第31回帝国議会　衆議院　本会議　第21号　大正3年3月10日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　大正三年三月十日（火曜日）午後一時八分開議
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  　　議事日程　第二十號　大正三年三月十日
  　　　　午後一時開議
  　　　　　　質問
  　　　一　移民奬勵に關する質問（中川虎之助君提出）
  　　　二　義務教育費に關する質問（中川虎之助君提出）
  　　　三　政府の新領土經營に對する主義方針及臺灣陰謀事件の責任竝其の善後策に關する再質問（小林勝民君提出）
  　　　四　國運の伸張に關する質問（鈴木萬次郎君提出）
  　　　五　鐵道事故竝監督に關する再質問（野村嘉六君提出）
  　　　六　帝國在郷軍人會に關する質問（相島勘次郎君提出）
  　　　七　支那新開埠に關する再質問（伊東知也君提出）
  　　　八　對米外交に關する再質問（齋藤隆夫君提出）
  　　　九　自治權蹂躪に關する再質問追加（早速整爾君提出）
  　　　十　新聞紙の發賣禁止に關する再質問（齋藤隆夫君提出）
  　　　十一　米價調節に關する質問（加賀卯之吉君提出）
  　　　十二　東北米作改良に關する質問（半谷清壽君提出）
  　　　十三　自治權蹂躪に關する再質問（島田三郎君提出）
  　　　十四　模範的示威運動禁止に關する質問（黒須龍太郎君提出）
  　　　十五　海軍收賄に關する第二質問（黒須龍太郎君提出）
  　　　十六　軍法會議の公開及辯護權上訴權に關する質問（花井卓藏君提出）
  　　　十七　國防に關する質問（澤來太郎君提出）
  　　　十八　宗教行政に關する質問（金尾稜嚴君提出）
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  　　第一　取引所法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　　第三　取引所税法改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　　第五　耕地整理法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第六　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　　第七　地租條例中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第八　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　　第九　肺結核療養所の設置及國庫補助に關する法律案（政府提出）　　　　第一讀會
  　　第十　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　　第十一　郡制廢止法律案（菊池武徳君提出）　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十二　過料に處せられたる者に對する裁判の執行猶豫に關する法律案（高木益太郎君提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十三　罰金、拘留及科料の言渡を受けたる者に對する刑の執行猶豫に關する法律案（高木益太郎君提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十四　印紙税法中改正法律案（中小路與平治君外一名提出）　　　　　　第一讀會
  　　第十五　衆議院議員選擧法中改正法律案（尾崎行雄君提出）　　　　　　　第一讀會
  　　第十六　地租條例中改正法律案（人見米次郎君外一名提出）　　　　　　　第一讀會
  　　第十七　印紙税法中改正法律案（石橋爲之助君提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第十八　印紙税法中改正法律案（三谷軌秀君外五名提出）　　　　　　　　第一讀會
  　　第十九　著作權法中改正法律案（石橋爲之助君外一名提出）　　　　　　　第一讀會
  　　第二十　醫師法中改正法律案（濱田政壯君外三名提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　　第二十一　衆議院議員選擧法中改正法律案（小泉又次郎君外二十六名提出）　第一讀會
  　　第二十二　農工銀行法中改正法律案（西谷金藏君外二名提出）　　　　　　第一讀會
  　　第二十三　所得税法中改正法律案（大西五一郎君提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　　第二十四　盲人保護法案（齋藤珪次君外五名提出）　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第二十五　國有土地森林原野下戻法中改正法律案（伊藤祐一君外六名提出）　第一讀會
  　　第二十六　公共團體の管理する公共用土地物件の使用に關する法律案（原田十衞君外二名提出）　第一讀會
  　　第二十七　耕地整理法中改正法律案（大橋松二郎君外二名提出）　　　　　第一讀會
  　　第二十八　議院法中改正法律案（高木益太郎君提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第二十九　刑事訴訟法中改正法律案（高木益太郎君外一名提出）　　　　　第一讀會
  　　第三十　明治二十三年法律第二十七號中改正法律案（高木正年君外一名提出）　第一讀會
  　　第三十一　市制町村制中改正法律案（石黒磐君提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第三十二　競馬法案（廣澤辨二君外二十名提出）　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第三十三　陸軍幼年學校廢止に關する建議案（石黒磐君外四名提出）
  　　第三十四　野岩羽鐵道速成に關する建議案（日下義雄君外四名提出）
  　　第三十五　開拓促進竝農牧奬勵に關する建議案（吉植庄一郎君外三十一名提出）
  　　第三十六　府縣税及市町村税制限に關する建議案（石黒磐君外三名提出）
  　　第三十七　蠶業革新政策に關する建議案（武藤金吉君外四名提出）
  　　第三十八　大嶺線延長工事速成に關する建議案（久保通猷君提出）
  　　第三十九　警視廳廢止に關する建議案（高木益太郎君外二名提出）
  　　第四十　滿洲戰蹟保存會の事業に關する建議案（長谷場純孝君外六名提出）
  　　第四十一　名古屋富山間鐵道建設に關する建議案（三輪市太郎君外三名提出）
  　　第四十二　田畑地價修正に關する建議案（有田温三君外一名提出）
  　　第四十三　官幣大社熱田神宮禮遇復興に關する建議案（石黒磐君提出）
  　　第四十四　靖國神社の祭日を國の祝日となすの建議案（清崟太郎君外四名提出）
  　　第四十五　港務局設置に關する建議案（西村丹治郎君外一名提出）
  　　第四十六　鐵道速成に關する建議案（佐々木文一君外二名提出）
  　　第四十七　飛騨鐵道建設に關する建議案（佐々木文一君外三名提出）
  　　第四十八　航空事業國庫補助に關する建議案（岩田大中君外一名提出）
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• 001・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
  〔書記朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  (追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
  取引所法中改正法律案
  取引所稅法改正法律案
  耕地整理法中改正法律案
  地租條例中改正法律案
  肺結核療養所ノ設置及國庫補助ニ關スル法律案
  (第一號)大正三年度歲入歲出總豫算追加案
  (第二號)大正三年度歲入歲出總豫算追加案
  (特第一號)大正三年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
  一貴族院ヨリ受領シタル政府提出案左ノ如シ
  巡査看守退隱料及遺族扶助料法中改正法律案
  一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  瀨戶內海ノ漁業ニ關スル質問(山本農商務大臣)
  御大禮費豫算提出ノ時機ニ關スル質問(高橋大藏大臣)
  政治道德ニ關スル質問(山本內閣總理大臣)
  對米問題ニ關スル質問(〓野外務大臣)
  外交ニ關スル質問(牧野外務大臣)
  政府ノ新領土經營ニ對スル主義方針及臺灣陰謀事件ノ責任竝其ノ善後策ニ
  關スル再質問(原內務大臣)
  大正三年三月十日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  衆議院議員小林勝民君提出政府ノ新領土經營ニ對スル主義方針及臺灣陰謀事
  件ノ責任竝其善後策ニ關スル再質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  內務省衆地第一一號
  衆議院議員小林勝民君提出政府ノ新領土經營ニ對スル主義方針及臺灣
  陰謀事件ノ責任竝其善後策ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
  第一
  甲新領土ハ帝國ノ一部タリト雖モ內地ト事情ヲ異ニシ同一ニ律スル能ハサルニ
  付特種ノ制度ヲ設ケテ經營シツツアリ
  乙憲法ハ新領土ニ行ハルルカ故ニ特種ノモノニ對シテハ特別ノ規定ヲ設ケ適宜
  ノ施設ヲナスノ必要アリ
  第二
  甲臺灣陰謀ハ主トシテ大正二年七八月ノ交ヨリ計劃ヲ進行シタルモノニシテ同
  年十月ヨリ檢舉ヲ始メタリ
  苗栗ハ事件ノ中心ナリシニ依ル
  丁丙乙臺灣陰謀事件ハ捜査ニ依リ犯跡明瞭セルヲ以テ豫審ノ必要ヲ認メス
  臺北ニ於ケル事犯者ハ大正二年九月以降加盟シタルモノニ係リ同年十二
  月之ヲ檢舉シタリ
  戊臺灣陰謀事件ハ支那革命ノ影響ヲ受ケ架空的迷想ニ驅ラレ企劃セルコト
  審理ノ結果ニ依リ明瞭ナリ
  己臺灣陰謀事件ハ以上ニ記述スル如クニシテ全島ニ大動搖ヲ來セルコトナシ今
  後ノ施設ハ臺灣ノ實狀ニ鑑ミ適切ナランコトヲ期ス
  右及答辯候也
  大正三年三月十日
  內務大臣原敬
  〔左ノ答辯書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
  大正三年三月七日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  衆議院議員小西和君提出瀨戶內海ノ漁業ニ關スル質問ニ對スル別紙答辯書進
  候
  (別紙)
  衆議院議員小西和君提出瀨戶內海ノ漁業ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  一明治四十二年十一月農商務省令第五十六號ヲ以テ發布シタル瀨戶內海漁
  業取締ニ關スル規定ハ發布ノ當時ニ於テ關係府縣ニ對シ殊ニ訓令ヲ發シ明治
  四十四年一月一日以來之カ實行ヲ期セリ爾來關係地方ニ於テモ此趣旨ニ基
  キ相當取締ヲナシツヽアルモ地方ヲ異ニスルカ爲ニ其ノ取締ニ緩嚴ノ差アルヲ免
  カレサルノ實況アルヲ認メ主務省ハ更ニ客年十月關係府縣ニ通牒ヲ發シ之カ
  注意ヲ喚起シタリ卽チ政府ハ該規則施行以來之カ實行ヲ期シ且ツ或程度迄
  ハ其實行セラレツヽアルヲ信ス
  二瀨戶內海漁業取締規則ハ主トシテ漁族ノ蕃殖上有害ナリト認メラルヽ漁業ニ
  付キ其ノ最有害ニシテ且ツ漁利比較的僅少ナル時季ヲ撰定シテ制限ヲ設ケタ
  レハ該規定ヲ厲行スルモ當業者周年間ノ經營ヨリ打算スルトキハ之カ爲ニ失業
  シ又ハ漁村全滅ヲ招致スルカ如キ患ナシト認ム
  三瀨戶內海漁業取締規則ノ實況及之カ営業者ニ及ホス關係ハ前述ノ如シト雖
  トモ由來瀨戶內海ニ於テハ其ノ漁場ニ比シテ漁業者ノ數多キニ過クルカノ感ナ
  キニアラサルヲ以テ關係地方ニ於テハ一方ニハ朝鮮海其他ノ通漁若ハ移住ヲ奬
  動シ他方ニハ養殖ノ事業ヲ奬勵シツヽアリ
  右及答辯候也
  大正三年三月七日
  農商務大臣山本達雄
  大正三年三月九日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  衆議院議員才賀藤吉君提出御大禮費豫算提出ノ時機ニ關スル質問ニ對シ別
  紙答辯書差進侯
  (別紙)
  衆議院議員才賀藤吉君提出御大禮費豫算提出ノ時機ニ關スル質問ニ對ス
  ル答辯書
  大禮ハ曠古ノ大典ニシテ其ノ豫算ハ極メテ愼重ナル調査ヲ要シタルモ既ニ右調査ヲ
  了シ目下之カ提出ニ必要ナル手續中ナリ
  右及答辯候也
  大正三年三月九日
  大藏大臣男爵高橋是〓
  大正三年三月九日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  衆議院議員田中善立君提出政治道德ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員田中善立君提出政治道德ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  勅語ノ御趣旨ヲ奉體シ日夜憂勤止マサル所ナリ
  大正三年三月十日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  衆議院議員田中善立君提出對支外交ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員田中善立君提出對支外交ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  第帝國ハ條約其他ノ關係上南滿洲及東部內蒙古ニ於テ特殊ノ地位ヲ有スル
  ヲ以テ政府ハ該地域內ニ於テ漸次帝國ノ利權ヲ伸長セムコトヲ期シ其目的
  ヲ達スルカ爲メニ必要ナル措置ハ常ニ之ヲ執ルコトヲ怠ラス條約若クハ契約
  等ニヨリテ邦人ノ有スル土地所有營業居住鑛山採掘森林伐採等ノ諸權利
  ノ保護伸長ニ關シテハ政府ハ平素事情ノ許ス限リ之ヲ努メツヽアリ
  第二支那領土保全主義トハ支那領土ノ分割ヲ防止スルコトヲ目的トスルモノナル
  處露國ノ外蒙古ニ對スル英國ノ西藏ニ對スル何レモ共ニ前記ノ主義ニ抵觸
  セサルコトニ留意シツヽアリ從テ帝國政府ハ兩國政府ニ向テ抗議ヲ提出シタ
  ルコトナシ又前記英露兩國ノ措置ニ付テハ帝國政府ニ於テ隨時兩國政府ヨ
  リ夫ミ必要ナル通告ニ接シタリ
  第三政府ハ外蒙古ニ對スル露國ノ措置ヲ以テ大陸ニ於ケル帝國ノ地位ヲ危殆ナ
  ラシムルモノト認メス
  第四
  一、政府カ橫濱正金銀行ヲシテ支那改革借款園體ニ參加セシメタル理由ハ本
  年一月二十一日本大臣ノ衆議院ニ於テ說明シタル通ナリ右參加ニ關シ帝
  國政府ト露國政府トノ間ニ毫モ意思ノ疎通ヲ缺キタルコトナシ
  二、支那借款ニ關シテ銀行團員ノ有スル權利義務ハ何レモ主義上對等ナリ萬
  一支那ガ債務ヲ辨濟スル能ハサル場合ニ於テ關係各國ノ執ルヘキ手段ニ關
  シテハ今ヨリ何等明言シ得ル限ニアラス
  三、政府ハ支那ノ財政整理困難ナルノ理由ヲ以テ橫濱正金銀行ヲシテ支那改
  革借款園體ヨリ脫退セシムルノ意ナシ
  四、昨年九月實業借款ヲ支那改革借款團體ノ共同範圍ヨリ除外スルコトニ
  決定シタル結果今後鐵道其他ノ實業借款ニ關シ獨リ改革借款關係各國
  資本家ノミナラス他ノ諸國資本家間ニモ競爭ヲ見ルニ至ルヘキハ蓋シ免レサ
  ル所ナルヘキモ此等實業上ノ自由競爭ハ必スシモ支那ノ領土分割ヲ馴致ス
  ルモノニアラサルノミナラス改革借款關係各國政府ハ何レモ支那領土分割ノ
  勢ヲ防止センコトニ其力ヲ用井ツヽアリ此ノ如キ場合ニ於テ橫濱正金銀行ヲ
  シテ前記團體ヨリ脫退セシムルカ如キハ政府ニ於テ得策ナリト思考セス
  五、支那改革借款〓體ノ借款支途監督ニ關スル權限ハ充分ナリトハ稱スルヲ得
  サルモ同園體ニ於テ毫モ監督ヲ怠リ居ルノ事實ナシ又改革借款金カ南北抗爭
  ノ用ニ供セラレタリトノ說アルモ該借款カ契約以外ノ目的ニ充用セラレタリト認
  ムヘキ何等適確ナル證據ナク團體代表者ノ檢査監督ヲ經タル借款使途ノ報
  告書ニ徵スルモ右ノ如キ事實ヲ認ムルヲ得ス
  六、支那改革款借成立ノ際支那政府ノ傭聘スヘキ外人顧問ノ地位割當方ニ
  付關係各國間ニ容易ニ意見ノ一致ヲ見ルニ至ラサリシヲ以テ政府ハ大局ニ
  顧ミ中央ニ於ケル顧問ノ地位ハ之ヲ他國ニ讓リ別ニ地方ニ對シ他國ヨリモ
  多クノ顧問ヲ入ルヽコトニ關係各國ノ同意ヲ得既ニ河野嚴男氏ヲ牛莊鹽務
  分所會辨ニ鄭永昌氏ヲ天津鹽務分所會辨ニ傭聘セシメ尙近ク他地方ニモ
  數名ノ本邦人ヲ任用セシムル目的ニテ目下交涉中ナリ又改革借款トハ直接
  ノ關係ナキモ上記顧問々題ニ付各國間ニ商議進行ノ際帝國政府ハ平井晴
  二郞氏ヲ交通部顧問ノ要職ニ傭聘セシメ借款關係最高顧問ト略同等ノ待
  遇ヲ與ヘシムルコトヽセリ
  第五支那政府ニ於テ今囘東部内蒙古各地及連山灣ヲ放スルコトヽナリタルハ該
  方面ニ於ケル通商貿易ヲ發展セシメ邦人ノ居住營業ヲ容易ナラシムル上ニ
  於テ帝國政府ノ歡ヲ所ナリ而シテ政府ハ右各地ノ開放ヲ以テ支那政府ガ帝
  國ノ勢力ヲ掣肘セムトスル宿圖ヲ達シタルモノト認メス
  第六質問ノ趣旨ハ假想的事實ニ基クモノナルヲ以テ答辯ノ限ニアラサルモ政府ハ
  東部內蒙古ニ於ケル帝國ノ特殊地位ヲ擁護スル爲常ニ機宜ノ措置ヲ執ルコ
  トヲ怠ラサルコト已ニ前ニ述ヘタルカ如シ
  第七吉會鐵道開辨ノ件ニ付テハ已ニ支那官憲ニ交渉ヲ試ミタルコトアルモ諸般ノ
  關係上未タ何等決定ヲ見ルニ至ラス然レトモ政府ハ適當ノ時機ニ於テ必要
  ナル方策ヲ講スルコトヲ怠ラサルヘシ
  第八安慶正陽關間鐵道ノ計畫ニ關シ英國側ヨリ妨害アリタルコトハ帝國政府之
  ヲ承知セス南昌萍〓間鐵道敷設權ノ要求ニ付テハ未タ民間實業家ヨリ帝
  國政府ニ其申出ヲ爲シタルモノナシ
  右及答辯候也
  大正三年三月十日
  外務大臣男爵牧野伸顯
  大正三年三月十日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  衆議院議員石橋爲之助君提出對米問題ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員石橋爲之助君提出對米問題ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  政府ハ外交ノ關係上今日ヲ以テ是等ノ質問ニ答フルニ適當ノ時期ト認ムル能ハサ
  ルヲ遺憾トス
  右及答辯候也
  大正三年三月十日
  外務大臣男爵牧野伸顯
  大正三年三月十日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  衆議院議員小林勝民君提出外交ニ關スル質問ニ對スル別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員小林勝民君提出外交ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  一政府ハ他國ノ立法部ニ懸案中ノ事項ニツキ所見ヲ公表スルヲ欲セス
  二質問ノ如キ聲明ニ關シ新聞紙上ニ傳ヘラレタルコトアルモ政府ハ公然之ヲ聞知
  シタルコトナシ
  三質問ニ所謂命令ニ付テハ政府ニ於テ聞知スルトコロナシ布哇出生者ノ米國渡
  航ハ該出生ノ事實ヲ滿足ニ證明シ得ル限リ何等支障ナキ筈ナリ
  四政府ハ福建省ニ對スル我特殊ノ關係ニ付テハ注意ヲ怠ラサルトコロナルモ該地
  方ニ對スル措置ニ關シテハ之ヲ言明スルコト能ハサルヲ遺憾トス
  右及答辯候也
  大正三年三月十日
  外務大臣男爵牧野伸顯
  一貴族院ハ本院ノ送何ニ係ル左ノ政府提出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領
  セリ
  (第一號)大正二年度歲入歲出總豫算追加案
  (特第一號)大正二年度各特別會計歲入歳出豫算追加案
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  社寺上地下戾ニ關スル法律案
  提出者請願委員長渡邊修君
  奈古浦丸ノ所有者救恤ニ關スル法律案
  提出者請願委員長渡邊修君
  區裁判所管轄區域變更ニ關スル法律案
  提出者吉田定之助君井深彥三郞君
  軍人恩給法改正ニ關スル建議案
  提出者村松恆一郞君高木正年君大口喜六君
  地租條例中改正法律案
  提出者大西五一郞君石橋爲之助君
  不動產登記法中改正法律案
  提出者三谷軌秀君
  支那ニ於ケル同仁會事業ニ關スル建議案
  提出者丸尾光春君八木逸郞君若杉喜三郞君
  濱田政莊君瀨戶山〓彥君
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
  海軍收賄事件査問ニ關スル質問
  提出者田中善立君八田裕二郞君
  宗〓行政ニ關スル質問
  提出者金尾稜嚴君
  國富增進ニ關スル質問
  提出者石橋爲之助君
  海軍現役ニ關スル質問
  提出者八田裕二郞君
  本願寺疑獄事件ニ關スル質問
  提出者金尾稜嚴君
  本願寺事件ニ關スル質問
  提出者金尾稜嚴君
  海軍ノ調査及〓究ニ關スル再質問
  提出者小西和君
  海軍査問會ニ關スル質問
  提出者黑須龍太郞君
  畜牛結核病豫防法改正案及結核牛乳肉ノ〓用取締竝牛馬籍ニ關スル質問
  提出者加藤政之助君
  判事及檢事ノ休職竝判事ノ轉所ニ關スル質問
  提出者小林勝民君
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
  常任委員左ノ通リ異動アリタリ
  第五部懲罰委員松本宗吾君辭任ニ付其補關トシテ岡田泰藏君當選セラレタリ
  去七日日本勸業銀行法中改正法律案外一件委員恆松隆慶君辭任ニ付其補闕
  トシテ小林源藏君ヲ、生產奬動特別免稅法案外一件委員菊池武德君辭任ニ付
  其補關トシテ石橋爲之助君ヲ議長ニ於テ選定セリ
  〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス)
  移民奬勳ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年二月十四日
  提出者中川虎之助贊成者八田裕二郞
  外二十九人
  移民奬勵ニ關スル質問主意書
  我カ邦現時ノ狀態ハ內社會政策ニ迫ラレツツ外國防ノ競爭ニ何物ヲモ犧牲ニ供セ
  ムトスルノ觀アリテ毫モ國家ヲシテ富强ナラシムヘキ經倫ノ基礎ヲ確立スル所ナキカ如
  シ嗚呼斯ノ如クムハ遂ニ國家ヲシテ營養不良ノ悲境ニ陷ラシムルノ外アラサルヘシ惟
  フニ今ヤ我カ國是ハ領土ノ擴張ニ非ス將又滿韓ノ移民ニ非ス絕大ナル富力ヲ有シ
  豐富ナル遺利ヲ有スル墨西哥及南米ノ一角ニ移民ヲ送ルヲ以テ最策ヲ得當ヲ得タ
  ルノ急務ナリト信ス我カ領土ハ狹小ニシテ敢テ誇ルニ足ルヘキ產物ノアルニ非ス人口
  ハ年々歲々非常ナル速度ヲ以テ過剩シツツアルニアラスヤ蓋之ヲ社會政策ノ上ヨリ觀
  之ヲ經濟發展ノ上ヨリ觀ルモ此ノ方面ニ於ケル移民ノ奬勵ト事業家ノ投資ヲ奬勵
  スルニ勝レルノ手段アラサルヘシト認ム政府ノ之ニ對スル所見如何
  若又政府ニシテ前記移民ヲ奬動スルノ意アリトセハ政府ハ移民ニ關スル學校ノ設立
  又ハ移民航海ノ補助其ノ他之カ便利ヲ圖ルノ諸機關ヲ設備セムトハ爲ササルカ
  右及質問候也
  義務〓育費ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年二月十四日
  提出者中川虎之助贊成者早速整爾
  外二十九人
  義務〓育費ニ關スル質問主意書
  義務〓育費ノ增加ハ地方財政ノ基礎ヲ危クスルノミナラス之カ負擔ニ堪ヘサルノ狀
  態ナリ現ニ德島縣板野郡大山村ニ於テ〓育費ヲ議スルニ當リ村會議員ハ之ヲ平等
  ナル戶數割ニ賦課セムトノ意見ヲ有シ村長亦同意見ニテ將ニ之カ議決ヲ爲サムトス
  ルノ形勢アリタルモ本員モ村會議員ノ一人タルヲ以テ一時之ヲ中止セシメタルノ實例
  アリ若斯ノ如ク議決セラルル場合アリトセムカ忽チ〓育費ニ多大ノ不足ヲ生シ學校ハ
  之ヲ閉鎖セサルヘカラサルノ不幸ヲ見ルニ至ルヘキヤ論ナシ政府ハ斯ル場合ニ遭遇セ
  ハ果シテ如何ニ之ヲ處置セムトスルカ
  右及質問候也
  政府ノ新領土經營ニ對スル主義方針及臺灣陰謀事件ノ責任竝其ノ善後策ニ
  關スル再質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年二月二十五日
  提出者小林 勝民贊成者岩崎安次郞
  外九十人
  政府ノ新領土經營ニ對スル主義方針及臺灣陰謀事件ノ責任竝其ノ善後
  策ニ關スル再質問主意書
  第一問ニ對スル政府ノ答辯ハ全然質問ノ要旨ヲ誤解セリ質問ノ趣旨ハ政府ノ新
  領土經營ノ根本的大主義大方針ヲ問フニアリ然ルニ政府ハ質問者ノ辯明ヲ待タ
  スシテ書面ヲ以テ答辯セラレタルヨリ問意ニ背反セル不得要領ノ答辯ヲ弄スルニ
  至レリ因テ項目ヲ分チテ再問スル左ノ如シ
  甲政府ハ新領土ヲ以テ日本帝國ノ一部一州トシテ經營スル方針ナリヤ又ハ單
  純ナル殖民地トシテ經營セムトスル方針ナリヤ
  乙政府ハ曾テ新領土ニ對シ帝國憲法ノ行ハレ居ルコトヲ聲明セリ而シテ樺太
  州ヲ除ク以外ノ新領土ニ於テハ事實上憲法ノ行ハレ居ラサル理由何如
  第二問ニ付テモ政府ノ答辯ハ質問ノ趣旨ヲ誤解シテ答辯セリ因テ更ニ左ノ如ク
  再問ス
  甲臺灣陰謀事件ハ臺北、基隆、新竹、苗栗、臺中、南投、臺南、阿緱ノ各廳下
  ニ瀰蔓セル大事件ニシテ其ノ黨與數千ノ多キニ達シ居レリ然ルニ該陰謀ノ發
  生以來二年餘ノ久シキ何故ニ之ヲ探知檢擧スル能ハサリシヤ
  乙該陰謀事件ハ臺北カ其ノ策源地ナリシニモ拘ラス苗栗ノ如キ由來裁判所モ
  ナク監獄モナキ地ニ臨時法院ヲ開設シタル理由何如
  丙該陰謀事件ノ如キ錯綜セル事件ヲ何故ニ豫審ニ付セサリシヤ
  丁臺北ニ多數ノ該事犯者アリシニモ拘ラス久シク之ヲ放漫ニ付シ居リタルハ何
  故ナルヤ
  戊當局者カ該事件ヲ以テ民心不平不滿ノ結果ニ非ストスル理由何如
  己該事件ノ如ク全島ニ大動搖ヲ來サシメタル善後策ニ付當局ニ何等具體的
  成案ナキヤ
  右及再質問候也
  國運ノ伸張ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年三月三日
  提出者鈴木萬次郞贊成者黒須龍太郞
  外九十人
  國運ノ伸張ニ關スル質問主意書
  現在國民ノ負擔セル租稅ハ全ク過重ニ失シ國運ノ伸張ヲ阻害スルモノト認ム政府ハ
  然ラスト認ムルヤ
  右及質問候也
  帝國在〓軍人會ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年三月三日
  提出者相島勘次郞贊成者高木益太郞
  外三十八人
  帝國在〓軍人會ニ關スル質問主意書
  一帝國在〓軍人會ハ陸軍省官制第十條第九項ノ事務ニシテ陸軍大臣ノ監督ニ
  屬スルモノナルコト帝國在〓軍人會規約第四條ニ明記スル所ノ如シ然ルニ寺內
  大將カ規約第十七條ノ規定ニ反シ朝鮮居住ノ儘會長ノ職ニ在ルハ不都合ナラス
  ヤ之ヲ不問ニ附スル理由如何
  一帝國在〓軍人會長カ其ノ會員ニ對シ國民トシテ選舉權ヲ行使スル行爲二十涉ス
  ル如キ訓令ヲ發スルニ拘ラス之ヲ不問ニ附スル理由如何
  右及質問候也
  支那新開埠ニ關スル再質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年三月三日
  提出者伊東知也贊成者相島勘次郞
  外三十八人
  支那新開埠ニ關スル再質問主意書
  一政府ノ答辯書ニ依レハ支那新開埠ハ支那政府ノ自覺ニ出テ帝國政府ハ何等カ
  ノ內交涉ヲ受ケシコトナシト云フハ列國トノ國際關係上支障ヲ來スノ虞アルヲ以テ
  單ニ表面上ノ辭令ニ過キサルノ意カ或ハ又誠心誠意ヲ以テ斯ク斷言シ得ルモノナ
  ルカ
  一本員ハ新開埠諸地中其ノ開放ニ依リ帝國ノ發展ニ障害ヲ來スモノ尠ナカラスト
  認ム然ルニ政府ハ少シモ帝國ノ發展ニ障害ヲ來スコトナシトスルハ如何ナル理由ニ
  依ルカ新開埠各地ニ就テ一々其ノ理由ヲ明示セラレムコトヲ望ム
  右及再質問候也
  對米外交ニ關スル再質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年三月四日
  提出者齋藤隆夫贊成者岩崎安次郞
  外八十九人
  對米外交ニ關スル再質問主意書
  一政府ハ昨年五月米國加州ニ於テ制定發布シタル外國人土地所有禁止法ヲ
  以テ日米通商航海條約違背ナリト認ムト答辯セリ政府ハ右條約ノ何レノ條項
  ニ違背スルモノト認ムルヤ
  二條約違背ハ國權ノ侵害ナリ米國ノ爲ニ帝國ノ國權ヲ侵害セラレ之ヲ囘復スル
  能ハス政府ハ輔弼ノ責任ヲ盡シタリト信スルカ
  三政府ハ同法律カ米國憲法ニ違背スルヤ否ハ事外國ニ於ケル國內法制ノ解釋ニ
  屬スルヲ以テ玆ニ明言スルヲ欲セスト答辯スレトモ若同法律カ米國憲法ニ違背
  スルモノナレハ在米日本人ノ權利ヲ保護スルカ爲ニ政府ハ適當ノ手段ヲ取ラサ
  ルヘカラス政府ハ之ニ關シ何等カノ手段ヲ取リタルカ
  四政府ハ本件ノ交涉經過ヲ適當ノ時期迄祕密ニ付スル事ヲ日米兩國政府間ニ
  約束セリト答辯セリ右約束ハ彼我何レノ政府ヨリ堤供シタルカ
  五政府ハ在米日本人ノ土地所有權ヲ確保スルカ爲ニ米國政府ニ對シテ日米通
  商航海條約改正ノ提議若ハ歸化法改正ノ要求ヲ爲ス意思ナキヤ如何
  右及再質問候也
  瀨戶內海ノ漁業ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年二月二十八日
  提出者小西和贊成者高木益太郞
  外三十八人
  瀨戶內海ノ漁業ニ關スル質問主意書
  一政府ハ明治四十二年十一月農商務省令第五十六號ヲ以テ瀨戶內海漁業
  取締規則ヲ發布シ明治四十四年一月一日ヨリ之ヲ施行セリ然ルニ其ノ實際
  ヲ窺フニ該規則ハ更ニ行ハレス殆ト全ク空文ニ屬スルノ觀アリ而モ尙政府ハ該
  規則ノ精神ヲ貫キ之カ目的ヲ達シツツアリト信スルカ若シ然ラストセハ該規則ヲ
  勵行スルノ意思アルカ又其ノ勵行ヲ始ムル時期如何
  二瀨戶內海ハ天然ノ魚族蕃殖場ト謂フモ不可アルヲ見ス然ルニ濫獲又濫獲ノ爲
  近年ニ至リテ著シク魚族ノ減少ヲ告ケタルノミナラス其ノ漸減ノ趨向ハ益甚シキヲ
  加ヘツツアリ此ノ故ニ魚族ヲ保護シ之カ蕃殖ヲ謀リ以テ此ノ方面ニ於ケル漁業
  上百年ノ大計ヲ立テム爲特殊ノ漁業取締規則ヲ設ケタルハ頗ル機宜ニ適ヘル
  モノト認ム唯該規則ヲ勵行シテ漁業ノ經營ヲ制限シ乃至禁止スルニ於テハ幾
  多ノ漁業者ヲシテ失業ノ不幸ニ陷ラシメ甚シキニ至リテハ漁村ノ全滅ヲ招知ス
  ルモノナキヲ保シ難シ之ニ對スル政府ノ所見如何
  三瀨戶內海漁業取締規則ノ一部分ノミ辛クモ施行セラレツツアル現狀ニ於テスラ
  尙漁業者ヲ苦シムルコト言語ニ絕シ延ヒテ犯則ノ行動ヲ取リツツアルモノ枚舉ニ
  遑アラス此ノ故ニ該規則ノ勵行ニ先チ幾多ノ漁業者ニ向ヒテ救濟的ノ方法ヲ
  立テサレハ瀨戶內海ノ魚族ハ到底保護乃至蕃殖ノ實ヲ舉クルコト能ハサルヘシ
  ト信ス政府ハ此ノ方面ノ漁業者ニ對シテ救濟的施設ニ出ルノ成案アリヤ又其
  ノ成案ノ內容及之ヲ實施スルノ時期ト方法ハ如何
  右及質問候也
  政治道德ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年三月四日
  提出者田中善立贊成者岩下〓周
  外三十二人
  政治道德ニ關スル質問主意書
  明治四十四年二月十一日明治天皇陛下ハ
  朕惟フニ世局ノ大勢ニ隨ヒ國運ノ伸張ヲ要スルコト方ニ急ニシテ經濟ノ狀況漸ニ
  革マリ人心動モスレハ其ノ歸向ヲ謬ラムトス政ヲ爲ス者宜ク深ク此ニ鑒ミ倍〓憂動
  シテ業ヲ勸メ〓ヲ敦クシ以テ健全ノ發達ヲ遂ケシムヘシ
  トノ勅語ヲ下シ給ヒタリ山本內閣總理大臣ヲ首メ各大臣ハ此ノ勅語ニ違背シ
  ツツアリト思惟セサルヤ
  右及質問候也
  御大禮費豫算提出ノ時機ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年三月二日
  提出者才賀藤吉贊成者岩下〓周
  外三十二人
  御大禮費豫算提出ノ時機ニ關スル質問主意書
  本年秋季御舉行アラセラルヘキ卽位式御大禮ニ關スル豫算案ハ會期ノ三分ノ二ヲ
  經過スル今日ニ至ル迄未タ提出セサルハ如何ナル事由ニ基クヤ
  右及質問候也
  右演說致サス候間文書ヲ以テ至急御答辯相成度候
  對支外交ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年一月二十四日
  提出者田中善立贊成者尾崎行雄
  外三十二人
  對支外交ニ關スル質問主意書
  第滿蒙問題解決ニ關スル件
  南滿洲及東蒙古問題ノ解決ハ之ヲ日〓日露ノ關係ヨリ見又國防上ヨリ考ヘ或ハ
  對支政策上ヨリ見テ一日モ忽ニスヘカラサル急務ニシテ國民ノ執心ナル輿望ナリ然ル
  ニ政府ハ南京事件、民國承認、露支協約ノ際等屢之カ解決ノ機會アリシニ拘ラス每
  ニ之ヲ棄テテ顧ミス偶,〓民國承認ノ際列國カ優勝ナル鐵道權ニヨリテ其ノ勢力圏ヲ
  支那本土ノ各地ニ擴張若ハ取得シタルニ對シ我ハ僅ニ我カ勢力範圍內ニ於テ貧弱
  ナル満蒙五鐵道ノ借款權ヲ得タルニ止マリ又近クハ東蒙各地ヲ開市シテ各國勢力
  ト複雜ナル關係ヲ結ハシムルニ至レリ要スルニ滿蒙問題解決ノ意義ハ國防上完全ナ
  ル施設ヲ爲スヲ得又經濟上我カ國民ノ自由ナル發展ヲ遂クルノ基礎ヲ立ツルニ在リ
  然ルニ之ヲ現狀ニ顧ミレハ其ノ名ハ我カ勢力範圍ト稱スト雖其ノ實ハ滿蒙內地ニ於
  テ我カ國人土地所有權ハ勿論營業居住權スラモ得ス鑛山採掘權、森林伐採權ノ
  如キハ全然其ノ得ル所ニアラス僅ニ狹隘ナル鐵道附屬地及居留地內ニ跼踏シテ美
  田ヲ見ルモ耕スニ由ナク珠玉ヲ探ルモ採掘スルヲ得サルノ狀態ニ在リ政府ハ滿蒙ノ關
  係ヲ以テ現狀ニ甘ムセムトスルカ然ラサレハ何故ニ南京事件、民國承認露支協約
  成立等ノ機會ヲ逸シ去リタルカ露支協約ニ對シテハ後レタリト雖尙滿蒙問題解決ノ
  理由充分ナルヲ信ス政府ハ之ニ對シ速ニ之カ解決ノ方法ヲ執ルノ決心無キカ
  第二支那領土保全政策ニ關スル件
  一路支協約ノ訂結ハ外蒙古ヲ擧ケテ事實上露國ノ保護國ト爲セリ西藏モ亦獨
  立シテ英國保護ノ下ニ立タムトシ現ニ三國委員交涉中ニ在リ支那領土ノ保全
  ハ之カ爲ニ全然破壞セラレタルモノナルヲ認ム政府ハ帝國從來ノ政策タル支那
  領土保全主義ノ爲何故ニ一國ニ對シテ之ヲ抗議セサリシカ
  二露國カ外蒙古ヲ獨立セシメ英國カ西藏ヲ獨立セシムル計畫ヲ爲スニ方リ兩國ハ
  日英同盟及日露協商ノ趣旨ニ遵ヒ共ニ帝國ニ對シ豫メ其ノ意ヲ通告シ來リタ
  ルヤ否ヤ若其ノ通告ヲ受ケタリトセハ政府ハ之ニ對シ如何ナル處置ヲ取リシヤ
  三現政府ノ支那領土保全ニ對スル意義ノ解釋如何
  第三露支協約ニ關スル件
  一帝國ノ大陸ニ於ケル國防及東邦平和ノ維持ハ日露勢力ノ均衡ニヨリテ維持セ
  ラルルモノナルコト言ヲ俟タス而シテ露支協約ノ成立ハ外蒙古ヲ舉ケテ事實上
  之ヲ其ノ保護國ト爲シタルモノニシテ帝國ハ之ト均衡ヲ維持スヘキ勢力ヲ內蒙
  古ニ扶植スルニアラサルヨリハ日露ノ均勢ヲ破壞シ帝國ノ大陸ニ於ケル地位ヲ
  危殆ナラシムルモノナルヲ信ス政府ノ所見如何
  二露支協約ノ成立ニ對シ日露ノ均勢ヲ保ツカ爲內蒙古ニ於テ之ト對抗スヘキ施
  設ヲ爲スハ一日モ忽ニスヘカラサル急務ナルニ拘ラス政府ハ露支協約ノ成立後
  數箇月ヲ經過シタル今日ニ及フモ之カ爲ニ未タ何等ノ處置ヲ取リタルヲ聞カス
  之ニ對スル政府ノ方針如何
  第四支那借款ニ關スル件
  一帝國カ露國ノ提議ヲ排シテ借款團ニ加入シタル理由如何
  二我カ國ノ借款資金ハ外債ヲ以テ之ニ充ツルモノナルカ故ニ其ノ借款ヲ重ヌルニ
  從ヒ外國市場ニ於ケル我カ信用益墜落シテ自然一般ノ公債ニ影響スルノ恐レ
  アリ而シテ其ノ借款ニヨリテ得ヘキ權利ハ常ニ他ノ債權國ト同等ノ權利ヲ得ル
  能ハス萬一ノ場合ニ於テハ兵力ヲ以テ債權ヲ保護スルノ責任ヲ負擔セシメラル
  ルノ結果ニ陷ルヘキニアラサルカ之ニ對スル政府ノ決心如何
  三借款團ノ目的ハ支那政府改造資金貸付ヲ爲スニ在リ然ルニ今日ノ勢ヲ以テ
  之ヲ推スニ中央地方共ニ財政ノ紊亂其ノ極ニ達シ借款ニ繼クニ借款ヲ以テシ
  財政ノ基礎遂ニ立ツニ由ナク政治ノ整理ハ殆ト望ムヘカラサルニ似タリ政府ハ
  之ニ對シ尙借款團加入ヲ繼續セムトスルカ
  四昨年九月借款〓ハ其ノ協約ヲ變更シ單ニ政治借款ニ限リ鐵道借款其ノ他ノ
  經濟借款ハ之ヲ自由ニ放任スル事トシタル爲爾來鐵道借款ハ盛ニ各國ト訂約
  セラレツツアリ抑鐵道借款ハ交通行政上及鐵道財政上ヨリ純然タル政治借款
  ノ性質ニ屬スヘキモノニシテ殊ニ借款ニヨリテ敷設シタル鐵道ハ之ニヨリテ事實上
  各借款國ノ勢力範圍ヲ劃定セラルヘク言ヲ換ユレハ借款團ハ從來ノ共同援助
  ヲ離レテ鐵道ニヨレル支那分割ノ自由競爭ニ移リタルモノト言フヲ得ヘシ借款
  團ノ目的ハ支那政治ノ整理資金ヲ供スルト共ニ一面ニ於テハ支那領土ノ分
  割ヲ馴致スヘキコト斯ノ如キ弊害ヲ防止セムカ爲ニアリシコトヲ信ス然ルニ借款
  團ハ終ニ此ノ目的ヲモ放棄シテ殆ト無意味ノモノトナレリ政府ハ尙之ニ對シ借
  款國加入繼續ノ必要ヲ認ムルカ所見如何
  五昨年六月第一囘大借款成立シ其ノ前渡金支拂中ニ於テ在野有志者等ハ精
  養軒ニ會シ該前渡金ハ袁世凱ヲシテ南北抗爭ノ用ニ供セシムルニ過キス是レ借
  款ノ精神ヲ沒却スルモノナルニヨリ同前渡金ノ拂渡ヲ見合スヘシト決議シタルニ
  外務省ハ六月九日之ヲ新聞紙上ニ辯明スルニ同借款金ハ其ノ用途ヲ明確ニ
  シ嚴重ニ監督ノ方法ヲ講シアルコト故南北抗爭ノ用ニ供セシムルカ如キハ斷シテ
  其ノ虞ナキ旨ヲ以テシタリ然ルニ其ノ後ノ經過ニヨレハ同借款金ハ明ニ南北抗
  爭ノ用ニ供セラレタルコト熊希齢ノ報告及各外國人等ノ報告ニヨリテ明ナリ當
  時借款團カ袁政府ヲシテ此ノ濫用ヲ敢テセシムルニ至リタル所以ノモノハ之ニ對
  シ監督ノ權能充分ナル能ハサル關係アリシカ或ハ其ノ權能充分ナルモ其ノ監督
  ヲ怠リタルカ爲ナリシカ之ヲ濫用セシムルニ至リタル事情竝當局者カ以上ノ如キ
  斷言ヲ敢テシタル理由如何
  六我カ國ノ借款團ニ加入シタルハ將來支那ニ對シ他ノ借款國ト平等ノ發言權ヲ
  得ムカ爲ナリ然ルニ借款擔保タル鹽務ニ對シ他國ハ相常ナル顧問ヲ採用セシメ
  タルニ拘ラス我ハ僅ニ鄭永昌外一名ヲシテ稽核造報分所協理ニ當リ僅ニ他國
  ノ下風ニ立タシムルヲ甘ムシタルハ我カ借款ニ對スル平等ノ權能ヲ自棄スルニ似タ
  リ政府ハ何故ニ他國ト平等ノ顧問官ヲ採用セシメサリシカ
  第五東蒙各地新開港ニ關スル件
  一東蒙及連山地方ハ帝國ノ勢力範圍ニシテ特ニ露支協約ノ均衡ヲ維持スル
  爲充分ノ施設ヲ要スヘキ地方ナリ然ルニ其ノ問題未タ解決セラレサルニ先タチ
  其ノ要地ヲ列國ニ開市シ對外關係ヲ複雜ナラシメタルハ滿蒙問題解決上有害
  ノ結果ヲ生スヘキモノナルヲ信ス政府ハ何故ニ之ヲ默視スルカ
  二東蒙各地連山灣ノ開港ハ支那政府カ外國ノ力ニヨリテ我カ東蒙ニ於ケル勢力
  ヲ掣肘セムトスル宿圖ヲ達シタルモノナリトノ說アリ政府ノ所見如何
  第六外蒙古ノ内蒙古併合運動ニ關スル件
  一外蒙古カ內蒙古ヲ併合セムトシ內蒙古王公中亦之ヲ希望スル者少ナカラサル
  ハ事實ナリ今日外蒙古ノ兵力尙微弱ナルカ爲未タ其ノ志ヲ達セスト雖他日西
  式訓練ニヨリ其ノ兵力充實スルニ至ラハ終ニ其ノ志ヲ達スルノ期ナシトセス政府
  ハ我カ勢力範圍內ニ於ケル此ノ危險ニ對シ豫メ防禦スルノ方法ヲ執リツツアリ
  ヤ
  二露國カ外蒙古ニ於テ六萬ノ蒙古兵ヲ西式ニ訓練スル事業ハ擔當〓官ノ處置
  當ヲ得サリシ爲一旦失敗ニ終リシト雖人ヲ換ヘテ之ヲ續行スヘキハ察スルニ難カ
  ラス若此ノ事業完成シタル曉ニハ外蒙古ハ强固ナル露國ノ保護國タルヘシ政府
  ハ之ニ對シテモ尙蒙古ニ於ケル施設ヲ急務トセサルカ
  第七吉會鐵道ニ關スル件
  吉會鐵道ハ國防上竝滿蒙經營上最必要ナル線路ナリ殊ニ其ノ敷設ニ關スル我カ
  特權ハ間島ノ領土權問題ト交換的意味ノ下ニ協定セラレタル特殊ノモノナルニ拘ラ
  ス其ノ敷設時期ノ限定ナキ爲今後永ク其ノ敷設ヲ延期セラルルモ奈何トモスヘカラサ
  ル狀態ニ在リ政府ハ本鐵道敷設ノ急務ニ對シ昨年滿蒙五鐵道借款權取得ノ際
  何故ニ之ヲ放置シタルカ
  第八揚子江岸ニ於ケル鐵道敷設其ノ他ノ利權獲得ニ關スル件
  本邦人カ曩ニ運動シツツアリタル南京萍〓間及安慶正陽關間ノ兩鐵道敷設權ハ
  英國ノ抗議ノ爲ニ其ノ成立ニ頓挫ヲ來シタルモノナリトノ說アリ抑揚子江流域ハ英
  國ノ勢力範圍ト稱スト雖其ノ事實ハ英國カ〓朝時代ニ於テ貿易ノ保護上他國ニ
  其ノ地域ヲ割讓セシメサルノ言質ヲ取得シタルニ止マリ其ノ他ハ何等ノ政治的經濟
  的特權ヲ有スルモノニアラス現ニ佛米獨諸國ハ同流域ニ於テ何レモ相當ノ利權ヲ占
  有シツツアルニアラスヤ我國ハ長江流域ニ於ケル利害關係ノ重大密接ナルコト在留
  民ノ人口ニ於テ遙ニ列國ノ上ニアリ貿易額ニ於テモ利權ノ投資ニ於テモ亦決シテ英
  國ニ下ラス況ヤ支那ニ對スル機會均等主義ハ列國間ノ公約タルニ於テ支那何レノ
  處ニ於テ利權ノ獲得ヲ行フモ何ソ列國ノ掣肘ヲ受クヘキ必要アルモノナラムヤ英國カ
  之ニ對シ薄弱ナル勢力範圍ノ名下ニ我カ國民ノ運動ニ向テ抗議ヲ爲シタリトセハ是
  レ日英同盟ヲ無視シ及列國間ニ於ケル機會均等主義ヲ度外視シタルモノナリ事實
  ノ眞相竝長江流域ニ於ケル鐵道其ノ他利權獲得ニ際シ英國ノ妨害ニ對スル政府ノ
  方針如何
  右及質問候也
  備考
  吉會線ハ南滿鐵道線長春驛ヨリ日本海岸朝鮮〓津ニ出ル中間ナル吉林ヨリ會
  寧ニ至ル間ヲ指ス其ノ延長二百七十哩(工費的三千萬圓ノ豫算)ニシテ此ノ鐵
  道成立スルトキハ從來我カ鐵道勢力ハ滿洲ニ於テ安奉線ニヨリ偏則ナル丁字形
  ヲ以テ其ノ線路ヲ劃シタルモノ此ノ鐵道ニヨリテ之ヲ兩端ヨリ引キ迴ハス形トナリ
  滿洲ニ對スル鐵道勢力ノ基礎始メテ確立スルヲ得ヘシ而シテ其ノ效果ヲ考フルニ
  左ノ如シ
  軍事上ニテハ一朝長春方面ニ事アリ急ニ軍隊ヲ集中スルニ當リ從來朝鮮方面
  及大連方面ヨリ奉天ニ集リ南滿線ノ一線ニテ之ニ赴クノミナリシカ吉長線成
  立スル曉ニハ其ノ集中線一一線ト爲ルカ故ニ倍數ノ兵力ヲ送ルヲ得ヘク又假リニ
  黃海方面ニ敵艦遊でスルコトアリトセムカ大連線ハ殆ト其ノ用ヲ爲サス又朝鮮
  線モ平安道海岸ニ接近セル線路ヲ脅カサルル恐レアリ然ルトキハ現時ノ南滿線
  モ亦決シテ安全ナルモノト云フヘカラス乃チ此ノ鐵道成立シテコツ始メテ此ノ缺
  點ヲ補フヲ得ヘシ又此ノ鐵道ハ露國ノ東〓鐵道竝浦鹽、ポシヱツト方面ニ對シ
  極メテ强力ナル威嚇ノ用ヲ爲シ其ノ勢力ヲ分割セシムルノ用頗ル大ナリ
  滿蒙經營上ニ於テハ日本海竝北韓方面ヨリ發展スル勢力ヲ滿蒙方面ニ集中
  スルニ最近距離且便宜ナル聯絡ヲ開通シ竝同鐵道沿線ノ富源ヲ開發シ通商
  移民其ノ他各種ノ勢力集中上始メテ完全ナルヲ得ヘシ
  之ヲ鐵道營業上ヨリ見ルモ現在長春方面ニ於テ四平街昌圖方面ノ我カ南滿
  線ニ對シテ東〓鐵道ヨリ荷物ノ運輸ヲ奪ハレツツアルニ對シ却テ東〓鐵道ノ荷
  物ヲ我ニ吸收シ又洮南長春線開通ノ上ニ於テモ其ノ方面ノ貨物ヲ吸收スルヲ
  得ヘク況ヤ本鐵道沿線ニ於ケル森林ノ伐採運輸ハ鐵道營業上頗ル有望ナルモ
  ノアリ要スルニ鐵道營業收支上ニ於テモ亦最有利ノモノタルヲ失ハサルヘシ
  本線ハ明治四十年四月十五日ヲ以テ締結シタル新奉及吉長鐵道ニ關スル條
  約中第三條ニ於テ「將來吉長鐵道ニ在テ支線ヲ添設シ或ハ該鐵道ヲ延長ス
  ル場合ニハ其建造ノコトハ〓國政府ノ自辨ニ歸スヘク若シ資金ニ不足アルトキ
  ハ會社ニ向ッテ借入ヲ申込ムヘシ」トノ條項ヲ認メシメタルカ當時間島問題ヲ解
  決スルニ當リ吉長安奉兩線ト共ニ交換的意味ノ下ニ此ノ條約ヲ結ハシメタル
  モノナルコトハ當時一般ノ疑ハサリシ所ナリ然ルニ滿蒙經營上國防上最急務ヲ
  要スル今日ニ至ル迄尙放棄セラレ殊ニ滿蒙五鐵道問題ノ解決ニ際シテモ之ヲ
  不問ニ附シアルハ甚遺憾ナリ
  木鐵道ノ沿線タル延吉琿春方面ハ前〓朝愛親覺羅ノ出生地ニシテ舊ト相
  當ノ盛區タリシカ覺羅氏其ノ眷族ヲ率井支那本土ニ出テタル際シ土民等大擧
  其ノ地ヲ空シクシテ之ニ從ヒ去リタル儘交通不便ノ爲今日迄人口稀薄ナルモノ
  ナレトモ地勢廣漠ニシテ土地肥沃ニ開拓上頗ル有望ナリ而シテ現ニ多數ノ鮮
  人等カ移住地ヲ以テ名アル間島平野ハ其ノ一部分ナル此ノ他沿線ニ於テハ森
  林鑛山ノ利源頗ル多ク又農產物ノ產出少ナカラス
  本鐵道ノ工費ハ從來ノ關係上ヨリスレハ南滿鐵道會社ニ於テ其ノ協議ヲ受クヘ
  キモノナルカ其ノ開通ハ單ニ滿鐵會社ノ收支ヨリスルトキハ其ノ本線ノ利益ヲ分
  割セラルルヲ杞憂スルカ爲自然放置セラルルモノナリトノ說アリ果シテ然ラハ大局
  ヲ顧ミサルノ行爲ナリトス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=1

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• 002・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　會議ヲ開キマス、高橋大藏大臣
  (大藏大臣男爵高橋是〓君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=2

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• 003・高橋是清

  ○大藏大臣(男爵高橋是〓君)　今囘大正三年度總豫算追加トシテ提出致シタル
  大禮費豫算ヲ諸君ニ紹介スルハ、私ノ深ク光榮トスルトコロデゴザイマス、抑大禮ハ
  洵ニ聖代ノ盛儀ニシテ、其關係スル所頗ル重大ニ、其影響スル所極メテ廣汎ナルヲ以
  テ、政府ハ昨年來汎ク各般ノ事項ヲ調査シ、愼重審議苟モ遺算ナカランコトヲ期スル
  上海)是ガ豫算ノ編成ニ關シテハ、冗ヲ省キ用ヲ節シ、以テ聖旨ノ在ル所ニ反カサラ
  ンコトヲ努メマシタ、大正三年度總豫算追加第一號ニ計上スルトコロノ金額ハ、歲入歲
  出各、三百八十二万六千百四十圓ニシテ、第二號ニ計上スル所ノ金額ハ、歲入歲
  出各〓百五十万千三百二圓、故ニ兩者ヲ合シテ歲入歲出各〓五百三十二万七千四
  百四十二圓デゴザイマス、前者ハ大禮ニ關スル直接ノ經費ニシテ大禮使ノ主管ニ屬シ、
  後者ハ大禮ノ舉行ニ伴ヒ關係各省ニ於テ實行スベキ各般ノ施設ニ要スル經費デゴザイ
  マい、尙ホ右ノ外大禮ニ伴ヒ關東都督府朝鮮總督府、及ヒ臺灣總督府ニ於テ要ス
  ル經費ハ各〓特別會計歲入歳出豫算追加トシテ之ヲ提出致シマシタ、諸君、私ハ諸
  君ガ愼重審議以テ速ニ本豫算案ニ協賛ヲ與ヘラレンコトヲ望ミマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=3

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• 004・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　此場合更ニ報告ヲ致サセマス
  〔書記朗讀〕
  一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  鐵道事故竝監督ニ關スル再質問(山本内閣總理大臣)
  新聞紙ノ發賣禁止ニ關スル再質問(原內務大臣)
  大正三年三月十日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  衆議院議員野村嘉六君提出鐵道事故竝監督ニ關スル再質問ニ對シ別紙答辯書
  差進候
  (別紙)
  衆議院議員野村嘉六君提出鐵道事故竝監督ニ關スル再質問ニ對スル答
  辯書
  鐵道ノ施設宜シキヲ得サルカ爲又ハ監督者其ノ責任ヲ盡サヽルカ爲事故ノ發生ヲ多
  カラシメタル事實ヲ認メス事故ノ數ハ寧ロ逐年減少ノ實績ヲ示シ近時特ニ續發セ
  ルノ事實ナキコト及銳意從事員ノ監督ニ努メ事故ノ防止ヲ圖リ漸次改良ノ實ヲ
  舉ケツツアルコト曩ニ答辯セル所ノ如シ
  大正三年三月十日
  內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
  衆議院議長長谷場純孝殿
  衆議院議員齋藤隆夫君提出新聞紙ノ發賣禁止ニ關スル再質問ニ對シ別紙答辯
  書差進候
  (別紙)
  衆議院議員齋藤隆夫君提出新聞紙ノ發賣禁止ニ關スル再質問ニ對スル
  答辯書
  發賣頒布禁止ノ處分ヲ爲シタル新聞紙ノ揭載事項ニ關シテハ之ヲ明示スルノ限ニ
  在ラス
  右及答辯候也
  大正三年三月十日
  內務大臣原敬
  〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
  鐵道事故竝監督ニ關スル再質問主意書
  右成規ニ據り提出候也
  大正三年三月三日
  提出者野村嘉六贊成者黒須龍太郞
  外九十人
  鐵道事故竝監督ニ關スル再質問主意書
  一鐵道政策其ノ當ヲ得サルニヨリ事故續發スルモノト認ム政府ノ所見如何
  一鐵道監督ノ任ニ該ルモノ其ノ責任ヲ盡ササルニヨリ改良サレサルモノト認ム政府ノ
  所見如何
  右及再質問候也
  新聞紙ノ發賣禁止ニ關スル再質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年三月五日
  提出者齋藤隆夫贊成者岩崎安次郞
  外八十九人
  新聞紙ノ發賣禁止ニ關スル再質問主意書
  政府ハ新聞紙揭載ノ事項ニシテ安寧秩序ヲ紊シ又ハ風俗ヲ害スルモノノ外發賣頒
  布禁止ノ處分ヲ爲シタルコトナシト答辯セリ然ラハ本年二月以來政府カ二六新報、
  やまと新聞萬朝報、報知新聞、新日本、日本及日本人ノ發賣及頒布ヲ禁止シタ
  ルハ其ノ記事中ノ如何ナル部分ヲ以テ安寧秩序ヲ紊シ又ハ風俗ヲ害スルモノト認ム
  ルヤ
  右及再質問候也

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=4

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• 005・野村嘉六

  ○野村嘉六君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=5

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• 006・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　野村君ハ何ノ發議デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=6

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• 007・野村嘉六

  ○野村嘉六君　唯今ノ答辯書ニ付テ不審ノ點ガアリマスカラシテ、簡單ニ質問シタイ
  ノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=7

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• 008・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　ソレハ再質問ナラバ更ニ書面ヲ以テ御提出ニナル方ガ御便
  利ダラウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=8

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• 009・野村嘉六

  ○野村嘉六君　再質問ヲ致シマシタ

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• 010・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　ソレデハ更ニ質問ヲスレバ宜イ、日程ノ質問第一、移民奬
  勵ニ關スル質問-中川虎之助君
  一移民奬勵ニ關スル質問
  〔中川虎之助君登壇〕

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• 011・中川虎之助

  ○中川虎之助君　諸君、本員ハ海外移民ノ問題ニ付テ政府當局ニ質問ガシタイノデ
  アリマス是ハ何デ此質問ヲスルカト云フト、本員ハ帝國ノ經濟ノ實力ヲ堅實ニスルト
  云フ其方法トシテ、經濟力ヲ增加スル上ニ於テ海外移民ト云フコトハ頗ル大切ナモノデ
  アルト云フコトヲ思ヒマシタノデ質問ガシタイノデアルソレニ又經濟ノ方面バカリデナシニ、
  我國モ追〓社會政策ノ解決ガ益〓切迫ヲシテ來タ感ジガアルガタメニ、此二ツノ一
  ツハ社會政策ノ上カラ、一ツハ經濟力ヲ充實スル上カラ思ヒ付イタ質問デアリマスガ、諸君
  貿易ノ狀態ガ、御承知ノ通リ近年ノ貿易ノ狀態ハ輸入超過ノ大部分ヲナシテ居ルモノ
  ハ何デアルカト云ヘバ、極メテ必要品デ、棉ダトカ豆ダトカ砂糖、斯ウ云フ一日モ國
  民ガ無ケレバナラヌトコロノ必要品ガ輸入超過ノ大部分ヲナシテ居ルノデアリマシテ、是
  等ハドウシテモ我國ニ此米ダノ棉ヂヤノ砂糖ヂヤノ豆ヂヤノト云フヤウナ日用品ヲ、何時
  モ國民ノ需要ニ充實スルダケノモノヲ我ガ領土内ニ作リ果セルカト云フト、奈何セン領土
  ガ狹イガタメニ產物ハ是等ノモノモアリマスケレドモ、皆キレ〓〓バラ〓〓ノ少シバカリノ
  モノガアルバカリデ、世界無敵ノ特產物トシテ貿易ノ上デ大ニ我國ガ利益ヲ得果セルト
  云フモノガナイノハ、誠ニ此領土ガ狹イカラデアラウト私ハ思フノデアル、然ラバ領土ノ擴
  張ハ出來ルカト云フト迚モ今日ノ狀態デハ領土擴張ナド云フコトハ言フベカラズ、又行
  フベカラズ、之ヲヤラウトスレバ禍ヲ求メルダケノコトデアル、サウスルトドウシタラ宜イカ、或
  ハ政府當局ノ人ハ前年ハ朝鮮トカ滿洲トカ云フ方面ヘ移民ヲ集中シタラ好イヂヤナイ
  カト云フヤウナコトヲ言フタコトモアリマシタガ、私ハ迚モ勞働ノ報酬ガ廉イ、生活程度ノ
  低イ、比較的滿洲朝鮮モ人口ノ多イ土地デアルカラシテ、我國ノ勞働者ガ喜シデ行ク
  ト云フコトハ彼所ヘハムヅカシイダラウト思フノデアル、他ニ無ケレバ已ムヲ得ヌケレドモ、他
  ニ私ハアラウト思フ、ソレハドウ云フ方面ニアルカト云ヘバ、墨國トカ或ハ墨國以南ノ南米
  ノ彼ノ智利ダトカ亞爾然丁ダトカ、其他伯剌西爾ヂヤトカ云フヤウナ方面ハ、キット·土地
  モ廣シ遺利モ豐富、勞働ノ報酬モ吾〓ノ調ベタトコロニ依ルト我國ニ比ベレバ殆ド十倍
  ノ賃錢ヲ得テ居ルモノガ澤山アリマス、斯ウ云フ方面ニ向ッテ大ナル移民ノ奬勵ヲヤルコト
  ニシタナラバ此貿易上ノ不利益ヲ被ットルコトヲ癒シ得ルコトガ出來得ラルヽデアラウト
  思フ、同時ニデス、此社會政策ノ解決ガ頗ル切迫シテ來テ居ル、之ヲ緩和スルニハ頗ル
  妙デアラウト私ハ思フノデアル、サウシテ又此墨國トカ南米トカ云フノモ今此時ニヤラナ
  カッタラ、今ノ北米合衆國ガ南米モ統一スルト云フヤウナ事マデナリサウニアルノダガ、南
  米ノ統一ヲ合衆國ガスルヤウナ事ガ出來タドキニハ、奈何セン南米ノ一角ヘ我ガ移民ヲ
  出スト云フコトモ、今日ノ加州ノ排日問題見タイナコトガ彼處ヘモドウセ流行ヲシテ行ッ
  テ、我ガ民族ガアノ方面ニ發展スルト云フコトモ今少シシタレバ出來ヌコトニナルダラウト私
  ハ思フノデアルカラ、此場合ニ宜シク政府ハ是等ノ墨國ダトカ伯剌西爾ダトカ亞爾然丁
  ダトカ云フヤウナ所ト-向フガ歡迎ヲシテ呉レ居ル際デアルカラ、特殊ノ有利ナル條約
  ヲ移民ニ對シ締結スルコトモ不可能ノコトヂヤナカラウト思フノデアル、ソレデ此方面ニ我
  ガ移民ヲ一ツドシ〓〓送ルト云フコトハ、移民局デモ設置シテ移民學校モ拵ヘ或ハ向
  フヘ行ッテモ一箇月ヤ二箇月ハ移民ガ十分移住地ノ撰擇ヲスルノニ便利ヲ與ヘルト云フ
  ヤウナコトカラ、又往來ノ船ニ對シテモ餘程ノ補助デモ與ヘルトカ、各方面カラ必要ナ
  ルトコロノ移民ニ對シテ便利ヲ與ヘル、各種ノ機關ヲ設置スルト云フ位ノ仕掛ニシテ、
  此際大ニ之ヲヤルト云フコトハ頗ル要用ノコトデアラウト思フノデアリマス、サウシテ之ニ頓
  著セズシテ當分打棄ッテ置クト云フコトニナルト、諸君之ヲ〓場ニ喩ヘテ一例ヲ申シマス
  ト年々六十四万頭ヅヽノ羊ガ殖エテ行キ居ル、年々六十四万頭宛ノ羊ガ殖エテ行ク
  ノニ、一ツノ牧場ノ中デジット外ヘ行クコトナラヌト云フヤウナ狀態ニナッテ居ル、一ノ牧
  場ノ中デ每年六十四万疋ヅヽ羊ガ殖エテ行クニ、牧場ノ外ヘ行クコトガナラヌ、牧場ヲ
  殖スコトガナラヌ、一ツノ牧場ノ中デ親モ子モ孫モ玄孫モ同ジ枯草ヲ奪合ウテ居ラナケレ
  バナラヌト云フヤウナコトデハ我ガ大和民族ガ世界的大發展ヲスルト云フトコロノ理想
  ハ、絕對的ニ出來ルモノヂヤナカラウト思フノデアル(「餘ッタラ撲殺シタラ宜イヂヤナイカ」ト
  呼フ者アリ)撲殺ハ可哀想ダ、之ヲ安閑ト打棄ッテ置クトー云フコトハ一ハ我ガ帝國ノ經濟
  狀態ヲシテヤハリ今日ノ如ク思ハシカラヌ狀態ヲ長クスル、又中ニハ貿易狀態ナドヲ樂
  觀スル人モアルケレドモ、本員ハ債務國トシテ今日ノ貿易狀態ハ頗ル憂慮スベキモノデア
  ラウト思フノデアル、ソレデ斯ウ云フコトヲ一ツ打破シテ大ニ我國ガ實力ノアル世界的發
  展ヲシヤウト云フニハ今カラ三十年計畫位ノ方針デ、每年一千万圓カ二千万圓之ニ
  金ヲ入レテ大ニヤッタナラバ出來モシヤウガ、眼前ノコトバカリニ醒配シテ遠大ノ考ガナク、
  一ノ牧場ノ中デ六十四万頭宛ノ羊ガ孫モ玄孫モ又ズン〓〓殖エテ行ク奴モ撲殺シタ
  ラ宜イト云フ、殘酷ナ批評モアルケレドモ(「羊ナラバー-人ナラバサウハ行カヌ」ト呼フ者
  アリ)所ガ人ダカラ困ル、況ヤ同胞デアル(「人ト言ヒ給ヘ」ト呼フ者アリ)是ハ牧場ニ例ヘ
  テト御斷リヲ申シテアルノデアル、若シ斯ウ云フヤウニ抛ッテ置イテ他ニ我國ヲ大ニ安全ナ
  ラシムルトコロノ經濟發展ノ具體的案ガナシ、領土擴張ト云フコトモ絕對當分ノ間ハ不
  可能デアレバ、幸ニ南米ノ一角ニ我ガ移民ヲ歡迎セラルヽトコロノ廣大ナル場所アリトスレ
  バ、宜シク政府當局ハ此年々增加スルトコロノ國民ニ對シテ、內ハ社會政策ノ解決ヲ
  是デ幾分カ補ヒ一方デハ國力ノ充實ヲ是デ補フト云フコトハ敢テ不可能ノコトヂヤ
  ナカラウト思フ、蓋シ財源ガ無イトカ、遣繰ガ付カヌトカ云フカモ知レヌケレドモ、之ヲヤ
  ラウト思ヘバヤレルモノデアルト私ハ思フヤラヌカラヤレヌト云フコトニ過ギナイノデアル、
  少シ遠大ノ考ヲ以テヤラウト思ヘバヤレルヂヤラウト私ハ思フノデアル、ソレデ長クハ私ハ病
  氣デアルカラ言ハヌ、要領ハ唯是ダケノコト、政府當局ニ對シテ一ツ此墨國トカ其他南
  ノ各邦ニ我移民ノ歡迎セラルヽトコロノ現ニ國ガアルノデ、國モ廣ク土地モ肥ヘ人口モ稀
  薄斯ウ云フ處ガアッテ勞働ノ報酬モ頗ル我國ニ較ブレバ何倍ノ賃錢ガ取レル、サウ云云
  國モ今ノ中ニ-亞米利加合衆國ガ統一シナイ中ニ、宜シク有利ナル條約ヲ締結シテ
  此移民ノ大政策ヲ遂行セラルヽコトヲ、本員ハ今日ノ國家ノ政策トシテハ一番大事ナ
  モノト思ウテ居ルノデアリマス、唯移民バカリヂヤナイ、實業家モ亦之ニ對シテ相當ノ奬
  勵ヲ加ヘテ、アノ方面ニ發展サセルト云フコトニシタナラバ、其結果ハ國內ノ經濟モ助カ
  リ、又輸出ノ物貨モ盛ニナルコトハ申スマデモナイコトハ諸君ガ御承知ノ筈デアルソレデ
  コソ始メテ萬里ノ波濤ヲ開拓シテ開國進取ノ國是ト云フコトノホンマモノガ出來ル、今ノ
  ヤウナ理窟テ何モヤラヌト云フヤウナ調子デ居ッタナラバ諸君昔ノ琉球藩ノ外交ミタヤウ
  ニ、唯禮讓ヲ以テ國防トスル、甚シキハ琉球ト臺灣ノ間ニ與那國島ト云フノガアル、其
  島ハ草鞋ガ國防ダ、草履ガ國防ダ、大キナ一丈モアルヤウナ草鞋ヤ草履ヲ流セバ此向フ
  ニ大キナ人ガ居ッテ取ッテ喰ハレルカラ近寄ラヌト云フテ、每年大キナ草履ヲ造ッテ流シテ
  居ル、サウシタラ餘所カラ攻メテ來ナイ、斯ウ云フヤウナ眞似ヲシテ居ルヤウナ外務省デハ
  イカマト思フノデアル、サウ云フコトデハ恐ラクハ甘イコトハ出來ヌダラウト思ヒマスカラ、此
  移民ニ對シテ一ツ根本ノ政策ヲ樹テラレンコトヲ政府ニ要求シ、合セテ諸君ノ所見ヲ尋
  ネルノデアル、ソレカラモウ一ツ第二ノ質問ヲ致シマス、是ハ實際問題トシテチヨット一口
  言ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=11

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• 012・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　第二義務〓育費ニ關スル質問中川虎之助君
  二義務〓育費ニ關スル質問

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=12

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• 013・中川虎之助

  ○中川虎之助君　是ハ實際問題トシテ極メテ簡單ナノデアル、御承知ノ通リ此義務
  〓育費ガ農村ニ非常ニ困ッテ居ルト云フコトハ皆樣モ御承知ノ筈デアル、私ノ村ニ、私
  ハ村會議員ヲサシテ居ル、實例ヲ以テ一ツ政府ニ質問ヲシテ居ル、今デハ町村制ガアッテ
  義務〓育費ニ對シテハ村會村長是ガ相當ノ町村制度ニ依ッテ〓育費ノコトハ大抵ノ
  トコロガ皆戶數割ニナッテヤッテ居ル戶數割ヲ財源ニシテヤッテ居リマスガ、ドウシテモ
  今ノ義務〓育費ヲ負擔スルコトハ非常ニ村ノ疲弊シテ居ル所デハ堪ヘラレヌ、ソコデ度々
  政府ヘ請願書ヲ出シ、或ハ議會ヘ度々請願書ヲ出シテモ、政府モ一向相手ニシナイ、
  議會モ亦之ヲ顧ミナイ、ソコデ吾ミノ地方ハ一ツ已ムヲ得ヌカラシテ實際ニ於テ政府ヲ
  反省セシムル手段トシテ、村長ガ村會議員ト村會ニ於テ是マデノ戶數割ト云フ割方ヲ、
  顏割ト云フ風ニ財產ノ多イ少ナイニ別ケテ賦課ヲシテ居ルコトハ何處モ同ジコトデアリ
  マスガ是ハ已ムヲ得ヌト云フコトデ平等割ニシテ-平等割ニスルト村ニ依ルト新民
  部落ナドガアル、サウ云フ所ハ平等割ニシタラ實際裸ノ棒一本ノ新民部落ナドハ、戶數
  割ヲ負擔スルコトハ七圓ニモ八圓ニモナルカラ出來ナイ、サウスルト忽チ〓育機關ガ停フ
  ル、サテサウナルト村長ガ之ニ對シテ(「新民部落トハ何デスカ」ト呼フ者アリ)之ニ對シテ新
  民部落バカリヂヤナイ(「新民部落トハ何デス」ト呼フ者アリ)新平民ダー(「新平民ト
  ハドウ云フ部落デス」ト呼フ者アリ)アトデ話ヲスルカラ待チ給ヘ、サウコネテ來ラレルト弱
  ル、特殊部落ノコトダヨ(「サウ云フ階級ガアルデスカ」ト呼フ者アリ)暫ク待チ給ヘ、實際
  問題デ必ズ君方ノ方ニモ出來ル筈、村長ハ村會議員ト衝突シテ、村會ヲ解散スルナレ
  バ別ダケレドモ、村長ハ村會ノ云フコトヲ尤モナリトスルサウシテ等差割ヲ平等割ニスル、
  平等割ニスルト富ンデ居ル者ハ僅カ外ナイ、貧民ガ多イ、サウ云フトキニ現在ノ戶數割
  ノ徵收ガ出來ヌコトニナル、郡長ハ町村制ニ依ッテサウ云フ場合ニハ郡長ガ豫算ヲ組ンデ
  强制執行ヲスルト云フコトニナッテ居リマスガ、强制執行ハ出來マスケレドモ一方ニ町村
  ノ自治團體ガ依然ト揃ッテ居ルニモ拘ラズ、一方ニ郡長ガ强制執行ヲスル、强制執行デ
  以テ其〓育機關ヲ今マデ通リヤリ果セルト云フコトガ、果シテ實際問題トシテ爲シ得ラ
  レルモノト政府ハ認メテ居ラルヽカ、他ニ又學校職員ノ給料ノ如キハ國庫ノ負擔ニテモ
  スル方法ヲ心配セラレテ居ルカ、此問題デアル、是ハ實際問題トシテ十分御〓究ヲ政府
  ノ當局ニ願ッテ、吾ミニ斯ウ云フ方法ニスレバ寛カラウト云フ一ツ政府カラ答辯ヲ求メタ
  イノデアリマス、私ハ病氣ダカラ今日ハ材料ハ少々アルケレドモ御負ケ申シテ言言ナナイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=13

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• 014・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　國運伸張ニ關スル質問、鈴木萬次郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=14

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• 015・伊東知也

  ○伊東知也君　議長議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=15

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• 016・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　鈴木君ニ發言ヲ許シマシタ
  四國運ノ伸張ニ關スル質問
  〔鈴木萬次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=16

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• 017・鈴木萬次郎

  ○鈴木萬次郞君　諸君私ハ豫算會ノ當時カラ此問題ニ付テ質問ヲ致シタイト云フ
  考ヲ持チマシテ、先ニハ國民ノ負擔ニ關スル質問ト云フ質問書ヲ出シマシテ、政府ノ答
  辯ヲ要求シマシタトコロガ、其趣旨ヲ說明スルノ機ヲ得マセヌ中ニ答辯書ガ參リマシタ、
  一向要領ヲ得マセヌノデ、再ビ此處ニ問題ヲ變ヘマシテ國運ノ伸張ニ關スル質問トシテ
  提出致シマシタ次第デゴザイマス、大體申シマスルト此問題ハ今年ノ當議會ニ於テ種々
  ノ稅案ノ出マシタガタメニ、俄ニ思付イタ問題デハゴザイマセヌ、私ハ久シイ間一ノ疑問
  トシテ又所信トシテ斯クアラネバナラヌト云フ考ヲ持チ來ッタノデアリマス、先般營業稅ヲ
  初メト致シテ、種々ノ稅案ノ本議場ニ現ハレマシタ際、諸君ノ御說ヲ謹ンデ拜聽致シマ
  スルト、或ハ失禮カハ存ジマセヌケレドモ、其論ズル所ノ多クハ政府ノ豫算案或ハ大藏
  省ノ算盤若クハ國庫金ノ多寡ト云フコトニ全然沒頭シテ頭ヲ突込ンデ、其中デ足リル
  トカ足ラヌトカ云フコトノ問題ニ執著セラレテ居ルカニ考ヘマス、其中ニ就テ稍〓私ト意
  見ヲ同ジウシテ居ラレルカノ感ヲ持チマスノハ、同志會ニアッテハ片岡直溫君、國民黨ニ
  アッテハ鈴木梅四郞君、殊ニ政友會ニアリマシテハ日向輝武君ノ御論ヲ聽キマスルト、
  稍〓私ト御同感デハアルマイカト私ハ傾聽致シマシタ、其他ハ、諺ニ言フ蝦躍レドモ籠ヲ
  出デズ-蝦ガ跳返ッテモ籠ノ中ヲ出デズト云フガ如ク、此國庫ノ經濟デ足リルカラ或
  足ラヌカラ、此減稅ガ出來ルトカ出來ヌトカ、殆ド大藏省ノ吏僚ガー役人ガ算盤ヲ持ッテ
  勘定スルト同ジコトヲヤッテ居ラレルカノ感ガアリマス、、是ハ殊ニ政友會諸君ニアリマシテ、自
  分ノ內閣ノ提出致シタ豫算案デゴザイマスカラ、其立場ノ上カラ申シマシタナラバ或
  相當デアルカモ知レマセヌケレドモ、御同樣ノ任務ハ-御同樣當然ノ責務ハ國家ノ
  經綸ト云フコトデアル、我ガ帝國ノ經營ニアル、何モ豫算案ノ中ヘ頭ヲ突込ンデ足リル
  トカ足ラヌトカ云フコトニ拘泥ヲシテ議論スル必要ハナカラウト思フ(「ソレハ全クサウダ」ト
  呼フ者アリ)全體ヲ見渡シテ今日ノ帝國ノ現狀ハ斯クアル、此政治機關ハ尨大ニ過ギ
  ル、民力ハ疲弊ニ過ギルト致シマシタナラバ其政治ノ機關ヲ出來ルダケ縮小シテ、此民
  力ヲ補フト云フ方ニ力ヲ御用井ニナッタラ宜カラウ、議論ヲ用ウタラ宜カラウト思ヒマス、
  然ルニイヤ何割減ニスルト金ガ足ラヌトカ足ルトカ云フコトハ、殆ド諸君ガ大藏省ノ屬吏
  ニナッテ議論ヲナサルカト思ハレル位ナ感ヲ懷イタ次第デアリマス、御同樣ハ少クトモ國務
  大臣以上ニ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)國家ヲ擔ッテ居ル此政府ガ過大ニ過ギタナラバ
  而シテ民力ガ疲弊ニ過ギタナラバ此政治機關ヲ縮小シテ此民力ヲ休養スル、左樣ナ
  御議議ヲナサリ、左樣ナ計畫ヲナサッタラ宜カラウ、何モ國庫金ガ足リルトカ足ラヌトカ、
  故ニ此稅ヲ廢止サレルトカ減稅デナケレバナラヌトカ云フコトニ拘泥スル必要ハナカラウト
  私ハ思フ、今日ハ諸君モ御承知ノ通り其程度、所謂民力ノ負擔程度ガ適當デアルカ
  適當デナイカ、或ハ之ニ漸ク堪ヘテ居ルノカ又綽々トシテ餘裕アルデアラウカドウデアラ
  ウカ、是ガ問題デアラウト私ハ思ヒマス、堪ヘル堪ヘルトシテ殆ド極點マデ重イトコロノ負
  擔ヲ人民ニ負ハシテ居ルト云フコトガ果シテ國ノ上ニ利益デゴザイマセウカ、私ノ考ニ依
  リマスルト-獨リ私バカリデナイ、諸君モ定メテ御同感デアラウト思フ、殆ド今日ハ國
  民ノ負擔ノ過重ト云フコトハ其度ヲ過ギテ居リハシマイカ、御承知ノ通リ日〓戰爭後
  殊ニ日露戰爭ニ於テ國民ガ負擔シマシタトコロノ稅ハ殆ド其極〓ニ達シテ、而シテ戰役
  後尙引續イテ其負擔ヲ緩メズニ脊負ッテ居ルト云フ結果カラ、商業ト言ハズ工業ト言ハ
  ズ、農業ハ言フマデモテイ、東西南北何レノ地方ヲ問ハズ多少ノ差異ハゴザイマスケレド
  モ、各級階ヲ通ジテ困ラヌモノハ一人モアリマセヌ、歎聲ヲ發セナイ者ハゴザイマセヌ、
  年或地方ニ凶作ガアッタト云フタメニ、或ハ草ノ根ヲ掘リ、或ハ木ノ皮ヲ食フ殆ド民ニ
  餘力ノナイト云フコトヲ證明致シテ居ルデハゴザイマスガ(「ヒヤノ〓」ト呼フ者アリ)天
  偶〓雪ヲ降ラスト云フコトガアルト致シマセウ、此前ノ雪ニハ東京府下輦轂ノ下ニ八人ノ
  行倒ガアリマス、寒ニ困リ饑ニ困ッテ立往生シタ者ガ八人アリマス斯樣ナ者ガ能ク私ハ
  放火モシナイ、泥棒モシナイト私ハ怪ム位ナノデ、野ニ遺賢ナシト云フコトハ國ノ祥事デ
  ゴザイマスガ、東北地方ノ慘狀ナドハ所謂野ニ餓莩アリ、野ニ遺賢ナシハ國ノ祥事デア
  ルナラバ、野ニ餓莩アリハ國ノ不祥事デアル、民力ハ殆ド枯竭シテ居ルト云フ證據テゴザ
  イマセウト思ヒマスサレバコソ、諸君ノ-殊ニ政友會ノ諸君ガ、諸君ノ內閣ガ出サレ
  タトコロノ減稅案ヨリハ尙進ンデ之ヲ減稅セネバナラヌト云フテ、後トカラ種々ナル問題ヲ
  出サレタト云フノモ或ハ口善惡ナキ者カラ申シマシタナラバ、人氣取リトカ何トカ言ヒマス
  ケレドモ、私ハサウデナイ、實際諸君ガ地方ニ往ッテナリ都會ニ來ッテナリ、各業者ガ各
  個人ノ間ヲ歷訪シテ話シテ御覽ナサイ、商業家デアラウガ工業家デアラウガ、總テノ業
  者ガ是デハ困ルト言ハザルモノハ一人モナイ、疾ムニ病マレズ手ヲ拱シテ飮食ヲスルコトハ
  出來ナイカラ、仕方ガナイノデ業ヲ營ンデ居ルダケデ、殆ド日本ノ國民ハ活動力ヲ失ッタ
  ト云フ有樣デアル、ソレヲ知ッテ居レバコソ畢竟スルニ諸君モ減稅案ヲ出サレタノデアラウ
  ト思フ、實際サウデアル、ソレガ所謂輿論デアル、實際デアリマス、唯私ハ其程度ダ、是
  テ今日我國民ノ負擔シテ居ル所ノ負擔ハ適當ダト見ア居ルノデアルカ、尙ホ此以上ニ
  減稅ナリ廢稅ナリヲ致サンナラヌカ、是ガ問題ダラウト思ヒマス、何ヲ以テ之ヲ測ルカ、何
  ニ依テ計量ヲ致スカ、古來國ヲ誤ルモノハマグ宜カラウマダ行ケルト云フノデ民ノ實情ヲ
  知ラズ、力ヲ測ラズシテ負擔ヲ重ネルト云フ政治ヲ施スカラ國ヲ誤ル、成程マダ增稅シテ
  モ或或取レルデゴザイマセウ、ケレドモ是ハ平凡ナル政治家デナク、餘程達眼ノ士ガ民情
  ヲ深ク察シテヤリマセヌケレバ、國家ハ甚ダ大ニシテ其生命ハ長ウゴザイマスカラチヨットニ
  ハ見エナイ、衰頽ノ狀態疲勞ノ有樣最早堪ヘヌト云フ實情ハ、一個人デゴザイマスレバ
  是ハ直グニ分カル、一人ノ人間ガ强イト言ック所ガ五俵六俵ノ米ヲ脊負フコトハ出來ナ
  イ、二俵背負ハセテモ汗ヲ流ス、此力ノ强弱ハ一個人デアレバ直グ見エルケレドモ、國ハ
  大キイカラチヨットニハ分ラヌ、例ヘバ又一個ノ兵士デゴザイマシテモ脊中ニ脊負フテ居ル
  彈丸機械ハ成タケ澤山ナ方ガ宣カラウケレドモ、是モ其負擔力以上ニ脊負ハセタナラバ
  步兵トシテノ活動ハ出來ナイモノデアル、果シテ然ラバ國モ亦負擔力不相應ナ重荷ヲ負
  ハセマシタナラバ活動力ヲ失フト云フコトハ當然ノコトデアラウト思フ、況ヤ諸君ノ御
  承知ノ通リ國ハ一個ノ有機體デアル、生治體デアル、而モ高等ナル一ノ動物デアル、有
  機體ト致シマスレバ此消費力ハドウデアル活動力ハドウデアル活動力ニモ消費力ニモ
  限リアリト致シマスレバ負擔金ニモ亦限リアリト言ハナケレバナラヌト思ヒマス、其活動
  力ニ限リアリ、消費力ニ限リアルト云フコトガ旣ニ定リマシタ以上ハ、國民ノ負擔力ニモ
  亦限リアリト云フ結論ガ來ヌケレバナラヌト思ヒマス、目下ノ所ハ唯漫然ト此位ハ國民
  ハ負擔ニ堪ヘルデアラウ、是マデハ宜カラウト云フ、宜カラウ宜カラウダケヤッテ居ル、故一
  私ハ最早國民ハ今日ノ負擔力ノタメニ殆ド活動ヲ失ッテ居ルト云フマデニ、疲弊ヲ致シ
  テ居ル場合デアリマスカラ、出來得ルダケ政治ノ費用ヲ省イテ、サウシテ民力ノ休養ト
  云フ方ニ向ケルコトガ國家ノ急務デハアルマイカ、國ノ經營ニ於テハ申スマデモナク國防、
  所謂海軍ノ補充師團ノ增設トカ、是ハ固ヨリ瘋癲白痴ニアラザルヨリハ此必要ヲ認メ
  ルノデアル此國防ノ急ナルト同時ニ、併セテ國內ノ民力ノ缺陷、私ハ之ヲ缺陷ト云
  フ、民力ノ消耗ト云フモノヲ國防ノ急ヲ認ムルト同時ニ之モ認メナケレバ所謂國運ノ伸
  張ヲ阻碍スルコトニナリハスマイカ唯海軍ノ擴張、陸軍ノ增師ノミヲ以テ國運ヲ伸張
  スルト云フコトハ出來マイト思フ、玆ニ私ガ數字ヲ以テ長ウゴザイマスガ調査致シマシタ
  所ノモノヲ以テ、私ノ所見ノ材料ト致スノデアリマスガ、凡ソ一國ノ活動カ
  (議長長谷場純孝君退席副議長關直彥君議長席ニ著ク〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=17

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• 018・鈴木萬次郎

  ○鈴木萬次郞君　負擔カ消費カヲ測ルニハ何ヲ以テ尺度トスルカ、何ヲ以テ物指シト
  スルカ斯ウ云フ一ツ問題ヲ考ヘテ見ナケレバナルマイト思ヒマス、凡ソ一國ノ活動シ消
  費シ、消費ニ依テ生產シ、生產シタルモノヲ消費シテ、餘リマシタ所ノモノヲ所謂貿易品
  トシテ海外ニ出スノデアル、活動シ消費シ、消費ニ依テ生產シ、生產ノ餘ッテ居ルモノガ
  所謂貿易品トナッテ出テ、其貿易品ニ依テ海外カラ所謂通貨金銀貨ヲ吸收スル、其吸
  收スル所ノモノガ卽チ國ヲ養フ所ノ滋養物、斯ウ致サヌケレバナラヌ、斯ウ定ムルガ適當
  デアラウト思フ、御承知ノ通リ我國ハ貿易ニ依テ得マシタ金ハ一箇年ニ五億ニ足ラヌ金
  デアル、此五億ヲ以テ物指シト致シマスレバ日本國ノ活動力、日本國民ノ活動力生產
  力ト云フモノヲ測ルニハ是ヨリ正確ナ尺度ハナカラウト思フ、此尺度ニ依テ計レバ先ヅ中
  ラズト雖モ遠カラザル、幾分正確ナル測定ガ出來ヤウト思ヒマス、今我日本國ニ於テ年
  年五億ニ足ラザル金ヲ外國カラ取ルト云フ今日ニ於テ、內政ニ使フトコロノ金ハ幾ラデア
  ル、政治ノ費用ハ幾ラデアル、御承知ノ通リ殆ド六億以上國ノ働キニ依テ働キ出シタ
  利益デアル、外國ノ貿易ト云フ此額ニ依テ得ルトコロノ金ガ五億圓、サウシテ政治ニ使
  フ中央ノ政費ガ六億デアル、斯ウ云フ國ガ何處ニアリマスカ、是ハ私ハ餘程攻究スベキ
  問題デアラウト思ヒマス、今五、七ノ國ノ統計ヲ調ベテ見マスルト、英吉利ハ輸出ニ依
  テ得ルトコロノ金ハ五十八億四千八百何十万、先ヅ約五十八億-五十八億デアッ
  テサウシテ中央ノ政費ハ何程カト申シマスルト、十七億四千万-外國カラ取ッテ來
  タルトコロノ滋養分ナル貨幣ガ五十八億デアッテ、中央ノ政費ニ使フトコロノ金ハ十七
  億四千万デアルカラ、約三分ノ一デ以テ國ノ賄ヒヲシテ居ルソレカラ北米亞米利
  加ハ輸出額ガ約四十一億ノ輸出ヲシテ居リマシテ、其內政費ニ使フ金ハ十三億、是モ
  三分ノ一デアル、ソレカラ佛蘭西-佛蘭西ハ三十億七千万デ、中央ノ政費ハ十七
  億四千万デアル、是ハ三分ノ一少シ强デアル、又獨逸ハ三十八億ノ輸出ヲ有ッテ居リ
  マシテ、中央國庫ノ費用ハ約十三億、是モ三分ノ一デアル、ソレカラ墺太利匈牙利是
  ハ九億八千万ノ輸出貿易ヲ有ッテ居リマシテ、政治ノ費用ハ一億八千万圓デ五分ノ
  一伊太利ハ八億一千万デゴザイマシテ、政治ノ費用中央ノ支出十億ニナッテ居リマス
  ガ、是ハ御承知ノ通リ貿易經濟維持策ヲ執ッテ居ルノデゴザイマス、聞ク所ニ依レバ觀
  光團ノ手ニ落ストコロノ金バカリモ六億アルト云フ、又移民政策或ハ殖民政策ニ依テ
  每年ノ人口增加ナドヨリ以上外國ヘ出テ金ヲ持ッテ來ルト云フ額モ亦少ナカラヌノデア
  ルカラ、貿易額ニ對シマスレバ其以上中央政費ニ使ッテ居リマスケレドモ觀光圍ノ金或
  ハ殖民ニ依テ得ルトコロノ金ヲ計算致シマスレバ、中央政費ニ使ヒマスルトコロノ額ハ多
  クモ或ハ十分ノ六ヲ過ギマイト思ヒマス、ソレカラ(「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)マダ
  一時間程ヤリマス(「謹聽」ト呼フ者アリ)瑞西ハ三億五千万デアッテ歳出ガ漸ク三千六
  百万圓、瑞典ハ三億二千万圓テアッテ歲出ガ一億三千万、何レノ國ヲ調ベテ見マ
  シテモ貿易額以上ヨリ貿易額ヨリハ內地ノ費用政治ニ使フトコロノ金ノ
  額ガ多イト云フ國ハ國ラシイ國デ何所ニアリマスカ、之ヲ一家ニ例ヘテ見マシテモ、
  店賣リデ五億圓バカリ取ラヌノニ-本營業ニ付テ營業本位ニ付テ五億圓バ
  カリ取ラヌノニ一家ノ經濟ニ六億圓ヲ使フト云フ店ガアリマスカ、是デ經濟ガ立チ
  行キマスカ(「行キマセヌ」ト呼フ者アリ)又一ツノ生キ物トシテモ御同樣ナ體テ致シテモ、
  五合滋養物ヲ食ッテ居ッテ、サウシテ此體ニ六合ノ滋養物ヲ使フト云フ人ガアリマ
  スカ、私ハ國民黨ノ鈴木梅四郞君ガ是ハ病的經濟ダト云フコトヲ再々言ハレタガ、是
  ガ所謂病的經濟デ、コンナ國ハナイ、斯ウ云フ生物ハナイ(「御手ノ物ダ其議論ハ」ト呼
  フ者アリ)玆ニ私ハ醫者ラシイ論ヲスルト諸君ガ仰セラルヽカモ知レヌガ(「謹聽」ト呼フ者
  アリ)此人ノ體ノ血ヲ三分ノ一以上失ヒマスルト、其體ハ完全無缺デ諸機關ガ何ノ障
  リガゴザイマセヌデモ、血ヲ失ナッタト云フダケデ人ガ死ニマス(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)
  頸動脈ヲ切ッテ死ヌノハ卽チソレデアル(「左樣」ト呼フ者アリ)ソレカラ人ノ皮デ--ノノ
  體ノ皮-皮膚ノ-是モ三分ノ一以上火傷シマスト諸機關ハ悉ク完全致シテ居リ
  マシテモ度膚ハ火傷ヲシタト云フコトノタメニ死ニマス、斯ウ云フ原則ガアル、果シテ然ラ
  バ-果シテ然ラバ國ノ富ト云フモノモ-國ノ金ト云フモノモ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者ア
  リ)大部分之ヲ政治ノ費用ニ使フト云フコトハ(「宜シクナイ」ト呼フ者アリ笑聲起ル)此
  人間ノ體ノ割合カラ往キマシテモ不自然ノ有樣デアルト云フコトハ明瞭デアラウト思フ
  (「ヒヤ〓〓」)成程國防モ必要デゴザイマセウ(「ヒヤ〓〓」)海軍ノ補充モ必要デゴザイ
  マセウ、二個師團增設モ必要デゴザイマセウ(「大ヒヤ」ト呼フ者アリ)併シ唯ダ政治ト云
  フ機關ノミ擴大ヲ圖リ、若クハ國防ト云フダケノ完成ヲ圖ルト云フコトデゴザイマシタナラ
  バ、丁度體ノ臟腑ト皮膚バカリ出來テ居ル國ノヤウナ有樣デ、此間ニ活動スルトコロノ
  國民或ハ骨ダトカ肉ダトカ云フモノハ丸デ拔キニシタ政治デアルマイカト思フ、サウシマスル
  ト丁度アノ蚯蚓ダ蚯蚓ト云フ奴ハ皮ト腹ダケデ居ル下等動物デアル(「蛞蝓ハドウダ」
  ト呼フ者アリ)殆ド下等動物ト一般ニ國ヲ見タヤリ方デハアルマイカ、カラシテ私ハ國防ガ
  必要ダトカ國防ノ缺陷ヲ補塡スルト云フコトガ必要ダト云フナラバ併セテ等分ニ此國
  民ノ缺陷國民ノ力ノ缺陷ヲ少ナクモ同等ニ見ナケレバナルマイサモナクシテ唯徒ニ是モ
  必要デアル彼モ必要デアルト云フテ、政府ヲ萬能主義ナリト御覽爲サル方ハ是ハ別段デ
  アル(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)又政府卽チ國家ナリト思ッテ居ル方ハ別段デアルガ(「ヒ
  ヤ〓〓」ト呼フ者アリ)吾〓ハ左樣ナ馬鹿ナ見解ハ持タヌノデアル、國ト云フモノヲ一ノ形體
  ト見タナラバ此國ニ相當ナル政治カラ見タ國防、卽チ國防會議ノ吾〓同志ガ必要デアル
  ト云フノモ此所以デアル、海軍ノ缺陷ヲ見ル眼ヲ以テ同ジク今日日本ノ國民ガドレダケ資
  力ニ缺陷ヲ生ジテ居ルト云フコトラ見テ貫ヒタイ、其上カラ國家ノ經營ヲヤッテ貰ヒタイ、
  サモゴザイマセヌト所謂蚯蚓ノ如キ、或ハ海鼠ノ如キ國ニシヤシマイカト云フ杞憂ヲ懷ク
  ノデアリマス(拍手起ル)サウ致シマスルト唯漫然ト今日ノ國內ノ狀況ヲ見テ堪ヘナカラ
  ウ、或ハ負擔ヲ輕クシテ貰ヒタイト云フ聲ガ大デアルトカ小デアルトカ云フコトヨリハ、御
  同樣ハ此有樣デハ(「簡單」ト呼フ者アリ)國ノ發達ヲ速カナラシメルコトガ出來ナイ、十
  分ナル國ノ進步ヲ圖ルコトガ出來ナイト云フ上カラ、政費ノ切リ盛ナリ何ナリヲ致サナケ
  レバナルマイ思フ(「大演說」ト呼フ者アリ)最モ國ニ依リマシテハ老衰ノ國ト靑年活氣時
  代ノ國ト、國ハイロノ〓アリマス、吾ミハ我國ノ如キハ確ニ靑年活氣時代デ、進步發達
  向上スル國柄ニハナッテ居リマス、ナッテ居リマスカラ昨年ニ較ブルト今年、今年ニ較ブレ
  バ來年ト幾分ヅヽ進步ハシテ往キマスルケレドモ、ソレガ問題ダ、若シ今日ノ如キ重イ負
  擔ヲ脊負ハセテ置カナカッタナラバ、恐ラク急ニ偉大ナル速力ヲ以テ進步シタコトデアラウ
  ト思フ(「今日ハ四十八モ日程ガアル」ト呼フ者アリ)幾ラカヅヽ進步ハシテ往キマスガ、其
  進步ノ度合ガドウデアルカト云フト、成程鐵道ノ荷物ヲ調ベテ見タリ、或ハ交換所ノ調
  ヲ取ッテ見ルト幾ラカヅヽ進ンデ居ル、ケレドモ今日ノ負擔ヲズウット輕減致シマシタナラバ
  一箇年ニ五分進步スルトコロノモノハ一寸進步スルノデアル、一寸進步スルトコロノモノ
  ハ二寸發達スルノデアル(「簡單」ト呼フ者アリ)ナカ〓〓簡單ニハヤレナイ(「贊成々々」
  「大ニ謹聽スルゾ」ト呼フ者アリ)私ハ殆ド今日ヲ以テ負擔ノ極力-極ニ至ッテ居ルモ
  ノデアルト觀察ヲ致シテ居ルノデアリマスルカラ、此負擔ヲ輕減致シマシタナラバ我國ノ國
  情トシテ、性質トシテ十分ナル發達ヲヨリ速カニ爲スコトガ出來ルノデアル(「ヒヤ/」ト
  呼フ者アリ)ソレヲ政府ガ-代ル〓〓ノ當務者ガ其事ニ著眼セズシテ、マダ堪ヘルマダ
  堪ヘルト云フコトデ此負擔ヲ脊負ハセテ置クト云フコトハ、所謂國運ノ伸張ヲ害スルモ
  ノ、其發達ヲ鈍カラシムルモノデアルト云フ私ハ確信ヲ採ッテ居ルノデアリマス(「滅稅廢
  稅ヲ斷行スレバ宜イ」ト呼フ者アリ)各國ニ取ルトコロノ金ヨリハ內ニ使フトコロノ金ガ餘
  計掛ルト云フ國ガ、國ラシイ國デ何處ニアル、ソンナ生物ガ何處ニアル、私ガ極論致シマ
  スルト、國民黨ノ諸君ノ議論ハ私ハ近イ(笑聲起ル)出來得ルダケ此膨大致シタトコロ
  ノ政治機關ヲ收縮シテ、サウシテ民力ノ体養ト云フコトニ大部分力ヲ用井ンケレバナルマ
  イ(「同志會ヘ出シ給ヘ」ト呼フ者アリ)年々歲々ノ貿易ハドウデアル、始終負ケテ居ルデ
  ハナイカ而モ債權國ニアラズシテ債務國デアル、借金ノ多イ國デアッテ利息ヲ拂ハネバ
  ナラヌ、貿易ニハ負ケテ居ル、サウシテ內政ニ使フ所ノ金ガ多クテ、取ル所ノ金ハ少ナイ、
  人民ノ手ニ渡ルトコロノモノハナイ、殆ド人民ハ年々歲々資本ヲ減ラサレルバカリト一ムフ
  有樣デアルカラ、工業モ興ラテイ商業モ振ハナイ、農事モ進マナイ、何處ニ進ンデ居リマ
  スカ今此ニ農商務省カラ取リマシタトコロノ表ニ就テ見マシテモ、之ハ諸君ノ御手許ヘ
  モ往ッテ居リマセウ、一昨年ニ較ベマスルト昨年ハ總テ減クテ居リマス各會社ノ拂込テ
  アルトカ增資デアルトカ云フモノハ寧ロ減ッテ居ル、地方ノ實業ノ狀況ヲ見マスルト、或ハ
  輕便鐵道ガ出來タ、或ハ水力電氣ガ出來タ、若クバ瓦斯會社ガ出來タ、寒村僻地デ
  或ハ瓦斯ヲ焚クトカ明ルクナルトカ云フコトハアリマセウ、又一日掛ッテ往ッタ所ハ一一時間
  デ往ケルト云フ輕便鐵道ハ出來タデゴザイマセウ、ケレドモ國ノ生產ト云フ事業ハ何處ニ
  出來テ居ル、生產的ナ貿易品ガ殖エタト云フ所ハ何處ニアリマス、到ル處デ盛ナモノハ
  輕便鐵道或ハ電燈瓦斯ダケ(「ヒヤノ〓〓ト呼フ者アリ)不生產的ナ興業ガ多クシテ全
  ク國ノ富デアル輸出物ノ殖エタト云フ生產的ノ興業ト云フモノハ殆ド振ハヌノデアリマス
  (「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)是ハ諸君ガ御承知デアル、サウシテ幾ラ農商務省ガ訓令シテ
  見タトコロガ資本ガ無クテドウシテ國ノ生產ガ盛ニナルカ、地方ヘ往ッテ金利ヲ問フテ御
  覽ナサイ、信用アル間ハ二錢五厘トカ三錢トカノ取引デアルケレドモ、何處ヘ往ッテ見テ
  モ先ヅ一割二分カラ一割五分ノ利息ダソレデ國ノ工業ガ興リマスカ、一割以上ノ金
  ヲ借ラネバ仕事ガ出來ヌト云フ有樣デ生產的工業ガ興ルト云フヤウナ馬鹿ナモノガ餘リ
  此場ニハ居リマスマイト思フ(「勿論」ト呼フ者アリ)實際ノ有樣ハサウナッテ居ルソレハ何
  デアルカト云フト取ル金取ル金ハ悉ク政治ノ費用トシテ出シテシマッテ、殘ルトコロノモノ
  ハ何デアル、ソレダカラ工業ハ興ラナイ、此表ニ就テ御覽爲サイ生產的工業ト云フモノ
  ハ殆ド興ラナイ、サウシテ金利ハ高イ(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)サウシテ貿易デハ負ケル、
  ソレデ富國策トカ積極的方針トカ何ヲ諸君ハ言ハレルカ、失禮ナガラ私ハ了解ニ苦シミ
  マス(「ヒヤ〓〓」)今日ノ日本ノ財政ヲ見テー現狀ヲ見テ誰カ鹽ヲ嘗メテ粥ヲ啜ルヤ
  ウナ政策ヲ執ルト云フヤウナ者ハナイ、瘋癲白痴ニアラザルモノヨリハ苟モ議員デアルトカ
  絲瓜デアルトカ云フ者ハ大〓見テ居ル(「ヒヤ〓〓」)ソンナコトハ分リ切ッタコトデアル、固
  ヨリ國ノ政策ハ積極ナラザルベカラズ、所謂開國進取ノ國是ヲ吾ミガ以テ國ノ定メタト
  コロノ國是ノ下ニ經營心ヲ持ッテ居ルト云フコトハ言フマデモナイコトデアル(「ヒヤ〓〓」)
  所ガ年々歲々勝ッタコトハナク、拂フトコロノ金ハ何時デモ多クシテ、取ルトコロノ金ハ少
  ナイト云フ貿易ハソンナラドウデアルカト云フト、賣ルトコロノモノガ少ナクテ買フトコロノモ
  ノガ多イ、ソレデモ進取ト言ハレマスカ、失フトコロガ多クシテ得ルトコロガ少ナイ、ソレデ
  ハ進取デハナイ、每年ノ貿易ニ付テ見ルト、開國進取ニアラズシテ開國退出ダ、負ケテ
  居ル、大藏大臣ハエラク辯明ヲシテ或ハ保險料ガ這入ッテ居ルトカ云フ金ヲ見テ居ルカ
  ラ、ソレ程ノ額ニハナラヌト云フガ、免ニモ角ニモ貿易デハ負ケテ居ルノデ、拂フ金ハ多ク
  シテ取ルトコロノ金ハ少ナイ、其少ナイトコロノ金ヨリハ尙國內ノ政治ニ使フト云フ金ガ
  多イ、是デ此國ガ盛ンニナルコトガ出來ルカ、ドウシテモ是ハ私ハ變態デアラウト思フ、
  鈴木梅四郞君ガ言ハレル病的國家デアル、而シテ今議院ノ外ヘ出テ樣子ヲ聞イテ見マ
  シテモ、銀行ニハ金ガアル、各地ヘ行ッテ見マシテモ有ル所ニハ金ガアルト云フガ、無イ所
  ニ行ッテハ少シモ金ガナイ(笑聲起ル)是ハドウ云フ譯デアルカト云フト、卽チ病的ダ、殆ド
  商工業等ノ間ガ圓滑ナル資本ノ融通ト云フコトガ出來ナイ、ソレハ當局者ガ往々此國
  家經濟ニ付テノ眼ガ無クシテ、不安ナ事ヲヤルカラ資本家ハナカ〓〓金ハ出サナイ、又之
  ヲ借リテ商業ナリ工業ナリ營ンダトコロガソレダケノ利益ガ無イカラ、金ガ其儘寢テシマウ
  ト云フ有樣デアル、社會モ何モナイ、國家ガ斯ウ云フ國家ガアルカ、斯ウ云フ生キ物ガア
  ルカ、斯ウ云フ團體ガアルカ、斯ゥ云フ店ガアルカ、店カラ營業上取ルトコロノ金ヨリハ
  一家ノ經濟ニ使フトコロノ金ガ多イト云フトロノ國ガ繁昌スルカ、此所ヘ竝ベタ國柄デハ
  ソンナ馬鹿氣タ國ハ何處モナイノデアル、サウシテ置イテ唯豫算案ニ對シテ足ルトカ足ラ
  ヌトカ云フ議論ヲシテ居ルノハ、私ハドウモ合〓ガ行カヌノデアル、日向輝武君ハ曰ク、
  吾〓ノ任務トシテハ國家全體ヲ達觀シテサウシテ按排料理スルト云フコトガ必要デアルト
  云フコトヲ言ハレタガ、私ハサウデナケレバナラナイト思フ、今日ノ現狀デハ如何ニ騒イデ
  見タトコロガ私ガ生產業ノ發達、貿易ノ均衡ナドト云フコトハ到底私ハ得ヤウガナイト
  思フ、其原因ハ何デアルカト申シマシタナラバ(「モウ宜カラウ」ト呼フ者アリ)工業家商業
  家悉ク資本ガナイ、資本ノ缺乏、我日本ニ於テ生產物ノ原料ガ無イカト申シマスレバ、
  到ル所ニ在ル、又智識ガ無イカト言ヒマスレバ下宿屋ノ二階ニ工學士ナント云フ者ハ轉ツ
  テ居ル(「ヒヤノゝ」笑聲起ル)唯智識ト原料ト資本トガ一致シナイノダ(「時間ヲ割愛シ
  タマヘ」ト呼フ者アリ)カラ私ハ今日ノ急務ハ固ヨリ國防ノ完成ト云フコトモ急務デアラ
  ウ、海軍ノ補充ト云フコトモ急務デアラウ二師團ノ增設モ急務デアラウ、急務デアラウ
  ガ此疲弊ノ局ニ在ッテ殆ド資本ヲ失ッテシマッタ、民力ノ休養ト云フモノヲ、此缺陷ヲ補
  塡スルト云フコトガ此國防ト竝ビ併セテ之ヲ補塡スルコトガ急務デアラウト私ハ信ズルノ
  デアル、サウデナイト云フノナラバ-サウデナイト云フナラバ何故ニ外國貿易ハ振ハヌカ、
  國內ノ產業ガ何故ニ振ハヌカ、之ニ對シテ吾ミ議員ト致シマシテモ、況シテ政路ノ
  當路ノ大臣トカ云フ人ミモ之ニ對シテ斯樣ナ政策ヲ執ラニ】ヤナラヌト云フ考ヲ致サヌケ
  レバナラナイト私ハ考ヘルノテアル、故ニ私ハ今日ノ現狀其儘デ推移ッタナラバ、到底是ハ國
  運ノ伸張ト云フコトハ求メ得ラレヌモノデアラウト考ヘルガ故ニ、政府ノ所見ヲ此案ヲ提出
  致シマシテ尋ネマスル次第デアリマスノデ、甚ダ長ウナリマシテ相濟マヌノデアリマスルガ、長イ
  間實ハ自分ガ疑問トシテ包藏シテ居ルトコロノ考ヲ此處ニ於テ述ベマシテ、政府ニ質スト
  コロアル次第デアリマシテ、甚ダ長ガウナリマシテ諸君ニ御迷惑ヲ掛ケマシタ次第デアリマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=18

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• 019・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　次ハ帝國在〓軍人會ニ關スル質問-相鳥勘次郞君
  六帝國在〓軍人會ニ關スル質問
  〔相島勘次郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=19

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• 020・相島勘次郎

  ○相島勘次郞君　最モ簡單ニ質問ノ趣意ヲ述ベマス、帝國在〓軍人會規約ノ第七條
  ニ「本會ハ軍人ニ賜リタル勅諭ノ精神ヲ奉戴シ在〓軍人ノ品位ヲ進メ親睦ヲ厚フシ相
  互扶助シ軍人精神ヲ振作シ體軀ヲ練リ軍事智識ヲ增進スルヲ以テ目的トス」斯ウ書イ
  テアルノデアリマシテ、在〓軍人ガ軍事的智識ヲ進メ又軍人タルノ品位ヲ進ムルタメニ
  斯ウ云フ會合ノ出來テ居ルト云フコトハ私共ノ贊成ヲスルトコロデアリマスル、然ルニ此
  桂公或ハ寺內伯ト云フヤウナ軍人ヲ以テー陸軍ヲ以テ日本ヲ一統スルヤウニ、マルデ
  陸軍ノ力ヲ以テ吾ミヲ臣民扱ヒニデモシタイト云フヤウナ考ノ人達ガ勢力ヲ得タ時分ニ、
  此規則ヲ改正ヲシテ(「靜肅ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)此軍人會ト云フモノニハ軍人デナ
  イ者ガ入ルト云フコトハ出來ナクナッタノデアリマス、從來ハ軍人會ノ中ニヤハリ唯ノ人モ
  入ッテ居ッタノデアリマスルカラシテ、地方ニ軍事會ト云フモノガアルト、ソレノ會長デアルト
  カ或ハ相談役デアルトカ云フ人ハ、或ハ市長デアルトカ區長デアルトカ村長デアルトカ云
  フ人ガ、其會長ナリ相談役ヲシタノデアッテ、軍人ト軍人デナイ者トノ間ガ大層圓滿ニ
  行ッタノデアリマス、(「ヒヤ〓〓」「其通リ」ト呼フ者アリ)然ルニ彼等ガ此規則ヲ改正シ
  テ、軍人以外ノ者ガ此會ニ入ルコトガ出來ナイト云フ結果ハドウ云フコトニナッテ居ルカ
  ト云フニ、假令軍人トシテハ相當ノ人デアッテモ、或ハ少尉デアルトカ或ハ下士官デアル
  トカ云フ人デアッテモ、地方ノ村落等ニナリマシテハ、其人ノ社會的地位ト云フモノハ甚
  ダ高クハナイ人ガ澤山アルノデアリマス、然ルニ其軍人タルトコロノ階級ノ地位ノ上カラシ
  テ、或ハ會長デアル、或ハ理事デアルト云フモノヲ定ムル結果トシテ、地方ノ人民ニ及ボ
  ス影響ト云フモノガ甚ダ宜シクナイノデアリマス、一體斯ウ云フ會ヲ起スト云フコトハ、平
  素ニ於テ軍人ノ品位ヲ高メ軍事的智識ヲ得ルト云フヤウナコトモゴザイマセウケレドモ、
  國家一朝事アル場合ニ於テ此在〓軍人ガ皆召集セラレテ軍事ニ從事シタ時分ニ、其
  後顧ノ憂ヒナカラシムルト云フヤウナ方法ニナッテ居ラナケレバ、在〓軍人會ヲ立テタ目的
  モ立タナイノデアルト私共ハ思フノデアル(「ヒヤ〓〓」)然ルニ全ク唯召集サレタナラバイツ
  何時デモ召集ニ應ジテ、陸軍ナリ海軍ナリニ行クト云フ人ダケガ團體ヲ組ンデ居ッテ、其
  他ノ軍人以外ノ人ハ一向關係ヲシナイデアルカラシテ、是ハ何等カヲ養成スルニハ宜シカ
  ラウケレドモ、眞ニ此在〓軍人ノ品位ヲ高メ、軍人タルノ智識ヲ增進スル上ニ於テハ甚
  ダ面白カラザル規則デアルト長ク考ヘテ居ッタノデアリマス(拍手起ル)然ルニ其ノ後ノ樣
  子ヲ見マスルト云フト、規則第四條ニハ本會ハ陸軍大臣ノ監督ヲ受ケルトアリマシテ、サ
  ウシテ第十七條ノ規則ニハ「會長副會長及本部ニ屬スル理事幹事評議員ハ東京市及
  其附近所在ノ會員中ヨリ云々」トアッテ、朝鮮ニ居ルトコロノ人ガ會長ヲスルト云フヤウ
  ナコトハ、此規則ニ背イテ居ルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)陸軍大臣ハ-
  第四條ノ規定ニ依ルト陸軍大臣ノ監督ヲ受ケルトアルガ、陸軍大臣ハ何ヲ監督ヲ爲スッ
  テ居ルノデアリマスカ、東京所在ノ人デナケレバナラヌト云フコトハ相當ノ理由ガアッタコト
  デアリマセウ、然ルニ長州ノ軍人デアレバ假令朝鮮ニ御出ニナッテモ差支ナイト云フ議論
  ハ無イ筈デアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)又在〓軍人會トシテハデス、軍人會ノ勢力ヲ
  以テ-此力ヲ以テ軍人會ナルモノヲ利用シテ政治ニ關係ヲスルト云フコトハ宜シクナ
  イコトハ吾〓モ考ヘテ居ル、ケレドモ此力ヲ動モスレバ政治ニ利用セントスルヤウナ傾ガ從
  來アッタノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)今日ハ少シク屏息シテ居リマスカラサウ云フ
  コトモシナイノデアルガ、曾テ彼等ノ威勢ノ赫々タル時分ニハ、隨分此規則ヲ-此團
  體ヲ利用シテサウシテ政治ニ關係セシメテ吾〓民論ヲ主張スルト云フヤウナ者ヲ何トナク
  壓迫ヲスルヤウナ傾ガアッタノデアリマス(拍手起ル)是ハドウ云フ譯デアリマスカ、軍人トシ
  テハデス-軍人トシテハ陛下ノ勅諭ノ精神ヲ奉體シテ軍人タルノ本分ヲ竭スベキハ
  勿論デアル、ケレドモ在〓軍人、所謂〓里ニ歸ッテ當リ前ノ一臣一國民トナッタ場合ニ
  ハ、政治ニ關係ヲシヤウガ何ニ關係シヤウガ決シテ此規則ニ依テ束縛ヲサルベキモノデハ
  ナカラウト私ハ思フノデアリマス、然ルニドウモサウ云フ事ヲナサル形跡ガアリマシテ、サウシ
  テ苟モ軍人ニ出タトコロノ人ハ政治ニ關係ガ出來ナイト云フコトハ詮ジ詰メレバ憲法上
  ノ問題トナルノデ、此立憲ノ進步ヲ非常ニ害スルモノデアリマシテ、斯ウ云フコトガ何人
  モ咎ムルコトナク行レテ居ルト云フコトハ、立憲ノ本旨ト云フモノガ到頭沒却サレテ、日
  本ハ陸軍國若クハ海軍國ニナッテシマッテ、吾〓ハ海軍ノ臣民陸軍ノ臣民ニナルヤウナ場
  合ニナルカモ知レナイト云フ恐ルベキ疑ヲ持ッテ居リマスカラ、此二點ニ就テ陸軍大臣ノ
  答辯ヲ求ムルタメニ此質問書ヲ提出シタノデアリマスガ、少シク其理由ヲ說明ヲ致シタ次
  第デアリマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=20

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• 021・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　第七支那新開埠ニ關スル再質問-伊東知也君
  七支那新開埠ニ關スル再質問

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=21

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• 022・伊東知也

  ○伊東知也君　私ガ再質問ヲ爲スニ當リマシテ、外務大臣ノ出席ヲ希望致シマス、ド
  ウカ御取計ヲ願ヒマス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=22

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• 023・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　伊東君ニ御相談致シマスガ、今使ヲ出シテアリマス、其間ニ順
  ヲ變ヘテ次ノ質問ヲ許シテハ差支アリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=23

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• 024・伊東知也

  ○伊東知也君　宜シウゴザイマス

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• 025・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　ソレナラバ其次ノ··
  〔川原茂輔君「ソンナコトヲ言ハズニヤリタマヘ、速記錄デ見レバ分ルノデス」ト
  呼フ〕

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• 026・伊東知也

  ○伊東知也君　ソレデハヤリマセウ
  〔伊東知也君登壇〕
  〔拍手起ル〕

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• 027・伊東知也

  ○伊東知也君　ソロ〓〓ヤッテ居ル間ニ御出デニナルデセウ(「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ
  者アリ)ユックリヤリマス-私ガ先月ノ五日ニ支那ノ新開埠ニ對スル質問書ヲ出シタノ
  デゴザイマス、ツレハ先達テ支那政府ガ蒙古ノ洮南府、赤峯、多倫諾爾、張家口、歸
  化城、是等ノ諸地方ヲ開放シマシタ、ソレカラ山東省ニ於ケル龍口、又直隸ニ於ケル胡
  蘆島、卽チ連山灣ヲ新ニ開港場トシテ開放シタノデアリマス、ソレニ就キマシテ私ハ我ガ
  帝國政府ニ及ボス影響ガ甚ダ大ナルモノデアルト考ヘマシタカラ、此支那政府ノ開埠ト
  云フモノハ帝國政府ガ勸告シタノデアルカ、或ハ他ノ列國ノ一二ノ方カラシテ勸告デモサ
  レタモノデアルカ、又ハ支那政府ノ自覺ニ出タモノデアルカ、是ガ第一箇條ノ質問デアッタ
  ノデアリマス、トコロガ當局者ハ是等ノ質問ニ對シマシテ約一箇月モホッタラカシテ置カレ
  タノデアリマス、私ハ此問題ハ餘程重大ナル問題デアル、決シテ疎カニスベキモノデナイト
  考ヘテ質問シタノデアリマスガ、政府當局者ハ如何ナル御考デアルカ知ラヌガ、之ニ答フ
  ルニ一箇月モホッタラカシテ置イテ、而モ私ニ其理由ヲ說明スル機會モ與ヘナイ、直ニ返
  辭ヲシテ曰ク、第一箇條ニ對シテハ「支那政府ノ自覺ニ出テシモノト認ム」第二箇條ノ
  「若支那政府ノ自覺ニ出テシモノトセハ其發表以前ニ於テ帝國政府ハ何等カノ內交涉
  ヲ受ケシコトアリヤ如何」ト云フ第二問ニ對シテハ「交涉ヲ受ケシコトナシ」ト單ニソレダケ
  デアル、ソレカラ第三問「前記諸地方中開放ニ依リ帝國ノ發展ニ障害ヲ來スコトナシト
  スルカ」ト云フ問ニ對シテハ「障害ヲ來スコトナシト認ム」實ニ簡單明瞭デアリマセウ、併ナ
  ガラ私ノ考デハ斯ノ如ク簡單明瞭ニシテ解決スベキ問題デハナイノデハアリマス、支那政
  府ガ新ニ開港場ヲ設ケル、ソレニ關聯シテ我ガ帝國ノ利益ノ消長如何ト云フコトハ餘
  程愼重ニ考ヘナクチヤナラヌノデアリマス、之ニ因テ帝國ノ將來ノ發展ノ素地ヲ作ルトコ
  ロノ地區ヲ如何ニ妨ゲラレルカト云フコトヲ深ク考ヘナクチヤナラヌ問題デアリマス、例ヘバ
  支那政府ガサウ云フ新シイ開港場デモ作ラウト云フヤウナ氣配ガ見エタナラバ、帝國政
  府ガ極力之ニ向ッテ〓究シナクテハナラヌノデアリマス、單ニ漠然ト支那政府ガ自覺ニ出
  デシモノト認ムルト云フヤウナコトヲ以テ一擲シ去ルベキ問題デハナイノデアリマス、堂々タ
  ル帝國使臣ガ北京ニ滯在シテ居ル、又到ル所ノ重ナル所ニ領事官ガ滯在シテ居ル而
  シテ支那政府ガ自覺ニ依テ之ヲ新タニ開クト云フ問題ガ起ッタナラバ當然ソレ〓〓其
  情報ヲ得テ場合ニ依テハ北京ノ公使館ニ報告シ、或ハ外務省ニ報告シテ帝國ハ其利
  害關係ヲ極メ、或場合ニハ抗議ヲ申込ミ、或場合ニハ勸告シテ早ク止メサセルト云フ手
  段モ取ラナケレバナラヌノデアリマス、然ルニ何ゾヤ單ニ支那政府ノ自覺ニ出デタモノト
  認ムト云フヤウナ漠然タル答ヲ以テ彌縫シ去ラントスルニ至ッテハ、無責任モ甚ダシイモノ
  ト思フノデアリマス、而モ若シ支那政府ノ自覺ニ出デタトナラバ仕方ガナイ、其發表以前
  ニ於テ帝國政府ニ何等カノ交涉ガ有ッタカ無カッタカドウカト云フ質問ニ對シテハ交涉
  ヲ受ケタコトガナイト返事サレテ居ル私ハ此問題ノ起ッタ當時北京ニ行ッテ居タノデアリ
  さく、ドノ位ノ關係ガアッテドノ位ノ交涉ガアッテ、而シテ支那政府ガ之ヲ發表スルニ至リ
  シカト云フ位ノコトハ不肖ナリト雖モ多少調ベテ居ルノデアリマス、私ハ敢テ窮追シテ、若
  シ當局者ガ斯ノ如キ事ヲ摘發スルコトヲ以テ我帝國ノ外交上ニ支障デモアリ或ハ列
  國關係等ニ差支ガアルト言ハルヽナラバ私ハ何モ好ンデサウ云云帝國外交ニ妨害ヲ
  及ボスヤウナコトハ致シマセヌ、併シ餘リニ冷淡デアリマス、餘リニ答辯ノ仕方ガ簡單過
  ギル殆ド要領ヲ得ナイ、私ノ質問スル理由ガ何處ニアルカト云フコトモ御聽キニナラズ
  シン、唯無シト云フ一言ヲ以テ答ヘラルヽニ至リテハ私ハ或場合ニ於テハ之ヲ摘發スル
  コトモ差支ナイカト考ヘルノデアル、私ハ帝國政府ハ內交涉ヲ受ケタノミナラズ、寧ロ此
  問題ノ根本タルヤ、支那政府ノ顧問タル英國ノ「ドクトルモリソン」ニ依テ殆ド飜弄セラ
  レタ形跡ガアルト云フコトヲ斷言スルニ憚リマセヌ、何ヲ以テ言フカ、此蒙古地方ニ於ケ
  ルトコロノ同地方ノ如キハ、日本ノ爲メニモ實ニツマラヌ、現在ニ於テハ何ノ利益モナイ
  地方デアリマス、又露西亞ノ方カラ見マシテモゝ此蒙古ノ開放地ト云フモノハ餘リニ得
  策トスル地方デハアリマセヌ、畢竟スルニ此蒙古ニ於ケルトコロノ開放地ト云フモノハ日
  露ノ勢力ヲ錯綜セシメテ、利害衝突ノ根元ヲ造ラントスル袁世凱及之ヲ背後カラ勸メ
  ル「モリソン」英吉利及亞米利加ノ政治的策略ニ出テタモノデアリマス、洮南府、赤峯、
  多倫諾爾此三箇所ト云フモノハ日本ノ勢力範圍トスル東蒙古ニ屬スル地方デアリマシ
  テ、追〓日本ガ此處ニ向ッテ進ンデ行ッテ、我ガ勢力發展ノ素地ヲ造ラナケレバナラヌ地
  方デアリマス、併ナガラ現在ニ於テハ何等ノ設備ヲ施スコトモ出來ナイヤウナ狀態ニナッテ
  居ル、ソレハ洮南府トカ赤峯トカ多倫諾爾ト云フ地方ハ飛ビ離レタ遠方ノ地デアッテ、
  日本ノ人民ガ其處ヘ行ッテ店デモ開カフト致シマシテモナカ〓〓容易ニ旅行シテ行クコト
  ガ出來ヌヤウナ遠方ノ地デアッテ、斯ウ云フ地方ヲ先キニ開カレテモ彼處ガ開放ニナッタカ
  ラト云フテ、日本ノ商人ガ算盤ヲ取ッテ見レバ、其處ヘ行ッテ商賣ヲシテ勢力發展ノ素
  地ヲ造ルコトハ到底出來ナイ有樣デアル、若シサウ云フ地方ヲ開クナラパ、モット近イ處
  ニ良イ處ガ幾ラモアル、或ハ熱河トカ其他滿洲ニ近イ地方デ日本ガ段々發展シテ行ク
  所ノ飛石トナルベキ地方ガ幾ラモ開放ナセル地方ガアリマス、然ルニサウ云フ飛石ノヤウ
  ナ、追ミツレカラソレト傳ハッテ行ク地方ヲ開放サセナイノデ、何百里何千里モ離レタ所
  ニ開放場ヲ造ッタトコロガ、日本ノ國民ガ發展シ進ムト云フコトハ到底言フベクシテ行フ
  ベカラザル問題デアルノデアル、寧ロ洮南府トカ·赤峯、多倫諾爾ノ如キハ露西亞ニ近イ
  地方デアッテ、此處ガ開放サレタナラバ露西亞ノ勢力ガ是ニ入リ込ミ、折角日本ノ勢力
  範圍ト極メテ居ル地方デアッテモ、露西亞ノ勢力ヲ增ス原因ヲ與フルト云フヤウナ有樣
  ニ陷ルノデアリマス、此間私ガ旅行中ニ滿鐵會社ノ調査會ノ人ガアノ地方ヲ巡囘シテ
  歸ッテ言フニ、モウ到底彼處ハ日本ノ勢力範圍デハナイ、露西亞ノ勢力範圍デアッテ、
  洮南府、赤峯等ハ皆ナ露西亞ノ貨幣ガ通用シテ居ルガ、日本ノ錢ノ如キハ少シモ通用
  シテ居ラヌ、建物等ノ如キ其他ノモノ悉ク露西亞風ヲ學ンデ居ッテ、日本人ナドハ全ク
  相手ニセラレヌト云フ有樣テアルト云フコトデアッタ、サウ云フ地方ヘ持ッテ行ッテ之ヲ日
  本ノ勢力範圍ナリトシテ之ヲ開放シタナラバ、露西亞ノ勢力ハ是ニ向ッテ所謂大河ノ堤
  ヲ決スルガ如ク流レ込ムデアラウ、此三地方ノ開放ノ如キハ當局者ガ當然抗議ヲ申込
  ンデ宜カルベキ次第デアリマス、但シ是ニ對抗スベキ地方、卽チ張家口及歸化城、此二
  箇所モ開放サレタ、是ハ或ル場合ニ於テハ日本ノ爲メニハ必要デアルカモ知レヌ、併ナガ
  ラ之ヲ以テ前ニ申シタトコロノ三地方ノ缺〓ヲ補フコトハ到底出來ヌノデアリマス、張家
  口及歸化城ノ如キモノハ露西亞ニ於テ前ケヨリ確乎タル根柢地ヲ造ッテ居リマスカラ、ソ
  コニ日木人ガ出掛ケテ行ッテ競爭ヲシテモ到底ムヅカシイ話デアリマス、差引勘定蒙古ニ
  於ケル此五地方ノ開放ト云フモノハ、私ノ考フル所ニ依レバ畢竟我ガ帝國ノ損
  失タルヲ免レヌノデアル、唯私ノ聞ク所ニ依レバ、此蒙古ノ解放ト云フモノハ日本政府
  ノ代表者ハ餘リ面白クナク思ッテ、多少抗議的意思ヲ申込ンダラシイ、然ルニナカ
  操縱ニ巧ミナル「モリソン」博士ハ、ソレナラパサウヤカマシク仰シヤラヌデモ宣イ
  アナタ方ノ爲メニ良イ地方ヲ開放シテ差上ゲル、ソレハ山東省ノ龍口デアル、之ヲ開イタ
  ナラバ芝罘ヨリ港ガ良イ、尙大連カラ一直線ニドン〓〓「ジヤンク」デ行クコトガ出來ル、
  之ヲ開放シタナラ帝國ハ直チニ獨逸勢力範圍ノドテッ腹ヘ穴ヲアケルヤウナモノデアルサ
  ウシテ大連灣ニ續クコトガ出來ルト云フヤウナコトヲ以テ誘ハレタラシイノデアリマス、成
  程私共ノ考ヘタ所モ龍口ヲ開イタナラバ日本ノ爲メニハ非常ニ利益ニナルト思ヒマス、果
  シテ此龍口ニ十分ナル施設ヲシテ日本ノ勢力範圍トスルコトガ出來タナラバ、今日ノ狀
  態カラ言ヘバ蒙古地方開放ニ比較シテ優ル所ガアルト思ヒマス、併ナガラ獨逸ガ此龍口
  ノ開放ニ對シテ默ッテ居ルベキ筈ガナイ、果セル哉近頃ニ至ッテ獨逸ハ是ニ抗議ヲ申込ン
  デ、是非トモ此龍口ノ開放ハ延期セネバナラヌト云フヤウナ高壓的手段ニ出デラレタ爲メ
  ニ、今デモ尙其開放ヲ敢テスルコトガ出來ナイヤウナ境遇ニナッテ居ルノデアリマス、今度
  ノ新開放地ノ中、最モ有望ナル龍口ガ斯ノ如ク獨逸ノ高壓ニ依テ抑ヘラレテ居ルデハア
  リマセヌカ、然モ蒙古ニ於ケル五開放地ト云フモノハ三ツハ駄目デ二ツハドウカ斯ウカ
  少シハ見込ガアルト云フ勘定ニナッテ居ル、左スレバ殘ル一ツノ直隸省ノ連山灣ハドウ云
  フ有樣デアルカ、諸君モ御承知ノ通リ連山灣ト云フ處ハ亞米利加政府ガ約十年以前
  ヨリ全力ヲ注イテ其築港ニ從ヒツヽアルノデアリマス、サウシテ嘗テ世界ノ物議ヲ起シタ所
  ノ錦愛鐵道、卽チ日本ノ南滿鐵道ニ駢行スル鐵道ヲ彼處ニ敷イテ、其口ヲ連山灣ニ
  出シテ、サウシテ日本ノ滿洲ニ於ケル所ノ利益ヲ全部奪去ラント企テタノデアル、併ナガ
  ラ露西亞及ビ我日本ノ抗議ニ依テ其錦愛線ハ全然否決サレマシタガ、亞米利加ハ今
  尙ホ其目的ヲ棄テナイノデアル、サウシテ非常ニ築港ノ技術ニ於テ熟練デアルト共ニ、外
  交上ノ手腕ノ非常ニ卓越シタル伎倆ヲ有スル「ピユース」ト云フ博士ヲ十年以來彼處ニ
  ヤッテ居ルノデアリマス、而シテ連山灣地方ノ調査ハ固ヨリノコト、何カ隙ガアッタナラバ彼
  ノ地方ヲ根據トシテ滿蒙·地方ニ手ヲ入レヤウト虎視耽々タル有樣ヲ以テ計畫シツヽア
  ルノデアリマス、ソレガ連山灣ノ築港ハ一時中止シタノデアルカラ、「ドクトルヒユース」ハ引
  揚ゲテ宣ササウナモノデアルガ、何時マデモ頑張ッテ居ッタカラ甚ダ不思議デアルト思ッテ
  居ッタラ、果セル哉今度ノ連山灣ノ開港ハ亞米利加ノ後押シデヤル所デアッテ、蔭デ英
  吉利ト手ヲ握ッテ是非トモ連山灣ヲ開放シナケレバナラヌト云フコトヲ計畫シ、其結果ニ
  依テ連山灣開放ト云フコトハ此七箇所開放ノ一ツニ加ヘラレタノデアル、卽チ開放スレ
  バ築港ノ必要ガアル、築港スレバ埋立地其他ハ亞米利加人ノ所有ニナッテ居ルカラ、非
  常ナ勢ヲ以テ騰貴スルノデアル、サウシテ其地方ガ發展スル、其地方ガ非常ニ發達スレ
  バ其餘勢ヲ驅ッテ復タ又錦愛鐵道ノヤウナ鐵道ヲ再ビ開設スルト云フ下拵ヲシテ居ルノ
  デアリマス、外ノ地方ハイザ知ラズ、此連山灣開放ニ至ッテハ我日本ノ滿洲蒙古ニ對ス
  ル所ノ發展ノ芽ヲ摘シダヤウナモノデアッテ、非常ナル大打擊ヲ受ケル次第デアリマス、斯
  ウ云フ連山灣開始ノ如キモノガ麗々シク書カレテ居ッテモ、內交涉ヲ致シタコトハナイ、或
  ハ帝國ノ發展ニ障害ヲ來スコトナシト恬然トシテ答フルニ至ッテハ、私ハ政府當局者其
  人ノ滿洲蒙古地方、我國ノ將來發展スベキ最モ肝要ナル地方ニ對スル所ノ智識ノ程
  度ヲ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、斯ウ云フ有樣アアッタナラバ我輩ハ實ニ我帝國ノ前
  途ヲ奈何セント思フノデアリマス、私ハ徒ニ當局者ニ喰ッテ掛ッテ喧嘩ヲスルコトヲ好ムノ
  デハナイ、我帝國ノ發展、我帝國ノ將來ハ繋ッテ支那四百餘州ニ在ルノデアリマスカラ、
  彼ノ列國ノ貿易ノ關係トカ或ハ商業上ノ關係トカ、或ハ利權ノ關係ニ依テノミ東洋ニ
  力ヲ盡ス、列國ト我帝國ガ支那ニ於テ力ヲ盡スノトハ同一ノ論デハナイノデアル、支〓ニ
  於ケル帝國ノ施設如何ハ我帝國ノ存亡問題デアルト斷言スルヲ憚ラナイ、ドウシテモ支
  那ノ問題ハ帝國ノ存亡問題デアルガ故ニ、單ニ利益トカ利權トカ其他小サナ商賣上ノ事
  ヲ持ッテ來ル彼ノ西洋各國ト同格ニ行クノデハナイノデアル、然ルニ我帝國ノ遣方ハ列國
  ノ鼻息ヲ窺ッテ、彼等ノ商賣人根性デアル仕事ト同格ニ行ケバ上等ダ位ニ考ヘテ居ルノ
  ハ甚ダ情ナイ次第デアル、サウ云フ考ヲ持ッテ居ルカラコソ、今度ノ新開放問題ニ付テモ
  漠然タル事ヲ以テ之ヲ扱ッテ居ル次第デアルト思フノデアル、願クハ諸君、ドウシテモ此支
  那問題ニ對スル所ノ關係如何ハ我國將來ノ發展、我國將來ノ存亡ガ繋ッテ居ルト思
  フノデアルカラ、當局者タルモノ少シク鑑ミテ斯ウ云フ問題ヲ忽セニシナイデ、モウ少シ注
  意ヲ拂ヒ、私共質問書ヲ出シタナラバ明カニ理由ヲ聽イテ又明カニ說明シ、若シ祕密ニ
  屬スル事デアッタナラバ大臣室ヘデモ呼ンテ相談的ニ話シタラ宜サウナモノデアル、單ニ「無
  シ」トカ「有リ」トカ「認メス」トカ云フヤウナ言葉ヲ以テ返答シ居ルガ如キニ至ッテハ、私ハ
  殆ド此帝國議會ノ權能ヲ侮蔑シタモノト考ヘル、隨ッテ甚ダ諄イヤウデアリ、貴重ノ時間
  ヲ費シテ諸君ニ濟マナカッタガ、私ハ再ビ玆ニ再質問ヲシテ些カ理由ヲ說明シタ次第デア
  リマス、願クハ當局大臣ヨリ明快ナル御答辯ヲ與ヘラレンコトヲ希望シマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=27

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• 028・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　書面ヲ以テ外務大臣ハ答ヘラルヽサウデアリマス、次ハ對米外
  交ニ關スル再質問齋藤隆夫君
  八對米外交ニ關スル再質問
  〔齋藤隆夫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=28

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• 029・齋藤隆夫

  ○齋藤隆夫君　諸君、本員ハ一月二十一日政府ニ對シ對米外交ニ關スル質問書ヲ
  提出致シマシタ、然ル所丁度其日ノ午後此席上ニ於テ外務大臣ヨリ此外交ノ經過竝
  ニ結果ニ付テ大略御報告ガアッタノデアリマス、.本員ハ非常ナル注意ヲ拂フテ之ヲ拜聽
  シ、竝ニ速記錄ニ就テ精細ニ之ヲ取調ベタノデアル、其結果若シ本員ノ質問ニ對スル疑
  〓ヲ氷解スルコトヲ得マシタナラバ、本員ハ欣ンデ此質問ヲ撤囘致シタイノデアリマス、然
  ル所ガ外務大臣ノ演說、例ニ依ッテ要領ヲ得ルコト甚ダ乏シイノデアル、ソレ故ニ止ムヲ
  得ズ此質問ヲ維持致シマシテ、數個ノ要點ニ付テ要ヲ得タル答辯ヲ求メントシタノデア
  リマス、所ガ爾來約一箇月半ヲ經過シタル三月三日ニ至ッテ、外務大臣ヨリ書面上ノ
  答辯ヲ與ヘラレマシタ、其答辯ヲ見マスルト云フト、頗ル簡單デハゴザイマスガ、明瞭デナ
  イノデアル、ソコデ止ムヲ得ズ再質問ヲ提出致シマシテ、更ニ政府ノ答辯ヲ要求シテ見タ
  イノデアリマス、質問ノ事柄ハ昨年ノ五月彼ノ米國加州ニ於テ制定發布セラレタ所ノ外
  國人土地所有禁止法ニ關スル事柄デアリマス、第一ノ質問ハ政府ハ此法律ヲ以テ日
  米條約違反ト認ムルヤ否ヤト云フ〓デアッタノデアリマス、所ガ政府ハ之ニ答ヘテ日米條
  約違反ナリト認ムト云フノデアル、併ナガラ私ノ見ル所ニ依ルト、政府ハ果シテ之ヲバ條
  約違反ト認ムル所ノ正確ナル公法上ノ論據ヲ有ッテ居ルヤ否ヤト云フコトヲ甚ダ疑フノ
  デアリマス、何故カト云フト外務大臣ノ演說ニ依リマスルト、外務大臣ハ第一囘ノ抗議
  書ニ於テ此法律ハ條約ノ主義及精神ニ違反スルモノデアルト云フコトヲバ速ベテ、合衆
  國ノ國務卿ニ抗議ヲ申込ンダノデアル所ガ國務卿ハ其抗議書ヲバ加州ノ知事ニ送付
  ヲシタ、加州ノ知事ハ之ニ對シテ條約違反ニアラズト云フ返電ラ打ッテ、間モナク彼ノ法
  律案ニ署名ヲシタト云フノデアル、ソコデ第二囘ノ抗議書ニ於テハ條約違反ノ〓ヲバ指
  摘細論ヲシタト云フノデアル、指摘細論ヲシテ更ニ國務卿ニ抗議ヲ申込シダ所ガ、此度
  ハ彼自身カラシテ詳細ナル所ノ反駁ヲ受ケタト云フノデアリマス、之ニ依テ見マスルト第
  一ノ抗議書ハ加州ノ知事ヨリ反駁セラレ、第二回ノ抗議書ハ國務卿自身ヨリ反駁セ
  ラレテ、此〓ニ關スル我ガ外務省ノ抗議ハ全ク彼ノ爲メニ打破ラレテシマフテ居ルノデア
  ル、一部公法家ノ曲論ニ誤ラレテ、論據ノ確ナラザル條約違反ヲ提ゲテ彼ニ當ッタコト
  ガ、此失敗ヲ招キタル一大原因デハナイカト思フノデアリマス、ソレデアリマスルカラ第三
  囘ノ抗議書ハ全ク看過セラレ、爾來六箇月ヲ經過シタル今日ニ於テモ何等ノ囘答ニ接
  シナイ、斯樣ナ緩漫ナル斯樣ナ侮辱セラレタル外交天下何レノ處ニアリマスカ、我ガ霞ゲ關
  ヨリ外ニハ無イノデアル、外務大臣ハ今日ニ於テモ尙條約違反ナリト確信シテ居ラル
  ノデアルカ、若シ條約違反ナリト確信シテ居ラルヽナラバ、本員ハ進ンデ其違反ノ條項ヲ
  示シテ貰ヒタイノデアル、言フ迄モナク條約ト云フモノハ國家間ノ契約デアリマス、而モ書
  面上ノ契約デアリマスルカラシテ、條約違反ヲ主張スル以上ハ條約ノドノ條項ニ違背ヲ
  シテ居ルト云フコトヲバ指摘セネバナラヌノデアル唯條約ノ精神ニ違反シテ居ル、條約
  ノ主義ニ違反シテ居ルト云フガ如キ、斯カル漠タル理由ヲ以テ、今日條約違反ヲ主張
  スルコトハ出來ナイノデアリマス、ソレ故ニ本員ハ條約違反ノ條項ヲ指摘セラレタイト云
  フノガ第一ノ質問ノ要點デアリマス、第二ハ若シ條約違反デアルト確信セラルヽナラバ、其
  結果如何ナル事ト爲ルノデアルカ、、條約違反ハ國權ノ侵害トナルト云フ位ノコトハ外務大
  臣ト雖モ心得テ居ラルヽデアラウト思フ、米國ノ爲ニ條約ヲ破ラレ國權ヲ侵害セラレテソ
  レヲ恢復ヲスルコトガ出來ナイヤウナ者ガ、何デ外務大臣ノ職ニ居ルコトガ出來ルノデアリ
  マスカ(拍手スル者アリ)私ハ此ノ〓ニ關スル國務大臣ノ責任ヲ明カニセンガ爲メニ、敢テ外務
  大臣ノ答辯ヲ要求セントスルノデアリマス、第三ハ、此法律ハ合衆國ノ憲法ニ違背ヲシテ居
  ルカ否ト云フコトデアリマス、此ノ質問ニ對スル答辯ヲ見マスルト政府ハ同法律ガ米國憲法ニ
  違背スルヤ否ヤハ事外國ニ於ケル國內法制ノ解釋ニ屬スルモノデアルカラ、茲ニ明言ス
  ルヲ欲シナイト云フノデアルガ、是ハ一說デアリマス、併ナガラ本員ノ見ル所ニ依ルト、若
  シ是ガ米國憲法違反デアルナラバ其結果トシテ在米日本人ノ權利ヲ害スルト云フコト
  ニナルノデアリマス、若シ在米日本人ノ權利ヲ害スルト云フコトニナレバ、外務當局者タ
  ル者ハ之ヲ默視スルコトハ出來ナイ、相當ノ手段ヲ以テ之ヲ恢復スル道ヲ執ラネバナラヌ
  ノデアリマス、而シテ米國憲法ヲ見マスルト、其第十四條第四節ノ末項ニ於テ斯ウ云フ
  規定ガアルノデアル「合衆國管轄區域內ノ何人ニ對シテモ法律ノ平等ナル保護ヲ拒ムヘ
  カラス」斯ウ云フ規定ガアル而シテ此規定ノ中ノ「何人」ト云フノハ是ハ合衆國ノ人民
  タルト外國人タルトヲ問ハナイ、又人種國籍ノ如何ニ拘ラズ總テノ人類ヲ言フノデアル、
  又「平等ノ保護」ト云フノハ人種國籍ノタメニ法律的差別ヲ爲スコトヲ許サザル意味デ
  アルト云フコトガ、高等法院ノ判決ニ依ッテ定ッテ居ルノデアリマス、然ル所ガ彼ノ排日法
  律ナルモノハ此憲法ノ規定ニ違反シテ、日本人ト米國人トノ間ニ於テ差別的待遇ヲ與
  ヘル所ノモノデアリマスカラ、本員ノ見ル所ニ依レバ明ニ憲法違反デアル在米日本人ガ
  米國ノ憲法ニ違反シタル國內法ニ依ッテ權利ヲ侵害セラレテ居ルト云フコトヲ知リツヽ
  是ガ恢復ノ手段ヲ執ラナイト云フガ如キコトハ如何ナル見解ヨリ出デタモノデアルカ、之ニ
  關スル外務大臣ノ意見ヲ聽キタイト云フノガ第三點デアリマス、第四〓ハ聞ク所ニ依レ
  バ我ガ政府ハ此事件ニ付テ彼ノ政府ト交渉談判ヲ開クニ當リ、我ヨリ進ンデ祕密約束
  ヲ提供シタト云フコトデアル、本員ハ之ヲ聞イテ實ニ怪訝ノ念ニ堪ヘナイノデアリマス固
  ヨリ外交談判ニハ祕密ヲ要スルコトガアル位ノコトハ本員ト雖モ辨ヘテ居ルノデアリマス、
  併シ是ハ其事柄ガ第三國ニ利害關係ヲ持ツ場合デアル、或ハ又第三國ニ關係ヲ持タズ
  ト雖モ若シ之ヲ公ニシタナラバ、其外交談判ノ目的ヲ達スル上ニ於テ大ナル差支ヲ生ズ
  ル場合ニ限ラレテ居ルノデアル、然ル所ガ此事件ノ如キハ決シテ斯カル性質ノモノデハア
  リマセヌ、北米加州ニ於テ彼ノ排日立法ガ出來タト云フコトハ天下萬衆ノ認メテ居ル
  所デアル、我ハ我ノ權利若ハ利益ヲ保護センガ爲メニ彼ノ政府ニ向ッテ交涉談判ヲ開ク
  ニ當ッテ、第三國ノ關係スベキモノデハナイ、又之ヲ祕密ニセザレバ談判ノ目的ヲ達スル
  コトガ出來ナイト云フガ如キ理由ハ、本員ハドウシテモ發見スルコトガ出來ナイノデアリマ
  ス、而已ナラズ之ヲ公ニシテコソ却テ我ノ目的ヲ達スルニ於テ一大便利デアル何故ナレ
  バ若シ我ニ相當ノ理由ガナイナラバ初ヨリ談判ヲ開カナイガ宜シイ併ナガラ我ニハ相當
  ノ理由ガアリ天下ニ對シテ恥ヂザル所ノ理由ガアル、我ニ公明正大ノ理由ガアルナラバ
  何ガ故ニ之ヲ公ニシテ世界列國ノ前ニ立ッテ正々堂々ト爭ハナイノデアルカ、世界ノ輿論
  ト世界ノ同情ヲ喚起シ、之ヲ後援トシテ我目的ヲ達スルガ爲メニ努メナイノデアルカ、然
  ルニ此道ヲ取ラズシテ徒ラニ事ヲ祕密ニスル、而モ我ヨリ進ンデ祕密ノ約束ヲ提供シテ、
  我ハ相當ノ理由ヲ持タナイ我ハ瑕ヲ持ツ身分デアルカノ如ク信ゼシメ、斯カル外交手段ヲ
  以テ其目的ヲ達セシメントスルハ抑〓時代後レノ甚シキモノデアル、外務當局者ハ斯カル
  手段ニ依テ此國家的大問題ヲバ暗ヨリ暗ニ葬ッテシマハントシテモ、國民代表ノ任務ヲ
  帶ブル吾ミニ於テハ決シテ之ヲ默過スルコトハ出來ナイノダアリマス、ソレトモ當局者ニ於
  テハ之ヲ祕密ニセネバナラヌト云フトコロノ特別ナル理由ノアルノデアリマスカ、又此祕密
  ノ蓋ハイツ開ク積リデアルカ、之ヲ質シテ置キタイノガ質問ノ第四點デアリマス、質問ノ第
  五卽チ最後ニ於テ本員ハ外務大臣ニ確メテ置キタイ、外務當局者ハ此排日立法ヲ如
  何ニスル積リデアルカ、其效力ヲ減殺シテ在米日本人ノ權利ヲ確保スルガ爲ニ一定ノ
  成案ガアルノデアルカ、又此儘ニ抛擲シテシマウテ置ク積リデアルカ、ソレヲ聽キタイノデアリ
  マス、或ハ米國ニ對シテ日米條約ノ改正ヲ提起スルナリ、或ハ歸化法ノ制定ヲ要求スル
  ナリ、其他適當ノ手段ヲ取ル積リデアルカ、又此儘ニ抛ッテ置ク積リデアルカ、之ヲ確メ
  テ置キタイノデアル過日外務大臣ハ是ニ付テ最善ノ道ヲ取ルモノデアルト言ハレテ居
  え
  ル、併ナガラ是ハ當リ前ノコトデアル、苟モ國家ノ機關タル政府ノ當局者ガ內外ノ政務
  ヲ行フニ當ニテ最善ノ道ヲ取ルト云フコトハ是ハ言ハズトモ知レテ居ルコトデアル、本員ガ
  問ハントスルトコロハ其最善ノ途ハ如何ナル途デアルカ、抽象的ノモノニアラズシテ具體
  的ノコトヲ聽カントスルノデアリマス、本員ハ決シテ外務當局者ニ向ッテ難キ外交ヲ要求
  セントスルモノデハアリマセヌ、米國ノ國家組織ト我國家組織トハ、其組織ノ大本ニ於
  テ違ガアリマス、又彼ノ國ノ政府ト我政府トハ權力ノ行使ニ於テ一大差等ガアル位ノコ
  トハ本員ト雖ドモ能ク心得テ居ルノデアリマス、ソレ故ニ不可能ノ外交ヲ要求セントスル
  モノデハナイ、唯從來外務當局者ノ取リタル外交方針ガ果シテ適當ノ方針デアルカ、最
  善ノ第ヲ取ッテ居ルモノデアルカ否ヤト云フコトヲ質サンガタメニ此質問ヲ提出シタ次第デ
  アリマス、外務當局者ハ須ラク赤誠ヲ披瀝シテ以テ本員ノ質問ニ答ヘ、此問題ニ對スル
  トコロノ天下萬衆ノ疑ヲ一掃セラレンコトヲ希望スルノデアリマス
  (外務大臣男爵牧野伸顯君登壇)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=29

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• 030・牧野伸顯

  ○外務大臣(男爵牧野伸顯君)　齋藤君ニ御答致シマス、唯今縷々御質問ノ次第デ
  アリマスガ、事多クハ談判ノ內容ニ立入ルコトデアリマシテ、何レノ點ガ條約ノ規定ニ背
  クヤ否ヤト云フコトハ、不幸ニシテ其談判ノ內容ニ立入ルノデアリマシテ、遺憾ナガラ其點
  ハ御話スルコトハ出來ヌノデアリマス、併ナガラ固ヨリ是ハ或ル時期ニ於テハ、此關係ノ
  公文等ハ發表シナケレバナラヌモノト考ヘテ居ルノデアリマス、今日ノ場合ハ度々私ヨリ
  申シテ置キマシタガ、帝國政府ニ於テハ此問題ヲ此儘ニ付シ去ルト云フ積リデハナイノデ
  アリマス、日米兩國間ハ此問題ノ爲ニ起ッテ居ル關係ハ、固ヨリ之ヲ相當ノ措置ヲシテ
  此兩國ノ交際ノ圓滿ヲ多少妨ゲテ居ル如キ事態ヲ除去シタイト云フ希望ヲ持ッテ居ルノ
  デアリマス、一方カラ言ヘバ帝國政府ハ此事ニ付テハマダイロ〓〓策ヲ講ジツヽアルノデ
  アリマシテ、謂ハヾ懸案中ノコトデアッテ、其內容ノコトニ付テハ如何ナル方法デ交涉ヲシ
  テ居ルカ、抽象的デナク具體的ノ囘答ヲ得タイト云フコトデアリマスガ、其點ニ於キマシ
  テハ御尋ノ御精神ハ十分ニ了解致シマスケレドモ、不幸ニシテ御滿足ナル御囘答ヲ申上
  ゲルコトハ出來ヌノデアリマス、又此問題ヲ機密ニスルト云フコトニ付テ、帝國政府ヨリ
  發議シタガ如キ御尋デアリマスガ、此懸案中ノ問題ヲ機密ニスルト云フコトハ是ハ獨リ
  帝國政府ノ希望ノミナラズ、之ヲ機密ニスルト云フコトハ兩國當局者ノ共ニ希望スルト
  コロデアリマシテ、卽チ此問題ノ進行上解決上ニ其方ガ適當ナリト云フコトニ付テハ、兩
  國ノ當局者ハ一致シテ居ルノデアリマスヽソレハ信ジテ疑ハヌノデアリマス、雙方ガ同樣ナ
  希望ヲ以テ之ヲ機密ニシタイト云フノデアリマス、其〓ヲ御了承ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=30

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• 031・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　次ハ自治權蹂躪ニ關スル再質問-早速整爾君
  九自治權蹂躪ニ關スル再質問追加
  〔早速整爾君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=31

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• 032・早速整爾

  ○早速整爾君　自治權蹂躪ニ關スル再質問ノ趣意ヲ簡單ニ申述ベマス、此問題ニ
  付キマシテハ一タビ內務大臣カラ御答辯ガアリマシテ更ニ質問ヲ致シマシテ更ニ內務
  大臣ノ答辯ガアリマシタ何レモ書面ニ依テ御答ニナッタノデアリマスガ、其答ハ總テ要
  領ヲ得ザルノミナラズ、不可思議ニモ事實ヲ曲ゲテ僞ヲ言ッテ本員ニ對シテ御答ニ相成ク
  テ居ル、此ニ於テ私ハ更ニ此再質問ノ追加ト致シテ、簡單ナル一箇條ノ質問趣意書ヲ
  提出シテ置イタノデアリマス、之ニ付テ其趣意ノ存スルトコロヲ申述ベタイト思フテ居ルノ
  デアリマス、問題ハ內務大臣ノ職權濫用ト云フ、卽チ自治權蹂關ト云フコトニ關スル
  問題デゴザイマスカラ、直接ニ內務大臣ノ責任ヲ問ハント欲スル事件ナノデアリマス、本
  日ハ內務當局者ハ御出席ニ相成ッテ居リマセヌケレドモ、私ノ申シマスル趣意ヲ簡單
  ニ申述ベテ置イテ、頁ニ之ニ對シテ貴任アル答辯ヲ求メタイト思ッテ居ル、事實ハ斯樣デ
  アリマス、昨年五月十三日ニ廣島市會ニ於テ適法ニ會議ヲ開キマシテ、其席ニ於テ豫
  テ內務大臣ヨリ命令ガシテアリマシタル廣島市長候補者三名ノ選擧推薦ヲ行ッテ、直ニ
  之ヲ內務大臣ニ進達ヲ致シタト云フノガ第一ノ事實デアリマス、內務大臣ハ此進達ニ
  接シテ、直チニ上奏裁可ヲ請フノ手續ヲ致スノガ當リ前デアルニ拘ラズ、殆ド二箇月ノ
  間之ヲ抛棄シテ置イタ結果、七月ノ十日ニ至リマシテ突然廣島市會ニ向ッテ市長候補
  者ノ再選擧ヲ行フベシト云フ指揮ヲ下シタノデアル、』其當時ハ殆ド何等ノ理由ラ示サズ
  其選擧ガ不適法デアルカラ更ニ再選舉ヲ行フベシト云フ意味ニ於テ、地方長官ニ指圖
  ヲシテ、其指揮ニ基イテ市長候補者ノ再選舉ヲ行フト云フコトニ相成ッタノデアリマス、
  市會ガ適法ニ會議ヲ開イテ市長候補者ノ選舉ヲ行ッタモノヲ、內務大臣ガ上奏裁可ノ
  手續ヲナサズシテ、徒ニ此選舉ヲ不適法ナリトシテ再選擧ヲ命ジタト云フコトノ事實ニ
  外ナラヌノデアリマス、是ハ全ク內務大臣ガ徒ニ職權ヲ濫用シテ自治權ヲ蹂躙シタト云
  フ事實ニ相違ナイノデアリマスカラ、本員ガ玆ニ此質問ヲ提出スルニ至ッタ所以ナノデア
  リマス、勿論其當時ノ市會ノ會議ガ法律ニ違反シテ居ル或ハ其當時ノ選擧ガ規則ニ
  違反ヲシテ居ルト云フコトデゴザイマスルナラバ、內務大臣ガ其選舉ヲ取消スト云フコト
  モ已ムヲ得ナイ、更ニ再選舉ヲ命ズルト云フコトモ是ハ當リ前ノ處置デアルト言ハナケレ
  バナラヌノデゴザイマス、ケレドモ市曾ノ會議ニ於テハ一點モ不適法ナル康ハナイ、其行ヒ
  タリシ選舉ノ上ニ於テハ、少シモ法律規則ニ違反ヲシテ居ル廉ハナイノデアリマス、市制
  ノ何レノ箇條ヲ見マシテモ內務大臣ガ徒ニ職權ヲ以テ市會ノ行ヒタリシ遷舉ヲ蹂躙スル
  ト云フガ如キコトガ出事ル筈ハナイノデアル、今ノ內務大臣ハ理由ナク市曾ノ決議ヲ蹂
  躪ヲ致シテ、折角選舉シタリシ市長候補者、洵ニ大切ナル此市長候補者ノ選擧ト云
  フモノヲマルデ踏躪ッテシマッタノデアリマス、之ニ對シテ-私ノ第一ノ質問ニ對シテ先
  日內務大臣ノ答辯ガアル、其書面ノ答辯ガ是ガ更ニ怪シカラヌノデアリマス、內務大臣
  ノ答辯書ノ趣意ハ大正二年五月十三日ニ開キタリシ廣島市會ハ其會議ガ適法デナイ
  故ニ其選擧ト云フモノラ不適法ト認メタト云フ趣意ニ外ナラヌノデアリマスガ、何故ニ其
  會議ガ適法デナイカト云フコトニ付テハ斯ウ云フコトガ認メテアルノデアリマス、五月十
  三日ニ於ケル廣島市會ノ會議ハ市制ノ規定ニ依リ催告ノ手續ヲナサズ、而モ出席議
  員定數ヲ缺キタルモノナリ、是デ以テ其當時ノ會議ガ不適法デアルト云フコトヲ論斷ヲ
  致シテ居ルノデアリマス、然ルニ此內務大臣ガ答ヘタル事實ガ明カニ聞違ヲテ居ルノデア
  ル五月十三日ノ會議ガ市制ノ規定ニ依テ催告ノ手續ヲナサズト書イテアルケレドモ
  立派ニ催告ノ手續ハ出來テ居ルノデアリマス、事實ニ於テ催告ノ手續ヲ爲シタリシモノ
  ヲ、催告ノ手續ヲ爲サナカッタカラ其會議ガ不適法デアルト云フコトハ、內務大臣ガ衆議
  院ニ向ッテ虛僞リヲ吐イタルモノデ、私ハ實ニ無責任ノ極デアルト思フノデアリマス、事實
  ハ全ク斯樣デアル、再度ノ內務大臣ノ答辯書ノ中ニモ現ニ之ヲ認メテ居ルノデアリマス、
  五月十三日ノ會議ト云フノハ、ズット以前ニ市長カラ招集セラレタル會議デゴザイマシテ
  全ク繼續中ニ屬スルモノデアッタノデ、是ハ內務大臣ノ答辯書ニモ揭ゲテアルノデアリマス、
  而シテ五月十三日ノ其前日タル十二日ノ市會ニ於キマシテ-前日ノ十二日ノ市會
  ニ於キマシテ其開議中ニ出席議員ガ定數ヲ缺クニ至ッタト云フノハ事實デアリマス、此
  於テ市會議長ハ直チニ市制ノ規定ニ依テ出席ノ催告ト云フモノヲナシタノデアル、出席
  議員ノ定數ヲ缺クニ至リタルヲ以テ、直チニ市會議長ハ出席ノ催告狀ヲ發シテ居ルノデ
  アリマス、是ハ私ハ質問書ノ中ニモ揭ゲテ置キマシタガ「出席催告本日日程ニ依ル議事
  ハ開議中出席員中定足敏ヲ缺キタルヲ以テ明十三日午後二時同日程殘部ニ依リ開
  識候條出席催告候也」是ハ市會議長ガ立派ニ公文書ヲ以テ各議員ニ此催告狀ヲ送達
  ヲ致シテ、ソレニ依ッテ十三日ニ於テ會議ヲ開クト云フ運ビニ相成ッタノデアリマス··
  〔此時副議長關直彥君議長席ヲ退キ議長長谷場純孝君議長席ニ著ク〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=32

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• 033・早速整爾

  ○早速整爾君　內務大臣ハ市制ノ規定ニ依テ出席ノ催告ヲナサナカッタ、是ガ內務大
  臣ノ此會議ヲ不適法ト認メルトコロノ根本ノ理由ニ相成ッテ居ルノデゴザイマス、ケレドモ
  斯樣ニ立派ニ此出席ノ催告ヲ現ニ公文書ヲ以テ出席ノ催告ヲ致シテ居ルノデアル、卽
  チ內務大臣ガ私ニ對スル答辯ノ中ニ於テ、出席ノ催告ヲ爲サナカッタト云フコトハ是ハ
  全ク事實ヲ僞ッタルモノデアッテ、責任アルトコロノ內務大臣ガ事實ヲ僞ッテ本員ノ質問
  ニ答ヘント欲シタルトコロデアルノデアリマス、ケレドモ此出席ノ催告ヲシタト云フ事實ニ
  對シテ、內務大臣ハ果シテ如何ナル考ヲ持ッテ居ルノデアルカ、斯樣ナル次第デゴサイマ
  スカラ、此出席ノ催告狀ニ依テ翌十三日ニヤハリ全ク適法ニ會議ヲ開イテ、其會議ニ
  於テ前申シマスル如ク市長候補者三名ノ選舉ヲ行ッタノデアル、少シモ其間ニ違法ノ點
  モナク、不當ノ處置ヲ執ッタルナドヽ云フコトハ事實ニ於テ之ヲ見出スコトハ出來ナイノデ
  アリマス、ソレニモ拘ラズ內務大臣が廣島市會ノ五月十三日ノ會議ハ催告ノ手續ヲ爲
  サナカッタト云フコトヲ以テ、之ヲ不法ト認メ、其會議ニ於テ行ヒタリシ大切ナル市長ノ
  選擧ト云フモノヲ無效ニ歸セシメテ、更ニ職權ヲ以テ再選擧ヲ命ジタト云フコトハ특별,
  內務大臣ノ職權濫用ニアラズシテ何ゾヤト私ハ思フノデアリマス、當時ノ事情ヲ申シマス
  ルト自治體內ニ向ッテ政黨ノ運動ヲ激シク持チ來タシ、政友會ノ黨籍ニ屬スル諸君ガ
  此市長候補者ノ選舉ニ付テハ非常ナル競爭ヲセラレタノデアル然ルニ御氣ノ毒デゴザ
  イマシタガ其當時政友會諸君ガ推サレタル所ノ候補者ハ、不幸ニシテ多數ヲ制スルコト
  ガ出來ナイト云フ結果、其當時ノ選舉ニ於テ政友會ノ推薦サレタル候補者ハ、遂ニ當
  選ノ榮ヲ荷フコトガ出來ナイト云フ結果ニ相成ッタノデアリマス、是ガタメニ前後政友會
  ニ屬スル所ノ諸君ハ議員竝ニ議員外ノ諸君ト共ニ、市會ニ於テハ隨分甚シキ紛雜ヲ醸
  シ、地方ニ於テ稀ニ見ル所ノ騷〓ヲ釀シタト云フ事實ハ存在ヲ致シテ居ルノデアリマス、
  其結果イロ〓〓政友會ノ黨派的運動ト云フモノガ其間ニ行ハレタト云フコトハ本員竊
  カニ之ヲ承ハッテ居ル、マサカ原內務大臣ガ其黨派的運動ノタメニ動カサレテ、斯ノ如ク
  徒ラニ會議ヲ蹂躙スルト云フコトヲセラレタデハナイデゴザイマセウガ、併シ私ハ此事實ニ
  就テ斯ノ如キ事實ヲ僞ッテマデモ職權ヲ濫用スルト云フガ如キ內務大臣ハ、政友會ノ黨
  派的運動ノタメニハ如何ナルコトヲシテモ、如何ナルコトヲモ爲スト云フコトヲ憚ラナイ人
  デアルト云フコトヲ認メナケレバナラヌノデアリマス(ヒヤ〓〓)廣島市會ガ適法ニ會議ヲ
  開イテ、大切ナル市長選舉ヲ行ヒタリシ時ニ當ッテ、黨派的運動ノタメニ此大切ナル選擧
  ヲ蹂〓シ去ッタモノト致シマスレバ、私ハ此〓ニ於テ明カニ現任內務大臣ノ責任ヲ問フ
  ベキ價値アルモノト信ジテ疑ハヌノデアリマス(ヒヤ〓〓)私ハ原內務大臣ガ私ニ對シテ
  再ビ御答ニナッタ如ク、事實ヲ僞ハルガ如キ答辯ヲナサズシテ、責任ヲ以テ眞面目ニ此質
  問ニ對シテ御答アランコトヲ希望致シテ、此壇ヲ降リマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=33

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• 034・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　質問ノ第十以下ハ後囘シト致シマシテ、直ニ議案ノ日程ニ入ラン
  コトヲ希望致シマス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=34

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• 035・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=35

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• 036・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナイト認メマスカラ本日ノ質問ハ是デ止メマシテ、
  日程第一、取引所法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス
  第一取引所法中改正法律案(政府提出)第一讀會
  取引所法中改正法律案
  取引所法中左ノ通改正ス
  第八條中「指圖式ノ倉荷證書」及「倉荷證書」ヲ「預證券、質入證券又ハ倉荷證券」
  三段六一
  第十條取引所ノ營業部類ニ屬スル商業ニ從事スル商人ハ定款ノ規定ニ從
  ヒ其ノ取引所ノ會員トナルコトヲ得
  取引所ノ仲買人トナラムトスル者ハ政府ノ免許ヲ受クヘシ
  第十一條第二項及第三項ヲ左ノ如ク改ム
  婦女、未成年者、復權セサル家資分散者及破產者竝本法ニ依リ除名セラレ
  除名ノ日ヨリ五箇年ヲ經過セサル者ハ會員トナルコトヲ得ス
  懲役若ハ重禁錮一年以上ノ刑ニ處セラレタル者又ハ刑法第二編第十六章
  乃至第十九章第二十三章第三十五章乃至第三十九章、舊刑法第二編第四
  章第一節乃至第五節第一百六十條乃至第二百六十二條第八章第九章第三
  節第三編第二章第一節第二節第四節乃至第六節、通貨及證券模造取締法、
  明治三十八年法律第六十六號、紙幣類似證券取締法、印紙犯罪處罰法、商法
  第二百六十一條、明治二十三年法律第三十二號商法第三編第九章、同年法
  律第百一號、保險業法第九十八條ノ三若ハ本法第三十一條乃至第三十二
  條ノ五ノ規定ニ依リ刑ニ處セラレタル者ニシテ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ
  執行ヲ受クルコトナキニ至リタル日ヨリ五箇年ヲ經過セサル者ハ仲買人
  トナルコトヲ得ス前項ニ該當スル者亦同シ
  第十一條ノ二會員第十條第一項ノ要件ヲ〓キ又ハ前條第一項若ハ第二項
  ニ該當スルニ至リタルトキハ其ノ取引所ヨリ脫退ス
  農商務大臣ハ不正ノ手段ニ依リ會員トナリタル者又ハ第十條第一項ノ要
  件ヲ缺キ若ハ前條第一項第二項ニ該當スル者ニシテ會員トナリタル者ア
  ルコトヲ發見シタルトキハ之ヲ除名シ又ハ其ノ取引所ヨリ脫退セシムル
  コトヲ得
  仲買人前條第一項又ハ第三項ニ該當スルニ至リタルトキハ免許ハ其ノ效
  力ヲ失フ
  農商務大臣ハ不正ノ手段ニ依リ仲買人タルノ免許ヲ受ケタル者又ハ前條
  第一項若ハ第三項ニ該當スル者ニシテ免許ヲ受ケタル者アルコトヲ發見
  シタルトキハ之ヲ除名シ又ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
  第十一條ノ三仲買人他ノ取引所ノ仲買人タル免許ヲ受ケタルトキハ前ノ
  免許ハ其ノ效力ヲ失フ前項ノ規定ハ仲買人カ取引所ノ役員タル認可ヲ受
  ケタル場合ニ之ヲ準用ス
  第十一條ノ四仲買人ハ第二項但書ノ場合ヲ除クノ外支店、出張所其ノ他
  何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハス其ノ本店以外ノ場所ヲ以テ賣買取引ノ取
  扱ヲ爲ス場所ト爲スコドヲ得ス
  何人ト雖定期取引ノ委託ノ代理、媒介又ハ取次ヲ營業ト爲スコトヲ得ス
  但シ仲買人農商務大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
  第十五條ノ二取引所ハ其ノ定款ヲ以テ會員若ハ仲買人トナルニ必要ナル
  條件ヲ定メ又ハ仲買人ノ員數ヲ制限スルコトヲ得
  第十一條ノ二ノ規定ハ會員若ハ仲買人カ前項ノ要件ヲ缺クニ至リタル場
  合又ハ之ヲ缺ク者ニシテ會員若ハ仲買人トナリタル者アルコトヲ發見シ
  タル場合ニ之ヲ準用ス
  第十五條ノ三仲買人ハ廢業後ト雖其ノ取引所ニ於ケル取引ノ結了及監督
  ノ目的ノ範圍內ニ於テハ取引結了後二週間ヲ經過スル迄仍廢業セサルモ
  ノト看做ス
  仲買人死亡シ若ハ除名セラレ又ハ其ノ免許カ取消サレ若ハ效力ヲ失ヒタ
  ル場合ニ於テハ其ノ取引所ニ於ケル取引ノ結了ニ至ル迄亦前項ニ同シ
  前項ノ規定ハ會員ノ死亡除名及脫退ノ場合ニ之ヲ準用ス
  前三項ノ場合ニ於テ會員又ハ仲買人ノ行爲ヲ爲ス者ナキトキハ取引所ハ
  農商務大臣ノ認可ヲ得テ代理人ヲ選定シ其ノ行爲ヲ爲サシムルコトヲ得
  第十六條ニ左ノ一項ヲ加フ
  取引所ノ仲買人トノ間ニ資金ノ供與、損益ノ分配其ノ他仲買人ノ營業ニ
  付特別ノ利害關係ヲ有スル者ハ其ノ取引所又ハ之ト同種ノ物件ヲ取引ス
  ル取引所ノ役員ト爲スコトヲ得ス
  第十六條ノ二役員前條第四項ニ該當スルニ至リタルトキ又ハ仲買人ノ免
  許ヲ受ケタルトキハ其ノ職ヲ失フ理事長又ハ理事他ノ取引所ノ理事長又
  ハ理事タル認可ヲ受ケタルトキ亦同シ
  農商務大臣ハ不正ノ手段ニ依リ役員タルノ認可ヲ受ケタル者若ハ前條ノ
  規定ニ違反シテ役員トナリタル者アルコトヲ發見シ又ハ役員ニシテ第十
  七條第二項ノ規定ニ違反スル者アリト認メタルトキハ之ヲ解職スルコト
  ヲ得
  第十六條ノ三農商務大臣ハ役員ノ職務ヲ行フ者ナキ場合ニ於テ必要ト認
  ムルトキハ假ニ役員ヲ選任スルコトヲ得
  第十七條役員又ハ取引所ノ使用人ハ何人ノ名ヲ以テスルヲ問ハス其ノ取
  引所ノ取引物件ニ付取引所ニ於ケル賣買取引ヲ爲シ又ハ其ノ委託ヲ爲ス
  コトヲ得ス
  役員又ハ取引所ノ使用人ハ其ノ取引所又ハ之ト同種ノ物件ヲ取引スル取
  引所ノ仲買人トノ間ニ資金ノ供與、損益ノ分配其ノ他仲買人ノ營業ニ付
  特別ノ利害關係ヲ有スルコトヲ得ス
  第二十二條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ直取引又ハ延取引ノ違約ヨリ生スル損害ノ賠償ニ付テハ定款ヲ以テ
  別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
  第二十五條仲買人ハ委託ヲ受ケタル取引所ノ定期取引ニ付取引所ニ於テ
  其ノ賣建、買建又ハ受渡ヲ爲サスシテ之ヲ爲シタルト同一又ハ類似ノ計
  算ヲ以テ委託者ニ對シ其ノ決濟ヲ爲スコトヲ得ス
  前項ノ規定ニ違反シタル仲買人ハ取引所之ヲ除名スヘシ
  第二十六條取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ公定相場ヲ決定シ及之ヲ公示
  スヘシ
  取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ各仲買人ノ賣買高ヲ公示スヘシ
  第二十六條ノ二取引所外ニ於テハ定期取引ト同一若ハ類似ノ取引ヲ目的
  トスル市場ヲ開キ又ハ其ノ市場ニ於テ取引ヲ爲スコトヲ得ス
  第三十一條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス但シ刑
  法ノ刑重キトキハ刑法ニ依ル
  一第十二條第一項ノ規定ニ違反シタル者
  二第十七條第一項ノ規定ニ違反シ又ハ同條第二項ノ特別ノ利害關係ヲ
  生スルコトヲ目的トスル行爲ヲ爲シタル者
  三第二十六條ノ二ノ規定ニ違反シタル者
  四仲買人ニシテ委託者ニ對シ其ノ委託ヲ受ケタル取引ニ關シ虛僞ノ通
  知ヲ爲シタル者
  第三十二條第十一條ノ四ノ規定ニ違反シタル者ハ三千圓以下ノ罰金ニ處
  ス
  第三十二條ノ二取引所ノ役員又ハ取引所ニ於ケル受渡物件ノ格付ヲ爲ス
  者其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ一年
  以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當
  ノ行爲ヲ爲ササルトキハ三年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
  前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ
  沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
  第三十二條ノ三左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓
  以下ノ罰金ニ處ス
  一取引所ノ役員又ハ取引所ニ於ケル受渡物件ノ格付ヲ爲ス者ニ賄賂ヲ
  交付、提供又ハ約束シタル者
  二取引所ニ於ケル相場ヲ僞リテ公示シタル者
  三公示若ハ頒布ノ目的ヲ以テ虛僞ノ相場ヲ記載シタル文書ヲ作製シタ
  ル者又ハ之ヲ頒布シタル者
  前項第一號ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除ス
  ルコトヲ得
  第三十二條ノ四取引所ニ於ケル相場ノ變動ヲ圖ル目的ヲ以テ虛僞ノ風說
  ヲ流布シ、僞計ヲ用ヒ又ハ暴行若ハ脅迫ヲ爲シタル者ハ二年以下ノ懲役
  又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
  第三十二條ノ五取引所外ニ於テ取引所ノ相場ニ依リ差金ノ授受ヲ目的ト
  スル行爲ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス但
  シ刑法第百八十六條ノ適用ヲ妨ケス
  第三十二條ノ六會員又ハ仲買人ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者雇人其ノ
  他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ第十一條ノ四若ハ第十二條第一項ノ規
  定ニ違反シ又ハ第三十一條第四號ノ規定ニ該當スル行爲ヲ爲シタルトキ
  ハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
  附則
  本法ハ大正三年九月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔農商務大臣山本達雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=36

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• 037・山本達雄

  ○農商務大臣(山本達雄君)　唯今議題ニ上リマシタ所ノ取引所法改正ノコトニ付
  キマシテハ多年ノ宿題デアリマシテ、世上ニ於テモ論議セラルヽコトガ尠カラヌノデアリマ
  ス、加之此案ハ帝國議會ニ於テモ數次問題ニ上リ、又第二十五議會ニ於テハ取引所
  改善ニ付テノ建議案モ提出サレタ如キ次第デアリマス、爾來政府ニ於テハ是ガ調査ニ
  從事致シマシテ、漸ク成案ヲ得マシテ此度此法案ヲ提出致シタ次第デゴザイマス、申ス
  マデモナク取引所法ノ善惡如何ハ、經濟上實際ニ於テ影響スルコトガ甚ダ 多イノデゴザ
  イマスルガ、故ニ漫リニ理想ニ走セ或ハ難キヲ强ユルガ如キコトハ最モ愼マナケレバナラヌ
  ノデゴザイマス、故ニ政府ハ旣住及現在ニ於ケル取引所ノ實情ヲ察シ、又其利弊ノ因
  テ生ズル所ノ原因ニ鑑ミマシテ、成ルベク情弊ヲ矯メテ、以テ眞正ナル機能ヲ發揮セシメン
  トスル趣意ニ外ナラヌノデゴザイマス、今其改正ノ要〓ヲ〓說致シマスルト、是マデ仲買
  人ノ選擇ニ於テ、ヨリ以上其範圍ヲ擴張シタルコト、又取引所ノ役員ノ義務ノ施行上
  成ベク嚴正ヲ保タシメントシタルコト、又取引ニ伴フ所ノ弊害ヲバ成ベク芟除シマシテ、
  取引所ヲシテ眞正ナル公定相場ノ作成ヲ保タシメント云フノニ外ナラヌノデゴザイマス、
  其他ノ條項ニ付テハ數箇條ノ改正ガアリマスガ、玆ニ其說明ハ止メテ置キマシテ、唯政
  府ニ於テ此改正ヲ致シマスルト云フコトノ大體ノ趣意ヲ申上ゲルニ止メテ置キマス、愼重
  審議御協贊アランコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=37

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• 038・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　日程第三ハ關聯セル議案デアリマスカラ一括シテ議題トス
  ルニ御異議アリマセヌカ
  (「異識ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=38

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• 039・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガゴザイマセヌカラ日程第三ハ一括シテ議題ト致シ
  マス
  第三取引所稅法改正法律案(政府提出)第一讀會
  取引所稅法改正法律案
  取引所稅法
  第一條取引所ニハ賣買手數料收入金額百分ノ十五ノ割合ニ依リ取引所營
  業稅ヲ課ス
  第二條取引所ハ每月ノ賣買手數料收入金額ヲ翌月十日迄ニ政府ニ申告ス
  ベシ但シ廢業ノトキハ直ニ之ヲ申告スヘシ
  前項ノ申告ヲ爲サス又ハ政府ニ於テ申告ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ハ
  其ノ課稅標準額ヲ決定ス
  第三條取引所營業稅ハ每月分ヲ翌月末日迄ニ納付スヘシ但シ廢業ノトキ
  ハ直ニ之ヲ納付スヘシ
  第四條會員組織ノ取引所ニハ取引所營業稅ヲ課セス
  第五條取引所ニ於ケル定期取引ニハ其ノ賣買各約定金高ニ對シ左ノ稅率
  ニ依リ取引稅ヲ課ス
  第一種地方債證券、社債券萬分ノ二
  第二種有價證券萬分ノ五
  第三種商品萬分ノ五
  賣買ヲ解約スルモ其ノ稅金ハ之ヲ免除セス
  第六條定期取引ニ於ケル轉賣及買戾ニハ取引稅ヲ課セス
  第七條國債證券ノ定期取引ニハ取引稅ヲ課セス
  第八條取引所ノ仲買人又ハ會員ハ每月分ノ定期取引ノ賣買各約定金高ヲ
  種別每ニ記載シタル申告書ヲ取引所ヲ經テ翌月十日迄ニ政府ニ提出スヘ
  シ
  取引所ハ前項ノ申告書ヲ調査シ其ノ當否ニ付意見ヲ付シ前項ノ期間內ニ
  之ヲ政府ニ提出スヘシ
  前項ノ規定ニ依リ取引所ヲシテ申告書ノ調査ヲ爲サシムル爲仲買人又ハ
  會員ハ第一項ノ期日前相當ノ期間內ニ申告書ヲ取引所ニ送付スヘシ
  申〓書ノ提出ナキトキ又ハ政府ニ於テ申告高ヲ不相當ト認ムルトキハ政
  府ハ其ノ課稅標準額ヲ決定ス
  第九條取引所ノ仲買人又ハ會員ハ每月分ノ稅金ヲ取引所ヲ經テ翌月末日
  迄ニ政府ニ納付スヘシ
  第十條政府ハ取引稅ノ納稅告知書ヲ取引所ニ交付シ取引所ハ之ヲ其ノ仲
  買人又ハ會員ニ送達スヘシ此ノ場合ニ於テハ取引所ニ交付シタル時ヲ以
  テ其ノ仲買人又ハ會員ニ送達アリタルモノト看做ス
  取引所ハ其ノ仲買人又ハ會員ノ納付スヘキ稅金ヲ取纏メ前條ノ納期內ニ
  之ヲ政府ニ送付スヘシ
  取引所前項ノ規定ニ依り取纏メタル稅金ヲ送付セサルトキハ國稅徵收法
  ニ依リ取引所ヨリ之ヲ徵收ス
  第十一條取引所ノ仲買人又ハ會員カ廢業脫退其ノ他ノ事由ニ因リ其ノ資
  格ヲ失ヒタルトキハ課稅標準額ノ申告及取引稅ノ納付ハ前三條ノ期限ニ
  拘ラス直ニ之ヲ爲スヘシ
  前項ノ規定ハ取引所ノ廢業シタル場合ニ於テ取引稅ニ付之ヲ準用ス
  第十二條取引所ハ其ノ仲買人又ハ會員ノ取引稅ノ納付ニ付保證ノ責ニ任
  ス
  取引所ノ仲買人又ハ會員納期內ニ取引稅ヲ納付セサルトキハ政府ハ取引
  所ヨリ之ヲ徵收スルコトヲ得
  第十三條取引所ハ賣買手數料及賣買取引ニ關スル事項ヲ帳簿ニ記載スヘ
  取引所ノ仲買人又ハ會員ハ賣買取引ニ關スル事項ヲ帳簿ニ記載スヘシ
  第十四條收稅官吏ハ取引所、取引所ノ仲買人又ハ會員ニ就キ其ノ賣買手
  數料又ハ賣買取引ニ關スル帳簿書類ヲ檢査シ又ハ監督上必要ノ處分ヲ爲
  スコトヲ得
  第十五條取引所第二條ノ申告ヲ怠リ又ハ詐リタルトキハ百圓以下ノ罰金
  又ハ科料ニ處ス因リテ脫稅シタルトキハ脫稅高三倍ニ相當スル罰金又ハ
  科料ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス
  第十六條取引所ノ仲買人又ハ會員第八條又ハ第十一條ノ申告ヲ怠リ又ハ
  詐リタルトキハ百圓以下ノ罰金又ハ十圓以上ノ科料ニ處ス因リテ脫稅シ
  タルトキハ脫稅高五倍ニ相當スル罰金ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ
  稅金二十圓未滿ナルトキハ罰金額ヲ百圓トス
  第十七條取引所法第二十五條ノ規定ニ違反シタル行爲アリタルトキハ取
  引稅ニ關シテハ取引所ニ於テ定期取引ヲ爲シテ脫稅シタルモノト看做シ
  其ノ稅金五倍ニ相當スル罰金ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵故ス但シ稅金二十
  圓未滿ナルトキハ罰金額ヲ百圓トス
  前項ノ場合ニ於テハ委託者ニ對シ約定金高トシテ計算シタル金額ヲ以テ
  賣買各約定金高トス第一項ノ稅金ニ關シテハ第八條乃至第十條及第十二
  條ノ規定ヲ適用セス
  第十八條取引所ノ仲買人又ハ會員ノ爲シタル第八條又ハ第十一條ノ申告
  不當ナル場合ニ於テ取引所之ヲ正當ナル申告トシテ政府ニ提出シタルト
  キハ百圓以下ノ罰金及ハ十圓以下ノ科料ニ處ス因リテ脫稅スルニ至ラシ
  メタルトキハ脫稅高五倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ稅金二十圓未滿ナル
  トキハ罰金額ヲ百圓トス
  第十九條取引所又ハ取引所ノ仲買人若ハ會員左ノ各號ノ一ニ該當スルト
  キハ百圓以下ノ罰金又ハ十圓以上ノ科料ニ處ス
  一取引所第八條又ハ第十一條ノ場合ニ於テ申告書ニ意見ヲ附セス又ハ
  申告書ノ提出ヲ怠リタルトキ
  二賣買手數料又ハ賣買取引ニ關スル帳簿ヲ調製セス、其ノ記載ヲ怠リ
  若ハ詐リタルトキ又ハ帳簿書類ヲ隱匿シタルトキ
  三收稅官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ其ノ
  職務ノ執行ヲ拒ミ、之ヲ妨ケ若ハ忌避シタルトキ
  第二十條本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條
  第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條
  ノ例ヲ用井ス
  第二十一條取引所ノ仲買人又ハ會員ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ
  他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法ヲ犯シタルトキハ其ノ仲買人又ハ
  會員ヲ處罰ス
  第二十二條北海道府縣、市町村及北海道沖繩縣ノ區ハ取引所營業稅ニ對
  シ本稅百分ノ十以內ノ附加稅ヲ課スルノ外取引所ノ業務ニ對シ租稅其ノ
  他ノ公課ヲ課スルコトヲ得ス
  附則
  本法ハ大正三年九月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第二十二條ノ規定ハ大正四年
  四月一日ヨリ施行ス
  本法施行前ノ賣買取引ニ關シテハ仍從前ノ規定ニ依リ取引所稅ヲ徵收ス
  本法施行前ニ爲シタル賣買取引ニ係ル賣買手數料ニシテ本法施行後ニ收入
  スルモノハ取引所營業稅ノ課稅標準額ニ算入セス
  明治三十九年法律第十一一號ハ之ヲ廢止ス
  〔大藏大臣男爵高橋是〓君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=39

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• 040・高橋是清

  ○大藏大臣(男爵高橋是〓君)　取引所稅法改正ノ說明ヲ致シマス、是ハ前ノ議題
  ニナリマシタ取引所法ノ改正ニ伴ヒマシテ、取引所稅ノ賦課徵收ノ方法ヲ改正シテ、併
  セテ其稅率ヲ改正スルノ必要ヲ認メマシテ本案ヲ提出シタル次第デゴザイマス、本案改
  正ノ要旨ハ取引所稅ヲ營業稅ト取引稅ト此二ニ區別ヲ致シマシタ、營業稅ハ取引所
  ノ營業ニ對シ手數料收入金額ヲ煙凖ト致シマシテ課稅ヲスル、又取引稅ハ取引所ニ
  於ケル定期取引ノ賣買約定高ヲ標準ト致シテ、取引所ノ仲買人或ハ會員ヨリ之ヲ徵
  收スルコトヽ致シマシタ、而シテ取引稅ノ稅率ハ、從來万分ノ十ニテアリマシタノヲ輕減
  致シテ、万分ノ二乃至五ト致シ、其ノ他脫稅ノ取締ニ關スル制裁ノ規定ヲ新ニ設ケマ
  シテ、以テ此取引所法ノ改正ト相俟ッテ取引所ノ改善ヲ期スルコトヲ目的ト致シタノデゴ
  ザイマス、速カニ御協賛アランコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=40

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• 041・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
  右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=41

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• 042・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　第一第三ノ兩案ハ、議長指名十八名ノ同一特別委員ニ付託セ
  ラレンコトヲ希望致シマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=42

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• 043・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　日程ノ第二第四ハ卽チ今中村君ノ動議ニ御異議ハアリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=43

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• 044・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議ノ通リ決シマス日程第五、耕地整理法
  中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス
  第五耕地整理法中改正法律案(政府提出)第一讀會
  耕地整理法中左ノ通改正ス
  第一條中「區劃形質ノ變面ム」ノ下ニ「湖海ノ埋立干拓ヲ加フ
  第二條ノ二登記シタル地上權、永小作權、土地賃借權ヲ有スル者又ハ國有
  林野法若ハ官有地取扱規則ニ依ル豫約開墾者ハ土地ノ所有者及賃貸人ノ
  同意ヲ得タルトキハ其ノ土地ニ付第三條ノ規定ニ依ル整理施行者又ハ耕
  地整理組合ノ組合員ト爲ルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テハ土地ノ所有者及賃貸人ハ其ノ土地ニ付テハ整理施行
  者又ハ組合員タルコトヲ得ス
  第二條ノ三官有地取扱規則ニ依リ埋立又ハ干拓ノ許可ヲ受ケタル者ハ本
  法ノ適用ニ付テハ之ヲ土地ノ所有者ト看做ス
  耕地整理組合ノ組合員ト爲リ又ハ爲ルヘキ地上權者、永小作權者、賃借權
  者又ハ豫約開墾者ハ第三十四條、第四十七條乃至第五十條、第五十五條、第
  五十六條及第五十九條ノ適用ニ付テハ之ヲ土地ノ所有者ト看做ス
  第三條中「關係人ノ同意書」ノ下ニ「竝第二條ノ二ノ場合ニ於ケル土地ノ所有
  者及賃貸人ノ同意書」ヲ加フ
  第五條ニ左ノ一項ヲ加フ
  第二條ノ二第一項ノ規定ニ依リ整理施行者又ハ組合員ト爲リタル者ノ耕
  地整理ニ關スル權利義務ハ其ノ地上權、永小作權、賃借權又ハ國有林野法
  若ハ官有地取扱規則ニ依ル權利ト共ニ其ノ承繼人ニ移轉シ地上權、永小
  作權又ハ賃借權消滅シタルトキハ土地ノ所有者又ハ賃貸人ニ移轉ス
  第七條中「地方長官」ヲ「主務大臣、地方長官」ニ改ム
  第九條但書ヲ左ノ如ク改ム
  但シ登記所又ハ土地臺帳所管廳ハ必要アリト認ムルトキハ耕地整理組合
  ノ組合長、組合副長又ハ臨時代理者以外ノ者ニ付其ノ資格ニ關スル市町
  村長ノ證明書ヲ提出セシムルコトヲ得
  第十二條中「適用セス」ノ下ニ「埋立地又ハ干拓地ニ付亦同シ」ヲ加フ
  第十三條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ第十一條第二項ニ依リ國有地ニ編入シタル土地ノ面積カ同條第一項
  ニ依リ交付シタル土地ノ面積ヨリ多キ場合ニ於テハ現地價ニ依リ算出シ
  タル地租ノ平均額ヲ其ノ面積ノ差額ニ乘シタル金額ヲ地租ノ合計額ヨリ
  控除シタル額ヲ以テ地租ノ合計額ト看做ス
  同條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加ヘ第四項中「前二項」ヲ「第一項、第二項及第四
  項」ニ改ム
  前二項ノ規定ハ國有ノ森林、原野若ハ荒蕪地ヲ第一類地ニ開拓シタル土
  地、埋立地又ハ干拓地ニ付テハ之ヲ適用セス
  第十四條耕地整理ヲ施行スルニ當リ其ノ地區內ノ民有土地總面積ノ五分
  ノ一以上ニ當ル土地ニ付開墾又ハ地目變換ヲ爲シタル場合ニ於テハ工事
  完了ノトキ開墾又ハ變換シタル土地ニ對シ從前ノ地域ニ依リ其ノ地價ヲ
  修正シ修正地價總額ト之ニ對スル原地價總額トノ差額ノ平均額ヲ五分ノ
  一ヲ超過スル面積ニ乘シタル額ヲ原地價總額ニ加ヘタルモノヲ以テ前條
  第一項ノ現地價トス
  前項ノ場合ニ於テハ開墾シタル土地ニ付テハ工事著手ノ年ヨリ二十年以
  上三十年以内、變渙シタル土地ニ付テハ工事完了ノ年ヨリ六年ノ耕地整理
  地價据置年期ヲ許可シ年期明ノ年ヨリ修正地價ニ依リ其ノ地租ヲ徵收ス
  但シ開墾シタル土地ニシテ年期明ニ至リシ工事了又ハ地味成熟セサル
  トキハ更ニ工事完了迄又ハ二十年以內ノ年期延長ヲ許可スルコトヲ得
  前二項ノ場合ニ於テ開墾ニ等シキ勞費ヲ要スル地目變換ハ之ヲ開墾ト看
  做ス
  地租ヲ課セサル土地ヲ整理施行地區ニ編入シ地租ヲ課スヘキ土地ト爲シ
  タルトキハ第十一條第一項ニ依リ交付シタル土地ヲ除クノ外工事完了ノ
  トキ從前ノ地域ニ依リ其ノ地價ヲ設定シ前條第一項ノ現地價トス
  第二項ノ規定ハ地目變換ヲ爲シタル場合ニ於テ修正地價ニ依リ算出シタ
  ル地租額カ原地價ニ依リ算出シタル地租額ヨリ少キ土地ニ付テハ之ヲ適
  用セス
  第十四條ノ二耕地整理ノ施行ニ依リ其ノ地區內ノ國有ノ森林、原野若ハ
  荒蕪地ヲ開拓シテ第一類地ト爲シタルトキ又ハ國有ノ水面ヲ埋立テ若ハ
  干拓シテ民有地ト爲シタルトキハ埋立地又ハ干拓地ニ付テハ五十年以
  內、其ノ他ノ土地ニ付テハ十年以內ノ耕地整理新開免租年期ヲ許可ス但
  シ年期明ニ至リ地味成熟セサルトキハ更ニ二十年以內ノ年期延長ヲ許可
  スルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テハ年期明ニ至リ其ノ地價ヲ設定シ其ノ年ヨリ地租ヲ徵
  收ス
  第十五條中「又ハ地目ヲ變換シ地價ノ修正アリタル土地」ヲ削リ第一號ニ左
  ノ但書ヲ加フ
  但シ工事完了ノトキニ於テ地價ノ修正又ハ設定當時ノ現況ヨリ第一類地
  ノ地目ニ變更シタル場合ニ於テハ開墾又ハ地目變換ヲ爲シタルモノト看
  做シ第十四條第一項ノ規定ヲ準用ス
  第十六條中「第十四條第一一項ニ該當スル土地」ヲ「第十四條ニ依リ年期ヲ許可
  シタル土地」ニ、「第十四條第二項ニ定ムル期間中」ヲ「第十四條ニ依ル年期
  中」ニ改ム
  第二十四條ノ二第十八條乃至第二十一條及前二條ノ規定ハ地上權者、永
  小作權者又ハ賃借權者ニシテ整理施行者又ハ組合員ト爲リタル者ニ之ヲ
  適用セス第二條ノ二第一項ノ規定ニ依リ同意ヲ爲シタル者ニ付亦同シ
  第三十條中「告示スヘシ」ヲ「告示シ直ニ其ノ旨ヲ管轄登記所ニ通知スヘシ」ニ
  改ム
  第三十三條從前ノ土地ノ全部又ハ一部ニ付既登記ノ所有權以外ノ權利又
  ハ處分ノ制限アルトキハ之ニ對スル換地ノ交付ハ其ノ權利又ハ處分ノ制
  限ノ目的タル土地又ハ其ノ部分ヲ指定シテ之ヲ爲スヘシ
  第四十條ノ二耕地整理施行ノ爲土地ヲ分筆スルノ必要アル場合ニ於テハ
  組合ハ其ノ所有者ニ代リ之ニ關スル手續ヲ爲スコトヲ得
  第四十三條ニ左ノ一項ヲ加フ
  登記シタル地上權又ハ永小作權ノ目的タル御料地又ハ國有地ニ付主務官
  廳ノ認許ヲ得タルトキハ其ノ地上權者又ハ永小作權者ヲ組合員ト爲シ其
  ノ土地ヲ組合ノ地區ニ編入スルコトヲ得但シ地上權又ハ永小作權ノ殘存
  期間カ耕地整理組合設立ノ認可申請ノ日ヨリ二十年未滿ナルモノニ付テ
  ハ此ノ限ニ在ラス
  第二條ノ二第二項及第五條第二項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ地上權者又
  ハ永小作權者カ組合員ト爲リタル場合ニ之ヲ準用ス
  第四十七條第一項ヲ左ノ如ク改ム
  土地ノ共有者ハ耕地整理ニ關スル一切ノ行爲ヲ爲サシムル爲其ノ一人ヲ
  以テ代表者ト爲シ之ヲ組合ニ通知スヘシ
  第七十二條中「解散、合併又ハ地區ノ變更」ヲ「解散又ハ合併」改改
  第七十九條第一項中「組合費又ハ」ヲ「組合費、ニ改メ「金錢」ノ下ニ「又ハ延滯利
  息若ハ過怠金」ヲ加フ
  第八十八條第一項中「又ハ」ヲ「若ハ」ニ改メ「不服アル者」ノ下ニ「又ハ地上權者、
  永小作權者、賃借權者若ハ豫約開墾者カ整理施行者若ハ組合員ト爲リタル場
  合ニ於テ第三十條第一項、第二項ノ處分ニ對シ不服アル土地ノ所有者」ヲ加
  フ
  第九十一條ノ二耕地整理組合ノ組合長、組合副長、臨時代理者、評議員又ハ
  組合會議員其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルト
  キハ二年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サ
  サルトキハ五年以下ノ懲役ニ處ス
  前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ
  沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
  第九十一條ノ三前條第一項ニ揭クル者ニ對シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束
  シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
  前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコト
  ヲ得
  第九十五條中「第十七條、」ノ下ニ「第二十五條、ヲ、「第四十條、」ノ下ニ「第七十九
  條、」ヲ加フ
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=44

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• 045・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　山本農商務大臣
  〔農商務大臣山本達雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=45

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• 046・山本達雄

  ○農商務大臣(山本達雄君)　耕地整理法中ノ改正ニ付キマシテ大體ノ說明ヲ致シ
  マスガ、此耕地整理法ハ明治三十三年ノ一月ヨリ施行ニ相成リマシテ、今日ニ至ルマ
  デ十四箇年ノ年月ヲ經テ居ルノデゴザイマスガ、其間ニ於テ追〓此整理ガ進ミマシテ、今
  日ニ至リマシテハ約五千九百箇所ノ場所ヲ認可致シマシテ、又其面積ニ於テハ三十三
  万町步餘ノ認可ヲ致シマシテ、而シテ此モノハ過半完了ヲ致シマシタガ、尙ホ其間ニハ
  進行シツヽアルモノモアルノデゴザリマス、就キマシテハマダ此上ニ充分ニ此耕地整理ヲ進
  メナケレバ相成ラヌ情況デゴザイマスルガ、ソレニ付キマシテ現今ノ法ヲ少シク改正シタイト
  云フ考デゴザリマシテ、其要〓ノ一二ヲ申上ゲマスト、第一ハ是マデノ耕地整理法デハ海
  面若クハ湖水ナドノ埋立テ、若クハ其開拓ニ付キマシテハ許シテ居ラヌノデゴザリマスル、
  併ナガラ斯ノ如キコトハ耕地整理ノ目的ヲ達スル上ニ付テハ最モ必要ト思ヒマスル、故ニ
  之レヲ耕地整理法ニ繰入レタイト云フ〓デゴザリマス、又第二ハ耕地整理法ニ依リマス
  ト、土地ノ所有者ニアラザレバ耕地整理ノ施行者若クハ其組合員タルコトヲ得ナイノデ
  ゴザリマス、併ナガラ地上權者又ハ永小作權者若クハ土地賃借權者ノ如キモノハ土地
  所有者ト殆ド同ジ如キ利害ヲ有ッテ居ルノデゴザリマス、斯ノ如キモノハヤハリ土地所有
  者又ハ賃貸權者ノ承諾ヲ得レバヤハリ耕地整理ノ施行者、若クハ其組合員トナルコトヲ
  許シタイノデゴザリマス、第三ハ耕地整理法ニ依リマスト"開墾若クハ地目變換ノ如キモ
  ノニ於キマシテ地租免稅ノ特權ガアリマスガ、之ヲ地租條例ニ依リマスル場合ト比較ス
  ルト其間ニ付テ、免稅ノ特權ニ於テ非常ナ懸隔ガアルノデゴザリマスルカラシテ、之ヲバ改
  正シマシテヤハリ地租條列ト稍、〓均衡ヲ保ツコトニ致シタイト云フノデゴザリマス、此三〓
  ガ改正ノ必要アル主ナル理由デゴザリマス、其他是マデ本法ヲ施行シタル上ニ於テ經驗
  シタル取扱上ノ冗長ナル〓ヲ省キ、或ハ簡便ナ法ヲ置イテ之ヲ補足スル〓モ段々アルノ
  デゴザリマスルガ、是ハ玆ニ說明ヲ省クコトニ致シマス、何卒御協賛アランコトヲ希望致
  シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=46

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• 047・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　日程第六、右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題
  ト致シマス
  第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

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• 048・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　唯今ノハ日程ノ第五ダケデアリマスガ、第七モ一括シタモノデゴザリ
  マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=48

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• 049・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　今第五ダケデス

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• 050・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ希望致シマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=50

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• 051・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「贊成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 052・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ナイト認メマスカラ其通リ決シマス-日程第七、
  政府提出地租條例中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-髙橋大藏大臣
  第七地租條例中改正法津案(政府提出)第一讀會
  地租條例中改正法律案
  地租條例中左ノ通改正ス
  第四條第六號中「軌道用地」ヲ「軌道用地、運河用地」ニ、第十六條中「埋立」ヲ「埋
  立テ又ハ干拓シ」ニ改ム
  〔大藏大臣男爵高橋是〓君登壇〕

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• 053・高橋是清

  ○大藏大臣(男爵高橋是〓君)　本案ハ運河用地ノ地租ヲ免ズルノ趣意デゴザイマシ
  テ、卽チ運河用地ハ鐵道用地、軌道用地ナドト其性質ヲ同ジウスルモノデゴザリマスル
  ガ故ニ、是ニ對シテ其地租ヲ免除スルヲ相當ト認メマシテ、玆ニ地租條例ノ免租規定中
  ニ之ヲ追加セントスルノデゴザリマス、又先刻農商務大臣ヨリ說明ニナリマシタル耕地整
  理法ノ改正ニ伴ヒマシテ、用語ノ改正ヲ爲ス必要ヲ認メマシタノデ、本案ヲ提出シタル
  次第デゴザイマス、併セテ速カニ御協賛アランコトヲ希望致シマス

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• 054・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　日程第八、右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉ヲ議題
  ニ致シマス
  第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=54

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• 055・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ日程第五ト同一ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ希望致シ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=55

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• 056・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議、日程第五耕地整理法中改正法律案ノ同
  一委員ニ付託スルニ御異議ハアリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=56

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• 057・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ナイト認メマス、其通リ決シマス-日程第九、肺
  結核療養所ノ設置及國庫補助ニ關スル法律案政府提出第一議會ヲ開キマス-水
  野內務次官
  第九肺結核療養所ノ設置及國庫補助ニ關スル法律案第一讀會
  (政府提出)
  肺結核療養所ノ設置及國庫補助ニ關スル法律案
  第一條主務大臣ハ肺結核豫防上必要アリト認ムルトキハ肺結核患者ニシ
  テ療養ノ途ナキ者ヲ收容セシムル爲人口三十万以上ノ市ニ對シ療養所ノ
  設置ヲ命スルコトヲ得
  國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前項療養所ニ關シ市ノ支出スル經費ノ六分
  ノ一乃至二分ノ一ヲ補助ス
  第二條公共團體又ハ公益法人ニシテ肺結核療養所ヲ經營スル者ニ對シテ
  ハ國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前條第二項ノ範圍內ニ於テ其ノ經費ヲ補
  助スルコトヲ得
  第三條肺結核療養所ヲ設置シタル公共團體ニシテ本法ノ補助ヲ受ケタル
  者ハ他ノ公共團體ノ委託アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ療養ノ途ナキ
  肺結核患者ヲ其ノ療養所ニ收容スヘシ
  附則
  本法ハ大正四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  (政府委員法學博士水野鍊太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=57

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• 058・水野錬太郎

  ○政府委員(法學博士水野鍊太郞君)　本案提出ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマス、肺結
  核病ハ逐年著シク其病勢ヲ加ヘマシテ、今ヤ國家衞生上竝ニ經濟上重要ナル問題ニ
  ナッテ居ルノデゴザリマス、而シテ政府ニ於キマシテモ是ガ取締リニ關シマシテハ、時々訓
  令ヲ發シ公衆衞生ノ上是ガ危害ヲ防グコトニ努メテ居リマスルシ、又喀啖ノ取締等ニ
  付キマシテハ、各種ノ省令ヲ發シテ居リマスルガ、未ダ之ヲ以テ足レリトシテ居ラナイノデ
  ゴザリマス、而シテ殊ニ此病氣ノ多イノハ御承知ノ如ク大都市デアリマスルカラシテ、大
  都市ニ對シマシテ肺結核患者ニシテ療養ノ途ヲ有シナイ者ヲ收容スベキ療養所ノ設置
  ヲ命ズル方法ヲ設ケマシテ、而シテ其費用ハ國庫ヨリ之ヲ補助スルコトニシタイト考ヘテ
  居リマス、尙公共團體若クハ公益法人ニシテ自ラ進ンデ之ガ療養所ノ經營ニ任ゼント
  スルモノガアリマシタ場合ニハ、是亦國庫ヨリ補助ヲ爲シ得ル途ヲ開イテ、以テ肺結核豫
  防ニ關スル施設ヲ完全ニシタイ考ナノデアリマス、此趣旨ヲ以テ此法案ヲ提出シタ次第
  デゴザイマス、何卒御審査ノ上御協賛アランコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=58

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• 059・菊池武徳

  ○菊池武德君　チヨット質問シタイ、是ハ肺結核患者ヲ隔離スルト云フノガ目的デアリ
  マスカ、療養ノ途ノナイ患者ヲ救助スルノガ目的デアリマスカ、ソレヲ伺ヒタイ
  〔政府委員法學博士水野錬太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=59

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• 060・水野錬太郎

  ○政府委員(法學博士水野錬太郞君)　御答致シマスルガ、是ハ主トシテ肺結核患
  者ニシテ療養ノ途ノナイモノヲ收容スル趣旨デアリマス、而シテ之ニ依リマシテ一面ニ於
  キマシテハ肺結核患者ノ傳染ヲ防グコトガ出來マスルシ、一面ニ於キマシテハ肺結核患
  者ノ療養ノ途ナキモノヲ救濟スルコトガ出來マス、此趣旨ヲ以チマシテ第一條ヲ規定シ
  テアル次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=60

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• 061・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　日程第十、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題
  ト致シマス
  第十右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=61

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• 062・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=62

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• 063・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=63

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• 064・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議ノ通リ決定致シマス、日程第十一、郡制廢
  止法律案第一讀會ノ續キヲ開キマス、委員長菅原通敬君
  郡制廢止法律案(菊池武德君提第一讀會ノ續(二人の人生は
  第十一出(昭和三
  〔菅原傳君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=64

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• 065・菅原傳

  ○菅原傳君　郡制廢止法律案委員會ノ經過ト結果ヲ御報告致シマス、郡制廢止
  法律案ハ諸君ノ御承知ノ通リ曾テ數年前本議場ニ於テ十分ニ論議セラレ、院議ハ可
  決ト相成ッテ居リマスル、今囘付託セラレタル吾〓特別委員會ニ於キマシテモ、多數ヲ以
  テ可決致シマシタ、申スマデモナク本案ハ郡役所ノ廢止或ハ郡長ノ廢止ト云フ案デナイ
  ノデアリマス、單ニ郡制ヲ廢止スルト云フノ案デアリマスル、其主ナル理由ハ事務ヲ簡便
  ニスルト經費ヲ節約スルト此二〓デアリマスル、現在ノ地方制度ハ府縣制郡制市町村
  制ノ三階級ニナッテ居リマスルガ、其中間ニアルトコロノ郡制ヲ廢スルコトハ事務ヲ簡
  便ニスル所以デアル元來郡ナルモノハ其沿革上ヨリ見マシテモ、自治制ノ要素ニ乏シク
  從ッテ此制度ヲ設ケラレマシタ以來、效果ノ見ルベキモノモ多カラザル譯デアリマス、故ニ
  此郡ニ於テ今日マデ經營シタトコロノ事業ヲ、或ハ町村ニ移シ或ハ之ヲ縣ニ於テ施設ス
  ルニ於テ差支ガナイノデアル、却テ其宜シキヲ得ルノデアルト云フノハ事務ヲ簡便ニスル
  ト云フガ理由ノ要旨デアリマス、又經營ノ點カラ申シマシテモ自ラ郡制ヲ廢シマスレバ郡
  會ナリ郡參事會ノ廢セラルヽ次第デアリマスルカラ、相當經費ヲ節約スルコトガ出來ルノ
  デアル、又郡制アルガ故ニ人情ノ常トシテ、或ハ營造物ヲ起スナリ又ハ新設又ハ新事業
  ヲ企ツルト云フガ如キ、、從ッテ經費ノ增加ヲ來スト云フコトモ自然陷ルトコロノ人情ノ弱
  〓トモ云フベキ弊デアルノデアリマス、經費ヲ增加スルト云フコトハ、是等ノ如キモノハ
  郡制ヲ廢シマスレバ自然ニ此弊ヲ矯正シテ經費ヲ節約スルコトヲ得ルト云フノデアリマ
  ス、而シテ此郡制ヲ廢シタ後ノ後始末ハドウデアラウカト云フコトニ付テ、多少心配ノ點
  モアルノデアリマスルガ、此廢止施行ノ期日等ニ付テハ勅令ヲ以テ定メルノデアリマスル
  ガ、郡ノ此財產ナリ營造物或ハ權利義務等ニ付キマシテハ、其關係アルトコロノ府縣
  參事會ノ意見ヲ徴シテ內務大臣ニ於テ處分致シマシタナラバ、別ニ困難モ無カラウト云
  フ是等ガ此原案贊成ノ大ナル趣意デアリマス、之ニ反對スルトコロノ意見ハ、縱令郡
  制ヲ廢シタトコロガ之ニ代ルニ幾多ノ組合ヲ起サンケレバナラヌ、多數ノ組合ヲ設クル以
  上ハヤハリ事務ノ簡捷ト云フ譯ニハイカヌノデアル、却テ複雜ニナリハセヌカ、從ッテ經費
  ノ點ニ於テモ節約スルト云フコトハ實際上如何アランカ、郡役所マデモ廢スルト云フコト
  ニナラバ免モ角、實際上事務ノ〓カラ見テモ此郡制ヲ廢スルト云フコトハ反對デアルト
  云フ意味デアリマス、法律案ニ對シ政府ハ同意ヲ表シタ次第デアリマス、以上御報告
  致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=65

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• 066・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　山田珠一君
  〔山田珠一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=66

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• 067・山田珠一

  ○山田珠一君　私ハ委員長ノ報告、卽チ郡制廢止案ニ反對致シマシテ郡制ヲ廢スル
  ノ必要ハナイト云フ意見ヲ持ツ者デゴザイマス、此郡制ヲ廢止スルト云フコトハ地方制
  度ノ一部ヲ改廢シテ、地方自治權ノ一部ヲ取去ルノデゴザイマス、其關係スルトコロハ
  頗ル重大ナルモノデアリマス、併ナガラ今日ニ於テ制度ノ改廢ヲ論ズレバ單リ此郡制ノ
  ミニ止マラズシテ、尙他ニ幾多ノ攻究スベキ問題ガアルコトヲ見ルデゴザイマス、例ヘバ郡
  制ニ密接ノ關係アルトコロノ郡役所ノ廢止、若クハ府縣廢合ノ問題、其他制度ノ改
  廢ニ付テ攻究スベキ問題ハ數ヘ來ッテ見マスレバ、殆ド枚舉ニ遑アラヌモノガアルト考ヘル
  ノデアリマス、デ是等ノ各種ノ問題ヲ擧ゲテ一ツノ大ナル堝ノ中ニ入レテ、之ヲ改鑄ス
  ル-之ヲ鑄造シ變ヘルト云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、此郡制廢止ノ問題モ或ハ攻
  究スベキ價値ガアルカモ知レヌト考ヘル、併ナガラ制度ノ根本ニ向ッテ改廢ヲ議スルコトハ
  ナクシテ、單ニ此郡制ノミニ付テ改廢ヲ議スルト云フコトハ畢竟スルニ姑息ノ事タルコト
  ヲ免レヌノデゴサイマス、デ私ハ此〓ニ於テ郡制廢止案ニハ反對ヲ致シマスル第一ノ理由
  トスルノデゴザイマス、最モ此郡制ヲ廢止スルガタメニ、唯今委員長ヨリ報告サレタ如ク經
  費節減ノ目的ヲ達スルコトガ出來マスルナラバ、或ハ攻究スルノ價値ガアルカモ知レヌノ
  デゴザイマス、併ナガラ吾〓ノ見ルトコロデハ此經費節減ノ〓ヨリ觀察スルニ、郡制廢
  止ナルモノハ殆ド一顧ノ價値ナキモノト信ズルノデアリマス(「ノウ〓〓」)若シ郡制ヲ廢止
  シ併セテ郡役所ヲ廢スルト云フコトニナリマスレバ、經費ヲ節減スルコト頗ル多額ニ上ル
  デアラウト考ヘル、併ナガラ今日ニ於テ郡役所ヲ廢止スルト云フコトハ、怨ラク出來難
  イコトデアラウト考ヘルノデゴザイマス、又此唯今議セラルヽトコロノ郡制廢止案ナルモノニ
  ハ、郡役所廢止ナルモノハ含マレテ居ラヌト云フコトハ委員長ヨリモ報告サレタトコロデア
  ルノデコザイマス、又政府ニ於テモ郡制ノ廢止ニハ同意スルケレドモ郡役所ノ廢止ニハ同
  意セヌト云フコトヲ言ハレテ居ルノデアリマス、ツマリ爰ニ議セラレテ居ルトコロノ此郡制
  廢止案ナルモノニハ、郡役所廢止ト云フモノハ聯關シテ居ラヌト云フトコロカラ見マスレ
  バ郡制ヲ廢止スルコトニ於テ多額ノ經費ヲ節減スルコトハ出來ヌノデゴザイマス、政府
  委員ハ此問題ニ付テ吾ミ委員ノ質問ニ答ヘテ曰ク、郡制ヲ廢止スルノ結果トシテ會議
  費若クハ事務費ノ上ニ於テ五十五万圓位ノ節減ニナルカモ知レヌ、併シ郡制ヲ廢止シ
  テ現ニ郡ノ經營事業ヲ縣若クハ町村組合ニ移スナラバ、是ガタメニ會議ヲ要シ、若クハ
  事務費ヲ要スルト云フコトガアルカラシテ、此五十五万圓ナルモノモ總テ節減スルト云フ
  コトハ出來ヌデアラウト云フコトヲ答辯シテ居ルノデアリマス、尙後ノ委員會ニ至テ政府
  委員ハ會議費事務費ノ外ニ於テ、郡制ヲ廢止スルナラバ郡ニ與ヘテアルトコロノ補助費
  或ハ財產費豫備費、其他ノモノヲ併セテ多少ノ節減ニナルデアラウ、云フコトヲ辯ゼラレ
  テ居リマスケレドモ煎ジ詰メテ見レバツマリ此郡制廢止ノタメニ節減スルトコロノモノハ
  僅々ノ額ニ過ギヌノデゴザイマス若シ是ガタメニ町村組合デモ澤山起スト云フヤウナコト
  ニナッタナラバ、或ハ現在郡制ノタメニ使ッテ居ルトコロノ金ハ、殆ド皆町村組合ノ費用
  ニ使ハナケレバナラヌト云フヤウナコトニモナルカモ知レヌ、此〓ヨリ考ヘマスレバ郡制廢止
  ノタメニ經費節減ナルモノハ殆ド期シ得ラレヌト云フ結果ニナルダラウト吾〓ハ信ズルノデ
  アリマス、デ更ニ郡制廢止ノ論據トスルトコロハ唯今委員長ヨリ報告サレタ如ク、是ガタ
  メニ事務ノ簡便ヲ見ルデアラウト云フコトヲ言ハレタノデゴザイマス、更ニ廢止論者ハ其
  內容ノミ說明サレテ曰ク、郡制ナルモノハ元ト郡ニ於テ自治ノ要素ガナイ、從ッテ此郡
  制施行以來事業ノ見ルベキモノナク其發達ノ著シイモノガナイ、詰リ郡制ナルモノハ不
  要ナモノデアルト云フコトヲ言ハレテ居ッタノデゴザイマス(「ヒヤ〓〓」)政府ヨリ委員會ニ
  對シテ二十二議會ニ政府案トシテ提出サレタ時分ニ、其廢止ノ理由ヲ說明サレマシタ
  〓要ナルモノヲ、菎蒻板トシテ吾ミ委員ニ迴サレタノデゴザイマスルガ、其廢止案ノ〓要中
  ニモヤハリ同樣ノ趣旨ヲ現ハシテ居ルノデゴザイマス、卽チ郡制施行以來ニ郡事業ハ見
  ルベキモノガ少ナイ、其發達ハ著シクナイ、斯ウ云フコトヲ言ハレテ居ルノデゴザイマスガ、
  果シテ此郡制施行以來郡ノ事業ハ見ルベキモノナキヤ否ヤ、郡制ハ果シテ發達ノ著シキ
  モノガナキヤ否ヤ、是ハ攻究スベキ問題デアラウト思フノデゴザイマス、詰ルトコロガ此郡
  制ノ發達ノ著シキモノガアルヤ否ヤ、事業ノ見ルベキモノガ無キヤ否ヤ、之ヲ論ズルニハ單
  ニ之ヲ机上ノ空論ニ於テ決スルコトハ出來ヌノデアリマス、デ直ニ郡現在ニ於テ使用シテ
  居ルトコロノ經費、又郡ノ現在ニ於テ經營シテ居ルトコロノ事業其モノノ盛衰如何ヲ見
  テ、是ハ決スベキ問題デアラウト考ヘルノデアリマス、然ルトコロガ政府ヨリ委員會ニ示サ
  レタ所ノ郡費ノ統計表、郡ノ經營シテ居ル所ノ事業ノ一覽表ナルモノニ付テ見ルニ吾
  吾ハ此郡制施行以來頗ル郡ノ自治ノ發達ノ見ルベキモノアリ、郡ノ事業ノ歲ヲ逐フテ
  進歩シツヽアルコトヲ見ルコトガ出來タノデゴザイマス、卽チ委員長モ先刻述ベマシタ通リ
  ニ、此郡制ノ問題ハ二十二議會ニ於テ盛ンニ審議討論サレタノデゴザイマス、此際ニ於
  テ政府ハ郡制ノ施行以來事業ノ見ルベキモノナキヲ云ヒ、發達ノ著シカラヌコトヲ頻ニ
  主張サレタノデアリマスガ、之ニ對シテ郡制ノ廢スベカラザルコトヲ主張シタル論者ハ、事
  實ニ付テ郡費ノ歲ヲ逐ウテ增加シタコト郡ノ事業ノ段々ト進歩シテ居ル、卽チ學校ナ
  リ勸業ナリ其他ノ事業ガ著シク歲ヲ逐ウテ進デ居ルト云フコトヲ現ニ二十二議會、、卽チ
  四十年ノ頃ニ於テ既ニ主張シテ居ッタノデゴザイマス、爾來七年、此間ニ於テ郡費ハ如何
  ナル有樣ヲ以テ增加シタ、事業ハ如何ニナッテ居ルカ之ヲ此處ニ〓ゲマスレバ恐ラク此問
  題ニ付テ深ク注意ヲ拂ハヌ所ノ諸君ハ、其進步ノ著大ナルコトニ驚カレルデアラウ、卽チ
  明治四十年ニ於テ郡費ノ總額ハ六百四万八千ト云フ額デアッタノガ、今日ハ一千十六
  万圓ニ增加シテ居ルノデアリマス、更ニ此〓育土木勸業等ニ付テ其增加ノ模樣ヲ茲ニ
  擧ゲレバ、土木ニ於テ明治三十八年度ニ五十二万圓、三十九年度ニ九十六万圓デア
  タッモノガ、大正二年度ニ至リマシテ二百三十万圓、卽チ三十九年度ニ比較スレバ幾ド三
  倍ニ增加シテ居ルノデゴザイマス更ニ〓育費ニ付テ之ヲ見ルニ、明治三十八年度ニハ
  四十九万デアル、三十九年度ニハ六十六万圓デアッタノガ、大正二年度ニ至ッテ二百
  九十万圓、明治三十九年度ニ比較スレバ幾ド四倍以上ノ增加ニナッテ居ルノデアル、
  勸業又然リ三十八年度ニハ五十万圓デアル、三十九年度ニハ六十九万デアッタノガ、
  大正二年度ニ至ッテ百三十七万圓卽チ幾ド四倍ニナッテ居ルノデアル斯樣ニ郡費ガ
  此七年間ニ於テ三倍若クバ四倍ノ增加ヲ見ルニ至ッテ居ルノデアル、此無味乾燥ナル
  數字ニ付テ之ヲ見マシテモ、如何ニ郡ノ事業ガ年ヲ逐フテ進歩シ、又此郡制ナルモノガ
  郡ノ自治制ナルモノガ如何ニ發逹シテ行キツヽアルカト云フコトハ證明サルヽコトガ出來
  ヤウト思フノデアル、此事實アルニ拘ラズ郡ノ事業ノ見ルベキモノガナイ、郡制ノ發達ハ
  著シカラヌト云フコトハ吾ミハ是レハ全ク事實ヲ誣ユルノデアルト信ズルノデアリマス斯ク
  郡ノ事業ハ年ヲ逐ウテ著シク進步シテ居ル政府ハ郡制ハ施行以來見ルベキ事業ガナ
  イ著シク發逹シテ居ラヌト云フ、又此郡制廢止論者ハ郡制ハ無用ノモノデアルト云フコ
  トヲ唱ヘツヽアル間ニ、郡ノ事業ナルモノハ斯ク年ヲ遂ウテ進ンデ來タ、郡制ハ斯ノ如ク段々
  ト自治ノ實蹟ヲ舉ゲ來ッテ居ルノデゴサイマスガ、是ハ決シテ偶然ニアラズシテ全ク斯ク發
  達スベキ理由ノアッテ然ルモノデアルト信ズルノデゴザイマス、玆ニ地方ノ事業ハ年ヲ逐ウ
  テ進步スルノデゴザイマス、又社會ノ進運ハ年々各種ノ事業ノ經營ヲ促シテ居ルノデゴザ
  イマス、此場合ニ於テ地方ノ事業中縣ニ於テ-府縣ニ於テ或ハ之ヲ經營スベキモノ
  ガアリ、又町村ニ於テ之ヲ經營スベキモノモ少ナカラヌノデゴザイマスガ、併ナガラ事業ノ
  (「簡單ケ々」「謹聽」ト呼フ者アリ)性質又ハ其事業ノ關係デ、廣キ狹キノ關係ヨリ致シ
  テ之ヲ府縣ニモ屬スルコトガ出來ズ、又町村ニ於テ之ヲ經營スルコトモ出來ヌト云フ事
  業ガ續々現レ來ルノデゴザイマス、此時ニ於テ卽チ縣ト町村ノ間ニ介立シテ居ルトコロノ
  此郡自治體ナルモノガアッテ、而シテ能ク此中間ノ卽チ縣ニ屬セズ町村ニ於テモ堪ヘ得
  ナイトコロノ住事ヲ經營シテ往クト云フ、斯ウ云フ風ニ微妙ナ働アルガタメニ、郡制ハ斯
  ク年ヲ逐ウテ發達スル所以デアルノデゴザイマス尤モ郡ノ事業中ニ於テモ初メハ頻リニ
  經營サレテモ遠カラズシテ段々ト失敗ニ歸シ、廢止ニ歸シタコトモ少ナカラヌノデゴザイマ
  スガ、(「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)例ヘバ〓育ノ事業ノ中ニ致シマシテモ中學校ノ
  如キ、是等ハ之ヲ郡自治體ニ於テ經營スルノハ餘リニ大キニ過ギルト云フ仕事デアルノ
  デゴザイマス、是ハ全ク縣ニ於テ經營スベキコトデアッテ、之ヲ郡ニ於テ經營スルト云フコ
  トハ元來郡ノ力ニ於テ堪ユベキトコロノ性質デナイノデゴザイマス、是ガタメニ此政府ヨリ
  週サレタトコロノ表ニ付テ之ヲ見マシテモ(「急速力ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)中學校ノ
  如キハ(「簡單-々々」ト呼フ者アリ)最初ハ明治四十年ノ頃ハ七箇ノ學校ガアッタノガ、大
  正二年度ニ至ッテハ三校ニ減ジテ居ルノデゴザイマス、又農事試驗場ニシマシテモ、明
  治三十九年度ニハ六十六ノ農事試驗場ガアッタノガ、大正二年度ニ至ッテハ二十一ニ
  減ジタ、此農事試驗場ノ如キニシテモ、性質トシテ又事業ノ規模トシテ郡ノ力ニ於テ頗
  ル堪ヘヌノデアル、之ヲ縣ニ於テ經營スルト云フコトガ至當ノ仕事デアル、是ガガタメニ農
  事試驗場ノ如キハ一時ハ各地ニ於テ郡自治體デ爭ウテ經營シテ居ッタケレドモ、段ケニ
  廢止ニ歸シテ居ル、斯ク郡ノ自治體ノ事業ニ適セザルモノハ漸次廢止ニ歸シテ居ルケレ
  ドモ、他ノ高等女學校ノ如キ、若クハ乙種農學校ト云フヤウナ縣ニ於テ經營スルニハ
  餘リニ小サイ、併ナガラ町村ニ於テ之ヲ經營スルニハ力足ラヌト云フヤウナル、ツマリ郡
  自治體ニ最モ適當ナル仕事ハ、年ヲ逐ウテ發達シテ居ルト云フコトハ、現ニ此政府ヨリ
  迴サレタトコロノ此表ニ於テ之ヲ見ルコトガ出來ルノデゴザイマス、斯ク(「分ッタ分ッタ」ト
  呼フ者アリ)郡制ノ年ヲ逐ウテ發達シ、事業ノ著シク進ンデ來テ居ルト云フコトハ、此實
  際ノ事實ニ徵シテ之ヲ知ルコトガ出來ルノデアリマス、之ヲ事業ノ見ルベキモノガ無イ、郡
  制ガ發達シナイト云フコトハ全ク事實ヲ誣ユル議論デアルト吾〓ハ信ズルノデアル、若シ之
  ヲ以前ノ議會、卽チ明治四十年頃ニ於テ主張サレタナラバ、或ハ人ヲシテ耳ヲ傾ケシメ
  タカモ知レヌケレドモ、爾來七年ノ治績ニ於テ之ヲ見レバ、此論據ナルモノハ全ク事實ニ
  於テ〓覆サレタモノデアルト吾〓ハ信ズルノデアル(「ノウ〓〓」「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者
  アリ)尙廢止論者ハ委員會ニ於テ此郡制アルガタメニ郡費ノ分捕ガ行ハレ、是ガタメニ
  不要ナル事業ガ濫リニ創立サルヽ虞ガアル、故ニ此〓カラシテ郡制ハ廢止スベシト云フ
  方モアッタノデゴザイマス、勿論或ル地方ニ於テハ斯樣ナル事モ絕對ニ無イデハナカラウト
  考ヘルノデゴザイマス、或ル地方ニハ斯ル弊害ヲ郡自治體ノ上ニ見ルコトガアッタラウト思
  フ、併ナガラ總テノ自治體ニ於テ斯ル弊ヲ見ルト云フコトハ吾〓ハ信ズルコトガ出來ヌノ
  デアル、事業ノ分捕、經費ノ分捕ト云フコトハ獨リ郡制ニ於テ之ヲ見ルノミナラズ、縣會
  ノ上ニ於テ之ヲ見ルノデアル、各地ニ於テ此縣會デ事業ノ分捕ヲシ、互ニ地方々々デ競爭
  ヲシテ仕事ヲ起スト云フヤウナコトハ、往々地方ノ府縣會ニ於テ見ル弊害デアルノデゴザ
  イマス、ケレドモ是ガタメニ何人ト雖モ府縣會ヲ廢止スベシト云フコトヲ唱ヘル者ハ無
  イノデゴザイマス(「分ッタ」「默ッテ聽ケ」ト呼フ者アリ)ソレハ卽チ事業ノ濫興、經費ノ分
  捕ト云フ弊ハ或ハ多少アルニシテモ、ヨリ以上ノ此府縣制ノ實行ガ地方自治ニ於テ最
  モ必要デアルノデゴザイマス、是ト同樣ニ郡制ニ於テ經費ノ分捕ト云フコトガ或ル地方ニ
  於テハ絕對ニ無イト云フコトヲ保證スルコトハ出來ナイ、ケレドモ併ナガラソレ以上ニ於テ
  此郡制ナルモノガ利益ノアル以上ハ、之ヲ廢スルト云フコトハ全ク根據ナキ議論デアルト
  吾〓ハ信ズルノデゴザイマス、之ヲ廢止スルニ於テ其善後ノ處分-其善後ノ處分ニ付
  テモ吾〓ハ頗ル困難デアルト云フコトヲ信ズルノデアル、廢止論者ハ此郡制ヲ廢止スレバ
  郡ノ事業ノ一部ハ之ヲ府縣ニ移シ、一部ハ之ヲ町村ニ移シ、一部ハ町村組合ノ經營
  ニ任ズレバ其廢止ノ善後處分ニ於テ決シテ不都合ヲ見ヌト云フコトヲ言ハレルノデアル、
  ケレドモ今日府縣ノ經濟ノ事情ヨリスレバ、一郡ニ於テ郡自治體ノ經營シテ居ル仕事ヲ
  引受ケテ、之ヲ經營シヤウト云フコトハ頗ル困難デアルト云フコトヲ吾〓ハ信ズルノデアル、
  又之ヲ町村ニ委任シテ町村ノ經營ニシヤウトシタナラバ、是亦町村ノ力ニ於テ決シテ堪
  ユルコトデナイト云フコトヲ吾〓ハ信ズルノデアル、已ムヲ得ズンバ之ヲ町村組合ニ委スル
  ト云フコトニナラナケレバナルマイガ、是モ亦町村組合ニ委シマシタトコロガ、五六箇ノ町
  村ニシテ一郡ノ經營ノ仕事ヲ引受ケルト云フコトハ力ノ及ブトコロデハナイノデアリマス、
  若シ多數ノ町村ヲ聯合シテ組合ヲ拵ヘルト云フコトニナッタナラバ、郡制ヲ存置シテ郡自
  治體ニ於テ之ヲ經營スルト少シモ變ッタコトガナイコトニナル加之町村組合ナルモノヲ
  組織シテ、聯合會デ之ヲ經營シテ行クト云フコトニナルナラバ一ノ事業ニ一ノ組合ヲ
  拵ヘナケレバナラヌ、〓育ノ事業ニハ〓育ノ組合ヲ作リ、土木ノ事業ニハ土木ノ組合ヲ
  作ッテ、ツマリ澤山ノ組合ヲ作ッテ行カナケレバナラヌ、故ニ益〓此地方ノ自治ノ仕事ガ複
  雜ニナリ、事務ガ一層面倒ニナルト云フコトニナルノデアッテ、決シテ是ガタメニ委員長ノ
  言ハレルガ如ク、事務ガ簡便ニナルト云フコトヲ見ルコトガ出來ナイト云フコトヲ吾ミハ信
  ズルノデゴザイマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)此〓カラシテモ此郡制廢止ナルモノヽ結果
  ト云フモノハ、決シテ廢止論者ノ豫期スルガ如キ效果ヲ奏スルコトハ出來ヌト云フコトヲ
  吾ミハ信ジテ疑ナイ所デゴザイマス、又此郡制廢止ナルモノハ、單ニ此郡ノ區劃ヲ廢ス
  ルト云フノデナクシテ、自治ヲ廢スルノデアル法律ニ於テ與ヘラレタルトコロノ此自治權
  ヲ一部滅却シヤウト云フ議論ニナルノデアル(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)今府縣ニハ府縣
  知事ナル者ガアッテ、之ニ府縣會ガ對峙シテ居ル(「又講釋ガ始マッタ」「議長」ト呼フ者ア
  リ)町村ニ於テハ町村長ノ外ニ町村會ナルモノガアッテ之ニ對峙シテ居ル(「ヒヤ〓〓」ト
  呼フ者アリ)獨リ此郡制ニ於テ郡會郡參事會ヲ廢メテ、而シテ郡長ノミニ行政ノ仕事
  ヲサセルト云フコトハ他ノ自治體ニ對スルトコロノ權衡ヲ失フバカリデナクシテ、實際ニ於
  テ地方ノ自治制ノ上ニ損スルコトガ頗ル多イコトヲ吾〓ハ信ズルノデアル(「名論々々」
  「謹聽々々」ト呼フ者アリ)若シ郡制ヲ廢スルト云フコトニナッタナラバ、地方官ハ必ズ之ヲ
  喜ブニ相違ナイ、郡ノ仕事ヲスル上ニ於テ郡會竝ニ郡參事會ヲ廢セラルルコトニナッタナ
  ラバ、郡長ハ頗ル仕事ガシヨクナリ、地方官モ頗ルラクニナッテ來ルコトハアラウト思フ(「人
  民ハ負擔ガ輕クナッテ喜ブ」ト呼フ者アリ)併ナガラ是ガタメニ所謂自治ナルモノ、卽チ此
  民治ノ政治ナルモノハ全ク滅却サルヽト云フ結果ニナラナケレバナラヌノデアル、此〓カラ
  考ヘマシテモ、此郡制廢止ト云フモノハ決シテ輕易ナル問題デハナクシテ、頗ル自治權ノ
  上ニ於テ重大ナ關係ヲ持ツモノデアルト吾〓ハ信ズルノデアル、何レノ點カラ觀察シテモ此
  郡制ヲ廢止スルト云フコトハ、決シテ當ヲ得タルモノデナク、之ヲ經費ノ點カラ考ヘテモ、
  又事務ノ簡便ニナルト云フ點カラ考ヘテモ、何レノ點ヨリ觀察シテモ、決シテ廢止論者
  ノ言フガ如キ結果ヲ見ルコトハ出來ナイノデアルト吾ミハ信ズルノデアル、此〓ニ於テ吾ミ
  ハ此郡制廢止案ニ反對ヲ表スルモノデアリマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=67

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• 068・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村啓次郞君
  (中村啓次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=68

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• 069・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　此法律案ハ二十二議會ニ於キマシテハ全院一致ヲ以テ通過シタル
  案デアリマス(「間違ダ」ト呼フ者アリ)間違デハアリマセヌ、二十三議會ニ於キマシテハ當
  時ノ大同倶樂部ガ前年ノ院議ニ反覆シテ反對ヲ試ミタノデアル、併ナガラ二十三議會
  ニ於キマシテモヤハリ內容ニ於テハ-形ニ於テハ大同倶樂部及ビ當時ノ進步黨ノ一
  部ノ人ノ反對ガアリマシタガ、其內容ニ於テハヤハリ全院一致ヲ以テ通過致シタト同ジ
  事ニナッテ居ルノデアル、何トナレバ二十三ノ議會ニ於キマシテ反對致シタルモノハ、大同
  倶樂部ヨリハ荒川五郞君ガ代表者トナッテ演說ヲ致シテ居ルノデアル、、進步黨ヨリハ
  (「憲政黨ダ」ト呼フ者アリ)當時ハ進步黨進步黨ヨリハ大津淳一郞君ガ出テ代
  表演說ヲ致シテ居ルノデアル、荒川君ノ當時ノ代表演說ノ趣意ハ尙〓究ノ餘地アリ
  延期ノ意味ヲ以テ否決致シタイト云フニ過ギナイノデアル、故ニ其內容ニ於テハ更ニ郡
  制廢止ニ反對致シタノデハナイノデアル、又大津淳一郞君ハ日本ノヤウナ狹イ國ニ於テ
  ハ四ツノ地方自治ノ階級ハ餘リ多過ギルノデアル、最モ簡明ニ致スト云フ上ニ於テ郡制
  ハ如何ニシテモ廢止シナケレバナラヌ併ナガラ郡役所ヲ廢止スルノダト思ッテ居ッタ、所ガ
  郡役所ヲ廢止シナイト云フコトハ貴族院ニ於テ當局ガ言明シタルノ故ヲ以テ、吾ミハ贊
  成シ能ハナイト云フ斯樣ナ苦シイコトヲ主張シタノデアル、故ニ其內容ニ於テハ一一十二議
  會ニ於テモ全院一致ヲ以テ貴族院ニ進ミ、二十三議會ニ於テモ亦全院一致ヲ以テ通
  過シタル議案デアル、何ガ故ニ院議ヲ重ンズベキ議員ガ此二十二議會ニ於ケル主張ニ
  反對シタカト云フト、當時贊成演說ヲ致シマシタ花井君及尾崎君ノ言明セラレマシタ
  通リ、不幸ニシテ此立派ナル郡制廢止ノ案ナルモノガ政略ノ犠牲ニ供セラレタト云フ嫌
  ガアルノデアリマス、此政略ノ犧牲ニ供セラレタト云フ嫌アルノ故ヲ以テ、聰明ナル大同
  倶樂部ノ諸君ハ反對シ、聰明ナル進步黨ノ諸君モ亦反對致シタノデアル、今日ハ更ニ
  此案ニ政略ノ加味ガ無イノデアリマス、提出致シタル人ハ當時ヨリ熱心ニ主張セラレタ
  所ノ菊池武德君或ハ花井君或ハ尾崎君ニ依テ提出セラレタノデアリマシテ、何等ノ
  政治上ノ政略上ノ黨略上ノ意味ハ此案ニハ附イテナイノデアル、シテ見レバ二十二議
  會ニ提出セラレタルト同一ノ狀態ニ在ルガ故ニ、實ハ全院一致ヲ以テ三度通過スルコト
  ナリト私共ハ信ジテ居ッタノデアル、然ルニ唯今不幸ニシテ平素極メテ寡默ヲ以テ持セラ
  ソン吾〓ハ其人格ニ向ッテ極メテ敬意ヲ表シテ居ル山田珠一君ニ依リマシテ娓々數萬
  言ノ御話ヲ承ッタノデアリマス、是ハ御尤ノ話デアリマシテ、當時大同倶樂部ノ荒川五郎
  君ハ〓究ノ意味ヲ以テ延期ノ意味ヲ以テ否決セラレタイト云フコトヲ主張致シタノデア
  リマスカラ、此六年間〓究ニ〓究ヲ積マレマシタル所ヲ御報告ニナッタノデアリマスカラ、
  其御長イコトハ勿論吾〓之ヲ忍ンデ沈默シテ拜承致シテ居ッタ次第デアリマス、併ナガラ其
  內容ハ誠ニ當時荒川君ガ述ベラレマシタル所ト大同小異デアリマシテ、彼ノ位デアッタ
  ナラバ何モ六年ノ間御〓究ナサラナクテモ、其當時明ニ反對シ得ラレタコトナリト信ジテ
  實ハ御氣ノ毒ニ思フノデアリマス、問題ハ斯樣ナ枝葉ナ問題デナイ、此問題ハ一體此
  郡ト云フ自治一ノ團體ハ郡制アッテ始メテ生ズルノデアッテ、日本帝國ニ於テハ歷史上地
  理上郡ナルモノハ存在スルケレドモ、郡ナル自治ト云フモノハ更ニ存在シテ居ナイノデア
  ル、總テ要求スベキ所ノ情勢ト云フモノガ存在シテ玆ニ法律ガ生ズベキ筈デアル、然ルニ
  何等ノ要求ナク郡制ト云フヤウナ自治ノ法律ガナケレバ地方自治ト云フモノガ玆ニ起ラ
  ナイト云フヤウナ運命ニ遭遇シナイデ、唯翻譯制度ヲ以テ郡制ナルモノガ玆ニ生ジタノデ
  アル、此根本問題、卽チ此郡制ト云フモノヲ施カナケレバ地方ノ自治ノ監督ガ出來ナイ
  カ、或ハ地方自治ノ助長ヲ計ルコトガ出來ナイカ、此根本問題ヲ〓究スレバ何デモナイ
  ノデアル、郡制アルノ故ヲ以テ却テ地方町村ノ自治ノ發達ヲ阻礙致シテ居ル、又郡制
  アルノ故ヲ以テ却テ地方町村ノ行政ノ監督ヲ不十分ニ致シテ居ル、古ノ如ク根本ニ於
  テ此郡制アラザレバ地方自治ガ立ッテ行カナイカドウカト云ヘバ、却テ郡制アルノ故ヲ以
  テ玆ニ地方ノ自治ト云フモノガ迷惑ヲ致シテ居ル、唯今山田珠一君ノ縷々數萬言ヲ重
  ネラレタ此郡制ノ生ミシ所ノ畸形兒、卽チ郡制ガアッテ始メテ玆ニ唯今山田珠一君ガ此
  郡制ヲ必要ナリトスルヤウナ事業ガ起ッテ來タノデアッテ、郡制ガ無カッタナラバ斯樣ナ複
  雜ナル事業ガ起ッテ來ナイノデアル、郡制微ツセバ斯ノ如キ複雜ナル自治ノ機關ト云フモ
  ノハ生ジナイノデ、町村之ヲ行ヒ得ベク府縣之ヲ行ヒ得ベキデアル、卽チ山田君ノ謂フ所
  ノ複雜ナル事業ガ玆ニアルト云フノハ全ク郡制ノ罪テアル、郡制ヲ撤廢シタナラバ此事業
  ヲ何ウスルカト云フヤウナコト、ソレ自身ガ卽チ此郡制ノ一日モ遠ニ廢止セザルベカラザル
  所以デアル、何トナレバ郡制ヲ廢スル事一日之ヲ緩フスレバスルホド山田君ノ憂ヲ增ス
  ノデアル、郡制ナル畸形兒ガ益〓生長シテ之ヲ除斥スルニ益〓困難ヲ感ズルニ至ルノデア
  ル、以上述ベ來タルトコロニ依リマシテ、此郡制ト云フモノハ元ト〓〓日本ノ歷史上地理
  上ニ於テ郡ト云フモノヽ存在ハアルガ、郡ナル自治ト云フモノハ未ダ曾テ無イノデアル郡
  ナル自治ノ實體アラザルニ拘ラズ、郡ナル自治ノ制度ヲ設ケタト云フモノハ全ク翻譯政
  治デアッテ、畸形兒デアッタノデアル、郡自身ガ生ンダ子デナクシテ全ク是ハ郡制ナルモノ
  ガ連子ヲ連レテ來タトコロノ法律デアルノデアル、故ニ此郡制ヲ廢止スレバ自ラ其畸形
  兒ノ連子ハ去ッテ、却テ眞正ナル自治ノ發達ヲ庶幾スルコトガ出來ルノデアリマス、是ガ
  卽チ委員長ノ報告ヲ贊成スル所以ノ要旨デアリマス
  〔拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=69

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• 070・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　荒川五郞君
  〔荒川五郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=70

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• 071・荒川五郎

  ○荒川五郞君　同志ノ山田君ヨリ詳細ニ論議セラレマシタカラ、私ノ登壇スル必要ハ
  ナイト思ッテ居ッタノデアリマス、然ルニ今中村君ニ依テ呼出サレテ已ムナク玆ニ登壇シナ
  ケレバナラヌコトニナッタノデアリマスカラ、簡單ニ唯今ノ中村君ノ御說ニ付テ意見ノ違フト
  コロヲ申立ゲマス、中村君ハ前ニ〓究ヲ要スルト云フタカラ六年〓究シタノデアラウ、其
  〓究ノ結果ガ聽キタイト一ムフ、勿論〓究シテ居ル、所ガ私共ハ却テ政府又政友會ガ〓
  究セラレテ成程郡制ハ廢シテハ行カナイト云フコトヲ自覺セラレタモノト信ジテ居ッタ、何
  故デアルカ、郡制ガアッテハ無用ナ費用ガ多ク要ル、郡制ガアッテハ事務ガ煩雜面倒デア
  ル、種々ナル事ノ上ニ害ガアルカラ之ヲ廢シタイト云フコトヲ六年前ノ當時ノ原內務大臣
  ヨリ當時ノ政友諸君ヨリ熱心論議セラレタノデアル、果シテ國家ノ損ニナリ人民ノ迷惑ニ
  ナルモノナラバ、何故ニ今日マデ御提案ニナラヌノデアルカ、私共ハ爾來今日マデ幾年ノ間
  年々ノ議會ニ政府ヨリ政友會ノ政府ヨリ、又政友會ノ諸君ヨリ此郡制廢止案ガ出ナイ
  ノヲ見テ、一ツハ奇怪ニ感ズルト同時ニ一ハ何程郡制ハドウモ止メラレヌモノダト云フコト
  ヲ白覺セラレタモノト思テ居タトコロヘ突如トシテ今年菊池武德君ヨリ此問題ガ現ハレテ
  來タ、所ガ若シ政府竝ニ政友會ガ郡制廢止ノ必要ヲ依然トシテ維持セラルヽナラバ、政
  友會ヨリ又政府ヨリ直ニ此案ガ出ルグラウト思フタ、何故カト云フノニ多クノ問題デ
  他ノ黨派カラ一ノ議案ガ出ルト同ジ種類ノ問題ヲ直グ政友會ハ御出シニナル政友
  會而已デハナイ、政府モサウセラルヽ、既ニ先ニ私立學校ノ用地免租ノ法律案ガ出タ
  ラ、殆ド同樣ナ議案ヲ政府ガ御出シナサル、是ハ一例デ此類ハ澤山アル、サウ云フヤウニ
  政府ナリ政友會ナリ之ヲ出サウト思ッタラバ何時デモ自分ガ遲レテモ構ハヌ後トカラデモ
  出シテ置イテ、サウシテ自分ノ方ヲ先ニ議スルヤウニシテ人ノ案ヲ止メラルヽヤウナコトハ澤
  山劍ガアルノデアルデアルカラ菊池武德君ガ出サレタ以上ハ政友會ガ今日ニ至ッテ尙
  此論ヲ維持セラルヽナラバ必ズ出ルダラウト思ヒノ外、一向出ナイ、出ナイノハ未ダ郡制
  ハ今廢セラレヌト云フコトヲ自覺セラレタノデアルト思フ、併シ先ニ既ニ議論シタモノヽ問
  題ガ今又出タ以上ハ已ヲ得ズ是ハ贊成シナケレバナラヌ、端目ニ陷リ、政友會ガ巳ムヲ
  得ズ今日御贊成ニナルト云フコトハ御氣ノ毒ニ思フノデ、郡制ヲ今廢スル能ハザルハ數
  多ナル事實ニ依テ明カナルコトデアル、此事ハ山田君ガ詳シク述ベラレマシタカラ各〓ニ
  於ケル理由ハ略シマスケレドモ、中村君ノ今言ハレタ町村行ヒ得ベク、府縣行ヒ得ラルヽ
  カラツレデ郡ガ要ラナイトハ是ハ獨斷的ノ斷定デアッテ、決シテ理由ヲ爲サズ又事實ニ當
  ラナイ唯自分免許ノ議論ト云ハナケレバナラヌ、諸君、前ニ山田君モ言ハレタ通リニ
  郡制ヲ廢シタトテドウシテ費用ガ減サレルカ、費用ガ減レレカ減サレヌカト云フコトハ重
  要ナル一論據デ、廢止論者ハ郡制ヲ廢シテ費用ヲ減ズルト云フノデアルガ、果シテ無駄
  ノ費用ガ減ルヤ否ヤト云フコトハ是ハ最モ明カニシナケレバナラヌ點デアル、然ルニ其理由
  ハ一ツモ舉ッテ居ラヌ、委員會デモ政府ハ會議費ガ五十何万圓減ル、其他補助費抔ガ
  減サレルト云フソレハ仕事ヲ止メレバ其レダケハ減ジラレマセウ、學校ヲマッテ居ル其學
  校ヲ止メレバ其費用ハ減ジラレマセウ、補助シテ居ル補助ヲ止メレバ其費用ハ滅ゼラレ
  ルケレドモ今日苟モ地方ニ斯ウ云フ事業ガ必要デアル、補助ガ必要デアル、〓育ガ必
  要デアルトスレバ、其費用ヲ滅ズルコトハ出來ナイ、シテ見レバ減サレルモノハ何デアルカト
  云フト、唯會議費ダケデアル然ルニ其會議費ナルモノハ實際減ゼラレルカ否ヤ、原案
  者モ政府モ郡ノ自治ヲ止メタラバ或ル事業ハ之ヲ縣ニ移シ又或ルモノハ之ヲ町村ニ移ス
  ト云フ、是レ全ク机上ノ空論デアル、出來ナイコトデアル、今日郡デ仕事ヲシテ居ッタモ
  ノガ縣ニシタラ宜カラウト云フテモ、之ヲ引受クルコトガ出來ナイ、サウ机上通リニ實際
  行ハレルモノデハナイ、縣ニモサウ學校ヲ引受ケテ始末出來ルモノデモナシ、又町村ガナ
  カ〓〓之ヲ負フテ行クコトモ出來ナイ、シテ見レバ多クノ事業ハ此町村ノ聯合ヲ以テヤ
  ラナケレバナラヌ、町村ノ聯合ヲ以テスレバ必ズ聯合會議員ヲ要スル、管理者ヲ要スル、
  シテ見レバ直ニ其事業ニ伴フ聯合會議費ト云フモノガ要ル、聯合會ノ管理者ノ費用ガ
  要ルノデアル決シテ此會議費ヲ減ズルト云フコトハ出來ナイ、況ヤ郡制ト云フ一ノ制
  度ノ下ニ一律ニ行フテ居レバ是ガ郡會々議費一ツデ行キマスケレドモ、若モ地方人民ノ
  思ヒノニ各種ノ事業ヲ思ヒ〓〓ニ聯合サセルト云フコトニナッタナラバ、啻ニ土木或ハ
  〓育或ハ勸業ト〓別スルノミナラズ、其〓育ノ中ニ於テモ或ハ實業學校ヲ建テル、其學
  校ノ組合ヲヤル高等女學校ヲ建テル高等女學校ノ組合ヲ要スル、同ジ〓育ノ中デモ
  組合ガ幾ツモ出來ル、同ジ土木ノ中デモ組合ガ幾ツモ出來ル、シテ見レバ此組合費聯
  合費ト云フモノハ澤山ニ要ッテ來ルノデアル、ナカ〓〓此郡會議員郡會ノ會議ト云フ一
  ノモノデヤルヤウナコトデハナイノデアル、却テ澤山ノ組合、澤山ノ組合費ヲ要シ、非常ナ
  ル煩雜非常ノ手數費用ヲ增加シテ來ルト云フコトハ明カナル事實デアル(「ノウノ」「ヒ
  ヤ〓〓タ」ト呼フ者アリ〕ノウノヽト言フノハ能ク實際ヲ御承知ガナイノデス、既ニ論ヨリ
  證據今日ハイロ〓〓ナ組合ガ發達シテ來テ、ドウモ郡制ガアリ市町村制ガアッテモ、マダ別
  ニ組合卽チ小郡制ヲ要スルヤウナ世ノ中ニナッテ居リマシテ、先年ノ市町村制改正ニハ
  此町村ノ組合ト云フモノヲ更ニ認メテ、サウシテ郡制ガアッテモ其下ニ小サイ小郡制ヲ
  認メルヤウナ形ニナッテ居ル、ソレカラ殊ニ今回政府カラ出タ府縣制ノ改正案ニハ、府縣
  ノ聯合ヲ認メテ居ル、縣ダケデハイカズシテ其上ニ一ツノ大府縣ヲ形ツクラナケレバナラ
  ヌト云フヤウニナッテ居ル、イロ〓〓ニ地方々々ノ狀況ニ依テ種々澤山ノ階段ノ自治ノ必
  要ガ生ジテ來ツヽアルノデアリマス、今郡制ガアッテ郡ノ事業ヲシナガラ、尙其下ニ町村ノ
  聯合ノ必要ガアル位デアリマス、是等ハ地方々ケノ狀況ニ依ッテ大小各〓其宜シキニ應ズ
  ル譯合デ、決シテ町村ト府縣ガ有ッタナラパソレデ宜シイト云フ譯ニハ實際ガ許サナイ明
  カナ證據デアリマス、例ヘバ道路ノ如キニシテモ、此郡制ガアルカラ郡道ナドガ漸次發達
  シノ、サウシテ交通ノ便利ヲ得ルノデアリマスケレドモ是ガ無クナッテ-若シモ希望ノ
  町村ニ全ク委シテ聯合スルトセヌヲ自由ニシタナラバナカ〓〓道路ト云フモノハ出來ナ
  イ、山奧ノ地方ハ自分ノ處ノ材木ヤ米麥ヲ出サウトシテモ出ス者ハ道路ノ必要ガアル
  ガ、出シテ行ク所ニ當ル町村ハ自分ニ直接ニ必要ヲ感ジナイカラ組合ヲシナイヤウニナル、サ
  ウ云フヤウナコトガ澤山出テ來ルノデアル、是ガ郡制ガアルカラサウ云フ事ガ一律ノ下ニ行
  ハレテ、道路モ必要ニ應ジテ出來、其他ノ事業モ發逹シテ人民ノ幸福ヲ增スヤウニナッ
  テ居ル、是等ハ今日マデ郡制ガ大ニ地方ノ發逹ニ效ヲ成シタル事實デアル、況ヤ今日ノ
  總テノ制度ガ例ヘバ〓育ノ問題ニシテモ、農學校デ言ッテモ甲種ノ農學校ハ縣事業タル
  ニ恰度適當スル縣ノ仕事デアル、乙種ノ農學校ハ縣ニシテハ小サイ、町村ニシテハ手ニ
  憚カル丁度是ガ郡ニスルニ適當デアルカラ、郡デ此乙種ノ農學校ヲヤル、其下ノ町村
  ニ於テハ實業補習學校ヲヤル斯ウ云フ風ニナッテ其按排ハ旨ク出來テ〓育ノ都合モ
  宜シク行ハレテ居ル女學校デモサウデアル、高等女學校ハ之ヲ府縣ニ於テ行ヒ、實科
  ノ女學校、卽チ簡易女學校ハ之ヲ郡ニ於テ行リ、高等小學校ハ之ヲ町村ニ於テスル、
  凡ソ是等ノ仕事モ恰度縣、郡市町村トソレ〓〓按排宜シキヲ得テ今日ハ漸次發達
  シテ行キツヽアルノデアル郡制施行以來時ニ日露ノ大戰役ナドガアッテ、事業ニ打擊ヲ
  受ケタケレドモ其以來著々ト進ンデ來タ、ソレガ爲ニ地方人民モ一般ニ便利ヲ得テ、是
  等ノ利益ヲ被ッテ居ルノデアル、是等ハ單ニ其一例ニ付テ申シタノデ、サウ云フヤウニ郡
  ノ事業ト云フモノハ、實施ニ於テ澤山有ルノデアル、之ヲ事業ガ無イト云フノハ(「餘リ
  有リ過ギテ困ル」ト呼フ者アリ)是ハ甚グ事實ヲ誣ウル論デアッテ、若シ有過ギテ困ルト云
  フナラバ、今恆松君ガ言ンタ如ク有リ過キデ困ルト云フナラバ一層郡制ヲ存スル必要ガ
  アルカラ、郡制ヲ廢メタナラバ尙困ルデアリマセウ(「町村長ハ困ッテ居ルノダ」ト呼フ者ア
  リ)殊ニ先年來郡制廢止ト云フコトガチラ〓〓出マシタノハ郡役所廢止ノ前提トシテ
  是ハ現レタ問題デアル(「ソンナ事ハナイ」ト呼フ者アリ)若シ地方ニ大鉈ヲ加ヘテ郡役所
  廢シ、郡長ヲ罷メテ簡易ニヤルコトガ出來ル法ガアレバ是レ郡制廢止モ一ノ〓究スベ
  キ價ノアル問題トナルノデアリマス、郡役所ヲ廢シ郡長ヲ罷メルト云フ議論ノ前提ヨリ起
  キテ居ル議論ガ、是ガ卽チチラホラ出テ來タ問題デアル、然ルニ此前提ノ問題ハ措イテ
  郡役所ハ必要ガアル、郡長ハ廢サナイ、斯ウシテ置イテサウシテ此郡制ダケ廢シヤウト云
  フコトハ此前提ガ既ニ失クナッテ唯空名議論ヲ玆ニ留メルト云フノハ徒ラニ此枝葉ニ
  固執スル議論ト言ハナケレバナラヌ(「モウ講釋ハ宜カラウ」ト呼フ者アリ)諸君ハ國家ノ爲ニ
  人民ノ爲ニ大ナル費用ヲ要シテ損デアルト六年前ニ絕叫シナガラ、、爾來人民ノ損ハ何處
  ヲ吹ク風カ、、事務ノ繁雜人民ガ困ルト云フノハ何ノコトカトイツ言ウタヤウニ一向ニ御忘
  レニナッタ如ク今日マデモ默シテ居ッテ、サウシテ他ノ人カラ問題ガ出レバ已ムヲ得ズ之ニ
  贊成シナケレバナラナイ、諸君ノ御心中ニ對シテハ困ラレタラウト思フ、若シ此議政ノ府
  ガ誠心ニ此國家人民ノコトヲ思ヒ、地方人民ノコトヲ考ヘタナラバ、若シ之ガ費用ノ節
  減ニナッテ、サウシテ他ニハ害ヲ及ボサナイ事務ノ簡捷ニナッテ利益ヲ得ルト云フコトナラ
  バ、諸君ハ萬難ヲ排シテ是マデニ疾クニ御ヤリニナラナケレバナラヌ問題デアル(「根本正君
  ノ如キハ其通リ」ト呼フ者アリ)サウデス、僅カニ酒ヲ賣ラスマイト云フ問題デスラ、年々
  歲々シツコク出シテヤッテ居ラレル-若シ根本君ガ〓心ニ酒害ヲ認ムルナラバ、此年々
  出サレルノハ感心ダト思フガ、此郡制ハ地方ノ一階級ヲ除カウト云フ日本全國ニ關スル
  上ニ費用ノ上ニ於テモ大問題デアル、ソレヲ若シ害アリ損ニナルト云フコトヲ明カニ認メ
  ラレル以上ハ、諸君ハ之ヲ決シテ等閑視セラルベキモノデハナイ、若シソレハ損デハアルガ
  出サナイト云ウタナラバ、諸君ノ平常口ニセラルヽ國利民福ナルモノハ無意味ニナッテシマ
  フノデアル、要スルニ斯ウシテ諸君ハ內實ニハ此郡制ハ已ムヲ得ナイト覺ラレタト云フコト
  ハ口ニハ言ハナイケレドモ事實ガ明カニ證スルノデアル、諸君ハ起立ノ時分ニハ夭資員
  ノ報告ニ立タレルデアラウケレドモ、此事實此有樣ハ明カニ天下ニ郡制ハ決シテ諸君ガ
  口デ云フ通リデハナイト云フコトヲ證明スルニ餘アルト信ズルノデアル(「ノウ〓〓」ト呼
  フ者アリ)枝葉ニ渡ル議論ハ玆ニ論ズルヲ要セズシテ、此大體ノ趣意ニ於テ郡制ハ尙決
  シテ廢スベカラズ、委員長ノ報告ニ反對スル所以デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=71

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• 072・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　松城兵作君
  〔松城兵作君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=72

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• 073・松城兵作

  ○松城兵作君　郡制廢止ニ付キマシテ、段々御議論ガアリマシタカラ、私ハ頗ル簡單
  ニ五分間バカリ御靜聽ヲ煩ハシマス、此問題ハ政友會ガ何ゼ出サヌカ、若クハ中正會ガ
  出シタカラシテ苦シ紛レニ餘儀ナク贊成シタデアラウトカ云フヤウナ、ソンナ不眞面目ナ御
  互ニ言葉尻ヲ捉ヘルトカ、其仕方ニ於テ非難攻擊シテ快哉ヲ叫ブベキ問題デナイ、唯今
  荒川君ノ申サレタ如ク實ニ此郡制廢止ト云フコトハ、地方自治ニ關係スル重大問題デ
  アリマスカラ、諸君ト共ニ冷カシハ止メニシテ眞面目ニ一ツ〓究シテ見タイト思フ、此問題
  ハ私ハ要點ヲ簡單ニ申上ゲル冗長ニ申上ゲレバ一時間モ二時間モ申上ゲラレルガ、併シ
  要〓ダケナラバ極ク簡單ニ十分間ダケデ濟ムダラウト思フ、要スルニ郡制ト云フモノハ地
  方自治ノ一部デアリマス、以上ハ凡ソ自治體卽チ圓滿ナル自治體完全ナル自治體ノ發
  展ヲ計ルニハ、利害關係ノ伴フ所ノ自治體ト云フモノガ、實ニ模範的ノ自治體デアル、
  其自治區ニ於ケル利害關係ガ成ベク同ジデアルト一云フコトガ、完キ自治體デアルト考ヘ
  ナケレバナラヌ、市町村トシテモ府縣トシテモ自治體ノ本旨ト云フモノハ成ベク同ジ區
  劃ニ居ル所ノ自治體ノ人民ガ利害關係ヲ成ベク等シクスルト云フコトハ、是ハ最モ自治
  體ノ本旨デアル、然ルニ郡制ト云フモノハ、先刻中村君ガ申サレマシタ如ク、所謂法律ノ
  上カラ制定サレテ、サウシテ已ムヲ得ズ郡制ト云ム自治體ガ生レテ來タ、沿革モ歷史モ
  ナイ何等ノ之ニ對スル素因ガナイノデアル、此モノハ法律ノ制定カラ無理ニ施イタコトデ
  アルカラ、其自治體ニ於ケル利害關係ト云フモノガ、非常ニ異ッテ居ルト云フコトハ是
  明カナル事實デアル、此郡制ト云フモノガ實施サレテ以來、段々ト郡費ガ多クナッテ來ル
  ノデ、最近七箇年間ノ統計ヲ見マシテモ、六百三十餘万圓カラ今日ハ一千十六万圓
  ト云フ程ニ郡費ガ段々殖エテ來タ、是ハ卽チ郡制ノ此自治制度ノ發達デアルト云フコト
  ヲ言ハレタガ、費用ノ增加スルノガ必ラズシモ郡制ノ自治體ノ發逹トハ言ヘナイ、此費用
  ノ增加スルト云フコトハ私ハ最モ憂フベキ事柄ト思フ、此郡ト云フモノハ自治體トハ申シ
  ナガラ、郡制施行當時カラ眞ノ自治體ヲ成シテ居ラヌト云フコトハ、反對諸君モ御承
  知ノコトヽ思フ、凡ソ自治體トアル以上ハ府縣トシテモ町村トシテモ、其自治ニ對スル
  相當ノ費用ニ對シテハ課稅ヲシナケレバナラヌ、所謂稅ヲ課シテ其自治體ノ費用ヲ作ラ
  ナケレバナラヌ、所ガ郡ニハ課稅ノ權利ガナイ、郡制カラ言ッテ郡ハ稅ヲ課スルト云フコト
  ハ出來ナイノデアル、故ニ町村ニ分賦シテ地租トカ若クハ戶數ヲ標準トシテ町村費デ以
  テ徵シテ居ル、故ニ其實體ニ於テハ所謂聯合町村組合デアル、郡長ガ唯之ヲ管理シテ
  居ルニ止ッテ名ハ立派ナル郡自治體ト云フ郡制デアルガ、其實際ハ町村聯合組合會議
  デアル、此町村聯合組合ナルモノガ甚ダ其管理ト云フモノガ宜クナイ、單ニ郡長ト云フモ
  ノガ之ニ發案スルト云フコトニナッテ居ルカラ、郡制ノ一一十二條ト云フモノハ多ク非常ニ廣
  義ニ解釋サレル、卽チ先刻山田君ノ言ハレタ通リ所謂郡費ノ分捕ガ超ッテ來ル、ナゼ起ル
  カト云フト利害關係ノ異ッテ居ル町村ヲ無理ニ郡制ノ下ニ引付ケタモノデアルカラ、或ル
  一地方ニ一ツノ事業ガ起ル、甲ノ町村ノ附近デアルカラシテ乙ノ町村ノ附近ニハ何等
  利害關係ヲ持タナイ、故ニ己ノ地方ニ道路ヲ拵ヘテ呉レ、己ノ地方ニ學校ヲ置イテ呉
  レト云フ工合ニ、所謂各地方々々ニ跨ッテ郡費ヲ分捕ル、郡長ニ對シテ郡制三十二條ニ
  依テ種々ナ建議ヲナシ、或ハ申出ヲスル、郡長ハ餘儀ナク發案ヲスルノデ所謂不急ノ事
  業ヲ起ス、道路ノ如キハ或一部ニ於ケル町村區劃ノ聯結、町村カラ郡役所ノ所在地ニ
  向ッテ道路ヲ付ケルト云フコトハ、是ハ町村里道ノ開發カラ言ヘバ必要ナコトデアリマスガ、
  併ナガラ此ノ郡費補助道路ハ段々弊害ヲ釀シテ今日デハ町村里道トシテ何等ノ公益
  上用ヲナサヌ、餘リ必要デナイ所ノ道路マデモ郡ハ之ヲ補助シテ拵ヘナケレバナラヌト云
  フ弊害ガ隨分多イ、此郡制ヲ施行シテ以來、一千十六万圓ノ費用ヲ使ッテ居リマスガ、
  百万圓ニ近イ所ノ費用ヲ使ッテ居ル府縣ハ全國ノ中デ福岡縣デアル、此福岡縣ガ最モ
  郡制ヲ施行シテ以來發達シタル縣デアル、其次ニ至リマスルト靜岡縣等ガ郡制施行以來
  隨分發達シタトコロノ縣デアル、先刻山田君ノ言ハレタ中學校ガ全國ノ中デ三ツアルト
  云フ、其中ノ二ツハ靜岡縣デアルト云フ工合デ、隨分郡制ヲ施行シテ以來發達シテ居
  ル、此發達シテ居ル府縣ノ狀態カラ見マシテモ、之ヲ一ツ整理スル時代ガ來テ居ル··
  〔此時議長長谷場純孝君議長席ヲ退キ副議長關直彥君議長席ニ著ク〕

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• 074・松城兵作

  ○松城兵作君　費用ガ多クナルト言ヒマスケレドモ、其費用ガ多クナルノハ所謂不急ノ
  事業ノ爲ニ土木事業ノ爲ニ費スノガ多イ、今日一千万圓以上掛ッテ居ルト云フケレド
  モ、實際ニ町村ニ分賦スベキ郡費ハ幾ラデアルカト云フト八百万圓デアル、其他ノ二百
  万圓以上ハ多クハ府縣國庫ノ補助費デアル、郡制ヲ施行シテ以來、郡ノ數ハ寧ロ殖エ
  テ居ル、現在ニ於テハ全國ニ五百三十七ノ郡ノ數ガアリマスガ、之ヲ整理シテ今ノ郡制
  ヲ廢止シタ結果、組合數ガ多數出來ルカト言ヘバサウデナイ、全國ニ於テ二百七十乃至
  八十造レバ立派ニ組合デ後トノ始末ガ出來ル、殊ニ中等〓育ニ於ケル施設經營ハ寧
  ロ縣ノ事業ニ任セルガ宜イノデアル、其他ノ區々タル事業ハ地方ニ移スベキモノハ移シ
  整理スベキモノハ整理シ、又町村聯合組合ニ移スト云フコトニナレバ、立派ニ何等ノ煩
  ナク整理ガ付クノデアル、殊ニ郡制廢止ト云フコトハ郡役所廢止ノ前提デアル
  郡役所ヲ廢止スルト云フコトナラバ郡制ノ廢止ト云フコトハ是亦一顧ノ價値ナイノデハ
  ナイ、ケレドモ單ニ郡ノ自治制バカリ廢スト云フコトハ甚タ宜クナイト云フノガ反對ノ御
  議論デアル、併ナガラ私ハ現在ノ狀況ニ於テ絕對的ニ郡役所ノ廢止ニハ贊成ガ出來ナ
  イモノデアル、抑〓諸君、現在ノ郡役所ノ制度ニ對シテ少クトモ郡ノ廢合ト一云フコトニ對
  シテハ決シテ異存ハナカラウヽ府縣ノ廢合ガ既ニ輿論トナッタ以上ハ、行政區畫ヲ廣メテ
  郡ノ廢合ト云フコトハ目下ノ地方行政整理ニ於テ必要デアラウト思フ、此前提トシテハ
  少クトモ郡ノ自治體タルトコロノ郡制ヲ其前提トシテ廢サズンバ到底郡ノ廢合ト云フコ
  トハ、卽チ地方行政整理ト云フコトハ一大支障ヲ釀スコトニナル、ソレ故ニ郡制ト云フ
  モノハ所謂無益ノ長物トハ言ハヌガ、免ニ角地方制度ノ發展ヲ一面ニ阻碍シ、不急ノ
  事業ヲ濫興セシムル所ノ郡制ト云フ自治體ニ對シテサウシテ此郡廢合、所謂行政區
  畫ヲ擴張スル、サウシテ全國ノ五百三十七ノ郡ヲ三百ニスルトカ、二百ニスルトカ云フ地
  方ノ行政整理ノ上カラ言ッテモ、此前提トシテ郡制廢止ハ最モ必要ナル事柄ト私ハ信
  ズル、故ニ諸君ハ之ヲ何派ガ出シタトカ、前ノ行キ掛リトカ云フコトデナイ同志會諸君
  モ能ク此地方行政ノ整理ト云フコトニ就テハ再考セラレテ、郡制廢止ト云フコトニ就テ
  ハ二十二議會二十三議會ノ歷史モアルコトデアリマスカラ、院議ヲ重ンジ民論ノアルト
  コロヲ參酌シテ、玆ニ滿場一致ヲ以テ本案ニ贊成アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=74

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• 075・伊藤英一

  ○伊藤一英君　討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=75

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• 076・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　通告ガゴザイマセヌカラ討論終結ト認メテ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=76

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• 077・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ガアリマセヌカラ討論ハ終結ヲ致シマシタ、本案ニ付テ
  第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=77

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• 078・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　多數デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=78

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• 079・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　直ニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ決セラレンコ
  トヲ望ミマス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル〕
  郡制廢止法律案第二讀會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=79

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• 080・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ガアリマセヌカラ直ニ第二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シ
  テ委員長報告通リ確定シテ差支アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=80

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• 081・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ガアリマセヌカラ委員長報告通リ確定致シマシタ(拍
  手起ル)日程第十二乃至第十三ハ、委員長ノ都合ニ依リ延期ヲ申出シタガ許シテ差
  支アリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=81

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• 082・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ガアリマセヌカラ是ハ延期ニ決シマス、日程第十四印
  紙稅法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、人見米次郞君
  第十四印紙稅法中改正法律案(仲小路與平治君外第一讀會
  一名提出)
  印紙稅法中改正法律案
  印紙稅法中左ノ通改正ス
  第五條ニ左ノ一號ヲ加フ
  一產業組合ヨリ組合員ニ發スル通帳
  附則
  本法ハ大正三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  (「人見君ハ居リマセヌ」「議長指名九名ノ委員ニ付託スヘシ」ト呼フ者アリ〕

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• 083・相島勘次郎

  ○相島勘次郞君　人見君ガ居リマセヌカラ私ガ代ッテ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=83

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• 084・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　簡單デアレバ其席デ宜シウゴザイマス

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• 085・相島勘次郎

  ○相島勘次郞君　極ク簡單デス、議案ニ書イテアル通リノコトデアリマスカラ-提案
  者ノ人見君ガ來ラレマシタカラ·

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=85

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• 086・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　相島君ニ發言ヲ許シマシタガ、御取消ニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=86

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• 087・相島勘次郎

  ○相島勘次郞君　人見君ガ來マシタカラ私ハ取消シマス

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• 088・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　ソレデハ人見君
  〔人見米次郞君登壇〕
  (「此時簡單ケ々」ト呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=88

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• 089・人見米次郎

  ○人見米次郞君　宜シイ簡單ニヤリマス、此地租條例中改正法律案ノ(「印紙稅法デ
  アル間違ッテ居ル」ト呼フ者アリ拍手笑聲起ル)幾ツモアリマスノデチヨット間違ヒマシタ、
  更メテ申シマス、印紙稅法ノ改正法律案ハ、印紙稅法ノ第五條ニ產業組合ヨリ組合ニ
  發スル通帳ニ用ユルトコロノ印紙ヲ免除スルト云フ趣意デアリマス、抑〓此產業組合ハ夙ニ政
  府ニ於テモ奬勵セラレタコトデアリマスガ、他ノ先進各國ノ例ヲ見テモ、獨逸ハ產業組合ガ
  最モ盛ナルモノデアリマシテ(「日本ダケデ宜イ簡單々々」ト呼フ者アリ)サウシテ簡單ニ致シマ
  スカラ暫ラク御待チ下サイ、其組合ノ數ガ二万二千バカリアルノデアリマス、サウシテ其組
  合員ノ數ハ二百万以上ニ達シテ居ルノデアリマス、又丁抹ノ產業組合モ最モ盛ナルモノ
  デアリマシテ、製酪組合ダケニ於テモ千七十組、組合員總數ガ十五万四千五百六十八
  人アルト云フコトハ最近ノ統計デアリマス、斯樣ナ譯デ泰西各國ハ產業組合ハ餘程盛ン
  ニナッテ居リマスガ、我國ハ未ダ十分ニ發達シナイノデアリマス、夫故ニ政府ハ、夙ニ之ヲ奬
  勸サレテ居ルニモ拘ラズ、此組合ヨリ發行スルトコロノ通帳其モノニ對シテ、組合ガ營業
  稅ヲ免除サレテ居ルニモ拘ラズ、印紙稅ヲ徵收スルト云フコトハ甚ダ不當デアル卽チ營
  業稅及所得稅ヲ免除セラルヽ以上ハ之ヲ營業ト見做サズシテ、通帳ヲ無稅ニシテ貰フ
  ト云フノガ本案ノ趣意デアリマス、餘リ深クハ申シマセヌ、是ダケノ趣意デゴザイマスカラ
  充分ニ御贊成アランコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=89

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• 090・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=90

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• 091・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　議長指名九名ノ委員ニ付託スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=91

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• 092・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ガアリマセヌカラ中村君發議ノ通リ決シマス、次ハ日
  程第十五、衆議院議員選舉法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、尾崎行雄君
  衆議院議員選舉法中改正法律案(尾崎行雄第一讀會
  第十五君提出)
  衆議院議員選舉法中改正法律案
  衆議院議員選擧法中左ノ通改正ス
  第十三條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
  政府ノ保護ヲ受クル株式會社ノ重役及其ノ使用人ハ被選舉權ヲ有セス若
  當選ノ後其ノ重役又ハ使用人トナリタルトキハ之ニ因リテ直ニ議員タル
  ノ地位ヲ失フ
  第十六條內閣ト進退ヲ共ニセサル官吏ハ議員ト相兼ヌルコトヲ得ス但シ
  其ノ官吏ノ種類ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  〔尾崎行雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=92

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• 093・尾崎行雄

  ○尾崎行雄君　衆議院議員選舉法ノ改正案ハ他ニモ段々出テ居リマスル、選舉權ノ擴
  張其他本員等ノ滿腔ノ贊成ヲ表スベキ議案ガ澤山出テ居リマス、然ルニ玆ニ衆議院議
  員ト官吏及準官吏トモ申スベキ〓ニ付テ、他ノ案ニ漏レテ居ルヤウニ考ヘマスル故ニ、已ム
  ヲ得ズ此單純ナル改正案ヲ提出致シマシタ、元來官吏ヲ衆議院議員ニ入ルベキモノナルヤ
  否ヤト云フコトハ、、世界列國ニ於テ憲法上ノ大問題デアリマス、申スマデモナク衆議院議
  員ナルモノハ輿論民意ヲ代表シナケレバナラヌトココノモノデアル、官吏ハ行政府ニ使ハレテ
  其指揮命令ヲ受ケナケレバナラヌ筈ノモノデアル、故ニ此官吏ト衆議院議員ト云フモノハ
  其性質ニ於テ餘程兩立シ難イ筈ノモノデアリマスルガ故ニ、世界列國ニ於テモ古ヘ議院
  ノ未ダ發達セザル場合ニ於テハ議員ヲ腐敗セシメ、議員ヲ自由自在ニ使ヒ廻ハスガタ
  メニ、腐敗的ノ意味ヲ以テ衆議院議員ヲ頻リニ官吏ニ任命致シテ、政府ノ議案ニ盲
  從セシメ或ハ官吏ヲシテ選舉ヲ爭ハシメ、而シテ之ヲ衆議院ニ入レテ、詰リ院議ヲ蹂
  〓スルト云フ素地ヲ造ツタ例ハ澤山アリマス、而シテ其弊害ニ堪ヘナイガタメニ立憲政體
  ノ祖國トモ云フベキ英吉利アタリニ於テハ段々嚴重ナル法律ヲ制定致シテ、官吏ナル
  モノハ、全部之ヲ拒絕シ單ニ內閣ト共ニ進退スベキモノ、卽チ政務官ダケハ衆議院議
  員ニ列スルコトヲ許スガ、其他ノ官吏ハ一人モ列スルコトヲ許テマト云フコトニナッテ、是
  ガ憲法上動スベカラザル制規トナッテ居ルノデアリマス、其他ノ國ミニ於テモ或ハ憲法ヲ
  以テ之ヲ制限スルトコロアリ或ハ法律ヲ以テ之ヲ制限スルトコロアリマスルガ、何レノ國
  ト雖モ官吏ト議員ト相兼ヌルコトヲ許サズト云フ〓ニ至ッテハ少シモ異ナルトコロハアリマ
  セヌ、然ルニ玆ニ最モ不思議ナルノハ獨リ日本國ニ於テハ或種類ノ官吏ヲ除イタモノ
  ハ議員ヲ兼ヌルコトヲ得ズト他ノ國デハ書イテアルノニ、日本ノ選舉法ニ於テハ相兼ネル
  コトヲ得ト書イテアル(「自分モヤッタヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)實ニ驚クベキコトデアリマス
  何故ニ斯ノ如キコトヲシタカト言ヘバ、御承知ノ如ク憲法制定ノ當時ニ在リテハ、成ル
  ベク國論卽チ興論民意ノ力ヲ以テ政府ニ迫マラレルコトヲ防グガタメニ、貴族院ニモ衆
  議院ニモ模樣ニ依テハ官吏ヲ充滿セシメテ、之ヲ樂ニ通過シヤウト云フ考ハ憲法制定
  者ノ腦中ニアックモノト見エマス、故ニ世界列國ノ制令ニ反シテ或種類ノモノヲ除イタ官
  吏ハ全部衆議院議員ト兼ルコトヲ得ト定メ、又貴族院ノ如キハ現在ト雖モ非常ニ多
  數ノ官吏ヲ以テ議員ヲ兼ネシメテ居ルノデアリマス、其結果ヤ初期以來ノ選舉ニ於テ、
  政府モ官吏ヲ候補者ニ出シテ衆議院議員ヲ競爭セシメタコトモアリマス、然ルニ其當時
  ニ於テハ、政府ニ反對スル所謂自由民權ノ空氣ガ盛ンデアッタガタメ二官吏候補者ノ
  多クハ失敗ヲ致シテ衆議院ニ多クノ座席ヲ占ムルコトガ出來ナカッタノデアリマス是ハ
  帝國ノ憲法史上ニ於テ極メテ幸福ナル寧ロ僥倖ナル結果トモ申スベキ譯デアリマスヽ又
  他ノ一面カラ申シマスルト、强テ官吏ニセズトモドウカ斯ウカ他ノ手段ヲ以テ衆議院ヲ通
  過スルコトノ出來ルト云フ事實モアッタ結果トシテ、餘リ此條ヲ濫用スルニ至ラズシテ今
  日マデ憲法發布以後二十五年間ヲ經過シタモノト見エマス、併ナガラ今ニシテ之ヲ改
  メテ置キマセナイト、他年亂暴ナル政治家ガ出デマスルナラバ多クノ官吏ヲシテ候補者
  トナッテ議院ノ議席ヲ爭ハシムルコトモ出來マスルシ、又衆議院議員ノ中反對黨ヲ多ク
  官吏ニ任命シテ、我ガ爪牙トナスト云フコトモ途ハ開ケテ居ルノデアリマス、此途ヲ鎖ス
  コトハ立憲政體ノ發達上極メテ必要ナルコトデアリマス、元來ヲ言ヘバ官吏ハ一人モ議
  員ヲシテ兼ネシメナイト云フノガ其性質カラ申シマシタナラバ適當ナコトデアリマセウ、併ナ
  ガラ英吉利ノ如キ制度ニ於テハ、政府委員ナルモノト雖モ大臣ト雖モ議席ヲ持タナイ者
  ハ一切議場ニ出入スルコトヲ許サナイガタメニ、止ムヲ得ズ大臣及大臣ト共ニ進退ス
  ルトコロノ政務官ナルモノハ議場ニ出入シテ政府ノ議案ヲ說明辯護スルノ必要上カラ議
  員ト相兼ヌルコトヲ許シテアリマス、其數ヤ極メテ少ナクシテ且其境界ハ極メテ嚴重ニ致
  シテ置キマス、日本ノ如キ終身官デアルベキ純然タル事務官、、純然タル刀筆ノ官吏ヲシテ
  議員ヲ兼ヌルコトヲ許スガ如キ、不思議ナル事例ハ殆ド世界列國ニ於テ見
  ルコトノ出來ナイ〓デアリマス(「外國ニアリマス」ト呼フ者アリ)若シソレ
  ガアリトスレバ何レ極メテ劣等ナル、マダ立憲政體ノ本色ヲ發揮シテ居ラナイ
  トコロニ僅ニアルカ知レナイ(「獨逸ニアリマス」ト呼フ者アリ)獨逸ノ如キハ嚴重ニ禁ジテ
  アリマス-帝國議會ニ於テハ極メテ嚴重ナル規則ヲ以テ禁ジテアリマス(「大學〓授デ
  モ出來マス」ト呼フ者アリ)日本ノ如キ大臣及政府委員ハ議席ヲ持タズトモ、議院ニ出
  入スルコトノ出來ルト云フ規則ヲ設ケテ居ル國ニ於テハ實ヲ言ヘバ一人モ官吏ハ議員ト
  爲スノ必要ハナイノデアリマス、元來ヲ申セバ大臣ト雖モ大臣ノ職權ニ依テ此處ニ列席ス
  ルコトガ出來マスル故ニ、議員トナラズトモ差支ナイノデアル併ナガラ是ハ一ツ他ノ點カ
  ラモ考慮シナケレバナラヌ、元來政治家ナルモノト事務家ナルモノトハ其性質ニ於テ全ク
  違ッテ居リマスガ故ニ、日本從來ノ如ク事務家出身、極ク下級ノ官吏カラ段々鰌上リ
  ニ登ッタモノヲ次官トナシ局長トナシ、但シハ大臣トナスト云フコトハ非常ニ弊害ノ源ヲ
  啓クコトニナリマス、事務家トシテ育ッタ者ハイツマデ登ッタトコロガ大臣タルノ器ヲ具ヘル
  コトハムヅカシイモノデアリマス、育チガ違フ、事務家ナルモノハ人ニ使ハルヽコトヲ稽古シ
  テ育ツモノデアル、政治家ナルモノハ人ヲ使フコトヲ心得テ育ツモノデアル使ハレル心懸
  ケト使フ心懸ケトハ全ク性質ガ違フガタメニ、我ガ今日ノ内閣大臣ナルモノハ多クハ事
  務家出身屬僚出身デ、人ニ使ハレテ育ツモノデアリマスルガ故ニ、大臣トナッテモ多クハ
  大臣タルノ心得ヲ持ツコトガ出來ナイノデアリマス、其著シキ事例ヲ舉ゲマスルト、屬官ノ
  身ニ取ッテハ一番下級ノ法令ガ最モ己ノ頭ヲ支配スベキ·大切ナルモノトナル、低キ役人
  ハ憲法ノ問題抔ニ觸レル機會ガ少ナイ、憲法ヨリカ法律ノ支配ヲ受ケル機會ガ多ク法
  律ヨリカ勅令ノ支配ヲ受ケル機會ガ多イノデアリマス、其位地ガ低ケレバ低イホド其人ノ
  腦髓ヲ支配スルモノハ低キ制度ガ主モテルモノトナルノデアリマス、故ニ屬官トシテ育ッタ
  者ニ取ッテハ勅令ヲ一番大切ガル、ナゼナレバ平生子供ノ時カラ勅令ノ支配ヲ受ケテ
  育ッタガタメニ勅令ヲ最モ大切ニ思ヒ、其上ニアルトコロノ法律ヲバ一層輕ク思ヒ、其上
  ノ憲法ノ如キハ殆ド何ト書イテ居ルカ知ラナイ者ガ多イノデアリマス、現ニ今ハ總理大臣
  トナッテ居ルトコロノ山本伯ノ如キモ、モト屬僚育チデアリマスルガ故ニ彼ノ腦膸ヲ支配
  シテ居ルモノハ今日尙憲法ヨリカ法律ガ重ク支配シテ居ル、法律ヨリカ尙勅令ニ支配サ
  ラレテ居ルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手スル者アリ)其實例トシテ過日本員ガ豫算委
  員會ニ於テ國防計畫ト憲法第五十五條ノ關係ヲ問ヒマシタ、總理大臣ハ如何ニシテ
  國防計畫ニ對スル責任ヲ持ツカト彼ニ尋ネマシタトコロガ、彼ハ是ニ答ヘルコトガ出來ナ
  イ、唯纔ニ參謀本部ノ條例ガ斯ウ書イテアルカラ責任ヲ持ツコトガ出來ナイ、成程參謀
  本部ノ條例或ハ軍事參議院等ノ官制ヲ見マスルト、國防計畫ト云フ大問題ヲ內閣
  以外ノ機關ニ依ッテ決スルコトハ書イテアル、併シソレハ勅令デアル-法律ノ下ニ在ル
  トコロノ勅令デアリマス、ソンナモノハ内閣員タルモノハ闇講デ決定シテ(「脫線」ト呼フ者
  アリ)陛下ノ御裁可ヲ得テ改正ヲシナケレバナラヌ筈ノモノデアルノニ、彼ハ憲法上ノ問
  題ヲ尋ネラルレバ勅令ヲ以テ答ヘル、參謀本部ノ條例ニ書イテアレバ憲法違反ノ仕事デモ
  尙是ニ服從シナケレバナラヌモノヽ如クニ心得テ居ルト云フノハ、卽チ彼ガ屬僚育チデア
  ルガタメニ(「脫線」ト呼フ者アリ)今日大臣トナルト雖モ尙其心ヲ持ツコトガ出來ナイノ
  デアリマス(拍手起ル)世ノ中ニハ桁違ヒト云フコトガアリマス、桁モ一桁位ノ見違ヒナラ
  バ容赦ハ出來ルガ、彼ハ憲法上ノ問題ニ付テモ勅令ヲ以テ答ヘル、卽チ二桁取違ヘテ
  居ル男デアリマス、(拍手笑聲起ル)有爲ナルコト彼ガ如ク、、聰明ナルコト彼ガ如キ者ト雖
  モ屬僚育チデアレバ此通リ政治家トナルコトハ出來ナイノデアル、況ヤ彼以下ナル者ガ刀
  筆ノ吏トシテ成長ヲ致シマスレバ、ドウシタトコロカ大臣ニナッタトコロガ、大臣ノ器ヲ備ヘ
  ルコトガ出來ナイノハ當然ノ次第デアリマス、此〓カラ見マスルト多年政治家ヲ養成スル
  ガ爲ニハ、屬僚ハ爲サズシテ議員ト爲シ、初メカラ政務官ノ職ニ就ケテ人ノ支配ヲ受ケ
  ズシテ、人ヲ支配スベキ練習ヲサスコトガ必要デアリマス、故ニ此〓カラ政府委員トシテ
  此處ニ列スルコトニ致シマシテモ、尙政務官ダケニハ議席ヲ與ヘテ政治家ノ練習ヲサセル
  コトガ出來ル途ヲ開イテ置クコトハ、國家ノ爲ニモ必要デアラウト考ヘマス、故ニ私ハ此
  ニ於テ政府委員トナルベキ役人、但シ其數ハ今日ヨリ減ラスモ宜シイ、各省ノ次官重
  立ッタル局長、法制局長カラ內閣書記官長或ハ警視總監其他ノ者、兔ニ角政府委員
  トナッテ政府ヲ代表シテ此表舞臺ニ出ヅベキ此役人ダケハ、是ハ刀筆ノ吏ト區別ヲ致シ
  テ、他年政治家トナルベキ卵ト看做シテ是等ニハ議席ヲ與ヘル途ヲ開イテ置クコトガ宜
  シイト思フノデアリマス、其他終身官トシテ何レノ內閣ニモ仕ヘル-給料サヘ與ヘレバ
  保守主義ノ内閣ニモ事ヘル、自由主義ノ內閣ニモ事ヘル誰ノ內閣ニモ事ヘルト云フ
  雇兵ノ如キモノハ、是ハ議席ヲ與ヘルベキモノデナイノミナラズ、表舞臺タル帝國議會、貴
  衆兩院ニハ顏スラ出サスベキモノデハゴザイマセヌ(「ヒヤ〓〓」拍手起ル)彼等ハ殆ド朝ニ
  吳客ヲ迎ヘ夕ニ越人ヲ送ル藝娼妓ノ如キモノデアル(拍手起ル)ドノ座敷ニモ出テ來レバ
  ドノ內閣ニモ仕ヘルノデアル、斯ノ如キモノハ蔭ニ隱シテ置クコトハ宜シイガ、表ニ出シテ
  其耻ヲ曝サスト云フコトヲ單リ本人ニ對シテ氣ノ毒デアルノミナラズ、此帝國ノ政治舞臺
  ヲ汚ス遣リ方デアリマス(「ヒヤノ」ノ聲起ル)故ニ此ニ於テ嚴重ニ區別ヲ定メテ政府
  委員ニハ事務官ヲ一切用井ナイ、但シ參考トシテ委員會位ニ內證デ之ヲ來ルコトハ許
  スガ、表向ノ舞臺ニ事務官ハ一切出サヌ政務官ニ限ル、政務官ノ數ハ何々ヲ政務官ト
  スルト云フコトハ、是ハ勅令ヲ以テ定メテ宜シイト思ヒマスルカラ、ソレダケハ議員ヲ兼ネ
  サセルガ、其他ノ者ハ一切議員ヲ兼ネサセヌト云フコトニ致スノガ宜シカラウト思フ(「贊
  成」ト呼フ者アリ)今日ハ少シク此制度ハ政友會ノ同志ノ內閣ノタメニ改正セラレテ多
  少好クナッテ居リマス、卽チ從來次官ノ如キハ全部終身官トシテ扱ハレテ、內閣ガ變ッテ
  モ容易ニ之ヲ變ヘルコトハ出來ナカッタノデアリマスルガ、特別任用ノ制度ガ開カレテ、今
  日ハ政黨員ガ試驗ヲ經テ十年、十五年政府ニ子飼ニ飼ハレタ者デナクテモ次官ニ
  成ルコトノ出來ル途ヲ政友會ノ內閣ガ開イタコトハ是ハ先ヅ賞スベキコトデアリマス、從
  テ次官ノ如キハ多クハ政友會ニ入黨シテ居ルト思ヒマス、是モ亦宜シイコトデアル、然ルニ
  玆ニ不思議ナノハ同シ政府ノ政府委員トシテ此處ニ陳列セラレテ居ル人間ノ中(笑聲
  起ル)主義政策ヲ同ジウスルタメニ、政府ノ議案ヲ辯護スルトコロノ人モアル、サウカト思
  フト唯純然タル雇兵デ主義政策ニ付テハ全ク反對ノ意見ヲ有ッテ居ルケレドモ、唯役人
  トシテ生キテ居ルカラ已ムヲ得ズ、口グケ賣ッテ之ヲ辯護スルト云フモノモヤハリ同ジ政府
  委員ト云フ名義ノ下ニ居ル、故ニ名ハ同ジ政府委員ト雖モ其性質ヲ解剖致シテ見マス
  ルト、主義ノタメニ働イテ居ル者モアリ、雇兵ニナッテ給料ノタメニ働々テ居ル者モアル
  (「其通リ」ト呼フ者アリ)所謂妻妾雜居ノ有樣デアッテ、此席ハ何ガ何ヤラチットモ分ラ
  ヌノデアル(拍手起ル)斯ノ如キ不體裁ハドウシテモ改メナケレバナラヌノデアリマス、政府
  ヲ辯護スル者ハ唯腦髓ヲ切賣スル者デハイケナイ、己レノ精神カラソレヲ是認スルガタメ
  ニ辯護スル者デナケレバナラヌ、サウデナイ者ハ表舞臺ニ出スベキモノデハナイ、帝國議會
  ハ日本第一ノ莊嚴ナル舞臺デアリマス、此席ニ出ル者ハ腦髓ヲ切賣スルガ如キ界劣漢
  ハ此處ニ陳列スベキモノデアリマセヌ(「ヒヤ〓〓」拍手起ル)其〓カラ此制限ヲ加ヘテ、
  或制限ノ下ニ官吏ノ兼任ヲ許スト云フコトニセヌケレバナリマセヌ
  〔此時發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=93

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• 094・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=94

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• 095・尾崎行雄

  ○尾崎行雄君　大體ニ於テハ兼ネシメザルヲ本則ト致シマス、政治家ヲ養成シテ主義
  政策ノタメニ、政府委員トナル者ダケハ初メカラ政治家トシテ取扱ッテ議員ト兼ヌルコト
  ヲ許スガ宜シイ、許スト云フ取除ケヲ開イテ居ッタナラバソレデ宜カラウト思フ、次ニ同ジ
  ヤウナ性質ノモノハ保護會社-政府ノ保護ヲ受ケテ居ルトコロノ會社ノ役員デアリマ
  ス、實ハ此事ハ私ハ餘リ强ク論ズルコトヲ好マヌノハ、吾ミガ多年朋友デアッタトコロノ人
  人が、、偶然保護會社ノ重役トナッテ此席ニ列シテ居リマス、其人ヲ眼前ニ据ヘテ置イテ
  之ヲ非難スルノハ誠ニ情トシテ忍ビヌノデアリマスルケレドモ、憲法上ノ大義ヲ論ズルニ
  方ッテハ已ムヲ得ヌノデアル(「ヒヤ〓〓」「謹聽」ト呼フ者アリ拍手起ル)保護會社ノ重
  役、政府ト特別關係アル會社ノ重役ヲシテ議員ヲ兼ネシメテ相成ラヌト云フコトハ、是ハ
  殆ド辯論ヲ費ス必要ハナイト思ヒマス、政府ノ請負ヲ爲ス者、若クハ主トシテ政府ノ請
  負ヲ爲ス會社ノ重役デスラ、我ガ選舉法ニ於テハ衆議院議員タルコトヲ禁ジテアリマス、
  政府ノ請負ヲ爲ス者、或ハ主トシテ政府ノ請負ヲ爲ス會社ノ重役ト、純然タル保護會
  社ノ重役ト、殊ニ政府カラ任命セラルヽトコロノ重役ト、其獨立ヲ失ッテ居ル〓ニ於テド
  チラガ重イノデアリマス、殆ド三尺ノ童子ト雖モ辨識ニハ苦シマヌノデアル、然ルニ我ガ衆
  議院議員選舉法ハ政府ノ請負ヲ爲シテ居ル者ハ衆議院議員タルコトヲ許サヌ、主トシ
  テ政府ノ請負ヲ爲ス會社ノ重役ハ、衆議院議員タルコトヲ許サヌ、併ナガラ政府ノ保護
  ヲ受ケ政府ノタメニ任命セラルヽ會社ノ重役ハ衆議院議員タルコトヲ許シテ居ルノミナ
  ラズ、現ニ其重役ト成ッテ此處ニ列席シテ居ル諸君ガアル、是ハ如何ニモ不釣合デハナ
  イカ、殊ニ其諸君ガ不幸ニシテ多年政黨内閣ノ主義ヲ唱ヘ、時トシテ議院内閣ナドト
  云フコトヲモ口カラ言フタトコロノ人ガ其事ヲ致シテ居ル(拍手起ル)是ハ實ニ驚キ入ッタ
  ル事デアル、政黨主義ヲサウ云フトコロニ持ッテ行ケバ、所謂政黨主義ナルモノハ天下カ
  ラ嫌ハルベキ物體トナルデハナイカ、政府ノ請負ヲスル者スラ禁ジテ居リナガラ、保護會社
  ノ重役デアッテ尙議員ヲ兼ネテ居ッテ宜シイナドト云フコトハ苟クモ立憲主義ヲ口ニスル
  者ノ斷ジテ爲スベキコトデアリマセヌ(「ヒヤ〓〓」拍手起ル)全ク辻褄ノ合ハナイコトデア
  ル故ニ議員タルコトヲ重ンズレバ重役ヲ辭スベシ、重役ヲ重ンズルナラバ議員ヲ辭サナケ
  レバナラヌ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)ソレヲ兼ネテ居ルト云フニ至ッテハ未ダ立憲政體ノ
  何モノタルヲ解セズ、殊ニ政黨主義議院政治ノ何タルヲ寸毫モ解シ得ヌ人々ト言ハナケ
  レバナリマセヌ(拍手起ル)斯ノ如キ痛烈ナル言葉ヲ用井ルコトハ本員ノ甚ダ遺憾トスルト
  コロデアリマスルケレドモ、我憲政ノタメ我帝國ノタメニ此理義ハ明カニシナケレパナラヌ
  (「ヒヤ〓〓」拍手起ル)又會社ノ方カラ見マシテモ、是ハ餘程考フベキコトデアル、日本
  ニ保護會社ハ現在ト雖モ餘程アル、日本銀行ヲ始メトシテ餘程澤山アル此重役ハ皆
  衆議院議員ト相兼ネルコトヲ得ト云フナラバ獨立ノ言行ヲナスコトノ出來ナイ常ニ政
  府ノ鼻息ヲ伺ハナケレバナラヌトコロノ位置ヲ占ムルトコロノ重役-會社ノ重役ハ何
  十人トナク殆ド百人內外此衆議院ニ這入ッテ來ルコトガ出來ルノデアリマス、若シ他年
  質ノ宣シクナイ內閣ガ出來テ、是等ノ重役ヲ皆議員トナスノ工夫ヲ爲シ、但シハ又議員
  ヲシテ此百有餘ノ重役ニ就クコトノ趣向ヲ致シマシタナラバ、直チニ自分ノ手下卽チ自
  由意思ノナイ議員ヲ數十名若ハ百名造ルコトガ出來ルデハナイカ、眞ニ立憲政體ヲ思
  フ者ヲシテ悚然トシテ肌ニ汗ヲ生ゼシムルコトノ事實ガ此處ニ直チニ出來ルノデアリマス
  (「ヒヤ〓〓」拍手起ル)議員ナル者ハ皆自由意思ニ依テ政府ノ議案、、議員提出ノ議案
  ニ於テ言議ヲ狹マナケレバナリマセヌ、然ルニ保護ヲ受ケテ居ル會社ノ重役ハ自由ニ政
  府ノ議案ニ贊否ヲ表スルコトガ出來ナイデハナイカ若シソレヲ表スレバ己レノ務ヲ盡サナ
  ケレバナラヌトコロノ會社ノ利害ト衝突スルコトニナルデハナイカ、又是等ノ會社ノ重役ニ
  ハ多分多クハ年限ガアルト思ヒマス、四年乃至六年、卽チ內闇ノ變動如何ニ拘ラズ忠
  實ニ其會社ノタメニ盡サナケレバナラヌト云フ性質デアルガタメニ、年限ヲ付ケテ居ルノデ
  アル、然ルニ議員ナル者、殊ニ政黨ニ席ヲ置クトコロノ議員ナルモノハ、內閣ト主義主
  張ヲ同ジクスルノデナケレバナラヌ、而シテ內閣ニハ壽命ガナイ、極ッテ居ラヌ、長キハ三年
  四年短キハ半年一年ニシテ倒レル、此內閣ノタメニ任命セラレタ者ハ任期未ダ盡キザル
  ニ當ッテ他ノ全ク性質ノ異ッタ內閣ガ出來テ、其人々ノ重役ノ意見ニ反對スル主義ノ議
  案ヲ出シタ時ニハ其重役兼議員トナッテ居ル者ハ如何ナル舉動ヲスルノデアリマス、其
  時ニ至レバ必ズ良心ノ使命ニ從フナレバ辭スルヨリ外ハナイノデアリマス、重役ヲ辭スルヨ
  リ外ニ途ガナイノデアル辭サナケレバ己レノ良心ニ背カナケレバナラヌ、良心ト重役ノ位
  置ト兩方ヲ完ウスルコトハ如何ナル人ト雖モ出來マセヌ、故ニ辭スルトニ言フデアラウ、縱
  シ數十ノ重役ガ皆此手ニ依シテ議員ヲ兼ネテ居ル時代ガ生ジタト見ル、而シテ內閣ガ
  種多く此數十ノ重役日本銀行ヲ始メ而モ大切ナル會社デアル興業銀行、勸業銀行、
  朝鮮銀行、拓殖會社、滿鐵皆國家大切ナ機關デアルガ、是等ノ重役ガ議員ヲ兼ネテ
  屋ヲナ而シテ異主義ノ內閣ガ出テ來タ、已ムヲ得ズ良心ヲ全ウスルガタメニ皆年限ハア
  ル、未ダ盡キザルニモ拘ラズ皆袖ヲ列ネテ辭職シタト假定セヨ、日本銀行以下ノ重役總
  テガ政府ト共ニ辭職シタト假定セヨ、ソレハ實業社會ニ如何ナル惡影響ヲ及ボスモノト
  御考ヘニナリマスカ、是等ノ者ハ皆政黨ト主義ヲ同ジウスベキモノデハナイ、況ヤ政黨ノ機
  關トナルベキモノデハナイ、、然ラバ議員ト相兼ネルコトヲ許サヌト云フコトハ當リ前ノ次第デ
  アリマス、會社ノ利害カラ言ッテモ國家ノ利害カラ言ッテモ、是等ノ者ハ決シテ議員ト相
  兼ヌルコトヲ許スベキ性質ノモノデハアリマセヌ、故ニ吾〓ハ今日ノ場合ニ於テ官吏及準
  官吏保護會社ノ重役ハ總テ議員ト相兼ヌルコトヲ許サヌト云フコトヲ原則ト致シヽ唯
  政府ノ委員トナッテ此處ニ出席スベキ五十乃至七八十ノ重要ナル政務官ダケハ之ヲ議員
  ト兼ヌルコトヲ許スコトニ致シタイ、先ヅ衆議院規則ヲ衆議院ノ選舉法ヲ斯ク改
  メ而シテ之ニ伴フトコロノ勅令ヲ發布致シマスレバソレデ他日段々他ノ方面モ改良ノ
  途ニ著ク、是ニ於テ始メテ政黨主義ノ完全ナル發達ガ出來ルデアラウト思ヒマス日本
  銀行以下總テノ重大ナル會社ヲ攪亂スルガ如キ方法ヲ以テ、而シテ是ガ政黨主義デア
  ル、政黨ノ勢力ヲ發達スル所以デアルト考ヘレバ是ハ非常ナル間違ヒデアッテ、吾ミハ政黨
  ノ勢力ヲ發逹セシムルイ云フコトニ付テハ敢テ人後ニ落チナイ者デアリマスル、ソレト同時
  ニ其途ヲ擇バズシテ此力ヲ伸バスト云フコトハ、獨リ政黨主義ノタメニ害ヲ爲スノミナラ
  ズ立憲政體及國家ノタメニ大害ヲ爲スモノト考ヘル故ニ已ムヲ得ズ此議案ヲ提出シ
  タ次第デアリマス願クハ諸君ニ於テモ虚心平氣ニ御勘考ニナッテ、大多數ノ贊成ヲ奥
  ヘラレムコトヲ希望致シマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=95

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• 096・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ前ノ衆議院選擧法改正法律案ト同一ノ委員ニ付託セラレ
  ンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=96

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• 097・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　中村君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=97

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• 098・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ナシト認メマス、ソレデハ前ノ衆議院議員選擧法改正
  案ノ委員ニ付託致シマス、次ハ日程第十六、地租條例中改正法律案、此第一讀會ヲ
  開キマス-人見米次郞君
  地租條例中改正法律案(人見米次郞君外一第一讀會
  第十六名提出)
  地租條例中改正法律案
  地租條例中左ノ通改正ス
  第三條第五項中「第一類地又ハ第二類地ノ山崩、川欠、押堀石砂入、川成、海成、
  湖水成等ノ如キ天災ニ罹リ地形ヲ變シタルモノ」ノ下ニ「及旱害ニ由リ土性
  硬化シテ田地龜裂シ特殊ノ工事ヲ施スニ非サレハ復舊セサルモノ」ヲ加フ
  〔人見米次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=98

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• 099・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　六時ニ近クナリマシタガ時間ヲ延長致シマスカラ左樣御承知
  ヲ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=99

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• 100・人見米次郎

  ○人見米次郞君　本案ハ地租條例ノ第三條第五項ノ天災ニ依ル荒地ノ種類ヲ明
  記シテアル中ニ、旱魃ノ災害ニ依ルモノモ追加セントスル趣意デアリマス、ソレデ其大體ノコ
  トハ理由書ニ書イテ置キマシテゴザイマスカラ、極ク簡單ニ此處デ說明ヲ致シマスルガ、元來
  此强粘土質ノ田地デアリマシテ、著シキ旱魃ニ遭遇シタトキニハ土質ガ硬化スルモノデア
  リマス、從ッテ其後ノ復舊工事ノ費用ニハ大變ニ澤山ナ金ヲ要スルヤウナ次第デゴザイマ
  シテ、他ノ風害トカ或ハ山崩レ川成等ノモノヽ復舊工事ト敢テ其程度ガ變ラヌヤウナコ
  トニナリマス、現在昨年ノ大旱魃ニ於キマシテ、滋賀縣ニ於ケル早魃被害ノ狀況ヲ申
  述ベマスルナラバ被害ノ反別ガ甲賀郡一郡ダケニ於キマシテ千三百二十八町ト云フヤ
  ウナ被害ノ高ニナッテ居リマス、其內ニ畦堀工事ト申スモノヲ施シマスルモノガ九百七十
  八町、ソレカラ床張工事ト云フモノヲシマスルモノガ三百五十町ト云フ位ナコトデアリマ
  ス、之ニ要スル費用ガドノ位掛ルカト言三マスト、總計ニシマシテ人夫ガ七十六万四千
  人此費用ガ五十三万八千二百圓ト云フ計算デアリマス、一縣ノ旱魃ノ害ニ致シマシ
  テスラ此ノ如クデアリマス、是マデニ政府ノ方ニ於キマシテ往々旱魃ノ時ニ於テハ特別ノ
  取扱ヲ受ケテ居リマス、現ニ明治十六年及二十六年ノ時ノ如キモノハ最モ甚ダシイノデ
  アリマス、政府ガ旱魃ノ被害地ヲ檢査ヲ致シマシテ、一年カラ五年マデノ間ノ免租ヲシ
  テ居ル處モゴザイマス、ソレカラ又三十箇年賦デ五万圓ノ貸付ヲ受ケタコトモアルノデゴ
  ザイマス、所ガ此地租條例ニ明文ガアリマセヌガタメニ、時ニ依リマシテハ稅務署ニ依リ
  マシテ往々解釋ヲ異ニスルノデアリマス、現ニ昨年ノ旱魃ノ如キモノニシマシテモ、大阪ノ
  監督局ト名古屋ノ監督局ト見解ヲ異ニ致シマシテ、損害ノ程度ハ同ジ程度デアリナガ
  ラ、滋賀縣ノ方ハ大阪監督局ノ方ノ檢査ヲ受ケ、三重縣ノ方ハ名古屋監督局ガ贊成
  ヲシナカッタト云フコトデゴザイマス、ソレ故ニ此法律ノ不備ヲ補ハンガタメニ玆ニ一ノ明文
  ヲ加ヘマシタナラバ、此不公平ノ所ガ將來ニ無クナルダラウト思ヒマス(「能ク分ッタ」「簡
  單簡單」ト呼フ者アリ)尙詳細ノコトハ委員會ニ於テ申述ベマスルガ、大體此ノ如キ次第
  デアリマスカラ、希クハ御贊成ヲ願ヒタウゴザイマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=100

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• 101・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ東北六縣田畑地價特別修正案ノ委員ニ付託セラレンコト
  ヲ望ミマス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=101

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• 102・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議アリマセスカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=102

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• 103・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　ソレデハ本案ハ東北六縣田畑地價特別修正法律案ノ委員
  ニ付託致シマス次ハ日程第十七及十八、是ハ同種ノ議案テ內容モ略〓同一デアリマ
  スカラ、一括シテ議題ト致サウト思ヒマス、御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=103

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• 104・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ナケレバ一括シテ議題ト致シマシテ一讀會ヲ開キマス、
  提出者石橋爲之助君
  第十七印紙稅法中改正法律案(石橋爲之助君提出)第一讀會
  印紙稅法中改正法律案
  印紙稅法中左ノ通改正ス
  第四條中「一賣買仕切書印紙稅三錢」ヲ削ル
  第五條中「一金高五圓未滿若ハ金高記載ナキ又ハ非營業者ニ發スル賣買仕
  切書」ヲ「一賣買仕切書」ニ改ム
  第十條中「賣買仕切書」ヲ削ル
  附則
  本法ハ大正三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  第十八印紙稅法中改正法律案(三谷軌秀君外五名第一讀會
  提出)
  印紙稅法中改正法律案
  印紙稅法中左ノ通改正ス
  第四條中「一倉荷質入證券印紙稅三錢」ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  一物又ハ有價證券ノ給付ヲ目的トスル有價證券印紙稅三錢
  第五條中「一金高五圓未滿若ハ金高記載ナキ又ハ運送契約ニ依ラサル送狀」
  ヲ「一運送狀以外ノ送狀」ニ「一金高五圓未滿若ハ金高記載ナキ又ハ」ノ下「非
  營業者ニ發スル賣買仕切書」ヲ「委託賣買ニ依ラサル賣買仕切書」ニ改ム
  附則
  本法ハ大正四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔石橋爲之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=104

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• 105・石橋爲之助

  ○石橋爲之助君　本案ノ內容ハ賣買仕切書ノ印紙稅ヲ免除スルト云フコトデアリマ
  ス、此仕切書ハ從來稅務官吏ノ見解モイロノ〓違ヒマスシ、裁判所ノ見解モ違ヒ、當
  業者ノ見解モ違ヒ、イロ〓〓ナ紛雜ヲ來シテ居リマシテ、最モ取引ノ圓滑ヲ阻碍スルノ
  デアリマスカラ、ソレデ之ヲ免稅ニ致シタイト云フノデゴザイマス、何卒御協賛ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=105

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• 106・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　法橋善作君-居ラレマセヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=106

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• 107・三谷軌秀

  ○三谷軌秀君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=107

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• 108・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　三谷サン御說明デスカー-三谷君
  〔三谷軌秀君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=108

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• 109・三谷軌秀

  ○三谷軌秀君　此印紙稅法改正案ニ付テ極メテ簡單ニ說明致シテ置キマス、先キニ
  石橋君ノ提出ニナッタノト少シ違フノハ賣買仕切書ノ中ニ問屋ノ仕切ル部分ガ殘ル、
  ソレカラ送狀ヲヤハリ免稅ノ區域ニ入レル、其中商法ノ規定スル運送業ダケハヤハリ有
  稅ニスルト云フノト、モウ一ツ商業證券タル者又ハ有價證券ノ給付ヲ目的トスル有價
  證劵、是モ商法ノ規定シテアルノデアリマスガ、此中ノ倉庫劵トカ、貨物引換證トカヽ船
  荷證トカ云フモノハ、旣ニ三錢ノ部ニナッタモノデ、ソレト變リガナイカラ之ヲ三錢ノ部ニ
  設ケタ、是ガ新ニ加ハルコトニナルノデアリマス、ドウカ御贊成ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=109

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• 110・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　第十七ト十八ノ此兩案ハ、日程第十四ト同一ノ委員ニ付託セラ
  レンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=110

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• 111・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=111

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• 112・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ガナケレバ日程第十四印紙稅法中改正法律案ノ委
  員ニ付託スルコトニナリマシタ、次ハ日程第十九、著作權法中改正法律案第一讀會ヲ
  開キマス、石橋爲之助君
  第十九著作權法中改正法律案(石橋爲之助君外一第一讀會
  名提出)
  著作權法中改正法律案
  著作權法中左ノ通改正ス
  第十一條第二號ヲ左ノ如ク改ム
  二新聞紙ニ記載シタル事項ニシテ特ニ轉載ヲ禁スル旨ヲ明記セサルモ
  ノ
  第二十條新聞紙ニ記載シタル電報及雜報ニ限リ特ニ轉載ヲ禁スル旨ヲ明
  記シタリト雖發行ノ日ヨリ三日ヲ經過シタルトキハ其ノ出處ヲ明示シテ
  之ヲ轉載スルコトヲ得
  〔石橋爲之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=112

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• 113・石橋爲之助

  ○石橋爲之助君　本案ノ內容ハ新聞紙ノ記事ニシテ、特ニ轉載ヲ禁ズルト云フ旨ヲ明
  記シテアルモノニ權利ヲ保護スルト云フ主意デアリマス、但シ雜報及電報ノ類ハ長ク轉
  載ヲ禁ズルト云フ必要ハアリマセヌノデ、發行ノ日ヨリ三日ヲ經レバ其出所ヲ明記シテ
  轉載スルコトヲ得ト云フ規定ニ致シタイ、何故ニ斯ウ云フ提案ヲ致シマスカト申シマスル
  ト新聞紙ガ特ニ轉載ヲ禁ズルト云フ旨ヲ揭載イタシマスルモノハ主トシテ海外ヨリ取
  ル所ノ特殊ノ電報デアリマス、ソレハ最モ多クノ經費ヲ要シテ居リ、又其新聞ノ特殊ノ
  材料トシテ尊ブ所ノモノデアリマス、ソレガ今日マデノ實例ヲ見マスト、例ヘパ東京ニ於テ
  其電報ノ著スルヤ直ニ號外ヲ發シマスルト、其本紙ハマグ地方ニ屆カヌ先キニ地方ノ新
  聞ハ東京カラ電話デ以テ其號外ヲ直グ取寄セテ、サウシテ何等ノ斷リモナクシテ自己ノ
  新聞ニ著シク電報ノ如キ體裁ヲ以テ、直ニ發行スルト云フヤウナコトガ行ハレテ居リマ
  ス其タメ肝腎ノ元ノ新聞紙ハ廣ク配布サレテモソレダケノ效力ヲ失フト云フコトニナリ
  マシテ、非常ニ損害ヲ受クルコトニナッテ居リマスカラ、サウ云フ不公平ノコトハ是ハ保護
  シケナレバナラヌ、其權利ヲ保護シナケレバナラヌト云フコトヲ必要トシマスノデ此案ヲ出
  シタ譯デアリマス、何卒御贊成アランコトヲ希望シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=113

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• 114・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=114

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• 115・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　議長指名九名ノ委員ニ付託スルコトニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異識ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=115

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• 116・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ナケレバ中村君發議ノ通リニ決シマシタ、次ハ日程第
  二十、醫師法中改正法律案第一讀會ヲ開キマス濱田政壯君
  第二十醫師法中改正法律案(濱田政壯君外三名提第一讀會
  円
  醫師法中改正法律案
  醫師法中左ノ通改正ス
  第十四條第一項ノ次ニ左ノ二項ヲ加フ
  前項ニ依リ醫術開業前期試驗ニ合格シタル者ハ大正三年十月三十一日迄
  ニ屆出テ特ニ定メタル醫術開業後期受驗資格名簿ニ登錄スルヲ要ス
  受驗資格名簿ニ登錄シタル者ニ限リ大正五年九月迄醫術開業試驗ヲ舉行
  ス
  同條第二項中「前項」ヲ「前三項」ニ改ム
  〔濱田政壯君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=116

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• 117・濱田政壯

  ○濱田政壯君　醫師法中改正法律案ヲ提出致シマシタニ付キマシテ、少シ詳シク申
  上ゲル筈デアリマシタ所ガ、斯ウ云フ場合デアリマスカラ簡單ニ申上ゲテ御贊成ヲ得タイ
  ト思ヒマス、此醫師法ニ依リマシテ醫術開業試驗ガ本年ノ九月限リ廢サルルコトニ極ッ
  テ居リマス、其タメ此法律ノ效果トシテ多數ノ醫學生ニ落伍者ガ出來ルコトニナリマシ
  タ、ソレガ甚ダ不幸ヲ招クト云フコトニナルノデアリマス、卽チ是等ノ落伍生ハ進ムニモ進
  マレズ、又退クニモ退カレズ、所謂進退維谷ルト云フヤウナ生殺シニナル所ノ醫學生ガ此
  結果トシテ出來ルノデアリマス、之ヲ今後二箇年間延長致シマシテソレヲ救ヒタイト云フ
  精神デゴザイマス(「委員付託」ト呼フ者アリ)ドウゾ是ハ此議會ニ於キマシテ此法案ヲ決
  議スルト否トガ全ク學生ノ運命ニナッテ居ルノデゴザイマスカラ、ドウゾ其邊ヲ深ク御高察
  ヲ願ヒマシテ、切ニ滿場一致ノ御贊成ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=117

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• 118・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ日程第九肺結核療養所ノ設置及國庫補助ニ關スル法
  律案ト同一委員ニ付託セラレンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=118

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• 119・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　中村君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=119

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• 120・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ナシト認メマスカラ、ソレデハ本案ハ日程第九ノ肺結核
  療養所ノ設置及國庫補助ニ關スル法律案ト同一委員ニ付託スルコトニ決定致シマシ
  タ、次ハ日程第二十一衆議院議員選舉法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、提
  出者小泉又次郞君
  第二十一衆議院議員選舉法中改正法律案(小泉又第一讀會
  次郞君外二十六名提出)
  衆議院議員選舉法中改正法律案
  衆議院議員選舉法別表中左ノ通改正ス
  神奈川縣橫濱市ノ次ニ
  橫須賀市一人
  長崎縣長崎市ノ次ニ
  佐世保市一人
  新潟縣新潟市ノ次ニ
  長岡市一一人
  高田市人
  三重縣四日市市ノ次ニ
  宇治山田市一人
  愛知縣名古屋市ノ次ニ
  豐橋市一人
  靜岡縣靜岡市ノ次ニ
  濱松市一
  長野縣長野市ノ次ニ
  松本市
  福島縣若松市ノ次ニ
  福島市-
  廣島縣廣島市ノ次ニ
  呉市人
  ヨタク
  大分縣
  大分市一人八
  郡部六
  北海道廳小樽區ノ次ニ
  旭川區一人
  ヲ加フ
  附則
  本法ハ總選舉ヨリ之ヲ施行ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=120

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• 121・小泉又次郎

  ○小泉又次郞君　極簡單デアリマスカラ、自席ニ於テ述ベタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=121

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• 122・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　簡單ナラ宣シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=122

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• 123・小泉又次郎

  ○小泉又次郞君　此案ハ橫須賀市外十市竝ニ本年四月一日ヨリ區制ヲ施行サレマ
  スルトコロノ北海道旭川ヲ合セマシテ、卽チ十一市一區此所ヲ從來ノ法ヲ改メマシテ、
  更ニ之ヲ獨立ノ選舉區ニシタイト云フ法律案デアルノデアリマス、其理由ト致シマシテハ
  此十一市竝ニ一區ヨリシテ商工業者ノ代表者ヲ選舉スルコトガ極メテ至當ナルコトデア
  ル、斯樣ニ信ジテ居リマスルガ故ニ、此案ヲ提出シタ理由デアルノデアリマス、此際ニ附
  加ヘテ申上ゲテ置キタイコトガアルノデアリマス、ソレハ政友會ノ諸君カラ御出シニナッテ居
  リマスルトコロノ衆議院議員選擧法中改正法律案モ、是ト同ジヤウデハアリマスルガ、末
  尾ニ附記シテアリマストコロノ北海道ノ增員ト云フノハ私ハ反對デハナイノデアリマス
  此趣意ニ付テハ贊成デアリマスルガ、此北海道ノ增員ヲスルト云フコトガアレバ獨リ北海
  道ノミナラズ、現在ノ戶數人口ヲ選舉權ニ割當テマシテ、北海道ノ增員ノ如ク增員スベ
  キトコロノ選舉區ハ多々アルノデアリマスルカラ增員ヲ標準トシテ改正セントスルナラバ
  獨リ北海道ノミナラズ他ノ府縣ニ於キマシテモ同樣ニ之ヲ提出セネバナラヌト思ウテ居リ
  マスカラ私ハ此意味ニ於テ此增員ハ後ノ議會若クハ此議會ニ於キマシテモ能ク調査ヲ
  シテ、更メテ增員ノミヲ提出スルノ考ヲ持ッテ居リマスソレガ故ニ政友會諸君ノ御提出
  ニナリマシタ案トハ、此選舉區ヲ獨立ニシテ、卽チ商工業者ノ代表者ヲ出スト云フノ意
  味合ノミノ提案ヲシタノデアリマシテ增員ニ關スル分ハ追テ提出セントスルノ考デアリマス
  カラ、此理由ヲ附加ヘテ申上ゲテ置キマス、御贊成アラムコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=123

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• 124・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ日程十五尾崎行雄君提出ノ案ト同一委員ニ付託セラレム
  コトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=124

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• 125・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　中村君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=125

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• 126・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ナシト認メマス、ソレデハ日程第十五衆議院議員選舉
  法中改正法律案ト同一委員ニ付託スルコトニ決定致シマシタ、、次ハ日程第二十二、農
  工銀行法中改正法律案ノ一讀會ヲ開キマス、提出者西谷金藏君
  第二十二農工銀行法中改正法律案(西谷金藏君外第一讀會
  二名提出)
  農工銀行法中改正法律案
  農工銀行法中左ノ通改正ス
  第一條中「二十圓」ヲ「五十圓以內」ニ改ム
  第四條削除
  第五條削除
  〔西谷金藏君登壇〕
  〔「簡單」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=126

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• 127・西谷金藏

  ○西谷金藏君　極ク短ク申シマス、本案ハ農工銀行法中第一條株式ノ金額ガ二十
  圓トアルノヲ五十圓マデ進ムルコトヲ得ル是ハ御承知ノ通リ農工銀行ハ特殊銀行テゴ
  ザイマスガ故ニ、大藏大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ニ於テスルコトハ素ヨリデゴザイマス、叉
  第四條ヲ削除シ第五條ヲ削除スル、ソレダケナノデアリマス、此第一條ニ付テハ二十八
  議會ニ於テ本員ガ提出致シマシテ、衆議院ハ全會一致ヲ以テ通過シ、政府モ同意セラ
  レ、貴族院ニ於テ通過ノ間合ヲ得ズシテ成立致シマセナンダ、又第四條ノ削除ハ政府
  ガ二十七議會ニ提出致シマシタ當時ハ、未ダ之ヲ全ク削除スルノ時期ニアラズトシテ、局
  部ノ改正ヲシテ通過ヲ致シマシタガ、爾來經濟界ノ發達ニ依リ資本共通ノ必要上之ヲ
  廢止スルノ必要ヲ認メマシタノデ、此第四條第五條共ニ削除スル案ヲ提出致シマシタ、
  ドウゾ御贊成アランコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=127

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• 128・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=128

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• 129・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　中村君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=129

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• 130・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　御異議ナイト認メマス、依テ本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付
  託スルコトニ決定サレマシタ、次ハ日程第二十三、所得稅法中改正法律案、第一讀
  會ヲ開キマス、提出者大西五一郞君
  第二十三所得稅法中改正法律案(大西五一郞君提第一讀會
  〓
  所得稅法中改正法律案
  所得稅法中左ノ通改正ス
  第三條第六項ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ戶主又ハ家族ノ勤勞ニ因ル所得ニシテ其ノ額各四百圓ニ滿タサルモ
  ノハ之ヲ合算セス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=130

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• 131・大西五一郎

  ○大西五一郞君　極ク簡單ニ申シマスガ故ニ、本席ヨリ說明ヲ致サウト思ヒマス、ソレ
  ハ但書ヲ加ヘマス、ソレハ所得稅法ノ第三條ノ六項ノ二デゴザイマス「戶主又ハ家族
  ノ勤勞ニ因ル所得ニシテ其額各四百圓ニ滿タサルモノハ之ヲ加算セス」斯樣ナ但書ヲ
  加ヘマスノデ、是モ要シマスルトコロハ四百圓ヲ以チマシテ今日ハ最低限度ニナッテ居リマ
  スルノニ、家族ノ所得ヲ合セマシテ四百圓トナリシモノ卽チ之ヲ例ヘテ申シマスレバ、其戶
  主ニシテ三百圓ノ年額所得アリ其家族ニシテ百圓ノ所得アリ、而シテ之ヲ四百圓トシ
  テ課稅サレマスコトハ可憐ナル下級社會ニ對シマシテ宜シクナイコトヲ認メマスルノデ、故
  ニ之ヲ合算セヌコトニ致シマシテ、夫等ノモノニ付テ稅ヲ全ク免除致シマス趣意ニ出テ居
  リマス、宜シク御贊成ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=131

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• 132・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ曩ニ提出セラレタル生產奬勵特別免稅法案外一件ト同一
  ノ特別委員ニ付託セラレムコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=132

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• 133・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　中村君ノ動議ニ御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=133

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• 134・關直彦

  ○副議長(關直彥君)　ソレデハ本案ハ生產奬勵特別免除法案外一件ト同一委員
  ニ付託スルコトニ決シマシタ、次ハ日程第二十四、盲人保護法案ノ第一讀會ヲ開キマ
  ス、提出者齋藤珪次君
  〔「反對」ト呼フ者アリ〕
  第二十四盲人保護法案(齋藤珪次君外五名提出)第一讀會
  盲人保護法案
  盲人保護法
  第一條按摩業ハ盲人ニ限リ試驗ノ上免許ヲ與フルモノトス但シ本法施行
  以前按摩業ノ免許ヲ受ケタル者ハ此ノ限ニ在ラス
  第二條地方長官ハ土地ノ狀況ニ依リ特ニ盲人以外ノ者ト雖試驗ノ上按摩
  業ヲ免許スルコトヲ得
  第三條本法施行ニ關スル細則ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  〔齋藤珪次君登壇」
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=134

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• 135・齋藤珪次

  ○齋藤珪次君　盲人保護法案ノ提出者ノ一人ト致シマシテ、私ガ代ッテ極ク大要ヲ
  申述ベマス、案其モノニ付テハ御承知デゴザイマセウガ、本案ハ按摩業ヲ盲人本位ト致
  シタイ考デアリマス
  (副議長關直彥君議長席ヲ退キ議長長谷場純孝君議長席ニ著ク〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=135

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• 136・齋藤珪次

  ○齋藤珪次君　サリナガラ既得權ヲ害ス譯デモナク、又盲人以外ト雖トモ地方長官ハ
  其土地ノ狀況ニ依テ之ニ許スコトモ出來ル斯樣ノ取除ケモアリマス、卽チ盲人ヲ本位
  トシテサウシテ生眼者ハ除外スルト云フノガ本案ノ骨子デアリマス、斯ク吾〓ガ此案ヲ出シマ
  シタニ付キマシテハ種々ノ理由モアリマスルガ、先ヅ大體ニ於テ古來我國ニ於テハ盲人ヲ
  非常ニ保護致シテ、之ニ對シテ按摩業ヲ專業ニ致サセタト云フコトノ先例ヲ復活致シタイ
  ト云フノガ趣意デアル、又社會ノ進步ニ從ッテ生存競爭ガ益ニ盛ニナッテ來ル場合ニ於テ、
  此癈疾者タル盲人ガ今日ノ如ク競爭場裡ニ置カレテハ、到底堪ラレヌノデアルカラシテ、ソ
  レデ之ヲ保護致シタイト一云フノデアル然ルトコロガ現在ノ制度ニ於キマシテハ、盲人ヲ殆ド
  死地ニ陷レルト申シテモ宜カラウト思フ、ナゼナレバ內務省令ニ於テ按摩業ヲ甲乙二種
  ニ區別シテアリマシテ、其甲ナル者ガ生眼者デアッテ目明キデアル乙ナル者ガ盲人デアッ
  テ此者ハ修業年限モ短ク致シテ、ソレカラ學科モ簡易ニ致スト云フコトデ、一面ヲ見マ
  スレバ盲人ハ非常ニ憐ナル形ニ於テ洵ニ是ハ恩惠アル制度ノ如ク見エルノデアリマスケレ
  ドモ、事實ニ於テハ同ジ按摩業ニ致シテ生眼者ハ甲者トシテ優等ナルガ如キヲ示シ、一
  方盲人ハ乙者トシテ劣等ナルガ如キコトヲ示シテ居リマスルガタメニ、サナキダニ身體動
  作ノ自由ヲ缺イテ、免角疎ジ居ラレル上ニ此乙種ト云フ名儀ノ下ニ、盲人ハ一層劣等
  ナリトシテ社會カラ輕蔑サレ、蔑如サレルト云フ狀況ニナッテ居ルノデアリマス、故ニ是ハ盲
  人ヲ本位ト致シテ斯ノ如キ區劃ノナイ區別ノナイヤウ、按摩業ハ盲人ガ主ナルモノト云フ
  コトニ復古致シテ、サウシテ此營業ヲ發逹セシメタイト云フノデアリマシテ、今之ヲ以テ人ノ
  自由、營業ノ自由ヲ奪フナドト生眼者ガ申シテ居リマスルケレドモ、御承知ノ通リ盲人ハ
  癈疾ノ者デアル、此者ハ普通ノ職業ハ出來ナイノデアル、而シテ此按摩業ハ洵ニ微々タ
  ル職業デアル、サウシテ盲人ニ向ッテ最モ適當ナル職業デアル、纖弱ナル手先ニ於テモ爲
  シ得ラレル職業デアルカラ、社會カラ此纖弱ナル職業ヲ一ツ取ッテ、之ヲ盲人ノ專業ニ
  致スト雖モ、決シテ是ガ天賦ノ營業ヲ害シ自由ヲ害スト云フガ如キ範圍デナイト私ハ信
  ズルノデアリマス(拍手起ル)況ヤ一方ニ於テ取除ガアッテ既得權ヲ害サズ、將來ト雖モ
  或ル程度マデハ生眼者ニモ許スト云フ以上ハ、決シテ營業妨害ニアラズ、一面ニ此不幸
  ナル盲人ヲ救フノ法案デアリマスカラ、ドウカ、御贊成アッテ通過アランコトヲ望ミマス(拍手
  起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=136

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• 137・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=137

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• 138・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=138

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• 139・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=139

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• 140・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=140

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• 141・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ナイト認メマス、中村君ノ動議ノ通リ決シマス-
  日程第二十五、國有土地森林原野下戾法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマスー
  伊藤祐一君-關信之介君
  第二十五國有土地森林原野下戾法中改正法律案第一讀會
  (伊藤祐一君外六名提出)
  國有土地森林原野下戻法中改正法律案
  國有土地森林原野下戾法中左ノ通改正ス
  第一條第一項中「明治三十三年六月三十日迄」ヲ「大正三年十二月三十一日迄」
  5枚入
  同條第三項中「未定地脫落地」ノ下ニ「地上權ト認ムヘキモノ」ヲ加フ
  第二條ニ左ノ二號ヲ加フ
  七入會地ニシテ國有ト認ムヘカラサルモノ
  八社寺上地ニシテ朱、黑印地ニ非サルモノ
  〔關信之介君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=141

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• 142・關信之介

  ○關信之介君　國有土地森林原野下戾法ノ改正案ニ就キマシテ、提出ノ理由ヲ簡
  單ニ說明致シマス、本改正ノ要旨ハ「第一條第一項中「明治三十三年六月三十日
  迄」ヲ「大正三年十二月三十一日迄」ニ改ム「同條第三項中「未定地脫落地」ノ下ニ
  「地上權ト認ムヘキモノ」ヲ加フ「第二條ニ左ノ二號ヲ加フ「七、入會地ニシテ國有ト認
  ムヘカラサルモノ」「八、社寺上地ニシテ朱黑印地ニ非サルモノ」斯樣ニ改正致シタイ趣意
  デアリマス、御承知ノ如ク三十二年ノ法律九十九號ノ國有土地森林原野下戾法ト
  申シマスルモノハ、維新後府縣設置ノ當時、社寺上地其他ノ上地處分ヲ爲スニ際シ、
  又地租改正ヲ爲スニ際シマシテ、其當時ノ吏員等ガ誤ッテ民有地ヲ官有地ニ編入スル
  ノ取調ヲ爲シ、爲メニ人民ガ從來持來ッタトコロノ所有權ヲ失ハシメタガタメニ(「簡單々
  々」ト呼フ者アリ)此所有權ヲ喪失シタ者ニ對シテ此下戾法ニ依リ下戾ノ申請ヲ爲サ
  シメ、而シテ此下戾法ノ規定ノ要項ニ適合致スモノニハ是ガ下戾ヲ爲シテ、而シテ此現
  ニ國有トナッテ居ルモノヲバ皆下戾ヲ爲シテ、其所有權喪失者ヲ救濟スルノ趣旨ニ外ナラ
  ヌ次第デアリマス、然ルニ明治三十二年法律第九十九號ハ發布後實施期限ト云フモ
  ノガ僅ニ七八箇月ノ短期間デアッタガタメニ、僻陬ノ村落ニ居リマス者ハ其法律ノ期
  限內ニ申請ヲ爲サヾルガタメニ、遂ニ其恩典ニ浴スルコトガ出來ナイ、折角誤ヲ正シテ
  此所有權ヲ失ッタ者ヲ救フト云フトコロノモノガ、一面ハ此法律ノ恩澤ニ浴シテ所有權
  ヲ得ルコトガ出來、又一面ハ此所有權ヲ失フト云フヤウナコトニナリマシテハ、此下戾法
  ニ依テ救濟スルト云フトコロノ趣旨ニ甚ダ反スルコトニナリマシタ次第デアリマス(「贊成」
  ト呼フ者アリ)故ニ此場合ニ於テ本案ハ大正三年十一一月三十一日迄此期限ヲ延期
  致シマシテ、而シテ其間ニ曩ニ申請ヲ爲サナイデ此恩澤ニ浴セザル者ニ對シテハ、此下戾
  ノ申請ノ權利ヲ得セシメルト云フノガ第一ノ趣意デゴザイマス、ソレカラ第二ハ地上權
  永久的地上權トモ認ムベキモノニシテ、全ク人民ガ此共有ノ權利ヲ有シナイ者ガアリマ
  ス、然ルニ此地上權ヲ有スル者ニ就テ此所有權ヲ與ヘヌガタメニ、非常ニ是等ノ地上權
  ヲ有シテ居リマスル者ガ、甚ダ困ッテ居ルト云フヤウナコトデアリマスカラ、是等ノ者ニモ例
  外トシテ此下戾法ヲ準用シテ所有權ヲ下付シテヤリタイト云フノガ趣意デアリマス、ソレカ
  ラ入會地ニシテ國有ト認ムベカラザルモノ、入會地ト云フモノハ御館林或ハ御林トカ云
  フモノハ免ニ角、其他ノモノハ大抵是ハ民有ノモノガ多カッタノデアリマス、然ルニ地租改
  正ノ當時一〓ニ入會地ト云フモノガ殆ド官有ニ編入致シマシテ、此入會地ヲ失ッタ
  ガタメニ秣或ハ柴草薪炭等ノ採取權ヲ失ッテ、甚ダ難澁ヲ致シテ居ル者ガ澤山アリマ
  ス、故ニ此規定ヲ此處ニ加ヘマシテ、而シテ是等ノ者ニシテ全ク元ト國有デナイモノデ
  ツタ場合ニハ、此下戾ヲ許スコトニ致シタイト云フノデアリマス、ソレカラ其次ニハ社寺上
  地ニシテ朱黑印地ニアラザルモノニ就テハ、行政裁判所ニ於テハ前ニ是等ノモノニ就テ、
  農商務省ガ下戾不許可ノ處分ヲ爲シタノヲ認メテ皆敗訴ニ歸セシメ後ニ半ヨリ以上
  ニ至ッテハ之ニ下戾ヲ許シタト云フ甚ダ偏頗ナ判決ガ出來テ居リマス、ソレデ前ニハ下
  戾スコトガ出來ナカッタモノガ、後ニ至ッテ下戻スコトガ出來ルト云フ判例ニナリマシテ、同
  一精神ノモノニ就キマシテ、一ハ下戾ノ恩澤ニ浴シ、一ハ下戾ノ恩澤ニ浴スルコトガ出
  來ナイト云フコトデアリマスカラ、此一項ヲ加ヘテ此等ノ爲メニ甚ダ偏頗ナ處置ヲ受ケテ
  苦ンデ居ル者ヲ救濟スルタメニ、斯樣ニ致シタイノデアリマス、ドウカ御審議ノ上御贊成
  アランコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=142

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• 143・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=143

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• 144・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=144

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• 145・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナケレバ中村君動議ノ通リ決シマス-日程第
  二十六、提出者原田十衞君外二名提出、公共團體ノ管理スル公共用土地物件ノ
  使用ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマス
  第二十六公共團體ノ管理スル公共用土地物件ノ使用第一讀會
  ニ關スル法律案(原田十衞君外二名提出)
  公共團體ノ管理スル公共用土地物件ノ使用ニ關スル法律案
  第一條公共團體ニ於テ管理スル道路、公園、堤塘、溝渠其ノ他公共ノ用ニ供
  スル土地物件ヲ濫ニ使用シ又ハ其ノ管理ニ關スル規則ニ基キ發シタル命
  令竝許可ノ條件ニ反シテ使用スル者ニ對シ管理者タル行政廳ハ其ノ使用
  ヲ禁止若ハ制限シ及地上物件ノ撤去其ノ他原狀囘復ノ爲必要ナル措置ヲ
  命スルコトヲ得
  第二條前條ノ場合ニ於テハ行政執行法第五條及第六條ノ規定ヲ準用ス
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=145

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• 146・原田十衞

  ○原田十衞君　簡單デアリマスカラ當席カラ說明致シタイト思ヒマス、本案ノ理由ハ議
  案ノ說明ノ處ニ書イテアル通リデアリマスガ、尙ホ詳細ノコトハ委員會ニ於テ說明致シタ
  イト思ヒマス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=146

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• 147・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ希望致シ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=147

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• 148・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議ニ御異議ガアリマセヌカ
  〔異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=148

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• 149・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナケレバ議長指名九名ノ特別委員ニ付託スルコ
  トニ決シマス-日程第二十七、耕地整理法中改正法律案大橋松二郞君外二名
  提出、第一讀會ヲ開キマス
  第二十七耕地整理法中改正法律案(大橋松二郞君第一讀會
  外二名提出)
  耕地整理法中改正法律案
  耕地整理法中左ノ通改正ス
  第十四條第一項中「從前ノ地域ニ依リ其ノ」ノ下ニ「五分ノ一ヲ超過シタル別
  段ノ」ヲ加フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=149

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• 150・熊谷五右衞門

  ○熊谷五右衞門君　簡單デアリマスカラ此席カラ申シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=150

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• 151・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　許可致シマス、自席デ宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=151

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• 152・熊谷五右衞門

  ○熊谷五右衞門君　此耕地整理法ノ第十四條ニ耕地整理ノ面積五分ノ一以上ニ
  達スル地目變換等ノアッタ場合ニハ、其五分ノ一ニ達スルマデノ分ハ思典ヲ受クルコトニ
  ナッテ居リマスガ、五分ノ一以上ニナリマスト此思典ヲ受ケルコトガ出來ナイノデアリマス、
  因テ五分ノ一以上ニナッタモノモ五分ノ一以上ニナルマデノモノモ、此恩典ヲ受ケラレル
  ヤウニシタイト云フ趣意デアリマスカラ、ドウカ之ニ御贊成ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=152

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• 153・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ日程第五ノ耕地整理法中改正法律案ト同一ノ委員ニ付
  託セラレンコトヲ望ミマス
  (「贊成々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=153

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• 154・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議ニ御異議ガアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=154

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• 155・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナイト認メマスカラ中村君動議ノ通リ決シマス-
  日程第二十八、高木益太郎君提出、議院法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス
  第二十八議院法中改正法律案(高木益太郎君提出)第一讀會
  議院法中改正法律案
  議院法中左ノ通改正ス
  第五十四條ノ二甲議院ノ提出シタル議案ニシテ乙議院ニ移リ委員ニ付託
  セラレタルトキハ其ノ發議者タル議員ハ乙議院ノ委員會ニ出席シ提案ノ
  趣旨ヲ辯明スルコトヲ得

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=155

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• 156・高木益太郎

  ○高木益太郞君　兩院議員ガ互ヒニ提案ノ趣意ヲ委員會ニ於テ說明ヲシタイト云フ
  改正案デアリマシテ、兩院ノ意思ヲ疏通スルタメニ必要ナルコトヽ思ヒマスカラ、宜シク御
  審議ヲ煩ハシタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=156

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• 157・横田千之助

  ○橫田千之助君　簡單ニ質問致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=157

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• 158・高木益太郎

  ○高木益太郞君　簡單ニ答辯致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=158

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• 159・横田千之助

  ○橫田千之助君　憲法五十四條ニ、其議院ノ議員デナイ人ガ其席ニ出テ發言スル
  場合ニ付テノ制限ガアリマスガ、單ニ議院法ノ改正ダケデ此目的ヲ達スルト云フ御考デ
  御提案ニナッタノデアリマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=159

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• 160・高木益太郎

  ○高木益太郞君　私ノ解スル所ニ依リマスト、橫田君ノ仰ニナッタ條文ハ本會ノ議場ダ
  ケノコトデアッテ、委員會ハ含マヌモノト解釋致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=160

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• 161・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ希望シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=161

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• 162・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　今中村君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=162

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• 163・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナケレバ其通リ決シマス-日程第二十九、高
  木益太郞君外一名提出、刑事訴訟法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、高木
  益太郞君
  刑事訴訟法中改正法律案(高木益太郞君第一讀會
  第二十九外一名提出)
  刑事訴訟法中改正法律案
  刑事訴訟法中左ノ通改正ス
  第四十八條ノ二第二十條第二十一條ノ一一第九十二條ノ二第九十五條乃至
  第九十七條及ヒ第百三十一條ノ規定ハ檢事、司法警察官、稅務官、林務官其
  他ノ公務員犯罪捜査ニ關スル書類作成ノ場合ニ之ヲ準用ス
  第七十五條ノ二勾留狀ヲ執行シタル時ヨリ一箇月ヲ經過シタルトキハ豫
  審判事ハ被〓人ノ請求ニ依リ又ハ職權ヲ以テ其勾留ヲ繼續シ又ハ被告人
  ヲ放免シ若クハ保釋ヲ許ス旨ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
  豫審カ終結スルニ至ル迄ハ順次一箇月每ニ前項ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
  第七十五條ノ三公訴ノ提起アリタル時ヨリ重罪事件ニ付テハ四箇月其他
  ノ事件ニ付テハ二箇月ヲ經過スルモ尙豫審ノ終結ニ至ラサルトキハ被告
  人ハ豫審判事ノ屬スル地方裁判所刑事部ニ對シ速ニ豫審ヲ終結スヘキコ
  トノ命令ヲ發セムコトヲ請求スルコトヲ得
  地方裁判所刑事部ハ豫審判事ノ意見ヲ求メタル上決定ヲ以テ一定ノ期間
  內ニ豫審ヲ終結ス可キコトヲ命スヘシ
  前項ノ期間ハ豫審判事ノ申立ニ依リ之ヲ延長スルコトヲ得
  第九十二條ノ二被告人其他ノ豫審調書ニハ供述人ヲシテ其各葉ニ契印セ
  シメ且插入削除及ヒ欄外ノ記入アルトキハ之ニ認印セシムルコトヲ要ス
  第九十三條ニ左ノ一項ヲ加フ
  豫審判事ハ被告人ヲ訊問スルニ先チ公訴事實ヲ告知スルコトヲ要ス
  第百九十四條第二項ヲ左ノ如ク改ム
  陪席判事、檢事及辯護士ハ裁判長ニ告ケ證人及被告人ヲ訊問スルコトヲ
  得
  第百九十八條ニ左ノ一項ヲ加フ
  被〓人ノ利益ノ爲唯一ノ證據方法ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ必ス之
  カ取調ヲ爲スコトヲ要ス
  第二百三條刑ノ言渡ヲ爲スニハ左ノ事項ヲ明示シ且法律ヲ適用シ其理由
  ヲ付スルコトヲ要ス但控訴裁判所ハ原判決理由ノ一部又ハ全部ヲ援用ス
  ルコトヲ得
  第公訴事實及爭〓ノ摘示
  第二裁判所ノ認定シタル犯罪構成要件、犯罪ノ日時、場所及ヒ之ヲ認メ
  タル證據
  第三攻擊防禦ニ關スル重要ナル證據方法採否ノ理由
  第四累犯及刑ノ量定ニ關スル情狀竝其證據
  第二百十九條第二項中「必要ナル」ヲ「內容ヲ證據トスル」ニ改ム
  第二百六十九條ニ左ノ一一號ヲ加フ
  第十一重要ナル爭〓ニ關スル證據調ノ申請ヲ却下シタルトキ
  第十二不當ニ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ爲ササルトキ
  第二百七十九條ニ左ノ一項ヲ加フ
  第二百四十五條第二百四十七條及第二百四十八條ノ規定ハ上〓趣意書提
  出ノ場合ニ之ヲ準用ス
  コミコミf

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• 164・高木益太郎

  ○高木益太郞君　本案提出ノ理由ハ詳細ニ委員會デ申シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=164

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• 165・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=165

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• 166・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 167・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナケレバ中村君發議ノ通リ決シマス-日程第
  三十、髙水正年君外一名提出、明治二十三年法律第二十七條中改正法律案ノ第
  一讀會ヲ開キマス、高木正年君
  第三十明治二十三年法律第二十七號中改正法律案第一讀會
  (高木正年君外一名提出)
  明治二十三年法律第二十七號中改正法律案
  明治二十三年法律第二十七號中左ノ通改正ス
  第三條委任經理ニ屬スル給與ノ殘金、廢物賣却代金及補償金ハ各〓其費目
  ニ屬スル積立金ト爲シ各〓其費目ニ於テ之ヲ使用スルコトヲ得
  第五條削除
  第六條政府ハ每年總決算ト共ニ委任經理ニ係ル積立金現在高ヲ帝國議會
  ニ報告スヘシ
  附則
  本法ハ大正三年度ヨリ之ヲ施行ス
  從來ノ積立金ハ各〓其費目ニ分割スヘシ其分割方法ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

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• 168・高木正年

  ○高木正年君　是ハ陸軍ノ委任經理ニ關スル改正ノ法案デアリマス、大體主ナル眼
  目ト致シマシテハ、委任經理ハ會計檢査院ノ認可ヲ經ナイコトヽナッテ居リマス、ソレヲ
  削除スルト云フコトガ第一ノ趣意デアリマス、其他ハ委任經理ニ依ルトコロノ項目ハ、其
  項目ニ於テ之ヲ使用シテ他ニ流用スルコトヲ得ナイモノデアリマスカラ、每年總決算ト共
  ニ會計檢査院ノ認可ヲ經テ帝國議會ニ報告スベシト云フノガ、改正ノ三箇條ノ趣意デ
  アリマスカラ、ドウカ御贊成ヲ願ヒマス

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• 169・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

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• 170・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=170

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• 171・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　御異議ガナケレバ中村君動議ノ通リ決シマス
  日程第三十一號、石黑磐君提出、市制町村制中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス
  第三十一市制町村制中改正法律案(石黑磐君提出)第一讀會
  市制町村制中改正法律案
  市制町村制中左ノ通改正ス
  市制第十條中及町村制第八條中「第二項乃至第五項」ヲ削ル
  市制第十八條第二項第二號「有給吏員」ノ下ニ「及市ノ囑託事務ヲ取扱ヒ常ニ
  其ノ手當ヲ受クル者及町村制第十五條第二項第一一號「有給吏員」ノ下ニ「及町
  村ノ囑託事務ヲ取扱ヒ常ニ其ノ手當ヲ受クル者」ヲ加フ
  市制第二十七條第一項中及町村制第二十四條第一項中「代人ヲ出シテ選舉
  ヲ行フコトヲ得」ノ下ニ「盲者啞者ニシテ文字ヲ書スル能ハサル者亦同シ」ヲ
  加フ

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• 172・石黒磐

  ○石黒磐君　本案ヲ提出致シマシタノハ、市制ノ第十條及町村制第八條ノ規定ハ
  必要ナクシテ害ノアルモノト思ヒマスカラ、削除スルコトニシタイノデアリマス、詳シイコトハ委
  員會テ申述ベマス、其次ノ市制第十八條竝ニ町村制第十五條第二項第二號中ニアル
  囑託員ナルモノハ、殆ド俸給ト同樣ノ手當ヲ受ケテ市町村ノ事務ニ從事シテ居ル、尾崎君
  ノ說明セラレタノト殆ド趣意ハ同ジコトデアリマスガ、非常ニ困ヲテ居ル事實モアリマス、是
  ハ尙ホ委員會デ詳シク說明致シタイト思ヒマス、次ニ市制第二十七條、是ハ盲啞者ニ
  モ選擧權ヲ代理ヲ以テ許スト云フノデアリマス、是モ亦委員會デ詳シク申シマス

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• 173・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02119140310&spkNum=173

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• 174・長谷場純孝

  ○議長(長谷場純孝君)　中村君ノ動議ニ御異議ガナイト認メマスカラ其通リ決シマ
  ス、今日ハ是ニテ散會
  午後六時三十一分散會
  衆議院議事速記錄第二十號正誤
  頁段行誤正
  四三四下一三千七百万以上五千七百万以上
  一四十二年度分ヨリー四十二年度ヨリ大正二年度分ヨリ-大正二年度ヨリ
  四三五上實行スルト云フコトヲ四十三年ヨリ實行スルト云フコトヲ大正三年ヨリ

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