1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治四十五年三月七日（木曜日）午後一時十三分開議
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議事日程 第十六號 明治四十五年三月七日
午後一時開議
質問
一 教育方針に關する質問（星一君提出）
二 清國動亂に關する質問（柴四朗君提出）
三 官紀振肅に關する質問（武田貞之助君提出）
四 米價騰貴に關する質問（武市庫太君提出）
五 土地増價税に關する質問（千田軍之助君提出）
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第一 陸軍作業會計法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 鑛業法中改正法律案（武滿義雄君提出） 第一讀會
第四 國有土地森林原野下戻法中改正法律案（岡田泰藏君外一名提出） 第一讀會
第五 家畜市場法中改正法律案（漆昌巖君提出） 第一讀會
第六 辯護士法改正法律案（岡田泰藏君外十一名提出） 第一讀會
第七 農工銀行法中改正法律案（粕谷義三君外二名提出） 第一讀會
第八 産牛馬組合法改正法律案（高橋嘉太郎君外三名提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第九 水道條例中改正法律案（井上角五郎君外八名提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第十 關税定率法輸入税表中改正法律案（武藤金吉君提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第十一 高等工業學校設置に關する建議案（鷲田土三郎君提出）
第十二 石油引火點規則改定實施に關する建議案（齋藤二郎君提出）
第十三 山陰高等農林學校設置に關する建議案（恒松隆慶君提出）
第十四 丹後鐵道建設に關する建議案（岡田泰藏君外六名提出）
第十五 紀勢鐵道建設に關する建議案（千田軍之助君外七名提出）
第十六 朝鮮拓殖銀行設立に關する建議案（三浦覺一君提出）
第十七 兒童玩具製造下級工手學校設立奬勵補助金下付に關する建議案（淺羽靖君提出）
第十八 日本刀劒鍛冶法維持の爲めに刀劒師養成に關する建議案（永野靜雄君外一名提出）
第十九 七尾灣築港に關する建議案（戸水寛人君外五名提出） （委員長報告）
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=0
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001・大岡育造
○議長(大岡育造君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル識案左ノ如シ
陸軍作業會計法中改正法律案
一貴族院ハ本院ノ送付ニ係ル政府提出鐵道敷設法中改正法律案明治四十五年
度歲入歲出總豫算案竝明治四十五年度各特別會計歲入歲出豫算案豫算外
國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件ヲ可決シ本院提出巡查看守退隱料
及遺族扶助料法中改正法律案ニ對シテハ第二讀會ヲ開カサルコトヲ議決シタル
旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
兒童玩具製造下級工手學校設立奬勵補助金下付ニ關スル建議案
提出者淺羽靖君
日本刀劒鍛冶法維持ノ爲メニ刀劒師養成ニ關スル建議案
提出者永野靜雄君淺羽靖君
一提出者ヨリ撤囘ノ申出アリシ議案左ノ如シ
府縣制中改正法律案(大內暢三君外三名提出)
郡制中改正法律案(大內暢三君外三名提出)
府縣制中改正法律案(三谷軌秀君提出)
府縣制中改正法律案(川崎安之助君外二名提出)
藏内治郎作君病氣ノ爲昨六日ヨリ二週間請暇ノ申出アリ
大野龜三郞君病氣ノ爲今七日ヨリ二週間請暇ノ申出アリ
市田兵七君病氣ノ爲今七日ヨリ八日間請暇ノ申出アリ
一川原茂輔君病氣ノ爲今七日ヨリ二週間請暇ノ申出アリ
〔左ノ報告及質問主意書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
一去四日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
保險業法中改正法律案
小川平吉君繩久逸
谷金藏君谷義奉二雄一覽川藤木二三郞郞君君君君
田虎之助君森加淺武翠齋八鐵
鈴鈴吉西木辰次郞君花藤片古粕大岡直田貞之助
木寅彥君井善素敵よろ瀨野陽吉君
鈴木摠兵衞君井禧逸君
臘虎膃肭獸獵獲禁止ニ關スル法律案外一件
阿部德三郞君塚田啓太郞君細川義昌君
山際敬雄君三浦覺君君小小寺謙吉君
藏原惟郭君淺羽靖一橋榮太郞君
一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
治安警察法中改正法律案委員會
委員長阿部德三郞君理事日野國明君
金名鐵道建設ニ關スル建議案外一件委員會
委員長米田穰君理事笠川繼孝君
保險業法中改正法律案委員會
八木逸郞君
委員長小川平吉君理事淺武野田貞之助君
陽吉君
臘虎膃肭獸獵獲禁止ニ關スル法律案外一件委員會
委員長塚田啓太郞君理事小橋榮太郞君
一昨六日國稅徵收法中改正ニ關スル建議案委員高柳覺太郞君病氣ノ爲辭任ニ
付其補闕トシテ髙木正年君ヲ金名鐵道建議ニ關スル建議案外一件委員岡井
藤之丞君病氣ノ爲辭任ニ付其補闕トシテ牧野平五郞君ヲ私設運河築港ニ關ス
ル建議案委員柏原左源太君病氣ノ爲辭任ニ付其補闕トシテ江原節君ヲ議長ニ
於テ選定セリ
〓育方針ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十五年二月二十四日
提出者星一贊成者古森泰
外三十五人
〓育方針ニ關スル質問主意書
一中學校入學ヨリ帝國大學卒業ニ至ル學年ヲ二年以上短縮シ得サルカ
一現存中學校ノ數ヲ減シ之ニ換ユルニ實業學校ヲ以テスル意思ナキカ
一官立專門學校入學生ノ入學試驗ヲ改正スル必要ナキカ
一田園生活ヲ樂ム支學書ヲ奬勵又ハ普及セシムルハ目下ノ急務ナラサルカ
右及質問候也
〓國動亂ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十五年二月二十七日
提出者柴四朗贊成者石田孝吉
外五十人
〓國動亂ニ關スル質問主意書
一我カ北京駐在ノ伊集院公使ハ〓帝退位迄君主立憲主義ヲ固執セリト聞ク事
實如何
二大總統ニ舉ケラレシ袁世〓カ南京政府ニ對シ北京ヲ去ル能ハサル理由ノ一トシ
テ北京ノ親王中某國ニ愚弄セラルルモノアルカ爲ナリト答ヘシハ明ニ日本帝國ヲ
指シタルモノナリト云フ政府ノ所見如何
邦人對招商局トノ借款ハ果シテ成立セシヤ其ノ經過如何
南滿洲ノ治安維持方策及將來ノ方針如何
七六五四三南滿洲ノ吉長鐵道及吉會鐵道ニ對スル方針ハ如何
奉天山海關ノ鐵道守備ニ對スル方針如何
我カ陸軍將校中ニ武昌革命軍ヨリ不當ノ金錢ヲ受領シタルモノアリト云フ實
否如何
八〓國動亂以來我カ邦人中退〓ノ處分ヲ受ケシ者アリヤ若之アラハ其ノ員數犯
罪事項及將來ノ取締方法如何
右及質問候也
米價騰貴ニ關スル質問主意書
右成規ニ據り提出候也
明治四十五年二月二十七日
提出者武市庫太贊成者夏井保四郞
外三十人
米價騰貴ニ關スル質問主意書
地方農民ノ生活狀態ヲ進ムルニハ農產物特ニ米穀ノ價格ヲ相當ニ維持セシムル必
要アリ然レトモ亦之ヲ常用スル者ノ生活費ヲ高カラシムルハ社會ノ健全ナル發達ヲ遂
クル所以ニ非サレハ農家ノ收益ハ成ルヘク現狀ヲ維持セシムルト共ニ國民ノ常食物ハ
現今ヨリモ低廉ニ之ヲ供給シ增ルノ政策ヲ取ル必要アリト信ス依テ次ノ五問ヲ掲ク
一政府ハ農業改良ニ對スル低利資金供給額ヲ增ス意思ナキカ
二政府ハ獨逸ニ於ケルカ如ク地方農村ニ共同信用銀行ヲ設ケ低利ナル資金ヲ融
通セシムルコトニ付調査ヲ爲シタルコトアリヤ、アリトスレハ政府ノ之ニ對スル方針
如何
三國有鐵道ノ米穀運搬賃金ヲ現今ヨリモ引下クルノ餘地ナキヤ
四政府ハ現今ノ米價ヲ以テ過當ナリトハ認メサルヤ、過當ナリトセハ之ニ對スル緩
和策ヲ講スル意思アリヤ如何
五政府ハ現今ノ米穀取引所ノ制度ヲ以テ完全ナルモノト認ムルヤ又之カ改善ノ
餘地アリトハ認メサルヤ、改善ノ餘地アリトセハ如何ナル方法ヲ以テ之ヲ調査シツ
ツアリヤ又改善ノ計畫及時期如何
右及質問候也発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=1
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002・大岡育造
○議長(大岡育造君) 是ヨリ會議ヲ開キ、御諮リヲ致シマス、唯今報告ノ議案撤囘
ニ關スル件ハ之ヲ許可スルニ御異議アリマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=2
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003・日野國明
○日野國明君 チヨット其事ニ付テ本員等ガ提出致シマシタ府縣制ノ改正郡制
ノ改正ハ川崎君三谷君等ヨリ提出ニナリマシタ府縣制ノ改正案ト共ニ審査委員會ニ
於テ審査中ニ政府委員ハ昨年市町村制ノ改正ニナッタ結果、府縣制等ニモ全體ニ亙ッ
テ改正ヲ加フル必要アリト認メテ目下調査中デアル、成ベクナラバ次ノ議會ニモ其案ヲ
提出シタイ考デアルト云フ言明デアリマス、ソレデ尙本員等ノ出シマシタ此部分的ノ改
正ニハ目下同意シ難イト云フコトデアッタノデアリマス、ソレデ本員等ノ改正案ハ次ノ議
會ヲ待ツコトノ出來ナイ程ニ急ヲ要スルモノデアリマセヌカラ、政府ノ其言明ニ信ヲ置キ
マシテ撤囘スルコトニ致シタノデアリマス、川崎君三谷君ノ撤囘モ同樣ノ理由デアルト
云フコトヲ私ハ承知ラ致シテ居ルノデアリマス、本會ノ御承認ヲ仰グ次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=3
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004・塚田啓太郎
○塚田啓太郞君 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=4
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005・大岡育造
○議長(大岡育造君) 塚田君ハ今ノ件デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=5
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006・塚田啓太郎
○塚田啓太郞君 サウデハアリマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=6
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007・大岡育造
○議長(大岡育造君) サウデナケレバチヨット御待チナサイ-議案ノ撤囘ニ關シテ御
異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=7
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008・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ許可スルコトニ決シマシタ、尙唯今報告致シ
マシタ請暇ノ件モ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=8
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009・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ之ヲ許可スルコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=9
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010・塚田啓太郎
○塚田啓太郞君 此場合議長ノ許可ヲ得テ田畑地價修正ノ建議案ノ委員會ヲ開
キタイト存ジマス許可ヲ請ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=10
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011・大岡育造
○議長(大岡育造君) 如何デスカ、餘リ多數御出席モナイ譯デスカラ、モウ少シ後ニシ
テハ-折角ノコトデスカラ御諮リヲ致シマスガ、此際田畑地價修正ノ委員會ヲ開ク
ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「許可スベカラズ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=11
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012・大岡育造
○議長(大岡育造君) 今少シ御待チニナッタラドウデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=12
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013・塚田啓太郎
○塚田啓太郞君 異議ガナイト云フコトデスカラ·発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=13
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014・大岡育造
○議長(大岡育造君) ソレデハ之ヲ許スニ御同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
起立者少數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=14
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015・大岡育造
○議長(大岡育造君) 少數デス、是ヨリ質問ヲ許可致シマス、星一君
〔星一君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=15
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016・星一
○星一君 私ハ玆ニ〓育方針ニ關スル質問ニ付、其趣意ヲ辯明セントスル者デアリマ
ス、〓育ニ關スルコトハ此範圍ガ廣ウゴザイマスカラ詳シク申上ゲルト、多大ナル時間ヲ
要シマスル故ニ極メテ簡單ニ其質問ノ要旨ヲ述ベルコトヽ致シマス、第一ノ質問ハ中
學校ヘ入學當時ヨリ帝國大學ヲ卒業スルニ至ル學年ハ現在ヨリモ二年以上短縮スル
コトハ出來ナイカト云フコトデアリマス之ニ關シテ私ハ小學校ノ〓育ニ對シテモ多少
ノ意見ハ持ッテ居リマスガ、是ハ他日ニ讓リマス、我中學校ノ學年ハ五箇年高等學校ハ
三年、大學校ハ學科ニ依リマシテ三年ト四年ト四年半トゴザイマス、之ヲ通算シマスル
ト都合十一年ト十二年半ニナリマス今私ハ中學校ノ入學者ノ年齡ニ就テ文部省ノ
報告ヲ見マスルト、中學校ノ入學者ノ平均年齡ハ満十四歲デゴザイマス高等學校ノ
入學者ノ平均年齢ハ二十歲、帝國大學ノ入學者ノ平均年齡ハ二十三歲ト云フコト
ニチ、數ヘ年二十五歲ニナッテ居リマス、是ハ少々高過ギルト思ヒマスカラ、之ヲ短縮
スルコトハ極メテ必要ナコトデ、又出來得ルコトヽ私ハ確信シテ居リマス、私ノ見マシタル
文部省ノ報告書ニ依リマスルト卒業者ノ年齡ヲ書イテアリマセヌ故ニ、卒業者ノ平均
年齢ヲ申上ゲルコトハ出來マセヌガ、今大學校ノ入學者ノ年齡ヲ基礎ト致シマシテ、之
ニ帝國大學ノ學期ヲ通算シマスルト、落第ナシニ總テノ人ガ及第セシト假定シテモ、卒
業者ノ平均年齡ハ滿二十六歲及二十七歲半ニ達シマス數ヘ年ノ二十八歲カラ一二
十歲ト云フコトニナリマス、人生五十三十ニ達スル人ガ學校ヲ出ル者ニ取リマシテ
ハ何事ヲ爲スニモ、日暮レテ道遠キ感アラント私ハ同情ニ堪ヘマセヌ次第デアリマス、學
校〓育ハ人生ニ取リテ萬全萬能ノモノデアルナラバ、滿二十七八歲マデ學校ニ居ルコト
ハ厭フトコロデハアリマセヌケレドモ帝國大學ヲ卒業シマシタトコロデ、是ハ專門ノ奧義
ヲ極メタト云フ譯ニハ參リマセヌ、未ダ專門ノ初歩ニ過ギナイノデゴザイマス、卒業後社
會ニ出デ活動的社會ノ實驗ト訓練トヲ俟タナケレバ、物ニハナリマセヌノデゴザイマスサ
スレバ帝國大學ノ卒業者ノ平均年齡ヲ私ノ考ニハ滿二十三歲若クハ四歲位ニ短縮シ
テ、早ク社會ニ出シ實物的訓練ヲ受ケサセルト云フコトハ、人間精力ノ旺盛ナル靑年
時代ヲシテ空シク學校ニ蟄居セシメズシテ、其精力ヲ最モ有效ナル方法ニ消費セシムル
所以デアッテ、啻ニ靑年者ノ幸福トスルノミナラズ、、社會上及國家上、有益ナルコトヽ思ヒ
て、私ハ歐羅巴各國ノ大學校ノ卒業者ノ平均年齡ヲ詳シクハ知リマセヌ、併シ亞米
利加ノ大學校-カレーヂ」ノ卒業者ノ平均年齡ハ二十一歳ト承知シテ居リマス、
日本ノ大學ノ卒業者ノ年齡ヨリハ遙ニ五年モ六年モ低クナッテ居リマス、ソレニ拘ハラズ
彼國デハ尙其學年ヲ短縮スベシトノ議論ガ盛ニ行ハレテ居リマスノデ、米國ノ實業家ノ
「カーネギー」氏ナドモ頻リニ短縮論ヲ唱ヘテ、滿十八歲若クハ十九歲デ「カレーヂ」ノ「ラ
イフ」ヲ卒ヘシメタイト云フコトヲ主張シテ居リマス、我國ノ實業家ノ益田孝サンガ、先年
歐米漫遊後、此學年短縮論ヲ持出シタコトヲ私ハ記憶シテ居リマス、是ハ大學校ノ專門
ナルモノガ尙專門ノ幼稚ナルモノデアルト云フコトガ、實業家ニ認メラレテアルト云フコト
ノ參考ニ供スルコトガ、出來ヤウト思ヒマス、中學校ヨリ大學校卒業マデノ間ノ年限ハ
今申シタ通リ、十一年ト十二年半デアルカラ、ソレガ長過ギマスル故ニ、是カラ二年又ハ
三年ヲ短縮シテモ結果ガ惡ルクナラヌ、、寧口宣シイコトニナルダラウト私ハ確信致シマス、無論
短縮スルニ於キマシテハ學科、、課程ノ整理ヲシナケレバナリマセヌガ、今一々此學科目ノ問
題ニ立入リマスルト長クナリマスカラ約シマスガ、今其一例ヲ舉ゲテ見マスルト、外國語ノ
科目デゴザイマス、高等學校ニ於テハ外國語ヲ二ツ〓ヘルコトニナッテ居リマスガ、此二ツノ
外國語ノタメニ學生ハ非常ナル苦痛デ總テノ科目ハ之ガタメニ犠牲ニ供セラレテ居ル有
樣デゴザイマス、斯ル多大ナル犧牲ヲ拂フトコロノ外國語モ、大學校ニ行キマスルト一ツノ
國語デ宜イト云フコトデアル、ソレナラバ最初ヨリ一ツノ外國語デ通シタコトナラバ學生
ニ取ッテ非常ナ幸福ナコトデアラウト私ハ思ヒマス、何ノタメニ二ツノ外國語ガ必要カト
言ヒマスルト、參考書ヲ讀ムニ必要ダト言ヒマスガ、今英、佛、獨ノ歐羅巴各國ニ於キマ
シテハ有名ナル著書ハ相互間ニ翻譯サレテ居リマスカラ、參考書ヲ讀ムニ一ツノ外國語
デ不都合ハ決シテナイノデアリマス、ソレノミナラズ日本ノ大學校ノ今日ノ〓授法ヲ見マ
スルト生徒ハ〓授ノ講義ヲ筆記シテソレヲ鵜呑ニシテ居ルヤウナ有樣デ、參考書ナド
ヲ讀ム時間ハチットモナイノデアリマス、若シ假ニ卒業後ニ於テ參考書ヲ讀ムガ必要トア
ルナラバ其必要ノアル者ガ卒業後ニ於テ〓究シタナラバソレデ宜イ、無理ニ學校ニ
於テ之ヲ一般學生ニ課スル必要ハ私ハナイト信ジテ居リマス、故ニ此二ツノ外國語ヲ廢
シテ一ツノ外國語ニシタダケテモ私ハ優ニ此間ノ學年ニ一年ヲ短縮スルコトガ出來ルト
信ジマス、況ヤ中學校カラ大學校ニ至ル間ノ課程ト〓授法ニ改良ヲ加ヘマシタナラバ二
年ハ勿論三年モ短縮スルコトガ出來ルト信ジテ居リマス、ツレニ大學校ノ〓授連ノ〓
授ノ方法デゴザイマスガ、日本大學ノ〓授連ハ餘リニ勿體振ヲシテ居リマスガ之ヲ廢
メテ、生徒ニ完全ナル参考書ヲ作ッテヤリ、大勉强デ懸値ナシニ賣却ヲシタナラバ、彼ノ法
科ノ四年ナドハ必ズ二年デ卒業セシムルコトガ出來ルト私ハ思ヒマス、又醫科ハ四年半
ニナッテ居リマスガ實際ハ五年掛ッテ居リマス學生ノ話ニ依リマスルト此〓授連ガ內
職ヲ廢メテ本氣ニナッテ〓ヘテ呉レルコトナラバ、立派ニ三年デ卒業シテ見セルト言ッテ居
ルノデゴザイマス、ソレデスカラ此短縮ハ確ニ出來得ベキコトヽ私ハ確信シテ居リマス、又同
樣ニ專門學校、實業學校等ノ學年ヲ短縮スルコトガ、私ハ出來ルト信ジマス、文部省
ハ將來此學年短縮ヲ爲ス方針デアルカドウカ、是ガ私ノ第一ニ聽カントスル質問ノ要
點デゴザイマス、第二ノ質問ハ中學校ノ數ヲ減ジテ之ニ換ヘルニ實業學校ヲ以テスル
ノ意思ガナイカト云フコトデゴザイマス現在中學校ノ數ハ三百五ゴザイマス內六十ハ
私立ノ學校デゴザイマス、公立中學校デ一番多イ縣ハ十一ゴザイマス、平均六、七二
ナッテ居リマス、中學校ハ男子ニ須要ナル高等普通〓育ヲ爲スヲ以テ目的トスト、文部
省ハ定義ヲ付ケテ居リマシテ、誠ニ結構ナトコロデアリマスケレドモ、實際我中學校ノ卒業
生ノ送リ場所及彼等卒業後ノ狀態ヲ觀察シマスルトキニハ、我國ノ現狀ニ照シテ中學
校ノ數ガ多過ギルト思ヒマス、之ヲ半分位ニ減ジマシテ、殘リ〓中學校ハ實業的知識ヲ
授ケル卽チ高等普通ノ實業的職業ニ從事シ得ル青年ヲ養成スル學校ニシタナラバ當
人ニ取ッテモ亦國家經濟上有益ナルコトヽ私ハ存ジマスヽ今中學校卒業生中ノ公立中
學校ノ生徒卒業後ノ狀態ヲ見マスルト、四十二年度ニ於キマシテ卒業生ガ總數一万
一千七百八人デ、其中高等學校ニ入學シタ者ハ僅ニ八百二十人デゴザイマス、其他ノ
學校ニ入ッタ者、兵役ニ從事シタ者モアリマスガ、今職業ニ從事シタ者ヲ擧ゲテ見マスレ
バ學校〓員、是ハ重ニ小學校ノ〓員デゴザイマス、是ガ千百十一人、官廳ノ職員ト
ナッタモノガ二百三十五人、其他ノ職業ニ從事シタルモノガ千七百四十人就職未定
ノモノガ四千零十四人デアリマス、諸君、驚ク勿レ、中學校生徒ノ半數ニ垂ントスルモノ
ハ職業ヲ得ルコトガ出來ズニ迷ウテ居ルノデアリマス、是ハ中學校ノ罪デハナイ、入ル者
ノ罪デアルトスレバ、議論ハ盡キマスガ、生徒ニ取リテハ不幸、親達ニ取リテハ至極迷惑
ナコトヽ私ハ信ジマス是レ中學校ガ高等學校ニ入ル其豫備校タル組織デアルカラト私
ハ思ヒマス高等學校、專門學校ノ豫備トスルナラバ私ノ考デハ一縣ニ二ツ、或ハ土地ノ
形勢ニ依リテ三ツモアレバソレデ十分デゴザイマス、其殘リハ成ベク其地方ノ狀態ニ鑑ミ
マシテ實業ノ〓育ヲ授クル學校ニ改メタナラバ、卒業生ガ此ノ如ク職業ヲ得ルニ苦ンデ
居ルコトハナクテ濟ムデアラウト思ヒマス、今日ノ我農村ノ疲弊ノ一原因ハ政府ガ中學
校ヲ濫造シタニ依ルト私ハ思ヒマス、無暗ニ中學校ヲ濫造シテ無暗ニ農家ノ子弟ヲ吸
收シ農家ヲシテ子弟ノタメニ少ナカラザル資本ヲ學資ト云フ名目ノ下ニ固定セシメ、其
資本ハ今申シタ如ク就職難ノタメニ一向歸ッテ來ナイ、ソレノミナラズ更ニ債務ヲ起シテ
資本ヲ注入シナケレバ其子供ハ鐵道往生ヲスルカ、華巖ノ瀧ニ行カナケレバナラヌト云フ
ヤウナ狀態ニアリマスノデ、資本ノ缺乏、債務返濟ノタメニ農村ノ疲弊ヲ來シテ居ルト
云フコトハ明カナ事實デゴザイマス、文部省ハ斯樣ニ御考ニナッテ居ルカト云フコトヲ聽
キタイノデゴザイマス、昨年文部省ノ報告ニ依ルト私ノ論據ヲ證據立ツベキ悲シムベキ現
象ガ示サレテ居ルノデアリマス我國ノ人口中農商工ハ大部分ヲ占メテ居ルニモ拘ラ
ズ、三十八年ヨリ此方、五年間ノ中學校入學者ノ父兄ノ職業別ヲ見マスレバ農モ
工モ、商モ、其入學ノ比例ニ於テ年々減少シテ居リマス其他ノ職業ニ於テハ增加シテ
アリマス、其他ノ職業ト云フノハ軍人、官吏ニ屬スルモノデアリマス是レ中學校ハ農商
工ノ人〓ニ歡迎セラレテ居ラナイト云フコトヲ示シテ居ル一ノ現象ト思ヒマス、前ニ申シタ
如ク中學校入學者ノ平均年齡ハ十四歲デ、中學校ノ課程ガ五箇年デアリマスカラ、卒
業者ハ丁年ニ達シテ居ルモノガ多數ヲ占メテ居リマス丁年ニ達シマスレバ一廉ノ人間
デアリマスカラ、是カラ進ンデ高等〓育ヲ受クルモノハ卒ザ知ラズ、普通ノ者ニ取ッテハソ
レ相應ニ職業ニアリ付カザルヲ得ザルニ、却テ獨立ノ職業ニ依リテ生活ヲ營ムニ不適當
ナル〓育ヲ受ケテ居ルタメニ、今申シタ如ク過半數ハ就職難ニ苦ンデ居ルト云フ次第デ
ゴザイマス、是等ノ卒業生ハ都會ニ來リ就職ヲ求メツヽ一年二年ト奔走シテ居リマス
終ニハ奔走ニ疲レテ故〓ニ歸リマスルガ、親ノ家業ヲ繼續スルコトモ出來ナイ、店ニ坐ツ
テ居ルコトモ出來ナイト云フノデ半生ノ「ハイカラ」ハ今ヤ地方ニ蠢々トシテ居ルノデゴザイ
マス、中學校ノ卒業生ノ職ヲ求ムル者ハ曰ク麵麴ヲ得ルナラバドンナ處デモ宣イト云フ
コトヲ云ウテ居リマスガ、ドンナ處デモ宜イト云フコトガ、一面ニハドンナ處ニモ適サナイト
云フコトニ同ジコトデ、吾〓ハ中學校ノ卒業生ノ身ノ周旋方ニ困難ヲシテ居ルノデゴザイ
マス、諸君モ私ト感ヲ同ウシテ居ル者ガ多クアラウト思ヒマス、而シテ父兄ハ學校不安ト
云フ念ヲ懷イテ居リマシテ、文部省ノ方針ニ大不滿ヲ表スル現象ヲ呈シテ居ルコトハ明
カナコトデアリマス、文部省ハ是等ノ現象ヲ御存ジデアラウカドウカ、我日本デハ商工ガ
振ハナイト云ヒマスケレドモ、是ハ無理ノナイコトヽ思ヒマス、日本ノ現在ノ文部省ノ〓
育ハ重ニ机ノ上デ書キ物ヲスルトコロノ人ヲ澤山作リマシテ、實業的〓育アル、所謂高
等勞働者ヲ造ッテ居ラヌカラデアラウト思ヒマス、我日本ノ帝國大學ハ國費ヲ以テ官吏
ヲ養成スルトコロノ學校デアリマス、中學校ハ其官吏ヲ養成スルトコロノ豫備校ノ豫備
校デゴザイマス、文部省ハ官吏ヲ養成スルコトヲ以テ〓育ノ本旨ト思ウテ居ルノデゴザイマ
セウカ、然リトセバ我靑年ハ官吏養成ノ傍杖ヲ喰ッテ居ルヤウナモノデゴザイマス、我國ハ
英米ノ風習ニ反シマシテ、子孫ニ金錢財產ヲ讓ルトコロノ風習ガアリマスケレドモ、我地方
ノ農村、愛國的、犠牲的、重稅ノ下ニ子女ニ讓ルベキ財產ガ缺ケツヽゴザイマス、又日
夜勤勉シテ讓ルベキ財產ヲ蓄積セントシテモ、其額ガ知レテ居ルカラ、セメテハ獨立自營ノ
素養アルベキトコロノ〓育ヲ授ケテ以テ此財產相續ニ代ヘントシテ居リマスケレドモ、今
申上ゲタ如ク〓育制度ノ不備ノタメニ農民ハ大ナル失望ヲ來シテ居ルノデゴザイマス、故
ニ私ノ思フニハ中學校ヲ半減シテモ政府ノ希望スルトコロノ官吏養成ノ目的モ達シ得ラ
レマス、又專門學校、實業學校ニ入ル者ニ取リテモ十分デアルト思ヒマスカラ、殘リノ半分
學術技藝的〓育ヲ授クル卽チ高等普通ノ實業的常識ニ富ンダ獨立自營ノ人ヲ作
ルヤウニサレタナラバ、如何ニ父母タル者ノ喜ピハ勿論又當人ノ利益ト思ヒマス、中學
校整理ノ時代ハ旣ニ到著シテ居リマス、政府ハ斯ル方針ヲ採ル考ガアルカ無イカト云フコ
トヲ私ハ第二ニ聽カントスルトコロデゴザイマス、第三ノ質問ハ官立專門學校入學生ノ入
學試驗ニ變更ヲ加フル意思ガナイカト云フコトデゴザイマス、私ガ此處ニ云フ專門學校
ト云フノハ文部省ノ所謂實業學校モ含ンデ居ルノデゴザイマス、醫學專門學校デ入學志
願者百人ニ對シテ、僅ニ十四人ヲ入學セシメテ居ル處ガゴザイマス、多イ處デ二十人
デアリマス、醫學專門學校ハ姑ク措キマシテ、我國ハ未ダ農ガ主腦デアリマスノニ、盛岡
高等農林學校ノ入學者ガ百人ニ對シテ農林科僅ニ十六人デゴザイマス林學科二十
七人、獸醫科二十人デゴザイマス、鹿兒島ノ方モ殆ド同樣ノ比例ヲ示シテ居リマス、東
京ノ高等商業學校ハ入學者ガ百人ニ對シテ去ル五箇年ノ統計ヲ見マスト僅二十
四人デゴザイマス、商業〓育ヲ授クル實業學校ニ於テ此ノ如ク志願者ノ四分ノ三ヲ拒
絕シテ居ルノデゴザイマス、故ニ商業學校ノ入學者ノ平均年齡ハ二十歲ト云フ髙イ年齡
ヲ示シテ居ルノデゴザイマス、此高等商業學校ハ豫科ガ一年、本科三年デゴザイマスカ
ラ、卒業者ノ平均年齡ハ二十四歲以上ニナッテ居ルコトハ確デゴザイマス領事官養成
所トシテハ宜イカ知ラヌガ、會社ヤ商店ノ人トスルニハ私ハ年齡ガ高過ギテ居ラウト思ヒ
マス、此東京高等工業學校ハ入學志願者百人ニ對シテ二十人デゴザイマス、大阪ノ
方ハ三十人、又東京高等工業學校附屬職工徒弟學校ノ如キ最モ必要ナル學校ニ於
テスラ志願者百人ニ對シテ三十九人ヲ入レテ居ルノニ過ギナイノデゴザイマス、此處ニマ
ダ參考トシテ申上ゲマスガ、高等學校ノ入學志願者ト入學者ノ數デゴザイマス其、
例トシテ東京ノ高等學校ノ入學志願者ヲ見マスレバ最近ノ報告ニ於テ志願者二千
二百三十九人デゴザイマス、內入學者ハ僅ニ三百六十七人テゴザイマシテ、百人ニ對
シテ十六人餘デゴザイマス、殊ニ甚シキハ此高等學校ノ第三部ニ於キマシテハ入學志願
者六百十五人ニ對シテ僅ニ六十五人ヲ入學セシメテ居ルノデゴザイマス、此ノ如キハ學
生ノ學力ノ足ラナイカラデアルカト云ヘバ決シテサウデナイ、チヤント文部省ノ監督ノ下ニ
是等ノ學校ニ入學スベキ資格アル中學校ヲ卒業シタトコロノ政府公認ノ入學資格ヲ備
ヘテ居ルモノデアリマス、ソレニモ拘ラズ滿員札ヲ以テ斯ク多數ヲ拒絕シテ居ルノデゴザイ
マス、文部省ハ一方デハ〓育々々ト言ヒマシテ、先祖代々ノ財產モ賣拂ヒ、親類ノ財產ヲ
質入抵當ニスルマデニ奬勵シテ置キナガラ、一方ニ於テハ斯ク資格アルトコロノ學生ヲ斯
ク多數拒絕シテ居ルデハアリマセヌカ(「ヒヤ〓〓ㄴ拍手スル者アリ)若モ專門學校、實業
學校ノ卒業者ヲ政府ガ卒業後直ニ採用シテ父母兄弟妻子ヲ養フニ十分ナルトコロノ
俸給ヲ一生涯供給スルトデモ云フコトデアルナラバ斯ク入學者ニ制限ヲ置クノモ必要
デゴザイマスケレドモ、政府ハ卒業シタル學生ニハ何等責任ハ持ッテ居リマセヌ、單ニ商業
實業的〓育ラ受ケタトコロノモノヲ多數作リタイト云フ趣意デアルナラバ、此ノ如ク多數
ヲ拒絕スルコトヲセズシテ、何等カノ方法ヲ以テ之ヲ入學セシメルコトガ出來ヤウト私ハ
思ウテ居リマス、今マデ申上ゲタヤウナ〓育ヲ施シテ居リマスルカラ父兄カラハ學校不安
ト云フ念ヲ抱カシテ居リマシテ、延イテハ文部省ノ不信任トナリ、遂ニハ〓育亡國論ト
云フヤウナ極端ナル論ヲ持出ス人ガ出テ來ハセヌカト心配シテ居ルノデゴザイマス、現在
ノ我學生ノ狀態ヨリ、而シテ學生ガ文部省ノ方針ノ惡ルイタメニ被リタルトコロノ父兄
ノ損害ヨリ鑑ミテ見マスレバ、文部省ハ私ヲ以テ言ハセレバグ、極端カハ知リマセヌガ、
未成「ハイカラ」製造所、破產人製造所、不良靑年鐵道往生「モルヒネ」往生、親不孝、
兄弟泣カセ、友人窘メ、借金仕入所ト云フヤウナモノデアル、若シ新刑法ノ精神ヲ
以テ論ジマスレバ文部省ハ罪ヲ犯シタモノデ、尙現ニ犯罪ヲ繼續シツヽアルト私ハ言ウ
テモ宜カラウト思フ(「ヒヤ〓〓」)我邦ノ入學方法ハ餘リニ學術ニ重キヲ置イテ居リマシ
テ、入學者ニ取ッテハ丁度富籤ヲ引クヤウナ有樣デゴザイマス獨逸ニ於テハ我日本ト
程度ヲ同ウシテ居ルトコロノ專門學校、實業學校ニ入學スルモノハ單ニ學力ノミニ依ラ
ズシテ、二年以上工場及商店ニ奉公シテ居ッタト云フコトヲ條件トシテ入學セシメテ居
ル處ガゴザイマス、是ハ私ハ非常ナ結構ナコトデアラウト思ヒマス、我日本ニ於テモ陸海
軍ハ是ト同樣ナル方針ヲ執ッテ居リマス、士官學校ヲ卒業シマシテ、サウシテ一一年、三
年實地ヲ〓究シタモノヲ陸軍大學校ヘ入レテ居リマス、此結果我陸海軍ハ我國民ノ
尊敬ヲ受ケルト共ニ、世界ノ尊敬ヲ受ケテ居ル次第デゴザイマス、斯ル方法ヲ採用スル
コトハ非常ニ私ハ有益ナルコトヽ思ヒマス、私ハ政府ニ對シテ此滿員札ヲ撤去スルカ、
或ハ滿員札ヲモウ少シ小サナルモノニスルカ、或ハ今申シマシタヤウナ入學方法ヲ取リマ
スカ、ドウカト云フコトヲ政府ニ御伺シタイノデゴザイマス、第四-最後ノ質問ハ田園
生活ヲ樂ムベキ文書ノ奬勵、又ハ普及セシメル意思ナキカト云フコトデゴザイマスガ、諸
君ヨ田舍ハ日々ニ寂レテ來マシテ、都會ハ非常ナル長足ノ進步ヲ以テ繁昌シツヽアリマ
入、都會ノ繁昌ハ決シテ惡ルイト云フノデハゴザイマセヌガ、田舍ノ衰頽ハ大ニ悲マザルヲ
得ザルコトヽ思ヒマス。丁度之ヲ譬ヘテ見マスレバ胃擴張ノ人ノ如ク、手ヤ足ハ瘠セテ、
胃バカリ膨脹シテ居ルガ如キデゴザイマシテ、決シテ健全ナル發達ト見ルコトハ出來ナイ
「カーセージ」「フイニシヤ」ノ繁昌ハ一時ノ夢、健全ナル國民ハ健全ナル地方ニ依ッテ永
續セラルヽモノト私ハ確信致シマス故ニ我國ノ現象ハ當局者ハ無論、國家ヲ憂フルモ
ノヽ憂トスルトコロデアラウト思ヒマス歐羅巴諸國ニ於テモ一度ハ此現象ニ遭遇シテ居
リマシテ、政府ハ地方ノ挽回策ニ大ニ努メマシタコトハ諸君モ御承知ノコトデゴザイマス、
彼ノ獨逸ノ如キ數億万馬克ノ金ヲ國庫ガ支出シマシテ、都會ノ人ヲ田舍ニ後戾リスル
トコロノ所謂內國殖民政策ヲ行ッタコト又現ニ行ヒツヽアルコトハ諸君ノ御承知デアラ
ウト私ハ思フ、故ニ政府ハ今ニ於テソレニ鑑ミルトコロガナケレバ斯ル必要ヲ見ルコトハ
必然ナコトデアラウト思ヒマス、此ニ於テ文部省ニ向ッテ田園生活ノ〓育及文書ノ獎勵
ヲ求ムル所以デゴザイマス、我邦ニハ古來田園生活ノ〓育ガ足ラナイ、殆ドナイト云ッテ
モ宜イノデゴザイマス、又此田園生活ヲ樂ムトコロノ文書ニモ極メテ乏シイノデゴザイマ
ス、書籍バカリデハアリマセヌ吾ミハ芝居ヲ觀マシテモ斯樣ナコトハ極メテ少ナイ、最近流
行シテ居ルトコロノ活動寫眞ヲ見マシテモ斯ウ云フモノハ求ムルコトガ出來ナイノデゴザイ、
マト、故ニ我國民ハ此田園生活ヲ爲スノニ甚ダ不適當ナル國民トナッテ居ルノデアル北
海道移民ハ政府ノ奬勵ガアリマスケレドモ、思フヤウニハナッテ居リマセヌ、臺灣、朝鮮又
其通リデゴザイマス遠ク海外ニ出ルトコロノモノハ日本ノ國ヲ去ルニ先立ッテ、歸國ヲスル
コトヲモウ計算シテ居ルヤウナ有樣デゴザイマス、彼ノ英國人ハ不毛ノ地ヲ開拓シ母國
ノ發展ニ供スルモノハ英國ノ〓育ガ與ッテ力アルトコロテゴザイマス、外國ニハ田園生活ト
云フコトニ適ウタルトコロノ〓育ガナカ〓〓盛デ、書籍モナカ〓〓多イノデゴザイマス、又
現ニ是等ノ書籍ハ續々トシテ出テ居ル、七八年前ノコトデゴザイマスガ、米國ノ前大統
領ローズベルト」ノ書イタ書物ノ中ニモ淋シキ生活ヲ送リツヽ西部ノ方ヲ開拓シタルトコ
ロノ「ルーズベルト」ニ依リテ初メテ名ヲ知ラレタヤウナ小サナ人ヲ極メテ稱讚シツヽ、極メ
テ尊敬ヲ拂ッテ書イテアリマス、米國ノ靑年ハ斯ル書物ニ依リテ受クルトコロノ感化ハ非
常ニ大ナルモノデアルト思ヒマス外國ノ社會黨ハ私ハ知リマセヌガ、日本ノ社會黨ハ私
ノ見ルトコロデハ都會生活ノ仲間入リヲスルコトガ出來ナクテ、不平ノ餘リニ起ックヤウニ
思ハレマス、彼等ガ社會黨ニ入ラントスル際ハ丁度四ツ辻ニ立ッテ迷ウテ居ルヤウナモノ
デアリマス、誰カ人ガアッテ後ロヨリ彼ノ肩ヲ叩イテ、汝ノ進路ハ右ノ田畑ナリ廣原ナリ、
深山ナリト指シタナラバ彼等ハ確カニ善良ナル田園生活ノ人トナッタノデアリマセウ、不
幸ニシテ彼ヲ田園生活ニ導クトコロノ人モナシ、書物モナシ、遂ニ淫靡タル都會生活ニ入
リマシテ、生活ノ競爭上不平ヲ抱キ、遂ニ社會ノ秩序ヲ亂スヤウニナッタノデアリマス、
春秋ノ論法ヲ以テ之ヲ論ジマスレバ、其罪ハ田園生活ヲ〓育セザル及奬勵セザルトコロ
ノ文部省ニアリト言ッテ宜カラウト思ヒマス地方ニ於テ〓育セラレタルトコロノ若キ男女
ハ都會生活ヲ好ミマシテ、都會ニ參ッテ來マス都會ニ戀々タル其有樣恰モ發狂人ノヤ
ウナモノデゴザイマス、又地方ニ還サレンコトヲ恐レテ自殺スル者スラアルノデゴザイマス、
〓育ヲ受ケタルトコロノ子弟ハ父祖ノ業ヲ繼續スルコトヲ厭ヒ、地方ヲ去リ、職業ヲ求ム
ルト云フ口實ノ下ニ都會ニ出テ來マシテ、放浪生活ヲ爲シテ居リマス尙且其放浪生
活費ヲ父母ニ供給ヲ仰イデ居ルノデゴザイマス、是レ我國ノ〓育ノ制度ハ自ラ獨立ノ地
位ヲ造リ、自ラ修メントスルトコロノ人士ヲ養成スルニ適シテ居ナイノデアリマス撓マザ
ルトコロノ勤勉ヨリハ寧ロ嚙リ附ニ依ッテ進級スルトコロノ据膳的主義ノ地位ヲ希望スル
ノ弊風ヲ增長セシメタルニハ因ルト雖モ、又此田園生活ヲ樂ムトコロノ交書ノ乏シキニ
在ルト云フコトガ原因テアルト思ヒマス、文部省ハ通俗〓育會又ハ文藝院ニ於テ選擇
スルトコロノ書物ニハ非常注意ヲ拂ハレンコトヲ希望シテ已マナイノデアリマス、是レ我現
狀ニ照シテ此必要ヲ私ハ認ムルノデゴザイマス、最後ニ於テー是デ私ノ質問ガ了リマ
シタガ、最後ニ於テ日本ノ各省中デ一番改良ヲ要スル處ハ、私ハ文部省ト思ヒマス、文
部省ハ學者ノ寄合所デ、口ノ人バカリガ多イノデゴザイマスカラ、此學制改革、學校整
理ノ時代ハ既業ニ到著シテ居ルニモ拘ラズ、未ダスルコトガ出來ナイノデゴサイマス、私ガ
以上質問ニ及ンダコトハ國家緊要ノ問題デアリマス現文部大臣ハ是マデノ大臣ト
違ヒマシテ學問ニ擒ニサレタ人デハアリマセヌ、學問ノ奴隷者テハナイ、、苦心經營ノ人デ
アリマス、私ハ現支部大臣ガ私ノ質問ニ對シテ滿足ナル答辯ヲ與ヘルコトヲ確信シマシ
テ、文部大臣ニ敬意ヲ表シマス(拍手スル者アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=16
-
017・長谷場純孝
○文部大臣(長谷場純孝君) 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=17
-
018・大岡育造
○議長(大岡育造君) 長谷場文部大臣
〔文部大臣長谷場純孝君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=18
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019・長谷場純孝
○文部大臣(長谷場純孝君) 唯今星君ノ御質問ハ四箇條ニ別レテ居リマス、今御
說明ニ依ッテ理由ノ詳カナルコトヲ承リマシタ、是ハ事ノ關係スルトコロ廣汎ナルヲ以テ、
イヅレ後日書面ヲ以テ御答ヲ致スコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=19
-
020・塚田啓太郎
○塚田啓太郞君 唯今ヨリ地價修正ノ委員會ヲ開キタイト思ヒマスカラ、許可ヲ願ヒ
タイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=20
-
021・大岡育造
○議長(大岡育造君) 塚田啓太郞君ガ是ヨリ地價修正ノ委員會ヲ開カントスル御
希望デアリマスガ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=21
-
022・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ハナイト認メマス、尙八木君ヨリモ御請求ガアリマス、
許スコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=22
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023・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ハアリマセヌケレバ許可致シマス-質問ノ第二、〓
國動亂ニ關スル質問柴四朗君
〔柴四朗君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=23
-
024・柴四朗
○柴四朗君 諸君、私ハ〓國動亂ニ關スル質問趣意書ヲ提出致シマシタ、而シテ逐
條ノ說明ニ先チマシテ提出ノ理由ヲ簡單ニ說明致シマスルカラ暫時御〓聽ヲ瀆シマス
(「長クテハ困ル、暫時ナラ宜イ」ト呼フ者アリ)元來我輩ハ常ニ內治ヨリモ外交ニ重キヲ
置キマス、故ニ一朝不幸ニシテ外患アルノ日ハ上下一致シテ禍ヲ轉ジテ福ヒト爲スノ策
ヲ講ジナケレバナラヌト云フ意見ヲ懷抱シテ居ル者デアリマス、此故ニ〓國ノ視察ニ先チ
マシテ外務大臣竝ニ陸軍大臣等ヲ歷訪致シマシテ、吾ミガ遵奉スルトコロノ〓ヲ受クルコ
トガ出來ルナラ、御高見ヲ拜聽致シタイ、、是ハ私ガ渡〓後ニ吾〓ノ言語竝ニ舉動ガ日本
ノ外交方針ト背馳セザランコトヲ努メヤウト云フニ外ナラヌノデアリマシタ、然ルニ政府ニ於
テハ未ダ統一セラレタトコロノ確乎タル對〓方針ノ定マラザリシカ、或ハ私ノ信用ノ薄イ
タメカ、日〓戰爭ノトキニ私ガ渡航前ニ陸奧、川上或ハ北〓事件ノトキニ靑木、寺內、
日露戰爭ノトキニ桂、兒玉諸公ニ吾ミガ反對派ニモ拘ラズ、能ク當時胸襟ヲ披イテ、
卽チ外交ノ方針ハ斯ウ々々テアルト云フ眼目ニ付テノ〓ヲ拜聽スルコトガ出來タノデア
リマス、然ルニ今囘ハ此ノ如キ〓ヲ奉ズルコトガ出來ナカッメノハ、甚ダ遺憾トスルトコロデ
アリマス故ニ渡航後內外人カラシテ日本ノ外交ノ方針孰ニ在ルカト云フ質問ヲ受ケ
マシテモ、私ガ之ニ答ヘルコトノ意見ヲ有セナカッタノデアリマス、我輩ノミナラズ〓國ニ在ル
トコロノ外交官、軍人、實業家有志家モ各〓政府ノ方針ノ如何ニ存スルカト云フコト
ニ付テハ疑ヲ抱イテ居ッテ、各自散漫トシテ其好ムトコロニ依ッテ行動ヲサレタデハナイカ
ト云フ疑ヲ持ッテ歸ッタノデアリマス歸リマシテモ尙其疑ヲ氷解シマセヌ故ニ、今日此質
問書ヲ提出シタノデアリマス、是ヨリ逐條ノ說明ヲ致シマス「一我北京駐在ノ伊集院
公使ハ〓帝退位マテ君主立憲主義ヲ固守セリト聞ク事實如何」私ガ北京ニ參リマ
シタトキニ最モ彼地ニ於テ外交ニ有力ナル人カラシテ貴國ノ公使ハ〓帝退位ノ時日ノ
迫リ、竝ニ閣員ノ人選マデモ殆ド決定シタ今日ニ於テ、尙君主立憲主義ヲ固執セラル
ト其事實如何ト云フコトヲ質問ヲ受ケマシタ、私ハ此事實ハ勿論存ジマセヌ併ナガ
ラ伊集院公使ガ君主立憲主義ヲ主張サレタト云フ事實ハ私ハ信ズベキ理由ガアルト
考ヘルノデアリマス、惟フニ我政府ニ於テハ初メハ君主立憲主義ヲ訓令サレタノヲ、中途
ニシテ其事ヲ曖昧ノ裡ニ葬ラントシタルヲ、伊集院公使ハ曩ノ主張ニ對シテ之ヲ撤囘ス
ル機會ヲ失シテ、此ノ如ク孤立無援ノ苦境ニ陷ラレタノデナイカト考ヘルノデアル、此ノ如
クデアリマスレバ吾〓ハ一片同情ノ念ニ堪ヘナイノデアリマス、又現內閣ヲ辯護セント云フ人
ノ加キハ、君主立憲主義ナルモノハ共和政治ヲ嫌惡スル一二元老ノ指金デアル故ニ、現
內閣ニ於テハ此君主立憲主義ト云フコトヲ嚴格ニ固持スル念ガナカッタ、斯ウ云フコトヲ
申スノデアリマス、併ナガラ是ハ現內閣ヲ侮辱シタモノデアラウト私ハ考ヘルノデアリマス、總
理大臣西園寺侯ガ曾テ元老ニ政治ヲ諮ル云々ト云フ答辯ヲ致サレタコトガアリマス「元
老ニ事ヲ諮ル、怪シカラヌコトデアル、此ノ如ク解釋致シマシテ宜シウゴザイマスカ、私ハ
豈啻ニ元老ノミナランヤ苟モ國家ノ事ニ付、其人ハ問フベキ人デアルト云ヘバ、所謂
網ヲ暴ス漁夫、鍬ヲ擔フ農夫ニモオヤデアル國家ノ事ハ私ハ隨分問フ、而シテ其結果タ
ル責任ハ無論憲法ニ依リマシテ、不肖ナガラ總理ノ職ヲ辱メテ居ル以上ハ私ハ持テ居
ル」云々實ニ立憲政治ノ總理大臣トシテ堂々タル御演說トシテ、當時覺エズ襟ヲ正ウシ
テ拜聽シマシタ語尙耳ニ存シテ居リマス、惟フニ外務大臣ハ人格高尙デ居ラレルカラ此
事ニ付テハ飽マデモ責任ヲ負フコトヽ信ズルノデアリマス、第二ニ「大總統ニ舉ケラレシ袁
世凱カ南京政府ニ對シ北京ヲ去ル能ハサル理由ノ一トシテ北京ノ親王中某國ニ愚弄
セラルルモノアルカ爲ナリト答ヘシハ明ニ日本帝國ヲ指シタルモノナリト云フ政府ノ所見如
何」私ガ南〓ニ居リマシタトキニ兩政府ノ祕密文書ガ手ニ入ッタコトガアリマス、其中ニ(「要
領ヲ云ハヌトイカヌゾ」ト呼フ者アリ)外交問題デアリマスカラ暫時御〓聽ヲ煩ハシマス(「外
交問題ナラ祕密ニヤリ給ヘ」ト呼フ者アリ)其中ニ時局ノ最大困難ナル〓皇ノ退位竝ニ
共和ノコトニ付テ幾ド其事ガ決定スルニ垂ントシテアルニ、日本ガ陰ニ反對運動ヲスル
ガタメニ事實紛糾シテ此事ガ成功シナイト云フコトガアルノデアリマス、私ハ是ハ袁世凱ガ
罪ヲ他人ニ嫁シテ自分ノ責任ヲ遁レルモノト信ジタノデアリマス、然ルニ今囘又此ノ如キ
暴言ヲ聞クニ及ンデハ是ハ既ニ事實然ルコトデアルカト考ヘタノデアリマス、蓋シ聞クトコロ
ニ依レバ恭親王ガ宗室會議ガアリマシテ慶親王ヲ詰責シ、袁世凱ヲ罵倒サレタ、其時ニ日
本ノ守備隊ガ行軍シマシタ、而シテ休憩シマシタ、其屋敷ハ恭親王ノ附近デアルト云フコト
ヲ知ッテ、ソコデ敬意ヲ表シタコトガアルサウデアリマス之ヲ神經過敏ナル袁世凱ガ日本
ガ恭親王ヲ〓唆シタモノト云フ疑ヲ起シタト云フコトモアリマス、又肅親王ガ滿洲ニ病氣
保養ノタメニ行カレタトキニ、何者カ滿洲ニ肅親王ガ行カレルコトヲ猜疑ノ眼ヲ以テ觀テ、
而シテ其出立サレタ其晩ニ支那人ガ警衞スルトコロノ其區域內ノ鐵橋ヲ爆裂セシメ、僅
ニ肅親王ハ危害ヲ免レテ而シテ或ル者ノ保護ニ依ッテ或軍艦ニ依ッテ滿洲ニ行カレタト
云フコトガアルサウデアリマス是等ノコトヲ以テ若シ愚弄シタリト云フコトデアリマスレバ
人ノ孤兒、寡婦ヲ欺キ、親王ヲ愚弄シ、世人ヲ翻弄シ、自分ノ腹心タルトコロノ大兵ヲ
放ッテ白晝公然掠奪ヲ恣ニシ、人ヲ殺ス、此ノ如キコトコソ、吾〓ハ人ヲ愚弄シタル擧動ニシ
テ之ヲ責ムベキ十分ノコトガアルト考ヘルノデアリマス、此ノ如ク此袁世凱ヲシテ侮蔑ノ言ヲ
發セシメタルニ付テハ、政府ノ威信ニ關係スルコトナキカ、此明答ヲ煩ハスノデアリマス
「三邦人對招商局トノ借款ハ果シテ成立セシヤ其經過如何」〓國動亂以來我貿
易ガ多大ノ打擊ヲ受ケマシタ故ニ、禍ヲ轉ジテ福ヒトナスノ策ヲ講ジナケレバナラヌト
云フ秋ニ當リマシテ、幸ニ南京政府ヨリシテ招商局ヲ抵當トシテ借款ノ申出ガアッタ
ノデアリマス、其時ノ南京政府ノ窮乏ハ其極ニ達シマシテ、私ガ南京ニ居リマシタト
キデモ若シ多少ノ金ガ出來テ、兵士ノ俸給ニ拂フコトガ出來得ヌナラバ則チ支那
ノ正月ニハ南京ニ大動亂ガ起ルト云フコトヲ警告シテ居ッタノデアリマス、故ニ若シ此借
款ガ成立チマシテ彼ノ窮ヲ濟ヒ、竝ニ兩國ノ意思ガ疏通シタナラバ、他日南〓ニ於ケ
ルトコロノ我貿易ノ發展ニ非常ナル影響ヲ得ルコトデアラウト考ヘマス當時恰モ此事
決シマシタトキニハ孫逸仙ノ所ヘ私モ兩三名ト列シタコトモアリマス、而シテ上海ニ歸リ
マシタトキニハソレガ尙一步進デ、此招商局ノ株券ヲ日本ニ賣ルト云フ論ガ起ッタノデアリ
マス、ソレデ私ノ考ヘマシタノハ曾テ英國デ蘇士運河ノ株金五千万圓ヲ臨時內閣會
議ノ一夜ノ中ニ決定シ、之ヲ明日ノ議場ニ報告シテ而シテ反對黨ヲシテ覺エズ拍手
セシメタ、其五千万圓ハ五億ノ價値ヲ生ジ、佛國ヲシテ茫然自失、策ノ施スナカラシメ、
今日英國ガ埃及ノ優越權ヲ得タノハ此過半數ノ株券ヲ買收シタト云フコトヲ聞イテ居
リマス、必ズ政府デモ此ノ如キ處置ニ出デラルヽデアラウト云フ希望ヲ以テ私ハ上海ヲ去
リマシタ、後ニ聞クトコロニ依リマスレバ日本ノ元老間ニイロ異論ガ起リ、財〓ノ間
ニ猜疑ガ起リ、其中ニ英國ノ知ルトコロトナッテ英國ノ抗議ガアッタサウデアリマス、而
シテ此英國ノ百五十万圓先ニ貸シタト云フコトニ付テ、日本ノ抗議シタト云フコトハ內
容ハ私ノ聞キマシタトコロデハ、日本ガ若シ此借款ニ出シタナラバ、其金ハ革命黨ニ往ク、
故ニ今日全ク嚴正中立ノ時代デアルト云フコトヲ言ハレタヤウニ外國ニ於テ聞キマシタ、
併ナガラ彼地ニ於テ聞クトコロニ依リマスレバ、英國ハ百五十万圓ノ五十万ト云フモ
ノハ確ニ革命黨ノ手ニ入ッタト云フコトヲ私ハ聞イテ居ルノデアリマス、此事ガ果シテ然ル
ヤ否ヤ、私ハ存ジマセヌ、其中ニ袁世凱ノ知ルトコロトナッテ此金ヲ南京政府ニ日本ヨリ
貸シタナラバ、由々シキ大事デアルト云ウテ大妨害ガ起ッタト云フコトモ聞イテ居リマス、
又日本デモ密ニ聞クトコロニ依レバ遞信省、大藏省、外務省等ノ意見ガ一致シナカッタ
ト云フコトモ聞イテ居リマス、此事ガ今ハ如何デアルカ、御質問致スノデアリマス、尙此
質問ヲ提出致シマシタ後ニ今ノ「チヤイナプレス」ノ北京通信ニ依リマスレバ、袁世凱ハ
日本ノ伊集院公使ニ招商局等ノ借款ニ異議ヲ申出タルニ、公使ハ確乎タル政府ノ成立
スルニ至ルマデ日本政府ハ其臣民ヲシテ〓國ニ於ケル何等借款契約ヲモ締結スルコトヲ
許サヾル主旨ナリト囘答シ云々、是ガ果シテ事實デアリマシタナラバ、政府ガ曩ニ南
〓ニ於テ借款問題ニ聲援ヲ與ヘラレタ意思ハ如何ナルモノデアリマスカ、又昨今問題ニ
上ッテ居リマス四國借款或ハ五國借款ニ對シテ政府ハ確乎タル〓國ノ政府ガ成立シ、
共和政治ヲ承認セラレタモノデアリマスカ、尙此四國或ハ五國借款ノ如キ日本ガ之ニ加
入シ能フヤ否ヤト云フコトモ序ニ御說明ヲ煩ハシタクアリマス「四、南滿洲ノ治安維持
方策及將來ノ方針如何」南滿洲ハ日露戰爭ノ結果列國ニ機會均等主義ノ外ハ政治
上、軍事上優越ナル特殊ノ權利ヲ有シテ居ルコトハ今更喋々ヲ要サナイノデアリマス、殊
ニ日露ノ協約ヲ重ネマシタ以來、其地步ハ更二層ノ鞏固ナル基礎ノ上ニ立テラレルコトニ
ナッタト信ジテ居リマス、加之滿洲ニハ一個師團ノ守備兵モ居リマス、六個大隊ノ守備兵モ
アリマス、又軍港モアリマス、外ニハ有力ナル艦隊ノ游戈シテ居ルノモアリマス、又平時ニハ不用視
セラレルトコロノ關東都督府モ置カレテ居ルノデアリマス、然ルニ何ゾ圖ラン遙ニ南方ニ於
テ革命黨ノ起ルヤ、我關東州竝ニ在滿ノ邦人ハ革命黨ニ力ヲ添ヘタノデナイカト云フ
疑ガアルノデアリマス、故ニ不逞ノ徒ガ横行シテ遼陽ニ於テ我士官ガ白晝狙擊サレタコト
モアリマス、又此頃本溪湖ニ於テ邦人二名ガ革命黨ト誤解サレテ殺害サレタ事實モ
アリマス、遂ニ此事ハ奉天ニモ鐵嶺ニモ及ンダノデアリマス、革命黨ト稱スルモノハ旣ニ中
立地帶ニ上陸シテ、蓋平附近ノ我鐵道ヲ脅シタコトガアリマス、大孤山ニ上陸シタ革命
黨ハ安奉線ヲ脅シタコトモアルノデアリマス私ハ二月十日奉天ニ參リマシテ、日本ノ領
事館ヲ訪問致シマシタトキニ、關東都督府ノ藍天蔚ト云フモノガ書留郵便ヲ以テ日本
人ガ明日ノ午後四時ヲ期シテ退去スルニアラザレバ日本人ノ生命財產ハ其責ニ任ゼ
ズト云フコトヲ通知シタノデアリマス、私ハ此ノ如ク滑稽ナルコトハ齒牙ニ掛ケルコトデナ
イト考ヘテ居リマシタ、何ゾ圖ラン其明晩ニ於テ非常ナル動亂ガ起ラントシタノデアリマ
ス、是ハ東三省ノ總督ノ家ニ居ルトコロノ人ガ來テ話ヲ致シマシタガ、昨晩日本人ト稱
スルモノガ鹽ヲ運轉スルトコロノ兵隊ニ五千圓、張作霖ノ一營ニ五千圓ヲ與ヘサウシ
テ城外ニ誘キ出シテ大叛亂ヲ企テントシ、漸ク事前ニ押ヘタト云フコトヲ申シタノデアリ
マスカラ、私ハ是ハ斷然日本人デナイ、卽チ洋服ヲ著ケ、髪ヲ斬ッタ革命黨ガ日本人ト稱
シテ此ノ如キコトヲヤルモノデアッテ、斷然日本人デナイト云フコトヲ申シタガ、必ズ此事
ハ左樣デアルト信ズルノデアリマス、併ナガラ初メ日本ハ其取締ヲ放漫ニサレテ、我居留
地ニ革命黨其他ガ徘徊シ後ニ之ヲ放逐シテ更ニ是ガ寛大ニナッタモノデアッテ、又之ヲ
取締ッテ今度更ニ遼陽其他ニ於テ革命亂ノ起ラントシタトキニ警告ヲ與ヘラレタト云フ
コトヲ聞キタイノデアリマス、之ヲ要スルニ今日ノ形勢ニ處シマシテハ、將來南滿洲ノ治安
ノ維持ハ日本ニテ獨力之ニ任ジ、各國ヲシテ日本ニ依賴セシメル方針ヲ取ラルヽヤ或ハ
過去ノ政策ノ如ク、時ノ形勢ニ從ッテ移動ノ方策ヲ取ラルヽカ、或ハ全ク官軍、革命軍
ノ間ニ介在シテ嚴正中立ヲ守リ傍手袖觀ノ舉動ニ出デラレルカ彼ノ居留ノ我同胞ハ
不安ノ念ニ堪ヘマセヌカラ、政府ノ方針ガ伺ハレルコトガ出來マスナラバ、之ヲ伺ッテ我邦人ヲ
シテ不安ノ念ヲ去ラシメタイノデアリマス「五、南滿洲ノ吉長及吉會鐵道ニ關スル方針如何」
外務大臣ヲ訪問致シマシタトキニ滿洲ニ付テノ意見ヲ申シタコトガアリマスガ、是ハ重大
問題デアリマスカラ無論御答ヲ得ヤウトモ思ハナカッタノデアリマス、併ナガラ當時鐵道ハ
交通機關ノ必要ナルモノデアッテ、又滿洲ノ利源ヲ開發スルニ必要ナモノデアル、況ヤ既ニ
條約ニ依ッテ得タトコロノ吉長線竝ニ朝鮮間島ノ交換的ニ得タトコロノ吉會線卽チ吉林
カラ會寧ニ通ズル鐵道、其借款ダケモ成立シテ、今日此鐵道ダケノ敷設ハ得タルモノデ
アリマス斯ウ申シタトコロガ外務大臣ハ大ニ此事ニ付テハヤッテ居リマス、斯ウ云フ御
答ヲ記憶シテ居リマス、然ルニ彼地ニ往ッテ調査シテ見マスレバ、日本カラ借リタ金ノ百
五十万圓ハ長春ヨリ吉林ニ至ル彼ノ吉長ノ線路ニ於テ、既ニ役人ノ給料賄賂或ハ「コ
ンミッシヨン」ニ費シテシマッテ、其金ガナイト云フコトデ、故ニ豫定ノ如クニ、條約ノ如ク
ニ出來ナイノデアリマス、又吉林竝ニ會寧間ノ鐵道ニ付テモ、滿洲ノ內地ニ於テ種々ノ
猜疑ノ眼ヲ以テ之ヲ妨害シテ居ルト云フコトデアリマスガ、外務大臣ガ大ニヤッテ居ルト
云フ言葉ガゴザイマシタカラ、此經過ガ如何ニナッテ居リマスカ御答辯ヲ煩シマス「七、我陸
軍將校中ニ武昌革命軍ヨリ不當ノ金錢ヲ受領シタル者アリト云フ事實如何」宋ノ岳飛ハ
「文臣不愛錢武臣不惜死天下泰平ナラン」ト斯ウ申シタコトガアリマスガ、今ヤ〓國人ハ
滔々トシテ唯金錢ヲ積ムノミニ汲々トシ、文臣ハ錢ヲ盜ミ、武臣ハ錢ヲ奪フト云フマデニ
堕落シタノデアリマシテ、三百年ノ社稷ハ一朝ニシテ〓覆スルモ、一人ノ義ヲ唱ヘテ節ニ
殉ズル者モ無イノデアリマス、、是ハ畢竟スルニ極端ナル拜金宗ニ陷ッタ弊害デアラウト信ズル
ノデアリマス、然ルニ我邦人ハ金錢ニ廉潔デアリマス、殊ニ武士道、道德ニ鍛ヘ上ゲタル
軍人ハ君國ノタメニ死ヲ顧ミナイノデアリマス、況ヤ金錢オヤデアリマス然ルニ此ノ如キ
記事ガ內外ノ新聞ニ喋々トシテ載ッテ居リマス、又在〓ノ我日本人ノ十ノ七八ハ之ヲ
信用シテ居ルノデアリマス、此ノ如キコトハ軍人ノ不面目ノミナラズ我帝國ノ汚點ト考
ヘルノデアリマス、私ハ事實此ノ如キコトハ無イコトヽ信ズルノデアリマス、又政府ヨリモ
無イト云フコトノ答辯ヲ得タイノデアリマス併ナガラ若モ萬々一此ノ如キコトガアッタナラ
バ川島司令官竝ニ外務省、陸軍守備隊長、其他カラノ報告ヲ徵セラレテ居ルコトヽ
思ヒマスカラ、此事ニ付テ政府ノ決心ノアルトコロヲ伺ヒタイノデアリマス、此處ニ民間ヨ
リ調査シタト稱スルトコロノ一册ガ手ニ入ッテ居リマス、併シ是ハ一軍人ノタメニ辯護シタ
傾ガアルノミナラズ、此事ヲ茲ニ朗讀シタリ、或ハ速記ニ載セルト云フコトガアリマシタナ
ラバ軍事上或ハ外交上由々シキ物議ヲ釀サウト思ヒマスカラ、是ハ割愛シテ載セヌ積
リデアリマス、モウ一ツアリマス「八、〓國動亂以來我邦人中退〓ノ處分ヲ受ケシ者ア
リヤ若シ是アラバ其員數及犯罪事項及將來ノ取締方法如何」是ハ說明ヲ致サヌ
デモ此通リデアリマス若シ其事實ヲ舉ゲマスレバ澤山ノ事實ヲ持ッテ居リマス顏
ル憂慮ニ堪ヘナイコトガアリマスルガ、是ハ今日ハ略シマス、之ヲ要スルニ〓國ノ現勢タル
ヤ實ニ累卵ノ危、不測ノ變、朝夕ヲ計ラレヌノデアリマス、現內閣ハ外交ニ秀逸ナル
トコロノ四名ノ大臣モ御揃ヒニナッテ居リマスカラ、對〓政策ニ付テハ無論深謀、遠慮、
萬々遺算ガナク機ニ臨ミ變ニ應ジテ著々步ヲ進メツヽアルデアリマセウ蓋シ其方針
ガ國民ニ貫徹致シマセヌデ、世人ガ適從スルニ迷ッテ居リマス、新聞及論客ハ曰ク〓
國ノ形勢ハ如何ニ成行クデアラウ、我對〓政策ハ失敗ニ歸スルニアラザルカ、實ニ不安
ノ念ニ堪ヘザルナリト云フノガ、今日ノ狀態デゴザイマス、吾輩ハ政府ニ如何ナル政策ヲ
執ラレヨト云フコトヲ要求スル者デハアリマセヌ、唯政府ガ確乎不拔、我國ノ國是ヲ立
テヽ吾ミヲシテ勇往邁進シテ其處ニ往キ、サウシテ國運發展スルノ方針ヲ立テラレンコト
ヲ希望スルノデアリマス固ヨリ外交ハ紆餘曲折ニシテ、巧妙ナル手段ガアルデアリマセ
ウ、單刀直入的ノ威壓的方策モアルデアリマセウ、已ムヲ得ズ兵馬ノ權ニ訴フルコトモ
アリマセウ、冀クバ當局者ニ於テ能ク胸襟ヲ披カレテ國是ノアルトコロヲ說明サレテ、吾
吾ヲシテ滿足スルトコロノ御答辯ヲ得レバ幸ヒナノデアリマス、玆ニ謹ンデ賢明ナル外務
大臣閣下ニ敬意ヲ表シマス(拍手起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=24
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025・大岡育造
○議長(大岡育造君) 內田外務大臣
(外務大臣子爵内田康哉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=25
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026・内田康哉
○外務大臣(子爵内田康哉君) 柴君ノ〓國動亂ニ關スル質問ニ御答致シマス、質
問箇條ハ八ツアリマスガ、此中七ツグケハ私ヨリ御答ヲ致シマス、第七ハ陸軍ノ當局者
ヨリ御答致シマスル、此質問ニ先チマシテ柴君ハ唯今全體ノ事柄ニ付テ熱心ナル御演
說ガアリマシタ、殊ニ外交ニ重キヲ置カレルト云フコトヲ聽キマシテ、私ハ其職ニ在リマシ
テ洵ニ有難ク之ヲ謹聽致シマシタ故ニ其大體ノコトニ付キマシテ一應御答ヲ致シタイ
ト思フ唯今ノ御話ニハ〓國事件勃發以來、日本政府ハ方針ガ無イ常ニ變ッテ居ル
ト云フヤウナ趣意ノ御質問ト伺ヒマシタ、是ハ日〓戰役、日露戰役若クハ義和團ノ事
變ニ較ベテ見ルト、其計畫ヤ何カヾ分ラヌ、斯ウ云フ質問モアッタヤウニ思フ、政府ガ此事
件ノ發シマシタ以來、方針ハ一定シテ居リマス、卽チ〓國ノ領土保全ヲ大主義ト致シマ
シテ、又支那ノ事件ニ對シマシテハ嚴正中立ノ態度ヲ執ル而シテ我國民ノ生命財
產ヲシテ危害ナカラシムル場合ニハ之ニ必要ナル自衞ノ途ヲ取ル、又〓國ニ於ケル我
國我國民ノ利權ノ擁護及其增進ハ事情ノ許ス限リ之ヲ圖ル此ノ如キ方針ヲ立テマ
シテ一定シテ變リマセヌ是ハ日露日〓ノ兩役ニ比較致シマスレバ事柄ガ違ッテ居ル、
日〓、日露ノ役ハアレハ敵意ヲ以テ之ニ對スルトコロノ計畫ヲ立テタノデアル、今度ハ
免モ角モ今日マデハ支那ノ內亂ニ止ッテ居ル、且日本ヲ始メ各國ガ最モ心配シタトコ
ロノ外人ノ生命財產ニハ成ベク手ヲ著ケナイト云フ態度ヲ官革共ニ取ッテ來マシタ、故ニ
今日マデハ幸ヒニシテ何等之ニ干渉スル場合ガナカッタノデアリマス、唯く輓近北京ニ
於キマシテ意想外ノ變亂ガアリマシタカラ、之ニ對シマシテハウレノ〓ノ處分ヲ機ヲ失セズ
取ッタ積リデアリマス卽チ千二百ノ兵ヲ增派致シマシテ、又北京ニハ山海關ヨリ直ニ
百名ノ兵ヲ增派致シマシテ、今後更ニ必要トアラバ內地ヨリ或ハ滿洲ノ兵ヲ補助スルコ
トモアルカモ知レマセヌ、此ノ如キ處置ハ一々取ッテ居ル積リデゴザイマス大體ノ御質
問ニ對シテハ是ダケ御答致シマス、是ヨリ各項ニ亙ッテ御答致シマス「第一、我ガ北京駐
在ノ伊集院公使ハ〓帝退位マデハ君主立憲主義ヲ固執セリト聞ク事實如何」、本問
ニ對シマシテハ豫算委員會及其他ノ委員會ニ於キマシテ再三御答辯致シマシタ通リ、政
府ハ初メヨリ〓國ノ政體問題ニハ不干涉ノ態度ヲ取ッテ來マシテ、伊集院公使ハ其訓
令ニ從ッテ行動致シタ次第デアリマス、今日〓國ニ於キマシテハ義和團事變以來〓
國ノ朝野ノ人々ヲ論ゼズ、能ク外人ニ向ッテイロノ說ヲ聞クコトガアリマスヽ是ハ殆
ド北京ニ於ケル常ニ起ル事柄ニナッテ居リマス、故ニ信條十九箇條ノ發布サレマシタ
頃ニハ官トナク民トナク各國ノ公使ヲ囘ッテイロ〓〓ノ意見ヲ求メタコトガアル、此時ハ
我伊集院公使ノミナラズ、多クノ公使ハ信條十九箇條ヲシテ早ク騒亂ヲ治メルヤウニシ
タラ宜カラウト云フヤウナ意見ヲ述ベタコトガアル卽チ日英協同シテ居中斡旋ノ勞ヲ
取リ、若クハ列國公使及官革兩方ノ代表者ニ對シテ、早ク協定シタラ宜カラウト云フ
忠告ヲ致シマシタトキハ、明カニハ明言ハ致シマセヌケレドモ、ヤハリ其邊ノトコロデ妥協シ
タラ宜カラウト云フ意味ハ含マレテ居タト云ウテモ差支ナイト思ヒマス、卽チ日本ノ政
府ガ此政體問題ニ對シテ執リマシタトコロノ事柄ハ唯今申シタ通リデアリマス第二問ノ
「大總統ニ舉ゲラレタル袁世凱ガ南京政府ニ對シ北京ヲ去ル能ハザル理由ノ一トシテ
北京ノ親王中某國ニ愚弄セラルヽモノアルガ爲ナリト答ヘシハ、明ニ日本帝國ヲ
指シタルモノナリト云フ政府ノ所見如何」此問題ハ要シマスニ袁世凱ト南京側ニ行ハレ
タル問答デアリマシテ、政府ニ於テハ是ガ果シテ事實デアルカ、事實デナイカ、確言スル譯
ニイキマセヌ、要スルトコロ是ハ支那當事者間ニ行ハレタ話デアッテ、我政府ニ於テ何等
之ニ干與スベキモノデハナイト思ヒマス、況ヤ此日本國トシテ北京ノ親王ヲ愚弄スル要モ
ナク、愚弄スル筈モナイ話デアリマス、是ハ日本ニハ寸毫モ關係ナキトコロノ事柄ト私ハ
思ヒマス、第三問「邦人對招商局トノ借款ハ果シテ成立セシヤ其經過如何」此問題ニ付
キマシテハ唯今柴君ハ實地ニ臨ンデノ御說明ガアリマシタカラ、私以上ニ御承知カモ知
レマセヌガ、政府ト致シマシテモ此問題ニ干涉シタコトガアリマス抑〓此變亂ノ始マ
リマシタ以來、各國ノ間ニ此軍用ニ用立テラルヽ恐レノアル金ハ官革共ニ貸サナイト云
フコトニシタイ就テハ其國民ガ何等此種ノ借款ヲ起ストキニハ成ベク之ヲ奬勵セザルヤウ
ニ致シタイト云フ申合セガアッタノデ、然ルニ此招商局ハ唯今柴君ノ述ベラレマシタヤウナ
來歷ガアリマス、且御承知ノ如ク招商局ハ楊子江其他支那沿岸ニ於ケル貿易上最モ重
要ナル場所ヲ占メテ居ル、此招商局ノ運命ハ我對〓貿易、又〓國ニ於ケル航運業ニ非常
ニ影響ヲ及ボス問題デアリマスガ故ニ、南京側ヨリ之ヲ抵當ニ致シテ借款ヲ致シタイト云フ問
題ガ起リマシタトキニハ、是ハ他ノ問題トハ違ヒマシテ、我當局ニ於テモ非常ニ注意ヲ
拂ッタ問題デアリマスノミナラズ、此借款ニ對シテハ非常ナ競爭ガ起ッテ、若シ万一他國
ニ之ヲ取ラレタナラバ我航運業ニ非常ナ影響ヲ及ボス話デアリマス故ニ、政府ハ他ニ競
爭ガアル間ハ之ヲ阻止スル譯ニ往キマセヌ、其事柄ハ明カニ列强ニモ答ヘタ次第デアリマ
ス、而シテ其招商局トノ借款ノ經過ハ其後株主ニ反對ガ起リ、其他ノ障碍ガアリマシテ、
遂ニ成立セザルヤニ聞イテ居リマス尙招商局ハドコノ國ニ對シテモ之ヲ抵當ニシテ金ヲ
借ラナイト云フ約束ガ出來タヤニ聞イテ居リマス、併シ是ハ主トシテ招商局ト我當業
者ノ間ノ話デアリマシテ、是以上ニ立入リマシテ私ハ此所ニ報告スルノ自由ヲ得マセヌ
左樣御承知ヲ願ヒマス、第四問「南滿洲ノ治安維持方策及將來ノ方針如何」、本問
題ハ甚ダ重要ナ問題デアリマシテ、南滿洲ニ於テ帝國ガ特殊ノ利權ヲ有シテ居リマスコ
トハ諸君ノ審ニ御承知ノ事柄ト存ジマス關東租借地ハ申スニ及バズ之ニ四五倍スル
程ノ中立地帶ニ對スル關係及七百哩ノ鐵道線路及附屬地、或ハ鴨綠江ニ於ケル木材事
業煙臺及撫順ノ炭坑、其他鐵道附屬地ニ沿ヒマシテ我人民ガ起シマシタトコロノ各種
ノ事業是等ノ利害關係ハ到底支那ノ本土ニ於テ各國トノ關係ニ於テ見ル能ハザル程
ノモノデアリマス、誠ニ特殊ナ利益デアル、加之南滿洲ハ我領土タル朝鮮ト東南ノ境ニ
於テ鴨綠江及豆滿江ヲ境ニシテ接近シテ居リマス故ニ南滿洲ニ於ケル安寧秩序ノ
紊亂ハ直ニ我特殊ノ利權ニ影響ヲ及ボスノミナラズ、朝鮮ノ治安ニ直ニ影響ヲ及ボス次
第デアリマス、ソレ故ニ南滿洲ニ對シマシテハ此事件ノ初メヨリ最モ注意ヲ拂ヒマシテ、先
方ニ於ケル我軍部ノ官憲ニ對シテ一定ノ方針ヲ定メテヤリマシタ、卽チ我租借地若ク
ハ鐵道附屬地等ヲ策源地ニシテ、何等治安及秩序ヲ紊亂スルヤウナ行動ヲ取ルモノニ
對シテハ嚴重ニ之ヲ取締ル、其我特殊ノ利權ニ關係無キ限リハ是ハ彼等ノ自由ニ
任セル、又我臣民ノ生命財產ニ危害ヲ及ボスヤウナコトガアルトキニハ、是非容赦ナク取
締ヲ致ス、此ノ如キ方針ヲ定メマシテ、ソレヲ今日マデ實行シテ居ル所以デアリマス、故
我租借地ナリ、或ハ附屬地帶ニ於テ未ダ此治安ヲ妨害セザル程度ニアリマス間ハ、敢テ干
渉ヲシマセヌ、苟モ之ヲ紊亂セシムル虞ガアルトキニハソレイ〓ノ取締ヲ致シタ次第デア
リマス、唯今柴君ノ御話ニモアリマシタ中立地帶ノコトニ關シマシテモ、北伐軍ガ中立地
帶ニ上陸スルト云フコトヲ聞キマシタニ依リ、再三北伐軍ノ首領ニ對シテ其上陸ノ不可
ナルコトヲ警告シタ、其警告ニモ拘ハラズ彼等ハ中立地帶ニ上陸致シマシテ、遂ニ官軍
ト衝突ヲ致シマシタニ依リ、我ハ出兵ヲ致シマシテ-中立地帶ニ出兵ヲ致シマシテ、
雙方ニ向ッテ中立地帶ヨリ退去スルコトヲ命ジマシタ、幸ニ彼等ハ兩方トモニ快ク之ヲ
承諾シマシテ、終ニ中立地帶ヲ退イタヤウナ次第デアリマス、其他鐵道沿線ニ於テ官革
ノ間ニ衝突モアッタコトガ、我國民ノ生命財產ニ危害ヲ及ボス虞ガアッタモノニ對シテハ
直ニ我兵ヲ出シテ雙方ヲ引別レシメタコトモ度々アリマス、ソレデ南滿洲ノ此治安維持ニ對シ
マスル處置ハ唯今申シタ通リノコトデアリマシテ、今後ト雖モ同ジ方針ヲ執ッテ參ル積リデアリマ
ス、第五問「南滿洲ノ吉長鐵道及吉會鐵道ニ對スル方針ハ如何」、吉長鐵道ハ御承知ノ
通リ明治三十八年ノ末北京條約協定ノトキニ其基ヲ起シマシテ、將來〓國ガ吉林長春
間ニ鐵道ヲ敷設スル場合ニハ、其金ハ日本ニ借リルト云フコトヲ極メマシタノデゴザイ
マス、其後二三囘ノ協商ヲ經マシテ、遂ニ吉長鐵道ヲ拵ヘル、其半分ノ金ハ日本ヨリ
借リル万般ノ便法ハ關外鐵道卽チ山海關ヨリ今日ハ奉天マデ達シテ居リマス、英吉
利ノ資本ニ依ッテ起ッタトコロノ彼ノ鐵道ノ便法ニ依ルト云フコトヲ極メタノデアリマス、
併シ此鐵道ハ支那ガ拵ヘルノダト云フノガ基ニナッテ居リマス、唯日本ノ技師長ト會
計官ヲ之ニ入レルト云フ定メニナッテ居リマシテ、明治四十二年ノ末頃ニ我技師長ヲ
入レ、其後又我會計官ヲ入レテ事業ニ著手セシメタ次第デゴザイマス然ルニ不幸ニ
モ著手スルヤ間モナク滿洲ニ「ベスト」ガ起リマシタ、其タメニ工事ニ意外ノ障害ヲ與ヘマシ
タ、其上ニ總辨其人ヲ得ズ、遂ニ今日マデハ三囘總辨ヲ更ヘタヤウナ次第デアリマス、且
鐵道敷設ニ不熟練ナタメニ-〓〓側ノ役員ガ不熟練デアルタメニ意想外ノ障碍ヲ此
工事ニ與ヘタ次第デゴザイマス、是ハ獨リ吉長鐵道ノミナラズ〓國人ガ外ノ鐵道工事ニ對
シマス仕打ヲ見テモ餘リ意外トスルベキモノデハナイ、往々是ハモウ有リ勝ノコトデアリマ
ス、其上ニ我技師長及會計官ノ權限ニ於テ十分ナラザルトコロモアリマシテ、今日マデ
豫定通リノ進行ヲ見マセヌ、併シ昨日受取リマシタ報告ニ依リマスト柴君ガ〓國ニ御
出デニナルトキニ御面會シタトキヨリモ少シ工事ハ進ミマシテ、八十哩ノ中今日ハ四十
六哩ホド出來テ居リマス、後ノ三十三哩出來マスルト、長春ヨリ吉林マデ是ガ續クコト
ニナリマス、唯今日最モ困難ヲ感ジテ居リマスルノハ、此鐵道資金ノ不足デアリマス、先
刻御話ノ通リ三百万兩以上ノ金ヲ既ニ費消シ盡シテ居ル、サウシテ此變亂ガ起リマシ
タタメニ資金ノ出所ガ無クナッテ、遂ニ我ニ其補給ヲ請求シテ來テ居ルヤウナ次第デアリ
マス、結局我ヨリ資金ヲ補給シナクテハナラヌト覺悟ハシテ居リマスガ、唯今マデノ通リノ
コトデハドウシテモ、之ニ應ズル譯ニ往キマセヌカラ、其金ノ仕拂ニ付テハ十分ナル保障
ヲ得マシテ、此金ヲ貸付ケテ、一日モ早ク此鐵道ノ完成ヲ致サセタイト思ウテ居リマス、ソ
レヨリ此吉會鐵道ニ關シマシテハ、是ハ吉林ヨリ朝鮮ノ會寧ニ到ルトコロノ鐵道デアリマ
シン、是モ早晩拵ヘル、併シ其時期ハ〓國ヨリ之ヲ定メテ日本ニ相談スルト云フコトニ
ナッテ居リマス、此鐵道ハ其延長約ソ二百七十哩內外ニナルダラウト思ヒマシテ、金モ
大分掛リマス鐵道デアリマス昨年既ニ其必要ヲ感ジマシテ我奉天ニ居リマス總領事
ヲ致シマシテ、總督ニ交渉ヲセシメマシタ、總督ハ直ニ其旨ヲ北京ノ方ニ通ジマシタガ、其
返答ノ來ル前ニ此騷亂ニナッテ、其儘ニナッテ居ル次第デアリマス、是モ出來得ル限リ早
ク話ヲ進メタイト思フ次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=26
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027・柴四朗
○柴四朗君 私ハ說明ノコトニ付テチヨット一言附加ヘタイ、此第六ノ「奉天山海關
ノ鐵道守備ニ對スル方針如何」ト云フ此極ク簡單ナ問題デアリマス、此間ヲ日本デ英
國ト協商シテ此責ニ任ズルノ方針ヲ執ラレルヤ否ヤト云フコトヲ附加ヘテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=27
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028・内田康哉
○外務大臣(子爵内田康哉君) 第六、是ハ先刻御說明ガ落チテ居リマシタヤウニ感
ジテ居リマシタガ、唯今ノ御說明デ能ク分リマシタ此間ノ鐵道ハ私ガ申スマデモナク、
北〓ト我鐵道-南滿鐵道及滿洲ニ於テ最モ我重キヲ置ク地帶トヲ聯絡致シマスル
唯一ノ鐵道デアリマス、又一朝北〓方面ニ事ガアリマシタ場合ニ、緩急之ニ應ズルノ途
ハ是ヨリ外ハアリマセヌ、本邦ヨリ兵ヲ送=、若クハ旅順ヨリ船ヲ仕立テル如キコトヲ致シ
テ居リマシテハ時機ヲ失スル場合ガアリマス其場合ニ奉天ヨリ直ニ山海關ヲ經テ兵
ヲ送ルト云フコトハ最モ早キ道デアリマス、故ニ之ニ對シテ最モ重キヲ措イテ居ル次第デ
ゴザイマスガ、今日デハ幸ニ此鐵道ノ聯絡ヲ絕タレルヤウナコトハ起リマセヌ、唯〓先般山海關
ヨリ十五哩バカリノ北ノ方ニ當リマシテ、鐵橋ガ壞レマシテ、之ニ對シテハ直ニ我監視兵
ヲ送ッテ之ニ監視セシメテ居リマス、其後工事モ出來マシテ、鐵道ハ今ハ通ジテ居リマス
唯〓氣ノタメニ「コンクリート」ヲ用ユルコトガ出來ナイ故ニ、其邊ダケハ汽車ノ徐行ヲシ
テ漸ク通ジテ居ルト云フ次第デアリマスケレドモヽ萬一將來ニ於キマシテ此鐵道ノ聯絡ヲ
絕タレルヤウナ場合ニ當リマシテハ、政府ニ於テハ之ニ適應スルトコロノ處置ヲ取ル積リ
デアリマス、此鐵道ニ付テハ外國ノ關係モアリマスガ、其邊ノトコロハ又ソレ相應ノ手續
ヲ取リマス、併シ此事ハ事外國ニモ關シマスカラ此所デハ明言ヲ憚リマス、第七ハ陸軍
當局者ヨリ說明ヲ致シマス第八卽チ最後ノ問題ニ對シテハ柴君ニ於テ御保留ニナッタ
〓モアリマスカラ、唯私ノ方デハ分ッテ居ル〓ダケ申上ゲマス、今日マデ退〓處分ヲ受ケ
マシタ者ハ安東縣デ三人、哈爾賓デ一人、遼陽デ一人、上海デ三人、芝罘デ二人、吉林
デ二人、關東州デ七人、都合十九人デアリマス是等ハ必シモ〓國動亂ノタメニ退〓
處分ヲ受ケタモノデアリマセヌ、是ハ殆ド十万ニ近イ我臣民ガ滿洲方面ヨリ支那全土ニ
於テ散在シテ居リマス故ニ、平生ニ於テモ此位ノ退〓處分ヲ受ケルモノガアリマス、其犯
罪ノ事項モ御問ニナッテ居リマスカラ申上ゲマスガ、多クハ賭博或ハ金品ヲ强請致シマシ
テ、婦女ヲ誘拐致シタ者、詐欺脅迫ヲ致シタ者、不正賣買ヲ致シタ者、治安妨害ヲ
致シタ者ガ一人關東州ニアリマシタ、是モ格別此動亂ニ關係シタモノトハ思ヒマセヌ、
是ダケ御答致シマス
〔政府委員岡市之助君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=28
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029・岡市之助
○政府委員(岡市之助君) 柴君御質問ノ第七「我陸軍將校中ニ武昌革命軍ヨリ
不當ノ金錢ヲ受領シタルモノアリト云フ實否如何」御答致シマス、是ハ斯樣ナ風聞ヲ耳
ニ致シタコトガゴザイマスノデ、我〓軍人ノ名譽上頗ル關係ノアルコトデ、ソレデ今日マデ
再三調査ヲ致シマシタ、其結果ニ依リマスト不當ノ金錢ヲ受領シタ形跡ハ認メラレマ
セヌ、併シ此疑ヲ被リマシタ本人ハ今歸朝ノ途中ニゴザイマス、不日歸著致スデゴザイ
マセウカラ、尙念ノタメ取調ヲ致ス積リテゴザイマス、左樣御了承ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=29
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030・小川平吉
○小川平吉君 是ヨリ保險業法中改正法律案ノ委員會ヲ開キタイト思ヒマス、御許
ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=30
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031・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=31
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032・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ハ無イモノト認メマス、質問御三、官紀振肅ニ關スル
質問-武田貞之助君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=32
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033・武田貞之助
○武田貞之助君 委員會ヘ出席シナケレバナリマセズ、ソレニ今日ハ聲ガ出マセヌカ
ラ延期ヲ申込ミマス
(議長大岡育造君議長席ヲ退キ、副議長肥塚龍君議長席ニ著ク〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=33
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034・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 暫時此席ニ著キマス、質問第三延期ト云フコトデアリマスガ、
御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=34
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035・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 然ラバ延期致シマス、質問第四、米價騰貴ニ關スル質問、武
市庫太君
〔武市庫太君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=35
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036・武市庫太
○武布庫太君 段々質問ガゴザイマシテ、諸君モ御倦怠デゴザイマセウガ、私ノハ今日
ニ於テ止ムベカラザルモノト自ラ感ジマス、又其說クトコロモ最モ簡明ニ致シマス心得デア
リマスカラ、御倦怠ノ此上尙御忍ヒデ御〓聽ヲ煩シマス、胡馬北風ニ嘶キ、越鳥南枝
ニ巢フ、禽獸ノ如キモノデモ皆其〓土ヲ愛スル此ノ如キ次第デアリマス、況シテ人間ニ於
テハ其〓ニ向ッテ其情ヲ深ウスルノハ當然デアルト思ヒマス私ハ此問題ヲ提起スルニ
付キマシテ誠ニ我〓土ノコトニ一念到リマシテ、初メテ此問題ヲ起ス動機トナリマシタ
ノデゴザイマス諸君モ御承知ノ通リ近年物價ノ漸々騰貴シ本年ニ至リマシテハ愈、以
テ騰貴シツヽアル有樣ニ付キマシテハ悲慘ナル有樣ガアチコチニ現ハルヤウナコトデアリマ
ス、デ極ク手短ニ申シマスレバ私ノ〓里ニ於テ此ノ如キトコロノ報道ガアッタノデアリマス、
其一ツ二ツヲ申シマスレバ私ノ國デ發行シマス「愛媛新報」ガ客月二十三日附ヲ以テ、
此ノ如キコトヲ報道シテ居リマス「伊豫郡ノ漁村松前尋常小學校ニテハ近來生徒ノ顏
色憔悴意氣銷沈セシモノ尠カラザルヨリ職員側ニ於テハ屹度米價ノ暴騰ニ伴フ減食ニ
基クモノナラント察シ普通ノ如ク三度ノ〓事ヲナサザルモノアリヤ有ラバ手ヲ舉グベシト試
問シタルニ二學年以上ノ生徒ハ少シハ年齢モ長ジ居ルダケ實際減食シテ居ルモマサカ手
ヲ舉ゲントモセザリシガ、一學年生ノ無邪氣ナル殆ド全部舉手シテ減食ノ事實ヲ訴ヘタ
リ」斯ウ云フ記事ガゴザイマス、又ソレニ續キマシタトコロテハ是ハ表題ハ「憫レナル物語」ト
シテゴザイマスガ「松山市第三尋常小學校第一學年某學級ニテハ此數日晝食ノ時間
他ノ生徒ノ退場シテ家庭ニ歸ルモノアレバ辨當部屋ニ赴クモアルニ二人又ハ三人ノ悄
然トシテ〓場ニ居殘ルモノアルヨリ受持〓員ハ不思議ニ思ヒ或ル日三人ノ居殘レル場合
試ミニ其仔細ヲ質シタルニ一人ハ私ノ家デハ一度ノ御飯ヲ二硫ト極メテ居マスソレニ今
朝私ハ三碗ヲ食ベマシタカラ、歸ッテモ食ベラレマセント答ヘ他ノ二人ハ口ヲ揃ヘテ歸ッテ
モ御飯ガアリマセント答ヘタルニハ受持〓員モ暗淚ニ咽ビタリトゾ」此報道ニ依リマシテ私
ハ大ナルトコロノ感ジヲ起シマシタデゴザイマスソレ以來果シテ社會ノ物價ガ如何ナシ趨
勢ニナッテ居ルカ、又此米價ニ就テハ如何ナルモノデアルカト言フコトニ多少心ヲ傾ケテ調
查ヲ致シマシタガ、此狹カラヌ我帝國全體ニ所謂一斑以テ豹ヲ知リ、一花開ケテ天下ノ
春ヲ知ルデ何レノ里モ斯ル慘狀ヲ見ツヽアル有樣ヲ私ハ見聞致シマシタデゴザイマス、是
ニ於テカ私ハ此質問ヲ提起スルノ已ムヲ得ザルニ至リマシタ、是カラハ此質問ニ對シマシテ
極ク簡略ニ其趣旨ヲ說明致シマセウト思ヒマス、元來我國ハ商工業ト併セテ此農業モ
盛ニ致サンナラヌ次第デゴザリマスルケレドモ、由來多數ヲ持ッテ居リマスルトコロノ此農
業ガ本位トナリマシテ、此土臺ノ上ニ於テ國家ノ隆盛ヲ期シマスルノガ本當ノ順序ダラ
ウト思フ、農業興ラズンバ商工モ亦興ラヌヤウナ次第ニ立至ルト思ヒマス、此農業ニシテ
盛ニナリマスレバ、商工モ隨ッテ盛ニナリ、國家遂ニ隆盛ヲ期スルヤウニナルト思フノデゴザ
イマス、テゴザイマスレバ此農業者ニ向ッテ及ブ限リノ力ヲ國家モ與ヘテ、彼ヲシテ其所期
ヲ盡サシメルヤウニ致サネバナルマイト思フノデゴザイマス、然ルニ近來此農家ハ或ル事情ノ
タメニ益〓其耕耘ノ業ヲ手控ヘマシテ、マダ是ヨリモ易イトコロノ樂ナトコロノ職業ニ向ッテ
手ヲ著ケントナシツヽアルヤウナ傾向デアリマスコトハ、甚ダ國家ノタメニ痛マシイコトヽ思フ
ノデゴザイマス、デ此場合私ハ農家ヲシテ安ンジテ其業ヲ取ラシメ、サウシテ農家ニ反ブダケ
ノ便宜ヲ與ヘルト云フコトハ國家ガ當然爲スベキ務デアラウト存ジマスルカラ、此第一
問ヲ發シマシタ次第デゴザイマス、卽チ第一問ハ從前モ國家ト致シマシテハ農工銀行ノ設
立デアルトカ、或ハ郵便貯金ノ分配ニ依リマシテ、或ハ耕地整理ノ補助トカ、種々ノコ
トカラシテ國費ヲ費シテ此農業上ノ利益ヲ與ヘルコトニ致シテ居リマスルケレドモ、此ノ
如キデハ尙私ハ甚ダ不足ト感ジマスニ付キマシテハ、政府ハ此財政困難ナル場合デアリ
マシテモ、國本タルトコロノ農業、我國唯一ノ根本的ノ關係ノアル此農業ニ向ヒマシテ
ハモウ少シ力ヲ致サレタイト存ジマス、ソレニ付テハ政府ハ此上尙是等ノコトニ付テ其
金額ヲ增スト云フノ意思ハナイデアルカ、增サナケレバナラヌト思フガ如何デゴザルカ、此
一問ヲ發シマシタ次第デゴザイマス、ソレカラ第二問ニ於キマシテハ獨逸ナドハ信用銀行
ヲ設ケマシテ、サウシテ低利ノ資本ヲ農家ニ供給スルヤウナ方法ヲ取ッテ居リマス、成程
チヨット一見スレバ我國ニハ農工銀行ナドモアリマスルカラ、是等ノ必要ガナイカノ如ク見
エマスケレドモ、併ナガラ是ハ又性質ガ違ヒマシテ獨逸ナドニ行ハレテ居ルトコロノモノハ
各町村々々其町村ノ事情ニ依リマシテ、大小廣狹ガゴザイマス適宜ニ之ヲ爲スコトヲ
得マスルカラシテ、其農家ガ用井マストコロノ資本ハ容易ニ之ヲ低利ニ得ルコトガ出來マ
シテ、而シテ此農産物ヲ賣リマシタ上ニ付テハ意外ノ利益ヲ儲ケルヤウナ次第ガアルデゴ
ザイマスルガ、政府ハ斯ウ云フヤウナ外國ノ制度ニ付テ調査ヲサレタコトガアリマスルカ、又ア
ルト致シマスレバ、之ニ付テハドウ云フ御考ヲ持タレルデゴザイマセウカ、ドウゾ此ノ如キ制
度ヲ我國ニモ用井ラレタイモノデアルガ、其御意見ハ如何斯ウ申スノガ私ノ第二ノ要旨
デゴザイマス、ソレカラ第三ハ以前封建時代トハ違ヒマシテ、今日我國ハ南ノ端カラ北
ノ端、東ノ端カラ西ノ端マデ、交通ノ便ガ大ニ開ケマシテ、年々鐵道ナドモ進ンデ參ルヤ
ウナ次第デゴザイマスル、併ナガラマダ歐米各國ノ如ク普及ト云フ〓ニハ參リマセヌ、參リ
マセヌケレドモ、東南ノ物ヲ之ヲ西北ニ致シ、西北ノ物ヲ之ヲ東南ニ致ストカ、或ハ南ノ
物ヲ北ニ致シ、北ノ物ヲ南ニ致スト云フコトモ、容易ク爲シ得ラルヽヤウナコトニナリマシ
タ、彼ノ千里江陵一日ニ還ル如キ快速ナルコトハ出來マセヌデモ、三數日ノ日子ヲ費シ
マスレバ、確ニ之ヲ爲シ得ラルヽヤウナ次第ニナッテ來マシタ、斯ウ云フヤウニナッテ來マシ
タニ付キマシテハ、或ハ東北ニ不足ヲ告ゲマスレバ、西南ノ餘レルヲ以テ之ニ給シ、西南
不足ヲ告クレバ、東北ノ餘裕ヲ以テ之ニ給スト云フコトニ致シマシタナラバ其價ト云フ
モノヲ平均シマシテ、米價暴騰ノ弊ヲ除クコトガ出來マセウト存ジマス、之ニ付テハ其唯
一ノ機關ナルトコロノ汽車ノ運賃ヲ低減スルノガ何ヨリノ方策ト存ジマステ政府ハ
今日ノ場合此上尙汽車ノ賃錢ヲ低減セラルヽトコロノ御考ハ無イデゴザイマセウカ是是
ガアリマスレバ農家ハ其重タイトコロノ澤山ノ米ヲ運搬スル上ニ得ルトコロノ利益ハ尠少デ
ナイ、斯ウ考ヘマス次第デゴザイマス、ソレカラ第四ニハ現今ノ米價ハ諸君モ御承知ゴザイ
マス通リ、未ダ曾テ有ラザルトコロノ價ヲ表示シテ居リマスル、是ハ甚ダ私ハ不可思議ニ存
ジマス、尙一昨年ノ如キハ大ナル農作デハナカッタデアリマスケレドモ、昨年ノ如キハ平常作
以上デゴザイマシテ、先ヅ豐作ト稱スベキ年柄デアルヽ然ルニモ拘ラズ其米價ノ上カラ見マ
スルト、昨年以上ニ騰ッテ居ルヤウナ有樣デゴザイマス、昨年以上ドコロカ、殆ド未ダ曾テ有
ラザルトコロノ價値デアルノデアリマス、デ此ノ如キコトニ至リマシタノハ、或ハ通貨膨脹ノ結
果カ、或ハ需用供給ノ關係カ、又其他種々ノ原因ガアッテ、此ニ至リマシタノカモ知レマセ
ヌケレドモ、此ノ如キ價格ヲ現ハスト云フコトハ尋常一樣ノコトデハナイ、卽チ私ハ過當
ノ價値ト見ネバナラヌト思ヒマスル、成程農家ニ於テ米價ノ騰貴ハ欲スルトコロデアル父
吾〓モ農民ト致シマシテハ米價ノ高キヲ望ミマスルサウシテ農民ノ資產ニ於キマシテ富
ンデ參リマスレバ、前ニ申上ゲマシタ通リ、國家ノ富ム次第デゴザイマスカラ、慶スベキアハ
アリマスケレドモ、併シ理窟ニ於テ合ハザルトコロノ騰貴ガ、未ダ曾テアラザルトコロノ現象
ヲ現ハスニ至リマシテハ、却テ農民ヲシテ不利ヲ招グヤウナ窮狀ニ至リハセヌカト私ハ考ヘ
ルノデゴザイマス、是ガ經濟上ノ原理ニ照シ需用供給ノ上カラ見マシテ、當ニ此ニ騰ル
ベキ筈ノ價格デアレバ、吾〓ハ之ヲ喜ンデ大ニ之ヲ樂ム次第デゴザイマスルケレドモ然ラ
ザルニ於テハ其眞價ニ之ヲ復シテ、平準ヲ得テ、サウシテ農家モ安ンジテコ〕ノノヲヲ爲ス
ト云フコトニ致シマセンナラヌト考ヘルノデゴザイマス、デ私ハ稍〓此價格ト云フモノハ過當
デハアリハシマセヌカト云フ虞ヲ抱キマスルガ果シテ政府ハ如何ナル御考デアルカ、是ガ
若シ私共ト見ルトコロヲ同ウセラルヽナラバ之ニ對スル緩和策ヲ講ズル御意思ハナイノ
デアラウカ、如何デアラウカ、餘リ暴騰シマスレバ農家ハ忽チ利益ヲ得ルガ如クニシテ、而
シテ農家ハ得マセヌト云フ反對ノ結果ヲ私ハ現ハスデアラウト存ジマス、是ハ唯今マデノ經
歷ニ徵シマシテモ歷々トシテ居ル次第デゴザイマス、丁度今日ノ場合ハ將ニ農家ガ其米ヲ
生產致シマシテ、之ヲ市場ニ出シテ、サウシテ我帝國ハ米ニ充チテ居ナケレバナラヌ時期デア
ルニモ拘ラズ、斯ル高價ノ有樣ヲ現ハシテ居ルト云フヤウナ次第デゴザイマスト、農家ハ其
慣習ニ馴染ミマシテ、サウシテ賣惜ミト云フヤウナ傾ニ流レテ來マス、而シテ其米ノ實價ガ
之ニ伴フモノナラ宜シイノデゴザイマスガ、或ル關係ノタメニ斯ル奇態ナル現象ヲ呈シ居ル
モノト致シマスルト是等ニハ氣信カズシテ將ニ賣ルベキニ其機ヲ失シマシテ、サウシテ却テ此
米ノ廉キ場合ニ於テ之ヲ倉出シスルト云フヤウナコトガアルノデアリマス、斯ルコトニナリマ
スト農家ノ倉廩ハ旣ニ空ウシテ、サウシテ他ノ好商ノ懷ガ玆ニ溫マルト云フヤウナ妙ナ現
象ヲ來スト思ヒマス斯ウ云フ次第デゴザイマスカラ、其價格ノ平準ヲ得、當然ノ理ニ於
テ保ツベキ價格ニテ之ヲ賣買致シ、之ニ依ッテ農家ハ收益ヲ得ルト云フコトニ致シタイモ
ノト考ヘルノデゴザイマス、ソレカラ今度ハ最後ノ五ノ質問ニ移リマス、此我國ノ米ノ價
格ノ平準ヲ得ルタメノ一ノ道具ト致シマシテ、米穀取引所ト云フモノガ出來テ居リマス、
成程是ハ必要ナモノデ、斯ウ云フ機關ガナクテハ我國ノ米價ノ平準ヲ得ルコトハムブカシ
イコトデゴザイマスカラ、斯ル制度ノアルコトハ當然ノコトヽ信ジマスルガ、アノ制度ニ於テハ
其趣意ヲ全ク行フコトガ出來ルヤ否ヤハ私ノ疑問ニ屬シテ居リマスルノデゴザイマス、成程
一利ノアルトコロハ一害ノ存スルトコロデゴザイマスカラ、唯利ノミヲ見ルト云フコトハ出
來マセヌケレドモ、其害ノ多キモノハ之ヲ矯正シテ、サウシテ利ヲシテ大ナラシメルヤウナコ
トニ致サナケレバナラヌト思ヒマス、唯今アリマストコロノ米穀取引所ノ如キモノハ、或ル
〓マデハ誠ニ都合好キモノト存ジマスケレドモ、時ニハ其價ヲシテ理窟上下ルベカラザル
程度ヨリモ之ヲ押下ゲ、又上ルベカラザル程度ヨリ之ヲ押上ゲテ、サウシテ之ニ從事スル者
ガ暴利ヲ其間ニ貪ルト云フヤウナ弊ガ此取引所ノ制度ノ上カラ出テ居ルコトモアルヤウ
ニ思ヒマスルノデゴザイマス、是等ハ其騰貴ト低廉トノ如何ニ拘ハラズ、平準ヲ得ルトコ
ロノ機關ナル此米穀取引所ト云フモノヽ趣旨ニ背ク次第デゴザイマシテヽ政府ハ之ニ向ッ
テ改善ノ策ヲ講ゼラレタイト存ジマス、ソレニ付テハ如何ナル方法ヲ以テ政府ハ之ニ付
テ御調査ニナリツヽアリマスルカソレガ伺ヒタイ、又其御調査ニシテナリツヽアリマシタナ
ラバ、其方法ハ如何ナル計畫ニサレマスルカ、又ソレハ他年ヲ待ッテセラレマスルカ、又近
キ將來ニ於テナサレマスルカ、是等ノ意思モ承リタイト存ズルノデアリマス、是ガ卽チ第五
問ノ趣旨テゴザイマス、之ヲ要シマスルニ私ノ此質問ヲ呈シマシタノハ·畢竟農民ヲシテ
其農產物ニ對シ、卽チ米ノ如キ大產物ニ對シテ利潤ヲ得セシメ農家ヲシテ殷富ノ境
涯ニアラシメタイト云フ精神ハ申スマデモナイ次第デゴザイマスガ、此我國民ノ常食トス
ルトコロノモノハ、又此米ニアル以上ハ、先ニ私ガ新聞紙ニ於テ一端ヲ申述ベマシタ如
〃誠ニ小學生徒ハ〓フモノモエ食ハズ致シマスルヤウナ、悲慘ナル有樣ニ立至ラシメザ
ル價格ノ範圍ニ於テ、サウシテ農家ハ彼ノ利益ヲ十分ニ得テ以テ國家ノ經濟上旨ク料
理シ得ラレルヤウナ有樣ニアリタイ、斯ウ考ヘマスルノデゴザイマス、デ唯ニ農家ガ其利得ガ
多キニ致シタトコロガ、之ガタメニ諸物價ガ騰貴致シ、四圍ノ狀況ガ悲惨ニナリマスレバ、
彼レ一人晏然タルコトハ得マセヌノデアリマス、是ハ私ガ細說ヲ致シマスルマデモナイ、旣
往ノ事歷ガ之ヲ證シテ居ルヤウナ次第デゴザイマスカラ互ニ相待ッテ國民全體モ餘リ高
イ、此非常ナ困難ノ生活ニ流レズシテ行キ、サウシテ農家ハ大ナル利益ヲ其篋底ニ收メ
ルト云フヤウナコトニシテ、兩々相待ッテ行クト云フコトニ致シタイモノト考ヘル此衷情カ
ラシテ玆ニ此質問ヲ提出シタ次第デゴザイマス、果シテ農家ニシテ其米價ノ平準ヲ得、又
一方ノ側ニ於テハ勞力ヲ省キ、廉キ資金ヲ得テ、サウシテ之ニ從事スルコトニ至リマシタ
ナラバ我國ノ殷富ハ期シテ待ツベキモノデアラウト存ジマス、サウナリマシタナラバ幾億ノ
我國ノ負債モ、又國防ノ充實ノ如キモ、是ハ他年ヲ期シテ爲シ得ラレルコトト信ジマスレ
バ私ハ今日此物價、殊ニ此米價ナドノ平準ヲ得ルヤウナコトニ政府ハ力ヲ入レ、サウシ
テ農家ヲシテ又利得ヲ得セシムルコトニ力ヲ入レルノハ國家ノ安泰ヲ圖ルトコロノ大ナ
ル計デアルト信ジマスル次第デゴザイマス、甚ダ粗漫デ意ヲ盡シマセヌガ、諸君ノ御倦怠
ヲ恐レテ、是デ降壇致シマス
〔農商務大臣男爵牧野伸顯君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=36
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037・牧野伸顯
○農商務大臣(男爵牧野伸顯君) 唯今ノ武市君ノ御質問ニ御答致シマス、第一ノ
農業低利資金ノコトニ付キマシテハ、イヅレ其主管ノ大臣カラ答辯ノアルコトヽ考ヘマス、
第二ノ政府ハ獨逸ニ於ケルガ如キ、地方農村ニ共同信用銀行ヲ設ケ、低利ナル資金ヲ
融通セシムルコトニ付、調査ヲ爲シタルコトアリヤ、アリトスレバ政府ノ之ニ對スル方針如
何此事項ニ付キマシテハ唯今質問ニ對スル御說明モアリマシタガ、政府ニ於キマシテハ
獨逸ノ地方ノ金融機關ニ對スル調査ハ之マデ致シテ居リマスノデアリマス、然ルニ何レモ
其起リ、沿革ハ其國情ニ依リ、地方ノ當時ノ有樣ニ依シテ居ルコトデアリマシテ、之ヲ直ニ
我國ニ行フト云フコトニ付キマシテハ、見込ガ立タヌノデアリマス、ヤハリ既ニ設立シテアリ
マストコロノ日本ノ勸業銀行、農工銀行、拓殖銀行其他信用組合、、或ハ其信用組合
ノ聯合會ノ如キ、旣ニソレ〓〓成立ッテ働イテ居ル機關モアリマスカラシテ、是等ヲ奬勵
致シテ、一層其用ヲ辨ズルヤウニ致ス方ガ宜シイト云フ考デアリマス、ソレカラ國有鐵道ノ
米穀賃金ノコトハ其所管ノ政府委員ヨリ說明致シマス、第四ノ政府ハ現今ノ米價ヲ過
當ト見ルヤ否ヤ、若シ過當ト見ルナラバ之ヲ緩和スル策ヲ有シテ居ルカ否ヤ、是ハ說明者
ノ御話ノ如ク、頗ル重大ナ問題デアリマス、然ルニ米價ノ過當デアルヤ否ヤト云フコトハ、複
雜ナ事情ニ依ッテ決セラレルコトデアリマシテ、例ヘバ需用供給ノ關係又賃金等ノ關係、
極メテ廣イ範圍ニ亙ッテ、種々ナ事實ニ照シテ考ヘナケレバナラヌノデ、今果シテ過當デア
リヤ否ヤト云フコトヲ經濟的ニ果シテ過當デアルヤト云フコトヲ斷言スルコトハ、未ダ今日
マデノ調ニ於テハ過當デアルト云フコトヲ斷言スルコトハ出來ヌト思ヒマス、是ハ今申
ス如ク一般ノ物價ノ關係ナドニ照シテ考ヘナケレバナラヌコトヽ思ヒマス、併ナガラ米
價ノ非常ナ騰貴ヲ致シテ居ル、從來餘リ例ノナイ、未曾有ノ有樣ヲ以テ騰貴ヲシテ居
ルソレガタメニ一部ノ國民ニ非常ナ困難ヲ與ヘテ居ルト云フ事情ハ十分ニ認メテ居
リマス、之ニ對スル緩和策ヲ執ルカ否ヤト云フコトニ付キマシテハ政府ニ於キマシテハ
折角調査中デアリマス、此場合ニ於テ此以上ノコトヲ申上ゲルコトハ出來マセヌノデアリ
さく、第五、取引所ノ制度ノ改善ニ付テノ御尋デアリマス、是ハ獨リ米穀取引所ノ關
係バカリデナク、此取引所ノ問題ハ一般ノ取引所ノ全體ノ制度ノ一部分デアリマシテ、
米穀取引所ノコトハー-此取引所ノ制度ガ今日ニ於キマシテ不完全ナ廉ガアルト云フ
コトハヤハリ同ク認メテ居リマスノデ、是モ目下調査中デアリマス卽チ此不都合ノ點
ヲ改善スルト云フ目的ヲ以テ、今調査致シテ居リマス、成ベク早キ時期ニ於テ此改善
ノ方法ヲ講ジテ、御相談ヲ致シタイト思ッテ居リマス
〔大藏大臣山本達雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=37
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038・山本達雄
○大藏大臣(山本達雄君) 唯今ノ第一ノ農業改良ノタメニ低利資金ヲ尙增加スル
意思ナキヤト云フ御質問ニ對シテ御答ヲ致シマス今日政府ハ農業發達ノタメニ資金
ヲ耕地整理、產業組合ト云フモノニ向ッテ五百万圓、又小農ノタメニ五百万圓、都合一
千万圓ヲ供給シテ居リマスガ、固ヨリ此額ハ十分ナルモノトハ認メテ居リマセヌ、故ニ追〓
增加致シタイト云フ意思ハ十分ゴザイマス併ナガラ之ヲ增スノニ付キマシテハ其財源ト
シテハ郵便貯金ノ增加ニ待タナケレバナリマセヌ次第デゴザイマス、追〓國ガ發達シマシテ
節儉心ガ起リマシテ郵便貯金ガ增加致シマスレバソレニ依ッテ漸次ニ其方ノ資金ヲ增
シタイト云フ意思デゴザイマス、之ヲ御答致シマス
(政府委員工學博士平井晴二郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=38
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039・平井晴二郎
○政府委員(工學博士平井晴二郞君) 武市君ノ唯今ノ御質問ノ第三、卽チ米穀
ノ鐵道運賃ニ關スル件ニ付テ、御答ヲ致シマス政府ハ此國民ノ糧食タル米穀ノ運賃
ヲシテ最モ廉カラシムル必要アリト認メテ、鐵道運賃ノ中最モ廉イ級ニ之ヲ充テヽ居ルノ
デアル而シテ鐵道國有以來、政府ノ方針トシテ總テノ運賃ヲ鐵道ノ經濟ノ許ス限り、
低減ヲ致シテハ居リマスガ、今日ノ場合ニ於テ現今以下ニ之ヲ低減スルコトハ出來得ナ
イト云フ考ヲ持ッテ居ルノデゴザイマス、左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=39
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040・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 質問第五、土地增價稅ニ關スル質問、千田軍之助君
〔「居ラヌ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=40
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041・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 質問者不在デゴザイマスカラ、是ヨリ日程ニ移リマス、日程第
一陸軍作業會計法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス
第陸軍作業會計法中改正法律案(政府提出)第一讀會
陸軍作業會計法中改正法律案
陸軍作業會計法中左ノ通改正ス
第二條第一項中「建物」ヲ「土地建物」ニ改ム
第三條第一項中「東京及大阪砲兵工廠ハ」ノ下ニ「俸給諸給旅費廳費」ヲ加ヘ
「建物」ヲ「土地建物」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員岡市之助君壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=41
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042・岡市之助
○政府委員(岡市之助君) 今囘陸軍作業會計法中ノ改正案ヲ提出致シマシタニ
付テ、理由ノ大要ヲ申述ベマス、是ハ東京、大阪兩砲兵工廠ハ今日マデ一種特別ノ作
業會計法ヲ取ッテ居リマシタ、卽チ職員ノ俸給諸給、廳費、旅費等ハ軍事費ヨリ支出
ヲ致シテ居リマシタ、其他職工及作業ニ關係スルコトハ無論作業費カラ出シテ居リマス、
土地ノ管理ニ付テモ取除ケニナッテ居リマス所ガ今日マデノ實驗ニ依リマシテ、頗ル
不統一且不便、不利ノ廉ガゴザイマスノデ、之ヲ純然タル作業會計ニ直シタイト云
フ希望デゴザイマス、但シ之ガタメニハ陸軍費ハ別ニ增加ハ致シマセヌ、又御協賛ヲ經マ
シタナラバ四十六年度ヨリ實行致シタイト云フ考ゝ四十六年度ノ豫算ヲ編成ノ關係ガ
ゴザイマスノデ、當議會ニ提出ヲ致シマシタ次第デゴザイマス、御協賛ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=42
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043・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 次ハ日程第二ニ移リマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=43
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044・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=44
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045・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 恆松君ノ發議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=45
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046・肥塚龍
○副議長(肥塚龍君) 然ラバ恆松君ノ發議ノ通リ議長指名九名ノ委員ニ付託スル
コトニ致シマス次ハ日程第三、鑛業法中改正法律案-武滿義雄君
第三鑛業法中改正法律案(武滿義雄君提出)第一讀會
鑛業法中改正法律案
鑛業法中左ノ通改正ス
第二條第一項中「石油、」ノ下ニ「可燃質天然瓦斯、」ヲ加フ
同條第二項中「但シ」ノ下ニ「可燃質天然瓦斯ハ總テ」ヲ加フ
〔武滿義雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=46
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047・武滿義雄
○武滿義雄君 鑛業法中改正法律案此改正法律案ノ目的ハ第二條第一項中ニ
「石油」ト云フ鑛物ノ名稱ガアリマスルガ、其石油ノ下ニ「可燃質天然瓦斯」ト云フ文
字ヲ加ヘル、又同條第二項中「但シ」ノ下ニ「可燃質天然瓦斯ハ總テ」ト云フ文字ヲ加
ヘル現行法ニ於テハ此可燃質天然瓦斯ハ鑛物ノ中ヨリ除外サレテ居ッテ、其保護ヲ
受ケルコトガ出來ナイト云フコトニナッテ居リマス、御承知ノ如ク瓦斯利用ノ途ハ甚ダ浩
汎デアッテ、其瓦斯ニ基ケル事業ハ其經營ノ如何ニ依リマシテハ、非常ニ公益ヲ增ス、卽
チ產業ノ開發、國力發展ノ上ニ利益アルコトヽ私ハ考ヘルノデアリマス、然ルニ現行法ノ中
ニ於テハ鑛物ノ中カラ可燃質天然瓦斯ガ除外サレテ居ルト云フコトハ甚ダ產業發展
ノ上カラ見マシテモ、亦國力開發ノ上カラ見マシテモ、是ハ法律ノ不備デアルト私ハ考ヘ
テ居ルノデゴザイマス、此瓦斯ナルモノハ如何ナルモノニ利用セラレテ居ルカト申シマスレバ
先ニ申シマシタ通リ甚ダ浩汎デアル、今其二三ノコトヲ申述ベマセウナラバ
〔副議長肥塚龍君議長席ヲ退キ、議長大岡育造君復席ス〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=47
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048・武滿義雄
○武滿義雄君 電氣ノ原動力、燃料、炊事、一般燈火用、蒸汽ノ原動力、硝子製
造、陶磁器製造、其他工業用燃料、此ノ如ク需用ノ途ガ甚ダ浩況デアル何故ニ之ヲ
現行法カラ除外シテ居ルカト云フコトヲ考ヘルト、油層ニ密接ノ關係ノアルトコロノ瓦斯ハ
鑛業法ノ第二條第二項中ニ認メラレテ居ル、然ルニ油層ニ密接ノ關係ナキモノハ除外
セラレテ居ルコトニナッテ居ルノデアリマスカラ、是ハ油層ニ密接ノ關係ガナイ所ニハ可燃
質天然瓦斯ハナイモノデアラウト、斯ウ云フコトヲ當局者ハ考ヘテ居リハセヌカト思フノ
テ、或ハ又アルト云フコトヲ知リツヽモ、法律上鑛物ト認メテ、サウシテ是ハ保護スルダケ
ノモノデハナイト云フコトヲ考ヘテ居ルノカモ知レマセヌケレドモ、今日デハ段々此天然瓦
斯ヲ掘採サレマシテ、發生ノ場所ニ乏シカラヌノデアル、其場所ヲ舉ゲテ申シマセウナラ
バ秋田縣南秋田郡ノ濁川村ノ如キ山形縣ノ楯岡町附近ノ如キ、印旛沼附近ノ如
〓、千葉縣下茂原ニ於ケル如キ、鹿兒島縣ノ敷根村ニ於ケルガ如キ、ソレ〓〓天然
〃瓦斯ガ漏出シテ居ルノデアル、所ガ此發生シテ居ル場所ハ油層ニ密接ノ關係アル所デアル
ヤ否ヤト云フコトハ、是ハ議論デアリマスガ、私ノ知リ得ル限リニ於テハ今申述ベマシタ
ル箇所ノ分ハ油層ニ密接ノ關係ガアル所デハナイト思フ、併ナガラ其中デモ千葉縣下ノ
茂原ニ於ケルモノヽ如キ、鹿兒島縣下ニ於ケルトコロノ如キハ確ニ油層ト密接ノ關係
ハナイモノデアルソレヲ法律ノ上ニ於テ認メテ居ラナイカラシテ、適3此瓦斯力ヲ利
用シテ、或ハ硝子製造業ヲ起ストカ、或ハ陶磁器製造業ヲ營ムト云フヤウナ志ノアル者
ガ居リマシテモ法律上ノ保護ガナイ以上ハ甚ダ危險デアルカラ、從ッテ多大ノ資本
ヲ投ジテ大計畫デ經營シヤウト云フトコロノ人ガナイノデアル、是ハ法律上ノ不備デアッテ、
甚ダ私ハ遺憾ナコトヽ思フノデアリマス、縱シ是ガ十分ナルモノガナイト致シマシテモ、此
可燃質天然瓦斯ノ一項ヲ加ヘマシタトコロデ何等妨ヲ及ボスヤウナコトハナイ、或ハ反
對スル者ハ言ハンツレハ是ニ特權ヲ與ヘテ、鑛物ノ一ツト認メル場合ニ於テハ此法律
ニ依ッテ濫リニ特權ヲ與ヘル故ニ公益上妨害ヲ與ヘルト一云フコトヲ言ハレルカモ知レマ
セヌガ、ソレハ鑛業法ノ中ニ於テソレ〓〓規定ガアッテ、監督官廳トカ、或ハ一私人ノ承
諾ヲ得ナケレバナラヌト云フ規定ガアリマスカラ、サウ云フ場合ハ毫モナイコトヽ私ハ信ジ
マス、此ノ如キ理由ニ依ッテ本案ヲ提出シタ所以デゴザイマスカラ、何卒御賛成アランコト
ヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=48
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049・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレタシ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=49
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050・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=50
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051・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガアリマセヌカラ本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託ス
ルコトニ決シマス日程第四、國有土地森林原野下戾法中改正法律案ノ第一讀會
ヲ開キマス、岡田泰藏君
第四國有土地森林原野下戾法中改正法律案(岡(第一讀會)
田泰藏君外一名提出)
國有土地森林原野下戾法中改正法律案
國有土地森林原野下戾法中左ノ通改正ス
第一條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ土地森林原野ニ於テ主產物ヲ採收シタル者ハ所有ノ事實アリタル
モノト見做ス但シ他ニ所有者アリト認ムヘキ證據アルモノハ此ノ限ニ在
ラス
第一條第二項中「前項」ヲ「第一項」ニ改ム
第二條第四號中「分收」ヲ「收得」ニ改ム
〔岡田泰藏君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=51
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052・岡田泰藏
○岡田泰藏君 國有土地森林原野下戾法中ニ少シバカリ改正ヲ致シタイタメニ本案
ヲ提出致シマシタ、同法ノ第一條第一項ノ次ニ斯樣ナ條文ヲ加ヘタイト思フ、ソレハ「前
項ノ土地森林原野ニ於テ主產物ヲ採收シタル者ハ所有ノ事實アリタルモノト看做ス但
シ他ニ所有者アリト認ムヘキ證據アルモノハ此ノ限ニ在ラス」此外此改正ニ連レマシテ
字句ノ修正二箇所バカリヲ要シマスル此改正ノ理由ハ下戾法ノ請求ノ權利ヲ擴張致
シマスルノデナクテ、現在ノ儘デ何等異存ハナイノデアリマスルガ、此法律ガ適用サレテ居リ
マスル現在ニ於テ、農商務省ノ處分、續イテ行政裁判所ノ判決ガ如何ニモ法理ニ適シテ
居ラヌ判決ヲ數多ク重ネテ參ッテ居リマス、其〓ハ土地ヲ長ク使用シ、且收益ヲシテ
居ルモノハ所有ト推定スベキガ當然ノ道理デアル併ナガラ他ニ所有者ガアル管理權ノ
發動トシテ、或ハ使用收益權ヲ持ツト云フ場合デナイ限リハ使用シ且收益シテ居ル
ト云フ事實ハ、之ヲ取ッテ以テ所有ノ事實アルモノト推定スベキガ當然ノ理論デアラウト思
フ、是ハ實際ニモ適スル說デアルト思フノデス、所ガ行政裁判所ニ於キマシテ、或ハ其使
用收益ト云フコトハ管理權ノ結果トシテサウ云フコトガアッタカモ知レヌカラ、故ニ所有
ト見ルコトガ出來ナイ、斯樣ナ認定ヲ下シテアリマスル、此判決例ガ數多ク重ナリマシテ、
殆ト法律ト同ジ效用ヲ以テ先例トシテ、玆ニ尙二百餘ノ未決ノ事件アルモノニ對シテ
モ、之ヲ應用サレルト云フ現在デアリマスル、ソレ故ニ本員等ノ考ヘマスルトコロハ、此
場合ニ於テ此法律ヲ改正ヲシテ、法理ノ正當ナルコトヲ主張スルト云フコトハ現在
定マッテ居ラヌ、訴訟事件ニ對スル下戾權ノ正當ナルコトヲ正シテ往クト、併セテ從來ノ
不幸ナル判決ヲ受ケタモノニ對シテモ、他日相當ニ救濟ノ途ヲ與ヘベキトコロノ事柄ニナ
ルト思ヒマス、唯是ハ徒ニ此主張ヲ打チヤッテ、總テノ判決ガ終了サレタ後ニ之ヲ讓
ルト云フコトハ言ウテ行ハレザルコトノ結果ニナルト思ヒマスルノデ、今日ハ此改正ヲ請求
スベキ、適當ノ時機ト考ヘマシテ、本案ヲ提出シタ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=52
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053・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案モ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=53
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054・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=54
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055・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ本案モ議長指名九名ノ委員ニ付託スルコト
ニ決シマス、日程第五、家畜市場法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-漆昌
巖君
第五家畜市場法中改正法律案(漆昌巖君提出)第一讀會
家畜市場法中改正法律案
家畜市場法中左ノ通改正ス
第二條、第三條、第四條、第五條二項、第七條二項、第八條、第九條、第十條、
第十四條、第十五條、第十六條中「地方長官」ノ下ニ「東京ニ於テヲ加フ
ハ警視總監」
第七條中「家畜ノ賣買交換ヲ業トスル者」ヲ「家畜ニ關スル營業者」ニ改ム発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=55
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056・漆昌巖
○漆昌巖君 極ク簡單デゴザイマスカラ此席ヨリ申上ゲマス、唯今日程ニナッテ居リマ
スル家畜市場法中改正法律案、是ハ極ク簡單デゴザイマス、恐クハ此法律制定ノ當時
當局者ガ氣ガ付カナカッタノデアラウト思フ位デゴザイマス、同法第二條、第三條、第四
條第五條ノ第二項、第七條ノ第二項、第八條、第九條、第十條、第十四條、第
十五條、第十六條中「地方長官」ノ文字ノ下ニ「東京府ニ在リテハ警視總監」ノ十一
字ヲ加ヘル斯ウ云フノデゴザイマス、ソレカラ是ハ總テ斯ウ云フ家畜ニ關スルコトハ警視
廳ガ東京府ニ在テハ、屠畜、賣肉、畜舍構造、牛乳榨取、馬車、牛車、獸疫豫防
等總テ警視廳ノ所管ニ屬シテ居ル、然ルニ市場ダケガ東京府ニアルノデアル、甚ダ取
締ガ能ク行屆カヌノデ、此當業者ノ迷惑ノミナラズ、延イテ公衆ノ衞生ニモ關係アルモ
ノト信ジマスル次第デ、故ニ唯今申シマシタ各條ノ下ニ「東京府ニ在テハ警視總監」ノ
十一字ヲ加ヘルト云フ是ガ改正ノ趣意デアリマス、同法第七條中ニ「家畜賣買交換ヲ
業トスル者」トアリマスルノヲ、之ヲ「家畜ニ關スル營業者」ト改正ヲ致シタイ、其趣意ハ
本法二十條、二十一條ノ中ニ「家畜ニ關スル營業者」ト云フ文字ガアリナガラ、其文字
ニ該當スルコトガ出來ナイ、思フニ是ハ當局者ガドウ云フ考デゴザイマシタカ知リマセヌ
ガ、此解釋上家畜賣買交換ヲ業トスル者ト云フダケデハ、二十條、二十一條ノ家畜ニ
關スル營業者ト云フモノニ該當スルコトガ出來マセヌノミナラズ、是ガタメニ此解釋上大
變狹小シテ用ヲナサヌト云フノデゴザイマス故ニ唯今ノ如ク改正ヲシタイト云フノデゴザ
イマスルガ、イヅレ詳シイコトハ又委員會デ充分ニ說明致シマスカラ、本案ハ是デ宜シク
御贊成ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=56
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057・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案モ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ朗王ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=57
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058・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=58
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059・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ本案モ議長指名九名ノ委員ニ附託スルコト
ニ決シマシタ、日程第六、辯護士法改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-提出
者岡田泰藏君
第六辯護士法改正法律案(岡田泰藏君外十一名第一讀會
提出)
辯護士法改正法律案
辯護士法
第一章辯護士ノ資格及職務
第一條辯護士ハ當事者ノ委任ヲ受ケ又ハ裁判所ノ命令ニ基キ法律ニ關ス
ル職務ヲ行フモノトス
第二條辯護士タラムト欲スル者ハ左ノ條件ヲ具フルコトヲ要ス
第一帝國臣民ニシテ民法上ノ能力ヲ有スル男子タルコト
三第二辯護士試驗規則ニ依リ試驗ニ及第シタルコト
第條辯護士試驗ニ關スル規則ハ司法大臣之ヲ定ム但シ試驗委員ハ司法
省高等官判事檢事辯護士中ヨリ之ヲ銓衡ス
第四條判事檢事又ハ辯護士タリシ者ハ試驗ヲ要セスシテ辯護士タルコト
ヲ得
第五條左ニ揭クル者ハ辯護士タルコトヲ得ス
第一刑法第二編第一章第二章第三章第五章第七章第八章第九章第十章
第十一章第十六章第十七章第十八章第十九章第二十章第二十一章第二
十二章第二十三章第二十五章第二十六章第三十五章第三十六章第三十
七章第三十八章第三十九章第四十章ノ規定ニ依リ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ
處セラレタル者
第二破產又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ復權セサル者
第三懲戒處分ニ依リ免官又ハ免職セラレタル者又ハ本法ニ依リ除名セ
ラレタル者
第二章辯護士ノ權利及義務
第六條辯護士ハ法廷ニ於テ職務上陳述シタル言語ニ付其ノ責ヲ負フコトナ
シ
第七條辯護士ハ正當ノ理由アルニ非サレハ司法大臣又ハ裁判所ノ命シタ
ル職務ヲ行フヲ辭スルコトヲ得ス
第八條辯護士ハ左ニ揭クル事件ニ付其ノ職務ヲ行フコトヲ得ス
第職務上相手方ノ協議ヲ受ケテ之ヲ贊助シ又ハ委任ヲ受ケタル事件
第二官吏公吏在職中取扱ヒタル事件
第三仲裁手續ニ依リ仲裁人ト爲リテ取扱ヒタル事件
第三章辯護士會
第九條各地方裁判所每ニ辯護士會ヲ置ク
第十條辯護士會ハ司法大臣之ヲ監督ス
第十一條辯護士會ハ之ヲ法人トス
第十二條辯護士會ニ會長及副會長ヲ置ク
會長又ハ副會長ハ其ノ會ヲ代表ス
第十三條辯護士ハ辯護士會ニ加入シテ其ノ會員名簿ニ登錄セラルルコト
ヲ要ス
第十四條辯護士會ハ左ニ揭クル事項ヲ定メ司法大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第一會長副會長其ノ他役員ノ選舉及其ノ職務
第二入會退會及登錄ニ關スル規定
第三總會又ハ役員會ノ議事ニ關スル規定
第四辯護士ノ風紀及懲戒ニ關スル規定
第五報酬ニ關スル規定
其ノ他會務ノ處理ニ必要ナル規定
第二天皇帝國學院所屬辯護士會以外ノ地ニ事務所ヲ設クル辯護士ハ其ノ地辯護士
遵守スヘシ
第四章懲戒及罰則
第十六條辯護士ニシテ本法又ハ辯護士會則ニ違反ノ處爲アルトキハ其ノ
所屬辯護士會ノ懲戒裁判ニ付ス
第十七條辯護士ニ對スル懲戒事件ニ付テハ各辯護士會ニ五名以上ノ懲戒
委員ヲ設ケ之カ裁判ヲ爲ス
所屬辯護士會ニ於テ定數ノ懲戒委員ヲ選定スル能ハサル場合ニハ司法大
臣ハ他ノ辯護士會員中ヨリ之ヲ補充ス
第十八條懲戒裁判ニ付テハ判事懲戒法及民事訴訟法第三十二條第三十三
條第三十四條第三十五條第三十六條第七百九十四條第七百九十五條第七
百九十六條第七百九十八條第七百九十九條第八百條ノ規定ヲ準用ス
第十九條懲戒罰ハ左ノ四種トス
第譴責
第二千圓以下ノ過料
第三五年以下ノ停職
第四除名
第二十條所屬辯護士會ノ懲戒裁決ニ不服アル者ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタ
ル日ヨリ七日內ニ覆審ヲ求ムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ裁決ヲ爲シタ
ル辯護士會ニ申立書ヲ提出ス, >
第二十一條覆審裁判ハ大審院判事及辯護士ヲ以テ組織シタル委員ニ於テ
之ヲ論數ハ大審院判專四名辯護士三名トシ司法大臣之ヲ任命ス
第二十二條覆審ニ關スル裁判手續ハ司法大臣之ヲ定ム
第二十三條辯護士ニ非スシテ法律ニ關スル事務ヲ取扱フコトヲ業トスル
者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第五章附則
第二十四條本法ハ明治四十六年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二十五條現在ノ各辯護士會ハ本法ニ依ル辯護士會ト看做ス
前項ノ辯護士會ハ本法施行ノ日ヨリ六箇月內ニ總會ヲ開キ第十四條ノ手
續ヲ爲スヘシ
第二十六條本法施行ノ際現ニ辯護士會ニ加入セル辯護士ハ本法ニ依リ其
ノ辯護士會ニ加入シ登錄セラレタルモノト看做ス
第二十七條本法施行ノ際在任セル辯護士會役員ハ本法ニ依ル役員ノ選任
ニ至ル迄本法ニ依ル役員ト看做ス
第二十八條本法施行ノ際開始セラレタル懲戒手續ハ明治二十六年法律第
七號ニ依ル
第二十九條本法施行ニ必要ナル事項ハ司法大臣之ヲ定ム
第三十條明治二十六年法律第七號ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ廢止ス
〔岡田泰藏君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=59
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060・岡田泰藏
○岡田泰藏君 此辯護士法改正法律案ハ東京辯護士會ニ於キマシテ委員ヲ選ンデ
一ノ定案ガ出來マシタモノヲ吾〓各派ノ議員ヨリ提出ヲ致シマシタモノデゴザイマス、本
員ガ代リマシテ、茲ニ本案ノ極ク重要ナル趣旨二三點ヲ舉ゲテ說明ヲ致シテ置キタイト
思ヒマス、此辯護士法ハ二十六年ノ制定ニ係リマスノデ、爾來約二十年ノ間現在ノ辯
護士法ニ依ッテ、辯護士會其他辯護士ノ諸般ノ行動ガ整理サレテ居ルノデアリマス、時
代ノ推移上、玆ニ改正ヲ企テル必要ヲ感ジタノデアリマス自分等ノ此改正案ニ於テ
最モ大切ナル基礎ニ置キマシタ〓ハ辯護士會ヲ法人組織ニ致シタイ、現在ハ別段ニ
法人トシテ何等ノ扱ヲ受ケテ居リマセヌガ實際ノ辯護士會ナルモノハ今日財產ヲ有ス
ル、例ヘバ東京ノ辯護士會ノ如キ、辯護士會館ト云フモノヲ建築シテ、之ヲ所有スルト
云フコトニモナリ、其他總テノ實際ガ法人トシテ人格ヲ與ヘ得ベキ時代ニ現在進ンデ居
リマスル故ニ、法律ノ上ニ於テ之ヲ改正シマシテ、サウシテ法人トシテ人格ヲ與ヘルト云フ
コトハ吾〓ハ此ニ改正ノ一大眼目ト致シタノデアリマス此法人ニシマスルニ連レテ現
在ハ各地方裁判所ノ檢事正ノ下ニ監督サレテ居ル辯護士會ナルモノハ、司法大臣ノ
直轄ニアルベキモノ尙續イテ懲戒ヲスル場合、此懲戒ノ事柄ハ現在ニ於テ或ル順序
ヲ取ッテ、檢事正カラ控訴院ニ之ヲ訴ヘマシテ、控訴院ノ檢事長ニ訴ヘテ、サウシテ控
訴院ニ於テ懲戒裁判所ガ開カレル、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデアリマスルガ、此改正
法律案デハ懲戒裁判ハ自分等ガ辯護士會自身ニ於テ懲戒裁判ヲ開イテ懲戒ノ詮議ヲ
スルト云フ此自治的ノ制度ニ直シタイト云フノガ、此法人ノ法律ノ上ニ認メテ往キマスル
ト同時ニ、自治ノ制度ニ依ッテ各條之ヲ補正シタ都合デゴザイマス、ソコデ第二ニ辯護
士タリ得ベキ資格ニ於テ、現在デハ此民法上ノ能力ヲ有スルトコロノ男子デアッテ、サウ
シテ辯護士試驗ニ登第スルモノ是ガ原則ニナッテ居ル、サウシテ尙之ニ對シテ判事檢事ノ
職ニアッタモノガ同樣ニナル、其外法律學ヲ修メタ法律ノ博士、或ハ法科大學ヲ卒業シタ
モノ、其他之ニ似タルトコロノ規定ガアッテ、資格ヲ得ルコトニナッテ居ル、之ヲ試驗制度ニ
局限シマシテ、嚴重ニ此試驗ヲ經テ辯護士ニナルト云フコトニ正シテ往クト云フ方針ヲ
取ッタノデアリマス、此外辯護士ノ權利ト致シマシテ、辯護士ハ法廷ニ於テ職務上陳述
シタ言語ニ付テハ責ヲ負ハナイト云フヤウナ辯護士ノ品位及權利トシテ認メテ願ハネバ
ナラヌ、新ナル規定ヲ加ヘ、其他些細ナル改正ヲ致シタノデアリマス、要スルニ法人トシ
テ、竝ニ自治ノ上ニ於テ、辯護士會ハ自己ニ於テ之ヲ能ク自身ニ整理シテ、サウシテ司
法大臣監督ノ下ニ處理ヲスルト云フコトガ本案立法ノ趣旨デアリマス、ドウカ御贊成
ヲ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=60
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061・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案モ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=61
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062・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=62
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063・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ議長指名九名ノ委員ニ付託スルコトニ決シ
マシタ、日程第七、農工銀行法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス粕谷義三君-
西谷金藏君
第七農業銀行法中改正法律案(粕谷義三君外二名第一讀會
提出)
農工銀行法中改正法律案
農工銀行法中左ノ通改正ス
第一條中「二十圓」ヲ「五十圓以内」ニ改ム
〔西谷金藏君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=63
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064・西谷金藏
○西谷金藏君 本案提出ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマス、農工銀行法ノ第一條ノ末文
ニ株式ノ金額ハ「二十圓」トアルノヲ「五十圓以內」ト改ムルノデゴザイマス、御參考ノタメ
ニ農工銀行法ノ第一條ノ全文ヲ申上ゲマスレバ「第一條農工銀行ハ農業工業改良發
達ノタメ資金ヲ貸附スルヲ以テ目的トスル株式會社ニシテ其資本金ヲ二十万圓以上ト
シ各株式ノ金額ヲ二十圓トス」斯ウナッテ居ル此二十圓ノ「二」ノ字ヲ「五」ト改メ「圓」
ノ下ニ「以內」ノ二字ヲ挿入スルノデゴザイマス、諸君御承知ノ通リ農工銀行法ハ明治
二十九年ノ發布ニシテ、爾來十七八年其間經濟界ハ非常ニ膨脹致シマシタタメニ、各
銀行共ニ當初ノ資金ヲ以テ營業スルコト能ハズシテ、近時何レモ增資ヲセラレテ居ル、
此增資ヲスル場合ニ於テ二十圓ノ少額ナル株式ニテハ銀行當業者及株主共ニ不便ヲ
感ズルガ故ニ、之ヲ五十圓以內ト改メタイト云フノデゴザイマス、御審議ノ上贊成アラン
コトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=64
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065・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案モ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=65
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066・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=66
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067・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ本案ヲ議長指名九名ノ委員ニ付託スルコト
ニ決シマシタ、日程第八、產牛馬組合法改正法律案、第一讀會ノ續、委員長高橋嘉
太郞君
第八產牛馬組合法改正法律案(高橋嘉第一讀會ノ續(書から
太郞君外三名提出)報告
〔高橋嘉太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=67
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068・高橋嘉太郎
○高橋嘉太郞君 產牛馬組合法改正法律案ノ委員會ノ經過ト結果ヲ御報告致
シマスル本委員會ハ三囘開會致シマシテ政府委員ト委員トノ間ニ屢、〓質問應答モ
ゴザイマシタ、ソレハ省キマシテ委員會ハ愼重審議ノ末、之ヲ修正シ或ハ削除致シマシ
テ決議シマシタ、其修正シタトコロハ第二條ノ末文ニアリマスルトコロノ「家畜市場」ト云フ
四字ヲ削リマシテ、之ヲ「糶場」ト修正致シマシタ、次ニハ第四條ノ但書ニ「特別ノ狀況
ニ依リ地方長官ニ於テ加入ノ必要ナシト認ムルモノハ此限ニアラス」ト云フノヲ削除致シ
マシタ、是ハ總テ產牛馬ノ生產事業ヲ營ムモノハ此組合ニ加入センケレバナラヌト云フコ
トニ改メタノデゴザイマス、ソレカラ第十五條ノ科料ノコトデゴザイマスルガ、之ニ付テハ多少
ノ議論モゴザイマシタケレドモ、結局改正案ノ通リ二百圓以下ノ科料ニ處スル、斯ウ云フ
コトニ可決ニナリマシテゴザリマス、是ニ對スル政府ノ意見ヲ〓括シテ其要〓ダケチヨット申
上ゲテ置カウト思フ、政府ガ之ニ對スル意見ハヤハリ政府ニ於テモ現行法ノ不完全ニシテ
改正センケレバナラヌトニムフ必要ハ認メテ居ル、改正ノ必要ヲ認メテ居ッテ、今日其
調査ヲシツヽアル併ナガラ其提出ノ時期ハ次ノ議會ニ提出スルカ、或ハ何レノ時期ニ
提出スルカ、ソレハ未定デアル斯ウ云フ答辯デゴザイマスル、併ナガラ委員會ニ於テハ
本改正案ハ現行ノ法律ニ對シテハ萬々優ルトコロガアルト云フ意見ノ下ニ全會一致ヲ
以テ可決致シマシタ次第デゴザリマス、願クバ滿場一致ヲ以テ可決アランコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「採決」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=68
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069・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ本案ハ二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ決シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=69
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070・恒松隆慶
○恆松隆慶君 直ニ開カレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=70
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071・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ直ニ二讀會ヲ開イテ、議案全部ヲ議題ニ供
シマス
產牛馬組合法改正法律案第二讀會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=71
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072・恒松隆慶
○恆松隆慶君 ドウカ讀會省略ヲ以テ二讀會デ決定セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=72
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073・大岡育造
○議長(大岡育造君) 讀會省略ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=73
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074・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナシト認メマス、因ッテ本案ハ讀會ヲ省略シテ委員長
報告通リ可決セラレタルモノト宣告致シマス、日程第九、水道條例中改正法律案第
一讀會ノ續委員長橋本久太郞君
第九水道條例中改正法律案(井上角五第一讀會ノ續(新鮮紙
郞君外八名提出)
〔橋本久太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=74
-
075・橋本久太郎
○橋本久太郞君 水道條例中改正法律案ノ委員會ノ結果ヲ報告致シマス、本案ニ
對シマシテ委員會ハ兩囘開キマシテ、政府委員ノ出席ヲ求メテ提出者竝ニ政府委員
間ニ於キマシテ十分ニ質問應答等ヲ盡シマシテ其結果トシテ大分修正ヲ加ヘマシタガ、
其修正シマシタモノハ御手許ヘ囘ッテ居リマスカラ悉ク此所デ申上ゲルコトヲ省キマセウト思
ヒマス(「贊成々々」ト呼フ者アリ)卽チ此提出セラレマシタ條例改正法律案ト御對照下
サッタナラバ、悉ク判明致シマセウト思ヒマス、要スルニ此條例改正ヲ致シマシテ初メテ今
日市町村ニ於テ政府ノ補助ヲ竢ッテ其補助ヲ得ズト數年ノ間事業ハ停滯シテ居ルモ
ノ、竝ニ町村ニ於テ其資力ニ堪ヘズシテ此敷設ヲ要スルコトハ切ナルニモ拘ラズ、其事
業ガ出來ズト居マスルモノ等ニ對シマシテ其團體外卽チ此公共團體外ニ於テ相當ノ企
業者ガアッタ場合ニ於テハ其團體ニ之ヲ相當ト認メテ異議ノナイ場合ニ於テハ此企業ヲ
許ルスコトノ途ヲ廣ク開ケテ、サウシテ今日マデ此澁滯シテ居ル事業ヲ一日モ速ニ敏活
ニ完備ニサスコトニ致サウト云フノ改正ニ外ナラヌノデゴザイマス、デ此ノ如クシテ初メテ
經濟上ニ、衞生上ニ、竝ニ火災豫防上等ニ於キマシテ、非常ナ利益ヲ與ヘテ、市町村
ノ發展進步等ニ遺憾ナカラシムルヤウナコトニシヤウト云フノガ、卽チ本案改正ノ趣意
デ、又修正シマシタ趣意デゴザイマスカラ、政府委員ニ於テモ無論全然之ニ同意セラレ
委員會ニ於テモ全會一致ヲ以テ可決シテ居リマスル次第デアリマスカラ、願クハ滿場
諸君ニ於テモ御贊成アランコトヲ希望致シマス
〔「採決」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=75
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076・大岡育造
○議長(大岡育造君) 本案ヲ二讀會ニ付スルヤ否ヤヲ決シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=76
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077・恒松隆慶
○恆松隆慶君 直ニ二讀會ヲ開キ、讀會ヲ省略シテ確定セラレンコトヲ望ミマス、委
員長報告通リ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=77
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078・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
水道條例中改正法律案確定議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=78
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079・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ委員長報告通リニ本案ハ可決確定致シマ
ス、日程第十、關稅定率法輸入稅表中改正法律案第一讀會ノ續、委員長武藤金
吉君
第十關稅定率法輸入稅表中改正法律案第一讀會ノ續(電話 分子
(武藤金吉君提出)
〔武藤金吉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=79
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080・武藤金吉
○武藤金吉君 委員會ノ成績ヲ報告ヲ致シマス、委員會ニ於キマシテハ十分ニ審査
ヲ致シマシタトコロ政府ハ大藏省ニ於テモ、農商務省ニ於テモ、全然同意デアリマス、
此鹽化加里ハ彼ノ燃寸ノ原料トナル格魯兒酸加里ヲ製造スル原料デアリマシテ、唯今
格魯兒酸加里ハ現ニ百一一十餘万圓ノ輸入ガアルノデアリマス、サウシテ燐寸ハ近年一
千万以上外國ニ輪出ヲ致シテ居ルトコロノ原料ニナルモノデアリマシテ、此格魯兒酸加
里ガ既ニ無稅デアル以上ハ此鹽化加里ノ無稅タルコトハ少シモ差支ナイノデアリマス、大
發言於テハマデ施入テデノクラ收入船所於テ步シニュテ元テスノ
デアリマス、此ノ如ク致シマシテ委員會ハ滿場一致ヲ以テ可決ヲ致シマシタ、此段御報
告ニ及ビマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=80
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081・大岡育造
○議長(大岡育造君) 本案ヲ以テ二讀會ニ付スルヤ否ヤヲ諮リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=81
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082・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ直ニ二讀會ヲ開キ、讀會ノ順序ヲ略シテ確定セラレンコトヲ望
ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=82
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083・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
關稅定率法輸入稅表中改正法律案確定議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=83
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084・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ハナイト認メマス、因ッテ本案ハ可決確定致シマシタ、
日程第十一高等工業學校設置ニ關スル建議案、鷲田土三郞君
第十一高等工業學校設置ニ關スル建議案(鷲田土三郞君
提出)
高等工業學校設置ニ關スル建議案
高等工業學校設置ニ關スル建議
工業就中海外輸出工業ノ發展奬勵ハ最現今ノ急務ナリトス
福井縣ハ海外輸出羽二重ノ製產地ニシテ每年ノ產額二千萬圓以上ニ及ヒ我カ輸
出絹織物中最多額ヲ製織ス然レトモ其ノ品タル白地ノ半製品ニシテ輸出ノ後外國
ニ於テ捺染其ノ他ノ加工ニ依リ消費セラル是レ主トシテ製產地ニ於ケル染織ノ知識
未熟ニシテ高尙ナル技術者無キニ由ラスムハアラス故ニ政府ハ高等工業學校ヲ福井
縣ニ設置シ獨リ織物ノミナラス同縣在來ノ漆器製紙等ノ技術者ヲ養成シ以テ海外
貿易ヲ增進シ國家ノ富源ヲ涵養セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=84
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085・鷲田土三郎
○鷲田土三郞君 本席ヨリ簡單ニ說明ヲ申上ゲマス、本案ハ福井縣ヘ高等工業學校
ヲ設置セラレンコトヲ希望スルト云フ建議案デアリマスガ、是ガ二十七議會ニ於キマシテ
モ滿場一致ヲ以テ通過シタ議案デゴザイマスカラ詳細ナコトハ委員會ニ於テ說明致シマ
シテ、此所ニ於テハ說明ヲ略シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=85
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086・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ曩ニ金澤高等學校ヲ置イテ呉レト云フ建議ガ出マシタ、其委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=86
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087・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=87
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088・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ恆松君ノ動議ノ通リニ決シマス、日程第十
ニ、石油引火〓規則改定實施ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、齋藤二郞君
第十二石油引火〓規則改定實施ニ關スル建議案(齋藤二郞
君提出)
石油引火〓規則改定實施ニ關スル建議案
石油引火〓規則改定實施ニ關スル建議
石油引火〓規則ハ明治十四年八月十三日太政官布告第四十號(石油取締規
則)ヲ以テ公布セラレタルモ明治十六年三月十六日太政官布告第十號ヲ以テ施行
日限ヲ無期延期シ遂ニ今日ニ至レリ政府ハ火災原因ノ危險率ニ鑒ミ速ニ本規則ヲ
改定實施セムコトヲ望ム
右建議ス
〔齋藤二郞君登壇〕
〔「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=88
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089・齋藤二郎
○齋藤二郞君 私ハ一體簡單ガ非常ニ好キデアリマスガ、是ハ實ハ帝國議會始ッテ以
來初メテ諸君ニ御紹介致スヤウナ案デアリマス、文句ハ變ナ案デアリマスガ、議長ノ仰ッシ
ヤッタノハ少シ間違ッテ居リマスガ、石油引火〓規則改定實施ニ關スル建議案ト斯ウナ
ルノデアリマス(「分リマシタ」ト呼フ者アリ)是ハ實ハ私ハ其石油ニ全ク素人デゴザイマス
併シ私ノ友人ハ實ニ昨年來此問題ヲ〓究シテ、〓究ノ結果ヲ私ニ託シテ代辯セシムル
ヤウナノデアリマスガ、內容ハ最モ重大ナモノデアリマス、ソレデ大體ハ此規則ト云フモ
ノハ議論ノナイコトハナイアッタノデアリマス、明治十四年ノ八月十三日ニ太政官ノ布
告第四十號トシテ是ハ世ノ中ニ公ニナッタモノデアリマス、所ガ段々此規則ノ施行ガ延
ビ延ピニナリマシテ遂ニ十六年ニ太政官布告第十號ト云フモノヲ以テ全ク此石油ニ關
スル取締規則ト云フモノハ今日マデ實施ニナラヌ、此內容ノ原因ト云フモノハ何デア
ルカト云フト、私ノ承ッタトコロニ據レバ、外國ノ壓迫ガアッタト言ヒ、或ハ日本石油ノ產
出額ニ付テ多少ノ此面倒ヲ見テヤラヌト云フト此石油業界ノ發達ガ鈍クナルカラシ
テ、此緩急ノ度ヲ調和セシムルタメニ延期シタトモ聞キマス、併シ重ナル理由ハ私ハ外國側ノ
壓迫ニ依シテ時ノ政府ガ引込ンデ、之ヲ實施ヲスル勇氣ガナカッタヤウニ聞イテ居リマス
斯ク論ジ來ルト頗ル此事ノ重大ナルコトガ分ルカト思ヒマス、-私自身ニ火ヲ〓ケル譯デ
ハアリマセヌガー此規則ハサウ云フ意味ニ依ッテ今日ノ此世ノ中ニ於テハ速ニ規定
シナケレバナラヌ、ソレデナイト屢〓新聞紙上デ御覽ニナルデアリマセウガ、日本ノ石油界ニ
於ケル幾多ノ跋扈ト云フモノヲ吾〓ハ眼前ニ見ナガラ帝國政府ニ於キマシテ、此石油取
締ニ關シテ所謂「フラッシングポイント」取締規則ナキガ故ニ、石油界ニ幾多ノ橫暴ヲサ
レテモ、「トラスト」ヲサレテモ、値段ヲ勝手ニ上ゲマシテモ、其實內容ノ惡ルイモノヲ賣ラレテ
モ、吾〓ハ默シテ居ルト云フ結果ヲ見ルノデアリマス、其故ニ理由書ニハ詳シク書イテ置キ
マシタガ、「ランムブ」カラ起ル失火率ト云フモノハ恐ルベキ統計ヲ示シテ居リマス、私ノ參
考第一號書中ニアル通リ洋燈、火鉢灰及灰殼ト云フ〓等ヲ御參考下スッテ、他ノ幾
多ノ原因ヲ見ルト、實ニ八分ノ一乃至十分ノ一ヲ含メテ居ル、是ハ東京ノ如キ瓦斯若
クバ電燈設備ノ十分ナル警視廳管內デモ此ノ如クデアリマス、其故ニ斯ウ云フ設備ノ無
イ地方ニ於テハ此率ガ最モ高マルコトハ明カデアリマス、私ノ承ッタトコロニ依レバ此原
因ハ立派ナ石油デアルナラパ宜イガ、其中ニ揮發油若クバ重油ヲ混ジテ、全ク純粹ノ石
油ヲ賣ラヌト云フ結果デアリマス、英國ノ「エーベル」ト云フ人ノ特許ニ係ル試驗器ヲ用井
レバ、之ガ惡ルイ石油デアルト云フコトガ直グニ發見サレルト云フコトデアリマス、明治十
六年太政官布告第十號ノ實施ヲ政府ニ迫レバ宜イノデアリマスケレドモ、今日ノ日本ニ
テハ御承知ノ通リ臺灣、樺太及朝鮮ヲ合併シテ我國ニナッタ以上ハ、溫帶國モアリマスレ
バ、此ノ極ク寒イ所モアリマス、一樣ノ檢査法ヲ以テ法律ヲ極メルコトハ出來マセヌ、或
ル程度ノ餘裕ヲ取ラナケレバナラヌ、是ハ立派ナ學者若クハ技師ガ寄ッテ引火〓ヲ極メ
ナケレバナラヌ、其故ニ私ハ直ニ布告ノ實施ヲ政府ニ迫ラナイデ、寧ロ政府ニ期間ヲ與
ヘテ政府ヲシテ立派ニ引火點ヲ制定シテ、吾〓ニ向ッテ協賛ヲ求メ來ラシムル考ヲ以テ、
政府ハ御調アッテ、此案ヲ提出サレタイト云フノデアリマス之ヲ讀上ゲマスト引火〓ノ
度合ハ混雜デアリマスカラ、是ハ參考第三號トシテ議長ノ許可ヲ得テ、速記錄ニ附ケマ
ス、尙此日本ノ今日ノ石油產出高ハ四百三十万石テアリマスガ、帝國內ニ於テ是ハ
燃料バカリデナク、動力ノタメ用井テ居ル消費高ガ四千万石ト聞及ビマス、決シテ是ハ
輕々ニ看過スベキ問題デナイノデアリマス、宜シク此案ニ贊成セラレテ政府モ亦吾〓ノ云
フコトヲ宜ク聽イテ、此率等モ調ベテ、速ニ第二十九議會ニ於テ間違ナク、此壇上ニ
政府ガ提出セラレンコトヲ希望スルノデアリマス
〔參照〕
凡ツ引火〓ヲ測定スルニハ印度ノ如キ熱帶國ニ於テハ他帶國ニ比シテ稍低ヲ例トス
例之バ英國ニテ華氏七十三度ニテ引火スル燈油ハ印度ニテ六十六度ニテ引火スル
ガ如シ故ニ引火點ヲ制定センニハ先ヅ一國ノ溫度ヲ基礎トセザルベカラズ今歐米各
國ノ定ムル所ヲ舉ゲンニ獨乙ニテハ攝氏二十一度露國ニテハ攝氏二十八度佛國及
瑞西ニテハ攝氏三十五度英國ニテハ華氏七十三度(攝氏二十七度)加奈陀ニテハ
華氏九十五度(攝氏三十五度)合衆國ニテハ華氏九十九度半(攝氏三十七度
半)ヲ以テ最低引火〓トセリ斯ノ如クナルヲ以テ南熱帶地ノ臺灣ヲ領シ北千島樺
太ノ如キ寒帶地ヲ領スル我國ニ在ッテハ必ズシモ何度ト限リタル引火點ヲ定ムルハ或
ハ困難ナルベク故ニ適當ナル引火〓ヲ定メタル上ニ幾分ノ餘裕ヲ設クルノ必要アリ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=89
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090・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ至ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=90
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091・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=91
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092・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ議長指名九名ノ委員ニ付託スルコトニ決シマス、
日程第十三、山陰高等農林學校設置ニ關スル建議案
第十三山陰高等農林學校設置ニ關スル建議案(恆松隆慶君
提出)
山陰高等農林學校設置ニ關スル建議案
山陰高等農林學校設置ニ關スル建議
明治二十七八年及同三十七八年戰役ノ後ニ於テハ我カ邦人文著シク發達シ其ノ
結果各種ノ〓育機關ハ稍完備ヲ告クニ至レリ然ルニ未タ山陰道ニ高等ナル農林學
校ノ設立ヲ見サルハ農林〓育ノ普及上最遺憾トスル所ナリ抑山陰道ノ地タル其ノ
國勢ヨリ觀ルモ又土地ノ狀況ヨリ察スルモ〓シテ農林業ノ地ニ屬スルヲ以テ交通ノ
便開ケタルノ今日該方面ニ農林學校ヲ設置スルアラハ林業ニ於ケル〓育ノ發達ト共
ニ該道ノ開發ヲ期スルニ於テ功果頗ル大ナラム依リテ政府ハ山陰道ニ高等農林學
校ヲ設置セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=92
-
093・恒松隆慶
○恆松隆慶君 極ク簡單ニ此席ヨリ申述ベヤウト思ヒマス、唯今ノ議題ニ上リマシタ
山陰道ニ高等農林學校ノ設置ヲ望ムト云フ建議案ハ、是ハ山陰道ノ國勢ヨリ觀マシ
テモ土地ノ狀況ヨリ察シマシテモ農林學校ガ最モ必要デアル又交通ノ便モ開ケマ
シン、今ハ此方面ハ十年以前ノ山陰道トハ大ニ趣ヲ異ニシテ居リマシテ、農業ニ於ケル
〓育ノ發達ト共ニ該道ノ開發ヲ期スル上ニ於テ、此農林學校ハ頗ル大ナル好結果ヲ
奏スルノデアリマス、然ルニ顧テ文部省直轄ノ經營學校ノ配置ヲ見マスニ、各地方皆
ワレノ〓各種學校ガ設立セラレテアルニ拘ラズ、山陰道ニ於テハ一モ此文部省直轄ノ
學校ハ無イノデアリマスカラ、是非相當ノ調査ヲシテ設置セラレタイト云フコトヲ希望シ
マス、此提出ノ理由ハ十分申述ベヤウト考ヘテ居リマスガ、今日ハ隨分質問演說モ數
多クアリ、其他ノ法案モ多クゴザイマシタカラ、其間ニ私ガ簡單ニ述ベヤウト思ッタコト
ヲ、此席デ鉛筆ヲ以テ大要ヲ認メマシタカラ、ドウカ是ハ議長ノ許可ヲ得テ、速記錄ニ
全部載セテ貰ヒタイ、尙文部省官轄學校ノ數及所在地ノ取調ベタモノモ此處ニアリマ
スカラ、併セテ參考トシテ載セテ貰ヒタイノデアリマス、此速記ヲ諸君ニ於テ御覽下サレ
タナラバ、如何ニモ山陰道ニハ一ノ實業學校ヲ置クノガ、該道ノ人文發達ノ上ニ於テ
モ、亦學校配置ノ權衡上ニ於テモ適當ナルモノデアルト云フコトハ諸君ハ定メシ御同
情下サルコトニ信ジマス、願クバ本案ハ委員ニ付託セラレテ十分ニ審査アランコトヲ切ニ
希望致シマス、尙其委員會ニ於テ詳細ノ理由ハ申述ベヤウト思ヒマス
〔參照〕
諸君御承知ノ如ク、山陰道ノ地タル從來交通ガ不便デアリマシタガ爲メニ、各般ノ
事物ガ他ノ方面ニ比シテ著シク後レツヽアッタノデアリマス、〓育ニ對スル設備ノ如キ
モ卽チ其一ツデアリマス
偖テ、我國ハ二大戰捷ノ後ヲウケテ、益〓國運ノ發展ヲ計ランガタメニ諸般ノ事柄ニ
ワタリテ積極的計畫ヲ見タノデアルガ、中ニモ〓育ニ對スル施設ノ如キハ所謂戰後經
營ノ一ツトシテ、大ニ之ガ振興ヲ計ラレタノデアリマス、其爲メ大學ヲ始メトシ或ハ高
等中學トカ、又ハ高等師範トカ、其他各種ノ學校ガ順次各地方ニ增設セラレタノデ
アル
殊ニ國力ノ充實ヤ、國富ノ增進ヲ計ルニハ、生產ノ發達實業ノ進步ニ俟タネバナラヌ
ト云フノデ、最モ此方面ニ意ヲ注ギ、先ヅ實業思想ノ涵養人物ノ養成ノ急務ナルヲ認
メタル結果トシテ、實業〓育ノ奬勵發達ニ大ニ意ヲ用ヒタノデアリマス、之ガタメニ、新
タニ設置セラレタル商業工業農林等政府ノ直轄ニ屬スル各種高等專門學校ノ數
ハ實ニ少クナイノデアリマス
當時私ハ山陰道ノ地形上山林ニ富ミ且又古來牧畜農業ノ早ク開ケシ等ノ關係ヨ
リ、此地方ノ狀況ニ最モ適シタル高等農林學校ノ設立ヲ得テ、地方開發ノ一助タ
ラシメントノ希望カラ、第十四議會ニ於テ山陰高等農林學校設立ノ建議案ヲ提出
シマシタ處ガ、當時ノ政府委員ハ大ニ之ニ同意シ、本院亦幸ニ之ヲ容レ全會一致
ノ可決ヲ得タノデアリマス、然ルニ、其後農林學校ノ增設ニ際シ、鹿兒島ニハ之ヲ設
ケラレマシタケレドモ、山陰道方面ニ向ッテハ未ダ何等ノ計畫ヲモ見マセン、是地方民
ノ甚ダ遺憾トスル處デアリマス
最モ其當時聊カ議論ノアリマシタノハ、山陰道ハ如何ニモ農林學校ニ適シテ居ル、ケ
レドモ交通ガ不便ノ爲メ、他方面ヨリ生徒ノ入學スルニ不便デアルト云フ一〓テアリ
マシタ
然レドモ吾ミガ多年熱望シテ居リマシタ山陰鐵道モ、出雲今市ヨリ東部京阪地方ト
ノ連絡既ニ完成シ、本月一日ヨリ開通ヲ見ルニ至リマシタカラ最早今日ニ於テハ以
前ノ交通不便ト云フ如キ懸念ハ先ヅ消エ失セタノデアリマス
例ヘバ、松江ヲ朝五時ニ立チマスレバ、午後六時四十九分ニハ大阪ニ著クコトヲ得、
又七時五十分松江ヲ立テバ、午後七時四十五分ニハ京都ニツカレルノデアリマス、其
他播但線トモ連絡シテ東部山陽道ト直接交通ガデキルノデアル、而シテ又東京ヲ午
後三時過ギニ出發スレバ、翌日夕方ニハ松江ニ著クヲ得ルト云フ有樣デ、其間僅々
二十數時間デアル、之ヲ從來陸路三日乃至四日ヲ費シタルニ比スレバ、實ニ非常ナ
ル差デアル從來年末休會ニ際シテ、鳥取島根兩縣ヨリ選出ノ議員ノ如キハ、歸縣不
可能ノ有樣デアリマシタガ、今日以後ハ他地方ノ諸君ト同一ノ便宜ガ得ラレルデア
ル、我山陰道モ亦十年以前ノ山陰道デハナイノデアルカラ、全國如何ナル方面ニ向ッテ
モ、學生ノ往復上毫モ不便ハナイノデアル
今翻ッテ政府ノ直接經營スル各種學校配置ノ現狀ヲ見ルニ、頗ル其均衡ヲ失ッテ居ル
ト思ハレルノデアル
一例ヲ舉グレバ、鄰接山陽道ノ如キハ神戶ニ高等商業學校アリ、岡山ニ第六高等
學校及醫學專門學校アリ、廣島ニ高等師範學校アリ、山口ニ高等商業學校アリ
ト云フ有樣
又九州ニハ福岡ニ於ケル九州大學ヲ始メトシテ長崎鹿兒島等ニ夫ミ相當ナ學校ガア
ル
東北地方ニツキテ之ヲ見ルモ、仙臺ノ東北帝國大學、第二高等學校、醫學專門學
校及高等工業學校、盛岡ノ高等農林學校、米澤ノ髙等工業學校、秋田ノ鑛山
專門學校、新潟ノ醫學專門學校等甚ダ完備致シテ居ルノデアル其他ノ地方モ言フ
ヲマタズト云フ有樣デアリマス、然ルニ山陰道ハドウデアリマスカ、農林上ニ於ケル樞要
ノ地タルニ拘ハラズ一ツノ直轄ノ學校ヲ持タナイノデアリマス、之レ實ニ偏シタル施設ナ
リト云ハザルヲ得ナイデハアリマセンカ
一般ニ北海道或ハ臺灣朝鮮等ノ拓殖問題トカ、東北ノ振興策トカ云フ如キモノニ
向ッテハ、多大ノ注意ヲ拂ハルヽ樣テアルケレドモ、山陰道ノ如キハ全ク閑却シテ顧ミ
ラレナイノデアリマス、斯ノ如クシテ成リ行キニ任セテ置イタナラバ、愈<世ノ進運ニ後
レルニ至ルノデアリマス
目下松江ニハ島根縣立農林學校アリ、倉吉ニハ鳥取縣立農學校アリ、故ニ此上ニ
直轄ノ高等農林學校ノ設立ヲ望ム次第デアリマス
ツマリ私ハ〓育ノ設備ニ平衡ヲ保チ、偏スル所ナク人文ノ發達ヲ助長スルハ、國家當
然ノ義務ナリト信ズル上カラシテ本案ヲ提出シタノデアリマス
固ヨリ財政上ニモ關スル處デアリマスガ、當局ニ於テハ成ルベク速ニ調査ヲ遂ゲラレ、
適當ノ地ニ之ガ設立ノ計晝ヲ立テ、以テ他トノ平均ヲ得ル樣、且ツ此地方人文ノ開
發ヲ促ガサレタイト思フノデアル
文部省直轄學校名及所在地
關東三東北八一
信三近畿五九山東州陽海五計四三
北山北道陰○四國○六
海二(但東北大學農科ヲ含ム)
東京帝國大學
東京高等師範學校
東京女子高等師範學校
東京高等商業學校茶葉県
第一高等學校
關東千葉醫學專門學校同同同同同東千同同同同東業打計一二
東京高等工業學校
東京外國語學校
東京美術學校
東京音樂學校
東京聾啞學校
東京盲學校
東北
北信
近畿
東海
山陽
九州
北海道
四國
山陰発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=93
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094・恒松隆慶
○恆松隆慶君 トヲ希望シマス
御異議アリマセヌカ
第十四、発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=94
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095・大岡育造
○恆松隆慶君 希望シマス
東北帝國大學仙臺市
盛岡高等農林學校盛岡市
第二高等學校仙臺市
仙臺醫學專門學校同
新潟醫學專門學校賀新禧
仙臺高等工業學校仙臺市
米澤高等工業學校米澤市
秋田鑛山專門學校
第四高等學校金澤市
金澤醫學專門學校同
上田蠶絲專門學校長野縣上田町
京都帝國大學京都市
第三高等學校同
京都高等工藝學校同
奈良女子高等師範學校奈良市
大阪高等工業學校
第八高等學校名古屋市
名古屋高等工業學校同
神戶高等商業學校神戶市
第六高等學校
岡山醫學專門學校廣同岡島山市 市
廣島高等師範學校
山口高等商業學校山口縣山口町
九州帝國大學福岡市
第五高等學校熊本市
第八高等學校造士館鹿兒島市
鹿兒島高等農林學校同
長崎高等商業學校長崎市
長崎醫學專門學校同
-小樽高等商業學校小樽區
東北帝國大學農科札幌區
ナシ
ナシ
更ニ動議ヲ提出致シマス、本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託スルコ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=95
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096・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議、本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託スルコトニ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=96
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097・恒松隆慶
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ恆松君ノ動議ノ通リ可決致シマシタ、日程
議長、チヨット修正ヲ願ヒタイ、唯今ノ案ハ前ノ金澤高等工業學校設
立建議案ノアノ委員ニ付託セラレタ方ガ便利ト思ヒマスカラ、ドウカサウ訂正アランコトヲ
計八
計三
計五
計二
計五
計六
計二
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=97
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098・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナケレバ恆松君ノ訂正ノ通リ決定シマス、日程第十
四、丹後鐵道建設ニ關スル建議案、岡田泰藏君
第十四丹後鐵道建設ニ關スル建議案(岡田泰藏君外六名提
出
丹後鐵道建設ニ關スル建議案
丹後鐵道建設ニ關スル建議
京都府下舞鶴ヨリ宮津ヲ經テ城崎ニ達スル鐵道ヲ速ニ建設セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=98
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099・岡田泰藏
○岡田泰藏君 此席カラ簡單ニ申シマス、此丹後鐵道デアリマスガ、是ハ鄰國但馬
城崎ヨリ出雲ニ繫リマシテ、尙東ノ方ハ越後カラ流レテ敦賀ヘ參ッテ居ル、本年ハ敦賀カ
ラ新舞鶴ニ達スル間ハ工事ニ著手ガ出來ルコトニナッテ居ルカラ、殘ル所ハ此日本海面
中央地帶ノ海岸線デ、丹後ヲ貫通スル鐵道ダケデアリマス、之ニ依ッテ日本海面ノ中央
地帶ノ海岸ヲ悉ク新設ヲ見ル狀態ニナルノデアリマス、ドウカ此鐵道モ敦賀新舞鶴間ノ
鐵道ノ竣成ト同時ニ此丹後ヲ通ズル鐵道モ竣成ヲ見ルヤウニシタイト云フノデアリマス、
是ハ當局ニ於テモ、亦鐵道院ニ於テモ、必要ト認メラレテ居ルノデアリマスカラ、此建議ヲ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=99
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100・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案モ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ希望シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=100
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101・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ノ通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=101
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102・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ議長指命九名ノ委員ニ付託シマス、次ハ日
程第十五、紀勢鐵道建設ニ關スル建議案、千田軍之助君
第十五紀勢鐵道建設ニ關スル建議案(千田軍之助君外七名
提出)
紀勢鐵道建設ニ關スル建議案
紀勢鐵道建設ニ關スル建議
一和歌山縣下和歌山ヨリ同縣下黑江、日方、湯淺、御坊、田邊、新宮、三重縣下
木本、尾鷲、長島、二〓ヲ經テ同縣下松阪ニ至ル鐵道
右鐵道ハ產業ノ發展ニ資シ交通ノ不備ヲ補フカ爲急設ヲ要スルモノト認ムルヲ以テ
政府ハ速ニ鐵道敷設法ヲ改正シ本線ノ建設ニ著手アラムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=102
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103・山口熊野
○山口熊野君 私ガ提出者ニ代ッテ簡單ニ申上ゲマス、此鐵道ハ前來屢〓現レタ建議
案デアリマスカラ、玆ニ之ヲ私ガ蛇足ヲ添ヘル必要ハアリマセヌ、前囘ニ於テ中村君カラ
詳シク理由ヲ述べ、又前々同ニ於テ千田君ガ之ヲ審ニシテ居リマス、卽チ和歌山縣下
和歌山ヨリ同縣黑江、日方、湯淺、御坊、田邊、新宮、三重縣下木本、尾鷲、長島、
二〓ヲ經テ同縣下松阪ニ到ル鐵道デアリマス、之ヲ申シマスレバ國防上カラ申シマシテ
モ、又國運ノ發展ノ上カラ申シマシテモ、交通運搬ノ上ニ付キマシテモ、最モ必要アル注
意ヲ拂フベキ鐵道デゴザイマス、現ニ昨年政府ガ此事ニ注目セラレマシテ、踏査ヲ遂ゲ、
實測ヲ遂ゲ、十分ナル調査が完了セラレタト云フコトヲ承知シテ居リマス、想フニ政府ガ
此調査ノ結果ト致シマシテ、此鐵道ヲ敷設スルノ要ヲ認メ、更ニ此鐵道ノ漸次ニ有利
ナルコトヲ認メラレタコトヽ思ヒマス、故ニ速ニ此鐵道ノ敷設法ヲ改正セラレテ、成ルベク早
ク本線ノ建設ニ著手セラレタイト云フ趣意テゴザイマス、此意味ニ於テ此建議案ヲ提出
シタ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=103
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104・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ニ付キマシテハ前ノ十四ノ日程ノ委員ニ託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=104
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105・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松隆慶君ノ動議ニ御異議ガアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=105
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106・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ本案ハ前ノ十四ノ日程ノ委員ニ付託スルコ
トニ決シマシタ-日程第十六、朝鮮拓殖銀行設立ニ關スル建議案-提出者三
浦覺一君
第十六朝鮮拓殖銀行設立ニ關スル建議案(三浦覺一君提出)
朝鮮拓殖銀行設立ニ關スル建議案
朝鮮拓殖銀行設立ニ關スル建議
由來朝鮮ノ貧弱ナル職トシテ生產事業ノ不振ニ基因セリ故ニ之ヲ救濟セムト欲セハ
須ク生產事業ノ振興ヲ圖ラサルヘカラス生產事業ノ振興ヲ圖ラムト欲セハ須ク先ツ
農業ノ改良發達ヲ謀ラサルヘカラサルナリ顧フニ農業ノ改良發逹ヲ謀ルノ途ハ多々之
レアルヘシト雖而モ荒廢セル池塘ノ復舊、新設ヲ速成セシメ併セテ水利事業ヲ完成シ
以テ民力ノ涵養富力ノ增進ヲ計ルヨリ急務ナルハナシ而シテ其ノ之ヲ行ハシムルニハ
政府ハ宜シク速ニ朝鮮總督ヲシテ特種銀行卽チ恰モ母國ニ於ケル勸業銀行ノ如キ
組織ノ金融機關ヲ設置シ以テ其ノ目的ヲ達セシメムコトヲ望ム
右建議ス
〔三浦覺一君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=106
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107・三浦覺一
○三浦覺一君 唯今日程ニ上リマシタ朝鮮拓殖銀行ヲ設立シテ貰ヒタイト云フ建議
案デス、其說明ヲ致シタイト思ヒマスルガ、一體朝鮮ヲ我帝國ニ併合致シマシタノハ唯獨
リ實利上ノ問題バカリデハゴザイマスマイガ、併合致シマシタ以上ハ朝鮮ノ國民ノ富力ヲ
增進シ、而シテ又我帝國ノ人民ヲシテ移住セシメ、速ニ朝鮮ヲシテ此經濟上ノ發展ヲセシ
六六、成ルベク母國ノ厄介ニナラヌヤウニ朝鮮ハ成ルベク朝鮮ノ經濟ヲ以テ立ツヤウニセ
ネバナラヌ、臺灣ノ如ク、自分ノ經濟デ自分ノ國ガ賄ッテ往クト云フ風ニ一日モ早ク之ヲ
セネバナラヌノデアル併ナガラ朝鮮ハ御承知ノ通リニ、朝鮮人ハ誠ニ貧弱ニ致シテ、經
濟思想ニ乏シイノデアル、此朝鮮人ガ然ラバ貧弱ニアルト云フノハ朝鮮ノ土地ガ一體
ニ貧弱デアルカト申セバ、決シテ土地ハ貧弱デハナイ、多年ノ間ノ惡政ト所謂暴吏ノ苛
歛誅求トニ依シテ、此ノ如キモノニナッタノデアリマシテ、朝鮮人自ラ貧弱デハナイノデアリマ
ス、朝鮮ハヤリヤウ次第ニ依ッテハ大ニ望ノアル土地デアルノデアル、今日ノ如キ貧弱ナル處
ニナッタト云フモノハ、寧ロ朝鮮人ガ勉强ヲ致シマシテ財產ヲ拵ヘ、若クバ人民ガ地位勢
力ヲ得レバ、却テツレガ禍ノ種デアル、金ヲ持ッタリ、財產ヲ拵ヘタリ、或ハ權力ヲ持ツヤウニ
ナレバ、ソレガ却テ禍デアリマシテ、朝鮮人ガ其日暮シト云フノガ卽チ今日朝鮮ヲシテ貧
弱ナラシメタ原因デアッテ、決シテ朝鮮其モノガ富ヲ成ストコロノ力ガナイト云フ譯デハナイ
デゴザイマス、故ニ朝鮮人ニ殖產興業ヲ丁寧ニ〓ヘテヤッテ、サウシテ朝鮮ニ於ケル多年
ノ間ノ惡政ヲ改良シテ、卽チ善政ヲ布イテ、農業ナリ、工業ナリ、水產ナリ、森林事業ナ
リ畜產ナリニ最モ力ヲ入レテ朝鮮ノ富ヲ增スト云フコトニ努メタナラバ必ズヤソンナニ
閑ガ掛ラズシテ、母國ノ厄介ニナラズシテ、朝鮮ダケハ其國ノ經濟デ賄フコトガ出來ルト
云フコトニナル、是ハ唯算盤ヅクノ話ノヤウデアリマスガ、決シテサウデナイ、斯ウ云フ目的
ニ是非サセネバ朝鮮ヲ併合シタル目的ハ何モ無クナッテシマフコトニナルノデアル、、然ラバ其
事業ノ上ニ於テ何ガ一番大切デアルカト申セバ、朝鮮ニ於テハ農業ヲ改良發達セシムル
ガ一番大切デアル、イロ〓〓事業ハゴザイマセウガ、其中ニ於テ農業ニ力ヲ注イデヤルト
云フコトガ、一番大切デアラウト思フノデゴザイマス、其又農業ヲ奬勵致スト云フコトニ
シテ、改良スルト云フコトニ付テノ方法手段ハ澤山ゴザイマセウ、或ハ種子ノ改良ヲヤ
ル、或ハ耕地ノ整理ヲスルトカ、或ハ肥料ノ改良ヲスルトカ云ッテ、此農業ノ改良ヲスル
事柄ニ於テハ種々ゴザイマセウケレドモ、其種類ノ中ニ就テ最モ大切ナルモノヲ選ブノガ
必要ナノデゴザイマシテ、其農業ノ改良發達ヲ圖ル種類ニ於テ何ガ一番急務デアルカト
申セバ、私ハ給水、卽チ灌漑ト云フコトニ付テ力ヲ注イデ往クト云フコトガ一番大切ナ
ルコトヽ信ズルノデアリマス此事柄ニ付テ全力ヲ注イデ朝鮮ノ今荒廢シテ居ルトコロノ池
塘、卽チ內地デ申シマスル溜池デアリマス、若クハ河川ノ水ヲ引イテ田畑ニ注グトコロノ途
ヲ講ジテ、能ク整理ヲ致シテ往キマシタナラバ、必ズヤ今ノ收穫ヨリ澤山ノ增收ヲ見ルコ
トガ出來マスルノデゴザイマスル、現ニ朝鮮ハ昔ニ於テハ既ニ三千ノ池塘ヲ有シテ居ツタ
ノデス、李氏ノ時代ニ於テハ三千ノ池塘ヲ持ッテ居ッテ、能ク整ッテ居ッタノデアル、決シテ
今日ノ荒廢シタル朝鮮デハナカッタノデアル、又水利ノ途モ能ク行ハレ、治水等ノ方法
モ能ク備ッテ居ッタノデアリマスケレドモ、前申上ゲマス通リ、惡政暴吏ノ苛歛誅求等ニ
依ッテ、今日ノ如ク廢ッテ德義心モナケレバ、公共心モナイ、自己一人ガ免ニ角活キテ暮ラ
セルト云フ根性カラ、今日ノ慘狀ヲ見ルニ至ッタノデアリマスカラ、第一番ニ其荒廢シテ居ル
トコロノ池塘ヲ元ノ通リニシテヤル、而シテ尙モ河川等ニ堰ヲ拵ヘテ水ヲ其處ニ給シテヤ
ルト云フ方法ヲ致シテ往ッタナラバ、今日ノ農業ヲシテ今ノ收穫ヨリ現在ノ段別ニ於テ
二百万石位ノ增收ヲ見ルコトハ譯ガナイノデアル、而シテ又此水利治水ノ法ガ行ハレマ
シタナラバ、今ノ荒蕪地トナッテ居ル-昔ハ美田デアッテ今廢ッテ居ルトコロノ荒蕪地ナ
ドデ、美田トナリ、良田トナルモノガ、約一千二百五十万町步位アリマス、此收穫ヲ見
マスレバ若シ是ガ美田トナリ、元ノ如ク良田トナリマシタナラバ一千万石位ノ增收ヲ
見ルコトガ出來ルノデアリマス、サウ致シテ參リマスレバ是ガ-ツレモ何モ臨時ニ出來タ
ノデハナイ、漸ク舊ニ復シテソレ位デアリマスカラ、ソレガ舊ニ復シタナラバ歲入ノ上ニ於テ
も、一千五百万圓位ノ歲入ヲ得ルコトハ易イノデアリマス、一千五百万圓ノ歲入ヲ得
ルコトガ出來マシタナラバ(「モウ宜カラウ」「贊成」ト呼フ者アリ)サウ云フト尙長ク言ヒマ
ス(「贊成」「ヤリ給ヘ」ト呼フ者アリ)大ニ母國ノ經濟ヲ助ケ、又朝鮮ヲ併合シタルトコ
ロノ目的ニモ適フノデアリマス、諸君ハ少シ位ノ時間ハ忍ンデ貰ヒタイ、私ハ眞面目ニヤッ
テ居ルノデス(「人數ガ足ラヌ」「眞面目ニ聽イテ居リマス」「謹聽々々」ト呼フ者アリ)故ニ
左樣ナル事業ヲ興サセルノニハ私ガ提出致シマシタル如キ、卽チ金融ノ機關ヲ設ケルヨリ
外ニ仕方ガナイ、此低利資金ヲ貸ス金融機關ヲ拵ヘテ、サウシテ此前ニ申上ゲマシタルヤウナル
事業ヲ完成セシムルノ最モ急務ナルヲ信ズルノデゴザイマスルガ故ニ、ドウプ滿場ノ御贊成
ヲ得テ、此私ノ熱心ナル希望ガ、速ニ達シテ朝鮮ノ今申上ゲルヤウナ荒廢シタルトコロノ
池塘ガ舊ニ復シ、治水ノ水利ノ事業ガ起ッテ、今廢ッテ居ル荒蕪地ガ美田、良田トナッテ
初メテ朝鮮ノ國民ガ併合サレタ日本ノ恩澤ニ浴シ竝ニ我國ガ朝鮮ヲ併合シタル實ニ於
テ副フヤウナ機會ニ達スルコトヲ偏ニ希望スル次第デアリマス、滿場ノ諸君ノ御贊成ヲ願
ヒマス、マダ申シタイコトガアリマスガ、是デ止メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=107
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108・恒松隆慶
○恆松隆慶君 此三浦君ノ熱心ナル建議案ハ、第七ノ日程、農工銀行法中改正法
律案ト云フ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
(「贊成々々」ノ聲起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=108
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109・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御贊成ガ多クテ御異議ガアリマセヌカラ、恆松君ノ動議ノ如ク
決シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=109
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110・恒松隆慶
○恆松隆慶君 此場合動議ヲ提出致シマス、見渡シマスニ議員ノ定數ヲ缺イテ居ル
ヤウデアリマスカラ、今日ハ是デ散曾シ、アトノ日程ハ次囘ノ會議ニ延バサレンコトヲ望ミ
マス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=110
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111・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガアリマセヌヤウデスカラ、今日ハ是ニテ散會、次囘ノ日
程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス
午後四時三十二分散會
衆議院議事速記錄第三號正誤
頁段行誤正
一七下三互ニ表彰互ニ協商
衆議院議事速記錄第十ハ號正誤
頁段行誤正頁段行誤正
二三六下二海ノ上ノ公海上ノ二三六下11獸群ノ獸皮ノ
同同二總テ禁止スル必シモ禁止セ
二二ズ同同三〇其國ニ取ツテ我國ニ取ツテ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X01719120307&spkNum=111
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