1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治四十四年三月七日(火曜日)午後一時九分開議
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議事日程 第十八號 明治四十四年三月七日
午後一時開議
質問
一 米國官憲の在布邦人に加へたる不法行爲に關する質問(千田軍之助君提出)
二 危險思想防止策に關する質問(村松恒一郎君提出)
三 正金銀行營業業務監督に關する質問(水野正巳君提出)
四 言論出版の自由及藝術の取締に關する質問(關和知君提出)
五 所得税法中改正法律案不提出に關する第三質問(守屋此助君提出)
六 藥品取締に關する質問(綾部惣兵衞君提出)
七 貴族院令第六條に關する質問(塚田啓太郎君提出)
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第一 電氣事業法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第三 大藏省預金部の利益金を一般會計に繰入るる件に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第五 執達吏手數料規則中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第七 關税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第九 賣藥税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十一 砂糖消費税織物消費税等の徴收に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十三 朝鮮事業公債法案(政府提出) 第一讀會の續
第十四 朝鮮事業公債金特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續
第十五 朝鮮鐵道用品資金會計法案(政府提出) 第一讀會の續
第十六 明治四十三年勅令第三百二十六號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第十七 明治四十三年勅令第三百二十七號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第十八 明治四十三年勅令第三百二十八號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第十九 明治四十三年勅令第三百二十九號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第二十 明治四十三年勅令第三百三十號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第二十一 明治四十三年勅令第三百三十一號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第二十二 明治四十三年勅令第三百三十三號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第二十三 明治四十三年勅令第三百三十六號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第二十四 明治四十三年勅令第三百三十七號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第二十五 明治四十三年勅令第三百三十八號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第二十六 明治四十三年勅令第四百六號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第二十七 朝鮮に施行すべき法令にする法律案(花井卓藏君提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十八 不動産登記法中改正法律案(政府提出貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十九 在外指定學校職員退隱料及遺族扶助料法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十 市町村立小學校教員退隱料及遺族扶助料法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十一 府縣立師範學校長俸給竝公立學校職員退隱料及遺族扶助料法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十二 帝國學士院學術奬勵金特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委長長報告)
第三十三 會計檢査院法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委長長報告)
第三十四 朝鮮總督府鐵道及通信官署に於て取扱ふ現金の出納に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委長長報告)
第三十五 北海道鐵道敷設法中改正法律案(小橋榮太郎君提出) 第一讀會
第三十六 普通選舉に關する法律案(日向輝武君外二十一名提出) 第一讀會
第三十七 地租條例中改正法律案(大西五一郎君提出) 第一讀會
第三十八 明治四十一年法律第三十七號中改正法律案(大西五一郎君提出) 第一讀會
第三十九 明治四十一年法律第三十七號中改正法律案(熊本壽人君外三名提出) 第一讀會
第四十 鐵道敷設法中改正法律案(中村啓次郎君外三名提出) 第一讀會
第四十一 水道條例中改正法律案(粕谷義三君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十二 刑の執行猶豫に關する法律案(木村格之輔君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十三 輕便鐵道法中改正法律案(吉植庄一郎君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十四 鐵道敷設法中改正法律案(吉田虎之助君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十五 御歴世 宮趾保表に關する建議案(八木逸郎君外二名提出)
第四十六 名所舊蹟古墳墓保護に關する建議案(八木逸郎君外二名提出)
第四十七 臺南水道敷設に關する建議案(村上先君外三名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=0
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001・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
大藏省預金部ノ利益金ヲ一般會計ニ繰入ルル件ニ關スル法律案
執達吏手數料規則中改正法律案
(第二號)明治四十四年度歲入歳出總豫算追加案
(特第一號)明治四十四年度特別會計歲入歳出豫算追加案
(第三號)明治四十四年度歲入歳出總豫算追加案
(特第二號)明治四十四年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
關稅法中改正法律案
賣藥稅法中改正法律案
砂精消費稅織物消費稅等ノ徵收ニ關スル法律案
韓國鐵道會計所屬資金ノ繰入ニ關スル法律案
司法事務共助法案
明治三十九年法律第三十一號中改正法律案
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
臺南水道敷設ニ關スル建議案
提出者村上先君中村啓次郞君山本悌二郞君
齋藤珪次君
東京市借地法案
提出者高木益太郞君卜部喜太郞君
鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者三浦盛德君高橋嘉太郞君村上先君
遠藤良吉君齋藤二郞君福井三郞君
前參議司法卿江藤新平表彰ニ關スル建議案
提出者尾崎行雄君犬養毅君森久保作藏君
柴四朗君川原茂輔君的野半介君
大竹貫一君
東京市ニ關スル法律案
提出者尾崎行雄君鳩山和夫君森久保作藏君
渡邊勘十郞君原田十衞君
東京市ニ關スル法律案
提出者福田又一君關直彥君高木益太郞君
肥塚龍君稻茂登三郞君松下軍治君
江間俊一君
人工降雨試驗ニ關スル建議案
提出者早川龍介君
日本海員掖濟會國庫補助金增額ノ建議案
提出者高橋光威君井上敏夫君安藤新太郞君
戶水寛人君
一貴族院ハ本院ノ送付ニ係ル左ノ議案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)
一左ノ議案ニ對シテハ第二讀會ヲ開カサルコトヲ議決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領
セリ
鐵道敷設法中改正法律案(衆第二九號)(本院提出)
鐵道敷設法中改正法律案(衆第三六號)(本院提出)
鐵道敷設法中改正法律案(衆第四六號)(本院提出)
鐵道敷設法中改正法律案(衆第四七號)(本院提出)
一鈴木力君ヨリ朝鮮民團議員任期延長ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
一根本正君ヨリ領事館設置ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
一吉田虎之助君ヨリ淡水產漁業奬勵ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
一決算委員ノ補缺選舉ニ左ノ通リ當選セラレタリ
第一部決算委員木戶豐吉君
一多木条次郞君ハ第二十七議會ニ對スル歲費辭退ノ旨屆出タリ
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
一去二日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
市制改正法律案外一件
尾崎行雄君齋藤珪次君鷲太郞君
戶狩權之助君村上先君高度總誌光威君
〓〓困〓土三郞君菊池侃二君修三君
上英君世良靜一君中前定
古賀庸藏君中倉万次郞君野藏田神原惟郭
日野國明君福田又一君添宗三君 君 君 君 君 若
久保田與四郞君石田仁太郞君濱田
江間俊一君荒川五郞君税等92
安東敏之君田川大吉郞君花井卓藏君
在外指定學校職員退隱料及遺族扶助料法中改正法律案外三件
小山田信藏君粕谷義三君西澤定吉君
松田吉三郞君川村嘩君井上僖作朗君
富島暢夫君庄野金十郞君三土忠造君
坂元英俊君高木正年君鹿島秀麿君
倉光藤太君首藤陸三君荒川玉子.
奧田柳藏君神藤才一君井阪別途中
樺太ニ於ケル漁業免許ノ取消及漁業料ノ徵收ニ關スル法律案
川原茂輔君遠藤良吉君高原篤行君
高橋直治君丹尾賴馬君木村格之輔君
關矢橘太郞君小橋榮太郞君大竹貫一君
問島ニ於ケル領事官ノ裁判ニ關スル法律案
三浦覺一君橋本久太郞君坪田十郞君
川崎安之助君黃金井爲造君村松龜一郎君
佐々木安五郞君大內暢三君淺羽靖君
輕便鐵道法中改正法律案外一件
武市庫太君伊東祐賢君森茂生君
安藤新太郞君吉田虎之助君武田貞之助君
藤井善助君小河源一君松本恆之助君
伏木港ニ於ケル海陸連絡ニ關スル建議案
上埜安太郎君筏井甚吉君米田穰君
澤田佐助君古井由之君佐藤貞雄君
高橋文質君近江谷榮次君堀谷左治郞君
一明治四十三年勅令第三百二十四號(承諾ヲ求ムル件)外十二件委員西山彰
君渡邊千冬君辭任ニ付キ其補闕トシテ山口熊野君富安保太郞君ヲ議長ニ於テ
選定セリ
一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
市制改正法律案外一件委員會
-長島鷲太郞君
委員長尾崎行雄君理事高橋光威君
日野國明君
在外指定學校職員退隱料及遺族扶助料法中改正法律案外三件委員會
委員長三土忠造君理事富島暢夫君
井阪光暉君
樺太ニ於ケル漁業免許ノ取消及漁業料ノ徵收ニ關スル法律案委員會
委員長川原茂輔君理事高橋直治君
輕便鐵道法中改正法律案(吉植庄一郞君外二名提出)外一件委員會
委員長小河源一君理事吉田虎之助君
間島ニ於ケル領事官ノ裁判ニ關スル法律案委員會
委員長橋本久太郞君理事三浦覺一君
伏木港ニ於ケル海陸連絡ニ關スル建議案委員會
委員長上埜安太郞君理事米田穰君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=1
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002・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 會議ヲ開キマス、御諮ヲ致シマス、宮內翁助君ヨリ眼病
ニ付、去ヌル四日ヨリ二週間、阪口仁一郞君ヨリ病氣ニ付、昨六日ヨリ十日間、太田
〓藏君病氣ニ付、昨六日ヨリ二週間、各〓請暇ノ願書ガアリマス、許可シテ御異議ハ
アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=2
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003・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ許可スルコトニ致シマス、去ル二日日野
君ノ發議ニ對シテ御答ヲ致シテ置キマス、先月十四日長晴登君ノ提出セラレタル動議
ハ當日ノ議場デ本職ノ朗讀シタル通り「守屋君ノ發言ハ議院法第四十八條ニ依リ
提出スベキモノニシテ、此場合ニ於テ許可スベキモノニアラズ、長晴登」ト云フノデアリマ
ス、是ガ卽チ最後ノ決議案デアッテ、速記錄ニモ明記シテアリマス、尤モ長晴登君ノ發言
中ニハ單ニ守屋君ガ質問トシテ提出シタルヲ咎ムルガ如キ口調モアリマスケレドモ、其決
議案、卽チ成文ノ動議ヲ見マスレバ、其爭フトコロノモノハ名稱デナクシテ演說ノ實質ニ
アリト認メネバナリマセヌ、之ヲ要スルニ議長ハ當該問題ニ直接ノ關係アルモノハ其何等
ノ言葉ヲ用ユルヲ問ハズ、從來ノ慣例ニ依リテ之ヲ許可スルコトニ致シ、而シテ其當該
問題ニ直接ニ關聯セザルモノハ何等ノ言葉ヲ用ユルニ拘ラズ、議院法第四十八條ニ依
ルベキモノトスル考デアリマス、過日中川君ノ質問ト云ハレタニモ拘ラズ、之ニ發言ヲ許
可シマシタノハ、右ノ理由ニ基キ、衆議院規則ノ所謂質疑ト認メタカラデアリマス、此段
御答ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=3
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004・日野國明
○日野國明君 本員ノ去ル二日ニ於ケル質問ニ對シマシテ、唯今議長ヨリ詳細ナル
御答ヲ得マシタガ、其中先月十四日ノ議場ニ於ケル長君ノ動議ノ趣旨ニ關シマシテハ、
多少議長ト本員トハ見ルトコロヲ異ニスル〓ナキニシモアラズデアリマスガ、後段ノ議長ノ
御言明、卽チ當該問題ニ關シテハ如何ナル言葉ヲ用ユルトモ、發言ヲ許スト云フ言葉
ハ丁度當日ノ議場ニ於テ私共同士ノ主張シタトコロト同樣デアリマス、私ハ英斷アル議
長ノ此御辯明ニ付テ滿足ヲ致シマス
〔「贊成ト」呼フ者アリ、拍手スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=4
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005・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本日ノ議事日程ニ揭ゲテアリマス質問ノ第一ヨリ第七マデ
ハ、各〓提出者ヨリ延期ヲ申出ラレマシタカラ、是ハ延期致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=5
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006・井上角五郎
○井上角五郞君 是カラ豫備金支出外四件委員會ヲ開カウト思ヒマス、免角委員
會ニ出席致シマセヌガ、此問題ハ貴族院ヘ早ク送ルベキ必要モアルノデアリマスカラ、特
ニ唯今カラ開キマスニ付テ委員諸君ノ委員會ニ御出下サルコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=6
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007・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 此場合議長ヨリモ御注意ヲ滿場ノ諸君ニ致シテ置キマス、
追~委員會ニ委員ノ出席ガナクシテ流會ニナルヤノコトヲ委員課長等ヨリノ申出モゴザ
イマスカラ、閉期切迫ノ場合各〓勉メテ出席ニナランコトヲ御注意致シマス-日程第
一電氣事業法案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス-後藤遞信大
臣
第一電氣事業法案(政府提出)第一讀會
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス以下之ニ傚フ〕
電氣事業法案
電氣事業法
第一條本法ニ於テ電氣事業ト稱スルハ左ニ揭クルモノヲ謂フ
一一般ノ需用ニ應シ電氣ヲ供給スル事業
二一般運送ノ用ニ供スル鐵道又ハ軌道ノ動力ニ電氣ヲ使用スル事業
第二條本法ニ於テ電氣工作物ト稱スルハ電氣ノ供給又ハ使用ノ爲施設ス
ル水路、貯水池、器具機械、電線路及其ノ他ノ工作物ニシテ電氣事業ノ
用ニ供スルモノヲ謂フ
前項ニ於テ電線路ト稱スルハ電氣ノ傅送ニ用井ル電氣導體及之ヲ支持シ
又ハ保藏スル工作物ヲ謂フ
第三條電氣事業ヲ營マムトスル者ハ勅令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ
外主務大臣ノ許可ヲ受クヘシ
第四條電氣事業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受ケタル後
ニ非サレハ工事ニ著手シ又ハ電氣工作物ノ使用ヲ爲スコトヲ得ス
第五條電氣事業者ハ主務大臣ノ指定スル期間內ニ其ノ事業ヲ開始スヘシ
主務大臣ハ正當ノ事由アリト認ムル場合ニ限リ前項期間ノ伸長ヲ許可ス
ルコトヲ得
電氣事業者指定ノ期間內ニ事業ヲ開始セサルトキハ電氣事業ノ許可ハ其
ノ效力ヲ失フ
第六條第一條第一號ノ電氣事業者ハ料金其ノ他電氣供給ノ條件ヲ定メ主
務大臣ノ認可ヲ受クヘシ之ヲ變更セムトスルトキ亦同シ
第七條電氣事業者ハ電氣工作物ノ施設ニ關スル測量又ハ工事ノ爲必要ア
ルトキハ他人ノ土地ニ立入ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ豫メ行政官廳ノ
許可ヲ受ケ且少クトモ五日間ニ市町村長ニ通知シ市町村長ハ之ヲ告示シ
又ハ其ノ旨土地ノ占有者ニ通知スヘシ
電氣事業者ハ電氣工作物ノ修理又ハ巡視ノ爲必要アルトキハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ其ノ工作物ヲ施設セル他人ノ土地又ハ建造物ニ立入ルコトヲ
得但シ日沒ヨリ日出迄ノ間ニ於テハ危險急迫ノ場合ニ非サレハ占有者ノ
意ニ反シテ邸宅其ノ他建造物ニ立入ルコトヲ得ス
第八條電氣事業者ハ電線路ノ施設及保守ニ障害ヲ及スヘキ竹木其ノ他ノ
植物ヲ伐除又ハ移植スルノ必要アル場合ニ於テ其ノ所有者ト協議調ハス
又ハ協議ヲ爲スコト能ハサルトキハ行政官廳ノ許可ヲ受ケ之ヲ伐除シ又
ハ移植スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ電氣事業者ハ豫メ其ノ旨所有者ニ
通知スヘシ
危險急迫ノ場合ニ於テハ電氣事業者ハ前項ノ規定ニ拘ラス直ニ竹木其ノ
他ノ植物ヲ伐除又ハ移植スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ遲滯ナク其ノ旨
行政官廳ニ屆出テ且其ノ所有者ニ之ヲ通知スヘシ
第九條電氣事業者ハ河川、橋梁、溝渠、道路、堤防其ノ他公共ノ用ニ供セ
ラレタル土地ノ地上又ハ地中ニ電線路ヲ施設スル必要アルトキハ其ノ效
用ヲ妨ケサル限度ニ於テ管理者ノ許可ヲ受ケテ之ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ電氣事業者ハ管理者ノ定ムル所ニ依リ使用料ヲ納ム
ヘシ
管理者タル地方行政廳ニ於テ正當ノ事由ナクシテ第一項ノ許可ヲ拒ミタ
ルトキ又ハ管理者ノ定メタル使用料ノ額ヲ不相當ナリトスルトキハ主務
大臣ハ電氣事業者ノ申請ニ依リ使用ヲ許可シ又ハ使用料ノ額ヲ定ムルコ
トヲ得
第十條電氣事業者ハ必要アルトキハ現在ノ使用方法ヲ妨ケサル限度ニ於
テ他人ノ地上ノ空間若ハ地中ニ電線路ヲ施設シ又ハ建造物ノ存在セサル
他人ノ土地ニ電線ノ支持物ヲ建設スルコトヲ得
電氣事業者前項ノ規定ニ依リ他人ノ土地ヲ使用セムトスル場合ニ於テ其
ノ所有者及占有者ト協議調ハス又ハ協議ヲ爲スコト能ハサルトキハ其ノ
使用ノ範圍ヲ定メ豫メ地方長官ノ許可ヲ受ケテ其ノ工事ニ著手スルコト
ヲ得此ノ場合ニ於テハ少タトモ五日前ニ其ノ旨土地ノ所有者及占有者ニ
通知スヘシ
第十一條電線路ヲ施設シタル土地ノ近接地又ハ前條ニ依リ電線路ヲ施設
シタル土地ノ所有者又ハ占有者ハ土地ノ使用方法ヲ變更スル爲必要アル
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ電氣事業者ニ對シ障害ノ豫防又ハ除却ニ必
要ナル方法ヲ施スコトヲ請求スルコトヲ得
前項ノ工事ニ要スル費用ハ電氣事業者ノ負擔トス但シ其ノ工事ヲ爲シタ
ル後正當ノ事由ナクシテ豫定ノ變更ヲ爲ササルトキハ請求者ノ負擔トス
第十二條第七條、第八條及第十條ノ場合ニ於テ現ニ生シタル損失ハ電氣
事業者之ヲ補償スヘシ
前項ノ補償金額ハ許可ヲ爲シタル行政官廳ニ於テ之ヲ裁定ス裁定ニ不服アル
者ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
行政官廳ハ必要ト認ムルトキハ電氣事業者ヲシテ損失ノ補償ニ充ツヘキ
金額ヲ供託セシムルコトヲ得
第十三條電氣事業者ハ地中電氣工作物ヲ施設スル場合ニ於テ他人ニ屬ス
ル地中電氣工作物ノ位置ヲ變更スル必要アルトキハ當該工作物ノ效用ヲ
妨ケサル限度ニ於テ其ノ位置ヲ變更シ又ハ其ノ工作物ノ所有者ヲシテ其
ノ變更ヲ爲サシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ主務大臣ノ許可ヲ受クヘシ
第十四條主務大臣ハ工事上已ムヲ得スト認メタル箇所ニ限リ電氣事業者
ニ對シ電線路ノ共用ヲ命スルコトヲ得
第十五條電氣工作物相互間及電氣工作物ト其ノ他ノ工作物トノ間ニ於ケ
ル障害ヲ妨止スル爲必要ナル施設ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條前三條ニ依ル工事ニ關スル費用ノ負擔其ノ他ノ條件ハ命令ヲ以
テ定ムルモノノ外當事者間ノ協議ニ依ル協議調ハサルトキハ主務大臣之
ヲ裁定ス
第十七條第一條ニ揭クルモノノ外電氣ヲ供給又ハ使用スル事業ニ關シテ
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本法ノ規定ヲ準用スルコトヲ得
第十八條電氣工作物ヲ損壞シ之ニ物品ヲ接觸シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ
電氣ノ供給又ハ使用ヲ妨害シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰
金ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十九條電氣事業者ノ承諾ヲ得スシテ濫ニ電氣工作物ノ施設ヲ變更シタ
ル者ハ二百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第二十條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ許可又ハ認可ヲ受ケテ
爲スヘキ行爲ヲ許可又ハ認可ヲ受ケスシテ爲シタル者ハ千圓以下ノ罰金
ご飯人
第二十一條電氣事業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業者
ニシテ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルト
キハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
第二十二條明治三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル
命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ電氣事業ヲ營ム者又ハ本法施行前ニ於テ電氣事業經營ノ
許可ヲ受ケタル者ハ第三條ニ依リ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
(遞信大臣男爵後藤新平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=7
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008・後藤新平
○遞信大臣(男爵後藤新平君) 玆ニ提出ニナリマシタ電氣事業法案ニ對シマシテ、
提出ノ理由ヲ一言致シテ置キマス、此電氣事業ハ我帝國ニ於キマシテモ、近年驚クベ
キ發達ヲ見ルニ至リマシテ、社會公衆ノ利害ニ關シテ、此發達ノ如何ニ密接ノ關
係アルカハ辯ヲ俟タナイ次第デアリマス、而シテ發電力ハ五十九万一千餘ノ「キロワット」
ニ達シテ居リマス、是ハ今後ニ於テ尙發達スベキ狀勢デアルト云フコトハ、申スマデモナイ
コトデアリマス、之ニ對シマシテ今日マデ法令ノ備ハラザルモノアッテ、保護監督ノ法未ダ
全キヲ得ナイ次第デアリマス、然ルニ此電氣事業ナルモノハ列國ニ於キマシテモ之ニ關ス
ル法令ヲ定メ、保護監督ノコトヲ怠ラヌヤウニナッテ、益〓之ヲ努メテ居ル次第デアリマス
カラ、此狀勢ニ照シテモ本法ヲ制定スルノ必要ナルコト言ヲ俟タナイ次第デアリマス、昨
年旣ニ本案ヲ提出致シマシタガ、不幸ニシテ成立ヲ遂グルコトノ出來ナイ經過ヲ得タノ
デアリマス、爾來該事業ノ實況ハ該法案ノ必要ヲ甚ダ急ナル狀態デアリマスカラ、玆ニ
又再ビ提出致シマシタ、愼重審議ノ上ニ協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=8
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009・才賀藤吉
○才賀藤吉君 遞信大臣ニ質問ガアリマスガ、本提出案ハ昨年ノ委員會ニ於テ修正
ヲ致シマシタモノヲ今度提出サレマシタコトハ吾〓當時ノ委員トシテ頗ル滿足スルトコロ
デアリマス、併ナガラ第六條ヲ又更ニ此處ニ揭ゲルコトハドウ云フ理由デアリマスカ、其他
詳シイコトハ又他ノ委員會等デ質問モアリマセウガ、本案ノ骨子タル第六條ノ理由ヲ少
シ承リタイト思ヒマス
〔遞信大臣男爵後藤新平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=9
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010・後藤新平
○遞信大臣(男爵後藤新平君) 本案ノ第六條ハ政府ニ於テ最モ必要ナル條項ト認
メテ居リマスル、此精神ハ政府ニ於テハ重要ナルモノト考ヘテ其當時ニ於テモ政府ハ之
ヲ行政ノ監督上捨ツベカラザルモノト認メテ居ッタノデアリマス、而シテ今日ニ於テモ其精
神ハ尙必要ナルモノト認メテ居リマス、ソレ故ニ本案ノ通リ提出致シタ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=10
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011・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第二、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=11
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012・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ議長指名十八名ノ特別委員ニ附託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=12
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013・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ議長指名特別委員十八名附託ニ御異議アリマセ
ヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=13
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014・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ其通リ決シマス、日程第三、大藏省預金
部ノ利益金ヲ一般合計ニ繰入ルヽ件ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀
ハ省略致シマス
(「延期スベシ」「異議ナシ」「日程第四」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=14
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015・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 政府委員ガマグ出席致シマセヌ、後囘シニ御異議アリマセ
ヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=15
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016・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ後囘シニ致シマス、日程第五、執達吏手
數料規則中改正法律案ノ一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第五執達吏手數料規則中改正法律案(政府提出)第一讀會
執達吏手數料規則中改正法律案
執達吏手數料規則中左ノ通改正ス
第二條中「五錢」ヲ「七錢」ニ改ム
第三條中「三拾錢」ヲ「四拾錢」ニ「五拾錢」ヲ「七拾錢」ニ、「七拾五錢」ヲ「壹
圓」ニ「壹圓」ヲ「壹圓參拾錢」ニ、「壹圓貳拾五錢」ヲ「壹圓六拾錢」ニ、「壹
圓五拾錢」ヲ「貳圓」ニ「貳圓」ヲ「貳圓五拾錢」ニ改メ第一項ノ次ニ左ノ一
項ヲ加フ
假差押ヲ爲シタル物ニ對スル差押ニ付テノ手數料ハ前項ノ手數料ノ半額
トス
第六條中「五拾錢」ヲ「壹圓」ニ、「拾五錢」ヲ「貳拾錢」ニ改ム
第七條中「第七百三十一條第一項ノ場合」ノ下ニ「又ハ民事訴訟法第七百三
十三條第一項ノ決定ニ基キ執行ヲ爲ス場合」ヲ加ヘ「五拾錢」ヲ「壹圓」ニ、
「拾五錢」ヲ「貳拾錢」ニ改ム
第七條ノ二前二條ノ規定ハ假處分ノ執行ノ手數料ニ之ヲ準用ス
第九條第一項但書ヲ削リ同條中「六拾錢」ヲ「八拾錢」ニ、「壹圓」ヲ「壹圓四
拾錢」ニ、「壹圓五拾錢」ラ「貳圓」ニ「貳圓」ヲ「貳圓六拾錢」ニ「貳圓五拾
錢」ヲ「參圓貳拾錢」ニ、「四圓」ヲ「五圓」ニ改ム
第十條中「三拾錢」ヲ「四拾錢」ニ改ム
第十一條中「五拾錢」ヲ「七拾錢」ニ改ム
第十四條中「貳錢五厘」ヲ「參錢」ニ改ム
第十五條中「拾錢」ヲ「拾五錢」ニ改ム
第拾六條拒絕證書ヲ作成スル場合ニ於テハ其手數料ヲ五拾錢トス若シ執
務一時間以上ニ渉ルトキハ一時間每ニ貳拾錢ヲ加フ但其執務一時間ニ滿
タサルモ一時間ト看做シテ算定ス
第十六條ノ二執行記錄其他ノ書類ノ閱覽ニ付テノ手數料ハ一囘ニ付拾錢
トス
第十六條ノ三手數料ノ定ナキ事項ニ付テハ最類似スル事項ト同一ノ手數
料ヲ受ク
第十八條中「拾錢」ヲ「拾五錢」ニ、「旅費ノ額」ヲ「旅費及宿泊料ノ額」ニ改メ
第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
執達吏其職務ヲ執行スル爲宿泊ヲ要シタルトキハ一泊ニ付壹圓貳拾錢以
下ノ宿泊料ヲ受ク
附則
木法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際未タ完結セサル事項ニ付テノ手數料及立替金ハ仍從前ノ規定
依く。
〔政府委員法學博士河村讓三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=16
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017・河村讓三郎
○政府委員(法學博士河村讓三郞君) 一應提出ノ理由ヲ述べマス、現行執達吏
手數料規則ハ明治二十三年ノ制定ニ係リマシテ、施行以來二十年餘ノ星霜ヲ閱シテ
居リマス、現今ノ社會狀態殊ニ著シク發達致シマシタル經濟狀態ニ適應セザルコトハ明
瞭デアルト信ジマスル、因ッテ本案ニ於キマシテハ執達吏ノ職務行爲ニ對シ受クベキ手數
料ヲ實際ノ狀況ニ適應セシムルタメニ相當ニ改正ヲ致シ、執行機關ノ體面ヲ保チ、事務
ヲ改善致シタイ考デアリマス、尙同時ニ曩ニ公布ニナリマシタ公證人規則ニ依リマスル
公證人ノ手數料ニ對シマシテモ、餘リ甚シキ軒輕ノナイヤウニ致シタイ、又現行ノ規則
ニハ多少不明不備ノ點モゴザイマスル、ソレヲ修補致シマシテ、其運用ヲ圓滿ニ致シタイ
ト云フ考ヲ以チマシテ、提出ヲ致シタ次第デゴザイマス、御審議ノ上御協贊ヲ顧ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=17
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018・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第六、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題
ニ致シマス
第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=18
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019・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=19
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020・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ議長指名九名ノ特別委員付託ニ御異議アリマセ
ヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=20
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021・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ其通リ決シマス、日程第七、第
九、第十一ハ大藏省所管ノ議案ナルニ依リ、一括シテ議題ト致スコトニ御異議アリマ
セヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=21
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022・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ關稅法中改正法律案、賣藥稅法中改正
法律案、砂糖消費稅織物消費稅等ノ徵收ニ關スル法律案ヲ一括シテ議題トナシ、此
第一讀會ヲ開キ議案ノ朗讀ハ省略致シマス、若槻大藏次官
第七關稅法中改正法律案(政府提出)第一讀會
第九賣藥稅法中改正法律案(政府提出)第一讀會
第十一砂糖消費稅織物消費稅等ノ徵收ニ關スル法律第一讀會
案(政府提出)
關稅法中改正法律案
關稅法中左ノ通改正ス
目錄中「囘漕」ヲ「運送」ニ改ム
第一條第二項ヲ削ル
第三條關稅ハ輸入申告ノ日ニ於テ行ハルル法規ニ從ヒ之ヲ課ス但シ保稅
倉庫ニ庫入シタル貨物ノ關稅ハ庫出ノ日、藏置期限又ハ運送期限ノ經過
ニ依リ關稅ヲ徵收スル場合ニ於テハ其ノ期間滿了ノ日ノ翌日、收容貨物
ニシテ公賣ニ付スルモノノ關稅ハ公賣ノ日第八十三條第三項ノ規定ニ
依リ關稅ヲ徵收スル場合ニ於テハ犯則ノ日ニ於テ行ハルル法規ニ從ロ之
ヲ課ス
第四條但書ヲ削ル
第七條中「貨物輸入ノ日」ヲ「之ヲ行使シ得ル日」ニ改ム
第十一條削除
第十二條中「積荷目錄」ヲ「積荷目錄又ハ運送目錄」ニ改ム
第十五條削除
第十六條船長ハ稅關長ノ認許ヲ得タル場合ノ外旣ニ提出シタル積荷目錄
ノ訂正補足ヲ爲スコトヲ得ス
第十九條削除
第二十條削除
第二十六條日沒ヨリ日出迄ノ間及稅關ノ休日ニ於テ貨物ヲ保稅地域ニ搬
入シ又ハ保稅地域ヨリ搬出セントスルトキハ稅關長ノ特許ヲ受クヘシ但
シ旅客ノ携帶品ハ此ノ限ニ在ラス
保稅地域內ニ於テ貨物ノ取扱ヲ爲サントスルトキ亦前項ニ同シ
第二十七條中「稅關ニ送致シ若ハ陸揚シタル」ヲ「保稅地域內ニ於ケル」ニ改
ム
第二十八條ニ左ノ一項ヲ加フ
外國貿易船ト沿海通航船トノ交通ハ稅關長ノ特許ヲ得タル場合ノ外之ヲ
爲スコトヲ得ス
第二十九條ノ二本法ニ於テ保稅地域ト稱スルハ稅關構內、保稅倉庫、稅
關假置場其ノ他法令ニ依リ外國貨物ヲ藏置シ得ル地域ヲ謂フ
第三十二條第二項中「異議ヲ申立テ若ハ訴願ヲ提起スルコトヲ得ス」ヲ「異
議ヲ申立ツルコトヲ得ス」ニ改ム
第三十三條削除
第三十四條中「之ヲ引取リ若ハ通過ノ爲發送スルコトヲ得ス」ヲ「之ヲ引取
ルコトヲ得ス」ニ改ム
第三十五條削除
第三十六條削除
第三十七條中「船積」ヲ「積出」ニ改ム
「第三節囘漕」ヲ「第三節運送」ニ改ム
第三十九條外國貨物ハ海路又ハ陸路ニ由リ開港間、保稅地域間又ハ開港
ト保稅地域トノ間ニ之ヲ運送スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ稅關ニ申〓
シ其ノ免許ヲ受クヘシ
前項ノ場合ニ於テ稅關ハ必要ト認ムルトキハ擔保ヲ提供セシムルコトヲ
得
第三十九條ノ二外國貨物ノ期路ニ由ル運送ハ命令ヲ以テ定メタル通路ニ
由ルヘシ
第三十九條ノ三外國貨物相當ノ期間內ニ運送先ニ到達セサルトキハ運送
申告者ヨリ關稅ヲ徵收ス但シ災害ニ因リ滅失シ又ハ稅關ノ認許ヲ得テ滅
却シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三十九條ノ四外國貨物ヲ運送セントスル場合ニ於テハ船長又ハ陸路運
送人ハ運送先ヲ異ニスル每ニ運送目錄ヲ稅關ニ提出スヘシ
船長又ハ陸路運送人ハ運送ニ關シ職務ヲ執行スル官吏ニ對シ相當ノ便宜
ヲ與フヘシ
第三十九條ノ五左ニ掲クル外國貨物ヲ海路又ハ陸路ニ由リ不開港ヨリ開
港又ハ保稅地域ニ運送セントスル場合ニ於テハ船長又ハ陸路運送人ハ稅
關官吏、稅關官吏在ラサルトキハ警察官吏ノ認許ヲ受クヘシ但シ陸路ニ
由ル運送ハ稅關官吏又ハ警察官吏ノ指定スル通路ニ由ルヘシ
一假ニ陸揚シタル貨物
二運航ノ自由ヲ失ヒタル船舶ニ積載セル貨物
三難破貨物
前項ノ貨物運送先ニ到達シタルトキハ船長又ハ陸路運送人ハ二十四時以
內ニ認許證ヲ稅關ニ提出スヘシ
第四十條內國貨物ハ外國貿易船ニ積載シ開港間ニ之ヲ運送スルコトヲ
得
前項ノ場合ニ於テハ稅關ニ申告シ其ノ免許ヲ受クヘシ
第四十一條第三十九條及前條ノ運送貨物運送先ニ到達シタルトキハ船長
又ハ陸路運送人ハ直ニ運送目錄ヲ稅關ニ提出スヘ
第四十五條第二十四條、第二十六條、第三十一條乃至第三十四條、第三十
七條乃至第三十九條ノ五第四十一條ノ規定ハ郵便物ニ之ヲ適用セス
第四十六條保稅倉庫又ハ稅關假置場ヲ除クノ外保稅地域ニ搬入シタル貨
物ヲ搬入ノ日ヨリ七日以內ニ其ノ保稅地域ヨリ撥出シ又ハ保稅倉庫ニ庫
入若ハ稅關假置場ニ移入セサルトキハ稅關ハ其ノ貨物ヲ收容スルコトヲ
得此ノ場合ニ於テ稅關ハ其ノ費用及危險ヲ負擔セス
前項ノ貨物生活力ヲ有スル動植物ナルトキ腐敗シ若ハ腐敗ノ虞アルト
キ又ハ他ノ貨物ヲ害スルノ虞アルトキハ前項ノ期間內ト雖之ヲ收容スル
コトヲ得
第四十九條前條ノ免許ヲ受ケタル日ヨリ三日以內ニ貨物ヲ保稅地域ヨリ
搬出シ又ハ保稅倉庫ニ庫入若ハ稅關假置場ニ移入セサルトキハ稅關ハ更
ニ第四十六條ノ收容ヲ爲スコトヲ得
第五十條第二項中「競賣」ヲ「公賣」ニ、「供託スヘシ」ヲ「貨主ニ交付ス」ニ改
第五十一條中「收容貨物」ノ下ニ「生活力ヲ有スル動植物ナルトキ、腐敗シ若
ハ」ヲ加ヘ「競賣」ヲ「公賣」ニ改ム
第五十二條中「競賣」ヲ「公賣」ニ改ム
第六十一條中「十日」ヲ「二十日」ニ改ム
第六十四條第一項第三號ヲ左ノ如ク改ム
三六年以上ノ懲役若ハ禁錮ニ處セラレタル者又ハ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ
處セラレ復權ヲ得サル者
六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ處セラレタル者及舊刑法ノ禁錮ニ處セラ
レタル者ニシテ其ノ刑ノ執行ヲ終ル迄ノ者又ハ執行ヲ受クルコトナ
キニ至ル迄ノ者
第六十八條中「稅關長ノ處分」ヲ「第六十二條ノ稅關長ノ判定」ニ改ム
第七十四條及第七十五條中「罰金若ハ科料」ヲ「罰金又ハ科料」ニ改ム
第七十五條ノ二前二條ノ犯罪ニ係ル貨物ノ運搬、寄藏、收受、故買又ハ牙
保ヲ爲シタル者ハ千圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第七十六條中「罰金」ヲ「罰金又ハ科料」ニ、「前二條」ヲ「第七十四條又ハ第
七十五條」ニ改ム
第七十七條貨物ト符合セサル積荷目錄又ハ運送目錄ヲ提出シタルトキハ
船長又ハ陸路運送人ヲ五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第七十八條及第七十九條中「罰金」ヲ「罰金又ハ科料」ニ改ム
第八十條第十條、第十三條、第十八條第二項、第二十一條、第三十九條ノ
四第一項、第三十九條ノ五又ハ第四十一條ノ規定ニ違反シタルトキハ船
長又ハ陸路運送人ヲ二百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第八十一條中「第四十條若ハ第四十一條」ヲ「第三十九條第一項、第三十九條
ノ二又ハ第四十條第二項」ニ「罰金」ヲ「罰金又ハ科料」ニ改ム
第八十二條ノ二輸出又ハ輸入ノ業ヲ營ム者ノ代理人又ハ使用人ニシテ其
ノ業務ニ關シ第七十四條、第七十五條又ハ第七十六條ノ規定ニ違反シタ
ルトキハ營業者ヲ處罰ス但シ稅關貨物取扱人カ貨物ノ取扱ヲ爲シタル場
合ハ此ノ限ニ在ラス
稅關貨物取扱人ノ代理人、雇人其ノ他ノ從業者カ其ノ業務ニ關シ第七十
四條、第七十五條又ハ第七十六條ノ規定ニ違反シタルトキハ稅關貨物取
扱人ヲ處罰ス
第八十二條ノ三前條ノ場合ニ於テ營業者又ハ稅關貨物取扱人カ未成年者
又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ヲ處罰ス但シ營業又ハ業務ニ關
シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第八十二條ノ四本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三
十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及
第六十六條ノ例ヲ用井ス
第八十三條本法ニ依リ沒收スヘキ貨物カ犯則者以外ノ者ニ屬シ又ハ消費
其ノ他ノ事由ニ因リ沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヨリ關稅及消
費稅ニ相當スル金額ヲ控除シタル金額ヲ犯則者ヨリ追徴ス
第八十二條ノ二ノ營業者及稅關貨物取扱人ハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ
之ヲ犯則者ト看做ス
前二項ノ追徵ヲ爲ス場合ニ於テハ其ノ貨物ノ關稅ハ犯則當時ノ貨物ノ所
有者ヨリ之ヲ徵收ス但シ貨物カ所有者ノ占有ニ歸セサル間ニ滅失シ又ハ
第三者ニ歸屬シタルトキハ犯則者ヨリ之ヲ徵收ス
前項ノ規定ニ依ル關稅ノ徵收ニ付テハ國稅徵收法ヲ準用ス
第九十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
旣ニ開始シタル臨檢搜索又ハ物件差押ハ必要アル場合ニ於テハ前項ノ規
定ニ拘ラス之ヲ繼續スルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
賣藥稅法中改正法律案
賣藥稅法中左ノ通改正ス
第一條ノ六北海道及府縣ハ賣藥營業稅ニ對シ本稅百分ノ五以內ノ附加稅
ヲ課スルコトヲ得
市町村及北海道沖繩縣ノ區ハ賣藥營業稅ニ對シ本稅百分ノ十以內ノ附加
稅ヲ課スルコトヲ得
附則
本法ハ明治四十四年度分ヨリ之ヲ適用ス
砂糖消費稅織物消費稅等ノ徵收ニ關スル法律案
第一條砂糖消費稅法、織物消費稅法、石油消費稅法又ハ骨牌稅法ニ於テ
稅關、保稅倉庫トアルハ關稅法ニ於テ稱スル保稅地域ヲ謂フ
第二條關稅法第三十九條ノ規定ニ依ル運送ハ砂糖消費稅法、織物消費稅
法、石油消費稅法又ハ骨牌稅法ノ引取ト看做サス但シ其ノ運送ニ付必要
アリト認ムルトキハ稅金ニ相當スル擔保ヲ提供セシムルコトヲ得
第三條砂糖消費稅法、織物消費稅法、石油消費稅法又ハ骨牌稅法ニ依リ
稅金ヲ徵收スル場合ノ外砂糖、精蜜、糖水、織物、石油又ハ骨牌ニ付關稅
ヲ徵收スル場合ニ於テ勅令ノ定ムル所ニ依リ關稅納付義務者ヨリ其ノ稅
金ヲ徵收ス但シ骨牌稅法ニ依リ骨牌ヲ沒收スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
(政府委員大藏次官若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=22
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023・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 關稅ニ關シマスル法律ハ二通リアリマシテ、間稅ノ取扱
ニ付テハ關稅法ト云フモノガアリマスルシ、又關稅ノ稅率ニ關シテハ關稅定率法ト云フ
ノガアルノデアリマスガ、唯今問題ニナッテ居リマスル關稅法中改正法律案ト云フノハ、
其取扱ニ關係スル方ノ法律デアッテ、稅率問題ト何等關係ノナイノデアリマス、此關稅
法ノ改正ヲ要シマス所以ノモノハ此法律ヲ改正致シマシタノハ三十二年デアッテ、其後
イロ〓〓ノ經驗ニ依ッテ、尙外ノ法規ノ改正ニ基イテ、現行ノ法律ハ所々ニ改正ヲ施ス
必要ヲ見ルニ至リマシタノデアリマス、殊ニ最近歐羅巴ノ貿易ノ關係ガ西伯利亞經由ノ
線路ニ依ッテ開カレルヤウニナリマシテカラ、是ノミノタメデハアリマセヌケレドモ、サウニ云フ
關係ガ主トシテ陸路運送等ニ於テ關稅ノ取扱ヲ今一層便利ニスル必要ガアリマスノデ、
旁〓此改正案ヲ提出シタ次第デアリマスソレカラ賣藥稅ノ改正案ハ御承知ノ如タ賣
藥ノ製造ニ付テハ特別ノ營業稅ガ取ッテアリマシテ、一般ノ營業稅ヲ課シテ居ラナイノデ
アリマス、其關係カラシテ唯今ノトコロデハ賣藥營業稅ヲ納メテ居ル者ハ衆議院議員ノ
選舉權、或ハ府縣會市町村等ノ選擧資格ノ中ニ此納稅額ヲ加ヘルコトヲセナンデ居リ
マスルガ、然ルニ特別ノ營業稅デハアルケレドモ免ニ角營業稅デアリマスカラ之ヲ直接稅
トシテ、是等資格ノ中ニ加ヘル必要ガアラウト思ヒマス、ソレデ此附加稅ヲ徵收スルコト
ガ出來ルヤウニナッテ居リマスガ、唯今ノ選舉資格ヲ認ムルヤウニシテ附加稅ヲ課スルヤウ
ニ致シマスト、無制限ニ附加稅ヲ課シマシタンデハ國稅ヲ防ゲル虞ガアリマスカラ、ソレ故
ニ玆ニ制限ヲ加ヘテ、一方ニハ附加稅ヲ課シテ之ニ依ッテ資格ヲ得セシムルト同時ニ、一
方ニハ餘リ高イ稅ヲ課セシメナイヤウニスル必要ガアル、斯ウ云フノガ此賣藥稅法案改
正案ノ理由デアリマス、第三ノ砂糖消費稅織物消費稅等ニ關シタ法律案ト云フモノ
ハ、是ハ全ク此關稅法ヲ改正シマシテ陸路運送等ニ便宜ヲ與ヘマス關係カラ外國カ
ラ入ッテ來マス砂糖、織物等ニ付テノ消費稅ノ徵收ノ上ニ改正ヲ加ヘル必要ガアリマ
スノト、二三ノ〓ニ於テ現行法ノ缺漏ヲ補フ必要ガアリマシテ、此法案ヲ提出シタ次
第デアリマス、三案共御審議ノ上御協贊アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=23
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024・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ御質疑モナケレバ右三案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選
舉ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=24
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025・菅原傳
○管原傳君 右委員ハ議長指名十八名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=25
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026・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 三案ヲ一括シテ議長指名十八名ノ特別委員ニ付託スルニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=26
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027・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ其通リ決シマス、日程ノ第三ヲ後囘シニシ
テアリマスガ、此場合ニ議題ニシテハドウデゴザイマセウカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=27
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028・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ日程ノ第三、大藏省預金部ノ利益金ヲ
一般會計ニ繰入ルヽ件ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第三大藏省預金部ノ利益金ヲ一般會計ニ繰入ルル件第一讀會
ニ關スル法律案(政府提出)
大藏省預金部ノ利益金ヲ一般會計ニ繰入ルル件ニ關スル法律案
政府ハ大藏省預金部ノ利益金ヨリ每年度百萬圓ヲ限リ之ヲ一般會計ヘ繰入ルル
コトヲ得
〔政府委員若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=28
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029・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 預金部ノ積立金ナルモノハ預金全體ニ對シマシテ損
失ノ補塡ヲ保障スルモノデアリマスカラ、相當ナル金ヲ積立テ置ク必要ガアリマスノミナラ
ズ、預金部ノ資金ハ其運用ニ依リマシテ地方產業資金ヲ低利ニ融通スルト、運用其者
カラ、又國家ノ必要ナル種々ノ働キヲ致スモノデアリマスカラ、此金ヲ成ルベク預金部ノ
會計ニ殘シテ置キマシテ運用スル必要ガアルノデアリマスガ、然ルニ此度小學〓員ニ支
給ヲ厚クスル必要上、小學校〓育費補助金ヲ增加シナケレバナラヌコトニナリマシテ、此
〓育上必要ナル事柄ノタメニハ預金部ニ生ジマシク利益ノ一部ヲ割イテ財源ニ充テヽ
差支ナカラウト云フノデアリマシテ、此預金部ノ利益金ノ一部ヲ此案ノミノタメニ一般
會計ニ入レルト云フガタメニ今囘預金部ノ利益金ヲ一般會計ニ繰入ルヽト云フ法案
ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、斯ヤウナ理由デゴザイマスカラ、成ベク本案ヲ御可決
ニナランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=29
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030・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ御質疑ガナケレバ日程ノ第四、右議案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=30
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031・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ議長指名ノ九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=31
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032・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 菅原君ノ動議議長指名ノ九名ノ委員ニ付託スルト一ムフニ
御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=32
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033・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ其通リ決シマス、日程第十三乃至第十
五ハ一括シテ議題トナシ、前囘ノ續キ、卽チ第一讀會ノ續ヲ開キマス、此場合御注意
ヲ申上ゲテ置キマスガ、此三案ハ前囘ニ於テ委員長ノ報告ヲ終リ、鈴木力君ノ反對演
說ガアリ、次ニ日向輝武君ヨリ內閣總理大臣ノ出席ヲ求メラレ、直ニ之ヲ通知シタル
ニ公務ノ都合ニ依リ出席シ難シトノ囘答ガアリ、菅原傳君ノ動議ニ依ッテ延期トナッテ
居ル案デアリマス、今總理大臣ガ出席ニナッテ居リマスカラ-日向輝武君
第十三朝鮮事業公債法案(政府提出)第一讀會ノ續
第十四朝鮮事業公債金特別會計法案(政府提第一讀會ノ續
〓〓
第十五朝鮮鐵道用品資金會計法案(政府提出)第一讀會ノ續
(「居リマセヌ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=33
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034・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日向輝武君ハ缺席デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=34
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035・菅原傳
○菅原傳君 質問者ガ出席ナイ以上ハ其質問權ヲ抛棄シタト見ルヨリ外ナイノデアリ
マン、免モ角モ何レニシテモ出席ナイ以上ハ此案ヲ進ムルヨリ外ナイト思フノデアリマスカ
ラ、玆デ私ハ本案ノ二讀會ヲ直ニ開カレンコトノ動議ヲ起シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=35
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036・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 二讀會ヲ直ニ開クト云フニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=36
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037・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ三案共ニ一括シテ直ニ二讀會ヲ開キ、三
案全部ヲ議題ニ供シマス
朝鮮事業公債法案第一讀會
朝鮮事業公債金特別會計法案第二讀會
朝鮮鐵道用品資金會計法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=37
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038・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長ノ報告ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=38
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039・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ三案トモ特別委員長ノ報告通リ二二讀會
ヲ決定致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=39
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040・菅原傳
○菅原傳君 直ニ三讀會ヲ開キ、二讀會ノ通リ決定セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=40
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041・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直ニ三讀會ヲ開クト云フコトニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=41
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042・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ直ニ三讀會ヲ開キ、三案ノ全部ヲ議題ニ供
シマス
朝鮮事業公債法案第三讀會
朝鮮事業公債金特別會計法案第三讀會
朝鮮鐵道用品資金特別會計法案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=42
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043・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、二讀會ニ於テ決定サレタ通リ
朝鮮事業公債法案、朝鮮事業公債金特別會計法案、朝鮮鐵道用品資金會計法
案此三案ハ是ニ於テ確定致シマシタ、玆ニ緊急ノ動議ガ提出サレテ居リマス、菅原傳
君ヨリ此場合第四號明治西十三年度歲入歲出總豫算追加、特第四號明治四十三
年度各特別會計歲入歳出豫算追加ヲ日程ヲ變更シテ議シタイト云フ動議ヲ提出サレ
テ居リマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=43
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044・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ第四號明治四十三年度歲入歲出總豫算
追加案、特第四號明治四十三年度各特別會計歲入歲出豫算追加案ヲ議題ト致シ
マスー原敬君
(第四號)明治四十三年度歲入歲出總豫算追加案
(特第四號)明治四十三年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
〔原敵君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=44
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045・原敬
○原敬君 唯今議題トナリマシタル追加豫算二案ニ付テ、豫算委員ノ審査竝ニ其結
果ヲ御報告致シマス、明治四十三年度歲入歲出總豫算追加第四號ニ付キマシテハ、
全部何等ノ異議ナク可決致シマシタ、ソレカラ明治四十三年度各特別會計歲入歲出
豫算追加特第四號、此案ニ付キマシテハ他ノ部分ニ於テハ何等ノ議論モナク可決致シ
マシタガ、朝鮮總督府ノ歲出臨時部第五款水道買收費二百九十二万六千七百九
十二圓ト云フコトニ付キマシテハ、、段々分科會ニ於テ調査ヲ致シマシタ結果、相當ナルモ
ノト見テ可決致シマシタ、是ハ京城ニ於ケル水道ガ是マデ外國人ノ所有デアリマシタガ、
公益上其他ノ關係ニ於テ是ハ政府ノ所有ニ致スガ適當デアルト云フ考ヲ以テ、總督府
ニ於テ澁澤榮一其他二名ノ手ヲ經テ外國人ヨリ買收致シタノデアリマス、其費用ガ二
百九十二万幾ラト相成ルノデアリマスガ、是ガ三月三十一日ヲ以テ計算ヲ打切ッテ、其
金ヲ交付スルト云フコトニナッテ居リマスカラ、買收シタトコロノ金額ニ對シテ多少ノ利息
其他ヲモ總テ含蓄致シテ居ルノデアリマス、尤モ此澁澤榮一其他二名ノ手ヲ經マシタケ
レドモ、其間ニ何等ノ報酬等ヲ與ヘテアルノデハナイト云フコトデアリマス、而シテ將來ニ
於キマシテハ日本人ノ京城ニ在留スル者ノ增加ニ考ヘ、其幾部分ガ水道ヲ使用スルモ
ノト致シマシテモ、收支ハ償フデアラウト云フ計算デアリマス、是ハ相當ナルモノトシテ可決
致シマシタガ、サリナガラ此ノ如キコトハ殆ド議會ノ協贊ヲ豫期シテ、一面ニ於テハ議會ヲ
シテ必ズ協賛ヲセシメザルヲ得ヌヤウナ境遇ニ於テ、此約束致シタト云フコトハ甚ダ穩當
デナイ、故ニ此事ハ適當トシテ可決スルケレドモ、將來ニ於テ此ノ如キ手續ニ出デナイヤウ
ニ注意アリタイト云フ警告ノ下ニ之ヲ可決致シタ次第デアリマス、其他ノ部分ニ付キマシ
テハ何等ノ議論モナク、皆原案ノ通リ可決致シマシタ(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=45
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046・菅原傳
○菅原傳君 別ニ御異論モナケレバ委員長ノ報告通リ決定セラレンコトヲ望ミマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=46
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047・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 別ニ御異議ハナイト認メマスカラ、第四號、明治四十三年
度歲出歲入總豫算追加、特第四號、明治四十三年度各特別會計歲入歲出豫算
追加、此二案共ニ豫算委員長ノ報告通リ可決致シマス-日程第十六乃至二
十七ハ同一委員ニ付託セラレ、且朝鮮ニ關スル事後承諾案及之ニ關聯セル議案ナル
ニ依リ、便宜上一括シテ議題トナシ、其大體ニ付テ討論ヲナシ、採決ハ之ヲ各別ニナシ
タイト思ヒマス、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=47
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048・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ其通リニ致シマス、特別委員長伊藤大
八君卽チ第十六ヨリ第二十七マデ、明治四十三年勅令第三百二十六號ノ承諾ヲ求
ムル件、明治四十三年勅令第三百二十七號承諾ヲ求ムル件、明治四十三年勅令
第三百二十八號承諾ヲ求ムル件、明治四十三年勅令第三百二十九號承諾ヲ求
ムル件、明治四十三年勅令第三百三十號承諾ヲ求ムル件、明治四十三年勅令第
百三十一號承諾ヲ求ムル件、明治四十三年勅令第三百三十三號承諾ヲ求ムル件、
明治四十三年勅令第三百三十六號承諾ヲ求ムル件、明治四十三年勅令第三一百三
十七號承諾ヲ求ムル件、明治四十三年勅令第三百三十八號承諾ヲ求ムル件、明治
四十三年勅令第四百六號承諾ヲ求ムル件、朝鮮ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律案、
卽チ之ラ一括シテ議題トナシ、特別委員長ヨリ報告ガアリマス
第十六明治四十三年勅令第三百二十六號(承(委員長報〓)
諾ヲ求ムル件)
第十七明治四十三年勅令第三百二十七號(承(委員長報告)
諾ヲ求ムル件)
第十八明治四十三年勅令第三百二十八號(承(委員長報告)
諾ヲ求ムル件)
第十九明治四十三年勅令第三百二十九號(承(委員長報告)
諾ヲ求ムル件)
第二十明治四十三年勅令第三百三十號(承諾(委員長報告)
ヲ求ムル件)
第二十一明治四十三年勅令第三百三十一號(委員長報告)
(承諾ヲ求ムル件)
第二十二明治四十三年勅令第三百三十三號(委員長報告)
(承諾ヲ求ムル件)
第二十三明治四十三年勅令第三百三十六號(委員長報告)
(承諾ヲ求ムル件)
第二十四明治四十三年勅令第三百三十七號(委員長報告)
(承諾ヲ求ムル件)
第二十五明治四十三年勅令第三百三十八號(委員長報告)
(承諾ヲ求ムル件)
第二十六明治四十三年勅令第四百六號(承諾(委員長報告)
ヲ求ムル件)
第二十七朝鮮ニ施行スベキ法令ニ關スル法律案(花井卓藏君提出)
〔伊藤大八君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=48
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049・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 尤モ此場合ニ御注意ノ御報告ヲシテ置クコトガアリマス、日
程第二十七、朝鮮ニ施行スベキ法令ニ關スル法律案、花井卓藏君提出、是ハ今日ノ
日程ニハマダ政府案ガ後ニアリ、政府ノ同意ヲ求メナケレバナラヌノデゴザイマスカラ、豫
テ政府ノ同意ヲ求メマシタトコロ、政府モ同意致シマシタカラ、玆ニ揭ゲタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=49
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050・伊藤大八
○伊藤大八君 諸君、委員會ノ經過結果ヲ御報告致シマス、委員會ニ於キマシテハ
總理大臣其他政府委員等ノ出席ヲ求メマシテ、數囘質問應答ヲ重ネマス、就中勅令
第三百二十四號ノ如キハ大ニ問題トナリマシテゴザイマス、併ナガラ此案ニ付キマシテハ
未ダ委員會ノ決定ヲ以テ諸君ニ御報告致シマスルノ運ビニ參ッテ居リマセヌ、其他御依
託ニナリマシタトコロノ十二案ヲ議了致シマシタニ付キマシテ此段御報告ニ及ヒマス、便
宜ノタメニ委員會ニ於キマシテハ憲法第七十條ニ關シマスルトコロノ法案卽チ三案ガゴ
ザイマス、此三案ヲ一括シテ議題ニ致シマシタトコロガ、委員會ニ於キマシテハ三案トモ何
等ノ反對演說モゴザイマセズシテ、朝鮮ノ併合ニ際シテ緊急ノ處置ヲ執ラレタノハ相當
ノコトデアル、故ニ緊急已ムヲ得ザルモノトシテ承認ヲ與ヘルコトニ是ハ致シマシテゴザイマ
ス、其次ニハ憲法第八條ニ關スル勅令デアリマスルガ、是ハ七案デゴザイマス、此七案ト
モ一括シテ議題ニ供シマシテ、是亦當時ノ狀態ニ於テハ緊急已ムヲ得ザルノ必要アルモ
ノト委員會デハ認メマシテ、承諾ヲ與フベキモノト決議致シマシテゴザイマス、第三ニハ憲
法第八條竝ニ憲法第七十條ニ依リマシテ發セラレタルトコロノ明治四十三年勅令第
三百二十四號、此案ニ付キマシテハ多少ノ議論モゴザイマシタ、サリナガラ委員會ニ於
テハ是亦已ムヲ得ザルモノト致シマシテ承諾ヲ與フルコトニ相成リマシテゴザイマス、是ガ
卽チ政府ヨリ承諾ヲ求メラレタルトコロノ十一案デゴザイマス、其次ハ花井卓藏君ヨリ
御提出ニナリマシタル朝鮮ニ施行スベキ法令ニ關スル法律案、此案ヲ議題ニ供シマシタ
トコロガ、委員會ニ於キマシテハ本案ヲ修正致スト云フ動議ガ出マシタノデ、其修正ノ理
由ト致シマシテハ、斯ウ云フ趣旨ヲ以テ修正致シタイト云フコトデゴザイマス、卽チ「明治
四十三年緊急勅令第三-日二十四號ハ朝鮮ノ現今ノ狀態ニ考ヘマシテ相當デアルト信
ズルデゴザイマス、其內容ニ於キマシテハ贊成スルニ躊躇致シマセヌケレドモ、委任命令ノ
規定ハ最モ重大ナル事柄デアリマスカラシテ法律ヲ以テ規定スルト云フコトヲ穩當トスル
ノデアリマス、斯樣ナル趣旨デ附則ノ期限ノ處ヲ刪除シテ「本法ハ公布ノ日ヨリ施行ス」
ト此案ヲ修正致シタイト一云フ動議ガ出マシテ、委員會ハ其趣旨ヲ認メマシテ可決致シ
マシタ、サリナガラ花井君ノ提出ヲ致サレタルトコロノ其法律案ノ理由ノ中第三項テゴザ
イマス、其三項ニ「議會假ニ緊急勅令ニ對シ事後承諾ヲ與フルモノトスルモ勅令ハ法律
ニアラサルヲ以テ如何ナル方法ニ依ルモ之ヲ修正シ若クハ改廢スルコトヲ得ス」斯樣ニ書
イテゴザイマスガ、之ハ斯樣ナ理由デハナイ、卽チ法律ヲ以テ勅令ハ改廢自由ナリト云フ
ノ委員會デハ見解ヲ以チマシテ、此理由ハ否認致シテ居リマス、其緊急勅令ヲ法律ヲ
以チマシテ改廢致シタリト云フ例ハ二三アリマスガ、ソレ等ノコトハ委員會ノ速記ニ精シ
ク載ッテ居リマスカラ、此處デ私ガ蛇足ヲ添ヘルノ要ハ認メマセヌカラ、之ハ省キマスカヤ
ウナ譯デ、委員會デハ十二案ヲ愼重ニ審議致シマシテ可決致シマシテゴザイマスカラ、何
分此ノ如キ重大ナル案ニハ冷靜ニ愼重ニ御討議アッテ御贊成アランコトヲ偏ニ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=50
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051・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 此場合高柳君カラ先決問題ガ出テ居リマスカラ御諮リヲ
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=51
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052・高柳覺太郎
○高柳覺太郞君 先決問題ノ前ニ委員長ニチヨット質問シタイコトガアル、委員會ニ
於テ三百二十四號ヲ特ニ後囘シニシテ、他ノ議案ハ今日此日程ニ上ルニ拘ラズ、三百
二十四號ヲ今日ノ日程ニ上スマデノ順序ニナラナカッタ順序ヲ委員長ヨリ深ク御報告ア
ランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=52
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053・伊藤大八
○伊藤大八君 三百二十四號ハ委員會デハ問題ニナリマセナンダ、マダソレハ後ニ愼
重ニ審議シ、諸君ニ御報告致シマス機ガアルト考ヘマシタ故ニ、其事ノ理由ハ御答ノ必
要ハナイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=53
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054・高柳覺太郎
○高柳覺太郞君 ソレハ宜シウゴザイマス-私ハ此際先決動議ヲ提出致シマス、ソ
レハ唯今日程ニ上ッテ居リマスル提案ノ中第二十七朝鮮ニ施行スベキ法令ニ關スル法
律案、所謂花井案デアリマス、此案ノ討議ヲ延期スルト云フ動議ヲ提出致シマス、ソ
レハ
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
〔高柳覺太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=54
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055・高柳覺太郎
○高柳覺太郞君 至ッテ理義明白デアリマスルカラ餘リ諄々シクハ申シマセヌガ、應
其延期ノ理由ヲ辯明シテ置カウト思ヒマス、其延期シマスル譯ハ此同ク委員會ニ付託
セラレタルトコロノ勅令ノ三百二十四號ノ本會議ニ上リマスマデ此議事ヲ延期スルノ趣
意デアリマスル、何故ナラバ申スマデモナク此花井君ノ提出シタルトコロノ法律案ハ緊急
勅令三百二十四號ニ代ルベキトコロノ法律案デアリマスル、提出者若クバ此案ヲ直ニ議
決セントスルトコロノ諸君ハ緊急勅令ヲ第一ニ承諾ヲ與ヘザルノ趣意ヲ以テ、今日直ニ
議決スルデアリマセウ、併ナガラソレハ豫斷デアリマス、緊急勅令ハ政府ガ既ニ議會開カ
ルヽヤ間モナク本會ニ提出シテ其承諾ヲ求メテ居ルトコロノ重大ナル案デアリマスル、殊ニ
委員會ニ於キマシテモ深ク〓究調査ヲ遂ゲラレテアルトコロノ問題デアリマスル故ニ此
勅令ヲ承諾スルヤ否ヤト云フコトハ最モ唯今委員長ノ報告シタ通り愼重ニ愼重ヲ重ネ
バキトコロノ重大問題デアリマスル、而モ今日此花井案ヲ議決セントスルトコロノ諸君ノ
胸中ニハ無論此勅令ニ對スルトコロノ斷案ハ胸中ニ存在シテ居ルコトデアルト思フデス、
併ナガラ何ヲ苦ンデカ此事後承諾案ヲ後ニシテ先以テ此法律案ヲ議スルヤト云フコト
ハ、私ハ本末輕重ヲ〓倒スルモノデアルト、斯樣ニ深ク思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=55
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056・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 高柳君御注意シマスガ、日程ノ第十六ヨリ二十七マデヲ一
括シテ議題ニ供シタイト云フコトハ先刻御諮ヲシテ、議場ノ多數ガ容レテ居ル、ソレデ
其時アナタノ其御發議ガナケレバナラヌ場合デアッタラウト本職ハ思ヒマス、併シ委員長ノ
報告ニ對シテソレヲ又發見サレテ此案ダケヲ延バスト云フ趣意ナラバ、ソレデ宜シイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=56
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057・高柳覺太郎
○高柳覺太郞君 宜シイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=57
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058・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ソレナラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=58
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059・高柳覺太郎
○高柳覺太郞君 其本末輕重ヲ轉倒スルタメニ若シ假ニ例ヲ設ケテシマスレバ、私ハ
奇態ナル結果ヲ來ス場合ガアリハセヌカト思フ、衆議院ハ玆デ多數デ以テ彼ノ事後承
諾案ヲ承諾ヲ與ヘザル豫斷ヲ以テ此法律案ヲ可決スルト假定シマシタトコロガ、此法律
案ガ貴族院ニ囘ツタ場合ニ於テ、ドウデアリマセウ、貴族院ハ此場合ニ於テヤハリ衆議
院ト同ク此勅令案ハ承諾ヲ與フベカラズト云フ豫斷ガアルナラバ、成程此法律案ガ通過
スルデアリマセウ、併ナガラソレハ同ク豫斷デアリマスル、若シ其豫斷ガ相矛盾衝突スル場
合ニ於キマシテハ、此法律案ガ一案ヲ通過シマシテ、折角成立タウトスルトコロノ法律案
モ遂ニ其豫斷ノ相違カラシテ意外ノ結果ヲ來ス譯デアル、折角法律トシテ成立サスベキ
トコロノ希望モ意外ノ結果ヲ來スコトニナルノデアリマス、ソレ故ニ私ハ豫斷ヲセズシテ先
以テ此緊急勅令ヲ議シテ、緊急勅令直ニ承諾ヲ與フベクンバ與ヘ、與フベカラズト決ス
ルナラバ速ニ首ヲ斬ッテ然ル後ニ大ニ議スルモノハ議シテ宜カラウト思ヒマスカラ、先以テ
緊急勅令ノ三百二十四號ノ本議ニ掛ルマデハ此花井案ノ議事ハ暫ク延期スルノ動議
ヲ提出致シマス
(「贊成」ト呼フ者アリ拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=59
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060・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 採決致シマス、日程第十六ヨリ二十七マデハ一括シテ議題
ニ供シ、委員長ノ報告ガアリマシタトコロガ、今髙柳君カラ日程ノ第二十七ダケハ延期
シタイト云フ先決問題ガゴザイマシタカラ採決致シマス、高柳君ノ動議ニ贊成ノ諸君ハ
起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=60
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061・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數、消滅-政府及委員長ニ對シテ質疑ノ通告ガアリ
V、、神藤才一君
〔神藤才一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=61
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062・神藤才一
○神藤才一君 諸君、本員ハ當問題ノ議題ニ上ッテ居リマスルトコロニ直接ノ關係ア
ルトコロノ事件、言換ヘレバ是ヨリ先ニデス極メナケレバナラヌト云フトコロノコトヲ總理
大臣ニ質問スルノデアリマス、併シ其理由ヲ簡單ニ私ハ述べマスルガ、議論ニ涉ルト議
長ヨリ御差止メニナルカモ知レマセヌガ、我輩ノ思フニハ理由ヲ述ベンケレバナラヌモノダ
カラ極ク單簡ニ述ベマスル、隨ッテ又本員ハカラッ下手ノコトデ馬車馬的ノコトデ、御承知
ノ通リ演說ヤラ何ヤラ分ラヌカ知レマセヌケレドモ、併ナガラ演說デハナイ神藤ノ言葉ト
思召シテ十五分間御〓聽ヲ願ヒマス(笑聲起ル)段々ニ末ニ至ル程此問題ニ近寄ルト
コロノ直接ノ關係ヲ引出シマスカラ、最初ハ餘談ノ橫道ニ入ルト云フ御叱リモアルカモ
知レマセヌガ、ドウカ十五分間-大末ニ至ッテ最モ直接ニ關係スルトコロノ論議ヲ述
ベマスル故ニ、ドウカ暫クノトコロ御〓聽ヲ願ヒマス(拍手笑聲起ル)我輩ガ此壇ニ登ル
以上ハ滿洲ノ戰爭ニムレ果テタトコロノ軍人ノヤリ損ヒト思召シテ宜シイ、餘談ハサテ措
イテ(笑聲起ル)我帝國ガ併合シタル朝鮮ガデス、其併合以前卽チ我帝國ノ保護ノ下
ニ在リシ時代ト竝ニ其併合後ニ於ケル朝鮮ノ國境ガ其鄰接國トニ關係アルトコロノ國
境其モノデアリマス、之ヲ卽チ總理大臣ニ問ヒ、次ニ勅令ニ關スルトコロノ御說明ヲ願フ
コトデアリマス、先ヅ是カラシテ單簡ニ述ベマス、凡ソ國家ガ外交上最モ忽セニスベカラザ
ルモノハ諸君ノ御承知ノ通リ、其國ノ國境其モノデアル、故ニ一國ガ新ニ新版圖ヲ發
見スルカ、或ハ他國ヲ統一スルカ、或ハ之ヲ併合スルトキニ於テハ、先ヅ第一著ニ其新版
圖ノ國境ヲ明瞭ニ劃一スルノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)、之ハ丁度諸君ノ御承知
ノ通リ、個人間ニ於ケル土地ノ賣買及其受授ニ先ダッテ其境界ヲ明瞭ニ致シ、後日相
互間ニ於テ爭論ヲ惹起サザルガタメノ手段ト同一デアル、而シテ此國境ナルモノハ諸君
ノ御承知ノ通リ、天然的國境アリ、人造的國境或ハ精神的國境等アリテ、之ヲ規定ス
ルガ卽チ國際公法上ノ原則デアル、然ルニ若シ一國ガ此新版圖ヲ獲得スルニ當リテ、此
最モ大切ナル國境ヲ忽セニスルニ於テハ其鄰接國トノ間ニ葛藤ヲ惹起シ、事甚シキニ至
リマシテハ、此葛藤ヨリ事ヲ干戈ニ訴ヘ、或ハ訴ヘントシタル事實ハ歐米各國ハ勿論國
ノ東西ヲ問ハズ往々アッタコトデアル、其實例ヲ舉ゲマスレバ諸君ノ御承知ノ通リ、千八百
二十六年佛蘭西ト「ハーデン」トノ國境大問題、千八百六十八年ハ彼ノ「サンステフエ
ノー」ノ條約、千八百七十八年ニ伯林條約、或ハ諸君ノ御承知ノ通リ、索漏西ト和
蘭兩國間ニ於ケル國境ニ發見シタル鑛山大鑛脈ノ如キハ最モ然ルトコロデアル、其他ノ
實例ハ枚舉スルニ遑アラザル程デアリマスガ、是等ノコトハ大抵皆列國會議或ハ國際裁
判ノ御世話ヲ蒙ッタノデアル、諸君現ニ露〓兩國間ニ於テ西藏方面ノ國境ノ紛議ハドウ
デアリマセウ、殊ニ英〓兩國間ニ於ケル國境ノノ紛議ハ益〓風雲ノ急ヲ告ゲテ居ルデハナ
イカ、現ニ此兩國ノ軍隊ガ日々ニ軍隊ヲ其國境ニ進メツヽアルト聞クノダ、況ヤ總理大臣
ガ先日御述ベニナリマシタトコロノ東洋ノ平和ヲ保タンガタメノ朝鮮併合ニ於テハ、最モ是
ガ鄰接國タル諸國卽チ露〓兩國ニ對シテ國境ヲ明瞭ニ致シ置クコソ卽チ是ガ東洋平和
ノ骨髓デアル、ドウデゴザイマセウ(笑聲起ル)況ヤ稀有ノ外交ヲ翻弄スル露〓兩國ニ對
シテハ尙更ノコトデアル、諸君浦鹽港ノ咽喉タル「ポセット」大砲臺ノ鄰地鹿島ノ地ハドウ
デス、國境明カナラザルガ故ニ、韓國ハ露國ニ之ヲ橫奪セラレシニアラズヤ、第二十四回
ノ帝國議會ニ於テ本員ガ時ノ政府ニ質問シタル彼ノ間島ノ問題ハドウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=62
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063・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 神藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=63
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064・神藤才一
○神藤才一君 ハイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=64
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065・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 此十二案ノ中ニハ國境ノ問題ハ加ッテ居ラヌヤウデアリマスカ
ラ、是ニ國境ヲ御加ヘニナルコトハ差支アリマスマイケレドモ、直接ニ關係アルコトヽ云フ
コトヲ先刻議長ガ宣言シテ置キマシタカラ、何等ノ言葉ヲ用井ルニ拘ラズ、今ノ御言葉
ハ議院法第四十八條ニ依シテ質問スベキモノト思ヒマス、直接當該問題ニ付テ御質問
ガアレバ格別発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=65
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066・神藤才一
○神藤才一君 ハイ、卽チ是等ノ問題カラ勅令事後承諾モ產出スコトニナル、卽チ彼
ノ間島ノ問題ハドウデセウ、卽チ九州四國ヲ併合シタルヨリモ廣大且肥饒ニシテ我
帝國ノタメニハ軍事外交及經濟ノ此三見地ヨリシテモ實ニ一大切要ナル間島ハ徹頭
徹尾韓國ノ領土デアッタノデアル、是レ當時議會ニ於テ本員ガ詳シク述ベ置キタルヲ以
テ當時ノ議員諸君ハ既ニ能ク御承知ノコトナルナランガ、此間島ガ韓國ノ領土デアリシ
コトハ〓國ガ韓國ノ微弱ニ乘ジ橫領ニ橫領ヲ極メ、遂ニ〓國自身ハ〓韓兩國ノ境界
線卽チ白頭山頂所謂分水嶺ニ康熙五十一年五月一日定界碑ヲ建テ、是ヨリ人造
的ヲ以テ嗄呀、布爾哈圖河ニ延長シタル國境ヲ作リ、又明治三十五年韓國駐箚公
使ノ露國公使「ウエバール」氏ハ時ノ韓國外相李道宰ト路韓兩國協治爲政ヲ此間島
ニ設ケタノデアル、且自治團體ヲ作リ、若シ第三位ノ國ニシテ此間島ニ干涉センカ、露
國ハ獨リ責任ヲ以テ是ニ當ルベシト殆ド保護的協約ヲ爲シテ間島ハ韓國ノ領土デアル
コトヲ確證シタノデアル、此ノ如ク實地ト外交トノ實歷實證アルニモ拘ラズ保護國タル
我ガ帝國ハ被保護國タル韓國ヲシテ此廣大ナル間島ノ領土權ヲ〓國ニ讓與セシムルニ
至ラシメタノデアル、是レ所謂屈讓的外交カ將タ君子的外交カハ知ラザレドモ、免モ角モ
第二十四議會ニ於テ竹越三一又先生ガ御祭音樂的外交トノ稱贊的ノ外交ニ囃シ立テ
ラレテ、他ニ一物ノ交換モナク御目出度相濟ンダノデアル、是レ畢竟國境定マラザルガ
故ニ事爰ニ至ッタノデアルガ、固ヨリ國境ノ不定ハ其國外交家ノ手腕ニ依ッテ其領土ノ
伸縮ヲ起生スルハ勿論デアル、是レ非凡ナル外交家ノ最モ得意トスルトコロデアルガ、我
國外交家ノ手腕トシテハ如何ナモノデアラウカ、是レ大ナル疑問デアル、聞ク當議會ニ
於ケル或ル政府委員ハ朝鮮ノ國境ハ其併合後今日ニ於ケルモ尙錯雜不定デアルトノコ
トヲ申サレタト云フコトデアリマス、宜ウゴザンスカ-宜イカ、間島讓與以來白頭山以
北ニ於ケル露〓兩國ニ對スル朝鮮ノ國境ハ如何又白頭山以南新義州ニ至ルマデノ〓
國ニ對スル朝鮮國境ハドウデアル豆滿鴨綠ノ兩江竝ニ長白山ハ東洋屈指ノ大森林
デアル國境定マラザルガ故ニ滿韓兩國民ハ入亂レテ之ヲ濫伐シツヽアルデハナイカ、殊
ニ楚山ヨリ新義州殊ニ昌城邊マデノ鴨綠江中ニハ大島嶼ノ諸所ニ散〓シテ之ニ大葦ノ
繁茂シアルヲ以テ、此兩岸ノ滿韓兩國民ハ此葦萱ヲ獲收センガタメニ每年大爭鬪ヲ惹
起シテ居ル是レ諸君モ御承知ノ通リ滿韓兩國民ノ家屋ニハ最モ此葦萓ハ必要缺ク
ベカラザルモノデアル、故ニ大島嶼ニ繁茂スル葦ハ彼等兩國民ノタメニハ一大切要ナル
財產デアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=66
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067・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 神藤君ニ御注意致シマス、唯今議題トナッテ居ルノハ主ニ朝
鮮ノ財政ニ關スル案デアリマス、議院規則ニモ質疑ハ當該案ニ對シテ直接ノ疑ヲ質スノ
デアリマスカラ、御承知デモゴザイマセウケレドモ、今ノ御演說ハ當該案ト少シ隔ッテ居ル
ヤウニ議長ハ認メマスカラ暫ク發言ハ許シマシタケレドモ是ニ遠キコトナレバイケマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=67
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068・神藤才一
○神藤才一君 ソレカラ段々入ッテ行ク-繁茂スル葦ハ彼等兩國民ノ爲ニハ一大
切要ナル財產デアル、是レ彼等ガ每年大爭鬪ヲシテモ之ヲ獲收セントスルニ外ナラザルモ
ノデアル、又〓韓兩國ノ官憲モ相互ニ其國境ノ不定ナルニ乘ジテ、是レ自國ノ領土ナ
リトシテ之ヲ爭フノハ已ムベカラザルモノデアル苟モ一國ノ體面殊ニ大陸ニ立脚ノ地ヲ
得テ、世界第一等國ニ昇進シタル我日本帝國ノ體面ヲ以テ外ト外交ニ當ランニハ、國
境ハ最モ忽セニスベカラザル一大問題デアル、況ヤ國ト國トノ併合シタル今日、況ヤ總理
大臣ガ先日御述ベニナリマシタ東洋平和ノ名ノ下ニ於ケル日韓兩國ノ併合シタル今日
ニ於テハ最モ然ルトコロデアルト本員ハ確信スルノデアル、殊ニ彼間島讓與ノ如キ界屈
的外交ノ轍ヲ再ビ履マザランガタメニ此大陸國境卽チ露〓兩國ニ對スル朝鮮國境ニ付
テ總理大臣ニ御說明ヲ求ムルノデアルガ、是ガ卽チ今日勅令ナリ法律ナリ經濟ナリ皆
是等ノコトヲ產出スノデアル、畢竟國境ガ定マラナイカラ何事モ出來ヌ、二十四議會ニ
於テ懇々述ベテ置イタ通リ、間島ハ九州四國ヨリモ大キナ地ヲ横領セラレタモノデアル、
殊更ニ東洋ノ平和ヲ保ツト云フ名ノ下ニ朝鮮併合ノ實ハ何レノ點ニアルカ、卽チ露〓
英〓ノ國境問題-國境ヲ定メズシテ其國ハ何ヲスル、ソレデ以テ不明不法不當ナル
問題ヲ事後承諾トスルハ如何ナモノデアルカ、段々言ッテ居ルト妨ゲニナルニ依ッテ、是
述ベマセヌガ如何デアリマセウ、總理大臣閣下或ハ總督閣下ヨリ詳シク御說明アランコ
トヲ望ミマス
〔內閣總理大臣侯爵桂太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=68
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069・桂太郎
○內閣總理大臣(侯爵桂太郞君) 唯今御質問ニナリマシタ境界ノコトニ付テ一言
申述ベテ置キマス、質問者ノ言ハレマスニハ境界ハ不定デアルト言ハレマシタガ、境界ハ
定ッテ居ルト云フコトヲ御答辯致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=69
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070・花井卓藏
○法學博士花井卓藏君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=70
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071・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 花井君ハ先刻カラ發言ヲ求メラレマシタガ、何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=71
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072・花井卓藏
○法學博士花井卓藏君 本員ハ衆議院規則第十條ノ第二項ノ規定ニ依リマシテ發
議者トシテ發案ニ對スル趣旨ノ辯明ヲ爲サンガタメニ再ビ演說ヲ致シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=72
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073・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ソレハ提出者トシテ御辯明ニナルノハ宜シウゴザイマスガ、モ
ウ少シ質問モアルヤウデアリマスカラ、ソレノ終ッテ討議ニ入ッタトキ二十七ノ日程ノ御
辯明デアラウト思ヒマスカラ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=73
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074・花井卓藏
○法學博士花井卓藏君 ドチラデモ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=74
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075・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 其場合ニ御演說ニナル方ガ宜カラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=75
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076・日向輝武
○日向輝武君 私ハ此際朝鮮統治ノ根本策ニ付テ政府ニ質問ヲ致シタイト思ヒマス
ガ、宜シウゴザイマスカ
(「登壇々々」「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=76
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077・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 此日程ニ直接ノ關係ガアルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=77
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078・日向輝武
○日向輝武君 大ナル關係ヲ持ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=78
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079・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 根本策ト朝鮮ノ合併ニ關スルト云フコトヽハ直接ノ關係ハ
ナイヤウニ思ヒマスガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=79
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080・日向輝武
○日向輝武君 朝鮮ノ合併ナドハ過去ノ事實デ問ハナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=80
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081・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 此日程ニ直接ノ關係ガアルナラバ、發言ヲ許シマス
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
〔日向輝武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=81
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082・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程ノ十六カラ二十七マデニナッテ居リマスカラ、御注意ヲ
致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=82
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083・日向輝武
○日向輝武君 承知致シマシタ-簡單ニ要領ダケヲ述ベマシテ、桂侯ノ說明ヲ求
メタイト思ヒマス、桂侯ハ第二十六議會ニ於キマシテ斯ウ云フコトヲ明言セラレタノデア
R、帝國政府ハ韓國トノ現在關係ヲ變更スルノ意思ヲ有セズ、二十六議會ガ終リヲ告
ゲマシタノハ昨年ノ三月末デアリマシテ、韓國ガ我國ニ合併セラレマシタノハ同ク其年ノ
八月デアリマス、韓國トノ現在關係ヲ變更スル意思ヲ有セズト明言セラレタ其舌根未ダ
乾カザルニ、韓國ハ帝國ノ領土トナッタノデアル、桂侯ハエライ政治家デアリマス、併ナガ
ヲ時ニハ嘘ヲ言フエライ政治家デアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)私ガ問ハントスル條項
ハ、此朝鮮ノ併合ナルモノハ財政上我國ニ累ヲ及ボスコトハ極メテ大ナリト信ズル、今後
其經費ハ益〓膨脹シ、是ガタメニ生ズル國民ノ負擔ハ益ノ增加シテ行クト云フコトハ明
カデアル、何故ニ桂侯ハ其實ヲ明ラサマニ語ヲテ、事ヲ國民ト共ニ圖ラナイノデアルカ(拍
手起ル)第二ハ既ニ本會ヲ通過致シマシタ朝鮮事業公債案ナルモノハ是ハ形ヲ變ヘルト
コロノ陸軍擴張費デアッテ、其實ハ朝鮮ヲ武裝スル費用デアル、何故ニ桂侯ハ其事實ヲ
事細カニ語ッテ言葉ヲ飾ラズ事實ヲ明ラサマニ語ッテ、國民ト共ニ朝鮮ノ經營ニ盡サレナ
イノデアルカ、第三ハ帝國ガ大陸ニ足ヲ踏ミ-一度足ヲ踏ンダノデアッテ、此大陸政
策ナルモノハ主トシテ海軍ヲ以テシ、帝國ノ海軍ガ膨湖島以東ノ支那海、黃海及日本
海ノ海上ニ於テ優勢ナル制海權ヲ維持シタナラバ朝鮮及滿洲ニ於ケル我大陸政策ハ
遂行セラルヽノデアル、然ルニ桂侯ガ陸軍ヲ中心トシテ居ルトコロノ軍國主義ヲ取ッテ、サ
ウシテ朝鮮經營ノ著手ニ當ラレタノハ大ナル誤リデアラウト信ズルノデアル、桂侯ハ須ク
是ニ對シヲ其誤ラザル所以ヲ辯明セラレタイノデアリマス··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=83
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084・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御注意シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=84
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085・日向輝武
○日向輝武君 直ダ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=85
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086・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直接ノ關係ガナケレバ發言ヲ中止シマス
(「ヤルベシヤルベシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=86
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087・日向輝武
○日向輝武君 私ハ大ナル關係ガアルト信ジマス-第四ハ寺內子爵ハ-寺內子
爵ハ朝鮮總督デアル、同時ニ又國務大臣デアリマス、身常ニ陛下ニ咫尺シ陛下ノ
御側ニアッテ、サウシテ閣臣連帶ノ補弼ノ大任ヲ全ウスルコトハ朝鮮ニ居ッテドウシテ出
來マセウカ、朝鮮ノ總テニ關スル法律モ此朝鮮總督ガ一方ニ國務大臣ヲ兼ネテ居ッテ
陛下ヲ輔弼スルトコロノ大任ガドウシテ果セルノデアルカ、又根本ノ重大ナル問題ヲ桂侯
ハ何故ニ放任シテ顧ミナイノデアルカ、或ハ朝鮮ニ居ッテモ陸軍省ノ事務ヲ指揮スルニ差
支ナイト云フコトヲ答ヘラレルカモ知レマセヌガ、ソレハ一省ノ行政長官トシテノ其所管ス
ル事務ハ差支ナイカモ知レナイ、併ナガラ國務大臣タルトコロノ大任ハ又別問題デアリマ
ス、或ハ陛下ノ大命ナリト云フコトヲ以テ御答ヘニナルカモ知レマセヌ、併ナガラ陛
下ノ大命ナリト云フコトハ議會ニ對スル答辯トハナラナイノデアル、此四〓ヲ尙敷衍シテ
詳細ニ其質問ノ趣意ヲ述ベタイノデアリマスガ、ソレハ總テ略シテ唯此要〓ダケヲ述ベテ
桂侯ノ詳細ナル御辯明ヲ希望致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=87
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088・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 桂內閣總理大臣
〔内閣總理大臣侯爵桂太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=88
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089・桂太郎
○内閣總理大臣(侯爵桂太郞君) 唯今質問者ノ御質問ニナリマシタ其第一〓ニ於
テ本官何時ノ場合ニ此ノ如キコトヲ申シタカ、一向記憶ニナイノデアリマス、本官ノ信ズ
ルトコロデハ斯樣ナコトヲ何レノ場合ニ言ウタカ、決シテ公會ニ於テ言言タタコトハナイト信
ジマス、其他ノコトハ質問者ノ御意見デアル、又之ニ御答辯スルノ限リデナイト考ヘマス
(「速記錄ニアッタラドウシマス」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=89
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090・村松恒一郎
○村松恆一郞君 直接關係ノアル質問ヲ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=90
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091・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 村松君
〔「登壇」ト呼フ者アリ〕
〔村松恆一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=91
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092・村松恒一郎
○村松恆一郞君 本員ハ極メテ簡單ニ質問ヲ致スノデアリマス、ソレハ朝鮮總督府ノ
豫算ニ關スルコトデアリマスガ、昨年來朝鮮總督府ニ於キマシテハ總督府ニ反對シツヽア
ルト認メラレテ居ルトコロノ朝鮮ニ於ケル各種ノ新聞雜誌ヲ盛ンニ買潰シヲヤラシテ居
ル、之ハ事實デアリマス、今現ニ交涉中ノモノモ確アルト私ハ信ズルノデアリマスガ、此ノ
如キ費用ハ如何ナル財源ニ依リ、如何ナル費用カラ支出セラレルノデアリマスカ、是ダケ
ヲ御尋致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=92
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093・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ヨリ討論ニ移リマス
(「答辯ナカラザレバ國民ノ疑惑ヲ奈何セン」「答辯シ能ハザル理由ヲ示スベシ」ト
呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=93
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094・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 答辯ハアリマセヌカラ討論ニ移リマス、大石正己君
〔大石正己君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=94
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095・大石正巳
○大石正己君 私ハ政府ノ求メラレテ居ル事後承諸案ニハ一切反對ヲ致シマス、又
此場合議題トナッテ居ル朝鮮ノ將來ノ統治策、卽チ法律ヲ以テ總督ニ多大ノ權能ヲ
與ヘルト云フ案ニモ反對ヲ致スノデアリマス第一此承諾ヲ-事後承諾ヲ求ムルト云
フコトソレ自身ガ大分近來ハ事柄ノ輕イヤウニ之ヲ看做スト云フ風ニ流レテ居ルト云
フコトハ、甚ダ此議會ノ權能上ヨリ私ハ嘆息ヲ致シテ居ル、或ハ事後承諾案ノ如キハ承
諾ヲセナクテモ其效力ノ上ニハ敢テ關係ハ無イ抔ト云フヤウナ風ニナッテ居ルガ、私ノ見
ルトコロデハ此事後承諾案ニシテ若シ承諾ヲ得ナイト云フ場合ニハ當然此內閣ノ不信
任デアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)其意味ヲ以テ事後承諾ヲ求メ、又議會モ其意味ニ
於テ事後承諾ヲ與ヘルト云フヤウニ鄭重ニ致スベキコトデアルト思フ、ソコデ今日ノ委員
長ノ報告ニ依リマスルト一云フト、緊急已ムベカラザルコトヲ認メテ委員會ハ承諾ヲ與ヘラ
レタト云フコトデアル、此緊急已ムベカラズトシテ事後承諾ヲ與ヘタト云フコトニ付テハ私
ハ大ニ見込ヲ異ニシテ居ルガ、第一此事後承諾ヲ求ムルニ當ッテ政府ノ答辯ト云フモノ
ハ如何ナル答辯ヲセラレテ居ルカト云フコトヲ見ルト、承諾ヲ求ムベキ理由ガ具ッテ居ナ
イ又承諾ヲ與ヘタ方ノ委員會ニ於テハ如何ナル事實ヲ指シテ緊急已ムベカラザルコト
デアルト云フノデアルカ、私ハ甚ダ疑フノデアル、何トナレバ總理大臣ノ委員會ニ於ケル說
明ヲ見ルト云フト二ツデアル、一ツハ至急-最モ至急ニ最モ急速ヲ要スル場合デアッ
テ議會ニ諮ル餘地ガ無カッタト云フコトデアル、是ハ時ノ問題ニナル、モウ一ツハ總理大
臣ノ辯明ニ依ルト云フト、不測ノ變災ガ起ル虞ガアッタカラシテ、議會ニ諮ルコトガ出來
ナカッタ、若シ議會ニ諮シタナラバ此不測ノ變災ガ起ッテ遂ニ合併ノ計畫ヲ誤ルノデアル、
此二ツニ外ナラズ、所デ最モ至急ニ最モ急速ニシテ議會ニ諮ルノ餘、地ガナカッタト云フコ
トハ、是ハ更ニ受取レナイ、何トナレバ此朝鮮併合ノコトタルヤ凡ツ一年程モ前カラ是ハ
廟議ニ於テ決定シテ、サウシテ其準備ニ掛ッテ居ルノデアル、時ノ問題ニ於テハ最早餘地
ハナイ、何ト言譯ヲシテモ容スベキ餘地ハナイ、不測ノ變災ガ起ルト云フコトニ付テ總理
大臣ハ如何ニ辯ゼラレテ居ルカト云フト、內外ノ情勢ニ於テ之ヲ議會ニ諮ルヤウナ時間
ヲ潰シヨッタナラバ不測ノ變災ガ起ル虞ガアッタ、斯ウ云フ、ツコデ委員ノ人ノ質問ニ其不
測ノ變英ト云フモノハ如何ナルモノヲ指シテ言フノデアルカト云フコトヲ推サレテ見ルト云
フト今度ハ曰ク、其不測ノ變災ハ言ハウモ言ヘナイ、當局者ノ位地ニ立ッテ御考ヲ下
サレト、斯ウ言ッテ居ル、卽チ此不測ノ變災ト云フモノハ事實ニ於テ決シテ存在ヲシテ居
ナカッタノデアル、若シ之ガ存在ヲシテ居ッタナラバ、不測ノ變災ノ實物ヲ押ヘテ此處デ御
辯明ニナル譯、不測ノ變災ト云フコトハ事實ニ於テハナカッタガ、當局者ガ朦朧トシテ唯
當局者自身ノ所謂妄想デアッタニ相違ナイ、私ハ此處デ其緊急已ムベカラザルコト及不
測ノ變災ガ起ルト云フコトニ付テ、之ヲ解剖シテ見タナラバ、ドウ云フモノニナルカト一ムフ
コトヲ一言辯ジタイノデアル、朝鮮併合ノ際ニ當ッテ政府ガ帝國議會ニ當然諮ルベキモ
ノヲ專斷ヲスルト云フコトニ於テハ、確實ナル玆ニ理由ガナケレバナラヌ、其確實ナル理由
トハ何デアルカ、第一ニハ若シ議會ニ諮リシナラバ國防上危險ノアル場合ト云フノガ一ツ
デアル、國防上危險ガアル、斯ウ云フノガ一ツノ理由ニナル、、然ルニ此朝鮮併合ノ際ニ
於テ國防土危險ナリト云フ何ノ虞ガアッタノデアル、外國ガ兵力ヲ以テ之ニ干涉スルト
カ、若クハ外交上ニ於テ帝國ニ壓迫ヲ加ヘルト云フ國ガアッタナラバ、國防上危險ノアル
場合ト云フコトガ二言ヘル、左樣ナ場合ハ一切成立ッテ居ラヌノデアル、モウ一ツハ被合併
國卽チ朝鮮、朝鮮内部ニ於テ內亂若クバ變動ノ起ル虞ガアルト云フ場合ハ確ニ是ハ理
由ニナル朝鮮併合ノ際ニ左樣ナ狀態ガ成立ッテ居ッタカドウデアル、朝鮮ノ當時ノ形勢
ト云フモノハ既ニ彼ノ兵力ヲ奪ヒ、警察權ヲ日本ノ手ニ收メ、司法ノ權ヲ取リ、外交、
內政、財政ノ權ト云フモノヲ舉ゲテ日本帝國ノ手中ニ收メテ居ッタ場合デアル(拍手ス
ル者アリ)殊ニ其併合前ニ當ッテ朝鮮ノ軍隊ト云フモノハ總テ解散ヲシテ居ル、此場合ニ
於テ或ハ朝鮮官憲ノ以外ニ於テ、國民的政治的團體ナルモノガアッテ、若シ是ガ反對ヲ
スルト云フコトガアッテモ、ソレハ多少ノ言前ニナルノデアルガ、併シ朝鮮ノ當時ノ情勢ト
云フモノハ卽チ一進會其他朝鮮ニ於ケル政治的團體ト看做サレルトコロノモノハ皆日
本ニ併合ヲ望ムトコロノ請願ヲ出シテ運動シテ居ル、此朝鮮ニ於テ内亂若クハ變動ヲ
起ス憂ガアッタト云フコトハドコヲ見テ當局者ハ想像ヲサレタノデアル、又此場合併合
スルトコロノ卽チ母國タル日本帝國內ニ於テ何カ併合ニ反對ヲスル大運動ヲ起ス虞ガ
アッタカト云フニ決シテナイノデアル、當局者ガ緩慢ニシテ朝鮮併合ノ遲緩ナルコトヲ罵ル
ト云フ有樣デアッテ、一人モ朝鮮併合ニ反對スル運動ヲ起スト云フ虞ハ決シテナカッタノ
デアル、然ラバ卽チ內外ニ於ケル情勢ハ如何ト云ヘバ不測ノ變災ガ起ルト云フ憂ハ毫モ
ナイ、モウ一ツハ何デアル、政治上經濟上ニ於テ若シ議會ニ諮リツヽアッタナラバ、重大
ナル損害ヲ受ケルト云フ場合若クハ諮ラズシテヤレバ大ナル利益ヲ收メルト云フ場合デア
ル、決シテ左樣ナ政治上經濟上ニ於テ議會ニ若シ諮ッタナラバ是ダケノ損害ヲ受ケル
ト云フ事實ハ毫モ成立ツテ居ラナカッタノデアル、而モ斯樣ニ一々分析ヲシテ申上ゲナクテ
モ朝鮮ト日本帝國ノ勢力ノ權衡上カラ考ヘテ見テモ分リ切ッタ話デアル、日本帝國ハ
百万ノ强兵ヲ提ゲテ居ル、五十万噸ノ艦隊ヲ浮ベテ居ル、朝鮮國ニ於テ此際寸鐵ヲ
帶セテ居ラヌ、此大勢力ヲ以テ此貧弱ナル朝鮮ニ臨ンデ何ノ不測ノ變災ガ起ル虞ガア
ルト云フノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)若シ尙此ノ如キ內外ノ形勢ニナッテ居ルノニ
不測ノ變災ガ起ルコトヲ恐ルヽト云フナラバ、全ク事實ニハナイガ、唯幽靈ヲ夢ミルガ如
クニ當局者ノ妄想デ恐レタト云フダケノ話デアッテ、事實恐ルベキモノハ存在ヲシテ居ラヌ
(拍手スル者アリ)此ノ如キ場合ニ於テ尙朝鮮ヲ併合スル上ニ於テ其不測ノ變災ノタメ
ニ日本帝國ノ計畫ヲ誤ルナドト云フコトヲ恐ルヽナラバ、是ハ世界無類ノ臆病人デアル
(拍手スル者アリ)ソレデ吾〓ハ當時現內閣ガ朝鮮併合ニ際シテ財政上及其他政治上
ノ處置ヲ取ル上ニ於テ當然帝國議會ニ協賛ヲ求メテ悠々トシテ之ヲ斷ジテ差支ナイモノ
ト看做ス、唯妄想ニ依ッテ何モ內外ノ情勢ニ於テ此計畫ヲ誤ラシメルダケノ事實ガ存在
シテ居ラヌモノヲ、或ハ不測ノ變災ガ起ランコトヲ惡レタト云ヒ、緊急已ムベカラズト云
フ、其緊急已ム可ラザル事實ト不測ノ變災ト云フモノヽ正體ヲ茲ニ示サズシテ、唯言葉
ノ上ニ於テイロノ〓ト其緊急已ムバカラズト云フコトヲ主張サレ、又當局者ガ自ラ辯解
ノ出來ヌコトニ至ルト、委員ノ諸君ニ向ッテ、當局者ノ位地ニ立ッテ御考慮ヲ下サレタナ
ラバ御分リニナラウナドヽ云フニ至エテテ、全ク此事後承諾ヲ求ムルノ理由ノ存在シテ居
ラヌモノト看做ス(拍手起ル)議會モ亦此重大ナル事件ニ對シテ事後承諾ヲ與ヘルト云
フニハ與ヘルダケノ理由ト其名義ガ成立タナケレバナラヌガ、吾〓ハ其名義其理由ヲ見
出スコトガ出來ナイ、是ハ當局者ノ承諾ヲ求ムルニ對シテ吾〓ハ不承諾ヲ與ヘルト云フ
主ナル理由デアル、而シテ一轉シテ朝鮮ノ將來ニ對シテ之ヲ如何ナル方法デ統治スルカ
ト云フノ案ガ、卽チ花井君ノ提出サレテ居ルトコロノ法律ニ依ッテ議會ノ權能ヲ殺イデ
總督ニ專制ノ權ヲ與ヘルト云フ案デアル、是ハ又吾〓ノ甚ダ贊成ヲスルコトニ躊躇スル
所以デアル、何トナレバ吾〓ハ勅令ガ宜イ、或ハ法律テ極メルガ宜イト云フ區域ニ入ッテ
爭フコトハ一向必要ガナイ、勅令ヨリハ法律デ極メタ方ガマシデアルトカ、或ハ勅令デヤッ
タ方ガ宜イトカ云フコトハ、是ハ既ニ此議會ノ權能ヲ割イテ、總督ニ大權ヲ與ヘルト云
フコトガ極ッタ後ノコトデアル、吾〓ハ朝鮮ヲ統治スル上ニ於テ、決シテ變則的ノ方法ヲ
以テ治メル必要ガナイト見テ居ル、無論風俗人情ガ異ナル故ニ、法律規則モ異ナラナケ
レバナラヌト云フコトハアル、ソレ故ニヤハリ此議會ノ監督ノ下ニ法律ヲ制シテ、而シテ之
ヲ實行サセルコトヲ總督ニヤラシテ宜シイ、今日ノ場合日本程朝鮮ノ事情ニ明ルイ人民
ハナイ、朝鮮ヲ併合致シタト云フコトハ近日ノコトデアル、ケレドモ朝鮮ヲ我帝國ノ恰モ府
縣ノ如ク、郡村ノ如ク、朝鮮ノ政治ヲ執ッテ來タト云フモノハ卽チ日本人デアル、或ハ
彼ノ國ニ顧問トナッテ彼ノ政治ヲ指導シ、若クハ彼ト委任ノ條約ヲ結ンデ我ニ朝鮮ノ政
權ヲ委託セシメ、若クハ朝鮮ノ役人ト日本人ガ自ラナッテ朝鮮ノ政治ヲ執ッテ來テ居ル、
朝鮮ノ人情風俗ニ明ルイコトハ新屬地ヲ扱フ上ニ於テ日本人程明ルイ國民ハナイ、殊ニ
朝鮮ト日本ノ地理上ノ關係カラ申シテモ敢テ九州、北海道ト異ナルモノデハナイ、海ノ
便アリ、陸ノ便アリ、何モ特別ナル總督ノ權力ヲ附與シテ置カナケレバナラヌト云フ必要
ガ第一ナイ、此憲法ノ制定セラレテ居ル處ニ所謂正則的ノ政治ヲ朝鮮ニ施シテ、決シテ
差支ナイ、事實上ニ於テ決シテ差支ナイ、殊ニ年々議會ハ開ケル、尙已ムヲ得ズンバ臨時
議會モ開ク、其議會ニ以テ朝鮮ノ法律規則ヲ前以テ知レテ居ルコトハ協贊ヲ經テ置
〃又或ハ出來事ガアレバ重大ナル出來事ハ無論內地ニ於テモ事後承諾ヲ得テヤルノ
デアル然ラザルモノハ順々ト其次ノ議會ニ提出シテ、法律ヲ極メレバ宜シイ、事實上ニ
於テ特殊ノ權力ヲ-議會ノ權力ヲ殺イデ總督ニ與ヘテ置クト云フ前以テ左樣ナコト
ヲスル必要ハ決シテ存シテ居ラヌ、是ハ變則政治ヲ爲サウト云フコトニ對シテノ所謂吾〓
ハ正則的ノ統治法ニ依ッテ朝鮮ヲ治メテ行カウト云フノデ、而シテ總督ニ若モ議會ノ權
能ヲ割イテ之ヲ與ヘテ置クト云フコトカラ起ル弊害ノ方カラ觀タトキニハ、益〓吾〓ハ此
法律ニ依ラウトモ、勅令ヲ以テシヤウトモ、總督ニ著大ナル權力ヲ附與シテ置クト云フコ
トハ頗ル不贊成デアル、是ハ數箇月ノ經驗デアリマスルケレドモ、朝鮮合併以來總督府
ニ於テ朝鮮ニ對スル法律規則其他政略上ノ處置ヲ見マスルト云フト、吾ミハ甚ダ寒心
セザルヲ得ヌコトガアル、抑、く朝鮮ヲ統治シテ行クトコロノ大方針ト云フモノハ、朝鮮ノ產
業ヲ發達セシムルト云フコトガ主眼ニナルノデス、又日韓ノ彼我ノ同化ヲ速ニ圖ルト云フ
コトハ是ハ主眼ニナラニヤナラヌ、此大方針ト云フモノハ如何ナル人ガ如何ナル手段ニ
依ッテ朝鮮ヲ統治シテモ、此二ツヲ出デヌコトハ是ハ明カナコトデアル、然ルニ此朝鮮ノ
生產的發逹ヲ圖リ、若クハ彼我ノ同化ヲ速ニシテ、日本帝國ノ國防上、經濟上ノ基
礎ヲ鞏固ニスルト云フ目的ヲ達スルト云フコトハ卽チ是ハ朝鮮人デハ出來ヌノデアル、
日本人ノ力ニ俟チ、日本人ノ資力ニ俟ツト云フコトハ無論ノコトデアル、無論日本人ノ
多クガ朝鮮ニ移住ヲスル、日本人ノ資本ガ朝鮮ヘ注入セラルヽト云フコトヲ圖ルコトハ
最モ急務中ノ急務デアル、然ルニ此朝鮮總督ノ政略ノ方針ナルモノハ如何ナル〓ニ向
イテ居ル、何ト辯解ヲ致シタトコロガ、ドウ云フコトヲ以テ之ヲ辯護シテ見タトコロガ、大
體ニ於テ朝鮮總督府ノ今日マデヤッテ來タトコロノ所謂警察ノ卽決例或ハ會社令其他
此新聞言論人民ノ自由權利-思想ノ自由ニ對スル束縛的、壓制的ノ手段ヲ執ラ
レタト云フコトハ、是ハ爭フベカラザルコトデアル、事實ハ澤山アリマス、一々事實ヲ舉ゲ
ヤウト云フナラバ日モ亦足ラヌ、吾〓ハ唯此綱領ヲ舉ゲテ此三箇條デ十分デアル餘リ
內密ニ入ッテ之ヲ訐キハシナイ、此ノ如キコトヲシテ朝鮮ヲ治メルト云フコトガ果シテ朝鮮
ニ向ッテ產業ノ發達ヲ奬勵シ、彼我ノ同化ヲ速ニスルト云フ方ノ途ニ是ガ行クノデアル
カ、將タ其反對ニ行クノデアルカト云フコトハ、誰ガ見テモ明カナコトデアル、旣ニ此總督
府ニナッテ以來ノ日本人竝ニ朝鮮人ノ批評ハ姑ク措イテ、外交團-領事或ハ宣〓
師其他朝鮮ニ出入スルトコロノ外國ノ人ノ批評ト云フモノハ又聽クニ價スル、是等ガ此
總督政治ト云フモノヲ見テ何ト言ウテ居ル、全ク此日本ノ朝鮮統治策ト云フモノハ軍
政デアル、民政ヲ假裝スル軍政デアルト云フコトハ、殆ド是ハ通語ニナッテ居ル、凡ソ此
殖民地ノ發達ヲ圖リ、此ノ如キ未開國ヲシテ速ニ我國ニ同化セシムル、或ハ彼ノ產業
其他ノ發展ヲ圖ルト云フニハ、餘程此政治向キニ於テモ種々樣ミノ人間ガ多ク移住シ
テ、多ク資本ヲ下シテ種々ナ企業ヲサスルト云フ方ニ之ヲ誘導スルヨリ外ニナイ、此軍
政的ノ束縛壓制的ノ方法ニ依ッテ何レモ朝鮮ニ住フコトハ精神上ニモ不愉快ヲ感ズル、
事業上ニモ干涉ヲ受ケル斯ウ云フ處ガ決シテ榮エタト云フ例ハナイ、既ニ總督モ過日
來實業家ヲ集メテ朝鮮ノ產業的發達ヲ圖ルニハ實業家ノ力ヲ俟タナケレバナラヌナドヽ
云フ隨分御世辭ヲ振撒イテ居ルヤウデアル、ケレドモ此朝鮮ノ生產的發達ヲ圖ルト云フ
コト、未墾地ヲ開墾スル、或ハ鑛山、山林ノ開發ヲヤル、詰リ此朝鮮ト云フモノガ商工
業ノ盛ンナ國デナイ以上ト云フモノハ、農事的ノ事業ヲ奬勵發達セシムルト云フヨリ外
ニナイ、然ルニ此農事的鑛山或ハ山林、或ハ漁場等ニ對スル總督ノ手心地ハドウデア
ルカ、之ニ行ッテ事業ヲ企テルモノハ數千万人アルノデアル、種々ナ政府ニ向ッテハ請願ヲ
シ、種々ナ特許ヲ得テ業ヲ營マントスルトコロノモノハ總督府ニモ其願書ノ多キ卓上山ヲ
成スト云フコトデアル、一向是等ノモノニ對スル裁決ヲ與ヘヌト云フコトモ輿論デアル、此
結果ト云フモノハドウ云フ方面ニ向ッテ進ミ居ルカト云フト、卽チ或ハ民業ヲ干涉シ、成ル
タケ民業ヲ抑ヘテ、此官營ト云フコトヲ企テルト云フ是ハ措置デハナイカ、若シ然ラズト言
ヘバソレハ然ラズト言ッテモ宜カラウガ、併ナガラ今ノ方針ト云フモノハ詰リ官營ニ傾ク方
ノ方針ニナッテ居ル、民業ハ何處マデモ干渉ヲスル、何處マデモ或ハ資力ノ乏シク或
總督府デ如何ハシイト見ルヤウナ人間ハ追〓退去條例モ制定セラレルト云フ話デアルガ、
段々嚴シクナッテ來ルデアラウ、サウ云フコトヲシテ此新殖民地、新領土ノ發展ヲ計ルト
云フコトハ到底是ハ望ミ得ラレヌコト、是等ノ事實ニ考ヘテモ總督府ニ無限ノ權力ヲ與
へ法律ヲ制定スル權力ヲ與ヘ、又政治的總督府ノ手心地ニ依ッテ事業ノ許否ヲ決ス
ル、總督府ノ憎惡ニ依ッテ卽チ人ヲ韓國カラ退ケル、斯ウ云フコトニナレバ此日韓合邦
ノ結果ト云フモノハ詰リ日本帝國ノ財政ヲ枯渇シ、日本帝國ノ國防的基礎ヲ薄弱ナ
ラシムルト云フ結果ニ陷ルノデアル、吾〓ハ左ナキダニ必要ノナイノニ議會ガ自ラ其權能
ヲ殺イデ、總督ニ與ヘル、又憲法上ノ意味ニ於テモ甚グ疑シイトコロマデ之ヲ侵シテ、尙
種々ナ工風ヲシテ法律ヲ立テ勅令ヲ拵ヘルト云フヤウナ行掛リニ之ヲ進メルト一云フコト
ハ、元〓不同意デアル、況ヤ現總督府ノ筆法政策ト云フモノヽ傾キハドチラカラ之ヲ批
評致シテモ決シテ將來朝鮮ヲ產業的ニ發達セシムル所以ニアラズ、又一面新聞、出版、
集會ノ自由ヲ禁ジテヤルト一云フコトハ詰リ〓育上ニモ干涉ヲ恣ニシテ、朝鮮ニ於ケル人
智ノ發達ヲ妨ゲルト云フコトハ疑モナイコトデアル、此ノ如キ壓制、專制ヲ行フト云フ人
ノタメニ折角合邦ヲシタトコロノ朝鮮ト云フモノヲ犠牲ニ供スルコトハ、我輩敢テ取ラヌ
(拍手起ル)或ハ進ンデ憲法論、法律論ニ入レバ多々反對ノ點ガアリマスケレドモ、吾〓
ハ政略上ヨリ、朝鮮統治ノ大方針上ヨリ此ノ如キ、總督府ニ無限ノ大權ヲ附與シテ
朝鮮ヲ統治セシムルト云フコトハ大反對デアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=95
-
096・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 柴四朗君
〔柴四朗君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=96
-
097・柴四朗
○柴四朗君 諸君、嘗テ韓國ニ公使トシテ手腕ヲ揮ハレ、今ハ外交通ヲ以テ名高イ
大石君ノ後ヲ受ケマシテ、此演壇ニ登リマシタノハ私ノ光榮トスルトコロデゴザイマス、而
シテ諸君ニ本問題ニ移ル前ニ願ッテ置キマスノハ、私ハ性來演說ト云フコトハ好マナイモ
ノデアリマシテ、此演壇ニ登ラヌコトモ既ニ數年デゴザイマスガ、今日已ムヲ得ズシテ此演
壇ニ立チマシタニ依リマシテ、或ハ辯ガ冗長ニ流レルカモ知リマセヌガ、諸君ニ於テ暫時
雅量ヲ以テ御〓聽アランコトヲ希望スルノデゴザイマス、私ハ委員長ノ報告ニ全部贊成
ヲ表スルモノデゴザイマス、而シテ大石君ニハ反對デゴザイマスガ、第一ニ大石君ノ述ベラ
レタコトニ付テハ私モ略〓贊成デアリマス、ソレハ大石君ハ此ノ如キ重大ナル問題ハ輕々ニ
論ズベキモノデハナクシテ、是ハ重大ナル信任問題デアルト云フコトヲ述ベラレマシタガ、私
モ此韓國併合ノタメニ起ルトコロノ此事後承諾ト云フノハ最モ重大ナル案件デアリマシ
テ、是ヲ議會デ否決シマシタナラ無論政府ノ信任問題デアルト解スルノデアリマス、併ナ
ガラ是ガ政府不信任デアルカ、信任デアルカハ僅ニ數日ノ間ニ決スルコトデアラウト思ヒ
マス、是ハ事實ニ徵シテ、後トデ諸君ノ見ラレンコトヲ希望スルノデアリマス、而シテ大石
君ハ之ニ承諾ヲ與ヘラレナイト云フコトニ付テ縷々御述ベニナリマシタガ、其大案件ハ此
ノ如キハ承諾ヲ與フル必要ノナイト云フコトヲ申サレタノデゴザイマスガ、抑〓此朝鮮併
合ニ就キマシテハ憲法第十三條ノ大權ニ依リマシテ條約ヲ締結サレ、而シテ御裁可ニナ
リマスヤ否ヤ、其瞬間ニ法律ヲ要スルノデアリマスカラ、是ニ於テ法律ニ代ルベキ勅令
ガ發布サレマシタト同時ニ又財政ノ處分ヲ爲サナケレバナラヌノデアリマスカラシテ、財政處
分ヲ政府ハ緊急ニ依ッテ取ッタノデアリマス、而シテ之ヲ憲法ニ依ッテ議會ニ提出サレタノ
デアリマスカラシテ、此事ニ付テハ何等政府ノ責任ヲ問フベキ議論ガナイト信ズルノデアリ
マス(ノウ〓〓ト呼フ者アリ)又大石君ハ此財政ノ處分ヲ爲スニ當ッテ急ヲ要スルニアラ
ズ、議會ヲ開イテ其協賛ヲ經テ、而シテ後ニ決スベキモノデアルト云フコトヲ申サレマシタ
ガ、此ノ恩賜金或ハ免租ノコト、其他ノコトハ議會ヲ開キマシテ是ノ協贊ヲ得ルタメニ
此コトニ付テ或ハ朝鮮ノ貴族ヲ如何ニスル、或ハ免租ヲ如何ニ取計フカト云フコトヲ論
ジマシテ、而シテ後ニ恩賜金等ヲ下サイマシタナラバ朝鮮人ノ如キ事大主義ニ感化サレ
タモノハ如何ニ考ヘルデアリマスカ、其聖恩ノ效能ト云フモノハ非常ニ薄イト云フコトヲ
私ハ斷言スルニ憚ラナイノデアリマス(ノウ〓〓ト呼フ者アリ)加之大石君ハ不測ノ災害
ト云フコトハ認メナイ、朝鮮ハ平穩デアルト云フコトヲ申サレマシタケレドモ、僅ニ一年前ニ
於テハ日本カラ討伐隊ヲ送ラレマシテ既ニ三十二年カラ三十三年ニ掛ケマシテ議會ニ
此頃提出ニナリマシタ通リ、三百六十万圓ノ討伐費ガ要ルデハゴザイマセヌカ、ソレガ此
朝鮮併合ヲ去ルコトマダ一年經タヌノデゴザイマス、此ノ如キ事實ヲ抹殺シ去ルト云フコトハ
大石君ハ此頃禪門ニ歸依サレテ屢〓無我ノ境ニ遊ンデ居ラレルト云フコトデアリマスカラ、
或ハ其コトカラシテ御忘レニナッタカモ知レマセヌガ、私ノ如キ凡俗ハ事實ヲ事實トシテ陳
述スルヨリ外ナイノデゴザイマス、私ガ之ヲ精細ニ論ジマスレバ少シク過去ノ事實ニ遡リタ
イト思フノデアリマス、抑〓朝鮮ハ日本建國以來幾多ノ聖主、賢相、名將、志士ガ心
血ヲ注ギ、熱血ヲ濺イデ、而シテ尙打ッテ一丸トスルコトガ出來ズシテ、ソレガタメニハ近ク
ハ大久保、西〓或ハ伊藤諸公ノ非命ニ斃レマシタノモ、皆是ハ朝鮮問題ノ禍源カラ
起ッタコトヽ思ヒマス、然ルニ今日〓文武允天皇ノ御世ニ於テ、而シテ今日ノ併合ヲ得マ
シタノハ本員等ハ實ニ欣喜措クトコロヲ知ラズシテ、此併合ノ日ヲ以テ祝日トマテモ致シ
タイト考ヘル位デアルノデアリマス、然ルニ(「ソンナコトハ關係ガナイ」ト呼フ者アリ)マア默ツ
テ御聽キナサイ、而シテ私ガ經歷カラシテ此御話ヲ致シタイ考デアリマス、私ガ朝鮮ノコトニ
關係ヲ致シマシタノハ大養君ノ紹介ニ依リマシテ始メテ彼ノ亡命客金玉均、朴泳孝諸
氏ト交際ヲ致シマシテ、彼ノ亡命客ガ日本ノ聲援ヲ當テニシテ事ヲ舉ゲマシタトコロガ、事
破レテ日本ニ亡命致シマシテ、而シテ日本政府ハ列國ヲ憚ッテ殆ド捨テヽ路傍ノ人ノ如
〃又有志家モ尙之ヲ助ケナイト云フコトデアリマシタガ、犬養君ハ之ニ同情ヲ表シマシ
テ大ニ朝鮮ニ向ッテ事ヲ爲サントセラレマシタコトカラシテ、吾〓ガ之ニ關係ヲシ始メタノデ
ゴザイマス、而シテ吾〓ハ彼等ヲ助ケ、而シテ遂ニ刺客ヲ送ラレマシテ遂ニ二十七年ノ變
亂ガ起ッタノデゴザイマス、此二十七年ノ變亂ガ起リマシタトキニ當ッテ、此間カラシテ朝
鮮總督ノ權限、或ハ其他ニ向ッテ烈シキ議論ヲ爲サレタトコロノ鈴木力君ノ如キハ如
何デアリマスカ、當時少壯ニシテ一劍ヲ携ヘ、爆裂彈ヲ强奪シテ、彼ノ禍中ニ投ジテ朝
鮮ヲ助ケントセラレタル一人デゴザイマス(「佳人之奇遇ヲ去ルコト遠シ」ト呼フ者アリ)鈴
木君カラ此ノ如キ議論ヲ聽クト云フコトハ實ニ今昔ノ感ニ堪ヘヌノデゴザイマス、而シテ
朝鮮ニ於テ果シテ不測ノ災厄ガ潛ンデ居ルヤ否ヤト云フコトハ一昨年ノ暮私ガ同志ヨ
リ朝鮮竝ニ滿洲露國ノ視察ヲ託セラレマシテ而シテ滿洲ニ參リマシテ、而シテ哈爾賓
ニ往キマシタトキニ営ッテ彼ノ朝鮮人ガ哈爾賓或ハ浦鹽斯德等ニ於テ非常ニ危險ナ分
子ノアルト云フコトヲ發見シタノデゴザイマス、私ガ哈爾賓ヲ去リマシタノハ伊藤公ノ遭難
ノ二日前デアッタノデゴザイマス、(「ソンナコトハ問題外デアリマス」ト呼フ者アリ)問題外
デアリマセヌ、是カラ事實ヲ證明スルノデアリマス、外交ヲ論ズルニハ大石君ヨリ甞テ
外交ヲ論ズルニハ事實ト歷史ヲ以テ判斷スルヨリ外ニナイト云フコトヲ大石君カラ聽イタ
コトガアリマスカラ、此事ヲ以テ是カラ論ジヤウト思フノデアリマス、而シテ私ガ滿洲カラ朝
鮮ニ入リマシテ、非常ニ驚キマシタノハ朝鮮ガ數年前ヨリモ著シク變化シタコトデアル、ソ
レハ宣〓師ノ勢力ガ非常ニ發達致シマシテ、ソレガタメニ學校ト云フモノモ澤山ニ起リマ
シタ、而シテ彼等ハ常ニ朝鮮獨立ノ歌ヲ歌ヒ或ハ危險ノ書籍ヲ頒布致シマシテ、是ガタ
メニ朝鮮人ハ非常ニ日本ニ反抗ノ氣勢ヲ高メタノデゴザイマス、是等ノ事實ヲ私ガ見
マシタカラシテ急イデ日本ニ歸リマシテ、朝鮮ハ彼ノ通リニシテ置カレルト云フコトハ實
ニ危險デアリマスカラ、早ク處置スルコトヲ當局者ニ中心言ヲ致シタコトモゴザイマス、而シテ
此事ヲ忠告シテモ具體的ニアラザレバ甚ダ要ヲ得ナイト思ヒマシタカラシテ、其處ニ居ラレ
ルトコロノ大竹君或ハ小川平吉君其他ト屢〓集會ヲ致シマシテ朝鮮ニ關スル問題ヲ具
體的ニ調査シテ之ヲ當局者ニ提言シタコトモゴザイマス、而シテ今日併合ノ結果ヲ見マ
スト、吾〓ノ提案ハ多クハ採用サレタモノト考ヘテ居ルノデアリマス(「報告終リ」ト呼フ者
アリ)而シテ大石君ハ日本ノ外交ハ朝鮮ニ對シテハ失敗デアルト云フ御議論デアリマス
ガ、私ガ一昨日哈爾賓カラ受ケタトコロノ哈爾賓ノ新聞ニアルコトヲ諸君ニ御參考ニ供
シテ置キタイト思フノデアリマス、是ハ露國ノ半官報「ノーオエウレミヤ」ノ數日ニ亙ッタ社
說中日本ガ韓國ヲ合併致シマシテカラ種々ノ活動ヲ初メル中ニ其中ノ最モ主ナルモノハ
鐵道ノ普及デアル、其鐵道ハ京元鐵道ヨリシテ會寧ニ到リ、會寧ニ到レバ既ニ浦鹽斯
德ニ、百二十哩ニシテ達スル、是ヨリ吉林ニ到リ、而シテ長春ニ達スルノデアル、然ルニ
今日ハ日露兩國ニ於テ協定ヲ重ネテ居ルカラ危險ノ虞ハナイト雖モ、國力競爭ハ力ニ
アル故ニ、他日國交斷絕ト云フ不幸ニ遭遇シテ、干才相見ルニ至ッタトキニハ、露國ハ六
年前ニ甞メシヨリモ尙辛イ經驗ヲ甞メニナラヌノデアル、然ルニ露國ノ鐵道政策ハ依然ト
シテ進歩シナイノデアルト云フコトヲ論ジ、是ヨリシテ朝鮮内地ノコトヲ論ジマシテ、終リ
ニ外交ニ付テ斯ク論ジテアルノデアリマス、日本外交ノ成功ハ日韓合併ニ於テ最モ顯著
ナルモノデアリマス、昨年八月日本ハ極メテ簡單ニ韓國ヲ合併シテ韓帝ヲ廢セリ、而モ
各國揃ッテ之ヲ默認シ一國トシテ之ニ何等ノ故障ヲ申出ヅル者ナカリシ、若シ韓半島
以外ノ地ニ於テ此ノ如キコトアリタルトセバ幾許ノ抗議紛出シ、幾種ノ虛喝物議ヲ惹
起シタルヤ知ルベキノミ、曾テ露國ガ朝鮮ニ於テ優先權ヲ得ントシタルトキ全世界ハ舉ツ
テ反對セリ而モ吾人ハ當時朝鮮ヲ以テ萬國ニ對シ萬國ノ貿易ニ對シテ其市場ヲ開クベ
キヲ宣言シ置キタリ然ルニ日本ハ朝鮮ヲ閉鎖シタリ朝鮮ニ於ケル歐米人ハ治外法權ヲ
失ヒ日本ノ行政日本ノ裁判權ニ服スルコトヽナレリ、曩ニ哈爾賓ニ於テ自國ノ領事以外
如何ナル官憲ヲモ承認スルヲ欲セサリシ獨逸人或ハ英國人ノ如キモ今日京城ニ於テ温
順ニ日本ノ裁判ニ從ヒ共刑罰ニ服シ居ルナリ而モ一言抗議ノ聲アリシヲモ聞カサルナリ
是レ日本外交ノ巧妙ナリシ結果ニ外ナラス」之ハ寧ロ外國ノ新聞ニ於テモ尙此讚辭ヲ呈
シテ居ルノデアリマス(「ソレガ何ノ關係ガアリマス」ト呼フ者アリ、笑聲起ル)此ノ如クニシテ
私ハ此統監政治ニ付テハ今度ノ合邦ニ付テ最モ巧妙ナル外交ニ依ッテ施行サレヌト云
フコトヲ信ズルモノデアリマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)今マデ伊藤公ノ如キ大政治家ガ
朝鮮デ指導ヲヤラレルニ對シマシテモ屢〓暴徒ガ蜂起シマシテ、而シテ或ハ鐘路ニ大集會
ヲ催シ、負商褓商儒生ガ四方ヨリ集マリテ妨害ヲシタト云フコトハ極ク近年ノ事實デゴザ
イマス、然ルニ此度ノ併合ノ最モ靜平ニ行ハレマシタノハ、此間總督ノ演說ニアリマスル通
リニ、朝鮮ノ皇帝ヨリシテ統治權ヲ日本皇帝陛下ニ讓與サレ、而シテ其詔勅ハ日本皇
帝陛下ノ詔勅ト竝ニ統監ノ諭告ト云フモノガ、今マデハ韓國ノ內地マデニ行渡リマスニ
ハ二月或ハ三月掛ッテ居リマスノニ、今度ハ僅ニ二三日卽チ置郵シテ會ヲ傳フルヨリ速
ナリト云フ勢デ、悉ク僻遠ノ地ニマデ行渡ッテ居ルノデアリマス、故ニ今日マデ朝鮮人卽チ
兩斑ノ人ガ浮說流言ヲ事トシ、常ニ禍亂ヲ起スト云フコトモ此詔勅ニ對シテ此機會ガナ
カッタノデアリマス、是等ハ最モ巧妙ニ行ハレタル〓例デアル、故ニ此間ノ統監ノ演說ニハ
如何ナルコトヲ以テ施政ノ方針ニスルト云フコトノ答ニハ、第一番ニ朝鮮人ニハ激變ヲ
與ヘズシテ安心セシメ、生命ノ安固、財產ノ安固、營業ノ自由ト云フモノヲ根本ニスル
ト斯ウ云フコトデ、吾ミハ無論承諾ヲ與ヘルコトニ躊躇シナイノデアリマス(「ソレハ贊成
スル理由トハナラヌ」ト呼フモノアリ)而シテ大石君ガ先程人權問題其他ニ付テ縷々御
議論デゴザイマシタガ、或ハ日本ノ人ニ付テハ多少ノ束縛ト云フコトガアッタカモ知レマセ
ヌ、併ナガラ之ハ吾ミガ深ク考慮ヲ費サンナラヌモノハ、日本ノ彼地ニ居留シテ居ルト
コロノ十五六万ノ人ヲ元トスルカ、千三百万ノ將來吾ミト兄弟ニ成行クベキ者ヲ同化
シ、之ガ人望ヲ收メルタメニ法律規則ヲ作ルモノデアルカ、卽チ十六万ノ者ヲ元ニスルカ、
千三百万ノモノヲ元ニスルカト云フコトハ、吾〓ガ愼重ノ考慮ヲ費サナケレバナラヌ問題デア
ルト考ヘルノデアリ、之ニ加フルニ日本裁判官ガ嚴肅ニ裁判シ、竝ニ收稅吏ガ今日マデ朝
鮮入ガ賄賂ヲ以テ裁判ヲ左右シ、收稅吏ト云フモノモ半パハ其私囊ヲ肥スト云フコトガ
アッタノヲ、之ヲ日本ノ役人直ニ裁判ト云フモノハ公平デアル、稅ト云フモノヲ納メル者ハ
必ズ吾ミノ安寧幸福福タタニニ納メルモノデアルト云フコトヲ彼等ガ理解シマシタナラバ、朝
鮮人ヲ同化スルコトハ敢テ難キコトデナイト思フノデアリマス、而シテ今日朝鮮總督ノ施
政ヲ責メルニ種々ノ非難モアルノデアリマスルガ、總督ノ此間議會ニ述ベラレタトコロヲ以
テ見マスルト、官制ヲ發布シテ、而シテ役人ガ其赴任地ニ往ッタノハ十二月マデヽアル、ソ
レカラ僅ニ三箇月ニシテ施政ノ要〓ヲ舉ゲルト云フコトハ、頗ル無理ナル注文デアルト私
ハ考ヘルノデアリマス、之ハ總督ヲ信任シテ、假スニ時日ヲ以テスルコトハ至當ト思フノデア
リマス、現ニ英吉利ノ「クローマー」卿ガ埃及ニ臨ンデ施政ヲ舉ゲマシテ、非常ナ名譽ヲ
博サレタノハ、何年掛リマシタカト云フト、十數年ノ歲月ヲ費シタノデアリマス、然ルニモ
拘ラズ昨年来國前大統領「ルーズヴエルト」ガ彼地ニ遊ンデ、尙之ヲ以テ餘リニ悠長デア
ル、何故ニ英人ハ尙一歩進ンデ埃及ヲ治メナカッタカト云フコトヲ述べ、英國人ハ驚イタ
ノデアリマス、此ノ如クデアリマスカラシテ臺灣ノ例ニ見マシテモ、臺灣デモ初メハ種々ノ
非難ガゴザイマシタガ、幸ニ兒玉總督竝ニ今日ノ遞信大臣後藤男ノ手腕ニ依ッテ其非
難モ消ヘテ、立派ナ國ニナリマシタ、故ニ朝鮮ニ於テモ吾〓ハ此事後承諾ハ無論與へ、
法律委任ノ權ヲ與ヘ、假スニ時日ヲ以テシテ、大ニ事蹟ノ舉ランコトヲ希望スルノデアリ
マ、尙憲法問題、法律問題ハアリマスガ、大石君ハ大體ヲ論ジテ、之ヲ拔キニサレマ
シタカラ、私ハ之ハ拔キトシテ、アトハ鵜澤、花井博士其他ノ諸君ノ御討論ニ委シマシ
テ、私ハ諸君ノ〓聽ノ榮ヲ謝シマシテ、壇ヲ降リマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=97
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098・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 花井卓藏君-花井君ハ卽チ日程ノ第十六、第十七、
第十八、第二十六ニ反對ノ意見ヲ述ベ、而シテ次ノ日程ノ二十七、自ラ提出サレタ法
律案ノ說明ノ補足ヲ爲スト云フコトデアリマス
〔法學博士花井卓藏君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=98
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099・花井卓藏
○法學博士花井卓藏君 諸君、本員ハ明治四十三年勅令第三百二十六號、第三
百二十七號、第三百二十八號、第四百六號ニ承諾ヲ與フルヲ非トスル者デアリマス、
之ヲ以テ憲法ノ條規ヲ悖ルモノナリト斷定致ストコロノ者デゴザイマス、憲法ハ議會ニ授
クルニ財政協賛ノ權ヲ絕對ニ以テシ、政府ノ獨斷専決ヲ許スコトヲ認メテ居ラヌノデア
リマス、財政ハ國家ノ歲入歳出ヲ整理スル所以ノ要道デゴザイマシテ、臣民ノ負擔ト離
ルベカラザル最モ密接ノ關係ヲ保ツトコロノモノデゴザイマス、ソレ故ニ憲法ハ特ニ之ヲ愼
重ニ取扱フベキコトヲ要求致シテ居リマシテ、必ズ議會ノ協賛ヲ經ベキモノナリト規定ヲ
致シテ居ルノデゴザイマス、誠ニ財政協賛ノ權利ハ立法協贊ノ權利ト共ニ憲法上議會
ノ有スル重大ナル權利テアリマス、立法協贊ノ權利財政協賛ノ權利ハ議會ノ生命デア
リマス、此權利ヲ侵蝕致スト云フコトハ議會ノ生命ヲ傷ツクルモノデアリマス、憲法ノ議會
ニ授ケタル權利ヲ全ク蹂〓スルモノデアリマス、憲法ハ每年一次ノ通常議會ヲ要求致シ
テ居リマス、緊急必要ノ場合ニ於キマシテハ臨時議會ノ召集ヲ要求致シテ居リマス、通
常議會ニ於テ臨時議會ニ於テ必ズ立法協賛ノ權利ハ行フベキモノデアル、財政協贊ノ
權利ハ行フベキモノデアルト規定ヲ致シテ居ルノデアリマス、明治四十三年八月二十九日
及同年九月二十九日ニ公布セラレタルトコロノ問題ニ懸ヲテ居リマスル緊要勅令、此勅
令ハ通常議會開會中ニ發セラレタルモノナレバ臨時議會ヲ召集ヲセラレテ之ニ依ッテ以テ
帝國議會ノ表決ニ俟ツベキ性質ノモノデゴザイマス、然ルニ政府ハ此重大ナル問題ニ關
シテ曾テ議會ノ召集ヲ爲サナカッタノデアリマス、議會召集ノ奏請ヲ致サナカッタノデアリ
さく、而シテ擅ニ憲法第七十條ニ基キマシテ、緊急勅令ニ依リマシテ、財政上ノ處分
ヲ致シタノデアリマス本員ハ此行動ヲ以テ憲法上許スベカラザル行爲ナリト認ムルモノ
デアリマス、獨リ本員ノ違憲處分ナリト斷定ヲ致スノミナラズ、本議會開會ノ第一日ニ
於テ尊敬スベキ政友會ノ幹事松田君ハ此壇ニ立ッテ朝鮮施政ノ方針ヲ質スベク專ラ此
問題ニ集中セラレタノデアル、政友會ノ諸君ハ拍手喝采シテ其意見ヲ迎ヘラレタノデアリ
マス而シテ、本員ノ語ルトコロ松田君ノ語ルトコロト異ラズ、憲法ノ語ルトコロ亦然リト致
シマシタナラバ政友會諸君モ本員ノ說ニ御贊成ニナッテ然ルベキモノナリト信ジテ居ルノデア
ル(拍手超ル)憲法第七十條ニハ如何ナル規定ガアリマスカ「公共ノ安全ヲ保持スル爲
緊急ノ需用アル場合ニ於テ內外ノ情形ニ因リ政府ハ帝國議會ヲ召集スルコト能ハサル
トキハ勅令ニ依リ財政上必要ノ處分ヲナスコトヲ得」ト斯樣ニ規定セラレテアルノデアリ
マス、理窟ハ多ク申上ゲマセヌガ、憲法第八條ニ揭ゲラレテアル文字ト七十條ニ揭ゲラレテ
アル文字トニハ大ニ異リタル意味ノ含マレテ居ルモノデアルト云フコトハ豫メ諒セラレンコ
トヲ望ンデ置クノデアリマス、抑〓法文ニ所謂內外ノ情形ニ因リ議會ヲ召集スルコト能ハ
ザルトキト云ヘル文字ハ如何ニ解釋ヲスルノガ相當デアリマセウカ、文字ハ文字ノ如クニ讀
マナケレバナラナイノデアリマス、內外ノ情形上議會ノ召集不能ナリト云フ場合ハ、例ヘバ
國家ニ兵亂ガゴザイマシテ議會ヲ召集スルコト能ハザリシ場合ノ如キ、若クハ議會解散
セラレテ召集スベキ議員ナキ場合ノ如キ是デゴザイマス、是以外ニ召集不能ト云フモノハ
憲法ハ毫モ想像ヲ致シテ居ラナイノデゴザイマス、明治四十三年八月及九月ノ間ニ於テ
果シテ此ノ如キ情形ノ中ニ我日本帝國ハ居ッタデゴザイマセウカ、如何ナル兵亂ガアッタ
ノデゴザイマセウカ、大石君ノ演說ニ所謂不測ノ變災ハ或ハ兵亂ノ意味ナランモ知ルベ
カラズト雖モ、不測ノ變災ノアリシヤナカリシヤ具眼者ハ之ヲ知ル、此ノ如キ言辭ノ下ニ
內外ノ情形ヲ解スルコトハ許シマセヌ、抑〓財政上ノ緊急處分ハ最モ重大ナルモノデゴザ
イマシテ、殊ニ嚴重ナル要件ヲ憲法ハ要求ヲ致シテ居ルノデアリマス、唯夫レ內外ノ情
形議會ヲ召集スルコト能ハザル場合ニ於テノミ、之ヲ認メテ居ルノデアリマス、此ノ如キ
場合ハ所謂非常ノ場合テアリマス、內外ノ情形非常ナル場合ニ於テノミ第七十條ヲ
以テ財政上ノ緊急處分ヲ許スノデアリマス、通常ノ場合ニ於テハ決シテ緊急處分ヲ許サ
ザル法ノ精神ハ明文上ノ一〓ノ疑ハナイノデアリマス、兵亂ナキナリ解散ナキナリ議會ハ
何レノトキニ於テモ容易ニ召集シ得ラレタノデアリマス、諸君、朝鮮ノ併合ハ國論ノ認メ
テ居ルトコロデゴザイマシテ、日〓日露兩戰役ノ處分ノ延長タルニ外ナラヌノデアリマス、
兩戰ニ與リタルトコロノ國民ハ首ヲ翹ゲ足ヲ企テヽ喜ンデ此最終ノ處分ヲ聽カンコトヲ
欲シテ居ルノデアリマス、內外ノ情形ハ臨時議會ノ召集ヲ迎ヘテ居ッタノデアル、召集ス
ルコト能ハザルニアラズシテ、召集ヲ希望シテ止マナカッタ當時ノ狀態デアリマス、國民ハ
議會ノ召集ヲ欲シ、政府ハ議會ノ召集ヲ遮リタリト云フノガ當時ノ情形ヲ寫シタルモ
ノト本員ハ信ジテ居ル、(拍手起ル)政府ハ委員會ニ於テ種々ナル辯明ヲセラレタルノデ
ゴザイマスガ、或ハ政治上ノ意味ニ於テ、或ハ外交上ノ意味ニ於テ、殆ド取ルニ足ラザル
トコロノ辯解デアッテ、之ニ對スル駁擊ハ大石君ノ議論ニ於テ盡サレテ居リマスカラ、繰返
スコトハ致シマセヌ、諸君、國論ノ一致セル問題ニ向ッテ國民ニ對シテ之ヲ祕密ニスベキ謂
レハ萬々ナイノデアル、召集シ得ベキ議會アリ、而シテ之ヲ召集セズ、祕密ニスベカラザル問
題ニシテ而シテ之ヲ祕密ニナシ、急速逼迫ノ事情アルニアラズシテ言ヲ急速逼迫ノ事情ニ
藉リ、此ノ如クニシテ國民ノ全體ニ於テ勝利ヲ博シタル日露日〓戰役ノ最後ノ處分ヲ
國民ヲ除外シテ政府一人ノ功ニ歸セント欲スルガ如キハ、斷ジテ許スベカラザル行爲デアルト
信ズルノデアリマス(拍手起ル)之ヲ要スルニ問題ト相成ッテ居リマスルトコロノ財政處分
ニ關スル緊急勅令ノ總テハ憲法第七十條ノ法規ニ戾ルコト論ヲ竢タヌト信ジマス、本員
ハ此ノ如キ理由ノ下ニ斷ジテ承諾ヲ與フベカラザルモノト確信致シマス承諾ヲ與ヘズト
雖モ財政處分ハ既往ニ溯ッテ其處分ノ效力ハ保チ得ラルヽノデゴザイマス、卽チ之ガタメ
ニ事前ノ效力ハ失ハナイノデアリマス、權利義務ニハ何等ノ關係ガナイノデアリマス、故ニ
實質ニ於キマシテハ政府毫モ痛痒ヲ感ズルトコロハゴザイマセヌ、政府痛痒ヲ感ゼスト雖
モ、吾〓ハ憲法ノ條規ニ照シ、統治機關ノ違憲行爲ヲ責ムルガタメニ、之ニ承諾ヲ與フ
ルヲ以テ最モ非ナリトスルモノデアリマス、財政協賛ノ權利ヲ尊重スル趣旨ニ於テ、政府
當局ノ責任ヲ糺スノ所以ノ道ニ於テ、憲法竝ニ議會ニ生命精神アラシムル所以ノ理義
ノ下ニ於テ、本員ハ此數個ノ勅令ニハ承諾ヲ與フベカラザルモノト論定スルコトヲ以テ憲
法ノ法意ニ適ヒタルモノナリト信ズル次第デアリマス、事後承諾ニ關スル憲法上ノ意義
ハ大石君ノ論ゼラルヽトコロノ如ク、柴君ノ論ゼラルヽトコロノ如ク、大臣問責ノ精神タ
ルコト論ヲ俟タヌト信ジテ居ル、本員ハ政治上ノ意味ニ於テ然リト信ジテ居ル、法律上ノ
意味ニ於テ然リト信ジテ居ル伊藤公ノ憲法義解ノ說明スルトコロニ據リマシテモ然リト
信ジテ居ルノデアリマス、故ニ問題ノ內容事項ニ關シテハ權利義務ノ關係トシテ、政府
何ノ痛痒ヲ感ゼズト雖モ、此財政協賛ナル重大ナル權利ヲ侵蝕シテ憲法ノ條項ヲ守ラ
ザリシ〓ニ於テハ其責任ハ斷ジテ解除スベカラザルモノデアル、法理的ノ見地ヨリ許スベ
カラザルモノデアル、政治上ノ見地ヨリ許スベカラザルモノデアルト云フコトヲ以テ本論ヲ結
ビタイト存ジマス(拍手起ル)-本員ハ是ヨリ本員提出ノ法案ニ關シマシテ衆議院規
則第百十條第二項ニ依リマシテ趣意ノ辯明ヲ再ビ致スコトヲ許サレンコトヲ望ミマス、
本員ノ本案ヲ提出致シマシタル理由ハ其理由書ニ盡サレテ居ルノデアル、而シテ理由書
ノ第一第二ニ於テ諸君ト見解ヲ同ウスルニ拘ラズ、第三ニ於テ第三ノ前段ニ於テ幾部
ノ諸君ト見解ヲ異ニスルト云フコトハ本員ノ甚ダ遺憾トスルトコロデゴザイマス、論據ハ人
各〓見ル所ヲ異ニスルノデアリマスガ、本員ハ幾部ノ諸君ノ見ラルヽトコロヲ以テ却テ法ノ
精神ニ副ハザルモノト論定ヲスルノデアリマス、反對說ハ憲法第八條ニ基ケル勅令ノ內
容事項ハ常ニ立法事項デアル、ソレ故ニ法律ヲ以テ之ヲ修正改廢スルハ自由ナリト云フ
ノデアリマス、是ハ松田君ニ依ッテ稱ヘラレ、委員會ニ於テ多數諸君ノ贊成セラレシトコロ
デゴザイマシテ、委員長ハ特ニ其趣意ヲ此壇上ニ言明ヲセラレタノデアリマス、去ル四日
本員不在ニシテ缺席ノ儘裁判ヲ受ケテ居ルノデゴザイマスカラシテ、職責上再ビ立ッテ辯
明ヲスベキ責任ガアラウト存ズルノデアリマス、本員思フニ若シ此說ノ如クンバ直ニ勅令
ニ向ッテ修正改廢ヲナシ得ベシトスルニアラザレパ貫カザル理窟ニナリハシナイカト考ヘル
ノデアリマス、第八條ニ揭ゲマシタル內容事項ハ立法事項デアル、法律事項デアルソレ
故ニ法律ヲ以テ修正改廢スルハ自由自在ナリト云フ論ヲ以テ眞ナリトセバ承諾ノ有無
拘ハラズ法律ヲ以テ直ニ勅令ニ向ッテ修正ヲ加ヘ若クハ之ヲ改廢スルコトヲ得ベシトノ
論、貫クニアラズンバ反對論者ノ說ハ貫カヌモノト考ヘルノデアル、憲法ハ第八條ニ
ニ於テ其立法事項タルノ故ヲ以テ論者ノ論ヲ助クベキ何等ノ規定ヲ致シテ居ラヌノデ
ゴザイマス、却テ第八條第二項ニ於テ此勅令ハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出ス
ベシ若シ議會ニ於テ承諾セザルトキハ政府ハ將來ニ向ッテ其效力ヲ失フコトヲ公布
スベシト云フ責任ヲ課シテ居ルノデアル、內容ガ立法事項ナレバ法律ヲ以テ勅令ト
雖モ自由自在ニ修正改廢ガ出來ルト云フノデアッタナラバ、八條二項ノ規定ヲ以テ
此變例立法ヲナシタルモノニ向ッテ責任ヲ課スベキ憲法ノ意義ガ分ラナクナルノデアリマ
ス、是故ニ論理一貫セザル誤解ナリト私ハ論定ヲ致スノデアリマス、委員會抔ニ於キマ
シテハ本員ノ論ヲ以テ憲法上ノ論據ヲ誤シテ居ルト云フ甚シキ攻擊ヲ向ケラレタヤウデゴ
ザイマスガ、本員ノ論ハソレ程弱イ論デハゴザイマセヌ、尤モ留守デゴザイマシタカラシテ
御批評ハ御隨意デ宜シウゴザイマスケレドモ、論者ノ申サルヽ如ク脆弱ナル論デハナイト
云フコトダケハ諸君ノ諒トセラレンコトヲ望ムノデアル、若シ對席ノ場合ノ議論デゴザイマ
シタナラバ、本員ノ議論ハ迎ヘラレタモノデアルト云フコトヲ認メラレンコトヲ望ムノデアル、
是ダケノコトヲ辯明致シマシテ、尙此論據ヲ强ウスルタメニ本院ノ先例ヲ引用致シテ置
キタイト思フ、衆議院先例彙纂九十二頁ニ依レバ緊急勅令ハ修正スルコトヲ得ストアル事
後承諾ヲ求ムル議案ハ一箇條ニテモ不承諾ナラバ全部不承諾トナルトアル、又伊藤公ノ憲
法義解ニモ議會ハ勅令ヲ修正シテ之ヲ承諾スルコトヲ許サズトアル、此ノ如クニ理論モ實
例モ定マッテ居ル、又法律ヲ以テ勅令ヲ廢止シタル實例ト云フモノハゴザイマセヌ、此ノ如ク
私ガ議論ヲ致シマスルトキハ似寄リタルモノガ澤山アルト、斯ウ來ルノデアル、本員劈頭
ニ辯明致シテ置キマシタル通リ、論者ノ說ノ如クンバ承諾ノ有無ニ拘ラズ云々ト云フコト
ヲ申シタコトニ御注意ヲ願ハンケレバナラヌ、承諾以前ニ於テモ承諾以後ニ於テモ立法
事項ナレバ修正改廢自在ナリト云フ論ナリト致シマシタナラバ-後ニ修正改廢が出
來ルノデアッタナラバ、前ニモ修正改廢ガ出來ナケレバナラナイ、後ニ向ッテノ例ハ幾ラカア
リマスガ、論ヲ强ウスル所以ニ於テ大切ナル前ノ方ニ付テノ例ト云モノハ全クナイ、ト
云フコトヲ申スノデアリマス、此〓ニ關シテハ尙大ニ論究スベキ點モゴザイマスケレドモ、要
スルニ本案提出ノ理由ハ政友會諸君ノ大多數ノ御贊成ニナリマシタ通リ、第一第二
ハ主タル理由デゴザイマシテ、第三ノ如キハ附從ノ理由デアッテ、唯學說上ノ爭ヲナスニ
外ナラヌノデアリマスカラシテ、私ハ是以上申上ゲルコトハ致シマセヌ、他日緩々論議ヲ致
スベキ機會ガアルデアラウト思ヒマス、此問題ニ付テ、此法案ニ付テ、大石君ハ委任立
法タル本案ニ反對セラレテ、法律デモ勅令デモ問フトコロデナイ、、議會ノ權能ヲ割イテ朝鮮
總督ニ與フルコトハ政治上ノ理由ニ於テ斷ジテ不可ナリト云フ、御演說ノ下ニ本員ノ案
ニモ一撃ヲ加ヘラレタノデアリマスガ、凡ソ立憲法治ノ國ニ於テ、法律ニモ據ラズ、勅令
ニモ據ラズ、而シテ一國ヲ治ムル途ト云フモノハ何所ニアルカト云フコトニ向ッテ本員
ハ甚ダ感フノデアル、勅令モ要セズ、法律モ要セズ、議會ノ權能ヲ割イテ朝鮮總督ニ授
クルコトハ危險デアル其レ故ニ本案ニ反對デアル、ト云ハルヽモノトセバ、然ラバ何ニ
依ッテ朝鮮ヲ治メルノデアルカト云フ〓ニ於テ私ハ甚ダ惑フノデアリマス、委任立法ノ當
否ハ憲法ノ問題トシテハ疑義ナリトハ本員ノ年來主張スルトコロデアル、疑義ナリト雖モ
今日ノ議會ハ明治二十三年以來之ヲ認メテ、幾千幾百ノ實例ヲ存シテ居ルノデアリマスカ
ラシテ、實際問題トシテ委任立法ノ憲法上ノ當否ヲ爭フコトハ政治上ニ於テハ全ク用ヲ
ナサヌ、學理上ニ於テハ多少價ガゴザイマスルガ、政治上ニ於テハ用ヲナサヌ、ナサヌガ故
ニ本員ハ誠ニ惜キ問題デゴザイマスケレドモ、三年前ヨリ違憲論ヨリ疑義論ニ移リ、今
日ニ於テハ違憲ニモアラズ、疑義ニモアラズト云フ論定ヲ保ッテ居ルノデアル、而シテ此法
案ヲ授クルヲ以テ危險ナリトセラルヽハ、朝鮮總督ヲ信ゼラレザルガタメノミニ原因スルコ
トデアラウト思フ、人宜シキヲ得ザルガ故ニ、一國ヲ治ムル法律マデモ併セテ葬ラントセラ
ルヽガ如キハ、本末輕重ヲ知ラザル甚シキモノト謂ハザルヲ得ヌノデアリマス、以上ノ理由
ニ據リマシテ問題ニナッテ居リマストコロノ財政處分ニ關スル緊急勅令ニハ全體反對シ、本
員提出ノ法令案ニ關シテハ滿場一致ヲ以テ御贊成アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=99
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100・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 鵜澤總明君
〔法學博士鵜澤總明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=100
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101・鵜澤總明
○法學博士鵜澤總明君 諸君、本員ハ此議題ニ對シマシテ政略上ノ意見ヲ述ベルダ
ケノ力ノナイコトヲ甚ダ遺憾ト致スノデアリマス、併ナガラ此政略上ノ問題ニ付キマシテハ
旣ニ大石君、柴君カラシテ十分ニ御議論ガアッタコトヽ考ヘテ居リマスカラ、本員ハ本體
ニ於テ帝國議會ニ附議セラレテ居ルトコロノ緊急勅令、是ハ果シテ承諾ヲ憲法ニ據ッテ與
フベキモノナルヤ否ヤト云フ〓ニ付キマシテ、審議ヲ致シマシタ結果ノ意見ヲ申述ベタイト
思フノデアリマス、イロ〓〓此帝國議會ヲ開カザルコトニ付テノ非難ガアリマシタガ、若シ
條約前ニ於テデス、條約前ニ於テ何故ニ帝國議會ヲ開カザリシヤト云フ議論デアリ
マシタナラバ、此議論ハ緊急勅令ト相對シテ頗ル理由ノアルコトニ思フノデアリマス、併ナ
ガラ此朝鮮ノ併合ノ場合ニ於キマシテハ條約ノ批准ハ八月二十二日デアル、而シテ之
ヲ公布セラレタノハ八月二十九日デアリマス、八月二十九日ニ於テ天皇ノ大權ノ作用
ニ依ッテ條約ガ締結セラレテアル、條約ガ締結サレテ、今迄保護國ノ一部ガ日本ノ領土
トナリマシタ以上ハ、之ニ依ッテ財政ノ處分ハ權利上ノ種々ノ關係ト云フモノガ當然生
ジテ來ルト云フコトハ疑ナイ、而シテ此事柄ハ條約ノ卽日カラ生ジテ來ナケレバナラヌコト
デアラウト思フノデアリマス、從ッテ此緊急勅令ニ付テ承諾ヲ與フベキモノデ有ルヤ無イヤ
ト云フ問題議會ヲ開クコトノ暇アリシヤ否ヤト云フコトニ付キマシテハ、幾ド議論ヲスル餘
地ガナイト考ヘテ居ルノデアリマス、併ナガラ國家ノ併合ト云フコトハ將來屢〓起ルベキ問
題デアル、而シテ將來ニ於テ併合スル場合ニ於テハ尙單純ナル條約ニ依ラズシテ國民ニ
十分諮ッタナラバドウデアルト、斯ウ云フヤウナ議論ナラ格別デアリマスケレドモ、然ラザル
以上ハ此勅令ノ內容ヲ一々吾ミガ調ベテ見マシテ、何故ニ議會ヲ開カザリシヤト云フ質
問ニ對シテハドウモ議論ガ弱イヤウニ考ヘテ居ルノデアリマス、先ヅ此議題ニナッテ居リマス
勅令ノ數ガ十一件アルノデアリマスガ、併ナガラ少シク之ニ付キマシテ內容ヲ御覽ヲ願ヒ
マスト、三百二十六號、ソレカラ三百二十七號、ソレカラ三百二十八號、是ハ孰レモ條約
ノ其日ニ發布サレテ居ルトコロノ緊急勅令デアリマス、多大ナルトコロノ人口ヲ持ッテ居リ
而シテ長イトコロノ歷史ヲ持ッテ居ル、ソレカラシテ從來ノ國際關係モアルシ、內國ノ種々
ノ法律上ノ關係モアルノデアリマスカラ、何等カノ緊急ノ處分ヲ採ラヌト云フコトニナリ
マスト、折角併合シタル朝鮮ノ國民ヲシテ全ク路頭ニ迷ハシムルト云フ結果ヲ生ズルノデ
アル、ソコデ勅令第三百二十ハ號ハドウ云フモノデアルカト申シマスルト、舊韓國政府ニ
屬スル歲入歲出豫算ハ當分ノ內從前ノ儘之ヲ襲用ス、其日ノコトデアリマスカラ誰ガ
ヤッテモ是以上ノコトハ餘程困難デアラウト思フノデアル、ソレカラ勅令第三百二十七號
ハドウ云フコトニナッテ居ルカト云フト、所謂臨時恩賜金デアリマシテ此場合ニ於キマシ
テモヤハリ直ニ之ヲ發布スルコトガ必要デアッタ事情ガアルト私ハ考ヘルノデアリマス、ソレ
カラ勅令第三百二十八號ハドウ云フコトニナッテ居ルカト云フト、從來保護國ノ關係ト
致シマシテ、大藏省ノ預金部ハ韓國政府ノ負擔ニ屬スル債權債務ノ關係ガアルノデア
リマス、卽チ保護ノ結果ト致シマシテ所謂債權債務ノ混同ガ起リマスカラ、此場合ニ
於テ一般會計ノ負擔ニ屬セシムルト云フ規定ハヤハリ條約ノ結果當然必要デアラウト
思フノデアリマス、ソレカラモウ一ツノ財政處分四百六號デアリマスガ、此四百六號ト云
フモノハ成程チヨット見マスルト一箇月ヲ經テカラ出テ居ルヤウニ思ハレル、併ナガラ此
四百六號ノ內容ヲ御覽ヲ願ヒマスルト、其勅令ノ出シ方ニ於キマシテハ或ハ誤解デアッタ
カモ知ラヌノデアリマスケレドモ、又後トカラ承諾ヲ與フルヤ否ヤト云フコトニ付テハ、ドウ
モ仕方ノナイ關係ニ出來テ居ルノデアリマス(「ソレハ前カラ分ッテ居ル」ト呼フ者アリ)勅
令第四百六號ト云フモノハ先ヅ本則ガ三箇條デアリマス、其三箇條ニハ特別會計ヲス
ル必要ガ生ジタト云フコトニナッテ居ル、ソレデ此本則ノ三箇條ニ付テハ何ニ依ッテ居ルカ
ト申シマスルト、憲法第八條ニ依リマシテ先ヅ此法律ニ代ルダケノ命令ヲ出シテ居ル、此
場合ニ併合後一箇月經ッテカラ何故ニ特別會計ニスル必要ガ起ッタカト云フコトニ付テ
ハ是ハ政略上ノ議論ト致シマシテハ、ヤハリ議論ガアルカモ知リマセヌガ、政略上ノ議
論ト致シマシテハ、ヤハリ反對ノ議論モ出來ルノデアル、ソコデ法律ノ上カラ見ルト先
ヅ緊急勅令ニ依ッテ一ノ法文ガ出來テ居ル、ソコデ此特別會計ヲ立ツルト云フコトニナ
ルト、直ニ從來ノ關係ヲ變ジマシテ、ヤハリ財政上ノ或ル處分ヲ執ラナケレバナラヌト云
フトコロカラシテ、直ニ九月一一十九日ニ此緊急勅令ノ出ルト共ニ十月一日カラ其令ヲ施
行スルコトニナッテ居ル、十月一日カラ之ヲ施行スルコトニナルト前ノ財政處分ト後ノ財
政處分トノ間ニ於キマシテ互ニ經過ノ規定ヲ設ケナケレバナラヌノデアリマスカラシテ、其
經過處分ガ所謂附則ニ依ッテ四條カラ十一條マデ非常ナ附則ノ長イ規定デアリマスケ
レドモ、是ガ出テ居ルノデアリマス、斯ウ云フヤウナコトニナッテ居リマシテ、之ニ對シマシテモ同
ク憲法ノ上カラ甚ダ不當デアル、斯ウ云フヤウナ議論ヲ容ルヽ餘地ガナイト考ヘテ居ルノ
デアリマス、ソコデ此憲法七十條ノ解釋ト云フモノニ付キマシテハ、ヤハリ公共ノ安全ノタ
メト云フコトガ目的テアルガ、此ノ如キ條約ヲ結ンデ直ニ財政上ノ處分ヲ執ル事柄ガ、ヤ
ハリ公共ノ安全ノタメニ甚グ必要デアル、其安全ノタメニ必要ナ處置ヲ執ッタモノデアル、
斯ウ認ムルコトニ付テ差支ガナイト思フノデアリマスガ、併ナガラ斯樣ナ朝鮮ノヤウナ國ヲ
併合スル際ニ於テ、其條約前ニ當シテ何故ニ議會ヲ開イテ之ヲ諮ラザリシヤト云フ政略
上ノ議論デアレバ、ソレハ別論デアリマス、併ナガラ其〓ハ此緊急勅令ノ承諾ニ大シタ關
係ノナイ問題ト思ヒマス、ソコデ財政上ノ處分ニ對シマシテ吾〓ガ審査スルトコロノ結果
ニ依リマスト、成程多少ノ不穩當ノ點ガアッタカ知リマセヌケレドモ、之ニ向ッテ承諾ヲ與
ヘル外他ニ致方ガナイト思フノデアリマス、ソレカラ其他ニ付キマシテハ勅令第三百二十
九號ハ是ハ此朝鮮ニ於ケル臨時恩賜ニ關スル件ノ規定デアリマシテ、是モ亦仕方ガナイ、
ソレカラ勅令第三百三十號ハヤハリ會計ノ經理舊韓國政府ニ屬スル、財產ノ管理デア
リマスカラシテ、是ハ前ノ勅令第三百二十六號ト相對シテ必要ナルトコロノ場合デ
アラウト思フノデアリマス、ソレカラ勅令第三百三十一號ニナルト、朝鮮カラ移入スル貨
物ノ移入稅等ニ關スル件デアリマスカラシテ、是モ國ハ一刻モ休ムコトハ出來ナイノデア
リマスカラシテ、當時此ノ如キ場合ノ規定ガ要ルト思ヒマス、勅令第三百三十三號ハ
內地、臺灣及樺太ト朝鮮トノ間ニ出入スル船舶及物件ノ檢疫及取締ニ關スル件デアリ
マスカラ、是モヤハリ必要デアラウト思フノデアリマス、ソレカラ勅令第三百三十六號ハ緊
急勅令デハナイ、普通ノ勅令ノ三百三十五號ト致シマシテ特許法ト意匠法、實用新
案法、商標法著作權法等ヲ朝鮮ニ施行シテ居ル譯デアリマスカラ、斯ウ云フ場合ニ於
キマシテハ朝鮮ニ行レテ居ルトコロノ從來ノ法律ト新ニ施行スル法律トノ經過ノ規定ガ
ナケレバナラヌノデアリマスカラ、ソコデ其經過ノ規定ガ勅令第三百三十六號デアリマス
ソレカラ勅令第三百三十七號ハ商標法ヲ朝鮮ニ施行スルコトニ關スル件デアリマシテ、
是モ經過ノ規定デアリマス、勅令第三百三十八號ハ是ハ著作權法ヲ朝鮮ニ施行スルコ
トニ關スル件デアリマスカラシテ、是モ亦必要ナ法令デアル、斯ウ見テ差支ガナカラウト思フノ
デアリマス、サウー云フヤウナ次第デアリマスト是等ノ大體ノ勅令ニ付キマシテハ今日ドウモ承諾
ヲ與ヘナイト云フトコロノ理由ヲ發見スルニ私ハ甚ダ苦ムト思フノデアリマシテ、其〓ニ付
キマシテハ全部私ハ委員長ノ報告通リ贊成致シタイト思フノデアリマス、次ニ殘ッテ居リ
マスノハ花井案ノ朝鮮ニ施行スベキ法令ニ關スル件デアリマスガ、是ハ旣ニ花井君カラシ
テ十分ニ說明ガアリマシタカラシテ重ネテ餘計ナコトヲ申ス必要ハナイト思ヒマスケレドモ、
尙一應何故ニ此法律案ガ必要デアルカト云フコトヲ述ベテ見タイト思フノデアリマ
ス、先ヅ勅令第三百二十四號ニ依ッテ如何ナル制令ガ朝鮮ニ與ヘラレテ居ルカト云フコ
トヲ少シク見マスルト、此ノ如キ場合ハドウシテモ法律ニ讓ラナケレバナラヌト云フ理由ハ自
ラ明白ニナルト思フノデアリマス、制令ハ朝鮮ニ先ヅ十三件程布カレテ居ルノデアリマス、
其中デ就中重要ナルモノハ制令第一號ノ帝國法令ト韓國法令ノ關係ノ規定ヲ示シタ
モノデアリマス、ソレト制令第五號ノ舊韓國法トソレカラ朝鮮財政ト云フモノヲ示シテ居
リマス、ソレカラ制令第六號ニ依リマシテ裁判所構成法施行ノ件、ソレカラ制令第十
號ニ依シテ犯罪卽決例、制令第十一號ニ依リマシテ民事訴訟規定ニ關スル件、制令
第十二號ニ依リマシテ辯護士規則、制令第十三號ニ於テヤカマシイトコロノ會社令ト
云フモノガ布カレテ居ル、是等ガ總テドウ云フ順序ニ於テ布カレテ居ルカト申シマスト、
何レモ重要ナル立法ノ事項デアルニ抅ラズ之ヲ緊急勅令ニ依リマシテ議會ト云フモノヲ
全ク無視シテ、議會以外ニ此勅令ニ依ッテ此ノ如キ制令ヲ朝鮮ニ布カシメル、斯ウ云フ
ヤウナ狀況ニナッテ居ルノデアリマスカラ、斯樣ナ必要ナルトコロノ法律上ノ規定ニ關スル部
分ハ之ヲ以テ先ヅ法律案ニ讓ッテ、而シテ此議會ト協同シテ十分商議シタ上ニ出スコトノ
方ガ將來ハ必要デアルマイカ、斯ウ云フヤウニ考ヘテ居ルノデアリマス、旣ニ勅令ガ從來出テ
居ッテ今日ニ至ルマデハ先ヅ效力ヲ持ッテ居ルノデアリマスカラ、今日マデノ苦情ヲ言ッタト
コロデ仕方ガナイ、併ナガフ將來ヤハリ此議會ノ權能ヲ、ソッチ除ケニシテシマッテ、サウシ
テ單純ナル緊急勅令ノ效果トシテ濫リニ法律ヲ出スコトハ餘程考ヘナケレバナラヌコトヽ
思ヒマス、諸君ノ御承知ノ通リニ憲法ノ多クハ三權分立論ノ主義ニ出來テ居ルノデ
アリマス、併ナガラ其後新シイトコロノ領土ノ加ハルコト、或ハ他ノ領土ヲ合併スル、此
場合ニ於キマシテ三權分立ノ主義ヲ嚴正ニ適用スルコトノ出來ナクナッタタメニ、種々ナ
ル解釋ヲ取ッテ調和ノコトヲ講ジテ居ルノデアリマス、獨リ新領土ノミナラズ國內ニ於キマ
シテモ一々其立法府ガ僅ニ三箇月或ハ二箇月ノ期間ニ於テ、國內ニ行ハルベキ總テノ
法律關係ヲ規定スルコトハ甚ダ困難デアリマスカラ、先ヅ立法府ト行政府トノ協同ニ依
リマシテ、之ニ處スルトコロノ相當ノ處置ヲ執ルト云フコトニナッタノデアリマシテ、三權
分立ノ主義ヲ害セザル範圍ニ於キマシテ互ニ相牽制スルノデナクシテ、互ニ相助合フト
云フトコロノ精神カラ一種ノ委任命令ノ如キモノガ出來テ來テ居ル、日本ニ於キマシテ
モ明治二十三年以來出來テ居ル、斯ウ云フヤウナ譯デアリマスガ、サウ云云ヤナナ事柄
ガ段々新領土ノタメニ益〓利用サレルト云フ傾向ヲ生ジテ居ルノデアリマス、サウ云云ヤウ
ナ場合デアリマスナラバドウ云フトコロカラ見マシテモ,先ヅ此勅令ト云フモノダケデアッテ、
議會ニ諮ラズシテ仕事ヲスルヨリモ、議會ノ立法權ノ範圍內ニ於テ行政權ト協同ノ仕
事ヲスルコトガ甚ダ憲法ノ精神ニモ適ヒ、、又議會ノ協賛權ヲ重シズルトコロノ所以デア
ラウト思フノデアリマス、而シテ此法律案ニ於キマシテハ提出ノ理由ニ付テハ花井君ガ先
程論ゼラレタ通リニ緊急勅令ト雖モ法律ヲ以テ廢止スルコトガ出來ナイト云フ議論ヲ以
テ花井君ハ本案ヲ提出サレタ、ソレカラシテ松田君ヨリ之ニ反對ガアリマシテ、緊急勅
令ト云フモノハ法律ヲ以テ改廢スルコトハ自由デアル、緊急勅令ニ關スル條件付ノ承
諾、或ハ承諾スル前ニ之ヲ變更スルト云フヤウナコトハ出來ヌケレドモ、之ヲ改廢スルコト
ガ出來ルモノデアル、斯ウ云フヤウナ議論ノ二ツガアッテ、此議論ハ學者ノ間ニモイロ〓〓
アルコトデアラウト考ヘテ居ルノデアリマスルガ、吾〓ハ所謂緊急勅令ニ對シマシテハ法律ト全
ク獨立シマシテ法律ニ依シテ廢止スルコトノ出來ナイ勅令、ソレカラ緊急勅令ノ如キハ效力
ノナイ法律ト同一デアルカラシテ法律ニ依ッテ改廢スルコトノ出來ルモノデアル、斯ウ云フヤ
ウナ見解ヲ取ッテ勅令ハヤハリ法律ニ依シテ改廢スルコトノ出來ルモノデアル、斯ウ云フ趣
旨ニ於テ花井案ニ贊成シタヤウナ次第デアリマスガ、先ヅ何レノ方面カラ見マシテモ此法
案ハ甚ダ必要デアッテ、而シテ緊急勅令ニ於ケルガ如クニ其第一條ニ於キマシテ無限ニ
此立法ノ權ヲ直ニ此議會ニ何等諮ルコトナクシテ他ニ與ヘルト云フヤウナコトニ見ル
ヨリハ法律案ヲ以テ之ヲ出シテ吾ミハ立法權ト行政權トノ此共同ノ働ヲ明白ニスル方
ガ甚ダ穩當デアラウト斯樣ニ信ズルノデアリマス、右ノヤウナ次第デアリマスカラシテ、總テ
委員長ノ報告通り御贊成ヲ顧ヒタイノデアリマス(拍手起ル)
〔「討論終結」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=101
-
102・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 卜部喜太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=102
-
103・清水市太郎
○〓水市太郞君 議長、唯今ノ御演說ニ對シテ御尋ヲシタイコトガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=103
-
104・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) ト部君ニ發言ヲ許シマシタ
〔「ヤルベシヤルベシ」ト呼フ者アリ〕
〔卜部喜太郞君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=104
-
105・卜部喜太郎
○ト部喜太郞君 諸君、唯今議事ニ上ッテ居リマスル合計十一ニ亙リマスルトコロノ
事後承諾案ハ何レモ憲法上重大ナル問題デアリマシテ、若シ此緊急勅令ノ中ノ唯一ツ
ナリトモ議會滿場ノ容ルヽトコロトナラズシテ議會ガ之ニ承諾ヲ與ヘナイト云フヤウナモノ
ガ一ツアリマシテモ、無論政府ノ責任ヲ負フベキ問題デアラウト思フノデアリマスル、今マ
デモイロ〓〓議論ノアリマシタ如ク、事後承諾案ハ分ケテ二種トスルノデアリマスル、其
第一ハ憲法ノ第八條ニ據リマスルトコロノ法律ニ代ルベキ緊急勅令デアル、第二ハ憲法
ノ第七十條ニ據ルトコロノ財政上ノ緊急處分デアリマスル、而シテ此多クノ緊急勅令中
デ最モ議論ノ種トナッテ居リマスルノハ勅令ノ第三百二十四號デアリマスルケレドモ、此
三百二十四號ハ今日ノ議事日程ニ上ッテ居ラヌノデアリマスルカラシテ、イヅレ他日此本
會議ノ上ニ於テ大ニ議論ヲ鬪ハスベキ問題デアルノデアリマスル、勅令ノ第三百二十四
號ヲ除キマスルト云フト、勅令第三百二十七號ノ財政上ノ緊急處分ガ是モ必要ナル問
題デアリマスルガ、此問題ニ付キマシテモ旣ニ花井君大石君等ヨリ十分ニ說明ガアッタ
點デゴザイマスルカラシテ、私ハ時間ヲ節約シ且成ルバク簡明ニ自己ノ意見ヲ述ベルト云
フ便宜ノタメニ細カイ議論ハ避ケルノデアリマスル、大體ニ於テ此承諾ヲ與フベシ
ニ)ラ議論ノ諸君ノ說ヲ伺ヒマスルト云フト、何カ此朝鮮合併ト云フコトハ豫期モ
セズ、偶然ニ起ッタ事柄デアッテ、狼狽シテ此始末ヲ著ケナケレバナラヌト云フ問題ノ
ヤウニ思ハレルノハ、之ハ甚ダ此韓國合併ノ由來ト云フモノヲ忘レタトコロノ議論デア
ラウト思フノデアリマス(拍手起ル)韓國合併ト云フ事柄ハ一年ヤ二年ノ間ニ突然ト起ッ
タ問題デハナイノデアリマス、古イ歷史上ノコトハ暫ク措キマシテ現ニ統監府ヨリ公ニサレ
マシタトコロノ韓國合併〓末書ト稱スルトコロノ此書物ヲ一讀ナサレタナラバ、此韓國
合併ト云フ問題ハ「ポーツマス」ノ條約、日英同盟約款ニ既ニ其原因ヲナシテ居ルノデア
リマスル、ソレニ續イテ明治三十八年ノ十一月ノ十七日ノ日韓新協約ト云フモノガア
リマスルガ、此日韓新協約ニ據ッテ初メテ統監府ヲ置イテ、韓國ノ外交權ト云フモノヲ我
ニ收メタノデアリマスル、ソレニ續イテ裁判警察等一切ノ韓國ノ內政ト云フモノハ悉ク
統監ノ手ニ歸シタノデアリマスル、爾來既ニ四年有餘ノ歲月ヲ經過致シマシテ韓國ノ政治
上ノ實權ト云フモノハ悉ク我國ノ手ニ歸シテ居ルト云フ事柄ハ之ハ事實デアリマスル、ソ
レ故ニ韓國合併ノ條約ト云フノハ唯一片ノ形式ニ止ッテ、其實ハ旣ニ疾ク韓國ト云フ
モノハ我國ニ合併サレタルトコロノ實ヲ持ッテ居ッタモノデアルト云フコトヲ申シテモ決シテ
過言デハナイノデアリマスル、然ラバ政府ハ既ニ統監府ヲ置イテ四年以上モ經過シテ居ル
ノデアリマスカラ、著々其準備ト云フモノヲ致シマシテ、萬違算ナキ筈デアルニモ拘ラズ、韓
國合併ニ對シテハ非常ニ狼狽ヲシテ何事モ議會ニ諮ラズ、法律モ財產上ノ處分モ總テ
議會ニ諮ラズシテ之ヲ獨斷ニ擅行スルト云フヤウナコトヽ云フモノハ、實ニ韓國合併ノ由
來ト云フモノヲ全ク忘却シタモノト言ッテモ差支ナイノデゴザイマスル(拍手起ル)多クノ緊急
勅令ノ內容ニ付テ今算ヘ擧ゲテ一々申ス必要ハアリマセヌガ、私ハ勅令ノ第三百二十
六號ト、勅令ノ第三百三十號ト、勅令ノ第三百四號ト云フモノニ付テ其內容ト云フモ
ノガ、果シテ憲法ノ規定ニ基クトコロノ法律ニ代ルベキ緊急勅令タル價ヲ持ッテ居ルモ!
デアラウカ、憲法第七十條ノ財政上ノ緊急處分ト云フモノニ該當スルモノデアラウカト
云フ〓ニ止メテ、少クトモ此三ツノ勅令ト云フモノハ憲法違反デアルトー云フコトヲ私ハ斷
言シテ憚ラナイノデアリマスル、今マデノ反對ノ論者ハ帝國議會ヲ開クコトノ出來ナイ狀
況デバナカッタノデアル、憲法第八條ノ處分ト云フモノヲ爲スベキ場合デハナイト云フコト
ニ付テ力ヲ籠メラレタノデアリマスルガ、假ニ政府ノ見ルガ如ク內外ノ情形ニ依シテ帝國
議會ヲ開クコトノ出來ナイ事情ノアッタモノデアル、憲法第八條ニ據シテ法律ニ代ルベキトコ
ロノ緊急勅令ヲ發スベキ必要ノアッタモノデアルト假定致シマシテモ、勅令第三百二十六號
勅令第三百三十號竝ニ勅令第三百四十號ト云フモノハ確ニ憲法違反デアルト云
フコトヲ斷言シテ、是ヨリ其理由ヲ述ベントスルノデアリマスル(「謹聽々々」ト呼フ者アリ)勅
令ノ第三百二十六號ハ帝國憲法第七十條ニ據リ財產上必要ノ處分デアルト云フノデ
アリマスル、然ルニ其內容ヲ見マスルトー云フト「舊韓國政府ニ屬スル歳入歲出ノ豫算ハ
當分ノ中從前ノ儘之ヲ襲用ス」トアルノデアリマスル、韓國ノ合併ト共ニ朝鮮總督府ト云
フモノガ新ニ設ケラレマシテ、其政治ニ關スル幾多ノ經費ヲ要スルト云フコトハ申スマデモ
ナイコトデアリマスルガ、其經費ヲ要スル〓ニ付テモ相當ノ財政ノ計畫ト云フモノガナケ
レバナラヌノデアリマス、然ルニ勅令第三百二十六號ハ舊韓國政府ニ屬スル歲入歳出ノ豫
算ハ當分ノ中從前ノマヽ之ヲ襲用ストノミ示シテアッテ其財產ノ緊急處分トシテノ內容
ト云フモノハ少シモ示シテナイノデアリマス、諸君ガ之ヲ財政上緊急處分ナリトシテ是ニ
協賛ヲ與ヘ、是ニ承諾ヲ與ヘラレントスルノデアリマスルガ、舊韓國政府ニ屬スルトコロノ
歲入歳出ノ豫算ノ內容ト云フモノハ、ドウ云フモノデアリマスカ、何千何百万圓ノ金ガ
ドウ云フ豫算ノ款項ニ編輯セラレテ、ドウ云フ使途ニナッテ居ルト云フ事柄ハ、此勅令ソ
レ自體ニ於テハ少シモ見ルコトガ出來ナイノデアリマス、苟モ帝國議會ノ協賛ヲ經ベキ豫算
ニ關シテ憲法ノ條規ニ則ッテ緊急ノ處分ヲスルト云フナラバ勅令ソレ自體ニ於テ其緊急ノ
財產處分ノ內容ト云フモノヲ示シテ置カナケレバ何ノコトデアルカ分ラヌデハアリマセヌ
カ、勅令第三百二十四號ニ付テハ吾〓ニ向ッテ白紙ノ委任狀ヲ出セト云フコトヲ迫ッテ
居リマスガ第三百二十六號ニ於テハ何モ其豫算ノ內容ヲ示シテナイ之ニ承諾ヲ與ヘヨ
ト云フテモ之ヲ可ナリトシ、之ヲ不可ナリトスルニハ、何ニ依ッテ決定スルコトガ出來ルノデ
アリマセウカ、鵜澤君ガ先刻各勅令ニ對シテ甚ダ輕妙ニ恰モ何等ノ問題モ伏在シテ居
ラヌカノ如ク言ハレ、輕々ニ看過セラレテ居ルノデアリマスガ、歲入歲出ノ豫算ハ當分ノ
中從前ノマヽ襲用スト云フノミデハ何ノコトヤラ一向分ラヌデハアリマセヌカ、之ヲ讀ンデ
諸君ガ成程舊韓國政府ニ屬スル豫算ト云フモノハ斯ウ云フモノデアルト云フコトガ御分
リニナル諸君ガ一人デモアッタラ私ハ御目ニ懸リタイノデアリマス、斯樣ナモノガ憲法第
七十條ニ依ルトコロノ財產上ノ緊急處分ソレ自身デアルナドヽ云フコトハ何カラ申スノ
デアリマセウカ、ドウゾ十分ニ御〓究ヲ願ヒタイノデアリマス、ソレカラ勅令第三百二十六
號ニ牽聯致シテ、ヤハリ三百三十號デアリマス、此三百三十號ハ韓國ノ歲入歲出ニ關ス
ル會計法ヲ定メタモノデアリマス、然ルニ其勅令ヲ見マスルト明治四十三年勅令第三
百二十六號ニ依リ豫算ニ關スル會計ノ經理及舊韓國政府ニ屬シタル財產ノ管理ニ關
シテハ當分ノ中從前ノ例ニ依ル、是ガ憲法第八條ニ依ル法律ニ代ルベキ緊急勅令デア
ルト云フコトデアリマス、苟モ憲法第八條ニ依ル緊急勅令デアルト云フナラバ、其緊急
勅令自體ニ於テ法律ノ內容ヲ備ヘテ居ナケレバナラヌノデアリマス、卽チ法律ニ代ルベ
キ勅令デナケレバナラヌノデアリマスガ、當分ノ中從前ノ例ニ依ルト云フコトノミデ、此
中ニ何ノ會計法ガ書イテアルノデアリマスカ、國民ハ法律ニ代ルベキ勅令第三百三十號
ヲ一讀シテ、是ガ朝鮮ノ歲入歲出ニ關スル會計ノ法規デアルト申シマシテモ、其法規ノ
內容ト云フモノガ此勅令ノ中ニ書イテナイノデアリマスカラ、當分ノ中從前ノ例ニ依ルト
云フノミデハ、卽チ勅令ノ體ヲ成シテ居ラヌノデアリマス、此〓ニ關シテ委員會ニ於キマ
シテ政府委員ニ說明ヲ求メタノデアリマスガ、當分ノ中從前ノ例ニ依ルトカ、或ハ外國
ノ例ニ依ルト云フ事柄ハ往々法律上ニアルコトデアルカラ差支ナイノデアル斯ウ云フ答辯
デアッタノデアリマスケレドモ、此從前ノ例ニ依ルト云フコトハ舊韓國ノ會計法ニ依ルト云
フコトデアリマセウケレドモ、舊韓國ハ明治四十三年ノ八月二十九日ニ日本國ニ合併
セラレテ朝鮮ト云フ名前ノ行政區劃ニ變ジタノデアリマス、其故ニ舊韓國ノ會計法ナドヽ
云フモノハ今日ハ天下ニ存在シテ居ラナイモノデアル、世ノ中ニ存在シテ居ラナイトコロノ
舊韓國ノ歲入歲出ト云フモノハ當分ノ中其豫算ヲ從前ノ通リニ之ヲ襲用スル-世
ノ中ニナイトコロノ韓國ノ會計法ト云フモノヲ當分ノ中從前ノ例ニ依ルト云フヤウナ事
柄ヲ勅令ニ書イテアッテモ、何ノ效モナイノデアリマス、卽チ勅令ノ第三百二十六號ト第
三百三十號ト云フモノハ法律ニ代ルベキ緊急命令ニアラズ、憲法第七十條ノ財政上ノ
緊急處分デナイノデアル、讀ンデ何ノコトヤラ意味ノ分ラヌ勅令デアルト申シテモ一向
差支ナイノデアリマス、而シテ此二ツノ勅令ト云フモノハ其自體ト云フモノガ甚ダ大切ナ
ルモノデアリマス、韓國ガ日本國ニ合併セラレタ以上ト云フモノハ舊韓國ノ歲入歲出ニ
關スルトコロノ總テノ財產上ノ事柄ト云フモノヲ日本政府ニ引繼ガナケレバナラヌノデア
リマス、又舊韓國ニ屬スル總テノ財產ノ經理ノ方法ト云フモノモ無論日本國ニ於テ立テ
ナケレパナラヌノデアリマス、然ルニ單ニ勅令ソレ自體ニ當分ノ中從前ノ例ニ依ルトカ、或
ハ又從前ノマヽ之ヲ襲用スト云フダケデハ何デ此勅令ト云フモノヲ實地ニ適用スルコトガ
出來ルデアリマセウカ、此勅令ニ依ッテ財政上ノ處分ヲシテ往カナケレバナラヌ、此勅令ノ
規定ニ依ッテ此會計ノ經理ヲシテ往カナケレバナラヌト云フノデアリマスケレドモ、勅令ノ上
ニハ少シモ其內容ヲ示シテ居ラヌノデアリマスカラ、何ニ依ッテ此總テノ活動ト云フモノヲ
ヤッテ行クコトガ出來ルノデアリマセウカ、是ハ實ニ容易ナラヌ問題デアルト私ハ思フノデア
リマス、更ニ勅令第四百六號ニ至リマシテハ更ニ驚クベキモノガアルノデアリマス、豫メ反
對論ノアルベキコトヲ考ヘラレテ鵜澤君ヨリ聊辯明ニナッタ〓モアリマスガ、勅令ノ第四百
六號ト云フモノハ明治四十三年九月二十九日ニ發布セラレタトコロノ緊急勅令デア
リマス、サウシテ此緊急勅令ハ何ニ依ッテ發セラレタノデアルカト申シマスト、憲法第八條
竝ニ第七十條ニ依レルトコロノ處分デアリマス、然ルニ憲法第七十條ニ依リマスト前ニ
モ議論ノアッタ通リニ「內外ノ情形ニ因リ政府ハ帝國議會ヲ召集スルコト能ハサルトキハ
勅令ニ依リ財政上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得」トアリマス、朝鮮既ニ我國ニ合併セラレ、
而シテ凡テ緊急ノ事項ト云フモノガ處理セラレタル曉ニ於テ四十三年九月二十九日ニ
至リテ、尙議會ヲ開クコトガ出來ナイ狀況ガ存シテ居ッタノデアリマセウカ、韓國併合ニ關
スルトコロノ必要ノ處分ヲ爲シマスル間際ニ當リテハ、或ハイロ〓〓ノ事情ノ下ニ事ヲ急
速ニ決行シナケレバナラヌ場合モアッタデアリマセウケレドモ、旣ニ平穩無事ニ併合ヲ終ツ
テ一月ヲ經過シタトコロノ九月二十九日ニ至ッテモ、尙議會ヲ開クコトガ出來ナカッタノ
デアラウカ、而シテ此緊急勅令ト云フモノハ何時カラ實行サレルト申シマスレバ、四十三
年ノ十月一日ヨリ實行サレルノデアル、四十三年ノ十一一月ニナリマシタナラバ立派ニ議會
ヲ開ケルノデアリマスルガ、僅ニ其間一二箇月ヲ待ツコトガ出來ナイデ、而モ議會ヲ開ク
コトノ出來ナイ狀況ナキニモ拘ラズ、此ノ如キ緊急勅令ト云フモノヲ濫發シタ責任ト云
フモノハ到底私ハ政府ハ免カレルコトノ出來ナイ〓デアラウト思フノデアリマスル(拍手起
ル)多クノ緊急勅令ノ中デ重要ナルモノニ付テ既ニ議論ガアッタノデアリマスルガ、唯今私
ガ數ヘ上ゲマシタトコロノ勅令三百二十六號竝ニ三百三十號竝ニ四百六號ノ緊急勅
令ト云フモノハ確ニ憲法違反ノ緊急勅令デアルト云フコトニ付テハ少シモ疑ヲ挾ムベキ
餘地ハナイノデアリマスル、餘リ緊急ノ勅令ガ濫發サレテ數ガ多イモノデアリマスルカラシテ、
其最モ主ナルモノニ付テハ諸君ガ十分ニ御注目ニナッテ居ルノデアリマスルケレドモ、一ツ
一ツ數ヘ上ゲテ其內容ヲ詮議スルト云フコトニ付テハ餘リニ諸君ガ注意ノ足ラザルコトヲ
私ハ憾ムノデアリマスル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)私ガ申シマスル如ク一々其內容ヲ詮
議致シマスルト今申スガ如クドウシテモ憲法上如何ニシテモ承諾ヲ與ヘルコトノ出來ナイ
此勅令ト云フモノガ幾ツモアルノデアリマスルカラ、斯ウ云フモノハ十分ニ區別ヲシテ吾ミ
ノ職責ヲ盡ス上ニ於テ此憲法ノ規定ト云フモノヲ飽クマデ擁護スル上ニ於テ十分ニ注意
ヲ私ハ拂ハナケレバナラヌ〓デアラウト思フノデアリマスル(拍手起ル)諸君緊急勅令ハ
合セテ十二濫發セラレタノデアリマスルガ、顧ミテ帝國憲法ノ條規ヲ一讀ヲ願ヒマシタナ
ラバ斯樣ナル重大ノ案ニ向テ輕々ニ承諾ヲ與ヘルコトノ出來ナイト云フ事柄ハ本員ノ口
ヨリ申上ゲルヨリモ寧ロ憲法ノ明文之ヲ許サズト云フコトヲ申上ゲタ方ガ最モ適當ノコト
デアラウト思フノデアリマスル、帝國憲法ノ第五條ニハ「天皇ハ帝國議會ノ協贊ヲ以テ立
法權ヲ行フ」第三十七條「凡テ法律ハ帝國議會ノ協賛ヲ經ルヲ要ス」第六十四條「國
家ノ歲入歲出ハ每年豫算ヲ以テ帝國議會ノ協贊ヲ經ヘシ」第四十三條「臨時緊急ノ
必要アル場合ニ於テ常會ノ外臨時會ヲ召集スヘシ」斯樣ニ明交ガアルノデアル、諸君ハ
憲法モ能ク御覽ニナラナイデ此職責ヲ盡サントスルノガ誤ッテ居ルノデアル(「ノウ〓〓トト
呼フ者アリ)唯今私ガ念ノタメニ列舉シタトコロノ憲法ノ條規ト云フモノハ緊急勅令
ヲ濫發セラレタルガタメニ悉ク無視セラレテ居ルノデアリマスル(拍手起ル)而シテ帝國議會
ノ存スル所以、諸君ガ今日此議席ニ著イテ此案ノ討議ヲセラルヽノモ亦私ガ唯今列舉
シタトコロノ憲法ノ條章ニ則ッテ居ノデアリマスル、然ルニ政府ガ此ノ如ク多クノ緊急勅令
ヲ濫發シタルガタメニ是等ノ條規ト云フモノハ悉ク無視セラレテ居ルト云フ事柄ハ言葉ヲ
繰返シテ申シテ置カナケレバナラヌ點デアラウト思フノデアリマスル(拍手起ル)ソレ故ニ
此總テノ緊急勅令ト云フモノハ憲法ノ規定ニ背イタモノデアッテ、所謂憲法第八條竝ニ憲
法第七十條ノ規定ニ則リタル適當ナル緊急勅令ナリトシテ之ヲ認メルコトガ出來ナイノ
デアリマスルカラシテ、全部之ニ向ッテハ承諾ヲ與フベカラズト云フノガ、本員等ノ固ク執ッ
テ動カナイトコロデアッテ、又是レ憲法擁護ノ途ニ於テ最モ其當ヲ得ルトコロノモノデアル
ト云フコトヲ信ジテ疑ハナイノデアリマスル、恐クハ諸君ガマサカニ此情意投合ノ犠性ノタ
メニ憲法ノ條規マデモ無視スルト云フヤウナ致方ハ致サレナイデアラウト云フコトヲ私ハ固
ク信ズルガ故ニ、多キヲ言ハズ、諸君ノ良心ニ愬ヘテ公明ナル判斷ヲセラレルコトヲ私ハ望
ムノデアリマスル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=105
-
106・清水市太郎
○〓水市太郞君 議長チヨット御尋シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=106
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107・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 質疑デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=107
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108・清水市太郎
○〓水市太郞君 唯今三君ノ御演說ニ對シテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=108
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109・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 極ク簡單ニ御述ベアランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=109
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110・清水市太郎
○〓水市太郞君 簡單デアリマス
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
〔〓水市太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=110
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111・清水市太郎
○〓水市太郞君 本員ハ大體政府ノナサレルトコロニ對シテハ大ニ反對スルトコロガア
ルモノデアリマス、併ナガラ此朝鮮ノ併合ニ際シテ發セラレタル緊急勅令ノ件ニ關シテハ
贊成デアル(「何ヲ言フノダ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=111
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112・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 質問ノ趣旨ヲ御述ベナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=112
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113・清水市太郎
○〓水市太郞君 其譯ハ質問ノ趣旨ハ先刻來花井君ノ言ハレルトコロヲ聽キマスルニ、
憲法第八條第七十條ニ政府ハ反對シテ居ルト云フ御議論デアル、併ナガラ是ハ其憲法
第七十條ハ緊急勅令ヲ發スルコトノ出來ル場合ガ規定シテアル、其緊急勅令ヲ發スル
場合デアッタカ、ナカッタカト云フコトハ判斷ニ依ッテ決スルノデアル、而シテ朝鮮當時ノ狀
態ヲ考ヘマスレバ實ニ(「何ンデスワレガ質問カ」ト呼フ者アリ)憲法第七十條ノ緊急勅
令ヲ發スルコトノ出來ルト云フノト出來ヌト云フノハ解釋ニ依ッテ異ナル、其解釋ハ憲法
第七十條ヲ花井君ハ戰爭ノ場合ト若クハ議會ガ解散シテ居ル場合ニ限ラレル··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=113
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114・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 〓水君ニ警告シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=114
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115・清水市太郎
○〓水市太郞君 サウ云フトキニ緊急ダト認メラレタ、併ナガラ戰爭ハ決シテ現ニ起ツ
テ居ル戰爭バカリヲ言ハナイ、將ニ起ルベキ事變ヲ豫想シタトキモ亦此緊急勅令ヲ發ス
ルコトガ出來ルノデアル、ソレデアリマスカラ苟モ朝鮮併合ト云フコトヲ其併合前ニ於テ
中外ニ發表シタナラバ如何ナル事變ガ出來スルカモ分ラヌト云フコトヲ政府ガ豫想シテ、
其豫想シタノガ適當デアッタナラバ卽チ憲法違反ニナラナイノデアル
(「誰ニ質問シテ居ルカ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=115
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116・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 〓水君、討論ナラ許シマセヌ、通告ガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=116
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117・清水市太郎
○〓水市太郞君 憲法ノ疑義ニ對シテ御尋スルノデアリマス、憲法ノ第七十條ハ決シ
テ戰爭ガ現ニ起ッテ居ル場合ヲ想像シタノデハナイト私ハ思フノデ、此〓ニ對シテ大ニ疑ヲ存
スルノデアル、而シテイロ〓〓御話ガアリマシタガ、其起ルベキ事變ヲ豫想スレバ幾ラモア
ルノデ、誰モ「ポーツマウス」平和條約ノトキニ伊藤公ガ毒手ニ殪レルト云フコトヲ豫想シタ
モノハナイ、ソレデアリマスカラ如何ナル事變ガ發生スルカ分ラナイ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=117
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118・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 〓水君、〓水君發言ヲ中止シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=118
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119・清水市太郎
○〓水市太郞君 其事變ノ發生ヲ豫想シテ政府ガ適當ニ之ヲ臨機ノ處分ヲセラレタ
コトハ憲法違反デナイ、斯ウ云フ意味デアリマス、憲法第七十條ノ意味ハ解釋次第デ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=119
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120・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 〓水君發言中止ヲ命ジマス-鳩山和夫君
〔法學博士鳩山和夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=120
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121・鳩山和夫
○法學博士鳩山和夫君 諸君、此比較的大キイ問題デアッテ國家ノタメニハ隨分大
切ナル問題デアルニ拘ラズ、何ダカ今日ノ討議ハ物足リナイヤウナ心持ニ今マデハ拜聽致
シマシタ、併ナガラ私ガ是カラ言ハントスルトコロモヤハリ平々凡々デアラウト思フノデアリマ
ス、何ントナレバ一體餘リ論議ヲ盡スベキ場所ガ無イノデアルデス、斯樣ナ分リ切ッタ問
題ニ付キマシテハサウ面白イ議論ハ出ナイ筈デス、殊ニ大石君ノ如キ雄辯家デモ雄辯ガ
出ナイノデスカラ、私ヂヤ尙駄目ダト思ヒマス、其事ガ諸君ニ分ルト餘程何カアルトコロ
ヲ諸君ニ分ラシメタコトニナルト思フノデアル、本來此朝鮮合併問題ト云フモノハ卜部君
ノ言ハレタ通リ、隨分前カラ噂ニハアル問題デアル、人ノ噂ニハアッタ問題デアッテ、ソレハ
「ポウツマウス」條約ドコロデハナイ、モット古ク日本ノ古イ歷史ニ入ッテ豐臣秀吉ナドモサ
ウ云フコトヲ考ヘテ居ッタト思フノデスカラ(「問題外」ト呼フ者アリ)近來ノ問題デナイカ
ラ日本人ハ大分古ク、議會開設以前カラシテ此問題ハ考ヘテ居ッタ問題デ、或ハ明治
二十三年ニ憲法ヲ布キ、帝國議會ヲ開イタトキニ之ヲ豫期シテ一ノ議題トシテ居ッタナ
ラバ、早手囘シデアッタカモ知レナイノデアル、併ナガラサウ云フコトハ出來ナイ、而シテモウ
一ツ此問題ニ付テ記憶シテ置キタイコトハ、朝鮮合併問題ト云フモノハ唯今私ノ言フ通
リ、古ク日本人ノ頭ニアッタト同時ニ憲法制定者ノ憲法ヲ起草スルトキニ新領土ヲ日
本ニ合併スルト云フコトガアッタカ否ト云フコトハ是ハ問題デアルト思フデス、或ハ臺灣ノ
合併或ハ朝鮮ノ合併ト云フコトハ憲法起草者ノ頭ニハ無カッタカトモ思フノデアル、アッ
タナラバ斯ウ云フ場合ニ適應スベキ箇條ガモウ少シ上手ニ、モウ少シ器用ニ出來テ居ッタ
カモ知レナイト思フノデアル、併ナガラ朝鮮合併ト云フコトハ事實トシテ此聖明ナル今
上陛下ノ御世ニ行ハレルコトニナッタ、甚ダ結構ナコトデ之ニ對シテハ上下共ニ皆喜ンデ
居ルノデス、此時ニデス、憲法ノ條章ガ丁度之ニ適應スルモノガアリヤ否ヤ、此憲法ノ明
文ニ反カズシテ相當ノ處分ヲナシテ行クト云フコト、是ハ政治家ノ職務デアルノデス、此
場合ニ於キマシテハ學者ハ學者トシテ大學ノ隅ニ於テナリ何レノ場所ナリニ於テ勝手ナ
議論ヲスルガ宜イノデアル、政治家ナルモノハ其學說ニ拘泥シテ大事ナ眼前ノ目的ヲ看
過スルト云フコトハ出來ナイ、極ク近イ例ヲ取レバ朝鮮合併ニ付テハ委任命令ト云フコ
トハ憲法ニ於テ許シテアル方ガ宜イ、憲法第五條之ヲ禁止シタルガ如クデアル斯ウ考ヘ
タナラバ合併前ニ憲法ヲ改正シタナラバ學者ハヤカマシイコトヲ言ヘナイデセウ、併ナガラ
此コトヲ行フ前ニ憲法ノ改正抔ト云フコトガ到底行ヘルモノデナイ、併ナガラ今ノ憲法ハ
政治家ガ讀メバデス、ヤハリ此憲法ニ依ッテ合併ニ對スル相當ノ處置ヲナス-ハ出來ル
ノデアル、委任立法是ハ憲法違反デアルト學者ハ言フ併シ政治家ハ疾ニ此問題ハ極メテ
シマッテ居ル、臺灣ニ對シテ委任立法ヲ行ッテ居ルデハナイカ、事實憲法ヲ解釋シテ居
ルデス、事實グラ井確ナル解釋ハ憲法ノ上ニ下スベキコトハナイト思フ、委任立法ハ事實
トシテ政治家仲間ノ間ニハ此憲法ノ下ニ行ヒ得ルト云フコトハ、モウ極ッテシマッテ居ル
ノデアル(「憲法蹂躙ナリ」ト呼フ者アリ)學者ハ蹂〓トカ何トカ言フデス、ソレカラ其次ニ
責任立法ト云フモノハ憲法ノ條章ノ下ニ爲シ得ルト云フコトデアルナラバ、其次ニハ緊急
勅令ヲ以テ委任立法ヲ爲シ得ルカ、或ハ法律ニアラザレバ委任立法ヲ爲シ得ザルカト云
フ、是亦憲法ノ條章ガ明カニ我〓ニ〓ヘテ居ル、是ハ解釋モ何モ要ラナイ、憲法ノ第八條
ハー憲法ノ第八條ハ或場合ニ於テ法律ニ代ルベキ緊急勅令ヲ政府ガ出スコトヲ許シ
テアル此緊急勅令ハ卽チ法律ニ代ルベキモノデ、法律ト同一ナル效力ヲ有スルノデアルカ
ラ、委任立法ナルモノハ勅令ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得ベシ、又法律ヲ以テ爲スモ可ナリ、
(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)此コトハ我國ノ憲法ノ解釋トシテハ事實ニ於テ最早極ッテシマッ
テ居ルノデアルデス、私ハ先刻ノ大石君ノ委任立法ニ對スル攻擊ニ對シテハ之ヲ以テ御答ト
シテ宜カラウト思フ、大石君ノ議論ハ少シ花井君ニ曲解セラレタト思フデスガ、大石君ノ意
思ハ公平ニ聽ケバ勅令デモ法律デモソンナコトハ論ズルトコロテハナイ、元來總督ニ斯樣ナ權
限ヲ與ヘルノガイケナイト云フノガ大石君ノ論據ラシイト思フ、其形ハ問ハヌト云フ御議論
ノヤウニ承ッタノデアルデス、ソレデモ宜イ、私ハ總督ニ是ダケノ制限ヲ與ヘ得ルト云フコトガ
憲法上ノ解釋ナラバ、ソレカラ先ハ政略上ノ問題ニナル、而シテ政略上ノ問題ト致シマシ
テハ事情ノ內地ト異ナル場所ニ向ヒマシテハ內地ト異ナル政治ヲ行フノガ、適當ト思ウテ
居ルノデアル、現ニ英國ノ如キハ違ッタ殖民地-事情ノ異ック殖民地ヲ外ニ持ッテ居
ル、而シテ濠洲、加奈陀ト香港ハ又違ッタトコロノ政策ヲ行フテ、違ッタ方法ニ依ッテ
居ルノデアルカラ、之ヲ內地ト同一ニ劃一ナル方法ニ依ッテ政治ヲ爲スト云フノハ殖民
政策トシテハ其當ヲ得ナイモノデアルカラ、私ハ總督ニ一任政策ヲ執ルノガ政策トシテハ
適當デアル、且憲法亦之ヲ許スト云フ論據ヲ執ルモノデアルノデアル、、殊ニ大石君ノ如
クニ總督ナリ其他ノ殖民地ノ役人ニ大ナル權能ヲ與フルノハ不得策デアルト云フコトニ
ナルト、マダ是ハ今ノトコロデハ分リマセヌケレドモ、朝鮮ハ我國ノ鄰國デアッテ歷史上、
言語上、多少ハ我國ト似タトコロガアル、併シ是カラ先キ日本ガドンナ領土ヲ取ルカモ分
ラナイ、ソレハ大キナ聲デハ云ヘナイケレドモ、其場合ニハヤハリ私ハ大ナル權能ヲ與
ヘタトコロノ總督ヲ置クノガ宜イト思フノデアル、ソレカラシテト部君ノ御論ナカ〓〓緻
密デ原案ヲ見ナイト充分ニ御答ガ出來ヌカモ知レヌガ、私ノ聽覺エタトコロハト
部君ハ數步ヲ讓ッテ、モウ議會ヲ開ク時モ無カッタ內外ノ事情開クコトヲ許サナカッ
タト云フトコロマデ數步ヲ讓ッテモ、尙三百二十六號外二ツバカリノ勅令ハ憲
法違反デアル、卽チ內容ヲ示サヾルガ故ニ、憲法違反デアルト云フヤウニ承リマシ
タガ、是ハ極ク造作ナク御答ガ出來ルト思フデス、內容ヲ示スノハ少シココデ學校
ノ講義ラシクナリマスガ列記ノ方法ト、〓括的ノ方法ト、他ノ文書ニ依ル方法等ガ
アリマスルノデ、今ノ勅令ガ內容ヲ示サナカッタノハ列記法ヲ採ラズシテ、〓括的表示
方法ヲ採ラズシテ、他ノ文書ニ讓ッタダケノ方法ヲ採ッタノデアリマスカラ、明カニ表示セ
ラレテ居ルト考ヘマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=121
-
122・菅原傳
○菅原傳君 討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=122
-
123・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 定規ノ賛成者アルト認メマス-桂總理大臣
〔內閣總理大臣侯爵桂太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=123
-
124・桂太郎
○內閣總理大臣(侯爵桂太郞君) 先刻ヨリ議題ト相成シテ居リマストコロノ此數多
ノ御承諾ヲ求ムル案ニ付キマシテ、反對贊成ノ御議論モアッタヤウデアリマスルガ、此點ニ
付キマシテハ政府ハ已ニ此議場ノ反對贊成ノ御說ニ依ッテ明瞭ニ諸君ニ御分リニナッテ
居ルト信ズルノデアリマス、玆ニ願クハ諸君ノ公明ナル御判斷ニ依リマシテ、政府ノ提出
致シテ居リマスルトコロノ緊急勅令ヲ御承諾アランコトヲ希望スルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=124
-
125・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 討論終結ノ動議ニ定規ノ贊成ガアリマスカラ採決ヲ致シ
マス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=125
-
126・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議アリマセヌカ-別ニ御異議ガナケレバ討論ハ終結
致シマス、採決ニ付テ御諮ヲ致シマス、先ヅ日程ノ第十六、第十七、第十八、此ノ三
案ニ付テハ御議論モアリマスカラ、此三案ヲ一括シテ採決ヲ致シ、次ニ第十九ヨリ第二
十五マデヲ一括シテ採決ヲ致シ、次ニ第二十六ヲ採決シ、次ニ御二十七ハ卽チ法律
案デアリマスカラ勿論別ニ採決致シマス、ソレデ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=126
-
127・花井卓藏
○法學博士花井卓藏君 十六、十七、十八ト二十六ヲ一緒デ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=127
-
128・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 先ヅ今宣告シタ通リヤリマセウ、日程第十六、明治四十三
年勅令第三百二十六號承諾ヲ求ムル件、第十七、明治四十三年勅令第一一百二十
七號承諾ヲ求ムル件、第十八、明治四十三年勅令第三百二十八號承諾ヲ求ムル件、
此三案ヲ一括シテ採決致シマス、本案ニ反對ノ諸君ノ起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=128
-
129・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數、他ハ委員長ノ報告通リ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=129
-
130・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ委員長ノ報告通リ決シマス、卽チ承諾ヲ求
ムルコトニ決シマス、(笑聲起ル)承諾ヲ與フルコトニ決シマス、確ニ正誤致シ置キマス、
日程ノ第十九、明治四十三年勅令第三百二十九號承諾ヲ求ムル件、第二十一、明
治四十三年勅令第三百三十一號承諾ヲ求ムル件、第二十二、明治四十三年勅令
第三百三十三號承諾ヲ求ムル件、第二十三、明治四十三年勅令第三百四十六號
承諾ヲ求ムル件、第二十四、明治四十三年勅令第三百三十七號承諾ヲ求ムル件、第
二十五、明治四十三年勅令第三百三十八號承諾ヲ求ムル件一括シテ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=130
-
131・菅原傳
○菅原傳君 唯今議長ハ日程第二十ヲ御朗讀ナイヤウデアリマスガチヨット御注意致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=131
-
132・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第二十ヲ讀落シマシタナラバ日程ノ第二十ハ明治四
十三年勅令第三百三十號承諾ヲ求ムル件、此七案ヲ一括シテ議題ニ供シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=132
-
133・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 反對ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=133
-
134・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數、他ハ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=134
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135・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ七案トモニ承諾ヲ與フルコトニ決シマス、日
程第二十六、明治四十三年勅令第四百六號承諾ヲ求ムル件、本案ニ反對ノ諸君
起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=135
-
136・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數、他ハ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=136
-
137・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ承諾ヲ與ヘルコトニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=137
-
138・菅原傳
○菅原傳君 日程第二十七ノ法律案ハ直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シテ委員
長報告通リ決定セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=138
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139・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程ノ第二十七、朝鮮ニ施行スベキ法令ニ關スル法律案、
花井卓藏君提出、第一讀會ノ續、卽チ本案ハ直ニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シテ委
員長報告通リト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=139
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140・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ直ニ····
〔「ノウノ〓」「開クベカラズト云フ論ガアル」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=140
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141・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 異議ガアリマスナラバ採決致シマス、直ニ二讀會ヲ開クト云
云フコトニ反對ノ諸君ノ起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=141
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142・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數、直ニ二讀會ヲ開クト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=142
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143・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ直ニ二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供シ
マス
朝鮮ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律案確定議
〔「委員長報告通リ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=143
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144・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長ノ報告ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=144
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145・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ三讀會ヲ省略シ委員長ノ報告通り本案ハ
是ニテ確定致シマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=145
-
146・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第二十八、不動產登記法中改正法律案、政府提
出貴族院送附、第一讀會ノ續、委員長報告-濱名信平君
第二十八不動產登記法中改正法律案第一讀會ノ續法温食
(政府提出)貴族院送附(報告
〔濱名信平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=146
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147・濱名信平
○濱名信平君 此登記法中改正法律案ノ委員會ノ結果ヲ御報告致シマス、此法案
ハ政府ノ提出ニ係ッテ、貴族院カラ送付ニナッテ居リマストコロノ法律案デアリマシテ、此
改正ヲ要スルトコロノ理由ニ至リマシテハ此說明ニ大體見エテ居リマスル通リ昨年十二
月中ニ皇室財產令ト云フモノガ御制定ノ上ニ公布ニナリマシテ、此財產令ノ發布ノ結
果此登記法中ニ改正ヲ要スルト云フ必要ヲ生ジマシタノデアリマス、而シテ改正ノ要
項ニ至リマシテハ登記法中第百二條ノ二ニ於テ登記法ノ改正スベキ要項ハ旣登記ノ
不動產ヲ世傳御料ニ編入シタル場合ニ於テ其登記ノ手續ヲ取扱フ場合、ソレカラ登
記法中ノ第百三條ノ二ニ於キマシテ不動產ニ付キマシテ皇族ニ於カセラレルトコロノ遺
留財產ノ設定又ハ增加等ノ登記ヲ取扱フ手續、又第百四十二條ノ二ニ於キマシテハ
遺留財產ノ廢止ノ勅許ヲ得タル時ノ登記ノ取扱手續、此以上ノ三〓ニ於キマシテ登
記法中ノ改正ノ法律案ヲ出サレタノデアリマス、之ニ付キマシテ委員會ハ再應審議ヲ盡
シマシテ此法案ハ通過スベキモノト全會一致デ可決ヲ致シマシテゴザイマス、殊ニ貴族院
ノ方ニ於キマシテモ本案ニ付キマシテハ原案ノ通リニ通過シテ送付ニナッタコトデゴザイマ
スカラ、滿場一致ヲ以テ此法案ハ通過ヲ希望致シマス、御報告ヲ致シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=147
-
148・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ決定セ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=148
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149・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ決
定シタイト云フ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=149
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150・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ直ニ二讀會ヲ開キ、議案ノ全部
ヲ議題ニ供シマス
不動產登記法中改正法律案確定議
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=150
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151・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナイト認メマスカラ三讀會ヲ省略シテ本案ハ委員
長報告通リ是ニテ確定致シマス、日程第二十九乃至第三十二ハ同一委員ニ付託シ、
關聯セル議案ナルニ依リ、一括シテ議題トナスニ御異議ハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=151
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152・三土忠造
○三土忠造君 日程第二十九カラ三十二マデハ都合ニ依リ延期ヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=152
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153・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第二十九ヨリ第三十一一マデハ都合ニ依リ委員長ヨリ
延期シタイト云フ申出ガアリマス、御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=153
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154・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ延期致シマス、日程第三十三、三十四
モ委員長ノ都合ニ依リ延期シタイト云フコトデアリマス、御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=154
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155・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ延期致シマス、日程第三十五北海道鐵
道數設法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス、提出者小
橋榮太郞君
第三十五北海道鐵道敷設法中改正法律案(小橋榮
太郞君提出)第一讀會
北海道鐵道敷設法中改正法律案
北海道鐵道敷設法中左ノ通改正ス
第二條第二號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
一瞻振國山越郡長萬部ヨリ輪西ニ至ル鐵道発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=155
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156・小橋榮太郎
○小橋榮太郎君 極メテ簡單デゴザイマスカラ自席カラ申シマス、本案ヲ提出致シマシ
ク要〓、卽チ北海道鐵道敷設法中ニ改正ヲ加ヘタイト云フ要點ハ、鐵道敷設法ノ第二
條第二號ノ次ニ「一、膽振國山越郡長萬部ヨリ輪西ニ至ル鐵道」、斯ウ云云十十文字
ヲ追加シタイト云フ案デゴザイマス、此改正案ヲ出シマシタ理由ヲ簡單ニ述ベタイト思イ
マス、本鐵道ハ北海道鐵道ノ幹線ノ聯絡統一上、又北海道東南部ノ利源開發ノ上ヨ
リシテ切要緊急ノ設備デアルト云フコトハ、是ハ足一度北海道ニ入ッタ御方ニハ能ク御
分リグラウト思ヒマス、長萬部輪西ナド斯ウ申シマシテハ御分リニナラヌ人モアルカモ知レ
マセヌガ、要スルニ函館ト室蘭トノ聯絡線デアリマス、此鐵道ノ設備ノ所謂建設ノ遲速
緩急ハ直ニ北海道全道ノ拓殖ノ上ニ至大ナル關係ヲ及ボスモノト私ハ信ズルノデアリマ
즈、因テ本案ヲ提出シタ次第デゴザイマス、願クハ諸君ノ公平ナル御判斷ノ下ニ此案ノ
速ニ成立致シマスルヤウニ御贊成ヲ仰ギタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=156
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157・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ北海道拓殖經營案基礎確立ニ關スル建議案ト同シ委員ニ付
託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=157
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158・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ北海道拓殖經營案基礎確立ノ建議案ト同一委
員ニ付託スルコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=158
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159・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ其通リ決シマス、日程第三十六、普通選
舉ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス、日向輝武君
第三十六普通選擧ニ關スル法律案(日向輝武君外二第一讀會
十一名提出)
普通選舉ニ關スル法律案
帝國臣民タル男子ニシテ滿二十五年以上ノ者選舉人名簿調製ノ期日前滿一
年以上其ノ選擧區內ニ住所ヲ有シ仍引續キ有スルトキハ衆議院議員選舉權
ヲ有ス
衆議院議員選舉法中納稅ニ關スル規定ハ之ヲ廢止ス
附則
本法ハ次ノ總選舉ヨリ之ヲ施行ス
〔日向輝武君壇登〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=159
-
160・日向輝武
○日向輝武君 簡單ニ提出者ノ一人ト致シマシテ本案提出ノ自由ヲ陳述致シマス、
此法律案ハ帝國ノ臣民滿一一十五歲ニ達シタル男子ハ生理上、心理上相當ナル考慮
ヲ有シテ權利義務ノ主體タル資格ヲ持シテ居ルモノデアルト云フコトヲ確信シテ、是等ノ
モノニ參政權ヲ附與スベシト云フノデアリマシテ、現行法ニ行ハレテ居リマスル納稅ノ資格
ハ人道ノ本義ニ背イテ居ルモノトシテ之ガ廢止ヲ要望スルモノデアリマス、而シテ本法ハ
次ノ總選擧ヨリ之ヲ施行セントスルノデアリマス、法文ハ極メテ簡軍デアリマス、併ナガラ
意義ハ明カニ之ヲ盡シテ居ルト信ジマス、之ヲ提出シタル理由ハ四ツアルノデゴザイマス、
第一ハ普通選舉ハ帝國憲法ノ精神ヲ擴充スル結果、當然來ルベキ權利ノ要求デアル、
第二、我國現在ノ文化ノ程度ハ優ニ此制度ヲ施行スルニ足レリ、第三ハ普通選舉ノ
制度ヲ施行スル結果ニ對シテ世ノ多クノ論者ノ懷ク種々ナル杞憂ハ全ク想像ニ過ギナイ
ノデアッテ、一トシテ取ルニ足ルベキモノハナイ、第四、普通選舉ノ制度ヲ施行セル結果
ハ政治上ニ偉大ナル變化ヲ及ボシ、面モ現今ノ政治上ノ腐敗ノ動機ヲ撲滅シ、政界ノ
空氣ヲ一新スルニ大ナル效力ガアル是此法案ヲ提出致シタ理由デアリマス、諸君、現
今我國ノ政治ノ中心ハ何レニアルカト申シマスルト政權ノ中心ハ內閣ニアラズ、國會ニ
アラズシテ、内閣及國會以外一種閣族官僚ト唱フル不可思議ナル少數ノ政客ノ手ニ
歸シテ居ルノデアリマス、憲法上國會ハ彼等ノ連中以上ニ獨立シテ居ルノデアリマス、
又彼等ヨリ以上ニ重大ナル權利ヲ持タテ居ル、若シ國會ガ一度正義ヲ取ッテ立チ、一
度斷乎トシテ此政界ニ蟠リマシタナラバ如何ナル勢力ヲ持ツトコロノ閥族デアリマシテモ
如何ナル動功ヲ有スル官僚デアリマシテモ亦之ヲ如何トモスベカラズト云フコトハ理數ノ
當然ナルコトデアリマシテ、又憲法ガ明カニ保障致シテ居ルトコロデアリマス、然ルニ此當
然ナルベキ理數ガ當然ナル能ハズ、却テ反對ノ結果ヲ現ハシテ居ルト云フコトハ抑〓如
何ナル理由デアリマセウカ、是ガ理由ノ根本ノ原因ハ今日ノ現行ノ偏狹且狭隘極マル
選擧法ニ依ルト信ズルノデアル、今日ノ選舉法ニ依リマスルト國民ヲ代表スルトコロノ代
議士ヲ選舉スル選舉民ノ數ハ僅ニ、百六十万人デアリマス、此百六十万人ハ日本ノ
各〓アラユル階級カラ公平ニ選ンダルトコロノモノデハナクシテ、單純ニ直接國稅十圓ヲ
納ムル者ニ其資格ヲ限定シテ居ルノデアリマス、其結果ト致シマシテ富豪ノ一部及地
主是ヨリ外ニ國會議員ヲ投票スルトコロノ投票權ヲ持ツ者ハナイト云ウテモ宜イノデア
ル、其結果トシテ此少數ナル投票權ヲ有スルトコロノ者ハ政權ヲ握ッテ居ルトコロノ悶
族及官僚等ガ自由自在ニ之ヲ左右スルヤウニ出來テ居ルノデアル、卽チ此少數ナル選
舉權ト云フモノハ權勢ノ下ニ羅致シ易イノデアル、又利祿ノ下ニ誘惑シ易イノデアリマ
ス、權勢ノ下ニ羅致シ易ク、利祿ヲ以テ誘惑シ易イトコロノ此少數ノ選舉民タルモノハ
常ニ此閥族ガ間接若クハ直接ニ其投票ヲ左右シテ居ルノデアル、一縣ニ於テ知事ノ向
背ニ依ッテモ其代議士ノ數ニ多大ノ影響ヲ來スト云フコトハ吾〓ガ目擊シテ居ルトコロデ
アル、小ナル官吏、地方ノ一ノ長官ニ過ギナイトコロノモノヲ使嗾致シマシテモ既ニ其影
響ヲ選舉場裡ニ感ズルノデアル、今日政權ノ中心ヲ握ッテ居ルトコロノ閥族ガ此不備ナ
ル選舉法ノ缺〓ニ乘ジテ、神聖ナル選舉場裡ニ餘毒ヲ逞クシテ居ルト云フコトハ明カナ
ル事實デアリマス、故ニ彼等閥族ハ啻ニ政權ヲ掌握シテ居ルノミナラズ、又力能ク國會
ノ死命ヲ制シテ居ルノデアル、憲法政治ノ下ニアリマシテ力能ク國會ノ死命ヲ制スルトコ
ロノ者ハ是等ノ者ニ政權ガ歸セズシテ誰ニ政權ガ歸スルデアリマセウ、彼等ガ傚然トシテ
天下ヲ左右シテ居ルノハ實ニ此ノ如キ國會ノ死命ヲ制スル力ヲ持ッテ居ルタメデアリマ
ス、元來諸君ガ日夜奔走シテ居ルノハ何ノタメデアルカト言ヘバ、憲法政治ノ本義ヲ貫
徹スルタメデアラウト思フ、大臣ニナリタイタメデハナイ、憲法政治ノ本義ヲ貫徹スルタメ
ニ諸君ガ御盡力ニナッテ居ルノデアラウト思フ、然ラバ憲法政治ノ本義ハ何デアルカト言
ヘバ民意ヲ代表スル國會ノ組織ニアルト言ハナケレバナラヌ、民意ヲ代表スル國會ノ組
織ノ其根本ハ何デアルカト言フナラバ、國會ヲ組織スル分子卽チ議員ヲ製造スルトコロ
ノ其選舉法ニアルト言ハナケレバナラヌ、卽チ選舉法ハ憲政ノ根元デアリマス、憲政ノ根
元タル此選舉法ハ今我國ハ如何ナル狀態ニアリマスルカ、總人口五千万ヲ有スルトコ
ロノ此帝國ニ於テ重大ナル參政權ヲ有シテ居ルモノハ僅々百六十万人ニ過ギナイ、帝國
ノ男子ニシテ此提出シタル普通選舉法ヲ施行スル曉ニ於テハ少クトモ一千万人ノ選舉
有權者ヲ得ルデアラウト信ズルノデアル、此一千万人ノ獨立男子ガ當然憲政治下ニ於
テ投票權ヲ有スルト云フコトハ當然ナル權利者トナルノデアル、然ルニ現行ノ選舉法ガ
不公平ニモ一千万人ノ中僅々百六十万人ニシカ其投票權ヲ與ヘナイノデアル、十ノ中
一六シカ投票權ヲ與ヘズシテ、他ノ八、四ハ悉ク政治ノ圏外ニ除却シテ居ルノデアリ
さく、十ノ中僅ニ一六シカ代表シナイトコロノ今日ノ國會ヲ指シテ諸君ハ何レノ所ニ
民意代表ノ實ヲ求メルノデアリマスカ、此ノ如キ組織ニ出來タル國會ニ向ッテ完全ナル
憲法政治ヲ希望スルノハ旣ニ無理ナ註文デアル、故ニ今日ニ於テハ須ク憲政ノ根元タ
ル選擧權ヲ擴張シテサウシテ偏頗不法極マル所ノ此制限ヲ撤囘シマシテ廣汎ナル國
民代表ノ下ニ選舉權ヲ改正スルト云フコトハ實ニ政弊惡政ニ依ッテ起ルトコロノ淵源ニ
向ッテ大ナル斧銭ヲ加ヘル一大妙案ナリト信ジテ居ルノデアリマス、近項英國ニ於キマシ
テハ婦人參政權ノ運動ガ盛ンニ行ハレテ居リマシテ、英國ノ大政治家ハ既ニ之ニ贊同
ノ意ヲ明カニ表シテ居ル總理大臣「アスキス」ノ如キモ亦婦人ニ參政權ヲ與フルコトニ同
意ナリト稱シテ居ルノデアル、私ハ極ク近キ將來ニ英國憲法史上ニ一大進化ヲ見ルデ
アラウト私ハ信ズルノデアリマス、然ルニ顧ミテ我國ヲ見マスルト如何デアリマスカ、婦人
ハ愚カ一千万人ヲ算ヘルトコロノ堂々タル有髯男子ガ悉ク政治圏外ニ放逐セラレテ全ク
國政ニ與ルコトヲ得ナイト云フ憐レナ有樣デアル、之ヲ指サシテ東洋ノ立憲國ト云フガ、
然レドモ私ハ其實ヲ見ナイノデアリマス、併ナガラ時運ハ漸々進歩シテ居ンテ大ニ吾〓ノ主
張モ或ル一部ヲ動カシタルコトヲ確ニ信ズルノデアリマス、故ニ私ハ本案提出者ノ一人ト
致シマシテ諸君ガ此重大ナル法案ニ對シテ愼重ニ御審議アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=160
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161・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=161
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162・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 議長指名九名ノ特別委員ニ付託スルト云フニ御異議アリ
マセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=162
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163・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ其通リ決シマス、日程第三十
七、三十八ノ兩案ハ關聯セル議案ニシテ、且提出者同一ナルニ依リ、一括シテ議題ニ
供スルコトニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=163
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164・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ハナイト認メマスカラ、地租條例中改正法律案、
明治四十一年法律第三十七號中改正法律案ヲ一括シテ議題ト致シマス、提出者大
西五一郞君
第三十七地租條例中改正法律案(大西五一郞君提第一讀會
번
第三十八明治四十一年法律第三十七號中改正法律第一讀會
案(大西五一郞君提出)
地租條例中改正法律案
地租條例中左ノ通改正ス
第一條第一項中「宅地地價百分ノ二箇半」ヲ「百分ノ二箇」ニ改ム
附則
本法ハ明治四十五年度分ヨリ之ヲ適用ス
明治四十一年法律第三十七號中改正法律案
明治四十一年法律第三十七號中左ノ通改正ス
第一條第一號及第二號ヲ左ノ如ク改ム
一北海道、府縣(沖繩縣ヲ除ク)、沖繩縣ノ區及町村
附加稅ノミヲ課スルトキ宅地地租百分ノ十六、二五
田畑地租百分ノ三十二
其ノ他ノ土地地租百分ノ二十七
段別割ノミヲ課スルトキ一段步ニ付每地目平均金四十錢
附加稅及段別割ヲ併課スル場合ニ於テハ段別割ノ總額ハ其ノ地目
ノ地租額ノ宅地ニ在リテハ百分ノ十六、二五、田畑地租ニ在リテ
ハ百分ノ三十二、其ノ他ノ土地ニ在リテハ百分ノ二十七ト附加稅
額トノ差額ヲ超ユルコトヲ得ス
二其ノ他ノ公共團體
附加稅ノミヲ課スルトキ宅地地租百分ノ十一、一一五
田畑地租百分ノ二十一
其ノ他ノ土地地租百分ノ十八
段別割ノミヲ課スルトキ一段步ニ付每地目平均金四十錢
附加稅及段別割ヲ併課スル場合ニ於テハ段別割ノ總額ハ其ノ地目
ノ地租額ノ宅地ニ在リテハ百分ノ十一、二五、田畑地租ニ在リテ
ハ百分ノ二十一、其ノ他ノ土地ニ在リテハ百分ノ十八ト附加額ト
ノ差額ヲ超ユルコトヲ得ス
附則
本法ハ明治四十五年度分ヨリ之ヲ適用ス
〔大西五一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=164
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165・大西五一郎
○大西五一郞君 本案提出ノ理由ヲ聊玆ニ陳述致シマス、又言ヒマスルコトハ爲
政上ノ論難ヲ致スノデハゴザイマセヌカラ言ヤ壯快ナラズ、事數字ニ係ッテ居リマスカラ實
ニ無味乾燥デゴザイマス、甚ダ御迷惑デゴザイマセウガ暫時御〓聽ヲ願ヒマス、地租條
例中ノ改正法律案ノ要ハ卽チ地租條例中ノ第一條其中ニ地租百分ノ二箇半トゴザ
イマスノヲ之ヲ百分ノ二箇ト改正ヲ致シタイト云フノガ要義デゴザイマス、之ヲ實施スル
トキハ明治四十五年度ヨリ適用ヲ致ス、全ク其趣意デゴザイマス、之ヲ數字上カラ申シ
テ見マスト、卽チ昨議會ニ於テ四十四年度ニ實施致シマスルコトニナッテ居ル宅地價修
正額ノ〓算、之ニ依リテ今日數ヘテ見マスレバ、市街宅地ノ地價ガ二億八千二百四
十八万四千五百八十四圓トナッテ居リマス、サウシテ市部ニアリマスル名稱ハ郡村宅地
トゴザイマスノガ二百二十一万二百二十八圓、是ノ合計ガ二億八千四百六十九万
四千八百十二圓、之ニ對シマストコロノ卽チ二箇半ノ地租ガ七百十一万七千三百
七十圓餘ニナッテ居リマス、而シテ郡部ニ於テアリマストコロノ郡部デゴザイマス、ケレド
モ名稱ハ市街宅地ニナッテ居リマス、ソレガ三千三百四十八万一一千四百七十一圓、郡
村ノ宅地價ニ於テハ三億一一千四百七十八万九千八百十圓、此郡部ノ地價合計三
億五千八百三十七万二千三百八十一圓、之ニ對シマスル百分ノ一一箇五、是ノ地租
額ガ八百九十五万六千八百トナッテ居リマス、此地租額ヲ合計致シマスレバ一千六百
七万四千百七十七圓トナッテ居リマス、是ガ今日卽チ行ヒツヽアルトコロノ宅地價修正
法ニ依ルトコロノ地價格ノ〓算デゴザイマス、而シテ同修正法ノ第三條ニ依リマシテ所
謂此制限ヲ置イテアルトコロノ卽チ超過致シテ居ルトコロノ地價額市部ノトコロデ市街
宅地ガ四千六百六十八万四千三百九圓、又市部ニゴザイマシテ名稱ノ郡村宅地ガ
八十二万二千二百四十二圓、是ノ合計ガ四千七百五十万六千五百五十一圓、是
ガ御承知ノ如ク十八倍デ止メテアリマス、其以上ノ卽チ地價額ニナッテ居ルノデゴザイマ
ス、郡部ニ於テハ卽チ郡部ニゴザイマスノデ、名稱ハ市街宅地ニナッテ居リマス、其地價
ガ二百五十九万五千五百二十圓、郡村宅地價ガ二千六百三万九千五百四十九
圓、郡部ノ方テ合計ガ二千八百六十三万五千六十九圓、之ヲ總計致シマスト七千
六百十四万一千六百一一十圓トナッテ居リマス、之ヲシテ制限外ニ止メナンダナラバ又地
租トシテ如何ニナルカト申シマスレバ、其數七千六百何某ニ對シテ二箇ヲ乘ケマスレ
バ一百九十万三千五百四十圓ト云フモノハ公平ニ修正ヲ行ハナカッタタメニ是ダケノ
地租ガ減ジテ居ルト云フ譯ニナルノデゴザイマス、之ヲシテ茲ニ二箇半トゴザイマスノ
ヲ、二箇ト致シマスト市部ニ於テ曩キニ申シタ如ク二億八千四百六十九万四千八百
十圓、之ニ對シテ百分ノ一一箇ト致シマスレバ、五百六十九万三千八百九十六圓、郡
部ニ於テ宅地價ノ計ガ三億五千八百二十七万二千三百八十一圓、之ヲ百分ノ二
箇ト致シマスレバ、七百十六万五千四百四十五圓ト云フモノニナリマス、サウシテ之ヲ
合セマスルト卽チ一千二百八十五万九千ニ一百四十一圓トナル、左樣致シマスレバ既
ニ今日修正額ニ依リマシテ徵收ヲ致ストコロノ地租額、ソレヨリ減ジマスル高ハ三百二
十一万四千八百三十六圓ヲ減ズルヤウナ計算ニナリマス、尙又是カラ以前市街ノ宅
地或ハ郡村宅地ト申シマスルノモ非常特別稅ナルモノヲ入レナカッタトコロノモノデアリマ
スガ、是等ハ申上ゲマセヌデモ疾ニ御諒知ノコトヽ思ヒマスカラ、今此處デハ申上ゲマセ
又、右樣ノ次第デゴザイマスガ故ニ、事數字ニ亙ッテ居リマス、且又二箇半トゴザイマス
半ノトコロヲ取ルニ付テ斯樣ナル金高ニ相成リマス譯合、全ク此二箇半ト申シマスノデ
二箇ト致シタトコロノ趣意ハ昨年當議會ニ於テ決定致シタトコロノ田租、畑租ト申シ
マスルモノ卽チ之ニ非常特別稅ナルモノヲ附加致シマシタ、卽チ以前ハ百分ノ二箇半デゴ
ザイマシタノヲ三ヲ加ヘテ五分五厘トナシタ、其三ノ中カラ八厘ヲ減ジテ居リマスカラ之ヲ
二箇ト致シマシテ其率ヲ以テ非常特別稅ニ對シマシテ此減ジマシタトコロノ步合ハ二分
六厘六毛六何某ト云フ數字ニナッテ參リマス、ソレニ依リテ全ク今般此案ヲ提出致シマシ
タ、數字ニ於テハ聊モ違ッテ居ラヌノデゴザイマス、斯樣ニシテ其率ヲ合セマスルト今日二
箇ト致シマシタトコロデハ漸クニ致シテ五万圓程シカ違ハヌ計算ニナッテ居リマス、以上ハ
全ク地租條例ノ改正デゴザイマシテ、ソレニ要スルトコロノ計數デゴザイマス、而シテ尙一
ツノ案モ同一提出者デゴザイマスル故ニ、便宜ノ上是ニ於キマシテ法律三十七號ノ改
正ノ要ヲ述ベマス、是ハ全ク此大體ノ地租條例ヲ改正致シマスルニ付キマシテ、地方ニ
於キマスルトコロノ財源デ此割デ減ジマスルナラバ如何デゴザリマセウカト存ジマスル之ヲ
杞憂致シマシテ今日ノ徵收シツヽゴザイマスル所謂地租ニ於キマシテハ百分ノ十三ト
云フコトヲ地方稅ノ方ノ制限ニ致シテ居リマス、之ヲ致シマシテ百分ノ十六、二五ト云
フコトニ變ヘテ居リマスノデ、此高ニ依リマスレバ、今日ノ徴收シテ居ルトコロノ地租ハ
減ジテ參リマシテモ、地方ノ財源ニ於キマシテハ聊モ變リハナイトコロノ案ニナッテ居リマ
スノデ、之ヲ實施致シマスルトキハ四十五年ヨリ實施ヲ致スト云フコトニ致シテ居リマス、
右二案ノ如ク玆ニ提出ヲ致シマシテ其理由ハ數字上右ノ如クニ相成リマスノデゴザイマ
スカラクド〓〓申上ゲル必要モゴザイマスマイカラ、ドウカ十分ナル御審議ヲシテ此案ノ
通過シマスルヤウニ願ヒマスル次第デゴザイマスル、長ラク申述ベマシテ甚ダ恐縮デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=165
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166・菅原傳
○菅原傳君 此二案ヲ一括シテ、議長九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=166
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167・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 二案ヲ一括シテ、議長指名ノ特別委員九名付託ニ御異
議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=167
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168・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ其通リ決シマス、日程第三十九、明治
四十一年法律第三十七號中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ、議案ノ朗讀ハ省略致
シマス、提出者熊本壽人君
第三十九明治四十一年法律第三十七號中改正法律第一讀會
案(熊本壽人君外三名提出)
明治四十一年法律第三十七號中改正法律案
明治四十一年法律第三十七號中左ノ通改正ス
第一條北海道、府縣其ノ他ノ公共團體ハ左ノ制限以內ノ地租附加稅又ハ段
別割ヲ課スルノ外土地ニ對シテ課稅スルコトヲ得ス
北海道、府縣(沖繩縣ヲ除ク)、沖繩縣ノ區及町村
附加稅ノミヲ課スルトキ宅地地租百分ノ十三
其ノ他ノ土地地租百分ノ三十二
段別割ノミヲ課スルトキ一段步ニ付每地目平均金四十錢
附加稅及段別割ヲ併課スル場合ニ於テハ段別割ノ總額ハ其ノ地目
ノ地租額宅地ニ在リテハ百分ノ十三、其ノ他ノ土地ニ在リテハ百
分ノ三十二ト附加稅額トノ差額ヲ超ユルコトヲ得ス
二其ノ他ノ公共團體
附加稅ノミヲ課スルトキ宅地地租百分ノ九
其ノ他ノ土地地租百分ノ二十一
段別割ノミヲ課スルトキ一段步ニ付每地目平均金四十錢
附加稅及段別割ヲ併課スル場合ニ於テハ段別割ノ總額ハ其ノ地目
ノ地租額宅地ニ在リテハ百分ノ九、其ノ他ノ土地ニ在リテハ百分
ノ二十一ト附加稅額トノ差額ヲ超ユルコトヲ得ス
附則
本法ハ明治四十四年度分ヨリ之ヲ適用ス
〔熊本壽人君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=168
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169・熊本壽人
○熊本壽人君 御疲レノ際ニ甚ダ〓聽ヲ煩ハシマスケレドモ、私ノ此提出致シマシタ
案ハ唯今大西君ノ御出シナスッタ案ト名目ハ同ジデゴザイマス、ケレドモ內容ハ大變ナ違
ヒデゴザイマス、簡單ニ提出致シマシタトコロノ理由ヲ陳述致シマス、昨年田畑ニ限リマシ
テ地租ノ輕減ヲセラレマシタ結果、地方稅町村稅ノ制限率ニ三樣ノ率ヲ用井ルコトニ
ナッタコトハ諸君ノ御承知ノ通リデゴザイマス、從來ハ御承知ノ通リ一率デゴザイマシテ、
非常特別稅ノ外ノ通常ノ地租ニ對シマシテ府縣稅ノ方ニハ百分ノ六十ヲ課シ、其他
公共團體ノ方ニハ百分ノ四十ヲ課シテアッタノデゴザイマス、簡單ナル一率ノ下ニ是ガ出
來テ居ッタノデゴザイマス、所ガ昨年地租輕減ノ結果及非常特別稅ト云フ名稱ヲ廢止
サレマシタル結果ト致シマシテ、遂ニ其三樣ノ率トナリマシテ、御承知ノ通リ田地ニ對シ
テハ百分ノ十三、田畑ニ對シテハ百分ノ三十二、ソレカラ其他ノ土地ニ付テハ百分ノ
二十八ト府縣稅ニ付テハ右三樣ノ率ヲ用井テアルノデゴザイマス、其他公共團體ノ方モ
三樣ニナッテ居ルノデゴザイマス、ソレガタメニ市町村役場ガ之ヲ賦課徵收スル上ニ付テ
大變ナ手數ト費用トヲ要シテ居ルノデゴザイマス、御承知ノ通リ三樣ノ內容ヲ作リマ
シンチ三樣ノ率ヲソレ〓〓乘ゼネバナラヌト云フコトニナリマスノデ、甚シキニ至ッテハ市町
村役場ハ是ガタメニ一人ノ書記ヲ要シ、或ハ臨時雇ヲ置カナケレバ其手數ニ困ルト云フ
コトニナリマシタノデ、全ク此率ガ長クナッタノト、モウ一ツハ三樣ニナリマシタ三率ヲ用井
ルト云フコトニナリマシタノデ、市町村役場ハ其計算ト其整理等ニ於テ大變ナ面倒ニナッ
テ居ルノデゴザイマス、之ヲシテ以前ノヤウニ一率ニナスコトガ出來得マスナラバ、最モ結
構デゴザイマスガ、今日デハ御承知ノ通リ宅地ノ如キモノハ地價修正ノ結果トシテ、或ハ
又非常特別稅ノ結果トシテ、大變ナ負擔ヲ增シテ居ルノデゴザイマスカラ、之ヲ一率ニ
スルト云フコトハ稍〓ドウモ其當ヲ缺キハシナイカト思フノデゴザイマス、右樣ノ事情デゴザ
イマスカラ田地ニ對シテハ百分ノ十三、其他ノ土地ニ付テハ百分ノ三十二ト云フ此二
率ニシタイト云フ考デゴザイマス、其他ノ土地ニ十八トアッタノヲ斷然止メテシマッテ率ヲ
二ツニナサウト云フ考デゴザイマス、又公共團體ノ方デモ其意味ニ於テ百分ノ九ト百分
ノ二十一ト云フ此兩率ニ止メタイト云フ考デゴザイマスル、斯ク致シマシタナラバ市町村
役場ハ餘程其手數ヲ省クコトガ出來ルコトダラウト私ハ信ジテ居ルノデゴザイマス、全體
此制限率ノコトハ聊モ御承知ノ通リ國庫ニ關係スルコトナク致シマシテ、其地方ノ財源
ニ關係スルコトデゴザイマス、ケレドモ、此稅率ヲ長クシ、或ハ稅率ヲ多クシタガタメニ、
殆ド全國ノ一萬幾千ノ市町村役場ニ於テハ非常ノ手數ト經費トヲ拂ッテ居ル次第デゴ
ザイマスカラ、之ヲ率ヲ少ク致シマシタナラバ、餘程此手數ヲ省キ、費用ヲ省クコトガ出
來ルト信ジテ居ルノデゴザイマス、何卒御審議ノ上ニ通過スルヤウニ御贊同アランコトヲ
切ニ希望スル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=169
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170・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ前條ノ委員ト同ジ委員ニ付託スルコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=170
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171・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ前日程ノ三十七、三十八ト同一委員ニ付託スルト
云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=171
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172・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ其通リ決シマス、日程第四十ハ提出者ヨ
リ延期ノ申出ガアリマス、許可シテ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=172
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173・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ガナケレバ延期致シマス、日程第四十一、水道條
例中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長粕谷義三君
第四十一水道條例中改正法律案(粕谷義第一讀會ノ續((한국판교)
三君外二名提出)報告発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=173
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174・粕谷義三
○粕谷義三君 簡單デゴザイマスカラ當席ヨリ報告ヲ致シマス、水道條例中改正法
律案ノ委員會ノ結果ヲ御報告申上ゲマス、本案ノ要旨ハ既ニ過日ノ本會議ノトキニ
提出者ヨリ詳細ナル御說明ガゴザイマシテ、諸君ノ御承知ノ通リデゴザイマス、大體此
議案ニ付キマシテハ政府ニ於テモ其主旨ニ同意ヲ表シテ居リマス又委員會ニ於キマシ
テモ委員ノ全體ノ者ハ悉ク同意ヲ表スルヤウナ譚デゴザイマス、唯此第二條ノ改正ガ餘
リニ廣過ギルト云フヤウナ嫌ヒガアルト云フコトガ委員會ニ於ケルトコロノ問題デアッタノ
デ、結局委員會ニ於キマシテハ審議討論ノ末ニ御手詳ニ配付ニナッテ居リマスルヤウナ
風ニ此第二條ヲ修正致シマシタノデアリマス、而シテ此原案ノ全部ニ亙リマシテ各條ニ
亙ッテ修正ニナッテ居リマスガ、其修正ハ悉ク皆此第二條ノ修正ノ結果デゴザイマス、此
修正ニ對シテハ政府モ全然同意ヲ表シテ居ル次第デゴザイマスカラ、何卒本會ニ於キマ
シテモ速ニ御決議アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=174
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175・菅原傳
○菅原傳君 御議論ガアリマセヌケレバ一一讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シテ委員長報
告通リ決定セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=175
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176・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直ニ二讀會ヲ開キ、省略シテ委員長報告通リト云フコトニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=176
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177・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ直三讀會ヲ開キ議案全部ヲ議題ニ供シマス
水道條例中改正法律案確定議
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=177
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178・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ本案ハ三讀會ヲ省略シテ委員長
報告通リ確定致シマス-日程第四十二、刑ノ執行猶豫ニ關スル法律案、委員長
根本正君-理事古賀庸藏君
第四十二刑ノ執行猶豫ニ關スル法律案第一讀會ノ續委員長
(木村格之助君外一名提出)報〓
〔「理事デハナイ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=178
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179・鈴木力
○鈴木力君 此場合發言ヲ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=179
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180・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 議事ノ進行上ニ付テヾスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=180
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181・鈴木力
○鈴木力君 固ヨリ議事ノ進行上ト云ヒマシタラ間違フカ知レマセヌガ、速記錄
ノコトニ付テ申シタイ-ヤハリ議事ノ進行ニ關係シテ居ルガ如ク考ヘル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=181
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182・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 速記錄ノコトナラバ後トデ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=182
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183・鈴木力
○鈴木力君 ヤハリ議事ノ進行上間違ッタコトヲ傳ヘラレテハ發言ノ順序ニ關係シマ
ス-大シタコトデハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=183
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184・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) イヤ、速記錄ニ間違ッタコトガ若シ書イテアッタトシテ、ソレヲ
訂正ニナルト云フガ如キコトナラバ後トデ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=184
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185・鈴木力
○鉛木力君 自分ノコトデハアリマセヌデスガ、訂正スル意味デハナイ、ヤハリ進行ニ關
係シテ居ルデス、ドウゾチヨット發言ヲ御許シニナッテハ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=185
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186・古賀庸藏
○古賀庸藏君 刑ノ執行猶豫ニ關スル委員長ハ間違ッテ居リマス、古賀庸藏ガ卽
委員長デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=186
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187・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長、古賀庸藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=187
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188・古賀庸藏
○古賀庸藏君 本案ハ頗ル簡單ナ案デゴザイマスカラ、此席ヨリ委員會ノ經過及ビ結
果ヲ御報道ヲ致シマス(鈴木力君「謹聽、大ニ謹聽」ト呼フ)本案ハ既ニ提出者木村君
ヨリ提出ノ際ニ詳細ニ案ノ內容ヲ述ベラレマシタカラ旣ニ諸君ノ御承知デゴザイマス、然
ルニ此案ハ三十八年第七十號ノ法律ニ依ッテ刑ノ執行ヲ受ケマシテ、此期間ヲ無事通
過致シタ者モ尙刑餘ノ名ガ戶籍ノ上ニ存シテ居ルト云フ次第デ、尙現刑法ノ第二十
七條ニ依ッテ言渡サレタモノハ全然刑名ガ消ヘマルスルモノデ、之ト同樣ニ致シタイト云フ
ノ案デゴザイマス、所ガ政府當局ニ於テハ大ニ反對ヲ唱ヘ、其反對ノ理由ハ未ダ執行
中ニアル、若クハ確定セザルモノデアレバ兔ニ角、既ニ確定ヲ致シテ執行ヲ終ヘタ者ニ向ッ
テ此ノ如キ案ヲ提出サレルノハ不同意デアル、斯ウ云フ趣意デゴザイマス、所ガ委員ハ尙
之ヲ反覆審査ヲ致シマシタ結果、諸君ノ御手許ニ配付致シマシタ如ク多數多數
デハナイ、文字ニ修正ヲ加ヘテ全會一致ヲ以チマシテ院議可決致スベキモノト決定致シ
マシタ、左樣御承知下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=188
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189・菅原傳
○菅原傳君 本案ハ直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ決定セ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=189
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190・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直ニ二讀會ヲ開キ、三讀曾ヲ省略シテ委員長ノ報告通リ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=190
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191・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ直ニ二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ニ供シマス
刑ノ執行猶豫ニ關スル法律案確定議
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=191
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192・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ本案ハ第三讀會ヲ省略シ、委員
長報告ノ通リ確定致シマス、日程第四十三、第四十四ハ同一委員ニ付託セラレタル
議案ナルニ依リ、併セテ委員長ヨリ報告致シマス、委員長小河源一君
第四十三輕便鐵道法中改正法律案(吉第一讀會ノ續調査法
植庄一郞君外二名提出)報告
第四十四鐵道敷設法中改正法律案(吉第一讀會ノ續委員長
田虎之助君外二名提出)報告)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=192
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193・小河源一
○小河源一君 此席ヨリ委員會ノ經過及結果ヲ報告致シマス、輕便鐵道法中改
正法律案ハ其第五條中ニ私設鐵道ノ下ニ第九條第二項ト云フ文字ヲ加ヘルノデゴザ
イマス、是ハ私設鐵道法ニ依リマスレバ株劵ノ十分ノ一拂込ヲ致シマスレバ市場デ賣買
ヲスルコトガ出來ルコトニナッテ居ル、然ルニ輕便鐵道法ニ其便法ガアリマセヌ故ニ、之ト
同一ノ便法ヲ與ヘルト云フ案デアリマス、誠ニ簡單明瞭ナ案デゴザイマス、而シテ此但書
ニ於キマシテハ他ノ會社ガ輕便鐵道ノ兼業ヲ致ス場合ハ之ヲ取除ケト致シテ居ルノデア
ル、政府ニ於キマシテハ此案ニ全然同意ヲ致シテ居ルノデゴザイマス、ソレ故ニ委員會ニ
於キマシテ全會一致ヲ以テ原案通リ決議ヲ致シタ次第デゴザイマス、次ハ鐵道敷設法
中改正法律案デゴザイマス、是ハ大津ヨリ敦賀ニ到ル鐵道ヲ豫定線ニ加ヘルト云フ案
デゴザイマス、此案ニ付キマシテハ政府ニ於キマシテハ固ヨリ希望ノ線デアル、ソレ故若州
井ノ口ニ至ルマデハ既ニ豫想線中ニモ加ヘテアルヤウナ次第デアル、併ナガラ今日ノ場合
之ニ同意ヲ表スルト云フコトハ出來ナイ、ケレドモ希望ノ線デアルト云フコトニナッテ居ル
ノデゴザイマス、尤モ是ハ鐵道院ノ方ノ答辯デアリマス、陸軍ノ方ノ政府委員ヨリノ答
辯ニ依リマスルト陸軍ノ目ヨリ見レバ頗ル必要ヲ感ズル線デアル、併ナガラ今日ノ經濟其
他ノコトヲ考ヘテ、陸軍ノ側カラ他ヲ差措イテモ之ヲ速ニセネバナラヌト云フ程ノ必要ハ
アリトシテ答辯ヲ致ス譯ニハ行カナイ、併ナガラ希望ノ線デアルト云フ答辯デアリマス、委
員會ニ於キマシテモ是モ全會一致ヲ以テ可決致シマシタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=193
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194・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 此場合チヨット政府委員ニ希望ヲ述ベテ置キマス、四十三ノ輕
便鐵道法中改正案ニ付テハ過日委員會ニ於テモ政府ハ全然同意ノ旨ヲ言明サレマシ
タガ、此程衆議院ヨリ貴族院ヘ送付シタル政友-議員提出-衆議院提出ノ鐵
道ニ關係スル案ハ大分否決ノ運命ヲ持ッテ居ルヤウデアリマス、ソレハドウモ十把一束ト、
サウ云フヤウナコトノナイヤウ、政府モ贊成ノ意思ヲ能ク貴族院ニ徹底セシメテ、本案ハ確
實ニ通過スルヤウ御盡力アランコトヲ希望致シマス、之ニ對スル政府委員ノ答辯ヲ聞イ
テ置キタイ
(政府委員工學博士平井晴二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=194
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195・平井晴二郎
○政府委員(工學博士平井晴二郞君) 御答致シマス、唯今吉植君カラ御尋ニナリ
マシタノハ日程第四十三ノ輕便鐵道法中改正法律案ニ付テノコト··
〔「全體」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=195
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196・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 輕便鐵道改正ノコトニ付テ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=196
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197・平井晴二郎
○政府委員(工學博士平井晴二郞君) 輕便鐵道法改正案ニ付キマシテハ過日委
員會ニ於テ政府委員ガ御答ヲ致シマシタ如ク、政府モ此改正ヲ必要ト認メテ居ル次第
デゴザイマス、故ニ貴族院ニ於キマシテモ通過スルヤウニ努メル積リデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=197
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198・菅原傳
○菅原傳君 日程四十三、四十四兩案トモ直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シテ
委員長報告通り決定セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=198
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199・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 兩案トモニ別ニ反對贊成ノ通〓モアリマセヌ、因テ兩案
共一括シテ議題ト致シタイト思ヒマス、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=199
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200・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナケレバ卽チ兩案一括シテ直ニ二讀會ヲ開キ、三讀
會ヲ省略シテ委員長報告通リ御異議アリマセヌカ
輕便鐵道法中改正法律案確定議
鐵道敷設法中改正法律案確定議
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=200
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201・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ三讀會ヲ省略シテ兩案トモ是
ニテ確定致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=201
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202・鈴木力
○鈴木力君 議事進行ノ上ニ付テ一言發言ヲ御許ヲ願ヒマス(「時間ガナイ」ト呼フ
者アリ)時間ガナイコトヲ承知ノ上デ言ヒマスカラ頗ル簡單デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=202
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203・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 議事進行ノコトナレバ一言仰シヤッテ、若シ議事進行ニ關
係ガナケレバ、議長カラ差止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=203
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204・鈴木力
○鈴木力君 アヽ承知ノ上デ-答辯ヲ要求シタ議員ノ發言ニ對シテ時〓間違ッタル
速記錄ガ出ル、ソレモ植字ノ修正デ宜シイケレドモ、今日ノ問題ハ實ニ議會對政府ノ
折衝問題ノ場合ニ於テ、議長ガ村松恆一郞君ノ質問ニ對シテ政府委員ガ未ダ答辯ス
ルトモセヌトモ言明セザルカノ如ク吾ミカラ見受ケルトキニ當ッテ答辯ノナイト云フ御宣告
ニナッタノハ是ハ如何ナル理由デゴザイマシタラウカ、彼等ノ無能ヲ憫ンデ議長之ヲ救ヒタ
ルカ但是ハ將來ノ心得ニナルコトデゴザイマス
〔「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=204
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205・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御答致シマス····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=205
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206・鈴木力
○鈴木力君 モウ一ツアリマス同ク第一ニ本年ノ議會-議會ノトキニ當ッテ議長ハ
本員ノ質問ニ對シテ桂總理大臣等ガ無言ニシテ苦笑シタル場合ニ於テ議長ノ仰シヤツ
タノハ答辯ノナイノハ答辯ガ盡キタモノト思ヒマスカラト云フ御言葉デアリマス、玆ニ至ッ
テハ取リヤウニ依リマシテハ內閣大臣等ガ答辯ガ盡キタンデアルト云フ宣告同然デ
アリマスカラ、質問者ハ殆ド面目ヲ施シタル都合デ、ソレマデ言ハレテ追窮スル程ノ逆意
ハアリマセヌカラ、默ッテ引込ンダ次第デアリマス、然ルニ速記錄ニハ質問ガ盡キタト思ヒ
マスカラト云フコトニ書イテアリマス、斯ルコトハ實ニ微妙ナルコトデアリマシテ、而シテ大
ナル關係ヲ持ツノデアリマス、此等ニ付テモ前後二ツ揃ヒマシタルニ依ッテ、議長ノ今日マ
デノ議場ニ對スル御差配ハ感服シテ居リマスケレドモ、今日ノ村松君ノ簡單ナル質問ニ
對スル答辯ハ果シテ質問ニ答辯ノナイト云フコトヲ御認メニナッタノハドウ云フ都合デゴザ
イマシタラウカ、是ハ全ク議事進行上ニ關係スルコトデ、議長ノ腹藏ナキ御答ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=206
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207・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御答致シマス、第一ハ御承知ノ如ク內閣員モ揃ッテ居リマ
入答辯ハシナイト云フコトデアリマシタカラ、答辯ハナイト言ウタ、ソレカラ第二ノ御問ニ
對シテハ此衆議院規則ノ百四十一條ニ依ッテ御申出ヲ望ミマス-既ニ今日ハ六時
ニナリマシタカラ今日ハ延會致シマス-諸般ノ報告ヲ致シマス
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
准三后北畠親房公墳墓修理竝南朝三帝ノ宮址賀名生皇居ヲ特別保護建造
物編入ニ關スル建議案
提出者東武君井上億作朗君
鐵道建設ニ關スル建議案
提出者白石義郞君根本正君佐々木鐵太郞君
柏原左源太君
朝鮮穀物及穀粉ノ移入稅ニ關スル建議案
提出者大內暢三君
一ト部喜太郞君ヨリ行政裁判所評定官免官ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタ
リ
一水品平右衞門君ヨリ鐵道改善ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=207
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208・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 議長ニ委託セラレタル委員ノ氏名ハ公報ヲ以テ御通知致
シ、次囘ノ議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、今日ハ是デ散會
午後五時五十六分散會
衆議院議事速記錄第十八號正誤
頁段行誤正頁段行誤正
三四八下三海軍ノ權力陸軍ノ權力同下八幹線ノ豫定幹線ノ豫想
三寳酒下七官線ノ豫定線幹線ノ豫想線発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002713242X01919110307&spkNum=208
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