第36回帝国議会　貴族院　本会議　第6号　大正4年6月2日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　大正四年六月二日（水曜日）
  　　　　午前十時六分開議
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  　　議事日程　第六號　大正四年六月二日
  　　　　午前十時開議
  　　第一　大正四年度歳入歳出總豫算追加案（第一號）審査期限を定むるの件
  　　第二　大正四年度各特別會計歳入歳出豫算追加案（特第一號）審査期限を定むるの件
  　　第三　豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件（追第一號）審査期限を定むるの件
  　　第四　臨時軍事費豫算追加案審査期限を定むるの件
  　　第五　大正四年度歳入歳出總豫算追加案（第二號）審査期限を定むるの件
  　　第六　作業會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第七　造幣局特別會計法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第八　貨幣整理資金特別會計法廢止法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　第一讀會
  　　第九　帝國學士院學術奬勵金特別會計法廢止法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　第一讀會
  　　第十　帝國學士院學術研究奬勵金委任經理に關する法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會
  　　第十一　明治三十三年法律第五十號中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　第一讀會
  　　第十二　教育基金法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第十三　要塞地帶法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
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• 001・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　是ヨリ諸般ノ報〓ヲ致サセマス
  「河井書記官朗讀〕
  昨一日特別委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
  要塞地帶法中改正法律案可決報告書
  同日議員男爵肝付兼行君外三名ヨリ三十一名ノ賛成ヲ以テ出征軍人家族廢
  兵戰病死者遺族救護ニ關スル建議案ヲ發議セリ
  同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
  作業會計法中改正法律案
  造幣局特別會計法案
  貨幣整理資金特別會計法廢止法律案
  帝國學士院學術奬勵金特別會計法廢止法律案
  帝國學士院學術〓究獎勵金委任經理ニ關スル法律案
  明治三十三年法律第五十號中改正法律案
  〓育基金法案
  大正四年度歲入歲出總豫算追加案(第一號)
  大正四年度各特別會計歲入歲出豫算追加案(特第一號)
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第一號)
  臨時軍事費豫算追加案
  大正四年度歲入歳出總豫算追加案(第二號)

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• 002・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、治水費資金特別
  會計法廢止法律案外三件ノ特別委員男爵〓誠之助君ヨリ、病氣ノタメ同委員
  ヲ辭任イタサレタキ旨ノ申出ガアリマシタ、之ヲ許可シテ御異存ゴザイマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 003・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　御異議ナイト認メマス、依ッテ此補缺トシテ男爵
  眞鍋斌君ヲ指名イタシマス

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• 004・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　議事日程第一、第二、第三、第四、第五
  〔左ノ送付文ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス〕
  (第一號)大正四年度歲入歳出總豫算追加案
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (特第一號)大正四年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  臨時軍事費豫算追加案
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (第二號)大正四年度歲入歲出總豫算追加案
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

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• 005・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　諸君、玆ニ大正四年度歲入歲出總豫算追加案ヲ
  諸君ニ御紹介イタス光榮ヲ有シマス大正四年度歲入歲出總豫算追加第一號
  ニ計上イタシテアリマス所ノ歲入ハ、經常部ニ屬スルモノガ四百二十四萬二
  千六百三十一圓、臨時部ニ屬シマスモノガ千五百四十五萬九千六百六十九
  圓合計シテ千九百七十萬二千三百圓デアリマシテ、其歳出ハ經常部ニ屬ス
  ルモノガ五百六十七萬九千八百三十圓、臨時部ニ屬シマスモノガ五千二百五
  十四萬七千九百八十圓、合計五千八百二十二萬七千八百十圓デゴザイマス、
  ソレ故ニ歲入ト歲出ト差引イタシマスト云フト三千八百五十二萬五千五百
  十圓ノ不足ヲ生ズル計算ニナリマスガ、此金額ハ本年度實行豫算ニ於テ歲入
  超過シテ居ルモノガアリマスカラ、其超過額ノ中ヲ以テ之ヲ支辨スルノ經畫
  デアリマス、次ニ大正四年度歲入歳出總豫算追加第二號ニ計上シテアリマス
  金額ハ歲入總額ガ七百二十三萬九千二百七十一圓、歲出ノ總額ガ千八百四
  十五萬二千九百二十七圓デアリマシテ、歲入ト歲出トハ差引シテ、不足額ガ
  一千百二十一萬三千六百五十六圓アリマスガ、是ハ前ニ述ベマシタ本年度實
  行豫算ニ於ケル歲入超過額中デ、第一號追加豫算ニ於ケル歲入不足ノ補塡ニ
  充テマシタ殘餘ヲ以テ、之ヲ支辨イタス經畫デアリマス、大正四年度總豫算
  追加第一號ニ計上シテアリマス所ノ歲入ハ、專賣局益金ニ於テ前年度ヨリ繰
  越ニ係ル益金ノ增加イタシマスモノガ三百四十五萬餘圓ヲ增加シテ居リマス
  ノ外、主トシテ時局ノ關係ニ基ク特殊ノ收入ニ屬シテ居ルモノデアリマス、
  而シテ其歲出ハ朝鮮ニ於ケル二個師團ノ增設、軍艦製造費ノ追加、其他參政
  官及副參政官ノ設置ニ關スル經費ヲ始メトシテ、〓育、殖產ノ奬勵擴張、地
  方災害復舊費、水道港灣費補助等ニ關シマシテ、曩ニ第三十五囘帝國議會ニ
  提出イタシマシタ諸般ノ經畫中、施行豫算ノ範圍內ニ於テ實行スルコトノ出
  來ヌモノニ對シマシテ、經費ノ增額ヲ要求イタシテ居ルノデアリマスガ、其
  外ニ近年事業ノ增大ニ伴ッテ、實際ノ必要ニ應ズルコトノ出來ヌヤウニナリマ
  シタ所ノ專賣局据置運轉資本ノ補足ニ對シテ、新ニ三百萬圓ヲ計上イタシタ
  ノデアリマス、大正四年度總豫算追加第二號ニ計上シテアリマス所ノ歲入
  ハ山東鐵道ノ經營ヨリ生スル收入及前年度剰餘金繰入デアリマシテ、其歲
  出ハ時局ニ關スル陸海軍臨時軍事費ノ本年六月以降十二月マデノ所要額千六
  百十七萬五千四百二十四圓ノ中デ、臨時軍事費所屬收入ヲ以テ支辨スルコト
  ノ出來マス金額ガ二百七十二萬二千四百九十七圓アリマスルカラ、之ヲ差引
  キマシタ殘額ニ對シテ、是ガ財源トシテ一般會計ヨリ繰入ヲ要シマスル金額
  ガ千三百四十五萬二千九百二十七圓ノ外、時局ニ關シ各省ニ於テ要シマスル
  經費ノ支出ニ充ツベキ臨時事件費、豫備費五百萬圓ヲ計上シテアルノデアリ
  マス、抑〓大正四年度ノ歲入ニ關シマシテハ、政府ハ曩ニ時勢ノ進運ニ應ズベ
  キ各般ノ經畫ヲ定メテ、又現下ノ時局ニ對スル必要ノ方策ヲ講ジマシテ、是
  ガ經費豫算案ヲ第三十五議會ニ提出イタシマシタケレドモ、不幸ニシテ其成
  立ヲ見ルコトガ出來マセナカッタ故ニ、帝國憲法ノ條規ニ從ッテ前年度豫算ヲ
  施行スルト同時ニ、緊急已ムヲ得ザル諸般ノ施設ニシテ、右施行豫算ノ範圍
  內ニ於テ實行スルコトノ出來ルモノヲ査覈イタシマシテ、之ニ依ッテ本年度實
  行豫算ヲ編製シテ、本年四月一日ヨリ之ヲ實施イタシテ居ルノデアリマス、
  右實行豫算ニ計上シテアリマス所ノ歲入ハ、經常部ニ屬シマスルモノガ五億
  二千十萬六千百九十二圓、臨時部ニ屬シマスルモノガ三千七百八萬五千五百
  八十四圓、合計五億五千七百十九萬千七百七十六圓デアリマシテ、其歲出ハ
  經常部ニ屬スルモノガ三億九千四百三十一萬千六百三十九圓、臨時部ニ屬シ
  マスルモノガ九千七百四十五萬八千二百十一圓、合計シテ四億九千百七十六
  萬九千八百五十圓デアルノデアリマス、ソレ故ニ歲入歲出差引イテ六千五百
  六十二萬千九百二十六圓ノ歲入超過ヲ生ジテ居ル計算デアリマスケレド
  モ其後時局ノ推移ニ伴フ所ノ軍事其他ノ施設、竝ニ災害復舊等ニ關シテ緊
  急差措キ難イ經費ノ支出ヲ要シマシタモノガアリマシタノト、今囘提出ニ係
  ル追加豫算ノ成立ニ伴ヒマシテ、之ト相伴ッテ施行豫算ノ範圍內ニ於テ經費ノ
  支出ヲナサムトスルモノガアリマスニ依ッテ、實行豫算ノ歲出增加ヲ來タスベ
  キ金額ガ千五百六十八萬二千七百六十圓ニ達スル見込デアリマスカラ、此金
  額ヲ控除イタシマス時ハ、實行豫算ノ歲入超過トナルベキ金額ハ四千九百七
  十三萬九千百六十六圓デアリマシテ、前ニ申述ベマシタ通リ、之ヲ以テ本年
  度追加豫算第一號及第一一號ニ於ケル歲入不足額ノ補塡ニ充當スルノ經畫デア
  リマス、曩ニ大正三年度限リ廢止ノ經畫ヲ定メテ居リマシタ治水費資金特別
  會計ニ付テハ、是ガ廢止法律ノ制定ヲ見ルコトガ出來マセナカッタ故ニ、本年
  度ニ於テハ尙ホ之ラ存置シテ居リマスケレドモ資金ノ借入ヲスルト云フコ
  トヲ全然之ヲ止メマシテ、地方分擔金ノ外ハ全部國庫ノ支出金ヲ以テ之ヲ支
  辨スルノ經晝ヲ立テタノデアリマス、而シテ右特別會計ハ本年度限リ廢止ス
  ルコトニ致ス考デアリマシテ、是ガ法律案ヲ今期ノ議會ニ提出シ、既ニ昨日
  本院ニ於テハ特別委員ノ審査ニ付託イタサレタヤウナ次第デアリマス、前期
  議會ニ法律案ヲ提出イタシマシタ所ノ國債整理基金特別會計法ニ付キマシテ
  モ、亦其成立ヲ見ルコトガ出來マセナカッタ故ニ、更ニ之ヲ今期議會ニ提出イ
  タシマシテ.本年度ヨリ直チニ既定財政經晝ノ實行ヲ期セムトシテ居ルノデ
  アリマス、此法律案モ亦昨日本院ノ特別審査委員會ニ御付託ニ相成ッタ次第デ
  アリマス、臨時事件ニ關スル經費ノ豫算ニ付キマシテハ、曩ニ前期議會ニ於
  テ大正三年度竝ニ大正四年度ノ追加豫算案ヲ提出イタシマシタケレドモ、其
  成立ヲ見ルコトガ出來マセナカッタ故ニ、政府ハ已ムヲ得ズ豫備金外臨時支出
  ノ方法ニ依リマシテ、以テ時局ニ對スル機宜ノ手段ニ於テ遺算ナカラムコト
  ヲ努メタノデアリマス、今其豫算外支出ニ屬スル金額ヲ擧ゲテ見マスト云フ
  ト、大正三年度ニ於テ臨時軍事費ニ屬シマスルモノガ千二百八十四萬餘圓、
  臨時事件費ニ屬シマスルモノガ二百九十二萬餘圓デアリマス又大正四年度
  ニ於テ臨時軍事費ニ屬シマスルモノガ二百八十五萬餘圓、臨時事件費ニ屬シ
  マスルモノガ千四百三十七萬餘圓デアリマシテ、臨時事件ノ初頭カラ今日マ
  デノ支出額ハ、臨時軍事費ガ七千九百二十二萬餘圓、臨時事件費ガ二千二十
  四萬餘圓ニ達シテ居ルノデアリマス、今之ヲ今回提出ニ係ッテ居ル臨時事件
  關係ノ豫算案ト通算イタシマス時ハ、臨時軍事費ノ總額ガ九千五百三十九萬
  餘圓、臨時事件費ノ總額ガ二千五百二十四萬餘圓ニナルノデアリマス、以上
  一般會計所屬追加豫算ノ外、各特別會計ニ付テモ又之ガ追加豫算案ヲ提出イ
  タシテ居ルノデアリマス、其內容ハ一般會計ト同ジク、大體ニ於テ曩ニ前期
  議會ニ提出イタシマシタ諸般ノ經畫ニ對シマシテ、前年度施行豫算ノ範圍內
  ニ於テ今日之ガ實行ヲ致シ難キモノニ係ッテ居ルノデアリマシテ、其新規ノ事
  項ニ屬スルモノハ主トシテ時局ノ要求ニ基クモノデアリマス各特別會計
  法中廢止ヲ要シマスルモノハ、大正五年度ヨリ之ヲ實施スルノ見込ヲ以テ、
  之ガ法案ヲ今期議會ニ提出イタシテ、以テ豫メ將來ノ方針ヲ確定シテ置キタ
  イト存ジマス、以上ハ大正四年度歲計豫算ニ屬スル經畫ノ要綱デアリマス、此
  機會ニ於テ私ハ更ニ進ンデ現下ノ經濟事情ニ付テ一言イタシテ置キタイト存
  ジマス本年ニ於キマスル經濟界ノ趨勢ハ時局ノ突發ノ當時ニ比ベテ見マス
  ト云フト、幾分緩和ノ兆候ハ有ルノデアリマスケレドモ、時局ノ關係ニ依ッテ
  事業界ハ未ダ一般ニ景氣ヲ恢復スルコトニハナッテ居リマセヌ、新事業ノ經畫
  ハ四月マデノ累計ガ七千四百萬圓デアリマシテ、昨年ノ同ジ期間ニ比べテ見
  マスト云フト、四千六百萬圓ヲ減ジテ居ルノデゴザイマス、外國貿易ハ四月
  マデノ累計ガ輸出一億九千四百万圓、輸入一億八千七百万圓、合計三億八千
  百万圓デアリマシテ、輸出入共ニ昨年ノ同期ニ比ベテ見マスト減退シテ居ル
  ト云フコトガ分ルノデアリマス、而シテ輸入ノ減少ハ六千九百万圓デアリマ
  スノニ比ベテ、輸出ノ方ハ千五百万圓ノ減少ニ止ッテ居ルノデアリマシテ、例
  年輸入超過期デアリマス所ノ上半期ニ於テ、輸出超過ノ現象ヲ見テ居ルト云
  フコトハ主トシテ時局ニ伴フ特殊ノ事情ニ依ッテ居ルモノデアルト考ヘマ
  ス、而シテ之ガタメ國際貸借ノ關係ハ幸ニシテ順調デアリマシテ、本邦正貨
  ノ總現在高ハ三億九千餘万圓デアリマシテ、之ヲ最近ニ於テ正貨ノ最モ減少
  イタシマシタ所ノ昨年十一月末ニ於ケル三億二千餘万圓ニ比較イタシテ見マ
  スト、約七千万圓ノ正貨ヲ純粹ニ增加イタシテ居ルノデアリマス、是等正貨
  ノ流入ハ、商工業ノ不況ニ伴フ資金需用ノ減退及時局ノ將來ニ對スル金融界
  ノ警戒心ト相俟チマシテ、一種變態ナル金融緩慢ノ現象ヲ成シテ居リマシテ、
  金利ガ低落シテ居ルト同時ニ兌換劵ガ收縮シテ居ルト云フヤウナ狀態ニナッ
  テ居リマスノデ、目下ノ兌換劵發行高ハ明治四十三年五月以來一番低イモノ
  ニ相成ッテ居ルノデアリマス、此機運ニ乘ジテ新規若クハ借換ノ爲ニ社債ノ發
  行セラレタ高ガ、四月マデニ約四千万圓ニ達シテアリマシテ、昨年ノ同ジ期
  間ニ比ベテ二千三百餘万圓ヲ增加シテ居リマスニ拘ラズ、金融界ハ依然トシ
  テ沈靜ノ狀態ヲ持續シテ以テ今日ニ及ンデ居ルノデアリマス、今ヤ方ニ製茶
  製絲ノ季節ヲ迎ヘマシタカラシテ、是カラハ漸次幾分資金ノ運動ヲ刺戟スル
  ヤウニ相成ルコトデアラウト考ヘマス、歐洲ノ戰局ハ未ダ收リマセヌケレド
  モ、鄰邦支那トノ間ニハ遠カラズシテ條約ノ締結ヲ見ムトシテ居ルノデアリ
  マス、此時ニ當ッテ深ク大勢ノ赴ク所ヲ察シテ、政府ト國民ト步調ヲ一ニ致シ
  マシテ、内外ニ向ッテ益〓國力發展ノ機會ヲ利用スルニ於テ一日モ遲レザラム
  コトヲ期シマスルコトハ蓋シ目下ノ急務デアルト信ジテ居リマス、諸君私
  ハ諸君ガ愼重審議以テ速ニ豫算案ニ協賛ヲ與ヘラレムコトヲ切望イタシマス
  〔男爵目賀田種太郞君演壇ニ登ル〕

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• 006・目賀田種太郎

  ○男爵目賀田種太郞君　本員ハ豫算ニ關シマシテ、增師ノコト及行政整理ノ
  關係ヲ申シマシテ、特ニ總理大臣ニ二箇ノ質問ヲ致シタウゴザイマス、說明
  ヲ求メタイノデゴザイマス、元來增師ノ問題ハ本員等夙ニ賛成スル所デゴザ
  イマスル、然ルニ軍事上ノ制度ニ付キマシテ、語ヲ換ヘレバ立國ノ根本主義
  ニ於テ、總理大臣ノ執ラルル方針ハ、本員ニ於テ了解イタシ兼ネル廉ガアリ
  やす、之ガ說明ヲ得タイノデアリマス、今方ニ軍國ノ時ニ在ッテ、軍國ニ於ケ
  ル國政ハ最モ重ンズベキコトト存ジマスル、軍國ノ事ハ勿論平時ニ於テモ軍
  事ノ制度ト致シマシテ、帝國ニ於テハ中央ノ統轄機關ノ外ニ、別ニ最高ノ國
  務機關ヲ置カレテアリマス、然ルニ曩ニ出師若クハ近來ノ支那ニ對スル派兵
  增兵、是等ノ事ハ本員ノ見ル所ヲ以テスレバ、殆ド獨斷專行、內閣獨リ行フ
  ヤウナ嫌ガアルト思ヒマス、冀ハクハ此點ニ對シ明白ニ本員ヲ滿足セシメラ
  レムコトヲ希望シマス、是ハ總理大臣ニ於テ大正三年九月八日ニ於テ、當貴
  族院ニ對シ說明セラレタル一節ニ於テ、卽チ其委員會ニ於テ、前ハ略シマス
  ルガ、卽チ出師ノコトニ關シテノ質問ニ對シテ大臣ノ申サルルコトハ斯ノ如
  クデゴザイマス、「宣戰講和ハ大權ノ發動デ、國務大臣ハ其輔翼ノ責ニ膺ル最
  後ノ通牒ニ應ゼザレバ直チニ戰鬪行爲ニ移ル、而シテ此戰鬪行爲ニ移ルト云
  フ時ニ於テ、大權、此權ガ直チニ元帥府、陸海軍參謀、卽チ軍事的行爲ニ於テ
  ハ自ラ大元帥陛下ノ御諮詢ガアルコトト存ジマスルガ、併ナガラ事實ハ左ノ
  如クデアル、大事デアルニ依ッテ元老ニ相談シタ譯、其元老卽チ元帥ハ委細承
  知シテ居ラレル譯デアル、是ハ表面國務大臣ノ責任以外デアル、事重大デア
  レバ先帝陛下以來元老ニ御諮詢ニナッタト云フコトデアル、其元老ハ卽チ元帥
  デアル、戰ニ移ル前ハ國務デアルガ、一度開戰トナリ、戰鬪行爲ニ移レバ卽
  チ大元帥ノ統率權ガ働キ出セバ元帥府ニ移ルノダラウト存ジマス」、斯樣述
  ベラレテアリマス、是ハ本員ハ當時頗ル解スルニ苦シミマシタガ、爾後ノ現內
  閣ガ執ラルル軍國ノ行政ニ於テ益〓感ノノデアリマス、元帥府ヲ置カレテ、帷
  幄ノ本部ヲ置カレタ時ニ下サレタル詔勅、之ヲ御存ジデアレバ斯ノ如キ解釋
  ハ起ラヌコトト思ヒマス、爾カ本員ガ申シマスノハ、右ノ如ク昨年以來ノ總
  理大臣ノ執ル所ニ依レバ、重大ナル軍國ノコトハ、サウ云フ爲ニ設ケラレタ
  ル最高ノ國務機關ノ審議ヲ俟タズ、獨リ內閣之ヲ行フ如クニ見エマス、ヨモ
  サウ云フコトハアルマイト思ヒマスガ、此事ヲハッキリ伺ヒタイ、又是ハ實ニ
  軍事上ノ制度ニ關スル重要ナルコトト私ハ思ヒマス、元來增師ノ問題ト云フ
  コトハ本員等モ此所ニ於テ、客年當時ノ內閣ノ軍部ノ行政ノ不統一、庶政總
  攬ノ責ノ擧ラザルコトヲ疑ウタノデアリマス、今日モ同ジコト、單リ內間、
  此軍國ノ時ニ當ッテ斯ノ如キ國務機關ノ協同一致ヲ俟タザルハ、若クハ俟タザ
  ル如キ姿アルハ如何デアル、實ニ是ハ重大ナルコトト存ジマス、又一ツソレ
  ニ附加ヘテ說明ヲ得タイノデアリマスルガ、此度提出セラレタル海軍補充費、
  卽チ昨年ノ臨時議會ヨリ引續イタル此海軍補充費ハ、實際ニ於テ前以テ明治
  三十九年、明治四十年、卽チ第三期ノ經畫トシテ當初帝國ノ最高國務機關ニ
  諮詢セラレタルモノトハ經畫ヲ異ニシテ居ル、其經畫ヲ異ニスルト云フコト
  ハ、無論防務會議ニ於テ審議セラレタルコトデアリマス、然ルニ防務會議ナ
  ルモノハ、是ハ唯軍事上ノ經畫ヲ他ノ行政部ト併セテ其執行上ノコトヲ圖ル
  所デアル、根本ノ軍事經畫ヲ定ムベキ所デハナイノデアル、ソレハ既ニ總理
  大臣ニ於テ屢〓述べラレタル所デアリマス、今一應繰返シマスルガ、本員ハ此
  軍國ノ重キ時ニ於テ如何ニシテ軍事ノ行動ヲ內閣ハ執ラルルヤ否ヤ、內閣總
  理大臣ハ萬機奏薦ノ責ニアル人デアリマス、之ニ對シテ適當ナル方法ヲ執ラ
  ルルノ途ハ業ニ已ニ存シテ居ルト思ヒマス、之ヲ伺ヒタイノデアリマス、今一
  ツハ既ニ施政ノ方針トシテ行政整理ノコトヲ言ハレテ居リマス、其行政整理
  ニ付テ衆議院ノ再選擧ニ際シ、國家ノ選良ヲ國民ヲシテ得セシムルト云フノ
  爲ニ、總理大臣、其他ノ國務大臣遊說ト稱シテ地方ニ出張セラレタノデア
  ル、之ニ對シテ衆議院ニ於ケル總理大臣ノ說明ニ依レバ、或時ハ國務ヲ以テ、
  公費ヲ以テ旅費ヲ支辨シ、又或時ハ私費ヲ以テ旅費ヲ支辨シテ居ルト云フコ
  トデアリマス、私費ヲ以テ支辨スルナラバ私用デアラウト思ヒマス、然ル場
  合ニハ大臣ノ椅子ヲ離ルルニハ必ズ奏請ヲ要スルコトデアラウ、何ト言ウテ
  奏請シタカ、是ハ本院ニ於テ宜シク說明アラムコトヲ求メル、業ニ已ニ帝國
  ノ國民ニ對シ、各國務大臣擧ゲテ地方ニ遊說セザレバ、法律ガ與ヘタル權利
  ヲ完全ニ施行スルコトガ出來ナイト見ラレタ程ニ、ソレ程マデニ鄭重ニ、國
  務大臣ガ地方ニ出張セラルルト共ニ、又之ニ對スル必要ナル法律、卽チ五月、
  五月デアリマセヌ、六月一日ヲ以テ本院ニ提出セラレタル營業稅ノ改正ノ爲
  ニ、衆議院ノ選擧資格ニ影響ヲ及ボスノ法律ハ何ガ故ニソラ程選良ヲ選ブ
  ガ爲ニ御心配アルナラバ前以テノ臨時議會ニ出サレナイカ、臨時議會ハ屢、
  開カレテ居ル、何ガ故ニ出サレナイカ、何故ニ緊急命令ノ式ヲ履マレテアル
  カ、本員爲ニ之ヲ問ヘバ、國務大臣ニ問ヘバ國務大臣ハ營業稅ノ改正ハズッ
  ト以前ノコトデアルト言ハレタ、解散、總選擧ナドノコトハ思ヒモ寄ラヌコ
  トデアル、併ナガラ解散、選擧ト云フコトハ憲法ニ書イテアル、何時起ルカ
  分ラヌ、起ッテ始メテ知ルト云フモノデハナイ、凡ソ國務ノ執行上、法律ノ執
  行上、法律ヲ變ヘレバ事實從ッテ變リ、從ッテ生ズルト云フコトハ普通ノ法律
  ノ原則デアル、國務大臣トシテ斯ノ如キ普通ノ法律ノ施行ヲ顧ミズ、而カモ
  尙ホ國家ノ選良ヲ得セシムル爲ニ地方ニ遊說シ、遊說ノミナラバ宜シイ、元
  來總理大臣ヲ始メ國務大臣ハ國家ノ重器デアリマス、其一言一行ハ具瞻ノ人
  デアリマス、然ルニ私ニ手紙ヲ發シテ、人ノ名前ヲ擧ゲテ誰彼ヲ選擧セイト
  云ハレル、斯ノ如キハ嚴肅ナル官紀ヲ維持スル爲ニ適當ノ行爲デアルヤ否
  ヤ。本員之ヲ疑フ、希ハクハ更ニ進ンデ明白ニ說明セラレムコトヲ望ミマス
  ル、又總理大臣ニ申ス、五月二十二日ニ於テ本員ハ現在ノ大使、公使等ノ採
  用ニ關シ現在外務省ニ於テ内規ガ存シテ居ッテ、他ノ局外ノモノヲ入レヌカラ
  之ヲ開カレテ、斯ウ云フコトハ排去セラルルヤ否ヤト云フ意味ヲ以テ御尋ネ
  ヲシタ、然ルニ何ゾ計ラム二十年前ノコトヲ以テ答ヘラレタ、內規ノ存在
  ヲ御存ジナケレバ御調ベガ宜イ、内規ノ存在ノ有無ヨリモ之ヲ變へタラ宜カ
  ラウト云フコトヲ御尋ネシタノデアル、遠キ昔ノコトヲ以テ〓ヘラルル、斯
  ノ如キハ本員ノ望ム所デアリマセヌ、斯ノ如キコトガアッテ尙ホ之ヲ行政整理
  ト云フカ、其行政整理ニ基イテ豫算ヲ提出セラルルノデアル、協賛ニ先ダチ
  御說明ヲ願ヒマス
  〔國務大臣伯爵大隈重信君演壇ニ登ル〕

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• 007・大隈重信

  ○國務大臣(伯爵大隈重信君)　目賀田君ニ御答へ致シマス、多分御承知デア
  ラウト思ヒマスルガ、全體憲法ニ依ッテ國家ノ根本ノ組織ヲ定メラレテ居ル、
  此國務大臣ガ總テ國務ノ責任ヲ持ツト云フ、ソレ故ニ陸海軍人モ國務ノコト
  デアル爲ニ、陸海軍大臣モ國務大臣デアルンデアリマス、平和ノ時デアルト
  モ軍國ノ時デアルトモ大小ノ國務ニ付テハ國務大臣其責任ヲ執ラナクテハナ
  ラヌノデアル、併ナガラ一度戰時トナルト初メテ統帥權ノ玆ニ働ガ起ルニ依ッ
  テ、卽チ茲デ初メテ軍國ト云フ文字ガ下ッテ、其時ハ無論全體ノ上ニ責任ヲ執
  ルトシテモ、其働其ノモノハ初メニ軍ニ發スルンデアリマス、其根本ハ大本
  營、然ルニ此度ノ國防經畫カラ師團ノ增設或ハ艦隊ノ補充ト云フモノガ昨年
  ノ通常會ニ現ハレテ、是ガ解散ノ爲ニ最モ國家ノ急ヲ要スル爲ニ此臨時議會
  ニ提出セラタモノデアル、而シテ此經畫ヲ定ムルニハ御承知ノ通リニ昨年防
  務會議ノ官制ヲ御覽ニナッタンデアラウト思フ、ソレニ依ッテ此度提出サレタ
  所ノ師團ノ增設及軍艦ノ補充此案ガ提出サレタノデアルンデアリマス、之ニ
  付テ元帥府ハ卽チ陛下ノ軍事ニ於ケル顧問ノ府デアルンデアリマス、多分是
  等ノコトハ元帥府カラ元帥會議ノ御諮問ニナッタコトト存ズルンデアル、軍會
  議ヲ起スノモ或ハ御諮詢ニナッタンデアル、而シテ元老ハ元帥ナリト云フ意味
  ハ少シ了解シナイ、元老ハ元老、元帥ハ元帥、全然是ハ異フタモノト存ズルン
  デアル、今日稱フル所ノ元老ニハ軍人デナイ御方モアルンデアル、松方侯、井
  上侯ハ是ハ元帥デハナインデアル、而シテ元老、是ハ違フカラ、アレハ多分何
  カノ御間違ヒデアルンデアラウ、ソレデドウカ意味ヲ能ク了解シナカッタト
  一、此度ノ日支交渉ニ對シ云々ト云フヤウナ御意見デアッタヤウデアルガ、成
  ルホド最後通牒ヲ送ッタニ相違ナイ、最後通牒ヲ送ル時ニハ是ハマダ外交ノ働
  デアル、最後通牒ニ滿足ナル返答ヲナサナケレバ初メテ茲ニ軍事的ノ行爲ガ
  起ルカモ知レヌノデアル、之ニ付テハ豫メ多分御諮問ニナッタコトデアルト
  信ズルンデアル、是ノ內部ノ行政ノ經畫若クハ軍事ノ經畫、複雜ナル種々ノ
  機關ヲ所謂陛下ガ御統ベニナッテ居ルンデアル、大權ニ於テ或ハ軍事ニ於テ、
  統帥權ニ依ヲテ悉ク一ツニ爲シテ居ルモノデアル、內閣ハ其輔弼ノ臣デアル、
  ソレ等ニ付テハ遺憾ナク陛下ノ命ヲ奉ジテ我〓ノ責任ヲ盡スコトニ付テ十分
  盡シタ譯デアルンデアル、或ハ我〓ヨリ意見ヲ上奏シテ、而シテ御裁可ニナツ
  テ其機關ハ活動シテ居ルンデアル、平時ニ於テモ戰時ニ於テモ少シモ變ルコ
  トハナイ、唯機關ノ働ガ變ルト云フニ過ギヌノデアル、最後通牒ヲ發スルト
  云フガ如キ國家ノ重大ナコトニ付テハ無論有ラユル機關ノ働ノ必要ガアル、
  是ハ少シモ其間ニ我〓ノ其責任ヲ盡ス上ニ付テ私ハ遺憾ナシト信ズル、ソレ
  カラ國務大臣ノ遊說ト云フト何ダカ語弊モアルヤウデアルガ、何等利己的ニ
  自己ノ何カヲ恃ミニデモシテ方々ヲ說イテ〓ルト云フ意味デハナインデア
  ル、旣ニ憲政ヲ布イテ國家根本ノ帝國議會ト云フ機關ハ國民ノ選良ニ依ッテ
  初メテ有效ニ働クンデアル、既ニ昨年帝國議會ヲ解散シタノハ決シテ無意義
  デハナインデアル、內閣ノ政策、國防ノ經畫、財政ノ經畫、此經畫ニ衆議院
  ハ反對シタノデアル、我〓ハ確ク信ジタノデアル、衆議院內デハ反對シタノ
  ガ多數ノ輿論ハ決シテ反對ニ非ズト認メタノデアル、是ガ議會解散ノ起ル所
  以デアル、然ラバ反對ノ政策········我ヽノ政策ヲ國民ニ訴ヘルト云フ必要ガ
  起ッテ來タノデアル、是ガ機會ニ臨ンデ、御用ノ都合ニ依ッテ或ハ國務大臣ノ
  地方ノ旅行トモナッタノデアル、或ハ自ラ信ジテ自ラ是ナリト認メタモノヲ國
  民ニ向ッテ之ヲ推薦スル、敢テ妨グナイト思フ、併ナガラ之ヲ選プト選バザル
  トハ、卽チ意思ノ自由ニ依ッテ選ブノデアル、而シテ内閣ノ採ル所ノ政策ヲ多
  數ノ國民ニ十分理解サシテ、サウシテ孰レガ是ナリト云フ良心ノ判斷力ヲ呼
  ビ起ス爲ニ出來能フダケ內閣ノ政策ヲ十分ニ說明シテ、之ニ反スルモノノ過
  マテルコトヲ說クト云フコトハ是ハ憲政ノ運用ノ上ニ必然起ルベキコトデ、
  併シ其爲ニ政務ヲ怠リ國務ヲ曠廢スルコトハ許サヌノデアル、決シテ此爲ニ
  何等通常ノ行政ノ上ニ少シモ停滯スルト云フガ如キコトハナイト信ジテ居リ
  マスノデアル、先頃全權大使及全權公使ノ任命ニ付テ何等カ外務省ニ内規ガ
  アッテ外交官出身以外ノ人ハ殆ド用ヒヌト云フガ如キ內規ガアルヤウナ御話
  ガアッタガ、是ハ全然ナイト云フコトヲ申上ゲタノデアル、其時ニ私ノ記憶シ
  テ居ル例ハ成程古イ例デアッタガ、其後アッタカモ知レヌト言ッタガ或ハ無イ
  カモ知レヌ、大方新タニ人ヲ用フルニ適當ナル外交官中カラ用フルト云フコ
  トヲ言ッタ方ガ適當デアッタカモ知ラヌ、併ナガラ若シ必要ノ人材ガアッテ又
  或外交上其人ガ最モ必要ナリト認メル時ハ何等妨ゲナイ、決シテ外務省ニ斯
  ノ如キ內規ノアラウ道理モナイ、其他ノコトハ他ノ大臣カラ御答イタシマス
  〔男爵目賀田種太郞君發言ノ許可ヲ求ム〕

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• 008・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　目賀田男爵ニチヨット議長カラ申入レマスガ、固
  ヨリ此問題ニ關係ノアルコトニ付テ尙ホ御質問ニナルコトト思ヒマスガ、左
  樣デゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=8

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• 009・目賀田種太郎

  ○男爵目賀田種太郞君　左樣デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=9

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• 010・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=10

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• 011・目賀田種太郎

  ○男爵目賀田種太郞君　極ク簡單デゴザイマスルガ唯〓ノ總理大臣ノ御說明
  ニ付テ簡單ニ伺ヒタイ、御聞キ下サイ、總理大臣ハ三十一年一月三十日ノ詔
  勅ヲ御承知デセウ、御承知デアルカナイカ、如何、之ヲ伺ヒタイ、果シテ御
  承知ナラバ唯〓ノ如キ御說明ハナイ筈ト思ヒマス、今ノ軍國ノ行政ノコトニ
  付テハ尙ホ唯今ノ御說明デハ解シ兼ネマス、何レ委員會ニ於テ尙ホ詳シク承
  リマス、右ノ詔勅ハ御存ジナイカ、無ケレバ無イデ宜シウゴザイマス、後デ
  伺ヒマス、是ダケ申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=11

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• 012・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　質問ヲ致シマス、陸軍大臣ニ質問ヲ致シタイ、ソレト同時ニ
  唯今總理大臣ノ目賀田男爵ニ對スル御答辯ニハ、此選擧ニ當ッテ地方ニ內閣諸
  公ガ遊說セラレタト云フコトニ付テ、政府ノ趣意ノ在ル所ヲ述ブル爲デア
  ル無論其通リデアラウト思ヒマス、此衆議院解散ノ主ナル理由ハ增師反對
  ト云フコトニアッタ、政府ハ何故ニ此增師ヲ提出シタカト云フコトニ付テノ御
  辯明ハ餘リナカッタヤウデアリマス、是ガ重モニ政府ノ國民ニ向ッテ親切丁寧
  ニ證間サレルベキハトデアリンスクレドモ、其因閣議公テ製ケ所へツ
  テ餘リ解散ノ主因タル所ノ增師問題ニ論及サレナカッタト云フコトハ本員ノ
  竊ニ不本意ト致シテ居ッタ所デアリマス、而シテ無論總理大臣ニ於カレマシテ
  モ議院及其他ニ於テ其理由ヲ述べタコトモアリマスケレドモ甚ダ判然トシナ
  イ、又陸軍大臣カラモ其理由ヲ述ベラレテ居ルコトハ再々デアリマスケレド
  干〓免角其間ニ一致點ヲ見出スコトハ出來ナイ、或ハ等シク陸軍大臣トシテ
  モ其理由ヲ、或時ニハ朝鮮新領地ニ向"テ二師團ノ特設ヲ要スルガ爲デアル
  トモ言ヒ、又或鄰邦ノ强國ニ對スルガ爲ノ備ヘデアルト云フヤウナコトモア
  リ又總理大臣ハ國家ガ膨脹スレバ師團モ增設シナケレバナラス、國ガ大キ
  クナレバ總テノモノモ大キクナル、斯ウ云フコトニナッテ居リマシテ、我〓ハ
  何レニ政府ノ本意ガ在ルカト云フコトヲ捕捉スルニ苦シム、而シテ此二十五
  師團ト云フモノハ三十九年ニ其御評議ガアリマシタサウデアリマスケレド
  モ、是ハ到底財政ノ許サザル所デアッテ、財政ノ都合ノ付クマデハ行フコトハ
  出來ヌ、實際ハ是ヲ打切ト云フコトニナッテ居ッタノデアリマス、而シテ四十
  二年ニ此二年兵役ト云フモノヲ採用サレタ、其時ニ陸軍大臣寺內伯ノ委員ノ
  質問ニ對スル答辯ニ依ルト、二年兵役ハ卽チ此增兵ノ爲デアル、兵數ヲ增加
  スル爲デアル、二師團增設ト云フコトモ今日ノ所デハ行ハレナイ、卽チ他ノ
  方法ニ依ッテ兵ヲ增加スルト云フコトノ趣意カラ起ッタノデアル、斯ウ云フコ
  トヲ答ヘラレテ居ル、是ハ三年兵ヲ二年兵ニスレバ五割ノ增加ト云ウタトハ
  我〓モ最初カラ分ッテ居ル、所ガ是ト同時ニ三年制ヲ二年制ニスルト同時ニ、
  一中隊ノ兵員ト云フモノヲ百二十人ノ制ヲ改メテ百四十人トセラレタ、是マ
  デハ百二十人一中隊トシテ、百二十人ノ三分ノ一ヲ每年募集シタ、サウスル
  ト四十人ヅツノ兵ヲ每年募集シタ、是ハ步兵デアリマス、所ガ此度ハ二年ニ
  百四十人ヲ募集スル、卽チ年々七十人ノ兵員ヲ募集スルコトニナッタ、是ハ大
  ナル增兵デアル、四十人ヲ七十人ニ增スト云フコトハ大變ナ增シデアル、勿
  論是ハ現役兵ダケデハ二十人ノ增シデアリマスケレドモ、豫後備ノ增スコト
  ハ大變ナ割合ニナル、丁度七割五分ノ增兵ニナル、是マデノ制度ニ依ルト云
  フト十年デ四百人ノ割合デ出來ルモノガ七百人出來ルコトニナルノデアル
  カラ、百分ノ七十五ノ增兵ト云フコトニナル、之ニ加フルニ以前ハ現役、豫
  後備通ジテ十二年制度デアッタモノガ、十七年ト云フコトニナッテ居リマス、
  十二ニ對シテ卽チ五デアリマスカラ四割六分殖エル、サウスルト七割五分ニ
  四割六分ヲ加ヘテ十二割一分、卽チ百分ノ百二十一ト云フ數字ニナッテ居ル
  是ハ專門家ノ說ニ依リマスト、之ヲ師圍ニ引直スト二十八個師團半ニ當ル、
  十三師團デアッタモノガ二十八師團半ニ今日ハナッテ居ル、卽チ二個師團ハ愚
  カ六個師團ハ愚カ、ソレ以上ノ非常ナル增兵ニナッテ居ルノデアリマス、私
  共ハ此增兵シタルコトハ大ニ喜ンデ居ル、二年制度ヲ之ヲ一年減シテ同一ノ
  〓育ヲ施スコトガ出來ルナラバ、經濟ノ點カラ見マシテ國家ノ壯丁ヲ三年間
  兵役ニ就カシムルモノヲ二年ニシタガ爲ニ生產上ニ大ナル利益ヲ得タ上ニ、
  兵數ガ斯ノ如ク增スト云フコトハ大變ナ利益デアル、併ナガラ之ニ準ジテ兵
  器ヲ供給シテ十分ナル戰圖力ヲ具ヘル爲ニハ、隨分多クノ兵器ヲ要スルノデ、
  今日、歐羅巴各國、殊ニ獨逸ノ如キ强國ニ比較シマスルト日本ハ兵器其他ノ
  モノガ大ニ劣ッテ居ルト言ハヌケレバナラヌ、無論改良シナケレバナラヌト云
  フコトハ、今囘ノ歐洲ノ大戰爭、又東洋ニ於ケル日獨戰爭ニ顧ミテ餘程ノ準備
  ヲ要スルコトト思ッテ居ルノデアリマスガ、斯ノ如ク大ナル兵數ヲ增サレテ
  居ルニ拘ラズ、斯ノ如ク僅ニ二個師團ヲ增スト云フコトニ當局者ガ焦慮セラ
  ルルコトハ如何ナル理由デアルカ、私ハ甚ダ之ヲ知ルニ苦シムノデアリマス、
  希ハクハ此點ニ付テ十分ナル說明ヲ與ヘラレムコトヲ望ムノデアリマス、第
  二ニ海軍大臣ニ向ッテ同時ニ伺ヒタイノハ、此補充經畫ノコトデアリマス、併
  ナガラ常ニ舊キ夢ニ囚ハレテ居ル如ク海軍モ亦舊キ形ニ囚ハレテ常ニ同ジ事
  ヲヤッテ居ルノデハナイカ、隨分日本ノ是マデノ造艦ノ經歷ニ鑑ミマスルト
  常ニ日本ノ艦ハ世界ノ風潮ニ隨,テ艦ヲ造ル、其艦ガ出來上ガル時ニハ常ニ舊
  型ニ屬シテ居ルト云フ如ク、多クナッテ居ル、是ハドウモ已ムヲ得ナイコトデ
  アリマスケレドモ、サレバト云ッテ艦ヲ造ラヌ譯ニハ往カヌ、往カヌケレド
  そ、今此歐洲ノ海戰ニ付テ顧ミマスルト餘程形勢ノ變ッタ所ガアル、例ヘバ彼
  ノ堂々タル英國ノ大艦隊ノ如キモ、獨國ノアノ機敏ニシテ神出鬼沒スル所ノ
  潜航艇ノ爲ニ常ニ奇襲ラ受ケテ餘程苦シメラレテ居ルノデアル、然ラバ此際
  海軍ハ是等ノ點ニ付テモ十分ニ御考慮ニナッテ、是マデノ如ク唯大ナル舊型ノ
  艨艟ヲ造リサヘスレバ、ソレデ以テ安心ガ出來ルモノデアルヤ否ヤ、又ハソ
  レモナケレバナラヌケレドモ、大ニ此潜航艇其他新工夫ノモノニ付テモ御考
  ニナッテ、少シタ此時勢ト共ニ經晝ヲ變更スル所ガアリハシナイカ、陸海軍同
  時ニ今囘ノ歐洲ノ戰爭ノ跡ニ鑑ミテ、是マデ通リ唯舊套ヲ追ウテ居ヲテ宜シイ
  モノデアルヤ否ヤ、私ハ是ニハ滿足スルコトガ出來ナイノデアリマス、日本
  ノ如ク此誠ニ窮迫セル所ノ經濟ノ力ヲ以テ、今日ノ世界ノ列國ノ彼ノ富裕ナ
  ル强國ト競爭スルニハ軍備ハ縮小スルコトハ出來マセヌケレドモ、成ルベク
  金ヲ少クシテ效力ノ多キ有效ナル經畫ヲ立テラレムコトヲ希望スルノデアリ
  マスガ、無論我〓ガ考ヘルヨリモ當局者ハ遙ニ進ンダ御考ヲ御有チニナッテ居
  ルコトト存ジマス、併ナガラ當局者ハ四圍ノ事情ニ因ハレ、四圍ノ事情ニ拘
  束セラレテ、更ニ進ムコトガ出來ナイト云フコトモ往々アルコトデゴザイマ
  スカラシテ、此點ニ付テ十分ナル御說明アラムコトヲ希望イタシマス
  〔國務大臣岡市之助君演壇ニ登ル〕

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• 013・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　鎌田君ノ御質問ニ御答イタシマス、御質問ノ第一
  ハ二個師團ヲ朝鮮ニ置クガ趣意デアルカ、朝鮮ニ置クガ爲ニ二個師團ヲ造ル
  ノガ趣意デアルカ、其邊ガ判然セヌト云フ御質問ノヤウデゴザイマスガ、是
  ハ鎌田君ノ唯今ノ御質問中ニモゴザイマシタ通リニ、二個師團ナルモノハ二
  十五師團經畫ノ中ノ一部ヲ遂行スルノデゴザイマシテ、之ヲ增設シタル場合
  ニ於テ何レニ置クカト斯ウ云フコトニナリマス、ソレデ朝鮮ガ我新領土トナ
  リ、朝鮮ノ統治上カラ申シマシテモ作戰上ノ經畫カラ申シマシテモ、今日
  ノ派遣制度ハ不利不便デゴザイマスノデ、此新ニ置キマスル所ノ二個師團ハ
  朝鮮ニ置カウト云フ趣意デゴザイマシテ、朝鮮ニ置クガ爲ニ二個師團ヲ造ル
  ノデハゴザイマセヌ、二個師團ヲ置ク場合ハ朝鮮ニ置クト云フ趣意デゴザイ
  やっゝソレカラ二年在營制度ヲ採ッタ爲ニ兵員ガ殖エテ居ルデハナイカ、十三
  個師團ノ場合ニ較ベテ見ルト計算上二十八師團以上ニナッテ居ル、斯ウ云フ御
  質問ノヤウデゴザイマシタガ、成ルホド兵員ハ殖エテ居ルニ違ヒゴザイマセ
  ヌ違ヒハゴザイマセヌガ、元ト二年在營制ヲ採リマシタノハ時勢ノ要求ニ
  應ジテ採リマシタ制度デゴザイマス、軍事上ノミカラ申シマスト好マシカラ
  ザル所ノ制度デゴザイマス、茲ニ申上ゲルマデモナク、御承知ノコトト存ジ
  マスガ現ニ佛蘭西ノ如キハ二年在營制ヲ執ッタ元祖トモ云ヘル所デゴザイ
  マセウガ、其國デアッテ彼ガ如キ國情デアリナガラ、二年在營制度ノ不完全ヲ
  悟リマシテ、三年在營制度ヲ採ラウト云フコトニ決ッタ年ニ、卽チ歐洲ノ戰亂
  ガ勃發シタト云フ斯ウ云フ有樣デゴザイマス、我軍事當局ノミカラ見マスル
  ト二年在營制度ハ好マシカラヌコトデゴザイマスガ、時勢ノ要求ニ應ジテ
  取リマシタ次第、之ガ爲ニ兵員ハ確ニ增加ヲシテ居リマスガ、併ナガラ此兵
  員ノミガ增加ヲ致シマシタ所デ、團隊ノ編成ト云フコトニ付テハソレ〓〓素
  質ガ要リマスノデ、獨リ兵卒ノミガ多ク出來マシタ所ガ、之ニ要スル所ノ幹
  部ノ必要ト云フコトハ申スマデモナイコトデアリマス、且ツ是ヨリ此兵員ノ
  增加ニ依ッテ得マシタ所ノ軍事上ノ利益ハ我戰時編成ヲ完全ニシタト、斯ウ云
  フ所ノ利益ヲ得テ居リマスヽ尙ホ此細カイコトニ付テ申上ゲタウゴザイマス
  ガ。公開ノ席上デハ憚リマスノデ、願ハクバ豫算總會等ニ於テ祕密會ヲ御開
  キガゴザイマスレバ、其席上ニ於テ此計算等ニ付テ詳細ニ申述ベマシタラバ
  或ハ御了解ニナルコトト存ジマス、公開ノ席上デ述べマス大要ハ以上ノ通リ
  デゴザイマス、ソレカラ··
  〔鎌田榮吉君「尙チヨット伺ヒマス」ト述ブ〕

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• 014・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　暫ク御待下サイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=14

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• 015・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　ソレカラ歐羅巴戰亂ノ結果ニ顧ミテ兵器ノ改良等
  ハ多々アルデアラウト云フ御質問デゴザイマスガ、ソレハゴザイマセウ、無
  イトハ申シマセヌガ、併シ兵器ノ改良ナルモノハ、是ハ過日來衆議院ニ於テ
  モ屢〓私言明イタシテ居リマスガ、我國ニ於キマシテハ兵器ノ改良ト云フコト
  ハ絕エズ行ッテ居リマス、唯世ノ中ニ是ガ現ハレマセヌダケノコトデ、例ヘバ
  我〓ノ唱ヘマス所ノ三十八年式小銃ト唱ヘマス中ニモ、最初ニ造リマシタ時
  代ト、今日ノ三十八年式ト唱ヘマス時代トハ大分變リマス、又其彈丸ニ於テ
  モ又諸種ノ細カイ所ノ點ニ於テモ變リガゴザイマス、ソレハ〓究ニ〓究ヲシ
  テ段々進步改良ヲ致シマシタ一例デゴザイマス、又大砲ニ於テモ左樣デゴザ
  イマス、常ニ是等ノコトニ關シテハ當局者ハ軍事ノ進步ニ後レザルコトヲ努
  メテ、〓心ニ〓究ヲ致シテ居リマス、唯或一定ノ進ンダ程度ニ於テ止マッテハ
  居リマセヌ覺悟デゴザイマス、固ヨリ歐羅巴ノ戰局ノ定マッタ後ニ於テハ唯
  今申上ゲマシタル通リ、兵器ノ改良ニ於テモ參考トスベキコトガゴザイマセ
  ウゴザイマセウガ、併シ之アルガ爲ニ我自衞上必要ナリト認メマシタ所ノ
  兵力ヲ差引ヲシテ、其備ヲ無クシテ濟ムト云フ理窟ニハ參リマセヌカラ、私
  共軍事當局者ハ苦心ヲ致シテ居リマス、左樣御承知アラムコトヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=15

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• 016・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　最初ニ御答ニナリマシタ二個師團ハ、是ハ二十五個師團中ノ
  二個師團デアッテ、是ハ何レニ置クカ、內地ノ樞要ノ地ニハ既ニ置カレテ居ル
  カラ、之ヲ新領土ノ朝鮮ニ置クガ宜カラウト、斯ウ云フコトデアリマス、新
  領土ヲ得タ爲ニ二個師團ヲ置クノデナイト云フ御答デアリマスガ、私ハ是ハ
  初メテ伺ヒマシタ、初メテ伺フコトデアリマシテ、是マデ當局者カラ伺ッテ居
  リマスノハ、サウデナイ、新領土ガ出來タカラシテ、是ニ交代ノ師團ヲ隔ッテ
  置クコトハ不便デアル、サウ云フコトデ統一上宜シキヲ得ナイカラ、之ヲ朝
  鮮ニ特設スルノデ、之ニ朝鮮特設師團ト云フ名ガ付テ居リマス、私一人ハ欺
  カレマシテモ天下ノ人ヲ欺クコトハ出來ナイ、斯ノ如ク言ヲ左右ニセラレ
  ルコトハ如何ナ譯デアリマスカ、內閣員ノ言フ所、殊ニ同一ノ陸軍大臣カラ
  違ッタ答辯ヲ伺フノハ甚ダ奇怪ニ堪ヘナイト思ヒマス
  〔國務大臣岡市之助君演壇ニ登ル〕
  〔鎌田榮吉君「ソレト同時ニ伺ヒタイノハ」ト述フ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=16

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• 017・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　チヨット陸軍大臣ガ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=17

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• 018・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　唯〓ノ御言葉ニ欺クト云フコトガゴザイマシタ
  ガ、私ハ決シテ左樣ナ前後矛盾シタコトハ申上ゲマセヌ積リデゴザイマス
  昨年既ニ衆議院ノ豫算總會デゴザイマシタカ、又豫算分科會デゴザイマシタ
  カ、祕密會議デゴザイマシタラウト存ジマスガ、質問ニ對シテ縷々申述べマ
  シタ中ニ此條項ハ確ニ幾遍モ申シテ居リマス、ソレデ二個師團ヲ增加スル
  增加シタラ二個師團ヲ何所ニ置ク、朝鮮ニ置クヲ至當トスル、斯ウ申シタノ
  デ。ドウ申シテモ逆樣ニ言フカマトモニ言フカト云フコトニ歸スルカ存ジ
  マセヌガ、順當ニ申シマスルト、唯今私ガ申シマシタ通リ世ノ聞エハドウ聞
  エテ居ルカ存ジマセヌガ、免ニ角、朝鮮ニ二個師團ヲ置ク、斯ウ云フコトニ
  ナリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=18

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• 019・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　御辯明ハ誠ニ巧ミナルコトデ感服イタシマスガ、決シテサウ
  ハ是マデ伺ッテ居リマセヌ、二十五個師團トサッキ旣ニ仰セラレマスガ是一
  衆議院ニ於テ既ニ此案ガ通過サレル時ニ於テ二十五個師團ト云フ聲ガ大キク
  ナリマシタガ、二十五個師團ト云フコトハ殆ドソレマデハ消エテ居ッテ、唯二
  個師團、此二個師〓サヘ出來レバ天下泰平、此クラヰニナッテ居ッタ、此頃ハ
  未ダ二十五個師團ノ聲ガ大分聞エテ居リマセヌ、其クラヰデアッテ二十五個
  師團ノ中、二個師團ヲ先ヅ拵ヘルガ、是ノ置キ所ニ困ル、朝鮮ニシヤウ、サ
  ウ云フコトハ初メテ承ルノデゴザイマス、併ナガラ此上ノ御答辯ハ請ヒマセ
  又、ソレカラ兵員ノ增加シテ居ルト云フコトハ陸軍大臣ニ於テモ御承認ニ
  ナッタヤウデアリマス、併シ此戰鬪ノコトハ兵員バカリデハイケナイ、編成法
  ト云フモノガ大切デアル、斯ウ云フ御說明デアリマス、サウシタナラバ何故
  ニ人員ヲ此儘ニシテ其編成法ヲ御變更ニナラヌノデアリマスカ、卽チ單位ノ
  中隊ノ人員ト云フモノハ、必シモ百四十人ニシタノハ是ハ餘リ效ハナイ、唯
  師團ノ數ヲ增サナケレバナラヌト云フ爲ニ中隊ノ數ガ之ニ關係スルナラバ、
  此單位ノ數ト云フモノヲ變ヘテ行ケバ今日ハ前言通リ或ハ二十八個師團ニナ
  リ得ルノデアル、或ハ其編成法ニ依ッテハ一一十五個師團ニスルト云フコトハ
  容易ナコトデアル、之ヲ御考ヘニナラズ、唯今ハ增シ、師團ハ師團デ增シテ
  別ニ考ヘルト云フコトハ全體ドウ云フ譯デアリマスカ、是モ私ハ伺ヒタイ、
  ソレト又二年制度ト云フモノハ甚ダ好マシカラヌ制度デアル、佛蘭西モ二年
  制度ト云フモノヲ採ッタケレドモ、又之ヲ三年制度ニ囘復セムトシテ居ル時ニ
  今囘戰爭ガ起ッタ、成ルホド其通リデアル、其通リデアリマスケレドモ、佛蘭
  西ハ抽籤法デナクシテ壯丁全部ガ皆兵役ニ就クノデアルカラ、此上ハ仕方ガ
  ナイカラ年數デモ延バサウト云フコトデ、前年來ヤッテ居ルノデアリマスガ、
  ソレハソレトシタ所デ、年數ノコトハ若シ長イ年數ガ宜イト云フコトナラバ、
  是ニモ私ハ方法ガアルダラウト思フ、私ハ素人デ能ク分リマセヌガ、聞ク所ニ
  依リマスレバ陸軍ニ於テハ兵營內ニ於テ受クベキ〓育ト、兵營外ニ於テ受ク
  ベキ〓育ノ區別ガ能ク立ッテ居ラス、ソコデ此普通在郷ノ時ニ受ケル〓育ヲ兵
  營ノ中デヤッテ居ル、殊ニ其愚ナルコトハ特別ニムヅカシイ言葉、兵トシテハ
  斯ノ如キ言葉ヲ使ハナケレバナラヌ、能ク人ガ言フ、今日使ッテ居ルカ知ラヌ
  ガ、一軒家ト言ヘバ分ルノヲ獨立家屋ト言フ、山ノ中カラ出テ來タ若イ者ハ
  獨立家屋ハナカ〓〓容易ニ覺エマセヌ、ソレヲナゼ一軒家デ分ラナイ、獨立
  家屋ト言フカ、橋ト言ッテハイカヌ橋染ト言ハナケレバナラヌ、橋モ橋梁モ同
  ジコトデアル、サウ云フ類ヲ擧ゲマスト枚擧ニ遑アラズデアル、斯ノ如キコ
  トヲ〓ヘルガ爲ニ一年ノ年數ト云フモノヲ費シテ居ル

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• 020・黒田長成

  ○副議長(候爵黑田長成君)　チヨット鎌田君ニ御注意イタシマスガ、成ルベク
  問題ニ關係ノコトニ付テ御質問ニナルヤウニ希望イタシマス

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• 021・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　是ハ關係ガアルト思ヒマスガ要スルニ是等文字言語ニ關ス
  ルコトハ學校デ〓ヘテ居ル、今日普通〓育ヲ受ケタ者ノ使ヒ得ル程度ニ於テ
  言葉ヲ使ッタナラバ必ズ其年數ト云フモノモ二年制度デ以テ三年制度ノコト
  ヲ私ハ十分〓育ヲ受ケ得ルコトト考ヘテ居ルノデアリマス是等ノコトヲ唯
  舊習ノ儘最初徵兵令カ何カ發シテ、當分ヤッテ居ッタコトヲ其儘繼續シ、繼續
  シテ來テ唯其習慣ニ囚ハレテ少シモ舊套ヲ改メルコトヲ爲サズシテ、徒ラニ
  兵數ヲ增シ年數ヲ增シ、サウシテ經費ノ增加ヲ顧ミナイコトハアリマスマイ
  ガ、增加ヲ來タスト云フコトハ最モ憂フベキコトデアリマスカラ、其點ニ付
  テハ常ニ御考ニナッテ居ルコトトハ思ヒマスケレドモ、私ハ尙ホ其點ニ付テ御
  見込ヲ伺ッテ置キタイト思フ
  〔國務大臣岡市之助君演壇ニ登ル〕

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• 022・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　御答ヲ致シマス、唯今ノ兵員ノミノ增加ヲシテ居
  ルノハイカヌ、幹部ヲ增加シナケレバイカヌト云フコトニ對シテ更ニ御質問
  ハ、ソレナラバ編成ヲ變ヘタラ宜シイデハナイカト云フ御質問デアリマシタ
  ガ、卽チ其編成ヲ變ヘルト云フ謂ヒハ詰リ申シマスト聯隊ヲ殖ヤス、若ク
  ハ旅〓ニ之ヲ編合シ、之ヲ積ッテ師團ヲ編成スル、斯ウナリマス、ソレデ步兵
  十二個中隊デ出來テ居ル、是ハ歐羅巴諸强國ガ實戰ノ經驗ニ基イテ拵ヘタコ
  トデアリマシテ、我國ニ於テモ數囘ノ戰爭ヲ經過シテ之ヲ利益ナリト信ジテ
  居リマス、此利益ト云フモノハ今囘ノ戰役ノ實驗ニ基キマシテ決シテ動カス
  ベカラザルモノト信ジマス、サウ致シマスルト編成ナルモノハ、卽チ聯隊ナ
  ラ聯隊ニ付テノ編成ト云フモノハ殆ド動カスコトハ出來マセヌ、自ラ之ヲ編
  合シテ師團ノ編成ヲスル、斯ウナリマス、ソレデ尙ホ詳細ナコトヲ申述ベタ
  ウゴザイマスガ、前申上ゲマシタ通リニ此公開ノ席デ申スコトハ避ケタイノ
  デゴザイマス、ドウゾ他日ニ御讓リヲ願ヒタウゴザイマス、ソレカラ〓育上
  ノコトニ付テノ御質問ガゴザイマシタ、鎌田君ハ餘程御〓究ニナッタト見エ
  テ御精シウゴザイマス、成ルホド唯今御話ノヤウナ實例ハゴザイマス、併シ是
  バ〓育ニ於ケル枝葉ノコトデゴザイマス軍事〓育ノ主眼トシテ居ル所ハ軍
  紀ノ〓育デゴザイマス、唯形ノ上ノ〓育デハゴザイマセヌ、卽チ死生ノ巷ニ
  立ッテ心身同一ニ働クト云フ上ニ付テハ、物ガ巧ミナト云フヨリモ熟練ト云フ
  コトニ重キヲ置キマス、熟練ト云フコトハドウシテモ年月ヲ經タ者ガ熟練ス
  ルニ相違ナイ、其上カラ割出シマシテ、二年在營ヨリモ三年在營ヲ宜イト致
  シテ居リマス、是ハ前ニ日露戰爭ノ實驗ニ徵シマシテモ戰爭ノ初期ニ於キ
  マシテハ三年在營ノ兵ヲ以テ既ニ御承知ノ通リ勝ヲ制シマシタガ、後ニ至ッテ
  沙河ノ會戰以後ニ至リマシテハ短期〓育ノ者ヲ混合スルヤウナ有樣ニナリマ
  シテ、頗ル戰爭ノ結果ガ十分デゴザイマセヌ、併ナガラ幸ニモ終局勝利ヲ占
  ムルヤウニ至リマシタガ、其實驗カラ申シマシテモ、ドウシテモ長ク〓育ヲ
  シタ者ノ方ガ軍事ノ目的ニ對シテ利益アリト信ジテ居リマス、御承知ヲ願ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=22

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• 023・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　唯今陸軍大臣ノ仰セノ如クナラバ、何故ニ三年制度ニ御恢復
  ニナラヌカト云フ疑ヲ有ッテ居ル、二年制度ノ不完全ナルコトヲ喋々ト述ベラ
  レタノハ私ハ甚ダドウ云フ所ニ趣意ガアルカト云フコトヲ疑フ、又沙河戰爭
  後ノ兵員ノ段々劣惡ニナッタト云フコトハ、是ハ皆三箇月カソコラノ〓育ヲ加
  ヘタ補充兵ヲ以テシタガ爲デアル、二年兵制度ガ惡イ譯デモナケレバ、二年
  制度ト云フコトハマダ其時行ハレテ居ラナイ

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• 024・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　何故ニ二年在營制度ヲ採ッタト云フ御尋デアリマ
  スカ、其當時ハ二年在營制度ヲ採ルト云フコトニ付テ現ニ帝國議會ニ於テモ
  非常ニ唱道セラレタノデ、ソコデ他ノ歐羅巴强國ニ於テモ段々二年在營制度
  ヲ採用シテ居リマスノデ、ソレニ從ヒマシテ、卽チ試ニ二年在營制度ヲ採ッテ
  居リマスノデ、徵兵令ノ上ニ於テハ決シテ二年兵役ト致シテ居リマセヌ、矢
  張リ現役ハ三年ニナッテ居ル、卽チ步兵ノ如キハ二年在營ヲサシテ三年目ニ歸
  休ヲ許シテ居リマス、デアリマスカラ經費ガ許セバ何時デモ三年ノ在營ニ出
  來マス
  〔國務大臣八代六郎君演壇ニ登ル〕

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• 025・八代六郎

  ○國務大臣(八代六郞君)　鎌田君ニ御答へ致シマス、鎌田君ノ海軍大臣ニ對
  スル御尋ハ海軍モ陸軍ト同樣ニ舊キ型ニ因ハレテ居リハセヌカ、軍艦等ガ
  出來ノ曉ニハ既ニ舊式ニ屬スルヤウニナリハセスカ、英國ノ艨艟ハ新式ノ獨
  逸ノ潜水艇ノ爲ニ大ニ苦シメラレテ居ル實況ガアルガ如何デアルカ、我國ノ
  海軍モ之ニ鑑ミテ唯艨艟ノミデナク新シキ潛水艇等モ建造シテハドウデアル
  カモウ少シ舊套ヲ脫シテハ如何デアルカ、種々四圍ノ事情モアルコトデア
  ラウガ、舊式ニ囚ハルルコトナク、努メテ新艦艇ヲ得ルコトニ努力シテハ如
  何。御質問ノ內容斯ノ如シト存ジマス、舊キ型ニ因ハレテ居リハセヌカト云
  フ御尋ニ對シテ海軍大臣ハ舊キ型ニ因ハレテ居ラスト云フコトヲ斷言イタシ
  9.8.尤モ安藝、薩摩等ノ建造ハ大分長キ時日ヲ要シマシタ、此事ヲ仰セラ
  ルルカトモ考ヘマス、ソレハ經費其他ノ都合ガアッテ非常ニ長日月ヲ要シタ
  コトト存ジマス、其後ノ攝津、河內、比叡昨今竣工イタシマシタ榛名、霧島
  等ハ三十七箇月ヲ以テ竣工ヲ致シテ居リマス、又最新ノ一驅逐艦十隻ハ著手
  以後六筒月ヲ以テ竣工ヲ致シテ居リマス、是ハ我國ノ造船業ニ於テ「レコー
  ド」ヲ破ッタコトデ、極メテ滿足ノ意ヲ表シテ居ル次第デアリマス、英吉利ノ
  大艦ガ獨逸ノ潜水艇ニ苦シメラレテ居ルノデアルガドウデアルカ、ソレハ如
  何ニモ實狀デアリマス、併ナガラソレハ潜水艇ガ大艦ノミヲ擊沈シタ場合ニ
  付テ著眼ヲセラレルカラ、サウ云フ御質問ガ出タノデアリマス、彼ノ「フオ
  ークランド」ノ戰ヒニ艨艟巨砲ヲ以テ獨逸ノ艦隊ヲ擊沈シテ居ル、又北海ニ
  於テハ艨艟巨砲ヲ以テ獨逸ノ「ブルーヘル」ヲ擊沈シ、其他ノ大艦ニ大損害
  ヲ與ヘテ居リマス、サレバ此點カラ見ルト艨艟モ必要ナリ、潜水艇、驅逐艦
  モ必要デアリマス、去リナガラ艨艟ハ海軍ノ主力デアリマス、我國ノ海軍ニ
  於テ未ダ此主力タル大艦ハ充實シテ居リマセヌ、現時ニ於テモ重キヲ大艦ニ
  置イテ居リマスノハ其處デアリマス、去リナガラ之ガ爲ニ耳目手足トナルベ
  キ巡洋艦、驅逐艦、或ハ潜水艇等ノ建造ハ之ヲ苟且ニ附シテ居リマセヌヽ獨
  リ憾ムラクハ潜水艇ノ今日最大ト云フモノハ本國ニ於テハマダ出來マセヌ、
  或種ノ潜水艇ヲ我國ニ於テ建造シ得ルト云フ見込ガ漸ク昨今ニ於テ附キマシ
  タ、此點ハソレ〓〓專門家ノ非常ニ苦心シテ居ル所デアリマス、是モ種々試
  驗ノ結果ヲ得テ愈〓建造ニ著手スル積リデアリマス、ヤッテ見マシタラ案外手
  際能ク出來ルカモ知レマセヌ、併ナガラ是ハ未來ニ屬スルコトデアリマスカ
  ラ、是ハ今日ニ於テ明言ハ出來マセヌ、舊套ヲ脫シテハ如何ト云フコトデア
  リマスガ旣ニ舊式ニ囚ハレテ居ラヌト云フコトヲ申シタ以上ハ、舊套ヲ脫
  シテ居ルコトハ當然ノコトデアリマスカラ、是ハ御答辯ヲ要シマセヌコトト
  思ヒマス、種々四圍ノ事情モアラムナレドモ、モウ少シ新シキ事ニ努力シテ
  ハ如何、是ハ如何ニモ四圍ノ事情殊ニ此經費ノ事ニ付テハ種々苦慮ヲ致シテ
  居リマス四圍ノ事情ノ中最モ苦心イタシマスコトハ此經費ノコトデアリマ
  ス、經費ヲ澤山與ヘラレマシタナラバ、モット餘程新シイ事ガ出來ルコトト思
  ヒマス、其他四圍ノ事情ト云フコトハ能ク解シマセヌガ、如何ニモ色〓ナ事
  情モゴザイマセウガ、是ハ努メテ困難ナル事情ヲ排シテ新シキ艦艇ヲ得ラレ
  ルコトヲ一日モ怠リナク努メテ居ル次第デアリマス、鎌田君ノ御質問中ニハ
  海軍ニ對スル御注意ト御希望ガ含ンデ居リマス、御注意ニ對シテハ深ク感謝
  ノ意ヲ表シ、御希望ニ對シテハ海軍當局者モ鎌田君ト同樣ノ希望ヲ有ッテ居ル
  ト云フコトヲ申シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=25

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• 026・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　尙ホ此陸海軍大臣ニ對シテハ質問スベキ點モアルト思ヒマス
  ガ、委員會デ········尙ホ本員ハ遞信大臣ニ伺ヒマスガ、是ハ此船舶補助問題デ、
  申スマデモナク昨年十二月ヲ以テ此航路補助ハ滿期ニナッテ居リマス、而シテ
  之ヲ議會ニ諮ラズシテ、政府ガ航路補助ハ一箇年ノ期間ヲ與ヘラレルト云フ
  コトハ卽チ金額及五箇年以內ニ於テ年限ヲ定メテ議會ノ協賛ヲ經ナケレバナ
  ラヌト云フコトニナッテ居リマス、其道ニ依ラズシテ之ヲ獨斷的ニ補助セラレ
  タト云フコトニ付テハ、如何ナル理由ニ依ッタモノデアルカ、之ヲ質問イタシ
  タイト存ジマス
  〔國務大臣武富時敏君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=26

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• 027・武富時敏

  ○國務大臣(武富時敏君)　鎌田君ノ御尋ニ御答イタシマス、御承知ノ通リニ
  遠洋航路ノ補助ハ第一囘ノ補助期間ハ昨年ノ十二月ヲ以テ滿了トナリマシ
  夕、併ナガラ此航路補助ノ必要ハ今尙ホ依然トシテ存シテ居ルノデゴザイマ
  スカラ、昨年御承知ノ通リニ大正四年乃至大正五年度ニ補助契約案ヲ議會ニ
  提出イタシマシテ同時ニ豫算モ提出シテ置キマシタガ、議會ノ解散ニ依ッテ豫
  算モ契約案モ共ニ不成立ニナリマシタ爲ニ、隨ッテ憲法ノ命ズル所ニ依ッテ政
  府ハ前年度豫算ヲ施行スルコトニ相成ッタノデアリマス、ソレデ本年度ノ補助
  ハ卽チ前年度ノ豫算ヲ施行サレテ、其施行豫算ノ範圍內ニ於テ補助ノ命令ヲ
  下シテ定期航海ヲ繼續サセラ行クノデゴザリマス、此前年度豫算ヲ施行スル
  ト云フコトニ付テ疑ガ世間ニアルサウデアリマスガ、併シ從來契約ニ基ク豫
  算ガ不成立ノ場合ハ其前年度ニ於テ契約ノ期限ガ切レテ居ッテモ、尙ホ其事柄
  ノ必要ガ殘ッテ居ル際ニハ其年限ノ盡キル年度ノ豫算ヲ翌年度ニ施行スルト
  云フコトニ從來ナッテ居リマス、ソレ故ニ此度ノ航路補助費モ昨年度限リ一時
  契約ハ滿期ニハナリマスルガ、其航路補助ノ必要ハ今日依然ト存シテ居ルノ
  デアリマスルカラ、前年度豫算ヲ今年度ニ施行スルト云フコトハ、詰リ從來ノ
  實例ヲ履ンダ譯デアリマシテ、更ニ新例ヲ造ッタ譯デハゴザイマセヌ、又補助
  法ノ第一條ニ金額年限ハ議會ノ協賛ヲ經ベシトアルノヲ、協賛ヲ經ズシテ補
  助ノ命令ヲ下付シタノハドウ云フ理由デアルカト云フ御尋ニ對シテハ、補助
  ガ一年限リデアッテ、其一年限リノ豫算ガ成立イタシマスレバ卽チ豫算ニ依ツ
  テ協賛ヲ得ルノデアリマスカラ、補助法ノ第一條ニ要求スル所ノ議會ノ協賛
  ト云フノハ、卽チ豫算ニ依ヲテ其條件ヲ充タスノデアリマス、更ニ別ノ形ニ於
  テ重複ニ議會ノ協賛ヲ求ムル必要ハナイト信ズルノデアリマス、ソレデ本年
  ハ前年度ノ豫算ガ施行サレテ卽チ豫算ガ成立イタシマシタ、議會ニ提出シタ
  豫算ハ不成立ニ終ッテモ前年度豫算ヲ施行スルト云フ憲法ノ規定ニ依ッテ施行
  豫算ガ成立イタシマシタ以上ハ、其豫算ニ依ッテ卽チ議會ノ協賛ヲ得タルノト
  同一ノ施行豫算ガ成立イタシマシタ以上ハ、卽チ議會ノ協賛ヲ經タルモノト
  同一ノ取扱ヲシテ、政府ハ此補助ノ命令ヲ發スルコトハ、何等憲法ニモ法律
  ニモ差支ハナイト信ジテ、御承知ノ通リノ處置ヲ取ッタ次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=27

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• 028・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　尙ホ唯〓ノ御答辯デハ滿足ハ出來ナイ、航路補助ノ必要ハ尙
  ホ存シテ居ルカラト云フコトハ、是ハ當局者ノ御見込ハサウデアリマセウ、
  或ハ我〓モサウ考ヘルカ知レヌガ、議會ハ何ト考ヘル、議會ニ於テハ五年ノ
  年限ヲ劃シテ補助シタモノデアルカラシテ、五年ノ補助ガ經過スルト、當然
  次ノ年限ヲ決メテ補助スルマデハ、議ガ決マルマデハ、必要不必要ト云フコ
  トハ分ラナイ、前年度ノ豫算ヲ踏襲スルト云フノハ契約ノアルモノヲ或ハ
  是マデ憲法上行政費ニ向ッテ適用スルモノデアル、其根本的契約ハ切レテ仕
  舞ヲテ居ルノデアル、卽チ會社ト政府トノ間ニ何等義務ハナイト云フコトニ
  ナッテ居ル、然ルニ唯前年度通リト云フコトハ、一箇年デアルカラ之ヲ爲シテ
  モ憲法ニ反シナイト云フコトハドウモ私ハ分ラナイ、一箇年デモ數箇年デモ
  同ジコトナンデス、時ト云フコトデアル、議會ニ向ッテ其補助ノ金額及年限ハ
  協賛ヲ經ベシト云フコトハ「タイム」ト云フコトデアル、金ト時、金ト時トノ
  二ツノ協賛ヲ經ナケレバナラヌト云フコトガ規定サレテアルニモ拘ラズ、
  年デアルカラ構ハナイ、五年ナラ議會ニ聞カナクチヤナラヌ、ソンナ理窟ハ
  アリハセヌ、卽チ取リモ直サズ政府ハ議會ノ五年ト決定シテ居ルモノヲ六年
  ト延長シタノト同ジコトデアル、憲法違反ニアラズシテ何ゾヤ、確カニ違法
  ノコトト私ハ考ヘルノデアリマス、前年度踏襲ト云フコトハ此事ニハ適用ス
  ルコトガ出來ナイ、卽チ時ト金トハ議會ニ聞カナケレバナラヌ、然ルニ金ガ
  アルカラ時ノ方ハ構ハナイト云フノハ、一ツノ要素ガ缺ケテ居リマスカラ遞
  信大臣ノ御答辯ハ未ダ私ノ滿足ヲ爲スコトハ出來ナイコトト申上ゲルヨリ仕
  方ガナイ
  〔國務大臣武富時敏君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=28

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• 029・武富時敏

  ○國務大臣(武富時敏君)　御滿足ヲ得マセヌノハ誠ニ遺憾ノ次第デゴザイマ
  スルガ、併シ唯今申上ゲマシタ通リニ豫算不成立ノ場合ハ前年度ノ豫算ヲ
  施行スルト云フ憲法ノ規定ニ依ッテ前年度ノ豫算ガ施行豫算トナッテ、成立イ
  タシタ以上ハ、鎌田君ノ仰セラルル時ト金トノコトガ議會ノ協賛ヲ得タモノ
  ト同一ノ場合ニ、玆ニナッテ居ルト政府ハ信ジテ此處置ヲ執ッタノデアリマス、
  ドウゾ此段ヲ御承知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=29

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• 030・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　唯前年度豫算ト云フコトハ偶然アルコトデアルカラ、決シテ
  年限ノ切レタモノニ向ッテ適用スルコトハ出來ナイ、ソレニデス、此航路補助
  ト云フコトノ必要ガ尙ホ存ジテ居ルト云フコトハ、私モ矢張リ同感デアル、
  航路補助ハ必要デアルト考ヘマス、併ナガラ此憲法ノコトト云フモノハ個々
  ノ場合ヲ以テ推ス譯ニイカヌ、必要ノ時モアリ、必要ノ消滅シテ居ル時モ長
  イ年月ニハアルデスカラ、ソコデ憲法ハ必ズ議會ニ聞クコトヲ命ジテ居ル
  ト云フノハ、政府ノ考ヘダケデハ分ラナイ、若シ是ガ今日必要デアルカモ知
  レナイケレドモ不必要ノ場合ガアル、不必要ナ場合ニハ今日ノ如キ〓廉ナル
  當局者、今日ノ如キ〓廉ナル所ノ諸會社トノ間ニハ宜シイノデス、唯他日間
  違ッタ政府、間違ッタ會社ガアッテ必要ノナイノニ必要ノ理由ヲ附シテ、隨分
  一箇年ノ補助ヲ得ルコトノ出來ナイコトハナイ、憲法ハ今日ノ如キ立派ナ政
  府立派ナ會社ヲ認メテ立テタモノデハナイ、若シ今日ノ如クデアッタナラバ
  殆ド憲法ハ要ラヌカモ知レヌ、議會ニ諮ラズ政府ニ一任シテ宜シイノカモ知
  レヌケレドモサウハイカヌ、百年千年ノ間ニハ如何ナルコトガアルカモ知レ
  ヌ、必要デナイモノヲ必要ト見テヤルト云フコトガ、隨分起ッテ來ルコトヲ防
  グノガ憲法、卽チ立憲ノ趣旨デアル其要點ヲ唯今ハ必要デアルカラ認メ
  ル、認メルノデヤル、ヤルナラバ憲法モ何モ要ッタモノデナイ、併ナガラ此上
  御說明ヲ要求ハシマセヌガ當局者ノ御說明ニハ滿足ヲスルコトガ出來ナイ次
  第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=30

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• 031・仲小路廉

  ○仲小路廉君　私ハ大藏大臣ニ二三御伺ヲシタイ、殊ニ今朝大藏大臣ノ御述
  ベニナリマシタコトニ依ッテ私ハ御尋ヲ致シタイ、、今朝大藏大臣ノ御述べニナ
  リマシタ御言葉ノ中ニ大正四年度ノ歲出入ニ付テハ是ガ經費豫算案ヲ第三
  十五議會ニ提出イタシマシタノデアリマス、不幸ニシテ其成立ヲ見ルニ及バ
  ナカッタノデアリマスガ故ニ、帝國憲法ノ條規ニ從ッテ前年度豫算ヲ施行スル
  ト同時ニ、緊急已ムヲ得ザル諸般ノ施設ニ對シテ、其成立ヲ見ルコトガ出來
  マセナカッタガ故ニ、政府ハ已ムヲ得ズシテ、豫備金外臨時支出ノ方法ニ依リ
  マシテ、機宜ノ手段ヲ執リ遺算ナカラムコトヲ努メタノデアリマスル云々、
  憲法ノ條章ニ依リマシテ、臨時緊急ノ處置ヲ執ッタ、此憲法上ノ問題ニ付キマ
  シテハ帝國議會殊ニ貴族院ニ於キマシテ、最モ攻究イタスベキ事柄ト本員ハ
  考ヘマス、私ハ今日ハ過日來カラ質問ヲ致シテ居リマシタノト其態ヲ變ヘマ
  シテ、今日ハ此憲法上ニ關スル問題ニ付キマシテハ、虛心坦懷ニ政府ト共ニ
  攻究イタシマシテ、我くノ遵守スベキコトモ明瞭ニ致スノミナラズ、又國民
  一般ノ嚮フ所ヲ知ラシムル必要モアルト自分等ハ考ヘマス、若槻藏相ガ先月
  ノ二十八日ニ衆議院ノ本議場ニ於テ、屢〓藏相ガ御使ヒニナリマシタ責任支
  出、責任支出ト云フコトニ付テ、衆議院ノ議場內ニ於テ或議員ヨリ質問ガアッ
  タノデアリマス、私ハ其當時貴族院議員ノ傍聽席ニ於テ注意ヲ致シテ傍聽イ
  タシテ居ッタノデアリマスルガ、其議員ノ質問ニ對シテ若槻大藏大臣ハ極メテ
  豪語サレタ、多クノ與黨ナルモノノ聲援ノ下ニ實ニ豪語サレテ居ッタノデア
  リマス、是ハドウ云フコトヲ仰セラレタカト申シマスルト「剩餘金ノ支出ハ
  政府ノ責任ヲ以テ致スノデアリマス、責任ト云フノハソレヨリモ大ナル制限
  ハナイノデアリマス、政治上ノ責任ヲ負フト云フヨリ大ナル制限ハナイノデ
  アリマス、政治上ノ責任ヲ負フト云フ以上ノ責任ハナイノデアル」、斯ルコト
  ヲ議場內ニ於テ豪語サレタ、而シテ多クノ與黨ナルモノハ其言葉ヲ壯ンナリ
  トシテ聲援イタシテ居ッタノデアリマス、憲法上ノ關係ハ一時多數ヲ得タカ
  ラ、一時多數ノ人ノ贊成ヲ得タカラ、若クハ其場合ニ都合好ク辯明ヲ致シテ
  切拔ケタカラト云フコトヲ以テ之ヲ看過スル譯ニハ參ラヌト私ハ考ヘル、是
  ハ御同樣ニ篤ト能ク〓究イタシテ置クベキコトト存ジマス、私ハ憲法上經費
  ノ支出ニ付テハ、第一ハ豫算ノ議定ニ依ッテナス支出、次ニ憲法第六十四條ノ
  第二項ニ依ル支出、豫算外ノ支出、今一ツハ憲法第七十條ニ依シル緊急ノ支
  出、此三通リノ支出ノ方法ノ外ニハ憲法上支出ノ道ハナイコトト本員ハ考ヘ
  ルノデアリマス、而シテ第六十四條ノ第二項ニ於ケル支出モ、第七十條ノ規
  定ニ依ル支出モ、是皆事後承諾ヲ必要條件トシテ居リマス、事後承諾ヲ條件
  トシテ居ル支出、支出其事柄ハ分ッテ居ルノデアリマスガ、是以テ憲法上支出
  シ得ベキ道ニ依ッテノ支出デアル大藏大臣ガ屢、述べラレテ居ル責任支出ト
  ハ何事デアリマス、責任支出ト仰セニナルノハ唯今申述ベタ憲法第六十四條
  ニ依レル支出、若クハ第七十條ニ依レル支出ノ外ニ新タニ責任支出ナルモノ
  ガ憲法上アリ得ル支出ノ道デアリマスカ、如何、抑〓岐阜ノ震災以來、帝國議
  會ノ疑問トナッテ居ッテ每期議會ノ問題ニナッテ居ルコトデアルノハ私共能ク
  承知イタシテ居リマス、ソレハ剩餘金支出ノ問題デアリマス、此剩餘金支出
  ナルモノハ憲法上如何ナル地位ニ置カレテ居ルモノデアルカ、是ハ二十四年
  ノ議會以來屢、アル問題デ、私共モ其點ハ詳知シテ居リマス、憲法ノ上ヨリ極
  ク順當ニ、至當ニ申シタナラバ蓋シ憲法第六十四條ノ第二項ニ於ケル豫算外
  ノ支出ナルモノハ憲法六十九條ノ豫備金ヲ基ト致シテ、ソレヲ大本トシテ
  ナスベキ支出デアルト云フコトハ憲法上至當ト存ズルノデアリマス、唯今マ
  デ不幸ニシテ歲計上十分ノ餘地ガナカッタガ爲ニ、其豫備費ニ多クノ金額ヲ見
  積ルコトガ實際ムヅカシカッタノデアリマス、ソレ故ニ豫備費ノ足ラザル結果
  ハ剰餘金ヲ以テ之ヲ補フ形トシテ、憲法第六十四條第二項ノ規定ニ從ッテ事
  後承認ノ方法ニ依ッテ支出ヲ致シテ居。ッタコトガアルノデゴザイマス、私モ從
  前政府部內ニ居リマシタ譯デアリマスカラ、今日敢テ以前ノ事柄ニ對シ批難
  ヲシ、態〓玆ニ辯ヲ好ムノデハアリマセヌ、故ニ岐阜震災以來ノ支出ノ事柄
  モ矢張リ憲法ノ條項ニ從ッテ議會ノ協賛ヲ求メ、議會モ亦事後承認トシテ之ニ
  承認ヲ致シタ例モアルノデアリマス、然ルニ責任支出、責任支出ト屢〓仰セニ
  ナリマス、其責任トハ何事デアリマス、玆ニ責任ナル言葉ノ前ニハ違憲行爲
  デアッタ、違法行爲デアッタ、憲法違反、法律違反ト云フコトヲ前提ニシナケ
  レバナラヌコトニナッテ參ルノデアリマス、之ニ付テハ大藏大臣ハ如何ナル御
  考デアリマセウカ、憲法ノ條規ノ下ニ爲ス政治ニ付テハ憲法ヲ遵守シナケレ
  バナラヌ、責任ノアリマスコトハ普通一般ノ者ガ國憲、國法ノ下ニ其典刑ヲ
  正シウシナケレバナリマセヌト云フ點ト少シモ變リハナイ、國憲ヲ犯シ、國
  法ヲ破レバソレニ伴フ制裁ノアルコトハ是ハ當然ノコトデアリ、殆ド一般普
  通ノ法ニ於テモ其通リデアル、唯或ハ國民ノ爲ニ、或ハ一町一村落ノ爲ニ國
  家ノ典刑ヲ破レバ相當ノ制裁ヲ受ケルコトハ覺悟ノ前、所謂志士仁人身ヲ殺
  シテ仁ヲ成スト云フ例ガアルノデアリマス卽チ一村落村民ノ爲ニ身ヲ犧牲
  ニシテ將軍ニ直訴シテ刑ニ觸レタ者モアルノデアリマス、是皆己ノ身ヲ犠牲
  ニシテ居ル、身ヲ犠牲ニシテ刑罰ノ前ニ身ヲ提供シテ、尙且ツ法律典刑ヲ犯
  シテ迄モ一般村民ノ爲ニ身ヲ捨テル、玆ニ於テ卽チ責任ナルコトガ明瞭ニナ
  ルノデアリマス、其場合ニ唯國家ハ主權者ノ名ノ下ニ於テ或場合ニハ其行爲
  ニ對シテ諒恕セラルル場合ガアリ、或ハ法律ニ規定シテ居ル場合ガアル、或
  ハ大赦ノ方法ニ依リ、若クハ特赦ノ方法ニ依リ、或ハ減輕、減免ノ方法ニ依ッ
  テ、國家ノ典刑ヲ犯シタモノデアル、違法行爲ヲ爲シタモノデアルガ、其事
  情ガ一般公益ノタメ若クハ已ムベカラザル行爲ニ依ッテ爲シタモノデアルカ
  ラト云フ爲ニ、主權者ハ特別ノ宥恕ノ途ニ於テ、是ニ恩赦ヲ與ヘラルル場合
  ガアル、是ガ責任解除ノ方法デアリマス、英國ニ於テモ丁度ソレト同一ノ事
  柄ガアル、確ニ憲法ヲ破ッテ憲法違反ノ行爲ヲ爲シテ居ルモノデアリマシテ
  毛、唯〓其事情已ムヲ得ザルモノ、國家公益ノ爲ニハ已ムヲ得ザルモノトシ
  テ。議會ニ於テ之ニ對スル免責ノ行動ヲ執ッテ居ル場合ガアル、是ハ英國憲法
  ノ特別ノ事情デアリマス、英國憲法ノ因ッテ來ッタ性質ガ、卽チ斯ル狀態ヲ議
  會ニ與ヘテ居ル、申スマデモナク英國ニ於テハ憲法議會ト云フモノヲ殆ド萬
  能ノモノト致シテ居ルノデアリマス、其結果ハ議會ニ於テ之ヲ承認スル、或ハ
  免責ノ法ヲ執ルト云フノハ是ハ英國ニ於テハ慣習デアル、去リナガラ我憲法
  ハ決シテ英國ニ於ケル憲法トハ同日ニ論ズベキモノデハナイノデアリマス、
  我憲法ハ憲法ノ條規條章ニ依ラザレバ、何等ノ事柄モ爲シ得ナイノデアリマ
  ス、憲法上違憲若クハ不法ノ行動デアリマシタナラバ、之ヲ議會ニ於テ有效
  ナラシムルト云フ途モ付カナイデアリマス、之ヲ簡單ニ申サバ、政府ハ曩ニ
  申シタ三種ノ事柄ノ以外ニ於テ、責任支出、責任支出ト仰セニナリマスルガ。
  其事後承認ヲ求ムル方法ハ、憲法ノ條章如何ナル條章ニ依ッテ帝國議會
  ニ向ッテ承認ヲ求メラルルカ、其條章ハ蓋シ第六十四條ニ準ジマスカ、若クハ
  第七十條ニ準ジマスカ、何レカニ準據シナケレバ帝國議會ニ向シテ事後承認
  ヲ求ムル筋ハ出テ來ナクナッテ來ル、若シモ其筋ガ出テ來ナクナッテ來ルモノ
  デアリマスナラバ、獨リ政府ノミナラズ議會自ラガ之ニ協賛ヲ與ヘ承認ヲ與
  ヘルト云フコトモ、憲法上如何ナル條項ニ依ッテ之ヲ爲スノデアルカ、殊ニ私
  ハ今日此所ニ武富遞信大臣モ御見エニナリ、一木文部大臣モ御見エニナッテ
  居ルト思ヒマスガ、現內閣ノ方〓ハ時~斯樣ナコトヲ仰セニナル、武富遞信
  大臣ノ如キハ現ニ航路補助問題ニ關シテ斯ウ云フコトヲ言ッテ居ラルル、「固
  ヨリ政府ハ國家ノ利益ヲ擁護スルガ爲ニ、自ラ責任ヲ執リ必要已ムヲ得ザル
  ノ處置ニ出デタルモノニシテ、區々法規ノ末ニ拘泥スルモノニ非ズ云々、」時
  ニ斯ウ云フ御言葉ガ現内閣ノ方ミカラハ出テ居ルノデアリマス、己レ必要ト
  見タ以上ハ之ヲ斷ジテ爲スノデアリマス、區々法規ノ末ニハ拘ラナイト、言葉
  甚ダ壯ンデアル、知ラザル者ガ聞ケバ壯語トシテ誠ニ大臣ノ處置ト考ヘル、
  憲法治下ニ於テ斯ル言葉ヲ爲ストハ何事デアル、憲法治下ニ於テハ行政者ハ
  憲法治下ノ一機關ニ過ギナイノデアル、憲法ヨリ超越シタ憲法以上ノ行動ガ
  爲セルモノダト云フコトハ、國務大臣トシテ何タルコトヲ言ハレルノデアリ
  マスカ、又一木文部大臣ガ五月二十七日ノ衆議院豫算總會ノ時ニ述ベラレテ
  居リマス、其御言葉ニ依リマスレバ、一木文部大臣ハドウシテモ、前提トシ
  テハ違憲デアル憲法違反デアルト云フコトハ、御認メニナッテノ御言葉ト存ズ
  ルコトガ見エルノデアリマス、唯〓文部大臣モ御同樣ニ「此方法ニ據ラナケ
  レバ政治家トシテノ活動ガ出來ナイノデアルニ依ッテ」·政治家ハ果シテ斯
  ルモノデアリマセウカ憲法以上ニ超越シテ何事モ己自ラ認メテ必要ナリト
  シタナラバ、責任責任ト稱スル名ノ下ニ於テ、之ヲ斷行イタスト云フガ果シ
  テ是ガ政治家ノコトデアリマセウカ、私ハ實ニ此場合憲法發布當時ニ降サレ
  マシタ先帝陛下ノ勅語ニ對シテ、今更ノ如クニ此事ヲ恐懼スル次第デアリマ
  ス、其勅語ノ一節ニ「朕ガ在廷ノ大臣ハ朕カ爲ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ
  任スヘク朕カ現在及將來ノ臣民ハ此ノ憲法ニ對シ永遠ニ從順ノ義務ヲ負フヘ
  シ」云々誠ニ其通リデアリマス、陛下親ラ憲法ノ條章ニ依フテ政治ヲ遊バサ
  ルルト仰出サレテ居ルノデアリマス、國務大臣宰相ト雖モ我立憲治下ニ於テ
  ハ憲法以上ニ超越スル行動ハ斷ジテ爲シ得ラレルモノデハナイノデ、又我國
  民ハ其事ハ皆能ク了解ヲ致シテ居ルト思フ、何レモ皆憲法ノ下ニ於テ爲シ得
  ラレルコトヲ爲シテ貰ヒタイト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレヲソレ以上ノ
  コトマデモ國務大臣、宰相ハ爲シ得ラレルモノダト考ヘラルルコトハ甚ダシ
  キコトデハナイカト思フ、私ハ此際此所デ憲法上ノ理窟バカリヲ研究イタス
  ノデハナイノデアリマス、之ガ爲ニ實際上ニ害惡ヲ起シテ居ルノデアリマ
  ス、斯ル憲法上ノ解釋ヲ執リマスル結果ハ、實際上ニ害惡ヲ起シテ居ルノデ
  アリマス、其害惡ハ如何ナルコトカト云ヘバ卽チ責任支出責任支出ト、或
  種ノ支出方法ガアルカノ如キ御考ヲ以テ、玆ニ出テ居ルノガソレデアル、例
  ヘテ言ヘバ近來ノ問題トナッテ居リマス米價調節ノ問題、蠶絲救濟ノ問題、更
  ニ進ンデハ航路補助ノ問題若クハ築港補助ノ問題、其他幾ラモ例ヲ擧ゲレバ
  アルノデアリマス、私ハ敢テ武富遞相其他ノ大臣ニ御尋イタスノデハナイ、
  私ハ平生ヨリ若槻大藏大臣ニ甚ダ信賴ヲ致シテ居ヲタノデアリマス、若槻大藏
  大臣ガ財政ノ衝ニ當ッテ居ラルル以上ハ、必ズヤ總テノ事ハ極メテ嚴肅ニ御取
  扱ヒニナルデアラウ、不法ノ行動ハ斷ジテ爲サルベキモノデハナイト自分等
  ハ考ヘテ居ッタノデアリマス、然ルニ近來ノ御行動ハ恰モ前日ノ若槻君トハ其
  人ヲ異ニシタルガ如ク、先例ヲ知ッテ居ル事務ヲ知ッテ居ルト云フコトノ爲
  ニ、或ハ先例ヲ引用シ、事務的理由ヲ付ケテ却ッテ非ヲ遂ゲシメ、非ヲ飾ルニ
  便利ヲ與ヘテ居ラレハセヌカト思フコトガアルノデアリマス、米價調節、蠶
  絲救濟案ノ如キ、現ニ當初ハ法律ノ規定ヲ必要トシテ議會ニ提案ヲサレタノ
  デアル、事柄ガ單ニ行政命令デ行ケルモノデアリマスルナラバ、初メヨリシ
  テ法律トシテ提案スル要ハナイノデアリマス、又法律トシテ提案スベキ事項
  デアルトスルナラバ、議會ガ解散ノ結果、成立シテ居ラナイ場合ニ憲法第
  八條ノ規定ニ依ル外、途ハナイノデアリマス、又政府モ其方法ヲ御執リニナッ
  タカノ如クニ承ルノデアリマス、然ルニ憲法第八條若クハ七十條ノ規定ニ依
  リマスレバ、憲法上必要ナル勅令ノ規定ヲ要スル、勅令ノ規定ヲ要スルニ付
  テハ樞密院ニ諮詢スル方法ヲ執ルノガ憲法上當然デアル、是等ノ憲法上ノ機
  關ヲ通ホシテ、ソレデ出來ナカッタナラバ、憲法上不能ノコトデアル、不可能
  ノコトデアル、憲法上不能ノコトデアリ、不可能ノコトデアリマスルナラバ、
  ソレハソレト致シテ置ケバ、國民モ其積リニナルノデアリマス、國民ハ決シ
  テ無理ナコトヲ要求イタスモノデハナイノデアリマス、卽チ憲法ノ條文ニ從ッ
  テ少シモ紛亂紛更セシメナイコトハ、至當ノ政治ヲ行ハレル上ニ於テ必要ガ
  アルノハソコデアリマス、若モ此事柄ガ實際上イケナイモノダト云ウテ早ク
  覺悟セシメタナラバ、其積リニナッテ居ッタニ違ヒナイモノヲ、何トカ出來ル
  ヤウナコトヲ屢〓言ハレ、殊ニ若槻大藏大臣ガ米價調節、蠶絲救濟其他ニ付テ
  辯解ノ一定セザリシコト、言換ヘレバ無定見ノ甚シカリシコトニ付テ私ハ實
  ニ遺憾トスルノデアリマス、根本ニ於テ米價調節ノ必要ナシト云フ御意見デ
  アッタノカ、蠶絲救濟ノ必要ナシト云フ御意見デアッタノカ、我〓ドモモ時局
  開始ノ初メヨリシテ、之ニ付テハ適切ナル方法ヲ考ヘテ見ナケレバナラヌト
  考ヘテ居ッタ、只御執リニナッタ手段方法ハ米價調節、蠶絲救濟、甚シク拙劣
  ナコトデハナカッタカト思ヒマス、ソレニ付テ果シテ御意見ガ其通リアッタカ
  ナイカハ存ジマセヌケレドモ、昨年八月以來幾度カ若槻大藏大臣ノ御見解ハ
  變遷ヲ致シ、變遷ヲ致シ、變更ヲ致シ、變更ヲ致シマスルノデアリマス、是
  ガ若槻禮次郞君御一人ナラバ社會ニ利害ヲ及ボシマセヌ、若槻君ノ地位ハ大
  藏大臣タルガ故ニ、此一擧一動ハ直チニ國民ニ重大ナル影響ヲ及ボスモノ
  ト御承知ニナラナケレバナラヌコトデアル、出來ヤウト思フカラ玆ニ市場ニ
  ハ影響ヲ及ボシ、海外ニ影響ヲ及ボシ、生絲ハソレニ依ッテ思惑ヲ生ジテ來
  ル、米價ハソレニ依ッテ考ヲ付ケル、出來タナラバ又下落シテ仕舞フ、是ハ卽
  チ國務大臣ノ一擧一動ハ延イテ市場ノ價値ニ對シテ屢〓高低ヲ致サシメル、實
  ニ國務大臣ノ行動ハ愼マネバナラヌノハ此點デアラウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=31

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• 032・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　チヨット仲小路君ニ御注意イタシマスガ、成ルベ
  ク御意見ニ涉ラヌヤウニ御質問ニナリタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=32

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• 033・仲小路廉

  ○仲小路廉君　勿論能ク能ク承知イタシテ居リマス、是ハ私ハ注意ニ注意ヲ
  致シテ居ルノデアリマス、是迄申シタコトハ此問題ニ必要デアリマス、ドウ
  カ議員ノ發言ニ付テハ成ルベク所思ヲ貫クヤウニ致シタイト存ジマス、唯今
  ノ事柄ハ能ク自分モ諒解イタシマス、今暫ク御聽キヲ願ヒマス········左様ナ次
  第デアリマスルカラ、屢見解ガ動クト云フコトハ遂ニ市場ノ攪亂トモナリ、
  影響ヲ及ボス基トナリハセヌカト思ヒマス、是等ハ實際ニ及ボス弊デアリマ
  ス、此點ニ付キマシテハ大藏大臣ノ御所見ハ如何デアリマセウ、簡單ニ申サ
  バ責任支出トハ憲法上如何ナル條章ニ依ッテナサルノデアリマスカ、其事ヲ承
  リタイ
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=33

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• 034・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　唯今仲小路君ヨリ、先程申述ベマシタ事柄ニ關
  聯シテ御質問デアリマシタガ、申述べマシタ言葉ヲ御引用ニナッタノハ、述
  ベタ言葉ト御引用ニナッタ言葉ノ其間ニ中間ガアルノデアルノヲバ、一〓ニシ
  テ御述べニナリマシタガ、是ハ速記錄ヲ能ク御覽ヲ願フト云フト、其間ニ尙
  ホ外ノ言葉ガ夾マッテ居ルノデアリマスカラ、其點ハ速記錄ニ讓ルコトニ致シ
  マシテ、御質問ノ要點ハ、國庫剰餘金ノ支出ヲスルト云フノハドウ云フ解釋
  ヲ以テ之ヲ爲スノデアルカト云フコトニ歸著シテ居ルヤウデアリマス、國庫
  剩餘金ノ支出ナルモノハ現內閣ガ初メテ之ヲ爲シタノデナイト云フコトモ、
  仲小路君ハ能ク御述べニナッタノデアリマス、明治二十四年以來今日マデ二十
  何年間ノ間、其間一兩年度國庫剰餘金ノ支出ノナイ年ハアリマシタラウガ、
  其他ニ於テハ殆ド國務ノ必要上巳ムヲ得ナイトキニ國庫剩餘金ヲ支出シテ
  居ッタト云フ事實ハ御認メニナッテ、サウ云フヤウニシテ居ッタノデアルガ、現
  內閣ノ說明ガ責任支出ト云フ言葉ヲ使ッタニ付テ御疑ヒニナッタト見エテ、ド
  ウ云フ譯デ、如何ナル理由ニ依ッテ國庫剩餘金ヲ支出シタカ、斯ウ云フ御尋ネ
  ノヤウデアリマス國庫剰餘金ノ支出ニ付テハ、帝國議會ニ於テ支出ノ初メ
  カラ論議ノアル事柄デアリマシテ、殊ニ衆議院ニ於テハ此剩餘金ノ支出ニ對
  シテハ屢〓議論ガアッタノデアリマス、併ナガラ第九議會ニ於テ、衆議院ガ國庫
  剩餘金ノ支出ヲ承諾セラレル場合ニ決メラレタ一ツノ見方、見解ガ其後今日
  マデ政府ガ執ッテ居ル所ノ見解デアルヤウニ私ハ考ヘマスガ、殊ニ現内閣ハ其
  見解ニ基イテ國庫剩餘金ノ支出ヲ致シタノデアリマス、ソレハ憲法ノ條項ニ
  依リマスト云フト、何レノ條項モ國庫剩餘金ノ支出ヲスルコトヲ明カニ定メ
  タ條文ハナイ、併ナガラ又之ト同時ニ明カニ國庫剰餘金ノ支出ヲ禁ジタ條文
  モナイ、ソレ故ニ憲法ノ上ニ於テハ明許シテモナカラネバ、明カニ禁ジテモナ
  イガ、斯樣ナ場合ニ國庫ニ剰餘金ノアル場合ニ、玆ニ豫算ニ豫見セナイ所ノ、
  豫期セナイ所ノ事柄ガ起ッテ來テ、其事柄ヲ經費ノナイト云フ故ヲ以テ放擲シ
  テ置イタナラバ、國務ノ上ニ非常ナ損害ヲ生ズルト云フヤウナ場合ニハ唯
  今申上ゲタ通リ憲法ニ明カニ禁ジテナイノデアルカラ、國庫剰餘金ヲ支出シ
  テ之ニ應ジテ、而シテ事後ニ至ッタナラバ、憲法ノ第六十四條ノ第二項ニ依ツ
  テ、豫算ヲ超過シ或ハ豫算外ノ金額ノ支出ヲ爲シタル時ニハ、帝國議會ノ承
  諾ヲ後ニ至ッテ受ケナケレバナラヌト云フ條文ニ基イテ、議會ノ事後承諾ヲ
  求メルト云フ、斯ウ云フコトニスベキモノダト云フコトガ、第九議會ニ於テ
  衆議院ノ事後承諾案ヲ議セラルル時ニ極ッタ解釋デアルノデアリマス、之ニ付
  テハ個人ノ解釋トシテ色〓ノ人ガ、ソレニ同意セラルル人モアリマセウ、又
  ソレデハマダ憲法ノ解釋トシテハ不滿足デアルト見ラルル人モアリマセウ
  ガ、併ナガラ國政ノ上ニ於テハ其事ガ土臺ニナッテ、其後ノ內閣皆其解釋ニ
  依ッテ國庫剩餘金ノ支出ヲシテ居リマスノデ、現内閣ノ國庫剩餘金ノ支出モ矢
  張リ其見解ニ從ッテ剩餘金ノ支出ヲ致シタ次第デアリマス、責任支出ト私ガ申
  上ゲマシタノハ、豫備金デアリマシタ所ガ第二豫備金、第一豫備金ト各、百万
  圓ナリ二百万圓ナリ設ケテアリマシテモ之ヲ如何ナル費目ニ如何ニシテ支
  出スルカト云フコトハ其支出ヲシタコトニ付テハ、後ニ議會ノ承諾ヲ受ケ
  ヌケレバナラヌヤウニナッテ居リマスノデ、其事項ヲ選ンデ、是ダケノ事項ガ
  生ジタ以上ハ是非何トカシナケレバナラヌ、ソレニ付テハ豫備金ノ是ダケノ
  金額ヲ支出スルト云フコトヲ見定メヲ致シマスコトハドウシテモ政府ガ責
  任ヲ取ッテ致スコトデアリマス、豫備金ニ付テデスラモ十分考究ヲシテ、成ル
  ベク濫費ニ涉ラヌヤウニ、責任ヲ取ッテ執行スル譯デアリマスガ、豫備金デナ
  イ國庫剰餘金、未ダ嘗テ議會ノ何等ノ意思ヲ表示セラレタコトノナイ金額ヲ
  支出スルコトデアリマスカラ、是ハ餘程鄭重ニ考ヘテ此事項ノ爲ニナラバ、ド
  ウモ已ムヲ得ズ出サヌケレバナラヌ、其事項ヲ放擲シテ置イタノデハ、國務
  ノ上ニ非常ニ阻害ヲ生ズルト思フ場合ニ於テハ、政府ハ十分ナ責任ヲ其上ニ
  置イテ之ヲ支出スルコトハ已ムヲ得ナイコトデアル、之ヲ支出シナケレバ一
  方ニ國務ノ曠廢ヲ生ズル故ニ、議會ハ嘗テ意思ヲ表示セラレタコトノナイ事
  項デアリ金額デアルケレドモ、政府ハ後日ニ至ッテ議會ノ承諾ヲ求メルト云
  フ考ニ於テ、全然ソレニハ責任ヲ負ウテ支出ヲスル、斯ウ云フ意味ニ於テ責
  任支出ヲスルト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス、衆議院ニ於テ一議員カラ
  質問ヲ受ケマシテ、國庫剩餘金ノ支出ニ付テハ何等カノ條件ガアルカ制限ガ
  アルカト云フ御話デアリマシタカラ、國庫剩餘金ヲ支出スルニ付テハ政府ハ
  閣議ヲ開イテ鄭重ニ審議シテ、其事ノ必要ナルヤ否ヤト云フコトヲ十分ニ考
  究シテ、然ル後勅裁ヲ仰イデ之ヲ支出スルノデアルカラ、ソレガ條件デアル、
  ソレガ制限デアルト云フ答辯ヲシマシタケレドモ、ソレデハ滿足シナイデ、
  何カ之ヲ出スニ付テ制限ガアルカ、更ニ斯ウ云フ問ガアッテ、制限ガナイト云
  フヤウデアルナラ、議會ノ開會中ト雖モ政府ハ之ヲ支出スルノデアルカト云
  フ、ソレニ對シテ今仲小路君ノ引用セラレタ答辯ヲシタノデアリマス、政府
  ハ國庫剩餘金ヲ支出スルニ付テハ政府ノ責任ヲ以テ支出スルノデアル、責任
  ヲ以テ支出スルト云フカラニハ容易ニ之ヲ爲サナイ、其事項ガ必要デナイノ
  ニ無闇ニ左樣ナ金額ヲ出スナドト云フコトハ決シテシナイノデアル、責任ヲ
  以テ支出スルト云フ位重大ナ制限ハナイ、政府ハ其位ニ考ヘテ居ルノデアル
  カラ、議會ノ開會中議會ニ向ッテ協賛ヲ受ケルコトノ出來ルノニ、責任支出ヲ
  スルト云フヤウナ左樣ナ事柄ハ決シテシナイ、斯ウ云フコトヲ答辯シタノデ、
  仲小路君ガ唯今之ヲ御引用ニナリマシタガ、私ハ其意味ニ於テ政府ハ責任ヲ
  以テ支出スルト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス、米價調節、蠶絲救濟ニ付
  テ色〓御論ガアリマシタガ、是ハ唯今御答辯申上ゲテ宜シイ時機デアルヤ否
  ヤ存ジマセヌケレドモ、既ニ御論ガ出マシタ以上ハ、一應申上ゲマスガ、米
  價調節、蠶絲救濟ニ付テハ、政府ハ當初法律ヲ制定スル考デ、既ニ其法案ヲ
  提出シテ居ッタノデアル、然ルニ其法案ガ成立シナカッタモノデアルカラ、之
  ヲ他ノ方法ニ依ッテ實行シタ、法律デ致スベキコトヲ法律ナシニ實行シタ、是
  ハ如何ニモ不都合デアルト云フヤウナ御論デアルヤウデアリマス、此點ハ或
  ハサウ云フ御疑問ガ若シ外ノ方ニ起リマシテハ相成ラヌカラ、サウ云フヤウ
  ナ御疑問ガアルナラバ十分ニ辯明シテ置キタイト思ウテ居ル所ニ、丁度仲小
  路君ガ左樣ニ仰セニナリマシタカラ、茲ニ明カニ申上ゲテ置キタイノデアリ
  マスガ米價調節ニ付テ政府ガ議會ニ提出イタシマシタ法律案竝ニ豫算案ハ、
  當時ノ財政經畫ニ於キマシテハ、國庫剩餘金ノアリ餘ルモノガ甚ダ少ク相成
  リマシテ、米價ノ調節ニ振向ケル財源ガ此方カラ求メルコトガ出來ナイ狀態
  ニナッタノデアリマス、然ルニ一方ニハ時局ノ際經濟上ニ甚ダ不規則ナル情況
  ヲ生ジテ居ル所ニ、米價ガ極端ニ低イモノデアリマスカラ、日本ノ人口ノ大
  部分ヲ占メテ居ル所ノ農民ノ生產物ガ其生產費ヲ償ッテ、アトニ大ナル利益ガ
  殘ラヌト云フヤウナ關係デ、農民ガ甚ダ困窮ヲスル、大多數ノ人民デアル農
  民ガ非常ニ困窮シテ購買力ヲ減ズルト云フコトニナレバ、其事ガ又商工業ニ
  モ影響シテ、一層一般ノ不景氣ヲ來タスコトデアル、時局ノナイ時ナラバ免
  ニ角、時局ノ際ニ在ッテ更ニ斯樣ナ事ニナルト云フコトハ、日本ノ經濟情況ノ
  爲ニ餘程考ヘナケレバナラヌコトデアリマスノデ、玆ニ至ッテ政府ハ米價調
  節ヲシテ、モウ少シ價格ノ引上ガルヤウニナル方ガ宜シイト云フ考ヲ起シマ
  シタガ、唯今申上ゲル通リ既ニ之ニ充テル資金ガナイヤウニナリマシタカ
  ラ、已ムヲ得ズ國債ノ償還ニ充テヤウト思ッタ金額ヲ割イテ、其金額ヲ以テ米
  價調節ニ充テヤウト云フ經畫ヲ致シタノデアリマス、國債償還額ナルモノガ
  法律ニ依ッテ必ズ維持シナケレバナラヌコトニ極ッテ居ルノデアリマスカラ、
  此金額ヲ減ジテ米價調節ニ振向ケムトスルナラバ、ドウシテモ法律ヲ改正ヲ
  致シテ、單行法律ヲ作ッテ、一時此金ヲ減ジテモ宜シイト云フダケノ玆ニ法律
  ヲ作ラヌケレバナラヌ必要ガアッタノデアリマス、ソレデ一方ニハ其法律案ヲ
  出シテ、ソレト同時ニ米ヲ買入レテ其價格ヲ引上グルガ爲ニ、買入レル爲ニ
  要スル資金ヲ豫算ニ計上シテ、是ガ協贊ヲ受クルト云フ手段ヲ執ッタノデア
  リマス、然ルニ衆議院解散ノ爲ニ其法律案モ、其豫算案モ成立セナンダノデ
  アリマスガ、是ト同時ニ當時提出シテ居リマシタ總豫算モ不成立ニナリ、又
  其他ノ軍事費ノ豫算等マデモ不成立ニナリマシタ爲ニ、是等ノ財源ニ充テテ
  居ッタ國庫剩餘金ナルモノガ其財源トナラヌデ濟ムヤウニナッテ、玆ニ國庫剩
  餘金ノ餘裕ヲ見ルヤウニ相成ッタノデアリマス、政府ノ手許ニ於テ既ニ國庫剩
  餘金ガ存シテ居リマス以上ハ、公債ノ償還金ヲ減ジテマデ財源ヲ見附ケテ來
  ル必要ガナクナッタノデアリマスカラ、最早公債償還金ヲ減ズルト云フ法規ヲ
  設ケル必要ガナクナッタノデアリマス、卽チ第三十五議會ニ向ッテ米價調節ノ
  爲ニ法律案ヲ提出シタ、其法律案ガ最早必要ナキニ至ッタノデアリマスカラ、
  ソレ故ニ政府ハ何等之ニ代ル法案ハ立テナカッタノデアリマス、併ナガラ米價
  調節ナル事柄ハ必要デアル、調節ナル事柄ノ必要デアル此事ハ前ニ法律案、
  豫算案ヲ提出シタ時ニ、政府ハ意思ヲ決定シテ居リマスノデ、其政府ノ決定
  シタ意思ヲ見テ、一般ガ價格ノ上ニ期待ヲ生ジタモノデアリマスカラ、ソヨ
  ニ至ッテ調節ノコトヲ中止シマシタナラバ、其反動ニ依ッテ左樣ナ經畫ヲ立テ
  ル前ヨリモ一層甚シイ困難ノ狀態ヲ農民ニ及ボス虞ガアリマシタカラ、ソレ
  故ニ是非調節ノコトハ遂行スル必要ガアリト斯樣ニ政府ハ認メタノデアリマ
  ス、併ナガラ之ヲ爲スノニハ更ニ法律ヲ設クル必要ガナクナッタノデアル
  カラ、法律ハ設ケマセナカッタノデアリマスルガ、豫算ハ持タナケレバナラ
  ヌ、政府ガ米ヲ買ヒマスノニハ豫算ガナクテハ出來ヌノデアリマス、ソレ故
  ニ若シ議會ガアリマシタナラバ豫算ヲ提出シテ協贊ヲ仰グノデアリマスガ、
  前ニ中上ゲタ衆議院解散ノ爲ニ議會ガナイノデアル、議會ノナイ所デ豫算ガ
  ナケラネバ實行ガ出來ナイ、斯ウ云フ必要ガアリマシタカラ、ソコデ前ニ申
  上ゲタ從前カラノ解釋ニ基イテ國庫剩餘金ノ支出ヲシテ、玆ニ豫算ヲ作ッテ、
  此豫算ニ基イテ米ノ買入ヲシテ米價ノ調節ヲ致シタ、斯ウ云フコトデアリマ
  シテ、今日マデ實行イタシマシタ關係ニ於テハ最早法律ノ制定ヲ要セナイ方
  法デアッタノデアリマスカラ、ソレデ法律ハナシニ實行イタシタノデアル、別
  段緊急勅令等ヲ要セナイデ此事ガ實行出來タノデアリマス、又蠶絲ノ救濟ニ
  付テモ、御承知ノ通リ昨年ノ暮ニ於テ提出イタシマシタノハ、生絲ニ對シテ
  融通ヲシタ銀行ガ、之ガ爲ニ損害ヲ受ケタナラバ政府デ其損失ヲ補償スルト
  云フ案デアリマス、此事ハ法律ガナケレバ行ハレヌノデアリマス、ソレ故ニ
  政府ハ議會ニ法律案ヲ提出イタシマシタガ、不幸ニシテ衆議院解散ノ爲ニ其
  法律ガ成立ニ至ラナカッタノデアリマス、成立ニ至リマセナカッタガ、此場合
  ニ於テモ亦米價調節ノ場合ト同ジク、政府ガ旣ニ救濟ヲスルト云フ決心ノア
  ルト云フコトヲ見テ、市場ノ生絲ニ對スル直段ハソレガ爲ニ騰貴ヲシテ、相
  當ノ直段ニ上ッタノデアリマス、之ヲ若シ亦救濟ヲ中止シテシマフト云フコト
  ニナリマスト、反動ノ爲ニ非常ナル損害ヲ受ケルコトニナリマスカラ、政府
  トシテハ旣ニ決心ヲシテ救濟ヲスルト致シタ以上ハ、其結果ヲ生ゼシムルマ
  デニ運バヌケレバナラヌト云フノデ、願ハクハ此議會ニ提出シタ法案ノヤウ
  ナ事柄ヲ憲法ノ八條ナリ、若クハ七十條ナリニ依ッテ成立セシメタイト云フ
  考ヲ持チマシタケレドモ、併ナガラ憲法ノ七十條、或ハ八條ナルモノハ他ニ
  爲スベキ方法ガナイ、萬已ムヲ得ナイ時ニ執ルベキ手段デアッテ、他ニ執ルベ
  キ手段ガアルナラバ成ルベク之ニ據ラヌ方ガ宜イト云フ意見モアリマシタニ
  付テ、是等ノ意見ニ鑑ミテ尙ホ他ニ方法ガアルマイカト云フコトヲ攻究イタ
  シマシタ上ニ、詰リ民間ニ蠶絲會社ガ出來テ、之ニ政府カラ助成金ヲ與ヘテ
  之ヲシテ生絲ノ直段ノ廉クナッタ場合ニハ買入レテ、價格ノ維持ヲ圖ラシメタ
  ナラバ、蠶絲救濟ノ目的ヲ達スルト云フコトヲ認メタモノデアリマスカラ、
  之ヲ爲スニハ最早法律ニ代ル命令ハ要セナイノデアリマス、殘ル所ハ唯其助
  成金ヲ與ヘルト云フコトサヘアレバ宜シイノデアル、助成金ヲ與ヘルト云フ
  コトハ豫算ガアレバ實行ノ出來ル事柄デアルノデアリマス、然ルニ豫算ガナ
  イノデアル、豫算ノナイ場合ニ於テハ、而シテ一方ニ其事ガ國家ノ爲ニ、公
  益ノ爲ニ必要デアル事柄デアレバ前例ニ依リマスレバ、國庫剰餘金ヲ支出シ
  テ之ヲ實行スルト云フコトハ幾ラモ前例ノアルコトデアリマスカラ、ソレ故
  ニ國庫剩餘金ヲ支出シテ豫算ヲ作ッテ、其豫算ニ依ッテ會社ニ助成金ヲ與ヘタ、
  斯ウ云フ事柄デアルノデアリマス、蠶絲救濟、米價調節ノコトハ何レ之ニ關
  スル事後承諾ノ案ガ本院ニ廻ッテ來ルノデアリマセウカラ、其機會ニ於テ十分
  說明ヲ申上ゲル積リデアリマスノデ、此場合ハ唯今ダケノ說明ニ止メテ置キ
  やす、要スルニ國庫剩餘金ヲ支出スルト云フ事柄ノ基ク所ハ何處デアルカト
  云フコトニ對シテハ、第九議會以來自然公ケニ認メラレテ居ル一ツノ見解デ
  アルノデアル、其見解ハ憲法ニ明カニ其事ヲ規定シテモナイガ、同時ニ明カ
  ニ禁止シテモナイ、故ニ國務ノ曠廢ヲ見ズシテ左樣ナコトヲ其儘ニ置イテハ
  公益ノ爲ニ宜シクナイト云フヤウナ場合ニハ、政府ガ已ムヲ得ズ勅裁ヲ仰イ
  デ之ヲ支出シテ、而シテ後日ニ至ッテ憲法六十二條第二項ニ依ッテ議會ノ承諾
  ヲ受クルト云フ、斯ウ云フ見解ガ公ケニ多年行ハレテ居ルノデアリマスカラ、
  此見解ニ準據シテ今囘ノ國庫剰餘金モ支出イタシタ次第デアリマス、其事ヲ
  稱シテ私ガ責任支出ト申上ゲルノハ、之ニ付テハ十分ナル考慮ヲ加ヘテ、之
  ヲ爲スニ非ザレバ其當時ニ於ケル公共ノ利益ノ上ニ大變害ガアル、然ル以上
  ハ是非議會ノ未ダ曾テ意見ヲ述ベラレタコトノナイ問題デアルケレドモ、此
  支出ヲセヌケレバナラヌト云フ決心ヲ致スマデニ至ッテ支出シタ金額デアリ
  マスカラ、ソレ故ニ之ヲ責任支出ト申上ゲタノデアリマス、左樣御承知ヲ願
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=34

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• 035・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　休憩ヲ致シマス
  午後零時三十八分休憩
  午後一時四十四分開會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=35

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• 036・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=36

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• 037・三宅秀

  ○三宅秀君　本員ハ是ヨリ請願委員會ヲ開キマスル爲ニ退席ヲ致シタイト思
  ヒマス、此會期ハ至ッテ短ウゴザイマスルニモ拘ラズ、請願ノ件數ハ可ナリ餘
  計ニ出テ居リマスカラ、是非退席イタシテ請願委員會ヲ開キタイト思ヒマス

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• 038・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　三宅君ヨリノ請願委員會ヘ退席ノ要求ハ許可シ
  テ御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 039・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　御異議ナイト認メマス

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• 040・仲小路廉

  ○仲小路廉君　今朝私ノ質問ニ對シテ大藏大臣ヨリ御答辯ガアリマシタ、尙
  ホ私ハ極ク簡單ニ大藏大臣ニ御尋ネ致シマス、大藏大臣ノ今朝ノ御說明ニ依
  リマスト責任支出ハ憲法上決シテ許シタ規定ハナイガ········許シタ規定ハナイ
  ガ、之ヲ禁ジタ規定モナイ、ソレデアルカラ責任支出ト云フ途ニ依ヲテ支出ス
  ルト云フ御趣意デアリマスカ、如何デアリマス、先ヅ以テ此事ヲ簡單ニ御尋
  ネ致シマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル]

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• 041・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　其通リデゴザイマス

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• 042・仲小路廉

  ○仲小路廉君　大藏大臣ノ御考ニ依リマスレバ、憲法第六十四條ノ第二項ニ
  依ルト云フ御考デハナイノデアリマスカ、之ヲ御尋ネ致シマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

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• 043・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　午前中ニモ申上ゲマシタ通リ、第九議會以來此
  國庫剰餘金ノ支出ナルモノハ、憲法ニ於テ明カニ認メテアル條項モナイガ、
  併ナガラ又之ヲ禁ジテアル條項モナイ故ニ、或必要已ムヲ得ナイ場合ニ於テ
  勅裁ヲ經テ之ヲ支出スルノハ仕方ガナイ、斯ウ云フ公ケナ見解ガアリマスノ
  デ、此見解ニ基イテ支出ヲシテ居ルノデアリマス、併ナガラ議會ニ向ッテ承諾
  ヲ求メマスニハ、憲法第六十四條ノ第二項ニ依ルト云フコトモ、是モ亦第九議
  會以來極ッテ居ル見解ノヤウニ思ヒマス、之ニ基イテ····

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• 044・仲小路廉

  ○仲小路廉君　大藏大臣ガ前段ニ御述べニナリマス通リニ憲法上別ニ許シ
  タ規定モナイガ禁ジタコトモナイ、ソレニ依ッテ支出ヲスルモノダト斯ウ云フ
  御意見ト、後段ニ御述べニナリマス憲法第六十四條ノ規定ニ依ッテ事後承認ヲ
  求ムルモノダト云フ御意見ハ確ニ牴觸ヲ致シテ居ルト私ハ考ヘルノデアリマ
  ス、是以上ハ全ク意見ニ屬シマス、私ハ前後ノ大藏大臣ノ御答辯ニ依リマシ
  テ免ニ角政府ノ御趣旨ノアル所ハ之ヲ明カニシマシタガ、唯是以上ハ憲法上
  重大ナル問題ニ屬スベキコトト自分ハ信ジマス、私ノ質問ハ是デ終リマス

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• 045・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　本員モ大藏大臣ニ向ッテ略、同一ノ質問ヲ致シタイト思ヒマ
  ス。卽チ唯〓仲小路君ノ御問ヒニナリマシタ憲法ニ明カニ禁ジタ條項ナキ故
  ニ剰餘金ヲ支出シタ、是ハ實ニ由々シキ大事デアル、凡ソ憲法ニ總テ此違法
  ノコトニ付テ明文ヲ以テ禁ジタモノハ一ツモアリマセヌ、卽チ總テ此豫算ハ
  帝國議會ノ協賛ヲ經ナケレバナラヌ、若シ此豫算ノ各款項ニ費目ノナキモノ
  ハ卽チ豫備費ヲ設ケテ、ソレニ依ッテ支出スルノデアル、又第七十條ニハ公共
  ノ安全ヲ保持スルガ爲ニ政府ガ必要ト認メタル緊急ノ場合ニ帝國議會ヲ召集
  シ能ハザルトキハ云々トアル、是ハ第一第二ノ豫備費ヲ設ケタ上ニ例ヘバ內
  亂ガ起ルトカ、騒動ガ起ルトカ云フ非常ナル國民ノ安寧ニ關係シタ事件ガ勃
  發シマシテ、議會ヲ召集スルコトノ出來ナイ場合ニハ已ムヲ得ズ其七十條ニ
  依ッテ處分ヲスル、斯ウ云フ條ヲ設ケラレテアル、其以外ニ何等ノ事情アリト
  雖モ、行政政府ガ議會ニ諮ラズ獨斷的ニ支出スル途ハナイ、又勅令ニ依ルト
  キハ卽チ樞密院ノ御諮詢ニ據ラレルコトデアリマスカラ、若シ憲法ニ禁ジテ
  ナイコトデアルカラ之ヲ行ッテ宜シイト云フコトデアッタナラバ其結果ハドウ
  ナリマスカ、例ヘバ此二個師團ト云フモノヲ增設シナケレバナラヌ、增設デ
  アルカラ是非是ハ豫算ニ持ッテ來ナケレバ金ガ出ナイ、二個師團ヲ減ズルトキ
  ハ憲法ニ何等ノ禁條ハナイノデアル、尙ホ極端ノ場合ヲ想像スレバ帝國ノ軍
  備ヲ撤廢スルト云フコトモ憲法ニ何等ノ禁條ハナイノデアル、日本ノ領土ノ
  一部ヲ外國ニ割讓スルト云フコトニ付テモ憲法ニ於テ禁條ハナイノデアル、
  憲法ノ條項ニ禁ジテナイカラ政府ノ必要ト認メタ場合ニハ之ヲ行フト云フコ
  トニ之ヲ段々擴張シタナラバ要スルニ立憲政體ト云フモノハ全ク有名無實
  ニナッテシマヒ、專制政治ニ歸著シテシマフ譯デアル、今此金ノ支出ト云フコ
  トニ付テモ是ハ成程先例ハアリマス、甚ダ宜クナイ先例デアル、現ニ此大隈伯
  ノ如キ高遠ノ理想ヲ持ッテ立憲政治ノ完成ヲ計ラウト云フ御考ヘナラバ、是
  等ノ惡例ト云フモノハ除カナケレバナラヌ、然ルニモ拘ラズ此惡例ヲ利用シ
  テ、是迄ヨリ、ヨリ以上ノ濫出ヲナスト云フハ如何ナルコトデアルカ、殊ニ
  米價調節又ハ蠶絲救濟、築港費ト云フモノハ公共ノ安寧ニ關シタコトデハナ
  イ故ニ此七十條ニ據ラヌト仰シヤルノモソレガ爲デアリマセウガ、此極
  端ナル場合ヲ想像シテ、萬々一豫備費等ニ於テ十分ナル備ヘヲナシテ、是非
  此帝國議會ノ協賛ヲ經テ何等ノ差支ナイコトニシテ居ルガ、萬々一ソレデ行
  カナイ時ノ場合ヲ想像シテ此七十條ト云フモノガ設定サレテ居ル、其七十條
  ニサヘ據ルコトガ出來ナイ事柄デアル、ソレヲ憲法ニハ何等ノ禁條ガナイ、
  必要ト認メテヤッタ、其制限ト云フモノハ內閣閣議ヲ開イテ十分ニ〓究ヲシテ
  十分ニ協議ヲシタ閣議デ以テ十分ニ〓究調査シタコトナラソレデ宜シイト
  云フコトナラバ、是ハ全ク政府獨斷ニ之ヲナシタコトニナル、閣議ニ於テ如
  何ナルコトヲナサウトモ、此議會ニ現ハレザル以上ハ政府ノ獨斷デアル而
  シテ其事柄タルヤ、今申ス如クニ國民ノ公共ノ安寧ニ少シモ關係シタコトデ
  モ何デモナイ、成程米價暴落ハ隨分困リマス、大藏大臣ノ仰セノ如クニ國民
  大多數ノ生產物タル米價ノ暴落ト云フコトハ困ル、如何ニモ困ル、併ナガラ
  國民大多數ノ是ハ〓物デハナイカ、國民大多數ノ食物ノ下落スルr云フコト
  ハ一方カラ云ヘバ喜ブベキコトデアル·

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=45

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• 046・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　鎌田君ニチヨット申シマスガ、成ルベク議論ニ涉
  ラヌヤウニ御質問ニナリタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=46

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• 047・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　ひん、ソレデハ········議論デハナイガ、サウ申サヌト云フト分
  ラナイ、米價ノ調節ヲ計ラルルノモ或ハ宜カラウ、併ナガラ斯ノ如ク米價ヲ調
  節シ能フヤ否ヤト云フコトノ見込モ付カズシテ之ヲナス、例ヘバ千五百万石
  ノ米ガ玆ニ剩ッテ居ッタ爲ニ暴落シタ、是ハ何トカシテ引上ゲナケレバナラヌ
  ト云フトキニ、八十万石ヲ買ッタカラト云ッタッテ、ソレハ恰モ池ノ水ノ溢レル
  ノヲ柄杓ヲ以テ二三杯掬ッタト同ジコトデアル、之ヲ以テ米價ガ騰貴スル譯ニ
  ハ行カナイ、成程相場ノ上デハ調節ガ出ルト云フ爲ニ二三日ハ騰貴シタカト
  思フ、愈〓其事ガ極マルト其日カラ下落シタ、ソレハ當リ前ノ話デアル、ソレ
  ハ駄目デアル、アルダケノ金ヲ使ッテシアヘバ金ハナイト云フコトハ分ッテ居
  ルカラ、是位ノコトハ當局者ハ疾クニ御分リニナッテ居ラナケレバナラヌ筈
  デアル、蠶絲救濟モ同樣デアル、本員ハサウ云フ考ヘデアリマスカラ此三ツ
  ノコトニ付テハ多ク申ス必要ハアリマセヌ、又改メテ申上ゲマスガ、要スル
  ニ是等ノコトヲ以テ今憲法七十條ニ設ケラレタル所ノ公共安寧云々ヨリ以上
  ノ急要ナコトト御認メニナラナケレバナラヌ、是ハドウシテソレ程大切ナコ
  トト思フカ、豫備費ニシテモ尙ホ出スコト能ハズ、第七十條ノ條項ニモ據ル
  コトガ出來ズシテ、而シテ政府ガ責任ヲ負ッテ之ヲ出スト云フコトハ、私ハ仲
  小路君ニ對スル大藏大臣ノ答辯ガアッテモ是等ヲ解スルコトハ出來ナイ、前段
  申ス如ク眞ニ憲政有終ノ美ヲナサウト云フ現内閣ハ、斯ノ如キコトガ例へ先
  例ニアリト雖モ、其先例ヲ打消シテ總テ此憲法ニ依ッテナサナケレバナラヌ
  ノニ、其先例ヲ利用ドコロデハナイ、十倍ニモ二十倍ニモ利用シテ、サウシ
  テサウ云フコトヲ勝手ニスルト云フコトハ甚ダ分ラナイ、若シサウ云フコト
  ガ出來ルナラバ議會ノナイコトヲ幸トシテナシ得ルナラバ、政府ハ何等カノ
  ムツカシイ出來ナイ相談ヲ議會ニ持掛ケテ、ソレヲ否決シタナラバ解散ヲス
  ル解散ヲシテ置ケバドンナコトデモ出來ル、是ハ憲政有終ノ美ヲ計ル所ノ
  政府ノ所爲デアルヤ否ヤ、之ニ付テ御答辯ヲ願ヒマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=47

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• 048・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　米價調節、蠶絲救濟、築港費補助等ノ事柄ハ其
  事柄ノ必要不必要ト云フコトデアリマスレバ私ハ十分ニ茲デ述ベル理由ヲ
  持ッテ居リマスケレドモ、鎌田君ノ御質問ハ唯例ニ御取リニナッタノデアッテ、
  其事項ニ付テ御質問ニナッタノデハナカラウカト思ヒマス、鎌田君ノ御質問ハ
  矢張リ仲小路君ト同樣ニ、國庫剩餘金支出ト云フコトノ法制上ノ據リ所ヲ御
  質問ニナッタコトト思ヒマス、ソレ故ニ其點ニ付テノミ御答イタシマスルガ、
  ソレニ付テモ鎌田君ハ從前カラ國庫剩餘金支出ノ常ニ行ハレテ居ル事柄ハ旣
  ニ御認メニナッテ居ル、現內閣ダケハ高遠ノ理想ヲ持ッテ居ルカラ之ヲ改メル
  筈デアルガ、其通リノコトヲ蹈襲スルコトハ是ハドウ云フコトデアルカト云
  フヤウナ御質問ノヤウデアリマス、現内閣ハ事柄ニ依ッテ改メヌケレバナラヌ
  ト思フコトハ改メマスルケレドモ、剰餘金支出ノ如キ多年成立ッテ居ル見解
  一、之ヲ强ヒテ改メナケレバナラヌト云フ必要ハ認メヌノデアリマス、而シ
  テ其成立ッテ居ル見解ノ如何ナルモノデアルカト云フコトハ、先程仲小路君ノ
  御質問ニ對シテ御答シタ通リデアリマス、改メナイ理由ハ唯今申上ゲマスル
  通リ、此內閣ニ限シテ强ヒテ此剩餘金支出ニ付テ別ナ見解ヲ持ツニ及バヌト斯
  ウ考ヘタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=48

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• 049・目賀田種太郎

  ○男爵目賀田種太郞君　大藏大臣ニ質問イタシマス、大正四年度ノ追加豫算
  ハ鐵道特別會計ヲ貸付金トスルコトニナッテ居ル、貸付ケル以上ハ利息ヲ徵收
  スル、從ッテ何時是ハ返濟ヲ得ルカ、返濟セザルトキハドウスル、一體政府ハ
  租稅ヲ徵收シテ、其租稅ヲ他ノ利用ニ貸付ケルト云フ理窟ハドコニアルカ、
  國家ノ歲出ニハ租稅ヲ供セラルルガ、鐵道ノ如キ或特別ノ事業ニ稅金ヲ貸付
  ケル方法ガドコニアルカ、之ニ對シテ本員ガ問ヒタイノハ利息ハ何カラ徵收
  シテ、イツ返却スルカ、返却ヲセラルル時分ニハ如何ナルコトヲスルカト云
  フコトヲ伺ヒタイ、第二ニハ明治三十八年ノ勅令七十八號ニ於テ、又同ジク
  三十八年ノ勅令第百九十五號ニ於テ、其第六條ニ於テ各、規定シテアル事柄デ
  アル、卽チ「本公債ノ元利金ノ償還ハ、煙草專賣益金ヲ以テ優先ニ擔保セラ
  ルヽモノトス」トアル、是ガ債務ナルモノハ大正十四年中ニ償却スル·······五
  千万圓ニ對スルモノハ········此勅令ハ定メテ現存シテ居ルモノデアラウト思フ
  ガ、效力ヲ有スルモノデアラウガ是ハ如何シテ········此勅令ノ廢止ニ赴ク手段
  ハ如何ニシテ執ラルルカ、昨日大藏大臣ガ本員ニ對スル辯明ハ大臣自己ニ於
  テモ亦頗ル難シトセラルル、餘程難事ト言ハレテ居ル、然ルニ帝國政府ノ收
  入ニシテ外債ノ爲ニ擔保ニナッテ居ル、之ガ爲ニ其法律上ノ結果ヲ免レムガ爲
  ニ今ヨリ適當ナル解除ノ方法ヲ講ゼラルルガ當然ト存ジマスガ、如何ノ方法
  ヲ以テ解除ノ途ヲ計ラレルカ、昨日本員ニ說明セラレタ所ハ甚ダ以テ足レリ
  トセヌ、尙ホ更ニ詳細ニ右ノ二箇條ニ對シテ御說明アラムコトヲ求ム
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=49

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• 050・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　貸付金ニ付テハ五分五厘ノ利息ヲ取ル見込デア
  リマス、年限ハ先ヅ五箇年ト致シテ置ク考デアリマスガ、五箇年ハ其時ニ至
  レバ延長スルコトガアルカモ知レマセヌ鐵道ノ方デハ其收益ニ依フテ、元利
  ノ償却ハ大體見込ノ立ツモノデ經營シテ往クノデアリマスカラ、是ハ償還ノ
  途ガ立ッテ往ッテ居ルノデアリマスガ、五年ニ返ストハ必ズ申上ゲマセヌ、唯
  今第一囘ハ五年ノ期限ニシテ置キマス併ナガラ五年ニ返スコトガ出來ヌ場
  合ニ於テハ延期ハ無論イタシマセウガ、第一囘トシテハ五年トシテ五分五厘
  ノ利息ヲ取ルト云フコトデ貸付ケル考デアリマス、ソレカラ外國デ募集ヲ致
  シマス四分半付英貨公債ノ償還ノコトニ付テハ、昨日モ御尋ガゴザイマシタ
  ガ今日モ亦御尋ニナッテ、今日ノ質問ハ借換ヘルヤ否ヤト云フ方ノ側デハナ
  クテ、是ノ擔保ニナッテ居ル煙草收入ヲ以テ期限ガ來タナラバ擔保ヲ解除スル
  コトモ努メヌケレバナラヌガ、ドウシテ解除スル積リカト云フ方面カラ御尋
  ニナッタヤウデアリマス、昨日モ申上ゲマシタ如ク從前ノ通リ償還經畫ヲ追ウ
  テ參リマシタ所ガ、此四分半利付公債ノ全部ヲ期限マデニ償還スルコトハム
  ヅカシイト私ハ思ヒマス、ソレ故ニ是ハ結局ハ借換ヲスルノ外ナイモノト心
  得テ居リマス、借換ヘル場合ハ從前ノ通リ煙草收入ヲ繼續シテ擔保トシテ、
  新タナル公債ヲ募集スルカ、或ハ左樣ナ擔保ヲ付ケズニ新タニ公債ヲ募集ス
  ルカト云フコトハ、其時ニ至ッテ定マル問題デ、唯今カラ申上ゲル譯ニハ往キ
  マセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=50

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• 051・目賀田種太郎

  ○男爵目賀田種太郞君　唯今ノ說明ハ本員ノ承フタ事トハ違ヒマス、如何ニシ
  テ解除スルヤト云フコトヲ御尋シタ、又國家ガ租稅ヲ貸付ケル········貸金ニ利
  用スルコトハナイ、是ハ無謀ノ法案ト存ジマス、更ニ答辯ヲ煩ハシマセヌ

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• 052・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　本員ハ陸軍大臣及文部大臣ニ質問イタシタイノデアリマ
  ス御出席ニナッテ居マセウカ

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• 053・黒田長成

  ○副議長(候爵黑田長成君)　陸軍大臣ダケ唯今出席セラレテ居リマス、文部
  大臣モ程ナク出席ニナル樣子デアリマス

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• 054・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　陸軍大臣ニ質問ヲ致シマス、師團ノ增設ハ兵力ノ增加ヲ
  意味シテ居ルコトハ勿論ノコトデアリマス、然レドモ兵員ノ數ガ增シタリト
  テ兵力ガ增スト云フコトニハ限ラヌモノト信ジテ居リマス、卽チ兵ガ弱ケレ
  バ數ガ多クテモ職責ヲ果スコトガ出來ヌト云フ事實ガアリマスカラシテ、
  應御尋シタイノデアリマス、陸軍ニ於キマシテハ實例ト致シマシテハ、去ル二
  十七八年及三十七八年ノ戰役ニ於キマシテ病兵ガ多數出來テ、是ガ後送ノタ
  メ又補充ノ爲ニ莫大ナル勞ヲ御取リニナッタコトハ明カナ事實デアリマス、尙
  又昨年ノ八月以來ノ時ニ於キマシテモ相應ニ病兵ガ出來テ其始末ニモ手數ヲ
  要シタコトハ無論ノコトデアリマス、斯ノ如ク弱イ者ガ數多ニナリマシタ所
  ガ帝國ノ兵力ヲ增スト云フ意味ガ十分ニ徹底スル譯ニハナラヌコトト思ヒマ
  ス、今ヤ壯丁檢査ノ成績ニ依レバ帝國國民ノ體格ノ漸次下落シツツアルト云
  フコトハ蔽フベカラザル事實デアリマス、斯ノ如キ壯丁ノ中ヲ選ンデ充ツル
  所ノ兵ハ成ルホド採用スルダケノ兵ハ相當ノ體力ヲ具ヘテ居ルガ如ク見エ
  ルノデアリマスガ、尙ホヨリ以上ノ兵ヲ要スルトキニ至レバ極メテ劣等ナル
  體格ノ兵員ヲ採用セザルヲ得ヌ時ガ來ルデアラウト思ヒマス、故ニ陸軍大臣
  ニ御尋ネ申スコトハ、斯ノ如ク我國民ノ體力ハ漸次下落シツツアルガ、將來ハ
  我目的トスル兵員ヲ募集スルニ十分ナル御見込ガ立ッテ居リマセウカ否ヤト
  云フコトヲ伺ヒマス、ドウゾ之ニ對シテ御辯明ヲ煩ハシマス
  〔國務大臣岡市之助君演壇ニ登ル〕

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• 055・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　高木男爵ノ御質問ニ御答イタシマス、壯丁ノ體格
  ガ今マデノ統計上段々惡クナルト云フコトハ仰セノ通リ、我〓軍事當局者ト
  致シマシテモ此點ニ付テハ大ニ痛心ヲ致シテ居リマス、併ナガラ今後二個師
  團ヲ增設ニナリマシタ場合ニ於キマシテ、之ニ要スル所ノ兵員ヲ徵募スル上
  ニ付テハ、現今ノ如キ狀態ニ於キマシテマダマダ餘力アリト信ジテ居リマス
  ガ、將來尙ホ師團ヲ增加シタル場合ニ於キマシテ、現今ノ壯丁ノ體格ノ狀態
  デ參リマスレバ或ハ如何アラウカト考ヘテ居リマスガ、併ナガラ人口モ段々
  增加ヲ致シマスルシ、從ッテ其壯丁モ增加スルト云フコトハ是ハ當然ナコトデ
  ゴザイマス、從ッテ多クノ中カラ選ンデ參リマスカラ、今ヨリ其事ヲ豫言イタ
  シ兼ネマスガ、左程悲觀ヲシタ事柄デモアルマイカ知ラヌト是ハ想像イタシ
  マー、差向キノ所ニ付テ申シマスレバ二個師閉ニ要スル兵員ヲ徵集スル上ニ
  付テハ差支ナイト云フコトヲ申上ゲマス、又繰返シテ申シマスレバ、壯丁ノ
  體格ガ從來ニ比ベマシテ段々惡クナルト云フコトニ付テハ私共モ認メテ居ル
  次第デアリマス
  〔男爵高木兼寛君發言ノ許可ヲ求ム〕
  ード。ソレカラチヨット一言申上ゲマス、唯今戰時ニ於ケル病人ノコトニ付テ
  ノ御說ガゴザイマシタガ、是ハ昨年ノ臨時議會ニモチヨット其事ヲ申上ゲタ
  ト覺エテ居リマスガ、昨年ノ靑島攻圍軍ニ於ケル病人ノ情態ハ平生ノ患者ノ
  百分比例ニ對照イタシテ左程差ハゴザイマセヌ、玆ニ悉シイコトハチヨット
  記憶イタシマセヌカラ申上兼ネマスガ、先ヅ患者ノ情態カラ申シマスト、戰
  時ニ於ケル患者ノ數ト致シマシテハ成績ハ宜シイト云フコトニ歸シマス、尤
  モ戰爭ノ時日モ餘程短ウゴザイマシタ、其結果ガ無論原因ヲ爲シテ居ラウト
  モ存ジマスガ、免ニ角實際ニ現ハレタル成績ニ於キマシテハ、平生ノト左程
  差ハゴザイマセヌ、是ダケ御報告イタシテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=55

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• 056・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　尙ホ伺ヒマスガ、唯今ノ御答辯ニ依リマスト、本員ノ御
  尋申シタノハ二個師團ヲ增シタ爲ニ要スル兵ヲ選ブニ付テ或ハ不足デモアリ
  ハシナイカト云フ御相談ヲシタカノ如キ御答辯ガアリマシタガ、本員ハ左樣
  ナ意味ヲ以テ御尋シタ譯デハゴザイマセヌ、二個師團位ノコトデハゴザイマ
  セヌ有事ノ日ニハ尙ホ多クノ壯丁ヲ募ッテ兵ヲ拵ヘル必要ガ起ラヌトモ限
  ラヌノデアリマス、其時ニ至ッテ身體虛弱デ兵役ニ耐ヘルコトガ出來ナイト云
  フ虞ガアルト信ズル所カラ御尋シタノデアリマス、ソレ故ニ今御答辯ヲ戴キ
  マシタケレドモ、私ノ御尋ノ趣意トハ違ッタ御答辯ヲ戴イタ譯デアリマスカ
  ラ.ソレハ左樣御承知ヲ願ッテ置ケバ宜シイノデアリマス、次ニ御伺ヒ致シタ
  イノハ、此日射病問題デアリマス、昨年ノ七月ノ十四、十五、十六ノ三日間
  ニ渉ル四十二聯隊ノ演習中悲慘ナコトノ起ッタノハ御承知ノ事柄デアリマセ
  ウ、僅カ千五百有餘ノ兵ノ中、三日間ニシテ斯ノ如キ慘事ヲ起スヲ以テ察スレ
  バ、將來我國ノ兵ハ斯ノ如キ氣候ノ折ニ戰地ニ向ハシメタナラバ、一層悲慘ナ
  ル事態ヲ惹起ス虞ガアルモノト思ヒマスガ、之ニ對シテハ陸軍大臣ニ於カセ
  ラレマシテハ如何ナル御考ヲ有ッテ御居デニナルノデゴザイマセウカ、ソレヲ
  伺ヒタイノデアリマス、尙ホ伺ヒマスコトハ、今日陸軍兵ノ用ヒテ居マス帽子
  ノ著用ヲ見マスルニ、イザト云フ時ニナリマスト、此紐ヲ掛ケテ〓子ヲ被ヲテ
  居ル樣ヲ見マスルト、何レニ於キマシテモ帽子ノ中央ガ高クナリマシテ、帽子
  ノ天井ガ頭天ニ直接シテ居ル姿ニ見エルノデアリマス、斯ノ如キ帽子ヲ被フテ
  居ッテモ酷暑ニ耐ヘルト云フ當局ハ御見込デアリマセウカ、本員ナドノ見ル所
  ヲ以テ見マスレバ、斯ノ如キ裝ヲシテ戰地ニ兵ヲ送ルノハ實ニ危險ナモノト
  思フノデアリマス、之ヲモウ一應御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス
  〔國務大臣岡市之助君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=56

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• 057・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　日射病ニ關スル御質問ニ對シテ御答ヲ致シマス、
  是ハ昨年ノ臨時議會ノトキニモ既ニ其御質問ガ出マシテ御答ヲ致シタト記憶
  イタシテ居リマス、其山口ノ聯隊ニ起リマシタ實況ニ付テモ悉シク其事ヲ御
  報〓イタシマシタ次第デ、ソレデ平時ハ斯ノ如キ誤リヲ惹起シテ居リマスガ、
  靑島攻圍軍ニ從事イタシマシタ者ニ付テ調ベテ見マスルト、當時靑島ニ於ケ
  ル暑氣ハ頗ル酷烈デアッタヤウデアリマス、迚モ山口聯隊ガ演習ニ從事シタ時
  ノ熱度ヨリモ餘程高カッタヤウデゴザイマスガ、併シ幸ニモ日射病ニ罹リマシ
  タ者ハ僅ニ十名以内ニ止マッテ居リマス、之ガ爲ニ死亡イタシタ者ハアリマセ
  ヌ、是ハ私共考ヘマスニ、謂ハユル心理情態カラ左樣ナ結果ヲ生ジタモノデ
  ハナイカト推測シテ居リマス、ソレデ日射病ニ對スル衞生上ノ注意ニ付キマ
  シテハ、將來益〓其幹部ヲシテ督勵ヲシテ、斯ノ如キ誤リナカラシムルコト
  ニ十分努メテハ居マスケレドモ、高木男爵ノ昨年ノ御質問ノ中ニゴザイマス
  通リニ、是ハ根源カラ申シマスレバ、矢張リ國民ノ體育ト云フ方カラ割出シ
  テ來ルコトニ存ジマス、是ハ先ヅ軍事當局者ガ他ニ責任ヲ嫁スルト云フ意味
  デハゴザイマセヌガ、根源カラ申シマスレバ、國民ノ體育ト云フ方カラ先ヅ
  來ルモノト言ヒ得ルモノト存ジマス、ソンカラ唯〓帽子ノコトニ付テ御說
  ガ出マシタ、誠ニ御親切ナル御注意デ、是ハ其事ニ付キマシテハ特ニ〓究ヲ
  致シテ居リマス、此帽子ノ左右ニ孔ヲ明ケマシテ、謂ハユルソレカラ氣ヲ漏
  ラスト云フコトニ致シテ居リマス、是ハ前ハゴザイマセヌノデ、山口聯隊ニ
  誤リガ起リマシタ時ニモ、御說ノ如ク帽子ガ矢張リ不完全デゴザイマシタ、
  帽子ガ之ハ改造ノ、古イ帽子ヲ被ッテ居リマシタ爲ニ、不完全ナル帽子ヲ被ッ
  テ演習ヲシタノモ日射病ヲ出シタ一原因デアッタカト存ジマス、是デ御答辯ハ
  終ッタヤウデゴザイマスガ、マダゴザイマスカ、宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=57

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• 058・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　了解イタシマシタ、唯今ノ御答辯ノ中デ申上ゲマスト、
  帽子ニ孔ヲ明ケマシタノハ是ハ昨今ノコトデハナイノデ、一昨々年ノ二月カ
  ラ御實行ニナッテ居リマスノデ、小生モ能ク承知イタシテ居ルコトデアリマ
  ス、唯今陸軍大臣ノ御答ニナリマシタ通リ、日本國民ノ體力ハ次第ニ惡クナ
  リツツアルト云フコトハ認メラレテ居ルノデアリマス、而シテ斯ノ如クナル
  ノハ體育ノ問題カラ、體育ニ關係ノアルコトダト唯今モ仰セラレマシタノデ
  アリマスガ、文部當局ニ於キマシテ之ヲ如何ニ御認メニナッテ居リマセウカ、
  簡單ニ申シマスレバ、中學以上ノ學ヲ修ムル者ノ體力ハ著シク惡シクナリマ
  シテ、尙又若年ニシテ死スル者ガ甚ダ多イト云フコトモ事實ト認メルコトガ
  確ニ出來ルノデアリマス、尙ホ〓兵檢査ノ成績ニ依ッテ見テ明カナモノデア
  リマス、故ニ國家ノ幹部トナルベキ中學以上ノ知識ヲ有フテ居ル者ハ總テ身
  體虚弱デアリマス、斯ノ如キ虛弱ノ國民ヲ以テ國家事業ノ幹部タラシムルコ
  トガ出來ルト云フ當局ハ御見込デアルノデアリマスカ、之ヲ伺ヒタイノデア
  リマス、尙ホ加フルニ中等學校ノ生徒及小學校ノ生徒ニ至ルマデ今日ハ著シ
  ク體力ガ惡シクナッタト云フコトヲ見ルコトガ出來ルト自ラハ信ジテ居リマ
  ス、其證據トナルベキモノハ何デアルカト言ヒマスレバ、生レタ時ハ直接〓
  育ニハ關係モゴザイマセヌケレドモ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=58

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• 059・黒田長成

  ○副議長(候爵黑田長成君)　高木男爵ニ申シマスガ、議案ノ範圍外ニ涉ラヌ
  ヤウニ御注意ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=59

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• 060・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　是ハ兵力ノ關係カラ申上ゲルノデアリマス、小學校ニ這
  入ラヌ者ハ一人モナイノデアリマス、卽チ體育ノ如何ニ依ッテ國民ガ强クナル
  ト惡シクナルトノ關係ガアリマスカラ、之ヲ御尋ネ致スノデアリマス、卽チ
  弱イ國民ヲ〓育上デ造レバ、兵ニ爲サムトスル時ニ弱イ國民ヲ兵ニ充テナケ
  レバナラヌト云フ結果ヲ生ズルノデアリマスカラ、問題外ニ涉ラヌト自ラハ
  信ジテ此事ヲ御尋ネ致シマス、長クハ申シマセヌ、政府ニ於キマシテ調製セ
  ラレタル統計表ガ果シテ事實デアレバ日本ハ卽チ三十代マデノ人間ハ著シク
  死亡率ヲ增シテ居ルノデアリマス、殊ニ十五歲乃至二十歲マデノ者ニ於キマ
  シテハ僅々二十年ノ間ニ百分ノ二十四殆ド二割四分ノ死亡ヲ增シテ居リマ
  ス、是等ニ付テハ當局ニ於テハ如何ニ御認メデアリマスカ、今日ノ〓育制度
  ハ斯ノ如キ憂ヲ來タスコトハナイモノト御認メデアリマスカ、簡單デ宜シウ
  ゴザイマスカラ御答ヲ願ヒマス
  〔國務大臣一木喜德郎君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=60

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• 061・一木喜徳郎

  ○國務大臣(一木喜德郞君)　高木男爵ノ御質問ニ御答申上ゲマスガ、男爵ノ
  御質問ノ趣旨ハ、今日〓育ノ結果トシテ國民ノ體力ヲ消耗セシムルコトハナ
  イカト云フ御尋デアッタ、國民ノ健康狀態ニ付キマシテハ高木男爵ノ御述ベニ
  ナリマシタ如キ心配モアルト云フコトハ考へテ居リマス、去リナガラ之ニ付
  キマシテハ統計材料等ヲ基礎ト致シテ判斷ヲ下スニ付テ餘程愼重ナ攻究ヲ要
  スル點ガ尙ホアルト思ヒマス、去リナガラ或種類ノ死亡ガ增シテ居ル、或ハ結
  核病ノ如キガ增加シテ居ル、或ハ幼兒ノ死亡率ガ增シテ居ルト云フヤウナ事
  實ハ統計上ニ認メラルルヤウデアル、斯ノ如キ一般ノ國民ノ健康狀態ニ關係
  イタシマス問題ハ〓育ノミニ依ッテ解決スルト云フコトハ、是ハ固ヨリ困難ナ
  コトデアリマス、殊ニ幼兒ノ死亡率ノ增加シテ居ルコトニ至リマシテハ- 25.
  經濟狀態其他種々ノ關係ガアルト思ヒマスノデ、斯ノ如キハ〓育ニハ何等關
  係ガナイト存ジテ居リマス、又今日ノ學校ニ於キマス所ノ〓育方法ガ國民ノ
  體格ヲ弱カラシムル、體力ヲ減少スルト云フ結果ヲ見テ居ルト云フヤウニモ
  考ヘテ居ラヌ、去リナガラ此體育ノ方法ガ今日ノ如クニシテ完全ナルヤト申
  シマスレバ、私ハ敢テ完全デアルト云フコトハ斷言イタシマセヌ、尙ホ改良ノ
  餘地ハ必ズ多少アルデアラウ、イツノ時期ニ於テモ常ニ改良進步ノ餘地ハア
  ルモノデアルト考ヘテ進ンデ行カナケレバナラヌコトト思ヒマスカラシテ、
  近頃學校衞生等ノコトニ付キマシテ特ニ注意ヲ用ヒテ居リマス、卽チ學校ニ
  於キマスル所ノ結核豫防ノコトニ付キマシテモ、豫テヨリ〓育基金ノ利子ノ
  幾分ヲ以テ〓員ノ結核病豫防···結核病豫防ノミニ限リマセヌガ、主トシテ
  結核性ノ病氣ノ治療等ニ充テルト云フ方法ヲ立テマシテ、既ニ其標準ヲ定メ
  テ發令ヲ致シタ次第デアリマス、其他一般學校衞生ノコトニ付キマシテハ學
  校醫ノ講習其他ノ手段ニ依リマシテ其改良ヲ企圖シツツアル所デゴザイマ
  ス、尙ホ體育ノ方法ニ付キマシテハ種々攻究ヲ致シ又現ニ實行シツツアル所
  モアルノデアリマス、併シ國民ノ體力ヲ增進シテ參リマスニ付キマシテハ獨
  リ學校ニ於ケル衞生又ハ體育ノミニ依賴スル譯ニ參リマセヌカラ、更ニ進ン
  デ學校ヲ了ッテ各、家ニ在ヲテ業務ニ從事シテ居ル、卽チ一口ニ申セバ靑年ノ體
  格ヲ良クスル、其體力ヲ强健ニスルニ付テ注意ヲ要スルコトデアラウト思ヒ
  マス、是等ノコトニ付キマシテハ靑年團體等ノ組織ニ依ッテ相當體力ヲ强健ニ
  セシムル方法ガアルノデアラウト信ジマシテ、是ハ法令ニ依ッテ一定シテ或方
  法ヲ採ルト云フ譯ニ參リマセヌケレドモ、成ルベク奬勵指導ノ方法ニ依ッテ、
  適當ナル途ヲ講ズル考デ居リマス、高木男爵ノ學校ニ於ケル衞生又國民ノ體
  力全體ニ關係シマシテ御心配ニナッテ居リマスコトハ誠ニ御尤モナコトト考
  へマス、是等ノ點ニ付キマシテハ一般ノ衞生行政竝ニ學校ニ於ケル〓育、竝
  ニ學校衞生等ト相俟ッテ、何トカ益〓國民ノ體力ヲ增進スルヤウニ努メテ參リ
  タイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=61

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• 062・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　陸軍大臣及文部大臣ノ御陳述ニナリマシタ通リ、國民衞
  生狀態ハ良クナイト云フコトハ或程度マデ明カニ分ッテ居ル事柄デアリマス
  付テハ大體ニ致シマシテ國民ガ弱クナル程、國家ノ恐ルベキ憂ハナカラウト
  思フ、兵ニ致セ事業ニ致セ之ニ依ラザルモノハナイノデアリマス、付テハ總
  理大臣ニ於カレマシテ大體ニ於キマシテ國民ノ衞生ヲ如何ニスルカト云フコ
  トノ御意見ヲ伺ヒタイ
  〔國務大臣伯爵大隈重信君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=62

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• 063・大隈重信

  ○國務大臣(伯爵大隈重信君)　先刻カラ陸軍大臣、文部大臣ニ御質問ノ御趣
  意ハ主ニ國民ノ體力ニ關スル、國民衞生ニ關スルコトノ軍事上、〓育上ノ
  部ニ亙ッテ居ッタガ、私ニ質問ハ大體ノ問題ト存ジマスガ、左樣デゴザイマス
  カ······頗ル重大ナ問題デ、是ハ國民衞生、國民ノ健康ヲ捗ラスト云フコトハ
  頗ル困難ナル問題デアルガ、是ハ今世界到ル處ノ大問題デアッテ、其極ハ人種
  改良論トナッテ居ルガ如キモノデ、是ハ國家ノ全力ヲ注イデ、國民ノ健康ヲ健
  全ニスルト云フコトハ有ラユル方面カラ〓究シ、第一ハ社會的ニ無論、國家ノ
  行政其他百般ノ國家ノ力ヲ以テ爲スベキコトハ何處マデモ怠ラズ努メナクテ
  ハナラヌノデ、是ニ於テ衞生局或ハ衞生會、又社會的ニハ私立ノ衞生會、
  方ニハ國家ハ其目的ヲ以テ帝國大學其他ノ大學デ醫學ノ〓育ヲナシテ居ル
  是ハ行政上ノミナラズ、社會上或ハ風俗ノ上、百般ニ亙ッテ是ハ國民、力ヲ協
  セテ國民ノ健康ヲ保持シ公衆ノ衞生ヲ努メナクテハナラヌノデアリマス、今
  漸ク衞生ノ思想ハ稍〓〓育ニ依ッテ認メラレテ來タノデアリマス、今日ノ物質
  的文明ノ進步ニ伴ッテ起ル所ノ弊害ハ物質上ニモ精神上ニモ其禍ヲ受ケツツ
  アルノデアル、之ヲ豫防スル〇現ハレテ是ガ國民衞生トナッテ居ルノデアル、
  全體醫者ガ病氣ガ起ッテ治療ヲスル、併シ病氣ヲナイヤウニスルノガ衞生ノ起
  ル本デアル、トコロガ國家ノ力、衞生ノ力ガ何處マデ及ブカト云フコトハ頗
  ル困難ナ問題デアル、此度ヲ超エルト干渉トナル、サウスルト國民全體ノ知
  識ガ本デアル、此處ガ國家ガ力ヲ極メテ〓育ヲ盛ンニスル所以デアル、是ハ
  諸君ト共ニ〓究シテ行政上バカリデナク、國民全體ノ社會的ノ働キニ依ッテ此
  弊ヲ防グコトガ出來ルト信ジマスル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=63

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• 064・水野錬太郎

  ○水野鍊太郞君　私ハ此際大藏大臣ニ質問ヲ致シタイノデアリマス、極メテ
  簡單ニ御質問ヲ致シマスカラ、其要領ダケノ御答ヲ得タイト思ヒマス、今度
  御提出ニナリマシタ豫算案ヲ見マスルニ米價調節ニ關スル豫算ハ何等計上シ
  テナイヤウデアリマス、是マデ御支出ニナリマシタ所ノ費用ヲ以テ既ニ米價
  ハ調節シ得タト云フ御考デアルヤ否ヤ、卽チ之ニ依ッテ農村ヲ救濟シ農民ヲ
  救濟シタ、效果ヲ擧ゲラレテ居ルト御考ヘニナッテ居ルカ、若シ將來米價ヲ調
  節スルノ要アリトスルナラバ、幸ニ帝國議會モ開設セラレタ後デアルカラシ
  テ、之ニ對シテ豫算ノ計上ガナケレバナラヌト思ッテ居リマスガ、豫算ヲ見マ
  シテモ何等是ガ計上シテナイ、果シテ然ラバ政府ハ是マデノ所謂責任支出ヲ
  以テ米價ヲ調節シ得タト云フ御考デアッテ、將來ハ之ニ對シ支出ナサレヌト云
  フヤウニ見受ケラレマスガ、果シテサウデアルカ、若シサウデナイト云フナ
  ラバ他日再ビ或ハ豫備金ヲ支出シ或ハ剰餘金ヲ支出シテ米價ヲ調節サレルノ
  デアリマスカ、豫算案ノ上カラ見マシテ甚ダ不明デアリマス、其點ニ對シマ
  シテ御說明ヲ願ヒタイ、今日大藏大臣ノ御說明ノ中ニ現下ノ經濟事情ニ付テ
  ノ御話ガアリマシタカラ、定メシ米價調節卽チ物價問題ノ重要ナル問題ニ付
  テモ、政府ノ執ッタ方針ニ依ッテ斯クナッタ、蠶絲救濟ノ如キモ斯クナッタト云
  フ御說明ガアルカト思ヒマシタガ、是ハ何等ナカッタノデアリマスルカラシ
  テ、此點ニ付キマシテ此度ノ豫算ノ關係ノ上カラシテ御說明ヲ得タイト思ヒ
  マン·Bソレカラ尙ホ一點ハ今日責任支出ノコトニ付キマシテ御問答ガアッタ
  ノデアリマス、私ハ此事ニ付テハ豫備金外ノ事後承諾案ガ出テ居ルノデアリ
  マスルカラ、其時ニ於テ伺ハウト思ヒマシタガ、幸ニ今日此事ニ付テノ御問
  答ガアリマシタカラ、之ニ付テ尙ホ伺ヲテ置キタイト思ヒマス、私ハ所謂責任
  支出ナルモノガ憲法上違反デアルヤ否ヤト云フ法律論ヲ伺フノデハナイ、是
  ハ二十餘年以來ノ慣例ガアリマシタガ、其慣例ノ基ク所ノ憲法上ノ根據ガ、
  果シテ若槻君ノ說明ガ適當デアルヤ否ヤニ付テ疑ヲ有ッテ居ルノデアリマス、
  之ヲ伺フノデハナイ、アリマセヌケレトモ、若槻君ノ說明ニ依リマシテモ所
  謂剩餘金ノ支出ナルモノハ憲法ノ明文ナキニ依リ、又憲法ノ禁ジテ居ル所ニ
  アラザルガ故ニ責任ヲ以テ支出スルト云フ御辯明デアッタ、責任ヲ以テ支出ス
  ルト云フ意味ガ極メテ不明瞭デアリマスルガ、要スルニ事極メテ重大デアル
  ガ故ニ、愼重ナル態度ヲ以テスルト云フコトニ歸スルカト思フノデアリマス、
  果シテ然ラバ剩餘金支出ニ付テハ最モ重大最モ緊急ナルモノニ限ルト云フ
  コトハ言フマデモナイコトデアラウト思フノデアリマス、二十餘年以來何レ
  ノ議會ニ於キマシテモ所謂此剩餘金支出ナルモノガアッタノデアリマシテ、多
  少常ニ問題ニハナッタ、衆議院ノ如キニ於キマシテハ每囘問題ニナリマシタケ
  レドモ、未ダ曾テ貴族院ニ於テ問題ニナッタコトハナイ、二十餘年來剩餘金支
  出ニ付キマシテ此議場ニ於テ問題ニナッタコトハ速記錄等ニ依ヲテ承知シテ居
  リマスガ、其他ノ時ニ於テ餘リ問題トナッタコトハナイ、又內外ニ於テモソレ
  ホド問題ニナッタコトハナイノデアリマスガ、今度ニ限ッテ朝野ニ色〓ノ問題
  ガアル、ソレハナゼデアルカト云フト、私ハ恐ラクハ此內閣ニ於テ行ハセラレ
  タ所ノ剰餘金支出ガ、事餘リニ多端ニ亙リ、事餘リニソレ程必要デナイカノ如
  キモノマデ及ンダ爲ニ、斯ル問題ヲ惹起シタカト考ヘマシテ、此事ニ付テハ甚
  ダ遺憾ニ堪ヘナイ、ソレデアリマスルカラ茲デ伺ヒタイト思フコトハ、所謂剩
  餘金支出ナルモノハ憲法上ノ原則カラ見テモ先ヅ是ハ異例ト見ナケレバナラ
  ヌ、普通ノ場合ナラバ豫算ニ計上シタルモノヲ支出スル、而シテ豫算以外ノ事
  項ガ生ジ或ハ豫算ノ款項ニ超過シタル事件ヲ生ジタル時ニハ所謂豫備費ヲ以
  テ之ヲ支出スルト云フコトガ憲法ノ原則デアル、豫算ニモ依ラズ豫備費ヲ支
  出シ、其以外ニ亙ッテ支出ヲスルト云フコトハ是ハドウシテモ異例ト見ナケ
  レバナラヌ、何故ニ之ヲナスカト云フト先程若槻君ガ御說明ニナリマシタ如
  〃、國家ノ事務ヲ進行セシムル上ニ於テ已ムヲ得ヌト認メル場合ニ於テ所謂
  責任ヲ以テ支出ヲスルト云フコトデアル、果シテ然ルナラバ此責任支出ナル
  モノハ餘程注意シナケレバナラヌ、ドウシテモ帝國議會ノ開設ヲ待ツノ暇ナ
  ク、又帝國議會ニ付議スルコトガ出來ナイ、其處マデ待ッテハ國運ノ進行ヲ妨
  グルト云フコトデナケレバナラヌト思ヒマス、果シテサウデアラウト思ヒマ
  スガ、此點ヲ伺ヒマス、ナゼ斯ウ云フ問ヲ出シタカト云フト其責任支出ヲナ
  シタ中ニ左程ノ重要デナイト思フモノガ隨分アルノデアリマス、一二箇月若
  クハ三四箇月ヲ待ツコトガ出來ナイト云フヤウナコトハナイヤウナモノガア
  ルヤウデアリマス、例ヘバ其一例ヲ擧ゲマスレバ港灣修築ノ如キ、下水道補
  助費ノ如キ、橫濱市ニ與ヘタル交付金ノ如キ、中ニハ何等工事ニ著手シテ居ラ
  ヌ、未ダ縣ノ方デ仕事ヲシテ居ラヌモノモアル、ソレヲ此一二箇月ヲ待テヌ、
  三四箇月待テヌデ憲法上ノ異例ト認メラルル如キ責任支出、剰餘金支出ヲナ
  サネバナラヌノデアリマセウカ、斯ノ如キ餘リ········甚ダ言葉ニ弊ガアルカ知
  レマセヌケレドモ、放慢ト申シマスカ、左ホドニ緊急デモナイモノニマデ支
  出ヲシタル爲ニ其事柄ガ多端デ、未ダ曾テ例ノナイ多端ニ亙ッタ爲ニ斯ノ如キ
  議論ヲ惹起シタデアラウト思ヒマシテ、私ハ是ハ衷心、憲法ノ上カラ申シマシ
  テモ、現內閣ノ爲カラ申シマシテモ、衷心遺憾ニ堪ヘナイ次第デゴザイマス、
  斯ノ如キコトヲ爲サレマシタノハ何故ニ爲サレタノデアル、三箇月、四五箇
  月ヲ待ツコトノ出來ナイ事柄ヲ爲サレタノデアルカ、之ニ付キマシテハ我〓
  ノ疑ヲ解クヤウナ御說明アラムコトヲ望ミマス、獨リ我〓ノミナラズ、般
  國民ガ疑ヲ有ッテ居リマスカラ、之ニ付キマシテハ何卒精確ナ御說明ヲ得タイ
  ト考ヘテ居リマス、尙ホモウ一ツ御伺シテ置キタイノデアリマス、是ハ大藏
  大臣デモ何デモ宜シイコトデゴザイマスガ、豫算ト官制ノ關係ニ付テデアリ
  ママカ。今度ノ豫算ヲ見マスト參政官、副參政官ナルモノノ豫算ガ計上シテア
  リマス、此事ガ善イトカ惡イトカ云フノデハナイ、併シ從來ノ慣例ニ依リマ
  スルト、多クノ場合ニ於キマシテハ豫算ガ可決セラレテ然ル後ニ官制ガ發布
  サレルコトガ多イノデアリマス、實例ハサウナッテ居ルト承知シテ居リマス、
  現ニ今度提出セラレテ居ル所ノ地方監察官ノ如キ、或ハ大藏省所管ニ於ケル
  書記官增員ノ如キ、是ハ官制ガ發布サレテ居ラナイ、豫算ガ通過サレテ後ニ
  官制ガ發布ニナルノデアラウト思ヒマス、從來ノ例ハ多クサウナッテ居リマ
  ス、ソレニモ拘ラズ獨リ參政官、副參政官ノ費用ニ至リマシテハ未ダ豫算ガ
  何等可決セラレテ居ラヌ、豫算ガ果シテ可決セラルルヤ否ヤ殆ト分ラナイ其
  當時ニ於テ、此官制ヲ發布サレタノハ何故デアリマセウカ、左程ノ必要ガアッ
  タノデアルカ、郎チ現ニ實際問題ト致シマシテ、今日ニ至ルマデ官制發布後
  殆ド半年以上モ經過シテ居リマシテ、未ダ此官ノ任用ガナイ、無イノハ何デ
  アルカ、豫算ガナイノデアル、現ニ官制ノ內ニモ經費ノ都合ニ依ッテ置カザ
  ルコトヲ得ト云フヤウナ除外例スラ出來テ居ル、斯ノ如キコトハ從來ノ慣例
  ニ背クカノ如ク考ヘラルルノデアリマス、又ソレ程急ニ迫ッタ問題デナイ、然
  ルニ豫算ノ可決ヲ見ズシテ前キニ官制ヲ發布サレタト云フヤウナコトハ如何
  ナル事情、如何ナル必要ニ出タノデアリマセウカ、是等ノコトハ將來ニモ例
  ニナル、又官制ガ發布サレマシテ、其官制ガ實施シ得ラレザルニ歸スルト云
  フコトハ甚ダ不都合ナコトデアルト思ヒマス、憲法六十七條ノ範圍ニ這入ル
  場合デアリマスレバ、是ハ政府ノ同意ヲ得ナケレバ帝國議會ハ廢除スルコト
  ヲ得マセヌカラ宜シイケレドモ、憲法六十七條ノ範圍ニ這入ラザル場合ハ帝
  國議會ニ於テ削減スルコトヲ得ル、若シ廢除削減セラレタナラバ官制ハ實行
  シ得ズシテ終ラナケレバナラヌ、斯ノ如キ次第デアリマスカラ、ドウシテモ
  豫算ヲ前キニ提出セラレテ、然ル後ニ官制ヲ發布スルノガ普通ノ常識カラ申
  シマシテモ、理窟カラ申シマシテモ適當ナコトデアラウト思ヒマス、然ルニ
  此適當ナ方法ヲ執ラズシテ、此違法ナル方法ヲ執ラレタノハ如何ナル理由デ
  アリマセウカ、之ニ付キマシテ御說明ヲ得タイ、是ダケニ付テノ御答辯ヲ煩
  ハス次第デアリマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演増ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=64

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• 065・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　米價調節ノ事柄、蠶絲救濟ノ事柄、或ハ港灣修
  築ノ補助費ノ事等ハ、剰餘金支出ノ事後承諾ヲ求ムル案ガ今日衆議院ニ繫屬
  シテ居ルノデアリマシテ、此議案ガ本院ニ廻ハリマスレバ、其時政府デハ一
  通リノ說明ヲ申上ゲ、又御質問ガアレバ御答辯ヲスル考ヘデアッタノデアリ
  9マ、今日ハ豫算ノ問題デアリマス故ニ其處ニ言及セナカッタ次第デアリマ
  ス、併ナガラ御質問ガアリマス以上ハ答辯ハ致ス考ヘデアリマシタ故ニ、午
  前中ニモ申上ゲタ位ノコト、午後ニモ唯今モ其問題ノ一部ハ御答シタヤウナ
  次第デアリマスガ、米價調節ニ付テハ午前中ニモ申上ゲマシタ通リ、時局突
  發後ニ於ケル日本ノ經濟界ガ甚ダ不安ノ狀態ヲ呈シテ居ル場合ニ於テ、米價
  ノ極端ナル下落ト云フコトガ農民ハ無論ノ話、商工者ニ至ルマデモ經濟上甚
  ダ不利益ナル影響ヲ受ケタ次第デアリマスカラ、何トカシテ調節ヲシテ此時
  局ノ際ニ極端ナル經濟上ノ影響ヲ受ケルコトヲ避ケタイト云フノデ着手イタ
  シタノデアリマシテ、若シ此米價ノ調節ヲセヌデ置キマシタナラバ、私ドモノ
  考ヘマス所ニ於テ、十二月カラ一月、二月ト云フ納稅ノ關係ニ於テモ一年
  中ノ決濟ヲスル關係ニ於テモ農家ノ相當ニ金ノ要ル時デアリマスカラ、ド
  ウシテモ持米ヲ賣ラナケレバナラメ時期デアル、急イデ米ヲ賣出スト云フコ
  トニナリマシタナラバ、或ハ恐ル今日ニ見ルヨリ今一層大ナル下落ヲ呈シテ
  居ッタカモ知レナイノデアル、私ドモハ調節ノ爲ニ相當ノ價格ガ保タレテ、ソ
  レガ爲ニ米穀ヲ賣ラナケレバナラヌ必要ナ時期ニ於テ極端ナル低イ價デナク
  シテ賣捌クコトノ出來タノハ、米價調節ノ效果デアルト考ヘテ居ルノデアリ
  やく、其價格ハ十二月カラ此四月頃マデノ價格ヲ御覽ニナルト、今日ノ値段
  ヨリ餘程高カッタノデアリマスカラ、ソレガ米價調節ノ結果ヲ受ケテ斯樣ニ相
  成ッテ居ルモノト、斯樣ニ私共ハ信ジテ居ルノデアリマス、今日ノ値段ハ稍低
  クナッテ居リマスガ、併ナガラ私ドモノ見ル所ニ依レバ、米價ハ最早騰貴ノ趨
  勢ニ向ッテ居ルノデアル、ソレ故ニ今後ハサウマデ調節ヲ致シマセヌデモ、自
  然ニ騰貴ニ向フト思ウテ居リマスガ、併シ政府ハ唯今調節ノ資金トシテ有ッ
  テ居ル分ガ若干アルノデアリマスカラ、之ヲ支出スルコトガ必要ナラバ何時
  ト雖モ辭セナイ考ヘデアルノデアリマス、今囘豫算ニ米價調節費ノ計上シテ
  アリマセヌノハ、唯今申上ゲルヤウナ觀察ニ依ッテ前途ハ自然ニ騰貴シテ來
  ル、故ニ强ヒテ豫算ヲ取ヲテマデモ之ヲ調節スルニハ及バヌデハナイカト云フ
  考ヲ以テ豫算ニ計上シテアリマセヌガ、併ナガラ此數日デアリマシテモ、大變
  狀況ガ變ルト云フコトデアレバ、場合ニ依レバ追加豫算ヲ提出セヌケレバナ
  ラヌカモ知レマセヌ、又唯今ノ所デハ追加豫算ヲ提出スル考ヘハアリマセヌ
  ガ、追加豫算ナシデ進メマシタ時ニ剩餘金支出ヲスルカト云フコトハ、是ハ最
  早剰餘金ヲ支出スル迄ニ及ブマイト思ヒマス、萬巳ムヲ得ナイ時ニハ豫備金
  ノ支出ヲスルト云フ途モナイノデハアリマセヌ、豫備金ノ增加ニ付テ唯今豫
  算ヲ提出シテ居ルノデアリマスカラ、萬已ムヲ得ナク、實行シナケレバナラ
  ヌ時ニハ是デモ出來ルト思ヒマスガ、今日ノ所デハ之ヲ支出スルト云フ考ヘ
  ハ持チマセヌノデアリマス、其必要ヲ見ル場合ニ於テ出來ルカ出來ナイカト
  云フコトデアレバ、之ニ依ッテ爲スコトガ出來得ルト思ウテ居ルノデアリマ
  ス、剩餘金支出ノ事柄ニ付テ色〓御述ベニナッテ、仲小路君ナドノ御質問トハ
  違ッテ、其剩餘金ヲ支出スルコトノ基準ニナッテ居ル法規ハ何處ニアルカト云
  フ御質問デハナクシテ、現內閣ニナッテカラ支出シタモノガ大變多クモアレ
  バ、又不急ノヤウデアルト云フ、所謂支出其モノニ付テノ要否ニ付テノ御質
  問ノヤウデアリマスガ、如何ニモ現內閣ニナッテカラ剩餘金ノ支出ノ金高ハ多
  イノデアリマス、併シ其大部分ハ臨時軍事費デアルト御承知ヲ願ヒタイ、今
  日今迄ニ於テ戰爭中ニ於ケル特別ノ財政ノ仕方ト云フモノハ是迄モ變通ノ手
  段ヲ取ッタコトハ幾ラモアルノデアリマス、公債ヲ募集シテ其資金ニ充テルト
  云フヤリ方モヤッテ居リマスガ、今囘ハ成ルタケ增稅募債ノ方法ニ依ラズシテ
  臨時軍事費ヲ支辨イタシタイ考デ諸般ノ經畫ヲ付ケテ置キマシタノデアリマ
  スガ、ソレニ付テハ剰餘金ニ依ッテ先ヅ以テ臨時軍事費ヲ支辨シテ置キタイ、
  ソレガ爲ニハ臨時議會モ開カレタノデアリマス、又通常議會ニモ豫算ヲ提出
  シテアッタノデアリマスガ、不幸ニシテ衆議院ノ解散ニ依ッテ豫算ガ成立シナ
  イト云フコトガアリ、一方ニハ戰時狀態ニ於テ日本ガ之ニ參加シテ居ルタメ
  臨時軍事費ノ支出ヲ爲サザルヲ得ナイト云フ必要ノ場合ニ迫ッテ居リマシタ
  故ニ、今囘ハ國庫剩餘金ノ支出ガ巨額ニ上ッタノデアリマス、又本年度ニ入ツ
  テ千何百萬圓ト云フ剩餘金ノ支出ガアリマスガ、是ハ殆ド全部ト言ッテモ宜イ
  程デアリマスガ殆ド此大部分ハ外國カラノ注文品ニ對スル支拂金デアルノ
  デアリマス、是ハ外國政府ガ直接ニ日本ノ民間ニ注文ヲシテ然ルベキコトデ
  ハアリマスガ、直接ニ注文ヲシテ納メタ品物ニ付テ十分ニ信用ヲ有タレナイ
  爲デアリマスカ、日本ノ政府ヲ通シテ注文品ノ調辨ヲシテ貰ヒタイト云フ外
  國政府ノ切ナル希望デアリマシテ之ヲ容レタノデアリマス、殊ニ日本ヘ外國
  カラ注文ヲ取ル上ニ於テ大切ナコトデアルト考ヘマシテ、此仲介ノ勞ヲ取ラ
  ナケレバ或ハ注文ガ外ニ行クト云フコトガアルカモ知ラヌ、戰時中經濟界不
  況ノ場合デアッテ、少シデモ餘計ニ外國ノ注文ヲ受ケタイト云フ所カラ外國政
  府ノ切ナル希望ヲ容レテ、政府ガ其間ニ立ッテ注文品ノ調辨ヲスル、從ッテ一
  方ニハ歲出ヲ要シマスカラ國庫剰餘金ノ支出ヲ致シマシタ次第デアリマス、
  今日是ハ直チニ代金ニナヲテ政府ノ收入ニ戾ッテ來ルノデアリマスケレドモ、
  豫算ノ關係ニ於テハ一應剩餘金ノ支拂ヲナサザルヲ得ヌノデアリマス、斯樣
  ニシテ剩餘金ヲ支出シタモノヲ擧ゲテ見マスレバ、私共ハ皆今日ノ場合必要
  已ムヲ得ナイモノト考ヘテ居リマス、或ハ水野君ハソコマデハッキリ仰セニ
  ハナラヌガ、米價調節、蠶絲救濟、港灣修築費補助、是等ノ事業ニ付テハ左
  程急切デナイト云フ御感ジガアルヤウニ思ハレル、ソレトナク伺ハレタノデ
  アリマスガ、米價調節、蠶絲救濟ニ付テハ時局ノ場合ニ重要ナル生產物ノ價
  格ヲ調節スルコトハ、是ハ實ニ時局中ノ經濟界ニ處スル最モ必要ナコト、緊
  急ナコトト、政府ノ方デハ認メタ次第デアリマス、港灣修築費補助ニ付テハ、
  是ハ前議會ニ於テ港灣ノ修築ニ對シテ補助ヲスルト云フコトノ契約案ニ御協
  賛ニナッテ居ルノデアリマス、此兩院ノ協賛セラレタ契約案ニ依フテ政府ハ地
  方ノ關係府縣ニ向ッテ補助ノ契約ヲ結ンダノデアリマス、玆ニ至ッテ政府ニ對
  シテハ法律上ノ義務ニ屬スル經費ニナッテ居ル譯デアリマス、ソコデ議會ガ今
  囘開ケマスカラ僅ノ期間デ議會ノ協賛ヲ得ラルルヤウデアリマスケレドモ
  御協賛ニナッタ補助ハ大正三年カラ補助スルト云フノデアリマシテ、三年度ハ
  年度ガ將ニ盡キムトシテ本議會ヲ待ツコトガ出來ナカッタノデアリマス故ニ、
  己ムヲ得ズ剩餘金ノ支出ヲシテ、補助ニ充テタト云フ次第デアリマシテ、又
  政府ニ於テハ緊急必要已ムヲ得ナイト認メテ居ル次第デアリマス、ソレカラ
  參政官、副參政官ノ官制ノ改正ト豫算關係ニ付テノ御質問デアリマシタガ、
  其官制ニ於テ豫算ノ都合ノ付カヌ所ハ參政官、副參政官ヲ置カナイデモ宜イ
  ト云フ規定ノアルコトハ水野君モ今其條項ヲ指定セラレタルヲ以テ、旣ニ御
  承知ニ相成ヲテ居ルコトト思ヒマス、元來三年度四年度ハ豫算ノ不成立ヲ〓ゲ
  タ時デアリマシテ、前年度ノ豫算ヲ施行シテ居ルノデアリマスカラ、各省ト
  モ皆參政官、副參政官ノ費用ニ充テベキ經費ガナイ譯デハナイ、施行豫算ノ
  範圍內デ强ヒテ支出イタセバ參政官、副參政官ニ下付スル位ノ俸給ハアルノ
  デアリマスガ、省ニ依フテハ全額ニ充タナイ省モアルノデアリマス、故ニ官制
  ヲ改正シテ出來ル所ハ實行シテモ宜シイガ、併ナカラ經費ノ足リナイ所ハ暫
  ク置カヌデモ宜イト云フ官制ガ出テ、其豫算ト相俟ッテ實行ガ出來ル次第ニ
  ナッテ居リマス、併ナガラ政府ガ參政官、副參政官ヲ新タニ置クコトニシマシ
  タノハ行政ノ安定ヲ保ツ爲ニ大切ナル事柄デアッテ、一ノ政治上ニ於ケル改善
  ノ意見デアルト見テ居リマスガ、又一方ニハ必シモ左樣ニ見ラレヌ意見モア
  ルヤウデアリマスカラ、斯樣ナ事柄ハ全部ニ付テ豫算ノ協賛ヲ受ケテカラ實
  施スルガ相當デアルト云フノデ、此度ノ議會ニ豫算全部ヲ要求シテ其成立ヲ
  俟ッテ實行シタイト考ヘマスガ、豫算ト官制トノ關係ヲ申シマスレバ既ニ豫算
  ニハ其經費ガ存在シチ居ルノデ、參政官、副參政官ノ俸給ヲ辨ジ得ル所モア
  ルノデアリマス、故ニ大體豫算ガアリマスカラ官制ヲ制定スルト云フヤウニ
  承リマシタガ、唯足リナイ省ニ向ッテハ旣ニ御認メニナッタ條項ニ依ッテ暫ク
  參政官、副參政官ヲ置カヌデ宜シイト云フ規定ヲ設ケテ豫算ト官制トノ調和
  ヲ保ッテ居ル、斯樣ナ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=65

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• 066・水野錬太郎

  ○水野鍊太郞君　唯今ノ大藏大臣ノ答辯ハ極メテ多岐ニ亙ッテ巧ナ御答辯デ
  アリマシタガ、私ハ尙ホソレニ付テ御尋ヲシテ置カナケレバナリマセヌ、米
  價調節ノ費用ヲ今度ノ豫算ニ揭ゲナイノハ唯今ノ所ニ於テ豫算ノ必要ヲ認
  メナイ、若シ兩三日內ニデモ其必要ヲ認メタラ追加豫算ヲ出スト云フ意味デ
  アリマセウガ、此議會モ最早一週間ニシテ經過スル、而シテ若シ此議會ニ要
  求シナカッタラ他日ハドウスルカ、斯ウ云フコトデアッタラバソレハ其時ニ必
  要トアレバ豫備金ノ支出ヲシテ置ク、今度ハ豫備金ノ金額ヲ增加ニナリマス
  カラ、ソレニ依ッテ支出ヲスル、若シ豫備金ガ足ラナケレバ剩餘金ヲ支出スル
  コトニナリマセウ、併ナガラ今日ノ御考ハドウデアリマス、米價調節ノ必要
  ガ尙ホ本年ノ中ニ此次ノ議會ガ開ケル迄ニ必要ガアルカモ知レヌト云フコト
  デアルナラバ、此議會ニ向ッテ其豫算ヲ提出セヌノハ不當デアラウト思ヒマ
  ス、必要ガナイナラバ宜シイ、アルカモ知レヌト云フナラバ、其時ニ豫備金
  或ハ剩餘金ヲ支出スルコトニナリマセウ、サウスレバ又元ノ狀態、議會以前
  ノ狀態ニ陷ルコトニナリマスカラ、私ハ今日果シテ米價調節ノ必要アリヤ否
  や。判斷ガ出來ナイカラ仕方ガナイ、併シ必要ガアルカモ知ラヌト云フコト
  ナラバ、縱令不用ニナルマデモ豫算ニ計上シテ置クガ適當ト思ヒマシタカラ、
  ソレヲ御尋ヲシタノデアリマスガ、其御答デハ甚ダ要領ヲ得ヌノデ、必要ナ
  ラバ出ス、必要ガナケレバ出サナイ、ソレハ無論分ッテ居リマスガ、必要ト認
  メルカドウカ、卽チ今日以後ニ於テ米價調節ノ必要ヲ御認メニナッテ居ルカ、
  將タ最早其目的ヲ達シテ居ルカラ、米價調節ノコトハ是ニテ足レリト云フノ
  デアルカ、ソコヲ伺ヒタイノデアリマス、剩餘金支出ガ本年度ニ多額ニ上フ
  テ居ルト云フノハ我〓モ認メル、決シテ額ノ多イノヲ指シテ言フノデハナイ、
  唯右ノ如キ必要ガアレバ是ハ千万圓デモ、剰餘金ガアッテサウ云フ必要ガア
  レバ出ス、必要ナ已ムヲ得ヌモノナレバソレハ出シテモ差支ナイガ、是ハ多
  寡ノ問題デハナイ、內容ノ問題デアリマス、緊急已ムヲ得ナイモノデナイ
  モノニマデ、剩餘金ヲ支出シタノハ甚ダ不適當デハナイカト云フノデ、卽チ
  其一例トシテ擧ゲタノデ、米價調節ガ善イトカ惡イトカ、或ハ蠶絲救濟ガ必
  要デアルカナイカハ云ウテ居ラナイ、併ナガラ剰餘金支出ノ中ニ於テ二三箇
  月若クハ三四箇月待ツノ暇ノナイコトハナイモノニ向ッテ支出ヲシタノハ如
  何デアルカ、其一例トシテ港灣修築下水道補助等ハ、是ハ三月二十五日ト記
  憶シテ居リマスガ、三月末ニ支出ニナッタヤウニ官報カ何カデ見マシタ、是等
  ハ四五月頃マデ何故待テナイノデアルカ、ソレニ對シテ大藏大臣ノ御答ニハ
  是ハ大正三年度ノ豫算ニ屬スルノデアルカラト斯ウ云フ御答デアル、ソレカ
  ラ大正三年度ノ豫算ニ屬スルコトハ········豫算スルコトハ········豫算外國庫ノ負
  擔トナルベキ契約ヲナスヲ得ルモノト云フコトハ、是ハ昨年ノ議會ニ於テ兩
  院ノ議決ヲ經テ既ニ公布セラレテ居ル、ソレニ依ッテ契約ヲシタノデアルカ
  ラ、是ハ國ノ義務ニ屬スル支出ダカラ支出ヲシタト云フコトデアリマスガ、
  果シテサウデゴザイマスカ、契約ヲナスッタノデアリマスカ、豫算ノナイノニ
  契約ヲナサレタト云フノハドウ云フ譯デアリマスカ、是ハ豫算外ニ於テ契約
  ヲナスコトヲ得ルト云フコトヲ極メタダケデ、必シモ之ニ依フテ、契約ヲセネ
  バナラヌト云フ義務ヲ負ウテ居ルノデハナイ、況ヤ靑森縣、宮城縣ノ如キ、
  其當時何等工事ニ著手ヲシテ居ラナカッタノデアリマス、是ハ恐ラクハ豫算ガ
  ナイト云フ理由ノ下ニ契約ハシテ居ラレヌカト思ヒマス、是ハ事實問題デア
  リマス、剩餘金支出ヲシテ、其結果トシテ契約ヲシタノデハナイカト思ヒマ
  スソコハ事實上ノ正確ノ御調ヲ伺ヒタイ、私ハ斯ウ云フ契約ヲナスヲ得ル
  ト云フコトハ可決シタガ、決シテ義務ハ負クテ居ラヌト思ヒマス、剩餘金支
  出ヲナスヲ得ルト云フ議ガ決マッタ後ニ於テ契約ヲナスッタノデナイカト思ヒ
  マス其所ニ事實ノ間違ガアルト思ヒマス、サウ云フモノニ對シテ、假令大
  正三年度ノ費用ニ屬スルガ故ト云ウテ、支出ヲシナケレバナラヌコトハナイ
  ト思フ、現ニ今度御提出ニナリマシタ豫算外國庫ノ負擔ニ屬スルモノニ付テ
  モ今マデ兩院デ協賛シタ案ニ改訂ヲシテ、年度割ヲ變ヘテ居ル位デアリ
  マスカラ、議決ヲシタカラ必ズヤラナケレバナラヌト云フコトハナイ、大正
  四年度ニ至ッテ更ニ年度割ヲ變ヘタモノヲ提出スルガ適當デアラウ、サウ云フ
  モノニマデ剰餘金ヲ支出シタノガ、是ガ世ノ中ノ問題ヲ起ス所以デアリマス、
  決シテ金額ノ問題デハナイ、金ハ極メテ僅少デアリマスガ、其内容ニ至リマ
  スレバ、甚ダ政府ノ爲ス所ガ適當デナイカノ如キ疑ヲ持ツノデアリマスカ
  ラ、ソレ等ノ御答ノ中ニ事實ノ上ノ誤リガアルト思ヒマス、ソレカラ參政官
  ノ費用ニ付テハ、俸給ガアルト仰シヤッタガ、是ハ間違ト思ヒマス、參政官ト
  云フモノニ對シテノ費用ヲ帝國議會ガ決議シタコトハアリマセヌ、有ルト仰
  シヤッタノハ奏任官ノ俸給ヲ流用スルトカ、判任官ノ俸給ヲ流用スルトカ、廣
  イ言葉ノ俸給ノ目ノ中ニ費用ガアルト云フノデアルト思ヒマス、事ニ依ルト
  判任ヲ置カナイデ奏任ヲ置キ、奏任二人ヲ置カズニ勅任一人置クト云フノハ、
  是ハ出來得ルコトデアルト思ヒマス、其事ヲ仰シヤッタノデアラウト思ヒマス
  ガ、參政官ノ費用ガ今日ノ豫算ニ上ッテ居ラヌト云フコトハ、私ヨリ若槻君ノ
  方ガ能ク御存ジノ筈デ、俸給ガアルト仰シヤルノハ巧妙ナル御答辯デハアラ
  ウト思ヒマスガ、ソレハ御間違デアルナラバ强ヒテ御尋ネハ致シマセヌガ、
  參政官ノ費用ガアッタヤ否ヤト云フ單純ナ問ニ對シテハ、恐ラクハ無イト仰シ
  ヤッタノデハナカラウカト思ヒマスカラ、ソレニ付テ御尋ネヲシタイ、無クテ
  モ宜シイガ餘リニ議會ガ協賛スベキ範圍ニ先ッテ、豫算ヲ御極メニナルノハ少
  シク如何デアラウカ、緊急已ムヲ得ナイト云ヘバ仕方ガナイガ、今日ニ至ルマ
  デ參政官ヲ置イテナイ、俸給ガアッタカラ置イタンダト云フ答辯ヲ得タノハ、
  餘リ矛盾シタ御言葉ヂヤナイカト思ヒマス、ソレハ恐ラク私ノ言ウタヤウナ
  意味デ御答ニナッタノデアラウト思ヒマスガ、尙ホ御尋ネ致シマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=66

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• 067・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　米價調節ニ付テ先程御答シマシタ場合ニ、米價
  ハ是カラ先ハ騰貴ノ趨勢ニアルモノト私共ハ觀察シテ居ルト云フコトヲ申シ
  マシタ、ソレデ大體ハ追加豫算ヲ提出セヌデモ旣ニ勅裁ヲ經テ居ル調節費
  ノ殘額モアリ、又前途ガ騰貴スル趨勢ニアルカラ、ソレ故ニ豫算ニハ計上シ
  ナカッタト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス、若シ其見込ガアッテモ、此先其
  見込ニ反シテ極端ナル直段ガ生ジテ、ドウシテモ其儘ニ措キ難イ時ニハドウ
  スルト云フコトヲ云ヘバ、前ニ申ス通リ豫備金ノ增加ヲ求メテ居リマスカ
  ラ、左樣ノ場合ニハ豫備金カラ支出シテモ宜カラウト思ヒマスト言ウタノデ
  アリマス、國庫剰餘金カラ更ニ支出シテ出スト云フコトハ申サナカッタノデ
  アリマス、ソレデ大抵水野君ノ御問ニ對シテ御答ニナッテ居ッタト思ヒマスガ、
  矢張リ再ビ御問ニナリマシタ、是ハ同ジ事柄ヲ御答スル外アリマセヌ、港灣
  水道等ノ補助ニ對シテハ契約ヲ結ンダノデアリマス、ソレ故ニ政府ノ義務ニ
  ナッタノデアリマス、ソレ故ニ國庫剰餘金カラ支出シテ與ヘタノデ、事實ハ私
  ノ申ス通リデ、一向齟齬ハ致シテ居リマセヌ、俸給ニ付テハ、參政官ノ俸給、
  勅任參事官ノ俸給ト云ウテ、細目ニ分ケテ御協賛ヲ得テアルノデナク、內務
  本省ナラ本省ノ俸給幾ラトシテ御協賛ヲ受ケテアルノデアリマスカラ、勅任
  參事官ノ爲ニアッタ俸給ガ、勅任參事官ヲ廢シタ爲ニ不要ニナリマシタナラ
  バ、其金ハ他ニ必要ノアル官吏ノ俸給ヲ要スル場合ニハ、之ニ使フコトハ豫
  算ノ上ニ於テ差支ナシ、又從來左樣ナ取扱ニナッテ居リマス、其事實ノ通リ申
  上ゲタノデ、言葉ノ上ニ御互ノ見方ガ違ッテ居レバ仕方ガアリマセヌガ、俸給
  ト云フコトデ御協賛ヲ經テアルノデ、勅任參事官ノ俸給、內務次官ノ俸給ト
  云フコトデ御協賛ヲ經テアルノデアリマセヌカラ、必要ナ官吏ノ支出ニ充テ
  ルノハ妨ゲナイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=67

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• 068・水野錬太郎

  ○水野錬太郞君　モウ私ハ御尋ネ致シマセヌガ、豫算外國庫ノ負擔ニ屬スル
  契約ヲナスヲ得ルモノニ付テ、契約ヲナサッタト云フノハ何時ノコトデアリマ
  スカ、甚ダ御面倒デアリマスガ其日附ガ御分リニナッテ居ルノナラバ日附ヲ
  承リタイ
  〔政府委員下岡忠治君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=68

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• 069・下岡忠治

  ○政府委員(下岡忠治君)　内務省ノ所管ニ關係シテ居ルコトデゴザイマスカ
  ラ私ヨリ一言申シマス、日附ハ三月ノ二十日カ二十五日ト心得テ居リマス
  〔水野鍊太郞君「分リマシタ、宜シウゴザイマス」ト呼ブ〕
  尙ホ一言唯今ノコトニ付テ辯ジマスルガ、契約ヲ締結イタシタ事實デゴザイ
  マス、是ハ御承知ノ通リ三十一ノ議會デ、所謂豫算外ノ國庫ノ負擔トナル契約
  ヲ締結スルノ件ト云フノハ御協賛ヲ經マシテ、大正三年度ニ於テ之ヲ實行ス
  ルト云フノデアッタガ、豫算ガ不成立、大正三年度ニ這入ッタ折ニ之ヲ如何ナル
  方法ニヤッタガ宜カラウカト云フコトデ、其當時ニモ責任支出ヲヤルカヤラヌ
  カト云フ問題ガアッタノデス、ケレドモ大正三年度中ニ此金ヲ支出スルト云フ
  コトデアルナラバ、强ヒテ年度ノ初メニ斯ウ云フコトヲスルト云フ必要モナ
  イ、先ヅ大正三年度ノ追加豫算ヲ冬ノノ會會ニ出シテ、ソレデ御協賛ヲ經テ、
  契約ヲ締結スルノ件ト云フノト一致ヲセシムルト云フ考デアリマスカラ、三
  年度ノ初ニ於キマシテ、サウ云フ意味ノ通牒ヲ各縣ニ出シテ、是ハ市或ハ縣
  ガ出スノミナラズ、又市ノ出スノニ對シテ縣ガ補助スルト云フコトモアリマ
  スカラ、地方ノ財政經畫ニハ餘程關係ノアルコトデアリマス、愈、是ガ出シテ
  貰ヘルヤ否ヤト云フコトニ依ッテ、大正三年度ノ終ニ於ケル支出ヲ如何ニスル
  カト云フコトハ、地方財政經畫ニ非常ニ影響ノアルコトデアリマスカラ、其當
  時ニ卽チ大正三年度ノ初ニ於テ、斯ウ云フ積リデアル、大正三年度ノ追加豫
  算トシテ提出シテ議會ノ協賛ヲ經ル積リデアルカラ、其積リニ依ッテ進行セヨ
  ト云フ意味ノ通牒ヲ出シテ置イタノデアリマス、從ッテ法律上カラ言ッテ政府
  ノ當然義務ニナルヤ否ヤト云フコトハ問題デゴザイマス、併ナガラ御承知ノ
  通リ、アノ規定ニ依リマスルト、豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ノ締結ヲ
  要スル件、斯ウ云フヤウナ風ノ言葉ニナッテ居リマス、或意味ニ於テハ「要ス
  ル」、卽チ當然政府ノ責務デアルト云フ意味ニモ解釋シ得ルヤウニナッテ居ル、
  ケレドモ次ノ條文ニ行ッテ、是~是~ノ年度及金額ヲ以テ政府ガ契約ヲ締結ス
  ルコトヲ得ト、斯ウナッテ居リマスルノハ、唯今水野サンノ御尋ネノ通リニ、サ
  ウ云フ權限ヲ附與シタルニ過ギナイノデアル、斯ウ云フ解釋モ當然出來ルノ
  デアリマスガ、免ニ角事實ニ於テハ「要スル」ト云フ意味カラ言ヘバ、法律
  上當然政府ノ義務ニ屬スルトハ言ヘヌデアラウケレドモ、少クトモ兩院ヲ通
  過シテ、サウ云フ權限ヲ附與スルモノヲ拵ヘタ以上ハ、政府ハ矢張リソレニ
  依ッテ出來ベキダケ、少クトモ大正三年度ニ於テハ其經費ヲ支出スルト云フ方
  ガ寧ロ當然デアラウ、斯ウ云フ考ヲ持フテ居リマス、況ヤサウ云フ通牒ヲ出シ
  テ追加豫算ニサウ云フ經費ヲ出シテヤルト云フ經畫マデ立テテ、府縣ハソレ
  ニ依ッテ經畫ヲシ、又都市ハソレニ依ッテ經畫ヲ進メテ行クト云フ狀態デアリ
  マスカラ、從ッテ其上カラ考ヘマシテモ、若シ豫算ガ不成立ノ場合ニ於テハ責
  任支出ヲスベキモノデアルト云フ位ニ考ヘテ居ッタノデアリマス、又實質ノ上
  カラ考ヘマシテモ、成程築港ノ上ニ於キマシラハ、靑森ノ如キハマダ著手ヲ
  シテ居ルト云フ程度ニ至ッテ居リマセヌデシタガ、四日市ハ御承知ノ通リニ若
  シモ中途デソレヲ止メルト云フコトニスルト、仕事ガ手戾リヲシテ非常ニ損
  害ヲスルト云フ狀況ニアッタノハ同樣デアリマス、只鹽釜ハ準備行爲ニ著手シ
  テ居ルト云フコトデアリマシタガ、若シ是ガ破レルト初カラ準備行爲ヲ遣リ
  直サナケレバナラヌ狀態ニナル靑森ノ狀態ハ若シ一年延バサウト思ヘバ全
  然出來ヌ譯ノモノデハナカッタデアリマセウケレドモ、此四ツノ港ハ初カラ豫
  定ヲ同ジウシ、步調ヲ一ニシテ來テ居ルト云フヤウナコトデ、靑森ダケハ全然
  除外シテ仕舞フト云フコトモ考ヘモノデアル、縣トシテモ、外ノ縣ハ責任支出
  ヲシテ補助ヲ受ケルノニ、自分ノ方ダケ後廻ハシニスルノハ何事カ、是ハ政府
  トシテ大ニ考慮スベキモノト考ヘマシタカラ、サウ云フ點カラ綜合シテ當然
  責任支出ヲセラレルト云フコトハ、已ムヲ得ナイモノデアラウト考ヘテ居ラ
  レタノデ契約ヲ締結ヲ致シマシタノハ、卽チ其必要ヲ認メテ締結スルコトニ
  シテ剰餘金ノ支出ヲ仰グ、斯ウ云フ順序ニナッタノデアリマス、水道ニ付テモ
  略〓ソレト同樣ナ狀態デゴザイマス、ドウゾ其點ハ御諒知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=69

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• 070・石渡敏一

  ○石渡敏一君　私モ大藏大臣ニ責任支出ノ點ニ付テ少シ承リタイト思ヒマ
  ス、ソレハ簡單ニ伺ヒマスガ、兩三日ノ中ニ案ガ來ルト云フ御話デアリマシ
  タカラ、ホンノ一ツ二ツニ私ハ止メテ置キタイト思ヒマス、其案ノ參ッタ時分
  ニ伺フコトニシマスガ、其一ツハ法律問題、度〓大藏大臣ハ議會ニ於テ、責
  任支出ハ憲法ニ於テ禁ジテモナケレバ又許シテモナイ、已ムコトヲ得ズシテ
  支出スルノデアル、斯ウ云フ御話ノヤウデアリマス、ソレハ事實ノ話デハナ
  イト思ヒマス、事實上巳ムコトヲ得ズシテ支出スルノハ、サウ云フダケノ話
  デアッテ、憲法上ノ問題ニハ少シモ觸レテ居ナイト思フ、ソレデ憲法上デハ之
  ヲバ許シテモ禁ジテモナイ、斯ウ云フ御話シ、ソレモ御尤ナ話デアリマス、
  併ナガラソレナラバ責任支出ハ憲法上ドウ云フモノデアルカ、大藏大臣ノ御
  話ニ依ルト、所謂消極的ノ御話ニナッテ、積極的ノ御話ニナッテ居ナイト思フ
  禁ジテモ居ナケレバ許シテモ居ナイダケハ分リマシタ、ソレナラ憲法上デハ
  適當トスルモノカ不法トスルモノカ、或ハ其中間ニ立ツモノカノ御辯明ガナ
  ケレバナラヌカト思フ、其點ヲ私ハ承ッテ置キタイト思ヒマス、今一ツハ責任
  支出ニ付テ四十万トカノ今日剩餘金ガアル、殘ッテ居ル費用ガアレバ之ヲ·使フ
  ト云フヤウナ今御話ガアッタヤウニ思ヒマス、私ハ聞キソコナッタノデアリマ
  スカ何カ知レマセヌガ、之ヲ使フト云フコトニ付テハ如何ナル理由デアルカ
  承ッテ置キタイト思フノデス、責任支出ノ承諾ヲ拒メバ無論使フコトモ出來マ
  スマイ又議會ガ承諾ヲ與ヘタ、與ヘタトキニハ現在支出シタモノニ付テ承
  諾ヲ與ヘタノデ、今後使フモノニ付テ承諾ヲ與フルト云フコトハナイコトデ
  ハナイカト思フ、ソレナラバ若シサウ云フ風ニシテ承諾內ニ其四十万圓ガア
  ルト云フコトニナルナラバ、此豫算ヲ協賛スルト云フコトハドウ云フコトニ
  ナルノカ、私ハソレハ出來ヌコトデハナイカ知ラヌト思ヒマス、其四十万圓ヲ
  今後使ハウト掛ルナラバ、議院ノ協賛ヲ經ナケレバナラヌコトニナル、私ノ或
  ハ聞違ヒデアッタカモ知レマセヌガ、玆デ聞遁ガスノモ甚ダ遺憾ト存ジマスル
  カラ一應承ッテ置キタイ、ソレカラ今一ツハ、遞信大臣ニ伺ッテ置キタイ、遞
  信大臣ノ先程ノ御辯明ニ依リマスルト、航路補助法ニ依ッテ郵船會社ト航路補
  助ノ契約ヲナスッタト云フ御話デアル、航路補助法ニ依ッテト云フ御話ガアル、
  其內デ世間デ一番喧シク言フ航路補助法ノ第一條ノ但書ノ、謂ハユル補助金
  額年限ニ付テハ議會ノ協賛ヲ經ナケレバナラヌト云フノニ付テ、補助金額ハ
  既ニ前年度豫算ヲ踏襲スルノデアルカラシテ、二度議會ノ協賛ヲ經ル必要ハ
  無イ、是ハマア議論デアリマセウケレドモ兔モ角モトシテ、私ハ一應承ッテ置
  キタイト思フノハ、唯年限········一年ハ年限デナイカラシテ適用シナイト斯ウ
  云フ御說ノヤウニ承ッタ、間違ヒマシタラバ一ツ御辯明ヲ願ヒタイ、一年ハ年
  限ノ中ニ這入ラヌト云フ御解釋ハ如何ナル所カラ出テ來タモノデアリマセウ
  カ、是ガ承リタイ、我〓ノ考ヘマス所デハ普通年限ト言ヘバ、一年以上ズッ
  ト這入ルノデ、無論一年ヲ含ンデノ話ト思フ、若シモ是ガ遞信省ノ專有物デ
  アルナラバ、其御解釋ハ遞信大臣ノ勝手ト云ッテモ宜シカラウト思フ、ケレド
  モ法律ハ國民ニ對スル命令ト思フ、遞信省モ亦ソレニ從ハナケレバナラヌ、
  サウスレバ公平ナル解釋ヲ付ケナケレバナラヌ、年限ト云フノヲ外ノ法律ニ
  比べテ見ルト、租稅ノ法律、土地ニ關シタモノニ付テハ、鍬下年期トカ云フ
  文字ヲ使ッテ居ル、公債條例ナドヲ見マスト据置年限幾ラト云フ、其中ニ一年
  ト云フコトヲバ皆入レテ解釋シテ居ルヤウニ思フ、ソレガ又至當ノヤウニ思
  ハレル、然ルニ航路補助法ニ限ッテ一年ト云フノハ年限ノ中ニ這入ラヌ、二年
  以上デナケレバ年限ノ中ニ這入ラヌト云フノハ少シク勝手ノヤウニ思ハレ
  ル、是ハ何カサウ云フ風ニ解釋スル先例デアリマスカ、ソレヲ一ツ承ッテ置キ
  タイ、ソレカラ今一ツハ海軍大臣ニ承ッテ見タイト思フ、是ハ新聞ニ依ッテ我
  〓ハ知ルノデアリマスガ、此度ノ歐洲ノ大戰爭ニ於テ非常ニ潛航水雷艇ガ勢
  ヒヨク働イテ居ルヤウニ思ハレル、ドウモ美マシイ位ニ隨分働キヲ爲シテ居
  ルヤウニ思ハレル、所ガ今日ノ日本ノ潛航水雷艇ハドウ云フ有樣デアラウカ
  ト見マスルトドウモ數モ甚ダ少イヤウニ思ハレル、又其製造年限モ極メテ
  古クハナイカト思ハレル、尤モ近頃御注文ニナッタト云フ話モアリマスガ、極
  メテソレモ少數ノヤウニ伺シテ居ル、國防上一體是デ御滿足ガ出來ルノモノデ
  アルカ若シ御滿足ガ出來ヌモノトスレバ、如何ナル今後ノ御方針デアラウ
  カ、其御方針ガ承リタイト思フ、我〓ノ考ヘマス所デハ、今日斯ノ如ク發達シ
  タ以上ハ、艦隊ノ編成ノ中ニモ加ハッテ宜カラウト思フ、ソレモ今日行ハレテ
  居ナイノハ人ガ足リナイト云フコトデアルカ、或ハ金ダケノ問題デアルカ、必
  要デハアルガ人ガ足リナイト云フノカ、ソレニ付テドウ云フ御經畫ガアルカ、
  ソレヲ承ルコトガ出來レバ光榮ト存ジマス、願ハクハ御說明ヲ煩ハシタイ
  〔國務大臣八代六郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=70

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• 071・八代六郎

  ○國務大臣(八代六郎君)　近頃歐羅巴ノ大戰ニ於テ潛水艇ガ美マシイ程ノ働
  キヲシテ居ル、御同感ニ存ジマス、然ラバ日本ノ潛水艇ハ數ノ上ニ於テモ少
  シ、古クモアルシ、是ハドウスル積リデアルカ、斯ウ云フ御尋デアリマス、潛
  水艇ハ海軍ニ於テハ最新最大ノ潛水艇ヲ澤山所有イタシタイ考デアリマス、
  併シ之ヲ製造イタシマスニハ成ルベク本國ニ於テ製造イタシタイト云フ考ヲ
  持ッテ居リマス、然ラバ本國デ出來ルマデ待ツ猶豫ガアルカ、御尋ニナリマス
  レバ、成ルベク早ク欲シイ、去リナガラ外國ニ今注文イタシマシテモ、決シ
  テ早クハ出來ヌト云フコトヲ調査イタシマシタ、又今日ニ於テ外國ニ之ヲ注
  文イタシマスルト非常ニ價ガ高クナリマス、而シテ内國ニ於テハ絕對ニ出來
  ヌカト申シマスト先刻モ申シマシタ通リ最新最大ノハ出來マセヌガ、或種
  ノ潛水艇ハ出來ル工夫ガ付イタ、編成ハ如何、今日マデ所有シテ居ルモノモ
  チヤント編成ハ致シテ居リマス、如何ニモ仰セノ通リ古イ、ドウカシテ立派
  ナ潛水艇ガ澤山出來ルコトヲ希望スル、其研究ハ寸時モ怠ッテ居リマセヌ、專
  ラ潛水艇製造ニ付テ種々ノ試驗ヲ今ヤッテ居リマス、先刻モ申シマス通リ、出
  來上ッタナラバ案外良イノガ出來ルカモ知レマセヌガ、是ハ未來ニ屬スルコト
  デアリマスカラ確言ハ出來ヌト云フコトヲ附加ヘテ申上ゲテ置キマス、此段
  ヲ御答イタシマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=71

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• 072・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　國庫剩餘金支出ニ付テノ憲法上ノ解釋ノ地位
  トデモ云ヒマスカ、憲法ニ依ッテ居ルノカ依ラヌノカト云フヤウナ···消極ナ
  事ヲ言ウテ居ルカドウ云フ意味カト云フ御尋ノヤウデアリマシタガ、是ガサ
  ウ云フ一ノ見解ガ公ケニ多年來成立ッテ居ルノデアリマス、其成立ッテ居ル見
  解ヲ申上ゲタノデ、國庫剩餘金ヲ支出スル、ドウシテ出來ルカ、ソレハ憲法ニ
  出來ルト明カニハ書イテナイガ、又出來ナイトモ書イテナイノデ、國務曠廢
  ヲ許サヌ場合ニ、緊急必要ナルモノニハ支出スルト云フコトニ、今日マデニ
  ナッテ來テ居リマスノデ、其見解ニ基イテ國庫剩餘金ノ支出ヲ致シタト云フノ
  ガ、ソレガ消極ノ解釋デアリマセウトモ、積極ノ解釋デアリマセウトモ左樣
  ナコトニナッテ、此第九議會以來公ケナル解釋ガ成立ッテ居リマスノデ、之ニ
  從ッテ剰餘金ノ支出ヲシテ居ル、斯ウ云フノデアリマス、第二點ノ御質問ハチ
  ヨット忘レマシタガ、ドウカ始メダケヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=72

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• 073・石渡敏一

  ○石渡敏一君　買入レニ付テ四十万圓殘ッタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=73

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• 074・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　分リマシタ、剩餘金支出ノ事後承諾ヲ求メマス
  ノハ、是マデハ總テ其金高ノ支出ヲ終リマシテ、計算書ヲ具ヘテ承諾ヲ求メ
  ルト云フコトニナッテ居リマスカラ、其通リニ致シマスレバ石渡君ノ御疑ハ
  起ラスコトニナルノデアリマス、支出シテ仕舞ッテカラ始メテ承諾ヲ求メル
  ノデアリマスカラ御疑念ハ起ラヌデ濟ムノデアリマスガ、今囘ハ········剩餘金
  支出ノ勅裁ヲ仰イダコトガアルナラバ其次ニ起ッタ········其次ニ召集セラレタ
  議會ニハ直グ承諾ヲ求メル、ソレ故ニ其勅裁ヲ仰イダ金額ガ旣ニ支出シ終ッ
  テ居ッテモ又終ラズ現ニ日々支出イタシツツアッテモ、議會ニ向ッテ承諾ヲ求
  メルト云フコトニナッテ居ルノデアリマスカラ、其中蠶絲救濟ト云フ如キハ既
  ニ支出シテ濟ンダモノデアリマスケレドモ、米價調節ノハ現ニ執行シツツア
  ル中間デ、事後承諾ヲ求メルヤウニナッタノデアリマス、ソコデ四十万圓前後
  ノ金ガマダ殘ッテ居ルト云フコトヲ言フノハ其所デアリマス議會ガ承諾ヲ
  與ヘラレレハ此金ハ必要ナラバデス、必要ナラバ支出シテ調節ヲ致シマス、併
  ナガラ議會デ承諾セラレヌト云フコトデアレバ、政治上ノ德義トシテ、ソレカ
  ラ以後ハ勅裁ヲ仰イデ居ッテモ、支出ヲセナイト云フコトニ致サヌケレバナラ
  ヌノデアラウト考ヘテ居リマス、唯今ノ所ハ議會ハ恐ラクハ御承諾下サルコ
  トデアルト斯ウ思ウテ居ルモノデアリマス、殘額ガ是位アリマスカラ、必要
  ナラバ支出スルト答辯ヲ致シタ次第デアリマス
  〔國務大臣武富時敏君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=74

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• 075・武富時敏

  ○國務大臣(武富時敏君)　石渡君カラノ御尋ニ御答ヲ致シマス、午前ノ會議
  ニ於テ本年度ニ對スル航路補助ノ命令ガ前年度ノ豫算ヲ施行サレタ、其豫算
  ニ依ッタ處分デアルト云フコトヲ御答ヘ申シマシタ所ガ、補助法第一條ノ但
  書、金額年限ハ議會ノ協賛ヲ經ベシトアルノニ、議會ノ協賛ヲ經ズシテ此處分
  ヲ爲シタト云フ理由ヲ重ネテ御尋ト承リマシタ、而カモ其解釋ヲ遞信省一己
  ノ獨斷ニ出デタカノヤウナ御說モゴザリマシタケレドモ、決シテ左樣ナ譯デ
  ハゴザリマセヌ、此補助法ノ但書ノ成立チマシタ歷史ハ、無論御承知デゴザリ
  マセウガ、少シソレヲ申上ゲテ見マセウナラバ、明治四十三年ニ此補助法ノ政
  府ノ原案ハ但書ハナカッタノデゴザイマス、七年ヲ限リ主務大臣ハ補助金ヲ下
  附シテ定期航海ヲ命ズルコトヲ得ト云フダケノ案デアリマシタ所ガ、衆議院
  ニ於テ段々議論ガ出マシテ、是デハ餘リニ主務大臣ノ權限ガ廣キニ過ギテ、憲
  法第六十二條ノ規定ニ違反スルヤノ虞ガアルカラ、憲法第六十二條ニ規定シ
  テアル豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スルトキハ、必ズ議會ノ
  協賛ヲ經ルヤウニシナケレバナラヌト云フノガ其但書ヲ加ヘタ趣意デアッタ、
  其事ハ衆議院ニ於テモ特別委員長ノ報告ニ明カニ報〓ガシテゴザリマス、又
  貴族院ニ於テモ其議事ノ際ニ、議員ノ質問ニ對シテ當時ノ遞信大臣ガ答辯ヲ
  致シテ居リマス、其速記錄ガ此所ニゴザリマスカラ、チヨット此所デ讀ンデ見
  マス「國務大臣(男爵後藤新平君)政府ニ於テハ此第七條ハ無論原案ノ通リニ
  通過センコトヲ希望イタシ、今日ニ於テモ其所信ハ同一デアリマスガ、併シ衆
  議院ニ於キマシテ此從來豫算外國庫ノ負擔ニ屬スル契約トシテ提出セラレシ
  所ノモノハ議會ノ協賛權ヲ尊重シテ貰ヒタイ、此コトハ保留シタイト云フ意
  見デ修正ヲ致シマシタノデゴザイマス云々」ソレデ明白ニ此但書ノ趣意ハ豫
  算外ニ亙ル契約ヲ爲ストキハ議會ノ協賛ヲ經ベシト云フ趣意ノ外ニハ何等趣
  意ハナイト存ジマス、サスレバ豫算ガ定ッテ其豫算以內ノ處分ヲスルニハ、
  此但書ハ無論嵌ラヌコトト思ハレル、此但書ハ豫算ノ成立イタシマセヌ以前
  ニ契約ヲ爲ス必要ガアルカ、或ハ二年三年ニ跨ガル契約ヲ爲スノ必要ガアル
  カ、或ハ時ニ短クテモ詰リ兩年度ノ豫算ニ跨ガルヤウナ契約ヲシナケレバナ
  ラヌ際ニ當ッテ、始メテ此但書ガ活用スルノデアリマシテ、一年限リノ豫算以
  內ニ處分ヲ致シマスルノハ、無論此但書ノ趣意ニ包含サレタモノデナイト
  信ジマスノデス、左樣ニ此但書ノ成立イタシマシタ歷史カラ考ヘマシテ、又今
  日明カニ殘ッテ居リマスル當時ノ議事ノ際ニ於ケル速記錄ヲ見マシテモ明白
  疑ナイコトト存ジマス、ソレデ午前ニモ述ベマシタ通リニ、此補助法第一條ニ
  議會ニ協贊ヲ要求シマス、其協賛ト云フノハ豫算ニ依ッテ一年限リノ補助デア
  レバ受ケルノデアリマシテ、今日ノ場合ハ議會ガ恊贊シタ豫算ガ成立シタノ
  ト、ソレニ代ル前年度ノ豫算ガ施行サレテ居マスカラ、卽チ此施行豫算ノ範圍
  內ニ於テ處分ヲ致シマスノハ、議會ノ協賛ニ依ッテ處分ヲ致スノト同一デ、何
  等異ナル所ハナイト信ズルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=75

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• 076・橋本圭三郎

  ○橋本圭三郞君　段々先輩カラ色~御質問ガアリマシタ、ケレドモ私ノ承ラ
  ムトスル御質問ハ今マデナイヤウデアリマスカラ一ツ伺ヒマス、ソレハ豫備
  金增加ノ件デアリマスガ此豫備金增加ノコトニ付テハ、前內閣ノ時分ニモ既
  ニ極ッテ豫算ニ提出ニナッタノデアリマス、又現内閣ガ成立セラレタ時分ニ於
  テモ其事ハ內外ニ········内外デハアリマセヌガ、宣言ヲセラレタコトデアッテ、
  又豫算ニモ既ニ增加ノ數ガ出テ居ッタノデアリマス、然ルニ此度追加豫算ノ第
  一號ガ出マシタノヲ見テ、必ズ豫備金增加ノ金額ハ一番初メニ出テ居ルデア
  ラウト思ウテ見マシタ所ガ少シモ出テ居リマセヌ、ソコデ第二ノ追加豫算ヲ
  見マシタ所ガ、ソレニモマダ出テ居リマセヌ、併シ今日議會ノ函ヲ見マシタ
  所ガ、始メテ第三號ト云フ追加豫算ノ中ニ、僅ニ第二豫備金二百万圓增加ノ
  請求ガ出テ居リマシタ、ソコデ私ハ甚ダ惑フノデアリマスガ、現內閣ハ成立
  ノ時分ニ、此剩餘金支出ト云フモノニ付テ度〓ヤルコトハ甚ダ不都合デアル
  カラ、豫備金ヲ增加シテ絕對ニ之ヲ防グコトハ出來ヌトシテモ、成ルベク之
  ヲ實行シタイト云フコトハ宣言サレテアルノデゴザイマスシ、又今ノ遞信大
  臣又ハ文部大臣ノ如キハ之ヲ文章ニモ書カレ、又口ニモ言ハレテ居ルノデア
  ル、左レバ此度ノ此議會ニ於テハ一番初メニ第一號ノ豫算ニ計上セラレテナ
  クテハナラヌ私ハ義務ガアルモノト思フノデアリマス、然ルニ一號ニモナク
  二號ニモナク、マダ此諸君ノ中ニハ御覽ニナラヌ御方ガアルカモ知リマセヌ
  ガ、先程漸ク二階ノ函ニ這入ッテ居ルヤウナ譯デ、第三號ガ初メテ出タ、而シテ
  其金額ハ僅ニ二百万圓、ソコデ說明ニ斯ウアリマス「第二豫備金拂切ノ處尙二
  百万圓ノ增加ヲ要スルニ依リ經常部第二十款ニ豫算セリ」斯ウアリマス、モウ
  既ニ年度ニ這入ッテ僅ニ一一箇月デアル、其二箇月ノ中ニ二百万圓ノ第二豫備金
  ハ大抵使ッテ居ル、ソコデ茲デ追加豫算ヲ出サレル時ニ二百万圓ト云フモノヲ
  出シテ今後十箇月ノ間ニ之ヲ使ハウト云フノデアル、而シテ第一豫備金ノ方
  ハ追加モ何モ出テ居ラヌ、シテ見マスルト云フト此內閣ハ今後又此豫備金ガ
  足ラヌ時ニハ、今日モ朝カラ今マデ其爲ニ議論紛々トシテ居ル此剩餘金支
  出其剩餘金支出ヲ又〓再ビヤラウト云フ考デアル、實ニ是ハ怪シカラヌ
  コトデナイカト思ヒマス、又サウ申スト云フト、ドウモ外ニ色〓費用ガアッテ
  誠ニ困ルト云フ、斯ウ云フ御話ガアルカ知ラヌガ、併ナガラ此一號ヨリ第三
  號マデノ豫算ヲ通覽イタシマスレバ、今日必ズ是非共ヤラナケレバナラヌト
  云フ重要ナモノデモナイモノモ澤山アルノデアリマス、サウ云フモノハ之ヲ
  削ラレテ、而シテ豫備金ト云フモノヲ增加シテ、憲法違反ト云ッテハ甚ダ惡イ
  カモ知ラヌガ或ハ或人ハ憲法違反ト云フ人モアルガ、或ハ憲法違反ニ近イト
  云フ說モアルガ、ソレハ私ハ別問題トシテ、サウ云フ避ケ得ベキ支出ハ之ヲ
  成ルベク避ケルト云フ方針ヲ何故ニ執ラレナイノデアルカ、又私ガ第二ニ付
  テ考ヘテ見マスレバ、此實行豫算ノ經常部ノ歲入ガ五億二千万圓アリマス、
  又經常部歲出ガ三億九千五十万圓、其差ハ一億二千五百万圓アルノデゴザイ
  やす、卽チ經常部ノ歲入ガ經常部ノ歲出ヲ超過スルコト一億二千五百万圓デ
  アル、而シテ經常部ト臨時部ト兩方之ヲ比較シマスト、此實行豫算ノ表ニ書
  イテアリマスヤウニ五千六百四十何万圓ト云フ殘額ガアルノデアリマス、此
  殘金ヲ何故ニ一番初メニ此豫備金ノ增加ニ充テラレヌノデアリマスカ、此六
  千五百万圓ト云フモノハ經常部ノ歲入ト經常部ノ歲出ノ差デアリマスカラ、
  ソレハ恆久財源デアリマス、一時的ノ剩餘金デハナイノデアリマスカラ、其
  財源ヲ此豫備金ノ增加ニ用ヒラレタナラバ易々トシテ出來ルノデアリマス、
  之ヲ此内閣ハ前ノ宣言ニモ悖リ、又天下囂々トシテ此憲法違反ノ疑ノアル支
  出ニ付テ議論ノアル今日、又其事ヲ敢テシヤウトスルノハ甚ダ私ハ不都合ノ
  コトデアラウト思フ、付テハ私ハドウ云フ譯デ此政府ハ第一號ニ第一番ニ何
  故ニソレヲナサレナカッタカト云フコトガ第一、ソレカラ第二ニハ僅ニ一一百
  万圓バカリヲ出シテ、ソレデ今ノ疑アル憂ヲ除去スルコトガ出來ルト云フ御
  考デアルカ、其二點、モウ一ツハ私共ハ此豫算ヲ删除スルノ權利ハ持ッテ居リ
  マスケレドモ、豫算ヲ增加スル權利ハ持ッテ居リマセヌカラ、申上ゲルノハマ
  ダ衆議院ノ方ニアッテ、貴族院ニハ廻ッテ居ラナイ第三號ノ追加豫算ヲ一日モ
  早ク引上ゲラレテ、サウシテ此豫算ヲ修正シテ出サレテハドウデアリマセウ
  カト云フ御忠告ヲ一ツ申シタイノデアリマス、ソレダケ········マダ質問モアリ
  マスケレドモ此質問ダケヲ聞イテ、其後ニ又何シマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=76

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• 077・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　豫備金ヲ增加イタシマシテ第一豫備金、第二豫
  備金、合セテ凡ソ五百万圓ホド增加シタイト云フコトニ付テハ現內閣モ橋
  本君ノ居ラレタ內閣ト同樣ニ左樣ニ致シタイノデアリマス、矢張リ第三十五
  議會ニ提出シタ豫算ニ於テハ左樣ニ相成ッテ居リマシタガ、其豫算ガ不成立ニ
  ナリマシテ、今玆ニハ施行豫算デ今日ノ國務ニ應ジ切レナイ已ムヲ得ザルモ
  ノヲ追加豫算ニ提出スルト云フコトニ致シタモノデアリマスカラ、ソレ故
  ニ常時ノ大體ノ經畫トシテ豫備費ヲ增サウト云フコトノ其案ヲ第一著ニ提出
  スルコトヲ得ズシテ、先ヅ一番急切ナモノニ付テ追加豫算ヲ組ンダノデアリ
  やっ、併ナガラ米價調節等ノ爲ニ本年度ハ豫備費ノ支出ガ割合ニ早ク大ナル
  金額ニ上リマシテ、唯今ハ年度經過二箇月餘ノ所ニ於テ、旣ニ第二豫備金ヲ
  支拂切ッタヤウナコトデアリマスカラ、此儘デハ到底後ニ應ズルコトガ出來マ
  セヌカラ、唯〓仰セニナッタヤウナ第二號ノ追加豫算ヲ以テ、更ニ第二豫備金
  ノ追加ヲ要求シタ次第デアリマス、是ダケノ要求ヲシテ置ケバ此十二月ニ開
  ケマス通常議會マデ、サウ不時ノ支出ヲ多額ニ要スルモノハ起ルマイト考
  ハラ、ソレダケノ要求ヲシタ次第デアリマス、國庫剩餘金ヲ支出スルコトヲ
  豫期シテ、豫備金ノ增加ヲ二百万圓ニ止メタノデモ何デモアリマセヌノデ、
  政府ハ無論國庫剰餘金ノ支出ハ避ケタイノデアリマスカラ、ソレ故ニコソ豫
  備費ノ追加二百万圓ト云フモノヲ提出イタシタ次第デアリマス、來年度ノ豫
  算ヲ組ミマス場合ニ於テハ、豫テノ經畫ニ從ッテ豫備費ハ矢張リ增加スルコ
  トニ致シタイノデアリマスガ、唯茲ニ私共ノ考ヘテ居リマス所ニ於テハ、免
  ニ角時局ノ影響ヲ受ケテ大變歲入ガ減少シテ居ル今日デアリマスカラ、平時
  ニ於テ經畫シタ通リニ豫備費ヲ增スコトガ大正五年ニ至ッテ出來ルヤ否ヤト
  云フコトハ、今マダ確カナラヌノデアリマス、希望ハドウカシテ常時ノ場合
  ニ經畫シタ通リニ豫備費ノ增額ヲ致シタイト思ッテ居リマスカラ、出來得ル限
  リハ左樣ニ努力スル積リデアリマスケレドモ、時局ノ影響ヲ受ケテ居ル今日、
  財政ヲ料理シテ行キマス上ニ必ズ前ニ提出シタ通リ豫備費ヲ增加スルト云フ
  コトハ今ヨリ申上ゲ兼ネマス、ソレニ付テ努力シタイト云フコトハ申シテ差
  支ナイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=77

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• 078・橋本圭三郎

  ○橋本圭三郞君　極ク簡單デアリマスカラ、モウ一ツ今ノ點ニ付テ御問ヒヲ
  致シマス、ソレハ今大藏大臣ハ平時デアレバ五百万圓ノ增加ヲ致シタイト思
  フノデアルガ、戰時デアルノデ二百万圓ノ追加ヲシタ、斯ウ云フ今ノ御說明ノ
  ヤウデアリマシタガ、是ハ私ハ分ラヌト思フ、平時デアッテ五百万圓デアルモ
  ノナラ今日ノヤウナ狀態ノ變化ノアル戰時ニ於テハ、ソレヨリマダタント增
  サヌケレバ駄目ダト思フ、其必要ノアル卽チ米價調節デアルトカ、或ハ蠶絲救
  濟デアルトカ云フヤウナモノハ、或ハ平時デアレバ政府ハナサレヌカッタカモ
  知レヌ、ソレハ別問題デアルガ、サウ云フ事柄ハ政府當局ノ說明ニ依ッテモ、若
  シ是ガ平時デアッタナラバシナイカモ知レヌケレドモ、戰時ノ狀態ノ變化シテ
  居ル時ニサウ云フコトガアッテハ由々シキ大事デアルカラシテ救濟シタト云
  フヤウナコトヲ說明サレタカノヤウニモ私ハ思フノデアル、ソレニ此今日ノ
  如キ戰時ニ於テハドンナコトガ勃發スルカモ分ラヌノデアリマス、其爲ニハ
  平時ニ於テヨリモ尙ホヨリ多ク豫備金ヲ增加シテ置イテ憲法違反若クハ憲法
  違反ノ疑ノアルヤウナ剰餘金支出ト云フコトハ、出來得ルダケ之ヲ避ケルト
  云フコトガ政府ノ義務、殊ニ大隈內閣ノ憲法的ノ動作動作ト云ハレル其內閣
  デハ是非共セラレナケレバナラヌコトデハナイカト思フ、所ガ大藏大臣ノ御
  說明ハ丁度私ノ思ウテ居ルコトト反對デアリマスガ此點ヲモウ一ツ伺ヒマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=78

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• 079・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　臨時軍事費竝ニ臨時事件費ニ關スル追加ノ豫算
  ハ本日當議場ニ上ッテ居ル通リデアリマスノデ、臨時軍事費ニ付テハ豫算ノ御
  協賛ヲ願ッテ之ヲ支出スル積リデアリマス、又臨時事件費ニ伴ッテ各省臨時ニ
  色〓ナコトノ起リマスル、ソレニ應ズルガ爲ニハ臨時事件費、五百万圓ノ臨時
  事件豫備費ト云フモノガ現ニ御協賛ヲ仰ガムトシテアルノデアリマス、是
  以外ニ起ルベキモノニ當ッテ、唯今申シマスル豫算費ノ二百万圓ノ追加ノ增加
  ヲ要求シタ次第デアリマスルカラ、ソレダケノモノガアレバ次ノ通常議會ノ
  開カレル迄ハ差支ナイト云フ積リデ、政府ハ總テノ經畫ヲ立テテ居リマス、
  決シテ此以外ニ國庫剩餘金ヲ支出スルナドト云フ考ヲ有ッテ居ル次第デハ毛
  頭ナイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=79

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• 080・仲小路廉

  ○仲小路廉君　私ハ質問ハ止シタイ考デアリマシタガ、止スコトノ出來ナイ
  コトニ遭遇イタシマシタ、ソレハ先刻築港及水道ノ補助ニ關スル點ニ付テデ
  アリマス、之ニ對シテ最初大藏大臣ヨリハ既ニ契約ヲ結ンデ居ル、政府ノ義
  務ニ屬スルコトニナッテ居ルノデアル、斯ウ云フ趣意ノ御答辯デアッタト存ジ
  マス、其當時ニ於テ如何ニモ是ハ明瞭ナ答辯ヲサレタト思ッテ居ッタ、水野鍊
  太郞君ノ質問ニ對シテ········然ルニ其後ニ出ラレタ內務次官ノ答辯ニ依ルト、
  別段法律上ノ義務ノアルベキモノデハナカッタノデアルガ、内務省限リニ於テ
  地方ニ斯樣ナ取計ヒニシタト云フヤウナ意味ニ承ッタ、是ハ私ノ若シモ伺ヒ違
  ヒデアリマスルナラバ甚ダ喜ブノデアリマスガ、若シモサウデナカッタナラ
  バドチラガ一體本當デアルカ、大藏大臣ガ豫算外國庫ノ負擔ニ屬スル契約
  トシテ當然政府ノ責ニ任ズベキモノデアルカラ緊急支出ヲシタト云ハルレバ
  マダシモデアルガ、內務次官ノ答辯ノ通リデアリマスレバ、ソレハ全ク違フ
  ノデアリマス、而カモ其時ハ何時デアルカ、三月ノ二十日カラ三月二十五日、
  抑〓本年ノ三月ノ二十日カラ三月二十五日ト云フ日ハ如何ナル時デアリマス
  カドウ云フ時デアルカ、ソレデアルカラ世ノ中ニハ非常ナ疑惑ヲ抱クノデ
  アリマス、本年ノ三月二十日カラ三月二十五日、其時議會解散後ニハ五箇月
  以內ニ議會ノ召集サレルハ明瞭デアルカラ、五月ニ入レバ臨時議會ヲ開カル
  ルノハ分リ切ッタ話デアル、其分リ切ッタ時デアルニ拘ラズ、時モ時トテ三月二
  十日カラ三月二十五日ノ間ニ、而カモ最モ地方ノ利害ニ關係アル築港補助、水
  道補助、之ヲ而カモ憲法上緊急支出ナラバ種々ノ制限ガアルニ拘ラズ、斯樣ナ
  コトニ使ッタト云フニ至ッテハ之ヲ濫費、濫出デアルト云フコトノ感ジヲ持タ
  ヌノデアリマセウカ、此點ニ付テ而カモ次官ハ內務次官デアリマスカラ、モ
  ウ一遍明瞭ニ御答辯ヲ得タイ、マダ次ニアリマス、尙ホ是モ私ノ默スルコト
  ノ出來ナイ、遞信大臣ヨリ遠洋航路補助ニ關スルコトニ付テ石渡君ノ質問ニ
  對スル答辯、其中ニ遠洋航路補助法制定ノ時ニ於ケルコトヲ述ベラレタノデ
  アリマス卽チ遠洋航路補助法ノ第一條ノ修正ニ關スル點ノコトニ付テ述べ
  ラレタノデアリマス、其述ベラレタル理由トシテ當時後藤遞信大臣ノ貴族院
  ニ於テ說明ヲセラレタ一節ヲ取リ來ッテ之ヲ己レガ論據トシテ、サモ强キモノ
  ノ如クニ述ベラレタノデアリマス、是ハ能ク能ク御覽ニナレバ何デモナイ話
  デアル、卽チ私ハ今日ハ殊更此問題ハ避ケテ居ッタノデアリマスガ、旣ニ世上
  ニ公ケニ致シテ居ル意見ノ中ニ、當初ハ成ルベク議會ノ有スル權限ヲ行政權
  ニ委任サレテ、十箇年以內三箇年以上ノ間ニ於テハ行政權ニ委任サレテ、其
  自由裁量ニ委セラレムコトヲ之ヲ議會ニ提案シタノデアリマス、然ルニ議會
  ハ議會ノ有スル決議權デアルカラシテ、之ヲサウ行政權ニ委任スルコトハ出
  來ナイト云フコトニ依ッテ但書ヲ附ケタノデアリマス、而カモ其年限モ始メ十
  箇年以内三箇年以上トアッタモノヲ、ソレヲ五年以內トシテ三年ヲ削ッテシマッ
  タノデアリマス、斯ノ如ク當初政府ガ議會ニ對シテ行政權ノ自由裁量ニ委セ
  ラレムコトヲ望ンダト云フコトハ恰モ此事業公債條例其他ノ一般ノ例ニ依ツ
  テ議會カラ委任サレレバソレデ出來ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=80

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• 081・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　仲小路君ニ申シマスガ、ドウカ要點ダケヲ願ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=81

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• 082・仲小路廉

  ○仲小路廉君　モウ直グ濟ミマスカラ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=82

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• 083・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　尙ホ本日ハ最早午後四時ニナリマシタケレドモ
  會議ヲ繼續スル積リデアリマス、此段モ申シテ置キマス

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• 084・仲小路廉

  ○仲小路廉君　ソレデゴザイマスカラ、其議會ノ權限デ、其本ハ何カト云フ
  ト、卽チ憲法六十二條ノ豫算若クハ豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ結ブ
  件ニ付テハ議會ノ權限デアル、其理由ヲ遞信大臣ハ、斯樣ナ理由ニ依ッテ議會
  ハ修正ヲ致シタト云フコトノ說明ヲ當時後藤遞信大臣ハセラレタノデアリマ
  ス、隨ッテ斯樣ナ事柄········此點ニ付キマシテハ何等影響ヲ有タヌノデアリマ
  ス、私ガ殊更此點ニ付テ遞信大臣ニ伺ヒタクナイト考ヘテ居リマシタガ、態
  〓進ンデ御述ベニナリマシタカラ、私ハ前ノ行掛リノコトヲ一言イタシテ置
  カナケレバナラヌ必要ガアル、ソレカラ私ノ伺ッタノハ內務次官ト、先刻ノ大
  藏大臣ノ述ベラレタルコトト違フカ違ハナイカ····
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=84

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• 085・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　下岡內務次官カラ答辯イタシマシタコトト、私
  ガ答辯イタシタコトトハ違ハナイノデアリマス、水道竝ニ港灣修築ノ補助ニ
  對シテ政府カラ補助ノ契約ヲナスコトガ出來ルト云フコトト、豫算外國庫ノ
  負擔トナルベキ契約ヲナスコトノ出來ル案ト併セテ、之ニ對シテ丁度ソレダ
  ケノ金額ヲ支出スル豫算案ト相伴ハシメテ、前內閣ニ於テハ議會ノ協賛ヲ求
  メラレタノデアリマス、然ルニ其契約ヲ結ブコトヲ得ル件ト云フ其議案ダ
  ケハ、兩院ノ協賛ヲ濟マサレタケレドモ、豫算案ニ付テハ兩院ノ協賛ガ濟ン
  デ居リマセヌ爲ニ豫算案ハ否決トナッタ、是ガ本デアリマス、唯今ノ御疑問ノ
  起リハ········ソコデ現内閣ハ其後ヲ承ケマシテ契約ヲ結プト云フコトハ成立ツ
  テ居ル、然ルニ其豫算ハナイノデアル、ソレデ此契約ヲ結プト云フ案ニ依ツ
  テ契約ヲ結ンデ仕舞ハウカ、玆ニ豫算ガナイ、豫算ガナクテモ既ニ兩院ノ協
  贊ヲセラレタノデアルカラ、政府トシテハ契約ヲ結ブコトガ出來ルノデアル
  ケレドモ、願ハクハ豫算ヲ伴ハシメテ置イテカラ契約ヲ結ンダ方ガ宜イト云
  フノデ、其契約ヲ締結スルコトヲ遲クラシテ置イテ、昨年十二月ニ開ケマシ
  タ議會ニ對シテ追加豫算ヲ提出シテ、其豫算ガ成立ヲシタ所デ契約ヲ結ブ考
  デアッタノデアリマス、然ルニ不幸ニシテ昨年十二月ニ召集セラレタ帝國議會
  ニ於テハ、衆議院ハ解散ニナリマシテ、政府ガ追加豫算ヲ提出シヤウトシタ
  コトガ目的ヲ達セナカッタノデアリマス、而シテ依然トシテ契約ヲ結ブコト
  ガ出來ルト云フコトダケハ留保セラレテ、チヤント成立ッテ居ル、之ニ基イテ
  關係府縣ハ各〓經晝ヲ立テテ現ニ直接ニ執行シ、又縣カラ更ニ市ニ向ッテ補助
  スルモノハ各-補助ノ豫算ヲ立ッテ實行セシメナケレバナラヌコトニナッタ、其
  時ニハ最早衆議院ハ解散ニナッテ議會ハ無クナッテ居リマシタノデアリマス、
  ソコデ再ビ政府ハ茲ニ契約ヲ結ブカ結バヌデ置クカト云フコトヲ考慮シナケ
  レバナラヌコトニナッタノデアリマス、其點ニ付テ下岡內務次官ハ契約ヲ爲ス
  ヲ要スル件ト言ハレルノハナンダカ義務ノヤウデアルケレドモ、中ニ書イテ
  アル所ハ何ミスルコトヲ得トアルカラ、必シモ政府ノ義務デナイヤウダト言
  ハレタノデ、ソレデ契約ヲ結ブト云フコトハソレノコトデアル、ソレハドッ
  チニモ解釋スルコトガ出來ル、結ブト云フコトガ出來ルト云フコトニナッ
  テ居リマスカラ、左樣ニナッテモ、其儘ニ置イテモ、强ヒテ政府ノ義務デナイ
  カモ知レマセヌ併ナガラ地方廳デハ·······各、關係府縣ハ之ヲ基トシテ經畫
  ヲ立テテ居リマスカラ、ドウモ結バナケレバナラヌト云フコトヲ考ヘテ、ソ
  コデ內務省ニ於テハ契約ヲ締結セラレ、關係府縣ハ關係府縣デ締結スルコト
  ニセネバナラヌカドウカト云フコトヲ、內務次官ハ先キホド義務ガ有ルカ無
  イカト言ハレタノデアリマス、併ナガラドウモ關係府縣ニ於テハソレダケノ
  準備ヲシテ著手シテ居ル以上ハ、兩院ノ協賛ニナッタ契約ハ結バヌケレバナ
  ラヌト云フノデ契約ヲ結バレタノデ、契約ヲ一度ビ結バレマスレバ、ソコデ
  政府ノ義務ニナル、水野君ノ質問ニ對シテ既ニ契約ヲ結ベバ政府ノ義務ニ屬
  スルカラ國庫剰餘金ヲ支出シ、此補助金ヲ支出イタシタノデアル、斯樣ニ答
  ヘタノデアリマスカラ、内務次官ノ答辯ト私ノ答辯ナルモノハ何等背馳スル
  所ハナイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=85

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• 086・仲小路廉

  ○仲小路廉君　唯今大藏大臣ヨリ御答辯ガアリマシタガ、大藏大臣ノ御答辯
  ハ甚シキ冗漫デアリマシタカラ、實ハ了解ニ苦シムノデアリマス、故ニ最初
  私ハ內務次官ノ言ハレタコトト違ヒハナイカ否ヤト云フ一點ヲ伺ッタノデア
  リマスガ、併ナガラ唯今大藏大臣ノ御答辯ニ依リマスルト左樣ナ事實ナラ
  バ最早宜シイ、如何ニモ普通ニアリ得ナイコトデアル、豫算ノ成立前デアッテ
  豫算外國庫ノ契約ヲ締結スル件ダケ通ッテ仕舞ッタト云フノデアリマスガ、果
  シテ斯樣ナコトデアリマスカ、此點ニ付キマシテ私ハ此上再度大藏大臣ニ御
  答辯ヲ煩ハシマセヌ、唯如何ニモ此事柄ハ疑惑スベキ事柄デアル、而カモソ
  レハ築港ニ關係シ、水道ニ關係シ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=86

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• 087・黒田長成

  ○副議長(候爵黑田長成君)　今ノハ御質問デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=87

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• 088・仲小路廉

  ○仲小路廉君　願ハクハ豫算委員會ノ際ニ御調ベヲ願ヲテ置クコトニシテ、私
  ハ此質問ヲ止メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=88

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• 089・小松原英太郎

  ○小松原英太郞君　本員ハ豫算ノ審査期限ヲ定ムルノ件ニ付キマシテ申上ゲ
  マス、今囘ハ臨時ノ際デモゴザイマスシ、會期モ切迫イタシテ居ルコトデゴ
  ザイマスカラ、審査期限ハ別ニ定メズシテ、豫算委員會ニ於キマシテハ出來
  得ル限リ速ニ審査ヲ遂ゲテ報告ヲスルト云フコトニ致シテハ如何デアラウカ
  ト思ヒマス、此段ヲ發議イタシマス、何卒諸君ニ於テ御賛成アラムコトヲ希
  望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=89

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• 090・武井守正

  ○男爵武井守正君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=90

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• 091・石黒忠悳

  ○男爵石黑忠悳君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=91

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• 092・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=92

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• 093・内田正敏

  ○男爵内田正敏君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=93

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• 094・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　唯今小松原君ノ、審査期限ハ審査濟ミ次第ニ議
  場ニ報告スルト云フコトニ付テ、御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=94

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• 095・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=95

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• 096・黒田長成

  ○副議長(候爵黑田長成君)　議事日程第六、作業會計法中改正法律案、政府
  提出、衆議院送付、第一讀會、第七、造幣局特別會計法案、政府提出、衆議
  院送付、第一讀會、第八、貨幣整理資金特別會計法廢止法律案、政府提出、
  衆議院送付、第一讀會、通牒文ノ朗讀ハ總テ省略シテ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=96

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• 097・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　御異議ナイト認メマス
  〔左ノ送付文及議案ハ朗讀ヲ經ザルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之
  ニ傚フ〕
  作業會計法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  作業會計法中改正法律案
  作業會計法中左ノ通改正ス
  第一條中左ノ如ク改ム
  第削除
  第四削除
  第二條第五項ヲ左ノ如ク改ム
  專賣局据置運轉資本ハ千萬圓トス
  附則
  本法中第一條中ノ改正ニ關スル規定ハ大正五年度ヨリ之ヲ施行ス但シ大正
  四年度分ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
  造幣局特別會計法案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  造幣局特別會計法
  第一條造幣局ノ事業ヲ經營スル爲固定資本、据置運轉資本及資金ヲ置キ
  作業上ノ收入、附屬雜收入及資金ニ屬スル收入ヲ以テ歲入ト爲シ作業ノ
  費用及資金ニ屬スル支出ヲ以テ歲出ト爲シ特別ノ會計ヲ立テシム
  第二條造幣局ニ於テ從來使用シ及將來增加スル所ノ土地、建物、築造、
  機械、重要ナル器具及標本ヲ以テ固定資本トシ從來ノ据置運轉資本ヲ以
  テ据置運轉資本トス
  資金ハ大正四年度末現在ノ貨幣整理資金特別會計所屬ノ資金ヲ以テ之ニ
  充テ舊貨幣及流通不便貨幣ノ交換及處分ニ關スル用途ニ使用ス
  第三條固定資本ノ維持、修理及補充ハ作業上ノ歲入ヲ以テ之ヲ支辨スヘ
  シ
  第四條本會計ニ於ケル作業上ノ歲出額ハ其ノ實際ノ歲入及据置運轉資本
  ノ合計額ヲ超過スルコトヲ許サス
  第五條資金ニ屬スル收入支出ハ別途ノ歲入歲出トシテ之ヲ整理スヘシ
  第六條作業上ノ純益ハ之ヲ資金ニ編入スヘシ
  第七條資金ノ收入支出ノ決算上過剰ヲ生シタルトキハ之ヲ該資金ニ編入
  スヘシ
  第八條固定資本ニ屬スル物件ノ賣拂代金ハ之ヲ一般ノ歲入ニ編入スヘシ
  第九條政府ハ每年本特別會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歳出ノ總豫算
  ト共ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
  第十條本會計ノ收入支出ニ關スル規程ハ別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  附則
  本法ハ大正五年度ヨリ之ヲ施行ス
  貨幣整理資金特別會計法廢止法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  貨幣整理資金特別會計法廢止法律案
  貨幣整理資金特別會計法ハ大正四年度限リ之ヲ廢止ス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=97

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• 098・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　作業會計法中改正法律案ハ造幣局特別會計法ヲ
  制定シマスルコト電信燈臺用品製造所ノ特別會計ヲ廢止イタシマスコト、
  及專賣局据置運轉資本ヲ增加イタシマスコト、此三ツノモノニ伴ッテ要スル必
  要ナル改正デアルノデアリマス、電信燈臺用品製造所ノ特別會計ハ來年度以
  降之ヲ廢止シタイ見込デアリマシテ、是ト同時ニ造幣局特別會計ニ付テモ別
  ニ法律ヲ設ケル爲ニ、右兩者ニ關スル規定ヲ作業會計法中カラ削除シテ置ク
  コトガ必要デアリマス、尙ホ併セラ近年專賣局事業ノ發達ニ伴ヒマシテ、現
  在ノ据置運轉資本額ヲ以テシテハ到底實際ノ必要ニ應ズルコトガ出來マセヌ
  故ニ、之ヲ增額スルノ必要上、作業會計ノ規定ニ改正ヲ加ヘムトスルノデア
  リマス、是ガ作業會計法中改正ノ理由デアリマス、專賣局据置運轉資本ノ現
  在高ハ法律上八百万圓ト定メテアリマスガ、實際豫算ニ依ッテ繰入レテアリマ
  ス金額ハ七百万圓デアルノデアリマス、然ルニ此運轉資金ガ少イ爲ニ煙草收
  納ノ場合ナドニ收納ヲシテ來ルモノヲ悉ク收納ヲ早クスル譯ニイキマセヌ爲
  ニ、耕作者ナドニ甚ダ不便ヲ與ヘテ居ル現狀デアリマスカラ、今囘据置運轉
  資本ヲ增加イタシマシテ、法律上ニモ亦實際ノ繰入高ニ伴フ一千万圓トシテ
  煙草ノ收納等ニ便宜ヲ與ヘルヤウニ致シタイト考ヘルノデアリマス、是ガ專
  賣局据置運轉資本ヲ增加スル理由デアリマス、貨幣整理資金特別會計ハ本年
  度限リ之ヲ止メマシテ、來年度以降ハ其資金ヲ造幣局ノ特別會計所屬ノ資金
  トシテ整理イタシマシタ方ガ、特別會計ヲ幾ツモ存シテ置クコトノ煩ヲ避ケ
  ルコトニ相成ルノデアリマス、左樣イタス考ヘデアリマシテ、之ガ爲ニ造幣
  局作業會計ニ關スル規定ヲ改正スルノ必要ガアルノデアリマス、ソレ故ニ從
  來ノ作業會計法中造幣局ニ關スル規定ヲ削リマシテ、又貨幣整理資金特別會
  計ト云フノヲ廢止イタシマシテ、ソレト同時ニ新ニ造幣局特別會計法ヲ定メ
  テ、唯今申上ゲマシタ趣意ヲ實行イタシタイ考ヘデアル、以上何レモ財政上
  必要ナ改正トシテ提出シタ次第デアリマスカラ、御審議ノ上、御協賛ヲ與ヘ
  ラレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=98

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• 099・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　唯今ノ三案ハ併セテ問題ニ供シテ御異存ゴザイ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=99

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• 100・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　御異議ナイト認ノマス、此三案ハ昨一日委員ニ
  付託サレマシタ治水費資金特別會計法廢止法律案ト同一委員ニ付託シテ御異
  存ゴザイマセスカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=100

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• 101・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑出長成君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=101

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• 102・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　議事日程第九、帝國學士院學術奬勵金特別會計
  法廢止法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、第十、帝國學士院學術研
  究奬勵金委任經理ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
  帝國學士院學術奬勵金特別會計法廢止法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  帝國學士院學術奬勵金特別會計法廢止法律案
  帝國學士院學術奬勵金特別會計法ハ大正四年度限リ之ヲ廢止ス
  帝國學士院學術〓究奬勵金委任經理ニ關スル法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  帝國學士院學術〓究奬勵金委任經理ニ關スル法律案
  帝國學士院ニ於テ學術〓究奬勵ノ爲ニ要スル金額ハ之ヲ帝國學士院長ニ交
  付シ經理ヲ委任スルコトヲ得
  委任經理ニ係ル會計ノ檢査ハ會計檢査院法第十六條ノ規定ニ依ル
  附則
  本法ハ大正五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  帝國學士院學術奬勵金特別會計法ニ依リ帝國學士院長ニ經理ヲ委任セラレ
  タル金額ノ支出殘額ハ本法ニ依リ經理ヲ委任セラレタルモノト看做ス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=102

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• 103・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　今朝豫算ノ說明ヲ申上ゲル場合ニ、特別會計ノ
  整理ノコトニ付テ申述べテ置キマシタ通リ、政府ハ現在ノ各特別會計中ニ於
  テ相當廢止或ハ合併ヲシテ整理スルノ方針ヲ定メマシテ、漸次調査ノ結了ス
  ルニ從ッテ必要ナ法律ノ制定ヲ致シタイト思フノデアリマス、玆ニ提出イタシ
  マシタ二ツノ案モ亦右ノ趣意ニ外ナリマセヌ、卽チ帝國學士院學術奬勵金特
  別會計ト云フノハ之ヲ廢止イタシマス、併ナガラ其廢止ニ伴ッテ、此特別會計
  法中ニ規定シテアリマシタ所ノ學術〓究奬勵金ヲ、委任經理ノ方法ニ依ッテ
  實際ノ便利ヲ達シテ行ク方ガ必要デアルト考ヘマシテ、左樣ナ別個ノ法律案
  ヲ制定セムトスル次第デアリマス、是モ亦特別會計整理ニ關スル法律案デア
  リマス故ニ、御審議ノ上、御協賛アラムコトヲ切望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=103

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• 104・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　是モ相關聯シテ居リマスカラ、合セテ問題ニ供
  シテ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=104

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• 105・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　御異議ナイト認メマス、兩案トモ同一委員ニ付
  託シテ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=105

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• 106・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ、書
  記官ヲシテ朗讀イタサセマス
  〔河井書記官朗讀〕
  帝國學士院學術獎勵金特別會計法廢止法律案外一件特別委員
  子爵稻垣太祥君男爵高木兼寬君男爵東郷安君
  石井省一郞君中島永元君岡田良平君
  木場貞長君室田義文君田島竹之助君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=106

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• 107・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　議事日程第十一、明治三十三年法律第五十號中
  改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
  明治三十三年法律第五十號中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  明治三十三年法律第五十號中改正法律案
  明治三十三年法律第五十號中左ノ通改正ス
  第一項ヲ左ノ如ク改ム
  鐵道、郵便、電信、電話官署ニ於テ取扱フ現金ノ出納ニ關スル事務ハ當該
  官署ノ事務員ヲシテ之ヲ分掌セシムルコトヲ得
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣武富時敏君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=107

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• 108・武富時敏

  ○國務大臣(武富時敏君)　是ハ至ッテ簡單ナ法律案デゴザイマス、御承知ノ通
  リニ會計法ニ於キマシテハ、現金ノ出納ハ官吏ニアラザル者ハ取扱フコトヲ
  認メテ居リマセヌ、唯鐵道、郵便、電信、郵便爲替、郵便貯金等ニ限ッテ官吏
  以外ノ事務員ニ分掌スルコトヲ許シテゴザイマス、所ガ年金恩給ノ受拂ヒ、
  又近クハ國庫金ノ受拂ヒヲ通信官署ニ於テ取扱フコトニナリマシタガ、此取
  扱ヲ官吏ニアラザル者ニ分掌ヲ許サヌト云フコトニナリマシテハ實際差支ヲ
  生ジマスカラ、官吏ニアラザル事務員ニモ是等ノ現金ノ出納ヲ分掌セシムル
  コトニ致シタイト云フ、斯ウ云フ法案ノ精神デゴザイマス、何卒御協賛アラ
  ムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=108

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• 109・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀イタサセ
  マス
  〔河井書記官朗讀〕
  明治三十三年法律第五十號中改正法律案特別委員
  伯爵川村 鐵太郞君子爵井伊直安君荒川義太郞君
  男爵北島齊孝君小松謙次郞君男爵辻健介君
  南弘君松原芳太郞君高崎三重郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=109

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• 110・黒田長成

  ○副議長(候爵黑田長成君)　議事日程第十二、〓育基金法案、政府提出、衆
  議院送付、第一讀會
  〓育基金法案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正四年六月一日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〓育基金法
  第一條〓育基金ヲ置キ其ノ額ハ千八十万圓トス
  前項ノ基金ハ大正四年度末ノ〓育基金特別會計所屬現金及漸次一般會計
  ヨリ繰入スル金額ヲ以テ之ニ充ツ
  第二條〓育基金ハ之ヲ費消スルコトヲ得ス
  第三條〓育基金ハ大藏省預金ニ寄託シ其ノ利子ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
  之ヲ普通〓育費ニ使用ス
  附則
  本法ハ大正五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〓育基金特別會計法ハ大正四年度限リ之ヲ廢止ス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル」

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=110

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• 111・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　本案モ亦特別會計整理ノ趣意ヲ以チマシテ、〓
  育基金ニ關スル現在ノ特別會計制度ヲ廢止イタシマスルト同時ニ、法律ヲ以
  テ〓育基金ト云フモノヲ整理イタシマシテ、其利子ハ每年度之ヲ一般會計ニ
  受入レテ、一般會計ニ於テ普通〓育費ニ之ヲ使用シヤウト考ヘルノデアリマ
  ス、其〓育基金ノ金額ハ大體ニ於テ唯今ノ〓育基金ノ現在額ニ依ヲテ之ヲ千
  八十万圓ト定メマシテ、現ニ現行ノ基金特別會計ニ屬シテ居ル現金ヲ以テ直
  チニ之ニ充テマスト同時ニ、其殘額ハ漸次一般會計カラ之ヲ繰入ルルコトニ
  セムトスル次第デアリマス、要スルニ〓育基金特別會計ト云フ其特別會計ト
  云フコトハ止メマスケレドモ、〓育基金ナルモノハ依然トシテ置イテ、サウ
  シテ事實ニ於テハ從前ノ特別會計アルト同ジヤウナ效用ヲ致サセルノデアリ
  マスガ、會計ノ手續ノ混雜シテ居ルノヲバ簡單ニ整理スルダケノ事柄デアル
  ノデアリマス、御審議ノ上御協賛ニナラムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=111

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• 112・久保田譲

  ○男爵久保田讓君　チヨット大藏大臣デモ、文部大臣デモドチラデモ宜シウゴ
  ザイマスガ伺ヒマス、〓育基金ノコトハ政府デモ御承知ノ通リ古イ歷史ヲ
  有ッテ居ル〓育基金デアリマス、〓育者ニ取ッテハ非常ニ重要視シテ居ル、唯
  今大藏大臣ノ御說明ニ依レバ、會計上ノ手續ヲ省略スル爲ニ會計法ヲ廢スル
  ト云フコトデアリマシタガ、非常ナ手數ノ掛ルコトデ、又會計上、整理已ム
  ヲ得ヌコトデアレバ餘儀ナイコトデアリマス、本員ノ之ヲ一讀イタシマス所
  ニ依レバ、此案ノ內容ニ於テハ左程違ッテ居リマセヌ、矢張リ基金ヲ置イテ其
  基金ハ預金部ニ託シ、サウシテ其利子ヲ使ヒ拂フ、斯ウ云フコトニナッテ居リ
  マスカラ手數ハ避ケラレマセウ、唯會計ノ帳簿上ニ於テ多少ノ手數ヲ省クコ
  トデアラウト存ジマスガ、誠ニ斯樣ナ重大ナ歷史ヲ有ッテ居ル〓育基金デアリ
  マスカラ、成ルベクハ御改正ニナラヌ方ガ宜シイコトデハナイカト存ジマス
  ガ、斯ノ如キ歷史ノアルニ拘ラズ、ヨリ重イ理由ヲ以テ御改正ニナラナケレ
  バナラヌト云フ理由ガアレバソレヲ伺ヒタイ、先ヅ其御答辯ヲ得タイ
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=112

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• 113・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　〓育基金特別會計ト云フモノヲ拵ヘマシタ事柄
  ニ付テハ唯〓久保田男爵ノ御述べニナル通リデアリマシテ、此事ハ〓育社會
  ニ於テモ重キヲ置イテ視テ居ラルル次第デアリマスカラ、政府ニ於テモ之ニ
  付テハ餘程重ク考ヘテ考慮イタシテ居ル次第デアリマス、成ルベク手ヲ著ケ
  ヌデ居ッテモ宜シイノデアリマスガ、大體ニ於テ諸般ノ會計ノ整理ヲスルト云
  フ主義ヲ採ッタモノデアリマスカラ、事柄自體ニハ一向サシタル變リノナイコ
  トデアッテ、矢張リ依然トシテ〓育基金ト云フ名前ヲ置イテ、〓育基金トシテ
  ノ取扱ヲスル次第デアルカラ、其根本ヲドコマデモ尊重シテ行ク上ハ、手續上
  ノ整理········外ノコトヲセヌナラバ此方ニ對シテ斯樣ニ致ス必要ハアリマスマ
  イケレドモ、他ノ諸般ノコトニ亘ッテ特別會計ノ整理ヲシヤウトスル際デアル
  モノデアリマスカラ、手續ヲ簡明ニスル方ガ宜シカラウト云フ意味デアリマ
  シテ、〓育基金其モノニ對シテハ十分重キヲ置イテ居ル次第デアリマス、現ニ
  是ハ關係ガ直接ニ本案ニハアリマセヌケレドモ、御承知ノ通リ現內閣ハ行政
  財政經畫ヲ立テマス場合ニ於テモ、〓育基金ヲ他ニ振替ヘテ使ッタ現金ニ對
  シテモ、ドウカ國庫剰餘金ヲ以テ元へ返還ヲシタイト云フ經畫ヲ立テタ位デ
  アリマス、其事ハ剩餘金支出ノ爲ニ行ハレナクナリマシタケレドモ左樣ニ致
  シタ位デアリマシテ、此〓育基金ト云フモノハ極メテ重キヲ置イテ視テ居ル
  ノデアリマス、ソレ故ニ土臺ハ無論今御述べニナル通リ、現行ノ〓育基金特別
  會計トシテ基金ヲ置クト云フ趣意ニ於テ異ナルコトハナイノデアリマス、唯
  手續ヲ成ルベク簡明ニシタイ、是ハ一般行政ノ整理トシテ斯樣ニシタイト云
  フノデアリマシテ、之ニ伴ッテ唯手續上ダケノ改正デアルカラ、ソレダケノコ
  トヲ致シタ所ガ根本ニ於テ重キヲ置イテ居ル〓育基金ト云フモノノ存在ニ妨
  グヲ生ズルコトデハナイト云フ意味ヲ以テ、全ク會計法ノ整理ダケノ趣意デ
  改正ヲ施ス次第デアリマス、此政府ノ趣意ノアル所モドウゾ御了承ヲ願ヒタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=113

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• 114・久保田譲

  ○男爵久保田讓君　政府ノ御趣意ハ一通リ分リマシタガ、〓育基金ニ重キヲ
  置イテ居ルト云フコトハ大ニ感心ハ致シマスガ、併シ從來ノ歷史ニ依リマス
  ト、サウバカリ參ヲテ居リマセヌ、折〓〓育基金ヲ御忘レニナルコトガアル、現
  ニ若槻君ガ大藏次官、桂公ガ總理大臣兼大藏大臣デ居ラレタ時分ニモ、此〓育
  基金ノコトニ付テ大分御忘レニナッタヤウナコトガアッテ、委員會ニ於テ意見
  ヲ述ベマシタナラバ、桂總理大臣ハ大ニ惡イコトヲシタ、大ニ誤ッタ、必ズ來
  年カラハ此豫算ヲ改正シテ諸君ノ希望ニ副フヤウニスルト申サレテ、サウシ
  テ其翌年ヨリ改正セラレテ、〓育基金ノ利子ヲ全部豫算ニ上ボサレルヤウナ
  コトヲセラレタコトガアリマスカラ、必シモ尊重セラルルト云フコトヲ御疑
  ヒ申スノデアリマセヌガ、折〓御忘レニナルコトガアル、文部省デモ其ヤウ
  ナルコトガアル、現ニ一昨年ノ行政整理ノ爲ニ〓育基金ノ幾分ヲ師範學校長
  ノ俸給ニ支辨サレルト云フコトニナッテ居ル、是等ハ如何デゴザイマセウカ、
  〓育基金ヲ尊重セラルル精神カラ行ケバ左樣ナコトハチヨット出來ナイ、、師範
  學校長ノ俸給ハ十何万デアリマスカ國庫カラ支辨シテ居ル、其國庫カラ支辨
  シテ居ル十万餘圓ヲ行政整理ノ爲ニ削ッテ、國庫ニ取ッテ仕舞ッテ、サウシテ此
  〓育基金ノ利子ヲバ師範學校長ノ俸給ト云フコトニ御充テニナッテ居ル、卽チ
  現內閣ノ大藏大臣ノ御經畫ニ於テモ其通リデアル、サウ云フコトヲ以テ見マ
  スルト必シモ今仰セノ通リニ始終此〓育基金ハ重キヲナシテ居ルト云フ御言
  葉ノ通リデアルカナイカト云フコトハ事實ニ於テ私ハ疑フノデアル、併ナ
  ガラ苟モ大藏大臣タル御方ガ此演壇ニ於テ唯今御辯明ニナリマシタナラバ、
  今後ハ右樣ナコトガナイト云フコトヲ本員ハ確信イタシマス、付キマシテハ
  此〓育基金法令ニ付テ、尙ホ今ノ御辯明ニ付テ疑ヲ抱クノデアリマス、事實
  ニ於テ變ルコトハナイド云フ御話デアリマスルガ、此〓育基金法第一條ニ於
  テ「〓育基金ヲ置キ其ノ額ハ千八十万圓トス」トアリマス、此法令ニ依レバ
  〓育基金ヲ新タニ置カレタヤウデアル、先刻申シマシタ通リ是ハ非常ナ歷史
  ヲ有ッテ居ルノデアリマス、〓國カラ得タ償金千万圓ヲ此〓育基金ニ充テラレ
  タノデアリマス、前ノ基金法ニ依リマスト支那ノ償金ヲ償金特別會計ノ中カ
  ラ千万圓ヲ此〓育基金ニ充テルト云フコトガ書イテアル、是ガ非常ニ意味ノ
  アルコトデアッテ、日〓戰爭ノ結果デ得タ償金カラシテ普通〓育ノ基金ニ充テ
  ラレルト云フコトニナッテ居リマス、之ヲ置キマスニ付キマシテ、非常ニ是ハ
  長イ間ノ議論デアリマシテ、漸ク〓育基金ニ之ヲ充テラレタノデアル、ソレ
  ガ今度ノ法令ニ依リマスレバ何時ノ間ニカ、後世カラ見レバ此時ニ唯偶然〓
  育基金ガ出來タヤウナ法令ニ變ッテシマッタ、是ハ第一ニ本員ハ疑フ、甚ダ遺
  憾ニ思フ所デアリマス、ソレカラ此額ガ千八十万圓トアリマス、是ハ元金ガ
  千万圓デアッテ八十万圓ハ此元金ヨリ········基金ヨリ生ズル所ノ利子ヲ蓄積サ
  レタモノガ八十万圓アル、是ハ三十二年ニ制定ニナッテ、三十七八年ノ戰爭ノ
  時ニ使用セラルルマデニ殘ッタ金ガ八十万圓アル、若シアノ以來續イテ基金
  ガアリマシタナラバ今日ハ三百万圓位ニナッテ居ルダラウ········千二三百万圓
  位ニナッテ居ルダラウト思フ、然ルニ其以來塡補ノナイ爲ニ千八十万圓ニナッ
  テ居ル、是ハ已ムヲ得ヌト云フコトニナッテ居ル、今度ノ法令ニ依リマスルト
  最早此金ガ殖エル道ハナイ、特別會計デアルガ故ニ利子ガ基金ニ繰入レラレ
  テ年々增加ヲシテ行クト云フ道ガアル、既ニ特別會計ヲ廢シマンタナラバ永
  久千八十万圓ヨリ殖エル道ハナイ、然ルニ内容事實毫モ相違ガナイト仰セガ
  アリマスルケレドモ、本員ノ見ル所ニ依レバ是等ハ大ナル相違ノアル點デア
  ル、又但書ニ於テ此基金ハ一般會計ヨリ漸次繰入レルトアリマス、漸次ト云
  フコトデアレバ一時ニハ繰入レルコトガ出來ヌノデアル、是ハ最モ大ナル關
  係ガアリマス、既ニ前山本内閣ノ當時行政整理ノ結果剩餘金ヲ生ジテ之ヲ以
  テ塡補ノ法案···財政經畫ガ決マッテ、此基金ヲ塡補セラレルコトニナッテ居
  リマス、續イテ現內閣ニ於キマシテモ唯〓大藏大臣ノ仰セラレタヤウニ基
  金ヲ塡補セラレルト云フコトニナッテ卽チ是ハ一時ニ塡補セラルルト云フコ
  トニナル、此法案ニ依レバ今後ハ一時ニ塡補スルコトガ出來ナクナッタ、漸次
  少シヅツ折〓塡補スルト云フコトニナル、假令餘裕ガアッテモ一時ニ塡補スル
  ト云フコトガ出來ナクナッテシマッテ、是亦現在ノ事實ヨリモ大ニ此〓育基金
  ノ爲ニハ不利益ヲ生ズルト云フコトノ結果ニナルデアラウト思ヒマス、右樣
  ナ次第デアリマシテ卽チ現在ノ事實竝ニ內容ニ於テモ特別會計ヲ廢シテ此基
  金法ニナリマシタナラバ、〓育基金ノ歷史ヲ失ヒ又〓育基金ノ利益ヲ減殺ス
  ル、斯樣ナコトニナッテハ本員ハ甚ダ遺憾ニ存ジマス、此儀ニ付テハ如何デア
  リマセウカ、モウ一ツ大藏大臣或ハ文部大臣ノ御考ヲ伺ヒタイ
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=114

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• 115・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　法律ノ全文ノ改正デアルモノデアリマスカラ、
  ソレ故ニ法文ノ書キ方トシテハ〓育基金ヲ置イテ云々ト云フ外ナイコトニ
  ナッテ居リマス、併ナガラ其基金ハ〓育ノ特別會計ノ現在金及今後ニ入レル所
  ノ金ヲ以テ之ニ充ツルト云フ其規定ノアリマス上ハ、此基金ナルモノニ〓育
  特別會計ノ法律ガアッタ、ソレガ此處ニ轉ジテ居ルト云フコトニ於テ歷史ハ矢
  張リ存シテ居ルヤウニ思ヒマス、併ナガラ償金特別會計カラ繰入レル、アレ
  ハアノ當時、一時ノコトデアリマスガ、其文言ガ見エナクナッテ居ルト云フコ
  トハ御話ノ通リデアリマス、併シ系統ヲ追ウテ參リマスレバ特別會計ノモノ
  ガ斯ウナルト云フコトデアリマスカラ、其意味ニ於テ大體ノ歷史ハ存シタヤ
  ウニナルト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ利子ノ使ヒ方デアリマスガ、
  是ハ今日ハ利子ハ悉ク行政費ニ使ッテ居ルモノデアリマスカラ、其現狀ヲ取。ツ
  テ今度ノ法律ニ規定イタシタノデ、實際ノ是マデ行ハレテ居リマス·······現實
  ヲ唯今度法文ニ規定シタト云フニ止マッテ居ルノデアリマス、ソレカラ基金ヲ
  入レマスコトハ漸次トアルカラ一遍ニハ出來ヌト云フ御解釋ノヤウタガ、私
  共ハ左樣ニ見テ居リマセヌノデ、無論財政ガ許シテ一時ニ補塡ガ出來ルナラ
  バ漸次繰入レルト書イテアリマシテモ、ソレハ一時ニ繰入レルト書イテアリ
  マシテモ、ソレハ一時ニ繰入レラレルコトハチットモ差支ナイノデアリマ
  ス要スルニ此金高ハ千八十万圓ト書イテアッテモ現金ハソレダケナイ、ソレ
  ハ財政ノ許ス限リハ之ヲ補塡スルコトヲ許スト云フ意ヲ明カニスル爲ニ漸次
  繰入レル金ヲ以テ補充スルト云フコトヲ書キマシタガ、財政ガ許スナラバ一
  時ニ入レルコトハ斯樣ニ書イテアッテモ、チットモ妨ゲナイ考デアリマス言
  葉ハ漸次ト書イテアルカラ一時ニ行ケヌト云フ言葉ガ起ルカモ知レマセヌ
  ガ、精神ニ於テハ一遍ニ出來ヌナラバ漸次ニ入レテ結局滿タスト云フ意味デ、
  一時ニ返償スルコトガ出來ル財政ノ狀態デアリマスナラバ、無論一時ニ返償
  イタスコトハ妨ゲナイ考デアルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=115

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• 116・久保田譲

  ○男爵久保田讓君　唯今ノ御說明デ一時ニ返ス精神デアルト云フコトデアレ
  バ此法文ガ不明ナラバ、ソレヲ書直スコトモ出來マス、本員ハ今日申ス必
  要ハアリマセヌガ、併シ特別會計ヲ廢シタ爲ニ基金ヲ增殖スルコトガ出來ナ
  イ、ソレカラ歷史ニ關シタコトハ是モ書直シタナラバ宜イカモ知レナイ、御
  精神ハ了解イタシマシタ、文部大臣ニ於テハ此事ハ如何ニ御考ヘニナルノデ
  アルカ、是ハ文部省トシテハ大切ナ歷史ヲ有ッテ居リマス、隨分屢〓非常ナ面
  倒ナコトヲ致シタコトデアリマス、文部大臣ノ御考ヲ伺ヒタイ
  〔國務大臣一木喜德郞演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=116

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• 117・一木喜徳郎

  ○國務大臣(一木喜德郞君)　久保田男爵ノ御質問ニ御答ヲ申上ゲマスルガ、
  此〓育基金ノ重ンズベキモノデアル、又其歴史ノ極メテ大切ナルモノデアル
  ト云フコトハ誠ニ御同感デアリマス、唯此度特別會計ヲ廢シテ基金法ヲ制定
  イタスト云フコトハ、實質ニ於テ別ニ變ル所ガナイト云フ考ヘデアリマス、
  利子ノコトハアリマスルガ、現在ノ狀況ヨリ致シマスレバ此利子ハドウシテ
  モ普通〓育費ニ常ニ用ヒテ行カナケレバナラヌト云フ有樣デアリマス、唯日
  露戰爭ノ際ニ於テ一時ノ變態トシテ利子ヲ使ハナカッタコトガアリマスル爲
  二、元金ガ八十萬圓增加イタシマシタ、今日ノ狀態カラ考ヘマスレバ常ニ利
  子ヲ使ッテ行カナケレバナラヌ、尙ホソレデモ足リナイト云フヤウナ有樣デア
  リマスルカラシテ、增殖ノコトニ付テハ特ニ規定スル必要ガナイト考ヘタノ
  デアリマス、ソレカラ先刻師範學校長給ニ之ヲ充テタト云フコトニ對シテノ
  御意見ガアリマシタガ、是ハ當時行政整理ヲ行フニ當ッテ、師範學校長給ヲ或
  ハ地方費ニ移サナケレバナラヌカト云フヤウナ詮議モアリ併ナガラ此俸給
  ノ負擔ヲ地方費ニ移スト云フコトハ他ノ點カラ大ニ考慮シナケレバナラヌコ
  トデアル、ソコデ行政整理ノ必要上、地方費ニデモ移サナケレバナラヌト云
  フ場合デアレバ、寧ロ〓育基金ノ利子ハ卽チ普通〓育費ニ充テル目的デアル
  カラシテ、此中カラ支辨スル方ガ優ッテ居ルデスカラ、斯ウ云フコトカラ其案
  ガ出マシテ、〓育調査會ノ議ヲ經テ決定イタシタコトト承知シテ居リマス、
  ソレハ〓育基金ヲ輕ンズルト云フヤウナ意味デナクシテ、寧ロ師範學校長給
  ヲ國庫ヨリ支辨スルト云フコトヲ何處マデモ維持シタイ、而シテ一方ニ行政
  整理ノ必要上之ヲ地方費ニデモ移サナケレバナラヌカト云フ必要ヲ見ルニ
  至ッタ場合ニ、已ムヲ得ズシテ斯ノ如ク決定ニナッタト承知イタシテ居リマス、
  左樣御承知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=117

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• 118・久保田譲

  ○男爵久保田譲君　文部大臣ノ御答ハ了解イタシマシタ、併ナガラ唯今師範
  學校長ノ俸給ヲ國庫支辨ニスルヤ、地方費ニ移スヤト云フコトノ問題ハ實ニ
  重大ナ問題デアリマス、併ナガラ今日ハ此處デ詳シク論ジマセヌ、他日又論
  ズル機會ガアラウト思ヒマス、先刻本員ノ大意ハ申述ベマシタ、今後ハ委員
  會ノ結果ヲ待ッテ更ニ又申述ベルコトガアルカモ知レマセヌ、今日ハ是デ質問
  ヲ止メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=118

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• 119・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　本案ハ議事日程第九ノ法律案ノ特別委員ト同一
  委員ニ付託シテ御異存アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=119

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• 120・黒田長成

  ○副議長(候爵黑田長成君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=120

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• 121・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　議事日程第十三、要塞地帶法中改正法律案、政
  府提出、第一讀曾ノ續、委員長報〓、松浦伯爵
  要塞地帶法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正四年六月一日
  右特別委員長
  伯爵松浦厚
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔伯爵松浦厚君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=121

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• 122・松浦厚

  ○伯爵松浦厚君　要塞地帶法中改正法律案、委員會ノ結果ヲ御報告イタシマ
  ス、委員會ハ去ル五月二十八日、昨一日ノ兩日ニ致シマシタガ、其二十八日
  ハ正副委員長ノ選擧ヲ致シマシテ、ソレガ終リマシテカラ政府委員ニ質問ヲ
  致シマシタ、皆樣御承知アラセラレル通リニ、此案ハ至ッテ簡單明瞭ナル案ノ
  ヤウニゴザイマス、卽チ今マデハ要塞地帶ノ區域ト云フモノハ陸上若クハ水
  面ニ於テ制裁ガカケラレテアリマシタケレドモ、マダ其時ニ於テハ空中ノコ
  トマデハ進ンデ居ラズ致シタ所カラシテ、マダ此飛行機ニ對スル所ノ制限ト
  云フモノモナカッタノデアル、付テハ此度人文ガ進ミ且航空界ニ向ッテノ科學
  上ノ發達ト云フモノガ、日進月歩ノ間ニ進ンデ參ッタ、又我國ニ於テモ此航空
  者ノ技術ト云フモノモ多少民間ニモ行ハレルヤウニナッテ參ッタ、付テハ今日
  此制限ヲ立ツルガ必要デアルト云フ所デ、此法律案ガ出タ譯デアリマスルコ
  トハ御承知ノ通リデアリマス、付キマシテハ此案ヲ委員會ニ於キマシテ討議
  イタスニ付テハ、チヨット文面カラ申シマスルト短簡明瞭ナルヤウニゴザイマ
  スルケレドモ.熟、此案ニ付テ〓究ヲ加ヘテ參ッテ見マシタ所ガ、謂ハユル國
  防上、軍機ノ上ニ於キマシテモ大切ナ問題デアルシ、大ニ〓究ニ〓究ヲ加ヘ
  テ、此法案ガ實際ニ施行サレタ上ニ付テ取締其他ノモノガ十分ニ行渡ルモノ
  デアラウカドウカ又此案ハ一刻モ早ク制定セネバナラヌモノデアルト云フ
  コトハ法ノ精神上ニ於テ各委員ガ認メマシタモノデアリマスカラ特ニ各
  委員ガ熱心ニ政府委員ニ就キマシテ〓究ヲシタ譯デアリマス、而シテ後ニ此
  案ノ〓究ヲ十分ニ致シマシタ、同時ニ此〓究ノコトハ逐一速記錄ニ殘スベキ
  必要ガアルト委員多數ガ認メマシタ、特ニ速記ヲ依賴イタシテ諸君ノ御手許
  ニ差出シテアリマスカラ、其詳シイコトハ速記錄デ御覽ヲ願ヒタイデス、併
  ナガラ此謂ハユル法律ヲ施行サレマシタ上ニ付テ果シテ此法律ノ取締ガ出來
  ルデアルカト云フコトニ付キマシテハ委員ガ大ニ心配ヲ致シタ次第デアリ
  ず、 、併シ委員竝ニ政府委員ト問答ヲ重ネマシテ〓究ヲ加ヘマシタ結果大ニ
  了解シ得ル所ガアリマシタ、又政府委員ニ於キマシテハ如何ナル方法ヲ以テ
  之ヲ取締ルカト云フコトニ付キマシテハ、聊カ具體的要領ヲ得タ點モゴザリ
  マシタ、卽チ或高イ場所トカ、目立ツ所トカ云フ所ニハ目標ナドモ立テル、
  又ハ旗棹ヲ設ケテ其上ニ白イ旗ヲ揭ゲルトカ、或ハ目立ツ建築、家屋ガアル
  ナラバ、其上ニ白イ胡粉ナドヲ以テ記シヲ附ケルト云フヤウナコトニ於テ、
  高空上カラモ之ヲ下瞰イタシマシテモ分リ得ルト云フコトノ聊カ顯著ナル目
  星ガ出來ルヤウナ說明モアリマシタ、又之ヲ實行スルニ付テモ十分ニ親切ナ
  ル手段ヲ以テ、航空者ニモ不便ヲ與ヘヌ、成ルタケ民間航空ノ學術的若クハ
  航空機ヲ運轉セシムル上ニ付テ不便ナカラシメルダケノ注意ヲ加ヘテヤルト
  云フヤウナ說明ガアリマシタ、卽チ一日ト二十八日ト兩日ニ亙リマシテ愼重
  審議審査ヲ加ヘマシタ結果、第一此法ノ精神ガ委員多數········委員總テニ於キ
  マシテハ贊成デアリマシタ、併シ唯取締上ニ付テ唯今申上ゲマシタ通リ空中
  カラ下ヲ見ルコトデアリマスカラ、果シテ三千五百間デアルカ七百間デア
  ルカヲ認メ得ルカ、又下カラ上ノ方ヲ通ルノガテッキリ三千五百間デアルカ
  若クハ七百間デアルカ、所ニ依レバ一直線ニ見テ極メルコトモ出來マセウガ、
  所ニ依ッテハ餘程ムヅカシイコトデアラウト考ヘマス、併ナガラ此法律ヲ施行
  スル上ニ付テハ十分ニ當局者モ注意ヲ施シテ甚シキ迷惑ヲ航空者ニ加ヘナイ
  範圍内デ軍機ノ取締ヲヤルト云フコトデゴザイマスカラ、委員會ニ於テハ決
  ヲ採リマシタガ、極ク少數ノ延期論者ハアリマシタガ、他ハ總テ贊成ノ樣
  子········同時ニ此案ヲ通過イタスニ付キマシテハ唯今申シマス通リ此案ノ精神
  ハ結構デアルガ、取締ノ上ニ於テハ如何ト云フ懸念ガアルカラ委員ニ於キ
  マシテ希望ノ要點ヲ述べマシテ此案ヲ贊成スルコトトナリマシタ、其希望ノ
  要點ノ重ナル一二ヲ御參考マデニ申上ゲテ置キマス此案ノ精神タルヤ卽チ
  航空者ノ要塞地帶內ニ入ルコトヲ禁ズル取締デアル、寫眞トカ其他圖〓トカ
  云フヤウナモノヲ取ッタリ引イタリスルコトヲ禁ズルモノデアリマスガ、此航
  空者ハ內國人バカリデナイ、卽チ外國人モ同樣此法ノ精神ニ當嵌マリ得ルヤ
  ウニナラナケレバナラヌ、其精神デヤル積リデアラレタイト云フコトヲ希望
  イタシマシタ、又此問題ハ要塞ト云フコトデアルケレドモ、恐レ多クモ大廟若
  クハ皇城ノ空中ヲ飛行スルヤウナコトハ今日迄ハアリマスマイガ、其點ノコ
  トニ付テ十分御注意アルカドウカ、是モ願ヒタイ、又此法律ガ施行セラレタ
  以上ハ十分取締ヲ付ケルヤウニスルト云フ政府ノ決心デハアルケレドモ、何
  シロ此法ガ布カルル前ニハ、歐羅巴列國ニ於テ設ケタルガ如キ航空法ガナイ
  以上ハ何カ物足ラヌヤウナ心持ガアルカラ、何卒航空法ヲ布カルルニ付テハ
  此次ノ議會迄ニ航空法ヲ制定セラレテ議院ニ提出セラルルコトヲ希望スルト
  云ノ希望ガ一ツデアリマシタ、モウ一ツハ要塞ノ地域内ニ於キマシテ今日マ
  デ餘リニ陸軍省ノ取締ガ嚴重ニシテ、言葉ヲ換ヘテ申セバ杓子定規ニシテ聊
  カ迷惑ヲ蒙ッテ居ル者ガナイデモナイカラ、況ヤ此航空術ガ我國ニ於テハ十分
  發達シタト云フ位地ニ達シテ居ラヌカラ、其邊ハ軍機ハ嚴肅デナケレバイカ
  ヌケレドモ、聊カ融通ヲ付ケタ上ニ於テ、此法ヲ實行セラレムコトヲ希望シ
  タイト云フ希望ガアリマシタ、此數箇條ノ希望ヲ以チマシテ、委員會デハ此
  案ヲ通過スルコトニ致シマシタ、唯委員會ニ於キマシテ原案ヲ通過イタシマ
  シタ所ノ實況結果ヲ御報告イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=122

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• 123・橋本圭三郎

  ○橋本圭三郞君　唯今委員長カラ詳細ニ御報告ガアリマシテ能ク分リマシタ
  ガ、付テハ陸軍大臣ニ伺ヒタイ、唯今委員長ノ御說明ノ結果ニ依リマスト大
  分ムヅカシイ取締ノヤウデアリマスガ、ソレニ要スル人モ要リマセウシ、又
  アチラコチラ高イ棒ナドヲ立テルト云フコトヲ御說明ニナッタノデアリマス
  カラ、其場所モ所々アルノデアリマセウカラ、之ニ付テモ建設費トカ、建築
  費トカ、新營費トカ、サウ云フモノガ要ルデアラウト考へルノデアリマスガ、
  此法律ガ通過イタシマシタナラバ、幾分陸軍省ハ追加豫算デモ御提出ニナル
  ノデアリマセウカ、又ハ陸軍ノ經費ハ隨分澤山アルノデアリマスカラ其中カ
  ラ流用デモ爲サッテ、追加豫算ハ御請求ニナラヌ積リデアリマスカ、其點ヲ質
  問イタシマス
  〔國務大臣岡市之助君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=123

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• 124・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　橋本君ノ御質問ニ御答ヲ致シマスガ、之ガ爲ニ人
  ヲ增スト云フコトハ考ヘテ居リマセヌ、卽チ現今要塞地帶法ノ取締ノ上ニ付
  キマシテモ要塞ニ居ル所ノ憲兵及警察官モ矢張リ此取締ニ任ジテ居リマス、
  デ將來ハイザ知ラズ先ヅ唯今ノ所デハ唯今ノモノヲ以テ取締ニ任ゼシムル
  積リデアリマス、ソレカラ設備ノコトニ付テドウスルト云フ御尋デゴザイマ
  シタガ、是ハ極ク完全ナル設備ヲ爲スニハ餘程經費ヲ要スルコトデゴザイマ
  ス、成ルベク應急ノ設備ヲ致シマシテ、一例ヲ申シマスルト唯今委員長ノ御
  報告ニモゴザイマシタガ、或屋根ノ上ヲ白ク塗ルトカ、或ハ高イ樹木ノ上ニ
  測量ノ標示ト同樣ノ旗ヲ立テルト云フガ如キ簡易ナルモノヲ設ケマシテ、サ
  ウシテ此區域ヲ空中カラ見下シ得ルヤウニシタイト存ジマス、ソレデ此經費
  ハ〓算デゴザイマスガ、總體デ一萬二千圓バカリシカ要リマセヌガ、此一萬
  二千圓タルヤ一時ニ出ス譯ニハ參リマセヌカラ、極ク重立ッタ所ニ經費ノ許ス
  範圍內ニ於テ、陸軍ノ新營費ノ許ス範圍内デ設備ヲ致シタイト思ヒマス、或
  ハ其設備ヲ致シマシタ結果、今年冬ノノ會會ニ更ニ經費ヲ要求スルカモ知レマ
  セヌガ、取敢ズノ所ハ應急ノ設備ヲ經費ノ許ス範圍內ニ止メテ置キタイト思
  ヒマスカラ、之ガ爲ニ特ニ經費ハ要求イタシマセヌ積リデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=124

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• 125・目賀田種太郎

  ○男爵目賀田種太郞君　チヨット陸軍大臣ニ簡單ナルコトヲ御尋ネ致シマス、
  御煩ハシイデハゴザイマセウガ、此第七條ノ一項ノ末文デゴザイマスガ、「要
  塞地帶內ヲ航空スルコトヲ得ス」トゴザイマス、萬ガ一不可抗力ニ依シテ要塞
  地帶內ヲ航空スルヤウナコトガアリマシタトキニハ許可ヲ得ナイ場合デモ
  不可抗力ニ依ル場合ニハ是ハ犯則デナイヤウニ存ジマスガ、如何ナモノデゴ
  ザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=125

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• 126・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　御答イタシマスルガ、是ハ其鑑定ニ任セルヨリ外
  ハゴザイマセヌ、委員長ノ御報〓ガゴザイマシタガ實際ノ狀況ニ付テ申シマ
  スルト過日委員會ニ於テモ其一斑ハ說明シテ置キマシタガ、現ニ外國人デ
  我領海外カラ日本ノ内地ニ飛ンデ參リタイト云フ希望ヲ以テ、許ヲ受ケタイ
  ト云フ者ガゴザイマス、其場合ニ於キマシテ先ヅ外國人ニ對スル取締ニ付テ
  申シマスルト、其場合ソレハイカヌト云フコトヲ以テ拒絕スルノニ、何ヲ根
  據トシテイカヌト云フ法律規則ノ上カラ論ジマシテ、是ガ有ルト無イトニ付
  テハ、拒絕スル上ニ於テ、餘程ノ効力ノ、厚イト薄イト申シマセウカ、生ジ
  テ來ル譯デ、昨年デゴザイマシタカ、矢張リ上海方面カラ日本ニ參リタイト
  云フ希望ガゴザイマシテ、是等ハ皆外國人ハ豫メ願出テ居リマス、願出テ居
  リマスカラ其取締ノ上ニ於テモ是ガ出來マスレバ大變都合ガ宜シイノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=126

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• 127・目賀田種太郎

  ○男爵目賀田種太郞君　私ノ御尋ネシマシタノハ、航空者ガ自己ノ生命ヲ保
  全スル爲ニ········空氣ノ作用其他ノ不可抗力ノ爲ニ、抵抗スベカラザル勢ノ爲
  ニ、要塞地帶內ノ上ニ自ラ到ッタトキハ、此法律ニ問フカドウカト云フ御尋ネ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=127

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• 128・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　私ハ御答ヲ致シタ積リデアリマシタガ、言葉ガ足
  ラザッタカ知レマセヌガ、ソレハ裁判官ノ判定ニ任セルヨリ外仕方ガナイト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=128

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• 129・小澤武雄

  ○男爵小澤武雄君　私ハ委員長ニチヨット伺ッテ見タイ、委員ノ希望條件ヲ澤
  山附加ヘテ置イタト云フコトデゴザイマシタガ、航空法ヲ此次ノ議會マデニ
  御提出ニナリタイト云フ御希望ハ、政府ガシヤウト思フナラバソレハ出來マ
  セウガ、此法律ヲ以テ航空機ノ、大廟若クハ皇城ニ關スル取締ヲスルト云フ
  コトハ、政府ガ如何ニシヤウト思ウテモ、出來ナイコトデアラウト思フ、ソ
  レヲ委員會ハ實際ハ出來ナクテモ、唯漠然ト希望サヘ屆ケテ置ケバ宜シイト
  云フノデ御述べニナッタノデアリマスカ、又ハ何等カ實行サセル方法マデ御〓
  究ニナッタ次第デアリマセウカ、ソコヲ伺ッテ置キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=129

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• 130・松浦厚

  ○伯爵松浦厚君　此所デ答辯イタシテ宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=130

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• 131・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=131

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• 132・松浦厚

  ○伯爵松浦厚君　私ノ考ハ、航空法ガ出來マスレバ實際其中ニ大廟若クハ宮
  城ノ上ヲ飛行スルコトハ出來ヌト云フコトハ決マルカラ、ソレマデハ其精神
  ヲ以テ成ルタケ其方面ニ飛行サレヌヤウニ、陸軍當局若クハ其他ノ方ニ於テ
  御注意下サルヤウニ、謂ハユル航空法ノ中ニ付テモ、其箇條ハ最モ大切ナル
  箇條トシテ這入ルヤウニト云フ希望ヲ述ベタ積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=132

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• 133・小澤武雄

  ○男爵小澤武雄君　航空法制定ノ時ニ其希望ヲ達スルヤウニト云フコトハ出
  來ルガ、今法律ハ決ッテ居ル、其法律ハ外國人モ遵奉シナケレバナラヌノデア
  リマス、ソレヲ陸軍ノ人ガ、手心カ何カデヤルト云フコトハ出來ルモノデハ
  ナイト思フ、ソレヲヤラウト云フノハドウモ·······ソコマデ〓究ナシニサウ仰
  シヤッタト云フコトデアレバ、私ハソレデ宜シイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=133

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• 134・阪本さん之助

  ○阪本釤之助君　委員長ノ御演說中ニ高イ竿ヲ立テルトカ、屋根ヲ白クスル
  ト云フ御話デアリマシタガ、空中カラドノ邊ガ要塞地帶デアルカ能ク分ラヌ
  モノヲ、標識ヲ立テルト云フコトハ却ッテ要塞地帶デアルト云フトヲ知ラシ
  メル導キニナルヤウニ思ヒマスガ、委員長ナリ當局ナリ、ドチラデモ宜シウ
  ゴザイマスカラ、了解ガ出來マスヤウニ御說明ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=134

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• 135・松浦厚

  ○伯爵松浦厚君　政府委員ニ御質問ヲ願ヒマス
  〔政府委員大島健一君演壇ニ登ル〕

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• 136・大島健一

  ○政府委員(大島健一君)　要塞ニ標ヲ付クレバ、寧ロ要塞ヲ空中飛行ノ者ニ
  案内ヲスルヤウナモノデアルト云フ御問デアリマス、如何ニモ御尤デゴザイ
  マスガ、今日ノ要塞ノ所在地ハ內國人モ凡ソ知ッテ居リマス、殊ニ外國人デ日
  本ノ要塞デモ見ヤウト云フヤウナ考ヲ持ッテ居リマス者ハ、大〓要塞ノ所在ハ
  知ッテ居リマスノデ、ソレヲ標識シマスノハ、唯是カラ以內ハ這入ッテハナラ
  ヌ所ト云フコトヲ示スノデ、法律ヲ設ケマシタナラバ、其法律ニ從フノハ
  如何ニシタラ宜シイカト云フコトヲ示スノデアル、其法ヲ示シマシタナラバ、
  之ヲ取締ルニ於テ遺漏ナク取締ガ出來ルト云フコトヲ一方ヤラナクテハナラ
  ヌト思ヒマス其法ハ唯〓大臣ヨリ御答イタシマシタ如ク、要塞ニ今日居リ
  マス憲兵警察乃至ハ要塞ノ監視者ト云フヤウナ者ガ見テ、是ガ飛行機ヲ認メ、
  其降リル地點ニ於テ押ヘルト云フ外、唯今ノ所致方ガゴザイマセヌ、ソレガ
  爲ニハ監視者其他要塞ニ在ル者ニハ、之ヲ見分ヶ取締ル法ヲ〓育スルコトノ
  必要ヲ認メテ居リマス、法律實施ノ上デ、是ガ〓育ヲ致ス心得デ居リマス、
  先程小澤男爵カラ委員長ヘノ御尋ネノコトモ、序ヲ以テチヨット申上ゲテ置キ
  マヽ、委員カラハ要塞ノ取締ハ是デ付クトシタ所デ、其他皇城大廟御陵等ノ
  上ヲ無遠慮ニ航空スル者ノ取締ハドウカト云フ、斯ウ云フ御話ガアリマシタ、
  デ是モ我國ニ於キマシテハ相當ノ制裁ヲ加ヘルコトガ至當デアルト私ハ認メ
  やき、併ナガラ之ヲ制裁スル、卽チ之ガ制裁スル所ノ法律ヲ作ルト云フコト
  ハ、是ハ陸軍ノ管轄デハアリマセヌ、我〓ノ管掌スル所デハアリマセヌ、ガ
  我〓ノ管掌スル以内ニ於キマシテモ、要塞地帶以外ニ大ナル火藥庫、門司ニ
  設ケマシタ火藥庫乃至ハ砲兵工廠ト云フヤウナモノデ見セタクナイモノガア
  リ、戰時ハ重要ナル鐵道ノ橋梁トカ其他ノモノモ必要ガアレバ、取締上飛行
  機飛行船ノ其上ヲ通過スルノヲ禁ジタイト云フヤウナ考モ有ッテ居リマスル、
  是等ハ歐洲諸國ガ實行シテ居リマス如キ、航空法トデモ申スモノヲ他日定メ
  ラレヌケレバナルマイ、其節ニハ陸軍ノ管轄ニ屬スル前申ス如キモノノ、交
  戰當時ニ於ケル航空機ニ對スル制裁等モ決メテ貰ハズバナルマイカラ、其節
  ニハ唯〓ノ問題ニナリマシタ皇城大廟等モ注意スルヤウニ致シマセウト云フ
  コトヲ申シテ置キマシタ、又航空法ガ定マリマスレバ、何レ航空者ニ對スル
  法律ノ威力ノ施行ト云フコトモ今少シ嚴格ニ行ハレルデアラウト思ヒマス、
  例ヘバ禁止地帶ヲ廣ク限リマシテ、餘リ內地ニ這入ラセヌヤウニスル、又禁
  止地帶ニ於テ犯シタモノハ射撃スルト云フヤウナコトモ外國ノ規定ニハアリ
  マスガ、其外炬火ヲ焚クトカシテ示ストカ、種々ナル大ナル禁止地區ヲ知ラ
  セル方法竝ニ之ヲ犯シタモノヲ强力ヲ以テマデ直チニ之ヲ制止スルト云フャ
  ウナ法モ出來マシテ、益〓嚴格ニ行ハレヤウト思ヒマス、サウ云フモノノ制定
  ヲサレル時分ニ今ノ御注意ハ致シマセウト、斯ウ云フコトヲ御答イタシテ置
  キマシタ次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=136

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• 137・杉田定一

  ○杉田定一君　唯今此要塞地帶法ノコトニ付キマシテ、委員長ノ方カラ詳細
  ニ委員會ノ經過ヲ御報告ニナリマシテ、私モ其委員ノ一人デゴザイマス別
  段委員長ノ報〓ニナッタコトガ不十分トカ云フ譯デハ決シテナイノデゴザイ
  W.X.併シ段々御疑問ガアルヤウデゴザイマスルデ、實ハ私ハ委員長カラ御
  報〓ニナリマシタ所ノ、卽チ少數ノ延期論者デアッタンデアリマス、少數ト申
  シテモ一人デアッタカモ知レマセヌガ、最早委員會デ多數デ議決ニナッタコト
  ヲ、實ハ此議場ニ於テ彼是レ申サヌ積リデ居ッタノデゴザイマスガ、屢〓色〓
  ナ御質問ガ起リマシテ、ソレニ付キマシテチヨット私共········私共デハナイ、私
  ノ延期說ヲチヨット諸君ノ御耳ニ入レタイ、餘程今日ハ長イ時間デ御疲レデゴ
  ザイマセウケレドモ申上ゲタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=137

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• 138・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　杉田君ニ御登壇ヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=138

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• 139・杉田定一

  ○杉田定一君　登壇スル程ノコトデアリマセヌ、此處デハ如何デス

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• 140・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　其方ガ能ク聞エテ宜シカラウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=140

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• 141・杉田定一

  ○杉田定一君　ソレデハ
  〔杉田定一君演壇ニ登ル〕

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• 142・杉田定一

  ○杉田定一君　登壇シテ申上ゲル程ノナンデモアリマセヌガ、段々初メノ會
  ニ於キマシテ各員カラ質問ガゴザリマスノデアリマス、ソコデ要スルニ陸上
  ノコトトハ違ウテ、空中ノコトデアルデ、之ヲ取締ル方法ハドウシテ調ベル
  ト云フコトニ付テ質問ガ出マシタノデス、先ヅ此要塞地帶ノ三區マデハドノ
  位ノ間數カ、ソレハ二千百五十間、ソレカラアト三千幾ラデアリマシタカ、
  五百間デアリマスルカ、五千七百間ホドニナル、其間數ノ區域ガ、ソコデ空
  中ノコトデアルデ、其範圍內ヘ這入ッタトカ這入ラナイトカ云フコトノ區別ハ
  ドウシテ付ケル、ソレハドウシテスル、ソレハドウモソコデハ付カナイ、ド
  ウシテナサル、ソレハ到著點ニ行ッタ所デ調ベタ所ガ、其範圍內ニ這入ッタ這
  入ラナイノ水掛論ガ起ッタトキニハドウナサル、ソレハマアチヨット德義上サ
  ウ云フコトハナイト云フヤウナ何デアルガ、併シ其取締ノ法ト云フノハドウ
  ナサルカ、今矢張リ陸軍ノ當局者ガ御話ニナッタヤウニ、何カ監視ナリ或ハ警
  察ナリ、ソレニサセル、ソレハ陸上カラ肉眼デ見ルデ、中〓ソレハムヅカシ
  クハナイカ、何カ外ニ設備ハナイカ、外國デハ煙火トカ何トカ云フヤウナコ
  トガアルガ、云フヤウナ御話、ドウモソコマデモ設備モシテナイノデアル、
  然ラバ其設備ヲナサレバドノ位ノ費用ガ要ルノデアルト云フコトモ御尋ネ申
  シタヤウナ次第ナンデス、サウスルト云フト、サウ云フヤウナ取調ハ到著點
  ニ行ッテ調ベル、ソコデ若シ見遁シタトキニハドウナサル、ソレハ若シ見遁シ
  タトキニハマア仕方ガナイ、サウスルト云フト善意ヲ以テ通ッタモノハ、見付
  ケラレテ、時ニ依ルト捕マル、惡意ヲ以テ通ッタ者ハ、時ニ依ルト見遁サレテ
  仕舞フト云フヤウナコトニナリマセヌカト云フヤウナコトモ、御尋ヲ致シタ
  ンデ、ドウモ其取締ノ方法ガ付カナイ、ソレカラ是マデ何カ餘程サウ云フヤ
  ウナ禁制ヲ犯シテ差支ガ起ッタコトガアルカ、イヤ別段サウ云フヤウナコト
  ハ今マデノ所ナイ、唯今マデ好イ景色ノ宮島ヘ行ッテ寫眞ヲ取ルトカ何トカ、
  ウッカリサウ云フコトヲ知ラズニヤッタ者ハアルガ、先ヅ今マデノ所ナイ、ソ
  レニ此度ノ是ト云フモノハ內地ノ取締デアル、先ヅ言ハバ輕イ心得ノヤウナ
  モノデアルト云フ御話デ、詰リ行ク行クハドウシテモ航空法ノヤウナモノヲ
  設ケニヤナラヌ、先ヅソレマデノ所何モナシニハ置ケナイカラ、此法案ヲ出
  シタノデアルト云フヤウナ御話デゴザイマシタ、デ實ハ餘程內地ノ此航空モ
  サウマダ進步モシテ居ナイ、未熟ナモノデアルデ、今日マデ禁制ヲ犯シタ者
  ハナイト云フヤウナ、德義上サウ云フヤウナ、犯スヤウナ非國民ノヤウナ者
  ガナイノナラ先ヅ········又此日本ノ情況ガ歐羅巴トハ違ウテ、國土領分、境ガ
  相接シテ居ル、或ハ英吉利ノヤウニ海峽ヲ一時間ソコラデ大陸ヘ著ケルト云
  フ國柄デモナイ、サウスレバ先ヅ御急ギニナル必要モナイノデハナイカ、是
  ハ逆ナ話デアリマスケレドモ、段々此歐羅巴ノ方デモ今度ノ戰爭ニ付テ、政
  府ノ所有ノ飛行機ダケデハ足リナイ、民間ノ所有ノ飛行機モ使用シテ戰爭ニ
  使フ、サウ云フヤウナ場合ニハ、或ハ陸軍ナリ內地ノ飛行機ハ、是ハ逆ナ話
  カ知リマセヌガ、少シハ砲臺ノ上デモ飛ンデ見テ、敵ヲ何スル所ノ演習ニデ
  モシタ方ガ却ッテ役ニ立チハシナイカ、外國ノ砲臺ヲ飛バセル稽古ヲサシテハ
  吳レナイカラサウ云フヤウナコトハ却ッテ········是ハ甚ダ逆ナ話デハアルガ
  如何デアルカ、ソレハサウ云フ必要モ無イデモナイ、ソレハ又サウ云フヤウ
  ナ御話デ、ソレデドウモ是ガナイト云フト、外國人ナリ何ナリガ來テ飛ブカ
  モ知レナイト云フ御話デゴザイマシタ、今マデハマアナイト云フ········ソコデ
  段々是ハ要塞ノ上バカリデハナイ、恐レ多クモ皇城ノ上ヲ飛ンダリ或ハ大廟
  ノ上ヲ飛ビ或ハ御陵ノ上ヲ飛プト云フヤウナコトモ、ソレハドウデモ宜イト
  云フコトハ無イデハナイカ、サウ云フヤウナ取締モ付ケナケレバ行クマイ、
  斯ウ云フヤウナ話モゴザイマシテ、ソレハ追~取締ヲ付ケナケレバナルマイ、
  何レ完全ナ航空法ハ設ケニヤナラヌガ、先ヅ取敢ズ斯ウ云フヤウナモノヲ一
  ツドウシテモヤッテ置ク必要ガアルト云フヤウナ御話デゴザイマシテ、ソレデ
  サウ云フヤウナ譯ナラバ、先ヅ今日マデハサウ云フ差支ガ別段ナカッタノデ
  アル、先ヅ言ハウナラバ德義心ニ訴ヘテ、德義上サウ云フ非國民ナコトヲス
  ル者ハ今マデナイト云フヤウナ譯合デアルデ、先ヅサウ云フヤウナ譯ナラ
  バドチラニシテモ航空法ヲ御設ケニナルナラバ、完全ナル航空法ヲ御設ケ
  ニナッテ、其節皇城ノコトナリ、御陵又此要塞バカリデハナイ、色〓兵器製
  造塲ナリ、色〓此軍機上最モ敵ニ見ラレルト大關係ノアル、サウ云フ兵器廠
  ト云フヤウナモノハ、此中ニハ無イノデアル、唯要塞ダケデアル、ソレデサ
  ウ云フヤウナ皇城ノ上ナリ、大廟ノ上ナリ、又ハ兵器廠ナリ色〓サウ云フヤ
  ウナ、軍事上關係ノアル所ノモノヲ一ツ皆列ベテ、サウシテ其上ヲ航空スル
  コトガ出來ナイト云フ、又之ヲ取締ル所ノ完全ナル方法ヲ作ッテ、サウシテ
  御ヤリニナッタラバ如何デアルカ、固ヨリ是ハ必要ハ必要ニハ違ヒアリマセヌ
  ケレドモ、法ヲ設ケテサウシテ徒法ニ屬スルハドウモイカナイデハアリマセ
  ヌカ、法ヲ拵ヘタ以上、罰則ナリ何ナリ是ハ有ルコトデアル、ドウモ唯水掛
  論デ終ルト云フヤウナ譯デハドウモ何デアル、モウ少シ、モウ一ツ完全ナル
  法ヲ御取調ニナッテ、御出シニナッタラ如何デアルカ、固ヨリ必要ハ必要デア
  リマスルケレドモ、ドウモ不十分ノ感ヲ懷キマスルデ、又今要塞ダケハ何分
  急ヲ要スル、併ナガラ皇城ノコト、御陵ノコトサウ云フコトハ後〓ハシデ
  モ宜シイト云フコトハアルマイ、御ヤリニナルナラバ皆御一〓ニ御ヤリニナ
  ルガ宜シイカラ、兵器廠ナリ何ナリ皆一〓ニ·········要塞ダケニシテ、アトハ後
  廻ハシト云フコトハ如何デアラウカ、完全ナルモノヲ御ヤリニナルガ宜カラ
  ウ、反對デハナイ、必要ハ認メテ居ルガ、漫然其取締ガ不十分デアルト云フ
  ノデ、私ハ延期論ヲ唱ヘタ、其實、印シヲ付ケルトカ何トカ云フコトハアト
  カラ持ッテ御出デニナッタ、併シ今陸軍省ノ御方ノ御話ヲ承ルト此設備ヲ御
  實行ニナルデハナイ、矢張リ先キニ申シタヤウナ監視トカ立番ノ者ニヤラセ
  ルト云フ唯今御答辯ノヤウデアリマス、先ヅ大體私ノ延期論ヲシマシタノハ
  サウ云フヤウナ次第デゴザイマシテ、若シ尙ホ速記錄ヲ御覽下サリマシテ、
  私ノ申スコトガ速記錄ニ書イテアルコトト間違ガアレバ、詰リ速記錄ニアル
  方ガ何デゴザイマシテ、大體今申上ゲタヤウナ次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=142

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• 143・石黒五十二

  ○石黑五十二君　唯今延期說ノ御意見ガアリマスデゴザイマスガ、本員モ此
  特別委員ノ一人デアリマシテ、先刻委員長ノ御報告ニナリマシタ如ク、我〓
  共一同愼重審議討議ヲ致シタ次第デアリマス、然ルニ先刻延期說ノ御方ヨリ
  御意見ノ出マシタ如ク、是ハ單ニ要塞地帶ノミナラズ、恐レ多クモ宮城若クハ
  又大廟ノ上ヲ飛行スルト云フコトハ甚ダ恐レ多キコトデアル、且又是等ヲ禁
  止シタイト云フ精神ノ爲ニ航空法ナルモノデモ制定サルルマデ見合セラレテ
  ハ如何、斯ウ云フ御意見デアリマス、本員ガ元來本案ニ賛成イタシマシタ趣
  旨ハ、幸ニ致シマシテ外國人ガ未ダ要塞地帶ノ上ヲ航空イタシマシタ例ハア
  リマセヌサウデアリマス、去リナガラ陸軍當局ノ御方ヨリ承リマスト云フ
  T、先刻大臣ヨリ御說明ガアッタ如ク或外國人ガ東京灣ニ飛行シテ來ヤウ、ソ
  レニ付キマシテ陸軍當局ヘ許可ヲ無線電信デ申シテ來タコトガアルサウデア
  リマス、然ルニ其際ハ陸軍當局ヨリソレヲ御斷リニナッタ、又飛行者モ船ノ上
  ニ於キマシテ飛行機ヲ設備スル際ニ十分ナル設備ガ出來マセナカッタ爲ニ飛
  行スルコトガ出來ナカッタ、彼ニ對シマシテハ甚ダ不幸カ知レナイガ、又我ニ
  對シマシテハ好都合デアッタト云ハナクテハナラナイ、若シ是等ノ制定ガナ
  カッタナラバ外國人ノ飛行スルコトヲ禁止スルコトガ出來ナイ、目下要塞地帶
  法ニ於キマシテ寫眞ヲ撮ルトカ、測量ヲスルトカ一云フコトヲ禁ジテアル如ク、
  航空スルコトヲ禁ズルノ制定ガアリマセヌ、デ甚ダ是等ノ點ニ付キマシテハ
  目下ノ狀況、若シヤ前申シマシタヤウナコトガアリマシタナラバ、我軍事上
  ニ對シマシテ大ニ嫌フベキ所デアリマス、依ッテ免モアレ要塞地帶ダケニ關シ
  マス所ノ制定ヲ設ケマスガ爲ニ此モノガ出タノデアリマスカラ、之ヲ必要ト
  シテ本員ハ原案ヲ主張スル次第デアリマス、尙又ソレニ加ヘマシテ宮城トカ、
  大廟トカ、若クハ又其他必要ノ兵器製造所トカ云フモノノ在ル處ヲ航空スル
  コトモナラヌト云フコトハ、近キ將來ニ於キマシテ別問題トシテ出ル所ノ航
  空法ナルモノニ御入レニナッタラ宜カラウト思フ、ソレ故ニ本員ハ玆ニ原案ト
  ナッテアリマス所ノモノニ對シテ原案ヲ賛成イタシマシタ所以デアリマス、大
  抵延期說、又委員長ヨリ御報告ノアリマシタ如ク、委員會ニ於キマシテモ十
  分審議ヲ盡シテ居リマスコトデアリマスカラ、願ハクハ此際讀會ヲ省略イタ
  シマシテ直チニ御決議アラムコトヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=143

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• 144・關義臣

  ○男爵關義臣君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=144

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• 145・山内長人

  ○男爵山內長人君　賛成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=145

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• 146・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　賛成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=146

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• 147・眞鍋斌

  ○男爵眞鍋斌君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=147

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• 148・内田正敏

  ○男爵内田正敏君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=148

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• 149・原口兼濟

  ○男爵原口兼濟君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=149

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• 150・下條正雄

  ○下條正雄君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=150

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• 151・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　贊成
  〔其他「賛成」ト呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=151

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• 152・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　讀會省略ノ動議ニハ定規ノ賛成者ガゴザイマシ
  夕、石黑君ノ動議ヲ可トスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=152

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• 153・黒田長成

  ○副議長(候爵黑田長成君)　三分ノ二以上ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=153

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• 154・黒田長成

  ○副議長(候爵黑田長成君)　本案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=154

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• 155・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　過半數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=155

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• 156・黒田長成

  ○副議長(侯爵黑田長成君)　明後四日曾議ヲ開キマス、議事日程ハ決定次第
  本院彙報ヲ以テ御報告ニ及ビマス、今日ハ散會ヲ致シマス
  午後五時三十五分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X00619150602&spkNum=156

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