第35回帝国議会　衆議院　本会議　第9号　大正3年12月22日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　大正三年十二月二十二日（火曜日）午後一時十七分開議
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  　　議事日程　第八號　大正三年十二月二十二日
  　　　　午後一時開議
  　　　　　　質問
  　　　一　銀行業取締に關する質問（人見米次郎君提出）
  　　　二　選擧人名簿調製に關する質問（原眞澄君提出）
  　　　三　對支外交に關する質問（伊東知也君提出）
  　　　四　内閣總理大臣の官紀紊亂に關する質問（横田千之助君提出）
  　　　五　水産講習所移管に關する質問（三浦覺一君提出）
  　　　六　移民政策に關する質問（西村丹治郎君提出）
  　　　七　靜岡縣政に關する質問（松城兵作君提出）
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  　　第一　衆議院議員選擧法中改正法律案（關直彦君外四名提出）　　　　　　第一讀會
  　　第二　蠶絲業法中改正法律案（高津仲次郎君外四名提出）　　　　　　　　第一讀會
  　　第三　營業税法廢止法律案（高木益太郎君外五名提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　　第四　地租條例中改正法律案（高木益太郎君外四名提出）　　　　　　　　第一讀會
  　　第五　社寺上地下戻に關する法律案（小川平吉君外一名提出）　　　　　　第一讀會
  　　第六　刑法中改正法律案（宮古啓三郎君外六名提出）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第七　刑事訴訟法中改正法律案（宮古啓三郎君外六名提出）　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第八　軍人恩給法中改正法律案（森茂生君外一名提出）　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第九　齒科醫師法中改正法律案（清水市太郎君外一名提出）　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十　實用新案法中改正法律案（伊東知也君外二名提出）　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十一　田畑地價修正に關する建議案（有田温三君外三名提出）
  　　第十二　中學校の法制經濟科に關する建議案（相島勘次郎君提出）
  　　第十三　府縣税及市町村税制限に關する建議案（石黒磐君外二名提出）
  　　第十四　陸軍幼年學校廢止に關する建議案（石黒磐君外四名提出）
  　　第十五　熱田神宮禮遇復興に關する建議案（石黒磐君外二名提出）
  　　第十六　東方調査局設置に關する建議案（伊東知也君提出）　　　　　　　（委員長報告）
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• 001・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　諸般ノ報告ヲ致サセマス
  〔書記朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル識案左ノ如シ
  東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ据置運轉資本增加ニ關スル法律案
  (第一號)大正三年度歲入歲出總豫算追加案
  (第四號)大正四年度歲入歲出總豫算追加案
  臨時軍事費豫算追加案
  一貴族院ヨリ受領シタル政府提出案左ノ如シ
  畜產組合法案
  一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  大正三年十二月二十二日
  內閣總理大臣伯爵大隈重信
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員人見米次郞君提出銀行業取締ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
  候
  (別紙)
  衆議院議員人見米次郞君提出銀行業取締ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  普通銀行ノ監督ニ就テハ從來成ル可ク法規上ノ拘束ヲ加ヘス自然ノ發達ニ委スル
  ノ方針ヲ採リ來リタルモ我國銀行業ノ現狀ニ顧ルニ遺憾ノ〓少ナカラサルヲ以テ之カ
  監督ヲ嚴ニスルノ必要ヲ認メ之ニ關スル經費增額ヲ大正四年度總豫算ニ揭上セリ
  貯蓄銀行ノ制度ハ不備ノ〓少ナカラス近時据置預金等ノ名ヲ以テ長期預金ヲ取
  扱フ者簇生シ其ノ弊害少ナカラサルヲ以テ之カ取締ニ關スル改正法律案ヲ具シ本期
  議會ニ提出スル見込ナリ
  右及答辯候也
  大正三年十二月二十二日
  大藏大臣若槻禮次郞
  大正三年十二月二十二日
  內閣總理大臣伯爵大隈重信
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員小西和君外一名提出米價調節ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
  候
  (別紙)
  衆議院議員小西和君外一名提出米價調節ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  本邦主要食物タル米ノ價格屢々激變スルニ付テハ政府ニ於テモ之レカ調節ヲ圖ルノ
  必要アリト認ム而シテ目下其ノ平準ヲ保タシムル方法ニ付特ニ省內ニ委員ヲ設ケテ
  愼重審議中ニ屬ス
  右及答辯候也
  大正三年十二月二十二日
  農商務大臣子爵大浦兼武
  大正三年十二月二十二日
  內閣總理大臣伯爵大隈重信
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員八木逸郞君提出傳染病〓究所移管ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
  差進候
  (別紙)
  衆議院議員八木逸郎君提出傳染病〓究所移管ニ關スル質問ニ對スル答
  辯書
  一傳染病〓究所ノ移管ハ行政整理文政統一ノ趣旨ニ出ツ
  二傳染病〓究所ハ傳染病ニ關スル學理ノ〓究ヲ主タル目的トスルモノタルヲ以テ
  同シク醫學上ノ〓究ヲ掌ル所ノ東京帝國大學醫科大學ト十分ナル連絡ヲ
  保チ互ニ相扶ケテ〓究上ノ進步ヲ圖ルヲ適當トス故ニ〓究所ハ明年度ヨリ現在
  ノ組織ノ儘之ヲ東京帝國大學ノ所屬トスルノ趣旨ヲ以テ先ツ之ヲ文部省ノ所
  管ニ移シタルナリ所謂文政ノ統一ナルモノハ卽チ此ノ意味ニ外ナラス而シテ傳染
  病〓究所ハ學理〓究ノ外衞生行政ニ關スル事項ヲモ處理スルモノナル故ニ
  此等ノ事項ニ付テハ今後モ內務大臣ノ指揮監督ヲ受クルコトヽシ以テ衞生行
  政上支障ナカラシメンコトヲ期セリ
  三傅染病〓究所ノ移管ハ其ノ組織及〓究方法ニ何等ノ變更ヲ及ホスモノニ非サ
  ルカ故ニ〓究所ノ學術〓究ニ對スル特性ナルモノアリトスルモ其特性ハ移管ノ
  爲ニ毫モ影響ヲ受クルコトナシ
  四質問ノ意若シ文政統一ノ意義如何トイフニ在ラハ第二ニ述ヘタル所ニ依リテ了
  承セラレタシ
  五政府ハ初ヨリ主トシテ傳染病ニ關スル學理ヲ〓究セシムルカ爲ニ〓究所ヲ設立
  シタルニ外ナラス而シテ今囘ノ移管ハ益〓此ノ〓究ニ便セントスルモノナルカ故ニ
  毫モ〓究所設立ノ歷史ニ背反スルモノニ非ス
  移管ノ問題ハ內閣ニ於テ審議ノ上決定シタルモノナリ
  七六移管ニ關シ〓究所ノ當事者ノ意見ヲ徵セサリシハ前述ノ如ク今囘ノ移管タル
  單ニ其ノ所屬ヲ改ムルニ止マリ內部ノ組織及〓究方法等ニ何等ノ變更ヲ加フ
  ルモノニ非サルカ故ニ特ニ當事者ノ意見ヲ聞クノ必要ヲ認メサリシニ因ル毫モ學
  問ノ權威ヲ無視シ學者ヲ尊重セサルノ精神ニ非ス
  八質問ノ如キ事實ナシ
  九質問ノ如キ事實ナシ
  右及答辯候也
  大正三年十二月二十三日
  內務大臣伯爵大隈重信
  文部大臣法學博士一木喜德郞
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  質屋取締法中改正法律案
  提出者光森德治君
  運河法中改正法律案
  提出者漆昌巖君
  衆議院議員選舉法中改正法律案
  提出者翠川鐵三君岩岡伊代治君
  蠶絲業救濟補償法案
  提出者戶水寛人君日下義雄君西谷金藏君
  高橋光威君中倉万次郎君三谷軌秀君
  森田俊左久君小坂順造君小山完吾君
  井上篤太郎君
  米價調節所法案
  提出者戶水寬人君日下義雄君西谷金藏君
  高橋光威君中倉万次郞君三谷軌秀君
  森田俊左久君
  羽越鐵道建設ニ關スル建識案
  提出者加藤勝彌君長晴登君髙橋光威君
  小林源藏君戶狩權之助君佐藤信古君
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
  靜岡縣政ニ關スル質問
  提出者松城兵作君
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
  一去十九日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
  巡查看守退隱料及遺族扶助料法中改正法律案
  相川久太郞君森田俊左久君國早光川六三郞君
  鈴木巖君太田直次君五郞君
  〓水隆德君犬飼源太郞君高野金重君
  衆議院議員選舉法中改正法律案
  則元由庸君岸本賀昌君原眞澄君
  熊谷五右衞門君津島源右衞門君齋藤隆夫君
  小泉又次郞君大內暢三君田中善立君
  三國港護岸施工ニ關スル建議案
  松田吉三郞君熊谷五右衞門君岸本賀昌君
  金子圭介君佐藤信古君眞舘貞造君
  本田恆之君山谷虎三君八田裕二郞君
  置賜輕便鐵道建設ニ關スル建議案外二件
  長晴登君遠藤良吉君肥後靜雄君
  高島茂平君早川六三郞君竹村欽次郎君
  松村時次君伊東知也君松本恆之助君
  瓦斯事業取締法制定ニ關スル建議案
  稻茂登三郞君佐藤信古君岩岡伊代治君
  島田俊雄君堀內啓治君鈴木寅彥君
  安東敏之君高木益太郞君才賀藤吉君
  棉花栽培奬勵ニ關スル建議案
  井上篤太郞君三浦盛德君田邊熊一君
  金子圭介君西風重遠君山道襄一君
  山宮藤吉君靑地雄太郞君岩下〓周君
  大阪臨港鐵道速成ニ關スル建議案
  三谷軌秀君秋岡義一君法橋善作君
  則元由庸君渡邊祐策君七里〓介君
  岩崎安次郞君相島勘次郞君大西五一郞君
  港灣政務統一ニ關スル建議案
  井上敏夫君米田穰君本出保太郞君
  田代進四郞君福井準造君川合直次君
  宇佐美寶君守屋此助君片桐酉次郞君
  又去十九日印紙稅法中改正法律案外一件委員小山田信藏君辭任ニ付其補關
  トシテ高津仲次郎君、國債基金特別會計法中改正法律案委員本出保太郞君、同
  委員西谷金藏君辭任ニ付其補闕トシテ堀切善兵衞君、兒玉亮太郞君ヲ議長ニ於
  テ選定セリ
  一委員長及理事左ノ通當選セラレタリ
  大嘗祭齋田ノ土地免租ニ關スル法律案委員會
  委員長早川龍介君理事增田穰三君
  農工銀行法中改正法律案委員會
  委員長恆松隆慶君理事竹村欽次郎君
  伊藤英一君
  巡查看守退隱料及遺族扶助料法中改正法律案委員會
  委員長森田俊左久君理事高野金重君
  衆議院議員選擧法中改正法律案委員會
  委員長則元由庸君理事岸本賀昌君
  三國港護岸施工ニ關スル建議案委員會
  委員長熊谷五右衞門君理事八田裕二郞君
  棉花栽培奬勵ニ關スル建議案委員會
  委員長井上篤太郞君理事靑地雄太郞君
  大阪臨港鐵道速成ニ關スル建議案委員會
  委員長三谷軌秀君理事相島勘次郞君
  〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス)
  銀行業取締ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年十二月八日
  提出者人見米次郞贊成者關直彥
  外三十二人
  銀行業取締ニ關スル質問主意書
  近來銀行業ノ監督緩漫ニ流ルルノ嫌アリ其ノ結果預金吸收ニ恐ルヘキ競爭ヲ生シ
  往々破產ヲ來シ一般財界ヲ紊亂シ其ノ弊頗ル大ナリ之ニ對スル當局者ノ取締方針
  如何
  右及質問候也
  內閣總理大臣ノ官紀紊亂ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年十二月十四日
  提出者橫田千之助贊成者長晴登
  外二十九人
  內閣總理大臣ノ官紀紊亂ニ關スル質問主意書
  一大正三年九月十八日內閣總理大臣大隈伯カ東京市ニ於テ發行スル新聞紙ノ
  主ナル記者八名ニ對シ外務省令第一號ノ旨趣ニ背戾スル事項ヲ記錄シタル覺書
  ヲ交付シ及同十月六日全國新聞記者同盟倶樂部實行委員十八名ニ對シ江木
  內閣書記官長立合ノ上外務省令第一號ノ旨趣ニ背戾スル事項ヲ宣言シ其ノ實
  行ヲ公約シタル行爲ハ內閣官制ノ規定ニ違反シ官紀紊亂ノ太シキモノナリト思料
  ス政府ノ所見如何
  一前揭二囘ノ首相ノ宣言公約ニ依リ外務省令第一號ノ規定ニ基ク當局大臣ノ行
  使スル權能ハ毫末モ拘束ヲ受ケサルモノナリヤ政府ノ所見如何
  一内閣總理大臣大隈伯ノ行爲果シテ內閣官制ニ違反シタルモノナリトセハ總理大
  臣以下各國務大臣ハ之ニ對シ如何ナル責任ヲ負ハムトスルヤ
  右及質問候也
  選舉人名簿調製ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年十二月十二日
  提出者原眞澄賛成者佐々木文一
  外三十人
  選舉人名簿調製ニ關スル質問主意書
  市町村ノ公民權卽チ市町村會議員ノ選舉權ハ市制第二十一條、町村制第十八
  條ニ市町村長ハ「選擧期日前六十日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ選舉人ノ資幣ヲ
  記載セル選舉人名簿ヲ調製スヘシ」ト規定シタルヲ以テ各府縣ノ市町村長ハ選舉人
  名簿調製ニ際シ所得稅ノ如キハ每年政府ノ決定ニ依リ異動アリト雖前年度分ノ決
  定ヲ受ケタル者ニシテ其ノ年度分ノ決定ヲ見ルマテハ引續キ納稅資格アル者トシテ有
  權者ト見做シ來レル潰例ナリシナリ之レ選舉權ヲ尊重スルノ趣旨ニシテ所得稅決定
  前ナルノ理由ヲ以テ納稅資格無シト斷定スルカ如キハ徒ニ理論ニ拘泥シテ事實完全
  ニ選擧權ヲ有スル者ニ對シ不法ノ推定ニ依リ貴重ナル選擧ノ權利ヲ剝奪スルノ結果
  ヲ生スルヲ以テナリ然ルニ大正二年法律第十三號ヲ以テ所得稅法ヲ改正シタル結
  果納稅額ニ異動アルノミナラス納稅資格ヲ喪失スルモノヲ生シ岐阜縣ニ於テハ同年
  七月市町村會議員ノ選舉期ニ該當セルカ故ニ所得稅納稅者中納稅資格ヲ喪フモ
  ノアルヘキヲ豫想シ岐阜縣知事ハ大正二年四月十四日本件ニ對シ前年ノ納稅額ヲ
  以テ調査シテ可ナルヤ否ヤ內務省地方局長ニ囘示ヲ請ヒタルニ地方局長ハ同年
  四月二十二日所得金額決定前ニ於テ納稅資格無キニ至リタル事實明瞭ナルヘキ筈
  ナキニ付選舉人名簿調製ニ際シテハ前年度ト同一ノ狀態ニ在ルモノト推定調査スル
  ノ外ナシト指示シタルヲ以テ之ニ依リ選舉ヲ執行シタリ然ルニ岐阜市ニ於テ市會議
  員選舉ノ效力ニ關シ行政訴訟ヲ提起スルモノアルニ至リ其ノ主張ハ所得稅ナルモノ
  ハ每年政府ニ於テ決定スルモノナルヲ以テ其ノ決定以前ニ於テハ納稅資格アルモノト
  云フヲ得ス從テ岐阜市會議員ノ選擧當日大正二年七月三日ハ未タ大正二年度
  所得稅ノ決定ナカリシヲ以テ地租又ハ所得稅以外ノ直接國稅ニ依リ選擧權ヲ認メ
  ラレタル者ハ納稅資格アルモノト云フヲ得スト云フニ在リ之ニ對シ行政裁判所ハ左
  ノ如キ判決ヲ與ヘタリ其ノ要旨ハ
  直接國稅ノ納稅資格及其ノ稅額ハ各稅法ノ規定ニ依テ定マリ當該官廳ノ爲ス
  決定ハ唯其ノ事實ヲ認定スルニ止マルノミナラス所得金額ノ決定及賦課ハ各年
  分各別ニ爲スモノナルヲ以テ當該官廳ノ右決定ヲ爲ス以前ト雖當該年分法定ノ
  所得金額ナキコト明ナル者ハ假令前年分法定ノ所得稅額ヲ納メタル者ト雖市制
  第九條ノ適用ニ於テハ當該年分ノ所得稅ヲ納メタル者ニ非スト謂ハサルヲ得ス又
  前年分法定ノ所得稅額ヲ納付シタル者ニシテ事實上當該年分モ法定ノ所得稅
  額ヲ納付スヘキモノハ亦之ヲ當該年分所得稅ヲ納ムル者ニ非スト云フヲ得ス
  ト云フニ在リ爲ニ市會議員八名ノ當選無效トナレリ
  以上ノ事實ニ依リ政府當局ニ問ハムト欲スル所ハ市制第二十一條、町村制第十八
  條ニ依リ市町村長カ選舉期日前六十日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ選舉人ノ資
  格ヲ認メ名簿ヲ調製スルコトヲ得ヘシト認ルヤ否所得稅額ノ決定ハ每年八月ニシテ
  營業稅額ノ決定ハ五月ナリ徵稅專務ノ收稅官吏スラ各自ノ納稅額決定ハ二三箇
  月ノ日子內ニ確定スルヲ得ス戶口少キ町村ニ在リテハ少數ノ日子ヲ以テ納稅資格
  ノ有無ヲ町村長カ調査シ得ルコトアルヤ知ルヘカラサルモ戶口數萬ノ市ニ在リテハ到
  底斯ノ如キ決定ヲ市長カ爲スコト至難ニシテ行政裁判所ノ判決ニ據ルモノトスレハ
  大都市ニ在リテハ所得稅營業稅ノ納稅額異動者多數ヲ出シ選舉人名簿ナルモノハ
  完全ニ作成スル能ハサルナリ衆議院議員ノ選舉權ニ關シ本件ノ如キ疑義ニ付大正
  元年十二月二十五日東京控訴院ニ於テハ
  所得稅ニ關シテハ未タ其ノ年度ノ所得金額ノ決定無キ場合ハ前年度ノ納稅額ヲ
  標準トスヘキモノト解セサルヘカラス」トシ其ノ理由トシテ「其ノ年ノ所得金額決定
  ニ至ル間ニ於テ選舉ヲ行フ場合ニハ第三種ノ所得ニ關シテハ專ラ前年度ノ納稅
  額ヲ標準トシ同法第八條第三號ニ所謂仍引續キ納ムルモノナルヤ否ヲ決セシムル
  コトカ右法律ノ條意ナリト解セサルヘカラス何トナレハ若之ヲ然ラストセムカ未タ其
  ノ年度ノ所得決定ナキカ爲曩ニ前年度ノ所得額ニ基キ選舉人名簿ニ選舉人トシ
  テ登錄セラレタル者カ實質上仍引續キ納稅義務ヲ負擔スルモノナルヤ否ヲ知リ難
  キ結果斯ク義務アル者ノミヲシテ投票ヲ爲サシムルニ由ナク從テ到底有效ノ選舉ヲ
  行フ能ハサルヘケレハナリ
  ト結論シタリ若夫レ行政裁判所ノ如キ解釋ナリトセハ有效ニ選舉ヲ執行スル能ハサ
  ル結果ヲ生シ自治團體ハ選舉ニ次クニ選舉ヲ以テセサルヘカラス之レ自治行政上憂
  慮スヘキコトナリトス行政裁判所ハ「當該官廳ノ決定以前ト雖所得金額ナキコト明
  ナル者ハ云云」ト云フモ其ノ明ナルトハ何ヲ以テ之ヲ認定シ得ルカ選舉人ノ財產狀態
  ヲ個々別々ニ調査シテ之ヲ認定スルノ意ナルカ果シテ然ラハ人事複雜ナル現社會ニ於
  テ殊ニ第三種所得ノ如キ種々雜多ノ所得ヲ包含スルモノニ對シ當局者カ選舉人名
  簿調製ノ際一々調査シ得ルヤ都市ニ於テハ不可能ノ事實ニ屬ス況ヤ本件ノ疑點ハ
  所得稅ノミナラス決定以前ニ於ケル營業稅ニ對シテモ亦適用セラルルニ於テオヤ而シ
  テ假ニ調査シ得ルトスルモ法律上線據ナキ調査當局者ノ推定ニ依リ貴重ナル選舉
  權ヲ否認セラルルニ於テハ誰カ之ニ服從スルモノアラムヤ其ノ結果ハ選舉人名簿ニ對
  スル異議ノ申立トナリ確定權アル當該官廳ノ決定ヲ待ツノ外ナク從テ其ノ期間ニ爲
  シタル選擧ノ大部分ハ之カ影響ヲ被ルモノト認メサルヲ得ス何トナレハ所得稅營業稅
  ノ如キハ每年多少ノ變動ヲ免カレサルモノナルカ故ニ如何ニ頭腦明晰ナル當局者ト
  雖當該官廳ノ決定以前ニ於テ之ト符合シ誤ラサル認定ヲ爲ス能ハス本件ハ事選舉
  權ノ有無ニ關スル重大問題ナルト選擧界ニ影響スル結果亦至大ナルヲ認ムルカ故ニ
  實例ヲ舉ケテ質問ヲ提出セル所以ナリ
  更ニ質問ノ要〓ヲ列舉シテ其ノ答辯ヲ望ム
  -政府ハ納稅ト選舉權ニ關スル法律ノ解釋何故ニ一定セサルカ
  二行政裁判所カ市會議員選舉ノ效力ニ關シ大正三年十月二十七日決定ヲ
  與ヘタル新判例カ將來我カ國縣、郡市町村會議員ノ選舉ヲ攪亂シ建訟
  ノ弊ヲ惹起シ延テ自治團體ノ發達ヲ阻害スルノ虞無シト認ムルヤ否
  三若行政裁判所ノ新判例ヲ適當ナリトセハ現行市町村制ノ法條ニ依リ市町
  村ノ行政當局者ハ容易ニ選舉人名簿ヲ調製シ得ルモノト認ルヤ否
  四若又市町村制ノ法條不備ナリトセハ政府ハ之カ改正ヲ爲スノ意アリヤ百
  右及質問候也
  對支外交ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年十二月十二日
  提出者伊東知也贊成者關直彥
  外三十二人
  對支外交ニ關スル質問主意書
  靑島稅關長任命事件ニ關シ北京駐箚英國公使「ジヨルダン」氏ノ行動ハ英國外相
  「グレー」氏ヨリ我カ駐英井上大使ニ交附シタル覺書ト矛盾ノ甚シキモノト思惟ス我
  カ當局ノ之ニ對スル所見如何又現ニ如何ナル處置ヲ執リツツアルヤ
  右及質問候也
  水産講習所移管ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年十二月十四日
  提出者三浦覺贊成者吉田虎之助
  外三十三八
  水產講習所移管ニ關スル質問主意書
  -政府ハ世運ノ進步ト時代ノ趨勢トニ鑑ミ實業〓育ハ產業主管ノ官省ニ直屬
  セシムルヲ可トスルノ意ナキ乎
  二本移管ハ名ヲ學制ノ統一ト財政ノ整理トニ藉リテ實業〓育ノ精神ヲ滅却スル
  モノニ非サル乎
  三大隈首相カ本問題ニ關シ村田保其ノ他ニ內約セシ事項如何
  四政府ハ本移管ニ依リ水産〓育ニ關シ大缺陷ト水產事業ノ啓發振興ニ大障害
  ヲ生シ且政費節約ノ主旨ニ反スルモノト認メサル乎
  右及質問候也
  移民政策ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年十二月十七日
  提出者西村丹治郞贊成者關直彥
  外三十二人
  移民政策ニ關スル質問主意書
  -政府ハ曩ニ我カ移民ハ滿韓ニ集中スルノ方針ナリト聲明シタリ今尙此ノ方針ヲ
  執リツヽアルヤ
  二濠洲ニ於ケル移民制限法ノ撤廢若ハ之カ改正ニ付何等カノ手段ヲ執リシコト
  アリヤ若之レナカリシトセハ今後ノ方針如何
  三明治四十一年以來墨西哥移民ヲ絕對ニ禁止セリト云フ其ノ理由及今後ノ方
  針如何
  四近時「ブラジル」ニ於テ排日思想起ラムトスルノ傾向アリト聞ク果シテ然ル乎若
  然リトセハ之ニ對シテ防止ノ手段ヲ執リツヽアル乎
  五加州土地法ニ關スル六月以後ニ於ケル交涉ノ經過如何
  右及質問候也
  靜岡縣政ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正三年十二月十九日
  提出者松城兵作贊成者〓崟太郞
  外三十二人
  靜岡縣政ニ關スル質問主意書
  靜岡縣知事湯淺倉平カ大正三年度追加豫算及大正四年度像算ニ對シ縣會ノ決
  議ヲ無視シテ遂ニ十三万餘圓ノ原案執行ヲ稟申シタルニ內務大臣ハ之カ認可ヲ與
  ヘタリ其ノ理由如何
  右及質問候也

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• 002・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　會議ヲ開キマス、若槻大藏大臣ヨリ演說ノ通告ガアリマス、
  之ヲ許可致シマス若槻大藏大臣
  〔大藏大臣若槻禮次郎君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=2

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• 003・若槻禮次郎

  ○大藏大臣(若槻禮次郞君)　諸君、大正三年臨時事件ニ關スル經費ノ追加豫算
  ガ、昨日本院ニ提出ニ相成リマシタ、仍テ此機會ニ於テ大體ヲ說明シテ御紹介スル光
  榮ヲ有シマス、臨時軍事費豫算追加ニ計上シテアリマス所ノ金額ハ二千百八十二万
  四千八百圓デアリマシテ大正三年度及同四年度ニ亙ッテ一般會計カラ繰入レル金
  額ヲ以テ之ヲ支辨スル計畫デアリマス、又第一號ノ大正三年度歲入歲出總豫算追加
  ハ計上シテアリマス、私ハ臨時軍事費特別會計ニ繰入ルベキ千三百三万三千四百四十
  圓ト臨時事件豫備費二百二十万圓合計千五百二十三万三千四百四十圓デアリ
  マシテ、前年度剩餘金五百二十八万千三百五圓、竝ニ陸海軍經常軍事費ニ於テ時
  局ニ關シ臨時軍事費ノ支辨ニ移リマシタモノヽアル爲ニ不用ニナッタ金額ガ九百九十
  五万二千百三十五圓アリマスカラ、此二ツノ財源ヲ以テ支辨スル計畫デアルノデアリマ
  ス、尙第四號大正四年度歲入歲出總豫算ノ追加ニ計上シテアリマス所ノ金額ハ、臨
  時軍事費特別會計繰入金八百七十九万千三百六十圓ト臨時事件豫備費四百
  四十万圓ト合セテ千三百十九万千三百六十圓テアリマシテ、是ハ皆前年度剩餘金ヲ
  以テ支辨スル計畫デアリマス、今ヤ時局ニ關スル軍事ノ行動ハ、我陸海軍ノ武勇ニ依リマ
  シテ既ニ其大半ヲ了シ、相當ノ成功ヲ收ムルコトヲ得タノデアリマス併ナガラ占領地ノ
  守備ハ尙將來ニ向ッテ之ヲ完ウセヌケレバナリマセヌ、又海上ノ警戒モ未ダ全ク之ヲ撤廢
  スルコトガ出來ナイノミナラズ、機ニ臨ミ變ニ應ジ毫モ遺算ナキコトヲ期セヌケレバナリマセ
  ヌ、而シテ臨時事件ニ關シ各省ニ於テ施設セル諸般ノ事項ニ付テモ、尙引續イテ是ガ
  經費ノ支出ヲ要スルコトガアルノデアリマス是ガ臨時軍事費及臨時事件豫備費ノ追
  加豫算ヲ要求シタ次第デアルノデアリマス、諸君、私ハ諸君ガ愼重審議速ニ御協賛ヲ
  御與ヘニナランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=3

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• 004・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　內閣總理大臣ノ官紀紊亂ニ關スル質問-横田千之助君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=4

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• 005・伊東知也

  ○伊東知也君　議事ノ進行ニ付テチヨット質問シマス、此公報ニ列記セラレタ順序ニ
  依ッテ質問セラレナイノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=5

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• 006・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　ソレハ日程第一ノ銀行業取締ニ關スル質問ハ、答辯ガ出タノ
  デ別ニ質問ガアリマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=6

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• 007・伊東知也

  ○伊東知也君　第二第三ガアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=7

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• 008・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　ソレカラ日程第二ノ選舉人名簿調製ニ關スル質問、原眞澄
  君、此方ガ橫田君ト順ヲ換ヘルト云フ御申出ガアリマシタ

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• 009・伊東知也

  ○伊東知也君　サウデスカ、ソレナラ宜シウゴザイマス、分リマシタ
  內閣總理大臣ノ官紀紊亂ニ關スル質問(橫田千之助君提
  四也
  〔橫田千之助君登壇〕
  〔拍手起ル〕

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• 010・横田千之助

  ○橫田千之助君　諸君、私ハ質問ノ趣意ヲ辯ズルニ先チマシテ一言御斷リヲシテ置カ
  ナケレバナラヌコトガアル、私ノ質問ノ第一項ハ既ニ豫算委員總會ニ於テ內閣總理大
  臣ニ向ッテ此質問ヲ發シタモノデアリマス、併ナガラ之ニ對シテ內閣總理大臣ハ正面ノ
  御答ガナカッタノデアリマス、是ニ於テ餘儀ナク書面ヲ以テ提出スルノ已ムヲ得ザル次第
  ニナッタノデアリマス、而シテ第二ニ御斷リシテ置カナケレバナラヌコトハ此質問ノ趣意タ
  ルヤ、單ニ法律命令ノ解釋ニ付テ些二ヲナ〓ヲ爭フノデアリマセヌ、今日ノ時局ニ於テ、
  今日ノ國家重大ナ立場ニ入ッテ居ル際ニ於テ、內閣總理大臣ノ行動心術ガ、苟クモ大
  政ノ統一ト云フコトヲ誤ルト云フコトニナッタナラバ、非常ナル重大ナル危險ヲ國政ノ上ニ
  與ヘルモノト私ハ信ズルノデアリマス、(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)加之內閣總理大臣ノ
  心術輕佻ニシテ浮薄ニシテ漫リニ宣告ヲ爲シ、濫リニ聲明ヲ爲スト云フコトガアッタナラ
  ハ其危險ヤ實ニ測リ知ルベカラザルモノデアリマス、此ニ於テ私ハ深ク此〓ニ付テ內閣
  諸君ノ熟慮、內閣諸公ノ熟慮ヲ仰ギ、總理大臣ノ良心ノ響キヲ聞カウト云フノガ本件
  ノ質問ノ趣意デアリマス大正三年九月十六日ニ外務大臣加藤高明氏ハ、新聞紙法
  二十七條ガ外務大臣ニ授ケタルトコロノ權限ニ依ッテ、國交ニ關スル新聞紙ノ記事論
  說ノ揭載ニ付テ或ル制限ヲ加ヘタノデアリマス、其制限ハ卽チ協約國同盟國ニ對スルト
  コロノ記事論說ニ付テハ外務省ノ認可ヲ受ケタ上デナケレバ揭載ヲサセナイー議
  長、チヨット書類ヲ自席ニ忘レテ來マシタ
  (橫田千之助君議席ニ赴キ再ヒ登壇〕
  〔「ユックリヤリ給ヘ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=10

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• 011・横田千之助

  ○橫田千之助君　然ルニ加藤外務大臣ノ提出致シマシタトコロノ發布シタトコロ
  ノ省令ニ對シマシテ、東京市ニ於ケルトコロノ發行スル新聞紙ノ記者八名ト云フモノハ、
  非常ニ心配ヲセラレテ、總理大臣ニ對シテ是ガ改廢ノコトヲ交涉セラレタモノト見エルノ
  デアリマス、所デ此總理大臣ハ此省令ニ對シマシテ九月十八日ニ有志記者八名ニ對シ
  マシテ、斯ウ云フ覺書ト云フモノヲ渡サレタノデアリマス「外務省令第一號存續中ト雖モ
  新聞紙ニ對スル取締ハ殊更ニ嚴ニスル方針ニアラズシテ、大體從前ト差違ナク外交ニ
  關スル新聞紙ノ議論批評主張等ハ總テ自由ナリ前條ノ省令ハ適當ナル機會ニ於テ消
  滅ニ歸セシメンコトヲ期ス」是ガ要項デアリマス、斯ノ如キ聲明ヲセラレタノデアルガ、全
  國新聞同盟倶樂部ノ代表者十八名ハ是等ノ人ミノ交渉ニ滿足ヲシナイノデアルサラク
  如キ生溫キ交涉デハイカヌト云フノデ、更ニ實行委員ト云フモノヲ選ビマシテ、十月六日
  ニ內閣總理大臣ト其官邸ニ於テ會見ヲ遂ゲタノデアリマス、會見ヲ遂ゲタ結果此參考
  書ヲ忘レテ參リマシタガ、要スルニ其趣意ハ大體ニ於テ其取締ト云フモノハ新聞紙ノ
  取締ト云フモノハ、從來ト差違ガナイ外交ニ關スルトコロノ記事論說等ハ自由ニ記載シ
  テモ宜シイ、斯ウ云フ意味ノコトヲ聲明サレタノデアリマス、十月十八日九月十八
  日ニ於ケルトコロノ有志ノ記者ニ對スルトコロノ聲明ト云フモノハ是ハ或ハ情誼上現
  內閣ニ同情ヲ表シテ居ルトコロノ記者諸君トノ私話ト見ルコトモ出來ルカモ知レマセヌ、
  併ナガラ十月六日ニ於ケルトコロノ全國新聞同盟記者倶樂部ノ十八名ノ人〓ト云フモ
  ノハ、全國ニ於ケルトコロノ言論機關ノ代表者トシテ首相ニ面會ヲ求メタモノデアリマ
  ス、而シテ其席ニ於テハ首相ノ高等行政ニ參與スベキトコロノ內閣書記官長ガ立會ッテ
  居ルノデアリマス、ノミナラズ其終リノ方ニハ聲明ノ終ノ方ニハ此聲明ト云フモノハ
  此宣言ト云フモノハ之ヲ外務大臣ニ通告シ、而シテ當局ノ此事ヲ取扱フトコロノ官
  吏ニ向ッテ內訓ヲ與ヘルト云フコトガ書イテアルノデアリマス、、此ニ至ッテ此仕事ガ單純ナ
  ルトコロノ私人ノ對話談論ニアラズシテ、內閣總理大臣ガ國家ノ事務トシテ全國ノ
  言論機關ノ代表者ニ向ッテ、一ノ公約ヲナシタト云フコトノ色彩ヲ以テ闡明ニナッタモノデ
  アリマス諸君內閣ノ官制ヲ見ルニ「內閣總理大臣ハ各大臣ノ首班トシテ機務ヲ奏
  宣シ旨ヲ承ケテ行政各部ノ統一ヲ保持ス」ト云フコトニナッテ居リマス、內閣官制ノ最
  モ主ナル要〓ハ、行政各部ノ統一ニアルノデアル、總理大臣ニシテ行政各部ノ統一ヲ少
  シニテモ緩メルト云フガ如キ考ノ人デアッタナラバ、此時ニ於テ此人ノ心事ハ旣ニ總理大
  臣ニ適セヌト云フコトヲ證明スルモノデアリマス、而シテ官制ノ又一箇條ニ「內閣總理大
  臣ハ須要ト認ムルトキハ行政各部ノ處分又ハ命令ヲ中止セシメ勅裁ヲ待ツコトヲ得」ト
  云フコトガアリマス、卽チ部下ノ行政長官ノ所爲ガ若シモ總理大臣ノ認メテ以テ不當ト
  シタ場合ニハ、之ヲ差止メテ置イテ、勅裁ヲ待タナケレバナラヌノデアル總理大臣大隈
  伯ニシテ眞ニ外務大臣ノ外務省令ノ發布ト云フモノヲ、國政ノ上ニ宜シカラズト認メタ
  ナラバ、何故此勅裁事項ニ對シテ勅裁ヲ受クルトコロノ相當ノ手續ヲ執ラナカッタノデア
  ルカ、勅裁ヲ受クベキ事項ヲ勅裁ヲ受ケズシテ勅裁ヲ受クルト同樣ナ所作ヲシテ、部下
  行政長官ノ行動ヲ拘束シタト云フノハ何事デアル之ヲシモ官紀紊亂ト云フコトガ出
  來ナカッタナラバ、世ノ中ニ官紀紊亂ト云フコトハ私ハ無カラウト思フノデアル(「ヒヤ/
  ト呼フ者アリ)此點ニ付テ總理大臣ノ明確ナル答辯ヲ得タイノデアリマス、或ハ總理大
  臣ハ斯ウ云フ答辯ヲセラルヽカモ知レヌ、二囘ノ宣言聲明ハ單ニ外務省令ノ運用ニ關
  スル手加減ニ付テノ言明ニ過ギナイ、外務省令ノ內容ト其働トニ毫末モ影響ナイモノデ
  アルト云フコトヲ言百カカモ知レヌ、然ラバ然ラバ問ハン、卽チ第二ノ質問ガ其處ニア
  ルノデアリマス、有志記者八名ノ人〓ハ私ハ論外ニ措キマス、全國ノ言論機關ノ代表者ト
  シテ精養軒其他ニ數囘ノ會議ヲ開イテ、サウシテ總理大臣ノ官邸ニ、書記官長立會ノ上
  交涉ヲシタ人〓ハ、外務省令ノ廢止ヲ以テ目的トシテ動イタ人〓デアル、此人ミガ唯其
  運用ニ付テノ手加減ニ付テノ首相ノ言明ヲ聞イテ阿容ミミ退イタカドウデアル、記者十八
  名ノ實行委員ノ人〓ノ報、告書ヲ見マスルト云フト、確カニ斯ウ云フコトガアリマス吾ミ
  ハ內閣總理大臣ノ口カラ明々白々地ニ國家ノ法令ヲ無效トスルノ宣言ヲ聽ケリト云フ
  コトガ明記シテアリマス、之ヲ首相ノ聲明ト外務省令トノ內容ニ對照シ來レバ實行委
  員諸君吾ヲ欺カズデアル、明ニ其趣意ハ外務省令ヲ打消シテ居ルノデアル打消シテ居
  ルノデアルガ、政府ガ詭辯ヲ弄シテ若シモ唯運用手加減ニ付テノ訓示若クバ注意ヲ與
  ヘタモノト言ッテ逃ゲルナラバ、內閣總理大臣ハ全國數千數百ノ言論機關ノ代表者ニ
  向き、甘言巧辭ヲ以テ一時ヲ瞞過シタト云フコトニナルノデアル、斯ノ如キ事ハ內閣總
  理大臣ノ立場カラ爲スベキモノデナイノデアルガ尙且然リト答辯スルノ勇氣有リヤ否ヤ
  ト云フコトガ第二ノ質問ノ要點ニナルノデアリマス、第三ノ質問ノ趣意ハ總理大臣ノ
  行爲ガ質問ノ第一ニ觸レテモ第二ニ觸レテモ、第一ニ觸レタ場合ニハ最モ然リ、內閣總
  理大臣及此部下ノ內閣諸公ハ如何ニ此場合ニ於テ責任ヲ取ラントスルノデアラウカ
  私ハ豫算委員總會ニ於テ或ハ大分縣ノ郡書記ノ首ヲ九名馘ッタ、町長助役若クハ村
  長ノ認可ガ何箇月遲レタト云フ質問ガアリマシタガ、是等ノ事ハ問題外デアル、總理大
  臣自ラ官紀ノ紊亂ヲスル疑ヒノ立派ニアルトコロノ內閣ノ下ニ、官紀ノ引締ト云フモノ
  ガ出來ル譯ノモノデナイノデアル、有司百官ヲ率井全國ノ大小ノ官吏ニ向ッテ號令ヲ爲ス
  ベキ立場カラ、斯ノ如キ不當ナ處分ヲ爲ストコロノ總理大臣ノ下ニ、現內閣ノ政綱トシ
  デ揭ゲタトコロノ官紀ノ振肅ハ思ヒモ寄ラヌモノト私ハ考ヘルノデアリマス現內閣ノ諸公
  ハ統一トカ或ハ振〓トカ云フコトニ付テハ、非常ニ念ヲ入レテ居ル人ミデアル其口舌ノ
  上ニハ確ニ念ラ入レテ居ル人〓デアル、論ヨリ證據、委員總會ニ於テ滿鐵重役解職ノ
  事ニ付テノ質問應答ノ速記錄ヲ諸君ハ御覽ニナルガ宜シイ、滿鐵ノ總裁副總裁野村
  伊藤ノ兩氏ヲ解職シタノハドウ云フ譯デアルカト言ヘバ卽チ職務ノ不統一ト云フコトデ
  アル職務ノ不統一ト云フ內容ノ事實ハ何デアルト尋ネテ見ルト云フト理事ノ一人犬
  塚某ナル者ガ氣粉レニ自由行動ヲ執ルト云フコトデ一時放言シタル事蹟ガアル、但シ其
  自由行動ナルモノハ變シテ溫泉場ノ滯在トナリ、更ニ轉ジテ東京ノ本社ニ出勤シテ忠實ニ
  事務ヲ執ッテ居ッタト云フトコロノ事蹟モアッタノデアル、併ナガラ現政府ハ現内閣ハ此行
  爲ヲ以テ社務ノ不統一ナリトシテ、仙石貢君ナドガ覺束ナゲナルトコロノ法律命令論ナ
  ドヲ振週シテ、サウシテ敢テ野村伊藤ノ正副總裁ニ向ッテ解職ノ事ヲ斷行シテ居ルノデ
  アル、諸君、斯ノ如ク統一好キ振肅好キノ現内閣ハ、總理大臣ハ外務大臣加藤高明
  氏ノ省令發布ニ對シテ爲シタ此行爲ニ對シテ、如何ナル處置ヲ執ラウトスルノデアルカ、
  私ノ最モ聽カントスル所デアル、時局最モ重大ニシテ危險ナリト云フノハ、現內閣ガ二
  個師團ヲ增加サレントスルトコロノ惟一ノ奧ノ手デアル、奧ノ手デアルガ、時局最モ重大
  ニシテ危險ナルカ故ニ、行政ノ統一最モ注意セザルベカラス、之ガ新聞記者諸君ニ向ッ
  テ爲シタルトコロノ宣言聲明ダカラ宜シイノデアル、若モ外務大臣ノ上ニ立ッテ居ルトコロ
  ノ總理大臣ガ、國際關係ニ於テ斯ノ如キ輕佻浮薄ノ聲明若クハ旦言ヲシタナラバドウ
  デアリマセウ、豫算委員總會及木會議ノ質問應答ノ狀態ニ依テ國民不安ノ狀況ガ
  躍然トシテ議場ニ現レテ居ルノデアリマスガ、其現レテ居ルトコロノ要〓ヲ捉ヘレバ何カ
  國民ノ知ラヌ宣言若クバ聲明ガ大ニ國家ニ累ヒヲ掛ケハセヌカト云フコトガ、危惧ノ要
  〓ニナッテ居ッタヤウデアリマス、尤モデアル國交ノ善惡ニ付テ之ヲ處置スルニ付テ最モ注
  意ヲシナケレバナラヌトコロノ此省令ノ働ニ付テ、發布ノ善惡ハ別問題デアル、此省令ガ
  國交ノ關係ヲ變理スルニ付テ重大ナル省令ノ働ヲ決スルノニ、總理大臣ト主務大臣ノ
  扞格齟齬ト云フコトハ斯ノ如ク國民ノ面前ニ曝露サレテ居ルノデアル、此曝露サレル所
  ノ狀態カラ推シテ以テ、國民ガ此內閣ノ外交其他各般ノ方面ニ向ッテ、幾多ノ危惧ヲ
  懷クト云フコトハ私ハ疑フ者ガ當然ニシテ、此疑ヲ否定スル者ガ大ナル誤リナリト論斷
  スルニ憚カラヌノデアリマス、內閣諸公ハ此質問ノ內容ニ含マレテ居ル事柄ハ、內外諸
  政ニ向ッテ國民ノ疑惑ガ含マレテ居ルト云フコトノ主意ニ於テ、諸君ハ又質問ニ對スル
  答辯ガ此疑ヲ解決スルヤ否ヤト云フコトヲ期待スル意味ニ於テ、諸公ノ答辯ヲ待タレン
  コトヲ希望シテ此壇ヲ降リルコトニ致シマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=11

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• 012・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　對支外交ニ關スル質問-伊東知也君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=12

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• 013・伊東知也

  ○伊東知也君　私ノ名前ハ「トモヤ」デゴザイマス、以後御注意ヲ顧ヒマス
  三對支外交ニ關スル質問(伊東知也君提出)
  〔伊東知也君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=13

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• 014・伊東知也

  ○伊東知也君　私ハ當局ノ對支外交ノ失敗トモ申シマセウカ、現ニ懸案中ニナッテ居
  ル一事件ニ就テ、聊カ質問ヲ試ミタイト思ヒマス、ソレハ何デアルカト云フト我ガ忠勇
  義烈ナル軍隊ト陸軍大臣ノ所謂或ル程度ニ於テ勇敢ナル英吉利軍ノ參加ニ依テ占領
  シタ所ノ靑島、其處ノ稅關長ノ任命事件ニ關係シタコトデゴザイマス、獨逸ガ支那政府
  ト約束シテアッタ通リ、我國ガ靑島ヲ占領シタナラバ、當然其稅關長ノ如キモノハ我國
  ヨリ推薦シテ支那政府ニ於テ之ヲ任命スベキ手續ニナッテ居ルノデアリマス、所ガ我ガ帝
  國政府ガ靑島ノ稅關長ヲ推〓シテ支那政府ニ任命シテ貰ハウトシタ所ガ、案外ナル妨
  ガ起ッタノテアリマス諸君、私ハ外務省ノ報告ニ依テ之ヲ言フノデハアリマセヌ、私ハ私ニ
  有スル所ノ偵察機關ノ報告ニ依テ、之ヲ土臺トシテ言フノデアリマスカラ其御積リデ願
  ヒマス、其報告ニ依リマスルト我國カラ推薦シテ支那政府ニ任命サセヤウトシタル稅關
  長ト云フモノハ英吉利ノ政府ニ取ッテハ餘リ面白クナイ人デアッタラシイ、此ニ於テ乎
  私ノ聞ク所ニ依リマスレバ、英吉利ノ公使「ジヨルダン」ト云フ人ガ何カ手ヲ入レテ多少
  其妨害ヲシ、靑島ハ開放スルガ宜カラウ、稅關長ハ日本人ト英吉利人ト兩方カラ出シ
  テヤッタラ宜カラウト云フヤウナ策ヲ講ジタラシイ、併ナガラ我當局モ如何ニシテモ是ニハ
  屈服シナカッタノデアリマス、サウシテソレハイケナイト言ッテ刎付ケタ所ガ、何ゾ圖ラン今度
  ハドウ手ヲ迴ハシタカ知ラヌガ、支那政府ガ日本ニ何等ノ交涉モナクシテ、直接ニ直ニ
  青島稅關長ト云フモノヲ任命シテシマッタノデアリマス、然ルニ或ハ英吉利人ヲ任命スル
  トカ、佛蘭西人ヲ任命スルトカ云フコトデアルナラバ、多少喧嘩ニモナルカモ知ラヌガ、唯
  日本ニ鼻ヲ明カサセヤウト云フ考カラヤッタノデアルカラ、現ニ大連ノ稅關長デアル立花
  政樹ト云フ日本人ヲ持テ來テ、グイト靑島ノ稅關長ニ任命シテシマッタ、多少日本政府
  ハ鼻ノ毛ヲ拔カレタヤウナ氣味ガアッタノデアリマス、是ニ對シテ私ノ偵察スル所ニ依レバ、
  此芝居ト云フモノハ一ニ北京ニ居ル所ノ英吉利ノ「モリソン」博士及「ジヨルダン」公使ノ
  カラクリニナッテ居ルト云フコトヲ確メタノデアリマス、併ナガラ諸君、私ガ此質問書ヲ出シ
  テヨリ後二日バカリ過ギテカラ、此北京ノ各新聞ニ此靑島ノ稅關長任命問題ニ關シテ
  イロ〓〓ノ事ガ記載サレタノデアリマス、ソレニ依リマスト、日本政府及英吉利ノ公使モ
  共ニ支那ノ當局ニ翻弄セラレテ、支那政府ガ日本ト英吉利ト喧嘩ヲサセテ、其間ニ甘
  イコトヲシヤウト云フ考カラ、アヽ云フ突飛ノ馬鹿氣タコトヲヤッタノデアルト一ムフコトガ、
  東京朝日新聞其他ノ新聞ニ記載サレマシタ、私ハ或ハ是ガ事實デナイカ知ラヌト一時
  ハ疑ッタガ、之ヲ信用スベキカ其新聞ノ記事ヲ信用スルニハ、餘リ私ハ當局ガソレ程マデ
  ニ意氣地ガナイトハ私ハ思ハヌノデアリマス、如何ニ我ガ外務當局無能ナリト雖モ、此新
  聞ニ揭載シタルガ如ク、アノ殆ド力ノ無イ勢ノ無イ支那政府ノ翻弄ニ一任シテ、アヽ云
  フ馬鹿氣タ眞似ヲサレルマデニ無能ナル外交ヲシテハ居ラヌト、私ハ其位ノ程度ニ於テ
  外務當局ニ信用ヲ拂ッテ居ッタノデアル、若シ新聞紙ノ記事ガ若シ事實トシタナラバ、英
  吉利ノ堂々タル大英國ノ全權公使「ジヨルダン」及我ガ堂々タル大日本帝國ノ外務大
  臣初メ、北京駐箚公使其他ト云フモノハ、彼ノ力ノ無イ何等ノ勢モ無イ所ノ支那政
  府ニ翻弄サレタト云フ結果ニナルノデアリマス、是程マデ無能ナリト私ハ當局ヲ思ウテ居
  リマセヌマダ幾ラカヤルダラウト信用シテ居ル、ソレダカラ是ニハ何カ事情ガアッタモノダラ
  ウト思フ、サウシテ見レバ私ノ偵察ニ依ル所ノヤハリ此蔭ニハ英吉利ガ潛ンデ居ッタト云
  フコトハ、私ハ當局ニ信用ヲ拂フ程度ニ於テ事實ト認ムルノデアリマス而シテ若又數
  百步ヲ讓ッテ此新聞ニ記載サレタヤウナコトガ事實デアッタトシタナラバ、是レコソ殆ド我
  ガ外務當局ナルモノハ、ドノ位無能デアルカ分ラヌノデアルアノ支那ノ政府ニ翻弄セラ
  V、而モ英吉利ノ全權公使モ皆一〓ニ愚弄セラレテ、アヽ云フ馬鹿ノ眞似ヲセラレタト
  云フコトハ殆ド考モ及バヌ所デゴザイマス、諸君試ニ御覽ナサイ、稅關長ノ任命ト云フモ
  ノハ、例ヘバ靑島ナラ我ガ日本ノ推薦ニ依テ支那政府ガ承認シ、サウシテ支那ノ總稅
  務司ガ之ヲ任命スルト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、現在ノ支那ノ總稅務司ハ何人
  デアルカ是ハ「アクレン」ト云フ人デアッテ、諸君ノ御承知ノ一番初メニ總稅務司ニナッ
  タ「ロバートハート」其人ニ代ッテ「ブレーネン」ト云フ人ガナッタ、其「ブレーネン」ト云フ人ガ
  本國ニ引揚ノ際ニマダ漢口ノ稅關長デアッテ、一向下デアル今ノ「アクレン」ト云フ人ヲ
  引上ゲテ總稅務司ニシタノデアル從ッテ此現在ノ總稅務司ナル者ハ一ニ「モリソン」博
  士デアルトカ「ジヨルダン」公使ノ指先ニ使ハレテ、唯々諾々命ヲ奉ズルト云フ人デアリマ
  ス、然ルニ英吉利ノ公使ニモ「モリソン」博士ニモ何等相談ナクシテ、靑島ノ稅關長ヲ、
  唯支那ノ言ヒナリ放題ニヤッタト云フコトハ、是ハ到底信用ノ出來ナイ話テアリマス、私
  ハ此一靑島ノ稅關長ノ任命問題其モノ二重キヲ措クモノデハアリマセヌ、併ナガラ我當
  局ノ支那ニ對スル措置、事々物々此ノ如ク機先ヲ制セラレ、或ハ英吉利デアルトカ、、或
  ハ獨逸デアルトカ、佛蘭西デアルトカノタメニ、殆ド事々物々機先ヲ制セラレテ、我國威
  ヲ輝シ國力ヲ發展シテ、大陸ニ延ビテ行クトコロノ力ヲ漸次壓抑サレツヽアルノデアリマ
  ス現ニ此小問題此小サイ問題デスラモ私ノ信ズル所ニ依レバ、英吉利ニ翻弄サ
  レテ居ル、若シ新聞紙ノ報告スルトコロニ依ッタナラバ、支那ノ政府ニ翻弄サレタ結果ニ
  ナッテ居ルノデアリマス、諸君、英吉利ハ我尊ブベキ同盟國デアルガ、一度北京ニ行ッテ
  御覽ナサイ、彼ノ國ガ我國ノ支那大陸ニ發展スルコトニ付テ、或ハ嫉妬デアルカ或ハ排
  擠デアルカ知ラメガ、有ラユル手段ヲ用井テ妨害ヲ加ヘツヽアルコトハ顯著ナル事實デアリ
  ス、ドウデス、南滿洲東蒙古ト云フモノハ日本ノ勢力範圍デアルト云フコトヲ、諸君モ
  認メ政府モ之ヲ公言シツヽアルデハアリマセヌカ、然ルニ何ゾヤ今日新聞デモ御覽ニナッタ
  デアリマセウガ、曾テ朝陽ヨリ喇嘛廟ニ至ル、最モ有力ナル東蒙古鐵道ハ英吉利ノタメ
  ニ取ラレテアル、又聞ク所ニ依レバ此頃北京ヨリ熱河ニ至ル鐵道モ英吉利ノ手ニ歸シタ
  ト云フ噂デアル、卽チ過日モ申シマシタガ津浦線ノ北段、若シ之ヲ日本ノ手ニ收メナカッ
  タナラバ山東鐵道ト云フモノハアッテモ役ニ立タヌト云フヤウナ結果ヲ來スノデアルガ、此
  津浦ノ北段モ將ニ英吉利ノ手ニ歸シツヽアラントスル有樣デアリマス、若シ津浦線ガ一
  度英吉利ノ手ニ歸シタナラバ彼ハ上海ヨリ南京ニ出デテ津浦鐵道ニ依ッテ北京ニ行
  キ、開外線ニ依ッテ我奉天ヲ衝ク恐レモゴザイマス、商業上、工業上、到底日本ハ大
  陸ニ發展ノ餘地ガナイ、南ニ於テハ長江一帶英吉利ノ勢力トシテ押付ケラレ、北ハ此
  鐵道ノ橫斷ニ依ッテ排擠サレントスル形勢ヲ呈シテ居リマス、同盟モ結構デゴザイマセウ
  ガ、愚弄サレ翻弄サレルト云フコトハ同盟ノ趣意デナカラウト思ヒマス、能ク此邊ノコトハ
  當局ニ於テ調和ヲ取ッテヤラナケレバナラヌ、然ルニ此今度ノ小サナ稅關長任命問題ニ
  見マシテモ、殆ドヤハリ依然トシテ彼ノ操リニ委セ、彼ノ愚弄ニ任ズル有樣ヲ呈シテ居
  ル、嘆ハシイ次第デアリマス、諸君、我當局ハ排日問題、支那ノ排日熱ガ盛デアル、排
  日ガ盛デ困ル、何トカ歡心ヲ得ナケレバナラヌト云フコトヲ常ニ申シマスガ、排日ノ根據、
  排日ノ根元ト云フモノハ何所ニアルカト云フコトヲ確カメラレヌ、確カメテ居ラヌト信ズル
  ノデアリマス、唯支那人ノ表面ニ立ッテ日本ニ向ッテ排日ヲ鼓吹スル或ハ新聞デ書ク、
  或ハ「ポイコット」ヲヤルト云フコトハ單ニ表面ニ現ハレタ一小事實デアッテ、其背面ニハ
  之ヲヤラセ之ヲ操縱スル彼ノ大ナル人形遣ガアルト云フコトニ御氣付ガナイノデゴザイマセ
  ウカ、諸君、申スマデモナイコトデゴザイマスガ、我仲哀天皇ノ時代ニ熊襲ガ頻リニ九州
  ヲ荒シ週ッタトコロガ仲哀天皇ガ之ヲ御征伐ニナッタガ、熊襲ヲ征伐サレテ不幸ニシテ
  矢ニ當ッテ御崩御アラセラレタ、其時ニ我神功皇后ハドウデス、熊襲ヲ征伐シテモイカ
  又、熊襲ノ後ロニ立ッテ居ル所謂人形使ナル新羅ヲ征伐シナケレバナラヌトラット、海ヲ
  渡シテ新羅ヲ征伐セラレタ、以後熊襲ノ亂ハ直ニ平定シタデハアリマセヌカ、是ト同ジデ
  アル、支那ノ排日ト云ッテ表ニ現ハレタ事ノミニ繼縫策ヲナシ、膏藥貼リヲシテ居ッテモ
  到底駄目デ、ドウシテモ是ハ所謂排日ノ根元タルトコロノ、其後ロニ潜ンデ居ルト云フ
  人形遣ノ首玉ヲ押ヘナケレバ、到底排日思想ハ撲滅スルコトガ出來ナイノデアル、私ハ
  此一小事實、稅關長問題ハ今尙我當局ト支那政府トノ間ニ交涉中デアルト云フコト
  ハ承知シテ居リマス、併ナガラ是ハ或ハ甘ク落著スルカ知ラヌガ、此事實茲ニ現ハレタ一
  小事實ヲ以テシテモ、我當局ノ支那ニ對スル政策ガ甚ダ緩漫デ、根本問題ニ觸レテ居
  ラヌト云フコトヲ御忠告申シ、旁〓此問題ヲ質問スル次第デゴザイマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=14

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• 015・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　諸君、唯今ヨリ地租條例中改正法律案ノ特別委員會ノ委
  員長ヨリ、委員會ヲ開キタキ旨ノ許可ヲ請ハレマシタガ、是ハ許シマスカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=15

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• 016・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナイト認メテ之ヲ許シマス、次ノ質問ニ移リマス、選舉
  人名簿調製ニ關スル質問-原眞澄君
  二選舉人名簿調製ニ關スル質問(原眞澄君提出)
  〔原眞澄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=16

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• 017・原眞澄

  ○原眞澄君　私ノ質問ハ壇上デ踏張ルコトノ出來ヌ極メテ活氣ノナイ選舉人名簿調
  製ニ關スル件デゴザイマス、ソレハ市町村ノ選舉人名簿調製ニ關スル件デゴザイマス、事
  ハ輕微デアッテ或ハ一見愚問ノ如キ感ガアルカモ知レマセヌガ、其影響スルトコロハ全國
  一般ノ町村長ガ此〓ニ付テ疑惑ヲ懷イテ居ルノデゴザイマスカラ、質問ヲ提起シタ次第
  デゴザイマス、ソレハ市制ノ第二十一條ト町村制ノ第十八條ニ「市町村長ハ選舉期日
  前六十日ヲ期トシ其日ノ現在ニ依ル選舉人ノ資格ヲ記載セル選舉人名簿ヲ調製スヘ
  シ」是ダケデゴザイマシテ何等疑義ヲ挾ム餘地ハナイヤウデゴザイマス、此〓ニ付テ質問ス
  ルニ先チマシテ暫ク事實ヲ語ル必要ガゴザイマスカラ其實例ヲ舉ゲテサウシテ質問ニ及バ
  ウト思ヒマス、ソレハ昨年-大正二年ノ七月岐阜縣ニ於テ市町村會議員ノ選舉ヲ行ヒマ
  シタノデ、サウ致シマスト七月選舉デアルガ故ニ其六十日以前五月ニ於テ選舉人名簿
  ヲ調製スルニ當リマシテ、岐阜縣ノ知事ハ從來ノ慣例ニ依ルト、市制第九條ニ依り直
  接國稅及地租ヲ納メル所謂公民權ヲ有スルモノハ前年ノ納稅額ヲ以テ選擧人名簿
  ヲ調製スルト云フ慣例デアルケレドモ、昨年ハ所得稅法ノ改正ニ依リマシテ稅額ガ輕減
  サレタガタメニ、所得稅ノミヲ以テ納稅トスルモノニ選舉權ヲ有シナイモノガ出來ルカモ知
  レナイト云フコトヲ豫想シテ、是ハ選舉人名簿調製ノトキハ五月デゴザイマシタガ其當
  時ノ納稅額ノ決定ハ八月デアル、故ニ選舉人名簿調製ノ際ニハ何レノモノヲ舉ゲテ調
  製シテ宜イカト云フコトヲ、內務省ノ地方局長ニ問合セタトコロガ當該官廳ノ決定
  以前ニ際シテ、何人ガ納稅者デアルカト云フコトハ分ラナイカラ、ソレハ從來ノ慣例上、
  從前納稅シテ居ル者ハ尙引續イテ納稅シテ居ル者ト看做シテ、選舉人名簿ヲ作レト云
  フ答ヲシタノデアリマス、ソレデ岐阜市ニ於テハ岐阜市長ハ尙此〓ニ就テ所得稅ガ輕減
  サレテ四百五十圓以上納メナイ者、及官吏ナドデ單ニ所得稅額ノミヲ以テ選舉權
  ヲ有スル者ガ、官職ヲ罷メラレタガタメニ俸給ヲ取ラナクナッタヤウナ者ハ、如何ニシテ之
  ヲ控除スベキカト云フコトヲ縣廳ニ問フタトコロガ、縣廳ノ當局者ハ是モヤハリ內務省ノ
  地方局長ノ答ト同ジク、前年納稅シタ者ハ、尙引續キ納稅スベキ者ト見テ選擧人名
  簿ヲ調製スベキモノト云フコトヲ答ヘテ居リマス、ソレニ據テ選舉人名簿ヲ調製シタノデ
  ゴザイマス、トコロガ選舉ノ結果異識者ガ出來テ、訴願ヲシ、市會及縣參事會ノ裁
  決ニ服セズシテ行政栽判所ノ審判ヲ仰グコトニナッタノデゴザイマス、其結果トシテ行政
  裁判所ハドウ云フ判決ヲ下シタカト一云フト、其要點ハ「直接國稅ノ納稅資格及其稅
  額ハ各稅法ノ規定ニ依テ定マリ當該官廳ノ爲ス決定ハ唯其ノ事實ヲ認定スルニ止マル
  ノミナラス所得金額ノ決定及賦課ハ各年分各別ニ爲スモノナルヲ以テ當該官廳ノ右決
  定ヲ爲ス以前ト雖當該年分法定ノ所得金額ナキコト明カナル者ハ假令前年分法定ノ
  所得稅額ヲ納メタル者ト雖市制第九條ノ適用ニ於テハ當該年分ノ所得稅ヲ納メタル
  者ニ非スト謂ハサルヲ得ス又前年分法定ノ所得稅額ヲ納付シタル者ニシテ事實上當該
  年分モ法定ノ所得稅額ヲ納付スヘキモノハ亦之ヲ當該年分所得稅ヲ納ムル者ニ非スト
  云フヲ得ス」斯ウ云フコトデ、其結果トシテ三級選舉當選者ガ十名ノ中デ八名無效失
  格シタノデアリマス、斯ウ致シマスルト所得稅決定ハ八月デアルガ、其以前ニ揭ゲタ者ハ
  假令前年分納メテ居テモ其者ハ選舉權ヲ有シナイコトニナル、ソレデ市町村長ハ如何ニ
  シテ名簿ヲ作ルカト申シマスルト據ルベキ所ガナイガタメニ、豫メ小サナ町村役場ニ於
  テハ調査ガ出來マスガ、大都市ニ至ッテハ如何ナル者ガ今年所得稅ヲ納メナクナルカ判
  定ガ付カヌ、殊ニ第三種ノ所得稅ニアリマシテハ、種々雜多ノモノガ含マレテアリマスカラ
  之ヲ認定スルコトガ出來ナイ、明カニ分ルモノハ取除ケヨト云フ行政裁判所ノ判決デア
  ルや、明ニ分ルト云フコトニ付テモ是ハ判定ガ出來ナイ、若シ之ヲ推定ニ依テ市長が選
  舉人名簿ヨリ取除ケルト云フコトニナレバ貴重ナル選舉權ヲ無意味ニ剝奪スルコト
  ニナリマス、ソコデ之ヲ如何ニシテ取除ケルカト云ヘバ、事實ニ於テ是ハ到底出來得ナイ
  ト云フコトヲ自分ハ聞イテ居ルノデアリマス、又營業稅ニ於テモ然リデアリマス斯ノ如ク
  營業稅ニ於テモ前年納メテモ其年ノ營業稅ノ調定額ト云フモノハ五月ニ決定スルガ故
  ニ分ラナイノデアル、此行政裁判所ノ新判例ト云フモノハ本年十月二十七日ニ判決ヲ
  致シタガタメニ、ソレカラ以後六十日以內ニ選舉ヲ行フト云フコトデアッテ、丁度十月二
  十七日デアッタガタメニ本年一抔六十日ノ餘日ガアル、タメニ本月ノ二十九日ヲ以テ此
  八名ノ市會議員ノ選舉ヲ行フコトニナッタノデアリマス、若シ是ガ十一月ノ十日乃至十
  五日頃ニ行政裁判所ガ斯ノ如キ決定ヲ與ヘテ、ソレカラ六十日經ッテ選舉人名簿ヲ調
  製スルトシタナラバ一月ニ跨ルコトニナッテ、此營業稅ハ又本年度ヨリ稅額ガ變ッテ來
  マシテ、其間ニ一月選舉ヲ行ッタナラバ營業稅ノ納稅失格者ガ出來タガタメニ、又斯
  ノ如キ事ヲ繰返シテ選舉ノ結果當選無效者ガ出來ルノデアル斯ノ如キ事ヲ爲スハ地
  方ノ自治體デハ選舉ニ次グニ選舉ヲ以テシナケレバナラヌ結果ニナルガタメニ、事實ニ於
  テ是ハドチラガ本統デアルカ、此事ニ就テ選擧權ト納稅額ニ付テハ、衆議院議員ノ選
  舉權ニ關シ本件ノ如キ疑義ニ付大正元年十二月二十五日東京控訴院ニ於テ、斯
  ウ云フ判決ヲシテ居リマス、「所得稅ニ關シテハ未タ其ノ年度ノ所得金額ノ決定無キ場
  合ハ前年度ノ納稅額ヲ標準トスヘキモノト解セサルヘカラス」トシ、其ノ理由トシテ「其ノ
  年ノ所得金額決定ニ至ル間ニ於テ選擧ヲ行フ場合ニハ第三種ノ所得ニ關シテハ專ラ
  前年度ノ納稅額ヲ標準トシ同法第八條第三號ニ所謂仍引續キ納ムルモノナルヤ否ヲ
  決セシムルコトガ、右法律ノ條意ナリト解セサルヘカラス、何トナレハ若之ヲ然ラストセムカ
  未タ其ノ年度ノ所謂決定ナキカ爲曩ニ前年度ノ所得額ニ基キ選舉人名簿ニ選舉人ト
  シテ登錄セラレタル者カ、實質上仍引續キ納稅義務ヲ負擔スルモノナルヤ否ヲ知リ難キ
  結果、斯ク義務アル者ノミヲシテ投票ヲ爲サシムルニ由ナク從テ、到底有效ノ選舉ヲ行
  フ能ハサルヘケレハナリ」斯ウ云フコトノ判決ニナッテ居リマス、若シ行政裁判所ニ於テ當
  該官廳稅務署ニ於テ、所得稅ナラバ其年ノ八月ニ於テ」初メテ決定シテ、其年ノ年度分ノ
  納稅資格ガアルト云フコトハ分リマスガ、其決定以前ニ於テ斯ノ如キ訴願ヲ行政裁判
  所ニ持出シタ時分ハ、稅務署ガ決定シタモノニ依テ初メテ失格者トスルト行政裁判所
  ハ言ウテ居ルケレドモ、是ハ此決定以前ニ於テハ行政裁判所ト雖モ恐ラク此者ガ失格
  デアルト云フコトハ出來マイト思ヒマス、故ニ地方ノ自治ノ事務ヲ取扱フトコロノ市町村
  長ハ、此點ニ付テ斯ノ如キ新判例ハ事實ニ於テ全ク行フコトガ出來ヌト云フコトヲ申シ
  テ居ルノデアリマス自治ノ遂行ノ實ヲ舉ゲル根抵ハ議員選舉デアル、議員選擧ノ淵源
  ハ選舉人名簿ノ調製デゴザイマスカラ、此〓ニ付テ質問ヲ提起シテ居ルノヲ極ク簡單ニ
  申シテ置キマスガ、斯ノ如キ事實ヲ援用致シマシテ、本員ガ此處デ明確ナル御答ヲ願ヒタ
  イノハ第一ニ政府ハ此納稅ト選擧權ニ關スル法律ノ解釋ヲ何故ニ一定セザルカ、ソレ
  ハ納稅ト選擧權トニ付テ行政裁判所ガ斯ノ如キ新判例ヲ與ヘテ居リ、一面ニ於テハ內
  務省地方局ニ於テハ前年度ノ納稅額ヲ標準トスルヲ適當ナリト見做シ來リタルコトハ、
  殆ド慣例ノ如クニナッテ今日迄取扱ッテ來タノガ、本年ノ行政裁判所ノ判決ニ依ッテ斯ウ
  云フ新例ガ出來ルトスルト、何故ニ此納稅ト選舉權ニ關シテ法律ノ解釋ニ付テ一定シ
  テ居ラヌカ、一定シテ居レバ其一定シタルトコロノ解釋ヲ明ニ玆ニ答ヘテ戴キタイノデアリ
  マス、第二ニハ此行政裁判所ガ市會議員選舉ノ效力ニ關シテ本年十月二十七日ニ決
  定ヲ與ヘタ、此判例ガ將來我國ノ縣會議員、郡會議員、市町村會議員ノ選擧ヲ攪亂
  シテ、健訟ノ弊ヲ惹起シ、延テ自治團體ノ發達ヲ阻害スルノ虞ハナイデアラウカ、此〓ニ
  付テ明ニ御答ヲ願ヒタイ、第三ニハ若シ行政裁判所ノ此判例ガ適當デアルナラバ現行
  ノ市町村制ノ法條ニ依リ、市町村ノ行政當局者ハ容易ク選舉人名簿ガ是デ出來得
  ルト認ムルヤ否ロト云フコトヲ承リタイノデアリマス、第四ニハ若又市町村制ノ法條ガ不
  備デアルト云フナラバ、政府ハ之ニ向ッテ改正ヲ爲スノ意ガアルカ否カ之ヲ承リタイノデ
  アリマス、ソレカラ此質問趣意書ニハ書イテハゴザイマセヌガ、是ト相關聯シテ居ルコトデ
  アリマスカラ、モウ一ツ第五トシテ質問ヲ致シマス、ソレハ當選者ノ選舉ノ無效ト云フ場
  合ニ投票數ノ控除ノ仕方デゴザイマスガ、是ハドウ云フ仕方デアルカト云フト、有志ニ
  於テ此市會議員ノ當選失格者ト云フ者ハ此所得稅及外ノ事實ニ於テ資格ナキ選
  舉人ガ投票シタルモノト云フノガ四十三票アル、此四十三票ヲ如何ニ配合シテ之ヲ控
  除シタカト云フト、是ハ先例モアルサウデゴザイマスガ、次〓者ノ最高數ヲ標準ト致シマ
  シン、當選者ノ最少數ノ得點者ヨリ四十三票ゾヽノ無效扱票ヲ漸次引イテ行キマシテ
  次〓者ノ最高〓ヨリモ少數ナルマデ引イテ十名ノ中デ八名失格シタト云フコトニナリマ
  ス、サウ致シマスルト此控除ノ仕方ニ依レバ、四十三名ノ無效投票ガアッタガ爲ニ四十
  三票ヅヽ八人引カレマスルト三百四十四票ト云フ票數ニナッテ、全ク三百票ト云フモノ
  ハ傍杖ヲ〓ッテ無意味ニ投票數ヲ引カレタ結果ニナリマス、、若シ是モ適當デアルトスレバ
  致方ガアリマセヌガ、ソレナラバ何故ニ此次〓ノ方ニ於テモ必ズ次〓者ノ投票ハ神聖ナ
  ルモノデアッテ、當選者ノ投票ノミ失格シタ者ガ-有權者デナイ者ガ投票シタト云フコ
  トガ明言ガ出來マセヌカラ、均シク次點者ニ於キマシテモ引クベキガ當然ノヤウニ思ハレマ
  スケレドモ、次點者ガ其儘ニシテ置イテ、當選者ニ於テ四十三票ヅヽ引イテ、而モ三百
  票ガソレガ爲ニ無意味ニ傍杖ヲ食ッテ、神聖ナル投票ヲシタト云フ投票ガ無效ニナッタ結
  果ニナッテ居リマス、是ハ總テノ選舉ニ於キマシテ無效投票ノ仕方ガ斯ノ如キモノガ
  適當デアルカドウデアルカト云フコトハ、明カニ御囘答ヲ願ヒタイ、能ク分リ切ッタヤウナコ
  トデアリマスケレドモ、地方ノ市町村長ニ於テハ此〓ニ付テハ非常ニ疑義ヲ懷イタ者ガ
  澤山ゴザイマスカラ、是ハ問題ハ小ナルガ如キコトデアリマスケレドモ、政府ニ於テ明カニ
  此解釋及本員が提起シタル質問ニ付テ御答ヲ願ッテ置キマスルト、全國各府縣ノ自治
  體ノ行政執務者市町村長ガ之ニ由テ-此方針ニ於テ歸著スル所ガアッテ進ムコトガ
  出來ルカラ、其利益ハ多大デアラウト思ヒマス、故ニ玆ニ質問ヲ致シマシタ次第デアリマ
  ス、第一カラ乃至第五マデ明カニ書面デモ口頭デモ宜シイカラ御答ガ願ヒタイノデアリマ
  ス、私ノ質問ハ是ダケデアリマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=17

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• 018・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　次ハ水產講習所移管ニ關スル質問-三浦覺一君
  五水產講習所移管ニ關スル質問(三浦覺一君提出)
  〔三浦覺一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=18

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• 019・三浦覺一

  ○三浦覺一君　私ハ實ハ斯ウ云フ空席ニ向ッテ質問ヲ發シタクナイノデアリマス、文部
  大臣竝ニ農商務大臣ノ御出席ノアル時ニ實ハ質問ヲ致シタイト思ヒマシタケレドモガ、
  今日ノ時局ヲ鑑ミマスレバ今日私ハ與ヘラレタル時ニ於テ質問ヲ致シマセネバ時間ガナ
  イト云フコトヲ考ヘマス、故ニ唯今議長ノ宣告サレタル質問ニ付テ說明ヲ少シ致サネバ
  ナラヌト思ヒマス、實ハ水產講習所移管ニ關スル事柄ハ、此質問モ實ハ本日モ遲レタル
  感ガアリマスルノデ豫算ノ提出サレタル其當時ニ於テ實ハ質問ヲ致シタイト思ヒマシタケ
  レドモガ、是モ時間ガ許シマセヌデ遂ニ今日ニナッタノデゴザイマス、私ガ此問題ニ付テ聽
  キタイコトハ、何故ニ水產ノ〓育ニ關スルコトヲ文部省ニ移サネバナラヌ必要ガアルト云
  フコトヲ第一ニ聽キタイノデゴザイマス、文部大臣ハ先達テ竹越君或ハ吉植君カラノ質
  問ニ對シテ、傳染病ノ移管或ハ水產講習所ノ移管ノ問題ハ、文政ノ統一行政財政
  ノ整理ノ爲ニスルノデアルト云フコトヲ申サレタガ、傳染病〓究所移轉問題ノ如キハ旣
  ニ其結果ガ詰ラズシテ馬ヲ殺シテ居ル、此水產講習所ノ如キヤハリ此移管問題モ强
  イテ之ヲ遂ゲヤウトスレバ卽チ角ヲ矯メテ牛ヲ殺スノデアル、往々文政統一デアル財政
  整理デアルト申シマスケレドモ、文政ノ統一ガ出來マシテモ其目的ヲ達スルコトガ出來ナ
  カッタナラバ何ニモナラヌノデアリマス、又此問題ガ財政整理ノ一端デアルト云フケレド
  モガ、財政整理ノ一端デハナイ、寧ロ却テ經費ヲ增スベキ問題ガ玆ニ生ズルノデアル、又
  文部大臣ハ先達テ此席ニ於テ各官省ノ職司ヲ明カニスルコトガ卽チ行政整理ノ大切
  ナル問題デアルト云フケレドモ、此問題ヲ決行致シマシタナラバ却テ此職司ヲ明カニスル
  ドコロデハナイ、職司ヲシテ益〓紛雜ヲ來サセル所ノ問題ニナルノデアル況ヤ此水產講習
  所ハヤハリ北里君ガ經營サレタル所ノ傳染病〓究所ト同ジヤウナ歷史ヲ有ッテ居ルノデ
  アリマシテ、唯政府ノ人等ガ文政統一デアル今度自分等ノ內閣ニナッタカラ直チニ取上
  ゲテ自分等ノ好キニ致スト云フ單純ナル問題ノ爲ニ、之ヲ解決スルコトガ出來ナイノデ、
  又許サレヌ問題デゴザイマス、全體我國ハ四面海ヲ環ラシテ居ッテ、其水產物ハ澤山アル
  ケレドモガ、此會ノ起リマシク當時ニ於キマシテハ實ニ此水產ト云フモノハ幼稚ナモノデ
  アッテ、世間カラハ漁師デアル、水產デアルト云ッデ少シノ注意モ拂ハズ、寧ロ輕蔑ヲ受ケ
  タル際ニ於テ、實ハ我國權ニモ關スル問題ガ反對ニ起ッタノデアル、卽チ米國ノ密獵
  船ノ如キ或ハ英國ノ密獵船ノ如キハ我近海ニ來シテ盛ニ臘虎、膃肭臍ヲ獲リ、若クハ
  捕鯨ヲ致シテ密獵ヲ致シタノデアリマス、水產ガ振ハザルノミナラズ自分ノ近海ニ於テハ
  米國ヤ英國ノ密獵船カラ自分等ノ國權マデモ侵サレルト云フヤウナ情ケナイ時代ニ當リ
  マシテ、先ヅ先輩ノ村田保君等ガ此水產ノ必要ナルコトヲ絕呌サレテ水產會ヲ起シテ、
  唯水產バカリデハイカナイ、是非トモ此水產ニ從事スル者ノ〓育ヲ致シテ有望ナル水產
  ヲ振興セネバナラヌト云フコトニナッテ、明治二十年頃デゴザイマシタラウ、水產會ヲ
  起シサウシテ此水產ニ從事スル者ノ〓育ヲ、ヤハリ農業若クハ工業或ハ其他ノ商業ノ如
  キ子弟ノヤウニ、同樣ニヤハリ水產ニ從事スル者ノ〓育モシテヤラネバナラヌト云フコトニ
  ナッテ、サウシテ此水產會ノ會頭ニハ小松宮殿下ヲ奉戴致シマシテ、此宮殿下ハ非常ニ
  水產ノ方ニ御熱心デアラレテ御盡力下サレマシテ、遂ニ私立ノ傳習所ヲ起シテ、卽チ今
  申シマシタ所ノ水產ノ子弟ヲ〓育スル所ノ場所ヲ造ル、此時分ニ於テハ非常ニ微々トシ
  テ其〓育ノ機關モ振ヒマセヌノデゴザイマシタケレドモガ、故宮殿下ハ何時モ其粗末ナル
  傳習所ノ卒業式ナドニ御出デニナリマシテ、必ズ令旨ヲ賜ッテ水產ノ御奬勵ヲ遊バサレ、
  段々進ンデ參リマシタケレドモガ、尙ホ一向振ヒマセズ明治二十六年ニハ遂ニ此議會ノ建
  議ニ基イテ政府モ稍〓水產ニ注意ヲ拂フコトニナリ、又力ヲ入レルコトニナリマシテ、僅カノ
  金ヲ以テ此傳習所ナルモノニ補助ヲ與ヘルコトニナリマシタ、ソレガ段々進ンデ參リマシテ、明
  治三十年ニハ遂ニ初メテ此講習所ト云フモノガ國立ノ國費ヲ以テ支辨スルト云フコトニ
  ナッタノデアリマス、左樣ナル歷史ヲ有ッテ居リマスルカラ、此講習所ノ卒業式ニハ農商務
  大臣ノ主管デアリマスル講習所ノ卒業式デハゴザイマスルケレドモガ、今日尙ホ宮殿下ガ
  ヤハリ御臨場ニナリマシテ、御令旨フ賜ハルト云フヤウナル歷史ヲ有ッテ居ルノデアリマス、
  故ニ唯文政ノ統一デアルトカ、財政ノ整理デアルトカト一云フヤウナル事柄ノミヲ以テ之ヲ直
  チニ決行スルト云フコトハ、此一〓ニ於テモ許サナイノデアリマス、又況ヤ其移シタル事
  柄ガ宜シケレバ宜シイケレドモガ、私共ハ決シテ宜シウナイト思ヒマス、前ニモ申上ゲマス
  通リニ、卽チ角ヲ矯メテ所謂牛ヲ殺スヤウナル結果ニ陷ルノデアリマス、何故ナラバ水產
  ノ〓育ハドウシテモ其實地ト云フコトガ大切デアリマス、是ハ獨リ水產〓育バカリデハナ
  イ一體ニ此實業〓育ト云フモノハ實際的ノ人物ガ出來レバ宜イノデアリマシテ、唯高
  等ナル學校ニ出テ先生カラ〓ヲ受ケテ、、ソレガ口ノ人バカリニナッテ、實際腕ノ人ガ出來
  ネバ何ニモナラヌノデアル、今日支部省ノヤッテ居ル實業〓育ト云フモノハ之ニ類スルコトガ
  多イノデアリマス、現ニ農學校ノ卒業生デアル、私共ノ縣ニアル農學校ニ致シマシテモ、
  農學校ニ出シタナラバ却テ農業ノ方ニハ從事シナイ、必ズ百人ノ卒業生ハ百人トモ
  縣廳ノ雇ニシテ呉レロ、或ハ何處ノ巡囘〓師ニ採用シテ吳レト云フ、折角父兄ハ農
  業ノ〓育ヲサセルタメニ學校ニ出シタトコロガ、今度ハ反對ニ自分ノ家モ繼ガナイ、家
  業モ繼ガナイ、又實際ニ農業ニモ從事シナイ、所謂高等遊民ヲ殖シテ居ルデハアリマセ
  ヌカ、是ハ獨リ農業バカリデナク總テ實業〓育ト云フモノハ今文部省ノヤラレテ居ル
  ノハ斯樣ナ傾ガアル、名ハ宜シイ實業〓育ヲ盛ンニスルト云フコトヲ始終仰シヤルケ
  レドモ、實業學校ヲ出タ者ガ實際實業ニ從事シテ居ル者ガアリハシナイ、皆卒業生ハ
  ドウカト云フト給料取リニナル、夫等ガ口ガナイトキニハ遂ニ是ガ高等遊民ニナッテシマ
  フ、名ハ實業〓育ト云フケレドモ事實ノ上ニ於テハ所謂高等遊民ノ製造所見タヤウニ
  ナッテ居ル、ソレデ實業〓育ト云フモノハ農業ノ〓育デアレバ百姓ニナルニ必要ナル學
  科ヲ〓ヘテ貰ヘバ宜イ、又水產ニ從事スル者ガ水產ノ〓育ヲ受ケルト云フノハ水產ノ
  實際ニ水產ノ仕事ノ出來ル人間ヲ養フノデアルヽ又生徒モ其意
  學者ニナルノデハナイ、
  味ヲ以テコソ學校ニ來テ居ルノデアル、高等遊民ニナルヤウナ〓育ヲサレテハ堪リマセヌケ
  レドモガ、今文部省ガ現ニヤッテ居ルヤウナルコトヲ致セバ卽チ斯ウ云フヤウナル結果ヲ
  來ス、文部大臣自ラモ此事ニ付テハ餘程心配ヲ致シテ居リマスト見エマシテ、先達テモ水
  產學校長或ハ商船學校長ナドヲ集メタル際ニ於テ、其諮問案ノ一ツニ實業界ト直接ノ
  方法如何ト云フヤウナル諮問案ヲ發シテ居ル、リレデアルカラ自分等ノ△〓〓育ヲ致シテ
  居ルトコロノ實際ノ有樣ハ實業〓育トハ云ヘドモガ、實際ニ於テ疎クアッテ、其卒業者
  ガ社會ニ出テ役ニ立タヌト云フコトヲ社會ガ認メテ居ル、ソレデ斯樣ナルトコロノ諮問案
  モ旣ニ自分ガ氣付イテ發シテ居ルノデアリマス、又實業〓育ト云フモノハ、唯學校ニ出
  テ〓授バカリシテ、學理ノミヲ〓究致シマシテモ何ニモナラヌ、寧ロ學理ト云フモノハ第
  二デアッテ、實際ノ-實物ニ就テ〓究ヲ致スノガ是ガ一番大切デアルケレドモガ、今此
  案ニ提出ニナッテ居ルヤウナル水產講習所デ、折角實用的ノ人間ガ出來居ルモノヲ、ワ
  レヲ文政統一ト云フヤウナ名ノ下ニ奪去ッテ、文部省ガ高等專門學校ト云フヤウナモノ
  ニ於テ之ヲ養ッタナラバ、今私ガ申シマスルヤウナ必ズ高等遊民ヲ造ルノデアル何ニモ役
  ニ立タナイトコロノ人間ヲ造ルノデアル、是ハ敢テ文部大臣ガ將來ヲ御覽ナサレト仰シヤ
  ルカ知ラナイケレドモガ、將來ヲ見ルニ及バナイ、今此處ニ實際ニ於テ適切ニ此結果ヲ
  示シテ居ル現ニ文部省カ御自慢テ爲サッテ居ルトコロノ東北大學ニ水產科ガ既ニア
  ル、文部省直轄ノ高等學校ニ於テ卽チ東北大學ノ水產科ノ生徒ノ結果ヲ御覽ニナッ
  タナラバ直チニ分ルノデアル是ハ大正二年度ノ調ベデゴザイマスルガ、東北大學ノ水產
  科ヲ卒業シタル人員ガ百五十名ノ中ニ於テ、今日無職ニ居ル者ガ四十七名アル約
  三分ノ一ガ無職ニ居ルデハゴザイマセヌカ、而シテ農商務大臣ノ管轄ニアルモノヲ取上ゲ
  テ、私ガ能ク育ッテヤラウト云フトコロガ講習所ノ方ガ餘程成績ガ好シイノデアル、現れ
  講習所ノ卒業生ハ千百七十二名ノ中ニ無職ト云フモノガ僅カニ十三名ホカナイ、此
  無職ト云フノハ或ハ病氣テ職ニ就ケナイノカモ知レナイガ、此表ニ現レテ居ルモノデ見レ
  バ千百七十二名モアリマスル中ニ僅カニ無職ノ者ガ十三名デアル、文部省御自慢ノ
  學校デ卒業シタル者ハ百五十名ノ中ニ四十七名ノ無職者ガ旣ニアルノデハナイカ、自分
  等ガ是カラ能ク水產ノ〓育ヲ盛ンニ致シマス、農商務大臣ガ持ッテ居ルヨリモ私ガ管轄
  シテ宜シクスルト云フ其結果ハ斯樣ナ結果ガ出テ居ルデハアリマセヌカ、斯樣ナル育テ方
  ヲスルトコロノ文部省ニ、何故ニ此必要ナル生徒ノ〓育ヲ賴マレルカ、實際ニ於キマシ
  テ斯樣ナル結果ヲ來シテ居ルノミナラズ、又私共ハ文部省ノ今日執ッテ居ルトコロノ實
  業〓育ノ方針ニ反對ヲスルノデアル、實際斯樣ナル特殊ノ〓育ハヤハリ特殊ノ機關ヲ監
  督スルトコロノ官省ガ管轄スルノガ最モ適當ナリト思フ、トコロガ文部大臣ハ先日モ此
  席ニ於テ、或ハ陸軍ノ幼年學校ノ如キ、或ハ遞信省ガ所管シテ居ル所ノ商船學校ノ
  如キ、特殊ノモノハヤハリ特殊ノ機關ヲ監督スルトコロノ官廳ニ任セルコトガ相當ナリト
  斯ウ云フコトヲ言ッテ居ル、是ガ實際デアル吾ミハ商船學校ヲ遞信省ガ持ッテ居ルノヲ最
  モ適當ナリト思フ又水產事業ノ如キ〓育ヲスルモノヲ農商務省ノ所管ニ置クコトガ本統
  ナノデアル、蠶業講習所ノ如キモノヲ文部省ニ移シタノハ農商務大臣ガ寧ロ意氣地ガナイ
  カラデアル、自分ノ所管シテ居ルトコロノ大切ナルトコロノ機關ヲ、文部省ニ取上ゲラレル
  ノハ農商務省ガ寧ロ意氣地ガナイ、今度ノ水產講習所モ支部省ニ移ルト云フノハ農商
  務大臣ノ意氣地ノナイカラデアル、獨逸ノ如キハ今日ハ敵國ニナッテ居リマスガ、獨逸帝
  國ノ今日ノ工業其他ニ於テ非常ニ勃興ヲ致シタル原因ハ何デアルカ、此實業〓育ガ立
  派ニ行屆イタカラデアルガ、其實業〓育ガ立派ニ行屆イタト云フノハ實際的ノ人間
  ヲ造ッタノデアル、今文部省ガ造ッテ居ルヤウナ高等遊民ヲ製造シタノデハナイ獨逸ガ
  今日勃興シタル原因ハ各種ノ事業ニ向ッテ適當ナル人物ヲ拵ヘ、サウシテ其人間ハ直
  チニ實業ニ從事シテ、勸キ得ル人間ヲ拵ヘタカラ今日ノ隆盛ヲ來シタノデアル我國ガ
  今日國產奬勵トカ、始終此演壇ニ立ッテ國務大臣ハ御話ニナルガ、高等遊民バカリ製
  造シテ居テサウ云フコトデドウシテ產業ガ發達スルカ、水產ノ如キハ農商務大臣ノ方ヘ
  取ッテヤルガ宜イ、養蠶講習ノ如キヲ文部省ニ移シタ如キモ間違デアル、ソレ等モ早ク取
  戾シテ農商務大臣ノ管轄スルコトニシテ貫ヒタイト云フ意見ヲ常ニ持ッテ居ルノデアリマ
  スソレカラ大體〓育ノ方針ガ間違ッテ居ル、尙財政整理ナドヽ云フケレドモ、前ニモ申
  シマシタヤウニ、決シテ是ハ財政整理ニハナラナイ、農商務省カラ文部省ガ奪ッテ何ト致シ
  マシタカ、高等專門水產學校ト斯ウ名ヲツケテアリマスガ、併ナガラ之ヲ〓育スルニ付テハ
  ヤハリ農商務大臣ガ所管シテ居ル、今度試驗所ハ廢止サレマシタガ、其試驗所ヘ往ッテ
  其試驗ノ結果ニ依ッテ生徒ヲ〓育スルニアラザレバ、何ヲ以テ〓育ノ材料ト致シマスカ、
  此水產ニ關シタル〓育材料ハ先進國ニハナイ、水產ノ高遠ナル學理ヲ〓ヘル、學理ハ
  諸外國ニモ無イデハナイカ、サウ致シマスレバ、我邦ニ於テ實驗致シタル其結果ヲ以テ
  生徒ヲ〓養スルノデアル、ソレハドコデスルカ、實地ニ試驗シナケレバナラヌ、實地ニ試驗
  シナケレバナラヌト云フト農商務省ノ試驗所ヘ生徒ヲ引率レテ往ッテ、警古ヲヤラナ
  ケレバナラヌ、ソレデ何ガ經費ノ節減ニナルカ、却テ職司ノ紛雜ヲ來シ、經費ハ餘計ニカ
  カルヤウニナル、而シテ又此處ニ文部大臣ガ居ルナラ聞イテ見タイト思ヒマスガ、此水產
  專門學校ヲ造ッテ誰ガ先生ニナルモノガアリマスカ、帝國大學ヲ卒業シタ化學ナリ物理
  ナリノ專門ノ事ヲ知ッテ居ル先生ガヤッテ來テ〓ヘルデアリマセウガ、此學校ノ主トスルト
  コロノモノハ何デアルカ、漁ヲスルコトガ一番主モナルコトデアリマセウ、此先生等ハ船ニ
  乘ッテ品川沖位マデハ宜イガ、、其先キヘ行ケバ船ニ醉ッテシマッテ人ニ〓ヘルトコロデハナ
  イ、自分ノ命ガ危イ位ニ思フデアリマセウ、漁業ト云フコトヲ〓ヘルニハ狂瀾怒濤ノ中ニ
  立ッテ魚ヲ漁ルコトヲ〓ヘナケレバナラヌ、文部省ユハドコニサウ云フ先生ガ居リマスカ、〓
  員其者ガ無イ隅田川位ナラ出ラレマセウガ沖ノ方ヘ出ルト船ニ醉ッテ何ニモナラナイ、ワ
  ンナ學校デ育ッタ人ノ役ニ立タヌコトハ極リキッテ居ル、第一ニ〓科材料モ無ケレバ〓員
  モ無イ仕方ガナイ、時間ガナイカラ-實ハモウ少シ國務大臣デモ此處ニ御出デニ
  ナレバ實業〓育ニ付テ獨リ水產ノコトバカリデハナイ、、實業〓育ノ方針ニ付テ十分御尋
  シタイト思ッテ居リマシタケレドモ、誰モ御居デニナラヌ、次官サヘモ御居デニナラヌ、空席ニ
  向ッテ質問ヲ發シテモ何ニモ役ニ立チマセヌカラ、何レアトデ書面ナドデ御答ガアリマセウ、
  御答ガアリマセウガ、ドウゾ國務大臣ハ明カニ答ヘテ貰ヒタイ、斯ウ云フヤウニ答ヘテ貰ヒ
  タイ、此水產專門學校ノ經費ノ否決ヲ望ムト云フ答辯ヲ望ム、ソレカラ農商務大臣ハ
  オマヘノ說ハ成程尤デアル、自分ハ惡カッタカラ水產講習所復活ノ經費ヲ直チニ出スノ
  ガ宜イト云フコトニスルトー云フ潔イ答辯ヲ求ムルノデアル、文政統一ナドハモウ聽キ飽キタ
  行政整理ノ一端デアルト云フコトモ實ハ聽キ飽イタ、サウ云フコトハ能ク知ッテ居ル左
  樣ナル答辯ヲ求ムルノデハナイ、ドウゾ此水產專門學校ト云フモノハ滿場一致ヲ以テ
  否決スルト云フコトヲ欲シ、尙私ハ水產講習所ノ追加豫算ヲ出スカラ、其時ハドウカ諸
  君ノ御贊成ヲ願ヒタイト云フ答辯ガ大切ダト思ヒマス、又ドウカ農商務大臣ハ此處
  ニ居ラヌガ、、空席ニ向ッテ言ッテ置キマスガ(笑聲起ル)農商務大臣ハモウ少シ元氣ヲ出
  シン、自分ノ仕事ヲ他ニ奪ハルヽヤウデハ遂ニ農商務省其物ガ無クナッテシマフ實業
  ノ奬勵トコロデハナイ、國務大臣ノ居ル官省ガ無クナッテ仕事ハ全ク無イヤウニナッテシマ
  フ故ニ農商務大臣ノモウ少シ元氣ヲ出シテ長イコトハナイダラウガ、居ル間ハ元氣ヲ出
  シテ、自分ノ所管ノ仕事ハ他ニ奪ハレヌヤウニ國產奬勵ヲ振ヒ興スコトヲヤッテ貰ヒタ
  イサウシテ今私ガ申シタヤウナ御答ヲ得レバ洵ニ滿足トスルトコロデアリマス、私ハ實ハ
  御答ニナルコトヲ知ッテ居リマス、先日村田君等ガ之ニ反對ノコトニ付キマシテ、大隈總
  理大臣ヲ尋ネマシタ、丁度斯ウ云フ意味ノヤウナ御答ダッタサウデス、實ハ能ク知ラナカッ
  タガ、成程聽イテ見レバドウモ自分等ガソレハウッカリシテ居テ宜クナッタ、傳染病〓究
  所ノ方ハ自分ガ主張シタガ、水產ノ方ハウッカリシテ居ッタノデアルドウカ此議會ノ方デ
  恢復ニナルデアラウ、又議會デモ解散ニナッタラ原案ガ又戾ッテ來ルカラ、ソレヲ希望
  スルト云フヤウナ口吻ヲ漏ラシタト云フガ、是ハ平生大隈伯ハ法螺ヲ吹クトカ何トカ云フ
  世評ガアルガ、此事ダケハナカ〓〓正直ニ言ッテ居ルソレデ今私ガ說明致シマシタヤウ
  ナ趣意ニ依ッテ御修正ニナルコトヽ信ジマス、尙ドウゾ滿場ノ御贊成ヲ得マシテ、今豫算
  審議中デアリマスカラ、斯ノ如キ趣意ニ依ッテ御賛成アランコトヲ希望致シマで、大臣ノ
  答辯ハ實ハ要リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=19

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• 020・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　移民政策ニ關スル質問-西村丹治郞君
  六移民政策ニ關スル質問(西村丹治郎君提出)
  〔西村丹治郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=20

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• 021・西村丹治郎

  ○西村丹治郞君　チヨット御斷リシテ置キマスガ、此質問書ノ第二項ヲ少シク修正致
  シマス其事ヲ御承知ヲ顧ヒマス「第二濠州ニ於ケル移民制限法ノ改正若クハ之ヲ有
  利ニ適用セシムル」トアリマスノヲ、「撤廢若クハ是カ改正ニ付キ何等カノ手段ヲ採リシコ
  トアルヤ若シ是レ無カリセハ今後ノ方針如何」斯ク修正致シマシタカラ左樣御承知ヲ願
  ヒマス、私ノ質問ノ箇條ハ五箇條ニナッテ居リマス、併ナガラ此五箇條ヲ此場合一々說
  明ヲ加ヘマスト大變ナ時間ヲ要シマスカラ幸ヒ此處ニ通商局長モ御居デノヤウデスカ
  ラ、大體ニ關シ質問ノ趣意ヲ辯明致シマスカラ、其積リデ御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス
  我國ノ如キ土地ガ極ク狹クシテ而モ其上ニ國ノ產物ト云フモノハ甚ダ少ナイノデアリマス、
  例ヲ引イテ申シマスナラバ先ヅ第一ニ米ノ如キモ足ラナイノデアル、麥モ足ラナイノデア
  ル、大豆モ足ラナイノデアル、砂糖モ足ラナイ、綿モ足ラナイ、殊ニ工業ノ基礎トナルベキ
  鐵ノ如キモ殆ド其大部分ヲ之ヲ海外ニ仰イデ居ルト云フヤウナ有樣、斯ノ如ク土地ガ
  非常ニ狭ク、而シテ國ノ產物ハ甚ダ少ナイノデアル更ニ一面ヲ見マスルナラバ、人口ハ殆
  ド無限ノ增殖力ヲ以テ殖エツヽアルノデアル、此ニ於テ我日本帝國ノ運命ヲ開拓スルニハ、
  ドウシテモ海外ニ向ッテ發展ヲスル、海外ニ張リ出ス、海外ニ伸ビルト云フ外ニハ途ハナイノ
  デアラウト思フノデアリマス、殊ニ戰後我國勢ノ發展民族ノ膨張ト云フモノハ實ニ驚ク
  ベキモノガアルデアラウト私ハ信ズルノデアリマス、此際ニ當ッテ移民政策ノ根本義ヲ確立
  スルト云フコトハ最モ必要デアルデアラウト信ズルノデアリマス、然ルニ諸君海外各地
  ノ有樣ヲ見マスレバ如何デアリマス、北米合衆國ニ於テ絕對ニ排斥サレテ居ル加奈
  陀ニ於テモ我大和民族ハ排斥サレテ居ル、更ニ南濠洲ヲ見マスレバドウデアル、濠洲方
  面ニ於テモ排斥サレテ居ル「ニユージーランド」ニ於テモ排斥サレテ居ル南米方面ニ於テモ
  今日各地ニ我大和民族ノ排斥熱ガ起ラントシツヽアルト云フ有樣デアル、我日本帝國
  ノ運命ハ海外ニ發展スルニアリ、海外ニ伸ビルニアリ、然ルニ海外各國地ヲ見レバ、東モ
  南モ總テ八方塞ガリト云フヤウナ狀態デアリマス、今カラ數年前デアリマシタカ、時ノ外
  務大臣小村侯爵ハ此壇上ニ立ッテ我大和民族ガ世界各地ニ排斥サレテ居ル、而モ之
  ヲ打破ルダケノ外交的手段ナクシテ、外交的力ナクシテ、己ノ無能、己ノ失政ヲ蔽ハン
  ガ爲ニ、移民政策ノ大方針ハ決シテ海外各地ニ我移民ヲ散布スルト云フヤウナ方針
  デナイ、總テ大和民族ノ海外ニ出ルモノハ、之ヲ滿韓ノ地ニ集中スルノデアル强イテ排
  斥ヲ食ッテ居ル地方ニ我政府ハ强イテ送ルト云フ考ハ毫モナイ、是等ノ移民ハ舉ゲテ滿
  韓ノ地ニ集中スルノデアルト云フコトヲ、曾テ此演壇ニ聲明サレタノデアリマス、併ナガラ
  是ハ唯外交ノ失敗ヲ蔽フ一時ノテレカクシニ言ハレタモノトシテ、吾ミハ殆ド重キヲ措カ
  ナカッタノデアリマス、最早今日ニ於テ私ガ玆ニ滿韓ハ我移民ノ行クベキ土地ニアラズト
  云フヤウナ說法ヲ諸君ニ致ス必要ハ毫モナイト思ヒマス、ソレ故ニ私ハ尙ホ我移民ヲ滿
  韓ニ集中スルト云フノ政策ヲ今日ニ於テモ、尙ホツレヲ執リツヽアルノデアルカ、將來モヤ
  ハリ此方針ヲ以テ行カントスルノデアルカト云フコトガ第一ノ質問デアリマス、私が敢テ此
  際ニ火事場泥坊ヲヤレト一云フテ政府ニ勸メルノデハアリマセヌ、併ナガラ諸君、我移民
  政策ノ根本義ヲ確立シテ、我大和民族ノ海外ニ發展スベキ根柢ヲ形ヅクルノハ、今日
  ヲ以テ最後ノ時期ト私ハ信ズルノデアリマス諸君、今月ノ十四五日ノ頃デアツタト記憶シ
  テ居リマス、都下各新聞ニ英國ノ對日感情ト云フノ電報ガ出テ居リマシタ、其中ニ如
  何ナルコトガアッタカト申シマスレバ、其一二句ヲ申シマスレバ、日本ハ此度正義ノ爲メニ
  成遂ゲタル偉大ナル效績ハ、濠洲殖民地ニ於ケル感情ヲ昂進セシムルコト疑ヲ容レズ
  云々ト云フ文句ガ其中ニアッタノデアリマス、諸君、今日濠洲ニ於テ我帝國ノ移民ガ如
  何ニ迫害サレ、如何ニ排斥サレツヽアルカト云フコトハ、私ガ此處ニ委シク申上ゲルノ必
  要ハナイト思ヒマスガ、其一節ヲ玆ニ申上ゲルノ必要ガアルト思ヒマス、先ヅ御承知ノ通
  リ千九百一年ニ濠洲ノ移民制限法ト云フモノヲ制定致シマシテ、其一條項ニ持ッテ行ッ
  テ歐羅巴語ヲ以テ語數五十字以上ノ文章ヲ作リ、且ツ之ニ署名シ得ルモノニ限ッテ濠
  洲ニ入國ヲ許ス、斯カル法律ガ制定サレテ居ルノデアリマス、然ルニ諸君、此法律制定
  ノ以前ニ於テ濠洲ニハ我移民ガ行ッタモノデ、今日存在シテ居ルモノガ約一千人居ルノ
  デアリマス、此法律アルガ爲メニ此一千人ノ我移民ハ十有餘年ノ間本國ヨリ妻子ヲ迎
  フルコト能ハズ、又新タニ結婚スルコトノ自由ヲ有セズ、海外萬里ノ異域ニ於テ此一千
  人ノ我憐ムベキ同胞ハ、今日マデ獨身生活ヲナスノ止ムナキ狀態ニ陷ツテ居ルノデアリマ
  ス、歐羅巴語ヲ以テ試驗スルト云フコトガ規定シテアル、故ニ我移民ニシテ濠洲ニ渡航
  セント欲スルモノハ、英語ヲ話ス國デアルカラ、英語サヘ習ッテ行ッタナラパ宜カラウ歐羅
  巴語ノ一タル英語サヘ習ッテ置イタラ、是テ確ニ試驗ニ合格ガ出來ル、斯ク考ヘテ或ル妻
  或ル子弟ハ日夜千辛萬苦英語ヲ習ッテ、而シテ其良人ノ處、其親ノ處ニ行カントシテ本
  國ヲ出發シテ向フニ參リマス、焉ンゾ講ラン試驗官ハ彼奴ハ英語ダケヲ知ッテ居ルヤウナ
  面付キダ、是レハ一ツ佛蘭西ヲ以テ試驗ヲスル、又或ハ獨逸語ヲ以テ試驗ヲスル、若ク
  バ伊太利語ヲ以テ試驗ヲスルトカ云フ如ク、英語ヲ知ッテ居ルト思ッテ居ル奴ハ佛蘭西
  語ヲ以テ、佛蘭西語ヲ知ッテ居ルト田心奴ハ獨逸語ヲ試驗スルト云フ如キ、斯ノ如キコ
  トヲ試驗官ガヤルガ爲メニ、折角多年ノ間千辛萬苦シテ親ニ遇ヒ又良人ニ逢ハンガ爲
  メニ遙々出掛ケテ行ッテモ遂ニ上陸スルコト能ハズシテ、淚ヲ呑ンデ日本ニ放逐サレタト
  云フコトガ隨分アッタノデアリマス、然ルニ諸君、歐羅巴カラ參リマスル移民ハ如何ナル制
  限ヲ受ケテ居ルカト申シマスレバ、實際ニ於テ殆ド英語デ自分ノ名スラ能ウ書キ得
  ナイト云フヤウナ者マデモ、ドシ〓〓濠洲ニ入リ得ルノデアリマス、況ヤ佛蘭西人デアレバ
  佛蘭西語デ以テ試驗ヲスル、英吉利人ハ英語ヲ以テ試驗ヲスル、伊太利人デアレバ伊
  太利語ヲ以テ試驗ヲスルト云フヤウニ、斯ク各〓自國ノ言葉ヲ以テ試驗ヲ致シマスカラ
  全然自由ニ入リ得ルノデアル、殆ド其試驗制度ハアレドモ無キガ如キ狀態ニナッテ居リマ
  ス、然ルニ諸君、我帝國ノ移民ハ斯ノ如ク殘忍酷薄ナル取扱ヲ彼レ移民官カラ受ケテ居
  ルノデアリマス、又新嘉坡及ヒ西濠洲間ニ定期航海ヲ開イテ居ル汽船會社ノ船賃ハ
  非常ナル所ノ差別的待遇ヲ受ケテ居ルノデアリマス、ソレハ何デアルカ、新嘉坡西濠洲
  間ヲ往來シテ居ル汽船會社ハ日本人ニ對シテハ白人ニ對スル船賃ノ恰度倍額ヲ課シテ
  居ルト云フ現在ノ有樣ニナッテ居ルノデアリマス、ツレカラ又濠州內地ニ於テ如何ナル取
  扱ヲ受ケテ居ルカト申シマスレバ、土地所有權ノ無キコトハ勿論、土地借地權スラ之ヲ
  有セズ、又製造業モ一切許サレテ居ラヌト云フ有樣デアル、又酒ノ小賣モ許サレテ足ロラ
  ヌ、鑛山ニ從事スルコトモ許サレテ居ラヌ、鑛山ノ勞働ニ從事スルコトモ許サレテ居ラヌ
  ト云フ有樣デアル、尙ホ滑稽ナ話ガアリマスノハ、或移民ガ自分ノ友人ガ本國カラヤッテ
  來タ爲ニ波止場ニ迎ヘニ出タ、而シテ其友人ノ荷物ヲ手ニシテ之ヲ助ケテ陸ニ上ッタト云
  フ爲ニ、巡査ニ捉ッテ告發サレテ罰金ヲ科セラレタトー云フコトガアル其理由ニ曰ク彼ハ契
  約移民デアル、荷物ヲ持ツト云フコトハ勞働者ノ職ヲ奪ッタト云フノデジ三罰金ヲ科セラレ
  タト云フコトガアル、又契約移民ガ自分ノ友達ノ庭ノ掃除ヲシテヤッタト云フノデ、勞働賃
  金ハ一錢デモ貫ッタノデハアリマセヌ、所謂厚意ヨリ庭ヲ掃イテヤッタ、其者ガ又勞働者
  ニ見付カッテ告發サレテ、是亦罰金ヲ科セラレタト云フ事例ガアルノデアリマス、諸君、斯
  ノ如ク我ガ移民ハ濠洲ニ於テ移民制限法ニ於テ非常ナル迫害壓迫ラ蒙リ、尙ホ內地ニ
  於テ斯ノ如ク殘酷至極ナル取扱ヲ受ケテ居ルノデアリマス、此ニ於テ私ハ問ハントスル、
  此度ノ日英協同動作ナルモノハ、何ノ爲ニ執ッタノデアル、勿論加藤外務大臣ガ此壇上
  ニ於テ、日英同盟ノ誼ニ依リ東洋平和ノ爲ニ執ッタノデアルト斯ウ辯明サレテ居リマス、
  無論其通リデアルト私モ信ズルノデアル、日英同盟ノ誼ニ依ッテ日本ハ立ッタコトハ勿論デ
  アルト信ズルノデアリマス、併ナガラ諸君、日英同盟ノ誼ニシロ、國家ノ利益國民ノ幸福
  ヲ無視シテ日英同盟何カアラント私ハ信ズルノデアリマス、如何ナル協約如何ナル同盟
  ト雖モ、國家國民ノ利益ヲ外ニシテ爲スベキ筈ハナイト確ク私ハ信ズルノデアリマス、諸
  君、曩ニ「タイムス」紙上ニ論ゼラレテ居ッタ所ノ英國ノ對日感情ヲ朗讀致シマシタガ、卽
  チ濠洲ニ於ケル我ガ移民ニ對スル所ノ感情モ確ニ此際改マルデアラウ、確ニ一變スルモ
  ノデアラウト云フコトヲ「タイムス」新聞モ論ジテ居ルヤウナ次第デアリマスカラ、戰後ニ於
  テ南洋方面ニ於ケル地圖ノ色ガ如何ニ變ラウトモ、亦如何ニ變ヘベキカト」云フコトハ、
  私ハ今日此處デ論斷スル時機ト思ヒマセヌガ、併ナガラ南洋ニ於ケル地圖ハ如何ニ變
  化スルトモ、南洋ノ勢力消長ハ如何ニナルカハ知レマセヌガ、此際此時ニ當ッテ是非トモ
  我ガ大和民族ガ南洋方面ニ向ッテ發展スルト云フニトニ付テハ、今後何等ノ拘束ヲ受ケ
  ズ何等ノ制限ヲ受ケズ、自由自在ニ南洋方面ニ向ッテハ橫行濶步シ得ル地方ヲ此際是
  非トモ確定シナケレバナラヌ最好ノ時機ト信ジマス、或ハ現内閣ニ向ッテ斯ル重大ナルコ
  トヲ望ムノハ無理デアルカモ知レマセヌガ、併ナガラ是ダケノコトハ是非トモ此際ニ確立ス
  ル所ノ政策ヲ執ラナケレバナラヌト私ハ信ズルノデアリマス、最後ニ私ハ加州·土地法ニ關
  シテ六月以後ノ交涉經過如何ト云フ質問ヲ發シテ居リマスカラ、之ヲ一言此ニ辯明致
  サウト思ヒマス、既ニ先般此問題ニ付テハ御質問ニナッタ御方モアルト考ヘマス、又既ニ
  加藤外務大臣ガ今尙交涉中デアルト云フヤウナ御返答ガアタヤウニ聞イテ居リマス、旣
  斯ル質問ガアリ、斯ル答辯ガアッテ居ルカラ、私ガ玆ニ質問スル要ハナイヤウデアリマス、併
  ナガラ私ハ更ニ之ヲ問フ必要ガアルト確信スルノデアリマス、何故デアル、今年六月二十
  四日カ五日デアッタト記憶シテ居リマス、加藤外務大臣ハ此壇上ニ立ッテ前外務大臣
  ノ或種ノ提議ハ六月十日之ヲ撤囘シタリト云フコトヲ聲明セラレタト私ハ記憶シテ居リ
  マリ、前外務大臣ノ亞米利加政府ニ向ッテ提議セラレテ居ッタ或ル種ノ提議ハ、現政府ハ
  之ヲ撤囘シタト云フコトヲ此壇上デ聲明セラレタノデアル、諸君、前牧野外務大臣ガ殆
  ド一年間モ掛ッテイロ〓〓ナ交涉イロ〓〓ナ協議ヲサレタト云フ〓末ハ、本年ノ春ノ議
  會ニ此壇上ニ於テ公ニサレテ居リマスガ、交涉協議ノ結果、最後ノ提議トシテ或種ノ
  內容ハ分リマセヌ、或種ト云フ言葉ヲ以テ此議會ニ紹介セラレテ居リマスカラ、私モ或
  種ト云フ其提議ヲ千辛萬苦ノ末練リニ練ッテ前內閣ノ外務大臣ガ亞米利加ニ提議
  シテ、之ヲ加藤男爵ガ協議ヲ爲サルヤ否ヤ、間モ無ク此提議ヲ徹囘セラレタト云フコト
  ニ付テハ、確カニ加藤外務大臣ノ胸中ニ一大抱負アリ、一大經綸アッテ爲サレタコトデ
  アルト思ッテ、私ハ確ニ其成功ヲ期シテ今日マデ待ッテ居ッタノデアル(拍手起ル)諸君、
  前內閣ガ斯クマデ苦心シテヤッタモノヲ、自分ガ其衝ニ當ルヤ否否、間モナクソレヲ有害ナ
  リ無益ナリトシテ撤回シテシマッタ以上ハ、自分ノ責任トシテ一日モ速ニ之ヲ解決シ、而モ
  一大抱負ヲ以テ之ヲ解決スベキ政治上ノ責任アリト私ハ信ズルノデアリマス(「ヒヤノㄴ
  ト呼フ者アリ)然ルニ諸君、旣ニ半歲ヲ過ル今日ニ至ルマデ何等聞ク所ガナイノデハアリ
  マセヌカ(拍手起ル)外交上ノ怠慢ト言ハンカ、餘リニ緩慢デハアリマセヌカ(「其通リ」ト
  呼フ者ナリ)更ニ私ハ之ヲ評スニ外交無能ナリト言フコトヲ斷言スルニ躊躇シナイノデア
  ル(拍手起ル)夫故ニ私ハ一日モ速ニ此期間モサウ長イコトハナイト思ヒマスガ、此期間
  ニ於テ-此開會期間ニ於テ速ニ此結果ヲ公表サレンコトヲ當局者ニ望ムノデアリマス
  (「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)之ヲ以テ私ノ質問ヲ終リマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=21

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• 022・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜岡縣政ニ關スル質問-松城兵作君
  七靜岡縣政ニ關スル質問(松城兵作君提出)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=22

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• 023・松城兵作

  ○松城兵作君　本員ハ質問ノ件ニ付キ書記官長ヲ經テ內務大臣ノ出席ヲ求メマシタ
  所、差支ガアルト云フコトデアル其差支ハ病氣カ或ハ如何ナル差支デアルカ、若シ病氣
  ナラ據所ナイガ、病氣デナイナラ院議ヲ以テ內務大臣ノ出席ヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=23

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• 024・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　病氣ノ爲ニ出席シナイト云フコトデアリマス
  〔「ヤレ〓〓」ト呼フ者アリ〕
  〔松城兵作君登壇〕
  〔拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=24

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• 025・松城兵作

  ○松城兵作君　本員ハ靜岡縣政ニ關シマスル質問ヲ致シマスルニ付テハ、是非共內務
  大臣大隈伯爵ノ出席ヲ希望シテ居ルノデアル、併ナガラ病氣差支アリトスレバ是ハ巳ム
  ヲ得ヌコトデアリマシテ、實ハ次囘マデ延期シヤウト云フ考モ起シマシタガ、最早議會モ
  此期間ニ質問セヌト、ドウナルカ分ラヌ(「其通リダ」「大ニヤッテ呉レ」ト呼フ者アリ)此場
  合ニ於テ甚ダ遺憾デアリマスケレドモ質問致シタイト思フ、內務次官ノ下岡君モ見エル
  ヤウデアリマスガ、下岡君ニ質問スルデハナイ、私ハ大臣ニ質問スルノデアリマスカラ、責
  任アル大臣ノ答辯ヲ求メタイト考ヘテ居リマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)靜岡縣政ニ關
  シマスル質問ハ、本年ノ靜岡縣通常縣會ニ於ケル豫算ノ件デアリマス、此豫算ノ縣會ノ
  決議ニ對シテ殆ド縣會ノ意志ノ大部分ハ沒却サレテ、知事ノ要求ノ全部ガ原案ニ悉ク
  ナッタト云フノデアリマス、此原案執行ニナリマシタ所ノ條項ニ付テ、其理由ヲ私ハ質シ
  テ見タイノデアリマス、御承知ノ通リ靜岡縣ハ本年ニ於キマシテハ大水害ヲ受ケテ居ル、
  一面ニ於テ靜岡縣ノ重要物產ハ如何ナルモノデアルカト云フト、第一ガ茶デアル、生絲
  デアル、漆器デアル、柑橘デアル、椎茸デアル、或ハ之ヲ小ニシテハ薑、絲瓜、落花生
  ノ類デアリマス、總テ輸出品デアル、物產ノ重ナルモノハ海外ノ貿易品デアル、夫故ニ
  此時局ノ影響ヲ受ケタル經濟上ノ打擊ヲ受ケタルコトハ實ニ慘澹タルモノデアル、漆器
  職工デ失業者既ニ三千人ニ垂ントシテ居ル、此場合ニ於キマシテハ靜岡縣民ハ殆ド困
  憊ノ狀態ニ陷ッテ居ルノデアルカラシテ、地方費ノ負擔ト云フモノハ、斯カル場合ニハ非
  常ニ輕減ヲシナケレバナラヌト云フコトハ是ハ縣下一般ノ輿論デアル單ニ靜岡縣バカ
  リデナク-此時局ノ爲メニ經濟上ノ影響ヲ受ケタルコトハ單ニ靜岡縣バカリデハナイノ
  デアルカラ、不急ノ支出ハ本年ノ如キ場合ニ於テハ成ベク新事業ハ緣延ベテ、所謂直接
  產業ノ發展ニ關係アル費用ハ免ニ角、私ハ各府縣知事ナドノ虛榮ヲ充スヤウナ何カ御
  土產ニシタイト云フヤウナ案ハ、是ハ成ルベク何處ノ府縣トシテモ止メテ貰ヒタイト云フノ
  ガ天下ノ輿論デアル、然ルニ大正四年度ノ靜岡縣ノ豫算ハ如何デアッタカ、大水害ノ
  結果トシテ追加豫算約百万圓テアリマス、之ニ大正四年度ノ經常臨時ノ知事ノ提案
  シタル所ノ要求額ガ幾ラデアルト云フニ、二百五十万圓合セテ三百五十万圓デアル、此
  三百五十万圓ノ大豫算ヲ縣會ニ提出シタト云フコトハ湯淺知事ガ始メテヾアッテカラ
  ニ、未ダ曾テ斯ル廣大ナル豫算ガ靜岡縣ノ縣會ニ現レタコトハナイノデアル、故ニ縣民
  ノ理想トシテハ成ベク不急ノ事業ハ緣延ベテ、卽チ此時局ノ爲ニ經濟的大打擊ヲ受ケ
  〓
  タルトコロノ此狀態ヲ、幾分デモ救ハナケレバナラヌト云フ意志ヲ以テ、建築事業ノ如キ若
  クバ其他不急ノ土木ノ事業ト云フモノハ、繰延ノ精神ヲ以テ否決シテ貫ヒタイト云フ意
  味テ、縣會ハ此縣民ノ意思ヲ容レテ、玆ニ査定ヲ加ヘタノデアル、例ヘバ郡役所ノ新築
  案ノ如キ、警察署ノ新築案ノ如キ、或ハ蠶絲檢査所ノ新築ノ如キ、是等ノ事業ト云
  フモノハ繰延ベテ差支ナイ事業デアル、其他知事ガ理想トシテ將來縣民ノ福利ニ關係
  ガアリハセヌカト云ッテ、知事一個ノ理想カラ割出サレテ出シタモノ、斯ウ云フ新事業ハ
  繰延ベル精神ヲ以テ否決シタラ宜カラウト云フノガ所謂縣會ノ意思デアル、然ルニ縣會ノ
  將ニ會期盡キントスル其當日デアリマシタガ、知事ハ縣會ノ議場ニ於テ演說シテ曰ク、
  ドウモ御同意ガ出來ナイノデアルカラシテ豫算ニ査定ヲ加ヘタル大部分ニ向ッテ御
  同意ガ出來ナイ、故ニ府縣制ノ條項ニ依テ再議ニ附スベキ筈デアルガ、其但書ニ依レバ
  敢テ再議ヲ附セナクテモ或ル場合ニ於テハ直ニ內務大臣ノ指揮ヲ乞フコトガ出來ルカ
  ラ、私ハ此處デ演說ダケハスル-御同意ノ出來ヌト云フ演說ハスルガ再議ニ附サヌ、
  斯ウ云フ甚ダ縣民ニ對スル不忠實ノ言明ヲサレタ、而モ縣曾ノ最終日デアリマシタケレド
  モ、午後二時デアル、時間ノ上カラ行キマスルト十分再議ニ附シテ之ヲ審議スル餘裕ガ
  アルニモ拘ラズ、再議ニ附セズシテ直ニ原案ヲ執行スルト云フコトヲ縣會ニ言明サレタノ
  デアル、夫故ニ最早排戰的ノ態度テアル、地方自治ヲ圓滿ニ解決スルト云フコトノ意志
  ガ知レナイト云フコトヲ認メタ爲メニ、縣會ハ大多數ヲ以テ知事ノ不信任案ヲ決議シタ
  ノデアル-湯淺知事ノ不信任案ヲ決議シタノデアル、(「尤モダ」ト呼フ者アリ)所ガ其
  不信任案ト云フモノハ縣會ノ決議スベカラザル條項デアルト云フノデ、府縣制ノ八十
  二條ノ條項ニ依ッテ直ニ知事ガ之ヲ取消シタノデアル、取消シタ所ガ議員ハ散會シテ
  居ラヌノデアル、唯議長ガ後トノ整理ノ爲ニ議長席ニ居ッタモノダカラ、內務部長ヲシテ
  議長ノ手許ヘハ之ヲ取消スト云フ通告ヲシテ來タケレドモ、縣會ハ散會ヲシテ誰モ居ラナ
  イ、故ニ形式ノ上カラ云ッタラバ取消シタデアラウケレドモ、事實ニ於テハ靜岡縣會ハ散會
  シテ居ッタカラ、現在知事ノ不信任ヲ決議シテ居ルノヲ、知事ハ其實議長ヘ通告スルコ
  トガ出來ナイヤウナ有樣ニナッテ居ル、偖原案執行ハ如何ナル條項ニ向ッテ原案ヲ執行シ
  タカ、治水堤防費デアル、砂防費デアル、鰆ノ流網デアル、港灣ノ改良費デアル、國道ノ
  改良費デアル、郡市町村土木補助費デアル、是ニ向ッテ原案ヲ執行シテ內務大臣ハ本
  月十四日許可サレタノデアル、治水堤防ノ費用デアリマスガ、此事ハ縣ノ技術家ガ内務
  當局ノ出張サレタトコロノ土木技師ト交涉シ、折衝査定シタ案デアルガ尙不完全デアル
  最初縣ノ要求額カラ申シマスルト、四五万圓程內務省テ査定シタト云フノデ、甚ダ急場
  デ以テ設計シタモノデアルカラ、如何ニ技術家ガヤッタコトデモ甚ダ杜撰デアル、併ナガラ治
  水堤防費ト云フヤウナコトヽ云フモノハ技術家ノ所謂技術上ニ關スル問題デアルカラ、
  如何ニモ原案執行ハ不當デアル、甚ダ當ヲ得ナイ、斯ウ云フコトヲ議論シタトコロデ、ソ
  レハ常識論ト技術ノ眼ヲ以テ見ルノト違フカラト云ヘバ水掛論ニナッテシマヒマスカラ、今
  此處デ私ハ深ク論ジナイ、或ハ砂防費ノ如キ、砂防費ハ八箇所ニ對シテ縣會ハ四箇
  所認メタ、所謂根固メ工事護岸工事ヲ認メタ、所謂靜岡縣ハ山ヤ土質ノ關係カラシテ
  土砂打止ヲシナクテモ、護岸工事デ差支ナイト一云フコトデアル、之ヲ技術家ハ國土保
  安上水源涵養トカ云フ名目ノ下ニ原案ヲ執行シタノテアル、是カ必要デアルカ必要デナ
  イカハヤハリ水掛論ニナルカラコヽデ私ハ深ク論ジナイ、偖テ原案ヲ執行シタル一條項
  ノ中デ私ノ問ハントスルノハ是ハ金額ハ甚ダ小ナモノデアル僅ニ千六百圓ノ金額デア
  ル、鰆ノ流網デアル鰆ト云フ魚ヲ捕ル流網ト云フモノハ、今囘靜岡縣會ヘ初メテ要求
  サレタ是ハ新事業デアル、此ノ新タナル流網ノ如キハ縣會ニ於テハ斯ル年柄ニ於テ縣民
  ニ負擔サセテ試驗ヲスル必要ハナイ、折角費用ヲ議決シタトコロデ果シテ魚族ガ群集シ
  テ來テ、年々歲々駿河灣遠江灘ニ於テ好成績ヲ舉グルコトガ出來ルヤ否ヤハ疑問デア
  ル斯ル年柄ニ於テハ延期シテ貰ヒタイト云フ意味ヲ以テ否決シタニ拘ラズ、是モ原案
  執行ヲ要求シテ、內務大臣ハ如何ナル理由ヲ以テ許可シタカ、モウ一ツハ下田港ノ改良
  費デアリマス、浚渫費デアリマス、下田港ノ改良ヲスルト云フト、成程一面カラ云ヘバ港
  灣ノ改良デ立派デアルガ、實ハ下田ノ港口ヘ流レル川ヲ直スノダ、河口稻生澤川ト云フ
  川ヲ掘ルノデアル、下田ハ御承知ノ通リ近來ノ商船トスベキ何千噸ト云フヤウナ船ガ輻
  輳シテ荷物ノ揚卸シヲスルデモ何デモナイ、唯神奈川千葉竝ニ靜岡縣、此近縣ノ漁船ノ多
  ク出入スル川ニナッテ居ル、此ノ川ヲ改良スルノデアル、勿論川ヲ改良スルト云フコトハ惡ルイ
  コトデハナイガ、此川ヲ掘リマス所謂浚渫船ニ依ッテ一万圓ノ費額ニ依ッテ之ヲ掘リマス、サ
  ウ云フ事柄ハ縣會ハ斯ル年柄ニ於テ新事業デ港灣ヲ改良スルコトハ惡ルイコトデハナイ、
  惡イコトデハナイガサウ云フコトハ縣下唯一ノ港デアッテ、一日モ急ヲ要スル事業デモナイカ
  ラ、此意味ニ依ッテ否決シタノデアル、內務大臣ハ知事ノ請求ニ依テ原案執行ヲ許可
  シタノハ如何ナル理由デアル、若シ斯ル問題ガ縣會デ否決シタカラト云ッテ一々內務大臣
  ガ實施ヲ許可スルト云フコトニナッタラ、或ハ各府縣ニモ起リマセウ、此港ヲ改良スレバ利
  益ガアルカラ此ノ費用ヲ要求スル、若シ行カズンバ縣民ノ福利ヲ阻害シテモ原案ヲ執行
  スルト云フコトニナッタナラバ、縣會ノ決議權ナルモノハ無クナッテ、所謂官權萬能デアッテ、
  知事ノスルコト爲スコトハ總テ意ノ如クナル、所謂決議機關ト云フモノヽ意味ハ根本的ニ
  是ガ爲ニ破壞サレテ、純然タル一種ノ諮問機關トナッテシマフ、斯ル費目ハ如何ナル理由
  ニ依ッテ許可サレタカ、モウ一ツハ國道ノ改良デアル、此ノ國道ノ改良ノ中ニ愛知縣ト靜岡
  縣トノ境ニ近イ所デアッテ、濱名湖ノ西岸ニ在ルトコロノ汝見坂ト云フ坂ガアル、此ノ坂ノ
  勾配ガ甚ダ國道デアルガキツ過ギル、六分一位ノ勾配デアッテ國道トシテ甚ダ不完全デアル
  カラ、此道ヲ二万四千圓掛ケテ勾配ヲ直スト云フ此費用デアル此道ハドウデアルカト云フ
  ト、御承知ノ通リ濱名湖ニ知事ハ橋ガアルト云フガ橋ハ無イ、所謂鐵道ノ鐵橋ハアルケレド
  モ國道トシテノ橋ハ無イ、サレバ如何ナル者ガ便利ヲ得ルカト云フト、新居町ト云フトコロノ
  或ル部分ノ町民ガ此道ノ先キニ當シテ多少利益ガアル次第デゴザイマス、ケレドモ縣下ヲ通ジ
  テ利用スル途ハ少ナイノデアル、況ン鷲津停車場カラ新居町ニ對シテ通ズル道路ハ、今ヤ繼
  續事業トシテ拵ヘテ居ル道ガアル、此ノ道ハ本年度デ完成スル筈テアル、是ガ本年完成
  スレバ汐見坂ヲ改良スル必要ハナイ、又新居ノ停車場ガ出來ルカラト云フ理由モアルケ
  レドモ、汝見坂ニ關係スルトコロノ白須賀町ノ住民rシテハ、決シテ此坂ガアッテモ差支
  ハナイ、此事實ガアルニモ拘ラズ、二万四千圓ト云フトコロノ費用ニ依ッテ其坂ノ勾配ヲ直
  スト云フコトハ、斯ル年柄ニ於テ急ニスベキモノデナイ、況ヤ軍事關係カラ云ッテモ其他ノ
  關係カラ云ッテモ、國庫補助ニ依ッテ今ヤ本坂峠ノ完成ヲ告ゲントシテ居ル、此本坂峠
  ノ出來マスレバ愛知縣トノ聯絡ハ十分ニ出來ル、所謂國道ト云フモノハ本坂峠ニ依ッテ
  十分ニ便利ガ出來ルノデアル、然ルニ斯ル年柄デアルニモ拘ラズ、之ヲ縣トシテ提案シ、
  是ヲモ所謂原案執行ノ一事項トシテ要求サレテ、內務大臣ハ之ヲ許可シタ、最後ニモ
  ウ一ツアリマスガ、是ハ郡市町村土木補助費デアル、郡市町村土木補助費ハ是ハ府
  縣ニ依ッテイロ〓〓補助規程ガ變シテ居リマセウガ、靜岡縣ニ於テハ町村ノ道路ヲ改良
  スル場合ニ於テハ、總豫算ニ對シテ縣ハ七分ノ補助ヲ與ヘル慣例ニナッテ居ル、是ハ町
  村所謂市町村ガ主體デアリマシテ、每年四月末日マデニ縣ニ起工ノ手續願ヲシテ來ル、
  サウシテ是ニ幾分ノ補助ヲ與ヘテ吳レト云フコトヲ願フト、縣ハ之ヲ査定シテ七分ノ補助
  ヲ與ヘル、サウ云云慣例ニナッテ居ル、トコロガ大正四年度ニ於キマシテハ新ラシイノ道路ガ加
  ハリマシテ三十線以上線路ノ數ガ出テ居ル、甚ダドウモ數モ多イノミナラズ、斯ル年柄ニハ
  全部町村トシテモ負擔ニ苦シム譯デアルカラ、場合ニ依ッテハ全部否定シテモ宜クハナイ
  カト云フ議論モアッタ、然ルニ先例モアルコトデアリマシテ明治三十七年ニ於テ二十三万
  圓ノ此郡市町村土木補助費ガ計畫シテアッタニモ拘ラズ、日露戰役ノ爲ニドウモ斯ル
  新事業ハ縣會ガ決議シテアッテモ繰延ベヲシナケレバナラヌト云フノデ、龜井英三郞君ガ
  德島縣カラ著任スルト早々臨時縣會ヲ召集シテ、前囘テ決議シタトコロノ道路ヲ繰延
  ベタト云フ前例モアル、ワレ故ニ斯ル年柄ニハ全部通路ニ對シテ繰延ベテモ差支ナイガ、
  併シヤリ掛ケタ道路モアル、或ハ橋ヲ架ケナケレバナラヌト云フヤウナ道路モアル、故ニ此
  全部ヲ否決スルト云フコトニ付テハ甚ダ穩當ヲ缺ク、故ニ縣下三州、豆州、遠州、駿
  河ノ縣下三州ニ於テ一箇國二線宛ヲ削ルノガ最モ時宜ニ適シタルトコロノ修正ノ仕方
  デアラウ、殊ニ町村ガ主體デアル、主體ナルガ故ニ其緩急ヲ圖ルハ勿論ノコトデアルガ、其
  町村ノ圓滿ニシテ所謂舉村一致シテノ希望ト云フヤウナ道路ニ對シテハ、無論是ハ補
  助ヲ與ヘナケレバナラヌガ、部落觀念ノ爲ニ非常ニ町村ガ亂レテ居ル、却ッテ縣會ガ補助
  ヲ與ヘルト云フコトヲ計畫スル爲ニ、町村ノ自治ヲ破壞スル町村ガ澤山アル、斯ウ云フ
  モノニ對シテ縣會ガ補助ヲ決議シテ却テ町村ノ紛擾ヲ釀スカラ、此意味ニ於テ否決セ
  ヨト云フノデ六線ノ道路ヲ否決シタノデアル、此事ニ付テハ知事ハ原案ノ執行ヲ內務大
  臣ニ要求スルト言ッテ、縣會ガ決議スルト同時ニ上京シテ、而モ東京ニ二週間モ滯在
  シテ居催促ヲシテ居ッタ、居催促ヲシタトキ吾〓ノ方デモ縣會ノ意見ハ十分ニ內務大臣
  ヲ初メ內務省ニ對シテモ辯解シテ置ク必要ガアルト云フノデ、吾〓ノ方カラモ內務省ニ理
  由書ヲ提出シク、其時ニ私ハ內務省デ下岡次官ニ會ッテ、此町村ノ道路ヲ萬一内務
  省ニ於テ之ヲ內務大臣ガ認可ヲ知事ノ要求通リ原案執行ヲ認可シタ所デ町村デハ起
  工ガ出來ナイ、六線ノ道路ノハ少クトモ三線以上過半ハ本年度內ニ決シテ起工ガ出來
  ナイ、必ズ繰延ベニナルカ或ハ此豫算ノ執行ガ出來ナイト云フ事實ガ出來タナラバドウス
  ルカト云フ質問ヲシタ所ガ、ソレハ一向差支ナイ、サウ云フ事柄ガアッテモ內務省トシテハ
  差支ナイト思フ、斯ウ云フ御答ガアッテ、殊ニ類例ガ澤山アルト言ック、ソレハドウ云フ
  類例デアッタカ、補助ノ原案執行ヲシタ類例ト云フモノハ聞ク必要モナカッタガ、斯ルモ
  ノヽ支出ニ對シテノ原案執行ノ類例アリトスレバ、ソレハ甚ダ惡例デアル、デ此原案
  執行ヲ知事ガ內務大臣ニ請求シテ居催促ヲシテ居ル間ニ、此關係町村卽チ縣會ニ於
  テ削除セラレタトコロノ關係町村ノ部落カラハ、區民ノ多數ガ調印ヲシ內務大臣ニ向ツ
  、、ドウカ原案執行ヲ許シテ下サラヌヤウニシテ貰ヒタイ、萬一原案執行ヲ許サレルト町
  村ノ紛擾ヲ釀シ、自治ヲ破壞スルト云フ陳情書ヲ出シテ、內務省ニ來テ居ル(「サウ云ム
  フコトハ澤山アル」ト呼フ者アリ)斯ウ云フコトガアルニモ拘ラズ、內務省ハ町村ノ圓滿ノ
  自治ヲ破壞シテマデモ知事ノ意志ヲ通スト云フ理由ハ何レニアルカ、甚ダ私ハ此理由ノ
  那邊ニ在ルカヲ解釋スルニ苦ムノデアル(「暴政ダ」ト呼フ者アリ)是ハ私ハ內務大臣大
  隈伯爵ニ進ンデ承リタイト思フ、本月ノ三日ニ內務大臣ヲ訪問シタ、實ハ世間傳フル
  所ニ據ルト內務大臣ヲ訪問スル必要ハナカラウ、下岡次官ニ御話ニナッタ方ガ宜カラウ
  或ハ大浦子爵ニ話シタ方ガ宜カラウト云フ人ガアッタ、可笑シナコトヲ言フト考ヘタ、免ニ
  角內務大臣ガ認可スルノダカラ内務大臣ニ話スガ宜カラウ、併シ內務大臣ハ事實ノ內
  務大臣デハナイ、形式上ノ內務大臣デアル、ソラ可笑シイガ內務省ノ實權ハ大浦子
  爵ガ握ッテ、下岡支配人ガ總テ事ヲヤッテ居ルト云フコトデ、大隈伯ノ所ニ行ッタ所ガ、
  ソレハ唯ケ空中ノ飛行機ノヤウナ所謂高イ所ヲ飛ンデ行ッテトテモ具體的ノ話ハ出來ヌ
  カラ止メタ方ガ宜イト云フ、併ナガラ私ハ大隈伯ハ博覽强記精力絕倫ナル人ト見テ居ル、
  所謂內務大臣ヲ兼攝サレテ居ルトコロノ彼大隈伯ノ非常ナル絕倫ナルトコロノ、絕大ナ
  ル勢力家デアル爲ニ、細大漏サズ如何ナル事情ニモ通ジテ居ルト思フ、殊ニ行政ノ刷新
  黨弊打破ト云フコトヲ宣告セラレテ居ルノデ、無論此地方ノ事情ニモ精通シテ居ルト云
  フノデ、縣會ノ正副議長縣參事會員ニ吾〓ハ附添フテ、本月ノ三日ニ總理大臣官邸ニ
  大隈伯ヲ訪問シタ、其時ニ伯爵ハドウ云フコトヲ言ハレタカト云フト、縣會ノ決議ノ經過ヲ
  話スト同時ニ、靜岡縣會ハモウ斯ル知事ニハ信任ヲ措クコトハ出來ナイト云フノデ、不
  信任ヲ決議シマシタト云フコトヲ申シマシタトコロガ、伯ハ曰ク、不信任ヲ決議シタ、モウ
  ソレナラ今後ノ途ハドウスルカト云フト、無論解散グ、解散-解散ノ外ハナイ人心ヲ
  新クニスルニハ解散ヲスル、立憲政治ノ動作ト云フモノハ縣民ノ輿論ヲ聞クノデ、縣會ノ
  決議ガ不當カ縣當局者ノシタ所ガ間違ッテ居ルカト云フコトヲ與論ニ問フノデアルカラ解
  散宣シイ、人心ヲ新クニスルノハ解散デアル、數囘解散ト云フコトヲ斷言サレタ(「解散贊
  成」ト呼フ者アリ)私ハ非常ニ是ハ信ジタ、無論解散ノ手續ヲサレルコトダラウト信ジテ
  居ッタ、所ガ內務省ヘ行ッテ內務省側ノ樣子ヲ聞イテ見ルト、ソレハトテモ解散ナドハ出
  來ヌ、又無論出來マセヌト云フ盲判ヲ捺ス所ノ伯トモ思ッテ居ラヌ、無論大臣ガ責任ヲ
  以テ解散ヲスルト云フコトヲ言明サレタニモ拘ラス、原案執行ハ許可ニナッタガ偖テ其後解
  散モナシ何等ノ音沙汰モナイ、是ハ大隈伯ガ官邸ニ於テ吾ミニ言明シタトコロノ靜岡縣
  會解散ノ意志ガナイカ、解散ノ手續ヲ執ルト云フ手續中デアルカ、或ハ內務省ノ屬僚
  ノ言フガ如クニ伯ガサウー云フコトヲ言〓テモ、ソレハ出來マセヌト云フ所謂屬僚政治デアル
  カ、此事ヲ私ハ內務大臣ニ伺ヒタイ(「痛快々々」ト呼フ者アリ)府縣制ノ精神ハ一面ニ
  於テハ大隈伯爵ガ言ハルル通り、自治デモアルシ半分ハ官治デモアルト云フコトヲ言ハレ
  タ、ツレハサウカモ知レヌ、市町村制トハ趣ヲ異ニシテ居ヲテ、純然タル自治制度デナイト云
  フコトハ私モ承知シテ居ルガ、少クトモ苟クモ府縣ノ此行政ヲ圓滿ニシテ地方自治ヲ發展
  セシムルト云フ上カラ行ケバ、縣民ノ意志ト云フモノニ對シテハ餘程重キヲ措カナケレバナ
  ラヌ、所ガ段々此官僚政治ノ通弊ト稱スベキカ官權萬能主義ガ熾ンナル故カ、ドウモ
  府縣會ノ權限ト云フモノハイツモ無視サレル、知事トー云フモノハ各府縣知事ガ五年十年
  居テ、所謂良二千石トシテ牧民官トシテ所謂縣民ヲ思フノ熱誠ガナイ、大抵渡ッテ來ル
  先ヅ長クテ二年カ三年、時トスルト一年半位デ更迭スル、ソレ故ニ眞面目ニ縣下ノ事情
  ヲ攻究シテ縣民ノ福利ノ爲ニ熱誠ヲ注グトコロノ者ハナイ、所謂一種ノ虛榮心ニ驅ラレ
  テ、何カ我輩ハ此縣ヘ來タカラシテ、一ツ手土產ニ仕事ヲ貽シテ行カウト云フ、十分ニ利
  害ハ〓究セズシテ何カ一ツ仕事ヲシテ出テ行キタイト云フヤウニ、甚ダ不眞面目ナ提案ヲ
  縣會ニ要求スル、是ハモウ敢テ靜岡縣ト云ハズ各府縣ヲ通ジテノ通弊デアル、大隈伯ハ黨
  弊打破ト云フガ寧ロ官弊打破ヲ先キニスルガ宜シイ、黨弊打破ハ是ハ政友會ニ對シテノ
  黨弊カ、或ハ同志會ニ對スル黨弊カ、是ハ私ガ進ンデ聽カント欲スル所デアル、私ハ最早
  多クハ費シマセヌガ、靜岡縣ノ此知事ノ原案ヲ執行サレタ後ノ人氣ハドウデアル、人心
  ハドウデアルカ、下岡内務次官ハ吾〓ガ內務省經過及理由ヲ陳情ニ往ッタ場合、湯淺
  知事ハ府縣知事中公平ナ人デアル、此公平ナル人ト云フコトハ天下何人モ否定シナイ、
  斯ウ云フテ非常ニ湯淺知事ニ對スル保證ヲセラレタ、私ハ個人トシテ湯淺君ト懇意デ
  アル、故ニ湯淺君ノ人格ハ知ッテ居ル、湯淺君ノ明敏ナル人デアルコト、頭腦ハナカノ
  シッカリシテ理窟ニ就イテハ强イ人デアル、先ヅ理窟一遍ト云ンテハ語弊ガアルカモ知ランガ、
  人格上ニ於テ頭腦ノ上ニ於テ私ハ敬服シテ居ル、故ニ湯淺知事ノ人格論ヲ下岡內務
  次官ヨリ聽キニ行ッタノデハナイ、其仕事ハドウデアル其シタ仕事ガ公平デアルカ、地方
  ノ牧民トシテ理窟ノミデ通ルモノデナイ、適才ヲ適所ニ用ヒナケレバナラヌ、湯淺知事
  ハ地方行政官、地方ノ行政長官トシテ人ヲ治ムルトコロノ適才デアルヤ否ヤト云フコト
  ハ是ハ自ラ定論ガアルカラ△〓爰ニ論ズル必要ハナイ、免ニモ角ニモ此靜岡縣ノ狀態ハ
  ドウデアル、縣下十三郡ハ非常ニ人心ガ沸騰シタ、甚ダ憂慮スベキトコロノ傾向ガアル、
  今後ニ於テハ實ニ此儘所謂大隈伯ノ解散ト云フコトヲセズシテ其儘ニウッチヤラカシテ置
  キマシタナラバドウ云フ結果ニ陷ルカト云ヘバ、縣參事會ハ每度知事ノ提案ニ對シテ
  決議シナイ、成ルベク決議シナイ旣ニ原案ヲ執行シタ、斯カル不信任ノ知事ノ提案ヲ否
  決スルナラバ、所謂府縣制ニ據ッテ又內務省ヘ持出ス、內務省ハ原案ヲ執行スル、故
  昨日ノ縣參事會ハ知事ノ提案ニ對シテ決議シナイ、此場合ニ於テ大隈伯ノ言明シタ
  如ク解散スルカ、此事ヲ尙確メテ置キタイノミナラズ、縣下十三郡ノ各有志者ハ縣民
  大會ヲ開キ知事ニ辭職勸告ヲスル爲メ、既ニ五郡アタリハ委員ガ出來テ、一月アタリニ
  ハ續々迫ルデアラウ、サウシテ知事辭職勸告委員ハ知事ニ辭職勸告ヲ迫ルト云フ覺悟
  デアル、其他甚ダ面白カラザル不穩ナルコトモ聞イテ居ル、故ニ用意周到ニ神經過敏ナ
  ル知事ハ之ニ向ッテ何トカ官權ニ依ッテ壓迫スルカ、懷柔スルカ分ラヌガ、免ニ角二十二
  日郡市長會議ヲ召集シテ居ル、ソレカラ引續イテ警察署長會議ヲ召集スル手續中
  デアル、是ハ此沸騰シタル人心ヲ鎭撫スル爲デアル、是ハ沸騰スル筈テス、免ニ角縣有
  物產ノ販路ハウマク行カヌ、繭ノ如キハドウデアル、米價ハドウデアル、漆器業者ノ如キ
  三千八ノ失業者ガアルト云ハレタノデアル、爰ニ縣民有志ハ縣經濟ノ何モノタルヲ無視
  シ三百五十万ノ尨大ナル豫算ヲ提出シテ、而モ其知事ノ意見デ全部原案執行シタ
  ト云フコトハ、縣民ヲ沸騰セシメタコトハ勿論デアル、決シテ政黨政派ノ問題テナイ、ソ
  レ故反對派ハ斯カル重要問題ニ就テ政友會ガ決議セザルヲ奇貨措クベシトシテ、縣政刷
  新會ヲ起シテ煽動セシメント試ミテ居ル、是ハ縣下全體ノ著シキ大問題デアル、政黨政
  派ノ關係デナイト云フノデ、穩健ナル實業家ハ起ッテ之ニ反對スル傾向ガアル、此ノ如ク
  惡影響ヲ釀シツヽアル、此狀態ニ對シ內務大臣トシテ如何ナル今後ノ此處置ヲ執ル積
  リデアルカ、如何ナル善後ノ策ヲ講ズル積リデアルカ、其儘ホッタラカシテ人心ノ沸騰ニ任
  セルト、或ハ甚シキニ至ッテハ不納同盟ガ出來テ、是ハ能クナイコトデアルガ、或ハ赤十字
  社山林大會愛國婦人會ナド總テ知事ガ會長タル關係ノモノニ對シテハ甚ダ大人氣ナイ
  コトデアルケレドモ、外ニ方法ガナイカラ是等ニ關係アル役員ハ皆ナ辭サナケレバナラヌト
  云フコトヲ云ッテ居ルサウ云フ場合ニ靜岡縣ハドウナル、之ヲシモ所謂大隈伯ノ最高ノ
  理想最高ノ權力ニ依シテ壓迫スルカ、掃蕩スルカ、或ハ立憲的動作ヲ取ッテ府縣會ヲ
  解散シテ、此ニ於テ人心ヲ新タニシテ、所謂伯一流ノ理想ヲ現出スルカ、私ハ此事ニ
  就テ明白ナル政府ノ答辯アランコトヲ、內務大臣大隈伯ノ答辯アランコトヲ望ンデ置キ
  マス

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• 026・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　質問ハ終了致シマシタガ、報告致スコトガゴザイマス
  〔書記朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  蠶絲業救濟ニ關スル法律案
  一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  大正三年十二月二十二日
  內閣總理大臣伯爵大隈重信
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員橫田千之助君提出內閣總理大臣ノ官紀紊亂ニ關スル質問ニ對シ別
  紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員橫田千之助君提出內閣總理大臣ノ官紀紊亂ニ關スル質問ニ
  對スル答辯書
  一本年外務省令第一號ノ旨趣ハ反覆之ヲ布衍闡明スルニ努メタルモ、同省令ノ旨
  趣ニ背戾スル事項ヲ記シタル覺書ヲ交付シ、又ハ同樣ナル事項ヲ宣言シタルノ事
  實ナシ
  一前項ニ述フルカ如ク內閣總理大臣ノ言明ハ單ニ外務省令第一號ノ旨趣ノ說明
  ニ止マリ、從テ同省令ノ規定ニ基ク當局大臣ノ行使スル權能トハ、何等ノ關係ナ
  キハ勿論ナリトス
  一內閣總理大臣ノ行爲ハ、內閣官制ニ違反シタルモノニ非ス
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  新聞電報保護法案
  提出者石橋爲之助君相島勘次郞君
  酒造稅法中改正法律案
  提出者井上角五郞君工藤吉次君三浦盛德君
  鈴木巖君
  砂糖消費稅法中改正法律案
  提出者中川虎之助君小西和君
  一議員ヨリ提出セラレダル質問主意書左ノ如シ
  區裁判所復活及地方裁判所支部權限復舊ニ關スル質問
  提出者村松恆一郞君

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• 027・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御諮リスルコトガアリマス、第四部選出豫算委員石黑磐君、
  右豫算委員辭任ノ申出ガアリマシタ、許可シテ御異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 028・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ガナイト認メマスニ依ッテ許可スルコトニ決シマシタ、此
  部ノ諸君ハ補缺選舉ノ上屆出アルコトヲ望ミマス、日程第一衆議院議員選舉法中改
  正法律案第一讀會ヲ開キマス

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• 029・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　此場合日程ヲ變更シテ政府提出貴族院送付ニ係リマス畜產組
  合法案ヲ議題トセラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル〕

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• 030・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中村君ノ日程變更ノ動議ニハ贊成アリト認メマス、且ツ別ニ
  反對モアリマセヌカラ、日程ハ變更サレマシタコトニ致シマス-畜產組合法案ノ第一
  讀會ヲ開キマス
  畜產組合法案(政府提出、貴族院送付)第一讀會
  畜產組合法案
  畜產組合法
  第一條本法ニ於テ家畜ト稱スルハ牛馬羊豚ヲ謂フ
  第二條牛羊豚ヲ飼養スル者又ハ馬ノ生產ヲ業トスル者ハ本法ニ依リ畜產
  組合ヲ設置スルコトヲ得
  第三條畜產組合ハ法人トシ畜產上ノ改良發逹ヲ圖リ組合員ノ利益ヲ增進
  スルヲ以テ目的トス
  第四條組合ハ營利事業ヲ爲スコトヲ得ス但シ組合ノ經營上必要アル場合
  ニ於テ地方長官ノ認可ヲ受ケ畜產上ノ施設ヲ爲スハ此ノ限ニ在ラス
  第五條組合ハ組合員ニ非サル者ニシテ其ノ區域内ニ於テ家畜ヲ所有シ又
  ハ保管スル者ノ委託ニ依リ委託者ノ費用ヲ以テ家畜衞生上必要ナル處置
  ヲ爲スコトヲ得
  第六條組合ヲ設置セムトスルトキハ郡市ノ區域ニ依リ組合員タルヘキ者
  三分ノ二以上ノ同意ヲ以テ定款ヲ作リ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ特
  別ノ事情アルトキハ郡市ノ區域ニ依ラサルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テ家畜又ハ組合員タルヘキ者ノ種類二種以上アルトキハ
  其ノ種類每ニ三分ノ二以上ノ同意ヲ得ヘシ
  前項組合員タルヘキ者ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第七條組合ノ名稱中ニハ畜產組合タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウヘシ
  畜產組合ニ非サルモノハ其ノ名稱中ニ畜產組合タルコトヲ示スヘキ文字
  ヲ用ウルコトヲ得ス
  第八條組合成立シタルトキハ其ノ區域內ニ於テ組合員タル資格ヲ有スル
  者ハ總テ組合員トス但シ特別ノ事情ニ依リ地方長官ノ認可ヲ受ケタル者
  ハ此ノ限ニ在ラス
  第九條地方長官必要アリト認ムルトキハ組合ニ對シ種畜ノ供給、種付、家
  畜ノ系統若ハ能力ノ登錄、家畜衞生ニ關スル施設又ハ家畜市場ノ開設ヲ
  命スルコトヲ得
  第十條定款ヲ變更セムトスルトキハ總會ニ於テ組合員半數以上出席シ出
  席者ノ議決權ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決シ地方長官ノ認可ヲ受クヘ
  シ
  定款ノ變更カ經費ノ分賦收入ニ關スルトキハ前項ノ出席者及議決權ノ數
  ハ家畜又ハ組合員ノ種類每ニ之ヲ計算スヘシ
  定款ノ變更カ區域ノ擴張又ハ家畜若ハ組合員タルヘキ者ノ種類ノ增加ニ
  關スルトキハ第一項ノ議決ノ外擴張又ハ增加ニ依リ新ニ組合員タルヘキ
  者三分ノ二以上ノ同意ヲ得ヘシ此ノ場合ニ於テハ第六條第二項ノ規定ヲ
  準用ス
  第十一條組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ組合員ノ所有又ハ保管ニ係ル家
  畜、畜產物又ハ畜產上ノ設備ニ付檢査ヲ爲シ又ハ試驗ノ用ニ供スル爲必
  要ナル分量ニ限リ無償ニテ物品ヲ收去スルコトヲ得
  組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ定款違反者ニ對シ過怠金ヲ徵收シ、其ノ違
  反ニ係ル物品ノ沒收其ノ他必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
  第十二條組合ノ經費ハ定款ノ定ムル所ニ依リ組合員之ヲ負擔ス
  第十三條組合ノ經費又ハ過怠金ヲ滯納スル者アル場合ニ於テ組合長ノ請
  求アルトキハ市町村ハ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テハ
  組合ハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スヘシ
  前項徵收金ノ先取特權ノ順位ハ市町村、水利組合其ノ他之ニ準スヘキモ
  ノノ徵收金ニ次クモノトス
  第十四條左ニ揭クル事項ハ總會ノ議決ヲ經ヘシ
  一經費ノ收支豫算
  二經費ノ分賦收入方法
  三起債竝其ノ方法、利息ノ定率及償還ノ方法
  四共濟其ノ他ノ基金ノ積立、支出及利用ノ方法
  五事業報告及收支決算ノ承認
  六訴願、訴訟及和解
  七定款ニ定メタル事項
  八其ノ他組合長ニ於テ重要ナリト認メタル事項
  第十五條前條ノ事項ニ付テハ總會ハ定款ノ定ムル所ニ依リ評議員ヲ以テ
  組織スル評議員會ニ委任シテ議決セシムルコトヲ得
  評議員會ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十六條第十四條第一號又ハ第三號ノ事項ニ關シ臨時急施ヲ要シ總會ヲ
  招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ組合長ハ之ヲ專決處分スルコトヲ得此
  ノ場合ニ於テハ次ノ總會ニ於テ其ノ承認ヲ求ムヘシ
  第十七條第十四條第一號乃至第四號ノ事項ニ付テハ地方長官ノ認可ヲ受
  クヘシ
  第十八條總會ハ總組合員ヲ以テ之ヲ組織ス
  第十九條總會ハ組合長之ヲ招集ス
  組合員其ノ總數ノ五分ノ一以上ノ同意ヲ得會議ノ目的タル事項及招集ノ
  事由ヲ記載シタル書面ヲ提出シテ總會ノ招集ヲ請求シタルトキハ組合長
  ハ十四日以內ニ總會ヲ招集スヘシ
  組合長正當ノ事由ナクシテ前項ノ期間內ニ總會ヲ招集セサルトキハ請求
  者ハ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコトヲ得
  第二十條總會ヲ招集スルニハ少クトモ七日前ニ會議ノ日時、場所及目的
  タル事項ヲ記載シテ各組合員ニ其ノ通知ヲ發スヘシ
  總會ニ於テハ前項ノ規定ニ依リ豫メ通知シタル事項ニ付テノミ議決ヲ爲
  スコトヲ得但シ定款ニ別段ノ規定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
  第二十一條組合員ハ總會ニ於テ各一箇ノ議決權ヲ有ス但シ定款ノ定ムル
  所ニ依リ一人ニ付議決權總數ノ十分ノ一ヲ超エサル範圍內ニ於テ二箇以
  上ノ議決權ヲ有セシムルコトヲ得
  第二十二條總會ノ議事ハ別ニ規定アルモノヲ除クノ外出席者ノ議決權ノ
  過半數ヲ以テ之ヲ決ス
  第二十三條組合員ハ總會ニ於テ書面又ハ代理人ヲ以テ議決ヲ爲スコトヲ
  得
  前項ノ規定ニ依リ議決權ヲ行フ者ハ之ヲ出席者ト看做ス
  第二十四條組合ハ命令及定款ノ定ムル所ニ依リ組合員ノ選舉シタル議員
  ヲ以テ組織スル總代會ヲ以テ總會ニ代フルコトヲ得但シ組合ノ解散、合
  併又ハ分割ノ議決ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
  總會ニ關スル規定ハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外總代會ニ之ヲ
  準用ス
  第二十五條組合ニ左ノ役員ヲ置ク
  組合長一人
  組合副長一人又ハ數人
  評議員數人
  役員ハ組合員中ヨリ之ヲ選舉ス但シ組合長又ハ組合副長ハ特別ノ事情ア
  ル場合ニ限リ組合員ニ非サル者ヨリ之ヲ選舉スルコトヲ得
  役員ノ任期ハ定款ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
  役員ハ任期中ト雖之ヲ解任スルコトヲ得
  役員ノ選任又ハ解任ハ總會ニ於テ組合員半數以上出席シ出席者ノ議決權
  ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決ス但シ定款ニ別段ノ規定アルトキハ此ノ
  限ニ在ラス
  組合長又ハ組合副長ノ選任又ハ解任ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
  第二十六條組合長ハ組合ヲ代表シ組合一切ノ事務ヲ管理ス
  組合副長ハ組合長ヲ補佐シ組合長事故アルトキ其ノ職務ヲ代理ス組合副
  長數人アル場合ニ於テ其ノ代理ノ順序ハ定款ノ定ムル所ニ依ル
  評議員ハ組合長ノ諮問ニ應シ又ハ業務ノ執行及財產ノ狀況ヲ監査ス
  第二十七條組合長ノ權限ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗
  スルコトヲ得ス
  第二十八條組合ハ畜產上ノ檢査ニ從事セシムル爲檢査員ヲ置クコトヲ得
  第二十九條組合長ハ定款、組合員名簿、會議ノ議事錄其ノ他組合ニ關スル
  書類及帳簿ヲ事務所ニ備ヘ置クヘシ
  組合員又ハ組合ノ債權者ハ前項ノ書類又ハ帳簿ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
  此ノ場合ニ於テ組合長ハ正當ノ事由アルニ非サレハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
  第三十條組合ハ左ノ事由ニ因リ解散ス
  一定款ニ定メタル事由ノ發生
  二總會ノ議決
  三組合ノ合併
  四組合ノ分割
  五組合員五人以下ト爲リタルトキ
  六監督官廳ノ處分
  第三十一條組合ニシテ解散、合併又ハ分割ヲ爲サムトスルトキハ第二項
  ノ場合ヲ除クノ外之ニ關スル必要ノ事項ヲ定メ總會ニ於テ組合員半數以
  上出席シ出席者ノ議決權ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決スヘシ
  家畜ノ種類ニ依リ組合ノ分割ヲ爲サムトスルトキハ其ノ種類ノ組合員ノ
  議決權ノ三分ノ二以上ヲ有スル者ノ同意ヲ以テ之ニ關スル必要ノ事項ヲ
  定メ組合ニ對シ之ヲ請求スルコトヲ得
  前項ノ請求アリタルトキハ組合ハ其ノ權利義務ノ分割ニ付總會ニ關スル
  規定ニ準シ他ノ種類ノ組合員ノ議決ヲ經テ請求者ト協議スヘシ協議調ハ
  サルトキハ地方長官之ヲ決定ス
  第三十二條組合ノ解散、合併又ハ分割ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
  第三十三條組合合併シタルトキハ合併ニ因リテ解散シタル組合ノ權利義
  務ハ合併後存續スル組合又ハ合併ニ因リテ設置シタル組合之ヲ承繼ス
  第三十四條組合分割シタルトキハ其ノ定ムル所ニ從ヒ分割ニ因リテ設置
  シタル組合其ノ權利義務ノ一部ヲ承繼ス
  第三十五條組合解散シタルトキハ合併又ハ分割ノ場合ヲ除クノ外〓算ヲ
  爲スヘシ
  民法第七十二條、第七十三條及第七十八條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準
  用ス
  民法第七十九條及第八十條ノ規定ハ第三十條第一號、第五號又ハ第六號
  ノ場合ニ之ヲ準用ス
  第三十六條組合ハ債權者ノ同意ヲ得又ハ異議アル債權者ニ對シ辨濟ヲ爲
  シ若ハ相當ノ擔保ヲ供スルニ非サレハ組合ノ解散、合併、分割若ハ區域ノ
  除斥又ハ家畜若ハ組合員ノ種類ノ減少ニ關スル定款ノ變更ヲ爲スコトヲ
  得ス
  第三十七條組合ノ會議ノ議決又ハ役員ノ行爲カ法令若ハ定款ニ違反シ又
  ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ主務大臣又ハ地方長官
  ハ其ノ議決ヲ取消シ議員若ハ評議員ノ改選ヲ命シ、組合長若ハ組合副長
  ヲ解任シ又ハ組合ノ業務停止若ハ解散ヲ命スルコトヲ得
  第三十八條主務大臣又ハ地方長官ハ組合ニ對シ業務ニ關スル報告ヲ爲サ
  シメ、書類帳簿業務ノ執行又ハ財產ノ狀況ヲ檢査シ、定款又ハ豫算ノ變更
  ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
  主務大臣ハ公益上必要アリト認ムルトキハ組合ノ合併又ハ分割ヲ命スル
  コトヲ得
  第三十九條地方長官左ニ揚クル事項ニ付認可ヲ爲シ又ハ前二條ノ處分ヲ
  爲シタルトキハ之ヲ告示スヘシ
  一組合ノ設置
  二組合ノ區域ノ擴張又ハ家畜若ハ組合員タルヘキ者ノ種類ノ增加ニ關
  スル定款ノ變更
  三組合長又ハ組合副長ノ選任又ハ解任
  四組合ノ解散、合併又ハ分割
  主務大臣前項ノ事項ニ付前二條ノ處分ヲ爲シタルトキハ關係地方長官ヲ
  シテ之ヲ告示セシムヘシ
  第四十條組合ハ共同シテ其ノ目的ヲ達スル爲畜產組合聯合會ヲ設置ス
  ルコトヲ得
  畜產組合聯合會ハ法人トス
  第四十一條聯合會ヲ設置セムトスルトキハ定款ヲ作リ其ノ區域一府縣以
  內ノモノニ在リテハ地方長官、二以上ノ府縣ニ亙ルモノニ在リテハ主務
  大臣ノ認可ヲ受クヘシ
  第四十二條聯合會ニ左ノ役員ヲ置ク
  會長一人
  副會長一人又ハ數人
  評識員數人
  第四十三條畜產組合ニ關スル規定ハ第二條、第三條、第六條、第八條、第十
  條第三項、第十三條、第二十三條、第二十四條及第一一十五條第一項ノ規定
  ヲ除クノ外之ヲ聯合會ニ準用ス但シ地方長官トアルハ二以上ノ府縣ニ亙
  ル聯合會ニ在リテハ主務大臣トシ第十一條及第二十五條第二項中組合員
  トアルハ聯合會ヲ組織スル組合ノ組合員トシ第三十條第五號中五人以下
  トアルハ一トス
  一府縣以內ノ區域ニ依リタル聯合會ニシテ合併又ハ區域ノ擴張ニ依リ二
  以上ノ府縣ニ亙ルヘキ場合ニ於テハ其ノ認可ハ主務大臣之ヲ行フ
  第四十四條組合又ハ聯合會ノ役員ニシテ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命
  令ニ違反シタルトキハ三百圓以下ノ過料ニ處ス
  非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準
  用ス
  第四十五條組合又ハ聯合會ノ役員又ハ檢査員其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受
  シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正ノ
  行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササルトキハ五年以下ノ懲役ニ處ス
  前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ
  沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
  第四十六條前條第一項ニ揭クル者ニ對シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタ
  ル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
  前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコト
  ヲ得
  第四十七條本法中府縣、郡、市町村トアルハ府縣制、郡制、市制、町村制ヲ
  施行セサル地ニ在リテハ之ニ準スヘキモノニ該當ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  產牛馬組合法ハ之ヲ廢止ス
  本法施行前產牛馬組合法ニ依リ設置シタル組合又ハ聯合會ハ本法ニ依リ之
  ヲ設置シタルモノト看做ス但シ其ノ定款中本法又ハ本法ニ基キテ發スル命
  令ニ違反スルモノアルトキハ命令ノ定ムル期間內ニ之カ變更ヲ爲シ地方長
  官ノ認可ヲ受クヘシ
  (政府委員上山滿之進君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=30

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• 031・上山滿之進

  ○政府委員(土山滿之進君)　唯今貴族院ヨリ本院ニ送付ニナリマシタ畜產組合法
  案ノ提出ノ理由ヲ簡單ニ說明致シマス、此法律案ハ現行法ノ產牛馬組合法ニ代ル性
  質ノモノデ、產牛馬組合法デハ產牛ト產馬ダケニ付テシカ組合ノ出來ナイモノデアルコト
  ハ、法律ノ名前ノ示ストコロデアリマス、併シナガラ此法律制定以後段々畜產業ガ發達
  致シマシテ、今日ニ於テハ羊及豚ニ付テモ組合ヲ設ケサス必要ノアルヤウナ狀況ニナリマシ
  タ、ソレデ此範圍ヲ廣ク致シマシテ、畜產組合法ト云フモノニ致シマシタノデアリマス、尙
  其法律ニ依テ支配サルヽ家畜ノ種類ガ殖エテ來テ、是マデハ家畜ノ生產ダケニ付テ組合ガ
  設ケラルヽコトニナッテ居リマシタガ、今後ハ生產ノ外ニ其飼養飼育ニ付テモ、組合ノ設ケ
  ラルヽヤウニシタイト云フノガ一ノ要點デアリマス、ソレカラ尙今一ノ要〓ハ組合ノ經費、
  之ヲ市町村稅徵收ノ方法ニ依ッテ取立テルコトノ途ヲ聞クト云フ〓ニアリマス、是ハ此
  公ノ法人デアル組合ノ事業ヲ遂行シテ行ク上ニ於テ、是非必要ナコトデゴザイマス、ノミ
  ナラズ今度ノ組合法案ニ於キマシテ、或程度ニ於テ組合ハ營利事業ヲ營ムコトガ出來
  ルヤウニ致シマシタ、營利事業ヲ營ム以上ハイロ〓〓ノ人ト債權債務ノ關係ヲ生ズル、
  此債權者ヲ保護スル上ニ於テモ組合ノ成立ノ確實デアルコトガ必要デアリマスカラ、旁ラ
  此規定ヲ入レマシタ、是ハ外ニモ段々例ガゴザイマシテ、現行法ニ於テモ耕地整理法ニ
  於テモ、ヤハリ此規定ガゴザイマス、其他總テ現在ノ規定ノ不備ノ點ヲ補足致シマスニ
  過ギマセヌ、ソレ等ノ詳細ノ點ハ何レ委員ガ設ケラレマスレバ、委員會ニ於テ詳シク御說
  明ヲ致シマス、ドウゾ速カニ議決セラレテ確定スルコトヲ偏ニ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=31

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• 032・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　別ニ質問モナイヤウデスカラ次ニ移リマス、畜產組合法案、
  右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
  右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=32

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• 033・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=33

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• 034・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中村君ノ動議ニ反對ハナイト認メマス、依ッテ議長指名九名
  ノ委員ニ付託スルコトニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=34

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• 035・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　此場合尙日程ヲ變更シ米價調節所法案ヲ議案トセラレンコトヲ
  望ミマス
  (「贊成々々」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=35

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• 036・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中村君提出ノ日程變更ノ動議ニハ贊成アリト認メマス、尙別
  ニ反對ガアリマセヌカラ日程ハ變更致シマシタ、米價調節所法案ノ第一讀會ヲ開キマス、
  提出者戶水寬人君
  米價調節所法案(戶水寬人君外六名提出)第一讀會
  米價調節所法案
  米價調節所法
  第一條米價ヲ調節スル爲米價調節所ヲ設ク
  第二條米價調節所ハ農商務大臣ノ所管トス
  第三條本法ニ於テ米ト稱スルハ日本ニ於テ生產スル玄米ヲ謂フ
  第四條主務大臣ハ米價著ク下落若ハ騰貴ノ場合ニ於テハ委員會ニ諮問シ
  最低最高價格ヲ定メ之ヲ公布スヘシ
  第五條主務大臣ハ市場ニ於ケル玄米一石ノ價格最高標準ヲ超過スルトキ
  ハ米穀取引所ノ米ノ取引ヲ停止スヘシ市價最低標準以下ニ落ルトキハ政
  府ハ市場ヨリ米ヲ買收シ市價最低價格標準ニ至ルニ及テ止ム
  第六條米價調節所ハ前條ノ處分ヲ爲スニ方リ豫メ委員會ノ決議ヲ經主務
  大臣ノ認可ヲ受クヘシ
  第七條米價調節所ノ組織及委員竝委員會ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ
  定ム
  第八條米價調節ニ要スル資金ハ米價調節所證券ヲ以テ之ニ充ツ證劵ニ關
  スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔戶水寬人君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=36

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• 037・戸水寛人

  ○戶水寬人君　米價調節所法、斯ウ云フ法律案ヲ提出致シタノデゴザイマス、米價ガ
  非常ニ下落致シテ之ヲ調節シナケレバナラヌト云フ議論ガ朝野ニ喧シイト云フコトハ諸
  君モ御存ジノ通リデゴザイマシテ、ツレデ此議會ニ於テ質問モ出マシタノデアル、建議案モ提
  出セラレマシタ、今日會議ノ劈頭ニ於テ朗讀セラレタトコロノ政府ノ答辯ヲ聽キマスト云
  フト、政府ニ於テモヤハリ禾貧ヲ設ケテ事實ヲ調ベテ居ルサウデアル、洵ニ結構ナコトヽ思
  ヒマスガ、私共モ米價調節ニ關シテイロ〓〓〓究致シマシテ、法律案ヲ二ツ拵ヘマシタノ
  デアルガ、其一ヲ提出致シマシタノデ、委員會ガ開カレタナラバ、今一ツノ案モドウカ委員
  ノ前ニ提出致シマシテ、御〓究ヲ願ヒタイト思フノデゴザイマス、强イテ此案ヲ固執シタイ
  ト云フ譯デモゴザイマセヌガ、米價調節ニ關シテ適當ナル法律案ノ出ルト云フコトヲ希望
  スルノデゴザイマシテ、諸君ノ御協賛ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=37

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• 038・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名十八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=38

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• 039・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中村君ノ動議ニハ贊成アリト認メマス、且反對ガアリマセヌカ
  ラ中村君ノ發議通リ、議長指名十八名ノ委員ニ付託スルコトニ可決ニナリマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=39

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• 040・中村啓次郎

  ○中村啓次郎君　此場合尙日程ヲ變更シ、蠶絲業救濟補償法案ヲ議題トセラレン
  コトヲ望ミマス
  (「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=40

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• 041・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中村君發議ノ日程變更ニハ贊成アリト認メマス
  〔此時「能ク分リマセヌ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=41

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• 042・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　蠶絲業救濟補償法案ヲ日程ニ載セルト云フノデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=42

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• 043・伊東知也

  ○伊東知也君　餘リ日程ノ變更ハ望ミマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=43

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• 044・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　日程變更ニ反對デスカ-反對ノ諸君ノ起立ヲ望ミマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=44

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• 045・伊東知也

  ○伊東知也君　是ダケハ贊成致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=45

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• 046・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　全部贊成ト認メマス、日程ハ變更サレマシタ、依ッテ蠶絲業救
  濟補償法案ノ第一讀會ヲ開キマス-西谷金藏君
  蠶絲業救濟補償法案(戶水寬人君外九名提出)第一讀會
  蠶絲業救濟補償法案
  蠶絲業救濟補償法
  第一條政府ハ本邦ニ於テ製造シタル生絲カ時局ノ影響ニ依リ價格ノ甚ク
  低落シタル場合ニ於テハ橫濱正金銀行及政府ノ指定セル銀行ヲシテ金二
  千萬圓ヲ限度トシ生絲ヲ擔保トシテ貸付ヲ爲サシムルコトヲ得
  第二條前條ノ資金ハ日本銀行ヨリ融通セシメ其ノ貸付利子ハ年六分トシ
  內二分ハ日本銀行ニ收メ一分ヲ取扱銀行ノ手數料トシ三分ヲ貸付金損失
  ノ補償積立金トス
  前項ノ融通金ニ對シテハ兌換券發行稅ヲ免除ス
  第三條前條ノ擔保價格ヲ協定スル爲橫濱正金銀行ニ若干名ノ商議員ヲ置
  前項ノ商議員ハ主務大臣之ヲ囑託ス
  協定セル擔保價格ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
  第四條橫濱正金銀行及政府ノ指定セル銀行カ第一條ノ賃付ニ依リ缺損ヲ
  生シ第二條ノ補塡金ヲ以テスルモ尙足ラサル場合ニ於テハ政府ハ其ノ缺
  損ノ補償ヲ爲シ又過剩アルトキハ政府ニ納ムヘシ
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔西谷金藏君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=46

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• 047・西谷金藏

  ○西谷金藏君　諸君、私共提出致シマシタ蠶絲業救濟補償法案ノ提出ノ理由ヲ簡
  單ニ申上ゲマス、此時局ノ突發致シマシタ以來、輸出貿易ガ多大ノ打擊ヲ受ケマシタ
  コトハ申スマデモゴザイマセヌガ、其中ニ付テ生絲輸出ガ最大打擊ヲ受ケマシタコトモ亦
  諸君既ニ御承知ノ通リデアラウト考ヘマス、此理由ヲ申上ゲマスレバ、餘程長ク時間ガ
  掛ルト考ヘマスルガ、總テノ〓ニ付テハ既ニ是マテ建議案提出ノ際ニ於テ本會ニ提出者
  ヨリイロ〓〓其理由ヲ陳述セラレ、又各種ノ委員會ニ於テソレ〓〓其理由ヲ發表サレマ
  シテ、既ニ本會諸君ハ逐一御承知ニ相成ッテ居ルコトト存ジマスルガ故ニ、其詳細ナル
  理由ヲ略シマスルガ、玆ニ極ク簡單ニ一二ヲ申シマスレバ、本年ノ八月ニ歐羅巴ノ戰亂
  ガ始マリマシテ當時丁度夏秋蠶ノ掃立ノ-秋蠶ノ掃立ノ時期ニ遭遇致シテ居リマシ
  タガタメニ、各地ノ養蠶家ハ是ガタメニ非常ナ杞憂ヲ懷キマシタ結果、本年ハ橫濱ニ出
  ストコロノ絲ノ箇數ガ昨年ニ比較致シマシテ約五万捆或ハ多クハ六万捆ニ達スルカモ知
  レマセヌ、唯僅ニ秋蠶ノ或ル一部ヲ飼育スルトキニ方ッテ此事ガ起リマシタ結果トシテ三十
  六万捆、昨年出マシタモノガ本年急ニ三十一万捆、若クハ其以內ニ減ズル見込デゴザイマ
  ス、又此輸出ノ金ニ於テ考ヘマシテモ、輸出總額ハ昨年ノ生絲總額ハ約二億圓ニ達シテ
  居ルト存ジマス、然ルニ是モ本年ノ同期若クハ今日ノ生絲相場ヲ以テ明年五月卽チ明
  年ノ新繭マデニ生絲賣出價格ヲ推算致シマスレバ、約七千八百五十二万七千九百
  八十七圓バカリノ損失ニナルト考ヘマス、此爲メニ製絲家若クハ此生絲賣込問屋或ハ
  之ヲ援ケテ居ルトコロノ銀行ガ窮地ニ陷ッテ居ルト云フコトハ申スマデモゴザイマセヌガ、更
  ニヨリ多クノ杞憂ヲ懷キマスルコトハ斯ノ如クニシテ推行ケバ明年以後ノ此生絲ノ產額、
  所謂此養蠶ノ掃立ノ上ニ偉大ナル關係ヲ及ボシ、遂ニ帝國唯一ノ國產ノ基礎タルトコ
  ロノモノヲ破壞セントスルノ虞ガゴザイマスルガ故ニ、吾ミハ玆ニ此法律案ヲ提出致シマシ
  タ次第ニシテ、此法律案ノ內容等ノ詳細ニ至リマシテハ、委員會ニ於テ篤ト說明ヲ致シタ
  イト考ヘマス、玆ニ簡單ニ提出ノ理由ヲ申上ゲテ諸君ノ御贊成ヲ乞ヒタイト存ジマス(拍
  手起ル)
  〔「贊成ル々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=47

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• 048・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名十八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=48

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• 049・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中村君ノ發議ニ贊成ガアルト認メマス、因テ議長指名十八名
  ノ委員ニ付託スルコトニ決シマス-衆議院議員選舉法中改正法律案ノ第一讀會
  ヲ開キマス-相島勘次郞君
  第衆議院議員選舉法中改正法律案(關直彥君外第一讀會
  四名提出)
  衆議院議員選舉法中改正法律案
  衆議院議員選舉法中左ノ通改正ス
  第八條第一號中「年齡滿一一十五年以上ノ者」ヲ「年齡滿二十年以上ノ者」ニ改
  同條第三號中「選舉人名簿調製ノ期日前滿一年以上地租十圓以上又ハ滿二
  年以上地租以外ノ直接國稅十圓以上若ハ地租ト其ノ他ノ直接國稅トヲ通シ
  テ十圓以上ヲ納メ仍引續キ納ムル者」ヲ「選舉人名簿調製ノ期日前滿一年以
  上直接國稅五圓以上ヲ納メ仍引續キ納ムル者」ニ改ム
  同條第三號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  四府縣立師範學校、中學校若ハ文部大臣ニ於テ中學校ノ學科程度ト同
  等以上ト認メタル學校又ハ文部大臣ノ認可ヲ經タル學則ニ依リ法律
  學、政治學、理財學ヲ〓授スル私立學校ヲ卒業セル者
  第十條中「年齡滿三十年以上ノ者」ヲ「年齡滿二十五年以上ノ者」ニ改ム
  第十八條第四項中「及納稅地」ヲ「、納稅地及學歷」ニ改ム
  第十九條ノ二選舉人第八條第四號ニ該當スルトキハ選擧人名簿調製ノ期
  日滿一箇年前ニ其ノ讃憑ヲ具ヘテ其ノ住所地ノ市町村長ニ屆出ツヘシ其
  ノ期日迄ニ屆出ヲ爲ササルトキハ選舉權ヲ有セス
  別表中左ノ如ク改ム
  東京府
  東京市十五人
  郡部伊豆七島トモ八人
  大阪府
  阪市
  堺大市七一十人人人
  郡部
  神奈川縣
  橫濱市
  橫須賀市五一三人人人
  郡部
  兵庫縣
  神戶市三人
  姫路市一人
  郡部十二人
  長崎崎縣
  長市人人
  佐世保市一六一一
  郡部人人
  對馬
  新潟
  市
  田岡洞縣
  佐郡高長新渡部市市十一十一一一人人人人人人
  二
  埼玉縣
  群馬縣
  前橋市
  高崎市七一一人人人
  郡部
  栃木縣
  宇都宮市人
  七一
  郡部人
  三重縣
  津市
  四日市市人人人人
  七一一一
  宇治山田市
  郡部
  愛知縣
  名古屋市
  豐橋市十一三人八人
  郡部一
  靜岡縣
  濱靜岡
  松部市市十一一人人人
  郡
  岐阜縣
  岐阜市人
  八一
  郡部人
  長野縣
  長野市人
  松本市人
  十一人
  郡部
  福島縣
  若松人
  福島部市市九一一
  人人
  郡
  巖手縣
  盛岡六一人人
  部市
  郡
  靑森縣
  弘前
  靑森部市市五一一人人人
  郡
  廣島縣
  道島
  吳尾廣部市市市十一一一人人人人
  郡
  愛媛縣
  松山八一人 人
  部市
  郡
  福岡縣
  福岡市一
  市市一一人人人八
  小間急救急用
  倉司一
  松部市市一人
  郡若十二人
  大分縣
  大分人
  部市六一人
  郡
  熊本縣
  熊本市九一人人
  郡部
  鹿兒島縣
  鹿兒島市人
  郡部一八一
  人 人
  大島
  北海道廳
  札幌一
  函館一
  區區區區人八八人
  樽一
  旭小
  川
  札幌、留萌
  宗谷、上川
  空知、室蘭六人
  浦河各支廳
  管內
  函館、檜山、
  後志各支廳三人
  管內
  根室、釧路、
  河西、網走、人
  各支廳管內
  (根室支廳管內千島ニ屬スル諸郡ヲ除ク)
  沖繩縣
  那覇區一八
  郡部首里區トモ三人
  〔相島勘次郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=49

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• 050・相島勘次郎

  ○相島勘次郞君　私ハ今玆ニ關直彥氏以下四名ニ依テ提出致シマシタトコロノ衆議
  院議員選舉法中改正法律案ノ提出ノ理由ヲ述ベヤウト思ヒマスル、此議案ハ每年提
  出スルノデアリマス、併ナガラ立憲國ノ問題トシテハ最モ重大ナル問題ナリト信ズルガ故
  ニ、例年提出スルノ理由ヲ以テ簡單ニ其趣旨ヲ辯明スルト云フコトハ出來マセヌ、併ナ
  ガラ成ルベク昨年ノ此議場ニ於テ申シマシタトコロノ〓ハ避ケマシテ、提出ノ理由ヲ申述
  ベタイト思ヒマスル、申スマデモナク選擧法ト申シマスモノハ國民ノ中ヨリ代表者ヲ選出
  スルトコロノ方法ニ就テノ法則デアリマスカラシテ、選舉法ノ理想トスル所ハドンナモノデ
  アルカト云ヘバ最モ適當ナル代表者ヲ得ル方法ヲ講ズルト云フノニアリマス、最モ適當ナ
  ル候補者-最モ適當ナル國民ノ代表者ト云ヘバソレハ優良ナル政治家デナケレバナラ
  ヌト云フコトハ論ヲ俟チマセヌ、又併ナガラ優良ナル政治家思操堅實ニシテ主義政見ア
  ル政治家ヲ選出スルト同時ニ、國民中ノ總テノ階級、有ラユル團體ニ利益アル者ヲ成
  ルベク廣ク代表スルト云フコトガ必要デアラウト考ヘラレマスル、ソコデ第一ノ優良ナル立
  派ナルトコロノ政治家ヲ出スト云フコトノタメニハ、選擧權ト云フモノハ成ルベク狹イ方ガ
  宜シイカモ知レナイ成ルベク狹イ範圍ニ制限ヲシタ方ガ偉イ人ガ出ルカモ知レマセヌ、併
  ナガラ成ルベク國民ノ各階級各團體ノ利益ヲ廣ク代表サセルト云フ方カラ云ヘバ、選擧
  權ト云フモノハ廣キガ上ニモ廣クナケレバナリマセヌ、是ニ於テ此雙方ノ目的ヲ適當ニ調
  和スルト云フコトガ吾〓ノ苦心ノ存スル所デアリマシテ、此議案ハサウ云フ考ヲ以テ編成
  サレテ居ルノデアリマス、勿論我等ハ度と申ス通リ、普通選舉ノ理想ヲ持ッテ居ル者デア
  リマス、議會ノ勢力ヲ最モ鞏固ナラシムルト云フコトハ國民ノ後援ヲ最モ多ク求メルト云
  フコトデアッテ、國民後援ノ力ヲ最モ廣ク最モ大ニ求メルト云フコトハ如何ニイロノ
  反對者ガアリマシテモ、ドウシテモ普通選舉ヨリ他ニ手段ガナイト私ハ確信ヲシテ居リマ
  ス、併ナガラ今ハマダ其時機ニ日本ノ文明ノ程度ハ達シテ居ラヌカノヤウニ考ヘマスカラシ
  テ、此制限選舉法ヲ提出シタ譯デアリマス、デ此サウー云フ考ニ基イテ提出ヲシタノデアリマ
  スガ、此議案ノ主眼トスル所ハ從來ノ選舉資格ヲ直接國稅十圓トアルノヲ五圓ニ改メ
  ルト云フコトヽ選舉資格ノ二十五歲ヲ二十歲ニ引下ゲルト云フコトヽ、被選擧資格
  ノ三十歲ト云フノヲ二十五歲ニ引下ゲルト云フコトヽ所謂智識階級、府縣立師範學
  校、中學校若クハ文部大臣ニ於テ中學校ノ學科程度ト同等以上ト認メタル學校又ハ
  文部大臣ノ認可ヲ經タル學則ニ依リ法律學、政治學、理財學ヲ〓授スル私立學校ヲ卒
  業セル者、此智識階級ヲ加ヘタコトガ主眼トナッテ居リマスル、此ノ年ヲ何故ニ引下ゲタカ
  ト云フヤウナコトニ就テハ、前ノ議會ニ於テ申上ゲマシタカラシテ私ハ深ク申上ゲマセヌ
  ケレドモ、併ナガラ成ベク人間ヲシテ早クカラ活動ノ〓ニ著カセルト云フコトガ國家ノ理想
  デナケレバナラヌノデアッテ、此理想ガアッテ初メテ國ハ發展スルノデアル、申スマデモナク所
  謂「アングロサクソン」ト云フヤウナ人ハ準備ノ時代ト一云フモノヲ成ベク短クシテ、活動ノ
  時間ヲ成ベク長クスルコトガ玆ニ英國ガアリ、玆ニ米國ガアルノデアリマス、ソレ故ニ我日
  本ニ於テモ〓育制度調査會ト云フヤウナモノガ行ハレテ、成ベク短イ時間ニ於テ世ノ
  中ノ役ニ立ツ人間ヲ拵ヘタイト云フ現ニ議論ノアルト云フコトモ、同ジク準備時代ハ成
  ベク短クシテ、サウシテ活動ノ時間ヲ長クシタイト云フ精神カラ出ルノデアリマス、此理想
  ハ此選擧法ニ於テモ加味シナケレバナラヌノデアッテ、成ベク若イ人ニ選舉權ヲ與ヘルト
  云フコトハ若イ時分カラシテ政治ト云フコトニ趣味ヲ以テ、當リ前ノ人間トナルト云フ
  資格ヲ與ヘルノデアリマスカラ、唯モウ此事カラ申シマシテモ年若イ人ニ選舉權ヲ與ヘ、
  若クハ被選權ヲ與ヘルト云フコトハ國ノ發達ノ上ニ於テ洵ニ必要ナコトヽ私ハ考ヘマ
  ス、又若イ人ニ選舉權ヲ授ケルト云フコトハドウデアルトカ、斯ウデアルトカ云フ議論ガアリ
  マセウケレドモ、併ナガラ政治ノ事ト云フモノハ將來ノコトデアル、政治ハ過去ノ學問デハ
  ナイ將來ノ學問デアルガ故ニ、將來日本ノ憲政ヲ如何ニスベキヤト云フコトヲ最モ愼重ニ
  考フベキコトデアッテ、是マデ若イ人ガドウデアルトカ、斯ウデアルトカ云フヤウナコトハ殆ド眼
  中ニ置ク必要ガナイト思フ、ソレ故ニ私ハ此ノ年代ヲ引下ゲテ、サウシテ若イ人ニ選舉權
  ヲ與ヘタイノデアリマス、又中學校ヲ卒業シテモ常識ガナケレバ仕方ガナイデハナイカト云
  フ非難ガ此前ノ議會ニ於テ橫田君カラ-非難ト申スヨリハ御注意ガアタッノデアリマ
  ス、ソレ故ニ私共一方ニ於テ中學校學科制度ノ上ニ於テノ議案ヲ出シテ居リマスルガ、
  成程中學校ヲ卒業致シマシテモ常識ガ發達シナケレバ仕方ガアリマセヌ、ソレ故ニ常識
  ト云フコトハ最モ大事ニ致スノデアリマスカラ、圓滿ナル常識ヲ發達スル爲メニハ中學校
  ノ方ノ改正ノ建議ヲ私ハシテ居リマスガ、要スルニ誰ガ常識ガアルト云フコトハ外ニ方法
  モナイ、直グオ前ハ常識ガナイト云フヤウナ次第ニハ參リマセヌカラ、巳ムヲ得ズ中學校以
  上ノ學校ヲ卒業シタル者ハ、先以テ智識ヲ備ヘルモノ常識アル者トシテ之ニ選舉權ヲ與
  ヘタノデアル聞ク所ニ依レバ政府ニ於テモ今囘ハ選舉權擴張ノ意ガアリマシテ、玆ニ五
  圓以上直接國稅ヲ納メル人ニハ選舉權ヲ與ヘルト云フコトマデニ進步シテ居ルト云フ
  コトデアル、唯智識階級ヲ加ヘルコト、年齡ヲ引下ルト云フコトニ就テハ、政府ノ是ヨリ
  差出サントスルトコロノ案ニハナイト云フコトデアリマスガ、吾〓ハ何レカト言ヘバ財產ニ
  資格ヲ置イテ選擧權ヲ定メルト云フコトハ、本當ノ理窟ニハ適ハナイト思ッテ居ルノデア
  ル、唯併ナガラ國家ノ代表者ト云フモノヲ、丁度國ノ進步ニ應ジテ適當ナル人ヲ出サウ
  トスレバ、誰カガ之ヲ代表シテ出サナケレバナラヌ、其代表スベキ人トシテハ先ヅ以テ
  當リ前ノ財產ノアル人ガ宜カラウト云フ見地カラ、此五圓ノ資格ヲ置クノデアル、之ヲ最
  モ適當ナル資格トハ認メテ居ラヌノデアリマスカラ、玆ニ智識階級ヲ加ヘルノデアリマス、
  又是モ諸君ノドナタモ御存知ノコトデアルガ、唯今英國ニ於テ選舉權ヲ持ッテ居ル人ハ
  ドウカト云フト、百分ノ七、佛蘭西ハ百分ノ二七、六、獨逸帝國ハ二二、二、白耳
  義ハ二三、ソレデアルノニ日本ハ僅ニ二九ト云フ數デアッテ、非常ニ選舉權ガ少ナイノデア
  ル、選舉權ノ少ナイト云フコトハ政治ト云フコトヲ或一程ノ階級ニ委ネルト云フコトデアッ
  テ、是ガ非常ニ國ニ害ヲ爲スノデアル、現ニ英國ノ上院ガ次第々々ニ勢力ノ衰ヘルノハ何
  ノ爲メデアルカト云フト、國民ノ公選ニ依ラズシテ彼等ハアヽ云フ事ニナッテ居ルカラシテ、
  次第々ケニ衰ヘテ來ルノデアリマス、ドウシテモ國民多數ガ政治ヲ了解シ國民多數ガ政
  治家ノ後援ヲスルト云フ、所謂政治上ニ於テノ無責任者ガ少ナクナレバ少クナル程國ノ
  政治ハ良クナルノデアッテ、低イ階級ト云フモノニ此選舉權ヲ與ヘタナラバ、ソレガ爲メニ
  政治ヲ害スルト云フヤウナ議論ハ全ク古臭イ說ト言ハネバナラヌノデアリマス、私ガ考ヘマ
  スルノニ今囘ノ議案ノ如キ-今囘政府ガ提出シタル所ノ豫算案ナドヲ見マスルト云フ
  ト、軍事費ト云フモノガ總テノ豫算案ノ非常ナル部分ヲ占メテ居ッテ、サウ云フ豫算ガ
  出來ルト云フコトハ何ノ爲メカト云フト是ハ國ノ國防ト云フコトヨリハ寧口薩長ノ權衡
  ヲ取ルト云フヤウナ、其蟠ッタル惡シキ傾向ガデス、ソレハ非常ナル豫算案ノ上ニ軍事費
  ノ多額ヲ來スコトガアルカモ知レヌ、ソレヲ吾ミ議員ガ本當ニ良心ノ命ズル儘ニ之ヲ斷ズ
  ルコトモ出來ナイト云フコトハ何デアルカト云フト、國民後援ノ力ガ弱イカラデアル、國民
  後援ノ力ガ强ケレバ解散モ糞モアッタモノデナイ、直ニ斯ウ云フ議案ト云フモノハ排斥
  シ得ルノデアル、然ルニ是ガ出來ナイト云フノハ國民後援ノ力ガ少ナイノデアル、是ガ少
  ナイト云フコトハ選擧權ノ少ナイト云フコトデアル、苟モ民一票ノ選舉權ヲ持ッテサウシテ
  責任ヲ持ッテ、政治ニ間接ニ關係スル人ガ多ケレバ國ノ〓育ハ年々進步スルノデア
  リマスカラ、此進步シタル國民ガ百人千人万人ト多ケレバ多イ程後援ノ力ガ强クナッテ、
  ソレヲ正シイ道ニ導ケバ立憲政體トシテハ是ガ理想デアルノデアル、又現政府ハ何カト云
  フト-現政府ガスルノデナイカモ知レナイ、或ハ御用新聞ガソレヲ受ケテスルノカモ知レ
  ナイガ、解散風ガ能ク吹クノデアルケレドモ、解散風ハ怖クナイ、解散ト云フノハ寧ロ何
  方ガ正シイカト云フコトヲ國論ニ問フノデ、之ヲシテ貰ハナケレバ自分ガ正シイカ正シクナ
  イカ分ラヌノデアル、然ルニ解散ト云フコトヲスル方デモサレル方デモ苦痛ニ思フノハ何デ
  アル選舉ト云フモノニ非常ナ弊害ガアルノハ勿論デアルケレドモ、弊害バカリデハナイ、
  是ガ或僅ノ人ニ限定サレテ居ルノガ病ノ本デアルト私ハ確信シテ居ル若モ此選舉權ガ
  私ノ言フヤウニ五圓以上ノ直接國稅二十年以上ノ男子、或ハ中學校程度ノ學科ヲ
  卒業シタト云フ知識アリ常識アリ、若クハ恆心アリ恆產アルトコロノ人ニモウ少シ多ク
  振撒カレテ、サウシテ少クトモ英國ノ半分位マデ進ンダナラバ、國ノ政治ハ必ズ改善サル
  ルニ違ヒナイト私ハ熱心ヲ持ッテ考ヘテ居リマス、此議案ハ年々差出シマシテ、サウシテ
  何時モ否決ノ運命ニ遭フノデアリマスガ、併ナガラ今日ノヤウナ時局ヲ見ル度ニ從來反
  對ナスッテ居ル御方々モ、是ハドウシテモ選舉權ヲ擴張シテ國論ノ後援ヲ正シク受ケナケレ
  バナラヌト云フコトヲ御考ニナッタコトダラウト私ハ考ヘテ居リマス、ドウゾ今年ハ時代モ
  此通リ變リ、政變モ亦良キ〓育ヲ吾ミニ與ヘテ居ルノデアリマスカラ、全會一致ヲ以テ
  吾ミノ此案ニ贊成サレンコトヲ希望致スノデアリマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=50

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• 051・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名十八名ノ禾賣員付セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=51

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• 052・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中村君ノ發議ニハ贊成ガアリマシテ且ツ反對ガナイト認メマス、
  依テ議長指名十八名ノ委員ニ付託スルコトニ可決ニナリマシタ-日程第一一、蠶絲業
  法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、高津仲次郞君
  蠶絲業法中改正法律案(高津仲次郞君外四名第一讀會
  第二提出)
  蠶絲業法中改正法律案
  蠶絲業法中左ノ通改正ス
  第二十六條中「府縣ノ負擔トス」ヲ「國庫ノ負擔トス」ニ改メ但書ヲ削ル
  第二十七條削除
  〔高津仲次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=52

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• 053・高津仲次郎

  ○高津仲次郞君　本案ハ是レマデ屢〓提出セラレタ問題デゴザイマスカラ、私ハ簡單ニ
  提出ノ理由ヲ說明致サウト思ヒマス、本案ハ蠶絲業法中ニ第二十六條ノ「蠶病豫防
  事務及地方種繭審査會ニ關シ必要ナル費用ハ府縣ノ負擔トス」トアリマスノヲ「國庫ノ
  負擔トス」ト改メマシテ、但書ノ「國庫ハ其半額以內ヲ補助スルコトヲ得」トアリマスルノ
  ヲ削除ヲ致シマス、次ニハ第二十七條ノ「府縣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ蠶種檢査ニ關
  スル手數料ヲ徵收ス」トアリマスノヲ削除ヲ致スノ改正案デゴザイマス、我國ノ蠶絲ハ貿
  易輸出品中ノ三分ノ一ヲ占メテ居リマス、貿易ノ均衡ヲ保ツトコロノ重要物產デアルト
  云フコトハ今更申上ゲルマデモゴザイマセヌ、而シテ此蠶絲業ノ盛衰ト云フコトハ、直ニ國
  力ノ消長ニ關スル程ノ大切ナル物產デゴザイマシテ、此蠶絲業ノ改良發達トームフコトニ
  付キマシテハ、種々ナル方法モゴザイマスルガ、就中蠶病ノ豫防種繭ノ檢査ト云フコトハ最
  モ急務ナルコトデアリマス、蠶病ノ豫防ヲ爲シテ蠶絲今保護シ蘆業ノ發達ヲ圖リ、又
  種繭ノ審査ヲ遂ゲテ種類ノ統一ヲ圖リ、品質ノ改良ヲナシ、歐羅巴ノ生絲ト聲價ヲ爭
  フト云フコトハ今日急務中ノ急務ナルモノデアリマス、此蠶病ノ豫防種繭ノ審査ト云
  フコトハ、獨リ一地方一府縣ノ事業ニアラズシテ、中央ニ於テ當然ナスベキトコロノ事業
  デアリマス、然レバ此事業ニ對スルトコロノ費用ニ付テハ、勿論國庫ニ於テ負擔スルガ當
  然デアラウト思フノデアリマス、然ルニ本案ニハ之ニ關スル費用ハ「府縣ノ負擔トス」トシ
  テアリマスガ、之ヲ改メマシテ「國庫ノ負擔トス」ト云フコトニ致スヲ當然ナルコトデアラウ
  ト思フ、又第二十七條ノ蠶種檢査手數料ヲ、檢査ヲ受クルトコロノ者ヨリ徵收スルト云
  フコトハ、勅令ニ依テ今日ハ特別蠶種一枚ニ付テ三錢、普通蠶種一枚ニ付テ二錢ト云
  フ過重ナルトコロノ手數料ヲ蠶種製造家ヨリ徵收致シテ居リマス、一體蠶種ノ檢査ト云
  フコトハ獨リ蠶種製造家ヲ保護スルニアラズシテ、蠶種ヲ需要スルトコロノ養蠶家ヲ保
  護スルト云フノガ目的デアルノデアリマス、其故ニ蠶絲業界全般ノ保護全般ノ利益ヲ圖
  ルト云フノガ目的デアルノデアリマス、卽チ國家公益ヲ圖ルト云フノガ目的デアル、然ルニ
  蠶種檢査ニ對スルトコロノ費用ヲ、蠶種檢査ヲ受クルトコロノ蠶種製造家ヨリ徵收スル
  ト云フコトハ甚ダ不當デアラウト思フノデアリマス、若シ是レガ蠶種製造家ノ希望ニ依テ
  蠶種檢査ヲ受クルト云フナラバ蠶種檢査ヲ請求スル者ヨリ徵收スルコトハ當然デアリ
  マセウガ、法律ヲ以テ强制的ニ檢査ヲ行フト云フ場合デアルナラバ當然是レハ國庫ニ於
  テ其費用ヲ負擔スルト云フコトハ論ノナイ話デアラウト思フ、恰モ肺結核病豫防ノ爲メニ要
  スルトコロノ費用ヲ肺結核病患者ヨリ徵收スルト同ジコトデアル、不當ト云フヨリハ甚ダ殘
  酷ナル方法デアルト私ハ考ヘルノデアリマス、ソレ故ニ第二十七條ヲ削除致シマシテ、蠶種
  檢査手數料ヲ全廢シヤウト云フノデアリマス、今日ハ歐洲ノ蠶業國ニ於キマシテハ、佛
  蘭西ナリ伊太利ナリ、墺太利ナリ、總テ此蠶絲業ノ保護奬勵ト云フコトニ付キマシテハ、
  多額ナル國費ヲ投ジテ熱心ニ力メテ居リマス、然ルニ外國ノ蠶絲業ハ前申シマスル通リ、
  貿易品ノ三分ノ一ヲ占ムルトコロノ大切ナルトコロノ事業デアルソレニモ拘ラズ此蠶絲
  業ニ對シテ政府ガ何等保護奬勵ニ付テ見ルベキモノハナイト云フコトハ、甚ダ私ハ痛嘆
  ニ堪ヘヌノデアリマス、獨リ保護奬勵ノ不十分ナルノミナラズ、唯今申上ゲマスルヤウニ
  蠶絲業ノ發達ヲ阻害スベキトコロノ本案ノ改正案ニ付テ、是マデ屢〓本會ニ提出致サ
  レマスガ、之ニ對シテ政府當局者ガ本案ニ對スル態度ノ甚ダ冷淡ナルコトハ、私ノ實ニ
  遺憾トスル所デアルノデアリマス、ドウゾ諸君ハ斯業ノ發達ノ爲メニ本案ノ通過ニ務メラ
  レンコトヲ切望ニ堪ヘマセヌ
  (「贊成々々」拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=53

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• 054・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=54

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• 055・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中村君ノ發議ニ贊成アリト認メマス、仍テ中村君發議ノ通リ
  議長指名九名ノ委員ニ付託スルコトニ決シマシタ--日程第三、營業稅法廢止法律
  案、第一讀會ヲ開キマス、大口喜六君
  營業稅法廢止法律案(高木益太郎君外五名提第一讀會
  第三田
  營業稅法廢止法律案
  營業稅法ハ之ヲ廢止ス
  附則
  本法ハ大正四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔大口喜六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=55

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• 056・大口喜六

  ○大口喜六君　私ハ提出者ニ代ハリマシテ、營業稅全廢ニ關スル理由ヲ說明致シタイ
  ト思フノデアリマス、凡ソ我國ノ營業稅ナルモノガ根本的惡稅デアルト云フコトハ天下ノ
  與論デアルト信ズルノデアリマス、然ルニ前通常議會ニ於テ本問題ニ關シマシテ大分反
  對ノ意見モ現ハレタノデゴザイマスガ故ニ、私共ニ於キマシテハ更ニ其〓究ヲ進ムルコトニ
  怠ラナカッタノデアリマス、然ルニ是ガ〓究ヲ累ネテ見レバ、累ネテ見ルボド益〓吾〓ハ本稅
  ガ惡稅デアルコトヲ信ジテ疑ハナイノデアリマス、ソレ故ニ本議會ニ於キマシテモ重ネテ本
  問題ヲ提出シタ次第デアリマス、本問題ノ理由ニ付テハ此前ノ通常議會ニ於テモ議論
  ヲ致シタコトデアリマスガ、故ニ成ルベク其時ニ觸レナカッタ事柄ニ付テ申述ベルコトニ致シ
  マシテ、重複ハ避ケタイト思フノデアリマス、免ニ角本問題ニ關シマシテ之ヲ歷史的ニ〓
  究シテ見マスルト營業ナルモノハ全體如何ナル理由ニ依テ我國ニ超ッタノデアルカ、御
  承知ノ如ク日〓戰爭ニ當リマシテ、我國ハ戰時費トシテ非常ナル費用ヲ要求シタノデア
  リマス、ソレ故ニ非常特別稅トシテ此營業ナルモノヲ起サレタノデアル是ハ隨分重稅デア
  ルト感ジタノデアルガ、我國民ハ非常ノ稅デアルガ故ニ、斯ル時ニハ之ヲ受ケナクテハナラ
  ナイ、若シ戰爭終ッテ財政ノ整理が出來タ場合ニハ、此稅金ハ廢セラルヽモノデアルト信
  ジタコトヽ私共ハ疑ハヌノデアリマス、然ルニ戰爭ガ濟ンデ財政整理ガ出來テ此稅金ガ廢
  セラレルカト思ッテ居ルノニ、却テ此戰後ノ經營ノタメニ營業稅ハ續ケラルヽコトニナッテ、、
  曾テ非常特別稅ナリシモノガ普通ノ稅金ト相成ッタノデアリマス、ケレドモ我國民ハ今ハ
  戰爭後デアルガ故ニ、種々ナル設備ガ要ルノデアル、經營ガ要ルノデアラウ、其間ハ已ムヲ
  得ザルモノトシテ尙忍ンデ居ッタノデアリマスガ、幸ニ經費ノ節減モ出來行政ノ整理ガ出
  來タナラバ、此營業稅ハ全廢セラルヽト云フコトハ、今尙國民全體ガ期待シテ居ルコトヽ
  私共ハ信ズルノデアリマス、斯ノ如キ譯ニ依テ出來上ッタトコロノ營業稅デアリマスルガ故
  ニ、吾ミハ此際出來得ル限リハ此稅金ノ全廢ヲ圖ッテ、我國民ヲシテ其ノ希望スルトコ
  ロニ副ハシムルニ非サレバ、決シテ我國家ト云フモノヽ信用ヲ國民ニ得ルノ所以デナイ、斯
  樣ニ私共ハ信ジテ疑ハナイノデアリマス、是ハ歷史上ノ問題デアリマスガ、曩ノ通常議會ニ
  於テ此營業稅全廢ニ反對ヲサレタイロ〓〓ノ中ニ、地租トノ關係ノ問題ガ出タヤウニ記
  憶スルノデアリマス、是ハ少シク新シキ議論デアリマスガ故ニ、此地租ト營業稅トノ關係ニ
  付テハ一言玆ニ辯ジテ置ク必要ガアルト思フノデアリマス、或論者ガ其當時言ハレマシク
  コトニハ、地租ト營業稅トハ極メテ權衡ヲ取ルベキモノデアル、故ニ地租ノ存スル以上ハ
  營業稅亦之ヲ存セザルヲ得ズト云フガ如キ議論ガアッタヤウニ私共ハ思フノデアリマス、果
  シテ然リトスレバ是ハ極メテ間違ッタル議論デアルト私共ハ思フノデアリマス、地租ト云フ
  モノハ我國ニ於テハ古ヨリ取ラレテ居ル稅金デアル歷史ノ上ニ於テモ何千年以前カラ
  此地租ノ形式ハアッタノデアリマス、而シテ續イテ參ッテ一ノ地租ト相成ッテ居ルノデアリ
  マスカラ、歷史ノ上ニ於テ一般人民ノ之ヲ認メテ居ルトコロノコトデアル、營業稅ハ之ニ
  反シテ唯今申シマシタ如ク非常特別稅トシテ日〓戰爭後ニ起ッタルトコロノ稅金デアル
  ノデアリマス、旣ニ歷史ノ上ニ於テ頗ル其趣ヲ異ニシテ居ル、ソレノミナラズ吾ミノ信ズル
  トコロニ據リマスレバ、地租ナルモノハ所謂土地ニ掛ケラレルトコロノ租稅デアリマシテ、土
  地ハ卽チ國家ノ所有シテ居ルトコロノモノデアル、然ルニ一般人民ガ之ニ對シテ特殊ノ所
  有權ヲ得ルガ故ニ、之ニ對スル一ノ神償料デアルト吾ミハ觀ルベキモノト思フノデアリマ
  ス、然ルニ營業稅ハ全ク之ニ反シテ一面カラ言ヘバ行爲稅デアリマス、又一面カラ言ヘバ人
  頭稅ノ如キ形式ヲ具ヘテ居ルノデアリマス、卽チ商工業者ニ對シマシテハ賣上ニ依テ稅
  金ヲ取ルノデアリマス、資本金ニ依テ稅金ヲ取ルノデアリマス、其人ノ營ンデ居ルトコロノ
  營業ノ資金ノ賃貸價格ニ依テ稅ヲ取ルノデアリマス、又從業者ニ依ッテ稅ヲ取ルノデアリ
  マス、斯ノ如キ譯デアリマスガ故ニ、商工業者ノ受ケル營業稅ナルモノハ、一面カラ言ヘ
  バ行爲稅デアリマス、又人頭稅テアリマス、土地ニ向シテ國家ガ地租ヲ取ルノトハ全ク其
  租稅ノ性質ヲ異ニシテ居ルモノト私共ハ信ジテ疑ハヌノデアリマス、ソレノミナラズ此商工
  業者ト云フ者ハ地租ヲ拂ッテ居ラナイカト言ヘバヤハリ是ハ地租ヲ拂ッテ居ルノデアリマ
  ス商工業ヲ爲ストコロノ者ハ所謂賃貸價額ヲ取ラレ-家屋ニ向ッテ賃貸價額ヲ取
  ラレルノデアリマスガ、其家屋ナルモノハ言フマデモナク必ズ土地ノ上ニ建ッテ居ルモノデア
  ル、賃貸價額ヲ掛ケラレル家屋ニ對スル土地ニハヤハD地租ヲ取ラレテ居ルノデアル、丁
  度農業家ガ耕スガタメニ田地ヲ持ッテ居ル、其田地ニ對シテ地租ヲ取ラレルト同ジ如ク、
  商工業者ガ商賣ノタメニ建テヽ居ル倉庫竝ニ店舗ト云フモノヽ建ッテ居ル土地ニモ、ヤハ
  リ地租ヲ掛ケラレテ居ルノデアリマス、而シテ此市街宅地ト云フモノ又ハ郡村宅地ト云フ
  モノニシテモ、宅地ノ地租ト云フモノハ非常ニ高マッテ居ルノデアリマス、明治四十三年
  三月ノ地價改正法-市街宅地竝ニ郡村宅地ノ地價改正法ト云フコトニ依テ見マ
  シテモ、市街宅地ハ十八倍ノ稅ヲ限度トシテ地價修正ガサレタノデアリマス、郡村宅地
  ハ丁度七倍二割ト云フモノヲ標準トシテ地價ガ算定サレテアリマス、故ニ唯今ノ宅地稅
  ト云フモノハ非常ニ高キモノニナッテ居ル、以前ニ較ベマスレバ-百分ノ二箇半ニ較バ
  マスレバ十八倍、郡村宅地デアリマシテモ七倍二割ト云フ租稅ヲ見テ居ルノデ
  アリマス、ヤハリ斯ノ如キ高キ地租ヲ拂ッテ居ル其上ニ賃貸價格デ取ラレ、從業者デ
  稅金ヲ取ラレ、賣上ニ依テ稅ヲ課セラルヽノデアルガ故ニ、商工業者ガ特別ニ重
  キ稅ヲ拂ッテ居ルト云フコトハ爭フベカラザル事實デアルト思フノデアリマス、勿論私
  共ハ地租ニ向ッテハ減稅ヲ主張スルモノデアリマシテ、是ハ私共ノ同僚カラ說
  明スルデアラウト思ヒマスガ、ヤハリ本年ノ議會ニ向ッテモ地租五厘減ヲ主張シテ居ル
  ノデアリマス、此事ニ付テハ後ニ說明ヲスル考デアリマスガ、斯ノ如キ地租ニ向ッテモ
  吾ミハ減稅ヲ主張スル者デアルガ、是ト同時ニ營業稅ノ全廢ハ當然ナルコトデアルト云
  フコトヲ確信シテ居ルノデアリマス、殊ニ此營業稅ノ非常ナル〓〓トスルトコロハ、惡稅ナ
  リトスルトコロハ二重稅ニナリ、三重稅ニナリ、或ハ四重稅ニナルト云フコトデアリマス
  或物品ヲ製送スルト云フト之ニ對シテ製造業者トシテ營業稅ヲ課セラレルノデアル、之
  ヲ仲買ニ賣ッテヤルト卸賣ノ稅ヲ取ラレルノデアル、是ガ又小賣人ノ手ニ渡ルト小賣稅ヲ
  取ラレルノデアリマス、斯ノ如ク一箇ノ物品ニ對シテ製造ニ稅ヲ取ラレ、卸賣ニ稅ヲ取ラ
  レ、仲買ニ稅ヲ取ラレ、小賣ニ稅ヲ取ラレルノデアリマスカラ、物品ニ對スルトコロノ稅金
  ハ三重四重ニモナッテ其結果ハ商人ノ損害ニナリ、又消費者ガ高キ物ヲ買ハナケレバナ
  ラヌト云フ現象ヲ來スノデアリマス、是ガ營業稅ノ根本ニ於テ誤クテ居ルトコロノコトデア
  ルト思フ、ソレノミナラズ此商品ヲ倉庫ニ入レテ倉庫業ヲ利用シテ資本ヲ借入レヤウトシ
  テ倉庫ニ預ケル、此倉庫業者ハヤハリ倉庫業者トシテ營業稅ヲ取ラレルノデアリマス、斯
  ノ如キ譯ニナルノデアリマスガ故ニ、我日本帝國ノ商工業者ト云フモノハ營業稅ノタメニ
  非常ニ苦メラレテ居ルモノデアル斯ウ云フコトハ信ジテ疑ノナイコトニナルノデアリマス、殊
  ニ私ガ最モ遺憾ニ思フノハ、此賃貸價格デアリマス、都ノ營業者ハ小サイ家ニ於テ其營
  業ヲスルコトガ出來ルノデアリマスガ、比較的邊鄙ノ都市ノ營業家ト云フモノハ頗ル廣
  キ家屋ヲ持ッテ居リマス、己レ自ラ其ノ處ニ住ンデ、而シテ其處ニ營業ヲシテ居ル、로
  ノ寢ル所客間ト云フモノマデヤハリ營業所ト看做サレテ、而シテ此賃貸價格ヲ取ラレテ
  居ルト云フノハ事實ノ上ニ現ハレテ居ルノデアリマス、元來此ノ全國ノ各都市ヲ見マス
  ルト云フト、家屋稅ヲ課シテ居ルトコロノ都市ト云フモノハ比較的少ナイノデアリマス吾
  吾ノ考ヘルトコロニ依レバ戶別割ヨリモ寧ロ家屋稅ヲ取ッタ方ガ非常ニ便利デアラウト信
  ジマスルニ、日本全國各都市ノ中ニ家屋稅ヲ課シテ居ルノガ、比較的少ナイノハ如何ナ
  ル理由デアルカ、家屋ニ稅ヲ課スルト云フコトハ種々テル事情ガアッテ出來ナイ結果デアル
  ノデアリマス、然ルニ營業ハ既ニ一種ノ家屋稅、卽チ賃貸價格ヲ課セラレルト云フガ如
  キコトハ、一般商業家ノ一大苦痛トシテ居ルトコロデアルノデアリマス、ソレノミナラズ此
  營業ト云フモノハ損ヲシテモ稅金ヲ取ラレルノデアル、懸金ガ取レナクテモ一旦賣ッタトナッ
  タ以上ハ、稅金ヲ取ラレルノデアリマス、其ノ上ニ稅務官吏ニ屢〓踏込マレテ檢査ヲサレ
  〓、店ニ度〓來ルトコロノ稅務官吏ハ屢〓客ノ妨ゲヲスル、非常ナ面倒ヲシナケレバナラ
  又、屆書ヲ出スニモ容易ナラヌ手數ガ掛ケテアリマスガ故ニ、一般此商工業者ト云フモ
  ノハ此稅金ノ爲メニ容易ナラザル打擊ヲ受ケテ居ルコトハ、爭フベカラザル事實ト私共思
  フノデアリマス、唯今此營業稅ノ全體取扱費用ハ幾ラデアルカ、確實ニ今囘ノ豫算ニ
  於キマシテモ私ハ知ルコトハ出來ナイノデアリマスガ、免ニ角私ノ調ベルトコロニ依ルト、本
  年度ニ於テモ約百五十万圓ト云フモノガ、單純ニ此營業稅ヲ徵收シテ居ル爲メニ要ス
  ルトコロノ費用デアルヤウニ思ヒマス、其外ニ種々ナル稅ヲ取ル上ニ共通ヲ致シテ居ル費用
  ガ澤山アル營業稅バカリデ旣百五十万圓バカリノ費用ヲ要求シテ居ルノデアリマス
  ガ此ノ百五十万圓ノ費用ト云フモノハ直ニ商工業者ニ向ヒマシテ、或ハ檢査ヲシ、或
  屆ヲセシムル等ニ要スルトコロノ費用デアル、斯ノ如キ譯デアルカラ、是ガ全體ノ商工業
  者ニ懸ッテ容易ナラザル迷惑ヲ及ポシテ居ルコトハ云フマデモナキ事デアルト、私共思フノ
  デアリマス、斯ノ如キ關係カラシテ、此地方ノ者ナゾハ商工業ヲ爲セバコソ、斯ノ如キ種
  種ナル目ニ遭ハナクテハナラナイ、寧口公債證書ガアルナラバ之ヲ握ッテ安樂ニ暮シタ方ガ
  宜イト云フガ如キ考ヲ起スノデアリマス、現ニ私共ナゾガ屢〓商工家トシテ立ッタ時分ニ、
  稅務官吏ニイロ〓〓ナ檢査ヲセラレルニ當ッテ、屢く苦痛ヲ感ジタコトモアルノデアリマス、
  左樣ナ事デ一般ノ人民ノ頭ニ染込ンダナラバ、我ガ國ノ商工業ト云フモノハ蓋シ阻害セ
  ラレルコトニナルデアラウト深ク自分ハ信ジテ疑ハナイノデアリマス、大體申シマスト斯ノ如
  キ譯デ、此營業稅ト云フモノハ根本的惡稅デアルト信ズルノテアル、然ルニ之ヲ廢シタ曉
  ニハドウナルカ、ヤハリ縣稅トシテ取ラルルノデアルカラ、廢シタトコロガ營業者ニハ同ジテ
  ハナイカ、斯樣ニ論ズル人ガアルノデアリマスガ、縣稅ト云フモノハ唯今ニ於テモヤハリ國
  稅ノ附加稅トシテ取ラレテ居ルノデアリマス、縣稅ハ國稅ノ附加稅トシテ營業稅ヲ取ッテ
  居ル、而シテ其縣ノ豫算收支ハ相償ッテ居ルノデアリマスガ、故ニ或ハ營業稅全廢ノ結
  果縣稅營業稅ニ於テ其縣ノヤリ方ニ依リマシテハ、幾分ノ增稅ヲ見ルト云フ結果デア
  ルカモ知レナイノデアリマズガ、蓋シ此國稅ヲ廢シタカラトテ縣稅營業稅ガ大ニ增スト云
  フ理由ハドウシテモナイト思ヒマス、又此財源ニ對シテ議論スル人ガアルデアラウト思ヒマ
  ス、成ホド宜イコトデアル、營業稅全廢ハ吾ミモ贊成デアルガ、國家ニ財源ノナイ場合ハ
  ドウスルカ、人民ハ忍ンデ之ヲ受ケナケレバナラヌト云フ議論モアルデアラウト思ヒマス、是
  モ一應最ノ議論デアリマスガ、何レ像算會議ニ於テ吾〓意見ヲ述ベル考デアリマスガ、吾
  吾同志ノ調査スルトコロニ依リマスレバ、今囘出シタトコロノ豫算ノ中ニ於テ、明カニ行
  政竝ニ財政ノ整理ノ結果トシテ、二千六百万圓ヲ得ルコトガ出來ルト云フ考デアリマ
  ス、既ニ政府モ大藏大臣ノ口ニ依ッテ、益行政財政ノ整理ヲスルト云フコトヲ明言サ
  レテ居リマス以上ハ、必ズ是ハ實行サレルモノデアラウト思フ、吾〓ノ方針ヲ以テ之ヲ立
  テヽ見レバ、結局二千六百万圓ヲ得ルコトノ出來ルコトヲ信ズルノデアリマス、斯ノ如ク
  ニナリマシタナラバ營業稅ヲ全廢致シマシタル結果ハ約一千八百万圓、地租ノ五厘
  減ヲ行ッタ結果ガ約六百万圓、合計二千四百万圓ト致シマシテモ、吾ミノ査定通リニ
  依レバ立派ニ恆久的財源ヲ得ル譯デアラウト思ヒマス、假リニ數步ヲ讓ッテ吾〓ノ査定
  案ガ通過シナイトシタトコロデ、今囘ノ豫算ノ中ニハドウデアルカ、鐵道ノ費用ヲ增スガ
  爲メニ五千万圓ト云フ每年々々返スベキ國債整理基金ヲ割イテ、二千万圓ヲ特別會
  計デアルトコロノ鐵道費用ニ廻サウト云フ案ガ出テ居ルノデアリマス、之ヲ吾〓ハ鐵
  道ハ鐵道ダケデヤレバ宜イト云フ論デアルノデアリマス、併ナガラ國家ノ交通機關ヲ害
  シヤウトハ思ハナイノデアリマス、ヤハリ鐵道ノ特別會計ノ中ニ於テ總テノ作業費ヲ節
  約致シマスレバ、約二千万圓ヲ得ルコトハ難カラザルモノト信ジテ居ルノデアリマス、
  事業ハ決シテ中止シナイ、而シテ總テノ費用ニ於テ節約ヲスレバ十分ニヤリ得ルコトヲ信
  ズルノデアリマス、ソレ故ニ鐵道ノ方ハヤハリ特別會計ノ範圍ニ於テ之ヲ行フコトニ致シ
  マスレバ、此二千万圓ヲ一方ノ減稅ニ〓ハシテモ十分ノ餘地ハアルモノト信ズルノデアリ
  さく、述ベタイコトハ澤山アリマスガ、成ルベク重複ヲ避ケル爲メニ是ニ於テ大要ヲ盡シタ
  モノト致サウト思ヒマスガ、要スルニ我ガ帝國現在ノ商工業ト云フモノハ、商工業ヲ爲ス
  ガ爲メニ特別ニ賣上金ニ於テ稅ヲ取ラレ、或ハ資本金ニ於テ稅ヲ取ラレ、而シテ己レノ
  住宅ニ對シテ商業ニ之ヲ用ユル以上ハ、賃貸價格ナリト致シテ一種ノ家屋稅ヲ取ラレ、
  召使ニ對シテハ人頭稅-經營者ニ關スル稅ヲ取ラレ、更ニ容易ナラザル手數ヲ掛ケ
  ルト云フコトニ相成ッテ居ルノデアリマス、其上ニ地租ハ先刻申上ゲマスル通リ當然之ヲ
  支拂ヒ、所得稅ハ又普通ノ官吏其他ノ人ト同ジク之ヲ支拂〓テ居ルノデアリマス、ドウシ
  テモ我國ノ商工業ノ發展ヲ期待スルトコロノ今日ノ時勢、殊ニ此戰亂ノ際ニ當リマシテ
  ハ、我ガ國ノ正貨補充ヲ爲スニハ、ドウシテモ貿易ノ力ニ依ラナクテハナラナイ、、商工業ノ
  發展ト云フモノヲ圖ルニハ今ガ絕好ノ時期デアルノミナラズ、我ガ國民ノ熱心ニ向ハナク
  テハナラヌトコロデアルト思フ、是ニ對シマシテ之ヲ阻害スル虞レノアルトコロノ營業稅ト
  云フモノガ全廢シテ、以テ我ガ國ノ商工業ノ前途ヲシテ有望ナラシメンコトヲ欲スルモノ
  デアルノデアリマス、願ハクハ諸君ニ於キマシテ滿場ノ御贊成ヲ得タイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=56

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• 057・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ議長指名十八名ノ委員ニ付託サレムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=57

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• 058・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中村君ノ動議ニハ御異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=58

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• 059・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　異議ガナイト認メマス、依テ中村君發議ノ如ク議長指名十
  八名ノ委員ニ付託スルコトニ決シマス、日程第四、地租條例中改正法律案第一讀會
  ヲ開キマス、山谷虎三君
  第四地租條例中改正法律案(高木益太郞君外四名第一讀會
  提出)
  地租條例中改正法律案
  地租條例中左ノ通改正ス
  第一條第一項中「田畑地價百分ノ四箇五」ヲ「田畑地價百分ノ四箇」ニ改ム
  同條第二項中「田畑地價百分ノ三箇二」ヲ「田畑地價百分ノ三箇」改改
  附則
  本法ハ大正四年分地租ヨリ之ヲ適用ス
  〔山谷虎三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=59

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• 060・山谷虎三

  ○山谷虎三君　諸君、私ハ玆ニ地租條例中改正ノ箇條ヲ說明致シマス、地租條例
  中第一條第一項中ニ「田畑地價百分ノ四箇五」トゴザイマスノヲ「田畑地價百分ノ四
  箇」ト云フコトニ改正ヲ致シマス同上ノ第二項中ニ「田畑地價百分ノ三箇二」トゴザ
  イマスノヲ「田畑地價百分ノ三箇」斯ウ云フコトニ改メタイト云フノガ本案ノ趣意デゴザ
  イマス、御承知ノ如ク日露戰爭前ニ於テハ地租ハ百分ノ二箇半デゴザイマシタガ、明治
  三十八年ノ戰爭中ニ二囘ノ增加ヲ以チマシテ百分ノ五箇五ト云フモノニナッテ居ッタノ
  デアリマス、ソレデ其後兩囘ノ改正ヲ見マシテ今デハ百分ノ四箇五ト云フモノニナッテ居
  リマスノヲ、更ニ此五ト云フモノヲ減ジタイト云フノガ本案ノ趣意デゴザイマス、本案ハ度
  度同樣ノ案ヲ本議會ニ提出セラレマシテ、其改正ノ趣意ニ付キマシテモ、其時々詳細ニ
  諸君ノ前ニ說明シテ居ラレマスル、デ私ハ深ク此際ニ於テ說明ヲ要スルノ必要ヲ認メマ
  セヌ、農民ガ非常ニ困難ヲシテ居ル狀態、或ハ農民ノ數ノ他ノ人口ノ非常ニ增加スル
  ニモ拘ラズ、五十万前後ノモノガ農業ヨリ離レテ居ル有樣、農村ノ荒廢ニ傾キツヽアル
  事情等ニ付テハ、每々本議案ノ說明中ニ論ゼラレテ居ルトコロデゴザイマス、是等ノ事ニ
  付テ重ネテ茲ニ詳細ノ辯論ヲ試ミルコトハ避ケマス、唯此案ハ何レノ時ニ於テモ諸君ノ
  間ニ御不贊成ガナクシテ、財政狀態ノ爲メニ其目的ヲ達スルコト能ハズシテ、其都度僅
  カニ言譯的ノ不滿足ナル修正ノ爲メニ此目的ヲ達シ得ズシテ今日ニ至ッタノデアリマス、
  所ガ今日ノ經濟界ノ狀態ニ照シマスルト、本案ノ益〓必要ヲ感ズルニ至ッタノデゴザイマ
  ス、其〓ニ付テ極單簡ニ一二ヲ指摘致シマスレバ、日露戰爭ノ後ニ於キマシテハ無論
  大戰ノ後デ非常ナ經費ヲ要シタ後デゴザイマスルノデ、財政上ノ大整理ヲ要シマスルノガ
  相當デアッタノニ、遂ニ此戰後ノ財政策ト云フモノハ大ナル整理ヲ加フルニ至ラズシテ、
  實ニ姑息放漫ノ一時的ノ財政策ヲ執ッテ來タト云フ有樣デ、借金ニ借金ヲ重ネ種々ナ
  名ノ下ニ財政ノ膨脹ヲ圖ッテ、ソレガ爲メニ又民間ニ於テモ戰勝ニ醉フノ餘リ、政府ノ
  財政策ト相呼應シテ隨分無謀ナ事業ノ計畫ヲ企テタト云フヤウナ有樣デ、官民相俟ツ
  テ非常ニ經濟上ノ膨脹ヲ來シタト云フノガ此十年間ノ歷史ノ證スル所デアル、固ヨリ財
  政策ノ上カラ見マスルト、斯カル財政策ハ誠ニ姑息ナ財政策デアッテ大ナル誤リデアル
  今日ニ於テハ甚タ遺憾ニ感ズル次第デゴザイマスルガ、他ノ半面ニ於テハ斯カル財政策
  ノ爲メニ一時ノ繁榮狀況ヲ呈シタト云フコトハ又明テアル、商工業ニ於テモ或ル產物ヲ
  生ズレバ其製造シタモノニハ相當ナ額ヲ增シテ行ク、商業ニ於テモ買ヘバ相當ナ利益ヲ
  得ルト云フノガ、此姑息ナ財政策ノ當時現ハレタトコロノ現象デゴザイマス、斯ウ云フ時
  代ニ於キマシテハ非常ニ租稅ノ苦痛ニ苦ム場合ニ於キマシテモ、苦痛ノ程度ト云フモノ
  ハ機分カ緩和セラレルノデアル、例ヘバ農家ノ生產物タル所ノ米ヲ取ッテ見マシテモ、之ヲ
  戰爭前ノ十年間ノ平均ノ價格ニ比ベマスルト、戰後十年間ノ價格ハ大ニ騰貴シテ居ル
  ノデゴザイマスデアルカラシテ自分ノ作ッタトコロノ米ノ價格ト一云フモノヨリ租稅ヲ拂フ
  場合ニナリマスレバ幾分カ事實ニ於テハ其苦痛ヲ減ジテ居ッタノデアリマス、所ガ斯ノ如
  キ姑息ナ財政策ハ長ク繼續ハ許サヌノデアル、遂ニ今日ニ至リマシテハ借金ヲセントスル
  ニモ遂ニ貸シ人ガナク、モウ何人ガ此場合ニ於テ財政ノ任ニ當ルニ致シマシタ所ガ、從
  前ノ如キ放漫ナル財政策ヲ繼續シテ行クコトハ、四圍ノ事情ガ許サヌヤウナ場合ニナッ
  タ、其結果トシテ縮小方針ヲ執ルヨリ外ニナイト云フ結果ハ、遂ニ物價ノ非常ナル下落
  ヲ來シタ斯ウ云フコトデ今日ノ不景氣ハ私ガ細カニ申スマデモナク殆ド前代容易ニ見
  得ベカラザルトコロノ不景氣ニ陷ッタノデアル、米價ハ隨テ非常ナ下落ヲ來シテ、是ト同
  時ニ一時ハ事實ニ於テ非常ナ高稅モ多少ノ緩和ヲ生ジテ居ッタノガ、一層輪ヲ掛ケテ
  今日ハ苦痛ヲ覺エル場合ニナッテ來タノデアル、斯樣ナ時世ニ於キマシテハ此改正案ノ
  要ト云フモノハ、今マデノ議會ニ於テ御互ニ論ジタヨリハ一層此法律案ノ成立ヲ必要ト
  スル事情ガ迫ッテ來タノデアリマス、ソレカラ又他ノ方面カラ見マスルト、米價調節問題
  ト云フコトハ本期ノ議會ニ於テ非常ニ諸君ノ御熱心ニ御論ジニナッテ居ル問題デアル、
  固ヨリサウデアル、今日ノ米價ハ實ニ未曾有ノ下落ヲ來タシ、此米價ノ下落ト云フコト
  ガ單ニ農民ノ一部卽チ生產者ノ苦痛ノミナラズ、是ガ基トナッテ社會一般ノ經濟上ノ
  不景氣ヲ來シテ居ル、殆ド恐慌ノ狀態ニ陷ッテ居ルノデアッテ其原因ヲ正セバ米價ノ下
  落ニアルト云フコトデアルカラ、米價調節ト云フコトノ必要ハ諸君ガ御熱心ニ御論ジニナ
  ルト云フコトハ相當ナコトデアル、獨リ議會ニ於テ論ゼラルヽノミナラズ、此議會ニ於テ諸
  君ノ熱心ニ論ゼラレタルトコロノ一節一句ト云フモノハ、直チニ全國ノ取引所ノ相場ニ
  反應ヲ來シテ居ルト云フノガ今日ノ有樣、誠ニ米價調節ト云フコトハ今日ニ於テ必要
  ナ問題デアルガ、又將來ニ於テモ此米價ノ劇變ヲ防グト云フコトハ重要ナル事柄デアル
  ト私ハ信ジマス、所ガ米價調節ト云フコトハ非常ナ必要ナコトデアルケレドモ、ドウモ一
  舉直チニ是ヲ解決スルノ妙案ヲ得ヌト云フノガ又今日ノ有樣デアル、ソレデ將來ニ於テ
  日本ノ如キ米價ガ、諸般ノ物價ノ高低ニ起因ヲ成シテ居ル國ニ於テハ、永久ニ米價ノ
  激變ト云フモノヲ防グガ、卽チ取敢ヘズ產業上ノ不安ヲ防グ一ノ方法デアラウト考ヘマ
  ス、ソレデ米價ノ調節ヲ計ルニハ種々ノ方法ヲ將來講ゼラルヽデアラウ、又必ズ相當ノ方
  法モアルデアラウト考ヘマスガ、私ハ永久的米價調節ノ方法ノ一トシテハ米收穫ノ調
  節ヲ計ルト云フコトガ、最モ其根本ノ調節方法ノ一デアラウト思フ、此米產ト云フモノ
  ガ多ク天候ニ俟ツモノデゴザイマシテ、米產ノ調節ヲ計ルト云フコトハ餘程困難ナコトデゴ
  ザイマスガ、併ナガラ人爲的努力ヲ以テ致シマスレバ、或程度マデハ豐凶ノ激變ヲ防グ方
  法ハ行ハレルモノデアル、又今日ノ實際ニ於テ農業從事者ノ努力如何ニ依テハ、相當ニ
  天候ニ抗シテサウシテ凶年ノ場合ニモ惡結果ヲ免ルヽモノデアルト云フコトニナッテ居ルノ
  デアリマス、人爲的ニ年ノ豐凶ヲ調節スル、卽チ人爲ヲ以テ天候ヲ抗シテ行ンテ、收穫ニ
  非常ノ差異ノ無イヤウニスルト云フコトニ付テハ、相當ノ經費ヲ要スルモノデアル、卽チ
  農家ニ之ニ應ズルダケノ資力ヲ與ヘルト云フコトガ必要デアル、斯樣ナ〓カラ見マシテモ
  卽チ此米價調節ノ問題ノ一トシテモ、此場合ニ地租ノ或部分ヲ減ズルト云フコトハ、最
  モ必要ナコトヽ考ヘマス、凡ソ一時ニ十二割ノ增加ヲ來シタト云フ-直稅ニ對シテ十二割
  ノ增加ヲ來シタト云フガ如キハ、誠ニ農民ノ多數ハ他ノ部分ニ比較致シマシテ、低級ナル
  生活ノ者ニ對シテハ、是ハ永久ニ持續スルト云フコトハ到底堪ヘ得ザルコトデアル、今日
  ノ如ク總テノ點ニ於テ經濟界ノ險惡ナ場合ニ於テハ、一層農民ノ負擔ヲ輕クシテ、根本
  ヲ培養スルト云フコトガ最モ必要ナコトヽ信ジマス、全體此問題ニ付テハ何時モ諸君モ
  御贊成デアルシ、委員會デモ政府ガ農民ノ苦痛ノ多イト云フコトハ認メラレテ居ル、唯タ
  愈〓之ヲ改正スル場合ニナッテ來ルト、財源ニ乏シイト云フコトガ、是マデ一ノ理由ニナッ
  テ充分ニ行ハレテ居ラヌノデゴザイマス、所ガ今日ハ餘リ徹底セザル理由ノ下ニ二個師
  團ノ增師ヲ計畫セラレテ居ル位ニ餘裕ノ財源ガ出來テ居ル際ト見ナケレバナラヌ、此財
  源ニ付テハ前ノ營業稅全廢論者ヨリ細カニ述ベラレマシタガ、私共ノ調ベル所ニ依レバ、
  充分本年ノ豫算ノ上デハ營業稅ナリ地租ナリ輕減スルノ餘裕ノアルモノト信ジマス、ツ
  レ等ヲ外ニ措キマシテモ、仝〓モ言フガ如ク餘リ理由ノ徹底セザル下ニ、二個師圍ノ增師
  ヲ實行シヤウト云フ程財政ニ餘裕ガアルモノト見マスト、目下ニ迫ッテ居ル所ノ農民ノ苦
  痛ヲ救フ所ノ財源ニ差向ケルト云フコトニ致シマシテモ、僅ニ其中ノ一部分ノ金デ濟ム
  譯デアル、尤モ本年ノ豫算ニ載ッテ居ル增師金額ハ少ナイガ、是ガ成立シタ以後ニ恆
  久ノモノトシテヤリマスレバ本稅ノ輕減位ハ極ク容易ク行ハレルノデアル百分ノ四個、
  五ヲ四ニスルト云フ如キハ、誠ニ農民苦痛ノ度カラ申シマスレバ甚グ謙讓シタル法案デアル、
  是ダケノコトハ行ハレヌト云フ理由ハ萬ナイト信ジマスル、願クハ諸君ニ於テモ今日ノ農民
  ノ狀態ヲ御察シ下スッテ、滿場一致ヲ以テ御決議アラムコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=60

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• 061・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　本案ハ前議案、卽チ營業稅法廢止法律案ノ委員ニ付託セラレム
  コトヲ希望致シマス
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 062・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中村君ノ發議ニハ反對ガナイヤウデゴザイマス、仍テ地租條例
  中改正法律案營業稅法廢止法律案ノ十八名ノ委員ニ付託スルコトニ可決致シマシ
  タ、日程第五、社寺上地下戾ニ關スル法律案ノ第一讀曾ヲ開キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=62

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• 063・加賀卯之吉

  ○加賀卯之吉君　定足數ヲ缺イテハ居リマセヌカ

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• 064・奧繁三郎

  ○議長(奧繁二郞君)　定足數ハ〓イテハ居リマセヌ-小川平吉君-小川君缺
  席デゴザイマス、尙ホ提出者ノ鵜澤總明君-鵜澤君モ缺席デアリマスカラ、是ハ次ニ
  延バスコトニ致シマス、日程第六及第七ハ同一委員ニ付託シテアリマスル議案デアリマ
  スカラ、一括シテ議題ト爲ス考デアリマス、御異議アリマスカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 065・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　ソレデハ刑法中改正法律案及刑事訴訟法中改正法律案ノ
  第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長武部其文君
  第六刑法中改正法律案(宮古啓三郞君第一讀會ノ續(報告ヘ委員長
  外六名提出)
  第七刑事訴訟法中改正法律案(宮古啓第一讀會ノ續(每〓緊急便當時
  三郞君外六名提出)
  〔武部其文君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=65

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• 066・武部其文

  ○武部其文君　刑法中改正法律案、刑事訴訟法中改正法律案此二案ハ同一委
  員ニ付託ニナリマシテ審査ヲ致シマシタ、ツマリ委員會ノ經過ト致シマシテハ三囘ノ調査
  ヲ致シタノデゴザイマス、先ヅ政府委員ノ出席ハ申スニ及バヌコトデゴザイマスガ、特ニ委
  員中ヨリノ請求ニ依リマシテ司法大臣ニ出席ヲ請ヒマシタノデゴザイマス、ソレハ何故カ
  ト云ヘバ本案ハ二案トモ大體本議場ノ問題トナルトコロノ人權蹂躙ノ問題ニ關係シタ
  事柄デゴザイマスルガ故ニ、特ニ右樣ナ手續ヲ致シタノデゴザイマス、ソレデ委員ノ一人宮
  古氏ガ司法大臣ニ尋ネマスニハ、是マデ往々司法部內ニ人權蹂躙ト云フコトガアルガ、
  大臣ニ於カレテハ此事ニ付テハドウ云フ御意見デアルト云フコトデゴザイマシタガ、之ニ對シテ
  司法大臣ハ本大臣ハ人權ヲ最モ尊重スルガ故ニ、是等ノ人權ヲ蹂〓スルト云フコトハ
  無イコトヲ希望スルノデアル、隨テ又屬僚ノ者ハソレ等ノ如キコトヲ非常ニ注意シテ居ル
  次第デアルト云フコトデアッテ、甚ダ滿足ナ答辯ヲ得タノデアリマスガ、ドウカ其通リニ御
  實行ヲ乞ヒタイト云フコトデアリマシタ、ソレカラモ一ツ是ハ委員會ノ決議ヲ以テ希望ヲ
  致シタコトデアリマスガ、段々政府委員トノ質問中ニ豫審判事ヲ任命致シマス際ニ檢事
  正ガ豫審判事ノ人ニ付テ彼此ト啄ヲ容レル、卽チ檢事ガ像審判事ノ意向ヲ迎ヘルヤウ
  ナ弊ガ往々アルガ、是ハドウ云フ風ナコトニナッテ居ルカト云フ卽チ政府委員ニ尋ネガゴザ
  イマシタ、之ニ付テハ鈴木次官ノ曰ク、從來此豫審判事ニ任命致シマスル時分ニハ各
  裁判所長ガ推薦ヲ致シマスルガ、其時ニハ檢事正ノ意見ヲ徵シテサウシテ上申ヲスルコ
  トニナッテ居ル、是ハ別ニ規則ガアル譯デハナイノデ、唯監督ノ手續上從來サウ云云コトニ
  ナッテ居ル斯ウ云フ答辯デゴザイマシタ、サウ致シマスレバ其上申ニ付テハ所長ハ檢事ト是
  マデ意見ノ違ッタコトハナイカト云フ更ニ尋ネモゴザイマシタ、ケレドモ是ニ付テハ右樣ナコト
  ハ今日マデナクシテ圓滿ニ行ハレテ居ルト云フ返事デゴザイマシタ、就テハ委員中カラノ
  發議ニ依リマシテ、一體此豫審判事ノ任命ニ付テハ檢事正ノ意見ヲ徵スル必要ハナカ
  ラウ、サウ云フコトガアルガ故ニ、却テ一般ノ人民ニハ豫審判事ハ何ゾ檢事ノ意嚮ヲ迎
  ヘ又甚グシキニ至ッテハ檢事ニ隷屬ヲシテ居ルト云フヤウナ考ヲ持ツト云フコトデ、是ハ害
  ガアッテモ利益ガナイ、以後斯ウ云フコトハ手續上御止メニナッテ下サルヤウニ願ヒタイト
  云フ、是ハ委員會一致ノ決議テ希望ヲ致シタノデアリマス、是ハ前以テ報告ヲ致シテ置
  キマス、ソレカラ先ヅ此刑法中改正案ノ方カラ報告致シマスガ、刑法ノ方ハ豫テ御手許
  ヘ案ガ〓ッテ居リマスガ別ニ深イ修正デハゴザイマセナンダノデゴザイマス、卽チ箇條ガ
  (「能ク分ッテ居リマス」ト呼フ者アリ)編入シタル箇條ノ順序ガ修正ニナッタバカリデゴザイ
  マスルノデ、卽チ申上ゲルマデモナク此裁判檢察ヲ行フモノニ對シテ恐嚇詐言ヲ用井タモ
  ノニハ懲役若クハ罰金ニ處スルト云フ新ラシイ法ヲ設クル、之ニ對シテ政府ハ本案ハ必
  要ガナイ故ニ同意シ難イト云フ答辯デアリマシタ、何故必要ガナイカト云ヘバ則チ右樣ナ
  コトハ書イテナイガ、萬々一アッタ時分ニハ懲戒處分ヲ以テヤッタナラバ防グコトガ出來ル
  デアラウ、斯ウ云フ趣意デゴザイマス、ケレドモ委員會ニ於テハサウ云フ恐嚇詐言卽チ刑
  事訴訟法ニ豫審判事ハ恐嚇詐言ヲ用ユベカラズト云フコトマデ規定シテアルノデゴザイマ
  スガ、若シ用井タ時分ニ規定ガナイノミナラズ、其他檢事及司法警察官ニ付テモ何等
  規定ノナイノハ甚ダ不都合デアッテ、獨リ之ヲ懲戒處分ニ委スルト云フヤウナコトハ甚ダ
  人權上ニ於テ危險ナコトデアル、故ニ此原案通リニヤハリ刑罰ヲ設クル方ガ至當デアル
  ト云フノデ、委員會ハ全會一致デ可決ヲ致シマシタ、(「贊成ケ々」ト呼フ者アリ)ソレカ
  ラ刑事訴訟法ノ方ハ原案ニ於キマシテハ、趣意ヲ申シマスレバ檢事司法警察官又ハ司
  法警察ノ職務ヲ行フ者ガ搜査上ニ拵ヘマシタ書面ハ、裁判上證據ト爲スコトガ出來
  ナイト云フコトガ一ツト、其文書ヲ豫審ニ係ル時分ニハ其搜査ノ文書ハ添付スルコト
  ガ出來ナイ、斯ウ云フ一項ト二項トノ一一ツニナッテ居ッタノデゴザイマス、是ガ段々議論ノ
  末ニ修正ガ出マシテ、其修正ノ一ツニ於テハヤハリ此原案ノ檢事司法警察官又ハ司
  法警察ノ職務ヲ行フ者ノ調書ハ、卽チ刑事上ノ裁判ニ於テハ原告ノ位置ニ在ル人ガ拵
  ヘタ書面デアリマスカラ、之ニハ間違ガ多イ、又事〓貝ニ於テ多イノデアリマス、之ヲ證據ト
  爲スコトハ甚ダ危險デアル、併ナガラ唯一〓ニ之ヲ皆裁判上證據ト爲スヲ得ズトスルト、
  或ハ此刑事訴訟法中ニ障ル所ガアルト云フノデ卽チ修正案ヲ出シマシタ如ク、但書ガ入
  リマシテ「但本法又ハ他ノ法律ニ於テ特ニ作成ス可キ旨ノ規定アルモノハ此限ニ在ラス」ト
  云フ規定ヲ設ケテ、檢事司法警察官其他ノ者ガ作ッタ書面デモ證據トシテ宜イト云フ
  場合ハ、其規定ニ依シテ證據トシテ宜イト云フコトヲ採用シタ、ソレカラ今一ツノ此訴訟
  記錄ニ添付スベカラズト云フ點ニ付テハ豫審ヲ經ル事件ニハ添付ヲシ、豫審ヲ經ナイ事
  件ニハ其儘附ケテ置クトー石フノモ一體當テ得ナイシ、殊ニ一面卽チ此書面ニ付テハ既
  ニ刑法ニ於テ罰スルト云フマデノコトガ出來テ居ルノデアリマスカラ、右樣ナ添付ヲシテ
  モ差支ガナイ、故ニ此原案ノ第二項ヲ削除ヲ致シマシテ、サウシテ今修正案ニ提出ノ如
  クニ修正ガ出來タノデアリマス、此外ニマダ委員ノ野村君カラ一ツ修正意見ガ出マシテ、
  是ハ檢事ノ拵ヘタ書面ダケハ證據トシテ宜シイ、其他ノモノハヤハリ原案一項ノ趣意ガ
  宜シカラウ、夫故ニ第二項ヲ設ケテ檢事ノ作ッタ書面モー詰リ檢事ノ搜査ノ爲メ作
  成シタル文書ハ讀上ゲテ本人ノ署名捺印アルモノニ非ザレバ裁判上ノ證據ト爲スコトヲ
  得ズ、斯ウスル、卽チ豫審判事ガ書面ヲ拵ヘタト略〓同一ノ形式ヲ履デヤルコトニシテ、
  檢事ノ搜査上拵ヘタ書面ノ效力アリトシタイト云フ修正意見デゴザイマシタ、ケレドモ是
  ハ少數デ消滅ヲ致シマシテ、卽チ御手許ヘ迥ヲテ居ル修正案ガ多數ヲ以テ決セラレマシ
  タノデゴザイマス、此段經過結果ヲ御報告致シマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
  〔政府委員法學博士豐島直通君登壇」

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=66

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• 067・豐島直通

  ○政府委員(法學博士豐島直通君)　刑法中改正法律案及刑事訴訟法中改正法
  律案ニ付キマシテハ委員會ニ於キマシテ政府ヨリ反對ノ意見ヲ述ベテ置キマシタガ、尙
  應茲ニ同意ガ出來ナイト云フコトヲ申上ゲテ置キタイト存ジマス、先ヅ刑法中改正法律
  案ニ付キマシテハ、此案ノマトヽスル事實ト云フモノガ今日存在シナイト考ヘマスノデゴザ
  イマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)政府ニ於キマシテハ訴訟手續ノ上カラ生ジマスル弊害ト
  云フモノハ、何處マデモ之ヲ絕滅シタイト云フコトニ努メテ居リマスル次第デゴザイマス、然ル
  ニ往々此司法警察官ナドノ不當ノ處分カラシテ、刑事上ノ訴追ヲスルトカ、又ハ其他ニ
  於テ懲戒ノ處分ニ附シタト云フ例ハ近頃ゴザイマシタ、併シ其事例ト云フモノハ承諾上
  留置ヲシテ置クト云ノヤウナ不穩當ノ處置ヲ致シマシタニ基クノデゴザイマス、調ベラ
  ルヽ者ニ對シテ恐嚇トカ詐言ヲ用ユルト云フヤウナ、調ベラレル者ガ承諾ヲシナイデ不當
  ノ處置ヲ受クルト云フ事例ハゴザイマセヌ、(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)皆承諾ヲ得テ居
  リマスル處置デゴザイマス、處分デゴザイマス「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)サウ云フ承諾ヲ
  得テ居ル處分ニ付テモ不穩當ト認メタモノニ付テハ懲戒ノ處分ヲ致シ、又ハ其他ノ處
  分ヲ致シテ居リマスル、斯ウ云フ次第デゴザイマスカラ此案ノ適用ト云フモノハ將來無イ
  考デ居リマス、ソレカラ次ニハ刑事訴訟法中改正法律案ニ付キマシテハ、是ハ手續ノ進
  行ヲ止メテシマフヤウナ結果ニナリマス、此判決ヲスル上ニ於キマシテモ、又ハ判決以外
  ノ裁判ヲスル上ニ於キマシテモ、檢事司法警察官ノ搜索書類ト云フモノガ證據ニナラ
  ナケレバナラヌト云フコトハ、モウ手續ヲ進行スル上ニ最モ必要ナノデゴザイマス、ソレカ
  ラ又證據ニナラヌト云フコトニナリマスレバ、今日豫審ノ無イトコロノ區裁判所ナドニ豫
  審判事ヲ澤山置カナケレバナラヌ、總テ區裁判所ノ事件ニハ豫審ヲ經テト云フコトヲ定
  メナケレバナラヌ、サウナリマスルト豫審判事ヲ置キマスルニ付テ、百万圓カラノ經費ガ要
  リマスノデゴザイマス、委員會ニ於キマシテハ六七十万圓ノ經費ヲ要スルト申上ゲタト思
  ヒマスルケレドモ、段々考ヘテ見マスルト百万圓位ノ經費ヲ要スルノデアリマス、手續進行
  ノ上カラ致シマシテモ亦經費ヲ要スル上カラ致シマシテモ、此改正案ニ同意スルコトハ出
  來ナイノデアリマス、ソレカラ最後ニ申述ベテ置キタイト思ヒマスルノハ、先程委員長ヨリ
  御報告ニナリマシタ豫審判事ヲ司法大臣ガ命ジマス場合ニ於キマシテ、檢事ノ意見
  ヲ聞クト云フ償例ガアルト云フ〓デゴザイマス、是ハ裁判所構成法施行前ヨリ致シマシ
  テ、今日ノ事務章程ト云フモノニ當リマスルモノニ規定ガゴザイマシタ、ソレ以後今日マ
  デ事務章程ト云フモノニ規定サレテ居リマス、斯ウ云フモノヲ廢シテ宜イカドウカハ尙〓
  究ヲシマスケレドモ、多年規定ノ上ニ存シテ居リマスルトコロノモノヲ、今日突然廢シテ
  シマフ譯ニハ參リマセヌ、此〓ヲチヨット附加ヘテ申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=67

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• 068・中村啓次郎

  ○中村啓次郞君　唯今政府ニ於テ反對ノ意見ヲ表明サレマシタガ、餘リ有力ナル意
  見トモ認メマセヌカラ、兩案トモ讀會ノ順序ヲ省略シ、直チニ委員長報告通リ可決確
  定セラレンコトヲ望ミマス
  (「贊成」「反對」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=68

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• 069・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ガナクバ中村君カラ--尾崎君ノ反對ハ讀會省略ニ
  反對デスカ
  〔「原案ニモ反對」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=69

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• 070・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　今中村君ヨリ讀會省略ノ動議ガ出マシテ、讀會省略ニ反對
  ガアリマスカラ、採決致シマス、讀會省略ニ反對ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  起立者少數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=70

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• 071・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　少數デゴザリマス、ソレデハ讀會ハ省略スルニ決シマシタ、是ハ
  一括シテ委員長ノ報告ニ付テ採決シマス
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
  刑法中改正法律案(宮古政三二君君外六名提出)確定議
  刑事訴訟法中改正法律案(宮古啓三郞君外六名提出)確定議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=71

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• 072・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　併シ反對ガゴザイマシテ、且ツ重要ナ問題デゴザイマスカラ採
  決致シマス、委員長ノ報告ニ贊成諸君ノ起立ヲ求メマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=72

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• 073・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　多數、過半數ノ決議デ委員長報告通リ可決確定サレマシタ
  (「著席ノ人ガ八十八名デスガ差支アリマセヌカ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=73

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• 074・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　制規ノ數ガアルト認メマスケレドモ、ソレガ若シナイト云フコトナ
  ラバ唯今決議ヲモウ一應採リマセウカ
  〔「不必要々々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003513242X00919141222&spkNum=74

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• 075・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　決議致シマシタ時ニハゴサイマシタ、次ノ日程ニ移ル筈デゴザイ
  マスガ、次ノ日程ニハ政府ヨリ委員長ノ報告ニ反對ノ意見モアリ、尙其時ニハ討論ノ
  通告ヲナサレテ居ル方モアリマス故ニ、是ハ本日ハ是限リニ措イテ、次ノ本會議ノ日ニ
  緩々ヤルコトニ致シマス、チヨット報告ガアリマスカラ暫ク·
  〔書記朗讀〕
  一政府ヨリ提出シタル議案左ノ如シ
  大正三年臨時事件費支辨ニ關スル法律案
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  警部警部補巡査及看守長看守ノ待遇改良ニ關スル建議案
  提出者森田小六郞君

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• 076・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　委員ノ氏名ト次ノ日程ハ公報ヲ以テ御報告致シマス、本日
  ハ是ニテ散會
  午後五時二十六分散會
  衆議院議事速記錄第八號正誤
  頁段行誤正頁段行誤正
  九八上二四千九千同下八範圍版圖
  同上三三生產生靈

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