1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治四十二年二月十八日(木曜日)午後一時十二分開議
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議事日程 第八號 明治四十二年二月十八日
午後一時開議
第一 沖繩縣罹災救助基金法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第三 帝國鐵道會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 市町村立小學校教育費國庫補助法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第五 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第六 違警罪即決例廢止法律案(卜部喜太郎君提出) 第一讀會
第七 刑法中改正法律案(小河源一君提出) 第一讀會
第八 商法中改正法律案(松田源治君外三名提出) 第一讀會
第九 印紙税法中改正法律案(木村半兵衞君外一名提出) 第一讀會
第十 渡良瀬川沿岸地方特別地價修正法律中改正法律案(武藤金吉君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 工作物保護に關する法律案(高木益太郎君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 教育基金填補に關する建議案(荒川五郎君外四名提出)
第十三 醫育統一に關する建議案(八木逸郎君提出) (委員長報告)
第十四 (特別報告第一號)利根川水害豫防工事速成の請願外十六件 (委員長報告)
第十五 (特別報告第二號)酒田新莊間鐵道急設の請願 (委員長報告)
第十六 (特別報告第三號)山陰縱貫鐵道速成の請願外一件 (委員長報告)
第十七 (特別報告第四號)足尾銅山鑛毒被害地地價修正漏の請願外二件 (委員長報告)
第十八 (特別報告第五號)足尾銅山鑛毒被害地地價修正に對し再修正の請願外一件 (委員長報告)
第十九 (特別報告第六號)裁判所出張所新設の請願 (委員長報告)
第二十 (特別報告第八號)海獸捕獲及海獸製革保護奬勵に關する調査の請願 (委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=0
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001・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
貴族院ハ本院ノ送付ニ係ル政府提出臺灣銀行ニ於テ發行シタル一圓銀貨ヲ以テ
引換フヘキ銀行券ノ引換期限ニ關スル法律案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領
セリ
一政府ヨリ左ノ質問書ニ對シ答辯書ヲ送付セラレタリ
韓國橫貫鐵道敷設ニ關スル質問主意書(桂內閣總理大臣)
沖繩縣醫師會役員解職ニ關スル質問主意書(平田內務大臣)
〔左ノ答辯書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス)
衆議院議員金尾稜嚴君外二名提出韓國橫貫鐵道敷設ニ關スル質問ニ對シ別
紙答辯書差進候也
明治四十二年二月十八日內閣總理大臣侯爵桂太郞
衆議院議長長谷場純孝殿
(別紙)
衆議院議員金尾稜嚴君外二名提出韓國橫貫鐵道敷設ニ關スル質問ニ對
スル答辯書
一韓國橫貫鐵道ハ政府ニ於テモ其必要ヲ認ムルモ敷設ノ時期ハ明言シ難シ
二敷設ノ方法ニ就テハ日下調査中ニ屬ス
右及答辯候也
明治四十二年二月十八日內閣總理大臣侯爵桂太郞
衆議院議員山根正次君提出沖繩縣醫師會役員解職ニ關スル質問ニ對シ別紙
答辯書差進候也
明治四十二年二月十八日內閣總理大臣侯爵桂太郞
衆議院議長長谷場純孝殿
(別紙)
內務省衆甲第一號
衆議院議員山根正次君提出ノ沖繩縣醫師會役員解職ニ關スル質問ニ對
スル答辯書
明治四十一年五月中沖繩縣醫師會役員會ハ同縣立中學校長大久保周八同
校〓諭高良隣德カ生徒ニ對シ種痘ヲ行ヒタルハ不當ノ所爲ナリト決議シタルニ依
リ沖繩縣知事ハ之ヲ以テ權限ヲ超エタル違法ノ行爲ナリトシ取消處分ヲ爲シタリ
然ルニ醫師會總會ハ更ニ知事ノ取消處分ヲ不當ノ所爲ナリト決議シタルヲ以テ
知事ハ又之カ取消處分ヲ爲シタルニ役員會ハ重ネテ右取消處分ハ不當ナリト決
議シタリ依テ知事ハ右役員ノ行爲ハ其ノ權限ヲ超エ法令ニ違背シタルモノニシテ
解職處分ノ必要アルヲ認メ之カ認可ヲ申請シタルヲ以テ內務大臣ハ知事申請ノ
正當ナルヲ認メ醫師會規則第十五條ニ據リ之ヲ認可シタルモノトス
質問理由書ニ依レハ醫師法ニ基ケル醫師會ノ建議ニ對シ取消處分ヲ爲シタルカ
如ク記載シアルモ該建議ト前項ノ決議トハ各別箇ノモノニシテ右建議ニ關シ取消
又ハ解職ノ處分ヲ爲シタルモノニ非ラス
右及答辯候也
明治四十二年二月十八日內務大臣法學博士男爵平田東助
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
鐵道改築及航路開始ニ關スル建議案
提出者三浦覺一君荻野芳藏君吉植庄一郞君
岩田信君
一藏原惟郭君ヨリ外交ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
外交ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十二年二月十七日
提出者藏原惟郭贊成者大竹貫一
外三十一名
外交ニ關スル質問主意書
一間島問題ハ我保護國タル韓國主權ニ關スル重大ナル問題タルハ勿論韓國民保護
上一日モ等閑ニ附ス可ラサルモノナリ然ルニ政府ノ之ニ對スル交渉甚シク緩漫ニ
失シ一昨年來何等ノ進捗ヲ見ル能ハサルハ何ソヤ或ハ我カ當局者ニ於テ讓歩ノ
內意アルヤニ噂スルモノアリ吾人ハ之ヲ全然非認スルモノナリト雖モ萬一政府ニ於
テ讓步スルコトアリトセハ之ニ對スル政府ノ交換條件アリヤ否ヤ之ニ對スル政府ノ
答辯如何
一新法線鐵道問題タルヤ北京條約ノ精神ニ照シテ帝國權利ニ屬スヘキハ一點爭フ
ヘキ餘地ヲ存セス故ヲ以テ英人某ナルモノ之カ經營ニ關係スル商事會社タルノ事
實アルニモ拘ラス英國政府ハ我要求ノ正當ナルヲ認メ何等異議アルナシト云フ然
ルニ今日ニ至ル迄清國政府ノ之ニ對スル保證ヲ得ル能ハサルハ我外交ノ面目威
信ニ關スルコト大ナリ政府ノ之ニ對スル覺悟ト交涉ノ〓末如何
一安奉線鐵道附近ノ鑛山發掘權ノ有無ハ我國利權ノ係ル所ノミナラス滿洲開發
上一日モ緩ニスヘカラサルコト明ナリ政府ノ之ニ對スル交涉アリヤ否ヤ果シテ之アリ
トセハ交涉ノ結果如何
一辰丸不法抑留ノ件ニ關シテハ政府ハ先キニ强硬ナル抗議ヲナシ其提議ニ應スル意
ナキヲ見ルヤ斷然タル處致ヲ採ルノ言明ヲナシタリ而テ〓國政府ノ謝罪賠償ヲ得
ルノ條件ヲ以テ事漸クニシテ落著セリト雖モ吾人ハ△〓日ニ至ル迄其損害ノ賠償サ
レタル事實アルヲ認ムル能ハス政府ハ何故ニ〓國政府ヲシテ之カ賠償ヲ實行セシ
メサル其間何等カノ事情ノ存スル在テ之カ解決ヲ見ル能ハサルカ政府ノ之ニ對ス
ル覺悟ト其遷延ノ理由トハ如何
一日露交戰ニ際シテ旅順港大連灣ニ於ケル露國人民ノ私有財產ニ對シテ露國政
府ハ三百万圓ノ代償金ヲ要求シタリト聞ク果シテ然ラハ政府ハ之ニ對シテ賠償ス
ルノ意思アルヤ如何
一一昨年十月十七日「デーリーテレグラフ」ノ報スル獨逸皇帝陛下ノ某外交家トノ
會談中極東ニ關スル言明ハ明ニ獨逸皇帝ノ日本帝圖ニ對スル國際的友誼ヲ缺
ク重大事件タリ而シテ皇帝ノ言明カ事實タルコトハ獨逸議會ノ重大ナル問題タリ
シ事實ヲ以テモ一點疑ナキ所ナリ況ヤ堂々タル獨逸帝國ノ元首ノ言明ナルニ於テ
オヤ帝國政府ノ之ニ對スル覺悟ト手段トハ如何
一大平洋沿岸合衆國連邦各州議會ノ排日案ハ幸ニシテ非決セラレタリト雖モ其後
ノ電報ヲ以テスレハ紐育州其他各地ニ排日ノ氣勢益盛ナルモノアリ以テ同國興
論ノ向フ所測知スルニ難カラス今ニシテ之カ根本的解決ヲ見ルニ非スンハ日米間五
十年來ノ親交モ遂ニ悲ムヘキ結果ヲ見ルニ至ルコトヲ恐ル而シテ兩國ノ關係如何
ハ世界平和文明ノ消長ニ關スル事偉大ナリ政府ハ如何ナル手段ニ依テ日米間ノ
問題ヲ解決シテ帝國ノ威信ト權利ヲ確持スルト同時ニ兩國ノ親交ヲ進捗セシメン
トスルカ其手段方針如何
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
一去ル十六日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
度量衡法改正法律案
鵜澤總明君塚田啓太郞君山東七武君君
中村啓次郞君中沼信一郞君田又
岡崎運兵衞君磯部保次君花井卓藏君
執達吏規則中改正法律案外一件
關信之介君夏井保四郞君島田保之助君
向坂弘君大熊三之助君國井庫君
福留〓四郞君豐增龍次郞君富島暢夫君
未成年者飮酒禁止法案
根本正君阿部政太郞君東祐賢君
神前修三君町田旦龍君服井伊阪光暉君
津久居彥七君齋藤巳三郞君部綾雄君
違警罪卽決例ニ關スル法律案外一件
長島鷲太郞君阿部德三郞君松立川雲平君
橫井甚四郞君田信君田源
飯田新右衞門君的山岩岡國吉君君を結婚 においし
松野祐次郞君野半介君歡迎光臨平正榮
岡井藤之丞君矢島浦太郞君野
〓水市太郞君ト部喜太郞君高木益太郞君
內地及臺灣司法共通ニ關スル法律案
越奥三郞君齋藤二中郎藤珪次
岡精一一倉池侃十勝負傷二
森福藤荻福竹代野芳藏君滿義君君君君君花世高原菊齋田
市之輔君小川神武板崎東製作所
田又一一越吉進藏雄井良柳靜一第一章第一部
田俊左久君川平君卓
質屋取締法中改正法律案
澤田佐助君宮古啓三郞君三浦盛德君
鷲田土三郞君稻村辰次郞君澤來太郞君
石田孝吉君村田虎次郎君堀谷左治郞君
居留民國法中改正法律案
三土忠造君富安保太郞君日向輝武君
橫井時雄正統領奥村上
未文君君君君星期保古 印刷田管理佐々木
山大佐田內珠暢一三一倉大
一一〇藤太君
守屋此助君金尾稜嚴君加瀨禧逸君
私設鐵道法中改正法律案外一件
武藤金吉君三浦覺一君戶狩權之助君
古井由之君木下義之君木下謙次郞君
須藤嘉吉君米田穰君多木条次郞君
一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
度量衡法改正法律案
委員長中村啓次郞君理事花井卓藏君
執達吏規則中改正法律案外一件
委員長關信之介君理事大熊三之助君
未成年者飮酒禁止法案
委員長根本正君理事齋藤巳三郞君
違警罪卽決例ニ關スル法律案外一件
理事「松田源治君
委員長立川雲平君(ト部喜太郞君
內地及臺灣司法共通ニ關スル法律案
理事福田又一君
委員長竹越與三郞君齋藤二郞君
質屋取締法中改正法律案
委員長堀谷左治郞君理事澤田佐助君
居留民國法中改正法律案
理事加瀨禧逸君
委員長橫井時雄君柵瀨軍之佐君
私設戰道法中改正法律案外一件
委員長武藤金吉君理事三浦覺一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=1
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002・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 會議ヲ開キマス、議員靑木新次郞君ヨリ病氣ニ付キ十八
日ヨリ向フ二週間ノ請暇ヲ願出デラレマシタ、許可シテ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=2
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003・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ許可スルコトニ決シマス、鐵
道建設ニ關スル建議案外一件特別委員鮫島慶彥君病氣ノタメ辭任ノ申出ガアリマ
ス許可シテ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=3
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004・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハ無イト認メマスカラ、許可致シマス、而シテ該委
員ハ議長指名デゴザイマスカラ、其補關トシテ奧田榮之進君ヲ指名致シマス、未成年
者飮酒禁止法案特別委員神前修三君昨十七日病氣ノタメ辭任ノ申出ガアリマシタ、
右委員會ハ本日デ結了致シマシタカラ、此事ダケヲ御報告致シ置キマス、沖繩縣糖商
同業組合長ヨリ砂糖消費稅ニ關スル請願書ヲ電報ヲ以テ提出致シマシタ、之ニ對シマ
シテ議員立川雲平君外五名ノ紹介ガアリマス、右請願書ハ衆議院規則第百四十八
條ノ署名捺印シテ提出スベシトノ規定ニ違反シテ居リマスガ、同縣ハ交通不便ノ處デモ
アリ、目下本院ニ於テ砂糖消費稅法ニ關スル法案ノ審査中デアリマシテ、至急ヲ要ス
ルカラ、之ヲ有效トシテ受理シテ貰ヒタイト云フ紹介議員カラノ請求ガアリマス、之ヲ受
理シテ差支アリマセヌカ、一應御諮リ致シマス
〔「贊成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=4
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005・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハ無イト認メマスカラ、受理スルコトニ致シマス、外
交ニ關スル質問、藏原惟郭君
〔藏原惟郭君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=5
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006・立川雲平
○立川雲平君 チヨット藏原君ニ私ハ御相談致シタイ、御許ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=6
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007・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 此質問演說ノコトニ付ラデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=7
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008・立川雲平
○立川雲平君 サウデス、私竊ニ考ヘマスニ、藏原君ノ外交ニ關スル御演說ハ餘程傾
聽スベキモノデアルト信ジマス、今日ハ生憎外務大臣モ出テ居ラヌヤウデアリマスカラ、筆
記デ示スヨリハ、ヤハリ出テ居ルトキニ御演說ニナル方ガ餘程利益デアラウト恩フ、今日
ハ御止メニナッテ、他日大臣ノ出席ノ折ヲ見テ、御演說ニナッタラ如何デアリマスカ、チヨッ
ト御用談致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=8
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009・藏原惟郭
○藏原惟郭君 立川代議士ノ御忠告ハ有難ク感謝致シマスガ、國務大臣ガ出席セラ
ルヽコトハ固ヨリ熱心私ノ希望スル所デアリマス、併ナガラ殆ド豫算結了ノ曉ニ於テ國務
大臣ハ殆ド議會ニ關セザルモノヽ如ク、立川君ノ御話ノ如クニ殆ド一人モ此席ニハ國務
大臣ガ居ラレヌヤウニ思ハレマス、何時マデ待ッテ居ッテモ際限ノナイコトヽ考ヘマス、故
私ハ國民ノ代表者タル諸君ニ訴ヘ、併セテ天下ニ訴ヘンコトヲ欲スルノデアリマスカラ
國務大臣ノアルナシニ拘ハラズ進行シタイト心得マズ、左樣御承知ヲ願ヒマス(拍手起
ル)諸君、過日外交問題ニ付テ聊カ界見ヲ述ベマシタ所ガ、不幸ニシテ賢明ナル諸君ノ
容ルヽトコロトナラズ、滿場ノ喝采場裡ニ埋沒セラレタ次第デアリマス、今日ハ敢テ會稽
ノ耻ヲ雪グ意味デハアリマセヌガ、國家ノタメニ一片ノ誠意ヲ有スルタメ萬已ムヲ得ズ、私
ハ玆ニ此外交問題ニ付テ質問ヲ提出スル所以デアリマス、ドウカ幸ニ諸君ノ御〓聽ヲ瀆
シタイノデアリマス、一體外交ノコトタルヤ、國家重大ノコトデアッテ、外交ノ振不振ハ實
ニ國民ノ消長ニ關スルノデアリマス、殊ニ諸君モ御承知ノ通リ今日ハ東洋ノ日本ニアラ
ズシテ世界ノ大日本デアル、此世界ノ大日本ト云フコトハ卽チ外交ノ日本デアルト云フ
コトデアル、故ニ外交ヲ最モ尊重セザルベカラザル時機ト信ズルノデアリマス、此際ニ當ッテ
外交ノ上ニ於テ國民ノ希望ヲ滿タシ、國民ノ誠意ニ報ユルノ働キガ現ハレナイト云フノ
ハ私ハ實ニ國家國民ノタメニ悲シムベキコトデアルト信ズルノデアル、殊ニ吾〓ノ鄰邦ニ
アルトココノ敬意ヲ表スルトコロノ支那帝國ハ、今日最モ重大ナル途上ニ登リツヽアルノ
デアル、此際ニ當ッテ日本帝國ト支那帝國トノ間ニ於ケル關係ガ、最モ圓滿ニ最モ誠意
ヲ以テ私ハ行ハナケレバナラヌコトヲ信ズルノデアルソレ故ニ帝國ガ當然要求スベキ所ノ
モノハ堂々ト之ヲ要求シ、帝國ノ讓ルベキ所ノモノハ進ンデ之ヲ讓リサウシテ此兩大國
ノ間ノ親交ヲ厚ウシテ東洋平和ノ基礎ヲ鞏固ニスルト云フコトハ、今日ノ最大急務デア
ルト云フコトハ諸君ノ御諒知ノ通リデアル然ルニ我帝國ノ支那ニ對スル外交ハ如何ニモ
茫漠トシテ其要領ヲ得ズ、歸局スルトコロヲ知ラズ、恰モ霖雨ノ時期ノ如キ有樣ガ我
對〓外交ノ上ニ現ハルヽト云フコトハ、如何ニモ帝國外交ノ面目威信ニ關スルコトデア
ルト思フ例ヘバ間島問題ノ如キ政府ハ其當時ニ於テ非常ニ重キヲ置キ、韓國ニ代ッ
テ此問題ヲ解決センコトヲ試ミタノデアル諸君ノ御承知ノ通リ間島問題ハ殆ド百有
餘年ノ間、兩國ノ間ニ於ケル懸案デアッタノデアル、遂ニ今ヨリ三十年前ニ至ルマデ兩國
相戒メテ此間島ニ足ヲ入ルヽコトヲ避ケテ居ッタ次第デアル、然ルニ段々時勢ノ進行ニ伴ツ
テ〓韓ノ間ニ於ケル問題ガ再發シテ、遂ニ日本帝國ヲ代表スルトコロノ統監府ガ韓國
ニ代ッテ此多年ノ懸案タルトコロノ間島問題ヲ解決セントスルノ任ニ當ッタノデアル而シテ
談判ハ開カレタノデアル、抑〓間島ナルモノハ如何ナルモノデアル、是ハ卽チ露國〓國竝ニ韓
國、此三國ノ境ヲ接スル重大ナル場所デアル、兵略上ニ於テモ、商業上ニ於テモ其他國
際上ニ於テモ最モ重大ナル場所デアルソレ故ニ政府モ之ニ重キヲ置キ、韓國モ亦之ニ
重キヲ置キ、宗主權ヲ有スル日本政府ニ託シテ此問題ノ解決ヲ計ッタノデアル、其結果
トシテ齋藤大佐ハ卽チ派出所ノ長官トシテ問島ニ派遣セラレ、卽チ韓民ノ保護管理ノ
任ニ當ッタノデアル卽チ此間島ニ對シテ韓國ノ要求竝ニ日本ノ要末スル所ノモノガ、
正當誠意デアリシナラバ、何故ニ之ヲ速ニ〓國ト共ニ解決スルコトヲシナカッタノデアルカ、
此〓ガ政府ノ緩慢ニ附シテ居ル所以ト信ズル、固ヨリ外交ノコトハ機密ニ屬スル〓ガ少
ナカラヌト云フコトハ本員モ信ジテ居ル、併ナガラ元ト韓國ニ屬シ、而シテ日本政府ガ
之ヲ當然正當トシテ認メルトコロノモノニ向ッテ、堂々要求ヲスルコトニ於テ何ノ憚ルトコ
ロガアルカ、若シ疚シイ所ノモノガアリシナラバ日本帝國ガ如何ニ談判ヲ重ヌト雖モ、如
何ニ天下ノタメニ主張スルトコロデアルト雖モ、帝國本來ノ威信ヲ擁護スルガタメニ之ヲ
讓ルモ可ナリデアル若シ讓ルコト能ハザル事實ト理由ノ存スルアラバ、何處マデモ要
求スベキデハナイカ、然ルニ年ヲ重ヌルト雖モ、其終局ヲ見ルコトガ出來ヌト云フハ是
政府ノ緩慢デアルカ、將タ此問題ガ實ニ複雜ニシテ、而シテ時日ヲ重ヌルノ已ムヲ得ナイ
ノデアルカ、吾ミ此〓ニ於テ迷フノデアル、斯ノ如キ問題ガ長ク兩國間ニ橫ハッテ、兩國
親交ノ上ニ障害ヲ與ヘルト云フコトハ吾ミノ採ラザル所デアリマス、聞ク所ニ據ルト過
ギシ頃或ル新聞ノ報ズル所ニ依ルト、謝恩大使ノ唐紹儀ガ米國ニ到ル途中日本ニ立
警·カド·其當時日本政府ト交涉ヲシタ結果、或ハ日本帝國ヨリ此間島ヲ〓國ニ讓ルノ
意アルノデハナイカト云フ疑問疑惑ノ中ニ含マシタ記事ガ現ハレタ之ニ付テハ其眞相ヲ
知ルコトハ出來ヌガ、果シテ唐紹儀ト日本帝國外交官トノ間ニ交換ガアッタヤ否ヤヲ知
ルコトガ出來ナイ、併ナガラ是等ヲ秘密ノ間ニ何時マデモ彷徨セシムルト云フヤウナコトニ
ナルト、斯ノ如キ疑惑ガ方々ヨリ起ルノモ已ムヲ得ナイノデアリマス、卽チ當時ノ漢字新
聞ニ何ト云フテ居ルカ、卽チ唐紹儀大使ヨリ〓國外部ニ致シタル其箇條ニ日本外務
省已ニ復簡アリ、而シテ其大意ハ間島問題ノ證據旣ニ確メラレ應ニ〓國ノ領土ニ歸
スベキハ疑義ヲ須ユル所ナシト云フニ在リ、斯ノ如キ通信ガアル斯ノ如キ事柄ガ新聞ニ
出テ居ルノデアル、外務省ハ之ヲ打消サヌ、何故ニ是ガ事實デナイナラバ打消サナイノデア
ル吾〓ハ間島ハ實ニ重大ナル場所デアルト云フコトヲ信ズル殊ニ此三國ノ間ニ橫ハル
所ノ最モ肝要ナル場所デアルト云フコトヲ信ズル政府ガ故ナク政府ガ根據ナク、此問
題ヲ提出シテ、此談判ノ任ニ當ッタト云フコトヲ私ハ信ゼヌ、故ニ政府ヲ深ク信ジテ政府
ニハ必ズ決意アリ必ズ據處アリ、必ズ要求スル所ノ決心ハ定ッテ動カヌモノト信ズルノデ
アル、併ナガラ政府ハ進ンテ此問題ヲ-固ヨリ急速ノ間ニ決行スルト云フコトヲ吾ミハ
要求スル者デハナイ、併ナガラ道ヲ盡シ誠意ヲ盡シ努力奮勵以テ此問題ヲ遠カラズシテ
解決シテ、兩國ノ間ノ和親ニ資スルトコロ大ナランコトヲ私ハ希望スルノデアル此記事ノ
報ズルトコロノ事ガ果シテ事實デアルヤ否ヤ、又政府ハ如何ナル程度ニ交涉ヲ進メツヽア
ルヤ否ヤ、是本員ガ聽カントスルトコロノ第一ノ問題デアル、第二ニハ是モ永イ間懸案ト
ナッテ居ルトコロノ卽チ新法線鐵道問題デアル抑此新法線鐵道問題タルヤ、諸君ノ
御承知ノ通リ或ル英國ノ商人ガ金主トナッテ而シテ〓國ノタメニ之ヲ經營スルト云フヤ
ウナ事柄ヲ吾〓仄ニ聞イテ居ル、又去年ノ貴族院ノ委員會ニ於テ珍田外務ノ次官ガ
此問題ニ對シテ說明スル所ガアッタコトモ覺エテ居ルノデアル卽チ〓國ガ英吉利ノ或ル
一商會社ト提携ヲシテ新法線鐵道ヲ經營スルト云フコトヲ聞イタノデアルカラ、之ニ抗議
ヲ申込ミ之ニ對シテ〓國ニ談判ヲ開イタノデアル、又一方ニ於テハ英國ノ意志ヲ確ムル所
ガアッタ所ガ決シテ日本ノ意志ヲ枉ゲテ迄モ此新法線鐵道ノ經營ヲ欲スルト云フ意志
ハ更ニナイ、要スルニ卽チ日本帝國ノ要求ガアッタラバ之ニ讓ルト一云フ意味ノ事實ヲ此
政府委員ハ漏ラサレテ居ルノデアリマス、英國ノ此寬大ナル、英國ノ此至當ナル態度ハ
吾〓ノ尊敬スル所デアッテ、實ニ日英同盟ノ精神モ玆ニアルト云フコトヲ信ズルノデアル卽
チ新法線鐵道ナルモノハ南滿鐵道ノ竝行線デアル、、此竝行線ヲ許サナイト一云フコトハ卽チ
「ポーツマス」條約ニ於テ關聯シ、進ンデハ北京條約ニ於キマシテモ此意味ハ明カニ言明サレテ
居ルノデアル、支那帝國ニ於テモ斯ノ如ク明カナル理由ノ存スル所ノ問題ヲ日本ノ正當
ナル要求ニ背イテ新法線鐵道ノ經營ヲナシテ南滿鐵道ノ利害ニ關係スルガ如キコトヲ
ナサヌト云フコトハ私ハ信ジテ疑ハヌノデアル、ソレ故ニ此問題ノ解決モ私ハ困難デハナ
イト思フノデアルガ、政府ハ此問題ニ付テ幾干ノ程度ニ此交涉ハ進メツヽアルノデアルカ、
政府ハ果シテ明カニ〓國政府ノ承認ヲ確メタノデアルカ、將又此問題ハ尙懸案中ニ
屬シテ決定スルトコロナイノデアルカ、殊ニ是ハ「ポーツマス」條約ヨリ自然ニ生ミ來ラレタ
ルトコロノ最モ根據アル問題デアルカラ政府ハ進ンデ和衷審議以テ此兩國ノ間ニ橫ハル
問題ヲ一刻モ速カニ結了セシメンコトヲ希望スルノデアル之ヲダニ解決スルトコロノ手腕
ガナイト云フコトデアッタナラバ吾〓ノ外交ハ實ニ外交トシテ見ルコトガ出來ヌト言フモ決
シテ私ハ過言ニアラズト信ズルノデアリマス、又私ガ更ニ政府ニ問ハントスルトコロノモノハ
何デアルヤハリ是モ〓國ニ關スル所ノ問題ノ一ツデアル卽チ辰丸不法拘留ノ件デア
ル、第三辰丸ガ突然世界ノ公路ニ於テ〓國軍艦ノタメニ抑留サレ、而シテ不法ノ行爲
ヲ以テ待遇サレ又侮辱ヲサレ而モ損害ヲ掛ケラレ、帝國ノ商船ニ向ッテ、侮辱ヲ加ヘ
タルト云フコトモ事實デアル、此問題ハ政府ハ非常ナル覺悟ヲ以テ〓國ニ談判ヲセラレタ
ト云フコトモ聞及ンデ居ルノデアル〓國幸ニシテ容ルヽトコロガアッテ或ハ謝罪ノ意ヲ表
3、或ハ賠償スルノ決意ヲ示シタト云フコトヲモ疾ニ聞イテ居ルノデアル、併ナガラ今ニ至ル
マデ之ニ對スル損害ノ賠償ノ實行サレタト云フコトヲ私ハ耳ニセナイノデアル、諸君ハ之ヲ
耳ニセラレタカモ知レヌ、私ハ耳ニシナイノデアル、何故ニ是ハ賠償サレヌノデアルカ、
聞ク所ニ依ルト廣東總督張人駿ナル人ガアッテ其賠償ヲ拒絕スルガ爲斯クハ遷延スルト
聞及デ居ル或ハ亦排貨問題ト關聯ヲシテ居ルガ爲此進行ヲ遷延シツヽアリハセヌカト云
フ疑惑ヲ私ハ有スルノデアル斯ノ如キ問題ハ簡明ニシテ、旣ニ解決セラレテ居ルノデアル
其結末ヲ付ケルト云フコトハ急務中ノ急務ニシテ、兩國間ノ感情融和ヲ計ルハ一日モ
缺クベカラザル急務デアルト私ハ信ズルノデアリマス、又日露交戰ノ際ニ於テ旅順大連
ニ於ケルトコロノ露國人ノ私有財產ニ對シテ露國政府ハ道途ノ傳フルトコロニ依レバ三百
万圓ノ賠償ヲ要求シタト云フコトデアル、是モ果シテ事實デアルカ、若シ事實デアッタラパ
政府ハ之ニ對シテ如何ナル手段ヲ執ラルヽノデアルカ、是モ私ガ聽カントスル所ノ問題デア
ル併ナガラ最モ私ガ重キヲ置イテ問ハントスル所ノモノハ諸君ヲ驚カシ世界ヲ驚カ
シ、世界ノ外交界ヲ實ニ驚倒セシメタル所ノ一事ガアル、何事デアルカ、昨年ノ十月十七
日「デーリーテレグラフ」ノ報ズル所ニ依ルト、吾〓ノ豫テ敬意ヲ表スル所ノ堂々タル世界
ノ大國、而シテ其國ノ元首タル所ノ英明卓拔ナル獨逸皇帝ハ或ル外交家ノ會見中ニ
語ッテ曰ク、近キ未來ニ於テ東洋ニ於テ必ラズ一大動亂アラン我大海軍ヲ擴張スルハ卽
チ是ガタメニ備ヘルノデアル、此場合ニ於テ此世界ノ大勢東洋ノ紊亂ヲ戡定スルトコロ
ノモノハ大海軍ヲ備ヘルトコロノ大强國ノミデアルト云フコトヲ明言サレタノデアル吾ミ
ハ其當時新聞ニ依ッテ之ヲ疑ヒ、其電報ノ事實ナラザランコトヲ希望シタノデアル、併ナガ
ラ日ト共ニ獨逸皇帝ノ三口明ハ事實デアッタコトヲ悲ムノデアル、而モ獨逸ノ議會ヲ非常
ニ感動セシメタノデアル、獨逸皇帝ノ言明ハ獨逸議會ノ大問題トナッタノデアル世界ノ
歷史ニ於テ世界ノ大國ノ元首ガ議會ニ於テ八面攻擊ヲ受ケ痛ク非難ヲ受ケラレタト云
フコトハ私ハ未ダ曾テ聞カザル所デアルノデアル、唯獨逸ニ於テ之ヲ認ムルコトヲ得タノデ
アル、一方ニ英邁ノ君主アリ一方ニ之ヲ攻擊スルノ議會アルコトハ、實ニ世界ノ外交界
ニ於ケル一大奇觀デアルト云フコトヲ私ハ信ズルノデアル、此一大奇觀ハ併ナガラ唯吾ミ
ノ日本帝國民トシテハ傍觀スベキコトデハナイノデアル、獨逸皇帝ノ言ハ直チニ日本帝國
民ヲ指シテ居ルノデアル、其證據ガアルノデアル、獨逸皇帝ハ此失言ニ於テ謝スルトコ
ロガアラレタト云フコトヲ聞クノデアル、流石ニ堂々タル大國ノ元首ニシテ其非ヲ悛
ムルニ憚カラレザルト云フコトハ實ニ吾ミ國民ガ敬意ヲ表シテ止マザルトコロデアル併ナ
ガラ獨逸皇帝ノ言明ハ必ズ心ヨリ出タモノデアラウト信ズルノデアル心ナキモノガ口ニ
出ル筈ガナイ、煙ノアル所ニハ必ズ火ガアルト云フコトハ是ハ世界ノ道理デアル事實デ
アル獨逸皇帝ノ此言明ハ確ニ日本ニ對スル友情友誼ト云フコトハ吾〓ハ認メルコトハ
出來ヌノデアル幸ニシテ獨逸議會ハ之ヲ否認シ之ヲ取消シ、而シテ兩國ノ間ノ親交ヲ
保ツニ努メタリト雖モ、獨逸皇帝ノ言明ハ炳トシテ天日ノ如ク未ダ消スベカラザルコトヽ
私ハ信ズルノデアル、然ラバ日本外務ノ當局者ガ-日本政府ガ獨逸皇帝ノ此不親
切ナル非國際的ナル此言明ニ對シテ如何ナル態度ト如何ナル手段トヲ執ッテ、卽チ此
兩國ノ間ニ於ケル所ノ疑ヲ全然消滅セシムルコトガ出來ルヤ否ヤト云フコトヲ私ハ問ハザ
ルヲ得ナイノデアル、小村外相ハ過日ノ外交方針ノ演說上ニ於テ獨逸ト日本トノ親
交ハ益〓深キヲ加フル將來モ亦斯ノ如クナルコトヲ信ジテ疑ハヌト言ハレタ、吾ミモ之ヲ信
ジテ疑ハヌ、然レドモ斯ノ如キ親交國ノ間ニ斯ノ如キ實ニ驚クベキ放言ガ元首ノ口ヨリシ
テ日本ノ友情ヲ缺クガ如キ言明ノアルト云フコトハ吾ミ國民ノ聊疑惑スルトコロデアルノ
デアル私ハ是ニ對シテ外務大臣竝ニ日本政府ノ手段ト態度トヲ承ハランコトヲ希望スル
ノデアル國民トシテ又明カナル明確ナル答辯ヲ實ニ望ンデ止マヌモノデアルト云フコトヲ信
ズルノデアル、更ニ私ハ長ク諸君ノ〓聽ヲ煩ハスト云フコトヲ恐ルヽノデアル、諸君ハ貴重ナル
問題ヲ前ニ控ヘラレテ居ル、併ナガラ尙一言日米ノ間ニ付テ本員ニ盡サセラレンコトヲ諸君
ニ私ハ請求シテ已マヌノデアル過日私ハ日米ノ問題ニ付テ移民問題ニ付テ聊述
ブルトコロガアッタノデアル、所ガ不作法ナル本員ノ辭令ニ甚ダ拙ニ、且其辯論スルトコ
ロガ諸君ニ徹底セザリシコトヲ甚ダ遺憾ニ思フ、併ナガラ諸君、日米ノ此排日問題ト云
フモノハ決シテ談笑ノ間ニ之ヲ看過スベキモノデハナイノデアリマス外務大臣ハ僅カ米
國一部ノ人民ノ間ニアルトコロノ思想ニシテ、米國全民ノ實ニ思想ニアラズト云フコトヲ
斷言セラレタノデアル、不肖惟郭モ十年間米國ニ居ッタトコロノ者デアルカラ、或ル〓ニ於
テハ小村外相ト感ヲ同ウスルモノデアル併ナガラ吾ミガ米國ニ在留スル其當時ヨリシテ、
決シテ加洲ニ限ラナイ米國全體ニ一部ノ卽チ亞細亞人排斥ノ觀念ハ存在シテ居ッタ
ノデアル、私ハ屢く是ト戰ヒ、屢〓大ニ是ト爭ヒ、而シテ斯ノ如キ思想ノ野蠻的ナルコト
ヲ論ズルコトガアッタノデアル,併ナガラ或ル社會ニ於テ、或ル階級ニ於テ、此觀念ハ實ニ
深ク根柢ヲ有シテ居ルノデアルト云フコトヲ私ハ疑ハヌノデアル、ソレ故ニ外務大臣ニ於テ
モ、國民ノ代表者タル諸君ニ於テモ、日米ノ問題ヲ一時ノコトヽシテ看過セラルヽト云
フコトハ實ニ私ハ國家ノタメニ悲シムベキコトデアルト信ズルノデアル、諸君、日米ノ間ニ
橫ハレルトコロノ日本人排斥ノ理由ハ何デアリマス、私ハ日本人排斥トハ言ハヌ、支那
人排斥、日本人排斥、卽チ亞細亞人排斥デアル、所謂黃色人ノ全部ノ排斥デアル、
是ハ直チニ人種問題ニ突入スルノデアルノデアリマス、固ヨリ勞銀問題モ其一ツデアリマ
セウ、社會問題モ其一ツデアリマセウ、選擧問題モ其一ツデアリマセウケレドモ、其根柢
ニ橫ハルトコロノヨリ大ナル問題ガアル、ソレハ卽チ、人種上ノ惡感情、異人種的反感情
更ニ詳言スレバ、人種ハ宗〓上ニ於ケルトコロノ一種所謂僻見デアル、感情デアル此二
大原素ガ相寄ッテ以テ此東洋人排斥問題ノ基礎トナッテ、是ガ遂ニ排日案トナッテ來テ
居ルノデアル諸君ガ御承知ノ通り嘗テ〓國人排斥ヲシタ、〓國人排斥ハ卽チ東洋人
排斥ノ前兆デアッタノデアル準備デアッタノデアル宜ナル哉今日ハ加洲ノミナラズ此太
平洋沿岸ノ各州ハ殆ド到ル處ニ排日問題ヲ議セザルハナイノデアル、米國ノ有ラユル新
聞有ラユル社會、有ラユル方面ニ於テ排日問題ハ到ル處ニ輿論ノ中心トナリ言論ノ
沸騰點トナッテ居ルノデアル、之ヲ以テモ此問題ノ根本ノ決シテ淺薄デナク原因ノ遠イ
ト云フコトヲ知ルニ足ルノデアリマス併ナガラ斯ノ如キ不幸ニ陷ラシメタノハ私ハ米人ニ
罪ガアルトハ申スケレドモ、是ハ日本外交ノ甚ダ失政ニ基クコトヽ思フノデアル、第一移民
ノ政策ガ日本ノ政府ニハ定マッテ居ナカッタノデアル移民ノ政策ガ一定シテ居ラナカッタ、
而モ移民ノ活動ヲ自由ニ放任シテ-居タタメニ、斯ノ如キ問題ヲ遂ニ惹起スルニ至エ
タト思フノデアル要スルニ失敗ノ大原因ハ移民ニ對スル政策ガ一定シ、方針ガ確立シ
テ居ラナカッタコトニ基クノデアル若モ之ノ方針ガ定ッテ居タナラバナゼ日本ノ移民ニ
於テハ秩序ヲ正サナイカ、ナゼ日本ノ移民ニ於テハ方式ヲ備ヘナカッタカ、ナゼ日本ノ
移民ニ於テハ其一定ノ場所ヲ示サナカッタカ、ナゼ之ヲ保護シナカッタノデアルカ、ナゼ之
ヲ指導シナカッタノデアルカ、到ル處ニ外務省ハ之ヲ抛擲シテ置タノデアル、外務省竝ニ
日本政府ノ一部ヲ代表スルトコロノ所謂外國ノ理事官竝ニ日本ノ領事館ハ殆ド此移
民ト云ウヤウナコトハ、念頭ニ掛ケナカッタノデアル、一種ノ冷淡ナル態度ヲ以テ之ニ對シ
タノデアル、之ハ我ミガ海外ニ於テ目擊シタ所デアル、例ヘバ米國ガ移民問題ヲ社會問題
トスル所以ハ何所ニアルカ、此所ニ同胞諸君ノ前ニ言明スルヲ恥ヅルト雖モ一種ノ如何ハ
シキ婦人ノ渡航ニ關係シテアッタノデアル何故ニ此婦人ニ對シテ相當ノ取締相當ノ制
裁ヲ加ヘテ而シテ海外ニ於テ日本國民ノ品位ヲ害スルヤウナコトヲ防禦スルヲ努メナカツ
タノデアルカ政府ガ既ニ手ヲ施シタ時ニハ後レテ居ッタノデアル後レタル外交ハ外交ナキ
ト云フモ決シテ誣言ニアラズト私ハ信ズルノデアル尙ホ政府ガ移民ノ政策ガ定ッテ居ッタ
ラバ何故ニ家族的移民ヲ行ハナカッタノデアルカ、ナゼ家族ヲ伴フテ而シテ永住的殖民ヲ
ナサシムルトコロノ方針ヲ助ケナカッタノデアルカ、殊ニ移民ノ政策ヲ行ハントスルニハ移民
ノ目的ヲ完フスル上ニ於テ相當ノ機關ヲ備ヘネバナラヌ例ヘバ外國語ノ修養トカ或ハ
風俗上ノ心得トカ地理氣候上ノ知識トカ、多少修養スル必要ガアル、卽チ移民〓育ヲ
ナサナカッタカ之ヲダニナサナイ日本ノ外交、移民ノ政策ハ決シテ移民ノ政策ニアラズシ
テ是ハ亂民政策デアルノデアル、是等ノコトハ確ニ日本政府ノ責任吾〓同胞ニ向ヲテ
卽チ日本ノ外交ノ行屆カナカッタコトヲ以テ外務當局者タル者ノ責任ヲ問ハザルヲ得ナイ
ノデアル今ニシテ此救濟ノ途ヲ講ズルハ遲シト雖モ亦無キニ勝ルト云フコトヲ私ハ信ズルノデアル、
之ヲ約言スレバ諸君日本人排斥ノ原因ハ種々今申上ゲマシタ如キコトガアルト同時ニ米國
ト同化シナイト云フコト米國ノ文明ヲ害スルトー云フコト、卽チ米國ノ安寧ヲ保護スルト云フ
上カラ又ハ東洋人ノ衞生ニ關スルコト若クハ道德ノ標準ニ關スルコト若クハ宗〓上ノ異同ニ
關スルトカ種々ノ理由ガ排日ノ動機ニナッテ居マシセウ然レドモ之ヲ大別スレバ先ヅ勞銀ノ低
廉ト人種上反感ト之ニ加フルニ此排日思想ヲ挑發シタル原因ハ卽チ日露ノ大捷ニ伴フ陸
海軍擴張尨大デアッタト云フコトヲ重ナルモノト思ヒマス是ハ過日犬養議員ヨリ演說ニナッタ
通リノ事實デアル、日本ノ陸海軍ノ莫大ナルトコロノ大計畫ハ確ニ米國全洲ヲシテ震駭セシ
メテ所謂恐日病ヲ惹起シタト云フコトハ疑ハヌノデアル、何トナラバ加洲ノ或議員ハ曰
ク日本人ハ決シテ劣等ノ人種ナルガ故ニ排斥スルノデハナイ寧口白人種ニ勝ルトコロノ
能力ガアルノデアル、此能力ノアル優レテ居ル人種ヲ今ニシテ壓迫セズンバ他日如何ナル
危害ヲ米國ニ及ボスモ圖リ難イト云フコトヲ明言シテ居ルノデアル、諸君人種ノ反感トハ
何デアルカ、何ヲ以テ異色人ナルガ故ニ排斥スルノデアルカ品性ノ劣等ナルガ故デアルカ
風俗習慣ノ異ナルガ故カ余ハ確信ス彼等ガ東洋人種ヲ排斥スル根本理由ハ異人種ト
異宗〓上ノ僻見ニ基ク卽チ東洋人種ヲ以テ本來劣等ナルモノデアルト云フ頑冥ナル
迷信ニ歸スルモノナリ、斯ノ如キ迷信無道ノ僻見ヲ排斥シテ彼ノ愚蒙ヲ啓クコトハ當
局者トシテ決シテ不當ノ手段ニアラズト本員ハ信ゼントス、否寧口最大須要ノ眞ノ外
交手段ナリト絕叫セント欲スルノデアル諸君ハ人種ノ問題ガ偉大ナル關係ヲ此排日間
題ニ有セヌト云フコトヲ思量セラルヽノデアルカ、此所ニ私ハ一ノ證據ガアル卽チ高橋作
衞君ノ米國ニ到ッテ此人種問題ヲ特ニ調査ヲシタノデアルガ其結果何デアルカ、米國人
民ハ日本人排斥ヲ人種ノ異ナルニ存スルト云フコトヲ成ルベク避ケントスルノデアル、何
故ニ避ケントスルカ是ハ人道問題デアリ又世界ノ同情ニ背クトコロノ問題デアルガ故ニ
排日ハ決シテ人種問題ニアラズト云フ、併ナガラ直チニ此言ハ打消サレテ居ルデハナイカ、
例ヘバ間接ニハ排日ノ理由ガ人種的僻見ニ基クコトヲ自白スルモノ比々皆然リ、而シテ
直接ニ且無遠慮ニ之ヲ自白セル者モ甚ダ多シ「コリヤーヌ」紙上ニ於ケルアーウ井ンノ如
キ日本人ノ入國ハ經濟的ニモアラズ社會的ニモアラズ然レドモ之ヲ排斥スルノ根柢ハ人
種問題デアッテ「レースクヱッションアットポットム」デアッテ經濟問題デハナイト云フ
コトヲ斷言シテ居ルデハナイカ斯ノ如キ明々白々タル斷言ハ日本ノ外交家ハ認メナイノカ
又オーゴノート云フ人ハドウ言言タタデアルカ、日本人ノ能力ヲ否認セズ却テ其能力アル
ガ爲ニ日本ノ勃興ヲ好マズ、白人ノ力ニ依リ之ヲ壓スルヲ必要ト認メ此認定ニ基キテ
排日ヲ主張セリ、蓋シ米人ノ心アル者ハ排日問題ヲ人種的僻見ニ基クト言ハルヽノ
不利益ナルヲ感ズルガ如キモ要スルニ加州「クリスチャンアドボケート」紙上ニ斷言セル如
ク「ゼーホールシング、イズ、ベースド、アポン、セオレテイカル、レース、プレヂュデースゝゼロ
ホール、ムーブメント、イズ、バースドアポン、〒、セオレテイカルレース、ヘートレッド、
アンド、オットレー、アンウォルシーオフ、エニー.ボールド、オフエヂケーション」、賢明ナル
諸君ハ譯セズトモ御分リニナッタト信ジマス、チャンバレーンガ殖民議會ニ於テ千八百九
十七年施政ノ方針ヲ示シタル演說ノ一部ハ如何ニ人道問題卽チ人種問題ヲ此黃色
人種排斥ノ理由ト爲スヲ恐レテ居ルカト云フコトガ分ル、白人殖民地ガ文明ノ異ナリ
宗〓ノ異ナリ習慣ノ異ナル幾千万ノ人種ガ侵入シテ來ルコトノ如何ニ殖民地人民ノ合
法ノ權利ヲ深ク害スルコトニ向ッテハ同情ヲ表セザルヲ得ナイ、是等ノ種類ノ移民ハ殖民
地ノ利益ノタメニ排斥スルコトハ決シテ妨ゲヌ、然レドモ諸君ガ英帝國ノ遺傳的觀念ヲ
念ズルコトヲ忘ルヽナカランコトヲ、卽チ人種ノ異ナルガタメ若クハ色ノ異ナルガ爲ニ女皇
陛下ノ印度人民ハ勿論、他ノ東洋人種ト雖モ排斥スルコトナカランコトヲ切ニ希望セザ
ルヲ得ズト此一言ヲ以テモ如何ニ人種、問題ヲ以テ移民政策ニ對抗スルコトノ不利不當
ナルカヲ恐レテ居ルコトヲ察スルニ難カラズ、之ニ付テ澳太利ノ總理大臣ザーヘンリーパー
クス氏ハ尤モ驚倒スベキ答辯ヲナセリ曰ク、吾ミハ國法ヲ犯スコトニ依ッテ受ケルトコロノ
損害ハ社會ノヨリ大ナル秩序ノ法則ヲ奉ズルコトニ依テ賠償シテ餘リアリ女皇陛下ノ
艦隊ト雖モ亦女皇陛下ノ此所ニ於ケルトコロノ代表者ト雖モ又殖民地ノ主管大臣
ト雖モ我等が亞細亞人種排斥ノ意思ヲ翻ス能ハズ、是等ノ言ヲ以テ如何ニ人種問
題ガ亞細亞人排斥ノ根柢ニ深ク橫ヘルカニ付テ一〓疑ヲ挾ムコトハ出來ナイ、之ヲ以
テ諸君排日問題ノ根據亞細亞人排斥ノ根柢ハ其餅見タル人種感情ノ反感情ニ根
柢スルト云フコトハ動ス可ラサル鐵案タルコトヲ知ラルヽデアラウ、然ルニ諸君米國ハ如
何ナル國デアルカ、米國ノ建國ヲ諸君ガ顧ルナラバ諸君ノ御承知ノ通リ自由平等博愛
デアル、自由平等博愛ノ三字ハ米國ノ臣民ヲシテ悉ク時ニ立タシムルトコロノ最モ有力ナ
ル言葉デアル、此言葉ノ上ニ此確信ノ上ニ立テラレタルノガ卽チ米合衆國デアルノデハナイカ、
此爲ニワシントンハ母國ト戰フテ自由ノ旗ヲ翻シタノデハナイカ、此爲ニリンコルンハ人道ノ爲
ニ奴隸ヲ解放スル爲ニ幾年ノ戰爭ヲ繼續シタノデハナイカ、米國ノ精神米國ノ國本ハ卽チ
人道ニアル自由平等博愛ハ米國ノ精神デアル理想デアル、斯ノ如キ理想ト精神トヲ以テ
立テルトコロノ賢明ナル合衆國民ガ人種ノ僻見上ヨリシテ東洋人ヲ排斥スルト云フコトハ
諸君ハ信ズルコトガ出來ルノデアルカ、盛華頓ヲ喚起シリンコルンヲ喚起シ、而シテ米國
民ニ訴ヘシムルコトナレバ米國民ハ將ニ慙死スベキモノデアルト私ハ信ズルノデアル(拍手
起ル)諸君、是ハ人種ノ衝突デアルノミナラズ、人種ノ衝突ハ一變シテ文明ノ衝突デア
〓、東洋ノ交明ト西洋ノ文明ガ此人種ノ癖見ニ基イテ衝突シテ、太平洋沿岸ニ現出
シタルモノト云ッテ私ハ可ナリト信ズルノデアル此問題ノ根柢ハソレ故ニ人道問題文
明問題、諸君、排日問題ノ根柢ヲ解決スルノ楔子ハ此東洋ノ文明ト吾〓ハ信ジテ疑
ハナイガ、西洋文明ノミガ世界ノ文明デアルカト云フ〓テアル若シモ東洋文明ガ世界
人類ノ上ニ於テ缺クベカラザルモノデアルト云フナラバ、吾ミハ鼓ヲ鳴ラシテ東洋文明ノ
威嚴ト東洋文明ノ特權トヲ擁護スルタメニ起タナクテハナラヌト私ハ信ズルノデアル(拍
手起ル)而シテ世界ノ文明ハ東洋西洋ノ融合一致スルニアラザレバ完全ナル文明ヲ期ス
ルコトハ出來ヌ、人道ノ圓滿ナル理想ト其本領トヲ滿足セシムル所ノモノハ、卽チ東洋文
明ト西洋文明ノ統圓融ニアリト信ズルノデアル語ヲ換ヘテ云ヘバ東洋人種ト西洋人
種所謂東西兩人種ノ和衷協同ニ依ラズンバ完全ナル世界ノ理想的ノ文明ハ期セ
ラレヌト云フコトヲ信ズル、此目的ガ期セラレヌ以上ハ吾〓ハ外交ノ基礎トスル吾〓ガ外
交ノ根本トスル所ノ所謂正義公道、世界ノ平和世界ノ文明ナルモノハ外交ノ辭令ニ
過ギズシテ、其實線粕同樣ノ辭令ニ過ギヌト云フコトヲ信ズルノデアル、若モ日本ノ外交
ニシテ唯一時ノ辭令ノ交換、一時ノ表面ノ感情上ノ衝突ヲ融和スルコトニ汲々セズシテ、
先ヅ根本ニ立還ッテ此人種ノ問題ニ鐵案ヲ施シ、此卽チ東洋ノ文明、西洋ノ文明ノ
協同ニ力ヲ盡スベシ而シテ卽チ世界ノ良心、世界ノ人道、世界ノ理想、私ハ人道ノ終
局共通的目的ノタメニ帝國ノ外交ヲ振刷シ、帝國ノ外交ヲ有力ナラシムルコトハ、帝
國民ガ世界ニ對スル道德的責任デアルト云フコトヲ疑ハヌ、若モ日本國民ニシテ又當局
政府ニシテ此人道問題ヲ提ゲテ米國ニ迫リ、米國人ノ輿論ヲ喚起シ尙且反響スルニ
足ラザルトキハ、所謂世界ノ良心ニ訴へ、世界ノ理想ニ訴ヘテ、堂々鼓ヲ鳴ラシテ米國民ニ
向ッテ肉迫スルノ曉ニ於テハ、必ズ米國ハ自ラ顧ル所ガアッテ必ズ建國ノ精神ニ彼等ハ照ス
コトガアッテ、翻然トシテ此排日若クハ排亞細亞問題ノ如キハ所謂旭ノ前ニ於ケル所ノ
朝露ノ如クニ消ヘ失セルト云フコトヲ疑ハヌノデアル何故ニ賢明ナル外務大臣小村伯
ハ此實ニ屈强ナル武器ヲ提ゲテ世界ノ良心ヲ動カシ世界ノ正義ヲ動カシ、人道ヲ動
カス所ノ大ナル武器ヲ外交ニ用井ルト云フ勇氣ガナイノデアラウカ、決心ガナイノデアルカ
小村外相ハ人道ノ如何ナルモノト云フコトヲ御承知ニナラヌデアラウカ、人道ハ諸君
天理デアル天ノ命デアル、天ノ命ヲ奉ザザル所ノ外交ガ何處ニアルカ、實ニ道ハ須叟モ
離ルベカラズ離ルベキハ道ニ非ズ、是卽チ人道ナリ此人道ヲ以テ何故ニ日本外交ノ精
神日本外交ノ根柢又日本外交ノ所謂根本ノ理想ヲ目的トシテ確定シナイノデアル
カ、何故ニ是ヨリ日本ノ外交ヲ打算シナイノデアルカ此人道ノ根柢ヲ打却シタル所ノ
外交ハ所謂虛僞ノ外交デアル形式ノ外交デアル、無氣力ノ外交デアッテ、無能ノ外
交ハ卽チ是ヨリ湧キ來ルノデアルト云フコトヲ自覺セネバナラヌ、若モ米國ニシテ、又世
界ニシテ、此人道上カラ來ル所ノ排日問題ノ不當、竝ニ此排亞細亞論者ノ不當ナル
コトヲ訴ヘテ尙聞ク所ガナク尙改ムル所ガナイナラバ尙更二日本帝國ハ進ンデ世界
文明ノタメニ、人道ノ自由平等博愛ノタメニ、全力ヲ舉ゲテ帝國ノ此永久ナル功績ヲ
世界ノ歷史ニ止メ、其任務ヲ竭スコトニ著眼セナイカ、諸君、或人ガ曰ク、人道トハ人間
ノ人間タル特性デアル道德的性格ノ基礎ニシテ一切心的行動ト其感情ト統一スベキ
最大最高ノ法則デアルト云フテ居ルデハナイカ、人ノ特性ハ卽チ動物ト異ナリ眞心ト
道理トヲ以テ人間共通ノ終局ニ向ッテ共同奮鬪スルノデアル、是卽チ「アリストーテル」ノ
言デアルデハナイカ、尙諸君米國人ガ產出シタル尤モ賢明ナル大學者ギツデングハ何ト云
フタ、米人ノ理想ハ自由平筈博愛デアル、英人ハ之ヲ個人化シ、佛人ハ之ヲ社會化ス、
米人ハ之ヲ世界化セリト米人ガ世界化スル所ノ人道ハ何デアルカ自由平等博愛デ
ハナイカ、此世界化セル所ノ米人カ自由平等博愛ノ旗ヲ河ッテ、東洋人ヲ排斥シ日
本人ヲ排斥シ、學童問題ヲ惹起シ、暴行事件ヲ惹起シ營業禁止問題ヲ惹起スト云
フ此自殺的風潮ニ反抗スルト雖モ尙且及バザルガ如キハ、果シテ米國ハ自由平等博愛
ガアルノデアルカ嗚呼私ハ米國建國僅ニ百餘年ヲ出デナイ、而シテ此正義人道的精
神ノ缺乏トナリタルコトハ吾ミ人道ノタメニ之ヲ悲ミ、場合ニ依ッテハ米國ヲ膺懲スルモ
可ナリ米國ヲ膺懲スルノハ米國ニ友誼ヲ盡スノデアル、米國ヲ敬セザルノデハナイノデア
ル日本帝國ニシテ眞ニ米國ト友誼ヲ永久ナラシメント欲セバ米國人ノ良心ニ訴ヘ理
想ニ訴ヘ人道ニ訴ヘ而シテ尙肯カズンバ已ムヲ得ズ兩國間ノ平和ヲ破ルト雖モ、是
帝國民ノ責任ニアラズト宣言セント欲ス、米國ソレ自身ノ責任デアルト云フコトヲ私ハ此
議會ニ於テ言明スルコトヲ躊躇シナイノデアル(拍手起ル)尙諸君、此外交上ノコトニ
付テハ申上ゲタイコトガ多々アリマスケレドモ、諸君ハ旣御倦怠ノ色ガ見ヘルノデアル
(一ノウ「謹聽ケ々」ト呼フ者アリ)固ヨリ人道ニ倦怠ヲ生ズルガ如キハ決之
テ諸君ノ本意デナイト信ズル、之ヲ要スルニ日本ノ外交ガ根本的ニ誠意ノ信念ヲ缺イテ
居ルト思フ又日本ノ外交ハ唯力ニ依ッテ外交ヲ切囘ハサントシテ、國民ノ共同同情ノ
力ヲ私ハ外交上ニ活用シナイト云フコトガ、缺〓デアルト信ズル、又餘リニ外交ガ形式
ニ拘束セラレテ、自由的積極的正義ニ基クトコロノ堂々タル意思ノ發表堂々タル意志
ノ決行ニ缺ケテ居ル、語ヲ換ヘテ言ハヾ確信誠意ニ缺ケテ居ルト、斯ウ云フノデアリマス
更ニ尙進ンデ言ハヾ世界ノ人道ト良心ノ光明ニ訴ヘル卽チ偉大ナル國民的ノ精神ニ缺
ケテ居ルト言ハナケレバナラヌ、尙終リニ日本ノ外交ヲ從來觀察シ來レバ言以テ之
ヲ蔽フコトガ出來ル、外交巧ナラザルニ非ズ、外交努力セザルニ非ラズ、外交決シテナキ
デハナイ、併ナガラ緩慢ナル惰弱ナル憶病ナル外交ガ存在セリト私ハ言フ(拍手起ル)願
クハ滿堂ノ諸君、願クハ政府ノ當局者、大膽不敵、正義堂々、外交ノ根柢ヲ置クコト
ヲ、餘リニ辭令ヲ弄弄ス餘リニ形式ニ拘泥セズ、勇往邁進人道ノタメ國家ノ權能權
力ノタメニ私ハ大膽不敵ノ行動ヲ決意アフンコトヲ希望シテ止マスノブアル是私ガ政
府ニ質問ヲスル卽チ大要デ政府ノ當局者ハ願クハ之ニ付テ明快ナル答辯ヲセランコト
ヲ希望致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=9
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010・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御諮リヲ致シマス、造船奬勸法中改正法律案外一件ノ特
別委員會ヲ本會ノ開會時間中ニ開キタイト云フ委員長ノ請求ガゴザイマス、許可シテ
御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=10
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011・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 許可スルコトニ決シマス議事日程第一、沖繩縣罹災
救助基金法案ノ第一讀曾ヲ開キマス議案ノ朗讀ヲ省略致シマス
第沖繩縣罹災救助基金法案(政府提出)第一讀會
沖繩縣罹災救助基金法案
沖繩縣罹災救助基金法
第一條沖繩縣ニ於テ貯蓄スヘキ罹災救助基金ノ最少額ハ二十萬圓トス
前項ノ金額ニ達シタル年度ヨリ遡リ十年問ニ本法ニ依リ支出シタル救助
費平均年額ノ二十倍ノ金額カ前項ノ金額ヨリ多キトキハ其ノ金額ヲ以テ
最少額トス但シ支出額ノ最高及最低年度ハ平均計算ニ加ヘス
第二條沖繩縣罹災救助基金ノ每年度積立額ハ三千圓以上トス但シ前條ノ
制限額ニ達シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三條國庫ハ沖繩縣罹災救助基金ノ補助トシテ初年度ヨリ五年度間每年
九千圓ヲ交付ス
第四條本法ニ規定スルモノヲ除クノ外沖繩縣罹災救助基金ニハ罹災救助
基金法ヲ準用ス但シ同法中市トアルハ區ニ該當トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定メ四十年度間之ヲ施行ス
沖繩縣ニ於ケル災害救助ニ關スル從來ノ例規及舊慣ハ其ノ效力ヲ失フ
〔政府委員若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=11
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012・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 豫算ノ御審査ノ際ニ御承知ニナッテ居リマス通リ、來
年度カラ沖繩縣ニ自治制ヲ施行スル考デ居リマス就テハ此災害ノ場合ノ救助ノコトモ
他府縣同樣罹災救助基金ヲ設ケテ置キマシテ、是カラ救助ヲサスルト云フコトガ相當
デアル斯フ云フ考ヲ以チマシテ或ル金額ハ縣ノ積立金、又或ル金額ハ國庫ノ補助金
ヲ以テ、玆ニ一定ノ罹災救助基金ヲ積マシメタイト考ヘマスノデアリマス、是ガ本案提出
ノ理由デアリマスドウゾ御贊同ヲ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=12
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013・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御質問ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=13
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014・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御質問ハナイト認メマス-譲事日程ノ第二、右議案ノ
審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=14
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015・伊藤大八
○伊藤大八君 第二ハ九名ノ委員トシテ議長ノ指名アランコトヲ望ミマス
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=15
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016・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 伊藤大八君ノ動議ノ通リ、第二ノ日程ハ議長指名ノ委
員九名トスルコトニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=16
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017・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ、其通リ決シマス、-議事日
程第三、帝國鐵道會計法案第一讀會ヲ聞キマス-特別委員長望月右內君
第三帝國鐵道會計法案(政府提出)第一讀會ノ續(〓〓)(委員長)
(「登壇々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=17
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018・望月右内
○望月右內君 極簡單デアリマスカラ此レカラ御報告シマス、本案ハ大體政府案ヲ是
認致シマシタノデアリマス唯此十五條ニ至リマシテハ委任立法ト云フヤウナ嫌ガアリマ
ス故、、其範圍ヲ縮小シテ「本會計ノ收入支出ニ關スル規定ハ別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」
ソレダケノ修正ヲ加ヘマシタノデアリマス、ドウカ滿場ノ御贊成ヲ得マスレバ此上モナイ
希望デアリマスソレダケノコトヲ··
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=18
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019・高木正年
○高木正年君 私ハ此問題ニ付テ政府ニ質問ガアリマス、此席ヨリ申シマス、此本案
鐵道ノ資金ヲ得ルニ便宜ヲ與フル場合ニ本法ノ負擔トシテ資金調達ニ便スルト云フノ
ガ本案ノ骨子ニナッテ居リマス然ルニ鐵道ノ將來ヲ考ヘマスルト殆ド五億以上ノ國債
ヲ將來募ラナケレバナラヌ、尤モ本年ハ國債ヲ募ル時機デナイト云ッテ、借入金ヲシテ居
ルガ、之ハ決シテ將來ノ政府ノ目的デナイト思フ要スルニ公債募集ノ利子若クハ元金
ヲ銷却スルニ本法ノ負擔トスルト云フノガ、此本案ノ骨子ニナッテ居ル、今後募ルベキ公
債ハ約五億圓アリトスルト之ニ對シテ仕拂フベキ利子ノ千五百万ノ收入ガナケレバ
ナラヌ、鐵道ハ建築以來殆ド三十年而モ多ク利益アル所ノ線路ヲ有シテ居ルニモ拘ハ
ラズ、其收入ハ僅カニ三千七八百万ニ過ギナイノデアリマス、今後更ニ千五百万ノ收益
ヲ得ルコトニ付テ、政府ハ確カナル所信アリヤ否ヤト云フコトヲ私ハ聞キタイ、今一ツ若シ
假リニ將來ニ於ケル鐵道公債ノ利子ヲ拂ヒ得ル力ナキトキニ至ラバ-若シ其拂ヒ得
ル金額ニ達セザル場合ニ於テハ、政府ハ非常ニ鐵道ノ運賃ヲ引上ゲルト云フヤウナコトハ
シナイノデアルカ否ヤト云フコトヲ後日ノ言質トシテ私ハ承ッテ置キタイト思フノデアリマス
〔政府委員若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=19
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020・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 唯今高木君ハ鐵道ノタメニ將來五億圓ノ公債ヲ募ル
ト云フコトヲ斷言シテ御尋ニナリマシタガサウ云フ計畫ハマダ成立ッテハ居ナイノデアリマ
ス、ソレ故ニ其事ニ唯今御答申上ゲルコトハ出來兼ネルノデアリマス
〔「採決」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=20
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021・高木正年
○高木正年君 支拂ノ出來ナイトキ運賃ヲ上ゲルコトヲシナイノカ、其事ヲ聞キタイ
〔「無用」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=21
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022・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ百ヤヲ議題ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=22
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023・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ直チニ二讀會ヲ開キ、讀會ヲ省略シテ決定アランコトヲ望ミマ
ス、前年建議致シタ問題デアリマス
(「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=23
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024・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 只今恆松君ノ動議ノ通リ直チニ二讀會ヲ開キ、讀會ヲ省
略スルコトニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=24
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025・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 印御異議ハナイト認メマスカラ直チニ第二讀會ヲ開キ、三讀
會ヲ省略スルコトニ決シマス-直チニ二讀會ヲ開キマス
帝國鐵道會計法案確定議
(「委員長報告通リ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=25
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026・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ修正動議モ出マセヌカラ、委員長ノ報告通リニ御異
議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=26
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027・長谷場純孝
○議長(長谷場 純孝君)御異議ハナイト認メマスカラ、委員長報告通リ決シマス、本
案ハ是テ確定致シマシタ日程第四、市町村立小學校〓育費國車補助法中改
正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、議案ノ朗】讀ハ省略致シマス-文部大臣
第四市町村立小學校〓育費國庫補助法中改正法律第一讀會
案(政府提出、貴族院送付)
市町村立小學校〓育費國庫補助法中改正法律案
市町村立小學校〓育費國庫補助法中左ノ通改正ス
第三條第一條ノ補助金ハ其ノ半額ハ市町村立小學校ノ本科正〓員數ニ他
ノ半額ハ市町村立小學校ノ本科正〓員ニシテ五年以上同一府縣內ニ勤續
スル者ノ數ニ比例シテ之ヲ北海道及府縣ニ配賦ス
附則
本法ハ明治四十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔文部大臣小松原英太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=27
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028・小松原英太郎
○文部大臣(小松原英太郞君) 唯今議題ニ上リマシタ法案提出ノ理由ニ付キマシ
テ聊說明ヲ致シテ置キタイト思ヒマス現行ノ規定ニ依リマスルト、此法律ニ基キマシテ
小學校〓員ノ加体ノタメニ支出致シマスル金額ハ各府縣ニ於ケル學齡兒童及就學兒
童ノ數ニ比例ヲ致シテ配付スルコトニナッテ居リマス、然ルニ〓員ノ數ハ必シモ學齡兒童
及就學兒童ノ數ニ比例ヲシナイノデアリマシテ、實際ノ支給上ニ於キマシテハ甚ダ不權
衡不公平ニ陷ルヤウナ實況ニナッテ來タノデアリマス或ル縣ニ於テハ正〓員ニシテ五箇
年以上勤續ヲ致シテ居ル者ニハ全部加俸ヲ支給スルコトガ出來ル、或ル縣ニ於テハ正
〓員ノ三分ノ一ノ數ニモ此加俸ヲ給與スルコトガ出來ナイト云フヤウナ實況ニナッテ參ツ
タノデアリマス、ソレ故ニ此規定ヲ改正ヲ致シマシテ、將來ハ金額ノ半額ハ正〓員ノ數、
半數ハ正〓員ニシテ五箇年以上勤續ヲ致シタ者ノ數ニ比例シテ分配スルコトニ致シマ
シテ、公平ヲ得ルヤウニ致シタイト云フ趣意デゴザイマス、ドウゾ御協賛下サランコトヲ希
望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=28
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029・田川大吉郎
○田川大吉郞君 唯今ノ議題ニ付テ文部大臣若クハ政府委員ニ向ッテ質問ヲ致シタ
イ本條ノ趣意ノ內容ハ能ク分リマシタケレドモ本條ニ能ク該當スルトコロノ規定ガ他
ノ〓育基金令第二條ニアル、御承知ノ如ク〓育基金令ハ勅令ヲ以テ定メテアル、本條ハ
法律ヲ以テ御規定ニナッテ居ル同一ノ省內ニ於テ同一ノ性質、同一ノ目的計畫ニ向ツ
テ立法例ノ斯ノ如ク區々ニナル理由如何、是ガ第一問、又今申上ゲマスヤウニ區々ノ例ガ
成立ッテ居ルトコロニ鑑ミテ、文部省ニ於テハ將來ニ於テ之ヲ統一セラルベキ何等カ計
畫アルヤ否ヤ、、是ガ第二問、第三問ハ此法律ハ市町村立小學校〓員加俸令ニ直接關
係ヲ有ッテ居リマス現ニ此三條ハ其〓員加俸令第三條ト離ルベカラザル關係ヲ有ッテ
居ル御目的ニハ同意ヲ表シマスガ、若シ此法律ガ改正セラレタル後ニハ加俸令ニ向ッ
テ改正ヲ加ヘラレナケレバ此目的ヲ公平ニ達スルコトガ出來難イ事情ガアルト存ジマス、
此法律改正ヲ企テラレタル結果トシテ更ニ市町村立小學校〓員加俸令ニ向ッテ改正ヲ
企テラレル意思アリヤ否ヤ、是ガ第三問
(政府委員岡田良平君豆壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=29
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030・岡田良平
○政府委員(岡田良平君) 唯今御尋ノアリマシタ問題ニ付キマシテ第一問ヲチヨット
聞落シマシタガ、甚ダ失禮デスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=30
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031・田川大吉郎
○田川大吉郞君 第一問ハ〓育基金令第一一條ニ丁度國庫補助法第三條ニ該當ス
コル同ジ規定ガアリマス其區々タル所以如何発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=31
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032・岡田良平
○政府委員(岡田良平君) 御答ヲ致シマスルガ、或ル事柄ヲ法律デ規定シ、或ル事
柄ヲ勅令デ規定致シマスルト云フコトハ便宜ニ從ヒマスルノデ、卽チ〓育基金令ノ第二
條ハ今囘提出ニナリマシタルトコロノ小學校〓育費國庫補助法ト成程同ジヤウナ規定
デアリマスルガ、併ナガラ此〓育基金令第一條ト云フモノハ卽チ〓育基金特別會計法
ノ委任ニ依リマシテ制定ニナッテ居リマスノデ、之ヲ必シモ法律ノ中ニ規定センケレバナラ
ヌ、箇條トモ思ヘマセヌサリナガラ今囘提出ニナリマシタ箇條ハ必ズ是ハ勅令デ規定
シテナラヌト云フコトモナイト思フノデアリマス、要スルニ之ハ各法律ノ便宜ニ依ルコトデア
リマス、將來ニ於テモ必ズ統一ヲシナケレバナラヌト云フ考ハナイノデアリマス次ノ第三ノ
御尋ニナリマシタ此法律ノ改正ヲスレバ、從ッテ勅令ノ改正ヲ行フヤ否ヤト云フ御尋デア
リマシタガ、此〓ニ付テハ唯今詮議中デアリマシテ、相成ルベク改正ヲ致シタイト云フ考
ヲ以テ調査ヲ致シテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=32
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033・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ御質疑モナイヤウデゴザイマスカラ日程第五、右議案ノ
審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
第五右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=33
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034・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ十八名ノ委員、議長指名アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=34
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035・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ唯今恆松君ノ動議ノ如ク、議長指名ノ委員十八
名ニ付託スルト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=35
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036・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマス、其通決シマス-日程第六、違
警罪卽決例廢止法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ヲ省略ヲ致シマスート部喜
太郞君
第六違警罪卽決例廢止法律案(卜部喜太郎君提出)第一讀會
違警罪卽決例廢止法律案
明治十八年九月第三拾壹號布告違警罪卽決例ハ之ヲ廢止ス
〔卜部喜太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=36
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037・卜部喜太郎
○ト部喜太郞君 違警罪卽決例廢止法律案ヲ提出致シマシタ理由ヲ述ベマスル、此
案ハ松田源治君ノ提出致シマシタ案ト略〓同樣ナモノデアリマスガ、其内容ニ至ッテハ大
ニ異ルトコロガアルノデアリマスカラ、極ク簡單ニ之ヲ提出スル理由ヲ述ベル積リデアリマ
ス御承知ノ通違警罪卽決例ト申シマスルモノハ明治十八年ノ九月ニ發布セラレタモノ
デアリマス、此時分ニハ未ダ諸殷ノ法律制度ト云フモノガ整ウテ居リマセヌ、人民ノ權
利或ハ自由ト云フヤウナモノヲ保護スル途ガ立タヌ時分ニ出來タ一種變則ナ法律デアル
ノデアリマスル、而シテ違警罪卽決例ノ內容ハ其法律ヲ御覽ニナリマスレバ能ク分ルノデ
アリマスルケレドモ警部トカ或ハ警部代理ノ巡査ト云フモノガ人民ノ大切ナル事由財產
ニ關スルトコロノ刑事裁判ヲ爲ス制度ニナッテ居ルノデアリマスルサウシテ其制度ト云フ
モノガ丁度告訴人ト、檢事ト裁判官、此三ツノモノヲ一人ノ警部或ハ警部代理ノ巡
査ガ行ッテ居ルト云フ法律デアリマシテ、一言二申シマスルト此專制政治ノ時代ノ一ノ殘
物デアリマス、斯樣ナモノハ憲法滿二十周年ノ今日ニ至リマシテ、我法令ノ中ニ存シテ
置クト云フ事柄ハ如何ニモ許スベカラザルコトデアルノデアリマス、デアリマスカラ一口ニ違
警罪卽決例廢止法律案ト申シマスルト、甚ダ大切デナイ案ノヤウニ見エマスルケレドモ
其案ハ帝國憲法ノ明文ニ基キマスルトコロノ司法權ノ運用ニ關スル重大ナ案件デアル
ノデアリマスル、其提出ノ理由ト致シマシテハ憲法ノ精神ヲ完クシ、裁判權ノ統一ヲ保
チ、行政ト司法トノ畛域ヲ明カニセントス、斯樣ノ理由ニ依ッテ提出シタノデアリマス、今
更玆ニ事新シク申上ケルマデモナイコトデアリマスルケレドモ帝國憲法ノ第二十四條、第
五十七條、第五十八條等ヲ御覽ニナリマスレバ、專制政治時代ノ此違警罪卽決例抔
ト云フ野蠻ノ法律ヲ聖明ノ今日現存セシムルコトノ出來ナイト云フ事柄ハ、私ガ喋々申
スマデモナイコトデアラウト思フノデアリマスル、日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判
ヲ受クルノ權ヲ奪ハルヽコトナシ、司法權ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ於テ定メタル裁判所
之ヲ行フ、判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ備フル者ヲ以テ之ニ任ズト云フノガ、唯今私
ガ讀上ゲマシタ憲法ノ明文ニ規定サレテ居ルノデアリマス然ルニ違警罪卽決例ト云フ
モノハ悉ク此憲法ノ明交ノ精神ニ背イテ居ルトコロノ布告デアリマスル、ソレノミナラズ刑
法ガ改正ニナリマシテ此違警罪ト云フモノガ非常ニ重クナッテ來タノデアリマスル、ゝ舊刑法
ノ時代ニ於キマシテハ拘留ト云フノハ一日以上十日以下、科料ト云フノハ五錢以上一
圓九十五錢以下ト云フ刑ノ範圍ト云フモノガ極ク小サカッタノデアリマス-狹カッタノ
デアリマス、然ルニ此新刑法ト共ニ發布セラレタトコロノ此警察犯處罰令ニ依リマスル
ト、拘留ト云フモノハ三十日以下、科料ト云フモノハ二十圓以下トアッテ、ソレデ若シ科
料ヲ完納シナイ、時分ニハ刑法ノ第十八條ニ依ッテ一日以上三十日以下ノ期間勞役
場ニ留置スル、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデアリマス、ソレノミナラズデス諸君ガ少シク注
意シテ先頃內務省令ヲ以テ發布ニナリマシタトコロノ此警察犯處罰令ト云フモノヲ御
覽ニナリマシタナラバデス甚ダ輕微ナル犯罪ニ付テノ規定ノヤウデアリマスケレドモ、其内
容ノ中ニハ實ニ驚クベキコトガ書イテアルノデゴザイマス、早晚此警察犯處罰令ノ改正ト
云フ聲モ想フニ朝野ノ法律家ノ間ニ起ルコトダラウト思ヒマスガ、其規定ノ內容ノ二
三ヲ指摘シテ申上ゲマスレバ直ニ能ク分ルコトデアリマスル、警察犯處罰令ノ第二條ノ
二十一ニ官公署ニ對シ不實ノ陳述ヲナシ、又ハ其義務アル者ニシテ、故ナク陳述ヲ背ゼ
ザル者、斯ウ云フ條交ガアリマシテ、此條文ニ該當スル場合ニハ三十日以下ノ拘留、二
十圓以下ノ科料ト云フモノニ處スル、ソレカラ第三條ノ八ニハ故ナク官公署ノ召喚ニ應
ゼザルモノハ是ハ二十圓以下ノ科料ニ處スルト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、巡査ヤ
或ハ警部ト云フモノハ職權ヲ濫用シテ、唯今私ガ讀上ゲタヤウナ條文ニ依ッテサウシテ吾ミ
ニ向ッテ來ルト云フヤウナコトガアリマスレバ實ニ容易ナラヌ出來事ニナルノデゴザイマス、
此警察犯處罰令發布以來日淺イノデアリマスカラシテ、批難ノ聲モ餘リ起ラヌノデアリ
マスケレドモ早晚此警察犯處罰令ト云フモノハ日本ノ現今ノ政府ハ卽チ警察ノ政治
デアルト云フヤウナ聲ヲ聞クトキガアラウト云フ事柄ヲ私ハ豫想シテ居ルノデアリマスデ
此違警罪卽決例ヲ廢スルニ付テ反對ノ聲ヲ聞イテ居ルノデアリマス、其反對者ノ申シマ
スルニハ此違警罪卽決例ヲ廢止シテ悉ク區裁判所ノ管轄ニ歸セシムルト云フコトニナ
リマスルト、人民ノ方ノ不便ガ甚シイデハナイカト云フノガ、重ナル反對ノ理由ノヤウデア
リマス、併ナガラ申上ゲルマデモナイコトデアリマスケレドモ、刑罰ト云フモノハ犯罪者ヲ罰
スル法律デアリマスカラシテ犯罪者ニ對シテハソンナニ常ニ便利ノモノデアリマセヌ、監獄ヲ
設ケテ重罪輕罪ヲ犯シタモノヲ拘留シテ置ク、裁判所ヲ設ケテ種々ナル手續ヲ以テ之ヲ
審問スルト云フコトハ犯罪者ニ取ッテハ決シテ便利ノ法律デハアリマセヌ、併ナガラ國家
ノ相當ニ此裁判權ヲ行フガタメニハ監獄ヲ設ケテ未決ノ被告人ヲ拘留スルト云フコトモ
必要デアルシ、イロ〓〓ノ制度ヲ設ケテ裁判ヲ鄭重ニスルト云フ必要ガアルノデアリマス
ル卽チ國民ノ自由財產名譽ト云フモノヲ重ンジテ裁判ニ間違ヒノナイヤウニ期スルカラ
シシ種々ナル不便ト云フモノヲ忍ンデ面倒ノ手續ヲ致シマス次第ト私ハ思フノデアリマ
スル違警罪ト云フモノモ、又一ノ犯罪デアリマスルカラ、多少ノ不便ガアリマシテモ、正
當ノ裁判ヲナシテ人民ノ權利ヲ伸長スルト云フコトニ致サナカッタナラバ、其結果ト云フ
モノハ遂ニ多クノ人民ハ非常ナ迷惑ヲ被ル巡査ヤ警部ノタメニエライ目ニ逢ッテモ奈
何トモスルコトノ出來ナイ恐ルベキ結果ヲ來スノデアリマスデアリマスカラ簡便ナ方法デ
無暗ニ此人民ヲ罰スルト云フ事柄ハ甚グ宜シカラザルコトデアリマシテ、人民ノ權利ト云
フモノハ便利ト云フ名前ノ下ニ蹂躙サレルト云フコトヲ許サヌノデアリマス、二月十七日ノ
本會議ニ於キマシテ花井君ノ質間ニ對シマシテ平沼政府委員ノ答辯ガアリマスル、ソレ
ハ一年間ニ此違警罪デ罰セラレタ件數ハドノ位アルノデアルカト云フ花井君ノ質問ニ對
シマシテ、平沼政府委員ノ答明治西十年ガ六十万少シ餘、其前年ノ三十九年ガ五十
四万餘、又其前年ノ三十八年ガ五十万少シ餘ノ數デアッタト、斯ウ云フコトヲ明カニ答ヘ
ラレテ居ル何ト驚クベキ數デハアリマセヌカ假リニ日本ノ國民ト云フモノヲ五千萬人ト
云フコトニ先ヅ假定シマスレバ、年ニ五十萬人ノ違警罪ノ犯者ヲ出スト云フコトニナリマス
レバ、國民ノ百分ノ一ト云フモノハ一年ニ此違警罪卽決例ノタメニ罰セラレテ居ルト云
フ結果ニナッテ居ルノデアリマス、實ニ驚クベキコトデアルト思ヒマス如何ニ輕微ナル犯
罪事件ト雖モ子供ヲ除キ、御婆サンヲ除キイロ〓〓ナサウ云フ犯罪ノ能力アルモノヲ除イ
テ、違警罪ノ刑ニ處セラルヽヤウナモノガドノ位アルデアリマセウ、今ノ五千万人ト云フ
數ニ割當テヽモ百人ニ付テ一人ヅヽ日本國民ガ每年此巡査ヤ警部ノタメニ處罰ヲ受ケ
テ居ル斯ウ云フ統計ヲ示シテ居ルノデアリマス、私ハ更メテ申上ゲルマデモナイコトデア
リマスルケレドモ、元來此行政警察ノ目的ト云フモノハ主トシテ人民ヲ保護スル方ノ側ニ
在ルノデアリマスルカラ、多クハ犯罪ヲ未發ニ防ギ、或ハ輕微ノ犯罪ノ如キ十分說諭ヲ
加ヘ將來ヲ戒メルト云フノガ、行政警察ノ目的デアラウト思フノデアリマス、然ルニ警
察犯處罰例ト云フ簡便ノ方法ガアリマスルカラ無暗ニ人ヲ引張ッテ行ッテ、サウシテ直
グニ警部或ハ警部代理ノ巡査部長ガ裁判ヲスル、ヲ以テ警察ノ威信ヲ揚レリトナシ、
意氣得々トシテ居ルノハ、今日ノ警察ノ狀態デナイカト思フノデゴザイマス、斯樣ナコトハ
實ニ罰セラルヽ人モ、罰スル方ノ國家モ、何レモ莫大ノ損害ヲ受ケテ、遂ニ何等モ益
スルトコロガナイト云フコトニナルノデアラウト思ヒマスル由來醉漢ガ交番ノ前デグヅッタト
云フノデアルカラ、年取ッタ警部サンガ出テ、サウシテ町寧ニ親切ニ說諭シテ、後來ヲ戒
メルト云フコトニスレバソレ切リデ濟ムノデアリマス、然ルニ違警罪卽決例ガアリマスルニ
依ッテ、直グニ警察署ヘ引張ッテ行ッテ、サウシテ五日間ノ拘留ト云フコトニスル、此五日ノ間
ハ番人ヲ附ケテ、國家ハソレニ相當スルダケノ供給ヲ與ヘナケレバナラヌノデアリマス、罰セラ
タ人ハ家ニ居レバ五日間ハ立派ニ働クコトガ出來マスケレドモ、徒ラニ警察ノ留置場ニ
呻吟シテ居ラナレバナラヌト云フ結果ニナルノデアリマス而シテ罰セラレタ人ガ歸ッテ來
テ、何ト申シマスカト云フニ彼ノ警察ノヤツハ不埒ナヤツデアル、己ガ何モ罪ヲ犯サヌノニ
五日ノ間拘留ニ處シタト、或ハ惡體ヲ吐ク者ガアリマセウガ、警察ノ處置ニ恐入ッテ、是
カラ益く品行ヲ愼マウト云フ念慮ヲ發スル者ハ少ナイノデアリマス斯樣ナコトハ國家ニ
益ナクシテ國家人民共ニ莫大ノ損害ヲ招クト云フコトニナルノデアッテ、違警罪卽決例
ナドハ廢サナケレバナラヌト云フ理由ハ玆ニ在ルノデアリマス、ワレカラ私ノ申スノト違ッテ、
ソレハイカヌ、行ク〓〓年々殖ヘテ每年五十万六十万ノ犯罪ガアルト云フノハ斯ウ云フ
ノデアリマスルト尙更以テ日本國民五十万六十万ノ裁判ヲ微々タル警部或ハ警部代
理ニ此裁判ヲ委ネテ置クト云フコトハ、益く私ハ危險極マルコトデアラウト思ヒマス、ソレ
デ違警罪卽決例ヲ廢シマスルト、其藝判權ハ何所ニ歸スルカト申シマスルト、全國區裁判
所ノ管轄ニ屬スルノデアリマスサウシテ今日デハ全國ノ有名ナル市トカ或ハ町ニハ皆區
裁判所ガ設ケテアリマス、交通ノ便利ノ開ケマシタトコロノ今日デアリマスルカラシテ、區
裁判所ヲシテ管轄セシムルト云フコトニ致シマシテモ、決シテソレ程ノ不便ハナイノデアリ
マリ、論ヨリ證據デアッテ民事ノ事件ハドウデアリマセウカ、ドンナ僅カノ金額ノコトデモ盡
ク區裁判所裁判ヲシテ居ルト云フノガ今日ノ實際デアル卽チ國民ノ中ニハモット區
裁判所ヲ澤山殖ヤサナケレバ人民ノ權利ヲ十分伸張スルコトガ出來ナイト云フコトヲ
申スコトヲ聽カヌノデアリマス、金ヲ貸シテ取レナイ人ハ遙ミ區裁判所マデ出テ救濟ヲ求
メル、斯樣ナ犯罪ヲ犯シテ罰セラルヽ所ノ人ハ十分便利ヲ與ヘ、ヨリ以上ノ便利ヲ
與ヘナケレバナラヌト云フコトハ到底理窟ノ合ハヌコトデアラウト思フ今日ハ遙〓臺灣
カラ大審院マデ上告ノ途ヲ開クト云フ法案ガ提出セラレテ居ッテ、サウシテ滿場ノ諸君ガ
殆ド之ニ御同意ノ傾キノアル今日ノ有樣デアリマス、人民ノ權利ヲ尊重スル上ニ於テハ
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少シ位ノ不便ト云フモノハ私ハ忍バナケレバナラヌト田心フノデアリマス、權利ヲ蹂〓セラル
ノト少シ位ノ不便ヲ刀プノトガドッチガ重イデアラウトー云フ事柄ハ容易ク判斷ノ出來ル
問題デアラウト思フノデアリマス、松田源治君ガ先キニヤハリ此違警罪卽決例ニ關スル
法案ヲ提出致シマシタ時分ニ其理由トシテ此警察ノ橫暴ヲ防グト云フノデアリマスル
成程警察ノ橫暴モアリマスルケレドモ、警察ガ橫暴ニ亙ルト云フノハ立憲治下ニ許スベカ
ラザル警察犯處罰例ナド云フ惡法ガアルカラ遂ニ警察官ガ橫暴ニ亙ルト云フコトデ
アッテ、是ガ根ヲ絕タヌケレバイケマセヌ、其禍根ヲ絕ッテ、斯樣ナル天下ノ惡法ハ斷然廢
シテ、初メテ警察ノ横暴ヲ行フ餘地ガ無イト云フコトニ私ハナイノデアラウト思ヒマス
無論此問題ニ付テハ隨分大問題デアリマスルカラ議論ノアルコトデアラウト思ヒマスケレ
ドモドウシテモ今日ニ於キマシテ斯樣ナ變則ノ法律ト云フモノハ全然廢止シテ十分ニ
人民ノ自由財產權利ト云フモノヲ保護スル途ヲ立テルノガ、卽チ國民ヲ代表シタトコロ
ノ者ノ義務デアルト確信スルノデアリマス、ソレ故ニドウカマダ此問題ニ付テ申上ゲタイコ
トガ澤山アリマスルケレドモ、併シ此位ニシテ置キマセウカラ、ドウカ御熟考ノ上彼ノ松田君
ノ案ト此案トヲ合セテ十分御〓究ノ上ニ私ノ案ヲ御贊成アランコトヲ希望スル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=37
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038・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ先ニ同種類ノ案ガ委員付託ニナッテ居リマスカラ其委員ニ付
託セラレ十分審査アランコトヲ請ヒマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=38
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039・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君ノ動議、卽チ本案ハ先キニ松田源治君外一名ヨリノ
提出案違警罪卽決例ニ關スル法律案ト同一委員ニ付託スルト云フコトニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=39
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040・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、其通リ決シマス、日程第七、刑
法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、議案ノ朗讀ハ省略致シマス、小河源一君
第七刑法中改正法律案(小河源一君提出)第一讀會
刑法中改正法律案
刑法中左ノ通改正ス
第六條ニ左ノ但書ヲ加フ
但短期又ハ寡額ハ其短ク又ハ寡キモノニ因ル
附則
本法ハ明治四十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔小河源一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=40
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041・小河源一
○小河源一君 刑法中改正法律案ヲ提出致シマシタ理由ヲ辯明致シマス、此案ハ御
承知ノ如ク誠ニ簡單ナル案デゴザイマス併ナガラ司法事務ニ從事致シテ居ル者ハ遣憾
ヲ感ジ、又刑事被告人トナッテ出マスル幾多ノ者ハ日々道理ニ反シ、法律ノ趣旨ニ昔キ
マシテ、不法ノ判決ヲ受ケツヽアル此法律ノ改正ヲ致スノデゴザイマシテ、其事柄ハ頗ル
緊要ナコトヽ信ズルノデゴザイマス刑法第六條ニ依リマスレバ犯罪後ノ法律ニ依ッテ刑
ノ變更ガアッタトキハ輕キモノヲ適用スルト云フコトニナッテ居ル、犯罪ノ後ニ法律ノ變更
ガアリマスレバ輕キモノヲ適用スルト云フコトハ、是ハ勿論當然ノ事柄デゴザイマシテ、此
法則ニ付テ何等私ニ於テハ異議ノアル譯デナイノデアリマス、若シ此法則ノ如ク、此法律
ノ文章ノ如ク果シテ輕キモノガ事實ニ於テ適用セラルヽノデアリマスレバ改正ノ必要ハ
ナイノデアル、併ナガラ此法律ノ文章ハ輕キモノヲ適用スルト云フコトニナッテ居リマスケレ
ドモ、今日事實上ニ於キマシテハ却テ多クノ場合ニ於テ重ク罰セラレルト云フ事柄ニナッテ
居ルノデゴザイマス、ナゼ斯樣ナ結果ヲ現ハスカト申シマスレバ刑法第十條ニ依リマシ
テ、刑ノ輕重ヲ定メテアル比較的刑ハ兩方ノ刑ヲ比ベタナラバ、ドンナモノガ重イノデアル
カ、ドンナモノガ經イノデアルカト云フコトヲ定メタ此刑ノ輕重ヲ定メル事柄ハ甚ダ困難ナ
ル仕事ト云ハナケレバナラヌ、ナゼナラバ刑法中刑ノ區別ヲ解キマシタナラバ或ハ長期ガ
長ク或ハ短期ガ長イト云フヤウニ種々ノ區別ガアッテ、幾百種ニ分レテ居ルノデゴザリマ
ス、此幾百種ニ分レテ居ルモノヲ一片ノ理窟ヲ以テ斯ノ如キモノハ重イ斯ノ如キモノハ
輕イト云フコトヲ定メルノデアル、所謂千差萬別ノ現象ニ向ヒマシテ一律ヲ以テ定メルノ
デアリマスガ故ニ、其輕重ヲ定ムルコトハ甚ダムヅカシイコトデアルト一ムハナケレバナラヌ、故
道理ニ依ッテ定メマシテ事柄ハ事實適用ノ場合ニ於テ大ニ實際ニ適合ヲ致サナイト云
フコトニナルノデアル、一例ヲ舉ゲテ中シマスナラバ舊刑法ニ於テ輕懲役卽チ六年以上
八年以下ノ輕懲役ニ處スル犯罪ガアルト、此犯罪ガ新法ニ於キマシテハ一年以上十年
以下ノ懲役ニ處スルト云フコトニナッテ居リマス、斯ノ如キ場合ニ於テ何レガ重イカト云
フコトニナリマスルト、刑法第十條ノ規定ニ依リマシテ長期ノ長キモノヲ重シトスルト云フ
コトニナッテ居ル故ニ一年以上十年以下ノ懲役ハ其長期ガ十年デアルガ故ニ是ガ重
イ舊法ノ六年以上八年以下ノ懲役ハ長期ガ八年デアル故ニ輕イ、故ニ斯ノ如キ場合
ニ輕キ舊刑法ニ依テ罰スルト云フコトニナリマス偖テ此場合ニ於テ被〓人ハ如何ナル
感ガ起ルノデアリマセウカ、成程十年ト云フ長期ガ長イケレドモ此新刑法ニ於キマシテ
幅ヲ廣ク致シマシタモノハ裁判官ガ或ル非常特別ノ場合ニ於テモ困難ナク重ク罰スルコ
トモ出來ル、又輕ク罰スルコトモ出來ルト云フ非當特別ノ場合マデ想像致シテ、而シテ長
期ヲ長クシ短期ヲ短クシテ、此刑ノ幅ヲ廣クシタ舊刑法ノ幅ノ狹イノガ不自由ト云フノ
デ、刑ノ幅ヲ廣クシタ故ニ長期ガ十年トアリマシテモ十年九年罰セラレルト云フコトハ
容易ニナイ餘程特別ノ場合ニ初メテ行ハレルコトデアッテ、常ニ行ハレベキコトデナイノデ
アル故ニ却テ一年以上十年以下ノ此刑ノ範圍內ニ於テ裁判セラレマストキニハ、多ク
ノ場合ニ於テハ一年若クハ二年三年ノ刑ニ處セラルヽヤウナ事柄ガ一番多イノデアル
然ルニ輕キモノヲ適用スルト云フ場合ニハ舊刑法ガ輕イト云フコトニナッテ居リマス、故ニ
六年以上八年以下ノ刑ノ範圍內ニ於テ裁判官ハ罰シ、被告人ハ罰セラレナケレバナラ
ヌコトニナル故ニ少クモ六年若クハレ七年ヲ以テ罰セラレナケレバナラヌコトニナリマス故
ニ比較上言葉ニ於テハ輕キモノヲ適用スルト云フコトニナッテ居リマスケレドモ、事實上ニ於
テハ重キモノヲ適用スルト云フコトニナッテ居ルノデアル被告人若クハ辯護士ノ地位ニ
立ツモノヨリ云ハセマシタナラバ、ドウカ裁判ハ重キ新刑法ニ依ッテ罰シテ下サイト云フコト
ヲ懇願スルデアラウ、併ナガラ是ハ法律ノ規定ニ依シテ舊刑法ヲ輕イトシテ、舊刑法ニ據
ルコトニナッテ居ルカラ、如何ニ切望シテモ此切望ハ容レラレナイカラ、法廷ニ於テ此望ヲ
述ベルモノハアリマスマイガ心中ニ尋ネタナラバドウカ此重イ新刑法ヲ適用シテ下サイ
ト云ッテ希望スルニ相違ナイノデアルソレ故ニ私ハ此輕キモノヲ適用スルト云フ此法律ノ
趣旨ニ適合スルトコロノ改正ヲ致サウト考ヘマシテ此但書ニ-本文ハ其儘デ宜シイガ、
輕キモノヲ適用シテ「但短期又ハ寡額ハ其短ク又ハ寡キモノニ因ル」ト云フコトニ改正ヲ
致スノデアル斯樣致シマスト云フト一應輕キモノヲ適用シ卽チ長期又ハ寡額ノ寡イモ
ノヲ適用スルガ故ニ、少シモ犯人ニ不利益ヲ來スコトハナイ、更ニ罰金科料ノ如キ寡額
ノ寡イモノハ其寡イモノニ從フト數シマシタナラバ假リニ舊法ガ輕イトシタナラバ長期ハ
舊法ノ輕イモノニ從ヒ、短期ハ新法ノ輕イモノニ從フ、斯ウ云フコトニナリマシテ初メテ法
律ノ精神ノ希望致シマストコロノ輕キモノヲ適用スルト云フ事柄ニナルノデゴザリマス
而シテ此輕キモノヲ適用スルコトハ何ニモ犯人被告人ヲ利スルガタメノ法律デハナイノデ
アリマス是ハ正理ニ於テ左樣ニナケレバナラヌノデアル、既ニ社會ガ以前ニハ罪ナリト
法律ニ定メタモノデモ、新タナル法律ニ依ッテ斯ノ如キモノハ罪ニナラヌトシタナラバ以
前其法律ノアルトキニ犯シタ犯罪モ法律變更ノ後罰セラルヽコトハナイノデアル、以前ニ
ハ重ク罰セナケレバナラヌト法律ニ定メテアッテモ後ニ其重イノハ不當デアッテ、輕ク罰シ
テ宜シイト云フ法律ガ出來マシタナラバ縱令以前ノ法律ノトキニ犯シタ罪ト雖モ其
法律ハ以前ノ法律ノ非ナルコトヲ知ッテ改メタノデアルカラ、新法ノ輕キモノニ依ッテ罰ス
ルガ當然ノコトデアル何ニモ犯人被告人ヲ利スル事柄デハナイノデアル、而シテ私ハ此
案ヲ提出シマスルトキニ頗ル案ジマシタ御承知ノ如ク此刑法ハ全國ノ力ヲ盡シマシテ昨
年漸ク改正ヲ遂ゲタ法律デアル、其昨年改正ヲ致シタ法律ヲ今年直チニ改正案ヲ提出
スルコトハ如何ニモ不愼重デナイカト云フ非難ヲ受ケヤウカト云フノデ、餘程此〓ニ於テ
ハ注意ヲ致シマシタガ、併ナガラ若シ他ノ部分デアリマシタナラバ敢テ私ハ改正ニ喙ヲ容レ
マセヌケレドモ、奈何セン此改正ノ件ハ目下ガ最モ必要ナトキデアル、卽チ法律改正ノト
キニ於テ必要ヲ感ズルノデゴザリマシテ、舊刑法ニ於ケルトコロノ輕罪ハ今二年半ノ中ハ
マダ期滿免除ニナラヌ、斯樣ナ場合デアリマシテ重罪ト雖モ七年若クハ十年ノ間期滿
免除ニナラヌ今日デアリマシテ今日多ク裁判所ニ於テ審問ヲ受ケル事件ノ大部分ハ
舊法時代ノ事件デアリマス、今數年ヲ去リマシタナラバ其去ッタ後ニハ多クハ新法律ノ
下ニ於テ犯シタ犯罪デアリマスガ故ニ、新舊比照スルコトハ出來ナイノデアル此數
年一三年四五年ノ間ガ最モ必要ナ時期デアリマス、此時期ヲ過ギタナラパ必要ヲ
感ジナイコトニナル--全ク感ゼヌノデハナイ。後ニ法律ノ變更ノアルトキノ材料ニハナリ
マスガ、此大改革ノアリマシタ刑法改正ノ行ハレタ今日ノ如ク切ニ感ズルコトハナイノデア
リマス此事柄タルヤ甚ダ簡單ナリト雖モ其國家ニ利害ヲ及ボス事柄ハ頗ル重大ナ事
柄デ、一日モ看過スルコトガ出來ヌモノデアリマスルガ故ニ、昨年改正ニナッタトコロヘ今
日改正案ヲ提出スルト云フコトハ一度ハ恐縮ト思ヒマシタケレドモ、已ムヲ得ヌコトヽシ
テ本案ヲ提出シマシタ次第デゴザリマス、ドウカ諸君御審議ノ上御贊成アランコトヲ希望
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=41
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042・花井卓藏
○花井卓藏君 質問ガアリマス、第一ニ本案改正ノ目的ハ彼ノ刑法ノ條項ニ何等ノ
關係ヲ有セズ、刑法施行法ニ何等ノ響フ有セズ、唯單ニ是ノミニテ差支ナイト云フ御
考デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=42
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043・小河源一
○小河源一君 私ノ考デハ是ノミノ改正テ差支ナイト信ズルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=43
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044・花井卓藏
○花井卓藏君 第二ニ伺ヒタイノハ本案ニ書イテゴサイマスル短期ノ短キモノ、寡額ノ
寡キモノ云々ハ法定刑卽チ法律ニ於テ定メタル刑ニ依ルノデアルカ、又ハ裁判刑卽チ
裁判所ノ言渡シタル刑ヲ基礎トスルノデアルカ、其何レヲ基礎トスルカニ依ッテ本案ノ見
方ガ大變違ッテ來ルノデアル、又御趣意ノ徹底スルコトモ出來ヌヤウニナラウカトモ思ヒマ
スカラ、ソレヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=44
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045・小河源一
○小河源一君 新法舊法ノ法律ニ定メタル短期ノコト云フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=45
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046・花井卓藏
○花井卓藏君 確カニ法定刑カ基礎デアルト認メテ宜シイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=46
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047・小河源一
○小河源一君 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=47
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048・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ極ク簡單ナ問題デアリマスルガ、併シ尙十分ニ調査ヲ要スル問
題ト考ヘマスカラ、十八名ノ委員議長指名アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=48
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049・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松隆慶君ノ動議ノ如ク、本案ヲ議長指名十八名ノ委
員ニ付託スルコトニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=49
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050・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガ無イト認メマスカラ、其通ニ決シマス-次ハ日
程第六、商法中改正法律案第一讀會-議案ノ朗讀ハ省略致シマス-松田源
治君
第八商法中改正法律案(松田源治君外三名提出)第一讀會
商法中改正法律案
商法中左ノ通改正ス
第二百二十三條第二項ヲ左ノ如ク改ム
株主總會ニ於テ合併ノ決議ヲ爲シタルトキハ合併ニ因リ消滅スヘキ會社
ノ記名株式ハ第八十一條ノ規定ニ從ヒ本店ノ所在地ニ於テ解散ノ登記ヲ
爲スマテ其旨ヲ公〓シテ一時其讓渡ヲ停止スルコトヲ得発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=50
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051・松田源治
○松田源治君 簡單デゴザイマスカラ當庭カカ申申上ゲマス、商法ノ第二百二十三條第
二項ヲ修正スル法案デアリマス、二百二十三條ノ第二項ニ於キマシテハ株式會社デ合
併ノ決議ヲシタ時分ニハ總テ存續スル會社モ、合併ニ依シテ解散スル會社モ、總テ解散
ノ登記ヲスルマデハ株式ノ讓渡ヲ停止シテ居ルノデアリマス、是ハ合併ニ付テ頗ル不便デ
ゴザイマシテ、株主ニ苦痛ヲ與ヘルコト少カラヌノデアリマス、折角規定シテアル商法ノ合
併ノ利益ヲ失フ場合ガ多イノデアリマスカラ、合併ニ依ッテ消滅シナイトコロノ存續スル會
社ノ株式ノ讓渡ヲ止メナクテモ、何等ノ弊害モ不便モアリマセヌカラ、株式ノ讓渡ヲ止
メズシテ消滅スル會社ノ株劵ハ會社ノ自由ニ依シテ解散ノ登記アルマデハ停止スルコトガ
出來ルト云フ隨意法ニシタ改正案デアリマスカラ、ドウカ本案ニ贊成セラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=51
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052・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ前ノ小河源一君カラ喋々辯ゼラレマシタ刑法中改正法律案ノ
同一委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=52
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053・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松隆慶君ノ動議ノ如ク、本案ヲ日程第七ノ同一夭資員
付託スルコトニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=53
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054・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガ無イト認メマスカラ其通り決シマス、日程第九印
紙稅法中改正法律案ノ第一讀曾ヲ開キマス-謹案ノ朗讀ハ省略致シマスー-木
村半兵衞君
第九印紙稅法中改正法律案(木村半兵衞君外一名第一讀會
提出)
印紙稅法中改正法律案
印紙稅法中左ノ通改正ス
第三條中「金高千圓以下ノモノ印紙稅五錢」ノ前ニ「金高百圓以下ノモノ印
紙稅二錢」ヲ加フ
〔木村半兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=54
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055・木村半兵衞
○木村半兵衞君 極ク簡單ニ本案提出ノ理由ヲ申述ベマス、此印紙稅法中改正法
律案ノコトハ重ニ約束手形ニ係ッテ居ルコトデ、此約束手形ノ印稅ト云フモノハ明治
四十年前マデハ百圓未滿、五百圓未滿、千圓未滿ト云フコトニナッテ居リマシタガ、四
十年ニ改正ニナッタ後千圓以下ト云フモノハ悉ク五錢ト云フコトニナッテ居リマス、此タ
メニ全國ノ市場ニ非常ナル痛苦ヲ與ヘテ取引上ニ非常ナル妨ゲガ起リマシタ、其理由ヲ
極ク簡單ニ申上ゲマスルト云フト近イ例ハ八王子、若クハ上州伊勢崎或ハ桐生足利
ト云フヤウナ取引市場デハ一市ニ十万若クハ五万ノ取引ガアリマスガ、ソレガ皆約束手
形ヲ以テ大〓取引サレマシテ從前印紙稅法ガ出來ヌ前ニ絹札ト云フ札ニ金額ヲ書イ
テ、ソレガ紙幣ノ代リニ方々通用シテ居リマシタ所ガ其手形ノ發行高ト云フモノガナ
カ〓〓夥シイモノデゴザイマスガ、ソレガ皆十圓若クハ二十圓、若クハ三十圓ト云フモノ
ガ多イノデアリマス、所ガ千圓以下五錢トナッテ以來容易ニ此小サイ手形ヲ出サヌヤウ
ニナリマシテ、ソレガタメニ小サナ商人ハ物ヲ賣ルニハ或ハ甲ト乙ト併セテ賣ルトカ、或ハ
金額ガ百圓以上ニナラナケレバ手形ヲ書カヌト云フヤウニナリマシテ非常ニ取引ガ阻害
サレルヤウニナリマシタ、何故十圓二十圓ノモノニ向ッテ元ノ通リ約束手形ヲ書カヌカト
云フノニ重ニ手形ヲ發行スルノガ仲買人若クハ買次ギ商デアル是等ノ者ノ口錢ト稱
スル手數料ト云フモノハ百圓ニ付テ一圓、卽十圓ニ付テ十錢位ノモノデヤッテ居ルノデ
アリマス所ガ約束手形ノタメニ五錢ト云フ印稅ヲ取ラレルト自分ノ得ルトコロノ手數
料ト云フモノハ半分取ラレルコトニナル、ソレガタメニ小額ノモノハ約束手形ヲ書カヌト云
フコトニナッタノデアリマス、大キナモノニナリマスト一市ニ於テ二百枚モ三百枚モ約束手
ールヲ書イタモノガ、今日ハ五十枚カ六十枚シカ書カナイソレガタメニ小サナ商人ハ非常
ナ妨ヲ受ケテ居リマス、故ニ之ヲ改正シテ百圓以下ハ二錢ト云フコトニナリマスルト約
束手形ハヤハリ從前ノ如ク一軒ノ家デ一一百枚モ三百枚モ使フコトニナリマスカラ、政府
ノ收入ガ殖エテ之ヲ使用スルトコロノ一般商工業者ハ助カル、政府ノ收入ガ增シテカラ
ニ一般ノ人民ガ助カルト云フ案デゴザイマスルガ故ニ、ドウゾ諸君ニ於テハ篤ト審査ノ上
御贊成ヲ願ヒマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=55
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056・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=56
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057・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君ノ動議ノ如ク、本案ハ九名ノ委員、議長指名ト云
フコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=57
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058・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議が無イト認メマスカラ其通リ決シマス-日程第
十渡良瀨川沿岸地方特別地價修正法律中改正法律案第一讀會ノ續ヲ開キマ
ス特別委員長武藤金吉君
渡良瀨川沿岸地方特別地價修正法
第十律中改正法律案(武藤金吉君外一第一讀會ノ續委員長
報〓
名提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=58
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059・武藤金吉
○武藤金吉君 當席カラ報告致シマス、委員會ノ經過及成績ハ原案ヲ贊成致シマシ
タ、而シテ此案ニ付キマンテハ宅地ハ建物ガアルタメニ此同樣ニ地價ヲ修正スルノ必要
ガ無イト云フコト、及此法律ハ此鑛毒ノタメニ土質ヲ惡變シタヽメニ卽チ鑛毒調査會ノ
解決ノ結果トヲ法律ヲ布カレタモノデアルカラ此法律ハ後ニナッテ之モ加ヘルト云フコト
ハ立法ノ精神デナイト一云フノガ、政府ノ同意セザル要旨ヨデアリマス、而シテ本案ハ尙特別
委員ヲ三名選ビマシテ政府ノ意志ヲ質シテ見タノデアリマスガ、結局政府ハ同意致シマ
セヌデ、委員會ハ二ニ對スルノ五ノ大多數ヲ以テ之ヲ至當ナルモノト可決致シマシタ、此
段報告ニ及ビマス
(「採決々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=59
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060・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 菅原政府委員
(政府委員菅原通敬君豆壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=60
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061・菅原通敬
○政府委員(菅原通敬君) 本案ニハ遺憾ナガラ御同意ヲ表シ兼ネル次第デゴザイマ
ス、渡良瀨川沿岸地方ニ於ケル鑛毒被害地ノ地租特別處分ノコトニ付キマシテハ曩キニ
特ニ設ケラレマシタル鑛毒調査會ノ最モ詳密ナル調査ニ依リマシテ田ト畑ニ付テハ地價
修正ヲナス必要ノアルモノモアルガ、田畑以外ノ土地卽チ宅地山林原野池沼等ニ付テ
ハ被害ノ程度輕微デ地價修正ノ必要ガナイモノデアルト云フ決定ガアッタノデアリマス、其
決定ニ基イテ此法律ガ出來タノデ從ッテ其處分ハ完了シテ居ル次第デアリマス、然ルヲ今
日ニナッテ此法律ヲ改正致シ、卽チ宅地以外ノ土地ノ地價ヲ修正スルト云フコトハ政府
ガ御同意致シ兼ネル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=61
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062・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ニ付テ二讀會ヲ開クヤ否ヤト云フコトニ付テ採決致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=62
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063・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ直チニ二讀會ヲ開キ、政府ガ反對スルト雖モ、本院ハ之ヲ是
ト認メ三讀會ヲ省略シ委員長報告通リ決セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=63
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064・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君ノ動議ハ直チニ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略
シテ委員長報告通リ贊成シタイト云フノデアリマスガ、直サニ本案ノ二讀會ヲ開クト云フ
コトニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=64
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065・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ其通リニ決シ、直チニ本案ノ二
讀會ヲ開キマス
渡良瀨川沿岸地方特別地價修正法律中改正法律案確定議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=65
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066・恒松隆慶
○恆松隆慶君 委員長報告ノ通リ異議ナシ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=66
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067・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松君動議ノ如ク委員長報告通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=67
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068・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 個月議ナイモノト認メテ委員長報告通り決シマス、本案ハ
是ニテ確定致シマス、次ハ日程第十一、工作物保護ニ關スル法律案第一讀會ノ續
キ-特別委員長鵜澤總明君
第十一工作物保護ニ關スル法律案(高木第一讀會ノ續(発祥日:
益太郞君外一名提出)報〓
〔鵜澤總明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=68
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069・鵜澤總明
○鵜澤總明君 チヨット御報告ヲ致ス前ニ字句ノ修正デ印刷ニ間ニ合ハヌモノガアリマ
シテ、ツレヲ發見致シマシタカラ第四條ヲ御訂正ヲ願ッテ置キマスル第四條ニ「民法第五百
六十六條第一項第三項及第五百七十一條ノ規定ハ第一條ノ」ソレカラデス「土地ニ
付建物ノ所有ヲ目的トスル地上權ノ設定又ハ賃貸借アリタル」此三十字ハ誤デ是ハ削
ルノデアリマス、始メカラモウ一度申シマス「民法第五百六十六條第一項第三項及第
五百七十一條ノ規定ハ第一條」其下ヘ「第一項」ト云フ三字ガ入ルコトニナッテ居ルノ
デアリマス「第一條第一項ノ場合ニ之ヲ準用ス」斯ウナルノデス、完ク意味ハ同ジデ字句
ノ修正ノミデアリマス、委員會ノ經過ヲ報告致シマスガ、本案ハ旣ニ提出者ノ高木君ガ
此所デ說明致シマシタ通リニ地震賣買ト云フコトニ關シマシテ、先ヅ借地人ノ保護
ト云フヨリ建物ヲ保護スルト云フ意味デ、德禽獸ニ及ブト云フコトガアリマスガ、
是ハ德建物ニ及ブト云フノデ、建物ヲ保護シテ議院ニ於テ功德ヲ施シテヤルト云フ案デ
アリマスカラ、從ッテ委員會ニ於テハ廣ク工作物ト云フヨリモ寧ロ建物ト名前ヲ變ヘタ方
ガ宜シイト云フコトデ建物保護ニ關スル法律案ト名前ヲ變ヘタノデアリマスソレカラ原
案ニ於キマシテハ、如何ニモ簡單明瞭ニシテ寔ニ讀ンデ字ノ如シト云フヤウナコトデアリマ
スケレドモ、込入ッタ問題デ民法ノ除外例ヲ設ケル次第デアリマスカラ、段々考ヘテ見ル
ト疑ガ起ッテ來ルコトニナッテ、ソレデ簡單ナ原案デハドウシテモ意味ガ十分デアルマイサ
ウシテ保護ノ目的ヲ達スルコトガムヅカシカラウト云フヤウナトコロカラ、修正案ハ第一
條第二條、第三條第四條併セテ附則ト云フヤウナコトデ修正ガ出來タノデアリ
マス第一條ハ詰リ大體ニ於ケル根本ノ規定デ地上權賃借權ト云フモノハ登記ガ無ク
トモ第三者ニ對抗スルコトガ出來ル第三者ト云フコトハヤハリ民法ノ原則ニ從ッテ善
意惡意ヲ區別セズ直ニ第三者ニ對抗ガ出來ルコトニ致シタノデアリマス、ソレカラ建物ニ
付テハ旣ニ大ナル形ガ存在シテ居ルカラ登記ガ無クテモ差支ナイデハナイカト云フ議論ガ
アリマシタガ、併ナガラ建物ハ登記法ト云フモノガ出來テ居ッテ賃借人ナリ地上權者ナリ
ニ於テ登記ノ出來ルコトデアリマスカラ、ヤハリ登記ヲシタガ宜イト云フコトデ登記ヲスルト
云フ言葉ガ加ッタノデアリマス、第二條ハ年ノキメデ地上權者ガ對抗スルト云フコトニナツ
テ、何年間其對抗ガ出來ルカト云フコト、ソレカラ又賃貸借權者ノ對抗ニ付テ何年
間對抗ガ出來ルカト云フコト、是ニ付テハ大體ニ於テ現行ノ民法ノ原則ニ從ッテ二十
年ヲ基礎ニ致シタラ宜カラウト云フコトデ第二條ガ出來タノデアリマス、ソレカラ第三條
ニ於テハ賃貸借ニ關シテハ隨分期間ノ定メノナイノガアル、期間ノ定メノ無イノハ期間
ヲ定メズシテ賃借ヲスルノデアルカラ明日家ヲ壞ハシテモ差支無イト云フヤウナ意味デ
無ク、寧ロ建物ノ朽廢ノトキマデヲ當事者ノ意思トスル譯デアラウト云フコトデ、第三條
が出來マシタ、第四條ハ登記無クシテ賃借權又ハ地上權ノ對抗ガ出來ルコトニナルト、
土地ヲ買ッタ人ガサウ云フヤウナ地上權ナリ或ハサウ云フヤウナ賃借權ナリノ存在ヲ知ラ
ズシテ不測ノ損害ヲ被ルコトガアッテハナラヌコトデ、第四條ガ出來マシタ、ソレカラ附則
トシテ此法律ハ此法律施行前ノ設定行爲又ハ契約ニ依ル地上權又ハ土地ノ賃貸借
ニモ之ヲ適用スルト云フコトヲキメマシテ、成ルベク今日起ッテ居ル提出者ノ理由ニ於テ
說明シテ居ルトコロノ弊害ヲ救フタメニハドウシテモ此規定ガ必要デアルト云フノデ此
規定ガ生ジタノデアリマス、右ガ大要デアリマスカラ、ドウカ此案ニ付テ御贊成ヲ願フ次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=69
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070・卜部喜太郎
○卜部喜太郞君 チヨット委員長ニ伺ヒマスガ、第二條ニ「賃借人ハ建物ノ存續スル
場合ニ限リ其期間ヲ更新スルコトヲ得」ト云フ規定ガアリマスガ、此規定ハ所謂公益規
定デ、反對ノ契約ヲ許サヌ意味ニ解シテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=70
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071・鵜澤總明
○鵜澤總明君 委員會デハ其積リデヤッタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=71
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072・卜部喜太郎
○卜部喜太郞君 サウデスカ、ソレデハ今鵜澤委員長ニ御尋シタ條項ニ付テ特ニ政府
委員ハ委員會ニ於テ今ノ委員長ノ說明通リノ趣意ニ於テ御贊成ニナッタノデアリマス
カ、ドウデアリスカト云フコトニ付テ、一ツ御意見ヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス
〔政府委員法學博士平沼騏一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=72
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073・平沼騏一郎
○政府委員(法學博士平沼騏一郞君) 唯今ト部サンカラ御尋ノコトハ此法案ノ制
定ノ目的カラ考ヘマシテ、委員長ノ唯今御述ベニナリマシタ通リニ解釋ノ出來ルコトニ相
成ラウト政府モ信ジマス
〔「採決々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=73
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074・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御質問ガ無イト認メマスカラ、直チニ本案第二讀會ヲ開ク
ヤ否ヤヲ議題ニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=74
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075・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ地震賣買ト云フ東京市ノ大問題デゴザイマス、直チニ第二讀
會ヲ開キ三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ確定セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=75
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076・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 唯今恆松君ノ動議ノ如ク、本案ハ直チニ二讀會ヲ開キ、三
讀會ヲ省略シテ委員長報告通リニ確定スルト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=76
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077・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ソレデハ直チニ二讀會ヲ開キマス
工作物保護ニ關スル法律案確定議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=77
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078・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長報告通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=78
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079・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長報告通り決シマス、本案ハ是ニテ確定致シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=79
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080・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第十二、〓育基金塡補ニ關スル建議案ヲ議題ト致
シ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス、荒川五郞君
第十二〓育基金塡補ニ關スル建議案(荒川五郞君外四名提出)
〓育基金塡補ニ關スルニ建議案
日露戰役ノ際臨時軍事費ニ流用シタル〓育基金一千万圓ハ國民普通〓育ノ
現狀ニ鑑ミ之カ塡補ノ一日モ忽諸ニ付スヘカラサルヲ認ム依リテ政府ハ適
當ノ方法ヲ以テ速ニ之ヲ塡補セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=80
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081・荒川五郎
○荒川五郞君 此建議案ハ提出者ノ一人テアル三土君カラ提出ノ說明ヲセラルヽ筈
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=81
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082・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 三土忠造君
〔三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=82
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083・三土忠造
○三土忠造君 諸君、私共ハ此〓育基金塡補ニ關スル建議案ヲ提出致シマシタガ、
其理由ヲ極メテ詳密ニ長ク御說明致サウト思ヒマスケレドモ本問題ガ餘リ明瞭ナタメ
ニサウ說明スル必要ハアリマセヌノデ極ク簡單ニ致シマス、併ナガラ中ニハ此〓育基金
ナルモノヽ本來ノ性質ヲ御承知ナイ御方ガアルカモ知レマセヌカラシテ、極ク短ク起リヲ
御話致サナケレバナリマセヌ、多數諸君ノ御承知ノ通リ此〓育基金ト申シマスモノハ明
治二十七八年ノ日〓戰役ノ後ニ、彼ノ我帝國ノ大捷ハ上御一人ヲ首メ忠勇ナル軍人
ノ働キニ因ルコトハ勿論デアルケレドモ、明治初年以來普通〓育ノ是マデ盡力シタ功勞
ニ歸スルトコロガ少クナイト云フコトヲ國家ガ認メマシテ、〓國カラ取リマシタ償金ノ一部
分ヲ割イテ普通〓育獎勵金トシテ國庫ニ保管スルコトニナッタノデアリマス、是ガ詰リ〓
育基金ノ本デアリマス〓育基金ノ高ハ一千万圓デゴザイマシテ、特別ノ法律ヲ制定シ
テ一千万圓カラ生ズル利子金五十万圓ヲ學齡兒童ノ數ニ割當テマシテ、各府縣ニ每
年配付シテ、サウシテ其一部分ヲ以テ〓育奬勵ノ用ニ供シ、其大部分ヲ以テ小學校ノ
校舍校具等ノ設備ノ費用ニ供シテ居ッタノデアリマス、所ガ日露戰爭ニ際シマシテ國
家多事ノ場合此〓育基金ノ如キ最モ歷史アル金ヲ軍事ニ一時使用スルノ已ムヲ得ヌ
場合ニ立至リマシテ、此一千万圓ト云フ元金ヲ軍事費ニ使用セラレタノデアリマス、是
ハ當時國家ノ必要上已ムヲ得ヌコトヽ全國民モ了承致シマシテ、使用スルコトヲ協贊致
シマシタガ、併ナガラ此金ハ戰爭ガ濟ンダナラバ必ズ直ク塡補シテ呉レルデアラウト云フコ
トヲ期待シテ居ッタノデアリマス、然ルニ日露戰役ノ終リマシタ後既ニ四箇年ニ垂ント致
シマスケレドモ政府ニ於テ之ヲ塡補スル計畫ガ無イヤウニ見エマス二十三議會ニ於キ
マシテ此同樣ノ建議案ガ本院カラ出マシテ、滿場一致ヲ以テ通過シタニ拘ハラズ、政府ニ
於テヤハリ之ヲ塡補スル處置ヲ執ラレヌノデアリマス、ソコデ〓育社會デハ日〓戰爭ノ終
リニ國家ガ普通〓育ノ效勞ヲ認メラレタト云フコトハ非常ナ奬勵トナリマシテ〓育者
ハ普通〓育ナルモノヽ重大ナルコトヲ國家ガ認メラレタト云フコトデ、〓育者ノ任務ノ重
且ツ大ナルコトヲ感ジマシテ、大ニ奬勵致シテ居ッタノデアリマス、所ガ今日此〓育基
金ト云フモノデ塡補スルト云フ國家ガ意思ガ有ルカ無イカト云フコトヲ疑フヤウナ場合
ニ立至リマシタノデ、非常ナ不安心ヲ〓育社會ニ與ヘテ居ルノデアリマス、是ハ事無形
ニ屬シマスケレドモ、我帝國ノ普通〓育ノタメニハ餘程憂フベキ現象デアルト考ヘルノ
デアリマス、ソレカラ又此五十万圓ノ利子ヲ每年各府縣ニ配付シテ居リマシタ時分ニ、
其時分ハ丁度義務〓育ガ四箇年ノ時分デゴサイマシテ、四箇年ノ義務〓育ノ時分ニ
於テスラモ學齡兒童ヲ收容スルダケノ學校ハ各市町村ガ設備スルコトガ出來マセヌデ
此五十万圓ノ利子ヲ一時借用シテ學校設備ノ義務ヲ果シテ居ッタノデアリマシタガ、
御承知ノ通リ昨年卽チ明治四十一年ノ四月カラ致シマシテ、義務〓育ガ六箇年ニナ
リマシタ、一時ニ校舍ノ增築ヲ要シ〓員ノ多數ヲ雇入レナケレバナラヌ、又學校ノ校具モ
多ク買入レネバナラヌト云フコトニナッテ來マシタノデ市町村デハ十分ニ此義務〓育ノ
必要トスル學校ノ設備ヲスルコトガ出來マセヌノデ、或ル市町村ノ如キハ數万圓ノ公債
ヲ募集シテ、漸ク國家ノ命ズル所ヲ果シテ居ルト云フヤウナ有樣デアリマス諸君我帝
國ハ世界ノ一等國ニ加ハリマシタケレドモ此義務〓育ト申シマスモノハ漸ク昨年カラ六箇
年ニナッタノデアリマスガ、歐米諸國ノ我日本帝國ト肩ヲ列ベマス諸國ニ於キマシテハ、大抵
義務〓育ハ八箇年デアリマス殊ニ獨逸ノ如キハ八箇年ノ義務〓育デマダ足ラヌト云フ
ノデ、二十四聯邦ノ中デ其半數以上ハ二箇年若クハ三箇年ノ補習〓育ヲ義務〓育ニシ
テ居ルト云フヤウナ有樣デアリマス、若シ我帝國ガ世界ノ列强ト相伍シテ長ク帝國ノ國光
ヲ發揚シテ行カウト思フニハドウシテモ普通〓育ヲ奬勵セナケレバナラヌ、ソレニハ市町
村ノ力ガ到底八年十年ノ義務〓育ハ愚カ、六箇年ノ義務〓育ヲ充タスダケ學校ノ設
備ガ出來ナイ今日デアリマスノデ·幸ニ斯ウ云フ一千万圓ノ〓育基金ト云フヤウナ美シ
キ歷史ノアル、國民ノ紀念トスベキ金ガアリマスノデ、其利子金ヲ積立テヽ市町村ニ貸
與ヘマスレバ、一方ニ於テ義務〓育ノ延長ガ段々出來ルノミナラズ、一方ニ於テハ〓育
者ノ非常ナ奬勵デアルト存ジマス故ニ政府ハ一日モ早ク此〓育基金ヲ塡補セラレンコ
トヲ希望スルノデアリマス此理由ヲ申上ゲレバ此衆議院於キマシテハ恐クハ一人モ
本案ニ不贊成ノ方ハアルマイト思ヒマスルガ、貴族院ニ於キマシテモ同樣ナ必要ヲ認メ、
各黨派一致ヲ以テ同樣ナル議案ヲ提出スルコトニナッテ居ルト云フコトヲ承ッテ居リマ
ス、ドウカ本院ニ於キマシテモ滿場一致ヲ以テ御贊成アッテ、政府ヲシテ國民ノ要望スル
所ヲ知ラシメ政府ニ於キマシテモ吾ミノ希望シテ居ル所ヲ御了承ニナッテ、國家ノタメ
ニ一日モ早ク此〓育基金ノ塡補ヲセラレンコトヲ希望致ス次第デゴザイマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=83
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084・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ九名ノ委員、議長指名ナランコトヲ望ミマス
「贊成々ヤ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=84
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085・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 恆松隆慶君ノ動議ノ如ク、本案ハ議長指名ノ九名ノ委
員ニ付託スルト云フニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=85
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086・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ其通リ決シマス、日程第十三、
醫育統一ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス特別委員長山根正次君
第十三醫育統一ニ關スル建議案(八木逸郎君提(委員長報告)
〓〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=86
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087・山根正次
○山根正次君 簡單デゴザイマスカラ是カラ申上ゲマス、此醫育統一ニ關スル建議案
ノ委員會ハ二囘開キマシテ、サウシテ一人モ缺ケナク皆委員ノ諸君ガ出ラレテ政府委員
ノ出席ヲ求メマシテ、是ヲ政府委員等ニ質問ガアリマシタ、此建議案ニ對シマシテハ政
府委員モ此趣旨ニ對シテハ贊成ヲスルト云フコトデゴザイマス、又大學令ノ改正或ハ經費
或ハ年限等ニ對シテノ質問ガアリマシタガ、之ニ對シテハ政府委員ハ確答ヲスルコトハ出
來ナイガ漸次此目的ニ進ミタイトテ「フコトデゴザイマシタ委員會ハ全會一致ヲ以テ
贊成ヲ致シマシタカラ滿場ノ諸君モドウカ此案ニ御贊成ヲ願ヒタウゴザイマス
〔拍手起ル〕
〔「委員長報告通リ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=87
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088・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本建議案ハ委員長報告通御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=88
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089・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、委員長報告通リ決シマス、日程
第十四ヨリ第二十マデハ請願ナルニ依リ、便宜上一件每ニ委員長ノ報告ヲ求メ逐次
議題トナシ、之ヲ採決シタイト思ヒマス、日程第十四特別報告第一號利根川水害
豫防工事速成ノ請願外十六件ヲ議題ト致シマス、請願委員長立川雲平君
第十四(特別報告第一號)利根川水害豫防工事(委員長報告)
速成ノ請願外十六件
〔立川雲平君登壇〕
(「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=89
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090・立川雲平
○立川雲平君 請願委員長トシテ請願委員會ニ於ケル經過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、
請顧委員會ノ組織分科ノ別方ハ總テ前例ニ從ッテ致シマシタノデゴザイマス、唯今御報告致
シマスルハ卽チ特別報告ノ第一號、利根川水害豫防工事速成ノ件、是ハ茨城縣稻數郡
阿波村大字須賀津五十五番地平民農竿代文藏外六十五名提出、ソレカラ同一ノ
事件ニシテ外十六件ゴサイマス、其十六件ハ提出者ノ姓名ノミヲ御報〓致シマス、橫田龜五
郞外五十三名提出、吉田米吉外八十名提出、福田源五郞外九十二名提出、川崎
隆三外三十二名提出、寺田臺二外二十九名提出、中村貴道外四十八名提出、櫻井
丑五郞外五十二名提出、小神仁作外四十九名提出、大橋甚三郞外三十五名提
出、平山佐一郞外五十一名提出、石井熊太郞外七十五名提出平岡藏之助外七
十六名提出、石島堅治外四十九名提出、坂本常之助外七十五名提出、玉村源
吉外九名提出、永長忠平外九十二名提出、是ハ十七件總テ同一ノ請願デアリマシ
テ、ソレハ十四箇村ト三町ニナッテ請願人ノ人員ガ九百七十九人デゴザイマス、是ハ利
根川ガ汎濫ヲ致シマスルタメニ害ヲ被ルコトガ頗ル甚シイ、其長ガ十里、幅ガ三里餘ニ
及プト云フ譯デアル、昨年モ此請願ガ出マシタノデゴザイマスガ、此利根川ノ水害ハ當局
者ニ於キマシテモ疾ニ承知ヲ致シテ居ルガタメニ、豫防工事ハ現ニ著手シ實行シツヽアル
ノデゴザイマス、今ハ第二期ノ工事中ニ係ッテ居ルノデアル然ルニ此請願ノ十四箇村三
町ノ人〓ガ心配ヲ致シマスルハ、彼ノ繰延ハ前政府ハ是ダケ繰延ベタ、現政府ハ是ダケ
繰延ベタト言ッテ繰延ノ競爭ヲスルヤウナ有樣デアルカラ折角二期中ノ工事ニアルモ
ノヲモ、尙繰延ベラルヽト云フヤウナコトガアッテハ甚ダ迷惑デアルト云フ事情ヲ具シテ一
日モ早ク豫防工事ヲ爲シ遂ゲテ貫ヒタイト云フノガ請願ノ趣意デゴザイマス、サウシテ政
府ニ於キマシテハ繰延ハ致シマシタケレドモ、ソレハ河川改修ノ總額ノ中デ幾分ノ繰延
ヲ致シタノデ、現ニ此利根川ノ工事ノ如キニ於テハ、繰延ノタメニ決シテ工事ヲ延期ス
ルト云フヤウナコトハナイ今現ニ二期ノ工事中デアリ引續イテ三期ノ工事ニモ著手ス
ルノデアル、此請願ハ政府モ其情ヲ諒トシテ同意ヲ表スルト云フコトデアリマス、故ニ請
願委員會ニ於キマシテハ採擇スルコトニ決シマシタノデゴザイマス、此段御報告ヲ致シマス
〔「委員長報告通院議採擇異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=90
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091・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長ノ報告通、此請願ハ採擇スルト云フニ御異議ハアリ
マセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=91
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092・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 採擇スルト云フコトニ決シマス、日程第十五、特別報告第
二號、酒田新莊間鐵道急設ノ請願ヲ議題ニ供シマス
第十五(特別報告第二號)酒田新莊間鐵道急設(委員長報告)
ノ請願発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=92
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093・立川雲平
○立川雲平君 引續イテ御報告致シマス、本請願ハ山形縣飽海郡酒田町酒田商業
會議所會頭荒木彥助外五名ノ提出ニ係ル請願デゴザイマス、是ハ奧羽線ノ新莊ヨリ酒
田ニ至ル鐵道ノ敷設ヲ遠ニシテ呉レト云フ請願デ、是亦昨年モ出マシタ請願デゴザイマ
ス、政府モ亦必シモ反對ヲ致スノデハナイ、政府モ亦其希望ヲ有ッテ居ルト云フコトデゴ
ザイマス、故ニ採擇ニ決シマシタ、此段御報告ヲ致シマス
(「委員長報告通院議採擇異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=93
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094・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長報告通、本請願ハ採擇スルト云フコトニ御異議ハア
リマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=94
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095・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、本請願ハ採擇スルト云フコトニ
決シマス、日程第十六、特別報告第三號、山陰縱貫鐵道速成ノ請願外一件ヲ議題
ニ致シマス
第十六(特別報告第三號)山陰縱貫鐵道速成ノ(委員長報告)
請願外一件発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=95
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096・立川雲平
○立川雲平君 報告ヲ致シマス、本請願ハ島根縣鹿足郡津和野町原新七外十一
名山口縣吉敷郡山口町八木宗十郎外二十名、是ハ二件トナッテ請願ガ出マシタケレ
ドモ、其請願スル趣旨ハ同一デゴザイマス、此請願ノ趣意ハ出陰線ノ延長卽チ島根縣ノ
今市ヨリ山口縣ノ小郡山陽線ノ小郡驛ニ達スル所ノ縱貫線ヲ速ニシテ貰ヒタイト
云フ請願、ソレカラ其趣意ノ中ニハ大峯ト云フ所ニ枝線ヲ敷イテ其枝線ハ萩ニ達スル
ダサウデゴザイマス、之ヲ速ニ成功スルヤウニ致シタイ成功スル方法トシテハ一端ハ今市
ヨリ、端ハ小郡ヨリ工事ヲ起シテ速ニシテ貫ヒタイ、斯ウ云フ極意ナンデ、恆松君ノ如
キハ最モ熱心ニ請願スルトコロデアッテ、事情ハ是ヨリ以上ヲ聽カント欲スルナラバ、同氏
ニ就テ御尋ニナレバ能ク分ルコトデアリマス、是ハ政府委員モ同意ヲ致シマシテ、兩端ヨ
リ工事ニ著手スルト云フコトハ現ニ行ハレツヽアルノデアル他ニモ其例ガ多クアルカラ左
樣ニ致シテ速成ヲ致シタイ、又大嶺校線ノ如キコトハ豫定線ノ中ニナイケレドモ、調査
費ト云フモノガアルカラ、其調査費ニ依ッテ速成ヲ致ストームフ考デアルト云フ要スルニ此
請願ハ政府ハ同意デアルト云フ趣意デアリマス、故ニ採擇ニ決シタ次第デアリマス、此段
報〓致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=96
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097・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 唯今委員長報告ノ日程第十六ハ、委員長報告通り採擇
ト云フコトニ御異該ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=97
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098・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマス、採擇スルコトニ決シマス-日程
第十七特別報告第四號、足尾銅山鑛毒被害地地價修正漏ノ請願外二件ヲ議題
ニ供シマス、委員長報〓
第十七(特別報告第四號)足尾銅山鑛毒被害地(委員長報告)
地價修正漏ノ請願外二件発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=98
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099・立川雲平
○立川雲平君 本請願ハ群馬縣新田郡生品村大字市野井村四十九番地平民農
廣瀨孫一郞外二十二名、同縣同郡鳥ノ〓村大字長手村四番地平民農石倉淺太
郞外十三名同縣邑樂郡郷谷村大字田谷村二十九番地平民農大塚源十郞外百
二十六名、此三件ノ請願ノ趣旨ハ明治三十七年法律第十六號卽チ渡良瀬川沿
岸地方特別地價修正ノ法律ノ執行ノ上ニ於テ尙修正漏ニナック分ニ對シテ、速ニ修
正セラレンコトヲ請フト云フ趣意デゴザイマス、是モ議會ニ於キマシテハ每年出ルトコロノ
宿題トナッテ居ルノデゴザイマシテ要スルニ當局者ガ机ノ上デ〓査シタモノニハ實地ニ就
テ眞正ニ害ヲ受ケタモノデアリナガラ、未ダ此修正ノ恩澤ニ與カラズシテ、害ヲ受ケテ居ラ
ヌ者ガ、却テ修正ノ恩澤ヲ受ケテ居ルト云フヤウナ事例ガアルノデアル卽チソレニ漏レタ
ル分ヲ速ニ修正ノ恩澤ニ浴シタイト云フノガ請願ノ趣意デゴザイマス、請願委員會ハ其
意ヲ諒トシ且ツ其事實ヲ認メマシテ、此請願ヲ採擇スベキモノト決シマシタ、此段御報
告致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=99
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100・武藤金吉
○武藤金吉君 チヨット私ハ贊成ノ意ヲ表シ、併セテ此決議錄ニ殘シテ置キタイト思ヒ
マス、此案ハ唯今委員長ノ報告ノ通リノ事實デアリマス、而シテ此案ハ田畑ニ限ッテ漏
レタ部分ヲ修正シテ呉レ、修正ノ等級ハ政府ニ一任スルト云フ案デアルノデアリマス、而
シテ私ハ提出致シマシタ此渡良瀬川沿岸地方特別地價修正法律改正案ニ付キマシ
テ、大藏大臣ニ會見ヲ致シタ際ニ、此修正漏レノ分ニ對シテハ政府ハ至急人ヲ派シマ
シテ調査ノー詮議ヲスルト云フコトニナッテ、今囘ハ政府モ大ニ反省ヲ致シマシテ、此
修正漏ニ對シテハ之ヲ直スト云フ意味ヲ漏ラサレマシタカラシテ、本案ハ前囘通リ滿場
一致ヲ以テ御可決アランコトヲ希望シテ、尙此コトヲ私カラ紹介議員トシテ申殘シテ置
キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=100
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101・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長ノ報告通り、本請願ハ採擇スルコトニ御異議ハゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=101
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102・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ、採擇スルコトニ決シマス-
日程第十八、特別報告第五號、足尾銅山鑛毒被害地地價修正ニ對シ再修正ノ請
願外一件ヲ議題ニ致シマス、委員長報告
第十八(特別報告第五號)足尾銅山鑛毒被害地(委員長報告)
地價修正ニ對シ再修正ノ請願外一件発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=102
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103・立川雲平
○立川雲平君 本請願ノ御報告ヲ致シマス此請願ハ群馬縣新田郡鳥之郷村大字
鶴生田村八番地平民農石橋類郎外三十五名提出同群馬縣新田郡强戶村大
字菅鹽村四十九番地平民農〓儀八外百十二名提出、此二件ノ請願者ノ趣旨ハ同
一デアリマス足尾銅山鑛毒害地ノ地價修正ニ對シマシテ再修正ヲシテ貰ヒタイ、卽
チ以前ノ修正ハ折角被害地ニ對シテ、修正ヲスルトコロノ要ヲ得テ居ラヌ事實ニ於テ
再修正ヲ致サヌト云フト、其被害ヲ取除ケルコトガ出來ナイノデアルト云フ請顯ノ趣意テ
ゴザイマス是亦採擇スルコトニ決シマシテ、此所ニ報告ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=103
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104・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長報告通リ本請願ハ採擇スルコトニ御異議ハゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=104
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105・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ、本請願ハ採擇スルト云フコト
ニ決シマス-日程第十九、特別報告第六號、裁判所出張所新設ノ請願ヲ議題ト
致シマス、委員長報告
第十九(特別報告第六號)裁判所出張所新設ノ(委員長報告)
請願発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=105
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106・立川雲平
○立川雲平君 本請願ノ趣旨ヲ御報告致シマス、是ハ岡山縣川上郡手莊村長難波
健治郎外三名ノ提出ニ係ルモノデゴザイマス、裁判所出張所ヲ新設シテ貰ヒタイト云フ
ノデ、此管轄ハ岡山縣ノ川上郡ノ手莊村大賀村高山村日里村ハ其所轄タル所ノ
高梁區裁判所成羽出張所トハ餘程遠隔シテ居ルノデ、此所ニ更ニ裁判所ノ出張所ヲ
設ケラレンコトヲ望ムト云フノデアリマス、是ニ對シマシテハ政府モ同意ヲ致シマシタ、併ナ
ガラ不幸ニシテ本年二十四箇所ノ創設スルモノガゴザイマスケレドモ、是ハ未ダ本年創
設スルトコロノ分ニ入ッテ居ラヌケレドモ早晩創設ヲスル積リデアルト云フ政府ノ明言テ
ゴザイマスカラ、是モ亦採擇スルコトニ決シマシタ此段御報告ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=106
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107・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長報告通り、本請願ハ採擇スルコトニ御異議ハアリ
マセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=107
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108・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、本請願ハ採擇スルコトニ決シ
マスー日程第二十、特別報告第八號、海獸捕獲及海獸製革保護奬勵ニ關スル調
査ノ請願ヲ議題ニ供シマス、委員長報〓
第二十(特別報告第八號)海獸捕獲及海獸製草(委員長報告)
保護奬勵ニ關スル調査ノ請願発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=108
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109・立川雲平
○立川雲平君 本請願ハ少シク趣意ヲ御報告スル必要ガアルト思ヒマス、此請願ハ東
京府北豐島郡三河島村大字三河島二千四百二十三番地平民南洋製革所技師井
上龜之介外四名ノ提出ニ係ルモノデアリマス、此請願ノ趣旨ハ皮革ノ製品ノ需用ハ年
々ニ激增シテ參ルソレ故ニ牛馬其他ノ獸畜ノ皮革ノ產額ハ一千万圓ヲ超ユル次第デ
アルサウニゴザイマス、唯今ノトコロデハ國內ノ產額ハ以テ國內ノ需要ヲ充タスコトガ出來
マセヌデ、輸入セネバナラヌ、其輸入ハ三箇年ヲ平均スルト九百餘万圓ト云フモノヲ輸入
シテ居ル是ハ何トカ輸入ヲ防グ道ヲ講ゼナケレバナラヌト云フノデ、政府モ亦見ルトコロ
ガアッテ、牧牛ノ保護奬剛ナドニ於テ取調ヲ致シツヽアルサウニゴザイマスソレモ幾分カ輸
入ヲ防グコトガ出來マセウガ、何サマ我帝國ハ環ラスニ海ヲ以テシテ居リマスカラ、此海
獸所謂海豚デアルトカ、海驢ノ皮ヲ取リマシテ、之ヲ製作ヲ致シマスルト、優ニ外品ノ輸
入ヲ防グノミナラズ、却テ輸出スルコトモ尙出來ヤウト云フ、將來大ニ見ルトコロガアル、卽
チ將來ニ於ケル我產業上ニ於テ一大富源トモナルデアラウト云フ考ガアル、之ヲ今ニシテ
保護シ、且奬勵ノ方法ヲ講ジテ置カナイト云フト、遂ニ此富ヲ看ス〓〓失ハナケレバナラ
ヌト云フ殘念ナ境遇ニ立至ルト云フノデ、此請願人ノ如キハ其海豚海驢デ製シタル革
ヲ以チマシテ吾ミニ示サレタノデアリマスガ、誠ニ立派ナ皮革ガ出來ルノデアリマス、是ハ
政府ニ於テ是非トモ奬勵保護ノ方法ヲ講ジラレノハ我國家ノ利益デアルト信ジマスカ
ラ委員會ハ採擇スルコトニ決シマシタノデアリマス願クハ滿場ノ御贊成ヲ得テ此事ノ事
實ニ一日モ早ク現ハレルコトヲ切望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=109
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110・恒松隆慶
○恆松隆慶君 是ハ輸入防禦皮革ノ保護奬勵デアリマス、此請願ハ速ニ御採擇アッ
テ、政府ハ相當ナ調査ヲセラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=110
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111・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本請願ハ委員長ノ報告通リ、採擇スルト云フコトニ御異議
ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=111
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112・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ、採擇スルト云フコトニ決シマ
ス-御諮リヲ致シマス、決算委員松下軍次君病氣ノタメ辭任ノ申出アリ、許可シテ
差支ナキヤ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=112
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113・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 差支ナケレバ同君ハ第七部ノ選出ニ付キ、同部ノ諸君ハ補
缺ノ互選アランコトヲ希望致シマス、次ニ度量衡法改正法律案委員花井卓藏君病氣
ノタメ辭任ノ申出アリ、許可シテ差支ナキヤ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=113
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114・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 差支ナケレバ許可スルコトニ決シマス、而シテ該委員ハ議長
指名ニ付キ、其補缺トシテ藏原惟郭君ヲ指名致シマスモウ一ツ造船奬勵法中改正
法律案外一件委員及非常特別稅法中改正法律案外二件委員小川源一君病氣ノ
タメ辭任ノ申出アリ、許可シテ差支ナキヤ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=114
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115・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、許可スルコトニ致シマス、而シ
テ該委員ハ議長指名ニ付キ、造船奬勵法中改正法律案外一件委員ニ橫田虎彥君
ヲ、非常特別稅法中改正法律案外二件ノ委員ニ鈴木摠兵衞君ヲ、各其補缺トシテ
指名致シマス、小河源一君病氣ノタメ明十九日ヨリ十一日間請暇ノ申出アリ、許可シ
テ差支ナキヤ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=115
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116・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、許可スルコトニ致シマス、諸般ノ
報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル識案左ノ如シ
齒科醫師法中改正法律案
提出者山根正次君古森泰君
打狗築港速成ニ關スル建議案
提出者齋藤珪次君山本悌二郞君中村啓次郞君
村上先君柵瀨軍之佐君
一佐々木安五郎君ヨリ臺灣統治上對蕃策ニ關スル政府ノ方針ニ付テノ質問主意
書、大竹貫一君ヨリ韓國統監政治ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
臺灣統治上對蕃策ニ關スル政府ノ方針ニ付テノ質間主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十二年二月十八日
提出者佐々木安五郎贊成者卜部喜太郞
外三十一名
臺灣統治上對蕃策ニ關スル政府ノ方針ニ付テ質問趣意書
一臺灣ノ蕃族ハ歷史上增殖的人種ニ非スシテ自滅的人種ニ屬ス故ニ暫ラク之ヲ化
外ニ置クモ決シテ臺灣ノ存立ヲ危クスル虞ヒナシ然ルニ政府ハ年々巨額ノ國帑ト
多大ノ人命トヲ賭シテ急遽ニ之ヲ處分セント欲スルハ果シテ如何ナル切迫セル事
情アルニ由ルカ
一若シ前條ノ理由拓植上ヨリ來ルモノトスレハ政府ハ今後幾年ヲ以テ蕃族ヲ平定
シ幾年ヲ以テ拓植ニ著手スルノ胸算ナリヤ且ツ蕃地ヲ以テ我カ同胞ノ拓植ニ適當
ナリト認メ得ヘキ理由ノ根據ハ那邊ニアリヤ
一政府若シ眞ニ蕃害ヲ取締ラント欲セハ蕃害ノ由リテ來ル所ハ土匪阿片ノ經路ト同
シク武器供給ノ禍根實ハ一葦帶水ノ對岸ヨリ來ルヲ察シ須ラク嚴ニ沿海線ノ警
戒ヲ爲スヘキニ却テ山中ニ曠日彌久シ徒ラニ奔命ニ維レ勞ルヽヲ厭ハサルハ果シテ
如何ナル見地ヨリ來ルカ
一要スルニ政府ノ對蕃策ハ威壓ヲ主トスルカ懷柔ヲ主トスルカ或ハ威壓ト懷柔ト併
用セントスルカ若シ然リトスルモ政府ハ此等ノ計畫上必須缺クヘカラスト言明セシ
蕃界鐵道布設不成立ノ今日以後ニ在リテハ將サニ如何ナル方法ヲ以テ對蕃策
ヲ遂行セントスルヤ
一近頃蕃族ニ對シテモ曾テ土匪ニ浴セシメタル歸順許可ノ思典ヲ施スコトアリト聞ク
此歸順許可ノ一事ハ憲法第一章第十六條ノ天皇ノ大權ヲ侵害スル恐レナキカ
若無之トセハ何時如何ナル形式ノ下ニ政府ハ此重大ナル特權ヲ得タリヤ
韓國統監政治ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十二年二月十八日
提出者大竹匠一贊成者河野廣中
外四十二人
韓國統益政治ニ關スル質問主意書
第一統監有韓國保護政策ノ根本方針如何
第二地方行政ノ不統一ニ陷リ不振ヲ極ルハ韓國ノ現狀ナリ統監府カ是ニ對スル
刷振更張ノ方針如何
第三伊藤統監ハ韓國現下ノ情勢ニ適セサル法令ヲ濫發セシメ徒ラニ文明ノ制度
ヲ潤色スルヲ以テ改善ノ急務トナスモノヽ如シ其效果如何
第四韓國ニ於ケル日本官吏ノ官紀ハ甚タ弛廢セリト聞ク斯クノ如クニシテ果シ
テ韓國官吏ノ模範タルヲ得ルヤ如何
第五統監府ハ新聞記者及通信員ヲ買收若ハ壓迫シ其他凡テノ言論ヲ拘束シテ
韓國ノ眞相ヲ壅蔽スルノ狀アリ其事實如何発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=116
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117・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知ヲ致シマス、本日ハ是ニテ
散會致シマス
午後三時五十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002513242X00919090218&spkNum=117
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