第36回帝国議会　貴族院　本会議　第10号　大正4年6月8日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　大正四年六月八日（火曜日）
  　　　　午前十時五分開會
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  　　議事日程　第十號　大正四年六月八日
  　　　　午前十時開議
  　　第一　大正三年臨時事件に關する一時賜金として交付する公債發行に關する法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第二　帝國鐵道會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第三　國債整理基金特別會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第四　作業會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第五　造幣局特別會計法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第六　貨幣整理資金特別會計法廢止法律案（政府提出、衆議院送付）　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第七　帝國學士院學術奬勵金特別會計法廢止法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第八　帝國學士院學術研究奬勵金委任經理に關する法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第九　染料醫藥品製造奬勵法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十　軍人恩給法中改正法律案（衆議院提出）　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第十一　歐洲列國の財政、經濟及社會上の現状調査に關する建議案（伯爵柳澤保惠君外一名發議）　會議
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• 001・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ諸般ノ報〓ヲ致サセマス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  昨七日議員伯爵柳澤保惠君外一名ヨリ三十四名ノ賛成ヲ以テ歐洲列國ノ財
  政、經濟及社會上ノ現狀調査ニ關スル建議案ヲ發議セリ
  同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提出案ハ本院ノ議決ニ同意シ奏
  上セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
  要塞地帶法中改正法律案
  同日衆議院ヨリ左ノ法律案ヲ提出セリ
  軍人恩給法中改正法律案
  同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
  大正四年度歲入歲出總豫算追加案(第一號)可決報〓書
  大正四年度各特別會計歲入歳出豫算追加案(特第一號)可決報告書
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第一號)可決報告
  書
  臨時軍事費豫算追加案可決報〓書
  大正四年度歲入歲出總豫算追加案(第二號)可決報〓書
  大正四年度歲入歲出總豫算追加案(第三號)可決報〓書
  大正四年度歲入歲出總豫算追加案(第四號)可決報〓書
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第二號)可決報告
  書
  請願委員會特別報告第二號
  同日議員松岡康毅君外三名ヨリ七十名ノ賛成ヲ以テ理化學〓究所設立ニ關
  スル建議案ヲ發議セリ

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• 002・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、議事日程第一、大
  正三年臨時事件ニ關スル一時賜金トシテ交付スル公債發行ニ關スル法律案、
  政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報〓
  〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
  大正三年臨時事件ニ關スル一時賜金トシテ交付スル公債發行ニ關スル法
  律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正四年六月六日
  右特別委員長
  伯爵寺島誠一郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔伯爵寺島誠一郞君演壇ニ登ル〕

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• 003・寺島誠一郎

  ○伯爵寺島誠一郞君　議事日程第一ニ上リマシタ法律案、卽チ大正三年臨時
  事件ニ關スル一時賜金トシテ交付スル公債發行ニ關スル法律案デゴザイマ
  ス、政府ノ說明イタシマス所ニ依リマスレバ、此案ハ今囘日獨事件ニ關シテ、
  陸海軍其他ノ從軍者、竝ニ此事件ニ關聯シテ其他ノ事務ニ從事シタ者ニ對シ
  テ、此際其功勞ヲ表彰スルノ必要ガアルト云フノデゴザイマス、而シテ其功
  績ニ對シテ賜金ヲ給與サルルコトニナリマスノデ、一時賜金トスベキモノヲ
  公債ヲ發行シテ之ヲ其者ニ與ヘヤウト云フノデアリマス、付テハ議會ノ協賛
  ヲ經ル必要ガアルカラ此法律案ヲ出シタノデアルト申シマスノデゴザイマ
  ス、委員會デハ卽決ノ動議ガ出マシテ、全會一致ヲ以テ可決ニナッタ次第デゴ
  ザイマス、本議場ニ於テモ、斯ノ如キ簡單ナ明瞭ノ案デアリマス故ニ、讀會
  ヲ省略セラレテ、直ニ可決確定セラレムコトヲ、此報告ト共ニ動議トシテ提出
  イタシマス

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• 004・澤柳政太郎

  ○澤柳政太郞君　私ハ本案ニ對シ二三質問ヲ致シタイト思ヒマスガ、政府委
  員ハ一人モ出席ガアリマセヌガ、速ニ出席アルヤウニ御取計ヲ願ヒマス

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• 005・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ政府委員ノ出席ヲ要求イタシマス、暫ク御
  待チヲ願ヒマス

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• 006・澤柳政太郎

  ○澤柳政太郞君　委員長デモ或ハ御答ガ出來ヤウト思ヒマスカラ、一應承リ
  タイト思ヒマスガ、一時賜金ニ關シテ公債ノ額ガ二千四百万圓ト云フコトニ
  ナッテ居リマスガ、其金額ノ基ク所ハ如何ナル點ニアルノデアリマスカ、ソレ
  等ノ點ニ付テ御審査ガアリマシタナラバ、其模樣ヲ拜聽イタシタイト思ヒマ
  ス、今囘ノ經費ハ總計ニ於テ一億万圓ヲ超エテ居ルト思ヒマスガ、事件ノ割
  合ニ其費用ガ多額ニ上ッテ居ルト本員ハ考ヘマスガ、ソレハ免ニ角一億万圓ヲ
  費シタル所ノ事件ニ對シ、殆ド三割ノ行賞費ヲ支出シナケレバナラナイト云
  フコトハドウモ少シク合點ガ行カヌヤウニ思フノデアリマス、加フルニ之
  ヲ日露戰爭ニ比ベテ見マスルト云フト、餘程公平ヲ失シテ居ルノデハナイカ
  ト云フヤウナ考ヲ有ッテ居ルノデアリマスガ、此點ハ委員會ニ於テ十分御審議
  ノアッタコトト思ヒマスガ、速記錄モ參ッテ居ラヌコトデアリマスカラ、委員
  長ニ伺ヒマス

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• 007・寺島誠一郎

  ○伯爵寺島誠一郞君　委員長トシテ御答ヲ致シマスルガ、澤柳君ノ御質問ニ
  御擧ゲニナッタヤウナ詳細ナ點ニ付テハ、委員會ニ於テハ別ニ說明ヲ聽カナ
  カッタノデアリマス、唯今申上ゲマシタ通リ卽決ト云フ動議ガゴザイマシテ、
  直ニ可決シタコトデゴザイマシタカラ、委員長ノ御答スルコトハ此點ニ付テ
  ハ控ヘルガ宜カラウト存ジマス、唯委員長ハ衆議院ノ速記錄ナゾヲ見テ、其
  點ハ承知ヲ致シテ居リマスケレドモ、貴族院ノ委員會トシテハ其點ハ聽カナ
  カッタト云フコトヲ申上ゲマス外ハナイト思ヒマス、而シテ一千万圓ノ中二
  千四百万圓掛カッタト仰セニナリマスケレドモ、是ハ御問ヒナサル御方ノ御間
  違ヒデハナカラウカト思ヒマス、一億万圓ヲ費シテ居ルノデハナイカト思ヒ
  ずる、ソレニ對シテ二千四百万圓ト云フノデアリマスカラ、稍、相當デアラウ
  カトモ考ヘラレルノデアリマス、尙ホ委員會ニ於テハ卽決ト云フノデハアリ
  マシタケレドモ、日〓事件、北〓事件、竝ニ日露事件ニ對シテ、ドノ位ナ一
  時賜金トシテ公債ガ出タカト云フ、其數字ハ聽イテ持フテ居ルノデゴザイマ
  ス其他詳細ナコトハ當局大藏大臣モ御出席ニナッテ居ルコトデアリマスカ
  ラ、大藏大臣カラ御答辯ヲ得タラ御滿足ニナルコトダラウト存ジマス

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• 008・澤柳政太郎

  ○澤柳政太郞君　委員會デハ格別此點ニ付テ御審議ガナカッタヤウデアリマ
  スルカラ、改メテ當局者ニ御尋イタシタイノデアリマス、一時賜金トシテ交
  付サレル所ノ公債ガ二千四百万圓デアルト云フコトデアル其外ニ現金ヲ以
  テ死傷者ニ支給スベキ額ガ現ニ數百万圓ニ上ッテ居ルト云フコトモ聞イテ居
  ルノデアリマス、且ツ豫算ニ於テ金鵄勳章年金モ數十万圓計上シテアルヤウ
  ニ承知イタシテ居リマスガ、此賜金ノ規模、大小ニ關シマシテハ、聊カ其比
  較ヲ得テ居ラヌヤウニ考ヘルノデアリマスガ、此計算ノ基ク基礎ヲ伺ヒタイ
  ト思フノデアリマス、加フルニ尙ホ日露戰爭當時ニ於ケル行賞ト餘程釣合ヲ
  失シテ居ルノデハナイカト素人ニハ考ヘラレマスガ、サウ云フコトモナイカ
  トモ思ヒマスガ、日露戰役ノ際ト今囘ノ行賞ト如何ナル釣合ニナッテ居ルカ
  ト云フコトヲ併セテ承リタイト思フノデアリマス、第二ニハ今囘ノ戰役ニ關
  シテハ、此戰爭ニ參加シタ所ノ忠勇ノ軍人其他ニ對シテ優ニ之ヲ賞與スル、其
  功勞ヲ認メルト云フコトデアリマシタガ、是モ甚タ結構ノコトデアリマスル
  ガ、僅ニ十年前ニ於テ日露戰役ニ參加シタル者、其者ニ對シテ餘程公平ヲ失
  スルト云フ嫌ヒハナイデアリマセウカ、現ニ四十四年ニ軍人ノ恩給法ガ改正
  サレテ以來、此恩典ニ浴スル者ハ其以後ニ退職シタル者ニ限ルト云フコトデ
  アルガ爲ニ、年々暮ノ議會ニ於テ數十通ノ請願ガ此議院ニ參ヲテ居ル、而シテ
  貴族院ノ如キモ其大體ノ趣旨ハ之ヲ採擇スベキモノトシテ每度政府ニ送ッテ
  居ルノデアリマス、法律ハ既往ニ溯ラヌト云フ原則ノアルノニ拘ラズ、尙ホ
  サウ云フ議論スラ起ス、現ニ恩給改正法ハ既ニ衆議院ヨリ提出サレテ、政府
  ハ餘リ同意ヲ表セラレヌヤウデアリマスガ、本院ニ配付ニナッテ居ルヤウナ際
  デアリマスルガ、サウ云フコトモアルノデアリマスケレドモ、マサカ溯フテ日
  露戰役ノ功勞者ニ追賞スルト云フコトモ出來ナイデアラウト思ヒマスガ、其
  邊ニ付テ政府ハ餘リ公平ヲ害セヌト云フ考デアリマスルカ、尤モ此點ハ若シ
  今囘ノ行賞ノ釣合ガ以前ト少シモ變ラナイト云フコトデアリマスルナラバ、
  今ノ質問ハ既ニ消滅イタシマスルカラ、御答ニ及バヌノデアリマス、次ニハ
  軍事當局ノ御方ニ御伺ヒ致シタイト思フコトガアルノデアリマスガ、戰死者
  ト、戰爭ニハ參加シタケレドモ無事息災ニ凱旋ヲシタト云フ其軍人ニ對スル
  所ノ賞與ノ工合ハ、是マデトテモソコニ多少手心ヲ用ヒラレタコトト思ヒマ
  ス、例ヘバ公債ヲ支給スルニシテモ、戰死者ニ對シテハ時價ニ換算シテ公債
  ヲ交付スル、生キテ居ル者ニ對シテハ額面ヲ以テ公債ヲ交付スルト云フヤ
  ウナ手心モ用ヒラレタノデアリマスガ、モット〓〓此兩者ノ間ニ手心ガ用ヒラ
  レテ然ルベキモノデハナイカト考ヘルノデアリマスガ、今囘ハ此點ニ付テ如
  何デアリマセウ、現ニ本院カラモ建議ヲ致シマシテ、戰病死者遺族扶助救護
  ニ付テハ大ニ其方法ヲ講ジテ貰ヒタイト云フ建議モ出テ居ルノデアリマス、
  ノミナラズ民間ノ或實業家ノ如キハ此遺族ニ對シテハ非常ニ同情ヲ持チ、又
  遺族ニ對スル同情バカリデナク、此戰死者ノ遺族ヲ今日ノ如ク窮迫ノ境遇ニ
  放棄シテ置クト云フコトハ士氣ヲ振興スル上ニモ餘程關係スルデアラウト云
  フコトデ、特ニ事務所マデ設ケ、多額ノ費用ヲ投ジテ是ガ調査〓究ヲシテ居
  ルト云フヤウナコトモアル位デアリマス、政府當局者トシテハ必ズ此邊ニ付
  テ御講究ノ所ガアラウト思ヒマスガ、今囘ノ行賞ハ戰死者或ハ病者等ニ對シ
  テノ行賞ノ振合ト云フモノハ、ドウ云フコトデアルカ承リタイト思フノデア
  リマス、モウ一ツ極メテ根本的ノコトデ、是ハ私一己ノ考デアルカモ知レマ
  セヌガ、同ジク軍人ト云フ上ニ於テ大ナル區別ガ二ツアルト思フノデアリマ
  ス、將校ナル者ハ職務トシテ軍事ニ從事シテ居ルノデアリマス、兵士ハ職務
  デハナイ全ク義務ノ爲ニ此軍事ニ從事イタシテ居ルノデアリマス、稍〓俗ナ言
  葉デアリマスルガ、其言葉ヲ使フコトヲ許サルルモノナラバ、將校ハ卽チ戰
  爭ヲスル、軍事ニ從事スルト云フコトガ商賣デアルノデアリマス、兵卒ハド
  ウデアルカト云フト、自分ノ商賣、本業ヲ一時中止シテ、全ク國家ノ爲ニ努力
  スルト云フ次第デアリマスルカラシテ、此二者ニ對スル所ノ行賞ノ振合程度
  ハ餘程其趣ヲ異ニスルノガ本員ハ當然デハナイカト思フノデアリマスルガ、
  從來日〓、日露ノ戰後ニ鑑ミマシテモ、矢張リ兵士ニハ薄クシテ而シテ將校ニ
  厚イト云フヤウナ、所謂昔ノ一將功成シテ萬骨枯ルト云フヤウナ主義ガ今日ニ
  於テ尙ホ行ハレテ居ル、昔ハサウ云フコトノアッタノハ、是ハ少シモ不思議ノ
  ナイコトデアリマスガ、今日ハ國民ニ重大ナル兵役ノ義務ヲ負ハセ、萬一事
  ノアッタ時ニハ死生ノ間ニ往來シナケレバナラヌ、サウ云フ義務ヲ負ハセテア
  ルノデアリマス、而シテ將校モ無論義勇忠良國家ノ爲ニ盡スト云フ精神ノア
  ルノハ無論デアリマスガ、ソレハ恰モ百姓ガ農事ニ務メテ國家ノ爲ニ盡スノ
  ト同ジク職務デアル、業務デアル、俗ナ言葉デ申セバ卽チ商賣デアル然ル
  ニモ拘ラズ、商賣トシテ居ル者ニ厚ク、義務トシテ從事シタル者ニ薄キ感ガ
  アルノハ聊カ其當ヲ失シテ居ルノデハナイカト本員ハ考ヘルノデアリマス
  ガ、其點ニ付テ一ツ當局者ノ御所見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、第三ニ
  ハ更ニ軍人殊ニ此將校ニ向ッテ功勞ヲ賞スルニハ出來ルダケ品ノ良イ、而シ
  テ其名譽ヲ保ツ所ノ方法ヲ以テセラレタナラバ、ソレガ最モ適當ナコトデア
  ラウト思フノデアリマス、其爲ニハ爵位ノ制或ハ動章ノ制ト云フモノモアル
  ノデアリマスガ、ソレヲ以テ足レリトセズシテ尙ホ金錢ヲ以テ其功勞ヲ賞サ
  ナケレバナラヌト云フ理由ハドコニ有ルノデアリマセウカ、金錢ヲ以テ其功
  勞ヲ賞スルト云フ結果ハ、私ハ或ハ軍人ノ品位ヲ落スト云フコトニナリハセ
  ヌダラウカト憂フルノデアリマス、是ハ獨リ武官ノミニ限ラズ、文官ト雖モ
  相當ノ給料ヲ貰ッテ職務ニ從事シテ居ル者ニ金錢ヲ以テ其功ヲ賞スルト云フ
  コトニナルト、ソレガ爲ニ文臣錢ヲ愛スルト云フ弊ニ陷フテハ誠ニ遺憾ト思
  ヒマス申スマデモナク軍人ハ軍人ニ賜ッタ所ノ勅語ノ御趣意ヲ守ッテ、質素
  ヲ貴ブベキハ申スマデモナイコトデアリマスガ、近來軍人竝ニ其家族ニ付テ
  見マスルト、日〓、日露ノ戰役ヲ經テ俸給以外ニ幾多ノ勳章年金等ノアルガ
  爲デアリマセウカ、甚ダ華美ノ風ガ蔓ッテ居ル傾ガナキニシモ非ズデ、當局者
  モ常ニ其點ニ付テハ警戒ヲ加ヘテ居ラルルデアラウト思ヒマスガ、若シ俸給
  ガ少ナイト云フナラバ其方ニ於テ增加スルコトヲ努メテ、特別ナル功勞ニ對
  シテハ最モ名譽トスル所ノ位階ナリ爵位ナリ、或ハ勳章ト云フモノヲ以テセ
  ラルルガ、寧口士氣ヲ皷舞シ高尙ノ風ヲ維持セラルルコトニ於テ利益デアラ
  ウカト思フノデアリマスガ、是モ此際ニ併セテ伺ッテ置キタイト思フノデア
  リマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

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• 009・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　澤柳君ノ御質問ノ第二、第三ハ、軍事當局ノ大
  臣カラ答辯ニナラウト思ヒマスガ、第一ノ御質問ダケニ御答ヘ申シマス、今
  囘ノ行賞ハ、日露事件ノ時ノ行賞ヨリモ特ニ賞ヲ厚クスルト云フ考ハナイノ
  デアリマス、矢張リ日露事件ノ時ノ行賞ト其大體ノ標準ヲ同ジクシテ行賞ニ
  相成ル譯合デアラウト存ジマス、金額ハ大藏省ガ陸海軍カラ受ケテ居リマス
  所ノ通知ニ依リマスレバ、凡ソ十四万人位ニ向ッテ、平均百六十圓グラヰナ賞
  與金ニ當ルヤウナ金額ニ相成ッテ居ルノデアリマス、其金額ノ總計ガ二千五百
  万圓バカリニナリマシテ、其中五百万圓バカリノ金額ハ端金デ、卽チ現金ヲ
  以テ交付スル五十圓以下ノ賞與或ハ其上ノ所ノ端金ニ係ルノデアリマスカ
  ラ、是ハ現金ヲ以テ交付シテ、アトノ二千万圓バカリノモノヲ公債デ之ヲ交
  付シヤウト、但シ公債ノ價格ハ百圓ノ額面ノモノガ九十圓ノ割合ニナルモノ
  トシテ交付シヤウト云フ計算ニ依ッテ此金高ハ出テ居ルノデアリマス、勿論是
  ハ大體ノ計算デアリマスカラ、此範圍內ニ於テ交付スルニ及バヌモノハ無論
  不用額トスルノデアリマスガ、大藏省ノ得テ居リマス材料ハ唯今申上ゲル通
  リデアリマシテ、其計算ノ基礎ニ於テ、此金額ハ定ッテ居ルノデゴザイマス、
  而シテ行賞ノ標準ハ日露戰爭ノ時ヨリ特ニ良クスルト云フコトニハナッテ居
  ラナイノデアリマス
  〔國務大臣岡市之助君演壇ニ登ル〕

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• 010・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　唯今ノ御質問ハ海軍ニモ關聯ヲ致シテ居リマスル
  ガ。陸軍ニ於テ定メマシタ方針ニ付テ御答ヲ致シマス、行賞ノ賜金ハ無論日
  露戰役ニ比ベマスレバ低クナッテ居リマス、平均率ハ低クナッテ居リマスルガ、
  尙ホソレヲ細分シテ申シマスルト、今囘ハ上ノ方ハ若干減額ヲ致シマシテ、下
  ノ方ヲ若干增加ヲ致シマシタ、是ハ澤柳君ノ御質問ノ要點ニ若干近ヅイテ居
  ルト存ジマス、ソレカラ將校モ下士卒モ同一デ宜イデハナイカト云フ御質問
  ノ要點ノヤウデアリマスガ、是ハ各〓職務ニ從ッテ責任ノ輕重ガゴザイマスノ
  デ、其責任ノ輕重ニ從ッテ行賞スルノガ至當チヤト存ジマス、將校モ下士モ兵
  卒モ同一ト云フコトニハ參ラヌト存ジマス、ソレカラアトノ御質問ハ、動章
  サヘヤレバ何モヤラズトモ宜シイデハナイカト云フ御議論ノヤウデゴザイマ
  ス、是ハ從來ノ慣例ニ依リマシテ〓囘モヤリマスルコトデゴザイマス、私ハ
  不都合ナイト思ッテ居リマス、澤柳君ノ唯今ノハ御意見ノヤウデアリマス、御
  意見トシテハ承ッテ置キマス、尙ホソレガ爲ニ將校等ノ一體ノ狀態ガ華美ニ流
  レテ來タヤウデアルト云フ御說デゴザイマスガ、是ハ誠ニ御同感デ、私モサ
  ウ考ヘマス、併シ是ハ獨リ將校ノミデナイ、世ノ中ガ華美ニナッタ、唯ソレニ
  カブレタト云フコトニ私ハ認メテ居ル、此事ニ付テハ深ク注意シテ且ツ之ヲ
  戒メルト云フコトニ付テハ極力努メテ居リマス、左樣御承知ヲ願ヒマス

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• 011・澤柳政太郎

  ○澤柳政太郞君　日露戰爭當時ト一向行賞ノ振合ハ異ナラヌト云フコトデア
  リマスルガ、今囘ノ臨時事件費ハ多クシテ一億圓ヲ超エルコトハナカラウト
  思フノデアリマスガ、ソレニ對シテ行賞ノ費用ヲ計算セラレタモノハ二千四
  百萬圓········端數ノ現金ヲ以テ支給セラルルモノ等ヲ合セマスルト、殆ド三割
  ニ上ッテ居ルノデアリマスルガ、ソレデモ日露戰役當時ト違ヒナイト云フコト
  デアリマスカ、又若槻大藏大臣ノ御話デハ十四万人ニ對シテ賞與ヲスルト云
  フ御話デアリマシタガ、アノ靑島ニ立籠ッテ居ッタモノハ四五千人、サウシテ
  軍艦ト申シテモ甚ダ優勢ナラザル軍艦、ソレニ對抗スル所ノ今囘ノ戰爭ニ於
  キマシテ、左程多人數ノモノガ之ニ參加イタシタノデアリマセウカ、確カ委
  員會デアリマシタカ、陸軍大臣カラシテ、陸軍ハ三万幾ラ之ニ參加シテ居ル
  ト云フヤウナ御話デアリマシタガ、餘リニ僅ナルモノニ對シテ餘計ナ人數ヲ
  掛ケタヤウナ嫌ガアリハシナイカ、先刻大藏大臣ノ御出デノナイ前ニ委員長
  ニ御尋ネシタコトノ中ニ、今囘ノ臨時事件費一億万圓ヲ出ナイト云フモノニ、
  是ハ私ハ既ニ其事自身ガ若シ屢〓此議場ニ現ハレタ言葉ヲ用ヒマスナラバ、
  餘リ放漫ナル支出デハナイカト思ハルル所ノ嫌ガアリマス、僅ニ二箇月カ三
  箇月シカ掛ラズ、其區域モ猫ノ額ノヤウナ所ニ限ラレテ········戰局ハ多少擴ツ
  テハ居リマスガ、ソレニ對シテ是ダケノ軍事費ヲ使用セラレタトナルト、他
  日二十一個師團悉クヲ使用シ、日本海軍ノ精銳ヲ擧ゲテ戰鬪ニ從事スルガ如
  キコトガアリマシタナラバ、何十億、何百億ノ戰費ヲ要スルコトデアリマセ
  ウカ、實ニ思ヒヤラレルノデアリマス、ソレハ兔ニ角ト致シマシテ臨時事件
  費ニ對シテ三割餘ノ·········尠クトモ二割五分餘ノ行賞費ト云フモノハドウモ
  釣合ヲ得テ居ラヌノデハナイデアラウカ日露戰爭ノ時ノ費用ハ二十億足ラ
  ズデアリマシタガ、其行賞費ハ決シテ三億ノ四億ノト云フ多額ニ上ッタノデ
  ハナカラウト思ヒマスガ、其點ヲ一應伺ヒタイト思ヒマス、陸軍大臣ノ御答
  ハ私ハ十分ニ要領ヲ得マセヌガ、是ハ根本的ノ問題ニナリマスカラ更ニ御尋
  ネヲ致スコトト致シマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

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• 012・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　靑島ニ出征イタシマシタ兵士ノ數ハ十何万アッ
  タ譯デハアリマセズ致シマスケレドモ靑島ノ出征軍竝ニ此出征軍ヲ出シテ
  居ル部隊ノ中デ働キマシタモノ、全部デモアリマスマイガ、或ハ職工等、海
  軍ニ付テハ海軍ノ軍艦ヲ動カシテ居ル、又是ニ色〓要スル所ノ兵器等ヲ造ッテ
  居ル職工等、是等ヲ集メマスト唯〓申上ゲマシタ十四万人程ニナルサウデア
  リマス、是ハ陸軍海軍カラ大藏省ニ是ダケノモノニ行賞ヲ要スル、其金額ガ
  是ダケノ高ニ上ルト云フコトデアリマスカラ、之ニ基イテ唯今御協賛ヲ仰イ
  デ居ル法律ヲ編成イタシタ次第デアリマス、行賞ヲシマスコトハ日露事件ノ
  時ノ標準ヨリモ宜クスルト云フコトハ決シテ致シマセヌト云フコトヲ申上ゲ
  タノデ、標準ハ日露事件ノ時ヨリ宜クハ致シマセヌガ、人數ガソレダケアル
  ト致シマスト、單位カラ是ダケノ人數ヲ推シテ致スコトニナリマスレバ、金
  高ハ唯〓ノ金額ニ上ルト云フコトハ已ムヲ得ナイト考ヘテ居リマス
  〔澤柳政太郞君「軍事費トノ比較ハ如何ニナリマスカ」ト呼フ〕

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• 013・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　軍事費ノ總額トノ比較ハ今囘ハ金高ハ割合ハ
  上ッテ居リマス、ソレハ如何ニモ日〓戰爭頃ヨリモ割合ハ上ッテ居ルヤウデア
  リマス、是ダケノモノハ先キニ申上ゲマシタ通リ、平均百六十圓トシテ是ダケ
  ノ行賞ヲ要スルト云フコトニナリマスル以上ハ、ソレダケ行賞スル人ガアル
  ト云フコトニナリマスト、大藏省トシテハ已ムヲ得ナイト認メタノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=13

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• 014・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　八代海軍大臣

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• 015・八代六郎

  ○國務大臣(八代六郞君)　陸軍大臣ガ先キヘ

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• 016・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　岡陸軍大臣
  〔國務大臣岡市之助君演壇ニ登ル〕

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• 017・岡市之助

  ○國務大臣(岡市之助君)　柳澤君ノ御質問ニ對シテ御答ヲ落シタコトガアリ
  マス、戰死者ニ對シテハ皆現金ヲヤッテ居リマス、卽時ニヤルコトニ致シテ居
  リマス、ソレカラ私ガ靑島攻圍軍ニ從事シタ人員ニ付テ衆議院ノ委員會デ述
  ベタコトヲ御例證ニナリマシタ、私ハ三万五千人ト述ベテ居リマス、是ハ其靑
  島攻圍軍ニ從事シタ戰鬪員ニ付テ答ヘマシタ、其背後ニ居リマスル後方勤務
  ニ從事シタモノヲ入レマスルト凡ソ五万程ニナリマス、ソレカラ私ガ先刻日
  露戰爭當時ヨリ寧ロ今囘ノ方ガ低イト申上ゲタト記憶シテ居リマス、左樣御
  承知ヲ願ヒタイ、ソレカラ尙ホ念ノ爲ニ申上ゲテ置キマスルガ、今囘金鵄勳
  章ヲ受ケルモノハ人數ガ餘程低ウゴザイマス、卽チ尠イノデゴザイマス、
  從ッテ一時金ヲ貰フモノノ方ガ多イト云フ割合ニナリマスガ、總體ニ於キマシ
  テハ日露戰爭當時ヨリモ餘程平均額ハ低ウナッテ居リマス、左樣御承知ヲ願ヒ
  マス
  〔國務大臣八代六郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=17

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• 018・八代六郎

  ○國務大臣(八代六郞君)　澤柳君ノ御質問ニ對シテ御答イタシマス、大體ハ
  陸軍大臣ノ答辯ト同樣デアリマスガ、異ッタ點ヲ述ベマス、海軍ガ兵力ヲ使用
  スルニ於テ用ヒマシタ人員ハ總テデ七万八千八百三十九人デアリマス、尤モ
  其中ニハ職工ガ二万五千程居リマス、斯ノ如キ人員ヲ何ノ爲ニ用ヒタカト云
  フ御疑ガアルカ存ジマセヌガ、是ハ豫算委員會ニ於テ
  〔澤柳政太郞君「サウ云フコトハ御尋ネ致シマセヌ」ト述フ〕
  ソレデハ、ソレハ申シマセヌ、斯ウ云フ御尋ネモアリマシタ、金錢ヲ以テ軍
  人ヲ賞スルガ故ニ軍人ノ家族等ガ奢侈ニ流レル虞ハナキカ、是ハ私モサウ
  云フ傾ガアルヤウニ世評ヲ承リマシタガ、嘗テ舞鶴長官タリシ時ニ十分ニ
  詮索イタシマシタ、格別奢侈ニ流レルト云フ程ノコトハアリマセヌ、如何ニ
  モ時ノ風ニ從ッテ綺羅美ヤカナ著物ヲ小供婦人等ガ著ルト云フコトガアリマ
  スガ、質ニ於テハ左程ナモノデハナイト云フコトヲ調ベ得マシタ、勿論中ニ
  ハ心得違ヒノ人ガアッテ、非常ニ華美ナ服裝ヲシテ居ル人ガナイデモアリマセ
  ヌ、ソレ等ニ對シテハドノ長官モ非常ニ苦慮シマシテ、十分ニ之ヲ戒飭スル
  コトヲ努メテ居リマス、今日ニ於テ海軍ニ特別ニ奢侈ノ風ガ橫溢シテ居ルヤ
  ウナコトハアリマセヌ、又斯ウ云フ御說ガアリマシタ、士官········將校ト仰セ
  ラレマシタガ、私ハ士官ト御答イタシタガ宜カラウト思ヒマス、將校ト將校
  相當官トアリマスカラ士官ト申シマス、士官ハ職業トシテ居ル、兵士ハ義務
  トシテ居ル、是ハ澤柳君御一己ノ御考ヘダト仰セラレマシタガ、非常ナ根本
  ノ問題デアルト思ヒマス、私ハ之ニ對シテ違ッタ見解ヲ有フテ居リマス、士官
  ガ職業、商賣ト云フコトヲ仰セラレマシタ、是ハ私ハ大ナル違ッタ意見ヲ有「ツ
  テ居リマス、士官トナルベキ者ハ何レモ日本國民デアッテ、當然護國ノ任務ニ
  當ルベキ義務ヲ有ッテ居リマス、其義務ヲ果スガ爲ニ士官トナッテ義務ヲ果シ
  タイ、是ガ故ニ此士官トナッテ居リマス、當然護國ノ任務ニ當ル義務ヲ以テ士
  官トナッテ其義務ヲ果シタイカラ、ソレ相當ノ〓育ヲ受ケ嚴密ノ試驗ヲ經タ後
  ニ士官ニ採用セラルルモノデ護國ノ任務····義務ハ一モ違ヒハアリマセヌ、
  然ルニ又士官ハ商賣デアル、下士卒ハ義務デアル、然ラバ賞與モ同一ニスル
  方ガ公平デハナイカト言ハレマシタガ、是ハ私ハ公平ト云フコトハ左樣ナモ
  ノデナイト思ヒマス、各〓其任務ニ輕重ガアル、任務ノ重イ者ニハ賞ガ重シ、
  任務ノ輕キ者ハ賞ガ輕イト云フコトハ、是ハ古來カラチヤント決マッタコト
  デアリマス、都テ其任務ノ輕重ニ依ッテ賞ガ異ナルト云フコトガ本當ノ公平
  デ、秤ニ掛ケテ丁度衡平ニスルト云フ衡平デハナイ、誠ニ公ニ平ラカナルト
  云フ公平デアラウト思ヒマス、是デ御答ハ了ッタト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=18

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• 019・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=19

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• 020・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　柳澤伯爵ハ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=20

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• 021・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　質問ガアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=21

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• 022・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=22

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• 023・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　大藏大臣ニ伺ヒタイ、二千四百万圓ノ公債ノ發行ハ私共
  ハ公債ノ募集ト變ハラヌカト考ヘテ居リマス、此點ガ伺ヒタイ、此度此公債
  ガ御發行ニナリマシテ、之ヲ相當ノ人ニ政府ガ交付セラレ、而シテソレハ無
  記名公債デアリマスカラ市場ニ融通ガ出來ル譯デアリマス、大藏大臣ハ此場
  合ニ於キマシテ銘々ノ手ニ公債ハ這入ルケレドモ、ソレハ大部分其者ノ手ニ
  殘ッテ市場ニ出ルモノハ少イ、是ハ二三度委員會其他デ伺ッタコトガアリマス
  ガ、日〓戰役、日露戰役後ニ於キマシテ、矢張リサウ云フヤウナ狀態デアッタ
  カト申シマスルト、私共ハ少カラザル所ノ公債ガ矢張リ市場ニ出タヤウニ考
  ヘマス、然ルニ今囘ノ場合ニ限ッテ此公債ハ大部分其人ノ手ニアッテ市場ニ澤
  山出ナイト云フコトハ、ドウ云フ根柢ニ依ッテ言ハレルノデアリマスカ、單ニ
  大藏大臣若槻君一己トシテノ御考デアリマスカ、或ハ大臣トシテノ御考デ
  アリマスカ、之ヲ私ハ伺ヒタウゴザイマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

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• 024・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　功勞ノアル陸海軍人ニ此公債ガ移ルノデアリマ
  スカラ、直接ニ其人ノ手ニ渡ッテ、先ヅ其人ガ此受ケタ賞與ヲ保管シテ居ッテ、
  ソレカラ年々利息ヲ受取ルコトニナラウト思ヒマスノデ、サウ大ナル金額ノ
  公債ガ市場ニ直グ澤山出ヤウトハ思ヒマセヌ、此意見ハ個人トシテモ亦大藏
  大臣トシテモ同樣ニ私ハ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=24

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• 025・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　別段御發言モナイヤウニ考ヘマスカラシテ本案ニ
  付テ採決イタシマス、本案ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒ
  マス
  起立者多數

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• 026・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=26

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• 027・中川興長

  ○男爵中川興長君　直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス
  〔男爵高木兼寛君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=27

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• 028・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　高木男爵ハ何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=28

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• 029・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　贊成シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=29

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• 030・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第二讀會ヲ開クベシトスル中川男爵ノ動議
  ニ御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フモノアリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=30

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• 031・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=31

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• 032・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第二讀會ヲ開キマス、全部ヲ問題ニ供シマ
  ス全部御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=32

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• 033・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=33

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• 034・中川興長

  ○男爵中川興長君　直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=34

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• 035・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　贊成

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• 036・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三讀會ヲ開イテ御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=36

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• 037・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=37

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• 038・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三讀會ヲ開キマス、第二讀會決議ノ通リ
  御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=38

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• 039・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=39

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• 040・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議事日程第二、帝國鐵道會計法中改正法律案、政
  府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、第三、國債整理基金特別
  會計法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報〓
  帝國鐵道會計法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正四年六月六日
  右特別委員長
  伯爵寺島誠一郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  國債整理基金特別會計法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正四年六月六日
  右特別委員長
  伯爵寺島誠一郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔伯爵寺島誠一郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=40

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• 041・寺島誠一郎

  ○伯爵寺島誠一郞君　唯今日程ニ上リマシタ此二案、卽チ國債整理基金特別
  會計法中改正法律案、竝ニ帝國鐵道會計法中改正法律案ハ、互ニ密接ナル關
  係ヲ有ッテ居リマスル案デアリマスル故ニ、此二案ノ特別委員會ニ於キマスル
  審議ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申シマスルニ際シマシテ、此兩案ヲ束ネテ問題
  ト致シマシテ陳述スルコトニナリマスカラ、豫メ御了承ヲ願ッテ置キマス、委
  員會ハ此兩案ノ內容ノ最モ重大ナル事柄ニ鑑ミ、且ツ政府ノ財政經畫ノ之ニ
  依ッテ遂行サレ、又鐵道經畫ノ之ニ依ッテ施設セラルル所以ニ慮ッテ、此會期切
  迫セルニモ拘リマセズ、正副委員長ノ互選以來每日開會イタシマシテ、各員熱
  心ニ審議イタシマシタ、其可否ノ論旨ハ政府ヨリハ大藏大臣ハ勿論ノコト、
  農商務大臣、鐵道院總裁等出席サレテ、ソレ〓〓陳辯スル所ガアッタノデアリ
  やゝ、其詳細ハ報〓中漸ヲ逐ウテ申上ゲルコトニナリマス、便宜上此兩案ノ
  中デ國債整理基金法ノ案カラシテ申上ゲルコトニ致シマス、元來此基金法ト
  申シマスノハ日露事件ノ爲ニ募集シタ公債ノ元利償還ニ充ツル爲ニ出來タノ
  デアリマシテ、之ガ爲ニ年々少クトモ一億一千万圓ヅツ繰入金ヲスルト云フ
  コトニ規定シタモノデアリマス、之ニ依ッテ此種ノ公債ヲ成ルベク速ニ償還
  シ、且ツ斯ノ如クシテ往ッタナラバ一定ノ期間ヲ經テ償遠シ盡シテ仕舞フト
  云フコトヲ規定シタ法律ナノデアリマス、其當時ハ誠ニ機宜ニ適シタモノデ
  アッタト斯ウ政府ハ申サルルノデアリマス、ナゼカト申シマスト此日露事件ノ
  內外公債ガ非常ニ多額デアッタノデアル、當時ニ於キマシテハ、此法律ノ規定
  ニ依ッテ償還スルコトガ出來タシ、又利息ヲ支拂フト云フ方ニモ可ナリ多額ノ
  モノガ使ハレテ居ッタノデアリマス、卽チ初メテ公債償還ノ當時ハ三千五六百
  万グラヰアッタサウデアリマス、明治四十二年度カラ此元金償還高ヲ五千万圓
  トシマシテ、一般會計カラ繰入金ヲ增加シタノデアリマス、卽チ一億一千万
  圓デハアッタガ、マダ五千万圓ノ償却高ニ上ラナカッタノデアリマス、外カラ
  入レル金ヲ以テ五千万圓償還スルノデアッタノデアリマス、然ルニ大正四年度
  ニ於キマシテハ基金法通リヤッテ見マスレバ、一億一千万圓ヲ以テ五千百六十
  万圓元金償却ニ充テナケレバナラヌコトニナルノデアリマス、固ヨリ大正五
  年、六年、七年、八年ト段々其高ハ增加シテ行クコトハ明カデアリマス、卽
  チ言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ四五年ノ後ハ一億一千万圓ヲ以テ六千万圓以上
  ノ元金償却卽チ元金償還ニナルノデ、此點ハ豫期ハシテ居ッタノデアリマス
  ガ、他ノ政府ノ入用モ考ヘルト公債ノ償還高ガ多少多過ギル傾ニナルト斯ウ
  政府ハ言ハレテ居ルノデアリマス、次ニ斯ノ如ク五千万圓、五千四百万圓、
  五千六百万圓ト四五年モ元金償還ヲ致シテ參リマスト、內地ニアリマス臨時
  事件費公債ガ殆ド全部償還サレ盡シテシマフノデアリマス、ソレガ爲ニ是カ
  ラ以後ノ元金償却ハ悉ク外國ヘ仕拂フト云フコトニナルノデアリマス、デ
  方元金ノ償還ニ使フ金ハ悉ク外國ニ出テシマフカラ、他方ニ於テ今日ノ我國
  ノ正貨ノ高ハ到底之ニ堪ヘ得ラレヌト申サルルノデアリマス、更ニ今後外國
  貿易ノ狀況ガ改善シテ參リマシテ········改善シテ行キマシタ所デ矢張リ斯ノ如
  キ巨額ノ正貨ヲ外國ニ仕拂フト云フコトハ到底我國ハ堪へ得ナイト斯ウ申サ
  ルルノデアリマス、尙ホ此改正ノ理由ト致シマシテ後トニモ申上ゲマスルガ、
  年々鐵道ノ爲ニ公債ヲ二千万圓前後ハ募集シテ居ル、此基金法ニ依ッテ········此
  國債整理基金法ニ依ッテ償還シテ居ル、其方デハ金ヲ返シテ居ルガ、鐵道ノ方
  デハ新タニ募集ヲシテ居ル、卽チ右ノ手デ返シテ左ノ手デ借入ヲシテ居ル、
  マダソレダケナラバ宜イガ、後トカラ借入レル方ノ分ハ條件ガ惡ルクナル、
  卽チ利廻リガ宜クナイノミナラズ勿論償還スルニハ額面高デアルガ募集ノ際
  ニハ割引シタ高デナイト發行セラレヌト云フコトガアルカラ、ソレヲ考ヘテ
  見ナケレバナラヌ、其上ニ重ニ外國デ募集スル日ニハ內地ノ通貨ニ非常ニ變
  動ヲ生ズル、經濟界ニ急劇ナ變動ヲ來タシ隨ッテ弊害ガ續出シテ來テ通貨ガ
  膨脹スル爲ニ空景氣トナッテ、ソレガ一ツノ原因ニナッテ輸入ヲ增シテ貿易ノ
  狀況ヲ惡ルクスルヤウニナッテ來ルコト等ヲ申サレタ次第デアリマス、尙ホ政
  府ハ我國官民兩面ヨリ唯今申上ゲタコトヲ標準トシテ海外ニ正貨デ仕拂ハナ
  ケレバナラヌ總額ハ········官民共ニ仕拂フモノヲ加ヘマシテ略ボ一億圓ニナル
  サウデアリマス、ソレデアルカラシテ是非此際貿易ヲ順調ニ轉換セシメネバ
  ナラヌト云フコトヲ此際附加ヘテ申サレテ居リマシタ、斯ノ如キ理由デアル
  カラシテ此減債基金ノ規定ヲ改正シテ日露事件公債ニ限ラズ、何レノ公債ヲ
  モ償還スルコトニシタイ、同時ニ償還ノ金額ヲ相當ノ程度ニ引下ゲルコトニ
  シタイト云フノデアリマス、卽チ一定ノ步合ヲ定メテ國債總額ノ萬分ノ百十
  六、卽ヲ當時ニ於テハ三千万圓內外ニナルノデアリマス、其減少シタ高卽チ
  二千万圓ト云フモノハ、是ガ次ノ鐵道會計法中改正法律案ト最モ密接ノ關係
  ヲ有ッテ居ル中樞ニナルノデアリマス、此法案ニ對シマスル政府ノ說明モ亦大
  藏大臣ヨリ承リマシタノデ其要領ヲ申上ゲネバナラヌノデアリマス、鐵道ノ
  資金、政府ハ鐵道ノ爲ニ要シマスル資金ヲ調達セムガ爲ニハ年々二千万圓前
  後ノ公債ヲ募集シテ居ルノデアリマス、今日マデハ外國ニ之ヲ仰イデ居リマ
  シタガ是ハ面白クナイ、是ハ到底募集スルコトノ出來ナイ場合デアル、內國
  債ハソレナラバドウカト申シマスルト前ニ申シマシタ通リ、外國貿易ヲ改
  善スルニハ內地ノ生產事業ヲ發達サセナケレバナラヌ、其生產事業ヲ發逹サ
  セル爲ニハ其資金ヲ潤澤ニシテ置イテヤラネバナラヌノデアル、其資金ヲ潤
  澤ニシテ置カネバナラヌ際ニ、政府ニ於テ募債等ヲシテハ其大切ナ資金ヲ吸
  收スルノデアル、卽チ經濟界ヲ壓迫スルコトニナル、ソレノミナラズ旣存ノ
  公債ニ影響スルノデアルカラ、今日ノ經濟界ノ模樣デハ當分之ヲ避ケネバナ
  ラヌ、卽チ內債モ出來ナイ、一方ニ資金ハ緊急必要ニナルノデアルガ内外債
  ハ出來ナイ、然ラバ借入レルヨリ外ニ途ハナイ、卽チ日本ノ國有鐵道デアリ
  RT.@新タニ建設ヲ要スル分、旣存ノ分ヲ改良セネバナラヌ、是ハ鐵道トシ
  テ相當ノ資金ガ要ルコトデアリマスカラ之ヲ借入レナケレバナラヌ、鐵道院
  ハ年ニ五千万圓グラキ入用ダト言フガ、今俄ニ多額ノ資金ヲ大藏省ハ出ス
  コトハ出來ナイノデアル、ダカラシテ苦シイ中ニモ二千万圓クラヰナラバト
  云フコトデ、據ドコロナク此減債基金ノ方カラ是ダケヲ融通シテ置クト云フ
  コトニナッタノデアリマス、卽チ是等ノ理由ガ此鐵道········帝國鐵道會計法中改
  正法律案ヲ提出サレテ、一般會計ヨリ借入ヲスルコトガ出來ルト云フコトニ
  シタイト云フ所以デゴザイマス、玆ニ兩案ノ說明卽チ政府ノ說明········私ガ申
  シマシタノハ政府ノ說明スル所ヲ不十分ナガラ申上ゲマシタガ、此政府ノ說
  明ガ分リマシテ委員會ニ於キマシテハ數多キ重要ナル質問ガアッタノデアリ
  や、、其中デモ最モ重要ナリト認メマスルモノヲ玆デ申上ゲマスコトガ私ノ
  義務ト存ジマス、鐵道デ一般會計ヨリ借入レル金ノ期間ハドノ位デアルダラ
  ウカ、利息ハドンナモノデアルカト云フ質問ガゴザイマシタ、之ニ對シテ政
  府ハ期間ハ五年クラキデ··通常五年ト云フコトニナフテ居ルカラ五年トス
  ルト云フコトデアル、利息ハ五分五厘ト云フコトニスル筈デアル、斯ウ答ヘ
  ラレマシタ、ソレカラ此一般會計カラ借入レル二千万圓ハ現在ノ鐵道ノ限度
  ニ對シテ資本トスルノカ、又或ハ將來ノ經畫·······現在ノ限度デハ迚モ滿足ス
  ルモノデナイカラ、將來ニ又大ナル經畫ヲスルコトデアルダラウガ、其經畫
  ヲモ含ンダコトニ對シテ資本トスルノデアルカト云フ大切ナル御問ヒガアフ
  タノデアリマス、之ニ對シテハ政府ハ現在ノ鐵道ノ限度ニ對シテモ二千万圓
  デハ不十分デアル位デアル、鐵道院ノ方デハ五千万圓ナケレバナラヌト言ッ
  テ居ルノダケレドモ、ソレニ對シテモ不十分ナルモノナガラ先ヅ二千万圓貸
  シテ置ケバ、現在鐵道ノ極ク必要ノ部分ダケヤッテ行ケルダラウト云フ御答
  デアッタト記憶シテ居リマス、又此法案ニ關係シテ居リマスル外國債償還ノコ
  トヲ行フニモ矢張リ鐵道ノヤウナ堅實ナル事業ヲ尙ホ一層確實ニシテ、之ヲ
  一ツノ目當ニ公債ヲ募集シナケレバ到底將來大ナル高ノ公債ヲ募集スルコト
  ハ行バレナイ、卽チ大正十四年大正十五年ニ返サナケレバナラヌ所ノ多額ノ
  外國債ヲ借替ヘルト云フコトモムヅカシイデハナイカト云フ問ガアッタノデ
  アリマス、之ニ對シテ大體ハ借替ヘナケレバナラヌ、是ハナカ〓〓事情困難
  デアルガ、ドウシテモ借替ヘナケレバナラヌノデアルカラ、今日カラ外國市
  場ヲ能ク養ッテ、成ルベク有利ノ條件ヲ以テ借替ヘタイト云フ趣意デアルト云
  フコトヲ繰返ヘシテ答ヘラレタニ止マッタノデゴザイマス、ソレカラ大正三年
  六月二十四日ニ政府ノ政綱ヲ發表セラレテ居ル、ソレハ第一、政費節減ヲ行
  ヒ國民負擔ノ輕減ヲ圖ルト云フヤウナコトヲ天下ニ表白サレタガ、ソレハ最
  早打切リニナッタカト云フ問ガアリマシタ、其時當局者ハ、當時ノ經畫ニ於テ
  ハ行政整理及自然增收其他用途ノナイ金額ヲ加ヘテ二個師團ノ增設ヲ行ヒ、
  海軍ノ製艦モヤリ、其他〓育、殖產、工業等發展ノ費途ニ支辨シテ、尙ホ二
  千万圓ノ殘リヲ生ズル見込デアルカラ、是デ租稅ヲ輕減スル筈デアッタガ、時
  局突發ノ爲ニ其金ヲ使ッテ仕舞ッタカラ減稅ガ出來ナイコトニナッタト云フ答
  辯ヲサレタノデアリマス、ソレカラマ少シ單刀直入ニ聞カレタ御方ハ、減債基
  金カラ之ヲ減ズル必要ガアッテ········減債基金ノ方ガ多クテイカヌカラ、之ヲ減
  ズル必要ガアッテ二千万圓減ズルノデアルカ、或ハ鐵道ノ方ニ金ガ入用デアル
  カラ整理基金ノ方ヲ減ズルノデアルカ、此基金法アッテ公債ノ信用ヲ維持シテ
  行カレルノデ、又其價格ヲ保ッテ行クコトガ出來ルノデアルガ、此爲ニ公債其
  物ニ影響ヲ及ボシハセヌカト云フ御尋ガアッタノデアリマス、所ガ此經晝ハ既
  ニ昨年ノ五月デアリマシタカ、倫敦デ發表ニナッテ居ルサウデアリマシテ、之
  ガ爲ニ惡イ影響ハナカッタ、倫敦ニ於テ日本ノ公債ノ價格ハ動カナカッタト云
  フコトヲ答ヘラレ、且ツ此整理基金ニ手ヲ著ケルノハ鐵道ノ爲ニ入用デアル
  カラト云フコトヲ答ヘラレタト私ハ記憶シテ居リマスノデアリマス、又此鐵
  道ノ經畫ニ付テ現政府ハドウ云フ考ヲ有ッテ居ラルルカ其一班ヲ聽キタイト
  尋ネラレタ所ガ、鐵道院總裁ハ之ニ對シテ、昨年三十五議會ニ出テ居ル七年
  經畫ト云フモノガ先ヅ今日行ッテ行カウト云フ經畫デアル、此冬ノ議會ニモソ
  レヲ出ス積リデアルト答辯セラレタヤウニ思ッテ居リマス、又一委員ヨリ此鐵
  道經畫ト云フモノノ中ニハ廣軌ニ直サナケレバナラヌ、其廣軌ニスルコトヲ
  含ンデ居ルカト云フコトデアリ、又貴族院ガ嘗テ四十五年ニ鐵道ニ對シテ希
  望ヲ決議シテアルガ、其希望ハ御承知デアルカト云フヤウナコトヲ鐵道院總
  裁ニ同時ニ質問サレタノデアリマス、鐵道院總裁ハ之ニ對シマシテ、廣軌ノ
  方ノ答ハ鐵道院總裁トシテデハナカッタヤウデアリマス、御自身デ自分デ之ヲ
  〓究シテ居ル、廣軌ニスルカ、强度ノ狭軌ニスルカト云フコトハ自分デ調査
  シテ居ルカラ、是ハ調査ノ結果ニ俟タナケレバナラヌ、又四十五年ノ希望ニ
  付テハ全然一言モ答ヘラレナカッタノデアリマス、終ニ仕舞ニハ御自身モ御存
  知ガナカッタカノヤウデアリマス、ソレカラ此一般會計ヨリ借入レル金ノ期限
  ハ何時ソレデハ返スノデアルカ、何年經ッテ又一般會計ニ返スカト云フ問ニ對
  シテハ、鐵道院總裁ハ之ヲ返スコトニ付テノ經畫ハナイ、其事ハ自分ハ知ラ
  ヌ、大藏省ノ方デハ知ッテ居ルコトデアリマセウガ自分ハ知ラヌ、免ニ角利息
  ヲ拂ッテ置クト云フヤウナ不滿足ナル御答デアッタト云フコトヲ玆ニ申上ゲテ
  間違ハナイト思ヒマス、ソレカラ此正貨ノ關係カラ是非今日ハ貿易ガ逆調デ
  アル所ヲ、ソレヲ順調ニスルト云フコトニ付テ辯論サレタノデアリマスガ、
  其際ニ免ニ角貿易ト云フモノハ逆調デアル、左程逆調デナイニセヨ益〓其勢ヲ
  進メテ行クト云フコトハ今日避クベキコトデアルト云フ感ジヲ有ツコトデア
  ルガ、ソレニ對シテ政府ハ如何ナル手段方法ヲ執ッテ居ラレルカ、チヨット見
  ルト放任主義ノヤウニ見エテ居ルガ、ドウ云フ御考デアルカ、當局所管大臣
  ノ說明ヲ聽キタイト云フコトデアリマシタ、ソレニ對シテ農商務大臣ガ出ラ
  レテ懇篤ニ說明ヲセラレテ、甚ダ好カッタノデアリマス、卽チ農商務大臣ノ說
  明ハ、內ニ對シテハ產業ノ發達ヲ圖リ、外ニ對シテハ貿易ノ發展ヲ助ケルヤ
  ウナ方針ヲ執ッテ居リマス、卽チ內ニ對シテハ製造工業其他ヲ發達セシメ、外
  ニ對シテハ販路ノ擴張ヲ圖ヲテ居リマシテ、實際ニソレ〓〓人ヲ派遣シテ調査
  セシメツツアル、卽チ支那南北ハ勿論、印度、濠洲、北米、南洋ト云フヤウ
  ナ所ヘ、ソレ〓〓人ヲ出シテアッテ、其報告ヲ受ケツツアル、其報告ニ依レバ
  餘程良好ナル狀態デアッテ、將來ニ望ミガアルト云フコトヲ言ハレタノデアリ
  やす、又內ニ於テハ化學工業ノ進步ヲ圖ル爲ニ其研究所ヲ設ケテ居ルトカ、
  其他今日ノ日程ニ上ッテ居ル染料ノ如キコトニ關シテモ、農商務大臣ガ述ベラ
  レタノデアリマシテ、稍、要領ヲ得タ御答デアッタノデアリマス、唯今柳澤伯
  爵カラ大藏大臣ニ御問ニナッタヤウナ問題ハ、矢張リ委員會ニ於テモアッタノ
  デアリマス、其次ニ出マシタ問題ハ朝鮮ノ鐵道ノ方ハ一億圓モ要ルト云フ
  コトデアルガ是ハドウスルト云フ質問ニ對シテハ大藏大臣ハ是ハ今日朝鮮
  ノ鐵道デ使ッテ居ル所ノ經費デアッテ、之ヲ現在ノ儘ニ止メテ置イテ其以上
  ニ要スルモノハ少シ一般會計カラ幾ラカ融通スルヤウナコトガアルデアラウ
  ト云フヤウナ、餘リハッキリシナイ御答デアッタヤウニ自分ハ記憶シテ居リマ
  ス、先ヅ是等ガ重ナル質問デアッテ、ソレニ對スル政府ノ答辯デアッタヤウ
  ニ記憶イタシテ居リマスガ是ヨリ討議ニ移リマシテ、其討議ニ於テハ、政府
  案ニ贊成ナサル議論モアリ、勿論反對ノ說モアリマシタガ、此議場ニ於テハ
  贊成ノ方ノ方ヲ先キニ申上ゲマシタラ御參考ニナルデアラウト思ヒマス、其
  減債法案ハ甚ダ不十分ナモノデアル、斯ノ如キモノヲ差出サレタノハ、遺憾
  千萬デアルガ、ドウモ致方ガナイ時機デアルカラ賛成ヲスル云々ト云フノガ、
  是ガ贊成者ノ一ツノ理由デアッタノデアリマス、併シ據ドコロナク賛成ヲスル
  ガ、免ニ角一般會計ノ方カラ利息ヲ付ケテ鐵道ノ方ニ貸付ケルト云フニ付テ
  ハ、其利息ト云フモノガ豫期シナイ所ノ收入ニナルノデアルカラ、成ルベク
  サウ云フヤウナ點ニ付テハ十分ニ注意ヲ拂ッテ置クヤウニシタナラバ、一般會
  計ノ方デモ不時ノ收入ノ有ルコトデアルカラ、其點ハ稍〓不幸中ノ結構ナコト
  デアル、又鐵道ノ方デモ二千万圓借リルト云フコトニセズ、一千万圓、一イ
  七八百万圓デ濟ムナラ、ソレダケデ間ニ合セテ、成ルベク借リルノハ必要ノ限
  度ニ止メテ置クヤウニシタイト云フ希望ヲ添ヘテ贊成サレタノデアリマス
  ソレカラ又或一員ハ、租稅ヲ以テ鐵道ヲ維持スル、國有鐵道ヲ維持スルト云
  フコトハ甚ダ面白クナイコトデアル、誠ニ己ムヲ得ヌコトデアルノデアル
  今度ノ議會ニ出テ居リマスル豫算ハ、增師ト云フモノヲ包含シテ居ル、旣ニ此
  方ハ緊急ナモノナンデアルノデ、是トノ因果關係デ豫算ト云フコトヲ頭ノ中
  ニ入レテ、此兩案トモ議セナケレバナラヌ、デ、鐵道ニ改良、建設ノ急務ノ
  有ルカ否カ、ソレモ亦〓究シタ上デナケレバナラヌガ、免ニ角我國ノ鐵道モ
  此運輸界ノ進運ニ伴ウテ向上發展ヲシナケレバナラヌカラ資金ガ要ルノデア
  ル其方ニ要ルノナラ成ルホド據ドコロナイ話ダカラ出ス、之ヲ手ヲ付ケル
  爲ニ豫算ニ關係ヲシテ來ルト云フコトデアルナラバ、師團ノ增設ニモ關係ヲ
  シテ來ルカラシテ、因果關係デ豫算ト云フコトヲ頭ニ入レテ、二ツノ案ヲ考
  ヘテ見テ、ソレデ之ニ贊成ヲ表セナケレバナラヌト思フト云フコトモ言ハレ
  タヤウデアリマス、ソレカラ最モ有力ナル或一員ハ、五箇ノ理由ヲ擧ゲラレ
  テ之ニ贊成ノ意ヲ表セラレタノデアリマス、第一ニハ卽チ政府ノ言ハレル通
  リ正貨流出ト云フコトヲ心配サレルノガ一ツノ理由、ソレカラ右ノ手デ返シ
  テ左ノ手デ借リルト云フコトニナレバ同ジコトデアルカラシテ、ソレナラバ
  返スコトヲ止メニシタラ宜カラウト云フノガ第二ノ理由、ソレカラ鐵道ノ資
  金ト云フコトニ付テ、是ハ是非鐵道ト云フモノハ發達サセテ行カナケレバナ
  ラヌノデアルカラ、其資金ヲ得ル方法ガ外ニ何處ヲ探シテモナイ、無イ以上
  ハ據ドコロナク此基金ノ方カラ出シテヤッテ宜カラウト云フノガ第三ノ理由、
  第四ノ理由トシテハ、是ハ政府ノ立場、衆議院ノ立場、貴族院ノ立場カラ考ヘ
  ネバナラヌト云フコトデアリマス、卽チ此貴族院ト云フ立場カラ致シマシテ、
  昨年衆議院解散ノ理由ニナッテ居リマスル問題ノ一ツデアリマスル是等ノ案
  ハ今日貴族院トシテ此案ヲ維持シテヤルコトガ至當デアルト考ヘルト云フ
  コトガ第四ノ理由デアッタヤウニ記憶シテ居ル、卽チ昨年國防上ノ問題カラシ
  テ内閣ガ壞ハレテ仕舞タ、今日ハ其貴族院ノ望ミデアッタ所ノ國防問題モ實
  行サレル際デアルカラシテ、ソレ等ノコトモ頭ニ入レテ置イテ此案ヲ贊成シ
  ナケレバナラヌト云フノデアリマス、國防ノ方ハ右樣ノ通リデアリマスガ、
  若シ萬一ナコトガアッテ、兩案共ニ不滿足ナモノデアルガ、併シ此不滿足ナモ
  ノデアルカラ承知ガ出來ヌト云フ場合ニハ如何ナルコトガ起ルカ、貴族院ガ
  奮然トシテ立ッテ之ヲ今日爲サネバナラヌノデアルガ、斯ノ如キコトニナッタ
  ナラバ天下再ビ紛亂ヲシテ中〓面倒ナコトニナルト云フ、サウ云フコトガ今
  日決心ヲ仕兼ネルノデアルト云フコトガ又一ツノ理由デアッタノデアリマス、
  是等ガ先ヅ贊成者ノ重ナル理由デゴザイマス、ソレカラ反對ヲセラレタ方ノ
  側ノ主ナ理由モ亦茲ニ申述ベルコトハ權衡上必要デアルト信ジマス、是等ノ
  案、殊ニ減債基金特別會計法ナドニ手ヲ著ケルト云フコトハ誠ニ國家ノ爲ニ
  憂フベキコトナンデアル、涙ヲ揮ッラモ反對ヲシナケレバナラヌ、其理由ハ一
  體此租稅ヲ以テ鐵道ノ資金トスルト云フコトデアルナラバ、新タニ租稅ヲ募ツ
  テサヘモ鐵道ヲ敷カナケレバナラヌデハナイカト云フ議論マデ出デ來ルデハ
  ナイカ、又減債基金ノ方カラ二千万圓取ッテ鐵道ノ方ニ使フコトガ出來ルナラ
  バソレダケノ餘裕ガアルノデアルカラ、其二千万圓ヲ果シテ鐵道ノ方ニ使
  フノガ、宜シイヤ否ヤ、或ハ減稅ノ方ニ充テナケレバナラヌト云フヤウナ議論
  ガ起ルデハナイカ、甚ダ憂フベキ紛亂ヲ來タスベキ基ニナルノデアッテ、斯ノ
  如キ根本的ノ法案ニ手ヲ著ケルト云フコトハ甚ダ悲シムベキデアル、鐵道ノ
  方カラ見レバ、鐵道ト云フモノガ特別會計ニシテアル精神ハ何處ニ在ルカト
  云ヘバ、國家ガ鐵道ヲ經營スル、卽チ鐵道其モノノ發展ニ伴フテ自營シテ行カ
  ナケレバナラヌモノデアルト云フ精神ニ外ナラヌ自營シテ行カナケレバナ
  ラヌ鐵道ナラバ、資金ハ入用ノ節ハ借リテ來ルガ宜イ、ソレハ募フテ來ルガ宜
  カラウ、併シ借リルト云フコトモ出來ズ、募集スルコトモ出來ヌト云フ曉ハ
  是ハ時機到來ヲ待ツヨリ仕方ガナイ、自分ガ擧ゲル所ノ利益ヲ割イテ益、發展
  スルヤウニスルノガ必要デアッテ、無理ナルコトマデシテ資金ヲ調達シナケレ
  バナラヌト云フノハ、是ハ問題トシナケレバナラヌト云フコトデアルノデア
  リマス、又二千万圓ヲ一度減債基金ヨリ減ズルト云フコトデアルナラバ、廢減
  稅ノ論據トナルハ勿論ノコト、各省ニ於テ··稍〓言葉ガ私ガ申上ゲルノハ不
  十分カモ知レマセヌガ、各省ニ於テモ色〓ノ施設ヲ望ンデ居ル次第デアル、
  緊急ノ施設ヲシナケレバナラヌ、ソレデアルカラ此省ニ於テモ斯ノ如キ施設
  ヲスルノダカラシテ是ダケノ金額ハ是非寄越セ、アチラノ省デモ斯ウ云フ施
  設ヲスルカラ是ダケノ金額ヲ是非寄越セト云フ、所謂各省分捕ノ原因トモナ
  ルコトガ出來シテ、遂ニ一方ニハ國債基金ノ原則ガ破レテ、片方ニハ斯ノ如
  キ現象ガ生ジテ來ルノハ甚ダ憂フベキコトデハナイカト云フノモ、一ツノ反
  對ノ理由デアッタヤウニ思ッテ居リマス、ソレカラ又減債基金ヲ此儘ニシテ置
  クト云フコトデアレバ、免ニ角元金ノ償還ト云フコトガ出來ルノデアッテ、濟
  崩シニシテ漸ヲ逐ウテ返スト云フコトガ出來ルヤウニナルガ、片方ニハ其方
  ヲ減ジテ單ニ將來大借替ヲスルトキノ準備ニ海外ノ市場ヲ養ッテ置クト云フ
  コトデアレバ、成ルホド借替ガ出來レバ宜イケレドモ、借替ガ出來ヌトキニ
  ハ誠ニ心配ノコトデアル、專賣ノ利益モ擔保ニナッテ居ルシ、又關稅モ擔保ト
  ナッテ居ルヤウナ次第デアルカラ、大借替ノ出來ヌト云フ際ニハ誠ニ心配ノ
  コトナンデアル、濟崩シニシテ行ケバ稍、其心配ノ程度ト云フモノハ減ルノ
  デアッテ、幾ラカ心配ノ中ニモ餘計安心スルコトガ出來ル、且ツ此金ヲ成ルタ
  ケ使ハズニ置クト云フコトノ必要ノコトハ申ス迄モナイコトデアルガ、平時
  カラ其心懸デヤッテ行カナケレバナラヌ、僅ニ靑島事件ガアッテサヘモ一億圓
  モ金ヲ使ッテ居ルカラ、若シ萬一ノ事ガアレバ何億ト云フ金、何十億ト云フ金
  ガ要ルヤウニナルカラ、平常カラ心懸ケテ成ルベク金ヲ使ハヌヤウニシテ置
  イテ、鐵道ノ如キモ僅カノモノデモ、據ドコロナイト云フコトナラバ、ソレ
  ヲ以テ自ラ經營シテ行クヨリ仕方ガナイデハナイカト云フ議論モアッタノデ
  アリマス、遂ニ是等ヲ總括イタシマシテ、今斯ウ云フモノヲ出サナクテモ宜
  イデハナイカ、此鐵道ノ經畫ノ如キハ未ダ出テ居ラヌノデアルカラ、此冬ノ
  議會ニ出サレルト云フ如ク政府デ言ウテ居ルカラ、此兩案ノ如キハ冬ノ通常
  議會マデ免ニ角行ッテ、此冬ノ議會ニ出シテ十分研究ヲシタラ宜イデハナイ
  カ、ソレ迄待ツコトニシテ欲シイ、此理由ヲ以テ反對スルト云フコトモアリ
  マシタ、ソレ迄ノ所ナラバドウナリ繰合ハシテ、短期デ借入ヲシテ、始末ヲ
  鐵道ノ方デハ濟マシテ置ケバ宜イデハナイカ、斯ウ云フノデアリマス、ソレ
  カラ此兩案卽チ鐵道ニ關スル案ト減債基金案、是ハ此病ハ鐵道ニモアル、又
  病ハ減債基金ノ方ニモアル、同病相憐ムノデアッテ、此案ハ病氣ノ案デアル、
  病案デアルノダ、斯ウ云フ名言ヲ吐カレタ御方モゴザイマス、病氣ハ今ニ始
  マッタノデハナイ、此病氣ハ以前カラ起ッテ居ッタンダ、併シドチラガ重イカト
  言ヘバ病ハ寧ロ鐵道ノ方ニアル、是ハ甚ダ簡單ニシテ要領ヲ盡シタカト思ッテ
  居リマス、卽チ鐵道經畫ヲ聞イテ見レバ、鐵道經畫ハ一向成ッテ居ラヌ、不熟
  ナモノデアル、不熟不徹底ノ決定ノ爲ニ減債基金ヲ減ラシテ貸付ケル、卽チ
  租稅ヲ貸付ケテ利息ヲ取ルト云フ案デアル、國家トシテハ一向定マッタ經綸デ
  ハナイデハナイカ、デアルカラモウ少シ〓究シテ新ニ今度ノ冬)ノ議會ニデモ
  出シタラ宜イデハナイカト云フヤウナコトデ反對サレタ御方モゴザイマス、
  先ヅ甚ダ不束デアリマシタガ、先ヅ經過ハ斯ウ云フヤウナ次第デゴザイマシ
  タ、遂ニ採決ヲ致シタ場合ニハ、十二名ノ委員ガ出席サレテ居リマシタノデ、
  贊成者九名ニ依ッテ此兩案トモニ政府提出、衆議院送付ノ通リ可決ニナッタ次
  第デゴザイマス、之ヲ御報告イタシマス、終リニチヨット附加ヘテ置キマスル
  ガ、唯今ハ委員長トシテ報告イタシマシタガ、私ハ委員ノ一人トシテ實ハ反
  對ノ意見ヲ有ッテ居ル者デアルト云フコトヲ此所ニ聲明シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=41

  ---

• 042・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　諸君ニ御諮リヲ致シマス、唯今委員長ノ報告ハ兩
  案束ネラレマシタガ、議題ト致シマスノモ兩案束ネテ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=42

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• 043・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス、是ヨリ通告順ニ依リマシ
  テ登壇ヲ促シマス、仲小路廉君
  〔仲小路廉君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=43

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• 044・仲小路廉

  ○仲小路廉君　私ハ本案ニ反對ヲ表スル一人デゴザイマス、今日ノ場合ニ此
  兩案ガ破壞サレムトスル端〓ノ開カレマスルコトハ、私ハ衷心實ニ遺憾ニ存
  ジマスノデアリマス、殊ニ國家ニ重要ナル案デゴザイマスルカラ、必ズ政府ニ
  於テモ此法律ノ改正ヲ企テラレルト云フナラバ、重要ナル理由ノ必ズ存在シ
  テ居ルモノダト自分共ハ存ジタノデアリマス、本案ガ委員會ニ付託セラレマ
  シテカラ以來、各委員ノ方〓ニ於テモ非常ナ御勵精ヲ以テ攻究審査ヲ盡サレ
  タノデアリマス、私モ亦此案ニ付キマシテハ最モ深キ關係ヲ有ッテ居リマスル
  譯デ、此委員會ニ於テ審査ノ初リヨリ最後ニ至ルマデ、常ニ臨席ヲ致シテ居
  リマシテ、應答說明、總テノコトモ詳細ニ承知ヲ致シタノデアリマス、然ル
  ニ私ハ其結果ニ於テ政府ガ斯ノ如キ重大ナル案ヲ御提出ニナリマシタニ拘リ
  マセズ、之ヲ改正ヲ企テラレルト云フ理由ハ極メテ薄弱デアル、殆ド此案ヲ
  今日ノ場合ニ於テ改正ヲシナケレバナラナイト云フ理由ハ殆ドナイト申シテ
  然ルベキヤウナ說明竝ニ答辯デアッタノデアリマス、之ニ反シテ本案ニ對シテ
  反對ヲ表セラレマシタ各員ノ御意見ハ何レモ皆堂々タル議論ヲ備ヘテ之ニ反
  對サレテ居ルノデアリマス、又贊成ヲ表セラレテ居ル委員中、私ハ其委員ノ中
  ニ最モ重キヲ置カルル人ハ前田子爵ノ賛成論、田中源太郞君ノ贊成論デアッタ
  ト存ズルノデアリマス、其他ニモ尙ホ賛成ヲ表セラレタ方〓モアッタノデア
  リマス、就中此兩君ノ御說ハ最モ重キヲ置イラ居ッタト私ハ存ズルノデアリ
  Pゞ、然ルニ賛成者中ノ有力デアリマシタ前田子爵竝ニ田中源太郞君ノ御意
  見ハ、贊成デハアルト言ハレテ居ルニ拘リマセズ、其述べラレテ居リマスル
  事柄ハ全ク反對ノ意見ヲ述べラレテ居ルト見テ宜カラウト存ズルノデアリマ
  ス、唯已ムヲ得ザル事情ノ爲ニ、已ムヲ得ザル事情ノ爲ニ贊成ヲスル、其後
  豫算委員會ニ於テモ、亦此問題ニ付キマシテ贊否兩樣ノ意見ガ出タノデアリ
  マス、其委員會ニ於キマシテハ中島永元君ヨリ賛成ノ御論ガ出タト思ヒマス、
  其御論ニ對シマシテハ同ジ贊成者ノ中デアリマシタ前田子爵ニ於テ明カニ其
  理由ヲ否認サレタ如クニ、贊成ヲセラレタ方〓ニ於テモ表ニ於テハ贊成デア
  ルト云フノデゴザイマスルガ、其內容ニ於テハ悉ク反對ノ論旨ヲ十分ニ說明
  サレテ居ッタモノダト私ハ信ズルノデアリマス、大藏大臣ハ委員會ニ於テ縷々
  御說明ニナッタノデアリマス、當初ハ此法案ヲ改正スル理由トシテ二箇ノ理
  由ヲ御說明ニナッテ居ッタノデアリマス、一ツハ鐵道ノ爲ニ資金ヲ要スルカ
  ラ餘儀ナク此法律ノ改正ヲシナケレバナラヌ、一ツハソレニ拘ラズ將來ノ
  公債銷却ノ上ニ於テモ尙ホ第二條ヲ改正シテ、日露戰役ノ爲ニ消費シタル經
  費云々ト云フモノヲ還シテイカナケレバナラナイ、斯ウ云フ御說明デアッタ
  ノデアリマス、然ルニ委員會ニ於テ漸次其審究ヲ進メラレマシタ其結果ニ於
  キマシテ、殆ド第二ノ理由ハ消エテ跡ナクナッタト云ッテ宜シイ位ノコトデ
  アリマス、全クハ鐵道ノ爲ニ差向二千万圓ノ金ヲ其方ニ向ケタイカラ之ヲ改
  正ヲスルコトニナル、固ヨリ御意見ハアルニハ相違アリマスマイガ、其說明
  應答ノ間ニ於テ結局本案ニ對シテハ鐵道資金タル二千万圓ヲ必要トスルカ
  ラ、ソレノ調達ニ必要ナリトシテ此改正ヲ要スルコトニナッタノデアル、是
  ガ殆ド唯一ノ理由デアッタノデゴザイマス、然ルニ鐵道ノ經畫ハドウデアル
  カ········鐵道ノ經畫ハドウデアッタカ、昨年ノ議會ニ於テハ鐵道ハ將來ニ亙ル十
  三箇年ノ經畫モ立テテ出シタノデアリマスル、其十三箇年ノ經畫ヲ立テテ出
  スニ付テハ年々四千万圓乃至五千万圓ノ金額ヲ要スル、從ッテ此年度割ニ相當
  スベキ不足分トシテ二千万宛ノ金額ヲ年々生ズベキ途ヲ執ッタノハ當然デア
  リマス、然ルニ大正四年度ナル本年ニ提出シテ居ル鐵道ノ豫算ハドウデアル
  カ、差向本年限リノ提出案デアリマス、而シテ其理由ハ何カト云フト、建設
  ハ偖テ措イテ、改良工事ニ重ナ力ヲ要スルトスル以上ハ、將來ノ鐵道ヲ廣軌
  ニスルカ、將タ狭軌ニシテ最强度ナルベキモノヲ以テ進メテ行クガ宜シイカ、
  此兩點ニ付テ十分審査攻究ヲ盡シタ上ニ此根本義ヲ極メタ上デ、次ノ議會ニ
  提案スルマデニドチラカノ意見ヲ極メル積リデアル、是ハ或ハ政府ノ公然ノ
  議デハナクシテ鐵道院總裁御一人ノ調査デアルカモ存ジマセヌガ、去リナガ
  ラ此事柄ハナクテモ構ハヌ事柄ト私共ハ思フノデアリマス、是カラ後ニ改良
  ノ點ニ重キヲ置キマスル以上ハ、ドチラニ致セ我內地ノ鐵道ハ廣軌ニ致サナ
  ケレバナラナイコトハ勿論到著イタシテ參ルノデアリマス、旣ニ朝鮮滿洲ニ
  於ケル我鐵道ハ是皆廣軌デアリマス········是皆廣軌デアリマスルノニ、獨リ我
  內地ノ鐵道ノミガ狹軌デ宜シイト云フコトハ到底ソレハ行カナイ、玆暫クノ
  間ガソレデ參ルト致シマシテモ、必ズヤ近キ將來ニ於テ再ビ其事ニ到著イタ
  スハ當然デアラウト考ヘマス、之ヲ單ニ技術上ノ考ヨリ觀察スベキモノデハ
  ナイト思フ、ソレヲ單ニ强度ノ狹軌ニスレバ事足リルナドト云フコトハ單
  ニ技術者ノ所見デアル、一面政治上、軍事上、經濟上ノ關係ヨリ云ヘバ車輛
  ニ致セ、總テノモノガ一朝有事ノ時ニ際シテハ朝鮮ニ在ルモノモ、滿洲ニ在
  ルモノモ、內地ノモノモ總テガ流用共通サルル途ヲ立ッテ置クコトハ是ハ當
  然ノ次第デアリマシテ、車輛其他ノモノノ共通流用ノナイ我國ニ於テハ、ド
  ウシテモ根本ニ於テ右ノ必要ハ勿論差迫ルノデアリマス、從ッテ鐵道院總裁ガ
  是ヨリ後ニ改良工事ニ重ナ力ヲ盡スコトニナッテ、茲ニ將來ノ經營ヲ立テルト
  云フ以上ハ、其根本ニ於テノ問題ヲ解決スルガ爲ニ調査ナサルト云フノハ是
  ハ當然ノ次第デアリマシテ、鐵道院總裁ガ職務ニ忠實ナルガ故ニ、經費ヲ無
  駄ニシナイガ爲ニ、手戾リニナラナイヤウニ、成ルベク其經費ヲ有益ニ使フ、
  有效ニ使ヒタイガ故ニ、玆ニ根本問題ニ付テ調査ヲ致サルルト云フハ當然ノ
  コトデアリマス、殊ニ貴族院ニ於テハ既ニ明治四十五年ニ於テ、將來ノ鐵道
  ハドウシテモ廣軌ニシテ置イテ、世ノ進運ニ伴フダケノコトハシテ行カナケ
  レバナラナイト云フ結果カラシテ、當時貴族院ノ院議ヲ以テ希望トシテ政府
  ニモ其事ガ傳ヘラレテアル、卽チ其當時ヨリシテ鐵道當局者ハ其院議トシテ
  傳ヘラレテ居ル途ニ於テ相當ノ準備モアリ、調査ノアルハ當然ノコトデアル
  ト考ヘルノデアリマス、其結果鐵道院總裁ガ、差向今年度ノ豫算ハ今年一年
  限リ、大正四年ニ頭ヲ出スモノダケニ止メテ置イテ········頭ヲ出スモノダケニ
  止メテ置イテ、後ノ經費ハ根本問題ノ解決シタル上ニ於テ相當ノ提案ヲスル
  ト云フ、此御考慮ハ至當ノコトト私ハ考ヘルノデアリマス、斯クナクテハナ
  ラナイ筈ノモノデアル、左スレバ今日鐵道ノ爲ニ必要トスル金額ハ實ハ差向
  キノコトデアリマス、今年若クハ來年、ソレ以上ハ根本問題ガ決マリマシタ
  後ニ付テ更ニドウ云フ提案ニナルカハ、ソレ以後ノコトデアル、先ヅ差向キ
  一兩年ノ間ハ目下急ニ迫ルモノノミトナッテ居ルノガ至當ト考ヘル、斯ル場合
  ニ···鐵道ノ關係ハ斯樣ナコトデアルノニ、此場合ニ一方國債整理基金法ノ
  根本法ヲ改メテ、年々五千万圓ヅツ銷却スルト致シテ居ッタモノヲ、其內二千
  万圓鐵道ノ方ニ向ケル必要ガアルト云フ理由ノ下ニ於テ、此整理基金法ニ破
  壞ノ端ヲ啓クト云フハ如何ナルコトデアルカト考ヘル、此點ハドウカ政府ノ
  方ニ於カレマシテハ、總理大臣閣下ヲ初メトシテ各大臣方ニ於カレマシテモ、
  能ク能ク御考ヲ煩ハシタイト存ズルノデアリマス、抑〓國債整理基金特別會
  計法ニ依ッテ一億一千万圓ト云フ金額ノ所、年々五千万圓ノ金額ヲ償還ニ充テ
  ル、是ハ實ニ日露戰役後ニ於ケル容易ナラヌコトデアッタノデアリマス、日〓
  戰役ノ際ハ免ニモ角ニモ國家ノ戰費ノ賠償金ヲ得タノデアル、然ルニ日露戰
  役ノ際ニ於テハ何等賠償金ヲ得ナカッタ結果、戰爭中ニ經費負擔ノ爲ニ非常特
  別稅トシテ重稅ヲ課シテ居ッタ、其非常特別稅トシテ課シテ居ッタ重稅ガ、戰爭
  ガ相濟ンダ後ニモ期限ヲ延バシテ、之ニ依ッテ免ニモ角ニモ日露戰役ニ消費サ
  レタル金、卽チ其公債ノ償還ヲ一日モ速ニシヤウト云フ御考カラ出來タノガ
  卽チ此法律デアル、ソレヲ今日此場合ニ於テ此法律ニ手ヲ著ケテ、遂ニ破壞ノ
  端〓ヲ啓カレルト云フハドウ云フ譯デアルカ、昨日モ豫算委員會ノ席上ニ於
  テ反對說ヲ主張サレル委員ノ一人カラモ述ベラレタコトガアル、唯今ハ幸ニ
  シテ東洋ニ於テ小康ヲ得テ居ルトハ言ヘ、免ニ角日獨ノ間ハ交戰ノ狀態ニ在
  ル、一時我〓ハ小康ノ狀態ニ在ルコトガ出來ルト云ウテモ、其關係ニアル、
  是ヨリ後如何ナルコトニ立到ルカ、ドウ云フコトニ逢著スルカ測リ難タナイ
  今日ノ場合、成ルベク資金ハ貯蓄イタシテ置カナクテハナラヌ、積ンデ置ク
  必要ガアル今日ニ於テ、此中ヨリ········今此基金法ヲ破ル端緒ヲ啓クト云フコ
  トニナルノハ、今日ノ場合ニ於テ如何デアルカ
  〔副議長候爵黑田長成君議長席ニ著ク〕
  斯ウ云フ議論ガ昨日委員會ノ席上デ出タノデアリマス、實ニ私共モ左樣ニ存
  ズルノデアリマス、尙ホ公債償還ノ金額ノコトニ付テ、五千万圓償還ノ關係
  ガ一時非常ナ悲境ニ沈淪シテ居ッタ公債ノ價格ヲ昇騰セシメテ、中外ノ信用ヲ
  保ツ基トナッテ居ッタト云フコトハ、過日私ガ第一讀會ノ際ニ於テ質問ノ際ニ
  モ申述ベタコトガアリマス、實ニ中外ニ對シテモ公債ノ信用ヲ維持シテ居フ
  タ其根本ニ影響スルコトニナッテ參ッタノデアリマス、此點ニ付キマシテ私以
  外ノ論者ヨリ十分ニ陳述サルベキコトガアラウト存ズルノデアリマス、私ガ
  別シテ必要ト考ヘルノハ鐵道特別會計、此鐵道特別會計ガ一般會計ノ爲ニ種
  々ノ係累ヲ有シテ居ッタ、其モノヲ再ビ復タ前日ノ狀態ニ向ハシメタルコトニ
  ナルノハ、是亦鐵道特別會計法改正ニ於テ甚シク遺憾ニ存ズルノデアリマ
  ス、斯ノ如クニ、此兩案ニ對シマシテハ殆ド改正ノ理由ガ乏シイノデアリマ
  ス、ソレニ拘リマセズ、遂ニ斯樣ナ狀態ニ至ッタニ付キマシテ、私ハ先刻委員
  長ノ報告中ニアリマシタ某議員ノ意見デアリマス、ソレハドウ云フコトデア
  ルカト申シマスルト若シモ此法律ニ改正ヲ加ヘルト云フ政府ノ提案ニ贊成
  ヲシナカッタナラバ、豫算ヲ不成立ニシ、其結果ハ國防上必要トシテ昨年貴族
  院ガ專ラ主張シテ居ッタ一一師團問題ヲ遂ニ不成立ニ了ラシメルヤウナ結果ガ
  出來テハ事大事デアル、是ハ實ニ貴族院ニ對シテハ甚シイ御言葉ヲ用ヰラレ
  タモノト私ハ思フ、陸海軍ノ事ヲ問ハズ、國防問題ハ貴族院トシテハ實ニ生
  命トシテ昨年以來主張イタシテ居リ、現ニ二百八十人ノ議員中二百四十人マ
  デ其事ヲ必要トシテ主張イタシタノデアル、ソレガ今ヤ成立スル際デアリマ
  スカラ、如何ナル人ヲ問ハズ貴族院ハ實ニ其成立ヲ望ンデ居ルノデアリマス、
  貴族院ガ其成立ヲ熱心ニ望ンデ居ル其弱點ニ付ケ込ンデ、若シモ貴族院ガ此
  案ヲ通過セシメナカッタナラバ豫算ハ不成立トナリ、御前達ガ最モ必要ト感ジ
  テ居ル國防問題ハ壞レルゾヨ、實ニ手嚴シイ方法ヲ用キラレタモノダト私ハ
  思フ、ソレガ單ニ某議員一己ノ御考デアリマスナラバ、是ハ單ニ某議員一己
  ハ餘程間違ヘラレテ居ルト申シテ宜シイノデアリマス、若シモ斯樣ナ事柄ガ
  政府筋カラ出テ密ニ三四ノ間ニ、斯樣ナ方法ヲ執ラナカッタナラバ遂ニ豫算ハ
  不成立ニナッテ、國防問題ハ成立スルコトガナイゾヨト云フヤウナ意味ヲ以テ
  向ハレタト云フナラバ、實ニ不穩當極マルコトデナイカト思フノデアリマス、
  貴族院ニハ殊ニ穩和ヲ主トシテ、穩和ヲ主トシテ成ルベク無事ナルコトヲ望
  マルル方〓モ多イ、又縱シ此案ガ通過シナイト致シテモ、私共ハ鐵道豫算ニ
  ハ何等ノ關係ヲ有タヌト思ッテ居ル、鐵道豫算ニ於テハ二千万圓ノ分ハ二千万
  圓トシテ其儘ニシテ置イテ一向支ヘハナイ、一時ノ繰替ノ方法ヲ以テ何トデ
  モ途ガ付ク、又市場ニ於テ公債ガ募リ得ラルル狀況ナラバ之ヲ募ヲテ一向支
  ヘナイ、若シモソレモ出來ヌコトナラバ私ハ固ヨリ鐵道ニハ甚ダ贔負分デア
  リマス、贔負分デハアリマスガ、市場ノ狀況ドウシテモ鐵道ノ爲ニ公債ガ募
  レヌ、仕方ガナイト云フ場合ナラバ、今日ソレマデニ縮小イタシテ置イテモ
  仕方ガナイデハアリマセヌカ、是モ亦隨分誇張サレタコトヲ以テ向ハレテ居
  ルト思フ、鐵道ニ十分ノ改良ヲ盡サヌカッタナラバ危險ダ、危險デアル、サウ
  云フ威カシ文句ヲ使ハレルト皆矢張リ恐怖スルノデアリマス
  〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
  去リナガラ實際ハドウカト云ヘバ、サレバト云ッテ總テノ金額ガナイト申スノ
  デハナイノデアル、一千八百万圓ト云フモノハ鐵道ノ自營上カラモ當然支出
  シ得ル金額デアッテ、而シテ今日改良工事、改良工事ト仰セニナッテ居ルモノ
  ハドンナモノデアリマス、京濱間ノ電車ハ前ノ人ガ經畫シテ置イタモノト
  言ッテ宜イ、ソレハ現當局者ヲ敢テ責ムルトハ私ハ申サナイ、去リナガラ今年
  卽チ大正四年度ノ豫算ヲ見マスレバ直チニ分ル、多クハ東海道線ノ改良デア
  リマス、或ハ京都附近、逢坂山ノ關係、若クハ大阪、神戶、京都ニ至ル附近ノ
  コト、或ハ中央停車場近邊ノ整理ノコト、私ハ實ニ鐵道ノ經畫ニ付テハ別シ
  テ深イ同情ヲ有ッテ居ルニモ拘リマセズ、近時ノ鐵道經營ニ至ッテハ實ハ愛想
  ノ盡キルコトモアル、京濱電車、京濱間電車ノ狀況ハ何トシタ失態デアル、
  其失態ヲサモ前任者ノコトデアルト云フコトヲ元ニシテ置イテ、麗々之ヲ發
  揚シテ而シテ鐵道廳院內ノ人〓ノ更迭ノ材料ニシテ居ルノデアリマス、過失
  ノアル者、過チノアル者ヲ懲罰シテ更迭スルコトハ固ヨリ必要、喜ブ所デア
  リマス、去リナガラ斯カルコトニ名ヲ託シテ、唯其間ニ自己ト趣味ヲ同ジウ
  スル者、自分等ト都合ノ好イ者ノ爲ニ他ノ者ヲ更迭セシムルト云フヤウナ結
  果ガアッテハ實ニ相濟マヌト思フノデアリマスガ、先ヅ其事ハ姑ク措キマシ
  テ、卽チ京濱電車ノ如キモノガ、是ガ謂ハユル東海道線ノ改良工事ノ一トサ
  レテ居ルノデアリマス、京都附近ニ於ケルコトモ同樣デアリマス、其外東海
  道線ノ改良工事、改良工事ト申ス中ニハサウ云フ性質ニ屬スルモノガ多イ、
  ソレバカリデナイ、中央停車場ニ關スルコトモ同樣デアリマス、固ヨリ是等
  ノ事柄モ出來マスレバ重疊デアリマス、ガ併シ是ガ今日ドウシテモ國債整理
  基金ニマデモ手ヲ著ケナケレバナラヌト云フ場合デアッタナラバ斯樣ナコト
  ハ姑ク見合シテ置イテモ宜イデハアリマセヌカ、千八百万圓、澤山出來ル仕
  事ガアル、ソレヲ鐵道ノ道ニ餘リ明ルクナイ人ガ多イカラト云ウテ、全然三
  千八百万圓ヲ使ハナケレバ詰リ人身ニ危害デモ及ボスヤウナコトヲ仰セニナ
  ルト、人ハ驚ク、驚クノハ無理ハナイ、必要ナ交通機關ガ危クテ、乘ヲテ居。フ
  タラ何時ドンナコトガ出來ルカモ知レヌト思ヘバ、誰モ彼モ恐怖シテ、アア
  ソレナラバ御尤御尤、此ヤリ方ハ、私ハ一方國家ニ忠實ナル軍人諸君ニ對シ
  テハ此案ヲ通サナイト二個師團ガ潰レルゾ、斯ウ來ル、最モ堪マラヌ思
  ヒデアルカラ、ドウシテモ通シテ置カヌト大變ゾト云フコトニナル、又サモ
  ナイ人デ固ヨリ鐵道ノコトニモ餘リ明ルクナイ方〓ニ對シテハ、鐵道ニ金ヲ
  掛ケテ置カヌト危イ、堪マラナイ、大變ダ、ドウシテモ二千万圓持,テ行カナ
  ケレバナラヌ、兩樣共ニ隨分私ハ殘酷ナル方法ト思フ、斯樣ナコトヲ爲サラズ
  トモ、ソレナラバ若槻大藏大臣ガ是非共國家ノ爲ニ斯ウシナケレバナラヌモ
  ノダト思召シニナッテ居ルナラバ、私ハマダ了解イタシマス、マサカニ胸襟ヲ
  打割ッテ若槻君ガ言ハレタナラバ、斯カル理由テサウ思召シニナル道理ハナ
  イ、唯理由ハ是ナンデ、昨年立閣ノ當時ニ於テ政綱トシテ非募債、募債ハシ
  ナイ、是ナンデ、是ハ總理大臣ハ左程ニ御考ガナカッタカモ知レナイ、實際ハ私
  ハ却ッテ總理大臣ノ方ハ、ソレハソレデ行ケバ宜カラウ、サウナレバ宜カラウ
  ト云フ位ノ御考デアッタカモ知レナイ、獻策サレタノハ若槻君デアル、建策サ
  レタノハ若槻君デアッテ、其若槻君ハ非募債非募債、其結果ハ到頭終ヒニ私ハ
  若槻君ニ御手腕ガナイトハ申シマセヌ、御手腕ガナイトハ申シマセヌガ、
  國ノ財務ノ衝ニ當ル人ハ單ニ事務的辯明ニ堪能ナリト云フバカリデハナク、
  經濟社會ニモ或勢力ヲ有シ、經濟社會ノ多クノ人モ、其人ノ指呼ノ間ニ相應
  ジテ、茲ニ眞ニ財政上ノ經畫モ立テバ、又經濟上ノ經畫モ立ツ、都合好クバ
  金ノ融通モ付ケ得ル位ノ手腕ハ必要デナイノデアリマセウカ、私ハ決シテ若
  槻君ニ能力ナシトハ申サナイ、手腕ナシトモ申サナイ、去リナガラ唯帳尻ヲ
  合セテ置イテ說明ダケガウマイト云フノデハ、實ハ私ハ甚ダ滿足ヲ致サヌ、況
  ヤ今日大切ノ場合、獨逸帝國ニ於ケル獨逸銀行總裁ハ如何、獨逸帝國ニ於ケ
  ル現藏相、如何、單ニ事務上ノ說明、雙方ノ間ノ帳尻ヲ合ハスト云フダケデ
  ハ實ニ軍國多事ノ今日、此後如何ナル事ガ到來スルカモ知レナイト云フ場合
  ニ、甚ダ親友ニ對シテ相濟マヌカモ存ジマセヌガ、ソレダケニ私ハ又心細ク
  思フ、卽チ初メニ非募債ト云フコトガ餘リ聲ガ高カッタ、今日ハ言葉ヲ改メマ
  シテ經濟ハ現狀ナリト仰セニナル、其通リ、其通リ、其事ヲ實ハ早ク言ッテ御
  置キニナッタナラバコンナコトハナカッタ、昨年大隈伯ガ起タレタ時分ニ若槻
  藏相ガ最初カラ、大隈伯ニ現狀デアリマスルトサウ言ッテ御置キニナッタラ
  大隈伯モ亦其事柄ヲ大キク言ハレル、ソレハ總理大臣ハ都合好クソレヲ大キ
  ク言ハレルカラ、ソレハ宜カッタ、所ガ若槻君ハ非募債デ行キマセウ、Lgl
  レデ行キマセウ、行ケルカ、行ケマス〓〓ソコデ首相ハ、是ハ非募債、當
  分公債ハ募ラヌ、國民ハ安心シロソレデ物價モ廉クナル、私ハ實ハ親不孝
  ダト思フ、ソレカラ尙ホ此度ハ此我〓ノ同僚、院內ノコト、是ニ私ハ實ニ遺憾
  ニ存ズルコトガアル、固ヨリ貴族院ハ穩當ガ宜シイ、穩カガ宜シイ、去リナ
  ガラ國家ノ大事ニ際シテハ、矢張リ國民ト喜憂ヲ共ニ致スノガ至當デハナイ
  カ今日ノ場合ニ私共ハ決シテ政府全體、皆サンヲ攻擊スルトハ申サナイ、
  ソンナコトハ言ハナイ、今年ハ度〓質問シタリ、此壇ニ登リマスカラ、アア
  仲小路ハ無暗ニ此所ニ出テオカシイゾ、斯ウ仰セニナルカモ知レナイガ、
  ソレハ見方ガ惡イ、私ノ先日カラ頻ニヤッテ居リマスコトヲチヤント通ジテ
  御覽ニナルト分ル、外交ノ心配ヲ致シテ居ル、是ハ實際デアリマス、アトハ
  財政ノ心配ヲシテ居ル、其外別段他ノ大臣ニハソンナニ申シマセヌ、私ハ何ニ
  モ悉ク政府ニ反對スルノデモナカラネバ、各大臣ヲ目ノ敵ニスル積リモナイ、
  中ニハ贔屓ノ人モ大分アル、唯外交ノ點ト財政ノ點ハ甚シク心配モ致シ、眞
  實憂慮シテ居ル、ソレデ此議會ノ初メカラ外交上ノ質問ヲ二囘マデ致シ、隨
  分加藤君ニハ氣ノ毒マデノ言葉ヲ申上ゲタ、ガ併シ此事ハ國民ガ皆心配ヲ致
  シテ居ル、然ルニ此議院中ニ、極メテ大ナル勢力ヲ有ッテ多數ノ人ノ集マラレ
  テ居ル其團體ニ於テ、外交ノ事ニ付テハ一言ノ質問スラモ出ナイ出ナイ、
  質問シテ居ラヌ、シナクテモ心配シテ居ルト仰セラレレバソレダケデアリマ
  スガ、併ナガラソレハ餘リニ對岸ノ火災、國民ハサウハ思ハナイ、チットハ我
  我ト一〓ニ心配シテ吳レテモ宜シイデハナイカト云フ感ジモ起シハセヌカト
  思フ、ソレガ餘リニ冷々淡々ニ打下ゲラレテ居ルト、今度ハ反對ニ若モ怨ノ
  府トナルヤウナコトガアッテハ相濟マヌト思フノデアリマス、外交ノ點ニ付テ
  スラモ自分ハ斯ク考ヘテ居ル、然ルニ今財政上ノ點ニ付テモ最モ重大ナル關
  係ヲ有ッテ居ル國債整理基金、此問題ガ今日參ッタ場合ニ、是ニモ同樣ニ何デモ
  政府案ハ通サウゼ、政府案ハ通サウゾ、强イカ弱イカ存ジマセヌケレドモ、免
  ニモ角ニモ皆ヲ撫デ集メテ仕舞ウテ、少壯ニシテ多少意見ノアル人ハ十分ニ
  意見ヲ主張シタイ方〓モアルニ相違ナカラウト思フ、ソレヲマア言フナ〓〓、
  オトナシイコト是ハ決シテ大隈總理大臣ノ御考デハナイト思フ、大隈伯ハ
  必ズソンナコトヲ宜イトハ思召ニナラナイ、性質上サウアルト思フ、若イ者
  ニハヤラセヌデハイカヌゼ、シッカリ議論ヲセイ、是ガ大隈伯ノ御了簡ニ相違
  ナカラウト思フ、ソレヲ又多クノ大臣ガ或關係ヲ利用シテ、己ガ命ニ從フベキ
  者ガ其處ニ居ルカラト言ッテ、斯ノ如キ重要ナ案ヲ、斯ノ如キ重要ナ案ニシテ
  殆ド理由モ何モナイモノヲバ强ヒテ之ヲ通サウトスル、私ハ我〓ノ同僚タル
  溫和ナ、オトナシイ方〓ヲ憎イトハ申サナイ、寧ロサウ云フ風ニ向ケル人ガ
  甚ダ憎ラシク思フ、是ハ甚ダ罪ナコトデアル、ドウカサウ云フコトダケハ貴
  族院ニハ向ケテ貰ヒタクナイト思フ、我〓ノ所屬幸倶樂部ハ、昨朝モ熱心ニ
  攻究イタシマシタ、又昨日委員會ノ終リニ於テ集ッテ〓心ニ攻究シタ、其結果
  ハ自由討議、銘々ノ意思ニ從ッテ銘々ノ考ヘ通リニ、贊成ト思ヘバ贊成、反對
  ト思ヘバ反對スルコトニナッタ、斯クアリテコソ初メテ貴族院ノ本當ノ有樣ヲ
  現ハシテ居ルト思フ、ドウカ私ハ滿場ノ諸君ニ取別ケテ御願ヲ致スノデアリ
  やゝ、此重大ナル案ヲ、唯今申スヤウナ理由デ、差向キ此際ニ鐵道ノ二千万
  圓ノ爲ニ、國家内外ニ對シテ信用ノ維持ノ根本トモナルベキモノ、之ヲ潰シ
  テ掛ルト云フコトハ實ニ堪ラナク思フノデゴザイマス、一度サウナリマシタ
  ナラバ、此戰後矢張リ戰時ト同ジヤウニ見テ、何處マデモ日露公債ノ濟ムマ
  デハ、特別稅デヤッテ行カウト言ウタモノヲ、此所デ二千万圓ヲサウ致スト、
  必ズ玆ニ減稅ヲシタイトカ、廢稅ヲシタイトカ云フ理由ノ出テ來ルノハ當然
  デアリマス、其次ハ海軍ノ爲ニ使ヒタイ、陸軍ノ爲ニ使ヒタイ、其他各種ノ
  コトニ使ヒタイト云フコトガ出テ來ルノハ當然デアリマス、若シモ左樣ナコ
  トガ出マシタナラバ、實ニ必要ナ公債ノ基礎、戰後ニ大切ナ關係トナッテ居ル
  モノガ、玆ニ壞ハレテシマフ端〓ガ出來ルノデアリマスドウカ之ニ付キマ
  シテハ考ヲ冷カニ、ドウカ斯樣ナ蕞爾タル理由ノ爲ニ此大切ナ法律ガ破レマ
  スルヤウナ端緒ノ開ケマセヌヤウニ········縱シヤ一時多數ヲ制シタカラト申シ
  テ、ソレハ何ニモナラヌト思フ、假令少數デアリマシテモ、他日ニハ矢張リ
  靑史ニ名ヲ遺シ、一時或他ノ誘惑········ト申シテハ相濟ミマセヌカモ存ジマセ
  ヌガ、事情ニ流レ、事情ニ流レテ餘儀ナク左樣ナコトガ出來テ參ッテ、他日若シ
  モ是ガ種々ナ端〓ニナッテ參ッタナラバ、其責ハ全ク今日此案ニ贊成サレタ人
  人ノ責任ニ歸スルコトニナッテ參ラウト思ヒマス、私ハ此案ノ決議ノ際ニハ
  成ルベクハ記名投票ニ願ヒタイト存ジマス、而シテ其名ヲ長ク遺シテ置クコ
  トモ必要デアラウト思フ、縦シ又無記名投票ニナリマシテモ、隱レタルヨリ
  顯ハルルハナシ、何方ニシテモ出來ルコトデアリマスカラ、成ルベク決議ノ
  際ニハ黑白何レニ歸スルカ、他日ニ遺シテ置ク爲ニサウ云フコトニ致シタイ
  ト考ヘマス、ドウカ成ルベク諸君ノ御賛成ヲ得タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=44

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• 045・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　休憩ヲ致シマス
  午後零時十五分休憩
  午後一時二十七分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=45

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• 046・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ報〓ヲ致サセマス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  本日議員伯爵柳原義光君ヨリ四十名ノ賛成ヲ以テ道德維持ニ關スル建議案
  ヲ發議セリ
  本日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
  明治四十五年度豫備金支出ノ件外十件(承諾ヲ求ムル件)特別委員會
  大正元
  委員長公爵德川慶久君副委員長伯爵正親町實正君
  本日特別委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
  無盡業法案修正報告書
  貯蓄銀行條例中改正法律案可決報告書

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=46

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• 047・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ午前ニ引續キマシテ會議ヲ開キマス、前田
  子爵ノ登壇ヲ求メマス
  〔子爵前田利定君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=47

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• 048・前田利定

  ○子爵前田利定君　本員ハ唯今議題ニナッテ居リマス國債整理基金特別會計
  法中改正案ト鐵道會計法中改正法律案ノ特別委員ノ一人ト致シマシテ、一兩
  日前ヨリ贊成ノ意見ヲ發表イタシテ居リマスノデアリマス、先日來先輩諸君
  ノ反對ノ御所信ヲ度〓伺フ機會ヲ得マシタ、尙又唯今仲小路君ノ御演說モ承
  リマシタ、仲小路君ノ御熱烈ナル、精神ヲ籠メラレタル御意見ニ付キマシテ、
  其誠意ノ在ル所ニ付キマシテハ非常ニ敬服イタシマシタ次第デアリマス、併
  ナガラ未ダ以テ私ノ懷抱シテ居リマス所ノ贊成ノ意見ヲ抛擲スル理由ニハ伺
  ヒ取レマセヌデアリマシタ、私ハ先輩タル仲小路君ガ手嚴シキ御議論ノ攻擊
  ノ矢ヲ御振リ注ギニナッテ下サルコトデアラウト期待シテ居リマシタ、所ガ脇
  へ外レマシテ私ニ十分ナル手傷ヲ負ハセテ下サラナカッタノヲ却ッテ御怨ミニ
  思フノデアリマス、偖テ本案ニ付キマシテ贊成ノ所信ヲ申述ブルニ先チマシ
  テ、私ノ國有鐵道ノ經營ニ對スル考ヲ先ヅ以テ申述べタイト思フノデアリマ
  ス、是ハ私ノ賛成論ノ基礎ニナル所ノモノデアリマス、ソレハ國有鐵道ノ政
  策ト致シマシテハ、鐵道ヨリ生ズル所ノ收入ヲ國庫ニ入レルト云フコトハ、
  所謂國有鐵道ノ本旨ニ背クモノデアル、ソレト同樣ニ租稅ヲ以テ卽チ一般會
  計ヨリ鐵道ノ經營ノ方ヘ補給ヲスルト云フコトモ、又同ジク國有鐵道ノ本旨
  ニ背イテ居ルモノデアルト云フコトヲ信ジテ居ルノデアリマス、此立論ノ基
  礎ハ仲小路君其他反對ノ意見ヲ有ッテ居ラレル所ノ諸君ノ御意見ノ基礎ト同
  ジコトデアリマス、併ナガラ振出地ガ同ジデアッテモ、行先地ノ異ナル如ク
  ニ、立論ノ地ガ同ジデアリマシテモ、結論ガ必シモ同一デハナイノデアリマ
  ス、抑〓此國有鐵道ナルモノハ如何ナモノデアルカ、鐵道モ一箇ノ營業デアリ
  マスカラ、國家ガ收入ヲ增スト云フ目的ヲ以テ經營ヲシタナラバ、相當ノ收
  益ヲ得ラルルコトハ分リ切ッタ次第デアリマス、併ナガラ國有鐵道ノ本旨ト云
  フモノハ、國庫ノ收入ヲ增ス爲ニ經營スルモノデナイト信ジテ居リマス、卽
  チ國有鐵道、詰リ鐵道ヲ買收シテ國有ニスルト云フ所以ノ根本ニ遡ッテ考ヘ
  テ見マスト云フト一面ニ於キマシテハ軍事上ノ必要、今一ツハ運輸ノ統一
  此二ツノ根本主義カラ成立ッテ居ルコトト考ヘルノデアリマス、故ニ私設會社
  ニ於ケルガ如ク、利益トナル地方、利益トナル方面ノミニ鐵道ヲ敷設シテ、
  サウシテ收益ヲ增スコトヲ是レ圖ルト云フヤウナ主義デハ根本ニ於テナイ
  ノデアリマス、故ニ國有鐵道ハ私設會社ノ鐵道經營ニ於ケルト同樣ニ多大ナ
  ル收益ヲ充タシテ來ナイト云フコトハ分リ切ッタコトデアリマス、國有鐵道ノ
  利益線カラ得ラルル所ノ收益ハ利益ノ薄イ方ノ線路ヲ維持スル方ニ振向ケ
  ナケレバナラナイノデアリマス、其結果モット文運ガ發達シマシテ、如何ナル
  地方ニ於テモ、如何ナル目的ヲ以テモ、鐵道ヲ架ケタ其地方カラ十分ナル收
  益ヲ得ラルルヤウナ世ノ中ナラバ格別デアリマスガ、今日ノ我日本ノ程度ニ
  於キマシテハ、中〓サウ多クノ收入ハ得ラレナイト云フコトガ當リ前ノコト
  デアラウト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、又縱シンバ將來ニ於キマシテ、此
  官營鐵道ノ收益ガ非常ニ擧ッテ、サウ云フヤウナ時機ガアルト致シマシテモ、
  其收益ヲ國庫ノ收入ニ入レルト云フコトデアリマスレバ、是ハ鐵道ニ乘ル所
  ノ人間ヘ課稅スルト同ジコトデアラウト思フノデアリマス、又一般會計カラ
  シテ鐵道經營ノ方ニ金ヲ注ギ込ムト云フコトハ、鐵道ニ乘ラヌ人間ニ課稅ヲ
  スルト同ジコトデアルンデアリマス、故ニ國有鐵道ノ本旨ト云フモノハ、此
  二ツノ限度內ニアラネバナラヌト考ヘテ居ルノデアリマス、卽チ若シ十分ナ
  ル收益ガ上ガッタナラバ、國庫ニ入レナイデ、ソレヲ線路ノ擴張ニ使フ、或ハ
  賃銀ノ低廉ニナルヤウニスル、是ガ國有鐵道ノ本旨デアラウト思フノデアリ
  マス、故ニ獨逸ノ諸聯邦ノ統計ヲ見マシテモ、唯一ツ「プロイセン」ノミガ
  非常ニ收益ヲ上ゲタ、財政學ノ原則ニ反シテ國庫ノ收入ニ致シテ居リマスル
  ガ、「ザクセン」其他ノ諸聯邦ニ於キマシテハ、矢張リ多大ノ損失ヲ每年計上
  イタシテ居ル次第デアリマス、單リ日本ノ國有鐵道ノミデハナイヤウデアリ
  マス、飜ッテ我國ノ國有鐵道ノ成立チマシテカラ以來ノ年月ハ僅ニ十年ニ垂ン
  トスル位ノコトデアリマス、而カモ軍國ノ此多事ノ時ニ方リマシテ、經營費
  ニ差支ヘタカラト云ウテ、其儘ニ必要ナル施設ヲ怠慢ニ付スルト云フコトハ
  到底許サヌノデアリマス、然ルニ多年來ノ財政ノ狀態カラ致シテ、鐵道院ノ
  經畫ハ貴族院デ以テ·貴族院ノミナラズ、議會デ以テ協贊ヲ受ケタル豫定
  ノ費用ノ下ニ經畫シタ所ノ事業ヲ圓滿ニ施設スルコトハ出來ヌ狀況ニナッテ
  居リマス、卽チ協賛ヲ受ケタル豫算ノ外ニ、鐵道ノ實行豫算ヲ造ッテヤラネバ
  ナラヌヤウナ狀況ニナッテ居ルノデアリマス、一例ヲ以テ申シマスレバ、大正
  三年度ニ於キマシテハ、議會ノ協賛ヲ得マシタル鐵道費ハ六千万圓デアッタ
  ニ拘ラズ、實際鐵道院ガ使用シタル金額ガ四千五百万圓ニナッタノデアリマ
  ス、斯ノ如ク今日ニ始マッタモノデナイノデ、多年來此鐵道ノ經營ト云フモノ
  ハ十分ナル資金ヲ得ラレナイト云フ爲ニ、線路其他ガ非常ニ痛ミヲ生ジタト
  云フコトハ顯著ナル事實デアリマス、ソコデ此度政府ニ於キマシテ、何トカ
  シテ鐵道ノ改良ヲ圖ラネバナラヌ、重モニ力ヲ改良ノ方ニ注グ、併ナガラ建
  設モ忽諸ニ付スベカラザルモノデアルカラ、本線竝ニ輕便鐵道ノ敷設ノ方ノ
  コトモ留念ヲ致シテ經畫ヲ致シテ居ル次第デアリマス、如何ニ其資金ヲ振リ
  向ケテアルカト云フト、建設費ノ方ニ千万圓、改良費ノ方ニ二千八百万圓振
  向ケテアル次第デアリマス、所ガ其資金ニ付キマシテハ二千万圓ノ資金ハ
  鐵道ノ益金中ヨリ充タスコトハ無論出來ヌノデアリマスルカラ、何トカ此調
  達ノ方法ヲ講ジナケレバナラヌト云フ難場ニ立ッタノデアリマス、玆ニ於テ政
  府ノ考ト致シマシテハ、減債基金ノ中カラ二千万圓ヲ此方へ投資スルト云フ
  決心ヲ執ッタ次第デアルノデアリマス、果シテ財政經濟ノ狀況ノ下ニ、斯ルコ
  トヲ政府ガ決心シタト云フコトハ、已ムヲ得ナイ事情ニ基イテ居ルノデアル
  カ、如何デアルカト云フコトヲ我〓ハ深ク〓究シナケレバナラヌコトダラウ
  ト考ヘルノデアリマス、ソコデ抑〓此二ツノ法案ハ先キニ委員長寺島伯カラ御
  報告ノアリマシタ通リニ、相牽聯シテ密接離ルベカラザル關係ニ立ッテ居リ
  やくろ而シテ又此兩法案ハ本年度追加豫算トモ亦密接離ルベカラザル因果關
  係ニ立ッテ居ルノデアリマス、卽チ此兩法案ガ可決イタシマスレバ、追加豫算
  ガ成立スルノデアリマス、此兩法案ガ否決サレマスレバ追加豫算ハ不成立ニ
  終ルノデアリマス、斯ル編成ヲシタト云フコトハ、政府ノ故意デアッタカドウ
  カ、其邊ハ私ハ分リマセヌ、我〓ハ唯善意ニ解釋ヲシテ居ルノデアリマス、
  免ニ角事實ニ於テハ因果關係ニナッテ居ルノデアリマス、而シテ本年ノ追加豫
  算ノ內容ヲ見マスト云フト、諸君モ御承知アラセラルル通リニ、中〓重大ナ
  ル經費ガ見積ラレテアルノデアリマス、例ヘテ申シマスレバ數年來政界ニ風
  雲ヲ捲キ起シツツアル所ノ增師ノ經畫モ這入ッテ居ルノデアリマス、又海ノ日
  本トシテ海防ノ經畫モ中ニ這入ッテ居ルノデアリマス、事柄ハ小サクハアリマ
  スケレドモ、航空機ニ關スル費用モ這入ッテ居ルノデアリマス、而シテ殊ニ此
  增師ノ事ニ付キマシテハ貴族院多年ノ希望デアリマス、陸海軍ノ國防ガ偏輕
  偏重ニナラヌヤウニシタイト云フ希望ヲ有フテ居ル所ノモノデアリマス、言ハ
  バ餘程重大ナル運命ニ今此貴族院ハ立ッテ居ルモノト考ヘルノデアリマス、是
  ハ餘程冷靜ニ考ヘマシテ、此解決ヲ與ヘナケレバナラヌコトダラウト考ヘル
  ノデアリマス、故ニ我〓ハ此兩法案ヲ〓究、論究スルニ付テハ、此追加豫算ナ
  ルモノヲ腦中ニ寸時モ離スコトハ出來ナイノデアリマス、偖斯ノ如ク此兩法
  案ハ極メテ重要ナル運命ヲ荷フテ居ル所ノモノデアル、又事柄自體ニ於キマシ
  テモ中〓重要ナルモノデアリマス、併ナガラ此改正ノ趣旨ハ至ッテ簡單ナモ
  ノデアリマス、詰リ鐵道ニ要スル所ノ資金ヲ調達セムガ爲ニ、又一面ニ於キ
  マシテハ年々海外ヘ流出スル所ノ外債ノ元利ノ拂ト致シマシテ金貨ヲ海外ニ
  拂ハネバナラヌ、其事ヨリシテ貨幣ノ制度ノ基礎ヲ堅實ニシヤウト、斯ウ云
  フ二ツノ意味ニ過ギナイノデアリマス、誠ニ事柄ハ簡單デアリマス、故ニ其
  根本タル改正ノ趣旨ニ從ヒマシテ、恰モ河ヲ源カラ河口ニ下ルガ如クニ、改
  正ノ趣旨ニ從ヒマシテ論及ノ步ヲ進メタイト思フノデアリマス、現時日本ニ
  於ケル此官有鐵道ノ現在ノ實況ハドウデアルカ、鐵道自身ニ有スル所ノ力ヲ
  以テ建設改良ガ出來ルヤ否ヤ、又改良建設ノ必要アリヤ否ヤ、必要アリトス
  レバ最少限要ル所ノ費用ハドノ位デアルカ、之ヲ先ヅ以テ論斷シヤウト思フ
  ノデアリマス、今日ノ鐵道ノ經營ノ狀況ヲ見マスレバ前申上ゲマシタ通リニ、
  今年度ニ於キマシテハ千八百万圓ノ益金ヲ見ルニ過ギナイノデアリマス、而
  シテ鐵道院ノ七年經畫ニ依リマスルト、大正四年度ニ於キマシテハ三千八百
  万圓ノ費用ヲ要スルノデアリマス、而シテ其中ノ一千万圓ヲ以テ建設費ニ充
  テ、二千八百万圓ヲ以テ改良費ニ充テ居ルノデアリマス、其改良費ハ如何ナ
  ルコトニ用ヒラレテ居ルカト申シマスト命數ノ將ニ盡キムトスル所ノ線路
  改良、隧道、橋梁、停車場、倉庫、聯絡ノ船舶、是等ノモノニ付テ改良ノ費
  用ヲ投ジテ居ルノデアリマス、私ハ其表ヲ仔細ニ見マシタ、併ナガラ實地ニ
  視察スルノ機會ヲ得マセヌカラ、果シテ政府ノ所信ノ如ク危險ニ瀕シテ居ル
  部分ガアルヤ否ヤ、又實際ニ適應シナイヤウナ狀況ニ停車場、倉庫ノ狀況ガ
  ナッテ居ルカドウカト云フコトハ、目擊シマセヌカラ詳ニ知リマセヌ、併ナ
  ガラ想像スル所ニ依リマスレバ、現時架ッテ居ル所ノ鐵道線路ナルモノハ、
  明治五年以來明治四十四年ニ亙ツテ居ルモノガ多イノデアリマス、而シテ
  近來非常ニ進ンダル所ノ此鐵道ノ進步ト比ベテ考ヘテ見マスト以前ハ鐵
  道ノ「レール」ニ於キマシテハ、六十一「ポンド」デ事ガ濟ンダノデアリマ
  スルガ、今日ハ機關車ノ大キクナッタ爲ニ、ドウシテモ七十五「ポンド」ノ「レ
  ール」ヲ要スルト云フコトデアリマス、又機關車ノ重量モ以前ハ四十五噸デ
  アリマシタノガ、今日ハ百二噸ノ目方ニナッテ居ルサウデアリマス、機關車ノ
  如キハ前カラ比ベテ見マスト、二倍ニ重量ガ殖エテ居ルノデアリマス、此二
  倍ニ重量ガ殖エマシタ所ノ機關車ヲ以テ、明治五年カラシテ四十四年ニ亙ツ
  テ架ケタ所ノ「レール」········多クノモノハ六十一「ポンド」ノ「レール」ノ上
  ヲ滑ッテ居ルノデアリマス、而シテ鐵道院ノ經濟ノ狀況ガ潤澤デゴザイマセヌ
  ガ故ニ、多年鐵道ヲ虐待シテ居ルノデアリマス、如何デアリマセウカ、線路
  ノ傷ミ、隧道ノ脆弱、橋桁ニ致シマシテモ以前ノ狀況トハ變ッタニ拘ラズ、依
  然トシテ之ヲ存シテ置クト云フコトハ、如何ナモノデゴザイマセウ、又以前
  ニ於テハ機關車ノ力ガ少イカラ、隨ッテ列車ノ長サモ短クテ濟ンダノデアリマ
  スガ、機關車ノ力ガ遙ニ强クナッタカラ客車モ貨物車モ長ク繫ガナケレバナ
  ラヌヤウニナリマシタノデ、隨ッテ停車場ノ狹隘ヲ感ジテ來ルト云フコトハ、
  是ハ當然アリ得ル結果ダラウト思ヒマス、是等ノコトヲ能ク吟味シテ考ヘテ
  見マスト云フト、私ハ政府ノ經畫ガ餘リ花大ナルモノデハアルマイ、斯ウ私
  ハ信ズルノデアリマス、聞ク所ニ依リマスト、政府部內ノ大藏省ノ方デモ其
  計數ノ大ナルニ驚カレマシテ、愈〓吏員ヲ諸所ニ派遣サレテ、其實地ヲ視察サ
  レタサウデアリマス、視察サレタ結果、是ハ尤デアルト云フノデ、大藏省ガ
  其豫算ヲ是認サレター云フコトヲ聞イテ居リマス、或御方ハ改良費ハ千万圓
  デ事ガ足リル、自分ノ見ル所ニ依ルト千万圓デ足リルト、或ハソレモ一ノ御
  意見デアルカモ知レマセヌ、ケレドモソレハ其御方ハ何カ據ル所ガアッテノ
  御見込デアリマセウガ、私ハ矢張リ政府ノ所信ノ如ク、其位ノ費用ヲ掛ナ
  ケレバナラヌコトデアラウ、多年鐵道ヲ虐待シテ居ルシ、以前ノ鐵道ノ經營
  ガ極メテ貧弱デアッタカラ、ソレハ無理ノナイコトデアラウ、斯ウ考ヘルノデ
  アリマス、又反對論者ノ御方ハ、例ヘバ上野カラシテ鍜冶橋ニ通ズル線路ノ
  如キ、又ハ萬世橋カラシテ中央停車場ニ通ズル鐵道ノ如キ、是ハ不急ノモノ
  デアル、是ハドウモ急ヲ要スルモノトハ思ヘヌト、成ルホド是モ御尤ノ御考
  デアルカ知レマセヌガ、私ノ見ル所ハ、中央停車場ノ出來タ以上、之ヲ中央
  停車場トシテノ働キヲ十分ナラシメムニハ、各線ノ振出シ停車場ニ連接スル
  ト云フコトハ、最モ急務ナコトデハアルマイカ、又軍事上ノ理由カラ考ヘテ
  見マシテモ、上野ト萬世橋、萬世橋ト中央停車場、此連接ガ出來テ居リマシ
  タナラバ、東北ノ車ヲ直チニ下リルコトナクシテ關西ノ方ニ運ブコトモ最モ
  容易ナノデアリマス、今日軍國多事ノ時ニ當ッテ、今日日本ノ國際狀態ハドウ
  云フ風ニ變化シテ行クカ、歐洲ノ戰亂ニ於ケル我國ノ地位ハ如何ナルモノデ
  アルカ、我國ハ如何ナル決心ヲ要スルカ、ソレ等ニ思ヒ至リマシタナラバ、
  軍事上ノ施設ニ遺漏ノナイヤウニ心掛ケテ置クト云フコトハ、最モ機宜ニ適
  シタ處置ト考ヘルノデアリマス、サテ鐵道ノ改良建設ト云フコトガ必要デア
  ルモノト玆ニ斷定ヲ致シマスレバ········若シモ鐵道ノ必要ト云フコトハ左程デ
  ナイ、益金ノ範圍デ事ガ足リルト云フ御考ヲ立テラルル諸君ガアレバ、ソレ
  ハ根柢ニ於テ我〓ト意見ガ違フノデアリマスカラ、最早ソレマデノコトデア
  リマスガ、幸ニ諸君ニ於カレマシテモ、成ルホドソレハ必要ナモノデアル、
  サウ云フ御考デアリマスレバ、其次ニ起ッテ來ル所ノ問題ハ、然ラバ其資金ヲ
  如何ニシテ調達スルカト云フコトノ問題ニ逢著シナケレバナラヌノデアリマ
  ス、然ルニ日本ノ經濟財政ノ狀態ニ於キマシテハ、先キホド寺島伯爵ガ委員
  長トシテ御報告ニナリマシタ如ク、内債モ外債モ此際募ルト云フコトハ
  方ハ不可能デアル、又一方ハ甚ダ不利益ナコトデアル、其内債外債ノ募集ガ
  不可能不利益デアルト云フコトニ付テハ、本員ハ茲ニ申述べマセヌ、既ニ委
  員長寺島伯爵ヨリ其點ニ付テハ詳ニ御報〓ニナッテ居リマスル故ニ、其點ハ省
  略イタシマス、然ラバ如何ナル途ニ依ッテ調達シタラ宜イカト云フ問題ガ茲ニ
  生ズルノデゴザイマス、鐵道會計法第二條ニ據リマスト若シ益金ノミデ不
  足ナ場合ニハ公債ヲ募ルカ、又ハ他ノ特別會計其他ヨリ借入スルコトガ出來
  ルト云フ規定ガアリマス、私モ成ルベクハ一般會計ト特別會計トノ間ニ連鎖
  ハ結ビタクナイノデアリマス、何等カ別ノ方法ヲ以テ此資金ガ調達シ得ラル
  ルナラバ、ソレニ越シタコトハナイノデアリマス、然ルニ如何セム他ノ特別會
  計ト申シマシテモ、預金部ヨリ外ニナイノデアリマス、預金部ノ持ッテ居ル公
  債ヲ二千万圓買入償還ヲ行ヒマシテ、預金部ニ二千万圓ノ公債ヲ引受ケサセ
  ル、是モ一ツノ方法デアラウト思フノデアリマス、此方法ハ事新シクモゴザイ
  マセズ、多年政府ガ遺繰財政ノ一ツトシテ預金部ヲ利用シテ今日マデ來テ居
  ッタノデアリマス、是ハ甚ダ姑息彌縫的ノ處置デアリマス、姑息彌縫的ノ處置
  デモ永續キガスレバマダ宜シウゴザイマスルガ、今日預金部ノ狀態ハサウ豐
  富ト云フ譯ニモ參リマセヌ、地方ノ公共團體ヤ產業組合其他ニ低利資金ヲ融
  通スルト云フコトヲ主トシテシナケレバナラヌ、其本分ヲ履行スルコトガ殆
  ド出來ナイヤウナ狀況ニナッテ居ルノデアリマス、ノミナラズ先キホド委員長
  ノ御報告ニナッタ通リ一面ニ於テ五千万圓ヲ償還イタシマシテモ、他ノ一面ニ
  於キマシテ二千万圓若クハ千五百万圓ヲ是マデノヤウナ姑息ノ方法ニ依ッテ、
  一方ニ於キマシテ募債ヲスルト云フコトハ誠ニ無意義ナコトデアルノデアリ
  マス、ノミナラズ借入レル時ニハ無論額面以下デ借リマシテ、ソレヲ償還ヲス
  ル時ニハ額面デ拂ハナケレバナラヌ、國庫ノ受クル所ノ損害ハ年ヲ重ヌルニ
  從ッテ益〓甚大ヲ加ヘテ行ク事柄デアリマス、斯樣ナル姑息ノ方法ヲシテ行ク
  ト云フコトハ、餘程考ヘナケレバナラヌコトダラウト思ヒマス、現ニ明治三十
  九年ニ於キマシテハ日露ノ大戰役ヲ經マシテ、我日本國ハ驚クベキ負債ヲ脊
  負ッテ居ルノデアリマス、其額ハ二十一億、端數ハ除キマス、約二十一億デア
  リマス、然ルニ今日ドレダケノ負債ヲ償還スルコトヲ得テ、荷ガ輕クナッテ居
  ルカト申シマスト、豈圖ラムヤ二十五億六百万圓ト云フ數字ニナッテ居ルノデ
  アリマス是ハ一方ニ還シテモ一方カラ募ルカラ何モ役ニ立タナイノデアリ
  やす、政府ガ斯ル姑息ナ彌縫ノ策ヲ此際打切ッテ、根本的ニ財政政策ノ治療ヲ
  シヤウト云フ、其精神ハ私大ニ贊同シテ居ル次第デアリマス、然ラバ此減債ノ
  基金二千万圓ヲ鐵道ニ振向ケルノ已ムヲ得ザルコトト考ヘマシテ、如何ニシ
  テ其調達ノ形式ヲ執ッタラ宜カラウカト云フ問題ガ玆ニ生ジテ來ルノデアリ
  マス、一般會計トノ關係ヲ續ケナイヤウニシヤウト致シマスレバ、預金部ニ持
  ッテ居ル所有ノ公債ヲ買入償還ヲシマシテ、其現金ヲ預金部ノ特別會計カラ鐵
  道會計ノ方へ直接ニ特別會計同士ノ間ニ於テ貸借ヲスル、此方法ガ一般會計
  ニ觸レナイデ事ガ濟ムノデアリマス、反對ノ御方ノ氣ニナサル所ノ鐵道會計
  法ノ第二條ヲイヂクラナイデ濟ム方法ナノデアリマス、此方法ガ善良ニ執リ
  得ラレマスレバ、無論本員ハ贊成スルノデアリマス、併ナガラ玆ニ困ッタコト
  ト云フモノハ預金部ニ持ッテ居リマス所ノ所有公債ノ額ハ、本年度ノ二千万
  圓クラヰハ買入償還ノ目的物ニナルコトガ出來マスルケレドモ、迚モ每年繼
  續的ニハ行クモノデハナイノデアリマス、又預金部ノ持ヲテ居リマス所ノ現金
  ハ甚ダ貧弱デアリマシテ、ソレニ應ズルコトハ出來ナイノデアリマス、假ニ預
  金部ノ持ッテ居リマス所ノ所有ノ公債ヲ買入償還ヲシテ、其現金ヲ鐵道會計ニ
  渡シタトシテ先ヅ考ヘテ見マス、ドウ云ウ結果ガ玆ニ起ッテ來ルカ、元〓此預
  金部ナルモノハ、恰モ官營貯蓄ノ觀ヲ爲シテ居ルモノデアリマスル、民間カラ
  シテ、各地方カラシテ零碎ナル所ノ資金ヲ此預金部ニ吸收シテ居ルノデアリ
  マスデアリマスカラシテ、イツデモ預ケ主ガ來テ金ヲ引出シタイト云フトキ
  ニハ、イツデモソレヲヤラナケレバナラナイノデアリマス、之ガ爲ニハ預金部
  ハ恰モ國庫ニ於キマシテ正貨ノ準備ガ必要デアルト同樣ニ、預金部ニ於キ
  マシテ擔保物タル有價證劵ガナケレバナラナイノデアリマス、其有價證劵ヲ
  賣飛バシテ仕舞フテ、サウシテ鐵道會計ノ方ヘ貸與ヘテ、其代リニ借用證文ヲ
  鐵道會計ノ方カラ預金部ガ握ッテ居ル、成ルホド預金部ト鐵道會計トノ間ニハ
  貸借關係ハ成立ッテ居ルノデアリマセウ、併ナガラソレヲ以テ第三者タル所ノ
  預ヶ人タル所ノ國民ニ對抗スルコトハ出來ナイノデアリマス、此不融通的ナ
  ル借用證文ガ、漸次ニ預金部ノ中ニ堆積シテ行ッタナラバ如何デアリマセウ、
  預金部ノ信用ト云フモノハ全ク地ニ墜チマス、預金部ノ信用ガ地ニ墜チルノ
  ミナラズ國家ノ信用ハ地ニ墜チテ仕舞フノデアリマス、故ニ斯ノ如キ方法ハ
  本員モ執リタイト思ヒマスルノデアリマスルガ、其結果ニ想到シテ考ヘテ見
  マスト云フト、此方法ヲ執ルコトハ出來ナイノデアリマス、然ラバ殘ル所ノ方
  法ハ矢張リ政府ノ經畫サレタル通リニ、ドウセ減債基金ヲ二千万圓減ラスト
  云フ決心ヲ採ッタ以上ハ、預金部ヲ潛フテ行クカ、潛ラナイカノ二ツデアリマ
  ス、潛フテ行ケバ右ノヤウナ不利益ナル結果ヲ生ズルト云フコトニ想ヒ到リマ
  スレバ、寧ロ一般會計カラシテ眞直ニ一直線ニ鐵道會計ノ方へ繰入レタ方ガ
  サウ云フヤウナ惡ルイ結果ガ出ナイノデアリマス、而シテ其直接一般會計カ
  ラ貸付ケタ利益ト致シマシテハ、ドウ云フコトガアルカト申シマスト云フト
  是迄ノ彌縫姑息的ナル而カモ病膏盲ニ入ッテ居ル所ノ財政ノ政策ヲ根本的ニ
  治療シテ、ドウセ出來ナイモノナラバ表面バカリ繕ッタッテ何ニモナラヌノデ
  アル、徐ロニ堅實ナル政策ノ樹立スルマデ、簡明ニ一般會計カラ貸付ケルト云
  フ方法ヲ執ッタ方ガ宜イト思フノデアリマス、第二ニハ此兩法案ノ改正ノ結果
  ト致シマシテ、確實ニ每年內外債何レヲ問ハズ、宜シク政府ノ見ル所ニ依フテ
  宜シク按排シテ、正貨ノ準備ニ危殆ノコトガ起ッテ來ナイヤウニ、內債外債宜
  シク按排ヲシテ、確實ニ三千万圓ノ金ヲ還シ得ルト云フ經畫ガ茲ニ根本ニ立
  ツノデアリマス、是迄ハ五千万圓ト標榜シテ居リマスガ、其實ハ矢張リ三千万
  圓以下デアリマシテ、不利益ナル公債ヲ募ルト云フコトカラ比ベテ見マスレ
  バ、私ハ一進步デアルデアラウト思フノデアリマス、斯ノ如キ理由ニ依リマシ
  テ今日此際國有鐵道ノ財政學ノ見地カラ申シマスレバ、甚ダ違例デアル、原則
  ニハ反シテ居ル、併ナガラ此國運ニ伴ウタル鐵道政策ハ一日モ忽諸ニ附スル
  コトガ出來ナイモノトシタナラバ、資金ハ是非トモ何等カノ方法ヲ以テ調達
  ヲシナケレバナラヌ、斯ウ決心ヲシタ以上ニハ、斯ウスルヨリ外ニ仕方ガナ
  イノデアリマス、併ナガラ若シ反對論者ノ中ニアリマシテ、斯ウ云フ腹案ガ
  アル、斯ウ云フ風ニスレバ宜イデハナイカト云フ明瞭ナル御說明ニ接スル機
  會ヲ得マシタナラバ甚ダ仕合セナコトト考ヘマスルガ、是マデニ伺ヒマシタ
  所ノ反對論者ノ御意見ノ中カラハ、私ハ其財源ヲ見出スコトハ出來ナイノデ
  アリマス、或御方ハ是ハ鐵道公債ナルモノハ生產的公債デアル、不生產的公
  債デハナイノデアル、生產的公債デアルカラ差支ハナイ、斯ウ云フ御話モ出
  マシタケレドモ、成ルホド此公債ヲ募ル目的トシマシタナラバ、不生產的公
  債ヨリモ生產的公債ノ方ガ至極結構ノコトデアラウト思フノデス、併ナガラ
  今日ノ場合ニ於キマシテ幾ラ目的ガ宜カラウガ、公債ヲ募ル其事ガ是マデノ
  旣存ノ公債ノ價値ヲ下落サセ、又日本公債ノ信用ヲ失墜セシメ、又民間ノ經
  濟ヲ壓迫スル、又依然トシテ國債ハ大キナ高ヲ負ウテ居ラナケレバナラヌ、
  少シモ好イ結果ハナイノデアリマス、故ニ此御說ニモ服從スルコトハ出來ナ
  イノデアリマス、斯ク論ジ來リマスルト私一己ノ考デハアリマスルケレド
  千、ドウモ此方法ニ依ルヨリ外ニ仕方ガナイトシマスレバ、已ムヲ得ズ贊成
  スルヨリ外ニナイノデアリマス、固ヨリ根本ニ於キマシテ公債政策ヲ執ルト
  云フコトハ絕對ニ惡イト云フノデハナイノデアリマスルカラ、內外市場ノ經
  濟景況ガ良クナリマシテ國家ノ不利益ナル方法ニ依ラズシテ此鐵道公債ヲ募
  リ得ル時機ガ來タナラバ、無論公債ヲ募ル方ガ宜イダラウト思ヒマス、事ハ
  實際ニ應ジテ考ヲ立テナケレバナラヌノデアル、曾テ委員會デ申述ベマシタ
  通リ、實行ノ出來ナイ名論卓說ハ幾ラ伺ヒマシテモ此事實ヲ動カスコトガ出
  來ナイト斯ウ思フノデアリマス、終リニ臨ミマシテ本員ハ以上縷々申述べマ
  シタル理由ニ依リマシテ此案ヲ贊成イタシマスルガ、元〓是ハ會計法上ノ變
  例デアリマスカラ、政府當局者ト致シマシテハ、一日モ早ク國有鐵道ノ政策ヲ
  樹立サレテ、サウシテ自營以テ經營ヲ遂行セラルル日ノ到來スルヤウニ折角
  御勉强下サラムコトヲ切望シテ止マヌ所デアリマス
  〔男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=48

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• 049・高橋是清

  ○男爵高橋是〓君　諸君私ハ此國債整理基金特別會計法ノ改正ニ對シテ反對
  ノ意見ヲ持ッテ居リマスルノデ、其理由ヲ陳述ヲ致シテ此政府案ニ反對ヲ致
  ス、此基金法ノ立テラレマシタ初ニ當リマシテ········日露戰爭中ニ本員ハ政府
  ノ命ヲ受ケテ外債ヲ募集ニ從事シテ居リマシタ關係カラシテ、戰時中ニ於テ、
  尙ホ其後ニ於テ、我政府ノ募集ニ助力シテ呉レマシタル歐米ノ資本家、是等
  ガ其跡始末ニ付キマシテ餘程親切ニ考ヘマシタ、私ヲ經テ時ノ政府ニ助言的
  建言ヲ致シマシタ、ソレガ基ニナッテ居ルノデアリマス、其大意ハ日露戰爭ノ
  結果ハ日本政府ガ一錢ノ償金ヲモ取ルコトガ出來ナカッタ、而シテ戰爭中ニ日
  本ノ公債ノ歐米ニ於テ募集セラレタトキニ應募ノ狀況等ハ如何デアッタカ、卽
  チ倫敦ノ先日歿シマシタ「ロスチヤイルド」卿ナド四十餘年ノ間、倫敦ノ經
  濟界ニ働イテ居ルガ、日本ノ戰時中ノ公債程ニ頻々ト多額ニ出テ、而カモ其
  度ニ十倍乃至三十倍ノ應募者ヲ以テ成功シタト云フコトハ未ダ四十餘年間、
  倫敦ノ經濟界ニ自分ガ立ッテ居ッテ例ノナイコトデアル、併ナガラ之ヲ見テ日
  本政府及日本ノ國民ガ俄ニ日本ノ財力ノ信用ガ斯ノ如クニ歐米間ニ生ジタ、
  又高マッタト思ウタナラバ大ナル誤解デアル、是ハホンノ日本ノ財力ノ信用ガ
  芽ヲ生ジタニ過ギナイノデアル、故ニ此芽生エニ培ウテ、之ヲ大切ニシナケ
  レバ將來日本ノ却ッテ禍ニナルノデアル、而シテ此信用ノ芽生エヲ培フ場合ニ
  於テハ如何ナル手段ヲ執ルノカト申シマスルト、聞ク所ニ依レバ此戰爭中ニ
  於テ世界無比ト當時稱ヘラレタ日本ノ國民ハ、其有スル所ノ財產ヲ擧ゲテ
  軍費供給、軍費供給デ尙且ツ常カラシテ輕カラザル所ノ稅ヲ、尙ホ一層重キ
  稅ヲ負擔シテ忍ンデ居ッタ、是ハ戰爭中デアルカラ出來タノデアラウ、免角戰
  爭ナトガ熄ミマスト云フト、ソレ迄ニ國民ガ重稅ニ甘ンズルト云フコトハ出
  來ナイモノデアル、併シ此重イ負擔ヲ以テ尙ホ國民ガ銘々其事業ニ從事シ、
  日本ノ產業工業ノ發達ヲスルコトガ出來レバ誠ニ仕合デアル、若シ其負擔ガ
  重イ爲ニ此峠ヲ越スコトガ出來ナイ、卽チ今後ノ日本ノ產業工業、之ヲ發逹
  シテ益〓外國ノ貿易ヲ增進スルコトノ運ビガ取レナイト云フホドノ重稅デア
  ルナラバ、何事ヲモ差措イテ先ヅ國民ノ負擔ヲ輕クシテ、サウシテ產業ノ發
  達ニ十分ニ働ケルヤウニシテオヤリナサラナケレバナラヌ、卽チ日本ノ經濟
  上ノ發達ガ十分ニ遂ゲラレテ、益〓外國貿易ガ盛ンニナルト云フ徵候ガ現レテ
  來マセヌト云フト、此戰時中ニ多額ノ日本ノ公債ニ應募シテ、之ヲ持ッテ居ル
  所ノ放資者ハ不安心ノ念ヲ起スノデアリマス
  〔副議長侯爵黑田長成君議長席ニ著ク〕
  是ニ安心ヲ與ヘルノガ卽チ日本ノ此生ジタ芽生エノ信用ヲ培ウテ之ヲ益育
  テル所以デアリマス、幸ニシテ此非常特別稅ナル重イ稅ヲ負擔シテ、尙ホ其上
  ニ山坂ヲ越ヱルコトガ出來ルト云フ力ガ國民ニアルノナラバ此戰時中ニ費
  シテ居ル所ノ軍費ニ充テテ居ル公債、之ヲ如何ニシテ確實ニ償還ヲスルカト
  云フコトノ途ヲ立テテ行ッ、、公公債所有者ニ安心ヲ與ヘテ、サウシテ日本ノ
  今日芽生エノ信用ヲ益育テルヤウニナサイマシ、是ガ資本家ノ助言的建言デ
  アリマス、時ノ元老、總理大臣、大藏大臣集會セラレテ私ヲ二度マデ其席ヘ御
  呼ビニナッテ其傳言ヲ聽カレ、又意見ヲモ徵セラレタ、ソレガ基ニナッテデス、
  此整理基金特別會計法ト云フモノガ出來タノデ、松方侯モ最モ熱心ニソレヲ
  主張セラレ、井上侯、尙ホ一層熱心ヲ以テ、是ハ豫算ナドデ極メテ置イタノデ
  ハイケナイ、將來此目的ヲ遂ゲルマデ變ヘルコトノ出來ヌヤウニ、必ズ法律ヲ
  以テシナケレバナラヌト云フヤウナコトマデ主張サレタ、阪谷男爵ガ法律デ
  決メルト云フト萬一ノ時ニ融通ガ利カナクナリマスカラ、豫算デソレヲヤッタ
  ラドウデアリマセウト云フ意見ヲ述ベタ時ニハ、井上侯ハ色ヲ變ヘテ怒ラレ
  タ、左樣ナコトデ此法律ガ出來マスト同時ニ、海外ニハソレ〓〓此事ヲ傳ヘマ
  シテ、而シテ尙ホ彼ノ戰爭ノ初メニ稅關ノ收入ヲ抵當トシテ二囘ニ募集シマ
  シタ所ノ六分利附公債二億二千万圓ヲ償還スル爲ニ、更ニ公債ヲ募レト云フ
  政府ノ命令ガアッテ、アチラヘ參リマシテ、此減債ノ手段ヲ話シマシタトキニ、
  今日ト違ッテマダ日本ノ狀態ニ暗イ彼等デアリマシテ、今日ノ政府ハソレデ
  宜イカ知ラヌガ、政府ガ更ッタラ何時此減債基金ト云フモノヲ減ラスカ、無ク
  ナスカ分ラヌヂヤナイカト云フカト云フ質問マデ受ケタ、日本ト云フモノハ
  憲法モアリ、貴衆兩院ガアリ、時ノ政府ガ勝手ニ法律ヲ動カスコトハ出來ナ
  イ、此兩院ノ協賛ヲ經ナケレバ動カスコトハ出來ナイ憲法ノアルコトカラ說
  明ヲ與ヘテ、ソレナラ誠ニ安心デアルト云フコトデアッタ、其安心ト云フモノ
  ニ依ッテ、彼ノ稅關收入抵當ノ比較的短期ノ六分利附ノ公債ヲ無擔保五分利附
  ノ公債ヲ募ッテソレヲ償還シタノデアリマス、尙ホ其後モ或ハ內國ノ國庫債劵
  ヲ償還スルガ爲ニ外債ヲ起シタ、皆此整理基金法ト云フモノアル爲ニ安心ヲ
  シテ、日本ノ財政ノ執リ方ハ正直ニシテ竪固デアル確實デアル、必ズ言フ
  タコトハ違ハヌ、返スモノハ返ス、拂フモノハ拂フ、而シテ此減債基金法ノ
  働キハ今日デモ無形ノ間ニ大ナル效ヲ奏シテ居ルノデアリマス、今日最近ノ
  我國ノ英貨公債ハ倫敦ニ於テ如何ナル値ヲ維持シテ居リマス、四朱利ノ公債、
  四分五厘ノ公債、五分利附ノ公債ト三種アリマス、而シテ從來政府ガ此五千
  万圓ノ內カラ一千万圓ヅツハ此四分利半ノ最モ多額ニアル、初メ募集シタト
  キハ六億デゴザイマス、三億ヅツ數箇月ノ間ニ二囘募集シタ、此四分半利附
  ノ公債ニ對シテ、千万圓ヅツハ必ズ償還ヲスル、詰リ此五千万圓ノ基金ノ出
  來マシタ當時、内外切半シテ償還ノ途ニ充テテ貰ヒタイト云フノガ資本家ノ
  希望デアリマシタ、併シソレハイカヌ、卽チ日本ノ製造工業ヲ發逹スルノニ資
  本ガ要ルノデアル、成ルベク多クノ金ノ償還ヲ內地ニ於テ行ッテ、サウシテ此
  國民ノ產業工業ノ玆ニ發展スル所ノ資ヲ辨ゼネバナラヌノデアル事件公債
  ノ內國債ヲ先ヅ以テ早ク償還シテ、其後デ此外債ハ還スコトニナルノデアル、
  ソレモ彼等ハ光モナリトシテ通知ヲシテ、一千万圓ヅツハ還スコトニナッテ
  居ル、而シテ今日其事ガ其公債ノ値ニハ大ナル關係ヲ持ッテ居ルノデアル、四
  分利附ノ公債ト云フモノハ年々償還スル部類ニ這入ッテ居ラナイ、四分半利附
  ノモノヲ還スト斯フ云ッテ居ル、四分利附ハ餘程償還期限ノ來ルマデハ日本政
  府ハ臨時ニ返サナイカモ知レナイ、今日ノ四分利附ノ公債ハ倫敦ニ於テ先ヅ
  七十圓、四分半利附ハ如何デゴザイマス、八十九圓、五分ノ公債ハ如何、九十
  二圓位、其差ヲ御覽ナサイ、五分利附ノ公債ト四分半利附ノ公債ノ差ト云
  フモノハ僅ニ三圓、五分利附ノ公債ト四分半利附ノ公債トハ唯ノ五厘ノ差デ
  アル、一方ハ十九圓ノ差ヲ持ッテ居ル、ソレデ三種ノ公債ノ中デ一番算盤ニ
  當ッテ利〓リノ惡イモノハ········所有者ニ取ッテ一番利廻リノ惡イモノハ四分半
  デアリマス、此四分半ガ獨リ左樣ナ價値ヲ今日維持シテ居ルノハ何デアルカ
  ト云ヘバ、一千万圓ヅツ是ハ每年免ニ角買入償還ヲシテ、先ヅ此公債ノ種類
  ハ年々減ラシテ行ッテ吳レルト云フコトガアル、其爲ニ獨リ此四分半利附ト云
  フモノガ比較的頭ヲ上ゲテ居ルト云フコトデアル、固ヨリ海外ニ於ケル有價
  證劵ハ獨リ日本ノ公債ノミデナイ、是ハ戰爭其他ノ事情ニ依ッテ、其時〓ノ經
  濟界ノ事情ニ依ッテ上ッタリ下ッタリスルコトハ、ソレハ常ノコトデアリマスケ
  レドモ、今日デハ先ヅ英吉利ノ「コンソル」公債ナゾト比べテ見マシテ、日本
  公債ノ其割合以上ニ今日ノ戰時中ニ於テモ下落シタコトハナイノデアル、斯
  樣ナ關係ヲ持ッテ居ル所ノ整理基金デアリマス、私ガ是ニ限ッテ何故大ナル力
  ヲ入レテ、此二千万圓ヲ減ラスコトニ反對スルカト云フニ、是ハ固ヨリ來ルベ
  キ歐羅巴ノ戰亂ノ終熄ノ際ニ當ッテ、平和講和會議ノ生ズル場合ニ於テ、我國
  ノ外交ニ大關係ヲ持ツガ故ニ私ハ心配スルノデアル、御承知ノ通リ日露戰爭
  ノ間ニ於テハ外交上ト申シマスカ、國際關係ノ方ニ於キマシテハ、歐羅巴ニ
  ハ末松君ヲ出サレ、亞米利加ニハ金子君ヲ出サレテ、偏ニ我國ノ戰ノ正シイコ
  トサウシテ此中立國ノ政府及國民ノ同情及好意ヲ我國ニ持タセルコトニ大
  ニ努メタ一方ニ於テハ財務委員ヲシテ日本ノ財政ノ堅固ナルコト、經濟ノ發
  達ノ著シキコト等ヲ紹介シテ、財力ノ信用ヲ繫グコト、之ヲ高メルコトニ努メ
  タノデアル、此來ルベキ講和談判ニ臨ム、我此大外交ニ對シテハ、日露戰爭
  中ヨリ非常ニ政府ハ是等ノ爲ニ餘程用意ヲシナケレバナラヌノデアリマス、
  卽チ此中立國タル所ノ政府、同盟國ハ勿論其他ノ國民ノ間ニハ其財界ニ於
  テ牛耳ヲ執ルモノ若クハ其間ニ於テ有力ナル働ヲ有ッテ居ル人達ノ安心ヲ買
  ヒテ、我國ノ財力ノ信用ヲ謳歌スルコトニ努メルト云フコトハ來ルベキ外交
  ノ上ニ於テ大ナル力ニナルニ違ヒナイ、卽チ獨逸ノ態度········孰レ日獨英ノ關
  係デアリマス、此態度ハ、日本ニ對スル態度ガ强イトカ弱イトカ云フ程度ハ、
  恐ラクハ此北亞米利加始メ他ノ列國ノ政府及社會ノ中流以上ニ在ッテ活動シ
  テ居ル人達ノ我國ニ對スル信用、同情、好意如何ト云フコトノ厚薄ニ依ッテ其
  程度モ定マルコトト考ヘマスル、ソレ故ニ此基金法ナルモノノ改正ハ、外國ノ
  財界ノ有力ナル人〓ノ我國ニ對シテ持ツ所ノ信用ノ上ニ大關係ガアリ、又今
  後我國ノ外債償還等ニ對シ、益〓經濟共通ノ途ヲ計ル上ニ於テハ最モ關係ヲ有
  ツモノデアリマスカラ、私ハ玆ニ此反對ヲ致スノデアリマス、政府ガ此改正ニ
  付テ必要トシテ述ベラルル理由ハ、或ハ速記錄ニ或ハ委員會ニ於テ、出來ルダ
  ケ之ヲ見或ハ承ッタノデアリマス、併ナガラ未ダ此大切ナル關係ノアル所ノ法
  律ヲ變ヘテマデ、鐵道ノ資金ヲ供給シナケレパナラヌト云フダケノ說明トハ
  私ニハ聞カレナイ、受取レナイ、唯今前田子爵ハ鐵道ノ今日ノ狀態ニハ少シモ
  安ンズルコトハ出來ヌ、軍事上ノコト、或ハ產業ノ發達等ニハドウシテモ三千
  八百万圓ノ金ヲ使ハナケレバナラヌト云フコトヲ縷々必要ヲ御述べニナッタ
  〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
  私ナドハモウ一層强イ、尠クトモ建設改良ニハ年々五千万圓ヲ投ジナケレバ、
  此我國ノ鐵道ハ十分ニ國有ニシタ甲斐ハナイト云フ位ニ思ッテ居ル、又預金部
  ノ御講釋モアリマシタガ、私ハ此席ニ於テ預金部ノ內容ヲ公ケニスルコトハ
  憚リマス、國民貯金ノ模範タル預金部デアル、今ノ御議論ハ御尤デアル、併
  ナガラ今日ノ預金部ノ有樣ハドウナッテ居ルカ、御話ノ如クニ唯預金者ガ引出
  シニ來テ金ヲ出シテ吳レト言ッテモ、直チニ金ニ換ハルモノガナイト云ハレル
  ガ、サウ云フコトハナイノデアリマス、政府ノ證文ガ役ニ立タヌト仰シヤル、
  日本銀行ノ正貨準備ニハ確カニ二千二百万圓政府ノ證文ガ這入ッテ居リマセ
  ウ、正貨準備デハナイ保證準備デス、鐵道院ノ借用證文デアレバ矢張リ政府
  ノ證文デアル、中央銀行ノ兌換劵發行準備ニナル日本政府ノ證文ガ、政府ノ
  預金部ノ貸金ニナルト云フ譯デアル、少シソレ等ハ御〓究ガ足リナイヤウデ
  アル、ソコデ是ヨリ政府者ノ或ハ贊成者ノ述べラレル理由ニ付テ、其大體ノ
  理由ニ付テ私ハ意見ヲ述ベヤウト思フ、一〓ニ申スト畢竟政府モ減債基金法
  ヲ變ヘタクナイ、併ナガラ如何セム鐵道ノ方ハ棄テテ置カレヌ、如何ニシテモ
  此資金ヲ他ニ得ル途ガナイカラ遺憾ナガラ已ムヲ得ズ是ニ手ヲ付ケルノデア
  ルト云フコトデアル、今ノ政府ハ卽チ立閣ノ始ニ於テ地方官ヲ集メ或ハ實業
  家ヲ集メ政見政策ヲ發表サレタ、其中ノ一ニハ今後ニ於テ公債ノ償還ヲ確實
  ニスルト同時ニ內外ニ向ッテ募集ヲセヌト云フコトガ旗標ニナッテ居ル、政見
  デアル、或ハ私ハ今日迄モ終始一貫シテ何處迄モ如何ナル場合ト雖モ、マサ
  カ一年カ二年デナカラウト思フ、我國ノ經濟上財政上ノ爲ニ、決シテ借財ニ
  據ラヌト云フ趣意ガ一貫セラレテ居ルカト思フトサウデハナイ、狀況ガ宜ケ
  レバ募集ガ出來レバ募集ヲスルノダ、今日ノ場合ハ內外ノ市場ノ有樣ニ於テ
  募債ガ出來ナイカラ仕方ガナイ、他ニ調達ノ途ガナイカラ此公債償還ノ五千
  万圓ノ中二千万圓ヲ取ッテ、一般會計カラ貸付ケルノデアル斯ウ云フコトデア
  ル、是ハ私ハ大藏大臣ガ日本銀行ノ幹部始メ我國ノ必要ナル銀行ヲ有スル其
  人達ト御相談ノ上デ、斯ウ云フコトガ愈〓出來ヌト云フコトヲ確メラレテ、サ
  ウシテ判斷ヲセラレタノデアルカ、或ハ机ノ上デ自分極メデ出來ナイモノト
  セラレテ、斯ウ云フ判斷ヲセラレタノデアルカ、私ハ其處ヲ疑フ、抑〓鐵道ナ
  ルモノハ之ヲ特別會計ニ致シタト云フコトハ、諸君ノ御承知ノ通リ一般會計
  ニ累ヲ及ボスカラト言ッテ、之ヲ特別會計ニシ又自營デヤッテ行カナケレバナ
  ラヌト云フノデアッテ、公債ヲ募集シタリ或ハ借入ヲシタリスル途ヲ開イテ、
  且ツ其利益ハ其方ニ用ヒサシテ自營ヲシテ卽チ普通ノ營業、營利事業デアル、
  國ガ有ッテ居リマシテモ營利事業デアル、之ヲ全ク離シテ一般會計ノ煩ヒヲ去
  ルト云フコトデ、ソレガ一般會計ニモ煩ヒニナラズ、又鐵道ノ自營ハ此國有
  ニシタル目的ヲ達スルニ却ッテ宜イト云フコトデ定メラレタ、此鐵道資金ガ今
  日得ラレマスマイカ、如何デアルカ、如何ナル金融狀態ニナッテ居リマスカ、
  今日ハ內地ノ銀行ガ普通ノ銀行ガ金ノ使ヒ途ニ窮シテ居ッテ、現ニ日本銀行ニ
  無利息デ五千万圓ノ金ヲ預ケテ居ルデハアリマセヌカ、五千万圓ノ金ヲ日本
  銀行へ無利息デ預ケテ居ル、又過日一千萬圓デシタカ大藏證劵ヲタシカ一錢
  八厘ノ日步デ發行シタ、一日ニシテ其所此所デ皆ナ奪ヒ合フヤウニシテ取ツ
  テ往ッタデハアリマセヌカ、又日本銀行ノ力ハ如何デアリマス、恐ラク日本銀
  行創立以來今日程兌換ノ基礎ノ堅固ナル時ハナカッタラウト思フ、一億圓餘ノ
  正貨ヲ海外ニ有シテ之ヲ準備ニ入レズニ居リマス、一億圓以上ノ正貨ヲ海外
  ニ有ッテ之ヲ準備ニ入レズニ、或ハ定期預金ニシ、而カモ英國ノ大藏省證劵デ
  五千万圓ヲ有ッテ居ルデハゴザイマセヌカ、斯ノ如ク外國ノ銀行ニ定期預金ヲ
  出シタリ、當座預金ヲナスハマダシモ、通知預金デナク英國ノ大藏省證劵デ、
  五千万圓所有スル所ノ力ヲ有ッテ居ル中央銀行デアル、內地ノ銀行ハ五千万圓
  無利息デ日本銀行ニ預ヶテ居ル今日ノ狀態デアリマス、何ンデ此金融界カラ
  短期ノ證劵ナリ、短期ノ債劵ナリ、一年トカ、或ハ六箇月トカ、或ハ二箇年、
  相當ノ利息ヲ付シテ鐵道資金ヲ得ラレスコトガアリマセウカ、今日ノ內外ノ
  狀態ニ於テ募債不可能ナリト大藏大臣ガ一ト言言ヘバ、我〓ハ其通リデアル
  ト信ジナケレバナラヌカ、事實調ベナイデ宜シイカ、今日ハ戰爭ニナリマシ
  タカラ、其事ハ直グニ實行ハ出來マセヌガ、本員在職中ニ隨分鐵道ノコトニ
  ハ苦心ヲシタノデアリマス、卽チ每年五千万圓········大凡ソ利益ヲ二千万圓ト
  見テ三千万圓位ハ借入金ヲシナケレバナラヌ、內地デ之ヲ借リルトスレバ、
  中〓我國民ノ貯蓄ノ力ハマダ弱イカラ、內地ノ事業ノ發達ノ爲ニ要スル資金
  スラ我國ノ蓄財力ハ不足デアル、民間デモ追~外資ヲ借リテ來ルト云フ形勢
  ニナッテ居ル、ソレヲ政府ト云フ强イ信用アルモノガ、此内地ノ貯蓄ノ弱イ所
  ニ持ッテ來テ鐵道ノ爲ニ使用シテハ益ソレガ爲ニ經濟界ヲ壓迫スル、ドウ
  シテモ外國カラ持ッテ來ナケレバナラヌト云フ私ハ考ヲ以テ、佛蘭西ノ資本家
  ト內相談ヲシテ見マシタ、所ガ斯ウ云フコトガアル、日本政府ノ公債ト云フ
  コトノ一色ガ佛蘭西アタリノ國民ノ頭ニ映ジテ居ル、名ガ變ハラヌ········名ガ
  變ハル方ガ宜イ、日本政府ノ公債ト云フモノハ、其公債ガ鐵道ノ爲ニ發行サ
  レテ居ッテモ、果シテ其通リ鐵道ノ方ニダケ金ガ往クヤラ、或ハ軍艦ヲ造ル方
  ニ往クヤラ、ソレハドウモ分ラヌ、ソレ故ニ鐵道國有ニナッテ居ルノデアルカ
  ラ、政府ハ一ノ會社ノヤウナ組織ニシテ日本帝國鐵道委員トシテ、其委員ニ
  權能ヲ與ヘテ鐵道營業上ノ債劵ヲ出ス方ガ········却ッテ日本政府ノ公債ト云フ
  ヨリハ、日本帝國政府鐵道委員ノ發行スル債劵ト云ッタ方ガ、佛蘭西アタリノ
  國民ハ喜ンデ持ツ、是ヨリ外ニマア仕方ガナイ、鐵道ト云フ卽チ利益ヲ生ズ
  ル所ノモノニ使ハレル金デアルカラ確實ト云フ所ノ信用ヲ受ケル、此方ガ信
  用ヲ得ルト云フノデ此方面ノ內談ガ進ンダ、ソレデ卽チ外ニ於テハ日本銀行
  ガ、斯ノ如ク正貨準備以外ニ一億餘ノ正貨ヲ有ヲテ居リ、内ニハ各銀行ガ
  五千万圓預金ヲ有ッテ居ルヤウナ場合ニ於テ、一年間若クハ二年間證劵ヲ發行
  スルコトガ出來ナイト云フコトハ認メナイ、シテ見レバ滅債基金ヲ持ッテ來
  ズトモ、資金ヲ調達スル途ハ私ハアルト思フ、又大藏大臣其他ノ御方〓ノ意見
  ノ中ニハ從來ノ遣リ方ハイカヌヂヤナイカ、一方ニ公債ヲ還スト唱ヘテ一方
  ニハ募ル公債ハ寧ロ減ルヨリ殖エルヤウナ傾キチヤナイカ、朝三暮四デア
  ル、又還ストキニハ額面テ還ストカ或ハ借ルトキハ手數料ヲ拂ハヌケレバナ
  ラヌトカ云フ、是モ不思議ノ議論デアル、公債ヲ還ストキニ額面デ還スト云
  フコトハドコノ國デモ決マッテ居ル、借リルトキハ額面以下、還ストキハ手數
  料ヲ拂フノハ當リ前デアル、是ガイヤナラ借財ヲシナイト云フヨリ仕方ガア
  ルマイ、又右ニ還シテ左ニ募ルト云フノハ同ジ事ヲシテ居ルト云フケレドモ
  此内容實質ヲ能ク調ベテ見ナケレバナラヌ、此減債基金法ニ依ッテ年々償還
  シテ行ク所ノ卽チ軍事資金公債デアル、是ハ何トシテモ國民ガ此元利ヲ拂ハ
  ナケレバナラヌ、租稅ヲ出シテ拂フヨリ仕方ガナイ、直接ニ國民ガ負擔シテ居
  ル、ケレドモ鐵道ノ爲ニ起ス所ノ公債ハ一錢一厘タリトモ國稅ニハ依ラナイ、
  卽チ鐵道ト云フ營利事業デアル、ソレヨリ生ズル所ノ利益ヲ以テ·······收入ヲ
  以テ借リタ金········借財、借財ノ利息ヲ拂ッタ其上ニ尙ホ今日ノ所ハ一千八百
  万圓ノ純益ガアル、他日ハ此鐵道ノ營業ノ上カラ生ズル所ノ收益ニ依ッテ、立
  派ニ返ス所ノ計算ナドガ立ッテ居ルノデアル、右ニ還シテ左ニ募ルカラ變ハリ
  ハナイト云フケレドモ、其點ニ於テハ大ニ變ハリガアル、軍事資金公債ハ
  初メハ確カ十七億圓アリマシタラウ、今日十三億圓位ニ減ッテ居ル、是ハ年々
  還シテ往クガ、國民ノ負擔デ還シテ居ル、一方ニハ八億圓モ鐵道公債ハ殖エ
  テ往クガ、此方ノ公債ハ幾ラ殖エルト云ッテモ、國民ノ租稅デ拂ハナケレバナ
  ラヌト云フ性質ノモノヂヤナイ、又不利益ダト云フ、大藏大臣ノ說明ニ依ル
  ト還ス所ノ舊イモノハ必ズ利益ガアッテ、後ニ募ル所ノモノハ必ズ不利益デ
  アルト斷定シテ居ルガ、何ニ依ッテソンナコトヲ言ハレルカ、嘗テ若槻大藏大
  臣ハ確カ大藏次官ノトキデアリマシタラウ、彼ノ四分利付公債ヲ發行シタト
  キニ國定利率ハ四分ニ定ッタト言ハレタコトガアル、私ハ其時國定利率トハ何
  デアル、法律上ノ利率ト云フモノハアルガ、國定利率ト云フコトガ何レノ國
  ニアルカ、獨逸ノ如キハ三分ノ公債ト云フコトニ決マッテ居ッテ、段々市場ノ
  狀況ニ依ッテ三分五厘トナリ、四分トナリ今日ハ三分ダ、英吉利「コンソル」
  モ矢張リ其通リデアル、金利ノ廉イトキニハ廉ク募レルシ、高イトキニハ高
  ク出サナケレバ募レナイノハ當リ前ノコトダ、必ズ舊イモノガ廉クテ新シイ
  モノガ高イトハ言ヘナイ、現ニ山本內閣ノ出來タトキニハ如何デアル、七千
  五百万圓大藏省證劵ガ市中ニ出テ居ッテ、是ガ忽チ年度ノ終リニ於テ償還ガ
  來ッテ居ル、之ヲ如何ニシヤウ、卽チ佛蘭西ニ於テ七千五百万圓五分利公
  債ノ國債ヲ發行シタ、英吉利ニ於テハ一箇年カ二箇年ノ短期ノ證劵ヲ發行
  シテ、サウシテ之ヲ調達シタ、サウシテ此鐵道ノ借財ヤ何カニ拂ッタ、此英吉
  利ノ方ハ其當時俄ニヤッタコトデアリマスケレドモ、五分五厘バカリニ付テ居
  リマシタ、割引料ガ五分デアリマスケレドモ、手數料ナドガアリマスカラ五
  分五厘、其翌年千五百万圓ノ期限ガ來タトキニハ、千五百万圓還ス········千五
  百万圓還スト云フトキニ、政府ハ千五百万圓ノ金ヲ返スバカリデナイ更ニ一
  千万圓ヲ殖ヤシテ二千五百万圓ヲ借入ル、一千五百万圓返ス、ソレモ矢張リ
  鐵道ノ借財ヲ預金部ニ返スノデアル、其時ハ四分七厘五毛デ出來テ居ル、五
  分五厘バカリノ大藏證劵、千五百万圓ヲ償還スル爲ニ四分七厘五毛ノ證劵ヲ
  二千五百万圓發行シタ、是ハ何モ其時ノ人ノ手腕デハナイ、全ク其當時ニ於
  ケル倫敦市場ニ於ケル金融ノ情態ニ依ルノデアル、シテ見レバ必ズ借リルト
  キハ安イモノヲ借リテ、返ストキハ高イカラ不利益ト云フコトハ、是ハ一時
  ノ或場合ノコトヲ捉マヘテ言ヘバソンナコトモアルカモ知レナイ、又有利ナ
  ル條件トカ、或ハ我經濟界ニ不利益ヲ來タサザル場合ニ於テ募集ヲスルト云
  フコトハ、確カニ委員會ニ於テ大藏大臣ハ述ベラレタ、卽チ此鐵道資金ヲ
  般會計カラ借リルガ、鐵道ノ資金ガ他ニ調達ノ途ガ出來レバ是ハ返ス、サウ
  シテ減債基金ニ繰入レルト云フコトヲ明言サレタヤウニ私ハ承ッテ居フタ、茲
  ガ分ラヌ、是ガ矢張リ非募債ト云フコトニナル、有利ナル條件ト云フノハ何
  ダ、何ノ標準デ有利ナル條件デアルカ、外國市場ノ金融情態ニ依ッテ、我國ノ
  財力ノ信用ノ程度ニ鑑ミテ、相當ノモノデ出來レハ宜イヂヤナイカ、有利ナ
  ル條件ト云フモノハ、前ニ五分ノ公債ダカラ、今度ハ四分デ出來ルト言ハレ
  ルノカ、ドウ云フコトガ有利ダカソコガ分ラナイ、曖昧ダ、ダカラ何時マデ
  モアレハ有利デナイカラ募ラヌト云ヘバ、非募債ガ出來ル、又我國ノ經濟界
  ニ不利ナラザル場合ト斯ウ言ハレル、是ハドウ云フ意味カ、是ハ大藏大臣ガ
  今ノ內閣ノ成立ノ始メニ於テ發表セラレタ宣告ノ中ニアル緊縮方針、從來政
  府ハ動トモスレバ外國カラ借金ヲシテ金ヲウント持ッテ來テ、我經濟界ニ資
  本ヲダブ付カセタ、ソレガ爲ニ通貨ガ膨脹シ、物價ガ騰貴シ、外國貿易ガ輸入
  超過ヲスルト云フ不利益ナ情況ヲ來タスト云フコトヲ云ハレタ、外國ノ資本
  ヲ持ッテ來レバ必ズサウ云フ情況ニナル、斯ウ云フ意味デハナイカ、不利益ニ
  ナルト云フノハ經濟界ニ不利益ノナイ場合ニ於テハサウスルト是ハ矢張
  リ非募債デ出來テ居ル、ソレデ初メニ發表セラレタ宣言ヲ近頃變へラレタヤ
  ウデモアルケレドモ、能ク大藏大臣ノ用語ヲ〓究シテ見ルト、變ヲタヤウナ變
  ラヌヤウナ所ガアル、是モデス、諸君ハ今ノ大藏大臣ガ宣言セラレタヤウニ
  御聞キニナッタラ、成ルホドサウカ知ラヌ、成ルホド政府ガ一〓ニ海外カラ澤
  山ナ金ヲ持ッテ來テ金融界ヲダブ付カセル、然ラバ事業ハ濫興シ、物價ハ騰貴
  シ從ッテ輸入モ殖エル、是ハ如何ニモ由々シキ大事ト云フ御考ヲナサラヌカ、
  是ハ私ハ事實ヲ大藏大臣ニ伺ヒタイ、イツノ何時政府ガ多額ノ金ヲ入レテ金
  融界ニ持ッテ來テ、ソレヲ出シテダブ付カシタコトガアリマスカ、御承知ノ通
  リ日露戰爭ノ後ニ於テ、平和克復ノ後ニ於テ、國民ガ是ヨリ各〓其業ヲ擴張
  シ、生業ヲ營マムトスルトキニ當ッテ資本ガ〓乏シタ。在ル者ハ國庫債劵ナド
  ニ應ジテ政府ニ出シタ、大體ニ於テ何トシテモ此一時ニ必要ナ銘々ノ資本ヲ
  政府ノ爲ニ、軍費ノ爲ニ貸上ゲタモノデアルカラ、之ヲ御返シ下サラヌケレ
  バ我〓ノ活動ガ出來マセヌ、是ハ尤ナリトシテ、外債ヲ起シテ國庫債劵ヲ返
  シタ、三十九年カラ四十四年マデ國庫債劵ノ類ヲ七億万圓以上返シテ居リマ
  ス、是ハ返ス必要ガアッテ返シタノデ、徒ラニ外國ノ金ヲ持ッテ來テタブ付カ
  セタノデハアルマイ、蓋シ大藏大臣ハ此時ノコトヲ言ハレルノデアラウ、然
  ラバ此七億ナンボト云フモノヲ國民ノ資本トシテ戾シテヤッテ、是ガ如何ニ働
  イタカト云フコトハ事實ニ於テ之ヲ見ナケレバ分ラナイノデアル、害ガアッタ
  カ利益ガアッタカト云フコトハ日露戰爭ノトキノ貿易ハ如何デアリマセ
  ウ、六七億ノ貿易モ、十年ノ後ニハ十四億、倍ニ上ッタデアリマセウ、成ルホド
  輸入モ盛ンニ殖エタ、從ッテ輸出モ殖ヱタ免ニ角貿易ガ十年ノ間ニ倍ニナッタ、
  我國ノ海運、運送ノ力モ其通リ發達シテ居ル、六億ノ貿易ノトキニ三割餘
  ノモノヲ我國ニ內地ノ船ガ搬ンデ、十二億足ラズノ貿易ニナッタ今日、其四割
  六分ハ、我內地ノ船ガ搬プヤウニナッタ、唯製造工業ノミナラズ、外國貿易ノ
  ミナラズ運輸、海運········運輸ノ力ニ於テモ其通リノ發達ヲシタノデ、私ハ
  細カニ調ベタモノモアリマスガ、當然ナコトデ、外國貿易ニ堪ヘルヤウナ、
  世界的通用ヲスルヤウナ貿易品ヲ造ルト云フ爲ニハ、從來ノ如キ手ノ先デ家
  庭デ作ッテ居ルモノデハイケナイノデアル、必ズ緻密ナル機械ノ働キニ依ッテ
  物ヲ廉ク一齊ニ造ル必要ガアル、多量ニ造ル必要ガアル、揃ヘル、又ソレヲ
  行フニ於テハ工場組織ニ依ッテ、男女ノ職工ト云フモノヲ使フト云フ工業ノ組
  織ニ改ッテ來ルト云フ時機ニナッテ居ルソレ故ニ輸入ノ大ナルモノハ何デア
  リマセウ、卽チソレ等ニ於ケル所ノ工業用品ガ必要デアル、第一機械類、第
  一ニ增シテ居ルノハ機械類デ、此機械ヲ以テコナス所ノ原料、棉ノ如キモノ
  サウ云フモノ、或ハ農家ニ用ユル所ノ肥料ノ如キモノハ、何レモ生產工業ノ發
  達ニ無クテナラナイモノガ這入ッテ來タノデ、ソレガ輸入ノ大ナル部分ヲ占メ
  テ居ル、一方ニ於テ贅澤品ナルモノハ、ソレデモ殖エテ居リマス、私ハ贅澤
  品ノ中ニ織物ヲ數ヘマス、恐ラク諸君モ此調べタ表ヲ見タナラバ、之ヲ贅澤
  品ニ入レルノハ餘リ酷デハナイカト言ハレル位ニマデ、範圍ヲ廣クシテ贅澤
  品、奢侈品ヲ調べテ見マスト云フト、三十五年ニハ五千万圓餘ノ輸入ガアル、
  四十五年ニ至ッテ依然トシテ矢張リ五千万圓餘ニシカ上ッテ居ラヌ、其間ノ貿
  易ハドウデアルカ、七億ノ貿易ガ十四億ニナリ、六億ノ貿易ガ十二億ニナッ
  テ、尙且奢侈品ニ屬スルモノノ輸入ガ左程殖エナイ所ヲ以テ見レバ、輸入超過
  ヲ來タシタガ、ソレハ我國ノ生產工業ノ發達ニ無クテハナラヌ所ノモノガ這
  入ッテ來タノデアル、ソレカラ見テモ貿易ノ增進、富ノ進ミ、輸送力ノ增加、ソ
  レ等ノモノニ於テハ我財力ノ增加ト云フモノハ著シク示シテ居ルデハアリ
  マセヌカ、謂ハユル國庫債劵等ヲ還シマシタ所ノ資本ガ、斯ノ如キ働キヲ爲
  シテ來テ居ルノデアリマス、其內地ノ借財ヲ還ス外ニ、政府ガ外債ヲ起シテ一
  時ニ外資ヲ輸入シタ爲ニ、我ガ金融界ニ激變ヲ生ジタト云フコトハ何時ノコ
  トヲ言ハレルカ、私ハ大藏大臣ニ伺ヒタイ、又政府ノ借財デナイ、或ハ京都
  市トカ東京市トカ、サウ云フ所ニテ外國ニ於テ起債スル所ノモノモ、是ハ必
  ズ一時ニ外國カラ金トシテ這入ッテ來テ居リハシマセヌ、從來政府及中央銀行
  ハ、深ク金融ノ狀態ヲ調理スルコトニ於テハ留意シテ、日本銀行ノ如キハ兌換
  發行稅ヲ損失シテマデ、海外ニアル金ハ其所ニ置イテ之ヲ內地ニ移サナイデ
  居ル、是ガ卽チ內地ノ金融界ヲ常ニ調節シテ居ルノデアル、唯今申シタ通リ一
  億以上ノ正貨ヲ海外ニ於テ、正貨準備以外ニ日本銀行ガ持ッテ居ル、是ハ畢竟
  何デゴザル、若シ之ヲ金デ持ッテ來タナラ、今日ノ兌換發行額ノ總額以上ニ正
  貨ガ殖エテ居ルノデアリマス、一厘ノ發行稅ヲモ出ス必要ハナイノデアリマ
  ス、ソレニモ拘ラズ海外ニ一億ノ正貨ヲ維持シテ持ッテ居ルノハ、是ハ我國ノ
  金融界ヲ調節スル必要ガアルカラシテ居ルノデアル、從來カラ是ハ採ッテ居ル
  方針デアル、然ラバ外債ヲ起シテ時ニ我金融界ニ激變ヲ生ズルナドト云フ
  コトハ、是ハ大藏大臣ガ如何ニモ事實ニ迂イ、迂イノデナイ、敏イ人ダカラ
  御承知ダ、御承知ニナッテ尙且ツ斯樣ナコトヲ言フノハ己ノ論旨ヲ助ケル爲デ
  アル、ソレ故ニ大藏大臣ガ初メニ民間カラモ問ハレテ、非募債ト云フコトヲ
  仰ヲシヤルガ、政府獨リ外債ヲ起サヌト云フコトデアリマスカ、民間ノ外資輸
  入ハ如何デアル、大藏大臣曰ク、民間ヨリ外資輸入ハ決シテ妨ゲナイ、ノミ
  ナラズ或種類ノモノニ依ッテハ援助スル、ソレナレバ餘處ノ國カラ這入フテ來
  ル、政府ガ借リヤウガ民間ガ借リヤウガ、外國ニ對シテ債務ヲ持ツコトハ同
  ジコトデハアリマセヌカ、又外國ノ金ガ內地ニ這入ッテ來テ大藏大臣ノ言ハ
  レルヤウニ、我金融界ニ激變ヲ生ズル虞レガアルト云フコトナラバ、同ジヤ
  ウナコトデハアリマセスカト云フ意味ヲ以テ問ハレルト、大藏大臣ハソレハ
  差支ナイ、民間ノ外資ヲ借リルト云フコトハ必ズ算盤ガ元ニナル、損ヲシナ
  イヤウナコトニ使フノデアッテ、第一大事ヲ取ル、第二ニ民間デ借リルモノハ
  サウ多額ナモノデナイ、僅カナモノデアル、然ルニ政府デ外債ヲ起スト云フ
  コトハ、或ハ不利益ノコトニ用ヒルカモ知レヌ、又何レモ政府ノ借リル時ニ
  ハ尠カラヌ高ノモノヲ發行シテ巨額ノ債務ヲ起ス、故ニ政府ガ借リルト必ズ
  澤山ノ金ガ我國ニ這入ッテ來テ、金融界ニ激變ヲ生ズルカラ、政府ハ愼シムト
  云フ答辯ヲサレテ居リマス、唯今申ス通リ事實ハサウデナイ、必ズ內地ノ金
  融ヲ調節スル方法ハチヤント備ッテ居ル、日本銀行ガ兌換ノ發行稅ヲ損シテマ
  デモ、海外ニ於テ準備外ニ正貨ヲ持ッテ居ル、ソレデモウ一ツ大藏大臣ノ述べ
  ラレタル理由、又賛成者ノ述べラレタル理由ノ中ニハ此五千万圓ヅツ償還
  ヲ繼續シテ行クト云フト、此軍事事件公債ト云フモノハ、今日ハ內國ニ三億
  足ラズアル、凡ソ十億ハ既ニ外國ニ出テ居ル、三億還スト云フト、五千万圓ト
  云フモノハ是ハ紙幣デハイカナイ、正貨ニ換ヘテ還スノダカラ卽チ正貨流出、
  我國ノ正貨維持ノ力ニ耐ヘナイト云フコトデ今日カラ御心配ナサル、先ヅサ
  ウ云フコトガアルナラ其時デ宜カラウ、其時ニ御考ナサレテ宜カラウ、マダ
  三億餘ノ內國ノ軍事事件公債ト云フモノノ償還スベキモノガアル、俄ニ今日
  其心配スル必要ハナイ、又國際間ノ經濟關係ト云フモノハ、免角唯正貨バカ
  リガ決濟ヲスル用ヲ爲シテ居ルト思フ人ガ多イ、内外經濟共通ト云フコトニ
  ナリマスレバ、正貨ト云フモノハ國際間ノ決濟ヲスル部分ニ於テ比較的僅カ
  ナモノデアル、僅カナ働キデアル、アトハ互ニ有價證劵或ハ手形、サウ云フ
  ヤウナモノデ決濟共通ノ途ハ取レテ行ク、御承知ノ通リ英吉利倫敦ト紐育ト
  ノ間、アノ巨額ノヤリ取リノアル、平年ニ於テハ米貨ガ金貨デ千五百万弗出
  タトカ、二千万弗出タトカ這入ッタトカ云フコトデ濟ンデ居ル、我國ノ貿易
  狀態モ、昨年八月以來ノ輸入ヲ調ベテ御覽ナサレテモ、原料ト機械ト云フモ
  ノニ於テ一番輸入ガ減ッテ居ル、是卽チ我國ノ從前發達シテ來タ殖產興業ノ發
  達ガ抑ヘラレテ居ル、八月歐羅巴ノ戰亂勃發ノ爲ニ········併シソレマデノ趨勢
  ト云フモノハ、年々一億乃至一億五千万圓ヅツ貿易ノ高ガ殖エテ行ク、其增
  進シテ行ク中ニ於テハ、輸入ノ殖エ方ヨリハ輸出ノ殖エ方ノ方ガ比較的强
  クナッテ居ル、此趨勢デ行ケバ年々年々貿易ハ順調ニナル、遂ニハ輸出超過ノ
  國ニナルト云フコトハ、我國ニ外國カラ輸入スル所ノ機械ヤ原料ガ餘計働ヲ
  爲シテ來レバ其結果ヲ得ルコトニナル、必シモ今後五六年後ノコトヲ心配サ
  レテ、サウ今カラ正貨五千万圓ヅツ返スト云フコトハ、正貨ニ困ルヂヤナイ
  カト云フ御心配ハマダチット早イ、私ナドハソンナ國柄デナイト思ッテ居ル、
  歐羅巴戰爭ガ濟マヌ中デモ此調節ヲシテ、此間ヲ利用シテ我商賣人ガ、或ハ
  支那ナリ或ハ露西亞ナリ或ハ南洋諸國等墺地利ナリ獨逸ナリノ商人ナドノ
  行ッテ居ッタ所ニ代ッテ、我國ノ物品ヲ供給スルト云フ方ニ發達シテ行ッタナラ
  バ、存外速ク我國ノ外國貿易ト云フモノハ順調ニ發達スルト私共ハ信ジテ居
  ル、又今日三億餘ノ軍國事件公債ガ內地ニアルノニ、今カラ正貨ノ御心配ニ
  ナッテ、此償還金額ヲ減ラサナケレバナラヌト云フコトハ受取レナイ話デア
  ル、ソレカラ又大藏大臣ハ大正十四年ニ償還期限ノ來ル所ノ、四分半利附ノ公
  債ノ殘額五億數千万圓ノモノニ言及セラレテ、斯ノ如キモノガ將來アルゾ、
  大正十四年ニナレバ卽チ煙草專賣收益ヲ抵當トシテ、擔保トシテ居ル四分半
  利附公債五億數千万圓ノ償還期限ガ來ル、是ハ借替ヘナケレバナラヌカラシ
  テ、今ノ中成ルタケ公債ヲ發行セズニ用意ヲセニヤナラヌ、斯ウ云フコトヲ
  言ハレタ、ケレドモ日本ガ之ヲ借リズニ居ッタラ、外國ノ資本家ガ日本カラ借
  替ニ來ルカラト言ッテ、シマッテ置キマセウカ、奪ヒ合ッテ皆日ニ月ニ方々カラ
  借手ガ來テ皆持ッテ行キツツアル、日本ガ遠慮シテ其間借リズニ居ッタ所デ十
  四年ニナッテ、サア宜シウゴザイマス、五億何千万圓借リマセウト言ウテモ備
  ヘテ居ルモノデナイ、又大正十四年ニナッテ何ノ據ル所ガアッテ大藏大臣ハ借
  替ト云フ意見ヲ定メラレテ居ルカ、何人ト雖モ大正十四年ハ歐米ノ經濟界ガ
  如何ニナルカト云フ豫想ハ出來ナイ、而カモ五億何千万圓ト口ニコソ言フケ
  レドモ、實際斯ノ如ク多額ノ公債ヲ一時ニ償還シタ國ガ何處ニアリマセウ
  カ伊太利ニ例ガアリマセウ、ケレドモ是ハ五六年モ前カラ仕度シテ成功シ
  タノデアル、今日唯借財ヲセズニ置イテ十四年ニナッテ借替ヘルト言ッテモ是
  ハ捨テテ置イテドウシテ其業ガ出來マセウカ、矢張リ借リルモノハ必要
  ノアルモノハ借リル途ヲ開イテ置カネバナラヌ、二千万圓ナリ三千万圓ナリ
  鐵道ノ金ヲ年々借リテ來レバ卽チソレハ成功デアル、軈テ貿易ガ順調ニナリ
  輸出超過ニナレバ或ハ正貨ガ餘ルカモ知レヌ、一方ニハ鐵道ト云フモノハ公
  債デ出テ行クガ、一方デハ今マデハ千万圓ヅツダケレドモ大正七年頃カラシ
  テ是ハ五千万圓ニナル、四分半利附ノ英貨公債ヲ返ス途ガ付クト思フ、是ハ
  意見デアル、サウシテ見タナラバ結果ハドウデアリマセウ、成程公債ハ減リ
  マスマイ、減ラヌケレドモ國民ノ負擔タル臨時事件公債、而カモ煙草專賣收
  益ノ擔保ニナッテ居ル所ノモノガナクナッテ、鐵道ノ財源ナル公債ト云フモノ
  ガ出テ、國民ノ負擔スル所ノ公債ガナクナッテ一方鐵道ノ營利ノ利益カラ支
  拂ッテ行クベキ所ノ公債ガ自然ニ廻ッテ行ク、サウシテ大正十四年マデ行ッタナ
  ラバ殘額ハ一億万カソコラニナル、一億万カソコラニナレバ是ハ何時デモ處
  分ガ付クト安心セラレテ居ッテ宜イカモ知ラヌグレドモ、如何ニモ五億何千万
  ト云フ巨額ノ借財ヲ而カモ煙草専賣收益ヲ以テ擔保トシテ居ルモノヲ其時ニ
  ナッテ借替ヘル、借替ヘルト云フコトハ容易イヤウニ聞エルケレドモサウデナ
  イ、矢張リ借リテ償還スルノデ、期限前ニ新タニ募集シテ金ヲ造ッテサウシ
  テ期限ノ來タモノヲ返スノデアルカラシテ、形カラ云ヘバ借替ト云フケレド
  モ事實ハ新タニ募ッテ返スト云フコトニナル、容易ナ業デハナイ、今日カラ其
  心掛ケヲシテ行カネバ是ハ大正十四年ハ我財政上ノ一大暗礁ト見テ居ル、之
  ヲ今ノ大藏大臣ガ御心配ナサルノハ誠ニ有難イガダ、唯借替ヘルト云フヤウ
  ナ單純ナ御考ヲ有ッテ居ルト云フコトハ私ハ頗ル遺憾ニ考ヘルソレデ大藏
  大臣ハ公債ガ殖エレバ既發ノ公債ノ價ガ下ガルト言フ、是モデス、唯數字カ
  ラ云ッタナラバ容レ物ガ同ジデ其處ヘ注込メバ溢レルケレドモ、日本ノ財力
  信用ハ入レル物ガ殖エレバ决シテ公債ノ價ガ下ガル譯デハナイ、一方ニ於テ
  信用ヲ維持スルコトヲ努メズシテ置イテ是ヘ注込メバ容レ物ヲ變ヘズシテ餘
  計ナ物ヲ注ギ込ムコトニナルカラ公債ハ溢レテ値段ハ下ガルト云フコトニナ
  ル、其處ガ當局ノ最モ骨ヲ折ラナケレバナラヌ所デアル、成ルベク我公債ヲ
  世界ニ廣ク求メ容レ物ヲ大キクスルト云フコトノ手段ヲ常ニ講ジナケレバナ
  ラヌノデアル、唯公債サヘ募ラナケレバ信用ガ增進スルト思ッテ居ラレルノ
  ハ間違デアル、終リニ一言イタシタイノハ此問題、此案ニ付テ先刻モ前田子
  爵ガ縷々御述べニナリマシタガ、豫算ニ關係ヲ有ツト云フコトヲ言ハレタ、
  本員ハ如何ニシテ是ガ豫算ニ關係ヲ有ツカ、豫算ノ不成立········豫算ニ關係ハ
  アルニ相違ナイガ、此案ヲ直ストカ此案ヲ否決スルトカ、政府ノ案ニ賛成シ
  ナイ場合ニハ豫算ガ不成立ニナルト云フコトヲ頻ニ言ハレルガ、私ハ其理由
  ガサッパリ分ラヌ、今マデ色〓其點ニ付テ御述べニナリマシタガ更ニ分ラヌ、
  是マデモ水道トカ或ハ築港ノ補助費ナドニ於テハ兩院ノ協賛ヲ經テ法律ガ出
  タガ、成立ッテ居ル豫算ガナイ爲ニ實行ノ出來ナイト云フコトハ間〓アル、法
  律ト財源ト必ズ伴ッテ居ラヌト云フコトガアル、是ハ反對ナノデアル、前申ス
  通リ實行上ニハ何等差支ナイ、豫算ハ豫算デ通過スル、一般會計カラ鐵道ノ
  方ニ借入レル財源、此法律ガ成立タヌ爲ニ、改正案ガ成立タヌ爲ニ二千万圓
  一般會計カラ鐵道ニ借入レルト云フコトガ出來ナクナル、隨ッテ鐵道ノ資金ガ
  ナクナル、鐵道ノ資金ガナクナルト云フコトデハ鐵道ノ方デハ困ル、ケレド
  モ唯今申シマス通リ內地ノ金融ノ狀態ト云ヒ、日本銀行ノ力ト云ヒ、今年二
  千万圓グラキノ調達ガ付カヌト云フヤウナ、ソンナカヨワイ經濟デハナイ、
  甚ダ外國ニ對シテ恥カシイ話デアル、二千万圓ノ金ガ出來ナイ爲ニ中外ニ向フ
  テ二度マデモ政府ハ聲明シテ居ル、此減債基金ヲ減ラスト云フコトハ實ニ恥
  カシイ話デアル、左樣ナ微力ナ我經濟界デハアリマセヌ、試ニ二千万圓ノ大
  藏證劵ヲ出シテ御覽ナサイ、アッチカラモ、コッチカラモ來テ足リナイトシテ
  持ッテ行ク、日本銀行ハ御覽ナサイ、一億ノ正貨準備ヲナシテ居ル、二千万圓
  ノ公債ハ大キナモノデハナイ、英吉利ノ證劵ヲ買"テ居ルノニナゼ我證劵ニ
  應ズルコトガ出來ナイカ、ナゼ鐵道ノ證劵ニ應ズルコトガ出來ナイカ、縱シ
  ンバ民間ノ銀行、公衆ガ資本ガナイト見タ所デ其力ガナイト言ハレマスカ、
  其クラヰ資金ノ調達ノ餘裕ガアルニモ拘ラズ、此我來ルベキ外交ニ大關係ヲ
  有チ又今後ノ財政經濟上ニ非常ナ關係ヲ有ッテ居ル此案ニ對シテハ、私ハドウ
  シテモ同意ガ出來ナイ、是私ノ反對スル理由デゴザイマスカラ宜シク御了承
  ヲ請ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=49

  ---

• 050・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　仁尾君
  〔仁尾惟茂君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=50

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• 051・仁尾惟茂

  ○仁尾惟茂君　本員ハ此案ニ贊成ヲ表スル者デアリマス、午前ヨリ段々此案
  ニ對スル反對論者ノ御論モ承リマシタ、付キマシテハ此反對意見ニ對シマシ
  テ一應所見ヲ述ベタイト存ジマス、要シマスルニ此問題ハ、第一ハ鐵道資金
  ト云フモノハ愈〓是ダケ要スルカ、第二、公債ハ此上募リ得ルヤ否ヤ、第三整
  理基金ハ減ジ得ルヤ否ヤト云フ、斯ウ云フ問題ニ歸著イタシマスル、ソレデ
  此事ガ、第一ヨリ第二、第三ノコトサヘ論定イタシマスレバ、自ラ是ハ分リ
  マスル論デアリマスルソレデ是ヨリ論辯ヲ試ミムト思ヒマスル、第一ノ資
  金ノ點ニ付キマシテハ、曩ニ前田子爵ヨリ御述べニナリマシテ、私ノ述ブル
  所モ同樣デアリマスカラ是ハ略シマシテ、固ヨリ私ノ論ジマス所ハ、資金ガ
  是ヨリ每年四千万圓若クハ五千万圓ヲ要スルモノデアルト云フコトハ是ハ
  定ノモノト致シマス、付キマシテハ第二ノ公債ヲ募リ得ルヤ否ヤト云フ點ニ
  付キマシテハ、先刻高橋君ヨリ初メテ公債ハ募リ得ル、斯ウ云フ御論ガアリマ
  シタ、ソレトモウ一ツ鐵道公債ハ起シテ宜シイ、此二ツデアリマス、實ハ私
  ハ此問題ニ對シマシテ初メテ承リマスルコトデアリマシタ故、眼ヲツブッテ之
  ヲ承リマシタガ、眼ヲツブッテ聽ケバ殆ド書生論カノ如クニ感ジマシタ、眼ヲ
  開イテ演壇ヲ見レバ、實ニ是マデ經驗アル所ノ高橋君デアル、誠ニ私ハ大キ
  ニ驚キマシタ、第一高橋君ノ御論ニ今ヤ內地ハ各銀行ニ於テ金融最モ緩慢デ
  アル、金ヲ借ラルルト仰シヤリマシタガ、若クハ公債ハ募レルト仰シヤイマ
  シタカ、其所ハ伺ヒマセヌデシタガ、此御論ハ實ニ私ハ御經驗アル所ノ高橋
  男ノ御論トハ受取リ得マセヌ、ト云フノハ何故ニ此金ト云フモノハ斯ク緩慢
  デアルカ、決シテ此金ハ日本全國、都鄙共ニ緩慢デハナイ、唯一時時局ノ關
  係其他不景氣等ノ一時ノ現象ニ依リ中央ニ此金ガ集ッタノデアル、皆銀行ハ各
  支店ソレ〓〓ヨリシテ、此金ト云フモノガ集ッタノデアル、サウシテ此金ハ然
  ラバドウナル金デアルカト云ヘバ是ハ他日歐洲ノ平和克復其他總テ內地ニ
  於キマシテモ景氣ガ恢復シマスレバ必シモ此金ト云フモノハ地方ヘ皆歸ッ
  テ行カニヤナラヌ金デアルノデアリマス、ソレデドノ銀行ノ有力ノ者ニ承リ
  マシテモ、此金ハドウデアルカト云ヒマスレバ、是ハ一時ノ融通ナレバ出來
  ル、卽チ大藏省證劵ノ如キガ卽日ニ集ッタト云フノハソレデアル、單ニ一時ノ
  モノナラバ宜イガ、扨少シク長イモノハ、長期ノモノナレバ一文モ出サナイ、
  皆先キヲ見越シテ此金ハ必シモ働ク金デアルト云フコトヲ言ッテ居ル、ソレト
  又、凡ソ鐵道ノ資金ニ致スト云フ金ハ短期ノモノデ宜シイカ、一時ノモノデ
  宜シイカ、長期ノモノデ宜シイカト云ヘバ、必ズ是ハ長期ヲ要スルモノデア
  ル、一時ニ年々二千万圓ヲ借入レテ翌年ハ四千万圓ニナリ、其翌年ハ六千万
  圓ニナルト云フヤウナ金ハ、迚モ一時ニ出來得べキモノデナイノデアル、又
  ソレデ斯ノ如キ有樣デアリナガラ、內地デ自由ニ出來得ルト云フヤウナ論ト
  云フモノハ、殆ド私ハ解シ得ナイノデアリマス、サウシテ又縱シ是ガ一時出來
  ルニ致シマシタ所ガ、今此金ヲ奪ヘバ必シモ民間ノ資本ト云フモノヲ奪取ル
  ノデアルカラ、民間ノ資本ヲ奪取ッタラドウカト云ヘバ、誠ニ〓後大ニ殖產興
  業ヲ發達セシメナケレバナラヌ所ノ財源ヲ奪フノデアル、是亦鐵道ト致シマ
  シテモ均シク政府ノ事業デアル、中央ノ政府ノ事業トシテ斯樣ナ資本ヲ奪フ
  ヤウナコトハ餘程考へネバナラヌトモ考へマス、デ又公債ノ中デモ鐵道公債
  ナラバ募ッテ宜シイ、サウ云フ御論ガアリマスガ私ハ甚ダ解セナイ、殆ント鐵
  道ト云フモノハ外國ノ鐵道デアルカト云フヤウナ論據ニナッテ來ルノデア
  ル、餘程外國化シタ論デアル、何故ナラバ名ハ特別會計ノ鐵道デアリマスケレ
  ドモ、均シク日本國ノ政府ノ國家事業デアル、此事業ガ國ニ害アルコトヲスレ
  バ、サセナイヤウニセネバナラヌ、國ノ財政經濟ヲモ構ハズ我ハ鐵道ナリト云
  ッテ、少シモ全體ノコトヲ考ヘズニ自分ノ自由自在ニ借錢ヲ拵へ、外債ヲ募ッテ
  國ノ害ハ一點モ顧ミズ我儘ニ働クト云フコトハ出來マセヌノデ、外國ノ鐵道
  ナラバイザ知ラズ卽チ國ノ鐵道デアル、國ト利害ヲ共ニセニヤナラヌモノデ
  アル、若シ此鐵道ガ多額ノ外債ヲ募リマシテ、ソレガ爲ニ是ガ元利ノ返濟等ニ
  正貨ヲ要シマストキニハ、鐵道獨リデ困ッテハ居リマセヌ、必ズ國ガ困ヲテ仕舞
  フノデアル、一番困難スルノハ國デアルノデアリマス、ソレデドウシテモ高橋
  君ノ御論ノ如ク、內債ヲ募ルトカ、若クハ鐵道デアルカラ宜シイト云フヤウナ
  コトハ、我國ノ經濟狀態デハ決シテ許シマセヌト思ヒマスル、是ハドウカ一ツ
  十分ニ是等ノ點ハ、高橋君ナドノ御一語ト云フモノハ最モ重イモノデアルカ
  ラ、十分ニ御〓究ヲ願ヒタイト思ヒマスル、ソレデサテ、斯ク········其他高橋君
  ノ御論ノ中ニ總テ種々ナ其中ニ御論モアリマシタガ、ソレニ付キマシテ一々
  私ハ所見ヲ述ベタイト思ヒマスルガ、是ハ長クナリマスルカラ、直接此案ニ
  關係ヲ有チマスル所ノ二點ノミヲ述べテ置キマシテ、遺憾ナガラ外ノコトニ
  對シテ論駁ハ見合セルノデアリマス、偖斯ク致シテ見マスレバ愈〓我國ノ現
  狀ト致シマシテ、公債ハ募リ得ベカラズト云フ論定ヲ私ハ致シマスル、シテ
  見マスレバ後ニ殘ル問題ハ何デアルカ、卽チ基金ハ減ラスガ宜イヤ否ヤト云
  フ問題ニナリマス、又午前仲小路君ノ御論、又過日來段々委員會ニ於キマシ
  テノ御論モ、歸著シマスル所ハ減債基金ヲ滅ズレバ公債ノ信用ニ關係スルト
  云フコトノ御論ガ一番重イヤウデアリマスカラ、此點ニ付テ私ハ十分ニ論ジ
  テ見タイト思ヒマスル、凡ソ此信用ト云フモノハ何デアルカ、名デアルカ、
  實デアルカト言ヒマスルト、決シテ名ニ在ラズシテ實ニ在ル、デ今迄ノ此基金
  ヲ減ジテ惡イト云フハ單ニ此基金五千万圓ヲ三千万圓ニ減ラスト云フ其名ニ
  拘泥シタ論デハナイカト私ハ斯ウ考ヘマスル、ケレドモガ信用ト云フモノガ
  名ニ在ラズシテ實ハ信用ノ如何ニ在ル、凡ソ要アッテ金ヲ借リマスルモノハ借
  リマシタ所ノ金ハ之ヲ返還シ、卽チ返シテ利益ノトキト然ラズシテ卽チ害ア
  ルトキガアルノデアリマス、返スベキ力ガアッテ之ヲ返セパ宜シイガ、若シモ
  無理ヲシテ返スベキ力ナクシテ之ヲ返スト云フコトハ寧ロ返サザルニ優ル害
  ガアリマスルデ私ハ今日ノ近來ノ狀態ハドウカト云ヒマスルト此金ヲ返
  セバ害ガアル、單ニ返スノヂヤナイ、此返ス所ノ度ヲ失ヘバ害ガアル、何故
  ナレバ此中外債ノ如キハ正貨ヲ以テ返サナクチヤナラヌノデ、若シ返スコト
  ノ度ニ過グレバ、忽チ此正貨維持ニ關係スル、實ニ我國ノ唯今ノ有樣ハ悲シ
  イカナ一々正貨ノ維持ト云フコトヲ考ヘナクチヤナラナイ、若シ是ガ正貨ノ
  維持ニ關係スルトナリマスレバ········正貨ノ維持ニ關係スルトスレバ直チニ此
  貨幣制度ノ根本ヲ危クスル、是ゾ卽チ一大事デアルノデアル、ソレデ實ニ一時
  外債ヲ重ネマシタ以上ドウ云フ有樣デアッタカ、元金ハ素ヨリ利子スラモ返ス
  コトニ苦シンダ時代ガアリマスル、ソレハ近キコトデアル、デ何ヲ以テ返シタ
  カト云ヘバ實ニ泣ク〓〓ニモ新シイ負債公債ヲ起シテ、新シイモノヲ以テ古
  イモノヲ返シ、卽チ借金ヲ以テ借金ヲ返ス、先刻高橋男ガ仰ッシヤイマシタ通
  リ外國デ金ヲ募ッテモ日本ニ金ハ這人ラヌカラ害ハナイト云フ、洵ニ然リデゴ
  ザイマス、金ガ這人ッテ來ウ筈ハナイノデアリマス、是ハ實ニ殘念至極ノコト
  デ、殊ニ國ノ狀態トシテ誠ニ危イコトデアリマス、ソレデ詰リ我國ノ今日ノ有
  樣ハ外債ハ一文デモ餘計ニ返シタイガ、返セバ返スホド債權者卽チ外國債權
  者ノ信ヲ失スルコトニナル、借錢ヲ返シテ信ヲ失スルノハ誠ニヲカシイコト
  デアリマスガ、事實サウナルノデアリマス、ソレハ何カト言ヘバ無理ヲシテ返
  スカラ債權者ニ金ヲ返シタノデハナイ、若シ力アッテ返ス金ナラバ債權者ハ返
  サルルコトヲ好マナイト云フ斯ウ云フモノニ違イナイノデアリマス、ソレデ
  私ハ此基金ヲ減ズルハドウカト云ヘバ決シテ信用ヲ減セズ、資金ヲ減ズル爲
  ニ却ッテ信用ヲ增スト云フ斯ウ云フコトヲ申シマス、ソレデ何故カナレバ茲ニ
  一ツノ金ノ必要ガアル、此金ハ借錢ヲスルガ宜シイカ、在ル所ノ金ヲ以テ之ヲ
  賄フガ宜イカト云ヘバ無論借錢ヲセヌデ在ル所ノ金ヲ以テスルガ宜イノデア
  ル〓又玆ニ一ツノ不急ノ金ガアルカラ此不急ノ金ヲ以テ急用ノ方ヘ廻スカド
  ウカト言ヘバ、無論是ハ遊ンデ居ル豐ナモノヲ以テ急ナ方ニ充テルガ最モ運
  用上シナクチヤナラヌコトデアルト思ヒマス、卽チ此基金ヲ減ジマスルト云
  フノハ借ルベキモノヲ借リル代リニ此金ヲ持ッテ行ク、又一方ニ不急ナモノヲ
  以テ急用ノモノニ廻スト云フ斯ウ云フコトニナリマスノデアリマスカラ、是
  ハ債權者初メ總テ誰カラ見マシテモナカ〓〓是ハ面白イコトヲヤッテ居ル、是
  迄ハ借金ノ上ニ借金ヲ重ネテシヨッタガ、段々斯ウ云フコトニシテ終ニ借金ヲ
  シナイ、在ル所ノモノヲ以テ間ニ合ハセルノハ誠ニ確カナ方法ニナッテ來タ
  ト云フ此信用ハ減債基金ヲ減ラシタ此金ハ決シテ濫費スルモノデハナイ、
  本國ノ生產力ニ使フノデアル、殖產興業其他ニ最モ必要ナル鐵道ニ使フノデ
  アル、ソレデ私ハ、無益ニ使ヘバ信用ヲ墜シマスケレドモ、斯樣ニ有利ノ事
  業ニ使ヘバ却ッテ此減債基金ヲ減ラシテモ信用ヲ保ツ基トナルト思ヒマス、實
  ニ我國ノ今日ノ財政ノ狀態ハドウデアルカト申シマスレバ、誠ニ困難ナ場合
  デアル、國民ハ負擔ノ輕カラザルモノガアリマス、又國債ハ斯ノ如ク多大ニ
  實ニ重荷ヲ負ッテ居ル、國防ハ益〓充實セネバナラナイノデアル、又殖產興業
  ノ發達ヲ圖ラネバナラヌノデアル、如何ニシテモ誠ニ財政ノ上カラ見レバ困
  難ナ時デアリマス、ソレデ一錢一厘タリトモ實ニ貴重ニ使ハナケレバナラナ
  イ時デアッテ、一方ニ無益ニ金ヲ遊バセルトカ何トカ云フコトガ出來得べキ時
  デハナイノデアリマス、故ニ財政ノ衝ニ當リマス者ハ、守ルベキモノハ守リ、
  變ズベキモノハ變ジ、謂ハユル守備活動共ニ其宜シキヲ制シテ行カナケレバ
  ナラナイノデアル、然ルニ當局ガ此際ニ當リマシテ、此基金ヲ····餘リ急ヲ
  要シナイ基金ヲ以テ急要ノ鐵道ノ資金ニ充テタト云フコトハ、私ハ是ハ機宜
  ノ宜シキヲ得タ處置デ、卽チ運用上其要ヲ得タモノデアルト、深ク私ハ當局
  ノ苦心モ察シマスノデアリマス、ソレデ右ノ如ク私ハ、第一鐵道資金ヲ必要
  ナリトシ、公債ヲ募リ得ズ、減債基金ハ之ヲ減ズルガ却ッテ信用ヲ增ス、又運
  用上機宜ヲ得タルコトデアルト私ハ深ク信ズルノデアリマス、ソレカラモウ
  一ツ殘ッテ居リマスガ、午前ニ鐵道資金二千万圓ハ廣軌鐵道ノコト云々ト仙石
  總裁ガ(聽取シ難シ)又是非是ハ廣軌鐵道ニセネバナラナイト斯ウ云フ御論
  ガアリマシタガ、是ハ唯御論ジニナルノナレバ何ノ差支モアリマセヌガ、ソレ
  ガ爲ニ此二千万圓ト云フモノヲ要シナイト云フコトニナレバ、一言申シテ置
  カネバナリマセヌガ、固ヨリ廣軌鐵道ト云フコトノ利害得失ハ一定ノ論ガア
  リマシテ、然ルニ一定ノ論ガアッテ廣軌是ナリトスルモ、實行シ得ラルルト云
  フ點ニ付キマシテハ、是ハ金トノ相談デアル、縱シ政府委員ガ今年一抔ニ調
  ベルトカ何トカ言ッタ所ガナカ〓〓サウ云フ譯ニハ行キマセヌノデアリマス、
  是ヨリ何年ニシテ實行シ得ラルルカ、前途尙ホ遠イコトデアルノデ、ソレト
  若シ之ヲ廣軌ニスルト云フコトニナリマスレバ、金ハドウデアルカト云ヘバ、
  唯今ノ狹軌ヲ改良シテ行クヨリハ、少ナクナルカ多クナルカト云ヘバ、實ニ是
  ハ幾倍ノ增シヲ要スル、巨大ノ費用ヲ以テ當ラネバ出來ナイト考ヘマスソ
  レデ詰リ若シ之ヲ今年ノ暮ニ、廣軌ト云フモノガ萬一ニモ運ブト云フコトニ
  ナリマスレバ、此廣軌論者ハドウデアルカト云ヘバ基金ノ五千万圓ハ
  千万圓ハ愚カ五千万圓ヲ總テ持ッテ行カナクチヤナラヌト云フコトニナッテ來
  ル、其準備トシテ今ヨリ二千万圓(聽取シ難シ)私ハドウ云フ調べガ付クカ
  知レマセヌガ、免モ角此二千万圓デハ追付カナイ、殆ド基金ノ五千万圓全部
  持ッテ行ッテモドウカト存ジマス、之ヲ以テ長ク三十年四十年モ掛ッテスルト
  云フコトヲスレバ、ソレハドウカ知レマセヌガ、今日交通ノ急要ヲ要スル際
  ニ於キマシテ、短イ年月ノ間ニソレヲヤラウト云フニハ、ナカ〓〓少々ノ金
  デハ出來マスマイト考ヘマス、ソレデ其事ハ此案ニ對シテ關係ノナイ論外ノ
  モノデアルト考ヘテ居リマス、ソレデ大〓反對論者ノ御論ノ要點ニ對シテハ
  一應愚見ヲ申述マシタト考ヘマス、終リニ臨ンデ又一言イタシマスガ、此案
  ハドウデアルカト云ヘバ唯一ノ基金問題ノ案デアリマス、併シ反對論者ノ論
  ガ成立スルト致シマスレバ、其結果ヤ誠ニ重大ナ關係ヲ及ボシマセウト存ジ
  やく、サウシテ此案ガ總テ一院ノミデ自由ニナルモノナラパ宜シウゴザイマ
  スガ、苟クモ二院制度ヲ執ル以上ハ、一院ガ既ニ決議ヲシテ參リマシタモノ
  ハ、他ノ一院デハ其決議ハ十分重ンジナケレバナラヌモノト思ヒマス、ソレ
  デ何カ是ガ重大ノ國防トカ、又ハ多數ノ力ヲ恃ンデ橫暴ナ分子ヲ含ンデ居ル
  トカ言ヒマスレバ、假令一院デ決議シタモノト雖モ、十分ニ決議ヲ重ネナケ
  レバナラナイガ、私ハ此案ハ決シテ左樣ナコトハアルマイト思ヒマス、卽チ政
  府ニ於キマシテモ與黨少數ノ時代ニ立テタル所ノ綱領ニ依ッテ出來タ此案デ
  アリマスカラ、斯樣ナコトモアリマスマイト思ヒマス、本院ガ事ノ大小輕重
  ヲ擇バスシテ屢、衆議院ニ反對スルト云フコトハ、深ク是ハ愼マナケレバナラ
  ヌト思ヒマス、私ハ此邊ニ對シテモ本案ハ十分贊成シナケレバナリマスマイ
  ト考ヘマスカラ、其事ヲ述ベテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=51

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• 052・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　澤柳政太郞君
  〔澤柳政太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=52

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• 053・澤柳政太郎

  ○澤柳政太郞君　私ハ遺憾ナガラ本案ニ對シテ反對ヲ表スルモノデアルノデ
  アリマス、先刻仲小路君ヨリシテ、本案反對ノ理由ニ於テハ、擧ゲテ盡サザル
  所ナキ程度ニ御話ガアッタノデアリマス、然ルニ之ニ加フルニ、少クトモ私ニ
  取リマシテハ甚ダ耳新クトモ、而カモ亦有力ナル反對ノ理由ヲ高橋男爵ヨリ
  シテ承ルコトヲ得タノデアリマス、私ハ更ニ之ニ加フル必要モナイカト思ヒ
  マスルシ、又兩君ノ御述べニナリマシタコトニ付キマシテハ、一言モ繰返ス
  コトヲ致サヌノデアリマス、私ハ全ク新タナル本案反對ノ理由ヲ述べテ諸君
  ノ御判斷ニ訴ヘタイト考ヘル次第デアルノデアリマス、申ス迄モナク國ガ公
  債ヲ起シマシタナラバ之ヲ返濟スルト云フコトハ論ヲ俟タナイコトデアルノ
  デアル、然ルニ何故ニ國債整理基金特別會計法ナルモノヲ設ケテ、サウシテ
  之ヲ返スト云フコトヲ內外ニ向ッテ宣言スルノデアリマセウ、如何ナル公債ト
  雖モ、或ハ短キハ三年、五年ノ据置期間ヲ經過イタシマスレバ、大體五十年
  以内ニ於テ·······長期ノ公債ト雖モ五十年以內ニ於テ之ヲ償還スルト云フコト
  ハ其規定ニ明カニ示サレテ居ルコトデアッテ、應募者ハ卽チ之ヲ信ジテ而シ
  テ募集ニ應ジタ次第デアルノデアル、ソレ故ニソレガアルノニ拘ラズ、尙ホ
  斯ノ如キ特別ニ國債整理基金、通俗ニ減債整理基金ト云フモノヲ置キマ
  スルノハ、先刻段々御話ノアリマシタ特別ノ事情モアリマスルガ、免ニ角一
  般ノ約束ヨリモット政府ハ勉强ヲシテ早ク返ス積リデアルト云フコトヲ宣言
  シタル所ノモノガ、卽チ此國債基金特別會計法ノ趣旨デアルト思フノデアリ
  〒、、此會計法ガナカッタ所デ、相當ニ政府ハ國債整理ノ經畫ヲ年々立テテ行
  カナケレバナラヌト云フコトハ申スマデモナイコトデアル、日本ハ現在約二
  十六億ノ公債ヲ負ッテ居ルノデアリマスルカラシテ、マダ期限ガ來ヌ、或ハ延
  バセルダケハ延バシテ、アトハドウナッテモ構ハヌト云フヤウナコトハ、如何
  ナル無責任ナル政府ト雖モ、又兩院ガ其責任ヲ感ゼズト致シマシテモ、斯ノ如
  キ財政經畫、斯ノ如キ國債政策ニ贊同ヲスルモノハナカラウト思フノデア
  ル、此基金令ガナイニ致シマシタ所デ、政府ハ必ズヤ相當ノ滅債ノ方法ヲ立
  テナケレバナラヌノデアル、況ヤ其額ハ二十六億ノ多キニ上ヲテ居ルノデア
  リマスカラシテ、此基金令ガナイニ致シマシタ所デ、少クトモ年ニハ三千万
  ヤ四千万ハ償還シテ行カナケレバナラヌコトハ是ハ言フマデモナイコトデア
  ル、ソレ故ニ抑、此國債整理基金特別會計法ノ出來ル際ニ當ッテ、學者ハ多ク
  ハ之ニ向ッテ反對ヲシタノデアル、國ガ國債ヲ負ウテ之ヲ償還スルト云フコト
  ハ、卽チ年々ノ財政經畫ニ於テ、歲入歲出ノ上ニ於テ出來ルダケ剩餘ヲ多ク
  シテ、以テ其償還ニ充テルト云フコトハ、是ハ特別ニ法律ヲ制定スル必要ハ
  ナイノデアル、唯時ノ事情ニ依リマシテ或時ハ卽チ非常ナ事變ガ起ルトカ、
  或ハ全國ヲ通ジテ非常ノ凶災ガ起ッタト云フヤウナトキニハ、其減債ニ充テル
  所ノ額ハ極メテ少額ニナルカモ知レヌ、或ハ一文モ償還セヌト云フコトニナ
  ルカモ知レヌ、併ナガラ又一方ニハ償還スル上ニ於テ、敢テ民間ノ經濟界ヲ
  攪亂スルコトナク、而シテ政府ニハ此剰餘金ガアルト云フトキニハ三千万
  圓ハ置キ、五千万圓デモ六千万圓デモ、凡ソ一國ノ有スル所ノ公債ノ全額ニ
  相應シテ、相當ノ整理ノ經畫ヲ立テナケレバナラヌノデアル、故ニ斯ノ如キ
  自繩自縛ノ法律ト云フモノハ、寧ロ之ヲ制定セヌ方ガ宜シイト云フ議論ガ
  アッタ位デアルノデアル、學者ノ議論ハ殆ド其點ニ於テ一致シテ居ルト申シテ
  宜カラウト思フノデアル、此法律ヲ設クルニ及バナイト云フノ論ハ、決シテ國
  債ハ整理セナイデ宜シイ、減債ヲ計ラナクテ宜シイト云フノデハナイノデア
  ル、減債、國債ノ整理ト云フコトハ、國庫ノ財政ノ如何ニ依ッテ自ラ其途ヲ
  發見スルコトガ出來ルト云フ意味ニ於テ、今申スヤウナ議論ガ成立ツノデア
  ラウト思フノデアル、然ルニ特ニ斯ノ如キ法律ヲ設ケタト云フノハ、政府ハ
  或特別ノ事情ニ依ッテ大ニ奮勵ヲシテ、他ノ事ハ何ヲ措イテモ此國債ハ整理ヲ
  シヤウ、大ニ奮發ヲシテ整理ヲシヤウト云フコトノ意味ヲ數字ニ、金額ニ現
  ハヽ條文ニ現ハシタル所ノモノガ、卽チ此特別會計ノ基金デアルノデアル、
  然ルニ今囘政府ガ之ヲ改メテ三千万圓トスル、而シテ其割合ハ万分ノ百十六
  ト云フコトデアルノデアル、斯ノ如キコトニ改正ヲシタナラバ、此法律ト云
  フモノハ無意味ニナル、無イヨリモ寧ロ惡ルイト申シテ私ハ宜カラウト思フ
  ノデアル、其點ニ於テ私ハ新タナル理由トシテ玆ニ一言申シタ次第デアルノ
  デアル万分ノ百十六ヅツ返ス、ソレ以上ト云フコトガアリマスルガ、法律
  ニ既ニ万分ノ百十六ト申シタ以上ハ、ソレダケヅツ返シテ行キマスレバ、兔
  ニ角法律制定ノ趣旨ニ適ッタモノト申シテ宜シイノデアリマス、然ラバ何年
  掛ヲテ是ガ整理ガ出來ルノデアル、八十六箇年掛ルノデアル、斯ノ如キ國債ノ
  政策ヲ立テル所ノモノガ、世界廣シト雖モ何處ニアリマセウ、獨逸ノ如キハ、
  是ハ私ノ調査シタノデハナイ、大藏次官ガ衆議院ノ者ニ衆議院ニ於テ答ヘラ
  レタ所ニ依ルト云フト獨逸ニ於テハ生產的ノ公債ハ百分ノ一、四ヅツ償還
  スル割合ニナッテ居ル、不生產的ノ公債ハ万分ノ三百、卽チ今度ノ率ニ直シテ
  見マスルト、獨逸ニ於テハ不生產ノ公債ハ万分ノ三百ヅツ償還スル、卽チ三
  十三年ニシテ軍事公債ト云フヤウナモノハ償還スル割合ニナルノデアリマ
  ス、生產的卽チ事業公債ノ如キモノハ万分ノ百四十ヅツデアル是ハ必シ
  モ利息ダケヲ拂ッテ參リマスレバ、生產的ノ公債デアッタナラバ、或ハ永
  遠ニ償還シナイ方ガ、此公債ヲ持ッテ居ル者ハ喜プカモ知レナイノデアル、併
  ナガラ免ニ角借リタモノデアルカラ返サナケレバナラナイ、而シテ其返ス割
  合ハ万分ノ百四十デアリマスカラ、可ナリ長クナリマスルガ、七十一年ニシ
  テ償還スルト云フコトデアルノデアリマス、恐ラクハ獨逸ニ於テハ此生產的
  不生產的ノ公債ヲ合セテ計算イタシマシタナラバ、四十年位ニシテ免ニ角現
  在アル所ノ公債、之ヲ償還スルト云フ經畫ニナッテ居ルノデアラウト思フノ
  デアリマス、免ニ角公債ノ償還期限ト云フモノハ五十箇年········長期ナルモノ
  ニ於テモ五十箇年ト極メテアルノデアル、而シテ此法律ハ八十六年ヲ經過ス
  ル其間ニ、ボチ〓〓償還スルノデアルト云フコトヲ、中外ニ向ッテ聲明スルノ
  デアリマスカラ、如何ナル意味ヲ持ッテ居ルノデアルカ、少シモ國債ヲ整理ス
  ルト云フ整理ノ意味ハ寸分モ含ンデ居ラヌト申シテ宜カラウト思フノデア
  ル寧ロ日本政府ハ借金ヲシタ、借金ハシタガ早ク返スノヲ努メルノデハナ
  〃成ルタケ返サヌヤウニ、返サヌヤウニト努メテ居ルノデアル、サウ言ッテ
  モ信ジナイカラ、万分ノ百十六ヅツ返スノデアルソレニ間違ヒナイト云フ
  コトヲ中外ニ向ッテ聲明スルノト同ジコトデアル、是ハ此條文ト云フモノヲ見
  レバ直グニ何人モ、此万分ノ百十六ト云フコトハ如何ナル根據ニ依ッテ出タ
  モノデアルカト云フコトハ、直グニ分ルコトデアリマスガ、此基金令ト云フ
  モノハ、或ハ是ガ衆議院解散ノ一ノ理由ニナッタ、隨ッテ衆議院ニ於テハ是ガ黨
  派問題ニナッテ居ル、或ハ本院ニ於テハ黨派問題ト云フコトハアリマセヌガ、
  稍〓何ダカソレニ類似シタヤウナ色彩ガ著イテ居ル、ソレ故ニ政府ガ改正セム
  トスル所ノ條文其物ニハ贊成スル方ニ於テモ反對スル方ニ於テモ、十分ニ
  注意サレルコトナクシテ、私ノ如キ財政ノコトニ付テハ至ッテ素人ノ者ガ、斯
  ノ如キ疑ヲ起スコトニナッタラウト思フノデアリマス、免ニ角斯ノ如キモノデ
  アッタナラバ、此公債整理基金令ト云フモノハ無キガ優ルモノデアル、無キガ
  優ルコト萬々ナルモノデアル、之ヲ大藏省ノ當局者ニ聽イテモ必ズサウ言ハ
  レルダラウト思フノデアリマス、若シ大藏省ノ人ガ、今此基金令ガナカッタナ
  ラバ、三千万圓ヲ返サナイノデアルト云フコトヲ言ハレルナラバ實ニ驚キ入
  ル、責任ノ何タルヲ少シモ知ラナイ人デアルト云フコトヲ斷言シテ憚ラナイ
  ノデノル、特別ナル時機、非常ナル事變戰爭ガ起ッタト云フコトデアルナラ
  バ今年ハ先ヅ辛抱シテ貰ハナケレバナラヌト云フコトナラバ聞エテ居ルカ
  モ知レマセヌガ、格別ノ事變モ起ラヌノニ、此法律ガアレバ三千万圓ハ仕方
  ガナイカラ返スガ、若シ無カッタナラバ二十六億ノ公債ヲ持フテ居ルガ、是ガ
  減債·········是ガ整理ニ付テハ一向考ヘテ居ラナイ、サウシテ年々六億ノ歲計ヲ
  立テヤウト云フコトハ決シテナカラウト思フノデアリマス、故ニ此基金合ノ
  如キハ、斯ノ如ク改正スルナラバ、無キガ優ルモノデアルト私ハ固ク信ズル
  ノデアル、他ニ如何ナル理由ガアルトシテモ、此點ニ於テ斯ノ如ク無意味ナ
  馬鹿ラシイ滑稽ナル案ヲ、我〓ハ同意スルコトハ出來ヌト考ヘル次第デアル
  ノデアリマス、併ナガラ此基金令ハ········此無意味ナル基金令ノ生ジタノハ、
  卽チ國債ヲ整理スルト云フ整理ノ方法如何ト云フ點カラシテ割出サレタ所ノ
  モノデハナイノデ、度〓御說明ノアリマシタ如ク、國有鐵道ノ經營ノ上カラ
  シテ、ドウシテモ或資金ヲ得ナケレバナラヌト云フコトカラシテ此案ガ出タ
  ノデアリマスルガ之ニ付テハ或ハ仲小路君ノ御話、又誠ニ事實ニ付テノ高
  橋男爵ノ御話モアリマシタカラシテ、之ガ爲ニ此永遠ニ亙ル特別ナ事情カラ
  起ッテ來タ所ノ減債基金令ヲ改正スル、而カモ無意味ニ滑稽的ニ改正スル理
  由ニナラヌコトハ申スマデモナイコトト思フノデアリマス、私ハ或點ニ於テ
  ハ·······高橋男爵ハ鐵道ノ建設改良ノ爲ニハ三千八百万ドコロデハナク、少ク
  モ五千万圓モ使ハヌナラヌト云フコトノ御話デアリマシタガ、使ヒ得ルナラ
  バ誠ニ結構ナコトデアル、併ナガラ國ガ國家トシテ當然經營シテ居ル所ノ國
  務ハ澤山アルノデアル、内治ノ上ニ軍事ノ上ニ·········而シテ如何ナル事業ガ年
  々二千万近クノ新ナル經費ト云フモノヲ投ジテ行クデアリマセウ、斯ノ如キ
  國務ハ國家トシテ當然營ム所ノ國務ニモ一ツモナイノデアル、併ナガラソレ
  ハ費用ヲ多ク要セヌノデアルカト云フト、決シテサウデハナイノデアル、國
  ノ發展ト共ニ幾多ノ事業ヲ經營シテ行カナケレバナラヌノデアリマス、殖產
  興業ニ關係スルコトニ致シマシテモ、或ハ〓育ニ關スルコトニ致シマシテモ、
  實ニ幾ラアッテモ足ラナイ位ノ今日ノ財政ノ有樣デアルノデアル、鐵道ハ勿論
  必要デアリマス、故ニ特別會計ニ依ッテ、他ニ何等ノ累ヲ及ボサズシテ、三千
  万ナリ五千万ナリノ公債ヲ募集シテ、ソレニ依ッテ經營シテ行クト云フコトデ
  アッタナラバ、而カモ是ガデス、尙ホ國家ノ手ニ於テ現在國有鐵道トシテ經營
  スルト言ウタナラバ、如何ニ他ニ累ヲ及ボサヌカラト言ウテモ、權衡ヲ失ス
  ルト云フ論モ出テ來マスガ、ソレハ兔ニ角トシテ、出來ルナラバヤッテモ宜シ
  イノデアリマスガ、殖產興業ノ上ニ於テ、又今囘ノ戰爭ガ起ッテ來マスレバ、
  忽チ或ハ原料ニ差支ヘ、或ハ工業ノ生產物ニ差支ヲ生ズルト云フヤウナコト
  デ、他ニ非常ニ必要ナルモノガアルニ拘ラズ、政府ハ民間カラシテ、或ハ議院
  カラシテ、或ハ諸方カラシテ督促スルニモ拘ラズ、之ニ向ッテ何等ノ經費ヲモ
  計上シテ居ラヌヤウナ次第デアル、勿論是ハ今日ニ始ッタコトデハナイ、何レ
  ノ時ニ於テモ殖產興業ノ上ニ、〓育上ニ、或ハ又電信電話ノ如キモノニ致シ
  マシテモ、幾多新ニ爲サナケレバナラヌ所ノ仕事ハ澤山ニ有ルノデアリマ
  ス、鐵道ホド多クノ金ヲ、經營ニナリ建設ニナリ使ヲテ居ル所ノ仕事ト云フ
  モノハ他ニ一ツモナイノデアリマス、若シ今日ノ經濟ノ狀態ニ於テ、ドウシ
  テモ益金以外ニ市場ニ公債ヲ募集スルコトガ出來ヌト言ッタナラバ、玆一年ナ
  リ一年半ナリ我慢スルト云フコトハ少シモ差支ノナイコトデアルト思フノデ
  アリマス、況ヤ先刻御話ノアリマシタ如ク、必シモ其方法ナキニ非ズト云フコ
  トデゴザイマスカラ、斯ル理由ニ依ッテ此國債整理基金令ヲ無意味ニ馬鹿ラシ
  ク、眞ニ中外ニ向ッテ自分カラ自分ノ不信用ヲ廣〓スルガ如キ改正ト云フモノ
  ハ是非ナイヤウニ致シタイ思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=53

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• 054・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　此際時間ノ延長ヲ宣〓イタシマス
  〔木村誓太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=54

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• 055・木村誓太郎

  ○木村誓太郞君　先刻來反對及贊成ノ御演說ヲ大分拜聽ヲ致シマシテゴザイ
  やくも何レモ此鐵道ノ改良ト云フコトノ必要ナコトハ御認メニナッテ居ルヤ
  ウデ、之ニ反對ナサル御方ハナイヤウニ見受ケマスルガ、唯少シク初メニ私
  ノ耳ニ達シマシタノハ、仲小路君ガ三千八百万圓ト云フヤウナ金ハ、縱シヤ
  止メテモ此國債整理基金令ハ變ヘテハナラヌト云フ御說ガアッタヤウデアリ
  WV.8其他ニハ一向見受ケヌヤウデアリマシテ、此改良ノ必要ト云フコトハ
  申ス迄モナイコトニ私ハ信ジテ居ルノデアリマス、サテ此鐵道ヲ改良スルニ
  付テハ其資金ガ不足ヲスル、其不足スル資金ハ何レニ求ムルカ、公債ヲ募集
  スルカ、又ハ政府ノ財政上ノ遣繰ヲ以テ之ヲ融通スルカト云フ此二ツニアル
  ノデアリマス、ソレデ先刻來或論者カラ承リマスルニハ、此鐵道ノ如キ生產
  的ノ事業ハ決シテ租稅ヲ徵收シタ一般ノ財政カラ之ヲ繰入ルベキモノデハナ
  イ、是ハ別段ニドウシテモ公債ヲ募ッテ遂行スベキ事業デアルト云フ御論ハ大
  分承ッタヤウデアリマスルガ、私ハサウハ信ジナイノデアリマス、何シロ特別
  會計ニシロ、一般會計ニシロ謂ハバ一軒ノ家ニ例ヘテ見レバ、唯奧ノ經濟
  ト店ノ經濟ト違フダケノ話デアリマス、店ノ資本金ガ足ラヌトキニハ奧ニ金
  ガ餘ッテ居ッテモソレヲ使フコトハナラヌ、是非借入金ヲセニヤナラヌト云フ
  コトハナイ筈デアル、素ヨリ鐵道ト云フモノモ利益ヲ目的トシタ事業デハナ
  イノデアリマス、申ス迄モナク社會ノ交通ノ便利、生產的ノ發達ヲ助クル爲
  ニ、運輸ノ交通ヲ統一スル爲ニ國家ガ之ヲ所有スルコトニナッタノデアリマ
  ス、ソレカラ推シテ見マスルト彼ノ製鐵所ノ如キモ矢張リ同樣デアリマス、
  是ニハドナタモ是非公債ヲ募ッテセニヤナラヌモノダト云フ御論ハ承ラヌノ
  デアリマス、此製鐵所ノ性質ト何モ別ニ變ッタコトハナイノデアリマス、私ハ
  此鐵道ノ事業ニ使フ金ハ、一般會計カラ繰入レテハ不道理デアルト云フ御說
  ハ甚ダ私ハ感服イタサヌノデアリマス、又此國債整理基金カラ之ヲ繰入
  レルコトニシタト云フモノハ、先刻申シマシタル通リ、公債ヲ募ルカ、一般
  會計カラ之ヲ入レルカ、一般會計カラ入レルニハ他ニ財源ガナイカラシテ、
  已ムヲ得ズ國債整理基金ヲ二千万圓減ジテ之ニ振向ケルト云フコトニナッタ
  ノデアリマス、サテ其國債整理基金ヲ三千万圓ニ減ジタナラバ如何ニ國家ノ
  信用ニ害ガアルカ、其國家ノ信用如何ト云フコトハ定メテ內國ノコトデアル
  マイ、外國ノコトヲ諸君モ仰セラレルコトデアラウト思ヒマスルシ、私モ此
  信用如何ト云フコトハ、外國ニ對スル言葉デアリマス、サテ其外國へ返ス此
  國債整理基金カラ返ス金ハ、ドレダケデアルカト申シマスルト、一年ニ一千
  万圓ヅツシカ是マデ返シテナイノデアル、ソレ以上ハ正貨ノ關係カラシテド
  ウシテモ國庫ニ金ハ餘ッテ居ッテモ返スコトハ出來ナイ、紙デハ返スコトハ出
  來ナイト云フ困難ガアルノデアル、卽チ元金ヲ返スニモ利子ヲ拂フニモ皆正
  金デナクテハナラヌ、ソコデ我國ハ幸ヒ近頃ハ歐洲ノ戰亂ノ結果モ手傳ウテ
  ハ居リマセウガ、幾分カ貿易ノ關係ト云フモノガ昨今幾分カ囘復ヲシテ、逆
  調ヲ順調ニ幾分カ導イテ居ルヤウニ見エマス、是ハ日本ノ國民トシテ一番憂
  フベキハ外國債ノ十五億圓ト云フモノデアリマシテ、内國債ハアリマシテモ
  是ハ謂ハユル一軒ノ家ノ內々ノ借貸、兄弟同士ノ貸借デアリマス、私ハ是ハ決
  シテ眼中ニ置カナイノデアリマス、唯憂フル所ハ外國債ノ十五億圓ト云フモ
  ノヲ成ルタケ早ク之ヲ償却セヌコトニハ········若シモ是マデノ如ク貿易ガ逆調
  デ年々決濟金ハ正金デ出サナケレバナラヌ、此國債利子、是モ正金デ拂ハネバ
  ナラヌト云フ場合ニ於テ、輸入超過トナッテ此決濟金ヲ又其上正金デ出サヌナ
  ラヌト云フト、我國ノ此兌換制度ハ將來如何ナルカト云フコトヲ懸念スル、
  私ハ密ニ心配ヲ致シテ居ルノデアリマス、ソレデ外國へ返ス信用如何ト云フ
  コトハ是マデノ一千万圓ヲ減ラシタナラバ、サテ大變不信任ニナリマセウ、
  又今日ノ形勢ヲ見マスレバ、假令三千万圓ニ此減債基金ノ高ヲ減ジマシテモ、
  外國ヘ返ス金ハ一千万圓以上、成ルベクハ二千万圓、成ルベクハサウ云フコ
  トニシテ貰ヒタイト私ハ希望スルノデアル、又出來得ルデアラウト私ハ信ジ
  テ居ルノデアリマス、ソレニハ成ルベク產業ヲ奬勵シ、輸入品ヲ節シ輸出品
  ヲ精々奬勵ヲシテ此貿易デ取ッテ來ルヨリ外ニハ仕方ガナイノデアル、我國ノ
  產出ノ金ト云フモノハ僅ニ一年ニ一千六百万圓位ノモノデアリマシテ、之ヲ
  以テ此輸出入ノ不平均ヲ決濟スルニ足リマセヌ、又外國債利子ニモ足ラヌ
  ノデアリマス、是非共此貿易上カラシテ此正金ヲ我國ニ取戾シテ、ソレヲ以
  テ外國債ヲ償却シテ行カウト云フヨリ外ニナイノデアリマス、ソコデ決シテ
  此信用不信用ノ上ニ於テハ三千万圓ニ減ジタカラト云フテ、矢張リ一千万以上
  二千万圓モ返シテ居レバ、決シテ信用不信用ト云フ議論ハナイコトト私ハ信
  ジテ居ル、縱シヤ之ヲ是マデノ如ク五千万圓ト致シタ所ガ、五千万圓ガコトハ
  措イテ三千万圓モ返スコトハ覺束ナイ、精々一千万圓、二千万圓モ返ス位ノ
  コトコソ出來ヌノデアル、ソレ故ニ此三千万圓ニシテ········是マデノ如ク五千
  万圓ト云フ名ハ高イモノノ、其實五千万圓償却ガ出來得ナイノデアル、一方デ
  廉イ利子ノモノヲ返シ一方デハ高イ利子ノモノヲ借リテ返スノデアル、其實
  決シテ五千万圓ヅツ償却ハ出來テ居ナイ、ソレハ卽チ公債ノ總額ヲ御調ベニ
  ナッタラ能ク分ルコトト信ジマス、ソレデ私ハ諸君ガ五千万圓ニ是非セヌケレ
  バナラヌト御述ベニナルノハ內國債ヲ返セト云フ議論ニ歸著スルコトト私ハ
  思ヒマスガ、サウ努メテ兄弟同士借合ヒヲシテ居リマスル內國債ヲ苦心シテ
  返スヨリハ、基金ガアッタナラバ私ハ成ルタケ產業奬勵費ニ使ッテモラヒタイ、
  產業ヲ奬勵シテ此輸出入ノ不平均ヲ直シテ、成ルタケ輸出ヲ殖ヤシテ金ヲ外
  國カラ取ルヤウニスルノガ一番今日ノ急務、焦眉ノ急デアルト私ハ信ジテ居
  ルノデアリマス、先刻來澤柳君モ御述べニナリマシタガ、此唯今議ニ上ヲテ居
  ル議案ハ豫算ニ關係ノナイモノデアルト御述ベニナリマシタガ、既ニ豫算總
  會ニ於キマシテ、若シ此議案ガ此所デ否決ニナッタラバ、此二千万圓ト云フモ
  ノガ大藏省所管ニアルモノヲ削ル、卽チ消滅スルモノト看做スト云フコトノ
  條件附デ豫算總會モ決議ニナッテ居ル、サスレバ此豫算ノ上ニ於テ關係ガナイ
  ト云フコトハ是ハ如何ナル點カラ御覽ニナッタモノカ、必ズ是ハ豫算ニ關係ヲ
  スルモノデアリマス、又段々衆議院ノ方ニ於キマシテモ筆記、速記錄ヲ見マ
  スルト議論ガアッタヤウデアリマスガ、此問題ハ卽チ前議會ノ解散ノ一ツノ理
  由トナッテ居ル問題デアリマシテ、輕々ニ本院ニ於キマシテ之ヲ否決スル場合
  ニ於キマシテハ、必ズヤ又衆議院ト衝突スルコトニナラウカト云フ懸念ヲ私
  ハ持ヲテ居ルノデアリマス、相成ルベクハドウカ本案ハ兩案共可決アラムコト
  ヲ私ハ希望シテ止マヌノデアリマス
  〔男爵目賀田種太郞君演壇ニ登ル〕

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• 056・目賀田種太郎

  ○男爵目賀田種太郞君　本員ハ至ッテ簡單デゴザイマス、十年前ニハ此事ニ付
  テ大藏大臣、遞信大臣職ヲ辭シタ次第デアリマス、卽チ是ハ責ヲ重ンジラレ
  タニ由ル、今ハ荏苒推移シテ唯〓現在ヲ彌縫シテ將來ヲ顧ミヌ、語ヲ換ヘテ
  言ヘバ責ヲ重ンゼザルト云フコトニナッタノデス、頃日來政府ノ言フ所ヲ見ル
  ニ唯獨リ此無責任ノ間ニ於テ、私ノ考デハ鐵道院總裁ナルモノハ稍、責任ヲ
  知ラルルト思ヒマス、無論政府委員トシテノ答辯ハ宜シカラヌ、總裁トシテ
  ハ一理アル、總裁ニ聽ケバ鐵道ノ當局ハ此資金ノ性質如何ヲ問ハズト云フコ
  トニナッテ居ル、年限乃至償却ノコトハ本官ノ考フル所ニ非ズ、大藏省ノ知ル
  所ナリト言フ、成程政府委員ノ答辯トシテハ當ヲ得マセヌガ、鐵道院ノ方カ
  ラ見レバ唯資金ヲ得タイ、寧ロ其口氣ヨリ反面ヲ察シマスレバ、評判ノ惡イ
  租稅ノ貸附ナドヨリモ公債ニ依リタイト云フコトヲ言明セラレタモノト私ハ
  推測シテ可ナリト思フ、故ニ鐵道院總裁ハ飾ラヌ、實ヲ言フ、之ニ對シテ大
  藏大臣ハ元來鐵道ト債務者ト未ダ契約ノ存セザルモノヲ偶〓本員ノ問ニ對シ
  テ五年ト言ハルルガ、後ニ行ッテハソレハ普通ノ例ダ、或ハ鐵道院ハ能ク知ラ
  ヌカモ知レヌ、斯ウ言ハレル、又更ニ總理大臣ニ問ヘバサウ云フ細ヤカナコ
  トハト言ハルル、何ヲ以テ細ヤカト言フ、是ハ根本ノ經營ノ基礎ダ、決シテ
  細ヤカトハ言ヘヌ、サウ云フ譯デ鐵道院總裁ハ飾ラズ、大藏大臣及總理大臣
  ハ言ヲ飾ル、之ヲ十年前ノ藏相遞相ノ爭デ、責ヲ重ンゼラルルニ比スレバ其
  差如何ゾヤ、是ガ第一ノ一ツノ理由、今一ツハ此現行法ノ國債整理基金ト云
  フモノハ抑〓何ノ爲ニ設ケラレタト云フ古ヘヲ見タラバ能ク明カデアラウト
  思フ、抑、明治三十七年二月七日ニ於テ未ダ開戰ノ詔勅ナキニ當ッテ政府ハ直
  チニ財務官ヲ派シ公債募集ノコトヲ圖ッタノデアリマス、其時ニ成ルベクハ無
  擔保デ公債ヲ募リタイ、併ナガラ日本モ非常ナル場合ニ於テアルノデアル、
  若シヤ必要ナラバ擔保ハ已ムヲ得ス、擔保ハ誠ニ遺憾ナコトデアルガ已ムヲ
  得ヌ、先ヅ其時ニ關稅ノ擔保トシタ所デ、ソレニ付テ遂ニ關稅ノ擔保ヲ要ス
  ルコトニナッテ、引續イテ三十八年、更ニ尙ホ募債スルニ當リ又專賣收入ノ擔
  保ヲ要スルコトニナッタ故ニ、現行法ハ遠ク三十七年二月七日ノ日ニ胚胎シテ
  居ル、是卽チ償却ヲ急グノ法律ナリ、償還ヲ急グハ國民國家ノ精神ナリ、何ト
  ナレバ今ノ帝國ハ擔保附ノ公債ヲ有スルト云フコトハ失態デアリマス、故ニ
  政府ノ當然ナル權利トシテ、又國民ノ希望トシテ一日モ早ク是ガ解除ヲ求ム
  ルノハ當然、是現行法ノ命ズル所以デアル、成程將來借換ノ困難ト云フコト
  ハ一應聞クヲ得ルガ、借換ノ出來ルヤウニシテ置カズニ、剩サヘ將來國民ノ
  負擔重キヲ加フルニ於テ、財政ノ基礎鞏固ナラザルノ時ニシテ、借換ヲ容易
  ニスルト云フコトハ是ハ困難、然ラバ大正四年ニ起ル此五億五千万ニ對スル
  抵當解除ト云フコトハ當ノ當局者其他ハ之ニ對シテ借換ノコトノミヲ言ハル
  ルガ、本員ノ見ル所ハ三十七年以來國家ノ以テ憂トスル此抵當解除ハドウス
  ルカ、抵當ヲ解除セザレバ其法律上ノ制裁ヲ存スルコトハ本員ガ申スマデモ
  ナイト思ヒマス、是ハ鐵道ノ病氣デアル、國債整理基金ハ態〓其病ヲ頒タム
  トスルモノデアル、其病ヲ頒タムトスルノ理由ハ、本員ノ見ル所ヲ以テスレバ
  此倉卒ノ際ニ於テ將來起ル減稅ノ門ヲ塞ガムノ意ニ出タリト認メマス、委員
  會ニ於テ成ルベク早ク之ヲ元ニ復ヘスト云フノ希望ヲ以テシタ、一應宜シウ
  ゴザイマス、去リナガラ既往ニ於ケル增師ニ對スル希望、若クハ又廣軌ノ經
  畫ニ對スル希望、一モ政府ガ之ヲ遵奉セシヤ否ヤ、何時デモ因循姑息、常ニ
  現狀ヲ濫リニシテ之ヲ遷延スル、從來ニ於テ然リ、此希望ハ殆ド私ハ役ニ立
  タヌモノデアル、顧ミルニ帝國ノ財政ハ遠ク松方、井上二侯、近クハ曾根子、
  桂公、建設ニ、用意ニ、擴張ニ各、勳業ヲ擧ゲラレタ、今之ヲ危殆ニ陷レムト
  スルハ國トシテ無責任ナリト考ヘマス

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• 057・小澤武雄

  ○男爵小澤武雄君　本員ハ討論終結ノ動議ヲ提出シマス

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• 058・有地品之允

  ○男爵有地品之允君　討論終結ニ贊成デス
  〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕

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• 059・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　討論終局ノ動議ニハ二十人ノ賛成ヲ要シマス
  〔「賛成」ト呼フ者多シ〕

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• 060・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　小澤男爵ノ討論終局ノ動議ニ定規ノ賛成ガアッタ
  ト認メマス、採決ヲ致シマス、討論終局ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

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• 061・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス、兩案ノ採決ノ方法ニ付キマシ
  テ無記名投票竝ニ記名投票兩樣ノ要求ガ出デマシタ、之ニ付テ採決ヲ致シマ
  ス、先ヅ記名投票ヲ問題ニ供シマス、記名投票ヲ可トセラルル諸君ノ起立ヲ
  請ヒマス
  起立者多數

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• 062・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス、念ノ爲ニ諸君ニ申上ゲマス、
  本院規則第百八條ニ依リマシテ、問題ヲ可トセラルル諸君、卽チ本案ノ第二
  讀會ヲ開クベシトスル諸君ハ白色票、二讀會ヲ開クベカラズトセラルル諸君
  ハ靑色票ヲ投票凾ニ御投入ニ相成ルコトヲ望ミマス、先刻申上ゲマシタカラ
  諸君ハ御承知ト存ジマスガ、兩案トモ問題ニナッテ居リマス、本日ハ御登壇ヲ
  願ヒマシテ此場所デ御投票ヲ願ヒマス、是ヨリ氏名點呼ヲ行ヒマス
  〔記名投票執行〕

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• 063・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　投票漏レハゴザイマセヌカ、投票漏レハナイト認
  メマスカラ開票イタシマス
  〔書記官投票ヲ計算ス〕

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• 064・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　記名投票ノ結果ヲ御報告イタシマス、投票總數二
  百三十八、白色票ヲ投ジタルモノ百九十一、靑色票ヲ投ジタルモノ四十七、
  故ニ兩案トモ第二讀會ヲ開クベキモノト決シマシタ
  〔參照〕
  賛成者氏名
  公爵二條基弘君公爵德川慶久君侯爵黑田長成君
  候爵花山院親家君侯爵細川護立君伯爵正親町實正君
  伯爵大原重朝君伯爵〓棲家〓君伯爵〓閑寺經房君
  伯爵松浦厚君伯爵柳原義光君子爵伏原宣足君
  子爵加藤泰秋君男爵尾崎三良君子爵加納久宜君
  山脇玄君子爵裏松良光君子爵岡部長職君
  子爵仙石政固君子爵藤井行德君子爵唐橋在正君
  子爵野宮定穀君子爵一柳末德君子爵大宮以季君
  子爵山口弘達君子爵大田原一〓君子爵鍋島直虎君
  子爵牧野貞寧君子爵京極高德君子爵松平康民君
  子爵久留島通簡君子爵黑田和志君子爵本 多實方君
  子爵實吉安純君子爵勘解由小路資承君子爵本多忠敬君
  子爵土御門晴榮君子爵藤谷爲寬君子爵樋口誠康君
  子爵稻垣太祥君子爵毛利高範君子爵東坊城德長君
  子爵松平直平君子爵松平直德君子爵靑木信光君
  子爵冷泉爲勇君子爵有馬賴之君子爵牧野忠篤君
  子爵永井尙敏君子爵伊集院兼知君子爵堀河護麿君
  子爵五辻治仲君子爵前田利定君子爵櫛笥隆督君
  子爵森〓君子爵西大路吉光君子爵榎本武憲君
  子爵京極高備君子爵今城定政君子爵水野直君
  子爵吉田〓風君子爵本多忠鋒君子爵豐岡圭資君
  子爵藪篤麿君子爵秋月種英君子爵伊東祐弘君
  子爵片桐貞央君子爵松平乗長君子爵野村益三君
  子爵池田政時君子爵丹羽長德君子爵〓岡長言君
  子爵立花種忠君男爵小澤武雄君淺田德則君
  男爵堤正誼君男爵有地品之允君小野田元凞君
  平山成信君男爵石黑忠悳君小松原英太郞君
  男爵高木兼寬君高崎親章君男爵中川興長君
  男爵杉溪言長君男爵中村雄次郞君小牧昌業君
  男爵關義臣君江木千之君男爵沖原光孚君
  男爵原口兼濟君男爵村上 敬次郞君男爵山名義路君
  男爵北島齊孝君男爵村木雅美君小松謙次郞君
  古市公威君男爵田健治郞君男爵武井守正君
  男爵阪井重季君男爵内田正敏君男爵肝付兼行君
  男爵藤井包總君男爵太秦供康君男爵山內長人君
  男爵勝田四方藏君男爵黑瀨義門君男爵梨羽時起君
  男爵眞鍋斌君男爵新田忠純君男爵南岩倉具威君
  男爵伊東義五郞君男爵宮原二郞君男爵平野長祥君
  男爵中溝德太郞君男爵山內豊政君男爵吉川重吉君
  男爵小早川四郞君男爵竹腰正己君男爵神田乃武君
  男爵靑山元君男爵毛利五郞君男爵藤大路親春君
  男爵若王子文健君男爵德川厚君男爵千秋季隆君
  男爵北大路實信君男爵眞田幸世君男爵安場末喜君
  男爵伊丹春雄君男爵長松篤業君男爵本田親濟君
  男爵神山郡昭君男爵本多政以君男爵福原俊丸君
  男爵〓水資治君男爵津田弘道君男爵黑田長和君
  男爵島津久賢君男爵岩倉道倶君男爵安藤直雄君
  男爵二條正鷹君男爵〓誠之助君男爵藤堂高成君
  男爵東郷安君石井省一郞君西村亮吉君
  谷森眞男君三宅秀君何禮之君
  中島永元君湯地定基君原保太郞君
  藤田四郞君岡田良平君山田春三君
  仁尾惟茂君木內重四郞君加太邦憲君
  阪本 多之助君木場貞長君馬屋原二郞君
  下條正雄君安立網之君伊澤修二君
  細谷巖太郞君小野光景君木村誓太郞君
  瀧川辨三君田中源太郞君武石橘次君
  石橋謹二君植竹三右衞門君依田仙右衞門君
  佐々田懋君廣瀨滿正君荒井泰治君
  竹村與右衞門君松尾廣吉君美馬儀一郞君
  尼崎伊三郞君土居通博君桑田熊藏君
  日高榮三郞君安田善三郞君網藏平輔君
  伊藤由太郞君木本源吉君福島文右衞門君
  堀正一君高崎三重郞君
  反對者氏名
  侯爵德川賴倫君伯爵寺島誠一郞君伯爵柳澤保惠君
  伯爵奧平昌恭君伯爵林博太郞君伯爵松平賴壽君
  伯爵島津忠麿君松岡康毅君男爵岡内重俊君
  宮本小一君男爵後藤新平君阿部浩君
  深野三君倉富勇三郞君河村讓三郞君
  仲小路廉君山本達雄君岡喜七郞君
  渡正元君男爵目賀田種太郞君男爵高橋是〓君
  森山茂君鮫島武之助君石黑五十二君
  石渡敏一君加藤恒忠君澤柳政太郞君
  福永吉之助君橋本圭三郞君山之内一次君
  勝田主計君杉田定一君室田義文君
  安樂兼道君古賀廉造君水野鍊太郞君
  德富猪一郞君田島竹之助君海江田準一郞君
  江原素六君宇野〓左衞門君橘〓治郞君
  中村治兵衞君堀內半三郞君佐藤友右衞門君
  森田庄兵衞君由雄元太郞君

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• 065・徳川慶久

  ○公爵德川慶久君　豫備金支出外數件ニ關スル特別委員會ヲ開キタウゴザイ
  マスカラ退席ノ要求ヲ致シマス

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• 066・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　德川特別委員長ノ要求ハ許可イタシテ御異存ゴザ
  イマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 067・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=67

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• 068・前田利定

  ○子爵前田利定君　直チニ第二讀會ヲ開クト云フ動議ヲ提出イタシマス

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• 069・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　賛成
  〔其他「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 070・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　兩案トモデアリマスカ

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• 071・前田利定

  ○子爵前田利定君　左樣デアリマス

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• 072・堀河護麿

  ○子爵堀河護麿君　贊成

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• 073・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　兩案ノ第二讀會ヲ直チニ開クト云フ前田子爵ノ動
  議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

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• 074・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=74

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• 075・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ兩案ノ第二讀會ヲ開キマス、全部ヲ問題ニ
  供シマス、全部原案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=75

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• 076・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=76

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• 077・前田利定

  ○子爵前田利定君　直チニ第三讀會ヲ開クト云フ動議ヲ提出シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=77

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• 078・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　賛成
  〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=78

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• 079・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ兩案ノ三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=79

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• 080・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=80

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• 081・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三讀會ヲ開キマス、兩案トモ第二讀會決
  議ノ通リ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=81

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• 082・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=82

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• 083・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議事日程第四、第五、第六ノ第一讀會ノ續、委員
  長報告········委員長寺島伯爵
  作業會計法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正四年六月六日
  右特別委員長
  伯爵寺島誠一郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  造幣局特別會計法案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正四年六月六日
  右特別委員長
  伯爵寺島誠一郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  貨幣整理資金特別會計法廢止法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正四年六月六日
  右特別委員長
  伯爵寺島誠一郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔伯爵寺島誠一郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=83

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• 084・寺島誠一郎

  ○伯爵寺島誠一郞君　日程ニ上リマシタ作業會計法中改正法律案、竝ニ貨幣
  整理資金特別會計法廢止法律案、造幣局特別會計法案、此三案ノ特別委員會
  ニ於キマスル結果ヲ御報告イタシマス、三案ハ密接ノ關係ヲ有ッテ居リマスル
  故ニ束ネテ御報告シタイト存ジマス、作業會計法中改正法律案提出ノ理由ヲ
  承リマスルノニ二ツアルノデアリマス、其二ツノ理由ノ第一ヲ申述ベルニ際
  シマシテ、自然ト貨幣整理資金特別會計法廢止法律案、竝ニ造幣局特別會計
  法案此南案提出ノ理由ガ含マレテ居ルコトニナリマスコトヲ申上ゲテ置キマ
  ス、第一ノ理由ト致シマスノハ特別會計整理ノ關係カラ此案ヲ提出シタト云
  フコトデアリマス、第二ノ理由ハ專賣局ノ運轉資本ヲ增加スル其關係カラ提
  出シタサウデアリマス、第一ノ特別會計ノ整理ヲシナケレバナラヌコトノ說
  明ヲスルニ際シマシテハ、又之ヲ二ツニ分ケマシテ第一條中ニ改正ニナッテ
  居リマス第一ノ削除、第四ノ削除ト、順ヲ追ウテ分ルコトトナリマスカラ其
  段ヲ豫メ御注意ヲ願ヒマス、特別會計ノ數ハ中〓澤山アリマシテ、豫算全部
  ノ組織ノ上ニ甚ダ複雜ノ關係ヲ有ッテ來ルノデアリマス、隨ッテイツノ時期カ
  ニ於テ之ヲ整理シタイト云フコトハ政府ニ於テ常ニ考ヘテ居ラレタコトデア
  リマス、其故ヲ以チマシテ六ツノ特別會計ヲ廢止スルコトガ適當デアルト云
  フコトニ歸著シタノデアリマス、此兩案ハ其整理ノ一端ヲ示シテ居ルモノデ
  アルノデアリマス、先程申シマシタ通リ、第一條中第一ノ削除ハ何ヲ含ンデ
  居ルカト申シマスト造幣局ノコトデアリマス是ハ貨幣整理資金特別會計ハ
  造幣局ノ一ノ資金トスルコトニ變ヘマシタノデ、卽チ別ニ案ヲ出シテアル所
  以デアルノデアリマシテ、單ニ削除シタノデアリマス、此方ハ爲ニ其方ノ規
  定ヲ存續シテ置ク必要ガナイノデ遂ニ削ルコトニナッタノデアリマス、第四ノ
  方ノ削除ハ何デアルカト申シマスト、是ハ電信燈臺用品製造所ノ特別會計ヲ
  全然廢止スルト云フコトデアリマス、何故ニ廢止スルヤウニナルカト申シマ
  スト、民間ノ供給デ十分デアル、滿足デアル、故ニ之ヲ廢止シテモ差支ナイ
  ト斯ウ云フコトナノデアリマス、デ是ガ第四ノ削除ノ方ノコトデアリマス、
  次ニ専賣局運轉資本增加ニ關係ヲ致シマスノハ何デアルカト申シマスト、從
  來ノ此作業法ニ依リマシテ八百万圓ト云フモノヲ規定シテアルノデアリマ
  ス、併シ實際ハ政府ヨリ承ル所ニ依リマスト、七百万圓デアッタサウデアリマ
  ス、此七百万圓ノ据置運轉資本ヲ專賣局ノ事業發展ノ爲ニ增加シナケレバナ
  ラヌノデアリマス、卽チ法文ノ上ハ二百万圓、實際ノ運轉資本ノ上カラハ三
  百万圓增加スルノ必要ガアルノカラ起ッタノデアリマス、此金ハドウシテ得ル
  カト申シマスト、是ハ專賣ノ益金カラ補助スルノデ、追加豫算ノ方ニ計上シ
  テ出テ居ルノデアリマス、ソレニ關聯イタシマシテ法律其モノヲ改正シナケ
  レバナラヌノデ、卽チ之ヲ千万圓卽チ八百万圓ニ對シテ二百万圓ヲ足シマシ
  テ、千万圓トシテ置カネバナラヌコトニナルノデアリマス、大要右ノ通リ政
  府ヨリ承リマシテ、委員會ニ於キマシテモ、其理由トスル所ヲ承認イタシマ
  シテ、別ニ質問モナク委員會デハ之ヲ可決確定イタシマシタ次第デアリマ
  ス、議場ニ於キマシテモ何卒御賛成下サイマシテ可決アラムコトヲ希ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=84

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• 085・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ガゴザイマセヌケレバ三案トモ束ネテ問題
  ニ供シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=85

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• 086・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　唯今ノ委員長ノ報告ハ極ク明瞭ニシテ簡單ナモノデゴザ
  イマスカラ、三案-モ讀會ヲ省略シテ可決アラムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=86

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• 087・寺島誠一郎

  ○伯爵寺島誠一郞君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=87

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• 088・江木千之

  ○江木千之君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=88

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• 089・山口弘達

  ○子爵山口弘達君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=89

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• 090・前田利定

  ○子爵前田利定君　賛成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=90

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• 091・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=91

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• 092・内田正敏

  ○男爵内田正敏君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=92

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• 093・谷森眞男

  ○谷森眞男君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=93

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• 094・原口兼濟

  ○男爵原口兼濟君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=94

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• 095・田中源太郎

  ○田中源太郞君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=95

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• 096・眞鍋斌

  ○男爵眞鍋斌君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=96

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• 097・平山成信

  ○平山成信君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=97

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• 098・石井省一郎

  ○石井省一郞君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=98

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• 099・武井守正

  ○男爵武井守正君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=99

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• 100・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　大原伯爵ノ讀會省略ノ動議ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ
  請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=100

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• 101・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　三分ノ二以上ト認メマス、三案トモ委員長ノ報〓
  通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=101

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• 102・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=102

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• 103・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　此際議事日程ヲ變更シテ無盡法案竝ニ外一件ノ報〓ヲ致
  シタイト思ヒマス、之ヲ議場ニ御諮ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=103

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• 104・寺島誠一郎

  ○伯爵寺島誠一郞君　私ハ此際治水費ノ特別會計外二件ノ特別委員會ヲ開キ
  タイト存ジマスカラ、ソレニ屬シテ居リマス委員ノ退席ノ御許可アラムコト
  ヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=104

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• 105・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　寺島伯爵ノ特別委員會ヘ退席ノ要求ハ許可イタシ
  テ御異存ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=105

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• 106・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=106

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• 107・山口弘達

  ○子爵山口弘達君　林伯爵ノ動議ニ贊成イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=107

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• 108・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　林伯爵ノ議事日程變更ノ動議ニ御異存ゴザイマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=108

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• 109・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス、故ニ·······
  〔伯爵林博太郞君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=109

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• 110・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　少シ御待チ下サイマシ、是ヨリ無盡業法案ノ第一
  讀會ノ續ヲ開キマス委員長報告·······議長ガ申落シマシタ、無盡業法案外二
  件ノ第一讀會ノ續ヲ開クト御承知ヲ請ヒマス
  無盡業法案
  右別册ノ通修正セリ依テ及報〓候也
  大正四年六月八日
  右特別委員長
  伯爵林博太郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  特別委員ノ修正ニ係ル條ノミヲ印刷シ其
  ノ他ハ之ヲ略ス-ハ削除ノ符號ナリ
  無盡業法案
  第六條無盡業ノ營業區域ハ道府縣ノ區域内ニ於テ之ヲ定メ會社ニ在リテ
  ハ定款中ニ其ノ他ノ者ニ在リテハ事業方法書中ニ之ヲ記載スヘシ
  無盡業者ハ其ノ營業區域ヲ超エテ營業所若ハ代理店ヲ設置シ又ハ勸誘員
  若ハ募集員ヲ派スルコトヲ得ス但シ營業區域外ノ者ヨリ申込アル場合ニ
  於テ之ト取引ヲ爲スコトヲ妨ケス
  第十條無盡業ヲ營ム株式會社カ會社財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完濟スルコト
  能ハサルニ至リタルトキハ無盡契約ニ基ク會社ノ債務ニ付各取締役ハ連
  帶シテ其ノ辨償ノ責ニ任ス但シ取締役カ任務ヲ怠ラサリシコトヲ證明シ
  タル場合ハ此ノ限ニ在ラス
  前項ノ責任ハ取締役カ退任ノ登記ヲ爲シタル後二年間仍存續ス
  貯蓄銀行條例中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正四年六月八日
  右特別委員長
  伯爵林博太郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=110

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• 111・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　私ハ簡單ニ無盡業法案竝ニ外二件ノ委員長ト致シマシテ
  委員會ノ經過ヲ御報〓ニ及ビマス、始メニ一言御注意イタシテ置キマスガ、
  本案ハ頗ル複雜イタシテ居リマスノデ、十分愼重審議ヲ經ラレタケレドモ、色
  色修正スル點モ起リマシタノデ、從ッテ唯今ノ無盡業法案竝ニ貯蓄銀行條例中
  改正法律案ノ二ツヲ修正又ハ可決イタシマシタガ、殘リノ營業稅法中改正法
  律案ノ方面ハ尙ホ委員會ニ於テ審理中デゴザイマスカラ、左樣御承知ノ上御
  聽取リヲ願ヒマス、差當リ報〓ノ都合上カラシマシテ、貯蓄銀行條例中改正
  法律案ノ方ヨリ御話ヲ致シマス、貯蓄銀行法中改正法律案ノ此度改正ヲ必要
  ト致シマス重モナル理由ハ凡ソ二ツアリマスガ、ソレハ近時普通ノ銀行業者
  ガ此貯蓄銀行ノヤッテ居ル貯蓄ノ方法デ勸誘ヲシマシテ、色〓ノ手段ヲ講ジ
  テ、サウシテ貯蓄銀行ト極メテ分別ノ出來難イコトヲヤッテ居ルノデ、此際
  ソレヲ判然分別スル必要ヲ感ジタト云フコトガ一ツデ、尙ホ一ツハ今マデハ
  大藏大臣ノ權限ガ此邊ノ所マデ及ンデ居ラヌ、從ッテ例ヲ擧ゲテ申シマスレ
  バ二十年乃至三十年ト云フ長年月ニ涉ッテノ預金ヲ勸誘シマシテ、サウシテ
  ソレガ二十年三十年ノ先キニナッテ、果シテ是ガ還ヘセルカドウデアルカト云
  フコトハ誠ニ是ハ實ニ疑ヲ挿ムベキモノデアルノニ、而カモサウ云フコトヲ
  シテ恬トシテ顧ミナイデヤッテ居ル者ガアッテモ、大藏大臣ハ之ニ對シテ定款
  ヲ改正シ、若クハ規則ヲ改正シテ是ガ改善ヲ圖ルトカ、之ヲ變更セシムルト
  云フヤウナ權限ヲ有ッテ居ラナイノデアルカラ、之ヲ修正シテ此度ノ法律案ヲ
  出シタ次第デアル、之ヲ審議シマシタ所ガ誠ニ此點ノ所ヲ明カニシタモノデ
  アリマスカラ、之ニ對シテ何等疑點ヲ挿ムベキコトハナイモノト認メマシ
  テ、委員會ハ之ヲ可決イタシマシテゴザイマス、次ニ無盡業法案ニ移ッテ御話
  ヲ致シマスレバ、此法律ハ大分複雜イタシテ居リマス、元來無盡賴母子講ト
  云フモノハ藤原時代ヨリアッタモノデアッテ、大變久シイ歴史ヲ有ッテ居ッテ、
  今日ニ於テハ講會數一万四千、此契約高一億三千万餘圓ノ多キニ上ッテ居リ、
  大ニ經濟上ノ問題ニナッテ居ル、然ルニ拘ラズ今日マデ無盡法案ト云フモノガ
  出テ居ラナイト云フコトデアリマシテハ、御承知ノ通リ弊害ノ頗ル多イ所ノ
  無盡業賴母子講ニ對シテハ制裁ヲ加ヘルコトガ出來ナイ、善男善女ヲ誘ッテ大
  ニ害ヲ被ルコトヲ見ス/〓見逃ガシテ居ラナケレバナラヌト云フ場合デアリ
  マスカラ、此法律ヲ作リタイト云フノハ誠ニ大切ナコトデ、時宜ニ適シタル
  モノト考ヘタノデ提出サレタノデアリマスガ、尙ホ詳細此案ノ出マシタ動機
  ニ付キマシテ述べテ見マスレバ、掛金ノ定メ方ガ今マデ一向統一シテ居ラヌ
  カラ、此際統一サセタイト云フコトデ、此無盡賴母子講等ノ弊害ハ無盡業者
  ニ大變アルコトデアリマスカラ、無盡業者ノ弊ヲ矯メルト云フコトハ此時機
  ニ肝要ナ點デアリマス、ソレカラ斯ウ云フ業務ヲ執ル所ノ者ハ色〓兼營ノ仕
  事ヲシテ居ッテ、今日暖昧ニ法網ヲ潛ヲテ頗ル惡イコトヲ働イテ居ルノヲ矯メ
  ムガ爲ニ兼營ヲ禁止スルト云フコトハ、更ニ掛金ヲ集メタモノヲ色〓ノ不正
  ナル方面ニ融通スル者ガアルノデ、ソレ故ニ此際掛金ハ有價證劵カ其他確實
  ナコトニ運用サセルト云フコトデ、今マデハ積立金ニハ何等制限ガナカッタ
  モノヲ此際其積立金ヲ高ク取ッテ、サウシテ確實ナル會社若タハ無盡業者タ
  ラシムルコト、會社ガ自分ノ經營シテ居ル所ノ無盡ニ自ラ這入ルコトヲ禁ジ
  タコト、掛金ガ免角集マラナイ仕事デアリマス其集マラナイト云フコトヲ
  口實ニシテ其外ノ掛金ヲ爲シタ者ニ對シテ拂ッテヤラナイト云フ弊害ガ是マ
  デ澤山アッタノヲ、之ヲ正シマシタコト、更ニ第六條ニアリマス必要ナ條件デ
  アリマスケレドモ、營業區域ヲ制限シテ、サウシテ信用アル人間ト信用ノナ
  イ人間ヲ地方長官ガ考査、審査スルコトガ出來ルト云フ便宜ヲ圖ッタ點、是等
  ノ點ヲ參酌シマシテ此法業ヲ出シタト云フコトデアリマスノデ、ソレニ付キ
  マシテ愼重審議ヲ重ネマシタノデアリマス、此法案ニ付キマシテ今日信託業
  其他ノ業務ニ從事スル者ハ、此度ノ法律ノ制裁ヲ受ケル者ガ多少ゴザイマ
  ス、ソレハ俄ニ業務ノ變更ヲサセルト云フコトハ今日ノ經濟狀態ニ於テ大變
  反動ヲ來タスコトデゴザイマスカラ、之ヲ救濟スル爲ニ五箇年間ノ猶豫ヲ與
  ヘラ、五箇年間ニ於テ漸次自分ノ事業ヲ罷メ、若クハ無葢業者ニ推移スルト
  云フ猶豫ヲ與ヘタ次第デアリマシテ、本案提出ノ理由ニ付キマシテ政府委員
  ノ間ニモ多少矛盾シタ所ノ議論モナイノデハナイケレドモ、頗ル時局ニ適合
  シテ、此際、至急ヲ要スル法案デアリマスカラ、少シク委シク述ベテ見マスレ
  バ、此四月デアッタサウデアリマス、地方長官ガ幸ニ東京ニ集ッタ時機ヲ利用シ
  テ、大藏省ヨリ本案ヲ示シテ地方ノ狀況ニ適スルヤ否ヤヲ諮問サレタ所ガ、是
  ハ頗ル時宜ニ適シタ法案デアルト云フコトニ滿場一決シタノダサウデアリマ
  ス、尙ホ實業者其他日本銀行ナドニ於テモ之ヲ調ベマシタサウデアリマスガ、
  此法案ニ對シテハ頗ル一日モ早ク之ヲ實行スルト云フコトニ付テ異議ガナ
  イ、從ッテ之ヲ全然贊成スルト云フヤウナ意見デアッタサウデアリマス、依ッテ
  委員會ニ於キマシテモ、時日ハ少イノデアリマスガ、愼重審議ヲ重ネマシテ衆
  議院送付ノ案ニ付テ其二ツダケヲ修正シマシテ可決イタシマシテゴザイマ
  ス、今簡單ニ其修正シマシタ要點ヲ御話イタシマス、御手許ニ唯今廻シマシタ
  本案中ノ第六條、第十條、第六條ノ第二項ニ於テ「無盡業者ハ其ノ營業區域
  ヲ超エテ營業所若クハ代理店ヲ設置シ又ハ勸誘員若クハ募集員ヲ派スルコト
  ヲ得ス但シ營業區域外ノ者ヨリ申込アル場合ニ於テ之ト取引ヲ爲スコトヲ妨
  ケス」ト斯ウアリマス、之ヲ本文ト御對照ニナリマスト直チニ分リマスガ、此
  衆議院ニ於テ附加ヘマシタ所ノ第二項ハ寧ロ法文ヲ複雜ナラシムルニ止ッテ、
  何等ノ明瞭ナル解釋ヲ與ヘルコトハ出來ナイノミナラズ誤解ヲ招キ易イ條文
  デアル、卽チ道府縣內ニ於テ營業ヲ當局ニ屆ケ、願ヒヲ出シテ、サウシテ許サ
  レテ居ル其無盡業者ガ、自分ノ營業區域外ニ於テ勸誘員ヲ派シタリ店ヲ造ル
  コトハ出來ナイ、ケレドモ先方カラサウ言ッテ來タトキハ之ヲ受ケテモ差支ナ
  イト云フコトニナレバ、此本條ノ規定ト矛盾シ頗ル是ガ骨拔ノ條ニナッテ仕舞
  ヒマシテ、頗ル其意義ガ徹底シナイ、此故ニ此委員會ニ於キマシテ此案·········此
  條項ハ無用デアリマスカラ之ヲ除クト云フコトニ一決イタシマシタ、次ニ第
  十條ノ但書ノ所ニ「但シ取締役カ任務ヲ怠ラサリシコトヲ證明シタル場合
  ハ此ノ限ニ在ラス」、無盡業者ニ於テ何等カ不都合ナコトヲシタトキ、其責ニ
  任ズルハ適當デアルガ、取締役ガ任務ヲ怠ラザルコトヲ證明シタラバ責任ガ
  無クナッテ仕舞フト云フコトデゴザイマス、會社員ガ我〓ハ頗ル勤勉シテ業務
  ニ從事シテ居ッタ、少シモ懈怠シテ居ラナカッタノデアルニモ拘ラズ、計算ニ
  於テハ不足ヲ生ジテ來タカラ已ムヲ得マセヌト云フコトヲ述べタ場合ニハ、
  其責任ヲ問フコトハ出來ナイ、此故ニ斯ノ如キ但書ハ無用ノ長物デアルノミ
  ナラズ、アレバ却ッテ犯罪者ヲ增加スル虞レアリト委員會ハ認メマシテ、全會
  一致ヲ以テ此但書ヲ削リマシタノデゴザイマス、其外ノ點ニ付キマシテハ衆
  議院ヨリ提出シマシタ通リ可決イタシマシテゴザイマス、唯今ノ此二ツノ案
  ガ問題ニナリマシテゴザイマス、何卒愼重審議ノ上、委員會ノ報告通リ御可
  決アラムコトヲ希望イタシマス、是ニテ簡單ニ委員長報告ヲ了リマス
  〔政府委員森俊六郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=111

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• 112・森俊六郎

  ○政府委員(森俊六郞君)　簡單ニ政府ノ考ヘマス所ヲ申上ゲテ置キタイト考
  ヘマス、第六條ノ二項ノ入リマシタノハ、此營業者ハ積極的ニ進ンデ勸誘ヲ致
  シマストカ、或ハ募集員ヲ派遣イタシマストカ云フコトヲ絕對ニ嚴格ニ禁止
  イタシマス積リデアリマス、併ナガラ前日大藏大臣ガ此席ニ於テ申述ベマシ
  タ通リ鄰縣相接シテ居リマス場合ニ、外ノ縣ノ無盡業者ガ非常ニ健全ナル經
  營ヲシテ居リ、自分ノ縣ノ無盡業者ハ比較的健全デナイ、又ハ直グ路ヲ一ツ
  距テテ、向側ニ他縣ノ無盡業者ノ代理支店等ガアリマシテ健全ニヤッテ居ル、
  自分ノ方ノ縣ノ無盡業者ハ或ハ二三里距ッテ居ルト云フヤウナ場合ニ於キマ
  シテハ、加入者ノ側カラ希望イタシマシテ申込ヲ致シマシタ場合ハソコハ
  サウ營業區域ヲ其點ニ於テヤカマシク言ハヌデモ、進ンデ勸誘イタシマスコ
  トハ絕對ニ出來マセヌケレドモ、加入者ノ便利デアリマス場合ハ、ソレヲ許
  シテ宜カラウト云フ趣意デ修正ニナリマシタノデ、第六條ノ根本ノ精神ヲ全
  然崩スト云フコトニハナラナイト考ヘルノデアリマス、殆ド六條ニ書イテア
  ルコトノ註釋ヲ加ヘマシテ、明カニ之ヲシタト云フコトニナラウト思ヒマス
  ノデ、若シ此六條ノ一項ダケヲ殘シテ置キマシテ、二項ガアリマセヌケレバ
  營業區城内ニ住所ヲ有スル者デナケレバ或ハ加入ガ出來ナイト云フヤウナ解
  釋ニナリマシテ、非常ニ窮屈ナ·······窮屈ナノハ宜イノデアリマスガ、解釋上
  疑義ヲ起スヤウナコトガアリハシナイカト云フコトデ、二項ニ於キマシテ其
  趣意ヲ明文ヲ以テ表ハシマシタニ過ギナイト云フヤウナ次第ニナッテ居リマ
  ス、相成ルベクハ衆議院修正ノ通リ御同意、御協賛ヲ願上ゲタイト考ヘルノ
  デアリマス、ソレカラ第十條ノ但書ヲ削ルト云フ委員會ノ決議デゴザイマス
  ガ、是ハ貯蓄銀行條例等ノ權衡カラ御議論デアッタヤウニ拜承イタシマスノ
  デアリマス、貯蓄銀行ニ於キマシテハ取締役ガ在任中ニ生ジタル義務ニ付テ
  ハ連帶無限ノ責任ヲ負フトナッテ居リマス、是ハ貯蓄預金デアリマスレバ、其
  時ニ預金ヲ致シマスタビニ、一ツ〓〓ニ口ガ分レテ居リマスカラ、在任中デ
  アルトカ或ハ在任中デナイトカ云フコトハ明カニ區別ガ付カウト思ヒマス、
  無盡ノ契約ニナリマスト契約ノ性質ガ一團トシタル契約デアルト云フヤウニ
  解釋ガナルサウデアリマス、初メ無盡契約ヲ致シマシテ、契約ガ成立ッテ債權
  債務ガ成立ツヤウニ考ヘマス、サウ致シマスト其無盡ヲ數年間ヤリマシタ會
  社ニ新ニ取締役ニ這入ッテ來タト云フ場合ニハ在任中ニ生ジタルト云フコト
  ハ何時ノコトヲ言フノカ分ラヌコトニナリマス、最初無盡契約ノ成立シタ場
  合ニ其取締役ガ居ラナケレバ責任ハナイ、其後ニ至ッテ掛金ヲ取ッタニシテモ
  責任ガアルカナイカ、其邊ガドウモ判明イタシマセヌノデ、種々詮議ヲ致シ
  マシタ結果、在任中ト云フ文字ノ入レヤウガナイ、又之ヲ入レルコトハ疑ヲ
  起スト云フ爲ニ在任中ト云フ字ヲ取リマシタノ、テアリマス、サウスルト絕對
  ニ其關係シタ會社ニ付テハ其責ヲ負ハナケレバナリマセヌ、ソレヲ緩和イタ
  シマス爲ニ其人ガ全然其時ニ關係シナカッタ、例ヘバ就任中ニ起ッタ債權債務
  ノ關係デアリマストカ、或ハ自分ガ海外ニ旅行デモシテ居リマシテ、全然關
  係ガナカッタトカ云フ明カナル證明ガ出來マシタ場合ニハ除外シナケレバナ
  リマセヌ、在任中ト云フ文字ヲ取リマシタノト、權衡カラ申シマスト餘リ酷
  ニ過ギマスカラ本文ノ通リ在勤中ニ生ジタルト云フ文字ヲ餘儀ナク取リマシ
  タ、其結果但書ヲ以テ緩和イタシマシタ次第デアリマス、是モ成ルベク原案
  通リ御協賛ヲ仰ギタイノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=112

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• 113・阪本さん之助

  ○阪本釤之助君　本案ニ付キマシテ意見ヲ述ベタイト思ヒマスカラ、相當ノ
  時機ニ於テ御許シヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=113

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• 114・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　唯今ガ最モ適當ナル時機ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=114

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• 115・阪本さん之助

  ○阪本釤之助君　本案ニ付キマシテハ第一讀會ノ節ニ政府委員ニ大體ノ質問
  ヲ致シマシタ次第デアリマスガ、本員ノ見マスル所デハ我國ノ無盡トカ、賴
  母子講トカ、薩摩アタリデハ「モアイ」ナドト申シテ居リマスガ、是ハ種々
  地方ニ依ッテ名ガ異ッテ居リマス元來僅ノ一村一町ノ狭イ區域ニ於テ、極
  ク少數ノ人ガ申合ッテ金ノ融通ヲ圖リ若クハ親戚故舊相集ッテ友人ノ急ヲ救フ
  トカ、親戚ガ寄ッテ改革ヲ助ケルト云ヤウナ意味合ニ使ッテ居ルヤウニ思ヒマ
  ス、所ガ近頃デハ無盡ト云フコトガ非常ニ蔓延シテ、是ガ一ツノ營業ノ如ク
  ナッタヤウニ見エマスガ、元來此無盡トカ、賴母子講トカ云フモノハ營業ニス
  ルモノデナイト云フコトヲ私ハ深ク信ズルノデアリマス、今日斯ノ如ク蔓延
  イタシタノハ是ハ一ツノ變態デアッテ、誠ニ宜シカラザル變態デアルノデ、此
  弊ヲ防ガム爲ニ斯ノ如キ法律ヲ出シテ、其結果終ニ無盡ト云フモノハ國家ノ
  認メタ營業トシ、營業稅マデモ取ッテ、一ノ小サナ銀行ノ營業デアルカノ如ク
  認メルノハ方角ノ違ッタコトデハナイカト思フノデアリマス、故ニ本員ハ絕對
  ニ此案ハ否決スベキモノデアルト思ヒマス、然ラバ此弊害ヲ如何ニシテ止メ
  ルカト云フ所カラ、此弊害ノ蔓延ヲ防ガム爲ニ此法律ヲ作ラムトスル說ガ
  起ッタコトト思ヒマスガ、法律ガ之ヲ認メテ一ノ營業トスル以上ハ、此箇條ニ
  依ッテ取締ヲ爲サムトシテモ、元來斯ノ如ヰ營業ヲ致ス人〓ハ玉石混淆、中ニ
  ハ結構ナ人モアリマセウガ、多クハ思ハシキ營業モナク、斯ノ如キコトヲシ
  テ細民ノ間ヲ奔走シテ、其金ヲ集メテ自己ヲ利スルト云フ所カラ起ッテ居ル
  ノガ多ウゴザイマスカラ、嚴格ナル法律ヲ作レバ又其穴ヲ潛ノテ巧ニヤルニ相
  違ナイ、是モ國家ガ認メテ以テ一ツノ公ノ業トシタ以上ハ仕方ガナイデアリ
  マセウ、畢竟無盡ノ目的ハ細民ノ射倖心ヲ利用シテ零細ノ資金ヲ集メテ、利
  用シヤウト云フコトデアリマスガ、斯ノ如キモノヲ營業トシテ認メラルル位
  ナラバ、寧ロ百尺竿頭一步ヲ進メテ富籤ノ方法ヲ許スガ宜カラウト思ヒマ
  ス、本員ハ此無盡ヲ富籤ノ一部ト見テ居ルノデアリマス富籤類似ノコトヲ
  無盡ト云フ名ニ依ッテ、巧ナル方法ヲ以テヤッテ居ルノデアリマス、之ニ加入
  スル者ハ何レモ一種ノ射倖心デ這入ルノデアリマス、其結果タル先キニモ申
  シマシタ如ク、汗ヲ垂ラシテ蓄メタ金ヲ此無盡ニ加入シテ置ケバ早ク澤山ナ
  金ガ取レルトカ、或ハ預金シテ置クヤウナモノデ取ラウト思ヘバ何時デモ取
  レルト云フヤウナ意味カラ加入スルノデアリマス、其結果細民ガ思ハザル困
  難ヲ招クコトガ往々ニシテアルノデゴザイマス、是ヨリモ細民ノ貯蓄ニハ旣
  ニ十分郵便貯蓄ヲ勸誘セランテ居ルノデアリマス、然ルニ此度法律ニ出來マ
  シタ通リ、貯蓄銀行ハ如何ナル名義ヲ以テ致シマシテモ五圓未滿ノ金額ハ貯
  蓄銀行條例ニ依ッテヤルコトニナリマシタ、ソレ等ノモノガ全國ニ澤山出テ來
  テ居リマスカラ、貯蓄ノ方法監督宜シキヲ得テ出來マスレバ、細民ノ零細ナ貯
  金ガ出來ルノミナラズ、既ニ產業組合ガアッテ細民ノ融通ニハ信用組合ヲ組織
  イタシマシテ、確實ニ細民ノ融通ノ途ガ出來テ居ルノデアリマス、旁、免ニ角
  自分ノ見ル所デハ無盡ノ如キモノヲ法律上公ケニ認メルノハ甚ダ後日ニ後悔
  ヲ殘ス基デハアリマスマイカ、此案ガ出マシタニ付キマシテ、現在此事ヲ營
  ンデ居ル人〓ハ此法律ハ餘リ嚴格デアルカラ、モット寬ニ改メテ貰ヒタイト云
  フコトヲ申シテ居リマス、本員ハ全然廢案ヲ主張スルモノデ、寛宥スルドコ
  ロノ意味デハナイ、寧ロ斯ウ云フ法律ヲ作ルコトヲ止メテ貰ヒタイト云フ意
  見デアリマシテ、少クモモウ少シ攻究スベキ案デアラウト思ヒマス、旣ニ政
  府ハ相當ノ取締ヲシテ居ルノデアリマセウガ、尙ホ一層警察的ニ嚴格ナル取
  締ヲ致サレテ、苟モ犯則ノ行爲ヲ致シマスレバ現在ノ刑法ニ依ッテ處分スベ
  キモノデアラウト思ヒマス、ソレ等ノ點ニ遺算ナク注意シテ、半年カ一年モ
  ヤッテ見テ、ドウシテモ斯ウ云フ法律ノ成立ガ避ケラレヌナラバ、次ノ議會ニ
  デモ相當ノ修正ヲ加ヘルコトニシテ宜カラウト思ヒマスガ、免ニ角モット能ク
  攻究スベキ問題デハナイカト思ヒマス、此法律ガ出ル以上ハ無盡營業ガ公ケ
  ニナルト云フ點ヲ恐レテ、飽クマデモ反對スルノデアリマス、ソレ故ニ私ハ
  本案否決ヲ主張イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=115

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• 116・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　此際ニ議長ガ念ノ爲ニ申上ゲタイコトガゴザイマ
  ス、先刻議事日程變更ノ場合ニ、無盡法案外二件ト宣告イタシマシタノハ、
  外一件ノ誤リデゴザイマスカラ、左樣御承知ヲ願ヒマス
  〔政府委員濱口雄幸君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=116

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• 117・濱口雄幸

  ○政府委員(濱口雄幸君)　唯〓阪本君ヨリ致シマシテ、本案否決ノ御意見ガ
  出マシタ、阪本君ハ無盡ノ弊害ヲ列擧セラレマシテ、斯ノ如キ弊害ノ有ルモ
  ノデアルカラシテ、是ハ公然法律ヲ以テ營業ト見做スト云フコトハ如何ナモ
  ノデアラウカ、宜シク愼重ノ調査ヲ遂ゲテ更ニ此事ヲ研究スルガ爲ニ、免一
  角此際ニ於テハ之ヲ否決シタイト云フ御意見ノヤウニ拜承イタシマシタ、併
  ナガラ政府ノ考ヘル所ニ於キマシテハ、成ルホド無盡業ニ付キマシテハ種々
  ノ弊害ガアルコトハ是ハ認ムル所デアリマス、併ナガラ其弊害ノ反對ニ、
  種ノ金融機關トシテ功績ノアルコトモ同時ニ認メナケレバナラヌコトト思ヒ
  マント。ソレ故ニ種々ノ機會ニ於キマシテ、或ハ地方官會議ノ席上ニ於キマシ
  テ、或ハ銀行家ノ大會ノ席上ニ於キマシテ、是等ニ付テ當業者竝ニ地方官憲
  ノ意見ノ存スル所ヲ聞合ハシテ見マスルニ、何レモ相當ノ取締ヲ要スルト云
  フコトハ一致シテ居リマスガ、此無盡業ト云フモノヲ根本カラ撲滅スルト云
  フ意見ヲ持ッタ者ハナイヤウニ認メテ居リマス、卽チ其長所ヲ認メテ之ヲ助長
  シ短所ヲ矯正シテ、此無盡業ト云フモノヲ益〓發達サセテ行ッテ、下層ノ金融
  機關トシテ功績ヲ擧ゲシムルガ宜カラウト云フコトニハ皆一致シテ居ルノデ
  アリマス、免ニ角無盡賴母子講ト云フモノハ、我國古來ノ習俗ト致シマシ
  テ、下層ノ金融機關トシテ行ハレ來ッテ居ルノデアリマスカラ、其弊害ハ
  アルニ致シテモ、其反面ニハ地方下層民ノ貯蓄機關、金融機關トシテ相當ノ
  功績ヲ擧ゲテ居ルト云フコトハ認メナケレバナラヌト思ヒマス、ソレデアリ
  マスカラ其短所ハ之ヲ矯メ長所ハ之ヲ助長シテ、目下缺乏ヲ感ジテ居ル所ノ
  下層金融機關トシテ相當ノ働キヲ爲サシメムガ爲ニ此案ヲ出シタ次第デアリ
  マス、唯今御話ノゴザイマシタ通リ、下層ノ貯蓄機關トシテハ郵便局ガアリマ
  スカ、三等郵便局ニ致シマシテモ、必シモ全國ニ普及シテ居ルトハ限リマセ
  ヌカラ········ソレカラ郵便局ハ貯蓄ダケデ融通ノ途ガナイ、又貯蓄銀行モアリ
  マスガ無盡トハ關係ヲ異ニ致シマシテ、無盡契約ト預金契約トハ違ヒマスカ
  ラ、今日ヤッテ居リマスル無盡業ノヤウナコトハ、貯蓄銀行ニハ望ムベカラザ
  ルコトデゴザイマス、願ハクハ此案ノ成立ニ至ラムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=117

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• 118・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　兩案トモ束ネテ問題ニ供シマシタガ、阪本君ヨリ
  無盡業法案ノ第二讀會ヲ開クベカラズトスル御意見ガ出マシタ以上ハ、採決
  ハ別々ニ致シマス、此際採決ヲ致シマスノハ、無盡業法案ノミト御承知ヲ請
  ヒマス、本案第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=118

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• 119・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=119

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• 120・尾崎三良

  ○男爵尾崎三良君　最早會期モ切迫シテ居ルコトデゴザイマスカラ、直チニ
  二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=120

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• 121・山口弘達

  ○子爵山口弘達君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=121

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• 122・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　尾崎男爵ノ直チニ第二讀曾ヲ開クト云フ說ニ御異
  存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=122

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• 123・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=123

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• 124・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第二讀會ヲ開キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=124

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• 125・阪本さん之助

  ○阪本彰之助君　モウ私ノ說ガ倒レマシタ以上ハ、修正說ニ付テ贊否ノ意ヲ
  表シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=125

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• 126・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　少々御待チ下サイ、阪本君ニ伺ヒマスガ、ドノ箇
  條ニ付テ御意見ガアルノデゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=126

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• 127・阪本さん之助

  ○阪本影之助君　私ハ少クトモ此委員會ノ說ハ飽クマデモ贊成ヲ致ス者デゴ
  ザイマスカラ、本員ノ廢案說ガ倒レマシタ以上ハ、ドウカ特別委員ノ修正ガ
  幾ラカ締リガ付クヤウデアリマスカラ、此修正案ヲ贊成シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=127

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• 128・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　全部ヲ問題ニ供シマス、阪本君御意見ガアルナラ
  バドウゾ御述ベヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=128

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• 129・阪本さん之助

  ○阪本釤之助君　モウ別ニ詳シク申上グル程ノコトデモゴザイマセヌ、唯今
  政府委員カラ御說明モゴザイマシタガ、ドウモ此第六條ノ第二項ヲ衆議院ニ
  於テ加ヘラレマシタノデアリマスガ、假令コチラカラ勸誘員ヲ出サナクテモ、
  他ノ區域カラ加入ガ出來ルト云フコトニナリマスト、勸誘ノ手段ハ如何樣ニ
  モ出來ルモノデアリマス、シテ見レバ斯樣ナコトガ書イテアッテモ格別ノ用ヲ
  爲サヌモノデアリマスカラ、區域ハ成ルベク狹ク致シタイ、一體本員ノ考デ
  ハモウ少シ狹クシテ一郡或ハ二村位ニ限リタイノデアリマスガ、最早大勢
  動カスベカラズ、阪本一人デ如何樣ニ申シテモ致シ方ハゴザイマセヌカラ、
  已ムヲ得ズ止メマスルガ、成ルベク區域ハ狹クシテ置キマセヌト、ドウシテ
  モ弊ガ多イノデアリマス、故ニ少クトモ第二項ヲ削ルト云フコトハ幾分カ
  本員ノ說ニ近イモノデアリマスカラ之ヲ削リ又第十條ノ但書ヲ削ルト云フ、
  此特別委員ノ修正ニ全然贊成ヲ致ス者デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=129

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• 130・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　採決ヲ致シマス、特別委員長ノ報告ニ同意ノ諸君
  ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=130

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• 131・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=131

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• 132・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=132

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• 133・山口弘達

  ○子爵山口弘達君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=133

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• 134・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三讀會ヲ開クト云フ大原伯爵ノ動議ニ御
  異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=134

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• 135・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=135

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• 136・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三讀會ヲ開キマス·········第二讀會ノ決議通
  リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=136

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• 137・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=137

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• 138・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　次ハ貯蓄銀行條例中改正法律案、此採決ヲ致シマ
  ス、本案第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=138

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• 139・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=139

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• 140・尾崎三良

  ○男爵尾崎三良君　直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=140

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• 141・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=141

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• 142・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ノ第二讀會ヲ直チニ開イテ御異存ゴザイマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=142

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• 143・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=143

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• 144・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ··

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• 145・徳川家達

  ○議長(公爵德川家逹君)　マダソレニハ少シ早ウゴザイマス

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• 146・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第二讀會ヲ開キマス、全部ヲ問題ニ供シマ
  ス、委員長ノ報〓通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 147・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス、是デ第二讀會ハ終リマシ
  タ

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• 148・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス

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• 149・山口弘達

  ○子爵山口弘達君　贊成

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• 150・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三議會ヲ開クト云フ大原伯爵ノ動議ニ御
  異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 151・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

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• 152・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三讀會ヲ開キマス·········第二讀會ノ決議通
  リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 153・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

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• 154・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議事日程第七、第八、第一讀會ノ續、特別委員長
  報告
  帝國學士院學術獎勵金特別會計法廢止法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
  大正四年六月七日
  右特別委員長
  子爵稻垣太祥
  貴族院議長公爵德川家達殿
  帝國學士院學術〓究奬勵金委任經理ニ關スル法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正四年六月七日
  右特別委員長
  子爵稻垣太祥
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔子爵稻垣太祥君演壇ニ登ル〕

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• 155・稻垣太祥

  ○子爵稻垣太祥君　帝國學士院學術〓究奬勵金委任經理ニ關スル法律案及是
  カ特別會計法廢止案、束ネテ報〓イタシマス、是ハ明治四十三年ヨリ皇室カ
  ラ向ウ十箇年間二千圓ヅツ學術奬勵ノ爲ニ御下賜金ガゴザイマシテ、ソレガ
  十箇年卽チ大正八年デ二万圓ト云フコトニナリマス、ソレカラ民間デハ三井
  岩崎兩家ヨリ四十四年度ヨリ向ウ十箇年間千圓ヅツ、住友家ヨリ大正元年度
  カラ向ウ十箇年千圓ヅツ、マダ外ニモゴザイマスガ、斯ノ如キ寄附金ガゴザ
  イマス、之ヲ今日マデ特別會計トシテ參ッタノデゴザイマスガ、此帝國學士院
  ニハ委任經理ノ途ガ付イテ居ラナカッタノデアリマス、ソレヲ今度行政整理ノ
  一トシテ特別會計法ヲ廢シマスニ付キマシテ此委任經理、單ニ委任經理ノ法
  律トナリマシタノデアリマス、ソレデ此金ヲ支拂ヒマシタノガ一万五千二百
  二十七圓三十四錢ト云フモノヲ支拂ヒマシテ、其殘リガ一万三千五百三十九
  圓九十八錢八厘ト云フモノデゴザイマス、是ハ卽チ學士院ノ方ヘ拂切リニナ
  リマシテ、此經理ニ屬スルコトニナリマス、モウ極ク斯ノ如キ明瞭ノ案デゴザ
  イマスカラ、異議ナク兩案トモ通過シタ譯デゴザイマス、此段御報〓イタシマ
  ス、何卒兩案トモ讀會省略ヲ以テ、ソレヲ速ニ御可決アラムコトヲ望ミマス

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• 156・山口弘達

  ○子爵山口弘達君　讀會省略ニ贊成

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• 157・石井省一郎

  ○石井省一郞君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=157

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• 158・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=158

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• 159・三宅秀

  ○三宅秀君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=159

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• 160・田嶋竹之助

  ○田島竹之助君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=160

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• 161・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=161

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• 162・伊澤修二

  ○伊澤修二君　賛成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=162

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• 163・青木信光

  ○子爵靑木信光君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=163

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• 164・谷森眞男

  ○谷森眞男君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=164

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• 165・小野田元熈

  ○小野田元凞君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=165

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• 166・室田義文

  ○室田義文君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=166

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• 167・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　稻垣子爵ノ讀會省略ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ
  請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=167

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• 168・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　三分ノ二以上ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=168

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• 169・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　兩案トモ原案ニ對シテ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=169

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• 170・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=170

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• 171・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議事日程第九、第一讀會ノ續、委員長報告、副委
  員長實吉子爵
  染料醫藥品製造奬勵法案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
  大正四年六月六日
  右特別委員長
  侯爵德川義親
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔子爵實吉安純君演壇ニ登ル〕

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• 172・實吉安純

  ○子爵實吉安純君　委員長德川侯爵ハ御差支ガアリマスカラ、私ガ代フテ委員
  會ノ經過ヲ御報告イタシマスガ、此染料醫藥品製造奬勵法案、是ハ提出ノト
  キニ農商務大臣ガ詳細ニ尙ホ明瞭ニ說明ニナリマシタカラシテ、モウソレ以
  上申上ゲルコトモナカラウト考ヘマス、ト申スノハ此時局ノ爲ニ外國カラ是
  マデ輸入シタ卽チ外國、殊ニ獨逸國カラ輸入シ來ッタ染料其物ガ來ナクナッテ、
  ソレデ大ニ內地ノ染色業者ガ困難ヲシテ居ル、ソレカラ之ヲ他ノ外國、英國、
  米國、佛蘭西ニ、何トカシテ輸入スル方法ハナカラウカト云フコトデ、段々
  穿鑿ヲシタケレドモ、他ノ國デモ獨逸國カラ輸入シテ居ッタノデ、既ニ困ッテ
  居ル、ソレヲ日本ニ讓ルト云フコトハ何所モ出來ナイト云フコトカラシテ、
  何デモ是ハ內地デ製造スル外仕方ガナイ、卽チ時局ガ何時了ルト云フ見込ガ
  付カヌ以上ハ、イツマデモ是ガナクテハ困ル、又現ニ在ル········我國ニ今マデ
  輸入シテアル所ノ物ハ非常ニ直段ガ高イ、或物ハ數倍、或ハ十倍二十倍ト云
  フヤウナ直段ニモナッテ居ル、ソレガ爲ニ染色業者ハ皆困難ヲスルト云フ有樣
  デアル、所デ此染料ト云フモノハ內地デ出來ナイカト申スノニ、ソレハ旣ニ
  大學又ハ工業試驗所等デ十分ニ〓究シテ、悉クト云フ譯ニハイカヌガ、免セ
  角簡易ノ物、卽チ主ナル物ト云フヤウナ物ハ學術上、技術上デ十分出來ルコ
  トニナッテ居ル、スレバ出來ル、卽チ既ニ試驗的ニ拵ヘタモノガ幾ラモアル、併
  ナガラ價格ハドウモ從來ノ輸入品ニ比シテ高イ爲ニ今マデ起ラヌ、ソレカラ
  藥品ノ方モ略〓ソレト同樣デゴザイマス、ソレカラ此染料ヲ製造スル原料ト云
  フモノハドウカト云フノニ、是モ極ク十分ト云フ譯ニハ往キマスマイカ知リ
  マセヌガ、免ニ角內地デソレモ是マデ不用ニナッタ物ヲ利用シテ、謂ハユル廢
  物ヲ利用ヲスルト云フヤウナ風ニナッテ、却ッテ國家經濟上利益ニナルト云フ
  ヤウナコトデ、其原料モカツ〓〓內地デ間ニ合フ、其原料ト申スノハ主ニ「コ
  ールタール」又ハ石炭滓カラ出來ルノデ、是ハ一番九州ノ三井ノ炭礦デ「ベ
  ンゾール」ト云フモノガ何百噸カ出來ル、ソレカラ若松ノ製鐵所、是デモ一一千
  噸出來ルト云フコトデ、此「ベンゾール」ト云フモノハ何デ出來ルカト云フ
  ト、是マデ「コークス」カラ出ルノデ、ソレデ唯煙トシテ出シテ居ッタノデ、
  之ヲ集メルト二千噸トカ三千噸トカ出來ル、其二ツデアリマスとソレデ「コ
  ールタール」ノ方ニナリマスト、原料ハ十分デアラウ、ソレカラソレヲ製造
  スルト唯〓ノ所デハ直段ガ高イカラ、內地デ拵ヘル方ガ宜イヤウナモノデア
  ル、併ナガラ平和克復ノ後ハ又廉イ物ガ外國カラ這入ルト云フヤウナコトニ
  ナルト云フト、今製造者ガ折角拵ヘテモ永續ガ出來ナイ、卽チ輸入品ノ廉イ
  モノニ壓倒サレテ仕舞フ、ソレガ爲ニ今度其資本ニ對シテ一箇年八朱ダケ補
  給利子ヲヤッテ、サウシテ十箇年ノ間內地デ此業ヲ保存スル、ソレガ爲ニサウ
  云フ習慣ヲ付ケテ、段々技術ガ巧ニナル、スレバ相應ニ廉イ物ガ世間ニ澤山
  ニ出來、サウシテ一方ニハ今度數百万圓ノ輸入ヲ防グ、又言ヒ換ヘレバ染料
  又ハ藥品等ノ獨立ガ出來ルト云フ意味ニナルノデ、ソレカラ藥品ノ方ニ於テ
  ハ悉ク其石炭滓ヤ今ノ「ベンゾール」若クハ「コールタール」ニ委カシテ居ル、
  ソレデ原料ニスルモノハ多數アル、其外ノ原料、例ヘバ阿片トカ云フ風ノモ
  ノハ、ソレ〓〓內地デ農作場ニ········卽チ阿片ノ耕作ハ是マデモ少シハアルノ
  デアリマス、ソレヲ奬勵シテ、サウシテ是マデハ阿片ハ重モニ土耳其カラ
  輸入シタモノデ、ソレカラ内地製ノ物ト合セテ、ソレデ阿片カラハ色〓ノ物
  ヲ拵ヘル、「モルヒネ」トカ、其他ノ物ヲ拵ヘテ居ッタノデアリマス、サウ云フ
  コトモ同時ニヤル、ソレカラ前ノ「ベンゾール」ヤ「コールタール」カラ拵
  ヘルヤウナ卽チ藥品ダケデハナイ、酒ノ腐敗ヲ止メル爲ニ使フ「サルチルサ
  ン」サウ云フ種類ノモノ、若クハ他ノ石炭酸ト云フヤウナモノハ矢張リ今
  ノ染料製造ノ方ト共通デ出來ルヤウナ譯デアリマス、ソレデ是モ矢張リ十箇
  年間年八朱ノ補給利子ガアッタナラバ、其後ハ獨立シテ行ケルダラウト云フコ
  トデ、此藥品ノ方ナゾハ尙ホ唯今貯藏品デ、藥品モ、染料モ當分ハ差支ナイ、
  世ノ中デ云フヤウニサウ拂底シテ居ル譯デモナイノデアリマスガ、今マデハ
  現品ヲ有ッテ居ル者ガ賣惜ンダ爲ニ、世間デハ非常ニ缺乏シテ居ルヤウニ見エ
  ルノデアリマス、併シ事實ハ幾分カソレヲ使ヒ果スマデニ此製造所ガ出來レ
  バソレデ間ニ合フコトニナラウ、先キニモ申上ゲタヤウニ先ヅ主ナモノ、
  或ハ容易イ物ハ卽座ニモ出來ル、ソレカラ此人造藍ナゾハ少シ所作モ込入ッ
  テ居ルシ、ダカラシテ直グト云フ譯ニハイカヌガ、段々是モ出來ル見込ガア
  ルト云フコトデアリマシタ、ソレデ唯今ノヤウナ譯デ委員會デハ他ニ質問等
  モナク、全然此案デ全會一致デ贊成ヲシタ譯デアリマス、モウ一ツ申上ゲテ
  置キタイノハ、衆議院デ一箇條削除ニナッテ居リマス、第五條デス、是ハ此補
  給利子ヲヤルノニ個人若クハ他ノ兼業者ニモヤルト云フ意味デアルノニドウ
  モ是ハ行ハレヌ、是ハ矢張リ染色業或ハ製藥工場專業ニヤル株式組織ノ基
  礎ガ固イモノデナクテハ、ドウモ個人ノ基礎ノ固クナイ者ニヤルコトハ困ル
  ト云フコトデ、衆議院デ削ッテ、政府デモソレニ同意デアルト云フコトデアリ
  マシタ、此段御報〓イタシマス

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• 173・石黒忠悳

  ○男爵石黑忠悳君　政府委員ニチヨット伺ッテ置キタイト思ヒマスガ、此補助
  ガ百分ノ八ト云フノハ、ドウ云フ所カラ出タノデアリマスカ、ソレカラモウ
  一ツ承ッテ見タイノハ是ハ此補助ヲ受ケテ本員ナゾノ考デハ今製造イタシマ
  スル物デ供給ハ出來マスガ、平和克復後ニ至リマシタナラバ、歐羅巴ノ方カ
  ラ安イ物ガ來ル爲ニ、其時ニハ餘程用心ヲシテ置カヌト、此工業ヲ始メル者
  ハ大打擊ヲ受ケルコトガアラウカト思ヒマス、サウ云フトキニハ外國品ニ輸
  入稅ヲ課スル御見込ガアルノデアリマスカ、ドウデアリマスカ、併セテ伺ッテ
  置キマス
  〔政府委員岡實君演壇ニ登ル〕

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• 174・岡實

  ○政府委員(岡實君)　唯今ノ石黑男爵ノ御尋ニ御答イタシマス、百分ノ八ニ
  致シマシタノハ、此事業ノ性質上成ルベク急ニ多クノ資本ヲ此事業ニ集中イ
  タサセタイト云フ考ヲ有ッテ居リマス、然ルニ他ノ銀行業或ハ鐵道業ト云フガ
  如キ事業ト異ナリマシテ、唯〓第二問ニ於テ御尋ニナリマシタガ如ク、多少
  將來ニ付キマシテ、各自ニ懸念ヲ懷クガ如キ性質ノ事業デゴザイマスカラ、
  此際時局ノ急ヲ救ヒマスルノト、又從來會テ日本ニ於テハ試驗的經畫ノ外未
  ダ起ッテ居ラナイ、比較的ムヅカシイ事業デゴザイマス、旁〓八分ト云フコト
  ニ決メマシテ、成ルベク速ニ本事業ニ對シテ資本家ガ資本ヲ投下スルヤウニ
  誘致イタシマシタ譯デゴザイマス、第二問ニ付キマシテハ時局平定後若クハ
  補給制度ノ止ンダ後ハ、政府ハ如何ニシテ此事業ヲ持續セシムルカト云フ御
  質問ノヤウデアリマス、時局中ニ於キマシテハ唯今委員長ノ御報告ニナリマ
  シタ通リ、染料ノ價ハ大層騰ヲテ居ルノデアリマス、殆ド何等ノ補給ヲスルコ
  トナクトモ染料製造家ハ相當ノ利益ヲ收メテ行クコトガ出來ルト確信イタシ
  テ居リマス、而シテ時局平定後モ暫クノ間ハ歐洲諸國ニ於ケル一般物價ノ騰
  貴、ソレニ伴ウタル一般的染料ノ缺乏ニ依リマシテ、染料ノ價ガ時局以前ニ
  復スルマデハ一二年ヲ要スルコトト考ヘテ居リマス、此間モ政府ノ補給ハ或
  ハ必要ノナイ場合モゴザイマセウシ、或ハ之ヲ假ニ致シマシテモ八分ノ全額
  ハ愚カ、或ハ五六分或ハ三四分位ノ補給デ十分目的ヲ達シ得ルコトガアラウ
  ト思ヒマス、而シテ此處三四年經過イタシマスト、今囘ハ獨逸ハ製造業モ平
  常ニ復シ、其物價モ平常ニ復シマスル結果、染料ノ價モ亦廉クナリマスシ、
  時局以前ノ相場ニ復リマストキニ初メテ之ヲ製造イタシマス會社ハ、此補給
  利子ノ恩澤ニ浴スル譯デアリマス、而シテ此補給制度ハ十箇年ノ間繼續イタ
  シマス、十箇年ノ間繼續イタシマス中ニハ、先程御報告中ニモゴザイマシタ
  通リ、從來相當ノ損失ヲ掛ケナケレバ出來ナカッタムヅカシイ仕事モ、大體手
  ニ入ルヤウニナルコトト存ジマス、又日本ニ於キマシテ最モ廣ク使用サルル
  所ノ染料、若クハ鄰國支那、南洋等ニ於キマシテ從來歐洲殊ニ獨逸カラ輸入
  イタシマシタ染料ノ如キ是亦內地ニ普及シテ居ル染料ト同ジク、各染料業者
  ガ之ヲ造リマシテ、相當ノ利益ヲ擧ゲ得ルコトト存ジマス、是等ノ事實比較
  的ムヅカシカラズ、又其需用モ比較的廣イト云フヤウナ仕事ニ付テハ、十分
  補給ガナクトモ內地ニ於テ十年間ニハ十分發達ヲナシ得ルコトト思ヒマス
  而シテ特ニ技術ヲ要スル、又極メテ新シイ染料ヲ、獨逸ヨリ先ンジテ日本ヨ
  リ出スト云フコトハ或ハムヅカシカラウト存ジマス、併ナガラ前申シマス染
  料ニ付キマシテハ、之ヲ我國ノ國產ト致シマシテモ、此法律ノ結果我國ニ奬
  勵シ、又之ヲ我國ニ土著セシメ得ルコトト信ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=174

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• 175・田健治郎

  ○男爵田健治郞君　私モ少シク政府委員ニ御尋シヤウト思ヒマス、此第三條
  ニ八分ノ補給ヲ載セテ居リマスガ、此補給ハドウ云フ工合ニナリマスカ、例
  ヘテ見ルト百万圓ノ會社ガ五万圓ヨリ儲カラヌト云フトキニハ三万圓·········配
  當ガ五万圓ヨリナイ、三万圓支給スレバ宜イ譯デアリマスガ、若シ損ヲシタ
  其時ニハドウ云フコトニナリマスカ、其補給ノ計算ノ仕方ハ勅令デ決メルト
  アリマスガ、其勅令デ御決メニナルノハ損ガ行ッタ場合ニハドウ云フ工合ニ
  ナリマスカ
  〔政府委員岡實君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=175

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• 176・岡實

  ○政府委員(岡實君)　田男爵ノ御質問ニ御答申上ゲマス、政府ノ精神ト致シ
  マシテハ、會社ガ必ズ八分ノ配當ヲ爲シ得ル如キ方法ニ於テ補給スル意味デ
  ゴザイマス、而シテ會社ガ配當イタシマスルニハ、必ズ先ヅ其損失ヲ塡補ヲ
  致シマシタ上ニ配當ヲ爲シ得ルコトハ勿論ノ次第デアリマス、故ニ會社ガ利
  益ヲ擧ゲルコトガ出來ズ、損失ヲ致シマシタ場合ト雖モ、政府ハ其損失ヲ補
  塡イタシマシテ、尙ホ其上ニ八分ヲ補給スル積リデゴザイマス、是等ノコト
  ハ勅令ニ於キマシテ其關係ヲ明カニ致ス積リデゴザリマス、斯ノ如ク致シマ
  シタ理由ハ、此事業タル甚ダ困難ナル事業デゴザイマス爲ニ、若シ損失ニ對
  シテハ補給セヌト云フ制度ヲ取リマスト、當業者ハ思切ッタ經畫ヲ立テテ、安
  ンジテ此事業ヲ經營スルコトガ出來ナイノデ、之ヲ避ケル傾キヲ生ズルコト
  ヲ恐レタノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=176

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• 177・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　政府委員ニ質問イタシマス、植物性ノ染料ヲ以テ染メタ
  ル絹及綿布類ノ持久力ト、化學的染料ヲ以テ染色シタル絹及綿布類ノ持久力
  ト、相違ガアルカノ如ク承ッテ居リマスガ、政府ハ如何ニ之ヲ御認メニナッテ
  居リマスカ伺ヒマス
  〔政府委員岡實君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=177

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• 178・岡實

  ○政府委員(岡實君)　高木男爵ノ御尋ニ御答イタシマス、我國ノ鑛物性染料、
  殊ニ此「コールタール」染料ノ渡來イタシマシタ初メニ於キマシテ、此染料
  ヲ以テ織物ヲ染付ケル方法ガ分ラナカッタノデゴザイマス又分ッテ居リマシ
  テモ甚ダ未熟ナル方法デヤッテ居リマシタ、ソレガ爲ニ植物性染料デ染メタ織
  物ハ、「コールタール」蒸溜ニ依ッテ生ジタル染料ニ依ッテ染メタモノヨリモ
  遙ニ强イト云フガ如キ感ジヲ一般ニ起サセタノデゴザイマス、然ルニ之ヲ專
  門學者ノ說ニ徵シマスルト、植物性ノ染料ト雖モ亦鑛物性染料ト雖モ、其性
  質ニ於テ擇プ所ハナイモノガ多イ、唯其染法宜シキヲ得ルニ於テハ、耐久力
  ニ於テモ必シモ徑庭スル所ナイト云フコトヲ承ッテ居リマシタ、而シテ此說明
  ハ最近ニ於キマシテ、各高等工業學校其他府縣ノ工業學校等ニ於キマシテ、
  染色術ノ講習又染色學科ノ著シキ發展ニ依リマシテ、西洋輸入ノ新染料ヲ以
  テ巧ニ之ヲ染色シ、其耐久力ニ於テモ從來ノ植物性染料ヲ以テ染メタモノト
  徑庭ナキマデニ染メ得ル技術ガ、最近ニ發達シタ爲ニ、從來學者ニ依ッテ唱道
  セラレテ居ッタコトガ事實ナルコトヲ證明シタ譯デ、鑛物性ノ染料モ染法ニ於
  テ適當デアル以上ハ、植物性染料ト擇ブ所ナイト云フコトニ歸著イタシマシ
  タ

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• 179・田健治郎

  ○男爵田健治郞君　先刻御尋シタコトヲ今一應確メテ置キマスガ、例ヘテ申
  スト百万圓ノ會社ガ五十万圓損ガ行ッタ場合、其時ニハ此案ニ依リマスト、其
  五十万圓ノ減資金ヲ、政府カラ補充シテヤッタ上ニ、尙ホ八万圓ノ配當ヲヤ
  ル、斯ウ云フ意味デアリマスカ
  〔政府委員岡實君演壇ニ登ル〕

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• 180・岡實

  ○政府委員(岡實君)　唯今ノ田男爵ノ御尋ニ御答イタシマス、其點ニ付キマ
  シテハ特別委員各位ニハ參考書ヲ提出イタシテ置キマシタ譯デゴザイマス、
  今其參考書ニ記載サレテ居ル所ノ要領ヲ申上ゲマス、會社ハ補助ヲ受クルニ
  際シテハ、凡ソ如何ナル經畫ヲ爲スカ、又其經晝ニ依ッテ如何ナル染料ヲ製出
  スルカ、而シテ其染料中如何ナルモノガ利益ガアルカ、又如何ナルモノハ不
  利益デアルケレドモ拵ヘテ見ルトカ、是等ノ點ヲ總テ明カニ記載ヲ致シマシ
  テ、豫メ主務官廳ニソレヲ提出シ、十分主務官廳ト協議ヲ遂ゲシムル積リデ
  アリマス、隨ッテ今男爵ノ御擧ゲニナリマシタガ如キ、莫大ノ損失ヲ來スベキ
  經畫等ニ付テハ、十分其認可ニ依ッテ之ヲ節制シ得ルコトト信ジテ居リマス、
  又右申スガ如キ大ナル損失ハ、多クノ場合ニ於キマシテハ必ズヤ火災若クハ
  氣鑵ノ破裂等ニ依ッテ生ズルノガ多イノデゴザイマス、斯ノ如キ思ハザル危險
  ニ對シマシテハ、總テ之ヲ保險ニ付セシムルコトト致シマシテ、假ニ斯ノ如
  キ原因ニ依ッテ損失ガ生ズルトモ、保險會社ヨリ補償セシメ、會社ノ損失トナ
  ラザル方法ヲ、豫メ會社ヲシテ立テシムル積リデアリマス

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• 181・阪本さん之助

  ○阪本彰之助君　少シ御尋ネシテ置キタウゴザイマスガ、第二條ニ依リマス
  ルト、帝國ノ法律ニ依ッテ設立シタル株式會社云々トアリマスカラ、苟モ法律
  ニ依ッテ立テマシタ會社ナラバ如何ナル小資本ノ會社デモ、染料藥品ヲ製造
  スルト云フモノデアリマスレバ、矢張リ政府ハ補助ヲ與ヘラレルコトデアリ
  マスカソレカラモウ一ツハ、藥品染料ニハ限ラヌ、今外國ノ輸入ヲ防遏
  スル爲ニ矢張リ是ト同等ノ必要ヲ感ズルモノガアリハセヌカト思ヒマスガ、
  ソレ等ハ政府ニ於テハ如何ニ御考ニナッテ居リマスカ、此二ツヲ········ソレカラ
  第五條ヲ衆議院デ削リマシタ、此削ッタ精神ハ特別委員長カラ御報告ガアッタ
  カ知レマセヌガ能ク聞取リマセヌデシタガ、何故ニ削ッタノデアリマスカ、又
  政府ハ御同意ニナッタノデアリマスカ承リタイ
  〔政府委員岡實君演壇ニ登ル〕

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• 182・岡實

  ○政府委員(岡實君)　阪本君ノ御質問ニ御答イタシマス、此法律ニ依フテ補助
  ヲ致シマスル會社ハ、命令ノ定ムル所ニ依ッテ染料藥品ノ製造業ヲ營ムト云フ
  コトガ一ツノ要件デゴザイマス、而シテ其命令ニ於キマシテハ、今御尋ノ如
  キ小ナル會社ニ對シテハ、條件ヲ具備セザルモノトシテ補助ヲ與ヘナイ積リ
  デアリマス、御承知ノ如ク染料ニ付キマシテハ餘程大ナル設備ヲ要スル、而
  シテ又時トシテ外國ノ「パテント」等ヲ購入スル資力ノアルコトモ必要デゴ
  ザイマス、時ト致シマシテハ又彼地ヨリ技師ヲ傭聘イタシマスル資力ノアリ
  マスルコトモ必要デゴザイマス、其他各種ノ關係ニ於キマシテ調査〓究ヲ必
  要ト致シマスル事業デゴザイマス、政府ノ考ト致シマシテハ成ルベク資本
  ヲ餘計ニ持ッテ居ッテ、大仕掛ニ於テ營業ヲ爲スモノニ限ッテ補助ヲ與ヘルト
  云フ積デアリマス、ソレカラ第二ノ御質問デゴザイマス、是ハ染料以外ニ付
  テモ尙ホ政府ガ斯ノ如キ制度ヲ設ケテ是ガ發達ヲ獎勵スベキモノガアルデア
  ラウガ、ソレニ對シテ如何ナル考ヲ持ッテ居ルカト云フ御質問ノ如ク了解イ
  タシマシタ、此問題ニ付キマシテハ時局以來農商務省ニ於キマシテ化學工業
  調査會ナルモノヲ組織イタシマシタ、各種ノ問題ヲ〓究イタシテ此染料工業
  ヲ我國ニ起スベキ必要ヲ議決イタシマシタノモ、又此經畫ノ遂行ニ付テ各種
  ノ意見ヲ發表イタシマシタノモ此化學工業調査會デゴザイマス、政府ハ尙ホ
  此化學工業調査會ヲ繼續イタシマシテ、今御尋ノ如キ必要ナル各種ノ工業品
  ニ付テハ何等カノ方法ニ依ッテ是ガ發達ヲ助長イタス考デ居リマス、ソレカラ
  第三ノ御質問デゴザイマス、兼業トシテ染料藥品ヲ製造スルモノハ補助ヲヤ
  ルト云フ條文ヲ削除シタノハ其理由何レニアリヤ、兼業ト致シマシテ此事業
  ヲ營ムト云フコトニナリマスト本業ト兼業トノ間ニ收支關係ヲ別ニ立テシ
  ムル必要ガ起ルノデゴザイマス、而シテ偶〓本業ニ於テ不利益ナ場合ガアッタ
  トキニ、之ヲ兼業ノ方ノ側ノ不利益ニ計上スル如キ虞ナキニシモ非ズデアリ
  マスルカラ、是等ノ點ニ付テハ特ニ十分ノ監督ヲ要スル譯デゴザイマス、其
  他何分ニモ一方ハ補給ヲ要スル事業デ一方ハ補給ヲ要シナイ事業デ、事業ノ
  性質ハ全ク別事デアリマスカラ、切離シテ別ニ補給ヲ要スル仕事ダケ營マシ
  ムル方ガ監督上カラ申シテモ便宜デアラウ、補給制度ノ金額ヲ維持スルニ於
  テ宜シクハナイカト云フ衆議院ノ意見デゴザリマス、政府ハソレニ對シテ同
  意ヲ表シタ譯デゴザイマス

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• 183・田健治郎

  ○男爵田健治郞君　唯今政府委員ノ御答ハドウモ私ノ御尋ニ嵌ラヌヤウデア
  リマスカラ尙ホ御尋イタシマス、私ハ此第三條ノ補助ノ性質ハ、勿論事實ニ
  於テハ第二條及第五條ナドノ關係ガアリマスケレドモ、サウ云フコトハ無論
  ナイ御積リデアリマセウ、ケレドモ法律ヲ立テタ以上ハ、有ッタラソレヲドウ
  スルト云フコトノ意味ヲ明カニセネバナラヌ、ソレ故ニ私ハ資本ガ大缺損ガ
  起ッタトキニ其資本ヲ償ヒ、其資本ヲ償ウタ上十年間ハ八朱ノ配當ヲ付ケルト
  云フコトヲヤルト云フ法律ノ精神デアルヤ否ヤト云フコトヲ御尋スルノデア
  リマス、事實ニ於テハ監査ナリ、又創立以前ノ御注意ナリ、愈〓斯云云フコト
  ノ起ラヌヤウニハ御注意ハアルデアリマセウ、併ナガラ商業、工業ナドハナカ
  〓〓サウ必ズ損ガ行カヌト云フコトヲ保證スルコトハ出來ヌト思ヒマス、況
  ヤ十年間ノ間ニ如何ナル經濟上ノ變化ナドデ損失ヲ來タシテ、資本ノ缺損ヲ
  來タスト云フヤウナコトモ絕對ニナイト云フコトモ理窟上カラ決メルコトハ
  出來ナイノデアリマスカラ、サウ云フ場合ガアリマシタトキニハ、此三條ノ
  精神ハ資本ニ幾ラ缺損ガ行カウトモ、一部デアラウト全部デアラウトモ、尙
  ホ而シテ其缺損ニ拘ラズ、尙ホ八朱ノ配當ノ出來ルダケノモノヲ年々補給シ
  テ行クト云フコトニシカ三條ノ書方ハ見エマセヌ、ケレドモ免ニ角第二項ニ
  勅令ニ委任シタヤウナ形モ見エマス、委任ヂヤナイカモ知レマセヌガ、免ニ
  角勅令デ決メルコトニナッテ居リマスカラ、サウスレバ無論此勅令ヲ御立テニ
  ナル上ニ付テ、ソレラノ邊ヲ御決メニナル御積リガアルカモ知レヌカラ、私
  ハ此精神ハ如何デアルカ、先ヅ勅令デハドウ御決メニナルト云フコトヲ御尋
  シタイノデアル、事實ニ於テ損ガナイトカ、監督ヲ十分スルカラサウ云フコ
  トハ起ラセヌトカ、保險ヲ付ケルカラソンナコトハ起ラヌトカ云フ事實ヲ御
  尋シタノデハナイ、詰リ立法ノ精神ヲ御尋シタノデアリマスルカラ、明ニ其
  點ヲ御說明ヲ願ヒタイ
  〔政府委員岡實君演壇ニ登ル〕

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• 184・岡實

  ○政府委員(岡實君)　唯今ノ御尋ニ御答イタシマス、先程申上ゲマシタノハ
  政府ノ補給ノ精神ハ八分ノ配當ヲナサシムルコトヲ目的トスルノデアル、故
  ニ缺損ノアッタ場合ニハ先ヅ其缺損ヲ塡補スルニ非ザレバ配當スルコトガ出
  來ナイノデアルカラシテ、勿論政府ハ其缺損ヲ塡補シ、且ツ其上ニ八分ノ配
  當ヲ爲サシムルノデアルト云フコトヲ申上ゲマシタ積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=184

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• 185・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　採決ヲ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クベシトス
  ル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

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• 186・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス

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• 187・實吉安純

  ○子爵實吉安純君　直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ····

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• 188・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　贊成

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• 189・藤田四郎

  ○藤田四郞君　贊成
  〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕

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• 190・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ二讀會ヲ開クベシトスル實吉子爵ノ動議ニ
  御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 191・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト思ヒマス

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• 192・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第二讀會ヲ開キマス、全部ヲ問題ニ供シマ
  ス········全部副委員長ノ報告通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 193・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=193

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• 194・實吉安純

  ○子爵實吉安純君　直チニ第三讀會ヲ御開キニナラムコトヲ希望イタシマス

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• 195・藤田四郎

  ○藤田四郞君　贊成
  〔其他「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 196・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=196

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• 197・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=197

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• 198・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三讀會ヲ開キマス、第二讀會ノ決議通リ
  御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 199・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

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• 200・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議事日程第十、軍人恩給法中改正法律案、衆議院
  提出第一讀會、通牒文ノ朗讀ハ省略イタシテ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 201・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  軍人恩給法中改正法律案
  右本院提出案及送付候也
  大正四年六月七日
  衆議院議長島田三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  軍人恩給法中改正法律案
  軍人恩給法中左ノ通改正ス
  第六條但書中「高等官八等ノ額」ノ下ニ「又現役ヲ退クトキ特ニ官等ヲ進
  メラレタル者ニハ海軍兵曹長同相當官ヨリ海軍中尉同相當官ニ進メラレタ
  ル者ヲ除クノ外新官等ニ對スル額」ヲ加フ
  第十條第一項中「前條ニ該當スル傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルトキノ現」
  ヲ「現役ヲ離レタルトキノ」ニ改ム
  第十八條第七號中「及北海道移住ノ際定規ノ給助ヲ受ケタル屯田兵下士卒」
  ヲ削ル
  同條ニ左ノ一號ヲ加フ
  八北海道ニ移住ノ際定規ノ給助ヲ受ケタル屯田兵下士兵卒ニシテ從軍
  シ若クハ屯田兵村監視又ハ屯田兵部隊附トナリ軍隊ノ常務ニ服シタ
  ルトキハ其日數
  明治四十四年法律第五十九號附則第二項、第三項及第五項乃至第八項ヲ削
  リ左ノ二項ヲ加フ
  明治四十四年四月一日以前現役ヲ離レ現ニ退職恩給、免除恩給、增加恩給
  又ハ扶助料ヲ受ケ又ハ受クヘキ權利ヲ有スル者ニ給スヘキ恩給金額ハ總テ
  本法ノ規定ニ依ル
  陸軍武官傷痍扶助及死亡ノ者祭粢竝其ノ家族扶助〓則、海軍退隱令又ハ陸
  軍武官恩給令ニ依リ扶助料、退隱料又ハ恩給ヲ受クル者ニ對シテハ命令ノ
  定ムル所ニ依リ本法規定ノ金額ヲ給ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第六條但書第十條第一項及第十八條第八號ノ改正規定ハ本法施行前ニ現役
  ヲ離レタル者ニモ之ヲ適用シ本法施行ノ日ヨリ本法規定ノ恩給ヲ給ス
  〔政府委員濱口雄幸君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=201

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• 202・濱口雄幸

  ○政府委員(濱口雄幸君)　此案ハ衆議院ノ提出ニ係ル案デアリマスルガ、之
  ニ對シテ政府ノ考ヲ申上ゲタイト思ヒマス、凡ソ議會ニ於キマシテ豫算ヲ修
  正イタシマスルトキニ當ッテ歲出豫算ヲ增加スル如キ修正ヲ致シマセヌト云
  フコトハ、議院ノ德義ト致シマシテ長ク議會ノ慣例トナッテ居ルヤウニ考ヘ
  RT @本案ハ固ヨリ法律案デアリマスルカラ、其性質ハ豫算トハ違ヒマスケ
  レドモ、此案ガ法律トシテ制定セラレマスル結果トシテ、歲出ノ增加ヲ生ジ
  マスル點ニ於キマシテ歲出豫算ノ增加修正ト少シモ異ッタコトハナイト考ヘ
  や、 、本案施行ノ結果ト致シマシテ年額ニシマシテモ約三百万圓ノ歲出ヲ增
  加スルト云フコトニナリマスガ、財政ノ狀況今日ノ如キ場合ニ於キマシテ、
  斯ノ如キ歲出ノ增加ヲ要シマスル法律案ヲ衆議院ヨリ提出ニナリマシタコト
  ハ、政府ニ於テ最モ遺憾トスル所デアリマス、其理由ヲ中シマスト、衆議院
  ニ於テハ政府ハ財政上ノ理由ヨリ絕對ニ反對ヲ表明イタシマシタ、然ルニソ
  レニ拘ラズ衆議院ニ於キマシテハ、多少ノ修正ヲ加ヘマシテ通過シテ、唯今
  本院ニ提出ニナッテ居ルノデアリマスガ、衆議院ノ委員會ノ修正ニ依リマスレ
  バ元ノ案ハ施行期日ガ大正五年四月一日デアリマシタノヲ、ソレヲ改メマシ
  テ本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ムトナッタノデアリマス、是ハ財政上ノ
  事情ヲ多少斟酌サレテ斯ノ如ク修正ニナッタモノト存ジマスガ、併ナガラ假令
  施行期日ヲ勅令ニ讓ルト云フコトニシテモ、苟クモ法律ヲ制定シタ以上ハ早
  晩政府ハ之ヲ決行スル決心ヲ有ッテ居ナケレバナリマセヌ、然ルニ今日ノ場合
  ニ於キマシテ、斯ノ如キ法案ヲ早晩設定スルト云フ決心ヲ執リマスコトハ、
  今日ノ財政狀態ト致シマシテハ政府トシテ決シテ同意ノ出來ナイ所デアリマ
  ス、依ッテ此案ニハ反對ヲ表明イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=202

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• 203・眞鍋斌

  ○男爵眞鍋斌君　本員ハ大藏政府當局者ト、又陸軍政府當局者ニ質問イタシ
  タイト思ヒマス、先ヅ最初ニ大藏次官ニ質問イタシマス、唯今ノ御說明ニ依
  リマスト、財政ノ許サヌ爲ニ政府ハ此案ニハ御同意ニナラヌ、斯ウ云フコト
  デアリマス、御承知ノ通リ此貴族院ニ於キマシテハ、此法律案ノ中ニアル明
  治四十四年ノ法律第五十九號ノコトニ關シマシテハ、議會ノ度每ニ數十件ノ
  請願ガ出マシタ、此件數ハ數十件デゴザイマスガ、其人員ニ至リマシテハ、
  幾百人ト云フ人員ニナッテ居リマス、デソレヲ此貴族院ニ於キマシテハ、其請
  願ト云フモノハ法律ノ改正ニナッタ其年ヨリ出テ居ルノデアリマス、所ガ最初
  ノ中ハ此法律ガ改正ニナリマシテ、サウシテマダ其法律ガ實際ニ行ハレテ居
  ラヌト云フ間ニ於テ、之ヲ輕々ニ此請願ヲ採擇スルト云フコトハ貴族院トシ
  テ愼ムベキコトデアル、今少シ年數ヲ待ッテ然ル後、實際ヲ見テカラノコトト
  云フコトデ、最初ニハ委員會ニ於テモ無論請願ニ對シテ一向採擇ヲシテ居リ
  マセヌ、其後段々實際ノ狀況ヲ見、又此請願ノ趣旨ヲ段々審査シマシタ結果、
  私モ其請願委員ノ一人デアリマシテ、是ガ調査ヲシタコトガアリマスガ、是
  ハ第一ニハ卽チ權衡ヲ得ナイト云フコトデアル、又第二ニハ下級軍人トシテ
  ノ·······卽チ今日軍人ノ體面ヲ保ツ上ニ付テモ唯今ハ舊恩給法ノ金額デハ甚ダ
  困難ヲシテ居ル、詰リ四十四年四月以後ニ於テ退職ヲ致シタ者ニ付テハ、卽
  チ改正ノ恩給法ノ恩給ガ給與シテアル次第デアリマス、其當時幾分カ當局者
  ノ意見ヲ承ッタコトモアリマスガ、是ハ全體ヲ殘ラズ改正ヲシテ皆一樣ニシタ
  イト云フ希望デアル、併ナガラ今ノ所財政ノ謂ハユル許サヌ所カラシテ、
  先ヅ其一部分ノモノダケヲ改正シテ置キ、將來ニ向ッテハ之ヲ殘ラズ改正スル
  ト云フ意思ガアル、斯ウ云フコトヲ承ッテ居ルノデアリマス、ソレデサウ云フ
  次第デアリマシテ、年々歲々請願ノ數ハ今ノ通リニ上リ、其請願イタス所ノ
  事情ニ於キマシテハ實ニ尤モ至極ニ考ヘラレマス、ソレデ其初メニハ請願ハ
  一二囘ハ今申シタ通リ不採擇ニ終リマシタガ、其後ハ請願委員會ニ於キマシ
  テハイツデモ此請願ニ於テハ採擇ヲサレマス、既ニ本年モ此請願ニ對シテ
  委員會ニ於テモ採擇シ、又此議場ニ於テモ採擇ニナリ、決議ニナッテ居ルヤウ
  ナ次第デアリマス、其決議ニナリマシタ所ノ趣旨ハ旣ニ御承知デゴザイマセ
  ウガ詰リ前ハ今申シマシタ二ツノ理由ニ依ッテ決議ニナッタノデ、貴族院ハ
  既ニ改正ニ付テハ斯ノ如キ意見ノアルコトハ、是ハ今日ニ始マラヌ、ソレデ
  サウ云フコトデ退職軍人ノ上ニ於テソレダケ明瞭ナル困難ナ事實ガアル、又
  一面カラ言ヘバ不平均ナル事實ガアル、之ニ對シテ政府ハ唯財源ガナイカ
  ラ之ヲヤラヌト仰セラレマスガ、之ニ付テ何カ財源ヲ求メテモ是ハ一ツ行ハ
  ナケレバナラスト云フ御意思ガ有ルカ無イカ、或ハ財源ガナイカラシテ、イ
  ツマデモ之ヲ抛ッテ置クト云フ御意思デアルカ、ソコヲ大藏次官ノ御答辯ヲ願
  ヒマス
  〔政府委員濱口雄幸君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=203

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• 204・濱口雄幸

  ○政府委員(濱口雄幸君)　唯今ノ御質問ニ御答ヲ申上ゲマスガ、唯今御述べ
  ニナリマシタ貴族院ニ於ケル此問題ニ對スル沿革ニ付キマシテハ能ク政府ニ
  於キマシテモ了承シテ居ル所デアリマス、又唯今ノ御趣意ニ於キマシテモ敢
  テ之ニ反對ヲスルト云フコトハアリマセヌ、唯御承知ノ通リ近來ノ此財政ノ
  情況ハ餘程困難デアリマシテ、卽チ時局ノ發生ニ依リマシテ歲入ノ見込ガ最
  初ノ經畫トハ餘程減少ヲシヤウト云フ見込デアリマス、其最初ノ見込ト申シ
  マスノハ卽チ時局發生前ニ於ケル見込ヨリモ、今日ノ事情ニ於テハ餘程減少
  セナケレバナラヌト思ッテ居リマス、而シテ此影響ハ果シテ何時マデ續キマス
  モノデアリマスカ、開戰前、時局前ノ情況ニ復舊スルト云フコトハ、今日ニ
  於テハ殆ド認メガ付イテ居リマセヌ、從ッテ諸般ノ經畫ニ於キマシテモ總テ齟
  齬ヲ來タシテ居リマス、段々政費モ緊縮イタシマス、其他新事業モ出來ル限
  リ見合セテ居ルト云フ次第デ、詰リ此問題ノミヲ考慮シテ後ニ之ヲ決行シヤ
  ウト云フ譯ニハ參ラヌト思フノデアリマス、一般財政經畫ト相待ヲテ考慮ヲ要
  スベキモノト思ヒマスカラ、今日ニ於テ何時カラ之ヲ實行スル、何時ニナレ
  バ財源ヲ求メテヤルト云フコトヲ明カニ申上ゲルコトハ甚ダ困難デアリマ
  ス、左樣御了承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=204

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• 205・眞鍋斌

  ○男爵眞鍋斌君　大藏次官ノ御答辯ニ依ッテ大藏省ノ御趣意ノアル所ハ能ク
  了承イタシマシタ、ソレニ付テ尙ホモウ一ツ伺ッテ置キタイ、今ノ仰セニ依レ
  バ一般ノ財政ガ困難デアル、諸般ノ整理モシナケレバナラス、ソレデアルカ
  ラ是バカリ一ツヤル譯ニ行カヌト斯ウ仰セラレマスガ、併ナガラ此問題ヲ大
  藏省ニ於テハ唯輕易ノ問題ト御承知ニナッテ居リマスカ、或ハ又軍人ノ今日ノ
  情態ヲ省ミラレ且ツ貴族院ニ於テ院議ヲ以テ之ヲ認メテ決定シテ居ルコトニ
  對シテ左程ニ之ヲ重要視ナサッテ御居デニナラヌノデゴザイマスカ、其所ヲ伺
  ヒタイ
  〔政府委員濱口雄幸君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=205

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• 206・濱口雄幸

  ○政府委員(濱口雄幸君)　御答シマスガ政府ニ於キマシテハ決シテ此問題
  ヲ以テ輕微ナル問題ト考ヘテ居リマセヌ、併ナガラ此外ニモマダ輕微ナラザ
  ル問題ガ澤山アル譯デアリマスカラ、是ハ一般財政經畫ニ涉リマシテ能ク其
  緩急ヲ比較〓究シマシテ、其上デナケレバ決スルコトハ出來ナカラウト考へ
  マス、依ッテ此席ニ於キマシテハ此問題ダケ離シテ御答申シマスルト云フコト
  ハ困難デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=206

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• 207・眞鍋斌

  ○男爵眞鍋熾君　大藏大臣ニモウ一ツソレヂヤ御尋イタシマス、サウ致シマ
  スルト此恩給法ノ改正ト云フコトニ付テハ、特別ニ決シテ御考慮ヲ爲サッテ御
  居デニナラヌノデアリマセウカ、其點ハ何カ財源ヲ求メテモ之ヲヤラナケレ
  バナラヌト云フ御考慮ハナイノデゴザイマスカ
  〔政府委員濱口雄幸君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=207

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• 208・濱口雄幸

  ○政府委員(濱口雄幸君)　唯〓御答申シマシタコトニ依ッテ御了解下サッタコ
  トト存シマスガ、特ニ政府ニ於キマシテハ此問題ノミヲ先キニ引拔イテ優先
  權ヲ與ヘル譯ニ行カヌト思ヒマス、種々ノ問題ガアリマスカラ、其大小輕重
  ハ是ハ皆比較モノデアリマスカラ、勿論當院ノ御希望ニ對シテ又御意見ニ對
  シテハ十分是ハ敬意ヲ表スル譯デアリマス、十分之ヲ諒トシテ居リマスケレ
  ドモ、何分財政上ノ經畫ト致シマシテハ外ノモノハ兔ニ角トシテ、此問題ノ
  ミヲ先キニ決行スルト云フ譯ニ參リ兼ネマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=208

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• 209・原口兼濟

  ○男爵原口兼濟君　本員モ一言政府委員ニ今ノ事ニ付テ御尋イタシタウゴザ
  イマスガ、此法律ノ決マリマス時分ハ、政府ノ方ハ全ク財源ガナイト云フ所
  デ以テ、現行ノ法律ニナッテ、四十四年ノ四月一日以前ニ職務ヲ退イタ者ニハ
  アノ法律ガ及バナイト云フコトニナッタノデアリマス、其時ニ此貴族院デ其法
  律ヲ議スルトキニ、當時ノ特別委員長タル小澤男爵ガ委員長トシテ此席ニ御
  報告ニナッタノニ、此事ハ········此法律ハ不完全ナル嫌ヒガアルケレドモ、今日
  ハ忍ンデ之ヲ贊成スルガ、後日、此法律ノ改正ヲ望ムト云フコトヲ委員カラ
  ノ趣意ヲ附加ヘテ特ニ報告スルト云フコトヲ報告ニナッテ、サウシテソレガ可
  決ニナッテ居リマス、又其當時財源ガナイト云フコトデ、左樣ナ法律ニナッテ
  居リマスルガ、其後、山本内閣ノ時分ニ、行政整理ノ結果、多數ノ剰餘金ガ
  出來マシタ、其時ニ矢張リ財源ハ出來テモ、政府ハ此事ニ付テ御構ヒガナイ、
  今日タリトモ、本員ノ考ヘマスルノニハ、恐ラク此恩給ニ充テル金ハ別ニ印
  シノ付イタ金ガ出ル譯ハアリマセヌ、併シ求メレパ是ハアルモノ、私ハ出來
  ルモノト考ヘテ居ルノデアル、求メズシテ置イテ財源ガナイト言ヘバ何時マ
  デモナイ、何時マデモ五年經ッテモ十年經ッテモ此財源ト云フモノガ別ニ出
  テ來ルト云フコトハ本員恐ラクナカラウト思フ、サウ致シマスト先刻眞鍋男
  爵ノ述べラレマシタノハ數百人ノ多キト云フコトデアリマシタガ、今日ハ數
  千人デゴザイマス、數百人デゴザイマセヌ、ソレダケノ者ガ請願ヲ出シテ居
  リマス、請願通數ガ七十九バカリアル、確ニ覺エマセヌガ、七十九カ八十バ
  カリアルト思ヒマス、請願人ノ數ガ二千何百人ト云フモノデアリマス、サウ
  云フ工合デアッテ隨分財源ガナイト言ヘバ一口ニ言ハレマスケレドモ、其邊ノ
  コトハ政府ニ於テモ御考慮ニナリタイ、サウ申シマスレバ、考慮シタ上デ矢
  張リ財源ガナイト仰セラレル、早イ所、財源ガアルトキデモ御構ヒナイト云
  フコトハ論ヨリ證據、山本内閣デ以テ行政整理ヲ爲サレテ隨分剩餘金ガ出來
  タトキモ知ラヌ顏デアリマス、私ハ其御趣意ガナイノデハナイカト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=209

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• 210・有地品之允

  ○男爵有地品之允君　質問ガゴザイマス、唯今問題トナッテ居リマスルモノハ
  衆議院ノ提出案デアッテ、總額ガ何程ニナルカ存ジマセヌケレドモ免ニ角支
  出ヲ要スル所ノ法律案デアル、是マデ兩院ヨリ政府ノ同意ナクシテ財源ヲ要
  スル所ノ法律ヲ決定シタ例ガアリマスカ否ヤ、若シ又例ガナイトシテモ兩院
  ヲ通過シマシタ場合ニハ如何ニナリマスカ、其御意見ヲ承リタイ········モウ一
  言申シ漏シマシタガ、果シテ今日是ガ新例トシマスルト、金額ノ多少ニ依リ
  マセヌ、幾ラ大キナコトデモ議決スルコトカ起ルカモ知レヌト考ヘマス、ド
  ウゾ委シク御答辯ヲ願ヒマス
  〔政府委員濱口雄幸君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=210

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• 211・濱口雄幸

  ○政府委員(濱口雄幸君)　有地男爵ニ御答申上ゲマスガ、歲出ノ增加ニ伴フ
  法律案ヲ政府ノ同意ナクシテ決議シマシタ例ガ有ルカ無イカト云フコトデア
  リマスガ、是ハ甚タ恐縮デアリマスケレドモ、此席デハッキリト申上ゲラレマ
  セヌ、全然例ノ無イコトモナカラウカト考ヘマス、唯ハッキリ記憶イタシマセ
  ヌカラ此席デハ申上ゲラレマセヌ、ソレカラ若シ政府ノ反對アルニ拘リマセ
  ズ、兩院ヲ通過シタトキノ處置ニ付キマシテハ是ハ私ヨリ何トモ申兼ネマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=211

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• 212・原口兼濟

  ○男爵原口兼濟君　私ハ滿場ニ向ッテチヨット一言申述ベテ置キタイコトガア
  リマス、御許シニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=212

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• 213・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=213

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• 214・原口兼濟

  ○男爵原口兼濟君　此案ト云フモノハ恩給

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=214

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• 215・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　原口男爵ニ伺ヒマスガ御意見ヲ御述ベニナルノデ
  アリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=215

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• 216・原口兼濟

  ○男爵原口兼濟君　イエ、意見·········意見ヲ述ベルノデハアリマセヌガ、此議
  場ハ之ニ反對スルコトハナイト云フコトヲ、今其道理ヲ申述ベテ置ク積リデ
  アリマス、反對ハ出來ナイノデ、反對スル資格ハナイ、何トナレバ請願ノト
  キニ滿場一致デ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=216

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• 217・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　矢張リソレハ御意見ニナリハシナイカト議長ハ認
  メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=217

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• 218・原口兼濟

  ○男爵原口兼濟君　マイ。ソレダケデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=218

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• 219・小澤武雄

  ○男爵小澤武雄君　是ハ唯今段々御質問デアリマスガ、玆デ卽決スベキモノ
  デナクシテ委員付託ニナルベキモノデハアリマスマイカト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=219

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• 220・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　無論委員付託ニナルベキモノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=220

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• 221・小澤武雄

  ○男爵小澤武雄君　ソレデハ政府委員ノ說明ヲ願ヒタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=221

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• 222・石黒忠悳

  ○男爵石黑忠悳君　陸軍當局者ノ意見ヲ更ニ伺ッテ見タイ
  〔政府委員大島健一君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=222

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• 223・大島健一

  ○政府委員(大島健一君)　恩給法ノ改正案ニ付キマシテハ陸軍ノ當局トシマ
  シテハ成ルベク實施ノ出來ルコトヲ希望イタシテ居リマス、是ハ御承知ノ通
  リ、唯〓原口男爵カラモ御話ガアリマシタガ、修正案ヲ四十四年ニ提出イタ
  シタ時分カラ陸軍ハ遡ッテ支給スルト云フ考ヲ持ッテ居リマシタノデゴザイマ
  ス、唯財政上ノ都合デ或一部ヲ遡ッタダケデ非常ナ不平均ヲ起シテ居リマス、
  然ルニ軍人ハ唯今三色バカリノ恩給ヲ受ケテ居リマスルガ、戰時ニハ同ジ階
  級ノモノガ·········二色ノ恩給ヲ受ケテ居リマスモノガ、戰時ニハ又再ビ隊ニ戾
  ッテ同等ノ仕事ヲ致スモノデアリマスカラ、ドウカ四十四年改正當時ノ考ノ
  如ク遡シテ支給スルコトヲ希望ハ致シテ居リマス、從ッテ此財源ヲ見出スコト
  ニ付キマシテモ部內デモ考慮イタシマスシ、大藏省トモ交渉ヲ重ネマシタ
  ガ、目下ノ財政之ニ分ツ所ノ財源ガナイト云フコトデアリマス、陸軍部內ニ於
  キマシテモ緊急重要ナモノニシテ尙ホ不足ナ仕事ガ多クゴザイマスル爲ニ、
  部內ヨリ財源ヲ提供スルト云フコトモ出來マセヌシ、已ムヲ得ズ大藏省
  國庫ニ於テ之ヲ支辨スルコトガ出來ヌケレバ、我〓ハ矢張リ四十四年以來ノ
  如ク、暫ク自ラ抑制シテ忍バナケレバナラヌカト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=223

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• 224・内田正敏

  ○男爵内田正敏君　本員ハ唯今陸軍次官ヨリ陸軍側ノ意見ヲ伺ヒマシタ、併
  ナガラドウモ十分其意ヲ領シマセヌカラ、更ニ海軍當局者ノ御意見ヲ求メタ
  ウゴザイマス
  〔政府委員鈴木貫太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=224

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• 225・鈴木貫太郎

  ○政府委員(鈴木貫太郞君)　御答イタシマス、海軍ニ於キマシテモ唯今陸軍
  次官ノ御說ノ通リ、矢張リ成ルベク速ニ改正ノ通リニ思給ノ增加サレムコト
  ヲ希望スル次第デアリマスケレドモ矢張リ財政ノ狀態カラ之ヲ急速ニ行フ
  コトノ出來ナイ事情ノアルノハ甚ダ遺憾ニ存ジテ居ル次第デアリマス、又
  海軍ノ經費ヲ節シテ出シ得ルカト云フコトニナリマスト云フト、矢張リ緊急
  ノ事業ガ澤山ゴザイマス爲ニソレヲ措イテ此恩給增加ニ差向ケルト云フコ
  トハ、甚ダ困難ナ事情ガゴザイマス、ドウゾ御承知ヲ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=225

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• 226・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
  〔河井書記官朗讀〕
  軍人恩給法中改正法律案特別委員
  侯爵德川賴倫君伯爵柳原義光君山脇玄君
  子爵五辻治仲君子爵榎本武憲君小松原英太郞君
  男爵原口兼濟君男爵中溝德太郞君佐々田懋君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=226

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• 227・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議事日程第十一、歐洲列國ノ財政經濟及社會上ノ
  現狀調査ニ關スル建議案、伯爵柳澤保惠君外一名發議、會議
  〔河井書記官朗讀〕
  歐洲列國ノ財政、經濟及社會上ノ現狀調査ニ關スル建議案
  右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
  大正四年六月七日
  發議者
  伯爵柳澤保惠馬屋原彰
  贊成者
  公爵德川慶久
  外三十三名
  貴族院議長公爵德川家達殿
  歐洲列國ノ財政、經濟及社會上ノ現狀調査ニ關スル建議
  現時歐洲ノ大動亂ニ際シ殊ニ列國ノ財政上經濟上及社會上ノ狀態ヲ〓究調
  査スルノ必要アルヲ認ム政府ハ此ノ際速ニ相當ノ措置ヲ取ラレムコトヲ望
  右建議ス
  理由書
  理由ハ本文ニ明ナルヲ以テ之ヲ略ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=227

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• 228・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　本員ハ本案提出者ノ一人ト致シマシテ一言申上ゲマス、
  此案ハ唯今書記官ノ朗讀セラレタル如ク、極メテ明瞭デアリマス、別ニ殊ニ
  說明ヲ要セヌカト考ヘマス、私ハ特別委員九名ニ付託セラレテ御審議アラム
  コトヲ希望イタシマス、御贊成ヲ請ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=228

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• 229・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=229

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• 230・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　贊成
  〔其他「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=230

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• 231・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　此建議案ヲ特別委員九名ニ付託スベシト云フ柳澤
  伯爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=231

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• 232・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官
  シテ朗讀イタサセマス
  〔河井書記官朗讀〕
  歐洲列國ノ財政經濟及社會上ノ現狀調査ニ關スル建議案特別委員
  侯爵細川護立君伯爵柳澤保惠君子爵大河內正敏君
  男爵南岩倉具威君男爵神田乃武君三宅秀君
  加藤恆忠君馬屋原二郞君依田仙右衛門君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=232

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• 233・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　明日ノ議事日程ハ本院彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマ
  ス、本日ハ是デ散會イタシマス
  午後六時三十八分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003603242X01019150608&spkNum=233