第37回帝国議会　貴族院　本会議　第17号　大正5年2月27日

1. 会議録本文

本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。

• 000・会議録情報

  　　　大正五年二月二十七日（日曜日）
  　　　　午前十時九分開議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　議事日程　第十七號　大正五年二月二十七日
  　　　　午前十時開議
  　　第一　大正三年度豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　　　會議（委員長報告）
  　　第二　大正三年度特別會計豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　　第三　大正三年度大正三年臨時事件豫備費支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　　第四　大正三年度帝國鐵道積立金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　　第五　簡易生命保險法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第六　簡易生命保險特別會計法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第七　關税定率法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第八　朝鮮の生産に係る生果、核子及銅の移入税に關する法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第九　證券を以てする歳入納付に關する法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　　　━━━━━━━━━━━━━

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=0

  ---

• 001・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
  〔長谷川試補朗讀〕
  昨二十六日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可
  決ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
  大正五年度特別會計歲入歲出豫算追加案(特第二號)
  同日本院ニ於テ修正議決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ囘付セ
  リ
  北海道會法中改正法律案
  同日本院ニ於テ可決シタル左ノ衆議院提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ
  旨ヲ衆議院ニ通知セリ
  實用新案法中改正法律案
  砂鑛法中改正法律案
  同日本院ニ於テ否決シタル左ノ衆議院提出案ハ第二讀會ヲ開カサルコトヲ
  議決シタル旨ヲ衆議院ニ通知セリ
  市制中改正法律案
  町村制中改正法律案
  府縣制中改正法律案
  同日本院ニ於テ修正議決シタル左ノ衆議院提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ囘付
  セリ
  齒科醫師法中改正法律案
  罹災救助基金法中改正法律案
  同日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
  證劵ヲ以テスル歲入納付ニ關スル法律案特別委員會
  委員長伯爵松浦厚君副委員長男爵田健治郞君
  高等試驗法案外一件特別委員會
  委員長伯爵〓棲家〓君副委員長澤柳政太郞君
  同日特別委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
  簡易生命保險法案修正報告書
  簡易生命保險特別會計法案可決報告書
  證劵ヲ以テスル歲入納付ニ關スル法律案可決報告書
  同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提出案ハ本院ノ議決ニ同意シ奏
  上セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
  重要物產同業組合法中改正法律案

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=1

  ---

• 002・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、御諮リヲ致シタイ
  コトガゴザイマス、豫算委員長竝ニ質屋取締法中改正法律案ノ特別委員長ヨ
  リ本日ノ本會議中ニ委員會へ退席イタシタイト云フコトヲ申出ラレマシタ、
  許可ヲ致シテ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=2

  ---

• 003・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=3

  ---

• 004・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ本日ノ議事日程ニ移リマス、議事日程第一、
  大正三年度豫備金支出ノ件、承諾ヲ求ムル件、衆議院送付、會議、委員長報
  〓第二、大正三年度特別會計豫備金支出ノ件、承諾ヲ求ムルノ件、衆議院
  送付、會議、委員長報〓、第三、大正三年度大正三年臨時事件豫備費支出ノ
  件、承諾ヲ求ムル件、衆議院送付、會議、第四、大正三年度帝國鐵道積立金
  支出ノ件、承諾ヲ求ムル件、衆議院送付、會議、委員長報告
  〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚
  フ〕
  大正三年度豫備金支出ノ件
  大正三年度特別會計豫備金支出ノ件
  大正三年度大正三年臨時事件豫備費支出ノ件
  大正三年度帝國鐵道積立金支出ノ件
  右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正五年二月二十六日
  右特別委員長
  男爵武井守正
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔男爵武井守正君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=4

  ---

• 005・武井守正

  ○男爵武井守正君　是ヨリ委員會ノ結果ヲ御報告イタシマス、大正三年度豫
  備金支出總計算書、大正三年度特別會計豫備金支出總計算書、大正三年度大
  正三年臨時事件豫備費支出總計算書、大正三年度帝國鐵道積立金支出總計算
  書此四案ヲ束ネテ御報道ヲ致サウト存ジマス、此承諾ヲ求メラレマシタル
  金額ハ合計イタシマスト六百九十萬圓バカリゴザイマシテ、其外ニ鐵道ノ積
  立金ガ百一萬圓デアリマスカラ、合セテ八百萬圓近イ金額デゴザイマス、第
  一豫備金カラ支出イタシマシタノガ百萬圓、第二豫備金カラ支出イタシマシ
  タノガ二百萬圓、特別會計豫備金ガ三百九十萬圓バカリ、臨時事件費ガ二百
  萬圓、其外鐵道積立金ノ支出ガ百一萬圓デゴザイマス、其第一豫備金ガ百萬
  圓ノ內、一々各省ノ計數ヲ申上ゲマスト煩ハシウモゴザイマスシ、數字デゴ
  ザイマスカラ共大體ヲ申シマスト、遞信省ガ五十八萬九千圓バカリ使ヒマシ
  タ、內務省ガ十四萬圓バカリ、大藏省ガ十一萬圓バカリデアリマシテ、其外
  陸軍省、外務省、農商務省、司法省等ガゴザイマスガ、各〓五六萬圓乃至一萬
  圓司法省ノ如キハ僅ニ四千九百圓バカリデアリマス、海軍省ハ第一豫備金
  ハゴザイマセヌ、第二豫備金ニ於テ海軍省ガ百五十一萬圓バカリアリマス、
  遞信省ガ十八萬圓、文部省ガ十四萬圓、其他ハ十萬圓以內乃至何千圓ニ止マ
  ッテ居リマス、是ニハ陸軍省ハゴザイマセヌ、特別會計ニ於キマシテ外務省ノ
  所管デ關東都督府ガ六千四百圓バカリ、風水害ニ三萬圓バカリ使ヒマシタ、
  內務省所管デ朝鮮總督府ガ三十萬圓バカリ、第二豫備金デ五十萬圓バカリ使
  ヒマシタ、此五十萬圓ハ時局ニ關シマシテ海軍省ノ石炭ヲ採掘シマスル爲ニ
  平壤ニ於テ二十五萬圓、ソレカラ水害復舊費ニ二十四萬圓バカリ使ッテ、合セ
  テ五十萬圓バカリニナッテ居リマス、其外朝鮮ノ朝鮮醫院及濟生院等デ四千七
  百圓バカリ、ソレカラ臺灣總督府デ九萬圓バカリ使ヒマシタ、是ハ死傷手當
  デゴザイマシテ、討蕃費トシテ三十萬圓バカリ、樺太ハ僅ニ八千圓バカリ第
  一豫備金カラ使ヒマシタ、大藏省所管デ專賣局ガ五十萬圓、陸軍省所管デ大
  阪東京砲兵工廠ニ於キマシテ六十四萬圓ニ百五十萬圓バカリ費消イタシマシ
  タ、文部省所管デ東京帝國大學、京都帝國大學其他新潟ノ醫學專門學校、秋
  田鑛山專門學校、東京美術學校、東京女子高等女學校等ニ於キマシテ僅ニ三
  千八百圓バカリ使ヒマシタノデゴザイマス、臨時事件豫備費ハ二百萬圓デア
  リマシテ、外務省七十六萬二千圓、內務二十萬圓、大藏七萬圓、陸軍三十萬
  圓司法ガ僅ニ千百圓、農商務省十萬圓、遞信五十四萬八千圓、帝國鐵道積
  立ノ支出ガ百一萬圓、此承諾ヲ求メマシタ譯ハ、豫算ガ不成立ニナリマシタ
  爲ニ前年度ノ豫算ニ據リマシタ爲ニ不足ヲ致シマシタモノガ重モナル原因デ
  ゴザイマシテ、其他ハ時局ノ爲ニ軍事費ヲ費消イタシマシタノト、ソレカラ
  法律ノ結果トシテ年々膨脹シマス例ヘバ造船奬勵費ノ如キガ、大正三年度ニ
  於テ百五十八萬圓パカリ計上ガ致シテアリマシタノガ、不成立ノ爲ニ前年度
  ノ七十五萬圓ノ豫算ニ據ッテ支出ヲシマシタ爲ニ八十九萬圓バカリ不足ヲシ
  マシタノデゴザイマス、先日豫算モ······議決ニナリマシタ豫算ニ依リマスト
  五年度ニ於テハ三百十二萬圓バカリニナッテ居ルノデアリマス、年々ノ是マデ
  ノ經過ニ依リマスト二倍以上ノ經費ガ增シテ參リマス、故ニ豫算總會ニ於キ
  マシテモ第五分科會ニ於キマシテ希望ヲ述ベラレタ人ガゴザイマス、ソレハ
  造船奬勵法ト云フモノハ明治二十九年ニ創設ニナリマシタモノデ、明治二十
  九年カラ今年ハ二十箇年間ヲ經過イタシテ居ルノデゴザイマス、二十九年ノ
  當時ニハ木船ヲ造リ僅ニ千噸內外ノ鐵船ヲ造ル位ノ時代デゴザイマスカラ、
  此奬勵法ヲ以テ大ニ發達ヲ促サナケレバナラヌ時代デアッタノデゴザイマス、所
  ガ二十年ノ星霜ヲ經マス今日ニ於キマシテハ千噸ハオロカ一萬噸乃至二萬幾
  千噸ト云フヤウナモノニ今日ハ船臺ガ上ッテ居ルノガゴザイマスノデアリマ
  スカラ、此勢ヲ以テ進ミマスレバ年々二倍以上ノ奬勵金ヲ支出スルト云フコ
  トハ當然ノ譯デゴザイマス、其幼稚ニシテ技術モ進マズ、職工モ慣レナイ當時
  ニ於テハ奬勵ノ必要ガアリマシタケレドモ、今日ハ······差シテ世界ニ負ケヌ
  位ニ技術モ進ミマシタ今日ニ於テ、尙且ツ二十年前ノ奬勵ヲシナクテハナラ
  ヌト云フコトハ何所ニモナイカラ、此法ハ宜シク改正シタラ宜カラウト云フ
  希望ガ出マシタノデゴザイマス、是ハ本員モ尤ナコトト存ジマス、既ニ海軍
  ノ八四艦隊ノ經費ハ六年度ニ於テ何レカラ出サレマスカ、豫算ノ表ニ依ッテ如
  何ニ算盤ヲシテ見マシテモ、私ハ何處ニモ餘アッテ之ニ向ケル金額ヲ見出シ得ヌ、
  斯ル不足ノ會計ノ有樣ニ於キマシテ尙且ツ無用ノ獎勵······造船奬勵費ヲ年々
  二倍以上ヅツ出スト云フノハ實ニ無用ナコトデアルト存ジマス、是等ハ宜シ
  ク改正シテ海軍費ニデモ向ケラレムコトヲ希望スル譯デゴザイマス、前ニ申
  上ゲマシタ通リ此支出ハ八百萬圓バカリデゴザイマスガ、一ツヅツ審査ヲ致
  シマスト皆尤ナ支出ト存ジマスカラ、委員會ハ滿場一致ヲ以テ承諾ヲ與フベ
  キモノト決シマシタノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=5

  ---

• 006・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　採決ヲ致シマス、諸君ニ於テ御異議ガナケレバ唯
  今委員長ノ報〓セラレマシタ四案トモ一括シテ採決ヲ致シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=6

  ---

• 007・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　四案トモ承諾ヲ與フベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒ
  マス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=7

  ---

• 008・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=8

  ---

• 009・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　第五、簡易生命保險法案、政府提出、衆議院送付、
  第一讀會ノ續、委員長報告
  簡易生命保險法案
  右別册ノ通修正セリ依テ及報告候也
  大正五年二月二十六日
  右特別委員長
  伯爵林博太郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  簡易生命保險法案
  (小字ハ特別委員ノ修正文、-ハ同削除ノ符號ナリ)
  第三條簡易生命保險ニ於テハ政府カ保險契約者又ハ第三者ノ生死ニ關シ
  保險金額ヲ支拂フヘキコトヲ約シ保險契約者カ對償トシテ政府ニ保險料
  ヲ支拂フヘキコトヲ約スルモノトス
  ○資格、
  簡易生命保險ノ種類、被保險者ノ年齡、○保險料及被保險者ノ爲ニ積立ツ
  ヘキ金額ノ計算ノ基礎ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  二百五十
  第四條簡易生命保險ノ保險金額ハ三百圓以下トス
  同一ノ被保險者ニ付數箇ノ保險契約ヲ爲シタル場合ニ於テハ其ノ保險金
  額ノ總額ハ前項ノ制限ニ依ル
  〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=9

  ---

• 010・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　是ヨリ簡易生命保險法案竝ニ簡易生命保險特別會計法
  案で、二案ノ特別委員會ノ經過ヲ御報〓イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=10

  ---

• 011・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議長ガ申落シマシタガ、第六ノ簡易生命保險特別
  會計法案ノ報告モ此際議題ニナッタ譯デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=11

  ---

• 012・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　差當リ便宜ノタメ此二案ノ中前者、卽チ簡易生命保險法
  案ノ方カラ御報告ヲ致シマス、此法案ハ御承知ノ如ク頗ル重大ナ案デゴザイ
  マスカラ、委員會ニ於キマシテモ愼重審議ヲ經マシテ、去ル二十一日ヨリ昨
  日マデ、而カモ午後マデ非常ニ鄭重ニ審議ヲ致シマシタコトデゴザイマス、
  之ヲ一々內容ニ付テ御話シマスノハ此議會切迫ノ際デモアルシ、尙又隨分傍
  聽シタ方モゴザイマスカラシテ其邊ハ省キマシテ、要點タル卽チ修正案ガ出
  マシタコトデゴザイマスカラシテ、其修正案ノ理由竝ニ之ニ對スル反對論ノ
  根據ヲ述べマシテ、サウシテ委員會ノ經過ヲ大體ニ於テ御報告イタス順序ト
  致シマス、此修正說ハ如何ナル點ニアルカト申シマスト簡易生命保險法案ノ
  第一條ヨリ第三十四條ニ亙ル中ニ於テ、第三條竝ニ第四條デゴザイマス、第
  三條ハ第二項ノ中、卽チ「簡易生命保險ノ種類、被保險者ノ年齡」ノ次ニ「資
  格」ト云フ二字ヲ加ヘルト云フコトデゴザイマス、尙ホ念ノタメ讀ンデ見マ
  ス、第三條、此本條ヲ略シマシテ第二項ヲ讀ミマス、「簡易生命保險ノ種類、
  被保險者ノ年齡、資格、保險料及被保險者ノ爲ニ積立ツヘキ金額ノ計算ノ基
  礎ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」、第四條ハ「簡易生命保險ノ保險金額
  ハ三百圓以下トス」トアルノヲ「簡易生命保險ノ保險金額ハ二百五十圓以下
  トス」ト云フ修正デゴザイマス、何レ修正ノ理由ニ付テハ修正論者ノ御方カラ
  御說明モアルト考ヘマスガ、委員長ノ責任トシテ簡單ニ其理由モ述ベテ置キ
  マス、デ此第三條ハ資格ニ付テデアリマス、第四條ハ金額ニ付テデアリマス
  ガ、差當リ資格ノ方面ノ理由ヲ述べマス、第一ニ理由トスル所ハ官業ノ壓迫
  ヲ避ケルト云フコトガ重モナルコトデアリマス、三百圓ト云フ點ニ於テ澤山
  ノ普通ノ生命保險會社ノ定款ニ接觸シテ居ル點ガアルノデアリマスカラ、之
  ヲ避ケルノガ穩當デアル、卽チ此壓迫若クハ接觸トカ影響トカ云フコトヲ及
  ボサナイヤウニスルノニハ、此三百圓ト云フ所ニ一ツ明カナル限界ヲ造ッテ
  置ク必要ガアルノダト云フ理由ニ於テ、之ヲ二百五十圓ニ下ゲレバ五十圓ノ
  差ガ出來ルカラ壓迫ノ程度ガ少クナル、是ニハ色ミナ論者ガアリマシテ、ナ
  ラウコトナラ百圓ナラバ餘程接觸ノ範圍ガ下ガル、二百圓デモ下ガル、併ナ
  ガラソレハ程度問題デアル、成ルベク下ヘ下ゲタイノダケレドモ、ソレガ出
  來ナイノデアルナラバ先ヅ五十圓下ゲテ二百五十圓トスレバ、三百圓ヨリ餘
  程影響ガ少クナル、此理由ガ先ヅ第一ニ立ッテ居ッタヤウデアリマス、次ニハ
  競爭ヲ避ケルト云フ點、名前ガ簡易生命保險デアリマスカラ無審査デアル、
  色ミノ便宜ガアリマス、印紙代、交通機關ト云フヤウナモノニ最モ重要ナル
  印紙モ唯デヤルト云フヤウナ色〓便宜ガアリマス、又月賦集金ト云フヤウナ
  コトニナッテ居ッテ、一度或ハ二度ニ澤山ノ額ヲ取ルノデナク、每月少イ額ヲ
  取ル、其取ルノモ集金デ家へ取リニ來ルト云フ便宜ガアルノダカラ、ドウシ
  テモソッチニ行クヤウナ傾向ガアリマスカラ之ヲ下ゲナケレバナラヌ、卽チ
  之ニ付テ矢張リ二百五十圓ト云フ所ニ低下スル、下ゲルト云フコトハ理由ニ
  於テ當然デアル、ソレカラ又此簡易生命保險法案ハ公益ト云フコトト私利ト
  云フコトト滅却スルト云フヤウナ議論モアルケレドモダ、若シ此壓迫ノ爲ニ
  普通ノ所謂今マデヤッテ居ッタ旣得權ヲ有ッテ居ッタ所ノ保險會社ガ多大ノ壓迫
  ヲ受ケテ破產デモスルヤウニナッタナラバ其結果ハドウデアル、破產スレバ其
  影響ハ獨リ僅ナル生命保險會社ノミナラズ被保險者全部ノ負擔ニナル、全部
  ノ損害ニナル、而カモ三百圓ト云フヤウナコトデアッテ見レバ細民ノ負擔ガ
  重クナッテ非常ナ損害ヲ受ケルト云フ不利益ヲ來タスヂヤナイカ、其影響
  ハ頗ル多大ナモノデアルト云フヤウナ理由ニ依ァテ、此資格ヲ定メルト云フコ
  ト、竝ニ三百圓以下ニスルト云フコトハ理由ノアルコトデアリマスカラ、又
  資格ニ付テ明カナル限界ヲ言ッテ見マスト云フト、ドウモ細民ヲ保護スルト云
  フコトニ對シテモ、何カ此所ニ嚴格ナル制限ガナイト云フト細民ノ保護ニナ
  ラナイヂヤナイカ故ニデス、或ハ假ニ言ッテ見レバ直接國稅十圓以下ヲ納ム
  ルト云フモノヲ細民ト云フ程度ニスルナラバ、卽チ其資格ニ制限ヲ付ケルノ
  ダカラ、サウスレバ大シタ間違モ起ラナイデアラウ、ソレハ十圓デナクテモ
  五圓ナラ尙ホ宜イカモ知レナイ、デソレ等ハ免ニ角政府ニ於テ十分御調べ下
  スッテ、其點ハ法文ニアリマス通リ勅令ヲ以テ定メルト云フコトデアリマスカ
  ラ、尙ホ念ニ念ヲ入レテ十分ニ審査シタ結果、或ハ職業別トカ或ハ稅ノ方面
  デアルトカ、サウシテ之ヲ定メテ貰ヘバ宜イデハナイカト云フ理由ノ下ニ資
  格ト云フモノヲ下ゲルノハダ、卽チ細民ニ恩澤ヲ及ボスト云フ上カラ見テ必
  要デアル、卽チ簡易生命保險ハ細民ノ方ニ恩澤ガ及ビ、普通ノ生命保險ハ中
  級階級ヲ主トシテ恩澤ヲ及ボスト云フコトデアレバ、接觸ヲ避ケルト云フコト
  ニ於テ十分出來ルコトデアラウト考ヘル、斯ウ云フ意思デアリマス、詳シイコ
  トハ又其論者ノ方カラ述ベマスカラ此所ニ略シテ置キマス、免ニ角此修正ヲ
  シマセヌト下級民ノ保護ト云フモノガ出來ナイノデ、下級民カラ集メタ金ヲ
  中等社會ノ方面ニ消費スルト云フヤウナ不都合ヲ生ズルモノデアル、斯ウ云
  フ意見デアリマス、政府モ大體ニ於テ之ニ對シテ御辯明ハアルト考ヘマスガ、
  之ニ對シテハ先ヅ到底同意ハ出來ナイト云フコトデアリマス、其修正案ニ反
  對ノ他ノ意見、是ハ又追〓御論議ガアリマスコトト考ヘマスカラ頗ル簡單ニ述
  ベテ置キマスガ、若シ此修正說ヲ贊成スルナラバドウ云フ不都合ガ起ッテ來ル
  カ、寧ロ官業ノ壓迫トカ何トカ云フコトヲ事實ニ於テ政府ニ强ヒヤシナイカ
  ト云フコトガ此所ニ一ツ理由ニナル、三百圓ヨリ下ヘ下ゲレバ手數料ハ二百
  五十圓デモ三百圓デモ同ジデス、手數ノ掛ルコトハ······從ッテ保險金額ニ對ス
  ル保險料ト云フモノノ中ニハ純保險料ト附加保險料トアルノデスカラ、此手
  數ガ掛ルト云フ方ノ附加保險料ハ依然トシテ同ジコトデアル、此故ニ保險料
  ト云フモノハ二百五十圓ニ對シテハ確カニ三百圓ニ對スルヨリ高イコトニナ
  リマスカラ、其結果デス、下級民ヲ助ケルト云ヒナガラ細民ニ對シテ壓迫ヲ
  加フルヤウナコトニナル、負擔ガ重クナルト云フコトニナル、モウ一ツハ保
  險金額ヲ七十五圓ト云フコトニ見積ッテ居ルノデアリマスカラシテ、若シモ損
  益ノ餘リナイヤウニ······勿論官營ノコトデアルカラ利益ト云フモノハ目的ト
  シナイガ、免ニ角損ヲセヌヤウニイケルナラバ、三百圓以下ニ下レバ七十五
  圓ノ平均額モ下リマスカラ、其平均額ヲ下ゲナイ爲ニハ勉强ヲスル、善イ言葉
  ヲ以テ言ヘバ勉强ヲスルト云フコトヲシナケレバナラヌ、サウスレバ卽チ尙
  更ニ民業ヲ壓迫シテ、サウシテ多クノ得意ヲ取ラウト云フコトヲ以心傳心ノ
  間ニ奬勵ヲスルコトガ起ル、サウナッタラ、ソレコソ民業ヲ壓迫スルヤウナ結
  果ニナッテ來ルヂヤナイカト云フ議論ガアリマシタ、又公益ヲ犠牲ニシテ私
  利ノミヲ圖ルト云フコトヲ論ズル御方モアル、若シ此修正說ヲ賛成スルナラ
  バ、其利益ヲ受ケルモノハ保險會社デハナイカ、サウシテ其損害ノ多大ナル
  モノハ何デアルカト言ヘバソレハ下層ノ細民デハナイカト云フヤウナ論カラ
  反對サレタ人モアリマス、是等ハ眞正而カラ反對サレタノデアリマスガ、此
  他ニ側面カラ反對サレタ議論ノ人モアル、ソレハ何デアルカト云フト、成ル
  ホド細民ノ保護ヲ圖リ、細民ニ恆產ヲ與フルト云フコトデアルカラシテ大變
  ニ是ハ結構ナコトデアル、デアルカラ三百圓ガ二百圓ニナリ、二百圓ガ百圓
  ニナルニ於テハ民業ガ壓迫ヲ受ケテ·····サウシテ旣得權トシテ營業シテ居ル
  權利ニ侵入シナイ方法ヲ講ズルノガ頗ル穩當ナ修正ノ論旨ノ立ッタコトデハ
  アリマス、併シ今日ハ最早會期モ切迫シテ居ルコトデアリマスカラ、其論旨
  ハ良イトシテモ是ガ衆議院ニ廻リ、サウシテ又再ビ論戰ヲ戰ハスト云フコト
  ニナッテ、遂ニ是ガ兩院ノ協議會ニ掛ルヤウナコトニナレバ結局此會期ニハ此
  案ガ通ラナクナル、若シサウナッテハ折角社會政策ノ爲ニ一日モ忽ニスベカ
  ラザル此良イ案ガ實施セラレナイト云フヤウナ虞ガアルカラ、之ニ依ッテ修正
  案ニ反對ヲスルト云フ方モアリマシタ、又原案全部ニハ反對デアルケレド
  モ、又原案ガ潰レテ見レバ比較的自分ノ意見ニ近イ所ノ修正說ニ贊成デアル
  ト云フ方モアリマシタ、斯樣ナ理由ニ依リマシテ修正案ニ付キマシテ決ヲ採
  リマシタ所ガ、採決ノ結果修正案ヲ可トスル者ガ多數デアリマシテ、此修正
  案ガ成立イタシマシタ、第二ノ簡易保險特別會計法案ガ次ノ議題ニ上リマシ
  タ所、是ハ頗ル簡易ナ案デアルト同時ニ、簡易生命保險法案ガ通過スル以上
  ハ當然是ハ必要デアルト云フ理由ニ依ッテ、大シタル辯難モナク通過イタシタ
  次第デゴザイマス、デ尙ホ經過ニ付キマシテハ約一週間ニ互ル論辯デアリマ
  シタカラ、澤山ニ御話スルコトモアリマスガ、ソレハ却ッテ御議論ノアル方カ
  ラ此壇上ニ於テ說明ノアル方ガ宜イノミナラズ、其餘裕ヲ付ケルノハ委員長
  トシテノ德義デモアラウト思ヒマスカラ、私ハ是ニテ此兩案ノ委員會ノ經過
  ヲ報告イタシマシテ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=12

  ---

• 013・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=13

  ---

• 014・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　高木男爵ハ何ノコトデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=14

  ---

• 015・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　質問ヲ致シタウゴザイマスガ、宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=15

  ---

• 016・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　政府ニ對シテ御質問デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=16

  ---

• 017・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　左樣デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=17

  ---

• 018・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=18

  ---

• 019・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　本員ハ去ル十八日ニ本案ニ對シテ質問ヲ致シマシタケレ
  ドモ、尙ホ一應伺ハナケレバ贊否ヲ決スルダケノ材料ヲ得ナイノデアリマ
  ス、ソレ故ニ御尋ヲ致シマス、先日ノ質問ニ對シテ簡易保險法ハ實行スルト
  モ國民ノ體力ニ影響スル憂ハナイモノト信ズルト云フ御答辯ニナッタノデア
  リマス、本員ガ加ヘテ御尋イタシマスノハ無診査デ保險ヲ付スルコトガ出來
  ルヤウニナリマスレバ身體ノ健康ノ良否ハ問フニ及バヌ、卽チ生命サヘアレ
  バ殆ド保險ヲ付スルコトガ出來ルト云フヤウナ氣風ヲ生ズルコトハ國家ノ爲
  ニ大ナル憂デハアリマセヌカト云フ意味ヲ含ンデ御尋ヲ致シマシタガ、之ニ
  付テハ未ダ御答辯ヲ得ナイノデアリマス、本員ガ信ズル所ニ依リマスレバ健
  康ホド大切ナモノハナイト云フ心掛ヲ持スル國民ハ自然體育ニ心掛ケルニ違
  ヒナイノデアリマスガ、斯樣ナル場合ニ臨ンデ······保險ノ場合ニ臨ンデ、健康
  如何ヲ問ハズ保險ヲ付スルコトガ出來ルト云フ如キ氣風ニナルノデ、取リモ
  直サズ國民ガ體育ヲ怠ル原因トナラウト思ヒマス、卽チ國民體育上墮落ノ先
  鋒ニナルト云フ虞ガアル、之ニ依ッテ當局者ノ御答辯ヲ煩ハシタイノデアリマ
  ス、尙ホ御尋ネ致シマスルノハ現在ノ保險業ハ漸々發達シテ居ルカト云フ問
  デアリマス、本員ノ見ル所ニ依リマスレバ、保險會社ハ日ニ月ニ其數ヲ增シ、
  其發達ハ數ノ多キガ爲ニ頗ル憂フベキ現象ガアルガ如クニ思ハレルノデアリ
  やさ、ソレ故ニ政府ニ問ハムトスル所ハ今日ノ保險業界ノ現狀ヲ以テ滿足シ
  テ御出デナサルヤ否ヤ、之ヲ御尋シタイノデアリマス、尙ホ之ニ搗テテ加ヘ
  テ簡易保險ヲ行ヘバ如何ナル利益ガ一般ノ保險業界ニ起ルト云フ御意見ガゴ
  ザイマセウカ、之ヲ伺ヒタイノデアリマス、政府ガ本法ヲ絕對的ニ必要視セ
  ラルル如ク先日ヨリノ說明デ聞エルノデアリマス、ソレニ付テハ此簡易保險
  ヲ行ヘバ他ノ保險全體ノ上ニ何等カ特ニ得ル所ガアルト云フ御認メガ立ッテ
  居ルノデアリマスカ、如何デアリマス、ドウゾ審ニ御答辯ヲ願ヒマス
  〔國務大臣箕浦勝人君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=19

  ---

• 020・箕浦勝人

  ○國務大臣(箕浦勝人君)　御答ヲ致シマスガ、此簡易保險ニ於キマシテモ被
  保險者、卽チ加入者ノ健康ヲ全ク眼中ニ置カヌト云フ譯デハナイノデアリマ
  ス、成ルベク健康體ヲ選ンデ取ルノデアリマス、唯其健康體デアルヤ否ヤト
  云フコトヲ專門ノ醫者ノ診察ニ俟タズシテ、素人ガ唯眼デ見ルノデアリマス
  カラ、隨ッテ專門ノ醫者ノ診察ノヤウニ精密ニ參ラヌノデアリマスガ、併ナ
  ガラ病人ヲ取ルトカ、健康ヲ顧ミナイト云フノデハアリマセヌ、先ヅ素人ノ
  眼デ見テ健康デアルト見タ者ヲ採リマス都合デアリマス、從ッテ勢ヒ專門家
  ノ診察ノヤウニ精密ニハ參リマセヌケレドモ、趣意ハ決シテ不健康者ヲ採ル
  ト云フ意味デナイノデアリマス、ソレカラ此簡易生命保險ヲ行ヒマス爲ニ普
  通ノ保險ニ如何ナル利益ガアルカト云フヤウナコトデアリマシタガ、ソレハ
  ドノ位ノ利益ガアリマスルカ、チヨット測リ難イデアリマスルガ、併ナガラ成
  ルベク廣ク此保險ノ利益ヲ及ボシタイト考ヘマスルニ付キマシテ、全國ニ散
  布イタシテ居ル七千有餘ノ郵便局ヲ使ヒマス譯デアリマシテ、自然保險思想
  ガ一般ニ弘マリ、普及スルト云フコトニナルデアラウカト期待イタシテ居ル
  ガ、保險思想ガ一般ニ普及イタシマスレバ、自然普通ノ保險······段々其人〓
  ノ狀態ガ進ムニ從ッテ高イ金額ノ保險ヲ附ケルト云フコトモ起ッテ來ル譯デア
  リマスカラ、間接ニハ並日通ノ保險ニ利益ヲ與ヘルト云フ結果ニナルデアラウ、
  又ナラムコトヲ希望シテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=20

  ---

• 021・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　保險業ハ現在健全ニ發達シテ居ルヤ否ヤト云フコトヲ御
  尋イタシマシタケレドモ、是ニハ答辯ガゴザイマセヌカラ、ドウゾ之ニ對ス
  ル答辯ヲ煩ハシタイ
  〔國務大臣箕浦勝人君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=21

  ---

• 022・箕浦勝人

  ○國務大臣(箕浦勝人君)　先ヅ我國ノ保險業ハ諸般ノ事業中健全ニ發達シタ
  ル事業ノ中ノ一ツデアルト考ヘマス、併ナガラ數アル保險會社ノ中ニハ色ミ
  ナ種類ガアリマスシ、色〓ノ狀態ニ居ルモノモアリマスルカラ、一〓ニハ申
  シマセヌガ、併ナガラ先ヅ以テ健全ニ發達シタモノト考ヘマス、併ナガラ或
  ハ餘リ一時ニ澤山出來過ギマシタ爲ニ、激甚ナル競爭、過度ノ競爭ガ起ッテ、ソ
  レガ爲ニ弊ヲ受ケテ居ルコトガ餘程アルト考ヘマス、其點ニ付テハ見樣ニ依
  リマシテ甚ダ健全ナラザル點モアルト考ヘマスルガ、併ナガラ大體カラ申シ
  マスレバ、先ヅ相應ナ發達ヲ遂グ來ッタモノト見テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=22

  ---

• 023・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　唯今ノ御答辯デハ唯有リノ儘ノ御話デアリマス、斯ノ如
  キ狀態ヲ以テ政府ハ滿足シテ御出デナサルカト云フコトヲ御尋シタノデアリ
  やマ、唯今仰シヤル通リニ其數ガ俄ニ增加ヲ致シ、弊ヲ生ジテ居ルト云フ如
  キコトガアラウト云フ意味合ノ御答辯デアリマス、是ハ卽チ當局者ト云フ御
  方〓ガ斯ク澤山アルヤウニ御拵ヘニナッタモノト言ハナケレバナラヌ、許可ガ
  ナケレバ斯クハ殖エナイ、弊ノ出タル所ヲ見テ御出デニナレバ是等ノモノヲ
  矯正シテ、然ル後尙ホ進ムト云フコトコソ國家ノ經營上宜シキヲ得タルガ如
  ク思ヒマスガ、當局ニ於キマシテハ唯今ノ所ハ如何ニ御考ヘニナリマスカ
  〔國務大臣箕浦勝人君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=23

  ---

• 024・箕浦勝人

  ○國務大臣(箕浦勝人君)　先刻御答ヲ申シマシタ次第デアリマスルガ、決シ
  テ今日ノ狀態デ宜シイト申ス譯ニハ參ラナイ、何レ之ヲ改良シテ參ルコトガ
  必要ト考ヘマス、ソレニ付キマシテ農商務ノ當局ニ於キマシテモ其點ニハ餘
  程注意ヲ致サレマシテ、將來一層諸般ノ弊害ヲ矯メテ健全ナル發達ノ助ニナ
  ルヤウニナルト云フコトヲ承ッテ居リマス、無論サウ云フ方針ヲ將來執ラルル
  コトト信ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=24

  ---

• 025・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　先キニハ診察ハシナイノデアルケレドモ、病人デアルカ
  ナキカハ素人ノ眼デハ鑑定ヲスルノデアル、斯ウ云フ御答辯デアッタヤウニ
  記憶イタシマス、シテ見レバ診察ト云フモノハ醫者デナクテハナラヌト決メ
  テ、素人ノ見ル眼ハ診察ニナラヌ、斯ウ云フ意味ニ聞エルノデアリマスガ、サ
  ウ云フ道理ガ世ノ中ニアルモノデアリマセウカ、甚ダ疑ハシク考ヘルノデア
  リマス、三等郵便局アタリニ出張サセテ、顏容子ヲ見テ、顏ノ容子ガ惡ケ
  レバ尙ホ手續ヲ立テテ、然ル後契約ヲ決定スルノデアルト云フガ如キ政府ノ
  御趣旨ノヤウデアリマス、斯ノ如クナサレバ實際ハ診察デハナイ、或ル程度
  マデノ簡易ナル······醫者ノ方デ申シマスレバ望診ト云フコトヲ素人ナガラモ
  スル、斯ウ云フ御話デアル、シテ見レバ多少實驗ノアル人デナケレバ之ヲ識
  別スルコトハ出來ナイコトデアラウ、サウナリマスレバ矢張リ專門見タヤウ
  十、體格、健康ノ良否ヲ見ル人ヲ郵便局ニ置カヌケレバナラヌト云フ始末ヲ
  生ズル憂ハナイノデアリマスカ、七千有餘ノ郵便局長ハ顏ヲ出セバ直グニ是
  ガ病人デアル病人デナイト云フコトヲ鑑定スルダケノ能力アリト御認メニナ
  ッテ居ル譯デアリマスカ、之ヲ一ツ伺ヒマス、尙ホモウ一ツ伺ヒマスルノハ先
  キニ本員ガ申上ゲタ通リデアリマス、尙ホ今後ハ改良スル積リデアル、如何
  ニ改良ヲシタラ宜シイカ、現在保險業界ニアル弊ノ基ハ何デアルカ、其本ヲ
  明カニシ、然ル後ニ是ノ處分ヲナサルニ非ザレバ改良法ハ到底出來ナイノデ
  アリマス、其本ヲ明カニシテ·······未ダ斯ノ如キ御調査モナイノヂヤナイカト
  思ヒマス、十分ニ保險業ノ中ニ弊ガアルナラバ、其弊ノアル所ヲ明カニ糺シ
  之ヲ矯正シテ、然ル後ニ進ムヤウニナサルノガ政府ノ本分デハナイカト思ヒ
  マスガ、今日ノ所デハ其弊ノアル所等ヲ十分ニ調査ヲセズ、此一方面ニ簡易
  ノ保險法ヲスルガ宜イト云フ如キ方針ヲ採ッタ如ク見エマスガ、本ヲ正シウシ
  テ然ル後末ヲ治メル方針ヲ御採リニナルコトハ出來ナイノデアリマスカ、モ
  ウ一應伺ヒマス
  〔國務大臣箕浦勝人君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=25

  ---

• 026・箕浦勝人

  ○國務大臣(箕浦勝人君)　最初ノ方ノ御尋ノ郵便局長ニ診察スル能力ガアル
  カト云フコトデアリマスガ、是ハ迚モ專門ノ醫者ナドノ如ク診察スル能力ハ
  ナイノデアリマス、併ナガラ普通ノ常識ヲ以テ、御話ノ通リ望診ヲスルダケ
  ノ能力ハアルト信ジテ居ルノデアリマス、ソレカラ今ノ農商務省ガ保險會社
  ニ對シテ改良ヲナサレルト云フ先ヅ一端ヲ申シマスレバ、濫設ノ弊ヲ防グ、
  餘ホド嚴重ナル方法ヲ以テ取締ヲスルト云フヤウナコトガ先ヅ改良ノ手段デ
  アラウト考ヘテ居リマスガ、是ハ農商務ノ方ニ屬スルコトデアリマシテ、餘
  リ詳細ナコトハ御答スル譯ニ參リマセヌガ、大體ハ左樣デアラウト存ジマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=26

  ---

• 027・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ通告ニ依リマシテ登壇ヲ促シマス、仲小路
  廉君
  〔仲小路廉君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=27

  ---

• 028・仲小路廉

  ○仲小路廉君　私ハ委員長ノ報告ニ反對ヲ致シマシテ、原案卽チ政府案ニ贊
  成ヲ致ス一人デアリマス、今日保險問題ニ付キマシテハ世上ニ重大ナル問題
  トナッテ居ルノデアリマシテ、尙ホ之ニ關シマシテハ種々ナル浮說流言等モ行
  ハレテ居ル今日デアリマスルカラ、私ハ本案ニ付キマシテ、政府案ニ贊成ヲ致
  シマスル私ノ立場及前後ノ關係ヲ明瞭ニ致シテ置キマスルコトハ甚ダ必要ト
  存ズルノデアリマス、私ハ屢〓現內閣ノ施政施設ニ對シテハ反對ノ態度ヲ執ツ
  タコトハ度〓アルノデアリマス、然ルニモ拘ラズ本案ニ付キマシテハ熱心
  ニ贊成ヲ致シタイト存ズルノデアリマス、何故ニ然ラバ現內閣ニ反對ノ態度
  ヲ執ッテ居リナガラ此案ニ向ッテ斯クマデ熱心ニ之ヲ主張スルカ、私ハ前年在
  官ノ當時ヨリ國家社會ノ關係ニ於テ簡易保險ノ制度ヲ立テルコトハ洵ニ必要
  ナコトデアルト存ジタノデアリマス、故ニ從來遞信省ニ於テ屢〓調査ニ著手
  セムトシテ其事ヲ遂ゲナカッタ此簡易保險問題ニ對シマシテモ、私共ハ在職
  當時ニ於テ一ノ發案ヲ致シ、尙ホ調査ニ從事シタノデアリマス、此事柄ハ私
  共ハ自己ノ主張トシテモ必要ト考ヘテ居ルノデゴザイマスルカラ、縱令政府
  ガ更ハリマストモ、何人ノ手ニ依ッテ行ハレマストモ、自己ノ主張シ、守持シ
  テ居ッタ意見ガ實行サレルコトニナリマスルナラバ、縱令何人ノ手ニ依リマス
  ルトモ私ハ之ニ對シテ非常ナル滿足ヲ表シ、一日モ速ニ此事ノ實現サレムコ
  トヲ希望イタスノデアリマス、私ハ唯〓ハ唯大體論ヲ申述ベルノデアリマス
  ルガ、先キニモ申シマス通リ委員長ノ報告ニ反對ノ意見ヲ述プルノデアリマ
  スカラシテ、多少修正論ニ關スル或點ニ論及イタスコトガアルカモ存ゼナイ
  ノデアリマス、極メテ大要ニ止メル積リデアリマスガ、此點ハ豫メ御諒恕ヲ
  願ヲテ置キタイト存ジマス、私ガ本案ニ付テ斯マデニ熱心ニ考ヘマスルハ、凡
  ソ人生ニ保險ハ極メテ有用ナコトデアラウト存ジマスル、老後ニ至ッテ路頭
  ニ迷フコトヲ豫メ防ギ、身後一家一族ノ悲慘ノ境涯ニ陷ルコトヲ豫メ防グガ
  爲ニ、保險ノ關係ハ極メテ人生ニ必要デアラウト思フ、上流以上ノ人〓ニ有
  用デアリマスル如ク、別ケテ中產以下ノ人〓ニハ尙更其必要ガアルノデアリ
  やく、中產以下殊ニ下層ニ位スル人ミノ爲ニハ出來得ル限リ此惠澤ニ潤ハシ
  メル途ヲ執リマスコトハ實ニ必要已ムベカラザルコトト存ズルノデアリマ
  ス、中產以下殊ニ下層ノ人〓ニ對シテ此惠澤ニ潤ハシムル方法ヲ執ルト云フ
  途ハ其間ニ寸毫タリトモ營利ノ觀念ガアッテハ宜シクナイト存ズル、飽マデモ
  犧牲的ノ精神ヲ以テ下層ノ人〓殊ニ中產以下ノ人ミニハ種々ナル面倒デモ
  見、種々ノ世話ヲ燒クト云フヤウナ、一種深キ同情ノアル親切心ヲ以テ之ニ從
  事セヌケレバナラヌモノダト存ズルノデアリマス、卽チ此意味ヨリシテ決シ
  テ此事柄ニ付テ寸毫タリトモ營利ノ考ヲ以テ從事スルコトハ出來難イコトト
  存ズル、サスレバ此多數ノ人〓ノ爲ニ出來得ル限リ便利ノ方法ヲ盡シマシテ、
  何レモ皆此恩澤ニ潤ハシムル途ヲ執ルト云フコトハ、到底國家ノ力ニ依ラナ
  ケレバ實行ノ出來ルモノデハナイト存ズルノデアリマス、又國家トシテモ社
  會組織ノ公義ニ依リ、國家ノ本分トシテモ正ニ是ダケノ事ヲ執ルノハ當然ノ
  コトト考ヘルノデアリマス、然ルニ世ノ論者斯ル關係ノモノデアルニモ拘ラ
  ズ、之ヲ官營トスルノハ不都合デアル、或ハ獨占ノ行動ヲ取ルノガ不都合デ
  アルト、往々斯ル議論モ耳ニ致シテ居ルノデアリマスガ、去リナガラ是等ノ
  議論モ多ク調査ノ進ムニ從ッテ其迹ヲ滅シマシタ、委員會中ニ於テハ最早斯ル
  議論ヲナス人ガ一人モナカッタト存ズルノデアリマス、其次ニ最モ議論ノ焦
  點トナッテ參リマシタノハ、政府ニ於テ此簡易保險ヲ實行スルガ爲ニ一般保
  險會社ニ對シテ種々ノ影響ヲ及ボシ、或者ハ如何ニモ言葉ヲ誇大ニ致シテ、
  此簡易保險ヲ政府ニ於テ實行スル結果ガ、遂ニ今日マデ發達シ來ッタ保險會
  社ノ事業ヲ撲滅デモ致スカノ如キ言ヲナス者モアッタノデアリマス、又之ニ反
  シテ此保險事業ヲ實行スルガ爲ニ一般保險會社ニ對シテハ何等ノ影響ヲモ及
  ボサナイモノダト主張スル者モアッタノデアリマス、政府ハドチラカト申セバ
  保險事業ニ對シテハ何等ノ影響ヲモ及ボサナイモノト論ゼラレタコトモアッ
  タノデアリマス、私ハ此官營事業ヲ實行イタシマスル爲ニ保險會社ニ何等ノ
  影響ヲ及ボサナイモノダト論ズルハ極端デアル、又此事業ヲ營ムガ爲ニアラ
  ユル保險會社ガ大打擊ヲ受ケテ、殆ンド撲滅デモサレムカノ如クニ論ズルハ
  是亦極端デアリマス、私ハ此官營事業ヲ營ム爲ニ保險會社ニ影響ヲ及ボサザ
  ルコトナリト論ズルハ是モ極端ニ失シテ居ル、多少影響ヲ及ボスコトハアラ
  ウト存ズルノデアリマス、少クモ百圓以上三百圓以下ノ程度ニ於キマシテハ
  之ニ影響ヲ及サズト云フコーニハ參リマスマイト思フ、必ズ一方ニ斯ル便利
  ノ途ガ開ケテ參リマスレバ、多少ハ其方ニ向イテ參ルト云フコトハ事實デア
  ラウト思ヒマス、之ニ對シテ寸毫モ影響ヲ及ボサズト論ズルハ、ソレハ極端
  ニ失シテ居ル、去リナガラ此事業ガ實行サレタガ故ニ保險會社ニ多大ナル影
  響ヲ及ボシテ、而カモ撲滅デモサレルガ如キコトヲ言フト云フハ、是亦甚シ
  キ極端ナル議論ヲナシテ徒ラニ世上ノ議論ヲ煽動スルモノデアラウト思フ、
  確カニ保險會社事業ニ對シテ影響ヲ及ボサヌトハ申サナイノデアリマス、併
  ナガラ之ト同時ニ私ハ一般保險會社モ同樣ニ恩澤ヲ蒙ムルコトガアルト信ジ
  テ疑ハナイノデアリマス、私ドモハ素ヨリ今日マデ發達シ來ッタ保險事業ガ
  萎靡不振ノ境涯ニ陷ルコトハ素ヨリ望マナイ、以往益〓健全ナル發達ヲ只管
  希望スルノデアリマス、又今囘簡易保險ヲ政府ニ於テ實行イタスト云フ事柄
  ハ、丁度前年勤儉貯蓄ノ思想ヲ一般ニ涵養イタシタ其結果ガ郵便貯金ニ好影
  響ヲ及ボシ、一般各種ノ貯蓄銀行ニ對シテモ其涵養セラレタル思想ノ結果ガ
  同樣ニ好影響ヲ及ボシテ居ルノデアリマス、此趣旨ニ於テ中產以下ノ人〓ニ
  マデモ保險ノ必要ナルコトヲ知ラシメ、身後ノ經營ヲナシ、老後ノ計ヲナス途
  ヲ知ラシメタナラバ、此思想ガ一般ニ普及スル結果ハ蓋シ中產以上殊ニ上流
  社會ニ在ラセラルル人ミモ、孰レモ皆此思想ノ影響ノ結果ガ益〓其必要ト利
  益ヲ感ズルニ相違ナイノデアリマス、果シテ然ラバ假令一面ニ於テ失スルコ
  トガアリトテモ、他面ニ於テハ大ナル利益ヲ享受スルコトガ當然デアラウト
  思フ、然ルニ何事カ、僅ナル關係ノコトノ爲ニ、左モ聲ヲ大ニ致シテ、アラ
  ユル保險事業ヲ撲滅デモスルガ如キ議論ヲナスト云フノハ、實ニ國家竝ニ社
  會組織ノ如何ヲモ考ヘズシテ、徒ラニ己ガ利益ニ汲々タルモノダト云フコト
  ヲ述ブル者ガアリマシテモ是ハ誣言ト云フ譯ニハ參ラヌト思フ、私ハ總テ大
  體ノ議論ニ止ムル積リデアリマス、唯委員長ノ報〓ニ反對ヲ致シマスル結
  果、勢ヒ修正論ノ一端ニ付テ論究ヲ致サネバナラヌノデアリマス、此修正ノ
  議論ヲ提案セラレマシタノハ、曩ニ國家ノ重要ナル職務ニ在ラセラレマシタ
  山本達雄君デアリマス、而シテ主トシテ之ニ贊成ノ議論ヲ主張セラレテ居リ
  マスル者ハ我〓ガ平素深ク敬意ヲ拂ッテ居リマス前田子爵デアリマス、此深キ
  尊敬ヲ拂フ兩君ガ當初ハ本問題ニ對シテ根本的ニ反對的ノ意見ヲ主張ナサレ
  テハ居ラナカッタカト思フノデアリマス、前田子爵ハ態〓文書ヲ廣ク弘布サレ
  マシテ、詳シキ意見ヲ述ベラレテ居ルノデアリマス、私ハ謹ンデ之ヲ拜誦イ
  タシテ、度〓繰返シテ其意ノ在ル所ヲモ玩味ヲ致シタノデアリマス、又山本
  達雄君ハ當初不幸ニシテ委員會ニ御出席ガナカッタノデアリマス、然ルニ委員
  會ニ御出席以來ハ繰返シ繰返シ御質問モアッタノデアリマス、其御意見ニ依レバ
  是亦同樣ニ隨分根本ニマデモ影響ヲスルヤウナ御說モアリハシナカッタカト
  モ拜聽ヲ致シタノデアリマス、然ルニ是等ノ兩君ガ折角斯クマデニ熱心ニ、
  殆ド根本ノ方針ニ對シテマデモ御異見ガアリハシナカッタカト氣遣ッテ居リマ
  シタニ拘リマセズ、昨日ノ委員會ノ情況ニ依リマスレバ、大體本案ニ對シ必
  要ナリト云フ御意見ニ御一致ニナリマシタコトハ、私ハ實ニ國家社會ノ爲ニ
  甚ダ喜ブ所デアリマス、深ク喜ブニ拘リマセズ、斯ウマデニ國家社會ノ爲ニ
  前職ヲ打捨テテ御一致ト云フコトマデ及ンダニ拘ラズ、之ニ對シテ修正ヲサ
  レタノデアリマス、此修正ノ第一ハ被保險者ノ資格ヲ決メル、被保險者ノ資
  格ヲ決メルト云フ意味デ被保險者ヲ保護シテ、中產以下ノ者ヲ保護スルト云
  フコトノ爲ニ其資格ヲ決メルト斯ウ仰セニナル、是ハ政府ニ於テモ實ニ此資
  格ノ決メ方ニハ困ル、實行上甚シキ不可能ヲ感ズルコトダト云フコトヲ繰返
  シ說明サレテ居ッタニ拘ラズ、遂ニ斯ルコトノ御提案ニナッタノデアリマ
  ス、私ハ玆ニ斯ウ云フコトヲ感ズル、近來一般ノ情況ハ成ルベク下層社會ノ
  人〓ト上流社會ノ人〓トガ出來得ルナラバ相接觸シ、共ニ意思ノ疏通モ付ク
  ヤウナ機會ノ出來ルコトハ社會ノ必要上極メテ大切ナルコトト思フ、然ルニ
  階級ノ關係ヲ、之ヲ廣クシ、或ハ人ニ差別的、區別的方法ヲ執ルト云フコトハ
  實ニ近代ノ思想ニ背イテハ居ラヌカト思フ、下層上流共ニ相成ルベクハ接觸
  モシ、意思ノ疏通ヲ計リ、相互ニ同情シ合フ機會ヲ造ルコトハ是ハ極メテ大
  切ナルコトデアリマス、但シ其相互ノ關係ニ於テ銘々ガ推讓抑損ノ途ヲ取ル
  ノハ、是ハ德義トシテ當然デアリマス、相互ニ推讓抑損ノ途ヲ取ルノハ當然
  ナコトデアリマスケレドモ、上流者ハ努メテ下級社會ノ情況ヲモ知リ、又下
  級社會ノ人ミモ此上流社會ノ情況ヲモ知リ、共ニ改善進步ノ途ヲ計ルト云フ
  コトハ近世ノ傾向デアラウト思フ、然ルニ何事カ態〓玆ニ資格ト稱シテ、態
  態資格ト稱シテ玆ニ中產以下ノ人〓ハ斯ルモノデアルト云フコトノ此區別的
  規定ヲ設クルト云フコトハ、私ハ大體ニ於テ甚ダ之ヲ遺憾ニ存ズルノデアリ
  やって、固ヨリ實行ニ於テハ先ニ申ス相互ニ推讓抑損ノ途ニ依ッテ、此制度ヲ
  努メテ中產以下ノ爲ニ設ケラレタモノト云フナラバ、上流ノ人〓ハ宜シク之
  ガ發達ヲ期スル途ヲ講ゼラレテ然ルベキモノデアラウト思フ、然ルニ何事カ、
  態〓之ニ對シテ區別的制度ヲ立テテ、之ヲ以テ可ナリトスルニ至ッテハ私ハ
  根本ニ於テ甚ダ遺憾ニ存ズルノデアリマス、次ニ三百圓以下トアッタノヲ、保
  險會社ニ關係ヲ及ボス故ニ之ヲ二百五十圓ニ改メル、是ハ極メテ私ハ異議ハ
  ナイト思フ、ナゼ交叉接觸ヲ認ムルナラバ斷然百圓ニ決メナイカ、斷然百圓
  ニ決メマスレバ玆ニ論理モ一致シ、條理モ貫通スルコトモアル、然ルニ何事
  カ、百圓ナリト云フコトノ勇氣スラモナク、僅ニ五十圓、是以上私ハ殊更論
  及スルコトヲ避ケルノデアリマス、是ガ嘗テ國家ノ重要ナル職務ニ當ラレタ
  山本君、殊ニ貴族院內ニ於テ最モ尊敬ヲ致スベキ前田君、此兩君ニ依ッテ斯樣
  ナコトノ御主張ハ實ニ私ハ遺憾千萬ニ存ズルノデアリマス、殊ニ私ハ憂フル、
  本案ハ旣ニ衆議院モ通過イタシテ居ルノデアリマス、固ヨリ二院制度ノ上ニ
  於テ衆議院ヲ通過シタル案ナリト雖モ貴族院ニ於テ修正加除、是ハ制度ノ上
  ニ於テハ當然ナコトデアリマスル、何人モ是ハ宜シクナイトハ申サナイ、去
  リナガラ之ト同時ニ兩院ハ相互ニ又尊重シ合フガ至當デアラウト思フ、成ル
  ベク相互ニ兩院相尊重シ、相調和ノ途ヲ講ズルハ憲法上至當ト考ヘマス、又
  案ノ性質如何ニモ依ルコトト存ジマス、例ヘバ華族ノ世製財產ニ關スル點ニ
  付テハ、是亦利害關係ノ如何ニ依ッテ重キヲ貴族院ニ置キ、衆議院ハ努メテ
  之ヲ尊重イタシテ滑ナル通過ヲ計リ、之ト同樣ニ今囘ノ保險問題ナルモノハ
  實ハ一般庶民ニ涉ル問題デアリマス、一般庶民ノ爲ニ國家ガ此思慮アル此制
  度ヲ施サムトシテ、今ヤ一般庶民ヲ代表イタシテ居ルト云フ衆議院ニ於テ通
  過イタシテ居ル其案ニ、態〓貴族院ニ於テ之ニ修正ヲ加ヘ、萬々一是ガ不成
  立ノ結果ニナリマシタナラバ其責ハ何人ガ負フカ、私ハ敢テ憲法上貴族院ニ
  修正ノ權ナシトハ申サナイ、去リナガラ事柄ハ單純ナ理論バカリデハナイ、
  宜シク前後ノ情況ト、又案ノ實質、性質如何ニモ考慮ヲ加ヘテ然ルベキモノ
  デアラウト思フ、然ルニ單ニ理論一偏ニ走ッテ、差シテノ意味ヲモナサナイモ
  ノヲ玆ニ修正ヲ加ヘテ、萬々一是ガ不成立ニナリマシタナラバ、私ハ實ニ國
  家社會ノ爲ニ折角ノ好制度ノ其實績ヲ見ルコトガ遲ルルノハ甚ダ遺憾ニ存ズ
  ルモノデアリマス、私ハ切ニ希望イタスノデゴザイマス、私ハ一身ノ上カラ
  申シテ自分ノ主張ヲ貫徹スルガ爲ニ、又貴族院ノ末班ヲ汚シテ居ル者ト致シ
  マシテモ、願ハクハ斯ル案ニ付テハ貴族院諸公ハ須ラク下層ノ人ミノ爲ニ一
  掬ノ同情ヲ持タレマシテ、滿場異議ナク之ヲ通過セシメルト云フガ如キ社會
  的公義心ヲ御發揮ニナリマスコトヲ深ク希望イタス次第デアリマス、私ハ此
  意味ニ於キマシテ原案卽チ政府案ニ贊成ヲ致スノデアリマス
  〔男爵高木兼寛君「私ハ申出デ置キマシタノハ取消シマス」ト述
  フ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=28

  ---

• 029・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　高木男爵ハ何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=29

  ---

• 030・高木兼寛

  ○男爵高木兼寛君　私ハ發言ヲ求メマシタケレドモ取消シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=30

  ---

• 031・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　別ニ發言ノ通〓モ得テ居リマセヌシ、他ニ發言者
  モナイト認メマスカラ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=31

  ---

• 032・水野錬太郎

  ○水野鍊太郞君　チヨット伺ヒタイノデアリマスガ、唯今ノ仲小路君ノ御演說
  ハ委員長ノ報告ニ反對スル御演說ノヤウデアリマス、是ハ一讀會、二讀會ノ
  順序デ往クノカモ知レヌト思ヒマスガ、委員長ノ報告ニ贊成デアルト云フコ
  トデアリマスナラバ此際ニ述ベルノデスカ、如何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=32

  ---

• 033・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　唯今仲小路君ノ御演說ハ少シ二讀會ニ移クテ、逐條
  審議ノ際述ベラレル如キ御申述ガゴザイマシタガ、議長ノ考ヘマスノハ唯今
  ノハ第二讀會ニ······本案ヲ第二讀會ニ移スベシトスル御論ト·····大體ノ御論
  ト考ヘテ居リマス、ソレデ宜シウゴザイマスカ、ソレカラ本案ノ第二讀會ヲ
  開クベキヤ否ヤノ決ヲ採リマシテ、其上デ第二讀會ヲ直チニ開クト云フ動議
  ガ可決セラレマスナラバ第二讀會ヲ開キ、逐條會議ヲ開ク考デアリマスガ、
  水野君ハソレデ御了解ニナリマシタカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=33

  ---

• 034・水野錬太郎

  ○水野鍊太郞君　私ハ斯ウ考ヘテ居ッタノデアリマス、本案ヲ第二讀會ニ移ス
  ベキヤ否ヤト云フコトニ付テノ御討議デアリマスルナラバ、本案ヲ詰リ其
  儘原案ヲ其儘贊成スルカ、修正案ヲ贊成スルカ、修正案ト原案ニ付テ贊成
  トカ反對トカ云フノハ甚ダヲカシイト思ヒマスガ、ソレハ別問題デアリマ
  ス、要スルニ委員長ノ御報〓ガアリ、而シテ委員長ノ報告ニ對シテ反對ガゴ
  ザイマスレバ委員長ノ報〓ニ對シテ賛成演說ガアッテ然ルベキコトト考ヘ
  Tv 3又必シモ此問題ハ第二讀會ニ於テ決議シナクテモ······討議シナクテモ
  大體議ト致シマシテ、而カモ本案ノ主要ナル點ニ付テ修正意見ガアリマシ
  テ、此點ニ付キマシテノ討議デアリマスルナラバ、仲小路君ガ反對意見ヲ述
  ベタト同時ニ贊成意見ヲ述ベルト云フ順序デ往クノガ寧ロ適當デハナイカト
  考ヘマスカラ、玆ニ伺ヒマシタノデスガ、私ハ共方ガ適當ト自分デ考ヘルノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=34

  ---

• 035・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　議長ハ寧ロ水野君トハ反對ノ考ヲ持ッテ居リマス、
  仲小路廉君ノ唯今ノ御演說ハ委員長ノ報告ガ問題トハナッテ居ラナイノデア
  リマス、左樣御承知ヲ請ヒマス、本案ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起
  立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=35

  ---

• 036・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=36

  ---

• 037・田健治郎

  ○男爵田健治郞君　直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=37

  ---

• 038・平山成信

  ○平山成信君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=38

  ---

• 039・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ本案ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起
  立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=39

  ---

• 040・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=40

  ---

• 041・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第二讀會ヲ開キマス、唯今問題ニ供シマス
  ノハ第一條ト第二條ト御承知ヲ請ヒマス、念ノ爲ニ申上ゲマスガ、委員長ノ
  報〓ハ第五、第六ヲ束ネテ致サレマシタガ、勿論唯今ノ第二讀會ヲ開クト申
  スノハ第五ノ簡易生命保險法案ノミト御承知ヲ請ヒマス、本案ノ第一條、第
  二條ニハ修正ガゴザイマセヌ、採決イタシマス、原案デ御異存ゴザイマセヌカ
  [「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=41

  ---

• 042・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス、是ヨリ諸君ニ於テ御異議
  ガゴザイマセヌケレバ、第三條、第四條、之ヲ問題ト致シ、ソレニ付テ討議
  ヲ致シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=42

  ---

• 043・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　通告ニ依リマシテ登壇ヲ促シマス、林伯爵
  〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=43

  ---

• 044・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　本員ハ此三條、四條ノ修正說ニハ反對ヲ致ス一人デアリ
  やっ、是ハ長イ間モウ議論ガアリマシタコトデアリマスカラ、外ノ御方ノ述
  ベタコトハ自分ハ述ベナイ積リデ、隨ッテ簡單デゴザイマスカラ暫ク御〓聽ヲ
  煩ハシタイノデアリマス、此第三條ノ第二項ニ資格ヲ加フルト云フコトニ付
  キマシテ先ヅ反對意見ヲ述ベタイ、デ是ハ御承知ノ御方モ無論ゴザイマス
  ガ、政府ガ商業會議所其他ニ前々諮問イタシマシタ時ノ前ノ案ニ於テ、既
  直接國稅十圓以下ノ者ニ於テハ割增金ヲ與ヘテ二百五十圓ヲ限度トスルケレ
  ドモ、是ガ略〓二百九十何圓卽チ三百圓位ニ當ルヤウニスルノダト云フコト
  ニナッテ居ッタノデス、而シテ今日ソレガ何故ニ此資格ノ問題ガ無クナッテ茲
  ニ現ハレテ來タカト云フコトモ考ヘナケレバナラヌダラウト思フ、是ハ政府
  モ少シク御手落ガアッタラウト思フ、卽チ說明ニ於テ······資格ト云フコトニ付
  テハ唯ムヅカシイト、審査ガムヅカシイカラ出來マセヌト云フニ止マッテ、何
  等具體的ノ證明モナケレバ、實例モナイ、本員ハダ、自分ノ取調ベタ所ニ依
  リマスト云フト、私ノ議論ニハ多少ノ論據ガアル、卽チ獨逸ノ「ヴイクトリ
  ヤ」會社ヲ始メトシテ、是ハ私營デヤッテ居ルケレドモ、小口保險卽チ簡易生
  命保險會社ノ發達シテ來タ徑路ヲ一ツ調ベテ御覽ナサイ、如何ナル方法ニ依
  リ、如何ナル定款ニ依ッテ、如何ナルコトヲヤッテ居ツタカト云フコトヲ一ッ調
  ベテ戴キタイ、御承知ノ如ク獨逸ニ於テハ民間ノ同ジ會社デアリマスケレド
  モダ、簡易生命保險ト同樣ニデス、此普通生命保險ガ步調ヲ一ニシテ進步シ
  テ居ル、共間ニ於テ此資格ト云フコトヲドウシテ居ルカ、是ハ初メニハ反對
  論者ノ仰ッシヤル如キコトヲ旣ニヤッテ居ッタノデ、資格ト云フコトガ初メニハ
  小口保險ノ歷史トシテ明カニ本ニ書イテアル、サウナッテ居ッタ、ソレガ何故
  ニ今日ハ獨逸現狀ニ於テ此小口保險ニ於テ資格ト云フコトヲ全然除イタカト
  云フコトノ原因ヲ一應調ベナケレバ唯空論デ、政府ノ方デハ是ハムヅカシイ
  カラヤラナイ、修正論者ノ方デハ是ガナケレバ細民ト中級トノ區別ガ付カナ
  イカラヤラナイト云フヤウナコトハデス、是ハ實際机上ノ空論ナンデス、惡
  口ヲ云ヘバ卽チ脫線ノ議論デス、ソレガデスナ、何故ニ資格ト云フコトヲ止
  シタカト云フト、ドウヤッテ見テモ方法ガ付カナイカラ止シタノデス、段々仲
  小路君カラノ御話ガアリマシタガ、此點ハ私ハ少々不贊成デアル、經濟階級
  ガ發展シテ來ルト階級ト云フモノガ段々薄クナッテ來ル、成ルベク我〓ハ階級
  ト云フモノヲ······細民ダト云フヤウナ區別ヲ付ケナイヤウニスルト云フ點ハ
  宜イガ、サウ云フ風デナイヤウニ發達スルヤウナ意味ニ聽キマシタガ、サウ
  デハナイ、實際今度ノ戰役ニ於テ工業社會ハ發展スルニ違ヒナイ、サウスル
  ト本當ニ細民ト云フ階級ガ出來ルカモ知レナイ、併ナガラ如何ナル點ニ於テ
  細民ナリヤ細民ナラザルヤハ區別ヲ決メマスカ、此標準ハ何處ニアル、斯ウ
  ナッテ來ルト恐ラク答辯ガナイダラウト思フ、此提案者ニ於テドウスル、ムヅ
  カシイト稱シテ居ル、此所ニ書イテアルカラ、勅令ヲ以テ定ムベシト云フコ
  トデアルカラ、ユックリ御考ヘナサイト云フノデ、何等具體的ノ提案ガナイヂ
  ヤナイカ、隨分無責任ナル修正案ダト考ヘル所謂私考ヘマスルニデス、今日
  獨逸ナドニ於キマシテハ上中下ノ區別ガ一等二等三等トナッテ、現狀ニ於テハ
  一等二等三等四等、汽車ニモ四等ト云フ車ガアル、卽チ勞働者階級ガ出來テ
  居ルヂヤアリマセヌカ、形デハ出來ルケレドモ內容デハ區別ハ出來ハシナ
  イ、例ヘテ見レバ······譬デスカラ脫線ヂヤナイデス、東京ノ電車ヲ御覽ナサ
  イ、資格ト云フコトヲ始メルニハ隨分考ヘタ、午前七時マデノ割引電車ニ今
  ノ勞働者ガ乘ルカ乘ラナイカ、或ル提案者ノ如クデス、細民保險ト云フ名前
  ヲ付ケタナラバ其名ニ對シテ細民シカ這入ラナイダラウト云フ議論ハ電車ヲ
  見テモ直グニ分ルヂヤアリマセヌカ、午前七時マデノ電車ニ細民ダケ乘ヲテ居
  リマスカ、細民以上ノモノガ乘ッテ居リマスカ、極メテ平凡ナ例デアル、ソレニ
  依ッテ見テモ御客ノ區別モ出來ナイ、規則ノ區別モ出來ナイカラ從ッテ其標準
  ニ苦シイ、而カモ獨逸ニ於テハ此標準ヲ立テルノニ非常ニ苦ンダ結果トシテ
  無クナッテ居ルニ於テヲヤ、是ハ餘リ長クナルトイケマセヌカラ其位ニシテ置
  キマスガ、御承知ノ通リ無職業ト云フコトモ出テ來ル、ソレバカリヂヤナイ、
  職業ニ依ッテ區別スルト云フ御話モアッタ、所カ段々工業界ガ發達シテ來レバ
  獨逸ノ所謂「アルバイツローシツヒカイト」無職業ガ出來ル、職業ノナイモノ
  ガ出來ル、細民保護ハ職業ノナイ哀レナモノヲ助クルト云フコトニ依ッテ慈
  善事業ガ貫徹スルノヂヤアリマセヌカ、サウ云フコトニナッテ色〓考ヘテ見
  マスト云フト、是ハドウモ自分ノ方ニ良イ案ハナイカラ、何トカ勅令デ決メ
  テ貰ヒタイト云フヤウナ漠然タル議論ハ、私トシテハドウ考ヘテ見テモ採ル
  コトハ出來ナイノミナラズ、斯ノ如キ重大ナ案ヲ出スニ當ッテ、斯ノ如キ杜撰
  ナル根柢ニ於テ修正シ贊成シロト云フコトハ、今マデ隨分私モ考ヘテ見マシ
  タガ、遂ニ理窟ニ於テ贊成ガ出來ナイト云フコトニ落チザルヲ得ナイ、次一
  第四條ノ三百圓以下ニスルト云フコトモ、是モ先程御話ガアッタカラ私ハ仲小
  路君ノ言ハレタ分ハ省キマスガ、政府ハ斯ウ云フコトヲ言フデス、三百圓以
  下ニ之ヲ下ゲマスト云フト七十五圓ト云フ平均額ガ減ル、サウシテ見ルト云
  フト是ガ收支償ハナクナル、國庫補助ヲ受ケナケレバナラヌ、色ミナコトガ
  起ル、强ヒテ七十五圓ニ保タウト云フナレバドウシテモ競爭ト云フヤウナコ
  トニ自然陷ッテ來ルト云フ議論モアッタ、是ハデスナ、ドウセ此案ヲ出ス以上
  ハ多少競爭モ實際ハアルデセウ、其點ニ付テハ原案ヲ私ハ必シモ宜イトハ言
  ヒマセヌガ、ソレハ仕方ガナイト思フ、二百五十圓ト云フコトニ付テハデス、
  是モ全ク仲小路君ト同感デ、何故ニ二百五十圓、タッタ五十圓下ゲタカ、下ゲ
  ル理窟ガアルナラバモット下ヘ行クナラバ當リ前デス、是ハ論ジマシタカラ言
  ヒマセヌガ、俗ニ五十步百步、五十步百步デハ半分違フ、ソレガ多少ト云フ
  コトニナッテ居ルガ三百圓ト二百五十圓デハ五十步百步以上ニ多少デアル、
  斯ウ云フコトハ根柢ガアッテ言フナラバ宜シウゴザイマスガ、何等根柢ナク
  三百圓ヲ二百五十圓、政府ノヤリ方ニ依ッテハソレデモ政府ニ餘程這入ッテ來
  ルダラウト思フ、サウ云フヤウナ詰ラナイ見込ノヤウナコトデ議論ヲ立テル
  ト云フコトハ私ハ間違ッテ居ルダラウト思フ、議論ヲスルナラバ健全ナル根柢
  ニ立ッテ遣ラナケレバ何ンニモナラナイ、佛獨ノ戰線ノ如キモノデ、一步進メ
  バ一步退ク、味方ガ進メバ敵ガ退ク、敵ガ進メバ味方ガ退クト云フ有樣ダ、
  是ハ限界線ガアルカラ宜イケレドモ、此議論ニ付テハ政府モ辯護ガ出來ナ
  イ、何等標準タルベキ限界線ガチットモナイ、片方ガ進メバ片方ガ退クト云フ
  論戰デアルノデス、私ノ身體ガ立ッテ居ルカラ初メテ右ダ左ダト云フ、身體ガ
  立ッテ居ナケレバ右ダトカ左ダトカ云ッタ所ガ分ル氣遣ヒナイ、總テ議論ハサ
  ウデス、斯ウヂヤナイカ、斯ウダト云ッタ所ガ、斯ウデナイト云ウタ所ガ議論
  ニ於テ標準ガナクチヤナラヌ、其標準ヲ私ハ後ニ述べマスガ、社會政策ガナ
  ケレバ標準ガ付カヌ、社會政策ヲ以テ標準トシテ、之ニ依ッテソレヲ制限スル
  ヤセザルヤト云フコトヲ根據ニ論ゼザレバ議論ハ活キテ來ヤシマセヌ、右ダ
  左ダ、ソレハ全ク空論ニ陷ル、斯ノ如キ議論ニハ贊成ガ出來ナイ、又政府ノ
  辯明ノ如キモ詰問シタ結果多少脫線ノ憂ガアルダラウト思ヒマスガ、サウ云
  フコトハ咎メラレナイト思フ、又之ニ對スル政府ノ方ノ御提案モ聽キマシタ
  ガ、是モ矢張リ一向斯ウ云フ工合デ、何等根柢ガナイノデアリマスカラ、是
  ハドウモ贊成ガ出來マセヌ、ソレカラ又政府ニ於テモ三百圓以下ニ下ゲルコ
  トノ出來ナイ理由ト致シマシテ色ミノコトヲ無論言ハレタノデアリマス、尙
  ホ手數料ナドノ話モ出テ來テ、普通ノ保險ハ先ヅ配當附ノ保險料ト云フコト
  ニナッテ居ルカラ、配當附保險ト云フモノハ保險料カラ將來受クル配當ト云フ
  モノヲ一々貰ッテ居ルノデアルガ、ソレヲ延ベテ行クト結局政府ノ此度ヤラウ
  ト云フ保險料ハ二割バカリ手數料ガ高クナッテ居ル、保險料ハ高クナッテ居ル
  ケレドモ······保險料ガ高イカラシテ競爭ニ依ッテ這入ッテ來ルモノヲ避ケルコ
  トガ出來ルノデアルト云フコトデアルガ、是モ矢張リ議論ダケノ話デアル、
  是ハモウ保險會社ノ方ノ言ハレル所ガ尤モダラウト思ヒマス、今日ノ保險會
  社へ何モ言ハズニ這入ラウト言ッテ來テ保險ヲ付ケル者ハ一人モナイ有樣デ
  アリマス、每日每日勸誘員ガ步イテ、ソレデ漸ク加入者ガ出來ルト云フコト
  ガ眞理デアラウト思ヒマス、シテ見レバ二割ヤ三割高イカラ這入ラナイ、安
  イカラ這入ラウト云フヤウナ意味カラ這入ル者ハナイト思ヒマスカラ、此說
  明ハ餘リ辯護スル積リデハナイノデアリマス、併ナガラソレハ簡易保險デア
  リマスカラ、無資產ノ者デアリマスカラ其方へ餘計這入ルト云フ嫌ガアルコ
  トハ無論ノ話デゴザイマセウ、ソレカラ又此簡易保險實行ノ及ボス影響ノ話
  デアリマシタガ、是等ノ影響ト云フヤウナコトニ付キマシテモ大ニ考ヘテ見
  ナケレバナラヌコトデアル、成ルホド三百圓ヨリハ一一百五十圓ニシタ方ガ接
  觸點ガ低イ、二百五十圓ヨリ二百圓、二百圓ヨリハ百五十圓ノ方ガ接觸點ハ
  低イノデアリマスケレドモ、恰モ時計ノ鎖ノ如キモノデアル、鎖ノ如キモノ
  ハ何故ニ丈夫デアルカト云フト、互ニ接觸シテ喰合ッテ居ルカラ丈夫ナノデア
  ル、ソレト同ジク保險業モ互ニ接觸シテ居ルカラ初メテ健全ニ發逹シテ行ク
  ノデアリマス、現ニ保險協會ナドト云フモノガアルヂヤアリマセヌカ、五二
  接觸シテ、切瑳琢磨シテ、之ニ依ッテ進歩スルノデアリマスカラ、ソレヲ影響
  ガアルトカ、壓迫デアルトカ云フヤウナコトハ言ハレナイ話デアル、互ニ相
  接觸スル結果トシテ進步スルノデアルカラ、彼ノ三井吳服店ガ出來タ爲ニ他
  ノ吳服店ガ賣レナイト云フ心配ハ要ラヌダラウト思フ、隣ヘ同業者ガ來タラ
  自分ノ方デハ益〓得意ノ便利ヲ圖タテ、良イ物ヲ賣ルヤウニシテ、サウシテ競
  爭ヲシナケレバナリマセヌ、サウスルト競爭心ヲ無クスルト云フヤウナ方針
  ヲ作ルノハ今日ノ現況ニ照シテ頗ル穩デナイト思ヒマス、ソレカラ此保險會
  社ニ這入ッテ居リマス所ノ三百圓以下ノ加入者、卽チ被保險者ト、ソレカラ全
  國ノ人口トノ割合ヲ取ッテ見マスレバ、內地ノ人口ヲ五千四百萬トシテ、五十
  八萬人ノ被保險者デアレバ〓數百分ノ一ナンデス、ソレデ若シ此修正案ヲ通
  ジテ縱令此民業ヲ全部壓迫スルト假定シタ所ガ百ニ對スル一デアル、其百ニ
  一ノ壓迫ヲ恐ルル爲ニ他ノ百ノモノヲ犧牲ニ供スルト云フコトハ數ニ於テ考
  ヘテ見テモ甚ダ詰ラヌコトダト思ヒマス、ソレハ何レ又御話モアリマセウ
  ガ、小サイ私利ヲ滅却シテ大ナル公益ヲ圖ルト云フコトハ少シモ差支ナイコ
  トダラウト思ヒマス、若シモ是ガ壓迫デアルト云フヤウナコトデアルナラバ
  私ハ保險業者ニ對シテ壓迫ト云フコトノ說明ヲシテ見タイト思フ、壓迫ヲ受
  ケズニ發展スルト云フコトハナイ、サウ云フモノハ天下ニ何物モナイト言ッ
  テ宜カラウト思ヒマス、況ヤデス、旣ニ是〓ノ人ガ這入ッテ居ル、私ハ此簡易
  保險ノ原案ガ通過シマシタラ、ソレニ依ッテ恩澤ヲ受ケル者ハ何デアルカト言
  ヘ凡ソ三ツバカリノモノガアリマス、是ハ蓋シ諸君モ御同感デアラウト
  思ヒマス、先ヅ第一ガ小學校〓員デ、其正〓員ガ十萬人、ソレカラ準〓員ガ
  五萬人、合セテ十五萬人、ソレカラ巡査ト云フモノハ極メテ薄給デアッテ、誠
  ニ氣ノ毒ナモノデアルガ、是ガ看守等ヲ合セテ兩方デ二十萬人モアリマス、
  之ヲ通算シテ見レバ三十五萬人ニモナル、此三十五萬人ガ差當リ此簡易保險
  ノ恩澤ニ浴スル、又浴スベキモノデアルト思ヒマス、此原案ガ通レバ或ハ之
  ガ爲ニ特別ノ施設モ出來ルデアラウト思ヒマス、是等ノ點ニ於キマシテ此
  修正案ニハ不贊成デアルノデアリマス、ソレカラモウ一ツ簡單ニ述ベテ置
  キマスガ、此提案ノ理由トシテハ稍、、曖昧デアリマシタ爲ニ誤解ヲ來タシテ
  居ルト思ヒマス、卽チソレハ細民ニ恆產ヲ與フルヤウニシテ、糊口ノ上ニ憂
  ナカラシメルト云フノガ此提案ノ理由デアルノデス、然ルニ何事ゾ、特別委
  員會ニ於テ是ハ細民ダケデアッテ中級以上ノ者ニイカナカッタノデアル、細民
  ニ恆產ヲ與フルト云フコトハ······其結果細民デアリマスガ、細民「プラス」ノ
  恆產ハ中等社會ノ人間デアル、此法案ガ通ッテ良イ結果ヲ來タシタナラバ細民
  ハ恆產ヲ得テ中級ニ入ルコトニナリマスカラ、玆ニ於テ私ノ言フ標準、サッ
  キ申上ゲタ社會政策ノ原理ニ適フト言フ······社會政策ニハ色〓アリマシテ、
  玆ニ桑田君モ居ラレマスガ、是ニハ定義ハアリマスケレドモ、私ハソンナコ
  トハ述ベマセヌ、中等社會ヲ減ラスト云フコトガ重ナル點ト思ッテ居リマス、
  是ハ御存知ノ方ハ幾ラモアルノデアリマセウ、現ニソレヲ伯林ノ「ワグネル」、
  「ミユンヘン」ノ「プレンタノー」「ヴエルニック」ノ「ミッテルスタンヅポリチッ
  ク」ト云フヤウナ書物ニ十年モ前カラ書イテアル、社會ノ發展、工業ノ發展ニ
  付テハ色〓込ミ入ッタ事業ガ起ッテ來ル、隨ッテソレガ爲ニ一番混亂セラルルモ
  ノハ中等社會デアッテ、其中等社會ガ段々減ッテ行クト云フコトニナル、卽チ資
  本家ト勞働者トノ二ツシカナクナルノデアルガ、是ハ社會政策トシテ甚ダ面
  白クナイコトデアル、成ルベク中等社會ガ其地位ヲ保ッテ居ラルルヤウニ調節
  スル所ノ社會政策ト云フモノガアルノデハアリマセヌカ、然ラバ是ガ中等社
  會ト云フモノガ殖エテ行クト云フコトニナッテ、サウシヲ細民ニモ恆產ヲ與ヘ
  ルコトニナルナラバ誠ニ結構ナコトト考ヘル、今年ノ議會デ是ガ通過シナイ
  デモ、又來年モ議會ガアルヂヤナイカト云フ議論ハ此戰後ノ經營ニ多大ノ關
  係ヲ持ッテ居ルコトヲ思ハヌノデアル、此戰爭ハ今年濟ムカモ知レズ、サウス
  レバ今ヤラナクテモ間ニ合フトハ言ッテ居ラレナイ、今日之ヲヤッテモ十年モ
  經タナケレバ十分ニ社會ノ事業ニナラヌト云フ譯デアリマスルカラ、其點カ
  ラ考ヘテ見レバ一日モ早ク此案ハ出サナケレバナラヌト思ヒマス、斯ウ論ジ
  テ來マスルト云フト、色〓ノ問題ガ戰後ニハ起ッテ來マスガ、社會政策ト言フ
  ガ、私ハ何モ此工業ノ發展トカ何トカ云フコトハ言ハヌ、彼ノ八分ノ補助ヲ仰
  イデ染料會社ガ出來ルトカ出來ナイトカ、サウ云フ商業工業ノ膨脹ヲ以テ社
  會ニ戰ハナケレバナラヌ、彼ノ獨逸ニ在ッテハ理化學ガ進步シテ居ル爲ニ工業
  ガ發展ヲシ、工業ガ發展シテ居ル爲ニ獨逸ガ强イト云フヤウニ論ジテ居リマ
  ス、デアルカラ内地ニ於テ商工業ノ發展ヲ圖ルト云フコトモ一ノ有力ナルコ
  トニハ違ナイノデアリマス、併シ是ハ大ニ考ヘナケレバナラヌ、若シソレダ
  ケノコトナラ日本ガ亞米利加ノ如キ國デアッタナラバデス、亞米利加ハアノ通
  リ工業ガ偉大ナル發展ヲシテ居ルコトハ御承知デアリマセウガ、然ルニ「サ
  イエンチフヰック、マネーヂメント」トカ、能率ヲ增スト云フコトヲ言ッテ居ル、
  是ハ悉ク亞米利加ノ新シイ思想デアル、併ナガラ斯ウ云フ平等的ノ道德ナド
  ヲ進メテ勞働力ヲ增加スルト云フコトダケデハ國家ハ强クナラナイ、若シ亞
  米利加ガ戰鬪力ガ强イナラバサウ云フコトモ一ツノ議論デアリマス、ソレデ
  アリマスカラ戰後ノ經營ニハ或ハ義務〓育延長ノ問題モ起ルデアラウ、色〓
  ノ問題ガ起ルデアリマセウ、工場法ノ如キモ十二歲ヲ限度トシテ居ルガ、歐
  羅巴ニ於テ一番劣等ト見做サレテ居ル伊太利ノ外ニハ斯ウ云フモノハアリマ
  セヌ、獨逸或ハ英國、或ハ瑞西ノ如キハ十五歲以上、少クモ十五歲以上····
  少クモ十四歲以上トナッテ居ル、我〓ガ戰後經營ノコトヲ考ヘルニ付テハ義務
  〓育ノコトヲ考ヘナケレバナラヌガ、簡易保險ノ如キモ皆戰後經營ニ集中シ
  テ考ヘテ行カナケレバナラヌ、自分ノ專門ノコトバカリ考ヘテ、保險事業ニ
  斯ウ云フ影響ガアルカラ通スガ宜イトカ、通サヌガ宜イトカ云フコトヲ言フ
  ノハ、戰後經營ナドト云フ頭ノナイ人ノ云フコトデアル、總テガ有機的トナ
  ッテ發展スベキ日本ノ將來ハ、保險ハ保險ニ依ッテ解決スルト云フヤウナ小サ
  ナ量見ノ時代デハナイデス、又保險會社ノ影響ト云フコトニ付キマシテ、先
  キホド御話ガアリマシタガ、日本ニ金ガ大分アルトシテデスナ、全部ノ金ガ
  一部此保險ノ爲ニ·······易生命保險ノ中ヘ這入ルトスルナラバ、日本全國ノ
  金ニハ影響ガナイト云フ政府委員ノ御話ハ何等意味ヲナサヌ、ソレダケデモ
  分リ切ッタ話デアルト······ソレハ影響ガアルデス、併ナガラ是ハ特別委員會
  デモ隨分話ガ出マシタガ、矢張リ先刻ノ議論デ、保險ハ保險ニ依ッテ解決スル
  ト云フ頭ダカラ、此金ノ爲ニ保險會社ニ壓迫ガ行クト云フ議論ガ出ルノデア
  ルガ、是ハサウデハナイ、殊ニ戰後ニ取ッタ金ガ、普通生命保險會社ニ這入ル
  ベキ金ガ減ルト云フ議論ハ、何等根柢ヲ持ッテ居ナイ議論デアル、恐ラク是ハ
  數理ヲ解シナイ人ノ言フコトデアル、今日保險ニ通ジタル人間······學者デモ
  實際家デモ·····保險會社ノ人ハサウ云フコトヲ言ハレルカラ聽キマセヌガ、
  世間ノ經濟學者ナドニ聽イテ御覽ナサイ、此影響ハドコヘ行クカ、全部ノ中カ
  ラ是レダケ減ズルト云フコトハアリマスガ、ソレハドコニ減ズルカト言ヘバ、
  私共考ヘマスルニ、保險ノ方ハ影響ガ行クノデハナイ、寧ロ普通銀行ノ營業
  者ノ貯金ガ減ルデセウ、政府ノ七千二百ノ郵便局デ月ニ三人ヅツ增加シテ行
  クト云フコトデアッテ見レバ、大シタ影響ハナイノダケレドモ、是ハ私ハ餘)
  內輪ニ勘定シタト思フ、實際ハ隨分這入ッテ來ルダラウト思フ、サウシテ其影
  響ハ何ゾト言ウタナラバ、寧ロ普通ノ金融業者ニ影響スル、併シ此方ノ影響
  ニ付テハ、外デモ內デモ何等御話ノナイノハ不思議デアリマスガ、ソレハ矢
  張リ量見ガ狹イカラソンナ考ガ出テ來ルノデアリマス、私ハモウ長クハ言ヒ
  マセヌガ、要スルニ保險ト云フモノハ慈善事業デアッテ、營利ヲ目的トスベキ
  モノデナイカラ、全部官營ニシテ然ルベキト思ヒマスガ、ソレハ此問題ニ關
  係ガナイカラ申上ゲマセヌガ、此簡易保險ハ將來勞働保險ヲ起スベキ過渡ノ
  橋梁トシテ誠ニ適當ナモノデアル、而シテ今日之ヲ起スベキ必要ニ迫ラレテ
  居ルモノト考ヘマスカラ原案ニ贊成イタシマス、而シテ此修正案ニ對シテハ
  反對ノ意見ヲ表シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=44

  ---

• 045・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　休憩ヲ致シマス
  午後零時四分休憩
  午後一時八分開會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=45

  ---

• 046・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ報〓ヲ致サセマス
  〔長谷川試補朗讀〕
  本日特別委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
  質屋取締法中改正法律案否決報告書
  古物商取締法中改正法律案否決報告書

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=46

  ---

• 047・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、山本達雄君
  〔山本達雄君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=47

  ---

• 048・山本達雄

  ○山本達雄君　私ハ此簡易保險ニ付キマシテ修正意見ヲ有ッテ居ルモノデゴ
  ザイマス、ソレニ付キマシテ聊カ此修正ヲ致シマシタル理由ヲ申述ベタイト
  思フノデゴザイマス、簡易保險ヲ官營トスルノ必要デアルコトト卽チ之ヲ官
  營ニシテ、サウシテ下級社會ニ便利ヲ與ヘルト云フコト、又下級社會ニ於キ
  マシテハ政府トシテ非營利主義ニ於テ出來得ルダケノ保護ヲスルノ社會的必
  要デアルト云フコトニ付キマシテノ政府ノ論議、又仲小路君其他ノ贊成論者
  ト同ジコトデアリマス、旣ニ本會議ニ於テ遞信大臣モ述ベラレマシタ、尙ホ
  私モ在官中ニ於キマシテ貴族院ノ豫算委員會部會ニ於テ質問ヲ受ケタニ付キ
  マシテモ官營ガ必要デアルト私ハ信ジテ居リマスト云フコトヲ述ベタノデゴ
  ザイマス、爾來今日ニ至ルマデモ此下級社會ノ爲ニ小口保險ヲナスコトニ付
  テハ官營ガ宜シイ、第一ニ堅實ニ、如何ナルコトガアッテモ絕對ニ損ヲ掛ケナ
  イト云フ下ニ於テ、又下級者ニ付テハ營利ニ亙ラナイヤウニシテ、サウシテ
  之ヲ世話ヲスルト云フコトニ付テ、至極宜イコトデアルト信ズルノデゴザイ
  マス、併ナガラ主義ハ宜シイ、主義ハ宜シウゴザイマスガ、此目的ヲ達スル上
  ニ於キマシテハ其方法ノ宜シキヲ得ナケレバ、折角ノ目的モ甚ダ效力ガ薄ク
  ナル、ソレ故ニ主義ガ宜シイナラバ、其主義ニ依ッテ實行モ出來、サウシテ效
  力ノ多クアルト云フコトニ向ッテ、成ルタケ其方法ヲ進メテ行カナケレバナラ
  ヌノデアリマス、又ソレト同時ニ此官營ニ致シマスル上ニ付テハ其方法如何
  ニ依リマシテハ、是マデ既設ノ保險會社、通常保險會社ニ於テ大ナル影響ヲ
  及ボシ、延イテ經濟社會ニ色ミナ波瀾ヲ起ス、又被保險者ニ迷惑ヲ非常ニ掛
  ケルト云フコトガ起ル、故ニ此モノニ付キマシテ十分ニ顧慮ヲシテ、斯ノ如
  キコトノナカラシメムヤウニ、成ルタケ途ヲ取リタイト云フノデアリマス、政
  府ノ趣旨ヲ伺ヒマシテモ、此兩樣ニ於テハ我〓ノ希望ト同ジデアル、政府ハ
  成ルタケ民業ヲ侵サナイヤウニシタイノダト云フ、又下級社會ニ成ルタケ普
  及シテ、サウシテ是ハ下級社會ノ爲ニ恆產アリ、恆心アリ、遂ニ節儉ノ念ヲ
  起シテ、後顧ノ憂ノナイヤウニシタイモノデアルト云フコトハ政府ニ於テモ
  度〓論議スル所デゴザイマス、是モ正ニ私等ノセムトスル意ヲ得タモノデアッ
  テ、少シモ違ッタコトハナイノデアリマス、ナイノデアリマスルガ、ソレナラ
  バ其趣旨トシ、言ハムトスルコトヲ成ルタケ實行ヲシテハドウカ、實行ヲシ
  テハドウカト云フトキニ至ッテ、此法案ニ付テ私等ハ不備デアルト云フ關點ヲ
  感ズルノデゴザイマス、ソレ故ニ此修正ヲ作ッタ譯デゴザイマス、第一ニ政府
  ガ此法案ニ付テハ下級社會ノ爲ニ便利ヲ計ッテ、サウシテ國家ガ下級社會ヲ保
  護スルノデアル、又是ハ社會政策ノ一端デアルト云フ位ニ述ベテ居ル、現
  此簡易生命保險事業〓況ト云フモノヲ政府カラ委員トシテ受取ッテ居リマス
  ガ、共第一ノ理由書ニ見マシテモ、簡易生命保險官營ノ第一ノ理由ハ簡易保
  險ハ普通保險ト其利用上ノ範圍ヲ異ニス、前者ハ中流以上ニ利用セラレルニ
  反シ、後者ハ主トシテ多數ノ下級者ヲ顧客トスルヲ常トシ、從ッテ其知識及資
  力共ニ薄弱ナルヲ免レザルヲ以テ、一朝事業ノ基礎ニ破綻ヲ來タス如キコト
  アルニ於テハ、爲ニ及ボス所ノ禍ガ甚大ナルニ依ッテ、政府ハ之ヲ世話スルノ
  デアル、是ガ第一ノ重ナル理由デアリマス、然ラバ矢張リ政府ハ中流以上ノ
  モノハ普通保險ノ業務ニ委ネテ、而シテ中流以下ノモノデ、智力モ乏シイ、
  資力モ薄弱ナル其下級者ヲ主トシテ立テルト云フコトガ趣意ニアルノデア
  ル、所ガ此簡易生命保險法ニ付テ擴ゲテ見マスト云フト、ドコニ是ガ下級社
  會ノ爲ニ之ヲ造ッテアルト云フコトガ何處ノ文言ニアルカ、一條ヨリ調ベテ見
  マシタ所ガ、何處ニモナイ、唯簡易生命保險會社、實ニ綺麗ナル、何等ノ觸
  リノナイ立派ナル名デアル、下級社會ナラ、下級社會ノ保險トカ、或ハ細民保
  護ト云フヤウナル名デモアッテ來ルモノナラバ、人ガ見テ以テ是ハ細民ヲ主ト
  シテヤル、下級社會ヲ主トシテヤルノデアルト云フコトハ分リマセウガ、是
  デハ何モ分ラナイ、是デヤッテ行キマスルト、政府ハ下級社會ト云フガ、若シ
  中流以上ノモノガ之ニ這入ッテ來ル、上流ノ人ガ這入ッテ來ルト云フコトニナッ
  タナラバ、ドウデアルカ、一向階級モナケレバ何モナイ、有位有爵ノ人或ハ
  役人デ高等官ノ人ガ之ニ這入ッテ來タ所ガ歡ンデ迎ヘル外仕方ガナイ、サウシ
  マスト云フト、動モスレバ下級社會ト云フモノノ名目ノ下ニ於テ却ッテ中流以
  上ノ人ノ爲ニ非常ナ便利ニナルト云フコトガ是ハ起ルデアラウト私ハ心配ス
  ル、ノミナラズ信ズル、簡易保險ハ成ルホド金ガ少イ、三百圓、三百圓デア
  ル故ニ先ヅ小民ノ小口トシテアルト言ヒマスガ、此政府ガ若シ如何ナルコト
  ガアッテモ絕對ニ損ハシナイ、而シテ無診査デ診察モシナイノデアル、集金ハ
  銘々ノ家ニ就テ、サウシテ取立テテ行ッテ貰フノデアル、ドノ點ヲ見タ所ガ實
  ニ便利ナル、讀ンデ字ノ如ク下級社會ノ爲ニ誠ニ便利ナル、唯簡易ト云フ一
  面ハ誠ニ都合ノ好イ便利ナ方法デアルト云フヨリ外ハナイ、必シモ小額デア
  ルカラシテ下級ノ者ト云フ譯ヂヤナイ、此モノニ依ッテヤリマスト云フト、三
  百圓ト云フモノヲ極度トシテ、例ヘバ私ニ子供ガ三四人アルト見マシテ、十
  二歲ニ達シテ居ッテ、是ニモ三百圓付ケ、又次郞ニモ三百圓付ケ、三郞ニモ三百
  圓付ケ、或ハ娘ニモ三百圓付ケルト云フコトニスルナラパ、幾ラデモ出來ル
  共人數ニ依ッテ幾ラデモ出來ル、制限ハナイ、身分ニモ制限ハナイ、ソコデア
  ルカラシテ、此下級者ト云ッテ其實上流者マデ非常ナ便利ヲ與ヘルト云フコト
  ニナルノデアリマス、果シテサウ云フ風ニナリマスト云フト、ドウデアリマ
  スカ、初メカラ其目的ナラ宜シイガ、簡易保險ナルモノハ小口保險、ソレハ
  何デアルカト云フト、下級者ノ爲ニ殊更ニ政府ガ設ケテ、サウシテ一方デハ
  私營ノ營利會社ノ其所ニ這入ルコトヲ禁ジテ、サウシテ居ッテ自分ダケガ專有
  シテ行カウト云フモノデアリマス、サウ云フ目的ノモノデアッテ來ルナラバ、
  ドウシテモ之ニ資格ヲ付ケルト云フコトハ最モ必要ナル條件デアル、此必要
  ナル條件ガナクシテ、唯是ガ簡易ヂヤト云ッテ今ノヤウニ來ルモノナラ、立派
  ナ人ガ這入ッテ來ルノヲ喜ブ、殊ニ保險ノ如キモノハ自ラスルヨリ勸誘員ガ
  アッテ段々進ンデ來ルト云フコトハ諸君モ御承知ノ如ク、況ヤ政府ガ之ヲ造ツ
  テ、サウシテ全國七千ノ郵便局ニ委託シテ、郵便局長ヲ以テ之ニ當ラシテ來
  タモノナラバ、之ヲ以テ何人ニ拘ラズ、社會階級ノ如何ニ拘ラズ、誠ニ便利
  ナルモノガ出來マシタカラ、ドウゾ這入ッテ下サイト言ッテ來ルコトハ言ハヌ
  デモ分ッテ居ル、普通ノ常識ヲ以テ考ヘレバ是ハ喋々私ガ申述べルノ必要ハナ
  イ、サウ云フモノデアルノニ、玆ニ何等ノ資格モ何モ定メテナイ、斯ウ云フ
  コトデアリマスカラシテ、是ハ此趣旨ニ依ッテ造ッタ非常ナ闕點ナンデ、恰モ
  一ツノ達磨ヲ描イテ立派ニ出來タ、出來タガ肝腎ノ眼ガ這入ッテ居ラナイ、眼
  ガ這入ヲ居ラナイ故ニ達磨ト云フ目的ヲ達シテ立派ナ繪ダト之ヲ稱スルコト
  ガ出來ナイヤウナ結果ニ陷ルノデアリマス、ソレ故ニ是ハ形ハ能ク出來タガ、
  ドウカシテ眼ヲ入レテ政府ノ趣旨ノ通リニ之ヲ實行スル如キモノニセナクテ
  ハイケナイ、ソレニ付キマシテハ第一ニ此資格ト云フモノヲ定メナケレバナ
  ラヌ、此資格ヲ定メテ、サウシテ行カナケレバ肝腎ノ眼ガ無イト云フコトヲ
  私ハ深ク信ズルノデゴザイマス、ソレ故ニ此條項ニ付キマシテ、一ツノ第三
  條ノ二項ニ於テ資格ト云フモノヲ入レムト云フコトデアリマス、是モ是デハ
  勅令ニ讓ルノデアリマス、此資格ノ如何ト云フコトハ極メテ必要ナコトデア
  リマスル故ニ、時ガアリ色ミスルナラバ十分ニ自ラモ〓究ヲシ、政府ニモ質
  シ、諸君トモ御謀リシテ、此資格ヲ肝腎ナモノデアリマス故ニ勅令ニ依ラズ
  シテ自ラ法律ノ中ニ入レタイト思フ位デ私ハアルノデアリマス、如何ニセム
  時ガナイノデゴザイマスル故ニ、二步モ三步モ讓ッテ政府ヲ信ジヤウ、政府
  ヲ御信ジ中ス故ニ、政府ハ適當ナル所ニ依ッテ、此資格ヲ定メテ下サイ、斯ウ
  云フノデアリマス、然ルノニ此反對ハ、ソレハ資格ヲ定メルト云フコトハ一
  理アルガ、ナカ〓〓ソレハムヅカシイ、殆ド不可能デアル、ソレ故ニ是ハ資
  格ヲ定メルト云フヤウナ漠トシタコトヲ言フノハ責任ノナイ一體遣リ方デハ
  ナイカト云フ議論モアル、成ルホド容易クハアリマセヌ、ムヅカシイコトデ
  アリマセウ、併ナガラ、此事ヲナスニ當ッテ、爲シ能ハヌト云フコトハナイ、
  日本ニ於テ人ノ職業ニ付テモ、戶籍ニ付テモ納稅ニ付テモ、ソレ〓〓規則正
  シクヤッテ居ル以上ハ、之ニ付テ分ラヌコトハナイ、出來ヌト云フコトモナイ、
  ソレデアル故ニ相當ナル私ハ資格ヲ定メルコトハ出來得ルコトト思フ、サウ
  ムヅカシイコトデナイト存ズルノデアリマスガ、假ニ非常ナムヅカシイコト
  デ、適當ニ行カヌトシテ讓ッテ考ヘマセウ、讓ッテ考ヘマシタ所ガ簡易保險デ
  下級社會ニヤルト云フモノニ付テ、立派ナ有位有爵者ノ這入ルコトヲ禁ジタ
  ラ如何デゴザイマセウ、政府ニ於テモ高等官、名譽ノ職ニ就イテ居ル者ガ此
  下級ノ爲ニ造ッタモノニ這入ルト云フコトハ御止シニナッテハ如何デゴザイマ
  セウ、ソレヲ禁ズルニ、若シモ納稅者ニ付テ、或ハ納稅ノ十圓ナラバ十圓ヲ
  納メル、五圓ナラ五圓ヲ納メルト云フ以上ノ者ハ中流ト看做シテ、是ダケノ
  者ハ之ニ入ルコトハ止サウト斯ウシタラ如何デゴザイマセウ、ソレモ宜イ、
  ソコデアル故ニ如何ナルコトガ起キテモ誰デモ宜シイト云フヨリモ、一ノ制
  限ヲ付ケルナラバ、其制限ガ縱シ不完全トシテモ、入レザルニ優ル、有位有
  爵者、高等官、誰デモ御入リナサイト云ッテ來ルヨリモ、今ノ如キモノヲ禁ジ
  テ見テモ、又爲サザルニ優ル、趣旨ガソレナラバ分ル、ソレヲ行ハズシテ之
  ニ議論ガ起キテ、遂ニハ仲小路君ノ先刻ノ御議論ノヤウナコトガ出來スル、是
  ハ制限ヲ附ケルト云フコトガ、ソンナコトヲスルト上中下ト云フ、社會ニ於
  テ平等ニ成ルベク接觸シテ行カナケレバナラヌ今日ノ急務デアル、然ルノニ
  ソレヲドウモ禁ジテ、サウシテ行クト云フヤウナルコトヲシテ、同ジ國民ニ
  付テ何カ懸隔ヲスルト云フヤウナコトヲスルノハ最モ不同意ダト云フ御議論
  ガ起ル、若シサウ云フコトニナルト下層ノ人、中上ノ人、總テノ國民ガ一致
  シテ懇親ニシテ熟和シテ、斯ウシテ行クト云フコトハ此簡易保險ニ待ツ必要
  ハナイ、ソンナ趣意デハナイ、然ラバ始メカラ政府ハ何故之ニ付テ下級社會
  ノ爲ニ計ルト云フカ、何故ニ中流以上ノ者ハ當リ前ノ民業ニ委ネ、中流以下
  ノ者ハ悉ク此保險ニ依ッテ普通ノ營利的會社ニ一步モ足ヲ踏込ムコトガ出來
  ナイトシテ、之ヲ制限シテヤルト云フ、斯ウ云フ趣旨バカリデ御ヤリニナル
  ヨリハ、ソンナコトヲセズニ、社會ノ何所ノドナタデモ御客ニ御出ナサイト
  云フ趣旨デヤルコトナラバ、ソレハ聞エテ居ル、併ナガラ是等ハ全ク政府ノ
  簡易保險ヲ造ルト云フコトノ趣旨ヲ沒却シテ仕舞フ、ソレガ私等ノ之ニ付テ
  全然同意スルコトノ出來ナイ所以デアルガ、此趣旨ハサウデハナイ、趣旨ハ
  今申シマシタ如キ趣旨デアルナラバ、其趣旨ニ依ッテ下級社會ノ人ニ成ルベク
  此恩澤ガ及ブヤウニシテ、サウシテ行キタイ、而シテ上流社會ノ爲デハナイ
  ト云フモノデアレバ、上流社會ノ人ハ成ルタケ行カレヌヤウナ途ヲ造ッテ、其
  區域ヲ定メルノガ困難ナラバ人事デ盡シ得ルダケノコトヲ御シナサイ、スル
  ハセザルニ勝ル、趣旨ヲ貫クヤウニ、ソレダケノコトハ政府ガシテ出來ナイ
  コトハナイカラシテ、ナサレマセ、殊ニ又之ニ付テ論者ハサウスルト云フト、
  郵便貯金ニ持ッテ行ク、或ハ此東京ノ電車ハ下級ノ人ガ乘ル、ソンナモノニ付
  テハ見定メガ付カナイヤウナモノデ、實例ハ分ッテ居ルデハナイカト云フ議論
  ガアル、是モ私ハ一〓ニハ分ラヌ、此案ナルモノハ唯振リ賣リ····金ヲ拂ッテ
  電車ニ乘ル、或ハ郵便函ニ物ヲ投ジテ來ルト云フ御客樣トハ違ッテ居ル、チヤ
  ント政府ガ法律ヲ設ケテサウシテ十二歲以上ノモノデアッテ、サウシテ斯ミト
  云フコトヲ列ベテアッテ、其モノハドウスルカト云フトデス、十二歲ヨリ十年
  二十年三十年五十年、遂ニハ終身ノ保險ヲナス爲ニ始メテナス、一度ナシテ
  居リマス以上ハ、終身ナラバ五十年經ッテモ六十年經ッテモ一ツモ動カサズシ
  テ一遍約束シタラ書イタ通リノコトヲヤッテ行キサヘスレバ宜イ事柄デアル、
  サウ云フモノデアリマスル故ニ、身分ヲ調ベルコトヤ何カト云フコトハ誠ニ
  ムヅカシクモ何デモナイ、政府ハ彼是ノ番匠金ヲ造ッテ之ヲ以テ御ヤンナサレ
  が、七千有餘ノモノガ保險會社ニ當ルモノデアリマス故ニ、大〓其所デ身分
  ハ分ルノデアリマス、何モムヅカシイコトデハナイ、書附ノ通リ規則通リ身
  分ノ者ヲ入レサヘスレバ宜イト云フノデアル、ソレヲ唯其時々ニ人ガ來ルモ
  ノト同ジヤウニ考ヘテ來ルノハ甚ダ私ハ實際ト適合シタル御說デナイト思フ
  ノデアリマス、例ヘバ銀行者ガ普通ノ銀行ニ金ヲ借リニ行キマスレバ、信用
  ノアルモノデアレバ、約束手形一本書ケバ直グト金ヲ貸シテ吳レル、又抵當ガ
  アッテ公債證書ヲ持ッテ行ケバ直グニ貸シテ吳レル、誠ニ瞬間ノ間ニ貸借ガ出
  來ルノデス、併ナガラ農工銀行トカ勸業銀行トカ云フ二十年三十年ト云フ長
  期ノ金ヲ貸ス所ニ至リマスレバ、一ツノモノヲ借リニ行キマシテモ一段ノ田
  地デ百圓ノ金ヲ借ルトシテ見マシタ所ガ、人ガチヤント戶籍法ニ據リ登記法
  ニ據リ誰ノ所有デ何所ニアル、其價ハドノ位スルカト言フコトハ態〓出張シ
  テサウシテ幾日モ幾日モ掛ッテ調べ上ゲテ、始メテ善イトカ惡イトカ云フコト
  ヲ決スルモノデアル、決スルノデアリマスガ、其間ニハ非常ナル時ヲ費シ、
  幾日モ費シ、幾日モ費シマスガ、一度之ヲ約束シテ貸借ガ出來タト云フ以上
  ハ、三十年經チマシテモ一本ノ證文ヲ書ク必要モ何モナイ、約束通リニ利子ヲ
  納メ、年賦償還ヲナシサヘスレバソレデ宜イノデ何等ノコトモナイ、ソレト異
  ッテ普通ノモノハ瞬間ニ金ヲ借リマスガ、サア二箇月經ッタカラ約束手形ヲ書
  直ス、サア何箇月經ッタカラ證文ヲ書直セト云フコトデ、三十年二十年ノ星霜
  ヲ加ヘマシテ非常ナ手數ト、非常ナ時間ト、非常ナ勞ガ掛ルヤウナ譯デアリ
  マス、サウ云フモノデアリマス故ニ、此保險モ養老ト云ヒ、終身ト云ヒ、長
  イ間ノコトヲスルノデアリマス故ニ、成ルベクサウ云フコトニ付テハ最初ヨ
  リ目的ヲ遂グル上ニ於テハ資格ヲ定メテ置カヌト下級社會ヲ保護シ、多數ニ
  便利ヲ與ヘル爲ニ起ッテ上流社會ノ方ニソレヲ爲スト云フコトガ出來スルノ
  デアル、ソレ故ニ私ハ是デハイカヌ、然ルニ又林伯爵ノ該博ナル御意見ヲ以
  テ歐羅巴各國ノ例ヲ御引キ下サッテ、何所ニ斯ウ云フコトガアルカト云フコト
  デアル、私ハ淺學ニシテ何所ニアルト云フコトハ承知イタシマセヌ、承知イ
  タシマセヌガデス、然ラバ反問スルガデス、歐羅巴ノ中デ佛蘭西デモ獨逸デ
  モ宜イ英吉利デモ宜シイガ、之ヲ官營トシテ專有シテ何人ニモヤラセナイ、
  己ノ是ハ專有物デアルカラ一步モ民營ノ這入ルコトハ出來ナイトシテ、唯單
  リ官營トシテ居ル國ガ何所ニアリマスカ、何レモ私ノ承知シテ居ル大國ニ於
  テハ官營モヤッテ居ルガ、民營モサッサト自由ニヤラセテ、互ニ競爭場裏デヤッ
  テ居ル、日本ノ案ノ如ク、是カラ以下ハ普通銀行······保險會社ハ踏込ムコト
  ハ出來ヌゾ、是ハ己ノ領域デアルカラ如何ナルコトガアッテモ踏込ムコトハ出
  來ヌゾト云フ「モノポリー」······其專有ノモノトシテ居ルノデナイノデアル、
  サウ云フヤウナル格段ナル趣旨ニ於テ之ヲ起シマシタナラバ、矢張リソレハ
  同時ニ其趣旨ヲ貫クダケノコトヲ以テシナケレバ何等ノ效能ガナイモノト私
  ハ信ズル、ソレ故ニ是ハ唯政府ノ案、ソレヲシテ效力アラシムル爲ニ、何ト
  シテモ此資格ガ必要デアルト云フ····次ニ第四條ニ於キマシテ政府ノ案ノ三
  百萬圓ト云フモノヲ····三百圓ヲ減ジテ二百五十圓以下トスルト云フ修正ヲ
  致シマシタノデゴザイマスルガ、之ニ付テ修正ノ必要ヲ感ジテ此ニ出シマシ
  タル所以ハ、資格ニ於テハソレデアルガ、尙ホ金額ニ於テモ成ルベク民間ノ
  營業者ト此保險ノ業務ヲ爭ッテ行クト云フ如キコトハ、從ヲテ其營業者ニ影響
  ヲヒドク及ボサナイト云フ程度ニ於テヤリタイノデゴザイマス、ソコデアリ
  マスル故ニデス、ソレヲ避ケルニハ成ルベク金額ヲ下ゲルト云フコトガ必要
  デアル、三百圓ヨリ二百圓、二百圓ヨリモ百圓、倫敦ノ如キハ百磅ト云フコ
  トニシテ居リマスガ、サウ云フヤウナコトデ避ケラレレバ避ケルコトヲ欲ス
  ルノデアリマスガ、餘リソレハ過ギマスルトデス、民營ト爭ハヌト云フ點ハ
  宜シイガ、此保險ノ業務ヲ實行スル上ニ於テ困難ヲ感ジ、成功スル事業ノ上
  ニ付テ又ハ損益ノ上ニ付テ色ミナルコトガ起リマス故ニ、ソレ故ニ此法ヲ有
  效ナラシメルト云フコトニ付テハ、成ルベク辛抱シテ、サウシテ出來ルダケノ
  程度ニ於テ斯ウアリタイト思フ、欲スルノハ其目的カラ云ヒマスト云フト三
  百圓ヨリモ二百五十圓、二百五十圓ヨリモ二百圓、尙ホヨリ以上百圓ト云フ
  モノニ出來テモ差支ナケレバ宜シイノデアリマスガ、サウ致シマスルト云フ
  1、政府ノ趣旨ヲ却ッテソレガ爲ニ沒却スルト云フコトガ起ッテハ相成ラナイ
  故ニ、此位ナラバ凡ソ宜カラウト云フコトニ於テ修正シタノデアリマス、其
  モノニ付テ丸デ根據ガナイノデハナイノデアリマス、在來ノ今日ノ保險會社
  ニ付キマシテ、百圓以下ハ幾ラ、二百圓以下ハ幾ラ、三百圓以下ハ幾ラノモ
  ノニナッテ居ルカ、五百圓以下ハ幾ラト云フコトノ實際ヲ承知スルノガ最モ必
  要デアリマス、近頃ノ調ニ依ッテ其表ヲ見マスト云フト、百圓以下、二百圓以
  下、色〓ニ分ッテ居リマスガ、三百圓以下ノモノカラ見マシテモ、人數ニ付テ
  九十九萬幾ラ、金額ニ付テ八千七百五十何万、是ガ政府ガチヤント領域ニナ
  ッテ、此內ニ這入ルベカラズト札ヲ立テル所ノ金額デゴザイマスルガ、其金ガ
  ダ、總豫算ノ高ノ十一億幾ラト云フモノニ比ベマスト云フトデス、中〓數ノ
  上ニ付テ割合ガ大キク、又之ヲ立テタナラバドノ邊デ爭フデアラウカ、亙ニ
  爭フデアラウカト云フコトヲ見マスノニ、政府ハ三百圓ト云ヒマスル故ニ五
  百圓····今マデ民間デャッテ居ル保險會社ニ於テ五百圓以下ト云フ、五百圓ヨ
  リ三百圓、此僅カ百圓····ノ間ニ付テ、ドノ位ナル被保險者ガ全國ニ附イテ
  アルカト見マスト、人數ニ於テ六十七萬人、金額ニ於テ三億三千萬圓ト云フ
  高ニナッテ居ル、而シテ全國ニ付テ見レバ全保險高ハ幾ラアルカ、又被保險人
  ノ數ハ幾ラアルカト云フコトヲ見マスト云フトデス、被保險ノ人ノ數ガ二百
  萬餘リ、而シテ金額ニ於テハ十一億以上ニナッテ居リマス、此五百圓カラ三百
  圓ト云フ、或ハ百圓ノ間ニ付テ總高ノ人員カラ幾ラニナルカト云フト、此人
  員ニ於キマシテ殆ド七割ヲ占メテ居ル、丁度二百萬ノ人員ノ七割ヲ占メテ居
  ル、金高ニ對シテ幾ラカト云フト十一億ト云フ總高ノ內カラ三億三千萬、此
  割合ハ三割强デアリマス、中〓容易ナラヌ大金デアリマス、此三百圓ト五百
  圓······先刻百圓ノ差ト申上ゲマシタガ、百圓デハアリマセヌ、二百圓デス間
  違ヒマシタ、此三百圓以上五百圓ト云フ二百圓ノ差ノモノニ付キマシテ、今
  言フ如ク人ノ數ニシテ總高ノ七割、金額ニシテ三割强ト云フ如キ大金ガ此所
  あれあいの
  ニアルノデアリマス、是ガ是マデ中流以上ヲ畑トシテ居ル保險社會ノ數十ノ
  モノト、七千有餘ノ郵便局ヲ以テ官營トスル其事業ト、此二ツノモノガ此所
  ニ交叉點ニナッテ出會ヒマシテ之ヲ爭フ數デアリマス、成程三百萬圓····三
  百圓以上デアル故ニ、四百圓五百圓ト云フモノハ簡易保險ノ領域デハアリマ
  セヌ、アリマセヌガ之ヲ割ルコトハ誠ニ易々タルモノデアル、簡易保險ハ誠
  ニ便利ナモノデアル、故ニ一人ノ忰ノ名ニスルヤツヲ二人ノ忰ノ名ニシテ仕
  舞フ、三人ノ忰ノ名ニシテ仕舞フト云ウテ保險ヲ附ケマスナラバ、之ヲ官營
  ニ取ルコトハ遣リヤウニ依ツテ決シテ難イコトデハナイノデアリマス、サウ
  云フコトニ相成リマスト云フト、政府ノ云フ如ク民業ハ害シナイ、影響ヲ及
  ボサナイト口デハ仰シヤルガ我ミノ頭ヲシテ成程御尤ダト云フコトハ、何ト
  シテモ承諾スルコトガ出來ナイ、ソレハ事實ノ數ガ示シテ居ルノデアリマス
  何等私ハ架空ノ論ヲ申述ベルノデハアリマセヌ、數ガ示シテ居ル、此數ニ於
  テ金高ノ三割、人ニ於テ七割ニナル所ノ數ヲ兩方デ爭フト云フヤウナコトニ
  ナリマシテ、是マデノ民營ニ危害ヲ及ボスヤウナコトガアルト云フコトハ、
  經濟社會ニ對シテモ亦是マデ附ケテ居ル被保險者ニ對シテモ、亦是マデ立ツ
  テ居ル保險會社ニ對シテモ、成ルタケ斯ノ如キコトハ政府ハ忍バレルダケ忍
  ンデ避ケタ方ガ宜カラウ、政府ノ趣旨ニモ適フ、我ミノ希望ニモ適フノデア
  ル、ソレヲドウカシテ貰ヒタイト云フノデアリマス、ソレニ付テハ先刻申上
  ゲタ通リ少イニ越シタコトハナイガ、政府ニ色〓質問ヲ致シマスト、三百圓
  デ豫算ヲ立テテ居ル、ソレガ二百圓ニナリ、尙ホ下ニナルト云フコトニナレ
  が、到底政府ノ豫算ガ齟齬ヲ來シテ、サウシテソレハ爲シ得ナイコトデアル
  ト云フノデアリマシテ、中〓之ニ付テハ頑丈ニ不同意ノ御返事ガアリマス
  ル、故ニ先ヅ忍ビ忍ビマシテ二百五十圓位ニシタナラバ、多少競爭シテモ著
  シキ影響ヲ民業ニ及ボスト云フコトヲ避ケ得ルダラウ、ソレダケデモ避ケ得
  ルダラウ、斯ウ云フコトニ致シマシテ二百五十圓ニ其限度ヲ設ケタル次第デ
  ゴザイマス、ソレニ付キマシテ之ニ付テモ根據ガナイト云フ色〓ニ反對者ノ
  御議論モアリマシタガ、決シテ根據ガナイデハナイ、今ノヤウナ根據ニ依ツ
  テ居ルモノデ架空デモ何デモナイ、數字ノ實際ガ斯ウナッテ居ルノデアリマ
  スカラ、之ニ依ッテ論ジナケレバナラヌト云フコトカラ來タ譯デアリマス、
  ソコデ翻ッテ此修正ヲシタ理由ヲ尙ホ申上ゲマスルト、何トシテモ政府ノ趣旨
  ヲ貫ク、之ヲ貫クニ付テハ下級社會ノ資格ヲ付ケヌト云フト、折角達磨ノ繪
  ヲ書イテモ眼ガアリマセヌカラ、ソレデ斯ウナサイ、民業ノ壓迫ヲシテモ宜
  イト云フコトナラバ、免ニ角、民業ヲ壓迫スルコトヲ欲シナイト云フ點ハ我
  我ノ說ト同ジコトデアル、デ成ルタケ凌ガレル程度デヤルコトニシタイ、二
  百五十圓位ナラバサウ政府ニ對シテ狂ヒハアリマスマイ、ソレヲ出スノハ易
  易タルモノデアル、色〓政府ニハ豫算ガ狂フト云フコトヲ言ハレルガ、若シ
  ソレニ付テ豫算ガ狂ッテ來ルコトナク、手數料ノ上ニ付テモ集金料ノ上ニ付テ
  モ、色ミヤリ方ニ依ッテ行ケルノデアリマスルカラ、此位ニナルノハ苦シクナ
  イコトト信ジマシタカラ之ヲ申シマシタガ、政府ニ於テハソレモナカ〓〓出
  來ヌト云フガ如キ固イ言デゴザイマス、是ナラ出來ル、出來ヌト信ズルト云フ
  コトハ出來マセヌ、出來ルト信ズルナラバ政府ノ趣旨ヲ貫徹スルヤウニスル
  ノデアリマスカラ、ドウゾ之ヲ容レテ下サイト云フ此二點デアリマス、然ル
  ニ論者中ニ此事ニ付キマシテ色〓說ガアリマスガ、反對者モ其趣旨ハ同ジコ
  トデアル、我ミノ修正ハ政府ノ趣旨ヲ貫キタイト云フノデアル、ドウカサウ
  ケチニ行カズ、趣旨ヲ貫クト云フ所ニ重キヲ置イテ戴キタイノデアル、又
  方ニ付テハドウカ民業ヲ害シナイヤウニシタイト云フノハ同感デアルカラ、
  ソレナラバ斯ウシマセウト云フノデアルカラ、餘リ議論ハナイ譯デアル、然
  ルノニ又少シク不思議ニ感ジマスコトハ、成ルホドサウデアル、サウデアッタ
  トシテ見テモ此政府案ニシテ衆議院ガ既ニ可決シタモノデアル、衆議院ガ可
  決シタモノヲ上院ニ於テ之ヲ修正スル、此修正スルト云フコトハ何デアルカ
  ト云フト、是ハ多少下層社會ノ一般ノ代表者ノ爲ニ必要ナル衆議院ノ領界ニ
  屬スルコトデアルカラシテ、貴族ヲ以テ成立ッタ貴族院デ此モノニ修正ヲ試ミ
  テ、ケチヲ付ケルト云フコトヲスルノハ、貴族院ノ諸公ニ於テハ愼ンダ方ガ宜
  カラウト云フ御忠言的ノ說モアリマシタガ、成ルホド一部ニ於テハサウ云フ
  御考ガアルカ知リマセヌガ、私ハ何モサウ云フ斟酌ヲスル必要ハナイト思ヒ
  マス、誠ニ政府ノ目的ガ良イカラ御ヤリナサイト云フノデアッテ、ムヅカシク
  モ何トモナイ、事ヲ好ムノデハナイ、ソレト同時ニ又兩院デ成立ッテ居ルノニ
  此モノハ一般ノ下層社會ニ關スル衆議院ノ領界デアル、我〓ガ之ニ對シテハ
  貴族院トシテハ御愼ミナサイト云フコトニ付テハ、徹頭徹尾了解ニ苦シムノ
  デアリマス、議院法ニ於テ豫算ノ先議權ヲ衆議院ガ有ッテ居ルトカ居ラヌトカ
  云フヤウナ議論トハ全ク異ッテ居ル、ソレ故ニ其モノニ付テモ私ハ御同意申ス
  コトガ出來ナイ、モウ一ツ進ミマシテ、ソレニモ拘ラズ修正ヲ試ミテ是ガ衆
  議院ニ囘ル、衆議院ニ囘ルト衆議院ニ於テハ旣ニ一旦可決シタコトデアル故
  ニ、遂ニ之ヲ否決スルト云フヤウナコトニナルト云フト、折角ノ此金科玉條
  タル此案ガ潰レテシマフ、故ニ我〓ハ枉ゲテ之ニ付テハ成ルタケ協和シテ、
  此頃流行ル妥協トカ協和トカ色〓言ッテ居リマス、成ルタケ仲好クシテ行ッタ
  方ガ宜カラウト云フコトハ是ハ一應御尤デアリマスガ、私ハ何ト考ヘテモ之
  ヲ政府ガ反對シヤウトモ思ハナイ、衆議院ニ於テモ之ヲ修正シテ反對シヤウ
  トハ萬々信ジナイ、ナゼ信ジナイカト云フト、今言フ如ク政府ノ趣旨ト云フモ
  ノヲ贊成シテ、ソレヲ有效ニ成立タセル上ニハ斯ウシタ方ガ宜イノデゴザイ
  マス、又人民ノ營業ト接觸シテソコニ非常ナル競爭ガ起ッテ遂ニ經濟社會ヲ紊
  スコトガアッテハイカヌカラ、ソレヲ愼ム爲ニハ數ヲ少クシタ方ガ宜シウゴザ
  イマスト云フ所カラ來タ修正デ、其間ニ何等毒モ何モナイ、モウ申シ述ベル通
  リノ道ヲ以テヤルノデアリマスル故ニ、若シ賢明ナル政府ニ於テデス、此趣旨
  ヲ貫徹スルト云フ意思ニ副フナラバ喜ンデ之ニ同意セラレテ宜シイ、ソレト
  同時ニ衆議院モ人ガアリマス、此位ノモノデ院議ヲ重ンズルトカドウトカ云
  フ如キソンナモノデハナイ、酒々落々トシテ之ニ付テ尤モナリトシテ同意シ
  ヤウ、目的ヲ實行シヤウトシタラ何ノコトモナイ、ソコ故ニ斯ノ如キ老婆心
  ハ重キヲ以テ考ヘナイ、ソンナコトハ斟酌ナク御ヤリニナッタラ宜カラウト思
  ヒマス、萬々一政府モ不同意、衆議院デモイケヌト云フモノナラ····政府ナ
  ルモノハサウ云フ枝葉ノコトニ於テ必要ナル此案ヲ捨テテシマフコトニナ
  ル、政府ノ精神ハドコニ在ル、唯頑張ッテ己ノ言フコトヲ突通スト云フマデデ
  アッテ、此モノヲ有效ナラシメルニ誠意ノアルモノト私ハ考ヘナイ、ソレナラ
  已ムヲ得マセヌ、サウ云フ考ナラ是ハ已ムヲ得ナイ、併シ國家ノ狀態ヲ考ヘ
  テ、此政府ノ當局者ニ於キマシテモ衆議院ニ於キマシテモ、ソンナ狭隘ナコ
  トハナイト私ハ考ヘテ居リマス、萬々一イケナケレバ其責彼ニ在リ、我〓ガ
  是ガ良イカラシテ之ヲ有效ニ成立タセルト云フコトデアルノデアリマスカ
  ラ、サウ申スコトデアリマス、尙ホ此政府ノ調ノ中ニ於キマシテモ色〓外
  國ノ例ガアッテ、官營事業ニ於テハ英吉利デモ行ッテ居ルガ、英吉利ノ官營ハ甚
  ダ〓々タルモノデアル、微々タルモノデアルガ、ソレハ何故カト云フト、身
  體檢査モナシ或ハ又保險ノ掛ケハ郵便局ニ取ッテ來、郵便ノ數ハ少シ、色ミナ
  ルコトヲシテ居ッテ、誠ニ效能ガ少イ、唯微々トシテ振ハナイ、振ハヌ故ニサ
  ウ云フヤウナコトハシナイ、日本デハ向ウノモノトハ違ヲテ、審査ニモヤリ或
  ハ保險金モ向ウニ取リニ行キ、郵便ノ振替デモヤッテヤル、サウシテ郵便ノ保
  險ヲ扱フ數ハ、向ウヨリモ幾倍モ多イト云フ有樣デアルカラ、有效ニ働クノ
  デアル、英吉利ノ如キコトハヤラヌト云フコトヲ此中ニ喋々ト論ジテアリマ
  ス、併シ是ハ又一方カラ味ッテ貰ハナケレバナラヌ、如何ニ英吉利人ガ人種ハ
  違ッテ居ルトモ、今日ノ「ロイドヂヨーヂ」ノ如キ人ガアッテ居ルノデアリマス、
  其他ノ者モ之ヲ有效ニ働カセテ、數ヲ增シ便利ヲ與ヘ、無診察ニナシ色〓ナ
  便利ヲ與ヘタナラ是ガ盛ニナルト云フコトハ何人モ知ッテ居ル、知ッテ居ッテ何
  故サウシナイノデアルカ、甚ダ微々トシテ振ハヌノハ、共所ガ是マデ爲ス所
  ノ民營ノ事業ト云フモノヲ重ンズルカラデアル、御承知ノ如ク、彼ノ國ノ如
  キハ民營デ以テ小口保險ヲ許シテアル、許シテアル所ニ向ッテ政府ガ其所ニ立
  ッテ有效ナル政府ノ力、信用、サウシテ金ハ損ガ行ッテモ構ハヌト云フガ如キ
  事業ヲ以テ、營利事業ト爭フナラバ、誠ニ易々タルモノデアル、易々タルモ
  ノデアルガ、ソレヲ有效ニ働カセテ政府ノ權威ヲ示ス如キコトヲスルト、民
  營ニ大キナ影響ヲ及ボシテ遂ニ營利ヲ害スルヤウナコトガ起ル、ソレ故ニ其
  所ニ付テハ正宗ノ刀ヲ持ッテ居ッテモ政府ハ正宗ノ刀ヲ持ッテ居ルト言ウ
  テ振〓ハサレテハ堪ラヌガ、正宗ノ刀ヲ持ッテ居リナガラ控ヘテ拔カズニ、サ
  ウシテヤラウト云フノデ、其所ニ初メテ味ガアル、此邊ノコトハ能ク御考ヘ
  下サラヌト、私ハ政府ノ御趣旨ニ反對スルヤウナコトガ起ラウト、斯ウ思フ
  次第デゴザイマス、斯ク私ガ申述ベマスコトハ、唯政府ノ官業ノ趣旨ヲ貫ク
  ヤウニ、而シテ明治十四年以來初メテ明治保險會社ガ阿部泰藏莊田平五郞如
  キ人ニ依ッテ、色ミナル困難危險ヲ冐シテ、サウシテ三十五六年ノ星霜ヲ經テ、
  今日ハ斯ノ如ク盛大ニナッテ來テ居ル、人員ニ於テハ二百萬、數ニ於テ十一億
  以上ノ保險ヲスル如キ盛大ナルコトニナリマシタノデアリマス、斯ノ如キ歴
  史ヲ持ッテ居ルモノニ付テ、政府ナルモノガ、唯民營デアル彼等ハ營利ヲ貪ル
  モノデアル、彼等ハ公共ノコトナドハ思ハヌモノデアルト云フ如キコトヲ以
  テ之ヲスルノハ餘リ是マデノ歴史ヲ少シモ意ニ介シナイ、而シテ經濟社會
  ニ影響スルコトニ付テハ餘リ御構ガナイコトデハナイカト思フ、殊ニ私ハ實
  業カラ出タ者デアリマスカラ、或ハ重ク考ヘルカモ知レマセヌガ、併ナガラ
  斯クシタ方ガ適當ナルコトデアラウト思ヒマシテ、誠ニ簡易ナル二箇條ノ修
  正ヲ致シタ次第デゴザイマス、何卒諸君ニ於カセラレマシテモ、此修正ノ趣
  旨ノアル所ヲ御諒察ニ相成リマシテ、公平ナル御判斷アラムコトヲ幾重ニ
  モ希望イタシマス
  〔男爵田健治郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=48

  ---

• 049・田健治郎

  ○男爵田健治郞君　私ハ此原案ヲ贊成スル者デアリマシテ、卽チ修正案ニ對
  シテ反對ノ趣旨ヲ述ベヤウト存ジマス、唯今山本君ハ、原案ニハ主義ニ於テ
  飽クマデ贊成デアルガ、唯其施行ノ方法宜シキヲ得ザルガ故ニ、是ニ修正ヲ
  加ヘタノデアルト云フコトヲ縷々御說明デアリマシタガ、或ハ山本君ノ御考
  ハサウデアルカモ知レマセヌガ、併シ大體此修正ノ成立ツ原因及根據ト申ス
  ベキ所ヲ申シマシタナラバ、是ハ決シテ原案贊成カラ出テ來タノデナイノデ、
  明カニ原案反對カラ生ジテ來タノデアル、ソレハ原案反對ノ勢力ガ謂ハユル
  不條理ナルガ故ニ、貫徹ガ出來ヌノデ、已ムヲ得ズシテ退イテ此修正ト云フ
  ヤウナ第二壘ニ引掛ッテ、漸ク維持シテ居ラレルト云フノデアリマス、ソレ故
  ニ私ハドウシテモ此修正案反對ニ付テハ、先ヅ以テ此簡易保險ノ性質ハ如何
  ナルモノデアルト云フコトカラ論ジテ、吟味ヲシナクチヤナルマイト存ジマ
  ス、此簡易保險ニ付テ反對論者ノ趣旨トセラルル所ハ、第一ガ强制的勞働保
  險デナクテハ社會政策トハ言ヘナイノデアルト云フコトガ一ツト、モウ一ツ
  簡易保險ハ民業タル保險ヲ壓迫スルト云フノガ、先ヅ主ナル論據デアラウト
  存ジマスガ、私ハ順次其論據ニ對シテ駁擊ヲ加ヘヤウト存ジマス、此第一ノ
  理由タル簡易保險ハ社會政策ニアラズト云フ論ハ、社會政策ナラバ强制勞働
  保險的ニセニヤナラヌトカ云フ論ガ多イヤウデアリマスガ、私ハ決シテサウ
  ハ信ジナイ、此社會政策トシテ、色〓社會ノ謂ハユル文明的生活ノ推移ト申
  シマスカ、社會經濟ノ變遷ト申シマスルカ、謂ハユル勞働問題ナドガ段々起
  ルノデ、此勞働問題ニ對シテ之ヲ救濟シテ行ク所ノモノガ社會政策デアル、
  其社會政策ニハ種々アラウト存ジマス、簡易保險モ確カニ其一ツデアリマセ
  ウガ、此簡易保險ナルモノハ、謂ハユル勞働問題ノ甚シキ弊害ニ陷ルコトヲ
  豫防スル爲ノモノデアッテ、簡易保險デ此豫防ノ效ヲ奏セナンデ初メテ强制保
  險ニ移ルモノデアル、デアルカラ私共ハ强制保險ハ寧ロ甚ダ忌ムベキモノデ
  アルト思ヒマスル、ト云フモノハ此社會問題ヲ病氣ニ例へテ見レバ、簡易保
  險ハ寧ロ成ルタケ病氣ニ陷ラヌ先キニ健康ヲ維持シヤウト云フ政策デアルト
  思ヒマスガ、强制保險ニナルト、寧ロ病ガ餘ホド激甚ニナッテ居ルカラ、其病
  ヲ癒サウ、少クトモ一層病ヲ劇シクスマイト云フ、謂ハユル治療法トモ云フ
  ベキモノデアラウ、ト云フモノハ、モウ强制保險トナルト、中〓反對諸君ガ
  申シテ居ラルルヤウナ氣樂ナモノデハナイ、簡易保險ヲヤル位ナラバ强制保
  險ヲヤッタラ宜イナドト云フコトヲ頻ニ仰ッシヤル方〓ガアルガ、中〓ソンナ
  氣樂ナモノデハナイ、强制保險トナレバ、無論勞働者カラモ保險料ヲ取立テ
  マスケレドモ、是ハ原則トシテ、殆ド國家及勞働者ヲ使用スル所ノ資本主、
  ソレト勞働者ソレ自身、此三ツノ者ヨリ保險金ト云フモノハ出スノデゴザイ
  マスルカラ、第一ニ此强制保險デモヤラウト云フナラバ、今日直グニ我國デ
  モ之ヲヤラウト云フコトニナッタラ、增稅問題ガ伴ハナクテハ行ケル氣遣ヒハ
  ナイノデアリマス、是ハ中〓ムヅカシイ話デス、併シ國家ハマダ增稅シテデ
  モヤルト云フコトヲ忍ブトシテモ、此勞働者ヲ使ウテ居ル所ノ資本家ハ如何
  ニスルカ、我〓ハソンナコトハ知ラナイトハ言ハレマセヌ、必ズ資本家ハ幾
  割ト云フ保險金ト云フモノヲ荷ッテ立タナケレバナラヌノデアリマス、是ハ直
  接保險ノ上ニ向ッテ非常ナ荷物ヲ脊負ハセル譯デアリマス、デアリマスカラ强
  制保險ナドト云フコトハナカ〓〓容易ニ言ヘルコトデハナイ、ケレドモ外國
  ニハソレヲ忍ンデヤラナクテハナラヌト云フノデ、獨逸ノ如キハソレヲ忍ン
  デヤッテ居ルノデアル、我ミハ願ハクハ我國ニ於テ强制保險ト云フモノノ必要
  ノ起ラヌ中ニ、簡易保險トカ何トカ云フヤウナ成ルベク簡便ナル方法デ、サ
  ウ云フ病氣ニ陷ラヌヤウニスルト云フコトヲ眼目トスルノデアリマス、假
  先ヅ强制保險ヲ要スル時ガ來ルトシテモ、之ニ依ッテ勞働問題ノ解決ガ付クカ
  ト云フト決シテ付カヌノデアル、獨逸ハ流石先見ノ明ノアル政治家ガ其點ニ
  目ヲ著ケマシタ故ニ、强制保險ト云フ制ヲ早ク設ケタカラ、此强制保險ノ御
  蔭デ謂ハユル勞働問題ナドハ極端ニハ陷ッテ居ラヌヤウデアリマスガ、英國ハ
  如何デアリマセウ、簡易保險ノ如キハ官民共ニ行ウテ居ルニ拘ラズ、ドウシ
  テモ此勞働問題ガ解決ガ付カナンダ、確カ千九百十一年頃デアリマシタカ、
  卽チ四五年前ニ、此勞働者ノ養老年金ト云フ制ヲ定メタノハ近イ頃ノコトデ
  アル、是ハ何ノ爲ニ斯ウ云フコトガ起ッタカト云フト、卽チ勞働者ガ四十以上
  ノ老年ニナッテ、最早勞役ニ服スルコトガ出來ナイ、而カモ己ハ何等扶養ヲ
  シテ吳レル者モナイ、殆ド饑餓ニ迫ルト云フコトガ段々殖エテ來テ如何トモ
  シヤウガナイ爲ニ、國家ガ之ヲ養フト云フ所ノ年金制デアリマス、卽チ一週
  間ニ確カ五「シリング」位ノモノデアッタラウト思ヒマスガ、詰リ國家ハ唯匁デ
  幾萬ト云フ多數ノ勞働者ニ對シテ、一週間ニ各〓五「シリング」程ノ金ヲ與ヘ
  テ〓ハシテ置クト云フコトデアルノデアリマス、是ハ英國デモ中〓喧マシイ
  論ガアッタノデアリマスルケレドモ、事實如何トモ仕方ガナイ、此法ヲ立テナ
  ンダナラバ、多クノ勞働者ガ飢渴ニ迫ルト云フコトデ、遂ニ非常ナル增稅案
  マデモ立テ、之ガ爲ニ上院ト下院トノ大衝突ノ起ルト云フコトモ辭セズシテ、
  遂ニ此法ガ出來マシタ、其法ノ出來タ結果ハ如何ト云ヘバ、初メノ豫算ハ八
  千萬圓位ノモノデ行ケルデアラウト云フノデ、出來タ所ノ法律ハ實行シテ見
  ルト、今日ハ年々一億八千萬圓カラノ國費ヲ、卽チ勞働者ノ養老年金トシテ
  年々支出シテ居ラニヤナラヌト云フコトニナルノデ、我〓ハ社會問題ノ爲ニ
  已ムヲ得ズシテ斯ウ云フコトヲセラルルコトハ、如何ニモ已ムヲ得ザルコト
  トシテ御氣ノ毒ニ存ジマスルガ、併ナガラ若シモ政治家ト云フ上カラ言ウタ
  ナラバ······政治ト云フ上カラ言ウタナラバ、斯ノ如キハ惜ムラクハ英國ノ政
  治家ノ先見ノ明ノ或ハ乏シカッタ結果デアッタラウガ、是ガ數年前若クハ十數
  年前カラ注意シテ居ッタナラバ、或ハ簡易保險デ防グコトガ出來タカモ知レナ
  1、簡易保險デ防グコトガ出來ナケレバ强制保險デ防グコトガ出來タカモ知
  レナイ、然ルニソレデモイカヌデ遂ニ養老年金ト云フモノヲ以テ數萬ノ勞働
  者ヲ唯匁デ養フト云フコトハ、國家トシテ如何ニモ社會的ノ大患ニ陷ッタモノ
  デアルト云フコトヲ申スノニ敢テ憚ラヌノデアリマス、左樣ノ儀デゴザイマ
  スルガ故ニ、此簡易保險ナルモノハ、斯ル病氣ニ罹リ、若クハ進ンデ斯ル大
  患ニ陷ラヌヤウニ、謂ハユル雨降ラザルニ綱繆スルトカ、又ハ外國ニ盛ニア
  ル所ノ此勞働問題ナル大困難ナル問題ノ病氣ニ傳染セヌヤウニスルト云フ一
  ノ豫防策トシテ、最モ早ク著眼シタ其先見ノ明ノアル所ノ一ノ政策デアルト
  云フコトト私共ハ信ズルノデアリマス、又第二ノ簡易保險ハ民業ヲ壓迫スル
  ト云フ說ニ對シテ意見ヲ述ベマス、前段ニ申上ゲマシタ通リ、簡易保險ナル
  モノハ社會政策トシテ行フベキモノデアリマスル、旣ニ社會政策トシテ卽チ
  中級以下ノ人民ヲ保護スルト云フ趣意カラシテ出タ所ノモノデアル以上ハ、
  是ハ如何ナル方面カラ觀テ見テモ營利ノ目的ニ供スルト云フコトハ斷ジテ出
  來ヌト云フコトハ、是ハ明カナコトデアル、是ガ若シモ營利ノ目的ニ供セラ
  ルルト云フコトニナレバ、卽チ目的物タル小民ノ利益ヲ犧牲ニ供シテ一部ノ
  資本家ノ勝利ニ歸セシメルト云フコトニナリマスルガ故ニ、是ハドウシテモ
  營利ノ目的ニ供スルト云フ性質ノモノデハナイ、旣ニ營利ノ目的ニ供スルベ
  キモノニ非ズシテ、而カモ是ハ行ハナクテハナラヌモノデアルト云フ以上ハ、
  國家ガ之ヲ經營スルト云フコトハ當然ノ結果デアリマス、營利ノ目的ナラバ
  獨リ抛ッテ置イテモ行キマセウガ營利ノ目的ニハ供セラレヌモノデアル、國家
  ガ經營セナンダラ何人ガ經營シマセウ、到底是ハ成立チヤウガナイモノデア
  ルガ故ニ、是ハ國家ノ經營ニ委スルト云フコトハ勿論論ノナイ筋合ノモノデ
  アル、詰リ此簡易保險ナルモノガ今申スヤウナ目的ニ依ッテ成立ツ以上ハ之
  ヲ若シ民業ニ附スルト云フヤウナル論ヲ以テ之ヲ行ハナンダト云フコトニナ
  ルト云フト、其結果タル、一面ニ於テハ卽チ文明的ノ社會經濟ノ變遷ニ應ジ
  テ相當ノ施設ヲ遂ゲテ、此弊害ノ釀成セヌヤウニ下級者ヲ保護シテ行クト云
  フ所ノ、所謂下級者ヲシテ其保險ノ利益ヲ享ケルコトヲ出來シメヌ所ノ結果
  ニナルノト、而シテ又一面ニ於テ其結果カラ生ズル所ノ所謂歐米ナドノ社會
  ノ大病トモ申シマスル所ノ勞働ト資本トノ大衝突ヲ態〓促スヤウナコトニナ
  ルト云フ結果ニナルノデアリマス、此點ニ付テハドウシテ見テモ國家ガヤル
  ヨリ致シ方ハナイノデアル、決シテ民業ヲ壓迫スルトカ、何トカ云フモノデ
  ハナイ、況ヤ又事實ニ付テ申シテ見マシテモ、此民業壓迫ト云フコトハ今山
  本君モ段々例證ヲ擧ゲテ御述ニナリマシタヤウデアリマスケレドモ、旣ニ此
  統計ニ於テ示シテアル通リ、山本君ハ事實ヲ數ガ示シテアルト云フコトヲ仰
  シヤイマシタガ、如何ニモ數ガ示シテ居ルノデアリマス、其數ガ示シテ居ル
  ノハ山本君ノ論點ノ利益ニナルモノニ非ズシテ、私ノ述ベル所ノ論點ノ利益
  ニナル所ヲ數ガ明カニ示シテ居ルノデアル、ソレハ何ダト云フト第一二百圓
  ヲ超エザルモノノ保險ト申スモノガ明治四十三年ニ於テハ百分ノ······人員ニ
  於テ十二·四、金額ガ百分ノ三·五ト云フモノデアルガ、ソレガ五年後ノ大正三
  年度ニ於キマシテハ人員ガ百分ノ僅カ一·八、金額ハ「コムマ」ノ四ニナッテシ
  マッテ居ル、モウ百分ニモナラヌ、金額ノ上ニ於テ百分ニモナラナイ、詰リ五
  年ノ間八分ノ一ニ減ッテシマッテ居ル、此三百圓ヲ超エザル數ニ於テ見テモ矢
  張リサウ云フヤウナ次第デ、四十三年ニハ百分ノ三十四·九、而シテ其金額ガ
  百分ノ十四·五デアッタ、是ガ大正三年度ニハ半分以下ニナッテ、人員ガ百分ノ
  十六·三、金額ガ百分ノ六·五ト云フモノニナッテ居ル、是ハ卽チ矢張リ半分以
  下ニナッテ居ルノデアリマス、而シテ此段々小額ノ保險ガ少クナッテ、殆ドモウ
  二百圓以下ナドハ寂滅ノ形ヲ示シテ居ルノデアリマスガ、其趨勢ハ一般ノ統
  計ノ上ニ於テ又現ハレテ居ル、詰リ此總テノ生命保險ノ契約ノ上ノ金額ヲ見
  マシテモ、三十九年度ニ於テハ總テノ保險金額ノ平均ガ四百十八圓デアッタモ
  ノガ、九年後ノ大正三年度ニ於テハ總平均ガ七百三圓ニナッテ居ル、殆ド三百
  圓ホドノ總平均上ゲ增加ヲ來タシテ居ル、斯ルコトハ卽チ所謂事實ノ數ガ示
  スト云フコトヲ仰シヤッタガ、其通リデアッテ、事實ノ數ガ此保險ト云フモノハ
  社會經濟ノ發達ニ從ッテ段々保險金額ノ平均ガ昇ッテ來ル、卽チ小額保險ト云
  フヤウナモノハ普通保險會社ノ目的物デナイト云フコトニナルノデアリマ
  ス、加之今山本君ハ華族中ヨリ掛ケルトカ、上流社會ガ段々這入ルトカ、色
  色御話ガゴザイマシタ、ゴザイマシタケレドモ、是ハドウモ上流社會ト云フ
  モノガ丸デ算盤ヲ知ラナイ、煩累モ厭ハヌ上流社會デアッタナラバ、ソレハ百
  中ニ一ツヤ千中ニ一ツハ或ハアルカモ知レマセヌ、苟クモ保險ヲ掛ケヤウト
  云フ位ナ經濟的頭ノアル人ガ、態〓月掛ニナラナクチヤ困ルト云フヤウナ事
  情ガナクシテ、ドウ考へテ見テモ月掛ノ保險ガ此普通簡易保險ノ目的デアル、
  共月掛ノ保險ヲ態ミ求メルト云フコトハ、詰リ言ヘバ月〓受取ル給料ナドノ
  中カラ置イテ置イタラ使ッテシマフガ、サウスルト何ニモ殘ラヌガ、ソレヲ少
  シヅツ十錢トカ二十錢トカ溜メテ月掛ニ郵便脚夫ガ取集メニ來ルモノニ渡ス
  ト云フノガ此保險ノ性質、多大ナ財產家ガ是ハドウモ宜イモノガ出來タト云
  フヤウナコトヲ言ウテ、月〓保險金ヲ受取リニ郵便脚夫ガ二十錢三十錢ヲ集
  メニ來ルモノヲ、富豪ダトカ有爵者、有位者、色〓ナコトヲ仰シヤッタ、マダ
  有ッタ、高等官トカ何トカ云フ色〓ナコトヲ仰シヤッタガ、サウ云フ又不經濟ノ
  考ヲ有ッテ居ル人ガ何處ニアルモノデアリマセウカ、私ハ絕對ニナイトハ言ヒ
  マセヌ、言ヒマセヌガ、是ハ商賣モ同ジコトデアッテ算盤ト云フモノガ物ヲ言
  フ、殊ニ山本君ノ如キハ實業ニ於テ久シク御關係ニナッタ方ガ、算盤御構ヒナ
  シニドウモ態〓其月掛ノ煩累ヲシテ、而カモ保險金ノ率ハドウダト云ヘバ、
  現ニ終身保險ノ如キハ餘ホド普通保險ヨリ高クナッテ居ル、又高クナル筈デ
  ス、此僅ナル零碎ノ掛金ヲ月〓其家へ取リニ來ルト云フ簡易保險デアル以上
  ノ、共集金ノ費用ト云フモノダケデモナカ〓〓附加保險料トシテ餘計ノモノ
  ヲ掛ケナケレバナラヌ、普通ナラバ一割位ノ附加保險料デ行ク筈ノモノガ、
  此簡易保險ハ三割以上モ掛ケナケレバ、ドウシテモ引合ハヌ、此三割以上ノ
  費用ト云フモノハ卽チ保險金ニ加ッテ、保險ノ率ガ高クナッテ居ル、其保險率ガ
  高クナッテ居ルモノヘ、態こ金持ガ保險ヲ掛ケルナゾト云フコトハ、餘リニ算盤
  ヲ無視シタ位ノ御說デアラウト思ヒマス、ソレデ大體此社會政策ニ非ズトカ、
  民業壓迫ト云フコトニ付テハ斯ル次第デ、如何ニシテ見テモ不條理ナルコト
  ト思ヒマスルガ、私ハ是ヨリ直接ナル此修正案ニ向ッテ一言ヲ試ミタイト思ヒ
  やっ、、第一ノ修正ハ第二條ノ年齡ノ下ヘ資格ヲ入レルト云フコトデアル、詰
  リ此理由ハ今山本君カラ縷々承リマシテ、頗ル驚イタノデアリマス、此資格
  ト云フコトヲ定メルコトノ困難ナルト云フコトハ過日以來政府當局大臣及政
  府委員ナゾカラモ縷々說明ニナッタヤウデゴザイマスルガ、私ハ此政府委員ナ
  ドノ說明ヨリ以上ニ於テ資格ヲ定メルト云フコトハ到底不可能ナコトデアル
  ト深ク信ズルノデアリマス、ト云フモノハ元來此世ニ所謂社會政策論者ガ色
  色論ゼラレテ居ル中ニ付テモ、私ハサウ云フコトニ付テ段々調ベタ譯デモゴ
  ザイマセヌガ、私ノ見解トシテハ、歐羅巴ノ、歐米諸國ノ勞働問題ト日本ニ
  於ケル勞働問題トハ全ク別種ノモノデアル、斯ル問題ハ總テ其國ミニ現ニ存
  シテ居ル所ノ國情ニ依ッテ論究シナケレバナラヌモノト云フコトヲ確ク信ズ
  ルノデアリマス、歐羅巴ニ於ケル社會政策トシテ論ゼラレル所ノ勞働問題ハ
  多クハ集團的工業等ニ從事スル所ノ勞働問題ガ主眼トナッテ居ルヤウデアリ
  マスガ、我國ニ於テハ未ダ今日ノ事實ニ付テ見ルト、ソレ等ノモノハ社會ノ
  其下級生活問題ノ上カラ見レバ、ホンノ一小部分ノモノデアッテ、其大多數ノ
  モノハ其集團的工業勞働者ノ外ニアッテ、而カモ此社會政策ノ中ニ、ドウシテ
  モ込メテ論斷シナケレバナラヌモノガ多數ヲ占メテ居ルト云フコトヲ深ク信
  ジテ居リマス、ソレハ何ダト申セバ、第一農民デモ······農民ト云フモノヲ必シ
  モ全部ヲ言フノデハアリマセヌケレドモ、農民社會ニモ甚ダ此下等勞働者ト
  シテ生活問題、卽チ小作人ノ如キ境遇ニアル者ニ付テハ唯集團シテ居ラヌト
  云フダケノコトハアリマスガ、散在シテ居ルト云フコトノ差ハアルケレドモ、
  是ハ矢張リ簡易保險ナゾニ付テ十分保護シテ行カナケレバナラヌ部分ガ澤山
  アルト思ヒマス、況ヤ此漁民ノ如キハ卽チ漁村ノ有樣ヲ能ク御承知ニナッテ居
  ル御方ナラバ、必ズ此御感ジガアル、漁民ト云フモノハ大漁ノアッタトキニハ
  非常ナ收入ニ、一時ナルモノデアルカラシテ、正月ガ三ツモ一〓ニ來タヤウ
  ナ騷ギヲシマスルガ、不漁ガ續クト鍋釜ヲ質ニ入レテモ治リガ付カヌデ、先
  祖ノ位牌マデモ質ニ置クト云フコトガ殆ド漁村デハサウ云フコトニナッテ居
  ル、ソレガ又先祖ノ位牌ダケデ濟ムナラバ、マダシモデアリマスルケレドモ、
  此漁民、漁村ト云フモノハ多クハ遠ク鰹漁トガ、鰯漁トカ、何十艘モ連ネテ
  出ルモノデアリマスガ、一朝不時ノ颶風ニ出會フト云フコトニナルト、何百
  般出テ居ッタ中ノ何十艘、何百人ノ乘組ガ遂ニ行方ヲ失ッテシマフト云フコト
  ニナッテシマッテ、卽チ漁村ノ中心力タルベキ所ノ壯丁卽チ盛ンニ働キノ付イ
  テ、海ノ上デ十分ニ稼ギノ出來ルヤウナ人ガ海底ニ沈沒シテシマフト云フコ
  トハ、是ハ新聞デモ御覽ニナッテ居ルコトデアル是等ノモノハ如何ニシテ見
  テモ跡ニ殘ル所ノ家族、老幼婦女ヲ養フコトノ覺悟ヲドウシテモ決メサシテ
  置カナケレバナラヌト云フコトハ、モウ是ハ少シ田舍ノ狀態ニ注目ナサレル
  御方ナラバ必ズ御氣ガ付カナケレバナラヌ、是等ノ如キハ卽チ斯ウ云フモ
  ノニ向ッテ、最モ必要ナモノデアル、其他過日來頻ニ特別委員會デモ御話ガ出
  テ居ッタヤウデアリマスガ、小學〓員トカ、下級官吏、巡査、看守トカ、成、
  雇員トカ、若クハ官廳ナリ、其他諸會社ナゾニ從事スル所ノ事務員トカ云フ
  ヤウナ、僅ナ給料ニ衣食シテ、一朝疾病若クハ病死等ノコトニ遭遇シタトキニ
  ハ殆ド其家族、遺族ヲシテ窮苦ニ悲嘆セシムルヤウナコトガ累々トシテアル
  ノデアリマス、是等ノモノガ卽チ今日日本ニ於ケル社會政策トシテ、是ガ生
  活難ヲ救フト云フコトヲシナケレバナラヌ目的物デアル、斯ウ云フヤウナ人
  人ハ今日ノ普通保險ニ於テ其保護ヲ受ケルコトガ出來ル人カト云フニ、是八
  殆ド絕對的ニ出來ナイノデアリマス、僅カ十五圓ヤ二十圓ノ給料ヲ貰ッテ、
  サウシテ家族ノ二三人モ養ッテ居ルモノハ、其日ノ衣食ニ汲々トシテ、漸ク生
  活ヲ繫イデ行ク位デアリマス、併シ是ガ都會ナラバ、マダシモデアリマスケ
  レドモ、是ガ田舍マデ廣ク散布シテ居ル、サウ云フモノガ普通保險ニ於テ半
  年掛ケ、一年掛ケトカ金ヲ固メテ出スト云フコトハ出來ナイ、又集金ノ方法
  デモ都會デハ集金法モ普通保險ニハ行ハレテ居ルヤウデスケレドモ、田舎ノ
  隅ミニ至ッテハ、ソレハイケマセヌ、サウ云フコトナリ、又諸方ニ散在シテ
  居ルヤウナ種々ノ點カラシテ、ドウシテモ是等ノ如キハ、其簡易保險ノ如キ
  各田舍ノ郵便局ニ於テ殘ラズヤルト云フヤウナ方法ガ設ケラレザル限リハ、
  普通保險ノ最低額ニモ應ズルコトガ出來ナイト云フコトニナル、シテ見ルト
  是等ハ文明ノ此必要ナル經濟機關トシテハ成立ツベキ所ノ保險ガアリナガ
  ラ、到底保險ノ保護、利益ヲ受ケルコトガ出來ヌト云フコトニナルノデアリマ
  スカラ、是ハ如何ニモドウモ棄テ置クベカラザル次第デアッテ、斯ウ云フモノ
  ヲ棄テ置クト云フト、私ガ前ニ申上ゲマスル所ノ社會ノ大病タル所謂勞働問
  題ト云フヤウナルコトヲ根本的ニ解決シテ、遂ニ國家ガ無救ノ民ヲ無限ニ養
  ハナケレバナラヌト云フヤウナ禍ガ來ルノデアリマスカラ、ドウシテ見テモ
  是等ハヤラニヤナラヌ、處デ是等ヲヤルニハ山本君ハソレヲヤルノハ宜イガ、
  若シモ金持或ハ有爵者、有位者ガ是ニ這入ッテ來タナラバ甚ダ困ル、是ハドウ
  シテモサウ云フ者ニ限ルト云フコトヲ職業別ナリ、納稅別カ何カニシテ決メ
  テ置カナケレバナラヌト云フコトヲ仰シヤルケレドモ、ソレガ立派ニ付クノ
  ナラバ私共モ或ハ御同意申スカモ知レマセヌケレドモ、山本君ノヤウナ聰明
  ノ御方ニモ似合ハヌ、ドウシテ見テモ付ケヤウハナイ、モウチット日ガアッタ
  ラ付クカモ知レヌガ、何分餘地ガナイ、政府ニ信賴スルトシタ所デ、其政府
  ガ誠ニサウ信賴シテ下サルノハ有難ウゴザルカラ、是ハドコマデモ信賴ヲ受
  ケテ立派ニヤッテ見マセウト言フナラバ御信賴モ結構カモ知ラヌガ、無理無
  體ニ押付ケニヤラウトシテモ政府ハ之ニ應ジナイノデ、トテモサウ云フコト
  ハ出來マセヌト言ッテ居ルデハアリマセヌカ、其出來ナイト云フモノヘ持ッテ
  往ッテ、飽マデモ信賴スルト云フコトデ以テ、無理押付ケニ勅令ノ中カ何カニ
  打込ンデ仕舞フト云フ話デハ、如何ニシテ見テモ無責任ノ話デアル、賴マレ
  タ者ガ遣リマセウト云フナラバソレガ上手ニ出來ルカ下手ニ出來ルカハ問題
  外デアリマスケレドモ、政府ヘ持ッテ往ッテモ、其國ノ行政ノ全權ヲ掌ッテ居ル
  所ノ政府ガ、ソレハイケマセヌト云フモノヲ議員ガ無理押付ケニ熱湯ヲ呑マ
  セルヤウニ、出來ヌデモ構ハヌ、何所マデモ貴樣ヲ信賴スルカラヤレト云フ
  ガ如キハ如何ニ議員トシテサウ云フコトヲ政府ニ御賴スルナゾト云フコトハ
  私ハサレマセヌ、サウ云フ無理ナコトヲ政府ニ御賴スルト云フヤウナ卑怯ナ
  コトハ出來ズ、命令スルト云フヤウナ無理ナコトモ出來ズ、何レニシテ見テ
  モ、私ハソンナ不條理ナコトハ一體議員ノスベキコトデナイト思フ、ソレモ
  何カ考ガ····又實際山本君ノ如ク御付ケニナルコトガ、脇カラ同感者ノ眼ニ
  付クナラバ、ソレハ我〓モ矢張リ此議場ニ列スル以上ハ國ノ爲ニ心配シテ、
  何トカ斯ウ云フ方法ヲ以テ此資格ノ定メ方ガアルダラウト云フコトヲ考ヘテ
  見マシタガ、是ハドウシテ見テモ矢張リ政府ガ餘計ノ人ヲ使ヒ、餘計ノ專門
  家ヲ使ッテ、三年モ五年モ汲々孜々トシテ調ベテモ、ドウシテモ其方法ガ付カ
  ヌトシテ、初メハソレヲヤル積リデヤリ掛ケテ居ッタガ、途中デ差障リガアッ
  テ、中〓付ケ難イモノデアルノヲ、我〓ガ智惠ヲ絞ッテヤッテモ、ドウシテモ
  付カウヤウハナイ、ナゼ付カウヤウガナイカト云フト、先刻ノヤウニ職業別
  トカ、納稅額別ト云フコトヲ仰シヤッタガ、納稅額別ナドガドウシテ分リマセ
  ウ、若シモ金ガ掛ッテモ少シモ構ハヌ、百圓ノ保險ヲ付ケルノニ二十圓モ、三
  十圓モ、時ニ依ッテハ百圓ノ費用ヲ掛ケテモ御ヤリニナルナラバソレハ往クカ
  モ知レヌ、往クカモ知レヌガ、納稅者、納稅者ト云ウタ所ガ今日此納稅者ヲ
  認メルト云フコトハ中〓町村役場ヤ稅務署ナドニ行ッテ調ベテ見テモ分ラヌ
  ノデアリマス、餘所デ····他府縣デ納稅ヲシテ居ル奴ハ到底分ラウ筈ハナイ、
  サウ云フ者ヲ一々資格ヲ以テ決メルト云フコトニナルト、百圓ノ保險ヲ約束
  スル爲ニ、ヤア稅務署、ヤア町村役場ト云フヤウナ所ニ行ッタ所ガ、ソレハ稅務
  署デモ誰ノ原籍ヲ調ベロトカ、ヤア子供ハ何所ニ行ッテ居ルトカ、其先キノ調
  モナケレバナラヌト云フコトニナッテ來テ、是ハ非常ナ煩累ノコトヲヤラナケ
  レバ到底其治リガ付クモノデハアリマセヌ、職業別デモ同ジコトデアリマス、
  此點ナドハ先刻林伯カラ色〓御話ガアリマシタカラ、私ガソレヲ繰返ス必要
  ハゴザイマセヌガ、免ニ角不可能デアルト云フコトハ明カニナッテ居ルノニ、
  ソレヲ無理ニヤラウト云フコトハ、殆ド先刻山本君ハ達磨ヲ拵ヘテ眼ヲ入レ
  ヌト仰シヤッタガ、私ノ眼カラ見ルト達磨ノ眼ガ折角這入ッテ居ルノニ、山本君
  ハ態〓達磨ノ眼ニ釘ヲ打チニ御出デニナッタトシカ思ヘヌノデアリマス、ドウカ
  此達磨ノ眼ニ釘付ケスルダケハ御免ヲ蒙ラヌト、サウ云フ無理ナコトヲシテ
  折角此法ガ行ハレルモノヲ、之ヲ拵ヘル爲ニ事實不可能、行フコトノ出來ナ
  イト云フコトニナル、詰リ此論ヲ持ッテ來ルト云フト、唯議論トシテ中級以下
  ノ······政府ノ理由書ニ「社會ノ中級以下ノ多數人民ノ幸福ヲ」ト書イテアルノ
  二、サウ云フ說明ヲ中ニ書イテ置キナガラ、其中級以下ト云フコトヲ法律中
  ニ證明スベキモノガナイカラ入レルノダト、斯ウ云フコトヲ仰シヤルガ、此
  法律ト云フモノヲズット初メカラ終ヒマデ御讀ニナッテ、之ヲ活用スル上カラ
  往ッタラ、ドウシテモ中級以下ノ者デナクチヤア來ナイヤウニナッテ居ル、丁度
  例ヘテ見ルト云フト郵便貯金法ト同ジデアリマス、郵便貯金法中ニハ別ニ財
  產家ハ郵便貯金ハヤルコトハナラナイト云フコトハ一ツモ書イテハアリマセ
  又、唯以前ハ三百圓ノ制限ハアッタガ、近頃ハ日本ノ社會經濟ガ段々發達シテ
  五百圓トナリ、終ニハ千圓ニ上ボシタ、上ボシタコトハアリマス、アリマス
  ケレドモ、詰ル所郵便貯金法ハ何ヲ主眼トシタカト云ヘバ、矢張リ社會ノ小
  額貯金ヲ奬勵スルト云フノガ主眼デアッテ、財產家ヤ大キナ富豪ナドノ貯金ヲ
  預ルノガ主眼デハナイ、サウ云フ趣意デハナイカラ制限ヲ拵ヘテアルケレド
  モ、郵便貯金法ニハ決シテ何百圓以上ノ所得稅ヲ納メル者ハ郵便貯金ヲナス
  コトヲ得ズト書イテナイ、有爵者ハ郵便貯金ヲナスコトヲ得ズトハ書イテナ
  1、山本君ガ若シ遞信大臣ニ御成リニナッタナラバ、或ハ郵便貯金法中ニ有位
  者、有爵者、高等官ハ郵便貯金ヲナスコトヲ得ズト云フコトヲ御制定ナサル
  御發議ヲナサルカモ知レマセヌガ、我〓ハ其時ハ貴族院ヂヤア承知シマセヌ、
  サウ云フ法ヲ御出シニナッテモ······サウ云フ譯デアルカラ、ドウシテモ無理ナ
  コトヲシテモ之ニ向ッテヤラウト云フカラ、是ハ詰リ言ウタラ此論ハ簡易保險
  ト云フコトヲヤラズシテ、複雜保險ヲシヤウト云フノデアル、此法律案ハド
  コマデモ簡易保險ヲ主義トシテ出來テ居ルガ、ソレヲシナイデ、無理ニ資格
  ヲ決メテ、郵便局ノ前デ毎日每日保險者ト郵便局ノ役人トブンナグリ合ヒデ
  モシナケレバナラヌ、己ハ納稅ヲシテ居ラヌ、貴樣ハ納稅者ダト云フヤウナ
  コトデ毆リ合ヒデモシナケレバナラヌナドト云フ種ヲソコニ蒔イテ、而シテ
  實際眞面目ニヤラウトシテ見タ所ガ、百圓ノ保險ヲ付ケルノニ二十圓モ五十
  圓モ調査費ガ掛ルヤウナコトヲシヤウト云フノデアリマスカラシテ、詰リ言
  ヘバ此簡易保險ヲ複雜保險トカ、若クハ困難保險ニシテ實行ノ出來ナイモノ
  ニシヤウト云フ御目論見ニ違ヒナイト考ヘル、是ハナンボ山本君ガ最初ニ本
  案ノ趣意ハ贊成デアルケレドモ施行方法ガ宜シキヲ得ヌカラ反對スルト仰シ
  ヤッタケレドモ、決シテサウハ思ヘナイ、本案ノ趣意ガ全ク反對デアルケレド
  モ、之ヲ打破ル所ノ理由ガナイカラシテ、已ムヲ得ズ第一陣ニ敗退シテ第二
  陣ニ取掛ッテ、辛クモ茲デ以テ本案ヲ實行ノ出來ナイモノニシヤウ、私ニハ斯
  ウトシカ思ヘナイノデアル、而シテ金額ノ制限論ト云フモノハ比較的小サイ
  問題デ、格別ヤカマシク、顏ヲ赤ラメテ論ズル程ノモノデハナイ、論デハナ
  イケレドモ、ヂヤアドッチカト云ヘバ原案ノ方ガ餘ホド宜シイ、何故ト云フニ
  此三百圓ト云フコトハ最高限ヲ示シタモノデ、最高限ト云フノハ能クアルモ
  ノデス、譬ヘテ見ルト普通保險會社ガ一萬圓マデハ保險ヲ付ケマストカ、三
  萬圓マデハ保險ヲ付ケマストカ言ッテ最高限ヲ決メテ居ルガ、一萬圓、三萬圓
  殘ラズ來テ吳レルモノナラ、保險會社ハ寢テ居ッテ獨リデ繁昌スル、サウハ行
  クモノデナイ、最高限ハ矢張リ名ノ如ク最高限、實際最高限平均一萬圓ニシ
  テ居ルカラ、一萬圓平均ニ行クト思フ社長サンガアッタラ直キ破產デアリマ
  ス、是ハ矢張リ最高限ト最低限ガアッテ、其中數ガ來ルノデアル、卽チ此保險
  ノ如キモ二十圓以上三百圓以下ト云フモノハ政府ハ此平均ハ七十五圓ニナル
  デアラウト云フコトヲ言ハレテ居ル、多分サウデアリマセウ、ソレ故ニ此最
  高限ト言フモノハ、謂ハユル保險會社ノ普通ニヤル所、三百圓以上ト云フモ
  ノガ普通ニヤルモノデアル、而シテ三百圓以下ヲ政府ガヤルト云フコトデア
  ルカラ、丁度其境目ノ三百圓ト云フモノヲヤッテ、是カラ以上ハ普通保險、是
  カラ以下ハ簡易保險トシタノデアル、ダカラシテ其間ニドウシテモ侵スコト
  ノ出來ナイヤウナ餘地ヲ設ケル必要ガアリハシナイ、況ヤ又普通保險ガ三百
  圓以下ハ絕對ニ出來ヌノナラマダシモデアリマスガ、是ハ此間モ政府委員ガ
  言フ所ニ依ルト、普通保險ハ三百圓以下モヤルコトハ一向構ハナイ、許サレ
  テ居ル以上ハ、實ハ許サレテ居ル者ハ八社ダトカデアリマス、三百圓未滿ノ
  保險ヲ許サレテ居ルモノハ四十何社トカノ中ニ八社ヨリ外ナイト云フコトデ
  アル、デアルガマア假令八社ニシテ見タ所ガ、兔ニ角三百圓未滿ノ普通保險
  ガ絕對ニ出來ヌカト言ヘバサウデナイ、ソレハ三百圓ヤラウガ、二百圓ヤラ
  ウガ許サレテ居ル以上ハチットモ構ハヌ、政府ノ獨占ト云フコトガ惡イト仰シ
  ヤルガ、何モ獨占ト云フコトハ、此簡易保險ノ方法ニ依ルコトハ普通保險デ
  ヤラヌ、卽チ獨占ト云フノハ診斷モセズ、而シテ三百圓以下ノモノニ此生命
  若クハ養老、此保險ヲ、三條件ノ備ッタモノヲヤルコトガ出來ヌト云フコトデ
  アッテ、此三條件備ハラヌ以上ハ、譬ヘテ見レバ醫者ニ診斷サシテ、而シテ二
  百圓ノ保險ヲ附ケルナラバ普通保險會社デヤッテ一向構ハヌ法律デアル、シテ
  見ルト此事ガ出來ルモノナル以上ハ、態ミ料率ノ高イ所ノ簡易保險ニ財產家
  ナドガ行ク必要ハナイ、是ハ全ク簡易保險デナクテハナラヌ、卽チ月〓ノ、
  月掛ケノ誠ニ容易イ、僅ノ給料ノ中カラ取集メニ來テ吳レル掛金デアル、ソ
  レデ知ラズ識ラズ出來ルコトヲ主眼トシテ居ルモノデアル、デモウ一ツ反對
  論者ニ能ク御考ヲ願ハナケレバナラヌコトガアル、ソレハ二百五十圓ト云フ
  御話デアリマスガ、今山本君ハ二百五十圓ヨリカ二百圓ガ宜イ、二百圓ヨリ
  カ百圓ガ宜イト云フコトヲ仰ッシヤル、是デ卽チ化ノ皮ガ現ハレタ、是ハ全ク
  中級以下ノ人ノコトナゾハ構ハヌト云フコトヲ白狀ナサレタ證據ト思フ、小
  學校〓員ガ死ナウガ、勞働者ガ縊ラウガ、跡ノ死ンダ者ノ遺族ハ其日カラ凍
  餒餓飢ニ陷ラウガ、ソンナコトハ一向構フモノデナイト云フコトヲ白狀ナサ
  ル、ト云フモノハ今日ノ狀態ハ是ガ四五十年前ナラバ三百圓ノ資金ハ可ナリ
  生產資本トシテ一家モ立行ク資本カモ知レマセナンダ、今日ノ社會ノ狀態ニ
  於テ經濟社會ノ狀態、殊ニ多クノ勞働者ノ場合ニ於テ三百圓ト云フモノハ如
  何ニモ小額デアル、此三百圓ノ資本デ先ヅ何カ內職デモシテ、家族ナリ子供
  ナリ遺ッテ、亭主ガ死ンダト云フ場合ニ於テ此三百圓ヲ資本ニシテ、ドウゾカ
  ウゾ一家族ノ生活ヲ計ラウト云フ場合ニ於テ、煙草屋ヲ始メルカ、燐寸ノ函
  ヲ貼ルカ、或ハ色〓近頃輸出ノ縫物ナドヲスルカモ知レマセヌ、色〓ノコトヲ
  ヤル、家族ナドガ手內職ヲシテ細ミヤル、サウシテ店ヲ出シテ荒物デモ店ニ
  置イテヤルトシテモ、三百圓ト云フコトハ誠ニ漸ク糊口ヲ凌クカ凌ガヌカ位
  ノ程度ノモノデアル、二百圓ナラ尙ホ結構、百圓ナラバ尙ホ結構ト云フ話ニ
  ナッテ來タラ、モウ下級人民ハ淚ヲ流シテ如何ニ我ミヲ見下ゲ果テタト仰ッシ
  ヤルカモ知レヌケレドモ、百圓デ我ガ一家族ノモノガ暮ス元手ニシロト云フ
  コトハ餘リニドウモ御胴慾ナルナサレ方デアルト言ッテ、御怨ミ申スコトガア
  リハセヌカト思ヒマス、其點ニ於テモ初メカラ反對論者ノ非常ナル誤ガアル、
  之ヲ其下級勞働者ヲ救フトカ、下級民ヲ救フトカ、下級社會ヲ救フト云フ上
  カラ山本君ハ細民保險又ハ下級社會保險ト名ヅクベキモノデアルノニ、之ヲ
  法文ニ書カヌノハ不埓ダ、斯ウ仰シヤル、成ルホド或ル保險會社ノ人ガサウ
  言ッタ、貧民保險ト云フ名ヲ付ケテ貰ッタラ此儘デモ結構デス、千圓位ニシテ貰
  ッテモ構ヒマセヌ、私ハソンナコトハ嘘カホンカ知リマセヌガ、唯新聞デ見タ
  ダケデアリマス、ソンナモノデアラウト思ヒマス、唯營利ニ汲々トシテ眼中
  ニ私利アッテ國益アルヲ知ラズト云フヤウナ人ハソンナモノカ知ラヌガ、.御氣
  ノ毒ダガ日本ノ國民ハ左樣ナヒモジイ根性ノ者ハ恐ラクアリマスマイ、我ガ
  日本國民ノ特ニ萬國ニ秀デテ、有シテ居ル所ノ大和魂トデモ申シマセウカ、
  國民精神トデモ中シマセウカ、名譽ノ爲ニ死ヲモ惜マヌ、命ヲモ惜マヌ、此
  精神一ツナンデス、歐羅巴ナドデハ道ヲ步イテ居ルト能ク子供ヤラ、子供ナ
  ラ宜イガ、立派ナ紳士デハナイガ、下級人民ガ煙草ヲ半分吸ヒ居ルト、モウ
  棄テルダラウト思ッテ、後カラ附イテ來テ、其煙草ヲ下サイト云フヤウナコト
  ヲヤル、是ハ歐羅巴ノ或國ナドニ幾ラモアル、又煙草ヲ、「シガー」デモ吸ッテ
  棄テヤウトスルト馭者ガ貰ヒニ來ル、所ガ日本人ハサウ云フコトヲスルモノ
  デセウカ、或ル立派ノ紳士ガ汽車ノ中デ、大阪へ降リルトキニ人カラ葡萄ヲ
  一バイ入レタ箱ヲ貰ッテ、ソレヲ少シバカリ、十分ノ一ホド食ッテ、ソレヲ降リ
  ルトキニ、食ヒ剩シデハアルケレドモ、マダ十分ノ一ホドヨリ食ッテナイ、赤
  帽ニ遣ラウトスルト、ソンナモノハ頂戴イタシマセヌト云ッタ、ココハ日本人
  ノ値打ナンデアル、人ノ食ヒ剩シナドヲ頂戴スルヤウナ乞食根性ヲ持タヌト
  云フコトガ日本人ノ誠ニ貴プコトデ、武士ハ食ハネド高楊枝、腐ッテモ鯛ト云
  フノハソレデアル、ソレヲ貧民保險ヂヤナント云フヤウナ看板ヲ揭ゲテ、サ
  ウシテヤルト云フヤウナコトヲ言ッタラ、恐ラク明日ニモ命ヲ失フヤウナ者デ
  モ、貧民保險ト云フモノニ今更這入ッテ金ヲ貰フコトハスマイト思フ、廉恥心
  ノアル者卽チ日本人ハ持前ノ名譽心ガアルモノダカラ、何死ヌマデモソン
  ナ保險會社ニハ這入ラナイト云フノガ日本人ノ唯一ノ日本ヲ有ッテ居ル最大
  原因デアリマス、物質的バカリニ掛ッテ、名譽ヲ心トスル名譽ヲ失ッテ仕舞フ
  ト云フコトニナッテハ迚モソレハ有リマセヌ、迚モ金ノ力デハ萬國列强ト對峙
  ハ出來マセヌ、此精神一ツガ日本ノ大ヲ致ス所以デアル、其名譽心ヲ態〓蹂
  躙シテ、サウシテ下級保險ダトカ、貧民保險ト云フコトヲ標榜シタラ、是ハ
  耐ヘテヤルト云フコトニ類シタコトマデ山本君ガ仰ッシヤルニ至ッテハ實ニ私
  ハ國家ノ爲ニ悲シム、私ハ餘リ長クナリマスガ、要スルニ此貴族院ノ議員ト
  シテ餘リニ此營業者ノ利害關係バカリニナル、不條理ノ我田引水ナドニ引込
  マレヌヤウニ致シタイノデアリマス、私ハ決シテ資本家ヲ罵ル譯デハナイ、
  又此日本ノ貧乏ナ國ハ大ニ是カラ發展シテ行カナケレバナラヌト云フニハ、
  此資本家ノ利益ヲ尊重シナケレバナラヌ、擁護シナケレバナラヌト云フコト
  ヲ飽マデ主張スル一人デアリマスガ、是ハ場合ニ依ッテ、資本家ノ利益ヲ保
  護シテ何等ノ害ヲ他ノ國民ニ與ヘヌ場合ナラバ、實際ノ利益ヲ尊重シ、擁護
  シテ宜シイガ、今日ノ場合ニ資本家ノ利益ヲ尊重スルト云フコトノ爲ニ、他
  ノ下級人民、多クノ下級社會ノ人ノ利益ヲ害スルト云フヤウナコトハ承知ス
  ルコトガ出來マセヌ、デアルカラシテ決シテ私ハ資本家ヲ憎ム譯デモナイ、
  尊重セヌ譯デモ何デモナイガ、此問題ニ於テ餘リニ資本家ノ我田引水論ヲ御
  容レニナルト云フコトハ、是ハドウカ御再考ヲ願ヒタイノデアリマス、要ス
  ルニ斯ウ云フコトヲ顧ミズシテ、ズン〓〓抛ッテ置クト云フト、眞ニ又歐羅巴
  ノヤウナ非常ナ社會ノ大患ガ傳染シテ來ル、其大患ガ傳染シテ來テ、勞働問
  題ノ大波ガズン〓〓日本マデ押シテ來テ御覽ナサイ、其時ニハドウナリマス
  カ、其時ハ資本家ハ迚モ此保險デ多少ノ不便利ヲ受ケル何ゾト云フモノデハ
  ナイ、强制保險ガ實際行ハレルトシテモ、一方デ增稅デイヂメラレ、一カニー
  於テ其資本家ノ有シテ居ル所ノ工場ノ勞働者ニ向ッテ皆保險ノ掛金ヲ掛ケテ
  ヤラナケレバナラヌ、サウ云フ直接損害ヲ受クルノデアル、モウ一步進ンデ
  謂ハユル英國ニ行ハレテ居ルヤウナ養老年金制ナドヲヤラナケレバナラヌ必
  要ガ出テ來タトキハ、其場合ニ於テハ又非常ナル國費ノ負擔、卽チ增稅トナッ
  テ資本家ノ頭ニ降リ掛ッテ來ルモノデゴザイマスカラ、サウ云フコトニナラヌ
  先キニ、謂ハユル牖戶ヲ綱繆シテ、サウ云フ國家ノ大患ニ陷ルコトヲ防グト
  云フコトガ卽チ資本家ノ利益ヲ保護スル所以ノ途デアリマスカラ、私ハ切ニ
  望ム、單ニ反對セザルノミナラズ、世ノ中ノ資本家タル人〓ハ成ルベク斯ウ
  云フ勞働問題ナドヲ未萠ニ防グ爲ニ、自ラ進ンデ斯ウ云フ社會政策ヲ遂行シ
  テ、完全ニ發達ヲスルヤウニセラレタイト云フコトヲ切ニ希望スルノデアリ
  やく、甚ダ冗長ニ涉リマシテ御氣ノ毒デアリマス
  〔岡野敬次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=49

  ---

• 050・岡野敬次郎

  ○岡野敬次郞君　諸君私ハ山本君ノ修正意見ニ贊成スル一人デアリマス、依
  ッテ其贊成ノ理由ヲ出來ルダケ簡單ニ私ハ述ベテ見タイト思フノデアリマス、
  豫メ私ハ御斷リヲ申上ゲテ置キタイコトハ、私ハ簡易保險制度其ノモノニ自
  ラ通ジテ居ルモノトモ認メナイノデアリマス、又此法案ニ付キマシテ私ハ特
  別委員ニモアラズ、從ッテ親シク委員會ニ於ケル質問應答竝ニ討議ノ模様モ悉
  シクハ承知ヲ致シテ居リマセヌノデアリマス、從ッテ私ノ此演壇ニ於テ述ブル
  コトハ或ハ肯綮ニ當ラヌ、或ハ事實ヲ誤ッテ居ルト云フコトガナイトモ限ラヌ
  ト思ヒマスケレドモ、是ハ豫メ諸君ニ御了承ヲ願ヒマシテ、本案ニ付テ私ノ
  感ズル所ダケヲ御參考ニ供シテ見タイト思フノデアリマス、而シテ其修正意
  見ニ贊成スルノ理由トシテハ多少簡易生命保險制度其モノニ付テ私ノ信ズル
  所ヲ御話シテ見マセヌト云フト·······印チ其徑路ニ付テ多少述ベテ見マセヌケ
  レバ修正意見ニ贊成スル理由モ明カデナイト私ハ信ズルノデアリマスカラ、
  直接ニ修正意見其モノニ關スルヨリハ、多少ハ生命保險制度其モノニ付テ申
  上ゲルコトモアラウト思ヒマス、併ナガラ私ハ極ク出來ルダケ簡單ニ申上ゲ
  タイト思フノデアリマス、デ先ヅ私ノ簡易生命保險法案ナルモノヲ一讀ヲ致
  シマシテ、而シテ又段々諸君ノ御議論ノアル所ヲ承ッテ見マスルト云フト、簡
  易生命保險卽チ簡單ニ申セバ小口保險デアリマス、小口保險ト云フモノハ、
  國營ト云フコト、卽チ官營ト云フコトトハ離ルベカラザルモノデアル、斯ウ
  云フヤウニ看做サレタ上ノ御議論ノヤウニ私ハ拜承スルノデアリマス、私ノ
  見マスル所ハ、簡易保險ト云フモノト、簡易保險ナルモノヲ國ニ於テ經營シ
  ナケレバナラヌト云フコトハ是ハ全ク別ナ問題デアルト思フノデアリマス、
  デ今簡易生命保險法案ニ付テ見マシタナラバ、何レノ點ガ此特有ノ所デアル
  カト申シマスレバ、殆ド本案ヲ通ジテ唯第一條ト第二條トアルノミデアリマ
  ス、若シモ簡易生命保險事業ヲ營ムモノガ國デアレ、公共デアレ、私人デア
  ルトヲ問ハズ、若シ營業ヲスルモノナラバ、殆ド三條以下ノ事柄ハ皆是ハ簡易
  生命保險ニ付テノ規定デアリマシテ、決シテ簡易生命保險ノ規定デナイノデ
  アリマス、固有規定トハ申サレヌノデアリス、或ハ此法案ノ末ニ至ッテハ印紙
  稅ヲ賦課セヌトカ、或ハ郵便ハ無料ニナスコトヲ得ルト云フヤウナ特別ノ規
  定ハアリマスルケレドモ、併ナガラ是亦若シモ小口保險ヲ民營デ營ム上ニ於
  テ國之ヲ保護スル必要ガアルナラバ、矢張リ斯ノ如キ規定ヲ設ケルコトモ敢
  テ妨ゲナイノデアリマス、ソレデアリマスルカラ、大體ニ於テ此法案ノ趣旨ト
  スル所ハ何處ニアルカト言ヘバ卽チ官營ト云フ所ニアル、卽チ第一條ニ「政府
  之ヲ管掌ス」ト言ヒ、第二條ニ「保險會社之ヲ營ムコトヲ得ス」ト、卽チ私營ヲ
  許サヌ、是ガ固有ノ規定ト先ヅ申シテ宜イ、アトハ是ハ決シテ簡易生命保險
  ノ固有ノ規定デハナイト言ハナクテハナラヌノデアリマス、而シテ果シテ然
  リトシタナラバ、此案ニ贊成スル者ハ官營ノ理由ニ贊成シナクテハナラヌ譯
  デアリマス、私ハ小口保險其モノハ決シテ反對デハナイノデアリマス、小口保
  險ヲ官營トスルモ可ナリ、民營トスルモ亦不可ナルニアラズ、併ナガラ簡易保
  險ト云フモノハ必シモ國ガ經營シナケレバナラヌカドウカト云フ點ニ付キマ
  シテハ唯私ハ之ニ反對シナイト云フコトヲ申スニ止マルノデアッテ、官營デナ
  ケレバナラヌト云フマデ私ノ考ハ未ダ熟シテ居ラナイノデアリマス、能ク此
  利害得失ヲ考究シテ然ル後ニ官營ニスベキ理由ガアルナラバ私ハ官營トスル
  事柄ニ反對スルノデアリマセヌ、今日ノ所ニ於テハ私ハ未ダ官營トスルニ足
  ルノ理由ヲ發見シナイノデアリマス、今官營ニセネバナラヌト云フ所ノ理由
  トシテ第一ニハ所謂社會政策ト云フコトデアリマス、政府ハ衆議院ニ於テ主
  トシテ此社會政策ナルモノニ重キヲ置イテ、第一ハ保險事業其モノガ下層ノ
  階級ノ者ヲ相手ニスル所ノ保險デアル、其點ニ於テ社會政策デアル、第二ニハ
  其保險料トシテ被保險者ヨリ集メタル所ノ金額ヲ低利資金其他ノ方法ニ於テ
  之ヲ利用スルト、其利ヲ受クル所ノ者ハ又下層ノ階級ニ屬スル所ノ者デア
  ル、故ニ是亦社會政策ノ一端デアルト、斯ウ云フ様ナ說明ヲシテ居ッタヤウニ
  私ハ承ッテ居ルノデアリマス、然ルニ本案ガ貴族院ノ議ニ付セラレテ以來ハ、
  所謂社會政策ノ意義如何ハ人ノ見ル所ニ依ッテ異ナルノデアル、必シモ社會政
  策ト云フ下ニ之ヲ主張スルト云フノデハナイカノ如クニ理由ガ多少改ッタヤ
  ウニ私ハ見テ居ルノデアリマス、併ナガラ此案ニ贊成ヲセラレル所ノ諸君ノ
  中デハ矢張リ社會政策ト云フ意味ニ於テ贊成ヲセラレテ居ル方モ少クナイノ
  デアリマス、桑田博士ノ如キ、又先刻ノ田男爵ノ御述ニナッタ所ヲ承ッテ見マ
  シテモ、矢張リ社會政策ト云フコトニ重キヲ置イテノ御演說ノヤウニ私ハ拜
  承イタシタノデアリマス、私ハ此下層社會ノ階級ニ屬スル所ノ者ノ利益ヲ保
  護シ、其經濟上ノ獨立ヲ圖リマスコトガ必シモ社會政策ニアラズト私ハ申ス
  ノデハアリマセヌ、又社會政策ノ意義ハ隨分ムヅカシイノデアリマシテ、私
  トテモ專門家デナイノデアリマシテ、社會政策ハ斯ノ如キ意義ニ解釋スベキ
  モノデアルト云フコトヲ斷言スル所ノ勇氣ハナイノデアリマス、併ナガラ私
  ハ若シ社會政策ト云フ意味ニ於テ此保險ニ贊成スルノデアルナラバ、意義ア
  リ目的アリ實益アル所ノ社會政策トシテ私ハ是ニ贊成シタイノデアリマス、
  其社會政策ノ意義如何ハ問フノデアリマセヌ、假ニ之ヲ社會政策ト言ハズ、
  下層社會ノ利益保護ト云フ名稱ニ於テ申シテモ矢張リ同ジコトデアリマシ
  テ、私ハドウゾ大ニ意味ノアル所ノ社會政策トシテ贊成ヲシタイト思フノデ
  アリマス、而シテ今此簡易生命保險事業其モノニ付テドレダケマデ此下級ノ
  階級ニ屬スル所ノ者ヲ、他ノ言葉デ申セバ他ノ階級ニ對シテハ隷屬的ノ關係
  ニ立ッテ居ル所ノ者ヲ、ドレダケ之ヲ官營トシテ保護シテ居ルカト云フ點ヲ
  私ハ考究シタイノデアリマス、ソレハ何デアルカト言ヘバ先ヅ第一ニハ創業
  ノ初メカラ五年ヲ限ッテ政府ニ於テ相當ノ補助ヲナシ、其補助スル所ノ金額ト
  云フモノハ五年ニ通ジテ八九十萬圓ニシカ當ラヌノデアリマス、是ガ一ツデ
  アリマス、次ニハ郵便局ノ利用ト云フコトガ一ツデゴザイマス、デ是等ハ申
  スマデモナク被保險者タルベキ、卽チ下層ノ階級ニ屬スル所ノ負擔ヲ減ズル
  所ノ原因デアルト云フコトハ是ハ爭ナイコトデアリマス、併ナガラ創業以來
  五年間ノ補助ト云フモノハ僅ニ百萬圓ニ滿タナイ、寧ロ八十萬圓位ニシカ當
  ラヌ計算ノヤウニ私ハ記憶ヲ致シテ居リマスルガ、ソレカラ以後ハドウデア
  ルカ、卽チ六年目カラシテ全ク自營自給ノ主義ニ基イテ居ルノデアリマス、
  自營自給ノ主義ト言ヘバ何デアルカト言ヘバ、卽チ保險料ヲ拂フ所ノ者卽チ
  下級ニ屬スル所ノ者ガ、契約上定ッテ居ル所ノ保險料ヲ拂ッテ、而シテ政府ハ其
  保險料トシテ收入シタル所ノモノヲ或ル方法ニ依ッテ運用ヲシ利殖ヲ圖リ、而
  シテ之ヲ以テ被保險者ノ保險金ノ仕拂ノ財源トスルト云フコトニナルノデア
  リマス、ソレデアリマスルカラ此點ニ於テハ普通ノ保險、今日民間デノ會社
  ガ經營シテ居ル所ノ保險ト少シモ違ハナイノデアリマス、私ガ此席カラ中上
  ゲルマデモナク、保險ト云フモノハ何デモアリマセヌ、被保險者ト云フ側ニ
  屬スル所ノ多數ノ者ガ相當ノ仕拂ヲナス、保險料ト云フ名義ニ於テ仕拂ヲナ
  シテ、サウシテ保險ヲ經營スル者ハ其中デ經費ヲ支辨シ、之ヲ運用シテ、他
  日其中ニ例ヘバ死亡シタ者ガアルナラバ、之ニ對シテ保險金ヲ仕拂フト云フ
  ノデアリマス、故ニ簡單ニ申セバ是ハ被保險者ガ自ラ保險ヲナシテ居ルノデ
  アル、被保險者ハ卽チ保險ヲシテ居ルノデアル、保險者ト被保險者ト云フモ
  ノハ同ジモノデアル、斯ウ云ウテ差支ナイ、法律的ニ申セバ是ハ誤ト致シマ
  スケレドモ、併ナガラ保險經營ノ經濟的思想カラ見タナラバ卽チ被保險者ト
  シテ保險金ヲ請取ル所ノ者ハ、自ラ保險料トシテ財源ニナル所ノモノヲ拂ツ
  テ居ルノデアリマス、デアリマスルカラ其保險事業ヲ經營スルモノハ國デア
  リマシテモ、公共〓體デアリマシテモ、又會社デアリマシテモ、唯其多數ノ
  者ノ上ニ立ッテ保險ヲスルト保險ヲシテ居ルト云フ職務ヲ執ルニ過ギナイノ
  デアリマスカラ、先刻モ申シマシタ通リ簡易生命保險ニ付テ申セバ、六年目
  カラハ自營白給デアルト云フコトハ卽チ被保險者ノ階級ニ屬スル下層ノモノ
  ガ、自ラ己ノ得ル所ノ保險金ノ支拂財源タルモノヲ拂ッテ居ルノデアル、恰モ
  預ケテ置クト云フノト何等異ナル所ハナイノデアリマス、サウ云フ計算デア
  ルナラバデス、此五年間八十萬圓ノ補助金ヲナスコト、而カモ其補助金ハ主
  トシテ創業費ニ當ルモノガアルカラト云ウテ是ガ假ニ社會政策ナリト云フ名
  ヲ附ケルコトヲ得ルモノトシテモデス、所謂大ニ目的アリ、大ニ意味アリ、
  大ニ實益アル所ノ社會政策ト言ヘルノデアラウカト云フコトヲ私ハ甚ダ疑フ
  ノデアリマス、格別五年間ニ於ケル、未ダ保險者ノ數モ多カラザル時代ニ於
  テ八十萬圓ノ補助ヲシテ、ソレカラ以後ハ自ラ自營自給、卽チ普通保險事業
  ノ經營ニ屬スルコトヲヤルノデアルト云ウテ、ソレガ永久ニ社會政策ヲ國家
  ガ行ッテ居ルモノデアルト云フコトガ出來ルノデアリマセウカ、次ニハ郵便
  局ノ利用ノコトデアリマス、成程郵便局ヲ利用スルト云フコトハ、確カニ保險
  事業經營ノ上ニ於テハ便利デアリマシテ、又被保險者タル下級ノ階級ニ屬ス
  ルモノノ負擔ヲ減ズルト云フコトニ於テ效果ノアルト云フコトハ、是ハ私ハ
  認メルノデアリマス、去リナガラ今日ノ七千有餘ノ郵便局ナルモノガ、何等
  擴張ヲナサズシテ、果シテ今日負擔シテ居ル所ノ職務ノ上ニ保險事業ニ屬ス
  ル所ノ事務ヲ執ルノ餘力ガアルカドウカ、私ハ斷ジテナイト思フノデアリマ
  ス、若シモ今日ノ郵便局ガ郵便事務ヲ執ル上ニ、更ニ附加セラレタル所ノ保
  險ノ事務ヲ尙ホ執リ得ルモノナラバ、未ダ行政整理ハ十分デナカッタト云ハナ
  クテハナラヌノデアリマス、併ナガラ今日ハ、主トシテ三等郵便局アタリノ
  例ヲ聞イテ見マスレバ餘程忙シイヤウデアル、此上ニ更ニ事務ノ負擔ト云フ
  モノハ私ハ出來ナイト思フノデアリマス、ソレガ故ニ先ヅ私ハ郵便局ノ擴張
  ト云フコトガ、恐ラク此官營簡易保險ニ付テハ將來ニ必然起ルベキ問題デア
  ルト思フノデアリマス、併シ是ハ私ハ大シテ申ス程ノ價ハナイト思ヒマスガ、
  手數料ハドウデアル、手數料ハ諸君モ御承知ノ如ク郵便局ニデス、國庫ヨリ
  支出スル所ノ手數料ト云フモノハ決シテ少イ額デハナイノデアリマス、可ナ
  リ大キイ額ト云ハナクテハナラヌノデアリマス、今私ハ其計算ヲ此ニ申ス必
  要ハナイト思ヒマスルガ、其郵便局ニ交付スル所ノ手數料ハ何カラ是ハ支出
  セラレルノデアルカト云ヘバ、ソレハ被保險者ノ支拂フ所ノ保險料デアリマ
  シテ、卽チ附加保險料トシテ被保險者ノ負擔ニ歸シテ居ルノデアリマス、被
  保險者ノ負擔スル所ノ金額カラ此手數料ヲ支拂フノデアリマスカラ、結局其
  手數料ハ被保險者ノ負擔デアルト斯ウ申シテ宜シイノデアリマス、デアリマ
  スカラ郵便局ノ利用ト云フコトハデス、ドレダケ被保險者ノ負擔ヲ減ズルカ
  ト申セバ、附加保險料ノ如キ、卽チ手數料トシテ國庫ヨリ支出スル所ノモノ
  ハ何レモ皆被保險者ノ負擔デアル以上ハデス、唯今日ノ郵便局ト云フ建設物
  ヲ利用スルト云フコトガ先ヅ此官營ノ一ツノ理由ニ過ギナイト思フノデアリ
  やじ、 、永遠ニ國庫カラ補助スル所ノモノハ先刻申シタ通リ無イノデアリマ
  六、郵便局ヲ利用スルト云フコトダケガ官營ト云フコトノ特殊ナル點デアリ
  マス、其郵便局ヲ利用スルコトガ出來ルト云フダケヲ以テ是ガ卽チ目的アル
  所ノ社會政策デアルト云フコトガ云ヘルデアリマセウカ、私ハ簡易小口保險
  其モノハ決シテ反對デハナイ、寧ロ贊成デアリマス、併ナガラ之ヲ官營ニス
  ルニ付テ大ニ疑フベキ所アリ、大ニ調査ヲ要スベキモノアリト私ハ考ヘテ居
  ルノデアリマシテ、若シ之ヲ官營ニスルナラバ先刻モ申ス如クニ、大ニ意味
  ノアル官營トシテ私ハ贊成ヲシタイト思フ、然ルニ今申シタ通リノ謂ハバ僅
  ニデス、被保險者ノ負擔ヲ輕減スルニ止マルモノヲ稱シテ是ハ所謂社會政策
  ト云フ名稱ノ下ニ之ヲ主張スルノ理由ガ果シテアルカドウカ、甚ダ私ハ疑フ
  ノデアリマス、ソレカラ次ニハデス、次ニハ此贊成ノ御論ヲ承ルト云フト、
  營利非營利ト云フコトニ付テ大ニ力說セラレテ居ル方ガアルノデアリマス、
  私ハ此官營ノ簡易生命保險ガ非營利デアルト云フコトヲ申サレル其論旨ハ、
  不幸ニシテ私ハ甚ダ了解スルコトノ出來ナイ點デアリマス、若シモ民間ノ會
  社ハ、是ハ始メヨリ營利ヲ目的トシテ設立セラレタルモノデアル、國家ハ利
  益ヲ得ルノ目的ヲ以テ此保險事業ヲ經營スルモノニアラズト云フ、此一點カ
  ラ申シマシタナラバ、是ハ成程營利デハナイ、民間ノ會社ハ營利的デアル、
  國家ハ非營利ノモノデアルト云フコトハ、ソレハ一言ニシテ言ウタナラバ私
  ハ言ハレマセウト思ヒマス、併ナガラ民間ノ會社ニ於キマシテ利益分配ノ形
  ヲ以テ株主ニ分配セラルル所ノモノハドノ位デアルカ、其分配金トシテ株主
  ニ配當セラルルモノノ財源ハ何デアルカト申セバ、成ルホド幾分此資本ニ對
  スル所ノ、申サバ起業上ノ危險ト云フコトモアルノデアリマスカラ、是ハ幾分
  カ利益モ見ナケレバナリマスマイガ、主トシテ準備金利用ノ方法如何ニ在ル
  ノデアリマス、私ハ玆ニ諄〓シク申シマセヌ、此簡易ノ保險ノ豫定利率ハ幾
  ラデアルカト言ヘバ、三分五厘デアル、民間ノ會社デ今日保險事業ヲ營ンデ
  居ル其保險事業ノ經營ノ上ニ必要ナル豫定利率ハ幾ラデアルカト云ヘバ多ク
  ハ四分デアル、三分五厘ハ少イ、四分デアリマス、四分デ計算ヲシテサウシ
  テ保險料トシテ收入スベキモノヲ定メ、而シテ其保險料カラ得タ所ノモノヲ
  積立テタ所謂積立金、其責任準備金ヲ利用スルニ是ハ六分ニ運用セラレタ、
  或ハ五分五厘ニ運用セラレタトシタナラバ、其豫定利率三分半若クハ四分
  ト、若クハ五分五厘若クハ六分トノ差ハ會社ノ利益ニ歸スルノデアリマシ
  テ、是ガ株主ニ配當セラルル財源ノ重モナモノデアリマス、此保險料ノ形ニ
  於テ、保險料ノ形ニ於テ被保險者ニ利益分配ノ財源トシテ課セラレルモノハ
  幾ラデアルカト言ヘバ是ハ誠ニ〓々タルモノデアリマス、私モ細カニ其點ヲ
  計算イタシタ譯デハアリマセヌケレドモ、併ナガラ此事ニ精通シテ居ル者ノ
  話ヲ聞キマスルト一圓ニ付テ七厘五毛位ニシカ當ラヌト云フ、是ダケガ被
  保險者ガ負擔スル譯デアリマスルケレドモ、併ナガラ株主ニ配當セラルベキ
  財源ノ主要ナルモノハ、主要ナルモノハ何デアル、殆ド大部分ヲ成シテ居ル
  モノハ此責任準備金利用ノ方法ニ依ッテ豫定以上ノ利益ヲ收メルコトガ出來
  ルト云フ點ニ在ルノデアリマス、而シテ此官營保險ノ利率ハ豫定ハ三分五厘
  デアリマス、三分五厘トスレバ、三分五厘トシタナラバ四分トスルヨリモ被
  保險者ノ負擔ガ增ス道理デアリマス、併ナガラ私ハ將來ニ向ッテハ三分五厘
  ノ豫定ガ適當ト思ヒマスカラ、三分五厘其モノニハ疑ヲ抱イテ居リマセヌケ
  レドモ、併ナガラ四分ト云フ豫定利率ヲ定メルヨリモ被保險者ノ負擔ガ多ク
  ナルト云フコトハ計算上爭フベカラザル事實デアルノデアリマス、ソコデ假
  ニ豫定利率ハ三分五厘トシテ、政府ハ保險料ノ形ニ於テ收入シタルモノヲ利
  用スルニ於テ如何ナル方法ニ利用スルカ、其利用スル方法ハ勅令ヲ以テ定ム
  ルト云フコトデアリマシテ、未ダ確定シテ居ラヌノデアリマス、併ナガラ此
  利用ノ方法如何ニ拘ラズ豫定利率、是ハ被保險者ノ有ニ歸スルノデハナイ、
  政府ガ之ヲ取得スルノデアリマス、デアリマスルカラ民間ノ會社ニ於テハ豫
  定利率ト利用利率ノ差ハ株主ニ配當セラルル財源デアルケレドモ、併ナガラ
  此官營保險ニ於テハ其差ト云フモノハ政府ノ所得ニナル、國庫ノ收入ニナル
  ノデアル、ソコデ是ハ事業ノ鞏固ヲ期スル上ニ於テハ宜イカモ知レマセヌケ
  レドモ、併ナガラ其金額ハ被保險者ニ割戾サルベキ性質ノモノデナイ、サウ
  シテ見マスレバ非營利ト云フ重モナル所ハデス、ドコニ在ル、然ルニ一方ニ
  ハ民間ノ會社トシテハ相互會社ガアル、相互會社ハ經營費ヲ控除シテ而シテ
  利益ガアッタナラバ、ソレハ社員タル保險契約者卽チ普通ノ場合ノ被保險者ニ
  分配シテ割戾サルベキモノデアル、ソレヲ若シ官營保險ニ比較シテ見タナラ
  バ、相互會社デ利益ノ被保險者ニ戾スベキ金ハ官營ニ在ッテハ政府ノ所得ニ
  歸スルト云フコトニナルノデアリマス、デアリマスルカラ私ハ利益······營利
  ノ目的デナイト云フコトヲデス、株主ニ配當セヌト云フ意味ニ於テ說カルル
  ナラバ誠ニ御尤デアリマスガ、其利益ガ保險ニ這入ッタ下層ノ階級ニ屬スル者
  ニ歸屬スルノデハナイノデアリマスルカラ、之ヲ非營利デアルト言ッテ此官
  營ノ利益ヲ主張スル理由ハナイト私ハ信ズルノデアリマス、デ斯ノ如ク尙ホ
  細カニ申シマシタナラバ、色〓御意見ノ是マデ承ッタ御議論ニ付テ私ノ甚ダ
  疑フモノ私ノ惑フモノハ決シテ少クナイ、又法案其モノニ付テ細カニ中シマ
  スレバ隨分論ズベキ點ガアラウト思ヒマスガ、其細カイコトハ私ハ申シマセ
  ヌ、デ玆ニ止メテ置カウト思フノデアリマス、要スルニ私ハ若シ國ニ於テ、國
  家ニ於テ、此簡易保險事業ヲ經營スルナラバ、私ハ大ニ被保險者ノ負擔ヲ減
  ジ、所謂實益アリ目的アル保險事業トシテ贊成イタシタイト云フコトヲ豫テ
  考ヘテ居ルノデアリマス、此場合ニ於テ私ノ申スヤウナ意味ノアル保險事業
  ヲ國ニ依ッテ經營セラレタナラバ、其結果ハ或ハ民業ノ壓迫ト云フコトニナル
  デアリマセウ、今日民業壓迫ナリト申シテ憂ヘラレル諸君ノ憂ハ益〓大キク
  ナルト私ハ思フノデアリマス、併シ所謂其實益アリ目的アル政策トシテ之ヲ
  實行スルノデアルナラバ、其結果ハ私ハ或ル程度ニ於テ民業ノ壓迫トナッテ
  モ心配セヌ、民業ヲ壓迫シテモ差支ナイトマデ私ハ信ジテ居ルノデアリマ
  ス、併ナガラ旣ニ此簡易保險ノ政府ノ計畫ノコトニ付テ段々承ッテ見ル所ニ
  依レバ、私ノ申スヤウナ意味アリ目的アリ實益アル所ノ保險事業ナリトハ私
  ハ思ハナイノデアリマス、外ノ言葉ヲ以テ言ヘバ國家ガ之ヲ經營スルニ於テ
  大ニ理由ノアル所ノ計畫ナリト私ハ信ズルコトガ出來ナイノデアリマス、其
  賛成スルコトノ出來ナイ理由ハ先刻申述べマシタ通リノ次第デアリマスガ、
  旣ニ所謂大ナル意味ノアル所ノ保險事業トシテ贊成スルコトハ出來ナイトシ
  テ、而シテ一方ニ於テ國家ガ此簡易生命保險ト云フモノヲ、經營スルト云フ
  コトニ大勢旣ニ定ッテ居ルナラバ、今更此官營ト云フコトニ尙更ニ調査ヲナス
  ベシト云フ議論ヲ唱ヘテ見タ所デ、是ハ結局無益ノコトデアリマスカラ、大
  勢動カスベカラズト云フナラバ是ハ誠ニ巳ムヲ得ナイモノデ、私ハ國營ト云
  フモノニ反對デナイト云フコトハ最初ニ申シマシタ通リデアリマスガ、尙ホ
  大ニ調査ヲ遂ゲタナラバ、尙ホ一層光輝アル官營事業トナルデアラウト云フ
  コトヲ考ヘテ居ルノデアリマス、併ナガラ是ハ誠ニ致方ガナイノデアル、而
  シテ今日私ノ信ズル所ニ於テ、謂ハユル社會政策ト云フ名稱ノ下ニ此保險事
  業ヲ實行シテ、若クハ社會政策ノ名稱ヲ附セザレバ免ニ角官營トスル所ノ理
  由ニ於テ甚ダ薄弱デアルト云フ以上ハ、私ハ責メテハ此民業ヲ壓迫シナイダ
  ケノモノニシテ置クコトガ穩當ナル政策ダラウト思フノデアリマス、民業ノ
  壓迫ト云フコトハ、謂ハユル社會政策ノ名稱ノ下ニ於テハ已ムヲ得ナイト私
  ハ信ズルノデアリマスガ、僅ニ創業五年間ニ百萬ニ滿タザル金額ヲ補助ス
  ル、而カモ是ハ五年ニ限ラレテ居ル、而シテ一方ニハ郵便局ヲ利用スルト云
  フコトニ過ギナイナラバ、公益ト云フコトハ誠ニ弱イモノト思ウテ居ルノデ
  アリマス、然ラバ斯ノ如キ方法ヲ行ウテ、今日ノ民營ノ會社ニ對シテ少シモ
  影響ガナイカト云ヘバ、是ハ熱心ナル贊成ノ論者ト雖モ多少ノ民業壓迫ハ已
  ムヲ得ナイコトデアルト云フコトハ認メラレテ居ルノデアリマス、先刻來演
  壇ニ立ッテ堂々御論ジニナッタ諸君ノ中デ、例ヘバ仲小路君ハ矢張リ是ハ多少
  ノ影響ヲ來タスト云フコトハ矢張リ認メラレテ居ルノデアリマス、其他絕對
  ニ影響ナシト斷言セラルル方ハナイヤウデアリマス、果シテサウデアルナラ
  一、私ハ一方ニハ國家ニ於テ此保險ヲ經營シ、他ノ一方ニ於テハ民間ノ會社
  ガ保險ヲ經營スルニ於テハ、其間ニ調和ノ策ヲ講ジテ、政府ハ相當ニ此簡易
  保險ヲ經營スルコトガ出來、又民間ノ會社モ安ンジテ此事業ノ經營ニ當ルコ
  トガ出來ルト云フ途ヲ講ズルノハ、極メテ適當ノコトデアルト私ハ思フノデ
  アリマス、ソレガ故ニ私ハ保險金額ヲ二百五十圓トスルト云フコトト、ソレ
  カラ被保險者ノ資格ヲ限定スルト云フ修正意見ニ詰リ贊成スルノデアリマス
  ガ、三百圓ト二百五十圓ト云フモノハ其差僅ニ五十圓デアル故ニ、若シモ民
  業壓迫ヲ憂フル方ノ論者カラ云ッタナラバ、僅ニ五十圓下ゲテドレダケ利益ガ
  アルカト云フコトヲ、反對論ヲ主張セラルル諸君ハ申サルルノデアリマス、
  是ニ至極御同感デアリマス、私モ決シテ三百圓ヲ二百五十圓トシテ大シタ效
  果ガアルトハ思ヒマセヌ、併ナガラ五十圓ノ差ト雖モ多少ノ利益ハアルノデ
  アリマス、ト云フコトハ認メナクテハナラヌノデアリマス、二百五十圓ニス
  ルノハ如何ニモ理由ガナイデハナイカト先刻林伯爵ハ此ニ述ベラレマシタケ
  レドモ、二百五十圓ニスルノハ理由ガナイデハナイカト云フノハ、三百圓ニ
  スルノハ大ニ理由ガアルト云フコトヲ前提トセラレタ議論デアリマス、若シ
  二百五十圓ガ理由ガナイナラバ、法律ニ於テ三百圓ト定メタノモ亦理由ガナ
  イノデアリマス、要スルニ是ハ程度ノ問題デアッテ、五十圓ノ差ダケデ此謂ハ
  ユル民業ノ壓迫ト云フモノヲ避ケルニ於テ多大ノ效果アリトハ思ヒマセヌケ
  レドモ、併ナガラ多少ノ利益ハアルト云フコトハ認メナクチヤナラヌ、ソレ
  カラ資格ヲ制限スルト云フコトデアリマス、資格ヲ制限スルト云フ修正論ニ
  對シテハ、重モニ反對セラルル諸君ノ御意見ハ、無責任デアル、極メヤウガ
  ナイノデアル、若シ之ヲ定ムルコトガ出來ルト云フ意見ガアルナラバ宜シク
  修正ノ意見トシテ出シテモ然ルベキコトデアル、少クトモ其提案位ハアッテ
  然ルベキコトデアル、然ルニ考案ナクシテ、唯勅令ヲ以テ之ヲ定ムトシテ、
  其定メ方ヲ政府ニ御任セスルノハ無責任デアル、斯ウ云フコトヲ申サレルノ
  デアリマス、私ハ此資格ヲ定ムルニ於テハ、是ハ明確ナル所ノ制限デアッテ、
  何人ガ認メテモ是ハ尤モナル制限ナリト認ムル所ノモノハナカラウト思フノ
  デアリマス、併ナガラソレガ故ニ定ムルコトヲ得ナイノデアルトハ私ハ思ヒ
  マセヌ、政府ニ於テソレハ定ムルコトハ得ナイ、極メルコトハ甚ダ困難デアル
  ト云フコトヲ言フト云フコトデアリマスガ、成程私モ困難ダト思フノデアリ
  やく、併ナガラ能ク攻究シタナラバ必シモ案ヲ得ルニ難キモノデハナイト私
  ハ思フノデアリマス、出來ナイト云フコトハ申サレヌノデアリマス、私モ隨
  分法律ヲ作ルコトノ經驗ハ相當ニ致シテ居ルノデゴザイマス、條文ヲ作ル上
  ニ於テ、何カノ標準ヲ定ムル上ニ於テ、隨分ムヅカシイ問題ニ逢著シタ例ガ
  アリマスケレドモ、併ナガラ何トカ定メナケレバナラヌト云フコトデアルナ
  ラバ、工夫ニ工夫ヲ重ネマスレバ、自ラ其案ノ浮ブコトモ決シテ無イデハア
  リマセヌ、成程政府ノ方ノ側カラ申セバ土臺此資格ヲ制限スルニ反對デアル
  カラ、政府ガ滿足スベキ標準ヲ得ルコトハ難イト云フコトハソレハアリマセ
  ウ、今日ニ於テ政府ガ滿足スベキ標準ハナイト云フコトハアリマセウガ、今
  日政府ニ於テ滿足スベキ標準ガナイ、故ニ其資格ヲ制限スルノハ難キヲ求メ
  ルノデアル無責任ノ論デアルト云フ結論ハ生ジナイノデアリマス、若シ先刻
  田男爵ノ述ベラレタ議論ガ宜イトシタナラバ、政府ノ反對アルニ拘ラズ法律
  案ナリ豫算ナリヲ修正スルト云フコトハ出來ナイノデアル、政府ハ斯ク豫算
  ヲ削減セラレテハ事業ノ經營ハ出來ナイ、法律ヲ斯ノ如ク修正セラレテハ法
  案ノ趣旨ヲ沒却スルト、斯ノ如ク申シタ所デ、我ミガ議員トシテ斯ク修正ス
  ルガ理由ガアル、斯ク修正スルガ利益ガアルト見タナラバ、何ゾ修正スルニ
  憚ルコトガアリマセウ、今日ハ或ハ滿足スベキ所ノ標準ハナイカモ知レマセ
  ヌガ、併ナガラ決シテ得ルコト不能ナリト私ハ思ハヌノデアル、而シテ終ニ
  申シテ置キタイノハ、斯ノ如クニシテ三百圓ヲ二百五十圓ト修正シ、更ニ被
  保險者ノ資格ヲ制限スルトシテ、果シテ政府ガ此法案ヲ提出シタ理由ト相容
  レザルモノデアルカト申セバ、私ハ決シテサウハ思ハヌノデアリマス、政府
  ノ謂ハユル下級ニ屬スル所ノ階級ノ利益ヲ保護シテヤルト云フ趣意ハ、啻リ
  達スルコトガ出來ルノミナラズ、尙ホ一層明カニ其目的ヲ達スルト云フコト
  ガ法律案ノ上ニ明カニナルト思ヒマスルカラ、政府ニ於テ反對スル理由ハ斷
  ジテナイト私ハ思ヒマス、或ハ三百圓ト云フコトハドウモ二百五十圓ニ減ズ
  ルト云フコトデアッテハ經營上困難デアルト云フ御議論モ先刻モアリマシタ
  ケレドモ、平均約七十五圓ト云フコトハ度ミ政府ノ言ッタコトデ、最低二十圓
  以上三百圓ト云フ範圍ニ於テ平均額ヲ七十五圓ニ見タト云フコトデアル、平
  均ノ七十五圓ハ三百圓ニ近イカ二十圓ニ近イカト云ヘバ二十圓ニハ近クシテ
  三百圓ニハ非常ニ遠イノデアル、ソレデアリマスカラ平均七十五圓ト見ル以上
  ハ三百圓ト云フモノハ殆ドアルカナイカト云フ位ノ計算デナケレバ平均七十
  五圓ニナラヌノデアリマス、デアリマスカラ之ヲ三百圓ヲ減ジテ二百五十圓
  ニシタカラ非常ニ平均ガ下ッテ仕舞フト云フヤウナコトハ私ハ計數ノ上ニ於
  テ言ヒ得ナイ計算ト思ヒマス、ソレガ爲ニ經營ニ困難ヲ來タスト云フ議論ハ
  ナイト思ヒマス、若シ經營ニ困難ヲ來タストシタナラバ七十五圓ノ計算ハ誤
  ッテ居ルモノト云ハナケレバナリマセヌ、デ私ハ以上申シタヤウナ理由ニ依
  ヲテ責メテハ民業トソレカラ官業トガ共ニ相立ヲテ其發展ヲナスコトガ出來
  ルト云フ程度ニ於テノ修正意見ナリトシテ私ハ之ニ贊成ヲスルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=50

  ---

• 051・鎌田勝太郎

  ○鎌田勝太郞君　討論終結ノ動議ヲ提出イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=51

  ---

• 052・古賀廉造

  ○古賀廉造君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=52

  ---

• 053・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=53

  ---

• 054・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=54

  ---

• 055・平野長祥

  ○男爵平野長祥君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=55

  ---

• 056・松平直之

  ○伯爵松平直之君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=56

  ---

• 057・關義臣

  ○男爵關義臣君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=57

  ---

• 058・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　討論終局ノ動議ニハ二十名ノ贊成者ヲ要シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=58

  ---

• 059・江木千之

  ○江木千之君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=59

  ---

• 060・高橋是清

  ○男爵高橋是〓君　贊成
  〔其他「賛成」ト呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=60

  ---

• 061・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　討論終局ノ動議ニハ成規ノ贊成者ガアッタト認メ
  R3,故ニ討論終局ノ動議ハ成立ヲ致シマシタ、遞信大臣ガ發言ヲ求メラレ
  マシタ
  〔國務大臣箕浦勝人君演壇ニ登ル」

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=61

  ---

• 062・箕浦勝人

  ○國務大臣(箕浦勝人君)　贊否ノ兩論者ヨリ種々ニ御議論ガアリマシテ討論
  將ニ終結サレムトスル場合デアリマスカラ此場合餘リ多クヲ申シマセヌ、唯
  ダ修正案ニ對シテ一言イタシタイト思ヒマス、修正案ノ提出者ハ如何ナル成
  案ヲ持タレテ居ルカハ存ジマセヌガ、此加入ノ制限ヲ附ケルト云フコトハ實
  際上極メテ困難ナルコトデアリマス、公平適當ナル制限ヲ附ケルト云フコト
  ノ途ハ殆ト色〓是マデ〓究ヲ致シマシタノデアリマスケレドモ、其途ヲ見出
  スコトハ出來ナイノデアリマス、最初政府ガ公表イタシマシタ所ノ草案ニハ
  實ハ其制限ヲ設ケテアッタノデアリマス、ソレハ直接國稅十圓ト云フヤウナ所
  ニ納稅ノ金額ヲ以テ制限ヲ定ムルト云フコトニ致シテアッタノデアリマス、
  併ナガラ其後段々〓究ヲ重ネマスルニ付キマシテ、此事ハ殆ド實行不可能ト
  云フ所ニ歸著ヲ致シタノデアリマス、先ヅ是等ノコトニ付テ最モ經驗ヲ積マ
  レテ居リマス大藏省ノ熟練家等ヲ集メ種々ニ〓究ヲ致シマシタケレドモ、到
  底其納稅額ヲ以テ公平適當ナル標準ヲ定ムルト云フコトハ出來ナイト云フコ
  トニナッタ、併ナガラ大ニ費用ヲ抛チ手數ヲ掛ケテヤリマスレバ或ハ出來ナイ
  コトモナイヤウデアリマスルガ、併ナガラソレホド大ナル費用ヲ入レテマデ
  左樣ナ面倒ナル制限ヲ設ケナケレバナラナイカドウカ、ソレダケノコトヲス
  ル値打ガアルカドウカト云フコトヲ調ベテ見マスルト、一面ニ於キマシテハ
  殆ド制限ヲ置クダケ値打ガナイト云フコトニ歸著イタシタ、ソレハ今日ノ修
  正案トハ少シ模樣ガ變ッテ居リマスガ、最初ハ保險金額ノ最高額ヲ二百五十圓
  ト致シタ、二百五十圓ト致シテ、サウシテ或ル一定ノ制限、納稅資格以下ノ
  モノニ對シテハ五十圓ノ割增金ヲ與ヘテ、併セテ三百圓ト云フ金額ニナルト
  云フ仕組デアリマス、然ルニ段々〓究ヲ致シマシタ結果、モウ殆ド九分九厘
  マデハ其五十圓ノ割增金ヲ受取ルト云フ部類ニ這入ルモノデアル、サウシテ
  其除外サレルモノハ誠ニ僅ナ部分デアルト云フコトニ歸著イタシマシタノデ
  ゴザイマス、其僅ナ除外サルベキ一小部分ノ爲ニ大ナル費用ヲ抛ッテ大ナル
  手數ヲ掛ケテマデ左樣ナ制限ヲ置ク必要ハナイ、故ニ初メカラ最高金額ヲ三
  百圓ニ致スガ宜イト云フコトデ、其制限ハ取去ラレタノデゴザイマス、ソレ
  デ今日ノ案ニ致シマシテモ、職業別ト申スカ納稅別ト申スカ色〓ノ方法モア
  リマセウガ、併ナガラ何レヲ採リマシテモ精密ニ公平適切ナル制限ヲ實行シ
  ヤウト思ヒマスルナラバ、是非トモ大ナル經費ヲ抛ッテセヌケレバナリマセ
  ヌガ、是以テ大ナル經費ヲ抛ッテ見タ所デ結果ハドウナルト云ヘバ洵ニ僅ノ
  除外サルベキ部分ノ爲ニ斯ノ如キ經費ヲ抛ツト云フコトニ歸著スルノデアリ
  マスカラ、强ヒテ左樣ナ制限ヲ設ケル必要ハナイト思フノデアリマス、制限
  ガナクトモ矢張リ此法案ノ目的トスル多クノ部分ヲ包容スルト云フコトニナ
  リマスカラ、紙ノ上ニ左樣ナ制限ヲ書イテアリマセヌデモ、實際ノ上ニハ自
  然ニ左樣ナ制限ガ出來タト同ジ結果ヲ現ハスノデアリマス、而シテ其利害
  ハドウカト申シマスレバナカ〓〓紙ノ上ニ制限ヲ設ケルト云フコトハ困難
  ナルノミナラズ、殆ドソレガ爲ニ萬一强ヒテ設ケマシタ所ガ却ッテ非常ナ
  煩ヲ惹起スノミデ、割合ニ實益ハナイト信ジマス、希ハクハ左樣ナ制限ヲ
  置クト云フヤウナコトハドウゾ止メニナルコトヲ希望スルノデアリマス、
  又最高金額ノコトニ付キマシテハ、是ハ元來ガ二十圓以上三百圓以下、其
  平均ヲ七十五圓ト致シマシテ、ソレカラ割出シテ保險料ナドハ定メラレテ居
  リマスルカラ、若シ二百五十圓トナリマスルト其平均額ハ六十五圓ト云フコ
  トニナリマス、其六十五圓ト云フ平均額ニナリマスレバソレダケ保險料ヲ上
  ゲナケレバナラヌト云フコトニナリマス、此保險料ヲ引上ゲルト云フコトハ
  此法案ノ本旨ノ一大目的ニ非常ナ妨ヲ生ズルコトデアリマスカラ、是ハ甚ダ
  苦痛ニ存ズルノデアリマス、或ハソレナラバ經費ヲ節約、卽チ手數料ノ高ヲ
  減ズル、或ハ利率ヲ高メルト云フコトニ致セバ、ソレデ以テ保險料ヲ高メズ
  シテ行ケルヂヤナイカト云フ御說ヲ委員會ナドニ於テモ屢〓承ッタノデアリマ
  スガ、是モモウ今日ハ殆ド切詰メタ所ニ至ッテ居リマスルノデ、募集手數料、
  集金手數料、一ハ千分ノ六或ハ百分ノ十二ト申シマスルト、誠ニ高イヤウデ
  アッテ、之ヲ減スコトノ餘地ガアルヤウニ見エマスルケレドモ、實際ハサウデ
  ナイ、七十五圓ト云フヤウナ平均ヲ根據ニ致シテ居リマスルカラ、其比率ハ
  高イ、比率ハ高イノデアリマスケレドモ其金額ハ誠ニ小サナモノデアリマ
  シテ、最早其上ニ之ヲ減ラスト云フ程ノ餘力ハナイノデアリマス、ソレカラ
  又三分五厘ハ廉イカラ之ヲ四分ニ引上ゲタラト云フ御說モ、段々今日モ承ッ
  タノデアリマスガ、民間ノ基礎ノ確實ナリト稱ヘラレテ居ル會社ハ、矢張リ
  三分五厘ノ利率ニシテ居リマスノデ、是ハ長イ問ノコトニナリマスカラ、ド
  ウシテモ此邊ノ低イ所ニ定メテ置クノガ、此基礎ノ鞏固ヲ保ツ上ニ最モ必要
  ナルコトト信ジマスルノデ、要スルニ經費ヲ省イテ保險料ヲ引上ゲルト云フ
  コトナシニ最高金高ヲ減ラスト云フ趣向ハ甚ダ困難デアルノデアリマス、右
  ノ次第デアリマスルカラ、二點トモドウカ修正ヲ加ヘラレズシテ原案ノ通リ
  ニ御贊成アルコトヲ希望スルノデアリマス
  〔澤柳政太郞君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=62

  ---

• 063・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　澤柳君ハ何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=63

  ---

• 064・澤柳政太郎

  ○澤柳政太郞君　通告ニ依ッテ發言ヲ致シタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=64

  ---

• 065・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　唯今討論終結ノ動議ガ成立チマシタカラ、是ヨリ
  ソレニ付テ採決ヲ致サウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=65

  ---

• 066・澤柳政太郎

  ○澤柳政太郞君　國務大臣ノ唯今ノ發言ニ依リマシテ討論終結ノ動議ハ消滅
  シタモノデハアリマセヌカト思ヒマスガ、如何デゴザイマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=66

  ---

• 067・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　消滅イタシマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=67

  ---

• 068・澤柳政太郎

  ○澤柳政太郞君　サウ云フ規則デゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=68

  ---

• 069・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　消滅シテ居リマセヌ······討論終局ノ動議ニ同意ノ
  諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=69

  ---

• 070・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　過半數ト認メマス、討論ハ終結セラレマシタ、本
  案ノ採決ニ付キマシテ記名投票ヲ以テ行ハレムコトヲ望ムト云フ要求ガ出マ
  シタ、故ニ第三條、第四條ヲ問題ト致シ、記名投票ヲ以テ決シマス、念ノ爲
  ニ申上ゲテ置キマス、問題ヲ可トスル議員、卽チ修正案ニ同意ノ諸君ハ白色
  票ヲ、反對ノ諸君ハ靑色票ヲ、投票函ニ御投入ヲ請ヒマス、例ニ依リマシテ
  書記官ヲシテ諸君ノ御席ヘ戴キニ出シマス
  〔書記官投票ヲ集ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=70

  ---

• 071・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　投票漏ハゴザイマセヌカ
  〔山脇玄君「アリマス」ト述フ〕
  〔書記官投票ヲ集ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=71

  ---

• 072・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　他ニ投票漏ハゴザイマセヌカ······投票漏ハナイト
  認メマス、是ヨリ計算ヲ致サセマス
  〔書記官投票ヲ計算ス〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=72

  ---

• 073・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　記名投票ノ結果ヲ御報告ニ及ビマス、出席總數二
  百三十六、白色票ヲ投ジタル者、卽チ修正案ヲ可トスル者百四十七、靑色票
  ヲ投ジタル者、卽チ修正案ヲ否トスル者八十九、故ニ修正案ハ可決セラレマ
  シタ
  〔參照〕
  贊成者氏名
  伯爵萬里小路通房君伯爵〓棲家〓君伯爵松浦厚君
  伯爵柳原義光君伯爵川村鐵太郞君伯爵奧平昌恭君
  伯爵島津忠麿君伯爵松平直之君子爵伏原宣足君
  子爵加藤泰秋君男爵小澤武雄君子爵岡部長職君
  子爵藤井行德君子爵唐橋在正君子爵野宮定穀君
  子爵一柳末德君子爵大宮以季君子爵井伊直安君
  子爵靑山幸宜君子爵山口弘達君子爵牧野貞寧君
  子爵京極高德君子爵松平康民君子爵久留島通簡君
  子爵黑田和志君子爵本多實方君子爵舟橋遂賢君
  子爵勘解由小路資承君子爵本 多忠敬君子爵藤谷爲寬君
  子爵樋口誠康君子爵稻垣太祥君子爵毛利高範君
  子爵東坊城德長君子爵松平直平君子爵松平直德君
  子爵靑木信光君子爵冷泉爲勇君子爵有馬賴之君
  子爵牧野忠篤君子爵酒井忠亮君子爵永井尙敏君
  子爵伊集院兼知君子爵堀河護麿君子爵五辻治仲君
  子爵細川立興君子爵前田利定君子爵櫛笥隆督君
  子爵森〓君子爵西大路吉光君子爵井上匡四郞君
  子爵榎本武憲君子爵京極高備君子爵京極高義君
  子爵今城定政君子爵水野直君子爵吉田〓風君
  子爵大給近孝君子爵本 多忠鋒君子爵豐岡圭資君
  子爵藪篤麿君子爵秋月種英君子爵伊東祐弘君
  子爵片桐貞央君子爵松平乘長君子爵野村益三君
  子爵大河內正敏君子爵池田政時君子爵丹羽長德君
  子爵米津政賢君子爵〓岡長言君子爵八條隆正君
  子爵立花種忠君男爵千家尊福君阿部浩君
  深野一三君男爵杉溪言長君男爵沖原光孚君
  男爵村上敬次郞君男爵山名義路君男爵北島齊孝君
  平井晴二郞君山本達雄君岡野敬次郞君
  岡喜七郞君男爵太秦供康君男爵神田乃武君
  男爵阪井重季君男爵目賀田種太郞君男爵藤井包總君
  男爵平野長祥君男爵辻健介君男爵中溝德太郞君
  男爵小早川四郞君男爵竹腰正巳君男爵高橋是〓君
  男爵毛利五郞君男爵藤大路親春君男爵若王子文健君
  男爵千秋季隆君男爵安場末喜君男爵伊丹春雄君
  男爵長松篤業君男爵福原俊丸君男爵黑田長和君
  男爵岩倉道倶君男爵安藤直雄君男爵佐竹義準君
  男爵藤堂高成君鮫島武之助君岡田良平君
  千頭〓臣君加太邦憲君福永吉之助君
  橋本圭三郞君山之內一次君有松英義君
  木場貞長君磯部四郞君杉田定一君
  室田義文君安樂兼道君古賀廉造君
  安立綱之君南弘君水野鍊太郞君
  麻生太吉君海江田準一郞君本間金之助君
  橘〓治郞君瀧川辨三君堀内半三郞君
  依田仙右衞門君佐藤友右衞門君廣瀨滿正君
  荒井泰治君鎌田勝太郞君松尾廣吉君
  美馬儀一郞君由雄元太郞君日高榮三郞君
  安田善三郞君伊藤由太郞君木本源吉君
  福島文右衞門君堀正一君高崎三重郞君
  反對者氏名
  侯爵細川護立君伯爵〓閑寺經房君伯爵吉井幸藏君
  伯爵柳澤保惠君伯爵林博太郞君山脇玄君
  子爵松平乘承君淺田德則君男爵堤正誼君
  男爵有地品之允君男爵大森鍾一君小野田元凞君
  平山成信君男爵後藤新平君男爵高木兼寬君
  高崎親章君男爵加藤高明君男爵中川興長君
  大澤謙二君小牧昌業君黑岡帶刀君
  男爵關義臣君男爵久保田讓君男爵山川健次郞君
  江木千之君荒川義太郞君折田彥市君
  柴田家門君男爵村木雅美君一木喜德郞君
  仲小路廉君押川則吉君小松謙次郞君
  古市公威君男爵田健治郞君男爵武井守正君
  男爵内田正敏君男爵肝付兼行君男爵山內長人君
  男爵勝田四方藏君男爵南岩倉具威君男爵伊東義五郞君
  男爵山內豐政君男爵靑山元君男爵德川厚君
  男爵北大路實信君男爵眞田幸世君男爵坪井九八郞君
  男爵神山郡昭君男爵楠本正敏君男爵本多政以君
  男爵〓水資治君男爵津田弘道君男爵島津久賢君
  男爵二條正麿君石井省一郞君西村亮吉君
  谷森眞男君中島永元君湯地定基君
  森山茂君馬屋原彰君原保太郞君
  藤田四郞君富井政章君石黑五十二君
  仁尾惟茂君澤柳政太郞君木內重四郞君
  若槻禮次郞君高田早苗君下條正雄君
  伊澤修二君桑田熊藏君田中源太郞君
  小野光景君田島竹之助君細谷巖太郞君
  木村誓太郞君江原芳平君武石橘次君
  植竹三右衞門君佐々田懋君星島謹一郞君
  橋本辰二郞君上松泰造君西川甚五郞君
  網藏平輔君鈴木周三郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=73

  ---

• 074・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　次ニ御諮リヲ致シマスノハ第五條ヨリ終マデ、原
  案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=74

  ---

• 075・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス、是ニ於テ第二讀會ハ終リマシ
  タ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=75

  ---

• 076・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=76

  ---

• 077・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　贊成
  〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=77

  ---

• 078・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三讀會ヲ開クベシトスル林伯爵ノ動議ニ
  同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=78

  ---

• 079・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　多數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=79

  ---

• 080・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三讀會ヲ開キマス·······第二讀會ノ決議通
  リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=80

  ---

• 081・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス······御靜肅ヲ願ヒマス、本
  案ヲ衆議院ニ囘付イタシマシテ、衆議院ニ於テ同意ヲ表セラルレバ、ソレ迄
  デゴザイマスガ、萬一協議會ヲ求メラレマスカモ存ジマセヌカラ、議事ノ都
  合上、此際休憩ヲ致シマス
  午後四時十五分休憩
  午後五時四十五分開會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=81

  ---

• 082・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ報〓ヲ致サセマス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  本日衆議院ヨリ本院ノ囘付ニ係ル左ノ政府提出案ハ同院ニ於テ本院ノ修正
  ニ同意セサルコトニ決議シタル旨ヲ以テ兩院協議會ヲ開クノ請求ヲ受ケ又
  同時ニ同院ヨリ協議委員ノ數ヲ十名トナスニ決セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
  簡易生命保險法案

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=82

  ---

• 083・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ前刻ニ引續キマシテ會議ヲ開キマス、諸君
  ニ御諮リヲ致シタイト存ジマス、唯〓報〓イタサセマシタ通リ、衆議院ヨリ
  簡易生命保險法案ニ付テ協議會ノ要求ガ參リマシタ、付テハ協議委員十名ノ
  選擧ヲ此際議事日程ヲ變更シテ行ヒタイト存ジマス、御異存ハゴザイマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=83

  ---

• 084・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=84

  ---

• 085・岡部長職

  ○子爵岡部長職君　協議委員ノ指名ハ議長ニ御一任申上ゲタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=85

  ---

• 086・田健治郎

  ○男爵田健治郞君　唯今ノ岡部子爵ノ動議ニ贊成イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=86

  ---

• 087・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　岡部子爵ノ協議委員十名ノ選定ハ議長ニ一任スル
  ト云フ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  [「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=87

  ---

• 088・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス、協議委員ノ氏名ヲ書記官
  ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
  〔河井書記官朗讀〕
  簡易生命保險法案兩院協議委員
  伯爵林博太郞君子爵前田利定君仲小路廉君
  小松謙次郞君山本達雄君男爵長松篤棐君
  山之內一次君桑田熊藏君荒井泰治君
  日高榮三郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=88

  ---

• 089・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　第六、簡易生命保險特別會計法案、政府提出、衆
  議院送付、第一讀會ノ續
  簡易生命保險特別會計法案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正五年二月二十六日
  右特別委員長
  伯爵林博太郞
  貴族院議長公爵德川家達殿

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=89

  ---

• 090・田健治郎

  ○男爵田健治郞君　此法案ハ前ニ載ッテ居リマスル簡易保險法案ト關係ノ伴
  ハナクテハナラヌノデアリマスガ、是ハ現ニ協議會ニ付セラルル以上ハ、此
  議決ハ延期ガ當然ト存ジマスカラ、此場合ハ延期セラレムコトヲ希望イタシ
  マス、此段動議トシテ申述べマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=90

  ---

• 091・平山成信

  ○平山成信君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=91

  ---

• 092・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　田男爵ノ延期說ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=92

  ---

• 093・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=93

  ---

• 094・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　第七、關稅定率法中改正法律案、政府提出、衆議
  院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、第八、朝鮮ノ生產ニ係ル生果、核子及
  銅ノ移入稅ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長
  報告
  關稅定率法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正五年二月二十六日
  右特別委員長
  伯爵奧平昌恭
  貴族院議長公爵德川家達殿
  朝鮮ノ生產ニ係ル生果、核子及銅ノ移入稅ニ關スル法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正五年二月二十六日
  右特別委員長
  伯爵奧平昌恭
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔伯爵奥平昌恭君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=94

  ---

• 095・奧平昌恭

  ○伯爵奧平昌恭君　唯今議題ニ上リマシタル關稅法中改正法律案竝ニ朝鮮ノ
  生產ニ係ル生果、核子及銅ノ移入稅ニ關スル法律案、此二案ノ特別委員會ノ
  經過及結果ヲ御報告申上ゲマス、昨二十六日正副委員長ノ互選ヲ終リマシ
  テ、直チニ會議ヲ開クコトニ致シマシタ、先ヅ關稅法中改正法律案ノ方ヨリ
  始メマシテゴザイマス、ソレデ本案ニ關シマシテ政府委員ノ說明ノ內容ニ付
  なますごと
  キマシテハソレハ略シ、且又本案ノ提出ノ理由等ハ旣ニ大臣ノ說明モアリマ
  スカラシテ、ソレ等ノ點ニ付キマシテモ是ハ全然省クコトニ致シマス、去リ
  ナガラ改正ノ趣旨ニ付キマシテハ、政府委員ヨリ承リマシタ所ニ付キマシテ
  少シク述ベル必要ガアラウカト思ヒマス、此度提出ニナリマシタ所ノ改正案
  ハ主トシテ輸入セラルベキ藥品原料デアッテ、內地デ生產ノ出來ナイモノ、若
  クハ內地デ生產ヲ致シマシテモ比較的生產額ノ少イモノ、卽チ外國カラ輸入
  ヲ仰ガナケレバナラヌモノ等ニ付キマシテハ、之ヲ無稅トシ若クハ稅率ヲ低
  下スルト云フコトニナッテ居ルノデゴザイマス、又精製品ニ付キマシテハ、外
  國ヨリ之ヲ輸入スルニ付テハ稅率ヲ引上ゲル、而シテ內地ノ生產ノ保護ヲス
  ルト云フノガ······且又從來制定セラレテ居ル所ノ稅率デ權衡ヲ失スルモノ、
  又取扱上便宜ノ點カラシテ之ヲ改正シタト云フノガ本案ノ提出ニナッタ所ノ
  改正案ノ趣旨デゴザイマス、此趣旨ガ稅率ノ改正ニ付テ皆適用ニナッテ居ル
  ノデゴザイマス、而シテ尙ホ一層改正案ノ內部ニ付キマシテ少シク申上ゲマ
  スレバ、第八條ノ「輸出貨物ノ容器ニ使用スル物品ニシテ命令ヲ以テ指定シ
  タルモノ」ト云フヤウニ、國內デ製造シテモ貨物ノ容器ガ出來ナイ物、又生
  產イタシテモ價格ノ關係上カラシテ、輸出貨物ヲ輸入シテ使用スルコトガ出
  來ナイモノヲ意味シテ居ルサウデアリマス、是ハ輸出奬勵ノ爲ニ輸入稅ヲソ
  レニ賦課シテハ宜シクナイト云フコトデ、免稅ヲ致シタサウデアリマス、ソ
  レデ質問ニ入リマシテ、各物品ニ關スル分ハ複雜ニナリマスカラ之ヲ略シマ
  シテ、稅制政策ノ上カラシテ二三ノ質問ガゴザイマシタ、是ハ重要ナモノト思
  ヒマスカラ茲ニ御紹介ヲ致シマス、ソレデ此改正案ヲ以テ政府ハ足レリトシ
  テ居ルカ、將又大體ニ涉ッテ今日ノ關稅法ヲ他日改正シタイト云フ考ヲ有ッテ
  居ルカドウカ、又改正案ハ今日ノ國家經濟上及國家工業ノ發展ノ上カラシテ
  種々改良サルルモノデアルカ、サウシテ其點ニ付テハ他日ニ之ヲ讓ル考デア
  ルカト云フ質問ヲ致シマシタ、ソレカラ何故ニ斯ノ如キ重大ナル改正案ヲ會
  期切迫ノ際ニ議場ニ提出シタカト云フ、斯ウ云フ三ツノ質問ニ對シテハ政府
  ハソレゾレ應答ガアリマシタ、質問ヲ終リマシテ、委員會ハ唯今前ニ述べラレ
  タ所ノ改正ノ趣旨ヲ是ナリトシテ、之ヲ可決イタシタノデゴザイマス、其可決
  ニ際シマシテ委員會ハ左ノ如キ希望ヲ附シテゴザイマス、ソレハ國稅ニ關ス
  ル諸種ノ法律ハ近年頻繁ニ改正ヲ加ヘラレテ、專門家デナケレバ複雜デアッテ
  一見シテモ此稅法ヲ理解スルコトガ出來ナイ、誠ニ商賣人等ニ對シテハ···
  貿易者ニ對シテハ非常ニ氣ノ毒デアルカラ、何トカシテ之ヲ他日改メテ、本
  案ノ改正案ヲ提出ナサレタラドウカト云フ希望ヲ議員カラ申サレマシタ、此
  希望ヲ委員會デ問ヒマシタ、所ガ委員會ニ於キマシテハ委員會ノ希望トシテ
  宜シイト云フコトデゴザイマスカラ、玆ニ御紹介ヲ致シマス、尤モ本案ニ付
  キマシテハ是ハ必ズ正鵠ヲ得テ居ル所ノ改正案トハ委員會デハ認メマセヌデ
  ゴザイマスケレドモ、去リナガラ會期切迫ノ際ニ之ヲ數日ヲ重ネテ議スルト
  云フコトハ出來ズ、サウ云フ工合ニ致シマシテハ今日焦眉ノ急ニ應ズル關稅
  定率法モ潰レナケレバナラヌト云フノデ、希望ヲ提出シテ此案ヲ可決イタシ
  マシタ、ソレカラ朝鮮ノ生產ニ係ル生果、核子及銅ノ移入稅ニ關係シマシテ
  ハ、果物核子、ソレカラ金屬類ノ制限ヲ、一方ハ從來從量稅デアッタ、ソレハ歐
  羅巴及亞米利加等ヨリ輸入シタ所ノ果物ハ從量ノ三割ヲ賦課スル規定ニナッ
  テ居ッタノデゴザイマスルケレドモ、若シ其儘ニシテ置ケバ朝鮮ノヤウナ生果
  及核子ノ生產ニ付テ生產費ヲ要セザル所ヨリシテ、日本ニ之ヲ移入シタ場合
  ニ移入稅ニ從量ノ三割ヲ賦課スルト云フコトデアルナラバ、非常ナ重稅ニナ
  ルカラシテ、是ハ寧ロ原價ヲ標準トシテ、原價ノ三割ヲ賦課スル方ガ宜カラウ
  ト云フコトデアッタサウデアリマス、ソレカラ塊及錠ハ朝鮮ニ產シマス所ノ金
  銀ヲ精煉用トシテ內地カラ之ヲ移入スルノデアッテ、此銅ノ塊及錠ニ金及銀ヲ
  含蓄セシメテ、再ビ之ヲ內地ニ移入シ、分析シテ金銀ヲ採ルノヲ目的トシテ
  朝鮮ニ銅ヲ移入スル、其銅ガ再ビ內地ニ移入セラルル場合ニ於テハ移入稅ヲ
  賦課シテハ、朝鮮ニ於ケル所ノ工業ノ發達ヲ保護スルト云フコトニ於テ誠ニ
  當ヲ得テ居ナイカラシテ、是ハ免稅ニシタラ宜カラウト云フコトデアリマス
  サウデアリマス、而シテ政府委員ノ說明スル所ニ於キマシテハ、衆議院ニ於
  テハ朝鮮ノ工業保護ニ付テハ單ニ銅ヲ免稅スルヲ以テ足レリトシナイ、廣ク
  金屬ヲ移入シタ方ガ宜カラウ、卽チ金屬ノ塊及錠ヲ免稅スベシト云フコトノ
  修正說ガ出タサウデアリマス、大藏省及朝鮮總督府モ同意シテ、衆議院デハ
  銅ノ移入ト云フコトヲ取消サレテ、唯〓申ス通リ金屬ト云フコトニナッテ居
  ルサウデゴザイマス、ソレデ此案ニ付キマシテモ委員會ニ於テハ一ノ異論モ
  ナク通過イタシマシタ、此二案ハ目下焦眉ノ急ニ應ズル、卽チ國內ノ產業ヲ
  保護スルヲ以テ目的トシテ居ル故ニ、委員會ニ於テハ此二案トモ異議ナク可
  決イタシマシタ、此段御報〓イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=95

  ---

• 096・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ガナケレバ唯今委員長ノ報告セラレマシタ
  兩案トモ一括シテ議題トナシ、採決ヲ致シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=96

  ---

• 097・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　兩案ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立ヲ請
  ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=97

  ---

• 098・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=98

  ---

• 099・奧平昌恭

  ○伯爵奧平昌恭君　直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=99

  ---

• 100・中川興長

  ○男爵中川興長君　贊成
  〔其他〕「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=100

  ---

• 101・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセ
  ヌカ
  [「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=101

  ---

• 102・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=102

  ---

• 103・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第二讀會ヲ開キマス、兩案全部ヲ問題ニ供
  シマス······全部委員長ノ報告通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  [「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=103

  ---

• 104・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=104

  ---

• 105・奧平昌恭

  ○伯爵奧平昌恭君　直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=105

  ---

• 106・中川興長

  ○男爵中川興長君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=106

  ---

• 107・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ兩案ノ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=107

  ---

• 108・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=108

  ---

• 109・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ第三讀會ヲ開キマス······第二讀會ノ決議通
  リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=109

  ---

• 110・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=110

  ---

• 111・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　第九、證劵ヲ以テスル歲入納付ニ關スル法律案、
  政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告
  證券ヲ以テスル歲入納付ニ關スル法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
  大正五年二月二十六日
  右特別委員長
  伯爵松浦厚
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔伯爵松浦厚君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=111

  ---

• 112・松浦厚

  ○伯爵松浦厚君　證劵ヲ以テスル歲入納付ニ關スル法律案ノ特別委員會ヲ昨
  日開キマシタ、其經過ヲ申上ゲマス、此法案ハ御承知モアラセラレル通リ
  ニ、旣ニ證劵ヲ以チマシテ歲入ヲ納付スルニ關シテハ勅令トカ省令トカ訓
  令、告示、國稅徵收施行細則ト云フヤウナモノニ於キマシテ、旣ニ斷片的ニ規
  定ヲサレマシテ旣ニ行ハレテ居ルモノデアリマシタ、併ナガラ共手續共他ガ
  極メテ煩瑣ニ亙ッテ居ル爲ニ、證劵ノ種類ガ種々アリマスノニ付キマシテ、制
  限モアリ、爲ニ折角ノ便利ナル事柄モ方法ノ十分ナラザルガ爲ニ利用サレザ
  ル所ノ憾ガアッタノデアリマス、ソコニ付テ此度ハ政府ニ於テ此法律案ヲ提
  出サレタノデアリマス、至ッテ簡單ナ法律案デアリマスケレドモ、特別委員ニ
  於キマシテハ十分ニ政府委員ニ答辯ヲ請ヒマシテ〓究ヲ致シタ次第デゴザイ
  やっ、其要點ニ付キマシテ極メテ簡單ニ申上ゲタイト考ヘマス、此度此法律
  案ヲ提出サレマシテ、唯今申シマシタ通リナル所ノ最モ複雜ナル事柄ヲ總テ
  統一スルヤウニナリマシタ爲ニ、大變便利ヲ得タト云フ次第デアリマス、付
  キマシテハ此歲入ヲ納メ入レルニ付キマシテ、取扱ヲスル銀行ハ如何ナル種
  類ノ銀行デアリマスカト申上ゲテ見マスナラバ、第一ニ特殊銀行、第二ニ手形
  銀行卽チ貨幣銀行、第三ニ國庫金ヲ取扱フベキ所ノ銀行、此三種ノ銀行ノ中ニ
  今日ハ限ラレテ居ル譯デアリマス、又其證劵ノ種類ハドウ云フモノカト申シ
  マスルト、第一ハ唯今申上ゲマシタ所ノ三種ノ銀行ニ宛テマシタ所ノ所持人
  拂ノ小切手、第二ハ卽チ仕拂期間到達ノ無記名國債ノ利札、第三ハ政府又ハ
  宮內省ノ仕拂命令竝ニ政府仕拂ノ請求書、第四ハ郵便爲替、是ノ種類ニ決ッテ
  居ル、斯ノ如ク其手形ヲ以チマシテ拂入ルルト云フ所ノ便法ヲ得マシタニ付
  キマシテハ、人民間ニ於キマシテモ極メテ適切ナル便法ヲ得マシテ、納稅ノ
  途モ輕便ニ開ケタト云フコトニナリマス、又當局者ニ於カレマシテ之ヲ納入
  サルル上ニ付テモ便利ヲ得タト云フコトデアリマス、雙方ノ便利、今日人文ノ
  進ミマシタ際ニ於テハ至極斯ノ如キ便法ヲ開カレ、新ニ法律案ヲ提出サレマ
  シタコトハ至極結構ナコトデアリ、歡迎スルコトト考ヘマス、付キマシテハ委
  員會ニ於キマシテ希望ガアリマシテ、其希望ハ唯今申上ゲマシタ所ノ三種ノ
  銀行以外ニ、地方ニ於テ信用アル銀行ガアルナラバ便利上其銀行ニ於テモ此
  取扱ヲ致サセルト云フヤウナ途ガ開ケテハドウデアラウカト云フヤウナコト
  デアリマシテ、又衆議院ニ於テモ同ジク斯ノ如キ希望ガアッタト云フコトデア
  リマス、付キマシテハ政府委員ニ於キマシテハ今日ニ於テハ餘ホド〓究ヲ要
  シ、色ミ銀行ノ信用上ニモ關係シテ居ルコトデアルカラ、直チニ玆ニ於テ取
  扱銀行ノ範圍ヲ廣クスルト云フコトハ御請合ヲシ兼ネルコトデアルケレド
  モ、尙ホ取調ヲ致シタ以上ニ出來得ル限リ此範圍ヲ廣クシテ便法ヲ開クコト
  ニ努メルデアラウト云フ返答デゴザイマシタ、付キマシテハ極メテ簡單ナ案
  デゴザイマスカラ、特別委員ニ於キマシテモ滿場一致デ贊成イタシマシタ、
  卽チ原案ヲ贊成イタスコトニナリマシタ、右ノ次第ヲ御報〓イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=112

  ---

• 113・田健治郎

  ○男爵田健治郞君　本案ハ納稅者其他ノ便利ヲ增進シ且ツ正確ニスルト云フ
  案デアリマシテ、極メテ簡單明瞭ナ案デゴザイマスルカラ、讀會ヲ省略シテ
  決定セラレムコトヲ望ムノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=113

  ---

• 114・小野田元熈

  ○小野田元凞君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=114

  ---

• 115・萬里小路通房

  ○伯爵萬里小路通房君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=115

  ---

• 116・松浦厚

  ○伯爵松浦厚君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=116

  ---

• 117・奧平昌恭

  ○伯爵奧平昌恭君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=117

  ---

• 118・野村益三

  ○子爵野村益三君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=118

  ---

• 119・松平直之

  ○伯爵松平直之君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=119

  ---

• 120・田中源太郎

  ○田中源太郞君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=120

  ---

• 121・高木兼寛

  ○男爵高木兼寬君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=121

  ---

• 122・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=122

  ---

• 123・中川興長

  ○男爵中川興長君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=123

  ---

• 124・山内長人

  ○男爵山內長人君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=124

  ---

• 125・田嶋竹之助

  ○田島竹之助君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=125

  ---

• 126・平野長祥

  ○男爵平野長祥君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=126

  ---

• 127・清閑寺經房

  ○伯爵〓閑寺經房君　贊成
  〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=127

  ---

• 128・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　田男爵ノ讀會ヲ省略スルト云フ動議ニ同意ノ諸君
  ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=128

  ---

• 129・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　三分ノ二以上ト認メマス、原案ニ同意ノ諸君ノ起
  立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=129

  ---

• 130・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス、是ニテ本日ノ議事ハ了リマシ
  タ、明日ノ議事日程ハ決定次第彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是デ散
  會イタシマス
  午後六時八分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003703242X01719160227&spkNum=130

4. 会議録のPDFを表示

この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。