1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
明治四十五年三月十六日(土曜日)午後一時十五分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第二十號 明治四十五年三月十六日
午後一時開議
質問
一 官紀振肅に關する質問(武田貞之助君提出)
二 土地増價税に關する質問(千田軍之助君提出)
三 商工政策に關する質問(三谷軌秀君外二名提出)
━━━━━━━━━━━━━
第一 日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 農工銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 朝鮮に於ける學校職員にして國庫より俸給の支給を受けさる文官判任以上の者の退隱料及遺族扶助料に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第九 酒造税法中改正法律案(黄金井爲造君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 刑事訴訟法中改正法律案(阿部徳三郎君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 新二十錢銀貨改鑄に關する建議案(森茂生君提出)
第十二 石油引火點規則改定實施に關する建議案(齋藤二郎君提出) (委員長報告)
第十三 日本刀劒鍛冶法維持の爲に刀劒師養成に關する建議案(永野靜雄君外一名提出) (委員長報告)
第十四 田畑地價修正に關する建議案(塚田啓太郎君提出) (委員長報告)
第十五 鹿兒島開港の建議案(山岡國吉君外七名提出) (委員長報告)
第十六 小松島港修築に關する建議案(大久保辨太郎君外三名提出) (委員長報告)
第十七 鐵道建設に關する建議案(吉田虎之助君外一名提出) (委員長報告)
第十八 決議案(請願委員長提出)
第十九 (特別報告第一五二號)水道費國庫補助の請願 (委員長報告)
第二十 (特別報告第一五三號)村合併の請願 (委員長報告)
第二十一 (特別報告第一五五號)利根川改修に付河川區域内土地買收の請願 (委員長報告)
第二十二 (特別報告第一五六號)河川改修速成の請願 (委員長報告)
第二十三 (特別報告第一五七號)常設美術展覽會場設立の請願 (委員長報告)
第二十四 (特別報告第一五八號)登記所設置の請願 (委員長報告)
第二十五 (特別報告第一五九號)登記所設置の請願 (委員長報告)
第二十六 (特別報告第一六〇號)登記所設置の請願 (委員長報告)
第二十七 (特別報告第一六一號)登記所設置の請願 (委員長報告)
第二十八 (特別報告第一六二號)區裁判所裁判事務復舊の請願 (委員長報告)
第二十九 (特別報告第一六三號)控訴院管轄變更の請願 (委員長報告)
第三十 (特別報告第一六四號)區裁判所出張所設置の請願 (委員長報告)
第三十一 (特別報告第一六五號)區裁判所出張所設置の請願 (委員長報告)
第三十二 (特別報告第一六六號)區裁判所出張所設置の請願 (委員長報告)
第三十三 (特別報告第一六七號)蠶絲業法中改正の請願 (委員長報告)
第三十四 (特別報告第一六八號)捕獲を禁する鳥類追加の請願 (委員長報告)
第三十五 (特別報告第一六九號)帝國軍人後援會國庫補助の請願 (委員長報告)
第三十六 (特別報告第一七〇號)郵便局設置の請願 (委員長報告)
第三十七 (特別報告第一七一號)郵便局設置の請願 (委員長報告)
第三十八 (特別報告第一七二號)郵便局設置の請願 (委員長報告)
第三十九 (特別報告第一七三號)郵便局設置の請願 (委員長報告)
第四十 (特別報告第一七四號)郵便局設置の請願 (委員長報告)
第四十一 (特別報告第一七五號)電信局設置の請願 (委員長報告)
第四十二 (特別報告第一七六號)三等郵便局設置の請願 (委員長報告)
第四十三 (特別報告第一七七號)郵便局設置の請願 (委員長報告)
第四十四 (特別報告第一七八號)郵便局設置の請願 (委員長報告)
第四十五 (特別報告第一七九號)郵便局設置の請願 (委員長報告)
第四十六 (特別報告第一八〇號)郵便局設置の請願 (委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=0
-
001・大岡育造
○議長(大岡喜造君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
朝鮮ニ於ケル學校職員ニシテ國庫ヨリ俸給ノ支給ヲ受ケサル文官判任以上ノ者
ノ退隱料及遺族扶助料ニ關スル法律案
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
藥品營業竝藥品取扱規則中改正法律案
提出者綾部惣兵衞君
朝鮮總督府新聞紙規則改正ニ關スル建議案
提出者關和知君大內暢三君
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
都市政策ニ關スル質問主意書((電話本局出太)
一今十六日五校院ニ於テ木隊ノ迄仔三保左ディ政府孤山樣ヲ可愛さ
ヨリ通牒ヲ受領セリ
假置場法案
陸軍作業會計法中改正法律案
一又左ノ本院提出案ニ對シテハ第二讀會ヲ開カサルコトヲ議決シタル旨同院ヨリ通
牒ヲ受領セリ
水利組合法中改正法律案
一常任委員ノ補闕選舉ニ左ノ通當選セラレタリ
第二部決算委員井上喜作朗君
第六部決算委員西能源四郞君
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
一委員長及理事左ノ通當選セラレタリ
刑事訴訟法中改正法律案委員會
委員長阿部德三郞君理事豐增龍次郞君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)委員會
委員長〓崟太郞君理事築山和一君
朝鮮醫院及濟生院特別會計法案委員會
委員長渡邊修君理事石橋爲之助君
汽船「トロール」漁業取締ニ關スル建議案委員會
委員長望月圭介君理事細川義昌君
鹿兒島開港ノ建議案外一一件委員會
委員長山岡國吉君理事大久保弁太郎君
癈兵優遇ニ關スル建議案委員會
委員長翠川鐵三君理事三浦覺一君
北海道醫學専門學校設立ニ關スル建議案委員會
委員長根本正君理事淺羽靖君
朝鮮總督府辯護士規則改正ノ建議案委員會
委員長福岡精一君理事豐增龍次郞君
中川改修工事速成ニ關スル建議案委員會
委員長齋藤珪次君理事福田又一君
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス)
官紀振肅ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十五年二月二十七日
提出者武田貞之助贊成者野添宗三
外三十人
官紀振肅ニ關スル質問主意書
輓近官紀漸ク紊レ監督權微弱ナルノ感アリ政府ハ如何ニシテ其ノ責任ヲ糾シ適切
且有效ニ監督ヲ爲サムトスルヤ詳細ナル答辯アラムコトヲ望ム
右及質問候也
土地增價稅ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十五年二月二十八日
提出者千田軍之助贊成者齋藤二郞
外三十六人
土地增價稅ニ關スル質問主意書
我カ邦ノ課稅中特ニ土地ニ對シテ重キニ過クルノ虞ナキ乎卽チ過重ナル地租ヲ課セ
ラルルノ外府縣稅市町村稅及所得稅皆之ニ伴ヒ土地ノ抵営金融及所有權ノ賣買
移轉ニ對シテハ登錄稅、家督及遺產相續ニ對シテハ相續稅ヲ課セラルル等孰レモ過
重ナラサルハナシ斯ノ如ク土地ハ幾多ノ重複負擔ヲ爲セルニ拘ラス政府ハ土地增價
稅ノ如キ新稅ニ依リテ此ノ上ニ土地ノ負擔ヲ加フルノ餘地アリト認ムルヤ如何
政府ハ明晰ニ其ノ所見ヲ答辯セラレムコトヲ望ム
右及質問候也
商工政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
明治四十五年二月二十九日
提出者三谷軌秀濱岡光哲早速整爾
贊成者中野武營
外二十九人
商工政策ニ關スル質問主意書
一過去及現在ニ於ケル帝國對外貿易ハ常ニ輸入超過ノ趨勢ヲ持續シ國運ノ伸
張ニ多大ノ障碍ヲ與ヘツツアリ政府ハ其ノ原因ヲ精査シ近キ將來ニ於テ此ノ趨
勢ヲ一轉シテ純然タル輸出國タラシムルノ成算アリヤ
二政府ハ我カ輸出入貿易品中將來輸入ヲ防遏シ輸出ヲ增進セシムルコトヲ得ヘ
キ物品ハ主トシテ農產品ニ囑望セラルルヤ將タ工產品ニ期待セラルルヤ
三政府ハ我カ工業不振ノ主因トシテ左記ノ事項ヲ認メラルルヤ果シテ之ヲ認メラ
ルルトセハ其ノ救濟策トシテ從來如何ナル政策ヲ執リタルヤ又將來如何ナル政
策ヲ斷行スルノ意ナルヤ
(+)工業智識ノ幼稚ナルコト
(日)工業資金ノ匱乏ナルコト
(1)公課ノ負擔過重ナルコト
(一)官營事業ノ過多ナルコト
(、A)財政計畫ノ失當ナルコト
(三)政費ノ分配其ノ宜シキヲ得サルコト
四政府ハ支那、印度及南洋諸島ニ對スル貿易ニ關シ如何ナル方法手段ヲ講シ
如何ナル政策ヲ實行セラレツツアリヤ殊ニ支那動亂ニ際シ我カ在〓領事及商
務官ハ果シテ適當ナル注意ヲ拂ヒ機宜ニ適切ナル處置ヲ行ヒ我カ當業者ニ對
シ如何ナル利便ヲ與ヘラレタルヤ其ノ事實如何
右及質問候也
都市政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據り提出候也
明治四十五年三月十四日
提出者高木益太郞贊成者古島一雄
外八十二名
都市政策ニ關スル質問主意書
東京ハ帝都輦載ノ地ニシテ又我カ國文化ノ中心〓ナリ故ニ其ノ市政ノ如何ハ之ヲ
內ニシテハ我カ國自治體ノ模範ト爲リ之ヲ外ニシテハ我カ國帝都ノ體面ヲ維持スルノ
必要アルハ固ヨリ其ノ處ナリ然ルニ從來政府當局者カ東京市政ニ對スル態度ヲ見ル
ニ殆ト一定ノ主義方針ヲ有セサルカ如クニシテ東京ノ市政ハ今ヤ漸ク紊亂ノ極ニ達
セムトス依テ本員カ政府ノ意見ヲ確メムトスル要目左ノ如シ
第一政府ハ電車、瓦斯、電燈事業ノ營業ニ對シ旣ニ確定セル一般的監督方
針ヲ有スルヤ若アリトセハ其ノ〓要如何
(イ)從來東京市民カ電車、瓦斯等ノ問題ノ爲ニ困厄ヲ蒙リタル事一再ニシ
テ止マラス曩ニハ電車値上問題ニ繼クニ電車市有問題ヲ以テシ最近又瓦斯
會社合併竝電車從業者同盟罷業ノ事アリテ紛擾又紛擾殆ト見ルニ忍ヒサル
情況ヲ現出シタルハ人皆知ル處ナリ而シテ今ヤ是等ノ諸問題ハ沈靜ニ歸シタ
ルカ如クナレトモ今日ニ於ケル市政ノ情態ヨリ見レハ將來又何時再起スルヲ
保シ難シ而シテ是等ノ諸問題ノ起リシ當時政府當局者ノ處置ヲ見ルニ其ノ初
ハ殆ト之ヲ知ラサルモノノ如キ態度ヲ取リ愈最後ノ場合ニ至リ突然非常識ノ
手段ヲ以テ之ヲ壓迫スルニアルモノノ如シ一例ヲ取ラムニ昨年七月電車市
有問題カ市會ニ於テ決議サレムトスルノ日ニ當リ數日前ヨリ奔命ニ疲レタル
市民ノ多クハ市會ノ意向ヲ知ラムトスル熱心ノ餘リ期セスシテ市會ノ門前ニ
集リ入場ヲ得スシテ其ノ附近ニ蝟集シ居リタルニ而モ當局ニテハ軍隊ヲサヘ出
シテ之ヲ制止シタルニハ非サルカ市民ヲシテ最後ノ手段ヲ取ラシムル迄默過シテ
愈最後ノ場合ニハ軍隊ヲマテ動カス當局ハ何故ニ市民ヲシテ斯ル態度ニ出テ
シムル根源ニ付テ充分ノ監督ヲ施ササルヤ市民ハ自己ノ膏血ヲ絞ッテ重稅ヲ負
擔シ國家ノ安寧ヲ維持セムカ爲軍隊ニハ義務奉公ヲ爲シ居ルナリ而モ爲政
者ハ其ノ軍隊ヲ以テ人民ノ自由ヲ壓迫シタルニ非サルカ今日支那ノ革命騷
動ニ於テ本邦人ノ生命財產カ其ノ犠牲ニ供セラレツツアルモノ決シテ尠シト
云フヘカラス而モ政府カ是等本邦人ノ保護ノ爲ニ軍隊ヲ派遣スルニ付テハ殆
ト因循姑息ノ態度ヲ取リ居ルニモ拘ラス內地ニ於ケル善良ナル市民ノ群集ニ
向テハ苟且ニモ軍隊ヲ動カスニ至リテハ吾人其ノ不合理非常識ノ極ナルヲ絕
叫セサルヲ得ス
(ロ)吾人ハ電車市有問題カ政府ノ正貨準備問題ヲ動機トシテ起リタルヲ耳
ニス其ノ眞否ハ元ヨリ之ヲ斷言シ得ルノ限リニ在スト雖政府カ軍隊ヲマテ出
動セシメテ反對運動ヲ壓迫シタル事實ニ之ヲ徵スレハ大凡那邊ニ其ノ消息カ
潛メルカヲ知ルニ難カラス而シテ東京市ハ遂ニ電車ヲ賣付ケラレ市有ニスレハ
市ノ體面ヲ保ツタケノ監督保護ニ便ナリト云ヘル當時ノ斷行理由ハ今日果
シテ如何、事故ノ〓ニ於テ設備ノ〓ニ於テ便利ノ點ニ於テ市有電車ハ果シ
テ昔日ノ會社時代ニ勝レル成蹟ヲ揚ケツツアルカ規定以上ノ人員ヲ容レタル
滿載電車ハ傍若無人ノ振舞ヲ以テ線路ヲ走ルナリ車掌運轉手ノ輩ハ市有
ヲ笠ニ著テ乘客ニ對シ橫暴ノ態度ヲ取ルナリ衝突事故殺傷事件ハ却テ東鐵
時代ヨリモ多キナリ未成線ノ延長ハ決シテ豫定通ニ行ハレサルナリ之レ猶姑
ク恕スヘシ舊冬ヨリ初春ニ懸ケタル電車從業者ノ同盟罷業ハ之レ果シテ何
事ソヤ一國帝都ノ中心ニ於テ而モ二百萬人ノ市民カ最繁忙ヲ極ムル時期ニ
於テ斯ル不體裁極マル出來事ヨリ蒙リシ損害ハ之レ一ニ市政當局者ノ責任
ニ非スシテ何ソヤ而シテ此ノ市政當局者ノ責任ヲ斯ク迄怠慢ナラシムルニ至
リタル原因ハ又之ヲ政府當局者ノ監督不行屆ニ求メスシテ何ソヤ
(ハ)翻テ瓦斯合併問題ニ之ヲ見ルモ其ノ當時市民反對運動ノ公會ハ幾十
度トナク隨所ニ開カレタルニモ拘ラス未タ一度タリトモ其ノ贊成演說會ノ開カ
レタルヲ耳ニセサリシハ之レ軈テ合併問題カ市民全部ノ聲ナリ輿論ナルコトヲ
證シテ餘リアリシニ非スヤ然ルニ政府ハ此ノ市民ノ聲ヲ無視シテ恰モ馬耳東
風我レ之ヲ知ラサルモノノ如ク有耶無耶ノ間ニ之ヲ經過セシメタルカ如キ之レ
果シテ市政監督ノ實ヲ盡シタルモノト云フヲ得ヘキ乎
(三)抑電車、電燈、瓦斯ノ如キハ所謂公益ニ關スル事業ニシテ其ノ經營ノ
市當局者ニアルト私設會社ニアルトヲ問ハス政府ハ十分之ニ對シテ監督ノ責ニ
任セサルヘカラサルハ固ヨリ其ノ處ナリ此ノ種ノ會社ハ他ノ一般會社ト全然其ノ
性質ヲ異ニス玆ニ於テカ泰西諸國ノ政府ニ於テハ特ニ此ノ種會社ノ監督ノ爲
ニ一獨立局ヲ設ケテ其ノ任ニ當ラシム我カ國又內務當局者ノ此ノ任ニ當ルモ
ノナキニ非スト雖其ノ監督ノ緩ナル一ニ之ヲ市當局者ニ委シテ顧ミサルモノノ
如シ之レ吾人ヨリ見テ其ノ無方針無主義ナルカヲ疑ハシムル所以ナリ勿論東
京ハ自治體ナリト雖其ノ自治體ヲ監督スルハ政府當局ノ責任ニ非スヤ況ヤ
東京ハ我カ國ノ首府ニシテ首府トシテノ體面ヲ維持セシメムカ爲ニ政府カ今
少シク市政ノ上ニ其ノ正當ナル監督權ヲ行使スルノ嚴ナルハ固ヨリ其ノ處ナ
ラストセムヤ此ノ〓ニ關スル政府ノ所信ハ本員ノ聞カムト欲スル處ナリ
第二曩ニ東京市會ハ全市ヲ通シ市營電燈ヲ普及スルノ案ヲ可決シ現ニ其ノ工
事施行ノ認可申請中ナリ而シテ爾來數月ヲ經ルモ未タ其ノ認可ヲ得ス爲ニ市
民ノ大多數ハ廉價ナル市營電燈ノ利便ニ浴スル能ハス甚タシキハ同一區民中
ニモ著シキ差異アル電燈料金ヲ拂ヒツツアリ故ニ政府ハ速ニ其レ等ノ不便ト不
公平トヲ除キ全市ヲ通シテ同一ニ廉價ナル市營電燈ヲ利用セシムル途ヲ開クノ
政策ヲ採ラサルヤ
第三政府ハ近來ノ物價騰貴ニ關シ〓貧問題ヲ解決セムトスル何等カノ方策ヲ
有スルカ
最近十數年間ニ於ケル物價ノ騰貴ハ世界共通ノ現象ナルモ我カ國ニ於テハ過
重ノ租稅、關稅及政府ノ惡專賣法等ニ依リテ直接ニ物價騰貴ノ誘因ヲ作レ
ル嫌ヒナシトセス殊ニ東京市ニ於テハ其ノ複雜セル社會的原因ヨリシテ其ノ難ニ
困メル貧民殊ニ多シトス、政府ハ從來之カ救濟問題ニ付調査ヲ爲シタルコト如
何又將來之ヲ爲サムトスル意向アリヤ否
第四政府ハ近年ニ於ケル東京市民ノ公課負擔額ノ過重ニ付府市當局者ノ課
稅方針上ニ更ニ監督ヲ加フルノ意思ナキカ(參照第一參看)
第五政府ハ不良少年ノ取締及感化等ニ付旣ニ確立シタル一定ノ主義方針ア
リヤ、又活動寫眞ノ營業上ニ何等カノ制限ヲ加フルノ意向ハナキヤ、不良少年
ノ跋扈ハ東京市ニ於テ近來最甚タシキヲ見ル若此ノ儘ニシテ放置セムカ彼等將
來ノ堕落ハ勿論一般善良ナル社會ニ及ホス害毒ハ大ニ恐ルヘキモノアラム政府
ハ此ノ點ニ付何等カノ方策アリヤ、又近時坊間ニ行ハルル活動寫眞中ニハ往々
風俗ヲ壞亂シ秩序ヲ紊亂スルノ繪畫ヲ混入スル事アリ若公然斯ル繪畫ノ寫影
ヲ許スニ於テハ其ノ害毒ノ社會ニ及フ處極メテ甚シ、又活動寫眞館ノ設備等ニ
於テモ衞生上大ニ非難スヘキモノアリ、政府ハ活動寫眞ノ種板ヲ檢閱シテ其ノ
不正ナルモノヲ差止メ又ハ活動寫眞館ノ內部ノ設備ニ付嚴重ナル制限ヲ設ク
ルノ意思ナキカ
第六政府ハ自動車ノ取締ニ付何等特別ノ法律ヲ制定スルノ意思ナキカ
自動車ハ近來漸ク其ノ數ヲ增加シ從テ轢殺、負傷等ノ事故ハ近來益多カラム
トス歐米ノ諸國ハ一トシテ之ヲ取締ルノ法律ヲ有セサルハナシ此ノ〓ニ關スル政
府ノ意見如何
第七政府ハ本期議會ニ瓦斯事業法案ヲ提出スルノ意思ナキヤ
第八政府ニ於テ若財政ノ都合上明治五十年日本大博覽會ヲ中止スルカ爲
東京市主催ト爲リテ之ヲ計畫スルトセハ政府ハ補助其ノ他ノ便宜ヲ與フルノ意
思アリヤ
第九中央魚市場ニ對スル政府ノ政策如何(參照第二、第三參看)
(3)魚市場ヲ市設ト爲スノ可否
(ロ)若魚市場ヲ當業者ノ經營ニ任スヘキモノトセムカ政府ハ其ノ敷地ニ付
テハ當業者ニ於テ必ス之ヲ買入ルヘキコトヲ要シ借地ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ
許ササル方針ナル乎
6世間或ハ日本橋魚市場移轉ノ候補地トシテ芝浦埋立地ヲ舉クルモノア
ルモ東京市ノ一隅ナル芝浦ヨリシテ最民衆ノ密集シ且食品ノ需用多大ナル
淺草上野等ノ方面ニ魚類ヲ運搬スルトセムカ其ノ距離遠キニ失シ新鮮ナル
食品ノ供給困難ナルト共ニ運搬費ノ增加ヲ來タスヤ必セリ、又中洲ノ如キハ
土地ノ面積頗ル狭隘ニシテ而モ現在三十噸以上ノ船舶ヲ出入セシムルコト
能ハサルノミナラス鐵道輸送ノ魚類ニ對シ頗ル運輸ノ連絡ヲ缺ケリ
然ルニ現在ノ魚市場ハ東京市ノ中心ニ位シ而モ吳服橋內ニ中央停車場竣
成ノ曉ニハ一層運輸上ノ利便ヲ增シ近クハ駿遠相、三陸、北越、房總、常
磐地方ヨリ遠キハ關西、山陽、朝鮮等ヨリ來ル魚類ハ冷藏貨車ニ依リ皆此
ノ停車場ニ集中シ其ノ一部ハ再ヒ關東竝甲信、中央線等各地方ヘ轉送セ
ラルルカ故ニ食品ノ集散ヲ司ル市場トシテ頗ル適當ナルコト疑ヒナシ且現在
市場ノ面積ハ龍動及巴里ノ中央魚市場ノ面積ニ比較スルモ頗ル廣大ナレハ
將來改良ノ餘地綽々タリ而シテ曩ニ兒玉內務大臣ハ大浦警視總監ニ對シ
三百年以上ノ舊慣アル本市場ノ如キ重要ナル經濟機關ハ漫ニ之カ移動ヲ
動行セシムヘキモノニ非スト訓示シタリト聽ク現政府ハ尙之カ移轉ヲ斷行セム
トスルヤ若之ヲ斷行セムトセハ其ノ候補地ハ當業者竝其ノ需用者ノ兩方面
ヨリ觀察シテ孰レノ土地ヲ以テ適當ナリト信スル平
又其ノ移轉ニ關スル行政上ノ方策如何
第十家屋建築法ノ制定ハ都市ノ美觀衞生竝防水防火ノ必要ヨリ其ノ急務ナ
ルコト論ヲ俟タス彼ノ三階以上ノ建物ニ消防力ヲ有セサル現狀ニシテ尙本造三
階家ノ建設ヲ認容スルカ如キ又其ノ地勢低ク出水ノ際甚タ危險アル場所ニ平
家ノ建設ヲ看過スルカ如キ甚タ不親切ノ措置ナリト云ハサルヘカラス故ニ政府ハ
此ノ〓ニ付相當ノ取締法ヲ設クルノ必要ヲ認メサル乎
第十一墓地(附火葬)ニ對スル政府ノ政策如何
第十二政府ハ曩ニ議會ニ公約セシ借地人保護ノ法律ヲ提案セサルヤ若調査
中ナリトセハ其ノ程度如何
右及質問候也
(參照第一)
東京市民カ負擔スル公課(國稅、府稅、市稅、區費)ハ明治三十一年度ニ於テ
四百六萬餘圓ナリシニ漸次增加シテ三十九年度以降ハ貳千萬圓ニ上レリ就中
地租ハ六拾萬圓ヨリ貳百六拾參萬圓ニ、所得稅ハ六拾九萬圓ヨリ四百四拾六
萬圓ニ、營業稅ハ百參拾貳萬圓ヨリ六百拾壹萬圓ニ、家屋稅ハ七拾七萬圓ヨリ
貳百貳拾萬圓ニ增加セリ、昨年度ノ負擔總額ハ約貳千萬圓ニシテ之ヲ市內ノ
戶數參拾七萬ニ割當レハ一戶平均五拾四圓强ト爲リ又市ノ公民五萬ニ割當レ
ハ一人平均四百圓ノ負擔ナリ(最近公刊ノ統計表ニ依ル)
(參照第二)
委員ノ市區改正市場移轉問題ニ關スル意見
東京市區改正事業ハ百年ノ大計ニシテ其設計縮少變更案ハ今ヤ內務省市區
改正委員ノ議ニ上レリ余輩不敏ナレトモ偶〓選ハレテ同委員ニ列シ此重大ナル案
ヲ議決スヘキ責任ヲ負ヘリ余輩ハ一日モ早ク東京市區ヲ整備シ文明的都府ト爲
スノ必要ヲ認ムルト同時ニ市民カ該事業ノ爲メニ負擔スヘキ費用ハ程途考量シ華
奢ニ流レス濫費ニ失セス實際公衆ノ便利トナルヘキ設計ヲ作リ市民ノ信托ニ負カ
サランコトヲ是レ努ムルノ外他意ナキナリ然ルニ何事ソ一二ノ通信社及新聞紙ハ
余輩カ市場削除ノ修正案ヲ提出シタルヲ非難シ爲メニスル所アリテ然ルカ如ニ讒
誣セリ余輩ハ此誤マレル報道ニ重キヲ置カスト雖モ該問題ハ市ニ重大ノ關係ヲ及
ホスモノナルニ因リ左ニ該案提出ノ理由ヲ公表ス
市區改正ハ異常ノ事業ナリ之ヲ遂行スルニハ民有ノ土地建物ヲ收用スルノ必要
ア,其其費用ノ出所ヲ求メサルヘカラス是ニ於テカ明治二十一年勅令第六十二
號東京市區改正條例明治一一十五年勅令第五號土地建物處分規則ノ發布ア
リ又明治二十一年十月五日東京市區改正委員會ニ於ケル經費支辨ノ區別ニ
關スル議決アリテ道路橋梁河川外濠公園上水下水等ニ要スルニ土地建物ハ强制
買收ヲ爲シ其經費ハ特別稅ヲ以テ支辨スルコトヲ得ヘク規定セリト雖モ魚鳥靑物
獸畜市場及屠場ノ如キハ單ニ其位置及面積ヲ定メタルニ止マリ其設立ニ係ル諸
費ハ當業者ノ員擔ト定メリ設計議決ノ當時ハ市場ノ土地ニ對シ公用土地買上
規則ヲ適用セシムル見込ナリシカ其後土地收用ノ發布アリ收用シタル土地ノ全部
若クハ一部不用ニ歸シタルトキハ舊所有者ニ原價ヲ以テ賣戾サヽルヘカラサル旨
ニ改定セラレタルヲ以テ市ニ於テ公用ノ爲メ一時指定地ヲ買上ルコトヲ得ルモ之レ
ヲ當業者ニ拂下クルコトハ法律ノ禁スル所トナリ而シテ土地建物處分規則ハ公費
ヲ以テ支辨スヘキ事業ニノミ適用スヘキ精神ノモノナレハ市場人民ハ之レヲ用ヒテ
土地家屋ヲ收用スルヲ得ス結局人民相對ノ契約ヲ以テ指定地域ニ該ル土地ヲ
買收シ建物ヲ移轉セシメサルヘカラス是卽チ今日ニ於テ市場移轉ノ實際ニ行ハレ
難キ所以ナリ思フニ現今ノ制度ニテ市場移轉ノ實行シ難キコトハ當局行政者モ
亦認メテ異議ナキ所ナリ唯玆ニ一ノ實行シ得ヘキ方法アリ卽チ東京市ニ於テ土地
收用法ヲ適用シ市場諸般ノ設備ヲ爲シ之ヲ東京市ノ造營物トシテ當業者ニ貸
與セハ此ノ目的ヲ達スルヲ得ヘシ市區改正委員中移轉實行說ヲ唱フル者ハ皆此
市設論ニ因リテ市場改良ノ目的ヲ達センコトヲ希望セリ然レトモ余輩市民ノ意志
ヲ代表スル者ハ俄カニ此說ニ贊同スル事能ハサルナリ
市場移轉事件ハ非常ニ複雜セル如キ觀·アレトモ其内容ハ簡約ナリ爭點ハ明白ナ
リ曰(第一)東京市公設ト爲スノ可否如何(第二)公設ヲ可ナリトスルモ現今ノ東
京市ハ市場設備ノ爲メニ巨萬ノ市稅ヲ費スルヲ得ルヤ否ヤ(第三)假リニ市ニ於テ
市場設備ヲ爲スヲ急務ナリトスルモ設計ニ定メタル位置ヲ適當トナスヘキヤ否ヤ
(第一)市場ヲ市設トナスノ可否
余輩ハ玆ニ抽象的ニ市場公設ノ可否ヲ論セサルヘシ何トナレハ之レヲ市設トナスノ
適當ナル時期アリヤモ知ルヘカラサレハナリ余輩ハ市民ニ選ハレテ現在及ヒ將來ニ
係ル市區改正事業ヲ討究シ議定スル責任アルモノアリ故ニ今日ノ現狀ニ徵シテ不
可ナルモノアルヲ認ムルトキハ公設ヲ以テ市ニ不利益ナル政策ト斷定セサルヘカラス
(第二)現今ノ東京市ハ市場設備ノ爲メニ巨萬ノ市稅ヲ費スルヲ得ルヤ
市場移轉事件ニ關スル重要ナル爭〓ハ此一大問題ニ歸著スヘシ玆ニ屠場及獸
畜市場ヲ別トシテ魚鳥靑物及ヒ獸肉市場ヲ設立スル爲メニ幾何ノ費用ヲ要スル
カヲ〓算スルニ箱崎市場京橋市場佐久間町市場芝市場深川市場ノ五箇所ノ
土地買收家屋移轉溝渠下水道路新設費等ヲ併セテ凡ソ參百六拾四萬參千七
百六拾壹圓ヲ要ス此他進ンテ市場ノ築造ヲ爲ス時ハ五箇所ニテ凡ソ貳百萬圓ヲ
要スヘシ此合計五百六拾四萬參千七百六拾壹圓ハ市カ支出セサルヘカラサル費
用ナリ
東京市カ計畫スヘキ事業ニシテ單ニ市場ノミナラシメハ或ハ五百六拾餘萬圓ノ金
額モ吝ムニ足ラサルヘシト雖モ東京市ニハ市場改良ヨリモ尙ホ遙カニ急要ナル事業
幾多アリテ而モ費用不足ノ爲メニ之ニ著手スル能ハサルナリ下水改良ハ水道改良
ニ伴フテ急施ヲ要スル事業ナリ此事業ヲ行フニハ少クトモ八百萬圓ヲ要スヘシ而シ
テ市ハ遠カラス之レカ改良案ヲ立テ以テ全市瀰漫セル活水ヲ排除シ公衆衞生ヲ
保タサルヘカラス道路改築ノ爲メニ曩ニ五箇年繼續百萬圓ノ支出ヲ議決シ今ヤ
其工事中ナレトモ之レトテモ一部分ヲ改良スルノミニシテ其工事タル不完全ナル割
栗道路ニ過キス尙ホ將來改良ヲ要スル〓尠カラサルノミナラス步道改良ノ爲メ猶
ホ巨額ノ支出ヲ爲サヽルヘカラス河川ノ兩岸ハ汚泥堆積シテ干潮時ニハ海底三分
ノ二ヲ露出シ舟行ノ便ト汚水ノ疏通トヲ妨クルモ之レカ浚渫ニ巨費ヲ要ス而ルニ
舊來ノ護岸及沈床ノ不完全ナル爲メ深ク岸脚ヲ浚渫スル能ハサル箇所多ク河底
ノ全部ヲ浚渫センニハ護岸改築費ニ巨額ヲ投セサルヘカラス法律上ノ義務タル國
民〓育ハ如何不就學兒童ハ他府縣ヨリ多シ東京府知事ハ曩ニ尋常小學校九
十校ノ增設ヲ命令セリト雖モ明治四十年迄ニ僅々五十校ヲ增設シ得ル豫定ナル
ノミ貧民施療病院ノ如キ必要ナル事業ニシテ始メテ本年度豫算ニテ其費用ヲ要
求セラレタレトモ余輩ハ事業ノ緩急ヲ計リ一時其經費ヲ削除セリ東京灣築港事
業ハ如何該事業竣工ノ上ハ市ノ財源トナリ且ツ一般市民ニ利益ヲ與フヘキモノナ
レトモ最縮少ノ計晝スラ貳千四五百萬圓ヲ要スル爲ニ容易ニ著手スル能ハサルア
リ之レヲ要スルニ東京市ノ土木衞生〓育及ヒ窮民救濟ニ關スル事業ニシテ急施
ヲ要シ巨資ヲ投スヘキモノ枚舉ニ遑アラス余輩ハ其緩急前後ヲ斟酌シテ適當ノ施
政ヲ爲サヽルヘカラス獨リ市場改良市ノ全力ヲ注ク能ハサルナリ
東京市民ノ納稅負擔ハ現今一人(納稅者)ニ付平均貳拾四圓貳拾九錢六厘ノ
割合ニ該レリ而シテ此外現在改良水道ノ爲ニ八百萬圓ノ市價ヲ負ヘリ將來築港
及ヒ下水改良ノ爲メニ少クトモ參千參四百萬ノ市債ヲ負擔セサルヘカラス此利子
ヲ六朱トスレハ百九拾萬圓殆ント現在東京市ノ歲入ト同額ニ近キ利息ヲ支拂フ
ノ時期アルコトヲ覺悟セサルヘカラス今日ノ場合テスラ地租附加所得稅附加其他
各種ノ市稅ハ殆ント制限額マテ徵收セリ然ルニ是等ノ重キ稅ヲ負擔セル市民ニ對
シ市場改良ノ爲メニ五百餘萬圓ノ費用ヲ負擔セシムルコトハ余輩ノ忍フ能ハサル
所ナリ市場ヲ市ノ造營物ト爲シ之ヲ當業者ニ貸與スルトキハ相當ノ收入アルヘキ
ニ因リ五百萬圓ヲ投スルモ吝ムヘキニ非ストノ說ヲ爲スモノアリ一應道理アル說ノ
如クナレトモ宅地ヨリ得ヘキ利益ハ東京市ニアリテハ通常三朱ヨリ四朱ノ間ニ在リ
市ニ於テ普通ノ貸地ヲ有スルモ之ヨリ多クノ利益ヲ收ムル能ハサルカ故ニ市場敷
地ニ供用スル場合ニハ公益ノ爲メ二朱位ノ收益ニ甘セサル可ラス六朱ノ公債利
子ヲ拂フテ之レヲ二朱ニ貸ス現在東京市ノ財政ハ斯樣ナル不經濟ヲ行フ能ハサル
ナリ加之舊建物移轉料溝渠道路及ヒ市場建物ノ築造費等ニ對スル收入トテモ
成ヘク之ヲ低減セサレハ現在ヨリ非常ニ高價ノ魚鳥蔬菜ヲ市民ニ供給スルコトヽ
ナルヘク中等以下ノ人民ハ非常ナル困難ニ陷ルヘシ市カ貧民ノ食物ヨリ生スル消
費額ノ幾分ヲ所得シ之ヲ財源ト爲スカ如キ說ハ不道理ノ甚シキモノニシテ余輩ハ
之レニ贊同スル能ハス
方今議事ニ上レル新設計カ百年ノ大計ヲ廢止シテ二十年ノ小計ニ變更シタルハ
費用缺乏ニ基クモノナリ道路河川外濠公園等必要ナル部分ニシテ新設計カ之ヲ
削除シタルハ不用ト認メタルニアラス二十年ノ後我等子孫ノ再計畫ニ讓ルヘシト
爲シタルニ外ナラス市場モ亦改良ヲ非認シタルニ非スト雖トモ巨額ノ市費ニテ近キ
將來ニ設備スヘキ餘裕ヲ有セサル以上ハ之レヲ市區改正設計中ヨリ削リ他ノ計
畫ニ讓ルモ晩カラサルナリ
市場指定地ヲ市區改正設計中ヨリ削除スルトキハ市區改正事業トシテハ之レヲ
爲スコトヲ得スト雖モ他日公設ト爲ス必要ヲ認メ市カ之ヲ經營スル餘裕ヲ有スル
ニ至ルトキハ何時ニテモ土地收用法ヲ適用シ市場ノ計營ヲ爲スコトヲ得ヘシ若市
區改正ノ設計中ニ市場ヲ加フル非ラサレハ其改良ヲ爲ス能ハストセハ大阪京都
廣島名古屋等ノ各市場ノ改良ハ絕對ニ不能ニ歸セサルヲ得ス蓋シ之レヲ設計中
ヨリ削ルハ單ニ指定地及ヒ坪數ノ制限ヲ解キタル迄ナリ削ラサルモ市ニ餘力ナクン
ハ行フヲ得ス削ルモ餘力アレハ行フヲ得ルナリ要ハ削除ノ利害ニアラスシテ市費ノ
給否ニ歸ス唯今日ノ如ク畫ケル花鳥水ニ映ル月影ノ如キ實體ナク活動ナキ設計
ヲ二十年縮少計畫中ニ加フルノ必要ヲ認メサルニ因ルノミ以上論シタル所ヲ約言ス
レハ現時ノ市場問題ハ主義トシテハ社會主義ト個人主義トニ分レ政策トシテハ增
稅說トニ分ル更ラニ之ヲ事實的ニ明言スレハ當局者ハ增稅ヲ斷行シテナリトモ市
場ノ改良ヲ計ルヲ公衆ノ利益ナリト認ムルトキ市會カ之レニ反對セハ勢ヒ市會ノ
解散トナラサルヲ得ス增稅ノ爲メ市會ノ解散市場改良ノ爲メ市會ノ解散知ラス
市民ハ之ヲ甘受スルヤ否ヤ
(第三)假リニ市設ト爲スヲ要スルモノトスルモ設計ニ定メタル市場ノ位置ハ適
當ナリヤ
政權ヲ以テ營業地區ヲ定メ人民ヲ驅リテ之ニ移ラシムルニハ深ク利害ヲ査察シ愼
重ノ選擇ヲ爲ササルヘカラス明治二十二年ニ市區改正ノ設計ヲ定メタルトキハ日本
橋ノ魚市場ノ如キハ海漕ヲ主トスルモノト認メ成ルヘク水運ノ便アル地ヲ選擇スヘ
シトノ方針ヲ取り終ニ箱崎中洲等ヲ指定シタルモノナリ然ルニ爾來陸上交通機關
ノ設備日々發達シタルノミナラス遠カラス呉服橋內ヘ鐵道中央停車場ヲ設ケラル
ル場合ニハ東海三陸北越房總常磐地方ヨリ來ル魚類ハ皆此停車場ヘ集中シ其
中一部ハ再ヒ關東甲信等ノ田舎ヘ輸送セラルヽモノナリ加之ナラス東京市ハ多ク
南西北ノ三方ヘ膨脹シ本所深川ヘ膨脹スル勢カ微弱ナルニ中央停車場ニ近キ日
本橋市場ヲ去リ麴町神田下谷本〓小石川牛込四谷赤坂麻布等ノ需用地ニ遠
キ東方ノ箱崎中洲ニ移スハ適當ト云フヘキヤ芝深川ノ魚市場ノ如キモ果シテ現在
ノ指定地カ適當ナルヤ不明ナリ神田佐久間町靑物市場ノ如キハ總武鐵道ノ通
過スヘキ線路ニ該ルヤモ知ルヘカラス築港汽車鐵道電氣鐵道等交通機關ノ設備
ニ付テハ東京市ハ尙ホ創業ノ初期時代ニ屬スルモノナレハ將來是等ノ設備略〓ニ
付キタル時ニハ貨物集散ノ地〓モ定マルヘク此時ニ當リ適當ノ位置ヲ指定シ徐ロ
ニ計畫ヲ爲スモ晩カラス然ルニ早計ニモ今日ニ於テ市稅ヲ投シテ之ヲ設備シ民財
ヲ糜シテ之レニ移ラシメタル後其指定地カ不適當不便利ナル場所トナリ不繁昌ヲ
來スコトアラハ今日之レヲ議決セル余輩ハ何ノ面目アリテ市ノ納稅者ニ對シ魚
鳥蔬菜ノ需用者ニ對シ將タ又其供給者ニ對センヤ寧ロ之レヲ今日ノ設計中ヨリ
削除シ他日適當ナル位置ヲ定ムルニ若カス
余輩ハ以上ノ說ヲ抱持スル爲メニ市場指定地削除ノ修正說ヲ提出セリ決シテ市
場改良ヲ希望セサルモノニアラス又絕對的ニ市場公設ニ反對スルモノニアラス然リト
雖モ今日ノ場合尙ホ高等官選出ニ係ル市區改正委員諸氏ト該問題ニ付協商ヲ
重ヌヘキ場合ニ在ルモノナルカ故ニ多少ノ讓歩ヲナシテ該問題ヲ解決スルヲ得ハ是
レ又一般ノ利益ナルヘシ唯タ市場位置改良ノ程度及ヒ其時期ト市民負擔ノ割
合トハ深ク計較セサルヘカラサル所ナリ此〓ニ付テハ努メテ市民ノ信托ニ背カサルコ
トヲ期スヘシ
明治三十五年九月十五日
東京市區改正委員今井光喜稻延利兵衞田村喜三郞
仁松科長郞吉八丸銀山林名綱政男宮川鐵次郞
粂次鹽島仁吉
(參照第三)
一市場移轉廢止意見書
右提出候也
明治三十六年五月六日
提出者
杉原榮三郞桑原謹三田口卯吉鹽島仁吉
森田鉞三郞本吉傳次郞仁科条次郞
稻延利兵衞松銀長林光綱吉男吉田幸作下村
四郞
丸山名政田村喜三郞關幸太郞宮川鐵次郞
肥塚龍有島武中島島豐
今井喜八市原求杉野秀行行孝坪福谷善四郞
野々山幸吉松崎權四郞
東京市會議長仁杉英殿
意見書
明治二十二年東京府告示第三十九號ニ東京市區改正事業ノ內鐵道魚鳥市
場靑物市場獸畜市場及火葬場ニ係ル諸費ハ凡テ其設立者又ハ所有者ニ於テ負
擔スヘキモノトストアリ而シテ右各市場ノ移轉期日ハ追々切迫スルヲ以テ警視廳ハ
営業者ニ對シ頻リニ市場ノ移轉經營ヲ迫ラルルト雖當業者ハ薄資ニシテ其ノ負
擔ニ堪ヘサルノミナラス指定地ノ土地建物ヲ買收スルニ當リテモ私人タル當業者ニ
於テハ土地收用法若クハ東京市區改正土地建物處分規則ヲ適用スルコト能ハ
サルヲ以テ結局當業者ヲシテ市場ノ移轉經營ニ任セシムルハ不可能事タラスンハア
ラサル也是ニ於テカ先ニ東京市區改正委員會ニ於テハ市場全部ヲ市區改正
設計中ヨリ削除セントスルノ議アリ又明治二十二年東京府告示第三十九號
ヲ廢止セントスルノ議アリ尋テ東京市區改正委員會ハ東京市自ラ市場ノ移
轉ヲ經營センコトヲ希望スル旨ヲ決議シ其ノ決議ニ基キテ市區改正委員長ヨリ
東京市參事會ヘ協議ニ及ハレタリト聞ク然レトモ元來市場ノ移轉經營ハ其ノ事
業ノ性質ニ於テ市區改正ノ事業ニ屬セス且現行法規ニ於テハ市場ノ移
轉ヲ市區改正ノ事業トシテ經營スルヲ許サヽルモノアリ又東京市ノ財
政ハ今日ノ場合到底數百万圓ヲ要スルカ如キ市場ノ移轉經營ニ任スルヲ得
ス而シテ當業者モ亦自己ノ資力ヲ以テ經營スル能ハサルコト前述ノ如クナルヲ
以テ市場問題解決ノ方法ハ現在ノ場所ニ於テ相當ノ改良ヲ加ヘシムルニ在ルノミ
元來市場ノ移轉ハ衞生上ニ基因スト雖現在ノ場所カ市場ニ適セサルニアラスシテ
其ノ設備ノ完全ナラサルカ爲ナリ左レハ移轉決定當時ノ議事錄ニモ歐米ノ「マーケッ
ト」ノ如キ設備ナレハ日本橋區京橋區ノ中央ニ置クモ不可ナシトアリ然レトモ歐米
ノ「マーケット」ハ庶民一般ノ集合シテ貨物ヲ賣買スル場所ナリト雖モ我カ各市場ハ
僅ニ商人ノ集會取引スル場所タルニ過キサレハ之ニ相當ノ改良ヲ加フレハ以テ衞
生上何等ノ支障アルヘカラス要スルニ移轉ハ改良ノ途ナキ場合ニ於テ決行スヘキ
モノニシテ現在ノ市場ハ充分ニ改良ノ餘地アルモノナレハ斷然市場ノ移轉ヲ廢止シ
現在ノ地域ニ於テ相當ノ改良ヲ加ヘシムルコトニ御詮議アランコトヲ希望ス右ハ本
市ノ公益ニ關スル事件ニ付市制第三十三條ニ依リ意見書提出候也
明治三十六年五月二十一日
東京市會議長仁杉英
內務大臣男爵内海忠勝殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=1
-
002・大岡育造
○議長(大岡育造君) 是ヨリ會議ヲ開キ、質問ニ掛リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=2
-
003・上埜安太郎
○上埜安太郞君 會期モ切迫致シマシタカラ唯今ヨリ決算委員會ヲ開キタイト思ヒマ
スカラ、ドウゾ御許シアランコトヲ望ミマス、是非ドウゾ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=3
-
004・大岡育造
○議長(大岡育造君) 未ダ少シ數ガ足リヌヤウデアリマスカラ、モウ少シ後ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=4
-
005・村松恒一郎
○村松恆一郞君 本員ハ議長ニ御注意ヲ願ヒタイコトガアリマス、ワレハ外デハアリ
マセヌ、先ニ本員ノ提出致シテ置キマシタ治安警察法改正案ハ既ニ數囘ノ委員會ヲ開
カレテ最早決定致スベキ場合ニナッテ居ルト考ヘルノデアリマスガ、ソレ以來更ニ開會ガナ
イヤウデアル、申スマデモナク法律案ノコトデアリマスカラ、兩院ノ協賛ヲ得ナケレバナラヌ
ノデアリマス、此會期切迫ノ場合ニ於テ何時マデモ委員會ヲ開カナイノハ甚ダ困ル、又
此法律ガ通過致シマスレバ、來ルベキ總選舉ニ於テ演說會ノ開會等ニ大ナル便利ヲ得
ルノデアリマスカラ、速ニ開會セラルヽヤウ、議長カラ委員長ニ御注意ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=5
-
006・阿部徳三郎
○阿部德三郞君 唯今村松君ヨリ治安警察法ニ付テ御請求ガアリマシタガ、本員ハ
其委員長ヲ致シテ居ルノデアリマス、是ハ數囘ノ質問ヲ重ネマシテ、最早決定スルト云フ
場合ニナッテ居ルノデアリマスガ、國民黨ノ議員諸君ト話合ノ結果、延期ニナッテ居ル
而モ國民黨ノ村松龜一郞君カラ二十日ヵ二十一日ニ開クヤウニシテ呉レト云フコトデ、
其儘ニナッテ居リマスガ、決シテ等閑ニ付シタ譯デハアリマセヌ、御答ヲ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=6
-
007・大岡育造
○議長(大岡育造君) 此場合御諮リヲ致シマス、上埜安太郞君ヨリ決算禾員會ヲ
開キタイト云フ請願ガアリマスガ、許可シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=7
-
008・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガアリマセヌカラ許スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=8
-
009・上埜安太郎
○上埜安太郞君 ソレデハドウカ決算委員ノ御方ハ決算委員室ニ御出ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=9
-
010・大岡育造
○議長(大岡育造君) 武田貞之助君
〔武田貞之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=10
-
011・武田貞之助
○武田貞之助君 諸君、本員ハ官紀振肅ニ關スル質問ニ對シマシテ其趣旨ノ大體ヲ
辯明セント欲シマス、生憎ク甚シキ風邪ニ冒サレマシテ、平日ノ音聲ノ乏シキトコロヘ以
テ來テ、低聲デ御送惑ナコトヽ懸念シマスガ暫クノ間御〓聽ヲ請ヒマス、先ヅ直ニ具體
的ニ事實ヲ舉ゲマシテ、二三ノ實例ヲ基本ト致シマシテ、以テ政府當局ノ辯明ヲ否ナ、
答辯ヲ請フモノデアリマス、其第一ハ彼ノ長崎控訴院ニ於ケル池田判事ノ收賄問題デア
リマス、サナキダニ此神聖ナル議會ニ於キマシテ、此貴重ナル演壇ニ於キマシテ、至高司直
ノ府ヲ攻擊スルコトハ本員ノ衷心之ヲ喜バザルトコロデアリマス併ナガラ是ガ大要ヲ玆
ニ陳述セザレバ本員ノ問ハント欲スル趣旨ガ徹底致シマセヌカラ、已ムヲ得ザル次第デア
リマス諸君、彼ノ長崎控訴院ノ判事池田正誠ハ滿十箇年以上ノ長キ賄賂ヲ貪リツ
ツアッタ者デアリマシテ、而モ同人ノ收賄其他不正行爲ニ於キマシテハ時效ニ係リシ
者-既ニ期滿免除ニナリマシタモノヲ合セマスルト云フト二十四口ノ多クアルノデアリ
マ、而シテ同人ノ如何ニ惡踈ヲ逞ウ致シテ、同人ガ如何ニ圖々シカリシカト云フ一事
ヲ申シマスレバ彼ノ池田判事ガ刑事被告人ノ親族若クハ其關係者ニ對シマシテ指二
本-指二本ヲ提出致シテ賄賂ヲ迫ッタコトガアッタノデアリマスルガ、其際ニ疵持ツ弱
〓アル者ハ弱キ被告ノ側ニ於キマシテハ非常ナル苦心ヲ致シテ、二百圓ノ金ヲ調達シテ
賄賂トシテ納メタノデアリマス、然ルニ池田判事ハ拙者ガ一一本ノ指ヲ示シタノハナニ二
百圓クライノ輕少ナ金ヲ指スノデアラウカ、二千圓ヲ示シタノデアル、ナニ咄馬鹿者メト言ッ
テ叱リ飛バシテ、大ニ脅迫シタノデアリマス、又同判事ガ賂賄ヲ貪ルトキニ於キマシテハ、
自分ノ擔當セル刑事ノ書類ヲ被〓人ノ親族若クハ被〓ノ關係者ニ向ッテ目リ眼
前ニ突付ケマシテ、サウシテ賄賂ヲ迫ッタノデアリマス、其他同判事ガ自己ガ擔當致シテ居
リマスル或ル俠客ノ乾兒ヲ無罪ト致シタ、其場合ニ於キマシテハ自分ガ褞袍ヲ著テ、顏
ニハ頰冠リヲ致シテ、其無罪ノ祝宴會ニ臨ンダト云フヤウナ事實モ存在スルノデアリマ
ス、諸君、同判事ガ如何ニ大膽ニ、如何ニ橫暴ヲ逞ウ致シタカト云フコトハ去月十五
日ノ同人ニ對スル裁判所ニ於キマシテハ係檢事ノ論告セラレタル其一端ニ依ッテ以テ知
ルコトガ出來ルノデアリマス、曰ク、被告池田ハ右控訴院判事ノ職ニ在リナガラ運
動費ノ名ノ下ニ不正ノ金錢ヲ貪ルコトヲ自己ノ常職ノ如ク心得云々-自己ノ常職
ノ如ク心得云々ト云フコトヲ係檢事ガ論告致シテ居ルノデアリマス、此ノ如ク非常ニ長
キ間罪ヲ犯シツヽアッタノデアリマシテ、而モ同判事ノ素行ノ修ラザリシコトハ長崎市民
ノ殆ド知ラザル者ハナカッタト云フ狀況デアッタノデアリマス、諸君、是ニ於テ本員ハ問ハ
ン、此ノ如ク橫暴、此ノ如ク不正ヲ而モ長〓シキ間逞ウ致シタニ對シテハ監督控訴院
長ナリ、檢事局ナリ、ヽ若クハ司法省ハ如何ニ致シテ居ッタノデアリマセウ、如何ニ監督ニ
對シ、如何ニ取締ノ〓ニ對シテ不注意ナリ、失態ナリト謂ハザルヲ得ヌデハアリマセヌカ、
卽チ本員ハ此多大汚損サレタトコロノ裁判所ノ威信此非常ニ毀損サレタルトコロノ裁
判所ノ尊嚴ヲ如何ニシテ將來救ハントスルカ、又監督官ニ對シマシテハ如何ナル處分ヲ
スルカ、又將來如何ナル方法ニ依ッテ適切ナル-適當ナル監督ヲ爲サントスルカト云
フコトヲ本員ガ第一ニ問ハントスルトコロデアリマス、第二ハ彼ノ京都電氣鐵道會社ニ於
ケル二十三万一千圓ノ通行稅ノ脫稅問題デアリマス、諸君ヽ諸君モ夙ニ御承知ノ如
ク此通行稅ノコトタルヤ、我帝國ガ曠古ノ大戰役ノタメニ其軍資金ニ供ンタルモノデア
リマス、而シテ政府ガ通行稅ヲ制定致シタ當時ニ於キマシテハ大數三百五十万圓前後
ニ其金額ガ上ルベキモノト豫算ヲ致シテ居ッタノデアリマス、然ルニ如何ナル事情ニ於テ
其以來二百四五十万圓ヨリ通行稅ハ上ッテ居ラナイノデアル、是ニ至ッテ朝野ノ有識者
ハ業既ニ通行稅ニ關シテハ一般ニ對シテ疑ヲ挾ンデ居ッタノデアリマス、而モ諸君、此京都
電氣鐵道會社ハ諸君モ御承知ノ通リ同市ノ極メテ短キ距離デアリマスカラシテ、通行
稅ナルモノハ比較的多大ノ多額ニ上ラナケレバナラヌ次第デアルノデアル、然ルニ同會社ニ限
リマシテハ他ノ會社ノ多クガ收入ノ卽チ切符代ノ約一割又ハ一割以上ノ通行稅ヲ納メ
ツヽアルニモ拘ラズ、同會社ニ限ッテハ僅ニ六朱九厘-六朱九厘ノ率ヨリハ上ッテ居
ナカッタノデアリマス、而モ諸君之ヲ車ニ乘リマシタ數、卽チ乘車數ノ人數ニ割ッテ見ルトコ
ロガ、外ノ會社ニ於キキマシテ多クハ一人當リニ於キマシテ七厘三毛-七厘三毛バ
カリノ數額ニ上ッテ居ルニ拘ラズ、同會社ノ通行稅ニ限リマシテハ、僅ニ三厘-僅ニ三
厘ノ率ヨリ上ッテ居ナイノデアル、加フルニ諸君、同會社ニ限ッテハ日々ノ收入表-日
日ノ收入表ト申シテ御承知ノ通リ車掌其他出札所ナドカラ持ッテ參リマス收入表等ノ
書類ヲ每日々々同會社ノミニ限ッテハ其大切ナ書類ヲ燒棄テツヽアッタノデアリマス、斯樣
ナル不可思議ナル斯樣ナル恠ムベキ、斯樣ナル不思議ナル狀態デアッタノデアリマスカラシ
テ、稅務當局者ハ監督廳ハ早クモ夙ニ此事ヲ發見シナクチヤナラヌノハ當然ナ譯デアリ
マスル又當然注意ヲ加ヘテ此一ノ遺漏ナキヲ期サナクチヤナラヌノハ當然デアリマセウ、然
ルニ諸君若シ同會社ニ對シマシタ江羅某ヨリ同會社ヲ告發スルコトガナカッタナラバ、此
大切ナル通行稅卽チ二十三万一千圓ノ金ハ所謂闇カラ闇ニ葬ラレテシマッタト云フコ
トニナラナケレバナラヌ次第デアッタノデアル、此ニ至ッテ本員當ニ言ハン實ニ稅務署若ク
ハ監督局ニ於キマシテハ徵稅ニ對シテ租稅ノ取立方ニ對シテ、如何ニ不注意如何ニ
不親切、如何ニ無責任デアルカト云フコトヲ此ニ諸君ト共ニ攻擊セザルヲ得ヌノデアリマ
入、當時口善惡ナキ京童ハ唱ヘタコトガアル、唱ッタコトガアル貧者ハ法律ニ支配サレ
ル、富者及大會社ハ法律ト人トヲ使役スルト云ッテ嘲ッタコトモアリマスル、確ニ一種ノ
疑ヲ此間ニ挾マザルヲ得ヌノデアリマス、卽チ本員此問題ニ對シテハ政府ハ當局者ニ對
シテ如何ニ責任ヲ糺シタカ如何ニ責任ノ存在ヲ明カニセシメタカ、而モ將來ニ於テハ如
何ナル方法ニ依リ、如何ナル手段ニ依ッテ、適切ナル適正ナル監督ヲ爲サントスルヤト云
フコトヲ問ハントスルモノデアリマス、第三ト致シマシテハ彼ノ德川侯爵家ニ於ケル相續稅
ノ連稅問題デアリマス、諸君、侯爵家ニ於キマシテハ所謂御親藩ノ一デアリマシテ、曾テ
ハ六十餘万石ノ巨祿ヲ食マレマシタトコロノ天下ノ名流デアル、天下ノ大藩デアルノデアリ
マツ、其大祿ヲ食マレ、其侯爵ニアラレルトコロノ方ノ財產ノ總テガ、資產ノ總テガ、二百
十餘万圓、僅ニ二百十餘万圓デ濟ムト云フニ至リテハ、本員疑ハザルヲ得ヌノデアリマ
ス、而モ諸君、相當ノ信用ノアル、相當社會ノ耳目ト致シテ信任致スベキ新聞紙ハ、斯
樣ニ記載致シテ居ルノデアリマス「舊主義親侯家督相續ニ關シ、其財產査定額ニ付、家
從海部昂藏氏ガ稅務官ニ運動シ、其結果四百万圓ヲ減ジ、二百万圓ト減額シタリ」云
云ト云フ記事ガ存在致スノデアリマス、諸君、同侯爵家ニ於キマシテハ租稅ノ幾部ヲ確
ニ通稅ヲ致シテ居ルト云フコトハ、諸君ノ夙ニ手ニセラレテ居ルトコロノ決算書類ノ幾分
ニ徵シテ明カナルトコロデアリマス、而モ諸君、其決算ニ關スル書類ニ明記セラレタル以外
ニ於キマシテ、諸君、同侯爵家ガ相續屆出ニ於キマシテ、公債證書及第三囘國庫債
劵類等モ少ナカラズアルノデアリマスルガ、諸君、現ニ此第三囘國庫債券ノ如キハ相續
開始ノ當時市價ト致シマシテハ九十三圓バカリ市價ハ總テ東京モ名古屋モ同一ノ價ヲ
保ッテ居ルニ對シマシテ、所轄稅務署ハ八十三圓ト致シテ居ルノデアル諸君、株
式取引所其他紡績ノ如キ、浮沈盛衰ノ甚シキモノナラバ何カ言ハンデアリマスルガ、
公債又ハ國庫債券ノ如キ、浮沈ノナイ何等高低ノナイトコロノ第三囘國庫債券ノ如
キニ對シテ、何ガ故ニ此ノ如キ減額ヲ致シテ居ルノデアリマセウ、又諸君、同侯爵家ノ不
動產トシテ相續屆出ヲセラレタトコロニ據ルニ、金額ハ五十二万二千圓デアルノデアリマ
入、不動產ノ部ニ對シテ五十二万二千圓デアリマス、其中ヲ區別致シマスルト、東京ノ
淺草區及外二區ニ於キマシテ十四万一千圓デアリマス、殘リ三十八万圓餘ハ名古屋
市及名古屋ノ郡部竝ニ北海道ニアルノデアリマス、尤モ北海道ニアリマスルノハ二万圓
弱デアリマスルガ、大部分ハ卽チ三分ノ二マデハ名古屋市及名古屋ノ郡部ニアルノデア
リマス、諸君、曩ニ一言致シマシタ十四万一千圓ニ對シマシテ、東京ノ稅務が署課稅標
準ニ據リマシテ、多年經驗ヲ致シ、諸種ノ方面カラ調査セラレタトコロノ課稅標準ニ依
リマシテ、サウシテ所轄名古屋稅務署ニ向ッテ囘答シテ居ルノデアリマスルガ、其囘答致
シテ居ル其稅率ヨリハ總テ三割ヲ減ジテ居ルト云フガ上ニ、右三十八万圓バカリノ大多
數ノ名古屋市及名古屋ノ郡部ニアルトコロノ不動產ニ對シマシテモ、ヤハリ多大ナ、三
割前後ノ多大ナ金額ヲ減殺シツヽアルノデアリマス、諸君、是ハ如何ナル現象デアリマセ
ウ、如何ナル有樣デアリマセウ、本員ノ取調ベタトコロニ據リマスルト、所轄稅務官ハ減
額高ノ二割ヲ云々致ストコロノ祕密契約ガアッタト云フコトヲ耳ニスルノデアル、諸君、今
ヤ我邦ノ經濟狀態ハ戰後ノ經營ヲ誤リマシテ、又國民ノ自覺奮勸ガ乏シキガタメニ、
未ダ進境ノ場合ニ至ラズ、景氣ノ恢復ガナイノデアル、從ッテ國稅ノ滯納者若クハ國稅
ナドニ向ッテ督促令狀ヲ受ケルモノガ隨分少ナクナイノデアリマス、今一例ヲ申シマスルナ
ラバ彼ノ營業稅等ニ於キマシテハ最近ノ取調ニ依リマスルト、十三万否ナ、十六万三千
人ノ多キ督促令狀ヲ受ケテ居ルノデアリマス、而モ愈〓進ンデ競賣處分、滯納處分ヲ受
ケマスルモノニ至リマスルト、是又少ナクナイノデアリマス、而モ其金額ノ內容ニ至リマス
ルト、本員此貴重ナル演壇ニ於テ、而モ此外國ノ視聽ノアル處ニ於キマシテ、之ヲ口外
スルコトヲ憚ルガ如キ狀態ニアルノデアリマス實ニ憐ムベキ狀態ニアルノデアリマス、又轉
ジテ國民ノ生活狀態ニ移リマスレバ、近時米價ノ昂騰セルタメニ市井ノ細民ハ日常ノ麵
麵問題ニ向ッテ苦痛ヲ告ゲツヽアルノデゴザイマス、又可憐ナル--憐ムベキトコロノ小
學校生徒ハ······小學兒童ハ常〓ノ〓事ガ得ラレザルガタメニ、數椀ノ粥ニ過ギザルガタ
メニ、其日ノ學科タル體操ノ學科ヲ避ケツヽアルトコロノ地方ノ慘狀モアルノデアリマス、然
ルニ諸君、傲然トシテ大厦高樓ニ居住シ、堂々トシテ出レバ駟馬ニ鞭ツト云フヤウナ名
流侯爵ニ於キマシテ、又ソレ等ニ對シマシテ特別ナル非常ニ寛大ナル非常ノ減額ヲ加
ヘ、非常ナル特別ノ取扱ヲ爲サシメテ居ルト云フコトハ何事デアリマセウ、本員實ニ感ハ
ザルヲ得ヌノデアル、疑ハザルヲ得ヌノデアル、是ニ至ッテ思フ、法ハ貧者ニ薄クシテ富者ニ
厚キモノデアル、法ノ威力ハ貧者細民ニ及ブト雖モ、富豪權勢ニハ及バザルモノナルカト
云フコトヲ慨嘆一番セザルヲ得ヌノデアリマス、慷慨一番セザルヲ得ヌノデアリマス、而モ
諸君、進步セル今日ニ於テ憲法治下ノ今日ニ於キマシテ、往々小魚ヲ羅スルコトガ急ニ
シテ、往々呑舟ノ魚ヲ逸スルノ嘆アルコトヲ免レナイト云フコトヲ諸君ト共ニ悲マザルヲ得
ヌノデアリマス、今ヤ終リニ臨ミマシテ一言ノ附加スベキ點ガアリマス(「簡單ニ願ヒマス」
ト呼フ者アリ)昨年及一昨年ニがキマシテ大阪控訴院ニ現ハレマシタル判決文ニ依リマ
スト稅務署及大藏省所管ノ官吏ガ大阪控訴院ニ於キマシテ犯罪者トシテ現ハレタル數
ガ三十餘人ノ多キニアルノデアリマス、以上ハ主トシテ此地方ニ對スル實例地
方ニ於ケルトコロノ事實ヲ引用シ來リマシテ、諸君ニ訴ヘ及政府當局者ニ向ッテ注意ヲ
喚起スルノデアリマスガ、諸君更ニ中央ニ及ビマシテ彼ノ陸軍ニ於キマシテハ國家ノ干城
タルトコロノ一死君國ニ報ユルト云フ人士ノ淵叢デアリナガラ、最近ノ取調ニ於キマシテ
三年間ニ於キマシテモ、五十七件ノ多キ違法ノ支出-不法ノ支出ノアルコトト及
三百三万五千圓ノ多キ金額ニ於ケル不法支出タルコトニ想到致シマスレバ、如何ニ情弊
ノ存スルトコロ廣クシテ、腐敗ノ彌蔓セル狀態ガ大ナルカト云フコトハ、本員諸君ト共ニ
大ニ憂ザルヲ得ヌノデアリマス、諸君ト共ニ大ニ慨嘆セザルヲ得ヌノデアリマス(「ヒヤ〓〓〓
諸君、今ヤ人心ハ漸ク荒怠ニ傾キ、浮華輕佻ノ嫌ガアリマシテ、漸ク眞面目ナラザルノ
感ガアルノデアリマス、玆ニ一國ノ宰相タリ、大臣タリ範ヲ後世民衆ニ示サルヽ方ニ於キ
マシテハ能ク想ヲ三度ヒ致サナクチヤナラヌ次第デアルノデアリマス、又諸君諸君モ御
承知ノ如ク彼ノ有名ナル政治家「メルポルン」氏モ云ウタコトモアリマセウ、彼ノ政府ハ政
府當局ノ事業ノ外、帝國ノ紳士ヲ作ラザルベカラズト云フコトヲ絕叫致シテ居ルデアリ
マセヌカ、卽チ廟堂ノ諸君ハ大ニ夫レ之ヲ努メザルヲ得ヌノデアリマセウ、今ヤ本員ハ此
壇ヲ下ルニ臨ミマシテ、本員敢テ辯ヲ好ムノデハナイノデアリマス、彼ヲ思ヒ、此ヲ想ヒマ
スレバ、憂國ノ至情惻々トシテ吾人ノ心ヲ動カシテ止マヌモノデアリマス、是ニ至ッテ本員
ハ近時政府ニ於テハ監督權微弱ナルノ感アリ、政府ハ如何ニシテ其責任ヲ糺シ、如何
ニシテ最モ適切ニ、最モ有效ナル監督ヲ爲サントスルヤト云フコトヲ玆ニ政府當局者ニ
向ッテ問ハントスル次第デアリマス、之ヲ以テ責任ヲ塞ギマス(拍手スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=11
-
012・大岡育造
○議長(大岡育造君) 土地增價稅ニ關スル質問-千田軍之助君
〔千田軍之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=12
-
013・千田軍之助
○千田軍之助君 私ハ諸君ノ御手許ニ配付サレテアリマス通リ土地增價稅ニ關スル
質問主意書ヲ提出致シマシタノデ、是ヨリ其理由ヲ極メテ簡單ニ述べヤウト存ジマス
(「簡單贊成」ト呼フ者アリ)近來政府內ニ各都市ノ宅地ニ新ニ土地增價稅ヲ課スベ
〃事宜ニ依ッテハ一般ノ地所ニモ及ボスベシト云フ議ガアリマシテ、目下調査中デアル
ト云フコトヲ過日來頻リニ耳ニスルノデアリマス、成程土地增稅ハ獨逸及北米合衆國
ノ如キ、國稅トシテ地租ヲ課シテ居ラナイ國及英國ノ如キ、國稅トシテ地租ヲ課シテハ
居リマスルガ、極メテ輕キ稅率、卽チ收益ノ百分ノ一ノ强ニ當ラナイ國ニ於テハ或ハ適
當ノ課稅方法カモ知リマセヌガ、否ナ、適當ノ課稅方法デアリマセウ、然レドモ諸君、御
承知ノ通リ我國ノ如キ極メテ重キ地租ヲ課シ加フルニ府縣稅、市町村稅、區費、是
又甚ダ輕カラヌノデアリマス、此三ツノ負擔ヲ合計スルトキハ地租以上重イノデアリマス、
故ニ地租、府縣稅、市町村稅、區費ト、此四ツノ負擔ヲ總計スルトキハ實ニ重キ負擔
デアルノデアル、非常ナル重稅デアルノデアリマス、加フルニ二百圓以上ノ所得アルモノニ
對シテハ更ニ所得稅ヲ課シテ居ルノデアリマス、又土地ノ抵當金融及所有權ノ賣買移
轉ニ對シテハ重キ登錄稅卽チ登記稅ヲ課シツヽアルノデアリマス、家督及遺產相續ニ對
シテハ是又非常ニ重キ相續稅ヲ課シツヽアルノデアリマス、此ノ如ク歐米諸國ト我邦トハ
土地ノ負擔ニハ甚シキ輕重懸隔ガアルノデアリマス、此事實ヲ眼中ニ置カズシテ歐米ノ
或ル國〓ガ土地增價稅ヲ起シテ居ルカラ我邦ニ於テモ土地增價稅ヲ起シタラ宜カラウト云
フコトハ、實ニ皮相ノ見ノ甚シキモノデアリマス、此ノ如キ皮相ノ見ニ驅ラレテ、我邦ニ於
テ新ニ土地增價稅ヲ現狀ノ上ニ於テ起スト云フコトハ實ニ無謀ノ極ト私ハ考ヘルノデ
アリマス、此ノ如キ次第デアリマスカラ賢明ナル財政當局ハ決シテ現狀ノ上ニ付テ、土
地增價稅ヲ起スト云フ考ハ持ッテ居ラヌト信ズルノデアリマスケレドモ、冒頭ニ述ベマシ
タ近頃政府部內ニ其說ガアッテ、調査中デアルト云フコトハ如何ニモ事實ラシク聞ユルノ
デ玆ニ此質問ヲ提起シタ次第デアリマス、政府ハ明瞭ニ此場合其所見ヲ吐露セラレ、
吾〓ノ疑ヲ氷解セラレンコトヲ切望スル次第デアリマス、是レ卽チ質問ノ理由デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=13
-
014・大岡育造
○議長(大岡育造君) 商工政策ニ關スル質問、三谷軌秀君
〔三谷軌秀君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=14
-
015・三谷軌秀
○三谷軌秀君 私ハ商工政策ニ關スル質問ノ趣意ヲ辯明致シタイト考ヘル、成ベク議
論ヲ避ケテ統計ニ據リ事實ヲ舉ゲテ、說明ノ趣意ヲ明カニ致シタイト考ヘマスガ、私此質
問ヲ出シマシタ所以ハ、帝國ノ前途ニ對シテ憂慮ニ堪ヘナイ次第ガアッテ提出シタ次第
デアリマス、其關スルトコロハ大藏、農商務、遞信、文部、陸軍、海軍ニ關係スル問題デア
リマスガ、一人モ國務大臣ノ出席ナキハ甚ダ遺憾トスルノデアリマス、質問ノ第一ハ「過
去及現在ニ於ケル帝國對外貿易ハ常ニ輸入超過ノ趨勢ヲ持續シ國運ノ伸張ニ多大
ノ障碍ヲ與ヘツヽアリ政府ハ其原因ヲ精査シ近キ將來ニ於テ此趨勢ヲ一轉シテ純然タ
ル輸出國タラシムル成算アリヤ」ト云フ問デアリマス、此輸入超過ノ國デアルト云フコトハ
深ク述ベナクテモ諸君ノ御承知ノ事デアリマス、之ニ對シテ大藏大臣ガ豫算委員會
其他ニ於テ述ベラレタトコロノ趣意ヲ約言致シマスレバ先ヅ救濟策ト致シテハ曰ク、歲
出ノ增加ヲ抑制シテ、歲入歲出ノ均衡ヲ保ツ、曰ク、戊申詔勅ノ旨ヲ體シ、國民一致
シテ大ニ業務ニ勉勵シ、且華ヲ去リ、實ヲ取リ、益〓產業ノ發達、輸出增進等ヲ計ルト
云フ考ニ外ナラヌノデアリマス、是レ國民トシテ、國家トシテ、努ムベキトコロデアリマスガ、
我邦ノ現勢ハ此ノ如キコトヲ以テ輸入國ヲ輸出國タラシムルコトガ出來ルト云フコトハ、
大ニ疑ナキ能ヌノデアリマス、今過去ニ於ケル輸出ノ狀況ヲ〓要申述ベマスレバ豫算參
考書ニ依ッテ見マシテモ、明治初年ヨリ二十年マデ輸入超過ハ二千四百七十四万四
千圓デアリマス、二十一年ヨリ四十四年マテ二十四年間ノ輸出貿易ノ現狀ハ如何ニ
ナッテ居ルカト見マスレバ、輸入超過ハ年ニ於テ十六箇年、金額ニ於テ七億九千五百
二十二万餘圓ト云フ金額ニナッテ居リマス、其內五千万圓以上超過ノ年ガ九箇年ア
ルノデアリマス、サウシテ輸出超過ノ年ハ僅ニ八箇年其內一千万圓ヲ超過シタ年ハ僅
ニ三箇年シカナイ、二千万圓ニ達シタ年ハナイノデアル、其金額ハ僅ニ七千二百七十七
万圓餘デアル、之ヲ差引キマスルト金額ニ於テ七億二千二百四十四万圓、輸入超過ハ
二十四年間ヲ通ジテ一箇年三千十万餘圓ガ輸入超過ニナッテ居リマス、此最近五箇
年間ノ狀況ヲ見マスレバ、五箇年間ノ輸入總額ハ二十三億二百九十六万圓、輸出
總額ガ二十一億二千九百六十三万圓、差引一億七千三百三十二一万餘圓輸入超
過ニナッテ居ル、之ヲ五箇年平均致シマスレバ三千五百万圓ハ輸入超過ニナッテ居ルノ
デアリマス、サウシテ貿易以外ニ於ケル對外正貨關係ハ如何ニナッテ居ルカト云フコトヲ
考ヘマスレバ、是又大藏大臣ノ言明ニ依リマスレバ、國債ノ利子其他外國ニ支拂フベ
キ正貨ハ約九千五百万圓ヲ要スルノデアルサウシテ帝國ノ金ノ產出高其他海外ヨリ
受入ルベキ正貨ハ二千万圓乃至三千万圓デアッテ、差引約七千万圓ヲ貿易以外ニ於
テ外國ニ仕拂ハナケレバナラヌト云フコトハ、大藏大臣ノ言明スルトコロデアリマス、之ニ
依リマスレバ我帝國ノ現狀ハ債務國ニシテ、且純然タル輸入國デアル、債務國ニシテ輸
入國タル國家ノ隆盛ニ趣キタル實例ノナイノヲ考ヘマスレバ帝國ノ前途ニ對シテハ大ナ
ル杞憂ヲ懷カザルヲ得ズ憂慮ヲ懷カザルヲ得ナイト考ヘルノデアリマス、今他ノ國ノ例ヲ
見マシテモ輸入國ハ債權國ニシテ、債務國ハ輸出國タルコトハ殆ド一般ノ通例デアル
獨リ我國ハ債務國ニシテ、且輸入國デアルサウシテ其輸入ノ狀態ハ一時ハ經濟上ノ變
態カラ起ッタモノデナクシテ、深キ原因ガアッテ、過去數十年來通ジテ輸入超過ノ狀勢ヲ
持續シテ居ッテ、サウシテ近キ將來ニ此形勢ノ變遷スベキ現象ノ認ムルコトガ出來ナイノ
ハ、目下ノ狀況デアルト信ズルノデアリマス、果シテ然リト致シマスレバ漫然歲入歲出ノ均
衡ヲ保ツトカ、勤儉貯蓄ヲ奬勵スルトカ云フヤウナコトデナクシテ、深ク其原因ヲ精査シ、
之ニ對スル策ナカルベカラズト信ズルノデアリマス、是ニ於テ第二問ヲ生ズルノデアル、如何
ニセバ此輸入國ヲシテ輸出國タラシムルコトヲ得ルカト云フコトニ付テハ一定ノ方針、一
定ノ目的ヲ以テセンケレバナラナイト考ヘルノデアリマス、卽チ第二問ハ「政府ハ我輸出入
貿易品中將來輸出ヲ防遏シ輸入ヲ增進セシムルコトヲ得ベキ物品ハ主トシテ農產品ニ
囑望セラルヽヤ將工產品ニ期待セラルヽヤ」ト云フコトナンデアリマス、此輸入ヲ防イデ輸
出ヲ增加スルニ付テハ、輸出入貿易中ノ品類ニ付テ考察スル必要ガアルト考ヘルノデア
リマス、之ニ依ッテ最近五箇年間ノ重要輸出入品ノ類別ヲ擧ゲテ見マスト、輸出品ニ
付キマシテハ五箇年ノ平均ニ於テ精製品ハ七千四百五十六万餘圓デアリマシテ、輸出
總額ニ對スル割合ハ僅ニ一割七分五厘デアリマス、サウシテ其精製品ト云フモノハドウ
云フ種類ノモノガ重ニ占メテ居ルカト云ヘバ、羽二重、絹製「ハンケチ」綿布類燐寸等ノ
モノデアリマス、ソレカラ其次ニ粗製品ハ幾何ノ高ニナッテ居ルカト一云ヒマスレバ一億八
千三百九十五万餘圓ニナリマシテ、輸出總額ニ對スル割合ハ四割三分一厘九毛ト云
フモノニナルノデアリマス、此粗製品ノ重ナルモノハ申スマデモナク生絲、綿絲、茶等デアリ
マス、ソレカラ未製品ニ屬スルモノハ幾何アルカト云フコトヲ見マスレバ、五千二一百二十三
万餘圓、輸出總額ニ對スル割合ハ一割二分五厘ニ外ナラヌノデアル、其他ノモノガ一億
一千四百十八万餘圓デアリマシテ、此分ガ輸出總額ニ對スル割合二割六分八厘一毛
ト云フコトニナッテ居リマス、是モ輸入品ニ付テ既往五箇年間ノ品類別平均ヲ舉ゲテ見
マスレバ、精製品ハ六千四百三十一万餘圓デアリマシテ、輸入總額ニ對スル割合ハ一
割三分九厘六毛デアリマス粗製品ニ付キマシテハ僅ニ三千九十三万餘圓、輸入總額
ニ對シテ六分七厘二毛ニ外ナラヌノデアル、未製品ニ屬スルモノガ二億二百六十七万
餘圓デアリマシテ、此分ガ輸入總額ニ對スル割合ハ四割四分ト云フコトニナッテ居ルノデ
アリマス、此未製品ニ屬スルトコロノ品物ハ如何ナルモノデアルカト云ヘバ、棉花、羊毛、
米、豆、石油等デアリマス、其他ニ屬スルモノハ一億六千二百六十六万餘圓デ、其輸
入總額ニ對スル割合ハ三割五分三厘二毛ト云フコトニナッテ居リマス、サウシテ殊ニ注
意ヲ要スルトコロノモノハ過去五箇年間ニ於ケル、米ダケノ輸出入ヲ調ベテ見マスニ、米
ノ輸入額ハ九千三百五十七万餘圓デアッテ、米ノ輸出額ハ二千四百九十四万餘圓、
差引六千八百六十二万餘圓ト云フモノハ、米ニシテモ輸入超過ニナッテ居ルノデアリマ
ス、其一箇年平均ハ千三百七十二万餘圓ト云フモノニナッテ居ルノデアリマス、サウシテ
此年ハ米ニ付キマシテハ豐年ノ打續イタ年ナンデアリマス、此品類ニ依ッテ見マスレバ、農
產品ニ付テハ我ノ輸出スルモノハ極メテ少ナクシテ、輸出總額ノ一割二分餘デアッテ、其品
類モ重ナルモノハ石炭ト銅トデアリマス、ソレカラ我輸出品中ノ最大要部ヲ占メテ居ルトコ
ロノ粗製品ト、輸入品中ノ最大要部ヲ占メテ居ル未製品トガ、稍〓相對照シテ居ルト
云フ有樣デアリマス、此未製品ニ屬スルモノハ將來輸入ヲ減少スルコトガ出來ルモノデア
ルカト云フコトヲ考ヘマスレバ、輸入ヲ減少スルコトハ出來ナイノミナラズ、將來入レンケ
レバナラヌ品物デアリマス、又一面此土地ノ面積ト人口トノ關係ヲ見マシテモ、日本ノ
面積ハ二万四千七百九十四方里三六デアリマス、四十一年度末ノ本籍人口數ノ四
千九百五十八万千九百一一十八人ヲ以テ割リマスレペ、一方里ニ對シテ千九百九十六
人七二六ト云フ人口ニナリマシテ、之ヲ世界ノ人口ニ比較シテ見マスレバ、世界中人口
稠密ナル第四位ニ日本ハ居ルノデアリマス、彼ノ露西亞ノ如キ、亞米利加ノ如キ、最
モ人口ノ稀薄ナル處ニ比較致シマスレバ、殆ド比較ニナラナイ有樣デアルノデアリマス、
之ニ依ッテ見マスレバ我帝國ノ對外貿易ニ關シマシテハ農產品ヲ以テ大ニ輸出ヲ增加シ、
又農產品ノ輸入ヲ防イデ、我農產品ヲ大ニ增加シテ、國民ノ需用ヲ充スト云フ事柄ハ、
此人口ト面積トノ關係カラ見マシテモ、亦地理上ノ關係カラ目九マシテモ、輸出入品類
ノ〓カラ見マシテモ、到底望ムコトハ出來ナイモノデアラウト信ズルノデアリマス、然ラバ何
ヲ以テ輸入ヲ防ギ、我輸出ヲ增スカト云ヘバ工產品ヨリ外ニ求ムルモノハナイト本員ハ
信ズルノデアリマス、工產品中ニハ目下ノトコロニ於キマシテハ、多ク外國品ヲ仰ガヌケレ
バ我內國デ出來ナイモノガ甚ダ多イノデアリマス、其品類ニ付テ見マスレバ、我內地
ニ於テ製造シ得ベキモノ、殊ニ其原料豐富ニシテ、今ハ原料ヲ海外ニ輸出シテ、彼地デ
製品ニシテ、再ビ我帝國內ニ輸入スルモノモ多イノデアリマス此工業ニ付キマシテハ前途
輸入ヲ防ギ、輸出ヲ增進スルノ途ガアルト云フコトヲ信ズルガ故ニ、此貿易ノ狀況ヲ順調
ナラシメ、我帝國ヲシテ輸出國タラシムルノニハ、工產品ノ發達ヲ圖ランケレバナラヌ一定ノ
目的ト一定ノ方針トノ下ニ進ムル必要ガアリハシナイカト云フ考ヨリ、此第二問ヲ起シ
タ次第デアリマス、是ヨリ第三問ニ移リマス、第三問ハ「政府ハ我工業不振ノ主因トシ
テ左記ノ事項ヲ認メラルヽヤ果シテ之ヲ認メラルヽモノトセバ其救濟策トシテ從前如何ナ
ル政策ヲ執リタルヤ又將來如何ナル政策ヲ斷行スルノ意ナルヤ」ト云フノデアリマスガ、サ
ウシテ其事項トシテハ「イ」カラ「ホ」マデ五項ニ分ッテ居ルノデアリマスガ、工業ヲ盛ナラシ
メテ、工產品ヲ以テ輸出貿易ノ現下ノ趨勢ヲ一轉セシメントスルナラバ、宜シク工業不振
ノ原因ヲ調ベテ、之ニ向ッテ救濟ノ策ヲ執ランケレバナラヌト考ヘル故ニ、此質問ヲ起シタ
次第デアリマス、其一ノ「イ」ニ於キマシテハ工業知識ノ幼稚ナルコトヲ云フノデアリマス、
成程目下ニ於キマシテ或ル事業ニ付キマシテハ學識、、經驗共ニ卓絕セル老練家モアッテ、
頗ル進步シテ居ル如キ感ガアルノデアリマスガ、之ヲ全體ノ我國工業界ノ狀況ニ照シテ
見マスレバ、學者ハ實地ニ疎ク、實地家ハ學問ノ素養ガナクシテ、實地ト學問トノ調和ヲ
〓イテ居ルト云フコトガ、今日ノ實況デアリハシナイカト信ズルノデアリマス、現ニ今モ申述
ベマシタ如ク、我帝國ニ於テ製造シ得ベキ物ニシテ、サウシテ舶來品ト同等ノ物ガ出來
ナイ中ニハ、全ク如何ニスルカ其スルコトヲ知ラナイ者スラ甚ダ多イノデアリマス、サウシテ
帝國ノ現狀ニ照シマシテ、他ノ陸海軍ノ如キ、或ハ醫學ノ如キ、或ハ法政學ノ如キ制
度ニ於ケル如キ部面ニ對比致シテハ見マスルナラバ、商工業ノ方ガ一番後レテハ居ナイカト
信ズルノデアリマス、現ニ戰術上ノコトハ別ニ致シマシテモ、陸海軍ニ於ケル砲兵工廠ノ製
作品、海軍工廠ノ製作品等カラ見マシテモ、我商工業界ノ知識、經驗、其出來ルトコロ
ノ品等ニ於テ、遙ニ劣ッテハ居ナイカ、是レ工業知識ノ未ダ幼稚ナル現狀デアラウト信ズル
ノデアリマス、之ニ付キマシテハ一面ニ於テハ實業〓育ヲ盛ニシ、卽チ實學ヲ修ムルト云
フコトガ必要デアルト考ヘマスルガ、今日マデノ〓育ノ方針ハ過日星君モ問ハレタ如ク、本
員ニ於テモ人物經濟ノ上ニ於テ、頗ル不經濟ナ〓育ヲシテ居ナイカト疑フモノデアリマス、
尙文部省直轄ノ高等工業學校ト、高等商業學校トノ旣往三年間ニ於ケル入學志願
者ト、收容人員トヲ調ベテ見マスルノニ、高等工業學校ニ於ケル入學志願者ノ一箇年ノ
平均數ハ、三千十三人デアリマシテ、收容人員ガ八百五十八人、差引二千百五十
五人ト云フ者ハ收容スルコトガ出來ナイコトニナッテ居ル、志願者ノ數ニ對シテ百人
ニ付テ二十八人餘ホカ收容シテ居ラナイノデアリマス、又高等商業學校ノ三年間ノ平
均ヲ見マスレバ、入學志願者ノ數ガ二千七百三十五人、收容人員ガ八百六十三人、
差引收容不能數ガ千八百七十二人デアリマス、是又志願者百人ニ付テ三十一人
餘ホカ收容シテ居ラナイノデアリマス、其他市町村立商業學校、工業學校、或ハ實業補
習學校等ノ設モ多々アリマスルガ、此ノ如ク官立高等學校ニ於テスラ志願者ノ約三割ノ
收容ホカ出來ナイト云フ有樣デアッテ、サウシテ志願者ノ數ハ近年增加シツヽアルカト云
ヘバ、之ニ反シテ減少シツヽアルノデアリマス、此減少ヲシテ居ルノハ之ニ向フ志望者ノ
減ルノデアルカ、到底希望ヲ充スコトガ出來ナイト云フ自暴自棄ニ出ヅルノデアルカト云
フコトハ、一考ヲ要スル問題デアルト考ヘルノデアリマス、固ヨリ〓育ニ付キマシテモ工業
ヲ盛ナラシムルト云フ意味ニ於テ、遺憾ナク經營施設スル必要ガアラウト考ヘマスルガ、
目下ノ狀況ハ獨リ學校〓育ノミデナク、實地ノ〓育卽チ試驗及〓究ヲスルノガ最モ必
要デアルト考ヘルノデアリマス、之ニ對スル適當ナル機關ハ卽チ農商務省所管ノ工業試
驗所デアリマス工業試驗所ハ明治三十三年ニ設立セラレマシテ、今日ニ至ッテ居リマ
ス、其設備費ノ總額ヲ調ベテ見マスレバ、僅カニ百十五万四千餘万圓デアリマス、本
年度ノ經費ヲ見マシテモ、僅ニ十万八千四百餘圓デ、水產講習所ノ費用ニモ尙
足ラヌヤウナ有樣デアリマス、國家ガ唯一ノ機關トシテ工業ヲ保護奬勵スル意味ニ於
テ設ケタ工業試驗所ト云フモノハ實ニ微々タルモノデアルト考ヘル過日實地ニ就テ拜
見モ致シマシタガ、工業試驗所ノ成績ハ一〓ニ之ヲ申シマスレバ未ダ見ルベキモノナイト
云ッテモ宜イト考ヘルノデアリマス、分析等ニ屬スルモノハ、是ハ獨リ工業試驗所ノミナラ
ズ、他方面デ澤山ヤッテ居ルノデアリマス、工業試驗所ニ於テ最モ必要ナル今日我工業
界ノ知識ノ足ラヌトコロヲ補充セントスルニ付キマシテハ舶來品中デ內地ノ需用ノ多ク
且內地デ完全ニ出來ナイ物ニ付テハ二箇ノ〓究スル必要ガアルト本員ハ信ズルノデア
ル、其一ハ其品ノ製作方法如何ニスレバ完全ニ其品物ガ出來ルカト云フ〓究ナンデア
ル、第二ニハ如何ニセバ經濟的ニ外品ト競爭スル力ノアル生產品ヲ廉ク製造シ得ルカト
云フ問題デアリマス、工業試驗所ノ目下〓究セラレツヽアルモノハ第一ニ其中二三品ニ付
テハ多少見ルベキモノモアルガ、是亦完全トハ認メラレヌト思フノデアリマス、第二ニ是ガ
商賣ニナルカ、經濟的ニナルカト云フ〓ニ付テハ殆ド閑却セラレテハ居ラヌカト云フ感ガア
ルノデアリマス、所謂官吏ノ養成所デアッテ、商工業ヲ發達セシムルタメノ國家ノ機關ト
ハ認メラレナイ〓ガアルト思フノデアリマス、殊ニ之ヲ經營施設スルトコロノモノモ、、甚ダ微々
タルモノデアリマスカラ、國家ノ工業ヲ盛ナラシメ、工業知識ノ幼稚ナルヲ補ハントスルナ
ラバ、國家ハ大ニ之ニ力ヲ盡ス必要ガアリハシナイカト本員ハ存ズルノデアリマス、次ハ
「ロ」デ工業資金ノ匱乏ナルコト我工業界ノ工業資金ハ未ダ潤澤デナイト本員ハ信ズ
ルノデアリマス、成程近年金利モ廉シ、金融頗ル緩漫デアリ、工業資金ハ潤澤ノ如ク
デアルガ、是ニハ大ニ注意ヲ要スル點ガアル、目下金融緩漫デアルノハ借金政策ノタメニ
外資ヲ入レテ、正貨準備ヲ潤澤ナラシメテ居ルタメデアッテ、輸出超過ノ結果我國力ノ
發展ニ依ッテ通貨ノ潤澤ニナッテ居ルノトハ、大ニ趣キヲ異ニシテ居ルノデアリマス、故ニ工
業資金ノ大部分ヲ占メルトコロノ株式ニ投ズルトコロノ資本ハ如何ナルモノデアルカト云
フコトヲ見マスレバ其多數ハ貯蓄的資本ニアラズシテ、所謂雇資本デアリマス、雇資本
ナルガ故ニ、金利ハ五朱內外デアリマシテ、八朱ヤ一割ノ利息デ工業會社ノ株金ニ資本
ヲ投ズルモノハナイノデアル、之ニハ前ノ金利ノ關係モアリマスガ、一面又工業知識ノ幼
稚ナルガタメニ經營其當ヲ得ナイ、不適實ナル經營ヲスルモノガアッテ、我國ノ工業ハ未ダ
危險事業ノ位置ヲ全ク去ッテ居ラヌノデアリマス、故ニ日露戰爭ノ後ニ於テ起ッテ居ル事
業ハドウ云フ種類ガ多イカト云フコトヲ見マスレバ、金利ハ廉クテモ輸出的工業資本ニ投
ズルモノハ少ナクシテ工業會社ハ起ラナイ、或ハ電氣鐵道デアルトカ、電燈デアルトカ、瓦
斯デアルトカ、水力電氣デアルト云フヤウナ種類ノモノガ、比較的安全デアルト云フコトノ
タメニ起ッテ居ルノデアリマス、之ヲ今對外貿易ノ關係上カラ申シマスレバ、輸出ヲ增加ス
ル所以ニハ少シモナラナクシテ、却テ輸入ヲ誘致スルノ因トナルモノデアルト考ヘルノデア
リマス、又之ヲ對外貿易ノ國家ト國家トノ關係ヲ個人關係ニ譬ヘテ見マスレバ、店ノ商
賣ハ年々損ガ往ッテ居ルノニ、主人ハ近頃座敷向キノ裝飾ニ非常ニ凝ッテ居ルト同樣ノ
結果デアルト考ヘルノデアル、之ヲ以テ國運ノ隆々タルコトヲ誇ルコトハ出來ナイト本員ハ
信ズルノデアリマス、此借金政策ニ付キマシテハ强チ借金ガ惡ルイト云フ本員ハ考ヲ持ッ
テ居ナイノデアリマスガ、今日ノ如クニ官ノタメニ、政府ノ財政ノタメニ、借金政策ヲ持
續シテ、其資金ハ不生產的事業ニ投ゼラレルト云フ事柄ハ最モ忌ムベキモノデハナイカ
ト考ヘルノデアリマス、我國ノ現狀ニ於キマシテハ外資ハ自然的外資ヲ輸入シテ、所謂彼
ガ我國ヘ來テ事業ヲ起シ、彼ト我國民ト共ニ事業ヲ現在ニ於キマシテ租稅ノ負擔ハ重
キニ失シテ、ソレガ延イテ工業ノ發達ヲ阻碍シテ居リハシナイカト考ヘルノデアリマス、其徑
路ヲ一々申述ベマス、現在ニ於キマシテ租稅ノ負擔ハ重キニ失シテ、ソレガ延イテ工業ノ
發達ヲ阻碍シテ居リハシナイカト考ヘルノデアリマス、其徑路ヲ一々申述ベマスレバ日
〓戰爭前ニ於キマシテ八千万圓內外ノ歲計ガ、日〓戰爭後一躍二億五千万圓內外
トナリ、日露戰爭後再躍シテ五億乃至六億ト云フコトニナリマシタタメニ、其日〓戰
爭ニ於キマシテハ是ガタメニ費シタトコロノ軍事費ハ約二億五千万圓ニシテ、サウシテ
彼ヨリ取ッタトコロノ償金ノ種々ナルモノヽ總額ハ約三億五千万圓デアッタニモ拘ハラズ、
二十九年ヨリ三十五年マデノ間ニ增稅ニ亞グニ增稅ヲ以テシタノデアリマス、サウシテ三
十六年一箇年增稅ガナクシテ、日露戰爭トナッテ、彼ノ非常特別稅ナルモノガ起ッタノ
デアリマス、爾來稅制ノ整理ヲ未ダナサズ、民力ノ休養ヲ力メズ致シマシタ結果ハ、今
三十六年度ト本年度四十五年度ト比較致シテ見マスルノニ、地租、印紙收入、官業
及官省財產收入ニ於テ三十五年度ニハ二億四百五十一一万餘圓デアッタモノガ、四十
五年度ニハ四億八千百四十七万餘圓ト云フコトニナリマシテ、差引二億七千六百九
十万餘圓ト云フモノガ增加シテ居ルノデアリマス、其割合ハ二倍三割五分四厘一毛ト
云フモノガ殖エテ居ルノデアリマス、又地方ノ政費モ漸次膨脹シマシテ、府縣、市町村ノ
負擔ト云フモノモ甚ダ今日ハ輕カラナイノデアリマス、是ガ工業上ニ如何ナル關係ヲ持ツ
カト云フ〓ニ付キマシテ、我大阪ニ於ケル主ナル株式會社中ノ一部ニ就テ取調ヲ致シテ
見マスルノニ四十三年度ノ一箇年分、所謂會社デ言ヘバ二年以上ノ年度デ其株主ノ配
當金ト國稅府縣稅市町村稅等ノ負擔額トノ割合ヲ調ベテ見マスレバ、大阪紡績外八
會社分ノ配當金ノ總額ハ百九十八万二千百四十五圓、納稅額ガ五十八万八千
四十九圓デアリマス、其配當金ニ對スル割合ハ二割五分六厘三毛ト云フモノニナッテ居
ル、織物業、ヽ毛斯綸紡績會社外二會社分ノ配當金二十六万八千五百圓、納稅額
ガ七万六千三百七十一圓ニナッテ居ル、此配當金ニ對スル割合ハ二割八分四厘四毛
ト云フモノニナッテ居ル、又渾送業大阪商船會社外十一會社分ノ配當金四百六十六
万七千三百七十一圓、納稅額ハ百三十四万千八百九十一圓、此配當金ニ對スル割
合ハ二割九分一厘七毛ニナッテ居ル、瓦斯電燈業大阪電燈會社外五會社分ヲ合
セテ百四十二万二千二百二十四圓、納稅額ガ二十四万百二十六圓、其配當金
ニ對スル割合ハ一割六分八厘八毛ト云フヨトニナッテ、斯ウ云フモノハ割合ニ廉クナッテ
居ル、其他ノ雜業大阪電氣分銅會社外十一會社分ノ配當金ハ三十一万四千三十
七圓、納稅額ハ九万千四百五十圓、此配當金ニ對スル割合ハ一一割九分四厘一毛
ト云フコトニナッテ居ル、約三割ハ稅ニ取ラレテ居ル斯ク致シマスルト一割ノ利益ノアル
工業ハ株主ニ配當スルモノハ七朱ニ下ッテ來ルノデアル、是タケノ一方ニ負擔ガアリマ
スレバ、自然工業會社トシテ利益ノ多イモノヨリ外起ラヌト云フコトニナル、今對外貿易
ノ關係上ヨリ外國品ト競爭スル上ニ於テハ、此ノ如ク利益ノ多イ事業バカリハ無イノデ
アリマス、是等モ工業不振ノ一ノ原因ニナッテ居ラヌカト考ヘルノデアリマス、次ニ「ニ」テ
アリマス「官營事業ノ過多ナルコト」官營事業ガ頗ル多過ギルト考ヘルノテアリマス、元
來國家ガ事業ヲ經營スルノニハ三箇ノ要件ガ要ルト本員ハ信ズルノデアル、曰ク、個人ノ
爲スベカラザル事業タルコト、曰ク、個人ノ爲ス能ハザル事業タルコト、曰ク、個人ノナスコ
トヲ欲セザル事業タルコト、此要件ガナケレバナラナイコトヽ考ヘルノデアリマス、若シ之ガ
無クシテ何デモ國家ガヤルト云フコトニ至リマスレバ、國家ニ對シテ個人ハ競爭スル力ヲ持ツ
テ居ナイガタメニ、他ノ產業ハ大ニ萎縮スル次第ニナルノデアリマス、現ニ本年度ノ各會計
中官營事業費卽チ官營事業トシテ政府ノ執ルトコロノ事業ノ仕拂金歲出ハ、ドレダケ
ノモノヲ拂ッテ居ルカト云フコトヲ見マスレバ二億六千五百八十八万五百四十二圓ト
云フモノヲ歲出ニ計上シテアルノデアリマス、國家ガ是ダケノ歲出ヲ投ジテ、官營事業ヲ
盛ニ致シマシタナラバ、是ヨリ生ズル或ハ職工ノ奪取、或ハ勞銀ノ騰貴、製品ノ投賣等、
其他官營事業ト競爭スル力ノナイ民業ハ官營事業ノタメニ壓迫ヲ破ルト云フ事柄ハ蔽
フベカラザル事實デアルト信ジマス、故ニ民業ヲ盛ンナラシメントスルナラバ、此官營事業ハ
適度ニ縮小シテ、現ニ政府事業中デモ、或ハ製鐵所ノ如キモ、或ハ製材事業ノ如キ、或
ハ製絨所ノ如キ、或ハ採炭所ノ如キ、或ハ造船所ノ一部、電信燈臺用品製造所ノ如
キモノハ、是ハ宜シク民業ニ移シテ、國家工業ノ發達ニ資スル必要ガアリハセヌカト考ヘマ
ス、之ニ對シテ過日豫算會議ノ場合ニ製鐵所ヲ民業ニ移スコトハ出來ナイカト云フコト
ノ問ニ對スル農商務大臣ノ答ハ、本員ハ甚ダ奇怪ニ思フノデアル、此製鐵所ナルモノハ
軍器ノ獨立ニ關係スルタメニ拂下ゲルコトハ出來ナイトー云フ答ガアッタト記憶致シマス、本
員ノ信ズルトコロニ依レバ、軍器ノ獨立ハ官自ラ營マナケレバ出來ナイト云フ意味デハナ
イ我國ニ於テハ我國民ニ於テ、我國內ニ於テ、製造シ得ベキ材料ニシヤウガ、製品ニシ
ヤウガ、我國內ニ於テ出來レバ、軍器ノ獨立ハ保テルノデアル、外國ノ輸入ヲ仰ガナケレバ
ナラヌト云フ場合ニハ一朝事アル場合ニ軍器ノ獨立ヲ保ツコトガ出來ナイト云フ意味デ
アルト考ヘルガ、農商務大臣ノ答ハ是非自ラシナケレバ軍器ノ獨立ガ出來ナイ如キノ御
答ガアッタノハ、甚ダ本員ハ奇怪ニ考ヘルノデアリマス、次ニ「ホ」財政計畫ノ失當ナルコト、
此財政計畫ノ其當ヲ得ナイト云フ事柄ハ豫算會議ノ場合ニモ種々御議論ガアッタヤウ
ニ記憶致シマスガ、今一般會計及各特別會計ヲ通ジテ、サウシテ各會計官ノ振替支出
ニ屬スルモノヲ除イテ、全ク政府ノ手ヨリ仕拂フベキ金額ハ幾何アルカト云フコトヲ調ベル
ト、九億七千二百三十一万五千四百五十七圓デ、約十億ト云フ歲計ニナッテ居ル、
之ニ各會計官ノ振替支出ニ屬スルモノヲ通算スレバ、十二億五千五百八十万五千
五百二十八圓ト云フ歲計ニナッテ居ルノデアリマス、我國ノ現在ノ富力、現在國民ノ
負擔ノ程度、前ニ申シマシタ公課ノ負擔ノ重イト云フ〓カラ考ヘテ見マシテモ、此歲計
ハ實ニ過大ナル歲計デアルト信ズルノデアリマス、是ガタメニ前內閣ノ場合ニ於テハ公
債非募集ノ名ノ下ニ盛ンニ借金政略ヲ實行シタノテアリマス、外債ノミニ於テ約三億
圓ト云フモノガ、前內閣時代ニ殖エテ居ルノデアリマス、又本年度ノ豫算ニ於テモ、所
謂大藏大臣ノ入ヲ量ッテ出ゾルヲ制スルト云フ名ノ下ニ七千八百九十九万四千九百十
六圓ト云フモノガ、公債其他ノ借金政略ヲ執ッテ居ルノデアリマス、此政略ノ持續スル
關係ハ、兌換制度ニ著シキ影響ヲ及ボスノデアリマス、卽チ外債ヲ以テ正貨準備ヲシテ
置クノデアル、之ニ對シテ大藏大臣ハ時々必要ニ迫ッテ小出シヲシテ補充ヲシテ居ルト云
フコトヲ言ハレテ居リマスガ、其小出シタトコロノ補充金額ハ幾何シテ居ルカト云フコトヲ
調ベテ見マスルト、四十二年末卽チ四十二年ノ十二月三十一日ノ日本銀行ノ正貨
準備ハ二億千七百八十四万餘圓デアリマス、サウシテ四十三年ノ輸入超過額ハ五百八
十万四千餘圓デアリマス、サウシテ同年度ニ於ケル前ニ申シタ債務ノ仕拂ヲ假二七千
万圓ト致シマスレバ四十三年度末ニ於テハ日本銀行ノ正貨準備ハ一億四千二百三
万八千四百六十三圓ニ滅少シナケレバナラヌ筈デアル然ルニ同年末ノ日本銀行ノ正
貨準備ヲ見マスレバ、二億二千二百三十八万二千四百六十五圓デアリマシテ、却ッテ
殖エテ居ル、其差引ノ差ハ幾何デアルカト云ヘバ卽チ八千三十四万四千二圓ト云フ
モノハ大藏大臣ノ所謂小出シヲシテ補充ヲシテ居ルノデアリマス、四十四年度ハ如何デ
アルカト云フコトヲ見マスレバ、四十四年中ノ輸入、超過額ハ六千六百三十七万六千
五百二十九圓デアリマス、同年度ニ於ケル債務、仕拂額ヲ是亦七千万圓ト假定致シマス
レバ、昨年末ノ正貨準備ハ僅ニ八千六百万六千九百三十六圓ニ減ラナケレバナラヌ
筈テアルノデアリマス、然ルニ四十四年度末日本銀行ノ正貨準備ハ二億一一千九百十
五万四千二百二十圓ト云フコトニ更ニ殖エテ居ルノデアル、其差引ノ差ハ何程デアルカ
ト云ヘバ、卽チ一億四千三百十四万七千二百八十四圓ニナル、是ダケガ四十四年度
ニ所謂小出シヲシテ補充ヲシタ金額ナノデアル、目下ノトコロデ此小出シヲシテ補充ヲ
スル政府所有ノ在外正貨ハ、一億四千三百万圓ホカナイ譯デアルサウスルト本年ニ於
テ昨年ダケノ輸入超過ガアレバ、最早補充ヲスル錢ハ無クナル筈デアル、然ルニ本年ハ
東京市ノ外債ガ募ラレマシタカラ暫クハ繰延ベルコトガ出來ルカ知リマセヌガ、借金政略
ヲ止メルト同時ニ兌換制度ノ基礎ニ一大變化ガ起ルト云フコトガ、我國ノ現狀ナリト致
シマスレバ、今ヨリ大ニ注意ヲ拂ハナケレバ、唯勤儉貯蓄位デ此輸出入ノ關係ヲ變ズルコト
ハ出來ナイト信ズルガタメニ、敢テ之ヲ聽カント欲スルノデアリマス、次ハ「ヘ」ノ「政費ノ分配
其宜シキヲ得ザルコト」、我國ノ政費ノ分配ニ付キマシテハ分類ノ仕方ハイロ〓〓アリマセ
ウガ、一定シタ分類ヲ立テタモノモ能ク本員ハ承知致サナイノデアリマスガ、今假ニ國債ニ關ス
ル諸費ト、軍事ニ關スル諸費ト、產業ニ關スル諸費ト、〓育ニ關スル諸費ト、其他ノ政務ニ關ス
ル諸費トノ五目ニ分ケテ、本年度ノ豫算ノ之ヲ一般會計ニ屬スル五億七千二百餘万
圓ノ中デ類別ヲ致シテ見マスレバ、國債ニ關スル諸費ハ一億七千九十六万一千五百
四十六圓、歲出總額ニ對スル割合ガ一一割九分八厘四毛ト云フモノハ國債ニ關スル諸
費ナノデアリマス、軍事ニ關スル諸費ハ一億九千七百万三千百九十五圓デアリマシテ、
其歲出總額ニ對スル割合ハ三割四分三厘九毛トナッテ居ル、產業ニ關スル諸費ハ僅ニ
三千三百六十六万四千四百七十七圓デ、歲出總額ニ對シテハ五分八厘七毛ニホカ
ナラヌ、〓育ニ關スル諸費ハ、千二十三万四千三百七十二圓デアリマシテ、僅ニ一分
七厘九毛ホカナイノデアル、其他ノ政務ニ關スルモノガ一億六千百一一万八千二百七
十六圓デ、其割合ハ二割八分一厘一毛ト云フコトニナッテ居リマス、此產業ニ關スルモ
ノ如キ、其重ナルモノハ製鐵所費、國有林野經營費、航路擴張費等デアッテ、一般、
產業ニ對スル金額ハ極メテ僅少ナモノデアリマス、軍事ニ關スル諸費モ陸海軍ノ本省費
ノ如キハ是ニハ入レテナイノデアリマス、此三割四分三厘九毛ハ歲出總額ニ對スル軍事
費トシテ、マタ餘裕ガアルト云フ議論モアルヤウニ聞イテ居リマスガ、是ハ一〓ニ歲出ノ總額
ト軍事費ノ割合ノミヲ以テ論ズルコトハ出來ナイト考ヘル、國力ノ關係卽チ我國ノ租稅
ノ負擔ノ有樣ハ重キカ、輕キカ、輸出入ノ關係ハ如何デアル、我國力ノ有樣ハドウデア
ルカト云フコトカラ見ナケレバ、唯各國ノ歲出總額ト、軍事費ノ割合ノミヲ以テ、我ガ
國ノ軍事費ハ未ダ餘裕ガアルト云フ事柄ハ、少シク失當ナ見デハナカラウカト本員ハ信
ズルノデアリマス、(「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)モウ大方濟ミマシタ(「モウドノ位掛リ
マス」ト呼フ者アリ)モウ少シデ濟ミマス、元來國防ノ必要ハ諸君御互ニ感ズルトコロデアリ
マス、國防ナルモノハ所謂軍備ノミヲ以テ國防ニハナラナイノデアル國力ガ之ニ伴ハナケ
レバナラヌ、寧ロ强兵ガ先キカ、富國ガ先キカ、國富ンデ始メテ兵强キヲ得ル國貧ウシ
テ、兵ノミ獨リ强キ國家ノアッタ實例ノナイノヲ見マスレバ今日ノ我帝國ハ軍事ノ擴
張ヨリハ、國力ノ發展ニ努メ、國力ノ充實ニ上下官民一致シテ努メナケレバナラナイモ
ノデアルト考ヘル、是ハ大ニ愼マナケレバナラヌ問題デアルト考ヘマスルガ、之ニ對スル又
大藏大臣ノ言ヲ此處ニ引キマスレバ、大藏大臣ハ如何ニ我國現在ノ經濟狀態ヲ觀察
シテ居ルカト云フコトヲ見マスレバ我國ノ經濟狀態ハ健康體デハナイ、病體デアルコト
ハ認メルガ、其病源ハ過喰シテ、胃腸ヲ害シテ居ルノデアル、ソレダカラシテ漫リニ滋養
物ヲ與ヘテモ、之ヲ消化スルノ力ガナイカラシテ、却テ衰弱ニ陷ル虞ガアル、故ニ外科的
療養ヲ用井ルコトヲ要セナイ、內科的治療若クハ自然療法ニ依ッテ漸次恢復セシムルノ
外ニ手段ガナイト云フコトヲ言ハレテ居リマスルガ、私ノ診察スルトコロニ依レバ、帝國ノ
現狀ハ此ノ如ク無爲無策ニシテ自然ノ成行デ、我輸入國ガ輸出國ニナルコトハ出來ナ
イト信ズルガタメニ敢テ之ヲ問ハント欲スルノデアリマス、以上述ベマシタ此「イ」ヨリ「ヘ」
マデ六項ノ原因ガ果シテ工業不振ノ原因ナリト致シマスレバ此原因ニ對シテ救濟策
ヲ執ラナケレバ、我工業ハ發達シナイト考へル、工業不振ノ原因ニ付テノ攻究ガ積ミマス
レバ、進ンデ商業ノ機關、卽チ其生產品ヲ捌クトコロノ方法手段モ必要ナノデアリマス
ガ、今ノトコロハ工業ハ進ンデ、商業ガ進マヌ又其製品ノ販路ニ苦ンデ居ルト云フトキデ
ナクシテ、工產品ノ發達ヲ期スル場合デアリマスルガ故ニ、先ヅ此工業振興策ニ付テ十
分ノ考慮ヲ要スルト考ヘルノデアリマス、最後ニ第四デアリマス、モウ是ハ簡單ニシテシマ
イマス、四ハ「政府ハ支那印度及南洋諸島ニ對スル貿易ニ關シ如何ナル方法手段ヲ講
ジ如何ナル政策ヲ實行セラレツヽアリヤ殊ニ支那動亂ニ際シ我在〓領事及商務官ハ
果シテ適當ナル注意ヲ拂ヒ機宜ニ適切ナル處置ヲ行ヒ我ガ當業者ニ對シ如何ナル利便
ヲ與ヘラレタルヤ其ノ事實如何」此通リデアリマス、我工產品ノ販路ハ支那及印度、南
洋諸島デアリマシテ、歐羅巴ハ我工產品ノ市場デハナイト信ズルノヂアリマス此方面ニ
對スル我外交、我生產品販路ニ對スル政策ニ付テハ獨リ當業者ニ委スルノミナラズ、
國家ハ一定ノ方針ヲ以テ、一定ノ政策ヲ實行スル必要ガアルト考ヘマスルガ、今日マデ
對〓貿易ニ對スル政府ノ執タタ置ハ實ニ區々デアッテ、未ダ一貫シタトコロノ處置ハ
ナイト考ヘルノデアリマス、殊ニ安奉鐵道開通後、我領土タル朝鮮ト滿洲ト接近シテ居
ナガラ、露〓協約ニハ我帝國ハ均霑スルコトガ出來ナイ、卽チ陸上貿易ニ對シテ露〓
協約ニ何ガタメニ我帝國ハ加入スルコトガ出來ナイカ、之ニ均霑スルコトガ出來ナイカ、
是ハ大ニ外務大臣ノ意見ヲ聽カント欲スルノデアリマス、、又我在外領事ハ何ガ故ニ通商
貿易ニ關スル通信ヲ商業會議所其他營業者ト直接ニ通信ヲスルコトヲ何ガ故ニ許サナ
イカ、領事ノ通信ハ外務省ニ來テ、農商務省ニ囘ッテ、サウシテ後初メテ營業者ノ手ニ
入ルノデアルガ、ソレハ歴史ヲ編纂スルニハ、多少足シニナルカモ知レマセヌガ、商業上ノコ
トニ付テハ何時モ後トノ祭、濟シダ後ニ報告ガ來ルノデアル、殊ニ此〓國動亂ニ付テハ
此結果ハ政治、經濟、風俗、習慣上ニハ一大變化ヲ起シマシテ、我國品ヲ需用スルコ
トモ、甚ダ多イト考ヘルノデアルガ、此際ニ於テ我商務官我領事ハ如何ナル態度ヲ執ツ
タカ、如何ナル處置ヲ執ッタカ、彼ノ漢口ニ於ケル市街ノ恢復ニ對スル物資ノ供給ニ付
テハ、如何ナル注意ヲ拂ッテ居ルカ、本員ノ聞クトコロニ依レバ在留人民ノ生命財產ヲ保
護セル外ニ何等手ヲ出スコトガ出來ナイト云ッテ、商機ニ關スル仕事ハ何等シテ居ナイ、
我當業者ニ利便ヲ與ヘテ居ラナイト云フコトヲ聞イテ居ルノデアリマス、是等ニ付テハ當
業者ノ努メルコトハ勿論デアリマスガ、政府モ之ニ相當スル政策ヲ執リ、我商工業者ヲ
率井テ、此貿易ノ進路ヲ開クト云フコトハ最モ國家ノ必要ナルトコロデハナイカ、此機
ヲ逸スレバ〓國ニ於ケル我商品ノ販路ハ焉ゾ知ラン、歐羅巴各國ノ占領スルトコロ
トナリハセヌカト云フコトヲ憂フルノデアリマス、元來此問題ニ付テハ果シテ本員ノ上ニ
申述ベマシタ如キノ事實ガアリト致シマスレバ、政黨、政派ノ如何ニ關セズ、內閣ノ何
人ニ依ッテ組織セラルヽニ拘ラズ、官民一致シテ我國是トシテ我對〓貿易ヲ如何ニスル
カト云フ事柄ハ、上下擧ッテ攻究シ、且努ムベキハ今日ノ急務テナイカト云フコトヲ本員
ハ問ハンガタメニ此問題ヲ提出シテ、當路ノ意見ヲ聽カント欲スル次第デアリマス
〔農商務大臣男爵牧野伸顯君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=15
-
016・牧野伸顯
○農商務大臣(男爵牧野伸顯君) 三谷君ノ質問ニ御答ヲ致シマス、輸出事業ヲ奬
勵致シマスルコトハ、帝國政府ノ一貫ノ主義デ、從來有ユル手段ヲ講ジテ、其途ニハ盡
シテ居ル積リデアリマス、此四十年間ノ貿易ノ有樣ヲ見マシテモ、約百万圓以上ノ輸出
品ヲ出シマシテ、今日マデ引續イテ百万圓以上ヲ出シテ居ルモノハ約五十種バカリアリマ
ス、無論其間ニ多少增減ハアリマスケレドモ、大勢ニ於テ百万圓以上ニ達シ、其金額
モ〓ネ維持セラレテ居ルノミナラズ、年々多少ヅヽ增額致シテ居ル次第デアリマス、是ハ無
論政府ノ奬勵ノ力モアリマスルケレドモ、當業者ノ非常ナ勉勵ノ結果デアッテ、決シテ悲
觀スベキ有樣デハナイト思フ、併ナガラ吾〓ハモウ少シ進ンデ、是以上ノ成績ヲ見タイト
思ウテ居ルノデ、既往若クハ今日ノ現狀ニ於テ見マスルト、期待セル程ノ成績ヲ舉ゲテ居
ラヌト云フコトヲ否認スルコトハ出來ヌノデアリマス、三谷君ノ御憂慮ニナルトコロト變ル
トコロハナイノデアリマス、其十分ナラザル卽チ輸出入ノ均衡ヲ保ッテ居ナイト云フ事情ヲ
改良スルタメニ段々御心配ニナッテ居ルヤウデアリマスガ、或ハ此處ニ揭ゲテ御置キニナル
トコロノ事項モ與ッテ大ニ關係ガアラウト思ヒマスケレドモ、又政府ノ見タトコロモ一應申
シテ見タイノデアリマス、成績ノ十分デナイト云フコトハ第一ニ此帝國ハ原料ニ乏シイト
云フコトガ、確ニ其原因テアルト考ヘルノデアリマス、、原料其儘デ輸出致シマスカ、又ハ之
ニ加工シテ輸出スルカ、要スルニ大規模デ產出スルトコロノ原料品ニ乏シイト一云フコトハ
爭ハレヌ事實デアルト考ヘマス、又第二ニハ歐米各國トハ大ニ風俗、、嗜好ヲ異ニスルト云
フコトモアルノデアリマス、故ニ帝國ヨリ輸出致シマストコロノ商品ハ多クノ場合ニ於テ
特別ニ外國向キヲ製造シナケレバナラヌト云フ必要ガアルノデアリマス、彼ノ風俗、人情、
嗜好ノ異ナッタトコロガアルタメニ外國向キノ製品ヲ作ルニハ、餘程ノ注意ヲ要スルノデ、
其〓ニ於テ或ハ十分ナ注意ガ行キ屆カナカッタト云フコトモ、此輸出品ヲ多ク出スト云
フ上ニ於テ妨トナッタデアラウト考ヘルノデアリマス、第三ニハ兔角御承知ノ通リ此商品ガ
輸出シマスト云フト、粗製、濫造ト云フコトガ起ッテ來ル、又商業上ノ取引ヲ致シテモ
其約束ヲ履行セヌト云フコトモ出テ來ルノデアリマス、是ハ或ハ次第ニ減ズル傾向ヲ持ッテ
居ルカトモ思フ、殆ド四十年來外國ヨリ又我領事館、商務官等ノ報告ニ依ッテモ、殆ド
絕ヘナイトコロノ苦情デアリマシテ、誠ニ遺憾ニ考ヘルノデアリマス、マダ其外ニモイロ〓〓
アルト思ヒマスケレドモ、要スルニ此主モナモノヲ舉ゲマスト、斯ウ云フコトヲ數ヘナケレ
バナラヌト、思ヒマス、併シ第一ニ申ストコロノ此原料ノ不足ト云フコトハ、今日ノ場
合ニ於テ、又將來ニ於テ、之ヲ補フコトガ出來ルト思ヒマスノデアリマス、我新領土
其他滿洲、〓國、南洋、濠洲方面ニ於キマシテハ世界ノ原料國トシテ輸入サレテ居ル
處デ、而モ我ニ距離近ク、大ニ將來此方面ニ於テ我製造業ノ原料-材料ヲ得タイ
ト思ッテ、大ニ望ヲ屬シテ居ルノデ、ツレガタメニ其原料ノ種類、供給價格等ニ付テハ精
細ニ調査ヲ致シテ居ルノデアリマス、是等ノ結果トシテ我當業者ガ是等ノ材料ヲ得ルト
云フコトハ、卽チ此將來製造業ヲ助クル上ニ大ニ便宜ヲ與ヘルコトデアラウ、又實際サ
ウ云フ事情ニナルデアラウト信ズルノデアリマス、第二ノ彼我ノ風俗、習慣ノ違フト云フ
コトニ對シマシテモ將來望ガアルト思ヒマスノハ、段々當業者ノ積年心配ノ結果、今日
デハ直輸出ト云フコトガ餘程盛ンニナッテ來テ居ルノデアリマス、當業者ガ親シク彼地ニ
往ッテ、彼地ノ流行、風俗、嗜好等ヲ親シク見聞致シテ、ソレガタメニ帝國ノ製造家
ト、彼地ノ消費地ノ事情ト、密接ナ關係ヲ持ッテ來ルト一云フコトモ、此彼我ノ間ノ距離ヲ
近クスルト云フ結果ヲ來サウト思ヒマスノデ、又政府ヨリハ練習生、視察員其他囑託
員等ヲ彼地ニ出シマシテ、始終商業上ノ傾向等ヲ取調ベテ居リマシテ、是亦一層彼レノ
事情ノ詳悉致ス上ニ於テ、多大ノ便宜ヲ得ルコトデアルノデアリマス、第三ノ粗製、濫造、
約束破毀ト云フ如キコトハ、甚ダ困ッタモノデアリマスケレドモ、是モ御承知ノ通リ大工
業ニ於テハ、サウ云フ弊害ハ少ナイノデアル、寧ロ小工業-小工業ニ於テサウ云フ弊
ヲ多ク見ルノデアリマス、是ハ其事業ノ性質トシテ、或ハ免レヌコトカト思ヒマスガ、小工
業ニ付キマシテハ專ラ檢査ノ法ヲ將來用井ナケレバ-擴張シナケレバナラヌデアラウト考
ヘルノデアリマス、干涉ハ敢テ好ムトコロデアリマセヌケレドモ、經驗ニ依リマシテ、又當業
者等ノ意向ヲ酌ミマシテモ、ヤハリ此檢査ト云フコトハ多大ノ品質ヲ良クスル-品質
ノ善良ナルコトヲ維持スルタメニ檢査ト云フコトハ大ニ效能ガアルヤウデアリマス、其他同
業組合、或ハ重要輸出品同業組合ノ如キモ、互ニ規約ヲ守リ、、誠實ニ其業ニ動ミ、成
ベク善良ノ物品ヲ製造スルト云フガ如キ申合セモ、一層之ヲ厲行シ、監督ヲ周到ニ致
セバ是亦效能ガアルト考ヘルノデアリマス、尙將來此輸出業ニ付テ大ニ望ヲ屬シマスノ
ハ、諸君モ御承知ノ此新關稅ノ働キデアリマス、此新關稅ハ卽チ三十有餘年モ掛ッ
テ、國民ノ希望モアリ、漸ク昨年ヨリ實施シタノデアリマスガ、此關稅ノ保護ト云フコト
ハ政府ニ於キマテシハ多大ノ望ヲ之ニ屬シマス、昨年以來實施ニナッテ、未ダ十分ノ成
績ヲ見ルコトモ出來マセヌケレドモ、凡ソ半期以上ノ輸出上ノ有樣ヲ見マスノニ、或ハ製
造業ノ狀況ヲ察シマスノニ、稅關ノ保護ノタメニ、或ハ新ニ事業ヲ計畫スル新事業ヲ起
ス、又今マデ殆ド引合ハヌタメニ倒レントシテ居ル事業モ蘇生シヽアルノデアリマス、二三
年モ經チマシタナラバ、斯ウ云フ方面ノ働キガ十分表面ニ現ハレテ來テ、大ニ輸出ノ額ヲ
殖ヤシ、又內地品ヲ需用シテ、外品ニ代ヘテ濟ムト云フコトモアルデアラウト思フノデアリ
又、其他戾稅ノ働キ、是亦大ニ輸出ヲ奬勵スルコトニナッテ居ルノデアリマス、政府ト致
シテハ無論大體ニ於テ輸出ヲ奬勵シナケレバナリマセヌガ、現ニ農商務省ノ所管ニ於キ
マシテハ農業、商業······(「簡單ニ願ヒマス」「謹聽、今日ノ演說ハ出來ガ宜イ」ト呼フ
者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=16
-
017・大岡育造
○議長(大岡育造君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=17
-
018・牧野伸顯
○農商務大臣(男爵牧野伸顯君) 工業、山林、水產、皆政府デ營ンデ居ル事業デア
リマスガ、是等ノ事業ヲ營ム上ニ於テモ、輸出增加ト云フコトヲ始終主眼ニ置イテー
眼中ニ置イテ營ンデ往キマシタナラバ、是亦其現ハレル結果ト云フモノハ、輸出ノ增額ト
云フコトニ來ルデアラウト思フノデアリマス、要スルニ政府ハ何處マデモ輸出ヲ奬勵致ス積
リデアリマス、併ナガラ是ハヤハリ一般ニ內地品奬勵、輸出ヲ增加シタイト云フ觀念ハ、-
般ニ持ッテ貫ハナケレバナラヌト思ヒマス、製造家ノ話ヲ聞キマシテモ、一番最モ有效ナル
保護ノ途ハ何カト云ヘバ註文ヲ澤山受ケルコトガ一番效力ノアル保護ノ方法デアルト云
フコトヲ申スノデ、是ガ當業者ノ境遇ヲ誠實ニ言ヒ現ハシタモノデアラウト考ヘルノデアリ
マ、、然ルニ免角外國品ト云フモノガ、一般ニ歡迎セラレル、是ハ日本バカリヂヤナイ、
外國デモヤハリ外國品ト云フモノハ歡迎サレルノデアリマス、舶來品ト云フコトハ一種ノ
優待ノ條件ニナッテ居ル、大ハ機械ヨリ、小ハ化粧品、食料品マデモ、外國品ト云フト歡
迎セラレテ居ル有樣デアル、或ハ製造ガ精巧デアッテ、使易イト云フ事情モアリマセウガ、併
ナガラ大抵ナモノハ今日ハ內地デ出來ルノデアリマス、技術ノ點ニ於テモ、大抵ナモノハ
出來ルノデアリマス、唯之ヲ奬勵スルトセヌニアルノデアリマス、少シク面倒ヲ見テ奬勵ヲ
スルト云フ氣ニナッテ、一般ノ國民ガ引立テルト云フ氣ニナレバ、其註文ダケデ、其需用
ダケデ、非常ナ保護ニナルノデ、技術ノ點ニ於テ非常ナ精巧品ハ別ト致シマシテ、大抵ナ
セノハ內地デ辨ズルノデアリマス、此事情ガアル以上ハ成ベタ舉國一致ニナッテ、內地
品ノ奬勵ト云フコトヲ心懸ケテ貰ヒタイ、政府ニ於テモ其政費支辨ノ上ニ於テ、內地ニ
於テ辨ズルモノハ成ベク內地ニ於テ之ヲ調達シタイト云フ考デアリマス、今マデモサウ
云フ積リデアリマシタガ、今日ノ財政ノ場合ニ於テハ、倍ゝ其方針ヲ執ルト云フ希望デア
ル、第二ノ御質問ニ付テハ大抵質問ノ御趣意ハ御述ベニナリ、又之ニ對スル御答辯モ
アルヤウニ考ヘマシタノデアリマスガ、唯農產品工產品何レニ重キヲ置クカ、孰レヲ以テ
將來輸出ノ見込ヲ立テルカト云フコトハ甚ダ申シニクイコトデアッテ、工產品卽チ農產品
ヲ以テ之ニ加工シテ初メテ工產品ニナルノデ、其分界ハ餘程困難デアルト思フ、輕重ヲ
言フベキ次第デハナカラウト思ヒマスガ、併ナガラ日本ノ十年間ノ貿易ノ趨勢ヲ見マスト、
工產品ガ非常ナ割合ヲ以テ增加シテ居ル、ソレカラ農產品ノ輸出ト云フモノハ格別增サ
ナイ、工產品ノ輸出ハ非常ニ殖エテ居ル、又工產品ノ輸入ハ減シテ居ル、十年間ノ經
過ヲ見マスト、農產品卽チ原料品ノ輸入ト云フモノガ、非常ニ殖エテ居ルト云フ趨勢デ
アリマス、是ハ先刻御述べニナッタト同樣ノコトデアラウト考ヘマスガ、此趨勢ハ卽チ將來
大ニ工業製造事業ニ帝國ノ便利ナ又巳ムヲ得ナイ工產品ヲ大ニ奬勵セネバナラヌト云
フ事情ヲ認メルコトガ出來ルト思フノデ、政府ニ於テモ工產品ニ付テハ特ニ力ヲ用井ナケ
レバナラヌ、現ニ關稅實施後、此輸出ノ工業品ノコトニ付キマシテハ、特ニイロ〓〓施
設ヲ致シテ居ル次第デアリマス、第三ノ段々事項ヲ御述べニナッテ居リマスガ、是ハ專ラ
稅制、財政ノ關係ノコトヲ御述ベニナッテ居ルヤウニ考ヘマス、之ヲ以テ今日ノ輸出不振
ノ原因ニナサッテ居ルヤウニ考ヘマスガ、多少サウ云フコトモアラウト思フノデアリマス、成ル
ベク租稅ノ負擔ヲ輕クシタイ、又財政ノ計畫ヲモ失當デナイヤウニシタイ、此邊ニ付テ
ハ十分マダ改良ノ餘地ガアルダラウト考ヘルノデアリマス、併ナガラ餘程是ハ大キナ問
題デアリマス、唯今此演壇ニ於テ一々御述ベニナッタ事實ニ對シテ、御答辯スルコトハ
出來マセヌノデアリマスガ、要スルニ政府モ大體ニ於テハ是等ノ點ニ付テ缺〓ヲ認メテ居
ルノデ、卽チ稅制、財政ノ二ツノ目的カラ、昨年來調査ヲ始メテ居リマシテ、現ニ之ヲ
實行シツヽアルノデアリマス、遠カラヌ中ニ其成績モ舉ルコトデアラウト考ヘテ居リマス、要
スルニ御尋ノ如キコトハ調査中ノ事項ニ屬スルノ多イモノト考ヘマスカラ、別段一々細目二
亙ッテハ申上ゲマセヌ、官營事業ノコトニ付テチヨット一言申上ゲテ置キタイノハ製鐵
所ハ特別ニ政府デヤラナケレバ出來ヌト云フヤウニ答辯シタヤウナ御話デアリマシタガ、是ハ
一ツ正誤シテ置キマセヌト、サウ云フ意味デ御答致シマシタ積リデハアリマセヌ此軍器
ハ營利事業デハ餘程困難デアルト云フコトハ軍器ハ唯時々其必要ガ起ルノデアッテ、繼
續シテ極ッテ、或ル時期ノ間、ズット需用ノ起ルモノデハナイノデアリマス、一年ノ中ニハ
遽ニ需用ガ起リマス、又マルデ數箇月ノ間製造ノ必要ノナイ時間モアルノデアリマス、サウ
云フコトハ民業ニ於テ營ムト云フコトハ餘程困難デアル、營利ガ主デナクテ-經濟的
經營ガ主デナクテ、軍器ノ必要ト云フ方ヨリカ、其仕事ノ必要ガ起ルノデアッテ、餘程之
ヲ民業トシテ卽チ算盤ヲ執ル事業トシテハ、困難ナ事業デアル政府ノ事業トシテヤリ
マスレバ何時デモ政府ノ勝手次第ニ出來ル、軍事上ノ必要ニ應ジテ、是ガ輙ク出來
ルト云フ意味デ申シダノデ或ハ誤解ガアッタカモ知レヌト思ヒマス、第四ノ南〓其他南
洋方面ノ貿易上ノ方針ニ付キマシテハ質問者ノ御洩シニナッタ御意響ト、格別變ッタコ
トハナイト思フ、政府ニ於キマシテハ手近ナ支那、印度、南洋方面ヲ以テ將來大ニ有望
デアルト考ヘテ居リマシテ、現ニ練習生、商務官、囑託員ナドモ、卽チ販路擴張原料品
ノ取調其他ニ付キマシテ、是等ノ人々ヲ派遣致シテ居リマスガ、此地方ニ最モ多ク派
遣致シテ居ルノデ、卽チ力ヲ用井テ居ルコトハ此手近ヲ近接ノ國々ニ最モ力ヲ用井テ居ル、
ソレヲ以テモ此方面ノ將來貿易上有望ナル見込ヲ持ッテ居ルコトハ、分ルデアラウト思ヒマ
ス、現ニ是等機關ノ働ニ依テ商品ノ市場ニ上ッテ、將來大ニ發達スルデアラウ、貿易ガ擴
張セラレルデアラウト云フ見込モ大デアルノデアリマス、〓略是ダケノコトヲ申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=18
-
019・早速整爾
○早速整爾君 議長、チヨット発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=19
-
020・大岡育造
○議長(大岡育造君) マダ答辯ガ終リマセヌ-石井外務次官
〔政府委員男爵石井菊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=20
-
021・石井菊次郎
○政府委員(男爵石井菊次郞君) 質問第四項ニ付テ私ヨリ添ヘテ答辯ヲ致シマス、
先ツ露〓陸路貿易ニ均霑スルト云フコトニ付テノ御質問ニ對シテ、一言申上ゲマスル
ガ、一昨年韓國併合ノ當然ノ結果ト致シマシテ、朝鮮ヨリ滿洲ニ亙ル陸路貿易ハ西
比利亞、滿洲ノ間ノ陸路貿易ノ規定ニ均霑シ得ルトコロノ權利ガアルト云フコトヲ政
府ハ確信シテ居ルモノデアリマシテ、此確信ヲ以テ併合後間モナク〓國政府ニ交渉ヲ開
キマシタトコロガ、〓國政府ニ於テハ一ハ露〓間ニ其條約ノ改正ノ議ガアルト云フコトヽ
二ハ又西比利亞ト滿洲ノ間ニ於ケル關係ト、朝鮮滿洲ノ間ニ於ケル關係ハ、地勢上
ニ於テ大ナル差異ガアルト云フ等ノ理由ヲ以チマシテ、我要求ニハ應ズルコトハ得ナイト
云フ同答ヲ申出タノデゴザイマス、サリナガラ政府ハ是等ノ理由ハ固ヨリ承認スルコトハ
得マセタノデ、交涉ヲ繼續シテ居ル中ニ此昨年以來ノ騷亂トナッタ次第デゴザイマシテ、
政府ハ尙機會ノアルヲ待ッテ、此交涉ハ繼續スル積リデゴザイマス、次ニ支那動亂ニ際
シマシテ在〓國我領事官、商務官ハ果シテ機宜ニ適シタ處置ヲ執リツヽアルヤ否ヤ、ア
ルナラバ其事實ヲ示セト云フ御質問デアリマスルガ、我領事官及商務官ハ專心誠心此
時局ニ際シマシテ、及ブ限リヲ盡シテ適當ノ〓究及彼地ニ渡船スル我同胞ニ對シテ便
宜ヲ與ヘルコトヲ努メテ居ル次第デアリマス、昨年十月此騷亂ノ起ルヤ、政府ハ直ニ我
領事官、商務官ニ訓令ヲ與ヘマシテ、此事件ノ我對〓貿易ニ及ボストコロノ影響ト及
之ニ應ジテ如何ナル手段ヲ執ルノ必要ガアルカ、又我當業者ガ之ニ對應スルノ手段ヲ講
ズル上ニ於テ、如何ナル參考ナリ材料ヲ供スルコトヲ得ルカ是等ノ事項ニ付テ十分ナ
ル調査ヲ遂ゲテ、迅速ニ之ヲ報告シロト云フ訓令ヲ出シテ置キマシタ、此訓令ニ從ッテ
領事官、商務官ハ各〓任地ノ各方面ニ出張視察ヲ遂ゲマシテ、又內外當業者ト接觸
ヲ保チ、此事變ガ支那人民ニ與ヘタルトコロノ風俗、慣例、商取引等ニ變化ヲ及ボシ、
從ッテ新商品、新需用ガ起ル、其新需用等ノ起ル傾向及將來ノ見込等ニ付テハ出來
ルダケ詳細ナル報告ヲ致シマシテ、是等ノ報告ハ隨時或ハ官報或ハ通商彙纂、若クハ
新聞紙等ニ發表致シマシテ、尙其當業者ニハ特ニ新說ト見タルトコロノモノハ、是ハ騷
亂ノ我經濟界ニ及ボス影響ト題シマシテ、對〓貿易ニ密接ノ關係アル各方面デ漏レナ
ク配付スルコトヲ努メテ居リマシタ、併ナガラ是等ノ報告及調査ハ今日是ハ完結シタト
ハ申シマセヌ、デ領事官及商務官ハ益〓此調査ヲ進メマシテ、今日尙續々ト其報告ハ
本省ニ達シツヽアル次第デアリマス、政府ハ此報告ノ達シ次第、尙引續キ通商彙纂其
他ノ方法ヲ以テ世間ニ發表致シマシテ、實業家ノ裨益ニ資スル積リデゴザイマス尙御
質問ガアリマシタカラシテ、此機會ヲ以テ一言申上ゲテ置キマスノハ、此領事及商務官
ト直接通信ヲ許サヾル理由ハ、ドウデアルカト云フ御質問ガアリマシタガ、此〓ニ付キマシ
テハ從來幾度カ御質問ノアッタコトモアリマスルガ、當時ノ事情トシテ直接通信ヲ許スト
云フコトハ煩ニ堪ヘナイ、事實行ヒ得ザルコトデアリマシタノデ、サリナガラ其後追〓便法
ヲ〓究致シマシテ、此事變ノ起ッタル以後デアリマス、過日來或ル範圍ノ下ニ相接通信
ヲ許スコトニ致シマシタ出來ルダケハ-固ヨリ是ハ手數ヲ增ス次第デハゴザリマスルガ、
或ル範圍內デハ之ヲ直接通信ヲ許スト云フ方針ヲ執リマシテ、各方面ニ其訓令ハ送ッ
テアリマスルカラ、間モナク直接通信ト云フコトハ實行スルコトニナル次第デアリマス、此事
ヲ添ヘテ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=21
-
022・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君 此場合議事ノ進行ニ付テ議長ヘ希望ヲ述ベマス、本員ハ對支
那外交ノ質問ニ付テ八箇條ノ質問書ヲ去ル三月九日質第二三號ヲ以テ提出シテ
置キマシタガ、爾來質問ノ定日ヲ經ルコト一、臨時質問ノ日ヲ經ルコト一卽チ二囘ノ
質問ノ日ヲ經テ今日ニ至リマシタケレドモ、未ダ質問ノ演說ヲスルノ機會ニ到達セヌコト
ヲ遺憾ト致シマス、是ハ定メテイロ〓〓議事ノ御都合モアルコトデゴザイマセウカラ、其
御都合ニ向ッテ彼此申スノデハアリマセヌガ、元來我外務當局ト云フモノハ外交ノ下手
ナ癖ニイツデモ內交ノ方ニハ甘イ遣繰リラヤル(「何ノ問題ダ」ト呼フ者アリ)質問ニ向ッ
テ-ムヅカシイ質問ガ出ルト、成ベク繰延ベ繰延ベト云フコトニシテ置イテ、議會ノ會
期切迫シテ、最早終ラントスルトキニ臨ンデ、之ニ答辯ヲスル餘日モナイカラ書面デ出タモ
ノハ書面デ答ヘルト云フコトヲ是マデ度々ヤラレテ居ル前例ガアル、是ニ於テ與論ヲ尊重
シテ、立憲有終ノ美ヲナサルト自ラ稱セラルヽ政友會ガ、內闇ヲ取ラレタ今日ニ於テハ、左
樣ナコトハアルマイト存ズルケレドモ質問ノ定日ヲ減シテ、火曜日ノ一日ニシタト云フ
コトモ、政友會ノ御働キデアル、シテ見レバ此質問ト云フモノヽ權利ヲ何處マデ尊重サレ
ルカト云フコトハ疑問デアル、之ニ於テ私ハ此次ノ火曜日ニハドウシテモ質問ヲサセテ貫
ハナケレバナラヌ、同時ニ其質問ノ答辯ハ外務大臣自ラ壇上ニ現ハレテ遺憾ナク吾〓ガ
問フトコロニ答ヘテ貰ヒタイト思ヒマス、此事ヲ希望シテ述ベテ置キマス-異議ガアラ
ウ筈ハナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=22
-
023・大岡育造
○議長(大岡育造君) 佐々木君ニチヨット申シテ置キマスガ、議長ハ成ベク此質問者
ニ滿足ヲ與ヘタイタメニ定日ノ質問日ノ外ニ本日モ臨時ニ質問ノ日程ヲ三ツマデ加ヘテ
置イタヤウナ譯デアル(佐々木安五郎君「ソレハ知ッテ居リマス」ト呼フ)默ッテ居リナサイ、
終ラヌ中ニ御返シニナッテハ行カヌ-ツレデ尙質問ノ提出シテアリマスルモノガ、凡ソ十
バカリアリマス而シテ時間ヲ繰合セテ順次ニヤッテ行クノデアリマスカラ、御要求ガナク
テモ、順序ヲ逐ッテ、此次ノ番ニ囘ッテ居リマスカラ、御安心ナサルヤウニ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=23
-
024・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君 火曜日以外ニヤッテ貰ヒタイト云フコトヲ議長ニ望ンデモ、出來ヌ
ノデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=24
-
025・大岡育造
○議長(大岡育造君) ヤレルダケハヤリマスガ、一々御註文ニハ應ジ兼ネマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=25
-
026・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君 議長ノ力モ及ビマセヌケレバ、致方ガアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=26
-
027・大岡育造
○議長(大岡育造君) 日程第一第三、第五ノ議案ハ關聯セル議案デアリマスカ
ラ、同時ニ政府委員ノ說明ヲ許シマス、橋本大藏次官
第日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出)第一讀會
日本勸業銀行法中改正法律案
日本勸業銀行法中左ノ通改正ス
第三十五條ノ二日本勸業銀行ハ券面金額二十圓以下ノ勸業債券ヲ發行ス
ル場合ニ於テハ賣出ノ方法ニ依ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ賣出期間ヲ
定ムルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ社債申込證ヲ作ルコトヲ要セス
第一項ノ規定ニ依リ發行スル勸業債券ニハ商號及商法第百七十三條第二
號、第四號乃至第六號ニ揭ケタル事項ヲ記載スルコトヲ要ス
商法第二百四條ノ三第一項ノ期間ハ勸業債券ノ賣出期間滿了ノ日ヨリ之
ヲ起算シ其ノ登記スヘキ事項ハ賣出期間內ニ於ケル勸業債券ノ賣上總額
及商法第百七十三條第四號乃至第六號ニ揭ケタル事項トス
賣出ノ方法ニ依リ勸業債劵ヲ發行シタル場合ニ於ケル社債ノ登記ノ申請
書ニハ賣出期間內ニ於ケル勸業債券ノ賣上總額ヲ證スル書面ヲ添附スル
コトヲ要ス
第三十五條ノ三日本勸業銀行ハ賣出ノ方法ニ依リ勸業債券ヲ發行セムト
スルトキハ賣出期間及商法第二百三條第二項第一號乃至第三號ニ揭ケタ
ル事項ヲ公告スヘシ
第五十六條中「第三十四條」ノ下ニ「又ハ第三十五條ノ三」ヲ加フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三農工銀行法中改正法律案(政府提出)第一讀會
農工銀行法中改正法律案
農工銀行法中左ノ通改正ス
第二十六條ノ二農工銀行ハ券面金額二十圓以下ノ農工債券ヲ發行スル場
合ニ於テハ賣出ノ方法ニ依ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ賣出期間ヲ定ム
ルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ社債申込證ヲ作ルコトヲ要セス
第一項ノ規定ニ依リ發行スル農工債劵ニハ商號及商法第百七十三條第二
號、第四號乃至第六號ニ揭ケタル事項ヲ記載スルコトヲ要ス
商法第二百四條ノ三第一項ノ期間ハ農工債劵ノ賣出期間滿了ノ日ヨリ之
ヲ起算シ其ノ登記スヘキ事項ハ賣出期間內ニ於ケル農工債券ノ賣上總額
及商法第百七十三條第四號乃至第六號ニ揭ケタル事項トス
賣出ノ方法ニ依リ農工債券ノ發行シタル場合ニ於ケル社債ノ登記ノ申請
書ニハ賣出期間內ニ於ケル農工債劵ノ賣上總額ヲ證スル書面ヲ添附スル
コトヲ要ス
第二十六條ノ三農工銀行ハ賣出ノ方法ニ依リ農工債券ヲ發行セムトスル
トキハ賣出期間及商法第二百三條第二項第一號乃至第三號ニ揭ケタル事
項ヲ公告スヘシ
第四十六條中「第二十六條」ノ下ニ「又ハ第二十六條ノ三」ヲ加フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出)第一讀會
北海道拓殖銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中左ノ通改正ス
第十二條第二項ヲ左ノ如ク改ム
債券ハ券面金額ヲ十圓以上トシ無記名利札附トス但シ應募者又ハ所有者
ノ請求ニ依リ記名ト爲スコトヲ得
債券ヲ發行スル場合ニハ商法第百九十九條ノ規定ヲ適用セス
第十二條ノ二北海道拓殖銀行ハ券面金額二十圓以下ノ債券ヲ發行スル場
合ニ於テハ賣出ノ方法ニ依ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ賣出期間ヲ定ム
ルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ社債申込證ヲ作ルコトヲ要セス
第一項ノ規定ニ依リ發行スル債券ニハ商號及商法第百七十三條第二號、第
四號乃至第六號ニ揭ケタル事項ヲ記載スルコトヲ要ス
商法第二百四條ノ三第一項ノ期間ハ債券ノ賣出期間滿了ノ日ヨリ之ヲ起
算シ其ノ登記スヘキ事項ハ賣出期間內ニ於ケル債劵ノ賣上總額及商法第
百七十三條第四號乃至第六號ニ揭ケタル事項トス
賣出ノ方法ニ依り債券ヲ發行シタル場合ニ於ケル社債ノ登記ノ申請書ニ
ハ賣出期間內ニ於ケル債劵ノ賣上總額ヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要
ス
第十二條ノ三北海道拓殖銀行ハ賣出ノ方法ニ依リ債券ヲ發行セムトスル
トキハ賣出期間及商法第二百三條第二項第一號乃至第三號ニ揭ケタル事
項ヲ公〓スヘシ
第二十七條中「第十二條」ノ下ニ「又ハ第十二條ノ三」ヲ加フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員橋本圭三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=27
-
028・橋本圭三郎
○政府委員(橋本圭三郞君) 御承知ノヤウニ改正ニナリマシタ商法ニ據リマスト、
會社ガ社債ヲ募集致シマストキニハ申込書ヲ取ルト云フコトニナッテ居リマス、而シテ勸
業銀行、農工銀行若クハ北海道拓殖銀行ノヤウナ銀行カラ出シマス小サイ債券ニ付
テ一々申込書ヲ徵シテ居リマスト、會社ノ方デモ不便デアリマスシ、又ハ其債權ヲ引受
ケル人ノ方ニモ不便デアリマスニ依ッテ、之ニ取除ヲ拵ヘマシテ、雙方便利ヲ計リタイト
云フ趣意ニ外ナラヌノデアリマス、ソレデ二三箇條ノ修正モアリマスケレドモ、ソレハ其振
出ヲ許スト云フコトニナルト、當然ノ結果トシテ起ル修正デアリマス、ドウゾ成ベク早ク
御協賛ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=28
-
029・恒松隆慶
○恆松隆慶君 唯今議題ニナッテ居リマスノハ、第一ヨリ第六マデ一括シテ議題トナ
シ、尙此付託スベキ委員ヲ九名トシ、議長指名ニナサンコトヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=29
-
030・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第三右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=30
-
031・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ三案トモ一括シテ議長指名九名ノ委員ニ
付託スルコトニ可決致シマシタ、日程第七、朝鮮ニ於ケル學校職員ニシテ國庫ヨリ俸給
ノ支給ヲ受ケザル文官判任以上ノ者ノ退隱料及遺族扶助料ニ關スル法律案ラ議題ト
致シマス、江木政府委員
朝鮮ニ於ケル學校職員ニシテ國庫ヨリ俸給ノ支給
第七ヲ受ケサル文官判任以上ノ者ノ退隱料及遺族扶第一讀會
助料ニ關スル法律案(政府提出)
朝鮮ニ於ケル學校職員ニシテ國庫ヨリ俸給ノ支給ヲ受ケサル
文官判任以上ノ者ノ退隱料及遺族扶助料ニ關スル法律案
第一條朝鮮ニ於ケル學校職員ニシテ國庫ヨリ俸給ノ支給ヲ受ケサル文官
判任以上ノ者及其ノ遺族ハ本法ニ依リ退隱料及遺族扶助料ヲ受クルノ權
利ヲ有ス
第二條府縣立師範學校長俸給竝公立學校職員退隱料及遺族扶助料法ハ第
一條、第二條、第九條、第二十條及第二十一條ヲ除クノ外前條ノ學校職員
及其ノ遺族ニ之ヲ準用ス但シ同法中文部大臣ノ職務ハ朝鮮總督府縣知
事ノ職務ハ道長官之ヲ行ヒ同法第十條及第十六條中府縣郡市町村トアル
ハ俸給ヲ支辨スル團體ニ該當ス
第三條明治二十九年法律第十三號第二條及第四條ノ三ノ規定ハ之ヲ第一
條ノ學校職員ニ準用ス
第四條第一條ノ學校職員ノ在官年月數ト文官判任以上ノ〓官、〓育事務
ニ從事スル文官、文官判任以上ノ待遇ヲ受クル學校及圖書館ノ職員竝小
學校本科正〓員タルヘキ資格ヲ有スル公立幼稚園長及保姆ノ在官又ハ在
職ノ年月數トハ市町村立小學校〓員退隱料及遺族扶助料法、府縣立師範
學校長俸給竝公立學校職員退隱料及遺族扶助料法、在外指定學校職員退
隱料及遺族扶助料法、明治二十九年法律第十三號、明治三十三年法律第
七十七號、明治四十一年法律第三十五號及本法ニ依ル退隱料、扶助料及
扶助金ノ支給ニ關シ相互通算ス
前項ノ規定ニ依リ通算スルコトヲ得ヘキ官職ノ種類及通算ニ關スル規定
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條明治四十年法律第四十八號ハ之ヲ第一條ノ學校職員ニ準用ス
前條ノ規定ニ依リ文官判任以上ノ〓官又ハ〓育事務ニ從事スル文官ノ在
官年月數ヲ第一條ノ學校職員ノ在職年月數ニ通算スル場合ニ於テハ其ノ
朝鮮ニ在勤シタル年月數ハ之ヲ第一條ノ學校職員ノ朝鮮ニ於ケル在勤年
月數ト看做ス
附則
本法ハ明治四十五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法ハ國庫納金ニ關スル規定ヲ除クノ外本法施行前退官シタル者又ハ本法
施行前死亡シタル者ノ遺族ニモ之ヲ適用ス
朝鮮ニ於ケル在外指定學校職員ノ明治四十年四月二十三日以後ノ在職ハ本
法ノ適用ニ付テハ之ヲ第一條ノ學校職員ノ在官ト看做ス
(政府委員江木翼君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=31
-
032・江木翼
○政府委員(江木翼君) 唯今提案ニナッテ居リマストコロノ朝鮮ニ於ケル學校職員ノ
退隱料竝ニ遺族扶助料ノ法律案ノ理由ヲ簡單ニ辯明致シマス、從來韓國ガ存在シテ
居リマシタトキニハ居留民團學校組合等ニ於キマシテ、經營致シテ居リマシタ學校ハ在
外指定學校ト致シマシテ、ソレ等ノ學校職員ハ退隱竝ニ遺族扶助料ヲ受クル權利ヲ
有シテ居ッタノデアリマス、然ルニ韓國併合ニナリマシタ以上ハ、是等ヲ依然トシテ在外
指定學校トシテ置クコトハ不當デアリマスカラ、其制度ヲ變更スル必要ガアルノデアリマス
ノガ、第一ノ理由デアリマス、尙舊韓國時代ニ於キマシテ、道、郡,面其他ノ舊韓國ノ
公共團體ニ於キマシテ經營致シマシタトコロノ國立學校ノ學校職員ノ退隱料竝ニ遺族
扶助料等ニ就テハ何等ノ保護ヲ受ケナカッタノデアリマス、然ルニ是等ニ對シテモ內地、臺
灣其他朝鮮ニアリマスルトコロノ在外指定學校ト同樣ニ保護ヲ與フル必要ヲ認メタノ
デアリマス、尙一言付加ヘテ置キマスガ、朝鮮ニ於キマスル學校制度竝ニ組織等ニ付キマ
シテハ併合當時ニ於キマシテハ咄嗟ノ間ニ於テ、制度竝ニ組織等ヲ定ムルコトハ如何ナ
コトデアラウカ、〓育ニ關スルコトハ十分ニ愼重ナル攻究ヲ要スルモノト認メマシタ故ニ、
十分ナル攻究ヲシタ結果、昨年九月ニ於テ朝鮮〓育令ナルモノヲ公布シマシテ、續イテ
之ニ伴フトコロノ學校ノ組織職員ノ資格等ヲ定メタノデアリマス、是ニ至ッテ朝鮮ニ於ケ
ル國立學校ノ組織竝ニ職員ノ資格等ノコトハ略〓整頓致シテ來タ次第デアリマス、之二
依リマシテ是等ノ職員ニ對シテ退隱料竝ニ遺族扶助料ヲ與ヘテ、內地、臺灣等ノ例ニ
依リマシテ相當ノ保護ヲ加フルノガ必要ナリト認メ、本案ヲ提出シタ次第デアリマス、御
審議ノ上御協賛アランコトヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=32
-
033・大岡育造
○議長(大岡育造君) 次ノ日程ニ移リマス
第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=33
-
034・恒松隆慶
○恆松隆慶君 此題目ノ長イ法律案デアリマスガ、此付託スベキ委員ハ九名トシテ、
議長指名アランコトヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=34
-
035・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=35
-
036・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ議長指名九名ノ委員ニ付託スルコトニ可決
致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=36
-
037・恒松隆慶
○恆松隆慶君 此場合日程ヲ變更シテ朝鮮病院及濟生院特別會計法案、政府提
出案ヲ議題トシテ議セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=37
-
038・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ日程ハ變更サレマシタ卽チ朝鮮醫院及濟生
院特別會計法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長渡邊修君
朝鮮醫院及濟生院特別會計法案(政府提第一議會ノ續(委員長)
四(報告
〔渡邊修君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=38
-
039・渡邊修
○渡邊修君 本案ニ對スル委員會ノ經過及結果ヲ報告致シマス、朝鮮總督府ノ醫
院及朝鮮ノ各道ニ在ル慈惠醫院及濟生院ヲ會計ヲ通ジマシテ一ノ特別會計ニシタイ
ト云フ案デアリマス、之ニ付キマシテ委員會ニ於キマシテ審議ヲ致シマシタ結果二箇ノ
希望ヲ附加ヘマシテ委員會ハ可決致シマシタ、其希望ハ一ハ此濟生院ト云フモノハ財
團法人ニナッテ居リマシテ、現ニ御下賜金其他ノ資金三百四十八万圓持ッテ居ル、所
ガ此度ハ別ニ總督府ニ濟生院ヲ拵ヘテ、サウシテ其財團法人ニ金ヲ持タシテ、世話ハ一
切總督府デシヤウト云フ案デアリマシテ、チヨット濟生院ガ二ツアリマスヤウナ形デ、甚ダヤ
カマシイケレドモ、現ニ在ルトコロノ財團法人ノ濟生院ハ其職員モ總テ總督府ノ役人
ガシテ居ルト云フコトデアリマシテ、之ヲ前ノヤウニ財團法人ニシテ置ク必要ガナイカラ、此
事ヲ總督府ニ經理サセル、其他ノ適當ノ方法デ、成ベク總督府デ直轄スルヤウニシタナ
ラバ宜カラウト云フ希望デアリマスモウ一ツ希望ハ朝鮮各道ニアルトコロノ慈惠醫院ノ
院長ハ悉ク軍醫ノ古手デアル、普通ノ醫者ト云フモノハ一人モ採用サレテ居ラヌト云フ
コトハ、甚ダ宜シクナイ、軍醫ト云フモノハ〓シテ兵隊ノ病氣ト云フモノハ大〓極ッタ病
氣ガ多イノデアルカラ、一般ノ醫者ノヤウニサウ醫者ガ上手デナイ、所ガ總テ之ヲ軍醫ノ
古手ニノミ限ラレテ居ルコトデハ宜シクナイ、ナゼ普通ノ者ヲ用井ナイカト云フコトヲ質問
シタトコロガ、ドウモ月給ガ安イカラ普通ノ醫者ハ來ナイダラウト云フ政府委員ノ答辯デア
リマスケレドモ、是ハヤハリ朝鮮ニ在ルトコロノ弊害デアルカラ、將來ハ成ベク慈惠院ノ院
長ハ軍醫以外ノ醫師モ採用スルト云フコトニシテ貰ヒタイト云フ希望、是等ノ二ツノ希
望ヲ以テ委員會ハ全會一致ヲ以テ可決ヲ致シタノデアリマス、此二箇ノ希望ニ對シマシ
テハ政府委員モ之ヲ諒ト致シマシテ、必ズ相當ノ考慮ヲ費スト云フコトデアリマシタ、此
段御報〓致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=39
-
040・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ委員會デモ全會一致ヲ以テ決セラレタ案デアル、本會モ讀會ヲ
省略シテ確定セラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=40
-
041・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
朝鮮醫院及濟生院特別會計法案確定議
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=41
-
042・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ本案ハ讀會ヲ省略シテ委員長報告通ニ可
決確定致シマシタ、日程第九、酒造稅法中改正法律案
第九酒造稅法中改正法律案(黃金井爲第一讀會ノ續((
造君外二名提出)報〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=42
-
043・恒松隆慶
○恆松隆慶君 此問題ハ屢〓議題ニ上リ、又延期モシテ居リマスガ、成程當業者デハ
最モ希望シテ居ルト云フコトデゴザイマスガ、又事實ノ上デ財政ニモ關係スル問題デアリ
マス、今少シ考慮ヲスル餘地アリト思ヒマスカラシテ、相變ラス延期アランコトヲ希望致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=43
-
044・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=44
-
045・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ本案ハ延期ニ決シマシタ、日程第十、刑事
訴訟法中改正法律案、第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長阿部德三郞君
第十刑事訴訟法中改正法律案(阿部德三第一讀會ノ續(株)那須加工
郞君外二名提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=45
-
046・阿部徳三郎
○阿部德三郞君 此席カラ御報告致シマス、此案ニ對シテハ委員會ニ於キマシテ司
法省ノ政府委員ノ意見モ聽イタノデアリマスガ、政府ニ於キマシテハ目下刑事訴訟法ノ
改正ニ著手シテ審査ヲナシツヽアルノデアリマスケレドモ、未ダ何レノトキニ於テ其事業
ガ完成スルカト云フコトハ見据ガ付カヌノデアル、然ルニ裁判所ニ於ケルトコロノ鑑定ノ
囑託ガ出來ヌト云フコトハ、裁判所ニ於テモ非常ナ不便ヲ感ジテ居ルノデアルカラ、一
般ノ刑事訴訟法ノ改正ニ先ッテ、先ヅ當面ノ必要上此案ニ贊成ヲスル、斯ウ云フ意見
デゴザイマシテ、委員會ハ全會一致ヲ以テ原案通可決シタノデアリマス、デ以上ハ委員
長ノ報告デアリマスガ、此機會ニ於テ本員ハ此問題ニ付テ一言辯明ヲ致シテ置キタイ
コトガアリマスカラ御許ヲ得タイ、本員ハ前囘ニ於テ提出ノ理由ヲ當席ニ於テ述ベタノデ
アリマスガ、然ルニ官報ノ速記ヲ見マシタトコロガ、此問題ハ單ニ區裁判所ニノミ必要ナ
ル問題トシテ速記ガ出來テ居ルノデアル、本員ハ決シテサウ云フ意味デハナイ區裁判所ハ
勿論ノコト、地方裁判所ニ於テモ、控訴院ニ於テモ、刑事ノ裁判所ニ於テモ、其階級
ノ何レヲ問ハズ必要ナル問題トシテ、此案ヲ提出シタノデアル、然ルニ官報ノ速記ニハ左
樣ニ誤ッテ記載サレテ居ルノデアリマスガ、本員ハ其意味ヲ以テ述べタ考デナイノデアリマ
スケレドモ、免ニ角左樣ニナッテ居ルノデアリマスカラ、此場合左樣ナ意味デナク、裁判所
ノ各階級ニ通シテ必要ナル問題トシテ提出シタモノデアルト云フコトヲ辯明ヲ致シテ置キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=46
-
047・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ニハ別ニ異論モナイヤウニ思ヒマスカラシテ、讀會ヲ省略シテ確定
セラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=47
-
048・大岡育造
○議長(大岡育造君) 恆松君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
刑事訴訟法中改正法律案確定議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=48
-
049・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ本案モ讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通可
決確定致シマシタ、日程第十一、新二十錢銀貨改鑄ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマ
入、森茂生君
第十一新二十錢銀貨改鑄ニ關スル建議案(森茂生君提出)
新二十錢銀貨改鑄ニ關スル建議案
新二十錢銀貨改鑄ニ關スル建議
明治三十九年勅令第百九號ヲ以テ改鑄シタル新二十錢銀貨ハ其ノ形式量目及
色彩共ニ五錢白銅貨ニ酷似セルヲ以テ民間其ノ甄別ノ容易ナラサルニ苦ミ繁劇ナル
小賣商ノ如キハ爲ニ取引ノ遲延ヲ來タスノ虞アリ又外國人ニ在リテハ往々新二-丁錢
銀貨ニテ取引ヲ行フコトヲ拒絕スルアリト聞ク故ニ政府ハ速ニ新二十錢銀貨ノ改鑄
ヲ行ヒ以テ前記ノ不便ヲ除去セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=49
-
050・大岡育造
○議長(大岡育造君) 登壇ヲ希望シマス、往々ニシテ速記ノ誤モ此邊カラ來ルカモ知
レマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=50
-
051・森茂生
○森茂生君 單純ナ問題デアリマスカラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=51
-
052・大岡育造
○議長(大岡育造君) 單純ニシテモ···
〔森茂生君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=52
-
053・森茂生
○森茂生君 諸君、本員ガ提出致シマシタ此新二十錢銀貨改鑄ニ關スル建議案ハ既
ニ諸君ノ御手許ニ囘ッテ居リマス建議案ニ其理由ハ認メ置イタコトデアリマス、誠ニ單純
ナ問題デアリマシテ、此我國ノ補助貨幣ト云フモノハ明治初年ノ頃カラ貨幣條例ニ依リ
マシテ制定セラレタモノデアリマスソレガ其儘ニ踏襲-襲用セラレテ來テ居リマスガ、
此銀ノ直段ガ上ッテ參リマシタガタメニ之ヲ鑄潰ス虞ガ參リマシタ、又一方ニハ明治三十
年貨幣法ノ施行ノ結果、一圓ノ兌換券ト云フモノヲ囘收致スヤウナコトニナリマシテ、
補助貨幣ノ發行高ヲ增加致シタコトデアリマス、ソレガタメニ餘リ大キクテハ差支ヘルト
云フコトデアリマスノデ、成ベク小サイ方ヲ鑄ルト致スヤウナコトニナッテ參ッタノデアリマス、
サウ云フヤウナ次第デアリマシテ、政府ハ明治三十九年ノ勅令ノ第百九號ヲ以テ五十
錢録貨ト二十錢銀貨ノ形ヲ小サク致シテ參ッタモノデアリマス、其結果二十錢銀貨ト云
フモノハ甚ダ形ガ小サクナリマシタガ、此五錢ノ白銅貨ト云フモノト、誠ニ寸法ト云ヒ形
ト云ヒ、克ク似テ居ルノデアリマス故ニ、往々ニシテ之ヲ間違ヘルモノガアルノデアリマス
所ガ此小サナ小賣人ト云フ方ニ於キマシテハ、之ガタメニ繁激ナル店屋ニ於テハ、非常ナ
困難ヲ致スト云フコトヲ耳ニシテ居ルノデアリマス、又一方外國人ノ如キハ日本ノ新二
十錢銀貨デ取引スルト云フコトヲ甚ダ好マナクテ、新二十錢銀貨ノ釣錢等ヲ渡ス場合
ニソレヲ拒絕スルト云フヤウナコトハ間々アルノデアリマス故ニ本員ハ此新二十錢銀貨
ヲ改鑄セラルヽト云フコトハ、今日ノ急務デアラウト思ヒマスガ故ニ、玆ニ此建議案ヲ提
出シタ所以デアリマス、宜シク御贊成アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=53
-
054・恒松隆慶
○恆松隆慶君 本案ハ議長指名九名ノ委貝ニ付託セラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=54
-
055・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=55
-
056・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ恆松君ノ動議ノ如ク、議長指名ノ九名ノ委
員ニ本案ヲ付託スルコトニ決シマシタ、日程第十二、石油引火點規則改定實施ニ關ス
ル建議案、委員長齋藤二郞君
第十二石油引火〓規則改定實施ニ關スル建議(委員長報告)
案(齋藤二郞君提出)
〔齋藤二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=56
-
057・齋藤二郎
○齋藤二郞君 今問題ニナリマシタ議案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、
三月八日ト三月十四日ノ二囘委員會ヲ開イタノデアリマス、サウシテ農商務省ノ方ノ
側カラモ、內務省ノ方ノ側カラモ、政府委員ガ出マシテ、之ニ對スル意見ヲ述ベタノデアリ
マス、サウシテ各委員ハ此案ニ付テハ何レモ皆贊成デアッタ、其中一ツ山田君カラ御註文
モアリマスカラ御報告シテ置キタイコトハ此引火〓ヲ直グ嚴重ニ極メラレルト、當業者ハ
困ル、ダカラ此規則ヲ政府ガ次ノ議會ニ出スト云フナラバ啻ニ引火〓問題バカリデナ
クシテ、容器類等ノ場合ハ之ニ關聯スルモノモ共ニ調ベテ貰ヒタイト云フ註文ガアリマシ
タ、是ハ誠ニ御尤ナコトデアッテ、政府當局ニ於テモ今此引火〓ヲ俄ニ嚴重ニ極メル
ト云フコトニナレバ、サウ云フ方ノ關係者ニ打擊ヲ與ヘルコトモアラウ、又イロ〓〓弊害モ
起ルコトモアラウ、ソレ故ニソレハ十分調査ヲ致シマスト云フ政府ノ言明デアルノデアリマ
ス、尙附加ヘテ申シテ置キマスガ、各府縣デハ此引火〓問題ヲ主トシナイデ一種ノ取締
ニ關スル例ヘバ警視廳令若クハ府縣令デ取締規則が、出テ居リマス、因テ是ハ全ク區
區デアッテ、統一ガ付テ居ラヌ、此〓ニ付テハ古賀政府委員ノ如キハ、ドウシテモ是ハ統
一シナケレバナラヌ、ソレ故ニ政府ニ於テモ十分之ヲ取調ベテ居ル、殊ニ斯ウ云フ建議ガ
アッタ以上ハ、至急ニ取調ニ著手シテ、近キ中ニ此事ニ付テ法案ヲ出シタイ、斯ウ云フ
コトマデ三言ハレテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ現ニ此石油ニ付テハ最モ利害關係ノアル山
田君ノ如キモ、雙手ヲ舉ゲテ此建議案ニハ贊成ヲセラレタノデアリマス委員全部之ニ
同意ヲシタノデアリマスソレ故ニ結果ハ全委員滿場一致ヲ以テ可決シタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=57
-
058・恒松隆慶
○恆松隆慶君 委員長報告通リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=58
-
059・大岡育造
○議長(大岡育造君) 委員長報告通り御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=59
-
060・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ委員長報告通リ決シマシタ、日程、第十三、
日本刀劒鍛冶法維持ノ爲ニ刀劒師養成ニ關スル建議案-委員長井上角五郞君
第十三日本刀劒鍛冶法維持ノ爲ニ刀劒師養成ニ(委員長報告)
關スル建議案(永野靜雄君外一名提出)
〔井上角五郞君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=60
-
061・井上角五郎
○井上角五郞君 報告致シマス、委員會ニ於キマシテ宮古啓三郞君又ハ淺羽靖君
等ヨリ日本ノ刀劒ノコトニ付テナカ〓〓聽クベキ、見ルベキ、議論ガゴザイマシタ、是ハ委
員會ノ速記錄ニゴザイマスカラ御覽ヲ願ヒマス、本案ハ日本古來ノ士氣ヲ維持シ今日
ノ文弱ニ流レルノヲ防グタメニ必要ナリト認メルカラ、政府ハ相當ノ方法ヲ具ヘテ保護ス
ルガ當然デアルト云フコトニ委員會ハ決定致シマシタ、此段ヲ報告致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=61
-
062・恒松隆慶
○恆松隆慶君 委員長報告通リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=62
-
063・大岡育造
○議長(大岡育造君) 委員長ノ報告ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=63
-
064・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナキモノト認メマス、卽チ本案ハ可決致シマシタ、日程
第十四、田畑地價修正ニ關スル建議案-委員長塚田啓太郎君
第十四田畑地價修正ニ關スル建議案(塚田啓太(委員長報告)
郞君提出)
〔塚田啓太郞君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=64
-
065・塚田啓太郎
○塚田啓太郞君 委員會ノ經過及結果ヲ報告致シマス(「謹聽々々」ト呼フ者アリ)
本案ヲ調査スルタメニ各種ノ參考書ガ入用デアリマスカラ、內務、大藏兩省ヨリ種々ナ
ル參考書ヲ取寄セマシテ、六囘委員會ヲ開キマシタ、此間大藏大臣及政府委員ト詳細ナ
ル質問、應答ヲ致シマシテ、現在ノ地價ニ非常ナル偏重偏輕ノアルコトヲ證明致シマシ
タ、其偏重偏輕ノアルコトヲ詳シク申シマスルト長クナリマスカラ是ハ略シマシテ、、唯單ニ一
例ダケヲ茲ニ申述ベテ置キタイト思ヒマス、全國ニ亙ッテ各稅務署ニ於テ實行シテ居リマ
ストコロノ地價百圓ニ對スル一箇年ノ田ノ自作ノ所得金額ノ一例ダケヲ申述べマス、其
他地價百圓ニ對スル所得金額ノ中デ十圓ノ所得ノ所モアリマスルシ、又二十圓ノ所モ
アリ、三十圓ノ所モアリ、四十圓五十圓ノ所モアリマス、其他六十圓、七十圓、八十
圓ト云フ所モアリマス、又百十六圓以上ノ所モアリマス、先ヅ是テ澤山デアリマセウ、此
ノ如ク非常ナル所得ノ懸隔ガアルノデアリマス、マダ他ニモ澤山申上ゲマスルトアリマス
ガ、先ヅ此一例ダケヲ申シテ他ハ略シマス(「モット願ヒマス」ト呼フ者アリ)大藏大臣モ、
政府委員モ、現在ノ地價ハ不公平デアルト云フコトハ明カニ認メテ居リマシテ、本案ニ
付テハ十分ニ參考トシテ攻究スルト云フコトヲ確ニ答辯致シマシタ、委員諸君ノ中ニハ
此次囘ノ帝國議會ニハ是非トモ修正案ヲ政府ニ於テ提出シテ貰ヒタイト云フ希望モア
リマシタ、又中ニハ今日ノ地價ハ不公平デアルガ、ナカ〓〓不公平ハ直ルマイト云フヤウ
ナ意見ヲ述ベタ方モアリマス、採決ノ結果ト致シマシテ、大多數ヲ以テ本案ノ通リ可決
致シマシタ、本案ハ一黨、一派ノ意見ヨリ出タモノデハアリマセヌ、各派ニ通ズルトコロノ輿
論ニ從ッテ提出致シタモノデアリマスカラ、御審議ノ上滿場ノ諸君ノ御贊成ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=65
-
066・恒松隆慶
○恆松隆慶君 異議ナシ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=66
-
067・大岡育造
○議長(大岡育造君) 委員長報告通リ御異議ハアリマセヌカ--御異議ガナケレバ
可決確定致シマス、日程第十五乃至第十七ハ同一委員ニ付託シタル議案デアリマスカ
ラ、一括シテ議題ト爲スニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=67
-
068・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ、一括シテ議題ト爲シマス、委員長山岡國
吉君
第十五鹿兒島開港ノ建議案(山岡國吉君外七(委員長報告)
名提出)
第十六小松島港修築ニ關スル建議案(大久保弁(委員長報告)
太郞君外三名提出)
第十七鐵道建設ニ關スル建議案(吉田虎之助君(委員長報告)
外一名提出)
〔山岡國吉君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=68
-
069・山岡國吉
○山岡國吉君 鹿兒島開港建議案ノ委員會ノ結果ヲ報告致シマス、本建議案ニ付キ
マシテハ政府委員ノ出場ヲ請ヒマシテ、數囘應答ノ結果、政府委員ノ意向ト致シマシ
テハ鹿兒島ハ此以前六七年以前ニ千四五百噸ノ船舶ヲ入ルヽノ築港ヲ致シタノデアリ
マシタガ、其築港ガ今日ハ狹キヲ告グル程ニ發展シテ居ルト云フ事實ハ認メルケレドモ、
輸入品ハ相當アルケレドモ、輸出品ノ上ニ甚ダ物貨ガ少ナイノデアル政府ノ意向デハサ
ウ貿易港ヲ增加スルト云フコトハ希望シテ居ラヌノデアルカラ、未來卽チ近キ將來ニ宮
崎線ノ貫通、或ハ西薩線ノ貫通ノ上ハ如何ニ成行クカ分カラヌケレドモ、唯今ノトコ
ロデハ何シロ輸出品ガ少ナイノデアルカラシテ、直ニ同意ハ致シ難イト云フ政府ノ意見デ
アルノデアリマス、所ガ委員會ニ於キマシテハ免ニ角鹿兒島ハ卽チ築港後今日ノトコロデ
ハ出入船舶ガ二百二十三万噸位ノ統計ヲ示シテ居リマスシ、又物貨ノ價格上カラ申
シマスト四千万圓以上ノ物貨ノ價格ガアルノデアリマス、是等ハ大貿易場タル全國
ニ於ケル七八ノ貿易場ヲ除クノ外ニ於テハ、遜色ナキトコロノ港灣デアリ、其上ニ近キ
中ニ此二箇ノ鐵道モ貫通致スコトニナッテ居レバ、自然物貨モ增加スルト云フコトハ是
ハ間違ヒナイ事實ニナッテ居ルノデアリマス、ノミナラズ開港致シマシタ上ニハ、此產業ノ
自然發達スルト云フコトモ、是亦疑ヲ容レヌコトデアラウト云フコトデアリマス、此ノ如ク
有望ナル場所ニ於テハ政府ハ速ニ開港致スト云フコトハ、最モ當然ノコトデアルト云フノ
意味ノ下ニ全會一致ヲ以テ原案ヲ可決致シタノデアリマス、御贊成ヲ願ヒマス、ソレカラ
小松島港修築ニ關スル建議案是ハ、德島市ヲ距ルコト二里半ノ所ニアリマスノデ、唯
今七哩ノ鐵道工事中デアリマシテ、今年中ニ貫通致スト云フコトニナッテ居ルノデアリマ
ス、而シテ神戶ヲ距リマスコト六時間ニシテ達シ、或ハ大阪ヨリ八時間デ達スルト云フ
所デアリマシテ、是ハ德島縣ニ於テ唯一ノ港デアルノデス、而シテ今日ハ四五百噸ノ船
ヲ入ルヽコトニナッテ居リマスケレドモ、土地ノ發展ノ必要上、ソレデハ不足ヲ告ゲルノデ、
卽チ唯今ノ目的デハ、千四五百噸ヲ入ルヽ修築ヲシナケレバ其必要ニ應ズルコトガ出來ナ
イト云フコトニナッテ居リマスガ故ニ、此建議案ヲ提出シタト云フ事實デアリマス、而シテ
是ハ同地ノ縣會デモ、昨年滿場一致ヲ以テ可決致シテ、政府ニハ旣ニ建議マデ致シテ
アルト云フ事實デアルノデアリマス、又政府委員ニ於キマシテモ成ルベクナシ得ルナラバ
基礎ノ大キイコトヲ希望スルノデアル、サリナガラ今日ト云フコトニ至ッテハ、財政上ノ都
合ガアルカラ直ニ同意ヲ表スルコトハ出來ナイケレドモ、此計畫上ニ付テハ異議ハナイト
云フ政府委員ノ意向デアルノデス、因テ之ヲ相當ナリト致シマシテ、滿場一致ヲ以テ
原案ニ可決致シマシタ、ソレカラ鐵道建設ニ關スル建議案、是ハ滋賀縣大津ヨリ分岐
致シマシテ、西近江路ヲ經テ福井縣下敦賀港ニ接スル鐵道デアリマス、是ガ約四十哩位ノ
距離デアリマシテ、此案件ハ昨年二十七議會ニ於キマシテモ、衆議院デハ採用ニナリマ
シタノヲ貴族院デ之ヲ否決セラレタト云フ案件テアルノデアリマス、而シテ昨年此件ニ
付テノ政府委員ノ意見及關係ノ委員等ノ意見ヲ速記錄ニ徵シテ見マスルニ、鐵道院
ニ於キマシテモ絕對的之ニ反對シテハ居ラヌノデアリマス、ノミナラズ陸軍省ニ於キマシ
テハ軍事上此速成ヲ希望シテ居ルト云フコトニナッテ居リマス、故ニ委員會ハ之ヲ此建
議案ヲ相當ナリト認メマシテ、、是亦全會一致ヲ以テ可決致シマシタ、御贊成ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=69
-
070・恒松隆慶
○恆松隆慶君 三案共委員長報告通リ卽決ヲ願ヒマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=70
-
071・大岡育造
○議長(大岡育造君) 三案共委員長報告通り御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=71
-
072・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ三素共ニ可決致シマシタ-日程第十八、
決議案-請願委員長武藤金吉君
第十八決議案(請願委員長提出)
決議案
議院ヨリ意見ヲ附シテ送付シタル請願ニ對シ政府ハ次ノ會期ノ始ニ於テ其
ノ結果ヲ報告アラムコトヲ望ム
右決議ス
〔武藤金吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=72
-
073・武藤金吉
○武藤金吉君 此決議案ハ議院ヨリ送付シタル-意見ヲ附シテ送付シタル請願ニ
對シ、政府ハ次ノ會議ノ始メニ於テ其結果ヲ報告アランコトヲ望ム、右決議ス、是ハ請
願委員會ノ提出デアリマシテ請願ノコトハ直接人民ノ聲ヲ議員ガ聽キマスル重要ノ問
題デアリマシテ、議會開設以來幾多ノ變遷ヲ經テ參リマシテ、今日ハ請願ノ權利ハ非
常ニ擴大サレテ居リマス、併ナガラ未ダ此請願ノ效果ガ全キヲ得テ居リマセヌノデアリマ
ス、試ミニ第一議會カラノ大要ヲ申上ゲマスレバ、第一議會開設ノ際ニハ請願ノ件數ガ一
千五百二十六アリマシタモノデアリマス、而シテ其中採擇ニナリマシタモノハ僅カ十三件
デアッタ、其他ハ政府ニ參考トシテ送ルモノガ多ク、又未了案件ノ問題モ四百件以上モ
アッタノデアリマス、而シテ第二議會、第三議會ト段々經テ參リマシテ、サウシテ此第十
一議會ニナリマシテハ請願ノ數ガ僅カ二十二件ニ減ジテシマッタノデアリマス、是ハ畢竟
スルニ憲法ノ-此議院法ニ請願權ヲ認メテアリマスケレドモ、請願權ヲ尊重シナイ結
果デハナイカト思フノデアリマス、更ニ進ミマシテ十二議會カラ以後ニ於キマシテハ段々減
ジテ參リマシテ、十四議會ニハ五百七十二、十五議會ニ於テハ千二百二十七件提出ニ
ナッタ、然ルニ採擇ニナリマシタモノハ十四議會ニ於テハ僅ニ七十一十五議會ニ於テハ
七十二件デアリマス、十六議會カラ以後ニ於キマシテハ段々減少致シマシテ二十議會マ
デノ間ニ於テ十九議會ノ如キハ僅カ十件ノ提出ギリナカッタノデアリマス、ソレカラ二十議
會ニハ四十五件ノ提出シカナイ、二十一議會ニ於テハ竹越君ガ歐羅巴カラ歸ラレマシテ
此事ヲ憂ヘラレテ、二十一議會ニハ自ラ請願委員長トナラレマシテ、此法律ヲ制定スル
コトヲ議場ニ諮ラレマシタ結果、漸クニシテ二百十二件ノ提出ヲ見タノデアリマス、二十
二議會ニ於テハ俄然トシテ國民ガ此請願權ニ重キヲ置テ九百五十二件ノ提出ニナツタ
ノデアリマス、其後引續イテ二十三議會、二十四議會、二十五議會、二十七議會マ
デニハ件數ノ相違ハアリマスケレドモ、大抵平均シテ多數國民ノ聲ハ直ニ議會ニ移サレ
ルコトニナッタノデアリマス、而シテ二十四議會以後ニ於キマシテ此法律案ノ制定ヲ請願
委員會ニ於テ爲スコトニナリマシテ、十年間ノ宿題トナッテ居リマシタ秩祿請願事件ノ如
キモ、二十四議會ニ於テ六十二號ノ法律案トナッテ確定サレタノデアリマス、又二十五
議會ニ於テハ二十六件、二十六議會ニ於テハ一件、前年ノ二十七議會ニ於テハ四件
ノ法律案ガ制定セラレテ居ルノデアリマス、而シテ第一議會以來ノ經過ヲ見マスレバ此
提出件數トヽ政府ニ參考トシテ送ッタモノト、又採擇セラレタモノヲ比較シテ見レバ採擇
セラルヽモノガ此二十一議會マデハ極メテ少數デ、十分ノ一以下モ採擇セラレテ居ナイ
ノデアリマス、然ルニ二十議會ニ於テハ其半分乃至半分ヨリ少シ減ジタ位ナ採擇ニナツ
テ居リマス、昨二十七議會ノ如キハ福井君ガ精勳ヲセラレタ結果總數千三百四十
二件呈出ノ中六百四十四件採擇セラレテ居リマス、卽チ昨年ノ議會ハ此二十七囘ノ
會期中ニ於テ最モ多ク採擇セラレタノデアリマス、併ナガラ是デハマダ請願ノ權利ヲ十分
擴大サレ、十分功ヲ奏シタカト申シマストヽ段々年表ヲ繰ッテ見ルト、五囘モ七囘モ
同一ノ案件ガ出テ居ルノデアリマス、政府ハ議院カラ意見ヲ附シテ送ッタモノニ向ッテ、何
等始末ヲ付ケテナイモノモアリ、其中ニハ功ヲ奏シタモノモアリマスガ、其大部分ハ其請
願ト云フモノハ事實上尊重セラレテ居ラヌノデアリマス、故ニ此結果始末ヲ議會ニ報告
スルト云フコトハ請願權ヲ尊重シ、國民ノ聲ヲ此憲法政治ノ上ニ於テ現ハストコロノ
第一ノ要件デハナイカト信ジマス、請願委員會ニ於テハ之ヲ憂ヘマシテ此功ヲ奏センガ
タメニ此決議案ヲ出シテ、サウシテ次ノ會期ニ於テ其結果始末ヲ報告シテ貫ヒタイト云フ
コトヲ望ム決議案デアリマス、勿論議院法ノ六十五條ニハ時宜ニ依ッテ報告ヲ求ムルコ
トヲ得ルト云フコトガアリマシテ、先例ニハ之ヲ求メタ例モアリマスガ、全部報告ヲ得ルト
云フコトニナッテ居リマセヌ、斯樣ナ次第デアリマシテ、請願ハ最モ直接人民ノ訴ヲ受ケルト
コロノ大切ナル憲法上ノ所デアリマスカラシテ、此同ジモノヲ七囘モ八囘モ出シテ、議院ハ
同ジヤウナ意見ヲ附シテ送ッテ置イテ、ドウナッタカ政府ノ方ヘ行クト分ラヌト云フヤウナコト
ハ、實ニ議會政治ノ上ニ於テ甚ダ政府ハ不親切デハナイカト思ヒマスデ、此決議案ハ委
員會ニ於テ特別委員會ニ付託シテ、政府ノ意見ヲ聽キサウシテ審査致シマシタガ、政府
ハ同意致シマセヌ、同意致シマセヌガ、請願委員會ハ請願ノ權利ヲ尊重シ、此實效ヲ奏
スルタメニ本決議案ヲ提出シタ次第デアリマスカラ、願クハ本會ニ於テ滿場一致ヲ以テ
可決アランコトヲ希望致シマス
(政府委員法學博士岡野敬次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=73
-
074・岡野敬次郎
○政府委員(法學博士岡野敬次郞君) 請願權ノ尊重スベキモノデアルコトハ請願委
員長ノ御話ノ通リデアリマシテ、政府ニ於キマシテ、議院ニ於テ採擇スベキモノト議決シ
タルトコロノ請願ニ付キマシテハ、愼重ノ調査ヲ致シテ居ルノデアリマス、併ナガラ此決議
案ニ同意ヲ表スルコトヲ得ザルノヲ遺憾トスルノデアリマス、其理由ヲ簡單ニ述ベタイト思
ヒマスガ第一ニハ此決議案ニ依リマスルト次ノ會期ノ初メニ於テ請願ノ結果ヲ報告セ
ネバナラヌト云フコトニ至ルノデアリマス、是ハ申上ゲルマデモナク、議會ハ會期每ニ成立
スルノデアリマシテ、一ツノ議會ヨリ次ノ議會ニ牽聯スルモノハ認メテナイノデアリマス、是
ハ議院法ニ依ッテモ、衆議院規則ニ依ッテモ、貴族院規則ニ依ッテモ、議院ハ每會期召
集セラレ、每會期成立スルノデアリマス、故ニ議會ハ各〓獨立ノモノデアリマシテ、一ツノ會
期ヨリ次ノ會期ニ聯ナルモノハ無イノデアリマシテ、憲法ニ於キマシテモ、次ノ會期ノ初メ
ニ於テ承諾ヲ求ムルコトヲ要スト云フコトガアリマスケレドモ併ナガラ是トハ其意味ヲ異
ニシテ居ルノデアリマス、ソレカラ又請願ハ必シモ一囘ニ限ル譯デナイノデアリマスカラ、每
會期每ニ提出スルコトヲ固ヨリ妨ゲナイノデアリマス、ソレカラ次ニハ議院法ノ第六十五
條ニ定メテアルトコロノ精神カラ解釋ヲ下シテ見マスレバ、議院法ハ其六十五條ニ依ッテ
議院ノ決議ニ依レバ時宜ニ依ッテ其請願ノ報告ヲ求ムルコトヲ得ルト云フコトニナッテ居
ルノデアリマス、是ハ請願ノ總テニ對シテ必ズ報告ヲセネパナラヌト云フ意味アルモノト致
シマシタナラバ、卽チ此第六十五條ノ精神ニ反スルモノデアラウト思ヒマス、故ニ此決議案
ノ趣旨ヲ貫カントスレバ、議院法ノ改正ヲ致スヨリ外ナイト云フコトニ至ラウト思ヒマス、
ソレカラモウ一ツ簡單ニ申述ベテ置キタイコトハ、議院法ニ於テ採擇シタトコロノ請願ハ、
各議院ヨリ政府ニ送付ニナルノデアリマシテ、政府ハ卽チ之ヲ其所管ノ事項ニ依ッテ各
省大臣ニ之ヲ送付シテ、各省ニ於テハ其請願ニ就テ各〓愼重ナル審査ヲ致シタ後ニ、之
ヲ闇識ニ提出スルノデアリマス、是ハ內閣ノ官制ニ於テ、帝國議會ヨリ送致スル人民ノ請
願ハ必ズ閣議ニ於テ之ヲ決定セネバナラヌト云フコトハ、明カニ定メテアルノデアリマス、政
府ニ於テ此請願ヲ取扱ヒマスコトハ唯今申上ゲル通リノ次第デ、決シテ之ヲ輕ク視テ居
ルノデハナイノデアリマス、而シテ議院ニ於テ採擇セラレタルトコロノ請願ハ先刻委員長ヨ
リ報告セラレマシタガ、隨分其數ハ多イノデアリマス、啻ニ衆議院ニ於テ採擇セラレタル
請願ノミナラズ、貴族院ニ於テ採擇セラレタル請願モ頗ル其數ガ多イノデアリマシテ、第二
十六議會ニ於テハ三千三百五十一件、第二十七議會ニ於テハ六百十八件ニ上ッテ居
ルノデアリマス、此中ニハ固ヨリ同ジ趣意ノ請願モアリマシテ、重複シテ居ルノモアリマスカ
ラ、必シモ此數通リ各〓獨立ノ請願トハ申サヌノデアリマス、其統計ヲ今申上ゲル譯ニハ參
リマセヌ、免ニ角其數ハ多イノデアリマシテ、先刻申シマシタトコロノ手續ヲ愼重ニ盡ス上
ニ於キマシテ、次ノ會期ノ始メニ於テ悉ク此請願ノ結果ヲ報告スルト云フコトハ、事實
不可能デアルト云フ〓ニアルノデアリマス、故ニ此〓ニ於テ此決議案ニハ政府ハ同意ヲ
致スコトガ出來ナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=74
-
075・松田源治
○松田源治君 政府ハ此決議案ニ反對セラレテ、議院法ノ六十五條ヲ御引用ニナリ
マシタガ、六十五條ニ「請願書ヲ政府ニ送付シ時宜ニ依リ報告ヲ求ムルコトヲ得」トナッ
テ居ルノデアリマスカラ、此決議案ハ此議院法ノ趣意ニ副フノミナラズ、此議院法六十
五條ノ活用ヲ爲ストコロノ適當ナル案ト私ハ考ヘルノデアリマス、且政府委員ハ議會ハ
一期每ニ變ルノデアルカラ、次ノ會期ト云フコトヲ玆ニ申スノハ、憲法上ノ精神ニ副ハナ
イト云フヤウナ趣意デゴザイマシタケレドモ、政府ハ何時ニテモ次ノ議會ニ於テ議案ヲ提
出スルト云フコトモ公言致シ、次ノ會期ニ於テハ如何ナルコトヲ爲スト云フ公約モスルノデ
ゴザイマス、次ノ會期ニ於テ如何ナル法律案ヲ出セト云フコトハ、議院モ建議案トシテ出
來ルノデゴザイマスカラシテ、會期ハ一會期每ニ違フト雖モ、議院ト云フモノハ永久ニ存
在シテ居ルノデゴザイマス、卽チ憲法政治ガアル以上ハ日本帝國ノ議會ナルモノハアルノ
デゴザイマスカラシテ、此決議案ハ衆議院規則及議院法ノ精神ニ副フノミナラズ、議院
法ノ六十五條ノ活用ニナルコトヽ考ヘマスカラシテ、決シテ政府ノ言フヤウナ違法ナコト
ハナイ、此決議案ハ相當ナリト信ジマスカラ、瀾場一致ヲ以テ可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「卽決贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=75
-
076・大岡育造
○議長(大岡育造君) 請願委員長提出ノ決議案ニハ、滿場御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=76
-
077・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナク可決致シマシタ、此場合ニ一言致シテ置キマス、
先日請願ノ件ヲ一括シテ議題ニ供スルコトヲ御諮リ申シテ諸君ノ御同意ヲ得タノデアリ
マスガ、其意ヲ誤解シテ請願ヲ虐待スルナドヽ云フコトヲ書イタ新聞モ見エタヤウデアリマ
スガ、決シテサウ云フ意味デハナイノデ、從來ハ請願ノ趣意ハ載セテ文書表ニアリト云フ
語ノミヲ速記ニ存シテ、實ハ十分明瞭ヲ缺イテ居ル嫌モアッタノデアル、ソレヲ今度ハ文
書表ナルモノガ、元來人民ニハ示サレズシテ、議員間ダケデ分配ニナッテ居ッタノデアリマス
カラ、文書表ニ載セルトコロノ趣意書ヲ悉ク官報速記錄ニ載セル、故ニ本院ニ於テ決議
サレタルコトハ、官報ヲ見ルトコロノ各人民ガ皆之ヲ明瞭ニ知リ得ル、且政府モ直ケ之
ヲ見得ルト云フコトニナリマスカラ、前ヨリハ決議ノ方法ハ便ニナリマシタケレドモ、請願
ヲ扱フ上ニ於テハ一層ノ鄭重ヲ加ヘタルコトデアリマスルカラ、此段ヲ明言致シテ置キマ
즈日程第十九乃至第四十ハノ請願ハ一括シテ議題ト致シマス、委員長ノ報告ヲ許
シマス-川崎安之助君
〔川崎安之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=77
-
078・川崎安之助
○川崎安之助君 委員長ニ代リマシテ、請願委員會ノ經過ヲ報告致シマス、昨日マ
デニ請願委員會ニ受理致シマシタトコロノ請願ノ件數ハ總數六百六十件デアリマス、而
シテ此中二百八十六件ハ已ニ去ル十二日ニ於テ審査ノ結果ヲ報告ヲ致シタノデゴザイ
さく、サウシテ本週中ニ於キマシテ-此週間ニ於キマシテ審査致シタトコロノ件數ハ、
百五十四件ニナッテ居リマス、其中ニ採擇スベキモノト決定致シマシタモノガ一百件、參
考ノタメニ政府ニ送付スベキモノト致シマシタモノガ四十一件、本會ニ於ケル委員會ニ
參考ノタメニ送付致シマシタモノガ三件、院議ニ付スルコトヲ要セザルモノト致シタモノガ
作、同種類ノ建議案又ハ請願議決ノ結果、議決ヲ要セザルモノガ五件アッタノデゴザ
イマス、尙其他ニ現在ニ於テ未了ノモノガ二百二十件ゴザイマス、而シテ本日院議ニ付
セラレタルトコロノモノハ水道費國庫補助ノ請願外二十七件デアリマス、卽チ日程ノ第
十九ヨリ第四十六ニ至ルマデノ此二十八件デアリマス、此二十八件ハ何レモ文書表ニ
記載ノ請願ノ趣旨ヲ相當ナル理由ト認メマシテ、之ヲ採擇スベキモノト決シマシテゴザイ
マス、而シテ其中ニ於テ最モ主ナルモノヽ一二ニ就テ說明ヲ致シマス、日程第十九ノ水道
費國庫補助ノ請願、是ハ大分縣速見郡別府町長吉田嘉一郞ノ星出デ、松田源治
君外一名ノ紹介ニナッテ居リマス、由來此水道ノ補助ナルモノハ大抵市ニ補助スルコトニ
ナシテ、町トカ村トカ云フモノニ對シテ補助ト云フコトハ餘リ無イヤウデアリマス、併ナガラ
前例ヲ調ベテ見マスルト、曩ニ若松町ニ對シテ此水道ノ補助ヲシタコトガアルノデアリマ
ス、殊ニ政府ノ方針ト致シマシテモ、强チニ此自治團體タルトコロノ市ト云フ名稱ニ拘泥シ
テ補助スル譯デナクシテ、縱令町デアラウガ村デアラウガ、其實際ノ有樣ガ之ヲ補助スルニ
必要ナリト認メタナラバ、補助スルト云フ精神ニナッテ居リマスカラ、本會ハ此別府町ノ如
キ特別ノ事情ノアルトコロノ都會ニ對シマシテハ、殊ニ水道ノ補助ヲスルト云フ必要ヲ認
メマシタカラ、玆ニ之ヲ採擇致シタ次第デアリマス其次ニハ日程第二十一ノ利根川改
修ニ付河川區域內土地買收ノ請願、請願人ハ埼玉縣大里郡中瀨村齋藤安雄外百
三名ノ呈出デアリマシテ、塚田啓太郞君ノ紹介デアリマス、此案ノ要旨ハ利根川改修
ニ付キマシテ河幅ヲ五百間ニ擴ゲルト云フコトニナッテアル、而シテ其五百間ノ間ノ三百
間ノ低水敷卽チ常水ノ流レル所ダケノ幅ヲ買上ゲルコトニナリマシテ、兩側ノ百間ツヽト
云フ此川中ノ土地ハ縱令田デアラウガ、畑デアラウガ、若クハ人家デアラウガ、之ニ對シ
テ買收モシナケレバ又損害ノ補償モ與ヘナイト云フコトデアル、是ハ誠ニ不都合ナコト
デアルカラ河幅五百間トナルナラバ、五百間全部ヲ買上ゲテ貫ヒタイト云フ請願デアリマ
ス、之ニ對シテ委員及政府委員ノ間ニ種々ノ質問、應答ガゴザイマシタ、政府委員ノ答
辯ニ依リマスレバ、是ハ事實ハ認メル、其低水敷ノ三百間ト云フ所ハ、或ハ百五十間
ノ所モアルシ二百五十間ノ所モアルカラ、此間數ニ付テハ多少相違ガアルケレドモ、免
ニ角縱令川中テアッテモ技術上ニ於テ將來之ニ對シテ危害ヲ及ボサナイト認メタ處ハ買
ハナイコトニシテ居ルノデアルト云フ政府委員ノ答辯デアリマシタ、議員ヨリハ若シ左樣ナ
コトニナリマシタナラバ、此技術者ノ設計ガ誤ッテ、將來此土地ニ對シテ危害ヲ及ボシタト
キニハドウスルカト云フ質問ニ對シテ、ソレハ仕方ガナイノデアル、若モ技術上サウ云フコトガ
無イト信ジテ買ハナイノデアルカラ、決シテサウ云フ事ハ萬々無イ筈デアルケレドモ、若シ竣工
ノ後ニ至ッテサウ云フコトガ生ジテモ、ソレハ已ムヲ得ナイコトデアルト云フヤウナ誠ニ不得
要領ナルトコロノ答辯デアリマシタ、故ニ本會ニ於テハ此請願ヲ最モ理由アルモノトシテ
採擇致シタノデゴザイマス、而シテ此請願ニ付テハ其關係スルトコロガ實ニ重大ナル問題デ
アリマスルカラ、殊ニ本會ハ此請願ニ付テハ政府ニ對シテ其結果ノ報告ヲ求メルト云フコ
トニ意見ヲ付ケテ居リマスルカラ、左樣御承知ヲ願ヒマス、以上大體報告ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=78
-
079・大岡育造
○議長(大岡育造君) 委員長報告通リ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=79
-
080・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナケレバ請願全部委員長報告通り可決致シマシタ
第十九特別報告第百五十二號
第三百八十八號
水道費國庫補助ノ請願大分縣速見郡別府町長吉田嘉一郎呈出(紹介
議員松田源治君外一名)
右請願ノ要旨ハ大分縣速見郡別府町ハ溫泉地トシテ浴客絕ユルコトナク一箇年ノ
延人員百萬以上ニ達ス而シテ大字別府及濱脇ノ人家稠密ナル地域ハ戶數三千餘
旅館ノ數亦二百八十餘浴槽ノ數八百十八ニ及フ尙家屋ノ新築一日平均一戶半
アリ然ルニ飮料水ニ乏シク一部人民ノ共同經營ニテ山間ヨリ〓水ヲ引用スルモノア
リト雖他ハ皆遠路ヲ忍ヒテ運搬スルカ又ハ溫泉ヲ冷却シテ飮料ニ供スルカ如キ狀況
ニ在リ碇泊ノ船舶モ給水ニ困難ヲ感シツツアリ依テ上水道布設ニ對シテハ國庫ヨリ
補助セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモ
ノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第二十特別報告第百五十三號
第四百三十七號
村合併ノ請願群馬縣吾妻郡高山村大字尻高村百十八番地平民農有馬
俊平外百五十二名呈出(紹介議員武藤金吉君)
右請願ノ要旨ハ群馬縣吾妻郡內高山村ト名久田村トハ相鄰接シ地形恰モ一村ノ
觀アリテ若之ヲ合併スルトキハ村役場、高等小學校及傳染病院ヲ一箇所宛廢止ス
ルカ爲巨額ノ經費ヲ減スルコトヲ得ヘク其ノ利益莫大ナリ或ハ現今ノ役場附近又ハ
村ノ東西隅ノ者ハ役場位置移動ヲ否トスルコトアラムモ是レ私論ニシテ公論ニ非サル
ナリ依テ兩村ヲ合併シ奈久多村ト改稱セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨
ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及御送付候也
第二十一特別報告第百五十五號
第三百九十四號
利根川改修ニ付河川區域內土地買收ノ請願埼玉縣大里郡中瀨村三十
九番地平民農齋藤安雄外百三名呈出(紹介議員塚田啓太郞君)
右請願ノ要旨ハ利根川中流部ニ於ケル改修計畫ハ河身ノ左右約五百間ヲ以テ新
ニ河川區域ヲ劃シ更ニ中央約三百間ヲ低水敷、其ノ左右約百間宛ヲ高水敷ト定メ
ラレタルカ低水敷約三百間ハ土地家屋ヲ買收スルモ高水敷約二百間ハ買收ヲ爲サス
ト聞ク然レトモ從來ノ汎濫區域ニ比シテ何十分ノ一ニ過キサル河川區域ヲ劃シテ大小
水量ヲ收容スルヲ以テ如何ニ低水敷ノ浚渫ヲ爲スモ耕土ハ數年ナラスシテ耕作シ能
ハサルニ至ルコト明カナリ依テ(一)埼玉縣大里郡秦村、長井村、妻沼村、男沼村、
明戶村、新會村、中瀨村ニ於ケル新設河川區域卽チ南北兩堤塘ノ間隔ハ總テ約
五百間ト定メラレ之ニ適合セサル舊來ノ堤塘ハ支川ノ處理ニ支障ナキ限リ總テ改築
セラレ(二)前項南北兩堤塘內ニ在ル民有土地ハ全部相當代價ヲ以テ買收セラレ
家屋ハ總テ移轉セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付併セテ本會
期中ニ政府ノ報告ヲ求メ候也
第二十二特別報告第百五十六號
第四百五十四號
河川改修速成ノ請願山梨縣南巨摩郡增穗村長上澤亙外三十五名呈出
(紹介議員佐竹作太郞君外四名)
右請願ノ要旨ハ山梨縣ハ水害ヲ被ムルコト殆ト每年ノ如ク加フルニ土砂ノ流出甚シ
ク少許ノ出水ニモ堤防ノ破壞、田畑家屋ノ流失ヲ免レス是レ山林荒敗ノ結果ニシ
テ昨四十四年御聖旨ヲ以テ帝室林野管理局ニ屬スル山林二十九萬餘町ノ御
下賜アリ著々根本治水ノ策ヲ講究中ナルモ植林事業ノ如キハ其ノ效果ヲ顯ハスニ少
クモ四五十年ヲ要シ到底現今ノ窮狀ヲ救濟スル能ハサルカ故富士川及其ノ支流ノ
改修ヲ施行セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇ス
ヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第二十三特別報告第百五十七號
第四百二十四號
常設美術展覽會場設立ノ請願東京府豐多摩郡代々木字山谷百四十三
番地士族〓工岡精一外四十一名呈出(紹介議員吉植庄一郞君)
右請願ノ要旨ハ曩ニ文部省ハ公設美術展覽會ヲ開設シ斯道奬勵ニ資スト雖適當
ナル會場ナク常ニ上野公園內舊博覽會跡二號館ヲ使用シ私設展覽會亦常ニ此ノ
處ニ開催セラル然ルニ該館ハ天氣ノ晴曇ニ依リ光線ニ變化ヲ來シ苦心ノ作品モ殆ト
價値ノ認ムヘキナキニ至ル美術奬勵上一大缺陷ト謂フヘシ依テ常設美術展覽會場
ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキ
モノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第二十四特別報告第百五十八號
第三百六十七號
登記所設置ノ請願長崎縣北松浦郡今福村二百五十二番戶平民農豐村
重郎外三十名呈出(紹介議員中倉万次郞君外一名)
右請願ノ要旨ハ長崎縣北松浦郡志佐村外七箇村ハ平戶區裁判所志佐出張所ノ
管轄ニ屬スルカ其ノ區域廣キニ過キ登記件數多キ爲申請者ノ不便少カラス而シテ
今福村、福島村、鷹島村ハ志佐出張所トノ距離近キモ二里遠キハ五里餘ヲ距テ
福島鷹島兩村ノ如キハ四里餘ヲ隔テタル孤島ナルニ志佐村ハ海淺ク風波ノ時ハ繋
船上陸シ能ハス調川村ハ志佐今福兩村ニ境ヲ接スルモ今福村トノ取引交通頻繁
ナリ依テ今福、福島、鷹島、調川ノ四箇村ヲ管轄區域トシテ今福村ニ登記所ヲ設
置セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト
議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第二十五特別報告第百五十九號
第三百六十八號
登記所設置ノ請願長崎縣北松浦郡柚木村長三間文五郞外二名呈出
(紹介議員中倉万次郞君外一名)
右請願ノ要旨ハ長崎縣北松浦郡柚木村、大野村、皆瀨村ハ佐世保區裁判所山
口出張所ノ管轄ニ屬スルカ距離遠隔ニシテ遠キハ五里ヲ距テ交通亦困難ナルカ爲
不便甚シ依テ三村ノ中央ナル大野村ニ登記所ノ設置アリタシト謂フニ在リテ衆議
院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五
條ニ依リ別册及御送付候也
第二十六特別報告第百六十號
第三百七十六號
登記所設置ノ請願山口縣美禰郡共和村長阿武義一外二名呈出(紹介
議員德田讓甫君)
右請願ノ要旨ハ山口縣美禰郡共和村、別府村、於福村ハ郡ノ西北方ニ僻在シ共
和村別府村ハ山口區裁判所太田出張所ノ所轄ニ屬シ其ノ距離近キモ三里遠キハ
六里ニ至ル於福村ハ同區裁判所伊佐出張所ノ所轄ニシテ遠キハ五里ニ達ス從テ往
復ニ日子ヲ要シ不便甚シ依テ三村ノ中央ニ位スル別府村字堅田ニ登記所ヲ設置セ
ラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議
決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第二十七特別報告第百六十一號
第三百八十七號
登記所設置ノ請願岡山縣阿哲郡矢神村大字矢田六百二十九番地平民
公吏安田士磨外六十八名呈出(紹介議員福井三郞君外一名)
右請願ノ要旨ハ岡山縣阿哲郡西部ハ同郡上市村所在登記所ノ管轄ニ屬シ六里
乃至三里ノ遠距離ニ在リ且道路險惡ナルカ故人民ノ不便謂フヘカラス依テ其ノ中
心タル矢神村大字矢田ニ登記所ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨
ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及御送付候也
第二十八特別報告第百六十二號
第四百三號
區裁判所裁判事務復舊ノ請願石川縣羽咋郡高濱町字高濱ヘノ一番地
平民金貸業加藤忠藏外二十三名呈出(紹介議員松田吉三郞君)
右請願ノ要旨ハ高濱區裁判所ハ明治三十五年十一月裁判事務取扱ヲ閉鎖セラ
レ事實上廢廳ト爲レリ元來羽咋郡內ニハ民事訴訟最モ多ク金澤地方裁判所管轄
內第一タリ今ヤ時勢ノ進運ニ伴フテ事件愈多キヲ加フルノ有樣ニ在リ羽昨郡ノ地
勢ハ長方形ヲ爲シ延長二十餘里ニ亙リ押水、邑知、志賀、富來ノ四〓區ニ區分サ
レ高濱區裁判所所在地タル高濱町ハ郡ノ中央ニ位シ志賀區ニ屬ス然ルニ今ヤ七尾
區裁判所ニ赴クニ南半部タル押水、邑知ハ七尾鐵道ノ便アレトモ北半部タル志賀、
富來ハ道路險惡交通至難ナルカ故不便甚シ且押水、邑知モ高濱ニ於テスルト七尾
ニ赴クトハ便否明白ナリ依テ高濱區裁判所ノ事務ヲ復活セラレタシト謂フニ在リテ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六
十五條ニ依り別册及御送付候也
第二十九特別報告第百六十三號
第四百四十二號
控訴院管轄變更ノ請願鳥取縣西伯郡米子町大字立町二丁目五十四番
地平民辯護士雜賀啓次郞外四十三名呈出(紹介議員福留〓四郞君)
右請願ノ要旨ハ交通機關ノ完備ニ伴ヒ廣島控訴院ノ如キモ其ノ必要ヲ認メラレサ
ルニ至レリ鐵道全通ノ今日ニ於テ山陰道人民ノ廣島行ハ大阪行ニ比シテ五時間半
ノ不利益アリ依テ現時ノ趨勢ト道民ノ利害トヲ察シ廣島控訴院ノ存廢如何ニ拘ラ
ス速ニ大阪控訴院ノ管轄ニ轉屬セシメラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ
至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
御送付候也
第三十特別報告第百六十四號
第四百五十二號
區裁判所出張所設置ノ請願奈良縣高市郡八木町長上田耕作外六名呈
出(紹介議員八木逸郎君外一名)
右請願ノ要旨ハ奈良縣高市郡ハ町村數十四人口五萬餘ヲ有スルニ拘ラス一ノ區
裁判所出張所ナシ斯ノ如キハ全國ニ例ヲ見サル處ナリ殊ニ本郡北部ノ八木町外六箇
町村ハ高田區裁判所ノ管轄ニ屬シ距離遠キハ三里ニ達シ不便甚シク之カ爲不測ノ
損害ヲ被ムルコト尠カラス依テ郡役所、中學校、郵便局其ノ他諸會社ノ所在地ニ
シテ貨物集散ノ要地ナル八木町ニ區裁判所出張所ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及御送付候也
第三十一特別報告第百六十五號
第四百五十三號
區裁判所出張所設置ノ請願長崎縣北松浦郡世知原村栗迎免三百六十
三番地ノ一平民雜業河內國十郞外三百二十名呈出(紹介議員辻川與
一右衞門君外一名)
右請願ノ要旨ハ長崎縣北松浦郡世知原村ハ人口三千六百餘ヲ有シ佐々、小佐
々、吉井ノ三村ト共ニ三里以上ノ距離ニ在ル區裁判所出張所ノ管轄ニ屬シ距離
遠キニ過クルヨリ不便大ナルノミナラス本村ノ登記件數ハ常ニ全區域ノ四分ノ一以
上ヲ占ム依テ右區域ヲ割キ本村ニ區裁判所出張所ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及御送付候也
第三十二特別報告第百六十六號
第四百五十八號
區裁判所出張所設置ノ請願靑森縣北津輕郡中里村長高橋作太郞呈出
(紹介議員石〓岡文吉君外五名)
右請願ノ要旨ハ靑森縣北津輕郡五所川原區裁判所金木出張所ノ管轄區域中
中里、武田、內潟ノ三村ハ出張所所在地トノ距離遠キニ過キ內洞村大字今泉ノ如
キハ殆ト五里ノ距離ニ在リ積雪ノ季節ノ如キハ人馬ノ往來阻絕シテ不便謂フヘカラ
ス依テ右三箇村ヲ管轄區域トシテ其ノ中央ナル中里村大字中里ニ區裁判所出張
所ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇ス
ヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第三十三特別報告第百六十七號
第三百七十九號
蠶絲業法中改正ノ請願鳥取縣東伯郡北谷村大字森村四番屋敷平民農
西谷金藏外七百十六名呈出(紹介議員武藤金吉君)
右請願ノ要旨ハ蠶病豫防ニ關スル檢査ハ當業者ノ希望ヲ俟テ之ヲ爲スモノニ非ス
國家ノ利害上必要ト認メ强制檢査ヲ施行スルモノナルニ其ノ費用ヲ府縣ニ負擔セシ
ムルハ失當ナリト謂フヘシ又近來框製蠶種ノ激增ヲ來シタルハ斯業ノ爲甚タ喜フヘキ
現象ナルニ檢査手數料ヲ徵收スルカ如キハ最危險ナル普通〓種ノ製造ヲ增加スルノ
虞アリ從來國家及府縣カ公益竝公衆衞生等ノ爲强制檢査ヲ施行スルモノ少カ
ラスト雖其ノ檢査ニ對シ手數料ヲ徵スルモノナシ蠶病豫防檢査ノ如キ亦同一ナルヘ
キ筈ナリ依テ蠶絲業法中第二十六條ノ後段「府縣ノ負擔トス」ヲ「國庫ノ負擔ト
ス」ト改メ但書ヲ割リ且第二十七條ヲ削除セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ
趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及御送付候也
第三十四特別報告第百六十八號
第四百四十八號
捕獲ヲ禁スル鳥類追加ノ請願高知縣水產組合組長北川深淵呈出(紹介
議員細川義昌君)
右請願ノ要旨ハ瀨鳥ハ遠ク洋海ニ飛翔シ食餌ヲ索ムル爲鮪鰹鰮其ノ他魚群ニ追
從伴行スルモノナルニ由リ漁夫ハ其ノ動靜舉止ヲ観テ魚群ノ在否、種類、多寡及
潮流ノ方向等ヲ察知シ執業ノ進退ヲ誤ラス該鳥ハ實ニ沖合漁業ニ必要ナル指導者
ナリ依テ之ヲ捕獲ヲ禁スル鳥類トシテ狩獵法施行規則中ニ追加セラレタシト謂フニ
在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院
法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第三十五特別報告第百六十九號
第三百七十三號
帝國軍人後援會國庫補助ノ請願東京府豐多摩郡戶塚村大字下戶塚七
十番地華族帝國軍人後增會理事伯爵大隈重信外九名呈出(紹介議員
〓窒太郞君)
右請願ノ要旨ハ陸海軍人ノ遺族及癈兵等ニ對シテハ癈兵院、思給扶助料等國家
ノ施設具ハレリト雖到底之ノミヲ以テ充分ナリト云フ能ハス且夫レ現役兵ノ救護ノ
如キハ服役者ヲシテ專心軍務ニ精勳セシムル上ニ於テ最必要ノコトニシテ之カ爲徵
集猶豫若ハ服役免除ノ適用ヲ要セサルニ至ラハ國民皆兵ノ實ヲ全フスルコトヲ得ヘ
シ帝國軍人後援會ノ事業ハ此等ノ目的ニ出ツルモノニシテ慈善事業ト謂ハムヨリハ寧
ロ國防上ノ補助機關ナリト謂フヘシ今ヤ二大戰役ノ後ヲ承ケテ救護ヲ要スル遺族癈
兵ハ著シク增加スルニ世ノ同情漸次冷却シ來ラムトス此ノ時ニ當リ本會事業ノ振否
ハ國民ノ獻身的精神ノ消長ニ關スル重要問題ナリトス依テ本會ニ國庫ノ補助アリタ
シト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ
依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第三十六特別報告第百七十號
第三百七十號
郵便局設置ノ請願埼玉縣北埼玉郡村君村大字下村君五十四番地平民
農田口與左衞門外十四名呈出(紹介議員齋藤珪次君)
右請願ノ要旨ハ埼玉縣北埼玉郡村君村ハ戶數五百餘人口三千六百餘ニシテ米
穀繭生絲織物等ノ輸出額三十九萬圓餘ニ達シ郵便電信ノ事項益多キヲ加フルニ
拘ラス所轄郵便局タル大越郵便局トノ距離二里三町ニシテ不便甚シ依テ本村中
央ナル村役場所在地ヘ郵便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ
至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
御送付候也
第三十七特別報告第百七十一號
第三百七十一號
郵便局設置ノ請願島根縣週摩郡久利村長森山英作星出(紹介議員石
田孝吉君外一名)
右請願ノ要旨ハ島根縣邇摩郡久利村ハ縣道中央ヲ縱貫シ百般ノ施設向上ノ氣
運ニ會シ〓育殖產ノ事業著シク進步シ信用組合、購買組合、、定期牛馬市場ノ設
ケアリ旅客ノ來往、出稼ノ增加等通信機關ノ施設ヲ要スルモノ切ナルニ拘ラス郵便
局ノ設備ナキ爲不便甚シ依テ本村ヘ郵便局ノ設置アリタシト謂フニ在リテ衆議院ハ
其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ
依リ別册及御送付候也
第三十八特別報告第百七十二號
第三百七十二號
郵便局設置ノ請願島根縣八束郡御津村長小笹壽一郞呈出(紹介議員
石田孝吉君)
右請願ノ要旨ハ島根縣八束郡御津村ハ戶數約百八十人口約一千ニシテ農漁業
ニ從事シ殊ニ蠶業ハ近時大ニ發達シ郡內屈指ノ地ト目セラレ他地方ヨリ雇用スルモ
ノ每年約四百名ノ多キニ達ス且隱岐國ト松江市トノ交通ハ總テ此ノ地ヲ經由スル
カ爲當地港灣ニ出入スル船舶ノ數ハ年々數百ヲ下ラス從テ郵便事務モ益多キヲ加
フルニ拘ラス管轄局タル加賀局ニ遠ク且外來郵便物ハ總テ松江局ヨリ本村ヲ經過
シテ加賀局ニ遞送シ更ニ本村ニ配達セラルルノ地勢ニ在ルカ故遲著甚シ依テ本村ニ
三等郵便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之
ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第三十九特別報告第百七十三號
第三百八十一號
郵便局設置ノ請願島根縣邑智郡谷住〓村長代理助役田中重信呈出
(紹介議員恆松隆慶君)
右請願ノ要旨ハ島根縣邑智郡谷住〓村ハ戶數四百餘人口二千六百餘ノ小村ナ
ルモ小商工業者多ク又出稼人ノ多キコトモ近鄰其ノ比ヲ見ス從テ郵便電信爲替等
ノ夥多ナル管轄局市山郵便區內第一位ニ居ル然ルニ市山局ニ至ル間ニ二川アリ共
ニ渡船ニ依リ近キハ一里半遠キハ四里以上ノ道程ヲ有シ殊ニ降雨ニ際シテハ交通
遮斷ノ不幸ニ遭遇スルコトアリテ其ノ不便甚シ依テ本村ニ郵便局ヲ設置セラレタシト
謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ
議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第四十特別報告第百七十四號
第三百八十五號
郵便局設置ノ請願岡山縣阿哲郡豐永村大字佐伏五百五十九番地平民
農荻野繁太郞外四十九名呈出(紹介議員福井三郞君外一名)
右請願ノ要旨ハ岡山縣阿哲郡豐永村及草間村ハ共ニ高山ノ巓ニ在り所轄郵便
局ハ山下ノ平坦部ニ在ルカ故ニ配達ニハ一里餘ノ峻坂ヲ攀チテ二平方里强ノ山腹
溪谷ニ散在セル人家ニ至ラサルヘカラス其ノ不便少カラス依テ右二村ヲ管轄區域ト
シテ適當ノ箇所ニ郵便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當
ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依り別册及御送
付候也
第四十一特別報告第百七十五號
第三百八十六號
電信局設置ノ請願岡山縣阿哲郡矢神村·大字矢田六百二十九番地平民
公吏安田士磨外六十八名呈出(紹介議員福井三郞君外一名)
右請願ノ要旨ハ岡山縣阿哲郡矢神村ハ郡ノ西部ニ位シ大字矢田ノ如キハ矢神
外四箇村ノ中心地〓ニ當リ物資ノ集散尠カラス然ルニ電信局ノ設置ナク四里六里
ノ遠路ヲ往復シテ用ヲ辨セサルヘカラサルカ故不便甚シ依テ矢田ニ電信局ヲ設置セ
ラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議
決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第四十二特別報告第百七十六號
第三百九十八號
三等郵便局設置ノ請願山梨縣北巨摩郡日野春村二十七番戶平民農武
井佐太郞呈出(紹介議員根津嘉一郞君外一名)
右請願ノ要旨ハ山梨縣北巨摩郡日野春村大字富岡ハ日野春停車場ノ所在地ニシ
テ郡ノ中央ニ位シ貨物ノ集散夥シク縣郡ノ講習會、品評會、牛馬糶市場等ノ開設
セラルル處ナルヲ以テ乘客モ亦頻繁ナリ然ルニ郵便事務ハ一里半ノ秋田郵便局ニ
屬シ停車場附近ニ配達セラルル郵便物モ同局ヘ遞送ノ上配達セラルルヲ以テ一日以
上ノ日子ヲ空費スルノ不便アリ依テ甲村、熱見村ノ一部、若神子村ノ一部、新富
村武里村、圓野村及日野春村ヲ管轄區域トシテ日野春停車場附近ニ三等郵
便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇
スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第四十三特別報告第百七十七號
第四百四號
郵便局設置ノ請願千葉縣匝瑳郡東陽村五千六百四十三番地平民農椎
名熊治郞外二百八十二名呈出(紹介議員關和知君外一名)
右請願ノ要旨ハ千葉縣匝瑳郡東陽、南條、白濱ノ三村ハ縣道ノ通路ニ當リ交通
絕エス一致事ニ膺ルヲ常トス而シテ三村ハ蠶業盛ニシテ且米穀海產等各特有ノ物產
ニ富ミ東陽村上宮川ノ如キハ鐵道荷馬車舟楫ノ便アリ商家櫛比シ交通織ルカ如ク
輸出入ノ貨物頗ル多額ナリ從テ通信往復ノ迅速ヲ要スルモノアルニ拘ラス三村中郵
便局ノ設置ナク局所在地ハ近キモ二里遠キハ三里ニ達シ不便謂フヘカラス依テ東陽
村上宮川ニ三等郵便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナ
リト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付
候也
第四十四特別報告第百七十八號
第四百七號
郵便局設置ノ請願岡山縣赤磐郡五城村大字平岡西平民農浦上宗志外
十三名呈出(紹介議員福井三郞君)
右請願ノ要旨ハ岡山縣赤磐郡五城村ハ町苅田郵便局ノ所管ニ屬シ二里ノ距離ニ
在リ又布都美村ハ仁堀郵便局ノ管轄ニ屬シ遠キハ三里ニ餘レリ而シテ遞送ノ順路
ハ町苅田局ヲ經テ仁堀局ヘ達スルヲ以テ發著共布都美村ハ一日ヲ遲ルルノ觀アリ
殊ニ最遠距離ニ在ル大字石上ニハ佐野鑛山アリテ盛ニ發展シツツアルヲ以テ通信爲
替等頻繁ナルニ不便甚シ依テ兩村ヲ管轄區域トシテ五城村大字平岡西ニ郵便局
ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキ
モノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第四十五特別報告第百七十九號
第四百八號
郵便局設置ノ請願三重縣名賀郡上津村大字伊勢地五十一番屋敷平民
農山本奈良次郞外二十名呈出(紹介議員濱田國松君)
右請願ノ要旨ハ伊賀國名賀郡上津村ハ神宮大廟ニ詣ツル要路ノ一宿驛ニシテ稍
市街ノ狀態ヲ爲シ周圍各村貨物ノ集散地タリ從テ通信機關ノ利用ヲ要求スルモノ
多キニ拘ラス郵便局ノ設備ナキ爲不便甚シ依テ本村ヘ郵便局ヲ設置セラレタシト謂
フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
第四十六特別報告第百八十號
第四百十三號
郵便局設置ノ請願新潟縣南蒲原郡大面村大字大面二十九番戶平民農
片野寅太郞外四十六名呈出(紹介議員高橋光威君)
右請顧ノ要旨ハ新潟縣南蒲原郡大面村大字大面、北潟、、矢田、吉野屋、鴨ケ池、
藏內、茅原、戶口安代、高安寺、小瀧、新潟村ノ東部、本成寺村ノ南部ハ通
信機關ノ完備ヲ〓キ人文ノ開發農工商業ノ發展ニ伴ハス且大面村大字大面ノ如
キハ舊驛場ニシテ商店多ク駐在所、學校等アリ大字矢田ニハ鑛泉アリテ交通頻繁
ナリ然ルニ帶織郵便局ノ管轄ニ屬シ不便甚シ依テ前記部落ヲ管轄區域トシテ大面
村大字大面ニ三等郵便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リテ衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至
當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御
送付候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=80
-
081・大岡育造
○議長(大岡育造君) 此場合委員ノ指名ヲ致シマス、同時ニ前囘漏レタヤウデアリ
マスカラシテ尙申シテ置キマス、卽日委員長、理事ノ選舉アランコトヲ望ミス
〔書記朗讀〕
日本勸業銀行法中改正法律案外二件委員
西谷金藏君富安保太郞君古井由之君
稻村辰次郞君村井善四郞君森正君
高木正年君永野靜雄君松本恆三郞君
右互選ハ第一委員室
朝鮮ニ於ケル學校職員ニシテ國庫ヨリ俸給ノ支給ヲ受ケサル文官判任以上ノ者
ノ退隱料及遺族扶助料ニ關スル法律案委員
根本正君佐々木文一君木戶豐吉君
世良靜一君町田旦龍君橫大山內暢三君
澤來太郞君荒川五郞君金太郞君
右互選ハ第九委員室
新二十錢銀貨改鑄ニ關スル建議案委員
三浦盛德君森茂生君塚田啓太郞君
安川保次郞君高橋政右衞門君平島松尾君
藏原惟郭君齋藤巳三郞君松尾寅三君
右互選ハ兩院協議室発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=81
-
082・大岡育造
○議長(大岡育造君) 次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是ニテ散會
午後四時三十二分散會
衆議院議事速記錄第十九號正誤
頁段行誤正
三一九下一五九十二件九十三件発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002813242X02119120316&spkNum=82
-
本文はPDFでご覧ください。
3. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。