1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治四十四年一月二十一日(土曜日)午後一時六分開議
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議事日程 第二號 明治四十四年一月二十一日
午後一時開議
第一 明治四十一年法律第十一號中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第三 作業會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第五 帝國鐵道會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第七 帝國大學特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第九 沖繩縣農工銀行補助に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十一 朝鮮に於ける貨幣整理の爲生したる債務を貨幣整理資金特別會計に移屬せしむる件に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十三 朝鮮事業公債法案(政府提出) 第一讀會
第十四 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十五 朝鮮事業公債金特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第十六 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十七 朝鮮鐵道用品資金會計法案(政府提出) 第一讀會
第十八 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十九 朝鮮森林特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第二十 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第二十一 輕便鐵道補助法案(政府提出) 第一讀會
第二十二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第二十三 治水費資金特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第二十四 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第二十五 府縣災害土木費國庫補助に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第二十六 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第二十七 裁判所位置名稱及管轄區域變更に關する法律案(齋藤二郎君提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=0
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001・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本日開會ノ始ニ於テ補缺選舉ニ當選セラレタル議員ヲ紹
介致シマス、京都府京都市選出議員濱岡光哲君
〔濱岡光哲君起立〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=1
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002・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
明治四十一年法律第十一號中改正法律案
作業會計法中改正法律案
帝國鐵道會計法中改正法律案
帝國大學特別會計法中改正法律案
沖繩縣農工銀行補助ニ關スル法律案
朝鮮ニ於ケル貨幣整理ノ爲生シタル債務ヲ貨幣整理資金特別會計ニ移屬セシム
ル件ニ關スル法律案
朝鮮事業公債法案
朝鮮事業公債金特別會計法案
朝鮮鐵道用品資金會計法案
朝鮮森林特別會計法案
輕便鐵道補助法案
治水費資金特別會計法案
府縣災害土木費國庫補助ニ關スル法律案
明治四十四年度歲入歳出總豫算案竝明治四十四年度各特別會計歲入歲出
豫算案
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
明治四十一年度歲入歲出總決算
明治四十一年度各特別會計歲入歲出決算
明治四十一年度歲入歲出決算檢査報告
明治四十四年度歲入歳出總豫算案竝明治四十四年度各特別會計歲入歲出
豫算案中修正豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件中修正
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
裁判所位置名稱及管轄區域變更ニ關スル法律案
提出者齋藤二郞君
京都府京都市選出議員西村治兵衞君ノ補闕トシテ濱岡光哲君當選セラレタリ
一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
豫算委員長原敬君理事大岡育造君
理事粕谷義三君理事川原茂輔君
理事高木益太郞君理事島田珠一君
一君理事富山暢夫君
決算委員長福岡精
理事根本正君理事三浦覺一君
理事電腦排除三星(日) 十五日ノ君の名古屋
請願委員長理事小久保喜七君
理事町田旦龍君理事橫山金太郞君
懲罰委員長岡田泰藏君理事鈴木辰次郞君
理事伊東祐賢君理事野添宗三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=2
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003・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 會議ヲ開キマス、御諮リヲ致シマス、請願委員後藤文一
郞君病氣ノタメ辭任ノ申出ガアリマス、許可シテ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=3
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004・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、許可致シマス、而シテ同君ハ第
五部選出ノ委員デアリマスカラ、同部ノ諸君ハ速ニ補缺選舉ノ上御屆アランコトヲ望ミ
マス、岡崎運兵衞君ヨリ、病氣ニ付今二十一日ヨリ三週間請暇ノ願出ガアリマス、許
可シテ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=4
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005・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、許可スルコトニ致シマス、是ヨリ
桂內閣總理大臣兼大藏大臣ノ演說ガアリマス
(內閣總理大臣兼大藏大臣侯爵桂太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=5
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006・桂太郎
○內閣總理大臣(侯爵桂太郞君) 諸君、本大臣ハ玆ニ政府所見ノ〓要ヲ陳述スル
ノ機會ヲ得マシタルヲ光榮ト存ジマス、諸君、締盟列國トノ交誼ハ益〓親善ヲ加ヘ、特
ニ日英同盟ノ基礎ハ、年ヲ追フテ益〓鞏固ナルヲ致シ、又昨年路國ト更ニ協商ヲ重ネマ
シテ、從來ノ協約ノ基礎ヲ一層確實ニスルヲ得タ次第デゴザイマス、其他各國トノ協約等
ニ付キマシテモ、孰レモ漸次其效果ヲ收メマシテ、爲ニ東洋ノ平和ヲ增進シ、帝國ノ安全ヲ
保障スルニ於テ、何等遺憾ナキヲ得マスルノハ、實ニ國家ノ幸福ト言ハナケレバナラヌノデゴ
ザイマス、諸君、列國トノ條約改正ニ關スル交涉モ、漸次其歩武ヲ進メテ居リマス、本大
臣等ハ諸君ト共ニ速ニ其目的ヲ達シ、其期ニ到リマシテ、圓滿ナル實施ヲ見ンコトヲ切
望シテ已マヌ次第デゴザイマス、韓國ニ對シマシテハ、帝國ハ常ニ其最善ヲ盡シマシタガ、
從來ノ政策遂行ノ結果ハ、未ダ以テ完全ニ帝國ノ所期ニ副ヒマセヌ、又同國開發ノ目
的ヲ達スル所以デモゴザイマセヌカラ、昨年八月ニナリマシテ、終ニ同國ヲ永遠ニ帝國ニ
併合セラルヽコトヽ相成リマシタノデゴザイマス、爾後朝鮮ノ情勢ハ、平靜デアリマシテ、庶
民其堵ニ安ンジ居リマスルナレドモ、尙今後一層其施設經營ヲ完ウシ、同地方ノ發達
同化ヲ圖リマシテ、以テ十分ニ併合ノ效果ヲ收メタイト存ジテ居リマス、諸君、本大臣ハ
就職以來財政經濟ノ整理ヲ計晝致シ、諸君ノ御贊同ヲ得テ其方針ヲ實行致シマシタ
ガ、幸ニ致シマシテ今日ニ至リ、稍2其效果ヲ實現致シマシテ、內外ニ對スル帝國財政
ノ信用鞏固トナリ、經濟界モ亦漸次穩健ナル發達ヲ見ルニ至リマシタノハ、實ニ國家
ノ幸デアルト存ジマス、政府ハ尙從來ノ方針ニ依リマシテ、益〓財政經濟ノ調和ヲ圖リ、
國力ノ發展ヲ確實ナラシメンコトヲ希望シテ居ルノデゴザイマス、國防ノ充實ヲ期シマス
ルノハ、東洋ノ平和ト帝國ノ安全トヲ維持スルニ於キマシテ、已ムヲ得ナイコトヽ存ズル
ノデゴザイマス、故ニ政府ハ財政ノ許ス範圍ニ於テ、之ガ補充ノ計畫ヲ立テマシタ、又交
通、殖產〓育等國運ノ發展ニ必要ナル事業ニ付キマシテハ、ソレ〓〓既定ノ計畫ヲ遂
行致シ、又新ニ計畫ヲ定メ、治水事業ニ付キマシテモ相當ナル企畫ヲ致シマシテ、何レモ
來年度豫算案ニ其費額ヲ計上ヲ致シマシタ、尙其他各種計畫等ニ付キマシテハ125
各大臣又ハ本大臣ヨリ、相當ノ時機ニ於キマシテ、其內容ノ詳細ヲ陳述致シマス、本
大臣ハ諸君ガ時勢ノ須要ニ鑑ミ、政府ノ意ノアル所ヲ諒トセラレマシテ、提出致シマ
シタル各案ニ對シテ、協賛ヲ與ヘラレンコトヲ切望シテ止マヌノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=6
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007・高木正年
○高木正年君 議長、總理大臣ノ御演說ニ付テ承リタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=7
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008・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) マダ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=8
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009・桂太郎
○大藏大臣(侯爵桂太郞君) 是ヨリ財政ノコト、歲計豫算ニ付キマシテ、所見ヲ述ベ
ヤウト考ヘルノデゴザイマス、諸君茲ニ明治四十四年度歲計豫算ヲ諸君ニ紹介ヲ致シマ
スルハ本大臣ノ光榮ト致ストコロデゴザイマス、明治四十四年度總豫算ニ付キマシテ
ハ編成後ニ至リマシテ、治水事業ニ關シ、後段述ベマスルガ如キ、經畫ノ成案ヲ得マ
シタルヲ以チマシテ、政府ハ之ガ實施ニ伴ヒ、豫算ヲ修正スルノ必要ヲ認メマシテ、旣ニ
之ガ修正案ヲ提出ヲ致シマシタ、今其修正ノ結果ニ依リマシテ、大要ヲ述ベマスルニ、明
治四十四年度總豫算ニ計上スルトコロノ歳入ハ經常部ニ屬シマスルモノガ四億九千二
百十二万八千圓、臨時部ニ屬スルモノガ五千九百八十九万四千五百三十九圓、合
計五億五千二百三万二千五百三十九圓デアリマシテ、其歲出ハ經常部ニ屬スルモノ、
四億七百十六万三千九百九十一圓、臨時部ニ屬スルモノガ一億四千四百八十六
万八千五百四十八圓、合計五億五千二百三万一一千五百三十九圓デアリマス、故
經常歲入ヲ以テ經常歲出ニ比較スレバ八千四百九十七万四千九圓超過デアリ
マシテ、之ヲ前年度ニ於ケル經常部歲入歲出ノ關係ニ對照ヲ致シマスレバ、一層良好
ナル狀態ヲ示シテ居ルノデアリマス、右總豫算ニ計上ヲ致シマスル歲出ノ外、明治四十
四年度ニ於キマシテハ、臨時軍事費特別會計ヨリ繰越シマシタル經費ノ中、二百六十
五万圓ヲ使用スルノ豫算デアリマシテ、前年度剩餘金ヲ以テ之ヲ支辨スルノ經畫デアリ
マス、明治四十四年度ノ歲入ヲ以テ之ヲ前年度豫算ニ比較致シマスルト、經常部
ニアッテハ前年度ニ於テ決定ヲ致シマシタル稅法整理ノ結果、前年度ニ於キマシテ、
一部ノ減額ヲ示スニ止マレル地租ハ、本年度ニ於キマシテ其全部ノ減額ヲ來シ、營業
稅ハ今年度ヨリ新率ヲ適用セラルヽニ依リマシテ、共ニ減額ヲ見マスルノ外、前年度
ニ於ケル稀有ノ水害ハ自ラ各種租稅ノ收入ニ影響ヲ及ボスベキモノガナイノデハアリ
マセヌナレドモ、一般經濟上ノ發達及新關稅率ノ實施ニ伴ヒ增加スルモノガアリマスガ
タメニ、結局租稅收入ニ於キマシテ、三百八十餘万圓ヲ增加シ、其他印紙收入官業
及官有財產收入等ニ於キマシテ、朝鮮總督府特別會計設定ノ結果、前年度ニ於テハ
一般會計ニ屬シタル歲入ノ一部ヲ、本年度ニ於テ同特別會計歲入ニ移シ變ヘタルモノ
ガアリマスガタメニ二百七十九万餘圓ヲ減少致シマシタケレドモ、一般經濟上ノ發達ニ伴
フ收入ノ增加スルモノガアリマス等ニ依リマシテ、差引百四十七万餘圓ヲ增
加致シ、結局經常部ニ於テ五百三十餘万圓ノ增加ヲ示シ、臨時部ニ於キマシ
テハ主トシテ軍艦水雷艇補充基金繰入ノ增加、及新ニ設置シタル治水費資金
ノ繰入アル等ニ依リマシテ、差引千二百三十餘万圓ヲ增加致シマスルタメニ歲入總
額ニ於テ千七百七十餘万圓ヲ增加致シマシタ、明治四十四年度ノ歲出ヲ以テ、之ヲ
前年度豫算ニ比較致シマスルト、經常部ニアリマシテハ、一方ニ於キマシテ既定ノ計
畫ニ基ク事業ノ進捗及軍備充實等ニ依リマシテ、歳出ノ增加スルモノガアリマスルモ、他
方ニ於テ國債整理基金繰入及諸拂戾金等ノ減少スルモノガアリマスガタメニ、差引三
百九十六万餘圓ヲ減ジ、臨時部ニアリマシテハ一方ニ於テ既定繼續費年割額ノ減少
若クハ前年度限リノ費途デアリマシテ、本年度ニ於テ之ヲ要セザルガタメニ、歲出ノ減少
スルモノガアリマスルモ、他方ニ於テ既定繼續費年割額ノ增加、若クハ前年度ニ於テ著
手シタル關門海峽ノ改良、神戶稅關防波堤ノ築造等ニ關シマシテ、事業ノ進捗ニ伴
ヒ工費ノ增加スルモノガアリマス等ノ外、海軍軍備充實、治水事業、製鐵所擴張、蠶
種統一等、國防ノ充實國土ノ保全、竝ニ產業ノ發展上緊急缺クベカラザル事項ニ關
シ、或ハ既定ノ計畫ヲ擴張シ、或ハ新ニ特別ノ方策ヲ定メタル等ニ依リマシテ、歲出ノ
增加スルモノガアリマスルガタメニ、差引二千百六十九万餘圓ヲ增加シ、結局歲出總
額ニ於キマシテ千七百七十餘圓ノ增加ヲ見ルノデゴザイマス、以上明治四十四年度豫
算ニ關シ、其歳入歲出增減ノ大體ヲ說明ヲ致シマシタ、本大臣ハ更ニ進ミマシテ同年
度豫算ニ關スル財政計畫ノ綱領ニ付キマシテ、一言致サウト考ヘルノデゴザイマス、歲
計ノ基礎ヲ確實ニシ公債ニ對スル信用ヲ厚ク致シマスルハ、政府ガ前前年度以來銳意
其實行ニ努メタル財政上ノ大方針デアリマス明治四十四年度豫算ヲ編成スルニ當
リマシテモ、亦從來ノ方針ヲ繼承致シ財政基礎ノ鞏固ヲ維持スル範圍內ニ於キマシテ、
內外ノ情勢ニ鑑ミ國勢ノ進運上緊急已ムヲ得ザル施設ヲ實行スルノ政策ヲ取リマシタ
ノデゴザイマス、今其計畫ノ主要ナルモノヲ舉ゲマスレバ次ノ如ク相成ルノデゴザイマス、第
一海軍ノ製艦及造兵方針ニ適當ナル變更ヲ加ヘ、以テ軍備ノ充實ヲ圖ルコト、二、治
水ノ根本策ヲ定メ生民ノ災厄ヲ除キ、國土ノ保全ヲ期スルコト、三、鐵道ノ改良及普
及ニ努メ、、以テ交通機關ノ整備ヲ圖ルコト、四、新ニ帝國版圖ニ歸シタル朝鮮ニ對シ其
開發ニ必要ナル各般ノ施設ヲ爲スコト、五、其他產業ノ發達國民經濟ノ進歩ニ必要
缺クベカラザル諸般ノ經營ヲ行フコト、此五箇條デゴザイマス、諸君、最近列國海軍ノ趨
勢ハ製艦及造兵ノ方針ニ一大革新ヲ來シマシテ、船型竝ニ砲徑ニ於キマシテ愈〓其大
ヲ競フニ至リマシタ、從ッテ帝國海軍ニ於キマシテモ、亦其既定計畫ニ係ル軍備ノ補充ニ
關シマシテ、製艦造兵ノ方針ニ適當スル變更ヲ加ヘ、國防ノ充實ヲ圖ルノ必要ガアリマ
ス、政府ハ現下ニ於ケル我財政ノ狀態ニ鑑ミマシテ、其經常歲入ヲモチマシテ、支辨シ得
ベキ範圍內ニ於キマシテ、海軍軍備充實ノ計畫ヲ改定ヲ致シ、旣定繼續費ニ對シマシテ、
本年度以降六箇年間ニ亙リ總額約八千二百万圓ヲ追加致スコトニ致シマシク、而シ
テ本年度ニ於キマシテ其旣定ノ年割額ニ對シマシテ、增加ヲ要シマスル金額ハ千四百
八十万圓ニ相成ルノデゴザイマス、前年ニ於ケル洪水ハ廣ク各地方ニ亙リマシテ多大ノ
損害ヲ及ボシ、人民ノ苦痛極メテ大ナルモノガアリマス、故ニ政府ト是ガ應急ノ手段ニ於
テ遺算ナカランコトヲ期シマシタ、又其復舊工事費ニ關シマシテモ、或ハ國庫補助ニ付
テ臨機ノ處置ヲ執リ或ハ預金部ヨリ低利ノ資金ヲ融通ヲ致シマシテ、地方費負擔ニ屬
スル經費ノ財源ニ充テ、專ラ地方人民ノ負擔ヲ輕減シ、其恢復ヲ速ナラシムルノ方法ヲ
講ジマシタ、之ガタメ既ニ國庫ヨリ支出シ、又ハ將來支出スベキ金額ハ實ニ七百餘万
圓ニ達シ、低利資金ノ貸出高ハ實ニ千七百餘万圓ニ上ルコトヽ相成リマス、而モ是レ
單ニ前年ニ於ケル水害後ノ應急手段ニ過ギヌノデゴザイマス、抑〓本邦ノ國土タル地勢
ノ關係上、容易ニ出水ノ害ヲ見ルコトガアリマス故、政府ハ夙ニ河川ノ改良ヲ實施シ來リ
マシタナレドモ、未ダ十分ニ是ガ災厄ヲ防止スルニ足リマセヌ、今ニシテ早ク百年ノ大計ヲ
定メマセヌトキハ、將來爲ニ國土ヲ損シ、生命ヲ傷ヒ、又ハ財產ヲ失フ等、其慘害寔ニ
測知スルコトガ出來ヌノデゴザイマス、是ヲ以チマシテ、政府ハ根本的治水策ヲ定ムルノ一
刻モ猶豫スベカラザルヲ認メマシテ、曩キニ特ニ臨時治水調査會ヲ置キ、河川ノ改良、
砂防ノ實施、森林ノ增殖其他治水ニ關スル各般ノ計畫ヲ其議ニ附シマシタ、爾來同
會ニ於キマシテ、周密ナル調査審議ヲ經マシタルノ結果、最近ニ及ビマシテ、玆ニ永遠
ニ亙ル治水策ノ成案ヲ得マシタルガ故ニ、政府ハ右ノ計畫ニ基キマシテ、本年度以降
是が實行ヲ期スルノ考デアリマス、其第一期ノ事業ニ要シマスル經費ノ總額ハ、一億九
千三百餘万圓トナルノデゴザイマス、而シテ十八箇年間ニ完成スルノ豫定デアリマシテ、
本年度ニ於テ要スル經費ハ千二百七十九万餘圓デアリマス、右治水事業ニ要スル經
費ハ、國庫竝ニ關係府縣ニ於テ之ヲ分擔スベキハ當然デアリマスケレドモ、其經常歲入
ヲ以チマシテ、年々必要ナル金額ノ全部ヲ支辨セシメント致シマスルトキハ、負擔重キニ過
グルモノト言ハナケレバナリマセヌ、故ニ政府ハ中央竝ニ地方財政ノ負擔ヲ考慮シ、姑ク
借入金ヲ以テ其足ラザルトコロヲ補ヒ、以テ一舉シテ先ヅ其事業ヲ完成シ、然ル後徐
ニ是ガ償還ヲナスヲ以テ適當ナリト認メマシタ、而シテ多年ニ亙リマシテ、此計畫ノ遂行
ヲ確實ニ致シマスルガタメニハ、特別ニ其資金ノ經理ヲ爲スヲ必要ト考ヘマスニ依リ、治
水費資金ニ關シマシテハ、特別ノ會計ヲ設置致シマスル考デゴザイマス、產業ノ發達上
交通機關ノ整備ヲ緊切トスルハ、今特ニ申上グルマデモナイトコロデアリマス、今ヤ財政
ノ整理漸ク其步ヲ進メマスルニ及ビ、交通機關ノ整備ヲ圖リマシテ、以テ產業ノ發達ニ
資シ國運ノ發展ヲ期シマスルノハ、刻下ノ急務デゴザイマス、因テ現在ノ鐵道ニ對シマシ
テ、大ニ改良ヲ加ヘマスルト同時ニ、新橋下關間ノ幹線ヲ廣軌式ニ改築ヲ致シ、竝ニ
既ニ著手致シマシタル線路ノ外、更ニ數線ノ建設ヲ規畫シ、且ツ旣成鐵道交通ヲ補
成スベキ輕便鐵道ノ建設ヲ奬勵スベキ計畫ヲ立テマシタ、之ガタメニ既定計畫ニ對シ、
更ニ建設費ニ於テ總額四千六百餘万圓、改良費ニ於テ總額二億七千四百餘万圓
ヲ增加シ、本年度以降前者ハ七箇年、後者ハ十三箇年ヲ以テ之ヲ完成スルノ豫定
デアリマス、右改定ノタメ本年度ニ於キマシテ、支出スベキ帝國鐵道建設改良費ノ年割
額ハ、五千百九十三万餘圓ニ達スルノデゴザイマス、新帝國ノ版圖ニ歸シマシタル
朝鮮ニ對シマシテハ、其開發ニ力メ、以テ新附ノ人民ヲシテ永ク福利ヲ享ケシメナケレバ
ナラヌノデゴザイマシテ、ソレガタメニ朝鮮總督府ノ會計ハ、特別ノモノト致シ、其歲入ヲ
以テ其歲出ニ應ジ、足ラザルトコロハ之ヲ一般會計ヨリ補充シ、以テ必要ナル施設ヲ實
行スル考デゴザイマス、本年度以降該特別會計ニ於キマシテ、實施致シマスル計畫ノ主
要ナルモノハ、鐵道ノ建設改良、海陸連絡ノ設備、道路ノ修築、各種產業ノ補助及
土地ノ調査等ニシテ、或ハ從來ノ規模ヲ擴張シ、或ハ新ニ計畫ヲ立ツル等デアリマシテ、
是レ皆富源ノ開發民力ノ養成ニ要スルトコロノモノデアリマス、而シテ本年度ニ於キマシ
テ、一般會計ヨリ補充ヲ要シマスル金額ハ千二百三十五万圓デアリマシテ、之ヲ前年
度ニ於テ舊韓國ノタメ一般會計ヨリ支出セシ金額ニ比較對照ヲ致シマスルトキハ、純粹
ニ一般會計ノ負擔ヲ增加シタル金額ハ百三十六万圓デゴザイマス、前年度ニ於キマス
ル大水害ノ後ヲ承ケテ、國費多端ナルノ際ニ方リ、以上各般ノ施設ヲ實行スル外、製
鐵所ノ擴張、蠶種統一ニ關スル事業等、產業ノ發達ニ資スベキ計畫ヲ定メマシテ、之
ニ要シマスル金額モ亦少クナイノデゴザイマスケレドモ歲計全體ヲ通ジマシテ努メテ緊
縮ヲ圖リマシタルガ故ニ、一般ノ歲計ニ於キマシテハ、公債財源ニ依ラズシテ、能ク歲入
歲出ノ均衡ヲ保ツコトヲ得マシタルノミデナク、公債ニ關シマシテハ從來ノ方針ヲ繼承致
シ、本年度ニ於キマシテモ、亦元金償還資金ト致シマシテ、五千万圓ヲ繰入スルノ計畫
ヲ定メマシタ、前年度ニ於テ實行致シマシタル、公債借換ノ成績ヲ一言致シマスルニ、
借換ノタメニ發行致シマシタル四分利公債ハ、總額五億五千六百餘万圓デアリマシテ、之
ヲ以テ償還ヲ致シマシタル五分利公債ノ總額ハ、五億千八百餘万圓デアリマス、其結果
每年利子ノ節約ヲ得ベキ金額ハ三百六十餘万圓ニ達シマス、公債ノ借換ハ永ク國庫
ノ負擔ヲ輕減ヲ致シ、財政上利益スルトコロ大ナルノミナラズ、右低利借換ノ結果ハ、自
カラ一般金利ノ低落ヲ誘致シ、產業ノ發逹ヲ刺激シ、之ニ依リマシテ又間接ニ國庫ヲ
益スルモノ尠クナイノデアリマス、政府ハ今後モ亦市場ノ情勢ヲ案ジ通當ト認ムル方法
ニ依リ、既定ノ計畫ヲ遂行シ、以テ一旦著手シタル事業ヲシテ、能ク終始スルトコロアラ
シムル考デアリマス、飜ヲテ前年中ニ於ケル我經濟界ノ趨勢ヲ案ジマスルニ、金融ハ常ニ
緩慢ノ狀態ヲ呈シタルノミナラズ、稀有ノ水害ハ各地ニ於ケル產業ヲ害シ、地方人民ノ
購買力ヲ損シタル狀況デアリマスガ、同年中銀行會社ノ新設又ハ擴張ノ計畫ヲナシタル
モノハ、約四億八千餘万圓ニ達シテ居リマス、現實社債又ハ株金拂込ヲ爲シタルモノ
ガ、約二億圓ニ上リ、大體ニ於テ各種ノ事業漸次穩健ナル發達ノ兆ヲ呈シツヽアルノ
ハ、一般ニ認メラルヽトコロデアリマシテ、殊ニ製造工業ニ要スル資金最モ多額ヲ占メ、其
計畫ニ係ルモノ約一億四千万ニ達シマシタルコトハ、最好ノ傾向ト云ハナケレバナラヌノ
デアリマス、本年度ニ於テハ、諸般ノ財政的施設ト相俟チマシテ、更二一層良好ナル狀
況ヲ呈スベキコトハ、疑ヲ容レナイノデアラウト思ヒマス、又同年中ニ於ケル我外國貿易ノ
狀況ヲ見マスルニ、輸出額四億五千八百餘万圓、輸入額四億六千四百餘万圓、合計
九億二千二百餘万圓デアリマシテ、輸出入ハ輸入額ノ輸出額ニ超過スルコト僅ニ五百
八拾餘万圓デアリマス、之ヲ前年度ノ貿易額ニ比較シマスルニ、輸出ニ於キマシテ、四千
百餘萬圓、輸入ニ於キマシテ七千万圓ノ增加ニナッテ、實ニ一億一千五百餘万圓ノ增
加ヲ致シタノデゴザイマス、若シ右輸出入額ニ更ニ內地朝鮮間ニ於ケル貨物ノ移出入ヲ
加算致シマスルトキハ、輸出輸入各〓四億七千二百餘万圓、合計九億四千四百餘
万圓ト相成ルノデゴザイマシテ、之ヲ最近貿易額ノ最モ多カリシ明治四十年ニ比スル
ニ、尙總額ニ於キマシテ一千八百餘万圓ノ增加ヲ致シテ居ルノデゴザイマス、更ニ進ンデ
昨年中ニ於ケル貿易內容ヲ案ジマスルニ、輸入ニ於キマシテハ主トシテ生產原料ヲ增加
シ、輸出ニ於テハ全製品ヲ增加セルノ實績ヲ認メルノデゴザイマス、以テ我內地ノ產業
ガ近時漸ク長足ノ進步ヲナシツヽアルコトヲ知ルコトガ出來ルト考ヘルノデゴザイマス、之
ヲ要シマスルニ大戰役ノ後ヲ承ケテ、財政上愼重ノ注意ヲ要スベキトキニ方リ、上下心ヲ
協セマシテ、財政ノ緊縮ヲ斷行シ、國債償還ノ大計ヲ確立致シマシテ、銳意之ガ整理
ニ力メマシタ其結果、公債ノ市價漸次恢復ヲ致シ戰時匆倉ノ際ニ制定ヲ致サレマシタ
ル稅法ハ、大體ノ整理ヲ經、公債ノ低利借換亦其進行ノ途ニ在リ、緊急已ムヲ得ザ
ル各般ノ施設、漸次其實行ヲ見ルニ至リマシタノハ、本大臣ノ深ク喜ブトコロデゴザイ
マス、諸君、本大臣ハ諸君ガ愼重審議以テ速ニ豫算案ニ協賛アランコトヲ切ニ希望致
スノデゴザイマス
〔「議長々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=9
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010・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 總理大臣ノ演說ニ對シテハ、通告ガゴザイマスカラ、其順序
ニ依ッテ發言ヲ許可致シマス、松田源治君
〔松田源治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=10
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011・松田源治
○松田源治君 本員ハ桂總理大臣ノ施政ノ方針ニ付テ、說明ヲ求メタイコトガアルタ
メニ演壇ニ登ッタノデゴザイマス、ソレハ韓國併合ト憲法ノ關係ニ付テ、桂總理大臣ニ說
明ヲ求メタイノデアル、桂內閣ガ昨年韓國ヲ合併スルニ當ッテ、幾多ノ緊急命令ヲ出シ、
憲法七十條ニ依ッテ幾多ノ財政上ノ處分ヲ出シ、臨時議會ヲ開カナイノハ憲法上如何
ナル處ニ根據ヲ有スルモノデアルカ、是ガ說明ヲ求ムルトコロノ大眼目デアルノデゴザイマ
ス、憲法ノ條規ヲ案ジマスルニ、諸般ノ條約ヲ締結スルニハ、絕對ニ天皇ノ大櫂ニ屬ス
ルコトハ勿論デゴザイマス、併シ此條約ヲ執行スルニ當ッテハ、法律ヲ要シ、豫算ヲ要スル
場合ニ於テハ、又帝國議會ノ協贊ヲ要スルト云フコトモ是レ論ナキトコロデアル、之ヲ要
シマスルニ天皇ノ大權事項ト、立法事項トハ兩々相對峙致シマシテ、毫モ互ニ其侵
犯ヲ許サナイノデアリマス、然ルニ政府ガ昨年韓國ヲ合併スルニ當ッテ、緊急勅令ノコト
ハ少々議論ノ餘地ガアリマスカラ、是ハ他日ニ讓リマシテ、何レモ疑ヲ容ルヽ餘地ノナイ
憲法七十條ノ財政處分ヲナシタノハ、吾々ノ見ル所ニ依リマスレバ、殆ド憲法違反デア
ルト私ハ考ヘルノデアリマス緊急勅令ハ憲法ノ八條ニ規定シテアル如ク「天皇ハ公
共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル爲メ緊急ノ必要ニ由リ帝國議會閉會ノ場合
ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ發ス」此場合ハ公共ノ安全ヲ保持シ、又ハ災厄ヲ避クルタメ
ニ緊急ノ必要ガアレバ帝國議會開會ノ場合ニ於テハ如何ナルトキニ於テモ、緊急勅令
ヲ發スルコトガ出來ルノデゴザイマス、併シ憲法七十條ノ條文ヲ見マスレバ「公共ノ安全
ヲ保持スル爲緊急ノ需用アル場合ニ於テ內外ノ情形ニ因リ政府ハ帝國議會ヲ召集ス
ルコト能ハサルトキハ勅令ニ依リ財政上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得」ト云フコトガ書イテ
アル卽チ七十條ノ財政處分ハ八條ニ比較スレバ愼重ヲ要シ、戒愼ヲ要スルノデゴザイマ
ス、左樣ナ臨時緊急ノ事情ガアルナラバ臨時帝國議會ヲ召集シテ、帝國議會ノ協賛ヲ
待ツガ宜シイ、臨時ニ帝國議會ヲ召集スル能ハザル場合ニ限ッテ、始メテ憲法七十條ノ財
政上ノ處分ヲ爲スト云フコトハ、憲法ノ明文上昭々乎トシテ日月ノ如ク明カナルモノデア
ラウト思フノデゴザイマス、然ルニ韓國ヲ政府ガ合併スルニ當ッテ、果シテ內外ノ情形ニ因
リマシテ臨時帝國議會ヲ召集スルコトガ出來ナイヤウナル狀態ガアッタデゴザリマセウカ、ド
ウデゴザリマセウカ、之ヲ言ヒ換ヘマスレバ、臨時帝國議會ヲ召集スルコトガ不能ノ狀態ニ
在ッタデアリマセウカ、ドウデゴザリマセウカ、若モ臨時帝國議會ヲ召集スルコトガ出來ルニ
拘ハラズ、臨時帝國議會ヲ召集スルコトガ出來ナイト云フコトニ口ヲ藉ツテ、-口實ト
致シテ帝國議會ヲ開カズシテ、議會ノ權利ヲ侵犯致シテ、憲法七十條ノ處分ヲ爲シタ
時分ニ於テハ、政府ハ憲法違反ノ責任ニ任ジナケレバナラヌト云フコトハ明カナルコトデアル
ノデゴザリマスル、本員ハ韓國合併ニ付キマシテ、內外ノ情形ハ臨時議會ヲ開イテモ-
十分臨時議會ヲ開キ得ルトコロノ有樣ニ在ッタト云フコトヲ確信スルノデゴザリマス、御
承知ノ如ク韓國ノ併合ト云フモノハ殆ト既定ノ事業デゴザリマシテ、諸外國ニ於テモ之
ヲ承認致シテ居ルノデアル、合併前韓國ニ於テモ既ニ知ッテ居ルノデゴザリマス、之ヲ公ケ
ニシタタメニ一大動亂ヲ起シ、一大紛擾ヲ起シ、外國ノ抗議ニ逢ッテ韓國合併ノ目的ヲ
遂行スルコトガ出來ナイト云フコトデアルナラバ、殆ド日本ノ外交ガ無クナルト言ッテ宜シ
イ韓國ニ於テ統監政治ガ無クナルト言ッテ宜シイト思フ、日本ニ外交ガアリ、韓國ニ於
テ統監政治ガアル以上ハ、韓國合併ト云フコトヲ公ケニシテモ、韓國合併ニ付テ障礙ヲ
來スコトハ、本員ハナイト確信致シテ居ルノデゴザリマスル、內地ノ模樣ハドウデゴザイマス
ル、交通機關モ完全シテ居リ、其他ノ設備モ完全致シテ居ルノデゴザリマスル、憲法ノ七
十條ニ所謂內外ノ情形ニ於テ、政府ガ帝國議會ヲ召集スルコト能ハザルト云フトコロノ
事實ハ一モナイノデゴザリマスル、然ルニ憲法七十條ニ政府ハ省ミマシテ、帝國議會ヲ開
カズシテ、帝國議會ノ權利ヲ侵シマシテ、憲法七十條ノ處分ヲ爲シタノハ、如何ナル理由
ニ基クカト云フコトガ、是ガ說明ヲ求メタイノデゴザリマスル、元來桂內閣ハ憲法ヲ無視シ
シ憲法ヲ尊重セザル傾ガアルノデゴザリマス、二十六帝國議會ニ於キマシテ、我政友會
ハ韓國ニ於ケル裁判事務ニ關スル法律第五十六號ヲ緊急勅分ヲ以テ廢シテカラ、其
廢シタルニ拘ハラズ、桂內閣ハ其緊急勅令ヲ憲法ノ命ズルトコロニ於テ、事後承諾ノタ
メ議會ニ提出セザリシニ依リ、我會ハ其提出ヲ政府ニ求メマシテ、滿場一致ノ諸君ノ
贊成ヲ得マシテ違憲ノ決議ヲ爲シテ、桂內閣ノ反省ヲ求メタノハ二十六議會デハ
アリマセヌカ、然ルニ此憲法違反ノ決議-桂內閣ヲ反省セシメタル決議ノ半歲經過
シタルニ拘ハラズ、朝鮮ヲ併合スルニ付キマシテ、殆ド形式ノ上カラ見マシタナラバ、憲法
違反ノ事實ヲ生ジタト云フコトハ、桂内閣ガ我憲法政治ニ付テ忠實ナラザル例證デゴザ
リマシテ、憲法ヲ尊信セザル者ナリト斷定シテモ私ハ差支ナカラウト思フノデアル、政府ガ
誠意ヲ以チマシテ-至誠ヲ以テ、將來ニ斯ルコトガアルカラ、內外ノ情形ニ於テ帝
國議會ヲ召集スルコトガ出來ナカッタモノデアルト云フコトヲ例示シマシテ、帝國議會ノ
協賛權ヲ侵シタト云フノハ、斯ル事實ガアルカラ、決シテ憲法違反デナイト云フコトヲ
明カニシマシテ、以テ吾ミニ御答辯アランコトヲ望ムノデゴザイマス、若シモ其答辯ガ要領
ヲ得ナケレバ、是ヨリ政府ノ提出セントスルトコロノ事後承諾ヲ求ムル緊急勅令、或
財政上ノ案ニ付テハ、大ニ考慮ヲ要シナケレバナラヌコトニナルノデアル、又ソレノミナラズ、
政府ハ或ル場合ニ於テ、本件ニ付テ、憲法違反ノ責ヲ負フニ立到ルトモ計ラレルノデゴザ
リマス、故ニ政府ハ外交其他ニ於テ祕密ガアルデゴザリマスレバ、議院法ノ明文ニ據ッテ
祕密會議ヲ要求シマシテ、堂々正々詳細ナル理由ヲ以テ、本議會ヲ滿足セシムルトコロノ
答辯アランコトヲ本員ハ望ムノデゴザリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=11
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012・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 高木正年君ハヤハリ總理大臣ニ向ッテ、此通告ニ依リ說明
ヲ求メラレルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=12
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013・高木正年
○高木正平君 私ハ說明ヲ求メルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=13
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014・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 後トデ許シマス
(內閣總理大臣侯爵桂太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=14
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015・桂太郎
○內閣總理大臣(侯爵桂太郞君) 唯今松田君ヨリ御質問ノゴザイマシタコトニ付キ
マシテ、御答辯ヲ致サウト考ヘルノデゴザイマス、韓國併合ノコトハ唯今御質問中ニモ御
述ベニナッタ如ク兩國ノ條約ニ據シテ成立ッタノデゴザリマス、然ルニ此併合ノ際ニ於キマシ
テハ、事最モ急速ヲ要シテ處理決定ヲ致サニヤナラヌコトガ多カッタノデゴザリマス、之ガタメ
ニ緊急勅令ヲ仰キ、其結果ト致シマシテ、憲法七十條ニ據リマシテ、臨時ノ支出ヲ仰イ
ダノゴザイマス、此緊急勅令竝ニ其他ノモノニ付キマシテハ、議會ノ承諾ヲ求ムルタメニ、
政府ハ提出ヲ致シテ置キマシタカラシテ此ノ場合ニ置キマシテ、其事情等ニ付キマシテハ
ソレ〓〓御說明ヲ致ス考デゴザイマス、左樣御承知ヲ下サルヤウニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=15
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016・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 高木正年君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=16
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017・高木正年
○高木正年君 私ハ簡短デアリマスカラ當席カラ申シマス、總理大臣兼大藏大臣ノ御
演說ガアリマシタガ、財政ノ方針ニ付テハ、今日ノ御演說ハ最モ數囘ノ御演說中デ、漠然
ヲ極メタモノト私ハ信ズルノデアリマス、先ヅ第一ニ私ノ承リタイノハ、政府ハ公債募集
ノ方針ニ付テ、從來政府ノヤリ來ッタトコロニ依リマスルト、所謂低利借替ノ外ニハ、公債
ヲ募集セヌト云フコトヲ一定ノ主義トシテ居ラレルガ、今日ハ之ニ付テハ說明ヲ致サレヌ
ヤウデアッタ、併ナガラ、四圍ノ狀況ヨリ考ヘテ見マスルト、現ニ昨年ノ暮ニ政府ガ發表セ
ラレタトコロノ豫算綱領ニ就テ見テモ、依然トシテ公債非募集主義ヲ持續スルト云フコト
ガ第一頁ニ書イテアリマス、更ニ塚田局長ヲ馘リマシタ處分ニ付テモ、此主義ヲ表示セ
ラルヽガ如クデアリマスガ、政府ガ發表スル方針ノ上ニ於テモ左樣ニ見ラレマスルガ、其手
段ニ於テハ、或ハ大藏證券ト云フモノヲ濫發シ、或ハ事業費ノ借入ニ、或ハ南滿鐵道ノ
資金ヲ借入レテ、殆ド公債募集ト少シモ變ラヌヤウナ事ヲ從來ハ取ラレテ居ルノデアリマ
ス、殊ニ今日此議場ニ提出セラレタトコロノ朝鮮事業公債、帝國鐵道ノ改正法等ニ依ッ
テ讀ンデ見マスルト、鐵道ノ會計法ニハ斯樣ナコトガ書イテアル、第二條ノ二ニ「但書ノ
場合ニ於テハ政府ハ割引ノ證券若クハ無記名ノ短期證劵ノ借入ヲ爲スコトヲ得」ルト
云フコトガ入ッテ居ル、更ニ其理由ヲ讀ンデ見マシテモ、一層適切ニ、名ハ證劵デアッテモ
其事實ハ借入證券借入證券ハ卽チ公債デアルト云フコトヲ意味シテ居ル、鐵道起
業公債ノ如キハ、尙更一層其主義ヲ成シテ居リマス、朝鮮ノ特別會計ト云フ今日提出
セラレタノヲ讀ンデ見マシテモ、公債ヲ募集シテ事業ニ充テル時分ニハ、政府ガ先ヅ之ヲ
發行シテ、其金ヲ朝鮮事業公債ニ向ケルト云フコトニナッテ居ル政府ノ方針トシテハ非
募集公債デアルケレドモ、事實ニ於テハ全ク此方針ヲ撤囘セラレテ居ル、所謂打切ラレテ
居ル、此事ハ甚ダ事柄ハ明瞭ノ如クニシテ、政府ノ言フトコロハ頗ル明瞭ヲ缺イテ居ル、此
點ニ於テ、政府ハ明カニ公債非募集主義ニ於テハ從來ノ主義ヲ打切ラレタノデアルト
云フコトノ明言ガアレバ免モ角モ、サウデナクシテ、漠然トシテ財政ノ上ニ付テハ吾〓ヲシ
テ方向ヲ迷ハシムルノミナラズ、帝國公債ノ上ニ付テ、總テ暗雲ノ中ニ居ッテ仕事ヲスルガ
如キ有樣ニナッテハ甚ダ得策デナイト思フガタメニ、殊ニ此事ニ付テハ十分ナル御說明
ノアランコトヲ希望スルノデアル、更ニ第二ニ伺ヒタイノハ、政府ハ稅制整理ト云フコトハ
打切ラレタノデアルカト云フコトヲ御尋シタイ、昨年所得稅ノ改正法案ヲ撤囘スルニ當ッ
テ、イヅレ調査ノ上ニ於テハ次ノ議會ニ於テ之ヲ提出スベシト云フコトヲ、殆ド確言サレテ
居ルノデアリマス、然ルニ今日ノ議會ニ於テ、此事ノナイノハドウ云フコトデゴザイマス、政
府ハ稅制整理ト云フ名ノ上ニ付テ、營業稅ハ改正ヲセラレタガ、其事實ニ於テハ毫モ納
稅者ヲシテ此間ニ付テ營業ノ自由ヲ伸バスト云フ手段ヲ取ッテ居ラヌノデアリマス、或ル
モノニ付テハ殆ド增稅ヲ爲シタガ如キ有樣ニナッテゴザイマス、公債募集ニ付テハ如何、稅
制整理ニ付テハ如何、此二ツニ付テ先ツ政府ノ答ヲ承リタク私ハ思フノデゴザイマス
〔政府委員若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=17
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018・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 唯今高木君ノ御質問ニナリマシタコトハ、私カラ御答
辯ヲ申上ゲマス、公債ノコトニ付テハ、明治四十二年度ノ財政計畫ノトキニ、大藏大臣
カラ申シテアリマスコトヲ繰返シテ申上ゲルト云フト、一般ノ歲計-一般ノ會計ニ於テ
ハ公債ヲ財源トセズシテ、歲計ノ均衡ヲ保ツヤウニシテ、財政ノ基礎ヲ固クスル鐵道ノ會
計ニ付テハ、是ハ公債ヲ財源トシテ經營スルノガ當然デアル、併ナガラ之ト雖モ、今日ノ
公債ノ狀況ニ於テハ公債ヲ募集スルコトハ、市場ノ狀況ニ於テハ適當ナラヌト見ルガ故
ニ一兩年ノ間ハ公衆ニ向ッテ募集ハシナイ、此間ハ借入金其他ノ方法ニ依ッテ經營シテ
往クノデアル、又臺灣ノ如キ新領土殖民地ニ付テノ經營ハ是ハ一般會計ニ於テ公債
ハ募集セヌト云フケレドモ、是ハヤハリ公債ノ財源ニ依ッテ經營シテ往クノデアルト云フ、斯
ウ云フ政綱ハ宣言シテアルノデアリマス、其事ハ今日ニ至ッテ、少シモ變更ハナイ、先程大
藏大臣カラ述ベラレマシタ通リ、一般ノ歲計ニ於テハ公債ヲ財源トシテ、均衡ヲ保ッテ居
ルト云フコトデ、此處デ明言ヲセラレマシタ、ソレカラ鐵道ノコトニ付テエライ御疑ガアルヤ
ウデゴザイマス、イロ〓〓ナモノカラ借リテ居ル、滿鐵ノ社債ヲ募集シテ、鐵道ノ資金ニ
充テヽ居ルヤウナ御疑念ヲ御持チニナッテ居リマスガ、是ハ甚ダ事實ニ相違スルト云フヨ
リモ、全然ナイコトヲ御問ヒニナッタコトデアッテ、是ハ甚ダ迷惑ヲスル譯デアリマスガ、南滿
洲鐵道ハ此經營ニ付テ資金ヲ要スルノデアル、今日安奉線ノ鐵道ヲ架ケテ居リマス、是
モヤハリ資金ヲ要スルノデアル、其他港灣ノ設備ニ付テモ、其他ノコトニ付テモ、マダ大ニ
資金ヲ要スルコトデアッテ、之ニ要スル資金ヲ社債ニ求メテ、今日經營シテ居ル次第デ
アッテ此金ヲ鐵道ニ使用シテ居ルト云フ御言葉ハ、全然事實ニ當ッテ居ナイノデアリマス、
大藏證券ガ多イト云フ御言葉デアリマスガ、大藏證劵ハ是ハ每年豫算ノ御協賛ノ際ニ
於テ、歲入ノ足リナイトキ、一時大藏證券ニ依ッテ辨ズル額ニ依ッテ協賛ヲ受ケテ居ル、
其協贊ヲ受ケテ居ル範圍內ニ於テ、政府ハ大藏證劵ヲ募ッテ居ル次第デアリマス、
朝鮮ノ今度ノ特別會計ニ付テ、公債ノコトガアル、是ガ公債ヲ募集セヌト云ハレタニ對シ
テ、宣言ニ反スル、斯ウ云フ御非難ノヤウデアリマスガ、朝鮮ニ付テハ、丁度四十二年ニ
於テ臺灣ノ經營ニ付テ、大藏大臣ガ臺灣ノ如キ新領土ニ對シテハ公債、斯ウ云フヤウ
ナ場合ニ於テハ公債ヲ財源ニスルト言ハレタト同ジ事情ガ、朝鮮ニ付テモアルノデアリマス、
之ニ基イテ朝鮮ノ富源開發ナリイロ〓〓ノコトニ付テ、速ニ經營ヲ辨シテ往ク必要ガア
ル、ソレニ付テハ一部公債ノ財源ニ依ルト云フ政府ノ計畫ニナッテ居ルノデアリマス、公
債ニ付テハ政府ガ當初宣言シテアリマス通リニ行ッテ居ルト云フコトヲ玆デ申上ゲテ置キ
ママ、ソレカラ稅制整理ニ付テドウ考ヘテ居ルト云フ御質問ノヤウデアリマスガ、稅制整
理ニ付テハ、前年モ既ニ大藏大臣カラ申シテアル通リ、稅制整理ハ何處マデモヤルノデア
ル、故ニ提出シタノミデ尙足リナイナラバ、更ニ尙進ンデ財政ノ許ス限リ稅制ノ整理ヲス
ルノデアルト云フコトガ言ウテアリマスカラ、政府ニ於テハ稅制整理ト云フコトハ、決シテ
捨テヽ居ナイ、只大藏大臣ノ演說ニアリマス如ク、財政ノ基礎ヲ確實ニスルト云フノガ、
政府ノ大體ノ財政ノ方針デアル、故ニ之ヲ失ハヌト云フノガ總テノ經營ヲスルト云フ
根本ノ主義ニナルノデアリマス、先程モ御聞キニナッタ通リ、海軍ノ經晝モスル、或ハ其他
治水ノ經營ヲ定メル卽チ前年度ノ水害ノ後ノ善後策ヲ講ズル、斯ウ云フヤウナ場合ニ於
テ、而シテ一方ノ歲入ヲ減ズルト云フコトニナレバ、玆ニ財政ノ基機ヲ確實ニ進行シテ往
クト云フ目的ヲ達シマセヌカラ、ソレ故ニ來年度ノ財政計畫ニ就テハ、所得稅法ノ改正
案ヲ提出セヌト云フコトニナッテ居リマス、併シ政府ニ於テ稅制ノ整理ヲスルコトヲ廢メル
ト云フ意味ハ全然ナイノデアリマスカラ、此事ヲ申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=18
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019・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 早速整爾君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=19
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020・早速整爾
○早速整爾君 私モ大藏大臣ニ質問ヲ致シタイト思ッテ居リマス、其大體ハ唯今ノ高
木君ノ御尋ニナッタコトヽ略、能ク似テ居ルノデアリマス、唯今大藏次官カラノ御答ヲ承ツ
タノデアリマスガ、ヤハリ此大藏次官ノ辯明モ、財政ノ大方針ニ關シテハ、吾〓ハ十分ニ疑
ヲ解クコトハ出來ナイノデアリマス、確定ノ歲入ヲ以テ歲出ヲ支辨スルト云フコトガ、桂內
闇ノ組織セラレタ當時、財政整理ノ大方針トシテ誇顏ニ世ニ示サレタトコロデアリマス、
所謂確定歲入主義ト世間ニ唱ヘラレテ居ッタノハ是デアル、卽チ公債ヲ募集シナイイロ
イロ財源モアッタガ、確定ノ歲入ニアラザレバ、之ヲ豫算ノ上ニ計上スルニ當ッテモ、ソレ
ハ臨時ノモノト認ムルト云フ風ニ解釋セラレテ居ッタノデアリマス、私ハ所謂確定歲入主
義ト云フモノハ既ニ此四十四年度ノ豫算編成ノ際ニハ、政府自ラ之ヲ打毀ハサレタ
ノデハナイカト云フコトヲ御尋シタイノデアル、繼續事業ハ、イロノ〓御計畫ニナッテ居リ
マ×、幾多ノ繼續事業ハ御計畫ニナッテ居ル、唯今ノ大藏大臣ノ御演說ニアリマスヤウ
ニ、積極的ニイロ〓〓御計畫ニナッテ居リマスケレドモ、豫算ヲ調べ、大藏大臣ノ御演
說ヲ承ッテモ、之ニ應ズル繼續的ノ此歲入ト云フモノハ殆ド之ヲ認ムルコトハ出來ナイ
豫算全體カラ申シマシテモ、五億四千万ノ歲出ニ對シテ、公共的ノ歲入卽チ誰ガ見テ
モ、永久ニ確定ノ歲入ト認ムルモノハ、能ク積ッテ見マシテモ、五億一千九百万圓、
其不足モ卽チ二千四五百万圓ノ不足ヲ告グルコトニ相成ッテ居ル、是ハ政府ニ於キ
マシテハ、無論前年度ノ剩餘金ニ依ッテ、之ヲ支辨スルト御答ニナルダラウト思ヒマ
スガ、桂內閣ノ解釋ニ依リマスレバ、前年度ノ剩餘金ト云フモノハ詰リ確定ノ歲入ト認
ムルコトハ出來ナイト斯ウ云フ御解釋ニナッテ居ル、確定ノ歲入ト認ムルコトノ出來ナイ
前年度ノ剰餘金ニ依ッテ四十四年度ノ豫算ハ、編成セラレタリト雖モ、此繼續的ノ事
業ヲ支辨スルタメニ、將來ノ財政ノ計畫ハ如何ニ相成ルデアラウカ、明治四十四年度ノ
一年度ノ豫算ハ、イロ〓〓ノ遣繰リデ、イロ〓〓彌縫手段デ之ヲ計上セラレタト致シマ
シテモ、此ノ如キ確定ノ歲入ガ無イニモ拘ラズ、繼續事業ガ幾多計畫セラルヽコトニナリ
マスレバ、將來ノ財政計畫ニ付テハ、吾ミハ大ニ疑ヲ抱カナケレバナラナイノデアリマス、是
故ニ此〓ニ關シテハ、政府ハ兩三年前ヨリ財政事務ノ大方針トシテ、確定ノ歲入主義
ニ依ルト稱ヘラレタトコロノ此桂內閣ノ標榜セラレタルトコロノ方針ハ、四十四年度ノ豫
算編成ニ對シテハ、自ラ之ヲ打毀ハサレタノデハナイカ、卽チ確定歲入主義ト云フモノハ
桂內閣自ラ之ヲ打毀ハシテ、而シテ自ラ矛盾ト云フ境遇ニ陷ツタデハナイカト思フノデ
アリマス、唯今高木君ノ御質問ニ對シテハ、大藏次官カラ公債ノ問題ニ付テ答辯ガゴザ
イマシタ、私ハ此點ニ付テ、更ニ財政ハ矛盾ヲシテ居ラヌ、將來ノ財政計畫ニ於テ、決シ
テ此確定歲入主義ト云フモノヲ撤囘ハシナイト、斯ウ云フ御意見デゴザリマスレバ、ソレ
ニ就テ更ニ評細ナル說明ヲ煩ハシタイノデアリマス
〔政府委員若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=20
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021・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 四十四年度ノ歲計ノ上ニ於テ、前年度ノ剩餘金ガ二
千百餘万圓アルコトハ事實デアリマス、併ナガラ政府ガ此四十四年ノ財改計畫ヲ立テマス
トキニハ、獨リ四十·四年度ノ歲入歲出ノ狀況ノミヲ見テ立テタノデハアリマセヌノデ、今日
立テタ財政計畫ニ依ッテ進メバ、四十五年度以降尙四十六年度、七年度、八年度、九
年度、總テ本年度以降如何ニ歲入歲出ノ狀況ガ如何ニナルヤト云フコトマデモ見通
シテ、サウシテ是ダケノ計畫ニシテ置ケバ獨リ來年度ノ歳入ニ於テ均衡ヲ得ルノミナラズ、
將來ノ財政ニ於テモ、歲入歳出ハ確實ニ往クト云フコトノ見込ヲ附ケテ、此計畫ヲ立テ
タノデアリマス、其計畫ニ於テ唯獨リ四十四年度ノトコロデ、此前年度ノ剩餘金二千
百餘万圓ヲ繰入レヽバ、全體ニ於テ此財政計畫ガ歲入歲出共ニ、相當ルモノニナルト云
フ見込ヲ立テヽヤッタノデアリマスカラ、四十四年度ノ財政計畫ノ中ニ於テ、前年度繰入
金二千餘圓アルト云フコトヲ見テ、是デ後年度ニ至レバ、ワレダケノ歲入ノ不足ガ常ニ續
クモノデアルト云ラヤウナ、御斷定ヲナサレタト云フコトハ是ハ事實ニ反シテ居リマス、政府
ノ計畫ハ明年度ニ至ッテモ、尙歲入歲出相當ルヤウニナルヤウニ、此四十四年度ノ財
政計畫ヲ立テタノデアリマス
(高木正年君「前ノ答辯ニ付テ御聽キシタイ」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=21
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022・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 根本正君
〔根本正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=22
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023・根本正
○根本正君 諸君、本員ハ總理大臣ノ施政ノ大方針ニ付キマシテ、御說明ヲ求メタイ
コトガアリマス、此施政ノ方針ハ五箇條ニ依タテ、卽チ第一ニハ軍艦ヲ拵ヘルコト、又第
二ハ治水ノコト、第三ハ交通、第四ハ滿韓ニ善ク設備ヲシナケレバナラヌ、又第五ニハ殖
產興業ヲ發展センケレバナラヌト云フ、五箇條ノ大方針デアリマスガ、私ガ說明ヲ求メン
トスルトコロハ、此〓育ニ關スル方針ト云フモノハ、我內闇ニハドノ邊ニアルカト云フコトヲ
甚ダ疑フモノデアリマス、唯今御演說中ニ更ニ此國家ノ根本トナルベキトコロノ〓育ニ
關スル御方針ト云フモノヲ、私ハ伺フコトガ出來ナカッタノハ甚ダ遺憾トスルトコロデア
ル、故ニ定メテ此等ニ付テモ、ソレ〓〓抱負ガ御アリニナルダラウト思ヒマスカラシテ、此事
ハ特ニ伺ヒタイト思フノデアリマス、殊ニ私ガ此〓育ノ方針ニ付テ伺ヒタイコトハ、國民〓
育ノコトデアリマス、デ國家ノ〓育ノ改善ト云フコトハ、最モ今日ノ急務デアリマシテ、サウ
シテ此〓育ノ改善ヲシヤウト思フナレバ、良イ〓員ヲ得ンケレバナリマセヌ、此良イ〓員ヲ
得ントスルニハ卽チ之ニ相當ノ俸給ヲ與ヘンケレバナラヌ、無論此事ニ付キマシテハ漸
次是迄ソレ〓〓優待ニナッタヤウナコトモアリマスケレドモ、此小學校ノ〓員ニ對シテハ
我現內閣ハ更ニ注意スルコトガナイト云フコトヲ認ムルモノデアリマス、卽チ一般ノ官吏ノ
俸給ハ大ニ增加サレマシタ故ニ、多分文部大臣ニ於カレマシテモ、此度ノ豫算ニ-聞
ク處ニ依レバ三百万圓ノ豫算ヲ組ンデ出シタト云フコトヲ仄カニ承ッテ居ル然ルニ是ハ
今日更ニ此豫算ニ見エマセヌガ、卽チ之ヲ今日見ルコトノ出來ナイト云フモノハ卽チ此
總理大臣ノ施政ノ方針ニナイ故ニ抹殺サレタモノト私ハ思フコトデアリマス、故ニ今日ノ
施政ノ方針ニシテ、唯軍艦ヲ澤山拵ヘルコトデアルトカ、或ハ交通機關ヲ斯樣々々ニスル
コトデアルトカ云フヤウナコトバカリハ卽チ是等ハ枝葉デアル、實際ノコトハ卽チ今日我
帝國五千有餘万ノ人ガ知識ヲ有タナケレバナリマセヌ譯デアリマス、然ルニ此大切ナル
根本ヲ一言モ發スルコトガナイト云フコトハ、吾〓五千有餘万ノ遺憾トスルトコロデアリ
マド、然ルニ此增俸ニ於キマシテ、實ハ今日相悲シムトコロハデス、大學ニハ三十餘名ノ
一等官ガアリマス、是ハ卽チ決シテ外ノ國ニ見ルコトモ出來ズ、又我邦ニ於キマシテモ、
陸軍ニ於テモ、海軍ニ於テモ、一ノ省ニ於テ一ト所ニ三十餘名ノ一等官ヲ見ルコトハ唯
大學アルノミデアリマス、又是等ノ極ク低イ給料ノ者ニシマシテモ四等官以上デアッ
テ、今日增体ノ結果、此大學ニ在ルトコロノ人ハ三千圓以上二千圓位ノモノヲ取ッテ居
ル、是ハ宜シイトシテモ此小學校ニ在ルトコロノ者ハデス、一圓タリトモ此度增俸ヲスルコ
トガナイト云フコトニナッテ居リマス、又中學校〓員ノ如キモ、是モ最近ニ於テ段々〓〓
四割五分ノ增加ヲ見テ居ルヤウニナッテ居ル、今日ハ卽チ平均デ四十八圓位ノ月給デ
アル、又師範校ニ於テモ今日ハ四十五圓位デアル、唯最モ吾ミノ大切トスルトコロノ國
民〓育ノ〓員ニ向ッテ、幾ラ我帝國ガ支拂ッテ居ルカト云フナラバ、其〓員一人ニ付キ僅
ニ十七圓四十三錢四厘デアル、又高等科ヲ〓ヘルトコロノ〓員ニ於テモ僅ニ二十二圓
二十七錢五厘ニナッテ居リマス、此尋常科ノ十七圓ノ月給ト云フモノハデス、勞働者社
會ニ於キマシテモ立派ナ勞働者デアリマセヌ、又二十二圓ノ此高等科ヲ〓ヘル〓員ニ於
キマシテモ立派ナ職工デハアリマセヌ、此ノ如キ者ニ實ニ吾〓ノ愛スルトコロノ兒童ヲ預
ケテ-後來我日本帝國ヲシテ世界列强ト肩ヲ駢ベセシムル國民ヲシテ、此ノ如キモノ
ニ依託スルト云フノハ遺憾デアル、幾ラ良イ先生ヲ得ヤウトシテモ、今日ノ待遇デハ長ク
止マル者ハナイ、直ニ去ルヤウナ弊害ヲ來スヤウニナルコトヲ私ハ深ク憂ヘテ居ルノデアリ
マス、諸君、我日本帝國ニ於キマシテ國庫ハ幾ラ出シテ居ルカ、僅ニ百万圓デアル、是
ハ卽チ明治三十三年ニ諸君ノ御盡力ニ依ッテ決議サレマシタトコロノモノデ、此百万圓
デサヘモ各府縣ヘ分ケルコトデナクシテ國庫ヨリ法律ノ結果當然出スベキトコロノ年功加
俸ニ用井テ居ル、而シテ之ヲ受クルモノハ幾ラアルカト云フト、僅ニ百万人位デアル、サウ
シテ一人ニ付テ僅カ一圓九十八錢位シカ受クルコトガ出來ナイ、斯ウ云フコトニナッテ居
ル、實ニ我日本帝國ニ於キマシテハ、唯上ノ方ニバカリ多クヤッテ、下ノ方ニ低クヤルト
云フコトハ、誠ニ是ハ悲ムベキトコロノ現象ト思ヒマス、市町村費ノ年々ノ增加ト云フモ
ノハ實ニ驚クベキモノデアッテ、明治三十六年度ニ於テハ、九千七百五十六万圓餘デア
リマス、サウシテ四十二年度ニ於テハ、一億五千二百二十一万四千五百五十
圓ト云フコトニナッテ居リマス、其一億五千万圓以上ノ中、卽チ吾〓國民ノ負擔スルトコ
ロノ地方ノ稅ヲ國家ノタメニ出ストコロノモノハ、ドレダケデアルカト云フナラバ、五千八百
七十八万二千何百圓ト云フ、卽チ此地方稅ノ三分ノ一ト云フモノガ、小學校ノ方ヘ出
シテ居ル、國庫カラハ僅カ百万圓デアル、勿論例ノ〓育基金ノ利子ガ五十万圓アリマ
ス、ケレドモ、是ハ別物デアッテ、國カラ出シマスルモノハ僅ニ九牛ノ一毛デアルトームフコトデ
アリマス、ドウカ我內閣諸公ハデス、只枝葉或ハ花ノミ咲スコトヲ考ヘズ、如何ニモシテ此
〓育ヲ大切ニシナケレバナラヌト云フコトヲ示シテ戴キタイト思ヒマス、英吉利ニ於キマシ
テモ、佛蘭西ニ於キマシテモ、亦亞米利加ニ於キマシテモ此國民〓育ト云フモノハ、其國
ノ最モ大切ナルモノトシテ、卽チ英吉利ニ於キマシテハ、小學校ノタメニ幾ラ金ヲ費スカ
ト云フナラバ、一億六千七百八十七万圓以上費シテ居ル、其內デ、國庫カラ幾ラ出スカ
ト云フナラバ、僅カ百万圓デハナイ、一億千五百五十八万圓費シマス、卽チ其國庫カラ
出ストコロノモノハ幾ラデアルカト云フナラバ、六割以上ヲ出シテ居ル、此大事業ヲ扶ケ
テ居ルノデアル、又佛蘭西ニ於キマシテモ、小學校ノ費用ハ八千九百六十五万圓以
上テ、其內國庫カラ出スモノハ幾ラデアルカト云フト、六千三百二十万圓餘デアッテ、
是モ七割以上デ、英吉利ヨリ佛蘭西ハ一割多イト云フコトニナッテ居ル、獨逸モ其通リ
一億六千六百十餘万圓デアリマシテ、國カラ出ス金ハ幾ラデアルカト云フト、四千何百
万圓ト云フモノヲ出シテ居リマス、殊ニ亞米利加ノ如キハデス、小學校ノタメ六億八千
三十二万圓餘ヲ出シ、サウシテ國カラ出シ、或ハ州カラ出ストコロノモノハ、一億二千四
百万圓餘出シテ居リマス、而モ小學校ニ於テハ授業料ハ一錢モ徵シナイノデアリマス實
ニ此ノ如ク文明國ニ於テハ、此國民〓育ト云フコトヲ最モ大切トシテ居ルノデアリマス、
卽チ立憲政治ノ國ニ於テハ、一般ノ普通ノ智識ヲ增シ、一般ノ人民ノ利益ヲ與フルトコ
ロノ本トスルタメニハ、ドウシテモ小學校ヲ良クシナケレバナラヌト云フノデ、今御話シ申シ
タ通リ、或ハ七割、或ハ六割、或ハ半分以上ト云フモノヲ、國庫カラ出シテ、國民ヲ〓育
スルト云フモノハ、卽チ之ニ重キヲ置ク所以デアリマス、然ルニ我當局者ハ今日此大切ナ
ル問題ニ付キマシテ、諸君ニハ如何カ知リマセヌケレドモ、私ノ耳ニハ一言半句モ伺フコト
ガ出來ナカッタ、實ニ是ハ大ニ考ヘナケレバナラヌ、此ノ如キ風デアリマスカラ、白晝東京市
ニ强盜ガ入ッテ來ルヤウナコトモアリマス、諸君私ハ、是ハ大切ナ問題デアルト思ヒマス、直
グニ金ニナル問題デハナイケレドモ、五年十年ノ後、我日本帝國ヲシテ眞ニ列强ノ位置
ニ立タシムルニハ、是非共〓育ヨシシナケレバナラヌト私ハ思フ、亂臣賊子ノ起ルノハ何
デアルカト云フナラバ、實ニ此邊ヨリ考ヘナケレバナラヌト私ハ思フノデアリマス、ドウカ我國
ニ於キマシテ、此小學〓員ノ俸給ヲ殖スノミナラズ、此稅ヲ取立テル方法ヲ口地方稅ニ
スルノミナラズ、ドウシテモ國稅ヲ以テスルヤウニシナケレバナラヌ、何故ニ之ヲ國稅ニシナケ
レバナラヌカト云フナラバ、則チ金持カラ餘計取ッテ、貧シイ者カラ尠ク取ッテ、澤山ヤル
ト云フコトデアリマス、尙其他ニ之ヲ國稅ニスル理由ハ澤山アル、ケレドモ、唯今ハ最モ大
切デアル時間デアリマスカラ申上ゲマセヌ、ケレドモ東京市ノ如キハ明治三十三年ノ勅令
法律ヲ守ラズシテ、尋常科カラ二十錢宛取ッテ居ル文部大臣ハ何故ニ此ノ如キ法律ヲ
無視スルコトヲ許シテ居ルカ、大阪デモ其通リ、十一万圓ト云フ取ルベカラサルモノヲ尋
常科カラ取ッテ居ル、神奈川縣デモ其通リ九万圓取ッテ居ル、此ノ如キハ卽チ國家ノ將
來ニ如何ナル結果ヲ來スカト云フコトヲ大ニ考ヘナケレハナラヌ、ドウカ諸君此事ニ付テ
大ニ御勘考ニナッテ總理大臣モ顯クバ三百万圓ヲ此小學校〓員優待ノ補助トシ、追
加豫算トシテ出スヤウニ願ヒタイト思フ(御質問デスカ意見デスカ」ト呼フ者アリ)尙此
事ニ付テ如何ナル御意見デアルカ御說明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=23
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024・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 小川平吉君
(根本正君「議長、御說明ヲ願ヒマス」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=24
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025・小川平吉
○小川平吉君 私ハ關稅ノ問題ニ付テ、少シク質問ヲ致シマス、先刻總理大臣御演
說中ニ日英同盟ハ日ニ益鞏固ヲ加ヘルト云フ御演說ガアッタノデアリマスガ··
(「登壇スベシ」「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
〔小川平吉君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=25
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026・小川平吉
○小川平吉君 先刻總理大臣ノ御演說ニナリマシタトコロ、唯今ノ日英同盟云々ノコ
トニ付テ、少シク御辯明ヲ求メタイト思フノデアリマス、昨年議會ヲ通過致シマシタ關稅
定率法、此關稅定率法ガ如何ニ英國ノ朝野ニ反對ノ聲ヲ生ゼシメタカト云フコトハ、玆
ニ喋々ト述ベルマデモナイコトデアル現ニ本員ノ如キハ昨年彼國ニ在リマシテ、現ニ親シク
彼國朝野官民ノ盛ナル反對ヲ致シ、又猛烈ナル非難ヲ此關稅法ニ向ツテ加ヘツヽアル
コトヲ、現ニ見聞ヲ致シタ一人デゴザイマス、而シテ聞クトコロニ依リマスレバ、英國ニ於テハ
自由貿易制度ヲ執ッテ居ルガ故ニ、我國ノ關稅定率法ニ向ッテ、是ガ復讎ノ策ヲ講ズル
コトガ出來ナイトコロカラシテ、已ムヲ得ズ我國ニ於テ此關稅定率法ニ基イテ、英國ノ
輸入品ヲ取扱フナラバ、英國ニ於テハ決シテ通商條約ニ調印ヲシナイト云フ決心デア
ルト云フヤウナコトヲ私ハ承ッタノデゴザイマス、是ガ果シテ事實デアリヤ否ヤ、之ヲ第一ニ
私ハ御尋ヲ致シタイノデゴザイマス、申スマデモナク日英同盟ノ基礎ハ、卽チ兩國官民ノ
精神ノ一致ニ在ルト云フコトハ言フマデモナイコトデアルト思フ、紙ノ上ニ書キマシタト
コロノ協約ハ、唯紙ノ上ニ書イタニ過ギナイノデアル、若シ一度兩國ノ人心ガ相離レマシ
タナラバ、紙上ノ空交何ヲカ爲サンヤデ卽チ空文ニ歸シ終ルトー云フコトハ、是ハ論ヲ俟タ
ヌトコロノコトデアル、然ルニ一國ノ政府、人民、反對黨、盡ク舉シテ我國ノ關稅法ニ反對
ヲ致シ、其極トシテ遂ニハ通商航海條約ニ捺印ヲシナイトー云フコトニナリマシタナラバ、ソ
レデモドウモ條約ノ紙ノ上ニ書イテアルト云フコトデ、日英同盟ノ基礎ハ鞏固ナリト云
フコトガ出來ルデゴザイマセウカ、如何デゴザイマセウカ(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)ソレデモ
日英同盟ノ基礎ガ日ニ益、鞏固ヲ加ヘルト云フヤウナコトハ如何ナル無責任-厚顏
無智ナル人デアルト雖モ、言フコトガ私ハ出來ナイト思フガ、政府ニ於テハヤハリ此ノ如
キ英國ノ事情デアリ、此ノ如キ英國ノ決心デアッテモ、尙且日英同盟ノ基礎ハ日ニ益ニ
鞏固ヲ加ヘルト云フコトニ御考デアルカドウデアルカ、ソレヲ第二ニ伺ヒタイ、又近頃承
ルトコロニ依リマスト云フト、英國ノ上下ノ反抗ノ甚シキヲ見テ、我政府ニ於テハ是迄ノ
方針ヲ變更セラレテ、更ニ一種ノ交涉ヲ彼國ニ向ッテ試ミルト云フヤウナ說ヲ承ッタノデゴ
ザイマスガ、果シテ彼國ニ向ッテ稅率ニ付テ協定ヲスルコトノ御考デアルカドウデアルカ、若
ハ又既ニ協定ニ著手セラレタノデアルカドウデアルカ、此〓ニ付テモ承リタイノデアリマス、
私ハ昨年ノ議會ニ於ケル速記錄ヲ調査致シテ見マシタトコロガ、昨年ノ議會ニ於テ我小
村外務大臣ハ、明カニ斯樣ナコトヲ述ベラレテ居ルノデアル、卽チ「此度ノ稅率ハ片務協
定デハゴザイマセヌ、雙務的卽チ兩方共ニ稅率ヲ協定スルコトニナルノデゴザイマス、先ヅ
一箇國カ二箇國ト考ヘテ居リマス」斯樣ニ述ベラレタ、卽チ雙務的雙方共ニ稅率ヲ協
定スルノデアルト云フコトヲ述ベラレタ、更ニ進ンデ斯樣ニ述ベラレテ居ル「事實ニ於テ利
益ノ交換ノ實ガ舉ラヌ以上ハ、協定ヲ負サヌ積リデゴザイマス、左樣御承知ヲ願ヒ最後
ニ至リマシテ、斯樣ナ御答ニナッテ居ル「御承知ノ如ク自由貿易ノ國デゴザイマスマスルト、
協定ノ餘地ガナイノデ、卽チ英國或ハ白耳義ノ如キ、、自由貿易ノ政策ヲ執ッテ居リマス
カラ、協定ノ餘地ガナイト云フコトハモウ明カデアリマス、斯「ウ云フ御答ニナッテ居ルノデア
リマス、此御答辯ガ如何ニ歐羅巴ニ傳ヘラレ、如何ニ英國官民ニ受取ラレタカト云フコ
トハ私ハ更ニ此處ニ重ネテ述ベルコトハ致シマセヌガ、此ノ如ク議會ニ向ッテ言明シ、中
外ニ向ッテ發表セラレタトコロノ政府ノ方針ハ、卽チ稅率ノ協定ヲスルナラバ、雙務的デ
アル、彼ガ稅ヲ下ゲタナラバ我モ下ゲル決シテ彼レ稅ヲ下ゲザルニ、我レ獨リ下ゲルト云
フ片務的協定ハ致サヌノデアル、從ッテ英吉利國ノ如キ所ニ向ッテハ斷ジテ協定ハシナイ
ノデアル、何ントナレバ自由貿易ノ國デアルガ故ニ、彼ノ低減スベキ稅率ガナイ、故ニ我
亦決シテ之ヲ低減セズ、斯樣ナ政府ノ方針ヲ明ニ議會ニ向ッテ言明ヲセラレ、中外
ニ向ッテ發表セラレタ、而シテ吾〓議會ニ於テハ之ニ向ヲテ協賛ヲ與ヘテ、卽チ關稅定率
法ト云フモノガ成立ッタノデアル、然ルニ若シ道路傳フルトコロノ如ク、或ハ片務協定ノ名
ヲ藉リ、或ハ如何ナル名義形式ヲ以テスルト雖モ、今日彼ノ官民上下ノ反對ヲ招ギ、事
窮スルニ至ッテ此言明ニ反シ、中外ニ發表セラレタルトコロノ政府ノ方針ヲ變更シ、政策
ヲ變更シテ、サウシテ更ニ引繰リカヘッテ英吉利ニ向ッテ稅率ノ交渉ヲスルト云フヤウナコ
トニナッタナラバ、政府ノ政治上ノ責任、帝國議會ニ對スル中外ニ對スルコトロノ政治上
ノ責任ト云フモノハ、全ク「ゼロ」デアル、全ク無責任デアルト云フコトニ歸著セネバナラヌト
思フガ、果シテ此ノ如キ交渉ヲ是マデ既ニ爲サレタノデアルカ、著手ヲセラレタノデアルカ、
或ハ又今後ト雖モ、是マデノ方針ニ依ッテ遂行スルコトノ出來ナイ結果トシテ、協定卽
チ稅率ヲ變更スルトコロノ關稅定率法、規定ノ租稅ヲ減ラスヤウナ交渉ヲ英國ニ向ッテス
ルト云フ御考デアルカ、政府御自身ガスルト云フ御考デアルカドウカ承リタイ、之ヲ變更シ
ヤウトスルナラバ、何人ガ考ヘマシテモ、今日又昨年議會ニ於テ明言シタトコロノ方針ヲ、
捨テルコトニナリマシタナラバ、當局者自ラ責ヲ引イテ辭職ヲシテ、更ニ他ノ內閣ガ出來
マシタナラバ、是レ卽チ更ニ變ッタトコロノ方針ニ基イテ、關稅定率法ノ改正若ハ關稅定
率法規定ノ稅率ヲ變更シ、低減スルトコロノ交渉ヲスルコトガ出來ルデゴザイマセウガ、今
日ノ政府トシテ是ガ議會ニ於テ、明言シタ方針ヲ變ヘテ、而シテ條約ヲ以テ關稅定率法
ニ定メタ稅率ヲ低減スルコトハ、私ハ決シテ出來ナイコトデアルト考ヘルノデアルガ、道路
傳フルトコロニ依レバ、此ノ如キ風說ガアルノデゴザイマスガ、此〓ニ向ッテモ政府ノ是マデ
ノ事實、今後ノ御考ト云フモノヲ承リタイノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=26
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027・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 小村外務大臣
〔外務大臣伯爵小村壽太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=27
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028・小村壽太郎
○外務大臣(伯爵小村壽太郞君) 唯今小川君ノ御質問ニ御答致シマス、條約改
正ニ關スル方針ニ關シマシテハ、昨年本院ニ於テ大體ノ方針ヲ開陳致シテ置キマシタ、
爾來政府ニ於キマシテハ、此方針ニ準據致シマシテ、諸般ノ準備ヲ整ヘテ、御承知ノ
如ク昨年七八月頃ヲ以テ、現行條約廢棄ノ通告ヲ關係諸國ニ與ヘマシテ、續イテ
是等ノ諸國ニ向シテ新條約案ヲ提出致シマシタ、此新條約案ニ於キマシテハ、政府ハ
條約改正ニ關スル方針ニ付テ、併セテ維新以來ノ皇謨ニ基キマシテ、全然我ガ稅權ヲ
恢復シ、且ツ從來ノ條約中ニ存在シテ居リマスル不對等ノ條項ハ一切之ヲ除去スル趣
意ヲ以テ、此新條約案ヲ調製致シマシテ、關係國ニ出シテアリマス、此條約改正ニ關
スル方針ハ昨年開陳致シタ通リデゴザイマシテ、今日寸毫モ之ヲ變更シタコトハゴザリマ
セヌ、此後モヤハリ此方針ニ依ッテ進行致ス積リデゴザイマスル、又小川君ノ御心配ニ
ナッテ居リマスル、英國トノ新條約、或ハ關稅問題ニ付キマシテハ、既ニ日英兩國ノ意
志相疏通致シマシテ、改正談判ハ目下順當ニ進行シテ居リマスカラ、關稅問題ノタメ
ニ日英間ノ政治上ノ關係ニ影響ヲ及ホスト云フコトハ萬々無イト云フコトヲ確言致シマ
スル、而シテ其交涉ノ內容ニ付キマシテハ目下談判中デゴザイマスルカラ、適當ノ時
機ニ達スルマデハ發表致スコトヲ差控ヘル責任ヲ有シテ居リマスルカラ、左樣御承知ヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=28
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029・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 鈴木力君
〔鈴木力君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=29
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030・鈴木力
○鈴木力君 先刻總理大臣ノ御演說ニ付キマシテ、如何ニモ了解シ難イトコロガアリマ
ス、折角ノ御大儀ナ長キ御朗讀ニ對シテ、分ラズニ受取ルコトハ失禮ト存ジマスカラ一層
明瞭ニ說明ヲ願ヒタイ、其爲メニ登壇致シマシタ、日英同盟ノ根柢ノ薄弱ト云フ〓ニ付
テモ御質問シタイノデゴザイマスガ、餘リ複雜ノ嫌ヒガアリマスカラ、私ハ直ニ韓國合併ニ對
シテ何故ニ政府ハ功ヲ急ニシ、合併ノコトニアセッテ、國民ニモ諮ラズ財政上ノ緩急ヲモ問
ハズシテ、斷行シタ理由如何ト云フコトヲ間ヒタイ、是ハ先刻ノ憲法違反ノ問題トハ論〓
ガ違ヒマス、、質問ノ〓ガ違ヒマス、ソレハ大藏大臣トシテノ桂氏ガ明白ニ述ベラレタル如
ク政府今日ノ政綱ノ隨一ハ財政整理ニアル、財政ノ基礎ヲ鞏固ニスルト云フコトガ、
戰後經營ノ至緊至急至重至大ノコトトシテ、政府ガ畫策シテ居ルト云フ意味デ、吾ミモ
之ヲ承認シテ居リマスルトコロ韓國合併名ハ美ナリト雖モ、其實ハ吾〓國民ニ對シテ重大
ナル負擔ヲ餘儀ナクセシメ、直ニ財政ニ影響スルコトハ旣ニ合併〓倉五千六百万圓
ノ事業公債ヲ起サニヤナラヌト云フ案ヲ政府自身ガ出シテ居ルノミナラズ、此韓國ノ經
費ニ對シテハ、約二千五百万圓バカリノモノヲ要スル、アチラノ歲入不足ヲ是等ハ
政府ガ主トシテ、汲々今日マデ財政ノ基礎ヲ鞏固ニスルト云フ〓ニ對シテ、矛盾トハ
言ハザレドモ、未ダ財政ノ基礎十分ナラザルニ、之ヲ斷行スルニ付テハ斷行スルニ足ル
ダケノ緊急ナル餘程重大ナル理由ガアッタノデゴザイマセウカ、恐ラクハ武臣專權、新式
武門政治ガ、幸ノ神ノ顏ヲシテ災ノ「ビリツケン」ヲ行ヒ(笑聲起ル)己レガ功ヲ急ニシ、
名ヲ貪ランガタメ、或ハ寵ヲ君前ニ爭フノ私心アッテ、己レノ功名手柄ノタメニ、其樣ナ
彼自ラガ標榜スルトコロノ財政整理ト云フ根柢ヲ動カシテモ、尙且之ヲ斷行スルニ急ナ
リシニハアラザリシヤト疑フノハ本員ノミナラズ、隨分人民中ニ多イニ依ッテ(拍手起ル)
此〓ヲ明瞭ニ具體的ニ、唯必要アッテ致シマシタデハ一向ニ分リマセヌカラ、御當人ガ
分ッテ居ル以上ニハ、吾〓ニモ分ルヤウニ御說明ヲ願ヒタイ、第二ニ桂總理大臣ノ演說
ハ終始天下泰平、開闢以來ノ樂天主義デアルケレドモ、併シ之モ漠然タル御話デナク
モット親切ナル具體的ナル御話ヲ願ヒタイ、論ヨリ證據、我日本帝國建國以來ノ一大
凶事我民族精神ノ根本ヲ傷ケ、國家存立ノ基礎ヲ危ウセントシタトコロノ(拍手起ル)
一大凶事ガ起ッタルコトニ付テ、桂總理大臣閣下及各宰相ハ之ヲ何トカ見テ居ラレル
三七、何等言及スルトコロナクシテ、例ノ天下泰平病、詐リノ泰平、人造泰平(笑聲
起ル)ツレ等ノタメニ言及セザルニハアラザリシヤト本員ハ疑フノデアリマス、故ニ此ノ如キ
重大事件、上ニ對シテモ恐レ多イ、下ニ對シテモ隨分ト恐縮スベキトコロノ此重大事件
ニ對シ、各宰相ハ何ト心得テ居ラルヽニヤ、其意志ヲ聽キタイ、言及セザリシ理由ヲ聽
キタイ、餘リ長クナリマスカラ右二〓ダケニ付テ明瞭ナル御話ヲ願ヲテ退キマス
〔拍手起ル「答辯々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=30
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031・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 佐々木安五郞君ハ先刻カラ度〓發言ヲ求メラレマスガ、モウ
通〓モ濟ミマシタ何カ說明ノ請求デモナサルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=31
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032・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君 私ハ極ク簡單デゴザイマスカラ、此處カラ申シマス、謹ンデ總理大
臣ノ施政ノ方針ヲ拜聽致シマシタ、向フニ見エル政府委員ハ濟々タル多士デアル、斯ノ如
キ政府ノ知識、政府ノ俊髦ラ集メテ御出デニナッタ以上ハ、定メテ吾〓國民ノ代表者ノ滿
足スルダケノ方針ガ示サレルモノデアルト云フコトヲ期待シテ居リマシタニ、豈料ランヤ施政
方針ナルモノハ例ニ依ッテ例ノ如ク每年御極リノ文句ヲ活版刷ニ刷ッタヤウナモノヲ承
)ルノハ實ニ想ヒノ外デアッタト云フコトヲ實ニ殘念ニ思ヒマス、其證據ハ國交ハ益〓親善ヲ
加ヘト云フコトヲ仰ラレマスガ、其國交ハ益〓親善ヲ加ヘト云フ漠然タル、多ク語ッテ何事
ヲモ言ハヌト云フノハ、外交ノ方面ニハ必要ナル言葉デアルカモ知レマセヌケレドモ、一 図
ノ總理大臣ガ議會ニ於テ國民ノ代表者ニ向ッテ說明スル場合ニ於テハ多ク語ッテ何事
ヲモ言ハズト云フヤウナ、外交ニ向ケル言葉ヲ、內交ノ方面ニ向ケテハ是ハ方角違ヒデア
ルト私ハ信ズルノデアル、ソレニ所謂國交ノ親善ヲ加ヘルト云フノハ其國々國々ノ當路
者ガ卽チ外交官同士ガ、御世辭ノ交換ヲシテ居レバ、ソレガ國交ノ親善ヲ加ヘタト思ウ
テ居タカドウデアルカ、其國ノ國民ヲ度外視シテ、唯政府同志デ御世辭ノ交換ヲスレバ
ソレガ親善デアルト謂フベキモノデアルカドウデアルカ、干戈ヲ執ッテ兵馬ノ間ニ相見エザル
限リハ是ガ卽チ親善デアルト謂フベキデアルヤ否ヤ、若シモ眼ヲ開イテ宇內ノ大勢ヲ見タ
ナラバ亞米利加ニ於ケル排日熱ハ如何、濠洲ニ於ケル排日熱ハ如何、非律賓ニ於ケル
排日熱ハ如何、此ノ如ク世界ノアラユル方面ニ向ツテ、日本ヲ排斥シヤウト云フ熱ガ烈
烈トシテ加ッテ居ル、是ニモ拘ラズ外交ヲ親善ナリト云フノハドウ云フ親善デアルカ、親善
ト謂フモノ排日ヲサレテモソレデモ親善ト云フ意味デアルカ、此親善ハ果シテソレガ國際ノ
親善ト云フコトデアレバー親善ガ此ノ如キ意味デアルト云フコトナラバ、吾〓ハ國交ノ
親善ト云フコトハ、左程有難ク信用スルコトガ出來ナイト思フ若モ國交ノ親善ト云ンコ
トガ、政府ノ眼中ニ排日ト云フコトガアッテモ親善デアル、サウ云フコトヲ言ハレルナラバ、更
ニ言葉ヲ改メテ問返シタイト思ヒマスガ、先ヅ第一ニ政府ノ親善ト云フモノハドノ程度ヲ
以テ親善ト謂ハレルカ、斯ウ云フコトヲ一ツ承リタイ、第二ニ此各方面ニ排日熱ガ起ッテ
之ニ對シテ如何ナル手段ヲ以テ此排日ヲ排除スル御心持デアルカ、全ク排日ガ幾ラ起ッ
テモ、年々七十五万人ヅヽ人口ガ增殖スル日本が、其出先ヲ塞ガレテモ知ラザル顏ヲシテ
濟シテ居ルノハ、當局者ノ當然爲スベキ處置デアルカドウデアルカ、ソレデ是ダケ年々餘ッテ
行ク人間ヲ何レノ方面ニ向ッテ排出シテ行クト云フ御考デアルカ、或ハ曰ク、滿韓集中デ
アル、滿韓集中ト云フコトヲ言ハレルナラバ、其滿洲ハドウデアルカ、唯今到ル處ニ排日熱
ガ起ッテ、警察官ハ之ガタメニ傷ケラレ、兵隊ハ兵隊ト爭フノミナラズ、何等ノ害意モ持タ
ヌデ、唯旅行スル中西正樹ト云フヤウナ、一個正直ナルオ老爺サンニマデ向ッテ、排日ノ
刃ヲ加ヘタト云フ有樣デハナイカ、斯ノ如キ烈々タル排日熱ノアル所ニ向ッテ、陛下ノ
赤子ヲ送ルト云フコトハドウ云フモノデアルカ、數ノ上カラ考ヘテモ、山東省ニハ國民ガ十
五方人年々行ッテモ、ソレガ滿洲ニ移住ガ出來ヌト云フヤウナ有樣デアルノニ、其滿洲ニ
向ッテ果シテ移民ガ出來ルカドウカ、移民ガ出來ナイト云フコトハ分ッテ居ルノミナラズ、滿
韓集中ト謂フテモ滿洲ト云フモノガ如何ニモ自己ノ占領地ノ如ク言過ギタタメニ、支
那ノ方デハ却テ排日熱ヲ激增シタト云フコトガアル、サウ來ラレテハタマラヌト云フトコロカ
ラ、益〓日本ヲ排斥シテ、日本人ノ出口ヲ塞グト云フ有樣デアルデハナイカ、之ニ對シテハ
政府自ラガ責任ヲ負ハナケレバナラヌト思ヒマスガ、如何ナル手段ヲ以テ此排日熱ヲ止メ
テ、サウシテ是ダケ七十五万人ヅヽ餘ッテ行ク人間ヲ何レノ方面ニ向ケテ行ク積リデアル
カ、此邊ヲ明カニ尋常一樣ノ月竝口調デナク、明カニ答辯アランコトヲ希望致シマ
ス答辨ヲ願ヒマス、答フル能ハザルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=32
-
033・石橋爲之助
○石橋爲之助君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=33
-
034・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 石橋君ハ說明ヲ求メラレルノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=34
-
035・石橋爲之助
○石橋爲之助君 サウデス、先刻外務大臣ノ御答辯ニ付テ一二伺ッテ置キタイコトガ
アリマス、昨年御通告ニナリマシタ十三箇國ノ條約改正ニ付イテハ、如何ナル程度マデ
交涉ガ進ンデ居リマスカト云フコトヲ伺ヒタイ果シテ今年七月十八日マデニ首尾好ク完
結シ得ラルヽヤ否ヤト云フ御見込ヲ伺ヒタイ、萬一十三箇國ノ條約改正ガ、七月十八
日滿期ニ至ッテ締結セラレナイ場合ニ、如何ニ處理セラルヽカト云フコトトヲ承リタイ、或
ハ暫定協約ヲ以テ一時ノ急ニ備ヘル御考デアルカ知レマセヌガ、其暫定協約ハヤハリ協
定稅率ヲ許スト云フ趣旨ノ暫定協約デアリマスカ、其暫定協約ノ中ニハ全然サウ云フ
モノヲ入レナイト云フ趣[曰デアリマスカ、其邊ヲ確メテ置キタイノ一アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=35
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036・澤來太郎
○澤來太郞君 唯今佐々木安五郎君ヨリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=36
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037・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ドナタデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=37
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038・澤來太郎
○澤來太郞君 澤來太郎デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=38
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039・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ヤハリ說明ヲ求ムルノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=39
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040・澤來太郎
○澤來太郞君 サウデス-佐々木君ガ質問致シタル事柄ニ對シテ、何等ノ明答モア
リマセヌガ、明答ヲナサルノデアルカ、御答ナサラヌノデアルカヲ質問致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=40
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041・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君 議長議長ハ聽エザルカ、答辯ヲ求メマスー總理大臣ニ答
辯ガ出來ナケレバ當局ノ大臣、卽チ外務大臣ガ來テ居ラレマスカラ、外務大臣ヨリ答
辯サレルコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=41
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042・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 佐々木君ノ聲ハ能ク聽エテ居リマスカラ、政府ノ各大臣モ
承知シテ居ルト思ヒマス、然ルニ議長ニ向ッテ發言フ求メラレマセヌカラ、議長ハ答辯ナキ
モノト認メマス-モウ質問モ餘程盡キタヤウニ思ハレマスカラ、是ヨリ日程第一及第
三ヲ議題ニ供シマス、日程第一及第三ハ關聯シテ居リマスカラ、一括シテ議題ト爲ス
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=42
-
043・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、明治四十一年法律第十
一號中改正法律案外一件ヲ議題ニ致シマス、-第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ハ
省略致シマス
第明治四十一年法律第十一號中改正法律案(政第一讀會
府提出)
第三作業會計法中改正法律案(政府提出)第一讀會
明治四十一年法律第十一號中改正法律案
明治四十一年法律第十一號中「四十三年度」ヲ「四十五年度」ニ改ム
作業會計法中改正法律案
作業會計法中左ノ通改正ス
作業會計法第二條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
印刷局据置運轉資本ハ四十七萬圓トス
附則
本法ニ依ル資本增加ニ要スル資金ハ明治四十四年度ニ於テ一般會計ヨリ之
ヲ繰入ス
〔大藏次官若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=43
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044・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 明治四十一年法律第十一號中改正法律案ハ
造幣局ノ擴張工事ニ付キマシテ、四十一年度カラ四十三年度マデニ繼續事業ヲ完成
スル積リデアリマシタモノヲバ、明治四十二年度ノ豫算ノトキニ年度割ヲ變更致シマシ
テ、明治四十五年マデ延バスコトニ相成ッテ居リマス、卽チ豫算ハ旣ニ變更ニ相成タテ
居ルノデアリマス、而シテ法律ノ改正ハ未ダシテアリマセヌタメニ丁度此明治四十四年
ニ入リマスルニ當ッテ、爰ニ法律ノ改正ヲ要スル次第デアリマス、ソレカラ作業會計法中
改正法律案ハ是ハ唯今印刷局ノ据置運轉資本ガ三十七万圓デアリマスニ對シテ、十
万圓ノ金額ヲ增加スルノデアリマス、是ハ印刷局ノ事業ガ段々大キクナリマシテ、到底
三十七万圓デハ足リマセヌ、故ニ此增加ヲ要スル次第デアリマス、此二法律ハ共ニ豫
算ニ關係ヲ致シテ居ル法律デアリマス故ニ、願クハ審議ノ上協贊アランコトヲ希望致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=44
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045・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第二第四ヲ一括シテ議題ニ供シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=45
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046・菅原傳
○菅原傳君 別ニ御質問ハナイヤウデアリマスカラ、此二案ヲ一括シテ議長指名九名
ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ希望致シマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=46
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047・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 菅原傳君ノ動議、卽チ此二案ハ一括シテ議長指名九名
ノ委員ニ付託スルニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=47
-
048・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、其通リ決シマス、······日程第
五、帝國鐵道會計法中改正法律案ノ一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第五帝國鐵道會計法中改正法律案(政府提出)第一讀會
帝國鐵道會計法中改正法律案
帝國鐵道會計法中左ノ通改正ス
第二條ノ二前條第一項但書ノ場合ニ於テ政府ハ利札付又ハ割引ノ方法ニ
依リ無記名短期ノ證券ヲ發行スルコトヲ得
第七條中「負債ニ對スル利子」ノ下ニ「、割引料」ヲ加ヘ第二項ヲ左ノ如ク改
ム
鐵道及軌道ニ關スル監督上ノ諸費用竝輕便鐵道補助金ハ本會計ノ負擔ト
シ收益勘定ノ歲出トシ輕便鐵道補助償還金ハ其ノ歲入トス
第十一條ノ二輕便鐵道補助金ノ每年度豫算殘額ハ順次之ヲ翌年度ニ繰越
使用スルコトヲ得
前項ノ繰越額ニ相當スル資金ハ收益勘定ニ於テ之ヲ翌年度ニ繰越スヘシ
第十一條ノ三第二條ノ二ノ證券ニ關シテハ本法中公債ニ關スル規定竝大
藏省證劵條例第四條第二項及第五條以下ノ規定ヲ準用ス
第十二條ニ左ノ一項ヲ加フ
融通證券ニ關シテハ大藏省證券條例ヲ準用ス
附則
本法ハ明治四十四年度ヨリ之ヲ施行ス
〔大藏次官若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=48
-
049・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 鐵道特別會計法改正ハ、是迄鐵道ノ資金ヲ得マス
方法トシテハ公債ニ依リマスカ、或ハ借入金ニ依ルト云フコトニナッテ居ッタノデアリマス、
然ルニ市場ノ狀況如何ニ依リマシテハ長ク固定スル公債ノ方法ニ依ルコトヲ得策トセ
ズ又或ル特定ノ人ト約束ヲシテ借入ヲスル、是モ亦ソレノミニ依ルノハ宜シクナイト云フ
ヤウナコトガナイトモ限リマセヌ、斯樣ナトキニ於テハ、短期ノ債劵ヲ出シ、或ハ割引ノ方法
ヲ以テ債券ヲ發行スルト云フヤウニシテ、而シテ丁度市場ノ狀況如何ニ應ジテ、鐵道ノ
資金ヲ自由ニ調達スルコトノ出來ルヤウニスルノガ、此特別會計ノ運用ノ上ニ於テ、最
モ適切デアルト思ヒマス、故ニ此一點ヲ改正シヤウト云フノデアリマス、尙一ツハ此度政
府ハ帝國鐵道會計ニ於テ、輕便鐵道ノ補助ヲ致シテ其速成ヲ奬勵シヤウト云フコトニ
ナッテ居リマスガ、此會計ニハ資本勘定、收益勘定、積立金勘定等ノ種々ナル勘定ガ
アリマスガ、其何レノ勘定ニ於テ此補助金ノ歲出ヲ致スカト云フコトヲ極メル必要ガアリ
マリ、之ヲ收益勘定ニ於テ、此鐵道ノ補助ヲスルコトニ致ス關係カラ、此一〓モ亦改正
ノ〓ニナルノデアリマス、此二ツノ點ガ鐵道特別會計法ノ改正ノ要〓デアリマス、ドウ
ゾ御協賛相成ランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=49
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050・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ御質疑モナイト認メマスカラ、日程第六、右議案ノ審
査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=50
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051・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ輕便鐵道補助案ト關聯シテ居ル重要ナ案ト思ヒマスルカラ、二
十七名ノ議長指名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ希望致シマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=51
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052・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ議長指名ノ特別委員二十七名ニ付託スルト云
フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=52
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053・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、其通リ決シマスー日程第七、
帝國大學特別會計法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第七帝國大學特別會計法中改正法律案(政府提出)第一讀會
帝國大學特別會計法改正法律案
帝國大學特別會計法中左ノ通改正ス
第一條中「東京帝國大學及京都帝國大學」ヲ「東京帝國大學、京都帝國大學、
東北帝國大學及九州帝國大學」ニ改ム
第二條前條ノ政府支出金ハ東京帝國大學ニ在リテハ每年度金百三十五萬
八千八百三十八圓京都帝國大學ニ在リテハ每年度金八十四萬圓トシ東
北帝國大學及九州帝國大學ニ在リテハ每年度豫算ノ定ムル所ニ依リ一般
會計ヨリ之ヲ繰入ル一>
第十二條第六條ノ規定ハ東北帝國大學及九州帝國大學ニ關シテハ之ヲ適
用セス
附則
本法ハ明治四十四年度ヨリ之ヲ施行ス
本法施行ノ際學校及圖書館資金ニシテ東北帝國大學農科大學及東北帝國大
學理科大學ノ用ニ供スルモノハ東北帝國大學ノ資金ニ京都帝國大學資金
ニシテ福岡醫科大學ノ用ニ供スルモノ竝學校及圖書館資金ニシテ九州帝國
大學工科大學ノ用ニ供スルモノハ九州帝國大學ノ資金ニ編入スヘシ
明治四十三年度京都帝國大學特別會計歲入歳出豫算中翌年度ニ繰越ヲ要ス
ルモノニシテ福岡醫科大學ニ關スルモノハ九州帝國大學特別會計ニ繰越ス
> >
東北帝國大學及九州帝國大學工科大學ノ創立費ハ第一條ノ規定ニ拘ラス一
般會計ノ所屬トス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=53
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054・小松原英太郎
○文部大臣(小松原英太郞君) 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=54
-
055・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 文部大臣··
〔文部大臣小松原英太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=55
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056・小松原英太郎
○文部大臣(小松原英太郞君) 本案提出ノ理由ヲ說明ヲ致シマス、帝國大學特別
會計法ナルモノハ御承知ノ通リ、從來東京帝國大學及京都帝國大學ノミニ限ッテ、
適用サレテ居ッタノデアリマス、而シテ東北ニ於キマシテ-東北ニ於ケル農科、理科大
學竝ニ九州ニ於ケル工科ノ如キハ、一時創設ノ際デゴザイマスルノデ、一般學校圖書
館ノ特別會計法ニ依リマシテ、經理致シテ居ッタノデアリマス、然ルニ來年度ヨリ東北
ニ於キマシテハ理科大學ヲ開始致スコトノ運ビニナリマスシ、九州ニ於キマシテハ、工科
大學ヲ開始スル運ビニナリマシタノデ、東北帝國大學ニ於キマシテハ、農科竝ニ理科、九
州帝國大學ニ於キマシテハ、來年度ヨリ京都帝國大學カラ分離致シマストコロノ醫科
ト工科ヲ併セマシテ、何レモ二分科ヲ包含致ストコロノ帝國大學ト致シマシテ、其事業
ヲ進行スルコトノ出來ル運ビニナリマシタノデゴザイマス、ソレ故ニ此兩帝國大學ニ對シマ
シテモ、帝國大學特別會計法ヲ適用スルコトヲ、至當ト考ヘマシテ、本案ヲ提出致シマ
シタ次第デゴザイマス、宜シク御審議ヲ下サイマシテ、速ニ協贊ヲ與ヘラレンコトヲ切望
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=56
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057・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ御質疑ハナイト認メマスカラ、日程第八、右議案ノ審
査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=57
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058・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ議長指名ノ九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=58
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059・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託スルコトニ御異議
ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=59
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060・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、其通リ決シマス-日程第九、
沖繩縣農工銀行補助ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ハ省略致シマ
ス-若槻大藏次官
第九沖繩縣農工銀行補助ニ關スル法律案(政府提出)第一讀會
沖繩縣農工銀行補助ニ關スル法律案
第一條政府ハ沖繩縣ニ對シ明治四十四年度ニ於テ十萬圓ヲ限度トシ沖繩
縣農工銀行株式引受資金ヲ交付スルコトヲ得
前項ノ交付金ヲ以テ沖繩縣カ農工銀行ノ株式ヲ引受ケタルトキハ農工銀
行補助法ニ依ル補助金ハ之ヲ交付セス
第二條前條ノ交付金ニ關シテハ農工銀行補助法第三條以下ノ規定ヲ準用
ス
〔政府委員若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=60
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061・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 農工銀行ニ付キマシテハ、御承知ノ如ク政府ガ株ヲ
引受ケマシテ、サウシテ、一定ノ年間ハ利益ノ配當ヲ受ケズ、而シテ終ニ其株ハ府縣ノ
財產ニスルト云フヤウナコトニナッテ居リマスガ、一般ノ府縣ニ付テハ-沖繩縣ハ當時
未ダ府縣制ノ施行ヲシテ居ナイ土地デアリマシタ故ニ、斯樣ナ規程ヲ適用スルコトガ出
來マセメ故ニ現行ノ農工銀行補助法ニ於テハ沖繩縣ノ農工銀行ニ限ッテハ年々五
千圓ダケ補助ヲスルト云フ規程ヲ設ケテ居ルノミデアリマシテ、株式ノ引受ト云フコトハ
致シテ居リマセヌ、然ルニ沖繩縣モ一昨年カラ府縣制ヲ施行スルト云フコトニナリマシタ
故ニ、今日ハ內地ノ他ノ府縣ト同樣ニナッタノデアリマス、然ル以上ハヤハリ他府縣同
樣ニ沖繩縣ノ農工銀行ニ對シテモ其株ノ幾分ヲ引受ケマシテ、而シテ終ニ之ヲ沖繩縣
ノ財產ニナスト云フヤウニスルコトガ、他ト權衡上至當デアルト認メマシテ、此法律案ヲ
提出シタ次第デアリマス、ドウゾ御協賛ニ相成ランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=61
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062・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ御質疑ガナイヤウニ認メマスカラ、日程第十、右議案ノ
審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
第十右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=62
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063・菅原傳
○菅原傳君 議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=63
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064・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 議長指名ノ特別委員九名ニ付託スルト云フコトニ御異議
ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=64
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065・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、其通リ決シマス-日程第
十一第十三、第十五、第十七及第十九ハ朝鮮ニ關スル議案ナルニ依リ、一括シテ
議題トナスニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=65
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066・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、朝鮮ニ於ケル貨幣整理ノ爲メ
生シタル債務ヲ貨幣整理資金特別會計ニ移屬セシムル件ニ關スル法律案外四件及
各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉ヲ一括シテ議題トナシ其第一讀會ヲ開キ、議案ノ
朗讀ハ省略致シマス-若槻大藏次官
朝鮮ニ於ケル貨幣整理ノ爲生シタル債務ヲ貨幣整
第十一理資金特別會計ニ移屬セシムル件ニ關スル法律案第一讀會
(政府提出)
第十二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第十三朝鮮事業公債法案(政府提出)第一讀會
第十四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧
第十五朝鮮事業公債金特別會計法案(政府提出)第一讀會
第十六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第十七朝鮮鐵道用品資金會計法案(政府提出)第一讀會
第十八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第十九朝鮮森林特別會計法案(政府提出)第一讀會
朝鮮ニ於ケル貨幣整理ノ爲生シタル債務ヲ貨幣整理資金特別會計ニ移
屬セシムル件ニ關スル法律案
朝鮮總督府特別會計ノ負擔ニ屬スル債務ニシテ貨幣整理ノ爲生シタルモノ
ハ貨幣整理資金特別會計ニ移屬ス
附則
本法ハ明治四十四年三月三十一日ヨリ之ヲ施行ス
朝鮮事業公債法案
朝鮮事業公債法
朝鮮ニ於ケル事業費支辨ノ爲政府ハ公債ヲ發行シ又ハ三年以內ノ期限ヲ以
テ借入金ヲ爲スコトヲ得
朝鮮ニ於ケル事業費支辨ノ爲從來負擔シタル債務及本法ニ依ル借入金ノ整
理又ハ償還ノ爲必要アルトキ亦前項ニ同シ
第一項ノ公債及借入金ノ額ハ通シテ五千六百萬圓以內トス
附則
本法ハ明治四十四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
朝鮮事業公債金特別會計法案
朝鮮事業公債金特別會計法
第一條朝鮮事業公債法ニ依ル公債金ノ會計ハ特別トシ一般ノ歲入歲出ト
區分スヘシ
第二條公債金ヲ使用セムトスルトキハ一般會計ヲ經由シテ其ノ金額ヲ朝
鮮總督府特別會計ノ歲入ニ組入レ其ノ歲出トシテ之ヲ拂出スヘシ但シ公
債又ハ借入金ヲ償還スル場合ニ於テハ直ニ之ヲ國債整理基金特別會計ニ
繰入ルヘシ
第三條公債金ニ餘裕アルトキハ之ヲ大藏省預金部ニ寄託シ其ノ利子ハ之
ヲ本會計ノ歲入ニ編入スヘシ
第四條公債金ノ每年度內ニ使用セサルモノハ遞次之ヲ翌年度ニ繰越スヘ
シ
本會計ノ每年度歲出豫算ニ於ケル支出殘額ハ遞次之ヲ翌年度ニ繰越シ使
用スルコトヲ得第二條ノ規定ニ依リ朝鮮總督府特別會計ノ歲入ニ組入ル
ヘキ一般會計ノ每年度歲出豫算ニ於ケル支出殘額ニ付亦同シ
第五條公債金ヲ以テ支辨スル事業完成ノ後本會計ニ剩餘アルトキハ之ヲ
朝鮮總督府特別會計ノ歲入ニ繰入ル->
第六條政府ハ每年本會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共
ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
附則
本法ハ明治四十四年度ヨリ之ヲ施行ス
明治四十三年勅令第四百六號第五條ニ於ケル公債金特別會計ニ屬スル資金
ノ殘餘ハ明治四十三年度朝鮮總督府特別會計ノ歲入ニ編入ス
朝鮮鐵道用品資金會計法案
朝鮮鐵道用品資金會計法
第一條鐵道用品ヲ購入貯藏及製作修理シ朝鮮鐵道ノ運輸營業及建設事業
ノ需用ニ應スル爲朝鮮鐵道用品資金ヲ置キ特別ノ會計ヲ立テシム
第二條朝鮮鐵道用品資金ハ明治四十三年度末現在ノ韓國鐵道用品資金ヲ
以テ之ニ充テ尙朝鮮總督府特別會計ヨリ漸次繰入シテ百萬圓トス
第三條朝鮮總督府ニ於テ本會計ヨリ鐵道用品ヲ購入スルトキハ前金拂又
ハ〓算渡ヲ爲スコトヲ得
第四條本會計ニ屬スル諸品ノ賣拂價格ハ其ノ自然ノ損減歩合、製作改製
修理費及其ノ附屬費用竝購入ニ附隨スル諸費ヲ其ノ購入原價ニ加算シテ
之ヲ定ムヘシ
第五條本會計ノ決算上該資金額ニ過剩ヲ生シタルトキハ其ノ過剩金ヲ同
年度朝鮮總督府特別會計ノ歲入ニ編入スヘシ
第六條政府ハ每年朝鮮鐵道用品資金會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲
出ノ總豫算ト共ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
第七條本會計ノ收入支出ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條本會計ノ經營ニ妨ナキ限リ一般ノ需要ニ應シ機械其ノ他ノ物件ノ
製作修理ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ本會計ニ屬スル用品ヲ以テ其ノ材料ニ充ツルコトヲ
得
附則
本法ハ明治四十四年度ヨリ之ヲ施行ス
韓國鐵道用品資金會計ニ屬スル明治四十三年度末現在ノ收入及支出未濟額
ハ之ヲ本會計ニ移スヘシ
朝鮮森林特別會計法案
朝鮮森林特別會計法
第一條鴨綠江及豆滿江沿岸森林ヲ經營スル爲特別會計ヲ設置シ其ノ事業
上ノ收入ヲ以テ其ノ支出ニ充テシム
第二條本會計ノ資本ハ明治四十三年度末現在ノ韓國森林特別會計ノ資本
ヲ以テ之ニ充ツ
第三條每年度事業上ノ益金ハ朝鮮總督府特別會計ノ歲入ニ編入スヘシ
第四條政府ハ每年朝鮮森林特別會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ
總豫算ト共ニ之ヲ帝國議會ニ提出スシ
第五條每年度ノ豫算ニハ災害事變其ノ他豫期セサル歲出ノ不足ニ應スル
爲豫備費ヲ設クヘシ
第六條本會計ノ收入支出ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法ハ明治四十四年度ヨリ之ヲ施行ス
韓國森林特別會計ニ屬スル明治四十三年度末現在ノ收入及支出未濟額ハ之
ヲ本會計ニ移スヘシ
〔政府委員若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=66
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067・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 唯今議題ニナリマシタ中ノ一番初メノモノニ付テダケ、
私ガ說明ヲ申上ゲマス、此第一ノ分ハ朝鮮ニ於ケル貨幣整理ノ爲生シタル債務ヲバ貨
幣整理資金特別會計ニ移屬サセルト云フ法律デアリマス、朝鮮ノ貨幣整理ニ付キマシ
テハ從前ノ計畫デハ朝鮮ノ補助貨ノ鑄造益金デ以テ此債務ノ辨償ヲスルト云フ計畫
ニナッテ居ッタノデアリマスガ、此度韓國併合ノ結果トシテ、貨幣ヲ統一スル必要ガアリマス
カラ、補助貨ノ鑄造ニ付テモ今後ハ一切一ツ所デ之ヲ鑄造致シマシテ、朝鮮ト內地ト
別々ニハセナイト云フコトニ致スコトニ相成ルノデアリマス、然ル以上ハ從前ノ計畫ニ於
テ、朝鮮ノ方ニ這八ッテ行ク筈デアリマシタトコロノ、朝鮮ニ流通スル補助貨ノ鑄造益
金ガ、朝鮮特別會計ノ益金ニナリマセヌ、故ニ其債務ヲ朝鮮特別會計ニ殘シテ置キマ
スト云フト財源ガ無イ、償還ノ財源ガ無イト云フコトニ相成ルノデアリマス、ソレ故ニ一般
メ貨幣整理資金ノ方ヘ此債務ヲ移シマシテ、補助貨鑄造ノ益金ハ朝鮮ニ行ハレルモノ
デアラウガ、內地ノモノデアラウガ、總テ內地ヘ收入スルト共ニ、貨幣整理ノタメニ爲シタ
債務ノ辨償ハ、共ニ此貨幣整理資金ヲ以テ之ヲ辨償シテ行クト云フコトニシタイト云云
ノガ、本案ノ趣旨デアリマス、是亦ドウゾ御協賛ニ相成リタイト思ヒマス
(政府委員荒井賢太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=67
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068・荒井賢太郎
○政府委員(荒井賢太郞君) 朝鮮事業公債法案、是ハ朝鮮ニ於キマシテ鐵道道
路築港ト云フヤウナ事業ノタメニ公債ヲ募集致シマス、デ、其事業ヲ經營スルト云フ計
畫ヲ立テマシタノデ、ソレニ依リマシテ、此事業公債ヲ募集スルト云フ法律案ヲ提出致
シマシタ次第デゴザイマス、ソレカラ此朝鮮事業公債金特別會計法案、是ハ唯今ノ事
業公債ヲ募集致シマシタルモノヲ特別會計ト致シマシテ事業ノ進行ニ從ヒマシテ必要
ナル費額ヲ每年繰入レテ行カウ、ソレマデハ是ハ特別會計ニ致シテ、其資金ハ留保シテ
置キマス、斯ウ云フ趣意ヲ以チマシテ、特別會計法案ヲ提出致シマシタ次第デゴザイマ
ス、ソレカラ朝鮮鐵道用品資金會計法案、是ハ唯今マデハ朝鮮ノ鐵道ハヤハリ內地ノ
鐵道ト同一ナル會計ニ於テ經理ヲ致シテ來マシタモノヲ、此度朝鮮ノ方デ、朝鮮總督
府ニ於テ、此鐵道ノ經營ヲ致スト云フコトニナリマシタ、依ッテソレニ伴ヒマシテ、用品資
金卽チ鐵道ノ運轉用、竝ニ建設用ノ材料諸品ヲ買入レテ置クト云フ、此用品資金ヲ
必要ト致シマスルノデ、其用品資金ノ特別會計法案ヲ提出致シマシタ次第デゴザリマス
ソレカラ、此朝鮮森林特別會計法案、是ハ朝鮮ニ於ケル鴨綠江竝ニ豆滿江沿岸ノ森
林ノ經營ハ從來モ日韓兩國ニ於テ資本ヲ提供致シマシテ、經營致シテ居リマシタ、然
ルニ今囘韓國併合ノ結果、制度ノ變更ヲ要シマシテ、新ニ此森林經營ノ上ニ特別會
計ヲ設置スルノ必要ガ生ジマシテ、本案ヲ提出致シマシタ次第デゴザイマス、何レモ右樣
ノ理由ニ依リマシテ出マシタノデアリマスカラ、御協賛アランコトヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=68
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069・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ御質問モ無イト思ヒマスガ、此場合御諮リヲ致シマス、
今此第十一ヨリ第十九マデヲ一括シテ議題ニ供シ、サウシテ政府委員モ同時ニ說明ヲ
致サレマシタ、唯此場合、其委員付託ハ、卽チ第十一ヨリ第十七マデヲ、卽チ第十一、
第十三、第十五、第十七、之ヲ同一委員ニ付託シタイト思ヒマスガ、御異議ハゴザイマセ
ヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=69
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070・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 其數ハ幾名ニシマスカ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=70
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071・菅原傳
○菅原傳君 此諸案ヲ一括シテ議長指名十八名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=71
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072・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 第十一ヨリ第十七マデヽゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=72
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073・菅原傳
○菅原傳君 サウデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=73
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074・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ソレデハ第十一、第十三、第十五、第十七ノ議案ヲ一括
シテ議長指名ノ特別委員十八名ニ付託スルト云フコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=74
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075・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ其通リ決シマス、日程第二
十
第二十右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=75
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076・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ九名ノ議長指名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=76
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077・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第十九ノ朝鮮森林特別會計法案ハ議長指名ノ特
別委員九名ニ付託スルト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=77
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078・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議無イト認メマスカラ、其通リ決シマス、日程第二十
一輕便鐵道補助法案ノ第一讀會ヲ開キ議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第二十一輕便鐵道補助法案(政府提出)第一讀會
輕便鐵道補助法案
輕便鐵道補助法
第一條輕便鐵道ニ於テ每營業年度ニ於ケル益金カ建設費ニ對シ一年五分
ノ割合ニ達セサルトキハ政府ハ該鐵道營業開始ノ日ヨリ五年ヲ限リ其ノ
不足額ヲ補給スルコトヲ得但シ營業收入ノ營業費ニ不足スル金額ニ對シ
テハ之ヲ補給スルコトヲ得ス
第二條前條ノ補助金ノ年額ハ明治四十四年度ニ於テハ二十五萬圓爾後每
年度二十五萬圓ヲ累加シ百二十五萬圓ニ至リテ止ム
第三條輕便鐵道ハ每營業年度ニ於テ其ノ益金カ建設費ニ對シ一年八分ノ
割合ヲ超過スルニ至リタルトキハ其ノ超過額ノ二分ノ一ヲ以テ政府ノ補
給シタル總額ニ達スル迄之カ償還ヲ爲スヘシ
第四條第一條及第三條ノ建設費、營業費、營業收入及益金ニ關シテハ命令
ヲ以テ其ノ算出方法ヲ定ムルコトヲ得
第五條輕便鐵道ノ管理者カ法令若ハ法令ニ基キテ發スル命令、免許若ハ
補助ニ附シタル條件ニ違反シ又ハ公益ヲ害スヘキ行爲ヲ爲シタルトキハ
政府ハ其ノ補助ヲ停止又ハ廢止スルコトヲ得
第六條詐欺ノ所爲ヲ以テ補助金ヲ受ケタルトキハ法定ノ利息ヲ附シテ之
ヲ償還セシム
前項ノ償還金ハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得但シ先取
特權ノ順位ハ國稅ニ次クモノトス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔遞信大臣男爵後藤新平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=78
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079・後藤新平
○遞信大臣(男爵後藤新平君) 玆ニ提出ニナリマシタ輕便鐵道補助法案ニ付テ提
出ノ理由ヲ一言致シマス、昨年帝國議會ノ協賛ヲ經マシテ、輕便鐵道法ノ制定セラル
ルニ至リマシタ、然ルニ此法案ノ制定セラレマシテカラ、今日ニ至リマスル經過ヲ見マスル
ト、各地方ニ於テモ、簡易ナル鐵道敷設ニ付テハ十分注意致シマシテ、此事業ヲ企ツル
ヤウデアリマスルガ、併シナガラ此自然ノ趨勢ニ委女テ置キマシテハ當初輕便鐵道法ヲ
制定シマシテ、軌道竝ニ普通鐵道ト相俟シテ運輸線路網ノ完成ヲ期スルト云フコトノ目
的ヲ十分ニ達スルニハ、尙ホ不足ノ感ヲ免カレヌノデアリマス而シテ又此輕便鐵道法ハ、
實ニ經濟上重要ノ關係ヲ持ッテ居ルモノデアリマスガ故ニ、之ニ對シテハ列國ノ關係ヲ
見マシテモ、補助法ヲ設ケテアルモノモ少カラヌヤウナ事情デアリマスカラ、此度我國ニ於
テモ此方法ヲ設ケテ、而シテ輕便鐵道法ヲ制定セラレマシタ趣旨ヲ完フシテ、運輸ノ完
全ヲ期シタイト云フノニ在ルノデアリマス、御審議ノ上、協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=79
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080・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御質問モ無イヤウデアリマスカラ、日程二十二、右議案ノ
審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
第二十二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=80
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081・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ日程第六ト同一委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=81
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082・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第五ノ帝國鐵道會計法中改正法律案ガ日程第六
ニ依ッテ二十七名ノ委員ニ付託セラレテアリマスガ、其同一委員ニ付託スルト云フコトニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=82
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083・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議無イト認メマスカラ、其通リ決シマス、日程第一一十
三及第二十五ハ關聯セル議案ナルニ依リ、一括シテ議題ト爲スニ御異議ハアリマセヌ
カ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=83
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084・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議無イト認メマスカラ、治水費資金特別會計法案外
一件及各家ノ審査ヲ付託ズモ委員ノ選票一括テ釀題-爲シ、其第一讀會ヲ開キ、
議案ノ朗讀ハ省略致シマス、若槻大藏次官
第二十三治水費資金特別會計法案(政府提出)第一讀會
第二十五府縣災害土木費國庫補助ニ關スル法律案第一讀會
(政府提出
治水費資金特別會計法案
治水費資金特別會計法
第一條治水費資金ヲ置キ其ノ歲入歲出ハ一般ノ會計ト區分シ特別會計ヲ
設置ス
第二條治水費資金ハ每年度豫算ノ定ムル所ニ從ヒ一般會計ヨリ繰入ルル
金額、河川法及砂防法ニ依リ府縣ノ納付スル金額竝第五條ノ借入金ヲ以
テ之ニ充ツ
第三條治水費資金ハ河川ノ改修、砂防、殖林其ノ他治水事業ニ關スル費途
ニ使用スルモノトス
第四條治水費資金ヲ使用セムトスルトキハ其ノ金額ヲ一般ノ歲入ニ組入
レ一般ノ歳出トシテ之ヲ拂出スヘシ
第五條治水費資金ニ充ツル爲必要アルトキハ政府ハ本會計ノ負擔ニ於テ
借入金ヲ爲スコトヲ得借入金ノ整理又ハ償還ノ爲必要アルトキ亦同シ
第六條前條ノ規定ニ依リテ本會計ノ負擔ニ屬スル債務ノ償還及利子ノ仕
拂ニ必要ナル金額ハ每年度一般會計ヲ經由シテ本會計ヨリ之ヲ國債整理
基金ニ繰入ルヘ
第七條府縣ノ納付シタル金額ニシテ還付スヘキモノアルトキハ本會計ノ
歲出トシテ之ヲ拂出スヘシ
第八條治水費資金ニ餘裕アルトキハ之ヲ預金部ニ寄託シ其ノ利子ハ之ヲ
資金ニ編入スヘシ
第九條治水費資金ニシテ每年度內ニ使用セサルモノハ遞次之ヲ翌年度ニ
繰越スヘシ
本會計ノ每年度歲出豫算ニ於ケル支出殘額ハ遞次之ヲ翌年度ニ繰越シ使
用スルコトヲ得
第十條政府ハ每年木會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共
ニ之ヲ帝國議會ニ提出スハシ
第十一條治水事業完成ノ後本會計ノ負擔ニ屬スル債務ヲ完濟シ仍本會計
ニ剩餘アルトキハ之ヲ一般ノ歲入ニ繰入ルヘシ
第十二條他ノ特別會計ハ其ノ資金ニ餘裕アルトキハ本會計ニ對シ貸付ヲ
爲スコトヲ得
第十三條本法ニ定ムルモノノ外本會計ノ收入支出ニ關シ必要ナル規程ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法ハ明治四十四年度ヨリ之ヲ施行ス
明治四十三年度ニ於ケル河川改良費ノ支出殘額ニシテ明治四十四年度ニ繰
越使用ヲ要スルモノアルトキハ之ニ相當スル金額ヲ一般會計ヨリ本會計ニ
繰入レ本會計ヨリ之ヲ一般ノ歲入ニ繰入ルヘシ
府縣災害土木費國庫補助ニ關スル法律案
政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ府縣災害土木費ノ一部ヲ補助スルコトヲ得
附則
本法ハ明治四十四年度ヨリ之ヲ施行ス
災害準備基金特別會計法ハ明治四十三年度限リ之ヲ廢止シ同會計ニ屬スル
資金ハ之ヲ治水費資金ニ編入ス
〔政府委員若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=84
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085・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 治水ノ事ニ付キマシテハ先刻總理大臣兼大藏大臣カ
ラ計畫ノ大體ヲ述ベラレマシタ通リニ、此度根本ノ策ヲ定メテ、從前長イ年間ヲ以テ
實行シヤウト思フテアッタモノヲバ短イ期間ニ早ク之ヲ完成シヤウト云フコトニナッタノデ
アリマス、而シテ斯樣相成リマスト、經常費デ總テ之ヲ支辨シヤウト致シマスノハ、國庫ニ於テ
モ隨分負擔ガ重クナリマスノミナラス、府縣ニ於テモ亦其負擔輕クナイノデアリマスカラ、
ソレ故ニ先ヅ雙方ノ負擔力ノアル程度ヲ計ッテ經常歲入カラ各〓ノ分擔金ヲ出シテ、其
他ハ一時預金部ヨリ資金ヲ借入テ、之ニ依ッテ必要ノ財源ニ充テヽ行カウト云フ今囘ノ
計畫ニナッテ居リマスガ、先キデ出スベキ費用ヲ早ク出シテ、完成スルト云フノデアリマス
カラ、事業ガ終リマシタ後ニ於キマシテモ、ヤハリ國庫ナリ府縣ナリハ、其費シタダケノ費
用ノ全部ヲ償還スルダケノ分擔ヲナサナケレバナラヌ、此ノ如ク長イ間ニ亙ッテ、事業ガ濟
ンデモ尙分擔金ヲ負擔スルト云フコトニナリマスニ付テハ、其資金ガ特別ノ會計ニシテ、
他ニハ流用ノ出來ナイヤウニシテ置イテ、之ニ依シテ事業〓完成ト、併セテ事業ニ依ッテ
負擔シマシタ債務ノ辨償ヲ爲シ終ルヤウニ仕組マナケレバナラヌノデ、玆ニ治水費ニ付テ
ハ、特別會計法ヲ設ケル計畫ヲ立テマシタノデアリマス、既ニ治水費ヲ特別會計ニ致シマ
ス以上ハ唯今アリマストコロノ災害準備基金ト云フモノハ、是ハ共ニ此方ヘ併セルノガ
至當デアラウト云フ考ヲ抱キマシタノデ、災害準備基金ト云フモノハ、御承知ノ如ク元
金ハ日露戰爭ノ際ニ於テ、其方ヘ繰替支辨ヲシテシマヒマシタタメニ唯今殘ッテ居ル現
實ノ金ハ十九万圓程シカアリマセヌ、ソレデ此治水ノ費用ガ特別會計ニ出來マス以
上ハ、此會計ハ廢シテ、共ニ此方ヘ併セテシマヒマス方ガ適當デアラウ、然ルニ此災害準
備基金法ノ中ニ災害ノ場合ニ於テハ、府縣ノ土木ノ復舊費ヲ國庫カラ補助スルコトガ
出來ルト云フ規程ガアリマス、此規程其モノハ何處ニデモ殘シテ置カナケレバナリマセヌ、
故ニ此災害準備基金ノ特別會計ヲ止メマスト共ニ、其會計法ノ中ニ規定シテアリマシ
タ土木復舊費補助ト云フ法律ノ規定ダケヲ特別法ニ致シマシテ、玆ニ法案ヲ設ケテ、而
シテ會計ノ特別デアルコトダケハ止メテ是ハ治水費ノ會計ノ方ニ併セテシマハウト云フノ
ガ、治水費資金特別會計法ト竝ニ府縣災害土木費國庫補助ニ關スル法律案ノ趣
意デアルノデアリマス是ハ豫算ト大ニ關係シテ居ル法案デアルノミナラズ、此度定メラレ
マシタ計畫ニ伴フ大切ナ法案デアリマス、故ニ願クハ十分御審議ノ上ニ御協贊ニ相成ラ
ムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=85
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086・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ御質議ガナイト認メマスカラ、右議案ノ委員選舉ヲ議
題ニ供シマス
第二十四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第二十六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=86
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087・菅原傳
○菅原傳君 兩案ヲ一括シ、議長指名一一十七名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=87
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088・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第二十三及第二十五ヲ兩案ヲ一括シテ、議長指名
ノ特別委員二十七名ニ付託スルト云フニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=88
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089・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、其通リ決シマス、日程第二十
七、裁判所位置名稱及管轄區域變更ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗
讀ハ省略致シマス-提出者齋藤二郞君
第二十七裁判所位置名稱及管轄區域變更ニ關スル第一讀會
法律案(齋藤二郞君提出)
裁判所位置名稱及管轄區域變更ニ關スル法律案
第一條明治二十三年法律第六十二號裁判所位置及管轄區域表中仙臺地方
裁判所管內大河原區裁判所管轄磐城國亙理郡ヲ同地方裁判所管內仙臺區
裁判所ノ管轄ニ變更ス但シ本法施行前大河原區裁判所ニ於テ受理シタル
事件ハ同區裁判所之ヲ裁判ス
第二條仙臺地方裁判所管內大河原區裁判所ノ位置ヲ同地方裁判所管內磐
城國刈田郡白石町ニ變更シ之ヲ白石區裁判所ト改稱ス但シ白石區裁判所
開廳ノ期日ハ司法大臣之ヲ定ム
附則
本法ハ明治四十四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔齋藤二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=89
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090・齋藤二郎
○齋藤二郞君 諸君、本員ハ今議長カラ御讀聞ケニナリマシタ此二十七ノ日程ニ付
テ、聊カ說明シタイト思ヒマス、是ハ御手許ニ囘ッテアル通リノ法案デアリマシテ、別ニ天
下ヲ震動スルヤウナ大問題デモナイノデアリマスガ、併ナガラ一人一個ノ問題デモナイ
ノデアリマスカラ、聊カ說明致シタイト思ヒマス、ソレハ二條カラ成ル法案デアリマスガ、御
承知デモアラッシヤイマセウガ、仙臺ノ南ノ方ノ四郡ヲ管轄スル區裁判所ガ一箇所アルノ
デス、其位置ハト申シマスト、口今ノ大河原町デアルノデス、サウシテ海岸ノ方ノ伊具郡
ト、其次ノ亙理郡、コチラノ方ヘ來マシテハ、柴田郡ト、刈田郡ト、此四郡ガ一ノ區裁
判所ノ管轄區域ニナッテ居ル、ソレヲ本員ハ種々ノ理由書ニ書イテアル通リノ理由ニ依ッ
テ交通ノ便カラ申セバ、海岸線ノ方ノ側ハ之ヲ仙臺區裁判所ノ管轄ニ移シテ、大河原
裁判所カラ先殘ル三郡ノ區裁判所ノ位置ヲ刈田郡ノ白石ニ移シテ、サウシテ管轄サセ
ヤウ、是ハ或ハ大河原町其モノヽ住民カラ申セバ、多少ノ利害休戚ニ關スルトコガアルカモ
知レマセヌガ、全體カラ見テ斯ウスルガ適當デアラウト思フガ故ニ、此案ヲ出シタノデアリ
マス、ドウカ諸君ハ此案ニ贊成セラレテ、速ニ通過スルコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=90
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091・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=91
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092・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ議長指名ノ特別委員九名ニ付託ト云フニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=92
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093・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、其通リ致シマス、御諮リヲ致シ
マス議員宮內翁助君ヨリ眼病ニ付、明二十一日ヨリ二週間請暇ノ願出ガアリマス、許
可シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=93
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094・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、許可スルコトニ致シマス、本日御
決議ノ上、議長ニ指名ヲ委託サレタ特別委員ノ指名ノ結果ハ、公報ヲ以テ御報告ヲ致
シマス、諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
鐵道敷設法中改正法律案
公共團體ニ對スル工事補助費繰越使用ニ關スル法律案
明治四十三年勅令第三百二十四號(承諾ヲ求ムル件)
第三百二十六號(承諾ヲ求ムル件)
第三百二十七號(承諾ヲ求ムル件)
第三百二十八號(承諾ヲ求ムル件)
第三百二十九號(承諾ヲ求ムル件)
同同同同同同同同同同第三百三十號(承諾ヲ求ムル件)
第三百三十一號(承諾ヲ求ムル件)
第三百三十三號(承諾ヲ求ムル件)
第三百三十六號(承諾ヲ求ムル件)
第三百三十七號(承諾ヲ求ムル件)
第三百三十八號(承諾ヲ求ムル件)
同第四百六號(承諾ヲ求ムル件)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
國稅徵收法中改正法律案
提出者根岸峮太郞君河野郁太郞君塚田啓太郞君
翠川鐵三君古野孫太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=94
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095・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 次囘ノ議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是ニ
テ散會
午後三時三十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X00319110121&spkNum=95
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