1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
大正三年三月四日午前十時二十九分開議
出席委員左の如し
戸水寛人君 島田俊雄君 八木逸郎君
岸本賀昌君 山宮藤吉君 荒川五郎君
紫安新九郎君
出席國務大臣左の如し
文部大臣兼司法大臣 奥田義人君
出席政府委員左の如し
文部次官 福原鐐二郎君 文部省專門學務局長 松浦鎭次郎君
文部省普通學務局長 田所美治君 文部省宗教局長 柴田駒三郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
地方學事通則改正法律案
實業教育費國庫補助法改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=0
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001・戸水寛人
○委員長(法學博士戶水寛人君) ソレデハ會ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=1
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002・奧田義人
○文部大臣(法學博士奧田義人君) 地方學事通則ノ改正案ニ付キマシテ、先達本
會議ノアリマシタ節ニ大體述ベテ置キマシタノデアリマス、尙ホ又重複ニハ涉リマスケレ
ドモ、本委員會ニ於キマシテ念ノ爲メ重ネテ大體ノ事ヲ申述ベタイト考ヘマス、此地方
學事通則ハ先達モ述ベテ置キマシタ通リニ、明治二十三年ニ制定ニナリマシタモノデ、其
後確カ一囘極ク此一々タル改正ヲ施シタバカリデアッテ今日ニ至ッテ居リマス、然ルニ一方
是レト最モ密着ノ關係ヲ有ッテ居リマス所ノ市制及町村制ハ、御承知ノ如クニ改正セラ
レマシテ、確カ明治四十四年カデアリマシタガ、改正法ガ實施ニナッテ居リマス、トコロガ此
地方學事通則ニ規定シテ居リマスモノヽ中ニ、市町村制ノ改正ノ結果、或ハ不用トナッ
タ條項モアリマスシ、或ハ又文字其他條文等ニ於テ雙方照シ合セテ見マスト、コチラノ
法律ノ方ハ今モ申シマシタ如ク舊ク出來タ法律デアリマスカラ、甚ダ今日ノ市町村制ニ
合ハシテ統一シテ居ラヌ文字々句等ガアリマス、彼是レ此場合ニ於テ全部ヲ改正シタ方ガ適
當デアラウト信ジマシタ、就中新シク設ケナケレバナラヌ事柄ガ大體三項アリマス-其第
一ハ學區廢止ノ場合ニ於ケル財產處分ニ關スル規定デアリマス、學區ト云フ言葉ハ從來小
學校竝ニ地方學事通則等ニモ無イデス、新タニ設ケマシタコトデ、普通ニハ學區ト云フコトハ
言ッテ居リマスケレドモ、法令ノ上ニ於キマシテハ單ニ「學校ノタメニ區ヲ設クルコトヲ得」
ト云フコトニナッテ「學區」ト云フ特別ノ名稱ハナイ、ソレヲ今度ハ明カニスルガタメニ他ノ
區ト區別ヲ明カニスルガ爲メニ、通常用井テ居ル名稱ト違ッテ「學區」ト云フ特別ノ名稱
ヲ付ケマシタ、此所謂學區ナルモノハ市ダケニ付テ見マスト、御承知ノ如ク東京ハ十五
區行政區ガアリマスガ、丁度學區モ十五ニ別レテ居リ、大阪ハ學區ガ六十四アルト思ヒ
マリ、京都ハ六十一神戶ハ六アリマスト云フヤウナ譯デ、市ダケニ付テ見マシテモ隨分
學區ノ數ハ多イ、ソコデ或ハ土地ノ狀況ニ依リマシテ、一學區ヲ廢止シテ他ノ學區ニ合
併スルト云フヤウナコトノ必要ヲ認メルコトモアリマス、或ハ又市町村デ以テ之ヲ希望ス
ル、卽チ或學區ヲ廢スルコトヲ希望スルト云フヤウナコトガ時々アリマス、然ルニ此區ノ所
有ニ屬シテ居リマス所ノ財產、學區ハ廢セラレテシマウ、從來學區ニアリマシタ其區ガ所
有シテ居ル財產處分ニ關シマシテ、市町村ト學區トノ協議ガ能ク整ヒサヘスレバ論ガ無
イケレドモ、協議ガ整ハナカッタ場合ニ於テハ、學區ハ廢シテシマッタガ財產ハ遺ルト云フ
コトニナルト、其財產ハ理窟上カラ申スト無主物トナル形ニナル、今マテハ或學區ノ所有
財產デアッタ、然ルニ學區ハ廢シタ財產ダケ遺ッタト云フト主體ガ無クナッテシマッテ、財產
ハ無主物トシテ遺ルヤウナ結果ヲ見ルノデアリマス、ソレ故ニ學區ヲ廢シヤウトシテモ、其
處分法ガ定メテナイ爲メニ、其結果遂ニ學區ヲ廢スルコトガ出來ヌト云フコトニナリマシ
テ、是マデ確カ兩三度斯ウ云フヤウナ場合ニ遭遇シテ、結局實行スルコトノ出來ヌヤウナ
コトデ其儘ニナッテ居ルノデアリマス、之ニ依テ此改正ニナリマシタ市制町村制ノ規定ヲ
參酌シテ、此改正案ノ第四條ノ規定ヲ新タニ設ケテ、學區廢止ノ場合ニ於ケル財產
處分法ヲ定メマシタ、之ガ改正ヲ致シマシタ中ノ新タニ設ケタ事項ノ一ツデアリマス、ソレ
カラ第二ノ〓ハ從來ノ地方學事通則ニ依テ見マスト町村間ニ於テハ兒童〓育事務ノ
委託關係ヲ認メテアルノデアリマス、然レドモ市ト町村トノ間ニ於テ委託關係ヲ認メテア
リマセヌ、市カラ町村ニ或ル範圍ノ兒童ノ〓育ヲ委託スルトカ、或ハ町村カラ市ノ方ニ
委託スルトカ云フヤウナコトハ認メテナイノデアリマス、然ルニ實際ノ狀況ニ徵シテ見マス
ルノニ、是ハ事實上認メテ置キマセヌト云フコト、例ヘバ市ト或ル村ト境界ヲ接シテ居リ
マスヤウナ時ニハ、其村ノ兒童ノ幾部分ハ市ノ方ノ學校デ〓育ヲ受ケルコトガ出來得
ル途ガアリマスレバ、大變ニ通ッテ參リマスル其距離モ近クテエライ便利テアル、其途ガ
ナイガタメニ已ヲ得ズ一里モ一里半モアルヤウナ學校ニ通ハナケレバナラヌト云フヤウナ
コトガ起ッテ來マスル、ソレデ相當ノ費用ハ計上ヲ致シテ、サウシテ市ト町村トノ間ニモ其
委託關係ヲ認メルト云フコトハ、必要デアルノハ實際上疑ノナイ有樣ニナッテ居ル、ソレ故
ニ先達モ述ベマシタル如クニ、大阪トカ神奈川、宮城、岩手、山形、三重、愛知、佐賀、
斯ウ云フヤウナ所デハ暗默ノ間ニ行ッテ居ルノデアリマス、法規上ニ於テハ認メテ居リマセ
ヌガ、實際ノ不便ヨリ暗默ノ問ニ其委託ヲシテサウシテ行ッテ居リマスケレドモ、旣ニ町村
間ニ此〓育事務ノ委託ノ關係ガ定メテアリマスル以上ハ、ヤハリ市ト町村トノ間ノ委託
關係モ明カニシテ置クト云フコトハ、是ハ法律上當然ノコトデアラウト考ヘマスルノデ、此
條ヲ新タニ加ヘマシタノガ一ツデアリマス、ソレカラ今一ツノ〓ハ市町村學校組合ノ設置
ノコトデアリマス、是ハ丁度第七條ニ當リマス、御承知ノ如クニ前ノ市制町村制ヲ見マ
スト云フト、組合ハ單ニ町村組合ヲ認メテアルバカリデアッテ、市ト町村ノ組合ト云フモ
ノハ認メテナカッタ、舊法デハ-ソレガ改正ノ市町村制デハ町村ト市トノ組合ヲモ認メ
ル斯ウ云フコトニナリマシタ、舊法ニ於テ既ニ認メテナカッタモノデアリマスルカラシテ、從テ
此學校ノコトニ付キマシテモ町村組合ハ之ヲ認メテアッテ、市ト町村ト組合ッテ學校ノ
經營ヲスルト云フコトハ認メテナカッタ、市制ノ方ガサウ云フヤウニ變ッタモノデアリマスカ
ラ、自然ノ結果、學校ノコトニ付テモヤハリ市ト町村ト組合ッテ、其經營ヲナスコトガ出
來ルト云フコトヲ認メルノ必要ガアリマス、今一例ヲ〓ゲテ見マスレバ、山口縣下ノ三田
尻ハ今ハ町デアル、此三田尻町トソレカラ他ノ七箇村ト組合ッテ周陽中學校ト云フモノ
ヲ設ケテ居ル、是ハ今日ノトコロデハ町村ノ組合テ設ケテアル、然ルニ二田尻町ガ段々ト
發展ヲ致シマシテ、他日之ガ市トナリマス、市トナリマシタ時ニハ、直ニ市ト町村トノ組
合ヲ認メテ居リマセヌカラ、從來存在シテ居リマス組合ト云フモノハ自然消滅ニナッテシ
マヒマシテ、共同シテ學校ヲ經營シ維持スルコトガ出來ナクナル、斯ウ云フ事情ニ陷リマ
ス、故ニ今日ニ於テドウシテモ市ト町村トノ學校組合ヲモ組織スルコトガ出來得ル途ヲ
開ヒテ置キマセヌト云フト、段々ト今例ニ〓ゲマス三田尻町ノ如キ場合ト云フモノガ增
加シテ來ヤウト考ヘマス、ソレ故ニ此途ヲ開キマス爲ニ第七條ニ於テ新ニ箇條ヲ設ケマシ
タ、卽チ以上述ベマシタトコロノ三事項ガ今囘新タニ加ヘマシタトコロノ事項デアリマシ
テ、其以外ハ冐頭ニ述ベテ置キマシタ通リ市町村制改正ノ結果、彼レ是レヲ斟酌致シ
マシテ、或ハ字句ノ修正ヲナシ、或ハ又條文ノ整理ヲ行ッタニ過ギマセヌ、尙ホ理由ノ詳
シイコトハ私ナリ又ハ他ノ政府委員ヨリ御質問ニ應ジテ御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=2
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003・島田俊雄
○島田俊雄君 此場合、大體ニ付テ二點程大臣ノ御說明ヲ求メテ置キタイト思ヒマ
ス、其一ツハ我國ノ現行ノ〓育法令ノ全體ヲ通ジテ見マスルト、〓育ノ大方針ハ明治
二十三年ノ〓育勅語ニ依テ立テラレテ居ルト云フコトハ是ハマア何人モ疑ノナイトコロデ
アラウト信ジテ居リマス、其勅語以外ノモノニ付テ見マスルノニ、〓育ノ法規ニシテ法律
ノ形ニ規定セラレテ居ルモノハ甚ダ少イ、少イト云フヨリハ此地方學事通則ト云フモノ
ヲ除ク外ニハ、殆ド他ニナイト言ッテモ宜イ位ナモノデアル、既ニ今御提案ニナッテ居リマ
ス他ノ一ツノ實業〓育ノ補助法ノ如キハ、法律デ規定セラレルノデアリマス、ケレド
モ、其以外ニハナイノデアリマス、而シテ大學ニハ大學令ト云フモノガアリ、中學ニハ中
學令、師範學校ニハ師範學校ノ規則ト云フヤウニ、キレ〓〓ノ學校ニ付テキレ〓〓ノ
法則ガアッテ、其間ヲ統一シ、ソレ等ノモノニ通ズル根本ノ法則ト一云フモノヲ見出スコト
ガ出來惡イヤウニ考ヘテ居ルノデアリマス、此地方學事通則ト云フモノハ、旣ニ御說明
モアリマシタ如ク、舊キ時代ニ制定セラレタモノデアリマシテ、地方ノ學事ニ關シテ完全
不完全ト云フコトハ暫ク措イテ、免ニ角此法律ガアッテサウシテ此地方ノ學事ニ付テノ
根本ノモノトナッテ居ルヤウデアリマス、其他一般ノ國家全體ニ通ズル學制ノ根本法規
ト云フコトニ付テハ無論御調査ニモナッテ居ルコトデアリマセウ、御計畫モアルコトデアラウ
ト考ヘマスガ、是等ニ付テ何カ根本ノ法則ヲ設ケル法律ヲ以テ定ムル、通ジタル共通ノ
法則ヲ定ムルト云フ御考ガアルヤ否ヤ、此〓ニ付テ御聽キシテ置キタイト思ヒマス、ソレ
ガ一ツデアリマス、第二點ハ他ノ部分ニ於テモヨクアル行政上ノ弊害ト云ヒマスカ、或
ハ習慣ト言ヒマスルカ、種々ノ規定ヲ法律ニ定ムベキ事柄ヲ勅令ニ讓リ、勅令ニ定ムベ
キ事柄ヲ省令其他ノ以下ノ法令ニ讓ルト云フコトハヨクアルコトデアリマスガ、〓育方面
ノ法令ヲ見マスルト殊ニソレガ多イ、今前ニ質問ヲ申上ゲマスル場合ニ申シマシタ大學
令或ハ中學令ト云フヤウナモノモ、多クハ勅令デ出テ居ルト云フコトモ其一ツデアリマス
ガ、ソレデナクテモ現ニ玆ニ出テ居リマス學事通則ノ中ニモ、勅令ニ其規定ヲ讓ッテ居ル
場合ガアルノミナラズ、重大ノ事柄ガ勅令ニ讓ラレテ居ルノデアリマス、例ヘバ第一條第
二項ノ但書ノ如キ、第七條ノ第二項ノ如キモノハ重大ノ關係ヲ含ンデ居ルモノト思フ、
唯今大臣ノ御說明中、學校組合ノ規定ヲ新設サレタト云フコトデアリマシタガ、此學
校組合ニ就テモ勅令デ市制町村制ニ對シ別段ノ規定ヲ設ケルコトガ出來ルト云フ、可ナ
リ重大ナル意味ヲ含ンデ居ルモノガ勅令ニ讓ッテアル、是ハ一面ニ立法上竝ニ〓育行政
上モ注意スベキモノト思フ、同時ニ他ノ一面ニ於テハ此ノ如クスルハ洵ニ行政ノヤリ方ト
シテ法律ニ頭ダケヲ出シテ置イテ、後ノコトハ勅令デ宜イ加減ノコトガ出來、又勅令ノコト
ハ省令ニ讓ルコトガ出來テ、所謂朝令暮改ヲシテモ法律ニ影響シナイト云フコトニナルノ
デアル、此ノ如キハ表面ヲ飾ル上ニ付テハ都合ガ宜イガ、實際ノ仕事ノ上ニ就テハ一定
ノ主義方針ナクシテ、一方ニハ都合ガ宜イカ知ラヌガ、現行ノ〓育法令ヲ知ル上ニ付テ
一般ノ人民ハムヅカシイノデアル、〓職ニ從事セラルヽ者ハ始終見テ居リマスカラ、之ヲ
知ルコトハ困難デナイカ知レマセヌガ、一般ノ國民全體カラ云フト、此ノ如キ委任ノヤリ
方バカリデハ洵ニ宜シクナイト云フヤウニ思フ結果、其弊害ガ此學事通則ノ上ニ於テモ
旣ニ現レテ認メラレテ居リハセヌカト思フノデアリマス、又是ガ他ノ一方カラ觀察スルト、今
日我國ノ學制ノ不統一、學制ノ不振ト云フ原因モ玆ニアリハセヌカト思フノデアリマス、デ
此〓育法規ノ上ニ付テ勅令ニ規定ヲ委任シ、勅令ニ規定スベキモノヲ省令以下ノモノ
ニ委任スルト云フ委任ノ方法ヲ多ク用ヒラレテ居ル趣意ハ、何カ特殊ノ事情ガアレバ其特
殊ノ事情ノ御說明ヲ願ヒタイ、例ヘバ彼ノ學務委員ノ規定ニ付テモ、學務委員ト云フ
モノハ勅令ノ小學校令ニ定メラレテ居ルガ、施行細則ノ中ニ學務委員ノ職務權限ガ規
定サレテ居ル、是ハ法律ノ規定デナイカラ不便デアレバ勅令ハ省令ニシ、省令ハ省議ニ
依ッテ勝手ニ變ヘルコトガ出來ルカラ、此學務委員ノコトノ如キ小學校令ニ規定シテア
リマスガ、實際省令ノ結果ニ依ッテ極メルコトガ出來ルト思フノデアリマス、是等ノ點ニ
付テ勅令省令ニ委任スルト云フ根本法規ニ屬スルモノヲ委任スルト云フコトニ付テハ、
特殊ノ事柄ガナケレバ御改メニナル方ガ宜カラウト思ヒマスガ、ソレヲ委任サルヽニ付テハ
何カ特別ノ事情ガアルノデアリマスカ、之ヲ伺ヒタイ、之ヲ要スルニ第一ノ點ハ此地方學
事通則ヲ法律デ定メル以外、他ノ一般ノ學制ノ根本ニ付テ法律ヲ以テ設ケラルヽ意思
アルヤ否ヤ、第二〓ハ〓育法規ノ如キハ全然勅令省令委任ノ形式ヲ有ッテ居ルガ、此
法規ノ重要ナ規定ヲ委任スルニ付キ弊害ガアルト思フ、此〓ニ付キ當局者ノ御意見ハ
如何デアルカト云フ、此二〓ニ付テ御說明ヲ願ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=3
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004・奧田義人
○文部大臣(法學博士奧田義人君) 御質問ハ詰リ一般ノ學制ヲ法律デ定メズニシテ
命令デ定メテ居ルノハドウカト云フモノニ歸スル御質問ト思ヒマス、是ハ法律ヲ以テ定メ
ナケレバナラヌ事項ニ入ッテ居リマセヌ、此〓育上ノコトト云フモノハ卽チ命令ヲ定メ得ル
事項ニナッテ居リマス、嘗テ私ノ記憶シテ居ル處ニ依ルト、唯今御質問ニナッタヤウナ議
論ガ生ジマシタコトガアリマシテ、法律ヲ以テ學制ヲ定メルガ宜イ、斯ウ云フ論ガ生ジタコ
トガアッタ時ニ、ソレハ慥カ議院デハナカッタ、政府部內デアッタト覺エテ居リマスガ、盛ニ
論議サレタコトガアリマシタガ、結局〓育ノコトハ憲法ニ依ル法律事項デモナイ、而シテ法
律ヲ以テ定メナケレバナラヌト云フ理由ガ他ニ存在シテ居ルカト云ヘバ決シテ存在シテ居
ラヌ、所謂命令ヲ以テ定メ得ル事項ニ屬スルコトデアルカラ、總テ〓育ニ關スルモノハ大
體命令デ定メテ、而シテ悉ク皆ナ樞密院ノ議ヲ經ナケレバナラヌ、斯ウ云フコトニナッテ
今日マデ來テ居ルノデアリマス、サレバト言ッテ法律デ定メルコトガ出來ヌ事項デアルカト
云ヘバ、私ハ必ズサウハ思ハヌ、定メテモ差支ナイト信ジテ居リマスガ、法律デ定メナケレバ
ナラヌ理由ガアルカト云ヘバ決シテナイノデ、既ニ今申シタ如ク初メカラ是ニ付テ論議ガ
アーメ、命令ノ範圍ニ屬スルモノデアルカラ命令ヲ以テ定メラレル、斯ウ云フ趣意ニ外ナラ
ヌト思ヒマス、殊ニ市町村制ヲ御覽ニナリマシテモ、市制ノ第二條ニ「市ハ法人トス官ノ
監督ヲ承ケ法令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共ノ事務竝從來法令又ハ慣例ニ依リ及將來
法律勅令ニ依リ市ニ屬スル事務ヲ處理ス」斯樣ニ規定シテアリマス、卽チ此中ニ〓育
事務ノ如キモノモ入ッテ居ルノデアリマス、〓育ニ關スルコトハ小學校令ノ如キ命令デ之
ヲ定メテ、此負擔ニ屬スルコトモ尙且市町村ニ命ズルコトガ出來得ルヤウニ市制ガ認メ
テ居リマス、或ハ市ノ一部ノ權利ヲ規定サレタ第七章ノ規定ヲ見テモ、最後ノ第百四
十八條ニ「本法ニ規定スルモノヽ外勅令ヲ以テ之ヲ定ム」斯ウ云フヤウニナッテ居ッテ、如
何ニモ〓育ノコトハ御承知ノ如クニナカ〓〓複雜ニ亙ッテ居リマスルシ、種々改廢ヲ要ス
ルモノガアッテ、一々之ヲ法律ヲ以テ極メルト云フコトハ實際ノ上ニ於テ甚ダムヅカシイコ
トデアラウト思フ、卽チ法律ヲ拵ヘマシタトコロ、ホンノ大體ノコトデ、而シテアトハ勅令委
任ニナルヨリ途ハナイノデ、實際法律ヲ拵ヘテモ拵ヘマセヌデモ同ジコトニ陷ルヤウニ考ヘ
マスノデ、將來モ命令ノ範圍ニ屬スルモノトシ、殊ニ實際上カラ斯樣ニ致シテ置クノガ宜
カラウト云フコトデ今日ニ至ッテ居ルト思ヒマス、又法律ニ關スルコトガ或ハ大學令トカ
中學令トカ種々ニナッテ居ッテ、一貫シテ居ラヌト云フ御話デアリマス、如何ニモ是ハ片々
ニナッテ居ルヤウデアリマスケレドモ、自カラ此間ニ一貫シテ居ルノデアリマス、別々ナ命令
ニハナッテ居リマスケレドモ、自カラ此間ニ一貫ヲシテ居ルノデアッテ、是ハ唯一ツノモノニ
纒ッテ居ラヌト云フダケノ話、一ツノモノニ纏ッテ居ルト同ジ系統ヲ以テ一貫シテ居ル、是
ガ大學ノ爲メニ中學ノ爲メニ或ハ小學ノ爲メニト云フヤウナ譯ニ別々ニナッテ居ッタカラト
云ッテ、何モ格別ナ不便ヲ感ズルコトモアリマセズ、是ガ爲メニ學制上不統一ヲ來シテ居
ルコトガアルカト申シマスルト、之ニ依ッテ以テ不統一ヲ來シテ居ルト云フコトハ私ハ實際
ニ於テナイト思ヒマス、サウ云フヤウナ譯デアリマシテ、ツマリ意見ヲ異ニスル〓ハ致シ方ガ
ナイノデアリマスケレドモ、今日迄斯樣ニナッテ居ル理由ヲ簡單ニ述ベマスルト、サウ云フヤ
ウナコトニ外ナラヌノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=4
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005・島田俊雄
○島田俊雄君 大體御說明デ分リマシタガ、此命令委任ヲスルト云フコトハ、單ニ法
律デヤラズニ勅令デヤルバカリヲ言ッタノデナイ、勅令ニ定メテアルモノヲ又省令ニヤル、是
ハ能クアルコトデアリマスケレドモ、隨分重要ナコトヲ省令ニヤッテ居ルト云フコトガアル、
此委任ト云フコトハドウモ餘計多過ギルヤウニ思フノデアル、其點モ御聞キシタ譯デアリ
マスガ、法律デ定ムベキモノトカモノデナイトカ云フコトハ別ト致シマシテ、命令ヲ以テヤッテ
居ルト云フ〓ニ付テハ、唯今ノ御說明ニ就テハ法律デ特ニヤラナケレバナラヌト云フコト
ガナイカラ、便宜上命令デヤリ來ッテ居ルカラヤル、斯樣ナ御答辯ニ承知シテ宜シウゴザ
イマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=5
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006・奧田義人
○文部大臣(法學博士奧田義人君) 固ヨリ法律デ定メナケレバナラヌ事柄ハ卽チ法
律デ定メル、而シテ法律ノ中ニ餘リニ複雜ニ亙リマシタ規定ヲ置クコトモ出來ナイカラ、
斯ウ云フ今ノ七條ノ如クニ「勅令ヲ以テ市町村制ニ對シ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得」
ト云フヤウナ意味ノ規定ト云フモノガ出來ル、是レバカリデナイ、多數アルコトハ御承知ノ
通リデアルノデアリマス、私ノ考ヘテ居ルトコロニ依リマスルト、立法ノ當時ニ於キマシテ、
是ハ命ニ令委任ヲスルト云フコトハ宜シクナイ、必ズ細カイコトマデ規定ヲシナケレバナラヌ
ト云フコトヲ立法部ニ於テ御認メニナリマスナラバ、何モ必シモ是非トモ之ヲ命令ノ範圍
ニ屬セシメテ貰ハナケレバナラヌト云フコトヲ私共決シテ主張シナイ、唯餘リ煩雜ニ亙リマス
カラ、煩雜ニ亙ルヤウナコトハ命令ニ委任ヲスル方ガ便宜デアルト云フ趣意カラ彼處此
處ニ命令ニ委任スルノ規定ガ出來テ居ルモノデアラウト思ヒマスカラ、何モ之ニ依ッテ以テ
勝手ナコトヲ行政部ニ於テヤラウト云フヤウナ趣意ハ毫頭無イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=6
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007・島田俊雄
○島田俊雄君 其〓ハ議論ニナリマスカラ御說明デ滿足ヲシテ置キマス、第一ニ私ガ
御問シマシタ學事ニ關スル根本ノ法規ト云フコトニ付テハ御說明ハアリマシタガ、ソレハ
從來ノ成行ニ就テノ御說明デ、從來斯ウ云フ風ニナッテ居ル、ソレデ不統一ヲ感ジナイ、
不便ヲ感ジナイト云フ御說明デアリマシタ、ソレハ私モ承知シテ居ル、私ノ希望モ、大學
令モ中學校令モ何モカモ一ツノ法典ニ纏メルト云フ意味デナイ、サウ云フモノヲ共通ニシ
タ一ツノ原則ト云フヤウナモノガ立テ得ルダラウカ、統一ヲ得ルト云ヘバ拵ヘレバ拵ヘルノ
デアル、唯今ノ大學ハ何年、中學ハ何年、其詳細ナコトハ勅令ヤ外ノモノニ讓ッテモ、サ
ウ云フモノハ共通ナモノガ出來得ル、地方學事ニ付テ學事通則デ出來ルヤウニヤリサヘ
スレバヤリ得ル、ソレヲスル御考ガアルカドウカ、或ハ從來ノ通リデ滿足シテ從來ノ通リ
ヤッテ行ク御考デアルカト云フコトヲ確メテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=7
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008・奧田義人
○文部大臣(法學博士奧田義人君) 從來〓育ノコトニ關シマシテハ、先刻述ベマシ
タ通リニ各種ノコトガ命令ニ出テ居ルノデアリマスガ、其命令ノ趣旨ガ皆學事ニ關スルト
コロノ原則ヲ示シタモノデアリマス、其以外ニ屬シマスコトハ何レモ皆運用ニ屬スル、迚
モ法令ノ上ニ一々規定スルコトノ出來ヌコトガ多イ、例ヘバ〓育ノ主義ト致シマシテ人
格ヲ養成スルコトヲ本主義ニスルトカ何トカ云フヤウナコトハ、是ハドウモ法令デ定メルコ
トハ出來ナイ、詰リ〓育ノ上ニ實際ノ活用上行フベキコトデアラウト思ヒマス、大體ノ體
形ニ關スル事柄ハ今ノ命令デ原則ヲ定メラレルモノト認メテ居リマス、將來ニ於キマシテ
モ私ハ目下ノ考デハ從來ノ通リデ差支ナイ、別段ニ特別ノ學制ト云フモノヲ作ッテ、サウ
シテ今命令デ定メテ居リマスルヤウナ同ジヤウナモノヲ又改メテ法律ニスル必要ハナイ、斯
樣ニ考ヘル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=8
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009・紫安新九郎
○紫安新九郞君 文部大臣ニ御尋ヲ致シマスガ、現行ノ地方學事通則ハ甚ダ備ラザ
ル所多シト存ジマシタガ、此改正案ニ依リマシテ其不備ヲ補フト云フコトハ洵ニ結構ナコ
トデアリマス、併ナガラ尙此改正法律案ニ對シマシテ疑惑ヲ懷キマスル〓ニ付キマシテ御
質問致シマス、現行ノ市制町村制ニ於キマシテハ、學區ヲ法人ト認メテ居リマセヌ、其
認メテ居ラナイト云フ據所ハ、市制ニ於キマシテモ第六條ニ於テ「勅令ヲ以テ指定スル
市ノ區ハ之ヲ法人トス」卽チ勅令ヲ以テ指定セラレテ居ルトコロノ市ノ區ト申シマスレバ、
東京市、京都市、大阪市デゴザイマスガ、此勅令ニ指定致シマシタ市ノ區ナルモノハ所
謂行政區デアリマシテ學區デハアリマセヌ、故ニ現行ノ市制ニ於テハ學區ハ法人ト認メテ
居リマセヌ、所デ此改正法律案ハ學區ヲ法人ト認メテ居ルモノト信ズルノデアリマス、同
一ノ學區デアルノニ、一方ノ市制町村制ハ法人ト認メズ、此學事通則ハ法人ト認メルコ
トニナリマスレバ、國家ノ意見ガ二樣ニ出マシテ、右樣ナ働ヲスルヤウニ感ジマスガ、是一
如何デゴザイマセウカ、此〓ニ就テ第一ニ御意見ヲ承リタイト思ヒマス、ソレカラ第二ハ
學區ノ財產處分ニ付キマシテハ、其財產ガ市町村ニ贈與セラレルトカ、或ハ寄附セラレ
ルト云フコトニナリマスレバ議論ハゴザイマセヌガ、之ニ反シマシタル場合ニ於キマシテ、學
區ハ廢セラレテシマッタ、併ナガラ財產ノミガ殘ッタト云フ場合ニ於キマシテ、此法律ニ依
リマシテ廢セラレタル學區ノ財產ヲ管理シ處分スルコトガ出來ルノデアリマセウカ、如何デゴ
ザイマセウカ、ソレカラ第二一ニハ財產ノ處分ト云フモノハ最モ重大ナル事件デアルト考ヘマ
ス、是ガ故ニ最後ノ決定權ハ行政裁判所ニ與ヘサセルノガ適當ト信ズルノデアリマス、然ルニ
之ヲ文部大臣ニ訴願致シマシテ、最後ノ決定權ヲ文部大臣デナサレルト云フコトハ適當
デナイカト思フノデアリマス、此〓ニ關シマシテ御意見ヲ伺ヒタイノデアリマス、ソレカラ
又第四ニハ此法律案ニ依リマスルト、〓育事務ノ爲メニ市町村ニ學校組合又町村ニ
學校組合ヲ組織セラレルノデアリマスガ、此市町村ノ學校組合ナリ町村ノ學校組合ニ
付テハ、此文字ノ示シテ居リマスル通リデ、府縣ト云フモノハ別段眼中ニ置カナイデ、府
縣ヲ異ニシテモ市町村組合、町村組合ヲ組織スルコトガ出來ルノデアリマスカ、以上ノ四
〓ニ付テ御意見ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=9
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010・奧田義人
○文部大臣(法學博士奧田義人君) 第一ハ學區ヲ法人ト看做シテ居ルト云フコト
ニ付テ御質問ノヤウデアリマスガ、法人ノコトニ付テハ誠ニ今日ノ法令ノ上ニ於テハ實ハ不
明瞭ノ點ガ御承知ノ通リ多イノデゴザイマシテ、例ヘバ寺院ノ如キモノニ致シマシテモ、之
ヲ實際ニ於テハ慣例上法人ト認メテ居リマスケレドモ、民法ノ施行法ニ於テハ民法上ノ
法人ニ關スルトコロノ規定ガ之ニ適用セラレテ居ル、而モ寺デ以テ財產ヲ有スルコトモ許
シテ居ル、斯樣ニ相成ッテ居ル、區ノコトニ付テハ現ニ市制ノ第百四十四條ニ斯樣ナコ
トガアリマス「市ノ一部ニシテ財產ヲ有シ又ハ營造物ヲ設ケタルモノアルトキハ其ノ財產
又ハ營造物ノ管理及處分ニ付テハ本法中市ノ財產又ハ營造物ニ關スル規定ニ依ル但
法律勅令中別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス」云々ト云フ規定ガアル、學區ト云
フモノハ學區ソレ自身ガ一般ノ法人ト同樣ナ權能ヲ持ツモノデナイト思ヒマス、ケレドモ
財產ノ關係ノ上ニ於テハ法人ト同ジ權能ヲ解釋上持タシテ差支ナイモノデアラウト考ヘ
マリ、ソレカラ第二ノ〓ハ學區ノ廢止ノ場合ニ於テ、其學區ノ有シテ居ッタトコロノ財產
ヲ寄附ヲスルト云フヤウナ時ニハ-他ノ町村ニ寄附スルナント云フ時ニハ一向差支ナ
イケレドモ、寄附ノ意思ガ纏ラナカッタ時ニ、其財產ノ處分ハ如何ニスルカト云フコトノ
御尋ノヤウデアリマスガ、ソレハ卽チ今度第四條ヲ設ケマシタ所以デアリマス、其處分法
ガ定メテナイガタメニ、第四條ヲ設ケテサウシテ處分法ヲ定メタ、斯ウ云フ譯テアリマス、
ソレカラ第三ノ〓ハ處分ニ對シテ不服ノアッタ時ノ訴ヘル途ガ行政裁判所ニ依ラズシテ、
訴願ノ途ヲ採ッタノハドウ云フ譯デアルカト云フ御質問ノヤウニ考ヘマシタガ、是ハ〓育ニ
關スル事柄デアルニ依ッテ、訴願ニ依ッタ方ヲ穩當ト認メタニ過ギナイノデアリマス、第四
點ハ何故府縣ト市町村トノ問ノ組合ヲ認メナカッタカト云フコトノ御尋ノヤウニ承リマシ
タガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=10
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011・紫安新九郎
○紫安新九郞君 サウデハアリマセヌ、府縣ヲ異ニシテモ市町村組合、學校組合ヲ設
立スルコトガ出來マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=11
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012・奧田義人
○文部大臣(法學博士奧田義人君) ソレハ府縣制ノ上ニ認メテ居ラヌノデス、他ノ
府縣トノ間ノ組合ハタシカサウナッテ居ルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=12
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013・紫安新九郎
○紫安新九郞君 更ニ大臣ニ伺ヒマスガ、此今度更ニ御設ケニナッタ第四條デアリマ
スガ、第四條ノ最後デアリマスガ、府縣知事ノ處分ニ不服アル市町村又ハ學區ハ文部
大臣ニ訴願致シマシテ、文部大臣ノ御決定ガ其學區ノ有シテ居ック財產ハ市町村ニ贈
與セヨトカ寄附セヨトカ云フ御決定デアレバ論ハアリマセヌガ、若シソレニ反シマシタ御決
定ガアリマシタ時分ニ、學區ハ廢セラレタリ、財產ハ殘ッタト云フ場合ニ、其殘ッタ財產ヲ
如何ニシテ管理シ處分スルコトガ出來マスカト云フ御尋デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=13
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014・奧田義人
○文部大臣(法學博士奧田義人君) 是ハ府縣知事ノ處分ニ不服アル者ハ-主
體ガナクナル場合ニ於テ、其儘財產ガ殘ルト云フコトハ有リ得ナイ譯デアル、無主物ニ
ナッテシマウ、無主物ニナッテシマウカラ、民法ノ規定ニ依ッテ不動產ハ國家ノ物トナリ、
動產ハ先占ニ依ッテ所有權ガ移ルト云フコトニナラナケレバナラヌ、ドウシテモ廢スル時ハ
其結果當然主體ガ無クナル、主體ノ無クナッタ財產ニ付テノ處分ハ府縣知事ガ定メナケ
レバナラヌ、其處分ニ對シテ文部大臣ガ之ヲ寄附シテハナラヌ、無主物ニシテ置ケト云フ
コトハ想像ノ出來ヌコトデアリマス、無主物ニスレバ民法ノ規定ノ適用ヲ受ケルト云フコ
トニナリハセヌカト思ヒマス、其邊ハ如何ナル御見解デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=14
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015・紫安新九郎
○紫安新九郞君 ドウモ私ノ考デハ「前項府縣知事ノ處分ニ不服アル市町村又ハ學
區ハ文部大臣ニ訴願スルコトヲ得」ト云フ規定カラ見レバ、大臣ノ決定ガ如何樣ニ出ル
カト云フコトハ豫メ測リ知ルコトハ出來ヌヤウニ考ヘラレルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=15
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016・奧田義人
○文部大臣(法學博士奧田義人君) 其結果ガ學區ヲ廢スルコトガ出來ヌト云フコト
ニナルナラソレデ宜シイガ、從來ノ通リ學區ガ其財產ヲ持ッテ居ルト云フコトニナリマスカ
ラ差支ハナイ、主體ガアル、然レドモ一方ニ區ハ廢シテ財產ハ其儘ニ置ケト云フコトハ理
窟上出來ナイ、卽チ無主物ト云フコトニナッテシマフト思ヒマスガ、如何デセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=16
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017・荒川五郎
○荒川五郞君 此市町村制デハ區ヲ設ケルコトヲ認メテ居リマスガ、今日ノ實際デハ
市町村ヲ成ルベク一致ニシテ、自治ノ完全ニ行ハレルヤウニヤラウト云フコトガ目的デ、成
ルベク此町村ノ如キハ其中ニ小町村ヲ設ケナイト云フ方針デヤッテ居ルノデアリマス、デア
リマスカラ今日ノ合併町村ナドデハ獨立シテ學校ナドヲヤリタイト云フノガ多イニモ拘ラズ、
成ルベク之ヲ縱令學校ヲ一町村ニ二校以上建テテモソレハ町村ノ經濟トシテ居ル、サウ
シナイト自治ガ破レルト云フノデ、是ニハ實際ニ非常ニ力ヲ用ヒテ居ルノデアリマスヤウニ
思ッテ居リマス、然ルニ此學事通則デ公然學校ヲ設ケルト云フコトヲ認メルト云フコト
ハ、此市町村制ノ精神ノ上ニ於テ其實際ノ運用ノ上ニ於テ反對ノ結果ヲ來サウカト思
フノデアリマス、此〓ニ付テ一應伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=17
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018・田所美治
○政府委員(田所美治君) 御答イタシマス、御意見ノ通リデ市町村制ノ規定ハ市
町村ヲ國家ノ自治體ノ一番小サイ〓體ニ認メテアル、其中ニ尙學區トカ或ハ部落トカ
云フヤウナ法人ニ類スル區ヲ設ケルト云フコトハ、今御話ノ通デアリマスガ、然ルニ餘儀
ナイモノニ對シテハ卽チ在來ノ部落有ノ財產ヲ部落有デ經營スル際ニ對シテ、市町村內
ノ一部ノ區ヲ認メテ居ッタ譯デアリマスガ、〓育ノ方デ見マスト、モット通學區域ノ關係
トカ、或ハ市町村制ヲ實施シマシタ當時カラ部落ヲ變更シテ町村ニシタヤウナ關係ガア
ルタメニ、尙〓育上ノ便宜ノ通學區域ヲ定メマシテ、サウシテ此財產關係ナドモ見マシ
テ、小學校令ノ內デ其方ガ便利ノ場合ニ於テハ、詰リ市若クバ町村ヲ區割シテ數區ト
シテ、サウシテ其學區ノ維持經營ハ其區ノ負擔トスル、斯ウ云フコトノ途ヲ當初聞イタ
ノデアリマス、是ハ唯今デ申シテ見マスト全國ニ數千區ガアリマスガ、卽チ學區ト云フモ
ノハ多クノ場合ニ於キマシテハ當初カラ便宜ノタメ設ケタモノデアリマスカラ、通學ノ關係
トカ云フモノヲ主モニ見マシテ、是ハ普通ニハ其便宜ニ基テ特ニ認メテ居ルノデアリマス、
初カラ市町村ヲ分割シテ、市町村ノ內ニ小法人ヲ作ル精神デナクシテ、〓育上カラ見ル
ト尙一町村ヲ分割シテ數區トナシテ、其經營ヲ其區ニヤラセルト云フコトハ便宜ノ場合
ニ於テ、府縣知事若クバ郡長ニ於テ其區ヲ學區ヲ創設スルコトヲ許シマシタノデアリマ
ス、是ハ特例ヲ市町村制ニ對シテ開イタノデアリマスガ、其關係ガ主ニナッテ地方學事通
則ガ出來テ居ルノデ、是レアルガタメニ荒川君ノ御尋ノ市町村制ノ內デ小法人ヲ作ッテ統
一シテ行クト云フ自治ヲ打壞ハスト云フ當初カラ考ハナカッタノデアリマスガ、餘儀ナク〓
育上ノ便利ノタメ分割ヲ命ズルノガ便利ト考ヘタ時ハ、サウ云フ特例ガ出來ルトシタノデ
アリマス、此事ニ付テ今日マデ實地ノ經驗ニ考ヘテモ其途ハ存置シテ行ク方ガ宜イト考
ヘタノデアリマス、唯今日問題ニナリマスノハ前年ハ大層便宜ト認メテ區劃ヲ致シタモ
ノヲ、其後ノ市町村ノ發達ノ狀況或ハ交通ノ關係ノ變更等ニ基キマシテ、統一ヲスル
方ガ利便デアル、斯ウ云フモノニ對シテハ區ヲ廢シヤウ、斯ウ云フ時ハ財產處分ノ規定
ガナイタメニ行キ詰ッテシマッタ、卽チ荒川君ノ御尋ノヤウニ、市デヤルトカ市町村デヤル
ト云フ場合ニ於テ、行キ詰リノ點ガアル、之ヲ四條ニ於テ財產處分ノ規定ヲ置キマシタ
ノデ、學校ヲ廢止スルト同時ニ財產處分ノ規定ヲ具ヘ、サウシテ便宜ヲ若シ府縣知事
郡長ニ於キマシテ學區ヲ廢シテ統一スル方法ガ宜イト云フ場合ニハ、頗ル便宜ヲ得ルヤ
ウニ四條ヲ設ケタノデアリマス、區ヲ分ケマシテ又區ヲ統一スルコトニ付テハ、地方ノ全ク
便宜ニ委スル、從來ノ通リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=18
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019・荒川五郎
○荒川五郞君 此學事通則デ郡ヲ一學區ニシテヤルト云フコトハ出來ルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=19
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020・田所美治
○政府委員(田所美治君) 其場合ニ於テハ必要ハアリマスマイト思ヒマス、郡ヲ一學
區ト云フコトハ、卽チ郡ノ事業ニナルカラ、郡ニ分割スル必要ハナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=20
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021・荒川五郎
○荒川五郞君 此勅令案ガ出來テ居リマスレバ參考ニ御〓シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=21
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022・田所美治
○政府委員(田所美治君) 今ノ御尋ハ此各條ニゴザイマス勅令案デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=22
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023・荒川五郎
○荒川五郞君 私共ハ實際ニ非常ニ困ルト思フノハ、今日デモ合併町村ガアリマシ
テ、ソレニハ在來ノ學校ハ卽チ營造物ヲ持テ居リマスカラ已ムヲ得ズヤッテ居ルケレドモ、
ソレガアルガ爲メニ、例ヘバ他ノ區ノ學校ニ行ク方ガ便利ガ宜イケレドモ、ソレガアルタメ
ニ行カレナイ、遠イ學校ヘ行カナケレバナラヌト云フ不便ガ多イ、ソレガ町村制ニ依テ自
治ノ團體デ學校ヲ經營スレバ近イ便利ノ所ヘ行カレル、ソレガ仕來リデ困ッテ居ルカラ、
町村制ノタメ目的ヲ達スルヤウニシタイト云フノハ認メテ居リマスケレドモ、之ガ今迄公ケ
ニ認メテナカッタガ、區ガ玆ニ法文上ニ定メラレル以上ハ、サウ云フコトノ實際ノ扱ヒ方ニ付
キテハ極力ニ必要ガアラウト思フ若シ他ノ箇條モ出來テアリマスレバ、學區ヲ設ケルニ付
テノ勅令案ガ出來テ居リマスレバ此際御廻シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=23
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024・田所美治
○政府委員(田所美治君) 第一條ノ「市町村制ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ〓育事務
ノタメ之ヲ學區ニ分劃スルコトヲ得」ト云フノハ從來ノ學事通則ト少シモ變リマセヌノデ、
其勅令ノ定ムル所ノモノハ學區ノ多クノ場合ニ適用ヲ見マスノハ小學校令ノ場合デアリ
マリ、小學校令ニ付テハ二十二年ニ學事通則ガ出來マシテ、同時ニ小學校令ノ內ニ、
勅令ハ卽チ此勅令ハ小學校令ニ主トシテ該當スルノデアリマス、其內第十一條ニ荒川
サンノ御尋ノヤウナ場合ガ規定シテアリマス、卽チ「府縣知事ハ市ニ於テ設置スヘキ尋
常小學校數校アルトキハ市內ノ一區若クハ數區ニ對シ又ハ市ヲ分劃シテ數區トナシ其
一區若クハ數區ニ對シ小學校設置ニ關スル費用ノ負擔ノタメニ其使用スヘキ小學校ヲ
指定スルコトヲ得此場合ニ於テハ關係市及區ノ意見ヲ聞クヘシ其之ヲ止メムトスル時
又同シ」トアッテ、斯ウ云フヤウニ設置スル場合ト廢止スル場合ハ十數年來小學校令ニ
規定シテアリマス、大體ニ於テ地方學事通則ガ改正ニナリマシテモ、小學校令ニ係ル規
定ハ其儘存置シテ置イテ宜イ考デ、唯附則ヲ法律デ補ヒマシタ積リデアリマス、自然法
律制定後ニ必要ヲ生ジタ場合ハ、ソレ〓〓勅令等ノ改廢ヲ加ヘル必要ガアリマセウガ、
唯今御話ノコトハ今日ニ於キマシテ大〓具備シテ居リマス、現行ノ小學校令ニ付テ御
承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=24
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025・荒川五郎
○荒川五郞君 勅令案ガソレデゴザイマスレバ、先刻御尋シタ郡ヲ學區トスル、此節國
庫デハ出來ズ、地方デモ出來ナイカラ、郡ヲ一學區トスレバ多クノ郡ニ於テ三分ノ一位
ハ學校ガ減サレルシ、設備ヲ完全ニ出來ルシ、ソレカラ又通學者モ便利デアラウ、ソレデ
經費モ節減ニナルカラト云フ、經費上ノ上モアルシ、ソレカラ又郡長知事ガ監督スル上
ニ於キマシテモ都合ガ好イト云フノデ、小學校ヲ郡ノ經營ニシタラ宜カラウト云フ說ガ段
段アルノデアリマスガ、サウスルト今日ノ郡制ノ上デ直チニ斯ウ云フ仕事ガ出來ルト云フ
前ノ御答辯ト承ッテ宜イノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=25
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026・田所美治
○政府委員(田所美治君) 小學校ニ付キマシテハ御承知ノ如ク小學校令ノ規定ニ
依リマシテ、市町村ガ義務トシテ此費用ヲ負擔シテ設置維持スルト云フコトガ原則ニ唯
今ハナッテ居リマス、サウシテ一市町村デ資力ガ足リマセヌ場合ハ、數箇町村ガ聯合シテ
學校ヲ置ク、卽チ本令ノ第七條ニ依リマシテ數町村聯合シテ學校組合ヲ設ケテ、サウシ
テ一小學校若クバ數小學校ヲ設置維持スルコトニナッテ居リマス、郡若クバ縣ガ小學校
ヲ設置スルト云フコトハ、唯今ノ法令ノ下ニハ認メテ居リマセヌノデゴザイマスガ、今荒川
サンノ御尋ノ如ク、郡內ノ總テノ町村ガ聯合シマシテ、ソレガ學校組合トナッテ小學校ヲ
設置維持スルコトガ出來ルモノデアリマスカラ、其場合ニ於キマシテハ郡內ノ總町村ノ組
合ノ聯合ニナラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=26
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027・荒川五郎
○荒川五郞君 ソレカラ此第三條ノ中ニモアリマスガ、此市町村制デハ市ノ基本財產
ヲ以テ市町村ヲ維持スルト云フノガ原則ニナッテ居ル、ソレガイケナイ場合ニ租稅ヲ取ルト
云フコトガ市町村制ノ原則ニナッテ居リマス、然ルニ第三條ニハ市町村稅ヲ納ムルモノヽ
負擔ト云フコトヲ主トシテ、ソレカラ財產ヨリ收入ナドカアル時分ニハソレヲ以テ充ルト云
フコトニナッテ居リマス、是ハ町村制ノ第七條ニ市ノ一部ノ事務ト云フモノモ財產ヲ木ト
シテヤッテ居リマスカラ、是ト同ジヤウニ行クト云フコトニナレバ、其財產カラ出ルモノヲ以
テ先トスルノガ當リ前ト思フ、是ハ反對ノ規定ニナッテ居ルヤウニ思ヒマスガ、如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=27
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028・田所美治
○政府委員(田所美治君) チヨット荒川サンニ伺ヒマスガ、市町村ニ於テハ基本財產
ヲ設ケルト云フコトガ本體ニナッテ居ル、然ルニ收入ガアレバ是ハ其收入デ補足セイト云
フ規定ガアルカラ、町村ノ負擔ノ原則ガ違ッテ居ルデナイカト云フ御問デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=28
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029・荒川五郎
○荒川五郞君 基本財產ノ收入ヲ以テヤルト云フノガ原則デ、租稅ヲ課スルト云フノ
ハ例外ノ規定ニナル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=29
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030・田所美治
○政府委員(田所美治君) 此第一條ノ基本財產等ニ關シマシテハ、市ノ財產營造
物ニ關スル規定、町村ノ營造物ニ關スル規定ガ、此學區ニ悉ク準用スルコトニナッテ居
リマス、第一條ニ市ノ財產營造物ニ關スル規定、町村ノ財產營造物ニ關スル規定ト斯
ウゴザイマスノデ、丁度基本財產ノ維持ノコトハ市制デ申シマスルト百カ條デアリマスガ、
ソレハ學區ニ皆準用致ス考デアリマス、三條ハ負擔ノ原則ハ町村デモ斯ウナッテ居リマス、
今日或ル町村ニ於キマシテハ稅ヲ一文モ取ラナイデ、財產收入ダケデ町村ノ經營ヲヤッ
テ居ル所ガアリマス、第一條二丁度御尋ノ基本財產ヲ設置維持シテ行クト云フ、斯ウ
云フノハ總括的ニ市町村ノ財產營造物ニ關スル規定ヲ準用スルト云フコトデ、區ニ適
用スル考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=30
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031・荒川五郎
○荒川五郞君 唯今ノハ少シ私ノトハ違ヒマスルガ、ソレハ措キマシテ私ハモウ一ツ御問
シマス、第六條ニ「學務委員ヲ置クヘシ」トアリマス、此法律ニハ學務委員ヲ置クベシト
云フコトガアッテ、其學務委員ノ仕事ガ更ニ極ッテ居ラヌ、學務委員ノ仕事ニ關スルコト
ハ勅令ニ讓ルトカ、此處ニ定メルトカ云フコトガナケレバ、此法文ヲ爲サヌト考ヘマスガ、
如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=31
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032・田所美治
○政府委員(田所美治君) 第六條ニハ斯ウ云フ書方デ勅令ニ委任スルコトニナッテ
居リマス、卽チ「市町村ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ學務委員ヲ置クヘシ」「學區ハ勅令ノ
定ムル所ニ依リ學務委員ヲ置クコトヲ得」ト斯ウゴザイマシテ、此勅令ノ定ムル所ニ依ルト
云フ文字ハ、其任務ニ關シマシテハヤハリ勅令デ規定シ得ル考デアリマス、六條ノ勅令
ノ定ムル所ニ依ルト云フコトデ、小學校令デ職務權限ハ規定致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=32
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033・島田俊雄
○島田俊雄君 私モ二三〓御尋ヲシマス、現行ノ學事通則ニ依リマスト、圖書館ノコ
トモ中ニ這入ッテ居リマス、卽チ九條ニ財產ノ關係ノコトニ付テアリマス、此改正案ニハ
圖書館ノ設ガ一ツモ見エマセヌガ、是ハ若シ區域外ニスルト云フコトデアレバ、圖書館ニ
付テハ何カ別段ニ規定デモ設ケル御考デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=33
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034・田所美治
○政府委員(田所美治君) 御尤ナ御尋デアリマスガ、此今度ノ地方學事通則改正
ノ趣意ハ、大臣カラ申上ゲラレタ通リデゴザイマスガ、圖書館ハ現行ノ圖書館今デハ市町
村ハ出來マスガ、區ハ圖書館ヲ立ルコトガ出來ナイコトニナッテ居リマス、此御尋ハ丁度
第三條ノ學校幼稚園ニ聯係シテ居ルコトカラ御考デゴザイマセウガ、學區ニ於キマシテハ
圖書館ノ設置マデハサセナクテモ宜カラウト云フ考デアリマス、學校幼稚園位ノ設置ノ權
能ヲ與ヘテ置キマシテ、卽チ現行ノ通リノ主義デ宜カラウカト考ヘテ居リマス、ソレ故ニ
圖書館ノコトハ學區ニ關シテハ書カナカッタノデアリマスルガ、御尋ノ〓ハ廣イ意味ニ於テ
圖書館ノコトハドウスルカト云フコトデゴザイマスト、ソレハ圖書館令其他ノ法律デ働キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=34
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035・奧田義人
○文部大臣(法學博士奧田義人君) 私ガ說明シナクテモ宜イデアリマスガ、丁度午
後ハ多分此委員會ハ繼續ニナルコトヽ考ヘマスガ、午後ニハ司法省ノ所管ノ戶籍法ノ
委員會ガアリマシテ、ソレニ出席ヲ致サナケレバナリマセヌノデ、便宜此處デ委員長ニ御願
ヲ致シテ、實業〓育國庫補助法改正案ノ大體ニ付テ一應述ベテ置キタイト思ヒマス、
此現行法ノ實業〓育國庫補助法ハヤハリ制定ハ古イモノデ、業ニ既ニ今日デ二十年モ
經過致シテ居リマス、所ガ段々時勢ノ進運ニ伴ヒマシテ、施行以來ノ實蹟ニ徵スルニ、
改正ヲ施サナケレバナラヌ〓ガ少ナクナイヤウニ考ヘマス、今其重要ナル〓ヲ舉ゲマスルト、
現行法ニ依レバ是等ノ實業學校ハ補助金ヲ受クベキ實業學校ハ公立ノモノニ限ッテ、唯
一ツ例外ガアルダケテアル、例外ト云フノハ監督官廳ノ認可ヲ經タ農工商組合ニ於テ
設置シタ實業學校ハ、文部大臣特別ノ認定ニ依リ之ニ準ズルコトヲ得、卽チ公立學校
ニ準ジテ補助ヲ與ヘルコトガ出來ルト云フ例外ガアルバカリデアリマス、然ルニ今日實業
〓育ノコトハ是カラ先キモ公立ノ學校ダケニ限ルト云フコトニ致シテ置キマシテハ、到底
十分ニ此〓育ノ奬勵ノ趣意ヲ達スルコトガ出來マセヌ、殊ニ地方ノ〓育費ハ追〓膨脹
致シマシテ、段々ト整理ヲシテ之ヲ減少スルヤウニ致サナケレバナラヌ方針ヲ執ッテ居ル次
第デアリマスカラ、別レテ公立ノ學校ノミニ依テ以テ實業〓育ノ奬勵ヲ圖ルコトハ困難
デアリマス、其故ニ將來ニ於テハ一般ノ私立學校ニ對シテ、卽チ私立ノ實業學校ニ對
シテモ、必要ニ應ジテ補助ヲ與ヘテ勵奬ヲシタイト云フヤウナ趣意デアリマス、今日此實
業學校ト稱スルモノヽ數ハ、御永知デモアリマセウガ補習學校ヲ除イテ五百十五アリマ
ス、其中公立ニ屬スルモノガ四百七十四校、私立ガ四十一校アリマス、補習學校ハ全
國ヲ通ジテ七千九百五十九校アリマス、斯ウ云フヤウニ段々發展シテ來マシタケレドモ
尙決シテ十分デハナイ、益〓奬勵シテ行カネバナラヌ時運ニ向ッテ居リマスカラ、私立ノ
實業學校ニモヤハリ補助金ヲ交付シテ奬勵シタイト云フノガ改正ヲ要シマス〓デアリマ
ス、ソレカラ次ニハ現行法ニ於テハ一定ノ期間經常費ニ對シテノミ補助ヲ與ヘルコトニ
ナッテ居ルノデ、臨時費卽チ設備費ニ要スル費用等ハ補助スルコトガ出來ヌ原則ニナッ
テ居リマス、ケレドモ或ハ或學校ニ於テ器械ヲ購入シナケレバナラヌ、圖書ヲ購入シナケ
レバナラヌト云フヤウナ設備費、其一時的ノ臨時費ニ對シテモ補助ヲ與フルコトガ出來
得ルヤウニシテ置キマスルノハ、實業〓育奬勵ノ上ニ最モ必要ダト考ヘマス、從ッテ又本
案ニ於テハ用途ヲ指定シテ、此ノ如キ補助ヲモ與ヘルコトガ出來ル途ヲ開キマシタ、ソレ
カラ次ニハ現行法ニ依レバ補助ノ期間ガ一期五年トナッテ居リマス、之ヲ從來ノ實績ニ
徴スルニ、學校經濟等ノ狀態如何ニ拘ラズ、五年間固定シテ一定ノ補助ヲ與ヘルコト
ハ長キニ失スル感ガアリマス、故ニ一期ヲ三年トシテ、三年每ニ補助ヲ更新シ得ルヤウニ
シン、學校ノ實際ノ狀態ニ適應セシムル、斯樣ナ途ヲ開キマシタ、次ニ現行法ニ依ルト
經常費ニ對スル補助ハ學校設立者ノ負擔額ヲ超ユルコトガ出來ヌ、例ヘバ千圓設立者
ガ負擔スレバ千圓以上ノ補助ヲ與フルコトハ出來ナイ、其範圍內デナケレバナラヌ原則
ニナッテ居ル、然ルニ實業補習學校ノヤウナ小規模ノモノデアルト、他ノ學校トハ事情ヲ
異ニシテ、其樣ナモノニ對シテハ一般ノ原則以上ニ補助ヲ與フルコトガ出來ルヤウナ途ヲ
開キマセヌト、實業補習學校ノ奬勵ヲ爲スコトハ出來マセヌ、固ヨリ補習學校ハ先キニ
モ述ベマシタ通リ七千九百五十九校モアル多數ノ學校デアリマスカラ、是等ニ向ッテ大
多數補助ヲ與ヘルヤウナコトハ、事實不可能ナルコト論ヲ待チマセヌケレドモ、其中ノ模
範トナルベキ學校ニハ出來ルグケノ補助ヲ與ヘテ奬勵シタイト思ヒマスル、卽チ規模ガ小
サイモノデアリマスルシ、又實業補習學校ナドヲ建テマスル例ヘバ町村等ニ於テ、資力ガ
貧弱デアルト云フヤウナ時ニ於テ、負擔額以內ニ於テノミ之ガ補助ヲ與ルト云フヤウナコ
トハ、甚ダ奬勵ノ上ニ於ケル趣意ニ副ハヌヤウニモアリマスルノデ、玆ニ例外ノ範圍ヲ廣
ク致シマシタ、次ニハ現行法ニ依ルト、實業學校ニ對スル補助ノ外、實業學校〓員養
成ノタメニ一定ノ金額ヲ支出スルコトガ出來ルヤウニナッテ居リマス、其故ニ其規定ニ基
イテ今日ノトコロデハ或ハ農科大學ニ於テ農業〓員養成所ヲ附設致シ、東京商業
學校ニ於テハ商業〓員ノ養成所ヲ附設致シ、又工業學校モ同樣ノ附設ヲミテ居ルト
云フヤウナコトヲナシテ居リマス、然ルニ諸國ノ實業〓育ノ實際ナドヲ調査シテ、印刷ニ
付シテ參考ニ配ッテヤリタイト思ヒマシテモ、ソレ等ノ費用ヲ支出スル途ガナイノデアリマ
ス、ソレデ改正法案ニハ金額ノ制限ハ從來ト變ラズ卽チ豫算總額ノ八分ノ一位ノ範
圍內ニ於テ、實業〓員ノ養成費及ビ〓育奬勵ノ上ニ於テ、今御話スル如ク出版物ナ
ドヲ出シテ參考ニ供スルヤウナ必要ノアルトキニ、ソレ等ノ費用ヲモ支出スルコトノ出來ル
ヤウニ致シマシタト云フノガ改正ヲ要スル一點デアリマス、今述ベテマシタ諸點ガ此法
律ノ改正ヲ認メタ理由ノ重ナルモノデアリマシテ、其以外多少改正ヲ行ッテ居ルトコロ
ハアリマスケレドモ、要スルニ文字等ノ修正ニ外ナラヌコトデアリマスルノデ、煩ヲ避ケテ茲ニ
述ベマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=35
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036・島田俊雄
○島田俊雄君 私ハ此場合一點附加ヘテ御說明ヲ願ッテ置キタイト田心フノデアリマス、
此實業〓育國庫補助改正ノ法律案ノ眼目トスベキ點、卽チ私立學校ニモ補助金ヲ
與ヘル方法ヲ開カレタト云フコトハ頗ル宜シイ改正デアリマシテ、大ニ贊成ヲシテ居ル
次第デゴザイマスガ、之ニ付キマシテハ此法律ニ何等ノ規定モアリマセヌガ、無論相當ナ
方法ヲ講ゼラルルコトヽ思ヒマスケレドモ、一面ニ於テ補助金ヲ與フルト同時ニ、他ノ一
面ニ於テ私立學校ノ會計等ノ監督ヲスル必要ガ自然起ッテ來ルト考ヘルノデアリマス、從
來補助金ヲ與ヘナイ場合デモ、學校ノ經營者ノ經濟振リニ付テノ御監督ハアルベキモノ
ト考ヘテ居リマスガ、ソレ等ノ事ハ如何樣ニナッテ居ルカ、又此法律實施ノ場合ニ於テハ、
如何ナル方法ヲ以テ私立學校等ノ會計上ノ監督ヲセラレル御考デアルカ、ソレ等ニ付
テノ大體ノ御腹案デモゴザイマスナラバ、從來ノ事ト共ニ御說明ヲ願ッテ置キタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=36
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037・奧田義人
○文部大臣(法學博士奧田義人君) 私立學校監督ノコトハ固ヨリ文部大臣ノ職權
ニ屬シテ居ルコトデアリマスカラ、從來モ出來得ル限リハヤッテ居リマス、而シテ此法律實施
ノ後ニ、私立學校ニ補助金ヲ與フルコトニ相成リマシタ場合ニ於テハ、時々監督員ヲ派
遣致シマシテ、會計帳簿等ヲ取調ベテ、苟モ不都合ノナイヤウニスルト云フ積リデアリマ
ス、ソレニ對シテノ制裁ハ第六條「主務大臣補助ヲ受クル學校ノ管理不適當ナリト認
メタルトキ又ハ其ノ學校主務大臣ノ定ムル規程ニ違背シ第五條ノ義務ヲ盡サス若クハ
補助ノ條件ニ違反シタルトキハ補助ヲ廢止シ若ハ停止シ又ハ補助金ヲ減少スルコトヲ
得」ト云フコトガアリマス、仍テ時々監督員ヲ派遣シテ檢查ヲ施シテ、其場合ニ於テ或ハ管
理ガ不適當ナリト認メ、或ハ補助ヲ與ヘタ時ニ定メタ所ノ條件ニ違反シタ事柄ガアルト
云フヤウナトキニハ、卽チ此箇條ニ依テ將來ニ向ッテノ補助ヲ何時デモ廢止スル或ハ停
止スルト云フコトニスル積リデアリマス、其條件等ノコトハ未ダ十分審議ヲ致サズニ居リマ
スケレドモ、此法案ヲ實施スルマデノ間ニハ十分ニ審議ヲ遂ゲテ定メル積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=37
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038・島田俊雄
○島田俊雄君 唯今御答出來ヌカモ知レマセヌガ、現行ノ補助ノ法ガ行レマシテカラ
今日マデ、國庫カラ支出シテ實際補助セラレタ金額ハ總計ドノ位ニナッテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=38
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039・松浦鎭次郎
○政府委員(松浦鎭次郞君) 補助法制定以來デスカ-是ハ舊トノ法律ニハ金額
ヲ書イタモノモアリマスガ、近頃ニナリマシテハ變リマシテ、每年豫算ヲ以テ定メ補助スル
金額ヲ法律ニ明定シテアリマセヌガ、近頃デハ每年三十五六万圓許リヲ補助シテ居リ
マヽ、以前ハ二十五万圓ト云フ時代モアッタデス、最初カラ今日マデ補助シタ金額ヲ總
計シテ幾ラニナルカト一云フコトハ、一寸今御答出來兼ネマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=39
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040・戸水寛人
○委員長(法學博士戶水寬人君) 御相談シマスガ、モウ十二時ニ近イデスガ、質問
ガ澤山アリマスナラバ午後ニ延バストカ、或ハ外ノ日ヲ極メタラドウデス
(「モウ一囘御開キニナッテハ如何デス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=40
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041・戸水寛人
○委員長(法學博士戶水寛人君) ソレデハ今日ハ是デ措キマシテ、六日ノ午前十時
カラ開クコトニ致シマス
午後零時一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003112379X00219140304&spkNum=41
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