1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治四十四年三月二日(木曜日)午後一時八分開議
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議事日程 第十七號 明治四十四年三月二日
午後一時開議
第一 市制改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第三 町村制改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第五 在外指定學校職員退隱料及遺族扶助料法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第七 市町村立小學校教員退隱料及遺族扶助料法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第九 府縣立師範學校長俸給竝公立學校職員退隱料及遺族扶助料法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十一 帝國學士院學術奬勵金特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第十二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十三 樺太に於ける漁業免許の取消及漁業料の徴收に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十四 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十五 間島に於ける領事官の裁判に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十六 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十七 朝鮮事業公債法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 朝鮮事業公債金特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 朝鮮鐵道用品資金會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 輕便鐵道補助法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十一 工場法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 蠶絲業法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 輕便鐵道法中改正法律案(吉植庄一郎君外二名提出) 第一讀會
第二十四 鐵道敷設法中改正法律案(吉田虎之助君外二名提出) 第一讀會
第二十五 普通選舉に關する法律案(日向輝武君外二十一名提出) 第一讀會
第二十六 地租條例中改正法律案(大西五一郎君提出) 第一讀會
第二十七 明治四十一年法律第三十七號中改正法律案(大西五一郎君提出) 第一讀會
第二十八 鐵道敷設法中改正法律案(村上先君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十九 御歴世宮趾 保表に關する建議案(八木逸郎君外二名提出)
第三十 名所舊蹟古墳墓保護に關する建議案(八木逸郎君外二名提出)
第三十一 伏木港に於ける海陸連絡に關する建議案(上埜安太郎君提出)
第三十二 區裁判所事務開始に關する建議案(稻村辰次郎君外一名提出) (委員長報告)
第三十三 鐵道速成に關する建議案(渡邊修君外八名提出) (委員長報告)
第三十四 鐵道速成に關する建議案(村上先君外一名提出) (委員長報告)
第三十五 鐵道敷設に關する建議案(河野郁太郎君提出) (委員長報告)
第三十六 上越鐵道敷設に關する建議案(武藤金吉君外四名提出) (委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=0
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001・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
電氣事業法案
一貴族院ハ本院ノ送付ニ係ル左ノ議案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
帝國大學特別會計法中改正法律案(政府提出)
朝鮮森林特別會計法案(政府提出)
明治三十八年法律第十七號中改正法律案(政府提出)
裁判所名稱變更ニ關スル法律案(本院提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
伏木港ニ於ケル海陸連絡ニ關スル建議案
提出者上埜安太郞君
明治四十一年法律第三十七號中改正法律案
提出者熊本壽人君福井準造君神前修三君
根岸峮太郞君
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
一去二十八日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
北海道拓殖經營案基礎確立及北海道拓殖鐵道急設ニ關スル建議案外二件
委員(追加)
白石義郞君東武君遠藤吉平君
高橋直治君米田穰君國井庫君
荒谷桂吉君森田俊左久君齋藤巳三郞君
大湊開港ニ關スル建議案
戶水寬人君齋藤二郞君日向輝武君
高橋嘉太郞君阿部政太郞君大市田兵七君
池田藤八郞君近江谷榮次君竹貫一君
鐵道速成ニ關スル建議案
田中定吉君原岡永江君小林庄一郞君
古森泰君丹尾賴馬君村松恆一郞君
富田幸次郞君松家德二君才賀藤吉君
一河川法中改正法律案委員中村彌六君辭任ニ付キ其補闕トシテ近江谷榮次郞
君ヲ、冷藏事業保護ニ關スル建議案委員村田虎次郞君辭任ニ付キ其補闕トシ
テ松家德二君ヲ議長ニ於テ選定セリ
一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
鐵道速成ニ關スル建議案委員會
委員長田中定吉君理事原岡永江君
大湊開港ニ關スル建議案委員會
委員長戶水寛人君理事齋藤二郞君
〔日野國明君「日程ニ入ラレル前ニチヨット」ト呼フ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=1
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002・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) マグ會議ヲ開ク宣〓ヲ致シマセヌ-曾議ヲ開キ、御諮ヲ
致シマス、決算委員木下義之君病氣ノタメ辭任ノ申出アリ、許可シテ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=2
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003・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ許可スルコトヽシ、同君ハ第一部選出ニ付
キ同部ノ諸君ハ速ニ補闕選舉ノ上屆出アランコトヲ望ミマス、地租條例中改正法律
案委員木下義之君病氣ノタメ辭任ノ申出ガアリマス、許可シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=3
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004・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ許可スルコトヽシ、而シテ其補闕トシテ山
岡國吉君ヲ指名致シマス、議員木下吉之丞君ヨリ病氣ニ付、去ル二十八日ヨリ二
週間木之義之君ヨリ實兄病氣危篤ニ付、昨一日ヨリ二週間、多木条次郞君病氣
一付、昨一日ヨリ二週間山田又七君病氣ニ付、今二日ヨリ十日間、各請暇ノ願
出ガアリマス、許可シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=4
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005・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ許可スルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=5
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006・日野國明
○日野國明君 議長々々発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=6
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007・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日野君ハ何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=7
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008・日野國明
○日野國明君 議場整理ノコトニ關シマシテ、議事日程ニ入ル前ニ議長ニ申上ゲテ
置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=8
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009・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=9
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010・日野國明
○日野國明君 先月十四日ノ本會ニ於テ四十四年度ノ豫算ヲ討論セラルヽ際ニ於
テ、議員守屋君ガ其議案ニ關シテ質問ヲスルト云フノデ、議長ノ許可ヲ得テ登壇ヲシ
マシテ、演說ヲナスッテ居ル其央ニ於テ長君ヨリ、質問トシテハ登壇演說ヲナスベキモノ
デハナイ、說明ヲ求ムルト云フコトデナケレバイケナイ、一旦取消シテヤリ直サナケレバナラ
ヌト云フヤウナ意味ノ發議ガアッテ、ソレガ問題ニナリマシタ結果、終ニ守屋君ハ其質問
ト云フ名義ニ於テ登壇演說ヲスルコトハ之ヲ差止メラレタ、改メテ更ニ說明ヲ求ムルト
云フノデ演說ヲシタコトニナッテ居リマス、卽チ或ル議案ヲ討議スル間ニ於テ、議員ガ是
ニ對シテ質問ヲサレナイト云フ先例ガ出來タ譯デアリマス、是ハ私共ハ甚ダ不都合ナコト
トハ考ヘマスルケレドモ、免ニモ角ニモ院議ニ於テ斯樣ニ決シマシタ以上ハ私共ハ之ヲ守
ラナケレバナラヌモノト存ジテ居リマス、然ルニ去二月二十八日ノ本會議ニ於テ丁度砂
糖消費稅ニ關シマスル改正法律案ノ討議中ニ中川虎之助君カラシテ、私ハ此席カラ
政府委員ニ質問ヲ致シマス、唯今本案ニ反對シタル論旨ニ付テ質問ガアリマス斯ウ
云フノヲ以テ發言ヲ許可サレテ、而モ餘程長キ演說ヲサレタコトハ議長モ御承知ノコト
ト考ヘマス、是ニ付テ本員ノ伺ッテ置キマスルノハ過日ノ會議ニ於テハ議案ニ付テ質問
ヲスルト云フコトハ出來ナイト云フ意味ヲ決議ニナッテ居ルガ、ソレハ不當デアルト云フコ
トヲ御認メニナッテ、議長ハ此院議ヲ反對ヲスルト云フ方針ヲ御執リニナル意味デアリマ
スルカ、或ハ左樣デハナイ、アレハ國民黨ノ守屋君デアッタカラ止メタノデアッテ、政友會ノ
議員カラナラバ構ハナイト云フ意味デモアルノデアリマセウカ、ドウカ是ハ此後ノ私共ノ心
得ニナリマスルカラ明白ナル御答ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=10
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011・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 明白ニ御答致シマス、去ル十四日ノ速記錄ノ總テヲ御熟
讀ヲ請ヒ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=11
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012・日野國明
○日野國明君 速記錄ハ持ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=12
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013・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 持ッテ居ルデセウカラ熟讀ヲ請ヒ置キマス、卽チ長君ハ成交
ノモノガアルカラト云フノデ、議長ハ之ニ依ッテ採決ヲシタコトガ後トニ書イテアルダラウト
思ヒマス、尙中川君ノハ議長ハ質疑ト云フコトニ了解シテ許シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=13
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014・武市庫太
○武市庫太君 議長々々発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=14
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015・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 何デスカ、議事進行上ノコトニ付テヾスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=15
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016・武市庫太
○武市庫太君 日程ニ入ル前ニ申上ゲテ置キタイコトガアリマス、一昨日本員カラ申
出デマシタコトニ付テ、政府委員ガ居ラレマセヌタメニ答辯ヲ得マセナンダガ、議長ニ保
留致スト云フコトヲ申上ゲテ置キマシタ、今日ハ當該政府委員モ見エタヤウデゴザイマス
カラ、一昨日私ガ提出致シマシテ說明ヲ求メマシタコトニ付テ、御答辯ヲ此際煩ハシタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=16
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017・日野國明
○日野國明君 議長-先刻ノ續キデスカラ-議長ハ二月十四日ノ速記錄ヲ能ク
見ヨト云フコトデアリマシタガ、本員ハ唯今議長ニ對シテ質問ヲ提出スルニ付テハ無論是
ハ熟讀ヲシタ上デ質問ヲ致シテ居ルノデアリマス、議長ノ方ガ却テ之ヲ御熟讀ニナッテ居ラ
ヌカト思ヒマス、私ガ之ヲ讀ンデ見マス「長晴登君、守屋君君ガ演壇ニ立タレタコトニ付
テハ議長ヨリ先刻政府ニ質問ガアルト云フコトデ演壇ニ立タレタト私ハ記憶シテ居リマ
ス、然ルニ此質問ハ議院法ノ規定ニ據リ、必ズ質問趣意書ヲ具ヘ、贊成者ヲ得テヤラナ
ケレバナラヌモノデアル云々」略シマスガ、ソレカラ更ニ又長晴登君ノ言ハレタ言葉ニ「私ハ
此際ニ於テ尙念ノタメニ書記官長ノ手許ニ於テ守屋君ノ通告ハ說明ヲ請フノデアルカ
質問デアルカト云フコトヲ取調ベテ見タ人間デアリマス然ルニ明カニ質問トナッテ居リマ
ス、質問トナッテ居ル以上ハ守屋君ガ演壇ニ立ッテ說明ヲ求ムルニハ別ニ訂正サレタ後
更ニ發言ヲ求メナケレバ出來ヌノデアリマス卽チ守屋君ガ一旦立タレタル演壇ハ質問
ト云フ事柄デ立タレタノデアルカラ、之ヲ取消サレテ更ニ發言ヲ求メラルレバイザ知ラズ、
曩ニ質問ト云フ通告ニ對シテ其演壇ニ立タレルト云フコトハ差止メルト云フ動議ヲ提出
致シマス」斯ウアルソレカラソレニ付テト部君、加瀨君ナドガ反對ノ意見ヲ述ベラレテ居
リマスト部君ノ言葉ノ中ニ「現ニ議事日程ニ上ッテ居ル議案ニ對シ、何時ニテモ政府
ニ向ッテ質問ガ出來ルノデアリマスルカラ云々」加瀨君ノ演說ノ中ニハ「私考ヘマスルニ質
問ト云フモノモ說明ヲ求ムルト云フノモ、同一デアルト思ヒマス」斯ウ云フ意味ニ依ッテ討
議セラレテ、サウシテ採決ノ結果ハ玆ニ私ガ申述ベルマデモナク、議長ハ長君ノ動議ガ多
數デアル、ト斯ウ決セラレタサウ致シマスレバ同ジコトデアッテモ說明ヲ求ムルコトニ付テ、
質問ト云フコトデハ說明ハ求メラレナイ、、質問ト云フコトデハ議題ニナッテ居ルコトニ付テ、
問ヲ發スルコトガ出來ナイト云フノガ長君ノ動議ノ趣意デアル、ソレヲ多數デ決セラレテ
居ルノデアリマスカラ、是ハ間違ッテ居リマスルケレドモ、兎ニモ角ニモ斯ク決シテ居ル以上
ハ議長モ此院議ヲ重ンゼナケレバナラヌノデアルガ、政友會ノ方デアルナラバ構ハヌト云フ
コトデアレバサウデアルト御明言ヲナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=17
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018・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 議長ハ斯ウ心得マス、所謂質疑ト云フコトハ議院法ニモ書
イテアル、ツレデ其名ヲ質問ニ籍リテ、サウシテ議論ヲ濫リニスルト云フコトハ宜シクナイト
思フノデゴザイマス、其場合ニ於テ極ク簡明ナル疑ヲ質スコトハ差支ナイト思ヲノデゴザイ
スス併ナガラ御承知ノ通リ十四日ノ日ハ議場モアノ通リノ混雜デアリマシタカラシテ、尙
取調ベテ御答ヲスルコトニ致シマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=18
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019・日野國明
○日野國明君 唯今ノ名ヲ質問ニ藉リテ演說ヲナスコトハ宜シクナイト云フ御意見ニ
付テハ何等ノ不服ハナイガ、過日ノ長君ノ動議ハ、名ヲ質問ニ藉リテ演說スルモノデアル
カラト云フノデ之ヲ止メルト云フニアラズシテ、說明ヲ求ムルト言ハナイデ質問デアルカライ
ケナイト云フコトニナッテ居リマスガ、併シ其當時ノ議場ニ於キマスル議長ノ態度ニ付キマ
シテハ、本員ハナカ〓〓議長ノ御苦心ノ存スルトコロヲ見テ居リマスカラ、能ク御詮議下
スッテ間違ッテ居レバ改メルト云フコトナラバ尙結構デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=19
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020・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ソレカラ一言加ヘテ置キマス、政友會ノ人ノ言フコトデアルカ
ラドウデアルトカ、他派ノ人ノ言フコトデアルカラドウトカト云フ御言葉ガアッタヤウデアリマ
ス、ソレハ以テノ外ノコトデ、議長ハ決シテ左樣ナ考ハ毛頭持チマセヌカラ、此段ハ御諒
承ヲ請ヒマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)外務大臣小村壽太郞君-唯今外務大臣
ノ演說ガアリマス
〔外務大臣伯爵小村壽太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=20
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021・小村壽太郎
○外務大臣(伯爵小村壽太郞君) 諸君、今囘帝國ト米國トノ間ニ締結シタル條約
ニ關シマシテ其〓要ヲ開陳致シマシテ、諸君ノ御參考ニ供シタイト考ヘマス(「謹聽」ト呼
フ者アリ)帝國ト諸外國トノ間ニ存スル通商航海條約ハ御承知ノ如ク帝國政府ニ於テ
當該國ニ對シ、既ニ是ガ廢棄ノ通告ヲ致シマシタカラ、本年七八月ノ頃ヲ以テ何レモ終
了スルコトニナッテ居ルノデゴザイマスルガ獨リ日米現行條約ニ至リマシテハ其終了期限
ニ關シ兩國政府間ニ見解ヲ異ニ致シマシテ、是ガタメ種々交涉ヲ累ネマシタケレドモ到
底兩國政府ノ意見ノ一致ヲ見ルコトガ出來ヌト云フコトヲ認メマシタカラ、帝國政府ハ
終了期限問題ヲ別ト致シマシテ、本年七月十七日ヨリ現行條約ニ代ルベキ新條約ヲ
日米兩國間ニ締結センコトヲ提議致シマシテ、米國政府ノ同意ヲ求メタ次第デゴザイマ
ス然ルニ米國政府ニ於キマシテハ專ラ兩國傳來ノ交誼ヲ顧念シ十分ノ厚意ヲ以テ我
提案ニ考量ヲ加ヘマシタ結果、遂ニ新條約締結談判ヲ直ニ開始スルコトニ同意ヲシタノ
デゴザイマス、然ルニ新條約ヲ本年七月十七日ヨリ實施致シマスルニハ目下開會中ナル
米國議會ノ開期中ニ元老院ノ批准協賛ヲ得ルノ必要ガゴザイマスルカラ日米兩國政
府共ニ銳意商議ノ進捗ヲ圖リマシタ、其結果幸ニ迅速ニ妥結ニ達スルヲ得マシテ、遂
二月二十一日ヲ以テ華盛頓ニ於テ、兩國全權委員ノ間ニ新通商航海條約ノ調印ヲ
了シタノデゴザイマス、米國政府ハ此條約ヲ直ニ元老院ノ議ニ付シマシタガ、元老院ハ同
月二十四日ヲ以テ批准協贊ヲ與ヘタル次第デゴザイマス、今囘ノ新條約ハ我政府ノ提
案ト米國政府ノ修正案トニ基キマシテ、商議決定シタノデゴザイマスルガ、新條約ヲ現行
條約ト對照致シマスルト、其主ナル相違ノ〓ハ五ツ程ゴザイマスル、第一新條約ニ於テハ
現行條約第二條末項ニ存シテ居リマスル勞働者ノ移住其他ニ關スル但書ヲ削除致シ
マシタ蓋シ合衆國ヘノ移民ニ關スル帝國政府ノ方針ハ嘗テ第二十五議會ニ於テ本
大臣ノ言明シタルトコロデゴザイマシテ、帝國政府ニ於キマシテハ此方針ヲ變更スル意思
ハゴザイマセヌカラ、新條約締結ノ際、帝國政府自ラ其旨ヲ米國政府ヘ宣言シタ次第デ
ゴザイマス、第二新條約ニ於キマシテハ關稅ハ兩國間ノ別箇ノ條約又ハ各自ノ國內
法ニ依ルコトニ致シマシテ、之ト同時ニ議定書ヲ以テ今後日米兩國間ニ別箇ノ條約ノ
締結セラルヽニ至ルマデハ、現行條約中關稅ニ關スル條項ヲ維持スルコトニナッタノデゴザ
イマスル、卽チ關稅ニ關シマシテハ日米兩國相互ニ最惠國待遇ヲ保障スル次第デゴザイ
マスル、第三新條約ハ現行條約第十條ノ末項ニ規定シテゴザリマスル如ク、一定ノ帝國
開港場間ニ於テ米國船舶ノ積荷運搬ヲ許可スルコトナク、沿岸貿易ニ付キマシテハ、全
然各自ノ國內法ノ規定ニ一任致シマシテ、唯互ニ最惠國待遇ヲ保障スルニ止メテゴザ
リマス、第四新條約ニ於キマシテハ永代借地權ニ關スル現行條約中ノ條項ヲ削除致シ
テゴザイマス、帝國政府ハ本件ノ根本的解決ニ付キマシテハ別エ米國政府ト協議ヲ致
ス筈デゴザリマス、第五現行條約中遭難船ニ關スル規定及脫船人ニ關スル規定ノ如
キ領事官ノ職務ニ當ル者ハ今後日米兩國間ニ商議決定スベキ領事職務條約ニリレ
ヲ讓ルノ趣意ヲ以チマシテ、新條約中ヨリ之ヲ削除致シタ次第デゴザリマス新條約ト現
行條約ト異ッテ居リマスル主ナル點ハ、唯今申述ベタ通リデゴザリマス、新條約ニシテ愈と
兩國間ニ批准書交換ヲ了シマスルニ於テハ、本年七月十七日ヨリ現行條約ニ代ッテ實
施セラルヽコトニナルノデゴザリマスル、之ガタメ彼我通商ノ利益ヲ確保シ、兩國傳來交情
ヲ益〓鞏固ナラシムル上ニ於テ、其效果ノ尠ナカラザルベキハ帝國政府ノ確信致ストコロ
デゴザリマス、今囘ノ日米新條約締結ノ〓末ハ〓略唯今申述ベタ通リデゴザリマスルガ、
尙新條約公布ノ時期ヲ待チマシテ詳細ノコトヲ開陳致シマスル機會モアラウト考ヘテ
居リマスカラ、諸君ニ於テ宜シク御諒承アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=21
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022・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 大石正己君-今大石君カラ外務大臣ノ演說ニ對シテ
質疑ノ通〓ガアリマシタカラ左樣···
〔大石正己君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=22
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023・大石正巳
○大石正己君 外務大臣ニ御尋シマスガ、新日米條約ニ二條ノ但書ヲ削除シタ、斯
ウ云フ御報告デアリマスアノ日米條約ノ中ノ主ナル箇條ハ恐ク此第二條ノ但書ノ意
味デアル、其事實デアル(「マット大キイ聲デ賴ム」ト呼フ者アリ)所ガ條約ニ表面ニ二條
ノ但書ヲ削除シタ代リニ日本政府ハ亞米利加政府ニ向ッテ從來ノ移民ノ方針ヲ進ンデ
聲明ヲシタト云フコトヲ仰シヤッタガ、此日本政府ノ聲明ヲナサレタ其交句ハドウ云フ
文句デアリマスカ、是モ伺ヒマスルガ、察スルトコロ但書ノ表面ニ書イテアッタ亞米利加
政府ノ目的ヲ達シサスルト云フコトヲ聲明ヲシタノデハアリマセヌカ、若シ然リトスレバ此
條約面ニ但書ヲ削除シタト云フコトヽ削除セザルトー云フコトノ間ニ於テ、如何ナル差ガア
ル日本國民ハ決シテ此文字ノ上ニ移民制限其他ノ日本帝國ノ面目ニ關スル條約ヲ
唯文句ノ上ニ反對ヲスルト云フ譯ヂヤナイ事實ノ上ニ於テ此ノ如キ不名譽ナル國辱
トナルベキモノヲ我堂々タル日本帝國ガ外國ニ向ッテ左樣ナル約束ヲスルト云フコトヲ反
對スルノデアル(「ヒヤノ〓」ト呼フ者アリ)然レバ今囘唯條約面ノ上カラ但書ヲ削除スル
ト云フコトハ、何ノ效能ガアルノデアルカ、斯ヤウナル不名譽ナ、日本國民ノ恥辱トナル
人牛而モ實利上日本國家ノ大損害ヲ受クベキトコロノ條約ヲ敢テスルト云フコトハ、·抑ゝ
此政府ハ何ヲ代表シテ此ノ如キ條約ヲナサルノデアル、日本國民ガ日本政府ノ移民
制限ニ對スルトコロノ政策ヲ決シテ褒メテハ居ラヌノデアル、此過去數年ノ間日本政
府ガ亞米利加ニ對スルトコロノ外交上ノ態度ト云フモノハ、界屈、從順、殊ニ日本ノ
國利民福ヲ害スルトコロノ外交デアッテ、一人モ之ヲ贊成スル者ハナイノデアル(「ヒヤヒ
ヤ」ト呼フ者アリ)凡ツ執政ノ局ニ當ル者ハ國家全體ノ利害國ノ面目國ノ輿論ト云フモ
ノヲ標準ニシテ外交ヲナスベキモノデアル、之ニ依ッテ始メテ日本政府ガ日本國家ヲ代表
スルトコロノ條約ト云フコトガ出來ルノデアル、今ヤ政府ノ亞米利加ト結ンダル條約ニ
於テ日本國民ノ輿論ヲ代表スルニアラズ、日本國家ノ利益ヲ標準トスルニアラズ(「ヒヤ
ヒヤ」ト呼フ者アリ)何ヲ以テ此ノ如キ條約ヲナサレタノデアル、又亞米利加ニ對シ、屈
辱的ノ外交ヲスル償トシテ、日本政府ハ滿韓集中ヲ以テ方針トスルト云フコトヲ聲明シ
タ滿韓ニ移民ヲ如何程昨年以來、若クハ一昨年以來、如何程滿韓集中ノ實行
ヲ舉ゲタノデアル、是レ一々統計ヲ以テ御示シナサレ、吾ミガ見聞スルトコロニ於テ、此
政府ノ亞米利加ニ屈スルトコロノモノヲ滿韓ニ伸ベル、其聲明ト云フモノハ皆噓八百デ
アル(拍手スル者アリ「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)事實ニ於テ一點モ實行スルコトハ出來ヌ
ノデハナイカ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)而モ尙高言ヲシテ曰ク、日本政府ハ從來ノ移民
ノ方針ヲ決シテ變ヘテ居ラヌ-變ヘテ居ラヌト云フコトハ、亞米利加ニ對スル屈辱的
ノコトヲ變ヘテ居ラヌノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)日本政府ノ聲明シタルトコロノ
滿韓ニ移民ヲ集中スルト云フコトハ、何ヲ一〓行ッタ事實ガアリマス、吾〓ハ其他ニ付テ
モ此日米條約ニ付テ批評ヲ試ムルコトハアリマスケレドモ、先ヅ此日米條約ノ中ノ其主
眼トナルベキトコロノ第二條削除ノ一端ニ於テ、十分ニ議會ヲ滿足サセ、國民ヲ滿足サ
セルダケノ御辯明アランコトヲ希望スルノデアル(拍手スル者アリ)
〔外務大臣伯爵小村壽太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=23
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024・小村壽太郎
○外務大臣(伯爵小村壽太郞君) 唯今大石君ニ御答致シマス、御承知ノ通リ日
米現行條約ノ第二條但書ニ依リマストつ米國政府ハ自國ノ法律ヲ以テ何時デモ自由
ニ日本人ノ移住制限ヲスルコトガ出來ルノデゴザイマス、此規定ハ兩國ニ取リマシテ甚ダ
危險ナルモノデゴザイマスルカラ、政府ニ於キマシテハ此條項ヲ削ルト云フコトヲ今囘ノ談
判ノ主眼ト致シタ次第デゴザイマス、又米國ヘノ移民ニ關シマシテハ先年來政府ニ於テ
ハ一定ノ方針ヲ定メマシテ、ソレヲ實行シ來リタル次第デゴザイマス、此方針ハ條約ノ如
何ニ拘ハラズ之ヲ變更スルノヲ-變更セザルノヲ最モ得策ト考ヘマスカラ、之ヲ變更ス
ル意思ハゴザイマセヌ、故ニ此度新條約締結ニ際シマシテ、此方針ヲ變更スル意思ハナ
ィト云フ事實ヲ亞米利加政府ニ向ッテ申述ベタ次第デゴザイマス、左樣御承知ヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=24
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025・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 服部綾雄君
〔服部綾雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=25
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026・服部綾雄
○服部綾雄君 私モ二三〓伺ヒタイコトガアリマス、現行條約ノ第二條ノ但書ヲ削除
セラレタコトニ付キマシテハ、私ハ何モ申シマセヌガ、外ノ點ニ付テ伺ヒタイ、是ガ削除セラ
レタニ付キマシテハ、米國ノ領土內ノ旅行竝ニ轉住、帝國ノ臣民ニシテ自由ヲ得タモノデ
ハゴザイマスガ、アレデハ布哇ノ住マウテ居ル帝國ノ臣民ハ、自由ニ米國ノ領土內ニ入ル
コトガ出來マスガ、卽チ何レノ州デアラウトモ、何所ニ參ッテモ、其轉住ノ權ヲ自由ニ用井ル
コトガ出來ルヤ否ヤト一ムフコトデ第二ニ伺ヒタイノハ是マデ各州ノ法律トシテ、吾〓同胞
ノ不利益ナル法律ガ設ケラレテゴザイマス、此第二條ノ但書ガ削除セラレタガタメニ、ソレ等
ノ法律ハ如何ナッテ居リマスカ、或ハ「カリホルニヤ」州ニ於テ、或ハ華盛頓州ニ於テ、或ハ
「オレゴン」州ニ於テ、吾々卽チ日本帝國ノ臣民ヲバ他國ノ臣民ト異ッテ取扱フ條項ガ殊
更ニ日本人トハ指シテゴザイマセヌガ、吾〓同胞ヲ指シタルトコロノ法律ガ澤山ゴザイマ
ス、此等ハ依然トシテ活キテ居ルモノデアルカ、此等ガ働クモノデアルトセバ第二條ノ但
書ヲ取除カレテモ、各州ハ又帝國ノ臣民ニ對シテ別々ノ法律ヲ作リテ、之ヲ苦メ、或ハ米
國中央政府ニ於テ之ヲ壓セントスルトキニハ、洲權ヲ稱ヘテ何カ申スヤウナ憂ハナイモノデ
ゴザイマスルカ、此條約改正ニ於テハワレ等ノ〓ニ付テハ如何ナッテ居リマスルカ、之ヲ伺
ヒタイ、ソレカラ第三ニ伺ヒタイノハ唯〓御話ニナリマシタ中ノ第三ト心得マスガ、沿岸貿
易ノコトデゴザイマスガ、是マデハ我邦ニ於テハ米國ノ船ガ自由ニ神戶ノ港、橫濱ノ港ヘ
繫グヤウナコトモ出來マシタノデアリマスガ、今承ッタトコロニ依リマスト、是ハ出來ナイヤウニ
ナッタヤウデ、ダガ何ゼ我邦ニ於テ沿岸貿易ヲ禁止シテ置イタ、ソレニ傚ウテ米國ノ沿岸
貿易自由權ヲ取ルコトニ變ヘテ、是ヲ禁ジテ兩方同ジヤウニスルコトニセラレタカ、之ヲ伺
ヒタイ實業團ガ先年米國ノ方ニ參リマシタトキニモ「ポルチモーア」ニ於テ開カレタ宴會ニ
於テモ、「ヒラデルヒヤ」ニ於テ開カレタ宴會ニ於テモ、「ボルチモーア」ニ於テハ曩ノ內閣員デ
アリマシタ、卽チ「ボナバール」ト云フ人ガソレカラ「ヒラデルヒヤ」ニ於テハ「ワナメーカル」ト
云フ人ガ、日本ト米國ノ東洋沿岸トノ聯絡ヲ計ランガタメニハ熱心ナル希望ヲ以テ彼ノ
實業團ノ人〓ヲ歡迎シマシテ、其席上ニ於テ「パナマ」運河ノ開カレル曉ニ於テハ、日本ハ
此沿岸ニ直ニ船ヲ送ッテ呉レルヤウニ吾〓モ亦出來得ルダケノコトヲナシテ、貴國ノタメ
ニ盡スト云フ意味ヲ十分ニ言現ハシテアル、其當時ニ於テ其實業團ノ中カラシテ確ニ之
ニ答ヲナサレタ、答ヲ私ハ見タコトガアル、其希望ヲ以テ此實業上ノ聯絡ヲ米國各州ト
付ケタイト云フ希望ヲ以テ、雙方ガ喜ンダ場合ガアッタヤウデゴザイマスルガ、三四年ノ後
ニ「パナマ」運)河ガ開カレルトキニ於キマシテハ、日本ガ米國沿岸ニ自由ヲ得テ居ルト云フ
コトハ莫大ナル利益デアルト思フノデ、或ハ會社ノ如キモノガ政府ニ多少ノ補助ヲ受ケ
テ居ルヨリハ遙ニ此自由權ヲ得マシテ或ハ「ボルチモーア」ニ參ッタ船ガヤハリ「ポルチモ-
ア」カラ「テキサス」ニ著イタトコロノモノガーカリホルニヤ」ニ客ヲ乗セ、荷物ヲ載セテ、サウシ
テ日本ノ航路ガ進ムコトガアリマシタナラバ、餘程ノ利益デアルト私ハ思ウテ居リマス、亞
米利加ニハ船ガナイノデス、亞米利加ハ船ガ乏シイノデアル、亞米利加ノ沿岸ニハ獨逸ノ
船ガ競ウテ居ルトキデアリマス、米國ガ今日或ハ朝鮮ト日本トヲ繫ギ、或ハ此島ノ一部ト
他ノ部トヲ繫グ權ヲ持ッテ居ッテ、大ニ吾ミハ權利ノ上ニ於テハ彼ニ此權利ガアルナラバ、
我モ此權利ヲ取ラナケレバナラヌト、平素思ッテ居ッタノデアル、之ヲ互ニ禁止スルデナシ
ニ、互ニ得ルト云フコトニシタナラバ、非常ナル利益デアルモノデアルト平素思ッテ居ック、
今囘條約改正ノ場合ニ於テハ、必ズ彼ニ與ヘテ居ッタ權利ハ我得ルモノデアラウト思ッテ
尼泊2、所ガ今ノ御說明ヲ伺ッテ初メテ承知ヲ致シマシタが、此沿岸貿易權ハ互ニ禁止シ
テ、サウシテ米國カラ申シマスレバ、サノミ利益ノナイモノナラ止メラレテ、何ノ苦痛ノ無イモ
ノト思ヒマスガ、我進ンデ得ルナラバ莫大ノ利益アル、之ヲ主張セラレタノデアリマスカ、ソ
レトモ最初カラ此〓ニ於テハサウ云フ風ニ進メズシテ、サウ云フ風ニ掛ラズシテ、サウシテ是
ハ互ニ禁止スルト云フコトノミデアリマシタカ、私ハ實ニ遺憾ニ存ズル餘リ此〓ヲ御尋申
シマス、卽チ是ガ第三點デアリマス、ソレカラ前ニ戾ルヤウデアリマスガ、但書ヲ取ラレタタメ
ニ今一ツ伺ヒタイコトガアル、我帝國ノ臣民ノ入籍權威或ハ養子トナリ、、或ハ婚入シ、又
亞米利加人ト結婚スルト云フヤウナ場合、斯ウ云フコトニ付テハドウ云フ風ニナッテ居リ
マスルカ、各州通ジテ差支ナイモノデアリマスカ、ソレトモマダサウ云フ風ノ權利ハ此條約ダ
ケデハ得ラレヌモノデアリマスカ、卽チ入籍ノ件デアリマス、斯ウ云フ四點ニ付テ私ハ失禮
デアルガ御答辯ヲ願ヒタイ(拍手起ル)
〔外務大臣伯爵小村壽太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=26
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027・小村壽太郎
○外務大臣(伯爵小村壽太郞君) 唯今服部君ノ御質問ニ御答致シマスルガ、沿岸
貿易ノコトニ關シマシテハ今囘ノ條約改正ニ於キマシテハ政府ノ方針ハ沿岸貿易ノコト
ハ全然國內法ノ規定ニ依ルト云フコトニシテ居ッテ、唯單ニ最惠待遇ヲ保障スルコトニ
止メテ置キタイト云フ方針デゴザイマス、今日ノ場合ニ於キマシテハ是以上ノコトヲヤルコ
トハ到底見込ガ無イト考ヘマシタ結果デゴザイマス、其外御質問ノ第一第二ノ點、第四
ノ點ニ關シマシテハイヅレ新條約ノ公布ノ上條約ニ付テ篤ト御互ニ〓究シタ上デ、申上
ゲル方ガ宜カラウト考ヘマスカラ、之ニ對スル御答ハ暫ク見合セテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=27
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028・石橋爲之助
○石橋爲之助君 本員ハ極ク簡單ニ此處カラ質問致シマス、本員ノ問ハント欲スルト
コロハ服部君ノ問ハレタ中ニ筵ルテテリリススルトコロノ沿岸貿易ノコトデアリマス、唯今ノ
御答辯ニ依ッテ尙說明ヲ請ハナケレバナラヌコトニナリマシタ、卽チ沿岸貿易ハ國際法ノ
原則ニ依ッテ互ニ禁ズルト云フコトヲ本則ト致ス、其代リニ最惠國條款ヲ保留シテ置ク、
斯ウ云フコトニ承リマシタガ、サウ致シマスルト其結果ニ付テ惑ヲ生ズルノデアリマス、米國
ハ沿岸貿易ヲ禁ズル國柄デアリマス、、然ルニ英國及白耳義ノ如キハ沿岸貿易ヲ許シテ
居ル國デアリマス、所ガ米國ニ對シテ我國ハ禁ジテ居ルガ、併ナガラ其例外トシテ取除ヶ
トシテ最惠國條款ヲ存シテ置ク以上ハ、日本ガ英國トノ間ヲヤハリ相互的ニ英國ニモ許
スガ故ニ、我國ニモ許スノデアッテ、沿岸貿易ヲ許スコトニナリマスルト、其利益ニ米國ハ均
霑スルコトガ出來マス、併ナガラ我國ハ米國ノ方ニ對シテハ何等均霑スルコトノ出來ナイ
結果ニナリマス、サウナリマスレバ卽チ雙務ニアラズシテ、ヤハリ片務ト云フコトニナリマス、
其邊ノ利害得失ハ如何ニ御辯明ニナリマセウカ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=28
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029・小村壽太郎
○外務大臣(伯爵小村壽太郞君) 英國トノ條約ハマダ出來テ居リマセヌ、出來マシ
タ上デ御答シタ方ガ便利ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=29
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030・大石正巳
○大石正己君 簡單デゴザイマスカラ、此處カラ御尋ネシマスガ、先程ノ質問ヲ致シテ
アル滿韓ヘ移民ノ集中ト云フ〓ガ御答ハナイデスガ如何デゴザイマスカ、滿韓ヘハ既ニド
レダケノ移民ヲ集中ナサレタノデアルカ、又如何ナル計畫ヲナシツヽアルカ、其アタリヲ明
カニ御答ニ與リタイ、且亞米利加ニ對シテ日本政府ハ從來ノ移民制限ノ主意ヲドコマ
デモ誠實ニ實行スルト云フコトヲ聲明シタト云フコトデアルガ、之ハ日本國ノ何等ノ利益
ニナル思召ヲ以テ、此ノ如キ聲明ヲナサレタノデアルカ、唯旣定ノ、政府旣定ノ其方針
ヲ聲明スルト云フコトハ取モ直サズ日本ノ國辱ヲサレタト云フコトデアル此度對等ノ條
約ヲ結ブ機會ニ當ッテ尙此ノ如キ陋態ヲ演ズルト云フコトハ、何等ノ日本ノ利益ヲ保護
スルタメニナサレタノデアルカ、其說明ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=30
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031・小村壽太郎
○外務大臣(伯爵小村壽太郎君) 大石君ノ御質問ニ對シテハ先刻答ヘテ置キマシ
タツレ以外ノコトハ唯今申上ゲル必要ハナイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=31
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032・大石正巳
○大石正己君 不都合デス、ソレハ大間違デアル、今御尋シタトコロノモノハ滿韓ニ移
民ヲ集中スルト云フ〓ハ先程質問シテアルニ御答ガナイ、ナイカラ其催促ヲシテ居ルノデ
アル、御答ガナイノデアル、又亞米利加ニ向ッテ日本政府ヨリ腰ヲ屈メテ屈辱的聲明ヲ
セヌナラヌト云フ理由ハ、如何ナル〓デアルカト云フコトハマダ說明ニナラヌノデアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=32
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033・小村壽太郎
○外務大臣(伯爵小村壽太郞君) 第一ノ〓ハ日米條約トハ關係ガゴザイマセヌ、此
際ニハ御答致シマセヌ、第二ノ點ハ大石君ハ屈辱的聲明ト申シマスガ、政府ニ於テハ
全ク所見ヲ異ニ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=33
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034・大石正巳
○大石正己君 最早御答モ出來ヌコトヲ追窮スルモ甚ダ愚ノコトノヤウニ思ヒマスケレ
ドモ併ナガラ其答ガ出來ヌナラ出來ヌト御答ニナレバ宜イガ、又抗辯シテ滿韓移民集
中ノコトハ此問題ト關係ガナイト仰シヤルノハ何デアルカ、卽チ此移民制限、亞米利加
ニ對シテ届シテ居ルトコロノモノハ滿韓へ移民ヲ集中シテ伸ブルト云フ譯デ、昨年以來
議會ニ於テ政府ハ公言ヲサレテ居ル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)之ガ何等ノ關係ガナイト
云フコトハ是ハ全ク政府ノ遁辭デアル(「外務大臣ハ健忘症ナリヤ」ト呼フ者アリ)又
後ノ〓ハ屈辱デナイト仰シヤル、是ハ意見ガ違フニ相違ナイ屈辱デナイト仰シヤルナラバ
意見ガ違フニ相違ナイガ、是ハ外務大臣若クハ内閣大臣ノ私見デアル、此ノ如キモノガ
屈辱デナイト云フ註解ハ此日本國民ハ信用シナイコトテアル
〔「ヒヤノ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=34
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035・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是以上ノ御質問ハ議院法ノ四十八條ニ依ッテ御質問ニナ
ルガ宜カラウト思ヒマス-御諮ヲ致シマス、請願委員第一分科員中砂糖政策ニ關ス
ル件、調査委員會ヲ本會議ノ開議中ニ開キタイト云フ請求ガアリマス、御異議ハゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=35
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036・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ許可スルコトニ致シマス、日程第一及第三
ハ關聯シタル議案ニナルニ依ッテ、一括シテ議題トナスニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=36
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037・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ日程ノ第一、市制改正法律案、日程ノ
第三、町村制改正法律案、之ヲ一括シテ議題ト致シマス、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第市制改正法律案(政府提出)第一讀會
第三町村制改正法律案(政府提出第一讀會
市制改正法律案
市制
第一章總則
第一款市及其ノ區域
第二款市住民及其ノ權利義務
第三款市條例及市規則
第二章市會
第一款組織及選舉
第二款職務權限
第三章市參事會
第一款組織及選舉
第二款職務權限
第四章市吏員
第一款組織選舉及任免
第二款職務權限
第五章給料及給與
第六章市ノ財務
第一款財產營造物及市稅
第二款歲入出豫算及決算
第七章市ノ一部ノ事務
第八章市町村組合
第九章市ノ監督
第十章雜則
市制
第一章總則
第一款市及其ノ區域
第一條市ハ從來ノ區域ニ依ル
第二條市ハ法人トス官ノ監督ヲ承ケ法令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共事務竝
從來法令又ハ慣例ニ依リ及將來法律勅令ニ依リ市ニ屬スル事務ヲ處理ス
第三條市ノ廢置分合ヲ爲サムトスルトキハ關係アル市町村會及府縣參事
會ノ意見ヲ徵シテ內務大臣之ヲ定ム
前項ヲ塲合二於テ財產アルトキハ其ノ處分ハ開催アル市町村會ノ意
徵シ府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
第四條市ノ境界變更ヲ爲サムトスルトキハ府縣知事ハ關係アル市町村會
ノ意見ヲ徵シ府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ之ヲ定ム所屬
未定地ヲ市ノ區域ニ編入セムトスルトキ亦同シ
前項ノ場合ニ於テ財產アルトキ其ノ處分ニ關シテハ前項ノ例ニ依ル
第五條市ノ境界ニ關スル爭論ハ府縣參事會之ヲ裁定ス其ノ裁定ニ不服ア
ル市町村ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
市ノ境界判明ナラサル場合ニ於テ前項ノ爭論ナキトキハ府縣知事ハ府縣
參事會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル市町村ハ行政裁判所ニ出訴
スルコトヲ得
第一項ノ裁定及前項ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ關
係市町村ニ交付スヘシ
第一項ノ裁定及第二項ノ決定ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコ
トヲ得
第六條勅令ヲ以テ指定スル市ノ區ハ之ヲ法人トス其ノ財產及營造物ニ關
スル事務其ノ他法令ニ依リ區ニ屬スル事務ヲ處理ス
區ノ廢置分合又ハ境界變更其ノ他區ノ境界ニ關シテハ前二條ノ規定ヲ準
用ス但シ第四條ノ規定ヲ準用スル場合ニ於テハ關係アル市會ノ意見ヲモ
徵スヘシ
第七條市ハ其ノ名稱ヲ變更セムトスルトキハ內務大臣ノ許可ヲ受クヘ
シ
市役所ノ位置ヲ定メ又ハ之ヲ變更セムトスルトキハ市ハ府縣知事ノ許可
ヲ受クヘシ
前條ノ市カ其ノ區ノ名稱ヲ變更シ又ハ區役所ノ位置ヲ定メ若ハ之ヲ變更
セムトスルトキハ前項ノ例ニ依ル
第二款市住民及其ノ權利義務
第八條市內ニ住所ヲ有スル者ハ其ノ市住民トス
市住民ハ本法ニ從ヒ財產及營造物ヲ共用スル權利ヲ有シ市ノ負擔ヲ分任
スル義務ヲ負フ
第九條帝國臣民ニシテ獨立ノ生計ヲ營ム年齡二十五年以上ノ男子二年以
來市ノ住民ト爲リ其ノ市ノ負擔ヲ分任シ且其ノ市內ニ於テ直接國稅ヲ納
ムルトキハ其ノ市公民トス但シ貧困ノ爲公費ノ救助ヲ受ケタル後二年ヲ
經サル者、禁治產者、準禁治產者及六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラ
レタル者ハ此ノ限ニ在ラス
市ハ前項二年ノ制限ヲ特免スルコトヲ得
家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ニ付テハ其ノ財產ニ付被相續人ノ爲
シタル納稅ヲ以テ其ノ者ノ納稅シタルモノト看做ス
市公民ノ要件中其ノ年限ニ關スルモノハ市町村ノ廢置分合又ハ境界變更
ノ爲中斷セラルルコトナシ
市稅ヲ賦課セサル市ニ於テハ市公民ノ要件中市ノ負擔分任ニ關スル規定
ヲ適用セス
第十條市公民ハ市ノ選舉ニ參與シ市ノ名譽職ニ選舉セラルル權利ヲ有シ
市ノ名譽職ヲ擔任スル義務ヲ負フ
左ノ各號ノ一ニ該當セサル者ニシテ名譽職ノ當選ヲ辭シ又ハ其ノ職ヲ辭
シ若ハ其ノ職務ヲ實際ニ執行セサルトキハ市ハ一年以上四年以下其ノ市
公民權ヲ停止シ場合ニ依リ其ノ停止期間以内其ノ者ノ負擔スヘキ市稅ノ
十分ノ一以上四分ノ一以下ヲ增課スルコトヲ得
二一疾病ニ罹リ公務ニ堪ヘサル者
業務ノ爲常ニ市內ニ居ルコトヲ得サル者
三年齡六十年以上ノ者
四官公職ノ爲市ノ公務ヲ執ルコトヲ得サル者
五四年以上名譽職市吏員、名譽職參事會員、市會議員又ハ區會議員ノ職
ニ任シ爾後同一ノ期間ヲ經過セサル者
六其ノ他市曾ノ議決ニ依リ正當ノ理由アリト認ムル者
前項ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ府縣參事會ニ訴願シ
其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二項ノ處分ハ其ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第三項ノ裁決ニ付テハ府縣知事又ハ市長ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十一條市公民第九條第一項ニ揭ケタル要件ノ一ヲ闕キ又ハ同項但書ニ
當ルニ至リタルトキハ其ノ公民權ヲ失フ
市公民租稅滯納處分中ハ其ノ公民權ヲ停止ス家資分散若ハ破產ノ宣告ヲ
受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復權ノ決定確定スルニ至ル迄又ハ禁錮以上
ノ刑ノ宣告ヲ受ケタルトキヨリ其ノ執行ヲ終リ若ハ其ノ執行ヲ受クルコ
トナキニ至ル迄亦同シ
陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ市ノ公務ニ參與スルコトヲ得ス其ノ他ノ兵役
ニ在ル者ニシテ戰時又ハ事變ニ際シ召集セラレタルトキ亦同シ
第三款市條例及市規則
第十二條市ハ市住民ノ權利義務又ハ市ノ事務ニ關シ市條例ヲ設クルコト
ヲ得
市ハ市ノ營造物ニ關シ市條例ヲ以テ規定スルモノノ外市規則ヲ設クルコ
トヲ得
市條例及市規則ハ一定ノ公告式ニ依リ之ヲ告示スヘシ
第二章市會
第一款組織及選舉
第十三條市會議員ハ其ノ被選舉權アル者ニ就キ選舉人之ヲ選舉ス
議員ノ定數左ノ如シ
一人口五萬未滿ノ市ニ於テハ三十人
二三十六人
三野六 九
四人11十萬以上三十萬未滿ノ市ニ於テハ上海交通大学
五人十萬以上ノ市ニ於テハ四十五人
ハ人口二十萬ヲ加フル每ニ議員三人ヲ增加ス
機會員買ノノ定之數枚ハハ激漸無鹽制ヲタファ合作シ之ヲ擔任者ハ之ヲ增被セス但シ著シク人口
ノ增減アリタル場合ニ於テ內務大臣ノ許可ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラ
ス
第十四條市公民ハ總テ選舉權ヲ有ス但シ公民權停止中ノ者又ハ第十一條
第三項ノ場合ニ當ル者ハ此ノ限ニ在ラス
帝國臣民ニシテ直接市稅ヲ納ムル者其ノ額市公民ノ最多ク納稅スル者三
人中ノ一人ヨリモ多キトキハ第九條第一項ノ要件ニ當ラスト雖選擧權ヲ
有ス但シ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者及第十一條第二
項ノ公民權停止ノ條件又ハ同條第三項ノ場合ニ當ル者ハ此ノ限ニ在ラ
ス
法人ニ關シテモ亦前項ノ例ニ依ル
直接市稅ヲ賦課セサル市ニ於テハ其ノ市內ニ於テ納ムル直接國稅額ニ依
リ前二項ノ規定ヲ適用ス
前三項ノ直接市稅及直接國稅ノ納額ハ選舉人名簿調製期日ノ屬スル會計
年度ノ前年度ノ賦課額ニ依ルヘシ
第十五條選舉人ハ分チテ三級トス
選舉人中直接市稅ノ納額最多キ者ヲ合セテ選舉人全員ノ納ムル總額ノ三
分ノ一ニ當ルヘキ者ヲ一級トス但シ一級選舉人ノ數議員定數ノ三分ノ一
ヨリ少キトキハ納額最多キ者議員定數ノ三分ノ一ト同數ヲ以テ一級ト
ス
一級選舉人ヲ除クノ外直接市稅ノ納額最多キ者ヲ合セテ選舉人全員ノ納
ムル直接市稅ノ總額中一級選舉人ノ納ムル額ヲ除キ其ノ殘額ノ半ニ當ル
へキ者ヲ二級トシ其ノ他ノ選擧人ヲ三級トス但シ二級選擧人ノ場合ニハ
前項但書ノ規定ヲ準用ス
各級ノ間納稅額兩級ニ跨ル者アルトキハ上級ニ入ルヘシ兩級ノ間ニ同額
ノ納稅者二人以上アルトキハ其ノ市內ニ住所ヲ有スル年數ノ多キ者ヲ以
テ上級ニ入ル住所ヲ有スル年數同シキトキハ年長者ヲ以テシ年齡ニ依リ
難キトキハ市長抽籤シテ之ヲ定ムヘシ
選舉人ハ每級各別ニ議員定數ノ三分ノ一ヲ選擧ス但シ選舉區アル場合ニ
於テ議員ノ數三分シ難キトキハ其ノ配當方法ハ第十六條ノ市條例中ニ之
ヲ規定スヘシ
被選舉人ハ同級內ノ者ニ限ラス各級ニ通シテ選舉セラルルコトヲ得
直接市稅ヲ賦課セサル市ニ於テハ第二項乃至第四項ノ納稅額ハ選舉人ノ
市內ニ於テ納ムル直接國稅額ニ依ルヘシ
第二項乃至第四項及前項ノ直接市稅及直接國稅ノ納額ニ關シテハ前條第
五項ノ規定ヲ適用ス
第十六條市ハ市條例ヲ以テ選舉區ヲ設クルコトヲ得二級又ハ三級選舉ノ
爲ノミニ付亦同シ
選舉區ノ數及其ノ區域竝各選舉區ヨリ選出スル議員數ハ前項ノ市條例中
ニ之ヲ規定スヘシ
第六條ノ市ニ於テハ區ヲ以テ選舉區トス其ノ各選舉區ヨリ選出スル議員
數ハ市條例ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
選舉人ハ住所ニ依リ所屬ノ選舉區ヲ定ム市內ニ住所ナキ者ハ直接市稅若
ハ直接國稅ノ賦課ヲ受ケタル物件又ハ營業所ノ所在ニ依リ物件又ハ營業
所ニシテ數選舉區ニ在ル場合ニハ之ニ對スル課稅ノ最多キ所ニ依リ其ノ
之ニ依リ難キ場合ニハ本人ノ申出ニ依リ其ノ申出ナキトキハ市長ニ於テ
選擧區ヲ定ムヘシ
選舉區ニ於テハ前條ノ規定ニ準シ選舉人ノ等級ヲ分ツヘシ但シ一級選舉
人ノ數其ノ選出スヘキ議員配當數ヨリ少キトキハ納額最多キ者議員配當
數ト同數ヲ以テ一級トス二級選舉人ニ付亦同シ
被選舉人ハ同選舉區内ノ者ニ限ラス各選舉區ニ通シテ選舉セラルルコト
ヲ得
第十七條特別ノ事情アルトキハ市ハ府縣知事ノ許可ヲ得區劃ヲ定メテ選
〓分會ヲ設クルコトヲ得二級又ハ三級選舉ノ爲ノミニ付亦同シ
第十八條選舉權ヲ有スル市公民ハ被選擧權ヲ有ス
左ニ掲クル者ハ被選舉權ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一月ヲ經過セサル
者亦同シ
一所屬府縣ノ官吏及有給吏員
二其ノ市ノ有給吏員
三檢事警察官吏及收稅官吏
四神官神職僧侶其ノ他諸宗〓師
五小學校〓員
市ニ對シ常ニ工事ノ請負、物件勞力其ノ他ノ供給契約ヲ爲シ若ハ市ノ爲
金錢出納ノ取扱ヲ爲ス者又ハ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ役員ハ其ノ市ニ於
テ被選擧權ヲ有セス
父子兄弟タル緣故アル者ハ同時ニ市會議員ノ職ニ在ルコトヲ得ス其ノ同
時ニ選舉セラレタルトキハ同級ニ在リテハ得票ノ數ニ依リ其ノ多キ者一
人ヲ當選者トシ同數ナルトキ又ハ等級若ハ選舉區ヲ異ニシテ選舉セラレ
タルトキハ年長者ヲ當選者トス其ノ時ヲ異ニシテ選舉セラレタルトキハ
後ニ選舉セラレタル者議員タルコトヲ得ス
議員ト爲リタル後前項ノ緣故ヲ生シタル場合ニ於テハ年少者其ノ職ヲ失
フ
市長市參與又ハ助役ト父子兄弟タル緣故アル者ハ市會議員ノ職ニ在ルコ
トヲ得ス
第十九條市會議員ハ名譽職トス
議員ノ任期ハ四年トシ總選舉ノ第一日ヨリ之ヲ起算ス
議員ノ定數ニ異動ヲ生シタル爲解任ヲ要スル者アルトキハ每級各別ニ市
長抽籤シテ之ヲ定ム選舉區アル場合ニ於テハ第十六條ノ市條例中ニ其ノ
解任ヲ要スル者ノ選擧區及等級ヲ規定シ市長抽籤シテ之ヲ定ムヘシ但シ
解任ヲ要スル選擧區及等級ニ關員アルトキハ其ノ闕員ヲ以テ之ニ充ツヘ
シ
議員ノ定數ニ異動ヲ生シタル爲新ニ選舉セラレタル議員ハ總選舉ニ依リ
選舉セラレタル議員ノ任期滿了ノ日迄在任ス
選舉區又ハ其ノ配當議員數ノ變更アリタル場合ニ於テ之ニ關シ必要ナル
事項ハ第十六條ノ市條例中ニ之ヲ規定スヘ
第二十條市會議員中闕員ヲ生シ其ノ闕員議員定數ノ三分ノ一以上ニ至リ
タルトキ又ハ府縣知事市長若ハ市會ニ於テ必要ト認ムルトキハ補闕選舉
ヲ行フヘシ
補闕議員ハ其ノ前任者ノ殘任期間在任ス
補闕議員ハ前任者ノ選舉セラレタル等級及選舉區ニ於テ之ヲ選舉スヘシ
第二十一條市長ハ選舉期日前六十日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ選舉人
ノ資格ヲ記載セル選舉人名簿ヲ調製スヘシ但シ選舉區アルトキハ選舉每
ニ名簿ヲ調製スヘシ
第六條ノ市ニ於テハ市長ハ區長ヲシテ前項ノ名簿ヲ調製セシムヘシ
市長ハ選舉期日前五十日ヲ期トシ其ノ日ヨリ七日間每日午前八時ヨリ午
後四時迄市役所第六條ノ市ニ又ハ告示シタル場所ニ於テ選舉人名簿ヲ關係
於テハ區役所
者ノ縱覽ニ供スヘシ關係者ニ於テ異議アルトキハ縱覽期間內ニ之ヲ市長
テハ區長ヲ經テ第六條ノ市ニボニ申立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ市長ハ縱覽期間滿了
後三日以内ニ市會ノ決定ニ付スヘシ市會ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ七
日以內ニ之ヲ決定スヘシ
前項ノ決定ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決又ハ第五項ノ裁
決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第三項ノ決定及前項ノ裁決ニ付テハ市長ヨリモ訴願又ハ訴訟ヲ提起スル
コトヲ得
前二項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
前四項ノ場合ニ於テ決定若ハ裁決確定シ又ハ判決アリタルニ依リ名簿ノ
修正ヲ要スルトキハ市長ハ其ノ確定期日前ニ修正ヲ加ヘ第六條ノ市ニ於
テハ區長ヲシテ修正セシムヘシ
選舉人名簿ハ選舉期日前三日ヲ以テ確定ス
確定名簿ハ第三條又ハ第四條ノ處分アリタル場合ニ於テ府縣知事ノ指定
スルモノヲ除クノ外其ノ確定シタル日ヨリ一年以內ニ於テ行フ選舉ニ之
ヲ用ウ選舉區アル場合ニ於テハ各選舉區ニ涉リ同時ニ調製シタルモノハ
確定シタル日ヨリ一年以內ニ於テ行フ選舉ニ之ヲ用井一部ノ選舉區限リ
調製シタルモノハ確定シタル日ヨリ一年以內ニ該選舉區ニ於テノミ行フ
選舉ニ之ヲ用ウ但シ名簿確定後裁決確定シ又ハ判決アリタルニ依リ名簿
ノ修正ヲ要スルトキハ選舉ヲ終リタル後ニ於テ次ノ選舉期日前四日迄ニ
之ヲ修正スヘシ
選舉人名簿ヲ修正シタルトキハ市長ハ直ニ其ノ要領ヲ告示シ第六條ノ市
ニ於テハ區長ヲシテ之ヲ〓示セシムヘシ
選舉分會ヲ設クルトキハ市長ハ確定名簿ニ依リ分會ノ區劃每ニ名簿ノ抄
本ヲ調製スヘシ第六條ノ市ニ於テハ區長ヲシテ之ヲ調製セシムヘシ
確定名簿ニ登錄セラレサル者ハ選舉ニ參與スルコトヲ得ス但シ選舉人名
簿ニ登錄セラルヘキ確定裁決書又ハ判決書ヲ所持シ選舉ノ當日選舉會場
ニ到ル者ハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ選舉人ハ等級ノ標準タル直接市稅又ハ直接國稅ニ依リ其ノ者
ノ納額ニシテ名簿ニ登錄セラレタル一級選舉人中ノ最少額ヨリ多キトキ
ハ一級ニ於テ二級選舉人中ノ最少額ヨリ多キトキハ二級ニ於テ其ノ他ハ
三級ニ於テ選舉ヲ行フヘシ
確定名簿ニ登錄セラレタル者選舉權ヲ有セサルトキハ選舉ニ參與スルコ
トヲ得ス但シ名簿ハ之ヲ修正スル限ニ在ラス
第三項乃至第六項ノ場合ニ於テ決定若ハ裁決確定シ又ハ判決アリタルニ
依リ名簿無效ト爲リタルトキハ更ニ名簿ヲ調製スヘシ其ノ名簿ノ調製、
縱覽、修正、確定及異議ノ決定ニ關スル期日、期限及期間ハ府縣知事ノ定
ムル所ニ依ル名簿ノ喪失シタルトキ亦同シ
選舉人名簿調製後ニ於テ選舉期日ヲ變更スルコトアルモ其ノ名簿ヲ用井
縱覽、修正、確定及異議ノ決定ニ關スル期日、期限及期間ハ前選舉期日ニ
依リ之ヲ算定ス
第二十二條市長ハ選舉期日ヨリ少クトモ七日前ニ選舉會場、投票ノ日時
及各級ヨリ選舉スヘキ議員數ヲ告示スヘシ選舉區アル場合ニ於テハ各級
ヨリ選舉スヘキ議員數ヲ選舉區每ニ分別シ選舉分會ヲ設クル場合ニ於テ
ハ併セテ其ノ等級及區劃ヲ告示スヘシ
各選舉區ノ選舉ハ同日時ニ之ヲ行ヒ選舉分會ノ選舉ハ本會ト同日時ニ之
ヲ行フヘシ天災事變等ニ依リ同日時ニ選舉ヲ行フコト能ハサルトキハ市
長ハ其ノ選舉ヲ終ラサル選舉會又ハ選舉分會ノミニ關シ更ニ選舉會場及
投票ノ日時ヲ告示シ選舉ヲ行フヘシ
選舉ヲ行フ順序ハ先ツ三級ノ選舉ヲ行ヒ次ニ二級ノ選舉ヲ行ヒ次ニ一級
ノ選舉ヲ行フヘシ天災事變等ニ依リ選舉ヲ行フコト能ハサルニ至リタル
トキハ市長ハ其ノ選舉ヲ終ラサル等級ノミニ關シ更ニ選舉會場及投票ノ
日時ヲ告示シ選舉ヲ行フヘシ
第二十三條市長ハ選擧長ト爲リ選舉會ヲ開閉シ其ノ取締ニ任ス
各選舉區ノ選舉會ハ市長又ハ其ノ指名シタル吏員第六條ノ市ニ選擧長ト爲
於テハ區長
リ之ヲ開閉シ其ノ取締ニ任ス
選舉分會ハ市長ノ指名シタル吏員選舉分會長ト爲リ之ヲ開閉シ其ノ取締
二世六
市長第六條ノ市ニハ選舉人中ヨリ二人乃至四人ノ選舉立會人ヲ選任スヘシ
於テハ區長
但シ選發區アルトキ又ハ選惡分會ヲ散ケタルトキハ各別ニ達擧文啻
設クヘシ
選舉立會人ハ名譽職トス
第二十四條選舉人ニ非サル者ハ選舉會場ニ入ルコトヲ得ス但シ選舉會場
ノ事務ニ從事スル者、選舉會場ヲ監視スル職權ヲ有スル者又ハ警察官吏
ハ此ノ限ニ在ラス
選擧會場ニ於テ演說討論ヲ爲シ若ハ喧擾ニ涉リ又ハ投票ニ關シ協議若ハ
勸誘ヲ爲シ其ノ他選舉會場ノ秩序ヲ紊ス者アルトキハ選擧長又ハ分會長
ハ之ヲ制止シ命ニ從ハサルトキハ之ヲ選舉會場外ニ退出セシムヘシ
前項ノ規定ニ依リ退出セシメラレタル者ハ最後ニ至リ投票ヲ爲スコトヲ
得但シ選舉長又ハ分會長會場ノ秩序ヲ紊スノ虞ナシト認ムル場合ニ於テ
投票ヲ爲サシムルヲ妨ケス
第二十五條選舉ハ無記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選舉人ハ選舉ノ當日投票時間內ニ自ラ選舉會場ニ到リ選舉人名簿又ハ其
ノ抄本ノ對照ヲ經テ投票ヲ爲スヘシ
投票時間內ニ選擧會場ニ入リタル選舉人ハ其ノ時間ヲ過クルモ投票ヲ爲
スコトヲ得
選擧人ハ選舉會場ニ於テ投票用紙ニ自ラ被選舉人一人ノ氏名ヲ記載シテ
投函スヘシ但シ確定名簿ニ登錄セラレタル每級選舉人ノ數其ノ選舉スヘ
キ該農數ノ二倍ヨリ少キ場合ニ於テハ連名投票ノ法ヲ用ツヘシ
自ラ被選舉人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者ハ投票ヲ爲スコトヲ得ス
投票用紙ハ市長ノ定ムル所ニ依リ一定ノ式ヲ用ウヘシ
選舉區アル場合ニ於テ選舉人名簿ノ調製後選舉人ノ所屬ニ異動ヲ生スル
コトアルモ其ノ選舉人ハ前所屬ノ選舉區ニ於テ投票ヲ爲スヘシ
選舉分會ニ於テ爲シタル投票ハ分會長少クトモ一人ノ選擧立會人ト共ニ
投票函ノ儘之ヲ本會ニ送致スヘシ
第二十六條增員選擧及補闕選舉ヲ同時ニ行フ場合ニ於テハ一ノ選舉ヲ以
テ合併シテ之ヲ行フ
第二十七條第十四條第二項又ハ第三項ノ規定ニ依リ選舉權ヲ有スル者ハ
代人ヲ出シテ選舉ヲ行フコトヲ得但シ年齡二十五年以上ノ男子ニ非サル
者、禁治產者及準禁治產者ハ必ス代人ヲ以テスヘシ
代人ハ帝國臣民ニシテ年齡二十五年以上ノ男子ニ限ル
第九條第一項但書ニ當ル者、第十條第二項ノ規定ニ依ル公民權停止中ノ
者及第十一條第二項ノ公民權停止ノ條件又ハ同條第三項ノ場合ニ當ル者
ハ代人タルコトヲ得ス又一人ニシテ數人ノ代理ヲ爲スコトヲ得ス
代人ハ委任狀其ノ他代理ヲ證スル書面ヲ選舉長又ハ分會長ニ示スヘシ
第二十八條左ノ投票ハ之ヲ無效トス
一成規ノ用紙ヲ用井サルモノ
二現ニ市會議員ノ職ニ在ル者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
三一投票中二人以上ノ被選舉人ノ氏名ヲ記載シタルモノ
被選舉人ノ何人タルカヲ確認シ難キモノ
六五四被選舉權ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
被選舉人ノ氏名ノ外他事ヲ記入シタルモノ但シ爵位職業身分住所又
ハ敬稱ノ類ヲ記入シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
連名投票ノ法ヲ用井タル場合ニ於テハ前項第一號及第六號ニ該當スルモ
ノ竝其ノ記載ノ人員選舉スヘキ定數ニ過キタルモノハ之ヲ無效トシ前項
第二號第四號及第五號ニ該當スルモノハ其ノ部分ノミヲ無效トス
第二十九條投票ノ拒否及效力ハ選舉立會人之ヲ決定ス可否同數ナルトキ
ハ選擧長之ヲ決定スヘ
選舉分會ニ於ケル投票ノ拒否ハ其ノ選舉立會人之ヲ決定ス可否同數ナル
トキハ分會長之ヲ決スヘシ
第三十條市會議員ノ選舉ハ有效投票ノ最多數ヲ得タル者ヲ以テ當選者
トス但シ各級ニ於テ選舉スヘキ議員數ヲ以テ選舉人名簿ニ登錄セラレタ
ル各級ノ人員數ヲ除シテ得タル數ノ五分ノ一以上ノ得票アルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ當選者ヲ定ムルニ當リ得票ノ數同シキトキハ年長者ヲ
取リ年齡同シキトキハ選舉長抽籤シテ之ヲ定ムヘシ
第三十一條選舉長又ハ分會長ハ選舉錄ヲ調製シテ選舉又ハ投票ノ〓末ヲ
記載シ選舉又ハ投票ヲ終リタル後之ヲ朗讀シ選舉立會人二人以上ト共ニ
之ニ署名スヘシ
各選舉區ノ選舉長ハ選舉錄テハ其ノ謄本第ハ〓〓〓ノ諸キ於ヲ添ヘ當選者ノ住所氏名ヲ市長
ニ報告スヘシ
選舉分會長ハ投票函ト同時ニ選舉錄ヲ本會ニ送致スヘシ
選舉錄ハ投票、選舉人名簿其ノ他ノ關係書類ト共ニ選擧及當選ノ效力確
定スルニ至ル迄之ヲ保存スヘシ
第三十二條當選者定マリタルトキハ市長ハ直ニ當選者ニ當選ノ旨ヲ告知
シ第六條ノ市ニ於テハ區長ヲシテ之ヲ告知セシムヘシ
當選者當選ヲ辭セムトスルトキハ當選ノ告知ヲ受ケタル日ヨリ五日以內
ニ之ヲ市長ニ申立ツヘシ
一人ニシテ數級又ハ數選舉區ニ於テ當選シタルトキハ最終ニ當選ノ告知
ヲ受ケタル日ヨリ五日以內ニ何レノ當選ニ應スヘキカヲ市長ニ申立ツヘ
シ其ノ期間內ニ之ヲ申立テサルトキハ市長抽籤シテ之ヲ定ム
第十八條第二項ニ揭ケサル官吏ニシテ當選シタル者ハ所屬長官ノ許可ヲ
受クルニ非サレハ之ニ應スルコトヲ得ス
前項ノ官吏ハ當選ノ告知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ之ニ應スヘキ旨
ヲ市長ニ申立テサルトキハ其ノ當選ヲ辭シタルモノト看做ス第三項ノ場
合ニ於テ何レノ當選ニ應スヘキカヲ申立テサルトキハ總テ之ヲ辭シタル
モノト看做ス
第三十三條市會議員ノ當選ヲ辭シタル者アルトキハ市長ハ直ニ之ヲ補フ
ヘキ當選者ヲ定ムヘシ此ノ場合ニ於テハ第三十條ノ規定ヲ準用ス
第三十四條選舉ヲ終リタルトキハ市長ハ直ニ選舉錄ノ謄本ヲ添へ之ヲ府
縣知事ニ報〓スヘシ
第三十二條第二項ノ期間ヲ經過シタルトキ同條第三項若ハ第五項ノ申
立アリタルトキ又ハ同條第三項ノ規定ニ依リ抽籖ヲ爲シタルトキハ市長
ハ直ニ當選者ノ住所氏名ヲ告示シ併セテ之ヲ府縣知事ニ報告スヘシ
第三十五條選舉ノ規定ニ違反スルコトアルトキハ選舉ノ結果ニ異動ヲ生
スルノ虞アル場合ニ限リ其ノ選舉ノ全部又ハ一部ヲ無效トス
第三十六條選舉人選舉又ハ當選效力ニ關シ異議アルトキハ選舉ニ關シテ
ハ選舉ノ日ヨリ當選ニ關シテハ第三十四條第二項ノ告示ノ日ヨリ七日以
內ニ之ヲ市長ニ申立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ市長ハ七日以內ニ市
會ノ決定ニ付スヘシ市會ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ十四日以內ニ之ヲ
決定スヘシ
前項ノ決定ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願スルコトヲ得
府縣知事ハ選舉又ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選舉ニ關シテハ第
三十四條第一項ノ報告ヲ受ケタル日ヨリ當選ニ關シテハ同條第二項ノ報
告ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ之ヲ府縣參事會ノ決定ニ付スルコトヲ
得
前項ノ決定アリタルトキハ同一事件ニ付爲シタル異議ノ申立及市會ノ決
定ハ無效トス
第二項若ハ第六項ノ裁決又ハ第三項ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ
出訴スルコトヲ得
第一項ノ決定ニ付テハ市長ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第二項若ハ前項ノ裁決又ハ第三項ノ決定ニ付テハ府縣知事又ハ市長ヨリ
モ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
市會議員ハ選舉又ハ當選ニ關スル決定若ハ裁決確定シ又ハ判決アル迄ハ
會議ニ列席シ議事ニ參與スルノ權ヲ失ハス
第三十七條當選無效ト確定シタルトキハ市長ハ直ニ第三十條ノ例ニ依リ
更ニ當選者ヲ定ム->
選舉無效ト確定シタルトキハ更ニ選舉ヲ行フヘシ議員ノ定數ニ足ル當選
者ヲ得ルコト能ハサルトキハ其ノ不足ノ員數ニ付亦同シ
第三十八條市會議員ニシテ被選舉權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被
選擧權ノ有無ハ市會之ヲ決定ス但シ禁治產者、準禁治產者、六年ノ懲役若
ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者、市公民權ヲ停止セラレタル者又ハ第
十一條第三項ノ場合ニ當ル者ニ付テハ市長之ヲ決定スヘシ
市長ハ市會議員中被選舉權ヲ有セサル者アリト認ムルトキハ之ヲ市會ノ
決定ニ付スヘシ
第一項ノ決定ヲ受ケタル者其ノ決定ニ不服アルトキハ府縣參事會ニ訴願
シ其ノ裁決又ハ第四項ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコ
トヲ得
第一項ノ決定及前項ノ裁決ニ付テハ市長ヨリモ訴願又ハ訴訟ヲ提起スル
コトヲ得
前二項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十六條第八項ノ規定ハ第一項及前三項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第一項ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ本人ニ交付スヘ
シ
第三十九條第二十一條及第三十六條ノ場合ニ於テ府縣參事會ノ決定及裁
決ハ府縣知事、市會ノ決定ハ市長直ニ之ヲ告示スヘシ
第四十條本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令ニ依リ設置スル議會ノ議員
ノ選擧ニ付テハ衆議院議員選舉ニ關スル罰則ヲ準用ス
前項ノ罰則中選舉人ニ關スル規定ハ第二十七條ノ代人ニ之ヲ準用ス
第二款職務權限
第四十一條市會ハ市ニ關スル事件及法律勅令ニ依リ其ノ權限ニ屬スル事
件ヲ議決ス
第四十二條市會ノ議決スヘキ事件ノ〓目左ノ如シ
一市條例及市規則ヲ設ケ又ハ改廢スル事
二市費ヲ以テ支辨スヘキ事業ニ關スル事但シ第九十三條ノ事務及法律
勅令ニ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
歲入出豫算ヲ定ムル事
五四三決算報告ヲ認定スル事
法令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料、手數料、加入金、市稅又ハ夫役現
品ノ賦課徵收ニ關スル事
不動產ノ管理處分及取得ニ關スル事
八七六基本財產及積立金穀等ノ設置管理及處分ニ關スル事
歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及權
利ノ抛棄ヲ爲ス事
九財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法律勅令ニ規定アルモノハ
此ノ限ニ在ラス
十市吏員ノ身元保證ニ關スル事
十一市ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事
第四十三條市會ハ其ノ權限ニ屬スル事項ノ一部ヲ市參事會ニ委任スルコ
トヲ得
第四十四條市會ハ法律勅令ニ依リ其ノ權限ニ屬スル選舉ヲ行フヘシ
第四十五條市會ハ市ノ事務ニ關スル書類及計算書ヲ檢閱シ市長ノ報告ヲ
請求シテ事務ノ管理、議決ノ執行及出納ヲ檢査スルコトヲ得
市會ハ議員中ヨリ委員ヲ選舉シ市長又ハ其ノ指名シタル吏員立會ノ上實
地ニ就キ前項市會ノ權限ニ屬スル事件ヲ行ハシムルコトヲ得
第四十六條市會ハ市ノ公益ニ關スル事件ニ付意見書ヲ市長又ハ監督官廳
ニ提出スルコトヲ得
第四十七條市會ハ行政廳ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
市會ノ意見ヲ徵シテ處分ヲ爲スヘキ場合ニ於テ市會成立セス、招集ニ應
セス若ハ意見ヲ提出セス又ハ市會ヲ招集スルコト能ハサルトキハ當該行
政廳ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十八條市會ハ議員中ヨリ議長及副議長一人ヲ選舉スヘシ
議長及副議長ノ任期ハ議員ノ任期ニ依ル
第四十九條議長故障アルトキハ副議長之ニ代ハリ議長及副議長共ニ故障
アルトキハ年長ノ議員議長ノ職務ヲ代理ス年齢同シキトキハ抽籤ヲ以テ
之ヲ定ム
第五十條市長及其ノ委任又ハ囑託ヲ受ケタル者ハ會議ニ列席シテ議事
ニ參與スルコトヲ得但シ議決ニ加ハルコトヲ得ス
前項ノ列席者發言ヲ求ムルトキハ議長ハ直ニ之ヲ許スヘシ但シ之カ爲議
員ノ演說ヲ中止セシムルコトヲ得ス
第五十一條市會ハ市長之ヲ招集ス議員定數三分ノ一以上ノ請求アルトキ
ハ市長ハ之ヲ招集ス, 9
市長ハ必要アル場合ニ於テハ會期ヲ定メテ市會ヲ招集スルコトヲ得
招集及會議ノ事件ハ開會ノ日ヨリ少クトモ三日前ニ之ヲ告知スヘシ但シ
急施ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
市會開會中急施ヲ要スル事件アルトキハ市長ハ直ニ之ヲ其ノ會議ニ付ス
ルコトヲ得三日前迄ニ告知ヲ爲シタル事件ニ付亦同シ
市會ハ市長之ヲ開閉ス
第五十二條市會ハ議員定數ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコ
トヲ得ス但シ第五十四條ノ除斥ノ爲半數ニ滿タサルトキ同一ノ事件ニ付
招集再囘ニ至ルモ仍半數ニ滿タサルトキ又ハ招集ニ應スルモ出席議員定
數ヲ闕キ議長ニ於テ出席ヲ催告シ仍半數ニ滿タサルトキハ此ノ限ニ在ラス
第五十三條市會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決
スル所ニ依ル
第五十四條議長及議員ハ自己又ハ父母、祖父母、妻、子孫、兄弟姊妹ノ一身上
ニ關スル事件ニ付テハ其ノ議事ニ參與スルコトヲ得ス但シ市會ノ同意ヲ
得タルトキハ會議ニ出席シ發言スルコトヲ得
第五十五條法律勅令ニ依リ市會ニ於テ選舉ヲ行フトキハ本法中別段ノ規
定アル場合ヲ除クノ外一人每ニ無記名投票ヲ爲シ有效投票ノ過半數ヲ得
タル者ヲ以テ當選者トス過半數ヲ得タル者ナキトキハ最多數ヲ得タル者
二人ヲ取リ之ニ就キ決選投票ヲ爲サシム其ノ二人ヲ取ルニ當リ同數者ア
ルトキハ年長者ヲ取リ年齡同シキトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム此ノ決選
投票ニ於テハ多數ヲ得タル者ヲ以テ當選者トス同數ナルトキハ年長者ヲ
取リ年齡同シキトキハ議長抽籖シテ之ヲ定ム
前項ノ場合ニ於テハ第二十五條及第二十八條ノ規定ヲ準用シ投票ノ效力
ニ關シ異議アルトキハ市會之ヲ決定ス
第一項ノ選舉ニ付テハ市會ハ其ノ議決ヲ以テ指名推選又ハ連名投票ノ法
ヲ用ウルコトヲ得其ノ連名投票ノ法ヲ用ウル場合ニ於テハ前二項ノ例ニ
依ル
第五十六條市會ノ會議ハ公開ス但シ左ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
一市長ヨリ傍聽禁止ノ要求ヲ受ケタルトキ
二議長又ハ議員三人以上ノ發議ニ依リ傍聽禁止ヲ可決シタルトキ
前項議長又ハ議員ノ發議ハ討論ヲ須井ス其ノ可否ヲ決スヘシ
第五十七條議長ハ會議ヲ總理シ會議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ會議ヲ開閉シ
議場ノ秩序ヲ保持ス
第五十八條議員ハ選舉人ノ指示又ハ委囑ヲ受クヘカラス
議員ハ會議中無禮ノ語ヲ用井又ハ他人ノ身上ニ渉リ言論スルコトヲ得ス
第五十九條會議中本法又ハ會議規則ニ違ヒ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ス議員
アルトキハ議長ハ之ヲ制止シ又ハ發言ヲ取消サシメ命ニ從ハサルトキハ
當日ノ會議ヲ終ル迄發言ヲ禁止シ又ハ議場外ニ退去セシメ必要アル場合
ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
議場騒擾ニシテ整理シ難キトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ中止シ又ハ之ヲ閉
ツルコトヲ得
第六十條傍聽人公然可否ヲ表シ又ハ喧騒ニ涉リ其ノ他會議ノ妨害ヲ爲
ストキハ議長ハ之ヲ制止シ命ニ從ハサルトキハ之ヲ退場セシメ必要アル
場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
傍聽席騒擾ナルトキハ議長ハ總テノ傍聽人ヲ退場セシメ必要アル場合ニ
於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
第六十一條市會ニ書記ヲ置キ議長ニ隷屬シテ庶務ヲ處理セシム
書記ハ議長之ヲ任免ス
第六十二條議長ハ書記ヲシテ會議錄ヲ調製シ會議ノ〓末及出席議員ノ氏
名ヲ記載セシムヘシ
會議錄ハ議長及議員二人以上之ニ署名スルコトヲ要ス其ノ議員ハ市會ニ
於テ之ヲ定ムヘシ
議長ハ會議錄ヲ添ヘ會議ノ結果ヲ市長ニ報告スヘシ
第六十三條市會ハ會議規則及傍聽人取締規則ヲ設クヘシ
會議規則ニハ本法及會議規則ニ違反シタル議員ニ對シ市會ノ議決ニ依リ
三日以內出席ヲ停止シ又ハ二圓以下ノ過怠金ヲ科スル規定ヲ設クルコト
ヲ得
第三章市參事會
第一款組織及選舉
第六十四條市ニ市參事會ヲ置キ左ノ職員ヲ以テ之ヲ組織ス
-市長
二助役
三名譽職參事會員
前項ノ外市參與ヲ置ク市ニ於テハ市參與ハ參事會員トシテ其ノ擔任事業
ニ關スル場合ニ限リ會議ニ列席シ議事ニ參與ス
第六十五條名譽職參事會員ノ定數ハ第六條ノ市ニ在リテハ八人其ノ他ノ
市ニ在リテハ六人トス
名譽職參事會員ハ市會ニ於テ其ノ議員中ヨリ之ヲ選舉スヘシ其ノ選舉ニ
關シテハ第二十五條第二十八條及第三十條ノ規定ヲ準用シ投票ノ效力ニ
關シ異議アルトキハ市會之ヲ決定ス
名譽職參事會員中闕員アルトキハ直ニ補關選舉ヲ行フヘシ
名譽職參事會員ノ任期ハ市會議員ノ任期ニ依ル但シ市會議員ノ任期滿了
ノ場合ニ於テハ後任名譽職參事會員選舉ノ日迄在任ス
第六十六條市參事會ハ市長ヲ以テ議長トス市長故障アルトキハ市長代理
者之ヲ代理ス
第二款職務權限
第六十七條市參事會ノ職務權限左ノ如シ
一市曾ノ權限ニ屬スル事件ニシテ其ノ委任ヲ受ケタルモノヲ議決スル
事
二市長ヨリ市會ニ提出スル議案ニ付市長ニ對シ意見ヲ述フル事
三其ノ他法令ニ依リ市參事會ノ權限ニ屬スル事件
第六十八條市參事會ハ市長之ヲ招集ス名譽職參事會員定數ノ半數以上ノ
請求アルトキハ市長ハ之ヲ招集スヘシ
第六十九條市參事會ノ會議ハ傍聽ヲ許サス
第七十條市參事會ハ議長又ハ其ノ代理者及名譽職參事會員定數ノ半數
以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス但シ第二項ノ除斥ノ爲名
譽職參事會員其ノ半數ニ滿タサルトキ、同一ノ事件ニ付招集再囘ニ至ル
モ仍名譽職參事會員其ノ半數ニ滿タサルトキ又ハ招集ニ應スルモ出席名
譽職參事會員定數ヲ闕キ議長ニ於テ出席ヲ催告シ仍半數ニ滿タサルトキ
ハ此ノ限ニ在ラス
議長及參事會員ハ自己又ハ父母、祖父母、妻、子孫、兄弟姊妹ノ一身上ニ
關スル事件ニ付テハ其ノ議事ニ參與スルコトヲ得ス但シ市參事會ノ同意
ヲ得タルトキハ會議ニ出席シ發言スルコトヲ得
議長及其ノ代理者共ニ前項ノ場合ニ當ルトキハ年長ノ名譽職參事會員議
長ノ職務ヲ代理ス
第七十一條第四十六條第四十七條第五十條第五十一條第二項及第五項第
五十三條第五十五條第五十七條乃至第五十九條第六十一條竝第六十二條
第一項及第二項ノ規定ハ市參事會ニ之ヲ準用ス
第四章市吏員
第一款組織選舉及任免
第七十二條市ニ市長及助役一人ヲ置ク但シ第六條ノ市ノ助役ノ定數ハ內
務大臣之ヲ定ム
助役ノ定數ハ市條例ヲ以テ之ヲ增加スルコトヲ得
特別ノ必要アル市ニ於テハ市條例ヲ以テ市參與ヲ置クコトヲ得其ノ定數
ハ其ノ市條例中ニ之ヲ規定スヘシ
第七十三條市長ハ有給吏員トシ其ノ任期ハ四年トス
內務大臣ハ市會ヲシテ市長候補者三人ヲ選舉推薦セシメ上奏裁可ヲ請フ
ヘシ
市長ハ內務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ任期中退職スルコトヲ得ス
第七十四條市參與ハ名譽職トス但シ定數ノ全部又ハ一部ヲ有給吏員ト爲
スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第七十二條第三項ノ市條例中ニ之ヲ規定ス
ヘシ
市參與ハ市會ニ於テ之ヲ選舉シ內務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第七十五條助役ハ有給吏員トシ其ノ任期ハ四年トス
助役ハ市長ノ推薦ニ依リ市會之ヲ定メ府縣知事ノ認可ヲ受クヘシ
前項ノ場合ニ於テ府縣知事ノ不認可ニ對シ市長又ハ市會ニ於テ不服アル
トキハ內務大臣ニ具狀シテ認可ヲ請フコトヲ得
助役ハ府縣知事ノ認可ヲ受クルニ非サレハ任期中退職スルコトヲ得ス
第七十六條市長有給市參與及助役ハ第九條第一項ノ規定ニ拘ラス在職ノ
間其ノ市ノ公民トス
第七十七條市長市參與及助役ハ第十八條第二項ニ揭ケタル職ト兼ヌルコ
トヲ得ス又其ノ市ニ對シ常ニ工事ノ請負物件勞力其ノ他ノ供給契約ヲ
爲シ又ハ其ノ市ノ爲金錢出納ノ取扱ラ爲スコトヲ得ス
市長ト父子兄弟タル緣故アル者ハ市參與又ハ助役ノ職ニ在ルコトヲ得ス」
市參與ト父子兄弟タル緣故アル者ハ助役ノ職ニ在ルコトヲ得ス
父子兄弟タル緣故アル者ハ同時ニ市參與又ハ助役ノ職ニ在ルコトヲ得ス
第十八條第五項ノ規定ハ此ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七十八條市長有給市參與及助役ハ府縣知事ノ許可ヲ受クルニ非サレハ
他ノ報償アル業務ニ從事スルコトヲ得ス
市長有給市參與及助役ハ會社ノ役員又ハ事務員タルコトヲ得ス
第七十九條市ニ收入役一人ヲ置ク但シ市條例ヲ以テ副收入役ヲ置クコト
ヲ得
第七十五條第一項乃至第三項第七十七條第一項及第四項竝前條ノ規定ハ
收入役及副收入役ニ第七十六條ノ規定ハ收入役ニ之ヲ準用ス
市長市參與又ハ助役ト父子兄弟タル緣故アル者ハ收入役又ハ副收入役ノ
職ニ在ルコトヲ得ス收入役ト父子兄弟タル緣故アル者ハ副收入役ノ職ニ
在ルコトヲ得ス
第八十條第六條ノ市ノ區ニ區長一人ヲ置キ市有給吏員トシ市長之ヲ任
免ス
第七十七條第一項及第七十八條ノ規定ハ區長ニ之ヲ準用ス
第八十一條第六條ノ市ノ區ニ區收入役一人又ハ區收入役及區副收入役各
一人ヲ置ク
區收入役及區副收入役ハ第八十六條第一項ノ吏員中市長、助役、市收入役、
市副收入役又ハ區長トノ間及其ノ相互ノ間ニ父子兄弟タル緣故アラサル
者ニ就キ市長之ヲ命ス
區收入役又ハ區副收入役ト爲リタル後市長、助役市收入役、市副收入役又
ハ區長トノ間ニ父子兄弟タル緣故生シタルトキハ區收入役又ハ區副收入
役ハ其ノ職ヲ失フ
前項ノ規定ハ區收入役及區副收入役相互ノ間ニ於テ區副收入役ニ之ヲ準
用ス
第八十二條第六條ノ市ヲ除キ其ノ他ノ市ハ處務便宜ノ爲區ヲ劃シ區長及
其ノ代理者一人ヲ置クコトヲ得
前項ノ區長及其ノ代理者ハ名學職トス市會ニ於テ市公民中選舉權ヲ有ス
ル者ヨリ之ヲ選舉ス
內務大臣ハ前項ノ規定ニ拘ラス區長ヲ有給吏員ト爲スヘキ市ヲ指定スル
コトヲ得
前項ノ區ニ付テハ第八十條第八十一條第九十四條第二項第九十七條第四
項第九十八條及第九十九條ノ規定ヲ準用スルノ外必要ナル事項ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第八十三條市ハ臨時又ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
委員ハ名譽職トス市會ニ於テ市會議員、名譽職市參事會員又ハ市公民中
選擧權ヲ有スル者ヨリ之ヲ選舉ス但シ委員長ハ市長又ハ其ノ委任ヲ受ケ
タル市參與若ハ助役ヲ以テ之ニ充ツ
常設委員ノ組織ニ關シテハ市條例ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第八十四條市公民ニ限リテ擔任スヘキ職務ニ在ル吏員ニシテ市公民權ヲ
喪失シ若ハ停止セラレタルトキ又ハ第十一條第三項ノ場合ニ當ルトキハ
其ノ職ヲ失フ職ニ就キタルカ爲市公民タル者ニシテ禁治產若ハ準禁治產
ノ宣告ヲ受ケタルトキ又ハ第十一條第二項若ハ第三項ノ場合ニ當ルトキ
亦同シ
前項ノ職務ニ在ル者ニシテ禁錮以上ノ刑ニ當ルヘキ罪ノ爲豫審又ハ公判
ニ付セラレタルトキハ監督官廳ハ其ノ職務ノ執行ヲ停止スルコトヲ得此
ノ場合ニ於テハ其ノ停止期間報酬又ハ給料ヲ支給スルコトヲ得ス
第八十五條前數條ニ定ムル者ノ外市ニ必要ノ有給吏員ヲ置キ市長之ヲ任
免ス
前項吏員ノ定數ハ市會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
第八十六條前數條ニ定ムル者ノ外第六條及第八十二條第三項ノ市ノ區ニ
必要ノ市有給吏員ヲ置キ區長ノ申請ニ依リ市長之ヲ任免ス
前項吏員ノ定數ハ市會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
第二款職務權限
第八十七條市長ハ市ヲ統轄シ市ヲ代表ス
市長ノ擔任スル事務ノ〓目左ノ如シ
一市會及市參事會ノ議決ヲ經ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ發シ及其ノ議決
ヲ執行スル事
二財產及營造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者ヲ置キタルトキハ其
ノ事務ヲ監督スル事
三收入支出ヲ命令シ及會計ヲ監督スル事
五四證書及公文書類ヲ保管スル事
法令又ハ市曾ノ議決ニ依リ使用料、手數料、加入金市稅又ハ夫役現品
ヲ賦課徵收スル事
六其ノ他法令ニ依リ市長ノ職權ニ屬スル事項
第八十八條市長ハ議案ヲ市會ニ提出スル前之ヲ市參事會ノ審査ニ付シ其
ノ意見ヲ議案ニ添ヘ市會ニ提出スヘシ
第八十九條市長ハ市吏員ヲ指揮監督シ之ニ對シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ
懲戒處分ハ譴責及十圓以下ノ過怠金トス
第九十條市會又ハ市參事會ノ議決又ハ選舉其ノ權限ヲ越エ又ハ法令若
ハ會議規則ニ背クト認ムルトキハ市長ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ
指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ又ハ再選舉ヲ行ハシムヘシ其ノ
執行ヲ要スルモノニ在リテハ之ヲ停止スヘシ
前項ノ場合ニ於テ市會又ハ市參事會其ノ議決ヲ改メサルトキハ市長ハ府
縣參事會ノ裁決ヲ請フヘシ但シ特別ノ事由アルトキハ再議ニ付セスシテ
直ニ裁決ヲ請フコトヲ得
監督官廳ハ第一項ノ議決又ハ選舉ヲ取消スコトヲ得但シ裁決ノ申請アリ
タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二項ノ裁決又ハ前項ノ處分ニ不服アル市長市會又ハ市參事會ハ行政裁
判所ニ出訴スルコトヲ得
市會又ハ市參事會ノ議決公益ヲ害シ又ハ市ノ收支ニ關シ不適當ナリト認
ムルトキハ市長ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シ
テ之ヲ再議ニ付スヘシ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ之ヲ停止スヘシ」
前項ノ場合ニ於テ市會又ハ市參事會其ノ議決ヲ改メサルトキハ市長ハ府
縣參事會ノ裁決ヲ請フヘ
前項ノ裁決ニ不服アル市長市曾又ハ市參事會ハ內務大臣ニ訴願スルコト
ヲ得
第六項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第二項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九十一條市會成立セサルトキ、第五十二條但書ノ場合ニ於テ仍會議ヲ
開クコト能ハサルトキ又ハ市長ニ於テ市會ヲ招集スルノ暇ナシト認ムル
トキハ市長ハ市會ノ權限ニ屬スル事件ヲ市參事會ノ議決ニ付スルコトヲ
得
前項ノ規定ニ依リ市參事會ニ於テ議決ヲ爲ストキハ市長市參與及助役ハ
其ノ議決ニ加ハルコトヲ得ス
市參事會成立セサルトキ又ハ第七十條第一項但書ノ場合ニ於テ仍會議ヲ
開クコト能ハサルトキハ市長ハ其ノ議決スヘキ事件ニ付府縣參事會ノ議
決ヲ請フコトヲ得
市會又ハ市參事會ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セサルトキハ前項ノ
例ニ依ル
市會又ハ市參事會ノ決定スヘキ事件ニ關シテハ前四項ノ例ニ依ル此ノ場
合ニ於ケル市參事會又ハ府縣參事會ノ決定ニ關シテハ各本條ノ規定ニ準
シ訴願又ハ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第一項及前三項ノ規定ニ依ル處置ニ付テハ次囘ノ會議ニ於テ之ヲ市會又
ハ市參事會ニ報〓スヘシ
第九十二條市參事會ニ於テ議決又ハ決定スヘキ事件ニ關シ臨時急施ヲ要
スル場合ニ於テ市參事會成立セサルトキ又ハ市長ニ於テ之ヲ招集スルノ
暇ナシト認ムルトキハ市長ハ之ヲ專決シ次囘ノ會議ニ於テ之ヲ市參事會
ニ報告スヘシ
前項ノ規定ニ依リ市長ノ爲シタル處分ニ關シテハ各本條ノ規定ニ準シ訴
願又ハ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九十三條市長其ノ他市吏員ハ法令ノ定ムル所ニ依リ國府縣其ノ他公共
團體ノ事務ヲ掌ル
前項ノ事務ヲ執行スル爲要スル費用ハ市ノ負擔トス但シ法令中別段ノ規
定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第九十四條市長ハ府縣知事ノ許可ヲ得テ其ノ事務ノ一部ヲ助役ニ分掌セ
シムルコトヲ得但シ市ノ事務ニ付テハ豫メ市會ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス」
第六條ノ市ノ市長ハ前項ノ例ニ依リ其ノ事務ノ一部ヲ區長ニ分掌セシム
ルコトヲ得
市長ハ市吏員ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第九十五條市參與ハ市長ノ指揮監督ヲ承ケ市ノ經營ニ屬スル特別ノ事業
ヲ擔任ス
第九十六條助役ハ市長ノ事務ヲ補助ス
助役ハ市長故障アルトキ之ヲ代理ス助役數人アルトキハ豫メ市長ノ定メ
タル順序ニ依リ之ヲ代理ス
第九十七條收入役ハ市ノ出納其ノ他ノ會計事務及第九十三條ノ事務ニ關
スル國府縣其ノ他公共團體ノ出納其ノ他ノ會計事務ヲ掌ル但シ法令中別
段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
副收入役ハ收入役ノ事務ヲ補助シ收入役故障アルトキ之ヲ代理ス副收入
役數人アルトキハ豫メ市長ノ定メタル順序ニ依リ之ヲ代理ス
市長ハ府縣知事ノ許可ヲ得テ收入役ノ事務ノ一部ヲ副收入役ニ分掌セシ
ムルコトヲ得但シ市ノ出納其ノ他ノ會計事務ニ付テハ豫メ市會ノ同意ヲ
得ルコトヲ要ス
第六條ノ市ノ市長ハ前項ノ例ニ依リ收入役ノ事務ノ一部ヲ區收入役ニ分
掌セシムルコトヲ得
副收入役ヲ置カサル場合ニ於テハ市ハ收入役故障アルトキ之ヲ代理スヘ
キ吏員ヲ定メ府縣知事ノ認可ヲ受クヘシ
第九十八條第六條ノ市ノ區長ハ市長ノ命ヲ承ケ又ハ法令ノ定ムル所ニ依
リ區內ニ關スル市ノ事務及區ノ事務ヲ掌ル
區長其ノ他區所屬ノ吏員ハ市長ノ命ヲ承ケ又ハ法令ノ定ムル所ニ依リ國
府縣其ノ他公共團體ノ事務ヲ掌ル
區長故障アルトキハ區收入役及區副收入役ニ非サル區所屬ノ吏員中上席
者ヨリ順次之ヲ代理ス
第一項及第二項ノ事務ヲ執行スル爲要スル費用ハ市ノ負擔トス但シ法令
中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第九十九條第六條ノ市ノ區收入役ハ市收入役ノ命ヲ承ケ又ハ法令ノ定ム
ル所ニ依リ市及區ノ出納其ノ他ノ會計事務竝國府縣其ノ他公共團體ノ出
納其ノ他ノ會計事務ヲ掌ル
區長ハ市長ノ許可ヲ得テ區收入役ノ事務ノ一部ヲ區副收入役ニ分掌セシ
ムルコトヲ得但シ區ノ出納其ノ他ノ會計事務ニ付テハ豫メ區會ノ同意ヲ
得ルコトヲ要ス
市長ハ市ノ出納其ノ他ノ會計事務ニ付前項ノ許可ヲ爲ス場合ニ於テハ豫
メ市會ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
區副收入役ヲ置カサル場合ニ於テハ市長ハ區收入役故障アルトキ之ヲ代
理スヘキ吏員ヲ定ム>>
區收入役及區副收入役ノ職務權限ニ關シテハ前四項ニ規定スルモノノ外
市收入役及市副收入役ニ關スル規定ヲ準用ス
第百條名譽職區長ハ市長ノ命ヲ承ケ市長ノ事務ニシテ區內ニ關スルモ
ノヲ補助ス
名譽職區長代理者ハ區長ノ事務ヲ補助シ區長故障アルトキ之ヲ代理ス
第百一條委員ハ市長ノ指揮監督ヲ承ケ財產又ハ營造物ヲ管理シ其ノ他委
託ヲ受ケタル市ノ事務ヲ調査シ又ハ之ヲ處辨ス
第百二條第八十五條ノ吏員ハ市長ノ命ヲ承ケ事務ニ從事ス
第百三條第八十六條ノ吏員ハ區長ノ命ヲ承ケ事務ニ從事ス
區長ハ前項ノ吏員ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第五章給料及給與
第百四條名譽職市參與、市會議員、名譽職參事會員其ノ他ノ名譽職員ハ職
務ノ爲要スル費用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
名譽職市參與、名譽職區長、名譽職區長代理者及委員ニハ費用辨償ノ外勤
務ニ相當スル報酬ヲ給スルコトヲ得
費用辨償額、報酬額及其ノ支給方法ハ市會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
第百五條市長、有給市參與、助役其ノ他ノ有給吏員ノ給料額、旅費額及其
ノ支給方法ハ市會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
第百六條有給吏員ニハ市條例ノ定ムル所ニ依リ退隱料、退職給與金、死亡
給與金又ハ遺族扶助料ヲ給スルコトヲ得
第百七條費用辨償、報酬、給料、旅費、退隱料、退職給與金、死亡給與金又ハ
遺族扶助料ノ給與ニ付關係者ニ於テ異議アルトキハ之ヲ市長ニ申立ツル
コトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ市參事會ノ決定ニ付スヘシ關係者其ノ決定ニ不服アル
トキハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決又ハ第三項ノ裁決ニ不服アルトキハ
行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ付テハ市長ヨリモ訴願又ハ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
前二項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第百八條費用辨償、報酬、給料、旅費、退隱料、退職給與金、死亡給與金、遺
族扶助料其ノ他ノ給與ハ市ノ負擔トス
第六章市ノ財務
第一款財產營造物及市稅
第百九條收益ノ爲ニスル市ノ財產ハ基本財產トシ之ヲ維持スヘシ
市ハ特定ノ目的ノ爲特別ノ基本財產ヲ設ケ又ハ金穀等ヲ積立ツルコトヲ
得
第百十條舊來ノ慣行ニ依リ市住民中特ニ財產又ハ營造物ヲ使用スル權利
ヲ有スル者アルトキハ其ノ舊慣ニ依ル舊慣ヲ變更又ハ廢止セムトスルト
キハ市會ノ議決ヲ經ヘシ
前項ノ財產又ハ營造物ヲ新ニ使用セムトスル者アルトキハ市ハ之ヲ許可
スルコトヲ得
第百十一條市ハ前條ニ規定スル財產ノ使用方法ニ關シ市規則ヲ設クルコ
トヲ得
第百十二條市ハ第百十條第一項ノ使用者ヨリ使用料ヲ徵收シ同條第二項
ノ使用ニ關シテハ使用料若ハ一時ノ加入金ヲ徵收シ又ハ使用料及加入金
ヲ共ニ徵收スルコトヲ得
第百十三條市ハ營造物ノ使用ニ付使用料ヲ徵收スルコトヲ得
市ハ特ニ一個人ノ爲ニスル事務ニ付手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第百十四條財產ノ賣却貸與、工事ノ請負及物件勞力其ノ他ノ供給ハ競爭
入札ニ付スヘシ但シ臨時急施ヲ要スルトキ入札ノ價額其ノ費用ニ比シ
テ得失相償ハサルトキ又ハ市會ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百十五條市ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附又ハ補助ヲ爲スコ
トヲ得
第百十六條市ハ其ノ必要ナル費用及從來法令ニ依リ又ハ將來法律勅令ニ
依リ市ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義務ヲ負フ
市ハ其ノ財產ヨリ生スル收入、使用料、手數料、過料、過怠金其ノ他法令ニ
依リ市ニ屬スル收入ヲ以テ前項ノ支出ニ充テ仍不足アルトキハ市稅及夫
役現品ヲ賦課徵收スルコトヲ得
第百十七條市稅トシテ賦課スルコトヲ得ヘキモノ左ノ如シ
一國稅府縣稅ノ附加稅
二特別稅
直接國稅又ハ直接府縣稅ノ附加稅ハ均一ノ稅率ヲ以テ之ヲ數收スヘシ但
シ第百六十七條ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
國稅ノ附加稅タル府縣稅ニ對シテハ附加稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
特別稅ハ別ニ稅目ヲ起シテ課稅スルノ必要アルトキ賦課徵收スルモノト
ス
第百十八條三月以上市內ニ滯在スル者ハ其ノ滯在ノ初ニ遡リ市稅ヲ納ム
ル義務ヲ負フ
第百十九條市內ニ住所ヲ有セス又ハ三月以上滯在スルコトナシト雖市內
ニ於テ土地家屋物件ヲ所有シ使用シ若ハ占有シ、市內ニ營業所ヲ設ケテ營
業ヲ爲シ又ハ市內ニ於テ特定ノ行爲ヲ爲ス者ハ其ノ土地家屋物件營業若ハ
其ノ收入ニ對シ又ハ其ノ行爲ニ對シテ賦課スル市稅ヲ納ムル義務ヲ負フ
第百二十條納稅者ノ市外ニ於テ所有シ使用シ占有スル土地家屋物件若ハ
其ノ收入又ハ市外ニ於テ營業所ヲ設ケタル營業若ハ其ノ收入ニ對シテハ
市稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
市ノ內外ニ於テ營業所ヲ設ケ營業ヲ爲ス者ニシテ其ノ營業又ハ收入ニ對
スル本稅ヲ分別シテ納メサルモノニ對シ附加稅ヲ賦課スル場合及住所滯
在市ノ內外ニ渉ル者ノ收入ニシテ土地家屋物件又ハ營業所ヲ設ケタル營
業ヨリ生スル收入ニ非サルモノニ對シ市稅ヲ賦課スル場合ニ付テハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
第百二十一條所得稅法第五條ニ揭クル所得ニ對シテハ市稅ヲ賦課スルコ
トヲ得ス
神社寺院祠宇佛堂ノ用ニ供スル建物及其ノ境內地竝〓會所說〓所ノ用ニ
供スル建物及其ノ構內地ニ對シテハ市稅ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ有料
ニテ之ヲ使用セシムル者及住宅ヲ以テ〓會所說〓所ノ用ニ充ツル者ニ對
シテハ此ノ限ニ在ラス
國府縣市町村其ノ他公共團體ニ於テ公用ニ供スル家屋物件及營造物ニ對
シテハ市稅ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者及使
用收益者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
國ノ事業又ハ行爲及國有ノ土地家屋物件ニ對シテハ國ニ市稅ヲ賦課スル
コトヲ得ス
前四項ノ外市稅ヲ賦課スルコトヲ得サルモノハ別ニ法律勅令ノ定ムル所
ニ依ル
第百二十二條數人ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他ノ必要ナル費用ハ其
ノ關係者ニ負擔セシムルコトヲ得
市ノ一部ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他ノ必要ナル費用ハ其ノ部內ニ
於テ市稅ヲ納ムル義務アル者ニ負擔セシムルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ營造物ヨリ生スル收入アルトキハ先ツ其ノ收入ヲ以
テ其ノ費用ニ充ツヘシ前項ノ場合ニ於テ其ノ一部ノ收入アルトキ亦同シ
數人又ハ市ノ一部ヲ利スル財產ニ付テハ前三項ノ例ニ依ル
第百二十三條市稅及其ノ賦課徵收ニ關シテハ本法其ノ他ノ法律ニ規定ア
ルモノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得
第百二十四條數人又ハ市ノ一部ニ對シ特ニ利益アル事件ニ關シテハ市ハ
不均一ノ賦課ヲ爲シ又ハ數人若ハ市ノ一部ニ對シ賦課ヲ爲スコトヲ得
第百二十五條夫役又ハ現品ハ直接市稅ヲ準率ト爲シ直接市稅ヲ賦課セサ
ル市ニ於テハ直接國稅ヲ準率ト爲シ且之ヲ金額ニ算出シテ賦課スヘシ但
シ第百六十七條ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
學藝美術及手工ニ關スル勞務ニ付テハ夫役ヲ賦課スルコトヲ得ス
夫役ヲ賦課セラレタル者ハ其ノ便宜ニ從ヒ本人自ラ之ニ當リ又ハ適當ノ
代人ヲ出スコトヲ得
夫役又ハ現品ハ金錢ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第一項及前項ノ規定ハ急追ノ場合ニ賦課スル夫役ニ付テハ之ヲ適用セス
第百二十六條非常災害ノ爲必要アルトキハ市ハ他人ノ土地ヲ一時使用シ
又ハ其ノ土石竹木其ノ他ノ物品ヲ使用シ若ハ收用スルコトヲ得但シ其ノ
損失ヲ補償スヘシ
前項ノ場合ニ於テ危險防止ノ爲必要アルトキハ市長、警察官吏又ハ監督
官廳ハ市內ノ居住者ヲシテ防禦ニ從事セシムルコトヲ得
第一項但書ノ規定ニ依リ補償スヘキ金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハ
サルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徵シ府縣知事之ヲ決定ス決定ヲ受ケタル者其
ノ決定ニ不服アルトキハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ本人ニ交付スヘシ
第一項ノ規定ニ依リ土地ノ一時使用ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服
アルトキハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ內務大臣ニ訴願
スルコトヲ得
第百二十七條市稅ノ賦課ニ關シ必要アル場合ニ於テハ當該吏員ハ日出ヨ
リ日沒迄ノ問營業者ニ關シテハ仍其ノ營業時間內家宅若ハ營業所ニ臨檢
シ又ハ帳簿物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ當該吏員ハ其ノ身分ヲ證明スヘキ證票ヲ携帶スヘシ
第百二十八條市長ハ納稅者中特別ノ事情アル者ニ對シ納稅延期ヲ許スコ
トヲ得其ノ年度ヲ越ユル場合ハ市參事會ノ議決ヲ經ヘシ
市ハ特別ノ事情アル者ニ限リ市稅ヲ減免スルコトヲ得
第百二十九條使用料手數料及特別稅ニ關スル事項ニ付テハ市條例ヲ以テ
之ヲ規定スヘシ其ノ條例中ニハ五圓以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコ
トヲ得
財產又ハ營造物ノ使用ニ關シテハ市條例ヲ以テ五圓以下ノ過料ヲ科スル
規定ヲ設クルコトヲ得
過料ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ府縣參事會ニ訴願シ
其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ府縣知事又ハ市長ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第百三十條市稅ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト
認ムルトキハ徵稅令書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三月以內ニ市長ニ異議ノ
申立ヲ爲スコトヲ得
財產又ハ營造物ヲ使用スル權利ニ關シ異議アル者ハ之ヲ市長ニ申立ツル
コトヲ得
前二項ノ異議ハ之ヲ市參事會ノ決定ニ付スヘシ決定ヲ受ケタル者其ノ決
定ニ不服アルトキハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決又ハ第五項ノ裁決ニ不
服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第一項及前項ノ規定ハ使用料手數料及加入金ノ徵收竝夫役現品ノ賦課ニ
關シ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ニ依ル決定及裁決ニ付テハ市長ヨリモ訴願又ハ訴訟ヲ提起
スルコトヲ得
前三項ノ規定ニ依ル裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ
得
第百三十一條市稅、使用料、手數料、加入金、過料、過怠金其ノ他ノ市ノ收入
ヲ定期內ニ納メサル者アルトキハ市長ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ
夫役現品ノ賦課ヲ受ケタル者定期內ニ其ノ履行ヲ爲サス又ハ夫役現品ニ
代フル金錢ヲ納メサルトキハ市長ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ急迫
ノ場合ニ賦課シタル夫役ニ付テハ更ニ之ヲ金額ニ算出シ期限ヲ指定シテ
其ノ納付ヲ命スヘシ
前二項ノ場合ニ於テハ市條例ノ定ムル所ニ依リ手數料ヲ徵收スルコトヲ
得
滯納者第一項又ハ第二項ノ督促又ハ命令ヲ受ケ其ノ指定ノ期限內ニ之ヲ
完納セサルトキハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ處分スヘシ
第一項乃至第三項ノ徵收金ハ府縣ノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追
徵還付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
前三項ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ府縣參事會ニ訴願
シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ府縣知事又ハ市長ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第四項ノ處分中差押物件ノ公賣ハ處分ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第百三十二條市ハ其ノ負債ヲ償還スル爲、市ノ永久ノ利益ト爲ルヘキ支
出ヲ爲ス爲又ハ天災事變等ノ爲必要アル場合ニ限リ市債ヲ起スコトヲ得
市債ヲ起スニ付市會ノ議決ヲ經ルトキハ併セテ起債ノ方法、利息ノ定率
及償還ノ方法ニ付議決ヲ經ヘシ
市長ハ豫算內ノ支出ヲ爲ス爲市參事會ノ議決ヲ經テ一時ノ借入金ヲ爲ス
コトヲ得
前項ノ借入金ハ其ノ會計年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘシ
第二款歲入出豫算及決算
第百三十三條市長ハ每會計年度歲入出豫算ヲ調製シ遲クトモ年度開始ノ
一月前ニ市會ノ議決ヲ經ヘシ
市ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ依ル
豫算ヲ市會ニ提出スルトキハ市長ハ併セテ事務報告書及財產表ヲ提出ス
ヘシ
第百三十四條市長ハ市會ノ議決ヲ經テ既定豫算ノ追加又ハ更正ヲ爲スコ
トヲ得
第百三十五條市費ヲ以テ支辨スル事件ニシテ數年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支
出スヘキモノハ市曾ノ議決ヲ經テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續
費ト爲スコトヲ得
第百三十六條市ハ豫算外ノ支出又ハ豫算超過ノ支出ニ充ツル爲豫備費ヲ
設クヘシ
豫備費ハ市會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第百三十七條豫算ハ議決ヲ經タル後直ニ之ヲ府縣知事ニ報告シ且其ノ要
領ヲ告示スヘシ
第百三十八條市ハ特別會計ヲ設クルコトヲ得
第百三十九條市會ニ於テ豫算ヲ議決シタルトキハ市長ヨリ其ノ謄本ヲ收
入役ニ交付スヘシ
收入役ハ市長又ハ監督官廳ノ命令アルニ非サレハ支拂ヲ爲スコトヲ得ス
命令ヲ受クルモ支出ノ豫算ナク且豫備費支出、費目流用其ノ他財務ニ關
スル規定ニ依リ支出ヲ爲スコトヲ得サルトキ亦同シ
第百四十條市ノ支拂金ニ關スル時效ニ付テハ政府ノ支拂金ノ例ニ依ル
第百四十一條市ノ出納ハ每月例日ヲ定メテ之ヲ檢査シ且每會計年度少ク
トモ二囘臨時檢査ヲ爲スヘシ
檢査ハ市長之ヲ爲シ臨時檢査ニハ名譽職參事會員ニ於テ互選シタル參事
會員二人以上ノ立會ヲ要ス
第百四十二條市ノ出納ハ翌年度六月三十日ヲ以テ閉鎖ス
決算ハ出納閉鎖後一月以內ニ證書類ヲ併セテ收入役ヨリ之ヲ市長ニ提出
スヘシ市長ハ之ヲ審査シ意見ヲ付シテ次ノ通常豫算ヲ議スル會議迄ニ之
ヲ市會ノ認定ニ付スヘシ
決算ハ其ノ認定ニ關スル市會ノ議決ト共ニ之ヲ府縣知事ニ報告シ且其ノ
要領ヲ告示スヘシ
決算ヲ市參事會ノ會議ニ付スル場合ニ於テハ市長市參與及助役ハ其ノ議
決ニ加ハルコトヲ得ス
第百四十三條豫算調製ノ式、費目流用其ノ他財務ニ關シ必要ナル規定ハ
內務大臣之ヲ定ム
第七章市ノ一部ノ事務
第百四十四條市ノ一部ニシテ財產ヲ有シ又ハ營造物ヲ設ケタルモノアル
トキハ其ノ財產又ハ營造物ノ管理及處分ニ付テハ本法中市ノ財產又ハ營
造物ニ關スル規定ニ依ル但シ法律勅令中別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ
在ラス
前項ノ財產又ハ營造物ニ關シ特ニ要スル費用ハ其ノ財產又ハ營造物ノ屬
スル市ノ一部ノ負擔トス
前二項ノ場合ニ於テハ市ノ一部ハ其ノ會計ヲ分別スヘシ
第百四十五條前條ノ財產又ハ營造物ニ關シ必要アリト認ムルトキハ府縣
知事ハ市會ノ意見ヲ徴シ府縣參事會ノ議決ヲ經テ市條例ヲ設定シ區會ヲ
設ケテ市會ノ議決スヘキ事項ヲ議決セシムルコトヲ得
第百四十六條區會議員ハ市ノ名譽職トス其ノ定數、任期、選舉權及被選舉
權ニ關スル事項ハ前條ノ市條例中ニ之ヲ規定スヘシ
區會議員ノ選舉ニ付テハ市曾議員ニ關スル規定ヲ準用ス但シ選舉人名簿
又ハ選舉若ハ當選ノ效力ニ關スル異議ノ決定及被選擧權ノ有無ノ決定ハ
市長ノ爲スヘキ場合ヲ除クノ外市曾ニ於テ之ヲ爲スヘシ
區會議員ノ選舉ニ付テハ前條ノ市條例ヲ以テ選舉人ノ等級ヲ設ケサルコ
トヲ得
區會ニ關シテハ市會ニ關スル規定ヲ準用ス
第百四十七條第百四十四條ノ場合ニ於テ市ノ一部府縣知事ノ處分ニ不服
アルトキハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第百四十八條第百四十四條ノ市ノ一部ノ事務ニ關シテハ本法ニ規定スル
モノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八章市町村組合
第百四十九條市町村ハ其ノ事務ノ一部ヲ共同處理スル爲其ノ協議ニ依リ
府縣知事ノ許可ヲ得テ市町村組合ヲ設クルコトヲ得
公益上必要アル場合ニ於テハ府縣知事ハ關係アル市町村會ノ意見ヲ徵シ
府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ前項ノ市町村組合ヲ設クル
コトヲ得
市町村組合ハ法人トス
第百五十條市町村組合ニシテ其ノ組合市町村ノ數ヲ增減シ又ハ共同事
務ノ變更ヲ爲サムトスルトキハ關係市町村ノ協議ニ依リ府縣知事ノ許可
ヲ受クヘシ
公益上必要アル場合ニ於テハ府縣知事ハ關係アル市町村會ノ意見ヲ徵シ
府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ組合市町村ノ數ヲ增減シ又
ハ共同事務ノ變更ヲ爲スコトヲ得
第百五十一條市町村組合ヲ設クルトキハ關係市町村ノ協議ニ依リ組合規
約ヲ定メ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ組合規約ヲ變更セムトスルトキ亦同
シ
公益上必要アル場合ニ於テハ府縣知事ハ關係アル市町村會ノ意見ヲ徵シ
府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ組合規約ヲ定メ又ハ變更ス
ルコトヲ得
第百五十二條組合規約ニハ組合ノ名稱、組合ヲ組織スル市町村、組合ノ共
同事務組合役場ノ位置、組合會ノ組織及組合會議員ノ選舉、組合吏員ノ
組織及選任竝組合費用ノ支辨方法ニ付規定ヲ設クヘシ
第百五十三條市町村組合ヲ解カムトスルトキハ關係市町村ノ協議ニ依リ
府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ
公益上必要アル場合ニ於テハ府縣知事ハ關係アル市町村會ノ意見ヲ徵シ
府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ市町村組合ヲ解クコトヲ得
第百五十四條第百五十條第一項及前條第一項ノ場合ニ於テ財產ノ處分ニ
關スル事項ハ關係市町村ノ協議ニ依リ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ
第百五十條第二項及前條第二項ノ場合ニ於テ財產ノ處分ニ關スル事項ハ
關係アル市町村會ノ意見ヲ徵シ府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ
得テ府縣知事之ヲ定ム
第百五十五條第百四十九條第一項第百五十條第一項第百五十一條第一項
第百五十三條第一項及前條第一項ノ規定ニ依ル府縣知事ノ處分ニ不服ア
ル市町村又ハ市町村組合ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
組合費ノ分賦ニ關シ違法又ハ錯誤アリト認ムル市町村ハ其ノ告知アリタ
ル日ヨリ三月以內ニ組合ノ管理者ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ組合會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル市町村ハ
府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決又ハ第四項ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁
判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ付テハ組合ノ管理者ヨリモ訴願又ハ訴訟ヲ提起スル
コトヲ得
前二項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第百五十六條市町村組合ニ關シテハ法律勅令中別段ノ規定アル場合ヲ除
クノ外市ニ關スル規定ヲ準用ス
第九章市ノ監督
第百五十七條市ハ第一次ニ於テ府縣知事之ヲ監督シ第二次ニ於テ內務大
臣之ヲ監督ス
第百五十八條本法中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外市ノ監督ニ關スル府
縣知事ノ處分ニ不服アル市ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第百五十九條本法中行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ內
務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
第百六十條異議ノ申立又ハ訴願ノ提起ハ處分決定又ハ裁決アリタル日
ヨリ二十一日以內ニ之ヲ爲スヘシ但シ本法中別ニ期間ヲ定メタルモノハ
此ノ限ニ在ラス
行政訴訟ノ提起ハ處分決定裁定又ハ裁決アリタル日ヨリ三十日以內ニ之
ヲ爲スヘシ
異議ノ申立ニ關スル期間ノ計算ニ付テハ訴願法ノ規定ニ依ル
異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ申立人ニ交付スヘ
シ
異議ノ申立アルモ處分ノ執行ハ之ヲ停止セス但シ行政廳ハ其ノ職權ニ依
リ又ハ關係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ之ヲ停止スルコトヲ得
第百六十一條監督官廳ハ市ノ監督上必要アル場合ニ於テハ事務ノ報告ヲ
爲サシメ書類帳簿ヲ徵シ及實地ニ就キ事務ヲ視察シ又ハ出納ヲ檢閱ス
ルコトヲ得
監督官廳ハ市ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
上級監督官廳ハ下級監督官廳ノ市ノ監督ニ關シテ爲シタル命令又ハ處分
ヲ停止シ又ハ取消スコトヲ得
第百六十二條內務大臣ハ市會ノ解散ヲ命スルコトヲ得
市會解散ノ場合ニ於テハ三月以內ニ議員ヲ選舉スヘシ
第百六十三條市ニ於テ法令ニ依リ負擔シ又ハ當該官廳ノ職權ニ依リ命ス
ル費用ヲ豫算ニ載セサルトキハ府縣知事ハ理由ヲ示シテ其ノ費用ヲ豫算
ニ加フルコトヲ得
市長其ノ他ノ吏員其ノ執行スヘキ事件ヲ執行セサルトキハ府縣知事又ハ
其ノ委任ヲ受ケタル官吏吏員之ヲ執行スルコトヲ得但シ其ノ費用ハ市ノ
負擔トス
前二項ノ處分ニ不服アル市又ハ市長其ノ他ノ吏員ハ行政裁判所ニ出訴ス
ルコトヲ得
第百六十四條市長、助役、收入役又ハ副收入役ニ故障アルトキハ監督官廳
ハ臨時代理者ヲ選任シ又ハ官吏ヲ派遣シ其ノ職務ヲ管掌セシムルコトヲ得
但シ官吏ヲ派遣シタル場合ニ於テハ其ノ旅費ハ市費ヲ以テ辨償セシムヘ
シ
臨時代理者ハ有給ノ市吏員トシ其ノ給料額族費額等ハ監督官廳之ヲ定ム
第百六十五條左ニ揭クル事件ハ内務大臣ノ許可ヲ受クヘシ
市條例ヲ設ケ又ハ改廢スル事
二學藝美術又ハ歴史上貴重ナル物件ヲ處分シ又ハ之ニ大ナル變更ヲ加
フル事
第百六十六條左ニ揭クル事件ハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クヘシ
一市債ヲ起シ竝起債ノ方法、利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ又ハ之ヲ
變更スル事但シ第百三十二條第三項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
二特別稅ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
三間接國稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
四使用料手數料及加入金ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
第百六十七條左ニ掲クル事件ハ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ
一基本財產ノ管理及處分ニ關スル事
二特別基本財產及積立金穀等ノ管理及處分ニ關スル事
三第百十條ノ規定ニ依リ舊慣ヲ變更又ハ廢止スル事
寄附又ハ補助ヲ爲ス事
七六五四不動產ノ管理及處分ニ關スル事
均一ノ稅率ニ依ラスシテ國稅又ハ府縣稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
第百二十二條第一項第二項及第四項ノ規定ニ依リ數人又ハ市ノ一部
ニ費用ヲ負擔セシムル事
八第百二十四條ノ規定ニ依リ不均一ノ賦課ヲ爲シ又ハ數人若ハ市ノ一
部ニ對シ賦課ヲ爲ス事
九第百二十五條ノ準率ニ依ラスシテ夫役現品ヲ賦課スル事但シ急迫ノ
場合ニ賦課スル夫役ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
十繼續費ヲ定メ又ハ變更スル事
第百六十八條監督官廳ノ許可ヲ要スル事件ニ付テハ監督官廳ハ許可申請
ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ許可ヲ與フルコトヲ得
第百六十九條監督官廳ノ許可ヲ要スル事件ニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ其ノ許可ノ職權ヲ下級監督官廳ニ委任シ又ハ輕易ナル事件ニ限リ許可
ヲ受ケシメサルコトヲ得
第百七十條府縣知事ハ市長、市參與、助役、收入役、副收入役、區長、區長
代理者、委員其ノ他ノ市吏員ニ對シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ
譴責、二十五圓以下ノ過怠金及解職トス但シ市長、市參與、助役、收入役、
副收入役及第六條又ハ第八十二條第三項ノ市ノ區長ニ對スル解職ハ懲戒
審査會ノ議決ヲ經市長ニ付テハ勅裁ヲ經ルコトヲ要ス
懲戒審査會ハ內務大臣ノ命シタル府縣高等官三人及府縣名譽職參事會員
ニ於テ互選シタル者三人ヲ以テ其ノ會員トシ府縣知事ヲ以テ會長トス知
事故障アルトキハ其ノ代理者會長ノ職務ヲ行フ
府縣名譽職參事會員ノ互選スヘキ會員ノ選舉補闕及任期竝懲戒審査會ノ
招集及會議ニ付テハ府縣制中名譽職參事會員及府縣參事會ニ關スル規定
ヲ準用ス但シ補充員ハ之ヲ設クルノ限ニ在ラス
解職ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ內務大臣ニ訴願スル
コトヲ得但シ市長ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
府縣知事ハ市長、市參與、助役、收入役、副收入役及第六條又ハ第八十二條第
三項ノ市ノ區長ノ解職ヲ行ハムトスル前其ノ停職ヲ命スルコトヲ得此ノ
場合ニ於テハ其ノ修數期間報酬又ハ給料ヲ支給スルコトヲ得ス
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間市町村ノ公職ニ選擧セラレ又ハ任
命セラルルコトヲ得ス
第百七十一條市吏員ノ服務紀律、賠償責任、身元保證及事務引繼ニ關スル
規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
前項ノ命令ニハ事務引繼ヲ拒ミタル者ニ對シ二十五圓以下ノ過料ヲ科ス
ル規定ヲ設クルコトヲ得
第十章雜則
第百七十二條府縣知事又ハ府縣參事會ノ職權ニ屬スル事件ニシテ數府縣
ニ涉ルモノアルトキハ內務大臣ハ關係府縣知事ノ具狀ニ依リ其ノ事件ヲ
管理スヘキ府縣知事又ハ府縣參事會ヲ指定スヘシ
第百七十三條本法ニ規定スルモノノ外第六條ノ市ノ有給吏員ノ組織任用
分限及其ノ區ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百七十四條第十三條ノ人口ハ內務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第百七十五條本法ニ於ケル直接稅及間接稅ノ種類ハ內務大臣及大藏大臣
之ヲ定ム
第百七十六條市又ハ市町村組合ノ廢置分合又ハ境界變更アリタル場合ニ
於テ市ノ事務ニ付必要ナル事項ハ本法ニ規定スルモノノ外勅令ヲ以テ之
可愛い
第百七十七條本法ハ町村制第百五十七條ノ地域ニ之ヲ施行セス
附則
第百七十八條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百七十九條本法施行ノ際現ニ市會議員又ハ區會議員ノ職ニ在ル者ハ從
前ノ規定ニ依ル最近ノ定期改選期ニ於テ總テ其ノ職ヲ失フ
本法施行ノ際現ニ市長助役又ハ收入役ノ職ニ在ル者ハ從前ノ規定ニ依ル
任期滿了ノ日ニ於テ總テ其ノ職ヲ失フ
第百八十條舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ本法ノ適用ニ付テハ
六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス但シ復權ヲ得タ
ル者ハ此ノ限ニ在ラス
舊刑法ノ禁錮以上ノ刑ハ本法ノ適用ニ付テハ禁錮以上ノ刑ト看做ス
第百八十一條本法施行ノ際必要ナル規定ハ合令ヲ以テ之ヲ定ム
町村制改正法律案
町村制
第一章總則
第一款町村及其ノ區域
第二款町村住民及其ノ權利義務
第三款町村條例及町村規則
第二章町村會
第一款組織及選舉
第二款職務權限
第三章町村吏員
第一款組織選舉及任免
第二款職務權限
第四章給料及給與
第五章町村ノ財務
第一款財產營造物及町村稅
第二款歲入出豫算及決算
第六章町村ノ一部ノ事務
第七章町村組合
第八章町村ノ監督
第九章雜則
町村制
第一章總則
第一款町村及其ノ區域
第一條町村ハ從來ノ區域ニ依ル
第二條町村ハ法人トス官ノ監督ヲ承ケ法令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共事務
竝從來法令又ハ慣例ニ依リ及將來法律勅令ニ依リ町村ニ屬スル事務ヲ處
理ス
第三條町村ノ廢置分合又ハ境界變更ヲ爲サムトスルトキハ府縣知事ハ關
係アル市町村會ノ意見ヲ徵シ府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得
テ之ヲ定ム所屬未定地ヲ町村ノ區域ニ編入セムトスルトキ亦同シ
前項ノ場合ニ於テ財產アルトキハ其ノ處分ニ關シテハ前項ノ例ニ依ル
第一項ノ場合ニ於テ市ノ廢置分合ヲ伴フトキハ市制第三條ノ規定ニ依ル
第四條町村ノ境界ニ關スル爭論ハ府縣參事會之ヲ裁定ス其ノ裁定ニ不服
アル町村ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
町村ノ境界判明ナラサル場合ニ於テ前項ノ爭論ナキトキハ府縣知事ハ府
縣參事會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル町村ハ行政裁判所ニ出訴
スルコトヲ得
第一項ノ裁定及前項ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ關
係町村ニ交付スヘシ
第一項ノ裁定及第二項ノ決定ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコ
トヲ得
第五條町村ノ名稱ヲ變更シ又ハ村ヲ町ト爲シ若ハ町ヲ村ト爲サムトスル
トキハ町村ハ內務大臣ノ許可ヲ受クヘシ
町村役場ノ位置ヲ定メ又ハ之ヲ變更セムトスルトキハ町村ハ府縣知事ノ
許可ヲ受クヘシ
第二款町村住民及其ノ權利義務
第六條町村內ニ住所ヲ有スル者ハ其ノ町村住民トス
町村住民ハ本法ニ從ヒ財產及營造物ヲ共用スル權利ヲ有シ町村ノ負擔ヲ
分任スル義務ヲ負フ
第七條帝國臣民ニシテ獨立ノ生計ヲ營ム年齡二十五年以上ノ男子二年以
來町村ノ住民ト爲リ其ノ町村ノ負擔ヲ分任シ且其ノ町村内ニ於テ直接國
稅ヲ納ムルトキハ其ノ町村公民トス但シ貧困ノ爲公費ノ救助ヲ受ケタル
後二年ヲ經サル者、禁治產者、準禁治產者及六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑
ニ處セラレタル者ハ此ノ限ニ在ラス
町村ハ前項二年ノ制限ヲ特免スルコトヲ得
家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ニ付テハ其ノ財產ニ付被相續人ノ爲
シタル納稅ヲ以テ其ノ者ノ納稅シタルモノト看做ス
町村公民ノ要件中其ノ年限ニ關スルモノハ市町村ノ廢置分合又ハ境界變
更ノ爲中斷セラルルコトナシ
町村稅ヲ賦課セサル町村ニ於テハ町村公民ノ要件中町村ノ負擔分任ニ關
スル規定ヲ適用セス
町村公民ノ數町村會議員定數ノ三倍ヨリ少キ場合ニ於テハ町村ハ町村公
民ノ要件ニ關シ町村條例ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第八條町村公民ハ町村ノ選舉ニ參與シ町村ノ名譽職ニ選舉セラルル權利
ヲ有シ町村ノ名譽職ヲ擔任スル義務ヲ負フ
左ノ各號ノ一ニ該當セサル者ニシテ名譽職ノ當選ヲ辭シ又ハ其ノ職ヲ辭
シ若ハ其ノ職務ヲ實際ニ執行セサルトキハ町村ハ一年以上四年以下其ノ
町村公民權ヲ停止シ場合ニ依リ其ノ停止期間以內其ノ者ノ負擔スヘキ町
村稅ノ十分ノ一以上四分ノ一以下ヲ增課スルコトヲ得
疾病ニ罹リ公務ニ堪ヘサル者
業務ノ爲常ニ町村內ニ居ルコトヲ得サル者
年齡六十年以上ノ者
五四三官公職ノ爲町村ノ公務ヲ執ルコトヲ得サル者
四年以上名譽職町村吏員、町村會議員又ハ區會議員ノ職ニ任シ爾後
同一ノ期間ヲ經過セサル者
六其ノ他町村會ノ議決ニ依リ正當ノ理由アリト認ムル者
前項ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ府縣參事會ニ訴願シ
其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二項ノ處分ハ其ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第三項ノ裁決ニ付テハ府縣知事又ハ町村長ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ
得
第九條町村公民第七條第一項ニ揭ケタル要件ノ一ヲ闕キ又ハ同項但書ニ
當ルニ至リタルトキハ其ノ公民權ヲ失フ
町村公民租稅滯納處分中ハ其ノ公民權ヲ停止ス家資分散若ハ破產ノ宣告
ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復權ノ決定確定スルニ至ル迄又ハ禁錮以
上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタルトキヨリ其ノ執行ヲ終リ若ハ其ノ執行ヲ受クル
コトナキニ至ル迄亦同シ
陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ町村ノ公務ニ參與スルコトヲ得ス其ノ他ノ兵
役ニ在ル者ニシテ戰時又ハ事變ニ際シ召集セラレタルトキ亦同シ
第三款町村條例及町村規則
第十條町村ハ町村住民ノ權利義務又ハ町村ノ事務ニ關シ町村條例ヲ設ク
ルコトヲ得
町村ハ町村ノ營造物ニ關シ町村條例ヲ以テ規定スルモノノ外町村規則ヲ
設クルコトヲ得
町村條例及町村規則ハ一定ノ公告式ニ依リ之ヲ告示スヘシ
第二章町村會
第一款組織及選舉
第十一條町村會議員ハ其ノ被選擧權アル者ニ就キ選擧人之ヲ選舉ス
議員ノ定數左ノ如シ
二一人口千五百未滿ノ町村ニ於テハ八人
人口千五百以上五千未滿ノ町村ニ於テハ十二人
三人口五千以上一萬未滿ノ町村ニ於テハ十八人
四人口一萬以上二萬未滿ノ町村ニ於テハ二十四人
五人口二萬以上ノ町村ニ於テハ三十人
議員ノ定數ハ町村條例ヲ以テ特ニ之ヲ增減スルコトヲ得
議員ノ定數ハ總選舉ヲ行フ場合ニ非サレハ之ヲ增減セス但シ著シク人口
ノ增減アリタル場合ニ於テ內務大臣ノ許可ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラ
ス
第十二條町村公民ハ總テ選舉權ヲ有ス但シ公民權停止中ノ者又ハ第九條
第三項ノ場合ニ當ル者ハ此ノ限ニ在ラス
帝國臣民ニシテ直接町村稅ヲ納ムル者其ノ額町村公民ノ最多ク納稅スル
者三人中ノ一人ヨリモ多キトキハ第七條第一項ノ要件ニ當ラスト雖選擧
權ヲ有ス但シ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者及第九條第
二項ノ公民權停止ノ條件又ハ同條第三項ノ場合ニ當ル者ハ此ノ限ニ在ラ
ス
法人ニ關シテモ亦前項ノ例ニ依ル
直接町村稅ヲ賦課セサル町村ニ於テハ其ノ町村內ニ於テ納ムル直接國稅
額ニ依リ前二項ノ規定ヲ適用ス
前三項ノ直接町村稅及直接國稅ノ納額ハ選舉人名簿調製期日ノ屬スル會
計年度ノ前年度ノ賦課額ニ依ルヘシ
第十三條選舉人ハ分チテ二級トス
選擧人中直接町村稅ノ納額最多キ者ヲ合セテ選擧人全員ノ納ムル總額ノ
半ニ當ルヘキ者ヲ一級トシ其ノ他ノ選舉人ヲ二級トス但シ一級選舉人ノ
數議員定數ノ二分ノ一ヨリ少キトキハ納額最多キ者議員定數ノ二分ノ一
ト同數ヲ以テ一級トス
一級二級ノ間納稅額兩級ニ跨ル者アルトキハ一級ニ入ルヘシ兩級ノ間ニ
同額ノ納稅者二人以上アルトキハ其ノ町村內ニ住所ヲ有スル年數ノ多キ
者ヲ以テ一級ニ入ル住所ヲ有スル年數同シキトキハ年長者ヲ以テシ年齢
ニ依リ難キトキハ町村長抽籤シテ之ヲ定ム, >
選舉人ハ每級各別ニ議員定數ノ半數ヲ選舉ス
被選舉人ハ同級內ノ者ニ限ラス各級ニ通シテ選舉セラルルコトヲ得
直接町村稅ヲ賦課セサル町村ニ於テハ第二項及第三項ノ納稅額ハ選舉人
ノ町村内ニ於テ納ムル直接國稅額ニ依ルヘシ
第二項第三項及前項ノ直接町村稅及直接國稅ノ納額ニ關シテハ前條第五
項ノ規定ヲ適用ス
特別ノ事情アリテ前七項ノ例ニ依り難キ町村ニ於テハ町村條例ヲ以テ特
例ヲ設クルコトヲ得
第十四條特別ノ事情アルトキハ町村ハ郡長ノ許可ヲ得區劃ヲ定メテ選舉
分會ヲ設クルコトヲ得二級選舉ノ爲ノミニ付亦同シ
第十五條選舉權ヲ有スル町村公民ハ被選舉權ヲ有ス
左ニ掲クル者ハ被選擧權ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一月ヲ經過セサル
者亦同シ
-所屬府縣郡ノ官吏及有給吏員
二其ノ町村ノ有給吏員
三檢事警察官吏及收稅官吏
四.神官神職僧侶其ノ他諸宗〓師
五小學校〓員
町村ニ對シ常ニ工事ノ請負、物件勞力其ノ他ノ供給契約ヲ爲シ若ハ町村
ノ爲金錢出納ノ取扱ヲ爲ス者又ハ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ役員ハ其ノ町
村ニ於テ被選擧權ヲ有セス
父子兄弟タル緣故アル者ハ同時ニ町村會議員ノ職ニ在ルコトヲ得ス其ノ
同時ニ選舉セラレタルトキハ同級ニ在リテハ得票ノ數ニ依リ其ノ多キ者
一人ヲ當選者トシ同數ナルトキ又ハ等級ヲ異ニシテ選舉セラレタルトキ
ハ年長者ヲ當選者トス其ノ時ヲ異ニシテ選舉セラレタルトキハ後ニ選舉
セラレタル者議員タルコトヲ得ス
議員ト爲リタル後前項ノ緣故ヲ生シタル場合ニ於テハ年少者其ノ職ヲ失
フ
町村長又ハ助役ト父子兄弟タル緣故アル者ハ町村會議員ノ職ニ在ルコト
刁麺、
第十六條町村會議員ハ名譽職トス
議員ノ任期ハ四年トシ總選舉ノ第一日ヨリ之ヲ起算ス
議員ノ定數ニ異動ヲ生シタル爲解任ヲ要スル者アルトキハ每級各別ニ町
村長抽籤シテ之ヲ定ム但シ解任ヲ要スル等級ニ關員アルトキハ其ノ闕員
ヲ以テ之ニ充ツヘシ
議員ノ定數ニ異動ヲ生シタル爲新ニ選舉セラレタル議員ハ總選舉ニ依リ
選舉セラレタル議員ノ任期滿了ノ日迄在任ス
第十七條町村會議員中闕員ヲ生シ其ノ闕員議員定數ノ三分ノ一以上ニ至
リタルトキ又ハ郡長町村長若ハ町村會ニ於テ必要ト認ムルトキハ補闕選
舉ヲ行フヘシ
補闕議員ハ其ノ前任者ノ殘任期間在任ス
補闕議員ハ前任者ノ選舉セラレタル等級ニ於テ之ヲ選舉スヘシ
第十八條町村長ハ選舉期日前六十日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ選舉人
ノ資格ヲ記載セル選舉人名簿ヲ調製スヘシ
町村長ハ選舉期日前五十日ヲ期トシ其ノ日ヨリ七日間每日午前八時ヨリ
午後四時迄町村役場又ハ告示シタル場所ニ於テ選舉人名簿ヲ關係者ノ縱
覽ニ供スヘシ關係者ニ於テ異議アルトキハ縱覽期間內ニ之ヲ町村長ニ申
立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ町村長ハ縱覽期間滿了後三日以內ニ町
村會ノ決定ニ付スヘシ町村會ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ七日以內ニ之
ヲ決定スヘ
前項ノ決定ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決又ハ第四項ノ裁
決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二項ノ決定及前項ノ裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願又ハ訴訟ヲ提起ス
ルコトヲ得
前二項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
前四項ノ場合ニ於テ決定若ハ裁決確定シ又ハ判決アリタルニ依リ名簿ノ
修正ヲ要スルトキハ町村長ハ其ノ確定期日前ニ修正ヲ加フヘシ
選舉人名簿ハ選舉期日前三日ヲ以テ確定ス
確定名簿ハ第三條ノ處分アリタル場合ニ於テ府縣知事ノ指定スルモノヲ
除クノ外其ノ確定シタル日ヨリ一年以内ニ於テ行フ選舉ニ之ヲ用ウ但シ
名簿確定後裁決確定シ又ハ判決アリタルニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキ
ハ選舉ヲ終リタル後ニ於テ次ノ選舉期日前四日迄ニ之ヲ修正スヘシ
選舉人名簿ヲ修正シタルトキハ町村長ハ直ニ其ノ要領ヲ告示スヘシ
選舉分會ヲ設クルトキハ町村長ハ確定名簿ニ依リ分會ノ區劃每ニ名簿ノ
抄本ヲ調製スヘシ
確定名簿ニ登錄セラレサル者ハ選舉ニ參與スルコトヲ得ス但シ選舉人名
簿ニ登錄セラルヘキ確定裁決書又ハ判決書ヲ所持シ選舉ノ當日選舉會場
ニ到ル者ハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ選舉人ハ等級ノ標準タル直接町村稅又ハ直接國稅ニ依リ其ノ
者ノ納額ニシテ名簿ニ登錄セラレタル一級選舉人中ノ最少額ヨリ多キト
キハ一級ニ於テ其ノ他ハ二級ニ於テ選舉ヲ行フヘシ但シ直接町村稅又ハ
直接國稅ヲ以テ等級ノ標準ト爲ササル町村ニ於テハ選擧長ノ定ムル所ニ
依ル
確定名簿ニ登錄セラレタル者選舉權ヲ有セサルトキハ選舉ニ參與スルコ
トヲ得ス但シ名簿ハ之ヲ修正スル限ニ在ラス
第二項乃至第五項ノ場合ニ於テ決定若ハ裁決確定シ又ハ判決アリタルニ
依リ名簿無效ト爲リタルトキハ更ニ名簿ヲ調製スヘシ其ノ名簿ノ調製、
縱覽、修正、確定及異議ノ決定ニ關スル期日、期限及期間ハ郡長ノ定ムル所
ニ依ル名簿ノ喪失シタルトキ亦同シ
選舉人名簿調製後ニ於テ選舉期日ヲ變更スルコトアルモ其ノ名簿ヲ用井
縱覽、修正、確定及異議ノ決定ニ關スル期日、期限及期間ハ前選舉期日ニ依
リ之ヲ算定ス
第十九條町村長ハ選舉期日ヨリ少クトモ七日前ニ選舉會場、投票ノ日時
及各級ヨリ選舉スヘキ議員數ヲ告示スヘシ選舉分會ヲ設クル場合ニ於テ
ハ併セテ其ノ等級及區劃ヲ告示スヘシ
選舉分會ノ選舉ハ本會ト同日時ニ之ヲ行フヘシ天災事變等ニ依リ同日時
ニ選舉ヲ行フコト能ハサルトキハ町村長ハ其ノ選舉ヲ終ラサル選舉會又
ハ選舉分會ノミニ關シ更ニ選舉會場及投票ノ日時ヲ告示シ選舉ヲ行フヘ
シ
選舉ヲ行フ順序ハ先ツ一一級ノ選舉ヲ行ヒ次ニ一級ノ選舉ヲ行フヘシ天災
事變等ニ依リ選舉ヲ行フコト能ハサルニ至リタルトキハ町村長ハ其ノ選
舉ヲ終ラサル等級ノミニ關シ更ニ選舉會場及投票ノ日時ヲ告示シ選舉ヲ
行フヘシ
第二十條町村長ハ選舉長ト爲リ選舉會ヲ開閉シ其ノ取締ニ任ス
選舉分會ハ町村長ノ指名シタル吏員選舉分會長ト爲リ之ヲ開閉シ其ノ取
締ニ任ス
町村長ハ選舉人中ヨリ一一人乃至四人ノ選舉立會人ヲ選任スヘシ但シ選舉
分會ヲ設ケタルトキハ各別ニ選舉立會人ヲ設クヘシ
選舉立會人ハ名譽職トス
第二十一條選舉人ニ非サル者ハ選舉會場ニ入ルコトヲ得ス但シ選舉會場
ノ事務ニ從事スル者、選舉會場ヲ監視スル職權ヲ有スル者又ハ警察官吏
ハ此ノ限ニ在ラス
選舉會場ニ於テ演說討論ヲ爲シ若ハ喧擾ニ涉リ又ハ投票ニ關シ協議若ハ
勸誘ヲ爲シ其ノ他選舉會場ノ秩序ヲ紊ス者アルトキハ選舉長又ハ分會長
ハ之ヲ制止シ命ニ從ハサルトキハ之ヲ選舉會場外ニ退出セシムヘシ
前項ノ規定ニ依リ退出セシメラレタル者ハ最後ニ至リ投票ヲ爲スコトヲ
得但シ選舉長又ハ分會長會場ノ秩序ヲ紊スノ虞ナシト認ムル場合ニ於テ
投票ヲ爲サシムルヲ妨ケス
第二十二條選舉ハ無記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選舉人ハ選舉ノ當日投票時間內ニ自ラ選舉會場ニ到リ選舉人名簿又ハ其
ノ抄本ノ對照ヲ經テ投票ヲ爲スヘシ
投票時間內ニ選舉會場ニ入リタル選舉人ハ其ノ時間ヲ過クルモ投票ヲ爲
スコトヲ得
選舉人ハ選舉會場ニ於テ投票用紙ニ自ラ被選舉人一人ノ氏名ヲ記載シテ
投函スヘシ但シ確定名簿ニ登錄セラレタル每級選舉人ノ數其ノ選舉スヘ
キ議員數ノ三倍ヨリ少キ場合ニ於テハ連名投票ノ法ヲ用ウヘシ
自ラ被選舉人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者ハ投票ヲ爲スコトヲ得ス
投票用紙ハ町村長ノ定ムル所ニ依リ一定ノ式ヲ用ウヘシ
選舉分會ニ於テ爲シタル投票ハ分會長少クトモ一人ノ選舉立會人ト共ニ
投票函ノ儘之ヲ本會ニ送致スヘシ
第二十三條增員選舉及補關選舉ヲ同時ニ行フ場合ニ於テハ一ノ選舉ヲ以
テ合併シテ之ヲ行フ
第二十四條第十二條第二項又ハ第三項ノ規定ニ依リ選舉權ヲ有スル者ハ
代人ヲ出シテ選舉ヲ行フコトヲ得但シ年齡二十五年以上ノ男子ニ非サル
者、禁治產者及準禁治產者ハ必ス代人ヲ以テスヘ
代人ハ帝國臣民ニシテ年齡二十五年以上ノ男子ニ限ル
第七條第一項但書ニ當ル者、第八條第二項ノ規定ニ依ル公民權停止中ノ
者及第九條第二項ノ公民權停止ノ條件又ハ同條第三項ノ場合ニ當ル者ハ
代人タルコトヲ得ス又一人ニシテ數人ノ代理ヲ爲スコトヲ得ス
代人ハ委任狀其ノ他代理ヲ證スル書面ヲ選舉長又ハ分會長ニ示スヘシ
第二十五條左ノ投票ハ之ヲ無效トス
一成規ノ用紙ヲ用井サルモノ
二現ニ町村會議員ノ職ニ在ル者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
三一投票中二人以上ノ被選舉人ノ氏名ヲ記載シタルモノ
被選舉人ノ何人タルカヲ確認シ難キモノ
六五四被選舉權ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
被選舉人ノ氏名ノ外他事ヲ記入シタルモノ但シ爵位職業身分住所又
ハ敬稱ノ類ヲ記入シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
連名投票ノ法ヲ用井タル場合ニ於テハ前項第一號及第六號ニ該當スルモ
ノ竝其ノ記載ノ人員選舉スヘキ定數ニ過キタルモノハ之ヲ無效トシ前項
第二號第四號及第五號ニ該當スルモノハ其ノ部分ノミヲ無效トス
第二十六條投票ノ拒否及效力ハ選舉立會人之ヲ決定ス可否同數ナルトキ
ハ選擧長之ヲ決スヘシ
選舉分會ニ於ケル投票ノ拒否ハ其ノ選舉立會人之ヲ決定ス可否同數ナル
トキハ分會長之ヲ決スヘシ
第二十七條町村會議員ノ選舉ハ有效投票ノ最多數ヲ得タル者ヲ以テ當選
者トス但シ各級ニ於テ選舉スヘキ議員數ヲ以テ選舉人名簿ニ登錄セラレ
タル各級ノ人員數ヲ除シテ得タル數ノ五分ノ一以上ノ得票アルコトヲ要
ス
前項ノ規定ニ依リ當選者ヲ定ムルニ當リ得票ノ數同シキトキハ年長者ヲ
取リ年齡同シキトキハ選舉長抽籤シテ之ヲ定ムヘシ
第二十八條選擧長又ハ分會長ハ選舉錄ヲ調製シテ選舉又ハ投票ノ〓末ヲ
記載シ選舉又ハ投票ヲ終リタル後之ヲ朗讀シ選舉立會人二人以上ト共ニ
之ニ署名スヘシ
選舉分會長ハ投票函ト同時ニ選舉錄ヲ本會ニ送致スヘシ
選舉錄ハ投票、選舉人名簿其ノ他ノ關係書類ト共ニ選舉及當選ノ效力確
定スルニ至ル迄之ヲ保存スヘ
第二十九條當選者定マリタルトキハ町村長ハ直ニ當選者ニ當選ノ旨ヲ告
知スヘシ
當選者當選ヲ辭セムトスルトキハ當選ノ告知ヲ受タル日ヨリ五日以內ニ
之ヲ町村長ニ申立ツヘシ
一人ニシテ兩級ニ於テ當選シタルトキハ最終ニ當選ノ告知ヲ受ケタル日
ヨリ五日以內ニ何レノ當選ニ應スヘキカヲ町村長ニ申立ツヘシ其ノ期間
內ニ之ヲ申立テサルトキハ町村長抽籤シテ之ヲ定ム
第十五條第二項ニ揭ケサル官吏ニシテ當選シタル者ハ所屬長官ノ許可ヲ
受クルニ非サレハ之ニ應スルコトヲ得ス
前項ノ官吏ハ當選ノ告知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ之ニ應スヘキ旨
ヲ町村長ニ申立テサルトキハ其ノ當選ヲ辭シタルモノト看做ス第三項ノ
場合ニ於テ何レノ當選ニ應スヘキカヲ申立テサルトキハ總テ之ヲ辭シタ
ルモノト看做ス
第三十條町村會議員ノ當選ヲ辭シタル者アルトキハ町村長ハ直ニ之ヲ
補フヘキ當選者ヲ定ムヘシ此ノ場合ニ於テハ第二十七條ノ規定ヲ準用ス
第三十一條選舉ヲ終リタルトキハ町村長ハ直ニ選舉錄ノ謄本ヲ添ヘ之ヲ
郡長ニ報〓スヘシ
第二十九條第二項ノ期間ヲ經過シタルトキ、同條第三項若ハ第五項ノ申
立アリタルトキ又ハ同條第三項ノ規定ニ依リ抽籤ヲ爲シタルトキハ町村
長ハ直ニ當選者ノ住所氏名ヲ告示シ併セテ之ヲ郡長ニ報告スヘシ
第三十二條選舉ノ規定ニ違反スルコトアルトキハ選舉ノ結果ニ異動ヲ生
スルノ虞アル場合ニ限リ其ノ選舉ノ全部又ハ一部ヲ無效トス
第三十三條選舉人選舉又ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選舉ニ關シ
テハ選舉ノ日ヨリ當選ニ關シテハ第三十一條第二項ノ告示ノ日ヨリ七日
以內ニ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ町村長ハ七日以
內ニ町村會ノ決定ニ付スヘシ町村會ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ十四日
以內ニ之ヲ決定スヘシ
前項ノ決定ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願スルコトヲ得
郡長ハ選舉又ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ府縣知事ノ指揮ヲ受ケ
選舉ニ關シテハ第三十一條第一項ノ報告ヲ受ケタル日ヨリ當選ニ關シテ
ハ同條第二項ノ報告ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ之ヲ處分スルコトヲ
得
前項ノ處分アリタルトキハ同一事件ニ付爲シタル異議ノ申立及町村會ノ
決定ハ無效トス
第三項ノ處分ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決又ハ第二項若
ハ第六項ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第一項ノ決定及第二項又ハ前項ノ裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願又ハ訴
訟ヲ提起スルコトヲ得
第二項第五項又ハ前項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコ
トヲ得
町村會議員ハ選擧又ハ當選ニ關スル處分、決定若ハ裁決確定シ又ハ判決
アル迄ハ會議ニ列席シ議事ニ參與スルノ權ヲ失ハス
第三十四條當選無效ト確定シタルトキハ町村長ハ直ニ第二十七條ノ例ニ
依リ更ニ當選者ヲ定ムヘシ
選舉無效ト確定シタルトキハ更ニ選舉ヲ行フヘシ議員ノ定數ニ足ル當選
者ヲ得ルコト能ハサルトキハ其ノ不足ノ員數ニ付亦同シ
第三十五條町村會議員ニシテ被選舉權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ
被選舉權ノ有無ハ町村會之ヲ決定ス但シ禁治產者、準禁治產者、六年ノ懲
役若ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者、町村公民權ヲ停止セラレタル者
又ハ第九條第三項ノ場合ニ當ル者ニ付テハ町村長之ヲ決定スヘシ
町村長ハ町村會議員中被選擧權ヲ有セサル者アリト認ムルトキハ之ヲ町
村會ノ決定ニ付スヘシ
第一項ノ決定ヲ受ケタル者其ノ決定ニ不服アルトキハ府縣參事會ニ訴願
シ其ノ裁決又ハ第四項ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコ
トヲ得
第一項ノ決定及前項ノ裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願又ハ訴訟ヲ提起ス
ルコトヲ得
前二項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十三條第八項ノ規定ハ第一項及前三項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第一項ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ本人ニ交付スヘ
第三十六條第十八條及第三十三條ノ場合ニ於テ府縣參事會ノ決定及裁決
ハ府縣知事、郡長ノ處分ハ郡長、町村會ノ決定ハ町村長直ニ之ヲ告示スヘ
シ
第三十七條本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令ニ依リ設置スル議會ノ議員
ノ選擧ニ付テハ衆議院議員選舉ニ關スル罰則ヲ準用ス
前項ノ罰則中選舉人ニ關スル規定ハ第二十四條ノ代人ニ之ヲ準用ス
第三十八條特別ノ事情アル町村ニ於テハ郡長ハ府縣知事ノ許可ヲ得テ其
ノ町村ヲシテ町村會ヲ設ケス選擧權ヲ有スル町村公民ノ總會ヲ以テ之ニ
充テシムルコトヲ得
町村總會ニ關シテハ町村會ニ關スル規定ヲ準用ス
第二款職務權限
第三十九條町村會ハ町村ニ關スル事件及法律勅令ニ依リ其ノ權限ニ屬ス
ル事件ヲ議決ス
第四十條町村會ノ議決スヘキ事件ノ〓目左ノ如シ
一町村條例及町村規則ヲ設ケ又ハ改廢スル事
二町村費ヲ以テ支辨スヘキ事業ニ關スル事但シ第七十七條ノ事務及法
律勅令ニ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
歲入出豫算ヲ定ムル事
五四三決算報告ヲ認定スル事
法令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料、手數料、加入金町村稅又ハ夫没
現品ノ賦課徵收ニ關スル事
七六不動產ノ管理處分及取得ニ關スル事
基本財產及積立金穀等ノ設置管理及處分ニ關スル事
八歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及權
利ノ抛棄ヲ爲ス事
九財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法律勅令ニ規定アルモノハ
此ノ限ニ在ラス
十町村吏員ノ身元保證ニ關スル事
十一町村ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事
第四十一條町村會ハ法律勅令ニ依リ其ノ權限ニ屬スル選舉ヲ行フヘシ
第四十二條町村會ハ町村ノ事務ニ關スル書類及計算書ヲ檢閲シ町村長ノ
報告ヲ請求シテ事務ノ管理、議決ノ執行及出納ヲ檢査スルコトヲ得
町村會ハ議員中ヨリ委員ヲ選舉シ町村長又ハ其ノ指名シタル吏員立會ノ
上實地ニ就キ前項町村會ノ權限ニ屬スル事件ヲ行ハシムルコトヲ得
第四十三條町村會ハ町村ノ公益ニ關スル事件ニ付意見書ヲ町村長又ハ監
督官廳ニ提出スルコトヲ得
第四十四條町村會ハ行政廳ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
町村會ノ意見ヲ徵シテ處分ヲ爲スヘキ場合ニ於テ町村會成立セス、招集
ニ應セス若ハ意見ヲ提出セス又ハ町村會ヲ招集スルコト能ハサルトキハ
當該行政廳ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十五條町村會ハ町村長ヲ以テ議長トス町村長故障アルトキハ其ノ代
理者議長ノ職務ヲ代理ス町村長及其ノ代理者共ニ故障アルトキハ年長ノ
議員議長ノ職務ヲ代理ス年齡同シキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第四十六條町村長及其ノ委任又ハ囑託ヲ受ケタル者ハ會議ニ列席シテ議
事ニ參與スルコトヲ得但シ議決ニ加ハルコトヲ得ス
前項ノ列席者發言ヲ求ムルトキハ議長ハ直ニ之ヲ許スヘシ但シ之カ爲議
員ノ演說ヲ中止セシムルコトヲ得ス
第四十七條町村會ハ町村長之ヲ招集ス議員定數三分ノ一以上ノ請求アル
トキハ町村長ハ之ヲ招集スヘシ
町村長ハ必要アル場合ニ於テハ會期ヲ定メテ町村會ヲ招集スルコトヲ得
招集及會議ノ事件ハ開會ノ日ヨリ少クトモ三日前ニ之ヲ告知スヘシ但シ
急施ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
町村會開會中急施ヲ要スル事件アルトキハ町村長ハ直ニ之ヲ其ノ會議ニ
付スルコトヲ得三日前迄ニ告知ヲ爲シタル事件ニ付亦同シ
町村會ハ町村長之ヲ開閉ス
第四十八條町村會ハ議員定數ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開ク
コトヲ得ス但シ第五十條ノ除斥ノ爲半數ニ滿タサルトキ、同一ノ事件ニ
付招集再囘ニ至ルモ仍半數ニ滿タサルトキ又ハ招集ニ應スルモ出席議員
定數ヲ闕キ議長ニ於テ出席ヲ催告シ仍半數ニ滿タサルトキハ此ノ限ニ在
ラス
第四十九條町村會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ
決スル所ニ依ル
第五十條議長及議員ハ自己又ハ父母、祖父母、妻、子孫、兄弟姊妹ノ一身
上ニ關スル事件ニ付テハ其ノ議事ニ參與スルコトヲ得ス但シ町村會ノ同
意ヲ得タルトキハ會議ニ出席シ發言スルコトヲ得
第五十一條法律勅令ニ依リ町村會ニ於テ選舉ヲ行フトキハ一人每ニ無記
名投票ヲ爲シ有效投票ノ過半數ヲ得タル者ヲ以テ當選者トス過半數ヲ得
タル者ナキトキハ最多數ヲ得タル者二人ヲ取リ之ニ就キ決選投票ヲ爲サ
シム其ノ二人ヲ取ルニ當リ同數者アルトキハ年長者ヲ取リ年齡同シキト
キハ議長抽籤シテ之ヲ定ム此ノ決選投票ニ於テハ多數ヲ得タル者ヲ以テ
當選者トス同數ナルトキハ年長者ヲ取リ年齡同シキトキハ議長抽籤シテ
之ヲ定ム
前項ノ場合ニ於テハ第二十二條及第二十五條ノ規定ヲ準用シ投票ノ效力
ニ關シ異議アルトキハ町村會之ヲ決定ス
第一項ノ選舉ニ付テハ町村會ハ其ノ議決ヲ以テ指名推選又ハ連名投票ノ
法ヲ用ウルコトヲ得其ノ連名投票ノ法ヲ用ウル場合ニ於テハ前二項ノ例
ご依頼ノ
第五十二條町村會ノ會議ハ公開ス但シ左ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
一議長ノ意見ヲ以テ傍聽ヲ禁止シタルトキ
二議員二人以上ノ發議ニ依リ傍聽禁止ヲ可決シタルトキ
前項議員ノ發議ハ討論ヲ須井ス其ノ可否ヲ決スヘシ
第五十三條議長ハ會議ヲ總理シ會議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ會議ヲ開閉シ
議場ノ秩序ヲ保持ス
第五十四條議員ハ選舉人ノ指示又ハ委囑ヲ受クヘカラス
議員ハ會議中無禮ノ語ヲ用井又ハ他人ノ身上ニ渉リ言論スルコトヲ得ス
第五十五條會議中本法又ハ會議規則ニ違ヒ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ス議員
アルトキハ議長ハ之ヲ制止シ又ハ發言ヲ取消サシメ命ニ從ハサルトキハ
當日ノ會議ヲ終ル迄發言ヲ禁止シ又ハ議場外ニ退去セシメ必要アル場合
ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
議場騒擾ニシテ整理シ難キトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ中止シ又ハ之ヲ閉
ツルコトヲ得
第五十六條傍聽人公然可否ヲ表シ又ハ喧騒ニ涉リ其ノ他會議ノ妨害ヲ爲
ストキハ議長ハ之ヲ制止シ命ニ從ハサルトキハ之ヲ退場セシメ必要アル
場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
傍聽席騒擾ナルトキハ議長ハ總テノ傍聽人ヲ退場セシメ必要アル場合ニ
於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
第五十七條町村會ニ書記ヲ置キ議長ニ隸屬シテ庶務ヲ處理セシム
書記ハ議長之ヲ任免ス
第五十八條議長ハ書記ヲシテ會議錄ヲ調製シ會議ノ〓末及出席議員ノ氏
名ヲ記載セシムヘシ
會議錄ハ議長及議員二人以上之ニ署名スルコトヲ要ス其ノ議員ハ町村會
ニ於テ之ヲ定ムヘシ
第五十九條町村會ハ會議規則及傍聽人取締規則ヲ設クヘシ
會議規則ニハ本法及會議規則ニ違反シタル議員ニ對シ町村會ノ議決ニ依
リ三日以内出席ヲ停止シ又ハ二圓以下ノ過怠金ヲ科スル規定ヲ設クルコ
トヲ得
第三章町村吏員
第一款組織選舉及任免
第六十條町村ニ町村長及助役一人ヲ置ク但シ町村條例ヲ以テ助役ノ定
數ヲ增加スルコトヲ得
第六十一條町村長及助役ハ名譽職トス
町村ハ町村條例ヲ以テ町村長又ハ助役ヲ有給ト爲スコトヲ得
第六十二條町村長及助役ノ任期ハ四年トス
第六十三條町村長ハ町村會ニ於テ之ヲ選舉ス
助役ハ町村長ノ推薦ニ依リ町村會之ヲ定ム
名譽職町村長及名譽職助役ハ其ノ町村公民中選舉權ヲ有スル者ニ限ル
有給町村長及有給助役ハ第七條第一項ノ規定ニ拘ラス在職ノ間其ノ町村
ノ公民トス
第六十四條町村長ヲ選舉シ又ハ助役ヲ定メタルトキハ府縣知事ノ認可ヲ
受クヘシ
前項ノ場合ニ於テ府縣知事ノ不認可ニ對シ町村長又ハ町村會ニ於テ不服
アルトキハ內務大臣ニ具狀シテ認可ヲ請フコトヲ得
町村長及助役ハ府縣知事ノ認可ヲ受クルニ非サレハ任期中退職スルコト
ヲ得ス
前項ノ認可ヲ受ケタル者ニ付テハ第八條第二項ノ規定ヲ適用セス
第六十五條町村長及助役ハ第十五條第二項ニ揭ケタル職ト兼ヌルコトヲ
得ス又其ノ町村ニ對シ常ニ工事ノ請負、物件勞力其ノ他ノ供給契約ヲ爲シ
若ハ其ノ町村ノ爲金錢出納ノ取扱ヲ爲シ又ハ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ役
員タルコトヲ得ス
町村長ト父子兄弟タル緣故アル者ハ助役ノ職ニ在ルコトヲ得ス
父子兄弟タル緣故アル者ハ同時ニ助役ノ職ニ在ルコトヲ得ス第十五條第
五項ノ規定ハ此ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六十六條有給町村長及有給助役ハ郡長ノ許可ヲ受クルニ非サレハ他ノ
報償アル業務ニ從事スルコトヲ得ス
有給町村長及有給助役ハ會社ノ役員又ハ事務員タルコトヲ得ス
第六十七條町村ニ收入役一人ヲ置ク但シ特別ノ事情アル町村ニ於テハ町
村條例ヲ以テ副收入役一人ヲ置クコトヲ得
收入役及副收入役ハ有給吏員トシ其ノ任期ハ四年トス
收入役及副收入役ハ町村長ノ推薦ニ依リ町村會之ヲ定メ郡長ノ認可ヲ受
クヘシ
前項ノ場合ニ於テ郡長ノ不認可ニ對シ町村長又ハ町村會ニ於テ不服アル
トキハ府縣知事ニ具狀シテ認可ヲ請フコトヲ得
第六十三條第四項ノ規定ハ收入役ニ第六十五條第一項及前條ノ規定ハ收
入役及副收入役ニ之ヲ準用ス
町村長又ハ助役ト父子兄弟タル緣故アル者ハ收入役又ハ副收入役ノ職ニ
在ルコトヲ得ス
收入役ト父子兄弟タル縁故アル者ハ副收入役ノ職ニ在ルコトヲ得ス
特別ノ事情アル町村ニ於テハ郡長ノ許可ヲ得テ町村長又ハ助役ヲシテ收
入役ノ事務ヲ兼掌セシムルコトヲ得
第六十八條町村ハ處務便宜ノ爲區ヲ劃シ區長及其ノ代理者一人ヲ置クコ
トヲ得
區長及其ノ代理者ハ名譽職トス町村會ニ於テ町村公民中選舉權ヲ有スル
者ヨリ之ヲ選舉ス
第六十九條町村ハ臨時又ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
委員ハ名譽職トス町村會ニ於テ町村會議員又ハ町村公民中選舉權ヲ有ス
ル者ヨリ之ヲ選舉ス但シ委員長ハ町村長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル助役ヲ
以テ之ニ充ツ
常設委員ノ組織ニ關シテハ町村條例ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第七十條名譽職町村長及名譽職助役其ノ他町村公民ニ限リテ擔任スヘ
キ職務ニ在ル吏員ニシテ町村公民權ヲ喪失シ若ハ停止セラレタルトキ又
ハ第九條第三項ノ場合ニ當ルトキハ其ノ職ヲ失フ職ニ就キタルカ爲町村
公民タル者ニシテ禁治產若ハ準禁治產ノ宣告ヲ受ケタルトキ又ハ第九條
第二項若ハ第三項ノ場合ニ當ルトキ亦同シ
前項ノ職務ニ在ル者ニシテ禁錮以上ノ刑ニ當ルヘキ罪ノ爲豫審又ハ公判
ニ付セラレタルトキハ監督官廳ハ其ノ職務ノ執行ヲ停止スルコトヲ得此
ノ場合ニ於テハ其ノ停止期間報酬又ハ給料ヲ支給スルコトヲ得ス
第七十一條前數條ニ定ムル者ノ外町村ニ必要ノ有給吏員ヲ置キ町村長之
ヲ任免ス
前項吏員ノ定數ハ町村會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
第二款職務權限
第七十二條町村長ハ町村ヲ統轄シ町村ヲ代表ス
町村長ノ擔任スル事務ノ〓目左ノ如シ
-町村會ノ議決ヲ經ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ發シ及其ノ議決ヲ執行ス
ル事
二財產及營造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者ヲ置キタルトキハ其
ノ事務ヲ監督スル事
三收入支出ヲ命令シ及會計ヲ監督スル事
四證書及公文書類ヲ保管スル事
五法令又ハ町村會ノ議決ニ依リ使用料、手數料、加入金、町村稅又ハ夫
役現品ヲ賦課徵收スル事
六其ノ他法令ニ依リ町村長ノ職權ニ屬スル事項
第七十三條町村長ハ町村吏員ヲ指揮監督シ之ニ對シ懲戒ヲ行フコトヲ得
其ノ懲戒處分ハ譴責及五圓以下ノ過怠金トス
第七十四條町村會ノ議決又ハ選舉其ノ權限ヲ越エ又ハ法令若ハ會議規則
ニ背クト認ムルトキハ町村長ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依
リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ又ハ再選舉ヲ行ハシムヘシ其ノ執行ヲ要
スルモノニ在リテハ之ヲ停止スヘシ
前項ノ場合ニ於テ町村會其ノ議決ヲ改メサルトキハ町村長ハ府縣參事會
ノ裁決ヲ請フヘシ但シ特別ノ事由アルトキハ再議ニ付セスシテ直ニ裁決
ヲ請フコトヲ得
監督官廳ハ第一項ノ議決又ハ選舉ヲ取消スコトヲ得但シ裁決ノ申請アリ
タルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依ル郡長ノ處分ニ不服アル町村長又ハ町村會ハ府縣參事會
ニ訴願スルコトヲ得其ノ裁決、第二項ノ裁決又ハ前項ノ規定ニ依ル府縣
知事ノ處分ニ不服アル町村長又ハ町村會ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ
得
町村會ノ議決公益ヲ害シ又ハ町村ノ收支ニ關シ不適當ナリト認ムルトキ
ハ町村長ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ
再議ニ付スヘシ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ之ヲ停止スヘシ
前項ノ場合ニ於テ町村會其ノ議決ヲ改メサルトキハ町村長ハ郡長ノ處分
ヲ請フヘシ
前項ノ處分ニ不服アル町村長又ハ町村會ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決
ニ不服アルトキハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項府縣參事會ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第二項及第四項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第七十五條町村會成立セサルトキ又ハ第四十八條但書ノ場合ニ於テ仍會
議ヲ開クコト能ハサルトキハ町村長ハ郡長ニ具狀シテ指揮ヲ請ヒ町村會
ノ議決スヘキ事件ヲ處置スルコトヲ得
町村會ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セサルトキハ前項ノ例ニ依ル
町村會ノ決定スヘキ事件ニ關シテハ前二項ノ例ニ依ル此ノ場合ニ於ケル
町村長ノ處置ニ關シテハ各本條ノ規定ニ準シ訴願又ハ訴訟ヲ提起スルコ
トヲ得
前三項ノ規定ニ依ル處置ニ付テハ次囘ノ會議ニ於テ之ヲ町村會ニ報告ス
ヘシ
第七十六條町村會ニ於テ議決又ハ決定スヘキ事件ニ關シ臨時急施ヲ要ス
ル場合ニ於テ町村會成立セサルトキ又ハ町村長ニ於テ之ヲ招集スルノ暇
ナシト認ムルトキハ町村長ハ之ヲ專決シ次囘ノ會議ニ於テ之ヲ町村會ニ
報〓スヘシ
前項ノ規定ニ依リ町村長ノ爲シタル處分ニ關シテハ各本條ノ規定ニ準シ
訴願又ハ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第七十七條町村長其ノ他町村吏員ハ法令ノ定ムル所ニ依リ國府縣其ノ他
公共團體ノ事務ヲ掌ル
前項ノ事務ヲ執行スル爲要スル費用ハ町村ノ負擔トス但シ法令中別段ノ
規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第七十八條町村長ハ郡長ノ許可ヲ得テ其ノ事務ノ一部ヲ助役又ハ區長ニ
分掌セシムルコトヲ得但シ町村ノ事務ニ付テハ豫メ町村會ノ同意ヲ得ル
コトヲ要ス
町村長ハ町村吏員ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第七十九條助役ハ町村長ノ事務ヲ補助ス
助役ハ町村長故障アルトキ之ヲ代理ス助役數人アルトキハ豫メ町村長ノ
定メタル順序ニ依リ之ヲ代理ス
第八十條收入役ハ町村ノ出納其ノ他ノ會計事務及第七十七條ノ事務ニ
關スル國府縣其ノ他公共團體ノ出納其ノ他ノ會計事務ヲ掌ル但シ法令中
別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
町村ハ收入役故障アルトキ之ヲ代理スヘキ吏員ヲ定メ郡長ノ認可ヲ受ク
ヘシ但シ副收入役ヲ置キタル町村ハ此ノ限ニ在ラス
副收入役ハ收入役ノ事務ヲ補助シ收入役故障アルトキ之ヲ代理ス
町村長ハ郡長ノ許可ヲ得テ收入役ノ事務ノ一部ヲ副收入役ニ分掌セシム
ルコトヲ得但シ町村ノ出納其ノ他ノ會計事務ニ付テハ豫メ町村會ノ同意
ヲ得ルコトヲ要ス
第八十一條區長ハ町村長ノ命ヲ承ケ町村長ノ事務ニシテ區內ニ關スルモ
ノヲ補助ス
區長代理者ハ區長ノ事務ヲ補助シ區長故障アルトキ之ヲ代理ス
第八十二條委員ハ町村長ノ指揮監督ヲ承ケ財產又ハ營造物ヲ管理シ其ノ
他委託ヲ受ケタル町村ノ事務ヲ調査シ又ハ之ヲ處辨ス
第八十三條第七十一條ノ吏員ハ町村長ノ命ヲ承ケ事務ニ從事ス
第四章給料及給與
第八十四條名譽職町村長、名譽職助役、町村會議員其ノ他ノ名譽職員ハ職
務ノ爲要スル費用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
名譽職町村長、名譽職助役、區長、區長代理者及委員ニハ費用辨償ノ外勤
務ニ相當スル報酬ヲ給スルコトヲ得
費用辨償額、報酬額及其ノ支給方法ハ町村會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
第八十五條有給町村長有給助役其ノ他ノ有給吏員ノ給料額、旅費額及
其ノ支給方法ハ町村會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
第八十六條有給吏員ニハ町村條例ノ定ムル所ニ依リ退隱料、退職給與金、
死亡給與金又ハ遺族扶助料ヲ給スルコトヲ得
第八十七條費用辨償、報酬、給料、旅費、退隱料、退職給與金、死亡給與金又
ハ遺族扶助料ノ給與ニ付關係者ニ於テ異議アルトキハ之ヲ町村長ニ申立
ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ町村會ノ決定ニ付スヘシ關係者其ノ決定ニ不服アルト
キハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決又ハ第三項ノ裁決ニ不服アルトキハ行
政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願又ハ訴訟ヲ提起スルコトヲ
得
前二項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第八十八條費用辨償、報酬、給料、旅費、退隱料、退職給與金、死亡給與金、
遺族扶助料其ノ他ノ給與ハ町村ノ負擔トス
第五章町村ノ財務
第一款財產營造物及町村稅
第八十九條收益ノ爲ニスル町村ノ財產ハ基本財產トシ之ヲ維持スヘシ
町村ハ特定ノ目的ノ爲特別ノ基本財產ヲ設ケ又ハ金穀等ヲ積立ツルコト
ヲ得
第九十條舊來ノ慣行ニ依リ町村住民中特ニ財產又ハ營造物ヲ使用スル
權利ヲ有スル者アルトキハ其ノ舊慣ニ依ル舊慣ヲ變更又ハ廢止セムトス
ルトキハ町村會ノ議決ヲ經ヘシ
前項ノ財產又ハ營造物ヲ新ニ使用セムトスル者アルトキハ町村ハ之ヲ許
可スルコトヲ得
第九十一條町村ハ前條ニ規定スル財產ノ使用方法ニ關シ町村規則ヲ設ク
ルコトヲ得
第九十二條町村ハ第九十條第一項ノ使用者ヨリ使用料ヲ徵收シ同條第二
項ノ使用ニ關シテハ使用料若ハ一時ノ加入金ヲ徵收シ又ハ使用料及加入
金ヲ共ニ徵收スルコトヲ得
第九十三條町村ハ營造物ノ使用ニ付使用料ヲ徵收スルコトヲ得
町村ハ特ニ一個人ノ爲ニスル事務ニ付手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第九十四條財產ノ賣却貸與、工事ノ請負及物件勞力其ノ他ノ供給ハ競爭入
札ニ付スヘシ但シ臨時急施ヲ要スルトキ入札ノ價額其ノ費用ニ比シテ
得失相償ハサルトキ又ハ町村會ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九十五條町村ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附又ハ補助ヲ爲ス
コトヲ得
第九十六條町村ハ其ノ必要ナル費用及從來法令ニ依リ又ハ將來法律勅令
ニ依リ町村ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義務ヲ負フ
町村ハ其ノ財產ヨリ生スル收入、使用料、手數料、過料、過怠金其ノ他法
令ニ依リ町村ニ屬スル收入ヲ以テ前項ノ支出ニ充テ仍不足アルトキハ町
村稅及夫役現品ヲ賦課徵收スルコトヲ得
第九十七條町村稅トシテ賦課スルコトヲ得ヘキモノ左ノ如シ
國稅府縣稅ノ附加稅
二特別稅
直接國稅又ハ直接府縣稅ノ附加稅ハ均一ノ稅率ヲ以テ之ヲ徵收スヘシ但
シ第百四十七條ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
國稅ノ附加稅タル府縣稅ニ對シテハ附加稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
特別稅ハ別ニ稅目ヲ起シテ課稅スルノ必要アルトキ賦課徵收スルモノト
ス
第九十八條三月以上町村內ニ滯在スル者ハ其ノ滯在ノ初ニ遡リ町村稅ヲ
納ムル義務ヲ負フ
第九十九條町村內ニ住所ヲ有セス又ハ三月以上滯在スルコトナシト雖町
村內ニ於テ土地家屋物件ヲ所有シ使用シ若ハ占有シ、町村内ニ營業所ヲ
設ケテ營業ヲ爲シ又ハ町村內ニ於テ特定ノ行爲ヲ爲ス者ハ其ノ土地家屋
物件營業若ハ其ノ收入ニ對シ又ハ其ノ行爲ニ對シテ賦課スル町村稅ヲ納
ムル義務ヲ負フ
第百條納稅者ノ町村外ニ於テ所有シ使用シ占有スル土地家屋物件若ハ
其ノ收入又ハ町村外ニ於テ營業所ヲ設ケタル營業若ハ其ノ收入ニ對シテ
ハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
町村ノ內外ニ於テ營業所ヲ設ケ營業ヲ爲ス者ニシテ其ノ營業又ハ收入ニ
對スル本稅ヲ分別シテ納メサルモノニ對シ附加稅ヲ賦課スル場合及住所
滯在町村ノ内外ニ渉ル者ノ收入ニシテ土地家屋物件又ハ營業所ヲ設ケタ
ル營業ヨリ生スル收入ニ非サルモノニ對シ町村稅ヲ賦課スル場合ニ付テ
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百一條所得稅法第五條ニ揭クル所得ニ對シテハ町村稅ヲ賦課スルコト
ヲ得ス
神社寺院祠宇佛堂ノ用ニ供スル建物及其ノ境內地竝〓會所說〓所ノ用ニ
供スル建物及其ノ構內地ニ對シテハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ有
料ニテ之ヲ使用セシムル者及住宅ヲ以テ〓會所說〓所ノ用ニ充ツル者ニ
對シテハ此ノ限ニ在ラス
國府縣市町村其ノ他公共團體ニ於テ公用ニ供スル家屋物件及營造物ニ對
シテハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者及
使用收益者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
國ノ事業又ハ行爲及國有ノ土地家屋物件ニ對シテハ國ニ町村稅ヲ賦課ス
ルコトヲ得ス
前四項ノ外町村稅ヲ賦課スルコトヲ得サルモノハ別ニ法律勅令ノ定ムル
所ニ依ル
第百二條數人ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他ノ必要ナル費用ハ其ノ關
係者ニ負擔セシムルコトヲ得
町村ノ一部ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他ノ必要ナル費用ハ其ノ部內
ニ於テ町村稅ヲ納ムル義務アル者ニ負擔セシムルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ營造物ヨリ生スル收入アルトキハ先ツ其ノ收入ヲ以
テ其ノ費用ニ充ツヘシ
前項ノ場合ニ於テ其ノ一部ノ收入アルトキ亦同シ
數人又ハ町村ノ一部ヲ利スル財產ニ付テハ前三項ノ例ニ依ル
第百三條町村稅及其ノ賦課徵收ニ關シテハ本法其ノ他ノ法律ニ規定アル
モノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得
第百四條數人又ハ町村ノ一部ニ對シ特ニ利益アル事件ニ關シテハ町村ハ
不均一ノ賦課ヲ爲シ又ハ數人若ハ町村ノ一部ニ對シ賦課ヲ爲スコトヲ得
第百五條夫役又ハ現品ハ直接町村稅ヲ準率ト爲シ直接町村稅ヲ賦課セサ
ル町村ニ於テハ直接國稅ヲ準率ト爲シ且之ヲ金額ニ算出シテ賦課スヘシ
但シ第百四十七條ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
學藝美術及手工ニ關スル勞務ニ付テハ夫役ヲ賦課スルコトヲ得ス
夫役ヲ賦課セラレタル者ハ其ノ便宜ニ從ヒ本人自ラ之ニ當リ又ハ適當ノ
代人ヲ出スコトヲ得
夫役又ハ現品ハ金錢ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第一項及前項ノ規定ハ急追ノ場合ニ賦課スル夫役ニ付テハ之ヲ適用セス
第百六條非常災害ノ爲必要アルトキハ町村ハ他人ノ土地ヲ一時使用シ又
ハ其ノ土石竹木其ノ他ノ物品ヲ使用シ若ハ收用スルコトヲ得但シ其ノ損
失ヲ補償スヘシ
前項ノ場合ニ於テ危險防止ノ爲必要アルトキハ町村長、警察官吏又ハ監
督官廳ハ町村內ノ居住者ヲシテ防禦ニ從事セシムルコトヲ得
第一項但書ノ規定ニ依リ補償スヘキ金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハ
サルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徵シ府縣知事之ヲ決定ス決定ヲ受ケタル者其
ノ決定ニ不服アルトキハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ本人ニ交付スヘシ
第一項ノ規定ニ依リ土地ノ一時使用ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服
アルトキハ郡長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ府縣知事ニ訴願シ其
ノ裁決ニ不服アルトキハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第百七條町村稅ノ賦課ニ關シ必要アル場合ニ於テハ當該吏員ハ日出ヨリ
日沒迄ノ間營業者ニ關シテハ仍其ノ營業時間內家宅若ハ營業所ニ臨檢シ
又ハ帳簿物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ當該吏員ハ其ノ身分ヲ證明スヘキ證票ヲ携帶スヘシ
第百八條町村長ハ納稅者中特別ノ事情アル者ニ對シ納稅延期ヲ許スコト
ヲ得其ノ年度ヲ越ユル場合ハ町村會ノ議決ヲ經ヘシ
町村ハ特別ノ事情アル者ニ限リ町村稅ヲ減免スルコトヲ得
第百九條使用料手數料及特別稅ニ關スル事項ニ付テハ町村條例ヲ以テ之
ヲ規定スヘシ其ノ條例中ニハ五圓以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコト
ヲ得
財產又ハ營造物ノ使用ニ關シテハ町村條例ヲ以テ五圓以下ノ過料ヲ科ス
ル規定ヲ設クルコトヲ得
過料ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ府縣參事會ニ訴願シ
其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ府縣知事又ハ町村長ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第百十條町村稅ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認
ムルトキハ徵稅令書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三月以內ニ町村長ニ異議ノ
申立ヲ爲スコトヲ得
財產又ハ營造物ヲ使用スル權利ニ關シ異議アル者ハ之ヲ町村長ニ申立ツ
ルコトヲ得
前二項ノ異議ハ之ヲ町村會ノ決定ニ付スヘシ決定ヲ受ケタル者其ノ決定
ニ不服アルトキハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決又ハ第五項ノ裁決ニ不服
アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第一項及前項ノ規定ハ使用料手數料及加入金ノ徵收竝夫役現品ノ賦課ニ
關シ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ニ依ル決定及裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願又ハ訴訟ヲ提
起スルコトヲ得
前三項ノ規定ニ依ル裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ
得
第百十一條町村稅、使用料、手數料、加入金、過料、過怠金其ノ他ノ町村ノ
收入ヲ定期內ニ納メサル者アルトキハ町村長ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促
スヘシ
夫役現品ノ賦課ヲ受ケタル者定期內ニ其ノ履行ヲ爲サス又ハ夫役現品ニ
代フル金錢ヲ納メタルトキハ町村長ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ急
迫ノ場合ニ賦課シタル夫役ニ付テハ更ニ之ヲ金額ニ算出シ期限ヲ指定シ
テ其ノ納付ヲ命スヘシ
前二項ノ場合ニ於テハ町村條例ノ定ムル所ニ依リ手數料ヲ徵收スルコト
ヲ得
滯納者第一項又ハ第二項ノ督促又ハ命令ヲ受ケ其ノ指定ノ期限內ニ之ヲ
完納セサルトキハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ處分スヘ
第一項乃至第三項ノ徵收金ハ府縣ノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追
徵還付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
前三項ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ府縣參事會ニ訴願
シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ府縣知事又ハ町村長ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第四項ノ處分中差押物件ノ公賣ハ處分ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第百十二條町村ハ其ノ負債ヲ償還スル爲、町村ノ永久ノ利益ト爲ルヘキ
支出ヲ爲ス爲又ハ天災事變等ノ爲必要アル場合ニ限リ町村債ヲ起スコト
得
町村債ヲ起スニ付町村會ノ議決ヲ經ルトキハ併セテ起債ノ方法、利息ノ
定率及償還ノ方法ニ付議決ヲ經ヘシ
町村ハ豫算內ノ支出ヲ爲ス爲一時ノ借入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ借入金ハ其ノ會計年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘシ
第二款歲入出豫算及決算
第百十三條町村長ハ每會計年度歳入出豫算ヲ調製シ遲クトモ年度開始ノ
一月前ニ町村會ノ議決ヲ經ヘシ
町村ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ依ル
豫算ヲ町村會ニ提出スルトキハ町村長ハ併セテ事務報告書及財產表ヲ提
出スヘシ
第百十四條町村長ハ町村會ノ議決ヲ經テ既定豫算ノ追加又ハ更正ヲ爲ス
コトヲ得
第百十五條町村費ヲ以テ支辨スル事件ニシテ數年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支
出スヘキモノハ町村會ノ議決ヲ經テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼
續費ト爲スコトヲ得
第百十六條町村ハ豫算外ノ支出又ハ豫算超過ノ支出ニ充ツル爲豫備費ヲ
設クヘシ
豫備費ハ町村會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第百十七條豫算ハ議決ヲ經タル後直ニ之ヲ郡長ニ報告シ且其ノ要領ヲ告
示スヘシ
第百十八條町村ハ特別會計ヲ設クルコトヲ得
第百十九條町村會ニ於テ豫算ヲ議決シタルトキハ町村長ヨリ其ノ謄本ヲ
收入役ニ交付スヘシ
收入役ハ町村長又ハ監督官廳ノ命令アルニ非サレハ支拂ヲ爲スコトヲ得
ス命令ヲ受クルモ支出ノ豫算ナク且豫備費支出、費目流用其ノ他財務ニ
關スル規定ニ依リ支出ヲ爲スコトヲ得サルトキ亦同シ
前二項ノ規定ハ收入役ノ事務ヲ兼掌シタル町村長又ハ助役ニ之ヲ準用ス
第百二十條町村ノ支拂金ニ關スル時效ニ付テハ政府ノ支拂金ノ例ニ依ル
第百二十一條町村ノ出納ハ每月例日ヲ定メテ之ヲ檢査シ且每會計年度少
クトモ二囘臨時檢査ヲ爲スヘシ
檢査ハ町村長之ヲ爲シ臨時檢査ニハ町村會ニ於テ選舉シタル議員二人以
上ノ立會ヲ要ス
第百二十二條町村ノ出納ハ翌年度六月三十日ヲ以テ閉鎖ス
決算ハ出納閉鎖後一月以內ニ證書類ヲ併セテ收入役ヨリ之ヲ町村長ニ提
出スヘシ町村長ハ之ヲ審査シ意見ヲ付シテ次ノ通常豫算ヲ議スル會議迄
ニ之ヲ町村會ノ認定ニ付スヘ
第六十七條第八項ノ場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ル但シ町村長ニ於テ兼掌
シタルトキハ直ニ町村會ノ認定ニ付スヘシ
決算ハ其ノ認定ニ關スル町村會ノ議決ト共ニ之ヲ郡長ニ報告シ且其ノ要
領ヲ告示スヘシ
決算ノ認定ニ關スル會議ニ於テハ町村長及助役共ニ議長ノ職務ヲ行フコ
トヲ得ス
第百二十三條豫算調製ノ式、費目流用其ノ他財務ニ關シ必要ナル規定ハ
內務大臣之ヲ定ム
第六章町村ノ一部ノ事務
第百二十四條町村ノ一部ニシテ財產ヲ有シ又ハ營造物ヲ設ケタルモノア
ルトキハ其ノ財產又ハ營造物ノ管理及處分ニ付テハ本法中町村ノ財產又
ハ營造物ニ關スル規定ニ依ル但シ法律勅令中別段ノ規定アル場合ハ此ノ
限ニ在ラス
前項ノ財產又ハ營造物ニ關シ特ニ要スル費用ハ其ノ財產又ハ營造物ノ屬
スル町村ノ一部ノ負擔トス
前二項ノ場合ニ於テハ町村ノ一部ハ其ノ會計ヲ分別スヘシ
第百二十五條前條ノ財產又ハ營造物ニ關シ必要アリト認ムルトキハ郡長
ハ町村會ノ意見ヲ徵シテ町村條例ヲ設定シ區會又ハ區總會ヲ設ケテ町村
會ノ議決スヘキ事項ヲ議決セシムルコトヲ得
第百二十六條區會議員ハ町村ノ名譽職トス其ノ定數、任期、選舉權及被選
舉權ニ關スル事項ハ前條ノ町村條例中ニ之ヲ規定スヘシ區總會ノ組織ニ
關スル事項ニ付亦同シ
區會議員ノ選舉ニ付テハ町村會議員ニ關スル規定ヲ準用ス但シ選舉人名
簿又ハ選擧若ハ當選ノ效力ニ關スル異議ノ決定及被選舉權ノ有無ノ決定
ハ町村長ノ爲スヘキ場合ヲ除クノ外町村會ニ於テ之ヲ爲スヘシ
區會又ハ區總會ニ關シテハ町村會ニ關スル規定ヲ準用ス
第百二十七條第百二十四條ノ場合ニ於テ町村ノ一部郡長ノ處分ニ不服ア
ルトキハ府縣知事ニ訴願スルコトヲ得
第百二十八條第百二十四條ノ町村ノ一部ノ事務ニ關シテハ本法ニ規定ス
ルモノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七章町村組合
第百二十九條町村ハ其ノ事務ノ一部ヲ共同處理スル爲其ノ協議ニ依リ府
縣知事ノ許可ヲ得テ町村組合ヲ設クルコトヲ得此ノ場合ニ於テ組合內各
町村ノ町村會又ハ町村吏員ノ職務ニ屬スル事項ナキニ至リタルトキハ其
ノ町村會又ハ町村吏員ハ組合成立ト同時ニ消滅ス
町村ハ特別ノ必要アル場合ニ於テハ其ノ協議ニ依リ府縣知事ノ許可ヲ得
テ其ノ事務ノ全部ヲ共同處理スル爲町村組合ヲ設クルコトヲ得此ノ場合
ニ於テハ組合內各町村ノ町村會及町村吏員ハ組合成立ト同時ニ消滅ス
公益上必要アル場合ニ於テハ府縣知事ハ關係アル町村會ノ意見ヲ徵シ府
縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ前二項ノ町村組合ヲ設クルコ
トヲ得
町村組合ハ法人トス
第百三十條前條第一項ノ町村組合ニシテ其ノ組合町村ノ數ヲ增減シ又
ハ共同事務ノ變更ヲ爲サムトスルトキハ關係町村ノ協議ニ依リ府縣知事
ノ許可ヲ受クヘシ
前條第二項ノ町村組合ニシテ其ノ組合町村ノ數ヲ減少セムトスルトキハ
組合會ノ議決ニ依リ其ノ組合町村ノ數ヲ增加セムトスルトキハ其ノ町村
組合ト新ニ加ハラムトスル町村トノ協議ニ依リ府縣知事ノ許可ヲ受クヘ
シ
公益上必要アル場合ニ於テハ府縣知事ハ關係アル町村會又ハ組合會ノ意
見ヲ徵シ府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ組合町村ノ數ヲ增
減シ又ハ一部事務ノ爲設クル組合ノ共同事務ノ變更ヲ爲スコトヲ得
第百三十一條町村組合ヲ設クルトキハ關係町村ノ協議ニ依リ組合規約ヲ
定メ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ
組合規約ヲ變更セムトスルトキハ一部事務ノ爲ニ設クル組合ニ在リテハ
關係町村ノ協議ニ依リ至部事務ノ爲ニ設クル組合ニ在リテハ組合會ノ議
決ヲ經府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ
公益上必要アル場合ニ於テハ府縣知事ハ關係アル町村會又ハ組合會ノ意
見ヲ徵シ府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ組合規約ヲ定メ又
ハ變更スルコトヲ得
第百三十二條組合規約ニハ組合ノ名稱、組合ヲ組織スル町村、組合ノ共同
事務及組合役場ノ位置ヲ定ムヘシ
一部事務ノ爲ニ設クル組合ノ組合規約ニハ前項ノ外組合會ノ組織及組合
會議員ノ選舉、組合吏員ノ組織及選任竝組合費用ノ支辨方法ニ付規定ヲ
設クヘシ
第百三十三條町村組合ヲ解カムトスルトキハ一部事務ノ爲ニ設クル組合
ニ於テハ關係町村ノ協議ニ依リ全部事務ノ爲ニ設クル組合ニ於テハ組合
會ノ議決ニ依リ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ
公益上必要アル場合ニ於テハ府縣知事ハ關係アル町村會又ハ組合會ノ意
見ヲ徵シ府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ町村組合ヲ解クコ
トヲ得
第百三十四條第百三十條第一項第二項及前條第一項ノ場合ニ於テ財產ノ
處分ニ關スル事項ハ關係町村ノ協議關係町村ト組合トノ協議又ハ組合
會ノ議決ニ依リ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ
第百三十條第三項及前條第二項ノ場合ニ於テ財產ノ處分ニ關スル事項ハ
關係アル町村會又ハ組合會ノ意見ヲ徵シ府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣
ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
第百三十五條第百二十九條第一項及第二項第百三十條第一項及第二項第
百三十一條第一項及第二項第百三十三條第一項竝前條第一項ノ規定ニ依
ル府縣知事ノ處分ニ不服アル町村又ハ町村組合ハ內務大臣ニ訴願スルコ
トヲ得
組合費ノ分賦ニ關シ違法又ハ錯誤アリト認ムル町村ハ其ノ告知アリタル
日ヨリ三月以內ニ組合ノ管理者ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ組合會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル町村ハ府
縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決又ハ第四項ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判
所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ付テハ組合ノ管理者ヨリモ訴願又ハ訴訟ヲ提起スル
コトヲ得
前二項ノ裁決ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第百三十六條町村組合ニ關シテハ法律勅令中別段ノ規定アル場合ヲ除ク
ノ外町村ニ關スル規定ヲ準用ス
第八章町村ノ監督
第百三十七條町村ハ第一次ニ於テ郡長之ヲ監督シ第二次ニ於テ府縣知事
之ヲ監督シ第三次ニ於テ內務大臣之ヲ監督ス
第百三十八條本法中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外町村ノ監督ニ關スル
郡長ノ處分ニ不服アル町村ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキ
ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第百三十九條本法中行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ內
務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
第百四十條異議ノ申立又ハ訴願ノ提起ハ處分決定又ハ裁決アリタル日
ヨリ二十一日以內ニ之ヲ爲スヘシ但シ本法中別ニ期間ヲ定メタルモノハ
此限ニ在ラス
行政訴訟ノ提起ハ處分決定裁定又ハ裁決アリタル日ヨリ三十日以内ニ之
ヲ爲スヘシ
異議ノ申立ニ關スル期間ノ計算ニ付テハ訴願法ノ規定ニ依ル
異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ申立人ニ交付スヘ
シ
異議ノ申立アルモ處分ノ執行ハ之ヲ停止セス但シ行政廳ハ其ノ職權ニ依
リ又ハ關係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ之ヲ停止スルコトヲ得
第百四十一條監督官廳ハ町村ノ監督上必要アル場合ニ於テハ事務ノ報告
ヲ爲サシメ書類帳簿ヲ徵シ及實地ニ就キ事務ヲ視察シ又ハ出納ヲ檢閱ス
ルコトヲ得
監督官廳ハ町村ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
上級監督官廳ハ下級監督官廳ノ町村ノ監督ニ關シテ爲シタル命令又ハ處
分ヲ停止シ又ハ取消スコトヲ得
第百四十二條内務大臣ハ町村會ノ解散ヲ命スルコトヲ得
町村會解散ノ場合ニ於テハ三月以內ニ議員ヲ選舉スヘシ
第百四十三條町村ニ於テ法令ニ依リ負擔シ又ハ當該官廳ノ職權ニ依リ命
スル費用ヲ豫算ニ載セサルトキハ郡長ハ理由ヲ示シテ其ノ費用ヲ豫算ニ
加フルコトヲ得
町村長其ノ他ノ吏員其ノ執行スヘキ事件ヲ執行セサルトキハ郡長又ハ其
ノ委任ヲ受ケタル官吏吏員之ヲ執行スルコトヲ得但シ其ノ費用ハ町村ノ
負擔トス
前二項ノ處分ニ不服アル町村又ハ町村長其ノ他ノ吏員ハ府縣知事ニ訴願
シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第百四十四條町村長、助役、收入役又ハ副收入役ニ故障アルトキハ監督官
廳ハ臨時代理者ヲ選任シ又ハ官吏ヲ派遣シ其ノ職務ヲ管掌セシムルコト
ヲ得但シ官吏ヲ派遣シタル場合ニ於テハ其ノ旅費ハ町村費ヲ以テ辨償セ
シム>>
臨時代理者ハ有給ノ町村吏員トシ其ノ給料額旅費額等ハ監督官廳之ヲ定
ム
第百四十五條左ニ揭クル事件ハ內務大臣ノ許可ヲ受クヘシ
一町村條例ヲ設ケ又ハ改廢スル事
二學藝美術又ハ歷史上貴重ナル物件ヲ處分シ又ハ之ニ大ナル變更ヲ加
フル事
第百四十六條左ニ揭クル事件ハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クヘシ
一町村債ヲ起シ竝起債ノ方法、利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ又ハ之
ヲ變更スル事但シ第百十二條第三項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
二特別稅ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
三間接國稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
四使用料手數料及加入金ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
第百四十七條左ニ揭クル事件ハ郡長ノ許可ヲ受クヘシ
一基本財產ノ管理及處分ニ關スル事
二特別基本財產及積立金穀等ノ管理及處分ニ關スル事
三第九十條ノ規定ニ依リ舊慣ヲ變更又ハ廢止スル事
寄附又ハ補助ヲ爲ス事
六五四不動產ノ管理及處分ニ關スル事
均一ノ稅率ニ依ラスシテ國稅又ハ府縣稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
七第百二條第一項第二項及第四項ノ規定ニ依リ數人又ハ町村ノ一部ニ
費用ヲ負擔セシムル事
八第百四條ノ規定ニ依リ不均一ノ賦課ヲ爲シ又ハ數人若ハ町村ノ一部
ニ對シ賦課ヲ爲ス事
九第百五條ノ準率ニ依ラスシテ夫役現品ヲ賦課スル事但シ急迫ノ場合
ニ賊課スル夫役ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
十繼續費ヲ定メ又ハ變更スル事
第百四十八條監督官廳ノ許可ヲ要スル事件ニ付テハ監督官廳ハ許可申請
ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ許可ヲ與フルコトヲ得
第百四十九條監督官廳ノ許可ヲ要スル事件ニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ其ノ許可ノ職權ヲ下級監督官廳ニ委任シ又ハ輕易ナル事件ニ限リ許可
ヲ受ケシメサルコトヲ得
第百五十條府縣知事又ハ郡長ハ町村長、助役、收入役、副收入役、區長、
區長代理者、委員其ノ他ノ町村吏員ニ對シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒
處分ハ譴責、二十五圓以下ノ過怠金及解職トス但シ町村長、助役、收入
役及副收入役ニ對スル解職ハ懲戒審査會ノ議決ヲ經テ府縣知事之ヲ行
フ
懲戒審査會ハ內務大臣ノ命シタル府縣高等官三人及府縣名譽職參事會員
ニ於テ互選シタル者三人ヲ以テ其ノ會員トシ府縣知事ヲ以テ會長トス知
事故障アルトキハ其ノ代理者會長ノ職務ヲ行フ
府縣名譽職參事會員ノ互選スヘキ會員ノ選舉補闕及任期竝懲戒審査會ノ
招集及會議ニ付テハ府縣制中名譽職參事會員及府縣參事曾ニ關スル規定
ヲ準用ス但シ補充員ハ之ヲ設クルノ限ニ在ラス
解職ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ郡長ノ處分ニ付テハ
府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキ又ハ府縣知事ノ處分ニ付テハ
內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
府縣知事ハ町村長、助役、收入役及副收入役ノ解職ヲ行ハムトスル前其ノ
停職ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ停職期間報酬又ハ給料ヲ支
給スルコトヲ得ス
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間市町村ノ公職ニ選舉セラレ又ハ任
命セラルルコトヲ得ス
第百五十一條町村吏員ノ服務紀律、賠償責任、身元保證及事務引繼ニ關ス
ル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
前項ノ命令ニハ事務引繼ヲ拒ミタル者ニ對シ二十五圓以下ノ過料ヲ科ス
ル規定ヲ設クルコトヲ得
第九章雜則
第百五十二條郡長ノ職權ニ屬スル事件ニシテ數郡ニ涉ルモノアルトキハ
府縣知事ハ關係郡長ノ具狀ニ依リ其ノ事件ヲ管理スヘキ郡長ヲ指定スヘ
シ其ノ數府縣ニ涉ルモノアルトキハ內務大臣ハ關係府縣知事ノ具狀ニ依
リ其ノ事件ヲ管理スヘキ郡長ヲ指定スヘシ
第百五十三條府縣知事又ハ府縣參事會ノ職權ニ屬スル事件ニシテ數府縣
ニ涉ルモノアルトキハ內務大臣ハ關係府縣知事ノ具狀ニ依リ其ノ事件ヲ
管理スヘキ府縣知事又ハ府縣參事會ヲ指定スヘシ
第百五十四條第十一條ノ人口ハ內務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第百五十五條本法ニ於ケル直接稅及間接稅ノ種類ハ內務大臣及大藏大臣
之ヲ定ム
第百五十六條町村又ハ町村組合ノ廢置分合又ハ境界變更アリタル場合ニ
於テ町村ノ事務ニ付必要ナル事項ハ本法ニ規定スルモノノ外勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第百五十七條本法ハ北海道沖繩縣其ノ他勅令ヲ以テ指定スル島嶼ニ之ヲ
施行セス
前項ノ地域ニ付テハ勅令ヲ以テ別ニ本法ニ代ハルヘキ制ヲ定ムルコトヲ
得
附則
第百五十八條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百五十九條本法施行ノ際現ニ町村會議員、區會議員又ハ全部事務ノ爲
ニ設クル町村組合會議員ノ職ニ在ル者ハ從前ノ規定ニ依ル最近ノ定期改
選期ニ於テ總テ其ノ職ヲ失フ
第百六十條舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ本法ノ適用ニ付テハ
六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス但シ復權ヲ得タ
ル者ハ此ノ限ニ在ラス
舊刑法ノ禁錮以上ノ刑ハ本法ノ適用ニ付テハ禁錮以上ノ刑ト看做ス
第百六十一條本法施行ノ際必要ナル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
〔內務大臣法學博士男爵平田東助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=37
-
038・平田東助
○内務大臣(法學博士男爵平田東助君) 本案提出ノ理由ニ付テ一言致シマス市
制及町村制ハ曩ニ施行致シマシタ以來、、旣ニ二十有餘年ヲ經過致シマシタ、其間ノ
實驗ニ徵シ、同案ノ間ニ於テ往々改正ヲ必要ト致スコトガ尠カラヌノデゴザイマス、第
ニハ市ノ行政及議決機關ニ於テ相當ノ改正ヲ加ヘントスルノ必要アリ、又市町村制ヲ
通ジマシテ議決機關ノ任期ニ關スルノ外、又上級官廳トノ間ニ於テ聯絡ヲ完全ニシ、
又條項ノ不備ナルモノヲ改正致シマシテ、實際ニ適應セシムルノ必要アリ其他法文ニ
於テ往々疑義ヲ生ズルノ嫌ヒアルモノモ亦尠カラヌノデゴザイマスニ依ッテ、是等ノ諸點ニ
向ッテ改正ヲ致スノ必要ガアルノデ、玆ニ本案ヲ提出ヲ致シマシタ次第デゴザイマス、自
治團體ト致シテ國家組織ノ重要ナル機關タルコトハ申スマデモナク、又國ノ行政ノ區畫
ト致シマシテ、國勢上トシテ最モ緊要ナ關係ヲ有シテ居ルトコロノ此自治機關ノ上ニ於
マシテハ、此際ニ於テ適當ナル改正ヲ加ヘ、益〓是等ノ發展ヲ促シタイト云フ考ヲ以チ
マシテ、今囘茲ニ提出致シマシタ次第デゴザイマス、御審議ノ上協賛ヲ與ヘラレンコトヲ
希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=38
-
039・石橋爲之助
○石橋爲之助君 チヨット說明ヲ求メタイ點ガ三點アリマス、簡單ニ此處カラ伺ヒタ
イ第一ハ市參事會ヲ從來執行機關デアッタモノガ轉ジテ諮問機關ニナルノデアリマス
ガ、是ハ自治制ノ本義カラ申シマシテ進歩ナリヤ退步ナリヤト云フコトノ說明ヲ聽キタイ
ノデアリマス進步デアルト言ハルヽナラバ其進步デアルトコロノ理由ヲ伺ヒタイ(「無用々
々」ト呼フ者アリ)ソレカラ第二ノ〓ハ新ニ市ノ參與ト云フモノヲ設ケラルヽノデアリマス
ガ近項ノ趨勢ヲ見マスルト市長ノ選舉ニ對シテモ隨分官邊ノ干涉ガアルノデアリマス、
殊ニ此新法案ニ依リマスレバ市長ノ權力ガ非常ニ伸ビルノデアリマス、其上ニ又參與ト
云フモノガ出來テ、其參與ニハ或ハ官邊ニ緣故アルモノ或ハ官吏ノ古手ガ侵入スルト
コロノ途ガ開カレタ如クニ考ヘラレル是等ハ果シテ此ノ如ク官僚主義ノ擴張ヲ意味ス
ルトコロノモノデアルヤ否ヤ第三ハ單記法ヲ採用スルニ拘ラズ、尙三級制度ヲ保存シテ
置ク理由ガ聽キタイノデアリマス之ガタメニ單記法ヲ採用シテ、而シテ尙一方ニ三級
制度ヲ執ルト云フコトノタメニ、卽チ此處ニ但書ガ挾マッテ來ルノデアリマス、卽チ一級ニ
於テ若シ議員ノ數ニ選舉人ガ足ラナイトキニハ、其數マデ最高級カラ取ッテ行クコトガ
出來ルト云フ取除ケガ一ツ出來テ居ルノデアリマス、其上ニ又第二ノ取除ケトシテハ、其
一級若クハ二級ニ於テ選ムベキ議員ノ數ノ三倍ニ足ラナイトキニハ連記法ヲ用井ルト
云フトコロノ卽チ單記ノ取除ケガ此處ニ出來テ居ルノデアリマス、而シテ尙其上ニ斯ウシ
テモ尙又選ブベキトコロノ議員ヲ選出スコトガ出來ナカッタ場合ヲ豫想シテ、サウ云フ場
合ニハ更ニ又足ラヌダケノモノヲ、モウ一度選ブダケノ取除ケガ又アルノデアリマス、此ノ
如ク紛雜ニ紛雜ヲ重ネテ、三級制度ヲ廢セザルガタメニ、非常ニ面倒ナ手數ガ幾度モア
ルト云フノデ、解釋ニ苦ミマスガ、何故ニ三級制度ヲ廢スル便法ヲ執ラナカッタカト云フ
コトヲ同ヒタイノデアリマス
〔政府委員法學博士一木喜德郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=39
-
040・一木喜徳郎
○政府委員(法學博士一木喜德郞君) 石橋君ノ御質疑ニ御答ヲ申上ゲマスガ、第
一〓ノ市參事會ヲ議決機關ニシタノハ進步デアルカ退步デアルカト云フノ御尋デアリマ
シタガ、進步デアルヤ退步デアルヤト云フコトハ、玆ニ論ズル必要ハナカラウト思ヒマスガ、
政府ニ於キマシテハ此改正ハ確ニ今日ノ實際ニ適當ナル改正デアルト認メテ居リマス、ソ
レカラ次ニ市參與ヲ設ケマシタ趣意ハ今日大ナル都市ニ於キマシテハ隨分特殊ノ事
業ガアル、其特殊ノ事業ヲ擔任セシムルガタメニ從來ノ如ク單ニ書記又ハ附屬員ト云フ
ヤウナ待遇ヲ以テシテハ適當ナル人ヲ得難イ場合ガ多イノデアルト考ヘルノデアリマス、
是等ノ實際ノ必要ニ應ジマスタメニ、市參與ノ制度ヲ設ケタ次第デアリマス、又市長ノ
選任ニ付キマシテ云々ト一云フコトモゴザイマシタガ、是ハ固ヨリ市ノ自治ニ屬スルコトデゴザ
イマスカラ、政府ニ於テ敢テ干渉スルトコロデハゴザイマセヌ、市參與ノ選任ニ付キマシテ
モ亦同樣デゴザイマスソレカラ三級制度ヲナゼ廢シナカッタカト云フ御尋デアリマスガ、此
三級選舉ノ制度ト單記ノ制度トハ決シテ相悖ラヌモノデアルト考ヘル、三級制度ヲ設ケ
テアリマシテモ同ジ級內ニ於テ尙單記ノ制ヲ用ユルノ必要アリト認メルノデアリマス、又單
記ノ制度ヲ用井マシテモ選舉權ノ範圍ノ廣イ場合ニ於キマシテハ、階級ノ制度ヲ以テ此
權利ト義務トノ間ノ均衡ヲ圖ルノ必要ガアルト信ジテ居ルノデアリマス、尙詳細ノコトハ
委員會ニ於テ御答ヲ致シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=40
-
041・菅原傳
○菅原傳君 兩案ヲ一括シテ議長指名二十七名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=41
-
042・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第一、第三ノ兩案ヲ一括シテ、議長指名ノ特別委
員二十七名ニ付託スルコトニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=42
-
043・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ其通リ決シマス、日程第五、第
七第九及第十一ハ關聯セル議案ナルニ依リ、一括シテ議題ニ供スルコトニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=43
-
044・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ第五、第七、第九、第十一ノ四案ヲ一括
シテ議題ト致シマス、議案ノ朗讀ハ省略致シマス-岡田文部次官
第五在外指定學校職員退隱料及遺族扶助料法中改第一讀會
正法律案(政府提出)
第七市町村立小學校〓員退隱料及遺族扶助料法第一讀會
中改正法律案(政府提出)
第九府縣立師範學校長俸給竝公立學校職員退隱第一讀會
料及遺族扶助料法中改正法律案(政府提出)
第十一帝國學士院學術奬勵金特別會計法案(政府第一讀會
提出)
在外指定學校職員浪料及遺族扶助料法中改正法律案
在外指定學校職員退隱料及遺族扶助料法中左ノ通改正ス
第六條中「公立幼稚園」ヲ「師範學校附屬幼稚園又ハ公立幼稚園」ニ改ム
市町村立小學校〓員退隱料及遺族扶助料法中改正法律案
市町村立小學校〓員退隱料及遺族扶助料法中左ノ通改正ス
第二條中「廢校」ヲ「廢職廢校」ニ改ム
府縣立師範學校長俸給竝公立學校職員退隱料及遺族扶助料法中改正法
律案
府縣立師範學校長俸給竝公立學校職員退隱料及遺族扶助料法中左ノ通改正
ス
第二條、第十條、第十二條、第十四條及第十六條中「正〓員」ノ下ニ「小學校
ノ本科正〓員タルヘキ資格ヲ有スル保姆」ヲ加フ
帝國學士院學術獎勸金特別會計法案
帝國學士院學術奬勵金特別會計法
第一條學〓究奬勵ノ爲帝國學士院學術獎勸金特別會計ヲ設置ス
第二條木會計ハ帝室下賜金寄附金其ノ他ノ收入ヲ以テ其ノ歲入トシ學術
〓究奬勵ノ爲ニ要スル支出ヲ以テ其ノ歲出トス
第三條本會計ハ學術〓究奬勵ノ爲有價證券ノ寄附ヲ受ケ之ヲ保有スルコ
トヲ得
第四條本會計ニ於テ支拂上餘裕アルトキハ之ヲ預金部ニ寄託スルコトヲ
得
第五條政府ハ每年本會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歳出ノ總豫算ト共
ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
第六條學術〓究奬勵ノ爲ニ支出スル金額ハ帝國學士院長ニ交付シ經理ヲ
委任スルコトヲ得
第七條委任經理ニ係ル會計ノ檢査ハ會計檢査院法第十六條ノ規定ニ依ル
第八條本會計ノ收入支出ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法ハ明治四十四年度ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員岡田良平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=44
-
045・岡田良平
○政府委員(岡田良平君) 唯今議題ニナッテ居リマスル四案ハ、何レモ簡單ナル法案
デゴザイマス、從來師範學校ニハ官制ヲ以テ幼稚園保姆ト云フモノヲ置イテ居リマセヌ
ノデゴザイマシタガ、昨年ヨリ官制ニ依リマシテ幼稚園保姆ト云フモノヲ置カレルコトニナ
リマシタカラ其結果ト致シマシテ恩給法ノ上ニモ改正ヲ施シマシテ、此幼稚園保姆ニ
モ恩給ヲ及ボスヤウニスルト云フノガ、唯今日程第九ニ載ッテ居リマスルトコロノ法案ノ
精神デゴザイマス、其結果ト致シマシテ在外指定學校ニ在職シテ居ル者ノ在職年數ヲ
通算スルニ於キマシテ是マデハ內地ノ師範學校附屬幼稚園ノ保姆ハ通算ニ入ッテ居リ
マセヌノデゴザリマシタガ、是ヲモ通算ニ加ヘルト云フノガ日程第五ニ載ッテ居リマスルトコ
ロノ法案ノ趣旨デゴザリマスソレカラ日程第七ニ載ッテ居リマスルノハ從來此思給ヲ支
給致シマスルノニ廢校ノタメニ退職致シマシタ者ハ在職十五年以上デアリマスレバ恩給
ヲ支給スルノデアリマシタガ、併ナガラ廢職ノ場合ハ之ニ含マシテ居ラヌノデアリマス從
來廢校ノ外ニ廢職ト云フコトハナカッタノデアリマスガ、近來外國政府ノ聘用ニ應ジマシ
テ在職ノ儘赴任致シマスル者ニ付キマシテハ、此廢職ト云フ場合ガ生ズルコトニナリマシ
タニ付テ、從ッテ此法律ノ改正ヲ要スルト云フコトニナリマシタノデゴザイマス、日程第十
一ニ載ッテ居リマスルトコロノ帝國學士院學術奬勵金特別會計法案、之ハ前ノ三案ト
ハ直接ノ關係ハ持ッテ居リマセヌノデゴザイマス、之ハ昨年帝國學士院ニ學術〓究獎勵
ノタメニ帝室ヨリ御下賜金ガアリマシタ、之ハ十箇年間續ケテ御下賜ニナルト云フコトニ
ナッテ居リマス、之ヲ基礎ト致シマシテ他ノ有志者等ノ寄附金ヲ以チマシテ、學術奬勵
ノタメニ資金ヲ設ケ之ヲ特別會計ヲ以テ經營致シテ行クト云フタメニ、此法律ノ必要ヲ
生ジマシタ理由デゴザイマス簡單ナ案デゴザイマスルカラ御審議ノ上御協賛ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=45
-
046・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 右四案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第十右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第十二右讀案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=46
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047・菅原傳
○菅原傳君 唯今說明ニナリマシタ四案ヲ一括シテ議長指名十八名ノ特別委員ニ
付託セラレンコトヲ望ミマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=47
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048・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 四案ヲ一括シテ議長指名特別委員十八名ニ付託スルト
云フコトニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=48
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049・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ其通リ決シマス、日程第十三、樺
太ニ於ケル漁業免許ノ取消及漁業料ノ徵收ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案
ノ朗讀ハ省略致シマス-平岡政府委員
第十三樺太ニ於ケル漁業免許ノ取消及漁業料ノ徵第一讀會
收ニ關スル法律案(政府提出)
樺太ニ於ケル漁業免許ノ取消及漁業料ノ徵收ニ關スル法律案
樺太ニ於テ漁業ノ免許ヲ受ケタル者漁業料ノ納付ヲ怠リタルトキハ樺太廳
樺太ニ族外の源頼ノノ枝收ニ關シテハ國稅徵收法及明治四十年法律第三十
四號ヲ準用ス但シ先取特權ノ順位ハ國稅ニ次クモノトス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員平岡定太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=49
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050・平岡定太郎
○政府委員(平岡定太郞君) 本案ニ付テチヨット大體ヲ說明致シテ置キマス、樺太ニ
於キマシテハ目下漁業料ヲ未納致シマスルト云フト取消ノ處分ヲ致シテ居リマス、然ルニ此
法案ヲ提出致シマシタル理由ハ本年ノ四月ヨリ樺太ニ目下全部施行シテゴザイマセヌト
コロノ漁業令全部ヲ施行シタイト云フトコロノ準備デゴザイマス、所ガ漁業令全部ヲ施行
致シマスルト云フト取消ガ出來マセヌノデゴザイマス、一旦條件ニ背イタトコロガ許シマシ
タトコロノ免許ハ其儘繼續シニヤナラヌト云フコトニナッテ居リマスカラ、目下ノ現況ヲ持
續スルタメニ取消ノ條項ヲ置キタイ、斯ウ云フ理由デ出テ居リマス、其後段ノ徵收料ノコ
トニ付キマシテハ、內地ト相互ニ共通シテ徵收ノ方法ヲ助ケ合フ、是ダケノ趣旨デ出テ居
ルノデゴザイマス、ドウカ然ルベク発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=50
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051・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 第十四、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト
致シマス
第十四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=51
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052・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=52
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053・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 菅原君ノ動議、卽チ議長指名九名ノ特別委員ニ付託ス
ルコトニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=53
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054・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ其通リ決シマス、日程第十五、間島ニ於ケ
ル領事官ノ裁判ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ハ省略致シマスー
石井外務次官
第十五間島ニ於ケル領事官ノ裁判ニ關スル法律案第一讀會
(政府提出)
問島ニ於ケル領事官ノ裁判ニ關スル法律案
第一條間島ニ駐在スル帝國領事官ノ豫審ヲ爲シタル死刑、無期又ハ短期
一年以上ノ懲役若ハ禁錮ニ該ル罪ノ公判ハ朝鮮總督府地方裁判所之ヲ管
轄ス
第二條間島ニ駐在スル帝國領事官ノ管轄ニ屬スル刑事ニ關シ外務大臣ニ
於テ必要アリト認ムルトキハ其ノ事件ヲ管轄スヘカラサルコトヲ當該領
事官ニ命シ且被告人ヲ朝鮮ニ於ケル監獄ニ移送セシムルコトヲ得
第三條前條ノ規定ニ依リ被〓人ヲ朝鮮ニ於ケル監獄ニ移送スル場合ニ於
テ朝鮮總督ハ其ノ事件地方裁判所ノ權限ニ屬スヘキモノナルトキハ被〓
人ノ移送セラルル監獄所在地ヲ管轄スル朝鮮總督府控訴院ノ檢事ヲシテ
裁判管轄指定ノ申請ヲ其ノ控訴院ニ爲サシメ其ノ事件區裁判所ノ權限ニ
屬スヘキモノナルトキハ被告人ノ移送セラルル監獄所在地ヲ管轄スル朝
鮮總督府地方裁判所ノ檢事ヲシテ裁判管轄指定ノ申請ヲ其ノ地方裁判所
ニ爲サシムヘシ
前項ノ申請及裁判ニ關シテハ刑事訴訟法第三十三條ノ規定ヲ準用ス
第四條地方裁判所ノ權限ニ屬スル事項ニ關シ間島ニ駐在スル帝國領事官
ノ爲シタル裁判ニ對スル控訴又ハ抗〓ハ朝鮮總督府控訴院之ヲ管轄ス
區裁判所ノ權限ニ屬スル事項ニ關シ間島ニ駐在スル帝國領事官ノ爲シタ
ル裁判ニ對スル控訴又ハ抗告ハ朝鮮總督府地方裁判所之ヲ管轄ス
第五條第一條及第四條ノ場合ニ於テ管轄權ヲ有スヘキ朝鮮總督府裁判所
ハ朝鮮總督之ヲ定ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前受理シタル訴訟事件及非訟事件ニ關シテハ從前ノ例ニ依ル
〔政府委員石井菊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=54
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055・石井菊次郎
○政府委員(石井菊次郞君) 本案ハ昨年朝鮮總督府ノ設置サレマシタ結果ト致シ
マシテ從來間島ニ於テ豫審ヲナシタル或ル事件ノ管轄ヲ是マデ統監府裁判所ニ於テ
ナサレタモノヲ總督府裁判所ニ於テスル、事實ニ於テハ何等ノ變更ハアリマセヌガ、其名
稱ニ於テ「統監府裁判所」トアルノヲ「總督府裁判所」ト改メマシタ、、其他「韓國」トアリ
マシタノヲ「朝鮮」ト改メ「統監」トアリマシタノヲ「朝鮮總督」ト改メルト云フ法律案
デゴザイマシテ、內容ニ至リマスルト何等ノ變更ハゴザイマセヌ、至ッテ簡單ノ法律案デア
リマスカラ、成ベク速カニ御協贊ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=55
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056・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第十六、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧
第十六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=56
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057・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=57
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058・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ヲ議長指名ノ特別委員九名ニ付託スルコトニ御異議
ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=58
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059・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ其通り決シマス、日程第十七乃至第十九
ハ同一委員ニ付託セラレタル議案ナルニ依リ、合セテ委員長ヨリ報告致サセマス、委員
長板倉中君日程第十七ハ朝鮮事業公債法案、第十八ハ朝鮮事業公債金特
別會計法案、第十九ハ朝鮮鐵道用品資金會計法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=59
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060・菅原傳
○菅原傳君 委員長ガ見エナイヤウデアリマスガ、報告ノ都合モアラウト思ヒマスカラ、
是ハ後ト囘シニナサレテ、他ノ日程ニ移ラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=60
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061・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第十七乃至十九ハ後ト囘シニスルト云フコトニ御異
議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=61
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062・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ後ト囘シト云フコトニ致シマス-日程
第二十、輕便鐵道補助法案第一讀會ノ續、特別委員長大岡育造君
第二十輕便鐵道補助法案(政府提出)第一讀會ノ續((委員長)
報告
〔大岡育造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=62
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063・大岡育造
○大岡育造君 輕便鐵道補助法案ノ委員會ニ於ケル經過及結果ヲ御報〓致シマス、
本員ハ從來委員長ノ報告ヲ成ベク簡單ニ終ル例ヲ持ッテ居リマスガ、本件ハ各議員諸
君ガ地方ニ御報告ノ御參考ニモナラウト思ヒマスカラ、少シ精シク報告致シテ置キタイト
思ヒマス、此輕便鐵道補助法案ハ政府ノ說明スルトコロニ依リマシテ了解スルトコロ經
過ノ便法ヲ設ケタノデアル卽チ本鐵道ヲ架ケル間ノ經過ノ便法ヲ設ケルノガ一ツ、ソレ
カラ是ニ補助ヲ與ヘル所以ノモノハ國有鐵道ノ營養ノタメニ各地方カラ貨物旅客等
ヲ運ブコトノ助ヲ得ルニ依ッテ、是ニ對スル報酬ノ意味ニ於テ補助金ヲ出シ得ル斯ウ
云フヤウナ說明ヲ致シテ居リマス、故ニ輕便鐵道ニ補助ヲ與ヘルノハ成ルベク本線ニ接
續ノモノヲ先キニシヤウ、一年ノ額ヲ二十五万圓ト定メテ居リマス、ソレヲ數ヘテ五年目
ニ至レバ百二十五万圓トナル、其所ニ至レバ金高ノ上ルコトヲ止メテシマヒマスガ、此金
高ノ範圍內ニ於テ政府ガ補助ヲ許可スル場合ニハ先ヅ國有鐵道ノ營養ニナリ、便利ニ
ナル部分カラ先キニシテ、尙餘裕ガアレバ其他ニモ及ボスト云フ方針ヲ採ッテ居ルノデアリ
マく、ソレカラ輕便鐵道ナルモノハ昨年ノ議會ニ於テ協賛セラレタル法案ニ從ッテ願出レ
バ何レモ許可ヲ得ル譯デアリマシテ、ソレニ依ッテ許可ヲ得マシタモノガ既ニ二十三ハカリ
アリマスデ、通常ノ法律ガ出來タル後ニ於テ許可ヲ得タルモノヲ支配スルノガ當然ノ順ノ
ヤウデアリマスルガ、此輕便鐵道ニ於テハ從前許可ヲ得タル輕便鐵道ニモ此法律ノ補
助ヲ與ヘルコトヲ及ボスヤ否ヤト云フコトガ一ツノ〓究問題トナッテ居リマスルガ、是モ政府
ハ及ボスト云フ言明ヲ致シテ居ルノデアリマス、卽チ營業ヲ開始シタル日ヨリ五箇年間
五朱ニ相當スルマデノ補給ヲ爲スノデアリマスカラシテ今日以後ニ營業ヲ開始スルトコロ
ノ輕便鐵道ガ補助ヲ願ヘバ願ヒ得ル譯ニナル、モウ一ツ遡ッテ今日ヨリズット以前ニ於テ
モ營業ヲ開始シテ尙五箇年ニ滿クザルモノデアッテ、而シテ補助ヲ要求スルニ適當ナル資
格アル線路ヲ持ッテ行ケバ政府ハ又之ヲ吟味セナケレバナラヌト云フコトニナルノデアリ
マス、ソレデ今日マデ許シテ居ルトコロノ輕便鐵道ノ建設資本ガ大凡一千七百二十三
万何千圓ト云フニ及ンデ居ルノデアリマス、而シテ補助ヲ與ヘル金額ハ年二十五万圓デア
ルノデアリマス、之ヲ政府ハドウ云フ風ニ分配スルカ、胸算、心算ハ如何ニアルカト尋ネ
テ見マシタガ、是ハ政府ニ於テハ輕便鐵道ヲ架ケテ補助ヲ願出ヅル者ニハ、大凡資本ニ
對スル年二朱以上ノ利益アル線路ニアラザレバ、此詮議ノ中ニハ加ヘヌ、既ニ許可シタ
ルトコロノ二十三種ノ線ハ多クハ一割五分以上、少ナクモ五朱八厘ト云フノガ一番低
イ利子デアッテ、五朱ニ相當スルダケノ補助ヲ願出ヅルコトハ此文面ニ於テハ-願書
ノ文面ニ於テハ必要ト認メヌ程ノモノダケガ許サレテアルト云フノデアリマスルガ、併ナガラ
實際ニ於テハ或ハ違算ヲ生ジ、豫算ヲ違ヘテ居ルモノモアリマセウカラ、開業シテ五朱ニ
相當シナイ場合ニハ之ヲ出願スルコトガ出來ル、故ニ政府ノ見込デハ其場合ニ於テハ足
ラナイトコロヲ補給スルノデアリマスカラ、大凡五朱ト題シテモ二朱五厘、先ヅ半分位ト
見込ンダナラバ事實ニ於テ間違ハナカラウ、故ニ一千万圓ノ仕事ヲ年々進メテ行クニシ
テモ五朱ノ半ヲ補給スル、卽チ二十五万圓アレバ足レリト云フ見込ハ立ツテ居ルサウデア
リマス而シテ此經濟上ノ關係カラ輕便鐵道ヲ許スト云ウテ今年出シタル政府ノ鐵道
網モ諸君ノ中御覽ニナッタ御方モアラウト思ヒマスガ、凡ソ輕便鐵道ヲ許スノハドウ云フ
モノニ許スカト云ヘバ今年豫算會ニ提出シタルトコロノ鐵道網ニ記サレタル線路ニ對シ
テハ之ヲ許スノ方針ヲ執ッテ居ルト云フコトデアリマス、先ヅ此線ヲ確定ノモノトシテ、併
ナガラ之ヲ動カスベカラザルモノトハセズ、尙審査ヲ遂ゲ必要ヲ認メタルモノハ加ヘ加
或ハ訂正、訂正シテ行ッテ事實ハ圓滿ニ運ベル譯ノヤウデアリマス、其次ハ補給ノ金額
ヲ定ムルニ、政府ノ答辯ニ委員會ニ於キマシテハ之ヲ豫算デ與ヘルノ便法モアリ、決算
ニ依ルノ法モアルト云フ二樣ノ答辯ニ致シテ居リマシタガ、結局最後ニ及ンデ補助ヲス
ル其不足金額ヲ見出スノ方法ハ決算ニ依ルト云フコトノ確言ヲ取ッテ置キマシテゴザイ
マスカラ、是モ此法文ノ御解釋ノ御參考ニナラウト思ヒマス。ソコデ又補助ヲスル線路ガ
如何ニモ數多ク不統一ニ流レル傾ガアル、卽チ輕便鐵道法案ナルモノハ幅ニ於テ何
等ノ制限ヲ致シテ居リマセヌ、線路ノ幅ニ於テハ何等ノ制限ガアリマセヌカラ、現ニ出願
ヲ致シテ居ルモノガ、二尺モアレバ三尺モアリ、二尺五寸モアレバ四尺何寸モアルト云
フ譯デアリマス、政府ノ此財政ノ中ニ於テ補助スル鐵道ガ縱令輕便ノ名ハ付クニシテ
モ二尺トカ云フヤウナ誠ニ狹イ、而シテ旅客ノ交通ニ甚ダ不安心ナモノヲ多ク造ラセル
コトハ、宜シキヲ得ザルモノト考ヘマシテ、卽チ我〓委員會ニ於キマシテハ此「ゲージ」ニ一
定ノ軌幅ヲ定メ、卽チ第二條ト云フモノヲ一ツ置キマシテ「補助ヲ爲スヘキ輕便鐵道ハ
二尺六寸以上ノ軌間ヲ有スルモノニ限ル」トシテ、是ヨリ狹キトコロノモノハ輕便鐵道デ
ハ架クルコトヲ止メヌケレドモ、補助ヲ貰フコトハ出來ヌ、與フルコトハ出來ヌト云フ制限
ヲ付ケタノデアリマス、今一ツ此法律ハ五年ニ至ッテ卽チ百二十五万圓ノ金額ニ上レ
バソレヨリ以上ノ金ハ出サヌト云フコトニ明文ハ書イテゴザイマス、ケレドモソレハ年月ノ
話デ、其五年目ニ續ケバ又五年、又五年ト、何時マデモ際限ナクヤルコトノ出來ルヤウ
ニナッテ居リマスガ、是ハ所謂過渡ノ法、經過ノ法、一時ノ便法ヲ設ケルモノデアッテ、結
局多クハ本鐵道ヲ架ケネバナラヌ其間ノ仕事デアリマスカラ先ヅ玆ニ年限ヲ付ケタラバ
宜カラウト考ヘマシテ、委員會ニ於キマシテハ附則ニ「本法施行ノ日ヨリ十年ヲ經過シ
タルトキハ新ニ補助ヲ爲スコトヲ得ス」ト制限ヲ付ケタノデアリマス、之ニ依ッテ十年ノ終
リニ新ニ開業シタルモノニ特許ヲ與ヘルコトモ出來マス、其場合ニハ其年カラモウ五年續
キマスカラ十年ノ後十四年ニ亙ルダケノ補助ノ續クコトハ此法律ニ於テヤハリ認メラレル
次第デアリマス、唯十年ノ以後ニ於テハ新ニ補助ノ許可ヲ與ヘルコトハナラヌト制限ヲ
致シタノデアリマス大略斯樣ナル意味ニ於テ修正ヲ加ヘマシタ、其箇條ハ法文トシテ
ハ第二條ノ軌幅ヲ二呎六吋、卽チ二尺五寸ニ當ル寸法以上ノモノニ補助ヲ與ヘルト
云フコトニシ附則ニ於テハ十年間ト定メマシタ、此二箇條デアリマスカラ、是ダケヲ御
報〓申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=63
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064・菅原傳
○管原傳君 本案ニ對シ大體反對ノ御意見無キニ於テハ直ニ二讀會ヲ開カレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=64
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065・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ反對贊成ノ通告モアリマセヌカラ本案ハ直ニ二讀會ヲ
開クト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=65
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066・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ直ニ二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ニ供シマス
輕便鐵道補助法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=66
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067・菅原傳
○管原傳君 更ニ御異議ガナケレバ三讀會ヲ開キ、委員長ノ報告通リ決定セラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=67
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068・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 二讀會ニ御異議ガナイト認メマスカラ委員長ノ報告通リ決
定致シマス直ニ三讀會ヲ開クト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=68
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069・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ直ニ三讀會ヲ開キ議案全部ヲ
議題ニ供シマス
輕便鐵道補助法案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=69
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070・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ第二讀會ニ於テ決定ノ如ク、
本案ハ是ニテ確定致シマス、日程第二十一工場法案第一讀會ノ續、委員長大岡育
造君
第二十一工場法案(政府提出)第一讀會ノ續(受注文
報〓
〔大岡育造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=70
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071・大岡育造
○大岡育造君 工場法案ノ委員會ニ於ケル經過及結果ヲ御報告申シマス、工場法
案ハ昨年ノ議會ニ於テ一ト度提出セラレタル上、相當審議ヲ遂ゲマシタガ、尙政府ニ
於テモ熟考スルタメニ撤囘ヲシマシテ、本年再ビ提出ニナッタノデアリマス、勿論此間ニ
於テ民間ノ意見等モ參酌シテ、大ニ昨年ノ案トハ趣ヲ異ニ致シテ、修正ノ結果モ見ル
ベキモノガアルノデアリマス、ソレデ此法案ニ付キマシテハ大分異論モアルヤウデアリマシ
タケレドモ結局スルトコロ工場法案ハ職工ヲ保護スルノガ主タル目的デアルベキニ、工
業主ヲ保護スル箇條モ甚ダ少カラヌ故ニ矛盾シテ居ルト云フヤウナ說モアッタノデアリマ
スルガ、此法律ハ諸外國ノ例ニ依リマシテ一々之ヲ言フノ必要ハアリマセヌケレドモ、英
吉利デ初メテ工場法ニ類スル取締ヲ致シマシタノハ、凡ソ百年以前ノコトデアリマス、卽
チ外國ノ百年ヲ經過シタ法律ヲ直ニ全部舉ゲテ日本ニ行ハントスルノデアリマスルカラシ
テ、外國法律ノソレト一致シナイ〓モ少カラヌコトハ當リ前ノコトデアル、而シテ工業ノ
上ニ保護ヲ意味スルノハ、列國ノ生產競爭ノ激甚ナル場合ニ於テ、日本ノ今日未ダ生
產業ノ幼稚ナル事情ヲ酌ミマシテ生產ノ保護ト云フコトヲ意味シマスノデ、工場法ナル
モノハ工業ヲ保護シ、職工ヲ保護スル意味ニ於テ纏ッテ居ルコトヲ御了承願ヒタイノデア
リマス併ナガラ一般ニ付テ申シマスレバ、餘程工業者ヲ保護シタル箇條モ多イノデアリ
又、卽チ年齢モ制限シテアレバ、時間モ制限シテアル、又病氣其他ニ付テハ職工ニ對
シテ工業主ガ之ヲ救護スルノ責任ヲ負ウテ居ルノデアリマス此ノ如ク定メテアリマスルガ、
偖テ其工業ノ方ニ付テ保護シテアル意味ヲ擧ゲマスルト、大工業ニ付テ、卽チ晝夜兼
行ノ業ヲスルトコロノ大工場ニ付テハ十五年間ノ後ニ此法ヲ實行スルト云フコトニナッ
テ居リマス如何ニモ十五年間ハ長イヤウデアリマスルケレドモ、紡績業等ノ重大ナル業務ヲ
今日俄ニ晝夜業ヲ致シテ居ルモノヲ止メテ、半バノ製造力ニ止メルト云フコトハ前ニ申
シマシタ生產競爭上、甚ダ不利ナルコトデアッテ、從ッテ日本ノ購買ノ顧客ニ對シテモ、
甚ダ不利ナコトデアル等ノ意味ヲ持ッテ居リマス、ソコデ私ハ直ニ是ヨリ修正ノ意味ヲ申
シマスルガ、第一條ハ「本法ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル工場ニ之ヲ適用ス、一、常時十
人以上ノ職工ヲ使用スルモノ、二、事業ノ性質危險ナルモノ又ハ衞生上有害ノ虞アル
モノ」此二箇ニ對シテ取締ヲスルコトニナッテ居リマスルガ「十人」トアル制限ヲ「二十人」
ト委員會ハ修正ヲ致シタノデアリマス、是ハ大ナル工場卽チ百人或ハ五百人若クハ千
人モ使フヤウナ大工場ハ此法律ノ實行セラルヽノガ十五年後デアリマスルガ、家族的
工事トモ認ムベキ十人位ノ仕事場ニ對シテ此歐羅巴流ノ工業法ヲ直二嚴格ニ行フト
云フコトハ如何ニモ窮届デアッテ、而モ權衡ヲ保タヌト考ヘマスルノデ凡ソ二十人位ノ
程度ノ職工ヲ持ッテ居ル處カラ初メテ、尙併ナガラ人數ノ如何ニ拘ラズ、事業ノ性質ガ
危險デアル又ハ衞生上ノ設備ガ不十分デアル、衞生ヲ害スルト認メタ場合ニハ何時
デモ此法律ヲ行フノ便ガ備ヘテアルノデアリマスカラ、凡ソ二十人ナラバ宣カラウト云フノ
デ、修正ヲ致シタノデアリマス、尙次ニ修正ヲ致シタノハ第七條デアリマスル、「職工ヲ
二組以上ニ分チ交替ニ午後十時ヨリ午前四時ニ至ル間ニ於テ就業セシムルトキハ一週
間ヲ超エサル期間每ニ其就業時ヲ轉換スヘシ」ト云フ、此「一週間」ト云フコトヲ「十日」
ト修正ヲシタイノデアリマス是ハ實際夜ト晝トノ業務ヲ二組ニ分ケテ置クノニ常ニ晝問
ノ者ハ晝間夜間ノ者ハ夜間トシマスルト、夜間ノ業務ニ就ク者ガ、非常ニ疲レマスルノデ
一週間每ニ晝夜ノ交替ヲセシムルコトヲ玆ニ規定シタノデアリマスガ、偖テ七日ヅヽニ實
際各工場トモニヤッテ居ルサウデアリマスケレドモキッチリ法律デ極メマスト、七日ノ終リ
ニ當ッテ其翌日位ガ丁度祭ニナルトカ、盆ニナルトカ云フヤウナトキニ少シク活用スルコト
ノ出來ルヤウニスルタメニ之ヲ「十日ヲ超エサル期間每ニ其就業時ヲ轉換スヘシ」ト云
フコトニ改メタノデアリマス、ソレカラ第八條ニ於キマシテ又一ツ大ナル修正ヲ加ヘタノデ
アリマスソレハ晝夜業デナクトモ就業ノ時間ヲ十二時間ト限ッテ居リマスルガ、十二
時間ト限ッテモ尙事業ノ事情ニ依ッテハ巳ムヲ得ヌモノガアリマスノデ、是ニハ一箇月內
七日ヲ超ヘザル間ダケ二時間ノ延長ヲ許スト云フコトニナッテ居ルノデゴザイマス、是ハ多
ク工業者ノ便ヲ圖ッタノデアリマスガ、偖テ日本ニ於キマシテ今日生絲ノ輸出高ガ一億
三千万圓以上ニ上ッテ居リマスル、其大切ナル生產業ノ半バヲ占メテ居リマストコロノ
信州地方ノ如キハ、冬期ノ業務ガ執レナイ、冬ノ間ノ業務ノ執レナイ地方デアリマスカ
ラシテ一時ニ繭ノトキナドニ多ク生產時期ガアルノデアリマスルカラ、此季節ダケニハ右
二時間ヲ延バスコトヲ集メタモノヲ通ジテ一時ニ使ヒ得ル便法ヲ又設ケタノデアリマス、
卽チ「季節ニ依リ繁忙ナル事業ニ付テハ工業主ハ一定ノ期間ニ付豫メ行政官廳ノ認
可ヲ受ケ其ノ期間中一年ニ付百二十日ノ割ヲ超エサル限リ就業時間ヲ一時間以內
延長スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ認可ヲ受ケタル期間內ハ前項ノ規定ヲ適用
セス」前項ノ規定ナルモノハ「一月ニ付七日ヲ超エサル期間就業時間ヲ二時間以內延
長スルコトヲ得」ト斯ウ云フ意味デアリマス、次ニハ第十六條ニ修正ヲ加ヘマシタ、是ハ
誠ニ輕微ナル修正デアリマス、職工タラントスル者ガ戶籍ノ謄本ヲ受クルニ無料デ謄本
ヲ受クルノ恩典ガアリマスガ、却テ徒弟若クハ徒弟タラントスル者ニ及ンデ居リマセヌカ
ラ、其文字ヲ加ヘタノデアリマス、第十八條ニハ大ナル修正ヲ加ヘマシタ、是ハ第二十
二條ト關聯シテ居ル箇條デアリマシテ、工業主ナルモノハ工場ニ於ケル出來事ニ對シテ
ハ自ラ干與セヌ、知ラズト云フコトヲ以テ免ルヽヲ得ズト、二十二條ニ規定シテアリマ
スカラ、工場ノ出來事ハ自ラ與ラズ知ラズト雖モ、皆責任ヲ負フ、卽チ金錢上ノコトモ
ゴザイマセウガ、刑罰モ亦與ラナケレバナラヌ、斯ウ云フコトニナリマスカラ、從ッテ信用ア
リ名譽ヲ重ンズルトコロノ資本家ハ自ラ正面ニ立ツコトヲ避ケナケレバナラヌト云フコトニ
ナル然ラバ此工場法案ナルモノハ、工事ヲ進ムルノ目的、工業ヲ健全ニスルノ目的ヲ以
テ作リナガラ、大キナル〓ニ於テ工業ヲ妨ゲル傾キガアルト見ルノデアリマス、是ニ於テ政
府ノ原案デハ工場管理人ヲ置クト云フコトヲ單ニ工業主ガ其土地ニ居ラザルトキ、例
バ東京ニ居ッテ門司ニ工場ヲ持ッテ居ルト云フ場合カ、斯ウ云フモノカ、然ラザレバ特別
ノ事情アルトキニ勅令ヲ以テ工場管理人ヲ許スト云フ規定ヲ置イテ居リマスケレドモ、實
際ニ於キマシテ勅令デ許サレル箇條ガドンナモノデアルカト云フト、政府デモ甚ダ困ル、所
ガ元ト是ハ生產調査會等ニ於キマシテ調ベタトコロデハ、別ニ工場ノ管理人ト云フモノ
ヲ選任シテ、之ニ一切ノ權限ヲ持タセテ、工場ノ責任ヲ持タセルト云フコトニナッテ居ッタ
ノデアリマス、此方ガ甚ダ適シタルモノト考ヘマシタカラ、政府案ノ幾部分ヲ取リマシタケレ
ドモ、吾〓ハ御配付申シマシタ通リニ修正ヲ致シタノデアリマス、二十二條ニ於キマシテ
ハ一々細字ヲ以テ書イテ居リマスカラ、讀マズトモ御承知デアルコトデアリマスガ、加ヘタルト
コロハ「但シ工場ノ管理ニ付相當ノ注意ヲ爲シタルトキハ此ノ限リニアラス」ト云フ文字
ヲ加ヘタノデアリマス一向與ラズ、知ラズ、何デモ構ハヌ、罰スルト云フコトハ餘リニ酷
ニ失シマスカラ相當ノ注意ヲ以テ監督シテ居ッテ、尙其間ニ起ッタルトコロノ職工ナリ其
外ノ者ノシタ仕事ニ付テハ責任ヲ必シモ歸セヌト云フコトニシタノデアリマス、其次ノ箇
條モソレデス、今一ツ落チテ居リマシタ、一一十一條ノ「又ハ虛僞ノ陳述ヲナシタル者ハ」ト
云フコトヲ削リマシタ、卽チ其意味ヲ削ッタノデ、文字ハ此所ニアル通リデス、又ハ虛僞ノ
陳述ヲ爲シタト云フノヲ除イテ「答辯ヲ爲ササル者ハ」ト改メタ、是ハドウカト言ヒマスルト
斯ウ云云コトニナルノデアリマス、全文ヲ讀ミマスルト「正當ノ理由ナクシテ當該官吏ノ臨
檢ヲ拒ミ若クハ之ヲ妨ケ若クハ其ノ訊問ニ對シ答辯ヲナサス又ハ虚僞ノ陳述ヲ爲シタル
者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス」斯ウナッテ居ルノデアリマス、ソコデ虛僞ノ陳述ヲ爲スコ
トハ無論宜シクナイコトデアリマスガ、之ヲ罪スルト云フヤウナル場合ハ裁判所ニ於テモ
先ヅ宣誓ヲシテ其誓ニ背イタト云フトキニ初メテ罰スルノデ、工場ノ監督者ガ行ッテ工場
ヲ臨檢シテ搜ス、其最中ニ陳述ニ齟齬ガアルト云フト之ヲ捉ヘテ虛僞ノ陳述ト云フヤウ
ナコトヲ以テ爭ノ種ニスルコトハ甚ダ宜シクナイ、況ヤ各工場ニ於テハソレー、ーニ祕密ノア
ルモノ、化學工場デアッテモ其通リ、紡績工場デアッテモ特有ノ祕密ヲ保ッテ居ル是等
ノモノニ立入ッテ自分ノ祕密ヲ陳述ヲ正直ニシテシマッタナラバ、其營業ニ非常ニ損害ヲ
受クル場合モアルカモ知ラヌ、又此場合ニ多少ノ相違シタルコトヲ言フト虛僞ノ陳述ナリ
ト田舍ノ分ラヌ判決ヲ致ス人ガ若シアルカモ知レヌノデアル、是ハ無論正直ニ言ハセナケ
レバナラヌケレドモ、此ノ如クスルノハ却テ事實ニ於テ害ガアッテ、益ガナイ、況ヤ臨檢ヲス
ル、自分デ檢査ヲスル以上ニ於テカラ間違ガアッタラ間違ヲ正サレヌコトハナイニ依ッテ、
之ヲ削ルコトニナッテ居リマス、凡ソ修正致シマシタノハ此ノ通リデアル、サウシテ委員會
ニ於テノ重ナル意見ヲ申シマスルト、吾ミハ卽チ此修正ヲ爲シテ此法案ヲ通過スルモノト
致シマシタ、而シテ進歩黨ヲ代表セラレルトコロノ(「進步黨ニアラズ」ト呼フ者アリ)國民
黨ヲ代表シテノ人ハ小寺君デアリマシタガ、此法案ハ大體ニ於テ贊成シテ尙不十分ナル
所ハアルケレドモ今日之ヲ修正スルモ通過ノ見込ガナイカラ他日ヲ期スルト云フ意味デ
アリマシタ無所屬カラハ花井君ガ出ラレテ稍〓同ジコトヲ言フ、免ニ角日本ニ於テ法律
ヲ以テ職工ヲ保護スルト云フコトノ第一步ヲ得タルコトヲ樂ミトシテ、其他ノ不十分ナコ
トハ忍プト云フ意味ヲ述ベラレタノデアリマス、右御報告ニ及ビマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=71
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072・早速整爾
○早速整爾君 チヨット委員長ニ說明ヲ求メタイコトガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=72
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073・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 早速整爾君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=73
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074・早速整爾
○早速整爾君 此第一條ノ修正デアリマンガ、常時十人以上ノ職工ヲ使用スルラノ
ト原案ニアリシトコロノモノヲ「二十人以上ノ職工ヲ使用スルモノ」ト修正セラレタ理由デ
アリマス、先程ノ御報告ニ承リマシタガ、能ク其意思ヲ了解スルコトガ出來ナイノデアリ
マス、勿論此制限ヲ具體的ニ數字ノ上デ御答ヲ願フ譯ニ行カナイノデアリマスガ、體
此工場ノ取締ヲ要スルモノハ大工場ノモノニモ其必要ヲ感ジマスケレドモ、併ナガラ小工
場ニ於テ取締ヲ要スルモノガ寧ロ多クハナイカト私共ハ考ヘテ居ルノデアリマス、十人以
上ノ職工ト制限シテアッテモ尙如何デアラウカト思フ位デアル二十人以上ノ職工ヲ
使用スル者ハ此工場法ノ支配ヲ受ケマスケレドモ、十九人マデ使用シテ居ルトコロノ工
場ハ此工場法ノ支配ヲ受ケナイト云フコトニナル、誠ニ其弊害ト云フモノガ多クハアルマ
イカト憂フルノデアリマス、此十人以上トアリマシタノヲ二十人以上ト殊更ニ修正セラレ
テ、却テ小サイ工場ニ弊害ガアルニ拘ハラズ、之ヲ取締ルコトガ出來ナイ、斯ウ云フ憂ヲ
殘サレタノハ吾〓共カラ考ヘマスルト、此修正ノ趣意ガドウモ能ク分ラナイノデアリマス、
二十人以上ノ職工ヲ使用スル工場ニ此工場法ヲ施行スレバ、ソレデ宜シイ、十九人以
下ノ此小工場ニ對シテハ工場法ヲ施行スル必要ガナイト御認メニナッタ理由ハ、何レニ
アルカ、之ヲ少シ御答ヲ願ッテ置ケバ宜シイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=74
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075・大岡育造
○大岡育造君 御答ヲ致シマス、吾ミガ此二十人ト致シマシタノハ前ニ御報告申シマ
シタ譯デ、大ナル職工ヲ使用スルトコロノ大工場ハ、十五箇年間此法律ニ重ナル制限
ヲ延期シテアルノデアリマス而シテ十人ト云フヤウナ工場ハ寧口家庭的ノ工場テアッテ、
餘リ職工ヲ虐待スルト云フヤウナコトモナカラウ、家庭的ニ營ンデ居ル者ガ、マダ多イ位
ノ狀態デアリマスカラ、程度論デハアリマスケレドモ、二十人以上ニシタナラバ其中通リ
ヲ得ハセヌカ、政府ノ統計デ示シタトコロニ依リマスルト、十人以上ノ工場トシマスレバ
數ガ凡ツ一万五千以上ニナリマス、二十人以上ニナリマスルト七千五百幾ラ、約半分ノ
工場ノ數ニナリマス、而シテ極ク小工場ニ於テ取締ラナケレバナラヌモノガアルノニ、何故
ニ斯クスルカト云フ御尋ニ對シテハ、第一條ノ第二項ヲ御覽ニナリマスルト二十人以下
ノモノデモ事業ノ性質危險ナルモノ、或ハ衞生不良ノ虞アルモノトゴザイマスカラ、五人ノ
工場デアラウガ、皆取締ル、若シ工場トシテ虐待ヲコトヽスル、若クハ衞生不良ナルコト
ヲ顧ミズシテ心配ヲ掛ケルモノトスレバ監督官廳ハ直ニ此二項ニ依ッテ此工場ニ工場
法ヲ行ヒマス(「ノウ〓〓ソレハ違フ」ト呼フ者アリ)サウ云フ意味ニナッテ居リマスカラアナ
タ方ガ反對セラルヽノハ格別デアリマスガ、吾〓ノ意味ハ斯ウ云フ意味デシタノデアリマス
カラ、左樣ニ御承知ヲ願ヒマス、尙是ニ於テ報告漏レガアリマスカラ、補ッテ置キマスガ、
以上先刻登壇ノ節御報告致シマシタル修正ノ中、第一條及第二十二條ヲ除クノ他ハ
政府ガ全然同意ヲ表シマシタ、而シテ第十八條ハ政府ニ於テハ其意味ニ不同意ハナイ
ガ、他ノ新法律ノ關係-商法トノ關係ニ於テ差支ガアルカラ直ニ同意ヲシ兼ネル
ト云フ意味ノ返事デアリマシタ、而シテ第一條ニ對シマシテハ二十人以上ニハ御同意ガ
出來ナイ、後ニ能ク〓究シテ交渉シテ見マスルト云ハレタガ、十五人位ハ應ズル趣デアリ
マスカラ、此〓ニ付テノ修正ハ二讀會ニ於テスル積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=75
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076・菅原傳
○菅原傳君 本案ニ對シ直ニ二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=76
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077・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直ニ二讀會ヲ開クト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=77
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078・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガアリマセヌカラ直ニ二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議
題ニ供シマス
工場法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=78
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079・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 修正ノ動議ガ提出シテアリマス、第一條、第三條、第五
條第六條、是ハ同一人カラ提出シテアリマスカラ同時ニ述ベラレルコトニ致シマス、高
木正年君
〔高木正年君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=79
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080・高木正年
○高木正年君 唯今委員長大岡君ヨリ委員會ノ經過ヲ御報告ニナリマシタ、唯今ノ
御報告ニ依リマスト、殆ド委員會ニハ何等ノ異議モナイヤウナ御辯明ガアッタノデス、此
場合ニ於テ私ガ修正說ヲ述ベマスコトハ如何ニモ事ヲ好ムガ如ク思惟セラルヽカモ知レヌ
ノデアリマス、併シ私ノ修正案ハ唯一人ノ修正案デハナイノデアリマス、代表的ニ自分ガ
此場合ニ於テ修正ノ意見ヲ吐露スルノデアリマスカラ、暫ク御聽ヲ顧ヒタク思ヒマス、私
ノ修正案ハ第一條ノ原案ニ、十人以上トアッタノヲ委員會デ二十人以上ト修正シタノ
ヲ原案ニ復スルト云ノガ一デアリマス、次ハ第三條、第五條、第六條ニ亙ッテ十五箇
年間トアルノヲ十箇年ト修正スル、此二ツデアリマス條ノ上ニ於テハ四箇條ノ修正ニナ
リマスガ、意味ニ於テハ二ツノ修正デアリマス、何故ニ私ガ此案ニ斯樣ニ此案ニ修正ヲ
セネバナラヌカト申シマスルト、工場法案ハ昨年ニ於テ私共ガ豫期シタヨリモ政府先ヅ其
決意ヲ翻シテ居ル、昨年ニ於テ提セラレタトコロノ條項ノ中本年ニ於テ之ヲ改メラレタル
モノハ何デアルカト云フト、唯今後ニ申シマシタトコロノ昨年ノ原案ニハ十年トアッタノヲ
十五年ト直サレタ、工場法ハ何ノタメニ規定セネバナラヌノデアリマスカ、我工業ヲシテ
健全ナラシムルタメニハ先ヅ勞働者ノ保護ヲ第一トセネバナラヌノデアリマス、又是ト同
時ニ勞働者ヲ總テ放縱ナラシメザルタメニ取締ノ法ヲ置イテ、工場ノタメニ利益ヲ與ヘル
ト云フノガ第二ノ趣意ニナッテ居リマス、是ニ加フルニ危險其他主トシテ豫防スベキト
コロノモノヲ取締ランガタメニ此工場法ヲ制定サレルノデアリマス、然ルニ政府ハ昨年ニ
於テ、提出セラレタ後ニ於テ、慥ニ或ル意味ニ於テハ退步ヲ致シテ居ルノデアリマス、先ヅ
第一條ニ何故ニ之ヲ十人以上ニ候復スルコトガ適當アアルア、唯今大岡君ガ早速
君ノ問ニ對シテ辯明サレマシタガ、蓋シ早速君ノ問ニ對スル答辯ハ未ダ我ミヲシテ滿足
セシムル答辯デナイト云フコトハ申スマデモナイコトデアリマス、何故ニ左樣ニ申シマスル
カ、我國ノ工場ノ中ニ於テ比較的大工場ニ於テ弊害ノナイト云フコトヲ私ハ知ッテ居
ル、唯時間ヲ多ク勞働者ニ働カシムルト云フコトガ、一ノ弊ト云フベキモノデアルガゝ其
他ニ於テ大工場ハ比較的弊害ガ少イ、寧ロ弊ノ多イノハ小工場デアル、過日本會ニ於
テ第一讀會ノ場合ニ於テ私ハ政府ニ尋ヌルニ十人以下ノ取締ハドウスルカト云フコトヲ
尋ネタ、此十人以下ノ取締ハ既ニ困難デアルト云フ今日ノ狀態デアル、然ルニ十人以
上トアルノヲ二十人以上トシテ此間ニ多クノ工場ノ取締ヲ脫セムシルト云フコトハ決シテ
此工場法ヲ制定スル趣意ニ適フモノデハナイノデアリマス、言ハヾ工場法制定ノ趣意ノ
大部分ヲ漏ラシタカト云フテモ差支ナイ、大岡君ハ却ッテ此大工場ノ狀態ハ御承知デゴザ
イマセウガ民間ニ散在シテ居ルトコロノ我國ノ小工場ノ狀態ハ御承知ガナイカモ知レヌ、
是ハ無理カラヌコトデアリマス、私共ハ最モ細民ノ間ノ狀態ヲ能ク知ッテモ居ルシ而モ其間
ニ住居シテ居ルノデアリマスカラ、最モ此事ニ近接シテ居ルノデアリマス、十人以下ノ職工
ヲ使用スルコトノ上ニ就テモ先ヅ是等ノ小工場ハドウデアルカト云フト其半ハ所謂年季所
謂年季奉公ト云フ者ヲ使用シテ居ル、年季奉公ヲ仕上ゲタモノト相交ヘテ十人ナリ一一十
人ナリノ人ヲ使用シテ居ルトコロノ工場ハ全國到ルトコロアル比較的我邦ノ工場ハ小サ
イノガ多數デアル、若シ是等ノモノヲ除ケバ工場ト云フモノヽ半分ハ「ゼロ」ニナル、取締
ト云フモノモ從ッテ「ゼロ」ニナル此最モ弊害ノ多イ小工場ヲ見棄テヽ大工場ヲ取締ル、
大工場ヲ取締ルト云フ趣意カラ從ッテ大工場ニ便宜ヲ圖ルト云フ意味ニ工場法ガ轉輾
シテ往クト云フコトモ、之ハ無理ハナイト思フ、十人以上、二十人以上、唯數ノ上ニ於
テ十人、二十人ノ相違ガアルモノト、或ハ考ヘラレル人ガアルカモ知レマセヌガ、併シ實
際ニ於テ斯ウ云フコトガ生ズルノデアリマス二十人以上ニナレバ工場法ノ支配ヲ受ケ
ル、是ニ於テ定員十八人ナリ、十九人ナリニシテ置キ、後ハ臨時ニ要ルトキニ人ヲ殖ス
ト云フガ如キコトニナッタナラバ、二十人以上實際ニ使用スル工場モ、事實ニ於テヤハリ
工場法ノ範圍外ニナッテシマフ、ソレハ十人デモ同ジコトダト云フ御說明ガアルカモ知レマ
セヌガ、併ナガラ十人以上トスルト、二十人以上トスルト、十人以上ト言ヘバ或ハ之
ヲ家庭的ノ工場ト云ッテモ宜イカモ知ラヌ、場所モ狹シ、從ッテ總テノ規模ガ小サイ
ノデアル之ヲシテ十人ノ所ニ二十人ヲ入レテ、十人以內デアルト云ッテ、工場法ヲ遁
レルヤウナコトハ先ヅ出來ニクイノデアル、却テ二十人以上トスレバ二十人以上ノモノ
ハ二十人以下トシテ工場法ノ支配ヲ遁レルコトハ爲シ易イ、ソレハ今日我邦民間ノ
此各職工ヲ使フモノヽ狀態ニ付イテ御調ベニナリマスルト、最モ之ハ見易キ道理デアリマ
ス、私共ハ主トシテ一方ハ勞働者ヲ保護シ、他方ニ於テハ工場ノ取締ヲスルコトノ精神カ
ラ往キマシタナラバ甚ダ委員長ノ-吾〓ノ常ニ敬愛スル委員長ノ御演說ニ對シテ反
對スルノハ誠ニ心苦シイガ、已ムヲ得ナイ、次ニ申シマスルガ此十五年ヲ十年トスル之ハ
昨年ハ政府ガ提出シタノデアリマス、ヨモヤ政府ハ反對ヲシナイノデアラウ私ノ修正ニハ成
程之ハ紡績工場等ニ於テハ隨分打擊デアルカモ知レナイ、併シ先刻大岡君ノ御言葉ニ、
今日ノ此工場法ハ十分デナイト云フ御說ガアルガ、先ヅ之ヲ取締ル方法ノ第一步トシテ
ヤルガ宜イト云フ御說ガアッタ、第一步トシテヤルナラバ、第一步ダケノ工場ノ取締ヲ成ベ
ク早クヤッテ見タイノデアリマス、第一步ガ十五年ノ後ト云フコトハ如何ニモ氣長過ギルノ
デアル、世界ノ文明ノ速度カラ申マシタナラバ、決シテ今日ハ百年ヲ以テ一世紀トハ言ハ
レナイノデアリマス、十年ヲ以テ一世紀ト爲ス位世界ノ進步速度ハ早イノデアリマス、
方ニ於テ機械ノ發明ノ力ガ加ハリ、一方ニ於テハ製造ニ付テノ危險ノ度ハ益〓加ハリ、
次第ニ增加シテ居ルノデアリマス、之ヲ十年ノ餘裕ヲ置ケバ、決シテ之デ紡績業ナリ總テ
ガ廢滅スルト云フコトハ言ハレヌノデアリマス、現ニ紡績業ノ中デモ最モ國ノ利益ヲ先キト
シノ、公平ニ事業ヲ觀察スルモノヽ目カラ見レバ十年デ十分デアルト云フコトヲ言ッテ居
ル、私共ノ友人カラ旣ニ今日モ其事ヲ耳ニシマシタ、工場ヲ持ッテ居ル人、其工場ニ關係
アル人スラ、旣ニ此ノ如キ公平ナ意見ヲ持ッテ居ル、十年モ此際延期シテ、決シテ今日ノ
工場ハ成立タヌト云フコトハナイノデアリマス、左樣ニ深ク御心配ハ要ラヌト私ハ思フガタ
メニ此十五年ヲ十年ニ短縮シテ少シモ差支ナイト思惟スルノデアリマス、私共所見ヲ有
體ニ言ヒマスレバ、私ノ居リマスル東京ノ郡部ハ東京市ノ大都會ノ工場ノアル處デアリマ
ス、自分一人ノ內情ノ上カラ往キマシタナラバ十五年ハ無論賛成デアル、併シ苟モ職工
ヲ保護シ、國ノ工業ノ健全ヲ來スタメニ工場法ヲ制定スルト云ハヾ、私一人ニハ如何ナ
ル之ガタメニ不利益ガアッテモ、言ヒニクイ此際發言ヲシテ健全ナル一ツ工場ノ前途ヲ祝
福スルコトガ、我〓ノ責任デアルト思ヒマスガタメニ甚ダ爲シニクイ事柄モ、時ニ依ッテハ既
ニ申シテ居ルノデアリマス、何卒私ガ斯ル狀態ニ於テ此修正案ヲ主張スル勇氣ニ御同情
下サイマシテ、縱令委員會ガ之ヲ認ムルト雖モ、全會一致ヲ以テドウゾ私共ノ修正ニ御
贊成アルヤウニ深ク希望スルノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=80
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081・細野次郎
○細野次郞君 本員ハ此際ニ於テ政府ニ問ハントスルトコロガアリマス、唯今委員長ガ
報告セラルヽ通リ委員會ノ修正第一條ハ僅ニ一字ノ相違トハ申シナガラ、此法律ノ及
プトコロヲ半減スルモノデアリマス、、當局ノ調査ニ據レバ十人以上トスレバ、一万五千ノ
工場ニ適用シ、二十人以上トスレバ僅ニ一千五百餘ニシカ適用ガ出來ヌト云フコトデア
リマス、果シテ然ラバ六億ノ歲入ヲ三億ニ負カスト同ジコトデゴザイマスル、私ハ此際ニ於
テ政府ガ委員會ノ修正ニ同意スルヤ否ヤ、所見如何
〔政府委員押川則吉君豆壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=81
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082・押川則吉
○政府委員(押川則吉君) 唯今細野君ノ御尋ノ二十人ニ修正スルト云フコトニ同
意スルヤ否ヤト云フコトニ付キマシテハ特別委員會ニ於テモ同意シ兼ネルト云フコトヲ
答ヘテ置キマシタ、此修正ニハ不同意デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=82
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083・細野次郎
○細野次郞君 更ニチヨット一言、委員長ハ政府ハ十五人ナラバ同意セラルヽ趣ガアル
トカ言ハレマシタガ、果シテ事實ナルヤ否ヤ
〔政府委員押川則吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=83
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084・押川則吉
○政府委員(押川則吉君) 十五人云々ト云フコトニ付キマシテハ、當議會ニ於テハ其
御意見ハ出テ居リマセヌノデ、唯今政府ハ其コトニ向ッテ答辯スル必要ハナイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=84
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085・大岡育造
○大岡育造君 本員ハ先刻委員長ノ資格ヲ以テ二十人ノ報告ヲ致シテ置キマシタ、
今改メテ十五人ニ修正致シタイノデアリマス「二十」ト云フノヲ「十五」ト改メル提議ヲ致
シマス、御贊成ヲ願ヒマス(「贊成々々」ト呼フ者アリ)而シテ此場合ニ於テ政府ノ意見ヲ
聽キタイノデアリマス、是ニ同意スルヤ否ヤ
〔「八百長」ト呼フ者アリ〕
(農商務大臣男爵大浦兼武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=85
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086・大浦兼武
○農商務大臣(男爵大浦兼武君) 唯〓大岡君ノ御意見ノ十五人ハ、政府ハ固ヨリ
十人ト云フ原案デゴザイマスケレドモ、大勢十五人ト云フ多數ノ御意見ナレバ、敢テ不同
意ハ唱ヘマセヌ(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=86
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087・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 採決ヲ致シマス、先ヅ第一條ニ付テ採決ヲ致シマス、卽チ一
條ニ付テノ採決ノ方法ヲ宣告致シマス、原案ハ「十人」トアルヲ委員會デハ「二十人」ト
修正ヲサレタ、ソレニ又髙木正年君其他成規ノ贊成ヲ得テ原案ノ復活、卽チ「十年」ニ
復活スルト云フ修正動議ガ出テ居ル、然ルニ又唯今大岡育造君カラ「十五人」ニ修正
スルト云フ動議ガ出テ、贊成ガアリマス、因テ原案ニ一番遠イモノカラ採決致シマス、原
案ガ卽チ「十人」ソレカラ委員會ノ修正ガ「二十人」デアル、ソレデ原案復活ガ此處ニアル
カラ先ヅ「十五人」ト云フ方ヲ一番先ニ採決ヲ致シマス、卽チ是ガ一番遠イ(「二十人」
ガ遠イ」ト呼フ者アリ)「二十人」ハ委員會ノ修正デアリマスカラ、第二讀會ニ於テハ委員
長ノ報告ガ原案ニナル例デアリマス(「原案ハ十人」ト呼フ者アリ)十人ハ原案復活論デ
アル(「委員長ノ修正說ヲ先ニ採ルガ宜イ」ト呼フ者アリ)卽チ今申シタ通リ議長ガ採決
致シマスカラ議長ノ宣告通リ同意セラルレバ、ツレデ宜シイノデゴザイマス、卽チ委員長ノ
報〓原案ニ「十人」トアルノヲ委員會ニ於テハ「二十人」トシタ、委員長ノ報告ニ對シテ
更ニ大岡育造君ヨリ「十五人」ト修正スルト云フ動議ガ出マシタカラ、之ニ同意ノ諸君
ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=87
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088・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 多數-「十五人」ニ決定致シマス、ツレカラ第三條、第五
條、第六條ノ高木君ノ修正ハ意味ニ於テ同一デアルト一云フコトヲ提出者モ述ベラレテゴ
ザリマス、卽「十五年間」ヲ「十年間」ト修正シ、「十五年後」ヲ「十年後」トシ「十五年
間」ヲ「十年間」ト修正スル、此三箇條デゴザイマスカラ、之ヲ一括シテ採決シヤウト思ヒ
マス、髙木君ノ修正說ニ同意ノ諸君ノ起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=88
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089・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數-其他ハ委員長ノ報告ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=89
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090・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ委員長ノ報告ニ決定致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=90
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091・菅原傳
○菅原傳君 直ニ三讀會ヲ開キ、二讀會ニ於テ決定セラレタル通リ確定セラレンコトヲ
希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=91
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092・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直ニ三讀會ヲ開クニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=92
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093・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ直ニ三讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供シ
マス
工場法案第三讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=93
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094・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、一一讀會ニ於テ決定セラレタ通リ、
之ニテ本案ハ確定致シマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=94
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095・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第二十二、蠶絲業法案、第一讀會ノ續、特別委員
長野田卯太郞君代理事武藤金吉君
第二十二蠶絲業法案(政府提出)第一讀會ノ續((報〓(43.4)
〔武藤金吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=95
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096・武藤金吉
○武藤金吉君 委員長ニ代リマシテ特別委員會ノ成績ヲ御報告申上ゲマス、特別
委員會ハ數囘ニ亙リマシテ審査ヲ重ネマシタ其順序ト致シマシテ特別委員會ニ於ケル
審査ノ大要修正ノ箇條竝ニ少數意見、其外ニ蠶絲業者低利資金融通ニ付政府ト
交涉ノコト、本案執行ニ關シ委員會ガ警告ヲ與ヘタルコト、是ダケデゴザイマス、此蠶絲
業法ハ御承知ノ如ク原蠶種ノ製造ノ規定、蠶病豫防法ノ事項、ソレニ同業組合ヲ加
ヘタルモノデ成立ッタモノデゴザイマス、サウシテ其外ニ此法律ヲ制定スルニ付キマシテ、委
員會ハ原蠶種ニ關スル施設竝ニ其方法、種繭審査所ノ規則其外蠶絲業法案ノ命
令ニ讓リタル事項等悉ク政府カラ提供ヲ受ケマシテ、審査ヲ致シマシタノデアリマス、
蠶絲業法ヲ行フニ方リマシテ、政府ノ大體ノ方針ハ豫算ニ於キマシテ全國ニ中央原蠶
種ノ製造所一箇所ヲ置キ、支所五箇所ヲ置クト云フ施設ニ伴ヒマシテ、此法律ヲ施
行スルコトデアリマス、政府ノ方針ハ今ヤ世界ノ此絹ノ需用ハ其產額ノ二割ヲ增シテ居
ルノデアリマス、而シテ我政府ニ此設備ハ年々十五石以上增收スル見込デ計畫ガ立ツ
テ居ルノデゴザイマス、今日ニ於キマシテ三百五十万石以上ヲ取ルモノニ、更ニ十五万
石ヲ一箇年ニ增シテ行カウト云フ計畫デアリマスカラ、丁度四五步ニ當ル計算デアリマ
スサウシテ此原蠶種ノ製造所ハ此產額ノ十分ノ一ヲ造リマシテ之ヲ漸次ニ統一整理
ヲ爲シテ行クト云フ方法ニ付キマシテノ此法律案デアリマス、サウシテ此法律案此原蠶
種ノ製造ニ付キマシテ十八條ト二十三條ガ問題ニナッテアッタノデアリマス、當院ニ於キ
マシテ昨年建議ヲ致シマシタ趣意ハ、勿論此蠶種ノ統一整理ヲ爲スト云フコトハ生絲ガ
此國家ノ貿易デアリマシタル以上ハ、之ニ全國ニ國家的統一整理ヲ爲スト云フコトノ方
針ヲ取ッテ、サウシテ委員會ハ此修正ノ眼目ニ於キマシテ修正ヲ致シタノデアリマス、是
カラ、修正ノ箇條ニ付キマシテ其修正ノ理由ヲ御報告致シタイト思ヒマス、修正ノ箇條
ハ十一箇條デアリマス、此一番ノ問題ニナリマシタノハ第十八條デアリマス、「主務大臣
又ハ地方長官必要ト認ムルトキハ原蠶種ノ製造若ハ其ノ讓渡讓受又ハ原蠶種ノ種類
ヲ制限スルコトヲ得」ト云フ條項デアリマス、此原案ニハ主務大臣又ハ地方長官トナッテ
居リマシテ、卽チ問題トナリマシタノハ地方長官ニ主務大臣ト同樣ノ權力ヲ與ヘテ居ルカ
ラ、鎖縣主義ニナリハセヌカト云フ議論ガアッタノデアリマス、然ルニ此修正ハ何處マデモ
國家ノ重要物產デアル以上ハ、之ヲ統一シナケレバナラヌカラ、主務大臣ト云フコトニシ
ナケレバイカヌト云フノデ「又ハ地方長官」ト云フコトヲ削除致シマシタ、ソレカラ又別項
ノ「地方長官前項ノ制限ヲ爲サムトスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ」トアルモノヲ斯
樣ニ改メマシタ「主務大臣ハ地方特別ノ狀況ニ依リ地方長官ヲシテ前項ノ制限ヲ爲サ
シムルコトヲ得」既ニ此法律ノ原則ニ於キマシテ蠶種ノ統一整理ヲナスト云フ原則ヲ改メ
タル以上ハ、主務大臣ハ更ニ地方ノ狀況ニ依タッナラバ地方長官ヲシテ一府縣乃至數
府縣ニシテ、此制限ヲナサシムルコトモ出來ルト云フ、此處ニ便法ヲ設タノデアリマス、元
來此案ヲ政府ガ拵ヘルトキニ全ク國家的整理統一トー云フコトヲ沒却シタノデハアリマセヌ
ケレドモ稍〓法律ヲ制定シタ法律文カラ見ルト、餘程地方主義鎖縣主義ニ傾イテ居ッタ
ノデアリマスガ、此修正ニナルト骨ガ入ッタノデアリマス、完全ニナッタノデアリマス、此蠶種
統一整理ノ目的ニ副フヤウニナッタノデアリマシテ、斯ヤウニ、十八條ヲ修正致シマシタ次
第デアリマス、ソレカラ又此制限ヲスルコトニ付キマシテハ、チヨット申上ゲテ置カンナラヌノ
ハ、此地方ニ於キマシテ蠶種審査會ト云フモノガ設ケラルヽト云フコトニ原案ニアリマシタ
ノデ、然ルニ更ニ中央ニ於キマシテモ此審査會ヲ設クルト云フコトニ致シマシテ.其審査
會ハ少クトモ從來ノ政府ノヤリマシタ委員會ノ如ク、官吏ガ七分、民間ノ學者技術家ト
云フモノヲ三分入レテヤルト云フコトヲヨシマシテ、今度ハ民七、官三ト云フ方針デ、地方
ノ審査會モ中央ノ審査會モヤルト云フコトニ致シタノデアリマス、而シテ政府ノ歡迎ヲ致
シマシタ學者技術家ト實際家、經驗家トヲ合致シマシテ、此方法ヲ-此蠶種ノ選定
制限等ヲヤッテ往クト云フコトデ此十八條ヲ修正致シマシタノデゴザイマス次ハ十九條
デゴザイマス、此十九條ハ「地方長官ハ蠶種又ハ繭ノ賣買又ハ取引市場ニ關シ取締
上必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得」トアリマスノヲ、之ヲ地方長官ヲ削除致シマシテ、主
務大臣ト云フモノヲ加ヘタノデアリマス、是ハ此重大ナル權力ヲ地方長官ニ委スルノハイ
ケナイト云フコトデ、主務大臣ト變ヘタノデアリマス、次ハ二十三條デアリマス、此十八
條ノ修正ニ伴ヒマシテ「主務大臣及」ト云フコトヲ此本案ノ「地方長官ハ」ト云フ頭ニ入
レマシテ「必要ニ應シ種繭ノ審査及原蠶種ノ選定ヲ行ハシムルタメ種繭審査會ヲ設クヘ
シ」ト云フコトニナッタノデアリマス、ソレカラ別項ノ「種繭審查會ノ設備組織權限及審
査選定ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」ト云フコトハ唯今十八條ヲ說明シタト同
樣デアリマス、次ハ第二十六條デアリマス「蠶病豫防事務及」ノ下ニ「地方」ト云フ二字
ヲ加ヘマシテ「種繭審査會ニ關シ必要ナル費用ハ府縣ノ負擔トス」但之ニ此修正ノ意
見ハ「但國庫ハ其半額以內ヲ補助スルコトヲ得」委員會ニ於キマシテハ大分之ニ付キマ
シテハ議論ガアリマシタ、全體此蠶病豫防法ノ如キ、此審査會ノ如キ、費用ハ國庫ノ負
擔トスベキモノデアルカラ國庫ノ負擔トスルト云フコトガ至當デアルト云フ議論モ澤山ゴザ
イマシタガ、段々討議ノ結果、此修正意見ト致シマシテ旣ニ本年ハ豫算モ計上セラレ、ソ
レカラ又之ヲ行フ上ニ於キマシテハ全然國庫ノ負擔トスルト云ウテ法文バカリ極メタトコ
ロガ、政府ガ出スコトガ出來ナケレバ困ルト云フコトデアリマシテ、段々政府ノ意見モ質シ
マシタトコロ、此蠶病豫防法ハ現行法ニ於キマシテハヤハリ國庫ハ其半額ヲ出スト云フ
コトニ規定サレテ居ルノデアリマス,然ルニ現在ニ於キマシテ百万圓掛ル費用ノ中ニ政府
ハ--國庫ハ、十万圓シカ出シテナイ、此但書ハ啻ニ國庫ハ半額以內ヲ補助スルコトヲ
得ト云フバカリニ書クノデハゴザイマセヌデ、政府ハ之ヲ此施行ト共ニ現實スルヤウニ、例
ヘバ百万圓掛リマスルモノハ、五十万圓政府ガ出スト云フコトニ同意ヲサセマシテ、サウ
シテ之ヲ出スト云フコトニハッキリハ明言モサレマセヌケレドモ、成ルダケ多ク出スヤウニト云
フコトデ、政府ハ同意ヲサレタノデアリマス、デ尙此蠶病豫防費ノ費用ニ付キマシテハ年
年唯今ノ此養蠶ノ發逹ハ共ニ殖ヘテ往クコトハ必然デゴザイマス、デ既ニ昨年ノ如キモ輸
出貿易ハ一億四千万圓ヲ數ヘマシタ、本年ノ如キハ此分デ參リマスレバ三十万梱ハ橫
濱ノ市場カラ出スコトガ出來ル、唯〓ノ價デゴザイマスレバ此生絲ノ直段ダケハ確ニ一億
六千万圓ヲ計上スルコトハ出來ルノデアリマス、又羽二重ノ輸出ハ三十万圓、之ニ屑物
ヲ併セマスルト輸出絹物ダケガ二億ヲ計上スルコトニナル、此二億ヲ計上スルトコロハ、
今日ノ三百五十万石デハ濟マヌノデアリマス、近來ハ夏秋蠶ノ增收ト云フモノハ著シキ
モノデアリマシテ、非常ニ發達ヲ致シテ居リマスカラシテ、此蠶病豫防ノ費用ト云フモノ
モ今日マデ百万圓ノモノハ乃至百二十万圓ニナリ、百五十万圓ニナルコトハ近キ中デ
アルノデアリマスカラ、從ッテ此費用ト云フモノモ殖ヘテ往クコトデアルノデアリマス、次ハ三
十五條デアリマス、此三十五條ハ錯雜シテ直シテアリマスカラ修正ノ全文ヲ讀ミマス「三
十五條當該官吏吏員ハ蠶病豫防ニ關シ蠶種又生繭ノ取扱ヲナスモノヽ店舗倉庫
製造場飼育場等ニ臨檢シ物品及帳簿其他ノ書類ヲ調査シ又ハ必要ナル分量ニ限リ
無償ニテ物品ヲ收去スルコトヲ得」「地方長官本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違
反スル所爲アリト認ムルトキハ當該官吏吏員ヲシテ前項ニ揭ケタル場所ニ臨檢シ犯罪
嫌疑者若ハ參考人ヲ尋問シ又ハ犯罪事實ヲ證明スヘキ物件帳簿書類ヲ搜索シ若ハ
之カ差押ヲナサシムルコトヲ得」ツレカラ「前二項ノ場合ニ於テ云々」トアリマスノヲ之ヲ削
除致シマシタ、ソレカラ「臨檢尋問搜索又ハ差押ニ關シテハ間接國稅犯則者處分法ヲ準
用ス」是ハ同ジ蠶絲業者デアリマシテモ例ヘバ橫濱ノ生絲貿易商製絲業者等トハ自ラ
此蠶ノ種ヲ拵ヘマスモノト生繭ヲ取扱ヒマスモノヽ營業者トハ違ヒマスカラシテ、此官吏ノ
臨檢無限ナル司法權ヲ與ヘル-此官吏ノ權力ヲ同ジ蠶絲業者デアリマシテモ此方
面ニ及ボサナイト云フ修正テアリマシテ、此修正ノ程度ハ至極穩當デアルト信ジマス、次ハ
三十八條デアリマス、此三十八條ハ「詐欺ノ所爲ヲ以テ第十一條ノ檢査ヲ受ケタル者
ニ第十四條又ハ第十七條ノ規定ニ違反シタルモノハ千圓以下ノ罰金」トナッテ居リマス
ノヲ「五百圓」ト修正ヲ致シマシタ、次ハ第三十九條是ハ「三百圓以下ノ罰金」「一免
許ヲ受ケズシテ他ニ讓リ渡スノ目的ヲ以テ蠶種ヲ製造シタル者、二、免許ヲ受ケズシテ
蠶種冷藏ノ業ヲナシタル者、三、第四條第一項又ハ第六條ノ規定ニ違反シタル者、四、
第七條第八條第十六條第三項ノ規定ニ違反シタル者」之ヲ「五百圓ト原案ハナッテ
居ルノヲ「三百圓」ト修正致シマシタ第四十條「左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三百圓
以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス、一第九條又ハ第十條ノ規定ニ違反シタルモノ二、第
十六條第一項ノ規定ニ違反シタル者」是ハ「二百圓以下」ト修正ヲ致シマシタ、デ是ハ
三十條、三十九條、四十條、モウ一箇條四十二條ニモ渉ッテ居リマスガ「千圓乃至五
百圓三百圓」ハ高キニ失スル、此罰金ガ高イカラト云ッテ此蠶業上ノ弊風ヲ總テ矯正ス
ルコトガ出來ルト云フ譯デハアリマセヌカラ、千圓ノモノヲ五百圓、總テモノヽ權衡ヲ取リマ
シテ、斯ヤウニ減ジタノデアリマス、ソレカラ第四十二條「第三十五條ノ規定ニ依ル職務ノ
執行ヲ拒ミ若ハ妨ケタル者又ハ臨檢ノ際當該官吏吏員ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ
虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス」トアルノデアリマス、是ハ
此ノ檢査ノ際「當該吏員ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サス」トアルヲ若ハ虛偽ノ陳述ヲ爲シタル
者」ト云フノヲ削リマシテ「尋問ニ對シ答辯ヲ爲サヽル者ハ二百圓以下ノ罰金又ハ科料
ニ處ス」ト云フコトニ修正致シマシタ、是デ本條ノ方ハ悉ク修正ハ濟ミマシタ、附則ノ方
ニ於キマシテ第五十二條ノ「本法施行ノ際蠶種ノ冷藏ヲ業トスル者ハ命令ノ定ムル期
間內免許ヲ受ケスシテ其ノ營業ヲ繼續スルコトヲ得」トアリマスノヲ「命令ノ定ムル期間
內」ト云フヲ削除致シマシテ「本法施行後一年ヲ限リ」ト修正致シタ、)是ガ此修正ノ
箇條ノ大要デゴザイマス、然ルニ此大體ハ政府ハ全然同意ヲ致サレマシテ、委員會ハ
大多數ヲ以テ之ヲ可決致シマシタノデアリマス、然ルニ此部分ニ付キマシテ久保田與
四郞君外四君カラ少數意見ノ發表ガアリマシテ、其內ノ第二十七條ノ「蠶種檢査ニ
關スル手數料ハ府縣ノ負擔トス」トノ修正說ガ出マシタ、ソレカラ第三十八條中「千
圓」ノ罰金ヲ「三百圓」ニ、三十九條ノ「五百圓」ヲ「二百圓」ニ、四十條及四十二條
中ノ「三百圓」ヲ「百圓」ニ改ムルト云フ少數意見ガ出テ居リマス、ソレカラ其他ニ
御報告致スベキコトハ蠶絲業ニ對シマシテ低利資金ヲ融通致シタイト云フノハ委員會
全體ノ決議ニ依リマシテ、桂大藏大臣竝ニ大浦農商務大臣ニ委員長理事等ハ交涉ヲ
致シマシタトコロ、內閣ニ於キマシテハ旣ニ勸業銀行竝ニ農工銀行ノ法律案モ出テ居ル折
柄デゴザイマスカラ、成ルベクハ此蠶絲業者ニ對シマシテハ、低利資金ノ融通ヲ計リタイ
ト云フノハ御同感デアルト云フコトデアリマス幸ニ今日ハ兩大臣トモ御見エニナッテ居リ
マスカラ、此〓ニ付テハ私ガ報告スルヨリモ、寧ロ兩大臣カラ御辯明ヲ願フ方ガ宜カラ
ウト思ヒマス此蠶絲業ノ資金ニ對シマシテハ旣ニ正金銀行ニ二千万圓二朱ノ利息ヲ
以テ國庫ハ別ニ融通ヲシテ居リマスガ、其金ハ實際ノ蠶絲業地ノ方ヘハ參リマセヌデ、
橫濱ノ貿易商、生絲業者ガ融通ヲシテ居ルニ過ギナイノデアリマス、實際ノ養蠶地方ノ
例ヘバ養蠶ヲナシ絲ヲ操ル者又繭ノ賣買ヲスルト云フ方ニハ均霑ヲ致シテ居リマセヌ
ノデアリマス、此低利資金ノ方法モ僅ニ五百万圓デアルサウデアリマスガ、トテモ此二億
カラノ蠶絲業ノ資金ニ五百万圓バカリデハトテモドコニモ足リマセヌケレドモ併ナガラ之
ガ低利資金ヲ融通スルト云フ一ノ端〓ヲ啓キマスコトハ、蠶業ノタメニ、國家ノタメニ、喜ブ
ベキコトデアルト思フノデアリマス、ソレカラ次ニ此法案ノ施行ニ付キマシテ委員會ガ政府
ニ警告致シタコトガ、二三ゴザイマス、是ハ桑苗ノ改良カ桑園ノ整理デアリマス、一體原
蠶種製造所ヲ設置スルト同時ニ、斯樣ナル蠶病豫防法ヲ勵行スルト共ニヤラナケレバナ
ラヌコトハ桑苗ノ改良デアリマス、桑苗ノ改良ヲセズ、桑園ノ整理ヲセズニ、片輪ノ奬
勵バカリシタトコロガ、一向日本ノ生命タルトコロノ日本ノ大產業タルトコロノ蠶絲業ノ
發展ハ期スベキモノデナイ、現ニ昨年伊太利ノ「ハイニイ」ト云フ人ハ伊太利ノ總理大
臣「ルサッチ」氏ノ使命ヲ帶ビテ來ッテ一昨年調査シタ報告ニ依リマスレバ日本ノ蠶業ハ
桑ヲ虐使スル故ニ、到底我國ノ競爭地トシテハ恐ルヽニ足ラヌト云フコトヲ報告サレテ居
ル、誠ニ此法律ヲ拵ヘ、サウシテ之ニ伴フトコロノ蠶病豫防法及消毒ノ方法ヲ勵行スル
ト同時ニ桑苗ヲ改良シ、桑園ノ整理ヲ急ニシナケレバ、我國ノ蠶業ト云フモノハ兩々相對
シテ進ンデ行クコトハムヅカシイノデアリマス、御承知ノ如ク我邦ノ桑園ハ今日ニ於テ既
ニ四十三万町步デアリマスケレドモ、之ヲ整理致シマシテ桑苗ノ改良ヲ致シマスレバ少
クモ現在ノ桑ニ於キマシテモ、其五割ノ增收ヲ見ル、又其上ニ桑園ヲ擴メマスレバ、之
ニ倍加スルダケノ桑園ハ擴ガリマス、殊ニ臺灣ノ如キハ支那ノ廣東地方ト同樣デアリマ
シテ、一年ニ七囘ノ養蠶ヲナスコトガ出來ルノデアリマス、殊ニ此上簇ノ時期ノ如キハ內
地ハ三十日以上掛リマスガ、十七日間デ上簇スル、桑ノ如キモ、天然ノ氣候ニ依ッテ進
ンデ行ク、デ臺灣ニ於キマシテ、今後大ニ日本ノ國產トシテ見込アルモノハ私ハ養蠶デアラウ
ト思ヒマス、此方針ヲ以チマシテ此委員會ハ桑苗ノ改良、桑園ノ整理ト云フコトヲ忽セニス
ベカラザルコトヲ警告致シマシテ希望シテ置イタノデアリマス、次ニ此法律ニハゴザイマセヌ
ガ、法律ノ外ニ同業組合法ノ施設ガナイノデゴザイマスガ、產業組合ヲ奬勵致シマシテサ
ウシテ町村ニ於テ蠶種ノ共同購入、肥料ノ共同購入、ソレカラ生繭-出來タ繭ノ共
同販賣ト云フ此途ヲ付ケルト云フコトハ卽チ繭質ヲ統一シ、又此生絲ノ統一ヲ計ルト
云フ上ニ於テ、最モ必要ノ要項デアルノデアリマス、其他ニ町村ニ於キマシテ稚蠶ノ共同
飼育、小サイ中ニ共同飼育ヲ致シマシテ、此經驗熟練アル者ガ稚イトキノ極ク掃イ
タバカリノ蠶ヲ共同飼育スルト云フ方法ハ共ニヤルベキコトデアルト委員會ハ警告致シタ
ノデアリマス、次ニ蠶病豫防施行法竝ニ蠶種檢査施行ニ關シマシテ、是マデハ往々此蠶
病豫防法ヲ施行スル役人等ハ其法律ノ精神ノアルトコロヲ忘レマシテ、實際養蠶家ニ臨
ムニ苛酷橫暴ヲ極メテ、往々不正ノ行爲ヲ働イタ事實ガ澤山アルノデアリマス、是等ニ付
キマシテハ此法律ヲ施行スルト共ニ主務大臣ハ責任ヲ以テ當業者ヲ虐待シナイヤウニ、
虐ゲナイヤウニシテ貫ヒタイ、又蠶種ノ檢査方法ニ付キマシテハ顯微鏡デ見テ唯無毒
デアルカラト云フバカリデナク、肉眼ノ試驗モ必要デアル實際ノ試驗モ必要デアル是
等ハ千篇一律ノ書イタモノヽ通リ書イタ條項ニ當箝メルト云フダケデハ實際ヤレナイノデ
アリマスカラ、蠶病豫防法ノ施行ニ付テモ、蠶種檢査ノ施行ニ付テモ、十分ナル注意ト
忠實ヲ拂シテサウシテ養蠶家ニ臨ムニ親切ニ、サウシテ國家ノ產業ヲ舉ゲルコトニ忠實ニ
シテ貫ヒタイト云フコトハカ此本案委員會ノ警告希望デアッタノデアリマス、大要ハ委員
會ハ此ノ如クニシテ濟ミマシタノデアリマス、而シテ此修正案ニ同意ヲセラレマシタノハ、我
政友會竝ニ中央倶樂部、無所屬デアリマス又少數意見トシテー甚ダ申シテハ恐入
リマスガ「蠶種檢査ニ關スル手數料ハ府縣ノ負擔トス」ト云フ少數意見ヲ出シタノハ進
步黨ノ諸君デアリマス、此段御報告ニ及ビマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=96
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097・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數者意見-久保田與四郞君-中島祐八君
〔中島祐八君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=97
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098・中島祐八
○中島祐八君 私ハ少數者ノ意見ヲ簡單ニ陳述致シマス、吾〓少數者ハ第二十
七條、竝ニ三十八條以下ノ罰金ニ付テ少數ノ意見ヲ提出シテアリマス此二十七條
ノ修正ノ趣意ハ單ニ蠶絲業家ヲ保護スルト云フ意味デハナイノデアリマス、是ハ委員會ニ
於テモ申述ベマシテゴザイマスガ、蠶種檢査ト云フコトハ强制的ニスルコトデアッテ、國家
ノ事業デアルノデアル、其國家的人事業ニ向ッテ檢査ノ手數料ヲ當業者カラ徵收スルト
云フコトハ甚ダ不當ノコトデアルト考ヘルノデアルノミナラズ、手數料ヲ拂ッテ檢査ヲ受
ケテ、其蠶種ガ檢査ニ合格シマセヌトキニハ燒棄サレルノデアル、是ハ蠶病豫防ノ手段ト
シテハ已ムコトヲ得ナイコトデアリマスケレドモ、隨分酸烈ナルコトヽ云ハナケレバナラヌ、尙
ソレノミナラズ、先年此手數料ヲ止メマシテカラ段々枠製蠶種ト云フモノガ發達シテ來タ
ノデアル、ソレガタメニ病毒ノ減少シマシタコトハ是ハ申スマデモナイコトデアリマスガ、然ル
ニ今又此手數料ヲ取ルコトニシマスト、或ハ此枠製蠶種ノ製造ト云フモノガ漸次減ル方
ノ傾ニナリハシナイカト思フ、ソレガタメニ却テ蠶種ノ病毒ヲ增スト云フ結果ヲ來スコトニ
ナラウカト考ヘル、斯樣ナ次第デアリマスカラ一一十七條ハ卽チ蠶種檢査ノ手數料ハ府縣
デ負擔スルト云フコトガ、最モ相當ナコトデアラウト考ヘル又三十八條ノ罰金ニ付キマ
シテハ是ハ頗ル苛酷ナ制裁デアルト考ヘル、元來蠶絲家ト云フモノハ信用ヲ得ルコトニ
努ムルト同時ニ、自分ノ名譽ト云フコトモ亦重ンズルモノデアリマス、故ニ僅ノ罰金デモ
其罰金ヲ取ラレタト云フコトニナルト、非常ニ不面目ニ考ヘルノデアル、斯樣ニ原案ノ如
クニ苛重ナ罰金ヲ科シテ、是デ蠶業ガ發達スルトハ決シテ言ハレナイ、故ニ私共ハ現今
ノ蠶病豫防法ニ規定サレテアル通リニ、千圓トアルノヲ一一百圓ニ、五百圓トアノルヲ二百
圓ニ、三百圓トアルノヲ百圓ニ、斯樣ニ修正ヲシタイト考ヘルノデアリマス、勿論此原案
ノ罰金刑ハ範圍ガ廣クナッテ居ルカラ、如何樣ニモ斟酌ガ加ヘラレルト言ハレルカ知リマ
セヌケレドモ、併シ罰金ノ極度が高ケレバ勢ヒ多クノ罰金ヲ科セラレルト云フコトハ近項
ノ裁判ノ趨勢デアリマスカラ是ハ相當ノ範圍ニ引直スコトガ適當デアラウト考ヘル斯
樣ナ趣旨ヲ以チマシテ此修正ノ意見ヲ提出シタ次第デアリマスカラ、ドウゾ滿場諸君ノ
御贊成ヲ願ヒマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=98
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099・菅原傳
○菅原傳君 直ニ二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=99
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100・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直ニ二讀會ヲ開クト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=100
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101・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ直ニ二讀曾ヲ開クコトニ決シマス、先ヅ議
案全部ヲ議題ニ供シマス
蠶絲業法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=101
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102・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數意見ニ贊成ノ諸君ガアリマスカ
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=102
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103・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 定規ノ贊成ガアルト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=103
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104・高木正年
○高木正年君 此際私ガ修正案ヲ出シテ置キマシタカラ便宜上此際申シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=104
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105・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) チヨット御待チナサイ、コチラカラ申シマス、高木正年君ノ修
正動議ハ三十五條ニ付テノ修正デアリマスカラ、此三十五條ノ場合ニ發言ヲ許シマ
ス、-第一條ヨリ第二十六條マデハ委員會ノ修正ハアリマスガ、別ニ反對贊成ノ通
告モアリマセヌ、ソレデ先ヅ第一條ヨリ第二十六條マデヲ採決シヤウト思ヒマス委員長
ノ修正報告ニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=105
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106・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ第一條ヨリ二十六條マデハ委員長ノ報告
通リニ決定致シマス、第二十七條少數者ノ意見「府縣ハ命令ノ定ムル所ニヨリ蠶種檢
査ニ關シテ手數料ヲ徵收スヘシ」トアルノヲ、少數者ノ意見トシテ「蠶種檢査ニ關スル手數
料ハ府縣ノ負擔トス」之ニ付テ採決ヲ致シマス、卽チ少數者ノ意見ニ贊成ノ諸君ハ起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=106
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107・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數、原案ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=107
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108・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 原案ニ御異議ナイト認メマスカラ原案ニ決シマス、二十八
條ヨリ三十四條マデハ修正モナク、又反對贊成ノ通告モアリマセヌ、原案ニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=108
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109・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、二十八條ヨリ三十四條マデハ
原案ニ決シマス、第三十五條、高木正年君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=109
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110・高木正年
○高木正年君 簡單デスカラ此席カラ述ベマス、私ノ修正バカリデナク、中島君ガ唯今
敷衍セラレタ少數意見ノ三十八三十九、四十二、ト此條ニ付テモ少數意見ヲ贊成
スル理由ヲ序ニ敷衍致シマス、私ガ三十五條ノ末項ノ臨檢以下「間接國稅反則者處
分法ヲ準用ス」トアル、之ヲ削リタイ、ト申シマス理由ハ元來此三十五條ハ委員會デ修
正ニナッテ居リマスノデ、所謂蠶絲ヲ蠶ノ種ト改メタノハ頗ル宜シイ修正デアル、然レドモ
尙此三十五條ヲ委員會ノ通告通リ存シテ置キマスト、此差押ヲシマストコロノ當該官
吏、若クハ吏員ト云フモノハ間接國稅犯則者處分法ヲ引用スルマデ手ヒドク之ヲヤラズト
モ、取締ハ付クト斯樣ニ考ヘタヽメニ此文字ダケヲ削除シタイト思フノデアリマス、私ハ先
刻申上ゲマシタ通リ少數意見ノ罰金ヲ少クスルヨリ少クスル、委員長ノ「千圓」ヲ「五百
圓」「五百圓」ヲ「三百圓」、「三百圓」ヲ「二百圓」、トシタノモ、頗ル減額ガ多イノデス、
面モ尙之ヲ減ラシタイト云フノハドウ云フ譯デアルカト云フト、蠶種統一ヲシテ絲ヲ改良
スルト云フコトニ付テハ恐ク天下一人ノ反對者モナイ、此事ハ誠ニ結構デアリマスルガ、
當局ガ此蠶種統一ヲ爲シ、絲ヲ改良スルト云フコトニ付テハ、今日マダ十分準備ガ出
來テ居ラヌノデアリマス、一方ニ於テハ十分準備ガ出來テ居ラヌ、唯此際ドウ云フコトガ
最モ當局ノ手腕ヲ揮ハルヽ土臺ニナッテ居ルカト云ヘバ、取締ノ方ハ其事業ノ進步シナ
イ其反比例ニ、非常ナ酷ト云ハンカ何ト一云ハンカ知ラヌケレドモ、非常ナ重イ規定デ取
締ヲスル、蠶業ハ實ニ大事ナ我邦ノ唯一ノ事業デアリマス若シ一朝取締ノ上ニ其度ヲ失
シタトキニハドウデアリマスカ、啻ニ「千圓」ヲ「五百圓」、「五百圓」ヲ「三百圓」、「三百
圓」ヲ「二百圓」ニシタダケデ是デ宜イト云フコトハ出來ナイノデアリマス、成ルベク先ヅ今
日ノ程度ニ於テ輕クシテ置イテ、若シソレデモ尙弊害アリト云フ其時ニ法律ヲ改正ス
ルモ少シモ差支ナイノデアリマス、此〓ニ於テ少數意見ヲ贊成致シテ居リマス、三十五條
ノ修正ハ委員長ノ言ハレタ「糸」ヲ種ト變ヘラレタノハ頗ル宜イノデアリマス、併ナガラ間
接國稅ノ犯則者處分法ヲ準用セズトモ此法文デ取締ガ出來ルノデアル搜索モ出來
ル、尋問モ出來ル、臨檢モ出來ル、總テガ出來ルノデアル、尙是ニ向ッテ彼ノ間接國稅犯
則者處分法ヲ以テ是等ノモノヲ犯則者ナリト云フ頭ヲ以テ取締ルト云フコトハ頗ル業
務ノタメニ將來ノ發展ヲ止ムベキコトヽ思ヒマス、私ハ徒ニ之ヲ言フノデハナイ織物稅ガ
常ニ惡稅ナリト云フノハ、稅務吏ガ取締ノ上ニ殘酷ナル手段ヲ爲スト云フコトガ、卽チ織
物稅ノ今日惡稅タル所以デアリマス、蠶種ノ取締モ其極度ニ達スレバ竟ニ大事ナ我國
ノ蠶業ヲ萎靡セシムルコトニナルノデアリマス、此〓ニ於テハ私ハ此修正ヲ致シ、且少數
意見ヲ贊成スルモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=110
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111・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 採決ヲ致シマス、高木君ノ「臨檢、尋問、搜索、又ハ差押ニ
關シテハ間接國稅犯則者處分法ヲ準用ス」之ヲ削除スルト云フコトニ同意ノ諸君ハ起
立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=111
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112・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數、消滅-委員長ノ報告ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=112
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113・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ委員長ノ報告通リ決定致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=113
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114・菅原傳
○菅原傳君 日程ノ二十二ハ了ヘタ譯デアリマスカ、三讀會ニマグ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=114
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115・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) マダ〓〓-三十六條、三十七條ニハ修正モ反對ノ意見
モアリマセヌガ、原案ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=115
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116・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ三十六條、三十七條ハ原案ニ決シマス、三
十八條以下ニ少數者ノ意見ガアリマス、卽チ三十八條ハ「左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス」ト云フノヲ委員長ノ報告ハ「五百圓」ト修正スル之ヲ少數
者意見ハ「三百圓以下」ト修正スル、三十九條ハ「左ノ各號ノ一ニ該當スルモノハ五百
圓以下ノ罰金ニ處ス」ト云フノヲ委員長ノ報告ガ「三百圓」少數者ノ意見ハ「二百圓」
斯ウナッテ居リマスヽソレカラ四十條ニ同ジク「三百圓以下ノ罰金」トアルヲ委員長ノ報
告ハ「二百圓以下ノ罰金」少數者ノ意見ハ「百圓以下ノ罰金」斯ウ云フコトニナッテ居
リマス、四十一條ニハ修正ガアリマセヌ、四十二條ハ「當該官吏、吏員ノ尋問ニ對シ答
辯ヲ爲サヽル者ハ三百圓以下ノ罰金」ト委員長ノ報告ガナッテ居リマス少數者ノ意見ハ
爲サヽル者ハ百圓以下ノ罰金」斯ウナッテ居リマス、一括シテ是ハ採決シヤウト思ヒマス
ガ、御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=116
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117・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ一括シテ採決致シマス、卽チ少數者ノ意
見ニ賛成ノ諸君ハ起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=117
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118・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數、消滅-委員長ノ報告ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=118
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119・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ委員長報告通リ決シマス、四十三條ヨリ
五十二條マデ委員長ノ報告ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=119
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120・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ委員長ノ報告通リ決定致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=120
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121・菅原傳
○菅原傳君 直ニ三讀會ヲ開キ、二讀會決定ノ通リ確定セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=121
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122・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直ニ三讀會ヲ開クコトニ御異議ハアリマセヌカ
G異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=122
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123・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、直ニ三讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ニ供シマス
蠶絲業法案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=123
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124・武藤金吉
○武藤金吉君 此際桂大藏大臣ニ蠶絲業者低利資金融通ニ關スル御所見ノ言明
ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=124
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125・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=125
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126・桂太郎
○大藏大臣(侯爵桂太郞君) 唯今武藤君ヨリ本官ニ言明ノ御請求ガアリマシタガ、
蠶絲業ニ關スル既設ノ產業組合ハ勿論將來一層蠶業ニ關スル產業組合ノ增置ヲ
奬剛ヲ致シマシテ、是ニ對シテ成ルベク多額ノ低利資金ヲ融通ヲシテ、蠶業ニ關スルト
コロノ金融ヲ緩漫ニ致ス考デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=126
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127・翠川鐵三
○翠川鐵三君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=127
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128・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 翠川君ハモウ三讀會ニ付シタノデゴザイマスガ何カ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=128
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129・翠川鐵三
○翠川鐵三君 幸ニ大藏大臣ガ御出席ニナッテ居リマスカラ、此法案ニ付テ大藏大
臣ノ御所見ヲ言明ヲ顧ヒタイ一廉ガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=129
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130・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 翠川君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=130
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131・翠川鐵三
○翠川鐵三君 此蠶絲業法案ノ第二十六條ノ但書ニ付テ「國庫ハ其半額以內ヲ補
助スルコトヲ得」ト修正ニナリマシタガ、今日マデ國庫ノ補助致シマシタ金額ハ僅ニ十万
圓ヅヽ每年補助サレテ居リマス、今後益く此豫防費用ノ嵩マリマスコトハ申スマデモナイ
コトデアリマスルガ、今後現在ノ補助金額ヨリ以上ニ國庫ガ十分ナル此豫防費ニ向ッテ
補助セラレンコトヲ望ムコトハ曩キニ委員會ニ於テモ當局大臣ニ望ンデ置キタノデゴザイ
マスルガ、今後此補助ニ對スル大藏大臣ノ御所見ハ如何デアリマスカ、此機ヲ利用致
シテ幸ヒニ御辯明ヲ得タイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=131
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132・桂太郎
○大藏大臣(侯爵桂太郞君) 只今翠川君ヨリ御質問ニ對シテ御答ヲ致シマス、政
府ハ只今ノ御質問ノ點ニ付キマシテハ諸君ノ御希望ノ如ク財政ノ都合ニ依リマシテ、是
ガ按排ノ必要ガゴザイマスカラ今玆ニ補助額ガ若干デアルト云フコトノ御確答ヲ致スコト
ハ致シ兼ネマス、ナレドモ成ルベク政府ハ財政ヲ按排致シマシテ、御希望ノ通リニ致サウ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、此段御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=132
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133・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ御異議ガナイト認メマスカラ二讀會ニ於テ決定ノ通リ
本案ハ是ニテ確定致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=133
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134・菅原傳
○菅原傳君 此場合日程ヲ變更シテ、曩ニ延期致シマシタル朝鮮事業公債法案外
二件ヲ院議ニ付セラレンコトノ動議ヲ起シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=134
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135・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=135
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136・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ日程ノ第十七、十八、十九ヲ
此場合ニ議題ト致シマス、卽チ日程第十七、朝鮮事業公債法案、日程第十八、朝
鮮事業公債金特別會計法案、日程第十九、朝鮮鐵道用品資金會計法案、此三案
ヲ一括シテ議題トナシ、第一讀會ノ續ヲ開キマス-特別委員長板倉中君
第十七朝鮮事業公債法案(政府提出)第一讀會ノ續愛滋味
報〓
第十八朝鮮事業公債金特別會計法案(政第一讀會ノ續委員長〇
府提出)報告
第十九朝鮮鐵道用品資金會計法案(政府第一讀會ノ續委員長
提出)報告
〔板倉中君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=136
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137・板倉中
○板倉中君 此朝鮮事業公債法案デゴザイマスルガ、本案ハ朝鮮ノ築港、鐵道道路
等ノ修繕ニ要シマスル資金ヲ公債ニ依リ、又ハ借入金ヲ以テ支辨スルコト、及從來是
等ノ事業ニ要スル朝鮮政府ノ負擔ニ歸シテアリマシタトコロノ債務モ同樣ニ公債又ハ借
入金ヲ以テ整理若クハ償還セントスル法案デゴザイマス、其必要ナル理由ヲ精細調査致
シマシタトコロガ、、總計五千五百七十三万千六百六十九圓ト云フモノデゴザイマス是
ハ卽チ本案ノ第三項ニゴザイマスル公債借入金ニ要スルモノデゴザイマス、卽チ五千五百七
十三万圓、殆ド五千六百万圓デアリマスカラ、第三項ニ於テ公債借入金ノ額ヲ五千
六百万圓ト定メタ譯デアリマスソレカラ第二項ニアリマストコロノモノ、卽チ從來負擔シ
タルトコロノ債務、及本邦デ借入レタルトコロノ金額ヲ整理若クハ償還スルタメニ同ク借
入レルコトノ法案デゴザイマスガ、是ハ豫メ額ハ定マリマセヌガ、從來負擔シタルトコロノ
モノガ、千九百八万圓デゴザイマス、ソレト本法ニ於テ新タニ借入レマシタルモノヲ整理、
若クハ償還スル必要ノタメニ第二項ニ依リマシテ公債若クハ借入ヲ致ス案デゴザイマス、
要スルニ此事業ハ已ムベカラザル必要ノモノト認メマシタ、故ニ之ヲ大體ニ於テハ可決ス
ルコトニ相成リマシテゴザイマスガ、唯借入金ノ方ニ於キマシテ三年以內ト云フコトニ
期限ヲ付シテアルニ拘ラズ公債ノ償還期限ガナイノヲ全カラザルモノト信ジマシテ、委員
會ハ第一項ノ「事業費支辨ノ爲ニ政府ハ」ノ下ニ「五十五年以內ノ期限ヲ以テ」ト云フ
トコロノ追加挿入ヲ致スコトニ決定致シマシタ、他ハ本案ヲ可決致スコトニ相成リマシタ
ノデアリマス、而シテ朝鮮ニ於ケル事業ノ詳細ヲ總テ質問精査ヲ遂ゲマシテゴザイマス
ルガ、是ハ速記錄ニ詳シクゴザイマスル、故ニ之ニ讓ッテ改メテ報道致シマセヌ、ドウカ
御可決アランコトヲ希望致シマス、第二ノ朝鮮事業公債金特別會計法案デゴザイマス、
是ハ旣ニ朝鮮ニ於ケル事業公債法案ヲ可決致シマシタ結果ト致シマシテハ、此處理
ニ付テ必要已ムベカラザルモノト信ジマス、故ニ委員會ハ本案全體ヲ可決致シマシテゴザ
イマス、第三ハ朝鮮鐵道用品資金會計法案デゴザイマス、是ハ從來本國ノ鐵道用品
資金會計法ヲ用井テ居リマシタノデゴザイマスガ、凡テノ鐵道ニ關スル會計ガ統監府ノ
特別會計ニ包含セラルヽコトニ相成リマシタ故ニ、均シク鐵道用品資金會計ト云フモ
ノガ四十三年度限リ消滅スルコトニ相成リマシタ故ニ、四十四年度カラハ卽チ鐵道ノ
事業ヲ行ウテ行クタメニ必要デアルカラ本案ヲ提出サレタ次第デアリマス、是亦必要ナル
法案トシテ委員會ハ可決スルコトニ相成リマシタ、唯其「第八條ノ一般ノ需用ニ應ジ
機械其他ノ物件ヲ製作、修理ヲナスコトヲ得ル」ト云フ箇條ニ付キマシテハ委員會ハ多
少ノ疑ガアリマシテ取質シマシタガ、是ハ卽チ政府ノ方ニ於テハ餘リ望マナイトコロノモ
ノ寧ロ迷惑ナル箇條デアルケレドモ朝鮮ニ於テハ折〓仁川等ニ於テ、或ハ船ガ破損シ
タトカ、若クハ碇綱等ガ切レタト云フヤウナ場合ニ於テモ、民間ノ是ニ應ズル事業家ガアリ
マセヌ、修理ヲナスベキ場所ガアリマセヌ、故ニ四十一年度ヨリ單行法ヲ發シテ以テ此民
間ノ需用ニ應ズルコトニナッテ居リマシタノデアリマス、ソレヲ此度法案ニ纏メマシテ、卽チ
第八條ニ此一項ヲ加ヘテ以テ民間ノ不時ノ需用ニ應ズルコトニ致シタイト云フ次第デ
アッテ、是亦必要ナルコトニ信ジテ本案全體ヲ可決スベキモノト致シマシタ次第デゴザイマ
ス、此段御報告ニ及ビマス、朝鮮鐵道用品資金會計法案モ、是亦全體ニ於テ必要ナル
モノト認メマシテ、可決スベキモノト致シマシタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=137
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138・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 朝鮮事業公債法案及朝鮮事業公債金特別會計法案ニ
反對ノ通告ガアリマス、鈴木力君
〔鈴木力君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=138
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139・鈴木力
○鈴木力君 私ハ唯今委員長ノ報告ノ朝鮮事業公債法案竝ニ朝鮮事業公債金特
別法案、此二箇ニ反對ノタメニ立チマスルガ、實ハ委員會ニ於キマシテ發言ノ機會ヲ失
ヒマシテ、甚ダ遺憾ニ存ジテ居リマスルガ、又我所屬團體モ此案ニ對シテハ贊成ノ方ニ
ナッテ居リマス、私ハ特ニ除外例ヲ要求シテ出マシタノデゴザイマシテ、サナキダニ少數黨ノ
中ノ最モ少數黨ノ單位トナッテ現ハレタル次第デゴザイマスガ、併シ頗ル重大問題ト考ヘ
テ、斯ル時旣ニ迫リタルニモ拘ラズ、且單位ヲ以テ立ツ以上ニハ旣ニ時間モ迫リマシタケ
レドモ願クハ十分御聽取アランコトヲ先ヅ祈ル次第デアリマス、私ノ反對ノ大綱ハ財政
計畫ノ大本ヨリシテ財政ノ基礎ヲ鞏ウスルタメニハ、此朝鮮事業公債ト云フモノヲ五千
六百万圓ト云フ額ヲ大束ニ玆ニ輙ク募ルコトヲ許スト云フコトガ宜シクナイ、、卽チ財政計
畫ノ點ヨリ第一反對シマス、第二〓ハ朝鮮總督ノ權力過大ナリ、殆ド第二ノ朝鮮國
王、新國王ノ如キ權利ヲ有シテ居ル此事實ニ照シマシテ、斯ル際ニ尙之ニ與フルニ既
ニ名ヲ以テシ、器ヲ以テシ、尙之ニ假スニ無限ノ財本ヲ以テシタルトキニ於テハ、此議會
ノ財政ニ關スル監督權ナルモノハ事實上ニ於テ縮メラレテ、卽チ法理上ノ憲法違反ハ既
ニ多數黨ノ諸君ニ於テ之ヲ御責メニナルト云フコトヲ聞キマシテ滿足致シテ居リマスルガ、
此有樣デ朝鮮總督ヲシテ此上ノ權力及財力ヲ握ラシテ、自由行使ニ委シタトキニ於テ
ハ、法理上ニアラズシテ實際上ノ憲法侵害乃至協贊權迫害ヲ結果スルト云フコトヲ一番
恐レルノデアリマス、第三點ニ於キマシテハ殖民地經營ノ方針ガ確ニ立ッテ居ラヌコトヲ憾
ミマシテ、殖民地經營トシテ先ヅ臺灣ト朝鮮トノ事業ノ緩急財源ノ有無ヲ計ッテ、彼
此ノ長短緩急宜シキヲ得セシメテ、臺灣ニ餘アレバ之ヲ朝鮮ノ事業經營費ニ投ジタイ、
大綱ハ右三〓デアル此第三番目ノ點ニ於キマシテハ所謂大勢既ニ此ノ如シト云ヘバ、
十ノモノヲ十五ニシテモ盲從スルトコロノ政府デゴザイマスカラ、餘程敬意ヲ拂ッテ御聽
キニナッタラウト思フコトガアル、ソレハ政友會ニ於ケル財政上ノ豫算等ニ對シテハ一隻
眼恐ク兩眼モアルトコロノ井上角五郞君ガ、過般委員會ニ於テ此臺灣ノ經費ニ付
テハ頗ル過大ナルトコロヲ認ム、之ハ能ク節減スレバ一千万圓位ノ削減ハアルデアラウト
云フ見込デアル、次ニ特別會計ノ濫發ニ驚ク、三十九ノ特別會計ヲ以テシテ、此財政上
ノ大部分ヲ殆ド唯款アッテ項目ナキトコロノ細目ニ涉ッテ、議會ガ論議スルコトノ出來ナ
イヤウナル此特別會計ガ三十九モアッテハ、甚ダ遺憾デアル因テ政府ハ將來之ヲ本會
計ニ繰入ルヤウ-一般會計ニ繰入ルヤウニスルコトヲ望ムト云フ意味ヲ井上君ガ言
ハレタ、是ハ私至極同感デアッテ、如何ニモ豫算ヲ審議スル程ノモノハ斯ル〓ニ著眼シテ、
サウシテ實際ノ急所ヲ突イテ政府ヲシテ其弊ヲ改メシメルト云フコトガ肝要デアル、蔭ナガ
ラ敬服シ且欣ンデ居ッタノデアリマス、斯ル次第デアリマスルカラ我輩今玆ニ論ズルトコロノ點
モ敢テ少數黨中ノ少數ナルガ故ニト云ッテ桂サンアタリガ此座ヲ立ツガ如キハ、自ラ揣ラザ
ルノ至リノモノデアリマス、彼ノ大政黨ノ中ノ大部分ガ斯ル精神デアルト云フコトヲ顧ミ
タナラバ、焉ゾ知ンヤ他日宰相倉皇トシテ憫ミヲ大政黨ノ軍門ニ乞フヤウナコトガ出來
ルカモ知ラヌト思フ況ヤ我輩ノ聊不備ナルトコロノモノハ此朝鮮合併ノ第一年ノ議會、
而シテ朝鮮事業公債ト云フ巨額ナル經費ヲ要求スル席ニ總理大臣旣ニ去リ、更ニ朝
鮮總督ノ見エナイ如キニ至ッテハ是レ聊不親切デハナイカト私ハ憾ムノデゴザイマス、合 D
ヤ〓〓」ト呼フ者アリ)ソレ又可ナリ、大體諸君ニ朝鮮今日ノ現狀ノ〓念ヲ御定メア
ランコトヲ祈ルデス、今日ノ現狀ハドウ云フ風デアルカト云フト朝鮮ハ合併サレタニ相違
ナイケレドモ政治面財政面ノ有樣ト云フモノハ決シテ地圖ガ赤ク染メラレタ如クニ日本
ト同化シテ居ルコトハ無イデス、朝鮮ハ朝鮮デ、殆ド獨立王國獨立ナラ宜イケレドモ
其費用其入費ト云フモノハ我〓ノ母國國民ノ負擔ニ歸セシメテ、無限ノ財力ヲ要求ス
ルトコロノ厄介ナル獨立國デス、其事情ハ細目ニ涉ッテ後ニ申上ゲマスガ、寺內總督ナ
ル人ハ總督ニアラズシテ副王デス、是ハ西洋人ガ言ッテ居リマス「ガバナーゼネラル」デナク
テ「ヴイセロイ」デアル-副王デス、實際上ノ權力ガ全ク副王ト云ッテモ宜イ、日本ハ
朝鮮ヲ合併シタケレドモ、第二ノ國王ヲ今造ッテ居ル、曰ク制令權、曰ク總督府特別會
計曰ク陸海軍ノ統轄、曰ク朝鮮事業公債ノ獨斷專用、之ヲ悉ク許シタル曉ニ於テハ
實ニ寺內總督ナル人ハ立憲國ノ君主ヨリモ尙無檢束ナルトコロノ絕對至高ノ權力者デ
ハアリマスマイカ、朝鮮ノ經費ハ年額四千八百万圓而シテ一切ノ會計ハ會計法第六
條ノ制裁ヲ免レテ豫算ヲ提出スルニ當ッテ、項目ニ分ケテ微細ニ費途ヲ示シテ、サウシテ
議會ノ協賛ヲ經ルマデノコトナシニ、唯大ザッパニ、曰ク仁川築港三百八十幾万圓ナリ、
釜山築港三百四十幾万圓ナリ-釜山ト仁川ハ違ヒマシタ-ト云フヤウニ大頭ノ、
大ザッバノ金高ヲ書出シタダケデ、サウシテ後トノ使途ハ自由自在ニナルノデアリマスカラ、
其權力ハ財力ノアル處ハ卽チ權力ノ生ズル處、況ンヤ武權ハ陸海軍ヲモ統轄シテ居ルノ
デアル、ナカ〓〓以テエライ權力デゴザイマス、然ルニ今ノ人動モスレバ朝鮮ト云フ代物
ノ品物ノ好イコトハ申シマスルケレドモ、其品物ニ對スル代價ヲ吟味シタ人ハ少イヤ
ウデアル第一政府ハ朝鮮ト云フ品物ノ代價ヲ國民ニ對シテ知ラシメルコトハ殆ド嫌フカ
ノ如クアル其代價デ大層好イモノヲ取ッタ功名手柄顏ハ能クナサルヤウデアルケレドモ、
我國民ヲシテ今日如何ナル負擔ノ下ニ、如何ナル苦痛ノ下ニ、此朝鮮ヲ脊負ハナケレ
バナラヌカト云フコトヲ知ラシメルコト深切ナラズ、隨ッテ朝鮮ニ對スル觀念ヲ甚ダ粗末ニ
サセルヤウナ傾キガアル、ザット積リマセウ、朝鮮ノ代價ヲ積リマスルト三千万圓、恩典公債
一千九百幾十万圓、先刻委員長ノ報告ニアリマシタ通リ是ハ舊韓國政府ヘノ立替
金、ソレハ捧引デス、七百幾十万圓朝鮮ノ貨幣整理ノ補助金、ソレカラ一千二百三十
五万圓ト云フ年々ノ補充金、而シテ今又玆ニ事業公債法案ト云フ法案ニ依ッテ、大束
ニ頭カラ五千六百万圓ヲ摑マントスルトコロノ此法案デアリマス、合セテ約一億二千万
圓ト云フモノガ差詰眼前ニ見エルトコロノ朝鮮ノ代價デアリマス、ソレデ此事業公債法
案ト總豫算トハ不可分ノ性質ヲ持ッテ居ルモノデアル、既ニ總督府ノ經費トシテ協贊シタ
ルトコロノ鐵道建設竝ニ改良費八百五十万圓ノ如キハ此法案ガ通過セズンバ一半ハ
成立ッテ、一半ハ成立ヌコトニナルノデ、ナカ〓〓大切ナル是ハ法案デゴザイマス、然ルニ衆
議院ハ前ニ前者卽チ一般歲計豫算ヲ通過セシメタカラ、是モ勢ヒ此儘通ス外ナイノデゴザ
イマセウケレドモ併ナガラ此案ヲ若シ否決致シマシテモ、否決ノ理由ニ依リマシテハ又之
ヲ救フノ道ガアルト心得テ私ハ之ヲ主張スルモノデアリマス、其細目ニ亙リマシテハ第二段
ニ申上ゲマスルガ、尙一層朝鮮ノ現狀ニ對スル觀念ヲ深ク心ニ刻マレタナレバ、成程サウ
云フ風ナラバ是ハ餘リ容易ク見テハナラヌト云フ其强ミヲ與ヘルコトガ出來ルト考フ、尙
一層申上ゲマスルガ官僚政治ナドヽ云フ言葉ハ最早古イデス、今ヤ官僚政治ドコロヂヤ
ナイ、官僚政治ニ高度ノ馬力ヲ加ヘタトコロノ陸軍絕對主義ノ天下デアリマス、朝鮮ヲ
政權上ニ於テ母國ヨリ引離シテ、サウシテ形式ト權柄トノ一本槍ヲ以テ之ヲ治メント欲
スルトコロノ朝鮮總督萬能政治デアリマス、ソレハ單ニ漠然ト申上ゲル譯デハゴザイマセ
ヌ、朝鮮總督府ノ豫算ニ現ハレタモノニ於テ悉ク之ヲ證明スルコトガ出來マス、卽チ朝
鮮總督府ノ經費二百八十万圓、是ハ俸給、旅費、機密費等ノ一切ヲ籠メタモノデ、
ソレニ加フルニ地方廳費四百三十万圓、斯ウ計上サレテアル、之ヲザット見マシテモ朝
鮮ノ如キ茫々タル又人民ノ程度ノ低キ處ニ當ッテ、斯ク巨大ナル廳費竝ニ地方廳費ヲ使
フト云フコトハ、チヨット見テモ朝鮮ハ軍人或ハ官僚ノ樂園、キタナイ言葉デ申シマスレバ月
給取ノ掃溜カト思ハレルノデアル、而シテ之ヲ統治スルノ實力ハ何カト云フ唯一ノ「サーベ
西四八曰ク警務費二百八十五百圓、憲兵補助費百五万圓ナリ朝鮮部隊費-陸
軍省支出ノ分ハ此外デス朝鮮部隊費二十四万圓ナリ、合セテ四百三十万圓ト云フ
次第デス、其他ニ補助費ト云フモノガアル、卽チ拓殖會社ニ補助スル三十万圓、其他ノ
補助費合セテ百四十三万圓モアルノデス、日本ノ近狀トシテ過日窮民醫療恩賜金百
五十万圓ガ下ッタニ付テ、孰レモ恐懼措ク能ハザルコトハ私モ同感デゴザイマスルガ、大臣
大將ノ面々華族、貴族院、衆議院等ノ方ミハ此恩賜金ノ忝キコトニ恐懼スルコトヲ知ッ
テ、朝鮮總督府ハ此恩賜金以上ノ思典ヲ夙ニ朝鮮國民ニ下シ給ッテ居ル事實ヲ御見
遁シニナルノハ怪シカラヌデス、朝鮮總督府ハ慈惠醫院費三十五万圓ト云フモノヽ年額
ヲ計上シテ居リマス、此經常歲出慈惠醫院ノ三十五万圓ト云フモノハ桂大藏大臣ノ
理想トスルトコロノ年利子三朱五厘ニ合セマスルト-其利率ヲ以テスルト一千万圓
ノ金高ニ該當スルノデアリマス、而シテ是ハ朝鮮人民ノ窮民ノ醫療ノタメニスルトコロノ
慈惠醫院費テゴザイマス、之ヲ賜ハル總督ノ威光、其財力ノ大ナルコトハ推測ラレルデハ
ゴザイマセヌカ、然ルニ母國人民ハドウカト云フト無殘ナル哉、ヂリ〓〓貧乏ノ姿デ怨聲
ハ日ニ高マリ、善政ハ固ヨリ期スベカラズ、セメテ虐政暴政ヲダモ免レンカト沙上ニ喁語シ、
口耳相屬スル今日デアリマス然ルニ折角ノ聖旨ニ對ヘ奉ランニハ一千万圓ノ金ヲ支出
セニヤナラヌガ、サリトテハ今日ノ景氣、今日ノ懷合ニ於テ、申シテハ恐レ多イケレドモ、
實ニ樂デハナイト云フノガ實狀デアリマス、ソレト此ト對照シテ見マスルト、如何ニモ此對
照ガ奇拔デゴザイマセヌカ、顧レバ地方ノ自治團體ノ國稅徵收費ヲ五百万圓デスカ
知ラヌ、大政黨ノ諸君ガ五百万圓-否ナ五十万圓デセウ、僅ニ五十万圓バカリヲ
此財政計畫中ヨリセリ出サント欲シテ、非常ナ御盡力デアッタサウデス、而シテ政府ノ之ニ
應ズル所以ノモノハ常ニ逡巡、曖昧、曰ク財政窮乏、諸君ノ意ニ滿タザルコトヲ憾ムト云ッ
テ哀訴嘆願シテ居ルヤウナ始末ト承ハル、然ルニ斯ルウラ寂シキ母國人民ノ有樣ニ引替ヘ
テ對岸ノ朝鮮ハ此ノ如キ爀々タル仕事ヲシテ居ルノデス、此一事デ以テ總督ナルモノヽ權
柄ガ如何ニ大ナルニ過グルカト云フコトハ、心象シ得ルト心得ルノデス、斯ウナリマスルト遺
憾千萬ナルノハ本年ノ總豫算ニ付テアラユル名士ガ一言ノ朝鮮合併ノ事實ガ如何ニ財
政ニ影響スルカ、、總督府ノ經費ナルモノハ總豫算ニ如何ナル關係ヲ持ツカト云フ〓ヲ著眼
〓ト爲シ論據ヲ此所ニ置イテ、此豫算ヲ審議シ、大經世ノ大論議ヲ試ミル人ノナカッタ
三·ハ私ハ聊カ寂莫ノ感ガアルノデス固ヨリ諸名士ハ政府ノ態度ガ所謂風旛風ヲ通サ
ズ、俗ニ言フトコロノ緩簾ニ腕押シデアルカラ、ソレニ呆レテ絕望ノ餘リニ斯ル〓ヨリシテ
巨細ニ論議スルコトハナカッタノデハゴザイマセウケレドモ、何レニセヨ斯ル有樣デ通過シテ來
マシテ、今又此事業公債金五千六百万圓ヲムザ〓〓通ストキニ於テハ、間接ニハ朝鮮
總督府ノ權力ノ過大ヲ是認シ、直接ニハ議會自ラガ監督權ヲ縮小スルコトヲ拒マナイ
늘結果ニナルノデス、諸君心シテ拜シ奉レ、李王家ノ經費ハ年額百五十万圓
デス、此百五十万圓ハ尊嚴ヲ保ツ上ニ付テ決シテ不足ハナカラウト拜シ奉ルノデス、然ル
ニ總督府ハ斯ル尊嚴ノ大ナル李王家ト對抗シ、其威嚴ヲ保チ形式ヲ保ツタメニハアラユ
ル權柄ト形式トヲ盛ンニシテ居ルノデス、卽チ李王家ノ御座ルトコロノ昌德宮以上ノ總
督官邸ヲ建テズンバ蟲ガ納マラナイ、人情ノ常トシテ澤山ナ入費ガ手ニアルト云フト從ツ
テ濫費或ハ驕奢ニ傾クト云フコトハ免レマセヌカラ、李王殿下如何ニ賢明ナリト雖モ、
左右ノ臣、侍御ノ輩ガ、或ハ濫費或ハ驕奢等ノ形跡ナシト云フコトハ出來ヌ、然ルニソ
レト對抗シテ世間ノ坊チヤンノ如キ調子デ金ヲ使ッタトキニハ何所マデ行キマスカ、誠ニ底
止スルトコロヲ知ラナイデアラウト思フ、事實ハ明白デス、且何ヨリ宜イ證據ニハ桂侯ノ
機關新聞タルトコロノ國民新聞ガ此事實ノ證據人トナッテ呉レマス、ソレハ先達國民
新聞ノ第一頁ニ朝鮮第一ノ大建築トシテ龍山ニ於ケルトコロノ總督官邸ヲ紹介シテ居
リマスガ、朝鮮ノ文化竝ニ生活程度ト云フコトヲ考ヘマシタナラバ、彼ノ大建築物ハ之ヲ古ノ
所謂阿房宮ニ比シテ宜カラウト思フ亞細亞式行列政治ト言ウテ宜イ、唯亞細亞式行
列政治ヲ以テ本領トシテ自ラ鮮民ニ臨ンデ快トスルヤウナル稚氣、其子供氣ヲ除カザル
限リハ政治ニ於ケルトコロノ事務ノ簡捷政治ヲ爲スコトノ經濟的ナルコト、或ハ文官ノ能
力ヲ相當ニ發揮スルコト等ハ斷ジテ期スコトハ出來マセヌ、文武兼行フト云フコトハ政治ノ
根柢デアッテ、我國モ三千年來文武二ツナガラ行ハレテ居フタケレドモ、歷史上ノ傳說或ハ
事實ヲ無視シテ今ヤ唯武卽チ無交ナルトコロノ政治ヲ朝鮮ニ布カント欲シテ居ルノデス、
故ニ斯ル稚氣幼稚ナル虛榮心等ヲ以テ經營シテ居ルカラ事實ニ現ハレテ來タトコロハド
ウカト云フト、豫算面ノ數字ガ又明カニ證據立ッテ居ル、卽チ豫算面ノ數字ガ公々然ト
シテ吾等ニ告ゲテ曰ク、廳舍新營費ハ八十万九千圓ナリ、官舍新營費十三万四千圓
ナリ、設備費、是ハ窻掛ダノ靴脫ヲ酒落レルノデセウ、十七万圓、而シテ韓國銀行出
資金七十五万圓、元モ子モ保護シテヤルカラ韓國銀行ニ更ニ六万圓ト云フ補給金ヲ
計上シテアリマス、而シテ寺內總督ハ韓國銀行卽チ母國ニ於ケル日本銀行同樣タラン
ト欲スルトコロノ韓國銀行ノ事實上ノ總裁デアリマス、卽チ兵馬ノ權ヲ有シ、更ニ政
治ノ絕對權。能ヲ有シテ、今ヤ又銀行ノ本總裁ニマデナルニ至ッテハ權力ノ大ナルコト、古
今東西此ノ如キコトハ殆ド類例ナカラウト思フノデゴザイマス、內ニハ卽チ所得稅改正ノ公
約ヲ行フ能ハズシテ、僅々二一百圓ト云フ所得額マデ之ヲ削ルコトハ出來ヌト言ヒ而シテ
納稅滯納者ハ頻々トシテ相踵ギ、如何ニ辛抱强キ良民デモ日ニ日ニ七零八落セントス
ル有樣、外ニハ卽チ列國海軍擴張ノ趨勢ハ我國ヲ强威シテ我財政難ハ海軍擴張費ヲ
以テ一層高メントスル今日ニ當ッテ、製艦費ノ如キハ僅ニ姑息、僅ニ彌縫、所謂朝三暮
四スル今日ニ當ッテ、獨リ朝鮮ニ限ッテ卽チ海軍ノ權力ノ普及シテ居ルトコロノ朝鮮ニ
限ッテ、陸軍勢力ノ本城タルトコロノ朝鮮ニ限シテ此ノ如キ無遠慮ニ大束ニ經費ヲ使用
シ經費ヲ要求スルト云ココトハ如何ニモ矛盾、撞著、倒行、逆施、政治ニ統一ナク
血脈ナク、人情ナキ致方デハアリマスマイカ、故ニ私ハ斯ル根本觀念ヲ以テ諸君ガ私ノ今
カラ細論ヲ御聽キニナルコトヲ望ムノデス、是カラ多少細論ニ入リマス(笑聲起ル)卽チ
本案ノ目的トスルトコロノ事業デス、其事業費ノ設定ヲ朝鮮ノ統治及朝鮮ノ中ノ經營
內地方經營ノ現狀ニ照シマシテ、其事業費ノ當不當、或ハ緩急等ヲ考ヘテ、其不急
ノ理由ヲ此所ニ證據立テルノデス、第一今日ノ朝鮮ノ道路ト云フモノハ官本位デアッテ
民本位デナイ、道ハ道ナリデ多クノ民ガ步ルクコトヲ本位トシナケレバナラヌノデ、御役人
ノ步ルクコトヲ本位トシテ居ル證據ニハ折角拵ヘタ道ガ草茫々トシテ居ル、ツレハ朝鮮
ノ「ヨボー」ガ卽チ「ヨボー」ト云フノハ農民デス、御存知デセウ其「ヨボー」ガ農繁ノ時期ヲ
モ顧ミズシテ其草ヲ取ラシテ居ルノガ現狀デス、然ルニ今日此五千六百万圓ノ事業資
金トシテ、其中一千万圓ヲ道路費ニ充テヽアルノデゴザイマス、併シ是等ハ敢テ臨時費
中ノ臨時費トシテ要求セズトモ經常費トシテ使ッテ宜シイト思フ、第二ニハ總テ經營ス
ル經營ハ官營主義ノ修理專門ナリ、而モ一氣可成的ノ官營壟斷ノ方針ニ···
〔議長長谷場純孝君議長席ヲ退キ副議長肥塚龍君議長席ニ著ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=139
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140・鈴木力
○鈴木力君 御辛抱下サイ官營壟斷ニ狂奔スル方針デアリマスケレドモ、ソレヲ抑
制シテモット人民側カラ仕事ヲ始メテ發展ノ氣力アル人民ヲ多ク植付ケテ日本人民ノ
部落ヲ作ルコトヲ專一ニセネバナラヌ、卽チ農業地デサウシテ今ヤ商業中心〓トナリツヽア
ルトコロノ太田ノ如キハ一向官ノ力ヲ藉ラズシテ日本人民ノ發展的氣力アルモノガ彼所
ニ移住シテ、斯ル土地ヲ經營シタノデス、此種ノ日本人ノ部落ヲ方々ニ段々ニ造ッテ、ウレヲ
植付ケルコトヲ專一ニシテ貫ヒタイ、拓殖會社ノ如キガ常ニ世上ノ非難ヲ被ルノハ壟斷
ノ志アルガタメ、而シテ個人ト云フモノヲ認メズシテ、大束ニ自分達ガ仕事ヲスルコトバカ
リヤリ居ルタメニ反對ヲ受ケテ居ル、其證據ニハ拓殖會社ニ限ラズ、此總督府ガ鐵道ヲ經
營スルヤ釜山ヨリ京城マデノ運賃ハ長距離ニ付テ一哩一錢ノ割二百七十四哩然ルニ
ツレヨリ少々短距離ナル處ハ一哩三錢ニナッテ居リマスカラ、仁川ノ如キモ釜山カラ貨物ヲ
呑吐サレルタメニ寂レテ來タ、此京釜鐵道ノタメニ最モ打擊ヲ受ケタノハ仁川デス、是等モ
鐵道運賃率ノヤリ方如何ニ依ッテ仁川ヲ救フコト難カラズ、然ルニ政府ハ當然爲シ得
ルトコロノ右樣ノ運賃率等ノ方ヲ度外視シテ置イテ、曰ク仁川築港ニ三百四十万圓ヲ
投ジヤウト云フノデス、是等モ緩急ヲ誤ッテ居ん、本末ヲ誤ッテ居ル所以テス、第三ハ先進
國民ノ殖民地經營ノ歷史ニ則ッテ學術及實際ノ二方面ヨリシテ天然富源ノ開發竝ニ其
順序ヲ定ムルト云フコトヽ云フ、此〓ヨリ見マス、朝鮮ト云フ國ハ山ハ禿山デ、川
ハ洪水ヲ來シ、道路ハ道路ノ如クシテ道路ナラズ、畑ガ變ジテ川ニナルコトモアルヤウ
ナ土地デアル、是ハ皆サン御存シデアルヽ然ルニ今此禿山ニ植林ヲスルコトヲ先キトセズ
シン、川ヲ治メルコトヲ先キトスルコトノ不可ナルコトハ三尺ノ童子ト雖モ分ッテ居ルコ
トアル、又委員會ニ於テ荒井度支部長ニ說明ヲ請ヒマシタトコロガ、ソレハ地質學上
ノ調査竝ニ氣象學上ノ調査ガ朝鮮ノ經營ニ付テ出來テ居ルカト云フト、荒井政府委
員ハ寔ニ誠實ニ極ク丁寧親切ニ答ヘラレマシテ、本員大ニ滿足シテ居リマスガ、實ハ御
存ジノ通リテ未ダ十分ト云フコトニハ至ッテ居リマセヌ、併シ朝鮮經營ノ急ナルヤ悉ク
其成立ツコトヲ待ッテ居ラレヌカラ、先ヅ取急ノ分ヨリ經營ヲ致スト云フコトノ御話デ
ゴザリマシテ、其〓ハ或ル程度マデハ之ヲ諒ト致シマスルケレドモ、道路ノ如キ一千万圓
ヲカケテモ未ダ足ラヌ、更ニ一千八百万圓モカケナケレバ前途イカヌト云フ道路テアリマス、
是等ノ道路ヲ輕々ニ經營サレタノデハ是ガ濫費ニ陷ルコトヲ本員ハ最モ恐ルヽ、尤モ是
ニ付テハ委員會ニ於テ道筋ハ幾本、而シテ幾百哩ト云フ豫算デ、サウシテ其中ノ何處
カラ何處マデハ幾ラノ經費ト云フ、細カイ說明マデ政府委員ノサレタコトハ決シテ本
案ニ對シテ不忠實ナル〓ハ認メマセヌ、十分滿足ハシテ居リマス、ケレドモソレハ一般會
計ノ如ク款項目ヲ詳シク每年ノ豫算ニ示シテ出サレテコソ吾ミハ十分ニ審議シ得ルノデ
ゴザイマスガ、短日月ニ於テ平常餘リ關係ノナイ-關係ノ薄イトコロノ道ヲ二十六本
何處々イト云ッテ一遍ニ出サレテハ分リヤウガナイ、ヤハリ所謂特別會計ヲ廢シテ一般豫
算ノ如キ方式ヲ以テ出サレナイデハ之ヲ審議スルニ甚ダ當惑、ソレカラ鐵道及港灣ヲ
築クコトハ軍國的見地卽軍國主義卽チ總督府ノ威容ヲ張ルトコロノ土木主義、ソレ
等ノ大キイコトヲ致シマスルカラ之ヲ制抑シナケレバナラヌ、抑制シナケレバナラヌ、例ヘバ
棉花ノ栽培ハ南朝鮮ニ於ケル有望ナル事業ト既ニ是認サレテ居リマシテ、ソレニ付テハ
同ジ築港ヲスルニモ木浦乃至群山等ヲ築港ヲシテ、彼ノ道ノ方ノ開發ヲ誘導シタ方ガ
宜イト云フコトハ實業家ノ頻リニ望ンデ居ルトコロデス、然ルニ此元山京城卽チ京元線
ト云フ鐵道ヲ先ニシテ、群山平壤間ノ鐵道ヲ後ニシタ如キハ開發ト云フ上カラ云
フト、尙遺憾デゴザイマスガ、此所京城ヲ中心トスルト云フ中ニハ總督府朝鮮官
府威嚴中心ト云フコトデス、是ガ含マレテ居ルト云フコトヲ、忘レテハナラヌ、
卽チ亞細亞式ノ自衞ヲ基トシタノデハ面白クナイ、現ニ群山ノ人民ノ如キハ、斯ル
大金ヲ投ジテ仁川及釜山ノ築港ヲヤカマシクナサルガ、群山地方ヲ顧ミザル理由ハ如何
ニト云フノデ、頻リニ躍起運動ヲヤッテ居ルト云フ次第デアル、(「簡單々々ト」呼フ者アリ)
此場合ニ於テ簡單ヲ望ムノハ多分其人ハ電車ニ乘ッテ停電ヲ望ム人デアラウ、ナカ〓〓
重大デス、私ハ唯空漠ノ論デハアリマセヌ、事實ヲ舉ゲテ尙諸君ノ視聽ヲ聳カシテ御
目ニ懸ケマセウ、世ニ云フ鎭南浦三大事業ナルモノガアル、斯ル四圍ノ狀況ヲ知ラズニ
漫然ト協賛スルコトガ、卽チ新聞デ能ク書イテアル盲從ナンデス、鎭南浦ノ三大事業トシ
テハ停車場附近ノ百万坪ノ埋立ト云フコトガアル是ハ李完用ト云フ人ト大倉組トガ
結託ヲシテ、李四歩、大倉六步利益配當ノ契約書ヲ作ッテ、サウシテヤッテ居ルデス、諸
君ハ五十万圓位ノ金ヲ政府カラー財政上カラ取出セヌト言ウテ騒イデ居ルガ、百万
坪ト云フモノハ十兩坪ニシテ一千万圓デス、理立費用ヲ差引イテモ百万乃至六七百万
ノ利益デセウ、ナカノヽ小サイコトデハアリマスマイ、サウ云フ利益アル事業等モ若シ親切
ニ朝鮮ノ經費ヲ審査スル上カラ言ヒマスルト利益アルモノコソ、官營ニシテホシイト云フ注
文モ持出サレル次第デス、次ニ製鹽事業、天日製鹽ト云フコトハ總督府ガ昨年行ッタ百
二十万ノ資本ヲ以テサウシテ三億斤ノ製鹽ヲヤル積デアッタトコロガ、昨年ノ水害デ是ハ
大失敗ヲ來シテ六十万圓ノ損害、尤モ其原因トシテハ支那地方カラ鹽ノ密輸入ガ
アッタト云フ事實モアリマシタ、又製鹽ノ新シイ簡便ナル方法ガ發明サレタタメニ、天日ト
云フコトニ損害ヲ與ヘタト云フ〓モアリマス併シ是等モ朝鮮經營ノ上デハ見遁スベカ
ラザル〓デス私ノ言フトコロハ餘リ輕〓シタ大金ヲ經營ニ投ジサセルハ餘程檢束ヲ加ヘ、
監督ヲ以テ之ヲ與ヘネバナラヌト云フノデス、是ガ大趣意デアリマス、マダアリマス(「簡
單」ト呼フ者アリ)ソレカラ漁業漁業ニ付テモ內地ノ漁民ト、朝鮮ノ漁業トノ間ニ
脈絡ガ十分ニ出來テ居ラヌ、卽チ農商務省ト總督府トノ間ノ關係ガ十分ニ出來テ居ラ
ヌ、其證據ニハ群山沖ノ如キニハ支那「ジヤンク」ガ數千艘ト云フモノガ來テ、密漁ヲシテ
居ル、日本ノ之ヲ四國乃至、日向對州等ノ人民ニ普ク-知ラシテ、而シテ農商務省ト
總督府トガ一致ノ行動ヲ以テ奬勵シタナラバ此支那人ノ「ジヤンク」ヲ逐拂ッテ、日本ノ
漁業上ニ利益ヲ得ルコトハ必ズ出來ルコトデス、然ルニ總督府ハ陸上ノ經營、官府本位
デス、京城中心ノ觀念ガ主デアッテ海陸併見ルノ明ガナイガ故ニ、斯ル事實ヲ生ジテ
居ルノデス、(「簡單」ト呼フ者アリ)ソレカラ商人-商業ト云フモノニ關スルトコロノ
觀念ノ誤謬、誤レル觀念ヲ正サニヤナラヌ、ナゼカト言ヒマスルト此總督府ハ軍人政
治デアル軍人ト云フモノハ誠ニ頭ノ堅イ規律ト云フコトヲ本位ニ置クモノデアリマシテ、
是ハ決シテ惡意デナイ立派ナ心デスルノデアル、ケレドモ免角商人ト云フモノヽ性質ヲ認
メナイデ、往々ニシテ商人ト謂ヘバ盜賊カノ如キ觀念ヲ持ツデス、ソレデドウナルカト言フト
內地カラ何分宜シクナイ商人ガ多ク入込ンデ困ル、之ヲ取締ルニハ卽チ會社合デナケレ
バナラヌトームフヤウナ、唯高飛車的ノ制法バカリ考ヘテ居ル然ルニ是ハ北海道ノ實例
ヲ以テ分ル話デ、北海道ノ開ケ始メノトキニハ、隨分浮浪ノ徒乃至不良ナル人間ガ入
込ンダノデアル、ケレドモ彼是ヤリ居ル中ニドウヤラ斯ウヤラ開發シテ、今日ノ北海道ヲ
現出シタモノデアリマシテ、餘リニ軍人式ノ偏屈ナル頭デ經營スル段ニナルト云フト、決
シテ良效ヲ收メルコトハ田來ヌ、第八マダアリマス(「モウ宜カラウ」「謹聽ケイ」ト呼フ者ア
リ)同ジヤウナ頗ル類似ノ〓ガアリマスルガ、此人造牆壁ヲ撤去スルコトヲ努メ、卽チ其中
ノ主ナル問題ハ言論ノ抑壓ヲ防遏セニヤイカヌデス、此朝鮮ノ商業關係ナルモノハ大阪
ト朝鮮大阪中心デス、然ルニ新聞紙ノ言論ト云フモノカラ言ヒマスルト大阪ニ於ケ
ル諸新聞ハ動トモスルト朝鮮ニ入ルコトガ出來ヌ目ニ逢フ、一番肝腎ナ大阪ノ新聞ガ
朝鮮ニ入ルコトガ出來ヌ、輸入ヲ禁止サレテ居ル、而シテ唯一ノ德富蘇峰先生ノ主宰ス
ルトコロノ御用新聞ガ朝鮮ニ跋扈シテ、其他雜誌等ニ於テモ朝鮮デ發行スルト云フト、
ナカ〓〓ニ種々ノ迫害ガ生ジテ來マシテヤリニクイ、ソンナ風デハイケマセヌカラシテ、私ノ
言ウトコロハモット商工業者ノ情義ニ通ジロ、商人ト云フモノヽ性質ヲ能ク知ッテ、軍人的
デナシニヤルニハ、衆智衆力ヲ請ハニヤナラヌ、ソレニハ先ヅ言論ノ抑壓ヲ止メテ、衆智衆力
ナルモノハアラユル新聞ヤ雜誌等ニ依ッテ吸收スルコトガ出來ルノデアルカラ、此方針ヲ以テ
進マネバナラヌト云フコトモアル、今ノ儘デ往クトコロノ政治ニ金ヲマグ此上ブッ込ムト云
フコトハドウシテモ不利デアラウト考ヘル、ソレカラ第九、一部ノ朝鮮貴族竝ニ日本ノ
大御用商人等ニ濫惠賣恩スル、惠ヲ濫ニシ恩ヲ賣ルコトヲ差控ヘテ、サウシテ人民
直接ノ利害休痛、痛痒ヲ本トシテ政治ヲヤルヤウニシテ貰ハネバナラヌ、又總督府ニヤ
タラニ經費ヲ差出スコトハ不利ダト言フノデス、事實ヲ申上ゲマスルト云フト前政府ノ各
大臣ニ對シテ先達二十万圓ト云フ金ヲ惠マレタ、ソレハ李王家カラ出スコトニシテ惠
マシタデス、ドウ云フ理由デアッタカ知リマセヌガ、李完用ノ如キハ內五万圓ヲ頂戴シタデス、
然ルニ是ハ李王家ヨリシテ如何ナル方法デ出サレタカハ知リマセヌケレドモ、其資金調達ノ
際日韓瓦斯株式二千三百株ト云フモノハ李王家ヨリ市場ニ賣出サレタト云フ事實ヲ
私ハ承知シテ居リマス偖テ其コトノ善惡ヲ玆ニ言ヒ且之ヲ彈効スルノデハナイ、總督府ノ
諸官、總督ハ固ヨリ〓廉潔白ノ人デアッテ、何等此處等ノ關係ハナイノデス、キタナイ關
係ナドノアラウト云フコトヲ匂ハセヤウト云フ氣ハナイ、決シテナイ、併シソンナ方ニハ非常
ニ力ヲ盡シテ居ル、ケレドモ何方面卽チ朝鮮農民ノ痛イ痒イニ對シテ、ドレダケノ注意ヲ
與ヘテ居ルカ一部ノ朝鮮ノ大官竝ニ御用商人等ニ付テハ斯クマデ-李王家ノ經
費中ヨリ金ヲ出シテマデ惠マレルケレドモ一般農民ノ痛痒ニ對シテハ冷々淡々、例ヘバ朝鮮
人ハ籾ヲ摺ル機械ヲ使フコトヲ知ラヌ、ソレカラ又金ノ乏シキタメニ靑田ナリニ商人ニ賣
〓ソレカラ又本當ニ乾シ上ゲヌ中ニ米ニシマスルカラ非常ニ物ガ粗惡ニナル、價モ從ッテ
廉イ、是等ノ〓ニ對シテ農業奬動團ト云フヤウナモノデモ拵ヘマシテ、日本ノ近項特許
等ニアルトコロノ籾磨機械等ヲ補助シ、或ハ廉イ金ヲ以テ貸スト云フヤウナコトデモシマ
シテ、全國ヲ眞ニ農事改良ノタメニ朝鮮農民ニ說イテ迴ル等ノコトハ如何ニモヤッテ欲シ
イコトデアリマスル、ケレドモ總督府ハ大ナル上バカリニ汲々トシテ、仕事ノコトハ細カイコトハ
甚ダ冷淡ナモノデス、諸君道路開鑿ヤ築港ハ之ヲ請負フ者ハ大ナル御用商人デアルカラ
彼等ハ本案ノ成立ヲ大ニ望ンデ居ルデセウ、ケレドモ日本內地デアッテモ大湊ノ築港ハ僅
カ數十万圓位デ足リルカモ知レヌト云フ噂デアルニモ拘ラズ、之ガ成立ハ遲々タル有樣
デアル、又越前ノ敦賀、浦鹽カラ船ノ著ク敦賀、此處ニ西伯利亞鐵道カラ直通デ歸ッテ
來ル人ガ、敦賀ニ泊ル處ガナイカラト云ッテ、米原アタリマデ來テ泊ル有樣デアリマス、是等
ニ對シテ何等ノ設備ヲ爲ス計畫モナケレバ又財源モナイト云フ有樣、然ルニ一方朝鮮
ハ右中ス通リ極ク自由テ築港乃至鐵道此等ノ速成ガ出來ル、第十條トシマシテハ浮華
虛張ヲ以テ外國旅客ノ泡沫錢ヲ迎合シ-アブク錢ヲ迎合シ、又ハ外面的經營ヲ以
テ外資吸收ノ手段ニ供セント欲スル滿鐵詭策-今日後藤大臣ハ見エマセヌガ、滿鐵
式詭策ト云フコトガアル、ソレヲヤラズニ、翻ッテ經濟ノ理法ニ忠實ナルコトヲ私ハ望ム、ソ
レガ出來ヌカラ事散漫ニナツテ、事業ノ本末ヲ誤ルト云フコトヲ憾ムノデス、卽チ滿鐵ノ
現狀ハ長春「ホテル」、旅順「ホテル」、大連「ホテル」、-大連「ホテル」等ハ必要デアリ
マスケレドモ、族順「ホテル」、ハ殆ド裝飾ノ道具ニナッテ居ル、サウシテ曰ク、外人ニ對シ
テ是マデ立派ニシテ置カナケレバナラヌ、外國人ヲ此處ニ遊バセテ外國人ノ金ヲ取ラネ
バナラヌト云フコトヲ本位トシテ裝飾的ニヤッテ居リマス、是等ノヤリ口ヲ稱シテ私ハ滿鐵
的ノ說策ト申シマス「キ」ハ詭辯ノ詭デス、卽チ大連ニ電車ガアル、大連ノ電車ハ不思議
ナル電車デアッテ、人ノ乘ラナイ電車偶、乘ッテモ一人カ二人シカ見受ケマセヌ、人ハ乗ラ
ヌデモヤタラニ驅迴ッテ居ル、迴レバ景氣ガ好イト云フ、是等ガ卽チ外國人ノ眼ニ對シ
テ大連ノ經營ヲ大層大キク見セテ而シテ外資輸入ノ一手段ニ供セント欲スルノデス、斯
ルコトハ平田內相等ガ御覽ニナッタナラバ、戊申詔勅乃至報德講ノ論ナドヽハ如何ニ
隔シテ居ルカト云フコトヲ必ズ血淚ヲ振ッテ御怒リニナルコトデアラウト思フ、第十一ハ朝
鮮ノ統治及經濟獨立ノ範ヲ臺灣經營ニ取ッテ、漫然トシテ獨立ヲ空想スルコトヲ戒
メ、朝鮮ト臺灣トノ天然ノ相違ヲ諦メ以テ獨立的、王國的、總督政治ノ誤マレル觀念
ヲ翻ヘスベシ、動トモスルト總督府ハ朝鮮經營ヲ臺灣ノ如クスルノデアル、卽チ制令權モ
六三號ト同ジ意味デアル、朝鮮モ今事業公債ヲ募ッテモ、臺灣ノ如クナッテ、收支相償ッ
テ獨立スルコトガ出來ルノデアルト云フノデス、然ルニ是ハ大ナル誤リ、臺灣トハ地勢が違
フ、地味ガ違フ又臺灣ニハ政治上ノ關係ガ違フ、ドノ方面カラ見マシテモ天然ノ富源ノ
盛ンナル臺灣ト、茫々タルナカ〓〓開發ニ困難ナルトコロノ朝鮮トハ之ヲ一律ニ日ヲ同
ウシテ論ズルコトハ出來ヌノデス、之ヲ詳シク言ヒマスルト云フト餘リ長クナリマスカラ今日ハ略
シマスガ、私ハ之ニハ論據ヲ持ッテ居ルト云フコトダケ此處ニ言明シテ置キマス(「モウ
好イ加減ニヨシテ呉レ」ト呼フ者アリ)ソレデモウ少シ分リ易ク話ヲシマセウ、朝鮮ハ例ヘバ
貧乏人ノ貫ッタ麥粉菓子ノ如キモノデアル、麥粉菓子ヲ貫フノハ子供ハ之ヲ喜ブケレド
モ、貧乏ナ親ハ砂糖が澤山要ッテ非常ニ弱ルノデアリマス、此邊ナラ通用ガ宜イデセウ、
以上十一箇條ノ理由ニ依ッテ之ヲ綜合シテ扨テ省ミテドウナルカト云フト、私ノ論ノ歸
著ハ今日ノヤリ口ヲ此儘是認セザルタメニハ先ヅ事業公債法案ヲ否決シテ、若シ必要已ム
ヲ得ベカラザル經費ナラバ、更ニ追加豫算ヲ以テ要求シテモ宜シイ、但之ヲ特別會計ニ
セズシテ、本會計ニ打入レテ、サウシテ臺灣ト朝鮮トノ財源ノ緩急ヲ圖ッテ、臺灣ノ有ヲ
朝鮮ノ無ニ通ジテ、サウシテ財政ノ基礎ヲ鞏固ニセヨト云フノデス、ソレニ付キマシテハ臺
灣ニ果シテソレダケノ餘裕ガアルカト云フコトヲ調ベマシテ、私ハ確ニアルト云フ證據ヲ持ッ
テ居リマス
(副議長肥塚龍君議長席ヲ退キ、議長長谷場純孝君議長席ニ著ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=140
-
141・鈴木力
○鈴木力君 臺灣總督府ノ歲計剩餘金ヲ割キ得ベキ見込、其證據デス、ソレハ臺灣
總督府ノ經常歲入三千七百四万九十圓ト云フ、之ハ內地稅卽チ地租關稅等ト竝ニ
官業及官有財產ノ收入竝ニ印紙稅等ノモノデアリマシテ、非常ニ確實デス而シテ多大
デス而シテ經常歲出部ニハドウアルカト云フト、二千五百七十五万圓、此經常歲出
部ノ費目ヲ考ヘレバソレデ臺灣ノ政治ハ大體出來ルト云フコトガ分ル、卽チソレハ總督
府費、法院費、地方費、警察費、監獄費、醫院費、國語學校費、中學校費、高等女學
校費、稅關費、通信費、鐵道作業費、專賣局費、農事試驗場費、一般會計繰入金、
地方費補助、豫備金等一切包含シテアルデス、是テ臺灣ノ政治ハ出來ル、是ハ豫算
ノ款項目ヲ御覽ニナレバ大抵推測シ得ル、然ルニ今ノ歳入ノ確實ナルモノヨリシテ之ヲ
差引キマスト、差引キ千百三十二万圓ト云フモノヽ剰餘ガ出テ來ル、之ヲ母國財政ノ
一般會計ニ繰入レテ繰入レラレナイコトハナイ、然ルニ特別會計ノ因襲日久シキタメニ
議會ト、乃至國民ト臺灣トノ距離ガ遠クナッテ、彼ノ地ノ實情ニ餘リ直接セヌガタメニ、
我〓初メ議會ノ耳目ガ誠ニ此經費ニ切入ッテ審査スルコトニ迂濶ニナッテ居ル、ソコデ
臺灣ガ治外法權、獨立天地ノ傾キガアッテ現ニ唯今決算委員會デ問題ニナッテ居リマス
通リ、鐵道敷設金ガ二十三万圓バカリ殘ッタト云フテ、之ヲ皆ノ慰勞金ニ分取リヲシ
テ會計檢査院ガ之ヲ否認シタル事實ノ如キハ、最モ臺灣ノ現狀ヲ證明シテ居ルノデア
リマス、斯ル有樣デアリマスカラ必ズ玆ニハ餘裕アリト大體認ムルコトガ出來ルノミナラズ、
此度ノ豫算ニ現ハレルトコロノ總督府ノ事業ノ名目ヲ見テ見マスルト、臨時費トアリマ
スル中ニ相變ラズ不急ナルコトガ多イ、卽チ金ガ餘ルカラシテ其餘ッタ金ヲ如何ニ使フカ
ト云フコトヲ名目ヲ考ヘルコトガ先デアル、此事ガ必要ナリト云フコトガ根柢ニナッテ居ラ
ヌト云フコトハ、歷々トシテ讀ムコトガ出來ル、卽チ第一ニハ總督府廳舍新營額四十万圓、
總督府官邸改良費六万圓、第三、新營費九十一万餘圓-新營費-新ナルイ
トナムノ費、跡ハ何モ書イテナイ、唯漠然トシテ新營費九十一万圓、臺北市區改正費
十万圓、打狗市區改正費一一万圓、舊慣及法案調査費六万圓餘、此等ハ此三項ノ如
キハ經常費中デ支辨スル餘地ガアル筈ノモノデアル、右六口合計百五十餘万圓、是ハ
一目シテ不急ノモノト知ラレル、尤モ此外ニモ阿里山問題二百万圓等モアリマスガ、此
等ハ嘗テ問題ニナリマシタガ、此等ノコトハ一向手ヲ觸レズニ右ノ如ク割出スコトガ出來ル
デス、次ニ驚クベキハ勸業費ノ款デ唯漠乎タル勸業補助ト云フ項ヲ以テ揭ゲマシテアルノ
ガ、三百四十一万餘圓デス、此等ノモノハ經常費ノ方ノ地方補助費ニ十分取ッテアル
以上ニハ、是ハ削減ノ餘地十分アルモノト考ヘラル、第三ハ理蕃費三百十三万圓、此
大部分モ亦削除シ得ルコトガ出來ルト云フ考デス、第四ハ-此年ノコトバカリヂヤナ
イ、第四ハ航海補助費九十一万餘圓中ノ大部分モ整理シマスレバ之ヲ假ニ半額減
ズルトシテモ二百万圓ハ出テ來ル(「簡短ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)其外水利事業費
百二十万圓、打狗築港費百六万圓、臺東鐵道建設費五十万圓、此中カラ整理
シマシテ繰延ベ得ベキモノヲ繰延ベタナラバ或ハ是モ三分一位ハ減ズルコトガ出來ルダ
ラウト思ヒマス、然ラバ玆ヨリモ百万圓ハ產出スコトガ出來ル、(「簡單」ト呼フ者アリ)
之ヲ簡單ナドト仰シヤル諸君ハ鐵道建設ノ建議案乃至港灣等ヲ十分各地ノ人民
ノ情誼ニ訴ヘテ御通過ニナッテ居ル非常ニ御熱誠デヤッテゴザルカ、是ノ財源如何ト云
ヘバ同ジ身上ノモノデアッテ、右ニ厚ケレバ左ニ薄クナルコトハ當然ノコトデス、是故ニ財
政ノ根本基礎ヲ固クシテ、彼ニ厚クシテ此ニ薄キヤウナコトノナイヤウニスルニハ斯ル削
減シ得ベキトコロニハ切込ンデ、サウシテ剩餘金ヲ殘シテ置イテ始メテ今マデノ諸君ノ鐵
道建議ハドウカ活キテ來ルダラウト思フ、ソレヲセズシテ諸君ノタメニ忠ナル此言論ニ簡
單トハ諸君御土產鐵道案ニスラモ不忠ナルモノト心得マス、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ、
笑聲起ル)此ノ如クシテ通計九百万圓バカリト云フモノハ臺灣ノ經費中ヨリ取出シ得ル
レラ)考デ、サウシテ之ヲ朝鮮事業費ニ入レル心組ニシテ、一方ハ更ニ一般會計ヨリ
シテ公債ノ七百万圓モ之ニ加ヘテ、今二千四百万圓ノ補充-公債ノ補充金ト
兩方デ要求シテアルノデ、責メテ一千七百万圓位ニデモ之ヲ節減シテ、始メテ總督府ヲ
シテ此過大ナル權力ヲ制限セシムルコトガ出來ヤウカト云フ是ハ希望デス、併シ今日ノ如
ク臺灣ハ旣ニ金ヲ澤山入レテ、餘裕アル財政ニナッテ居ルガ、金ハ餘ッテモ此方ニハ澤山
ハ融通セヌ、臺灣ハ臺灣デヤッテ往クンダト云ウテ飽マデモ積極的ニヤッテ、一方ハ母國人
民ガ窮苦ヲ訴ヘテ居ルニモ拘ラズ之ヲ顧ミズシテ、朝鮮ニ無限ノ金ヲ投ズルト云フコトハ
政治ト云フモノヽ上ノ道ヲ誤ッテ居ルモノト考ヘル「分ッタ〓〓」ト呼フ者アリ)更ニ軍事
上外交上ヨリ大體ヲ觀察シマスルニ(笑聲起ル「ヤレ〓〓」ト呼フ者アリ)ヤレ〓〓ナント
云フ話デハナイ、、諸君ツンナコトデハ往カヌ、吾輩ガ玆ニ立ッテ立論スルニ當ッテハ諸君ハ御
存知ナイカモ知リマセヌガ、今日ノ總督府ノ權威ヲ冒シテ出テ居ル總督府ノ權威、將又
總督府ノ權威ニ限ラズ、陸軍主義ノ天下ト先刻申シタル通り如何ニ此權力威勢ノ烈
シキ力ヲ顧ミタナラバ、玆ニ立ツ吾輩ハ普通ノ覺悟決心デハ立テヌト云フコト位ハ御承知
デナケレバナラヌ、ソレヲ漫然トシテ御聽キニナルノハ甚ダ不親切デアラウ(笑聲起ル)軍
事上、外交上ト云フノハ何デアル、曰ク支那ハ戰フ能ハズ、露西亞ハ戰ハズ、日本ハ戰
フベカラズ、當分ノ間ハ此三ツヲ以テ原則トシテ居ッテ差支ナカラウト思フ、故ニ築港事
業ノ如キモ、鐵道事業ノ如キモ、徒ラニ軍國主義ニ逸ッテ前後緩急ヲ觀ミズシテ採
擇スルト云フコトハ、根本ニ於テ宜シクナイ、是ハ大體論デス、今日ノ儘デ此朝鮮總督
ノ權力過大ヲ是認シ、而シテ此儘デ推移ッタナラバ、諸君今ニ御覽ナサイ、關東都督府
兼朝鮮總督-都督兼朝鮮總督、而シテ滿洲ト朝鮮ニ對スル經費ハ益〓張ルバカリデ
ス、而シテ諸君ガ如何ニ所得稅改正案ヲ出サウトシテモ出シテモ更ニ行フベキ餘地
ナシ、先ヅ金ノ無暗ニ掛ル方ノ口ヲ押ヘズシテ、サウシテ、財政ヲ救ハウト欲シテモ無理デ
ス、是故ニ吾輩ハ其元ヲ救フ、其本ヲ正スノ意味ニ於テ、是非ナク本案ニ反對スルノデ
ス、若夫レ總督ノ行政等ニ對スル-關スルコトハ多少直接ナラザル-本案ニハ直
接デハナイヤウナルトコロノコトマデ論及シマシタケレドモ、是ヲ云ハネバ朝鮮ノ光景ガ明カニ
ナラヌ、ソレガ頭ニ入ッタ以上ニハ今日ノ如ク陸軍天下デ、何等文官ノ力、文章ノ力衆
智衆力ト云フコトヲ認メナイトコロノ政治デ、如何ニシテ此朝鮮ガ治メラルヽカ、乃至此
財政將來ノ發展上ノコトガ往ケルカト云フコトハ到底絕望デアルト云フコトハ御分リニナ
ルダラウト思フ、吾輩ハ此見地ヨリシテ反對スルノデアリマシテ、固ヨリ本案ノ運命ハ定
マッテ居リマスケレドモ、願クハ玆ニ發シタル此言ヲシテ鄰ニ貴族院及樞密院モゴザイマ
ス、竝ニ天下茫々タリト雖モ、マダ〓〓立國ノ大本ヲ忘ルヽニ至リマスマイカラ、天下ノ
識者、乃至新聞有ラユル人民ノ誠ノ心アッテ國ヲ憂フル人ニ訴ヘルノデス、卽チ今日ハ甚
ダ御〓聽ヲ煩ハシテ濟ミマセヌガ、我輩ノ精神ニ對シテ御同情アランコトヲ祈ルノデス(拍
手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=141
-
142・日向輝武
○日向輝武君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=142
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143・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日向君ハ本案ニ對シテノ御發言デアリマスカ、何デアリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=143
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144・日向輝武
○日向輝武君 チヨット質問ヲシタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=144
-
145・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 質疑発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=145
-
146・日向輝武
○日向輝武君 サウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=146
-
147・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日向君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=147
-
148・日向輝武
○日向輝武君 私ハ豫算案ガ本會ニ上リマシタ節ニ總理大臣兼大藏大臣ニ質問ヲ
致シタノデアリマスガ、當時其答辯極メテ曖昧テアリマシテ尙續イテ發言ヲ求メタノデア
リマスガ、議長ガ御許シニナラヌタメニ遂ニ今日ニ至ッタノテアリマス、此際ニ於テ朝鮮事
業公債ナルモノニ付テ極ク簡單ニ要點ダケヲ述ベテ、總理大臣ニ質問ヲ致シタイト思ヒ
マスガ、總理大臣ハ御出席ガ無イノデアリマスカラ、議長ニ於テ御取次ヲ願ヒタイノデア
リマス、其主意ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=148
-
149・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) チヨット御斷リヲ致シテ置キマスガ、質問ノ御取次ハ議長ハ
甚ダ迷惑ヲ感ジマス、質問ヲ總理大臣ニ向ッテナサルナラバ、ヤハリ議院法ノ規定ニ依ッ
テナサルノガ、相當カト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=149
-
150・日向輝武
○日向輝武君 ソンナラバ總理大臣ノ出席ヲ要求致シマス、御取次ヲ願ヒタイ
〔「ヒヤ〓〓ソレガ順序ダ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=150
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151・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日向君ニ御諮ヲ致シマスガ、總理大臣ノ答辯ニ依ッテ贊否
ヲ決セラレルノデアリマスカ、然ラズンバ議事ハ進行サセタイト思ヒマスガ、今總理大臣ニハ
使ヲ遣ッテ居リマスカラ、何トカ返事ガアリマセウケレドモ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=151
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152・日向輝武
○日向輝武君 黨議ニ從フコトハ無論從フノデアリマスガ(鈴木力君「議長ハ何デス、私
話ヲナスベカラズ」ト呼フ)總理大臣ニ是非承ハラナケレバナラヌ問題ガアルノデゴザイマスカ
ラ、御出席ヲ要求シタノデゴザイマスガ、今マデ出席ヲ要求致シマシテ御出席ヲ要求セラ
レテ闇臣ガ是ニ列席スルマデ每囘必ズ待ッテ居ッタニ、本員ノ要求ニ對シテ獨リ議事ヲ
進行スル理由ハナイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=152
-
153・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ソレデ御諮ヲ致シタノデアリマス、ソレナラバソレデ宜イ-
議長ハ私話ヲスルト云フコトデスガ、議長ハ決シテ私話ハ致シマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=153
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154・日向輝武
○日向輝武君 ソレナラバ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=154
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155・菅原傳
○管原傳君 此問題ハ重要ナル問題デアリマス、且又既ニ質問ヲ望マルヽ議員モアル
ノデアル、桂首相ノ出席ヲ求メテ質問ヲ致シタイト云フ議モ起ッテ居ルノデアリマス、旁く
此問題ハ延期セラレンコトノ動議ヲ提出致シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=155
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156・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 併シ御諮ヲ致シマスガ、今總理大臣ニハ使ヲヤッテモウ追付
來ルカ來ナイカガ分リマス、ソレヲ待タズニ延期スルト云フノデアリマスカ、若シ來ナケレバ
延期スルト云フノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=156
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157・菅原傳
○菅原傳君 左樣デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=157
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158・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 宜シイ
〔「延期贊成」ト云フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=158
-
159・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 今返事ガアリマシタ、公務ノ都合ニ依ッテ出席シ難イト云フ
コトデアリマス、サウスルト菅原君ノ動議ニ付テ御諮リ致シマス、菅原君ノ動議、延期ト
云フコトニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=159
-
160・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ、日程ノ第十七、第十八、、第十
九、是ハ延期致シマスー日程第二十三、輕便鐵道法中改正法律案、吉植庄一郞
君外二名提出、第一讀會、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第二十三輕便鐵道法中改正法律案(吉植庄一郞君第一讀會
外二名提出)
輕便鐵道法中改正法律案
輕便鐵道法中左ノ通改正ス
第五條中「私設鐵道法」ノ下ニ「第九條第二項」ヲ加ヘ左ノ但書ヲ加フ
但シ第九條第二項ノ規定ハ私設鐵道株式會社ニ非サル會社カ兼業トシテ
輕便鐵道ヲ敷設スル場合ニハ此ノ限ニ在ラス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=160
-
161・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 此場合提出ノ主意ヲ述ベマス、是ハ極ク簡單ノ案デアリマシテ輕
便鐵道會社ニ向ッテモ普通ノ私設會社ガ受ケテ居ル通リ拂込資本金ノ十分ノ一デ事
業ニ著手スルコトガ出來ルヤウニシタイト一云フ案デアリマス、唯ソレダケノ簡單ナル案デア
リマスカラ是ダケ申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=161
-
162・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=162
-
163・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ議長指名ノ特別委員九名ニ附託スルコトニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=163
-
164・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ其通リ決シマス、日程第二十四、鐵道
敷設法中改正法律案吉田虎之助君外二名提出第一讀會、議案ノ朗讀ハ省略致シ
マ、、吉田虎之助君
第二十四鐵道敷設法中改正法律案(吉田虎之助君第一讀會
外二名提出)
鐵道敷設法中改正法律案
鐵道敷設法中左ノ通改正ス
第二條第一項近畿線ノ部第五號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
一滋賀縣下大津ヨリ西近江路ヲ經テ福井縣下敦賀ニ至ル鐵道
〔吉田虎之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=164
-
165・吉田虎之助
○吉田虎之助君 提出者トシテ簡單ニ提出ノ理由ヲ述ベマス、此案ハ滋賀縣大津
驛カラ分岐シマシテ西近江路ヲ越ヘ福井縣敦賀ニ參ル鐵道ノ線路デアリマス、此線路ヲ
敷設法案中ニ入レナケレバナラヌ理由ハ三ツアル、ソレハ沿道ノ開發ナリ、ソレカラ軍事
ノ關係ナリ、交通運輸ノ便利ト云フコトニ付テ是非此法律案ニ入レナケレバナラヌト云
フ理由ガアルノデゴザイマス、第一ノ沿道ノ開發ト云フコトニ付キマシテハ、御承知ノ如
ク滋賀縣ノ西近江路ト云フモノハ交通ノ極ク不便ノ所デアリマシテ、高島郡ノ如キハ縣
下中ノ大面積ヲ有ッテ居ル郡デアッテ、米ニ於キマシテハ高島米ト云フテ有名ナ米ガ澤
山出ルトコロデアリマス、又石材ナドモ庭石ノ守屋石トカ、或ハ高島硯、或ハ炭、材木等
ニ付テ非常ニ物產ノ豐富ノ場所デアリナガラ、僅ニ大湖汽船會社ノ寄港シマスバカリデ
アリマスカラ、一朝風波ノアリマシタ場合ニハ、港ニ積堆スルトコロノ貨物ト云フモノハ非
常ナモノデアッテ、人民ガソレガタメニ難澁スルト云フコトハ實ニ想像以外ノモノデアルノ
デアリマス、又此ノ如キ處デゴザイマスカラ、之ニ汽車ヲ著ケテ其物產ヲ開發スルト云フ
コトニ付テハ是非シテ戴カナケレバナラヌト思フノデゴザイマス、又其沿道ノ景色ニ於キマ
シテモ西近江路ハ極ク景色ニ富ンダ處デゴザイマシテ、唐崎ナリ、坂本ナリ、堅田ナリ、
近江舞子ト言ハレテ居リマス小松濱ナリ、藤樹書院ナリ、イロ〓〓名所ガ澤山アル、而
シテ其名所ハ不便ナタメニ誰モ往ク人ハナイノデアリマス、僅ニ小口ノ唐崎ト坂本ダケハ
近頃外國人ガ大分往クヤウニナリマシテ、其落シテ往ク金モ澤山アリマス、若シ此鐵道
ヲ作リマスレバ滋賀縣ノ西近江路ノ風景ト云フモノハ非常ニ世界各國ニ鳴響クダラウト
思ヒマス、是ガ第一ノ本鐵道ヲ敷設シナケレバナラヌ理由デアル、次ニ軍事上ノ關係デ
ゴザイマスガ、此高島郡ニハ響庭野ト云フ野原ガゴザイマシテ、是ハ關西唯一ノ砲兵演
習地ニナッテ居ル、ソレデ關西地方ノ陸軍ノ砲兵ハ大抵此處デ演習スルコトニナッテ居
ル、又此鐵道ニ依シテ十六師團ト敦賀旅團トノ聯絡ヲ付ケル上ニ於テ、極ク必要デアッ
テ、軍事上カラ云ウテモ此鐵道ハ必要デゴザイマス又交通運輸ノ〓カラ言ヒマシテモ、
唯今敦賀港ニ出入致シマス貨物ハ、大阪デ集散ヲシテ居ル此途ハ湖東線ヲ囘リマス
ト、丁度二十哩近クナルノデアリマス、此三〓ニ於キマシテ、是ハ今日マデ捨置クベキ線
路デハナイノデアッテ、是非敷設シナケレバナラヌ線路デアル、昨年モ本議會ニ建議ヲ致
シマシテ是ガ通過致シテ居リマス、又請願モ貴衆兩院ヘ出シマシタガ通過致シテ居ッタノ
デアル、政府ハ之ヲ容レマシタセイカ、本年ノ鐵道網ノ中ニハ豫想線トシテ載セラレタノ
デアル、豫想線デハマダ少シ物足リナイノデ、進ンデ此敷設法中ニ入レテ貰ヒタイト云フ
希望ヲ以テ此案ヲ提出致シマシタ、此線路ハ昨日貴族院ハ此本案ト同樣ナ請願ヲ採
擇致シテ居リマスノデ、ドウカ直ニ御贊成アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=165
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166・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ日程二十三ノ委員ト同一ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=166
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167・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ日程第二十三ト同一委員ニ付託スルコトニ御異議
ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=167
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168・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ其通リ決シマス、日程第二十五ハ提出
者ヨリ都合ニ依ッテ延期ノ申出デガアリマス、延期ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=168
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169・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ延期致シマス、日程第二十六、地租條
例中改正法律案、第二十七、明治四十一年法律第三十七號中改正法律案共ニ
提出者ヨリ都合ニヨリ延期ノ申出ガアリマス、延期ニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=169
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170・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ延期致シマス、日程第二十八、鐵道敷
設法中改正法律案提出者村上先君外一名提出、第一讀會ノ續、理事村上先君
第二十八鐵道敷設法中改正法律案(村上第一讀會ノ續(那須賀美
先君外一名提出)報告
〔村上先君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=170
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171・村上先
○村上先君 本案ノ特別委員長渡邊君ハ事故〓席デゴザイマスカラ本員ガ代ッテ報
告致シマス、本案ノ原案ハ鐵道敷設法中ノ第二條第一項奧羽線ノ部三號ノ次ニ巖
手縣下大船渡ヨリ花卷ニ到ル鐵道ト云フ獨立ノ一項ヲ加ヘルト云フ原案デアリマス、
所ガ段々審議ノ結果、政府ニ於キマシテハ獨立シテ追加スルコトニハ同意ハ出來ナイト
云フコトデアリマスノデ、ソレヲ第四號ノ下ニ「又ハ巖手縣下大船渡ヨリ花卷ニ到ル鐵
道」ト云フコトニ致シタノデゴザイマス、之ニ向ッテハ政府モ喜ンデ同意致シマシタカラ、ド
ウカ滿場一致ヲ以テ本案ノ通過セラレンコトヲ希望致シマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=171
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172・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ決定セ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=172
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173・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シテ委員長報〓
通リト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=173
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174・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ直ニ二讀會ヲ開キ議案全部ヲ議題ニ供
シマス
鐵道敷設法中改正法律案確定議
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=174
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175・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ三讀會ヲ省略シテ本案ハ委員
長報告通リ可決致シマス、日程第二十九、第三十ハ都合ニ依リ提出者ヨリ延期ノ申
出ガアリマス延期ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=175
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176・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ延期致シマス、日程第三十一、伏木港
ニ於ケル海陸連絡ニ關スル建議案、議案ノ朗讀ハ省略シマス、提出者上埜安太郞君
第三十一伏木港ニ於ケル海陸連絡ニ關スル建議案(上埜安
太郎君提出)
伏木港ニ於ケル海陸連絡ニ關スル建議案
伏木港ニ於ケル海陸連絡ニ關スル建議
政府ハ北陸線髙岡驛ヨリ伏木港ニ達スル鐵道ノ連絡ヲ完全ナラシムル爲速ニ調査
ヲ遂ケ相當ノ方法ヲ取ラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔上埜安太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=176
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177・上埜安太郎
○上埜安太郞君 諸君、此建議案ハ日本海ニ於ケルトコロノ伏木港ヨリ北陸線ノ高
岡驛ニ達スル連絡線ヲ完全ニシタイト云フ趣意デアリマス、諸君モ御承知ノ通リ伏木
港ハ北陸道ニ於ケルトコロノ唯一ノ港デアリマシテ、物資集散ノ豐富ナルコトハ此右ニ出
ルモノハナイノデアリマス、而シテ北海道ハ從來ヨリ密接ナル關係ヲ有シテ居リマスルノミ
ナラズ、露領浦鹽及朝鮮ノ北道ノ沿岸ノ諸港トハ唯一葦帶水ヲ隔ツルノミデアリマス、
此ノ如キ關係カラ致シマシテ、將來ハ益〓此伏木ノ海運事業ト云フモノハ發展スル見込
ガアルノデアリマス、又陸ニ於キマシテハ彼ノ飛越ノ橫斷線ノ計畫ガ既ニ成ラントシテ居
リマス、又泊直江津間ノ全通モ明年度ニ迫ッテ居ル有樣デアリマシテ、此泊直江津間
ノ開通ガ出來マスルナラバ、長野新潟ニ於ケル物產ノ如キハ冬期ニ至リマスルナラバ多ク
此鐵道ニ依ッテ、伏木ニ向ッテ外ニ出デントスルデアラウト想像スルノデアリマス、斯ウ云フ
場合デアリマスルカラ、政府ニ於カレテモ伏木港ニ修築ト云フコトニハ意ヲ用井ラレマシテ、
數年前ヨリ此修築ニ力ヲ盡サレマシテ現ニ二千噸內外ノ船ハ港ヘズン〓〓入ルコト
ニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ又昨年ノ追加豫算ニ於テ四十万圓餘ノ追加豫算ヲ提
出セラレマシテ、今ヤマダ其修築ノ效果ヲ舉ゲルコトニ努メテ居ラルヽヤウナ有樣ニナッテ
居ルノデアリマス、偖テ伏木ト云フモノハ此ノ如ク見込ガアル、伏直ノ聯絡ノ出來ル此
場合ニ當ッテ獨リ此伏木ノ港ト北陸線ノ聯絡致シマス所ニハ眇タル一私立會社ガ此聯
絡ヲシテ居ルノデアリマス、此私立會社ハ甚ダ粗末ナル鐵道デアリマシテ、「レール」ノ如
キハ漸ク三十五磅デアリマス、輕便鐵道ヨリモ甚シイノデアリマス、一昨年皇太子殿下
御行啓ニナッタ折ノ如キハ、危險ト云フコトデアッテ、遂ニ會社ガ修築スルコト能ハズシ
テ、地方稅カラ多大ナル補助ヲ與ヘマシテ漸ク修築ヲシタ位ノ有樣デアッテ、實ニヒドイ
鐵道デアリマス、此間ヲ此鐵道デ海陸ノ聯絡ヲスルコトハ到底將來出來得ラレヌコトデ
アリマス、ドウカ政府ハ速ニ調査ヲナシテ、此高岡驛ヨリ伏木港ニ達スルトコロノ海陸ノ聯
絡ニハ十分ナル設備ヲナスコトヲ注意セラレンコトヲ望ム次第デアリマス、ドウカ此案ハ委
員會ニ附シマシテ十分御審査アランコトヲ希望致シマス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=177
-
178・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ議長指名ノ九名ノ委員ニ付託アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=178
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179・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ議長指名ノ九名ノ委員ニ付託スルコトニ御異議ハ
アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=179
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180・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ其通り決シマス、日程第三十二、區裁
判所事務開始ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、委員長吉植庄一郞君
第三十二區裁判所開始ニ關スル建議案(稻村辰(委員長報告)
次郞君外一名提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=180
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181・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 此席カラ報告致シマス、此建議案ハ千葉縣佐倉ニ於ケル區裁判
所ヲ開始シテ貫ヒタイト云フ建議デアリマシテ、昨年モ議會ヲ通過シテ居リマス、本年ハ
政府ニ於テモ同意デアッテ、近キ將來ニ議院ノ希望スル如ク區裁判所開始ヲ遂ゲヤウト
云フ答辯デアリシタ、唯一囘開會致シマシタノミニシテ、滿場一致ヲ以テ提案ヲ贊成致
シマシタ譯デアリマス、ドウゾ滿場ノ御同意ヲ願ヒマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=181
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182・菅原傳
○菅原傅君 本案ハ委員長報告通リ確定セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=182
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183・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=183
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184・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ本建議案ハ委員長ノ報告通リ可決確定
致シマス、日程第三十三、乃至第三十六ハ同一委員ニ付託セラレタル議案ナルニ依リ
併セテ委員長ヨリ報告ヲ致サセマス、委員長渡邊修君代理村上先君
第三十三鐵道速成ニ關スル建議案(渡邊修君外(委員長報告)
八名提出)
第三十四鐵道速成ニ關スル建議案(村上先君外(委員長報告)
一名提出)
第三十五鐵道速成ニ關スル建議案(河野郁太郞(委員長報告)
君提出)
第三十六上越鐵道敷設ニ關スル建議案(武藤金(委員長報告)
吉君外四名提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=184
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185・村上先
○村上先君 本員ガ代ッテ報告ヲ致シマス、日程第三十三ノ鐵道速成ニ關スル建議
案、之ハ香川縣下多度津ヨリ愛媛縣下今治ヲ經テ松山ニ到ル鐵道デアリマス之二
對シマシテハ政府ハ四十五年度ニ於テ之ヲ實行スルコトハ約束ハ出來ナイガ、成ルベク
速ニ此計畫ヲスルト云フコトデアリマシタ、ソレカラ日程第三十四、ヤハリ鐵道速成ニ關
スル建議案、之ハ第一號ノ巖手縣下黑澤尻ヨリ秋田縣下橫手ニ到ル鐵道ニ對シテハ
旣ニ本院ニ於テ鐵道敷設法中ノ比較線ノ追加ノ法律案ガ決定ニナリマシテ、唯今貴
族院ニ囘ッテ居リマス、第二號ノハ先刻決定ニナリマシタ鐵道敷設法ニ依リマシテ比較
線ガ追加ニナリマシタ、ソレデ此文章ヲ御手許ニ囘シテ置キマシタル如クニ、最モ穩當ニ
修正ヲ致シマシテ決議致シマシタ、ソレカラ日程第三十五、此鐵道モヤハリ是ハ能ク御
承知ノ如ク山陽線三田尻ヨリ山陰総貫豫定線山口縣下阿武郡地福地方ニ接續ス
ル鐵道、政府モ之ニ對シマシテハ成ルベク調査ノ上、其意見ヲ決定スルト云フコトデゴザ
イマシタノデ、是又原案ノ通リ決シマシタ、ソレカラ次ハ日程ノ三十六、上越鐵道、此
鐵道ハ群馬縣ノ高崎ヨリ新潟縣ノ長岡ニ通ズル鐵道デゴザイマス、是ハ鐵道線路網ニ
於キマシテハ官線ノ豫定線ニナッテ居リマス、之ニ對スル政府ノ所見ハ成ルベク四十四
年度中ニ於テ審査ヲ遂ゲテ、將來ニ向ッテ相當ノ施設ヲ爲シ、而シテ是ハ幹線ノ豫定
線デアリマスカラ、將來共ニ私有鐵道ハ許可セヌ、斯ウ云フコトデゴザイマシテ、是モヤハ
リ滿場一致ヲ以テ原案ノ通リ可決シマシタ、以上報告ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=185
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186・菅原傳
○菅原傳君 唯今報告ニナリマシタ四案共ニ委員長ノ報告通リ確定セラレンコトヲ望
ミマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=186
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187・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程ノ第三十三、鐵道速成ニ關スル建議案、渡邊修君
外八名提出、日程第三十四、鐵道速成ニ關スル建議案、村上先君外一名提出、日
程第三十五、鐵道敷設ニ關スル建議案、河野都太郞君提出、日程第三十六、上越
鐵道敷設ニ關スル建議案、武藤金吉君外四名提出、卽チ此四案共ニ委員長ノ報告
ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=187
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188・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ委員長ノ報告通リ確定致シマス、御諮ヲ
致シマス、議員森肇君ヨリ病氣ニ付、明三日ヨリ九日間、矢島中君ヨリ病氣ニ付、明
三日ヨリ十日間、各〓請暇ノ願出ガアリマス、許可シテ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=188
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189・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ許可スルコトニ致シマス、諸般ノ報告ヲ致シ
マス
〔書記朗讀〕
一今二日桂内閣總理大臣ヨリ左ノ通リ政府委員任命相成タル旨ノ通牒ヲ受領セ
リ
內務省參事官湯淺倉平
內務省所管事務政府委員被仰付
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
鐵道敷設法中改正法律案
提出者中村啓次郞君山口熊野君神前修三君
一塚田啓太郞君ヨリ貴族院令第六條ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=189
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190・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 議長ニ委託サレタ委員ノ氏名ハ公報ヲ以テ御通知致シマ
ス、次囘ノ議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是ニテ散會
午後六時一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01819110302&spkNum=190
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