1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正五年二月十二日(土曜日)
午前十時八分開議
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議事日程 第十號 大正五年二月十二日
午前十時開議
第一 大正五年度歳入歳出總豫算案竝大正五年度各特別會計歳入歳出豫算案 會議(委員長報告)
第二 豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件 會議(委員長報告)
第三 大正五年度特別會計歳入歳出豫算追加案(特第一號) 會議(委員長報告)
第四 國籍法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 北海道會法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 華族世襲財産法改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 砂糖消費税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 私立學校及公益法人の用地免租に關する法律案(衆議院提出) 第一讀會(前會の續)
第九 市制中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十 町村制中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十一 府縣制中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔長谷川試補朗讀〕
去ル九日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決
ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ据置運轉資本增加ニ關スル法律案
朝鮮森林特別會計法廢止法律案
朝鮮事業公債法中改正法律案
會計檢査院法中改正法律案
行政裁判法中改正法律案
議院法中改正法律案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
郵便法中改正法律案
鐵道船舶郵便法中改正法律案
電信法中改正法律案
海底電信線保護萬國聯合條約罰則改正法律案
同日請願委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表第七囘報告書
一昨十日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
華族世襲財產法改正法律案修正報告書
請願委員會特別報告第四號
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
銀行條例中改正法律案
貯蓄銀行條例中改正法律案
商業會議所法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ法律案ヲ提出セリ
齒科醫師法中改正法律案
社寺上地下戾ニ關スル法律案
軍人恩給法中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、議事日程第一、大
正五年度歲入歲出總豫算案竝大正五年度各特別會計歲入歲出豫算案、第二、
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件、第三、大正五年度特別
會計歲入歲出豫算追加案、特第一號、會議、委員長報告、豫算委員長岡部子爵
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之ニ傚
フ〕
一大正五年度歲入歳出總豫算案
一大正五年度各特別會計歲入歲出豫算案
一豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
右衆議院ヨリ送付シタル各案ヲ審査シ總テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモ
ノナリト議決セリ依テ及報〓候也
大正五年二月八日
豫算委員長
子爵岡部長職
貴族院議長公爵德川家達殿
一大正五年度特別會計歳入歲出豫算追加案(特第一號)
右衆議院ヨリ送付シタル案ヲ審査シ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報告候也
大正五年二月八日
豫算委員長
子爵岡部長職
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵岡部長職君演壇ニ登ル〕
〔男爵久保田讓君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 久保田君ハ何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=3
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004・久保田譲
○男爵久保田讓君 豫算委員長ノ報告前ニチヨット····今日ノ豫算ノ會議ニ
國務大臣ハ誰モ出席ハゴザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 必ズ出席セラルルコトト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=5
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006・久保田譲
○男爵久保田讓君 出席ガアリマシテカラ報〓ガアリマシタ方ガ宜カラウト
思ヒマスガ、如何デゴザイマスカ
[「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=6
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007・岡部長職
○子爵岡部長職君 唯今日程ニ上リマシタ所ノ大正五年度歲入歲出總豫算其
他三案デゴザイマスルガ、便宜ノ爲ニ之ヲ一括イタシテ審査ノ經過竝ニ結果
ヲ御報告イタシタイト考ヘマス、豫算ノ大體ニ付キマシテハ昨暮豫算委員ニ
各案ヲ付託相成リマシタ節ニ、大藏大臣ヨリ大體ニ付キマシテ說明スル所ガ
アリマシテ、諸君ノ御聽取ニナリマシタルコトデアリマスルカラ、大體ニ付キマ
シテノコトハ其大藏大臣ノ說明モゴザイマシタコトデアリマスルカラ、玆デ
又再ビ申述べマスコトハ略シマス、大正五年度特別會計歲入歲出豫算追加特
第一號ハ去ル一月十七日ノ本議ニ於テ豫算委員ノ方ニ付託ニ相成リマシタル案
デゴザイマス、豫算委員會ニ於キマシテハ一月二十日ヨリ二十四日マデ連日
質問ノ會議ヲ開キマシテゴザイマス、此間各委員ヨリノ詳細ナル質疑又ソレ
ニ對スル政府側ヨリノ答辯モ丁寧反覆十分ニ盡サレタコトデアリマス、二十四日
ノ會議ノ終ニ於キマシテ一先ヅ質問ヲ終結イタシタモノト見マシテ、各案ノ
審査ヲ分科ニ付託イタシマシテゴザイマス、其分科ノ審査期限ハ本月ノ三日
ト云フコトニ取極メマシテゴザイマス、各分科ニ於キマシテハ〓心ニ審査ニ
從事イタシ、分科會ハ其數ヲ重ネマシタニ拘ラズ、審査上日數ニ於テ不足ヲ
告ゲマスコトニ相成リマシテ、分科會ノ審査期限ヲ三日ヨリ五日マデ延長イ
タスコトニ委員會ニ於キマシテ取極メマシタ次第デアリマシテ、其結果ト致
シテ委員會ノ審査期日ヲ曩ニ本月ノ五日ト定メテ置キマシタル所、本月ノ八
日マデ延期ノコトヲ過日本議ニ於テ諸君ノ御贊同ヲ得マシテ、去ル八日ヲ以
チマシテ議長ノ御手許マデ報告ヲ了リマシタ次第デゴザイマス、各分科會ヨ
リ報〓ガ集リマシタニ付キマシテ、去ル七日八日ノ兩日委員會ヲ開會イタシマ
シテ、各案ノ審査ヲ進メマシタ次第デアリマシタ、其結果必要ノ件ト認メマス
ル數箇ノ希望箇條ヲ加ヘマシテ、豫算案ト共ニ此議決ヲ致シテ政府ノ考慮ヲ
求メマスルコトニ致シマシタノデゴザイマス、而シテ豫算各案ニ於キマシテ
ハ一ノ修正ヲモ加ヘズ、衆議院ヨリ送付イタシマシタル所ノ案ヲ總テ可決イ
タシマシタ次第デゴザイマス、唯今申述ベマシタル數箇ノ要件ト申シマスル
モノハ、是ハ後ヨリ御聽キニ達シマセウト存ジマス、審査ノ經過ヲ〓略申上ゲ
マスル順序ト致シテ、先ヅ委員會ニ於ケル質問中ノ最モ重モナルモノヲ、最
モ簡單ニ申上ゲヤウト存ジマス、各委員ヨリ質問ヲ致サルル便宜ノ爲ニ、質問
ノ初メニ部門ヲ分チマシタ、卽チ財政部、外交部、軍事部、其他各種ノ質問
ト、斯ウ四ツニ大別ヲ致シマシテ、財政部ヨリ始メマシテ唯今申述ベマシタ
所ノ順序ヲ逐ウテ質問ヲ進行イタシマシタノデアリマス、其質問ノ〓略ヲ申
述ベマスレバ左ノ如クデゴザイマス、大正四年度實行豫算ノ實施上大ナル齟
齬ヲ來シタル事由ハ如何ナルモノデアルカ、ソレニ對スル政府ノ答辯ハ、時
局ノ永續ヲ豫期セザリシヲ以テ、豫想以上ニ歲入ヲ減少セシメタノデアル、
其最モ著シキモノハ關稅及酒稅デアルト答ヘラレマシタ、又國債償還ノ爲
ニスル追加豫算案ヲ總豫算案ヨリ遲レテ提出シタル事由ハ如何ナモノデアル
カ、其問ニハ、果シテ總豫算編製ノ時期ニ於テ正貨ノ激增明カデハナカッタ
ノデアルカ、又當時ハ國內ニ於テ國債借換ノ見込ガ確實ナラザリシコトデ
アッタカト云フヤウナ問デアリマシタ、答ハ、政府ハ正貨問題ヲ忽ニセズ、
然レドモ正貨ノ激增ハ九月十月頃ガ最モ著シク見エテ來タ時デアッタ、又政府
ハ佛貨公債買入償還ノ計畫ヲ立テタノデアル、而シテ十二月ニ至リテ漸ク買
入レノ見込ガ確實ト相成ッタガ故ニ、ソレヲ機トシテ內債募集ノ計畫ヲ發表シ
タ譯デアル、斯ウ云フ答デゴザイマス、八四艦隊ノ建造ニ必要ナル材料ヲ得ル
ノ方法ハドウデアルカ、其答ニ、財政狀態常道ヲ逸スルヲ以テ、是ガ財源ハ必
ズ今日ニ於テ確定スルノ要ナシ、大正六年度豫算ノ編製ニ際シテハ最善ノ力
ヲ致サムト云フ考デアル、財源ヲ得ルノ途ハサウ多岐ノモノデハナイ、平和ガ
速ニナレバ歲入ノ自然增加モアラム、又速ニナラザレバ歲出ヲ減ズルカ、歲
入ヲ增加スルノ外ニハ致シ方ガナイノデアルト云フ答デアリマシタ、而シテ
是ガ實施ニ關シテハ大正六年度豫算ノ編製ニ適當ノ計畫ヲナスコトヲ期スル
譯合デアル、八四艦隊ノ建造ニ必要ナル經費ハ大正六年度豫算案ニ繼續費ト
シテ計上セラルル積リデアルカ、答六年度ニ於テ建造ニ著手スベキ艦艇製
造費ハ六年度以後ノ繼續費トシテ豫算案ニ計上スルモ、七年度以後ニ著手ス
ベキモノニ對シテハ六年度豫算ニ計上スベキヤ否ヤハ未定デアル、又問ニ海
軍大臣ハ大藏大臣ノ言ヲ信ジテ大正六年度ヨリ艦艇建造ノ根本的計畫ヲ立テ
ルコトヲ期セラレタ、然ラバ大正六年度豫算案ニ於テ全部ノ繼續費ヲ計上ス
ベキニアラズヤト云フ問デゴザイマス、其答ニ、豫算編製ノ方法ハ未定ナル
モ、成ルベク大正六年度ノ豫算案ニ全部ノ計畫ヲ繼續費トシテ計上セムコト
ヲ希望スル是ガ答デゴザイマスル、又問ニ、大正五年度ニ於ケル海軍艦艇
建造費豫算ノ編製方法ハ謂ハユル准繼續費トモ稱スルモノニシテ、批難スベ
キ方法デハナイカ、ソレニ答ヘテ、サウデハナイ、艦艇ノ竣工ニ要スル經費
ハ大正五年度ヨリ大正八年度ニ至ルマデ悉ク計上シテアレバナリ、鐵道資金
二千萬圓ハ一般歲入ヨリノ借入ヲ廢シテ公債ニ依ラシメ、減債基金ノ還元ヲ
ナサバ如何、答國債整理基金二千萬圓ノ增額ハ鐵道ノ資金ヲ公債ニ依ルコ
トヲ前提トス、而シテ經濟社會ノ狀態ニシテ鐵道公債ノ募集ヲ許スモノトセ
バ大ニ希望スルコトデアルト云フ答デアリマス、尙ホ答ガ續イテ居リマス、
然ルニ旣ニ七千萬圓ノ公債ヲ募集セリ、更ニ近ク二千萬圓ヲ募集スルハ經濟
界ニ惡影響ナカラズヤヲ慮ル、是ニハ熟考ヲ要スルモノデアル、加之現下ノ
變狀ヲ呈セル經濟狀態ニアッテハ鐵道公債ノ募集ハ早計ト考ヘル、國債整理
基金ノ增加ヲナセバ之ニ依ッテ償還スベキ一般會計ノ負擔スベキ英貨公債ノ
償還ニ充テザルベカラズ、斯ノ如キハ佛貨公債ノ償還ニ比シテ甚シク不利益
デアル、英貨公債償還年額ハ經驗上三千萬圓內外トス、五千萬圓ノ償還ヲナ
スガ爲ニハ不利ナル抽籤償還ニ依ラネバナラヌ、之ニ反シテ一億法ノ佛貨公
債ヲ償還スル方ガ比較的有利デアル、是レ政府ガ大正五年度ノ豫算案ニ於テ
鐵道資金ヲ一般會計ノ借入ニ仰ギ、內債ヲ募集シテ佛貨公債ノ償還ヲ計ル所
以デアル、是ガ財政ニ關スル質問竝ニ答辯デゴザイマス、次ニハ外交ニ付テ
ノ質問答辯モ隨分ゴザイマシタガ、此質問ノ重モナルモノハ旣ニ本議場ニ於
テ議員ト政府トノ間ニ問答ガゴザイマシテ、諸君モ御聽ニナッテ居リマスコ
トデモアリマスシ、又其他ノ細カイコトニ付キマシテハ委員會ニ於キマシテ
モ、之ヲ祕密會ト致シテ說明ヲ求メマシタコトガゴザイマス、併シ是ハ唯今
此處デ列ネテ御報告ヲ致シマスコトハ却ッテ諸君ノ御分リモ如何カト存ジマ
ス、又祕密會ノコトハ此處デ申上ゲル譯ニモ參リマセヌカラ外交ニ關スル
コトハ省キマセウト思ヒマス、特ニ御尋デモゴザイマスレバ、其事每ニ付テ
御答ヲ致シ得ルコトハ御答ヲ致ス方ガ宜カラウト存ジマス、次ニ軍事ニ關ス
ル質問、是モ種々ゴザイマシタガ、其主要ナルモノハ矢張リ八八艦隊ト八四
艦隊トノ比較、又其計畫ヲ遂行セムトスルニ必要ナル財源ハ如何、ト申スヤ
ウナルコトガ一番ノ問題デゴザイマシタ、又造船ニ付テモ其材料ノ價格等ニ
付テハ時局ノ推移ニ付テ將來非常ナル變動ガ起ルデアラウガ、ソレニ付テ政
府ハドウ云フ考ヲ有ッテ居ラルルカト云フ質問デアル、ソレニ付テ政府ノ答辯
ガゴザイマシタノデアリマス、先ヅ軍事ニ關シマシテハ極ク重モナル質問ハ
唯今申述ベマシタ位ノモノト考ヘマス、或ハ多少唯今記憶ニ漏レテ居リマシ
タコトガゴザイマスカモ知レマセヌガ、ソレハ御質問ニ應ジテ御答ヲ致シタ
方ガ宜カラウト存ジマス、其次ニハ其他ノ質問ト云フノデゴザイマス、是尼,
モ色〓ゴザイマシタガ、其重モナルモノハ航空學ノ講座ヲ帝國大學ニ設クル
爲ニ必要ナル經費ヲ要求セザルハ如何ナル譯デアルカ、答ニ右ハ必要ナル施
設ト認ムルガ財政ノ都合上豫算ニ計上シナカッタノデアル、併ナガラ政府ハ
段々考慮ノ結果、航空學講座設置ノ爲ニ必要ナル經費ヲ大正五年度ノ追加豫
算ニ計上シテ議會ヘ提出スル積リデアルト次ニ〓育ニ關スル質問、大正二
年三月貴族院ハ政府ニ建議シテ有力ナル〓育調査機關ヲ設ケテ〓育ノ主義方
針ト其制度等ヲ調査セシメ國家百年ノ大計ヲ定メムコトヲ要求シタリ、是ガ
調査機關タル〓育調査會ノ決議ハ屢〓動搖矛盾シ、又同一內閣ニ於テモ文部
大臣ノ更迭每ニ學制ニ關スル方針ノ異ナレルハ如何、其答ニ、〓育調査會ノ
決議ハ前後必シモ矛盾セズ、又文部大臣ノ學制上ノ意見ハ成ルベク〓育調査
會ノ決議ヲ尊重スルノ趣旨ニ出デタリト雖モ多少相違スルコトナシトセズ、
是レ文部大臣ノ更迭ナキ場合ニ於テモサウ云フヤウナコトハアルト云フ答デ
ゴザイマシタ、國定〓科書編纂ノ方法ヲ廢スベシトノ意見ヲ有セラルルヤ否
ヤト云フ問ニ對シテ、現在ノ編纂方法ヲ廢止スル考ハナイ、併ナガラ國定〓
科書ノ弊ハ〓科書ヲ單調ニ陷ラシムル虞ガアル、依ッテ現在ノ制度ノ下ニ多
少ノ改良ヲ加ヘムトスル考デアルト、鐵道ノ軌制ニ關スル質問、明治四十四年
頃ニ貴族院ノ豫算委員會ニ於テ軌制ニ關シテ希望シタルコトガアル、政府ノ
意向ハ如何ニ決定ヲナシタルヤト云フ問デアリマス、其答ニ未ダ廣軌制ヲ實
行スル時期ニ達セズト認ムル、而シテ是ガ實行如何ニ付テハ目下案ヲ具シテ
廟議ノ決定ヲ待チツツアル場合デアルト云フコトデアリマシタ、然ラバ軌制
ニ關スル方針及是ガ廟議ノ決定時期ハイツ頃デアラウカ、其答ニ廣軌制ヲ必
要ト認ムト雖モ財政ノ關係上十分ニ之ヲ實施スルコトヲ得ズ、依ッテ財政ノ
現狀ニ鑑ミ先ヅ東京下關間ニ著手シ、漸次他ニ及バムトスル案ヲ目下大藏省
ト協議中ナリ、而シテ本會期中ニ是ガ案ヲ提出セムト希望イタシテ居ルノデ
アル、是ハ大隈總理大臣ノ答ト玆ニ記シテ居リマスデゴザイマス、官業整理
ニ關スル調査ノ結果ハドウデアル、調査會ハ成ルベク民業ニ移スノ方針ヲ執ツ
テ居ル、是ノ調査ハ旣ニ進捗セルモ歐洲戰亂ノ影響ヲ受ケテ未ダ實施ニ至ラ
ヌノデアル、先ヅ質問ノ重モナルモノハ唯今申述べマシタ位ノ所デアルト記
憶イタシテ居リマス、其質問ガ終リマシテカラ、各案ヲ各分科ニ付託ヲ致シ
マシタノデゴザイマス、而シテ分科會ハ去ル五日ヲ以テ委員長ノ手許マデ審
査ノ結果ヲ報告ニ相成リマシタ、去ル七日竝ニ八日ノ兩日ニ委員總會ヲ開キ
マシテ、各主査ノ報告ヲ聽取イタシテ、尙ホ審議ノ結果各案ヲ議了イタシマ
シタ次第デアリマス、主査ノ報告ハ中〓長クゴザリマシテ、速記錄ヲ御覽相成
リマスレバ能ク御分リニナリマスルコトデアリマスルガ、唯今報告ヲ致シマ
スルニ際シマシテ其極ク必要ト感ジマスル所ノ部分ヲ朗讀ヲ致シタイト考ヘ
マス、第一分科主査ノ報告ノ中少シ朗讀ヲ致シマス、「五日ノ日ニ愈〓討論採決
ヲスルト云フ場合ニナリマシタ、此場合ニ於テ大藏大臣ニ對シテ質問ガ起ッタ
ノデアリマス、ソレハ昨年ノ臨時議會ニ於テ國債整理基金ヲ二千萬圓減ジ
テ、是ヲ鐵道ノ財源ニ貸渡スト云フコトニ付テハ貴族院ニ於テ段々議論ガア
リマシタ、時ノ大藏大臣若槻君カラシテ他日經濟事情ガ公債ヲ募リ得ル場合
ニナッタナラバ、成ルベク之ヲ元ニ返スヤウニ致シマセウト云フコトヲ言明セ
ラレマシテ、貴族院ハ其言責ヲ諒トシテ昨年ノ財政經畫ヲ協賛イタシタノデ
アリマス、然ルニ五年度ノ總豫算ヲ見マスト云フト、ソレガサウナッテ居ラヌ
ガ爲ニ、先日本議場デモ議論ガアリ段々意見ノ交換モ起ッタノデアル、デ我〓
ハ此貴族院ノ院議ト云ヒ大藏大臣ノ言責ニ向ッテハ、政府ハ之ニ付テ相當ノ
遂行ヲ努メラレルダラウト思ッタ所ガ、サウナッテ居ラヌ、此點ニ付テ政府ハ如
何ナル措置ヲ執ラルル所ノ御意見デアルカ、其御意見ヲ承ッテ更ニ考慮スル
積リデアルト云フ趣意デ御尋ネガアリマシタ、ソレニ對シテ武富大藏大臣ハ
昨年ノ特別議會ニ於テ前大藏大臣ヨリ說明セラレタコトハ今日ノ當局者モ責
任ヲ持ッテ居リマス、殊ニ貴族院ノ御意見ハ勿論尊重ヲ致シテ考慮ヲシタノ
デアリマシタガ、此鐵道資金ノ調達ニ付テハ現時ノ經濟狀態ニ鑑ミ、又豫算
等ノ進行モ今日ニ至ッテ居ル譯デアリマスルカラ、此際ニ之ヲ解決スルト云フ
コトハ甚ダ困難デアリマスルガ、貴族院ノ御意見ノアル所モ十分ニ承知ヲ致
シテ居リマスルシ、一方ニハ其後經濟事情モ愼重ニ熟慮ヲ致シマシテ、政府
ハ不日國債整理基金特別會計ノ豫算ニ於テ二千萬圓ノ公債ヲ募集シテ外債償
還ヲスルト云フ案ヲ提出スル積リデアリマスル、又之ヲ實行スル上ニ於テ國
債整理基金法第五條ノ規定ニ少シク除外例ヲ設ケヌト、之ヲ實行スルニ妨ゲ
ニナル虞レモアリマスルカラ、其除外例、卽チ外債ヲ整理償還スル爲ニ政府
ハ必要アリト認ムル時ハ國債整理基金法第五條ノ規定ニ依ラズ國債ヲ發行ス
ルコトヲ得、ト云フヤウナ意味ノ法律案ヲ此追加豫算ト同時ニ提出スル積リ
デアリマス、卽チ此時機ヲ利用シテ、豫テ貴族院ノ御意見タル國債償還ニ力
ヲ盡スト云フコトノ御趣意ヲ徹底イタシタイ考デアリマス、斯ウ云フ大藏大
臣カラ言明ヲセラレマシテ、此事ハ無論內閣ヲ代表シテ申スノデアル、又政府
ハ衆議院ヲ通過セシメルニ付テ最善ノ努力ヲ致シマスル、斯ウ云フコトマデ
問ニ對シテ言ハレタノデゴザイマス、此大藏大臣ノ言明ニ對シマシテ、委員
カラ段々又質問應答モゴザイマシテ、其末愈~討論ニ入ルト云フコトニナリマ
シタ、ソレニ對シテ或ル一員ヨリ修正案ガ起リマシタ、ソレハ歲出臨時部大藏
省所管第七款帝國鐵道特別會計貸付金二千萬圓、此款ヲ削除スルト云フ說デ
アリマス、卽チ一般會計ヨリ鐵道會計ヘ貸付ケルコトヲ廢メルト云フ說デア
リマス、而シテ其削ッタ所ノ二千萬圓ハ大藏省ノ歲出ノ部ニアリマスル所ノ
國債整理基金、卽チ公債償還基金ノ方ニ編入スルコトヲ政府デナサレ、而シ
テ鐵道ノ財源二千萬圓ヲ削除シタ其財源ハ預金部其他ニ於テ借入ナリ何ナ
リ相當ノ處置ヲシタナラバ、此鐵道財源ハ得ラレルデアラウカラ、斯ウ云
フ意味ヲ以テ政府ハ相當ノ處置ヲナサレ、斯ウ云フ趣意ノ下ニ發案セラレ
タノデアリマス、之ニ贊成者ガアリマシテ議題トナリマシタ、而シテ又他
ノ一員ヨリ發議ガアリマシタ、ソレハ原案ヲ贊成スルノデアル、去ナガラ
其本意ハ飽マデ國債整理基金ヲ元ノ通リニ戾スト云フ意見カラ生ジテ居ルノ
デアルガ、此事ニ付テハ色〓議論ヲ重ネタ末、政府モ政治道德上御反省ガアッ
タト見エテ、玆ニ全部デハナイケレドモ、希望ノ一部デアルケレドモ、旣
追加豫算ヲ以テ國債整理基金二千萬圓ヲ增シテ、新ニ求メテ、而シテ之ヲ以
テ國債償還ニ充テルト云フコトヲ言明セラレタノデアルカラ、我〓ノ希望ノ
半バシカ達セヌガ、併ナガラ此希望ガ全部達スルト云フコトハ卽チ其道行ノ
一部ト見ルガ故ニ、玆ニ一ノ希望ヲ付シテ原案ヲ贊成シタイ、其希望ノ趣意
ハ鐵道經營ニ付テハ財政ノ許ス限リ一般會計ヨリノ借入ニ依ラズシテ他ニ適
當ナ計畫ヲ立テル事、斯ウ云フ希望ヲ附帶ノ決議ト致シテ、卽チ貴族院ノ全
部ノ希望ヲ他日ニ實行セラレタイト云フ所ノ希望ヲ懷イテ、此原案ヲ贊成ス
ルノデアルト云フ發論デゴザイマシタ、之ニモ贊成ガゴザイマシタ、依タテ採
決ヲ致シマシタガ、前ニ申シマシタ所ノ大藏省所管第七款ノ鐵道會計貸付金
二千萬圓ヲ削除スルト云フ修正說ハ少數デ消滅ニナリマシテ、而シテ他ノ第
二ノ希望トシテ決議案ヲ提出セラレタ案ハ大多數ヲ以テ可決イタシマシタ、
其結果トシテ總豫算ノ歲入及其他一分科ニ屬スル所ノ大藏省所管及追加豫算
全部ト云フモノハ總テ原案ニ決シタノデゴザイマス、而シテ此希望的附帶決
議ハ豫算總會ニ於テモ矢張リ總會ノ希望トシテ決議アラムト云フコトノ希望
ヲ表セラレタ次第デアリマス、此段御報告申上ゲマス」、是ガ第一分科主査ノ
報告ノ終リノ所デアリマス、次ニ第三分科主査ヨリノ報〓ノ極ク短イ部分ヲ
朗讀イタスコトヲ御許シヲ願ヒマス「最後ニ本分科會ニ於キマシテハ希望ノ
決議ヲ致シマシタ、之ニ付テ是ヨリ申上ゲマス、此希望決議ハ極メテ重大ナ事
項ニ關スルコトト思ヒマス故ニ、是ハ少シ時ヲ費シマスケレドモ、其意ヲ諒
トシテ御聽取下サラムコトヲ希望シテ置キマス、決議文ハ斯樣ナモノデアリ
マス」「貴族院ハ大正二年三月〓育調査機關ノ設置ニ關スル建議ヲ提出シ、
以テ政府カ特ニ有力ナル〓育調査機關ヲ設ケテ〓育ノ主義方針ト其ノ制度ト
ヲ調査セシメ百年ノ大計ヲ定メンコトヲ要求シタリ、今ヤ歐洲大戰ノ〓訓ハ
我〓育學制上ノ懸案ノ解決ヲ促スコト益〓急切ナルモノアリ、然ルニ目下政
府ノ施設スル所ヲ觀ルニ未タ本院ヲシテ滿足セシムルコトヲ得サルノ憾ア
リ、就テハ政府ハ右建議ノ旨趣ニ副フヘキ周到精確ナル調査ヲ遂ケシメ、以
テ前述ノ目的ヲ達スルコトニ努メラレムコトヲ望ム」ソレカラ中ヲ略シマシ
テ「大正二年六月ニ〓育調査會ナルモノヲ組織セラレマシテ、ソレ〓〓任命
アリマシテ、以來二箇年半有餘ヲ經過シテ居ル次第デアリマス、然レドモ未
ダ右朗讀イタシタル建議ノ趣旨ニ適フガ如キ經過ヲ見ルコトガ出來ヌノハ甚
ダ遺憾トスル所デアリマス」又中略イタシマシテ「故ニ特ニ此重大ナル事件ニ
關シテハ日夜苦心焦慮、以テ之ガ目的ヲ達スルニ汲々シテ、一日モ早ク其結
果ヲ見ルヤウニアリタイト云フ趣意ニ外ナラヌノデアリマス、決シテ之ヲ新
タニ求メルノデハナイノデアリマス、旣ニ其方針ヲ御立テニナッテ居ルニ付
テハ之ヲ一日モ早ク懸案ヲ解決スル如クナルヤウニ致シタイト云フ希望ニ外
ナラヌ譯デアリマス、右ノ趣旨ヲ以テ本分科會ニ於テハ全會一致ヲ以テ可決
シタ次第デゴザイマス」云々、唯今朗讀イタシマシタノガ第一分科主査竝ニ
第三分科主査ノ報告中ノ極ク肝要ナル部分デゴザイマス、各主査ノ報告ガ終
リマシテカラ、討論ニ移リマシテゴザリマスルガ、玆ニ修正說ガ出マシタノ
デアリマス、修正說ハ卽チ總豫算ノ臨時歲出部ノ大藏省所管第七款ノ帝國鐵
道特別會計貸付金二千萬圓ヲ削ルト云フ修正デゴザイマス、此修正ノ理由ニ
付キマシテハ唯今報告イタシタ中ニモ御聽取ニナッテ居リマスコトデモアリ
そう、又旣ニ此問題ニ付キマシテハ當議會ノ會期ノ初メ以來諸君ノ旣ニ御〓
究ニ相成リ居リマスルコトデモアリマス、玆ニ詳シク申上ゲズトモ其趣意ノ
如何ナル所ニアルカト云フコトハ諸君ノ旣ニ御了解ニ相成リ居リマスルコト
デアリマスカラ、之ニ付キマシテ修正意見發議者ハ隨分長ク理由ヲ陳述サレ
テアリマスルガ、是ハ省キマシテ宜カラウト存ジマス、唯〓申述ベマシタル修
正意見ニ付キマシテ原案贊成ノ意見ヲ一委員ヨリ明瞭ニ發表サレマシテゴザ
リマス、其要領ニ付キマシテ極ク簡略ニ申上ゲテ見マセウト存ジマス、固ヨ
リ其大意ダケ採リマシテ申述ベマスルコトデアリマスカラ、其委員ノ用ヒラ
レマシタ所ノ文字等ニ少シモ抱泥イタサズニ申上ゲマスル積リデアリマス、
此一委員ノ原案贊成說ハ非還元ヲ合理トシテ贊成スルノデハナイノデアル、
矢張リ自分モ還元說ヲ唱ヘル一人デアルノデアル、其點ニ付テハ修正論者ト
其歸スル所ハ一デアル、唯其目的ニ達スル方法ニ於テ異ナル所ガアルニ過ギ
ナイノデアル、此問題タルヤ、其性質ニ於テ純然タル財政問題デナケレバナ
ラヌ、卽チ財政問題ヲ以テ終始セネバナラヌ問題デアルト確ク信ジテ居ッタニ
拘ラズ、今日ノ有樣ニナッテ見ルト旣ニ純粹ノ財政問題タル所ノ性質ヲ逸シ
テ、稍〓政治問題ニ轉化シ來リタルノ傾ガアル、是ハ甚ダ意外千萬ト申シテ
宜イ譯デアル、併ナガラ事玆ニ至ッテ見レバ、自ラ之ニ應ジテ態度ヲ決メナケ
レバナラナイノデアル、修正論者ハ唯豫算ノ內容ノミニ眼ヲ注イデ、深ク周
圍ノ事情ニ付テハ注意ヲ拂フ所ガ或ハ闕ケル所ガアリハセヌカト思フノデア
ル、ソレデアルカラシテ此豫算ヲ修正ヲ致シテモ、此豫算ノ通過云々ト云フ
コトニ付テハ深ク心配サレナイヤウナルヤウニ考ヘラレルノデアル、併ナガ
ラ斯ノ如キ問題トテモ、一旦政治問題タルノ色彩ヲ帶ブルニ至ッテハ、單純ナ
ル理論ヲ以テ之ニ處スルトキニハ豫算成立ノ上ニ於テ危險ヲ冒サネバナラヌ
ト云フコトヲ覺知シナケレバナラヌノデアル、豫算ニシテ若シ不成立ニ終ル
コトニ相成ッタナラバ、政界ニ及ボス所ノ影響ハ決シテ鮮少デハナイノミナラ
ズ、卽チ豫算不成立トシテ財政ノ受クル所ノ影響モ亦大ナルコトデアル、サ
ウ云フコトニナッテ見レバ、修正論者ハ單ニ二千萬圓ヲ削除シテ、修正ヲ行ハ
ムト欲シテ、何モ出來ナイコトニナッテシマフノデアル、然ルニ政府ハ貴族院
ノ希望ノアル所ヲ熟察サレテ旣ニ減債追加豫算ヲ提出スルノ意アルヲ示サレ
タ、ソレニ依ッテ我ガ目的ノ半バヲ達シテ、未ダ半バヲ達セザルト云フヤウナ
有樣デアル、ソレハ甚ダ遺憾トスル所デアルケレドモ、此場合ニ於テハ强ヒ
テ意義ノ不徹底ヲ忍ンデ、豫算ノ通過ヲ計ッテ、所謂角ヲ矯メテ牛ヲ殺スノ過
ヲ避ケネバナラナイト考ヘルノデアル、是卽チ一步ヲ今日ニ進メテ、他日目的
地ニ達スルヲ期スル譯合デアル、又海軍艦艇補充費ノコトノ如キハ委員ノ質
問ニ對シテ政府ノ說明スル所ハ甚ダ明瞭ヲ闕ク所ガアッテ、容易ク首肯スルコ
トノ出來ナイ點モ無キニシモアラズデアル、政府ハ宜シク將來ノ施設ニ對シ、
精密ノ調査ヲナシテ、適當ノ計畫ヲ立テテ、之ヲ議會ニ提出サレムコトヲ切
望シテ止マヌ次第デアル、又鐵道ノ軌制ニ關スル方針ニ至ッテハ今囘ノ議會ニ
於テマダ政府ノ方針ヲ明示スルニ至ラナイノハ甚ダ遺憾トスル所デアル、國
家交通機關ノ最モ重要ナル鐵道ノ軌制ヲ定ムルコトハ一日モ之ヲ忽諸ニスル
コトヲ許サヌ譯デアルカラ、政府ハ大ニ力ヲ用ヒテ此解決ヲ計ラレルコトヲ
切望イタス次第デアル、最後ニ鐵道ノ經營ニ付テハ其資源ニ關シテ本會期中
ニ主要ノ問題トシテ我〓ハ〓究イタシタノデアル、政府ハ宜シク貴族院ノ意
見ノアル所ヲ十分ニ察セラレテ、誠意誠心愼重ノ措置ヲ執ラレムコトヲ望ム
次第デアル、依ッテ三箇ノ希望ヲ揭ゲテ、豫算ト共ニ之ヲ可決セムトスルノ
デアル、三箇ノ希望トハ左ノ通リデアル、「一、海軍補充ニ關スル將來ノ施設
ニ付テハ更ニ計畫ヲ立テテ提案セラルヘキ事、一、鐵道ニ付テハ軌道ニ關ス
ル方針ヲ決定シ、適當ノ計畫ヲ立ツル事、一、鐵道ノ經營ニ付テハ財政ノ許
ス限リ一般會計ヨリノ借入ニ依ラスシテ、他ニ適當ノ計畫ヲ立ツル事、」是ガ
卽チ三箇ノ希望デアル此希望ヲ以テ、卽チ此希望ト共ニ此豫算案ノ全部ヲ衆
議院送付ノ儘可決ヲ致シタイ、是ガ卽チ可決論ノ主張イタシタ所デアリマス、
可決論者ノ主張イタシタ所デアリマス、先キニ述ベマシタル所ノ修正說竝
ニ原案贊成說共ニ贊成ノ委員モアリマシタニ付キマシテ、ソレデ兩方ノ
決ヲ採リマスコトニ相成リマシタ、先ヅ修正說ヨリ採決ニ及ビマシタ所
ガ、是ハ少數デゴザイマシテ、成立チマセヌデゴザイマシタ、次ニ唯今讀上
ゲマシタル所ノ希望ヲ帶ベル所ノ原案ニ付キマシテ採決ヲ致シマシタ所ガ、
是ハ大多數ヲ以チマシテ可決イタシマシタ、以上申述ベマシタル所ガ卽チ豫
算委員會ノ經過竝ニ結果デゴザリマス、唯今報告イタシマシタヤウニ申シマ
スト、修正說ガ大ニ原案贊成ト違ッテ居リマスヤウニモ見方ニ依リマシテハ
解セラレマスガ、本員、委員長ト致シマシテ兩者ノ論ノ岐ルル所ヲ能ク考ヘ
テ見マスト、少數者タル修正論者モ、大多數ノ原案贊成者モ、其目指ス所ノ
目的地ハ變ッテ居リマセヌ、之ヲ旅行ニ喩ヘマスレバ、一ハ東京ヲ發シテ東
海道ニ依ヶテ京都ニ行カムトシ、一ハ中仙道ニ依ッテ行カムトスル位ノ違ヒ
デアル、ソンナコトデアリマスカラ爭ハ爭ノ如クニ見エマスガ、其爭ヤ果シ
テ爭ニアラズ、唯道路ノ選ビ方ガ違ッタト云フ位ノコトデアル、加之原案贊
成者ノ提出シタル希望條件ノ如キハ修正論者ニ於テモソレハ全然同意デア
ル、併ナガラ此希望條件ト云フモノト豫算案ト云フモノトハ附イテ離レナイ
モノデアルカラ、修正論者ハ二千萬圓ヲ削除スルト云フ說ヲ主張スル以上ニ
一、如何ニ希望條件ニハ同意デアルケレドモ、之ニ贊成セムト欲スレバ矢張
リ原案ニ贊成スルコトニナル、甚ダ心苦シイコトデアルガ、サウ云フ理由ガ
アルガ爲ニ起タナイノデアル、希望モ、條件ノ三箇條ニ付テハ全然贊成デア
ルコトハ修正論者モ申サレタ位デ、其爭ヤ君子トデモ申シマセウカ、爭ニシ
テ爭ニアラズト結論ヲ致シテ決シテ過デナイト存ジマス、先ヅ報告ハ是位デ
了リマシテ又細カイ事ニ付キマシテ何カ御尋デモゴザイマスレバ、委員長ト
シテ記憶シテ居リマスコトハ申上ゲマセウシ、尙ホ細カイ事デ委員長ノ御答
ノ出來マセヌコトハ各分科ノ主査ノ方カラ御答ヲ致スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=7
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008・馬屋原彰
○馬屋原彰君 文部大臣ニ質問シテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=9
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010・馬屋原彰
○馬屋原彰君 チヨット此間ニ文部大臣ニ美術政務ノ方針ニ付テ二三點御意
嚮ノ在ル所ヲ伺ヒタイト思ヒマス、第一ハ東京美術學校日本畫ノ〓育ニ關ス
ル件デアリマス、卽チ同美術學校日本畫ノ課目ニ於キマシテ、解剖學遠近法
又ハ用器畫法等ノ如キ、西洋畫科ノ課目ト同一ノ課目ヲ置キ、和洋混合卽チ
日本畫ト西洋畫ト混合シタ雜駁ノ〓育ヲ施シテ居ルヤウニ認メマス、是ハ果
シテ日本畫ノ〓育ノ上ニ如何ナル必要ガアルノデアリマセウカ、本員ノ見ル
所ニ依リマスレバ、斯ル工藝的若クハ器械的ノ技術ヲ混入シテ、我ガ東洋ノ
筆墨畫ノ特技特長ヲ衰〓セシメ、純日本畫ノ專門家ヲ養成スル上ニ於キマシ
テハ、深ク害アッテ益ナキモノト思フノデアリマス、此點ニ付キマシテハ當局
者ノ御考ハ如何デアリマセウカ、ドウカ明瞭ナル御答辯ヲ願ヒタイ
〔國務大臣高田早苗君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=10
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011・高田早苗
○國務大臣(高田早苗君) 只今ノ馬屋原君ノ御尋ハ東京美術學校ノ日本畫科
ニ西洋畫ノ畫法ヲ〓ヘルト云フコトニ付テデアリマス、大分專門的ノ御尋デ
アリマスカラ、或ハ御答ガ要領ヲ得ルカ得ナイカヲ危ミマスガ、極ク大體ノコ
トヲ一通リ御答ヲシヤウト思ヒマス、無論日本畫科ニ於テハ專ラ日本畫ヲ〓
ヘルノデアリマスケレドモ、參考トシテ西洋ノ畫法モ交ヘ〓ヘル譯デアリマ
シテ、是ガ日本畫ヲ學修スル上ニ於テ妨ニナラウトハ考ヘテ居リマセヌ、御說
ニ依リマスト云フト、日本畫ノ特長ヲ消滅スル、西洋ノ畫ハ工藝的器械的デ
アル、斯ウ云フ御話ノヤウニ承リマシタガ、之ガ爲ニ日本畫ノ特長ヲ消滅セ
シムルト云フ憂モナシ、又唯參考ニ萬一西洋ノ畫法ニ長所ガアレバ、ソレヲ
収入レルト云フコトノ便利ニモナルト云フ、唯參考トシテ〓ヘルニ止マルノ
デアリマスカラ、御心配ノ如キコトハナカラウト思ッテ居リマス、又申上ゲ
ルマデモナク、總テ此西洋畫ヲ工藝的器械的ト一〓ニ申ス譯ニモ參リマセヌ
ト思ヒマス、無論西洋畫ト日本畫トハ其本領ヲ異ニシ、其特長ヲ異ニシ、又
日本畫ハ日本畫ノ本領ヲ沒却セシメナイヤウニシテ行カネバナリマセヌコト
ハ勿論デアリマス、併ナガラ參考トシテ多少西洋ノ畫法ヲ〓ヘマスト云フコ
トガ御心配ノ如キ結果ヲ生ズルモノデハアルマイト、斯ウ信ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=11
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012・馬屋原彰
○馬屋原彰君 唯今縷々御答辯ガアリマシタガ、本員ナドノ考ヘル所トハ大
分隔ッテ居ルヤウデアリマス、併ナガラ之ニ對シマシテハ意見ニナリマスカ
ラ、此點ハ此儘デ措キマス、其次ハ文部省ノ美術展覽會ニ於ケル出品ノ審査
ニ關スル件デアリマス、是ハ本員ノ見ル所ニ依リマスレバ、近來其審査ノ方
針ハ繪畫其モノノ製作ハ雅俗ヲ問ハズ、目新シク形ノ變ッタモノヲ奬勵スル
ト云フ風ガ事實ノ上ニ現ハレテ居ルノデアリマス、從ッテ文展ノ陳列畫ニハ
諸君御承知ノ通リ往々世間ノ非難ヲ免レ難キモノガアルノデアリマス、是一
畢竟ズルニ從來何等此審査上ノ標準ガナイ、全ク其一定ノ標準ガナイ爲ニ
因ッテ起ル所ノ常弊デアラウト思フノデアリマス、デ東洋畫ニシテモ亦西洋
畫ニシテモ、御承知ノ如ク古今一定セル本義ト云フモノガアルノデアリマス
カラ、其本義ニ基イテ新ニ其審査標準ヲ定メラレルト云フコトハ何等ムヅカ
シイコトハアルマイト考ヘマスルガ、當局ノ御見込ハ如何デゴザイマスカ、
之ヲ承リマス
〔國務大臣高田早苗君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=12
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013・高田早苗
○國務大臣(高田早苗君) 御答ヲ致シマスガ、唯今ノ御質問ハ文部省展覽會
ノ審査ノ方針ニ付キマシテ、兎角目新シキヲ競フヤウナ傾ガアルニ付テハ、
此審査ノ標準ヲ定メタラドウデアルカ、標準ヲ定メルト云フ考ハナイカト、
斯ウ云フ御尋ノヤウニ了解イタシタノデアリマス、此前委員會ニ於テモ御答
イタシマシタ通リニ、文部省展覽會ノ審査ノ方針ハ必シモ目新シキヲ良シト
スルト云フ譯デナシ、去リトテ又舊法ヲ墨守スルト云フコトヲ奬勵スルト云
フ意味デナシ、舊法ヲ學ンデ新意ヲ出スト云フコトガ宜シイト云フ考ニ依ッテ
居リマス譯デアリマス、ソレデ尤モ文部省自ラ審査ヲスル譯ニハ參リマセヌ
カラ、現代ノ畫家ノ中デ最モ技術ニ長ケ、信用アル人〓及其他此方ノ道ニ精
シキ方〓ニ依賴シテ、其評議ニ依ッテ決定スルト云フ仕組ニナッテ居リマス、今
日ノ所、先ヅ此方針ニ依ルヨリ外ニ途ガナイト斯ウ考ヘマス、此繪ノ本義ニ
依ッテ、其本義ニ基イテ標準ヲ文部省自ラ立テル、是ハナカ〓〓ムヅカシイ問
題デアリマシテ、如何ナルモノガ繪デアルカ、如何ナルモノガ繪デナイカ、
繪トハ如何ナルモノカト云フヤウナ問題ニ這入ラヌケレパ分ラヌノデ、容易
ニ標準ヲ求メ、其標準ニ依ッテ審査ヲスルト云フコトハ出來難イコトデハア
ルマイカト竊ニ考ヘテ居ル譯デアリマス、尙ホ併ナガラ折角ノ御注意デアリ
マスカラ、今後十分ニ〓究ヲ致ス積リデアリマスガ、唯今ノ所ハ今御答ヲシ
マシタヤウナ考デ居リマス譯デアリマス
〔男爵目賀田種太郞君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 目賀田君
〔男爵高橋是〓君、馬屋原彰君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 目賀田男爵ト唯今議長ハ呼ビマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=15
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016・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 ソレデハ發言シテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=17
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018・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 本員ハ文部大臣ニ承リタイト存ジマスガ、昨年臨時
議會ニ於キマシテ六月八日ヲ以テ本員等ハ道德及德義ノ制裁ニ關シ一般ニ之
ガ属行アラムコトヲ建議イタシテ居リマス、右ニ對シテ以後ノ政府ノ執ラレ
タル所ノ其成績ハ如何デアリマスカ、簡單ニ御伺ヒ致シタウゴザイマス
〔國務大臣高田早苗君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=18
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019・高田早苗
○國務大臣(高田早苗君) 目賀田男爵ノ御質問ニ御答シマスガ、唯今ノ御話
ノ建議ナルモノハ文部省ノミニ關係シタコトデハ勿論ナイノデアリマシテ、
政府ノ全體ニ亙リマシタコトノヤウニ理解シテ居リマスガ、事文部省ニ關シ
マスコトニ付キマシテハ其建議ノ御趣意ニ基イテ、其後精々注意ヲ致シテ居
リマス譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=19
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020・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 甚ダ恐縮デアリマスルガ、チヨット要領ヲ得マセヌ
ガ、六月八日ノ建議ハ廣イコトデアリマス、卽チ道德ノ制裁ヲ行ハシムルト
云フコトデアリマス、唯今ノ文部大臣ノ述ベラレル如ク文部省バカリデハゴ
ザイマセヌ、去リナガラ當時ノ此建議ハ國民一般ノ道德及風儀ヲ鞏ウセネバ
ナラヌト云フ譯デ、國民ノ道德ヲ鞏ウスルニ依ッテノ意味ナルコトハ申スマデ
モゴザイマセヌ、故ニ唯精々御注意ト云フ御說明デハ何分了解イタシ兼ネマ
ス、兎ニモ角ニモ昨年六月八日ニ於テ貴族院ハ一般ノ道德ト其制裁ヲ行ハシ
ムルガ爲ニ建議ノ當時總理大臣モ御出席ノ上御答ガアリ、委員會ニ於テハ內
務大臣モ答ヘラレタ、司法大臣モ答ヘラレタ、文部大臣モ答ヘラレタコトデ
アリマス、ソレニ付キマシテハ前日豫算總會ニ於テ本員ハ總理大臣ニ伺ヒマ
シテゴザイマス、其時總理大臣ノ御返事ハ一向見當違ヒノコトデアリマシ
テ、本員ノ質問ニ答ヘラレナカッタノデアリマス、ソレ故ニ國民道德ノコトニ
關シテハ共ニ文部大臣ニ責任アリトシテ本員ハ文部大臣ニ御尋スルノデアリ
やじ、唯今ノ精々注意ヲスルト云フコトデハ足ラヌヤウニ存ジマス、今少々
御說明アラムコトヲ望ミマス
〔國務大臣高田早苗君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=20
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021・高田早苗
○國務大臣(高田早苗君) 目賀田男爵ニ御答ヲ致シマスガ、國民道德ノ振興
ト云フコトニ關シマシテハ無論此貴族院ノ建議ガナクトモ、平生文部當局ニ
於テ大ニ意ヲ致サナケレバナラヌコトデアリマス、況ヤサウ云フ御注意ガア
リマシタ譯デアリマスルカラ、爾來機會ガアル每ニ其方法ヲ〓究シ又之ガ實
施ヲ圖ッテ居ルノデアリマス、其以後各學校ノ管理者、校長ノ會議ト云フガ如
キモノモ許多ゴザイマシテ、其度每ニ色ミノ諮問モ致セバ又注意モ致スヤウ
ナ次第デ、又或ル場合ニハ其機會ニ依ッテ一層其方法ヲ講ジマス譯デ、御大典
ニ際シマシテハ其心得ヲ示ス爲ニ印刷物ヲ作リマシテ之ヲ一般ニ頒チマスト
カ、紀元節ニ臨ミマシテハ憲法ニ關スルコトニ付キマシテ一層、是亦印刷物
ヲ拵ヘマシテ、各學校ニ配付シテ注意ヲ促シマシテ、御建議ノ御趣意ニ付テ
ハ爾來怠ラズ機會アル每ニ、或ハ注意ヲ致シ或ハ諮問等ヲ致シマシテ、御建
議ノ趣意ニ副フコトヲ努メテ居リマス次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=21
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022・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郎君 度ミデ誠ニ恐縮ニ存ジマスルガ、何分ニモ唯今ノ御
答ハソレハ尋常一樣ノコトデゴザイマシテ、左樣ナ譯デハナイト存ジマス蓋.
シ文部大臣ハ御更任ニナリマシテ六月八日ノ建議ハ御承知ノナイヤウニモ思
ハレマス、併シサウ云フコトヲ承知スルト否トハ此議場ノ問題デナイト考
ヘマス、兎ニモ角ニモ貴族院ガ建議ヲ致シマシタ以上ハ政府トシテ大臣ノ更
迭如何ニ依ッテ知ルト否トノ問題ハ生ゼヌコトト存ジマス、唯今ノ御答ハ唯
有リフレタルコトデアリマス、サウ云フ趣意デハゴザイマセヌ、當時ノ建議
ハ政府當局自ラ道德ヲ怠リ、隨ッテ國民道德ノ(聽取シ難シ)政府自ラ戒メナ
ケレバナラヌ、國民ヲ戒ムルト同時ニ····國民ニ向ッテ戒飭ヲ加ヘナクテハイ
カヌト云フ意味ヲ籠メテアル、其時ニ本員ハ殊更、總理大臣ニ對シテモ斯ノ
如キ建議ハ總理大臣ヲ始メラレテ皆サン御反對ニナルヤ否ヤト云フコトヲ
伺ッタノデ、敢テ贊成ヲ求メタ譯デハアリマセヌ、御採用ニナラヌナラバ御
採用ニナラヌデ宜イ、御受納ニナルヤ否ヤト云フコトヲ伺ヒマシタ、トコロ
ガ是ハ固ヨリ輔弼ノ責アル者ハ勿論關係アリ、而カモ其時ニ於テハ種々選擧
其他ノコトニ付テ爲シタルコトニ於テハ大ニ謝スルト云フコトヲ述べラレ
久、之ニ對シテモ本員ハ其答辯ノ不都合ナルコトヲ述ベタ次第デアリマス、
唯今高田君ノ述べラレタ如ク尋常一樣ノコトデハゴザイマセヌ、是ニ對シテ
ハ如何デアッタト云フコトヲ承ッタ、然ルニ何ゾヤ昨今ハ〓育ノコトニ付テハ
憲法ノ講習ヲ始メサセテ居ル、以テノ外ノコトデアル、學校ノ生徒ナドニ憲
法ノ講習ナドハ何ノ必要ガアルカ、何カ法學ノ先生ナドヲ賴ンデ憲法ノ講釋
ヲ始メルト云フコトヲ承ッテ居ル、實ハ過日豫算總會ニ於テ私共ノ同僚ヨリ〓
育會ノ調査ニ對シ、又此憲法ノ講習ニ對シテ質問ニナッタ場合ニ於テ、甚ダ要
領ヲ得ヌ義デアリマス、何レノ國ニ於テモ學校ノ生徒ガ憲法ノ〓究ナドヲ致
ス國ガアリマスカ、是等ハ又或ル程度ニ於テ〓究スベキモノト存ジマスガ、
學校ノ生徒ニ決シテ政治家ノ〓育ハ要リマセヌ、斯ウ云フヤウナ次第デア
ル、是ハ唯因ミニ申スノデアリマスガ、元來大正四年六月八日ニ於キマシテノ
建議ハ唯今高田文部大臣ノ述ベラレル如キコトデハゴザイマセヌ、御承知ナ
クバ後刻ニ於テ更ニ之ヲ審究セラレテ本員ニ答辯アラムコトヲ望ミマス、唯
今ハ求メマセヌ、後ニ數刻ヲ隔テタル後ニ審究セラレテ、本員ニ答辯アラム
コトヲ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=22
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023・馬屋原彰
○馬屋原彰君 先刻本員ノ質問ニ對シテ文部大臣カラ御答ガアリマシタガ、
ナカ〓〓其御答辯ニ對シテ此所デ一々私ノ意見ヲ申上ゲマスノハ時間ヲ費シ
マスカラ、先ヅソレハ略シマス、文部大臣ノ述べラレタ古法ヲ學ンデ新意ヲ出
スト云フコトハドウ云フコトカ分ラナイ、古法ヲ學ブト云フノハドウ云フコ
トカ分ラヌ、古法ヲ學ブノハ古人ノ描イタモノヲ寫スノガ古法ヲ學ブノデア
ルカ、ソレハ分ラヌガ、其事ハ今日ハ止メマス、要スルニ文展ノ現狀ハ此儘デ
完全ナモノナリト云フ御見込デアリマスカ、將タ是デハドウモ段々審査ノ結
果ノ上ニ於テ見惡イヤウナモノモアリ、旣ニ世間ノ批難ノアル如ク、風〓ニ
關スルモノガアルコトハ御承知デアリマセウガ、之ヲ其儘ニシテ置クト云フ
御方針デアリマスカ、ドウシテモ改善ノ方針ヲ考ヘナケレバナラヌト云フ御
見込デアリマスカ、其點ヲモウ一應御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス
〔國務大臣高田早苗君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=23
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024・高田早苗
○國務大臣(高田早苗君) 御答ヲ致シマスガ、此文部省展覽會ノ今ノ審査ガ
必シモ完全デアルトハ無論思ッテ居リマセヌ、又改良スベキコトモ多々アリ
マセウシ、直サナケレバナラヌコトモアラウト思ヒマスガ、併ナガラ年ト共
ニ多少成績ガ擧ッテ居ルト斯ウハ考ヘテ居リマス、併ナガラ之ヲ以テ滿足シ
テ居ル次第デハアリマセヌノデ、尙ホ精々注意ヲ致サウト斯樣ニ考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=24
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025・高橋是清
○男爵高橋是〓君 私ハ大藏大臣ニ御尋ヲ致シタイト思ヒマス、第一ニ大
藏大臣ハ歲入ノ豫定ヨリ不足ヲシタ、減收ヲ來タシタ共重モナルモノハ關
稅竝ニ酒稅デアルト云フコトヲ屢〓言ハレマス、ソレガ爲ニ海軍ノ擴張ノ爲
ノ資源モ、時局ノ爲ニ歲入ニ變態ヲ生ジテ居ル爲ニ今日ハ定メル機會デナイ
ト云フコトヲ屢〓言ハレマス、抑〓此內閣ノ成立イタシタル當時、全國ノ實
業家等ヲ集メラレテ、現政府ノ方針ハ出來得ルダケ輸入ヲ防遏シ、內國品ノ
使用ヲ奬勵シ、現ニ宮中ニ於カレテモ輸入ノ葡萄酒等ハ用ヒラレナイ、內地
デ製作·····製造シタル所ノ葡萄酒ヲ用ヒラレルト云フヤウナコトデアリマシ
テ、兎ニ角輸入超過ノ狀態デアルカラ此病ヲ治サナケレバナラヌ、ソレガ爲
ニハ輸入ヲ防遏シテ內國產ヲ奬勵シテ、內國品ヲ用ヒルコトヲ奬勵スルト云
フコトヲ聲明セラレタ、時ニハ又全國ノ實業家ヲ集メラレテ政府ハ其意志ヲ
示サレタ、然ラバ歲入ニ於テ關稅ノ減收ヲ來タスト云フコトハ、當初ヨリ政
府ノ政策ヲ定メラレタル時カラシテ、之ヲ期待サレタルコトト考ヘテ居ッタノ
デアリマス、今日時局ノ爲ニ輸入ガ大ニ減ッテ、其結果トシテ關稅ノ收入ガ減ウ
タト云フコトハ、寧ロ當局者ニ取ッテ御滿足ナルコトト私ハ考ヘテ居ッタノデ
アリマス、然ルニ時局ガ終レバ又收入モ常態ニ復スルト云フコトヲ屢〓御答
辯ニナル間ニ言ハレタ、是ニ於テ迷ハザルヲ得ヌノデアリマシテ、歲入ノ復
スルト云フコトハ卽チ重モナル減收ガ關稅デアリマスレバ、矢張リ戰爭ガ終
レバ關稅ガ大ニ增スト云フコトヲ望マレルノデアリマセウ、シテ見ルト最初
ノ輸入防遏ト云フ政策ヲ執ラレルト云フコトハ、今日ハ改メラレテ輸入ノ增
加ヲ歡迎セラレルト云フコトニナッタノデアルカ、大ニ是ハ迷フ點デアリマス
カラシテ一應伺ッテ置キタイノデアリマス、ソレカラ第二ニ減債基金ニ關シ
テモ屢〓御答辯ニナリマシタガ、政府ハ此豫算ヲ編製スル時分ニハ、マダ內地
ノ市場ノ有樣ガ斯ノ如ク公債募集ガ出來ルト云フヤウナコトニナラウトハ思
ハナカッタ、又正貨モ激增スルトハ思ハナカッタ、正貨ノ激增ハ昨年九月十月
頃最モ其有樣ヲ呈シタノデアル、ソレ故ニ其前ニ豫算ヲ編製シタノデアッテ、
豫算編製當時ニ於テハ正貨ノ激增ノ影響トシテ、內地ノ金融ガ緩慢ニナッテ、
公債ノ募集ガ出來ルト云フ市場ノ狀況ニナルト云フコトハ思ハナカッタト云
フコトヲ仰ッシヤルヤウニ承知シテ居リマス、然ルニ民間ニ於キマシテハ正貨
ノ激增ト云ヒマスカ、詰リ軍需品等ノ代價ノ大部分ガ這入ルト云フコトハ一
昨年カラシテ、註文ヲ受ケタ時カラシテ、七八月ニ於テ其代價ヲ受取ルコト
ニナルト云フコトハ、民間ニ於テハ分ッテ居ッタ、一昨年ノ暮、陸軍大臣ハ卽
チ一千萬圓ノ剩餘金ヲ使ッテ、サウシテ此註文ヲ受ケタ、註文ヲ受ケル爲ニ
千萬圓ノ支出ハ要ルノダ、斯ウ云フコトヲ議場デ言ハレタ、シテ見レバ其時政
府ニ於テモ是等ノ六七千萬圓ノ品物ハ、七八月頃ニ於テ大部分ハ完成シテ受
渡ニナルト云フコトハ、政府ニ於テモ御承知デアッタラウト思フノデアリマ
ス、然ルニ大藏大臣ニ於テハ恰モ突然、九月十月ニ至ッテ正貨ガ降ッテ來タヤ
ウニ、激增シタヤウニ御話ニナリマスガ是ハ民間デハ前申ス通リ一昨年註文
ヲ受ケタ時カラ、何時頃正貨ガ殖エルト云フコトハ、銀行ナドニ於テモ十分
ニ知ッテ居ッタノデアリマス、ソレヲ大藏大臣ハ、ソレヲ豫メ豫想サレナカッタ
カ、ソレヲ伺ヒタイ、ソレカラ第三ニハ大藏大臣ハ公債ヲ償還スルニ當ッテ····
外國債ヲ償還スルニ當ッテ利〓リト云フコトヲ能ク仰ッシヤル、詰リ四分半ノ
英貨公債ヲ償還スルヨリハ五分ノ佛貨公債ヲ償還シタ方ガ利廻リニ於テ斯ク
斯クノ利益ガアルト云フコトヲ仰ッシヤリマスガ、抑〓公債ノ價格ニ付テ利廻
リヲ算スルノハ貯蓄ヲスル所ノ放資家ガ言フコトデアッテ、債務者ガ其借リタ
金ヲ返ス場合ニ於テ取ル算盤デハナカラウト私ハ考ヘル、大藏大臣ハ佛貨公
債ノ五分利ノモノヲ償還スル爲ニ內地ニ於テ五分以上ノ利ヲ拂ッテ新ニ公債
ヲ募集シテ、サウシテ佛貨公債ヲ返ス方ガ利廻リガ宜イト云フヤウニ仰ッシ
ヤリマスガ、政府ハ金ヲ放資シテ利ヲ圖ルガ如キ餘裕ノアル筈ガナイ、是ハ
貯蓄ヲスル人ガ何ノ株ヲ買ヘバ幾ラノ利ニ廻ルトカ、銀行ニ預ケレバ幾ラノ
利ニ〓ルトカ云フコトハ金ヲ放資スル方ノ側カラ言フ問題デアッテ、債務ヲ辨
濟セムトスル政府トシテ、今日ノ市場ニ於テ新ニ內債ヲ起セバ現ニ五分ノ公
債ガ九十二三圓乃至五圓ト云フノデアリマスカラ、新ニ發行セラルルト云フ
コトニナッタナラバ、必ズソレ以上ノ價格ナレバ發行ガ出來マスガ、尙ホ其
上ニ相當手數料モ出サナケレバナラヌノデアリマスカラ、ドウシテモ新ニ發
行スル所ノ公債ハ必ズ五分以上ノ利ニナルノデアリマス、今日デハ佛貨公債
ニ付テハ政府ハ百圓ノ公債ニ對シテ五圓ノ利ヲ拂ッテ居レバ國家ハソレデ濟
ンデ居ル、然ルニ內債ヲ起シテ五分二厘トカ五分二厘五毛トカ云フ利ヲ拂フ
ナラバデス、是ハ決シテ有利ト云フコトハ出來マセヌ、二分五厘ナリ五厘ナリ
餘計ノモノヲ百圓ニ對シテ利ヲ拂ハナケレバナリマセヌ、現ニ五分拂ッテ濟
ンデ居ルモノヲ償還スル······償還ヲセズニ金持ガ公債ヲ握ッテ利廻リヲ圖ル
ト云フ場合ナラバ、ソレデモ有利ト言ハレマセウガ、新ニ高利ノ內債ヲ起シ
テサウシテ低利ノ外債ヲ返スト云フコトハ、ドウシテモ國庫ノ爲ニナラヌト
私ハ考ヘル、然ルニ大藏大臣ハ屢〓有利ナリト言ハレ、利廻リガ宜イト云フコ
トヲ言ハレマスガ、是ハチト見當違ヒデハアリマセヌカ、又英貨四分半利付ノ
公債ハ今日ハ容易ニ買フコトガ出來ナイト云フ財務官ノ報告デアッテ、精々一
箇年三千萬圓位ガ極度デアルト云フ、其以上パドウシテモ買ハムトスレバ値
ガ高クナッテ政府ノ損ニナルト仰ッシヤルノデアリマスガ、併シ政府ハ償還
期限ガ來マスレバ否デモ應デモ百圓ノモノハ百圓ノ額面デ拂ハナケレバナリ
マセヌ、今日倫敦ニ於テ四分半利付ノ英貨公債ハ利付ニ於テ九十五磅、利落
ニ於テ九十三磅ノ價ガシテ居ル、尙ホ百圓ニハソコニ差ガアル、寬リガア
ル、又此四分半利付ノ英貨公債ト云フモノハ獨リ倫敦ニ在ルバカリデハアリ
マセヌ、今日デハ餘程紐育ニモ這入ッテ居ル譯デアリマス、紐育ニ於ケル最
近ノ相場ヲ大藏大臣ノ言葉ヲ借リテ利〓リニシテ見マスト五分以上ニ付イテ
居ル、其位安ク買フコトガ出來ルノデアリマス、是ハ獨リ倫敦ニ於テ買フバ
カリデナク、隨分紐育デモ買ハウト思ヘバ買ヒ得ル時期デアル、又倫敦ノ取
引所ニ於テ相場ガ立ツ以上ハ多少ニ拘ラズ賣買ガ出來ル筈デアル、御承知ノ
通リ「ジヨッバー」ト云フモノガアル、是ハ日本トハ違ヒマシテ日本ノ公債賣
買專門ノ請負者デアッテ、ソレニ向ッテ仲買ガ賣買ヲ試ミル、卽チ此請負者ト
云フモノハ日本ノ四分利公債ハ幾ラスルト云フ問ヲ受ケタナラバ必ズ幾ラデ
買フ、幾ラデ賣ルト云フ賣買ノ二ツノ相場ヲ答ヘル義務ガアル、ソレヲ答ヘタ
以上ハ相當ノ高マデハ賣リモ買ヒモ引受ケル義務ガアル、故ニ仲買ガ參ッテ日
本ノ四分半利付公債ハ幾ラデアルト言フ時分ニ、買ヒニ來タノカ賣リニ來タ
ノカ分ラヌ、分ラヌケレドモ必ズ賣リハ幾ラ買ヒハ幾ラト云フコトヲ答ヘナ
ケレバナリマセヌ「ジヨッバー」ガ旣ニ其答ヲシタ以上ハ相當ノ高マデハ卽チ
十萬圓位マデハ賣ルコトモ買フコトモ引受ケテシナケレバナラヌト云フ仕組
ニナッテ居リマス、ソレデアリマスカラ財務官ガ三千萬圓位ガ極度デアッテ、
其上ハ買ヘヌト云フ報告ハドウ云フ所カラ詮議セラレタノカ知ラヌガ、今日
デハ獨リ倫敦バカリデナク、紐育デモ買フコトガ出來ル且ツ紐育デ買フ方ガ
利廻リカラ行ッテ餘程安ク付クノデアリマス、ソレデ大藏大臣ハ動モスルト質
問ニ對シテ利迥リノコトヲ仰ッシヤルガ、ソレハ放資者ノ立場カラ取ルベキ算
盤デアッテ、政府者ノ取ルベキ算盤デハナカラウト思ヒマス、ソレハ如何デゴ
ザイマスヽ三千萬圓ガ極度デアルト云フコトハ私共ハ唯財務官ノ報〓ダケデ
ハ足ラヌ、實際ノ事情ヲモウ少シク御盡シニナラナケレバ御分リニナリマス
マイト思ヒマス、モウ一應此點ニ付テ御詮議ニナッタラ如何デアラウカト思
ヒマス、現在百圓ノモノヲ百圓以下デ買ヘバ政府ハ矢張リ得デアリマセウ、勿
論九十五圓ガ九十六圓ニナッテモ四分半利付ノ公債ヲ御買ヒニナッテ宜カラウ
ト思ヒマス、勿論之ヲ買フニ付テハ商賣ノコトデアリマスカラ多少ノ商略ト
云フモノハ必要デアリマス、始終買フ買フトバカリハ言ッテ居ラレナイ、或ル
場合ニハ政府ハ買ッタモノヲ賣"テヤルト云フヤウナ商略ヲ取ルコトモ必ズ財
務官ニ其權能ヲ持タセテ置カナケレバナラヌト思ヒマス、サウ云フ點ニ付テ
事實ハ如何ニナッテ居リマスカ、旣ニ佛國ニ於テ國庫債劵ヲ募集スルニ當ッテ、
其取扱人ニ日本ノ佛貨公債ヲ持ッテ來タナラバソレハ現金ト見做シテ相當ノ
割合デ受取ルト云フコトマデ言ッテ努力シテ居ル、倫敦ニ於テハ公債ノ募集ガ
アリマスケレドモ、日本政府ガソコマデ努力シテ佛貨公債ヲ買ッタト云フコ
トハ聞キマセヌ、一方ニ於テハ努力セラルルヤウデハアルガ、英貨四分半利
付ノ公債ニ付テハ政府ノ努力ガ未ダ足リナイヤウニ思ヒマス、殊ニ米國ニ於
テ買入レルト云フヤウナ策ヲ運ラサレタト云フコトハ聞カヌノデアル、又佛
貨公債ノ如キハ是ハ外債ヲ減ラスト云フ爲ニ詰リ內債ニ變ズルマデデアッテ、
今日ハ民間デハ如何デアル、政府ガ買ハズトモ爲替相場ノ上カラ佛貨公債ガ
一番有利デアリマスカラ、五分ノ佛貨公債ハ民間ニ於テ競ァテ買ハムトシテ
居ルケレドモ、ナカ〓〓買ヘヌ、額面以上ニナッテモ、爲替相場ノ關係カラ計算
シテ利益デアルカラ買ハムトシテモ買ヘナイ、遂ニハ五十八年ノ償還期限ノ
四分利ノ佛貨公債ヲボツ〓〓買フト云フ民間放資者ノ有樣デアル、シテ見マ
スレバ政府ガ之ニ對シテ大ニ力ヲ盡シテ······佛貨ニノミ力ヲ盡サズトモ此英
貨ノ四分半利ニ力ヲ盡スガ相當デハアルマイカト私ハ考ヘル、ソレカラ第四
ニハ政府ガ內債ヲ募集スルト云フ、卽チ此九月十月ニ至ッテ正貨ガ激增シテ
市場ノ狀況ガ變ッテ來タ、ソレ故ニ佛貨公債ノ爲ニ四千萬圓ノ公債ヲ發行ス
ル、尙ホ今度衆議院ニ提出ニナリマシタ追加豫算ニ於キマシテハ、二千萬圓
ダケ募集スルト云フ、合セテ六千萬圓募集ノ協贊ヲ政府ハ此議會ニ求メラレ
タ、大藏大臣ハ今日ノ市場ノ有樣ニ於テ、此六千萬圓ノ公債ガ有利ニ發行ガ
出來ルト云フ御計畫ガアルノデアリマスカ、私ナドノ、寡聞デアリマスルガ、
見ル所ニ依リマスルト、旣ニ佛貨公債ヲ買入レルコトヲセラルル、卽チ三千
八百六十萬圓ノ公債ノ發行スラモ、或ハ三箇月グラヰ時期ガ遲レテ、今日ハ
其機ヲ失シテ居リハセヌカト思ハレル、而カモ過日ハ此三千八百六十萬圓ノ
公債ヲ募集シ、其上ニ二千萬圓ト云フコトハ殆ド見込ガナイト云フ答辯ヲセ
ラレタ大藏大臣ガ、僅カ一週間乃至二週間ノ後ニ其見込ガアルト云フコトニ
ナッテハドウ云フ經濟界ニ變態ヲ生ジタカ、昨年ノ十一月前後ニ於テハ、民
間ノ金融ハ緩慢デアッテ、日本銀行ニ無利息デ民問ノ銀行カラ預ケテル金ガ六
千萬圓乃至七千萬圓ヲ上下シテ居ッタヤウニ私ハ聞イテ居ル、然ルニ今日ハ二
千萬圓乃至二千五百萬圓ト云フヤウナ高ニ減ッテ居ルノデアリマシテ、民間
ニ於テモ段々ト新ニ事業ヲ起シ、或ハ舊事業ノ擴張ヲ圖リ、或ハ舊債ノ借替
ヲ圖ルト云フ氣運ニ向ッテ來マシタガ、是デモ尙ホ大藏大臣ハ六千萬圓ノ公債
ノ募集ガ出來ルト云フ御確信ガアルノカ、ソレトモ斯ウ云フコトヲ定メラレ
ルニハ、大藏大臣ガ獨リ机ノ上デ定メラレルノハ危イノデアリマスカラ、必
ズ日本銀行其他民間ノ金融機關ノ重モナルモノニ付テハ、其意見ヲ御徵シニ
ナッタコトカト在ジマスルガ、今日六千萬圓ノ公債ヲ募集スルト云フコトヲ聲
ヲ立テテ、其實行ガ出來ヌト云フコトハ、是ハ徒ラニ經濟界ヲ壓迫シテ害ヲ
爲スモノデアリマス、而シテ議會ニ提出セラルル以上ハ、是ガ濟ンダラ直チ
ニソレニ著手サレルト云フコトノ確信ガナケレバナラヌ筈デアリマスガ、果
シテソレダケノ御確信ガアルノデアリマスルカ、ソレヲ伺ヒタイ
〔國務大臣武富時敏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=25
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026・武富時敏
○國務大臣(武富時敏君) 高橋男爵ニ御答ヲ致シマス、第一ノ御質問ハ、歲
入ノ減少ヲ來タシタノハ政府自ラ招イタコトデハナイカト云フ御趣意ノヤウ
デアリマス、政府ノ現內閣ノ成立以來、輸入防遏ニ努メタ······輸入防遏ト云フ
言葉ヲ頻ニ御使ヒニナリマシタガ、現內閣ハ何モ輸入防遏ト云フコトヲ政策
ト致シマセヌ、又ソレヲ努メモ致シマセヌ、唯從來ノ貿易ノ不均衡ヲ直シタ
イト云フノガ現內閣ノ政策デアリマス、成ルベク輸出ヲ盛ニシテ貿易ノ均衡
ヲ失ハヌヤウニシタイト云フノガ本意デアルノデアリマシテ、輸入ヲ防遏ス
ルト言ヘバ、例ヘバ關稅デモ引上ゲテ輸入ガ減少スルヤウニシナケレバナリ
マセヌガ、左様ナコトハ致シテ居リマセヌ、隨ッテ此關稅ノ減收ニナッタノハ
政府自ラ招イタト云フコトハ政府ニ於テハ信ジマセヌ、是ハ申スマデモナク
時局ノ影響ニ依ッテ此減收ヲ來タシタト信ジテ居リマス、ソレカラ次ハ此豫算
編製ノ時分ニハ公債ノ募集ガ出來ルカ出來ヌカソレヲ知ラナカッタト云フ御
話デアリマスルガ、是ハ先日正貨ノ激增ヲシタノハ九月十月頃ノコトデアル
ト云フコトヲ本議場デ申上ゲタコトハ記憶イタシテ居リマス、併ナガラ此豫
算編製ノ時期マデ、公債ノ募集ガ出來ルカ出來ナイカ分ラナカッタト云フコト
ハ申シタ覺ハゴザイマセヌ、其頃ヨリ金融ノ緩慢ハ隨分ヒドクナッテ居リマ
シテ、多少ノ公債募集ハ出來ルモノト云フコトハ見當ハ付ケテ居リマシタ、
併ナガラ此經濟界ノ狀況ト云フモノハ、先日來度〓申上ゲマスル通リニ、
時ノ變態ニ出デタモノデアリマスルカラ、此變態ヲ基礎ニシテ政策ヲ改メ
ル、或ハ他ノ經費ノ支辨方法ヲ改メルト云フ如キコトハ、ドウモ大早計タル
ヲ免レヌト政府ハ信ジテ、鐵道ノ財源ノ調達等モ、先ヅ此儘ニシテ豫算ヲ組
ンダト云フコトヲ說明ヲ致シタコトハ記憶ヲ致シテ居リマス、卽チ其通リデ
ゴザイマス、實際此豫算編製ノ時期マデハ何モ分ラナカッタト云フ譯デハゴ
ザリマセヌ、隨分分ヲテ居リマシタ、併シナガラ此現象ハ一時ノ現象デゴザ
リマスルカラ、此一時ノ現象ニ依ッテ豫算ヲ立テルト云フコトハ其當ヲ得タ
ルモノデナイト信ジタノデアリマス、第三ハ外債償還ニ付テ大藏大臣ハ利廻
リ利廻リト云フコトヲ言フガ、利週リノ善シ惡シヲ選ブノハ放資者ノ爲スコ
トデアッテ、政府ノ爲スコトデナイ、斯樣ナ御說ノヤウデアリマシタガ、ソレ
ハ御尤ノコトト存ジマス、併ナガラ政府モ外債ヲ償還スルニ當ッテ、成ルベク
便利ノ宜イ償還ヲナスト云フコトハ、政府ガ當然努メナケレバナラヌコトト
思フノデアリマス、成ルベク國庫ノ損失ヲ少クシテ償還ノ目的ヲ達シタイト
云フコトガ、當局者ノ努ムベキコトデアラウト存ジマス、ソレ故ニ佛貨公債
ヲ償還イタシマスレバ、同ジク外國ニ對スル債務ヲ辨償スルノ目的ハ同ジク
達シテ、國庫ハ四分半利付ノ英貨公債ヲ償還スルヨリモ損失ガ少イ、寧ロ利
益ヲ得ル勘定ニナリマスルカラ、之ヲ先ヅ以テ償還ヲシタ方ガ政府ノ當然ノ
職責デアルト信ジテ此案ヲ出シタノデアリマス、ソレニ付テ四分半利ノ英貨
公債ノ買入方ニ付テ種々御注意ノ點モゴザリマシタ、是ハ男爵多年ノ御經驗
ノ結果ト存ジマシテ、私ハ甚ダ御〓示ノコトニ付テハ益ヲ得マシタノデ、財
務官任セデ十分ノ働ガ出來ヌ、何トカ注意ヲシタラ宜カラウト云フ、是ハ御質
問デハナイ、、寧ロ御忠告デアリマス、此御忠告ハ有難ク御請ヶヲ致シマシテ今
後ハ精々注意ヲ致シマス、三千萬圓······一年度內ニ凡ソ三千萬圓位ノ買入ガ
目下ノ所ハ先ヅ手一パイノ所デアラウト云フノハ、是マデノ經驗デ申上ゲタ
ノデアリマシテ、今後向ウノ經濟狀態モ變化ヲ致シマセウシ、又精々注意ヲ
致シマシタラバ其以上ニ買入ガ出來ルカモ知レマセヌ、併シ詰リ是ハ相手仕
事デアリマスルカラ、確實ニドレダケハ買入ガ出來ルト云フコトハ無論豫測
ハ出來ナイノデアリマス、ソレカラ六千萬圓ノ公債ヲ有利ニ募集シ得ルノ確
信ガアルカト云フノ御尋ニ對シマシテハ、有利ト申シマスレバ是ハ比較的ノ
言葉デゴザイマシテ、何ニ比較シテ有利ト云フコトハチヨット玆ニ御答ハ出來
兼ネマス、併ナガラ今日ノ金融狀態、又是カラ凡ソ豫期シ得ル所ノ正貨ノ流入
等ヲ考ヘ合シテ見マスルト、六千萬圓位ハ募集ガ出來ナイコトハアルマイト
信ジテ居ルノデゴザイマス、無論此經濟界ノ事情ヲ知ルニ付キマシテハ、各
銀行ノ重モナル人達ノ意見モ徵シタコトモゴザイマス、先日ハ四千萬ノ內債
ヲ募集スルガ一パイデ、此以上ニ二千萬ノ公債ヲ募集スルハ不可能デアルト
私ガ申シタヤウニ男爵ハ御沙汰デゴザイマシタガ、左樣ナコトハ申シタ覺ハ
ゴザイマセヌ、四千萬ノ内債ヲ募集シタ上ニ尙ホ二千萬ヲ募集スルト云フコ
トハ、是ハ深ク熟慮シナケレバ今決定ハ致シ兼ネルト云フコトヲ申シタノ
デ、ソレハ其通リデアリマス、共時ト今日トハ聊カ事情ノ異ナル所ガゴザイ
やすか。今日ノ狀況カラ推シテ此五年度內ノ經濟市場ノ有樣ヲ考ヘテ見マス
ルト此位ノ募集ハ强ヒテ出來ナイコトハナカラウト政府ハ信ジテ居ルノデ
ゴザイマス、先ヅ御尋ニ付キマシテノ答辯ハ是デ御了承ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=26
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027・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 休憩ヲ致シマス
午後零時十四分休憩
午後一時三十七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=27
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028・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 是ヨリ午前ニ引續イテ開會イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=28
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029・岡部長職
○子爵岡部長職君 本員ハ午前ニ於キマシテ報告ヲ致シマスル際ニ、第三分
科主査ノ報告中ニ〓育制度調査ニ關シテ希望ノ決議案トデモ申スルヤウナモ
ノヲ朗讀イタシマシテゴザリマス、アレハ矢張リ他ノ三條件ノ希望、豫算ト
共ニ決スルト云フコトト同ジ順序ヲ履ミマシテ、第三分科會主査ノ報告ノ分
ハ矢張リ豫算ト共ニ希望ヲ以テ決議ヲ致シマシタコトト御承知ヲ願ヒタイ、
此段ヲ加ヘテ御報告イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=29
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030・馬屋原彰
○馬屋原彰君 私ハ午前ニ質問ヲ致シマシタ件ニ付キマシテ······今玆ニ御見
エニナリマセヌガ、内閣總理大臣ハ御出席ニナリマセヌデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=30
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031・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 總理大臣ハ御出席ニ相成ル筈デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=31
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032・馬屋原彰
○馬屋原彰君 ドウカソレデハ御出席ニナッタ上デ述ベタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=32
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033・杉田定一
○杉田定一君 總理大臣ニ外務大臣ハ御出席ハアリマスノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=33
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034・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 然ラバ總理大臣ノ出席マデ待ツコトニ致シマ
ス······唯今總理大臣ガ御出席ニナリマシタカラ、馬屋原君、御質問ニナッテ宜
ウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=34
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035・馬屋原彰
○馬屋原彰君 ソレデハ····午前ニ於キマシテ文部大臣ヨリ本員ノ質問ニ對
シテ御答辯ニナリマシタルコトハ敬承イタシマシタ、玆ニ其御答辯ノ大體ニ
付テ一言希望ヲ述ベテ置キタイト存ジマス、ソレデ本員ハ敢テ漫ニ此舊派ノ
糟粕ヲ主張スルモノデハナイ、若シ幸ニ繪畫ノ要義ニ依リ種々ノ新機軸ヲ出
ス者ガアレバ大ニ歡迎スルノデアリマスガ、方今ノ如キ新派トカ、色〓ノ新シ
イ繪ガ流行スルヤウデアリマスルケレドモ、要スルニ或ル一部ノ畫工ガ試驗
ニ畫ク畫工其人モ亦本當ニ是ガ成功スルヤ否ヤト云フコトハ自身モ分ラナ
イ、其試驗中ノモノヲ採ッテ文展ナドハ之ヲ奬勵サレルナゾト云フノハ甚ダ
遺憾デアリマス、サウ云フ國ハドコニアルカ、世界各國ドコニモナイ、ソコ
ヲ私ハ憂ヘルノデアル、ソレデ本然ノ新機軸ヲ出ス者ガアレバ、實ニ歡ンデ
我ミハ歡迎スルノデアルケレドモ、方今ノ如ク模擬的、模擬的ノ折衷派ト云
フヤウナモノハ是ハ繪畫ノ繪畫タル所ノ要義ニ離レテ居ル、要義ニ背イテ
居ル、要スルニサウ云フヤウナ變態ノ試驗中ノ繪ヲ却ッテ其筋デハ奬勵サレ
ルト云フコトニナルカラシテ、靑年畫工ハ是ハ成程奬勵サレルノデアルカ
ラ、其風ヲ做フト云フ鹽梅デ、段々自分ノ本筋ノ事業ハ擲フテ、詰リ變態ノ眞
似ヲスルト云フヤウニナル、サウシマスルト云フト、日本、我ガ固有ノ美術
ノ進步發達ト云フコトハ之ガ爲ニ阻碍サレテ來ル、ソコデサウ云フ模倣的ノ
折衷畫ニハ遺憾ナガラ本員等ハ同意ガ出來ナイ、デ日本畫ノ〓育ニシテモ、
將タ文展ノ出品ノ審査ニシテモ、尙ホ現況ノ儘ニ之ヲ放任シテ置イタナラ
バ、ドウナルカ、日本畫ハ、純日本畫ハ益〓堕落孟浪ニ流レ、サウシテ其結果
ハドウ云フ所ニマデ及ブカト云フト、是ハ昔カラ歷史ノ上ニ明カニ分ッテ居
ルコトデアリマスルガ、人心ノ墮落ヲ導クノデアル、詰リ繪畫ノ、··繪畫
デナイ丸デ僞物ダ、僞物ヲ以テ世間ノ分ラヌ人ノ目ヲ迷ハカス、ノミナラズソ
レガタメ益〓其人ノ人心、其人ノ素行、所謂正シイ心マデモ詰リ其繪畫ノ爲ニ
紊サルルト云フコトニナル、サウ致シマスルト、共繪畫ノ墮落ノ弊タルヤ、
遂ニ底止スル所ナキニ至ルノデアル、デ本員ハ深ク之ヲ虞レルノデア
ル、政府當局ニ於カレマシテハ前途ノ利害ヲ察セラレ、ドウカ適當ナル改善
ノ手段ヲ斷行シテ貰ヒタイ、又此問題タルヤ小事ニアラズ、國家永遠ノ利害
ニ至大ノ影響ヲ及ボスベキ問題デアルガ故ニ、內閣總理大臣ニ於カレマシテ
モ行政各部ノ統一上ニ關スルモノトシテ、深ク此問題ノ解決ニ付テハ御考慮
ヲ添ヘラレムコトヲ望ミマス、總理大臣ノ御考ハ如何デゴザイマセウカ
〔國務大臣伯爵大隈重信君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=35
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036・大隈重信
○國務大臣(伯爵大隈重信君) 馬屋原君ノ御希望ハ私モ御同感デアリマス、
併ナガラ是ハ頗ル困難ナルコトデ、文部省殊ニ美術學校モ其點ニハ必ズ注意
シテ居ルコトト信ジマスルノデアリマス、承ル所、美術學校〓科ノ有樣ヲ見
マスルト先ヅ共審美學、美學ヲ〓ヘ、美學ヲ歷史的ニ〓へ、古代ノ美術カラ
現代ニ至ルマデ、ソレカラ殊ニ美術學校ニ於テハ歐羅巴デ〓ヘル以外ニ東洋
ノ卽チ支那、日本ノ、是モ〓ヘテ居マシテ、時代ニ從ッテ段々〓究ガ進ンデ
參リマスルカラ、美術其ノモノニハ色〓宗〓的ニ起ッタモノモアレバ、貴族的
ニ起ッタモノモアリ、種々時代ニ依ッテ起ッタモノヲ現代ノ文明、現代ノ日本
ニ適用スル爲ニハ決シテ〓究ヲ怠ラヌト思フノデアリマス、畫其モノハ隨分
風俗ノ上ニ、人心ノ上ニ影響ヲ及ボスコトハ御論ノ通リデアリマス、十分ニ
注意ヲ致シマシテ、文部省殊ニ美術學校ハ注意ヲ怠ラヌト存ジマス
〔國務大臣高田早苗君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=36
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037・高田早苗
○國務大臣(高田早苗君) 此場合ニ午前目賀田男爵カラ御質問ガアリマシタ
コトニ付テ今一應御答ヲ致シテ置キタイト思ヒマス、御質問ノ趣意ハ此前ノ
議會ニ貴族院ヨリ建議ニナリマシタ道德維持ニ關スル建議、其事ノ成績ガ爾
來擧ッラ居ルカ、ドレダケ擧ッタカト云フコトノ御質問デアリマス、此道德維持
ニ關スル建議ヲ唯今玆ニ讀ンデ見マスルト云フト「道德ヲ維持シ、其ノ制裁ヲ
重カラシムルハ風〓上最必要ナル事トス、今ヤ德義ノ制裁漸ク輕クシテ國家
ノ前途大ニ憂フ可キモノアルヲ覺ユ就中爲政當局ノ責任者ハ一層此ノ點ニ留
意セラレムコトヲ望ム」ト云フ建議案デアリマス、此建議案ノ出マシタ動機ハ
刑餘ノ人ガ選擧ニ當選シタト云フコトガ本ニナッテ居リマスヤウデ、其當時
ノ提出者柳原伯爵ノ御演說ニモ其事ガ載ッテ居リマスガ、此建議ノ御趣意ノ
アル所ハ無論私當局ノ責任者ノ一人トシテ、十分ニ服膺シテ居リマスノミナ
ラズ、殊ニ文部ニ關係ノ多イコトデアリマスカラ、特ニ此道德維持ト云フコ
トニ付テ留意イタシマシテ、午前モ御話ヲ申上ゲタ通リニ出來得ル限リ色ミ
或ハ諮問シ又注意ヲ促スト云フヤウナコトヲ致シテ居ル譯デアリマス、尙ホ
、
ドレダケノ成績ガ擧ッタト云フコトヲ具體的ニ御話スルコトハ困難デアリマ
スガ、今後ト雖モ一層此點ハ文部省當局トシテ注意ヲ致ス積リデアリマス、
併セテ一言申シテ置キマスガ、先刻目賀田男爵ノ御質問ノ中ニ此學校ニ於テ
憲法ノ講義ヲスルト云フヤウナコトノ御話ガアリマシタ、是ハ中學校ニハ御
承知ノ通リ法制經濟ト云フ科目ガアリマスガ、小學校ノ如キ程度ノ低イ所ニ
於テ憲法ノ講義ヲサセルコトハ致シテ居リマセヌ、唯立憲政體ノ今日ニ於テ
共立憲政體ノ意味ヲ了解セシムルト云フコト、殊ニ選擧ノ神聖ニシテ大切デ
アルト云フコト、是ハ小學校ニ於キマシテモ成ルベク會得セシムルト云フコ
トハ必要デアル、玆ニ於テ紀元節ナドニ於キマシテ、憲法發布ノ紀念日ニ於
テ憲法發布ノ詔勅等ノ話ヲ致スヤウナコトハ奬勵シテ居ル次第デアリマス、
畢竟此建議ノ如キモノガ出デマスト云フコトモ、卽チ此謂ハユル濱職議員、
刑餘ノ人ガ當選スルト云フヤウナコトモ、一面矢張リ選擧ノ神聖ト云フコト
ニ付テ理解ガ薄イ、立憲政體ト云フコトニ付テノ理解ガ薄イト云フコトニ原
因スルコトモ尠カラズアラウト思ヒマス、併ナガラ此點バカリニ注意イタシ
マシテ
〔議長公爵徳川家達君議長席ニ復ス〕
道德維持ニ關スル建議ノ總テノ目的ヲ達スルト云フ譯ニハ勿論參ラヌノデア
リマスカラ、或ハ通俗〓育、社會〓育種々ノ方面ニ付テ過去モ努メタ積リデ
アリマスガ、今後モ亦一層注意ヲ致シ、而シテ御建議ノ趣意ニ副フヤウニ努
メタイ、斯樣ニ考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=37
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038・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 本員ハ唯今ノ終末ニ於ケル文部大臣ノ御說明ハ頗ル
了解イタシマセヌ、憲政ノコトニ付キ願ハクハ斯ウ云フコトニ御勉强下サレ
ザラムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=38
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039・杉田定一
○杉田定一君 私ハ先般外交ノコトニ付テ質問ヲ致シマシタガ、マダ要領ヲ
得テ居ナイコトモアリマス、又其他ノ事柄ニ付キマシテモ質問ヲ致シタイト
思ウテ居リマス、所ガ本日幸ヒ豫算審議ノ會デゴザイマスカラ、此外交ノコ
トハ豫算ニハ卽チ今日世界大亂殆ド軍國同樣ノ議會ト申シテ可ナルヤウナ次
第デアリマスカラ、此御審議ノ際ニ於テ質問ヲ御許シヲ願ヒタイノデアリマ
ス、先般、此度ノ歐羅巴ノ大亂ハ成ルベク其歐羅巴ニ局限シテ東洋ニハ波及
ヲシナイヤウニ、此渦中ニハ成ルベク投ジナイヤウニスルガ世界平和ノ爲ニ
宜シカラウト云フコトニ付テ質問ヲ致シマシタ所ガ、外務大臣ハ同感ノ御說
明デゴザイマシテ誠ニ(聽取シ難シ)次第デゴザイマス、ソレデ伺フコトハ此
度單獨不講和ノ仲間ニ這入リマシテ、此點ニ付テ衆議院ノ方ニ於テ、タシカ
質問ガアッタヤウデアリマスガ、外務大臣ハ此單獨不講和ノ加入ニ付テハ日英
同盟以外ニ何等責任ヲ增加シナイ、增加シナイト云フコトヲ御答ニナッタヤ
ウデアリマス、ソレハ其通リデ、固ヨリ其通リデ、然ル次第デ、又サウ御答
辯ニナッタヤウデアリマス、是ハ固ヨリ世界平和ノ爲ニ私ハ先般我國カラ矢
張リ其邊ノ方ヘ影響シテ來ルノダカラ、是ハ御答ニナッタノハ無論其通リデ
アラウト思ヒマス、詰リ日英同盟以外ニ責任ハ增加シナイ、斯ウ云フ御答デ
アッタト記憶シテ居リマス、此通リデゴザイマスカ、ソレカラ先般其對支帝
制延期勸告ニ付キマシテ、是ハ他ニ內治ニ關係ハシナイケレドモ、其結果或
ハ內亂ガ起ルト云フヤウナコトニナレバ、卽チ利害關係ガ日本ニモ影響スル
ト云フ所カラ御警告ニナッタヤウデアル、所デ先般ノ質問ニハ上海ニ動亂ガ
起ッタ、ソレハ鎭リハ致シマシタガ、今日ハ雲貴ガ獨立シ、四川モ殆ド獨立ス
ル、或ハ南〓一帶ガ動搖セムトスル模樣ガアル、或ハ蒙匪、蒙古ノ方ニ於テモ
何カ暴動ガ起ッテ居ルヤウナ次第デアリマシテ、之ヲ支那人ノ言葉デ形容シ
テ云フナラバ、殆ド四百餘州亂レテ麻ノ如クナラムト欲スルヤウナ模樣デア
ルノデアリマス、殊ニ彼ハ帝制ヲ延期スレバ却ッテ内亂ガ起ルカモ知レナイ
ト云フ、所ガ此度ハソレト反對ニ帝制ヲ進行シタ爲ニ其內亂ガ起ッテ、又此唱
フル所ハ皆帝制反對デ起ッタ內亂デ、今日デハ御承知ノ通リ之ヲ其團匪ト申シ
テモ唯支那ノ定例ノ團匪トカ何トカ云フノデ、唯民間ノ匪賊ト云フヤウナモ
ノデハナイ、其內地ノ秩序ヲ守ラヌナラヌ所ノ大總統直轄ノ師團ガ謀反ヲ致
シタト云フコトデアル、言ヘバ己レノ師團、卽チ大總統ノ大權ノ下ニ於ケル
所ノ官軍ガ謀反ヲ致シタ、是ハ匪賊ノ反亂トハ違ッテ實ニ重大ナル彼ニハ責
任ガアラウト思フノデアリマス、ソコデ近來御用新聞ヲ見マスルニ往々支那
ニ於テハ內亂、帝制反對ガ續々起ッタ、卽チ現內閣ノ豫想ノ通リニナッタ豫言
ガ的中シタト云フコトヲ得々トシテ誇ッテ居ルヤウニ御用新聞ニサウ云フ記
事ガ往々現ハレル、成ルホドソレハ其通リ豫想ガ當ッタカモ知レマセヌガ、是
ハサウカモ知レマセヌケレドモ、ソレダニ依ッテ此帝制延期ノ勸告ト云フコト
ヲナサッタノデハナイカ、然ルニ其延期勸告ト云フコトニ付テハ未ダ徹底シ
テ居ナイデハナイカ、唯其內亂ヲ見テ果シテ我ガ言フガ如クニナッタ、併ナガ
ラ方今ノ帝制問題ノ延期勸告ニ付テハ卽チ內亂ヲ防グダケノ、鎭メルダケノ
徹底的ノ御警告御行動ガアッタノカ、唯警告ヲサレタバカリデ、唯干涉スル、
斯ウ云フヤウナ、此何ナラバ始メカラソレハナサラヌ方ガ宜カッタデハナ
イカ、實ニ此點ト云フモノハ、帝國ノ威嚴面目ニ關係ヲ致スコトト思フノデ
アリマスガ、此點ニ付テ政府ハ其警告ヲ徹底的ニ十分ノ御行動ヲ御執リニナ
リ、又其確信ト云フモノガアルノデアリマスルカ、共點ニ付テ御伺ヒヲ致シ
タイノデアリマス、又序ニ伺ヒタイノハ、此度彼地ニ於テ卽チ內亂ガ起ッタ、
共內亂ト云フモノハ卽チ共和政體ヲ維持シタイ、自分ノ國ノ卽チ國體ヲ維持
シタイト云フ爲ニ內亂ガ起ッテ來タ、一方ハドウデアルカト云フト、固ッテ居
ル國體ヲ變更シヤウト云フノデナイ、政體ヲ變更ヲシヤウト云フノデアル、
サウシテ見レバ或ハ時ニ依ルト政體ヲ守ルト云フ方ガ官軍ノヤウニモ見エ
ル、政體ヲ變更シテ仕舞フト云フ方ガ賊軍ノヤウニモ見エナイデハナイ、サ
ウ云フ疑ガアルノデ、ソコデ此近來聞ク所ニ依レバ、雲貴ガ獨立シタト云フ
コトヲ外ノ或國ニ通告シタ、共國ニ於テハ其內容ハ知レマセヌガ、先方ノ政
府ノ畢竟術策カ知レマセヌガ、又ソレニ對シテ中立ノ態度ヲ執ルト云フヤウ
ナコトノ話モアリマスガ、チヨットソレヲ新聞デ見受ケマシタガ、ソレガ事
實デアリマスカ、付キマシテハ我國ハ此帝制ヲ施クト、ソコニ內亂ガ起ル、
ソレニ付テ警告ヲ與ヘテ果シテ其通リ內亂ガ起ッタ、我ガ云フ通リ守ラナカ
ッタカラ其通リ起ッタ、然ラバ彼ハ卽チドウ云フカ、雲貴ハ反軍ナリ、或所
ニ起ッタ反對ノ方ノ反軍ニ對シテハ我國ハ之ニ對シテ如何ナル態度ヲ御執リ
ナサル御積リデアルカ、共邊ノ所ヲ承リタイノデアリマス、ソレカラ元來此
對支帝制延期勸告ハ是ハ他ノ誘導ニ依ッテサレタノデアルカ、或ハ又日本カラ
進ンデ他ノ國ヲ誘導サレタノデアルカ、詰リ他ノ協商側へコチノ方カラ御相
談ヲナサッタノカ、向ウノ方カラ相談ヲ受ケテ御ヤリニナッタノカ、卽チ此帝制
延期警〓ト云フモノハ自發的ノモノデアリマシタカ、或ハ他動カラ起ッテ
來タノデアリマスカ、其邊ノ所ハ如何ニナルノデアリマスカ、自發カ他動カ、
彼カラ誘ッタノカ我カラ誘ッタノデアルカト云フコトヲ承リタイノデアリマ
ス、又是ガ單獨デ警告ガ出來ナカッタカドウシテモ聯合デ警告ヲシナケレバ
ナラヌト云フ程ノ事情ガアッタノカ、共邊ハ如何デアリマスカ、之ヲ承リタイ
ノデアリマス、ソレカラ承リタイコトハ昨年モ豫算委員會ニ於テ質問ヲ致シ
マシタガ、其節要領ヲ得ナカッタ、云フモノハ我國ハ此日英同盟ノ趣意ヲ守
リ、十分日英同盟ノコトニ付テハ義務ヲ守リ、有ラム限リノ隨分信義ヲ盡シ
テ居ルノデアル、實ハ此茫漠タル海上ノ面積ヲ日本ニ於テ同盟國ニ代ッテ警
衞ニ當リ、又軍器ノ供給又ハ膠州灣ノ戰爭、隨分此協商·····最モ同盟國ニ對シ
テ十分ナル所ノ信義、十分ナル所ノ義務ヲ盡シテ居ル、總テノ國民ガ同情ヲ
寄セテ居ッタ次第デアリマスルガ、然ルニ往々此支那ノ方ニ於キマシテ遺憾ナ
ルコトハ、此同盟國ノ人民ノ方カラ往々日本トノ利害ノ衝突ガアルガ如キノ
觀ガアルノデアリマス、ソレハ一々列擧シマセヌガ、隨分共利害ノ衝突······衝
突デハナイ、却ッテ彼等ヨリ故障ヲ受ケルト云フヤウナコトガ此支那ノ方ニ
於テアル、又第四ニ此度ノ事ニ付テモ、アレハ日本人ノ內亂ノ煽動デアルト
云フヤウナコトヲ新聞ニ書立テルコトガナイデモナイノデアリマス、是ハ本
元デハ知ラナイコトカ知レマセヌガ、出先キノ人民ニ於テサウ云フコトガ
起ッテ······ヨモヤ本國カラサウ云フ沙汰ハアリマスマイト思ヒマス、出先キニ
於テサウ云フコトガ時ニアッテハ誠ニ此日英同盟ノ親善ガ······益、親善ニ往カ
ナケレバナラヌノニ、誠ニサウ云フ感情ヲ懷イテ居ルノハ甚ダ遺憾デアリマ
ス、其邊ニ付テハ當局者ニ於テノ御考ハサウ云フコトハナイト云フ御考デア
リマスルカ、如何デアリマスルカ、又移民問題、我ガ日本ハ年々人口ノ增加
スルニ隨ッテ、卽チ亞米利加ナリ南洋ナリ或ハ濠洲ナリ新西蘭ナリ、此移民ノ
發展ヲ致サナケレバナラヌ、然ルニ帝國ハ全體デハアリマセヌガ、往々移民
問題ニ於テ實ニ文明ノ主張シ自由平等ヲ貴ブ所ニ於テ此人類ニ差別ヲ立テラ
レルト云フコトハ、誠ニ今日仁義公道ノ行ハルル世界ニ於テ、實ニ是ハ遺憾
デアル、トコロガ米國ニ於テサウ云フコトガアリマス、然ルニ何ゾ測ラムヤ、
卽チ同盟國タル所ノ殖民地ニ於テ往々日本人ヲ排斥スルト云フ沙汰ヲ聞クノ
デアリマス、是ハ甚ダドウモ遺憾ナコトデ、同盟國ノ殖民地ニ於テサウ云フ
コトガアルト云フコトハ甚ダ遺憾ナ次第デアリマスルガ、サウ云フコトハ總
理大臣、外務大臣ニ於テハ無イト云フ御考デアリマスルカ、ドウモアレハ之
ニ對シテドウ云フ御考デアリマスルカ、ドウシテモ先キ申シマシタ通リ、我
國ハ日英同盟ヲ守ッテ實ニ此太平洋ノ茫漠タル面積ヲ、今日大ナル面積ノ警衞
ノ任ニ當リ、實ニ其他協商國ニ對シテ有ラム限リノ同情ヲ寄セ、多大ノ盡力
ヲ致シテ居ルノデアル、ソレニ付テハ同盟國ニ於テ其邊ニ付テ餘ホド汲ンデ
貰ハネバナラヌト思ヒマスガ、併シ斯樣ナコトヲ今日玆デ申スノハ外交ニ付
テ如何デアルト云フ疑問ガアルカ知レマセヌガ、併ナガラ我ガ日本國民ノ(聽
取シ難シ)殖民地ナドノコトニ付テハ日本ノ方ニハ讓ッテハナラヌトハ言ハ
ヌト、サウ云フ所ノ······卽チサウ云フ眞相ガアルノナラバ唯新聞デナシ、議會
ニ於テモ斯ウ云フ質問ガ起ッタカト云フコトガ彼ノ本國ニ分レバ、ソレハ本國
政府ハ更ニ知ラナイ、出先キ殖民地ニ於テサウ云フコトガ起ッタノデアルナ
ラバ餘ホド注意セネバナラスト云フコトデ、彼ノ方ノ參考トモナル、是ガ卽
チ日支日英ノ親善ノ基トモナルノデアリマスルカラ、徒ラニ今日唯沈默ヲ守
ルノハ却ッテ今日日英親善ノ義デハナカラウト思ヒマスルデ、玆ニ此點ヲ質
問イタシタ次第デアリマス、ソコデ近來支那問題ニ付キマシテハ、是ハ新聞
ノコトヲ彼此レ申スモ如何デアリマスルガ、決シテ私ハ今日此事ヲ申スノハ
黨派問題デアルトカ、サウ云フ考デ申スノデハナイ、全ク憂國ノ精神カラ申ス
ノデアリマスガ、此事ニ付テハ實ニ日英間ノ機關新聞······文明國ノ機關新聞
デナイカ知レマセヌガ、報知新聞ノ如キハ近來其事ハドウモ對支······同盟國
ノ人ガ色ミノコトヲ言フノデ困ルト云フヤウナコトガ始終書イテアルヤウデ
アリマス、付キマシテハ、其邊ノコトニ付キマシテハ今日ハ隨分是ハ世界モ大
亂デアリマスルガ、併シ此移民問題ノ如キト云フモノハ實ニ將來大關係ガア
ラウト思ヒマス、實ニ唯今日戰爭ノアル間ダケハ治マッテ居ルガ、戰サガ濟ム
ト直グニ日本人排斥ガ續々起ルト云フヤウナコトニナッテハ實ニ甚ダ遺憾デ
アリマス、付キマシテハソレ等ノ點ニ付テ果シテ其事實ガアルト云フナラ
バ、政府ノ之ニ對スル所ノ所見、サウ云フヤウナ故障ガアルナラバ其故障ヲ
排斥ヲセラレテ、サウ云フ所ノ考ヲ有シテ居ラレルヤ、又ソレ等ノコトニ付
テ途ヲ講究シテ居ラレルノデアルヤ否ヤ、其邊ノコトニ付テ承知イタシタイ
ノデアリマスカラ、總理大臣ヨリ御說明ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 杉田君ニ確メマスガ、外務大臣へノ御質問デアリ
マスカ、總理大臣ニ答辯ヲ求メラレルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=40
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041・杉田定一
○杉田定一君 私ハ總理大臣ニ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、併ナガラ大
體ノコトニ付テハ總理大臣ニ御說明ヲ願ヒタイ、又細カイコトニ至リマシテ
ハ外務大臣カラ御答ニナッテモ宜シウゴザイマス、成ルベクハ總理大臣ニ顧
ヒタイ
〔國務大臣男爵石井菊次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=41
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042・石井菊次郎
○國務大臣(男爵石井菊次郞君) 杉田君ノ御質問ハ主トシテ私ノ管掌スル事
項ト存ジマスルカラ、便宜私ヨリ御答ヲ申上ゲタイト考ヘマスル、御質問ノ
各事項ハ旣ニ貴族院ノ本會議ニ於キマシテモ、亦委員會ニ於キマシテモ、旣ニ
幾度カ御答ヲ中上ゲタ事項デハゴザリマスルガ、兎モ角杉田君ノ深ク憂慮セ
ラレテノ御質問デアリマスカラ、反覆ヲ厭ハズ各點ニ付キマシテ要領ヲ申上
ゲタイト考ヘマス、御質問ノ第一點ノ倫敦宣言ニ加入シタルコトニ付キマシ
テ帝國政府ハ日英同盟協約以外ニ責任ノ增加シタルモノナキヤト云フ御問デ
ゴザイマス、是モ屢〓御答ヲ申上ゲマシタ通リ政府ノ考デハ何等責任ノ增
加シタルモノハナイト認メテ居リマスカラ、此段重ネテ申上ゲテ置キマス、
第二ニ支那ニ於ケル帝制延期ノ勸告、政府ハ此勸告ヲ徹底スルノ覺悟アルヤ
否ヤト云フ御質問ノヤウニ承リマシタガ、勸告ヲ徹底スルト云フ意味ハ私ニ
ハ實ハ明瞭ニ了解イタシ兼ネマスルガ、今日ノ此問題ノ現狀ヲ申上ゲマシタ
ナラバ、或ハ杉田君ノ御問ニ對スル答ニナルカモ知レマセヌ、卽チ昨年十月
ニ於キマシテ、支那ニ於テ帝制ヲ實行スルト云フコトハ或ハ支那ノ內部ニ動
搖ヲ惹起スノ憂ガアルト認メマシテ、絕對必要デモナイ帝制ハ共際延期セラ
レタシト云フ勸告ヲ與ヘマシタノデ、其問題ニ付テノ曲折ハ其後申上ゲマシ
タカラ玆ニ繰返シマセヌガ、今日ニ於テハ此帝制ヲ無期延期シテ居ルノデゴ
ザイマス、此上貫徹スルト云フ意味ハドウ云フ御趣意カハ存ジマセヌガ、是
ヨリ此問題ノ將來發展ヲ待ッテ、更ニ帝國政府デハ態度ヲ決メナクテハナラヌ
場合デゴザイマス、將來ノコトヲ豫見イタシマシテ政府ノ態度ハ斯クアラム
ト申上ゲルコトハ、私ハ差控ヘタイト考ヘマス、支那ノ雲南貴州ニ起ッテ居
ル叛軍ニ對シテ、帝國政府ハ如何ナル態度ヲ執ルカト云フ御質問デアリマス、
支那ノ叛軍ニ對スル事情ハ政府ニ於キマシテ公電モ受取リマスシ、又公電以
外ノ新聞紙上デ承知スル所モゴザイマスルガ、今日ハ御承知ノ通リ未ダ混沌
タル有樣デアリマシテ、又我〓ガ每日接受スル電報ナルモノモ甚ダ正確ヲ期
シ難イノデゴザイマス、今日ノ所日本ニアッテハ誰アッテ支那ニ於ケル形勢ガ
斯〓デアルト云フコトヲ正確ニ斷言シ得ル者ハナカラウト思フ、此際ニ當ッテ
政府ハ叛軍ニ對シテ如何ナル態度ヲ執ルカト云フ御質問ハ當局ト致シマシテ
ハ聊カ迷惑ヲスル問題デアリマシテ、要スルニ支那ノ態度ガ一層明瞭ヲ加ヘ
タ上デナケレバ政府ノ態度モ斯ウデアルト云フ御滿足ナル返答ハ致シ兼ネマ
ス、政府ハ靜ニ支那ニ於ケル事態ヲ觀望シツツアルノデアリマス、ソレヨリ
外ニ今日執ル方法ハナカラウト思ヒマス、帝制延期ノ勸〓ハ自發的ナリシヤ
又他動的ナリシヤト云フコトノ御質問デゴザイマス、是モ私ハ曩ニ御答ヲシ
タコトガアルト記憶シテ居リマスルガ、支那ノ問題ニ付キマシテ列國殊ニ同
盟國又ハ與國ノ間ニハ絕エズ意志ノ交換ガアリマシテ、或一ツノ仕事ヲ致シ
マスニ付キマシテモ朝夕談話ヲ交ヘテ居ル際ニ、自ラ其議ハ熟シテ來ルモノ
デアリマス、或ハ私ノ方デ自發的デアッタト思ッテ居ッテ、又先方デモ自發的
ト思フト云フヤウナコトモアルカモ知レマセヌ、要スルニ今日帝國政府ト與
國政府トノ間ハ極メテ親密ナノデアリマシテ、始終意志ノ交換ヲ行ヒ、是ガ
熟シテ自然各國ノ議トナリマシタノデゴザイマス、自發的トモ他動的トモ申
上ゲ兼ネルノデゴザイマス、帝國政府ト與國政府トノ間ノ熟議ノ結果ト御承
知ヲ願ヒタイノデアリマス、此勸告ハ何故ニ單獨ニナサザリシカ、與國ト提
携セザルベカラザル理由ガアッタカト云フ御質問デゴザイマス、帝制延期ノ勸
告ヲナスニ付キマシテ、單獨ニ出來ナイト云フ理由ハナカッタノデゴザイマ
ス、去リナガラ支那ニ於ケル動亂ノ起ラザルコトハ、獨リ帝國政府ノミナラ
ズ、我ガ同盟國、與國ニ取リマシテモ共同ノ利益トスル所デアル、共同ノ動
作ヲ執ッタ方ガ有利ト考ヘマシテ、共同ノ動作ニ出デタ次第デゴザイマス、我
ガ同盟國タル英國人ニシテ支那方面ニ在ル者ヨリ、往々帝國政府若クハ日本
人ニ對スル惡聲ヲ發スル者ガアル、戰爭開始以來多大ノ犠牲ヲ拂ッテ同盟ノ
誼ニ走ッタ帝國政府及臣民ニ對シテ斯ル惡聲ヲ放ツ者ノアルト云フノハ、私ハ
杉田君ノ言ハルル通リ英國ノ臣民ノ中ニ在ルト思ヒマス、其事ニ付テ私ハ杉
田君ト遺憾ヲ同ジウスル者デアリマス、丁度此機會ニ於テ私ガ一言申添ヘテ
置キタイノハ英國人カラ見マスト矢張リ其感ジヲ懷ク者ガ少カラヌダラウト
思フ、デ、帝國政府ノ信義ニ付テハ一點疑ヲ懷クコトハナカラウト思ヒマス
ガ、矢張リ日本人民、日本ノ新聞ニ於テ我ガ同盟國ニ對シ頗ル不謹愼ニ亙ル
ヤウナ言語ガ遺憾ナガラ屢〓見受ケル、之ニ對シテ英國政府若クハ英國ノ
公衆ガ不愉快ナル感ジヲ抱クノハ、恰モ支那ニ於テチラホラ我〓ガ見出ス
日本ニ對スル惡聲ニ對シテ我ミガ遺憾ノ感ヲ抱クト同ジコトデアリマス、
デ是等ハ然ラバ政府ニ於テ如何ナルコトヲスル積リカト仰ッシヤッタヤウ
デゴザイマスガ、一個人ノ意思ヲ自由ニ表示スルニ付キマシテハ他國ノ政
府カラ······自國政府デモ之ヲ牽制スルコトハ困難デゴザイマス、況ヤ他國政
府カラ之ニ干渉スルコトハ事實不可能デアリマス、此點ハ特ニ心配ヲシテ居
ルコトデアリマシテ、兩國ノ爲ニモ輿論ノ改良ヲ致シマシテ、日英兩國政府
ノミナラズ、人民間ニ御互ニ了解ヲ深クシテ、斯ル不愉快ナル又不謹愼ナル
言說ヲ發表セナイヤウニナルコトヲ深ク希望スルモノデゴザイマス、此機會
ニ於キマシテハ私ハ御同然ニ努ムベキコトハ帝國內ノ輿論モ大ニ改良スルコ
トヲ努メナケレバナラヌト考ヘマスルノデゴザイマス、ソレカラ移民問題ニ
付キマシテハ是又帝國ニ於テ人口增加ト又海外發展ノ現今ノ狀勢ニ依リマシ
テ、我ガ同胞ノ發展ノ餘地ヲ見出スノハ政府ニ於テ疾ヨリ努メテ居ルコトデ
アリマス、移民調査費ヲ要求シテ議會ノ協賛ヲ得タル分ニ對スル各方面ノ調
査ヲ遂ゲテ、移民ノ手引キマデ致スト云フ位ノ覺悟ハ有シテ居ルノデアリマ
ス、從ッテ我ガ移民發展ノ障碍トナルベキコトハ出來得ル限リ排除ヲ努メテ
居リマス、此同盟國ニ於ケル我ガ勞働者ヲ入ルルコトニ困難ナル、是又政府
ガ年來苦心シテ居ル所デアリマス、此點ニ付キマシテ衆議院ニ於テモ貴族院
ニ於テモ旣ニ申上ゲタ通リ、戰爭開始以來更ニ殖民地政府及一面英吉利本國
ニ我意ノアル所ヲ披瀝シマシテ、目下其談話ガ繼續シテ進行中デゴザイマ
ス、此結果ハ豫想スルコトハ出來マセヌガ、滿足ノ結果ニ到達セムコトヲ現
ニ努力シテ居ル際デゴザイマス、左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=42
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043・杉田定一
○杉田定一君 唯今ノ御答辯ノ中ニ了解シ得タ所モアリ、又全ク要領ヲ得ナ
イ點モゴザイマスルガ、支那ノ方ニ於ケル同盟國人ガ惡聲ヲ放ツト云フコト
ハ、唯新聞紙上デ惡聲ヲ放ツト云フパカリデナク、ソレニ對シテ成ルホド他ノ
方デ同盟國人ガ我國ノ人ニ付テモサウ云フコトガアルカモ知ラヌガ、ソ
レヲ政府ガ責任ヲ持ツト云フコトハ出來ナイ、其事ニ付テ談判スルト云フコ
トモナカ〓〓ムヅカシイコトデアリマセウ、併ナガラ事實問題ニ付キマシテ
衝突ガ起ッテ居ル、或ハ鐵道ノ如キ、ソレハ申シマセヌデモ分ッテ居ルダラウ
ト思ヒマス、サウ云フ事實問題ガアル、併シソレハ矢張リ支那ニ移住シテ居
ル所ノ人民ガ本國へ言ウテヤル、サウスルト忽チ議會ノ問題ニナッテ政府モ
之ガ爲ニ動カサレル、其動カサレル爲ニ其結果ガコチラヘ及ンデ來ルト云フ
ヤウノコトガ往々アルヤウデアリマス、ソレハ固ヨリ他人ノ都合ノ好イコト
ヲ圖シテ己レノ國ノ利益ヲ犠牲ニシナケレバナラヌト云フコトハ同盟國ニ對
シテモアリマスマイ、併ナガラドウモ支那ニ於テハ同盟國人ノ間ニ却ッテサ
ウ云フコトガアルヤウデアリマス、或ハソレハ本國デハナイ、全ク移住民カ
ラ動カサレタコトデアルカ知レマセヌケレドモ、ドウモサウ云フコトガア
ル、併ナガラ事實移民カラ動カサレタコトニシテモ、各本國ノ方デ其ヤウナ
コトカ積リ積ッテ影響ヲ及ボスコトガアリハセヌカト恐レマス、ソレデ世間デ
言フノハ餘リ日本ハ拜英主義デ、餘リ英國ヲ信仰スル、英國ヲ崇拜シ過ギル
カラサウ云フコトガ起ルノデハナイカト言フ者ガ世間ニアルヤウデアリマス
ガ、ドウモ餘リ同盟國ヲ崇拜シテ信ジ過ギル所カラ左樣ナコトガ起ルノデハ
ナイカト云フヤウナ噂ガ世間ニアルヤウデアリマスカラ、唯新聞上ノ惡聲バ
カリデハナイ、事實ニ於テサウ云フコトノナイヤウニ致シタイト云フ考デア
リマシテ、此點ニ付テハ外務大臣ハ恐ラク一々御答辯ハナサレ惡イカモ知レ
マセヌケレドモ、共邊ニ付テノ御感想ガナイデモアルマイト思ヒマス、私、
唯新聞紙上ノコトバカリ申スノデハナイノデアリマス、ソレカラマア支那ノ
帝制問題ハ延期シテ居ルデハナイカト云フコトデアリマスガ、ソレハドウモ
通リ一遍ノ話デアッテ、續々內亂モ起リ、旣ニ秩序ヲ維持スル官憲ガ謀叛ヲ起
スト云フヤウナコトニ到ッテハ支那ハ殆ド闇黑ノヤウナ有樣ニナッテ居ルノデ
アル、唯表面延期ト言ッテ居リナガラ一方デハ帝制ノ準備ヲ進行シテ居ルト
云フヤウナ次第デアッテ、外ニ向ッテハ良イ加減ナコトヲ言ッテ、內ニ於テハサ
ウ云フコトヲヤッテ居ルト云フヤウナ次第デ、誠ニ是ハ(聽取シ難シ)苟モ警
告ヲシタ以上ハ徹底的ノコトヲ今日御ヤリニナル何ハナイノデアルカ、今ノ
ヤウナ有樣デアルナラバ寧ロ初メカラ警告ヲセヌ方ガ帝國ノ面目上又支那ノ
人心上ニ考ヘテモ宜イノデアル、唯チヨットヤッテ見ルト云フ位ノコトナラバ
寧ロ初メカラヤラヌ方ガ宜カッタノデハナイカト思フノデアリマス、併ナガ
ラ其邊ノ方法ニ至ッテハ一々此處デ御話ニナルコトモムヅカシカラウト思ヒ
マスガ、私ハ詰リサウ云フ所カラ此警告ガ徹底的ニ帝國ノ面目ノ立ツヤウニ
願ヒタイト云フ何デアリマシテ、今日ハ豫算總會デアリマシテ、私ハマダ要
領ヲ得テ居ラヌ事柄ガアル、御答辯ニ依ッテ要領ヲ得タ所モアリ、又要領ヲ得
ヌ所モ隨分多イノデアリマスカラ······併ナガラ又ソレハ他日ニ讓リマシテ···
···徒ラニ其事ニ付テ時間ヲ費スト云フコトモ何デアリマスカラ·····ドウカ、
御答ノ御ムヅカシイ所モアリマセウガ、併ナガラ此趣旨ノアル所ハ、ドウカ
成ルベク之ヲ徹底スルヤウニ御盡力ヲ願ヒタイ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=43
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044・馬屋原彰
○馬屋原彰君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 馬屋原彰君ハ何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=45
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046・馬屋原彰
○馬屋原彰君 チヨット発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 政府ニ質間デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=47
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048・馬屋原彰
○馬屋原彰君 希望デアリマスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御希望ヲ御述べニナルノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=49
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050・馬屋原彰
○馬屋原彰君 ハイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=50
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051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) ドウカ質問ノ範圍內デ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=51
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052・馬屋原彰
○馬屋原彰君 質問ノ續キデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御希望ト云フコトハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=53
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054・馬屋原彰
○馬屋原彰君 質問ニ付テデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=54
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055・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 單ニ質問ノミニ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=55
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056・馬屋原彰
○馬屋原彰君 質問デ卽チソレガ希望······宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=56
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057・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御述べニナッテ御覽ナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=57
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058・馬屋原彰
○馬屋原彰君 先刻內閣總理大臣ヨリノ御答辯、竝ニ午前ニ於テ文部大臣ノ
御答辯、是ハ本員盡ク敬承イタシマシタ、併ナガラ本員ガ午前質問イタシマ
シタ所ノ件々ハ、皆現狀ニ付テ質問ヲ致シタ譯デアリマスガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=58
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059・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 馬屋原君ニ議長ハ一言申上ゲタイト思ヒマス、午
前ニ引續キマシテ政府ニ對スル質疑デアルナラバ此際ニ許シマスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=59
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060・馬屋原彰
○馬屋原彰君 質疑デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=60
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061・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御希望ヲ御述ベニナルト云フコトナラバ、此時機
ハ御延シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=61
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062・馬屋原彰
○馬屋原彰君 質疑ニ續イテ居ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=62
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063・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 單ニ質疑ノ範圍內ナラバ御許シ申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=63
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064・馬屋原彰
○馬屋原彰君 質疑デゴザイマス、質疑ノ範圍デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御注意イタシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=65
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066・馬屋原彰
○馬屋原彰君 デ、サウ云フ譯デアリマスカラ、政府ニ於カレマシテハ、本
員ガ午前ニ質問ヲ致シマシタ件々ニ付テハ、尙ホ能ク學校ノ〓育ナリ、文展
ノ審査ノ方法ナリ、確實ナル調査ヲ遂ゲラレ、然ル上適當ナル改良手段ノ計
畫アラムコトヲ切ニ希望シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=66
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067・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 石渡敏一君ノ登壇ヲ促シマス
〔石渡敏一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=67
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068・石渡敏一
○石渡敏一君 私ハ總豫算ノ臨時歲出部、大藏省所管、第七款、帝國鐵道特
別會計貸付金、金二千萬圓トアルノヲ削ルト云フ修正案ヲ提出イタシマス、之
ニ付テノ理由ヲ述ベマス、我國ノ外國債ハ現今十七億カラ餘計アリマス、此
外國債ノ償還ニ付テ人ノ最モ注意スル所ノモノハ、大正十四年ニ償還ヲスル
第一囘第二囘ノ四分利付五億ノ英貨公債デアリマス、此償還ハ無論我國ニ力
ノ有ルト云フコトハ何人モ疑ハナイ所デアリマス、併シ何分ニモ高ガ五億圓
ト云フノデアッテ、償還期ニ至ッテ多少ノ書換······借換ト云フコトハ免レヌト
云フコトモ、亦我ミガ豫期シナケレバナラヌ所ト存ジマス、之ヲ借換ヘルト
云フコトニナレバ、ドウ云フ結果ガ起ルカト云フト、無論十年後ノコトデアリ
マシテ、今日カラ想像スルノハ早イト云フ說モアリマセウガ、又是ハ考ヘテ
置カネバナラヌコトデアラウト思フ、ソレニハ矢張リ今日外國ノ······卽チ我
ガ債權國ノ經濟上ノ狀態モ少シハ聞イテモ見、又書イタモノヲ見ナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス、ソレ等ニ依リマスルト、我ガ債權國ノ最モ富ンダ
ル國ト云ハレテ居ル一國ノ公債ノ利ノ高モ、一昨年ガ三分半デアッタ、ソレガ
昨年ニハ四分半ニ上ッタ、今暫クスレバ五分ニ上ルト云フコトハ噂ニ聞イタ所
ナノデアル、現ニ亞米利加ニ英佛ノ名義デ募ッタ公債ハ、其利子ガ五分ト云フ
コトヲ聞イテ居ル、而カモ戰爭ニ依ッテ英國ノ費ス所ノ戰費ハ日ニ三千五百
萬ト聞イテ居ル、此結果ヲ豫想シマスルト、日本ノ五億ノ公債ノ書換ガ十年
後デハアルケレドモ、有利ニ書換ヘルコトガ出來ルト云フコトノ見込ハ少シ
付カヌト斷言シナケレバナラヌト思フ、此場合ニ日本デハドウ云フ風ニシナ
キヤナラヌカト言ヘバ、先ヅ豫想ノ不利益ニ對シテノ豫防策トシテハ種々ア
ルト思フ、併ナガラ最モ有力ナルモノハ、日本ノ公債ノ買入償還デハナイ
カ、買入レテ償還スルノガ一番宜クハナイカト思ッテ居ル、殊ニ現今日本ノ經
濟上ノ狀態ハ、最モ此買入償還ヲナスニ適當ナル經濟狀態ト思フノデアルカ
ラ、成ルベク餘計買入ヲシテ後ノ苦ミヲ避ケルト云フコトガ最モ必要デハナ
イカト思フ、ソレニハ減債基金、減債基金ハ適當ナモノデハナイカ、、減債基金
ハ內外公債償却ノ積立金デアルト言ハナキヤナラヌト思フカラ、此積立金ヲ
增シテ、サウシテ買入償還ヲ餘計ニスル、買入償還ヲ餘計ニスル爲ニ減債基
金ヲ增加シテ置クト云フコトハ、當然ノ結論デアラウト思フ、是マデハ餘リ
議論ガナイ所デスガ、偖此減債基金ヲ增加スルトナルナラバ、何所カラ其增
加額ヲ持ッテ來ルカ、財源ヲ何所ニ求ムルカト云フコトガ第三ノ問題ニナル
ト思フ、ソレニハ從來一般會計カラ鐵道ニ貸シタ所ノ二千萬ヲ削ッテ之ヲ減
債基金ニ組入レテ、減債基金ヲ五千萬ニシテ、サウシテ前ノ目的ヲ達シタラ
宜カラウガ、ソレハ宜シイトシテモ、鐵道ニ貸シタ所ノ二千萬ヲ削ルト云フ
コトニ付テハ議論ガ大分アルト思フ、我〓ハ鐵道ガ租稅ニ依フテ經營サルベ
キモノデナイト云フコトヲ第一ニ平生カラ信ジテ居ルモノデアリマスカラ、
此點ニ付テハ前議會ニ於ケル鐵道特別會計法改正ノ際ニ於テ諸君等カラ論ゼ
ラレ、我〓モ論ジタコトデゴザイマスカラ、再ビ玆ニハ申上ゲマセヌノデゴ
ザイマス、ガ一ツ茲ニ述ベテ置カナケレバナラヌノハ、前大藏大臣ガ前議會ニ
於テ述ベラレタコトハ今日ノ所デハ巳ムコトヲ得ナイカラシテ二千萬ノ金ハ
鐵道ニ使フノデアル、減債基金ヲ削イテ鐵道ニ使フノハ已ムコトヲ得ナイ、
外ニ途ガナイカラ斯ウシテ置ク、若シモ公債デモ募ルコトガ出來ル時代ガ來
ルナラバ、サウ云フコトヲシナイデ、是ハ減債基金ニ還スト云フコトヲ言ハ
レタ、鐵道ノ爲ニ公債ヲ募ルコトノ出來ル時期ガ來タカ否ヤ、鐵道ハ公債ヲ
募ッテ經營スルコトノ出來ル時代デアリヤ否ヤト云フト、今日ハ鐵道ノ爲ニ
二千萬ノ公債ヲ募ルコトノ出來ル時代デアルト云フコトハ殆ド疑ナイ次第デ
アルト思フ、サウスレバ此二千萬ハ削ッテ減債基金ニ入レルト云フコトハ最
モ至當ノ場合デナイカト思ヒマス、之ガ爲ニ鐵道ニ特ニ不都合ガ生ズレバ格
別デゴザイマスガ、鐵道ニモ私ハ決シテ不都合ハ生ジナイト思フノハ前一
モ申ス通リ公債ヲ募ッテ鐵道ノ經營ヲスルコトガ出來ルシ、又實際見込ノ話
デアルケレドモ、事實出來ナイトナッタトキニハドウカト云ヘバ預金部カラ
金ヲ借リテモ經營ハ出來ル、是ハ分科會ニ於テモ大分質問ヲシマシタ結果カ
ラシテ、我〓ハサウ云フ考ヲ得タノデアリマス、ソレ故ニ、鐵道ニ貸シタ所
ノ二千萬ヲ削ッテ減債基金ニ入レテ差支ナイト云フ斷言ヲシテ差支ナイト存
ジマスル、斯ノ如クデアリマスルカラシテ修正案ヲ提出シテ決シテ不道理ノ
コトハナイ、之ヲバ政府案トソレカラ政府ガ······修正シマシタ案ト較ベテ見
タナラバドウ云フ違ガアルカト云フコトヲ考ヘテ見マスルト云フト、先ヅ第
一ニ政府ノ出シタ所ノモノト本案ト較ベテ見マスルト別ニ違ハナイノデア
ル、佛貨公債トカ證劵トカ云フノヲ一億法償還スル、此點ハ我〓モ政府ノ計
畫ガ宜シイト思フ、唯ソレヨリハモウ少シ進ンデ外國債ヲ償還スルナラバ、
減債基金ノ三千萬圓ヲ五千萬マデニ殖ヤシテ、サウシテ此際ハ外國債ヲ銷却
シテ貰ヒタイト云フ點ガ政府案ト違ッテ居ル、此違ッテ居ル點ハ我〓ノ方ガ
宜イト思フ、又實際出來ルナラバ政府ト雖モ是ハ拒ムコトハナイト我ミハ信
ジテ居ル、ソレ故ニ本案ト政府ノ原案ト較ベテ見ルト本案ノ方ガ宜イデハナ
イカ、又本案ト政府ノ修正案ト較ベテ見ルトドウ云フ結果ヲ得ルカト云
フト、是ハ較ベ物ニナラヌ程ニ本案ノ方ガ宜イノデアルカラ、先ヅ政府ノ修
正案ハドウ云フノカト云フト、減債基金ヲバ三千萬ヨリ五千萬ニ增加スルト
云フコトハ我〓ノ修正案ト同一デアル、唯財源ヲバ公債ニ依ルト云フコトデ
アル、ケレドモ公債ニ依ルトスレバ何故之ヲ二千萬ニ限ッタノカ理由ガ一ツ
モ立タヌト思フ、又何デ公債ヲ起シテマデモ外國債ヲ償還シナケレバナラヌ
カ、內國債ヲ起シテ償還シナケレバナラヌカト云フ理由ハ一ツモ說明サレテ
ナイノデ、場合ニ依ッテハ是ハ不利益デモスルノデアルト云フコトヲ暗ニ示サ
レテ居ルト思フ、ト云フノハ法律ヲ變更スル、法律マデモ變更スルガ、其法
律ハ有利ニ償還スルコトバカリヲ從來許シテアル法律ヲ變更シテ、不利益ニ
借換ヲシテモ差支ナイト云フ風ニ法律ヲ變更シテ行クノデアルカラ、此度ノ
外國債償還ノ爲ニ起ス所ノ內國債ハ何ノ目的、有利ノ目的デアルカ何ノ目的
デアルカ殆ド分ラヌ、且ツ二千萬ニ限ッタ此主義モ立タヌト思フ、是ハマア第
一時第二點ハ公債ヲ起ス、公債ヲ起セヌトキハ是ハドウナルデアラウカ、
全ク目的ヲ達スルコトガ出來ナクナル、又財源ガ一ツノ公債デアルカラシテ、
高クテモ或ハ公債ヲ募集シナケレバナラヌ、利息ガ高クテモ募集ヲシナケレ
バナラヌト云フノ結果ヲ惹起シハセヌカト思フ、又高イ公債ヲ募集シテマデ、
ナゼニ外國債ヲ還サナケレバナラヌト云フコトガ分ラナクナルト同時ニ、當
局者卽チ大藏大臣ガ高クトモ構ハヌ、公債ヲ募集シサヘスレバ責任ヲ果スト
云フヤウナ無責任ナル觀念ヲ起サシムル案デアルト思フ、斯ノ如キ案ト、
我〓ノ案ト較ベテ見テドチラガ善イカ惡ルイカト云フ、問題ニハ私ハナラヌ
位ノ惡ルイ案ト思ッテ居ル、又今日マデハ何人モ政府ノ修正案ヲバ善イトシ
テ辯護シタ人ヲバ聞イタコトガナイノデアル、政府モ此案ニ付テ辯明サレ
タコトガ一囘モナイノデアル、唯斯ウ云フコトヲシマスト云フコトヲ斷言ヲ
サレタルニ過ギナイ、ケレドモ此案ノ善イ所ヲ述ベラレタコトモナケレバ、
委員中カラ此案ガ善イトシ、案其モノガ善イト云フコトヲ述ベタ人モナイ
ノデアルカラ、我ミトシテハ我〓ノ案ヨリモ劣ルノミナラズ、政府ノ原案
ニモ劣ッタモノデアッテ、最惡ノ案デアルト、斯ウ言ッテ差支ナイト思ッテ
居ル、我〓ノ案卽チ本修正案、我〓ノ修正案ニ對シテ政府ハドウ云フ意見
ヲ採ラレタカト云フト、實ハ最初ハ全然反對シテ居ラレタノデ、是ハ先キ
ホド高橋男爵ヨリ政府ハ矛盾ノ言ガアリハシナイカト言ッタトキニ、大藏大
臣ハ矛盾ノ言ナシト云フコトヲ述べラレタガ、私ハサウハ認メテ居ナイ、
政府ノ言ハレタコトハ大分矛盾ガアリハシナイカト思フノデアル、第一ニ言
ハレタノハ、我ミノ案ニ反對サレタノハ二千萬ノ公債募集ト云フコトハ困難
デハナイカ知ラヌト思ヒマス、困難デアルト思ヒマスト云フコトヲバ第一ニ
大藏大臣ハ述ベテ、我〓ノ案ニ反對シテ居ッタノデアル、ソレカラ其次ニハ
今ノ所デ成ルホド公債二千萬圓募集スルコトガ出來ルカモ知ラヌガ、併シ今
後モ同ジヤウニ募集シ得ルカ否ヤト云フコトヲ今日デハ見込ヲ付ケル時代デ
ナイカラ、共見込ノ付ク時代ニナッテカラナラバ兎モ角モ、サウデナケレバ我
我ノ修正案ニ同意セヌト言ッテ拒ンデ居ッタ、又三ニハ三千萬ダケナラバ四分
半利付ノ英貨公債モ英國ニ於テ買付ケラルルガ、是ガ五千萬トナッテハムヅ
カシイ、ノミナラズ或ハ不可能トナルカモ知レマセヌト言ハレテ反對サレテ
居ッタ、四ニハ不利益デアル、不利益デアルガ爲ニ四分半利付ヲ買フト云フコ
トハ今日不利益デアルト云ウテ反對ヲサレテ居ッタ、ソレカラ五番目ニハ減債
基金ノ三千萬外國公債ヲ還シテ、其上ニ佛蘭西公債ヲバ四千萬近ク、三千八
百六十萬モ還シ、尙ホ其外ニ二千萬圓モ還ストナルト卽チ九千萬還ストナッテ
一、償還ノ程度、外國債償還ノ程度ガ過ギルト言ッテ拒ンデ居ッタノデアル、斯
ウ云フ風ニ初メハ反對シテ言ッタノデアリマス、所ガ終リニ至ッテ半分ダケハ
全ク變更セラレタト思フ、ト云フモノハ政府ガ今度案ヲ修正サレル、外ニ國
債ヲ償還スル爲ニ減債基金ヲ五千萬ニ殖ス、殖スト云フコトノ案ヲ政府自ラ
提出サレルノデアル、卽チ初メニ反對セラレタ所ノ半分、半面ハ旣ニ取消サ
レタモノトシナケレバナラヌト思フ、他ノ半面ハソンナラドウカ、鐵道ヨリ
二千萬圓ノ金ヲ削ッテ、サウシテ減債基金ヲ五千萬圓ニスル、其二千萬圓
ヲ削ルト云フ點ダケハ政府ハ不同意ヲ唱ヘテ今日モ居ルケレドモ、共不同意
ヲ唱ヘル程度ガ非常ニ變ッテ來タト思ヒマス、初メニ今ノ所デハ公債ハ今日
ハ募レテモ是ガ今後募レルカ否ヤガ分ラヌ時代デアルカラシテ、鐵道ノ二
千萬圓ヲ削ルコトハ出來ナイト言ッテ反對サレテ居ッタノデアリマス、所ガ
此出來ナイト言ッテ反對シタノヲバ、今度ハ考慮中ナリ、其點ハ考ヘ中ナ
リト言ッテ態度ヲ曖昧ニスルコトニナッタ、所謂艶消シニシタ次第デナイカ、
ケレドモ我〓ノ考ヘル所デハ政府ハ初メニハ成ルホドヒドク反對シタガ、次
ニハ反對ヲ弱メテ來タ、其弱メテ來タノハ何カト云フト、今後我〓ト同一ノ
態度ヲ取ッテ鐵道ヨリ二千萬ヲ削ラウト云フ案ヲ暗ニ含ンデ居ルノデハナイ
カ、近キ將來ニ於テ斯ノ如キコトヲナサルルノデハナイカト云フコトノ信用
ヲ我ミニ懷カシメタ、ソレ故ニ我ミハ政府ノ言葉ノミヲ取ッテ言ッテ見タナ
ラバ前後矛盾トカ、或ハ不信トカ斯ウコトガ我〓ハ言ヘヤウト思フ、ケレド
モ之ヲ咎ムルドコロデナクシテ我〓ノ說ニ近付イテ來ラレタ、將來全然同ジ
ニナリハシナイカト思フ、其事態ニ於テハ之ヲ私ガ答ムルヨリハ寧ロ進ンデ
來ラルル方ノ一日モ早イコトヲ希望イタスノデアル、谷メヌノミナラズ御出
デ下サルノ一日モ早イコトヲ希望スルト云フコトヲ私ハ述ベテ置キタイ、サ
ウシマスルト將來ハ同ジコトニナル、政府モ我〓ノ案ト同ジヤウナ案ニナル
ト云フコトヲ我〓ハ承知シテ居ル、今日ニナッテ何モサウ急イデ政府ヲバ同意
サセルニ及バヌヂヤナイカト云フ御說モ起ラヌトハ限ラヌト思ッテ居ル、是モ
御尤モニ違ヒナイガ、政府ガ我〓ノ案ニ同意シナイ所ノ理由ハ何處ニアルカ
ト思ッテ考ヘテ見ルト畢竟鐵道ガ可愛イノデハナイカ知ラヌト思フ、鐵道ニ貸
シテアル二千萬ヲ削ル、削ルト鐵道ガ困リハシナイカト云フノガ、政府ガ我
我ニ同意ヲシナイト云フ根本デアラウト私ハ考ヘテ居ル、ヨク所謂還元問題
ト云フノニ付テ政府ハ非募債主義ニ囚ハレテ居ルノデハナイカト云フ說ヲ唱
ヘタ人モアリマスガ、私ハ之ヲ全ク信ジナイ方デ、非募債主義デナクシテ、鐵
道政策ノ爲ニ政府ガ囚ハレテ居ルノデハナイカト思ハレル、七年計畫ノ爲ニ
ハドウシテモ二千萬圓必要トスル、而カモソレガ永イ間確カナ財源デナクテ
ハイカヌト云フ考ヲ確カニ有ッテ居タンダラウト思ヒマス、所ガ其考ハ宜イト
シテ、宜イニ違ナイケレドモ、ドウモ今日ノ時勢、ソレデハ迚モ立行カヌト云
フコトニナッテ、追〓是ガ變化ヲシテ來ルノデアル、ケレドモ未ダ變化ノ途中
ニアッテ全部變化シ切ラナイ時代デアルカラ、此病ヲ取ッテシマフノガ一番我
我ノ考デハ今日ニ必要デナイカ、政府ニ此考ヲ去ラシムルノガ最モ必要デナ
イカ、是ハドウシテモ少シ我〓ノ少數意見デハアリマスガ、本會マデモ提出
シテ、サウシテ諸君ノ判斷ヲ請フノガ最モ適當デナイカ、國ノ爲ニ必要デナイ
カト云フ考デ今日此修正案ヲ提出シタ次第ナンデアリマス、無論言葉ノ足リ
ナイ所ガアルコトハ承知デアリマスルガ、其意志ヲ採ッテドウカ成ルベク贊
成ヲ願フ、卽チ政府案ヲ排斥シテ、サウシテ我〓ノ所謂修正案ハ最モ適當ナ
モノト信ズルシ、是ハ豫算委員會デハ敗レタモノデアル、敗レタモノデアル
ケレドモ之ヲ一日モ忽ニシテ置クコトハ出來ナイ、成ルベクナラバ一日モ政
府ノ鐵道ニ對スル執著心ヲ止メサシムルノガ適當ナリト考ヘル以上ハ、少數
デアッタ所ノ此修正案ヲ本會ニ提出スルト云フコトハ我〓已ムコトヲ得ナイ
コトデアルト思フ、國ノ爲ニ亦必要ナコトデハナイカト存ジマスルカラ、諸君
ノ贊成ヲ願フ次第デアリマス、ドウカ宜シク願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=68
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069・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 仲小路廉君
〔仲小路廉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=69
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070・仲小路廉
○仲小路廉君 私ハ石渡敏一君ノ修正意見ニ贊成ヲ致ス一人デアリマス、本
問題ハ今日ハ世上ニ於テ重大ナル問題トナッテ居リマス、殊ニ又政治上ノ關係
ニ於キマシテモ極メテ複雜ナル關係トナッテ居ルノデアリマス、去リナガラ私
ガ竊ニ考ヘル所デハ本問題ハ決シテ斯ル複雜ナ問題デハナイノデアリマス、
事柄ハ至ッテ簡單ニシテ且ッ明瞭デアル、抑〓昨年政府ガ減債基金法ヲ改正
シ、鐵道特別會計法ヲ改正シ、非常ナ大業ナ方法ヲ執ラレマシテ、遂ニ今日
ニ至ッテ斯ル重大ナ問題ヲ惹起スコトニナッタノデアリマスルガ、去リナガラ
昨年斯ルコトノ出來タ其原因ハ何デアルカト申シマスルト、唯鐵道ノ改良建
設費金ニ要スル二千萬圓ノ金額ヲ調達セムガ爲ニ、鐵道資金二千萬圓ヲ調達
スルコトノ其便宜ヲ得ムガ爲ニ、日露戰役後將來ノ內外債ノ償還ニ必要ナル
減債基金法ニ手ヲ染メ、殊ニ鐵道ノ自營ヲ以テ本主義トナシテ居ッタ鐵道特
別會計法ニマデ、手ヲ著ケ、一般會計ト鐵道ノ特別會計トヲ相混亂シテ、
ツハ一般會計ニ尠カラヌ係累ヲ及ボシ、鐵道自ラハ自營ノ本主義ヲ丸デ放擲
シテ仕舞フ結果ニナルコトハ、何レノ點カラ考ヘテ見マシテモ此事柄ハ決シ
テ國家ノ爲ニ宜シクナイト考ヘタノデゴザイマス、ソレ故ニ當時我〓ハ當議
場ニ於キマシテモ、此事柄ハ將來ニ取ッテ甚ダ不得策ナルモノデアルト云フ
コトヲ痛論イタシタノデゴザイマスル、然ルニ昨年ハ不幸ニシテ當議場內ニ
於テ我〓ノ議ハ容レラレマセヌデ、少數ノ結果否認サルルコトニナッタノデ
アリマス、併ナガラ我〓ト反對ノ側ニ立タレタ諸君ニ於カレマシテモ、結果
ニ於テコソハ反對デアリマシタケレドモ、趣意ニ於テハ何レモ御同見デアッタ
ト存ズルノデアリマス、ソレ故ニ結果ニ於テハ其當時已ムベカラザル事由ノ
アルコトヲ御考慮ニナリマシテ、遂ニ政府ノ提案全部ニ御贊成ニナッタニモ
拘リマセズ、反對側ニ御立チニナリマシタ諸君ニ於カレマシテモ矢張リ我〓
ト共憂ハ共ニ致サレタノデゴザイマス、其結果ハ已ムニ巳マレナイ國家ノ
必要上ヨリ政府ノ提案ハ贊成ヲスルノデアルケレドモ、併ナガラ事柄ハ決シ
テ得策デハアルマイト考ヘルカラ、何トカ一時ノ場合已ムヲ得ヌト致シテ置
イテモ、他日經濟ノ關係ニ於テ鐵道資金二千萬圓ノ募集シ得ル時ガ來タナラ
バ宜シク是ハ元ノ通リニ還シテ置クガ宜カラウ、是ガ卽チ今日ノ所謂還元復
舊ノ問題デアリマスガ、若シモ他日ニ於テ鐵道資金二千萬圓ノ金額ヲ募集シ
得ル時機ガ來タナラバ、宜シク還元復舊ヲシテ置クガ然ルベシト云フコトノ
意見ヲ提案サレタノデゴザイマス、當時政府ニ於テモ此提案ノ理由ヲ至當ナ
リト認メラレテ、他日經濟ノ狀態ニ於テ募債ノ出來得ル時ガ來タナラバ、必
ズ之ヲ還元復舊スルト云フコトヲ明カニ聲明サレタノデアリマスル、卽チ昨
年ハ不幸ニシテ我〓ト結果ニ於テハ反對ノ側ニ立ッタニモ拘リマセズ、多クノ
諸君ノ御盡力ニ依ッテ政府モ亦斯ル明言ヲ致シテ居ッタノデアリマス、而シテ
昨年ニ比ベテ今年ノ經濟社會ノ狀態ハ我〓ニ於テハ殊ニ鐵道資金トシテ二千
萬圓ノ金額ハ之ヲ募債ヲナスニ決シテ難カラヌト當初ヨリ考ヘテ居ッタノデ
アリマス、又今日ノ經濟狀態ヨリ考ヘテ、昨日政府ガ當議場ニ於テ聲明セラ
レマシタル結果ニ依リマシテモ、實ハ本年度ノ豫算ヲ編製セラルル際ニハ須
ク其言明ニ依ッテ疾ニ豫算ニ於テ斯ル編製ガアルノガ當然デアルト考ヘタノ
デアリマス、然ルニ依然トシテ鐵道ノ資金二千萬圓ハ租稅、殊ニ非常特別稅ニ
淵源ヲ致シテ居ル其金額二千萬圓ヲ以テ、殆ド知ラザル眞似ヲシテ、依然鐵
道資金ニ繰込ンダノデアリマスル、今日ノ經濟狀態ノ上ヨリ考ヘルモ亦唯今
石渡君カラ御述べニナリマシタ如クニ將來ニ於ケル外債償還ノ大策ヨリ考ヘ
ルモ、又昨年貴族院ニ對スル政府ノ政治上ノ關係ヨリスルモ、何レノ點ヨリ
スルモ昨年ノ言質ヲ全ウスルコトハ是ハ當然デアルノデアル、其結果本年
ノ議場ニ於テ豫算總會ノ初メヨリ此問題ハ議場內ニ於ケル重要ナル問題ト
ナッタノデアリマス、又我〓ノ多クノ同僚諸君ハ連日連夜此點ニ付テ尠カラヌ
御盡力ニナッタノデアリマス、政府モ亦遂ニハ其議ヲ容レザルヲ得ナイ結果ニ
ナッタト私ハ思フ、卽チ今日更ニ二千萬圓ノ金額ヲ公債ヲ募集シテ之ヲ減債償
還ノ金ニ增加スル、ソレガ爲ニ遂ニ法律マデノ改正ヲ企テル是ガ所謂世上
ニ唱道セラレテ居ル妥協ノ成案ナルモノデアリマスル、私共ハ交讓妥協ハ憲
法上ノ考トシテ此事柄ハ無クチヤナラヌモノト思フ、決シテ一〓ニ妥協其モ
ノヲ非ナリト考ヘナイノデアリマス、交讓妥協ハ憲政上必要ノ關係デアルト
思フ、去リナガラ如何ナル場合ニ於キマシテモ其中ニハ前後一貫シタル條理
ガ無クテハナラヌモノダト思フ、又如何ニ交讓妥協ノ場合ト申シマシテモ、
國利民福ヲ計算ノ外ニ置クコトハ出來ナイモノダト思フノデアリマス、今囘
我ミノ同僚諸君ノ御盡力ニ依リマシテ、政府ハ旣ニ其提案ノ一部ヲ改メ二千
萬圓ノ公債マデヲモ募集スルコトニ同意ヲ表シテ參ッタ、果シテ然ラバ何故一
步ヲ進メテ、何故ニ一歩ヲ進メテ其募集シタル金額ハ之ヲ鐵道ノ資金トシナ
イノデアリマスカ、而シテ一般會計コリ鐵道ニ交付サレル金額ハ先キニ申シ
マス通リニ租稅、就中非常特別稅ニ關スル金額デアリマスカラ、宜シク之ヲ
以テ減債償還ノ基金ニ充テルガ至當デアル、是ガ卽チ前後條理ノ立ッタ所以
ト考ヘルノデアリマス、然ルニ此條理ヲ無視シ、鐵道ノ爲ニハ非常特別稅ニ
關スル其金額、卽チ利子ノ付カザル金額ヲ、ソレヲ鐵道ニ交付シテ、假令共
內部ニ於テハ多少ノ協定ハアリト致シマシテモ、兎ニモ角ニモ非常特別稅ニ
淵源シタル金額ヲ以テ之ヲ鐵道ノ建設改良費ニ充テ、而シテ外債償還ノ爲ニ
必要ナリトシテ更ニ高利ノ金額ヲ借入ルル便利ヲ開カムガ爲ニ、玆ニ法律マ
デ改正シテ此事ヲ爲ス、是ガ果シテ國家民人ノ爲ニ利益アル所業ト申サレル
デアリマセウカ、私ハ遺憾ナガラ斯樣ナ言葉ヲ用ヒルコトヲ好マナイデアリ
マスガ、唯一時ヲ姑息シ、一時ヲ彌縫セムガ爲ニ條理ノ一貫セザルコトヲナ
シ、國家民人ノ爲ニモ不利益ヲ忍ンデ遂ニ事玆ニ至ッタモノダト申ス外ハナ
イト存ジマス、交讓妥協ハ必要デアリマス、去リナガラ斯ノ如ク首尾一貫セ
ザル、何レカラ考ヘテ見テモ不條理ナル斯樣ナ結果ニ陷ルコトハ、遺憾ナガ
ラ私ハ之ニ對シテ不同意ヲ表セザルヲ得ナイノデアリマス、唯茲ニ同僚諸君
ニ向ッテ深ク共勞ヲ謝シマスノハ、蓋シ今日內外多事ノ場合ニ於テ豫算ノ不成
立ヲ來タスト云フコトハ實ニ憂フベキモノデアルト御考慮ニナッタノデアリ
やっと、故ニ忍プベカラザルヲ忍ンデ、一歩タリトモ我〓ニ近寄ッテ來タ以上
先ヅ十分ナルコトハ期シ難イト致シテモ、セメテ之ヲ以テ滿足スルガ宜
カラウト御考慮ニナッタ次第ト思フ、此事モ私ハ又諸君ニ對シテ深イ同情ヲ致
スノデアリマス、是モ我〓同僚諸君ノ御厚意ト致シマシテハ斯ノ如キ御方向
ヲ御採リニナリマスコトモ已ムヲ得ヌコトト存ジマス、唯私ハ政府ニ向ッテ
疑フ、實ニ政府ノ行動ハ前後一定シタル方針ナク、前後一貫シタル言說ナ
〃、左顧右町、常ニ所說ハ變ッテ參ルノデアリマス、私共ハ忍ブニ忍ビ難キ
コトマデモ忍バレテ居ル同僚諸君ニ向ッテハ御同情イタスノデアリマスガ、
併ナガラ政府ノ行動ニ付テハ實ニ不感服ヲ表セザルヲ得ナイノデアリマス、
更ニ私ハ又敢テ政府ヲ信ゼヌトハ申サナイ、又謂ハユル今日ノ妥協案ナル
モノニ對シテハ必ズ政府ニ於テモ最善ノ力ヲ盡サレテ、衆議院ノ通過ヲ期ス
ルコトニ御盡力ニナルニハ相違ナイト存ジマス、併ナガラ衆議院ハ又獨立ノ
議政ノ機關デアル、假令政府ノ意思ガソレニ及プト致シマシテモ、其結果ガ
如何ナルコトニ立至ルヤハ豫メ之ヲ測ルコトガ出來ナイモノデアル、サスレ
、、今日豫算審査ノ當時ニ於テ現ニ或ル一定ノ意見ヲ有ッテ居ッタ者マデモ、
今囘謂ハユル政府ノ妥協案卽チ二千萬圓ノ新規公債募集ノコトニ依ッテ當初
ノ意見ヲ幾分緩メラレタコトニナルノデアリマス、是ハ卽チ今ノ事柄ガ成立
スルト云フコトノ條件デアリマス、然ラバ其條件ハ少クトモ一院ヲ通過シ
テ、我ガ貴族院ノ審査ニ付セラルル時機ニナッテ、茲ニ初メテ兩方ヲ考量イタ
シテ、適當ナル處置ヲ執ルハ至當ト考ヘタノデアリマス、故ニ我〓ハ此意見
ヲ以チマシテ、過日我ガ同志ノ一員ヨリ願ハクハ今ノ事柄ガ衆議院ヲ通過シ
テ、貴族院ノ審査ニ付セラルルマデハ當豫算ノ審査モ亦ソレマデハ御見合セ
ニナルガ至當デハナイカト云フ意見ヲ提案シタ人モアッタ、不幸ニシテ是亦容
レラレナカッタ、サスレバ此上ハ必要ナル條件ト認メテ居ルモノガ未ダ確カ
ニ成就スル見越ノ付カナイ以上ハ、當初ノ意見ニ依リマシテ、鐵道ニ對スル
經費ハ非常特別稅ナル資金ヲ以テ充用スルコトハ不當ナリト認ムル意見ヲ執
持イタスコトハ當然ノ筋合ト考ヘルノデアリマス、尙ホ本件ニ付キマシテ
ハ昨年以來我〓ハ同ジ意見ヲ以テ同ジ行動ヲ執ッテ進ンデ參ッタノデアリマ
ス、隨分種々ノ苦心モ經テ參ッタノデアリマス、假令今日一面ニ於テ我〓ノ
意見ガ幾分容レラルルマデノ境涯ニ逹シタトハ申シナガラ、昨年以來我ミノ
同志者、同行者ニシテ茲ニ修正ノ意見ヲ提出セラルル以上ハ、之ヲ唯其儘ニ
打棄テ置ク譯ニハ到底參ラナイノデアリマス、或ハ本年モ亦當議場ニ於テ少
數ノ運命ニ遭遇イタスカモ存ゼスノデアリマス、併ナガラ主張ト意見ノ爲ニ
ハ昨年ト均シク其行動ヲ同ジウスルコトハ政治上當然ノ關係ト心得マス、願
ハクハ昨年以來行動ヲ共ニ致シマシタル諸君ハ申スニ及バズ、願ハクハ我〓
ノ微意ヲ諒察セラレマシテ一人タリトモ多數ノ御贊成アラムコトヲ偏ニ希望
イタシマス
〔子爵前田利定君演壇ニ登ル]発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=70
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071・前田利定
○子爵前田利定君 昨年モ畏敬スベキ先輩ノ仲小路君ト所見ヲ異ニ致シマシ
テ、此壇上ニ相見エマシタ、本年モ亦遺憾ニモ意見ノ相違ヲ致シマシテ、再
ビ此所ニ見エマスノハ本員ノ深ク遺憾トスル所デアリマス、本員ハ豫算第一
分科會ニ於キマシテモ、豫算總會ニ於キマシテモ、三度此壇上ニ於キマシテ
モ修正說ニ反對ヲ致シマスノデアリマス、併ナガラ其理由ハ每度申上ゲマス
通リニ、此非還元ヲ合理的ノモノト認メテ原豫算案ヲ贊成イタシマスノデア
リマセヌ、將來敬服スベキ非還元論ニ遭遇イタシマセヌ限リハ、本員モ亦修
正說論者ノ如ク熱心ナル還元論者デアリマス、故ニ還元論ヲ正論ナリト主張
スル點ニ於キマシテハ、本員敢テ修正說論者ニ一步モ讓ラナイノデアリマ
ス、且ツ其論據ノ根柢ガ同一デアリマスニ拘ラズ、其歸著點ヲ異ニ致シマス
譯ハ至極簡單デアリマス、卽チ還元ノ目的ヲバ達シヤウトスル其道行ガ單ニ
異ナルノミデアリマス、修正論者諸君ハ恰モ旅順ノ堅塞ニ向ッタ所ノ白襷隊ノ
如キ意氣ヲ以テ肉彈戰ヲヤラレヤウト致サレテ居ルノデアリマス、本員モ此
肉彈戰ガ功ヲ奏シテ還元ノ目的ガ最善ニ達成セラルルコトデアリマスレ
バ、本員不敏ト雖モ其先鋒タルヲ辭セナイノデアリマス、併ナガラ此肉彈戰
ハ還元ト云フモノヲ自滅ニ導ク所ノモノデアリマス、謂ハユル還元論ニ取ッテ
ハ不利ナル軍略デアリマス、故ニ本員ハ甚ダ迂遠デハアリマスケレドモ、電光
型ノ塹壕ヲ掘リツツ一步一步其目的ヲ達成スルニ外ナラヌノデアリマス、是
ハ還元ノ目的ヲ達成スルノ捷徑デアラウト信ズルノデアリマス、故ニ其目標
ハ同樣デアリマスケレドモ、戰術ガ違フノデアリマス、今一ツニハ段々修正
論者ノ御意見ヲ承ッテ居リマスルト云フト、此還元ノ正論ナルコト及現下ノ財
政ニ於テハ必要ナル措置デアルト云フ效能ヲバ諄々トシテ述ベラレルノデア
リマス、併ナガラ本員ハ斯ク考ヘルノデアリマス、旣ニ還元ノ正論デアルト
云フコトモ現下ノ財政ニ對シテ此措置ヲ執ラナケレバナラヌト云フ其效能ノ
コトニ付キマシテハ昨年來耳ニ胼胝ノ出ルホド拜聽シテ居ル位デアリマシ
テ、今更事新シク還元ノ效能ヲ述ベル必要ハナイト存ジマスノデアリマス、
本員ハ修正說論者諸君ガ此還元ノ效能ヲ說カレル間ニ、一步進ンデ如何ニセ
バ此還元ノ目的ヲ達スルコトガ出來ルカト云フ方法ヲ案出シテ居ルノデアリ
やっ、又案出シタノデアリマス、言ヲ換ヘテ申シマスレバ、修正論者諸君ガ
此還元ハ正論デアル、正論デアルガ故ニ、イヤデモ政府ニ於テ此措置ヲ御執
リナサイ、斯ク强ヒラレルニ反シマシテ、本員ハ如何ニセバ政府ヲシテ此還
元ヲ實行サセルコトガ出來ルカ、實行シ易イ方法ハナイカト云フ點ニ付テ〓
究ヲ進メタノデアリマス、之ヲ藥ニ譬ヘテ見マスルト云フト修正說論者諸
君ハ此藥ハ無額ノ良藥デアル、良藥デアルカラ苦カラウガ强ヒテ御飮ミナサ
イ、斯ウ申サレルト同樣デアリマス、昔ノ醫者ハ多ク斯ウ云フ筆法デアリマ
ス、病人ガ苦イト云ッテモ、此藥ハ利クカラ强ヒテ御飮ミナサイト云ッテ口ヲ
割ルヤウニシテマデモ飮マセタモノデアリマス、近頃ノ進ンダ醫者ハ決シテ
サウ云フヤウナコトハシマセヌ、謂ハユル「オブラート」ニ包ンデ飮ミ易イヤ
ウニシテ病人ニ飮マセルノデアリマス、考ヘテモ御覽ナサイ、三尺ノ童子ト
雖モ苦イカライヤダト云ッテ、カブリヲ振ル其子供ヲ捕マヘテ强ヒテ藥ヲ飮マ
セルト云フコトハ隨分ト骨ノ折レルモノデアリマス、修正說論者諸君ノ執ラ
ルル所ノ方法ハ恰モ舊式ノ醫者ノ筆法デアルノデアリマス、本員ハ成ルベク
實行シ易イ方法ヲ講ジテ、サウシテ實行ヲスル方ガ醫者ノ則ルベキ途デアル
ト斯ウ信ズルモノデアリマス、然ルニソレガ修正說論者諸君ト本員等ト考ノ
相違ハ單ニソレダケノコトデアリマス、元來此還元問題ハ度〓中上ゲルガ如
ク、誠ニ簡單ナル純粹ナル財政問題デアラネバナラヌモノデアリマス、然ルニ
遺憾ニモ今日ハ我ミノ豫期ニ反シマシテ政變問題ニ移リ變ッタノデアリマス、
政府ガ若シ今少シ道義ノ御觀念ガ厚クアラレテ、サウシテ政府ノ御力ガ·····
結合力ガ御强クアッタナラバ、此問題ハ政變問題ニナラズシテ解決セラレベキ
モノデアッタラウト深ク遺憾ニ堪ヘナイノデアリマス、併ナガラ理窟ハ理窟ト
致シマシテモ、實際是ハ政變問題ニ移リ變ッテ居ルノデアリマス、本員等ガ修
正說論者諸君ト轡ヲ駢ベテ鞭ヲ擧ゲテ勇往邁進シタナラバ、ドウ云フ結果ニ
至ルデアリマセウカ、豫算ハ不成立ニナル、必ズヤ政變ガ起ルデアリマセ
ウ、豫算ハ成立スルヤ、不成立ニナルヤ、政府ガ瓦解スルカ、存續スルカ、是等
ノコトハ本員等ノ握レル「ハンドル」ノ廻シ方一ツニ因ルノデアリマス、是
愼重ニ此場合ニ於テ考ヘテ見ナケレバナラヌト思フノデアリマス、固ヨリ憲
政治下ニ於キマシテハ政府ノ更迭ヤ豫算ノ不成立ト云フコトハアリ得ベキコ
トデアリマス、又珍シカラヌコトデアリマス、例ヘバ輔殉ノ責ヲ全ウシナイ所
ノ政府ノ更迭、國政ニ適應シナイ所ノ豫算ノ不成立ノ如キハ國家ニ於テ利益
アルトモ害ハ無イモノデアル場合モアリマスカラ、本員ハ政變ノ惹起トカ、
豫算ノ不成立トカ云フ聲ヲ以テ本員等ヲ脅威スルコトヲ好マナイノデアリマ
ス、又本員等ハ恐レナイノデアリマス、豫算ガ成立シタカラトテ御目出タイ
譯デモアリマセズ、豫算ガ不成立ニナッタカラト云ッテ決シテ不目出タイノデ
ハナイノデアリマス、豫算ノ成立不成立ハ吉凶以外ノコトデアリマス、故ニ不
徹底ナル所ノ大局論者、又豫算ノ不成立論ノ前ニハ本員ハ屈服ヲシナイノデ
アリマス、併ナガラ此大正五年度ノ豫算ガ不成立トナリマシタナラバ、本員等
ノ熱望スル所ノ修正說論者諸君ト同樣ニ最モ熱望スル所ノ此還元ト云フコト
モ事實不還元同樣ナ結果ニ葬リ去ラレテ仕舞フノデアリマス、是ハ熱心ナル
還元論者ト致シマシテハ遺憾至極ノコトト感ズルノデアリマス、恐ラク修正
說論者ト雖モ斯ル結果ガ湧イタナラバ必ズヤ御遺憾ノコトデアラウト本員モ
思フノデアリマス、謂ハバ戰サニハ勝ツケレドモ實ノナイ勝利デアル、悲哀ノ
勝利デアル、本員等ノ目的トスル所ト云フモノハ還元ニアリマシテ豫算ノ不
成立ヤ政變ノ惹起ト云フコトハ目的以外ノコトデアリマス、然ルニ目的トス
ル所ノ果實ハ得ラレナクシテ目的デナイ所ノ收穫ガ偶〓手ニ這入ルト云フコ
トニナッテハ是ハ誠ニ無意義ナ政戰デアルノデアリマス而シテ又今日還元ノ
議論ガ自然ノ發展ノ結果ドウナルデアラウト申シマスルト、先キニ申述ベマ
シタ通リ豫算ノ不成立ニナルト云フコトハ是ハ大地ヲ打ツ槌ハ外レルトモ此
觀測ハ決シテ外レッコハナイノデアリマス、是ニ於テ本員ハ大悟徹底ヲ致シタ
ノデアリマス、假令不十分ナル形デアリマシテモ此還元ノ目的ヲ達スルノガ
是ガ本員ノ務デアル還元論者ノ務デアルト斯ク信ジタノデアリマス、修正說
論者諸君ニ對シテモ相成ルベクハ大悟徹底セラレムコトヲ勸告スルノデアリ
マス、此度政府ハ一法律案ト一追加豫算案ヲ旣ニ衆議院ニ御提出ニナッタサウ
デアリマス、本員ハ未ダ十分ニ其內容ハ詳ニ致シマセヌケレドモ、仄ニ承ル
所ニ依リマスルト云フト、此度ノ御提案ハ貴族院ノ要望スル所ノモノヲ御參
酌ニナッテ、而シテ御提出ニナッタ趣ニ承リマシタ、而シテ本員ハ政府ノ執ラレ
タル所ノ苦衷ト、幾分カ貴族院ニ對シテ誠意ヲ御示シニナッタ點ヲ諒ト致シ
マシテ、圓滿ナル空氣ノ中ニ此還元問題ヲ解決イタシタイト考ヘルノデアリ
やっく、言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ政府ハ此一法律案ト一追加豫算案ノ此「オ
ブラート」ガアレバ、飮ミニクイ所ノ還元劑ガ飮易イト申サレルモノデアリ
マスカラ、本員ハ此「オブラート」ニ包ンデ、此還元ノ良藥ヲ政府ニ呈セムト
スルノデ、是ハ良醫トシテノ爲スベキ本分ト考ヘルノデアリマス、固ヨリ一
法律案ト一追加豫算案ナルモノハ謂ハバ現ニ貴族院ニ繫屬シテアル所ノ大正
五年度總豫算ノ修正的ノ豫算デアリマスカラ、之ヲ考ヘテ見マスレバ誠ニ筋
ノ通ラヌコトモアルヤウニ考ヘラレマス、又不十分不滿足ノモノデアルト云
フコトハ修正說論者諸君ト共ニ同樣ノ見解ヲ有ッテ居ルノデアリマス、併ナガ
ラ此還元ト云フコトニ付テ最善ト云フコトガ旣ニ不可能デアルト云フ以上ニ
ハ本員ハ已ムヲ得ズ次善ヲ盡サナケレバナラヌト思フノデアリマス、此次善
ヲ盡スト云フ意味ニ於テ甚ダ不感服デハアリマスケレドモ、此原豫算案ノ維
持ヲ致ス所以デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=71
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072・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 本員ハ發言ニ先ダチマシテ簡單デアリマスガ、一種
政府ノ意志ヲ確メテ置キタウゴザイマス、チヨット玆デ質問ヲ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=73
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074・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 政府ハ此際衆議院ニ對シテ······明治三十九年六號ノ
法律ニ第五條ノ除外例ヲ設ケラレタサウデゴザイマス、併ナガラソレハ均シ
ク矢張リ國債整理基金ノ豫算ニ這入ルモノデアリマシテ、語ヲ換へテ申シマ
スレバ今此議場ニ懸案中ノ豫算モ變更シ修正スルコトガ名ハ追加豫算ト申シ
マスケレドモ、追加豫算ノ場合ハ會計法五條ニ關クベカラザル必要、若クハ
已ムヲ得ズシテ生ジタル豫算ノ不足ニ對シテ起ルモノデアリマス、此度衆議
院ニ於テ提出セラレタル追加豫算ハ闕クベカラザル必要トハ認メラレヌノデ
アリマス、何トナレバ旣ニ一月二十二日ニ於テ若クハ二十九日ニ於テ政府ノ
大藏大臣ハ決シテ其必要ヲ認メテ居ラヌノデアリマス、故ニ此ニ於テ本員ハ
總理大臣ニ伺ヒタウ存ジマスルケレドモ、却ッテ御煩ハシウ存ジマスルカ
ラ、念ノ爲ニ法制局長官ニ伺ヒタウ存ジマス、元來斯ノ如キ場合ニ於テ本員
ガ見ル所デアレバ明治三十九年法律第六號第五條ノ改正案ト云フベキモノハ
單行法ヲ定メ、又此豫算ノ修正デアルベキモノヲ追加豫算トシテ出サレタル
法律上制度上ノ見解ハ如何デアリマスカ、總理大臣ヨリ御辯明ヲ願ヘバ有
難ウ存ジマスルガ、却ッテ煩ハシウ存ジマスルカラ、制度上ノコトデアリマ
スルカラ一言法制局長官ヨリ伺ヒマシテ、然ル後本員ハ發言イタシタウゴザ
イマス
〔副議長侯爵黑田長成君議長席ニ著ク〕
[政府委員高橋作衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=74
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075・高橋作衞
○政府委員(高橋作衞君) 唯今ノ御尋ニ御答イタシマスルガ、此度出シマ
シタル所ノ單行法ハ會計法第五條ヲ改正スルト云フノデハゴザイマセヌ、
而シテ又追加豫算ヲ出シマシタノハ已ムヲ得ザル所ノ理由ニ依ッテ出シタ
ト云フノデアリマス、ソレダケ御答イタシマス、斯ル例ガアルノデアリマ
ス
〔男爵目賀田種太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=75
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076・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 本員ハ今討議中ノ國債整理基金法ノ關係ヨリ生ズル
此豫算ノ問題ニ付キマシテハ是ハ重大ナル事柄ト存ジマス、元來本員等ガ國
債整理基金ノ改正ニ、昨年臨時議會ニ於テ反對ノ意ヲ表シマシタルノハ實ハ
唯單ニ財政上ノ問題ト云フノデハアリマセヌ、實ニ今日ノ國家ノ基礎トシテ
是等ハ變更スベカラズト云フ意見デアリマス、此見地ヨリ見マスレバ、敢テ其
間ニ於テ政府ト貴族院トノ間ニ於テ、彼是ノ議論ノアルベキモノデハナイト存
ジマス、故ニ昨年ノ本院ノ意志ノアル所ニ適ウテ政府ハ其通リニ其國債整理
基金ノ制度及豫算ヲ提出セラルベキガ當然ト存ジマスル其間ニ於テ敢テ政變
トカ其他財政ノ問題トカ云フベキ程ノコトデハナイト存ジマス、誠ニ簡單ナ
ル問題ト存ジマスノ此點ニ於テ本員等ハ昨年來意見ヲ陳述イタシテ居ルノデア
ルカラ、何等外ニ懷抱スル所ハナイノデアリマス、然ルニ偶〓貴族院ガ昨年以
來ノ所說ニ思ヒマシテ今モ之ヲ繼續スルニ拘ラズ、政府ハ一種ノ法律案及追
加豫算ヲ衆議院ニ去ル十日ヲ以テ提出シタルコトダサウデアリマス、此點ニ
付キマシテ今方ニ本員ハ政府ニ尋ネマシタ所ガ、政府ハソレハ別物ナリト言
ハレマス、其御言葉ハ一應如何樣デモ宜シウゴザイマスルガ、其精神、其實體
ニ於テハ然ルベカラザルコトト存ジマス、何トナレバ假令名ハ何ト設ケマシ
テモ、矢張リ國債整理基金法五條ノ改正、幾ラ門戶ハ別ニシテモ、入口ハ別ニ
シテモ入ル所ハ何デアル、出ヅル所ハ何デアル、卽チ追加豫算ノ形式之ヲ證明
スル、卽チ一般會計ノ國債整理基金ノ部ニ於テ入ルモノハ、此度ノ借換ニ依ツ
テ入ルモノデアル、出ヅルモノモ同ジク出ヅルモノデアッテ、要スルニ國債整
理基金三千萬圓ヲ五千萬圓ト改正スルト云フノト同ジコトデアル是ハ本員
ノ見ル所ヲ以テスレバ、實ニ容易ナラヌコトト存ジマス、何トナレバ今之ヲ包
含スル所ノ總豫算ハ此議場ノ懸案デアル、此議場ノ懸案トナッテ貴族院ガ之
ヲ討議シ、之ヲ決定スルノ自由ト權利ヲ有スルニ拘ラズ、同時ニ政府ハ之ヲ改
正シ、之ヲ變更シ、之ヲ修正セムトスル所ノ法律ト豫算ヲ衆議院ニ提出スル
ト云フコトハ、誠ニ憲法ノ精神ニ反シ、卽チ貴族院ガ此所ニ於テ豫算ヲ議定
スルノ權利ヲ侵スモノト本員ハ見マス、若シヤ斯ノ如キコトガ將來例ヲナサ
ムトスルナラバ、是ハ大ニ考フベキコトト考ヘマス、此點ノミナラズ大體ニ
於テ此國債整理基金ノ昨年ノ改正ニ對シテ、貴族院ノ懷抱スル意見ハソレノ
ミデアリマセヌ、將來國債ノ償還ヲ確實ニスルト云フコトデアル、之ト共ニ
同時ニ茲ニ生ジ居ル海軍補充費若クハ鐵道繼續費ノ問題ヲモ明カニシテ、其
財源ヲ確定セムトスルノニアリマス、一體獨リ國債整理基金ノミナラズ、此豫
算ニ於テハ種々ノ問題ヲ含ンデ居リマス、一應海軍補充費ニ付テ簡單ニ陳述
シテ置キマスガ、其財源ノ不確定ト云フコトハ業ニ已ニ本院ノ見ル所ト存ジ
ぜひ、 財源ガ不確定ノミナラズ、其海軍ノ編成ソレ自ラモ本員ノ見ル所ヲ以
テスルト頗ル不確定デアルノデアリマス、卽チ昨年來海軍當局ガ八八艦隊八
四艦隊ト稱スルノ名義ハ、承リマスルト誠ニ理由モ根據モ無キコトデアリ
きや、是ハ現ニ豫算ノ審査ニ於テ本員ガ承ル所ニ依レバ、八八ト稱シ八四ト
稱スルノハ新聞紙ノ名ヅケタモノト云フコトデアリマス、俗ニ稱スル世間ノ
名稱デ、帝國政府ガ下シタル名稱デハナイサウデアリマス、是ハ正シク海軍大
臣加藤友三郞君ヨリ承リタリ、若シ違アラバ來ッテ辯明セラルベシ、又併セテ
共八四、八八ヲ構成スル艦隊ノ編成ソレ自ラモ、本員ニ於テハ頗ル不分明ノ嫌
ナキ能ハズ、何トナレバ當議會ノ初メヨリ、本員ガ尋ネル所ニ從ッテ變化ス
ルノデアリマス、一々辯明ハアリマスルガ、今共是非ハ爭ヒマセヌガ、後ノナ·
尋ヌレバ從ツテ變ハル、是ニ於テ本員ハ海軍、國防ノ名義ニ於テ、實際ニ於
テ未ダ〓究セラレザルコトヲ認メマス、故ニ縱シヤ大正六年度ニ於テ如何ナ
ル財源ヲ供給セラレテモ、其財源ヲ要スル海軍國防問題ソレ自ラニ於テハ、
本員未ダ了知セザルコトヲ此ニ於テ言明シテ置キマス、又鐵道ノコトニ於テ
モ旣ニ度〓申シマシタコトデアルカラ今玆ニ更ニ申ス勞ヲ省キマス、要スル
ニ此豫算ニ於テ卽チ國債整理基金ノ原案、修正ト否トニ付テハ旣ニ問題ノ存
スル所、本員ノ喋々スルコトヲ須ヒマセヌ、併シ是ハ政變トカ、或ハ單一ナ
ル財政問題トカ云フニアラズ、無論財政問題デハアリマスルガ誠ニ極メテ分
リ易イ問題デ、斯クアラネバナラヌ故ニ申シタ譯デアリマス、決シテ此爲ニ
爭ヲ好ミ、議論ヲ致ス程ノモノデハナイノデアリマス、故ニ昨年モ其希望ヲ
致シタノデアリマスルカラ、政府ハ政府者タルノ德義上十分ニ之ヲ容レラレ
テ提出セラルベキコソ其責任、義務ナリト存ズルノデアリマス、併ナガラ
事此ニ至ッテハ如何トモスルコトハ出來ナイ、本員ハ玆ニ意見ヲ述べ、併セテ
此豫算ニ於テ海軍ノ財政上ノミナラズ、國防其モノニ付テモ本員ノ如キハ未
ダ了解スル能ハズト云フコトヲ述ベテ置キマス
〔公爵德川家達君議長席ニ復ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=76
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077・徳川家達
○議長〔公爵德川家達君〕 此際會議時間ノ延長ヲ宣告イタシマス、高木男爵
ノ登壇ヲ促シマス
〔男爵高木兼寬君演擅ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=77
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078・高木兼寛
○男爵高木兼寬君 私ハ原案贊成者ノ一人デアリマス、聊カ卑見ヲ述ベテ贊
成イタスノ趣意ト致シタウ在ジマスノデアリマス、抑〓還元問題ト申スコト
ハ何ノ爲ニ起リシモノカト申セバ、三十七八年ノ戰役ニ被リタル國病ヲ癒サ
ムガ爲ニ起ッタル問題デアルト思フノデアリマス、病ヲ治スニ付キマシテ御醫
者方ガ澤山御揃デ、殊ニ病理學者ハ甚ダ多ク御出デナサイマシテ、種々御討
論下サルノデ有難ク謹聽イタシテ居ッタノデアリマス、併ナガラ實際ニ徵シテ
見マスレバ、殊ニ私ハ過去五十年來經驗イタシタ所ニ依リマスレバ理論ト實
際トハ共趣ヲ異ニ致シマス、理論通リニ我ガ取扱フ所ノ病者ヲ治療シ得ル場
合ハ誠ニ少イノデアリマス、此通リト深ク信ジテ手ヲ著ケテ見マスルトナカ
ナカ案外ノコトガアリマシテ、玆ニ於テカ咄嗟ニ機宜ノ處置ニ出デナケレバ
ナラヌコトガ多イノデアリマス、故ニ自カラハ實際ヲ最モ重シトスル一人デ
アリマス、此度ノ豫算案ニ對スル施設ハ所謂實地ノ問題デアリマシテ、理論ノ
問題デハナイ、卽チ理論ヲ措イテ實際ニ就ケバ吾人ノ目的ヲ達スルコトガ出
來ルコトハ前田子爵ノ御演說ニナッタ通リデアリマス、理論ニ走スレバ失敗ニ
終リ實地ニ走スレバ目的ヲ達スルト云フ譯ニナルノデアリマスルカラ、本員
ハ病理學者ノ言フ御說モ貴重ナルニ拘ラズ之ニ御同意スルコトガ出來ナイノ
デアリマス、尙ホ其他ニ本員ガ當豫算ノ成立ヲ切望シテ止マザル理由ガアリ
やっく。ソレノ曾テ此席へ登壇ヲ致シ政府當局ニ質問ヲ申上ゲタリ又着望ヲ述
ベタコトガゴザイマス、其時ニ又他ノ場合ニ於テ申スヤウニト云フ議長ノ御
注意ヲ戴キマシテ延期イタシマシテ、豫算總會ニ於テ其目的ヲ果シタノデア
リマス、斯ノ如キ問題ヲ以テ政府當局ニ御尋イタスノモ抑、國國ノ健全ハ何
ヲ以テ致スベキカト言ヘバ國民ノ體力ニ在ルト存ズルノデアリマス、然ルニ
今ヤ帝國國民ノ體力ハ實ニ哀ナ有樣デアリマス、先ヅ英、佛、獨、日本ノ四箇國
ヲ對照シテ見マスレバ我ガ日本ホド體力ノ振ハヌ國ハナイノデアリマス、今
日體力ノ威力ノ大ナルコトハ諸君モ御承知ノ通リニ歐羅巴諸國ニ於テ歷然ト
シテ現ハレテ居リマス、體力ノ弱イ國ハイザト云フ場合ニ臨ンデ其目的ヲ達
スルコトノ困難ナルハ私ガ申サズトモ、明カナ譯デアリマス、故ニ陸軍大臣
ニ御尋ヲ致シタコトハ陸軍ノ徵兵檢査ホド國民ノ體力ヲ檢査スル場合ハナイ
ノデアリマス、今日ノ場合ニ於テハ之ニ依ルヨリ外ニ好材料ハナイノデアリ
マス、然ルニ陸軍大臣ノ御答辯ニ依リマスレバ徵兵檢査上甲種ノ合格者ハ次
等ニ減少シテ參ルノデアリマス、卽チ十七年前ト十七年後ノ今日トヲ對照シ
マスレバ、十七年前ニハ千人ノ壯丁中四百人ノ甲種合格者ヲ得タ、又十七年
後卽チ大正三年ニハ三百五十八人ダケノ甲種合格者シカ得ラレヌノデアリマ
ス、玆ニ於テ入用ノ人員ヲ充タスニ御差支ハナイカト御尋ハ致サナカッタノ
デアリマスケレドモ、陸軍大臣ノ御答ニ依リマスレバ甲種合格者ガ不足ノト
キハ乙種合格者ヲ以テ其數ヲ充タスカラ隊ノ編成上ニ不足ハナイト云フ御答
辯ガアッタノデアリマス、然レドモ實質上ニ於テハ乙種合格者ヲ繰上ゲテ我ガ
軍隊ヲ編成スル有樣ニ至ッテ居ルト云フノハ事實デアルト云フ御說デアリマ
シタ、斯ノ如キ有樣ニナッテ居リマス、尙ホ身長ノ點ヲ申セバ五尺三寸以上ノ
者ハ年々ニ增スケレドモ、五尺以上五尺三寸マデノ者ハ身長ガ減ズルト云フ
現象デアリマス、身長ダケハ伸ビルト云フコトヲ示シテ居リマスケレドモ、
共體格ハ前ニ申述ベマシタ數ニ依ッテ明カニ漸次下落シテ居ルコトヲ證明ス
ルノデアリマス、又軍隊中ニ共外若イ人〓中ニ肺病及肋膜等ノ著シク增加イ
タシタルコトハドナタモ御承知ノ通リデアリマス〓尙ホ是レ以外ニ亙ッテ肺
病及肋膜ノ多クナリシコトハ十七年前ニ較ベテ見ルト今日ハ六倍强デアリマ
ス、實ニ恐ルベキ趨勢デアリマス、尙又國民中ニ近視眼ノ多クナリシコトハ
十七年間ニ三倍ホド近眼ガ出來マシタ、是モ材料ハ陸軍當局ヨリ頂戴イタシ
タノデアリマス、卽チ豫算委員第四分科ノ速記ニ載ッテ居リマスカラ、詳細ノ
點ハソレニ依ッテ御覽ヲ願フノデアリマス、斯ノ如ク男子ダケハ分ッテ居リマ
スカ、女子ハ斯ノ如キコトガナイカト申セバ、女子ニ於テモ必ズアルニ相違
ナイノデアリマス、之ニ對シテ當局ハ如何ナル設備ヲサレタカト云フノガ問
題デアリマス、第一ニ本豫算ニアリマス所ハ文部省ニ於キマシテ衞生主事ヲ
置カレマスト云フ件デアリマス、今日マデノ所ハ學校衞生ヲ主管イタスモノ
ガ一人モナイノデアリマス、然ルニ幸ニモ規模ハ甚ダ小チルモノデ遺憾ニ存
ズル次第デアリマスケレドモ、手初メトシテ一人ノ衞生主事ヲ置キ、之ヲシ
テ學校衞生ヲ管掌セシメテ、卽チ靑年兒童ノ健康ヲ保護スルノ目的ニ充ツ
ル費用ハ此豫算ノ成立ニ依ッテ初メテ出來ルノデアリマス、是等ガ如何ニ健康
不良デアルカト云フコトハ豫算委員會ノ速記錄ニゴザイマスカラ、御一讀ヲ
煩ハスコトニ致シテ茲ニハ申述ベマセヌ、其次ニゴザイマスモノハ內務省デ
アリマス、內務省デ保健衞生費トシテ二萬圓ノ要求ガゴザイマス、我國ノ衞
生ハ現在ノ所デハ殆ド急性ノ傳染病豫防ヲ取扱フニ過ギナイ設備ノモノデア
リマス、急性傳染病以外ニ至ッテ其力ヲ致スコトハ甚ダ今日マデハ微ナルモノ
デアリマス、ケレドモ此本豫算ニ依リマシテ保健衞生事業ニ著手スルコトニ
ナリマスレバ急性傳染病以外ノ慢性傳染病其他一般ノ健康增進上ニ必要ナル
調査ヲ遂ゲ、以テ國民衞生ヲ保護スルノ端〓ガ開ケルコトニナルノデゴザイ
p.y. 此問題ハ誠ニ金額ハ些カデアリマスケレドモ、六千萬乃至七千萬ノ國
民ノ健康保護ノ上カラ見レバ非常ニ重味ノアルモノト申ス外ナイノデアリマ
ス、故ニ一日モ早ク之ニ著手イタスト云フコトハ國家ノ爲ニ關クベカラザル
コトト深ク信ジテ疑ヒマセヌ、尙又先年本院ガ協賛イタシマシタル工場法デ
アリマス、此工場法モ今日ニ至ルマデ實施サレズニ居リマス、幸ニ來ル大正五
年度ヨリ工場法ヲ實行セム爲ノ費用ノ要求モアルコトハ各位御承知ノ通リデ
アリマス、此工業ニ從事スル者ノ健康ノ良否ハ國產ノ盛否ニ大ナル關係ガア
リマス、國民ガ健康ナレバ生產ノ業モ益〓進ミ、又製品モ精良ニナリ、製品ノ價
格ヲ增スト云フコトニナルノデアリマス、之ヲ一日遲ラスコトヲ致シマスレ
バ從ッテ國利ハ減ズルト云フコトニナリマス、長年ノ間希望イタシタル工場
法ヲ本年ヨリ行フト云フコトハ極メテ大切ナルコトデ、各位ニモ必ズ御同感
デアルニ相違ナイト信ジテ居リマス、以上三點ハ此豫算案ノ成立ニ依ッテ忽
チ著手ノ出來ルコトデアリマス、而シテ其事柄タルヤ國家ノ重大ナル問題ニ
相違ナイト深ク信ジテ居ル譯デアリマス、尙ホ一言申上ゲタイコトハ國民道
德ノ涵養デアリマス、斯ノ如キ問題ガ我國ニ於テ盛ニ唱道サレルノハ何ノ爲
デアルカト申セバ、結局ハ國民ガ國體及政體ノ組織ヲ未ダ審ニシテ居ナイ爲
デアリマス、故ニ國民性養成ノ標準ヲ明カニシテ、是ガ徹底ニ對スル施設ヲ
十分ニスルト云フコトハ今日ノ場合必要デアラウト思ヒマス、ソレ故ニ政府
當局ニ於カレマシテハ、是ガ完備ヲ努メラレムコトヲ切ニ希望イタスト共
ニ、右申述ベタル理由ヲ以チマシテ本員ハ本案卽チ原案ヲ贊成イタス次第デ
アリマス
〔仁尾惟茂君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=78
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079・仁尾惟茂
○仁尾惟茂君 本員ハ修正案ニ對シマシテ反對ノ意見ヲ抱イテ居リマスル
ガ、此修正案ハ早クモ本ヲ忘レテ末ニ走ルノ嫌ガアリマス、抑〓昨年ニ於キ
マシテ、減債基金ヲ割イテ一般會計ヨリ鐵道資金ニ二千萬圓ヲ貸付ケタルモ
ノハ、此主タル原因ハ鐵道ノ財源ニ在ッタカ、又基金ノ點ニアッタカト申シマ
スレバ當時鐵道ノ財源卽チ二千萬圓ト云フモノガ必要ナリト認メマシタ、然
ルニ當時財政上ノ困難ニ依リマシテ是ガ財源ヲ得ルコトガ難イ故ニ、遂ニ之
ヲ減債基金ヨリ二千萬圓ヲ割クト云フコトニナリマシテ、又減債基金ノ有樣
ハドウ云フコトデアルカト言ヘバ、數年ノ經驗ニ依レバ、五千萬圓ノ中僅ニ一
千萬圓ヨリ外債ノ償却ハ出來ナイ、アト四千萬圓ハサマデ差急ガナイ所ノ内
國債ヲ返シテ居ルト斯ウ云フ有樣デ、是亦數年來ノ實驗ニ依リマシテ、外債ヲ
返サムト欲シマスレバ正貨維持ノ爲ニナシ得ラレヌト云フ、誠ニ悲シキ狀態
デアリマシタ爲ニ、僅ニ一千萬圓ヨリ返サナイ、デアルカラ是ヨリハ三千萬圓
以上ハ必ズ返スコトト致シテ、アト二千萬圓ハ一般會計ヘ戾スト、斯ウ云フコ
トニナリマシタ、卽チ是マデ僅ニ一千萬圓ノミ返シテ居ッタモノヨリハ一步ヲ
進メテ、三千萬圓ハ固ク返スト斯ウ云フコトニシマシタノハ、、卽チ數年來ノ經
驗等ニ依リマシテ、是ナラバ正貨ノ維持上ニモ差支ナイト云フ見渡シヲ付ケ
テ致シタノデ、サウシテ是ハ決シテ三千萬圓ニ限ル譯デハナイ、共以上ハ卽チ
國庫ノ剩餘金等モアレバ、幾ラデモ此以上返スト云フコトニ致シテアルノデ
アル、サウシテ此鐵道ノ二千萬圓ト云フモノハ種々繰合セヲ付ケマシテモ付
キマセヌ故ニ、一方ニハ基金ト云フモノガ殆ド遊ンデ居ルト云フカラ、卽チ
國庫經濟ノ狀態ヨリシマシテ困難ナ中ニ成ルベク金ヲ遊バセナイヤウニ、有
益ナモノニ對シテ之ヲ使ッタ譯合ニナッテ居ルノデアル、サウシテ此二千萬圓
ト云フ鐵道ニ財源ヲ與ヘマシタ事柄ハ、昨年ト今年ト變ヲテ居ルカト申シマス
ルニ、決シテ此財源ノ二千萬圓ノ鐵道ニ必要ト云フコトハ變ッテ居リマセヌ、
卽チ當院ノ多數ガ昨年卽チ僅ニ七八箇月ノ前ニ於テ必要ナリト認メタ所ノ二
千萬圓デアルト云フコトハ、是ハ卽チ此本問題ヲ論ジマスルニ付キマシテ一
言申シテ置キマス、是ヨリ修正案ニ對シマシテ意見ヲ述べタイト考ヘマス、ソ
レデ修正案ノ論據ト致シマスル所ハ何デアルカト言ヘバ、大藏大臣ノ口約ニ
於テ、他日公債ヲ募リ得ル場合ガアッタナレバ是ハ公債ヲ募ッテ鐵道ノ財源ト
シ、一般會計ヨリノ貸金ハ是ハ基金ニ返ス、斯ウ云フ口約ヲ本ト致シマシテ、
サウシテ此口約ハ卽チ今日金融ハ緩慢、公債ハ募レル、卽チ此事實ヲ現實ニ
致シタ、デアルカラ今日ヨリ直チニ此事ヲ履行セネバナラヌ、斯ウ云フノガ卽
チ修正案ノ基ク所デアリマス、付キマシテ此公債ヲ募リ得ル場合ト云フコト
ニ付キマシテ、ココガ一ノ論據ノ、論點ノ岐ルル所デアルト思ヒマスカラ、之
ヲ一ツ確メテ掛リタイト考ヘマス、ソレデ口約ノ公債ヲ募リ得ル場合ト云フ
ノハ一時切リ······卽チ本年ハ之ヲ募リ得ルモ來年ハ覺束ナシト斯ウ云フ場
合モ大藏大臣ノ口約ノ中ニ這入ルノデアルカ、之ヲモウ一ツ事實デ申シマス
レバ、本年ハ公債モ募集シ得ラルルカラシテ公債ノ財源ニ依ル、來年ハ募債シ
得ラレヌカラシテ、一般會計ヨリ再ビ資源ヲ仰グ、斯ウ云フコトニナリマ
ス、扨サウ云フコトガ事實ニ於テ爲シ得ラレルカ得ラレヌカト云フコトガ是
ガ事實問題デアリマス、若シ一朝一般會計ヨリ今年公債ガ募リ得ラレルトシ
テ此二千萬ヲ一般會計ニ對シ、若クハ他ノ財源ニ之ヲ移シタナラバ再ビ鐵道
ガ此財源ヲ得ラレルヤ否ヤ、是ハ今日ノ財政狀態ニ於キマシテ私ハ甚ダ難イ
コトト思ヒマス、寧ロ再ビ得ルコトハ出來ヌモノデアラウト思ヒマス、サウシ
タトキニハ忽チ鐵道ノ財源ト云フモノニ對シテ非常ナ不安ヲ與ヘル、斯樣ナ
モノデアリマスカラ、一時的デ卽チ今年ハ募リ得ルモ、來年ハ募リ得ナイト云
フ場合ヲ決シテ公約ノ公債ヲ募リ得ル場合トハ見ラレ得ナイ、大藏大臣ガサ
ウ云フ積リデアッタトシテモ我〓ハサウ云フ不定ノコトハ認メラレヌト考ヘ
マット、又モウ一ツ此場合ト云フコトニ確メテ置カナケレバナラヌコトガアリ
マスノハ、高利ノ場合、卽チ公債ヲ募レバ鐵道自家ニ於テモ不利ナコトニナ
ル、又之ヲ募レバ他ヘ害ヲ及ボス、卽チ民間一般ノ資本ヲ妨ゲ、經濟ヲ紊リ、又
ハ旣定ノ公債ニ對シテモ影響ヲ及ボスト云フ、斯ウ云フ場合モ矢張リ大藏大
臣ノ公債ヲ募リ得ル場合ト認メラレルカト云フニ、決シテ是モ私ハ此場合モ
認メ得ラレヌ場合ト思フ、ソレカラモウ一ツハ、鐵道ハ自ラ算盤ヲ取ッテ、少々
利ガ高クテモ是ハ募債シテ資本ニ充テテ宜シイト、斯ウ云フ場合ニアリマシ
テモ、若シ是ガ他ニ害ヲ及ボスヤウナ高利デアレバ決シテ是ハ許スベカラザ
ルモノデアリマスルカラ、是亦許ス場合デナイト考ヘマス、斯ク先ヅ一時ノ
場合ハ其公約ノ範圍內デ極メマシタトキニハ、扨此目下來ッテ居ル所ノ公債
ヲ募リ得ル經濟狀態ハ如何デアルカ、是ガ自然的ノモノデアルカドウカト云
フコトヲ玆ニ一ツ確メナケレバナリマセヌ、是ハ決シテ自然的卽チ國ノ殖產
工業等ノ增進發達、謂ハユル國力ノ發達カラ自然ニ來タモノデアルカ、卽チ此
多數ノ增加ヲ得、之ニ依ッテ····緩慢ヲ來タシタ所ノ原因ハ自然的デアルカ如
何カト申スト、決シテ國力發達カラ來ル自然デハナイ、全ク一時時局ノ爲ニ來
タト云フコトハ明カニ證跡ガアリマスノデ、ト云フノハ試ニ昨年十二月マデ
ニ正貨ノ這入リマシタ高ガ凡ソ一億八千萬、若クハ二億ト致シマシテ、サウシ
テ其正貨ト云フモノハ貿易自然ノ力ニ依ッテ來タモノデアルカト申シマスレ
バ、此事實ヲ調ベテ見マスレバ凡ソ六千萬圓ハ兵器彈藥ノ賣却代、九千萬圓ハ
軍需品ノ賣却代、其他三千萬ガ船會社等ノ保險料トカ、彼是デ以テ凡ソ一億八
千萬ト云フモノニナッテ、卽チ國力發達ノ自然カラ來ル狀態ノモノデナイト云
フコトヲ明カニ證シマス、サウ致シマシテ卽チ曩ノ公約ノ公債ヲ募リ得ル場
合ト云フノハ卽チ一時ノモノデナイ、サウシテ此金融緩慢ト云フモノハドウ
デアルカト云ヘバ、是ハ全ク自然カラ來テ居ラナイ所ノ一時的ノモノデアル
ト云フコトガ、玆ニ判定イタシマスレバ始メテ此修正案ノ公債ヲ募リ得ルカ
ラ、直チニ本年ヨリ之ヲ施行スルト云フコトハ自ラ是ハ消滅ニ歸シハセヌカ
ト考ヘマス、ソレデ修正論者ハ全ク今日ノ事實ガ實現シテ、直チニ大藏大臣ノ
公約ノ公債ヲ募リ得ルト云フコトガ今日ノ事實ニ實現ヲ致シテ來タカラ、直
チニ公債ヲ募ッテ之ヲ財源ニ充テルト、斯ウ論ジマスルガ故ニ、右ノ如ク私ハ
決シテ是ハ大藏大臣ノ公約ト云フモノハ一時的ノモノデナイ、卽チ本年募リ
得ルモ來年ハ募リ得ラレスト云フ場合デナイ、又經濟上ノ狀態ニ於テハドウ
カト云フニ、是ハ決シテ自然的ノモノデナイ、卽チ一時ノモノデアル、此二
ツヲ以テ私ハ修正案ト云フモノハ成立タナイ、卽チ自然ニ是ハ消滅スルモノ
ト云フコトヲ一ツ申シテ置キマスノデ、詰リ私ハ此鐵道ノコトニ付キマシテ
ハ素ヨリ今日ノ儘ノ現狀デ之ニ安ンズルノデハナイ、之ニ對シテハ整理ノ問
題モアリマスルシ、又廣軌狹軌ノ軌道ノ問題モアリマス、デ是ハ大キニ期ス
ル所ガアリマスルガ、兎ニ角今日ハ斯ノ如キ重大、且ツ調査等ノ細密ヲ要ス
ル問題ノ爲ニ、唯今ノ現狀ヲ維持スルニ止マルカト申セバ、是ハ決シテサウ
ハ參リマスマイト考ヘマスルノデ、ドウカ鐵道ハ先ヅ今日ノ儘デ一ツ維持ヲ
致シテ參リ、サウシテ望ム所ハ之ヲ他日ニ期スルト云フコトニ致シテ、之ヲ
シタイモノト考ヘマス、ソレカラ又モウ一ツ修正案ハ預金部ノ貸付事情ニ依
ルト、斯ウ云フコトガ一ツアリマスガ、是亦決シテ新シク起ッタ問題デハア
リマセヌ、昨年ニ於キマシテ此問題ガ起リマシテ色〓〓究調査ヲ致シマシ
タ、ケレドモ預金ノ性質ト致シテ、斯ノ如ク長期ナルモノニ對シテ容易ニ貸付
クベキモノデナイ、又元來ガ地方民間ノ零碎ナル資金ヲ集メタモノデアル故
ニ、是ハ地方殖產工業等ノ資金ニ充テルガ穩當デアルト云フヤウナ論モアリ
マス、兎ニ角當院ハ預金部ヨリ此財源ヲ與フルノハ不可ナリト認メマシテ、ソ
レデ一般會計ヨリ二千萬圓ヲ出シタコトデアリマスルガ、是ハ旣ニ昨年最早
決ッテ居ルコトデアリ、少數ノ人ノ考ニハソレハアリマシタケレドモ、本院ノ
多數ハ之ヲ不是ナリト認メタコトニ決ッテ居リマス、又昨年ト本年トガ預金部
ノ狀態ガ變ッタカト申シマスレバ、寧ロ昨年ヨリモ本年ハ此融通ヲ益〓不是ナ
リト認メル、ト云フノハ此正貨ノ問題ニ對シマシテ政府ニハ種々預金ノ金ヲ
以テ一時保留ノ策ヲ圖ッテ居ルト申スコトデアリマシテ、尤モ是ハ今日預金部
ノ仕事トシテ此正貨ヲ成ルタケ保留スルト云フコトハ、最モ宜シキ策デアラ
ウト考ヘマスル、ソレデ決シテ昨年ヨリモ本年ガ變ハリテ預金ヨリ融通ガ出
來ルト云フコトハアリマスマイト考ヘマスル、ソレデ旁〓〓此鐵道ノ財源ヲ或
ハ一年切リ、翌年ヲ測ルベカラヌ所ノ公債ニ依リ、若クハ賴ムベカラヌ所ノ預
金ノ金ニ依ルト云フコトハ如何ニモ鐵道財源ヲシテ不安ニ陷ラスルモノデア
リマス、若シ是ガ鐵道財源ニシテ斯樣ナ未定ナモノデモ宜シイト云フコトデ
アレバソレハ宜シウゴザイマスルガ、事業ハ一定シテ益〓進ンデ行キマスル
シ、一朝財源ヲ絕チマスレバ忽チ鐵道ヲシテ立往生セシムルト云フヤウナコ
トニナリマスルカラ、是ハ又鐵道ハ鐵道ナリトシテ考ヘナクテハナリマスマ
イト考ヘマス、又ドウカ此鐵道ノ財源ト云フコトハモウ少シ御考ヲ願ッテ、愈ゞ
不必要トアレバ宜シウゴザイマスルガ、此必要ト云フ點ノ消滅シナイ限リハ
是ハ是デ矢張リ相當確實ナ財源ヲ備ヘナケレバナリマスマイト考ヘマス、又
全體此修正案ト私共ハ大體ニ於テ大ニ考ガ違ッテ居リマス、ソレヲモウ一ツ申
述ベタイト思ヒマスルノデアリマス、ソレデ修正者ノ意見モ何故ニ此論ガ起ツ
タカト云ヘバ此度正貨ノ俄ニ劇增ヲシ、內地ノ金融ガ緩慢ノ跡ガアル、是ヨリ
起ッタノデアリマスルノデアラウト思ヒマス、然リマスルニ此度ノ正貨ノ劇增
イタシマシタコトニ對シマシテハ、ドウカ眼ヲ經濟ノ大體ニ一ツ注イデ是ハ
處理シナケレバナラヌモノデアルシ、區々タル考ヲ以テ是ハスベキモノデナ
1、卽チ此俄ニ出來タル所ノ正貨ハ如何利用スベキヤ、卽チ此道ヲ講ズルコ
トガ最モ肝要急務ト存ジマスル、ソレデ第一此利用策ニ付キマシテハ第一ニ
ハ外債ノ償還、第二ニハ此正貨ノ蓄積及保留ノ策ヲ講ジマシテ、サウシテ金融
ヲ調和スルト云フコトヲ最モ主眼トセナケレバナラヌ、サウシテ又外債ヲ償
却スル點ニ於キマシテモ、ドウ云フヤウニ此金ヲ費消スル方ガ宜イカト云ヘ
一、私共ノ素論トシテハ借換銷却ヲ以テ最モ良キコトトスル、何トナレバ此
借換銷却ハ內債ヲ借リテ外債ヲ還ス、卽チ目下內債ヲ募集シテ金融ノ調和ヲ
ナシ、外ハ債務ヲ減少スル、斯ウ云フコトデ一擧兩得デアル、ソレ故ニ私共
ハドウカ此正貨ニ對シマシテハ凡ソ少クモ一億圓位ノ公債ヲ募リタイト斯ウ
考ヘテ居リマス、ソレデ又其募リマスル方法ニ於キマシテハ固ヨリ此募集ナ
ドト云フコトハ實際經濟界ニ當ッテ見マスレバ誰以テ之ヲ豫定ガ出來マセヌ
モノデアリマスルカラ、先ツ一億圓ノ內幾千萬ヲ募債シテ見テ、果シテ之ヲ
呑込ミ消化シ得ルナラバ第二又幾千萬ヲナニシ、サウシテ尙又障リナク之ヲ
消化シ得ルト云フナレバ第三又幾千萬圓ヲ出シ、サウシテ見テ厭氣ガアルナ
レバ、不進ミナレバ之ヲ止メ、又其上ニモ進ムナラバ之ヲ呑マス、斯ウ云フ
ヤウニ此實際ノ遣リ方ニ最モ餘地ヲ與ヘマシテ、募リ得ルダケヲ募ル、其募
リ得ルダケト云フノハ詰リ金融調和ヲ圖リマスル程度ヲ以テ募ルト致シテ、
ドウカサウ云フヤウナコトニシテ、及ブダケ內債ヲ金融調和ヲ闕カナイ以上
之ヲ募リ、サウシテ又之ヲ外債償還ニ充テルトキニ當ッテモ是亦常則ニ拘ラ
ズ、固ヨリ外債ヲ償却スレバ少シデモ有利ニスルガ當リ前デアル、ケレドモ
ガ今日ハ少シノ計算ノ上ニ於テ損ヲシテモ、今マデ實ニ我國ガ煩ッテ居ル所
ノ國ノ大病患ニナッテ居ル所ノ外債ヲ一文デモ餘計還スノガ國ノ益デアル、卽
チ債務ノ減返ヲスルノガ最モ急務デアルト云フ一段高キ處カラ之ヲ見マシ
テ、普通ノ計算等ノコトノ利鞘デアルトカ何トカ云フ少シ不利ナルコト
ハ忍ンデモ、玆デハ債務ヲ減ジテ國ノ煩ヲ減ズルコトガ主デアル、斯ウ云フ
一ツ考ヲ採ッテ私ハ致シタイ、斯ウ考ヘテ居リマシタノデアリマス、又此度ノ
正貨ハ如何デアルカト云ヘバ國力自然ニ來タモノナレバ抛ッテ置イテモ國ヲ
逃ゲハシマセヌデスガ、斯ノ如キ一時ニ來タモノデアリマスル故ニ是ハドウ
デモ斯ウデモシテ捉ヘテ置カナクテハ是ガ逃ゲル、一旦逃ゲタナラバ再ビ返
ラナイト云フモノデアルカラ、ドウカ良イ方法ヲ以テ之ヲ取逃サナイヤウニ
致シタイ、斯ウ云フノガ主デアル、ソレ故ニドウカ第一ニ國庫ニ於テモ、第
二日本銀行ニ於ラモ預金部ニ於テモ力ノ有リタケ之ヲ一ツ保留スルノ策ヲ執
リ、又第二民間ニ於キマシテハ外國ノ短期ノ公債、若クハ證劵等ニ應募シ、
又ハ外國債ヲ買入レルトカ、又ハ正貨ノ······資本ヲ要スル事業ハ努メテ之ヲ
起シ、殊ニ支那地方ニ於キマシテハ最モ之ヲ放資シテ宜シイコトデアリマ
ス、斯樣ニシテ有ラユル策ヲ以テ此正貨ヲ繫グノ方策ト云フコトハ十分ニ努
メネバナラナイ、是ガ卽チ今度ノ正貨ト云フモノガ不自然ニ來タモノデアル
カラ、兎ニ角是ハ臨機應變ノ策ヲ以テシ、外債ヲ還スニモ一〓ニ之ヲ基金デ
スルトカ、二千萬圓ニスルトカ何トカ言ハズシテ、最モ大キク玆ニシテ置クト
云フコトガ最モ大事ナコトデアラウト考へテ居リマス、實ハ斯ウ云フ私ハ考
ヲ有ッテ居リマシタ所ガ、政府ヨリ出デマシタ所ノ豫算ハ僅ニ三千八百六十萬
圓デアリマシテ、實ハ私共ハ失望ヲ致シタ、モウ少シ氣張ルコトガ出來ナカッ
タデアラウカ、甚ダ不足ヲ感ジテ居リマシタ所ガ、此頃二千萬圓ノ募債ヲス
ル、斯ウ云フコトガアリマスルノデ、實ハ私共ノ希望カラ申シマスレバ、此
二千萬圓ハ少クモ五六千萬圓位ノコトニシテ、御出シヲ願ッタラ宜カッタラウ
ニト云フ位ノ考ヲ私ハ有ッテ居リマス、サウシテ見マスレバ、隨分經濟狀態
ヲ考ヘルト、ソンナニ日本ノ此小サイ經濟界デハ呑切レルモノデハナイト云
フ御論モアリマセウガ、私ハ斯樣ナコトハ決シテ一旦豫算ヲ定メタコトニ依ツ
テ、是非ソレダケ無理カラデモセヨ、經濟界ヲ亂シテモセヨト云フ考ハアリ
マセヌ、豫算ニ於テハ十分ニ積ッテ置キマシテ、サウシテ經濟界ノ狀況、卽チ金
融調和ノ程度ヲ以テ之ヲ處シテ行ク積リデアリマスルカラ、成ルベク一ツ經
濟界ガ許セバ多クノ公債ヲ募ッテ多クノ債務ヲ減ジタイ、斯ウ云フニ過ギマセ
ヌノデアリマス、右ノ如キ私ハ見地ヲ以テ此正貨ノ利用竝ニ金融調和ノ策ヲ
目的ト致シテ居リマシタノデアリマスルガ故ニ、ソレデ從ッテ外債ト云フモ
ノモ努メテ多額ノ償還ヲナシ、事實ニ於テハ減債基金還元ノ目的ヨリモヨリ
多ク目的ヲ達スルノデアル、斯ウ云フ考ヲ有ッテ居リマシタノデアリマスル、
デ、ドウカ修正ノ御論ニ於キマシテモ成ルタケ此場合ハ常則常律ニ拘ラズシ
テ、此折角得タル所ノ正貨ニ對シテ成ルベク一ツ之ヲ都合ヨク利用スルト云
フ方ノ所謂經濟眼ヲ以テ處理セラレテ、サウシテ此基金還元ノ目的ハ漸ヲ以
テ達スルコトニ私ハ致シタイ、斯ウ云フ希望ヲ豫テ懷イテ居リマスルノデ、
ソレカラモウ一ツ私ハ終ニ臨ミマシテ別ケテ一言申添へテ置キタイノハ、今
日ノ我國ノ經濟ノ狀態ハ全ク時局ノ關係ヲ受ケテ居ルト云フコトハ明カデア
リマス、ソレガ爲ニ財政モ患ッテ居レバ、經濟モ種々動搖ヲ來タシテ居ルノデ
アル、ソレデ是ハ平和克復後ニハ此狀態ハ如何ニナリ行クカ、如何ニ落付ク
カ、是ハ最モ誰モ今日之ヲ斷定シテ斯樣ニナルト云フコトヲ斷定スル者ハ
アリマスマイト思ヒマスガ、實ニ是ハ大疑問デアル、此大疑問ノ中ニ居リマ
シテ、サウシテ此本問題ヲ首メトシマシテ、總テ此平時狀態ニ於テ爲スベキ
事柄ヲ今日ニ於テ之ヲ爲スト云フコトハ洵ニ安心ナラヌコトデハナイカ、ド
ウカ、暫ク自重耐忍シテ時ノ移ルヲ待ッテ安全ニ事ヲナシタイト云フニ過ギ
マセヌデアリマスルカラ、此一言ヲ添ヘマシテ、壇ヲ降リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=79
-
080・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 今朝以來贊否ノ御議論モ大分ゴザイマシタ故ニ最
早採決ヲ致シテ御異存ナイト考ヘマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=80
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081・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 豫算委員長ノ報〓ハ第一ヨリ第三マデヲ束ネテ致
サレマシタガ、此際問題ト致シ、採決ヲ致シマスノハ大正五年度歲入歲出總豫
算案ノミト御承知ヲ請ヒマス、卽チ議題ト致シマスノハ五十四頁ノ所デゴザ
イマス、問題ハ石渡君ノ提出サレマシタ修正案デゴザイマス、採決ノ方法ニ
付キマシテ記名投票竝ニ無記名投票ヲ以テ採決セヨト云フ兩方ノ要求ガ出テ
居リマス、先ヅ以テソレニ付テ諸君ノ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス、表決ヲ
記名投票トスベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=81
-
082・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス、故ニ表決ハ記名投票ト決シマ
シタ、諸君ニ申上ゲマスマデモゴザイマセヌガ、貴族院規則ノ第百八條ニ依
リマシテ問題ヲ可トスル議員卽チ石渡君修正案ニ同意ノ諸君ハ白色票ニ、反
對セラルル諸君ハ靑色票ニ、各氏名ヲ記シテ御投票アラムコトヲ請ヒマス、
投票ヲ集メマス爲ニ書記官ヲ諸君ノ議席ヘ差出シマス······御分リニナリマシ
タカ
〔書記官投票ヲ集ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=82
-
083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 投票漏ハゴザイマセヌカ······投票漏ハナイト認メ
やく、是ヨリ開票イタシマス
〔書記官投票ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=83
-
084・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 記名投票ノ結果ヲ御報告ニ及ビマス、總數百九十
二、白色票ヲ投ジタル者卽チ修正案ニ同意ヲ表シタル者二十八、靑色票ヲ投
ジタル者卽チ修正案ニ反對ヲ表シタル者百六十四、故ニ修正案ハ否決セラレ
マシタ
〔參照〕
贊成者氏名
侯爵德川賴倫君伯爵寺島誠一郞君男爵後藤新平君
倉富勇三郞君仲小路廉君岡喜七郞君
男爵目賀田種太郞君鮫島武之助君石渡 敏一君
加藤恆忠君福永吉之助君橋本圭三郞君
山之内一次君磯部四郞君杉田定一君
室田義文君安樂兼道君古賀廉造君
德富猪一郞君田島竹之助君海江田準一郞君
江原素六君本間金之助君宇野〓左衞門君
中村治兵衞君佐藤友右衞門君鎌田榮吉君
由雄元太郞君
反對者氏名
侯爵黑田長成君侯爵花山院親家君侯爵德川圀順君
侯爵細川護立君伯爵萬里小路通房君伯爵〓閑寺經房君
伯爵松浦厚君伯爵川村鐵太郞君伯爵島津忠麿君
伯爵松平直之君子爵伏原宣足君子爵藤波言忠君
子爵岡部長職君子爵唐橋在正君子爵野宮定穀君
子爵一柳末德君子爵大宮以季君子爵井伊直安君
子爵靑山幸宜君子爵山口弘達君子爵牧野貞寧君
子爵京極高德君子爵松平康民君子爵久留島通簡君
子爵黑田和志君子爵本 多實方君子爵舟橋遂賢君
子爵實 吉安純君子爵勘解由小路資承君子爵本 多忠敬君
子爵稻垣太祥君子爵毛利高範君子爵東坊城德長君
子爵松平直平君子爵松平直德君子爵靑木信光君
子爵有馬賴之君子爵牧野忠篤君子爵酒井忠亮君
子爵永井尙敏君子爵堀河護麿君子爵五辻治仲君
子爵細川立興君子爵前田利定君子爵櫛笥隆督君
子爵森〓君子爵西大路吉光君子爵井上匡四郞君
子爵榎本武憲君子爵京極高備君子爵京極高義君
子爵今城定政君子爵水野直君子爵吉田〓風君
子爵大給近孝君子爵本多忠鋒君子爵豐岡圭資君
子爵藪篤麿君子爵伊東祐弘君子爵片桐貞央君
子爵松平乘長君子爵野村益三君子爵大河內正敏君
子爵池田政時君子爵丹羽長德君子爵〓岡長言君
子爵八條隆正君子爵立花種忠君淺田德則君
男爵堤正誼君小野田元凞君男爵高木兼寬君
高崎親章君男爵中川興長君小牧昌業君
黑岡帶刀君江木千之君男爵沖原光孚君
男爵村上敬次郞君男爵山名義路君荒川義太郞君
男爵北島齊孝君柴田家門君男爵村木雅美君
小松謙次郞君男爵太秦供康君男爵田健治郞君
男爵武井守正君男爵阪井重季君男爵内田正敏君
男爵肝付兼行君男爵藤井包總君男爵山內長人君
男爵黑瀨義門君男爵梨羽時起君男爵新田忠純君
男爵南岩倉具威君男爵伊東義五郞君男爵宮原二郞君
男爵平野長祥君男爵辻健介君男爵中溝德太郞君
男爵山內豊政君男爵小早川四郞君男爵竹腰正巳君
男爵靑山元君男爵藤大路親春君男爵若王子文健君
男爵德川厚君男爵千秋季隆君男爵眞田幸世君
男爵坪井九八郞君男爵伊丹春雄君男爵長松篤 業君
男爵本田親濟君男爵楠本正敏君男爵本多政以君
男爵島津隼彥君男爵福原俊丸君男爵〓水資治君
男爵岩倉道倶君男爵安藤直雄君男爵佐竹義準君
男爵二條正麿君男爵藤堂高成君石井省一郞君
西村亮吉君谷森眞男君中島永元君
湯地定基君原保太郞君富井政章君
仁尾惟茂君木內重四郞君加太邦憲君
倉知鐵吉君下條正雄君桑田熊藏君
田中源太郞君細谷巖太郎君木村誓太郞君
江原芳平君瀧川辨三君石橋謹二君
植竹三右衞門君依田仙右衞門君佐々田懋君
星島謹一郞君廣瀨滿正君荒井泰治君
竹村與右衞門君松尾廣吉君美馬儀一郞君
尼崎伊三郞君橋本辰二郞君上松泰造君
日高榮三郞君西川甚五郞君網藏平輔君
伊藤由太郞君堀正一斤井芹康也君
鈴木周三郞君高崎三重郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=84
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085・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ原案ニ付テ採決イタシマス、原案ニ同意ノ
諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=85
-
086・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス、次ニ諸君ニ於テ御異存ガゴザ
イマセヌケレバ、殘リ豫算案全部ヲ問題ト致シ··
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
マダ宣告ヲ致シマセヌ、豫算委員長ノ報〓ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=86
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087・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第四、國籍法中改正法律案、政府提出、
第一讀會、通牒文ノ朗讀ハ本日ハ總テ省略シテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=88
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089・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
〔左ノ提出文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下
之ニ傚フ〕
國籍法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
大正五年二月七日
內閣總理大臣伯爵大隈重信
內務大臣法學一木喜德郞
博士
國籍法中改正法律案
國籍法中左ノ通改正ス
第十八條日本人カ外國人ノ妻ト爲リ夫ノ國籍ヲ取得シタルトキハ日本ノ
國籍ヲ失フ
第二十條ノ二外國ニ於テ生マレタルニ因リテ其國ノ國籍ヲ取得シタル日
本人カ其國ニ住所ヲ有スルトキハ內務大臣ノ許可ヲ得テ日本ノ國籍ノ離
脫ヲ爲スコトヲ得
前項ノ許可ノ申請ハ國籍ノ離脫ヲ爲ス者カ十五年未滿ナルトキハ法定代
理人ヨリ之ヲ爲シ滿十五年以上ノ未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ法定
代理人ノ同意ヲ得テ之ヲ爲スコトヲ要ス
繼父、繼母、嫡母又ハ後見人カ前項ノ申請又ハ同意ヲ爲スニハ親族會ノ
同意ヲ得ルコトヲ要ス
國籍ノ離脫ヲ爲シタル者ハ日本ノ國籍ヲ失フ
第二十四條中「前五條」ヲ「前六條」ニ、「前六條」ヲ「前七條」ニ改ム
第二十六條中「第二十條」ノ下ニ「、第二十條ノ二」ヲ加フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣一木喜德郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=89
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090・一木喜徳郎
○國務大臣(一木喜德郞君) 國籍ニ關シマス立法ノ主義ガ國ニ依ッテ異ッテ居
リマスガ爲ニ、出生地主義ヲ執ッテ居リマス國ニ生レマシタ者ハ直チニ其國
籍ヲ取得イタシマシテ、卽チ二重ノ國籍ヲ有スルコトニナリマスノデ、我國
ニ於キマシテモ斯ノ如キ種類ノ者ガ漸次其數ヲ增シテ參ルニ拘ラズ、現行法
中ニ之ニ對スル規定ヲ闕イテ居リマス、ソレ故ニ此闕點ヲ補フ必要アリト考
ヘマス、又之ニ反シマシテ婚姻ノ關係ヨリ何レノ國籍ヲモ有セザル無籍者ヲ
生ズル虞ガアル場合モアリマス、此二ツノ闕點ヲ補ヒマスノガ本案提出ノ理
由デゴザイマス、何卒御審議ノ上御協賛アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=90
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091・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサ
セマス
〔河井書記官朗讀〕
國籍法中改正法律案特別委員
伯爵寺島誠一郞君子爵岡部長職君子爵松平乘長君
平山成信君男爵關義臣君男爵島津隼彥君
倉知鐵吉君有松英義君森田庄兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=91
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092・前田利定
○子爵前田利定君 本員ハ家祿賞典祿處分ニ關スル法律案外一件ノ特別委員
會ヲ開キタイト思ヒマス、退席ノ御許ヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=92
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093・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 前田子爵ノ要求ニ對シテ御異存ゴザイマセヌカ
[「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=93
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094・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
〔子爵前田利定君「ドウカ委員ノ御方ハ御退席ヲ願ヒマス」ト述フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=94
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095・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第五、北海道會法中改正法律案、政府提
出、衆議院送付、第一讀會
北海道會法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正五年二月八日
衆議院議長島田三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
北海道會法中改正法律案
小字ハ衆議院ノ修正-
ハ同削除ノ符號ナリ
北海道會法中左ノ通改正ス
第二條北海道會議員ハ名譽職トス
議員ノ任期ハ四年トシ總選擧ノ日ヨリ之ヲ起算ス
○及第四號ム
第五條中第二號及第三號〓ヲ左ノ如ク改メ第四號ヲ第五號トシ以下順次繰
下ク
二家資分散又ハ破產ノ宣告ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復權ノ決定
確定スルニ至ル迄ノ者
三六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
四六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ
受クルコトナキニ至ル迄ノ者
第七條中「北海道廳ノ官吏」ノ下ニ「及北海道地方費ノ有給吏員」ヲ加へ同條
第四項ヲ左ノ如ク改ム
北海道廳ノ爲請負ヲ爲ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス
法人ノ無限責任社員重役及支配人ハ北海道會議員ノ被選擧權ヲ有セス
ニ處セラレ
第八條中「其ノ職ヲ失フ」ノ下ニ「禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタル者ヲ除ク
外」ヲ加フ
第十條中「第二次ノ通常會」ヲ「次ノ通常會」ニ改ム
附則
第二條ノ規定ハ次ノ總選擧ヨリ之ヲ施行ス
舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ本法ノ適用ニ付テハ六年ノ懲役又ハ
禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
舊刑法ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ハ本法ノ適用ニ付テハ六年未滿ノ懲役
又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
大正三年度北海道地方費決算ハ大正五年ノ通常會ニ報告スヘシ
〔國務大臣一木喜德郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=95
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096・一木喜徳郎
○國務大臣(一本喜德郞君) 現行北海道會法ニ依リマスレバ、議員ノ任期ガ
府縣會ノ任期ヨリ一年短クナッテ居リマス、卽チ三年ニナッテ居リマス、然ルニ
今日ニ於キマシテハ特ニ北海道會議員ニ限リマシテ其任期ヲ短カクスルノ必
要ハナイト考ヘマス、寧ロ是ハ內地ノ府縣等ノ制度ト同ジク四年ニ致シタ方
ガ適當デアルト考ヘマス、又決算ノ時期ニ付キマシテモ內地ヨリ一年後ラセ
テアリマスケレドモ、是亦府縣ト同ジク其時期ヲ定メマス方ガ適當デアルト
考ヘマス、其外刑法ノ改正ニ伴ヒマシテ選擧ノ資格等ニ付キマシテモ府縣制
等ノ釣合カラシテ之ヲ變更スルノ必要ガゴザイマス、殊ニ此任期ノコト竝ニ
選擧資格ニ關シマスコトハ本年行ハレベキ改選ノ時ヨリ之ヲ實行イタシマス
ノガ適當ト考ヘマスカラシテ、此際此改正案ヲ提出イタシマシタ次第デゴザ
イマス、尙ホ一言申添へテ置キマスノハ此案ニ對シマシテハ衆議院ニ於テ修
正ガゴザイマス、此修正ハ本日、日程ニ上ッテ居リマス、市制中改正法律案、町
村制中改正法律案、府縣制中改正法律案、此三法律案ノ趣旨ト相關聯イタシテ
居リマス、其內容ハ先キニ衆議院議員選擧法ノ改正ニ依リマシテ刑ノ宣告ヲ
受ケマシタ者デモ、共判決ガ確定ニ至リマス迄ハ資格ヲ失ハヌコトニナリマ
シタ、然ルニ現行市町村制府縣制等ニ於キマシテハ尙ホ判決確定ニ至ル前刑
ノ宣告ヲ受ケタ時ヨリ權利ヲ失スルコトニナッテ居リマスガ、之ヲ衆議院議員
選擧法改正ノ釣合ニ準ジテ改正スル方ガ適當ト云フコトデ衆議院デ提案ヲ致
シタノデアリマス、此案ニ付キマシテ旣ニ一院ニ於テ議決イタシタコトデモ
アリマスシ、又先キニ衆議院議員選擧法改正モ兩院ヲ通過シ現ニ法律トナッテ
居ルコトデアリマス、政府ニ於キマシテモ强ヒテ反對ヲ致シマセヌ、ソレデ
其同ジ趣旨ヲ以テ北海道會法中改正法律案ニモ衆議院ニ於テ修正ヲ加ヘマシ
タノデアリマス、是亦政府ニ於キマシテハ强ヒテ異議ハゴザイマセヌ、併セ
テ申述ベテ御參考ニ供シマス、何卒御審議ノ上御協賛アラムコトヲ希望イタ
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=96
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097・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ御報告ニ及ビマス
〔河井書記官朗讀〕
北海道會法中改正法律案特別委員
侯爵花山院親家君伯爵島津忠麿君子爵松平乘承君
子爵京極高義君男爵南岩倉具威君阪本 多之助君
安立綱之君田島竹之助君細谷巖太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=97
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098・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第六、華族世襲財產法改正法律案、政府
提出、第一讀會ノ續、特別委員長報〓、富井政章君
華旅世製財產法改正法律案
右別册ノ通修正セリ依テ及報〓候也
大正五年二月十日
右特別委員副委員長
富井政章
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字ハ委員會ノ修正、
ハ同削除ノ符號ナリ
華族世襲財產法
○其ノ家格ヲ維持スルニ必要ナル範圍內ニ於テ
第一條有爵者ハ。世襲財產ヲ設定シ又ハ之ヲ增加スルコトヲ得
第二條世襲財產ノ設定又ハ增加ハ遺言ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
○其ノ保佐人ハ豫
五〇.八.○ナルトキハ其ノ法定代理人、メ家政協
性にある有爵者カ未成年者、〓禁治產者〓又ハ準禁治產者ナルトキハ〓世襲
議員會ノ
決議ヲ經テ○ノ認可ヲ申請
財產ヲ設定〇又ハ增加スルコトヲ得ス
有爵者カ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ家產ヲ治ムルニ堪ヘス又ハ之ヲ傾クルノ虞アルトキハ家政協
議員會ハ本人ニ代リテ前項ノ認可ヲ申請スルコトヲ得
家政協議員會ニ關スル規程ハ宮內大臣之ヲ定ム
第四條世襲財產ハ家寶、不動產、登錄國債又ハ記名ノ有價證劵ニ限ル
四
第五條世襲財產ヲ設定又ハ增加セムトスルトキハ其ノ財產ノ目錄ヲ添
ヘ宮內大臣ニ認可ヲ申請スヘシ
世襲財產設定其ノ
第六條前條ノ認可ノ申請アリタルトキハ宮內大臣ハ目錄ニ記載シタル財
產ヲ世襲財產ト爲スノ當否ヲ調査フヘシ
本人
前項ノ場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ宮內大臣ハ目錄以外ノ財產ノ
狀況ヲ調査スルコトヲ得
世襲財產設定ノ認可ノ申請ヲ相當ナリト認ムルトキハ其ノ
第七條宮內大臣ハ前條ノ調査ニ依リ支障ナシト認メタル財產ニ付第五條
ノ認可ノ申請アリタル旨ヲ一週間公〓スヘシ
前項ノ公告ニハ土地ニ付テハ其ノ所在地目及面積、建物ニ付テハ其ノ所
在種類構造及建坪其ノ他ノ物件ニ付テハ其ノ品目種類箇數其ノ他必要ナ
ル事項ヲ揭クヘシ
及債權者
第八條前條ノ規定ニ依リ公〓シタル財產ニ關シ權利ヲ有スル者又ハ民事
上ノ强制執行、假差押若ハ假處分ニ著手シタル者ハ前條第一項ノ公告期
間內又ハ其ノ期間滿了後二月內ニ之ヲ宮內大臣ニ申出ツヘシ
世襲財產ノ設定又ハ增加ノ認可ハ前項ニ定メタル期間滿了ノ後ニ非サレ
ハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第九條宮内大臣ハ世襲財產設定ノ認可ノ申請ノ全部又ハ一部ヲ認可スヘカラサル理由アリト認ム
ルトキハ華族世襲財產審議會ニ諮詢スヘシ
華族世襲財產審議會ニ關スル規程ハ宮內大臣之ヲ定ム
十
野菜宮內大臣ハ世襲財產ノ設定又ハ增加ヲ認可シタルトキハ其ノ旨及
第七條第二項ニ揭クル事項ヲ公〓スヘシ
第十一條前十條ノ規程ハ世襲財產ヲ增加スル場合ニ亦之ヲ適用ス
0一
第十〇條宮內大臣ハ華族世襲財產臺帳ヲ設ケ世襲財產ニ關スル事項ヲ登
錄スヘシ
三タルニ付テ
第十一條世襲財產中登錄國債アルトキハ國債登錄簿ニ世襲財產タル旨ヲ
cm/, )
登錄シ有價證劵アルトキハ宮內大臣ハ之ニ世襲財產タル旨ヲ記入スルコ
トヲ要ス
及
株劵又ハ社債劵ニ付テハ前項ノ規定ニ依ルノ外株主名簿又ハ社債原簿ニ
->
世襲財產タル旨ヲ記入スルコトヲ要ス
手續ヲ踐ミタル後
登錄國債又ハ有價證劵ノ世襲財產タル效力ハ前二項ノ要件ヲ具備スルニ
非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
四
第十二條世襲財產ノ效力ヲ第三者ニ對抗スルコトヲ得ルニ至リタル日以
後ハ其ノ前ノ原因ニ基キ世襲財產ニ付所有權、質權又ハ抵當權ヲ有スル
○確定
者ハ〓判決又ハ確定日附アル證書ニ依リテノミ其ノ權利ヲ主張スルコト
ヲ得
前項ノ規定ニ依リテ權利ヲ主張セムトスル者ハ其ノ旨ヲ宮內大臣ニ中出
ツヘシ
五ノ特權ニ屬ス
第十三條世襲財產ハ家督相續人之ヲ相續ス
六及
第十四條世襲財產又ハ其ノ法定果實ヲ收取スル權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ質
權若ハ抵當權ノ目的ト爲スコトヲ得ス株劵カ世襲財產タル場合ニ於テ利
益又ハ利息ノ配當ヲ受クル權利ニ付亦同シ
第十七條土地カ世襲財產タル場合ニ於テ
○又ハ
世襲財產ニ付地上權ト〓永小作權又ハ地役權ヲ設定又ハ變更セムトスル
ニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
トキハ宮內大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
○及第十六條ニ揭クル權利ハ世襲財產ノ管理ニ因リテ生シタル權
八利及不法行爲ニ因ル損害賠償ノ請求權ニ基ク場合ヲ除クノ外
第十五條1世襲財產〇ハ民事上ノ强制執行ノ目的ヲ以テ之ヲ差押ヘ又ハ
般ノ先取特權ニ基キ之ヲ競賣スルコトヲ得ス
及第十六條又カ
世間財産ノ果登又、前條第一區ノ利益廣ハ和食ニシテ他ノ財產上混
○間其ノ三分ノ二ニ付
サル○モノ亦前項ニ同シ
前二項ノ規定ハ世製財產ノ效力ヲ第三者ニ對抗スルコトヲ得ルニ至リタ
ル日前ニ爲シタル假差押ニ基キ差押ヲ爲シ又ハ一般ノ先取特權ニ基キ著
手シタル競賣ヲ續行スルコトヲ妨ケス
第十六條世襲財產タル不動產ノ管理ニ付テハ豫メ其ノ方法ヲ定メ宮內大
臣ノ承認ヲ受クヘシ
九重大ナル
第十比條世襲財產ハ確實有利ナル世襲財產ニ換フル爲又ハ已ムコトヲ得
トキ
サル事由アル場合ニ限リ宮內大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ全部又ハ一部ヲ廢止
スルコトヲ得
世製財產ハ他ノ世製財產ニ換フル爲其ノ全部又ハ一部ヲ廢止スルコトヲ得
四○第一項前二項ノ場合ニ
第二條、第三條ト第五條〓及第六條ノ規定ハ世襲財產ノ廢止ニ付之ヲ準
用ス
第二十條宮内大臣ハ世製財產ノ廢止ヲ認可スヘキヤ否ヤニ付華族世襲財產審議會ニ諮詢スヘシ
二十一第十九條第二項
第十八條前條ノ規定ニ依リ確實有利ナル世襲財產ニ換フル爲世襲財產ヲ
○家督
廢止シタル場合ニ於テハ廢止ノ認可ヲ受ケタル者又ハ其ノ〇相續人ハ
六月世襲財產設定ヲスヘシ
認可アリタル日ヨリ」作內ニ第五條ノ認可ノ申請ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ期間內ニ申請ヲ爲ササルトキハ宮內大臣ハ相當ノ期間ヲ定メ其ノ
申請ヲ爲スヘキ旨ヲ命スルコトヲ得
第三條ノ規定ハ前二項ノ規定ニ依リテ認可ノ申請ヲ爲スヘキ場合ニハ之
ヲ適用セス此ノ場合ニ於テ申請ヲ爲スヘキ者カ未成年者又ハ禁治產者ナ
ルトキハ其ノ法定代理人之ニ代リテ申請ヲ爲スコトヲ要ス
二十二世襲財產カ○、競賣
第十九條前條ノ規定ハ收用、滯納處分、償還、滅失〓其ノ他ノ事由ニ因
ハ其ノ財產ヲ以テ世襲財產ヲ補充スヘシ此ノ場合ニ於テ
他ノタルトキハハ前條第一項ノ規定ヲ準用ス
リ世暖的產ニ代リ其ノ所有者ニ餘シタル間產アル場合ニ之ブ使用ス
世襲財產ニ代リタル八
前項ノ財產ニシテ他ノ財產ト混合セサルモノニ付テハ第十五條第一項ノ
規定ヲ準用ス
○第一項
第一項ノ場合ニ於テ宮內大臣ハ和當ノ事由アリト認ムルトキハ前條うノ
認可ノ申請ヲ免除スルコトヲ得
〇三
第二十〓條前二條ノ場合ニ於テ宮內大臣ハ必要アリト認ムルトキハ管理
人ヲ選任シ世襲財產タリシ財產又ハ前條ノ財產及其ノ財產ノ處分ニ因リ
テ得タル財產ヲ世襲財產ノ設定又ハ增加ノ認可アル迄他ノ財產ヨリ分離
セシム
シテ管理スルコトヲ命スルコトヲ得果實又ハ配當ヲ受ケタル利益若ハ利
管理
息ニシテ其ノ財產ト混合シタルモノニ付亦同シ
前項ノ規定ニ依リテ管理スル財產ハ管理人ニ依ラスシテ之ヲ處分シ又ハ
管理ニ因リテ生シタル權利ニ基カスシテ民事上ノ强制執行若ハ競賣ヲ爲
スコトヲ得ス
第一項ノ場合ニ於テ宮內大臣ハ管理人ヲ改任シ其ノ他財產ノ管理ニ付
必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十四條管理人ノ選任アリタル場合ニ於テ本人、其ノ法定代理人又ハ保佐人カ世襲財產設定ノ
認可ヲ申請セサルトキハ管理人ハ遲滯ナク管理財產ニ付其ノ申請ヲ爲スヘシ
第二十五條管理財產ハ管理人ニ於テノミ之ヲ處分シ又ハ管理ニ因リテ生シタル權利若ハ不法行爲
ニ因ル損害賠償ノ請求權ニ基キテノミ民事上ノ强制執行若ハ競賣ヲ爲スコトヲ得
第十六條及第十八條第二項ノ規定ハ之ヲ
第二十一條前條第一項ノ規定ニ依リヲ管理スル財產ノ果實ニ關シテハ第
管理
十四條第一項及第十五條ノ規定ヲ準用ス其ノ財產中株劵アル場合ニ於テ
利益又ハ利息ニ付亦同シ
六
第二十二條有爵者爵ヲ失ヒ又ハ襲爵者ナキコト確定シタルトキハ世襲財
○失爵又ハ家督相續開始ノ時ヨリ
產ハ○其ノ效力ヲ失フ
七四
第二十三條世襲財產ニ付第十二條第二項ノ申出アリタル後二月內ニ主張
其·
ニ係ル權利ヲ消滅セシメ又ハ主張ニ對シ訴ヲ提起セサルトキハ世襲財產
○初ヨリ世襲財產タル
ハ〇其ノ效力ヲ失フ
前項ノ期間內ハ主張ニ係ル權利ニ基キテ競賣ヲ爲スコトヲ得ス
第二十八條○
○三乃至五○前條タル
第三十3億阪第二千」のノノボホハ第一項ノ地定ニ依リヲ世襲断本
ヲ失ヒタル財產アル場合ニ之ヲ準用ス
二十二
前項ノ則產ニ代リ其ノ所有者ニ歸シタル財產アル場合ニ於テハ第十九條
ノ規定ヲ準用ス
九
第二十四條世襲財產ノ廢止、失效其ノ他ノ異動アリタルトキハ宮內大臣
ハ其ノ旨ヲ公〓スヘシ第二十條又ハ前條第三項ノ規定ニ依リ財產ノ管理
○選任又ハ一
ヲ命シ又ハ管理人ヲ〓改任シタルトキ亦同シ
第七條第二項ノ規定ハ前項ノ公告ニ之ヲ準用ス
登錄國債又ハ有價證劵ニ付世襲財產ノ廢止又ハ失效アリタルトキハ第十
三
一條ノ登錄又ハ記入ヲ抹消スヘシ
三十
第二十五條第二十條ノ規定ニ依リテ管理スル財產中登錄國債アルトキハ
國債登錄簿ニ管理財產タル旨ヲ登錄シ管理終了シタルトキハ其ノ登錄ヲ
ヽソ
抹消スルコトヲ要ス
第十一條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
三十·
第二十六條世襲財產ニ關スル公〓、登記又ハ登錄ノ費用ハ其ノ名義人ノ
負擔トス
三十二
第二十七條宮內大臣ハ必要アリト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ世襲財產
ノ檢査ヲ爲サシムルコトヲ得
宮内大臣ハ世襲財產ノ管理ニ付必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
三十三
第二十八條本法ノ施行ニ關スル規程ハ宮內大臣之ヲ定ム
附則
從前ノ規定ニ依ル世襲財產及に其ノ附屬物ハ本法ニ依ル世襲財產ト看做ス」
本法施行ノ際從前ノ規定ニ依リ世襲財產ノ純收益ニ付他人ノ有スル權利ハ
本法施行後ト雖仍其ノ效力ヲ有ス本法施行前著手シタル差押又ハ假差押ニ
付亦同シ
○第百四條中「創設」ヲ「設定ニ改メ同條ニ左ノ二項ヲ加ヘ同法
不動產登記法〓第百四十三條中「解除ヲ認可シタルトキ」ヲ「廢止又ハ失效ア
、「創定」ヲ「設定」ニ改ム
リタルトキ」ニ改メ同法第百四條ニ左ノ二項ヲ加フ
○又ハ第二
〇三十八條ル
華族世襲財產法第二十〓條〓ノ規定ニ依リ管理ヲ命シタル財產中不動產アル
トキハ當該官廳ハ遲滯ナク管理財產タル旨ノ登記ヲ登記所ニ囑託シ管理終
了シタルトキハ其登記ノ抹消ヲ囑託スルコトヲ要ス
管理人カ其
前項ノ管理中取得シタル不動產ニ付テハ管理人ハ取得ノ登記ト共ニ管理財
產タル旨ノ登記ヲ申請シ管理終了シタルトキハ其登記ノ抹消ヲ申請スルコ
トヲ要ス
〔富井政章君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=98
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099・富井政章
○富井政章君 委員長德川公爵ハ御不例デアリマス故ニ私ヨリ特別委員會ノ
經過竝ニ結果ヲ御報告イタシマス、私モ昨日ヨリヒドク風ヲ引イテ居リマス
ノデ、或ハ十分ニ御聽取ガ出來ナイカ知レマセヌ、此段豫メ御斷リ申上ゲテ
置キマス、本案ノ特別委員會ハ昨年ノ十二月ニ三囘開カレマシテ、速記錄ニ
載ッテ居リマス通リ種々質問ガアリマシタ、政府ノ答辯ハ現行法ヲ根柢ヨリ改
正スル趣意デナクシテ、唯時勢ノ進運ニ合ハナイ不備ノ點ヲ改メタト云フコ
トデアリマス、ソレニ致シテモ現行法ノ全部ニ改正ガ及ンデ居リマス、且ツ此
法案ハ民法其他ノ法律ト密接ノ關係ヲ有スルモノデアリマシテ、ナカ〓〓込
入ッタ議案デアリマス、ソレ故ニ委員會ニ於キマシテハ六名ノ小委員ヲ置イテ
調査スルコトニナリマシタ、此小委員會ハ年末ヨリ度〓開カレマシテ、及ブ
限リ愼重ニ審議ヲ盡サレマシタガ、終ニ第三囘目ノ修正案ニ纒マリマシテ特
別委員會ニ報告スルコトトナリマシタ、特別委員會ニ於キマシテハ更ニ少シ
バカリノ修正ヲ加ヘテ可決セラレタノデアリマス、委員會ノ修正案ハ政府提
出案ノ全部ニ亙ッテ居リマスガ、比較的微細ナル點ハ總テ委員會ノ速記錄ニ
讓ルコトニ致シマシテ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=99
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100・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 成ルベク御退席ハ御見合セヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=100
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101・富井政章
○富井政章君 專ラ重立ッタル修正ノ箇所ノミヲ申上ゲヤウト思ヒマス、先ヅ
第一條ニ於キマシテ「有爵者ハ」ト云フ言葉ノ下ニ「其ノ家格ヲ維持スルニ必
要ナル範圍內ニ於テ」ト云フ文字ヲ入レルコトト相成リマシタ、是ハ世襲財
產ノ最高限度ヲ定メタイト云フ考デアリマシテ、其重モナ理由トスル所ハ家
ヲ維持スルニ必要ナル程度ヲ超エテ過多ノ財產ヲ不融通物トナスト云フコト
ハ國民經濟ノ上ヨリ考ヘテ甚ダ宜シクナイコトデアル、又債權者其他ノ者ニ
損害ノ生ズル如キコトモ成ルベク防ギタイ、且ツ一旦設定シタル世襲財產ハ
成ルベク後ニ至ッテ之ヲ廢止スルヤウナコトガ起ラナイヤウニシタイト云フ
趣意デアリマス、サレバト申シテ一定額ノ收益ヲ生ズル財產ヲ限度トスル如
キ數額ヲ以テ制限スルコトハ甚ダムヅカシイノデアル、本來家ニ依ッテ狀況
ヲ異ニスルコトデアリマスル故ニ、斯ル方法ハ適當デナイト考ヘマシタ、又財
產ノ半額トカ三分ノ一トカ云フヤウナコトニスルノモ同一理由ニ依ッテ宜シ
クナイト考ヘタノデアリマス、又斯ノ如ク數字ヲ標準ト致シマストキハ後ニ
至ッテ共限度ヲ超エタ、イヤ超エナイト云フヤウナ問題ガ生ズルノモ宜シクナ
イ、ソレ故ニ甚ダ漠然デアリマスケレドモ右申上ゲルヤウナ抽象的標準ヲ取
ルコトニ致シマシテ、其適用ハ主務大臣ノ認定ニ委ネルコトトナッタノデアリ
マス、次ニ提出案第三條ニ於キマシテハ未成年者其他ノ無能力者ハ世襲財產
ヲ設定スルコトヲ得ズトナッテ居マシタガ、無能力者ト雖モ世襲財產ヲ設定ス
ルコトノ必要アル場合アルコトハ一般ノ能力者ト少シモ相異ルコトハアリマ
セヌ、ソレ故ニ無能力ニ對シテモ世襲財產ヲ設定スル途ヲ塞ガナイガ宜イト
云フ考デアリマス、此理由ヨリ致シマシテ「法定代理人又ハ補佐人ハ家政協議
員會ノ決議ヲ經テ世襲財產ヲ設定スルコトヲ得」ト致シタノデアリマス、又禁
治產又ハ準禁治產者ト雖モ疾病其他ノ事由ニ依ッテ家產ヲ治ムルニ堪ヘズ又
ハ之ヲ傾ムクル虞アルトキハ本人ニ代ッテ世襲財產ヲ設定シ得ル者ガナクテ
ハ法律ノ闕點デアルト思ヒマス、ソレ故ニ此場合ニハ家政協議員會ニ申請權
ヲ與ヘルコトトナッタノデアリマス、家政協議員會ト致シテ親族會ト致サナン
ダ譯ハ多クノ家ニハ親族以外ノ舊臣トカ云フヤウナ人ヲ加フル必要ガアラウ
ト考ヘタノデアリマス、又普通ノ親族會ハ裁判所ノ干涉ヲ要スルコトトナツ
テ居マス故ニ、斯ル場合ニハ適當デナイト考ヘマシテ、宮內大臣ノ定メニ依
ルコトト致シタノデアリマス、次ニ第九條ノ規定ヲ新設セラレマシタ、是ハ
宮內大臣ノ諮問機關トシテ華族世襲財產審議會ト云フモノヲ置クコトニ致シ
マシタ、宮內大臣ガ世襲財產トナサムトスル財產ノ全部又ハ一部ニ付テ設定
ヲ認可シ難イ理由アリト認メル場合ニハ、是ニ諮詢スベキコトトナルノデア
リマス、此修正ノ理由ハ、斯ノ如キ場合ニ於キマシテハ宮內大臣限リデ決ス
ルト云フコトハ餘程困難デアラウト思ヒマス、ソレ故ニ斯ウ云フ機關ヲ置ク
コトニナッタラバ、宮內大臣ニ於テモ甚ダ解決ガシ易クアッテ、甚ダ適當ナ決定
ヲ得ラレルコトデアラウト考ヘタノデアリマス、併シ總テノ場合ニ諮詢セネ
バナラヌトシテハ、實際必要ナキ塲合ニマデ、一家ノ財產狀態ヲ多クノ人ニ
示サナケレバナラヌコトトナリマシテ宜シクナイト考ヘマス、ソレ故ニ認可
スベカラザル理由アリト認ムル塲合ニ限ラレタノデアリマス、提出案第八條
及第十三條乃至第十六條ニモ修正サレマシタ點ガアリマスケレドモ、重大デ
ナイ事項ハ委員會ノ速記錄ヲ御覽ヲ願フコトニ致シマシテ、質問ガアレバ御
答イタスコトトシテ、說明ヲ省略スルコトニ致シマス、唯第十五條ノ修正ニ
付テ一言イタシタイト思ヒマス、是ハ世襲財產ノ差押ヲ禁ズル規定デアリマ
スガ、稍〓大キナ修正ガ二ツ加ハリマシタ、其一ツハ世襲財產ノ管理ニ因ッテ
生ジタル權利ト不法行爲ニ因ル損害賠償ノ請求權ヲ行フ爲ニハ世襲財產ヲ差
押フルコトヲ得ルト云フ除外例ヲ設ケラレタコトデアリマス、此修正ハ殆ド
說明イタスマデモナク、世襲財產ノ管理費用ノ如キハ、世襲財產其物ニ關ス
ル債務デアリマシテ、世襲財產ヲ以テ支辨スベキ性質ノモノデアル、不法行
爲ニ因ル損害ノ如キモ、假令世襲財產ニモセヨ、現ニ財產ヲ有シナガラ之ヲ
賠償セナクテモ宜シイト云フコトハ如何ニモ不當デアリマス、ソレ故ニ差押
ヲ許スコトニ改メタノデアリマス、今一ツハ世襲財產ノ收益デアリマスガ、
現行法ニ依レバ其三分ノ一マデハ差押ヲ許シテアルニ、提出案ニ於テハ他ノ
財產ト混同セザル間ハ一切差押フルコトヲ得ズトナッテ居マス、是ハ三分ノ一
ヲ超エタカ超エナイカト云フ見分ケガ付キニクイ、隨ッテ煩ハシイ關係ノ生
ズルコトヲ防ギタイト云フ理由デアリマシテ、一應尤モナルコトデハアルト
思ヒマス、併ナガラ既ニ現行法ニ認メテアル權利ヲバ將來債權者ニ與ヘナイ
トスルコトハドウモ穩當デナイト考ヘマシテ、修正案ノ如クニ改メタノデ
アリマス、卽チ此點ハ殆ド現行法復活ニナルノデアリマス、次ニ提出案第十
七條、世襲財產廢止ノ規定デアリマスガ、此條文ニ改正ヲ加ヘラレタ重モナ
ル點ハ、原案ニ依レバ世襲財產ヲ換ヘル塲合ト、已ムコトヲ得ザル事由アル
場合トヲ區別セズシテ、何レノ場合ニモ全部又ハ一部ヲ廢止スルコトヲ得ト
ナッテ居マシタガ、如何ニモ法文ノ體裁トシテハ其方ガ宜シイノデアル、併
シ此已ムヲ得ザル事由アル場合トシテハ、或ハ濫用ノ弊ヲ生ズル虞ガアリマ
ス、卽チ債權者ノ脅迫其他ノ事由ヨリシテ擧ニ世襲財產ヲ無クシテシマフ
ヤウナコトガ生ジナイトモ限リマセヌ、サレバト申シテ具體的ニ各箇ノ場合
ヲ列記スルコトハ甚ダ困難デアリマス、ソレ故ニ此場合ハ一部ノ廢止ニ限ッテ
置イタ方ガ家ノ維持ヲ圖ル爲ニハ安全デアラウト考ヘタノデアリマス、ソレ
ニシテモ全ク廢止ヲ許サザル現行法ニ比スレバ一大改正デアリマス、序ニ巳
ムコトヲ得ザル事由アル場合ト云フ言葉ヲ改メマシテ、重大ナル事由アル場
合トシタノハ、何程カ重ク聞エテ濫用ノ防ギトナルデアラウト云フ趣意デア
リマス、此言葉ハ皇室財產令ニ於テ世傳御料ニ付テモ用ヒラレテアル言葉デ
アリマス、世襲財產ノ廢止ハ如何ナル場合ニ於テモ重大ナル事項デアリマス
故ニ、是ハ必ズ世襲財產審議會ニ諮詢セネバナラヌコトト致シテ、第二十條
ノ規定ヲ置クコトトナッタノデアリマス、提出案第十八條以下ニハ比較的些
細ナ修正シカアリマセヌ、唯世襲財產ノ交換デス、世襲財產ヲ換ヘルコトデ
スナ、其他租稅ノ滯納處分ヨリシテ金錢ナドヲ保管スル爲ニ、一時管理人ヲ
置クコトトナッテ居マスガ、委員會ノ修正案ニ於キマシテハ其管理人ノ權限ヲ
擴張シテ世襲財產ヲ補充スル爲ノ申請手續マデモナスコトヲ得ルモノトナシ
タノデアリマス、卽チ第二十四條ノ規定ガ新ニ加ッタノデアリマスガ、是ハ管
理ノ結末ヲ付ケル爲ニ必要ナ規定ト考ヘタノデアリマス、本案修正ノ要點ハ
〓略以上申述べマシタ通リデアリマス、最初ニ申上ゲマシタ通リ此案ハナカ
〓ムヅカシイ込入ッタ問題ガ澤山ニ含マレテ居リマスル故ニ、何卒諸君ニ
於カレマシテモ十分ニ御審議アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=101
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102・大隈重信
○國務大臣(伯爵大隈重信君) 華族世襲財產法改正案ニ付キマシテ、委員會
ハ昨年以來審議ヲ盡サレテ、大部分ノ箇條ニ於テ修正ヲサレマシタノデアリ
やく、政府ニ於テハ異議ハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=102
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103・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 諸君ニ於テ御異存ガゴザイマセヌケレバ採決ヲ致
シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=103
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104・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=104
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105・高木兼寛
○男爵高木兼寛君 直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス、ドウ
ゾ諸君ノ御贊成ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=105
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106・小野田元熈
○小野田元凞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=106
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107・田健治郎
○男爵田健治郞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=107
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108・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=108
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109・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ第二讀會ヲ開クト云フ高木男爵ノ動議ニ御
異存ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=109
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110・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=110
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111・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 直チニ第二讀會ヲ開キマス、修正セラレマシタ箇
條ハ數多ゴザイマスガ、御異議ガナケレバ全部ヲ問題ニ供シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=111
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112・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 全部特別委員長ノ報告ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒ
マス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=112
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113・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス、是デ第二讀會ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=113
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114・高木兼寛
○男爵高木兼寛君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=114
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115・小野田元熈
○小野田元凞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=115
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116・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ第三讀會ヲ開イテ御異存ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=116
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117・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=117
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118・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ第三讀會ヲ開キマス·······第二讀會ノ決議通
リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=118
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119・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=119
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120・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第七、砂糖消費稅法中改正法律案、政府
提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告
砂糖消費稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正五年二月八日
右特別委員長
伯爵寺島誠一郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵寺島誠一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=120
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121・寺島誠一郎
○伯爵寺島誠一郞君 唯今議事ニ上リマシタ砂糖消費稅法中改正法律案ノ委
員會ニ於キマシテ、報〓書ニゴザイマス通リ決定イタシタ次第ヲ簡單ニ申上
ゲマス、今囘ノ改正ノ要旨ヲ申シマスレバ第一、外國ニ輸出ヲ致シマスル所ノ
砂糖、糖蜜竝ニ糖水ガ其目的ニ副ハズシテ內地ニ消費セラルル場合ニ對シマ
シテ消費稅ノ徵收ヲ保證イタシマスル爲ニ、當業者ヨリ擔保品ヲ提供セシメ
テアルノデアリマス、ソレガ現今行ハレテ居ル所ノ規定デゴザイマス、今般之
ヲ改正イタシマシテ此規定ヲ廢止スル次第デアリマス、併ナガラ除外例ヲ設
ケマシテ、原則ト致シマシテハ唯今申述ベマシタ通リ是等輸出糖ニ對シテハ
擔保品ヲ取リマセヌコトニナリマス、ケレドモ除外例ト致シマシテ政府ガ殊
ニ必要ト認メマシタ場合ニハ矢張リ擔保品ヲ提供セシムルト云フ規定ヲ存シ
テ置クノデアリマス、其理由ハ何デアルカト申シマスルト、此砂糖消費稅法中
ニ此規定ガ設ケラレテ以來未ダ一囘モ輸出サレタル所ノ砂糖ガ內地ニ消費セ
ラレテ、ソレガ爲ニ消費稅ヲ徴收セラレタ例ガ一遍モナイノデアリマス、從
テ其消費稅徵收ノ爲ニ保證トシテ提供シテアッタ擔保品ニ手ヲ著ケラレタコト
ハナイノデアリマス、卽チ是ガ改正ノ理由デゴザイマス、併ナガラ萬一ノ場合
ヲ慮リマシテ除外例トシテ擔保品ヲ提供セシメル、卽チ政府ガ必要ト認メタ
ル場合ニノミ擔保品ヲ提供セシムルト云フ箇條ヲ存シテ置クノデアリマス、
第二ノ點ハ糖蜜ガ市場ニ出マス際ニハ消費稅ヲ課セラルルノデアリマス、併
ナガラ共糖蜜ニ於キマシテ食物ニ不適當ナル製造方法ヲ受ケテ市場ニ出テ參
リマシタ糖蜜、食料トシテ用フベカラザル所ノ糖蜜ニ對シテモ今日デハ課稅
セラレテ居ルノデアリマス、消費稅ヲ課セラレテ居ルノデアリマス、是ガ誠ニ
不適當ナ事柄デアルカラシテ、此改正ノ際ニ糖蜜ノ課稅ハ食料トシテ不適當
ナルコトガ明カデアリ、不適當ノ點アルガ如キ製造ノ糖蜜ニハ消費稅ヲ課セ
ヌガ宜イ、此說明ト同時ニ理由ハ明白デアルト信ズルノデアリマス、第三ニ旣
ニ消費稅ヲ課セラレテ居ル砂糖、課稅濟ノ精糖ヲ材料原料ト致シマシテ造リ
上ゲマスル糖水、其糖水ニ消費稅ヲ課セラレテ居ルノデアリマス、卽チ原料糖
卽チ材料ト致シマス所ノ精糖ニ一旦稅ガ掛ッテ居リマスノニ、再ビ製シ上ゲタ
糖水ニ又課稅セラレテ居ル是ハ一見不穩當ノ感ガアルノデゴザイマス、又聊
カ二重ノ課稅ノ嫌ガアルノデアリマス、故ニ今般改正ニナリマシテ、是等糖水
ニ對シテハ稅ヲ課セヌト云フコトニシタト云フコトナノデアリマス、是モ又
明カニ分ッテ居ルコトト存ジタ次第デアリマスル、是等ノ三點ガ要點デアリマ
スケレドモ、是レ以外ニモ數多修正改正ノ點ガアルノデアリマスケレドモソ
レ等ハ重モニ字句ノ改正デゴザイマシテ、大シタモノデハナカッタノデゴザイ
マスカラ、玆ニ之ヲ指摘イタシマスコトハ省略イタシマス、委員會ハ唯今申述
ベマシタ理由デ改正ヲ是認イタシマシテ、先キホド申上ゲマシタ通リ、報書〓
ニゴザイマスル通リ可決シマシタ次第デアリマス、サテ尙ホ此際ニ委員會ニ
於キマシテゴザイマシタ質問竝ニ政府ノソレニ對スル所ノ答辯ノ中デ重モナ
ル二三ノ點ヲ茲ニ申上ゲルコトハ、强チ不要デナイト存ジマスルカラ、聊カ御
〓聽ヲ煩ハシマス、ソレデ第一ノ御問ヒハ輸出糖ニ對シマシテ、卽チ外國ニ輸
出スル所ノ砂糖又ハ糖蜜或ハ糖水等ニ對シマシテ、六箇月以內ニ外國ニ陸揚
ヲシタ著荷ヲシタト云フ其證明ガナケレバ課稅ヲスルト云フノガ現在ノ規定
デアリマスルケレドモ、今日ニ於キマシテハ遠ク大洋ヲ隔テテ加奈陀マデ砂糖
ヲ輸出セムトシテ居リマスル、又或ハ其他ノ遠隔ノ地ニモ砂糖ヲ輸出セムト
シテ居ル際デアリマスカラ、此規定ヲ實行イタシマスルニ、或ハ六箇月以內ニ
陸揚證書著荷證書ト云フモノガ屆イテ來ナイ場合ガアルデアラウ、ソレデ或
ハ其規定ヲ實行スルニ付テ不便ヲ生ズル塲合ガアリハシナイカト思フガ、サ
ウ云フ不便ガアッタナラバ政府ハ如何ニ處置シテ其調節ヲ圖ル積リデアルカ、
ソレガ伺ヒタイト云フ御尋デアリマシタ、之ニ對シテハ政府ハソレハ成ルホ
ド質問サレタ如ク困難ナ事情モアルデアラウ、併ナガラ施行細則ノ方デ事實
實際ニ已ムヲ得ズト認メタ場合ニ於キマシテハ陸揚證書ハ免ルシテヤルト云
フコトニシテ、其困難ナ事情ヲ調ベルト云フコトガ卽チ其事實ノ證明ニナル
カラ、强チヒドイ差障リハナイト思フ、斯ウ云フコトデアリマシタ、其政府委
員ノ說明ニ對シマシテ又委員ノ質問ノアリマシタノハ、サウナルト著荷證書
陸揚證書ト云フモノニ重キヲ置カズシテ、寧ロ船積證書ト云フモノニ重キヲ
置クヤウニナリハセヌカ〓サウスルト又ソレニ伴フ不便又ハ弊害ガ起ッテ來ル
デアラウト思フガ、其點ハ如何ト云フ質問デアリマシタ、之ニ對シテハ、成ル
ホド原則トシテハドコマデモ著荷證書ニ重キヲ置ク、著荷證書ヲ提供セシム
ルノデアル、併ナガラ實際稅務署ニ於キマシテ事實不可能ト確認イタシタト
キハ、之ヲ承認シテ之ヲ取ラヌデモ宜イト云フコトニスルノデアルカラ、是ハ
事實政府ニ於テモ心配スルカラ、此點ニ付テハ事實不都合ナク運バレルデア
ラウ、斯ウ云フ御答デアッタノデアリマス、又其次ノ質問ハ此砂糖消費稅法中
改正法律案ガ決定ニナリマス前ノ規定ニ從ヒマシテ旣ニ提供シテ居リマスル
所ノ擔保品ハドウスルノデアルカ、此擔保品ハ解除シテソレ〓〓當業者ニ戾
スノデアルカ、其移リ換ル所ハ如何ナル方法ヲ取ルモノデアラウカト云フ御
尋ガアッタノデアリマス、之ニ對シテ、政府ハ矢張リ施行規則ノ方デ是非解除
シテヤル方法ヲ取ル積リデアルト云フ御答デアッタノデアリマス、其次ニゴザ
リマシタ所ノ問題ハ保稅ヲ移スト云フコトナノデアリマス、保稅ヲ移スコト
ガ出來レバ非常ニ便利デアルガ、サウ云フヤウナ便法ハ政府ニ於テ取レルモ
ノデアラウカ······此保稅ヲ移スト云フコトノ例ヘテ見マスレバ臺灣ヨリ砂
糖ヲ內地ニ移入イタシマスルノニハ、下關ニ持ッテ參リマス、下關ニ著キマシ
タ砂糖ヲ、或ハ取引上ノ都合デアルトカ、其他ノ便宜ノ爲ニ、之ヲ神戶ニ移ス
トカ、又ハ靑森ニ持ッテ行クトカ云フコトガアル場合ヲ想像イタシマシテ、其
下關ノ砂糖ガ臺灣ヨリ參リマシタ際ニ、今日ノ場合デハ之ヲ下關以外ニ移サ
ウト云フニハ、其下關デ稅ヲ拂ハヌナラヌコトニナッテ居ル、其場合ニ當業者
トシテハ甚ダ不便ヲ感ズルノデアルカラ、此保稅ヲ移スコトガ出來テ、橫濱ヘ
持ッテ來タ場合ニハ橫濱デ拂フ、靑森ヘ持ッテ行ッタ場合ニハ靑森デ拂フ、ソレ
ガ許サレルト云フ便利ナ方法ハ出來ヌモノカト云フ御尋デアリマシタ、之二
對シテ政府ハ、成ルホド取引上ニ於テ不便ヲ感ゼラルルコトデアレバ、政府ト
シテハ或ル制限ヲ設ケテナラバ、或ハソシモ出來ナイコトモナイカト考ヘテ
居ルガ······ト云フ御答デアリマシタガ、到底今日ノ場合ハ之ヲ實行スルコト
ニナッテ居ラヌノデアルト云フ御答ニ止マッタノデアリマス、以上申上ゲマシタ
ル通リデ、委員會ニ於テハ此案ハ全會一致ヲ以テ可決ニナリマシタ次第デア
リマス、何卒本會ニ於キマシテモ諸公ノ御贊成ヲ得ムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=121
-
122・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立ヲ請
ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=122
-
123・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=123
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124・寺島誠一郎
○伯爵寺島誠一郞君 直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ動議イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=124
-
125・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニト云フコトデスカ、直チニト云フ意味デス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=125
-
126・寺島誠一郎
○伯爵寺島誠一郞君 ハイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=126
-
127・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=127
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128・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ第二讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=128
-
129・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=129
-
130・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ第二讀會ヲ開キマス、全部ヲ問題ニ供シマ
ス····全部原案通リデ御異存ゴザイマセヌカ
[「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=130
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131・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=131
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132・寺島誠一郎
○伯爵寺島誠一郞君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=132
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133・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=133
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134・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=134
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135・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=135
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136・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ第三讀會ヲ開キマス、全部ヲ問題ニ供シマ
ス·······第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
[「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=136
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137・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=137
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138・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第八、私立學校及公益法人ノ用地免租ニ
關スル法律案、衆議院提出、第一讀會、前會ノ續
〔議案ハ一五二頁ニ揭ケタルヲ以テ茲ニ之ヲ略ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=138
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139・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔河井書記官朗讀〕
私立學校及公益法人ノ用地免租ニ關スル法律案特別委員
子爵稻垣太祥君男爵山川健次郞君折田彥市君
男爵神田乃武君男爵肝付兼行君伊澤修二君
江原素六君石橋謹二君木本源吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=139
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140・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第九、市制中改正法律案、衆議院提出、
第十、町村制中改正法律案、衆議院提出、第十一、府縣制中改正法律案、衆議
院提出、第一讀會
市制中改正法律案
右本院提出案及送付候也
大正五年二月八日
衆議院議長島田三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
市制中改正法律案
市制中左ノ通改正ス
第十一條第二項中「禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタル」ヲ「禁錮以上ノ刑ニ處
セラレタル」ニ改ム
町村制中改正法律案
右本院提出案及送付候也
大正五年二月八日
衆議院議長島田三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
町村制中改正法律案
町村制中左ノ通改正ス
第九條第二項中「禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタル」ヲ「禁錮以上ノ刑ニ處セ
ラレタル」ご依頼人
府縣制中改正法律案
右本院提出案及送付候也
大正五年二月八日
衆議院議長島田三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
府縣制中改正法律案
府縣制中左ノ通改正ス
第三十七條第一項中「禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタル者」ヲ「禁錮以上ノ刑
ニ處セラレタル者」三段人発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=140
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141・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 諸君ニ御諮リシマスガ、唯今議長ノ議題ト致シマ
シタ三案ハ、議事日程第五ノ北海道會法中改正法律案ノ特別委員ニ付託シテ
御異議ゴザイマセヌカ
[「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=141
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142・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、是デ本日ノ會議ハ終リマ
シタ、次ノ議事日程ハ決定次第御通知ニ及ビマス、本日ハ是デ散會イタシマ
ス
午後五時四十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01019160212&spkNum=142
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