1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正五年二月九日（水曜日）午前十時二十五分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=0
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001・富井政章
○副委員長(富井政章君) 今朝委員長カラ電話デアリマシテ少シ御病氣ノヤウデア
リマス、委員會ノ方ハ御相談デ何分ニモ宜シイヤウニ取計ッテ呉レト云フコトデアリマス、
ソレデ委員長ニ代ッテ開會イタシマス、今日ハ小委員會ノ修正案ト云フモノハ出來テ居
リマス、其說明ヲ小委員ノ方ヨリ委員會ニナサル順序デアラウト思ヒマス、ドウ云フ風ニ
致シタモノデアリマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=1
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002・奧田義人
○奧田義人君 今日ハ不幸ニシテ德川委員長ガ御不快ノ爲ニ御闕席デアル御樣子
デ、副委員長ガ代ッテ委員長席ニ著カレマシタノデアリマスルケレドモ、此修正案ニ付テ
ハ今委員長ノ席ニ居ラレマスル富井博士ガ最モ愼重ニ御考ヘ下サイマシテ、其結果此
案ガ出來ルニ至ッテ居リマスルコトデアリマスルノデ、私ノ希望ヲ致シマスル所ハ臨時委員
長ノ席ハ代理デ御處理ニ相成ッテ、富井博士ニ修正案ノ大體ニ付テ御說明ヲ請フヤウ
ニ致シタイト思ヒマス、何卒然ルベク手續ヲ請ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=2
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003・富井政章
○副委員長(富井政章君) 私ハ奧田君ニ願ヘバ一番宜カラウト思フノデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=3
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004・田健治郎
○男爵田健治郞君 ドウカ奧田サンノ御發言ニ贊成イタシマスルカラ、報告ノ間ダケ富
井博士ニ願ヒマシテ、其間假リニ委員長代理ヲ其報告ノ間ダケ岡部子爵ニデモ御願ヒ
ヲ致シテ、サウナサルヤウニ願ヒタイト思ヒマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=4
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005・富井政章
○副委員長(富井政章君) ソレデハ暫時·····
〔子爵岡部長職君委員長席ニ著ク〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=5
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006・岡部長職
○委員長代理(子爵岡部長職君) 唯今富井副委員長カラ報告ノ御都合ニ依リマ
シテ、暫時本員ニ於テ代理ヲ致シマスルヤウニト云フコトデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=6
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007・富井政章
○富井政章君 ソレデハ僭越ナガラ私ヨリ小委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告イタシマ
ス、本案ノ小委員會ハ昨年ノ暮ヨリ數囘開カレマシタガ、案外込入ッタ法律案デアリマシ
テ、吾〓ハ大イニ困難ヲ感ジマシタ、政府提出案ハ現行法ノ全部ニ改正ヲ加ヘテ居マス
故ニ、修正案モ自然原案ノ全體ニ及ブコトトナッタノデアリマス、吾〓小委員ハ二囘マデ
修正案ヲ作リマシテ、協議イタシマシタ後、遂ニ今日御手許ニ迴ッタ案ニ纏ッタノデアリ
マス、卽チ是ガ第三囘ノ修正案デアリマス、此一事ヲ以テモ甚ダ困難ナル議案デアルト
云フコトハ御分リニナラウト思ヒマス、是ヨリ修正案ヲ原トシテ、提出案ニ修正ヲ加ヘラ
レマシタ點竝ニ其理由ヲ申上ゲマス、先ヅ第一條ニ於テ「有爵者ハ」ノ下ニ「其ノ家格ヲ
維持スルニ必要ナル範圍內ニ於テ」ト云フ文字ガ加リマシタ、是ハ世襲財產ノ最高限ヲ
定ムル趣意ニ出デタ修正デアリマス、世襲財產ニ最高限ヲ置キタイト云フ意見ハ多クノ
人ヨリ聞クコトデアリマス、又此委員會ニ於テモ桑田博士其他ノ方ヨリ出タ意見デアリ
マス、是ハ家ヲ維持スルニ必要ナル限度ヲ越エテ、過多ノ財產ヲ不融通物トナスト云フ
コトハ國民經濟其他ノ點ヨリ大イニ考フベキコトデアル故ニ、何カ相當ノ制限ヲ置キタイ
ト云フ趣旨デアリマス、唯如何ニ最高限ヲ定ムベキヤハ甚ダムヅカシイ問題デアリマシテ、
其點ニ於テハ大イニ講究イタシテ見タイノデアリマス、最モ確實ナル一ノ方法ハ、例ヘバ一
万圓ト云フ如キ一定額ノ收益ヲ生ズル財產ヲ限度トスルコトデアリマス、然シ何程限度
トスルト云フコトハ元來家ニ依ッテ狀況ヲ異ニスルコトデアリマシテ、大キナ家デアレバ二万
圓三万圓ノ收益デモ或ハ不十分デアルカモ知レナイ、ソレ故ニ單ニ最高限トシテモ收
益ヲ標準トシテ一樣ニ定ムルコトハ宜シクナイト考ヘタノデアリマス、又斯ノ如クニ數額ヲ
標準トシテ極メマス時ハ後ニ至ッテ其限度ヲ越エタ、イヤ越エナイト云フコトニ付テ爭ヒガ
起リマシテ、甚ダ困難ヲ來タス虞レガアリマス、或ハ總財產ノ半分トカ、三分ノ一トカ云
フコトニ定ムルノモ一ノ案デアリマスルケレドモ、是モ同樣ナ不都合ガアルト思ヒマス、ソレ
故ニ此種類ノ方法ハ執ラザルコトニ一致シタノデアリマス、ソコデ段々講究イタシマシタ結
果一ツノ抽象的ノ標準ヲ定メテ、其應用ハ主務大臣ニ一任スルノ外ハナイト考ヘタノデ
アリマス、ソレ故ニ少シ漠然デハアリマスケレドモ、「其ノ家格ヲ維持スルニ必要ナル範圍
內ニ於テ」ト云フ文字ヲ第一條ニ加ヘルコトトナッタ次第デアリマス、尤モ此制限ハ今後
世襲財產ヲ設定スル場合ニノミ適用スベキモノデアリマシテ、既ニ現行法ノ規定ニ依ッ
テ設定シタル世襲財產ニ適用ノナキコトハ附則ノ第一項ニ依ッテ明カデアリマス、其外世
襲財產ノ最小限度ヲ定ムルガ宜イト云フ說モアルヤウデアリマス、現ニ現行法ニハ年額
五百圓以上ノ純收益ヲ生ズル財產ニ限ルトナッテ居リマス、此制限ハ政府提出案ハ削
除セラレテモアリ、又我〓小委員ニ於テモ少キニ過グルト云フ方ニハ弊害ガナイト考ヘタ
ノデアリマス、ソレ故ニ此〓ハ原案ニ從ッテ何等ノ制限ヲモ設ケナイト云フコトニ決ッタノ
デアリマス、ソレカラ提出案ニハ第一條以下ニ於キマシテ設定又ハ增加ト云フ文字ヲ
使ッテアリマス、併シ世襲財產ノ增加ト云フコトハ其實質ニ於テ一部ノ設定ニ外ナラヌ
ト考ヘマスル、又各條ニ於テ設定又ハ增加ト書クノハ甚ダ煩ハシイコトト思ヒマスル故ニ、
第十一條ニ於テ增加ノ場合ヲ一ト纏メニ致シマシテ、設定ニ關スル規定ヲ適用スルコト
ニ致シタノデアリマス、修正案第二條及第三條ハ提出案ノ通リデアリマス、第四條モ提
出案第五條ト殆ンド同樣デアリマス、唯第二項ガ加ハリマシタ、宮內大臣ノ調査ヲ便
ニスル爲ニ他ノ財產ノ〓況ヲ申出シムルト云フコトハ至極宜シイコトト考ヘタノデアリマ
ス、第五條ハ原案第三條ニ一大修正ヲ加ヘタ規定デアリマス、提出案ニ依レバ未成年
者、禁治產者又ハ準禁治產者ハ世襲財產ヲ設定スルコトヲ得ズトナッテ居リマス、是ハ
ドウモ十分ノ理由ナキコトデアリマシテ、是等ノ無能力者ニ對シテモ、世襲財產ヲ設定
スル途ヲ塞ガナイガ至當デアルト我ミハ考ヘマスノデアリマス、ソレ故ニ法定代理人又ハ
保佐人ハ豫メ家政協議員會ノ決議ヲ經テ設定ノ認可ヲ申請スルコトヲ得ト致シタノデ
アリマス、ソレノミナラズ未ダ禁治產又ハ準禁治產ノ宣告ヲ受ケザル者ト雖モ、疾病其
他ノ事由ニ因ッテ家產ヲ治ムルニ堪ヘズ、又ハ之ヲ傾クルノ虞アルトキハ、家政協議員
會ハ本人ニ代ッテ設定ノ認可ヲ申請スルコトヲ得ト致シタノデアリマス、是ハ斯ウ云フ場
合ハ隨分實際ニアルノデアラウ、而シテ先ヅ以テ禁治產又ハ準禁治產ノ宣告ガナクテハ
ナラヌトシテハ却テ有爵者ヲ無能力者扱ヒニスルヤウナ嫌ヒモアリマシテ、禁治產又ハ準
禁治產ノ宣告ノ申請ヲ奬勵スルヤウナ結果ニナルカト思ヒマス、免モ角斯カル場合ニモ
世襲財產ヲ設定スル途ガ無イト云フコトハ立法ノ目的ヲ貫徹セザルコトデアルト考ヘマシ
テ、其方法ヲ定ムルコトニナッタノデアリマス、家政協議員會ト云フ新イ言葉ヲ設ケマシ
テ、現行法ニ於ケル如クニ親族會議トシマセナンダ所以ハ、親族以外ノ宗族及ヒ舊臣ノ
如キ家ニ綠故アル者ヲ加フベキ場合ガ多クアルデアラウト考ヘタノデアリマシテ、ソレ故ニ
親族會議ト云フ言葉ハドウモ適當デナイト考ヘタ、要スルニ其組織ハ宮內大臣ガ施行
規則ニ定ムルコトトナルノデアリマス、一般ノ能力者ニ付テハ家政協議員會ニ諮ルコトヲ
必要ト認メナンダノデアリマス、其理由ハ何人モ一家ノ財產狀態ヲ多クノ人ニ示スト云フ
コトハ人情トシテ欲セザルコトデアリマス、斯カルコトヲ總テノ場合ニ於テ法律ガ强制スルト
云フコトハ宜シクナイ、サウ云フコトヲシナクテモ、大キナ家デアレバ自然家政協議員會ト
云フヤウナモノガアッテ、其議ヲ經ルコトニナッテ居ルト思ヒマス、旁〓以テ一般ノ能力者
ニ付イテハ豫メ其議ヲ經ルコトヲ必要トセナンダノデアリマス、第六條乃至第八條ハ提
出案ノ第六條乃至第八條ト同樣テアリマス、唯少シバカリ文字ノ修正ガアルニ過ギマセ
ヌ第九條ハ提出案ニナイ新設ノ規定デアリマス、宮內大臣ハ世襲財產ノ設定ノ許否ヲ
決定スルニ付テ困難ヲ感ズル場合ガアルデアラウト思ヒマス、或ハ家ヲ維持スルニ必
要ナル範圍ヲ超エテ居ナイカト云フ疑ヲ持ツコトモアリマセウ、或ハ其設定ニ依タテ
他人ニ損害ヲ及ボス虞ガアルト思フ場合モアラウト思ヒマス、ソレ故ニ世襲財產ノ
設定ヲ認可スベカラズト認ムル場合ニハ、華族世襲財產審議會ニ諮詢セネバナ
ラヌト云フ規定ヲ設クルコトニナッタノデアリマス、最初ハ總テノ場合ニ於テ諮詢
セネバナラヌト云フ案ヲ立テテ見タノデアリマスガ、能ク考ヘテ見マシタ結果ドウモソレハ宜
シクナカラウ、唯今申上ゲタヤウナ弊害ナキ限リハ、成ルベク一家ノ財產狀態ヲ多クノ人
ニ知ラスコトヲ强制シナイガ宜シイ、審議會ノ議員ナドハ全ク親類デモナク家ニ關係ノナ
イ人デアリマセウ、必要モナイニサウ云フ人達ニ家ノ財產狀態ヲ打明ケナケレバナラヌト
云フコトハ、特ニ其必要ナキ限リハ宜シクナイコトデアラウト思ヒマス、ソレ故ニ何カ他人
ニ損害ヲ及ボストカ云フヤウナコトカラシテ世襲財產ノ設定ヲ認可スベカラズト認メタル
場合ニ限ッタノデアリマス、此外第二十條ニ於テ世襲財產ヲ廢止スル場合ニモ此審議
會ノ諮詢ヲ經ネバナラヌト云フコトニナッテ居リマス、審議會ハ何人ヲ以テ組織スルカト
云フニ、是モ宮內大臣ガ施行規則ニ於テ定ムルコトニナルノデアリマス、多分有爵者、
宮內官及ビ學識經驗アル者ト云フヤウナコトニナルノデアラウカト察シマス、第十條ハ提
出案ノ九條ノ通リデアリマス、第十一條ハ曩ニ申上ゲマシタ如ク增加ノ場合ヲ一纏メニ
シテ規定シタルニ過ギマセヌ、第十二條乃至第十四條ハ原案第十條乃至第十二條ニ
當リマス、是モ何等ノ變更ガアリマセヌ、第十五條ハ提出案第十三條ニ當リマス、提
出案ニハ「世襲財產ハ家督相續人之ヲ相續ス」トアリマスガ、是ダケノコトナラバ明文ヲ
要セナイ當然ノコトデアルト思ヒマス、世襲財產ガアッテモ法人デハナイ、共有物テモナク、
無主物デモナイノデ全ク現戶主ノ所有財產デアリマス、ソレ故ニ其死亡等ニ依ッテ家督
相續ノ開ケタ場合ニハ家督相續人ガ之ヲ相續スルト云フコトハ言ハズシテ明カナコトデ
アリマス、ソレダケナラバ削除シテ宜イ規程デアル、若シ何カ規定ヲ置クナラバ曩ノ委員會
ニ於テ奧田博士ノ述ベラレタ如ク、世襲財產ハ民法第千百三十條ニ定メタル家督相
續人ノ遺留分ニ算入セザルコト、又民法第千二十五條以下ニ定メタル相續ノ限定承
認ノ場合ナドニモ、世襲財產ハ之ヲ除外シテ相續財產ヲ算定スルコトヲ明カニスルガ宜
シイト考ヘタノデアリマス、世襲財產設定ノ目的ヲ一貫スルニハドウシテモ一般ノ相續財
產ト別ニスベキデアラウト思ヒマス而シテ此趣旨ヲ文字ニ現ハスニハ家督相續ノ特權ニ
屬スト云フノガ民法第九百八十七條ナドノ文例デアリマス、餘リ明瞭ナル文字デハアリ
マセヌケレドモ、其用例ニ傚ッタノデアリマス、第十六條ハ讓渡ヲ禁ズル規定デアリマスガ
是ハ提出案第十四條第一項ト全ク同一デアリマス、第十七條ハ提出案第十四條二
項ニ當リマス、此條ニ於テハ修正セラレマシタ點ガ一ツアリマス、ソレハ地役權ノ設定又
ハ變更ニハ宮內大臣ノ認可ヲ必要トセザルコトニ改マッタノデアリマス、此修正ノ理由ハ
地役權ナルモノハサマデ土地ノ價格ヲ變更スルモノデハナイ、既ニ十五年又ハ二十年ト
云フガ如キ長期ノ賃貸スラモ主務大臣ノ認可ナクシテ出來ルトナッテ居ル以上ハ、地役
權モ是ト同一ノ取扱ニスル方ガ權衡ヲ得タモノト考ヘタノデアリマス、第十八條ハ提出
案第十五條ニ該當シマスガ、二三修正セラレタ點ガアリマス、此條ハ世襲財產ノ差押
ヲ禁ズル規定デアリマスガ、提出案ニハ世襲財產ト其果實ハ之ヲ差押フルコトヲ得ズト
ナッテ居マスガ、世襲財產ノ法定果實ヲ取得スル權利ツノモノニ付テハ規定ガナイ、例
バ世襲財產ヲ賃貸シタル場合ニ於テ將來ニ借賃ヲ請求スル權利ハ之ヲ差押フルコトガ
出來ルト云フ解釋ニナルカト思ヒマス、提出案ノ趣意ハ固ヨリサウデナクシテ、其第十四
條ニ依ッテ讓渡スコトヲ得ザル權利デアル故ニ、當然差押フルコトモ出來ナイト云フ見解
デアッタト思ヒマス、併シソレハ甚ダムヅカシイ、少ナクモ疑ハシイト思ヒマス、如何トナレバ
斯ノ如クニ讓渡ノ場合ト、差押ノ場合トヲ書別ケテ、第十八條ニ明カニ世襲財產ト其
果實ニ付テノミ規定シテアリマス故ニ、其以外ノ財產ハ差押フルコトガ出來ルト云フガ
寧ロ至當ノ解釋デアラウト思ヒマス、ソレ故ニ世襲財產ト云フ文字ノ下ニ「及第十六條
ニ揭クル權利」ト云フ數字ヲ加フルコトトナッタノデアリマス、次ニ不法行爲ニ依ル損害賠
償ノ爲ニハ世襲財產ヲ差押フルコトガ出來ルト云フ修正ヲ致シタノデアリマス、是ハ委員
會ニ於テ岡野博士ガ述ベラレマシタ如ク苟モ不法行爲ニ依ッテ他人ニ損害ヲ加ヘタ場
合ニ、縱令世襲財產ニモセヨ財產ヲ有シナガラ、是ヲ賠償シナクテモ宜イト云フヤウナ責
任ヲ沒却シタルコトヲ法律ニ認ムルト云フコトハ如何ニモ穩當デナイ、ソレ故ニ本來世襲
財產ニ關スル債務デハナイケレドモ、此除外例ヲ設クルコトニ致シタノデアリマス、
第三ノ修正ハ世襲財產ノ收益デアリマスガ、現行法ニ依レバ其三分ノ一マ
デハ差押フルコトヲ許シテアルニ、本囘ノ提出案ニ依レバ果實ト他ノ財產ト
混同セザル間ハ、其全部ニ對シテ差押ヲ許サザルコトトナッテ居マス、其理由ハ三分ノ一
ト云フ如キ限度ヲ明カニスルコトハ實際困難デアル、且ツ其點ガ分ッタトシテモ、ソレニ申
出デノアッタ債權額ヲ割當テルト云フコトハ甚ダ煩ハシイコトデアル、三分ノ一ヲ超エタ、
超エナイト云フコトガ分リニクイ上ニ、ソレニ申出デノアッタ債權額ヲ充當スルト云フコト
ハ一層ノ困難デアルト云フ理由ニ歸著スルト思ヒマス、成ルホド實際ノ始末ハサウシタ分
ガ宜シイノデアラウト思ヒマス、併シ今日マデ現行法ニ於テ債權者ニ與ヘテアッタ權利ヲ、
今後與ナイト云フコトニナルノハ如何ニモ穩デナイト考ヘマシテ、此〓ハ寧ロ現行法ニ歸ッ
テ提出案ヲ修正シタ譯デアリマス、此所ニ於テ提出案第十六條ヲ削除シタコトヲ〓〓
致シマス、此條ハ不動產ニ付テハ豫メ其管理方法ヲ定メテ宮內大臣ノ承認ヲ受クベシ
ト云フ規定デアリマス、併シソレマデニスル必要ハドウモ無イト考ヘマス、若シサウ云フ必
要ガ起ッタ場合ニハ第三十一一條第二項ニ依ッテ「宮内大臣ハ世襲財產ノ管理ニ付必
要ナル命令ヲ爲スコトヲ得」ト云フ、此規定ニ依ッテ實際ニ不便ナキコトヲ得ルノデアル、
總テノ場合ニ通ジテ初メヨリ管理方法ヲ定メテ承認ヲ受ケネバナラヌト云フコトハ、如何
ニモ大袈裟ニ過ギテ是ダケノ必要ハ無イト考ヘタノデアリマス、修正案第十九條ハ提出
案第十七條ニ當リマス、是ハ世襲財產廢止ノ規定デアリマス、提出案ノ主眼トスルモノ
ハ此規定ニアルト思ヒマス、本條ニ付イテモ二三ノ修正ヲスルコトトナリマシタ、先ヅ世襲
財產ヲ廢止スル場合ハ一一ツアリマス、ソレハ他ノ世襲財產ヲ以テ是ニ換ヘムトスル場合
ト、今一ツハ提出案ニ所謂已ムコトヲ得ザル事由アル場合デアリマス、而シテ原案ニ依レ
バ何レノ場合ニ於テモ全部又ハ一部ヲ廢止スルコトヲ得トナッテ居マス、修正案ニ於テハ
此二ツノ場合ヲ分ケマシテ、先ヅ其最モ適用多キ場合ヲ第一項トシタノデアリマス、ソレ
ハ卽チ已ムコトヲ得ザル場合デアル、此已ムコトヲ得ザル事由アル場合ト云フコトニ付テ
ハ委員會ニ於テモ、初メヨリ種々ノ議論ガアッタノデアリマス、最モ實際ニ生ジ易イト思
ハレル場合例ヘバ世襲財產ノ一部ヲ解除スレバ、債權者モ納得シテ整理ガ付キ、家ノ
體面ヲ保ツコトガ出來ルト一云フヤウナ場合デアラウト思ヒマス、其範圍ハ極メテ狹クナクテ
ハナラヌノデアリマスガ、サレバトテ具體的ニ其場合ヲ指定スルコトモ出來ナイノデ已ムヲ
得ズ、已ムコトヲ得ザル事由アル場合ト云フヤウナ言葉ヲ使フコトニナッタノデアリマス、是
ハ何ト書イテモ大同小異デアリマスルガ、重大ナル事由アルトキニ限リト云ウタ方ガ、何程
カ重ク聞ヘル、濫用ノ防ギトシテ宜シイカト考ヘタノデアリマス、此言葉ハ皇室財產令ニ
於テモ、世傳御料ニ付テモ用井テアル言葉デアリマス、次ニ此場合ニハ全部ノ廢止ヲ
許サスシテ一部ニ限ッタノデアリマス、其理由ハ、若シ初メヨリ全部デモ廢止スルコトガ出
來ルト致シマストキニハ、或ハ濫用ノ弊ガ生ズルカモ知レヌ、例ヘバ巨額ノ負債アル場合ニ
ハ、債權者ノ方デモ强ク出テ、一舉ニ世襲財產ヲ無クスルヤウナコトガ生ズルカモ知レヌ、
ソレ故ニ先ヅ一部トシテ置イタ方ガ、家ノ維持ヲ圖ル策トシテ穩當デアラウト云フ考ニ出
デタノデアリマス、第二ハ交換ノ場合デアリマスガ、原案ニハ確實有利ナル世襲財產ニ換
フル爲トアリマス、此確實有利ト云フ文字ハ、無用デアラウト考ヘマシテ削除イタシマシ
クドウ云フ財產ガ果シテ確實有利デアルカ、其標準ガ明カデナイ、結局宮內大臣ニ於
テ、其財產ガ世襲財產トナルニ適當ナルヤ否ヤヲ調査シテ許否ヲ決スルノデアル、ソレ故
ニ特ニ斯ル條件ヲ法律ニ定ムル必要ハナイト思ヒマス、第三項ハ設定ニ關スル條文ヲ、
廢止ノ場合ニ準用スル規定デアリマス、是モ原案トハ少シク其內容ガ變ッタノデアリマス、
先ヅ第二條ノ準用ヲ止メマシテ、卽チ遺言ヲ以テ廢止スルコトヲ認メル必要ハナイト考
ヘタノデアリマス、ソレカラ第五條第一項ノ準用ハ無能力者ノ爲ニ設定ノ途ヲ開イタ結
果、廢止ノ場合モ同樣ニスルヲ至當ト考ヘタノデアリマス、第四條及第六條ノ準用ハ原
案ノ通リデアリマス、修正案第二十條ハ新ニ加ハッタ規定デアリマス、卽チ一旦設定シタ
ル世襲財產ヲ廢止スルコトハ重大ナルコトデアル、故ニ華族世襲財產審議會ニ宮內大
臣ハ諮詢セネバナラヌコトニ修正イタシタノデアリマス、第二十一條ハ交換ノ爲ニ廢止スル
場合ノ規定デアリマス、提出案第十八條ニ當リマス、此場合ニ於テ其代リトナル世襲
財產ノ設定ハ、一年以内ニ其手續ヲナスベキコトニナッテ居マシタガ、此一年ト云フ期間
ハ餘リ長キニ過グルト認メマシタガ故ニ、六箇月ト改マリマシタ、ツレカラ原案ノ第三項ハ、
修正案第五條ニ於テ無能力者ノ爲ニ世襲財產ヲ設定スル途ヲ開クコトトナッタ爲ニ、
自然不必要トナリマシタ、ソレ故ニ是ハ削除イタシタノデアリマス、第二十二條乃至第
二十五條ハ、提出案第十九條乃至第二十一條ニ當ルノデアリマスガ、實質上ノ修正
トシテハ第二十四條ガ加ハッタノミデアリマス、是ハ交換ノ場合、其他租稅ノ滯納處分ノ
爲ニ、世襲財產ガ處分サレル、金錢其他ノ財產ニ代ッタ場合ニ、世襲財產設定又ハ補
充ノ實行ヲ確實ニスル爲ニ、管理人ヲ置クコトニナッテ居リマスガ、將來ニ於テハ其管理
人ノ權限ヲ擴張イタシマシテ、管理財產ニ付キ、遲滯ナク世襲財產設定ノ手續ヲナサシ
ムルコトニシタイト云フノデアリマス、是ハサウ致サナクテハ其金錢ハ無クナルカモ知レヌ、且
ツイツマデモ始末ガ付カヌモノトナル虞ガアル、故ニ此一條ヲ設クルコトニナッタノデアリマ
ス、其以外ニハ唯少シク文字ガ改ッタノト、前ニ加ヘラレタ修正ノ結果ニ過ギマセヌ、第
二十六條ハ原案ノ第二十二條ニ當リマス、提出案ニ依レバ世襲財產ハ何レノ時ヨリ
其效力ヲ失フノデアルカ明カデナイ、是ハ失爵又ハ襲爵者ナキコトガ確定シタル時ヨリ其
執行ノ效力ヲ失ヒ、其執行ノ效果ヲ生ズルニ非ズシテ、其原因ノ發生シタル時トスル方
ガ相當デアル、解釋ハ二ツニ分カレルノデアラウト思ヒマス、ソレ故ニ其字句ヲ明カニ示ス
コトニ修正サレタノデアリマス、第二十七條乃至第三十三條ハ提出案ノ第二十三條
乃至第二十八條ト相異ナルコトハアリマセヌ、唯僅カ文字ノ修正ガ加ハッタニ過ギマセ
ヌ、附則ニ於テモ何等實質上ノ變更ハアリマセヌ、唯文字ノ整理ガ加ハッタダケノコトデア
リマス、小委員會ニ於ケル修正ノ理由ハ大略以上申上ゲマシタ通リデアリマス、我ミニ
於テモ確タル經驗ヲ有シタト云フ所モアリマスガ、マダソレマデノ信念ヲ有セザル箇所モア
リマスル、ソレ故ニ皆サンニ於カレマシテモ十分ニ御審議下サレマスルコトヲ切ニ御願ヒ致
シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=7
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008・平田東助
○子爵平田東助君 今囘此修正ヲ御託シ致シマシテ、連日御審議下サレマシタ結果
ニ付キマシテ、唯今御說明ヲ承ハリマシタ、大體ニ於テ誠ニ結構ニ考ヘマス、連日ノ御
審議下サレマシタ御勞苦ニ對シマシテハ、私ナドハ謹ンデ感謝スル所デアリマス、唯少シ
ク了解イタシ兼ネマスルヤウナ〓ヲ一二御說明ヲ煩ハシタイト唯思フノデアリマス、此第
一條ニ付テ唯今御說明ヲ承ハリマシタ所ニ依リマシテ、此家格ヲ維持スルニ必要ナル範
圍內ニ於テト云フコトヲ御定メニナリマスルト云フコトハ、誠ニ御尤ナ至當ノ事ト考ヘマ
スルガ、サテ御說明中ニモ最小限度ヲ定メルト云フコトハ、別ニ其必要ハナイヤウニ思フ
ノデ、又敢テ害モ無イト思フカラ、故ニ最小限度ハ定メナカッタト云フヤウナ御說明ヲ承
ハリマシタガ、如何ニモ害ハ無イカトモ思フヤウデゴザイマス、併ナガラ其家格ヲ維持スル
ニ必要ナル範圍內ト申ストキニ於テハ、最小限度ハ無論ノコトデゴザイマスルガ、餘リニ
少ナキコトニナリマシテハ其意義ニ於テドンナモノデアリマセウカ、家格ヲ維持スルニ必要
ナリト云フ文字ヨリシテ、殊ニ申スノデハゴザイマセヌガ、此文字ノ意義ヲ唯單ニ拜見イ
タシマシタ所デハ、斯樣ナ感ジヲ起スノデアリマス、ソレデ是ハ最小限度ハ如何ニモ無害
デハゴザイマセウケレドモ、又餘リニ少額ノモノヲ殊ニ世襲財產トスル必要モ亦ナイカトモ
思フ心持モ致スノデゴザイマスルガ、是等ハ如何ナモノデゴザイマセウカ、唯是ハ御說明ヲ
煩ハシタイト思フノデゴザイマス、又唯今ノ御說明ニ依リマシテ、成ルベク斯樣ナ家政上
爭財產ノ狀態ナドト云フコトニ、餘リニ他人ニ知ラセルト云フコトハ避ケル方ガ宜カ
ラウト云フ御趣意デアッテ、設定ノ場合ナドハ審議會ニ掛ケナイ方ガ宜カラウト云フ御趣
意デアッタカト了解イタシタノデアリマスガ、是モ誠ニ御尤モナ次第デ御趣意ハ能ク徹底
イタシテ居リマス、併シ旣ニ先キニ參リマシテ認可セヌ場合ニ於テハ審議會ノ議ニ付セラ
レ、又其外廢止ノ認可スベキヤ否ヤト云フコトヲ定ムル場合ニ於テモ亦審査會ニ諮詢セ
ラルヽヤウデアリマス、旣ニ斯樣ナ場合ニ於テ審議會ニ付セラルルト云フコトニナリマスト
云フト、其家格ヲ維持スルニ必要ト云フ範圍ニ於テモ亦宮內大臣自己ニ於テ之ヲ定ム
ルト云フコトハ事實ニ於テ隨分困難ナコトデハゴザイマスマイカ、如何ニモ其御用意ノ周
到ナル〓ニハ能ク了解イタシマシタケレドモ、或ハ是等ノ〓モ如何ナモノカト少シ疑團ノ
點ヲ抱クヤウデアリマスルガ、其邊ニ付テ一應ノ御說明ヲ煩ハシタイノデアリマス、又序ニ
チヨット伺ヒタイト思ヒマスルノハ此第十九條ノ第三項ノ所ニ於キマシテ、第五條第一
項トシテアリマシテ、此殊ニ第一項ガ揭ゲラレテ居リマスガ、此第二項ノ或ハ家產ヲ傾ク
ルノ憂アルト云フヤウナ場合ニ於テハ亦之ヲ準用セラルルコトノ必要ハ或ハナキモノデゴザ
イマセウカ、或ハ第五條第一項ダケデ、是ハ足リルノデ、第二項ニハ必要ハナイノデゴザ
イマセウカ、是モ少シク了解シ兼ネル所ガアリマスルノデ、是モ御說明ヲ煩ハシマス、先ヅ
取リ敢ヘズ是レダケ御說明ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=8
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009・富井政章
○富井政章君 尙ホ詳シイコトハ他ノ小委員諸君ヨリ御答イタサルルデアリマセウガ、
先ヅ簡單ニ唯今ノ二三〓ニ付テ私ノ所見ヲ申上ゲテ置キマス、此第一條ノ範圍內ニ
於テト云フコトハドウ云フ風ニ讀メルカ存ジマセヌガ、我〓ノ考ハ最高限ノミヲ極メル趣
意デアリマシテ、最低限マデハ意味シテ居ラヌノデアリマス、最低限ノ方ハ自由ニシテ置
ク法律デ何等ノ强制ヲモ加ヘナイト云フ趣意デアリマス、成ホド餘リ少ナ過ギテ是ッパ
カシデハ家ヲ維持スルコトガ出來ナイト云フヤウナ場合ニハ、宮內大臣ハ申請者ニ注意
ヲ與ヘルデセウ、ソレデハ餘リ少イカラモウイッソ止シテハドウカ、ソレデモ聽カナケレバ、而
シテ宮內大臣ニ於テハドウモ許サナイ方ガ宜イト考ヘマシタ時ハ、審議會ノ議ヲ經テ認
可セナイト云フコトニナルノデアリマス、ドウモ少ナ過ギルト云フ方ニハ格別弊害ノ伴フコ
トデアリマセヌ故ニ、五百圓以上ノ收益トカ云フヤウナコトヲ法律ニ極メナイ方ガ寧口穩カ
デアラウ、サウシテ又少ナ過ギルト云フヤウナコトハ實際頻繁ニ起ラナイデアラウト云フノデ
先ヅ極メズニ置イタノデアリマスガ、最低限度ヲ極メルト云フ、立法例モナイデハアリマセ
又、普魯西ノ議會ニ提出サレテ居リマス世襲財產法ノ草案ニハ三万馬克デアリマシタ
カ、ハッキリ覺エマセヌガ、最少限度ヲ極メテアリマス、外ニ例ハ殆ドナイヤウデアリマス、
ソレカラ第二ノ點ハ是ハ我ミニ於テモ大イニ考ヘマシタノデアリマシテ、認可スベカラズト
認メタル場合ニノミ審議會ニ諮ルト云フコトデハ殆ド諮詢スル場合ハナクナッテ、實際有
名無實ニナリハスマイカト一云フヤウナ考ヲ起シタノデアリマス、併シドウモ是ハ一得一失デ
アリマシテ、唯今御述べニナリマシタ通リ一家ノ財產狀態ヲ親族デモ何デモナイ審議官
ト云フヤウナ大勢ノ人ニ打明ケテ、曝シテシマフト云フコトハドウモ面白クナイコトデアル、
何カ權利ヲ主張スル者ガアリドウモ是ハ世襲財產トスルノハ宜シクナイ、不當ニ損害ヲ
蒙ル者ガアルト思ハレルヤウナ場合ニ限ッタモノデ、サウ云フ趣意デアリマス、併シ此廢止
ノ場合ハ一旦世襲財產ヲ設定シテ、ソレヲ廢止シヤウト云フ事柄ソレ自身ガ重大ナコト
デアリマスカラ、廢止スルニシテモセナイニシテモ其許否ヲ決定スルト云フコトガ重大ナコト
デアリマスルカラ、是ハ宮內大臣ガ廢止ヲ許スベシト云フ場合ト、廢止ヲ許スベカラズト
認メタ場合トハ審議會ノ議ニ掛ケルト云フコトニ致シテ見タノデアリマス、サウ云フ〓ハ
十分ニ御審議ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ第三ノ第五條第二項ヲ何故ニ第十九條
ニ於テ準用セナンダカト云フ質問デアリマスガ、是ハ第十九條ハ廢止ノ場合デアリマス、
世襲財產ヲ廢止スル、卽チ其家カラ云ヘバ危イコトヲスル、家ノ維持ニ必要ダト云フノ
デ設定シタ其世襲財產ヲ廢止スルト云フ場合、疾病ニ依ッテ家政ヲ執ルコトガ出來ナイ
トカ、或ハ家產ヲ蕩盡スル虞ガアルト云フヤウナ場合ハ、恰モ世襲財產ヲ其儘ニシテ置
クコトガ望マシナイノデアッテ、家政協議員會ナドデ廢止ヲスルト云フヤウナコトハ其場合
ニハ適當セナイコトデアル、ツレハ何處マデモ廢止ノ規定デアリマスルカラ、サウ云フ場合
ニハ設定ノ途ヲ開クト云フコトハ宜シイケレドモ、廢止ノ場合デナカラウト云フ理由デアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=9
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010・奧田義人
○奧田義人君 本案ニ付キマシテハ詳細ニ富井博士ヨリ唯今御說明ガアリマシタノ
デ、皆サンニ於カセラレテモ大體御承知ニ相成ッタコトト考ヘマスルノデアリマス、然ルニ
爾後少シ氣附イタ點モアリマスルシ、又此席ニ參リマシテカラ平田子爵ノ御質問モアリ、
其外桑田委員ヨリノ御質問ノアリマシタ點モアリマスルノデ、彼是以テ皆サンノ御參考
マデニソレ等ノ點ヲ申述ベテ見タイト考ヘマス、今ノ平田子爵ノ御質問ノ中ニ第一條ノ
此價格ヲ維持スルニ必要ナル範圍內ニ於テト云フコトノ意味ニ付テ御疑惑ガアリマス、
之ニ對シテハ富井博士ヨリ御說明ニナリマシタノデアリマスガ、是ハ御承知ノ通リニ原案
ニハ斯ノ如キモノハアリマセナンダノデアリマス、然ルニ此委員會ヲ初ニ開カレマシタ當時
ニ、委員ノ御方ミヨリ此最高限ニ付テ何等カ此制限ノ意味ヲ含マシタコトヲ玆ニ現ハシ
テ置クノ必要ガアルコトデアラウト云フコトヨリ致シマシテ、此家格ヲ維持スルニ必要ナル
範圍ニ於テト云フ文字ガ加ヘラレマシタノデアリマスル、是ハ富井博士ヨリ御說明ニナリ
マシタルガ如ク、固ヨリ此意味ニ於テハ最高限ヲ是デ示ス、斯ゥ云フ積リデアルノデアリ
マスルガ、甚ダ漠然ト致シテ居ル言葉デアッテ、ドウモ正確ニ之ニ依ッテ以テ此世襲財產
ヲ設定シマスル範圍ヲ定メルト云フコトハ固ヨリ出來ナイ、ソレヲ期スルコトハムヅカシイ
ト考ヘマスルガ、要スルニ設定ノ認可ヲ致サレマスル宮內大臣ノ考ニ依ッテ此一條ノ意味
ヲ參酌シテ許可セラレル、斯ウ云フコトニ解釋ヲ致スヨリ仕方ガアルマイカト思ヒマス、而
シテ其最底度ノコトニ至リマシテハ少シ茲ニ困ル事情ガアリマスルノハ、此世襲財產ト云
フモノガ不動產トカ或ハ又其他ノ有價證券トカ云フヤウナ收利ヲ生ジマスルモノバカリデ
アリマスルト、是ハ玆ニ書キ易イ點モアルカモ知レマセヌケレドモ、家寶ト云フモノガ加ッテ
居ルモノデアリマスカラ、最小限ノ家寶ノミヲ世襲財產トシテ設定シタイト云フ希
望ガアリマシタ時ニ之ヲ許スキベヤ否否ト申シマスト、之ヲ許シタカラト云ッテモ一向
差支ナイコトデアラウト私ハ考ヘマスル、サウシテ見マスルト、此收益ノアル所ノ財產ニ
付テノミ觀察ヲスルコトガ出來得マセヌ以上ハ、茲ニ最小限ヲ定メルコトガ甚ダ困
難ナ事情ガアリハシナイカト考ヘマス、斯ヤウニ存ジマス、ソレデ先ヅ漠然ナガラモ此最高
限ヲ餘リ過度ニ涉ラヌヤウニセシムルト云フダケノ趣意ヲ以テ、斯ノ如ク言ヒ表ハスヨリ外
ニ致方ガナイト小委員ニ於テハ考ヘタノデアリマス、ソレカラ第四條ノ二項ノコトニ付キマ
シテ先刻桑田委員ヨリ御注意ガアリマシタ、此第二項ハドウモ削除ヲシタ方ガ宜カラウ、
ト云フノハ設定ヲ希望セラレル所ノ有爵者ガ自己ノ財產狀態ヲ明ラサマニ示スト云フヤ
ウナコトハ好マヌ事情モアルカラシテ寧ロ是ハ削除シテシマッテ、サウシテ第六條ノ二項ノ
適用ヲシサヘスレバ、ソレデ差支ナカラウ、ドウデアラウカト云フコトノ御相談ガアリマシタノ
デアリマス、然ルニ是ハ第一條ニ此家格ヲ維持スルニ必要ナル範圍ニ於テト云フ言葉ヲ
入レマシタモノデアリマスカラ、之ニ基イテ宮內大臣ガ設定ヲ許スベキヤ否ヤト云フコトヲ
判斷ヲ致シマスルニ當ッテハ、ドウモ此總財產ノ〓量ヲ知ルニ足ルベキ事項ガ附記シテアリ
マセヌト云フト、其判斷ヲ下ス上ニ於テ甚ダ困難デアラウ、然レドモ亦一方ニ於テハ餘リ
詳細ノコトヲ書出サセルト云フヤウナ事ニシテハ是ハ實際ニ於テ其當事者ニ迷惑ヲ及
ボスコトニナルカラ、眞ニ〓量ダケヲ知ルニ足ル事項ダケヲ附記セシムルガ宜シイ、斯ウ云
フ趣意デ玆ニ這入リマシタノデアリマス、所ガ既ニ第六條ノ二項ノ箇條ガアリマスルカラ
シテ、實際ノ適用上ニハ大シタ差支モナイコトデアルヤウニ考ヘマスルカラシテ、私ノ意見
デハ若シドウシテモ此總財產ノ〓量ヲ初カラ書出スト云フヤウナコトガ、當事者ノ格別ノ
迷惑ニナルト云フヤウナ譯デアリマスルナラバ第一條ノ規定トハ聊カ釣合ハ付カヌヤウニ
ハ考ヘマスルケレドモ、必ズシモ此第四條ノ二項ヲドウシテモ茲ニ置カナケレバナラヌト云
フ程ノ必要モナイカ知ラヌト思ヒマス、若シ其必要ガアル時ニハ卽チ第六條ノ二項ヲ適
用シサヘスレバ宜シイ、斯ウ云フ事ニ相成ルダラウカト私ダケハ考ヘマスルカラ、御參考ノ
爲ニ申上ゲテ置キマス、ソレカラ第五條ノ第二項ニ付キマシテ先刻富井博士ヨリノ御說
明モアリマシタノデアリマスルガ、卽チ之ヲ親族會トセズシテ、家政協議員會ト致シマシタ
所以ハ富井博士ノ述ベラレマシタル以外ニモ尙其理由ガアラウト思ヒマス、御承知ノ通
リ普通ノ親族會議デアリマスルト云フト、常ニ裁判所ノ干與ヲ要スルコトニナリマス、世
襲財產ノ設定ニ關シマシテ、餘リ裁判所ノ干與ヲ要スルヤウニナルノハ穩カデナイ、家政
協議員會デアリマスレバ、裁判所ニ何等ノ關係ナクシテ、宮內大臣ノ定メタ規定ニ基イ
テ設定スルコトガ出來得ルモノデアリマスカラシテ、斯ヤウニ致シテ置イタ方ガドウモ普通
ノ親族會議ヨリモ適當デアラウト云フ趣意モアッタカノヤウニ覺エテ居リマス、聊カ蛇足デ
アリマスケレドモ補足シテ置キマス、ソレカラアトデ氣付キマシタ點ト云フノハ何デアルカト
申シマスルト、第八條デアリマス、第八條ノ「前條ノ規定ニ依リ公〓シタル財產ニ關シ權
利ヲ有スル者又ハ民事上ノ强制執行、假差押若クハ假處分ニ著手シタル者」斯ウアリ
マス此「又ハ」以下デアリマス、「民事上ノ强制執行、假差押若クハ假處分ニ著手シタル
者」ト原案ニハ斯ヤウニナッテ居リマスノデ、其儘是ハ玆ニ這入ッテ居リマスケレドモ、隣
席ノ岡野博士モ氣付カレマシタヤウデアリマスガ、必ズシモ民事上ノ强制執行、假差押
若クハ假處分ニ著手シタル者ニ限ッテ申出ズル權利ヲ有タシメテ、其以外ノ債權者ヲ除
外シテシマフト云フ必要ハナイノミナラズ其以外ノ債權者ヲ保護スル上カラ云ッテモ、是ダ
ケニ限ルト云フコトハ不穩當デアルカ知ラヌト考ヘラレマスルノデ、ソレデ或ハ是ハ「又ハ債
權者」ト廣ク書キマシテ、サウシデ今ノ「民事上ノ强制執行、假差押若クハ假處分ニ著
手シタル者」ト云フノヲ除イテシマフコトニナッテシマッタラドウデアラウカ知ラヌト思フノデア
リマス、ソレカラ次ノ第九條ハ先刻平田子爵ヨリ御質問ニ相成リマシタノデアリマス、是
ニ對シマシテ富井博士ヨリ詳細御答辯ニナリマシタ、初メ小委員會ニ於テハ富井博士
ガ述ベラレマシタ如ク、世襲財產ノ設定ヲ認可スル場合デモ、之ヲ認可セザル場合デモ、
何レノ場合タルヲ問ハズ、審議會ニ諮詢ヲスルヤウニ案ハ立テテアリマシタ所ガ、其後宮
內大臣ニ面會ヲ致シマシタ時ニ、アノ箇條ハ宮內大臣ニ於テ認可スル時ダケハ諮詢ヲシ
ナイデモ宜イヤウニシテ置ノテ貰ヒタイ、ト云フノハ隨分數〓アルコトデ、其數〓アル場合ヲ
一々審議會ニ諮詢ヲスルト云フコトハ甚ダ煩ハシイコトデモアルシ、又宮內大臣ノ職權カ
ラ見テモ、ドウモ許可シテモ宜イト宮內大臣ガ思フ分ハ宮內大臣ニ信賴ヲシテ委セテ貰ッ
テモ敢テ差支ナイコトデアラウカ知ラヌト斯ウ考ヘルカラ、出來ルコトデアルナラバ、認可
ヲシナイト宮內大臣ガ考ヘタ時ニ於テノミ諮詢スルコトニシテ貰ヒタイ、斯ウ云フ話ガアリ
マシタ、ソレニ基キマシテ相談ヲ致シマシタ所ガ、成ルホドドウモソレノ方ガ穩當デアルヤウ
デアル、斯ウ云フコトデ斯ノ如ク改メルコトニナリマシタノデアリマスル、來歷ハ······然ルニ
此箇條ニ付キマシテモ亦丁度隣席ノ岡野博士モ同樣ノ疑ヲ持タレタヤウデアリマスガ、
聊カ不十分デアルカノ如クニ考ヘラレマスルノデ、其點モ申上ゲテ置キタイト思ヒマス、
ソレハドウデアルカト申シマスルト、「世襲財產ノ設定ヲ認可スヘカラスト認ムルトキハ」ト單
ニアリマスト、例ヘバ不動產ナリ、動產ナリ、家寶ナリ、色ミノ種類ヲ舉ゲテ、サウシテ之
ヲ世襲財產ニシタイト云フコトノ申請ガアリマシタ時ニ、此部分ハ認可シテモ宜シイケレド
モ、コチラノ部分ハドウモ認可ガ出來ヌト云フヤウナコトモ必ズ生ジテ來ヤウト思フ、其場
合ニ於テ或ハ實際カラ申シマスルト、當事者ニ宮內大臣カラシテ內諭ヲシテ、サウシテ申
請書ヲ改メサセルト云フヤウナコトモ出來ヌデハアリマスマイケレドモ、ソレガ出來得ル出
來得ヌニ係ハリマセズ、一部分ハ認可シテ他ノ部分ヲ認可セヌト云フヤウナコトモ亦茲ニ
明カニ致シテ置キマセヌト云フト、ドウモ是ダケノ文章デハ其意味ガ明カニナラヌヤウニ考
ヘラレマス、ツレ故ニ是ハ實際ノ取扱ヒガドウアラウトモ「世襲財產ノ設定ノ認可ノ申請
ノ全部又ハ一部ヲ認可スヘカラスト認ムルトキハ」ト改メタ方ガ宜イデハナイカト氣付キマシ
タノデ、此〓ヲ御參考マデニ申シテ置キマス、ソレカラ第十八條デアリマス、第十八條ノ
「不法行爲ニ因ル損害賠償ノ請求ノ爲ニスルノ外民事上ノ强制執行」云々ト云フコト
ガアルノデアリマス、ソレデ此相談ヲ致シマシタ當時ニ於テ、富井博士ノ御提議デ、ドウモ
不法行爲ニ因ル損害賠償ノ請求ノ爲ニ之ヲ許スト云フコトデアルナラバ權衡上カラ
云ッテモ、世襲財產ノ管理ニ因ッテ生ジタ所ノ權利ノ爲ニモ、亦差押强制執行ヲ許スト
云フコトニシナイト云フト、其當ヲ得ヌヤウデアルト云フコトノ御話ガアッタノデアリマス、彼
是當時審議ヲ致シマシタケレドモ、マア餘リ重キヲ置ク程ノコトデモアルマイト云フコトデ、
其儘ニナリマシタ、併ナガラ熟考ヲ致シテ見マスルノニ、ドウモ此假令實際ニ於テハ重キ
ヲ置クホドノコトデモナイカモ知ラヌガ、不法行爲ニ依ル損害賠償ノ請求權ノコトガ玆ニ
這入ッテ居リマスル以上ハ、此權衡上管理ニ依ッテ生ジタ權利ノコトモ入レテ置カヌト云
フト、法律ノ體面トシテ甚ダ不穩當ノヤウニ考ヘラレマス、ソレデ隣席ノ岡野博士モ同意
見ノヤウデアリマスガ、玆ハ斯樣ニ直シタラドウデアラウカト思ヒマス、卽チ「損害賠償ノ請
求權及世襲財產ノ管理ニ因リテ生シタル權利ノ爲ニスル場合ヲ除クノ外」トナリマシタ
ラ、如何デアラウカト考ヘラレマスコトデアリマス、ソレカラ今一ツ述ベテ置キタイノハ、第
十九條ノ此三項ノコトニ付キマシテハ平田子爵ヨリノ御質問ガアッテ、富井博士ヨリ御
答辯ニナリマシタ、是ハ御分リニナッタコトト考ヘマスル、唯ダ此廢止ヲ一部ニ限リマシタ
事柄デアリマス、當初小委員會デ協議ヲ致シマシタ時ニハ、ドウモ此世襲財產ヲ廢止ス
ルノヲ一部ダケニ限ッテ廢止スルト云フコトヲ許シテ、全部ヲ許サヌト云フコトハ可笑イ、
巳ムヲ得ヌ場合ガアル時ニハ全部ヲ許シテ差支ノナイコトデハナイカト云フヤウナ議論モア
リマシテ、初メハ全部又ハ一部ヲ廢止スルコトヲ得トアッテ、次ノ項ノ交換ノコトト一〓ニ
シテアッタヤウニ覺エテ居リマス、然ルニ後、委員ノ方ミヨリ段々御意見モアリマシタ、其
結果トシテ遂ニ此普通ノ廢止ハ一部分ニ限ル、全部ノ廢止ハ許サヌ、交換ノ場合ダケ
ハ全部又ハ一部ヲ廢止スルコトガ出來ル、斯ウ云フコトニシタイト云フ多數ノ御方ノ御
意見デアッタヤウデアリマスノデ、斯樣ニナッタノデアリマスケレドモ、段々尙ホ理窟ヲ考ヘテ
見マスルト云フト、玆ニ重大ナル事由ガアルト云フコトガ前提ニナッテ居ル、廢止シナケレ
バナラヌト云フホドノ重大ナル事由ガアルノニ、全部ノ廢止ハ許サヌ一部分ノミヲ許スト
云フコトハ、ドウモ理窟ノ上ニ於テ甚ダ不穩當ニ考ヘラレマス、ソレデ私ノ意見ト致シマ
シテハ、矢張リ前ノ案ノヤウニ普通ノ廢止モ全部又ハ一部トナッタ方ガ宜イデハナイカト
考ヘマス、併シ是ハ唯私ノ考ダケデアリマシテ、皆サンノ御考デ矢張リドウモ斯ウシテ置イ
タ方ガ實際上宜シイト云フコトデアリマスレバ、强ヒテ是ハ主張ヲスル譯デハナイノデアリ
マスルガ、唯少シ理窟ガ立タヌヤウニ考ヘマスカラ、御參考マデニ自分ノ意見ヲ述ベテ置
キマス、以上述ベマシタ點ガ卽チ他カラ御注意ヲ受ケマシテ、或ハ又私ナリ岡野博士ナリ
氣付カレマシタ點デアリマスノデ、篤ト御勘考ヲ請ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=10
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011・岡部長職
○委員長代理(子爵岡部長職君) 水野子爵ハ如何デゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=11
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012・水野直
○子爵水野直君 アトデ宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=12
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013・岡野敬次郎
○岡野敬次郞君 唯今段々奧田博士ヨリ詳細ノ御說明ニナリマシタコトデアリマスカ
ラ、私ヨリ重ネテ又蛇足ヲ加ヘル必要ハナイト考ヘマスガ、唯一二點私ハ申上ゲテ見タイ
ト思フノデアリマス、ツレハ此第八條ノコトデアリマスガ、第八條ヲ修正シタラバドウデアラ
ウカト云フ奧田博士ノ御意見ニ付キマシテハ私ハ全然御同意ヲ表シタイト思フノデアリ
さく、此第八條ノ規定ニ依リマスルト云フト、「財產ニ關スル權利ヲ有スル者」ト云フノ
ハ、先ヅ物權的ノ權利ヲ有ッテ居ルモノヲ指スノデ、「又ハ」以下ノ「民事上ノ强制執行」
云々ニ至リマシテハ世襲財產ヲ除イタ特定財產ニ對シテ自己ノ權利ヲ主張スルト云フモ
ノデアリマス、處ガ一般ノ債權者、卽チ普通ノ債權者ト雖モ一度ビ宮內大臣ニ對シテ
其權利アルコトノ申出ヲ矢張リ許シテ、宮內大臣ガ果シテ申請ノ儘設定ヲ認可スベキ
モノデアルヤ、或ハ斯ノ如クニ債權者ガ澤山アル以上ハ、場合ニ依ッテハ申請ノ一部ハ
認可スルヨリ外ハナイ、其世襲財產設定認可ノ爲ニ一般ノ債權者ニ迷惑ヲ及ボスト云
フヤウナコトガ必ズ起ラヌトモ限ラヌノデアリマスカラ、先ヅ宮內大臣ハ其申請ヲ認可スル
ヤ否ヤト云フ時ニ當リマシテ、矢張リ一般債權者ヲシテ其權利アルコトヲ申出サセルガ
穩當デアルト云フノデ、此八條ヲ修正シタラ宜カラウト云フ奧田君ノ意見ニ私ハ贊成ス
ルノデアリマス、此〓ニ付キマシテハ曩ニ小委員會ノ際ニ於キマシテ、偶〓世襲財產ノ事ヲ
〓究シテ居ル人ガ京都大學、竝ニ東京大學ノ法科大學ノ〓授ニアリマシテ、將ニ其意見
ガ雜誌ニ依ッテ發表セラレントシツツアル際デゴザイマシテ、尙ホ其意見等ヲ一應參考シテ
見タイト云フ希望ヲ私ハ其當時述ベテ置キマシタノデアリマス、間モナク雜誌ガ發行セラレ
マシテ、其雜誌ニ就イテ見マスルト云フト、多クノ意見ハ此小委員會ノ修正意見ガ採用
サレテ居ルノデアリマスガ、中ミ誠ニ尤モノ注意デ、其注意ニ基イテ修正シタラバト心付イ
タ點モアルノデ、此八條ノ奧田博士ノ修正意見ハ卽チ其一ツデアリマス、私ハドウゾサウ
アリタイト思フノデアリマス、是ニ付キマシテ牽聯スル所ノ第四條ノ二項ハ奧田博士ノ御
意見デアリマスガ、元ト第四條ノ二項ト云フモノハ先刻奧田博士ヨリ說明セラレマシタ
ル通リ、第一條ニ於テ最高限ヲ置ク以上ハ相當ニ有爵者ノ財產ノ狀態ハ如何ナルモノ
デアルカト云フコトヲ知ルノ參考書類ハドウモナケレバナルマイト云フ所カラ、此四條ノ二
項ハ此財產ノ謂ユル財產目錄ト云フモノヲ矢張リ添ヘナケレバナラヌト云フコトニ應應
修正ヲ致シタノデアリマス、其財產ノ目錄ヲ添ヘネバナラヌト云フコトニ致シマスルト云フ
ト段々委員ノ中ニ御心配ニ相成リマシタル通リ、其有爵者ノ財產ハ、不動產ハドノ
位アル、有價證券ハ幾ラアル債務ハ幾ラアル債權ハ幾ラアルト云フヤウニ悉ク列記スル
ヤウニ相成リマスノデ、ソレガ爲ニ財產ノ狀況ヲ人ニ知ラセルヤウナコトニナッデ、有爵者
ハ甚ダ好マヌ所デアルト、斯ウ云フ御意見ガ段々出マシテ、誠ニ至當ノ意見デアルト云フ
所カラ此修正ヲ加ヘマシテ、第四條ノ二項ヲ「總財產ノ〓況ヲ知ルニ足ルヘキ事項」ト
改メタノデアリマス、此總財產ノ〓況ヲ知ルニ足ルベキ事項ト云フコトハドウ云フコトヲ
書ケバ宜シイト云フト、其細カイ事ニ至リマシテハ、或ハ委員中ニ於テハ多少意見ヲ異
ニスル者ガアルカモ知レマセヌケレドモ、先ヅ大體ニ於キマシテハ謂ユル文字通リノ〓況
デ、不動產ハ幾ツアッテ、ドレダケノ價格ノモノデアル、有價證劵アリ、國債アリ、地方債
アリ、其他ノ有價證券モアッテ、其價格ガ幾ラアリ、負債ガ幾ラアルトカ云フヤウナコトヲ
書カセル趣意デハアリマセヌノデ、唯大凡有爵者ノ財產ハドノ位アル、純財產ハドノ位ア
ル、其他財產中ニ於テ世襲財產ガドノ位ニ當ルカト云フコトヲ知ルダケノ材料ニ過ギナイ
ノデアリマスカラ、格別是ガ爲ニ有爵者ノ財產ノ狀況ガ人ニ知ラルルト云フヤウナ虞ハ
私ハナイモノト思フノデアリマス、且サウ云フナンデアリマスカラシテ、此四條ノ二項アルガ
爲ニ有爵者ガ痛ク迷惑ヲ感ゼラルルト云フコトハナカラウト思フ、而シテ私ノ考ヘマスル
所デハ六條ノ第二項ト云フモノハ、是ハ寧ロ例外ニナル場合デアリマシテ、成ルベク其六
條ノ第二項ノ如キハ事實ニ於テハ適用ノナイコトヲ私ハ希望スルノデアリマス、六條ガア
ルカラシテ四條ノ二項ヲ削除シテモト云フヨリ、私ハ寧ロ第四條ノ二項ヲ此儘置キマシ
テ、事實ニ於テハ六條ノ第二項ハ餘リ適用ノナイコトニ私ハシタイト思フノデアリマスカ
ラ敢テエライ此有爵者ノ財產ノ狀況ガ人ニ知ラルヽト云フコトノ迷惑ニナラナイトスル
以上ハ私ハ第四條ノ第二項ハ此儘ニ存置シテ置キタイト云フ希望ヲ有ッテ居リマス、敢
テ其點ニ付テ私ハ固執イタス譯デアリマセヌケレドモ、立案ノ主意ト云フモノハ私ノ考ヘ
マス所、此第四條ノ第二項ノ〓況ニ依ッテ認可スルコトニシテ、ヨク〓〓ノ場合デナケレ
バ六條ノ二項ハ適用シナイト云フコトニ致シタイト思ヒマス、ソレカラモウ一點ハ第九條
ノ修正ノコト竝ニ第十八條ノ修正ノコトハ是ハ私ハ全然贊成ヲ表シタイノデアリマス、ソ
レカラ十九條ノコトデアリマス、是ハ先刻奧田博士ヨリ說明セラレマシタ通リノ成行キデ
アリマシテ、此全部ノ廢止ト云フコトハ一度ビ定ッタノガ段々小委員ノ中ニ於テ御意見
ガ出マシテ、遂ニ此一部ノ廢止ト云フコトニナッタノデアリマス、而シテ詰リ全部ノ廢止ト
云フコトヲ認メナイト云フコトハ私ノ記憶イタシマス所、其御意見ノ趣意ト云フモノハ場
合ニ依ッテハ結局全部ノ廢止ニ至ルカモ知レヌケレドモ、併ナガラ一擧ニシテ世襲財產ガ
全部廢止セラレテ仕舞フト云フコトハ甚ダ望マシクナイコトデアリマス、固ヨリ一部ト申シ
タ所デ五分モ一部ナリ、九分モ一部ナリ、而カモ重大ナル事由ノアル時ニ限ッテ廢止ス
ルト云フコトデアリマスカラ、理窟ノ上デ申シマスト、一部ダケノ廢止ヲ認メテ全部ノ廢
止ヲ認メナイト云フコトハ、餘リ法律的ニ申シマスレバ穩當デナイ、又說明ニ困難ナルコト
デアラウト私ハ理窟ノ上デハ考ヘルノデアリマスガ、斯クナッタ所以ハ要スルニ適用ノ上ニ
於テ味ヒノアルモノデアル、詰リ一度ニ全部無クナッテ仕舞フト云フコトハ望マシクナイ、場
合ニ依ッテハ今年一部又後ニナッテ一部ト云フコトニナッテモ是ハ已ムヲ得ナイケレドモ、
一遍ニ全部無クナッテ仕舞フト云フコトハ餘リ面白クナイト云フノガ修正者ノ其當時ノ
修正意見ノ趣意デアッタト思ヒマス、殊ニ此廢止ノコトニ付キマシテハ色ミノ委員外ノ方
カラ承ル所ニ依リマシテモ、全然廢止ト云フ制度ハ宜シクナイカラ、廢止ト云フ制度ハ
止メタラ宜カラウト云フ御意見ヲ承ルノデアリマス、又廢止ト云フコトヲ認メルニ付テモ
成ルベク其廢止ト云フコトガ輕ミシク出來ナイヤウニシテ貰ヒタイト云フ希望ノ方モ大分
アルヤウニ私ハ承ッテ居ルノデアリマス、サウ云フヤウナ工合デアルノミナラズ、此廢止ノ申
請ノアッタ場合ニ於キマシテモ宮內大臣ハドウモ一部ノ廢止ハ已ムヲ得ヌケレドモ全部ヲ
廢スルト云フコトハイカヌト云フコトノ取捨モ隨分私ハ場合ニ依ッテハ困難デアルカモ知レ
ヌト思ヒマスカラ、矢張リ理窟ハ奥田博士ノ言ハレル如ク說明ニハ甚ダ困難ト思ヒマス
ケレドモ、矢張リ適用ノ上ニ於テモ一部ノ廢止ノ方ガ適切デハナカラウカ、サウスレバイッ
ソ全部ノ廢止ト云フコトハ認メテ置カナイ方ガ味ヒガアリハシナイカト思ヒマス、甚ダ理窟
上ノ說明ニハ困難デアリマスケレドモ、此點ニ於テハ私ハ矢張リ十九條ノ一項ハ此儘ニ
存置シテ置キタイト云フ希望ヲ有ッテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=13
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014・岡部長職
○委員長代理(子爵岡部長職君) 丁度モウ晝ガ過ギマシタカラ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=14
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015・岡野敬次郎
○岡野敬次郞君 モウ一〓簡單ナコトヲ申シテ置キタイ、ソレハ極メテ簡單ナコトデア
リマスガ、三十條ニ牽聯シマシテ、寧ロ十三條ノ方カラ申上ゲタ方ガ宜カラウト思ヒマ
ス、十三條ニ付キマシテハ御覽ノ如ク登錄國債ニ付キマシテハ國債登錄簿ニ世襲財產
タル旨ヲ登錄スルコトニナッテ居リマス、ソレカラ有價證券ノ中ニ於キマシテ株劵ト社債
劵ニ付テハ十三條ノ二項ニ株主名簿ニ世襲財產タル旨ヲ記入シ、社債原簿ニ世襲財
產タルコトヲ記入スルコトニナッテ居リマス、所ガ無論其有價證券ハ必ズシモ株劵、社債
券ニ限リマセヌ、其他ノ有價證券ガアリマス、其他ノ有價證券ニ付テハドウデアルカト申
シマスルト、法律ノ上ニ於テ國債ノ如クニ國債登錄簿ヲ設ケヨト一云フ譯ニナッテ居ルノデ
ハナイ、株劵社債券ノ如ク株主名簿、社債原簿ヲ設ケヨト云フコトニナッテ居ルノデアリ
マセヌ、事實ニ於テハ原簿ノ如キモノガアリマセウ、又無クテハナラヌノデアリマスガ、法律
ノ上ニサウ云フ制度ガ認メラレテ居リマセヌカラ誠ニ巳ムヲ得ナイコトデアリマス、ソレデ
其登錄國債ニアラズ、株劵ニアラズ、社債券ニアラザル他ノ有價證券ニ付テハ本案ノ上
ニ於テドウナルカト云フト、唯十三條ノ一項ノ終リノ所ニ「有價證券ニ付テハ宮內大臣
ハ之ニ世襲財產タル旨ヲ記入スヘシ」トナッテ居リマス、ソレデ詰リ記入ノ手續キダケデア
リマシテ、登錄ト云フコトヤ原簿ニ記入スルト云フ手續ハナイノデアリマス、ソレハ誠ニ已
ムヲ得ナイコトト思フノデアリマス、ソレカラ三十條ニ付キマシテ「管理財產中登錄國債
アルトキハ國債登録簿ニ管理財產タル旨ヲ登錄シ」云々トアリマス、是ハ私ガ申上ゲルマ
テモナク登錄國債ハ登錄簿ノ登錄ニ依ッテ權利ノ移動ヲ認メル譯ニナル證券ハ無イノ
デアル、ソレデアリマスカラドウモ登錄國債アルトキハ國債登録簿ニ登錄シテ置キマセヌト
登錄ダケデ權利ガ移動シマスカラ、ドウシテモ是ハ原簿ニ記入スルヨリ外仕方ガナイノデ
アリマス、所ガ等シク原簿ニ登錄記入ノ手續キヲ致シマシタ所ガ、株劵社債劵ハ三十
條ノ適用ガナイノデアリマス、ソレハドウ云フ譯デアルカト云フ疑モアリマスノデ、ソレニ付
テ私ハ一言イタシテ置キタイノデアリマス、登錄國債ハ先刻申上ゲマス通リ國債登錄簿
ダケノ登錄デ權利ノ移動ハ定マルコトニナリマスガ、株劵トカ社債トカ云フモノハ有價證
劵ト云フ形デ其證書ガアル、而シテ證書ニハ世襲財產タル旨ノ記入ガシテアル、而シテ
此三十條ノ適用ニナリマス場合ガ管理人ガ選任セラレマシテ、而シテ管理人ハ其財產
ヲ管理シテ居ル場合デアリマスカラ、株券ヤ社債券ノ如キ有價證券ガ其世襲財產中ニ
アリマシテ、而シテ管理人ガ之ヲ管理スルトキハ株券ヤ社債券ト云フモノハ、管理財產
トシテ其管理人ノ手ニアルノデアリマスカラ、ソレデ株主名簿ヤ社債券名簿ニ管理財產
トシテ登錄スルトカ云フ必要ハ無カラウト云フコトデ、三十條ニハ唯登錄國債ノコトヲ規
定イタシマシテ、株劵ヤ社債券ノコトハ無イノデアリマス、兎ニ角此案ノ趣意ハソコニアル
ノデ、多少御疑問ガアリマスカラ、序ヲ以テ一言イタシテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=15
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016・岡部長職
○委員長代理(子爵岡部長職君) 最早此際休憩イタシマシテ、午後一時ヨリ始メ
マイヘ
午後零時二十一分休憩
〔午後ハ開會トナラス〕
出席者左ノ如シ
副委員長富井政章君
委員
伯爵柳澤保惠君子爵平田東助君子爵岡部長職君
子爵水野直君奧田義人君岡野敬次郞君
男爵田健治郞君男爵本多政以君桑田熊藏君
政府委員
法制局長官高橋作衞君法制局參事官馬場鍈一君
司法省參政官田川大吉郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003700220X00419160209&spkNum=16
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