1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
明治四十二年二月二十四日午後一時三十分開議
出席委員左の如し
長島鷲太郎君 天川三藏君 木村半兵衞君
須藤嘉吉君 松尾寅三君 細野次郎君
出席政府委員左の如し
大藏省參事官 菅原通敬君
本日の會議に上りたる議案左の如し
印紙税法中改正法律案(木村半兵衞君外一名提出)
○委員長(長島鷲太郎君)は開議を宣告す
○木村半兵衞君は明治四十年に約束手形の税率を現行法に改正したる以來織物市場就中甲州、米澤、足利、桐生等の市場に於ては商取引の圓滑を阻害するに至りたるを以て商人は當日の市場の取引に用ゆる手形の發行を翌市に延へ二囘の取引を合して一枚の約束手形を發行するの慣習行はるるに至り現に事實に就て取調を爲すに四十年前に於て一店にて二百五十枚乃至三百枚の約束手形を發行したる者か今日に於ては五六十枚の發行を爲すの状況に在りて小取引を阻害すること甚しきを以て本案を提出したりと説明し尚税率を輕減するも手形の發行數に於て大なる増加を來たすへけれは政府の收入は増加するとも減少するの恐なしと説明せり
○政府委員(菅原通敬君)は政府は大體に於て本案に反對す其の理由は普通の借金證文は万分の五の税率なるに約束手形の税率を改正案の如くせは税率の權衡上不公平を生するのみならす一方に收入を減少するの恐あり或一部に於ては或は現行の約束手形の税率を改正するの必要を認むるかは知らされとも各地の一般の取引市場を通顴するに税率の高きに失するか爲に手形の發行を阻害するの恐れあることは政府に於て認めさる所なり今約束手形の發行枚數を調査せし所に據るに
約束手形の總發行數 貳百四十万枚
内千圓未滿のもの 百二十万枚
此税領は 六万三千圓
今千圓未滿のものの内百圓以下の分の割合を五割と見る時は此税額 三万千圓
税率低減の爲に増加する發行枚數を一割増と算するも此税額 一万四千圓
差引 一万七千圓減少す
進んて樂觀的計算し千圓未滿のもの内百圓以下のものを三割と假定せは
三十八万枚此税額 一万九千圓
税率改正の爲に増加する枚數を五割増とするも五十七万枚此税額 一万千圓
差引八千圓の減收となるか故に政府は減税の改正案に贊成を表すること能はすと説明せり
○木村半兵衞君は政府か普通の借金證文と商取引に缺くへからさる約束手形を同一に見るは大に誤れり今本改正案によりて直接の影響を受くへき約束手形は重に織物市場に於て流通するものにして(一)長期のものは三十日短期のものは十五日(二)税率高きか故に小取引に用ゆる手形を市場より自然驅逐せり(三)百圓以下の約束手形は重に兩毛、八王子、秋田等織物市場に使用せらるるものにして其の範圍は生産地に限られ居るを以て生産地の商取引に大なる打撃を與へ商況の萎微を來たせり(四)政府か市場の改善、生産の發達を盛に唱道實行しつつあるに拘らす市場の取引の圓滑を阻害する約束手形の而も百圓未滿のものに對する減税に反對するは理由なしと説明せり
○細野次郎君は約束手形の使用は明治十八年の頃より盛に行はれ當時は金高の如何に拘らす二錢なりしか四十年に至り現行法の如く重税を課することとなれり抑も約束手形は商取引の圓滑に缺くへからさるは勿論なるに政府か借金證文と同一に見るは根本に於て誤れり爲換手形は三錢なるか故に約束手形を發行する場合に爲換手形を使用すること京阪地方に盛に行はる是れ税法の不完企なる處より起る弊害なり政府は收入の點に減少するの恐ありと謂ふも決してさる恐なし改正案の爲に増加する枚數は二倍なるか三倍なるか未た知るへからさるなり
又現行の税率は百圓未滿のものに封しては禁止税に等し假令は織物市場に於ては十圓の取引に對して總收入か十錢なるに印税五錢を課せらる而も十五日乃至三十日間に於ける負擔なるに於て誰れか之を禁止税と謂はさるものあらんや政府は宜しく七千圓乃至八千圓の減收あるの恐あると云ふ理由の下に本案に反對することなく生産地の商取引に莫大なる發達を來すか故に本案に贊成せられむことを希望すと説明せり
○須藤嘉吉君は政府は改正案の税率に多少の變更を加へ同意するの意なきやを質問せり
○政府委員(菅原通敬君)は政府は減税の法律に同意し難しと答辯せり
○委員長(長島鷲太郎君)は別に意見なきを以て採決する旨を告け本案は全會一致を以て可決するに異議なきやを諮問せり
○委員長(長島鷲太郎君)は異議なきを以て可決せし旨を告け散會を宣告す
于時午後二時二十分発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002510064X00219090224&spkNum=0
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