1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治四十五年二月二十七日(火曜日)午後一時十四分開議
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議事日程 第十二號 明治四十五年二月二十七日
午後一時開議
質問
一 取引所政策に關する質問(細野次郎君提出)
二 日本勸業銀行農工銀行北海道拓殖銀行の年賦償還貸付金利子に關する再質問(高橋直治君提出)
三 小學教科書に關する質問(綾部惣兵衞君提出)
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第一 樺太酒類出港税法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 工業用酒精酒類其の他酒精含有飮料戻税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 明治三十四年法律第十號中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 衆議院議員選擧法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第九 群馬縣下郡界變更に關する法律案(請願委員長提出) 第一讀會
第十 市制中改正法律案(小河源一君提出) 第一讀會
第十一 町村制中改正法律案(小河源一君提出) 第一讀會
第十二 拘留科料に關する裁判法案(卜部喜太郎君外一名提出) 第一讀會
第十三 高層氣象勸測所設置に關する建議案(根本正君外一名提出)
第十四 鐵道速成に關する建議案(江原節君外三名提出)
第十五 鐵道速成に關する建議案(渡邊修君外七名提出) (委員長報告)
第十六 上越鐵道敷設に關する建議案(青柳信五郎君外四名提出) (委員長報告)
第十七 信越河東線鐵道建設に關する建議案(安川保次郎君外一名提出) (委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=0
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001・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 議長差支ニ付、暫時此席ニ著キマス、報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
衆議院議員選舉法中改正法律案
一貴族院ハ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領
セリ
學校及圖書館資金ノ一部所屬換等ニ關スル法律案(政府提出)
〓國事件費支辨ニ關スル法律案(政府提出)
(第一號)明治四十四年度歲入歲出總豫算追加案
(第二號)明治四十四年度歲入歲出總豫算追加案
(特第一號)明治四十四年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
(第三號)明治四十四年度歲入歲出總豫算追加案
(特第二號)明治四十四年度特別會計歲入歳出豫算追加案
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
農業金融ニ關スル建議案
提出者恆松隆慶君長晴登君中倉万次郎君
東武君上埜安太郞君築山和一君
平島松尾君齋藤宇一郞君富田幸次郞君
水道條例中改正法律案
提出者井上角五郞君恆松隆慶君管原傳君
森茂生君橋本久太郞君松田源治君
鵜澤總明君岡田泰藏君翠川鐵三君
鐵道建設ニ關スル建議案
提出者根本正君小久保喜七君白石義郞君
小山田信藏君佐々木鐵太郞君星柏原左源太君
長晴登君佐治幸平君一君
神社行政統一ニ關スル建議案
提出者早川龍介君
國稅徵收法中改正ニ關スル建議案
提出者根岸峮太郞君古野孫太郞君熊本壽人君
岡田泰藏君中村啓次郞君春田祐〓君
河上英君塚田啓太郞君
直江津開港ノ建議案
提出者水品平右衞門君靑柳信五郞君山際敬雄君
根岸峮太郞君安川保次郞君
一星一君ヨリ〓育方針ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
一武田貞之助君ヨリ官紀振肅ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
一柴四朗君ヨリ〓國動亂ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
一昨二十六日明治五十年日本大博覽會開催ニ關スル建議案委員渡邊勘十郞
君病氣ノ爲辭任ニ付キ其補闕トシテ八木逸郞君ヲ議長ニ於テ選定セリ
一第七部選出決算委員園山勇君ヨリ病氣ノ爲辭任ノ申出テアリ
一麥田宰三郞君病氣ニ付去二十五日ヨリ三週間請暇ノ申出テアリ
一內藤利八君病氣ニ付今二十七日ヨリ十日間請暇ノ申出テアリ
一五十嵐敬止君病氣ニ付今二十七日ヨリ三週間請暇ノ申出テアリ
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲玆ニ揭載ス〕
一去二十四日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法中改正法律案
宮古啓三郞君後藤文一郞君江原節君
岡田泰藏君稻村辰次郞君藤代市之輔君
入江武一郞君阪本彌一郞君花井卓藏君
明治四十三年度豫備金支出ノ件外三件(承諾ヲ求ムル件)
菅原傳君齋藤珪次君
松田吉三郞君熊野君製品機種 大豆 肉汁丹祐總權總明君若君君君
奧田榮之進君加田山 山定吉君祐〓君
水品平右衞門君國際的信息
卜部喜太郞君關田嘉七郞君加治壽衞吉君
小河源一君山田珠一君加瀨禧逸君
明治五十年日本大博覽會開催ニ關スル建議案
渡邊勘十郞君有本國藏君川崎安之助君
黃金井爲造君木下吉之丞君高木正年君
藏原惟郭君山根正次君田川大吉郞君
神社崇敬ニ關スル建議案
早川龍介君有田源一郞君篤行君
向坂弘君佐々木鐵太郞君井大高阪津原淳一郞君
村松恆一郞君丸山孝一郞君光暉君
一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法中改正法律案委員會
委員長宮古啓三郞君理事藤代市之輔君
明治四十三年度豫備金支出ノ件外三件(承諾ヲ求ムル件)委員會
委員長菅原傳君理事[水品平右衞門君
(西村丹治郞君
明治五十年日本大博覽會開催ニ關スル建議案委員會
委員長八木逸郞君理事田川大吉郞君
神社崇敬ニ關スル建議案委員會
委員長早川龍介君理事高原篤行君
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲玆ニ揭載ス〕
取引所政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據り提出候也
明治四十五年二月七日
提出者細野次郞贊成者大竹貫一
外二十九人
取引所政策ニ關スル質問主意書
一政府ハ數年來屢取引所改善ノ方法ヲ調査中ナリト宣明ス其ノ改善ヲ爲サムト
スル〓何レニ存スルヤ
二政府ハ明治四十一年四月東京株式取引所手數料ニ約一割ノ引上ヲ認可セ
リ其ノ理由如何
三政府ハ明治四十四年五月東京株式取引所ニ於ケル直賣買ヲ禁止シタリ其ノ
理由如何
四政府ハ明治四十四年八月十日東京米穀取引所八月限及九月限賣買ヲ停
止シタリ其ノ理由如何
右及質問候也
日本勸業銀行農工銀行北海道拓殖銀行ノ年賦償還貸付金利子ニ關スル再質
問主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十五年二月十二日
提出者高橋直治贊成者井上角五郞
外二十九人
日本勸業銀行農工銀行北海道拓殖銀行ノ年賦償還貸付金利子ニ關スル再
質問主意書
日本勸業銀行農工銀行北海道拓殖銀行ノ年賦金償還利子計算ニ關シ一月二
十五日附ヲ以テ政府ニ質問主意書ヲ提出シ一月二十七日衆議院本會議ニ於テ
之カ辯明ヲ爲シタルニ山本大藏大臣ヨリ答辯アリタルモ其ノ要旨ハ筋違ニシテ質問
ノ主意ニ對スル答辯ニ非サルヲ以テ左ニ再質問ヲ爲サムト欲ス
第一三特種銀行ハ大藏大臣ノ認可シタル債務者ト銀行トノ間ニ於ケル年賦
償還貸借契約ニ基キ假ニ十萬圓ヲ初年据置十四箇年年賦償還トシ利息ハ
年七分八厘ト定メ元利金ヲ每年七月一月ノ二囘ニ拂込ム約定ヲ爲スニ當リ
其ノ元利ヲ合算シテ年賦金ヲ作リ出ス方法ハ元金ヲ年二囘ニ償還スル約定ナ
ルカ故ニ利子ノ計算ハ十五箇年ニ對シ初年ヲ据置キ一一年目ヨリ每年七月一
月ノ二囘卽チ十四箇年間ニ於テ二十八囘ニ元金ヲ段々ニ引去リツツ利子ノ計
算ヲ爲シ元金ヲ合算シテ年賦金ヲ作リ出スヲ正當トス然ルニ三特種銀行ハ每年
一月ニ於テ一囘卽チ十四箇年間ニ於テ十四囘ヨリ元金ヲ引去ラサルカ爲ニ每
年下半季ハ元金ノ無キモノニ對シテ利子ヲ取ル割合ト爲ル政府ハ三特種銀行カ
法律モ許サス債務者ニ對スル契約ニ於テモ取ルキヘ權利無キ利子ヲ徵收スルモ
之ヲ不當ト認メサルカ
第二前項ノ不當利息計算ニ關シ債務者ニ於テ契約書ニ基キ此ノ計算ハ違フ
カ故ニ之ヲ相當計算ニ改メラレタシト要求スレハ銀行ハ利息ノ計算ハ違ヒアルモ
年賦償還貸付ノ利子ハ大藏大臣ノ認可ヲ經タルモノナリト主張シ卽チ大藏大
臣ノ認可ヲ經タル名義ノ下ニ自己勝手ナル計算ヲ爲シ元金ノ無キ利子ヲ徵收
シタル金高カ年七分八厘ノ認可ヲ經タルモノニ對シ八分一厘三毛强ニ當ル迄
ノ不當利息ヲ徵收スルモ政府ハ其ノ認可權ニ差支ナキカ
前二項質問ノ主意ヲ明瞭ナラシメムカ爲具體的ニ別紙參考書ヲ添附セリ政府ハ
仔細ニ之ヲ調査シ當否如何ヲ答辯アラムコトヲ望ム
右及再質問候也
(別紙參考書ハ略ス)
小學〓科書ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十五年二月十五日
提出者綾部惣兵衞贊成者石田仁太郞
外三十二人
小學〓科書ニ關スル質問主意書
明治四十三年八月十五日發行ニ係ル高等小學理科書第十五課防腐劑ト題スル
記事中「サルチル」酸及「フオルマリン」ヲ飮食物ノ腐敗ヲ防ク藥品トシテ引例シアレト
モ該藥品ハ既ニ學理上使用スヘカラサルモノト認定セラレ居ルノミナラス我カ國法ニ
於テモ亦明治三十六年九月二十八日飮〓物防腐劑取締規則ヲ以テ嚴ニ使用ヲ
禁止シタルモノナリ然ルニ國民〓育上最注意ヲ要スル〓科書ニ於テ學理上ノ誤謬ヲ
示シ法律ノ精神ヲ無視スルカ如キ記事ヲ揭載スルニ至リテハ國法ト矛盾スルモノニシ
テ洵ニ〓歎ニ堪ヘス此ノ如キ記事ハ速ニ改訂セサルヘカラス政府ノ所見果シテ如何
右及質問候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=1
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002・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 唯今報告致シマシタ請暇及委員辭任ノ件ニ付テハ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=2
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003・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 然ラバ御異議ナキモノト認メマス、其補缺ハ其部ニ於テ選舉セ
ラレンコトヲ望ミマス、會議ヲ開キマス、取引所政策ニ關スル質問-細野次郞君
〔細野次郞君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=3
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004・細野次郎
○細野次郞君 取引所ノ政策ハ日本ノ明治政府ノ舊來ノ政策ハ唯是レ失敗ノ歴史
ト云フコトハ誰モ言ヒマスルコトデゴザイマスガ、豈獨リ日本政府ノミナラズ、取引所政策
ニ關シマシテハ文明諸國悉ク皆失敗ノ歷史ナラザルナシト云フモ可ナル有樣デゴザイマ
ス、抑〓明治政府維新ノ當初ニ於ケル時代ノ思想ハ定期賣買ト云フモノヲ見マシテ、唯
一種ノ害物トナシ、併シ人生ノ弱〓、成ベクハ禁ジタイケレドモ、之ヲ禁ズルノ害ハ禁ゼ
ザルノ害ヨリ更ニ甚シイト云フヤウノ見地カラシテ、之ヲ或ル土地ヲ限リマシテ而シテコヽダ
ケ許ス、成ベク取締ヲ窮屈ニシテ、而シテ賣買ヲ面倒ニシテ、成タケ其害ノ及プコトノ少ナ
イト云フコトヲ企圖スルノミデ、以テ取引所ノ效用ヲ舉ゲヤウト云フ意念ナドハ路ホドモ
政治上ニゴザイマセナンダ、如何ハシイ例デハゴザイマスガ、丁度賣婬制度ト同ジヤウニ、已
ムナク地區ヲ限ッテ取締ヲ嚴ニシテ之ヲ許ス唯其害ノ多カラザランコトヲ是レ祈ルノミデアッ
タノデアリマス故ニ全ク取引所ヲ許シマスノモ、何等ノ見込ニ依ッテ許シタト云フ譯デ
ハナイ、明治ノ初年ニ鎧橋ノ南北ニ米穀取引所ガ二ツ軒ヲ竝ベテ立ッテ居ッタト云フノ
ヲ見テモ、如何ニ其時分ノ思想ガ幼穉デアッタト云フコトハ了解セラルヽノデアリマス、所
ガ左樣ナ次第デアリマスカラシテ是カラ稅ヲ取ル、而シテ此租稅ナルモノハ時ノ進ムニ依ッ
テ非常ニ多額ニナッテ參ル、ソコデ政府モ取引所其モノヽ效用ハ少シモ認メナクテモ唯
租稅ガ澤山取レルト云フ方ノ考カラ其〓ニ於テ取引所ト云フモノヲ輕ミシク見ナク
ナッタノデアリマス、明治二十六年ニ取引所法ヲ制定ニナッテ、法律ノ文面カラ見マス
ルト、此取引所ノ公定相場ト云フモノヲ重ンジ、而シテ取引所ト云フモノニ付テハ經濟
上ノ有要機關ノ如クニ書イテハアリマスケレドモ、政府ノ之ニ對スル政策ヲ見マスルト
其以來政府ノ命ズルトコロハ唯脫稅ノ防備ヨリ外何事モシテ居リマセヌ、其他ハ唯賣
買ヲ窮屈ナラシムル、却テ取引所自然ノ發達ニ妨害コソスレ、其發達ヲ助成スルナドト
云フコトハ一ツモシタコトガナイ、ソコデ此取引所ニ關シマシテモ經濟思想ノ進ムニ從
ヒマシテ唯今デハ多數ノ人ガ經濟上是非無ケレバナラヌ機關ダト云フコトニハ一致イタシ
テ居リマス、併ナガラ之ニ付テノ弊害モ亦少ナクナイノデ、度〓本議會ニ於キマシテモ、議
員ノ口ヨリ、政府ノ口ヨリ、論議ニ上リマス、何時モ政府ハ取引所ハ其改善ノ必要ヲ認
メナイコトハナイガ、其改善ノコトニ付テハ政府ハ調査中デアル、必ズ適當ナル案ヲ立テ此
改善ヲ計ルト云フコトハ、既ニ三年モ前カラ宣明セラレテ居ルノデゴザイマス、而シテ其
以後爲ストコロヲ見マスレバ一向改善ノ實ヲ舉ゲテ居ラナイ、テ私ハ今ノ政府ガ取引
所ヲドウ考ヘテ居ルノカ、而シテドウ改善シタイノカ、其〓ニ付テ政府ノ所見ヲ聽キタイ
ノデゴザイマス、唯取引所ハ租稅ガ取レルカラ政府トシテハ成ベク租稅ノ多ク取レルヤウナ
コトヲ目的トシテ、之ヲ處理スルト云フノデアルカ或ハ又取引所ニ於テ最モ多ク行ハレ
ルトコロノ投機賣買、其投機賣買ノ弊ヲ恐レテ、成ベク投機賣買ヲ禁止セントスルノ
ガ、取引所政策ノ目的デアルカ、私ハ之ニ付キマシテ意見ヲ述ベマセウト思ヒマスガ、日本
程此取引所カラ重イ稅ヲ取ッテ居ル國ハ世界ニナイ、殆ド世界列國ニ於キマシテハ、日
本トハ賣買稅ニ付テ比準ニナラナイノデアリマス、併シ日本ノ如ク公ナル市場ヲ一營利
會社ナル株式取引所ナリ米穀取引所ナリ一株式會社ニ獨占ノ權ヲ與ヘテ居リマス、是
等ハ營利會社ノ常トシテ、公ノ利害ハ第二、第三トシテ唯己ノ會社ノ利益ノ多イコト
ヲ努ムルノハ言フマデモナイコトデゴザイマス、故ニ非常ニ取引所ナルモノハ儲カル仕事デア
ル凡ツ全國ノ營業ニ於テ取引所位氣樂デ資本ガ要ラナクテ儲カル仕事ト云フモノハゴ
ザイマセヌ、ソレデアリマスカラ此取引所カラ取ル稅ハ取易イ、取易イノデアリマスカラ、
西洋各國ノ例トハ違ヒマシテ、獨占ヲ許シテ置ク以上ハ取引所ニ重稅ヲ掛ケルト云フコ
トモ强チ無理ナコトデモゴザイマスマイ併ナガラ是ハ取引所ニ掛ケルノデアル、取引所
カラ取ルノデアル、公ナル賣買ニ付テ縱令能ク取レテモ賣買ニ稅ヲ掛ケルト云フ位經
濟上ニ損ナモノハゴザイマセヌ、大損害デアリマス、ト云フモノハ商品經濟ニ最モ必要
ナノハ交換ヲ簡易ニスルノデアッテ、交換ヲ簡易ニスル、卽チ交通機關ニ國財ヲ捨テヽ不
利益ナル鐵道ヲ敷設スルノモ賣買交換ヲ簡易ニスルノモ同ジコトデゴザイマス、是ガ政
府自身ノコトニナルト、此眞理ガ分ル、卽チ公債ノ價格ヲ維持セント欲スレバ、聚歛止
ムナキトコロノ政府モ、公債ノ賣買ニ限ッテハ其稅ヲ免除スルト云フノヲ以テモ此賣買
ヲ簡易ニスルコトガ如何ニ商品ニ大切ナルカト云フコトノ證據ニハナラウト思ヒマス、若シ
此取引所ヲ見ルニ唯收稅ノ一方ヨリスルト云フコトニ至リマシテハ、丁度鐵道ヲ架ケ、
電信ヲ設ケ、左ノ手デ交通ヲ簡易ニシテ、右ノ手デ商品ノ流通ヲ妨ゲルト云フ矛盾ニ陷
ルノデアリマス、是ハマサカ政府者ト雖モ今ノ取引所ハ何ガタメト云ヘバ、之ヲ設ケルノハ
收稅ノタメトハ能ウ言ヘマイト思ヒマス、偖其次ニハ投機賣買ノ禁止、此投機ト云フコト
ニ付キマシテ、政府者ガ誤解ヲスルタメニ、アッチコッチ非常ナ刑事被〓人ヲ生ジマシテ、實
ニ言フニ堪ヘザル平地ニ風波ヲ起スヤウナコトガ少ナクナイノデアリマス、故ニ聊之ニ付
テ政府當局ノ政策ノ上ニ於テ投機ト云フモノニ誤解ヲシテ居ルト云フ〓ヲ私ハ一言辯
ジヤウト思ヒマスル、投機ト云フモノハ或ハ空相場ト云ヒ、或ハ賭博ト云ヒマス、併シ投機
ノ本來ノ性質ト云フモノハ純粹ノ商賣デス、商賣ノ目的ハ何ガ目的ダト云フト、差金ヲ得
ントスルガ目的デアル、卽チ廉ク買ッテ高ク賣ルト云フノガ目的デアル、卽チ普通ノ商賣ハ甲
ノ廉イ處カラ買ッテ、乙ノ高イ處ヘ持ッテ行ッテ賣ル、廉ク賣ル人カラ買ッテ、高イ人ニ賣
ルト云フノハ誰モ理解スルトコロノ普通ノ商賣デアリマスガ、投機ト云フモノハ人ト處ト
ニ拘ラズ時ノ差異ニ依ッテ生ズルトコロノ差金ヲ得ントスルノヲ投機ト云フノデゴザイマス、
卽チ廉イトキニ買ッテ置イテ、高イトキニ賣ル、今年ハ米ガ廉過ギルカラ今ノ中ニ買ッデ
置イタラ今ニ高クナルダラウ、今株ガ廉イカラ之ヲ買ッテ置イタラ、今ニ高クナルダラウト
云フ、時ノ違ニ依ッテ生ズルトコロノ差金ヲ利セントスル目的ヲ以テヤルノガ投機デアル、
是ハ賭博トハ全ク違フ、純粹ノ營業デアル、商賣ト云フモノハ總テ差金ヲ得ントスルノガ
目的デアル、而シテ其投機ト云フモノハ時ニ關スルトコロノ差金ヲ得ルノヲ投機ト申シマ
スルノデス、所ガ常ニ投機ト云フモノト賭博ト云フモノヲ間違フ、投機ハ是レ卽チ賭博ナ
リト云フヤウナ誤想ヲ抱イテ居リマス、勿論投機ハ將來ヲ豫測スルノデアッテ、百姓カラ米
ヲ買ッテ米ヲ喰ベル人ニ賣ル程確實ノコトデハアリマセヌ、故ニ或ハ非常ニ利益ノアルコト
モアリ、或ハ非常ニ損害ノアルコトモアル、極メテ危險ノ仕事デアル、危險ノ仕事デアル故
ニ、唯其危險ノ程度ガ賭博ト相似テ居ルト云フナラバ、私バ異議ハアリマセヌ、ケレドモ
賭博ノ性質ト投機ノ性質トハ全ク異ナルモノデアリマス、ソコデ投機ト云フモノニ付キマシ
テハ、誰モ人間自然ノ情ノ發出ニシテ之ヲ法律ヤ政治デ如何ニ禁ゼントシテモ禁ズベカラ
ザルモノト云フコトニ付キマシテハ、全ク異議ガアリマスマイト思ヒマス、如何ニ法律デ投機
ヲ禁ジタイト思ッテモ、到底其效ノナイニ付テハ何人モ異議ナイコトヽ思ヒマス、併シ投機
ト云フモノハ害物デアル、社會ニナクテ宜イモノデアルト云フヤウナ考ヲ持ッテ居ル者ガ少ナ
クナイ、投機ト云フモノハ決シテ害物デナイ、社會ニ有用ナモノデアル、人間ニ投機思想ガナ
ケレバ國ハ亡セマス、例ヲ舉ゲテ見マスレバ米ハ一年ニ一遍シカ出來ナイ、是ハ一日モナ
ケレバナラヌ物デアリマスケレドモ、誰モ彼モ明日ノ分ノ蓄モ買ハズニ置キマス、天ニ豐凶
アリ、地ニ景氣不景氣アリ、而シテ豐年ト雖モ米ガ餘ラズ、凶年ト雖モ餓死スル者ノナ
イト云フノガ何故カト云ヘバ、人ニ投機思想ト云フモノガアッテ、今年ハ凶年ダカラ米ガ
今ニ高クナルデアラウ、今買ッテ置イタラ諸カルダラウト云フ營利ノ心ニ驅ラレテ、米ヲ持ツ、
卽チ此米ヲ持ツ所以ガ他日缺乏シタ時代ニ價ガ高ク賣ル所以デアリマス、經濟上ノコ
トハ公益、慈善、義俠等ノ手段デハ行ケルモノデハナイ、皆營利ヲ目的トシテ動クノデア
リマス、其營利ヲ目的トスルトコロガ公益ト背馳シナイ以上ハ、之ヲ國ニ於テ咎ムルコトデ
ナイノデアリマス、例ヲ舉ゲテ見マスレバ例ヘバ日本ニ鐵道ガ必要デアル是ハ遞信大臣
ガ草鞋穿デ鐵道架設ノ急ヲ說クヨリモ、取引所デ鐵道株ガ一圓上ッタ方ガ遙ニ效能ガ
アルノデアリマス、今日二百万錘ノ紡績會社ガ出來マシタノハ何故ノ結果デアルト言ヘ
バ、紡績株ガ高イ故デアル、若シ此株ガナクシテ己ノ力ダケテ、錢ノアル人デナケレバ此
仕事ガ起シ得ラレヌト云ウタナラバ恐クハ其進步ハ今日ノ十分ノ一ニモ及バヌモノデア
リマセウ、資本家ト云フモノハ臆病ナモノデアリマス金持ト云フモノハ安逸ヲ貪ルモノ
デアリマス、危險ヲ冒サヌモノデアリマス、故ニ金ノアル者ハ確ナ公債ヲ持ッテ居ルトカ、或
ハ時價一万圓ノ物ニ八千圓ノ金ヲ貸シテ利息ヲ取ルトカ云フヤウニ利益ノ多カランコ
トヨリモ、損害ノ少ナカランコトヲ希望スルノガ資本家ノ常デゴザイマス、若シ此株劵ノ
賣買ト云フモノガナケレバ、今日ノ經濟上ノ發達ガ十分ノ一ニモ及バナカッタト一ムフコトヲ
私ハ斷言シテ憚カラヌノデゴザイマス、其所以ハ何カト言ヘバ皆吾レ人ト共ニ投機思想
ニ驅ラレテ、而シテ今ニ高クナルダラウト思フモノヲ買ッテ置クトー云フ思想カラ價ノ高低ガ
アリマス、其價ニ支配セラレテ此ノ如キ事業ガ起ッタノデアリマス、既ニ投機思想ト云フ
モノハ弊ガアリマスガ、凡ツ世ノ中ニ利ノ大ナルモノハ其弊必ズ之ニ伴フノハ言フマデモナ
イコトデゴザイマスカラ、弊害モ澤山ナイトハ言ハナイ、數世打續イタル名家モ一朝投機
ニ係ッテ忽チ家族離反ノ不幸ヲ見ル例ハ每日目前ニ見ルトコロデゴザイマス、其弊ノタイ
コトニ付テ決シテ異議ハゴザイマセヌ、弊ハ多イノデゴザイマスガ、併シ投機ト云フモノハ社
會上ニ根絕ハ出來ナイ必要ノモノデアル、投機ナクバ國ガ立タナイト云フコトニ付テ、先
ヅ御承認ヲ得タイノデゴザイマス、之ヲ先ヅ極メマスルト云フト今ノ取引所ニ投機賣買ガ
多イカラト云ウテ取引所ヲ廢メルト云フコトノ理窟ニナラヌト云フコトガ一ツ極マリマス
レバ、取引所ノ賣買ナルモノハ經濟上必要ナコトトシマスレバ、先決問題ト致シマシテ取
引所ノ商ハ努メテ簡易確實ニスルコトヲ努メナケレバナラヌ、簡易確實トハドウ云フ意味
カト言ヘバ最モ少ナキ資本ニ於テ最モ大ナル商ヲシテ、而シテ違約者アルモ相手方ヲ
シテ損害ノ少ナカラシムルト云フコトガ簡易確實ト云フコトノ意味デゴザイマス、所ガ
唯今ノ實際ヲ申シマスルト云フト殆ド取引所法ナルモノハ實際行ハルベカラザルノ法律、
若シ嚴密ニ解釋シマスレバ仲買人ノ中ニ於テ取引所法違犯ノ行爲ヲシナイ者ハ百人中
一アルカナイカ分ラヌ位ダラウト思フ、凡ソ法律ノ力ハ大多數ガ遵奉スル譯デゴザイマセ
ヌケレバ、法律ノ效能ガナイト云フコトハ言フマデモナイコトデアリマス、例ヘバ呑行爲ノ多
イコト、卽チ一ツハ如何ニ輕々ニ論ズルモ呑ムト云フコトハ脫稅ニハ相違ナイ、取引所法
違反ニハ違ヒアリマセヌガ、呑行爲スラ幾度政府ガ之ヲ禁止セント欲スルモ、到底禁ズル
コトハ出來ナイ、恐ラクハ露骨ニ申シマスレバ是亦百人ノ仲買中九十九人マデハ呑ム
ト云フコトヲ敢テシテ居ルノデアリマス、時ニ是ガ何カコトアッテ、裁判官ノ眼ニ觸レルト云
フト、皆悉ク有罪ニナルノデアル、而シテ假リニ之ヲシナイヤウニセント努ムレバ· 卵形
呑ンデ脫稅ヲヤッテ、ソレデ營業ガ出來テ行ク商ニ對シテ競爭ガ出來ナイ、、近所隣ガ悉
ク呑行爲ヲヤッテ居ルニ、己レ一人脫稅ヲシナケレバ迚モ仲買業ハ出來ヌト云フコトニナ
リマス、又最モ簡單ナ例ヲ御話シマスト、取引所ノ仲買人ト云フモノハ唯今制規ニ依ッ
テ、二年以上其業ニ從事シテ且幾ラ〓〓ノ財產ガナケレバナラヌト云フ規定ニナツテ居
リマスケレドモ、此幾ラ〓〓ナケレバナラヌト云フ規定ガ事實ニ於テハチツトモ行ハレテ居
ラヌ、豫メ許可ヲ得ルト云フ時ニ於テ其前カラ何ノ財產ヲ所有シタト云フ證據ノナイ人
ガ、仲買業ノ許可ヲ得ントスル場合ニ於テ、稅務署ニ行ッテ私ハ是ダケ財產ガアリマシタ
ガ、唯今マデ所得稅ヲ納メズニ居リマシタカラ、誠ニ相濟ミマセヌカラト一云フテ、脫稅ヲ自
首シテ而シテ稅務局ヘ納メテ、而シテ稅務官カラ證明ヲ取ッテ取引所ニ出スノデアル取
引所ハ仲買人ガ之ニ署名ヲシテ取引所カラ推薦スルト、農商務省デハソレヲ以テ證トナ
シマシテ、ソレダケノ財產ガアリ某年間タケ從事シテ居ッタト見テ免許ヲ與ヘルノデアリマ
ス、若シ之ヲ嚴格ニ論ジマシタナラパ、全國ノ首府タル東京株式取引所ノ仲買人デスラ、
此成規ニ合セザルモノガ幾人アルカ知レナイ、尤モ此取引所ニ關スルトコロノ法律ガ宜シ
キヲ得ザルタメニ仲買人ノ營業モ實ニ困難、客ニ對シテ客カラ不當ヲ言ハレヽバ何處
マデ言ハレテモ仕方ガナイヤウナ商賣デアリマスカラ、誰一人永久ニ此業ヲ持續シテ居ヤ
ウナドト云フ人ハ一人モナイノデアル、早ク錢ヲ儲ケテ此仲買ヲ廢シタイ、早ク儲ケテ廢
シタイト、皆考ヘテ居リマスノデスカラ、其中デ少シ金ノ出來タモハノ忽チ自分ハ例ヘバ事
實上關係シテ居ッテモ、名前人ハ手代ノ名前ニスルトカ、或ハ他ノ者ヲ連レテ來ルトカ、
或ハ合資會社ノ組織ニスルトカ何カシテ、財產ノ少シ出來タモノハ表面名前人トナッテ、
一ツ間違ヘバ忽チ法律上ノ罪人トナルト云フヤウナ禍ヲ避ケルノデアリマス、現ニ僅ニ此
一事デツイ此頃ノコトデハゴザイマシタガ、名古屋株式取引所ニ於キマシテ十年以來ノコ
トヲ檢事ガ調ベマシテ、而シテ皆此不當ヲ計キ立ッタ、サアトウダ、若シ廢業屆ヲ出サナケ
レバ殘ラズ一々檢舉スルカラト云フノデ、名古屋ノ仲買人ハ過半數皆廢業屆ヲ出シタノ
デアル一應論ズレバ無論違法ニ相違ゴザイマセヌケレドモ、此違法ナルモノハ普通何
レノ土地ニモ行ハレテ居ル、當リ前ノコトデアルノニ十年以來ノコトヲ許立ッテ、殆ド
名古屋ノ取引所ハ其首腦ヲ失フト云フヤウナ慘狀ニ陷ッタノデゴザイマスカラ、私ハ玆ニ
政府ニ問ヒマスノハ、政府ハ取引所ヲ改善セントスルノハ如何ナル〓ニ於テ改善セント
スルカ、益〓此賣買取引ヲ窮屈ナラシムルモノデアルカ、或ハ又行ハレベキトコロノ法律ヲ
設ケテ、多數ガ服從シテ營業ガ出來得ラレルダケニセント努メルノデアルカ、卽チ要ハ取
引所ノ善發達ヲ望ムノデアルカ、唯之ヲ有害物視シテ飽迄モ之ニ壓迫ヲ加ヘントスル
ノデアルカ之ニ就テ問ヒタイト思フ、是ガ第一問デゴザイマス、第二問ハ政府ハ明治
四十一年四月東京株式取引所ノ手數料約一割ノ引上ノ申請ニ認可ヲ與ヘマシタ、
是ガ何故デアルカト申スノデス、本來公ナル市場ヲ一私立會社ニ獨占ノ權ヲ與ヘテ置キ
マシテ、手前勝手ナコトヲサセテ置クノハ日本ヨリ外アリマセヌ、故ニ斯樣ナル獨占事業ニ
關シテハ政府ハ常ニ監督ヲ嚴ニシテ、而シテ其私ノ暴橫ノ少ナイト云フコトニ至ラシメン
コトヲ注意スルガ何ヨリ必要デアル、例ヘバ一般ノ競爭ノアル仕事ニ付キマシテハ、不當
ノ利ヲ貪レバ、卽チ他ノモノヽ競爭ガ出來テ打勝ッテ、自然淘汰ニナリマスガ、獨占事業
ニ至リマシテハ、此憂ガアリマセヌ故ニ、政府ハ常ニ監督ヲ怠ッテナラヌコトハ言フマデモ
ナイ、然ルニ政府ノ爲ストコロハ豈ニ獨リ取引所ノミナラズ、總テノ獨占事業ニ對シテハ
却テ普通ノ營業ヨリモ其取締ヲ放漫ニシテ、自儘勝手ニシテ公益ニ關スル何等ノ取計
モシナイデ、而シテ一朝又何カ考ガ違フト云フト、例ヘバ電燈ノ如ク一ツ東京鐵道ニ許
可シタカトスルト、間モナク第三ヲ許可スル、千代田瓦斯ヲ許可スル又害ガアルト言ッテ
合併スル、是ハ敢テ中央政府バカリノコトニハ關シマセヌガ、其〓ニ至リマシテ實ニ其宜
シキヲ得ナイコトハ唯取引所ニ付テモ其通リ凡ソ世ノ中ニ營業トシテ取引所ノ營業位
有利ナ營業ハ少ナイノデアリマス、假ニ取引所ノ有利ナト云フ一例ヲ舉ゲマスレバ東京
株式取引所ハ其手數料ナルモノハ、近キ十年間ニ十倍シテ居リマス、僅ニ半期ニ十五
万、二十万ノ高デアリマシタモノガ、唯今ハ百万以上、四十三年ノ上半期ニハ半期デ百
七十何万ト云フトコロノ收益デアル所ガ斯樣ニ儲カル仕事ハ國ノ繁昌ニ伴フコトハ勿
論喜ブベキコトデハアリマスガ、ソレト共ニ公益ト云フコトモ始終政府ハ見テ行カナケレバ
ナラヌ、此取引所ガ利益ガアルカラシテ政府ガ財政ノ急ヲ訴ヘマストキニハ、幾囘カ是カラ
シテ租稅ヲ取ル、租稅ハ取引所稅デアル、賣買稅デハナイノデアリマス、併ナガラ取引所
ニ稅ヲ掛ケルト云フト其都度取引所ハ手數料ヲ引上ゲテ、卽チ賣買者カラ取ッテ居
ルノデアル取引所ノ利益ノ增シマスル、一例ヲ申シマスルト、餘リ取引所ガ儲カルモノデア
リマスカラ、配當ガ高ク上ボルト、世間ノ聞エガ惡ルク、三割モ五割モ儲カルト世間ノ
聞エガ惡ルイト云フノデ、必要ノナイノニノ資本ヲ增シテ、卽チ配當額ダケハ減ルヤウニ努
メテ居ル、故ニ、最初二十万ノ資本ガ今日ハ千二百万、創業當時一株ヲ所有シテ居
リマスルモノハ今日ハ舊株ガ二十株、新株ガ四十株、時價ニ依ッテ計算シマスルト設
立當時僅ニ五十圓テ一株待ッテ居リマシタモノガ、今日ハ六千餘圓ノ利益ヲ得ルト云
フコトノ計算ニナッテ居ル、是程儲カル仕事デアリマスカラ、獨占事業ノ常トシテ政府ガ
幾分公衆ノ便益ト云フ考ガゴザイマスル以上ハ、繁昌スルニ從シテ當然手數料ヲ引下ゲ
ルノガ當前デアル、取引所ト云フモノハ全國ニ幾箇所モゴザイマセヌ、多額ノ賣買ヲ爲サ
ントスル所ハ東京カ、大阪カ、其以外ニ於テハ行ハレマセヌ、故ニ取引所ノ手數料ガ高イ
ト云ッテ他デ商賣スルコトハ出來ナイ、取引所ノ手數料ヲ引上ゲルト云フコトハ卽チ一
種ノ租稅ヲ引上ゲタト變リガナイ、二百万圓ニ付テ一割引上ゲタトスルト、二十万圓ノ
租稅ヲ出シタト同ジコトニナルノデアル、斯樣ナ譯デアリマスニモ拘ラズ、取引上ノ此口
錢ノ引上ノ理由ハ何カト云ヘバ、決議ノ理由書ヲ見マスルト、非常特別稅ガ發布ニナッ
テ-三十七年ニ非常特別稅ガ發布ニナリ、三十八年一月ニ同稅ガ又再增徵ニ
ナッタ、前ノ非常特別稅ハ直賣買ノ本主ニ課シタケレドモ三十八年ノ按分ノ三ノ增
徵ハ取引所、仲買人兩方ガ負擔シテ居ル、所ガ是ハ遂ニ營業稅ニナツタ故ニ、手數料
ガ減ズルカラ稅ヲ引上ゲテ呉レヽ斯ウ云フ意味デアル、何カ此文句ニ依リマスルト取引
所ハ取引所稅ヲ自己ガ負擔スルトコロノ義務ガナキカノ如キノ申請デアル、ソレカラシマ
ヒニ物價騰貴デモアルカラト云フコトガアリマスガ、物價騰貴ハ幾分影響ハアリマスケレド
モ取引所ノ經濟ニ物價騰貴ナドト云フコトハ極メテ微細ナルトコロノ影響デアッテ、損
得ノ增減ニ足リナイノデアリマス、サレバ此處ニ至リマスルト全ク理由ノナイノニ政府ハ引
上ゲラレタト言ハザルヲ得ヌノデゴザイマスルガ、私ノ知ラヌトコロニマダ理由ガアリマスル
カ私ハ政府ニ之ニ付テ明白ナルトコロノ理由ヲ承リタイト思フ、是ガ第二問デゴザイマ
ス、ソレカラ第三問ハ明治四十四年五月二十一日株式取引所直取引ヲ政府ハ禁止
致シマシタ、其禁止ナルモノハ農商務大臣ノ依命、通達ニ依ッテ公ニセラレタノデアル
其文句ハ「取引所ニ於ケル直取引ハ其本質ニ於テ現物ノ受授ヲ目的トスルモノタルヤ
論ナシ然ルニ往々空相場ニ流レ動モスレハ〓博ニ陷ラントス」トアル、此意味ガ分ラヌ、第
一直取引ハ其本質ニ於テ現物受授ヲ目的トスル、是ガ大ナル誤デアリマス、商人ノ取
引ハ差金ヲ取ルノガ目的デス、現物ノ授受ハ手段デス儲ケタイタメニ買フノデス、唯現
物ヲ若シ家ヲ住フタメニ買フノハ是ハ商行爲デハナイ、他ヘ賣ッテ儲ケヤウトスルノガ
商行爲デアル、是ガ商行爲デアリマス、現物ノ授受ハ手段デアリマス、是等ハ商買ノ道
理ヲ少シク知ッタモノハ何人モ疑ハナイコトデアラウト思フノデアリマス、然ルニ往々空相場
ニ流レ、能ク空相場空相場ト云フコトヲ申シマスガ、此意味ガ的確デナイ、恐ク政府ハ
取引所ノ政策ニ付テ賣買高ハ多額ニ上ッテ居ルガ、受渡高ガ少ナイト云フ卽チ買ッタモノ
ハ必ズ取ル賣ッタモノハ必ズ渡サナケパナラヌト云フヤウニ解シテ居ルノデアリマス、或ハ此空
相場ト云フモノガ買フ約束ヲシマシテ、其物ヲ引取ラズニ他ニ賣リマスルト、之ヲ空相場
ト云フカ知レマセヌガ、若シ果シテ然ラバ是レ大ナル誤デアル、前申シマス通リ商賣ト云フ
モノヽ本質ガ商行爲ト云フモノハ賣ルタメニ買フノデアリマスカラ、買ッテ置イテ或ハ
二年、三年、數箇年ヲ持ッテ居ルモノモ隨意デアレバ、今日買ッテ明日賣ルノモ隨意デア
リマス、之ヲ政府ガ干涉スル必要ハナイノデアル、又今日買ッテ明日賣ルノモ隨意デアレ
バ、今買ッテ直グニイヤニナッテ賣ルノモ任意ノ行爲デアリマス、是ガ商行爲ヲ敏活ナラシム
ルニ於テ此自由ヲ與ヘテ少シモ差支ナイノデアリマス、ソレカラ又物ヲ買ッテ自分ニ賣買ヲ
スル授受ヲスルノニ是非共物ヲ買ッタモノハ引取ラナケレバナラヌト云云理窟ハナイノデ
アリマス、現ニ紡績ノ取引ナドガ最モ永久ノ商品取引トシテ行ハレルモノデアリマスガ、唯
今ハ八箇月、九箇月先キノ商ヒヲ甲商人ハ紡績會社トチヤント約束シテ居ル、而シテ
ソレヲ他ヘ賣ルトキニ自分ハ其荷物ヲ受取ラヌデ、紡績會社カラ直グニ乙ナル先方ニヤ
ルノデアル米穀ノ如キモ爲シ得ベクンバ値ノ差ヲ利スルノガ目的デアリマシテ、必要ノナ
キ品物ノ授受ヲシテ甲ノ倉カラ乙ノ倉ニ唯持ッテ來ルト云フヤウナコトハ完ク無用ノ手數
デアリマス、爲シ得ベクンバ一箇所ニ置イテ動サズニ唯甲カラ乙、乙カラー内ト云フヤウニシ
テ實際需用者ノ手ニ入ルマデハ、其儘デ始終措クト云フコトガ宜イト云フコトハ云フマデ
モナイノデアリマス、若シ此空相場ト云フモノヲ以テ實際ノ物ノ賣買ト云フコトヲスレバ、
必ズ取ラナケレバナラヌ、必ズ渡サナケレバナラヌ、イヤ應ナシニ品物ヲ渡スト云フコトニナ
ルト、經濟上ノ發達ヲ阻碍スルコト決シテ少ナクナイト思ヒマスルカラ、此意味ハ政府ハ
空相場ト云フノハドウ云フモノデアルカ、直取引ガ賭博ニ陷ルト云フコトデアルガ、此意
味ニ付テ伺ヒタイノデアリマス、ソコデ直取引ニ付テハ大體ニ申シマスト、一體株式ノ定
期取引ガ三箇月ト云フコトハ世界ニ例ガナイ、日本ガ三箇月ニシタト云フコトモ意味ガ
アッテシタノデハナイ、唯舊幕府以來米穀取引ハ定期賣買ハ米穀ニ限ッタモノデアル、而
シテ其米穀ガ三箇月デアリマシタ故ニ、唯其儘ヲ移シテ之ヲ株式ニ用井マシタノデ、完ク
意味ノナイノデアル卽チ日本デハ何商品ニ拘ラズ、三箇月ノ取引ニシテゴザイマスガ、
蠶絲ノ如キ、棉絲ノ如キ、三箇月デハ短イ、完ク取引ノ效用ヲ爲シマセヌ、米ノ如キハ
二月、三月デ宜シイカ知レマセヌガ、蠶絲、棉絲ノ如キモノハ三箇月デハ短イ、而シテ株
ノ如キハ三箇月デモ長過ギル、二箇月デモ長過ギル、何ントナレバ片方ノ消費物ニ對シ
テ何故ニ蠶絲ガ短過ギルカト云ヘバ、絲屋ガ繭ヲ買フノハ出來秋一度デアル其製絲家
ハ繭ヲ買フト同時ニ絲ノ先賣ガ出來ルヤウニシナケレバナラヌ、故ニ半年以上ニ亙ラナケ
レバ其效ヲ爲スコトガ出來ナイ、唯今ノ所デハ繭ヲ買ッテ製絲家ガ絲ニシテ順次ニ絲ニナ
ルニ隨ッテ賣ッテ參リマスル故ニ絲價ノ上ルトキニハドンナ製絲家デモ儲カルガ、絲價ノ下
ルトキニハドンナ立派ナ製絲家デモ損ガ立ツノデアリマス、製絲事業ノ得失ハ工場ノ經營
如何ニアラズシテ、唯是レ絲價ノ高低ニアル、此故ニ製絲業者ノ自己ノ工場內ノ機械ヲ
改良スルトカ、工女ヲ監督スルトカ云フコトハ第二、第三ニシマシテ、唯何時賣ッタラ宣カ
ラウ、何時賣ッタラ宜カラウト云フノデ、生絲ノ賣時バカリニ頭ヲ惱マシテ居ルノデアル、相
場ノ高低ヲ計ルノハ商人ノ仕事デス、工業家ノ仕事デハナイ、又日本ノ紡績會社ニ於テ
モ同ク紡績會社ノ社長ガ最モ頭ヲ惱ス〓ハ何レニアルカト云ヘバ綿ノ仕入時ト絲ノ賣
時デアル是ガ又ヤハリ商賣人ノ仕事デ、決シテ工業家ノ仕事デハナイ、然ルニ工業家ト
云フモノハ綿ヲ買フト同時ニ絲ヲ賣ル、繭ヲ買フト同時ニ生絲ヲ賣ッテ、唯工場ノ經濟ヲ
維持シテ行クト云フノデアルガ、世ノ分業ガ進ンデ參リマスレバ工業家ヲシテ投機思ハ
クラサセル不利益ハ云フマデモナイ、其思ハクハ思ハクデ專門ノ者ニヤラセルガ宜イ、勝
手ニ損得ヲシタイヤツニサセルガ宜イ、此故ニ世界ノ株式ノ如キハ將來ノ騰貴ト下落トヲ
豫想シテ賣買シマスカラ、三箇月先キト云フヤウナ約束ハナイ、甚シキニ至ッテハ三箇月
ガアルタメニ、他ニ自由ガ利キマセヌカラ、有價證券ヲ賣放ツコトハ定期ニ賣ッテ居リマス、
此定期ニ賣ルノガ一番公平デアリマス、之ヲ賣繫グトスルト暴騰ニ際シ、追敷ハ出來ズ、
渡スコトハ出來ズ、追敷ニ困リ實ニ悲境ニ陷ルト云フコトハ世界何レノ國ニアリマセウ
カ、ソレ故ニ彼等ノ賣買ハ窮屈ガ宜イト云ヘハ別ナ話、簡易ニシテ確實ニスルト云フコト
デアリマスレバ、此定期取引位長過ギルト云フコトハ云フマデモナイ、先年木內重四郞
氏ガ商工局長ヲシテ居ルトキニ、歐羅巴ノ實例ガ斯樣デアルト云フノデ、取引ヲ一一箇月
ニシマシテ、是ハ失敗ニ終リマシタガ、其當時私ハ決シテ惡ルクハナイト思ッタ唯日本
ノ取引所ハ株式會社ガアッテ手數料ヲ取ル、重稅ガ掛ッテ居ルカラ、馬鹿ニ西洋ノ例
カラ見ルト高イ故ニ日本ノ二箇月ハ窮屈デ口錢ガ高ク付クカラ、商ガ出來ヌト云フ
ノデ、巳ムヲ得ズ潰レマシタガ、之ニ伴ウテ相當ニ簡易ニ商ノ出來ルヤウニシマスレバ、定
期取引ニ三箇月ハ決シテ要サヌノデアリマス、一番知イノハ亞米利加ハ其日限リ、卽チ
日本ノ直取引同樣デアリマス、ソレカラ英吉利ハ二週間、確カ佛蘭西モ二週間デアリ
マス、獨逸ハ其月限リデアル、幸ニモ日本ニハ定期ガ長クシテ不便デアル代リニ、漸ク此
直取引ナルモノガ發達シテ參リマシテ、私共ハ宜イ案排ダト思ッテ喜ビ切ッテ居ッタ、眞ノ
取引ト云フモノハ直取引ヲ追〓發達シテ往クト、イツノ間ニカ定期取引ノ弊害ヲ救フコ
トガ出來ヤウト思ッテ喜ンデ居リマシタ、元來日本ノ直取引ト云フモノハ銀貨ノ賣買カラ
起リマシタノデ、銀貨ノ定期賣買ヲ政府ガ禁ジマシタトコロデ直取引バカリ許シマシタノ
テ、卽チ預金勘定ニ依リマシテ直取引ガ定期取引ヨリモ便利ナリ、直取引ニ付テ深ク
御承知ノナイ方ニ辯明致シマスガ、直取引ノ賣買ハ投機賣買ガ多イコト而シテ其
賣買ガ其日ニ取引ヲ結了セヌデ、中ニハ數日、數箇月マデ每日毎日約束ヲ變ヘテ持ッ
テ居ルノガアリマス、故ニ是ハ定期同樣ト云フヤウナル農商務省ノ意見モアリマセウガ、是
ハ一向差支ナイト思フノデス、一考スレバ直グ分ル相手方ハ今日直取引ノ契約ヲ結ビ
マシテ、其受渡ヲ相對デモウ一日延バシテ呉レマイカ、日步ヲ幾ラ拂フ、ソレヂヤ宜カラウ、
尙一日延バス、是ガ何ンデ害ガアリマセウ、契約當事者ノ隨意ニ任シテ可ナリ、三年持ツ
モ可ナリ、三日持ツモ可ナリ、取引所ナルモノハ唯擔保ノ責任アル故ニ、其質問ハ或ハ
監督ヲ用井マスケレドモ、モウ明日カラハ、取引所ノ御世話ニナリマセヌ、相對同士デ宜
ウゴザイマス、萬一相手方ガ違約シテモ取引所ニ文句ヲ言ッテ來マセヌ、斯ウ言ッタラ當
人同士ノ相對ニシテ何ガ差支ガアル、何ガ差支ガアル、總テ是等ニ付テ政府ガ妨害支
障ヲシマスルノハ、卽チ商業ヲ妨ゲル所以デアラウト思フ是ガ何故ニ此直取引ノ此ノ如
ク道理ニ少シモ悖ラヌモノヲ禁ジタカ、是ガ第三デアリマス、ソレカラ第四-是ダケデス、
御退屈樣デモ是デ御シマヒデス、政府ハ明治四十四年八月十日、東京米穀取引所ノ
八月限九月限ノ營業ヲ停止致シマシタ取引所法ニ據リ政府ガ賣買ヲ停止スルハ
公益ヲ害スルカ、公安ヲ妨害スルカノ二者、其一ツデナケレバナリマセヌ、去年何ヲ以テ
公益ヲ害シ、公安ニ妨アリト認メタノデゴザイマセウカ、私ハ了解ニ苦ミマシタ、當時世
論ハ昨年米ガ二十圓臺ニ上ッタトキニ、是ハ相場師ノ仕事デアル決シテ自然ノ相場
デナイ、人爲相場デアル二三ノ商賈ガ暴利ヲ貪ランガダメニ、斯樣ナル暴相場ヲ出シ
テ經濟界ヲ攪亂スルト云フヤウナ議論ガアリマシタ、當時、私ハ今日ノ米價ノ騰貴ハ二
三商賈ノ罪デナイ、政府ガ兌換劵ヲ濫發スル結果デアルト云フコトヲ、東京市ノ二十餘
新聞社、通信社等ヘモ手紙ヲ出シテ集ッテ貰ヒマシタガ、幸ニ二三商人ノ業デアッテ、其
商人ヲ征伐シテ米ガ下ル道理ナラバ結構デアルケレドモ、ソレハ何等關係ノナキ事柄テア
ル、何トナレバ如何ニ商人ガ多額ヲ買占メルト言ッテ見タトコロガ、二十万石ヵ三十万
石デアル、日本全國一日ノ〓量ハ十三万餘石デアリマス、僅ニ二日分ノ食量ヲ或者
ガ買占メタガタメニ、全國ノ米ノ相場ガ二圓モ三圓モ騰貴スルヤウデハ吾〓不安デ溜ラ
ナイ、此米價ノ騰貴ハ全ク經濟上自然ノ勢デアル、其罪ハ政府ニ在リ、其病源ヲ顧ミ
ナイデ、枝葉ヲ論ジテ居ルコトハ國家ノタメニ歎カハシイ、、況ヤ其當時ハ東京鐵道ヲ市有
ニシマシテ外債ヲ募ッテ、更ニ兌換券ヲ濫發スル虞ガアリマシタカラ、其弊ヲ指摘致シマ
シタ、勿論其以後政府ガ變リマシテ、政府モ大ニ緊縮ノ方針ヲ採ラレ、今ヤ物價騰貴
ト云フコトハ一二商賈ノ罪デナイト云フコトハ、今日デハ世論ニ異議ハナイノデアリマス、
政府モヤハリ此世論ト同ク昨年ノ八九月ノ定期米ヲ停止シタノハ其意味デアル、然ラ
バ今日ノ米價ヲ奈何スルデス、一昨年ハ不作デアル、非常異作ノ年デアル其異作尻
ノ而モ葺合セ時ニ二十圓ノ米ガ公益ヲ害スルト言ッテ、賣買ヲ停止スルト云フナラバ今
日ノ二十圓ノ米ハ公益ヲ害サナイノデアラウカ、或ハ政府ハ今年ハ經濟市場ガ相違シテ
二十圓ハ去年ハ害ガアッタケレドモ、今年ハ二十圓ヲ超シテモ害ガナイト云フノデスカ、或
ハ去年二十圓デ賣買ヲ停止シタノハ政府ガ全ク經濟市場ヲ見誤リテ申譯ガナカッタト
云フナラバ、其事ヲ謝サナケレバナラヌ、(「ヒヤ〓〓」「マダ米ガアル去年ハ米ガナカッタ」ト
呼フ者アリ)然ラバー-然ラバデス、政府ハ故ナクシテ理由ナキコトニ數十百人ノ營業ヲ
停止シテ損害ヲ掛ケタノデアル、若シ亞米利加ヤ英吉利ニ於キマシテ農商務官吏ガ斯樣
ナルコトヲ致シマシタラ、國民ハヨモ其儘ニハ置カヌダラウト思ヒマス、(「ヒヤ〓〓」)先ヅ
要〓ハ是ダケデス、私ハ今日聲ガ潰レテ居テ長クヤラレマセヌカラ、皆樣モ御仕合セデス、
是デ御免ヲ蒙リマスガ、終ニ臨ンデ一言御斷リシテ置キマス、明治政府ハ失政ガアル、
男ラシク失政ハ失政ト能ウ言ハナイ今度ノ政府ハ是マデノ政府ヨリハ幾ラカ良ササウデ
ス、卽チ取引所ノコトニ付テ實例ヲ舉ゲマスルト、明治三十八年三月ニ株式ノ定期取
引ヲ二箇月ニシタトテモイケナイト言ッテ、又復舊シナケレバナラヌコトニナッタ、然ルニ直
ニ定期ヲ三月ニスルト變デアルカラ、態ト延取引ヲ定期取引トシナイデ、延取引ヲ三箇
月ニスルト云フヤウナル、所謂耳ヲ掩ウテ鈴ヲ盜ムヤウナ馬鹿々々シイコトヲシタノデアル
所ガ大藏省ハ延取引デハ稅ガ取レヌカラ、ヤハリ舊ノ定期取引ニシテ吳レト言ウテ、二
月モ三月モ掛ッテ復タ元ノ定期取引ニシタト同ジコトデ、斯樣ナ愚ナコト、兒童モ欺ク
コトノ出來ナイヤウナル明々白々ナル口實ヲ設ケナイデ、取引所政策ニ付テ失敗ヲ特ニ
責メルコトハ出來ナイ、政府ハ皆誤ッテ居ルノデアルカラ、露骨ニ失政ハ失政、是カラ斯ウ
スルモノデアルト云フコトヲ、男ラシク述ベラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=4
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005・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 質問第二、日本勸業銀行、農工銀行、北海道拓殖銀行ノ
年賦償還貸付金利子ニ關スル再質問高橋直治君
〔高橋直治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=5
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006・高橋直治
○高橋直治君 諸君、私ハ例ニ依リマシテ聽苦イ演說ヲ二十五分間御許ヲ願ヒマス(笑
聲起ル)諸君モ御承知ノ通リ先月三特殊銀行利子ノ計算ニ關シマシテ、先月ノ本日
此演壇ニ於テ質問ヲ致シマシテ政府委員ニ向ッテ大臣ノ御答辯デナク、、理財局長
勝田君ニ於テ私ノ計算書ヲ御調査ノ上御答辯ヲ御願致シマシタルニ、幸カ不幸カ大
藏大臣ノ筋違ヒノ御答辯ヲ受ケマシテ、其御答辯ニハ滿足ハ出來ズ、再質問ヲ致シマ
スル次第デゴザイマスル、此質問ノ辯明ニ先チマシテ諸君ノ御同情ヲ求メマスルノハ此
問題ガ十五箇年モ銀行ガ瞞著致シテ居リマシテ、債務者ガ個人々々ニ銀行ニ懸合ヒ
マスルト、銀行ハ大藏大臣ノ認可ヲ一點張リデ、刎付ケ、公ノ問題ニナリマシタノハ私ガ
十六年目ニ爭フノデゴザイマス、爲ニ第一ニハ此ノ如キ間違ヲ十五箇年間モ政府ガ其儘
認可シテ居ル譯ハナイト云フ御疑問ト、第二ニハマサカ大銀行ガ利子ノ計算ヲ胡麻化
ンテ取ッテ居ルマイト云フ御考ト、第三ニハ山本大藏大臣ハ日本一ノ實業家トシテ入閣
サレタル有名ナル理財家デ、銀行ノコトハ御手ノモノデ、不都合ナル御答辯ヲナサルヽヤウ
ナコトハアルマイト云フ信念ト、此三ツノ無形ノ信用ガアリマスルノニ-政府ト銀行デ
此無形ノ信用ガアリマスルノニ、質問者ノ私ハ諸君ノ御承知ノ通リ政治家トシテハ三
學年生デ信用ハ極ク薄弱デアリマスルガ故ニ、十五箇年間モ無事ニ行ヒツヽ來リタル問
題ニ對シテ、信用ナキ私ガ質問致シマシテモ、駄目ナリト云フヤウナコトニナリマシテハ、
一億五千万圓ノ債務者ノタメニモ斯ル詐僞的ノ計算ヲ改メルコトガ出來マセヌデハ國
家ノタメニハ私ハ殘念デアリマスガ故ニ、玆ニ此問題ニ對シ信用ヲ得ルガタメニ私ノ來歷
ヲ述ベマシテ諸君ノ御贊助ヲ求メマスル、諸君、私ハ無學デアリマシテ法律ノ解釋ヲ致
シマスルコトハ三文ノ價ナキ者デアリマスルガ、併ナガラ德義ヲ以テ貸借ノ契約ヲ爲シ德
義ヲ以テ契約書ノ解釋ヲスルコト、又損益ニ關スル計算ヲ爲スコトハ、十三歲ノトキヨリ
貸借ノ契約ヲ爲シ、契約ヲ解釋スルコトヤ損益ニ關スル計算ノ事柄ハ四十三箇年間苦
ンデ來マシタ者デアリマスルガ故ニ、實務ノ計算家トシテハ紙屑買ニ捨賣リニ致シマシテモ
博士ノ價ハアルモノトマデ御信用下サレマシテ私ガ誠心誠意ヲ以テ調査致シマシタル質
問書ハ確ナリトシテ御同情ヲ以テ御聽取アランコトヲ切望致シマスル者デゴザリマスル
(拍手起ル)私ノ第一ノ質問ニ對シ大藏大臣ノ御答辯ハ餘リ違ッテ、私ハ能ク分リ兼ネマ
スガ、要スルニ年七分八厘ノ利子デ、ソレガ元ヲ前ニ取ル、前ニ取リマス故ニ、七朱八厘
ノモノガ、或ハ八朱ニナルトカ、實際ニ於テハ年幾ラト云フ割合ニ餘計ナモノガ掛ッテ居
ルガ故ニ、ソレハ不當デアルト云フ質問ヲ致シマシタヤウニ御答辯ニナッテ居リマスルガ、私
ハ斯樣ナ意味デ以テ質問致シマシタモノデハゴザリマセヌ、又第二ノ質問ニ對シテ大藏大
臣ノ御答辯ニナリマシタ、要領ハ手形割引ノ前利子又ハ貸ス日ト返ス日ト同一ノ日ナ
ラバ二重利子ノオドリガ取レル、又ハ年利ノ割合ニ定メテモ、一箇月、二箇月ト云フ
ガ如ク月轉バシノ利ニ利ガ付テオドリガ出來ル、年七分八厘ノモノガ八分何厘ニナルハ不
當ニアラズト云フガ如キ筋違ヒノ御答辯ニナリマシタハ、大藏大臣ハ私ノ質問ニ對シテ少
シク了解ニ苦ムト申サレマシタガ、私ハ此ノ如キ大藏大臣ノ御答辯ニハ大ニ苦ムトコロデ
ゴザイマスル(「ヒヤノ」)大藏大臣ハ私ノ提出シタル計算書ト質問書ヲ御講査モナク
御分リガナイノデ、此ノ如キ筋違ヒノ御答辯ニナリマシタルモノト思ハレマスル私ハ自然
ニ起ル手形ノ前利子ヤ月轉バシノオドリ利子ノ如キ薄弱ナル差金ニ付テ公ノ質問ヲ致
シマセヌ、私ハ大藏大臣ガ認可シタル銀行ト債務者間ノ契約ニ基キ、利子ノ計算ガ違フ
コトヲ質問致シタノデゴザイマス、諸君ノ御手許ニ差上ゲマシタル參考書ノ一ニアリマス
銀行ト債務者間ノ契約ニ農工商ニハ成ルダケ分リ兼ネルヤウ書イテアリマスガ、結局第一
條ニ十万圓十五箇年ノ貸借ニ定メ、第二條ニ初年据置キ十四箇年年賦償還ヲ定メ、
第三條ニ利子ヲ年七分八厘ト定メ、第四條ニ据置キ期間中ノ利子ハ七月一月ノ二
囘ニ拂込ヲ定メ、第五條ニ年賦償還期間中元利金ヲ合算シテ每年七月一月ノ二囘
ニ償還ヲ定メ、此五箇條ニ基キ計算シマスルトキハ、初年ハ据置キニシテ元利金ニ關係
ナシ、二年目ヨリ十五年目マデ、每年二月ヨリ七月ニ至ル六箇月間ノ上半期ハ正當
ノ計算ヲ以テ、利子ヲ積ッテアリマスガ、每年八月ヨリ翌年ニ至ル六箇月間ノ下半期
ハ全部不當ノ計算ヲ以テ利子ラ積ッテアルノデゴザイマス、今其不當計算ノ利子ヲ年
別ニ致シマスルト其胡麻化シ方ガ餘程面白ク、巧ニ計算ガ出來テ居ルノデゴザイマス
(拍手スル者アリ)其不當計算ノ十五箇年ノ千九百五十圓零五錢ハ、此金額ハ大藏大
臣ノ認可ヲ濫用シテ、債務者トノ契約ニモ銀行ガ取ルベキ權利ナキ不可思議ナル利子ヲ
瞞著シテ取ッテ居ルト、斷言シテモ憚ラヌモノト信ジマスルモノデゴザイマス、再質問ノ一
ツハ三特殊銀行ニ大藏大臣ノ認可シタル債務者ト銀行ノ間ニ於ケル年賦償還、貸借
解約ニ基キテ假ニ十万圓餘ヲ初年据置十四箇年年賦償還トシテ利子ハ年七分八厘
ト定メ、元利金ヲ每年七月、一月ノ二囘ニ拂込ム約定ヲナスニ営リ、其元利金ヲ合算シ
テ年賊金ヲ造出ス方法ハ、一元金ガ年二囘ニ償還スル約定ナルガ故ニ、利子ノ計算ハ十五
箇年ニ對シテ初年ハ据置、一一年ヨリ每年七月一月ノ一一囘、卽チ十四箇年間ニ於テ二十
八囘ニ元金ヲ段々ニ引去リツヽ利子ノ計算ヲナシテ、元利金ヲ合算シテ年賦金トスルガ
相當ナルニ、三特殊銀行ハ每年一月ニ於テ一囘卽チ、十四箇年間ニ於テ十四囘ヨリ
元金ヲ引去リマセヌ故ニ、每年下半期ハ元金ニナキ金ニ對シテ利子ヲ取ッテ居ル割合ニ
ナリマスガ、政府ハ三特殊銀行ガ法律モ許サズ、債務者ニ對スル契約ニ於テモ取ルベキ
權利ナキ利子ヲ徵收シテモ政府ハ尙不當ト御認メナキカ、第二ノ再質問ハ第一ノ質
問テ速ベマシタル如ク、不當利子計算ニ對シテ債務者ニ於テ契約書ニ基キ其計算ガ
違フ故ニ、相當計算ニ改メラレタシト要求スレバ、銀行ガ利息ノ計算ハ違アルモ、年賦債
還ノ貸付ノ利子ハ大藏大臣ノ認可ヲ經タルモノナリト主張シテ、大藏大臣ノ認可ヲ經
タル名義ノ下ニ自己勝手ナル計算ヲナシ、元金ニナキ不當利子ヲ徵收シタル金高ハ、年
七分八厘ノ認可ヲ經タルモノニ對シテ、八分一厘三毛强ニ當ルマデ、不當利子ヲ徵收
シテモ政府ハ其認可權ニ差支ナキカト云フ、此二〓デゴザイマスガ、聞クトコロニ依リマス
レバ、山本大藏大臣ハ、元ト日本勸業銀行總裁デアリマシタルタメニ、殊更ニ有耶無
耶ニ筋違ヒノ答辯ヲナシテ、銀行ノ利益ニナルヤウニ援護セラルヽト云フ風聞ガアリマス
ガ、私ハ此ノ如キ風聞ハ信ジハ致シマセヌガ、併ナガラ此ノ如キ小問題ニ對シテ我實業
家ヲ代表サレマスル大藏大臣トシテ、斯ル忌ミシキ風聞ハ風聞ノミデモ私ハ國家ノタメニ
も、我實業家ノタメニモ惜ムバキコトヂヤト歎息スルモノデゴザイマス、(「ヒヤノ〓」)故ニ
私ハ大藏大臣ニ篤ト御願ヲ致シマスルノハ問題ハ小ナルモ、此ノ如キ不當ナ計算ノタ
メニ、債務者ガ不快ノ念ヲ感ジツヽ農工商ノ發達ニ大ナル關係ヲ持チマスルガ故ニ
免ニモ角ニモ卽答ハセズトモ、公平ニ御調査下サレマシテ、親切ナ御答辯ヲ御願致シマス
ル、而シテ此問題ハ元金ニナキ利子ヲ取ッテ居ルト云フコトハチヤント算盤ノ上ニ現ハ
レテ居リマシテ、大藏省モ銀行モ爭フコトハ出來ナイノデゴザイマス、私ハ法律ト契約書
ヲ改正セヌ限リハ、三特殊銀行利子ノ計算ハ、違法ナルコトヲ確信シテ居リマスルガ故
二、政府ガ見當違ヒノ有耶無耶ノ御答辯ヲナサレマシテモ、私ハ滿足セヌ、政府ハ何ノ
法律、何ノ契約ニ依ッテ元金ニナキ利子ヲ取ルモ違法ニアラズト云フカ、又ハ銀行ガ元金
ナキ利子ヲ取ルハ違法ナルヲ以テ計算法ヲ改メサセルト云フカ、筋違ヒノ御答辯デナ
〃、書面ヲ以テ親切ニ二ツニ一ツノ御答辯アランコトヲ希望致シマス終リニ臨ミマシテ
滿場ノ先輩諸君ニ御願ヲ致シマスルノハ過日此演壇ニ於テ計算書ノ御入用ノ諸君
ハ何時ニテモ差上ゲマスルト申上ゲマシタトコロ、意外ニモ官報ノ號外ノ速記ヲ見テ、
院外ノ一府十六縣下ノ債務者ヨリ續々ト計算書ノ請求ヲ受ケテ、計算書ノ品切レト
直ニ全國ノ債務者ガ憤慨シテ居ルノデアリマシテ、甚シキハ福島縣ノ債務者ノ如キハ全
國ノ債務者大會ヲ東京ニ於テ開カレタシトマデ申越シテアリマスガ故ニ、萬々ガ一政府ガ
銀行ヲ援護センガタメニ、大藏大臣ガ認可シタル契約書ヲモ顧ミズ不當計算ガ算盤
ノ上ニ現ハレテ居ルニモ拘ラズ、有耶無耶ノ御答辯ヲナサレマスレバ、私ハ建議案ヲ提出
シテ議員ノ權能ト生命ノアラン限リ、政府ト爭フノ覺悟ヲ以テ致シマスルガ故ニ、諸君
ニ於テモ農工商ノ發達ノタメニカノアラン限リ御援助アランコトヲ切望ニ堪ヘナイモノデ
ゴザイマス(拍手スル者アリ)マ二分間デ終リマス唯今私ノ說明ノ中ニ計算家トシテ
博士ノ價アルモノト御信用下サイト御願ヲ致シマシタガ、一人ノ御異存モナイヤウデゴザ
イマスカラ、私ハ博士ノ價アルモノト滿場ノ諸君ハ御認メニナッタモノトシテ喜勇ンデ降壇
ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=6
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007・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 次ハ質問ノ第三、小學〓科書ニ關スル質問提出者、絞部惣
兵衞君
〔綾部惣兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=7
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008・綾部惣兵衞
○綾部惣兵衞君 諸君、私ハ極メテ簡單ニ質問ヲ致シマス、私ノ質問ハ高等小學理
科書ニ付テ質問スルノデアリマス、既ニ質問理由書ニ於テ其大要ヲ述ベテ置キマシタカ
ラ餘リ細カイコトハ私ハ爰デハ述ベマセヌ、此小學〓科書ニ付キマシテハ餘程注意ヲ拂
ハナケレバナラヌト考ヘテ居リマス、小學〓科書ノ善イ惡ルイト云フコトハ、國民〓育ノ上
ニ於テ頗ル重大ナルトコロノ關係ガアルガ故ニ、當局ニ於テモ此〓科書ノ編纂ニ付テハ
常ニ御注意アルコトニ考ヘマス、又吾〓モ監視ヲ怠ラヌノデアリマスガ、前議會ニ於テ圖
ラズモ南北正閏論ト云フヤウナル大問題ヲ〓科書ニ付テ惹起シタ事實ガアル、當時未
曾有ナルトコロノ大問題トナッタ、正閨論、斯樣ナコトモアリマスシ、又近ク舊冬ノコトト
記憶シテ居リマス、彼ノ寶井其角ノ句ニ付テ文部省ニ於テ此句ニ付テモ物議ガ起ッタ
ト云フコトヲ私ハ承知シテ居リマス
〔此時副議長肥塚龍君議長席ヲ退キ議長大岡育造君復席ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=8
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009・綾部惣兵衞
○綾部惣兵衞君 彼ノ其角ノ句ニ「時鳥一一一ノ橋ノ夜明カナ」ト云フ其角ノ句ガア
ル、是ハ其角ガ吉原歸リノ句デ有ルトカ無イトカ云フヤウナコトデ、其當時物議ヲ招イダ
ト云フコトモ聞イテ居リマス、先キニハ南北正〓論ニ付テ紛擾ヲ起シ、又近クハ此其角
ノ句ニ付テ議論ガ起ッタト云フコトモ本員ハ聞イテ居リマス、偶〓本員ガ高等小學理科
書、第一學年〓師用ト云フノヲ見マスト此〓科書ニ付テモ私ハ大ニ疑ヲ起スノデア
ル、此〓科書ノ第十五課「腐敗防腐」ト題スル項目ノ中ニ特ニ「防腐劑」ト題シタル項
目ニ付テ、私ハ質問シタイト思フノデアリマス「飮食物ノ腐敗ヲ防ク爲ニ往々藥品ヲ混ズ
ルコトアリ、藥品ノ中ニハ極メテ少量ヲ混スルモヨク防腐ノ效ヲ奏スルモノアリ、「ザルチル」
酸「フオルマリン」等ハ其例ナリ、サレト是等ハ其量多キトキハ人體ニ害アリ」斯ウ云フコ
トガ第十五課ニアル斯ウ云フ記事ヲ揭ゲアリマス、此記事ノ中ニ防腐劑トシテ引用シタル
トコロノ「ザルチル」酸及「フオルマリン」ハ分量ノ多少ニ拘ラズ學理上有害デアルト云フコ
トハ旣ニ斷定セラレテ居ルトコロノ藥品デアル「フオルマリン」ハ劇藥デアルト云フコトモ既ニ
法律ヲ以テ定メラレテ居ル、而シテ學理上カラ「フオルマリン」「ザルチル」酸モ是ハ多少ニ限ラ
ズ用ユレバ害ガアルゾト云フコトハ既ニ決定セラレテ居ルノミナラズ、明治三十六年九月二
十八日ノ內務省ノ省令第十號ニ依シテ飮食物防腐劑取締規則ト云フノガ發布セラレ
テ居ル、此第一條ニハ斯樣ナコトガアル「本則ニ於テ防腐劑ト稱スルハ左ニ揭クル物質
其化合物及之ヲ含有スルモノヲ云フ」此中ニ諄々シイカラ略シマスガ「フオルマリン」「ザルチ
ル」酸ト云フモノハ飮食物防腐劑規則第一條ニ防腐劑ト云フコトヲ認メテアル、第一一條
ニハ「販賣ノ用ニ供スル飮食物ノ製造及貯藏ニ防腐劑ヲ使用スルコトヲ得ス」斯樣ニ規
定シテ居ル「防腐劑ヲ使用シタル飮食物ハ之ヲ販賣シ、又ハ販賣ノ目的ヲ以テ陳列シ
若ハ貯藏スルコトヲ得ス」、第三條ニハ「第一條ニ揭クルモノハ飮食物ノ防腐用ト稱シテ
販賣シ又其目的ヲ以テ製造シ若ハ貯藏スルコトヲ得ス」斯樣ニ規定シテアル、卽チ內務
省ノ飮食物防腐劑取締規則第一條ニ於テ「フオルマリン」及「ザルチル」酸ハ有害デアル
ガ故ニ、之ヲ用井テハ相成ラヌ、之ヲ用井タ物ヲ販賣シテハ相成ラヌ、又陳列シテハ相成
ラヌ、若シ是等ノ第一條、第二條、第三條ニ違背シタル場合ニ於テハ第六條ニ於テ
斯樣ニ規定シテアル「第一條第二條第三條ニ違背シタル者ハ二十五圓以下ノ罰金ニ
處ス」斯樣ニ嚴禁シテ居ル、併ナガラ此「ザルチル」酸ニ付キマシテハ、玆ニ一ノ除外例ガ
アルソレハ〓酒ヲ作ルトキニ酒ノ防腐劑トシテ一ノ除外例ハアル、酒ニ限ッテハ一石ニ
付テ十匁マデヲ用ユルコトヲ許シテアル併ナガラ此除外例ト云フモノハ明治四十三年
三月十六日ノ內務省令第三號ニ依ッテ向フ七箇年ト云フ年限付デモッテ之ヲ許可シテ
アル、併シ是モ特ニ酒ダケニ限ッテ用ユルコトガ出來ルノデ、是ハ酒ノ防腐スルニ於テ他ニ
適當ノ品ガナイト云フノデ已ムヲ得ズ「ザルチル」酸ニ限リ一石ニ付キ十匁ト云フ規定ヲ以
テ、之ヲ向フ七箇年許シテ居ル、卽チ明治四十九年マデ-是ハ四十九年度マデ猶豫
シテアルノデアル、此內容ハ實ハ所謂酒ヲ製造スル釀造業者ノ運動ガ多大ノ力アッテサウ
シテ已ムヲ得ズ、是ハ七箇年猶豫シタノデアル、法律ノ表デハ他ニ良キ防腐劑ガ見付カ
ラナイト云フノデアルガ、其實ハ當業者ノ運動ニ依ッテ是ハ七箇年ト云フコトニ猶豫ヲ與
ヘテアルノデアル、是ハ〓酒ニ限ッテノコトデアル併ナガラ「フオルマリン」ニ至ッテハ絕對ニ
是ハ飮食物ニ禁ジテアル全部禁ジテ居ル、既ニ法律ノ上ニハ劇藥トシテアルノデア
ルニ依ッテ、現ニ法律ハ禁ジテ居ルノデアル、私ハ是ニ於テ疑ガ起ルノデアル、文部省ニ
於テ〓ユルトコロノ卽チ〓師用トシテ文部省ガ出版シテ居ルトコロノ書物ニ於テハ「ザル
チル」酸ト「フオルマリン」ヲ用ュレバ防腐ノ效ガアル、斯樣ナコトヲ〓ヘテ居ルノデアル、併
ナガラ「サレト是等ハ其量多キトキハ人體ニ害アリ」ト拔ケテ居ル、併ナガラ之ヲ裏面ヨリ
讀返シテ見マスルト、少量ヲ用ユレバ人體ニハ害ガナイト、斯ウ云フコトニナッテ居ル語ヲ
換ヘテ申シマシタナラバ是ハ使ッテモ妨ゲナイ、斯ウ云フ意味ヲ以テ文部省ノ〓科書
ハ〓ヘテアルノデアル、同ジ日本政府ノ下ニ立ッテ居ルトコロノ內務省ト文部省ト行政ノ統
一ヲ缺イテ居ルト云フコトハ、是ハ抑〓疑問ニ堪ヘナイノデアル、文部省ノ方デハ小學〓科書
中之ヲ使ヘバ防腐ニナルト言ッテ〓ヘテ居ッテ、小學校デ〓ハッタコトヲ家ヘ歸ッテ之ヲ實行
スレバ警察署ニ告發セラレテ二十五圓ノ罰金ヲ取ラレル、斯ウ云フコトニナル、ツマリ
小學校ハ犯罪ヲ構成スルコトヲ〓ヘル場所ニナル、サウー云フコトニナル、小學校デ〓ハッタコ
トヲ家ヘ歸ッテ實行スレバ一一十五圓ノ罰金ニ科セラレル、一方ニ於テ小學校ニ〓ハッタ
コトハ罪ヲ作ルベキ基トナルト云フ、斯ウ云フ恐ガアル、故ニ私ハ此ノ如キコトハ甚ダ
〓科書ノ上ニ於テ還憾トスルトコロデアルト考ヘル、此事ハモウ餘リ議論ヲ要スル問題デ
ハナイ、此ノ如キコトハ如何ニモ政府ノタメニ私ハ惜ムト思フ、內務省ニ於テハ是ハ用井
テハ相成ラヌ、毒デアル、又學者ハ是ハ有害デアルト既ニ學理上認メテ居ル、學者が有
害デアルト認メテ居ルモノヲ文部省ノ〓科書ニ於テ用井テモ宜シイトシテアル、內務省ハ
是ハ用井テハ相成ラヌト取締ッテアルモノヲ文部省ニ於テハ少シハ用井テモ宜シイト〓
ヘルコトハ、是ハ甚ダ宜シクナイコトヽ思フ、行政ノ統一ヲ缺イテ居ルト私ハ考ヘマス、故ニ
政府ハ是ニ付テ如何ナル御考ガアル、恐クハ是ハ前內閣卽チ明治四十三年ニー
是ハ明治四十三年八月十五日ニ出來タ本デ、內務省ノ省令ハ明治三十六年ニ出
來テ居ルノデアル、內務省ノ省令ガ三十六年ニ出來テ居ッテ四十三年、最近ニ拵ヘタ
小學〓科書ニ左樣ナ間違ガアルト云フコトハ甚ダ遺憾ニ存ズルノデアル、併ナガラ此間
違ハ恐クハ桂內閣當時ノ文部大臣ノ當時ニ誤ッタノデアルコトハ私ハ事實ノ上ニ於テ認タ
メル、故ニ今長谷場文部大臣ニ對シテ私ハ之ヲ責ムルト云フノハ實ニ私ノ遺憾トスルト
コロデアリマスガ、其桂內閣ト情意投合ナサッテ御引受ニナッタ交部大臣デアラセラルヽ以
上ハ(笑聲起ル)長谷場文部大臣ニ此事ヲヤハリ質問シナケレバナラヌ、所デ今日此席
ニ自ラ御出馬ニ相成ッテ居ル位ノ立憲的ノ大臣デアル以上ハ、長谷場文部大臣ハ私ノ
質問ニ對シテ恐クハ直ニ御答辯ヲ與ヘラルヽデアラウト私ハ喜ンデ待ッテ居ル、且此質問ハ
質問書ヲ提出シマシテ以來、今日デ十二三日經過シテ居リマス、而シテ理由ヲ詳ト書イ
テ出シテゴザイマスカラ文部省ニ於テモ十分ニ御調ガ付テ居ルコトデアラウ、デ私ハ此席
ニ於テ文部大臣閣下ニ速ニ御答辯アッテ、而シテ是ヲ是トシ、非ヲ非トシテ御改善下サ
ルト云フコトナラバ、私ハ滿足スルノデアル私ハ敢テ辯ヲ好ムタメニ立ッタノデハナイノ
デアリマスルカラ私ノ精神ヲ御酌量アッテ、誠意御答辯アランコトヲ希望致シマス、尙此
場合ニ一言申シテ置クコトハ、凡ソ政府ノ人ハ何時モ負惜ミヲ云フ、御前ノ方デ言ハナ
クトモ私ノ方デ直サウト思ッタト云フヤウナコトヲ隨分言フガ、長谷場大臣ハ立憲的デア
ルカラ左樣ナコトハナカラウト思フ(笑聲起ル)私ハ此壇ヲ降リマシテ、御答辯ヲ待ッテ居リ
マス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=9
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010・大岡育造
○議長(大岡育造君) 長谷場文部大臣
〔文部大臣長谷場純孝君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=10
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011・長谷場純孝
○文部大臣(長谷場純孝君) 唯今綾部君ノ御質問ニ對シテ答辯ヲ致シマス、綾部君
ノ御質問ハ誠ニ御最モノ御質問ト考ヘマス、其事ニ付キマシテハ既ニ當局ニ於テモ讀本
ヲ修正致シテ居リマス、サウシテ此新讀本ヲ四月一日ヨリ實行スルコトニナッテ居リマス、
尙其修正ノコトハ舊本ヲ所持シテ居ルモノニ向ッテ遍ク之ヲ修正シタト云フコトヲ周知セ
シムル方法ヲ採リツヽアルノデゴザイマス、卽チ內容ヲ一言申シマスレバ丁度綾部君ノ御
述ベニナッタ通リニ舊讀本ニハ
防腐劑飮食物ノ腐敗ヲ防ク爲ニ往々藥品ヲ混スルコトアリ藥品ノ中ニハ極メテ少
量ヲ混スルモヨク防腐ノ效ヲ奏スルモノアリ、ザルチル酸フオルマリン等ハ其例ナリ、
サレト是等ハ其量多キトキハ人體ニ害アリ
ト丁度今御述ベニナッタ通リニナッテ居タノデゴザイマス、之ヲ斯ウ修正ヲ致シマシテ新讀
本ガ出來上リマシタカラ、四月一日ヨリ實行致シマス
防腐劑物ノ腐敗ハ藥品ヲ用ヒテ之ヲ防グコトヲ得、藥品ノ中ニハ極メテ少量ヲ混
スルモヨク其ノ效ヲ奏スルモノアリ、ザルチル酸フオルマリン等ハ其ノ例ナリ、サレト是
等ハ人體ニ害アルカ故ニ飮食物ノ防腐ニ用フヘカラス
絕對ニ斯ウ書イテアリマス(拍手起リ笑聲起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=11
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012・大岡育造
○議長(大岡育造君) 日程第一、第三、第五ハ關聯セル議案デアリマスルカラ、一
括シテ議題ト致スニ異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=12
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013・大岡育造
○議長(大岡育造君) 異議ガナケレバ一括シテ議題ニ供シマス、樺太酒類出港稅法
案工業用酒精酒類其ノ他酒精含有飲料戾稅法中改正法津案、明治三十四年法
律第十號中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、宮尾政府委員
第樺太酒類出港稅法案(政府提出)第一讀會
樺太酒類出港稅法案
樺太酒類出港稅法
第一條本法ニ於テ酒類ト稱スルハ燒酎、酒精及酒精含有飮料ヲ謂フ
前項ニ於テ燒酎ト稱スルハ酒造稅法ニ於ケル燒酎ヲ謂ヒ酒精及酒精含有
飮料ト稱スルハ酒精及酒精含有飮料稅法ニ於テ同法ヲ適用スルモノヲ謂フ
第二條樺太ニ於テ製造シタル酒類ヲ帝國內ノ他ノ地方ヘ移出スルトキハ
燒酎ニ付テハ酒造稅法、酒精又ハ酒精含有飲料ニ付テハ酒精及酒精含有
飮料稅法ノ造石稅ト同一ノ稅率ニ依リ出港稅ヲ課ス
第三條酒類ハ合令ヲ以テ指〓シタル港ニ由ルニ非サレハ移出スルコトヲ
得ス
第四條酒類ヲ移出セムトスル者出港稅ヲ納付シタルトキハ領收證及船積
免狀ヲ交付ス
第五條船長ハ船積免狀ニ照シ酒類ヲ船積シ出港前其ノ積取石數ヲ收稅官
吏ニ屆出ツヘシ
第六條收稅官吏又ハ警察官吏ハ必要ト認ムルトキハ何時ニテモ出港船舶
ニ臨檢スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ收稅官吏ハ其ノ身分ラ證明スヘキ證票ヲ携帶スヘシ
第七條出港稅ヲ納付セスシテ酒類ヲ船積シ又ハ移出シタル者ハ其ノ出港
稅ノ五倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ五十圓ヲ下ルコトヲ得ス
前項ノ酒類及其ノ容器ハ之ヲ沒收ス既ニ處分シタルトキハ其ノ價格ニ相
當スル金額ヲ追數ス
第八條第五條ノ屆出ヲ爲サス又ハ虚僞ノ屆出ヲ爲シタル者ハ百圓以下ノ
罰金ニ處ス
第九條收稅官吏又ハ警察官吏ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、之ヲ妨ケ若ハ忌避ル
又ハ當該官吏ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ
三十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十條酒類ノ製造、販賣又ハ移出ヲ業トスル者ノ代理人、戶主、家族、同居
者雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ第七條又ハ第九條ノ規定
ニ違反シタルトキハ酒類ノ製造、販賣又ハ移出ヲ業トスル者ヲ處罰ス
第十一條前條ノ場合ニ於テ酒類ノ製造、販賣又ハ移出ヲ業トスル者未成
年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ヲ處罰ス但シ業務ニ關シ成
年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十二條本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條
第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六
條ノ例ヲ用井ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三工業用酒精酒類其他酒精含有飮料戾稅法中改第一讀會
正法律案(政府提出)
工業用酒精酒類其ノ他酒精含有飮料戾稅法中改正法律案
工業用酒精酒類其ノ他酒精含有飮料戾稅法中左ノ通改正ス
第一條中「造石稅」ノ下ニ「又ハ出港稅」ヲ加フ
第二條中「沖繩縣酒類出港稅」ヲ「出港稅」ニ改ム
第五條第一項中「造石稅」ノ下ニ「又ハ出港稅」ヲ加フ
第五明治三十四年法律第十號中改正法律案(政府第一讀會
提出)
明治三十四年法律第十號中改正法律案
明治三十四年法律第十號中左ノ通改正ス
第一條中「造石稅」ノ下ニ「若ハ出港稅」ヲ加フ
第二條中「輸出港稅關」ヲ「政府」ニ、第一號ヲ左ノ如ク改ム
-納稅濟證明書
〔政府委員宮尾舜治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=13
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014・宮尾舜治
○政府委員(宮尾舜治君) 樺太酒類出港稅法案提出ノ理由ヲ申上ゲマス、樺太ニ
於キマシテハ近年追〓農民ノ移住モ相應ニ增シテ參リマシタ、從ッテ農產物モ追く增シ
テ參ルヤウナ次第デアリマス、此農產物ノ處理ノコトハ農民ノ經濟上ニ大關係アル問題
デゴザイマス、而シテ此農產物ノ中ニ於キマシテハ主ナル種類ハ麥類及馬鈴薯デアリマス
ルガ、、馬鈴薯ハ運搬及保存ニハ比較的困難ナル品物デゴザイマスル故ニ、是ガ保存方
法或ハ運搬ノ方法ト致シマシテ酒類ノ製造ヲ致シマスト云フコトハ比較的農民ノ經濟
ニハ良好ナル結果ヲ來ストコロノ一ツノ方法デアリマス、故ニ樺太ニ於テハ酒類ヲ製造シ
タイト云フ希望ノモノモアリマスルガ、今日ノ制度ニ於キマシテハ酒造稅法若クハ酒類酒
精及酒精含有飮料稅法ニ於キマシテ、帝國內ニ於テ施行地ト同キ稅率ヲ課セナイ間ハ
施行地カラハ-施行地內ヘ輸入ヲ禁ジテ居ルト云フ制度デアリマスルガ故ニ、樺太ニ
於テ製造致シマシテモ、內地其他ニ持ッテ行クコトハ出來マセヌ次第ニナッテ居リマスル、
唯今此酒類出港稅法ノ制定ニ依リマシテ同ジ稅率ヲ掛ケマシテ島外搬出ノ途ヲ開キタ
イト云フノデゴザイマスル、是ハ樺太ノ農民ノ經濟ニ關係アル次第デゴザイマスルカラ、御
同情ヲ以テ御協賛アランコトヲ願ヒマス、尙次ニ工業用酒精酒類、其ノ他酒精含有飮料
戾稅法中改正ノ理由ヲ說明申上ゲマス、是ハ工業用酒精酒類其他酒精含有飲料
戾稅法中ニ於キマシテ、或種ノ工業用ニ供シタルトコロノ酒精ハ戾稅スルコトニナッテ居
リマスルカラ、樺太ニ於テ製造致シマシタルトコロノ酒類モ、出港稅ヲ一旦納メマシタル
モノガ、工業用ニ供セラレマシタル場合ニハ同樣ノ恩惠ニ依ッテ戾稅ヲ致シタイ、斯ウ云
フ次第デゴザイマス、次ニ明治三十四年法律第十號中改正法律案ノ理由ハ造石稅ヲ
納メマシタルトコロノ酒精若クハ酒精含有飮料等ガ外國ニ輸出致シマシタルトキニハ戾
稅ヲスルコトニナッテ居リマスルカラ、是モ同樣樺太ニ於テ製造致シマスル酒類ニ致シマ
シーノ一旦出港稅ヲ納メタルモノガ再ビ輸出ニナリマシタ時分ニハ、同樣戾稅ノ思惠ニ
浴セシメタイト云フ趣意デ制定ヲ要スル理由デゴザイマス、是亦御同情ヲ以テ御協賛ア
ランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=14
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015・早川龍介
○早川龍介君 チヨット一口政府委員ニ質問致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=15
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016・大岡育造
○議長(大岡育造君) 早川龍介君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=16
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017・早川龍介
○早川龍介君 本年度ノ最近ニ至リマシテ「メチール」ノ輸入額ハドレ程ニナッテ居リマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=17
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018・宮尾舜治
○政府委員(宮尾舜治君) 「メチール」ノコトハ此改正案ニハ關係ガアリマセヌガ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=18
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019・早川龍介
○早川龍介君 工業用酒精ト云フモノニ戾稅ヲ御付ケニナルコトデアリマスカラ、是ハ
輸入ヲ防禦スルコトノタメニ斯ウ云フコトニナッタノデアラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=19
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020・宮尾舜治
○政府委員(宮尾舜治君) 是ハ樺太ノ農產物ヲ以テ酒類ヲ製造致シマシテ、隨シー
此農產物ヲ比較的有利ニ賣リタイ、斯ウ云フ考デ制定ヲ致シマシタ
〔「「メチール」トハ何デスカ」ト呼フ者アリ、笑聲起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=20
-
021・大岡育造
○議長(大岡育造君) 右三案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ニ移リマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=21
-
022・恒松隆慶
○恆松隆慶君 此三案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=22
-
023・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=23
-
024・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ右三案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託スル
コトニ可決致シマシタ-日程第七、衆議院議員選舉法中改正法律案ノ第一讀會
ヲ開キマス-原內務大臣
〔拍手起ル〕
第七衆議院議員選舉法中改正法律案(政府提出)第一讀會
衆議院議員選舉法中改正法律案
衆議院議員選舉法中左ノ通改正ス
第一章議員ノ定數及選舉ニ關スル區域
第一條第一項ヲ左ノ如ク改ム
衆議院議員ハ四百五十人以內トシ各選舉區ニ於テ之ヲ選舉ス
第五條削除
第六條郡市長ハ選舉長トナリ選擧ニ關スル事務ヲ擔任ス
一選舉區ニシテ數郡市ニ涉ルトキハ地方長官ハ關係郡市長ノ一人ヲシテ
選擧長タラシムヘシ
第十一條中左ノ如ク改ム
三六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者及舊刑法ノ重罪ノ刑
ニ處セラレタル者但シ復權ヲ得タル者ハ此ノ限ニ在ラス
四禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ其ノ執行ヲ終リ
又ハ其ノ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
第十八條中第一項及第二項ヲ削リ「市」ヲ「市町村」ニ、「三十一日」ヲ「二十
日」ニ、「生年月」ヲ「生年月日」ニ改ム
第二十條中「郡長、」ヲ削ル
第二十四條郡市長第二十一條又ハ第二十二條ノ申立ヲ受ケタルトキハ其
ノ理由及證憑ヲ審査シ申立ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ之ヲ決定スヘ
シ其ノ申立ヲ正當ナリト決定シタルトキハ之ヲ申立人及關係人ニ、其ノ
申立ヲ正當ナラスト決定シタルトキハ之ヲ申立人ニ通知スヘシ
前項ニ依リ申立ヲ正當ナリト決定シタルトキハ郡長ハ直ニ之ヲ本人住所
地ノ町村長ニ通知シテ選舉人名簿ヲ修正セシメ市長ハ直ニ之ヲ修正スヘ
シ
市町村長選舉人名簿ヲ修正シタルトキハ直ニ其ノ要領ヲ告示スヘシ
第二十六條削除
第二十七條中但書ヲ左ノ如ク改メ第三項ヲ削ル但シ確定判決ニ依リ選舉人
名簿ノ修正ヲ要スルトキハ第二十四條第二項及第三項ノ例ニ依ル
第四十二條投票管理者ハ一名又ハ數名ノ投票立會人ト共ニ投票ノ翌日迄
ニ投票函、投票錄及選舉人名簿ヲ選舉長ニ送致スヘシ
第四十四條中「選舉長」ヲ「地方長官」ニ改ム
第六章選舉會
第五十一條選擧會ハ選舉長ノ屬スル郡市役所又ハ地方長官ノ許可ヲ得テ
選舉長ノ指定シタル場所ニ之ヲ開ク
第五十二條選擧長ハ選舉會ノ場所及日時ヲ告示スヘシ
第五十三條選擧長ハ投票立會人中ヨリ三名以上七名以下ノ選擧立會人ヲ
選任シ選舉會ニ立會ハシムヘシ但シ一選舉區タル市ニ於テハ投票立會人
ヲ以テ選舉立會人トス
選舉立會人ハ正當ノ事故ナクシテ其ノ職ヲ辭スルコトヲ得ス
第五十四條選舉長ハ一選舉區タル市ニ於テハ投票ノ翌日其ノ他ノ郡市ニ
於テハ投票函ノ總テ到達シタル翌日選擧立會人立會ノ上投票函ヲ開キ投
票ノ總數ト投票人ノ總數トヲ計算ス, ~
第五十五條、第五十七條及第五十九條中「開票管理者」ヲ「選擧長」ニ、「開票
立會人」ヲ「選擧立會人」ニ改ム
第五十六條選舉人ハ其ノ選舉會ノ參觀ヲ求ムルコトヲ得
第六十條選舉長ハ選舉錄ヲ作リ選舉會ニ關スル〓末ヲ記載シ選舉立會
人ト共ニ署名シ投票錄ト併セテ議員ノ任期間之ヲ保存スヘシ
第六十一條削除
第六十二條中「開票」ヲ「選舉會」ニ改ム
第六十三條中「開票所」ヲ「選舉會場」ニ改ム
第七章削除
第六十四條削除
第六十五條削除
第六十六條削除
第六十七條削除
第六十八條削除
第六十九條削除
第七十條中第二項乃至第五項ヲ削リ左ノ二項ヲ加フ
當選人ヲ定ムルニ當リ投票數同シキトキハ年齡ニ依リ年齡同シキトキハ
抽籤シテ其ノ順位ヲ定ム
判決ニ依リ當選無效トナリタルトキハ選舉長ハ前二項ノ例ニ依リ更ニ當
選人ヲ定ムヘシ
第七十一條當選人定マリタルトキハ選舉長ハ直ニ其ノ氏名、得票數及選
舉人名簿ニ記載セラレタル者ノ總數其ノ他選舉ノ結果ヲ地方長官ニ報告
スヘシ
前項ノ報告ヲ受ケタルトキハ地方長官ハ直ニ當選人ニ當選ノ旨ヲ告知ス
ヘ
當選人ナキトキハ選舉長ハ直ニ其ノ旨ヲ地方長官ニ報告スヘシ
第七十二條中「選擧長」ヲ「地方長官」ニ改ム
第七十四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
當選人其ノ當選ヲ辭シ若ハ死亡シ又ハ當選人ナキトキハ地方長官ハ選舉
ノ期日ヲ定メ豫メ之ヲ告示シ更ニ選舉ヲ行ハシムヘシ但シ第七十條第二
項ニ依リ當選シタル者其ノ當選ヲ辭シ又ハ死亡シタルトキハ選擧長ハ次
ノ順位者ヲ當選人ト定ムヘシ
同條第三項ヲ左ノ如ク改ム
選舉ニ關スル罰則ニ依リ處罰セラレタル結果當選無效トナリタル者アル
トキハ地方長官ハ第一項ノ例ニ依リ更ニ選舉ヲ行ハシムヘシ
第七十八條中第一項ヲ削リ第二項ヲ左ノ如ク改ム
議員ニ闕員ヲ生シタルトキハ地方長官ハ內務大臣ノ命ニ依リ其ノ命ヲ受
ケタル日ヨリ二十日以內ニ補闕選舉ヲ行フヘシ
第八十六條中「十圓以上」ヲ削ル
第八十七條中「一月以上一年以下ノ輕禁錮ニ處シ又ハ十圓以上」ヲ「一年以
下ノ禁錮又ハ」ニ改メ「、開票所」ヲ削ル
第八十八條中「二月以上二年以下ノ輕禁錮ニ處シ五圓以上百圓以下ノ罰金
ヲ附加ス」ヲ「二年以下ノ禁錮又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス」ニ改メ第一號
中選舉人ノ下ニ「、議員候補者、選舉運動者」ヲ加フ
第八十九條選舉事務ニ關係アル官吏、吏員、立會人及監視者選舉人ノ投票
シタル被選舉人ノ氏名ヲ表示シ又ハ其ノ選舉區ノ投票結了前票數ヲ表示
シタル者ハ二年以下ノ禁鋼ニ處ス其ノ表示シタル事實虛僞ナルトキ亦同
シ
第九十條中「開票所」ヲ「選舉會場」ニ、「一月以上一年以下ノ輕禁錮ニ處シ又
ハ十圓以上」ヲ「一年以下ノ禁錮又ハ」ニ、「ノ罰亦前項ニ同シ」ヲ「ハ三年以
下ノ禁錮ニ處ス」ニ改ム
第九十一條中「開票管理者、」及「、開票所」ヲ削リ「四月以上四年以下ノ輕禁
錮ニ處ス」ヲ「五年以下ノ禁錮ニ處ス」ニ改メ第二項ヲ左ノ如ク改ム
多衆聚合シテ前項ノ罪ヲ犯シタル者ハ刑法第百六條ノ例ニ依り處斷ス
第九十二條中「開票所、」ヲ削リ「ヲ嘯聚シタル者ハ六月以上三年以下ノ輕禁
錮ニ處ス其ノ情ヲ知テ嘯聚ニ應シ勢ヲ助ケタル者ハ十五日以上三月以下ノ
輕禁錮ニ處ス」ヲ「聚合シタル者ハ首魁ハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處シ其
ノ他ノ者ハ五十圖以下ノ罰金ニ處ス」ニ改メ第一一項ヲ削ル
第九十三條中「選舉人、議員候補者及選擧運動者ニシテ」ヲ削リ「二年以下ノ
輕禁錮又ハ五圓以上」ヲ「二年以下ノ禁錮又ハ」ニ改ム
第九十四條中「、開票所」ヲ削リ「前條ノ例ニ依リ一等ヲ加フ」ヲ「三年以下ノ
禁錮又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス」ニ改ム
第九十五條中「十五日以上六月以下ノ輕禁錮ニ處シ又ハ五圓以上」ヲ「六月
以下ノ禁錮又ハ」ニ改ム
第九十七條中「六月以下ノ輕禁錮ニ處シ五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス」ヲ「一
年以下ノ禁錮又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス」ニ改ム
第九十八條中「一月以上一一年以下ノ輕禁錮ニ處シ十圓以上百圓以下ノ罰金
ヲ附加ス」ヲ「一年以下ノ禁錮又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス」ニ改ム
第九十九條中「五圓以上」ヲ削ル
第百條中「第九十二條第二項」ヲ削ル
第百二條選擧ニ關スル犯罪ニ依リ刑ニ處セラレタル者ハ判決ヲ以テ罰金
ニ付テハ判決確定ノ日ヨリ其ノ他ノ刑ニ付テハ其ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ
執行ヲ受クルコトナキニ至リタル日ヨリ二年以上八年以下選舉人及被選
舉人タルコトヲ禁ス
第百六條第一項中「掌ル」ヲ「掌リ町村役場トアルハ戶長役場又ハ之ニ準ス
ヘキモノニ該當ス」ニ改メ第二項及第三項ヲ左ノ如ク改ム
郡長ヲ置カサル地ニ於テハ本法ニ規定シタル郡長ノ職務ハ北海道廳支廳
長、島司又ハ之ニ準スヘキ者之ヲ掌リ郡役所トアルハ北海道廳支廳、島廳
又ハ之ニ準スヘキモノニ該當ス
東京市、大阪市ノ區及北海道、沖繩縣ノ區ニ付テハ本法中市トアルハ區、
市長トアルハ區長、市役所トアルハ區役所ニ該當ス
第百七條中「開票管理者、」ヲ削ル
第百十條中「及」ヲ削り「沖繩縣」ノ下「其ノ他交通不便ノ地」ヲ加フ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ次ノ總選舉前ノ議員補關ニ付テハ仍從
前ノ例ニ依ル
本法ハ北海道廳根室支廳管內千島ニ屬スル諸郡及東京府小笠原島ニハ當分
ノ內之ヲ施行セス
沖繩縣ニ於テ初メテ議員ヲ選舉スルニ付必要ナル選舉人名簿ノ調製ニ限リ
第十八條乃至第二十條第二十四條第二十七條ノ期日及期間ハ勅令ヲ以テ別
ニ之ヲ定ムルコトヲ得但シ其ノ選舉人名簿ハ次ノ選舉人名簿確定ノ日迄其
ノ效力ヲ有ス
(別表)
東京府
議員總數
第一區人
坂布谷町
第
橋
七六五四三二本下神淺深本日京芝赤麻四麴本橋
第第第 第第第區區區區區區區區區一二一二三一二一一
〓谷田草川所上海市建设工业有限公司
人 人人 人人人人人人 八八人 人
十九八
第
第十一區一小石川二
牛込
第十二區豐多
第十三區北一一
第十四區南一
荏南葛
第十五區原
伊豆
第十六區南多摩郡人人人 人
第十七區西多摩郡
第十八區北多摩郡
京都府
議員總數人
第區京三人
第二區人
宇紀乙葛愛樂喜世治伊訓野岩都八
第三區相綴久郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市人
第四區北南桑桑田田八
船
第五區加何天佐鹿田井
人
中與謝
第六區野郡郡郡郡人
熊竹野
大阪府
十七人
一二十一錢課程二
二二
第第第第第二人人人人人
五四三區區區北東西堺南北東西郡郡郡市區區區區一三
第六區成成二人
河內
第七區豐能島赫都那:一
第八中河
河內郡人人人人 人
第第十九區區區區泉泉南北郡
第十一南郡
神奈川縣
議員總數九人
第一區橫濱市三人
第二區橫賀市人
久
第三區都橘金術家福聚餐 15人
第四區一甲座倉浦筑樹人
第五區中津愛高鎌三
久井
第六區培根 1000円
第七區足一人
足
兵庫縣
議員總數六人
第一區三人人
第二區
第三區多有川武姬神上紀馬邊庫路戶十郡郡郡郡郡市市二人
第四區氷一八
第五區
第六區
第七區
第八區
第九區
第十區一
第十一區
第十二區
長崎縣
議員總數
第一區
第二區
第三區
第四區
第五區
第六區
第七區
新潟數 縣
第一國風
第二
第三區
第四區
第五區
第六區
第七區
一人
一人
一人
一人
津朝養出美城佐赤失揖神飾加多加印加美明原名來父石方崎用穗栗保崎磨西可東南古囊石郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡
二人
人
三人
崎九人
佐長一一
石家電車 時間 2000杵保
二人人 人人人
南北東西
南北一
小説明信は
岐一人
對壹馬一人
十五人
長新岡潟市
市一一人人人
西蒲原郡
利用者印
東蒲原郡二人
岩船郡
中蒲一人
一節原 原 因 素
古志郡二人
〓三島郡二人
羽郡
第八區
第九區
第十區
第十一區
埼玉縣
議員總數
第一區
第二區
第三區-
第四區
第五區
第六區
群馬縣
議員總數
第一區
第二區
第三區
第四區
第五區
第六區
第七區
千葉縣
議員總數
第一區
第第二
三區區區
第四
第五區
第六區
南一人
最好衹的人生育學的
中人
高東田
中頸頸人
城城市
佐西人
十人
北足立郡二人人
入間
里企二人
北南大比
郡郡郡郡郡郡郡郡郡人
埼葛埼玉飾玉
一人
秩兒北父玉一人
人
一一人人人
一
根妻馬 野波樂田田多崎橋九二人
碓北利吾群多佐邑山新勢高前郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市市一人
二人
甘樂一人
氷
人
千旛原葉十一
市
一人八人 人
葛飾
郡郡郡郡郡郡郡郡郡
長山匝海香東印人
生武瑳上取一
二人
詩社 比隅一
何€€安君夷房津郡郡郡人人人
所在此
茨城縣
議員總數戶十人
第一區一人
第二區茨茨城城人
第三區一人
第四區一人
筑結眞新行鹿多久那西東水郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市
第五區一
第六區敷波城壁治方島賀慈珂一
第七區人 人人 人
第八區一
第九區稻一人
北相馬郡
第十區猿島郡一人
栃木縣
議員總數八人
第一區宇都宮市一人
第二區河內郡人
芳賀郡
第三區下都都賀賀人人
第四區上一一
第五區安郡郡郡郡郡郡一人
那鹽足須谷利蘇
第六區二人
奈良縣
議員總數人
第區
第二區陀城駒邊上良五
北宇磯生山添奈
第三區郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市人
葛葛城
第四區城人
宇高南
第五區-野智市一人
舌
三重縣
議員總數
第一區
第二區
第三區
第四區
第五區
第六區~
第七區
第八區
第九區
第十區
愛知縣
議員總數
第第一區區
二
第三區
第四區
第五區
第六區
第七區
第八區
第九區
第十區
第十一區
第十二區
靜岡縣
十人
津市一一
四日市市人人人
宇一
一人
一人
多飯桑員三河鈴一安
東京都會有限公司郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市一人
一人
度人
志
北牟牟婁人
南
阿山人
名賀郡
十五人
名古屋市
豐橋市
愛知郡一一一三人 八人人
東春春井郡
井
一一人
一人
田豆海多西東島栗羽日日一人
人人
八渥寶南北東西額幡碧知海海中葉丹西郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡
二人
設設加加樂樂茂茂
人
名美飯一人
議員總數十二人
第一區區一一
第二人人人
第三
區區
第四一人
第五區一一
第六區濱磐周小榛志駿庵富安濱靜
人 人人
第七區方茂佐名田智笠原太東原士倍松岡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市市二
第八區一人
第九區引二人
第十區田賀人
山梨縣
議員總數五人
第一區甲府人
第二區二人
中革命 那那郡 亦武武都市
第三區人
第四區人
滋賀縣
議員總數人
第一區一人
第二區郡郡郡市一人
第三區犬愛神蒲栗野甲高滋大田上知崎生太洲賀島賀津六人
第四區~
郡郡郡郡郡郡郡郡
第五區
阪
第六區人
伊香郡
岐阜縣
議員總數人
第一區一人
第二區一人
第三區人
第四區土可加郡武本揖安不養海羽山稻岐人
第五區城田野那岐兒茂上儀巢斐八破老津島縣葉阜九郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市人
第六區人
第七區-一人
第八區人
第九區吉益大惠人
長野縣
議數十二人
第一一、一貫、通 感本野市一
第二上松長人人人
第三區
〒高高水水井井內內
第四區上一人
一更下
第五區縣科級一人
第六區郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市人
第七區
北南北南西東小埴
第八區佐佐安安筑筑久久曇曇摩摩人
第九區人
第十區諏訪人
上伊那郡
第十一區下伊那郡人
宮城縣
議員總數七人
第一區仙臺市人
第二區
第三區
第四區
第五區
第六區
第七區
福島縣
議員總數
第一區
第二區
第三區
第四區
第五區
第六區
第七區
第八區
第九區
第十區
巖手縣
議員總數
第一區
第二區
第三區
(2003)一人
名
一人
鹿生吉米原造田田美川理具田田取城郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡人
牡桃本登栗玉遠志加黑互伊刈柴
-一
人
一人
一一人人
二人
瀨川村積達達夫松島十
一人
南西東岩石田安安伊信若福
一人
郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市市一人
會會白白津津河川
一人
相雙石耶河大北人
馬葉城麻沼沼人
一人
人
八
稗紫巖盛戶戶貫波手岡七人
郡郡郡郡郡市
九二一人
第四區〔下閉伊郡一人
上閉伊郡
第五區和賀一人
〓刺澤郡郡郡郡
第六區江人
西氣仙
第七區-一人
其他線
青森縣
議員總數七人
第一區弘青森市一一八人
第二區前
東郡郡郡市
第三區南洋裝小児童人
ー上中北
第四區下郡郡郡一人
第五區三戶北人
非洲線一人
第六區三年輕郡
山形縣
議員總數人
第一區澤形八ー人人
第二區
西東南米山蛋糕特價$15,000
第三區二人
第四區西南東賜郡八
東川
第五區川二人
最上海郡
第六區[北村山郡一人
秋田縣
議員總數八人
第一區區秋田市
第二南秋田郡一一一人人人
第三區山本
第四區一〓郡野縣郡一人
鹿角
第五區河邊一人
臼利郡
第第六區區一
七雄平仙勝鹿北郡郡郡一人人人
領 五一
福井縣
議員總數人
第一區一人
第二區人
第三區人
大遠三敦南今丹阪吉大足福飯敷方賀條立生井田野羽井五郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市
第四區人
第五區一人
石川縣
議員總數人
第區一一人人
第二區
第三區一人
洲至島咋北沼美川澤六
珠鳳 鹿羽河江能石金郡郡郡郡郡郡郡郡市
第四區二人
第五區一人
富山縣
議員總數人
第一區岡山七一一
第二區上高富人 八人
第三區一川一
1中新新新郡郡郡郡郡郡市市
第四區一人
第五區射婦下水負波木貝川川一人
第六區東京都町田三二人
氷見
鳥取縣
議員總數四人
第區鳥取市一人
第二區-
第三區
第四區
島根縣
議員總數
第一區
第二區
第三區
第四區
第五區
第六區
岡山縣
議員總數
第一區
第二區
第三區
第四區
第五區
第六區
第七區
第八區
一人
日西東氣八岩野伯伯高頭美郡郡郡郡郡郡一人
一人
人
一人
人
二人
足濃賀智摩濃川石原多義束江七
隱鹿美那邑邇安簽飯大仁能八松岐郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市
一人
人
一人
人
一人
上兒御岡二人
人
一人
米田田田庭哲房上月田口備窪久氣磐道島津山十郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市
二人
久英勝苦眞阿上川後小淺吉都邑和赤
人
人
人
廣島縣
議員總數十三人
一島市一
二一
第第第第第區區區區區八八人八人
五四三
一
第六區二
第七區人人 人
沼深蘆甲神比雙世御豐賀高山安佐安尾吳廣一一
第八區郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市市
隈安品奴石婆三羅調田茂田縣佐伯藝道
第九區一人
第十區人
第十一區人
第十二區一人
山口縣
議員總數人
第一區一人
第二區二人
第三區一人
第四區玖大熊都豐大阿厚美佐吉下珂島毛濃浦津武狹禰波敷關九郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市一人
第五區一人
第六區二人
第七區一人
和歌山縣
議員總數六人
第區和歌山一人
第二區海草二人
郡郡郡郡郡市
第三區日伊那有高都賀田一人
第四區一人
第五區「西牟婁郡一人
東牟婁郡
德島縣
議員總數人
第區一人
第二區人
第三區三美板麻阿海那勝名名德好馬野植波部賀浦西東島六郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市人
第四區二人
第五區一人
香川縣
議員總數人
第一區一一
每一條人 人人
第三區歌田川豆川龜松七一
三仲綾木大小香丸高郡郡郡郡郡郡市市
第區一
五 四
第人人人 人
第六區區多度
第七區豐郡
愛媛縣
議員總數人
第一區二人
第二區二人
摩居桑智豫泉山九
第三區郡郡郡郡郡郡郡市二人
東喜上宇新周越伊溫松
第四區一人
第五區一浮一人
ー多
第六區一人
西11,000
第七區(南宇一人
高知縣
議員總數六人
第一區高知市一人
第二區二人
第三區幡高安香長吾土多岡藝美岡川佐郡郡郡郡郡郡郡一人
第四區人人
第五區一
福岡縣
議員總數十六人
第一區岡市
第二區留米一一一一人人人人
第第三區
四區
第五區一人
第六區一
第七區一人
田企三山八三浮三朝嘉鞍遠宗糟筑糸早小門久福
第八區郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市市市二人
上都川救池門女瀦羽井倉穗手賀像屋紫島良倉司
第九區一一人
第十區一人
第十一區=人
第十二區一人
第十三區-一人
第十四區築京人
大分縣
議員總數人
第一區大分分七人
大郡都郡南
第二區北海海
第三區玖直大南
田珠入野
第四區日一人
第五區一人
東國東郡
下
第六區宇見佐毛郡郡郡二人
速
佐賀縣
議員總數六人
第一區佐賀市人人
賀郡一一
第二區佐
第三區神埼郡一人
(三発売
小城郡
第四區杵津島郡二人
藤郡
わたる 。
第五區大阪府社人
熊本縣
議員總數十人
第一區區一一
第二八八人
第三區阿菊鹿玉飽熊蘇池木名 託本一
第四區一人
郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡市
第五區益益城城二人
天球葦八宇下上
第六區草磨北代土二人
第七區一人
宮崎縣
議員總數人
宮湯崎四
第一區兒二人
第二區東西北新东路街道人
言葉 真實 有 限 公 司 法 書
第三區一人
鹿兒島縣
議員總數十人
第一區鹿兒島市一人
第二區〔鹿兒島郡一人
熊邊毛
第三區川人
第四區
第五區人 八人
唹屬良佐水摩置宿島郡郡郡郡郡郡郡郡郡郡
第六區大囎肝始伊出薩日揖
第七區人
第八區
人 人
第九區
沖繩縣
議員總數人
第一區那尻覇四人
郡區
一島
第二區宮古郡郡人
八重山
第三區首里區人
中郡
第四區國頭頭郡人
北海道
議員總數十二人
第一札幌區
第小樽區一一
二區區區八人人八
第三函館區
第四區札幌支廳管內
第五區〔空知支廳管內二人
增毛支廳管內
上川支廳管內
第六區宗谷支廳管內二人
網走支廳管內
根室支廳管內
第七區釧路支廳管內人
河西支廳管內
第八區一浦河支廳管內一
[室蘭支廳管內
第九區函館支廳管內一
檜山支廳管內
第十區後志支廳管內一人
本表ハ少クトモ十年間ハ之ヲ更正セス
〔內務大臣原敬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=24
-
025・原敬
○內務大臣(原敬君) 諸君、唯今日程ニ上リマシタルトコロノ衆議院議員選舉法
改正案ノ大體ノ說明ヲ致シマス、此衆議院議員選舉法ハ御承知ノ通リ實施後旣ニ
十年ニ相成リマス、此間ニ於テ屢〓當院ヨリモ市ノ獨立又ハ人口ノ標準ニ依ッテ、議員ヲ
增加スルトコロノ法律案ノ提出ニナッタコトモアリマスルケレドモ、總テ此別表ノ改正ハ人
口ノ異動ガアルトモ、十年間ハ据置ト云フコトニ法律上規定サレテアリマスルカラ、總テ
ノ改正案ハ此十年ノ期限ヲ待ッタ次第デアリマス、故ニ政府ニ於キマシテハ篤ト實際ヲ
調査致シマシテ、市ノ獨立及人口ノ標準ニ依ッテ議員ヲ增加スルノ改正ヲ第一ニ致スノ
デアリマス、此市ノ獨立ハ今日マデ卽チ現行法ノ規定ハ三万以上ノ市ヲ獨立ノ選舉區
ト致シテ居リマスルカラ、此度モ此三万以上ノ人口ヲ標準ト致シマシテ、市ノ獨立選舉
區ヲ加ヘタ譯デアリマス、又郡部ニ於ケル議員選出ノ數モ是亦現行法ニ於テハ十一一万人
ニ付テ一人ノ議員ヲ出スノ方針ト相成ッテ居リマスルカラ、是亦此標準ヲ動カサズシテ十
三万人ニ付テ一人ノ議員ヲ選出スルノ標準ニ依ッテ、此度ノ改正案ヲ調製致シタ次第
デアリマス、ソレカラ次ニ選舉區ノ配付ノ仕方デアリマス、御承知ノ如ク今日ニ於テ市ハ
獨立選舉區デ小選舉區ト相成ッテ居リマスルケレドモ、郡部ニ於ケル部分ハ所謂大選
舉區ト申シ、一府縣ヲ通ジテ議員ヲ選出スルノ制度ニ相成ッテ居リマス、此所謂大選
舉區ナルモノヽ十年間經過致シマシタ實績ヲ調査致シマスルト、最初ノ所謂大選舉區
ニ改、メマシタ當時ニ豫期致シマシタ結果ハ今日ニ得ラレマセヌ、全ク豫期ニ反シテ居ルト
申ス次第デアリマス當時大選舉區ニ致シマシタ理由ヲ見マスルニ、第一ハ大選舉區ニ
致ストキハ人才ヲ選出スルコトガ出來ルト云フコトモ一ノ理想デアリマシタ、併シ實績ニ
於テ大選舉區ニナッタ以來、小選舉區ニ比シテ著シク人才ヲ得タリトモ申兼ネル次第デア
リマス(笑聲起ル)無論人才ハ多ク出テ居リマスルガ、是等ノ人ミハ小選舉區ノ時代ニ
モ選出セラレテ居ッタ人デアル、小選舉區ニ居ルトキニハ常ニ落選ヲ致シテ、大選舉區デ
始メテ當選致シタト云フヤウナ次第デハアリマセヌ、是モ豫期シタ結果ヲ得ラレナカッタノデ
ス、次ニ大選舉區ニ致シタ理由ハ一府縣ヲ通ジテ多數ヲ得テ居ル黨派デアッテモ、必
シモ多數ノ議員ヲ出スコトハ出來ナイノデアル、何故トナレバ選舉區ガ小分セラレテ居ル
初級ミ一府縣ヲ通ジタトコロノ大選舉區ニ致ストキニハ、多數ヲ得テ居ル政黨ガ必ズ
多數ノ議員ヲ出スト云フ理想デアリマス、固ヨリ多數ヲ得テ居ル黨派ガ多數ノ議員ヲ
出スノハ當然ノコトデハアリマスルケレドモ、議員選舉ノ場合ニ於キマシテハ、所謂作戰計
晝ノ結果トシテ、必シモ此理想通リニ參ラヌノハ今日マデノ實績ガ證明スルノデアリマス、
又第三ニハ小選舉區デアルトキニハ、賄賂、暴行、脅迫等ノ如キ選舉ヲ妨害スル者ガ多
〓、大選舉區ニ改ムルトキニハ斯樣ナル弊ヲ除クデアラウト云フコトデアリマシタ、ケレドモ
是モ理想ニ反シタ結果ヲ見テ居ルノデアリマス、成程暴行、脅迫ハ減少致シタヤウニ見
エマス、併シ是ハ果シテ大選舉區ノタメデアリマセウカ、記名、無記名ノ關係デアリハスマ
イカト云フ疑ナキヲ得ナイ、又世間ノ狀態ノ變化ニ依シテ生ジタカノヤウニモ見エルノデ
アリマズ、而シテ今日ハ暴行、脅迫ノ多少減少致シタト云フ事實ヲ見ルト同時ニ、却テ
暴行、脅迫以外ノ弊害ガ生ジテ居ルノデアル、此弊害ハ寧ロ暴行脅迫以上デアラウカト
考ヘルノデアリマス、之ガタメニ選舉界ノ腐敗ヲ致シ、相當ナル候補者ヲ得ルニモ亦困難
テ、選〓人人亦亦スル結果ガ往々生ズルト云フヤウナコトモ見エルノデアリマス、
此ノ如ク其理想ニ反シタ結果ヲ今日ハ見テ居ルノデアリマス、又補缺選舉等ノ場合ヲ
見マスト實ニ甚シキ困難ヲ感ジテ居ル、補缺選舉ハ全府縣下ヲ通ジテ一人ノ代護士ヲ
出ス場合ガ多イ、此時ニ當リマシテハ全府縣下ヲ騒ガセ之ガタメニ人民ノ迷惑尠ナカラ
ヌコトデアル、又候補者タル人ノ費用モ實ニ夥イコトデアル、是ハ詳ク申サズトモ補缺選
擧ノ場合ノ困難ハ議員タルト、然ラザルトニ拘ラズ人民ノ皆認ムルトコロデアルノデアリマ
ス、斯樣ナルコトヲ考ヘマスレバ最初ニ大選舉區制ニ改メタトコロノ豫期ニ反スル結果ヲ
見テ居ルト斷言シテ宜イ、然ル以上ハ之ヲ改ムルノガ當然デアリマス、之ヲ如何ニ改メル
カト申スコトニ付テハ政府ニ於テモ種々調査ヲ致シマシテ是ハ小選擧區ニ致スノガ、
一番此時弊ヲ矯ムルニ適當ナル方法デアルト考ヘマス、尤モ小選舉區ト云ヒマシテモ以
前卽チ此大選舉區ヲ實施スル以前ニ於テ行ハレタトコロノ小選舉ニ戾ルノデアリマセヌ、
當時ノ所謂小選擧區ナルモノヽ投票ノ方法ハ記名デアリマス二人以上選出スル處ハ
其上ニ連記デアリマス、又選舉人ノ資格モ今日以上デアリマシタガ、是ハ別問題ト致シテ
候補者タルトコロノ人モ、ソレ〓〓納稅、住所イロ〓〓ノ制限モアッタノデアリマス今
日ハ此等ノコトハ他ノ法律ニ於テ、卽チ府縣制、市町村制ニ於キマシテモ選舉ノ方
法ハ單記無記名トナリ、今日一般ニ認ムルトコロノモノハ最早記名ヲ許サヌ-記名連
記ヲ許サヌノデアリマスカラ、此等ノコトニ關シテハ現行法ノ規定ヲ其儘蹈襲致シマシ
テ、其大選舉區ト云フ大ナルモノヲ小ニ改メル、ソレデ前申スガ如ク今日ニ於テモ所謂
大選舉區トハ申シマスケレドモ、現行法ニ於テモ小選舉區ナルモノガ、七十何箇所モア
ルノデアリマス、市若クハ島ハワレデアリマス、今日存在スルトコロノ此小選舉區ノ有樣
ヲ見マスレバ、成程競爭ノ場合ニハ激甚ナルコトモアル、サリナガラ無競爭若クハ無競爭
ニ近イトコロノモノモ甚ダ多ダノノデアル、前回ノ選舉ノ實績ヲ見マスレバ二十幾箇所、殆
ド三十箇所バカリハ無競爭若クバ甚ダ穩和ナル手段ニ依ッテ選舉ハ行ハレテ居リマスガ、
之ニ反シテ大選舉區ノ地方ニ於テハ如何ナル處ト雖モ競爭ハ免レヌノデアル、反對黨ト
互ニ競爭致スバカリデハナイ、自黨ニ於テ同志相爭フノ有樣ヲ呈シテ居ルノデアリマス、
之ガタメニハ候補者タル者モ殆ド其費用ニ堪ヘ切ラヌヤウニ見エマス、一般人民モ亦無
益ニ金錢ヲ費シ、勞力ヲ費サナケレバナラヌヤウナ有樣デアル、而シテ斯樣ナル制度ハ
各國何レノ國ヲ見渡シマシテモ存在致シマセヌ、全ク日本特有ノ制度デアリマス、日本
特有ノ制度ナルガ故ニ改メルト云フ理由ハアリマセヌケレドモ、併シ大體各國先進國ノ
前例ヲ見マシテ、我法制ヲ極メルノニ參酌致シテ宜カラウト考ヘマスガ、各國ノ例ヲ見マ
シテモ此ノ如キ制度ハ存在致シマセヌ、故ニ國家前途ノタメ憲法政治ノ益〓發達ヲ圖ル
ガタメニハ、此時弊ヲ除イテ小選舉區ニ致スコトガ必要ナリト確信致スノデアリマス、又
現行選擧法ノ下ニ於キマシテモ最早數年ヲ經マシタ、其間ニハ刑法ノ改正モアリ、、新刑
法ト釣合ノ取レヌ條項モ多イノデアリマス、故ニ是モ改メナケレバナラヌ、又選舉ノ手續
キニ致シマシテモ、投票ノ規定以外ニ選舉ノ手續ニ關シマシテモ改メナケレバナラヌノデア
リマスシ、又小選舉區ト致スニ付テハ當然ノ結果トシテ、各條項ニモ改正ヲ加ヘナケレ
バナラヌノガ多イノデアリマス、此等ノ理由ニ依リマシテ、此改正案ヲ提出致シタ次第デア
リマス、詳細ニ亙リマスコトハ尙委員會ノ機會ニ於テ陳述致ス積リデアリマス、大體ニ於
テ斯樣ナル理由ニ依ッテ、此改正案ヲ提出致シタ次第デアリマスカラ、十分ニ御審査ノ
上ニ協贊ヲ希望致シマス
〔「議長々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=25
-
026・大岡育造
○議長(大岡育造君) 田川君ニ發言ヲ許シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=26
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027・日向輝武
○日同輝武君 發言ノ通告ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=27
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028・大岡育造
○議長(大岡育造君) 發言ノ通告人現ニ四人アリマス、君ハ五人目ニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=28
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029・田川大吉郎
○田川大吉郞君 唯今、大體ノ範圍ヲ限ラレタル政府ノ御說明ニ對シ、尙大體ノ範
圍ト推測致シマスル範圍ニ於テ、三箇バカリ質問致シタイ
(「田川君大キナ聲デ願ヒタイ」「聽エマセヌ」「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
〔田川大吉郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=29
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030・田川大吉郎
○田川大吉郞君 第一ノ問ハ現行ノ選擧法ハ-選舉區ニ關シテ申上ゲマスガ、一
選擧區ニ於テ數名ノ候補者ヲ選出スル規定ニナッテ居リマス、改正案ハ一選舉區一人
ヲ選出ーシタイト云フ御趣意ノヤウニ窺ハレマス、現行ノ府縣制若クハ、市町村制ニ依ッテ
如何ナル選舉ガ主義トシテ施行サレテ居ルカト云フコトヲ考ヘテ見マスルト、府縣制ニ於
キマシニテ毛、市町村制ニ於キマシテモ、卽チ府縣會議員ヲ選擧スル若クハ市町村會
議員ヲ選舉スル場合ニ行ハレテ居ルトコロノ現行ノ法律ハ、總テ一選舉區數名ヲ選出
スル實際ニナッテ居リマス、國會議員選舉法ヲ今日ノ御提案ノ如クニ選舉區一人ト云
フ制度ニ御改メニナリマスレバ、其結果トシテ府縣會議員若クハ市町村會議員ヲ選舉
スル場合ニ於テモ、亦一選擧區一人ヲ選出スル制度ニ改メントセラル意思、若クハ其準
備ガ今ノ內務省ニアラルヽカ否ヤ、是ガ第一ノ問デアリマス、若シ然ラズトナレバ、茲ニ吾ミ
ノ一般選舉界ニ主義トシテ認メラレ居ル一選舉區ニ數人ヲ選出スル主義ハ、此新ナル
立法ノ規定ニ於テ破ラルヽ結果ニナリマス、故ニ唯今ノ第一ノ問ヲ起スノデアリマス、第
二ハ現選舉法ノ-衆議院議員選舉法ノ施行ノ結果トシテ、多大ノ浪費ト煩累ヲ增
スコトニナッタ故ニ、是ガ改正ヲ企テルト云フ御說明デアリマスガ、其中ノ私ハ唯一箇ノ
例トシテ選舉ニ對スル費用ニ付イテ申上ゲテ見タイ、第一議會ノ時分ニハ全國ノ有權
者ノ數ガ約四十五万人デアッタ、先般ノ四十一年ニ行ハレタ選舉ノ時分ニハ、投票ノ
總數ガ百五十九万人デアッタ、故ニ第一議會ノ時分ニ比シマシテ、第十囘ノ選擧ノ頃
ニム選舉人ノ數ガ三倍半ニ達シテ居リマス、故ニ選舉ニ要シマストコロノ費用ハ自然ニ
其有權者ノ總數ニ比例シテ增減セザルヲ得ナイ、若シ第一議會ノ頃ニ、一ノ候補者ガ選
擧ニ對スル費用ヲ一千圓要シタト致シマシタナラバ有權者ノ數ガ三倍半ニ增加シタル
結果ト致シマシテ、ソレガ三千五百圓ニ增加スルコトハ、自然ノ成行デアリマスノミナラ
ズ、第一議會ノ頃ニ於ケル物價ヲ百ト假定致シマシタナラバ標準ヲ百ト定メマシタ
ナラバ四十一年ニ於ケル比數ハ百九十三ニナッテ居リマス、故ニ第一議會ノ頃ニ較ベマ
スレバ、選擧ノ費用ガ當然ニ二倍ナルト云フコトハ日本ニ於ケル物價ノ現狀ニ照シテ
已ムヲ得ザルノ形勢テアリマス、第一議會ノ頃ニ一千圓費用ニ要シタル場合ガアッタト
假定致シマシテ、其一千圓ハ今申シマシタ人口ノ數ノ增加、有權者ノ數ノ增加ト、物
價ノ騰貴ノ結果トシテ當時ノ一千圓ハ四十一年ニ於テハ六千七百五十五圓ニナラナ
ケレバナラヌノデアリマス其六千七百五十五圓ナルモノヽ內容如何ハ暫ク私ハ言ハナ
イ第一議會ニ費サレタル一千圓ノ內容モ私ハ問ハナイ、免ニ角第一議會ノ頃一千圓
ヲ要スベキ必要ガアッタト致シマシタナラバ第十囘ノ選舉ノ場合ニハ六千七百五十五
圓ヲ要セザルベカラザル周圍ノ事情デアッタノデアリマス今政府當局者ニ於テ、大選舉
區制ヲ施行シタル結果トシテ費用ガ非常ニ增シタ、多大ノ浪費ト費用ヲ要スルコトニ
ナッタト言ハレマスナラバ是等ノ變化ノ狀態ヲ勘定ノ中ニ加ヘラレテ、事實ニ於テ幾許
ノ違ヒアリ、若クハ幾許ノ變化ガアッタカ、ト云フコトヲ御示ヲ願ハナケレバ、私自ラハ提案
者ノ說明ニ向ッテ滿足スルコトガ出來ナイ、ソコデ大選舉區實施ノ結果ト致シマシテ、勞
力若クハ費用ガ大ニ增シタト云フコトノ實例ヲ何等カノ實例ニ依ッテ證明サレルコトガ
出來ルヤ否ヤ、私ハ其御證明ヲ願ヒタイノデ、是ガ第二デアリマス、モウ一ツノコトヲ附
加ヘテ問ヒマス、私ハ不敏ニシテ近來所謂選舉法改正ト云フモノヽ內容ガ、單ニ選舉
區劃ノ內容ニ止マルト云フ實例ヲ知ラナイノデアリマス、外國ニ於テ屢、選舉法ノ改正
ト云フコトノアルコトヲ聞キマシタ、其內容ノ多クハ選擧權ノ擴張ニ關係シテ居ル(「ヒ
ヤ〓〓」)選擧權ノ擴張ヲ主體トシ、ソレニ伴ウテ區劃ノ擴張、若クバ制限ト云フヤウナ
議論ノ行ハレタコトヲ聞イテ居リマス、ケレドモ未ダ選擧權ノ擴張ヲ度外視シテ而シテ區
劃ノミノ改正ヲ、選舉法ノ改正ト稱ヘタトコロノ實例アルコトヲ聞カナイ、多分左樣ナ例
ガアルノデアリマセウ、ケレドモ、私ハ不敏ニシテ未ダ聞カナイ、故ニ若シ是アリトセバ、何時
頃如何ナル國ニアッタカ、其例ヲ御示ヲ願ヒタイ、竝ニ其例ヲ問フコトガ問題デナイ、其例
如何ヲ問フコトガ問題デハナイガ、何等カ選舉區劃ノ大小ヲ主體トシテ論議サレタル場
合ニ、大選舉區ノ弊若クハ小選舉區ノ利、彼等ガ如何ナル理由ニ於テ當時左樣ナ改
正ヲ企ッタコトガアラウカ、ト云フ實例ヲ御示ヲ得レバ私ガ今後本案ヲ審査スル場合ニ
向ッテ、利益ヲ得、参考ヲ得ルコト尠ナクナイコトヽ思ヒマス、、政府ニ於テ多分ソレ等ノ御
調査ガ屆イテ居ラルヽダラウト信ジマス、故ニ是ハ私ノ不敏ノ故ヲ以テ政府ニ御望ヲスル
ノハ不穩デアルカモ知レマセヌケレドモ、私ガ未ダ其處ニ調ベ至ッテ居リマセヌカラ、御調ガ
アルナラバ政府ヨリソレヲ御示シ下サルコトヲ御願ヒスルノデアリマス
〔拍手起ル〕
〔內務大臣原敬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=30
-
031・原敬
○內務大臣(原敬君) 唯今ノ田川君ノ御質問ニ御答致シマスガ、第一ハ一選擧區
一名ノ原則デ、此改正案ハ出來テ居ルヤウデアルガ、府縣制ニ於テモ斯樣ヲ原則ヲ執
ルヤト云フ御尋ノヤウニ聞エマシタガサウデアリマスカ、御答ガナケレバ多分サウダラウ
ト思ヒマスガ、府縣會議員ハ一番少ナイノデ、一縣下カラ三十人、多イ所ハ四十人、五
十人デアリマス、此三十人以上四五十人ヲ選ブ府縣會議員ヲ小選舉區ヲ造ッテ割當
ルト云フコトハ不可能デ、且必要ノナイコトデアリマス衆議院議員ハ之ニ反シテ一府
縣下ニ於テ、少ナイノハ四人、多クテ見タトコロガ十人少シ超ス位ノ所デアリマス、之
ヲ一府縣下カラ選出スルノデアリマスカラ、府縣會議員トハ同樣ニハ參ラヌノデアリマス、
因テ衆議院議員選舉法ハ小選舉區ノ制度ヲ執ッタガ故ニ、府縣會議員モ此ノ如ク致
スト云フコトハ不可能デアリ不必要デアルト考ヘマス、又今日ノ改正案ニハ一選舉區
一人ノ原則ヲ執リマシタケレドモ、行政區劃モ考ノ中ニ置カナケレパナラヌ、人口ノ多寡
モ考ノ中ニ置カナケレバナラヌノデアリマスカラ、其府縣ヨリ選出スルトコロノ數ハ十三
万ニ付テ一人ト云フ標準ヲ動カシマセヌケレドモ其割出方ニ依ッテ一選擧區ヨリ二人
ヲ出ス、若クバ三人ヲ出ストコロノ已ムヲ得ヌノガアルノデアリマス、ソレカラ選擧費用ハ
大選舉區ニナッテ澤山掛ルト言ッタ證明ヲ得タイト云フ御話デアリマスガ、是ハ他ハ知
ラズ、當衆議院ニ於テハ其位ノコトハ當局者ニ御質問ナクトモ御銘々分ル筈デアル(「ノ
ウ〓〓」「ヒヤ〓」)併シ人ニ依ッテ少ナク濟ムト御考ノ人モアリマセウガ、誰ガ見テモ大
選擧區ニナッテ多ク掛ッタト云フコトハ事實デアリマスガ、人〓ノ懷中ヨリ出シタ數字ヲ私
ハ申スコトハ出來マセヌガ、諸君ノ良心デ御考ヘニナッテ問ハズシテモ分ル問題ト私ハ思ヒ
マス、ソレカラ第三ハ選舉法改正ニ選舉權ノ伴ハナイ改正案ハ有ッタカ無カッタカ、各國
ノ例ヲト仰ッシヤル是ハ實ハ有ッテモ無クテモ宜イコトヽ思ヒマスガ、質問者モ御同感デア
ル、有ルコトハ幾ラモアル、例ヘバ佛蘭西ノ如キ大選舉トナリ、又小選舉區トナリ、小選
擧區、大選舉區トナリ、數囘變化致シマシタ、選舉權ニ何等ノ變化ハ無イノデアリマス、
アリマスケレドモ此有ル無イハ此案ヲ決スル問題ニハナラヌノデアリマス、私ノ見マスルト
コロデハ選舉權ノ資格ハ今日ノ通リデサマデ之ヲ擴張スルノ必要ヲ見マセヌ、ト申スモノハ
實際ニ於テ選擧人ハ非常ニ增加致シテ居ル-增稅其他ノ結果デ無論アリマスルガ、
倍若クハ倍以上ニ增加シテ居リマスルカラ、今日ノ日本ノ程度ニ於テハ此上選舉權ヲ
擴張致シテ選舉人ヲ增加スルノ必要ヲ見マセヌ、故ニ今日ハ選舉權ニ關シマシテハ現行
法ノ規定通リニ致シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=31
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032・大岡育造
○議長(大岡育造君) 高木正年君
〔高木正年君登壇〕
〔拍手起〔ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=32
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033・高木正年
○高木正年君 極メテ簡單デアリマス、實ハ今日聲ガ立チマセヌカラ已ムナク登壇ヲシ
タノデス、原內務大臣ハ選舉法中改正法律案ノ說明トシテ三箇ノ理由ヲ提ゲテ御辯
明ニナッタノデアリマス、惜ムラクハ此選擧法ノ改正ニ伴フ大ナル理由ヲ此際御陳辯ニナ
ルコトヲ忘レテ居ラッシヤルヤウニ考ヘル、ソレハ何デアルカ元來選舉ナルモノニ付テ完全ナ
ル目的ヲ達スルタメニハデス、成ベキダケ國民ノ意思ヲ漏レナク代表セシムルト云フコトガ最
モ今日攻究スベキ事柄デアリマス、近時我國ニ如何ハシキ危險思想ノ發達スル上ニ付
テハ、多クノ國民ニ其意思ヲ代表セシメテ、斯ル不平ヲ除クト云フコトガ今日ノ時代ニ於
テ最モ必要ナル方法デアルト考ヘネバナラヌノデアリマス、所ガ內務大臣ノ說明中說
明ト云ハンヨリハ寧日此改正法律案ノ大ナル目的ヲ忘レテ居ルト云フコトニ付テ、私ハ
疑ヲ懷イテ居ルノデアリマス、若シ國民ノ(「モウ答辯シタ」ト呼フ者アリ)マア御聽キナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=33
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034・大岡育造
○議長(大岡育造君) 私話ヲ禁ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=34
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035・高木正年
○高木正年君 國民ノ意思ヲ漏レナク代表セシムルト云フコトデアッタナラバ、何故ニ選
舉權ノ擴張ヲ第一攻究サレナイノデアリマスカ、是ガ卽チ第一問ノ要旨デアリマス、是レ
以上ハ言フ必要ハ無イ、諸君ハ既ニ此〓ニ於テ〓究セラレツヽアルノデアリマス、
過グル議會ニ於テハ普通選擧スラモ當議會ヲ通過シタデハアリマセヌカ、今日ノ時代ニ
於テ選擧法ヲ改正スル上ニ於テ何ノタメニ選舉權ノ擴張ニ第一ニ政友會ノ內閣ガ之ヲ
攻究シナイカト云フコトハ大ナル疑問ト申サネバナラヌノデアリマス、是ガ卽チ私ノ承リタ
イ第一問ノ要旨デアリマス、第二問ハ初メニ申シタ通リ成ベク國民ノ意思ヲ代表セシム
ルト云フ趣意ニ出ヅルナラバ之ヲ小選擧區ニ改ムル必要ハ何レニ在ルカト問ハネバナラヌ
ノデアリマス、小選擧區ト爲ストキニ於テハ甲ノ郡、乙ノ郡ニ於テ選舉人ノ半數以上ノ
人ハ其意見ヲ代表セシムルコトヲ得ルトモ、半數以下ノ選舉人ハ其意見ヲ代表セシム
ルコトガ出來ナクナルノデアリマス、全府縣ヲ通ジテ小選舉區トナル以上ハ、其五分ノ一
以上ノ選舉人ハ其意思ヲ代表セシメテモ、其以下ノ選舉人ハ其小選舉區ニ於テ落選
者ニ與ヘタトコロノ投票ヲ-全ク意思ヲ代表スル機關ヲ失フノデアリマス、大選舉區ハ
之ニ反シ斯ル少數ノ投票ト雖モ一府縣ヲ通ズレバ一人若クハ二人ノ代表者ヲ出スト云
フコトニ付テ大選舉區ノ效能ヲ認メルノデアリマス、私共ハ單ニ候補者ノ利便ノタメニ言
フノデハナイ、候補者ノ利便ソタニメニ考ヘタナラバ或ハ小選舉區可ナリト云フコトモ言
ヒ得ベキモ、國民ヲ代表スル上ニ付テ漏レナク其意見ヲ代表セシムルト云フ上ニ於テ考ヘ
テ見タナラバ、大選舉區ヲ以テ最モ完全ナルモノト私ハ思考スル、此〓ニ於テ唯小選舉
區ハ入費ガ少ナイ、競爭ガ無クナルー競爭ガアル〓ニ於テハ已ムヲ得ナイノデアリマス、
今日ノ國民ガ果シテ今日ノ代議政體ニ滿足シテ居ルヤ否ヤト云フコトハ疑問デアリマ
ス、此疑問ヲ解決シ、尙帝國議會ヲシテ所謂憲法ノ生長ヲ掌ラシムルトコロノ善良ナル
議會タラシムルニ於テ、成ベク選舉ノ際ニ於テ政治革新ヲ意味スルトコロノ投票ノ多ク
ヲ集メル必要ガアルノデアリマス、若シ小選擧區ニ於テ一郡若クハ二郡ノ投票ニ於テ落
選者ニ與ヘタトコロノ投票ハ、大選舉區ニナレバ之ニ依ッテ一人二人ヲ出ス、此一人
二人ヲ出スノハ其全縣下ニ於ケル政治上ニ於テ改良ヲ意味スルトコロノ投票ヲ集メ得ラ
ルヽノデアリマス若シ小選舉區ナラバ何時政治ノ改良ガ出來ルノデアリマスカ、甚ダ覺
束ナイト私ハ思フノデアリマス、此二〓ニ付テ原內務大臣ハ私共ヲ滿足セシムルダケノ御
答辯アリタク私ハ希望スルノデアリマス
〔內務大臣原敬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=35
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036・原敬
○内務大臣(原敬君) 唯今ノ高木君ノ御質問ハ十分ノ注意ヲ以テ承リマシタガ分リ
マセヌ、選擧權擴張ヲ忘レタカドウカ-私ハ忘レハ致シマセヌ、今日ノ程度デ澤山ダ
ト既ニ御答ヲ致シタ後ノコトデアル何ヲ御質問ダカ分リマセヌカラ、願クハ此御質問ヲ
尊敬致シテ御答致シタイカラ、簡單ニモウ一遍御述ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=36
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037・高木正年
○高木正年君 私ノ質問ノ要旨ハ第一ニ何故ニ選擧權ノ擴張ヲ忘レタカト云フノガ
第一問デス、其趣意ハデス(「忘レテハ居ナイト言ッテ居ル」「默ッテ居ロ」ト呼フ者アリ)マア
御待チナサイ、ソレダケデ分ル筈デアル、議會ハ屢〓選舉法ノ改正ヲ建議シ、殊ニハ普通
選舉スラモ此議會ヲ通過シテ居ルノデアル、嘗テ選舉區制ノ改正ハ市ノ獨立以外ニ
之ヲ求メタコトハナイノデアリマスガ、選擧權ノ擴張ハ屢〓之ヲ要求シテ居ル、然ルニ政府
ガ之ヲ講ジナイノハ何デアル、ソレモ前內閣ナラバ免モ角モ輿論ヲ以テ政治ノ方針トナ
スベキ信念ノアル政友會內閣ガ忘レテ居ルトハ何デアルカ、是ガ第一問、第二問ハ國民代
表ト云フコトガ若シ選擧法改正ノ趣意デアレバ、小選擧區デアッタナラバ、例ヘバ一郡ノ
投票ガ二千デアル、千一票ヲ取ッタ人ハ代表者ヲ出シ得ラレルケレドモ、九百九十九票
ヲ取ッタ人ハ其意見ヲ議會ニ代表スルコトガ出來ナイ、大選擧區制デアレバ此投票ハ他
ノ郡ト相俟テ一人ヲ出シ得ル、此際ニ國民ノ意志ヲ何レガ滿足ニ代表シ得ルカト云フ
コトハ、大選擧區ニ於テ見ルトコロノ利益デアルガ、政府ハ何故ニ小選擧區制ヲ取ッテ國
民代表ト云フコトニ重キヲ措カザルカト云フノガ第二ノ質問ノ趣意デアリマス、是デ御分
リニナッタデアリマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=37
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038・原敬
○內務大臣(原敬君) 稍〓分リマシタ、分リマシタガ、何故ニ選舉權擴張ヲ忘レタカト云
フ御問デアルガ、眞ニ忘レタコトナラバ忘レタコトニ理由ガアラウトハ思ハナイ、私ハ忘レタノ忘
レナイノト云フコトヂヤナイ、選擧權ヲ今日ハ擴張ニ及バヌ、今日ノ程度デ澤山ナリト答
ヘタ、忘レタノデハナイ、若シ忘レタナラバ理由ハ無イノデアリマセウガ、忘レタノヂヤナイ、ソ
レカラモウ一ツ何ヤラ分リマセヌガ、其答ハ何デモ國民代表ノ意志ヲ忘レタカ忘レヌカト
云フヤウニ是モ聞エルガ、私ハ國民代表ハ之ニ依ッテ全ウスルコトハ出來ルト考ヘタノデア
リマス
〔西村丹治郞君「少數代表ヲ屈スルカト云フ意味ナンデス、ソレガ分ラヌヤウヂ
ヤ仕方ガナイ」默レ「誠意ガナイ駄目グ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=38
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039・原敬
○內務大臣(原敬君) 誠意ガナイヂヤナイ、答ヘント欲スルカラ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=39
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040・西村丹治郎
○西村丹治郞君 少數代表ヲ屈スルカト云フノダ一言ニ言ヘバ······
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=40
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041・大岡育造
○議長(大岡育造君) 靜ニシテ御聽キナサイ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=41
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042・原敬
○內務大臣(原敬君) 分リマシタカ、分ッテ居ルナラ私モ分ッテ居ルガ、譯ノ分ラヌコト
ヲ仰ッシヤッテハ分ラヌト云フ、私ハ答ヘント欲スルガ故ニ、二度マデ問ウタ、、初カラ少數代
表者ヲドウスルカト御問ヒニナレバ明瞭デアッタ、何ヤラ分ラヌコトヲ澤山言ハレルカラ答
ヘヤウガ無カッタノデアリマス、少數代表者ヲ出スコトハ此選舉法ノ改正ニ依ッテ少シモ
變ラヌノデアリマス、少數代表者ヲ出スコトハ依然タルモノデアルト私ハ之ヲ認メテ居ル
(「ノウ〓〓」)認メナイナラ相當ニ議論ヲナサッタラ宣カラウ御尋ナラ斯ク答ヘル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=42
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043・大岡育造
○議長(大岡育造君) 細野次郞君
〔細野次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=43
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044・細野次郎
○細野次郞君 私ガ政府ニ問ハントスルトコロハ抑〓選舉法卽チ衆議院ノミニ關スル
法律ヲ憲法上貴族院ノ協贊ヲ經ルコトハ無論ノコトデハアリマスガ、貴族院ナルモノハ宜
シク此ノ如キ法律ニ關シテハ衆議院ノ院議ヲ重ンジマシテ、若シ本院通過ノ上ハ必ズ貴
族院モ之ニ同意ヲセラルヽノハ疑モナイコトヽ信ズルノデアリマス、然ルニ若シ貴族院ニシ
テ此ノ如キ案ニマデ衆議院ノ意思ニ反シマスル場合ニハ(「要ラヌ御世話ダ」ト呼フ者ア
リ)卽チ貴族院ガ政府ニ對スル一種ノ不信任決議ト信ジマスル、閣臣宜シク責任ヲ議
會ニ負フベシトハ豈獨リ衆議院ニ對スルノミノコトデナイト云フコトハ政友會諸君モ御異
議ガアリマスマイト思ヒマスル、現內務大臣ハ前々內閣ノトキニ內務大臣ヲ御就職デアッ
テ、當時郡制廢止案ヲ提出セラレマシタ(「問題外ダ」ト呼フ者アリ)所ガ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=44
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045・大岡育造
○議長(大岡育造君) 注意ヲ致シマス、本選舉法ニ付テ直接質問ノ要點ヲ舉ゲテ其
理由ヲ御述ベニナリタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=45
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046・細野次郎
○細野次郞君 デ郡制廢止案ヲ御提出ニナッタトコロガ、貴族院ニ於キマシテ否決ニナ
リマシタ、衆議院ニ於テ通過ヲ致シマストキニモ、隨分政治家トシテ忌ムベキトコロノ手
段マデ執ッテ、ヤット通過セラレテ、一タビ貴族院デ否決ニ相成リマスルト、其以來幾万
ノ政友會員モ此問題ニ付テハ杳トシテ聲ナク、尙現在其意見ヲ支持セラレテ居ルヤ否
ヤ知ルコトヲ得ナイ、私ハ斯樣ナコトハ衆議院ノ威信ニ關スルコト決シテ少ナクナイト思
フ之ヲ一タビスル尙恕スベシ再ビスルニ至ッテハ許シ難イト思フ、私ハ若シ此案ガ貴族
院デ否決ニナリマシタ場合ニ、之ヲ政府ニ對スル不信任案ト見ルヤ否ヤト云フ〓ニ付テ
政府ノ答ヲ受ケダイ
〔內務大臣原敬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=46
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047・原敬
○內務大臣(原敬君) 唯今ノ細野君ノ御質問ニ御答致シマスガ
(「是ハ大抵分ッタラウ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=47
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048・大岡育造
○議長(大岡育造君) 靜ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=48
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049・原敬
○內務大臣(原敬君) 分ラヌコトハ分ラナイ、分ルコトハ分ル、アナタ方モ默ッテ聽ク方
ガ能ク分ル、唯今ノコトデアリマスルガ、貴族院ノ場合ヲイロ〓〓御話デアリマス、貴族院
ハ衆議院ト同樣ニ議決ノ權ヲ持ッテ居リマス、故ニ各〓其見ル所ニ依ッテ愼重ニ公平ナ
ル決議ヲスルデアラウト考ヘマス、其以上何ノ御答モ致スコトガ出來マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=49
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050・大岡育造
○議長(大岡育造君) 日向輝武君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=50
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051・藏原惟郭
○藏原惟郭君 、議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=51
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052・大岡育造
○議長(大岡育造君) 藏原惟郭君-藏原惟郭君デシタ
〔藏原惟郭君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=52
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053・藏原惟郭
○藏原惟郭君 諸君、私ハ簡單ニ二四〓當局大臣ニ說明ヲ求メタイノデアリマス第
一一八
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=53
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054・大岡育造
○議長(大岡育造君) 靜ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=54
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055・藏原惟郭
○藏原惟郭君 大選舉區が選舉費用ガ多クテ、小選舉區ニナル場合ニ於テハ選舉
費用ガ多ク要ラヌト云フ趣意ノ御說明デアリマシタガ、之ニ對シテハ、或ル議員カラ證據
ヲ示サレタイト言ハレマシタガ、未ダ其證據ヲ示サレナイヤウデアル、私ハ原內務大臣ガ
此重大ナル選舉法案ヲ提出セラルヽニ當ッテハ、百方調査ヲ盡サレタ上ノコトデアラウ、ド
ウカ其統計ヲ示サレタイト思フ(「君ノ胸ノ中ニアル」ト呼フ者アリ)ソレハ多分政府ニ分ッ
テ居ルダラウ、サウ云フコトノ費用ノタメニ機密費ナドハ使ハレテ居ル、又役人モ設ケラ
レテ居ル、統計局モ設ケラレテ居ルカラ(笑聲起ル)斯樣ナコトガ調ガ屆イテ居ラヌ筈ハナ
イ、是ハ一ツ明カニ統計ヲ以テ示シテ貫ヒタイト思フ、且又外國ノ例モ調ベテ居ラルヽニ
違ヒハナイ、外國ハ此選舉費用ガ各〓其國ニ依ッテ異ナルデアラウケレドモ、原君ノ所
謂世界各國到ル處小選舉區デアル、其小選舉區ノコトヲ日本ニモ必要デアルト云フ
トコロカラ調査ノ結果玆ニ至ッテ法律案ガ提出サレタモノト思ヒマスカラ、其各國ニ於ケ
ル小選擧區ノ競爭ニ費ストコロノ費用ハ幾許デアル、是亦一ツ統計ヲ示シテ貰ヒタイ、
然ラザレバ小選舉區ノ費用ガ大選擧區ヨリ要ラナイト一云フ反證ガ立タヌ、ソレ故ニ願ク
ハ事實ヲ示シテ貰ヒタイ、例ヘバ英國ノ如キハ平均一人前ガ千五百磅ト云フモノガ最
低價ニナッテ居ル、千五百磅ト云ヘバ一万五千圓デアル、ソレヨリ以下デハ選舉ハ出來
ヌコトニナッテ居ル、歐洲各國到ル處斯樣ナルモノデアル、然ラバ將來我國ガ萬一小選
舉區制ヲ設ケタ場合ニ於テ、從來ヨリモドノ位ノ割合ニ於テ事實上費用ガ掛ラヌト云
フコトノ證據ガ立ツカ、大空想-想像ニ過ギナイ議論ニ終ルデアラウト私ハ思フノデアル、
況ヤ此物價ト云フモノハ日〓騰貴シ來居ル、數年前ト比較スレバ今日ハ總テ必要品ニ於
テモ三割以上、六割ノ違ヲ生ジテ來テ居ル、左樣ナ場合ニ於テ此大選舉區デアラウガ
小選舉區デアラウガ、費用ノ相當ニ掛ルト云フコトハ當リ前デアル、當然ノ結果デアル、是
ハ此費用ノ多イ少ナイヲ以テ選舉權ノ買收ノ授受如何ト云フコトヲ察スルト云フコトハ
大早計デアル、尤モ此處ニハ原君ガ言ハレタ通リ選舉ニハ費用ガ大分掛ルト云フコトハ
議員ガ皆知ッテ居ルト言ハレテ居ル此處ニ多ク居ル議員ノ中デ一万圓ナリ、三万圓
ナリ、五万圓ナリ、六万圓ナリノ授受ノ方法ニ依ッテ得ラレタ方ガアルカモ知ラヌ、我
輩ハサウ云フ經驗ガナイカラ(笑聲起ル)知ラナイケレドモ恐ラクハ原內務大臣自ラ其御
經驗ガアルコトデアラウト思フ、ソレ故ニ此處ニ此議員ニ向ッテ彼ハ證明スルマデノコトハ
ナイ事實デアルト確言セラルヽ所以テアルト私ハ思フ、併ナガラソシ等ハ別トシテドウ
シテモ選擧費用ガ嵩マルト云フコトハ當然ノ勢デアリマスガ、之ヲ大選舉ニ更ヘテ小選
擧區ニスレバ要ラナイト云フ證據ハ何處ニアルカ、私ハム乙ヲ示シテ貫ヒタイ唯想像テ
ハイケナイ、斯樣ナ大問題ヲ決定スルニ-改正スルニ想像ニ依ッテスルガ如キハ國民
ノ許サザルトコロデアリマセウ、又小選舉區ニスレバ競爭ガ從來ノ如ク激烈デナイト云フ御
話ガアル、是ハ全ク反對デハナイカ、其證據ハ卽チドウデアリマスカ、東京市ニ於ケル市
會議員或ハ府會議員ノ選擧ハ殆ド小選舉區ノナノナモノデアルガ、此選舉ノ激烈ナル
コトハドウデアル、衆議院議員ノ選舉ヨリモ多イノデハナイカ、彼ノ市會議員ノ選舉ニ於
テ候補者ガ一万圓以上使ッテ居ルデハナイカ、府會議員ノ選舉ニ於テ八千圓カラ一万
圓ノ金ヲ費シテ居ルデハナイカ、選舉區ガ狹小デアレバ狭小デアル程激烈デアル、投票
ノ數ガ少ナケレバ少ナイ程之ヲ爭フコトノ烈シクナルノハ自然ノ勢デハナイカ、而シテ其
證跡ハ縣下到ル處、全國到ル處ニ實例ガアルノデアル、諸君ハ其辛イ經驗ヲ既ニ嘗メラ
レテ居ル方〓デアルト云フコトハ顏ノ皺ニ明カニ書カレテアルノデアル(笑聲起ル)然ラバ
是等ノ近イ事實ニ照シテ見テモ大選舉區ヨリ小選舉區ガ費用ガ多ク掛ラヌト云フコト
ハ空論デアル、事實ニ於テ之ヲ反證シテ居ル、ソレカラ又此改正案ヲ見ルニ一大缺點ガ
アル、其一大缺〓ハ何デアルカト云フト此ノ如キ重大ナル十年モ二十年モ將來モ更ヘル
コトノ容易ニ出來ナイ改正ヲスルニ當ッテ唯其改正ノ精神ガ部分的デアッテ全體的デナ
イト云フコトハドウ云フコトデアル、凡ソ此國家ノ法律案、殊ニ議院政治ニ大關係ノアル
トコロノ此選舉法輿論ノ全部ヲ完全ニ代表セシムベキトコロノ方法手段ハ最善ヲ選バナ
ケレバナラヌノニ、此選舉法ノ改正案ニ於テ唯其一部分的ノ改正ニ注目セラルヽト云フコ
トハ何事デアル、何故ニ根本的ニ是ガ改善ヲ圖ラヌノデアルカ、而シテ此改正ノ精神ヲ
全ウスルコトニ努力シナイノデアルカ、謂ハバ卽チ唯選舉ノ便利ノミヲ圖ッテ而シテ選擧ヲ
スベキトコロノ國民ノ精神ヲ無視シテ居ルノデハナイカ、國民ノ精神トハ何カ輿論ヲ完全ニ
代表スル議員ヲ選擧スルノ方法デアル、而シテ完全ニ與論ヲ代表スルトコロノ此選舉法ヲ
作リ立ツルニ於テハ全部ニ力ヲ注ギテ此法律ノ完成ヲ圖ラナクテハナラヌ、然ルニ
何等舊來ノ小選舉區ニ於ケルトコロノ舊法ヲ再ビ蘇ヘラセテ而シテ今日ニ之ヲ適用スル
ニ止マルト云フコトハ如何ナルコトデアルカ私ハ分ラヌ、其作ラレタル所以ヲ私ハ原內務
大臣ガ具サニ說明セラレンコトヲ希望スル、原內務大臣ハ先刻カラ大分高木君ト爭ヒ、
ソレカラ又其他ト段々爭ハレテ居ル、其意氣ノ盛ナルニ付テハ敬服スル、此ノ如キ大臣ハ
未ダ嘗テナイ、私ハ立憲政治ノ所謂此大臣ヲ出シタルトコロノ初メノ是ハ實ニ事實デアラ
ウト思ウテ密ニ敬意ヲ拂ッテ居ル、ドウゾ胡麻化サズニ眞面目ニ、本氣ニ精細ニ答ヘラレ
ンコトヲ希望スル
〔內務大臣原敬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=55
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056・原敬
○內務大臣(原敬君) 唯今藏原君ノ御質問ニ御答致シマス、先刻來費用ノコトニ付
テイロノノ御質問ガ出マスルガ、私ノ改正案ヲ提出シタル一部ノ理由ニハ費用ノコト
ガアリマス、費用ノ多イト云フコトハ卽チ改正案唯一ノ目的デハアリマセス、是ハ豫メ御
斷リヲスル、其改正ノ一部ノ理由トナッタトコロノ選舉費用ノ統計ヲ出セト云フコトヲ
仰ッシヤルガ、聰明ナル藏原君ニモ不似合グ、此ノ如キ費用ノ統計ガ世界ニアルモノデス
カ、外國ノ例ヲ出セト仰ッシヤルケレドモ外國ニ於テモ選舉費用ガ幾ラ掛ッタト云フ此統
計ハナイノデアリマス、是ハ各〓經驗スルトコロニ依ッテモ分リマセウガ、他人ガドレダケ掛ケ
タト云フコトヲ推測シ得ルコトハ出來ル、併ナガラ統計ヲ以テ示スト云フコトハ不可能ナ
モノデアル(藏原惟郭君「ソレハ大臣ノ不明デアルト呼フ)是ハ藏原君ナラバ率ザ知ラヌコ
ト、常識ヲ以テハ出來ナイ相談デアル、次ニ御答ヲ致シマスガ競爭ノ激烈ナルコト、成程
競爭トナレバ大變ニ激烈ナル場合ハアルノデアル、先刻私ノ申シタノハ競爭ノ激烈ナルコ
トノ有無デハナイノデアル、現在ノ選舉法ノ下ニ於テモ七十何箇所ハ小選舉區デアル
ガ、此中三十何箇所パカリハ無競爭、若クハ競爭ノ極メテ激烈ナラザル所ガアッタト云フ
コトヲ申シタノデアル、現在デモ小選舉區ハアルノデアリマスカラ、多少ノ參考ニナルカト
思ッテ申シタノデアリマス、故ニ小選舉區ニ全部改メマシテモ、競爭ヲスルトキニハ其時ノ
狀況ニ依ッテハ、激烈ナル所ハアルデアリマセウ、激烈ナル處ハアルデアリマセウケレドモ、
一方ニ於テハ無競爭ノ處モアルデアラウト思フ、是ハ今日ノ大選舉區ノ下デハ此無競
爭ナドノ狀況ヲ見ルコトハ出來マイト思フ、故ニ競爭ノ激烈ナル處ノ有ル無シ-競爭
ノ仕方ニ依ッテハ自ラ知ラズ識ラズノ間ニ激烈ナルコトガアルノデアリマスガ、是ハ絕對ニナ
イト云フコトハ何人モ申スコトハ出來ナイノデアリマスケレドモ、小選舉區ニナリマシタナラ
バ、此弊ハ甚ダ少ナイ、無競爭ノ處モ多クアルデアラウ、競爭ガアルトシテモ激烈ナラ
ザル處モアルデアラウト考ヘテ、ソレヲ申シタノデアリマス、ソレカラ其次ノ質問ハ改正ハ部
分的デアルカライカヌト言ハレルノデアル、成程維新以來多ク法律ノ改正ハ根本的ト申
シテ改メズシテ宜シイヤウナ所マデ改メタ例モアリマスケレドモ、改正案ナルモノハ改正セザ
ルヲ得ヌ、其弊害ヲ見タ所ヲ改メテ宜イノデアル、何時デモ根本的ト云ッテ用モナイノニ
殘ラス改メル必要ハ毫モナイノデアル故ニ私ノ改正案ハ今日ノ時弊ヲ救濟シテ將來憲
政ノ發達ヲ計ルニ必要ナリト考ヘタ〓ダケノ改正デアリマス、故ニ改正ハ必シモ根本的
テ殘ラズ改正シナケレパナラヌナドト云フ議論ハ御同意ハ出來マセヌ、私ノ趣意ハ必要ナ
ル部分ダケノ改正デアリマス、其外何カアッタヤウデアリマスケレドモ、蓋シ枝葉ノ議論デ
アラウト思ヒマスカラ是デ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=56
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057・大岡育造
○議長(大岡育造君) 日向輝武君
(「登壇々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=57
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058・日向輝武
○日向輝武君 此改正案ハ誠ニ本議場ノ大案デアッテ、先刻ヨリイロ〓〓質問ガゴザ
イマシタケレドモ、私ハ尙疑團解ケザル〓ガアルノデアリマスカラ、此〓ヲ伺ヒタイノデアリ
マス、是ハ小選舉區ノ昔ニ立歸ッテ、現行法ノ大選擧區ヲ廢スルト云フノガ本案ノ眼目
デアリマス其結果トシテ議會ハ降下スル議會ノ品位ガ降下スル點デアリマス、中央ノ
政界ニ於キマシテ大立者タル大政治家モ往々ニシテ一部分一町村ノ或ル限局セラレタ
ル區劃ニ居リマシテハ、其郡村ニ於ケルトコロノ豪族又ハ大地主ナドト勢力ヲ比較シテ
其足下ニモ及バヌ奇觀ヲ呈スルノデアリマス、是ハ事實ノ證明スルトコロ、獨リ日本ノミ
デナイ、今此大選舉區ヲ小選舉區ニ引直シマスル結果、高才逸足ノ人物ハ立
法部ノ外ニ驅逐サレ堂々タルベキ帝國議會ハ地方ノ名主豪族或ハ郡長ナドノ人
物ヲ以テ充タサレルニ至リハシナイカ、卽チ議會ノ品位ト云フモノハ實ニ降下スルモノデ
アルト云フコトヲ私ハ信ズルノデアリマス、之ニ對シテ內務大臣ハ私共ノ疑團ノ解ケマス
ルヤウニ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、立法部ノ降下、議會ノ品位ノ堕落ハ憲政ノ退步
ナリト私ハ信ズルノデアリマス、此一〓ニ就テ明細ナル御答ヲ願ヒタイノデアリマス
〔內務大臣原敬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=58
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059・原敬
○內務大臣(原敬君) 唯今ノ日向君ノ御質問ニ御答致シマスガ、日向君ノ御質問
ハ小選舉區トナレバ其村カ郡カ知リマセンガ、サウ云フ一局部デ人望ヲ得ル者ダヶ當選
シテ、他ノ有力ナル者ハ當選シナイヤウナコトガアリハシナイカト云フ御質問ノヤウニ聽取
リマシタ、是ハ最初ニ申シマシタ如ク、サウ云フヤウナ理想ノ下ニ大選舉區ノ制度ニ改メ
タノデアリマス、改メタノデアリマスケレドモ、大選舉區ニスル折ニハ、大選舉區ニナッタナラ
バ左樣ナ地方ノ一隅ニ人望ヲ得ルヤウナ人ガ出ズシテ、殘ラズ天下ノ大政治家ガ出ルデ
アラウト云フヤウナ趣意デアッタカノヤウニモ見エル、併シ選舉ハ左樣ニハ參ラヌノガ事實デ
アリマス、必シモ其地方ニ名望ガアリマシテモ、ソレハキット當選スルト云フモノデハ元來ア
リマセヌガ、併ナガラ其地方ニ位地名望ガアリマシタナラバ、比較的當選ハ容易デアラウ
トハ思ヒマス、容易デアラウトハ思ヒマスガ、小選舉區ノ時代ト十年經驗致シマシタトコ
ロノ實績トニ依ッテ考ヘマスルノニ、小選舉區ノ時代ニハサウ云フ地方ノ小人物バカリ出
テ居ッタトハ思ヒマセヌ、從ッテ今日ノ改正ヲ致シテ設クルトコロノ小選舉區ハ以前ノ小
選舉區トハ違フト云フコトハ先刻申シタ通リデアリマス、ケレドモ、縱令以前ノ小選舉區ノ
如クデアリマシテモ、必シモ地方ノ一部ノ人望ヲ得タ人デナカッタト云フコトガ見エル以上
ニハ、尙更此改正案ノ如ク單記無記名ニシテ候補者タル者ハ自由ニ何レノ處カラモ候
補者ニ立テルト云フヤウニ致シマシタナラバ、人才ヲ得ルニ決シテ困難デナイト考ヘマス、
又一部一部ノ郡村ニ於テ名望ガアリマシタ位ノコトデハ段々憲政ノ進步ニ於テ
ソレダケデハ當選ハ幾ラカ便利ニハナリマセウケレドモ、是ノ如キ人バカリ出ルナドト云フ心
配ハ決シテナイト考ヘマシテ、此改正案ヲ提出致シタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=59
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060・大岡育造
○議長(大岡育造君) 高木益太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=60
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061・高木益太郎
○高木益太郞君 賢明ナル内務大臣閣下ニ說明ヲ求メタイノハ、政府ガ此選舉法改
正案ヲ起草セラルヽニ當ッテ、議員ノ分配ノ標準ハ單ニ國民ノ人口數ノミニ依ッテ納稅
額竝ニ選舉人ノ數等ヲ參酌セザル理由如何ト云フノデ、是ハ東京デ言ヘバ日本橋區ノ
如キハ十五區ノ中デ國稅ノ十分ノ四以上納メテ居ル、十分四以上納メテ居ルトコロノ
區ガタッタ一人ノ代議士ヲ出スダケニ止ッテ、本所、深川ノ如キハ三人ノ代議士ヲ出セ
ルト云フ具合ニナッテ居ル、所デ是ハ內務省ノ方針ト云フモノガ普通選舉ト云フ論ナラ
論ガ立ツノデアル、普通選舉ヲ認メナイ-昨年本院ガ決議シタトコロノ普通選舉ト
云フモノハ認メナイデ、財產ノ制限ニ依ッテ選擧權ヲ與ヘル、斯フ云フ主義ヲ取ッタ以上
ハ、何ガ故ニ此人口ノ數ノミヲ根據ニシタノデアルカ、若シサウ云フコトデアルト云フト、
養育院ニ居ル半身不隨ノ人間モ監獄署ニ入ッテ赤半纏ヲ著テ居ル人間モ、健全ナルト
コロノ人間モ、同ジ待遇ヲ受ケルト云フコトニナル、現ニ今日ノ市町村制ノ上ニ於テ三級
制度ヲ認メテ居リ、議院制度ノ上ニ於テハ多額議員制度ヲ認メテ居ル、是ハ原內務大
臣閣下ノ御監督ノ下ニ近ク東京市ニ於テ行ハレタ市會議員增員ヲ內務省ガ認可シタ、
其標準ハ人口ト有權者ノ數ト市稅納稅額ヲ參酌シテ今度ノ東京市會議員ノ增員ヲ
認可サレテ居ル、一面ニハ國家ノ制度ガ此ノ如キ制限ノ規定ガアルニモ拘ラズ、何ニガ故
ニ衆議院ニ付テハ人口ノミヲ標準トシテアルノデアルカ其理由如何、之ニ付テ原內務大
臣ニ望ムノハ願クバ此案ヲ審議スル上ニ於テ斯ク小選舉區每ニ有權者ノ數ノ統計ト、
ソレカラ納稅額ノ統計ヲ此委員バカリデナク議員全體ニ御配付シテ戴キタイ、尙希
望スルコトヲ云ヘバ、內務省ノ起草委員ガ參酌セラレタトコロノ各國ノ選舉法ノ立法
測、是モ特別委員バカリデナク議員全體ニ配付シテ貰ヒタイ、ツレカラ第二ノ質問ハ
選舉ノ手續ニ於テ少シモ改正ヲシテ居ラヌガ、先刻原內務大臣ノ御說明ニ依ルト今度
ノ改正案ハ選舉ニ關スル時弊ヲ矯正スルタメデアルト云フ、果シテ然ラバ此東京ナドニ
於テ先輩ガ段々ヤッテ來タ每戶訪問ナドハ甚グ如何ハシイコトデアル、選舉ハ言論文章
ニ依ッテ立憲的ニ堂々トシナケレバナラヌ、何ガ故ニ斯ウ云フ〓ニ付テ適當ナル時弊ヲ矯
正スル提案ガナイカ、此〓ヲ十分詳細ニ說明ヲ願ヒマス、ソレカラ本院ニ於テハ選舉法
ノコトニ關シ「オーソリチイ」タル林田君ノ如キハ非常ニ費用ヲ省キ、サウシテ簡便デ、屆出
ニ依ッテ候補者ヲ當選セシムルト云フ考案ヲ屢〓公ニセラレテ居ル、サウ云フヤウナ選舉ノ
手續ニ關スルトコロノ簡明ナルモノデ、候補者モ喜ヒ、國民モ喜ブトコロノ此選舉ノ煩
勞ヲ省イテ、サウシテ立派ナ人ヲ出ス手續ニ付テ、何故ニ起草委員ハ相當ナル調査ヲシ
テ御提案ニナラヌ次第デアルカ、此〓モ私ハ御尋ヲシタイノデアリマス、第三ニハ此選舉
法ニ付テ特ニ內務省ハ官僚ト共ニ貴衆兩院カラ委員ヲ選ンダノデアルガ、是等モ屢〓爲
サルト云フ先例ヲ作ラレル次第デアルカ、サウスルト郡制ノ廢止ナドニ付テモ一々サウ云フ
委員ヲ御作リニナル御考デアルカ、如何ナル必要ガアッテ、斯ウ云フ委員ヲ拵ヘタノデア
ルカ、若シ必要ガアレバ議院法ノ規定ニ依ッテ繼續委員デモ拵ヘテ愼重ニ討議スベキデ
アルガ、其以外ニ行政府ニ此ノ如キ委員ヲ拵ヘタノハ何ノ理由デアルカ、詳細ニ原內務
大臣閣下ノ說明ヲ求ムル次第デアリマス
〔內務大臣原敬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=61
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062・原敬
○內務大臣(原敬君) 高木君ノ御質問ハ先般內務省ニ設ケマシタトコロノ衆議院
議員選舉法改正案調査玄員會ニ於テ御述ベニナッタコトヲ又述ベラルヽ、是ハ甚ダ迷
惑ニ感ジマスルケレドモ、併シ何囘テモ御答ハ厭ハヌ、アナタノ議論ガ潰レタラ再ビ述ベラ
レテモ宜シイ、ソレハ宜シイガ選舉權ハ-凡ソ選舉權ヲ極メルニハ何ヲ標準トスルカト
云フコトハ納稅ノ資格ニ依ッテ居ル故ニ、是ダケノ稅ヲ納メル者ハ投票ヲスルコトガ出來
ルト云フ規定ニナッテ居ル、各國皆サウ云フ納稅ノ資格ニ依ッテ極メルコトニナッテ居ル、
納稅ノ資格デナケレバ年齡ニ依ッテ左樣ニ極メテアル、併ナガラ當選シタトコロノ代議士
ナルモノハ國民ヲ代表スルモノデアル、選舉ノ方法ハ納稅ニ依ッテ資格ハ極マルガ、出ルト
コロノ人ハ國民ヲ代表スルノデアリマス、國民ヲ代表スルノデアルガ故ニ、人口ニ依ルト云
フコトハ至當ノ理由デアリマス、ソレノミナラズ若シ人口ニ依ラズシテ納稅ノ資格ニ依ッ
テ割出シマシタナラバ非常ニ不平均ヲ來シマス、高木君ノ選舉區ノ如キ日本橋區ナドハ
多數ノ議員ヲ出シマセウガ、私ノ〓里ノ東北ナドハ極メテ僅少ノ代議士ヲ出スコトニナ
リマス、國家此ノ如キ不權衡ナルコトヲ以テ憲政ノ發達ハ計ラレマセヌ、又戶別訪問ナ
ドヲ廢メタラドウカ、ソレカラ何ヤラ費用ハドウトカ、斯ウ云フコトハ取締ノ上ニ於テ制限
ノ出來ルコトモアリマセウケレドモ、出來ナイコトモアル、人ガ決シテ訪問シテハナラヌトハ
言ヘナイ、故ニイロ〓〓御尋デアリマスケレドモ、是ハ法律ヲ以テ規定スルニハ不可能ナ
ルコトデアル、故ニ幸ニ委員ニ御出デヾアリマシタナラバ、能ク御審議ヲナサッタラ宜カラ
ウト思フ、ソレカラ調査會ノコトニ付テ御質問デアリマシタガ、別ニ之ヲ先例トシテ屢〓調
査會ヲ兩院議員ヨリ集メテ設ケルト云フ方針ヲ採ッテモ居リマセヌ、併ナガラ斯樣ナル重
大ナル問題ニ付テハ兩院議員竝ニ行政官ノ知識ヲ集メテ審査スルガ公平ナル案ヲ得ルデ
アラウト考ヘテ、此調査會ヲ設ケタノデアリマス、是ハ高木君モ其委員ノ一人デ、其調査
會ガ惡ルカッタラ委員ニ御出ニナッタノガ不思議デアル、免ニ角斯樣ナル次第デ以テ調査
會ヲ設ケテ高木君ナドノ御名論ヲ承ッテ此案ヲ確定シタノデアリマス、ソレカラ承ハルトコ
ロニ依ルト質問ノ通告ハ是ダケト云フコトデアリマスガ、先刻ノ說明ニ足ラザルトコロガ澤
山アリマスケレドモ、一二委員會ニ移ル前ニ說明ヲ致シテ置キタイノハ、大選舉區ト小選
舉區ニ於テ選舉取締ニ非常ノ相違ガアルト云フコトヲ申シテ置キター大選舉區ノ下デ
取締致シテ、眞正ニ選舉人ノ權利ヲ實行サセウト云フコトハ非常ニ困難デアリマス、之
ニ反シテ小選舉區デアリマスレバ、取締上甚ダ便利ヲ得テ取締ガ行居クデアラウト考ヘ
ル、從ッテ費用モ減ジ選舉權ノ行使モ完全ニ致スコトガ出來ルカト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、又大選舉區ノ下ニ於テハ選舉人ト被選擧人トハ殆ド相關セザルヤウナトコロガアル、
選舉ノ際ノミ金錢若クバ其他ノ方法ニ依ッテ當選ヲ計ッテモ選擧ガ濟メバ、マルデ選舉人
ト被選舉人トノ關係ガ完ク消滅シテシマフヤウナ傾ノ處モアル、悉クトハ申サヌ、是ガ小選
擧區デナケレバ、選舉人ノ被選舉人トノ關係ヲ密著ナラシメテ、其政見ヲ明瞭ニ知ッテ
當選スルト云フコトハ困難ナリト考ヘルカラ是等モ改正案ヲ提出シタル一部ノ理由デア
リマス、其他說明ニ漏レマシタコトハ尙委員會ニ於テ詳シク申述ベルコトト致シマスガ、
二〓ヲ此處ニ補ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=62
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063・大岡育造
○議長(大岡育造君) 日程第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉ヲ議題ト致
シンス
第八右議案ノ審查ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=63
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064・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ三十六名ノ委員、議長ノ指名ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=64
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065・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
(「異識ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=65
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066・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ議長指名三十六名ノ委員ニ付託スルコトニ
可決致シマシタ、日程第九、群馬縣下郡界變更ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス、提出者請願委員長武藤金吉君
第九群馬縣下郡界變更ニ關スル法律案(請願委員長第一讀會
提出)
群馬縣下郡界變更ニ關スル法律案
群馬縣上野國山田郡毛里田村、韮川村、矢場川村、休泊村ヲ同縣同國新田郡
ニ編入ス
附則
本法ハ明治四十五年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔武藤金吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=66
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067・武藤金吉
○笹藤金吉君 請願委員會ノ經過ヲ報告致シマス、本案ハ群馬縣山田郡矢場川
村長茂木安太郞外三名ノ請願デアリマス、紹介議員ハ武藤金吉デアリマス、本請願ハ
群馬縣山田郡ノ毛里田村、韮川村、矢場川村、休泊村、ノ四箇村ヲ群馬縣下ノ新
田郡ニ編入ヲシテ貰ヒタイト云フノデアマリス、又其理由ハ此四箇村ハ下山田ト稱シマシ
テ地理ノ便宜上ハ勿論、人情風俗總テガ同一デアリマシテ、殊ニ此下山田郡四箇村ハ
渡良瀨川ヲ境トシテ上ト下ト分レテ居ルノデアリマス、上山田ハ純然タル機業地デアリマ
ス-機場デアリマス、下山田ハ純然タル農村デアリマシテ郡役所ノ所在地マデハ四五
里モアルノデアリマス、サウシテ此新田郡ノ郡役所ノ所在地ニハ此四箇村共近キハ五六
町デアリマス、遠キモ一里ヲ越ヘナイノデアリマス、ソレデ水利組合ノ如キハ新田郡役所
ガ管理ヲ致シテ居リマス、又電信ノ配達區域ノ如キモ此新田郡ノ郡役所ノ所在地デア
リマス、又裁判所、登記所ノ如キモ其管轄ニ屬シテ居リマス、總テノ行政上ノ便宜ハ此
新田郡ニ接近セラレテ居リマシテ、明治二十六年ニハ時ノ群馬縣知事中村元雄ハ此
新田郡ニ編入スベシト云フ諮問案ヲ四箇村ニ問ハレタコトガアルノデアリマス、四箇村ハ
村會ヲ開イテ之ヲ認メタノデアリマス、其後ニ於テ合併ハ出來ナイデアリマシタガ、年々
歲々此請願ハ併セル方ノ四箇村ハ村會ノ決議ヲ以テ請願ヲ致シテ居ルノデアリマス、又
合併ヲサレル方ノ新田郡ニ於テモ別段ノ異議ハナイノデアリマス、(「ノウ〓〓」)唯此異
議ノアルノハ現在ノ知事神山潤次ガ反對ヲスルノデアリマス、是ハ此桐生ガ市ニナラナイ
中ハイケナイト云フノデアリマシテ、又內務省ニ於テモ實情ハ之ヲ認メテ居ルノデアリマスル
ガ、縣知事ガ贊成ヲシナイト云フ理由ヲ以テ反對ヲサレテ居ルノデアリマス、前議會ニ於
テ本院ハ通過ヲ致シマシタ、貴族院ニ於テ否決ヲサレマシタ、前々議會ニ於テハ本案ハ
早ヤ法律案トナッテ通過ヲ致シテ、サウシテ貴族院ハ本會ニ掛ケラレズニシマッタノデアリ
マス、請願委員會ハ分科會ニ於テ相當ナル請願ト認メマシテ法律案ノ起草委員ヲ選
定致シマシテ、此法律案ヲ御示シノ通リノ「群馬縣上野國山田郡毛里田村、韮川村、
矢場川村、休泊村、ヲ同縣同國新田郡ニ編入ス、附則本法ハ明治四十五年七月一
日ヨリ之ヲ施行ス」斯樣ナ法律案ヲ制定致シマシタ、サウシテ請願委員會ニ於テハ滿場
一致ヲ以テ可決ヲ致シタノデアリマス、此段御報告ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=67
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068・細野次郎
○細野次郞君 本案ハ昨年モ一昨年モ武藤君ガ提案セラレ詳細ニ御說明ニナリマシ
タ、本員ハ之ニ反對ノ理由ヲ二度述ベマシタ、同ジ理由ニ於キマシテ本年又反對ヲ致
シマス、本員反對ノ理由ハ武藤君ハ唯今述ベラレマセヌガ、大體武藤君ノ言ハレルトコ
ロニ本員モ異議ハナイノデアリマス、併ナガラ此四箇村ヲ新田郡ニ合シマスルト山田郡ハ
獨立ノ能力ヲ失ヒマス(「ノウ〓〓」)一郡ヲ廢郡ニ致シテマデモ此村民ノ意ヲ達スルコト
ハ出來ナイ、此理由ニ於テ反對ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=68
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069・武藤金吉
○武藤金吉君 議長
〔「モウ宜カラウ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=69
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070・武藤金吉
○武藤金吉君 宜クハナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=70
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071・大岡育造
○議長(大岡育造君) 武藤金吉君
〔武藤金吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=71
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072・武藤金吉
○武藤金吉君 委員會ノ報告ニ贊成致スモノデアリマス、唯今敬愛スル細野次郞君ノ
御反對ノ演說ハ其反對ノ骨子ヲ拜聽スルコトノ出來ナイノヲ遺憾トスルノデアリマス、要ス
ルニ山田郡ノ獨立ノ能力ヲ缺クト云フノガ主眼デアリマスカラ、私ハ其主眼ノ〓ニ付テ
論ジヤウト思ヒマス、此四箇村ハ矢場川村ガ三千四百九十、休泊村ガ三千八百十九、
韮川村ガ四千四百三十一毛里田村ガ七千七百四十四、合計一万九千四百八ノ
人口ヲ有シテ居リマス、而シテ山田郡全體ノ戶數ハ今日八万三千四百八十九ヲ有シ
テ居ルノデアリマス、ソレデ之ヲ差引キシマスルト、マダ四箇村ヲ除イテモ六万四千五ノ
人口ヲ有シテ居ル、全國デ郡ノ數ハ五百三十九アリマス、此五百三十九ノ中デ六万
以上ノ人口ヲ有シテ居ル郡ハ半分ナイノデアリマス、サウスルト全國ニ於ケルトコロノ此
六万持タナイトコロノ郡ハ一郡ヲ維持スルノ能力ハナイモノデアリマスルガ、殊ニ山田郡ノ如
キ桐生ノ如キハ東洋ノ「マンチエスター」トモ稱スベキトコロノ市ニナル資格ヲ持ッテ居ル所
デ此四箇村ヲ省イタトコロガ郡ノ獨立ノ資格ガナイト云フコトハ殆ド論據ニナラナイノデ
アリマス、殊ニ工業地ト農業地トヲ合併シテ置クト云フコトハ其獘ニ於テ、又行政ノ上ニ
於テ、甚ダ是ハ相背反ヲシテ居ルノデアリマス常ニ論者ハ經費ノ節減ヲ唱ヘ繁文ノ
縟禮ヲ唱ヘテ居ッテ、事實ノ上ニ於テモ尙認メテ居ルニモ拘ラズ、此御議論ヲナサレルト
云フコトハ甚ダ私ハ細野君ノタメニ惜ムトコロデアリマス、此問題ハ議論ノ問題ヨリモ實
際ノ問題デアリマシテ、唯今私ハ委員長トシテ報告スル理由ニ於テ明カニ此人情、
風俗結婚、金融、登記所、電信Y郵便ノ配達區域、又水利組合、總テノコトガ
違ッテ居ルノデアリマスカラ、此問題モ或ハ此知事ガ反對デアリマスルガ、併シ此知事サヘ
同意ヲスレバ內務省ニ於テモ異議ハナイノデアリマス、貴族院ニ參リマシテ如何ナル運命
ニ遭フカ知レマセヌガ、免ニ角總テノ行政ノ區劃ノ〓ニ於テ斯樣ナル問題ヲ解決スルコ
トハ極リ切タル問題デアリマスカラ、細野君カラ御反對ノ演說ガナケレバ、本年ハ演說ヲ
致サヌ積リデアリマシタ、ケレドモ細野君カラ反對ノ御演說ガアリマシタカラ甚ダ此議場
ヲ煩ハス虞ガアリマスケレドモ、一言贊成ノ理由ヲ述ベテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=72
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073・恒松隆慶
○恆松隆慶君 採決ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=73
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074・大岡育造
○議長(大岡育造君) 採決ヲ致シマス、本案ニ付テ二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=74
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075・恒松隆慶
○恆松隆慶君 ドウカ直ニ二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=75
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076・大岡育造
○議長(大岡育造君) 直ニ二讀會ヲ開クコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=76
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077・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ直ニ二讀會ヲ開キ、本案ヲ議題ニ供シマス
群馬縣下郡界變更ニ關スル法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=77
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078・恒松隆慶
○恆松隆慶君 全部ヲ議題トシテ讀會ヲ省略シテ確定セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=78
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079・大岡育造
○議長(大岡育造君) 讀會ヲ省略シテ確定スルニ御異議ハアリマセヌカ
群馬縣下郡界變更ニ關スル法律案確定議
〔「異議ナシ異議ナシト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=79
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080・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ本案ハ讀會ヲ省略シテ可決スルコトニ決定
致シマシタ-日程第十及第十一ノ議案ハ關連セル議案デアリマスカラ、一括シテ議事
ニ付シタイト思ヒマス、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=80
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081・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ一括シテ議事ニ付シマス、市制中改正法
律案、町村制中改正法律案、提出者小河源一君
第十市制中改正法律案(小河源一君提出)第一讀會
市制中改正法律案
市制中左ノ通改正ス
第十一條第二項末段「若ハ」ノ下ニ「刑ノ執行猶豫ヲ受ケタル者ヲ除クノ外」
ヲ加フ
第十一町村制中改正法律案(小河源一君提出)第一讀會
町村制中改正法津案
町村制中左ノ通改正ス
第九條第二項末段「若ハ」ノ下ニ「刑ノ執行猶豫ヲ受ケタル者ヲ除クノ外」ヲ加フ
〔小河源一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=81
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082・小河源一
○小河源一君 簡單ニ兩案提出ノ理由ヲ說明致シマス、市制ニ於キマシテハ十一條
第二項、町村制ニ於キマシテハ第九條ノ第二項ハ、ドチラモ現行法支ガ同一デアリマ
ス、修正ノ事柄モ亦同一ニ歸スルノデアリマス、而シテ此改正ハ曩ニ提出ヲ致シマシタ
刑法施行法中改正法律案ト相伴フモノデゴザイマシテ、刑法施行法中ノ改正ヲ致シマ
シテ、執行猶豫ヲ受ケタルモノニ對シテ公權ヲ行フコトヲ許スト云フコトニナリマスレバ、是
マデ設ケラレテ居ル民法其他ノ單獨法律ニ於キマシテ種ミナルトコロニ影響ヲ及ボシマシ
テ、之ニ對シテ悉ク公權ヲ行フ權利ヲ有スルコトニナルノデゴザイマス、左樣ナリマスレバ
總テノ舊法ハ別段ニ改正ヲ要スルコトハナイノデアッテ、施行法ノ此一部ヲ改正スレバワレ
デ濟ムノデアリマスルガ、此市制町村制ハ昨年新ニ制定セラレマシタ法律デアリマスガ故
ニ、他ノ法律ニハ公權剝奪若クハ公權停止ト云フコトガ記載セラレテアリマスルケレド
モ、新刑法ガ發布セラレタル後ハ、卽チ公權剝奪、公權停止ナルモノガ無クナリマシテ、
後ニ出來マシタルトコロノ市制町村制ハ、公權ト云フコトガ記載シテナイノデアル、公
權ト云フコトガ記載シテナイ代リニ、斯樣ナコトガ書イテアル「禁錮以上ノ刑ニ處ヒラレタ
ル者亦同シ」「亦同シ」ト云フノハ公民權ヲ行フコトガ出來ナイト云フノデ、是デハ禁錮以
上ノ刑ニ處セラレタルモノデアリマスルガ故ニ、公權ノ停止ヲ解カレマシテモ、ソレヲ以テヤ
ハリ禁錮以上ノ刑ヲ犯シタモノデアルト云フコトニナリマスルガ故ニ、市町村制デアレバ公
民權ヲ行フコトガ出來ナイト云フコトニナル、因テ選舉權被選舉權モナイト云フコトニナリ
マヽ、從ッテ公民權ノナイモノハヤハリ郡制府縣制ニ依リマシテ、此場合ニ於キマシテヤハ
リ選舉權ヲ行フト云フコトガ出來ナイト云フコトニナリマスカラ、此法律ヲ改正致シマセ
ヌケレバ、他ノ法律ト伴フテ同一ノ權衡ヲ得テ行フコトガ出來ナイノデアリマスルガ故ニ、
曩ニ提出致シマシタトコロノ施行法ヲ改正致シマスレバ、之ヲ改正シナケレバ法律ガ跛ニ
ナリマスルガ故ニ、之ニ伴フ法律トシテ此改正案ヲ提出致シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=82
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083・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ刑ノ執行猶豫云〓ト云フ簡單ナ修正案デゴザイマス、是ハ前ニ
刑ノ執行猶豫ニ關スル法律案ト云フガ委員ニ付託ニナッテ居リマス、其委員ニ付託ニ
ナック方ガ委員ト云ヒ、政府ト云ヒ、便利デアラウト思ヒマス、此動議ヲ提出シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=83
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084・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=84
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085・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ恆松君ノ動議ノ通リ前ニ付託シテアル刑ノ
執行猶豫ニ關スル法律案ノ委員ニ付託スルコトニ決シマス、日程第十二ハ拘留科料ニ
關スル裁判法案デアリマスルガ、是ハ提出者ヨリ本日說明ヲ延期スルコトニナリマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=85
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086・恒松隆慶
○恆松隆慶君 ソレデハ十二ハ延期デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=86
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087・大岡育造
○議長(大岡育造君) 延期ニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=87
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088・恒松隆慶
○恆松隆慶君 今日ハ是デ閉會ニナリ、他ノ日程ハ次ノ會ニ付セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=88
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089・大岡育造
○議長(大岡育造君) 見渡シマストコロ定數モ危イヤウデアリマス、今日ハ是ニテ散會
シ、次ノ日程ハ公報ヲ以テ御報告致シマス
午後四時二十五分散會
衆議院議事速記錄第十一一號正誤
頁段行誤正頁段行誤正
一三上二二伺ツテ向ツテ二六下二九輕小黨ヲ爲シ繼承統ヲ作シ
テテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01319120227&spkNum=89
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