1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
明治四十二年三月五日午前十一時十分開議
出席委員左の如し
山根正次君 東條良平君 八木逸郎君
高原篤行君 高山長幸君 森田俊左久君
松野祐次郎君 高木正年君
出席政府委員左の如し
内務省衞生局長 窪田靜太郎君
委員長の許可を得て出席したる者左の如し
内務技師 野田忠廣君
本日の會議に上りたる議案左の如し
種痘法案
○理事(東條良平君)は本日は委員長長晴登君の出席なきを以て自己が委員長の代理をなすべき旨を告げ開會を宣告す
○委員長代理(東條良平君)は前囘に引續き政府委員に質問をなすべき旨を宣告す
○森田俊左久君は本案第一條に種痘は左の定期に於て之を行ふべし又同第五條に市町村は種痘を施行すへしとありて實際種痘を行ふの責任者が兩條に跨がりて責任の存在不明暸なり且つ第一條の行ふべしとは何人が何人に向て命令するものなりやと質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は第一條は一般種痘を一定の時期に於て行ふべき所以の原則を規定したるものにして必らずしも命令者被命令者を明示したるものに非らず第五條は市町村が種痘を施行すべき責任を定めたるものなりと答へたり
○東條良平君は第一條は市町村二種痘施行の義務を負はしめたるものにあらずやと質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は第一條は凡そ種痘なるものは如何なる時期に於て行ふべきものなるやの根本原則を規定したるものにして施行者の何人たるを定めたるものにはあらずと答へたり
○高山長幸君は第二條第三條第四條は種痘を受くるものの義務を定め第五條は種痘を行ふものの義務を定めたるものと解して如何と質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は立法者の意思は其處に在りと答へたり
○森田俊左久君は種痘の義務を全然市町村に負はしめては如何と述べたり
○政府委員(窪田靜太郎君)は不適當なりと認むる旨を述べたり
○委員長代理(東條良平君)は討議は後廻しにして質問すべき旨を告ぐ
○八木逸郎君は種痘證は善感者不善感者共に與ふるやと質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は兩者共に與ふと答へたり
○八木逸郎君は種痘證の交付と戸籍簿卒業證等に記載する證明とは重復の嫌なきやと質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は種痘證の交付は一般の醫師が種痘したる場合のみにして原則として重復せずと答へたり
○東條良平君は戸籍簿へ記載するには何に基きて之をなすやと質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は種痘を施せし醫師竝に保護者及義務者の屆出に因ると答へたり
○東條良平君は第二十條の科料額は傳染病豫防法の科料に比して重きに失せずやと質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は寧ろ輕き方なりと答へたり
○八木逸郎君は小學校等に於て卒業證に記載せざりし場合の制裁如何と質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は文部省をして學校監督法により監督勵行の任に當らしむれば足れりと答へたり
○森田俊左久君は寄留者種痘の場合に於て戸籍記載の手續き如何と質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は種痘は第一期が免疫上最も必要なるが故に之を嚴正に戸籍簿に記載して遺漏なからしめ寄留の場合は之を本籍吏に屆出でしむることとし其手續きは別に細則を設定する考なりと答へたり
○森田俊左久君は第六條の場合に於て種痘人名を指定せずやと質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は特に各人を指定せず一般告示を以て種痘者及其の種痘期日を指定すと答へたり
○東條良平君は第十二條の場合に於て他の醫師の種痘したるものを檢診して種痘證を交付し得るやと質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は本條は市町村醫以外の普通一般の醫師の檢診したる場合を規定したるものにして又種痘の檢診は其の不善感の場合の如き何等痕跡を止めざるものを檢診すること能はざるべきが故に從て他の醫師の種痘せるものを檢診するの場合事實に於て之れ無かるべし本條は醫師が自ら痘種せるものに對する場合の規定なりと答へたり
○山根正次君は種痘後直ちに旅行し其地に於て種痘證必要の場合は如何と質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は制規上種痘を施さざる醫師の檢診を許さざるが故に斯かかる場合には其事由を受種痘地の市町村長に屆出でしめて該證書の交付を求めて可なり第十一條は即ち之を規定したるものなりと答へたり
○松野祐次郎君は第三條所定の責任者は種痘義務者が其義務を履行せざりし場合責任者は義務履行の通知を爲したるのみにて責任完了したるものと云ふを得べきやと質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は第十九條により夫れ夫れ制裁を加へ居れりと答へたり
○高山長幸君は第一條に付き免疫期間を質問せり
○内務技師(野田忠廣君)は免疫は各人によりて其程度を異にせるも通常十年間は有効にして大概三期施行によりて生涯免疫の効を奏することは歐州一般の學説の認定する所なるを以て本案は此に基つきて立案せりと答へたり
○高原篤行君は自ら虚僞の申立を爲し醫師を欺きて證書を受けたるものの制裁如何と質問せり
○政府委員(窪田靜太郎君)は痘瘡は誰人も之を怖れて豫防するを常情となすが故に斯かる虚僞の場合を強て豫想して之れが制裁を設くるの必要なかるべしと答へたり
○委員長代理(東條良平君)は次囘を期して質問を續け討議に入るべきを告げ散會を宣告したり
于時午後零時二十分発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002511454X00319090305&spkNum=0
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