1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正四年六月一日（火曜日）
午前十時六分開議
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議事日程 第五號 大正四年六月一日
午前十時開議
第一 河川法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第二 華族世襲財産法改正法律案（政府提出） 第一讀會
第三 法人の役員處罰に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第四 鐵道敷設法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第五 治水費資金特別會計法廢止法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第六 大正三年臨時事件に關する一時賜金として交付する公債發行に關する法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第七 帝國鐵道會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第八 國債整理基金特別會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第九 大正四年勅令第十一號（承諾を求むる件）（衆議院送付） 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
〔成瀨書記官朗讀〕
去月二十九日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送
付セリ
日本勸業銀行法中改正法律案
農工銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中改正法律案
同日豫算委員分科會ニ於テ當選シタル主査ノ氏名左ノ如シ
第一分科主査伯爵柳澤保惠君第二分科主査伯爵柳原義光君
第三分科主査男爵久保田讓君第四分科主査男爵村上敬次郞君
第五分科主査男爵武井守正君第六分科主査小松原英太郞君
同日豫算委員副委員長ヨリ豫算委員分科擔當委員ノ兼務ヲ左ノ如ク決定セ
ル旨ノ報告書ヲ提出セリ
第一分科擔當委員伯爵柳澤保惠君
第二分科兼務
昨三十一日內閣總理大臣ヨリ左ノ通政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受
領セリ
政府委員
法制局參事官馬場鍈-君
司法省所管事務政府委員
司法省參事官山内確三郞君
同日政府ヨリ左ノ法律案ヲ提出セリ
華族世襲財產法改正法律案
法人ノ役員處罰ニ關スル法律案
同日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
無線電信法案特別委員會
委員長伯爵奧平昌恭君副委員長男爵有地品之允君
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
鐵道敷設法中改正法律案
治水費資金特別會計法廢止法律案
大正三年臨時事件ニ關スル一時賜金トシテ交付スル公債發行ニ關スル法
律案
帝國鐵道會計法中改正法律案
國債整理基金特別會計法中改正法律案
大正四年勅令第十一號(承諾ヲ求ムル件)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、無線電信法案特別
委員長奧平伯爵ヨリ特別委員會ヲ開キマスニ付テ議場ヨリ退席ヲシタイト
云フ要求ガ議長ノ手許ヘ出マシタ、許可イタシテ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ議事日程ニ移リマス、議事日程第一、
河川法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、通牒文ノ朗讀ハ總
テ省略イタシテ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス
〔左ノ送付文及法律案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下
之ニ傚フ〕
河川法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正四年五月二十八日
衆議院議長島田三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
河川法中左ノ通改正ス
第二十六條中「地租額十分ノ一」ヲ「地價總額千分ノ二箇半」ニ、「地租額
ヲ超過スル部分」ヲ「地價總額百分ノ二箇半ヲ超過スル部分」ニ、「前項」
ヲ「第一項」ニ改メ第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ニ於テ地價ト稱スルハ其ノ年分地租ヲ徵收スヘキ土地ノ一月一日現
在地價ヲ謂フ
〔國務大臣子爵大浦兼武君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=5
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006・大浦兼武
○國務大臣(子爵大浦兼武君) 唯今議題ニ上リマシタ河川法ニ付キマシテ簡
單ニ申上ゲタイト思ヒマス、河川法ノ施行セラレタル以後、河川ノ改良工事
ニ對スル國庫ノ補助額、又ハ國庫ト關係府縣トノ分擔額ヲ定ムルニハ、河川
法ノ規定ニ依リマシテ、其府縣ノ地租額ヲ標準トシテ算出イタシタルモノデ
ゴザイマシタ、然ルニ明治四十三年ノ地租條例改正ノ結果ニ依リマシテ、其
稅率加重セラレ、從ッテ其府縣ノ負擔額著シク增加サレマシタノデゴザイマ
ス茲ニ於テ地方ノ負擔上其權衡ヲ保タシムル爲ニ此度河川法中ノ一部ヲ改
正スルノ必要ヲ認メマシタノデゴザイマス、ソレデ此案ヲ玆ニ提出イタシタ
ノデゴザイマスカラシテ、ソレデ此案ヲ玆ニ提出イタシタノデゴザイマスカ
ラシテ、何卒宜シク御協賛アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀イタサセマ
ス
〔成瀨書記官朗讀〕
河川法中改正法律案特別委員
侯爵花山院親家君子爵野村益三君小野田元凞君
男爵杉溪言長君渡正元君男爵安藤直雄君
千頭〓臣君細谷巖太郎君木村誓太郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第二、華族世襲財產法改正法律案、政府
提出、第一讀會
華族世襲財產法改正法律案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
大正四年五月三十一日
內閣總理大臣伯爵大隈重信
司法大臣尾崎行雄
華族世襲財產法
第一條有爵者ハ世襲財產ヲ設定シ又ハ之ヲ增加スルコトヲ得
第二條世襲財產ノ設定又ハ增加ハ遺言ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第三條有爵者カ未成年者、禁治產者又ハ準禁治產者ナルトキハ世襲財產
ヲ設定又ハ增加スルコトヲ得ス
第四條世襲財產ハ家寶、不動產、登錄國債又ハ有價證劵ニ限ル
第五條世襲財產ヲ設定又ハ增加セムトスルトキハ其ノ財產ノ目錄ヲ添ヘ
宮內大臣ニ認可ヲ申請スヘシ
第二條ノ場合ニ於テ遺言者カ遺言執行者ヲ指定セサリシトキ又ハ其ノ指
定ヲ第三者ニ委託セサリシトキハ家督相續人又ハ其ノ法定代理人ニ於テ
前項ノ手續ヲ爲スヘシ
第六條前條ノ申請アリタルトキハ宮内大臣ハ目錄ニ記載シタル財產ヲ世
襲財產ト爲スノ當否ヲ調査スヘシ
前項ノ場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ宮内大臣ハ目錄以外ノ財產ノ
狀況ヲ調査スルコトヲ得
第七條宮內大臣ハ前條ノ調査ニ依リ支障ナシト認メタル財產ニ付第五條
ノ認可ノ申請アリタル旨ヲ一週間公〓スヘシ
前項ノ公〓ニハ土地ニ付テハ其ノ所在地目及面積、建物ニ付テハ其ノ所
在種類構造及建坪、其ノ他ノ物件ニ付テハ其ノ品目種類箇數其ノ他必要
ナル事項ヲ揭クヘシ
第八條前條ノ規定ニ依リ公〓シタル財產ニ關シ所有權又ハ擔保權ヲ主張
セムトスル者ハ前條第一項ノ公〓期間滿了ノ後二月內ニ異議ヲ宮內大臣
ニ申出ツヘシ
世襲財產ノ設定又ハ增加ノ認可ハ前項ノ期間滿了ノ後ニ非サレハ之ヲ爲
スコトヲ得ス
第九條世襲財產ノ設定又ハ增加ノ認可アリタル後ハ前條第一項ノ權利ハ
判決又ハ認可前ノ日附アル公正證書ニ依リテノミ之ヲ主張スルコトヲ得
第十條宮內大臣ハ世襲財產ノ設定又ハ增加ヲ認可シタルトキハ其ノ旨及
第七條第二項ニ揭ケタル事項ヲ公〓スヘシ
第十一條宮内大臣ハ華族世襲財產臺帳ヲ設ケ世襲財產ニ關スル事項ヲ登
錄スヘシ
第十二條世襲財產中登錄國債アルトキハ國債登錄簿ニ世襲財產タル旨ヲ
登錄シ有價證劵アルトキハ宮內大臣ハ之ニ世襲財產タル旨ヲ記入スヘシ
第十三條世襲財產ハ家督相續人之ヲ相續ス
第十四條世襲財產ハ之ヲ讓渡シ又ハ擔保ノ目的トスルコトヲ得ス世襲財
產ノ法定果實ヲ收取スル權利ニ付亦同シ
世襲財產ニ付地上權、永小作權又ハ地役權ヲ設定又ハ變更セムトスルト
キハ宮內大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十五條世襲財產ハ之ヲ民事上ノ强制執行ノ目的ト爲スコトヲ得ス世襲
財產ノ果實ニシテ他ノ財產ト混合セサル間亦同シ
第十六條世襲財產ハ確實有利ナル世襲財產ニ換フル爲又ハ已ムコトヲ得
サル事由アル場合ニ限リ宮內大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ全部又ハ一部ヲ廢止
スルコトヲ得
第二條、第三條及第五條ノ規定ハ世襲財產ノ廢止ニ之ヲ準用ス
第十七條世襲財產ハ爵ノ喪失ト共ニ其ノ效力ヲ失フ
第十八條世襲財產ニ付第九條ノ規定ニ依ル權利ノ主張アリタルトキハ其
ノ世襲財產ハ效力ヲ失フ
第十九條世襲財產ノ廢止、失效其ノ他ノ異動アリタルトキハ宮內大臣ハ
其ノ旨ヲ公〓スヘシ
第七條第二項ノ規定ハ前項ノ公〓ニ之ヲ準用ス
第一項ノ場合ニ於テハ登錄國債又ハ有價證劵ニ付第十二條ノ登錄又ハ記
入ヲ抹消スヘシ
第二十條世襲財產ニ關スル公〓ノ費用ハ其ノ名義人ノ負擔トス
第二十一條宮內大臣ハ必要アリト認ムルトキハ世襲財產ノ檢查ヲ爲スコ
トヲ得
第二十二條本法ノ施行ニ關スル規程ハ宮內大臣之ヲ定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
從前ノ規定ニ依ル世襲財產及其ノ附屬物ハ本法ニ依ル世襲財產ト看做ス
不動產登記法第百四十三條中「華族世襲財產ノ解除ヲ認可シタルトキハ」ヲ
「華族世襲財產ノ廢止又ハ失效アリタルトキハ」ニ改ム
〔國務大臣伯爵大隈重信君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=8
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009・大隈重信
○國務大臣(伯爵大隈重信君) 諸君、華族世襲財產法改正ノ理由ヲ簡單ニ說
明イタシマス、御承知ノ通リニ華族世襲財產法ハ十九年ニ設定サレマシタモ
ノデアリマシテ、其當時五爵ノ制ハ布カレマシテ、而シテ帝國ノ名家ノ此財
產ヲ保護スルノ必要ヲ認メテ、此法律ガ制定サレタコトデアリマス、然ル
ニ既ニ三十年ヲ經過イタシテ、此法律ガ段々時勢ノ變ニ從ッテ、少シク嚴格ニ
失シ或ハ時勢ニ適セナイト云フコトガ起リマシテ、既ニ十年來此改正ノ必要
ヲ宮中ニ於テモ認メラレテ、既ニ帝室制度取調局ニ、伊藤公ノ總裁ノ時代カ
ラ度〓此改正法ガ起草サレテ、遂ニ今日ニ至ッテ居リマシタガ、愈〓改正ノ必
要ガ貴族ノ仲間ニ於テモ、或ハ宮內省ニ於テモ必要ナリトセラレ、根本ノ主
義ハ同一デアリマスルガ、多少時勢ニ適シテ之ヲ緩和シタモノニ過ギヌノデ
アリマス、其最モ必要ナルモノハ、世襲財產ノ本ガ二ツニ分レテ、一ハ不動
產、一ハ公債及有價證劵、有價證劵ヲ不動產ニナスコトハ許サレテ居マスガ、
不動產ヲ有價證劵ニナスコトハ出來ナイト云フコトニナッテ居マシタノデア
リマス、其他種々ノ規定ガ現在ノ時勢ニ應ゼヌ、或ハ華族ノ生計其他ノコト
ニ適應シナイモノノアル爲ニ、多少之ヲ緩和シテ、或ハ公債有價證券モ亦不動
產ニ轉ズルコトガ出來ル、其他多少ノ時勢ニ適應スル改正ガ心要ト認メテ、此
改正法案ガ提出イタサレタノデアリマス、宜シク御審議ヲ願ヒタウゴザイ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=9
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010・尾崎三良
○男爵尾崎三良君 チヨット今總理大臣カラ此改正ノ御趣意ヲ述べラレマシ
タガ、尙ホ此議案ニ付テ大臣若クハ政府委員カラデモ宣シウゴザイスガ、モウ
少シ御說明ヲ煩ハシタイト存ズルノデアリマス、其譯ハ一體此世襲財產ト云
フモノハ歐羅巴デモ有ルモノデアリマスガ、今日ノ社會ニ於テハ、追〓是ハ
宜シクナイモノト云フコトニナッテ、英國ナドデハ段々減ジテ、遂ニ無クスル
位ニ考ヘテ居ルノデアリマスガ、一體是ハ社會問題デアッテ、或一部ノ人間ヲ
保護スル爲ニ、多數ノ人間ニ迷惑ヲ掛ケルト云フ結果ガアルノデアリマス、
依ッテ社會ガモウ少シ進步シタラバ全然廢止スベキモノデアラウト私ハ考ヘ
テ居ル、去リナガラ今日ノ場合、未ダ之ヲ全廢スルト云フ場合ニハ至ラヌ
カモ知レマセヌガ、暫ク必要ト見テ存シテ置クコトモ、現時ノ場合已ムヲ得
マセヌカモ知レマセヌガ、去リナガラ是マデノ世襲財產法ト云フノハ甚ダ粗
笨ナモノデ、窮屈ナモノデ、保護セムトスル···セラレムトスル華族其者モ
自ラ束縛セラルルコトガアル、社會ハ又之ガ爲ニ非常ニ迷惑ヲ蒙ッテ居ルコ
トモアル、依ッテ此際改正案ヲ出サレルノハ誠ニ時機ヲ得タモノト信ジテ居リ
マスガ、去リナガラ此改正案ハ唯今見マシタ所デ、ドウモ私共ノ考ヘル程ノ
改正ニハナッテ居ラヌヤウニ思ヒマス、ソレデ私共ハ元〓此法案ハ巳ムヲ得ヌ
一時ノ法デアッテ、到底ハ是ハ廢スベキモノト思ヒマス、ガ今日之ヲ存スル必
要ガアル以上、何トカ是ニ制限ヲ加ヘテ置キタイト思フノデアリマス、今日
此世襲財產ノ法ガアル爲ニ、或華族ニ於テハ數百萬圓ノ財產ヲ世襲財產トシ
テ置イテ、其利息デ贅澤ナ暮シヲシテ居ル、而シテ當然賠償ヲ得ベキ債權者
ハ左程有福ナ人間デナイ、僅カナ金ニ困ルト云フ者ガアッテモ、ソレハ少シ
モ償ハヌデモ宜イト云フ斯ウ云フヤウナ狀態ハ、今日例ガアルノデアリマス、
デ其世襲財產ト云フモノハ華族ヲ保護スル、卽チ古來ノ名門トカ、有功ノ家
トカ云フモノガ、零落シテ潰レテハ誠ニ憫然ノ話デアルカラ、之ヲ保護スル
爲ノ法ト思ヒマスガ、去リナガラ其華族ノ面目ヲ保ヲテ行ク所ノモノガアッタ
ラ宜カラウト思ヒマス、然ルニ此法律ヲ以テ數百万ノ財產ヲ世襲財產トシテ
置イテ、債權者ハ左ノミ裕福ニ非ズ、中ニハ難儀シテ居ル者モアルケレドモ
ソレニハ拂ハナイ、斯ウ云フコトガアルガ、是ハ詰リハ華族ト云フモノガ社
會ノ害物ダト云フ觀念ヲ人民ニ起サセルコトダラウト思ヒマス、是ハ歐羅巴
ニモ隨分例ノアルコトデ、其裏ニハ華族全廢ト云フヤウナ激烈ナ反動ガアリ
マシタ、是ハ宜シク今日ニ於テ考ヘテ置クベキコトト思ヒマス、デ私共ノ考
ハ今度改正案ガ出レバ大抵ノ所ニ制限ヲ付ケテ、ソレ以上ノ必要ハナイト云
フコトニシタイト思フノデスガ、此改正案ヲ見マスルト一向其制限ガナイ、
矢張リ是迄通リ數百万圓ノ財產ヲ世襲財產ニシテ置ケバ、隱居シタトカ死ン
ダトカ云フ場合ニ家督相續人ニナッテモ、矢張リ限定相續人トカ云ウテ、其債
權者タル者ニハ當然ナル權利ヲ有ッテ居ル者ニハ仕拂ハズシテ、數百萬圓ノ
財產ヲ相續シテ晏然トシテ居ル、人民ノ上ニ立ッテ皇室ノ藩屏トカ云ウテ居〃
テモ、果シテ是ガ人民ノ怨ヲ來タサヌモノデアリマセウカ、是ハ社會問題デ
アッテ、甚シク人民ノ反感ヲ來タサヌ中ニ、早ク是ハ相當ナ所ニ改良シタラ宜
カラウト拙者ハ思フノデアリマスガ、政府ニ於テハ、此案ニハ其制限ノ箇條
モ見エマセヌガ、其邊ハ如何ナ御見込デアリマセウカ、矢張リ現時ノ通リ數
百萬圓ノ財產ヲ有ッテ居ッテ、華族以外ノ人民ニ對シテ損害ヲ掛ケテモ構ハヌ
ト云フ精神デアリマセウカ、其邊ノ御見込ヲ一ツ伺ヒタイノデアリマス
〔國務大臣伯爵大隈重信君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=10
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011・大隈重信
○國務大臣(伯爵大隈重信君) 唯今ノ御質問ハ能ク理解イタシマセヌガ、チ
ヨット御尋ネ致スガ、制限ヲ置イタラ宜カラウト云フ如キ修正ノ御意見デ
アルカ、或ハ數百萬圓ノ財產ヲ有ッテ居ル所ノ貴族ガ債權者ニ世襲財產法ニ
依ッテ迷惑ヲ掛ケル、斯ノ如キモノハ社會問題ニナルト云フ根本ノ御議論デア
ルカ、若シ根本ノ御議論ナラバ是ガ卽チ法律案、此法律ガ一般ニ行ハレタ以
上初メテ貸借ノ關係ガ起レバ、世襲財產法ニ於テ如何ナル大財產モ世襲財
產ニハ手ヲ付ケルコトハ出來ナイト云フコトヲ理解シテ貸借ノ成立ッタモノ
デ、是ハ往々華族ノ從來ノ習慣デハ、如何ナル名家ノ人モ餘ホド勝レタ高尙
ナル考ヲ有ッテ居ッテモ、一家ノ財ヲ營ムコトハ甚ダ粗デアルト云フ如キモノ
ニ乘ジテ、世間デ稱ヘル狡猾ナル高利貸ナドガ金ヲ貸シタト云フコトハ是迄
澤山承ル、今日モアルノデアル、是等ハ初カラ分リ切ッタ話デ、法律其モノハ
世襲財產ニハ手ヲ觸レルコトハ出來ナイト云フ、抵當ニナラヌ、ソコデ是ハ
私ハ社會問題ニハ決シテナラヌト思フ、社會ハ何等其爲ニ不滿ハナイノデア
ル、一種ノ貴族ノ弱者ニ乘ジテ金ヲ貸スト云フ如キ危險ヲ冒シテ爲スモノハ
不平ヲ言フカモ知ラヌガ、是ハ法律ニ依リ斯ノ如キモノヲ豫メ制シテ置クノ
デアリマス、併ナガラ是ハ範圍ガ云々ト云フコトハ、他日多少或ハ修正ト云
フ御意見ガアルナラバ、ソレハ委員會デ御意見ヲ承リタイト存ズルノデアリ
PV·併ナガラ精神其モノハ今日ノ時勢ニ適シタリト認ムルノデアリマス、
前ヨリハ多少緩和サレタモノデアル、左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=11
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012・尾崎三良
○男爵尾崎三良君 唯今本員ノ質問ニ對シテ總理大臣ヨリ御答辯ガアリマシ
タガ、其御答辯ニ依ルト、尾崎ノ質問ハ二ツアルヤウニ見エル一體社會問題
トシテ此世襲財產ト云フモノハ良クナイモノデアルト云フ說ト、或ハ制限ヲ
立テルト云フ、此二ツアルヤウニ見エルガ、斯ク〓〓ト云フ御說明ガアリマ
シタガ、成程二ツノヤウニ聞エマセウガ、併シ其本ハ一ツデアリマス、ト申
スモノハ一體私ノ論ハ斯樣ナモノハ到底永遠ニ存ズベキモノデナイ、當然廢
スベキモノデアルト云フコトガ土臺ニナッテ居ル、去リナガラ今日ノ時勢ニシ
テ未ダ之ヲ全廢スルノ時機ニ至ラヌカラ、暫ク存シテ置クト云フコトハ已ム
ヲ得ヌコトデアラウ、去リナガラ元〓是ハ社會ニ存スベキモノデナイ、暫ク
時勢上巳ムヲ得ヌカラト云フコトデアルナラバ、相當ニ制限ヲ立テル必要ガ
アル、其制限ト云フモノハ詰リ名門ノ華族ヤ何カガ零落シテ、今日食フコト
モ出來ナイヤウニナッテハ、甚ダ日本ノ今日ノ社會ノ組織上面白クナイカラ、
之ヲ維持スルダケノモノニ止メテ置キタイ何モ數百萬圓ノモノガナクテハ
華族ノ體面ヲ保ツコトガ出來ヌト云フコトハナイ、ソレモ色〓程度ガアリマ
スケレドモ、大抵ソコ〓〓暮ラシガ付ケバソレデ宜イト思ヒマスドウシテ
モ是ハ大隈伯、今ノ總理大臣ノ豫テ御說ニシテモ、之ヲ永遠ニ存シテ置カヌ
ナラヌト云フノハ、豫テノ御議論ト少シ齟齬スルヤウニ思ヒマスルガ、去リ
ナガラ私モ今日之ヲ全ク廢スルト云フ考デハアリマセヌ、唯時勢上巳ムヲ
得ヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 尾崎男爵ニ御注意ヲ致シマスガ、何卒御意見ニ相
成ラヌヤウニ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=13
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014・尾崎三良
○男爵尾崎三良君 宜シウゴザイマス、ソレデ唯今ハ制限ノ論デアリマシタ
ガ、今總理大臣ヨリノ御說明ニ制限ヲ加ヘル必要ガアルナラバ、ソレハ又如
何樣トモシテ宜カラウト云フ御說デアリマシタ、シテ見レバ之ニ制限ヲ加ヘ
ルト云フコトハ餘リ御異存モナイヤウニ思ハレル、其上ハ議論ニナリマスル
カラ止シマシテ、是ハ社會問題ト相俟ッテ必要ナ重大ナ事件ト考ヘマスルカ
ラ、是ハ一ツ特別委員ハ十八人ニ御決メニナッテ、其委員ノ指名ハ議長デナサ
ルルコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=14
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015・田健治郎
○男爵田健治郞君 此特別委員ノ數ニ付テ唯今尾崎男爵カラ御發議ガゴザイ
マシタガ、私ハ此際僅カナ差デハアリマスルガ、十五名ト致シタイノデアリ
TV.是ハ民法トノ關係ヲ有チマスル可ナリ重要案デアリマスカラ、十五名
ノ委員ヲ議長ニ於テ指名セラルルコトニ致シタイト思ヒマス、ドウカ御贊成
ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=15
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016・江木千之
○江木千之君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=16
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017・眞田幸世
○男爵眞田幸世君 贊成
〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯今尾崎男爵ノ特別委員ヲ十八名ト云フ動議ハ賛
成者ガアリマセヌカラ、成立イタサヌモノト認メマス、田男爵ノ特別委員ノ
數ヲ十五名トスル說ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシト」呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官
ヲシテ朗讀イタサセマス
〔河井書記官朗讀〕
華族世襲財產法改正法律案特別委員
侯爵細川護立君伯爵柳澤保惠君子爵平田東助君
子爵岡部長職君子爵三島彌太郞君子爵酒井忠亮君
子爵水野直君男爵小澤武雄君男爵有地品之允君
奧田義人君男爵中川興長君岡野敬次郞君
男爵田健治郞君富井政章君桑田熊藏君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際議長ハ此席ヲ副議長ニ讓リマス
〔副議長候爵黑田長成君議長席ニ著ク〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=20
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021・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 議事日程第三、法人ノ役員處罰ニ關スル法律案、
政府提出、第一讀會
法人ノ役員處罰ニ關スル法律案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
大正四年五月三十一日
內閣總理大臣伯爵大隈重信
司法大臣尾崎行雄
法人ノ業務ヲ執行スル社員、取締役、理事、監査役又ハ監事ニシテ刑事訴
追又ハ刑ノ執行ヲ免レシムル爲合併其ノ他ノ方法ニ依リ法人ヲ消滅セシメ
タル者ハ五年以下ノ懲役ニ處ス
附則
本法ハ大正四年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣尾崎行雄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=21
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022・尾崎行雄
○國務大臣(尾崎行雄君) 此案ハ從來法人ニ對シテ刑ヲ課シ、若クハ課シタ
場合ニ之ヲ解散若クハ其他ノ手續ニ依ッテ刑罰ヲ免レムト企テル者ガ時ヽア
リマス、ソレヲ防禦スルガ爲ニ提出シタルモノデアリマシテ、若シ役員ガサ
ウ云ウヤウナ經晝ヲ致シマシタ場合ニ於テハ、之ヲ五年以下ノ懲役ニ處スル
ト云フ趣意デアリマシテ、極メテ簡單ナル意味デアリマスルカラ御協賛アラ
ムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=22
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023・石渡敏一
○石渡敏一君 唯今司法大臣カラ此案ニ對スル御說明ガアリマシタガ、議案
デ見タ所ト同ジコトデアリマスルカラ、今少シ事實ニ付テ斯ウ云フ例ガアッ
テ、斯ウ云フ譯デ以テ本案ハ改正スルコトニナッタト云フ點ヲ、事實ノ上デ御
說明アラムコトヲ請ヒマス
〔國務大臣尾崎行雄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=23
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024・尾崎行雄
○國務大臣(尾崎行雄君) 細カナ點ハ何レ委員會ニ於テ說明ヲ致ス積リデア
リマスガ、其一例ヲ申シマスレバ、例ヘバ或會社ガ稅ヲ納メナイト云フガ如
キ場合ニ於テ、之ヲ是非納メサセヤウトスル時ニ、突然合併········他ノ會社ト
合併シ、若クハ解散ヲスルト云フガ如キ手續ヲ以テ脫稅ヲ圖ルコトモアル、
其他違法ノ處分ヲ以テ財產刑ニ處セラルル時ニ、或ハ處セラレテ執行前ニ突
然合併、若クハ解散ヲシタト云フガ如キコトデ、裁判ヲ進行シテモ其目的ヲ
達シ得ナイ場合ガ時〓アリマスサウデアリマス、其ヤウナ場合ニ於テハ之ヲ
企テタル役員ヲ處罰シテ、左樣ナコトノ將來ニナイヤウニ豫防ヲ施サウト云
フ趣意ニ外ナリマセヌ、如何ナル會社、法人ガ如何ナルコトヲシタト云フ詳
細ナ點ハ、御入用トアレバ何レ委員會ニ於テ說明ヲ致スコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=24
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025・石渡敏一
○石渡敏一君 私ハ此事實ヲバ司法大臣ト云フ譯デハゴザイマセヌ、他ノ政
府委員ノ方カラ承ッテモ宜シウゴザイマスガ、今少シ事實トシテ斯ウ云フ事
實ガアッタト云フコトノ御話ガ出來ルナラバ此所デ御願スルト云フ希望ヲ持ッ
テ居リマス
〔政府委員鈴木喜三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=25
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026・鈴木喜三郎
○政府委員(鈴木喜三郞君) 石渡サンノ御質問ノ點ニ付キマシテ、茲ニ悉ク
申上ゲル譯ニ行キマセヌガ、唯今調査イタシマシタ一二ノ事實ヲ申シマスレ
昨年九州ニ於キマシテ「トロール」會社ガ漁業法違反ヲ致シマシテ、裁
判所ニ於テ事件ヲ繼續イタシマス半ニ於テ、合併ヲ致シマシテ、遂ニ處罰ス
ルコトガ出來ナイヤウナ事實ガアッタノデアリマス、其他尙ホ一二アルノデゴ
ザイマシテ、今現ハレマシタ事實ノ調査ヲシツツアルコトデゴザイマスカラ、
追ッテ委員會デ詳シク申上ゲル考デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=26
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027・阪本さん之助
○阪本釤之助君 本案ト直接ノ關係ハゴザイマセヌガ、政府ガ斯ノ如キ取締
ヲ行ハルルト云フコトハ頗ル結構ナコトデアリマス、今日世間ニ或ハ銀行ノ
名ヲ用ヒ若クハ會社ノ名ヲ用ヒマシテ、民間ノ零碎ナ貯金ヲ集メマシテ、
遂ニ其結果ハ細民ヲ苦メルト云フコトガ澤山事實ガアルノデアリマス、政府
ニ於テモ相當ノ取締ハサレテアルヤウデアリマスルガ、斯ノ如キコトニ御氣
附ニナッテ法律ガ出來マスル位ナラバ、是等ノ御取締ニ付テモ何等カモソット
嚴重ナ取締ガアリサウナモノト存ジマスル、地方ニ居ッテ實際見マスルト、東
京ノ本店ナルモノハ如何ナルモノデゴザイマスルカ、サッパリ分ラヌ位ナモノ
デアッテ、而シテ地方ニ麗々シク支店ナドヲ設ケマシテ、勸誘員ナドヲ置キマ
シテ、事理ヲ辨ゼザル細民ニ向ッテ巧イコトヲ言ッテ、粒々辛苦シテ貯ヘタ零
碎ナ資金ヲ集メマシテ、何時ノ間ニヤラ閉店ヲシタリ、夜逃ゲ同樣ノコトヲ
シタリスルノデアリマス、是等ハ餘程嚴重ナ取締ヲ必要ト思ヒマスガ、斯ノ
如キ法律ヲ御設ケニナル場合ニ於テハ是等ノ點ニ付テモ········是ハ司法省ノ御
所管デハナイカト存ジマスガ、政府トシテ何等カ御考ヘガアルノデアリマス
カ、幸ヒ此機會ニ御意見ヲ承リタウ存ジマス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=27
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028・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 唯〓御尋ネニナリマシタヤウナ弊害ノアルコト
ハ政府モ之ヲ認メテ居リマスノデ、此度貯蓄銀行法ノ改正竝ニ無盡業法ト云
フモノヲ新タニ制定シヤウト思ヒマシテ、唯今衆議院ニ提出ニ相成ッテ居ル
ノデアリマスカラ、何レ衆議院ノ可決ヲ見マシタナラバ、當院ノ御評議ヲ仰
グヤウニナルデアラウト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=28
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029・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀イタサセ
マス
〔河井書記官朗讀〕
法人ノ役員處罰ニ關スル法律案特別委員
伯爵松平賴壽君子爵本多實方君子爵勘解由小路資承君
男爵伊丹春雄君男爵黑田長和君男爵二條正麿君
加太邦憲君倉知鐵吉君森田庄兵衞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=29
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030・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 議事日程第四、鐵道敷設法中改正法律案、政府
提出、衆議院送付、第一讀會
鐵道敷設法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正四年五月三十一日
衆議院議長島田三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
鐵道敷設法中左ノ通改正ス
第七條第一項第六號中「中新潟縣下新發田ヨリ村上ニ至ル鐵道」ヲ削ル
同項第二十二號中「香川縣下多度津ヨリ愛媛縣下川之江ニ至ル鐵道」ヲ「香
川縣下多度津ヨリ愛媛縣下西條ニ至ル鐵道」二郎人
〔政府委員仙石貢君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=30
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031・仙石貢
○政府委員(仙石貢君) 目下工事著手中ノ線路ニシテ近ク竣工シ又ハ竣工セ
ムトシツツアルモノガ澤山アルノデアリマシテ、本案ノ線路ハ本年ニ於テ之
ヲ追加セムトスルノ案デアリマス、又本案中新發田村上線ヲ創ルノハ是一
工事ガ竣工イタシマシタカラ削ル次第デアリマス、御審議ノ上速ニ御協賛ア
ラムコトヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=31
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032・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀イタサセ
マス
〔河井書記官朗讀〕
鐵道敷設法中改正法律案特別委員
公爵二條基弘君伯爵〓閑寺經房君子爵松平直平君
子爵京極高備君子爵豐岡圭資君古市公威君
男爵福原俊丸君海江田準一郞君廣瀨滿正君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=32
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033・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 議事日程第五、治水費資金特別會計法廢止法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
治水費資金特別會計法廢止法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正四年五月三十一日
衆議院議長島田三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
治水費資金特別會計法ハ大正四年度限リ之ヲ廢止ス
治水費資金特別會計ニ屬スル資金及債務ハ之ヲ一般會計ニ歸屬セシム
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=33
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034・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 御承知ノ通リ唯今問題ニナッテ居リマスル治水
費資金特別會計法ナルモノハ、明治四十三年大洪水ノ後ニ政府ガ新ニ治水ノ
經畫ヲ定メマシテ、十八年間ニ全國ノ最モ重要ナル河川ノ改修ヲシ、然ル後
更ニ其次ニ及バウト云フノデ、經畫ヲ立テマシタ際ニ、其資金ノ關係ヲ特別
會計ニ定メテ置イテ、其特別會計ノ金ヲ一般會計ニ入レテ、治水ノ經畫ヲ實
行スルコトニイタシタノデアリマス、元來河川ノ改修ノ費用ハ此改修ヲイタ
シマシタカラト云ウテ、一般ノ公益ノ上ニハ餘程大切ナコトデアリマスケレ
ドモ、ソレガ爲ニ直チニ收益ヲ生ズルト云フ次第ノモノデハアリマセヌカ
ラ、斯樣ナ費用ハ借入金ニ依ッテ實行スルト云フコトハ、出來ルナラバ之ヲ避
ケタ方ガ宜シイノデアリマス、卽チ一般ノ歲入ヲ以テ支辨スルノガ當然ノ事
柄デアルノデアリマスガ、當然借入金ニ財源ヲ求メタ所以ノモノハ一七〇
於テ財政上ニ於テ新ニ立テマシタ治水經畫ヲ實行スル時ニ、十分ナル財源ノ
餘裕ガナイト云フコトガアリマシタシ、他ノ一方ニ於テハ、年々日本ニ起リ
マスル所ノ水害ニ對シテ成ルベク早ク之ヲ防止スル經畫ヲ立テテ、民生ノ損
害、財產ノ損失等ヲ免レシメナケレバナラヌト云フ必要ニ迫ッタモノデアリマ
スカラ、已ムヲ得ズ財源ノ一部ヲ借入金ニ求メルコトニ致シテ、借入金ニ求
メルニ付テハ特別會計ヲ設ケテ一般ノ歲入ト地方ノ分擔金ト、竝ニ借入金ト
シテ併セテ治水費特別會計ノ財源ニシテ、此財源ヲ一般會計ニ繰入レテ、治
水ノ經畫ヲ實行スルコトニ致シタイノデアリマス、併ナガラ前申シマス通リ
元來河川ノ改修ノ如キハ、之ヲ借入金ヲ財源ニシテ置ク時ハ收益ヲ生ジナイ
事業ニ借入金ヲ用フルコトニナリマスカラ、出來ルナラバ避ケタ方ガ宜カフ
タノデアリマス、當時已ムヲ得ズ此經畫ヲ立ッタ次第デアリマスガ、然ルニ借
入金ヲ財源ニシテ居リマスト、此經畫ハ主ニ預金部カラ借入金ヲ致ス經畫ニ
ナッテ居リマスガ、預金部カラ借入金ヲ致スト云フコトニシマスト、預金部ノ
資金ガ十分餘裕ノアル場合ニ於テハ至極結構デアリマスガ、預金部ノ資金ノ
增加ガ近年見マス如ク、餘リ大ナル增加ヲ呈セズト云フヤウナコトニナリマ
シテ、而シテ又此預金部ノ資金ナルモノハ、總テ皆政府ノ財政ノ財源ノ方ニ
之ヲ使フト云フヤウナコトニ致シマスルト、全國各地方カラ零細ナル資金ノ
集ッテ來テ居ルモノガ、一地方ニ偏シタ放資ノ方法ニナリマスル、資金ノ融通
ノ上ニ於テモ亦其宜シキヲ得ナイト云フコトニ相成リマスルシ、又一方ニハ
其增加ガ思フ通リニ參リマセヌト、預金部カラ貸スコトガ出來惡イガ爲ニ、
勢ヒ治水經畫ノ繰延ヲシナケレバナラヌト云フコトガ起ル恐レガアルノデア
リマス、此點カラ申シマスルト、今日ノ通リナ經畫デ進ミマスルト、或場合
ニハ資金ノ放資ノ關係ニ於テ········預金部ノ資金ノ放資ノ關係ニ於テ宜シキヲ
得ナイト云フヤウナコトモ生ジ、又或場合ニハ治水經畫ヲ實行スル上ニ於テ
ハ資金ノ缺乏カラ、時ニ依レバ是ガ繰延ヲ要スルト云フコトガ起ラヌトモ限
ラヌノデアリマス、然ルニ今囘ハ政府ハ財政ノ經畫ヲ色〓變へマス際ニ、治
水費ニ付テハ借入金ヲ財源トスルコトハ止メテ、一般歲入カラ總テ之ヲ支辨
スルト云フコトニ變ヘルコトニ致シタノデアリマス、斯樣イタシマスレバ、
唯今申上ゲマシタ通リ收益ノナイ事業ニ對シテ借入金ヲ使フコトヲ止メマ
ス、又預金部ノ資金ヲ一局部ニ偏セシメテ放資スルコトモナクナリ、同時ニ
又治水費ノ財源ガ非常ニ不如意ナ爲ニ、治水事業ヲ遂行スルコトヲ繰延ベナ
ケレバナラヌト云フコトヲ致サヌデモ濟ムヤウニナルノデアリマスカラ、斯
樣ナ財政經畫ニ此度變更イタシタノデアリマス、旣ニ借入金ヲ財源ニシナイ
ト云フコトニナリマスレバ、一般歲入ト地方ノ負擔金ヲ以テ治水經畫ヲ實行
スルノデアリマスカラ、最早特別會計ヲ存シテ置ク必要ハナイノデアリマス、
特別會計ヲ存シテ置キマスト、唯會計ヲ重複混雜セシムルノミデアッテ、何等
實益ガナイコトニナリマスカラ、此度改正シマシタ財政經畫ニ於テハ最早特
別會計ヲ存置スル必要ガナイノデアリマシテ、茲ニ法律ノ改正案ヲ提出シタ
次第デアリマス、御審議ノ上、御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ切ニ希望イタシマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=34
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035・水野錬太郎
○水野鍊太郞君 本案ニ付キマシテハ唯今ノ御說明デ極メテ明瞭ニ了解イタ
シタノデアリマスガ、此際念ノ爲ニ御伺ヒ致シタイノデアリマス、治水費特
別會計ハ唯〓大藏大臣ノ御話ニナリマシタ如キ事情デ出來タノデアリマス
ガ、此度ハ借入金ヲ止メルト云フ政府ノ御方針デアッテ、一般會計デ之ヲ支辨
スルト云フコトニ財政經畫ヲ御改メニナッタサウデアリマスガ、是ハ大體ノ財
政經畫ヲ承ラナケレバ分ラヌノデアリマスガ、私ハ今ソレヲ承ルト云フノデ
アリマセヌケレドモ、元ト四十三年ノ大水害ノ際ニ鑑ミマシテ此治水經畫ヲ
立テマシタノハ當時ノ財政ノ事情ニ依リマスト、一般會計ノ費用ヲ以テ之
ヲ支辨シテ居リマシタ際ニハ、時ニ依リマシテ始終其費用ノ消長ガアッタノ
デアリマス、ソレデアリマスカラシテ、寧ロ之ヲ特別會計トシテ借入金ヲ爲ス
制度ニ改メタナラバ、時ニ依ッテ一般會計ノ事情ニ依リマシテ、借入金ヲ以テ
之ヲ補足スルコトガ出來ルト云フヤウナ事情デ出來タモノト考ヘテ居リマ
ス、唯今ノ御說明ニ依リマスレバ、却ッテ其方ガ治水經畫上ニ將來支障ヲ來タ
ス虞レガアル故ニ、此度借入金ノ制度ヲ止メ、特別會計モ止メルト云フコト
デアリマスガ、此經畫ヲ御改メニナリマシタ後ニ於キマシテ、其當時經畫サ
レマシタ所ノ謂ハユル十八年ニシテ二十河川デアリマシタカ、此河川ヲ總テ
改修スルト云フ經畫ノ上ニ於テ此度ノ此財政經畫ノ變更ハ何等支障ヲ來タサ
ヌノデアリマセウカ、或ハ此數年間ハ是デ以テ足レリトスルノデアリマセウ
カ、將來モ此經畫ニハ少シモ變更ヲ來タサズシテ行ケルト云フ御見込デアル
ノデアリマスカ、此點ニ付テ念ノタメ一應伺ッテ置キタイト思ヒマス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=35
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036・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 治水經畫ノ上ニハ何等變更ハ加ヘマセヌノデア
リマス、卽チ治水ノ經畫其モノハ明治四十三年ニ立テマシタ經畫ニシテ、其
後財政行政ノ整理ノ場合ニ少シバカリ金額ニ異動ヲ生ゼシメテアリマスケレ
ドモ併ナガラ總體ニ於テハ矢張リ十八年間ニ於テ完成スルト云フ經晝ニ
ナッテ居リマスガ、其經畫ハ今囘ハ全ク之ヲ少シモ變更シナイノデアリマス、
卽チ治水ノ經畫其モノハ明治四十三年ニ立テラレマシタ其精神ヲ何所マデモ
實行シテ行クト云フコトデアリマシテ、今囘ハ唯其經畫ニ對シテ入用ナル資
金ヲドウスルカト云フ問題ダケデアルノデアリマス、當時ノ事情ハ水野君モ
能ク御承知ノ通リ九月以後ニ洪水ガ起ッタノデアリマス、九月頃ニナリマスト
政府ノ財政ト云フモノハ略、見當ガ付イテ來ルノデアリマス、ソレデ翌年ノ治
水費ノ經畫モ略、付イテ居ル所ヘ大洪水ガ起ッタ、斯樣ニ屢、大洪水ガ起ルヤウ
ナコトニ付テ從來ノ經畫通リデハイケナイカラ、玆ニ根本カラ經畫ヲ一ツ立
テテ行カウト云フノデ治水費調査委員會ナドモ出來マシテ、水野君ノ仰セラ
レマスヤウナ十八年經晝ガ出來タノデアリマス、然ルニ其時ハ既ニ財政經畫
ガ付イテソレ〓〓財源ノ分配ガ出來タ後デ、既ニ經畫ヲ立ッタ其經畫ヨリ以上
ノ治水費ヲ使ハナケレバナラヌヤウナコトニナッタモノデアリマスルカラ、已
ムヲ得ズ借入金ヲシテ補フヤウナ經畫ニシテ案ガ立ッテ居ッタノデアリマス、
ソレヲ今囘行政整理等ニ依ッテ出マシタ財源ノ按排ニ依ッテ、借入金ヲシナイ
デモ一般ノ歲入デ既ニ立ッテ居ル經畫ガ出來ルヤウナ見込ガ付キマシタガ故
ニ、最早借人金ヲ待タヌデモ既定ノ遂行ガ出來ルト云フ意味ヲ以テ、此廢止
案ヲ提出シタ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=36
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037・田健治郎
○男爵田健治郞君 此特別會計廢止案特別委員ハ十五名ニシテ議長ガ選定セ
ラレルヤウニ致シタイ、其理由ハ此案モ可ナリ重要ナ案デゴザイマスガ又
續イテ第六、第七、第八ト云フモノモ矢張リ財政經晝ニ關聯シタモノデ、同
一委員ニ付託セラレルコトデアリマセウト思ヒマスカラ、其意思ヲ以テ玆ニ
於テ、第五ノ案ニ於テ十五名ノ委員ヲ御選定ニナルヤウニ致シタイノデアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=37
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038・江木千之
○江木千之君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=38
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039・小野田元熈
○小野田元凞君 贊成
〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=39
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040・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 唯今田男爵ノ委員ヲ十五名ニスルト云フコトニ
御異存ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=40
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041・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 御異議ナイト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=41
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042・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 議事日程第六、大正三年臨時事件ニ關スル一時
賜金トシテ交付スル公債發行ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第
讀會
大正三年臨時事件ニ關スル一時賜金トシテ交付スル公債發行ニ關スル法
律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正四年五月三十一日
衆議院議長島田三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
大正三年臨時事件ニ關スル一時賜金トシテ交付スル爲政府ハ額面二千四百
萬圓ヲ限リ五分利付公債ヲ發行スルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=42
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043・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 大正三年臨時事件ニ關シマシテ、功勞ノアリマ
シタ陸海軍人竝ニ其他ノ人ニ對シテ行賞ヲセラレマス爲ニ與ヘラレマス公債
ハ前例ニ依リマシテ五分利ノ公債ヲ以テシタ方ガ至當デアルト存ジマシ
テ、而シテ其金額ハ額面二千四百萬圓限リ發行スルト云フコトニ致シタナラ
バ、行賞ノ爲ニ與ヘラルベキ者ニ大體ハ不足ナイト存ジマスカラ茲ニ此法律
案ヲ提出シマシテ御審議ヲ願フ次第デアリマス、ドウゾ御協賛ニナラムコト
ヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=43
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044・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 本案ノ特別委員ハ第五ノ議案ノ特別委員ト同一
委員デ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=44
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045・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 御異議ナイト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=45
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046・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 議事日程第七、帝國鐵道會計法中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會、第八、國債整理基金特別會計法中改正法
律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、此兩案ハ牽聯シテ居リマスカラ、
併セテ議題ニ供シテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=46
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047・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 御異議ナイト認メマス
帝國鐵道會計法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正四年五月三十一日
衆議院議長島田三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
帝國鐵道會計法中左ノ通改正ス
第二條中「又ハ」ノ下ニ「一般會計、」ヲ加フ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
國債整理基金特別會計法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正四年五月三十一日
衆議院議長島田三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
國債整理基金特別會計法中左ノ通改正ス
第二條第二項ヲ左ノ如ク改ム
前項繰入額ノ中國債ノ元金償還ニ充ツヘキ金額ハ他ノ特別會計ヨリ繰入
ルルモノヲ併セテ前年度首ニ於ケル國債總額ノ萬分ノ百十六以上トシ三
千萬圓ヲ下ルコトヲ得サルモノトス
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ大藏省證劵及借入金ハ之ヲ國債ト看做サス
附則
本法ハ大正四年度ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=47
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048・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 鐵道特別會計法中ノ改正案ハ一般會計カラ鐵道
會計ニ借入金ヲナスコトノ出來ルヤウニシヤウト云フ趣意ノ改正案デアリマ
ス、唯今鐵道特別會計ニ對シテハ外ノ特別會計カラ借入ヲナスコトハ出來マ
スケレドモ、一般會計カラ借入ヲナスコトノ規定ガナイノデアリマスカラ、
此度一般會計カラモ借リルコトノ出來ルヤウニ改正スルノガ鐵道特別會計法
中ノ改正ノ趣意デアリマス、又國債整理基金法中ノ改正案ハ現行ノ國債整理
基金法ニ依リマスト云フト、日露事件ノ爲ニ發行イタシマシタ公債ノ元利償
却ノ爲ニ、每年少クトモ一億千萬圓ノ繰入金ヲナサナケレバナラヌト云フ規
定ニナッテ居リマス、此規定ヲ改正イタシマシテ、今囘ハ一般會計ノ側カラ國
債整理基金ニ繰入レマス金額ノ元金ノ償還額ニ充ツベキモノガ國債總額ノ
萬分ノ百十六以上ニナルダケノ金額ハ必ズ入レナケレバナラヌ、而カモ其萬
分ノ百十六ト云フモノガ若シ三千万圓以下ニ下ルヤウナ計算ニナル場合ニ於
テハ、必ズ三千萬圓ニシナケレバナラヌト云フ、斯ウ云フコトニ改正スルノ
ガ國債整理基金法改正ノ重モナル所デアリマス、重モナル所ト言ヒマスガ殆
ドソレノ必要ガアッテ改正案ヲ提出イタシマシタ次第デアリマス、何故ニ斯ノ
如キ改正ヲ致スカト云フコトヲ一通リ申上ゲタイト思ヒマス、國債整理基金
法ヲ改正シマスノハ二ツノ點カラ改正ノ必要ヲ感ジテ參ッタノデアリマス、
ツハ先程申上ゲマシタヤウニ、日露事件公債ノ爲ニ年々一億千萬圓以上ノ金
ヲ繰入レナケレバナラヌト云フ規定ニ依リマスト云フト、其規定ノ通リニ實
行イタシマスト云フト、大正四年度ノ國債償還額ハ五千百萬圓以上ニナルノ
デアリマス、大正五年度ニナレバ、ソレガ五千二百何十萬圓、ソレカラ段々
追ウテ行ッテ、四五年後ニナレバ六千萬圓以上ノ元金償還額ニ上ルト云フコト
ニ相成ルノデアリマス、唯一億千萬圓ヲ繼續シテ入レテ參リマスト、ソレデ
日露事件ノ公債ガ多額ニアリマス場合ニ於テハ、利息ノ高ガ澤山ニナッテ居
リマスカラ、之ヲ利子ニ仕拂ヒマスト元金ノ償還ニ當ルモノガ左ホド多額ニ
ハ上ラナカッタノデアリマスケレドモ、今日ハ日露事件ノ公債ナルモノガ段々
減ジマシタ結果トシテ、利子ニ充當セラレル部分ガ漸次減少シ參ルノデアリ
ママ·カ其反比例ニ於テ元金償還ニ當テラルベキ金額ハ段々增加シテ參リマス
コトハ、前ニ申上ゲマシタ通リ、五千萬餘リノモノガ數年ナラズ六千萬圓以
上ニ上ルト云フコトニ相成ッタノデアリマス、公債ノ償還額ノ多額ニ上ルコト
ハ一應ハ至極結構ナヤウデアリマスケレドモ、併ナガラ一般ノ政費ノ分配ノ
上カラ考ヘマスト云フト、凡ソ政費ノ分配ノ上ニ於テハ大抵好イ加減ノ程合
ノ程度ガアラウト思ヒマスノデ、行政費ニドレダケ、軍事費ニドレダケ、國
債費ニドレダケト云フ割合カラ言ヒマスト、此元金ノ償還額ダケヲ餘リニ餘
計增加スルト云フコトハ割合ノ上カラ言ウテ宜シクナイデアラウト思ヒマ
ス、ノミナラズ茲デ五千萬圓或ハ六千萬圓ト云フヤウナ償還ヲ致シマスト云
フト、四五年ノ後ニ至リマスト云フト內國ニ存シテ居リマス日露事件公債
ト云フモノハ殆ド償還シ了ルノデアリマス、之ヲ旣ニ償還シ了リマスト云フ
ト、後トニ殘ル所ノモノハ外國ニアル日露事件公債バカリデアリマスカラ、
日露事件ノ公債ニ限ヲテ必ズ是ダケ償還シナケレバナラヌト云フ現行法ガ存
シテ居リマスト、今後四五年ノ後ニ至リマスト、年々六千萬グラヰノ元金ヲ
外國ヘノミ支拂ハナケレバナラヌト云フコトニナリマス、左樣イタシマスト
年々內地ニハ、チットモ公債償還ガナクシテ六千萬圓以上ノ償還ハ殆ド外國ニ
向ッテシナケレバナラヌ、利息ヲ外國ニ拂ヒマスモノガ今日デハ六千萬圓以上
アルノデアリマス、公債ダケ、國債ダケニ於テ、地方債社債ナドハ別ト致シ
マシテ、國債ダケニ致シテ外國ニ利息ヲ拂フモノガ六千萬圓以上アリマス、
之ニ加ヘテ又元金マデモ六千萬圓位外國ニ拂フコトニナリマスト、年々一億
圓以上ノ正貨ヲ外國ニ出サナケレバナラヌト云フコトニナリマシテ、斯樣ニ
澤山ナ正貨ヲ年々外國ニ出スト云フコトニナリマシテハ、日本ノ貨幣制度、
日本ノ金貨ヲ維持シテ行クト云フコトニ於テ甚ダ困難ヲ覺エテ來ル事情ガア
ルノデアリマス、ソレ故ニ其點カラシテ此規定ハ今後長ク此儘デハ到底實行
ノ出來ヌコトニ相成ルノデアリマスカラ、早晩改正ヲ要スルノデアリマス、
今頃カラシテ既ニ改正ヲシテ、公債ノ償還高ハ何レノ公債ヲ償還シテモ差支
ナイヤウナ規定ニシテ置キマシテ、外債ヲ償却スル方ガ其當時ノ都合ガ好ク
ナリ、又正貨ノ關係カラ差支ナケレバ外債ヲ償還シテ行クノガ宜イノデアル
ガ、正貨ノ關係ヲ顧慮シ又內地ノ事情ニ鑑ミテ、內債ノ方ヲ餘計償還シテ、
外債ノ方ノ償還ヲ少クスルノガ宜シケレバ其時ノ事情ニ應ジテ其通リ實行ノ
出來ルヤウニ、法律ハドチラデモ出來ルヤウニシテ置キマセヌト、唯今ノ現行
法ノ如クシテ置クト、今後五六年ノ後ニ至リマスト實行ガ甚ダ難澁ニナルト
云フ虞ガアリマスカラ、之ヲ改正シテ置ク必要ガアルノデアリマス、是ガ改正
ヲ要シマスル一ツノ理由デアリマス、改正ヲ要シマスル他ノ一ツノ理由ハ今
囘ノ財政經畫ニ伴ッタ理由デアリマス、是迄ノ經畫ニ依リマスルト、鐵道資金
ハ鐵道ノ益金デ辨ジ得ル外ハ公債募集又ハ借入金ヲナシテ其鐵道建設改良ノ
費用ニ充テルコトニ相成ッテ居ルデアリマス、此經畫ヲ施行シテ行カムトシ
マスレバ、年々多額ノ公債ヲ募集シナケレバナラヌノデアリマス、然ルニ外
國デ公債ヲ年々募集スルコトニシマスト、公債募集ノ度每ニ外國カラ正貨ガ
急ニ內地ニ這入ッテ俄ニ通貨ノ狀態ニ變動ヲ生ズルノデアリマスカラ、其激變
ノ結果內地ノ經濟市場ヲ一時攪亂スル虞ガアリ延イテ輸入ヲ促進シテ輸出
ヲ妨ゲルト云フコトニナリマシテ、外國貿易ノ上ニ於テ良カラザル影響ヲ見
ル事柄ハ最近數年ノ實例ニ依ッテ明カナルコトト思ヒマス、ソレ故ニ外債ヲ
續ケテ募集スルコトハ今日ノ日本貿易ノ逆潮ヲ轉囘シテ之ヲ改善スルト云フ
上ニ於テ餘程妨ゲニナルコトデアラウト存ジマス、ソレナラバ內地デ公債ヲ
募集シタラドウカト云ヒマスト、內地デ公債ヲ募集シマスレバ、第一ニ事業
資金ヲ政府ノ公債ニ依ッテ吸收シテ參ルノデアリマスカラ、自ラ事業資金ノ
調達ニ壓迫ヲ加ヘルト云フ虞ガアルノデゴザイマス、ノミナラズ、市場困難
ナルニモ拘ラズ公債ノ募集ヲ續ケテ致シマスト發行條件ガ段々惡クナッテ參
リマスカラ、左樣イタスト、旣ニ發行セラレタル所ノ巨額ノ公債價格ニ影響
ヲ與ヘテ、公債ノ信用ヲ保ツ上ニ餘程惡ルイ影響ガアルト信ズルノデアリマ
ス、故ニ政府ハ大體ニ於テ今日ノ日本ノ經濟狀況ニ於テハ內外市場ニ公債ヲ
募集セヌ方ガ宜イト云フ考ヲ立テタノデゴザイマス、ソレナラバ公債ヲ募集
セズシテ鐵道ノ建設改良事業ノ實行ガ出來ルカト申シマスト、今日五千哩以
上ノ鐵道ヲ國有トシテ政府ガ之ヲ經營シテ居ル又大體ノ幹線ニ當ル部分ハ
政府デ是ガ建設ヲナスト云フコトニナッテ居リマシテ、其中ノ最モ急ナ所カラ
著手シテ建設中デアルノデゴザイマスガ、是等ノ事業ヲ適度ニ施行スル今日
ノ場合デアルカラ、進ンデ急ニヤル必要モナカラウト思ヒマスガ、適度ニ建
設改良ヲ實行セムトスレバ相當資金ヲ要シテ、凡ソ二千萬前後ノ金ハドコカ
ラカ見付ケテ來マセヌト鐵道ノ益金ノミデハ鐵道ノ建設改良ノコトヲ略〓適
度ニ遂行スルコトガ出來ヌノデゴザイマス、ソコデ其二千萬ト云フ金ヲ公債
ニ求メテ居リマシタガ、公債ヲ內外ノ市場ニ募集スルコトハ先キニ申述ベマ
シタヤウナ不良ナ影響ヲ與ヘテ、是ハ成ルベク避ケナケレバナラヌ事情ガア
ルノデアリマスカラ、之ヲ避ケルト云フ方針ヲ政府ハ立テタノデアリマス、
然ル以上ハドコカラカ代リニ是ダケノ資金ヲ見付ケナケレバナラヌノデ、巳
ムヲ得ズ一般ノ歲人ノ中カラ貸付ケルト云フ方法ヲ取リタイ、然ルニ一般歲
入ハ他ノ諸般ノ歲出、之ヲ節減シ得ザルモノガアリマスノデ、已ムヲ得ズ公
債ノ償還金カラ減ジテ之ヲ鐵道資金ニ向ケルト云フコトニ致シタノデアリ
やっ、 鐵道ニ付テノ從前ノ經畫ハ公債デ其資金ヲ得タノデアル、其公債募集
ガ公債ノ信用ニ害アリト見タ以上ハ公債ヲ募集セズ、其代リニ公債償還ノ金
ヲ以テ募集ニ代ヘルコトニ致シマスノガ一番適切ナル方法デアル、斯樣ニ考
ヘマシタ故ニ、從前約五千万圓償還シテ居リマシタモノヲバ約三千万圓ニ減
ジテ其金ヲ鐵道資金ニ向ケル、其金ノ借リラレルヤウニ鐵道會計法ニ一般會
計カラ借入レル道ヲ開キマシタノデアリマス、又國債整理基金カラ鐵道資金
ニ貸ス餘裕ヲ作ル爲ニ其法律ノ改正ヲ致シタノデゴザイマス、而カモ法律ノ
改正ヲスルニハ唯二千万圓減ズルト云フコトニ致シマセヌデ、公債ノ現在總
額ノ万分ノ百十六ヲ償還ニ當テルト云フコトニ致シマスレバソレガ凡ソ二千
万圓ニナリマシテ、唯〓申シマシタ財政經畫ノ遂行上ニ於テ丁度出來ルコト
ニナルノデゴザイマス、ソコデ斯樣ニ改正イタシマスレバ今後公債ノ募集ガ
出來ルヤウニナッテ公債ヲ募集シマスレバ、公債元金ガ殖エル割合デ償還金ヲ
增加シナケレバナラヌコトニナリマスカラ、自動的ニ公債償還ノコトガチヤ
ント經畫ガ立ッテ參ルコトニナルノデゴザイマスカラ、其意味ヲ兼ネテ此改正
案ヲ提出シタ譯デゴザイマス、御審議ノ上御協賛アラムコトヲ希望イタシ
マス
〔仲小路廉君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=48
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049・仲小路廉
○仲小路廉君 每々政府ニ質問ヲ致スヤウデアリマシテ、甚ダ御妨ゲ致シマ
シテ恐縮ニ堪ヘナイ次第デゴザイマスガ、私ハ已ムヲ得ズ此際政府ニ御尋ヲ
シタイ、唯今御提案ニナリマシタ鐵道特別會計法ノ改正及國債整理基金特別
會計法ノ改正、私ハ此兩案ニ對スル改正ノ趣意ヲ拜聽イタシマシテ嘗テ政
府ノ空前ノ出來事デアリマシタ日露大戰役ヲ經テ、之ニ伴ウタル國家ノ財政
經畫ノ根本ノ破壞スルヤウナ端ヲ開カレテハ居ラナイカ、殊ニ明治四十二年
桂內閣、桂內閣ノ中外ニ宣言セラレマシタ其根本ノ綱目ハ之ニ依ッテ破壞セ
ラルル端ニナリハセヌカ、明治四十二年ノ桂內閣ニハ今日此議席ニ御出ニナ
リマス方ニモ澤山閣中ニ列シテ居ラレマス、殊ニ今日ノ大藏大臣若槻君ハ其
當時ニ於ケル桂内閣ノ諸般ノ事柄ニ付テ最モ御盡力ニナッタ一人デゴザイマ
ス、桂內閣ガ明治四十二年行政整理、財政整理ノ主ナル項目ハ何デアリマス、
從來一般會計ニ對シテ少カラヌ係累ヲ及ボシテ居ッタ鐵道建設改良ニ關スル
資金ヲ、之ヲ一般會計ヨリ分離シテ玆ニ鐵道ノ特別會計ヲ造ッテ、此間ニ斷然
タル區劃ヲ造ッタト云フコトガ、是ガ一ノ大ナル項目デアッタノデアリマス、其
次ニハ當時甚シク公債ノ不況デアッタ場合、加フルニ鐵道買收公債ノ約四億八
千万圓ニ相當スベキモノガ不日發表セネバナラヌコトノ爲ニ、痛ク市場ニ壓
迫ヲ加ヘテ居ッタ事情デアリマス、カルガ故ニ此二點ニ付キマシテ當時ノ桂內
闇ハ少カラヌ注意ヲ拂ッテ、少カラヌ苦慮ノ中ニ玆ニ一大經畫ヲ立テラレタモ
ノト私共ハ信ズルノデアリマス、明治三十九年、戰後ノ經營トシテ帝國鐵道
ノ買收、鐵道國有ノ事柄ハ當時上下ニ於テ餘程ノ議論ヲ生ジタノデアリ
ス、去リナガラ戰後ノ經營トシテ軍事上ノ關係ヨリ、又殖產興業ノ上ヨリ、
鐵道ノ國有ハ變へ難イ政策ノ一トシテ、種々ナ反對ガアリマシタニ拘リマセ
ズ、國家將來ノ大計トシテ政府ハ之ヲ斷行シテシマッタノデ、當時種々ノ議論
ガアリマシタニ拘リマセズ、貴衆兩院ノ協賛ヲ經テ、鐵道國有ノ根本ハ定マツ
タノデアリマス、鐵道ヲ國有ニ致シ、將來建設改良ノコトヲ政府ニ於テ負擔
スルト云フ以上ハ、其責任上建設改良ニ關シテ、數多ノ費用ヲ要スルコトハ
當然デアリマス、容易ナラヌ費額ヲ要スルコトハ當然デアリマス、故ニ其結
果トシテ當時鐵道ノ經營ニ關シテ責任ヲ有セラレテ居リマシタ山縣遞信大臣
ハ、此鐵道國有ノ結果トシテ、政府ガ當然爲スベキ義務ニ屬スル建設改良ニ
付テハ少カラヌ責任ヲ持ッテ居ラレタノデアリマス、故ニ此鐵道國有ノ趣意
ヲ達シマスル爲ニハ、建設改良ニ對シテ要スル數多ノ經費ニ付テハ、責任上
當時ノ遞信大臣ハ何トカシテ其職責ヲ全ウスル道ヲ執ラヌケレバナラナカッ
タノデアリマス、然ルニ財政ノ局ニ立ッテ居ラレマスル阪谷大藏大臣ハ、此經
費ノ支出ニ付テハ餘程難ンゼラレタノデアリマス、何故斯樣ナコトニナッテ
參ッタカト申スニ、當時ハ一般會計ヨリ鐵道ノ建設改良ニ關スル資金ヲ支出ス
ルコトニナッテ居ッタノデアリマス、其結果ガ勢ヒ大藏大臣ノ立場カラ見レバ、
ドウシテモ費用多端ナル場合ニ於テ、一般會計ヨリ之ヲ支出スルハ甚ダ困難
ト考ヘラレタノハ、是亦多少無理ナラヌコトト存ズルノデアリマス、卽チ遞
信大臣ノ立場ヨリスレバ何トカシテ鐵道國有ヨリ生ズル結果ヲ完全ニ致シテ
參ラネバナラヌ責ガアル、大藏大臣ハ又一般會計ノ關係ニ依ッテ十分ノ資金
ヲ支出スル譯ニモ參ラナカッタ、此關係ハ遂ニ山縣遞信大臣ト阪谷大藏大臣ト
ノ間ニ避クベカラザル確執ガ起ッテ參ッタノデアリマス、私ハ當時遞信次官ト
シテ能ク其事情ヲ了解シテ居ルノデアリマスガ、私ハ此間ノコトヲ今日考ヘ
テ見マシテモ甚ダ傷マシク存ズルノデアリマス、遞信大臣大藏大臣何レモ皆
其職責ヲ守ラレルコトノ爲ニ、固ク執ッテ動クコトガ出來ナカッタ、是ハ國務
大臣トシテ實ニ責任ヲ重ンズル方〓デアッタト思フノデアリマス、其結果ハ山
縣遞信大臣阪谷大藏大臣ハ何レモ冠ヲ挂ケテ其責ヲ引イテ退カレタノデアリ
やす、國務大臣トシテハ實ニ斯クアルベキコトト私共ハ考ヘル、實ニ其職責
ヲ重ンズルコトノ厚キ、意見ノ爲、主張ノ爲ニハ斷然冠ヲ挂ケテ而シテ退カレ
ル、是ガ何ニ基シマスカト申シマスレバ、卽チ鐵道建設改良ノ資金ヲ一般會
計ヨリ支出イタシテ居ルト云フ事柄ガ、遂ニ斯ル結果マデ惹起スコトニナツ
タノデアリマス、是ニ於テ其翌年成立シマシタル桂內閣ハ、其前年來ノ事柄
ニ鑑ミラレテ、是ニ於テ其係累ヲ絕ツ爲ニ、解ク爲ニ、再ビ斯ルコトノナイ
ヤウニト云フノデ、玆ニ鐵道ニ關スルコトハ鐵道特別會計法ヲ以テ、鐵道ヲ
本體トシ、鐵道ハ既ニ其當時ニ於テ約十億圓以上ノ資產ヲ有シテ居ルノデア
リマスカラ、之ヲ本體トシテ相當ノ方法ヲ立テテ行クヤウニシタイ、一 一二
般會計ニ對シテハ其係累ヲ及ボサヌコトニシタノガ、四十二年ノコトデアリ
やくろ。當時若槻君ハ次官トシテ專ラ其點ニ付テ御盡力ニナッタト存ズルノデ
アリマス斯樣ナ筋合ノモノデアリマスモノヲ、此度再ビ一般會計ヨリ支出
ノ道ヲ開クコトニナリマシタナラバ、恰モ前年ノヤウナ關係ヲ再ビ繰返スコ
トニナリハシマセヌカト私ハ存ズルノデアリマスガ、此點ニ付キマシテハ大
藏大臣ハ如何ニ御考ヘニナリマスカ、再ビ前年ノヤウナコトヲ繰返スヤウナ
結果ヲ生ジ、非常ナル之ガ紛糾ノ端トナリハシマセヌカ、當時桂內閣ガ整理
ノ根本トシテ斷然立テラレタ方針ハ之ニ依ッテ破レルヤウナ端〓トハ相成リ
マセヌカ、之ヲ第一ニ伺ヒタイト存ズルノデアリマス、其次ニ國債整理基金
ノコトデゴザイマス、之ニ付キマシテ唯今種々ノ理由ヲ御述べニナリマシ
タ、去リナガラ其重ナル事柄ハ何デアルカト申シマスレバ、言フマデモナイ
年々五千万圓ヅツ償還スベキ筈ノ中カラ、二千万圓ヲ以テ之ヲ鐵道ノ資金ニ
嵌メタイト云フコトガ重モナ理由タルコトハ爭ヒ難イコトデアラウト存ジフ
ス、國債整理基金ノコトハ明治三十九年日露戰役ニ於キマシテ消費サレマシ
タ其經費ニ付テ、我帝國ハ大枚ノ負債ヲ荷ウテ居ルノデアリマス一日モ速
ニ之ヲ償還シテ適當ノ處置ヲ執ルト云フコトハ最大肝要ナコトトシテ、戰時
ト等シイ狀態ニ於テ非常特別稅モ繼續セラレ、殊ニ一億一千万圓ノ金額ヲ以
テ國債償還ノ基金、殊ニ日露戰役ニ消費サレタル金額ノ償還ヲ重ナル目的ト
セラレタノハ、卽チ戰後ノ經營トシテ明治三十九年ノコトデアリマス、而カ
モ其後先刻申シマスル通リニ挂內閣ノ立チタル、明治四十二年後ノ狀況ハ公
債ハ甚シイ悲境ニ沈淪シテ居ッタ、九十圓臺ノモノガ八十圓臺ニナリ、遂ニ七
十圓臺ニモ陷ッテ仕舞ッタ譯デアル、加フルニ鐵道ノ買收トシテ四億八千万圓
ヲ不日發行シナケレバナラヌ事情ニナッテ、是等ノ事情ガ內外ノ市場ニ對シテ
甚シキ壓迫ヲ加ヘ、其結果ハ公債ガ甚シイ悲境ニ沈淪シタ爲ニ、單リ政府部
內ノミデハナイ、一般ノ狀態ニ於テ成ルベク公債ノ信用維持ヲ圖リ、是ガ確
實ニナルヤウナ途ヲ講ジテ貰ヒタイト云フ一般ノ希望デアッタト思ヒマス、桂
內閣ハ能ク此趨勢ニ鑑ミラレマシテ、公債ノ整理及其信用ヲ增スコトニ付テ
ハ最大ノ努力ヲ致サレタモノト私ハ考ヘルノデアリマス、卽チ行政整理、財
政整理ニ依ッテ得タル金額ハ公債償還ノ方ニ當テラレタ、加フルニ公債ノ利子
ニ付テハ所得稅ヲモ免除スル方法ヲ取ッテ、有ラユル方法ヲ講ジテ年々五千万
圓ヅツノ償還ヲシテ、中外ニ向ッテ大ナル安心ヲ與ヘ、ソレニ依ッテ信用ヲ高
メヤウト云フ途ヲ講ジタ、此政策ハ著々功ヲ奏シテ、七十圓臺ニマデ沈落シ
テ居ッタ公債ガ八十圓トナリ九十圓トナリ、遂ニハ額面ヲ超スヤウニナッタ次
第デアル、此五千万圓償還ト云フコトハ、當時ノ桂內閣ハ中外ニ對シテ甚ダ
重キヲ置イテ保證サレテ居ッタ事柄ト存ズルノデアリマス、單リ國內ノ關係ノ
ミナラズ、外各國ニ對スル上ニ於テモ、此保證ハ隨分强イ關係ヲ有ッテ居ッタ
ト私ハ存ズルノデアリマス、ソレヲ他人ハイザ知ラズ、若槻君ノ手ニ於テ此
根柢ヲ破却スルヤウナ端ヲ御啓キニナルト云フコトハ如何ナルコトデアラウ
ト私ハ考ヘル、此金額二千万圓ヲ以テ鐵道資金ニ當嵌メルト云フ、事甚ダ容
易ニ聞エル、去リナガラ此二千万圓ハ一般會計ニ屬スル金額デアリマスルカ
ラ、之ニ對シテハ種々ナ要求ヲ鼓舞スルニ相違ナイ、或ハ之ヲ以テ減稅ノ費
用ニシタイ、廢稅ノ費用ニシタイト云フヤウナ要求モ一面ニハ鼓舞サレルニ
違ヒナイ、或ハ國防ノ爲ニ使ヒタイ、軍事ノ爲ニ使ヒタイト云フ感ジヲ有タ
ヌトモ限ラヌ、更ニ各省ニ於テハ種々ナ經營モ致シタイ、種々ナ事業ノ經畫
ヲ致シタイト考ヘルノデアリマスカラ、玆ニ二千万圓ト云フ金額ガ出來テ來
タ以上ハ、縱シヤ一方政府ニ於テハ、是ハ鐵道ノ資ニ當嵌メル積リデアルト
考ヘテ居リマシテモ、一時ノ考ハ後〓ニ至ッテドウ云フ結果ヲ生ズルカモ知レ
ヌト思ヒマス、サウ致シマスルト、遂ニハ二千万圓ノ金額ニ付キマシテハ、是
ガ種々ナ要求ヲ鼓舞シ惹キ起スノ基ニナッテ、避クベカラザル紛亂ヲ來タシハ
シナイカト思ヒマス、極メテ事ハ簡單ニシテ便利ノヤウニ御心得ニナリマス
ケレドモ、此極メテ姑息ナル方法ハ遂ニ種々ノ禍害ヲ包藏スル基トナラヌカ
ト私ハ存ズルノデアリマス、何ガ故ニ斯ル途ヲ御執リニナリマシタカ、此內閣
成立ノ初メ、殊ニ若槻大藏大臣ハ公債ヲ募集シナイ、非募債主義デアル、此事
柄ヲ高ク唱ヘラレタ、ソレヨリ後ニハ非募債主義ト言ウタヤウナコトハナイ、
近來ハ段々其事柄ニ付テ御取消ニナッテ居リマス、過日來ノ衆議院其他ノ狀況
ヲモ詳シク拜聽イタシテ居リマスルガ、現實デアル、現實デアルト仰セニナッ
テ居ル、總テ現實デゴザイマス、若モ現實デアルト致シマスルナラバ、昨年ノ
狀況ニ於テ一面公債ノ募集ニ困難デアリマシテモ旦ニ夕ヲ計ラレザル經濟狀
態、今日ヨリ明日ヲ推測スルコトガ出來ナイ經濟狀態デアル、何時如何ナル
狀況ヲ呈スルカモ知レヌノデアリマス、又公債募集ノ出來ヌ場合ニ公債ヲ募
集セヨト申ス者ハ誰モゴザイマスマイト思ヒマス、又募集シ得ル時機ガ到來
シタナラバ、一面是ガ生產的ノモノデアリマシテ利廻リモ相當ニ〓ハルモノ
デゴザイマシタナラバ、之ヲ募集スルコト何ノ不可カアル、サウスレバ是ハ
皆時ニ關シ場合ニ關スル問題デアリマシテ、玆ニ主義ナルモノノアルベキ筈
ハナイ、ソレヲ餘リニ高ク唱ヘラレマシタ結果ガ、遂ニ自繩自縛ノコトニ陷
リハシナカッタカ、一切公債ヲ當分募ラヌト仰セニナッタ結果ガ、遂ニ五千万
圓ノ中カラ二千万圓ヲ取除ケテ、已ムヲ得ズ之ヲ鐵道ノ資金ニ流用シナケレ
バナラヌト云フヤウナ結果ニナッテ來タノガ、是コソ所謂自己ノ言葉ニ依ッテ
自ラ囚ハレテ仕舞ッタト云フ結果ニナリハセヌカト私ハ存ズルノデアリマス、
又是ガ單ニ一時ノコトデアリマスルナラバ、何故基金法ナル大切ノ法律マデ
モ變更シナケレバナラヌカ、鐵道資金ニ伴フト仰セラレマスガ鐵道ニ付キマ
シテモ其通リデ、之ヲ十分調査シテ見マスト三十五議會卽チ前議會ニハ、
鐵道ハ向フ十三箇年ノ經畫ヲ立テマシテ········向フ十三箇年ノ經畫ヲ立テマシ
テ、年々約四千万圓乃至五千万圓ノ內カラ年度割ヲ以テヤルベキコトニナツ
テ居リマシタ、ソレデアリマスカラ、マダシモソレト伴ウテ片一方ニ約二千
万圓ニ相當スル金額ヲ支出スル方法トシテノ立テ方ガ、マダシモ理窟ガ通ル
ノデアル、然ルニ今年ノ鐵道豫算ハ如何デアリマスカ、今年ノ鐵道豫算ハ昨
年ノ十三年經畫ニ相當スベキモノハ提案セラレヌ、差向キノ經畫ニナッテ居
ル········差向キノ經畫ニナッテ居ル、若シモ是ガ差向キノ經畫デアルト致シマス
ナラバ、一方二千万圓ノ資金ノ事モ亦是差向キノコトデ宜シイデハアリマセ
ヌカ、一時ノ途ニ依ッテ何トデモ工夫ガ付クモノト思フ、私ハ今日經濟社會ノ
狀態カラ考ヘマスレバ、一面ニ五千万圓償却ヲ致シテ、其內カラ事實二千万
圓ヲ掬ヒ上ゲラレルコトハ、左シテ困難デナカラウカト思ヒマス、ソレモ困
難デアル、其手數ヲ取リタクナイト云フナラパソレデ宜シイ、何故此基金法
ニ依リマシテ········此基金法ノ規定ハ甚ダ簡便ニ都合好ク出來テ居ル、場合ニ
依ッテハ此基金法ノ規定ニ依ッテ、相當ノ途ニ依ッテ利殖スル途モアル、他ニ貸
付ケル途モアル、ソレデアリマスカラ單ニ一時ノ便ニ供スル積リナラバ、何
モ基金法自ラニ手ヲ付ケズトモ、今年ハ今年、來年ハ來年デ、二千万圓位ハ
何トデモ都合ガ付クデハアリマスマイカ、夫レ是レ考ヘ合セテ見ルト、實
今日此場合ニ於テ、大切ナ基金法全體ニ手ノ付クコトハ如何ナル次第デアル
カト存ジマス、以上申シマシタ點ニ付キマシテ、ドウカ玆ニ明瞭ナ御說明ヲ
煩ハシタイト思ヒマス、尙ホ其御答辯ニ依リマシテ更ニ伺ヒタイト思ヒマス
〔國務大臣若槻禮次郎君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=49
-
050・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 一般會計ト鐵道會計トノ關係ヲ申上ゲタイノデ
アリマスカラ、仲小路君ノ今一番御終ヒニ述ベラレタヤウナ點ノ一部カラ申
上ゲマス、今囘提出シテアリマス鐵道經畫ハ第三十五議會ニ提出イタシマシ
タノトハ違ッテ居リマシテ、大正四年ニ著手スルモノノ費用ダケガ求メテアル
ノデアリマスソレ故ニ一時目前ノ經畫デアルノダカラ、公債ノ經畫モ目前
ノ事ニ伴ハシメテ宜イヂヤナイカト云フヤウナ御疑念ガ起ッタノデアラウト
思ヒマスガ、實ハ政府ノ經畫ハ第三十五議會ニ提出シタ通リナ鐵道經畫ヲ持ッ
テ居ルノデアリマス、今囘其經畫ノ一部ノミヲ出シマシタノハ、議會ガ臨時
議會ノコトデアリマスカラ、成ルベク一般ノ經畫ニ屬スルモノハ通常議會ニ
於テ能ク御審議ヲ願フヤウニシタ方ガ宜シイ、此特別議會ニハ是非御審議ヲ
願ハヌケレバ運ビノ付カヌモノダケヲ提出シタ方ガ宜シイト云フ意味ニ於
テ、今囘ハ大正四年カラ著手スルモノダケヲ提出シタノデアリマスケレドモ、
政府ノ鐵道經畫ナルモノハ第三十五議會ニ提出シタ經畫ヲソレヲ矢張リ持ッ
テ居ルノデアリマス、一々數字ノ細カイ事ハ申上ゲマセヌガ、大體ニ於テハ
今日ノ鐵道ヲ以テ是ガ改良ヲ爲シテ行キ、竝ニ政府ガ幹線ノ聯絡ニナルベキ
モノノ中最モ急ナモノヲ漸次ニ建設ヲシテ、聯絡ヲ完ウシテ行カウト思ヘバ、
年々凡ソ五千万圓グラヰナ金額ヲ建設改良費ニ充テナケレバナラヌト云フ大
體ノ考ヲ持ッテ居ルノデアリマスガ、今日ハ鐵道ノ益金ガ千八百万圓シカナ
イノデアリマスカラ、今日カラ直チニ五千万圓ノ金額ヲ建設改良費ニ使ハム
トシマスレバ、餘程ノ大ナル金額ヲ他カラ融通シテ來ナケレバナラス、是一
今日ニ於テ到底左樣ナ經畫ヲ立ツル譯ニ行カヌ、ソレデ大體ノ考ハ、鐵道ノ
益金ガ今日ハ千八百万圓デアルケレドモ、漸々增加スルノデ、幾ラ增加スル
カト云フ精確ナ數ハ、ハッキリ今日カラ見込ノ立ツモノデアリマセヌガ、既往
ノ經驗ニ依ッテ推シテ見マスレバ、凡ソ年々二百万圓位ノ益金增加ハアルモノ
ト思ヒマスカラ、ソレヲ土臺ニ置イテ宜シイト云フ考ヲ持ッテ經畫ヲ立テテ
大正四年度ハ千八百万圓ノ益金ガアル、之ニ他カラ融通スル金ヲ二千万圓位
加ヘルト三千八百万圓ノ建設改良費ガ使ハレル、大正五年度ニ於テハ千八百
万圓ノ益金ガ二百万圓增加シテ二千万圓ノ益金トナル、之ニ他カラ二千万圓
融通スレバ四千万圓ニナル、其翌年ハ益金ガ二千一一百万圓ニナル、之ニ他カラ
二千万圓融通スレバ四千二百万圓ニナル、其翌年ハ益金ガ二千四百万圓ニナ
ル、之ニ他カラ二千万圓融通スレバ四千四百万圓ニナル、斯樣ニシテ進ンデ
行クト、七年ノ後デアリマシタカ、六年ノ後デアリマシタカ、或年數ヲ經ル
ト年々五千万圓ヅツ使フコトノ出來ルヤウニナル、其翌年ニ若シ二千万圓融
通シテ使フナラバ、五千二百万圓鐵道ノ建設改良費ガアル筈デアリマスガ前
申上ゲマシタ通リ五千万圓使ッテ建設改良ヲスレバ宜シイト考ヘマスカラ、五
千二百万圓ニナルナラパ融通スル金ヲ二千万圓カラ減ジテ千八百万圓ニス
ル、サウスルト益金ガ三千一一百万圓アルノト千八百万圓融通スルノト合セテ
ソレデ五千万圓ニナル、其翌年ハ益金ガ更ニ二百万圓增加シマスレバ融通ス
ル金ヲ千六百万圓ニ減ズル、其翌年ハ又二百万圓增加スレバ融通スル金ヲ千
四百万圓ニ減ズルト云フヤウニシテ、ズット先キニ至レバ二千万圓ノ融通ヲセ
ヌデモ、鐵道ノ益金ノミデ全ク建設改良ノ出來ルヤウニ爲スヤウニシヤウト
云フガ大體ノ政府ノ考デアルノデアリマス、ソレデアリマスカラ一般會計カ
ラ此七八年ノ間此二千万圓ヲ鐵道ニ融通スルコトニスレバ、鐵道ノ方ハソレ
ニ基イテ經晝ヲ立テテ行クト云フノデ、此經畫ヲ守ッテ行ケバ、仲小路君ノ御
心配ニナッタ鐵道院ノ當局ト大藏省ノ當局ト意見ノ衝突ヲ來タシテ、一般會計
ト鐵道ノ特別會計トノ間ノ圓滿ヲ缺クヤウナ虞ガアリハセヌカト云フ御心配
ニ付テハ、唯今ノヤウナ經畫デ進行スレバサウ云フ虞ハナクッテ濟ムト云フ、
斯ウ云ヲ見込ヲ持ッテ居ルノデアリマス、ソレカラ五千万圓償還、今日ノ國債
整理基金法ト云フモノヲ日露戰爭以後ニ拵ヘテ、更ニ第二桂內閣ニ於テハ元
金ノ償還額ヲ千五六百万圓增加シテ、年々五千万圓ノ償還ヲスルト云フ經畫
ヲ立テタコトニ付テ、斯樣ナ經畫ノ根本ノモノヲ拵ヘタノニ、今日之ヲ變ヘル
ト云フノハ宜シクナイデハナイカト云フ御議論デアリマスガ、私共五千万圓
ヲ償還スルト云フ經畫ヲ立テマシタトキ、無論私共ハ與ッテ居ル事柄デアリ
マシテ、日露戰爭ニ依ッテ公債ガ急激ニ增加シタノデアリマスカラ、ドウカシ
テ公債ノ高ガ或程度ニ減ズル迄ハ成ルベク償還ニ努メテ、國債ノ償還ヲ多ク
シテ、サウシテ一方ニハ公債ノ負擔ヲ減ジ、一方ニハ公債ノ信用ヲ高メテ行
クヤウニシタイト云フコトニ於テハ、今日尙ホ前日ノ通リデアルノデアリマ
ス、若シ五千万圓ノ償還金ヲ減ゼズシテ濟ムコトデアリマスナラバ、無論五
千万圓ヅツ償還スルコトヲ續ケテ行キタイノデアリマス、ソレガアッテモ國債
整理基金法ハ改正シナクテハナラヌト云フコトヲ私ハ主張スルノデアリマ
ス、ソレハ前ニ申上ゲタ通リ二ツノ點カラ今日ハ改正ヲ要スルヤウニナッテ
居ルト言ッタ前段ノ理由ニ依ッテ、償還金五千万圓ヲ續ケテ行クトシテモ、今
日ハ國債整理基金法ハ改正シナケレバナラヌト云フコトヲ主張スルノデアリ
マスガ、其點ハ別トシテ置イテ、五千万償還ヲスルト云フコトヲ、其内カラ
二千万圓ダケ償還ヲ減ズルコトニスルト云フ其一點ダケデ申上ゲテモ出來
ルコトナラバ年々五千万圓償還スルト云フ經畫ヲ維持シタイノデアリマス、
無論其方ガ宜イノデアル、併ナガラ之ヲ維持スルナラバ一方ニハ公債ヲ募集
シテモ日本ノ今ノ經濟狀況ニ於テハ惡ルイ影響ノ生ゼナイト云フ見込ガ立タ
ナケレバ行カナイ、此見込ナシニシテ置イテ、サウシテ鐵道ノ資金ハ矢張リ
今日ハ益金ノミデハ辨ジ得ナイト云フコトヲ前提トシテ置イテ、サウシテ申
シマスナラバ、私共ハ今日ノ場合ニ於テ無理ヲシテ公債ヲ募集スル上カラ、
日本ノ財政ノ上ニ受クル所ノ信用ヲ損ズル事柄ト、五千万圓ノ償還ヲ三千万
ニスルト云フコトカラ、幾ラカ公債ノ上ニ付テ期待ガ變ジタト云フコトノ、
雙方ノ何レノ方ガ國ノ全般ノ信用ノ上ニ於テ餘計ニ害ガアルカト言ヘバ、私
共ハ今日此經濟狀況ニ於テ二千万圓ノ公債ヲ無理ヲシテ內外市場デ募集ヲシ
ヤウト云フコトヲスル方ガ餘計ニ弊害アリト見テ居ルノデアリマス、此點ニ
付テ意見ガ別レレバ仕方ガアリマセヌガ、私共ハ公債ノ償還ニハ努メタイノ
デアル、併ナガラ償還ニ努メル結果、一方ニ公債ヲ惡ルイ條件デ募集スルナ
ラバ、ソレカラ起ル害ハ公債ノ償還額ヲ二千万圓減ズルヨリモ尙ホ一層大ナ
ル國ノ信用ノ上ニ害ガアリト斯ウ見テ居ルモノデアリマスカラ、大ナル害ヲ
避クル爲ニ小ナル點ヲ讓ッテ掛カル外ナイト云フノガ、今日ノ政府ノ經、畫デ
アルノデアリマス、殊ニ又今日內外市場ニ於テ公債ヲ募集スルト言ヒマスケ
レドモ、外國ニ於テ日本ガ今日公債ヲ募集スルト云フコトハ私ハ殆ド出來ナ
イコトト思フノデアリマス、今日ノミナラズ最近ノ年ニ於テ相當ナ條件デ外
國デ新ニ公債ヲ募集スルコトノ出來ル時機ガ到來スルト云フヤウニハ私ハ思
ヒマセヌ、內地ナラバ二千万圓位ヲ········一方ニ五千万ノ償還ヲシテ置イテ、
一方ニ二千万圓ノ募集ヲスル位ノコトハ出來ル譯合デアルト云フ仲小路君ノ
御論デアリマシタガ、是ガ亦意見ノ相違デアリマス、五千万圓ノ償還ヲシテ
二千万圓内地デ募集スルコトカラ起ル日本ノ經濟上ノ影響ト、ソレヲセナイ
デ其代リ必要ナル資金ハ公債ノ償還金ヲ以テ充テテ、公債ヲ募集セナイト云
フコトカラ生ズルコトノ經濟上ノ影響ト、ドチラノ方ガ今日餘計ニ惡ルイ影
響ヲ來タスカト言ヘバ、私ハ內國市場ニ於テ公債ヲ募集スル方ガ不良ノ影響
ヲ餘計ニ與ヘルト見テ居ルノデアリマス、左樣ナ狀況デアリマス以上ハ、私
自身ガ關係シテ出來上ッタ經畫デアリマシテモ、國家ノ全體カラ考ヘテ其事ヲ
無理ニ通サウト思ヘバ、其方ガ餘計ニ國ノ上ニ不良ノ影響ヲ與ヘルト云フコ
トヲ見マシタ以上ハ、其場合ニ應ジタダケノ幾分カ變通ヲ加ヘテ行クト云フ
コトハ、是ハ已ムヲ得ナイコトト考ヘマスカラ、ソレ故ニ今囘ノヤウナ經畫
ヲ立テタ次第デアリマス、前ニ申上ゲタ通リ政府ノ鐵道ニ對スル考ハ唯〓提
出シテアリマス案ハ、特別議會ナルコトニ、臨時議會ナルコトニ顧ミテ、大正
四年度ニ著手スル鐵道ノ費用カラ見テアリマスケレドモ、經畫ハ依然トシテ
前ニ提出シタヤウナ經畫デアリマシテ、ドウシテモ益金ノ外ニモ二千万圓位
ナ融通金ヲ、今後七八年ノ間繼續シマセヌケレバ實行ノ出來ナイ經畫ヲ持ッテ
居ルノデアリマス、而シテ今後數年ノ間ソレナラバ直チニ此鐵道ノ資金ニ付
テ內外市場デ公債ヲ募集スル見込ガ立ツカト言ヘバ、私ハ唯今申上ゲル通リ、
其募集ノ出來ルト云フ見込ノ立チマセヌ上ニ、之ヲ募集シタナラバ日本ノ經
濟市場ニハ中〓惡ルイ影響ガ來ルト斯ウ見テ居ルモノデアリマスカラ、此所
ニ基金法ヲ改正シテ、鐵道ノ資金ノ事柄モ確定シテ經畫ヲ十分ニスルト同時
ニ、一方ニハ他ノ理由ニ依ッテ改正ヲ要スル必要ニ迫ッテ居ルノデアリマスカ
ラ、ソレト共ニ唯今ノ財政經畫ノ實行ノ出來ルヤウニシタ方ガ宜イト、斯ウ
云フ意味デ今囘ノ經畫ヲ提出シタ次第デアリマス、大體ハソレデ御答辯ニナツ
テ居リハセヌカト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=50
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051・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 時刻ニナリマシタカラ一應休憩ヲ致シマス
午前十一時五十七分休憩
午後零時五十八分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=51
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052・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 是ヨリ報〓ヲ致サセマス
〔河井書記官朗讀〕
本日特別委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
無線電信法案可決報告書発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=52
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053・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=53
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054・仲小路廉
○仲小路廉君 此法案ハ今朝私ノ質問ニ對シテ大藏大臣ノ御答辯ヲ得マシタ
ガ、私ハ折角大藏大臣ヨリノ御答辯ニ滿足ヲ致シマセヌノデアリマス、尙ホ
種々御尋イタシタイ點モアリマスガ、本日ハ尙ポ他ニ質問ヲセラルル方〓ガ
アラウト思ヒマス、何レ其中機會ガアラウカト存ジマスカラ、私ハ本日ハ是
デ控ヘルコトニ致シマス
〔男爵目賀田種太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=54
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055・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 本員ハ日程ニ從ヒ二段ノ質問ヲ大藏大臣ニ致シマ
ス、中ニ分ケテ凡ソ六點ホド伺ヒタイ、先ヅ第一ニ一般會計ヨリ貸付ケルト
云フ此法案ガ如何ナル行政ノ法理ニ基クモノデアルカ、本員ノ如キハ之ヲ解
スルニ苦シミマス、如何トナレバ明治三十七年日露戰役ノ初メ、時ノ急要ヲ達
スルガ爲ニ法律ガアリマス、其法律ニ依レバ政府ノ特別基金、資金ノ金ハ之ヲ
戰時ニ要スル費用ニ流用スルコトヲ得ト云フヤウナ法律ガアリマス、其法律
ハ大藏大臣必ズ審ニ之ヲ知ラルルダラウト思ヒマス、其法律カラ見マスト云
フト、政府ハ必要ノ場合ニ於テ國家ノ緊急ニ迫ラレテ、基金資金ヲ戰時ノ用
ニ供スルト云フノデアリマスルカラ、ソレヨリ推シテ考ヘレバ、元來國家ノ
有スル基金ハ、其中ニ於テ預金ノ如キモノハ、是ハ預金ト云ヘバ殆ド銀行ノ
ヤウナモノ、預金部ノ有スル有價證劵ノ如キモノハ外ニ流用シテ利殖シテモ
宜イト云フ行政ノ法理ニ相違ナイ、然ルニ一般會計ノ金ヲ或營業的ノ事業ニ
供シテ、之ヲ利殖スルト云フコトハ何分本員ニ於テハ之ヲ解シ能ハヌ、何ト
ナレバ凡ソ國家ノ行政ニシテ稅ヲ取ッテ置イテ其稅ヲ他ニ貸付ケテ利殖スル
ト云フヤウナ理窟ハ存在セザルコトト思ヒマス、若シソレホドノ餘裕ガ國庫
ニ存スルナラバソレヲ生ゼシムル其稅ハ徵收セザルガ宜シイト思ヒマス、成
ルホド法律ハ萬能デアリマスルカラ、如何ナルコトモ規定スレバ法律トナツ
テ效ハゴザイマセウガ、此日程ニ上リタル鐵道會計法ノ改正ノ、唯今述ベル
ヤウナ實際ニ亙ル法律ハ、私ハ善良ナル法律ト思ヒマセヌ、故ニ此點ニ對シ
審ニ本員ノ疑ヲ解カレムコトヲ希望シマス、是ハ第一段ノ質問デアリマス、
第二段ニ於テ更ニ本日ノ日程ニ從ヒマシテ國債整理基金法ノ改正ノコトデア
リマス、元來明治三十九年法律六號ノ執行以來右ノ法律ノ目的ヲ遂行シタル
結果ハ餘リ多クデハナイト思ヒマスル、何トナレバ明治三十九年ノ法律六號
ト云フモノハ三十七八年戰役ノ爲ニ發行セラレタル公債ノ整理方法デゴザイ
マシテ、其現在ニ於ケル結果ハ如何デアルカ、內國債ニ於テハ三億七十餘万
圓ヲ尙ホ存シテ居ル、其内譯ハ何デアルカト云ヘバ、例ヘバ五分利公債特別
五分利公債若クハ第一四分利公債、第二四分利公債、是等ヲ合シテ三億七十
餘万圓ニナッテ居リマス、右ノ三十九年法律六號ニ依ヲテ還債處分ヲ了スベキ
其他ノ外國債ハ十億二百十九万圓ヲ存シテ居リマス、是ハ第一四分利、四分半
ノ公債、第二四分半利ノ公債、第二囘四分半ノ公債、五分利公債、唯今現ニ大正
四年此六月ニ於テ、尙ホ合計十三億二千七百九十三万圓ヲ存シテ居リマス、
當初ノ所謂戰時公債ハ稍〓五五億ニ近クゴザイマシヲ、其償還ノ成績ト云フモ
ノハ餘リ多クデハナイ、是ハ論ズルマデモナク數ニ於テ明カデアリマス、然ル
ニ現在額ハ斯ノ如クデアルノニ將來大正十五年度マデニ還債ヲ要スル外國債
ノ額ハ合計六億七千二百六十三万圓アリマスル、其中ニ就テ五億五千百五十
七万圓ナルモノハ卽チ最前申上ゲマシタル所ノ第一囘四分半利付ノ英貨公債
第二囘四分半利付ノ英貨公債ノ二ツデアリマス、之ニ對シテハ當時ノ勅令ガ
ゴザイマス、其第一ニ付テ明治三十八年ノ勅令七十八號ニ於テハ其六條ニ於
テ、本公債ノ元利金ノ償還ハ煙草專賣收入ヲ以テ擔保セラルルモノトスト書
イテアリマス、又同ジク引續イテノ第二囘四分半利付英貨公債ニ付キマシテ
ハ勅令百九十四號ニ於テ、本公債ノ元利金ノ償還ハ煙草專賣收入ヲ以テ擔保
トス其順位ハ三十八年三月發行ノ英貨公債三千万圓ノ次トストアリマス尙
ホ其次ノ條ニ於テ三十八年三月發行ノ英貨公債償却ノ後ハ本公債ハ煙草專賣
收入ヲ優先ニ擔保セラルベシト書イテアリマス、此勅令ハ今日ニ於テモ尙ホ
效力アリト認メマスガ、是ハ別ニ其後改メラレタル勅令モマダ本員ハ見マセ
ヌカラ質問ノ要ハナイ、唯是等ヲ包含スル將來ニ於テ償却ヲ要スル六億七千
二百六十三万圓ナルモノハ大正十五年迄ニ唯今ノ如ク明白ナル證文ニ依ッテ、
證書ニ依ッテ償却ヲスベキモノデアッテ、其中ノ五億五千百五十七万圓ナルモ
ノハ今ノ如ク帝國政府ハ煙草專賣收入ヲ擔保トスル、卽チ勅令ニ於テ明記シ
テアル、私ハ政府ニ對シ、殊ニ現任大藏大臣ニ對シ、公債ノ募集ノ將來ニ於ケ
ル方法若クハ見込、其可能不可能ノ見込ト云フコトハ別ニ承リマセヌ、大藏
大臣ハ繰返シテ曩ニ三十九年ニ其經畫ニ參與シタ時ニ較ブレバ今日ハ周圍ノ
事情大ニ變化シテ居ル、斯ウ言ハレル、卽チ此內閣ノ組織ニ際シテモ其事ヲ
言ハレ、又昨年三十五囘ノ帝國議會ニ於テ大正三年十二月九日ニ於テ其事ヲ
言ハレテ居リマス、其事ニ對シテハ本員ノ如キハ別ニ意見ヲ有シテ居リマス
ルガ、是ハ意見ニ涉リマスカラ能不能ト云フコトハ本員問ヒマセヌ、故ニ其
點ニ對シテ別ニ大藏大臣ノ本員ニ對スル說明ハ必要デアリマセヌ、ソレニ付
テハ本員ハ求メマセヌ、唯私ハ單一ナ計算上、ドウシテ是カラ算盤ヲ取ラレル
カト云フコトヲ承リタイノデアリマス、既ニ申シマシタル如ク現在存在スル
三十七八年ノ戰役ノ結果、三十九年法律六號ニ依ッテ償却ヲ要スル、卽チ法律
六號ノ第六條ノ意味ハ每年五千万圓ヅツヲ、償却シテ一年ニ元利償還額ハ一
億一千万圓ヲ下ルコトヲ得ズト云フ其法律ニ基イテ、今日償却シツツアル其
戰時公債ナルモノハ、内國債ナルモノハ三億七十餘万圓外國債ガ十億一一百十
九万圓、合計十三億二千七百九十三万圓ト云フモノガアル、其内ニ於テ尙ホ將
來五億五千百十七万圓ト云フ大正四年ニ返サナケレバナラヌト云フモノガア
ル、而カモソレハ煙草專賣收入ガ擔保ニナッテ居ル、斯ウ云フコトデアル、之
ニ對シテ現行ノ法律ヲ行ッテ往ケバ卽チ毎年五千万圓ノ償却ヲスルニ依ッテ、
十年ノ後ニハ五億圓ヲ返ス、卽チ唯今計算シテ大正十五年迄ニ返還スベキ六
億七千三百万圓ノ中ノ大部分ヲ返セル譯ニナル、之ヲ此度ノ如ク改正シテ三二
千万圓ヲ返ス時ニハ向フ十年ノ間ニ三億圓ノ外ハ返スコトヲ得ザルコトニナ
ル、故ニ右ノ如キ實況デアルカラ、本員ハ玆ニ大藏大臣ニ敢テ請ヒ問ハムト
スルノハ、今ノ狀況ニ於テ大正十五年迄ノ間ニ之ヲ圓滿ニ借替ヘサスルコト
ヲ遂行セラルルヤ否ヤト云フ點ニ付テ多少ノ說明ヲ仰ギタイト思フテ居リマ
ス、無論外國市場ナルモノハ本員ニ於テトスベキモノデハナイ、卽チ大藏大
臣ノ言ハレル現實ニ據ルノデアル、敢テ將來ハ今ニ於テ豫知スベカラザルコ
トデアル、去リナガラ此兩案ハ、鐵道ノ案ト云ヒ、國債整理基金法改正ノ案
ト云ヒ、此兩案ハ國家根本ノ經綸問題デアル、サラバ極ク遠キ將來ハ別トシ
テ、數年先キノ未來ハ經綸ノ責ニアルモノハ之ヲ稽ヘテ居ラザルベカラザル
コトデアルト私ハ思フ、今ノ如ク唯計數ノ上ヨリ見マスレバ此議場ニ提出セ
ラレタル國債整理基金法ノ改正案ナルモノハ寧ロ大正十五年迄ノ六億七千萬
圓ノ償還方法ニアラズシテ、大部分以上借替法ナゾト云フモノヲ含ムモノト
認メザルヲ得ヌノデアリマス、若シ之ヲ借替ヘムトスルナラバ是ハ自分一
人デ借替ヘル譯ニハイカヌ、對手人ガ要ルノデアリマス、殊ニ第二囘四分利
付英貨公債ニ對シテハ三十八年ノ勅令百九十四號、其一條ニ於テ此公債ハ英
國倫敦、北米紐育獨逸國ニ於テ英貨公債三千萬磅ヲ募集スルモノトスト云フ
コトニ明記シテアルノデアリマス、此成立ニ付キマシテハ御承知ノ通リ三十
八年六月十日以來七月二十日ニ涉ッテ、時ノ政府ガ獨逸國ヲ介シテ此第二囘公
債ノコトニ斡旋ヲ得タノデアリマス、此ノ如キ狀況ノ下ニ於テ、是ヨリ十年
先キト申セバ甚ダ近イノデアリマスガ、法律上償還スル額ニ對シテ、現ニ此
法律ヲ改メテ償還スル額ニ對シテ、卽チ三千萬圓トナスノ結果ニ對シテ償還
スベキモノハ倍以上デアリマス、殊ニ借替ヘハ是ハ私ハ惡イトモ何トモ言ハ
ナイ、借替ヘハ無論希望イタシマスガ、隨分困難デアルト思フ時ニ當ッテ如
何ニシテ此見込ヲ遂行セラルルヤ、多少一國ノ經綸ニ當ル人ハ腹案ガアリマ
セウ、其〓要ヲ示シテ貴族院ノミナラズ、國民ヲシテ安心セシメラレムコト
ヲ私ハ求メマス、今歐羅巴ニ於ケル大戰局ノ眞タダ中ニアリマシテ、業ニ已
ニ各交戰國ノ發行スル公債、借入金、大藏省證劵、國庫債劵ノ如キ、勿論其
詳細ナルコトハ本員ハ確知シマセヌ、蓋シ當局者ハ十分御調ベデアリマセウ、
唯本員聞キ知リタル大要ヲ擧ゲマスレバ、英國ハ既ニ四十四億圓ノ發行ヲシ
テ居ル、佛蘭西ハ三十二億、露西亞ハ三十四億、獨逸ハ六十二億、墺太利ハ
十億、免ニ角交戰國ノ債務ナルモノハ百八十二億圓以上ニナッテ居ル、是ハ實
ニ各交戰國ハ勿論、其中ニ於テ金力、資力ノ豐富ナル英國、佛蘭西ニ對シテ
モ隨分私ハ過大ナル負擔ダラウト思ヒマス、殊ニ英國佛蘭西ト云フモノハ自
國ノ戰後ノ經營ノミナラズ、何レ戰後ニ於テハ他ノ交戰國ノ分モ引受ケナケ
レバナラヌ、宜ナルカナ英國ハ旣ニ其心ヲ以テ當ッテ居ル、必ズ此戰後ノ交戰
國ノ財政經濟ノ整理ノ大任ヲ英國ニ歸スルモノト思ッテ居ル、サウシテ交戰國
ニ於テノミナラズ、一般ノ負擔ハ英國佛蘭西ニ歸スルモノデ、加フルニ是カ
ラ先キ將來ノ公債其他ノ增發若クハ戰後ノ增稅、其時ニ當ッテ歐羅巴ノ市場ニ
於テ如何ナル模樣ヲ見ルデアラウカ、ソレニ本員ノ如キハ頗ル憂慮イタシテ
居ルノデアリマス、實ニ歐羅巴ノ金融市場、公債市場、其他ノ財政經濟市場
ニ於テハ、一語デ言ヘバ財政ノ動員ハ最モ激甚激大ナルモノデアル、遙〓日
本ヨリ其際ニ出テ公債ノ借替ヘヲ圓滿ニ爲シ得ルヤ否ヤ、殊ニ償還スベキ資
力ガ豐富ニ存在シテ、確實デアルナラバ借替ヘモ出來マセウガ、己ノ資力ノ
確實ガ稍少クシテ、ソレカラ借替ヘルト云フコトハ容易ニ出來マイ、殊ニ唯
今申上ゲマシタ如ク、勅令百九十四號ニ於テモ、勅令百七十八號ニ於テモ各、
其六條ニ於テ元利金ノ償還ハ煙草専賣益金ヲ以テ擔保トストアル、ソコデ本
員ノ考ニ於キマシテハドウモ唯〓ノ豫定デハ其時ニ於テ圓滿ニ完全ニ償却
ヲ爲シ得ヌヤウニ思ヒマス、又借替ヘノコトモ頗ル困難デアラウ、借替ヘルト
云フコトガ困難デ有ル無イト云フコトハ論ゼズシテ、私ハ單一ナル國務ノ執
政方法、國務ヲ執ル方法トシテ安全ナル方法ハ矢張リ現行ヲ維持シテ普通ノ
常形ニ從ッテ進ンデ行クノガ當然デアラウト思ヒマス、何ガ故ニ大藏大臣ハ
三十九年ノ前ニ於テ是ハ永久不變ノ政策ナリトスル、大正四年ノ前ニ於テハ
又而カモ大ニ周圍ノ事情異ナルト云ハレマスケレドモ、周圍ノ事情ハ前ト少
シモ變リマセヌゾ、如何トナレバ此國債整理基金ノ改正ニ付テノ方針ナルモ
ノハ內閣ノ成立ノ時ニ公表セラレ、遠ク今ノ歐羅巴ノ大戰ノ發生ニ先立ッテ、
其時ニ於テ當時ノ施政ノ方針トシテ大藏大臣ハ何ト云ハレタ、凡ソ輸入超過
國ノ外國債務ヲ決濟スルハ輸出超過ノ差異ニ依ル、ソレハ原則トシテハ當然
デアル、併ナガラ日本ノ如キニ於テハ其實行ハ頗ル困難デアラウト思フ、ソレ
マデハ募債セズ、故ニ外國貿易ノ權衡ヲ保タムガ爲ニ、其時ノ方針トシテ三
十九年法律六號ノ實行ハ是ハ遂行シ得ラレナイ、變ハル、事情ガ變ヲタカラ之
ヲ變ヘルト云フコトヲ言ハレテ居リマスガ、今日ニ於テハ事情ガ變ハル、或
ハ不能ト云ハレルノハ是ハ歐維巴ノ戰局ノ爲デナイ、其前ノ平常ノ事態ニ付
テ言ハレタコトニ相違ナイ、前々ノ事情ハ現行法ノ發行ノ時ト少シモ私ハ
異シテ居ラヌト思フ、私ハ此所ニ於テハ別ニ現行法、第九號ノ執行上事態ノ變
遷等ノコトニ付テ大藏大臣ニ說明ハ求メマセヌ、又願ハクハソレニ對シテ御
說明ヲ下サザラムコトヲ求メマス、詰リ餘計ナコトデアリマス、殊ニ其中ノ
或部分ハ或ハ違憲ニ涉ルデアラウト思ヒマスカラ私モ求メマセヌ、唯私ノ今
述ベマシタ如キ實況デアレバ、大正十五年迄ニ負擔スル外債ヲ圓滿ニ借替ヘ
ルコトヲ得ルヤ否ヤ、又借替ヘルコトヲ得ザル時ニハ何ヲ以テ償還スルカ、
其時分ニハ大ニ國費ヲ減ジテ裕餘ヲ作ラレテ、アトノ三億九千萬圓ヲ償遠ス
ルコトヲ得ルヤ否ヤ、又或ハ更ニ增稅デモサレルヤ否ヤ、殊ニ況ヤ明治三十
九年ノ法律六號ニ定メタ返還金ハ單リ外債ノミナラズ內國債モアル、ソコデ
今或ハ外國債ヲ返スコトハ難イ、內國債ハ還ヘセバ直チニ還ヘスコトガ出來
ルト云ハレマスケレドモ、是ハ迚モ既ニ五分利ニシテ一億九千萬圓尙ホ其他
ヲ合セ、合計三億九千万圓ト云フノデアルソンナ短日月ニハ返ヘセヌ、然
ラバナゼ此法律ノ遂行ガ困難デアルナラバ一時一部分ノ內國債ノ返還ヲ力メ
ラレヌノデアルカ、是ハ本員大ニ分ラヌ、免ニモ角ニモ日程第七、第八ノ此
法案ハ國家ノ遠キ將來ニ涉ル法案デアリマス、何ガ故ニ之ヲ此短時間ノ臨時
議會ニ提出セラルルノデアルカ、是ハ本員ノ大ニ疑フ所デアリマス、一體今
開カレタル此臨時議會ナルモノハ昨年········解散ノ結果增師ノ問題ニ基イテ居
ル、增師ノ問題、海軍ノ問題、是ハ已ムヲ得ヌ、是ニモ意見ハアリマスケレ
ドモ所謂從前ノ行掛リデアリマス、獨リ此鐵道ノ問題ニ付テハ從來存セザル、
昨年六月ニ於テ、三十二囘ニ於テ其前ニ不成立ニナリタル海軍補充費ノ提出
スラ本員ノ如キハ意見ヲ有ッテ居リマシタケレドモ、時ハ最モ必要ナ場合デア
リマスルカラ已ムヲ得ナイコトト思ウテ居リマス、又增師モ是モ從前ノ行掛
リデ豫算不成立ノ結果已ムヲ得ヌコトト思ヒマス獨リ此鐵道ノコトハ增師
トモ海軍補充費トモ違ッテ、全ク普通ノ營業事務、何デモナイ事務デアル今
日ノ鐵道ノ經營ト云フモノハ其半面カラ見レバ要スルニ一ノ營業事務デ、國
家ノ經營ニハ相違アリマセヌケレドモ一ノ營業事務、卽チ國民ノ經濟、國
民ノ給養、必要如何ニ從ッテ是ハ調和セラルベキ問題デアル、敢テ至大ナル陸
海軍ノ事務ノ如キ急要ナモノト私ハ思ハヌ、而カモ況ヤ此臨時議會ニ於テ一
部ヲ協賛セヨト言ハルルモ、若シ其一部ヲ協賛シタナラバ丁度大正二年ノ帝
國議會ガ海軍ノ提出ノ一部ノ協賛ヲ爲シテ後デ困難ヲ見タルト同ジコトニナ
ル、殊ニ本員ガ此所ニ更ニ伺ヒタイノハ此臨時議會ニ提出セラレタル一部
ニ基ク鐵道事業ノ追加豫算ナルモノハ一億一千萬圓デアリマス、併ナガラ是
ハ不成立ニナリタル大正三年度ノ鐵道繼續費ノ要求八億七百萬圓ノ一部デア
リマス、其八億七百萬圓ト云フモノハ大正元年度ノ基礎ニ基ク四億五千二百
十五萬ニ三億五千萬ヲ加ヘタル八億九百萬ノ一部デアル、今此所ニ於テ鐵道
特別會計ニ依ッテ將來此所ニ提出セラルル鐵道豫算ノ協賛ハ必ズ其末ニ於テ
八億九百萬圓ノ增額ヲ認ムルト同ジク、而カモ鐵道ノ經營ニ於テ必要ナル廣
軌問題ノ如キハ如何ナル、是ハ必ズ起ルコト、今大藏大臣ノ午前ノ說明ニ於
テ暫クノ間ハ鐵道ノ資源ハ完全デアル、圓滿デアルト云ハレマシタケレドモ、
之ニ加フルニ僅ニ數年ヲ出ズシテ必ズ廣軌問題ハ起ッテ來ル、何トナレバ滿洲
朝鮮ノ運輸能力、又輸送時間、輸送能力、時間能力、之ヲ比べマスレバ內地
ノ鐵道ハ僅ニ五分ノ一デアル、實ニ尾大振ハズト云フコトガアリマスガ、頭
大振ハズト云フ有樣デ、首尾相轉ジタル有樣デアリマス、サウ云フ有樣デア
リマスカラ今其事ニ付テ此所ニ述ベマセヌケレドモ是ハ必ズ近キニ起ルコ
ト、然ラバ鐵道經營ノ根本ハ不定デアル、而カモ其資金ガ不定デアル、何ト
ナレバ稅ヲ以テ貸付ケ、國家ガ稅ヲ人民カラ徵收シテ而シテ利殖シテ貸付ケ
ルト云フコトハ、是程法理ニ背イタルコトハ私ハナイト思フ、斯ウ云フモノ
ヲ以テ之ヲ維持シテ行クト云フ程ノ鐵道經營ノ現今ノ有樣デアルカラ、此鐵
道經營ナルモノハ又不定デアル、資本モ不定其行政モ不定デアル、大抵諸君
ノ中ニモ御承知デゴザイマセウ、鐵道ノ經營トシテ是ハ信用ヲ置クベキコト
デアリマセヌ、唯〓京濱電車ノ如キハ何ノ爲ニ出來タ、五百萬圓餘ノ金ヲ投
ジテ、トント運轉セヌ、其如クデアッタナラバ鐵道ノ行政ハ將來ドウナルカ、
加フルニ資金ハ如何、一體明治四十二年度ニ於テ鐵道ノ特別會計ノ制度ヲ制
定シテ、鐵道ト云フモノヲ一、甚大法人ト看テ之ヲシテ至大ノ權利ヲ有セシ
メ、之ヲシテ至當ナル、適實ナル公債ヲ募ラシメ、一般ノ行政上ノ公債トハ別
ニシテ之ヲ一ノ營業的經理トシテ行ッタト云フ方針ハ此處ニ於テ破レテ仕舞ツ
タ、全ク破壞セラレテ仕舞ッタ、私ハ實ニ是ハ由々シイコトニ思フ、斯ノ如キ
法案ヲ此臨時議會ニ提出セラレ、早急ニ議定セシムルコトハ非常ナル、私
憂慮スベキコトデアルト思ヒマス、是ハ實ニ重大ナルコトデアラウト思ヒマ
ス。殊ニ現內閣ニ限ッテ總理大臣始メ本院ニ於テ頻ニ輔弼ノコトヲ口ニセラ
じ、是ハ目賀田ハ恭シク總理大臣始メニ御注意申上ゲマスガ、貴族院ニ對
シテハ斯ノ如キ御注意ハ要ラヌト思ヒマス、皆能ク心得テ居ル、斯ウ云フ大
經綸ヲ此所ニ於テ輕〓シク議セラルルハ私ハ大ニ其道ニ適ハヌト思ッテ居リ
やっと、私ハ前ニ質問イタシマシタノハ、更ニ明白ナル說明ヲ得ルガ爲ニ大藏
大臣ニ繰返シテ申上ゲマスガ、將來大正十五年マデニ返却スベキ額ハ六億七
千二百六十三萬圓ニシテ其內、五億五千百五十七萬圓ハ各勅令ノ定メル所
ニ依リ煙草專賣收入ヲ以テ抵當ト爲ス、今此改正ヲ行フ時ハ十年間ノ將來ニ
返還額ハ三億圓ニ止マル、然ラバ是ハ將來借替ヘヲ意味スルモノナルヤ、償
還ヲ意味スルモノナルヤ、或ハ增稅ヲ意味スルモノナルヤ、又或ハ其勅令ハ
直グニ廢セラレテ效力ナキヤ否ヤ、多分效力ナイモノト思ヒマスガ、是亦大
正十四年七月十四日ニ返還スベキモノハ當初三十八年六月十日以來政府ノ訓
令ヲ以テ、初メ獨逸ト交渉ヲシテ出來タモノデアリマス、又歐羅巴ニ於ケル
戰局後ノ負擔ハ非常デアル、サウ云フ最中ニ於テ向フ十年間ニ借換ヲシ得ル
ヤ否ヤ、成ルホド明治三十八年ヨリ大正二年ニ亙リ借入レタル公債額ハ八億
餘ニ上ッテ居リマス、是ハ平和ノ時デアル、今ハ平和ノ時デナイ、殊ニ將來戰
後ノ財政狀態ノ歐羅巴ニ於ケルモノハ、殆ド付度スベカラザル有樣デアルト
思ヒマス、其中ニ於テ容易ニ出來ルヤ否ヤ、本員大ニ之ヲ憂慮シマス、ソレ
ガ第一段ノ問題デアリマス、束ネテ御答辯ニナリマスノハ是ハ御隨意デアリ
マスガ、願ハクハ他ノコトニ亙ラザルヤウ、徒ラニ外ノ事實ヲ御述べ下サレ
テモ苟モ本員ハ存ジテ居リマス、御免ヲ蒙リタイ、唯簡單ナル說明、午前ノ
分ノ如キ實ニ餘計ナル御說明ハ目賀田ノ如キハ甚ダ迷惑、ドウゾ御免ヲ蒙ム
ル、ソレカラ第二段ハ國家ガ國民ヨリ稅ヲ徵收シ而シテ之ヲ貸付ケテマデ國
民ノ營業資金ヲ取ッテ宜イモノデアルカ、サウ云フ財政經濟ノ法理ハドコニア
ルカ、法律トスレバ宜シウゴザイマスガ、是ハ私ハ實ニ帝國議會始ッテ以來、
斯ノ如キ法案ノ協贊ヲ求メラレルノハ頗ル怪シム、誠ニ目賀田ハ分ラヌ男デ
ス、ドウゾ審ニ目賀田種太郞ニ········目賀田種太郞ノ申スコトハ貴族院議員ノ
申スコトデアリマス、私ハ········貴族院議員トシテノ目賀田ハ餘程重ンズベキ
デアル、輕〓シク御答辯ノ無カラムコトヲ希望イタシマス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=55
-
056・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 目賀田男爵ノ御質問ノ第一點、卽チ特別會計ノ
資金ヲ事變ノ場合ニ一般會計ニ繰換ヘテ使ッタ例ハアルガ、一般會計ノ金ヲ特
別會計ニ貸付ケテ利殖スルト云フヤウナ事柄ハ如何ナル理由ニ依ッテ左樣ニ
ナスカ、斯ウ云フ御尋ニ對シテ第一ニ御答イタシマスガ、此度ノ改正案ハ
般會計ノ金ヲ鐵道特別會計ニ貸付ケテ利殖シヤウト云フ意味デハアリマセヌ
ノデ、鐵道ニ付テノ資金ヲ益金以外何等カニ求メナケシバナラナイ必要ニ
迫ッテ居ルノデアリマス、ソレヲ是マデ公債募集金デ求メテ居リマシタガ、公
債ヲ內外市場ニ募集スルコトハ戰爭前ノ狀態ニ於テ日本ノ經濟ノ上ニ私ドモ
ハ不良ノ影響ヲ與ヘルモノデアルト見テ居リマスルカラ、內外市場ニ公債ヲ
募集スルコトハ改メテ掛ラヌケレバナラヌト云フ考デアリマシタガ、今回歐
羅巴ノ動亂ガ起ッタニ付テ、益〓此經畫ヲ變ヘテ掛ラナケレバナラヌト云フコ
トノ急切ヲ感ジタノデアリマス、然ラバドコカラ資金ヲ持ッテ來ルカト云フ
トゝ公債ヲ募集セナイト云フコトデ、而カモ鐵道ノ資金ハ必ズ之ヲ要スルト
云フコトデアレバ、之ヲ一般會計ノ歲入ニ求ムル外ハ仕方ガナイ、而シテ鐵
道ハ自分ノ益金デ其建設改良費ニ充テタモノノ償還ヲセシメルヤウニシテ經
營シテ行カウト云フノガ、今日ノ鐵道特別會計ノ趣意デアリマスルカラ、之
ヲ一般會計ノ資金カラ鐵道ニ支出シ切リニセズシテ、矢張リ貸付ケト云フコ
トニシテ、一方ニハ鐵道ハ自分ノ收益ヲ以テ建設改良費ヲ元利償却シテ行ク
ト云フ精神ヲ貫カシメ、一方ニハ鐵道ノ爲ニ要スル資金ヲ確實ニ調ヘテ行カ
ウト云フ、斯ウ云フ趣意ニ於テ今囘ノ改正ヲ致シタノデアリマス、一般會計
ノ金ヲ地方ノ災害復舊費等ニ貸付ケタ例ハ從前幾ラモアリマスノデ、已ムヲ
得ヌ場合ニ於テ一般會計ノ歲入ヲ貸付ケルト云フコトガ全ク前例ノナイコト
デモアリマセヌカラ、今囘ノ經畫ヲ立テタノデアリマス、尙ホ鐵道ニ付テハ
以前ニハ一般會計ノ歲人デ其建設費ヲ辨ジタモノモアルノデアリマス、ソレ
アル故ニ必ズ之ヲシテ宜イト云フコトデハアリマセヌガ、今日午前中カラ申
上ゲタ通リ鐵道ノ爲ニハドウシテモ益金以外ニ或資金ガ要ルノデアル、其資
金ハ今日ハ之ヲ公債募集ニ於テ調辨スルコトハ日本ノ經濟上不良ノ影響ヲ與
ヘテ宜シクナイノデアル故ニ一般歲入ノ上カラ之ヲ貸付ケル方ガ、今日ニ
於テハ最モ適切ノ方法デアルト云フヤウニ考ヘタノデアリマス、第二點ノ大
正十五年マデニハ六億圓前後ノ公債償還ヲシナケレバナラヌコトニナッテ居
ルガ、唯今公債償還金ヲ減ズルト云フコトニスルニハ此十年間バカリノ間ニ
大ナル外國ニ向ッテノ償還ヲ爲サナケレバナラヌコトガアルニ依ッテ、餘程妨
ゲハアリハセヌカト云フ御憂慮ガアルニ付テ御質問ニナッタノデアリマス、是
ハ私共モ同ジ事ニ付テ餘程考慮ヲ加ヘテ居ルノデアリマス、大正十五年マデ
ニ於テハ大ナル金額ノ償還期限ガ來ルノデアリマス、併ナガラ是マデ五千萬
圓ヅツ償還スル、其前ニハ五千萬圓デハナカッタノデアリマスガ、免ニ角明
治三十九年カラ國債整理基金法ト云フモノガ成立シテ居リマスガ、明治三十
九年度ニ於テモ、四十年度ニ於テモ、四十一年度ニ於テモ、四十二年度ニ於
テモ償還金デ外債ノ償還ヲシタノハ殆ドナイノデアリマス、明治四十三年度
カラ始メテ外債ニ向ッテ千萬圓償還スルト云フコトニシテ、其翌年度カラ遂ニ
大正三年度前期マデハ其方針ヲ以テ進行シテ居リマシタガ、之ニ依フテモ年々
千萬圓ノ償還額デ、トテモ五千萬全部ヲ外國ニ償還スルコトナドニハ是マデ
デモ實行イタシテ居ラナイノデアリマス、從來ノ如キ償還額ナラバ今囘ノ經
畫ニ依ッテ總償還額ガ三千萬圓ニナリマシタ所ガ尙ホ之ヲ續ケテ行クコトハ
出來ヌコトハナイノデアリマス、之ヲ爲スコトノ得失如何ト云フコトハ別問
題デアリマスガ、出來ルヤ否ヤト云フコトヲ申上ゲレバ、三千萬圓ニナッテモ
是マデ通リノコトハ出來ヌコトハナイノデアリマス、何レニシテモ到底此大
正十五年ニ期限ノ到來イタシマス所ノ六億圓前後ノ償還スベキ金額ニ付テ
ハ、十五年マデニ償還シ終ルト云フコトハ、私共ノ考デハ到底ムヅカシイト
思フノデアリマス、從前ノ五千萬償還ノ經畫ヲ繼續シテ居リマシテモ、今日
ノ三千萬償遠ノ經畫ヲ實行イタシマシテモ、何レニシテモ到底大正十五年マ
デニ償還期限ノ到來スル國債ヲ悉ク償還スルト云フコトハムヅカシイノデア
ル、何レニシテモ是ハ借替ヘルノ外ハナイノデアリマス、其借替ヲ致スニ付
テハ今日マデノ五千萬償遠ノ經畫ヲ維持シテ、サウシテ一方ニ鐵道ノ爲ニ要
スル資金ヲ新タニ募集スル、卽チ公債募集ヲシテ、日本ノ公債ヲ一方ニ償還
シタヤウデアルガ、他ノ一方ニ募集シテ、結局現存高ハ餘リ減ズル所ハナイ、
場合ニ依レバ額面トシテ增加スルヤウナ狀態ニナル、而カモ募集スル度每ニ
其發行條件ガ餘リ有利デナイト云フコトデアリマシタナラバ、益〓日本ノ公債
ノ價格ノ上ノ信用ヲ害スルヤウナ狀態ヲ呈スルデアラウト思ヒマスガ、左樣
ナコトヲ致シタナラバ大切ナル償還期限ノ到來シタ時ニ借替ヲ實行スル上ニ
却ッテ良クナイト私ハ考ヘテ居リマスノデ、新シク公債ヲ募集シテ日本ノ公債
ニ惡ルイ影響ヲ及ボスヨリモ、今囘ノ如ク改正シテ行ク方ガ十五年迄ニ期限
ノ到來スル大ナル金額ニ對スル借替ニハ却ッテ都合ガ好イト云フ見込ヲ持ッテ
居ルノデアリマス、又目賀田男爵ノ第三ノ御質問デアルト思ヒマスガ、斯樣
ナ大問題ヲ此臨時議會ニ提出シタノハ如何デアルカ、臨時議會ニ對シテハ二
個師團增設或ハ海軍問題ノミヲ提出スルガ相當デアル、其以外ノモノマデ出
スノハ如何デアルト云フ御質問ノヤウデアリマスガ、併ナガラ今囘ノ臨時議
會ナルモノハ普通ノ或目的ヲ定メテ召集ニナッタ議會ト違ッテ、衆議院解散ノ
後ノ特別議會デアッテ、初メカラ議會召集ニ付テノ問題ハ極ッテ居ラヌ故ニ、
豫算不成立ノ結果、今日ハ國費ノ上ニ於テ種々議會ノ協賛ヲ受ケナケレバナ
ラヌモノガアルノデゴザイマス、ソレ等ニ付テ此特別議會ニ協賛ヲ仰グト云
フコトハ是ハ至當ノコトノヤウニ考ヘテ居リマス上ニ、唯今申述べマスル通
リ鐵道資金ヲ如何ニ調達スルカ、國債償還ノ經畫ヲ如何ニスルカト云フコト
ハ政府ガ增師問題其他ト共ニ衆議院ヲ解散スルコトヲ奏請イタシマシタ重モ
ナル事由ニナッテ居ルノデアリマスカラ、總選擧ノ後ノ此特別臨時議會ニ向。ツ
テ衆議院解散ノ理由ノ一タル鐵道特別會計法ノ改正案竝ニ國債整理基金法改
正案ヲ提出シテ協賛ヲ仰グト云フコトハ、事態ノ上ニ於テ當然ノ事柄デアル
ト、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=56
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057・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 本員ハ少シ大藏大臣ニ伺ヒ置キタイコトガアリマ
ス、第一、一般會計ヨリ鐵道特別會計ニ貸付ケルノハ利殖デナイト云フコト
デアリマスガ、貸付ケルコトハ利殖ト同ジコトト思ヒマス、利殖スルノデナ
ケレバ、ナゼ貸付ケルノデアリマスカ、甚ダ私ニハ分ラヌ、第二ニ目賀田ハ
決シテ六億前後ナドトハ申シマセヌ、目賀田ガ計算イタシマシテモ六億七千
二百六十三萬圓ニナル、決シテ六億前後ナドト云フコトハ申シマセヌ、免
角六億以上ノ高ガ多シ、書イテアル金ガ七千萬以下ニナルコトハナイ、前後
ナドト云フコトハ決シテ目賀田ハ申シマセヌ、國家ノ財政ヲ司ル大藏大臣ニ
於テ六億内外ニ亙ル金ヲ唯前後ト言ハルル、是ガ自己ノ言ナラバ宜シイ、質
問者ガ言ッタ如クニ言ハレルノハ頗ル發言ノ重カラザルヤウデゴザイマス、
目賀田ハ決シテサウハ申シマセヌ、改メテ申シマスガ六億七千二百六十三萬
圓トナル、其中帝國政府ノ煙草專賣ヲ以テ擔保トシ、大正十四年ニ返還スベ
キ分ガ五億五千百五十七萬圓アル、之ニ對シテ改正ノ如クンバ到底借替ヘル
ヨリ外ニ仕方ガナイガ、其借替ト云フコトガ困難デハナイカト云フ御尋ネヲ
シタ、此借替ノ手段方法等ニ付テハ敢テ申シマセヌガ、唯今ノ御答辯ハ目賀
田ノ質問ニ適スル所ハナイヤウデゴザイマス、唯今ノコトヲ繰返シテ申シマ
スガ、目賀田ハ六億前後ナドト云フコトハ決シテ言ヒヤセヌノデアリマス、
ソレカラ第三ニ臨時議會ノコトヲ仰セラルルケレドモ、是ハ將來必ズ········近
キ將來ニ鐵道ノ繼續費ノ追加要求ガ八億以上ニ上ルコトデアラウト思ヒマ
ス、ソレニ對スル經營方法ハ既ニ付イテ居ッテ、其案ノ提出ヲセラルルノガ普
通デアル、免ニ角徐ロニ議サレタラ如何デアラウカト云フコトヲ申シマシタ、
唯今言ハレタ如ク臨時議會ニ於テハ前ヨリ引繼キ解散ノ結果必要ナルモノト
見ナケレバナラヌソレナラバ解散ノ結果須要ノモノナラバ、ナゼ鐵道ノ經
營ノ如キハ前ノ三億五千萬圓ト云フノヲ、ナゼ提出セラレナイ、又其一部ヲ
提出セラルルナラ三億五千萬圓ヲ基礎トシテ何ガ故ニ提出セラレヌカ、解散
ノ結果トシテ提出シタト言ハレマシタガ何故ニ一億千萬圓ト改メラレタノデ
アルカ、此三點ガ今ノ大臣ノ說明ニ依ッテ更ニ不分明ナル所デアリマス、尙ホ
一應伺ヒマス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=57
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058・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 今ノ貸付ノコトデアリマスガ、私ハ其精神ヲ申
シマシタノデアリマス、鐵道ノ資金ガアッテ、已ムヲ得ズ一般會計ノ金ヲ以テ
之ヲ支辨スルヤウニ致シマシタノデ、趣意ハソコニ在ルノデアリマス一般
會計ノ金ヲ利殖スル爲ニ鐵道資金ニ貸スノデハナイト申シマシタノデ、ソレ
カラ六億七千幾ラト云フコトニ付テ私ガ目賀田男爵ガ六億前後ト仰セニナツ
タヤウニ申シタナラバ、ソレハ私ノ間違デアリマス、目賀田男爵ガ仰セニナ
ル六億七千幾ラト云フ數字ハ目賀田男爵ノ仰セニナッタ通リト思ヒマスガ、左
樣ニ相成ッタ所デ先ニ私ノ說明イタシマシタ自分ノ意見ハ少シモ變化スル所
ハナイノデアリマス、財政ノ經畫ニ付テハ衆議院ノ反對ヲ受ケマシタノデ、
遂ニ解散ヲ見ルニ至リマシタノデ、其解散ノ理由ニナッタモノヲ提出イタシ
マシタガ、鐵道ノ經畫ニ付テハ午前ニモ申上ゲマシタ如ク三十五議會ニ提出
イタシマシタ鐵道經畫ニ付テ、當時衆議院ハ旣ニ之ヲ可決シテ居ラルルノデ
アリマス、其經畫ハ衆議院ガ認メテ居ラレテ、其點ハ政府ト衆議院ト意見ヲ
異ニスル所ガアリマセヌカラ、其經畫ノ全部ニ付テハ是認ヲ受ケテ居ルト了
解シテ居リマス、唯豫算提出ニ付テ今囘特別臨時議會ナルガ故ニ大正四年度
カラ著手スルモノヲ出シテ、新案ハ次ノ帝國議會ニ提出シヤウト云フ考デア
ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=58
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059・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 議事日程第七、第八ノ特別委員ハ、第五、第六
ノ委員ト同一委員デ御異議ハゴザイマセヌカ
「「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=59
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060・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記
官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔河井書記官朗讀〕
治水費資金特別會計法廢止法律案外三件特別委員
伯爵寺島誠一郞君子爵牧野忠篤君子爵前田利定君
子爵榎本武憲君男爵久保田讓君江木千之君
男爵目賀田種太郞君男爵〓誠之助君仁尾惟茂君
石渡敏一君勝田主計君水野鍊太郞君
田中源太郎君土居通博君安田善三郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=60
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061・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 議事日程第九、大正四年勅令第十一號(承諾ヲ
求ムル件)衆議院送付、會議
大正四年勅令第十一號
右本院ニ於テ承諾スヘキモノト議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送
付候也
大正四年五月三十一日
衆議院議長島田三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
大正四年勅令第十一號
朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝國憲法第八條第一項
ニ依リ衆議院議員選擧資格ニ關スル件ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正四年二月十三日
內閣總理大臣伯爵大隈重信
內務大臣子爵大浦兼武
外務大臣男爵加藤高明
臣岡市之助
軍軍
臣八代六郞
文大海陸大大大大
若槻禮次郞
部藏學
臣臣臣博法士一木喜德郞
司法大尾崎行雄
遞信大臣武富時敏
農商務大臣河野廣中
勅令第十一號
本令公布ノ際衆議院議員選擧法第二十七條ニ依リ確定セル選擧人名簿ニ登
錄セラレタル者ハ同法第八條第三號ノ要件ニ異動ヲ生スルコトアルモ該名
簿ニ依リ行フ選擧ニ限リ選擧權ヲ失ハサルモノトス
〔國務大臣子爵大浦兼武君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=61
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062・大浦兼武
○國務大臣(子爵大浦兼武君) 唯今問題ニナリマシタ緊急勅令ノ事後承諾案
ニ付キマシテ大要ヲ申上ゲタイト存ジマス、本年二月二十五日ヲ以テ行ハレ
マシタル所ノ衆議院議員總選擧ニ付キマシテハ、曩ニ地租條例及營業稅法ノ
改正ノ結果トシテ、確定名簿ニ登錄セラタル選擧有權者ノ中、其納稅資格ヲ失
フ者ハ甚ダ尠カラザル場合ニ立至ッタノデアリマス、而カモ營業稅法ハ撰擧ノ
期日マデニ其稅額ヲ定ムルコトガ甚ダ不可能デゴザイマス、到底此儘ニ置イ
テ選擧ヲ行ハムカ、所在選擧有權者ノ有無ニ原因シテ選擧訴訟ノ續々起ルト
云フコトヲ甚ダ憂慮イタシタノデゴザイマス、是ニ於テ再ビ選擧ヲ行ハザル
ヲ得ザルノ混雜ヲ見ルコトヲ甚ダ憂ヘタル所ヨリシテ、緊急勅令ヲ公布セラ
レタル次第デゴザイマス、此勅令ハ本年ハ選擧人名簿確定スルマデ效力ヲ有
セシムルモノデゴザイマスルガ故ニ、憲法第八條ニ依ッテ帝國議會ニ事後承諾
ヲ求メル爲ニ提出イタシタル譯デゴザイマス、速ニ御協賛アラムコトヲ希望
イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=62
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063・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 內務大臣ニ承リタウゴザイマス、簡單デス、營業稅
法ノ改正ハ緊急ノ場合ニ發セラレタル、卽チ此承認ヲ求メラルル勅令第十一
號ノ前ニ於テ營業稅ノ改正ハ行ハレ居ル如ク思ヒマス、凡ソ法律ノ改正ト云
フモノハ、其結果ハ改正ト共ニ當然生ズルモノト豫測セラルルノガ當然ノコ
トト思ヒマス、故ニ本員ノ伺ヒタイノハ、何故ニ當時法律ヲ發セラレタルト
キニ此勅令ヲ要セラルルニ至ラナカッタガ、營業稅ノ修正ニナリ減稅ニナッタ
トキニ於テハ、其結果トシテ選擧資格ニ影響ガアルト云フコトハ分ルコトデ
アル、法律ヲ改正スレバ事實ガ從ッテ變ズルト云フコトハ當然デアル、政府者
ノ職分トシテ當然分ルコトト思ヒマス、ドウ云フ譯デ其場合ニ法律ヲ發布セ
ラレズ、營業稅ノ改正アリタルト同時ニ、假令其案ガ衆議院ニ發セラレヤウ
ト政府カラ提出ニナラウトモ、其時ニ提出セラレズニ後カラ提出ニナッタ
ト云フ理由ハ如何デスカ、ソレヲ伺ヒタイ
〔國務大臣子爵大浦兼武君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=63
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064・大浦兼武
○國務大臣(子爵大浦兼武君) 唯今御尋ネノコトハ、營業稅法ハ御承知ノ通
リズット前ニ改正ニナリマシタ、衆議院ノ選擧ト云フコトハ御承知ノ通リ俄ニ
昨年解散ニナリマシテ此場合デゴザイマシタカラ、其營業稅法ノ改正ノ時ニ
ハ斯ノ如キコトガアラウトハ考ヘズニ私ハ居ッタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=64
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065・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 凡ソ法律ヲ改正スレバ、之ガ改正ニ伴フ總テノ結果
ハ總テ伴隨スベキモノト云フコトハ大抵ノ法律學者ノ皆知ッテ居ル所デアル、
後ニ衆議院ノ選擧ガ有ラウトモ無カラウトモ、法律ハ改正サレレバ必ズ其變
化ハ伴フベキハ當然デアル、唯今ノ御說明ノ如クンバ、政府タル注意ヲシナ
イヤウニ思ヒマスガ、サウデナイノデスカ
〔國務大臣子爵大浦兼武君「御答イタシマセヌ」ト述フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=65
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066・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 唯今ノ質問ニ對シテハ說明ハナイノデスカ
〔國務大臣子爵大浦兼武君「說明ハ致シマシテゴザイマス」ト述フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=66
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067・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 說明ハナイノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=67
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068・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 說明ハナイト云フ內務大臣ノ言デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=68
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069・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 是ハ本員ハ甚ダ不親切デアルト思フ、貴族院始マッテ
以來、議員ノ正當ナル質問ニ對シ說明ヲセラレヌト云フハ、本員ハ解シマセ
ヌ、非常ニ不正當ナル質問又不必要ノコトト思ヘバ··本院ハ法律ヲ制定ス
ル院デアル、法律制定ノ府デアル、故ニ本院ノ當然ノ職分トシテ之ヲ伺フノ
デアル、御說明ハナイノデアルカ更ニ伺ヒマス、今一應伺ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=69
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070・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 先刻目賀田男爵ニ申シマシタヤウニ、內務大臣
ハ說明ヲ致サレナイト云フコトヲ申サレマシタ、特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲ
シテ朗讀イタサセマス
〔河井書記官朗讀〕
大正四年勅令第十一號(承諾ヲ求ムル件)特別委員
伯爵吉井幸藏君子爵靑木信光君男爵石黑忠悳君
男爵山名義路君岡喜七郞君阪本彭之助君
橋本辰二郞君福島文右衞門君鈴木周三郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=70
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071・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 明日モ會議ヲ開キマス、議事日程ハ追テ本院彙
報ヲ以テ御通知ニ及ビマス本日ハ散會イタシマス
午後二時九分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00519150601&spkNum=71
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