第36回帝国議会　衆議院　本会議　第3号　大正4年5月22日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　大正四年五月二十二日（土曜日）午後一時三分開議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　議事日程　第二號　大正四年五月二十二日
  　　　　午後一時開議
  　　第一　河川法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　　第三　帝國鐵道會計法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　　第五　國債整理基金特別會計法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　第一讀會
  　　第六　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　　第七　治水費資金特別會計法廢止法律案（政府提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第八　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　　　　━━━━━━━━━━━━━

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• 001・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　是ヨリ開會ヲ致シマス、諸般ノ報告ヲ致サセマス
  〔書記朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  臨時軍事費豫算追加案
  (第二號)大正四年度歲入歲出總豫算追加案

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• 002・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　是ヨリ昨日カラ懸案ニナッテ居リマスル事ニ付テ其事ヲ御報告
  致シマス、齋藤珪次君ヨリ御問ニナリマシタ點ヲ取調ベマシタ、速記錄ニ黨派ノ記名ヲ
  致シマスル件ニ付キマシテハ其〓末ハ、事務局ニ於テ速記錄ノ體裁ヲ改良スルノ目的
  ヲ以テ取計ッタノデアリマス、併ナガラ事務局ノ取計ヒニ付テ、更ニ考慮ヲ要スルコトガア
  リマスルノデ、各派ノ御意見ヲ徵シタトコロガ、二ツニ分カレマシテ、可トスルモノアリ、否
  トスルモノアリテ、全會ノ御方ガ總テ一致デナケレバ改メナイ方ガ宜カラウ、斯ウ云フ圓滿
  ナル御意見デアリマスカラ、其通リニ致シマシタ、昨日ノ件ハ是デ結了致シマシタ、其他
  決算委員ノ諸君ニ申シマスルガ、前例ニ依リマシテ、第三十一囘議會及第三十五囘
  議會ニ提出ニ相成ッテ居リマスル決算ヲ、本會期ニ於テ審査セラレンコトヲ望ミマス

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• 003・佐々木安五郎

  ○佐々木安五郞君　議長

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• 004・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　唯今報告致シタコトデアリマスカ

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• 005・佐々木安五郎

  ○佐々木安五郞君　イヤ議場ノ整理ニ付テ一言致シタイ

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• 006・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　整理ナラ宜シウゴザイマス、佐々木君

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• 007・佐々木安五郎

  ○佐々木安五郞君　議長ハ奉職當時ノ御披露ノ御挨拶ニ於テ、心ヲ用井テ公平ヲ維
  持スル精神ヲ以テト言ハレタ、然ルニ其後帝國ホテルノ或招待會ニ於テ、議長トシテ臨
  席ヲサレテ、吾〓國民黨ノ提出セルトコロノ議案ニ向ッテノ批評ガアッタ、議長トシテハ斯
  ノ如キ所ニ於テ戰ヲ挑ムベキトコロノ言語ヲ用フベキデハアルマイト思フ、若シ論難攻擊
  ノ必要ガアレバ宜シク議長ノ席ヲ降ッテ、一議員ノ席ニ於テ、而シテ論難攻擊スルガ宜カ
  ラウ(「ノウ〓〓」「無用々々」ト呼フ者アリ)公平ヲ維持スルト云フコトヲ言ウテ置キナガ
  ラ、不公平ノ事ヲスルト云フコトハ甚ダ以テ······(「無用々々」「默レ」「無用デハナイ
  默レ」ト呼フ者アリ議場騷然)

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• 008・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　發言ヲ妨ゲヌヤウニ靜ニ··

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• 009・佐々木安五郎

  ○佐々木安五郞君　若シモ多數黨ヲ恃ミトシテ斯ノ如キ場合ニ於テモ、飽迄橫暴ヲ
  逞シクスルト云フヤウナコトハ-最初ノ宣言ニ基イテ公平ヲ維持スルナラバ、以後言語
  御愼ミナサレト云フコトヲ中心言シテ置ク(拍手起ル)

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• 010・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　一言御答ヲ致シテ置キマスガ、此席ニ於テハ議院以外ノ事ニ
  ハ何事モ御答ヲ致シマセヌ(「ヒヤノ」「其通リ」ト呼フ者アリ)是ヨリ各大臣ノ演說ガ
  ゴザイマスル總理大臣、外務大臣、大藏大臣ノ演說ガアリマスルカラ、是ガ順次終リマ
  シタ後ニ、通告ニ從ッテ質問ノ發議ヲ許シマス······大隈內閣總理大臣
  〔拍手起ル〕
  (內閣總理大臣伯爵大隈重信君登壇〕

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• 011・大隈重信

  ○內閣總理大臣(伯爵大隈重信君)　諸君、本大臣ハ新ニ當選ノ光榮ヲ荷ハレテ本
  議場ニ列セラレマシタル諸君ト、玆ニ相見エ、政府ノ所見ニ付キマシテ一言スルコトヲ得
  ルノハ、本大臣ノ光榮トスルトコロデアリマス、諸君、政府ハ東洋ノ平和ヲ益〓鞏固ナラ
  シメ、日支兩國ノ交誼ヲシテ愈く深厚ナラシメムトスルノ目的ヲ以テ、本年一月支那政
  府ニ對シ交涉ヲ開始致シマシタトコロ、本月ニ至リマシテ、終ニ案件ノ解決ヲ得マシ
  タ之ニ依リテ極東ノ平和倍牢固ニ、國交愈〓親善ヲ加ヘマスルノハ、本大臣ノ期
  シテ疑ハザルトコロデゴザイマス(拍手起リ「ノウ〓〓」「何ガ親善グイ」「國交ガ親善ダ」ト
  呼フ者アリ)聯合作戰國ノ努力ニー(「議會ニハ朗讀ヲ禁止スベシ」「默レ」「議事規
  則ヲ見ヨ」ト呼フ者アリ)唯歐洲ノ戰亂ハ猶來ダ終熄ニ至ラズ、聯合作戰國ノ努力ニ依
  リ其目的ヲ達シ、平和ノ速ニ克復スルニ至リマスルコトハ、本大臣ノ諸君ト共ニ冀望シ
  テ止マナイトコロデゴザイマス、諸君、政府ハ昨年大命ヲ奉ジタル以來、諸般ノ事項ニ渉
  リ愼重ノ審議ヲ悉クシ、行政及財政ノ整理國防ノ充實等各,其計畫ヲ定メ、大正四
  年度ノ豫算案ヲ編成シ、之ヲ舊臘ノ議會ニ提出致シマシタ、不幸ニシテ議會ハ解散ニ
  ナリ、其計畫ヲ實行スルコトガ出來ナイノハ遺憾ナ次第デゴザイマス、就キマシテ大正四
  年度ノ豫算ハ憲法ニ遵ヒ前年度ノ豫算ヲ實行スルコトト致シマシタ、然レドモ國家ノ
  進運上緊要ナル計畫ハ、速ニ之ヲ實行スルノ必要ヲ認メ、追加豫算案及各般ノ法律
  案ヲ提出スルコトト致シマシタ、願クハ政府ノ意ノ在ル所ヲ諒セラレ、國家ノ要務ニ對
  シ、愼重審議協贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス(拍手起ル)

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• 012・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　加藤外務大臣
  〔外務大臣男爵加藤高明君登壇〕
  〔拍手起ル〕

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• 013・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　諸君、前議會以後ニ於ケル外交ノ狀況ハ過般來
  日支兩國ノ間ニ交涉進行中デアリマシタル案件ノ外ニ、特ニ茲ニ御報告致スホドノ重
  要ノ事項ハゴザイマセヌニ付キマシテ、本大臣ハ玆ニ諸君ニ對シテ該案件、卽チ日支交
  涉中ナリシ案件ノ性質、竝ニ其經過ノ〓略ニ關シテ開陳致シタイト存ジマス、尤モ此ノ
  案件ハ未ダ大體ノ協定ヲ結了シタニ止マリマシテ、條約文及之ニ附屬スルトコロノ公交
  書ノ作成ニ付テハ現ニ兩國ノ委員問ニ協議進行中デアリマシテ、未ダ之ヲ公表スルノ
  時機ニ到ッテ居リマセヌ、從ッテ今日ハ單ニ旣ニ協定ヲ了シタル大體ノ趣旨ニ付テ報告
  スルノ外ナイコトヲ御諒察ヲ願ヒタイ、曩ニ前ノ議會ニ於テ當時ノ議員諸君ニ報告致シマ
  シタル通リ、帝國ノ陸海軍ハ客年十一月七日極東ニ於ケル獨逸ノ根據地タル膠州灣ヲ
  占領致シマシテヽ戰局ハ玆ニ一段落ヲ〓ゲマシタルニ依ッテ、帝國政府ハ日獨戰役ノ善後ヲ
  圖ルト同時ニ、此機會ニ於テ日支兩國ノ關係ヲ益:親善ナラシメ、且極東ニ於ケル帝
  國將來ノ地步ヲ鞏固トナシ、以テ東洋ノ平和ヲ永遠ニ確保セムコトヲ庶幾ヒマシテ、支
  那政府ニ對シテ山東問題ノ處分ニ關スル提案ト共ニ、滿洲蒙古ニ於ケル我國ノ地位
  ノ確認、竝ニ其他ノ事項ニ關スル問題ノ解決ニ關シテ、大要左ニ申述ブルトコロノ條件
  ヲ提出シテ、其應諾ヲ求メマシタ
  第山東省ニ關スル件
  一獨逸ガ山東省ニ關シ條約其他ニヨリ支那ヨリ獲得シタル權利利益讓與等ノ
  處分ニ付將來日獨兩國間ニ協定スヘキ一切ノ事項ヲ承認スルコト
  二山東省ノ不割讓ヲ保證スルコト
  三芝罘又ハ龍口ト膠濟鐵道トヲ聯絡スヘキ鐵道ノ數設權ヲ日本國ニ許與ス
  ルコト
  四山東省ノ主要都市ヲ開放スルコト
  第二南滿洲及東部內蒙古ニ關スル件
  一族順大連租借期限竝ニ南滿洲及安奉兩鐵道ニ關スル各期限ヲ更ニ九十
  九箇年延長スルコト
  二日本人ニ對シ各種商工業上ノ建物ノ建設又ハ耕作ノタメ必要ナル土地ノ賃
  借權又ハ所有權ヲ許與スルコト
  日本人カ居住往來シ各種商工業及其他ノ業務ニ從事スルヲ許スコト
  五四三日本人ニ對シ特ニ指定セル鑛山採掘權ヲ許與スルコト
  他國人ニ鐵道敷設權ヲ與ヘ又ハ鐵道敷設ノタメ他國人ヨリ資金ノ供給ヲ
  仰クトキ竝ニ諸稅ヲ擔保トシテ他國ヨリ借款ヲ起ストキハ豫メ帝國政府ノ同
  意ヲ經ヘキコト
  六政治財政軍事ニ關スル顧問〓官ヲ要スル場合ニハ帝國政府ニ協議スヘキコ
  ト
  七吉長鐵道ノ管理經營ヲ九十九箇年間日本國ニ委任スルコト
  第三漢冶萍公司ニ關スル件
  一日本國資本家ト同公司トノ密接ナル關係ニ顧ミ公司ヲ適當ノ機會ニ日支
  合辨ト爲スコト竝ニ支那政府ハ日本國ノ同意ヲ經スシテ、公司ニ屬スル一切
  ノ權利財產ヲ自ラ處分シ、又ハ公司ヲシテ處分セシメサルヘキ旨ヲ約スルコト
  二日本資本家側債權保護ノ必要上支那政府ハ本公司ニ屬スル諸鑛山附近
  ノ鑛山ニ付キ公司ノ承諾ヲ經スシテ之カ採掘ヲ公司以外ノモノニ許可セサル
  ヘキ旨竝ニ其他直接間接公司ニ影響ヲ及ホス虞アル措置ヲ執ラントスル場
  合ニハ先ツ公司ノ同意ヲ經ヘキ旨ヲ約スルコト
  第四支那沿岸ノ港灣及島嶼ヲ他國ニ讓與又ハ貸與セサルヘキ旨ヲ約スルコト
  第五懸案解決其他ニ關スル件
  中央政府ニ政治財政及軍事顧問トシテ有力ナル日本人ヲ傭聘スルコト
  二支那內地ニ於ケル日本ノ病院寺院及學校ニ對シ土地所有權ヲ認ムルコト
  三必要ノ地方ニ於ケル警察ヲ日支合同トスルカ又ハ是等ノ地方ニ於ケル警察
  官廳ニ日本人ヲ傭聘スルコト
  四日本ヨリ一定數量ノ兵器ノ供給ヲ仰クカ又ハ支那ニ日支合辨ノ兵器所ヲ設
  立シ日本ヨリ技師及材料ノ供給ヲ仰クコト
  五武昌ト九江南昌線トヲ聯絡スル鐵道及南昌杭州間南昌潮州間鐵道敷設
  權ヲ帝國ニ許與スルコト
  六臺灣トノ關係及福建不割讓約定ノ關係ニ顧ミ福建省ニ於ケル鐵道鑛山港
  灣ノ設備ニ關シ外資ヲ要スル場合ニハ先ツ日本國ニ協議スヘキコト
  七支那ニ於ケル日本人ノ布〓權ヲ認ムルコト
  本提案ハ其目的前述ノ通リデアリマスガ、各條項トモ何レモ帝國當然ノ要求ニ係リ又
  ハ適當ノ希望デアリマシテ、帝國政府ガ從來支那ニ關シ、列國ニ對シテ隨時聲明シタル
  領土保全機會均等門戶開放等ノ主義ト牴觸スル虞アリト認メラルル條項ヲ有セザルコ
  トハ申スマデモナク、乃チ山東省ニ關シテハ帝國政府ハ多大ノ犠牲ヲ拂ヒ獨逸ノ勢力
  ヲ驅逐シタリト雖モ支那ノ現狀ヲ見レバ支那ハ獨逸ガ其地ヲ囘復スルコトヲ防止スルノ
  實力ヲ持ッテ居ラヌト云フコトハ明カデアリマスルガ故ニ、帝國自ラ獨逸ノ有スル權利ノ
  處分方法ヲ講ジテ、極東ノ禍根タル其勢力ノ復活ヲ豫防スルノ措置ニ出デマシタノ
  ハ、洵ニ已ムヲ得ヌ次第デアリマス、又南滿洲ニ關シテハ、帝國ガ從來同地方ニ對シテ、
  密接特殊ナル關係ヲ有シ、優越ナル地步ヲ占メテ居リマスルコトハ、中外ノ齊シク認ム
  ルトコロデアリマシテ、而シテ東部內蒙古モ亦地理上經濟上密接不可分ナル關係
  ヲ有スル南滿洲ト略〓其揆ヲ一ニシテ居ル次第デアリマス、然ルニ從來同地方ニ於ケル
  帝國ノ地位ハ未ダ支那政府ノ確認スル所トナッテ居ラザリシ點ガ多カッタ爲メニ日
  支兩國間ニ時々種々ノ問題ヲ惹起シ、延テ兩國ノ國民的感情ニモ好マシカラザル影響
  ヲ及ボシタルコト一再ニシテ止マラザリシコトハ、帝國政府ノ常ニ遺憾ト致シタ所デアリ
  マス、隨ッテ此際支那政府ヲシテ、是等ノ地方ニ於テ我帝國ノ當然有セザルベカラザル
  地位ヲ確認セシムルコトハ、兩國ノ和親ヲ圖ルノ上ニ於テ、極メテ必要ノ事デアリマスル、
  漢冶萍公司ニ關スル件ハ、同公司ト日本資本家トノ密接ナル關係ニ顧ミマシテ、公司
  將來ノ利益ノ爲メ最善ノ方法ヲ講ゼントスルモノデアリマス又第四沿岸不割讓ノ件
  ハ、帝國政府ガ屢〓內外ニ官言シタル支那領土保全ノ大則ニ、更ニ一步ヲ進メタルモノ
  ニ外ナリマセヌ、次ニ以上ノ各條項ト其性質ヲ異ニスルモ、日支兩國和親ノ關係ヲ益ミ
  增進スルガ爲メニ、從來兩國間ニ蟠ル所ノ各種ノ懸案其他ノ諸問題ヲ、此際出來ルナ
  レバ一併解決シテ、將來ノ紛爭ヲ避クル爲メニ取極メヲ爲シ置クコトハ甚ダ望マシイコ
  トハ申スマデモナイ次第デアリマス、仍テ帝國政府ハ是等ノ事項ヲ前ニ述ベマシタル各
  條項ト區別シテ、當方ノ希望トシテ支那政府ニ提出ヲ致シテ、同國政府ニ於テ兩國親
  交ノ增進ヲ圖リ、兩國共通ノ利益ヲ擁護センガ爲メニ其實行ニ同意センコトヲ勸告スル
  コトト致シマシタ、此提案ニ付キ交涉ヲ開始スルヤ、支那政府ハ先ヅ東部內蒙古ニ關ス
  ル問題、及ヒ第五ノ諸問題ニ付テハ、絕對ニ交渉ニ應ズルコトヲ拒ミマシタ、其他ノ問
  題ニ付テモ種々ノ理由ノ下ニ、容易ニ應諾ノ意ヲ表シマセヌデアリマシタ、而シテ一方ニ
  於テハ交涉ノ漸次進ムニ從ッテ、提案各條項ハ濫リニ誇大ニセラレテ外間ニ流布セラ
  レ、談判ノ內容モ隨時新聞ニ揭載セラルヽ等ノコトガアリマシタ爲メニ、交涉ノ局面徒
  ラニ紛糾ヲ來シ、其結了ヲ遲延ナラシムルニ至ッタコトハ太グ遺憾トスル所デアリマス、帝
  國政府ハ支那側ノ斯ル態度ヲ示セルニ拘ラズ、二十五囘ノ會議ヲ重ネ、三箇月餘ノ日
  子ヲ費シ、十分誠意ヲ披瀝シテ提案ノ趣旨ヲ反覆說明スルト共ニ、支那政府ノ腹藏
  ナキ意見ヲモ承リ、飽マデモ互讓妥協ノ精神ヲ以テ交涉ノ圓滿ナル解決ニ力メマシタル
  結果、支那政府ニ於テモ省ミル所アリシモノノ如ク、山東省ニ關シテハ第三項ニ付キ
  多少ノ修正ヲ加ヘタノミデ、大體我方ノ提案ヲ容レ、南滿洲ニ關シテハ第一項及ビ第四
  項乃至第六項ニ付キ、多少ノ訂正ヲ加ヘテ協議纒マリ、第七項ノ吉長鐵道ノ件ニ現存
  借款契約ヲ我ガ方ニ最モ有利ナラシムルヤウ根本的改訂ヲ爲スコトヽナシテ協議濟トナ
  リ、右ノ如ク或箇條ニ付テハ交涉ガ纏リマシタケレドモ、主要問題タル居住及ビ土地ニ
  關スル權利ニ付テハ種々ノ制限ヲ加ヘ東部內蒙古ニ關スル問題、及ビ第五列記ノ諸
  問題ニ付テハ、或ハ主權ト相容レズ、又ハ他國ノ條約ト牴觸スルト云フ理由ノ下ニ、依
  然協議ニ應ズルコトヲ避ケマシタニ付テ、帝國公使ニ於テハ其然ラザル所以ニ付テ、百
  方說示スルトコロアリマシタケレドモ、當方ノ懷抱シタル和衷協同ノ誠意ハ、充分ニ支
  那當局ノ酬ユルトコロトナラザリシ感アリシ實況デアリマシタ、然レドモ帝國政府ハ交涉ノ
  圓滿ナル解決ヲ爲スコトハ、東洋ノ平和維持ノ爲メニ極メテ緊要ナルコトヲ思ヒよん、
  四月二十六日ヲ以テ、更ニ支那側ノ主張ヲ參酌シテ、若干ノ讓步ヲ爲セル修正案ヲ
  提出スルコトヽ相成リマシタ、此修正案ハ從來ノ會議ニ於ケル支那側ノ意見ヲモ參酌
  シタルモノニシテ、卽チ前述第二南滿洲及東部內蒙古ニ關スル件ヨリ、東部内蒙古ニ
  關スル問題ヲ分離セシメ、第二項土地ノ賃借權、又ハ所有權ヲ賃借又ハ購買トナスカ、
  或ハ永租若クハ暫租ト改メルカ、又ハ永キ期限、且ツ無條件更新ノ意義ニテ租借ト爲
  スカハ支那側ノ撰釋ニ委スコトヽナシ(「謙遜々々」ト呼フ者アリ)第二項、第三項ニ關
  スル制限トシテハ、、旅券ヲ地方官ニ提出シテ登錄ヲ受ケ、且ツ日本領事ニ於テ同意シタ
  ル警察法令及課稅ニ服スルコトヽシ、民刑訴訟ハ被告主義ニ依ルコト開放地ノ場合
  ト同樣トナシ、唯兩國官吏互ニ臨席傍聽スルヲ得ルコトヽ致シマシタ、而シテ土地ニ關
  スル日支人間ノ民事訴訟ノミハ支那ノ法律慣習ニ依リ、彼我ノ官吏共同シテ審判ヲ
  )
  爲スコトヽ致シマシタ、東部蒙古ニ付テハイ日支合辨ノ農業及ビ附隨工業ノ經營口鐵
  道借款租稅擔保借款ニ對スル優先權ハ開放地ノ增設ノ三項ニ止メ、(漢冶萍公司ノ
  件ハ屢次ノ會見ニ於テ支那側ノ言明スルトコロノ事項、卽チ他日日支合辨ノ議ガ整フ
  タ場合ニ於テハ支那政府ハ之ヲ承認スルト云フコト、又支那政府ハ公司ヲ沒收セサ
  ルコト及ヒ日本資本家ノ同意ナクシテ國有トナシ、又ハ外資ヲ入レシムルコトナキ旨ヲ
  約束スルコトトナシ、沿岸不割讓ノ件ハ支那側ノ希望ヲ容レ、支那政府自ラ進ンデ宣
  言ヲナスノ形式ニ改メ、其他第五列記ノ諸件ニ關シテハ、會議中ニ支那側代表者ノ言
  明シタル如ク一顧問ノ件ハ必要ノ場合ニ日本人ヲ傭増スルコトトシ、二學校病院用地
  ノ件ハ租借又ハ購買ヲ支那政府ニ於テ允許スルコトトシ、三兵器ノ件ハ他日陸軍武
  官ヲ日本ニ派遣シテ兵器購入、又ハ日支合辨、兵器廠設立ノ事ヲ協議スルコトニ改
  メ又我方ニ於テモ支那側ノ主張ヲ酔酌シ、四布〓權ノ件ハ他日ノ商議ニ讓ルコトト致
  シ、從ッテ寺院用地ノ件ヲ撤囘シ、五南支鐵道ノ件ハ他國ニ於テ故障ナキ場合ニ日
  本ニ許與スルカ、又ハ別ニ日本ト關係國トノ直接協議纏ルマデ本件鐵道敷設權ヲ他
  國ニ許與セザルベキ事トシ、以上五項ノ趣旨ヲ記錄ニ載スルコトヲ求メ、(警警察合同
  ノ件ハ前陳第二南滿洲ニ關スル件第六項顧問傭聘ノ項ノ中ニ警察ノ一項ヲ追加スル
  コトトシテ之ヲ撤囘シ、七福建省ニ關スル件ハ、同省沿岸ニ他國ガ造船所軍用貯炭
  (
  所海軍根據地、其他軍事上ノ施設ヲ爲スヲ許サザルコト、及ビ支那自ラガ外國ノ資
  本ニ依ッテ同樣ノ施設ヲ爲サザルコトヲ、公文交換ノ形式ニテ約束セシムルコトト致シタ
  ノデアリマス、此修正案ノ提出ト同時ニ帝國政府ハ支那政府ニ對シ、同政府ニシテ我
  ガ修正案全部ヲ應諾スルニ於テハ、戰後講和會議ノ結果、膠州灣ガ帝國ノ自由處分
  ニ委セラルル場合ニハ、同地ヲ商港トシテ開放シ、日本專管居留地モ設置シ、且ツ列
  國ニ於テ希望スルニ於テハ共同居留地ヲモ設置スルコト、獨逸施設物ノ處分其他ノ
  條件手續ニ關シテハ、日支兩國間ニ協定ヲ遂グベキコト等ノ條件ノ下ニ、之ヲ支那ニ還
  附スベキコトヲ聲明致シマシタ、(「同胞ノ血ヲ水ノ泡トセリ」ト呼フ者アリ〕膠州灣ハ獨
  逸ガ多額ノ資財ト多大ノ勞力トヲ投ジテ經營シタル同國ニ取リテ、軍事上、通商上、
  極メテ重大ナル極東唯一ノ根據地デアリマス、支那ガ獨力ヲ以テ此地ヲ囘復スルガ如
  キハ、到底望ム能ハザルトコロデアリマス、而シテ帝國ガ武力ヲ以テ此地ヲ占領シタル上
  ハ、之ヲ如何ニ處分スベキヤハ、主トシテ帝國ノ意志ニ屬シマシテ、支那ニ還附スベキ義
  務ナキコト勿論ナルニ拘ハラズ、帝國ニ於テ進ンデ還附ヲ豫約セントシタル所以ハ、實ニ
  帝國ガ支那領土保全ノ主義ヲ重ンズルト同時ニ、日支國交ノ親善ト、極東全局ノ和
  平トニ眷々タルニ外ナラヌ次第デアリマス、然ルニ支那政府ニ於テハ我方ノ交讓妥協ノ
  誠意ヲ諒トセズ、五月一日、更ニ對案ヲ提出シテ、之ヲ以テ其最終ノ決定案ナリト聲
  明致シマシタ(「斯ノ如キ侮ヲ招クモノハ唯ゾ」ト呼フ者アリ)右對案ハ、南滿洲ニ關シテ
  ハ日本人ニ永租權ヲ與フルコトヲ拒ミ、且ツ無條件ニテ支那ノ警察法規ニ服從シ、
  土地ニ關スル訴訟ハ日支兩國人間ノモノハ素ヨリ、日本人相互間ト雖モ總テ支那官
  吏ノ審判ニ歸スベシ等ノ條件ヲ要求シ、且ツ東部內蒙古ニ付テハ、其範圍ヲ限局シ、
  我要求ノ眼目タル農業及ビ附隨工業ノ經營ヲ拒ミ、同時ニ膠州灣租借地ノ無條件
  還附、日獨講和會議ニ於ケル支那政府參加ノ承認ヲ求メタルノミナラス、山東省
  ニ於テ用兵ノ結果生ジタル避クベカラザル損害ノ賠償ヲ求メ、竝ニ同戰役ニ於ケル日本
  軍ノ軍事的施設ノ卽時撤廢、守備兵ノ至急撤退ヲ要求シ、更ニ第五列記ノ諸件中、
  福建省ニ關スル件ヲ除キマシテ其他ノ提案、卽チ會議中支那側委員ノ言明シタル處ヲ
  記錄ニ止メテ置カウト云フコトニ過ギザル我提案ヲモ拒絕シテ(「何ノ面目ガアル」ト呼フ者
  アリ)加之右對案ニハ一旦撤囘シタル條項ヲ復活セシメ、又ハ已ニ協定濟ミノ事項ヲ
  取消ス等、自國委員ノ責任アル陳述ヲ否定シタル廉尠カラズ、殊ニ膠州灣無條件還
  附ノ要求、若クハ山東省ニ於ケル用兵ノ結果生ジタル避クベカラザル損害ノ賠償請求
  若クハ日獨講和會議ニ支那政府ノ參加セントスル申出ノ如キハ帝國ニ於テ到底容認
  スル能ハザルモノデアルト云フコトハ申スマデモナイコトデアル而モ支那ノ政府ハ右要求
  ヲ含メル對案ヲ以テ、其最終ノ決定案ナリト明言致シマシタ、從テ我ニ於テ是等不當
  ノ要求ヲ容認セザル以上ハ他ノ諸項ニ關シテ如何ナル商定ガアラウトモ、如何ナル協
  議ガ整フトモ圓滿ノ解決ヲ見ル理由ナク、結局支那政府ノ對案ハ其全體ニ於テ全ク空
  漠無意義ト申シテ宜イ性質ノモノデアリマシタ、帝國政府ハ支那政府ノ斯ノ如キ態度
  一覽會一.此上交涉ヲ繼續スルノ餘地ハ殆ド是ナキヲ認メマシタケレドモ、極東和平ノ維持
  ニ顧ミ、努メテ時局ノ紛糾ヲ避ケンコトヲ冀ヒ愼重審議ノ結果、更ニ我修正案ニ付キ、
  第一乃至第四ノ各項ハ該修正ヲ其儘採用セシムルコトトシ、第五ノ各項中支那政府
  ノ承諾シタル福建省ニ關スル件ヲ除キ、其他ハ改メテ他日ノ協議ニ讓ルコトトナスコトニ
  決定シ、五月六日ヲ以テ在支帝國公使ニ訓令シテ、右ノ趣ヲ支那政府ニ申入レシム
  ルト同時ニ、支那政府ニ於テ更ニ愼重ナル考量ヲ加ヘ、我修正案ニ對シ、五月九日
  午後六時迄ニ承諾ノ意ヲ表スベキ旨、竝ニ同時刻迄ニ滿足ナル囘答ヲ得ザルニ於テハ
  帝國政府ハ止ムヲ得ズ其必要ト認ムル措置ニ出ヅベキ旨ヲ通告致シマシタ、此ニ至ッテ
  支那政府ハ初メテ克ク帝國政府ガ極東ノ和平ニ春々タル情意ヲ酌ミ、大局ヲ顧念シ
  テ五月九日陸外交總長ヲ帝國公使ノ下ニ遣ハシ、我提案全部ヲ直チニ應諾スル旨
  ノ公文ヲ交付シ、此ニ木交渉モ圓滿解決ヲ告グルニ至ッタノデアリマス(拍手起ル)此交
  涉ノ結果ヲ具體的ノモノタラシムベキ條約、及ビ交換公文ノ協議作製方ニ關シテハ在
  北京帝國公使ニ於テ、已ニ帝國政府ノ訓令ニ基キ、支那政府當局ト交涉ヲ開始シテ
  居リマスカラ、近日ノ中ニ兩國全權ノ調印ヲ見、次デ御批准ヲ仰グニ至ルト信ジマス、
  關係公文書等ハ其時ニ於テ諸君ノ御覽ニ入レル積リデアリマス、此等條約等ニシテソ
  レ〓〓成立ヲ見ルニ至ラバ、從來久シク日支兩國間ニ蟠リ、兩國國交ノ親善ヲ妨グル
  ノ虞アリタル問題ノ重要ナルモノハ玆ニ解決セラレテ(拍手起ル「ノウ〓〓」ト呼フ者ア
  リ)兩國和親ノ關係益〓敦ク(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=13

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• 014・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜肅ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=14

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• 015・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　極東平和ノ基礎更ニ固キヲ加フルノ結果アルベキ
  ハ帝國政府ノ信ジテ疑ハザル處デアリマス(拍手起ル「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=15

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• 016・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　若槻大藏大臣
  (大藏大臣若槻禮次郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=16

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• 017・若槻禮次郎

  ○大藏大臣(若槻禮次郞君)　諸君茲ニ大正四年度歲入歲出總豫算追加案ヲ諸
  君ニ御紹介致ス光榮ヲ有シマス、大正四年度歲入歲出總豫算追加第一號ニ計上致
  シテアリマストコロノ歲入ハ、經常部ニ屬スルモノガ四百二十四万二千六百三十一圓、
  臨時部ニ屬スルモノガ千五百四十五万九千六百ハ十九圓、合計千九百七十万二
  千三百圓デアリマシテ、其歲出ハ經常部ニ屬スルモノ五百六十七万九千八百三十
  圓、臨時部ニ屬スルモノ五千二百五十四万七千九百八十圓、合計五千八百二十
  二万七千八百十圓テアリマス、夫故ニ歲入ト歲出ト差引致シマスルト、三千八百五十
  二万五千百十圓ノ不足ヲ生ズル計算デアリマスガ、此金額ハ本年度實行豫算ニ於ケ
  ル歲入超過額ノ內ヲ以テ之ヲ支辨スルノ計畫デアリマス、次ニ大正四年度歲入歲出
  總豫算追加第二號ニ計上シテアリマストコロノ金額ハ、歳入ノ總額ガ七百二十三万
  九千二百七十一圓、歲出ノ總額ガ千八百四十五万二千九百二十七圓デアリマシテ、
  歲入歲出差引不足ヲ呈スル金額ガ千百二十一万三千六百五十六圓デアリマス、此
  金額ハ前ニ述ベマシタ本年度實行豫算ニ於ケル歲入超過額中、第一號追加豫算ニ於
  ケル歳入不足ノ補塡ニ充テマシタ、殘餘ノ金額ヲ以テ之ヲ支辨スル計畫デアリマス、大
  正四年度總豫算追加第一號ニ計上シテアリマストコロノ歲入ハ專賣局益金ニ於テ
  前年度ノ繰越ニ係ッテ居リマス益金ノ增加致スモノガ三百四十五万餘圓アリマスモノ
  ノ外、主トシテ時局ノ關係ニ基キ、特殊ノ收入ノ增額シテ居ル次第デアリマス、而シテ
  其歲出ハ朝鮮ニ於ケル二個師團ノ常設、軍艦製造費ノ追加、其他參政官及副參政
  官ノ設置ニ關スル經費ヲ始メ、〓育殖產ノ奬勵擴張、地方災害復舊費、水道港灣費
  補助等ニ關シテ、曩ニ第三十五囘帝國議會ニ提出致シマシタル諸般ノ計畫ニシテ、施
  行豫算ノ範圍內ニ於テハ實行スルコトノ出來ナイモノニ對シテ、經費ノ增額ヲ要求シタ
  ノデアリマシテ、其以外ノ金額ハ事業ノ增大ニ伴ッテ實際ノ必要ニ應ズルコトガ出來ヌヤ
  ウニナリマシタトコロノ專賣局据置運轉資本ノ不足ニ關シテ、尙他ニ三百万圓ヲ計上
  シタノデアリマス、大正四年度總豫算追加第二號ニ計上シテアリマストコロノ歲入ハ、
  山東鐵道ノ經營ヨリ生ズル收入、及前年度剩餘金ノ繰入デアリマシテ、其歲出ハ時
  局ニ關スル陸海軍臨時軍事費ノ本年六月以降十二月迄ノ所要額、千六百十七万
  五千四百二十四圓ノ內デ、臨時軍事費所屬收入ヲ以テ支辨スルコトガ出來マシタトコ
  ロノ金額ガ二百七十二万一一千四百九十七圓デアリマスカラ、之ヲ差引タル殘額ニ對シテ、
  是ガ財源トシテ一般會計ヨリ繰入ヲ要シマスル金額千三百四十五万二千九百二十
  七圓ノ外、時局ニ關シ各省ニ於テ要スル經費ノ支出ニ充ツベキ臨時事件費豫備費五
  百万圓ヲ計上シテアルノデアリマス、抑〓大正四年度ノ歲入ニ關シテハ政府ハ曩ニ時
  世ノ進運ニ應ズベキ各般ノ計畫ヲ定メマシテ、又現下ノ時局ニ對スル必要ノ方策ヲ講
  ジマシテ、是ガ經費豫算案ヲ第三十五囘帝國議會ニ提出致シマシタノデアリマスガ、不
  幸ニシテ其成立ヲ見ルニ及バナカッタノデアリマスガ故ニ、帝國憲法ノ條則ニ隨ッテ前年
  度豫算ヲ施行スルト同時ニ、緊急已ムヲ得ザル諸般ノ施設ニシテ右施行豫算ノ範圍
  內ニ於テ實行出來マスモノヲ査覈致シテ、之ニ依テ同年度實行豫算ヲ編成致シテ、
  本年四月一日カラ實施致シタノデアリマスル、右實行豫算ニ計上致シテアリマス歲
  入ハ經常部ニ屬スルモノガ五億二千十万六千百九十二圓、臨時部ニ屬スルモノガ三
  千七百八万五千五百八十四圓、合計シテ五億五千七百十九万一千七百七十六圓
  デアリマシテ、其歲出ハ經常部ニ屬スルモノガ三億九千四百三十一万千六百三十九
  圓臨時部ニ屬スルモノガ九千七百四十五万八千二百十一圓、合計四億九千百七
  十六万九千八百五十圓デアルノデアリマス、ソレ故ニ歲入ト歲出ヲ差引致シマスト、六
  千五百四十二万千九百二十六圓ノ歲入超過ヲ生ジテ居ル計算デアリマスガ、其後時
  局ノ推移ニ伴ヒマシテ、軍事其他ノ施設竝ニ災害復舊等ニ關シテ、緊急差措キ難イ
  經費ノ支出ヲ要シマシタモノガアリマスノト、又今囘提出ニ係ル追加豫算ガ成立致シマ
  スルナラバ是ト相伴ヒマシテ之ト相俟ッテ施行豫算ノ範圍內ニ於テ經費ノ支出ヲ爲サ
  ントスルモノガアリマスニ依ッテ、實行豫算ノ歲出ノ增額ヲ來スベキ金額ガ千五百六十
  八万二千七百六十圓ニ達スル見込デアリマス、故ニ之ヲ控除致シマス時ハ實行豫算
  上歲入超過トナルベキ金額ハ四千九百七十三万九千百六十六圓デアリマスノデ、前
  ニ述ベマシタ通リ、之ヲ以テ本年度追加豫算、第一號、第二號ニ於ケル歲入不足額
  ノ補塡ニ充當スルノ計畫デアルノデアリマス、曩ニ大正三年度限リ廢止スル計畫ヲ定メ
  テアリマシタトコロノ治水費資金特別會計ニ付キマシテハ、是ガ廢止法律ノ制定ヲ見ルコ
  トガ出來マセヌカッタ故ニ本年度ニ於テハ尙之ヲ存置シテハ置キマスケレドモ、資金ノ借
  入ハ全然之ヲ止メマシテ、地方分擔金ノ外全部國庫支出金ヲ以テ之ヲ支辨スルノ計
  畫ヲ立テタノデアリマス、而シテ右特別會計ハ本年度限リ廢止スルコトヽ致シテ、是ガ
  法律案ヲ本期ノ議會ニ提出致シマシタ次第デアリマス、前期議會ニ法律改正案ヲ提出
  致シマシタトコロノ國債整理基金特別會計法ニ付テモ、亦其成立ヲ見ルコトガ出來マ
  セヌデシタカラ、更ニ之ヲ今期ノ議會ニ提出致シテ、本年度ヨリ直ニ既定ノ財政計畫ノ
  實行ヲ期セムト致シタ次第デアリマス、臨時事件ニ關スル經費ノ豫算ニ付キマシテハ、曩
  ニ前期ノ議會ニ於テ大正三年度、竝ニ大正四年度追加豫算案ヲ提出致シマシタケレ
  ドモ、其成立ヲ見ルコトガ出來マセナカッタ故ニ、政府ハ已ムヲ得ズ豫備金外臨時支出
  ノ方法ニ依リマシテ、時局ニ對スル機宜ノ手段ニ於キマシテ違算ナカラムコトニ努メタノ
  デアリマス、今其豫算外支出ニ屬スル金額ハ大正三年度ニ於テ臨時軍事費ニ屬スルモ
  ノ千二百八十四万餘圓、臨時事件費ニ屬スルモノ一一百九十二万餘圓、大正四年度
  ニ於テ臨時軍事費ニ屬スルモノ二百八十五万餘圓、臨時事件費ニ屬スルモノ千四百三
  十七万餘圓デアリマシテ、臨時事件ノ初カラノ支出額ハ、臨時軍事費ガ七千九百二十二
  万餘圓、臨時事件費二千二十四万餘圓ニ達シタ次第デアリマス、今之ヲ今囘提出ニ
  係ッテ居ルトコロノ臨時事件關係ノ豫算ト通算致シマス時ニ就テハ、臨時事件費ノ總額ハ
  九千五百三十九万餘圓、臨時事件費ノ總額ハ二千五百二十四万餘圓ニナルノデアリ
  マス、以上一般會計所屬追加豫算ノ外、各特別會計ニ付キマシテモ、亦是ガ追加豫算
  案ヲ提出致シテ居リマス、其內容ハ一般會計ト同ジク大體ニ於テ曩ニ前期議會ニ提出
  シタ所ノ豫算ノ經畫ニ關シ、前年度施行豫算ノ範圍內ニ於テ、是ガ實行ヲ期スルコトノ
  出來ナイモノニ係ッテ居ル次第デアリマシテ、其新規ノ事項ニ屬スルモノハ、主トシテ時局
  ノ要求ニ基クモノデアリマス、各特別會計法中、廢止ヲ要シマスルモノハ、大正五年度
  カラ之ヲ實行スル見込ヲ以テ、是ガ法律案ヲ今期議會ニ提出シテ以テ、豫メ將來ノ方針
  ヲ確定シテ置キタイト考ヘテ居ルノデアリマス、以上ハ大正四年度歲計豫算ニ關スル經畫
  ノ要綱デアリマス、此機會ニ於テ更ニ現下ノ經濟事情ニ付テ一言致シテ置キタイト思ヒ
  マス本年ニ於ケル經濟界ノ趨勢ハ、時局突發ノ當時ニ較ベテ見マスト云フト、幾分緩和
  ノ兆候ハアリマスケレドモ、時局ノ關係ガアリマスガ故ニ、事業界ハ未ダ一般ニ景氣ヲ恢
  復スルコトニハ至ッテ居リマセヌ、新事業經畫ハ、四月マデノ累計ガ七千四百万圓デアリ
  マシテ、昨年ノ同ジ期間ニ較ベテ見マスト云フト、四千六百万圓ニ減ジテ居ルノデアリマ
  ス、外國貿易ハ四月マデノ累計ガ輸出一億九千四百万圓、輸入一億八千七百万圓、
  合計三億八千百万圓デアリマシテ、輸出入共ニ昨年同期間ニ較ベテ見マスト云フト、大
  ニ減退シテ居ルコトガ見エルノデアリマス、而シテ輸入ノ減少ハ六千九百万圓デアリマスノ
  ニ較ベデ、輸出ノ方ハ千五百万圓ノ減少ニ止マッテ居ルノデアッテ、例年ノ輸入超過期ニ
  於テ、輸出超過ヲ見ルコトニ至ッテ居リマスコトハ、主トシテ時局ニ伴フ特殊ノ事情ニ依ル
  モノデアルト考ヘテ居リマス而シテ是ガ爲メ國際貸借ノ關係ハ幸ニシテ順調ニナッテ居
  リマシテ、本邦正貨ノ總現在高ハ唯今三億九千餘万圓デアリマスノデ、之ヲ最近ニ於
  テ正貨ノ最モ減少シタ昨年十一月末ニ於ケル三億二千餘万圓ニ較ベテ見マスト云フ
  ト、約七千万圓ダケガ純粹ニ增加シタコトニ相成ルノデアリマス、是等正貨ノ流入ハ、商
  工業ノ不況ニ伴フ資金需要ノ減退、及時局ノ將來ニ對スル金融界ノ警戒心ト相俟チマ
  シテ、一種變態ナル金融緩慢ノ現象ヲ來シテ、金利ノ低落ト同時ニ兌換券ノ收縮ヲ生
  ジ、目下ノ兌換券發行高ハ明治四十三年五月以來デ、一番低イモノニ相成ッテ居ル
  ノデアリマス、此機運ニ乘ジテ新規若クハ借換ノ爲ニ、社債ノ發行セラレタ高ガ、1丁目
  リ四月マデニ約四千万圓ニ達シテ居リマシテ、昨年ノ同ジ期間ニ比較シテ、二千三百餘
  万圓ヲ增加シテ居ルニモ拘ラズ、金融界ハ依然トシテ沈靜ノ狀態ヲ持續シテ以テ今日ニ
  及ンデ居ルノデアリマス、今ヤ正ニ製茶製絲ノ季節ヲ迎ヘマシタカラ、是カラハ漸次幾分
  資金ノ運動ヲ刺戟スルヤウニ相成ラウト考ヘテ居ル次第デアリマス、歐洲ノ戰局ハ未ダ
  收マリマセヌケレドモ、鄰邦支那トノ間ニハ遠カラズシテ條約ノ締結ヲ見ントシテ居ルノ
  テアリマス、此時ニ當ッテ深ク大勢ノ趨ク所ヲ察シ、政府ト國民ト步調ヲ一ニシ、內外ニ
  向ッテ益ミ國力發展ノ機會ヲ利用スルコトニ於テ、一日モ後レザランコトヲ期スルノハ蓋
  シ目下ノ急務デアルト信ジマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)諸君、私ハ諸君ガ愼重審議
  以テ速ニ豫算案ニ協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=17

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• 018・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　大臣ノ演說ニ對スル質疑ノ通告ガアリマス、通告ノ順序ニ從ツ
  テ許可ヲ致シマス-元田肇君(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=18

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• 019・元田肇

  ○元田肇君　本員ハ登壇スル前ニ、願クハ總理大臣ノ御出席アランコトヲ希望致シマ
  ス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=19

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• 020・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　貴族院ガマダ午前ノ議事ガ續イテ居リマスノデ、總理大臣ハ
  彼方ヘ參リマシタ、都合ヲ問合セマセヌケレバ御答ガ出來マセヌ
  (「衆議院ハ貴族院ヨリモ重シ」「ヒヤ〓〓」「休憩々々」ト呼フ者アリ〕
  (「議事ノ進行ヲ願ヒマス」「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=20

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• 021・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　唯今問合中デゴザイマス
  〔此時發言ヲ求ムル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=21

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• 022・相島勘次郎

  ○相島勘次郞君　チヨット今時間ガアルヤウデスガ、總理大臣ガ御出デニナル前ニ失禮
  ナ申分カ知レマセヌガ、外務大臣ノ演說ハ經過ヲ御述ベニナッタノダカラ、押問答ノ末ガ
  斯ウ云フコトニナッタ、吾ミハ頭ガ惡ルクテ能ク分カラヌデスガ、之ヲ要スルニ今條約ヲ締
  結セントスルノハ是レ〓〓是レ〓〓デアル、斯ウ一番終ヒニ言ッテ戴クト大變吾〓ノ頭ニ
  入ルヤウ··
  (「頭ガ惡イノダ」ト呼フ者アリ笑聲起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=22

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• 023・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　唯今總理大臣ハアチラノ席ヲ離レテコチラヘ參ラレルサウデアリ
  マス

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• 024・坂口仁一郎

  ○坂口仁一郞君　議事ノ進行ヲ願ヒタイト思フ、總理大臣ガ來ラレルマデ·····
  〔此時發言スル者多シ〕

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• 025・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜肅二

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• 026・坂口仁一郎

  ○坂口仁一郞君　唯無暗ニ故ナク待ッテ居ルト云フコトハナイト思フ(「ノウ〓〓」「議
  會ノ先例ヲ知ラザルカ」ト呼フ者アリ)院議ヲ以テノ請求ナラバ格別デアリマスケレドモ
  一個ノ請求ニ斯ノ如ク長時間ヲ費ス必要ハナイト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=26

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• 027・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　請求ニ依リマシテ貴族院ト折合ッタト見エマシテ、總理大臣ハ
  コチラヘ參ラレルサウデアリマス
  〔早川龍介君「ユックリシテ名論ヲ聽クガ宜イ」ト呼フ〕

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• 028・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　元田君、總理大臣ガ著席ニナリマシタ
  (「名論拜聽」ト呼フ者アリ)
  〔元田肇君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=28

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• 029・元田肇

  ○元田肇君　本員ハ唯今演說ニナラレマシタル總理大臣ノ施政ニ關スル演說、外務
  大臣ノ對支外交ニ關スル演說、主トシテ此點ニ付テ、大體ノ質問ヲ致サウト存ジマス、
  凡ツ列國ニ對シマシテ交涉ヲ致シマスルニハ、特ニ至誠ヲ披キマシテ、平和ノ間ニ折衝ス
  ルコトヲ要スルコトハ我帝國ノ國是デアルト存ジテ居リマス、偶〓布哇ニ向ッテ軍艦ヲ派遣
  シタ如キ例モナキニシモアラズデアリマスケレドモ、其他ハ殆ド此帝國ノ國是ヲ實行セザル
  コトハ古來ナイト云フコトヲ本員ハ確信シテ居ルノデアリマス、然ルニ現內閣ハ今囘對支
  交涉ヲ爲スニ方リマシテ、先ヅ名ヲ守備隊ノ交替ニ藉リマシテ、增兵ヲ致シテ威嚇ノ態
  度ヲ示シ、支那ノ强硬ナル抗議ニ遭ヒマスルヤ、屈辱退嬰ノ修正案ニ改メ、而モ此屈辱
  退嬰ノ修正案ニ改メタルニ拘ラズ、之ニ加フルニ膠州灣還付ノ言明マデ致シテ居ルノデ
  アリマス、而シテ尙此第二ノ提案ヲ輙ク認容セラレヌト云フコトヲ見マスルヤ、忽チニシテ
  五項ノ要望ヲ撤囘致シテ、僅カニ支那ノ容認ヲ甘ンズルノ失態ヲ敢テシタノデアリマス、
  (拍手スル者アリ)右ハ帝國ノ外交ノ國是ニ背キ、恫喝ニ次グニ屈辱ヲ以テシ、毫モ誠意
  ナク(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)又一定ノ所信モナイモノト認メザルヲ得ヌ(「ノウ〓〓」ト
  呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=29

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• 030・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜肅ニ·····

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=30

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• 031・元田肇

  ○元田肇君　敢テ此點ニ付キマシテ總理大臣及外務大臣ノ明白ナル辯明ヲ請求致
  ス次第デアリマス、是レガ質問ノ第一デアリマス、第二ハ前項申上ゲマシタ對支外交ノ
  經過及結果ハ、帝國ガ平和ノ間ニ當然得ベキ利權ヲ阻害シ-平和ノ間ニ得ベキ利
  權ナルコトハ外務大臣ガ此席ニ於テ唯今言明シテ居ルノデアル、此當然得ベキトコロノ
  利權ヲ阻害シタルノミナラズ、支那政府及人民ヲシテ惡感侮蔑ノ心ヲ激成セシメテ居リ
  マス(「ノウノ」ヒヤノ」ト呼フ者アリ)又列國ヲシテ怪疑輕侮ノ念ヲ大ナラシメテ居
  ルノ感ガアルノデアリマス、政府ハ之ヲ以テ尙帝國ノ威信ヲ汚損セズト爲スデアラウカ、
  其理由ヲ承ハリタイト云フノデアリマス(「燒餅ヲ燒クナ」ト呼フ者アリ「拍手起ル」)第三
  ハ政府ハ曩キニ英米列國ニ對シマシテ膠州灣還付ヲ聲明シタルヤニ世上傳ヘマシタ
  カラシテ、昨年ノ臨時議會ニ於キマシテ本院議員ノ一人ハ質問ヲ致シマシタ、此質問ニ對
  シテ外務大臣ハ戰爭ニ依リ占領シタ以上ハ無償還付ノ義務ナシト云フ趣旨ヲ明答サ
  レテ居リマス、此明答ニ依ッテ帝國ノ國民ハ此ニカ心ヲ安ズルトコロガアッタノデアリマス、
  然ルニ今ヤ支那ニ向ッテ遂ニ是ガ還附ヲ言明シ、弊履ノ如ク之ヲ抛棄サレマシタ(「ノウ
  ノウ」「何ガノウダ」「能ク聽イテ居ラニヤイカヌ」ト呼フ者アリ)是レ國民ヲ欺キ、列國ニ對
  スル聲明ヲ事實ニスルノ機會ニ供シタノデハナイカト田心((手手起ル)此點ニ付テ詳細ナ
  ル辯明ヲ求メマス(「辯明ノ必要ナシ」「眼ガ眩ンデ居ル」ト呼フ者アリ)第四對支外交ノ
  經過ヲ見マスルニ、帝國政府ハ初メハ脫免ノヤウニアリマシテ中頃以後ハ處女ノヤウニ
  (「君ノ如シ」ト呼フ者アリ)支那ノ政府ハ是ト反比例ノ態度ヲ執ッテ居ルノデアリマス
  (「政友會ノ外交ハドウグ」ト呼フ者アリ)政友會ノ外交ヲ論ズル場所デハナイ(笑聲起
  ル)而シテ此間英國······(議場騒然)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=31

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• 032・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　議員各自ノ問答ヲ止メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=32

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• 033・元田肇

  ○元田肇君　而シテ此間英國人等ハ浙江省ニ於テ鐵道ニ關シ、四川省ニ於テ石油
  鑛ニ關シ、或特殊ノ權利ヲ得タルノ事實アルヤウデアリマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)尙
  ホ英米人等ハ漢冶萍附近其他ニ於キマシテ幾多ノ特權ヲ得ント企圖スルモノガアリマシ
  テ、爲ニ兩國政府卽チ英米兩國政府ハ、强硬ナル注意ヲ帝國政府ニ致シタ、斯樣傳
  ヘテ居リマス、果シテ左樣ナル事實アリヤ否ヤヲ質問致シマス尙ホ歐洲戰亂以來日支
  交涉竝ニ列國ニ對スル措置ニ付キマシテハ、國民ハ疑惑シテ措ク能ハヌノデアリマス政
  府與黨ノ諸君ハ誠ニ御目出度イカラサウデナイカ知ラヌガ、國民ハ疑惑シテ措ク能ハヌノ
  デアリマス、單リ國民ノミデハナイ、支那人民ハ帝國ニ對シテ非常ニ惡感情ヲ懷キ非常ナル
  騷ギヲシテ居ルト云フコトハ政府ハ或ハ領事其他ヲシテ通信ヲ禁止シタト云フ風說モ
  アリマスカラシテ、與黨ノ諸君ニハ聞エヌカ知ラヌ、政府ニモ聞エヌカ知ラヌガ、現ニ支那
  各方面ニ於テ大惡感情ヲ來シテ居ルト云フ實況ヲ現出シテ居ルデハアリマセヌカ、又歐
  米列國ニ於キマシテモ、今囘ノ交涉〓末ヨリシテ帝國政府ニ對シ決シテ好感情ヲ懷イ
  テ居ラヌト云フコトモ事實デアル、故ニ政府ハ此際歐洲戰亂勃發以後對支交渉ニ關ス
  ル公文書、其他英、米、佛、若クハ獨逸、露西亞、是等ノ列國ト往復致シタルトコロノ
  公交書ヲ明カニ玆ニ示サレマシテ、內外ノ疑惑ヲ解クコトガ必要デアルト存ズルノデアリ
  マス政府ハ之ヲ爲スノ意志テアルカドウカ、希クハ本員ハ政府ニ於テ斯樣ナル交書ヲ
  提出シ明カニ内外ノ疑惑ヲ解クト云フコトニ努メラレタイト思フノデアリマス(拍手スル
  者アリ)以上述べマシタコトハ誠ニ大體ノ事デゴザイマスルガ、膠州灣還附ノコトニ付キマ
  シン)國民ハ御承知ノ通リニ血ヲ流シ、幾多ノ財ヲ費シマシテ之ヲ得タノデゴザイマスル
  ガ、今ヤ之ヲ弊履ノ如ク抛棄シ去ル斯ノ如クニシテ能ク我國民奉公ノ至誠ト云フモノ
  ヲ永遠ニ維持スルコトガ出來ルノデアリマセウカ(拍手起リ「分ラヌ〓〓」ト呼フ者アリ)
  將來軍國ノ急アル秋ニ方ッテ、一外務大臣一時ノ當局者ガ國民ノ血ヲ流シテ得タモノヲ
  弊履ノ如ク抛棄スルト云フニ至ッテハ、能ク其忠誠ヲ維持スルコトガ出來マセウカ、本員
  等ハ國家將來永遠ノ爲メニ竊ニ寒心ニ堪ヘザルノデアリマス、此點ニ關シテモ亦政府ハ如
  何ニ感ゼラルルノデアルカ、徒ラニ「ノウ」「ヒヤ」ヲ以テ葬ルベキ問題デハアリマスマイ希ク
  ハ大隈首相、加藤外務大臣、其他內閣諸公ハ是等ノ點ニ付テ深思セラレテ、叮嚀親
  切ナル答辯アッテ然ルベシト思フノデアリマス、此他內容ニ立入リマシテ種々ナル質問ノ點
  モアリマス、又(「具體的ニヤルベシ」ト呼フ者アリ)又內政ニ於キマシテモー-內政ニ至リ
  マシテハ憲法ヲ奉ジ云々ト大隈首相ガ先刻述ベラレマシタケレドモ、現ニ大藏大臣ニ於
  テ提出サルヘキ剩餘金支出ニ至ッテハ、悉ク憲法ノ條章ニ據リテハ居ラヌ(「ノウ〓」ト
  呼フ者アリ)又歐洲戰亂後ノ民間經濟救濟ノ點ニ至リマシテモ政府ハ如何ナル施設ヲ
  爲シタカ、其效力ハ吾〓ノ眼中ニハ少シモ見エヌノデアル、是等ノ點ニ對スル質問モアル
  又官權ヲ濫用シテ選舉ノ神聖ヲ紊シタト云フコトニ付テモ幾多ノ疑問ガアルノデアリマス
  ガ(「疑問ヲ述ベヨ」ト呼フ者アリ)諸君ノ御希望ノ通リニ多數ノ我同僚引續イテ質問ヲ
  致シマスルカラシテ、是等ノ細項ニ亙ッテハ他ノ同僚ニ讓リ、本員ハ今日ハ是マデニシテ
  置キマス

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• 034・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　加藤外務大臣
  〔外務大臣男爵加藤高明君登壇〕
  〔拍手起ル〕

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• 035・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　唯今、政友會ノ代表者トシテ元田肇君ヨリ縷々御
  質問ガアリマシタ、大分政府黨竝ニ反對黨諸君共ニ囂々ノ妨害ガアリマシタ爲ニ、能ク
  聽取レヌ事ガアッタカモ知レマセヌ(「ソレハアナタノ方ガ惡インダ」ト呼ラ者アリ)私ハ何モ聲
  ヲ發シナカッタノデアル(「ヒヤ/」笑聲起ル)守備隊-第一ニ御述ベニナッタ點ハ、滿洲
  及ビ山東ニ於ケル我守備隊ノ交代ノコトニ付テデアッタト思ヒマス、支那談判ニ際シテ
  支那政府ヲ威嚇スル爲ニ此兵ヲ出シタト云プ意味ノ御質問ト思ヒマス決シテ右樣ナ
  次第デハアリマセヌ、但シ此守備隊交代ノ事ニ付テハ、私ヨリ申述ベテモ宜シウゴザイマ
  スガ、主務ノ大臣カラ追テ是ハ其理由ハ申述ベル筈デアリマス、但シ此處テ私ガ申述ベ
  テ置キタイ事ハ談判ヲ始メル前カラ兵隊ヲ出シタト云フ御話デアリマシタガ、談判ヲ始
  メタノハ一月ノ末デアリマシタ、此事ヲ支那政府ニ最初通知シタノハ日置公使ガ支那
  共和國ノ大總統ニ面會シタル一月十八日ガ初マリデアリマス、而シテ支那ノ外交總長
  ハ、大總統ノ命ニ依テ支那側ノ代表者トナッテ我日置公使ト交涉ヲ始メタノハ一月ノ
  末デアリマス、我交代兵ノ彼ノ地ニ著シタノハ三月中旬ヨリ下旬ニ亙ッテノコトデアル、是
  レダケノコトヲ私ハ玆ニ申上ゲテ置ク、ソレカラ第二ニ我ガ政府ハ支那ト交渉ヲナスニ際
  シ、讓與ニ讓與ヲ重ネテ、終ニ屈辱退嬰ノ結果ヲナシタト云フコトデアル(「其通リ」ト呼
  フ者アリ)斯ウ云フ形容詞デハ問答ガ出來マセヌ、事實ニ就テ御質問ガアリ御意見ガア
  レバ承リマス、反對黨ハ右ノ如キ形容詞ヲ遣ハレル結果デアルト信ゼラレテモ、國民ノ多
  數ハ決シテ右ノ如キ〓感ジハ持ッテ居ラヌ······(拍手起ル「國民ハ決シテ滿足シテ居ラヌ」
  「默レ」ト呼フ者アリ議場騒然)

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• 036・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜肅ニ願ヒマス

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• 037・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　穩カナラザルヤウナ言葉ニ自然ニ流レテ慚愧ノ次第
  デアリマスガ、是ハ質問者ガ此ノ如キ言葉ヲ用井ラレタカラデアル、第五項ノ讓歩ヲナシタ
  コトニ就テハ(「理々乎トシテ小ナル哉」ト呼フ者アリ)是ハ前刻演說ノ中ニモ申述ベテ置
  キマシタガ、初メカラ要求スル時カラシテ性質ヲ異ニシテ居ルト云フコトハ詳シク申述ベタガ、
  此事ニ就テ先刻申述べタコトニ就テハ、意味ガ能ク御分リニナラナカッタヤウデアル、第
  ヨリ第四ニ至ルマデハ、我國及ビ我ガ國人ガ權利ヲ有ッテ居ルトハ申サレマスマイ、當然
  占ムベキ筈ノ運命ヲ持ッテ居ルト申シタラ一番宜カラウ、之ヲ現實ニシテ滿洲ニ於テ我ガ
  地步ヲ鞏固ニ致シ、山東ニ於テハ日獨戰爭ノ結果ノ善後ヲ計リ、其他漢冶萍云々ノコ
  トニ就テハ、我國ノ資本ガ莫大ニ入ッテ居ル、各〓基ク所ガアッテ、我ガ地位ヲ求メシム
  ルノデアリマスカラシテ、是ハ要求トシテ提出致シ、飽クマデモ其目的ヲ貫徹スルコトニ初
  メカラ努ムル決心ヲ持ッテ居ッタ、而シテ五項ノ事柄ニ至ッテハ、、若シ支那政府ガ之ヲ容
  ルレバ我國ノ利益ニナルコトモアルシ、兩國共通ノ利益、卽チ東洋ノ平和(「ソレガ一
  番大切ダ」ト呼フ者アリ)日支兩國ノ親善ヲ圖ル上ニ就テ、甚ダ望マシイコトデアル、希
  望トシテ初メヨリ提出致シテ居ルノデアル(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)希望トシテ提出シテ
  其實行ヲ勸告シテ居ルノデアル(「豫定ノ退却」「唯〓機敏ガ缺ケテ居ッタ」ト呼フ者アリ)
  默ッテ御聽キナサイ(「謹聽々々」ト呼フ者アリ)默ッテ御聽キニナッテ分ラナケレバ何遍デモ
  出マスカラ

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• 038・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　許シマセヌ辯論ハ··

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• 039・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　而シテ此讓步ヲナスコトハ敢テ好ム所デナイコトハ勿
  論ノ話デアル、前刻詳シク申述ベタ通リニ之ヲ讓ルコトハ、素ヨリ當局者タル自分ニ於テ
  モ苦痛デアリマスケレドモ、其苦痛ハ東洋ノ平和ヲ亂ルコトヲ見ルノハ、尙更大キナ苦痛
  デアル、此ニ至リテハ姑ク是等ノ問題ニ關スル交涉ヲ他日ニ延ベテ主要ノ我ガ要求ヲ
  徹底スルコトヲ目的ト致シタ、飽マデモ平和ノ解決ヲ圖ッタコトデアル、然ルニ幸ニモ支那
  政府ハ結局ニ至ッテ我ガ提議ヲ容レタ次第デアル、此平和ノ結果ヲ見タルコトハ蓋シ諸
  君ト雖モ御同慶ノ次第デアルト信ズルノデアル(拍手起ル「ノウ〓〓」「何ガ平和ダ」ト呼フ
  者アリ)ノウ〓〓ト仰シヤルナラバ、戰爭ガ御好キデスカ(「戰爭ガ好キデハナイ」ト呼フ者ア
  リ)第二點トシテ元田君ノ御述べニナッタ支那人ノ惡感ヲ來シタト云フコト、是ハドレ程ノ
  程度デアルカ私ニハ分ラヌ、元田君ハ詳シク御承知ノヤウデアリマスガ、支那政府ハ此
  平和ノ解決ヲ得タコトニ就テ滿足ヲ表シテ居リマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)支那人
  民ニ至ッテハ或者ノ煽動ニ依リ不滿ノ念ヲ持テ居ル者モ少ナカラヌト云フコトハ新聞
  紙ニモ見エテ居リマス(「國民ノ蠢動ノミ」ト呼フ者アリ)是ハ併ナガラ此度支那ガ應諾シ
  タコトハ日本ノ側カラ言ヘバ當然要求セザルベカラザルコトデアル、支那ノ側カラ言ヘバ
  隨分應諾ニ困難ヲ感ジタコトモアルダラウト思ウ、從ッテ支那國ノ中ニ不快ノ感ヲ爲ス
  者ハ絕無トハ決シテ申サレヌノデアル併ナガラ日本ノ或ル小部分ニ於テハ、我國ノ得タ
  ル所ノモノニ對シテ不平デ惡感ヲ懷イテ居ラルルヤウデアリマスガ、支那ニ於テハ支那ガ
  讓ッタコトニ對シテ、日本ガ取ッタコトニ對シテ、不快ノ感ヲ持ッテ居ル併シ是ハ事態ノ
  明カナルニ從ッテ、不日總テノ惡感ハ解ケテ兩國人ノ間ニ極メテ親密ナル關係ノ恢復ス
  ルコトガ出來ルト私ハ飽マデ信ジテ居ル、次ニ列國ノ人ガ大層惡感情ヲ懷イテ居ルト
  云フコト是亦具體的ノ事實デアルカノ如クニ元田君ハ御述ベニナリマシタガ、政府ニ
  達シテ居ル報道ハ、別段各國人ガ惡感ヲ懷イテ居ルト云フコトハナイノデアリマス(「タイ
  ムス」カラ褒メラレテ居ル」ト呼フ者アリ)支那ノ側カラ漏レタ所、間違ッタル報道ニ依テ一
  部ノ新聞紙等ニハ多少批評等モアリマシタガ、大體ニ於テ列國人ガ我國ニ對シテ惡感
  ヲ是ガ爲メニ懷イテ居ルト云フ事實ハ吾〓ニハ少シモ報道ハ達シテ居リマセヌ(元田肇
  君「輕侮ノ念ヲ增シ日本政府ノ態度ニ對シテ怪ミヲ容レ疑ヲ容レ輕ンゼラレ侮リヲ得
  ルニ至エタタト云フコトヲ言ッタノデス」ト述フ)右ノ如キコトハ毫モアリマセヌ、膠州灣ヲ還付
  シタコトニ就テ敝履ヲ棄ツルガ如ク、是ハドウモ穩カナラヌ形容詞デアルト思フ(「事實ナ
  ルヲ奈何セン」ト呼フ者アリ)膠州灣ヲ得ルニ就テハ、我國ノ忠勇ナル軍人ノ血ヲ流シ少
  ナカラザル資財ヲ使ッタ結果デアリマス、之ヲ棄ツルコトハ飽マデ愼重ナル審議ヲ盡シタ結
  果デナケレバナラヌ、決シテ敝履ヲ棄ツルガ如シト申スコトハ思ヒモ依ラヌ話デアル、而シテ
  此事ヲ支那ニ申入レタノハ四月二十六日ニ日置公使ヨリ初メテ公然申出デタノデア
  リマスケレドモ、此時ニ急ニ思ヒ付イタ次第デナイ(「其前ニ約束ヲシタカ」ト呼フ者アリ)
  約束モシテ居ナイ昨年ノ議會ニ於テ本大臣ヨリ、先刻元田君ハ議員ノ一人ヨリト
  言ッタガ一人ドコロデナイ、、數人カラ質問ガアリマシタ、日本政府ハ膠州灣ヲ支那ニ還付
  スルコトニ關シテ支那ト何カ約束ヲシテ居ルノデハナイカ、或ハ各國ニ對シテ何カ拘束的
  言質デモ取ラレテ居ルノデナイカト云フ意味ノ御尋テアリマシタガ、當時モ明ニ辯明シタ
  ル如クニ、支那竝ニ其他何レノ國ニ對シテモ何等約束シタコトハナイノデアル、就テハ此
  土地ヲ如何ニ處分スルカト云フコトハ一ニ帝國政府ノ自由ナル意思ニ依ヶテ決定シ得
  ルコトデアル、之ヲ如何ニセバ帝國ノ名譽ノ上ニ於テ、帝國ノ利害ノ上ニ於テ宜シイカ、何
  人ノ拘束ヲ受ケズ帝國ガ自ラ決シ得ルコトデアルノデアル、併ナガラ(「併ナガラ其處ニ意味
  ガアル」ト呼フ者アリ)先ヅ全部御聽キニナッテ批評アッテ然ルベシ、元日本ハ支那ノ領土
  保全ヲ欲スルモノデアル日英同盟ノ目的ノ一ニシテ我國ノ確乎タル方針タル支那ノ領
  土保全ト云フコトハ、有ラユル手段ヲ盡シテ其目的ヲ達センケレバナラヌ次第デアリマス、
  而シテ此土地ハ前年或ハ事情ノタメニ獨逸ノ租借スルトコロトナッタ、爾來獨逸ハ是ニ對
  シテ大ナル力ト莫大ナル費用ヲ投ジテ今日ノ靑島トー云フモノヲ造リ出シタノデアル、之ヲ
  今日本ガ武力デ獨逸カラ取ッタトコロデ、支那ニ漫然ト還付シタナラバ支那ハ、獨逸
  ガ再ビ來シテ此土地ヲ恢復スルコトヲ防止スル力ハナイノデアリマス就テハ此土地ハ我國
  ニ於テ之ヲ續ケテ占領シテ居ルカ、若クハ相當ナル條件ヲ付シテ支那ニ還付スルカ、之ヲ
  極メナケレバナラヌノデアル(「答辯ニナラヌ」ト呼フ者アリ)元昨年獨逸ト開戰シタル
  理由ハ、日英同盟ノ義ニ依ッテ矛ヲ取ルニ至ッタノデアル、獨逸ノ武力ヲ東洋ヨリ驅逐シ
  (「苦シイ〓〓」ト呼フ者アリ)其勢力ノ根據地タル靑島ラ獨逸ノ手カラ奪フト云フ趣
  意ヲ以テ起ッタノデアッテ、掌大ノ地タル青島其モノヲ得ルト云フガ目的デナイノデアル
  (「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」「强辯曲解」「伊太利ヘ留學シ給ヘ」「答辯益〓窮セリ」ト呼フ
  者アリ)其目的ハ獨逸ヲ兵力ニ依ッテ追拂ッタコトニ於テ旣ニ達セラレテ居ル(「何ヲ言
  フ」ト呼フ者アリ)此土地ヲ永ク我ニ於テ占領スルヤ否ヤヲ決スルニハ、大局ニ鑑ミテ決
  シテ然ルベキコトデアル、我國ニ於テ支那ノ領土保全ノ趣意ヲ完ウシ、併セテ日支兩國
  ノ親善ヲ是ニ依ッテ圖ルコトハ極メテ我國ノタメニ得策ナリト考ヘタ、(「其考ガ間違ッテ
  居ル」「臺灣モ還シタラ宜シイ」「默レ」ト呼フ者アリ)而シテ此事ハ決シテ四月ノ下旬
  ニ至ッテ始メテ出來タトコロノ決定デハナイノデアル、昨年膠州灣占領ノ後、未ダ支那ニ
  向ッテ交涉ヲ始メザル前カラ廟議ハ決定シテ居ルノデアル、適當ナル時機ニ於テ適當ナル
  條件ヲ付シテ(「國民ハ承知セヌ」ト呼フ者アリ)還付スルコトハ我國ノ得策ナリ(「ソレハ
  アナタグケ」ト呼フ者アリ)ト云フコトニ廟議ハ決定シテ居ル、意見ガ違ヘバ後デ御述べ
  ナスッタラドウデス、御聽キナサルダケハ御聽キナスッテ,

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• 040・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜肅ニ

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• 041・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　而シテ支那トノ交涉ヲ始メル前ニ此廟議ハ決定シ
  テ居ル交渉中ニモ或時機ニ於テ適當ト認メレバ此事ヲ支那ニ提言シヤウト云フコトモ
  極ッテ居ッタノデアル、而シテ四月下旬ニ至ッテ(「一向分ラヌ」ト呼フ者アリ)此事ヲ支那
  ニ提言スルコトニ付テ適當ナル時機到來ト云フコトニナッテ、ソコデ始メテ表向ニ提言致
  シタノデアルガ、或場合ニ於テ或條件ヲ附シテ膠州灣ヲ支那ニ還附スルコトアルベシト云
  フコトハ、疾クカラ定ッテ居ッタコトデアル(「ソレニ相違ナイヨ」ト呼フ者アリ)從ッテ支那ニ
  對シテ交渉ヲ進ムルニ從ッテ、論ズベキコトハ既ニ論ジ盡シテ、今ヤ如何ニ終結ヲ告ゲルカ
  ト云フコトニナッタノデアル、彼ニ對シテ讓リ得ルコトハ我ヨリ讓リ、又膠州灣還付ノ如キ
  大局ニ顧ミテ之ヲナシタル方ガ我國ノタメニ利益デアルト云フコトヲ提言ヲ致シテ、而シ
  テ彼ニ於テモ、ソレマデ譲步シナカッタコトヲ讓歩スベシト云フコトヲ申込ンダノガ四月二
  十六日ノ提議テアッタノデアル、膠州灣還付ヲナシタコト-未ダ爲サヌガ---ススタメ
  ニ東洋ニ於ケル平和ニ資スルトコロガアル、何ゼナレバ支那ノ領土保全ノ主義ヲ完ウシ、
  日支兩國國交ノ親善ヲ圖ルト云フ大目的ヲ達スルコトガ出來タノデアル(拍手起ル)
  (「何ガ大目的ダ」ト呼フ者アリ)此膠州灣占領ト云フコトニ付テ注ガレタル血ト費サレタ
  ル資財ハ決シテ無用デナイト思フノデアリマス(拍手起ル)(「ノウ〓〓」)ソレカラ後ノ方ノ
  部分ハ餘リ宜ク聽キ取レナカッタデアリマシタガ、英國人又ハ英米兩國人ヨリ極メテ强硬
  ナル抗議デアルカ提議デアルカヲ受ケタコトガアルカ否ヤト云フ御尋ネ、何等其事實ハアリマ
  セヌ、强硬ニモ軟弱ニモ抗議ヲ受ケタト云フコトハ更ニゴザイマセヌ、次ニハ支那ノ或土
  地ニ於テ不幸ニシテ起ッタトコロノ支那人ノ暴動ニ付テ、領事其他ヲシテ通信ヲナスコト
  ヲ政府ハ禁ジテ居ルト云フヤウナコトガアルカ否ヤト云フコト毛頭右樣ナコトハゴザイマセ
  又、以テノ外ノ御對ネデアルト信ズル、領事ハ立派ニ報告ハ日々夜々ニ致シテ居リマス、
  而シテ其報告ハ悉ク世ノ中ニモ發表サレテ居リマス(「重大事件突發ハ何ゾヤ」ト呼フ者
  アリ)而シテ膠州灣還付ニ付テ我國ノ-還付ト申シタコトハ、是ハ未來ノコトデアリア
  マス、先刻演說ニモ申述ベタ如クニ、日獨講和條約ノ結果トシテ、我國ガ膠州灣ヲ自
  由ニ處分シ得ル場合ニ立至ラバト云フコトデス(「無論ノ話ダ」ト呼フ者アリ)次ニハ第
  一-第一膠州灣ヲ通商港トシテ開ク二ニハ日本人ノ爲メニ專管居留地ヲ設ケル
  ト云フコト三ニハ若シ列國トシテ希望トアレバ、列國共同ノ居留地ヲモ設クルト云フコ
  ト(「是レ大ナル禍ナリ」ト呼フ者アリ)是等ノ條件ヲ附シテ還付スルニ至ルベシト云フ豫
  約デアルノデアリマス、若シ此場合ニ至ッタナラバ我國ハ膠州灣ヲ支那ニ還付シテ其領
  土ヲ保全セシムルト同時ニ、我國ニ於テモ支那ノ彼ノ方面ニ於ケル我ガ同胞經濟上ノ發
  展ノ基礎ヲ茲ニ得、同時ニ他ノ外國人ニモ其利益ヲ頒ツト云フ洵ニ結構ナルコトデア
  ルト信ズルノデアル(拍手起ル)之ヲ占領スル爲メニ死シ若クハ負傷ヲシタルトコロノ軍人
  ノ誠忠ハ、若シ日本ガ土地ヲ支那ニ還付スルニ至ラバ空クナッテ、將來軍人ガ活動ス
  ルコトニ於テ大ニ妨害ニナルダラウト云フ意味ノ御質問カ御意見デアッタト思ヒマスガ、私
  ノ觀ル所ハ全ク違フノデアル、日本ノ軍人ハ廟議ノアル所陛下ノ御命令ニ從ッテ動ク
  ベキモノデアッテ(「理窟ヲ三ロフナ」ト呼フ者アリ)斯ノ如ク大義名分カラ云ッテモ利害得失
  カラ云ッテモ遺憾ナキ結果ヲ得ルコトニ就テ決シテ彼等ノ(「陛下ノ罪ニ歸スル勿レ」ト
  呼フ者アリ)拂ッタ犧牲ガ空クナッタト思フ者ハ一人モナカラウト信ズルノデアル(拍手起
  ル)將來ニ於テ忠勇ナル軍人ハ帝國ノ爲ニハ必ラズ土地ヲ得ルト云フダケノ目的デハナク
  シテ(「外國人ノ犧牲ニナルノカ」ト呼フ者アリ)帝國ノ爲メニ有形無形ノ(「將來コンナコ
  トハナイヨ」ト呼フ者アリ)名譽若クハ利益ヲ得ルタメニ生命ヲ惜マズシテ忠勇ヲ盡スコト
  ト私ハ確信スルノデアリマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=41

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• 042・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　元田君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=42

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• 043・元田肇

  ○元田肇君　本員ハ前質問中歐洲戰亂以後、歐洲列國單ニ支那ニ對スルノミデハ
  ナイ、列國トノ交涉往復ニ付國民ハ皆疑惑ノ中ニアルカラ(「何ガ疑惑ダ」ト呼フ者ア
  リ)願クハ此公文書ヲ示シテ戴キタイト云フ希望ヲ述ベアリマス、加藤外務大臣ハ何等
  疑惑ガナイ、支那人モ惡感ヲ懷イテ居ラヌト云フヤウナコトヲ申サレマシタガ、是等ノ事ニ
  就テハ幾ツモ違ッタ所感ヲ抱イテ居ル點ガアラウト思ヒマスカラシテ、本員ノミナラズ國民
  ハ〓ゲテ政府ガ公文書ヲ示シ、明カニ其眞相ヲ示サレ安心セシメラレタイト思フノデアリ
  ママ、是ハ單リ吾〓國民ガ安心スルノミナラズ、現內閣ノ爲メニモ宜シカラウト信ズルノデ
  アリマス、又加藤外務大臣ハ外國カラシテ何等ノ抗議ヲ受ケテ居ラヌト答辯セラレタヤ
  ウニ聞エマシタガ、英國上院ニ於ケル外務次官ノ言明ニ依レバ、日英同盟條約ニ抵觸
  セザルヤウニ屢〓注意ヲ與ヘテ居ルト述ベテ居ル、本員等ノ聞カント欲スルトコロハ其所
  デアリマス陛下ノ外國大臣ノ言ヲ信用セヨト云ヘバソレマデデアリマスガ、蓋シ此事ハ事
  實デアラウト信ズルノミナラズ、先囘支那ニ對シ最後通牒ヲ發セラレタトキニ當ッテ、英國
  若クハ米國若クハ佛國ヨリ何等カ注意ヲ受ケタト云フコトハ吾〓ハ承ッテ居ルガ、是レハ
  唯道路ノ風說ニ止マラヌト私ハ信ズルノデアリマス、斯樣ナ疑心ヲ懷イテ居ルモノハ國
  民中有識者間ニハ多數アリマスカラシテ、願クバ公文書-最後通牒ヲ獨逸ニ
  發シタル前後ノ關係ヨリ總テノ文書ヲ舉ゲテ本院ニ明示アラムコトヲ望ミマス(拍手起
  ル)尙ホ加藤外務大臣ハ先刻ノ御演說中ニ、當然帝國ガ享クベキトコロノ利權ヲ提案
  シタノデアルト云フコトヲ第一ノ提案說明ノ場合ニ言ハレタノデアル、本員ハ加藤外務大
  臣ガ當然帝國ノ享クベキ利權ヲ提案サレタノデアルト一云ハレナガラ、之ヲ退要的ニ一度ナ
  ラズ二度迄モ修正シタノハ退讓屈讓ト云フテ差支ナイト思フノデアリマス、或ハ失禮ナル
  言辭ニ亙ッタカモ知レマセヌガ、今當然得ベキ運命ト變ヘラレマシタガ、前ノ御言葉ニハ當
  然享クベキ利權ト言ハレシヤウニ信ジテ居リマス、帝國ノ當然享クベキ利權ヲ屈讓ニ屈
  讓ヲ重ネルト云フニ至ッテハ本員等ハ-外務大臣ハ今ハ御滿足ト云フカ知ラヌガ、新
  聞ニ表ハレタルトロノ外務省ノ公表ヲ見テモ、難ヲ忍ビ忍ブベカラザルコトヲ忍ンデト云フヤ
  ウナ文詞ガアリマシテ此言葉ノ出デタノハ決シテ滿足ナル條約ノ結果デハナイ、屈讓シタ
  ル條約デアルガ致方ナク結ンダト云フコトハ明カニ見ヘテ居ルサレバ是ハ本員ガ言フノミ
  ナラズ外務大臣自身ガ公表シタル文書ニアルノデアリマス、ソレ故ニ前ニ屈讓云ケノ言葉ヲ
  用井タノデアリマスカラシテ、必ズシモ現内閣若クハ加藤外務大臣ニ對シテ故ラニ禮儀ヲ
  缺キタル言辭ヲ使ッタノデハナイノデアリマス、最後ニ大隈首相ハ以上ノ質問ニ對シ外
  務大臣ノ御答ニナッタ外、更ニ御辯明ガアルノデアラウカドウデアラウカ、願クハ御答辯ヲ
  承リタイ

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• 044・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　加藤外務大臣
  〔外務大臣男爵加藤高明君登壇〕

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• 045・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　唯今元田君ヨリ讓步ヲ重ネタノハ屈讓ヂヤナイカト
  云フ御話ガアリマシタガ、凡ツ外國ト交涉ヲ開クニ當ッテハ、出來ルダケ其目的ヲ十分ニ
  一〓モ殘ラズ得ルコトニ、其目的ヲ立テテ交渉ノ際之ニ努ムルコトハ申スマデモアリマセ
  ヌガ、是レト同時ニ交涉ハ命令ニアラズ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)先方ノ申分モ聽イ
  テ、多少讓步ヲ爲スト云フコトガ無カラネバ到底談判交渉ハ出來ナイト私ハ存ジマス(拍
  手起ル)勿論戰爭ノ結果デデモアッテ、城下ノ盟ヲ爲サシメントスルヤウナ場合ニ於テハ
  二三日ノ休戰期ヲ與ヘテ其間ニ此方ノ申分ヲ聽クカ聽カヌカト云フ場合ニハ其先例
  ガ幾ラモアルヤウデアリマスガ、凡ツ平和ノ時ニ於テ平和ノ手段ヲ以テ交渉ヲ爲ス上ニ就
  テハ互讓妥協ノ精神ヲ持ッテ之ニ當ルト云フコトガ同時ニ必要デアル(拍手起ル)互讓
  妥協ノ精神ト云ヘバ或點ハ對手ノ申分モ聽イテ之ヲ讓ル若シ交涉談判ガ右ノ如キ
  コトヲ爲スモノデナイト言ヘバ一說トシテーホリマスガ(拍手起ル)私ハ左樣ニ取レヌノデアル
  (「外交ヲ知ラズ」ト呼フ者アリ)ソレカラ當然ノ要求-當然ノ要求ト言フコトモ演說
  中ニ用井マシタニ違ヒアリマセヌ、當然我國ガ行フベキ權利ト申スト、ドウモ少シ穩カナラヌ
  ヤウデアリマス、滿洲ノ土地ハ歷史上我國ガ殊ニ多大ノ犠牲ヲ供シ來ッタ、若シ出來ル
  ナラバ日露戰爭ノ後ニ直チニ今日ノコトガ出來テ居ッタラ尙更宜カッタデアリマセウ、併ナ
  ガラ其時ニハ其時ノ都合ガアッテ、當然得ベキ筈ノモノガ得ズニアッタモノガアルノデアル、
  而シテ之ヲ早晩此地步ヲ占メナケシバナラヌト云フコトハ我國人ノ運命デアル、其運
  命デアル,當然占ムベキ筈デアルー-筈デアルト申スコトト現實ニ占メルト云フコトトハ違
  フノデアル、其占ムル、卽チ滿洲ニ關スル要求ニ就テハ、互讓ノ精神ヲ以テ多少讓ツタ點
  モアリマス、此形式ヲ換ヘタ點モアリマスルガ、主要ノ目的ハ殘ラズ達シテ居リマス、ソレ
  ハ先刻演說ニモ御斷シテ置イタガ(「アナタ一人ノ考ダ」ト呼フ者アリ)不日ソレニ就テノ
  書類ガ發表ニナリマセウカラ、ソレヲ御覽ニナッタラ能ク分ルノデアル、今日ニ於テ此演說
  ヲ爲スノハ甚ダ苦シイノデアル、困難デアル、其條約ノ調印竝ニ批准ガ濟ムマデノ餘裕ガ
  アッタラ私ハ喜ンダノデアルガ、併ナガラ諸君ハ對支外交ノ〓略ナリトモ一日モ早ク國民
  ノ代表者トシテ御聽キニナリタイコトト信ジマシタカラ、其不便ヲモ顧ミズ出來ルダケノコ
  トヲ申上ゲタ次第デアル、條約ノ內容等ニ付テハ、近日何レ調印モ出來マセウシ、又多
  分御批准モ仰ガルルト信ジマスカラ、其上デ能ク御覽ニナルコトヲ希望スルノデアリマス
  ソレカラ又元田君ヨリ先刻御尋ネニナッタ、英國若クハ米國或ハ-其兩國ヨリ强硬ナ
  ル抗議ヲ受ケタコトガアルヤ否ヤ(「注意デアリマス」ト呼フ者アリ)日支兩國ノ交涉事件ニ
  就テハ、英國ハ同盟國デアリマスルガ故ニ、此方カラモ始終交涉ノ有樣等モ內示モ致シマ
  シタ、彼ノ國ヨリ又希望ヲ申出ラレタコトモアリマシタケレドモ、强硬ナル注意デモナケレ
  バ抗議デモ無論ナイノデアル、關係諸國ノ間ニ意見ノ交換ノアルコトハ決シテ怪シムニ足
  ラヌコトデアル、是等ノコトニ就テハ今日ニ於テハ之ヲ發表スル必要ヲ認メマセヌ、但シ
  發表シナイカラト言ッテ決シテ其ヒドイ抗議ヲ受ケタト云フコトハ毛頭アリマセヌ、而シテ獨
  逸開戰ノ前後ニ於ケル一云々ト云フコトガアリマシタ、是ハ前ノ議會デモ或ル議員ヨリソン
  ナ御話モアリマシタガ、當時發表スベキコトハ發表シテ其他ニ發表スルコトハナイト申上
  ゲタ通リデアリマス

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• 046・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　伊東知也君
  〔伊東知也君登壇〕
  〔拍手起ル〕
  〔此時發言スル者アリ〕

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• 047・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　不規則ノ發言ヲ禁ジマス

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• 048・伊東知也

  ○伊東知也君　私モ此ニカ外務大臣ニ向ッテ御質問ヲ致シタイト思ヒマス、此度ノ對
  支交渉ハ最早呶々喋々ヲ用井マセヌ、私ハ根柢ヨリ失敗ニ終レルモノト斷言致シマス
  (「ヒヤノ」「ソンナ質問ハナイ」ト呼フ者アリ)默ッテ聽カヌカ-ザワ〓〓スルナ

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• 049・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜ニ靜ニ

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• 050・伊東知也

  ○伊東知也君　ザワ〓〓申スナヨ、騷ガズニ聽ケ、其理由ナドハ

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• 051・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜肅ニ願ヒマス-諸君、暫ク-議長ガ宣告ヲ致シマスカ
  ラ暫ク著座ヲナサイ、屢〓不規則ノ發言ヲ禁ジマスケレドモ總テ御用井ガナイ、其甚シキ
  ニ至ッテ遂ニ演壇ヨリ自カラ議場ヲ制スルト云フ發議者ヲ出スニ至ッテハ、議場ノ不體
  裁、甚ダ職務ヲ執行スルニ差支ヘマス、一度ハ斯ノ如キコトヲ議長ハ忍ビマスケレドモ、
  再ビ演壇ヨリ斯ノ如キ不規則ナル語ヲ發スルニ至ッテハドナタニモ拘ラズ規則ヲ執行致
  シマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)更ニ議長ハ申シマス、演壇ニ立ツ人ヲシテ斯ノ如キコト
  ヲ發セシムルノハ畢竟全院ノ諸君が不規則ナル發言ヲナサル結果デアリマス、ソレ故ニ
  相互ニ愼ンデ議場ノ神聖ヲ保ツヤウニ御考ヲ願ヒマス(拍手起ル)唯今伊東君ノ言ッタ
  コトハ速記錄ニ載セマセヌ、不規則デアリマスカラ取消シマス

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• 052・伊東知也

  ○伊東知也君　其失敗ノ理由ハ私ヨリ諄ミシク申ス必要ガナイ、現ニ膠州灣ヲ還付ス
  ルト云フ其報酬トシテ得タル所ハ何物テアルカ、大局ニ顧ミテヤッタ方ガ宜イカラト云フ
  外務大臣ノ御言葉デアル
  〔此時發言スル者アリ〕

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• 053・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　不規則ノ發言ヲ止メマス

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• 054・伊東知也

  ○伊東知也君　先刻私ハ貴族院ニ於テ外務大臣ノ仲小路廉君ニ對スル御答辯ヲ
  承ッタノデアリマス、ソレニ依リマスト云フト失フ所ノモノハ是レノデアル是ハ尤モテア
  ルガ、得タル所ノモノニ最モ有利ナル第一箇條ニ算フベキモノハ、關東州、南滿洲鐵道其
  他ノ地方ノ期限ヲ九十九年ニ延バシタト云フコトガ、最モ有利ナル今度ノ外交ノ成功
  ノ第一要件タト云フコトヲ、、御說明ニナッタコトヲ貴族院ニ於テ責任アル外務大臣ノ御
  口ヨリ私ノ耳ニ入ッタノデアリマス此ニ至ッテハ私ハ何ヲカ言ハン、斯ウ云フコトデハ一 ~
  小サナ條件其他ヲ列ベタ先刻ノ外務大臣ノ御言葉ハ、宛然タル領事館ノ書記生ガ狀
  況ヲ列ベルヤウナ御言葉デアルアヽ云フコトヲ言フヤウデハ堂々タル我帝國ノ外務大臣
  トシテ折衝ノ任ニ當ルコトハ出來ナイノデアル、ソコデ(「質問ハドウシタ」ト呼フ者アリ)質
  問ハ今カラヤル

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• 055・島田三郎

  ○議長(島田三郎君)　靜肅ニ··

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• 056・伊東知也

  ○伊東知也君　ソコデ諸君、私ハ現內閣ノ諸公ニ一個人トシテ私人ノ開係カラ申シ
  マスレバ實ニ多年恩顧ニナッタ人ミガ多イカラ能ク其御性格ヲ知ッテ居ル卽チ私ノ信
  用スル現內閣諸公ハ斯ウ云フ大失敗ヲシタナラ、私共ハ默ッテ居ッテモ、モウ御引キニ
  ナル御考ガ出ヤウト思フ、又其時機デアラウト私ハ考ヘル、ソコデマア私共支那問題ヲ
  以テ生命トスル人間デアルカラ、此跡始末ヲシナケレバナラヌ、內閣ノ諸公ガ罷メルカ或
  ハ逃ゲルカ知ラヌガ、此跡始末ヲスルニ付テ是非今度ノ談判中ニ聞イテ置カナクチヤナラ
  ヌコトガアル、ソレハ或ハ第何箇條トカ何トカ竝ベタ事ハ、マア私ノ外ニ御質問ニナル方
  ガアルダラウカラ、私ハ極ク細カナコトヲ御聞キ申シタイ、今度ノ御約束ノ中ニ南滿洲ト
  云フコトガ度〓出テ居ル、東蒙古ト云フコトガ度〓出テ居ル然ラバ此南滿洲ノ境界、
  東蒙古ノ境界、是レハ何ニ依ッテ御定メニナッタカ、支那ト日本トノ間ニ交涉セラルル際
  ニ當ッテハ如何ナル點ヲ標準トシテ御交涉ニナリマシタカ、是ガ第一箇條、東蒙古南滿
  洲ト云フト甚ダ漠然トシテ居リマス、是レハ或ル學者ノ如キハ經度緯度ニ依ッテ定メル
  人モアル、或ル學者ノ如キハ山河ノ形勢ニ依ッテ定メテ居ル人モアル現內閣否ナ加
  藤外務大臣ハ、何ヲ標準トシテ此境界ヲ立テヽ御交涉ニナリマシタカ、之ヲ承リタイ
  南滿洲ノ如キハ極リ切ッタヤウデアルガ、吉林省ニ至ルト云フト甚ダ境界ガ曖昧デアル、
  又東蒙古ニ接近シタル遼河ノ以西ト云フモノハ甚ダ曖昧ナル有樣ニナッテ居ル此邊ハ
  ドウ云フ具合ノ御極メヲ以テ御交渉ニナリマシタカ、又東蒙古-東蒙古ハ近項露
  西亞ノ內閣カラ云フ所デハ、東經百七十五度以北ハ全部南滿洲デアルト云フコトヲ
  言ウテ居ル、サウ云フ點ヲ何ト御極メニナッタノデアルカ、併ナガラ細カイ事ヲ言フテモ分ル
  マイガ大體ノ事デ宜シイ(笑聲起ル「簡單」ト呼フ者アリ)簡單ナドト言フト水デモ飮ンテ
  悠クリヤルゾ(笑聲起ル)

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• 057・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　伊東君言語ヲ御愼ミ下サイ

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• 058・伊東知也

  ○伊東知也君　具體的ニ申シマスレバ東蒙古ハ何ヲ標準トサレマシタカ、南ノ方ノ境
  界ハ何トサレマシタカ、是マデノ歷史及學者ノ說ニ依リマスト、長城以北ハ悉ク東蒙古
  トナッテ居ル、現內閣ハ果シテソレヲ承認サレルカドウカ、又北ノ方奉天蒙古ト云フモノ
  ガアル、ツレハ行政區劃ノ上ニ於テハ現ニ奉天省ノ管〓ノ下ニナッテ居ルガ、地理上カラ
  言フト東蒙古ニ屬スル問題デアル、姚南府ノ如キ鄭家屯ノ如キ、是レハ行政區劃カラ
  言フト奉天省卽チ南滿洲ニ屬シテ居ルガ、是レハ果シテ東蒙古トシテ御取扱ニナッタノデ
  アルカドウカ、免ニモ角ニモ此境界線、經度ニスレバ東經何度何分ヨリ何度何分マデ、
  緯度何度ヨリ何度マデトー云フヤウナコト或ハ山河ノ形勢或ハ行政區割ヨリ御ヤリニナッ
  タナラバ、ドコソコ縣ハドレ、ドコソコ縣ハドレト、云フコトヲ明白ニ御示シヲ願ヒタイ、アナ
  タ方ガ御失敗ニナッテ或ハ御罷メニナルカドウカ知ラヌガ、吾ミノ如キ此支那ノ運命ヲ以
  テ我ガ帝國ノ存亡問題ナリト信ズル人間ハ、跡釜ヲ引受ケナケレバナラヌ、尻拭ヒヲシナ
  ケレバナラヌ、跡掃除ヲヤルニ付テ其境界問題ノ如キハ最モ必要ナル要件デアルカラシ
  テ、此點ハ明白ニ御答辯ヲ願ヒマス(「掃除屋御苦勞」ト呼フ者アリ)

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• 059・議長(島田三郞君)

  ○議長(島田三郞君)　加藤外務大臣
  (外務大臣男爵加藤高明君登壇〕

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• 060・外務大臣(男爵加藤高明君)

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　唯今伊東サンヨリ御尋ネノ事ハ、條約ノ內容ニ關
  シマスル事デ、豫テ演說ニ御斷リ申シタ通リ今日ハ交渉ノ經過ニ付テ〓略ノ御話ヲ致シ、
  條約ノ內容ニ付テハ近日發表ニナル書類ヲ御覽ニナルコトヲ希望スルト云フコトヲ申
  上ゲタ範圍ニ屬スル事デアリマス、併シ唯今ノ御話ハ隨分面倒ナ問題デゴザイマシテ、伊
  東君ハ面倒ナコトヲ御承知デ多分御尋ネニナッタト思フ、是レハ自カラ定マッテ居ル事デア
  リマス、支那政府トノ間ニ能ク意思ハ了解シテ居リマス、今日此場合デ言明スルコトハ
  甚ダ不得策ト信ジマスカラ、答辯致シマセヌ、若シ滿洲若クハ東蒙古ニ付テ何ゾ御ヤリ
  ニナルト云フコトデアリマスレバ、外務省ハ喜ンデ其手續ヲ御話スルコトニ致シマス(拍手
  起ル)
  議長(島田三郞君)床次竹二郞君

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• 061・床次竹二郞君

  ○床次竹二郞君　本員ノハ······(「登壇々々」ト呼フ者多シ)簡單ナル數箇條デアリマ
  スガ(「登壇々々」ト呼フ者多シ)

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• 062・議長(島田三郞君)

  ○議長(島田三郞君)　不規則ノ發言ヲ止メマス、登壇ヲ願ヒマス、外ノ聲デ話ガ聽
  取レマセヌ

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• 063・床次竹二郞君

  ○床次竹二郞君　一問每ニ御答ヲ戴キマスレバ大層私ハ仕合ニ考ヘマスガ、左樣ナ御
  許可ハ得ラレヌモノデアリマセウカ

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• 064・議長(島田三郞君)

  ○議長(島田三郞君)　答ヘル方ガ御承諾デアレバ議長ハ干涉致シマセヌ
  (「登壇々々」ト呼フ者アリ〕

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• 065・床次竹二郞君

  ○床次竹二郞君　ソレデハ外務大臣ニ御尋致シマス··

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• 066・議長(島田三郞君)

  ○議長(島田三郞君)　外務大臣ノ答ハ總テノ事ヲ言盡シタ處デ、箇條ニ付テ御答ス印
  ルト云フコトデアリマス、登壇ヲ願ヒマス
  〔床次竹二郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕
  (「松浦五兵衞君ガ手ヲ拍イテ居ル」ト呼フ者アリ〕

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• 067・議長(島田三郞君)

  ○議長(島田三郞君)　不規則ノ言ヲ止メマス

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• 068・床次竹二郞君

  ○床次竹二郞君　諸君、本員ハ今日ノ時局ニ際シテ、現內閣ガ日支ノ親善ノ關係
  ヲ增シ東洋ノ永遠ノ平和ヲ維持センガ爲メニ玆ニ日支間ノ關係ヲ解決シヤウトシテ努
  力致サレタ事ニ付キマシテハ洵ニ感謝致スノデアリマス、又其要求セラレタ條件モ吾〓ノ
  平生希望スル所デアリマスカラ、是亦大ニ滿足致スノデアリマス(「ソレデ宜シイ」ト呼フ者
  アリ)唯彼我ノ誠意ガ能ク貫徹致サナカッタ譯デモアリマスカ、獨リ案件其モノニ付テノ解
  決ガ不充分デアルノミナラズ、兩國民ノ間ニモ感情ヲ惡ク致シタ影響ガアルヤウニモ考ヘ
  マス、此點ハ大ニ遺憾トスルトココデアリマス、先刻外務大臣ヨリ大體ノ御報告ヲ得マシ
  タガ、右樣ナ次第デアリマスカラ尙ホ數箇ノ點ニ付テ玆ニ御尋ヲ致シテ置キタイト考ヘル
  ノデアリマス、第一ハ本件交涉ノ開始ハ突然ニ袁大總統ニ提出セラレタヤウニ承リマ
  スガ、果シテ左樣ナ手續デアリマシタデアリマセウカ、之ヲ承リタイノデアリマス、或ハ普通
  ノ場合ニハ先ヅ外務當局者ニ交涉ヲ開カレルヤウニモ聞キマスガ、ソコノ所ハ如何ナモノデ
  アリマスカト云フコトヲ承リタイ、次ニ談判ノ開始サレル前後ニ、第三國ニ案件ノ內容ヲ
  通告ト申シマスカ若クハ內示ト申シマスカ、免ニ角通告ナリ內示ナリヲセラレタルモノデア
  リマスカドウカ、之ヲ承リタイノデアリマス、若シ內示致サレタトスルナラバ案件ノ全部デア
  ルカ又ハ一部デアルカ、ドノ邊ノ程度マデ內示致サレタノデアルカヲ承リタイノデアリマス、
  世間ニ傳フル所ニ依リマスレバ、同盟國其他ヨリ質問ガアリマシテ、希望條件デアルト云
  フコトヲ成程是ハ略シマス、先程希望條件デアルト云フコトヲ承リマシタカラ日ハハ
  シマス、次ニ此第五項ハ先刻ノ御說明デ希望デアルト云フコトヲ承リマシタガ、希望ト
  要求トハ其間ニドレ程ノ差別ガアル譯デアリマセウカ、其所ヲ承リタイノデアリマス、或ハ
  第五項ハ先程ノ御說明ニ依リマスレバ、强テコチラノ主張ヲ貫徹シタイト云フ御考モナ
  イ如クニ考ヘラレルノデアリマスガ、若シ左樣ナコトデアリマスルナラパ之ヲ始ヨリ要求案
  件ノ中ニ列記致サレズシテ、交涉セラレタコトデアッタナラバ如何ナモノデアルカト云フ考ヲ
  持テ居ルトコロヨリ、御尋致ス次第デアリマス、其次ニ御尋致シタイコトハ交渉ノ半ニ
  先程元田君ヨリ質問セラレタ如ク、交替期ニ先立ッテ兵ヲ送ラレタト云フコトハ其理
  由、事情等ガアレバ詳シク承リタイノデアリマス、其次ニ御尋致シタイコトハ第五項ヲ後日
  ノ協商ニ御讓リニナッタノデアリマスガ、其理由ハ如何ナルコトデアリマスカ、讓ラレタニ付
  テハ後日協商ヲナスニ何等カノ餘地ヲ存シテ留保サレルトコロガアッタモノデアリマスカ否
  ヤ若シサウ云フコトガアリマシタナラバ、如何ナルコトガアルカト云フコトヲ御示シヲ願ヒ
  タイ尙第五項ノ中ノ南支鐵道ニ付テハ特ニ第三國ノ關係ヲ尊重シ修正ヲ加ヘト、外
  務省ノ交渉〓末ニ載ッテ居リマスガ(「議員ノ一年生」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=68

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• 069・議長(島田三郞君)

  ○議長(島田三郞君)　靜肅ニ··

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• 070・床次竹二郞君

  ○床次竹二郞君　第三國ノ關係ノアルト云フコトハ初メヨリ御調査ニナッテ居ッタコト
  デアリマスカ、又ハ交渉ノ半ニ至ッテ明瞭シタコトデアリマスカ、ソレヲ承リタイノデアリマス、
  其次ニ交涉ガ難局ニ陷ッタ際ニ-難局ト言ッテハ語弊ガアルカ知リマセヌガ、免ニ角
  行惱ミニナッタ際ニ、第三國ヨリ何等カ帝國政府ニ申込ミタルコトガアルヤウニモ傳聞致
  シマス、先程アッタヤウニ御話ニナッタ如ク承リマスガ、果シテ事實デアルナラバ如何ナル事
  柄デアリマシタカト云フコトヲ承リタイ、其次ニ最後通牒ニ至ッテ大讓歩ヲナサレテ居ルヤ
  ウデアリマスガ、右ハ如何ナル理由ニ基クノデアリマセウカ、四月二十六日デアリマシタカ、
  第二修正等ノ際ニ此大讓步ヲナスコトナクシテ、最後通牒ヲナスニ當ッテ大讓〓ヲヲサ
  レタ、ソレハ如何ナル理由事情ガアッタノデアリマスカ其次ニ承リタイコトハ最後通牒
  ノ前卽チ新聞ニ依リマスレバ五月ノ三日若クハ四日頃ニ支那ノ各地ノ領事ニ於テ、
  居留民ニ引揚準備ノ諭達ヲ與ヘラレテ、從ッテ居留民ニシテ引揚ケタ者モ少クナイト云
  フコトヲ承リマスガ、右領事ニ何カ本省ヨリ訓令ノ筋デモアッタモノデアリマスカ否ヤ、若
  シ又左樣ナル訓令ヲ出サレタト云フナラバ、其理由ハ如何ナル譯デアルカト云フコトヲ承
  リタイ次ニ膠州灣ノ還付ニ付テハ日支ノ關係ヲ考ヘ、東洋ノ全局ノ平和ノ爲メニ之
  ヲ還付セラレルト云フコトハ、洵ニ帝國ノ公明ナル態度デアッテ、本員ニ於テハ是ハ
  異議ハアリマセヌ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)唯コチラノ自由ニ處置シ得ベキ所ノ膠州
  灣ヲ彼ノ場合ニ於テ還付スルコトヲ聲明セラレタト一云フコトハ談判交渉ノ結果聲明セ
  ザルヲ得ヌコトニナッテ聲明サレタモノデアルカ、ソレ等ニハ全ク自由デアッテ、全ク帝國ノ
  好意ヨリ聲明ヲサルルニ至ッタモノデアリマスカ否否ト云フコトヲ承ッテ置キタイ、其次ニ承
  リタイ事ハ此度ノ交渉談判ニ付テハ度〓機密ガ外間ニ漏レタコトデアッテ、外交ノ交
  涉ニシテ斯ノ如ク機密ノ漏洩サレタコトハ、本員共ハ承知セヌ所デアリマスガ、日本ノ態
  度ガ支那竝ニ第三國ニ分ッテ談判上ニモ又ハ兩國民ノ間ノ感情ノ上ニモ不利尠ク
  ナカッタト考ヘルノデアリマス、之ガ爲メニハ或ハ將來日本ノ外交ノ信用ニモ關係ガアラウ
  カト思フデス、其邊ニ付テハ外務大臣ハ何等カ手段ヲ執ラレタモノデアリマスカ否ヤ、之
  ヲ承リタイノデアリマス、モウ一箇條、近時新聞ニ依リマスレバ排日運動ガ支那ノ各地ニ
  起ッテ居ルヤウデアリマスガ、政府ハ其原因ヲ如何ニ御觀察ニナッテ居ルノデアリマセウ
  カ、且ツ此運動ハドレ程續ク御見込デアリマセウカ、又ソレニ付テハ何等カ政府トシテ方
  法ヲ講ジテ居ラレルノデアリマセウカト云フコトヲ承リタイノデアリマス
  〔外務大臣男爵加藤高明君登壇〕

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• 071・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　唯今床次サンヨリ縷々御尋ノ趣ニ對シテ、成ルタケ
  詳細ニ御答致シタイト思ヒマスカラ、成ルベク靜ニ御聽ニナルコトヲ希望致シマス、支那ノ
  大總統閣下ニ對シ突然ノ要求ヲシタト云フ事實ガアルカ然ルヤト云フコトガ第一間デアツ
  タト思ヒマス、突然ト云フ言葉ハ種々意味ノ取リ方モアリマセウガ、一月十八日ニ於テ
  我日置公使ハ袁闇下ニ謁見ヲ致シテ、日支兩國ノ親善ヲ增シテ、其交際ヲ益、親密ナ
  ラシムル爲メニ日本政府ノ提議スル所ハ斯ノ如シ、就テハ支那政府ニ於テ十分ノ好意
  ヲ以テ之ニ應ゼラレンコトヲ希望スルト云フ趣意ヲ、詳シク申述ベタ次第デアリマス、ワレ
  ガ日支交渉ノ發端トモ申シテ宜シイ袁總統閣下ハ此意ヲ諒トシテ、其外交總長ニ交
  涉ノ任ニ當ルコトヲ命ゼラレテ、爾後數十囘ノ會議ガ行ハレタ次第デアリマス、其次ノ
  御尋ハ要求ト希望ノ差別、是ハ演說中ニモ又其後ノ御質問ニ對シテモ既ニ申述ベタト
  存ジマスガ、更ニモウ一遍繰返シマスレバ要求致シマシタ事ハ當然我國及我國人ガ得ナ
  ケレバナラナイ筈ニナッテ居ル所ノモノヲ、支那政府ヲシテ承認ヲ爲サシムルト云フ類ノコ
  トヲ要求シテ提出致シタ、其他ノ事ハ若シ支那政府ニ於テ之ヲ採用セラルレバ日本ノ
  爲メニモ支那ノ爲メニモ極メテ利益多カラウ、成ルベク採用サレンコトヲ望ムト云フ性質
  ノモノヲ、要求條項トハ區別シテ初メカラ提出致シタノデアル、サレバト申シテ希望ト申シ
  タ所デ、唯言ヒ出スダケデ取捨撰擇一ニ君ノ自由ニ在ルト」云フ次第デハナイ、相當ノ理
  由ヲ述ベテ精々其希望ヲ達スルコトニ力メルツモリハ固ヨリ持ッテ居ッタノデアル、ソレダケノ
  區別、ソレカラ交代兵ガ前キニサレタト云フコトニ付テハ、是ハ軍事主任ノ大臣ヨリ答辯
  ガアル筈デアリマスカラ是ハ略シマス

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• 072・床次竹二郎

  ○床次竹二郞君　甚ダ失禮デアリマスガ、第二番目ニ御尋致シマシタ談判ノ開始前
  後ニ、第三國ニ政府ヨリ案件ノ內容ヲ、用語ハ知リマセヌガ通告ト云フカ內示ト云フカ、
  兔モ角案件ノ內容ヲ第三國二示サレタコトガアルノデアリマセウカ、アルナラバドウ云フ程
  度マデ示サレタノデアルカト云フコトヲ承リタイ

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• 073・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　成程其御尋ガアリマシタコトヲ忘レテ居リマシタ、談
  判ノ開始前デハアリマセヌ、開始後ニ我同盟國其他二三ノ友邦ニ對シテ要求條項トシ
  テ支那ニ提出致シタ其大意ヲ內示致シマシタ、是ハ別ニ彼等ニ內示スルノ義務ガアル爲
  メデナク、彼等ニ於テモ之ヲ知ラレテ居ル方ガ便利デアル、便利上好意ヲ以テ內示シタコ
  トガアリマス、內示スル義務モ何モナイ事ト御承知ヲ願ヒタイ、而シテ希望條項ハ之ヲ通
  告內示スル別段ニ必要モナイト信ジテ、其當時內示シナカッタノデアリマス(「其理由如何」
  ト呼フ者アリ)此事ニ付テ世上往々疑惑モアルヤウデアリマス、外國新聞ニ現ハレタコト
  ガ日本ニ移ッテ、外國ノ取次ギヲシテ居ルヤウナ人ガアルヤウデアリマスカラ申述ベマスガ、
  是ハ一ニ便宜ノ問題デアッテ、前ニモ申上ゲルガ如クニ何モ何處ノ國ニモ內示通告ヲス
  ル義務ガアル爲メデハナイ、是ダケノコトヲ內示シテ置クコトガ便宜デアルト云フ見計ヒノ
  話デアル別段ニ之ヲ隱祕スルトカ云フヤウナ趣旨ニ出デタモノデハ無論ナイ、然ルニ是
  等ノ事ガ新聞ニ誤リ傳ヘラレタリシテ、是モ序ニ知ラセテ置ク方ガ便利ト認メテ程ナク知
  ラシタノデアル、ソレモ別段ニ何處ノ國カラモ催促ヲ受ケタノデモ何デモナイ、其方モ序ニ
  知ラセテ置ク方ガ便利デアラウト云フノデ知ラセタノデアル內示ヲシタトコロノ時日ニ於
  テハ兩者ノ間ニ差ガアルト云フコトヲ玆ニ申上ゲル、ソレカラ第五項ヲ後日ニ讓ッタコトニ
  付テ、留保シタコトガアルヤ否ヤト云フ御言葉デアリマシタガ、ドウモ意味ガ能ク私ニ分リ
  マセヌデシタ、是ハ後日ノ商議ニ讓ルト云フコトヲ此方カラ申込ンダ最後通牒ニ申込
  ンダノデアリマス支那政府ハ其最後通牒ノ趣意ニ從フタノデアリマスカラ、彼ニ於テハ後
  日商議スルコトヲ信ジテ居リマス

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• 074・床次竹二郎

  ○床次竹二郞君　甚ダ失禮デアリマスガ重ネテ申シマス、成ホド留保ナドト云フコトハ
  本員ガ慣レヌモノデアリマスカラ、全ク何等何ト言ヒマスカ、話合ト云フカーーナシ
  ニ單純ニ其儘將來ノ協商ニ讓ル、斯ウ云フコトニナッタ次第デアリマスカト云フコトデア
  リマス

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• 075・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　其通リデアリマス、二十六日ニ申出シタ時ガ將來
  ノヤハリ商議ニ讓ルトシテアルノデス、支那政府ノ代表者ガ會議中ニ口頭ヲ以テ申述
  ベラレタ次第デ、後日斯クノ如キ事ヲ爲ス意志アリ、他日斯ウ云フコトヲシテモ宜イト
  云ンコトヲ存ジテ居ル其言ハレタコトヲ記錄ニ止メテ置カウト云フ次第デ二十六日ニ
  申出シタノデ、然ルニ承諾ヲ得ズシテ最後通牒ニ至ッタ時ハ、其記錄ニ載セルト云フ要
  求ヲ撤囘シテ、我ガ通牒ニ於テ後日ノ商議ニ讓ルト云フコトヲ記載シタト云フニ止マ
  ル次第デアリマス、次ニ御尋ネニナッタコトガ南支鐵道ト第三國トノ關係、第三國ガ
  其地方ニ於テ既ニ何等カノ權利ヲ持ッテ居ックト云フコトヲ知ッテ居ッタノカ、知ラズシテ
  居ッタノカト云フ御尋ネデアリマス、是ハ其中ノ或ルモノニ付テハ或或三國ガ既ニ權利ヲ
  得ター借款ノ契約ヲ得タト云フコトヲ聞イテ居ッタノモアリマス、三線ノ中一線ハ存
  ジマセヌデアリマシタ、併ナガラ我政府ノ敷設ヲ望ンダトコロノ線路ハ第三國ガ旣ニ借
  款ノ權利ヲ得テ居ル所ト全ク同一デハナイノデアル、地方ガ同ジ地方デアルト申ス譯デ、
  同一ノ線路ヲ要求シタ次第デハナイ、ソレカラ交涉難局ト云フコトヲ仰ッシヤッタヤウデ
  ス、難局ノ際ニ何等カ第三國ヨリ申込アリタルヤ否ャ是ハ先刻元田サンノ御尋ネト
  重複スルモノデハナイカト思ヒマス、元田君ハ强硬ナル申込ヲ受ケタルヤ否ヤ床次サ
  ンハ穩カニシテ何等カ申込ヲ受ケタルヤ否ヤ、先刻モ申上ゲタ通リ同盟國トノ間ニハ、
  此事件ニ付テ屢〓意見ノ往復モ致シマシタ、而シテ同盟國タル英國ハ日支兩國ノ
  交涉事件ガ圓滿平和ノ間ニ解決セラルヽコトヲ切ニ希望シテ居ラレマシタト云フコトハ、
  事實デゴザイマス、是ハ支那ニ於テ其國人ガ大ナル利害ヲ有ッテ居ル關係カラ當然
  ナル希望デアルト、我ガ政府ニ於テモ充分此希望ニ對シテハ尊敬ヲ拂ッテ居ッタ次第
  テ、而シテ抗議デモナイ難題デモナイ、同盟國トシテ好意ハ常ニ保ッタノデ、日本ノ立場ヲ
  諒トスルト同時ニ、東洋ノ平和ガ是ガ爲メニ破ラザランコトヲ切ニ希望シテ居ラレタト云
  フコトハ事實デアリマスヽ而シテ詳細ニ御話申ス場合デナイト存ジマスガ、是ガ爲メニ英
  國ハ北京ニ於テ相當ナル行動ヲ取ラレタト信ズベキ理由ガアリマス、北京ニ於テ取ラレタ、
  卽チ此案件ヲシテ平和ノ間ニ解決ヲ告ゲシムルト云フコトニ付テ、北京ニ於テ相當ナ
  ル行動ヲ取ラレタト信ズベキ理由ガアリマス(拍手起ル)而シテ其使臣タル「サージヨンジ
  ヨーダン」此人モ或ハ本國政府ノ命令ノ結果トシ、或ハ其命令ヲ受クル前ヨリ日支兩
  國ノ交涉案件ヲ無事ニ平和ノ間ニ解決セシムルコトニ於テ大ニ努力セラレタ、是ハ我ガ
  政府ニ於テモ深ク其好意ヲ諒トシテ居ルト云フ次第ヲ諸君ニ御報告スルノハ、私ノ最モ
  喜ブトコロデアリマス、最後通牒ニ大讓步ヲ爲シタル理由如何、大讓步デアルカ小讓
  歩デアルカ、是ハ觀ル人ニ依ッテ違フノテ、併ナガラ此通牒ヲ對手國ニ出ス時ニ用ユル言
  葉ト、御互ノ間ニ議スルトコロトハ少シ輕重ガアルト云フコトハ御了解ヲ願ヒタイ、之
  ヲ公開ノ席ニ於テ詳ク私ノ意味ヲ辯明スルコトノ出來ヌノハ甚ダ遺憾デアリマスガ、聰
  明ナル諸君ハ果シテ私ノ意ガ何處ニアルト言フコトハ容易ニ御了解下サルデアラウト思ヒ
  さい、其讓步ヲ爲シタル理由ハ、支那政府ノ態度ハ充分我ヲ滿足セシムルモノデナイ、
  是ハ餘程和カイ言葉デアリマス、今日ハ交涉圓滿ニ解決シタカラ言葉ヲ極メテ謹ンデ居
  リマス、其當時ニ席上ニ發表シタ外務省ノ文書ニハ、モット强イ言葉ガアッタカ知レマセ
  又、今日ハ幸ニ平和ノ間ニ事ガ濟ンダノデアル、從テ私モ大ニ言葉ヲ謹マナケレバナラヌト
  云フコトハ御諒承ヲ願ヒタイ讓歩ヲナシタ理由ハ支那政府ノ態度右ノ如クアッタニ拘ラ
  ズ、如何ニセバ東洋ノ平和ヲ保ツコトガ出來ルカ、談判交涉ノ行掛リト云フモノガ出來
  テ居リマスカラ、二十六日ニモ已ニ讓歩ヲナシテ、其上ニ幾分デモ讓步ヲナスコトハ甚ダ
  苦痛デアル、日本臣民ニ於テモ苦痛テアルコトハ勿論デアリマスガ、殊ニ當局者タル拙者
  ニ於テハ頗ル苦痛ヲ感ジタ次第デアリマスガ、其苦痛ハ事ガ破レテ、兩國ノ間、干戈ヲ以
  テ見コル苦痛ニ比スレバ尙ホ小ナリ(拍手起ル)出來ナイマデモ平和ヲ計ラウ、無事ニ事柄
  ヲ平和ニ落著セシメヤウト云フ上カラ、力ヲ以テ致セバ何デモナイコトデアル、其儘ニ最
  後通牒ノ時ニ更ニ讓歩ヲ爲サヌデモ出來タカモ知レナイ、併ナガラ同時ニ出來ナカッタカ
  モ知レナイノデアル、平和ノ破レル處ノ危險ヲ成ルベク少ナクスルコトハ帝國ノ利益ナリト
  信ジテ、此ニ至ッテ更ニ讓歩ヲナシタト云フ理由ハ、先刻ノ演說ニ委シク申述ベテ置イタ
  次第デアリマス、最後通牒ノ前ニ滿洲其他支那ノ各地ニ於ケル居留民ニ引揚準備ノ
  諭達ヲ、領事ヨリ爲サシメタ、少々是ハ意味ガ違ッテ居リマスガ、本月ノ三四日ノ交ニ至ッ
  テハ或ハ日支兩國ノ間ニ平和ノ關係ヲ持續スルコトハ困難デアルカト云フ狀況ガ現ハ
  レテ來タノデアリマス、萬一事ガ破レル時ニ至ッテハ、我同胞ノ生命及ビ財產ニ如何ナル
  危害ノ加ハルコトノ生ゼザルトモ限ラヌノデアリマス、豫メ事ガ大事ニ赴キツヽアルト云フ
  コトヲ領事ニ內報シテ、各地ニ於ケル居留人民ニ對シテ必要ナル注意ヲナシテ、不幸ニ
  シテ兩國ノ間ノ關係ガ破裂ニ及ンダ時ニハ、場合ニ依ッテ立退カナケレバナラヌダラウシ、
  其他ノ片付ケモ致サナケレバナラヌカラ、豫メ其心得マデニ其事態ノ迫ッタコトヲ知ラセル
  コトハ政府ノ當然ノ職務トシテ之ヲ實行シタ次第デアリマス(拍手起ル)膠州灣還附
  ノ事ハ床次サンハ政府ト所見ヲ同ジウセラレタ、誠ニ喜バシイ次第デアリマス(拍手起ル)
  公平ナル人ハ、又大局ニ通ズル人ハ斯クノ如クナクテハナラヌノデアリマス(拍手起ル)不
  幸ニシテ黨ヲ異ニシテ居リマスガ、誠ニ平常カラ尊敬シテ居ル床次サンニ對シテ、一層尊
  敬ノ度ヲ增スト云フコトヲ申スコトヲ得ルノハ私ノ極メテ欣幸トスルトコロデアリマス(笑
  聲起ル)決シテ笑ヒ事デナイ、私ハ眞心ヲ以テ話シテ居ル、之ヲ申出シタノハ時ヲ得タル
  ヤ否ヤ、此御尋ノ意味ガ能ク分リマセヌデアリマシタガ、此場合ニ申出スコトハ無用デナカッ
  タカト云フ意味ガ含ンデ居ルカト思ヒマス、若シ間違ソテ居リマシタラ御訂正ヲ願ッテ、更ニ
  御答ヲ致シテモ宜イ、、膠州灣還附ノ理由ハ已ニ先刻來屢〓申述ベク通リノ事デアリマス、
  而シテ是ハ交涉中ノ或ル時期ニモ必要ヲ感ズルニ於テハ申出サウト云フコトハ、豫テ政
  府ニ於テ極メテ居ッタ次第デアリマス、我政府ノ提案ニ對シテ談判ガ未ダ酬ナルニ至ラザ
  ル時ニ於テ、支那政府ヨリ對案ガ出タノデアル、其對案ノ中ニ膠州灣ノ還附ト云フコト
  モ彼ハ希望シテ居ル、ソレカラ歐洲ニ於ケル平和會議ニ支那ハ參列スル事ノ權利ヲ日
  本ニ於テ承認スベシト云フ要求モ見エテ居ッタ、又日本ハ山東ニ於テ兵ヲ用井タニ付テ、避
  クベカラズシテ起ッタ處ノ損害ノ賠償ヲナスベシト云フコトモ、其當時支那ノ對案ニ見エテ
  居ッタ、守備隊ノ至急撤退、其他軍事施設物ノ卽時撤廢ト云フヤウナコトモ見エテ居ッ
  タノデアリマス、其當時我ガ日置公使ハ其要求條項ノ謂ハレナキコトヲ委シク陳述ニ及
  ンデ皆之ヲ斥ケタノデアル、獨リ膠州灣還附ノ一事ハ、我政府ニ於テモ意志アルコト故
  ニ、是ハ後日ノ相談トスルコトニ致サウト言ッテ、絕體ニ排斥致サナカッタ關係デアル、故
  ニ談判中何時カハ之ヲ申出サナケレバナラヌヤウナ行掛リモアリマスガ、我政府ノ意志ハ
  支那ニシテ我ノ要求ヲ大體ニ於テ容レヽハ-容レテ而シテ彼ニ於テ其好意ヲ我ニ示
  セバ、我モ亦大局ニ鑑ミテ此事ヲ提言スベシト云フ意志ガアリマシタ所、二十六日ニ於
  テ論ズベキコトハ論ジ、議スベキコトハ殆ド議シ盡シテ、此ニ至ッテ雙方ノ主張ヲ纏メテ結
  著ヲセシメナケレバナラヌト云フ時ニ當ッテ、彼ニ於テ讓歩スルコトハ-我ニ於テ望ムコ
  トハ讓歩ヲ求メ、我ニ於テ彼ノ條件ニ同意スベキコトハ同意ヲ表シ、修正案ナルモノヲ作〃
  タ時ニ於テ、此時ニ至ッテ膠州灣還附ノコトニ付テノ聲明ヲナスコトノ至當ナル時期ト
  考ヘテ、ソレヲ申出シタ次第デアリマス、是ハ理由ガアルニ拘ラズ爲シタノカ、或ハ右ノ如
  キ聲明ヲ爲サヾルヲ得ザル事情ガアッテシタカ、何等其時ニ於テ爲サザルベカラザルト云フ
  義務ハ有ッテ居ラヌ、我政府ハ全ク自由ニ之ヲ爲スコト適當ナリ、之ヲ爲スコト得策ナ
  リト考ヘテシタノデアリマス、機密ノ漏レタコトニ付テノ御尋是ハ御尋ノ要點ガ孰レニア
  ルヤラ私ニハ能クハ分リマセヌデシタ、私ハ御承知ノ如ク餘程祕密家デアルト云フ評判ヲ
  受ケテ居ルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」)私カラモ政府カラモ漏レタコトハ無論ナイノデアル
  併シ支那ニ於テハ隨分漏レメヤウデアリマスガ、是等ノ事ニ付テモ最後通牒ノ發送ヲナ
  シタコトヲ諸君ニ御報告スル場合ナラバ尙ホ委シク申述ベマスガ、今日ハ已ニ平和ニ局
  ヲ結ヒツヽアル際デアリマスカラ、格別必要モナイトスレバサウ云フコトモ餘リ述ベヌ方ガ
  宜イト思ヒマスカラ述ベマセヌ次第デアリマス(拍手起ル)併シ其祕密ヲ孰レヨリ得ラレタ
  カ、俗ニ政友會ノ機關ト稱セラレタ所ノ中央新聞ナドニハ事實デナイコトガ多カッタノ
  デアリマスガ、免ニ角事實トシテ盛ンニ記載セラレタ、是ガ機密ノ漏レタト云フコトニナル
  カ存ジマセヌガ、サウ云フコトガアッタヤウデアリマス、其他我國ノ主ナル新聞紙ニ於テハ國
  際交涉ノ事ノ大切ナルコトニ考ヘラレテ、際立ッテ謹愼ノ態度ヲ執ラレタ、隨分聞込ノコ
  トモアッタカ知レマセヌガ、ソレニモ拘ラズ交渉談判ニ妨害ノアルコトヲ成タケ記載シナイヤ
  ウニ努メラレタ如キ形跡ガアッタコトハ、實ニ新聞紙ノ公德ノ大ナルコトトシテ私ハ深ク感
  謝スルノデアリマス(拍手起ル)ソレカラ排日運動ノ繼續如何是モ支那ノ各地ニ行ハ
  レテ居ルヤウニ御話デアリマシタガ、今日マデ政府ニ報告ノ達シマシタノハ、福州ニ於テ小
  サナコトガ一件アリマシタ、是モ疾ウニ片付キマシタ重慶ト申ス處ニ多少ノ事ガアリマシ
  タガ、是モ多分片付イタト思ヒマス續報ハアリマヒヌ、獨リ漢口ニ於ケル暴徒ハ稍激
  シイヤウデアリマシタガ、新聞記者諸君ノ事ヲ少シ由サナケレバナリマセヌガ、誤ラレテ居ラ
  レルノデ決シテ惡意デハデゴザイマセヌガ、アノ方面カラ來ル報道ハ少シ誇大ニ失シテ居ル
  ヤウニ思ハレマス、政府ニ達シテ居ル公報ハ新聞紙ニ掲ゲラレテ居ル程デハアリマセヌ併
  シ十八日ニ於テ我ガ同胞ガ支那人ノ暴徒ノ厄ニ罹ッテ重傷ヲ負フタ者ガ六名、輕傷ヲ
  負フタ者ガ八名ト云フコトデアリマス、誠ニ大事件ニハ相違アリマセヌ、右ノ如クデ死ンダ
  者ハ一人モアリマセヌ、今日マデ右樣ノコトガ起ッタコトハ甚ダ遺憾トスル次第デアリマス
  是等ノ原因ニ付テハイロ〓〓〓究モ致シテ居リマスガ、明暸ニ分リマセヌガ、慷慨悲歌的
  ノ支那ノ新聞紙ノ煽動ノ結果カモ知レマセヌ、又漢口カラ來リタルトコロノ一ノ報知ニ
  據レバ獨逸人ノ煽動ニ係ルト云フコトモ申シテ來テ居リマス、是ハ併シ確デハアリマセ
  ヌ、サウ云フ想像ニ過ギヌノデアリマス、尙全ク鎭靜ニ至ッテハ居リマセヌ、之ニ付テハ政
  府ハ既ニ數囘北京ノ中央政府、竝ニ武昌ノ地方政廳ニ對シテ嚴重ナル警告ヲ加ヘテ、
  斯ノ如キコトガ若シ尙續キ、或ハ他ノ場所ニ於テ起ルト云フコトガアレバ兩國ノ國際上
  由々シキ事件ガ更ニ起ル、就テハ支那政府ニ於テ速ニ相當ノ處置ヲ執ラルベシト云フコト
  ヲ屢〓書面及口頭ヲ以テ怠ラズ注意ヲ致シテ居リマス、支那政府ニ於テモ全ク之ニ
  同感デアリマシテ、相當ノ手段ヲ執ラレテ居ルコトト確信致シマス、就テハ暴動ノ繼續ニ
  付テハ幾日間ニ熄ムト云フコトヲ斷定スルコトハ出來マセヌガ、程ナク鎭靜シテ常態ニ復
  スルコトト信ジテ居リマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=75

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• 076・床次竹二郎

  ○床次竹二郞君　唯今質問致シマシタガ、言葉ガ足ラナイデ誤解ニナッタカト思フトコ
  ロガアリマスカラ重ネテ申上ゲマスガ、最後通牒ニ於テ「大」ト云ッタノガ耳障リニ御取リニ
  ナッタヤウデスガ、免モ角モ最後通牒ニ於テ讓歩ヲ爲サレタノハドウ云フ意味デアルカト云
  フ御尋ヲ致シタ趣意ハ、四月二十六日ノ第二修正案ノ際ニ最後通牒ニ「大」ト同
  ジヤウナ決心ヲ當局ニ於テ執ラレタコトナラバ、或ハ其時ニ於テ事件ガ圓滿ニ解決シナカッ
  タノデハアルマイカト云フ考ヲ持ッテ居ル、其時ニ解決致サズニ最後通牒ニナッテ大讓步
  ヲサレテ、コヽデ解決ヲ致シタト云フ、其邊ノ事情ガドウ云フ譯ノモノデアルカー承リタイト
  云フ趣意デアリマス、此事ニ付テ先程元田君ノ論ニ對シテモ、最後通牒デ收メナケレバ
  戰爭ニナルデハナイカ、戰爭ヲヤッテモ尙構ハズヤルノデアルカト云フヤウニ吾ミノ意思ガアル
  如ク御取リニナルコトハ、是ハ甚シイ間違デアリマス、其事ハ斷ジテ玆ニ申上ゲテ置キマ
  ス、唯今申ス如ク最後通牒ニ於テ讓歩ヲ爲ス大決心ヲセラレタコトガ、四月二十六日
  頃ニ出來タコトデアッタナラバドウデアラウカト云フ考ヲ持ッテ居ルカラ、其處ノ邊ノ理由ヲ
  承リタイト云フノガ趣意デアリマス、ソレカラ次ニ最後通牒前ニ居留民ニ引揚ノ準備ヲ
  命ゼラレタノハ、如何ニモ注意ヲ加ヘラレタ次第デアリマセウガ、最後通牒ノ廟議ノ決定
  サレタノハソレヨリズツト後ニナルコトデアル、其前ニ斯ノ如キ處置ヲ執ラレタコトヲ御尋ネ
  致シタ次第デアル、ソレカラ尙膠州灣還附ノコトニ付テハ些カ私ノ言葉ガ足リナカッタノ
  デ、誤解ヲ懷イテ居ラレルヤウテアル、又誠ニ御賞讚ノ言葉ヲ頂戴シテ名譽ニ考ヘマスガ、
  私ハ膠州灣還附ハ、方法ト條件トニ依テハ勿論差支ナイト云フ考ヲ持ッテ居ルノデアリマ
  スケレドモ、唯今御尋ヲ致シマシタ趣意ハ、聊カ其邊ニ不滿ガアル爲ニ、綺麗ナ高明ナ
  ル日本ノ態度ニ依テ自由ニ決セラレタノデアルカ、交涉ノ結果已ムヲ得ズ其處ニ到ラナ
  ケレバナラヌコトニナッテ還附ノコトヲ聲明サレタノカ、ドウカ、ソレヲ御尋致シタイト云フ趣
  意デアリマス、他ニ誤解ヲ招イダ點モアリマスカラ其趣意ヲ辯明スルト共ニ、併セテ其事
  ヲ御尋ヲシテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=76

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• 077・菊池武徳

  ○菊池武德君　此場合チヨット發言ノコトニ付テ確メテ置キタイコトガアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=77

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• 078・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　菊池武德君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=78

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• 079・菊池武徳

  ○菊池武德君　先程床次君ガ外務大臣ニ對シテ一問一答ノ請求ヲシタトコロガ、ワ
  レハ總テ言了フテ後ニスルト云フコトニナッタノデアリマス然ルニ外務大臣ノ發言中ニ於
  テ、床次君ハ愼重ノ態度ヲ以テ甚ダ失禮デスガト言フコトヲ言ッテ、隨分充分ナル發言
  ヲサレタヤウデアリマスガ、其事ハ(「答辯者ガ承知シタカラ」ト呼フ者アリ)答辯者ノ意ニ
  委セルト言言コトデアリマスレバ議長ハ之ヲ許シ、之ヲ先例トシテ彙纂ノ中ニ書遺ス考デ
  アリマスカ、ソレヲ確メタイト思ヒマス、若シ之ヲ差支ナイモノトスレバ、非常ナ惡慣例ヲ
  遺スノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=79

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• 080・島田三郎

  ○議長(島田三郎君)　御答致シマス-他ノ言論ヲ禁ジマス、答ヘル方ニ御異存ガ
  ナケレバ成ルベク干涉ヲ致サヌ、其前ニ申シタ言葉ニ對シテナラ議長ハ之ヲ止メマセヌ、併
  ナガラ他ニ之ニ向ッテ故障ノアル御方ガアレバ實ハ著席ノ所カラ問答ヲ爲サルノハ不規
  則ト考ヘマス、斯樣ナルコトハ屢〓セラレザランコトヲ望ミマスー-加藤外務大臣
  (外務大臣男爵加藤高明君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=80

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• 081・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　床次サンハ私ニ御尋ネニナッタノカ、趣旨ヲ御說明ニ
  ナッタノカ能ク了解致シマセヌデゴザイマシタガ、私ノ言葉ヲ御繰返シニナッタノニ少々間
  違ガアリマスカラ、ソレダケハ正シテ置ク必要ガアルト思ヒマス、卽チ支那ニ於ケル在留ノ
  同胞人ニ對シテ引揚準備ノ命令ヲ發シタト云フ御話ガゴザイマシタガ、命令ハ何等發シ
  マセヌ、先刻申上ゲマシタ通リ事或ハ重大ノ場合ニ至ルカモ知レヌカラ、立退等ヲ要ス
  ル事變ガ生ジナイトモ限ラヌカラ、其心構ヘヲ爲セト云フ注意ヲ領事ヲシテ爲サシメタ、
  引揚ノ命令トハ全ク違ヒマスカラ、其事ダケハ辯明ヲ致シテ置キマス、其外御尋ガアリマ
  シタガ、是ハ又規則ニ違フカ知レマセヌガ(笑聲起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=81

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• 082・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　次ヘ移リマス-同陸軍大臣
  〔陸軍大臣岡市之助君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=82

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• 083・岡市之助

  ○陸軍大臣(岡市之助君)　唯今床次君ノ御質問ノ交替兵ヲ期ニ先立ヲテ派遣ヲシ
  タノハドウ云フ譯カト云フ御質問デゴザイマシタガ、之ニ關聯ヲ致シマシテ元田君ノ御質
  問中ニ、威嚇的趣意ニ於テ兵ヲ派遣シタノデハナイカト云フ御質問デアッタヤウニ承リマシ
  タガ、此滿洲及靑島ニ交替兵ヲ派遣ヲ致シマシタノハ三月ノ中旬ノコトデゴザイマシテ、
  是ハ豫定ノ行動デゴザイマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)滿洲ニ付テ申上ゲマスルト例
  年三月若クハ四月ノ候ニ於テ交代ヲサセテ居リマヌ、本年ハ三月ニ交代ヲサセルト云フ
  最初カラ豫定ヲシテ居リマシタノデ(「嘘ヲ言フナ」「餘計ナコトヲ云フナ」ト呼フ者アリ)當
  局者ガ責任ヲ以テ御答ヲスルノデアリマスカラドウゾ······(「僞リヲ言フテハイケマセヌ」ト
  呼フ者アリ)

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• 084・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜肅ニ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=84

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• 085・岡市之助

  ○陸軍大臣(岡市之助君)　ドウゾ御聽取ヲ願ヒマス、ソレカラ靑島ノ方ハ是モ交替ヲ
  サセル豫定ニシテ居リマシタノデ、實ハ交替兵ガ出マスルマデハ昨年靑島攻圍軍ニ從事
  致シマシタル所ノ兵ノ一部分ヲ留メ置キマシタ次第デゴザイマス、餘程長クナリマスカラ
  之ヲ交替サセルト云フ計畫ヲ豫メ立ッテ置キマシテ、之ヲ滿洲ノ方ト殆ド同時ニ交代サ
  セル目的ヲ以テ新ニ兵ヲ出シマシタ所ガ、此交替兵ガ彼ノ地ニ到著ヲ致シマシタ頃ヒハ、
  恰モ滿洲及靑島ニ於キマシテ不穩ノ狀況ヲ認メマシタノデ、若干日間交替ヲシテ歸ル
  兵ヲ止メテ置キマシタ次第デゴザイマス、何等別段ノ意味アル次第デハゴザイマセヌ、左樣
  御承知ヲ願ヒマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=85

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• 086・元田肇

  ○元田肇君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=86

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• 087・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　順序ガゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=87

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• 088・元田肇

  ○元田肇君　先刻陸軍大臣ハ御答辯ガナイニ依ッテ私ハ默シタノデアリマスガ、既ニ答
  辯サルヽナラバ此際一二問ダケ御許シヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=88

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• 089・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　順序ガアリマスガ、極ク簡明ニ要點ダケヲ御話ニナルナラバ特
  ニ許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=89

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• 090・元田肇

  ○元田肇君　騷動ガ起ッタト云フノハ、如何ナル騒動デアルカト云フコトヲ承リタイ、第
  二ハ(「順序ガアル」ト呼フ者アリ)膠州灣還附ニ付テデアリマス、軍隊ノ血ヲ流シテ取ッ
  タ所ノモノヲ容易ク放棄スルト云フコトヲ致シマシタナラバ、將來我國民ノ奉公心ニ影
  響シ、忠誠ナル國民性ヲ頽敗セシムルコトハアルマイカト申シマシタ所ガ、外務大臣ハ是ハ
  當局者カラ答ヘルデアリマセウガ、軍隊ハ陛下ノ命令ニ依ッテ行フノデアルカラ斯樣ナ
  コトハナイト云ハレマシタガ、軍事當局者ハ如何ナル御考ヲ持ッテ居リマスカヲ伺ヒタイ
  (「發言ヲ許シタノデスカ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=90

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• 091・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　御答ヲ致シマス、順序ハ次ニ移ルベキデアリマスガ、若シ陸軍
  大臣ガ簡單ニ御述ベニナッテ、是ガ片付クナラバソレダケハ特別ニ許シマス、若シ長ク問
  答ヲ續ケルヤウナコトデアルナラバ、是ダケニ止メマス-岡陸軍大臣
  〔陸軍大臣岡市之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=91

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• 092・岡市之助

  ○陸軍大臣(岡市之助君)　元田君ノ御質問ニ御答ヲ致シマスルガ、私ハ騒動ガ起ル
  トハ申シマセヌ、起ル兆候ガアルト申シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=92

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• 093・元田肇

  ○元田肇君　ドンナ兆候ガ···

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• 094・岡市之助

  ○陸軍大臣(岡市之助君)　ソレハ一々此處デ申上ゲル必要ハゴザイマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=94

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• 095・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　規則ニ依ッテ發言ヲ止メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=95

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• 096・岡市之助

  ○陸軍大臣(岡市之助君)　ソレカラ血ヲ流シタ靑島云々ト云フコトデゴザイマシタガ、
  是ハ外務大臣ノ御答致シマシタ趣旨ト變リハゴザイマセヌ、卽チ軍隊ハ國家ノ目的ヲ遂
  行スル爲ニ陛下ノ御命ニ從フテ行動ヲスルノデアリマスカラ、其行動シタ結果ガドウデア
  ラウトモ、ソレハ軍隊ノ與リ知ル所デハゴザイマセヌ(拍手起ル)

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• 097・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　鈴木梅四郞君
  〔鈴木梅四郞君登壇〕
  〔「簡單々々」「長クヤリ給ヘ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=97

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• 098・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜肅ニ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=98

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• 099・鈴木梅四郎

  ○鈴木梅四郞君　私ハ外務大臣ニ向ッテ質問ガ第一ニゴザイマス、唯今外務大臣ガ
  床次君ノ質問ニ對シテ最後ニ御答ニナッタ排日問題、之ニ付テ少シ御尋致シタイ、私
  共ノ聞キマス所、又新聞デ見マスル所ニ依リマスレバ外務大臣ノ所謂圓滿ナル解決ヲ
  遂ゲマシタ其支那ニ於キマシテ、其談判ノ結了前ヨリ催シガアッタノデゴザイマスルガ、所
  謂排日問題、日本ノ臣民ニ對シテ危害ヲ加ヘ、日本ノ商店ニ對シテ亂暴ヲ働クト云フ
  コトガ現ニ盛ニ起リツツアル、又日本ヨリ輸出シマスル所ノ商品ニ對シテハ、總テ之ヲ排
  斥スルト云フ嚴重ナル決議ヲシテ著々實行シテ居ル、現ニ或商人ノ如キ-此排貨ノ
  同盟ニ入ッテ居ル商人ガソレヲ破ッテ、日本人ト約束シタ爲ニ其事ヲ發見サレテ罰金ヲ
  販ラレタト云フコトガアルタメ其商賣ハ其後ハ一向取引ガ無イト云フ一ノ例モアリマス、
  其他日本ノ商品ヲ或處ニ集メテ之ヲ燒棄テテ、非常ニ所謂排貨ノ勢ヲ昂メテ居ルト云
  フコトモ聞イテ居リマス、其他商業會議所ノ會頭ト云フヤウナ重要ナル人〓ガ、熾ニ此
  排貨、日本ノ貨物ノ排斥ト云フモノヲ非常ニ激シク論ジ、激シク之ヲ厲行スルコトヲ努
  メテ居ルサウデアリマス、此日本ノ國民ニ對シテ危害ヲ加ヘ、或ハ商店ニ對シテ妨害ヲ與
  ヘルト云フコトハ長ク續クト云フコトハナイデアラウト云フコトハ私共ハ是ハ信ジマスル、
  サリナガラ此排貨問題ト云フモノハ餘程注意ヲ要スル由々シキ問題デアルト思フ〔「ヒヤ
  ヒヤ」ト呼フ者アリ)御承知ノ如ク支那トノ貿易ハ、我國ノ貿易ノ重要ナル部分ヲ占メ
  テ居ルノデアリマス而シテ今後我國ノ商工業ノ發達致シマシテ、我國ノ國富ノ增進
  ヲ計ル天地ハ何レニアルカト申シマスレバ、第一ニ此支那ノ市場ト云フモノガ一番重要
  ナルモノデアルノデアリマス、然ルニ外務大臣ノ所謂圓滿ナル解決ヲ告ゲルヤ否ヤ、斯ノ
  如キ排貨問題ガ起シテ商工業者カラ見マスルト云フト、殆ド非常ナ打擊ヲ今日與ヘテ居
  ルノデアリマス、外務大臣ノ先刻ノ御說明ニ依リマスルト、至極簡單ニ事モ無ゲナ御答
  辯デアッタヤウデゴザイマスルガ、私共ハ左樣ニハ信ジラレナイノデアル、先年辰丸事件ト
  云フ問題ガアリマシテ、廣東方面、卽チ南〓方面ニ所謂日貨排斥ガ起リマシテ、其經
  過ヲ考ヘテ見マスルト能ク分リマスノデ、辰丸事件ナルモノハ此度ノ對支外交涉問題ニ
  較ベマスレパ、誠ニ事輕少ナ問題デアル、ソレニモ拘ラズ支那人ガ之ニ對シテ日本ノ商
  品ヲ排斥スルト云フ同盟ヲ結ンデ、我日本ノ貿易ニドノ位ナ妨害ヲ與ヘタデアラウカ
  ト云フト卽チ此問題ハ輕少ナ間題デアッタケレドモ頗ル長イ間我國ノ支那貿易ト云フ
  モノニ對シテ、妨害ヲ與ヘタト云フコトハ何人モ能ク記憶スルトコロデアリマス、此辰丸
  事件ニ較ベマスレバ支那人ニ取ッテハ最モヒドクコタエテ居ルトコロノ此度ノ問題デアッ
  テ見マスレバ、私共ハ此一例カラ申シマシテ今日ノ所謂日本ノ商品排斥問題ト云フモ
  ノハ、餘程我國ノ貿易ニ關係シ、我國ノ經濟ニ餘程關係ヲ及ボシハセヌカト云フ虞ヲ
  懷イテ居ルノデアリマスデ之ニ對シテ先刻排日問題ト云フコトデ簡單ニ御答ニナリマシ
  タガ、我臣民ニ危害ヲ與ヘ、商店家屋ニ妨害ヲ與ヘルト云フヤウナコトハ、外務大臣ノ
  所謂嚴重ナル警告ニ依ツテ之ヲドウカスルコトハ出來マセウガ、、支那一般ノ商工業者ガ或
  勢力ニ壓セラレテ、此排貨問題ヲ實行スルト一云フコトニ付テハ、ドウ云フ方法ドウ云フ御考
  案ガアルノデデゴザイマセウカ、是ハナカ〓〓私共ハ輕々ニ見テ居ル問題デナイト思フノデゴザ
  イマスルカラ、此邊ニ對シテ最モ經濟財政ノ上ニモ御考ノアル外務大臣トシテハ、相當御
  考ガアルダラウト思フ又我商工業者モ外務大臣ノ此說明ニ依マテ自分ノ商取引、若
  クハ工業ノ營業ノ上ニ付テハソレ手加減ヲスル考ヲスル必亜スガアラウト思ヒマスカラ、
  此黙ニ對シ外務大臣ノ明確ナル御答辯ヲ得タイトm心フノデアリマス、次ニハ大藏大臣ニ
  向ッテ財政方針ノコトニ付テ御尋ヲ致シマス、三十五議會ニ於キマシテハ、大藏大臣ハ時
  局々々ト云フコトデ、總テノ財政方針ノコトヲ御尋致シマシタニ對シテ御逃レニナッタヤウ
  ニ吾〓ハ思ツテ居リマスガ、、日獨戰爭ハ旣ニ結了シ疾ウニ收マリ、又日支交渉問題モ既ニ
  結了シテ不日條約ノ取替セガ濟ムト云フ時節、歐洲ノ大亂ハ何時結了致シマスカ、是
  ハ分リマセヌケレドモ併シ極東ニ位置ヲ持シテ居ル我帝國ト致シマシテハ、此際ドウシテモ
  政府ノ財政方針ト云フモノニ對シテハ、相當ノ考慮ヲ費シテ此國民ノ商工業ノ前途ニ付
  テ懷イテ居ルトコロノ危惧ノ念ヲ解イテヤルノ必要ガ確カニアル時期ト私ハ考ヘテ居リマス、念
  フニ歐羅巴ノ大戰爭ハ何時結了スルカト云フコトハ問題デアリマスルガ、日本帝國ト致シマシ
  テ、今後ドノ方面ヨリ考ヘマシテモ國ノ富ヲ增殖シ、國ノ力ヲ附ケルト云フコトガ最第一ノ
  要件デアルコトハ私ガ申スマデモナク是ハ明瞭ナコトデアル、歐羅巴ノ戰局如何ニ拘ラ
  ズ今日ハ我帝國ハ上下一致シテ、全力ヲ此〓ニ盡サナケレバナラヌ時期デアラウト恩心
  マス、然ルニ先刻大藏大臣ノ御說明ヲ承ハリマスルト云フト、唯オ座ナリノ御說明デアッ
  テ、財政ノ方針ニ付テハ一言モ御言及ニナラナカッタト云フコトニ對シテ、頗ル失望ヲ致シタ
  ノデアリマス、何故ナラバ此度ノ解散問題ノ主要問題ニナッテ居リマスル二個師團、此二
  個師團ハ何レ此議會ニ於テハ通過スルデゴザイマセウ、吾〓ハ反對テゴザイマスルガ、所デ
  之ヲ世間ハ大ニ誤解シテ居リマスルガ、ナカ〓〓ノ重要問題デ、大正十年マデニ臨時費
  バカリガ約千二百万圓、ソレカラ經常費ガ二千百万圓、合セテ三千二百万圓出來上
  リマデニ掛ッテ、サウシテ年々歲々出來上ッタ後ハ五百十何万圓宛ト云フ大金ヲ喰ウテ
  參リマスル計畫デアリマス、サウシテ政府ハ斯ノ如キコトヲ一方ニ於テ財政計畫ニヤッテ
  居リマスルノニ對シテ、又外ニイロ〓〓ナ不安心ナ計畫ヲシテ居ルト云フノハ、國債償還
  基金ノ二千万圓ヲ減ジテ、ソレヲ以テ鐵道ノ敷設費ヲ用ヒテ居ル是ハ今年限リデアル
  カ或ハ來年モヤルノデアルカ、或ハ永久ニヤルノデアルカ、ソレハ分リマセヌガ、併シ鐵道
  ノ敷設經營費ト云フモノハ今後年々ニ必ズ必要ノモノデアル、之ヲ先ヅソレニ向ケテ居
  ル、ソレカラ朝鮮事業費ハ朝鮮事業費ニ八百餘万圓剩餘金ヲ貸付ケテ居ル、是
  モ如何デアルカ、朝鮮ノ事業費ハ總體デ五千六百万圓ト記憶シテ居リマスルガ、其中ニ
  公債ニ依ッテ旣ニ使ハレタモノガ三千万圓ト、殘ルトココノ二千六百万圓、此二千六百
  万圓ノ中、差向キ今年剩餘金ヲ以テ八百餘万圓ヲナサルト言ヘバヽ後トニマダ大變ニ
  殘ッテ居ル千八百万圓バカリ、此朝鮮ノ事業費モ要リ居ルノデアル斯ウ考ヘテ見マス
  ト云フト、今日ノ財政狀態カラ申シマスト前途ドウシテ行クデアラウカト云フコトハ何
  人モ心配セザルヲ得ヌノデアル、之ヲドウナサルカ、更ニ詳シイ御話ハ廢シマスルガ、歐洲
  戰亂ノ結果トシテ官民共ニ二十億ノ外資ヲ輸入シテ財政經濟ヲ調理シテ居ル、我帝
  國ニ於テハ此戰爭中ハ無論ノコト戰後少ナクトモ十數年ノ間ト云フモノハ新タニ外
  資ヲ入ルヽコトガ出來ヌバカリカ、此借入レタ外資ハ徐々取立テラレル運命ニ迫ッテ居ル
  ト云フ此所ニ大難事モアルノデアリマス、ソレ等ニ對シテ今日此際、此臨時議會ヲ御開
  キニナッテ、斯カル長年期ニ亙ッテ國民ノ負擔ヲ重クスル案ヲ御提出ニナル以上ハ之二
  對シテ財政計畫ハ斯ク〓〓ニシテ行クノデアルカラシテ、安心シテ之ニ協賛ヲ與フベシト
  云フ抱負ガナケレバ順序ヲ得ナイモノト思ヒマスルノデアリマスルガ、此點ニ付テ如何デ
  ゴザイマセウカ、之ヲ御尋シマス、ツレカラ今一ツ御尋ネスルノハ廢減稅問題民力休
  養問題、現政府ガ成立ノ當時聲明サレマシタ重要ナル政綱ノ中ニ、此廢減稅、民力
  休養ノ問題ガゴザイマシタ、之ヲ前ノ三十五議會ニ於キマシテハ、時局ト云フモノヲ口ニ
  サレテ此問題ハ逃ゲラレタノデゴザイマスガ、先刻モ申上ゲマス通リ我帝國トシテハ今日
  時局ハ旣ニ通過シテ、今後國力ヲ養ヒ國ノ富ヲ增進スルト云フコトニ努メナクテハナラヌ
  ノデアルガ、今ニ財政方針ヲ承ハルコトガ出來ズ、又今日ノ財政計畫ヲ見マスレバ前途
  ノ事ハ一切構ハズ、其日限リ其日暮シノ財政ヲ立ッテ居ラルヽトシカ目ルラレマセヌカラシ
  テ、政府ハ廢減稅民力休養ノ問題ハ御取消ニナッテシマッタノデアルカ否ヤ、斯ウ云フ問
  題デゴザイマス、私ノ質問ハ此三箇條デゴザリマス
  〔拍手スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=99

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• 100・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　大藏大臣
  (大藏大臣若槻禮次郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=100

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• 101・若槻禮次郎

  ○大藏大臣(若槻禮次郞君)　支那ニ於ケル排貨ノ問題ニ付テハ、當局ノ大臣カラ後
  程答辯ガアラウト思ヒマスカラ、唯今御質問ノ第二第三ニ付テ御答致シマス、財政計
  畫ニ付テ先程申述ベタ所ガ十分デナイ、ソレ故ニ能ク分ラヌト云フ御質問ノヤウデアリマ
  シタガ、先程申上ゲマシタ如ク、今囘提出致シマシタ追加豫算ハ第三十五議會ニ政
  府ガ出シマシタ財政計畫ソレヲ追ッテ居ルノデアリマス第三十五議會ニ出シマシタ時ノ
  計畫ヲバ、施行豫算ノ上ニ於テ成ベク實行シテ、其施行豫算デハ實行ノ出來ナイ部分
  ヲ今囘ノ追加豫算ニ於テ補ッテ、此追加豫算ト實行豫算ト相俟ッテ第三十五議會ニ
  提出シタ、恰モ政府ノ財政計畫ト同樣ナル實際ナ有樣ヲ呈サセヤウト云フノガ大體ノ
  計畫デアルノデアリマス、其第三十五議會ニ出マシタ時ノ財政計畫ハ、先程總理大臣
  ノ演說ニモアリマシタ如ク一方ニ於テハ財政行政ノ整理ヲシテ、年額ヲ大凡一千六
  百万圓バカリ新タニ玆ニ何等用途ノ定ラナイ財源ヲ作リ得タノデアリマスカラ、其財源
  ト從來ノ財源ト相俟ッテ、第三十五議會ニ種々ナ計畫ヲ立テクモノガ、收支相當ルヤウ
  ニナッテ居ルノデアリマス、其中ニ二個師團ノ增加ニナリマシテモ、或ハ海軍ノ製艦費ノコ
  ト其他ノ事柄ト云フモノハ、唯今申上ゲタ中デ收支ノ償フヤウニナッテ、唯三十五議會
  ニ提出シタ豫算、アレノ實行豫算ニ於テ行レナイ所ガ今囘ノ追加豫算ニ出テ居ルノデア
  リマスカラ、當時ノ財政計畫其儘ヲ今囘ノ追加豫算ニ依テ完成シヤウト云フ當初ノ
  計畫通リニ實行シヤウト云フノガ考デアルノデアリマス、ソレデ二千万圓ノ國債償還金ヲ
  減ジテ之ヲ鐵道ニ振向ケルヤウナコトラシテ居ルガ、ソレデハ此先ドウナルカト云フ御質問
  デアリマスガ、ソレガ卽チ政府ノ計畫デアッタノデアリマス、鐵道ニ付テ相當ノ資金ヲ要ス
  ル、是マデハソレヲ借入金ニ求メテ居ッタノデアル、然ルニ今鈴木君モ仰セラルル如ク、歐
  羅巴ノ現狀デハ到底日本ニ金ヲ貸スヤウナ場合ハ當分ノ間生ジマイト思フノデアリマス
  政府ノ財政計晝ハ時局ノ始マリマス前カラ立テタノデアリマスガ、當時立テタ時ノ考ハ
  歐羅巴ノ狀況モ餘リ日本ニ餘計金ヲ貸シ得ル樣子デハナカッタノデアリマス、ケレドモ其
  事ノミナラズ、元來ニ於テ外國カラ餘リ年々借入金ヲスルト云フコトハ、日本ノ經濟事情
  ニ對シテ好イ影響ヲ與ヘナイ之ヲ直サウト云フノガ現內閣ノ方針テ、外國貿易ノ上ニ
  於テ年々大ナル輸入超過ヲスルコトヲ、ドウカ直シテ、此正貨ノ基礎ヲバ餘リ薄弱ナモノ
  ニナラヌヤウニサセヤウト云フ考デアリマシテ、ツレガ爲メニ外資ハ餘リウニ依賴シタクナ
  イト云フ考ヲ起シタノト同時ニ、餘リ外國ガ日本ヘ金ヲ貸スヤウナ狀況デ無イ是ト雙
  方相待ッテ政府ノ計畫ハ外國カラ餘リ金ヲ借リナイト云フコトニシヤウ、同時ニ又日本
  ノ內地デ全然公債ノ募集ガ出來ヌト云フノデモアリマスマイケレドモ、政府ノ募債ノ爲メ
  ニ民間ノ事業資金ヲ壓追スルヤウナコトガアッテハナラヌカラ、是亦成ルベク內地ノ市場
  ニ向シテ當分ノ間ハ政府ハ募債セヌ方ガ宜イト云フ方針ヲ立テマシタノデ、然ル以上鐵道
  ヲ止メナイ限リハ、何トカ鐵道ノ資金ヲ一方ニ於テ見付ケテ來ンケレバナラヌ、鐵道ヲ廢メ
  ルナラバ宣イガ、鐵道ノ建設改良ト云フコトガ全然廢スルコトガ出來ヌ以上ハ必要ナ資
  金ハ何處カラカ見付ケテ來ナケレバナラヌ、ソレハ從來ナラバ借金デヤッタガ、金ヲ借リ
  ル代リニ返ス金ヲ其方ニ向ケルノガ相當デアルト現內閣ハ國債償還資金ヲ減ジテ其金
  ヲ振向ケルコトニシタノデアリマス一般ノ財政計畫ハ前ニ申上ゲル如ク一方ニハ行政
  財政ノ整理ヲシテ財源ヲ出シテ、ソレト從前カラアッタ歲出ノ段々減少シテ行クモノ、之
  ニ依テ生ジテ行ク用源、之ニ併セテ唯今提出シテ居ル追加豫算ヲ、實行豫算ニ加ヘタモノ
  ヲ施行シテ行クニ差支ナイト云フ見込ヲ立テヽ玆ニ今日ノ追加豫算ヲ提出シタ次第
  デアリマス、ソレカラ廢減稅ノコトヲ如何ニスルカト云フ御尋テアリマスガ、時局ハ終ッテ
  居ル、時局ガ終フタ以上ハ、當初聲明シタヤウナ事ヲ只行センケレバナラヌト云フ御話デ
  アリマシタガ、唯今御答致シタ中ノ財政行政ノ整理ヲ行ウテ、而シテ此時局ガ無イト
  シテ、大正四年度ニドウ云フ歲入ノ狀況ニナルカト云フコトヲ見積リマシタ、其見積額
  ト雙方併セテ實行致シマスレバ、唯今御答ヘシタトコロノ二個師團ノ增加、其他必要
  ナル經費ヲ辨ジテモ尙相當ナル國民負擔ノ輕減ノ出來ル計畫デアッタノデアリマスガ其
  際ニ恰度昨年八月時局ガ起ッタ、時局ガ起ッタ後ノ計畫ニ於ケル鈴木君ノ質問ハ屢(
  アッタニ相違アリマセヌ、當時モ御答申シタ如ク、之ガ爲メニ歲入ノ大減少ヲ來シタ、
  其歲入ノ大減少ヲ來シタ事柄ハ今日モ尙存シテ居ルノデアル東洋ニ於ケル兵戰ハ如何
  ニモ熄ダニハ相違アリマセヌ、靑島モ取ッタ、既ニ獨逸ノ艦隊モ東洋カラ無クナッタト云ムコ
  トニナッテ居リマスケレドモ、併ナガラ歐羅巴ノ時局ガ存シテ居ル以上、今日關稅ダケ御覽
  ニナッテモ輸入ガ非常ニ減ッテ居ルト云フコトハ直チニ分ル、從テ關稅ノ收入ガ大ニ減ジテ
  居ル、收入ガ減ジテ居ル如クツレグケ內地ノ商賣其他ノモノモ皆影響ヲ受ケテ居リマス
  カラ、一般ノ歲入ニ於テモ減少ヲ來シテ居ルト云フ狀況ハ依然トシテ存シテ居ル是ガナケ
  レバ今モ中上ゲマシタロ通リ、政府ハ國民負擔ノ輕減ヲ實行スル積リデアリマシタガ、左樣
  ナ事ガ生ジタ以上ハ、玆ニ歳入ノ減少ニ依テ已ムヲ得ズ豫テ聲明シテ居ッタ國民負擔ノ
  輕減ヲスルコトガ出來ナイ狀態デアル、是ガ現在ノ有樣デアリマス、而シテ一方規則立ッ
  タル歲入ノ狀態ト比較スレバ、則チ戰爭ノ影響ヲ受クルコトナキニ至ッテ相當ノ歲入ガ見
  付カルコトニナッタナラバ國民負擔ノ輕減ト云フコトモ考慮スルト云フコトハ、無論政府
  ニ於テ怠ッテ居ラヌ考デアリマス
  〔外務大臣男爵加藤高明君登壇〕

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• 102・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　鈴木君ヨリ御尋ニナリマシタル、支那ニ於ケル日本
  ノ貨物ヲ排斥スル運動ニ關シテノ事柄デアリマス、ナカ〓〓容易ニ熄マヌト云フコトニ鈴
  木君ハ御考デアルガ、政府ノ觀ル所ハ如何、竝ニ之ニ對スル如何ナル方法方策ヲ講ズル積
  リデアルヤ否ヤト云フ御尋デアッタト存ジマス、新聞紙ニハ餘程大キク報ゼラレテ居リマス
  ガ、政付ノ得テ居リマス報告ニ依レバ地方ハ各地ニハ決シテ亙ッテ居ラヌ、先刻モ申上
  ゲタ如ク四川ノ重慶ニ於テ多少ノ事ガアリ、又福建ノ福州ニ於テモ事件ガアッタヤウデ
  アリマス、併シ福州ノ方ノハ幾ド全ク收マッタト云フ報告ヲ得テ居ル、重慶ノ方ハ其後詳
  報ハ得マセヌガ、是亦格別ノ事ハ無イカト思ッテ居ル次第デアル、單リ稍重大ナルハ漢
  口デアリマス、是ハ旣ニ數日ニ亙シテ日本人在留日本人モ頗ル不安ノ念ニ驅ラレテ
  居ル、政府ニ於テモ勿論心配致シテ居リマス、是等ノ事ハ他ノ地ニ傳播シナイヤウニ支
  那ノ中央政府竝ニ地方ノ官憲ニ對シテ先刻モ申上ゲマシタ如ク、啻ニ暴動ヲ爲サシメ
  ザルコトニ努メタルノミナラズ、日貨排斥等ノ擧ニ出デシメナイヤウニト云フ主意ヲ以テ掛
  合ッテ居ル次第デアリマス、而シテ漢口ノ事モ唯今得マシタル報告ニ依レバ支那ノ當局
  者ニ於テモ頗ル之ヲ憂慮シ、全力ヲ盡シテ鎭壓ニ努メルト云フコトデアリマス、甚ダ喜バ
  シク存ジマスカラ唯今得マシタル電報ノ大意ヲ御話致シマス、漢口發、大正四年五月
  二十一日午後六時三十五分「五月二十一日公文ヲ以テ交涉員ニ照會スルト同時ニ
  本官ハ武昌ニ至リ段芝貴ニ面會シテ其趣旨ヲ述べ且漢口ニ於ケル支那人一般ノ本邦
  人ニ對スル態度ヲ詳細ニ說明シテ之ガ鎭定方ニ關シ反省ヲ促シタルニ、將軍ハ本官ノ
  要求ニ對シ、全責任ヲ以テ當ルベキコトヲ聲明シ、差當リ兩國人融和ノ一策トシテ本
  日直チニ商務總會ノ重立タルモノヲ呼寄セ、日本商賈ト從來ノ如ク親善シテ取引ヲナ
  スベキコトヲ說諭シ、漢口ノ文武官憲ヲ督勸シテ一切排日的行動ノ嚴重ニ取締ラシメ、
  尙其效ヲ奏セザルニ於テハ、將軍自ラ漢口ヘ出張シテ善後策ヲ講ズベキニ付、遲クトモ
  一週間內ニハ市場ノ面目一新スベシ尙又目下日本人間ニ流布スル所ノ種々ノ危險
  ナル謠言ハ決シテ信ズベキモノニアラズト雖モ、之ニ對シ十分調査ノ上相當ノ措置ヲ取
  ルベキ旨附言シタリ」斯ノ如ク支那ノ當局者ニ於テモ熱心ニ配慮致シテ居ラレルコトデア
  リマス、此ノ騷動モ不日鎭マルコトト私ハ信ジテ居リマス(拍手起ル)

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• 103・鈴木梅四郎

  ○鈴木梅四郞君　簡單デアリマスカラ自席カラ申シマス、外務大臣ノ唯今ノ御答ハ特
  ニ漢口カラノ電信マデ持ッテ來テ御說明ニナリマシタガ、ソレハ私ノ御尋ネシタコトデナイ
  官憲ノ力ノ及ブ範圍ノ問題ハ兩國政府間ノ交讀ニ依ッテドウニモナルデセウ、然シナガラ
  排貨問題ハ支那國民ノ、一般ノ國民ノ人心デ湧イテ出來テ來ル問題デアリマスカラ、之
  ヲ官憲ノ力ヲ以テ鎭メルコトハ出來ヌト思ヒマスガ、ソレハドウデアルカ、共、例ヲ言ヘバ
  辰丸事件ガ今日マデ長イ間日本ノ商工業ヲ苦シメタコトガアル、斯ウ云フ問デアル、然ル
  ニ領事ノ電信ヲ御讀ミニナッテ、其談判ノ返事ヲ承ッタノデハ吾〓ハ安心ハ出來ナイ、其支
  那ノ一般ノ商工業者ガ日本ノ貨物ヲ排斥シテ、日本ノ對支貿易ニ對シテ妨害ヲ與ヘ
  ルト云フ、此一般ノ支那全般ノ空氣カラ起ッテ來ル、之ニ對シテハドウ云フ御抱負ガアル
  カ、ドウ云フ方法ガアルカト一云フ御尋デアリマス、領事ノ簡單ナル談判模樣ノ返答位デ
  ハ、私共ハ實ハ商工業者ヲ代表シテ安心ハ出來ナイ、其事ニ就テ外務大臣ノ今少シ
  御親切ナル御返事ヲ得タイ、ソレカラ立チマシタ序ニ若槻大藏大臣ニ一言申上ゲマス
  若槻大藏大臣ノ御話ハ、一一十五議會ノ時ト同樣デアルト云フガ、御尋ネシタノハサウデナ
  イソレハ時局ト云フコトデアッタカラ承ッテ居ッタガ、時局モ旣ニ帝國トシテハ結了シテ居
  ル、今後ドウシテモ財政方針根本ノ財政方針ヲ極メテ行カナケレバナラヌガ、之ニ付テハ
  ドウ云フ案ガアルカ、長イ將來ノコトハイザ知ラズ、少クトモ今後五七年間ハドウ云フ工
  合ニヤッテ行クカト云フ、財政計畫ノ方針ヲ承リタイトニムフノデアリマス
  〔外務大臣男爵加藤高明君登壇〕

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• 104・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　私ハ鈴木君ノ御尋ニ對シテハ、餘程叮嚀親切ニ御
  答シテ居ル積リデアリマス、此上御答致スコトハアリマセヌ
  〔大藏大臣若槻禮次郞君登壇〕

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• 105・若槻禮次郎

  ○大藏大臣(若槻禮次郞君)　唯今御答申上ゲタノハ、歲入ノ增額ニ對シテ歲出ノ
  權衡ヲ得ルヤウニシテ、唯今ノ豫算ハ提出致シテアルノデアリマス、今後ドウナルカト云フ
  ノハ、今日ノ歲出ノ狀況ガ其儘繼續シテ、今日ノ歲入ノ狀況ガ其儘繼續スルナラバ
  今後ノ年度ニ於テモ歲入歳出相償ッテ足ラナイトコロガナイト云フ、其計算ノ下ニ本年
  度ノ豫算ヲ作ッテ居ルノデアリマス、其〓ニ於テ今後數年ニ亙ッテドウ云フ方針カト云フ
  御尋デアレバ現在ノ歲入ノ計畫ト現在ノ歲出ノ計畫ヲ御覽下サレバソレガ卽チ財
  政ノ計畫デアルノデス時局ハ終ッテ居ルト云フ御話デアリマスガ、其點ハ先程申上ゲタ
  ガ戰ヒハ濟ンダニ相違アリマセヌガ、時局カラ經濟上ニ及ンデ居ル影響、財政上ニ及ン
  デ居ル結果ハ依然トシテ存シテ居ルノデアリマス、ソレノ下ニ於テ今日ノ政府ハ財政計
  畫ヲ立テテ居ルノデアリマス

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• 106・小川平吉

  ○小川平吉君　私ハ日支交渉ノコトニ付テ質問ヲ致シタイノデアリマスガ······

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• 107・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　ドウプ演壇ニ御進ミ下サイ

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• 108・小川平吉

  ○小川平吉君　總理大臣ガ御出ニナリマセヌカラ、總理大臣ノ出席ヲ待ッテ御尋シタ
  イト思ヒマスカラ、議長ヨリ總理大臣ノ出席ノ御交涉アランコトヲ希望致シマス
  (「無用々々」ト呼フ者アリ〕

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• 109・坂口仁一郎

  ○坂口仁一郞君　議長々々

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• 110・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　午前ヨリ貴族院ノ議事ニ從ハレタタメニ、疲勞シテ、唯今チヨット
  休息シテ居ラレマス、今免ニ角出席サレルヤ否ヤヲ照曾致シマス

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• 111・坂口仁一郎

  ○坂口仁一郞君　私ハソレハ無用ト思フノデス(「ノウ〓〓」)無用ト云フモノハ空シク
  貴重ノ時間ヲ費スノデ、次ノ人ニヤラセルノガ宜イト思ヒマス

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• 112・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　此際諸君ニ一言申シテ置キマスガ、或議員ガ發言サレテ居ル
  議事ノ際ニ、イロノ批評セラルルノハ、殆ド職務執行ノ妨害テアリマスカラ、其時ニ
  已ムヲ得ザレバ其妨害ヲ除クベキ手段ヲ執ルヨリ外致方ハゴザイマセヌ(「ソチラニ向ッテ
  御造レナサイ」ト呼フ者アリ)何レモ其通リデゴザイマス、ドチラニ向ッテモ左樣ニ致シマス
  總理大臣ガ出席ニナリマシタカラ小川君
  〔小川平吉君登壇〕
  〔拍手起ル〕

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• 113・小川平吉

  ○小川平吉君　諸君、私ハ今囘ノ日支交涉ニ付キマシテ數箇條ノ質問ヲ致シタイノ
  デアリマス、其內三箇條ハ談判ノ手續方法ニ關スルコトデアル二箇條ハ談判ノ案件
  其モノニ關スル事柄デアリマス、又他ノ二箇條ハ談判ノ結果ニ付テ質問ヲ試ミタイト考
  ノルノデ、第一此今囘ノ日支交涉ニ何キマシテハ當初當局者ノ提出ヲ致シマシタトコ
  ロノ案件ヲ新聞紙ニ依ヲテ承知致シマシテ、私ハ之ニ對シテ多少ノ疑ヲ懷イタノデアリマ
  ス、果シテ當局者ハ此多數ノ箇條ヲ擧ゲテ悉ク之ヲ貫徹スルトコロノ誠意アリヤ否ヤト
  云フコトヲ疑ヒマシタノデゴザイマス、其後談判ノ經過ヲ見ルニ及ビマシテ、益〓此感ヲ深
  ク致シタノデゴザイマス、今日私ガ御尋致シタ事柄ハ、此ノ如ク多數ノ箇條ヲ舉ゲテ、當
  局者ハ眞ニ誠意ヲ以テ悉ク之ヲ貫徹スル意志デアッタカドウデアルカ、之ヲ尋ネタイノデ、
  第一私共ノ考ヘマスルトコロデハ、此二十一箇條ノ中ニハ種々樣々ナル事柄ヲ含ンデ居
  ル或ハ東洋永遠ノ基礎ヲ固メルコトニ關係スルトコロノ事柄モ見エルノデアリマス、或ハ
  又今日マデノ懸案トナッテ居ッタ事柄モ見エルノデアリマス、又或ハ吾〓ヲ以テ言ハシムレ
  バ洵ニ些末枝葉末節ニ亙ルトコロノ事柄モ見エルノデアル、此ノ如キ事柄ヲ雜然トシ
  テ一緒ニ之ヲ提出シタト云フ事柄ハ、談判ノ方法トシテハ宣キヲ得タルモノナルヤ否ヤ、之
  ヲ第一ニ私ハ疑ウテ居ル、又第二ニハ其時機ニ於テ當局者ノ提案シタル時機ハ、其當
  ヲ失シタモノデハナイカト考ヘル、吾〓ハ此歐洲戰亂ノ結果ニ付テ東洋ノ平和ノ基礎ヲ
  定メル、兩國親善ノ增進ヲ圖ルタメトスルニハ彼ノ膠州灣ノ陷落シタル際、我軍ノ未
  ダ該地ヲ撤退セザル以前ニ於テ、支那ニ對シテ要求ノ條項ヲ提出シ、談判ヲ開始スル
  コトヲ以テ」モモ適當ナリト考ヘマシテ、當時既ニ私ニ當局者ニ向ッテ之ヲ勸誘ヲ致シタコ
  トモアルノデアリマス、其當時ハ支那ニ於テモ膠州灣陷落ト同時ニ、今日マデノ兩國ノ
  間ニ蟠ッテ居ルトコロノ懸案ヲ解決シ、兩國民ノ狀態ヲシテ一層良好ナラシメンガタメニ、
  將又東洋ノ永遠ノ平和ノタメニ必ズヤ我日本帝國ヨリシテ相當ナル條件ヲ以テ要求
  ヲ提出スルト云フコトハ彼等ノ既ニ覺悟致シテ居ッタトコロデアル此時ニ及ンデ吾〓ノ
  勸告ヲ容レズ、彼等爲スコトナクシテ爾來殆ド二箇月餘ヲ經過致シ、一月ノ十八日ニ
  至ッテ突然トシテ此ノ如キ數多キ條項ノ要求ヲ提出致シタノハ如何ナル次第デアルカ、
  此間ニ於テ或ハ歐羅巴、或ハ亞米利加等ニ交涉デモセラレタノデアルカ、或ハ又其他ニ
  於テ何等カ準備デモセラレタコトガアッタノデゴザイマスカ、是ガアリマシタナラバ之ヲ伺ヒタ
  イ、必要ナル準備手續ガアッタト云云コトデアルナラバ、或ハ此時機ニ付テ吾〓モ首肯ス
  ルコトガ出來ルカ知ラヌ、何等必要ナルコトガ無カッタニモ拘ラズ、空シク膠州灣ヨリシテ
  軍隊ヲ撤退致シ二箇月ノ日子ヲ經タル後、支那ニ於テハ舊暦ノ休暇ニ際スルトコロ
  ノ一月ノ始メニ當ッテ、此ノ如キ問題ヲ突然ニ提出スルト云フコトハ私ハ決シテ其時機
  ヲ得タルモノデナイト言フコトヲ信ズルノデアリマス、ソレカラ又爾來談判ノ經過ヲ
  見マスト云フト、或ハ要求條項ノ中ヨリシテ一部分分離ヲ致シテシマウ、或ハ又其
  中一部分ノモノハ撤囘ヲ致シテシマフ、或ハ又其中ノ最モ必要ナル部分ハ之
  ヲ後迴シニスル、其舉動、其交涉ノ遣リ方ト云フモノガ果シテ東洋ノ平和ノタ
  メニ兩國親善ノタメニ、誠心誠意ヲ以テ此二十一箇條ノ貫徹ヲ圖ヲタモノデアルト見
  ルコトハ吾〓ニハ出來ナイノデアリマス(拍手起ル)是ガ私ノ第一ニ尋ネテ見タイ點デアル、
  第二ハ此三月中旬ニ於ケル出兵ノ事デアリマス、是迄旣ニ此〓ニ就テハ質問モアッタノ
  デゴザイマスルガ、之ニ對シテ唯今モ當局者ハ單ニ駐屯軍ノ交替ニ過ギナイ、斯樣ニ答辯
  ヲサレテ居ル、其當時談判ノ行惱ンダトコロノ事情ニ顧ミテ見、支那側ノ强硬ナル主
  張ニ照シテ見、前後ノ狀況ヲ知ルトコロノ者ハ六千万國民、誰カ之ヲ以テ無意味ナル
  交迭兵ナリト信ズル者ガアルデゴザイマセウカ(拍手起ル)又若シ果シテ眞ニ交替兵ニ
  過ギナイト云フコトデアルナラバ、何ガ故ニ斯ノ如キ緊要ナル談判ヲ進行スル最中ニ於テ、
  未ダ交迭ノ期限來ラザルニ先ッテ大兵ヲ動カシ、世界ノ耳目ヲ惹キ、國民ヲ驚カシ、新
  聞紙ノ記事ヲ少シモ差止ムルコトナク而シテ彼レ支那官民上下ヲ驚カスヤウナ不謹愼
  ナルコトヲ何故ニスルノデアルカ(拍手起ル)之ヲ私ハ問ハナケレバナラヌノデアル、ソレヨリ
  モ當局者ハ男ラシク此談判ノ行惱ミニ就テ、支那ニ對シテ威力ヲ示スガタメニ名ヲ交替
  ニ藉リテ出兵シタノデアルト、何故斯ノ如ク男ラシク白狀ヲセナイノデアルカ、(拍手起ル)
  私ハ支那ノ談判ニ就テ或ル時期ニ於テ威力ヲ用ユルノ必要アリト云フコトハ敢テ否認ヲ
  致ス者デハナイノデアリマス、是故ニ當局者ハ男ラシク談判ノ行惱ミニ就キ、威力ヲ示ス
  ガタメニ出兵ヲ致シタノデアル、交替兵ヲ送ッタモノデアルト、斯樣ニ答辯セラレタナラバ其
  方ガ吾〓ヲ滿足セシメタデアラウト思フ、諸君、殊ニ私ノ此〓ニ就テ當局者ニ尋ネテ置
  キタイ事柄ハ、此出兵ヲスルニ就テモ當局者ハ單純ナル交替兵ノ派遣アリト稱シテ居リ
  マスルガ、單純ナル交替兵ノ派遣デアッテモ、、確ニ支那官民ヲ驚カシタト同時ニ、必ズヤ此
  談判ニ對シテ多少ノ影響ヲ與ヘナケレバナラヌ筋合ノモノデアルト考ヘル、然ルニ此交替兵
  ノ派遣、我ノ出兵ガ彼レ支那官民ニ對シテ何等ノ感動ヲ與ヘナカッタノハ何ノ爲メデア
  ルカ、縱ンバ當局者ガ無意味ニ之ヲ派遣シタト爲シマシテモ、支那ノ官民ニ於テハ之ニ
  對シテ大ナル恐ヲ懐カナケレバナラヌ筈デアル、然ルニ何等ノ感ジヲ與ヘナカッタノハ如何ナ
  ル所以デアルカ、吾〓傳ヘ聞ク所ニ依リマスレバ此出兵ニ就テモ歐羅巴若クハ亞米利
  加ノ中ヨリシテ質問ノアッタノニ答ヘテ、我國ニ於テハ決シテ支那ニ對シテ兵ヲ動カシ戰爭
  ヲスル最後ノ手段ヲ執ルト云フガ如キコトハ、決シテスル考ガナイト云フコトヲ以テ答ヘタ
  此當局者ノ答ガ外國大使館ノ人ノ口ヲ經テ支那ノ政府ニ通ジテ、之ニ依テ支那ノ政
  府ハ我國ノ出兵ニ對シテ少シモ恐レヲ懷カザルニ至ッタト云フコトヲ傳ヘ聞イテ居ルノデア
  リマス、果シテ斯ノ如キ事ガアッタカ否ヤ若シ支那ニ對シテ威力ヲー不ス必要ガアリ、出兵
  ヲ致シタト致シマシテモ、一方ニ於テ此出兵ハ如何ナル事アリト雖モ戰爭ヲスルコトニハ
  至ラヌノデアル、如何ナル談判ノ行惱ミガ生ジテモ、最後ノ破裂ハシナイノデアルト云ム、我
  ガ當局者ノ意志ガ迥リ迥ッテ支那政府ニ傳リマシタナラバ如何ナル手段ヲ執リ、如何ナ
  ル威力ヲ示シテモ、結局彼ニ對シテ何等ノ效ヲ奏セヌト云フコトニ了ルデアラウト私ハ思
  フ(拍手起ル)斯ノ如キ事實ガ有ッタノデアルカ、無イノデアルカ、加藤外務大臣ハ眞ニ嚴
  格ナル問答ヲ好マルヽヤウデアル、私ノ問フガ如キ事柄ガ無イト致シマシテモ、之ニ類似セル
  事柄ガアッタノデアルカ、如何デアルカ、ソレヲ私ハ伺ヒタイ第三ハ最後通牒ノコトデアル、最
  後ノ通牒ナルモノヲ發スル時ニ於テ、我ガ當局者ハ全然此第五項ナルモノヲ後迴シニシテシ
  マッタノデアル、四月二十六日ノ修正案ニ於テハ、此第五項ニ就テハ大體ニ於テ支那側ノ
  談判中ニ陳述シタルトコロノ事柄ヲ記錄ニ留メテ置ク、斯樣ナ要求ガアルヤウニ承ッテ居
  ル、此四月二十六日ノ提案ニ對シテ、五月一日ニ甚タ無禮不當ナルトコロノ提案ヲ支那
  ヨリ致シタコトハ先刻ノ御說明ニ依テ分ッタノデアル、之ニ對シテ我政府ハ所謂最後通
  牒ナルモノヲ發スルニ到リ、元老會議ヲ開キ海陸ノ兩軍ニ向ッテ動員ヲ命ジ、今ニモ兩
  國干戈相見エントスルトコロノ決心ヲ示シ、多數ノ我ガ同胞ノ海外在留者ニ向ッテハ引
  揚ヲ命ズル、斯ノ如キ大決心ヲ示サレタノデアル、然ルニ此時ニ至ッテ吾ミノ當時信ジマ
  シタ所デハ、我四月二十六日ニ提出シタル所ノ修正案、是ハ旣ニ非常ナル讓步ヲ示シ
  テ居ル、第五項ノ如キモ單ニ其一部分ヲ記錄ニ留メテ置クト云フコトニ止マッテ居ル、加
  フルニ膠州灣ヲ支那ニ還附スル斯ノ如キ大讓歩ヲ爲シタルトコロノ此四月二十六日
  ノ修正案ニ對シテ一步モ讓ラナイ、之ニ向ッテ我ガ政府ハ支那ニ向ッテ單純ナル諸否ノ決
  答ヲ求メルコトデアルト吾〓ハ解釋シテ居ッタ、然ルニ曷ゾ料ラン、最後通牒ナルモノヲ發
  スルニ當ッテ、忽チ第五項ナルモノヲ後迴シニシテ殆ド無期延期ノ形、何時此希望ガ達
  セラルヽヤラ、何時此談判が再開セラルヽヤラ、全ク望ナキ廢案同樣ノコトニ之ヲ歸セシ
  メテシマッタ、而シテ之ヲ以テ最後ノ提案トシテ通牒ヲ致シタ、旣ニ讓步ノ上ニ讓歩ヲ重
  ネ、彼レ傲慢無禮ニシテ不當ナル提案ヲ致スニ至ッテ、所謂最後ノ決心ヲ致シ、干戈ニ
  訴ヘテモ我ガ目的ヲ貫徹シヤウト決心シタ時ニ方ッテ、何ガ故ニ四月二十六日ノ提案ニ
  以上ノ吾〓ノ最モ大切ナリト信ズルトコロノ此第五項ノ要求ナルモノヲ、忽チニシテ所
  謂散履ヲ棄ツルガ如キ有樣ニシテ之ヲ後週シニシテシマッタト云フコトハドウ云フ譯デアル、
  之ヲ後週シニシナケレバ此要求ハ貫徹スルコトガ出來ナイト考ヘラレタノデアルカ、將又
  他ニ何等カ故障ノ起ッタコトニ原因スルノデアルカ、道路傳フル所ニ依レバ、或ハ元老ガ
  反對シタトカ云フヤウナ事モアル、私ハ斯ノ如キコトハ信ジナイ、全ク、齊東野人ノ
  言葉デアラウト思フ、然ラバ卽チ英吉利若クハ亞米利加、是等ノ邊ヨリシテ何カ此
  第五項ニ付テ讓步セザルベカラザルヤウナ事柄ヲ申込ヲ受ケタノデアルカ、ドウデア
  ルカ、英米各國ヨリモ何等ノ申込モナイ、元老其他外間ノ掣肘モ更ニ無イト致シ
  マシタナラバ何ガ故ニ一月十八日以來、此五月ニ至ルマデ百日ノ間主張シタ所
  ノ重大ナル問題ヲ、最後ノ通牒ヲ發スル時ニ當ッテ、故ナクシテ之ヲ抛棄致シタノ
  ハ何ノ爲デアル後迴シニシタノハ何ノ爲デアル、之ヲ私ハ伺ヒタイ、既ニ最後通牒
  ヲ發スルノ決心ヲ致シマシタ以上ハ吾〓ノ見ル所ヲ以テスレバ、必ズヤ彼支那政府
  ハ大局ニ顧ミ我政府ノ希望ヲ容レタデアラウト思フノデアル、又新聞紙等ノ傳フル
  所ニ依テ見マシテモ、旣ニ我政府ノ最後通牒ヲ交付スル以前ニ於テ、彼支那政府ニ於
  テハ此第五項中ノ或ル部分ニ就テハ我希望ヲ容レルト云フ內意ヲ漏ラシタト云フ事ヲ
  私ハ承ッテ居ル、是ハ私ハ事實デアラウト思フ彼レ我ノ誠意ヲ諒トセズシテ干戈相見ユ
  海陸ノ兩軍ガ支那大陸ヲ壓スルニ至リマシタナラバドウデゴザイマセウカ、、彼レ支
  ニ至リ、
  那政府ハ此危險ヲ冒シテモ第五項ノ希望ヲ拒ムト一云フヤウナ事ハ、吾〓ハ想像ハ出
  來ナイ、然ラバ則チ彼ノ新聞紙ノ傳フル所ノ我最後通牒ヲ發スルノ以前ニ於テ、第五
  項ノ我希望ヲ容ルヽノ意田心ヲ漏シタト云フコトハ私ハ事實デアルト信ジテ差支ナカラウ
  ト思ヒマス、斯ノ如キ狀態ノ下ニアッテ何故ニ此大切ナル五項ヲ故ナク後週シニセラレタ
  ノデアルカ、之ヲ明細ニ私ハ伺ヒタイ、其次ハ此談判ノ案件、其モノニ關係ヲ致シタ事
  柄デアリマス、其第一ハ此漢冶萍煤鐵鑛公司ノ特權ニ關スルコト、卽チ提案第三項ノ
  第二ニ當ルノデアリマス、此漢冶萍公司ノ附近ノ鑛山等ニ就テハ、公司ノ承諾ヲ經ザ
  レバ他ニ之ヲ讓渡スコトノ出來ナイ、卽チ漢冶萍公司ノ特權ニ關スル所ノ第三項ノ第
  二デアリマス、之ヲ全ク撤囘セラレタノハ如何ナル理由デアルカ、之ヲ伺イタイ、是ハ私ガ
  玆ニ細カク言フマデモナク最モ必要ナル事柄デアリマス、而シテ又支那政府ニ於テモ、今
  日ノ現狀ニ顧ミテ必ズヤ我ノ要求ヲ容レザルベカラザル所ノ事柄デアルト吾〓ハ信ジテ居
  ル、然ルニ之ヲ撤囘セラレタルハ如何ナル理由ニ依ルカ、當時歐羅巴ノ新聞等ノ傳フル
  所ニ依レバ、英國ノ外務大臣ハ議會ニ於テ說明シテ曰ク中部支那ニ於テハ列國自
  由ニ鑛出ノ權利ヲ獲得スルコトニ就テ盡力ヲ致シテ居ル、斯樣ナ說明ガアッタト記憶致シ
  テ居ル、此新聞ノ記事ニシテ事實デアルト致シマシタナラバ、此漢冶萍公司ノ附近ニ於ケ
  ル所ノ鑛山ニ對スル權利ニ付キマシテハ、或ハ英國ノ故障若クハ何等申出等ガアッテ是
  ガ爲ニ撤囘ヲセラレタモノデハナイカ、其〓ヲ御腹藏ナク御漏シヲ願ヒタイノデアリマス、又
  此南昌ヲ中心トスル所ノ中央支那ノ鐵道ノ權利、是ハ何ノ故ニ後週シニセラレタノデア
  ルカ、既ニ此鐵道ノ權利ニ就テハ懸案トシテ是ガ解決ヲ計ラレ、又實ニ我國ニ取ッテハ
  最モ必要ナル事柄デアルて支那政府ニ於テモ我國ノ要求ニ對シテハ異存ヲ言フベキ所ノ
  理由ト云フモノハ持タナイコトデアルト思フ、然ルニ此南昌ヲ中心トスル所ノ中央支那ノ
  鐵道ニ關スル事項ヲ全ク後週シニシテ了ッタト云フコトハドウ云フ譯デアルカ、是亦英吉
  利ノ故障若クハ英吉利ノ申出等ニ基イテ殊ニ遠慮セラレタノデアルカ、其〓ヲ伺ヒタイ、
  次ニ福建省ノ鐵道鑛山ニ關スル事柄デアル、福建省ニ於テハ最初第五項ノ六トシテ、
  卽チ我日本帝國ノ勢力範圍ノ內ニ在ル所ノ福建省テアル、不割譲ノ約束ノ出來テ居
  ル所ノ福建省、此福建省ニ向ッテ鐵道及鑛山ノ權利ニ就テ希望ヲ提出シテ居ルコトハ
  實ニ當然ノコトデアリマス、支那ガ所謂不割讓ノ契約ナルモノヽ中ニハ、我帝國ノ勢力
  範圍ヲ含ンデ居ル、此故ニ今同ノ談判ニ於テモ所謂我政府ノ提議セル沿岸ノ不割譲
  ヲ約束スルニ付テ、彼レ支那政府ガ極力之ヲ排斥シ、之ニ反對ヲスルノハ卽チ不割讓ノ契
  約ヲスレバ、支那ノ主權ノ一部分ガ毀損セラルヽノデアル、日本ノ勢力範圍ノ一部分ニ
  入ルノデアル、斯樣ニ考ヘルカラ支那ノ沿岸ノ不割讓ニ反對シマシテ、而シテ彼レ自カラ
  宣言ヲスルコトニナッタ、此意味ヨリ推セバ此福建省ノ不割讓ノ約束ナルモノハ、此福建
  全體ヲ以テ我帝國ノ勢力範圍ナリト認メテ居ルコトハ論ヲ待タヌノデアル、然ルニ此福
  建ノコトニ就テ、沿岸港灣ノ設備ノコトニ就テハ約束ヲセラレテ居ル、鐵道及鑛山ノコ
  ト當然得ベキ所ノ權利當然彼ノ承諾セザルベカラザル所ノ事柄ヲ舉ゲテ之ヲ他日ニ讓ッ
  タノハ如何ナル次第デアルカヽ是亦何等外間ヨリ掣肘ヲセラレタノデアルカ、或ハ又當局
  者他ニ顧ミ考フル所アッテ然ルノデアルカ、其點ヲ私ハ伺ヒタイ其次ハ卽チ膠州灣ノコトデ
  アル、私ハ膠州灣ノコトニ就テハ殊ニ古クヨリ熱心ナルモノデアリマスヽ旣ニ獨逸ガ此膠州灣
  ヲ占領致シマスル時分ニモ、之ニ對シテ自分ノ意見ヲ公ニ致シタコトガアル其後一昨年
  アタリモ獨逸ノ經營ヲ調査致シマシテ、自ラ其經營ノ狀況ヲ述ベテ世人ノ注意ヲ促シタ
  コトモアル、膠州灣ノ事ニ付テハ殊ニ私ハ熱心ナル〓究者ノ一人デアリマス、幸ニシテ歐
  羅巴戰亂ヲ機會ト致シテ、此膠州灣ヨリシテ獨逸ノ勢力ヲ驅逐致シマシタコトハ、實ハニー
  我レ人共ニ是ハ欣喜ニ堪ヘザルトコロノ事柄デアル、而シテ之ヲ驅逐致シマシタル以上
  ハ、我國代ッテ之ヲ占領スベキコトハ當然ノコトデアル、私ハ徒ニ他國ノ領土ヲ占領シ
  租借シ、若クハ之ヲ版圖ニ入ルルコトヲ好ム者デハナイノデアリマス、必要ナリト信ズルト
  コロノ確乎不拔ノ理由ガアルカラシテ私ハ之ヲ主張スルノデアリマス諸君、先刻外務大
  臣ハ膠州灣ヲ返還スルコトニ付テ、支那ノ領土ヲ保全スルガ爲メデアルト云フヤウナコト
  ヲ言ハレタ、是ハ如何ナル意味デアルカ、私甚ダ了解ニ苦シム、所謂支那ノ領土ヲ保全
  スルト云フコトハ、唯支那ノ土地ニ手ヲ著ケヌト云フコトニ外務大臣ハ解釋サレテ居ルノ
  デアルカ、私ハ決シテ左樣ニハ見ナイ、支那ノ領土ヲ保全スルノハ支那ノ爲メニ支那ノ
  領土ヲ保全スルノデハナイ、東洋ノ平和ノ爲メニ支那ノ領土ヲ保全スルニアルコトハ論ヲ
  俟タヌトコロノ事柄デアル(拍手起ル)我國ガ東洋ノ盟主トシテ、先進國トシテ、此大陸
  ニ依ッテ大局ヲ支持シ東洋全局ノ平和ヲ一身ニ荷フテ行カウト思ヒマスルニハ、大陸ニ於
  テ、膠州灣ノ如キ要害ノ地ヲ占メ、之ニ依テ以テ支那ヲシテ我儘ヲサセナイ、支那ヲシテ
  自カラ領土保全ノ主義ヲ破ルガ如キ行ヒヲサセナイ、平時ニアッテモ戰時ニアッテモ、)
  レダケノ根據ヲ有チ、ソレダケノ位置ヲ占メテ、而シテ後ニ初メテ大日本帝國ガ東洋ノ平
  和ヲ保ツトコロノ責任ヲ盡スコトガ出來ルノデアル(拍手起ル)徒ニ支那ノ領土ニ手ヲ著ケ
  ナイカラシテ、ソレデ以テ支那ノ領土保全主義ガ完全ニ行ハレタ、東洋ノ平和ハ保タレタト
  云フガ如ク見ルノハ、是ハ全ク誤リデアル、所謂領土ヲ保全シ所謂平和ノ維持ヲ圖ルト
  云フコトハ是ハ紙ニ書イテ出來ルモノデハナイ、條約ガアッタノミデ出來ルモノデハナイ、リ
  レダケノ實力ヲ有チソレダケノ地步ヲ占メ、而シテ後ニ初メテ之ヲ實行スルコトガ出來ル
  モノデアルト私ハ考ヘテ居ル然ルニ膠州灣ハ如何ナル土地デアルカ、既ニ獨逸ハ之ニ依
  テ以テ政治上及ビ經濟上ノ勢力ヲ、十數年ノ間ニ於テ彼レノ如ク支那ニ向テ增進セシ
  メテ居ル洵ニ要害ノ地デアル支那ノ中腹ヲ制シテ、揚子江ト黃河ノ中央ニ向ッテ
  我勢力ヲ展バスニ付テハ最モ必要ナル所デアル、平生ニ於テモ勿論デアルガ、一朝事
  有ル時ニ當リマシタナラバ最モ必要ナル所デアッテ、之ヲ我國ガ占領シテ初メテ平和
  維持ノ責任ヲ盡スコトガ出來ル、支那ノ領土保全ヲ實行スルコトガ出來ルノデアル、
  然ルニ唯此土地ニ手ヲ著ケナケレバ、領土保全ノ主義ガ實行セラルヽガ如クニ御考
  ヘニナルノハ何タルコトデアルカ、果シテ本心ヨリシテ斯ノ如ク言ハルヽノデアルカ、私ハ
  疑フ位デアル、諸君、況ヤ此膠州灣ハ永キ歷史ノアルトコロノ膠州灣デアル、我國ノ
  國運ヲ賭シテ初メテ〓國ニ對シテ大戰爭ヲ致シ其結果トシテ遼東ヲ取リ、此遼東
  ハ三國干渉ノ爲メニ淚ヲ呑ンデ〓國ニ還付ヲ致シタ、此干涉ノ張本タルトコロノ獨
  逸、此獨逸ガ三國干涉後間モナク宣〓師ノ殺害ヲ口實トシ此遼東還付ノ報酬ノ
  意味ヲ以テ占領シタルトコロノ膠州灣デアル、我國民ノ眼ヨリ觀マスレバ、或意味ニ於
  テ日〓戰爭ニ於テ遼東ヲ還付サセラレタ此恨ヲ酬ユルト云フ意味モアルデゴザリマセ
  ウ、此遼東ノ代リト云フ意味モアル、唯何等因緣歷史ノ無キ土地ヲ占領シタル
  ノトハ少シク其事情ヲ異ニ致シテ居ルノデアル(拍手起ル)斯ノ如キ事モ國民ノ精神上
  ニ及ボストコロノ影響ヨリ考ヘマスレバ、決シテ之ヲ等関ニ付スルコトハ出來ナイト
  私ハ考ヘテ居ル(「ヒヤ〓〓」拍手起ル)況ヤ我ガ同胞千五百人ノ血ヲ流シ、其碧血未
  ダ腥ク膠州灣ノ草ヲ染メテ其色未ダ黑クナラヌトコロノ今日ニ於テ、何ヲ苦ンデ倉皇トシ
  テ之ヲ〓國ニ還附スルノデアルカ(拍手起ル)斯ノ如クニシテ我ガ大和民族ハ大陸ニ向ジ
  テ膨脹スルコトガ出來マスカ、大帝國建設ノ思想ニ對シテ少シモ影響ヲ及ボサナイト云
  フコトヲ保證スルコトガ出來マスカ、是ハ單ニ政治上若クハ經濟上ノ問題ノミデハナイ、
  國民ノ精神上ニ及ボストコロノ影響ト云フモノモ、私ハ頗ル大キイモノデアルト考ヘル(拍
  手起ル)然ルニ諸君、此膠州灣ニ就テ當局者ハ如何ナルコトヲ言ハレタカ、諸君モ御記
  憶デゴザリマセウ、昨年ノ議會ニ於テ膠州灣ハ是ガ還附ニ就テ何等ノ拘市ヲ受ケテ居ラ
  又、何等契約ヲ致シテ居ラヌ、全ク自由デアル斯樣ニ言ハレタ、全ク自由デアルナラバ
  何ヲ苦ンデ此日支交渉二十一箇條ノ談判ヲスルニ方ッテ、斯ノ如キモノヲ提供セヌデモ最
  後ノ決心マデスルトコロノ當局者デアリマシタナラバ膠州灣マデ出サズトモ此外交ノ手
  腕ニ依テ、殊ニ外交家トシテ第一流ノ加藤外務大臣其局ニ當り、斯ル大犧牲ヲ拂ハ
  ズトモ此最後通牒ニ示シタルガ如キトコロノ要求ノ箇條ヲ得ルコトハ私ハ決シテ難クナ
  カッタデアラウト思フ(拍手起ル)此事ニ付キマシテハ、先刻初メテ外務大臣ハ此壇上ニ
  於テ半バ事實ヲ自白セラレテ居ル、曰ク〓州灣還附ニ就テハ廟議曩ニ既ニ決定セリ、
  斯樣ニ言ハレタ、何時決定致シタノデアルカ私ハ伺ヒタイ、恐ラクハ日獨開戰ノ當初ニ
  於テ決定セラレテ居ッタンデハナイカ(拍手起ル)果シテ然ラバ第三十五議會ニ於テ何ガ
  故ニ膠州灣還附ニ就テ更ニ一層明確ナル答辯ヲセラレナカッタノデアルカ、如何ニモ膠州
  灣ハ返還スルモノデナイカノ如キ顏色ヲシテ、吾〓ヲ始メ國民ニ向ッテ安心ヲセシメ、而シテ
  突然トシテ最後通牒ヲ發スル時ニ至ッテ、還附ノ聲明ヲシテ之ヲ發表スルト云フコトニ
  至ッテハ、國民ヲ欺瞞シタルモノデアルト云フテモ私ハ過言デナカラウト思フ(拍手起ル)若
  シモ曩ニ廟議旣ニ返還ニ決定シタト云フナラバ、何ガ故ニ是ガ返還ヲ可トスルニ至エタタノ
  デアルカ、其理由ヲ伺ヒタイ、單ニ大局ノ爲メニ之ヲ返スト云フコトデハ分ラナイ、斯ノ如
  キ大切ナル土地ヲ如何ナル理由ニ於テ返シタカ、ソレヲ伺ヒタイ(「床次君ニ聞キ給ヘ」ト
  呼フ者アリ)聞クトコロニ依レバ海陸兩相ノ如キモ亦此膠州灣ハ或ハ必要デナイカノ如
  キ意見ヲ吐イタト云フコトヲ新聞其他ニ於テ承タタ、果シテ然ルヤ否ヤ、果シテ然ラバ此
  壇上ニ於テ、海陸兩相ハ膠州灣ノ必要ガナイト云フコトヲ斷言シ得ルカドウカ斷言シ
  得ルナラバ斷言シテ戴キタイ、私ノ聽クトコロデハ一朝事アル秋ニ於テ、此膠州灣ヲ我
  國ニ於テ有スルト有セザルト非常ナ相違デアル、勿論軍事當局者トシテハ是ガ占領ヲ希
  望スルトコソ承ッテ居ル、然ルニ一部ノ新聞紙ノ傳フルトコロニ據レバ、是ガ必要ナシト
  云フガ如キコトヲ言ッテ居ル、何ノタメニ必要ナシト云フコトヲ言フカ、其理由ノ根據ヲ私
  ハ伺ヒタイ(「床次君ニ聽キ給ヘ」ト呼フ者アリ)

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• 114・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜肅ニ靜肅ニ··

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• 115・小川平吉

  ○小川平吉君　又モウ一ツ此結果ニ付テ伺ヒタイ、外務大臣ハ此日支交涉ハ日支
  兩國ノ今日マデノ懸案ヲ解決スルコトガ一ノ目的デアルト言ハレタ、而シテ此懸案ヲ解
  決セラレテ、國民ハ喜ンデ居ルノデアルト斯樣ニ言ハレテ居ルノデアル(「其通リ」ト呼フ者
  アリ)懸案ガ果シテ解決セラレタルヤ、之ヲ伺ヒタイ、第五項ニハ何ト書イテアル-第
  五項ニハ何ト書イテアル、卽チ懸案解決其他ニ關スル件トアルデハナイカ、懸案モ懸案、
  諸君モ御承知テゴザイマセウ、彼ノ南昌ノ錢道敷設權ノ如キ實ニ懸案デアル、久シキ懸
  案デアル、政府自ラ既ニ標題ヲ命ジテ懸案ノ解決其他ニ關スル件ト云フ題ガ玆ニ書イ
  テアル、而シテ此懸案第五項其物ハ全部後迴シニシテアル、是デモ懸案ガ解決サレタモ
  ノデアルト云フコトガ言ハレマスカ、蒙古ノ如キハドウデアルカ、蒙古ハドウシタノデアルカ
  蒙古ニ付テ讓歩サレタ事柄ハ悉ク懸案トシテ殘シテ居ルデハナイカ、是デモ懸案ガ解決サ
  レテ居ルト云フコトガ出來ルノデアルカ、若シ又外務大臣ニ於テ解決セラレタリト言ハ
  レマスナラバ此蒙古ノ問題ニ付テ、若クハ此第五項ノ鐵道ノコト、福建省ニ於ケル鑛
  山若クハ鐵道ノコト、此等ノ點ニ付テハ最早將來進シデ是ガ解決ヲ希望スルト云フ御
  考ハ無イノデアルカ、全然放棄スルト云フ御考デアルナラバ成程解決シテシマッタト一ムフ
  コトハ出來ルカモ知レナイ若シ今後是ニ向ッテ更ニ交涉ヲ累ネ、更ニ我ノ希望ヲ達ス
  ルコトヲ圖ラルルト云フコトデアルナラバ、懸案ハ決シテ解決シタリト稱スルコトハ出來ナイ
  デハアリマセヌカ、之ヲ私ハ伺ヒタイ最後ニ此支那ニ今日起ッテ居ルトコロノ所謂排
  日思想、之ニ付テ先刻外務大臣ハ餘リ日本排斥ノ思想ガ濔蔓シテ居ラヌカノ如ク言
  ハレタ、ソレハ何カ事實ヲ御間違ヒデアラウト思ヒマス、何人ガ見テモ今日彼ノ支那ノ國
  民ガ我日本ニ對スル反感ト云フモノハ非常ナモノデアル現ニ漢口事伴ノ如キハ此反感
  ニ基キ、或ハ獨逸人等ガ之ヲ煽動シタカ知レヌガ、免ニ角我日本ニ對スル反感ヲ利用
  シテ、而シテ彼ノ如キ暴動ヲ成熟シタト云フコトハ論ヲ俟タヌノデアル而シテ彼ノ如キ
  排日思想ヲ釀成シタニ付テ、先刻外務大臣ノ答辯ヲ伺ヒマスルト、是ハ何カ日本ガ支
  那ニ對シテ重キ要求ヲシタカラ、ソレニ付テ彼ガ日本ニ反對ノ感ジヲ起シタモノデアルカノ
  如ク言ハレタ、ソレヲ伺ヒタイノデアル、是ハ或ハ多少斯ノ如キコトガ原因ニナッテ居ルノ
  デゴザイマセウ、ケレドモ決シテ是ハ原因ノ全部デハナイ、一小部分デアルト私ハ考ヘル、
  抑〓今日彼ノ如ク支那人ノ反感ヲ招イダル所以ハ、單ニ我ガ彼ニ向ッテ過當ナルトコロ
  ノ要求ヲ提出致シタガタメデハナイ、我談判ノ方法其宜シキヲ失シ、其提案ノ趣意ガ頗
  ル明瞭ヲ缺イテ居ルカラデアル、或ハ此提案ヲ分裂致シ、或ハ此提案ノ一部ノ撤囘ヲ致
  シ、或ハ兵隊ヲ出シテ彼ヲ感嚇シタ、或ハ外國ノ干渉ヲ受ケテ忽チ頭ヲ引込マストカ、
  或ハ又第五項ノ如キ最モ重大ナルモノヲ最後通牒ヲ發スル間際ニ到ッテ之ヲ引込マセ
  ル斯樣ナ誠意ナキ方法ヲ以テ彼ニ對スルガ故ニ、彼ハ我ニ對シテ卽チ憤ルノデアル彼
  ハ我ニ對シテ卽チ輕侮ノ仝心ヲ生ズルノデアル諸君、少シク支那人ノコトヲ〓究シテ見
  給ヘ、彼等ハ此ノ日本ノ要求ノ不當ナルヲ愬フルヨリモ、日本ノ行動ノ前後不揃
  其誠意ノ一貫セザルコトニ向ッテ彼ハ卽チ最モ輕侮ノ念ヲ抱イテ居ルノデアル、或ハ外
  國ノ干渉、若クハ注意、外國ノ事情等ニ依ッテ我ノ要求ヲ忽ニシテ引込マセ、忽ニシテ
  讓歩スル、前後變轉極リナキ行動ヲスルカラ、卽チ之ニ向ッテ輕蔑ノ念ヲ生ジテ居ル是
  ガ卽チ排日思想ノ最モ重大ナル原因デアル、之ニ向ッテ當局者タルモノハ宜シク自ラ斯
  ノ如キ反感ヲ挑發スルニ至ッタ責任ヲ考へ、善後ノ處分ニ付テハ十分ナル注意、十分ナ
  ル手段方法ヲ悉サナケレバナラヌト思フ、之ニ對シテ果シテ如何ナル御考ガアルカ、之ヲ
  私ハ最後ニ伺ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=115

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• 116・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　加藤外務大臣
  〔外務大臣男爵加藤高明君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=116

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• 117・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　唯今小川サンヨリ質問ト稱シテ御述べニナリマシタ
  ガ、寧ロ彈劾演說ト伺ッタ方ガー良イカモ知レマセヌ、別段私ノ答辯ヲ御求メニナラヌデモ
  小川君ノ御考ニ任セテ然ルベキコトデアルト思ヒマスガ、其中ニハ質問ト申シテ良イ廉モ
  アリマスカラ、其廉ニ對シテ相當ナル御答ヲ致シマス、第一ニ小川君ハ政府當局者ハ支
  那ト談判ヲナスニ當ッテ、誠意ヲ以テ之ニ從事シタルヤ否ヤ、是ハ答辯ヲ要サヌダラウ
  ト思フ當局者ハ十分ナ誠意ヲ以テ之ニ當ッタコトハ申スマデモナイコトデアル、ソレカラ先
  キハ諸君ノ見ルトコロニ任カセルヨリ仕方ガナイ當局者ハ誠意ヲ以テシタカ不誠意ヲ
  以テシタカト云フ質問ハナカラウト思フソレカラ其次ハ談判方法宜シキヲ得タルヤ否百、
  是亦前ト同樣、無論談判ハ宜シキヲ得タト當局者ハ信ジテ居ルノデアルソレカラ其次
  ニ御述ベニナッタ交涉開始、其時機宣シキヲ得タルヤ否ヤ、是ハ無論時機宜シキヲ得
  タト信ジテ居ル、但シソレニ付テ小川君ハ一ノ御意見ヲ述ベニナッタ、是ハ私ハ御同意ノ
  出來ナイ意見デアル、卽チ靑島ヲ攻ムルニ當ッテ、日本カラ派遣セラレタル軍隊ガ一部
  撤退ヲ始ムル前ニ、ナゼ談判開始ヲシナカッタカト云フ御尋、私ハ支那ト此談判ヲ
  スルニ當ッテ、其時ニ山東ニ居ッタ如キ大兵ヲ擁シテ談判ヲスル必要ハナイト信ジタノデ
  アリマス、而巳ナラズ一月十八日ニ於テ突然談判ヲ始メタト云フ御話デアリマシタガ、
  始メタノハ成程一月十八日、是ダケノ重大ナル談判ヲスルニ方ッテハ長キ準備モ要リ
  マス(「如何ナル準備」)ト呼フ者アリ)如何ナル準備ト云フコトハアナタ方ノ經驗ノ無イ
  御方ニハ分ラヌデセウ、十分ニ要求事項ニ付テモ材料ヲ具ヘ北京ノ使臣ヲ之ガ爲メニ
  召還モ致シ其意見ヲモ參酌シテ要求案ヲ始メテ作リ出シタモノデアリマス、之ガ爲メニ
  相當ノ時日ヲ要スルト云フコトハ苟モ事務ノ經驗ノアル御方ハ殘ラズ御分リニナルダラ
  ウト思フ、而シテ其支度ハ十二月ノ初旬ニ出來タノデアル、十二月ノ初旬ニ出來タノデア
  ル、日置公使ハ歸ッテ之ヲ支那文ニ翻譯ヲ致シ、而シテ丁度先刻小川君ノ御述ニナッタ支
  那ノ舊曆ノ正月-今ハ陽暦ニ據ッテ居ルカラ同ジデアル-休暇ガ付タノデアル、ワ
  レ故ニ休暇ノ濟ムヤ否否一月十八日ヲ以テ大總統ニ會見ヲ求メタ、必要ナル準備必
  要ナル理由ノ下ニ丁度其時ニナッタ譯デアルノデ、徒ラニ遷延シタ次第デモ何デモナイノ
  デアル、ソレカラ出兵ノコトニ付テハ既ニ先刻外ノ御方ヨリ御質問ニナッタコトデ、多ク唯
  今ノ御論モ御繰返シガ多イヤウデアリマス、出兵ノコトハ先刻質問モアリ答辯ニナッタコ
  トデアリマスガ、小川君ガ風說トシテ御聞込ニナッタコト小川君ハ免角風說ガ入リ
  易イヤウデアリマスガ、餘リ風說ニ御送ヒニナラヌコトヲ希望致シマス(拍手起ル)ソレハ
  歐洲列國ニ對シテ出兵ハ單ニ交替ニ過キズ、隨ッテ此兵隊ヲ如何ナル場合ガアッテモ
  戰爭ノ爲メニハ使ハヌト云フ證言ヲ與ヘタト云フ風說ヲ御聞込ニナッタ、ソレハ事實全然
  無根ノ事デアリマス、最後通牒ノコトニ關シテ縷々御申述ニナリマシタガ、支那ノ各地ニ
  居留スル所ノ我同胞臣民ニ引揚ヲ命ジタ、是ハ再三既ニ先刻辯明シタ通リ、其答ヲ
  繰返ス必要ハ無イガ、命ジタコトハアリマセヌ、第五項ハ後週シ-後日ノ商議ニ讓ッタ
  ト云フコト、此事ニ付テモ先刻來屢、中述ベタ通リデアリマス、之ヲ復タ繰返スコトハ諸
  君ノ聰明ヲ疑フ道理ニナリマスカラ繰返シマセヌ、道路傳フル所ニ依レバ元老ノ掣肘ヲ
  受ケタ云々、元老ハ陛下ノ命ニ依テ、國家ノ大事ニ與フテ意見ヲ表白セラルヽコトノ慣
  例ノアルコトハ私否定致シマセヌ、隨クテ此度ノ最後通牒ヲ決スルニ方ッテモ元老諸
  公モ交ッタ席ニ於テ評議ヲ致シタコトモアルコトヲ否定シナイ、併ナガラ其結果ニ至ッテハ
  何等掣肘ヲ受ケタコトモ無ケレバ、結果ニ至ッテハ善惡トモ政府ニ於テ全然責任ヲ負ヒ
  マスカラ、左樣御承知ヲ願ヒタイ、最後通牒交付ノ前ニ彼ヨリ讓歩云々ノコトヲ申出テタ
  是ハ成程新聞ニ出テ居リマシタ、事實些カ似寄ッタコトガアル、最後通牒ヲ提出シタノハ
  本月七日午後三時其前日六日ノ夜ニ至ッテ支那ノ當該官吏ノ一人ガ我公使館ニ訪
  問セラレテ云々ノ話ガアリマシタ、成程第五項ノ中ノ或事ハ何カ日本ノ言ヒ分ヲ聽ク語
  氣ガアリマシタ而シテ第五ノ中ノ蒙古ノコト、其他政府ニ於テハ最モ重要ノ部分ト考
  ヘテ居ル事柄ニ付テハ我政府ノ要求シタ如キ讓步ヲ爲シテ居ラヌ、要スルニ取留メタ
  話シハ無カッタノデアル、既ニ其時ニ於テ日置公使ハ政府ヨリ最後通牒ヲ支那政府ニ
  提出スベシト云フ電訓ヲ受ケタ時デアル、最早商議ヲ許サヌ、最後通牒ヲ出サズシテモ
  尙政府ノ二十六日ニ差出シタモノヲ其儘聽イタノデアラウノニト云フコトガ新聞紙ニア
  ルヤウデアリマス、是ハ全ク想像ニ過ギヌ、六日ノ晩ニ支那ノ外務次官ガ帝國ノ公使館
  ニ見エタトキノ話シハ、右ノ如キ話シデアリマセヌデアリマシタ、、漢冶萍ノ關係ニ付テ附近ノ
  鑛山採掘權ヲ求メルト云フ要求ヲ初メ日本ガ爲シタ、之ヲ讓ッタノハ如何ナル理由ニ基
  クカト云フコト、是ハ支那政府ニ於テドウシテモ同意ヲ致シマセヌデアリマシタ、故ニ互讓
  ノ精神ニ依テ漢冶萍公司ニ關スル我國ノ利益ノ開ケル大目的ヲ達シタ以上ハ是モ其
  一部トモ申スベキデアリマスケレドモ、謂ハヾ先ヅ從タル目的テアリマスカラ、妥協ノ精神
  ヲ以テ棄テタ譯デ、之ガ爲メニ英國ヨリ何等申出ヲ受ケタコトモ無ケレバ、況ンヤ抗議ナ
  ドハ無論受ケナイ、此點ニ關シテ英國政府ト意見ノ交換ヲ爲シタコトハ絕對ニアリマセ
  又、南昌ヲ中心トスル鐵道云々、是ハ三線アリマシテ、其中二線ニ付テハ支那政府トハ
  先年來ノ懸案ニナッテ居ル問題デアリマス南昌潮洲ハ此度始メテ申出タノデアリマス
  此地方ニ於テハ英國ハ鐵道若干ノ權利ヲ英國ノ資本家ガ得テ居ルト云フニ付テ、英國
  政府ハ我政府ヘ是レノ〓ノ鐵道ハ我國ノ臣民ニ於テ若干ニ付テノ權利ヲ得テ居ルガ故ニ、
  アナタノ方デ請求ナサルニ付テハソレト衝突シナイヤウニ、氣ヲ付ケラレンコトヲ希的王スルト
  云フ意味ノ通牒ヲ受ケタコトハアル穩カナル事務的ノ通牒テアル、抗議デモ何デモアリ
  マセヌ、然ルニ我政府ノ見解ニ從ヘバ此度要求シタル所ノ權利ハ、必ズシモ英國資本
  家ノ得タモノト衝突シナイト云フ見解ヲ持ッテ居リマシテ、併ナガラ旣ニ其疑ガアル以上
  ハ、外國ノ權利ヲ蹂躪スルコトハ無論爲スベキ事デモナシ、殊ニ同盟國トノ間ニハ十分意
  思ノ疏通ヲ計ラナケレバナラヌコトデアリマスカラ、支那ノ政府ニ向ッテ申シタノハ、若シ支
  那政府ノ我ガ希望ヲ容レザル理由ガ、既ニ同一ノ權利ヲ他國ニ與ヘタ爲メニ爲シ能ハヌ
  ト云フコトデアレバ、其關係ノ國トハ日本ニ於テ交渉ヲスルデアラウ、若シ其交涉好結
  果ヲ生ジタ場合ニ於テハ、支那政府ハ同意シテ貰ヒタイ、斯ウ云フコトニ途中カラ變ヘタ
  ノデアル英國ニ於テハ己レノ國民ノ權利ヲ害サレナイヤウニ相當ノ注意ヲサシタ、決
  シテ故障ヲ申込ンダト云フ譯テモナシ支那政府ニ於テモ右等ノ精神ニ依テ此通牒ラ爲
  サレタモノトハ毫モ思ウテ居リマセヌ(「時間延長」ト呼フ者アリ)ソシカラ福建省ノ鐵道
  敷設、鑛山採掘、其他ノ優先權ヲ認メテ其他ニ關シテ會議ヲ要スルトキハ、日本ニ相
  談セヨト云フ優先權ヲ認メテ居リナガラ、之ヲ變ヘタ理由如何ト云フ御話ノヤウデアリマ
  シタガ、是モ最初日本カラ提出シタ形ニ於テハ支那政府ノ應諾ヲ受ケルコトガ出來マ
  セヌ、結局彼ニ於テハ-而シテ此要求ヲ何故ニ日本ガ爲シタカ、最初此要求ヲ爲シ
  タ所以ハ世間ニモ今日ハ當然ノ事ナリト仰ッシヤルケレドモ、斯ウ云タコトニ付テ、世間ノ
  何人カラモ福建ニ付テハ斯ウシタ事ヲシロト云フ御注文ヲ受ケタコトハナイノデアリマス
  (小川君「ノウ〓〓拙者ガ既ニ言ウテ居ル」ト呼フ)一向ソンナ事ハアリマセヌ、アナタノ
  考ハ、支那ヲ保護國ニスルト云フ事ハ屢〓承ハッタノデアリマスガ、其他ノ事ハ承ハラヌノ
  デアル、此要求ヲ爲シタ所以ハ臺灣ノ防備ヲ侵サレナイ爲ニ、對岸ノ福建ニ於テ外國ノ
  勢力ヲ樹立セシメナイト云フノガ目的デアル、初カラ其目的ヲ以テ請求シタノデアル他
  國ノ資本ヲ福建省ニ入レシメナイヤウニスルト云フノガ目的デアル鑛山採掘赤六
  鑛山ノ調査シタコトモナイ、事實鑛山モ澤山ナイヤウデアル、鐵道ノ敷設モ甚ダ困難デア
  ル、困難ト云フヨリ殆ド出來ナイ部分ガ多イノデアル、ケレドモ尙調査シタナラバ鐵道
  ヲ敷設スル所ガアルカモ知レナイ、鑛山採掘ガアルカモ知レヌト云フ爲メニ、外國ノ資
  本-港灣ノ設備固ヨリ然リ、福建ニ入レバ其勢力ガ附イテ一葦帶水ヲ隔ッタ臺灣ノ
  對岸ニ於テ、他國ノ勢力ガ樹立サレ、日本ノ爲メニ甚ダ憂フベキコトデアル斯ウ云フ
  精神カラ之ヲ請求シタノデアル-請求デハナイ希望ヲ述べタノデアル、トコロガ談判ノ
  進行ニ連レテ支那ノ代表者ハ此形デハドウシテモ支那ハ應諾ヲ爲シ難イ、既ニ滿洲ノ
  事ニ於テ山東省ノ事ニ於テ出來得ルダケノ讓步ヲ爲シタノデアルカラ、又福建ニ於テモ
  優先權ヲ與ヘル讓歩ハ爲シ難イ、併ナガラ斯ウ云フコトハ約束致サウ、福建ノ沿岸ニ於
  テ外國ニ軍事的根據地ヲ設ケシメナイ軍事的設備ヲ爲スコトノ特權ヲ、何處ノ國ニモ
  與ヘナイ、又支那自ラ之ハ爲サント欲スル時ニモ外國カラハ金ヲ借リナイ、金ヲ貸シタ國
  ハ其施設物其土地ヲ抵雨ト爲シテ、自ラ權力ガ附ク譯デアルカラ外國ノ金ヲ借リテ、支
  那自ラ其設備ヲ爲ス事モ致サナイト云フダケノ約束ヲシテ、ソレデ日本ガ目的ヲ達スルデ
  ハナイカ、至極尤モナ申方デアリマスカラ是ニ同意ヲ致シタノデアル膠州灣還附ニ付テ
  ハ本日旣ニ屢〓申述ベタノデ、再ビ繰返スノ必要ヲ認メマセヌ、ソレ以上ノ事ハ意見ノ相
  違デアッテ御質問ト云フコトニ私ハ認メナイノデアリマス、然ルニ聞拾ニナラヌコトガ一二
  アッタノデ、小川君ハ支那ノ保全ヲ圖ルノニハ日本自ラ支那ノ土地ヲ占領シナケレバナ
  ラヌト云フ御意見ノヤウニ伺ヒマシタ(小川君「ノウ〓〓誤解々々」ト呼フ)私ハサウ承ハッ
  タ膠州灣ヲ占領シナケレバ支那ノ保全ヲ完ウスルコトハ出來ナイト云フ御說ニ伺ッタ、果
  シテ然ラバ之ヲ論理的ニ申セバ支那ノ保全ト云フ主義ハ日本ニハ當箝ラヌ、日本自ラ
  何等勝手ナコトヲ致シテモ宜シイガ、日本以外ノ支那カラ見レバ外國ガ土地ヲ取ルコト
  土地ヲ占メルコトハ惡イ斯ウ云フ御說デアル(望月圭介君「賣國奴」ト呼フ)何ガ賣國
  奴デアルカ、容易ナラヌ言葉デアル
  〔「懲罰々々」ト呼フ者アリ議場騒然〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=117

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• 118・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　望月君、唯今ノ御言葉ハ如何ニモ聞捨テニナラヌコトデアリマ
  スガ、ドウ云フ御考デアリマスカ
  〔「懲罰々々」ト呼フ者アリ又發言ヲ求ムル者多ク議場騷然〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=118

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• 119・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　暫ク-ドウ云フ御考デ御述ベニナリマシタカ(「モウ六時ニナ
  リマシタ」「時間ダ〓〓」ト呼フ者アリ)免ニ角時間ヲ延ベマス-併ナガラ唯今ノ言葉
  ハ如何ニモ聞捨テニナラヌ言葉デアリマスガ、ドウ云フ御考デ御發議ニナリマシタカ

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• 120・望月圭介

  ○望月圭介君　激昂シタカラ申シタノデス
  (此時發言ヲ求ムル者多シ〕

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• 121・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　暫ク-激昂シタカラ發議シタト言フテハ一向取消ニナリマ
  セヌ
  (「懲罰ニ附スベシ」ト呼フ者アリ議場騒然〕

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• 122・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　勝手ナ發議ヲ止メマスー-誠ニ惡カッタト云フ言葉ヲ附ケテ
  御取消シニナレバ、議長ハ懲罰委員ニ附スルコトハ暫ク猶豫致シマス

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• 123・小川平吉

  ○小川平吉君　其事ニ付テ發議ヲシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=123

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• 124・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　本人ノ答ヲ望ミマス

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• 125・小泉策太郎

  ○小泉策太郞君　先程同志會ノ席ノ方デ小川君ノ演說中ニ非國民ト言ッタコトヲ、
  議長ノ耳ニ入リマセヌカ(「不公平」ト呼フ者アリ)

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• 126・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　不公平デハアリマセヌ
  〔此時發言ヲ求ムル者多ク議場騷然〕

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• 127・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　唯取消スト云フダケデハ議長ハ聞入レル譯ニ行キマセヌ、惡カツ
  タカラ取消スト云フナラ聞キマスガ、激昂シタト云フ理由デハ取消ヲ許シマセヌ

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• 128・小川平吉

  ○小川平吉君　唯今ノ事ニ付テ·····

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• 129・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　取消ニ付テノ良心ヲ御證明ナサイ、ソレデナケレバ今ノ懲罰委
  員ノ發議ヲ議長ガ繼續致シマス、ソレマデハ一切他ノ事ハ聞キマセヌ
  〔小山松壽君「外ノ事ト違ヒマスカラ議場ノ神聖ヲ保ツ爲メニ相當ナル制裁ヲ
  加エル必要ガアルト思ヒマス」「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

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• 130・小川平吉

  ○小川平吉君　其點ニ付テ一言述ベタイ

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• 131・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　本人ノ說ヲ承ハッテ其後ニ承ハリマス
  (「懲罰ハ先決問題」ト呼フ者アリ〕

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• 132・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜ニナサイ、本人ノ言フトコロヲ承ハッタ上デ懲罰ノ發議ガゴザ
  イマスレバ適當ノ處分ヲ致シマス

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• 133・望月圭介

  ○望月圭介君　少シ

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• 134・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　唯今本人ハ激昂シタカラ左樣ニ申シタト申サレマシタガ、激昂
  シタト云フ理由ヲ以テ懲〓詞ノ發議ヲ取消スコトハ許シマセヌ、適當ナル良心ノ發議ヲ求
  メマス

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• 135・望月圭介

  ○望月圭介君　唯今ノ失言ヲ取消シマス
  〔此時發言ヲ求ムル者多シ〕

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• 136・島田三郎

  ○議長(島田三郎君)　暫ク-ソレデハ議會ニ問ヒマス、唯今望月圭介君ガ失言ヲ
  取消スト言ハレタノデアリマスソレデ滿足セラレルナラバ···
  〔「ノウ〓〓」ト呼フ者多シ〕

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• 137・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　ソレナラバ改メテ懲罰ニ附スルト云フ發議ヲドナタカ爲サルナ
  ラ、議長ハ適當ナル處置ヲ致シマス

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• 138・小山松壽

  ○小山松壽君　私ノ發議ハ三分ノ二以上ノ贊成ガアリマス、小山松壽ノ發議ニ對シ
  テ御採決ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=138

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• 139・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　前ノハ許シマセヌ發議デアリマスカラ仕方ガアリマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=139

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• 140・黒須龍太郎

  ○黑須龍太郞君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=140

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• 141・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　黑須龍太郞君
  〔此時發言ヲ求ムル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=141

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• 142・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　黑須龍太郞君ニ許シマシタ、他ノ人ハ一切聽キマセヌ

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• 143・黒須龍太郎

  ○黑須龍太郞君　唯今望月君ノ事ニ付テ紛擾ヲ起シマシタガ、誠ニ遺憾デアリマスケ
  レドモ、望月圭介君ヲ懲罰事犯トスルノ動議ヲ起シマス
  〔拍手起ル「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

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• 144・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　定規ノ贊成者ガアリマスレバ直チニ決ヲ採リマス、ソレデハ規
  則ニ依リマスルト、是ニハ討論モ何モ要リマセヌ、直チニ決ヲ採リマス、黑須君ノ動議ニ
  贊成ノ方ノ起立ヲ求メマス
  起立者少數
  (「少數」「多數」ノ聲起ル〕

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• 145・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　少數ト認メマス
  (「多數」「少數」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=145

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• 146・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　少數ト認メマス-少數デアリマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=146

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• 147・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　別ニ異議ガナイト考ヘマスカラ宣告通リ致シマス、時間ガ過ギ
  マシタカラ暫ク休憩ヲ致シマス、休憩ノ後會ヲ續ケマス
  午後六時二分休憩
  午後七時七分開議

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• 148・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　休憩前ニ引續キノ會ヲ開キマス

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• 149・池田寅治郎

  ○池田寅治郞君　私ハ議事ノ進行ニ付テ意見ヲ述ベタイ、先刻ハ議場ニ於テ非常ノ
  騷デアリマシタガ、私ハ其當時ノ光景ヲ熟く考ヘマスルニ、何ガ故ニ斯ノ如ク議事ノ進
  行ヲ妨ゲタカト云フコトニ付キマシテハ頗ル遺憾ニ存ジマスルガ、小川平吉君ガ遼東還
  附膠州灣還附ノコトニ付テ私ノ伺ヒマシタ所ニ依リマスレバ膠州灣還附ハ領土
  保全ノ意味デハナイ、或十分ナル意味ヲ有タセズンバ之ガ爲メニ却テ禍根ヲ貽シハシナイ
  カト云フ意味ヲ申サレタヤウニ了解シテ居リマス、然ルニ之ニ對シテ外務大臣而モ最モ
  外交ニ長ケテ居ラレルト云フ加藤外務大臣、殊更ニ之ヲ追窮ナサル、而シテ發言者小
  川平吉君ハ誤解デゴザルト注意マデナシタニモ拘ラズ、ドコマデモ之ヲ追窮ナサルト云フコ
  トハ私ハ甚ダ奇怪ニ堪ヘナイト思フ元來斯ウ云フ國交上ノ大問題、而モ是ガ(「議
  事ノ進行デハナイ」「默レ〓〓」ト呼フ者アリ)此大問題ニ向ッテ苟モ國ヲ取ルトカ取ラヌ
  トカ云フヤウナ言論ハ最モ私共互ニ注意ニ注意ヲ加ヘテ頗ル愼マナケレバナラヌト思
  フ然ルニ之ニ向ッテ殊更ニ何黨派ノ-日本人ハ何黨派デアラウガヤハリ日本人デア
  ル、誰カ陛下ノ臣子ニアラザランヤ、普天ノ下率土ノ濱王土王臣ニアラザルハナシ、
  國ヲ憂フルノ情ハ一ツデアル、ソレニ或人間ハ支那ノ國ヲ侵略スルト云フガ如キ考ヲ持ッ
  テ居ルト云フガ如キコトヲ世界ニ公表シ、而モ之ニ裏書ヲスルガ如キ言動ヲセラレタルガ
  爲メニ、玆ニ誤解ヲ生ジテ議事ノ進行ヲ妨ゲマシタ私ハ由來斯ウ云フ外交上ノ事柄ニ
  關シテハ、國ヲ取ルトカ遣ルトカト云フヤウナ言葉ハ、平素外交ノ辭令ニ馴レテ居ル當
  局者外務大臣ハ頗ル御注意ヲ願ヒタイ、若シ此御注意ガアッタナラバ是ダケノ混雜騷
  擾ハ來サヌト思ヒマス、頗ル遺憾ニ存ジマスカラドウカ御注意ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=149

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• 150・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　暫ク、議事ノ進行ト云ヒマスルカラ議長ノ取計ヒマシタコトノ
  御不承ト思ウテ謹ンデ承ッテ居リマシタ、何ニ致セ私ハ全體ノ議員諸君ニ希望致シマ
  ス、全體ノ御方ガ自ラ戒メテ戴イタナラバ、混雜ガ一番省ケル本ト思ヒマス、現ニ望月
  君ガ取消サレタカ取消サレナイカ不明デアッタガ爲ニ混雜シタノデ、議長ハ直ニ失言ヲ取
  消サレタト承ッテ居ル(此時發言スル者多シ)暫ク承ッタノデアリマスカラ、失言トシテ認メ
  ラレテ取消サレタナラバ議長ハ片付キタリト思フタ、ソレガ方々ニ徹底シナイノデ混雜ラ起
  シタノデ、唯今特別ニ發議トシテ承ッタダケデナクテ、混雜ノ原因ハ總テノ發議ガ徹底シ
  ナイノヲ以テ原因ト議長ハ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=150

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• 151・小川平吉

  ○小川平吉君　私ハ外務大臣ノ答辯ガ甚ダ其意ヲ得ザル點ガ多イノデアリマス、殊
  此保護國云々ト云フガ如キ言ヲ、當壇上ニ於テスルハ甚ダ怪シカラヌト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=151

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• 152・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　小川君、長イ御批評ナラバ演壇ニ御出下サイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=152

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• 153・小川平吉

  ○小川平吉君　今日尙質問ヲ致シタイト思ヒマスガ、多數諸君ノ質問ノ通告モゴザイ
  マスカラ、私ハ何レ豫算委員會ニ於テ述ベヤウト思ヒマス(「ソレガ宜カラウ」ト呼フ者ア
  リ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=153

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• 154・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　長島君
  〔長島隆二君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=154

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• 155・長島隆二

  ○長島隆二君　本員ハ外交上ノコトニ關シマシテ、重要ナル箇條ダケ質問致シマスカラ
  御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス唯今マデノ質問應答ヲ見マスルノニ、甚ダ遺憾デハゴザイマ
  スガ、口舌ノ上ノ議論ガ頗ル多カッタヤウデゴザイマス、此歐洲大戰亂ノ場合、世界列國
  共ニ國際關係ニ付キマシテハ非常ナ困難トナリマシタ、其爲メニ內政上ニモ今マデナイヤ
  ウナ狀況ガ現ハレテ居ル場合デアリマス、卽チ伊太利ノ內閣ノ組織、佛蘭西ノ内閣ノ組
  織、又最近ニ起ラントシツツアル英吉利ノ內閣ノ變動ナドヲ見マスト、容易ナラヌ場合デ
  アルト云フコトヲ列國ガ認メテ居ル際デアルト考ヘマス、我國ハ歐洲ヨリ離ルヽコト甚ダ遠
  イノデゴザイマス、又戰爭ニ入ッテ居リマスガ、獨逸トノ距離ガ遠イ爲ニ、如何ニモ今日ノ
  場合歐洲列國ガ感ジツヽアルガ如キ困難ハナイヤウニ考ヘル人モアルカモ知レマセヌガ、此
  戰爭ノ關係竝ニ戰後ノ關係ヲ見マスルト、我國ノ困難ハ或ハ歐洲列國ノ何レヨリモ更
  ニ大デアルカモ知レナイノデアリマス、故ニ今日外交上ノ問題ニ付キマシテハ吾ミガ國
  民ヲ代表致シマシテ飽迄モ愼重ニ愼重ヲ重ネテ〓究シナケレバナラヌト思フノデゴザイマ
  スカラ、ドウカ當局ニ於カセラレマシテモ其御考ヲ持チマシテ十分ナ御說明アランコトヲ希
  望致シマス、唯今マデノ質問應答中ニ、私ハ重要ナ點ニ付テ少シマグ不明ナ箇條ガ殘ツ
  テ居ルヤウニ考ヘマスガ、其事ヲ申ス前ニ外務大臣ニ御考ヲ仰ギタイ〓ガ一ツゴザイマ
  ス、外交上ノコトデゴザイマスカラ、言語御使用ノ上ニ於テ餘程御困難デアラウト察シマ
  ス、又外務大臣ノ御說明ガ其爲ニ甚ダ不十分デアリマシタコトハ是ハ已ムヲ得ザルコ
  トト考ヘマスガ其外交上ノコトデアッテ、言語ヲ愼マレテ居リマスル外務大臣ノ先刻ノ
  御說明中ニ、甚ダ私共遺憾ニ感ズル御言葉ガアッタノデアル(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)
  卽チ外務大臣ハ外國ニ對スル交涉ニ於テハゝ交讓ガアルノハ當然デアルト云フ御言
  葉ガアッタノデアリマス、併シ是ハ外務大臣ニ於カセラレテモ決シテ讓ル-始メカラ讓ル
  ト云フ覺悟ヲ有ッテ御出デハナイ、卽チ言葉ノ意味ガ日本ノ要求主張ニハ、何時デモ懸
  直ガアルト云フ意味デハナイト私ハ考ヘルノデアリマス、併ナガラ外交上ノ交涉ニハ交讓
  妥協ガアルノハ當リ前テアル、其言葉ヲ間違ッテ聞キマスルト、日本ノ要求ニハ常ニ懸直
  ガアル、何時デモ交讓スルモノデアルト云フ誤解ヲ外國ガ起シタナラバ事ハ由々敷大事
  デアルノデアリマス(拍手起ル)ソレデアリマスカラ私ハ外務大臣ノ御說明ノ御取消ハ望ミ
  マセヌガ、此言葉ノ意味ヲ斯ウ解釋致シタイノデアル、ソレハ卽チ此度ノ交涉ニ於テ日本
  ガ最初ノ提出シタル箇條ハ、何レモ至當ナリト認メタノデアル、併ナガラ交涉ノ間ニ於テ
  こと
  之ヲ讓ルベキ事情ガアル、或ハ讓ッタ方ガ宜イト云フ理由ヲ認メタカラ讓ッタノデアル、卽チ
  已ムヲ得ズ是ハ讓ツタノデアルガ、讓ルコトガ當然ナノデハナイ、讓ッタコトニ付テノ責任ハ
  外務大臣ガ脊負ハルル、其責任ハ外務大臣之ニ任ズト云フ意味ト私ハ解釋シタノデアル、
  敢テ言葉ノ修正ヲ望ムノデナイ(「質問デハナイ」「何ヲシテ居ルノダ」「默ッテ聽ケ」「不規則
  ノ發言ハイカヌ」ト呼フ者アリ)又今マデノ質問應答中ニ大切ナ箇條ガ一ツゴザイマス、
  先刻ノ床次君ノ御質問ニ對シマシテ、外國カラ强硬ナル注意ガアリシヤ否ヤト云フコト
  ガゴザイマシタ、之ニ對シマシテ外務大臣ハ强硬ナル注意ハ無カッタ-强硬ナル注意ハ
  無カッタ、斯ウ云フ御言葉デゴザイマシタガ更ニ私ハ御尋ヲ致シタイ、强硬ナル注意ハ無
  カッタガ注意ハアリマシタカドウカト云フコトヲ御尋ネシタイノデアリマス、私共ノ承知致シ
  テ居ル所テハ、英吉利ガ第五項ニ對シテ滿足シテ居ラナカッタ、又亞米利加ハ非公式デ
  ハゴザイマスガ、第五項ノ要求中福建省ノ不割讓ノ點ダケハ異存ハナイガ、其外ニ付テ
  ハ不同意デアルト云フ意志ヲ發表シテ來タト云フコトヲ私ハ承知致シテ居ルノデアリマス
  (「其通リ」ト呼フ者アリ)其事實ヲ外務大臣ハ御否認爲サラヌヤウデアルガ、御認メニナ
  ルカドウカト云フコトハ、是ハ此度ノ外交談判ノ成績ガ如何デアッタカト云フコトヲ、國
  民ガ判斷ヲスル上ニ於テ極メテ重大デアリマスルカラ、此點ニ付テ明ニ御說明アラン
  コトヲ希望致スノデアリマス、而シテ此外國ノ注意ガアッタト云フコトハ、先刻略〓御認メ
  ノヤウデゴザイマスガ、其注意ハ如何ナル時機ニアリマシタカ、如何ナル形式ヲ以テ現ハ
  レテ來マシタカ、而シテ其注意ニ對シテ日本ガ如何ナル程度ニ於テ之ヲ受ケタカ、其點
  ヲ御說明ヲ願ヒタイノデアリマス、私共ノ知ッテ居ル所ニ依リマスルト、强硬ナル注意デハ
  ナカッタガ、極メテソレハ輕イ意味ノ注意デアリマシタガ、日本ノ當局ハ極メテ之ニ對シテ
  重キヲ置イテ、遂ニ第五項ノ大部分ハ讓ルニ至ッタト私ハ承知致シテ居リマス、ソレデゴ
  ザリマスルカラ日本ガ讓ッタコトガ、日本自ラノ發意ニハ相違ゴザリマセヌケレドモ、少
  ナクモ其讓ッタ動機ノ主ナル原因ヲ爲シテ居ル、ソレガ外國ノ注意デアッタカ否ヤト云フ
  コトヲ私ハ承知致シタイノデアル、又膠州灣ノ還附ノコトニ付キマシテイロ〓〓ナル質問
  ガアリ、ソレニ對シマシテ外務大臣ヨリ特ニ鄭重ナル、極メテ御親切ナル御說明ガゴザリ
  マシタ、其御親切ナル御說明ニ對シテハ私ハ深ク感謝ヲ致シマスルノデゴザイマスルガ、
  尙其御說明ニ於キマシテ少シク確メタイ點ガアルノデゴザイマス、外務大臣ハ此度ノ交
  涉如何ニ拘ハラズ、膠州灣ヲ還附スルト云フコトハ闇議ニ於テ內定サレタト言ハレマシ
  タ、併ナガラ私ハ如何ナル必要ガアリマシテ歐洲ノ平和會議ニ臨ム前ニ於テ、我政府ハ
  我國民ノ血ヲ犧牲トシテ取ッタル膠州灣還附ト云フコトヲ、闇議ニ於テ內定スルノ必要
  ヲ感ジタノデアリマスルカ(拍手起ル)還スコトノ可否ハ是ハ政策ノ問題デ別問題デゴザ
  イマスルガ、膠州灣ヲ還スト云フコトヲ何等事件ノ發生セザル場合ニ於キマシテ-又
  歐洲戰爭ノ平和克復ノ場合ニ於キマシタナラバ、此問題ヲ討議シ、此ノ問題ニ對シテ
  閣議ヲ決定スル必要モアルデゴザリマセウガ、何等其事ノ起ラザル場合ニ於テ、如何ナル
  必要ガアッテ閣議ニ於テ還附ノコトヲ決定致シタノデアリマスル、私ハ甚ケ推測ニ過ギル
  ヤウデゴザリマスルが、元ト〓〓膠州灣還附ト云フコトハ、獨逸ニ對スル最後ノ通牒ノ場
  合ニ於テ略〓定マッタモノト信ジテ居ルノデアリマス、勿論法律的ノ又理窟一遍ノ解釋カ
  ラ申シマシタナラバ、日本ニ膠州灣處分ノ自由ノ權利ハ殘ッテ居ルト云フコトモニ言ヘルデ
  ゴザイマセウガ、少ナクトモ日本政府ガ膠州灣ヲ占領シテ居ル必要ガ無イト云フコトハ、
  最後ノ通牒ニ於テ示シタノデアル、最後ノ通牒ニ於テ支那ヘ還附スル目的ヲ以テト云フ
  コトヲ明カニ獨逸ニ對シテ言フタコトニ於テ、世界列國ニ對シテ日本ハ膠州灣ヲ支那ニ
  還附スルノ目的ヲ有シテ居ルト云フコトヲ明言致シタノデアリマス、ソレデゴザリマスルカ
  ラ、頻リニ外務大臣ハ膠州灣還附ニ對シテ自由ノ意思ヲ日本ハ殘シテ居ル、自由ニ處
  分スルコトガ出來ルノデアルト言ハレマシタガ、ソレハ唯口舌ノ上ノ議論デアリマシテ、旣
  ニ獨逸ニ對シテ膠州灣ヲ支那ニ還附スル目的ヲ以テト云フコトヲ言ウタ場合ニ於テ、
  外交上又一般ノ働ノ上ニ於キマシテ、旣ニ支那ガ膠州灣ノ還附ヲ要求スルコトガ出來
  ル、列國ハ膠州灣還附ヲ日本ニ迫ルコトガ出來ルト云フ關係ニナッタト私ハ斷定致スノ
  デアリマス、閣議ノ決定如何ガ問題デハゴザイマセヌ、少クトモ斯ノ如キ狀態ニナル其結
  果、支那ニ事アラザル場合、未タ歐洲ニ平和ガ問題トナッテ居ラザル場合ニ於テ、膠
  州灣還附ノコトヲ決定スルニ至リマシタルコトハ、是ハ甚ダシキ失策デアル、卽チ獨逸ニ
  對スル最後ノ通牒ニ於テ、政府ハ非常ナル失策ヲ爲シテ居ルト云フ一ツノ例證デアルト
  私ハ信ズルノデゴザリマス、(拍手起ル)ソレデゴザリマスルカラ、此閣議ニ於テ膠州灣還附
  ノコトヲ決定サレマシタ時機ハ何時デゴザリマシタカ、又如何ナル必要ガアッテ其事ヲ決
  定サレタノデアルカ、明カナル御說明ヲ願ヒタイノデアル、支那問題ニ就キマシテハ本年ノ
  一月ニ至リマシテ突然問題ガ起ッタヤウデゴザリマスルガ、我國ノ識者ノ間ニ於キマシテハ、
  膠州灣攻擊前ニ於テ其事ハ問題ニナッテ居ッタノデアル、殊ニ膠州灣攻擊ガ始マリマシテ
  間モナク支那問題ヲ如何ニスベキカ、卽チ膠州灣攻擊ハ日本ガ唯獨逸ニ對スル戰爭デ
  ハナイ、東洋ノ平和ヲ維持スル爲メ支那ノ領土保全ノ目的ヲ全クスルト云フコトニ就テ、
  膠州灣攻擊ヲ基礎ト致シマシテ、更ニ進ンデ支那ヲ如何ニスベキヤヲ決シナケレバナラヌ
  ト云フコトガ、世間ノ大問題ニナッタコトハ私ガ申上ゲルマデモナイコトデアリマス、而シテ
  此事ガ內閣ニ於テ私ハ一ノ重大ナ問題トナッタト信ズル事實ヲ知ッテ居リマス、十月ノ
  終リ恰度十月二十三日頃カデゴザイマシタガ、內田山ノ井上侯爵邸ニ於テ元老ノ會合
  ガゴザリマシテ、大隈總理モ其席ヘ出ラレタノデゴザリマシタガ、其際元老カラシテ如何ナ
  ル希望ガ政府ニ對シテアリマシタカ、外務大臣ノ御說明ヲ願ヒタイノデアリマス、(笑聲起
  ル)是ハ笑フコトデハゴザリマセヌ、政府ニ對シテ希望ガアル其希望ヲ私共之ヲ聞キマス
  ルノニ、膠州灣攻擊ヲヤッテ居リマスルガ、支那問題ガ極メテ大切テアル、支那ニ對スル
  案無シニ一日モ送ルコトハ國家ノ甚ダシキ損害デアルカラシテ、支那ニ對スル成案ヲ定メ
  ナケレバナラヌ、而シテ其實行ニ著手シナケレバナラヌト云フコトガ元老ノ會合ヲ爲サレタ
  主タル目的デアル、而シテ之ニ關聯致シテ多少ノ提案ガアッタヤウニ承知致シテ居ルノデ
  アル、卽チ此際一般ノ是ハ議論トナッタバカリデハゴザリマセヌ、國ノ將來ヲ憂ヒテ責任ア
  ル當局ニ對シ、支那問題ニ對シテ適當ナル法案ヲ立テヽ之ヲ實行スベシト云フコトガ希
  望サレマシテ、當局ハ之ヲ問題ニサレタニ相違ナイノデゴザリマスルガ、此場合ニ於キ
  マシテ、我政府ノ當局ニ於カセラレマシテハ如何ニ此事ヲ見タノデゴザリマシタカ、先刻
  加藤外務大臣ノ御說明ニ依リマスルト、十二月ニ至リマシテ初メテ支那ニ對スル要
  求ノコトヲ定メタト申サレタノデゴザリマスカラ、此時ニハ未ダ支那ニ對シテ何等意見ノ
  政府ニ於テハ定マッテ居ラナカッタヤウニ推測サルルノデゴザリマス、私共カラ申シマスルト
  膠州灣攻擊ハ主タル目的デハゴザリマセヌ、東洋ノ平和支那問題ノ解決ガ最モ重大ナ
  ル問題デアリマスカラ、既ニ十月ニ於テ支那ニ對スル政府ノ方針ガ定マッテ居ラナケレバ
  ナラヌト思ヒマスルガ、此元老會議ノ際ニ於テ政府ノ意思ハ未ダ定マッテ居ラナカッタ
  ヤウデアル、先刻ノ御說明ニ依リマスルト、十二月ニ至ッテ是ガ初メテ定マッタヤウニ伺ハ
  レルノデアリマスガ、ソレハ間違デハゴザリマセヌカ、私ハ外務大臣が此十月ノ會議ノ前
  後ニ於テ、政府ノ方針ハ定マッテ居ッタト云フコトヲ御說明アルコトヲ希望スルノデアリマ
  スルガ、定マッテ居ッタノデゴザリマシタカ、其時ハ未ダ定マッテ居ラナカッタノデゴザリマス
  カ、是ハ極メテ重大ナル問題デゴザリマスカラ、明カナル御說明アランコトヲ希望致スノ
  デアリマス、又先刻膠州灣ノ攻圍軍ヲ引上ゲタコトニ就テ問題ガ出タノデリマス(「駄
  辯々々」ト呼フ者アリ)此事モ私ハ極メテ重大ナル問題デアルト思フ(「演說會場ト違
  フゾ」ト呼フ者アリ)膠州灣攻擊ノ軍隊ヲ引上ゲタ後ニ於テ、日支談判ヲ致スガ宜カッタ
  カ、或ハ引上ゲズシテ我大軍ガ支那大陸ニ在ル間ニ於テ、其勢ヲ以テ支那ニ對シテノ
  談判ヲ致スコトガ宜カッタノデアルカ、是モ一ノ重大ナル問題デアルト思フ此場合意見
  ヲ述ベル場合デハアリマセヌカラ敢テ是ハ申シマセヌガ、世間ノ多數ノ人ノ信ジテ居ル所デ
  ハ何故我政府ニ於テハ膠州灣攻擊ノ後ニ於テ直ニ日支ノ談判ヲ開カナカッタカ、若シ
  アノ場合ニ於テ此談判ヲ開イタナラバ、更ニ再度ノ出兵ヲ爲ス必要ハナカッタノデアル、又
  最後ノ通牒ノ如キ手段ヲ執ル必要ハナカッタノデアルト云フコトヲ申シテ居ル論者ガ甚ダ多
  イノデアルガ、此支那ノ談判ノ前ニ於テ外務大臣ハ撤兵ノ必要ヲ認メテ支那談判ニ
  對シテ卽チ決シテ大軍ヲ膠州灣ニ置ク必要ハ認メナカッタト中サレタノデアリマスガ、此〓
  ニ付キマシテ私ハ陸軍大臣ニ御說明ヲ願ヒタイノデゴザイマス、私ノ承ッテ居ルトコロニ據
  リマスルト、膠州灣攻擊軍ノ司令官神尾中將ハ、彼ノ地ヨリシテ我軍隊引揚ハ甚ダ宜
  シクナイト云フコトヲ切論シタル意見書ヲ提出セラレタヤウニ私ハ承知シテ居ルノデアリマ
  ス是ハ果シテ事實デゴザイマスルカ、又事實デアリマスルナラバ事實デアル、事實デナケ
  レバ事實デナシ、其事ノ說明ガ出來ナイノデアリマスルナレバ說明ガ出來ナイト云フダケ
  デ宜シイノデアリマスガ、此點ニ就テ御說明アランコトヲ陸軍大臣ニ望ムノデアリマス、是ハ
  極メテ重大ナノデアル(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)外務當局ガ膠州灣ニ居ル軍隊ヲ擁シ
  テ支那ニ談判ヲスルガ宜イカ、軍隊ヲ一度引揚ゲテ談判ヲ始メテ、更ニ再度ノ出兵ヲ
  スルノガ宜シイカト云フコトハ、外交ノ巧拙ヲ論ズル點ニ於テ極メテ重大ナル點デアリマ
  ス(「ソレハ濟ンダノデハナイカ」ト呼フ者アリ)濟ンダノデアレバ何デモ宜イノデアリマスカ、
  マダ外務大臣ニ御說明ヲ願ヒタイ〓ガゴザイマスガ(「マダアルノカ」ト呼フ者アリ)澤山ア
  リマス(「ヤルベシヤルベシ」ト呼フ者アリ)ソレハ一月十八日支那ニ對シテ要求ヲ提出致シ
  マスル前ニ、英吉利初メ他ノ諸國ニ通告ヲ致シテ、是ハ任意的デアルガ、通告ヲ致シタ
  ト云フコトハ先刻外務大臣ノ御說明ガアッテ承知致シマシタガ、尙此點ニ關シテ床次君
  ヨリ極メテ遠慮サレタ御質問ガアッタ、卽チ通告ノ箇條ニ於テ落シテ置イタカ全部ヲ通
  告シタカト斯ウ云フ御質問ガゴザイマシタガ、私ハ更ニ此事ヲ敷衍シテ御尋ヲ申上ゲタ
  イノデアル、私ノ聞イテ居ル所ニ依リマスルト、此通告ニ於テ第五項ハ全部ヲ落シテ居ッタ
  ト云フコトヲ承知致シテ居ルノデアリマス、吾〓ノ信ズル所ニ依リマスルト、此度ノ支那ニ
  對スル交涉ノ條件中重要ナルハ第五項ニアルノデアル、然ルニ此重要ナル第五項ヲ列國
  ノ通告ニ落シテ置イタ其眞意ハ如何デゴザイマス、尙ホ併シ其點ニ外務大臣ハ正確ナル
  御言葉ヲ御用ヒデアリマスカラ、正確ニ申シマスルト此通告ニ於テ第五項ヲ揭ゲザリシヤ
  否ヤト云フコトノ御說明ヲ願ヒタイ、而シテ第五項ヲ落シテ置キマスレバ是ハ先程ノ
  御說明ノ通リ希望條件デアル、希望デアルカラドウナッテモ宜シイト云フ御考デアッタカド
  ウカヲ伺ヒタイノデアル、若シ是ガ希望條件デアッテドウナッテモ宜シイト云フ御考デアッタ
  ナラバ、何故ニ四月ノ二十六日ノ再度ノ提案ノ場合ニ於キマシテ、日本ハ斷然讓ル能
  ハザル箇條ナリトシテ、此事ヲ外務大臣ハ主張サレタノデアリマスルカ(拍手スル者アリ)
  私ノ解釋ニ依リマスルト此通告ニ於テ第五項ヲ落シマシタルコトガ、此度ノ談判ノ失敗ノ
  最大原因ヲ成シテ居ルト思フノデアル、卽チ通告ヲ受ケタル諸國ニ於テハ日本ハ第五項
  ニ付テ讓ルノ意思ガアルノデアル、人之ヲ惡イ方カラ申シマスレバ、日本ガ此通告ヲ列國
  ニシナカッタカラシテ、日本ヲシテ此條項ハ讓ラシムルコトガ出來ルモノデアルト云フ-
  或方面カラ見マスルト是ハ日本ノ懸値デアル、或方カラ申シマスレバ日本ヲシテ之ヲ讓
  ラシムルコトガ出來ル條項デアルト云フコトヲ、列國ニ信ゼシムルニ至リマシタルコトガ、
  卽チ最後ニ至ッテ第五項ヲ日本ガ讓ラナケレバナラヌコトニナッタ原因デアリマスカラ、若
  シ第五項ヲ落シ、而モ落シタコトガ極メテ是ハ輕1意味ノ希望條件デアルト三ロヒマスレ
  バ最後ノ場合ニ之ヲ讓ルニ至ッタノハ當然ノ結果デアリマシテ、是ハ果シテ支那ニ對シ
  テ日支兩國ノ關係ヲ善クシ東亞ノ平和ヲ永遠ニ維持スル所以ト信ジテ斯ノ如キ態度ニ
  出デタノデアリマスカ、詳細ナル御說明アランコトヲ希望スルノデアリマス、又此事ガ支那
  側ヲ疑惑セシメタル所以デアルト私ハ思フ、卽チ支那ニ對シテハ此事ヲ重要ナル箇條ノ如
  ク要求致シ、列國ニ對シ之ヲ通告シナカッタ、ソレデゴザイマスカラ日本ハ是ハ列國ニ隱
  シテヤルノデアル卽チ其箇條ノ中ニハ英吉利ニ關係シタ事モ多イ亞米利加ニ關係シタ
  事モ極メテ多イ、ソレデアルカラシテ日本ハ列國ニ之ヲ隱シテ支那ニ壓迫ヲ以テ迫マルノ
  デハアルマイカト云フ誤解ヲ支那ニ生ジタノデゴザイマシテ、支那ガ最後マデ第五項ニ付
  テ强硬ナル態度ヲ執リマシタノハ、此誤解ニ出デ、又一方ニ於テハ列國ガ日本ヲシテ屈
  服セシムル最後ノ手段ニ供スルト云フコトデ、支那ガ强硬ニナッタコトヽ考ヘルノデアリマ
  ス、卽チ此談判ノ最終ノ結果ハ、最初ニ於テ通告ヲ故意カ或ハ失意カ知レマセヌガ、落
  シタト云フコトニアルト私ハ考ヘルノデアリマスカラ、此點ニ付テ通告ニ於テ之ヲ落シタ、落
  シタナラバ落シタ、其時ノ考如何デアッタカト云フコトヲ御說明ヲ願イタイノデアリマス(「モ
  ウ宜イ」「分ラヌヨ」ト呼フ者アリ)又此點ニ付キマシテ英吉利ト亞米利加カラ質問ガアッ
  タト云フコトヲ私ハ承知致シテ居リマス、卽チ支那ニ對スル條件ノ中ニ是ハ揭ゲテアルガ、
  英吉利ニ對スル通告ニ無イ、如何ナル意味デアルカト云フコトヲ英吉利カラモ質問ヲ致
  シ、又亞米利加ニ於テモ-亞米利加政府ニ於キマシテモ此事ヲ如何ナル形式デアッ
  タカ知リマセヌガ、質問ヲ致シタト云フコトヲ承知致シテ居リマスガ、英吉利ハ亞米利加
  カラノ質問ハ如何ナル形式デ參ッタノデアリマスカ、又之ニ對シテ如何ナル說明ヲ我政
  府ガ與ヘタカト云フコトノ御說明ヲ願ヒタイノデアル、何トナレバ其說明如何ニ依
  リマシテ、英吉利、亞米利加等ガ此問題ヲ如何ニ解釋スルカ、又此問題ニ付テ支那トノ
  間ニ如何ナル關係ニ至ルカト云フコトガ岐レルノデアリマスカラ、列國ニ對シテ我政府ノ說
  明ハ如何デアッタノカト一云フコトヲ、是ハ外交ノ文書其物テ御說明アラムコトヲ希望スル
  ノデゴザイマス(「ヒヤ〓〓」ト呼ヒ拍手スル者アリ)出兵ノコトニ付キマシテ先刻小川君ヨ
  リイロ〓〓御說明ガゴザイマシタ、其事ハ最早略〓盡キタヤウデアルカラ申シマセヌガ、膠州
  灣ノ還附ノコト、是モ先程略〓申シマシタカラ略シマス、最後ニ最後ノ通牒此事ニ付キマ
  シテモ先刻カラ御質問ガアリマシテ略〓分リマシタヤウデゴザイマスルガ、尙ホ明カニ致ス爲ニ
  御尋ネ致シマルル、本月ノ七日午後三時ニ最後ノ通牒ヲ北京ニ於テ支那ノ政府ニ交付
  致シタ所ガ、其前日ニ於テ支那ヨリシテ其前ニ日本ノ提案ニ對シテ應諾ヲ致シテ來タ
  (「ソレハ說明シテ置イタ」ト呼フ者アリ)說明ガ不十分デアルカラ聽タノデアリマス、アナタ
  ニハマダ分ラナイノデセウ(「同ジヤウナコトバカリ言ッタッテ仕樣ガナイ」ト呼フ者アリ)卽チ
  先刻ノ御說明デハ支那ノ或ル官吏ガ來テ承知スルヤウナコトヲ申シタト云フコトデゴザイ
  マスガ、私ノ知リマスル所デハ是ハ風說デハゴザイマセヌ、外務大臣ハ風說ヲ信ジテハナラ
  ヌト申シマシタガ、風說デハナイ、風說ニハ傳ハッテ居ラヌノデアリマスガ、私ノ知リ得タ
  所ニ依リマスト、支那政府ニ於テハ第二囘ノ提案ニ對シテ應諾シテ來タ、而モ其應諾致
  シテ來タモノハ、我ガ政府ガ最後ノ通牒トシテ提出シタルモノニ比ベテ有利ナル條件デアツ
  タト云フコトヲ私ハ聞イテ居ルノデアリマス、而シテ此事實ガ外務省ニ御分リニナリマシタ
  ノハ、最後ノ通牒ハ北京公使館ニ訓電ハ致シマシタガ未ダ支那政府ニ出シテ居ラヌ時
  デアル、マダソレカラ後ニ於テ此條件ノ變更ヲ致ス時刻ハ十分ニアッタ時デアル、然ルニ一
  方ニ於テ英吉利ニ對シテ是後通牒ノ條件ヲ通〓致シタル爲メ、同盟國ニ對シテ一旦通
  告致シタルモノデアルカラ、縱シ支那政府ガソレ以上ノ條件ニ就テ應諾シテ來テモ、最早
  如何トモスベカラズト言ウテ、其儘最後ノ通告ヲ出シタト云フヤウニ私ハ承知致シテ居リマ
  ス、ソレハ先刻巧妙ナル御說明デゴザイマシタ、又外務大臣ノ御說明ヲ飽マデ信ズルノ
  デアリマスガ、極メテ重大ナル點デアリマシテ、此間北京公使館トノ應答ノ電報ハ必ズア
  ルト信ジマスカラ、此問題ニ關スル北京公使館トノ往復ノ電報ヲ議會ニ提出シテ御說
  明アランコトヲ希望致スノデアリマスナゼ此點ニ重キヲ置クカト云フト、一國ガ決心ヲ致
  テ最後ノ通牒ヲナス、其事容レラレズンバ兵力ニ訴ヘルト云フ決心ヲ致ス時分ニハ寶
  ハ國家ノ運命ヲ賭ス重大ナル場合デアリマスカラ、此ノ如キ態度ニ出ヅル其事柄ハ、旣
  ニ支那政府ハ容レテ、支那政府ガ承諾シタルハ更ニソレ以上ノ條件ニナッテ居ッタト云フ
  コトデアルナラバ、是ハ最後ノ通牒ニアラズシテ、其實支那政府ニ屈服致シタルモノニ外
  ナラヌノデアル、而シテ此ノ如キ場合、勿論先刻ノ御說明デハ蒙古ノ問題ガ多少異
  論ガ殘ッテ居ッタヤウデゴザイマスガ、大體ハ支那政府ハ我ガ第二囘ノ提案ニ對シテ應
  諾ヲ致シテ來タ、此場合ニ於テ何ヲ苦ンデ最後通牒ノ手段ニ出デタノデゴザイマスカ、
  此場合ニ於テハ兩國ノ間ニ尙數日ノ交涉ヲ重ネタナラバ、條約ノ一致點ヲ見出ス
  コトガ出來タノデゴザイマセウニ、ナゼ此場合ニ最後ノ通牒ニ出デタノデアルカ、若シ今ノ
  如キ事實トシマスレバ、此通牒ハ支那ニ對スル最後ノ通牒ニアラズシテ、國民ノ目ヲ欺
  ク爲ニ、日本國ハ强硬ナル態度ヲ取ッテ國民ヲ欺クガ爲ニ事ヲ好ンデ爲シタ次第デアル
  ト私ハ謂ハナケレバナラヌ、併ナガラ是等ノ點ニ付キマシテモ、外務當局ノ責任アル辯明
  ヲ待テ後初メテ吾〓國民ハ判斷致サナケレバナラヌノデアリマスカラヽ極メテ重大ナル箇
  條ト信ズルガ故ニ、外務當局ニ於カレマシテハ此間ノ往復ノ電報ヲ其儘吾〓ニ御示シア
  ランコトヲ希望致スノデアリマス、尙終ニ一言是ハ御伺ヒデモアリ又心得ノ爲ニモ申上ゲ
  ルノデアリマスガ、頻ニ外交ノ祕密々々ト云フコトヲ申サレマス、如何ニモ外交ノ祕密ハ
  大切テゴザイマスルガ、ドウ云フモノデゴザイマスカ、外交ノ祕密ハ存外保タレテ居ラヌ、殊
  ニ此度ノ談判ニ於キマシテハ支那ニ對スル日本ノ通牒、日本ノ要求日本ノ談判ノ模
  樣又支那ガ之ニ對シテノ應答ノ工合、支那ノ提案、總テ是ガ明カニ世間ニ漏レテ居
  ルノデアリマシテ、此點ハ支那ガ或ハ之ヲ利用シテ談判ノ際ニ於テ有利ナル事情ノ下ニ
  立タウト致シタ結果デアルカ知リマセヌガ、非常ニ能ク分ッテ居ルノデアリマス、吾〓ノ耳ニ
  マデ幾ド細カナル言葉ト致シテ、言葉其儘傳ヘラレテ居ルノデアリマスカラ、私ハドウカ此
  問題ニ付キマシテハ外務當局ニ於カセラレテハ、祕密ハ既ニ漏レテ居ル、總テノ事實ガ世
  間ニ傳ヘラレテ居ルモノトシテ、ドウカ事實ヲ隱蔽スルコトナク御說明アランコトヲ希望ス
  ルノデアリマス、外交ノ祕密ノ名ノ下ニ隱レテ、徒ラニ世間ヘノ體裁ヲ繕ヒ、或ハ世間ノ
  攻擊ヲ避ケルガ如キコトハ決シテ此場合採ルベキ態度デナイト信ズルノデアリマス、甚ダ
  私ハ議場ニ馴レマセヌタメニ言葉ニ於テ行屆カヌ點ガアルデアリマセウガ、大體ニ於テ私
  ガ質問致シタル觀念ハ、此外交談判ハ膠州灣攻擊ノ後ニ於テ直チニスルガ適當デアッタ
  ノニ、其機會ヲ失シ、又其後談判ヲ開始スルニ當ッテ列國ニ對スル通牒ガ誤ッテ居
  ル最後ノ場合ニ於キマシテ支那ガ應諾シタル點以下ノモノヲ最後ノ通牒トナスト云フ
  ガ如キ、是ハ誤解カモ知レマセヌガ、其觀念ガ國民一般ノ間ニ傳ハッテ居ルノデアリマ
  スカラ、ドウカ今申上ゲタ諸點ニ付テ詳細ナル御說明アランコトヲ希望シテ止マヌノデア
  リマス
  〔外務大臣男爵加藤高明君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=155

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• 156・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　唯今長島君ヨリ縷々御述ニナリマシテ、第一ハ私ノ
  先刻申上ゲタ中ニ言葉ノ遣ヒ方ガ惡カッタト云フ御咎デアリマスガ、互讓ガ必要ナリト
  云フコトヲ申上ゲタ、苟モ帝國ニ於テ他國ニ要求ヲナス以上、其全部ノ貫徹ヲ期スルコ
  トハ申ス迄モナイノデアリマス、併ナガラ談判ハ命令ヲ以テ爲スベキモノデアリマセヌカラ、
  交涉ノ經過從テ實地ニ臨ミ交讓妥協スルコトナクンバ外交ノ談判ト云フコトハ、一ガ
  ノ原案通リ一分一厘ノ變更ナク出來タト云フ先例ハ多クナイヤウニ思ヒマス、初メカラ
  讓ル精神ヲ以テ出タト云フコトデハナク、成ルベク讓ラズシテ全部ノ貫徹ヲ期スルノハ申ス
  迄モナイ、併ナガラ談判ノ實際ニ臨デ妥協交讓ノ精神ヲ以テシナケレバ、平和ノ解決ヲ
  期シ難キコトハ幾ド總テノ談判ニ伴フコトデアルト私ハ承知シテ居ル、外國ヨリ注意ヲ受
  ケタコトアリヤ、注意ト云フト何カコチラニ行居カヌ事ガアルカラ、他國カラ〓ヘテ貰フ
  タト云フヤウナ意味ニモ聞ヘマスガ、注意ト云フ字ニ非常ニ力ヲ入レテ度〓御述べニナリ
  マシタガ、若シ右ノ如キ意味ナラバ、注意ト云フコトハ受ケタコトハアリマセヌ、併シ各國
  トノ間我同盟國トノ間ニモ意見ノ交換ヲナシタコトハアル、長島サンハ餘程世間ノ事情
  ニ御精通デアリマシテ、聞ク所ニヨレバ內閣ニ於テハ斯ウ云フコトヲ決シタヂヤナイカ、元
  老諸公ハ斯ウ云フ說ヲ有ッテ居ラレタノデナイカト云フヤウナ事柄ヲ、度々斷定的ニ御
  述ベニナリマシタガ、其中ニ私ノ知ラヌコトガ澤山アルノデアル、帝國ヨリノ照會ニ關スル
  コト、是モアリマシタ、先刻申上ゲタ通リ米國ニモ照會ノ次第モアリマシタ、多クハ我ガ要
  求竝ニ希望事項ニ付テ其意味ヲ問合セル種類ノコト、其之ニ對シテ我政府ハ適當ナル
  說明ヲ其與度ニ與ヘテ居リマス膠州灣還付ノ事ニ關シテハ之ヲ還付スル事ヲ支那ニ
  向ッテ豫メ聲明スルノ理由ハ、先刻來縷々申述ベマシタカラ、是ハ最早繰返ス必要ハ無
  イカト思ヒマス、廟議ニ於テ其事ヲ決定シタ時期如何、是ハ御話申スコトハ容易イコトデ
  アリマスガ、何モ諸君カラ御聞ニナル必要モナカラウト思ヒマス、サウ云フ意味デ發表シタ
  ト云フ說明デアル、但シ長島君ノ御話ノ中ニ、十月幾日トカニ內田山ノ井上侯爵ノ邸
  ニ於テ云々ト云フコトヲ申サレマシタガ、是ハ本官ノ知ラザル所デアリマス、長島君ガ御承
  知ニナッテ居ルト云フ、頗ル元老諸公ニ御緣故ガアル故デアリマスガ、是ハ本大臣ハ其場
  合ニ於テ對支外交ノ談判ヲ-對支ノ交涉ヲ開始スベシト云フコトハ決定シタト一云フ
  コトハ承ラヌ、當局者タル外務大臣ハ其席ニ居ラナイノデアル、又其會合ノアッタ趣モ後
  ニ聞イタコトデ、當時知ラナカッタ、談判開始ノ時期ガ、山東ニ於テ獨逸ト戰ッテ我ガ兵ガ
  彼ノ地ニ駐在シタ中ニシタ方ガ宜カッタデナイカト云フ御問ハ、先刻既ニ答辯致シマシ
  ク、支那ニ對スル要求事項ヲ或ル國々ニ內示シタルヤ否ヤ、內示シタトスレバ要求條項
  希望條項、共ニ內示シタルヤ否ヤ、此事ニ付テモ先刻精シク答辯致シマシタ、英米若ク
  ハ其孰レヨリカ第五項ノ事ニ關シテ質問ガアリタルヤ否ヤ、是ハ英國カラモ質問ガア
  リマシタガ、米國カラモ質問ガアリマシタ、前申述ベタ通リノ事デ、ソレカラ外交ノ機密ノ
  漏レタ云々ト云フコトニ付テモ、先刻私ノ見ル所ヲ申述ベタ通リデ繰返シマセヌ、唯
  點答辯ヲ要スルト思フ點ハ五月六日、卽チ我ガ最後通牒ヲ彼ニ聲明スル前ニ於テ、
  支那政府ミリ既ニ二十六日ニ我レヨリ提出シタル所ノ要求及ビ希望事項ノ全部ヲ應
  諾シテ居ッタ、然ルニ最後通牒ヲ其事ヲ聞キナガラ提出シタノハ、徒ラニ强硬ト云フ名
  譽ヲ得ンタメニシタノデアラウ、是ハ穩カナラヌ御尋ネデアル、吾〓苟モ此大任ヲ拜シテ居
  ル以上ハ、右ノ如キ事ヲ爲スベキ筈デアルヤ否ヤ、長島君ト雖モ亦此一點ノ演說ノ時ニ
  拍手ナスッタ方ミニ於テモ、吾〓閣臣ガ右ノ如キ界劣ナ擧動ニ出デタト云フコトハ御信ジ
  ニナラヌト信ズルノデアル(拍手起ル)此事ニ付テモ旣ニ先刻モ申述ベマシタガ、五月六
  日ノ夜ニ是ハ實ハ本日私ガ此處ニ演說シタリ若クハ質問ニ答ヘル時ニハ、未ダ條約批
  准ガ濟ンデ居ラナイカラ頗ル困難デアルト云フコトヲ先刻申シマシタ、其事ヲ御諒察ナク、
  謂ハバ私ノ弱味ニ乘ジテ頻リニイロ〓〓ナコトヲ御問合セニナルヤウデアリマスカラ、止ム
  ヲ得ズ此點ハ先刻申シタ規則ヲ破ッテ御話致シマス、曹汝霖ト云フ支那ノ外交次長
  ハ我ガ日置公使ヲ訪問シテ、最後通牒ハ旣ニ翌日ノ午後三時ニ出スト云フコトハ分ッタ
  時デアル此時ニ訪問サレテ第五項、其中ノ或ル事項ニ付テハ日本政府ノ要求ニ從ッテ
  モ宜イト自分ハ思フ、未ダ政府ノ議ヲ經タコトデナイ、學校病院-日本ノ學校病院
  ヲ支那ノ內地ニ開設スルニ付テ、土地ノ所有、若クハ租借ヲ其關係者ニ許スト云フコト
  ヲ希望スル事項ナルコトハ、先刻申述ベタノデアリマス、其事項ハ旣ニ談判ノ中ニ於テモ
  支那ノ代表者ガ事實ニ於テ認メテモ宜カラウ、斯ウ云フコトヲ言明シタノデアリマス、二
  十六日ニ我カラ修正ヲ差出ス時ニ當ッテハ支那當局ハ既ニ言明サレタコトデアリマシテ、
  其事ヲ記錄ニ留メヤウデナイカ、斯ウ云フコトヲ要求シタ一箇條ガアル、其事柄ハ
  我ノ希望通リニ卽チ主義ニ於テ、我ガ希望ノ趣旨ヲ認容スルト云フコトヲ支那ノ外交
  次長ガ言ハレタコトヲ記錄ニ載セルト云フコトヲ承諾シテモ自分ハ宜カラウト思フ、又南
  支鐵道ノ事ニ關シ、若シ日本ガ要求シテ居ル所ノ鐵道ガ、他國ニ向ッテ既ニ權利ヲ與
  ヘラレテ居ル鐵道ト衝突スルガ故ニ支那政府ニ於テ我ガ希望王ヲ容レルコトガ出來ヌト
  云フコトデアレバ其關係ノ國トハ日本ニ於テ相當ノ交涉ヲ試ミル、若シ幸ニ其國ト交
  涉ガ整ウタ場合ニ於テハ支那政府ハ許スカ否ヤ、ソレカラ其事ヲ記錄ニ載セテ貰ヒタ
  イ若クハソレモ出來ヌ場合ニ於テハ、此日本ガ種々敷設權ノ要求希望ヲ表シタ所ノ
  其同ジ線、全ク同ジ線ナンデ、ソレヲ他ノ國ニ許スト云フコトハ、日本ガ關係ノ國ト談判
  ヲ濟マシテ、其結果ヲ得ルマデハ見合シテ貰ヒタイ、甲カ乙カ斯ウ云フコトニ其事柄ヲ記
  錄ニ留メテ置キタイ、是モ五月一日ノ支那囘答ニ依ッテ拒ンダノデアル、五月六日ノ夜
  ニ曹汝霖ガ我ガ公使館ヲ訪問シタ時ニ、鐵道ノ事ニ關シテハ右ノ中ノ第二ノ日本ガ關
  係ノ他國ト話ヲスルト云フコトデアレバ其協議ノ結果ヲ得ルマデハ、日本ガ將ニ敷設權
  ヲ與ヘラレタイコトヲ希望シタ、其全ク同一ノ線路ヲ他國ニ許サナイト云フコトヲ記錄
  ニ留メルコトハ宜イデアラウ、其二〓ヲ言ッタノデアル、此二點ハ共ニ曹汝霖君ノ自己ノ
  意見デアッテ、政府ノ議ヲ經タモノデナイ、而シテ我ガ政府ノ最モ重キヲ置イテ二十六日
  ノ修正案ニ於テ要求シタ所ノ、東部内蒙古ニ於テ我國人ト支那人ト合辨シテ農業ヲ
  經營スルコトヲ得ルト一云フ要求ヲ、支那ハ拒ンデ居ルノデアル其事ハ到底應諾ガ出來
  又、滿洲ノ土地ニ關スル民事ノ訴訟ニ就テハ、支那ノ裁判官ガ日本人ヲモ審判シタイト
  云フ支那ノ案デアリマシタカラ、之ニ對シテハ民事訴訟ノ中土地ニ關スル分ニ限ッテハ、
  支那ノ裁判官ノ審判スルコトニ同意スル、但シ我國ノ官吏モ之ニ立會ッテ共同審判ヲ爲
  スコトニシタイト云フ申込ヲシタ、其事モ聽カナイ、其他滿洲ニ關シテ尙重要ナル事
  ニ就テノ議ノ纏マラヌ事ニ就テハ、我ガ政府ノ意見ハ容レナイ、斯ウ云フコトヲ申シタノ
  デアル、ソレデ先刻私ガ申シタ中ニ取留マラヌコトデアルト申シタノハ其事デアル、日本ノ
  希望ノ如クニ、第五ニアル事ヲ記錄ノ中ニ留メルト云フコトハ言ッタニ違ヒナイガ、ソレハ曹
  汝霖君一人ノ私見デアッテ、政府ノ議ヲ經タモノデナイ、斯ウ云フノデス、既ニ我ガ政府
  ニ於テ廟議ヲ盡シテ御裁可ヲ得テ、支那ニ向ッテ最後通牒ヲ差出スコトヲ日置公使ニ訓
  令シタ、其訓令ヲシタ趣ニ從ッテ日置公使ハ支那ニ最後通牒ヲ發スルコトニ決定シテ、
  其爲メニ支那ノ當局ト會見ノ時刻ヲ約シタ後デアル、其場合ニ於テ右等ノ取留マラヌ
  話ヲ承ッテ、最後通牒ノ執行ヲ止メルコトハ出來ヌト政府ハ信ジタノデアリマス、事實ハ
  右ノ如クデアリマス

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• 157・長島隆二

  ○長島隆二君　今ノ說明ニ就テ尙此席カラ簡單ニ申上ゲタイコトガアリマス

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• 158・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　長島君

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• 159・長島隆二

  ○長島隆二君　私ハ外務大臣ノ御說明ニ依リマシテ大體能ク分リマシタ、殊ニ私ノ滿
  足致シマスルノハ列國ニ對シテ帝國ニ於テ第五項ヲ落シテアッタト云フコトガ明カニナッタ
  コトハ私ハ甚ダ國家ノ爲メニ遺憾トスルト同時ニ、外務大臣ノ答辯ガ私ノ考ヘテ居リ
  マシタ通リデアルコトヲ感謝致シマス

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• 160・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　議長

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• 161・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　加藤外務大臣
  〔外務大臣男爵加藤高明君登壇〕

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• 162・加藤高明

  ○外務大臣(男爵加藤高明君)　先刻申シマシタガ、長島君ガ落シテアッタト一云フコト
  ハ甚ダ語弊ガアル、要求ノ事項ニ就テハ斯ノ如キ理由ヲ以テ、二三ノ友邦ニ內涉ヲ致シ
  タ希望條項ハ斯ノ如キ理由ヲ以テ內涉ヲシナカッタト云フコトヲ申シタノデス

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• 163・長島隆二

  ○長島隆二君　其事實ガ明カニナリマシタ、ソレカラ是ハ唯今外務大臣カラ元老會議
  ノ事ニ就テ、何カ私ガ特ニ其事情ヲ知ッテ居ルカト云フヤウナ言葉ガアリマシタガ、
  斯ノ如キ重大問題ニ就キマシテ、私ハ自分ガドウト云フヤウナ考ハ少シモアリマセヌ、唯
  此事ガ支那問題ノ解決ニ對シテハ重大ナル關係ガゴザイマスルカラ、其事實如何ヲ確
  メタイト思フノデアリマス、サウシテ外務大臣ガ此事ハ少シモ自分ハ知ラヌト仰ラレマシタ、
  併ナガラ其當時ノ新聞ヲ調ベテ見マスレバ分リマスガ、其會議ガアリマシテ外務大臣ハ
  參列サレマセヌデアリマシタカ、大隈首相ハ其會議ニ列シテ、而モ其後各方面ニ於テ大
  隈首相ガ老軀ヲ提ゲテ御說明ノタメニ御週リニナッタ、其爲メニイロノ〓ナル問題ガ起ッ
  タト云フコトハ是ハ明カナル事實デゴザイマスカラ、其事ニ就テハ最早私ハ政府ノ說明ヲ
  求メマセヌ、ソレカラ最後ノ通牒ノ前ニ支那ガ應諾シテ來タコトニ就テ私ハ申シマシタ是
  ハ外務大臣ノ御說明ガ其通リデアルコトヲ私ハ望ムノデアル、又サウ信ジナケレバナラヌ
  ノデアリマス、併ナガラ國民ノ間ノ疑惑ガ甚ダ多イノデアリマシテ、現ニ私ハ斯ウ云フ事マ
  デ聞イテ居ルノデアル、外務大臣ガ最後通牒ニ對シテ訓電ヲ日置公使ニ發シタ後ニ、日
  置公使カラシテ支那ガ應諾シテ來タ、之ニ對シテ外務大臣ハ更ニ電訓シテ、七日ノ午
  後三時ニ交付スベキ最後ノ通牒ヲ交付スルカ、或ハ延バスカ、其事ハ公使ニ任スト云フ
  コトノ電訓ガアッタト云フコトヲ私ハ聞イテ居ルノデアリマスガ、此風說モ誤リデアルコトヲ
  私ハ望ムノデアル、併ナガラ斯ノ如ク此重大ナル點ニ就テ疑惑ガ甚ダ多イノデアリマシテ、
  若シ是ガ明カニナリマセヌト、是ハ帝國ノ外務大臣ノ威信ニモ關係致ス事デゴザイマスル
  カラ、國民ノ疑惑ヲ解ク意味ヲ以チマシテ、此間ニ於テ往復サレタル電報ヲ其儘議會ニ
  御示シアランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)而シテ此事ニ就テ尙私ハ甚ダ餘事ノヤウデ
  アルガ申上ゲマスガ、昨年ノ八月ノ七日頃カラシテ獨逸ニ對シテ最後通牒ヲ發シマス
  ル間ノ此英吉利トノ交渉、此內容モ世間ニハイロノ〓ト傳ッテ居ルノデアリマス、而シテ
  之ニ對スル外務大臣ノ說明ハ此世間ニ傳ッテ居ル所、又外國ノ新聞等ニ出テ居ル所ト
  ハ非常ニ違ッテ居リマシテ、外務大臣ハ新聞ヲ信ズルカ自分ヲ信ズルカト云フ御言葉マ
  デ-非常ナ强イ意味ノ御言葉マデ御用井ニナッタノデアリマスガ、此〓ニ就テハ唯世間
  バカリデハゴザイマセヌ、殆ド貴族院ノ多數ハ疑デハナイ、此間ノ電報ノ往復ヲ見タナラバ、
  是ハ非常ナル國辱、非常ナル國ノ威信ニ關スル事ガ多イノデアルカラ、政府ヲ責ムル積
  デアレバ此電報ノ公表ヲ要求スルノデアルガ、其事ハ旣ニ過ギタルコトデアル、獨逸ニ對
  スル最後通牒ガ既ニ發セラレタ過去ノコトデアルカラ、何モ故ラニ之ヲ發キ立テテ國ノ恥辱
  ヲ世界ニ曝スニモ及バヌカラト申シテ居ルノデアリマシテ、是モ或ハ誤リカモ知レマセヌ、併ナ
  ガラ唯世間バカリデハアリマセヌ、又新聞ノ上バカリデハアリマセヌ識者ノ間ニ於テ常ニ外
  交ノ機密ト云フコトニ就テ斯ノ如キ疑惑ガアルノデゴザイマスカラ、此最後通牒ノ前後ニ
  於ケル北京公使館トノ電報ノ往復ノ寫ヲ、議會ニ其儘御示アッテ國民ノ疑惑ヲ解カルル
  コトガ、外務大臣トシテ此場合ニ於テ適當ナル處置ナリト信ジマスカラ、此事ヲ要求致
  シマス(拍手起ル)

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• 164・岡市之助

  ○陸軍大臣(岡市之助君)　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=164

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• 165・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　岡陸軍大臣
  〔陸軍大臣岡市之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=165

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• 166・岡市之助

  ○陸軍大臣(間市之助君)　唯今長島君カラ陸軍大臣ニト云フ特ニ御指名ノ御尋
  デアリマス、ソレハ靑島陷落シタル後ニ神尾中將ヨリ日支交涉ノ事件ヲ豫想シテ、兵ヲ
  此儘彼ノ地ニ留メ置クヲ得策ナリトスル意味ノ意見上申ガアッタ、斯ウ云フ意味デゴザイ
  マシタナ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=166

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• 167・長島隆二

  ○長島隆二君　日支交渉ヲ豫想シテト云フコトハ申シマセヌ、其儘駐屯軍ハ撤廢セズ
  ニ置クコトガ必要ナリト云フ意見ガ具申サレタト云フ點デアリマス

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• 168・岡市之助

  ○陸軍大臣(岡市之助君)　簡單ニ申シマスルト、左樣ナ意見上申ハ參リマセヌノデ
  ス、詰リ任務ガ了了リマシタナラバ必要ナ兵ダケヲ留メマシテ、其他ハ漸次ニ引揚ゲルト云
  フコトニ致シマシク、左樣御承知ヲ願ヒマス、ソレカラモウ一ツ是ハ辯明ヲ致シテ置キマス
  ルガ、又更ニ兵ヲ出シタト云フ御言葉ガアリマシタ、ソレハ一一月中旬ニ交替兵ヲ出シタコ
  トデゴザイマシタラウト思ヒマス是ハ先刻床次君ノ御質問ニ對シテ御答ヲ致シマシタ通
  リデ、何等ノ意味ハゴザイマセヌ、純然タル交替兵ヲ派遣致シマシタニ外ナリマセヌ、念
  ノ爲ニ辯明ヲ致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=168

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• 169・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　佐々木安五郞君
  〔佐々木安五郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=169

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• 170・佐々木安五郎

  ○佐々木安五郞君　外務大臣トハ初メテ御目ニ掛リマス、應酬流ルヽ如ク圓轉滑脫
  實ニ其手際ニハ感心致シマシタ、併ナガラ多ク語ッテ何事ヲモ言ハズト云フ意味デ、千
  言萬語ヲ費シマシテモ、殘ル所ハ外交ノ失敗ト一云フ字デゴザイマス、ナゼ外交ノ失敗カト
  云フニ最後ノ通牒ヲ出シタ其曉ニ及ンデ陸海軍ニ動員令ヲ出サレ、樽爼折衝玉帛ヲ
  以テ解決ヲシタナラバ、外交ノ手腕ト云フコトモ多少ハ認メラレルガ、陸海軍ヲ出シテ而
  シテ後ニ僅ニ支那ノ承諾ヲ得タト云フコトハ、外交ノ無能力デアルト云フ證據デアル、陸
  海軍ガ無ケレバ解決ガ附カナイ(「名質問」ト呼フ者アリ)斯ノ如キ意味ニ於テ外務大臣
  ハ先刻何ト言ッタ、支那ニ於テ獲得スルノハ當然ノ權利デナイ、當然ノ運命ダト云フ、運
  命ト云フモノハ、棄テヽ置イテモ來ルモノデ、權利ト思ハズニ運命ト思ハレテ九十日掛ラ
  レタ所ハ非常ニ御苦勞トームフコトヲ謝スル譯デアリマス、而シテ此運命ノ落著ナルモノ
  ガ、ドウ云フコトニナッタカト云フコトニ就テハ前辯士ガ旣ニ私ノ言ハント欲スル所ヲ言ッ
  タ(笑聲起ル)サウ云云テテ小サナコトデ議論セニヤア勝テヌダラウ、小股ヲ取ルナ、堂々トヤ
  レ、堂々ト議論セイ、辯士ト言ッタガ何ガ惡イ、辯論ヲスルヂヤアナイカ(「ヒヤノ」ト呼
  フ者アリ)要スルニ最早千言万語ヲ費ス必要ガナイ、我輩ノ言ハント欲スル所ハ外務省
  デ用ユル言葉ノ〓究ヲシテ見タイ、ドウ云フ事カト云フト狀態ハ圓滿デ、事體ガ解決デ、
  結果ガ親善ト云フ譯ノコトヲ度々言ハルヽ、圓滿ナル解決ヲ得テ日支兩國ノ親善ヲ增シク
  ト云フコトガ、貴族院ニ於テモ本議院ニ於テモ言ハレタコトデアル、圓滿トハ何デアル
  カ、第一案ノ時之ヲ讓リ、第二案ノ時之ヲ讓リ、第三案ニナッテモ之ヲ譲ッテ、而シテ僅ニ
  治ッタノガ是ガ圓滿、然ラバ外務省ニ於テ用ユル圓滿ト云フ文字ハ屈讓ト云フ字ノ換ヘ
  言葉デアルト解釋ヲシテモ差支ナイ(「質問デスカ」ト呼フ者アリ)ソレガ要點デス、ソレカ
  ラ解決ト云フコトデス、解決ト云フコトハサラリト皆殘リナク濟マネバナラヌ譯デアルガ、果シ
  テ殘リナクサラリト濟ンデ居ルカドウカ、重要ナル問題ハ悉ク懸案トシテ殘サレテ居ル、殘
  リ物ノアルノガ是ガ解決ト云ヘルカ、未了ノ條件ヲ殘シテ置クノガ外務省デハ解決ト云
  フ意味デアルカドウカ、而シテ第三番ニ承リタイノハ其屈讓ニ屆讓ヲ重ネタ外交モ、日支
  ノ親善ヲ重ンズルカラデアルト云フコトハ貴族院ニ於テ言ハレ、此所テモ言ハレタ、唯今
  此外交ノ結果ガ果シテ日本ト支那トノ親善ヲ來シテ居ルカドウデアルカ、私ハ親善ヲ來
  シタトハ認メナイ、至ル所ニ排日熱ガ起リ「ボイコット」ガ起リ、人ヲ殺シ家ヲ燒キ婦女ヲ强
  姦スルト云フヤウナ亂暴狼籍ナル有樣ガ支那ノ大陸ニ於テ現ハレテ居ルデナイカ、斯ク申
  ストサウ云フコトハ領事カラ言ッテ來ナイト御逃ゲ遊バス、併ナガラ私ハ領事ヲ信ゼナイ、
  ナゼ信ゼナイカ、信ゼナイ證據ヲ擧ゲテ申シマス、膠州灣ニ於テ獨逸ガ石油ヲ持ッテ居ル
  (「質問ヲシロ」ト呼フ者アリ)今質問中デアル、此石油ヲ持ッテ此石油ヲ利用シテ膠
  州灣ニ於ケル建物ヲ一炬ニ附スルト云フ最後ノ計畫ヲシテ居ッタ、此石油ノ載セテアル
  所ノ汽車ハ陸軍ノ軍隊ガ押ヘタ、然ルニ獨逸ハ手ヲ遇ハシテ亞米利加ノ婦人ノ名ヲ以
  テアノ汽車ニ載セテ戰爭中ニ積込ンダ石油ハ一個人ノモノデアルカラ返シテ呉レト云フコ
  トヲ濟南ニ居ル所ノ日本ノ領事ニ照會ヲ賴ンダ、日本ノ領事ハ之ヲ承諾ヲシテ照會狀
  ヲ書イテ靑島ニ居ル軍隊ニマデ向ケタコトガアル、何ゾ計ラン靑島要覽ト云フ書物ヲ讀
  ンデ見レバ一個人トシテ五箱以上ノ石油ヲ所有スル者ハ二千圓以上ノ罰金、二箇
  月ノ禁錮ニ處スルト云フコトニナッテ居ル、此事實ヲ知ラズ、現ニ敵國ノ所有物デアル石
  油ヲ敵國ノ週シ者ガ之ヲ奪ハントスル其手ニフワリト乘ッテ、照會狀ヲ書イテ渡ストームフ
  ノガ日本ノ領事デアル(「何ノ質問」ト呼フ者アリ)斯ノ如キノ領事ハチヨイト讀メバ直グ
  分ル、靑島要覽ト云フ書物ガアル、ソレヲ調ベラレルモノモ調ベキラヌコトデアリマスカラ、領事
  ノ耳ニハ最後デナケレバ何ニモ屆クモノデナイ、、ダカラ領事ノ報告ガ來ヌカラ支那ハ泰平デ
  アルト言ハレナイ、支那ハ亂レテ居ル、將來此問題ハ重大ニナルト思ヒマス、ソレガ或ハ重大
  ニナッタト云フ事ニナルト、外務省ノ失敗カラ來タヤウニ言ハレテハナラヌト云フ意味カド
  ウカ、知ラヌガ、成ルベク疵ヲ小サクスルヤウナ傾向ガアリハセヌカ、是ハ怪シカラヌコトデア
  ル、事實ヲ事實トシテ發表シテ、善後策ヲ講ズルノガ國務大臣ノ執ルベキ仕事デアル(「ソ
  レハ議論ヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)議論モ這入ルヨ、質問ノ中ニ-而シテ更ニ未解決
  トシテ殘ッテ居ル問題ノ中デモ、沿岸不割讓ナルモノハドウダ、沿岸不割讓ト云フコトハ、向
  フガ聲明ナシタ-支那ノ方カラ聲明ナシタ條件ニナッテ居ラヌ、將來此支那ガ何處カ
  ノ國ニヤラウト思ッタラ勝手ニヤルカモ知ラヌ、ソレヲ答メルコトハ出來ヌ、自分ノ聲明シ
  タモノヲ自分ガ取消スニ差障リハナイト向フガ言ッタラドウスル、條約ナラバ答メルコトガ出
  來ルガ、彼レ自カラ自己ノ自由ニ於ケル所ノ聲明デアルカラ之ヲ取消スノハ何デモナイ
  ガ、外務大臣ハ將來斯ノ如キ場合ニ於テハ何ノ言葉ヲ以テ支那ヲ束縛スルコトガ出來ル
  ト思フカ、殊ニ以上ノ如ク數ヘ來レバ殘ス所ハ皆失敗ノ文字ヨリ外ニハナイノデアルガ、失
  敗ニ更ニ副ヘ物ヲシテ、コッチデ取ッタトコロノ膠州灣ヲ還ス、還スノハ何ノ爲メニ還スカ
  ト云フコトヲ貴族院デ問ハレタトキニ、日支兩國ノ親善ヲ欲スルガ爲メニ還ス、、然ラバ此
  日支兩國ノ親善ヲ欲スルガ爲メニ還スト云フタナラバ還シタトキニ日支兩國ノ親善ノ
  意味ガ現レタカドウカ、、若シモ親善デアルナラバ有難ウト云フテ禮ノ一遍位言ヒサウナモノ
  デハナイカ、禮ヲ言ハサルノミナラズ、撤兵ヲ要求シ、損害賠償ヲ要求シテ居ル、ソレニ
  向ッテ日支親善ノ爲メニ還シタト云フノガ何ノ是レガ手柄ニナッテ居ルカ、一ツモ手柄ニ
  ハナッテ居ラヌノデアル斯ノ如クニシテ手柄ニナラナイコトヲ手柄ニナルヤウニ言フ意味ハ
  何ノ邊ニ在ルカ、膠州灣ヲ還セバソレデ日支ガ親善ニナル-親善ニナルト云フコトガ
  事實ナッテ居ッタナラバ、外務大臣ノ賢明ナルニ服スルケレドモ、親善ニナッテハ居ナイ(「未
  來ノ話ダ」ト呼フ者アリ)未來ノ話デハナイ、現在デアル-現在デアル、ソッチカラワア
  ワアト言フト幾ラデモ長クヤルゾ(「ヤルベシヤルベシ」「夜ノ明ケルマデヤルベシ」「何ボデモヤ
  レ」「蒙古ノ方ヲヤレ」ト呼フ者アリ笑聲起ル)蒙古ノ問題ハ(「ヒヤ〓〓」)蒙古ノ問題
  ハ最前同僚ノ伊東知也君ガ說明ヲ求メタケレドモ、說明ガ出來ヌサウダ、出來マイ(「君
  ナラヤルサウダート呼フ者アリ)東部蒙古ト云フ話ハアルガ、奉天省ノ一部分ト直隸省ノ
  一部分ヲ併セテ、東部蒙古ト云フ名ヲ付ケテハ居ラヌカ、調ベ出シテ見タナラバ存外チッ
  ポケナモノカ知レヌ、是レハ蓋ヲ開ケヌ方ガ宜イト云フ譯デアラウガ、參考ノ爲メニ公ノ場
  合ニ示サレヌナラバ、長島君ガ請求シタトコロノ外交ノ電報ト共ニ祕密會デモ要求シテ
  是非示シテ貰ヒタイモノデアルト思フ、而シテ膠州灣ヲ還シタル結果(「而シテ」ト呼フ者
  アリ笑聲起ル)是レガ日本ノ軍人ニドレダケノ士氣ヲ沮喪セシメタカト云フコトハ是非
  共此場合ニ於テ大ニ考慮ヲ費シテ貰ハナケレバナラヌ(「蒙古ハ蒙古ヲヤレ」ト呼フ者ア
  リ)ソレハダ、アレダケノ人ヲ殺シアレダケノ金ヲ使フテ居リナガラモ、漫然ト之ヲ支那ニ還
  シテ、其結果タルヤ徒ラニ支那人ノ侮辱ヲ招イデ、今日ノ如キ排日熱ヲ起サシメタニ至ツ
  テハ言語道斷ト思フガ、之ヲ元ノ通リニ親善ニ直ストコロノ考ガアルヤ否ヤ、之ヲ要ス
  ルニ外務省ノ圓滿ナルモノハ是レガ幾ラ缺ケテモ圓滿ト云フノカ、是ガ一ツ解決ト云フノハ
  後ニ物ガ殘ッテ居ッテモソレガ解決ト云フノカ、親善ト云フノハ排日「ボイコット」虐殺、火
  事、ソンナコトヲヤラシテモソレデ親善ト云フノカ、此三ツニ對シテ明確ナル返答ガアレバ、
  凡ツ外務省ノ腕前ト云フモノガソレデ分ル譯デアリマス、之ヲ以テ此壇ヲ降ル
  〔拍手起ル〕
  (「答辯ノ限リニアラズ」「答辯ガ出來ネバセヌデモ宜シイ」「サレヌ方ガ宜イダラウ」
  ト呼フ者アリ〕

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• 171・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　川原茂輔君
  〔川原茂輔君登壇〕

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• 172・川原茂輔

  ○川原茂輔君　諸君、本員ハ(「新タナル質問ヲ願ヒマス古イノデハイカヌ」ト呼フ者アリ)
  總理大臣閣下ニ向ッテ新タナル質問ヲ極ク短簡ニ致サウト思フノデアリマス(「有難イ命
  ガ延ビル」ト呼フ者アリ)

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• 173・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜肅二·

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• 174・川原茂輔

  ○川原茂輔君　大隈伯爵閣下ガ高齡ヲ以テ國難ノ場合ニ當ラレマスルノハ、吾〓ハ深
  ク多トスルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」「ワンナコトガ質問カネ」ト呼フ者アリ)而シテ大隈伯
  爵ガ昨年來屢〓御演說ニナッタトコロノ一節ヲ玆ニ申上ゲテ、而シテ最近ニ於ケルトコロ
  ノ事實ニ之ヲ當箝メテ、伯ノ御答辯ヲ得ント思フノデアリマス(「謹聽々々」ト呼フ者アリ)
  昨年ノ六月二十四日ニ伯爵閣下ガ豫算委員會ニ於テノ御演說ノ一端ヲ申上ゲマスレバ
  「日本ノ元老ト云フコトニ付テハ頗ル遺憾ニ思ウテ居ルノデアル、併ナガラ元老ト云フ言
  葉ハ餘程後カラ出タコトデ、若シ年寄ガ元老ナラバ吾輩モ元老」此先ニ「憲法上輔弼ノ
  臣國務大臣以外ニ何等政治上ニ權力ノアルモノハナイ云々、私ハ何等斯ノ如キ元老ニ
  依ッテ左右サレタ人間デハナイ」(「勿論」ト呼フ者アリ)是レガ卽チ六月二十四日ノ御演
  說デアリマス、ソレカラ九月ノ臨時議會ニ於テ所謂伯ノ失言問題ナリトシテ世間ヲ騒ガ
  セタ其一節ヲ申上ゲレバ「元老ト云フモノハ存在シテ居ッタヤウデアル、今尙存在シテ或時
  期ニ於テ中間ニ加ハルコトガアルガ、何等直接ノ責任ハナイ、直接ノ責任ハ國務大臣デ
  アル云々」(「其通リソレデ宜イデハナイカ」ト呼フ者アリ)此通リデアル、伯ハ卽チ老齡ヲ
  以テ自ラ此局ニ當シテ政治上ノ事ハ總テ國務大臣ガ全責任デアルト云フコトヲ論ジナガ
  ラ、此間ノ元老會議ハ何事デアルカ、是レハ伯ガ從來御演說ニナリマシタ事ト、此間御
  開キニナッタ元老會議ノ結果ハ承知シマセヌガ、御趣意ト違ヒハセヌカト一云フ疑ヲ起スノ
  デアリマス、而シテ伯ノ與黨タル-伯ノ與黨タル諸君ガ決議ヲシタノハ何ト決議ヲシタ
  カ「內閣ハ天皇輔弼ノ責ニ任シ國家ノ安危ヲ負フモノ、一ニ元老ノ異議ニ動カサルヽ
  コトナク、憲法ノ大義ニ則リ斷然豫定ノ行動ヲ取リ上陛下ノ信任ニ應ヘ下國民ノ
  興望ニ副ハムコトヲ期スト云フ決議ヲシタデハナイカ、然ラバ一二元老ノ異議ニ依テ動
  カサレルモノデナイト云フ意味カラ、決議シテ居ルノデハナイカ、(「ソンナコトハナイ」ト呼フ
  者アリ)ナイナラバ何デ決議ヲスルカ、アルカラ決議ヲシタデハナイカ、ナイナラ何デ決議ヲ
  シテ居ルノデアルカ、然ラバ伯ガ從來主張セラレタルトコロノ憲法上ノ責任-元老抔ハ
  一切責任ヲ負フモノデナイ、自カラ責任ニ當リ、元老ハ無用ノ長物テアルガ如ク御議論
  ニナッタ伯ガ元老會議ヲ開イテ元老ニ喙ヲ容レシメタト云フコトハ、從來ノ御議論ト變ツ
  タノデアルカト云フ疑ヲ起スノデアル、若シナイナラバ與黨ノ人、其中ノ主モナル人ノ名前ハ
  紫四朗君、或ハ大竹貫一君、此等ノ人ガ卽チ集ッテ此決議ヲシテ各方面ニ向ッテ活動
  シテ居ルデハナイカ(「途方モナイコトヲ[言フナ」「本旨ヲ述ベヨ」ト呼フ者アリ)卽チ本月ノ
  五日ニ政府與黨ノ人〓ガ集ッテ此決議ヲシテ各方面ニ向ッテ活動ヲシテ居ルノデアル、責
  任ヲ持タナイモノデアルナラバ何デ與黨ノ人ガ騒グコトガアル、何ヲ以テ騒グノデアルカ(此
  時發言スル者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=174

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• 175・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　諸君ガ不規則ノ發言ヲナサルナラバ注意致シマス、諸君ノ過
  デ、議場ガ紊レルノデアリマスカラ、諸君ガ鎭マルマデ-發言者ノ聲ガ達スルマデ中止
  セザルヲ得ヌト思ヒマス--川原茂輔君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=175

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• 176・川原茂輔

  ○川原茂輔君　伯ガ年來ノ憲法上ニ於ケル御議論ト吾〓ノ意見ト一致シテ居ルノデ
  アリマス、然ルニ此元老會議ノ結果與黨ノ人ガヤカマシク言ッテ此通リ決議ヲシテ騒ギマ
  ス以上ハ、其内容ニ至ッテ果シテ元老ノ異議ニ依テ動カサレタノデアルカ、或ハ又世間ノ
  稱スル卽チ外交失敗ノ責任ヲ一二元老ニ轉嫁セムトスルノ御趣意デアルカトームフコトヲ
  疑フノデアリマス、伯ガ元老ニ對スル年來ノ屢ノノ話話ト、現在ノ伯ノ御考ニ付テ如何
  ナル變更ガアリマシタカ、果シテ然ルカト云フコトヲ伯ニ向ッテ問フノデアリマス(岡崎久次
  郎君「演說者ニ質問ガアル、決議ト云フノハ能ク分ラヌ、ドウ云フ所デ決議ヲシタノカ、
  モット、明カニ言ッテ貫ヒタイ」ト呼フ)

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• 177・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　大隈總理大臣
  〔內閣總理大臣伯爵大隈重信君登壇〕

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• 178・大隈重信

  ○內閣總理大臣(伯爵大隈重信君)　國家重大ノ問題ガ起ル每ニ、從來ノ內閣ニ於テ
  元老閣臣ガ集ッテ協議ヲサレタト云フコトハ數囘繰返サレテ居ルコトデアリマス、吾〓局ニ
  當ック後モ、旣ニ昨年八月八日ニ日獨交涉ノ末、或ハ不幸ニモ兩國兵ヲ交ユルノ已ム
  ヲ得ヌカモ知レヌト云フトキニ當ッテ、元老吾〓ハ集會シタコトガアリマス、此度モ均シク
  集會致シタノデアリマス、元老ハ帝室ノ重ンセラルヽトコロ、國家ニ大勳アル者デアッテ、
  決シテ此元老ヲ厄介視スル、サウ云フコトハ少シモナイノデアル、吾ミハ尊重シテ居ルノデ
  アル、併ナガラ重大ノ問題ヲ以テ責任ヲ分ツ抔ト云フ、斯ノ如キ誤レル考ハ少シモナイノ
  デアル、無論國家ノ問題ニ付テハ大小ヲ問ハズ補弼ノ臣自カラ責ニ任スル、憲法ノ大義
  デアル、又元老其者モ其大義ヲ冒スト云フコトハナイノデアル、何等干涉スルト云フコト
  モ決シテアリ得ラレヌ譯デアル、多分誤解カラ斯ノ如キコトガ起ッテ居ルト思フノデアル

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• 179・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　池田寅治郞君
  〔池田寅治郞君登壇〕

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• 180・池田寅治郎

  ○池田寅治郞君　東洋永遠ノ平和ヲ維持スルト云フコトハ我國ノ國是デアル、世界
  列國ノ熱望スルトコロ、而モ此日本ガ東洋永遠ノ平和ニ關スル立場ハ歐洲列國ヨリ之
  ヲ見マスレバ、單ニ問題ハ利害得喪ニ止マルニ拘ラズ、日本ヨリ之ヲ見レバ利害得喪ノ
  問題ハ最モ親密ナル關係ヲ持ツコトハ申スマデモナク、日本帝國ノ存危安亡ニ關スル大
  問題デアルノデアリマス、此存危安亡ニ(笑聲起ル)諸君、此日本ノ存立問題ニ關シテ
  デス、此平和ノ問題ハ何レニアルカト言ヘバ、日支親善ノ關係ヲ維持スルヨリ外ニ策ハ
  無イノデアル、此日支親善ノ關係ヲ維持スル、此日支談判ノ如何ニ是ガ取扱レタルカ
  ト云フコトヲ私共ガ考ヘマスルト、實ニ感慨ノ情ニ堪ヘナイコトガ數ミアリマス、併ナガラ
  是ハ(「質問ヲ早クセヨ」ト呼フ者アリ)諸君默リ給ヘ、默レ、默レ(「謹聽々々」ト呼フ者
  アリ)此大切ナル問題ヲ交涉スルニ當リマシテ、曩ニ加藤外務大臣ハ準備ヲ要シタト言
  ハレマシタ、私ハ頗ル同意ヲ表シタモノデアル、然ルニ玆ニ怪訝ノ情ニ堪ヘナイノハ、今朝貴
  族院ニ於テ、仲小路君ガ御質問ノ時ニ權利義務ノ御言葉ヲ御使ヒニナリマシタ、海外
  ニ之ヲ報告スル義務ハ持タナイ、斯ウ云フ御演說ガアリマシタ、勿論私ハ日本帝國ガ堂
  堂タル權威ヲ持ッテ何等服從的ノ義務ヲ以テ、之ヲ海外ニ報告スルノ義務ノ無イト云
  フコトハ外務大臣ノ言葉ヲ俟タズシテ、三尺ノ童子ト雖モ確カニ之ヲ知ルトコロデアル、
  御承知ノ通リ此支那ニ於ケル日本ノ關係ハ如何ナル關係ヲ持ッテ居ルカト云フコトデアル
  支那ハ所謂此極東問題ノ檜舞臺ニハ、世界列國ガ至大ナル關係ヲ持ッテ居ルノデアル、
  此至大ナル關係ヲ持シテ居ッテ、甚シキニ至ッテハ此支那ノ獨立國ニ向ッテ是ハオレノ勢
  力範圍デアル、是ハオレノ勢力範圍デアルト地圖マデ立派ニ拵ヘテ、人ノ領土內ニ朱線
  マデ引込ンデ而シテ之ヲ本屋デ賣ッテ居ルヤウナ有樣ヲ以テ、世界列國共ハ言葉ヲ換へ
  テ申シマスレバ多大ノ關係マデ持ッテ居ルノデアル···
  〔「ソレガ質問カ」ト呼フ者アリ〕

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• 181・池田寅治郎

  ○池田寅治郞君　御待チナサイ、質問ノ要領冒頭デス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=181

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• 182・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　靜肅ニ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=182

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• 183・池田寅治郎

  ○池田寅治郞君　ソコデ斯ノ如キ關係ヲ持ッテ居リマスルカラシテ、準備モアリマシタル
  次第ト確カニ私ハ信ジマス、此至大ノ關係ヲ持ッテ居ル歐米各國ノ態度如何ト云フコ
  トヲ無視ハセラレナカッタラウト云フコトヲ私ハ深ク信ジマス、此關係ヲ無視セズシテ何等
  カノ交涉モアッタコトモ旣ニ曩ニ御自白ニナッテ居リマス、强硬ナリトカ軟弱ナリトカ云フ程
  度問題ノ爭ヒマデアリマシテ、確カニ此列國ノ間ニ何等カノ交渉ノアッタコトト考ヘル私ハ
  今過去ノ此成功デアルカ失敗デアルカ、斯ウ云フ重大ナル國家問題ヲ提ケテ當路者ノ
  成功不成功ノ過失デアルカ過失デナイカト云フ、此些細ナ過去ノ事實ヲ捉ヘテ議論ヲ
  シヤウト思フ者デハナイ、頗ル日支關係ノ將來ニ向ッテ多大ノ憂慮ヲ拂ッテ居ル者デアル、
  故ニ此日支關係ノ······(「質問ノ要〓」ト呼フ者アリ)要〓ニ入リツヽアル、待チ給ヘ、此
  日支ノ關係ヲデス日本ト支那ト此二國ダケデ談判ヲ致シタナラバ私ハ玆ニ公言スルコト
  ヲ憚リマスガ、是ハ諸君ガ胸ニ手ヲ置イテ御考ニナルナラバ、如何ナル結果ヲ告ゲルカト
  云フコトハ自ラ分ルコトデアリマス、何ガ故ニ全體斯ノ如キ縺レヲ來シテ議場マデモ騒ガ
  ナケレバナラヌカト云フコトヲ御考ヲ願ヒタイ、故ニ私ハ外務大臣ニ向ッテ御願ヒ致シマ
  ス、全體支那ト交涉ノ經過サヘモ旣ニ立派ニ議場ニ於テ御說明ニナリマシタ以上ハ、此
  歐米各國トノ交涉ガ如何ニナッタカ、此事ノ外交文書ヲ示シテ私共ニ安心ヲ與ヘラレム
  コトヲ希望スル、何ガ故ニ之ヲ希望致シマスルカト云フト、一葉落チテ天下ノ秋ヲ知ル、
  此歐米各國ガ支那ニ向ッテ如何ナル利害關係ヲ持チ、如何ナル態度ヲ以テ今度ノ問題
  ニ出タカト云フコトハ歷史ハ繰返ス、歷史ハ繰返ス、將來ニ於テモ亦斯ノ如キコトガアッタ
  時分ニハ、如何ニ之ヲ交涉折衝スベキカト云フコトノ玆ニ確カニ私共ニ大ナル信念ヲ與ヘ
  ルコトデアルノデアル、又殊ニ此支那自身ノ問題ヲデス、解決ノ善惡是非ニ付テ、先
  程カラ屢〓議論ガアリマスガ總テ是ハ皆水掛論デアル、此支那ノ問題ハ支那自身解決
  シタノデハナイ歐米列國ト云フモノガ樂屋ノ中ニ居ッテ此問題ガ解決セラレタノデアル、然
  ルニ歐米各國ハ樂屋ノ中ニ居ッテ如何ナル事ヲシテ居ッタカト云フコトヲ知ラズシテ、而シテ
  單ニ之ガ是非ノ判斷ヲ下スト云フコトハ甚ダ早計ノ至リデアル、ソコデ私ハ······(「君ハ
  知ッテ居ルカ」ト呼フ者アリ)知ラナイカラシテ私ハ外務大臣ニ向ッテ此交渉ノ〓末ヲ公
  文書ヲ以テ御示シヲ願ヒタイノデアル、若シ萬一公文書ヲ以テ順序ヲ逐フテ御示シニナル
  コトガ出來ナイナラパ、セメテハ祕密會ヲ開イテモ、此〓末ダケハ私ハ詳シク伺ッテ置キタ
  にいい?12
  1、是ガ將來此對支モウ一ツ三〓葉ヲ切ニシテ言ヘバ東洋永遠ノ平和ヲ維持スル點ニ於
  テ切ッテモ切ルコトノ出來ナイ茲ニ原因ガ伏在シテ居ルト云フコトヲ私ハ確信スルノデアル、
  外務大臣ハ此歐米各國トノ間ニ交渉往復セラレタル公文書ヲ必ズ御示シ下サルコトヽ
  信ジマス、何故ナレバ是ハ事既ニ過去ニ屬シ、又私ノ希望トシテハ此日付ノ前後又支
  那ニ對スル交涉ノ前後孰レガ原因ニナリ孰レガ結果ニナッテ居ルカト云フコトヲ深ク考ヘ
  テ行キマスナラバ、此對支交涉ノ是非善惡ハ多辯ヲ要セズシテ自カラ分リ、且ツ將來ニ
  對シテ日本ガ如何ナル政策ヲ執ルベキカト云フコトモ、此間ニ自カラ確定シテル行クト云フ
  コトハ分明シテ居ルノデアル、故ニ私ハ此日支交涉ソレ自身ノ直接關係ヨリモ寧ロ間接
  關係ナル所ノ歐米列國間トノ交涉〓末ヲ、順序ヲ逐ウテ全部ヲ御明示アラムコトヲ熱
  望スルノデアリマス
  (「答辯ノ必要ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=183

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• 184・高柳覺太郎

  ○高柳覺太郞君　議事ノ進行ニ付テ一言致シタイ、唯今ノ質問ニ對シマスル答辯ノ
  殘リ、及ビ他ノ質問ハ總テ後日ノ日程ニ迴シテ、今日ハ是ニテ散會サレムコトヲ望ミマ
  ス
  〔「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ〕

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• 185・荒川五郎

  ○荒川五郞君　マダ質疑ノ通告モアルヤウデアリマスガ、最早質疑ヲ打切ルニ相當ノ
  時機ニ達シタト認メマス、アトハ豫算會ニ讓リ、玆ニ質疑終結ノ動議ヲ提出致シマス
  〔拍手起ル〕

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• 186・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　贊成ガアリマスカ
  (「贊成々々」ノ聲起ル〕

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• 187・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　贊成者ガアレバ決ヲ採ラナケレバナリマセヌ
  (「散會ノ動議ガ出テ居リマス」ト呼フ者アリ)

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• 188・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　ソレハ贊成ガアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=188

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• 189・高柳覺太郎

  ○高柳覺太郞君　アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=189

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• 190・林毅陸

  ○林毅陸君　議事ノ進行ニ付テ一言致シタイ、從來政府ニ對シテ質問ヲ致ス場合ニ、
  各派ヨリ通告ガアリマス時ハ、成ベク各派ニ行渡ルヤウニ發言ヲ御許シニナルヤウニ本員
  ハ考ヘテ居ル、私ハ早ク院內幹事ノ手ヲ經テ質問ノ通告ヲ致シテ居ルノデアリマス、先
  程書記官長ノ手許デ見マシタトコロニ依レバ、非當ニ順番ハ後レテ居ルノデアリマス、ソ
  レハ本員ノ順番ガ後レタノデアルカラ宜シイガ、免ニ角今マデニ於テ政友會ヨリ四名ノ質
  問者ガアリ、國民黨ヨリ四名ノ質問者ガアリ、而シテ中正會ノ本員ニ向ッテハ發議ヲ
  未ダ御許シガナイノデアル、恰モ本日ノ質問會ハ政友會ト國民黨ノ爲メノ質問會デアル
  カノ如ク見エル、是ハ斯ウ云フ慣例ガアルカ、本員ガ從來見テ居ルトコロニ依レバ成分
  ク各派ニ別ッテ順次ニ質問ヲ許スト云フコトニナッテ居ルヤウニ思ヒマス、心得ノ爲ニ伺ッテ
  置キタイ

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• 191・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　手許ニ參ッテ居リマスノハ、林毅陸君ノハズット遲レテ居リマ
  ス、ソレハ前カラ御請求ガアレバ直シテアルダラウト思ヒマス、唯今初メテノ御發議デ知リ
  マシタ、一方ニハ荒川君ノ動議ガアッテ贊成ガアリマス、一方ニハ高柳君ノ動議ガアッテ
  是モ贊成ガアリマス、高柳君ノ動議ヲ先ヅ採リマシテ、ソレカラ荒川君ノコトヲ採リマシ
  テ、ソレデ尙續ケルト云フコトニナリマスレバ、林君ノ方ヘ發議ノ權ヲ迴スト云フコトニ致
  シテ宜カラウト思ヒマス
  (「前例ガアリマス」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=191

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• 192・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　前ニ此御請求ガナカッタノデ、議長ノ手許ニ出テ居ルノガ後レ
  タト云フノデアッテ、許サヌト云フコトデハゴザイマセヌ、林君、ソレデ宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=192

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• 193・林毅陸

  ○林毅陸君　私ハ演說ヲ許シテ貰ヒタイト云フノデハアリマセヌ、各派ニ偏スルヤウナ嫌
  ガアリマスカラ、ドウデアラウカヽ云フコトヲ伺フタノデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=193

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• 194・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　唯今申シマシタ通リデアリマス、ソレデハ高柳君ノ動議ニ付テ
  決ヲ採リマス、高柳君ノハ是デ止メテ明日會ヲ續ケヤウト云フノデアリマス(「明日ハ日
  曜」ト呼フ者アリ)次ノ會ニ續ケルト云フコトデアリマス、明日ト云フノハ私ノ言ヒ誤リデ
  アリマス、荒川君ノハ是デ質問ノ會ヲ止メテ豫算委員會デヤラウト斯ウ云フノデス、異
  議ガナイト考ヘマスカラ發議者ノ名ニ依シテ決ヲ採リマス、高柳君ノ說ニ同意ノ御方ハ
  起立ヲ乞ヒマス
  起立者
  (「議長ノ宣告徹底セズ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=194

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• 195・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　徹底致サナケレバモウ一遍繰返シマス、高柳君ノ發議ハ明白
  デアラウト思ヒマス(「是レデ散會」ト呼フ者アリ)散曾ハ決議ノ結果デアリマスカラ今ハ發
  議ヲ止メマス、高柳君ノハ是デ今夕ノ會ヲ閉ヂマシテ、次ニ日程ヲ作ッテ定日ニ此會ヲ
  引繼グト云フノデアリマス、徹底シマシタカ、高柳君ニ同意ノ方ハ起立ヲ乞ヒマス
  起立者少數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=195

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• 196・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　少數--荒川君ノコトハ御承知デアリマセウガ、モウ一遍繰
  返ス必要ガアリマスカ
  (「必要ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=196

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• 197・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　荒川君ノハ此會デ質問ヲ止メマシテ、豫算委員會ニ讓ルト云
  フコトデアリマス(「橫暴々々」ト呼フ者アリ)荒川君ニ同意ノ方ハ超立ヲ乞ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=197

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• 198・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　多數-ソレデハ質問ノコトハ本會ニ於テ之ヲ止メルト云フコ
  トニ致シマシテ、次ノ日程ニ移リマス、日程第一河川法中改正法律案第一讀會ヲ開
  キマス
  第一河川法中改正法律案(政府提出)第一讀會
  河川法中改正法律案
  河川法中左ノ通改正ス
  第二十六條中「地租額十分ノ一」ヲ「地價總額千分ノ二箇半」ニ、「地租額ヲ超過
  スル部分」ヲ「地價總額百分ノ二箇半ヲ超過スル部分」ニ、「前項」ヲ「第一項」ニ
  改メ第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
  前項ニ於テ地價ト稱スルハ其ノ年分地租ヲ徵收スヘキ土地ノ一月一日現
  在地價ヲ謂フ
  〔政府委員下岡忠治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=198

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• 199・下岡忠治

  ○政府委員(下岡忠治君)　河川法ノ改正法律案ニ關スル理由ヲ申上ゲマス、河川
  法ヲ施行シマシタ河川ノ改良工費ヲ國庫カラ補助ヲスル、又ハ國庫ト關係府縣トノ分
  擔額ヲ定メマス、ソレニ付イテハ是マデ河川法ノ規定ニ依ッテ、其府縣內ノ地租額ヲ標
  準トシテ算出スルト云フコトニナッテ居ッタノデゴザイマス、然ルニ明治四十三年法律第二
  號ニ依ッテ地租條例ガ改正セラレマシタル結果、稅率ガ多クナッテ來タ、其結果トシマシテ
  從來ノ如キ算定法ニ據ルト云フコトデアルト、地方ノ負擔ガ非常ニ增加スルコトニナッテ
  來マシテ甚タ權衡ヲ失スルモノデゴザイマスカラ、依ッテ河川法ヲ制定シマシタ當時ノ趣
  旨ニ基イテ、河川法中ニ改正スルコトヲ必要アリト認メテ、玆ニ本案ヲ提出スルコトニ
  ナッタノデゴザイマスカラ、宜シク御審議ノ上協賛アラムコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=199

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• 200・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　質問ガゴザイマセヌケレバ第二ニ移リマス、第二ニ移リマシテ議
  案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉
  第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=200

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• 201・荒川五郎

  ○荒川五郞君　本案ハ議長指君九名ノ委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=201

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• 202・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　異議ガナケレバ荒川君ノ動議ニ決シマス
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=202

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• 203・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　次ハ第三、第五、第七デアリマス、是ハ一々別ケテ致シマスルト
  說明ノ上ニ手數ヲ重ネマスガ、大藏大臣ノ請求ニ依シテ之ヲ一度ニシテ說明ヲ與ヘタイ
  ト云フコトデアリマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
  第三帝國鐵道會計法中改正法律案(政府提出)第一讀會
  帝國鐵道會計法中改正法律案
  帝國鐵道會計法中左ノ通改正ス
  第二條中「又ハ」ノ下ニ「一般會計、」ヲ加フ
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  第五國債整理基金特別法中改正法律案(政府提出)第一讀會
  國債整理基金特別會計法中改正法律案
  國債整理基金特別會計法中左ノ通改正ス
  第二條第二項ヲ左ノ如ク改ム
  前項繰入額ノ中國債ノ元金償還ニ充ツヘキ金額ハ他ノ特別會計ヨリ繰入
  ルルモノヲ併セテ前年度首ニ於ケル國債總額ノ萬分ノ百十六以上トシ三
  千萬圓ヲ下ルコトヲ得サルモノトス
  前項ノ規定ノ適用ニ付テハ大藏省證劵及借入金ハ之ヲ國債ト看做サス
  附則
  本法ハ大正四年度ヨリ之ヲ施行ス
  第七治水費資金特別會計法廢止法律案(政府提出)第一讀會
  治水費資金特別會計法廢止法律案
  治水費資金特別會計法ハ大正四年度限リ之ヲ廢止ス
  治水費資金特別會計ニ屬スル資金及債務ハ之ヲ一般會計ニ歸屬セシム
  (大藏大臣若槻禮次郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=203

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• 204・若槻禮次郎

  ○大藏大臣(若槻禮次郞君)　初ノ案ハ鐵道會計法中ノ改正案デアリマスガ、夏に、
  此度ノ政府財政計畫ニ依リマスト、一般會計ノ資金ヲ以テ鐵道會計ヘ貸付ケヤウト云
  フ計畫ニナッテ居リマス、此改正ヲ致シマセヌト其事ガ實行ニナリマセヌ、故ニ此法案ヲ提
  出致シタノデアリマス、第二ノ國債整理基金法中ノ改正案ハ今日ノ通リテアリマスト云
  フト、日露事件公債ノ爲メニ年々一億千万圓ヅヽ入レルト云フコトニナッテ居リマスガ、此
  儘ニ致シテ置キマスト、今數年ナラズシテ大變ニ元金ノ償還額ガ殖エテ參ル、而カモ多
  ク外債ニ向ッテ償還シナケレバナラヌコトニナルノデアリマス、之ヲ改正ヲ致シマシテ適當ニ
  償還ノ出來ルヤウニナルト同時ニ本囘二千万圓ダケハ此償還金ヲ減ジテ鐵道ノ資金ニ
  振向ヤウト云フ計畫ニナッテ居リマス、之ヲ實行シタイ爲メノ法案デアルノデアリマス、第
  三ノ治水費特別會計法、是ハ是マデハ借入金ヲ財源ノ一部ニシテ居リマシタケレドモ、
  今後ハ借入金ヲ廢シヤウト思フノデアリマス、借入金ヲ爲サヌコトニスルナラバ特別會計
  法ヲ存置スルノ必要ガナイノデアリマスカラ、今後之ヲ廢シヤウト云フ趣意デアルノデアリ
  やく、三案トモニ財政計畫ニ伴ッタ法案デアリマス、故ニ十分御審議ノ上、成ベク速カ
  ニ御贊成アラムコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=204

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• 205・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　別ニ御發議ガナケレバ三案トモ委員ヲ選ムコトヲ議題ト致シ
  マス
  右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=205

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• 206・荒川五郎

  ○荒川五郞君　日程第四第六ハ一括シテ議長指名ノ十八名ノ委員ニ付託サレンコ
  トヲ望ミマス、又日程第八ハ別ニ議長指名十八名ノ委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス
  (「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=206

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• 207・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　唯今ノ荒川君ノ動議ニ御贊成デアレバ其通リ致シマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=207

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• 208・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　異議ガナイト認メマスカラ左樣ニ決シマス-是ヨリ報告ガゴ
  ザイマス
  〔書記朗讀〕
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
  國民〓育ノ方針ニ關スル質問
  提出者大津淳一郞君
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
  一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
  勅語奉答文起草ノ委員會
  委員長箕浦勝人君理事大竹貫一君
  豫算委員會
  月小太郞君
  瀨軍之佐君
  直溫君理事國際空港和國防衛門中正善立君
  委員長片岡木年君
  木梅四郞君
  suscensis
  決算委員會
  村松山壽君
  平出喜三郞君
  委員長大津淳一郞君理事芳介君
  當初九 五月 元 書 明 書 先小太郞君
  幸せ即日
  懲罰委員會
  豐增龍次郞君
  委員長森田茂君理事橫山金太郞君
  重盛信近君
  請願委員會
  戶井嘉作君
  景之君理事樋口秀雄君
  委員長肥田松本恆之助君
  本田親〓君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=208

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• 209・島田三郎

  ○議長(島田三郞君)　委員ノ氏名ト竝ニ議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、
  今日ハ是デ散會致シマス
  午後九時一分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003613242X00319150522&spkNum=209

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