第37回帝国議会　衆議院　本会議　第11号　大正4年12月23日 | テキスト表示

1. 会議録本文

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000・会議録情報
　大正四年十二月二十三日（木曜日）午後一時二十四分開議
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　　議事日程　第十號　大正四年十二月二十三日
　　　　午後一時開議
　　第一　國庫出納金端數計算法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
　　第二　帝國大學特別會計法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
　　第三　造幣局設備擴張費に關する法律案（政府提出）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
　　第四　海洋調査及研究機關整備に關する建議案（小西和君提出）
　　第五　米澤高等工業學校に關する建議案（竹村欽次郎君外七名提出）
　　第六　救育費國庫支辨に關する建議案（鈴木萬次郎君外七名提出）
　　第七　（特別報告第二號）濱四郷村黒目に郵便局設置の請願　　　　　　　（委員長報告）
　　第八　（特別報告第三號）元田島區裁判所復舊の請願　　　　　　　　　　（委員長報告）
　　第九　（特別報告第四號）元社區裁判所復舊の請願　　　　　　　　　　　（委員長報告）
　　第十　（特別報告第五號）元加治木區裁判所復舊の請願　　　　　　　　　（委員長報告）
　　第十一　（特別報告第六號）手莊村に登記所設置の請願　　　　　　　　　（委員長報告）
　　第十二　（特別報告第七號）作木村に區裁判所出張所設置の請願　　　　　（委員長報告）
　　第十三　（特別報告第八號）都城飫肥間の鐵道速成の請願　　　　　　　　（委員長報告）
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001・島田三郎
○議長(島田三郞君)　諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔書記朗讀〕
一千葉縣選出議員板倉中君退職トナレリ
-政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
大正三年臨時事件ノ經費支辨ニ關スル法律案
朝鮮森林特別會計法廢止法律案
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
大正四年十二月二十一日
內閣總理大臣伯爵大隈重信
衆議院議長島田三郞殿
衆議院議員小橋藻三衞君提出外交ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員小橋藻三衞君提出外交ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一帝國政府カ支那政府ニ對シ帝政實行ノ延期ヲ勸告シタルハ本年十月ニ入リ
支那政府カ國民代表大會組織法ヲ公布シ其意志ヲ正式ニ表明シタルニ依テ
玆ニ愼重考量ヲ加ヘテ之ヲ爲シタルモノニシテ質問ノ如ク特別ノ動機アリシニア
ラス
二帝國カ昨年九月五日ノ倫敦宣言ニ加入シタルニ付キテハ何等條件ヲ附シタル
コトナシ
右及答辯候也
大正四年十二月二十一日
外務大臣男爵石井菊次郞
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
大阪臨港鐵道速成ニ關スル建議案
提出者金澤種次郞君加藤彰廉君金澤仁作君
紫安新九郞君石橋爲之助君谷口武兵衞君
兵役稅法案
提出者矢島八郞君望月小太郞君杉山東太郞君
黑須龍太郞君林毅陸君藤定
宮原幸三郞君(芙雀氏)望堀加豐介介彥吉君君君君
村松山壽君大大小小心小心小心清真司茂郎馬路口月圭
根本正君竹木早川龍
樋口秀雄君田村新吉君
癈兵、戰病死者遺族、軍人家族救護法案
提出者矢島八郎君望月杉山東太郞君
黑須龍太郞君林毅垂数小藤定吉君
宮原幸三郞君君老君主君望堀加豐
山壽君茂月圭介彥君君
村松田大大小場場林
根本正君竹次郞君早川龍介君
樋口秀雄君村新吉君
家祿賞典祿處分ニ關スル法律案
提出者原田十衞君辰喜君山大根原義剛君
山內範造君旗元正次君
關丸名降岡村忠松本道理小林嘉平治君
日第八百八八百八百八臺市裕所營養老字號山芳介室木彌治郞君
戶寅川原茂輔君
豐增龍次郞君西英太郞君井原喜代太郞君
南里琢一君
沒祿處分ヲ受ケタル者ニ對スル家祿賞典祿處分法補充法律案
提出者原田十衞君岡辰喜君大原義剛君
山內範造君降旗元太郞君山根正次君
八田裕二郞君名村忠治君小林嘉平治君
〓水市太郞君丸山芳介君室木彌治郞君
田中喜太郞君關戶第五話 (川原茂輔君
豐增龍次郞君西又は200井原喜代太郞君
南里琢一君
一常任委員ノ補闕選舉ニ左ノ通リ當選セラレタリ
第四部豫算委員指田義雄君
(左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
去二十一日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
郵便爲替法中改正法律案
關野善次郞君平山午介君鐵酸水解脢一郞君
市原又次郞君藤原元太郞君幸太君
志々目藤彥君三木與吉郞君有田溫三君
電氣事業法中改正法律案
山道襄一君初見八郞君岡部政太郞君
森環君中川幸太郞君白石直治君
友常穀三郞君戶叶薰雄君川崎克君
委員異動軍人恩給法中改正法律案外二件委員安東敏之君辭任ニ付其補闕
トシテ野村嘉六君ヲ、未成年者飮酒禁止法案委員田中喜太郞君辭任ニ付其補闕
トシテ中野悌治君ヲ東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ据置運轉資本增加ニ關ス
ル法律案委員織田了君辭任ニ付其補闕トシテ大場竹次郞君ヲ、假置場法中改正
法律案委員橫田孝史君辭任ニ付其補闕トシテ石田平吉君ヲ、電氣事業法中改
正法律案委員山道襄一君辭任ニ付其補闕トシテ市川文藏君ヲ議長ニ於テ選定
セリ
委員解任衆議院規則第二百四條ニ依リ解任セラレタル委員左ノ如シ
第四部選出豫算委員武藤金吉君
一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
郵便爲替法中改正法律案委員會
委員長關野善次郞君理事三木與吉郞君
電氣事業法中改正法律案委員會
委員長戶叶薰雄君理事山道襄一一口
一理事ノ補闕選舉ニ左ノ通り當選セラレタリ
懲罰委員會
理事金澤種次郞君(理事大場茂馬君補闕)
〔參照〕
議員席次ノ變更左ノ如シ
三十九番翠川鐵三君
七十八番田邊熊一君
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002・島田三郎
○議長(島田三郞君)　是ヨリ會議ヲ開キマス、御諮リヲ致ス事ガアリマス、柚木慶二
君病氣ニ付今二十三日ヨリ向フ九日間請暇ノ申出ガアリマス、御異議ガアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
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003・島田三郎
○議長(島田三郞君)　御異議ガナイ故ニ申出デノ通リ許可致シマス、高木君ヨリ議
事ノ進行ニ付テノ發言ヲ求メラレマシター高木君
(高木益太郞君登壇〕
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004・高木益太郎
○高木益太郞君　政府ヨリ昨日大正四年度歲入歲出總追加豫算、豫算外國庫ノ
負擔トナルヘキ契約ニ關スル件、大正四年度各特別會計歲入歲出追加豫算、大正
五年度歲入歲出總豫算追加ト云フヤウナ澤山ノ追加ノ豫算ガ出マシタガ、此豫算案
ハ實ハ昨朝ノ午前七時頃ニ端書ヲ以テ豫算委員長カラシテ豫算委員會ヲ開ク、斯ウ
云フ御通知ガアリマシテ、午前九時ニ本院ニ登院ヲ致シマシテ、此追加豫算ニ關スル書
類ヲ初メテ手ニ致シタノデアリマス吾〓ハ此追加豫算案ヲ見マスルト、問題ハ軍事費、
殊ニ此前ノ議會カラ天下ノ疑問トナッテ居ル所ノ軍需品ノ受託製造ニ關スル問題モ含
ンデ居リマスシ、又國債整理基金ニ關スル現內閣ノ政策デ、議會解散ノ理由ニナッタ
問題ニモ關聯シテ居ルノデアリマス、金額ノ上カラ申シマシテモ一億万圓以上ノ關係デ
アリマスカラ、是ハ一應本會議ニ御提出ニナッテ、サウシテ總理大臣以下、當局大臣ガ
此案ニ付テ詳細綿密ナル御說明ヲサレテ、而シテ本會議ニ於テ之ヲ豫算委員會ニ移ス
カ、或ハ全院委員會ニ付スカ、本會議ニ於テ適當ナル審査ノ方法ガアルデアラウト考ヘ
マリ、吾ミハ常ニ此日本ノ今日ノ豫算審議ノ方法ニ付テハ遺憾尠カラヌノデアリマス、
歐洲ノ先進國ニ於テハ豫算編成ノ際ニ於テ、各政黨ノ首領ヲ呼ンデ其當局大臣カラ編
成スル際ニ相談シテ、ソレカラ之ヲ議會ニ出スト云フト、各款項節目ニ付テ全院委員
會ヲ開ィテ、綿密ナル審議ヲスルト云フコトヲ聞イテ居リマス、我國ニ於テハ唯豫算內示
ト云フ出來上ッタモノヲ內示スルト云フヤウナコトハアリマスガ、編成ニ付テハ何等協議
ヲシタコトモナシ又出來上ッタモノニ付テモ少數ノ豫算委員ガ唯審議ヲスルト云フダケ
デアリマシテ、此像算ノ審議ノ方法ト云フモノハ眞面目デナイト云フコトヲ感ジテ居ルノデ
アリマス、トコロデ吾ミハ此豫算ノ審議ニ付キマシテハ、非常ニ熱心ニ審議ハ盡シテ居リ
マスケレドモ、ソコヘ持ッテ來テ更ニ此追加豫算ヲ出スト云フヤウナコトデアリマスガ、今日
ノ歲出ノ上ニ付テハ大藏大臣モ此純歲出ノ額ト云フモノハ幾ラデアルト云フコトヲ聽イ
タラ、今日マデマダ御答辯ガナイ、本員カラ大藏省ニ向ッテ日本ノ純歲出ハ幾ラカト云フ
コトヲ屢〓御間ヒ申シタガ、大藏大臣ガ此壇上ニ於テ五億何千万圓ト云フ御話デアリマ
シタケレドモ、國家ノ一般會計特別會計ヲ合セテ見ルト云フト、十三億ニ上ッテ居ル、歲
入ト合シテ見マスト二十億圓以上ノ審議ヲスルノデアリマス、ソコヘ又更ニ一億圓以上
ノ追加豫算ガ出タ以上ハ、親切丁寧ニ吾ミハ審査ヲシタイノデアリマスカラ、一應是ハ
當局大臣ガ此豫算ニ付テ本會ニ報告シテ、ソレカラ本會ニ於キマシテハ適當ナル御決
定アランコトヲ願ヒタイノデアリマス、私ハ其希望ヲ申立テマス(拍手起ル)
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005・島田三郎
○議長(島田三郞君)　贊成ガアリマスカ
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
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006・島田三郎
○議長(島田三郞君)　是ヲ議題ト致シマス、別ニ御發議ガナケレバ決ヲ採リマス
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007・武富時敏
○大藏大臣(武富時敏君)　議長
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008・島田三郎
○議長(島田三郞君)　武富大藏大臣
(大藏大臣武富時敏君登壇〕
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009・武富時敏
○大藏大臣(武富時敏君)　一昨日臨時軍事費ノ追加豫算ト國債償還ニ關スル追
加豫算トヲ提出致シマシタノハ、全ク從來ノ慣例通リノ致方ヲシテ居ルノデアリマス、此
度別ニ此議院ノ慣例ニ違ッタト云フヤウナコトハ更ニアリマセヌ、全體豫算ハ政府カラ本
院ニ提出致シマスレバ、常任委員タル豫算委員ニ直ニ迴付サレルノデアリマス、本院ノ會
議ニ上ルト云フコトハアリマセヌ、唯總豫算ヲ提出致シマシタ際ニハ、大藏大臣ガ其豫
算ノ大體ニ付テ議員ニ紹介ヲスルト云フ慣例デアリマス、他ノ追加豫算ニ至ッテハ、大
藏大臣ガ紹介ノ演說ヲシタコトモアリ、或ハセザルコトモアル、多クハ紹介ノ演說ヲシタコ
トハアリマセヌ、ソレ故ニ此度ノ提出方ハ、何等從來ノ議院ノ慣例ニ違ッタコトハアリマセ
ヌ、高木君ノ御希望ガ豫算ノ提出方法竝ニ審議ノ方法ニ付テ、新ニ其方法ヲ改正シ
ヤウト云フ御希望デアレバ別問題デアリマスガ、一昨日提出致シマシタ追加豫算ニ付テ
ハ、何等從來ノ慣例ト異ッタコトハナイ、ソレダケヲ申上ゲテ置キマス
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010・山本悌二郎
○山本悌二郞君　議長-大藏大臣ニ質問ヲ致シマス-唯今ノ御說明ニ付テチ
ヨット質問致シマス
(「議事ノ進行ニ付テ申シタイコトガアリマス」ト呼フ者アリ〕
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011・島田三郎
○議長(島田三郞君)　質問デアリマスカラ別ニ···
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012・山本悌二郎
○山本悌二郞君　簡單ニ御尋致シマス、唯今ノ大藏大臣ノ御辯明ニ依リマスト、議
會ノ從來ノ慣例ニ違ッタコトハナイト云フ仰セデアリマスガ、ソレハソレト致シマシテ、御尋
シタイノハ免ニ角一億圓ヲ前後スルトコロノ此巨額ノ追加豫算デアリマシテ、而モ其歲
入ニ至ッテハ頗ル多岐ニ亙ッテ、其審査ガ甚グ複雜困難ヲ極メテ居ル性質ノモノデアルノ
デス、此場合ニ於テ大藏大臣ハ、此豫算ヲ直ニ其儘ニ豫算委員會ニ提出スルヨリハ、
免ニ角斯ノ如キ重大ナル豫算案デアルガ故ニ、一應本會ニ於キマシテ之ヲ辯明ナサルノ
ヲ、適當ナリト御認ニナリマセヌヤ否否ヲ御尋致シタイ
〔「當然ナリ必要ナシ」ト呼フ者アリ〕
〔大藏大臣武富時敏君登壇〕
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013・武富時敏
○大藏大臣(武富時敏君)　唯今御尋ノ一應本會ニ辯明スルガ適當デアリマスヤ否ヤ
ト云フコトニハ御答ヲ申ス必要ハ旣ニ過去ッテ居ルノデアリマス、一昨日本院ニ提出シ
テソレガ大藏大臣ノ紹介演說ガナクテ、直ニ豫算委員ニ迴サレテ、豫算委員ノ總會デ
其紹介演說ヲ致シタノデ、其手續ガ旣ニ三日前ニ過去ッテ居リマスカラ、今日殊更ニ其
紹介演說ヲ致スノ必要ヲ認メマセヌ、强テ紹介ノ演說ヲ拒ム譯デハアリマセヌガ、其必要
ハ既ニ過去ッテ居ルト私ハ考ヘテ居リマス
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014・島田三郎
○議長(島田三郞君)　高木君ノ動議ニ贊成ノ御方ハ起立ヲ乞ヒマス
起立者少數
〔「多數」ト呼フ者アリ〕
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015・島田三郎
○議長(島田三郞君)　少數デアリマス、動議ハ否決セラレマシタ、是ヨリ日程ニ入リ
マ·、日程第一、國庫出納金端數計算法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報
告ヲ求メマス、委員長岡崎運兵衞君
第國庫出納金端數計算第一讀會ノ繪(〓〓〓)(株式会社長)(二)(確定議)
法案(政府提出)
〔岡崎運兵衞君登壇)
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016・岡崎運兵衞
○岡崎運兵衞君　國庫出納金端數計算法案ノ委員會ノ經過及結果ヲ御報告申シ
マ、委員會ニ於キマシテハ本案ニハ一ノ議論モナクシテ可決ヲ致シマシテゴザイマス、一
致ヲ以テ可決ヲ致シマシタ、此段御報告ヲ申シマス
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017・福田又一
○福田又一君　本案ヲ二讀會ヲ開クコトニ致シマシテ、直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ
省略シテ委員長ノ報告通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
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018・島田三郎
○議長(島田三郞君)　福田又一君ノ說ニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=18
019・島田三郎
○議長(島田三郞君)　御異議ガナイト認メテ確定致シマス、日程第二、帝國大學特
別會計法中改正法律案第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス委員長
大橋松二郎君
第二帝國大學特別會計法中改正法律案第一讀會ノ續(雜誌)、
(政府提出)
〔大橋松二郞君登壇〕
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020・大橋松二郎
○大橋松二郞君　帝國大學特別會計法中改正法律案ノ委員會ノ經過ヲ御報告
致シマス、此委員會ハ十七日ニ委員長理事ノ選擧ヲ行ヒヤシテゝ不肖委員長ニ金澤
仁作君ガ理事ニ當選ニナリマシタ(「大聲ニ願ヒマス」「コチラノ方ヲ向イテ顯ヒマス」ト
呼フ者アリ)ソレカラ二十一日ノ午前十時ヨリ委員會ヲ開キマシテ、引續イテ午後モ開會
シマシタ、此當日一日ニ委員會ヲ終了致シタ譯デアリマス、委員會ニ於テ質問ヲナサレ
タル方ハ殆ド杉山君御一人ト言ッテモ可ナルコトデアリマシテ、本問題ハ曩キノ本會議ニ
於キマシテモ同君ヨリ詳細ナル御質問政府當局者ノ答辯等モアリマシテ、、略〓其要領ガ
盡キテ居リマシタガ、尙委員會ニ於テ詳細ナ質問及政府ノ答辯ガアッタ次第デアリマス
所デ此問題ハ一面カラ見マスルト此傳染病〓究所ノ移管ニ關係ヲ致スモノノ如クニモ
見ヱルデアリマスケレドモ其内容ハサウデハナイノデアリマシテ、要スルニ此「ヂフテリヤ」
血〓ノ政府ガ値下ヲスルト云フコトガ此經費ノ上ニ於テ三万圓足ラナイ結果ヲ見ルコト
ニナリマシテ、此政府支出金卽チ傳染病〓究所ガ內務省ヨリ交部省ニ移サレ、文部省
ニ於テハ之ヲ大學ノ中ニ收メマシタガ故ニ、此東京帝國大學ニ向ッテ政府ノ支出金三
万圓ヲ增加スル、斯ウ云フコトニ案ハ歸著致シテ居ルノデアリマス、サウシテ反對ノ御意
見モ出マシタ次第デアリマシタ、反對ノ贊成者ハ意見ヲ提出サレタ人外一名デアリマシ
テ、當日ノ委員ハ七名ノ出席デ反對ノ御意見ハ三分ノ一ノ數ニ充チマセナンダガ故ニ
少數意見ト云フコトヲ御持チ出シニナル便宜ヲ失ハレタ次第デアリマス、ソレ故ニ私ノ聽
取リマシタ反對御意見ノ主要ナル點ダケヲ此處デ御紹介ヲシマスルナラバ先ヅ第一ニ
加テ反對御意見ハ(「分ッタ〓〓」)ト呼フ者アリ)內務省ヨリ文部省ニ所管ヲ移シタト云
フ此移管ノ問題ハ寔ニ無意義デアル、ソレカラモウ一ツニハ政府當局者ハ學制統一ノ趣
意デアル、斯ウ言ハレルケレドモ此血〓ヲ拵ヘルト云フガ如キコトハ一面カラ見レバ殆ド
藥劑ノ製造ニモ近イ性質ノモノデアル、之ヲ學問〓究ノ大學ニ入レタト云フコトハ商賣
ト學問ノ〓究トヲ混同スル嫌ガアル、斯ウ云フヤウナ御意見ガアリマシタ、モウ一ツハ政
府ノ此血〓ノ價ヲ安クスルト云フノハ一面ニ於テ今囘ノ此〓究所ニ於テ造ルトコロノ
血〓ガ-品物ガ惡イガ故ニ其賣先キガ狹カラウ、所謂賣レナカラウト云フコトヲ按ジ
テ値下ヲスル嫌ガアル、斯ウ云フヤウナ御意見ガアリマシタ今一ツハ公衆衞生上ノ關
係ノ問題デアリマス、是ハ傳染病〓究所ガ衞生事業ト直接間接ノ關係ヲ有ッテ居ルト
云フコトハ無論ノコトデアリマスガ、此衞生ノコトヲ掌リマストコロハ內務省デアル、之マデ
ハ內務省ノ方ニ此〓究所ガ所屬サレテ居ッタデアルカラ、甚ダ便宜デ且又〓究所ノ衞
生事業ニ向ッテ貢獻スルトコロモ尠ナカラナンダ事實デアルノデアル然ルヲ之ヲ文部省ノ
方ニ移シ、而モ其文部省ノ中デモ更ニ大學ノ中ヘ之ヲ入レタト云フコトニナッタ結果ハ、
內務省トノ距離ガ甚ダ遠クナッタデアラウ、是ガ此衞生事業ノ上ニ於テ不便ガアルデアラ
ウト云フヤウナ御意見ノヤウニ伺ハレタノデゴサイマス所デー大層聲ガカスレマシテ御
聽取リ惡イカ知リマセヌガ-ツコデ此政府案ニ同意ヲ致シマシタトコロノ意見ハ、要ス
ルニ此反對ノ御意見トシテ所謂杉山君カラ御出シニナッタトコロノ御意見ハ、大イニ吾ミ
ガ傾聽スベキ價値ハ無論アルノデアル、併ナガラ本問題ハ既ニ是ハ「ヂフテリヤ」血〓ノ値
下ノ問題ニ係ッテ居ルノデアッテ、前々議會ニ於テ隨分ヤカマシク此議場ニ於テ花ノ咲イ
タトコロノ移管問題トハ、甚ダ關係ガ遠イノデアル此移管問題ハ御承知ノ如ク政府ノ
行政處分ニ依ッテ既ニ是ハ決定サレタ問題デアッテ、ゾコデ一步ヲ讓ッテ此反對ノ御議論
ノ御方ノ言ハレル如ク、此所管ヲ動カシタノヲモト〓〓ニスルコトノ出來ル(「原案贊成ノ
御意見デスカ」「分リマセヌ」ト呼フ者アリ)私ノハ政府案ニ贊成シマシタトコロノ意見ヲ
御紹介致シテ居ルノデアル攻擊デナイノデス、所デ此所管ヲモトノニシタトコロデ、所
謂問題トナッタ前ノ〓究所トサウシテ北里博士ト云フ如キ德望ノ高イ人等ノ關係
カラ因ッテ來ッタトコロノ問題ノ解決ニハナラナイノデアル、サウシテ見レバ此〓究所ハ今
日ノ處ニ於テハ、是ガ內務省ニ移ラウガ、文部省ニ在ラウガ、縱シ大學ニ在ラウガ、
〓究所ノ問題ト云フモノハ別段(「脫線」ト呼フ者アリ)何等ノ意味ヲナサナイ、而シ
テ此研究所ノ事業中ノ最モ國民ノ多數ニ關係アルトコロノ「ヂフテリヤ」血〓ノ値下ヲ
セラレルト云フコトハ、甚ダ此方面ノ患者ノ便宜トスルトコロデアラウ、當局ノ說明ニ
依リマスルト此「ヂフテリヤ」血〓ト云フモノヽ臨牀上ノ實驗ノ結果ハ生活程度ノ
高イ人ハ少ナク用井テ宜シイガ、生活程度ノ低イ人ハ中ニハ一万單位ヲモ要スルト云フト
コロノ結果ヲ見タ、斯ウ云フコトニナッテ居ル、サウスルト是マデノ値段ニシテ置キマスルト、
一万單位使ヘバ丁度十圓ト云フコトニナル、斯ノ如キ多額ナルモノヲ今四割減ジテ、サ
ウシテ之ヲ安クスルトー云フコトハ、政府ニ於テハ三万圓國庫カラ金ヲ餘計出スコトニナル
ケレドモ、十万ノ「ヂフテリヤ」患者ニ向ッテ便益ヲ與ヘルト云フノ大イナル效果ヲ及ボスト
コロノモノデアル、デアルカラ此政府案ニ對シテ贊成ヲスル、斯ウ云フ意味ニ歸著スルノデ
アル、右ノ結果ニ依リマシテ二名ニ對スル四名ヲ以テ、政府案ニ同意ヲ致シマシタ次第
デゴザイマス、此段御報告ヲ致シマス
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=20
021・島田三郎
○議長(島田三郞君)　杉山四五郞君ノ反對通告ガアリマス、杉山四五郞君
〔杉山四五郞君登壇〕
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=21
022・杉山四五郎
○杉山四五郞君　諸君、本員ハ本案ニ對シ絕對的反對ノ意見ヲ表明スルモノデアリ
マイ、換言致シマスレバ本案ヲ否決セント欲スルノ意見ヲ提出スル者デアリマス、此法律
案ノ要旨ハ申上ゲルマデモナク、傳染病〓究所ヲ東京帝國大學ノ所屬ニ移シマシテ、
而シテ一方ニ於テハ「ヂフテリヤ」ノ血〓收入ニ減少ガアリマスルカラ、同大學ノ特別會計
ノ經理上、政府支出金ヲ三万圓增スト云フ案デアリマスルガ、其血〓ノ減收ヲ來ス所
以ハ本會議ニ於テ先日高田文部大臣ノ言明ノ通リ「ヂフテリヤ」血〓ノ所謂臨牀上
ノ使用量ガ多量ニナッテ居ル故ニ、此多量ニ亙ルトコロノ血〓ヲ使ヘバ勢ヒ貧民ニ向ッテ
モ一種ノ苦痛ヲ與フルガ故ニ政府ハ去ル九月ヲ以テ同血〓ノ價格ノ値下ヲ決行シタ、
卽チ臨牀上「ヂフテリア」ノ血〓ヲ多量ニ用ユルニ至ッタト云フコトヲ說明シテ居ラルヽノ
デアル又大津參政官ハ本議會ノ本會議ノ議場ニ於テ本員ノ質問ニ對シ、又二
十一日ノ委員會ノ席上ニ於テ、同參政官竝ニ松浦政府委員ノ答辯ニ依リマシテ、高
田文部大臣ノ說明ノ足ラザルトコロヲ補足スルト云フ意味ニ於テ、モトハサウハ要ラナカッ
タノデアルガ、臨牀上ノ實驗ニ依ッテ一万單位ノ「ヂフテリヤ」血〓ヲ要スルニ至ッタト云
フ、假ニ一千單位ヲ一圓ト見レバ十圓ト云フヤウナ大變高イトコロノモノヲ要スルカラ、
ソコデ四割減收スル、八万圓ノ減收ヲ見ルノ結果デアルト云フコトヲ言ウテ居ラレル、諸
君、斯ル說明ト云フモノハ專門家以外、若クハ醫務ノ實際ニ當ッテ居ル以外ノ者ニ向ッ
テハ宜シイカモ知レヌガ、苟モ神聖ナル議場ニ於テ一國ノ法律案ヲ提出スルニ際シテ、果
シテ斯ル理由ヲ以テ此提案ノ理由トスルニ足リマセウカ、實際上ノ醫務ノ事實ニ當ッテ
居ルトコロノ鈴木萬次郞君ハ、既ニ委員會ノ席上ニ於テ委員ノ一人トシテ、是ハ寔ニ
荒唐無警ノ話デアル、ソンナコトガ實際ニアッテタマルモノカト喝破シテ居リマスガ無論
至當ノ言デアルト思フ吾〓ノ調ベルトコロニ依ルト、普通ノ「ヂフテリヤ」ハ先ヅ二千單
位ヲ注射シマスレバ治ルノデアル、重キモノガアリマシテモ大抵先ヅ四千單位位テ宜イノ
デアル、成程長イ間ノ實驗上、徐ミト臨牀上ニ用井マスル血〓ノ量ハ增シテハ來テ居リ
マリ、併ナガラ四千單位カラ直ニ一万單位ニ上ルト云フ說明ハ此議場ヲ何ト思ッテ居
ラルヽカ、實ニ本案提出ノ理由ニナラヌ、卽チ頗ル無責任ナル何等根據ナキトコロノ理
由ト信ジマス故ニ、斯ル簡單ナル而モ僞ッテ居ルトコロノ理由ヲ以テ、本案ヲ提出セラレ
テ居ルノデアリマスカラ、吾〓ハ先ヅ其第一點ニ於テ本案ノ提出ノ理由ハ根據ヲ失ッテ居
ルモノト存ジマス、次ニ政府ハ曩ニ文部省ヘ所管換ヲシマシタルコトノ理由、竝ニ今囘
ノ東京大學ニ移シマシタルトコロノ此理由トシテハ、所謂文〓ノ統一學制ノ整理ト云
フコトヲ以テセラルヽガ、併ナガラ諸君凡ソ一國ノ制度ハ自カラ其由テ來ルトコロノ原
因ガアルノデアル、成程文部省ノ所管デアリマスルトコロノ東京帝國大學ノ醫科大學ニ
於テハ、或ハ藥物學上ヨリ、或ハ病理ヨリ、或ハ衞生生理ノ方面ヨリ一般ノ疾病ニ關
スルトコロノ病源ノ檢索、或ハ一般疾病ノ豫防治療方法ノ攻究、或ハ一般疾病ノ豫
防治療材料ノ檢査、斯ウ云フコトハ致シテ居リマスル、卽チ其中ノ一部分トシテ成程傳
染病理ノ〓究モシテ居リマスルケレドモ、併ナガラ申上ゲルマデモナク此細菌學ト云フモ
ノハ實ニ僅々數十年來ノ所謂文化ニ係リマシテ、特ニ各種ノ醫術醫學ニ關スルトコロ
ノモノカラ分科致シマシタコトハ寔ニ日ガ淺イノデアル、然ルニモ拘ラズ、一面ニ於テハ人口
ノ增加交通ノ頻繁ニ伴ヒマシテ、傳染病ノ發生ハ多岐ニ亙リマシテ、其病毒傳播ノ著
シギ、或ハ多數ノ人命ヲ失ハシメ、或ハ幾千万ノ財產ヲ蕩盡シ、實ニ社會上由々シキト
コロノ問題デアリマスルガ故ニ、隨ッテ此傳染病ノ病源ノ檢索及豫防治療方法ノ〓究
及豫防治療ノ材料ノ檢査等ハ急務中ノ急務デアル故ニ歐米各國ニ於テモ大學ノ外
ニ、特ニ此調査〓究ニ關スルトコロノ施設ガ出來テ來タノデアル、我傳染病〓究所モ
等シク其人文ノ進步及社會ノ必要ニ伴ウテ、三十年程以前ニ其芽ヲ出シテ、遂ニ官
立ノ傳染病〓究所ガ出來テ、昨年十月移管ヲ決行セラルヽマデ段々ノ發達ヲ遂ダ來ツ
タノデアル、卽チ特種ノ必要ニ依ッテ此傳染病〓究所ナルモノガ出來テ來テ居ルノデアリ
マヽ、然ルニ之ヲ大學ノ醫科大學ニ附屬セシメタナラバ、何デアラウカ、文部大臣ハ互ニ
相援ケテ發達ヲ計ルト云フ斯ウ云フ御答デアリマシタガ、吾ミハ其言ノ甚ダ失當タルヲ
斷言セント欲スル者デアル、何トナレバ昨年十月此移官ヲ決行シテカラドウ云フ狀態デ
アルカト申シマスト、卽チ林博士、是ハ大學ノ藥物學ノ講座ヲ擔任シテ居ラレル林博士
ヲ以テ、傳染病〓究所ノ技師ヲ兼任セシメ、又長與博士ヲ持ッテ來テ、此人ハ現ニ病
理學ノ講座ヲ擔任シテ居ル其博士ヲ持ッテ來テ、片手間ニヤハリ傳染病〓究所ノ技師
ヲ兼ネシメ、又曩ニハ又曩ニハ橫手博士、今ハ石原博士、卽チ衞生生理ノ講座ヲ擔
任セルトコロノ石原博士ヲ持ッテ來テ、ヤハリ傳染病〓究所ノ兼任技師トシテ居ルノデ
アル、斯ノ如クシテ辛ウジテ辻褄ヲ合セテ居ルヤウナ次第デアル、一昨日鈴木萬次郞君
ガ此有樣ヲ形容シテ、殆ド住職無キ伽藍堂デアルト云フコトヲ言ッタノデアル、吾〓ハ其
言ガ果シテ眞デアルカ否ヤハ知リマセヌケレドモ、是ハ形容的ノ所謂鈴木萬次郎君ノ評
言デアリマスルガ、免ニ角斯ノ如クシテ住職デナキ坊サンガ來タヤウナ形ニナッテ居ルノデ
アル、鈴木萬次郞君ノ言ハレル如ク伽藍堂ト云フコトデナイカモ知レヌケレドモ、免ニ角
專任ニアラズシテ片手間ニ講座ニ於テ〓鞭ヲ執リツヽアル、片手間ニ於テ此特殊ノ施
設ニ來ッテカラニイロ〓〓重要ナル傳染病檢査器デアルトカ、傳染病治療方法、及傳
染病治療材料ノ〓究ヲスルト云フコトガ、果シテ十分ニ出來ルデアラウカ否ヤ、是ハ殆
ド十目ノ視ル所十指ノ指ス所、常識ヲ以テ判斷致シマシテ、甚ダ行政制度ノ寧ロ混亂
デアリマシテ、何等行政整理デハナイノデアル、況ヤ先程大橋委員長カラ御話ガアリマシタ
ノデアリマスルガ、此傳染病〓究所ハ單リ病理ノ〓究ヤ豫備治療材料ノ檢査バカリデナ
イノデアル、卽チ痘苗ヤ血〓ヤ其他細菌學的豫防治療材料ノ檢査ヲシテ居ルノデアリマ
スルガ、此傳染病〓究所ヲ大學ニ移シマスト云フト、大學ハ一面ニ於テハ文〓ノ府デア
ん、其文〓ノ府ト致シマシテ此血〓類ナドノ製造ヲ致シ、又販賣ヲスルト云フコトハ卽
チ文〓ノ府ヲ化シテ藥品製造販賣ノ府トスルノデアル、是ガ果シテ行政ノ整理デアリマ
セウカ、是ハ寧ロ行政制度ノヤハリ混亂デアル、故ニ政府者ガ此事ヲ以テ行政整理デア
ルト云フコトヲ言フノハ確ニ其立論ノ根本ヲ誤ッテ居ルノデアリマス、殊ニ一言申サンケ
レバナラヌノハ此林、長與、石原ノ如キ各博士諸君ガ、一面ニ講座ヲ持ッテ居ッテ、而
シテ同時ニ於キマシテ「ラボラトリユーム」〓究室ニ於テ、傳染病ノ檢査ヤ、病源ノ檢査
ヤ、傳染病豫防治療方法ノ〓究ヤナドヲ致シテ居ラレナガラ、又一面ニ於テ傳染病〓
究所ノ「ラポラトリユーム」〓究室ニ於テ同ジコトヲスルト云フコトハ、同一ノ人ニ依ッテ同
一ノコトヲスルト云フコトハ殆ド二重ノ機關ト云フモノヲ設置スル結果ニ歸スルノデア
ル、スルト若シ大學ニ於テ十分ヤリ得ナイカラ、此所ニ於テヤルト云フナラバマダ理由ガ立ツカ
知ラヌケレドモ、事實同ジ人間ガヤルカラ如何二言ヲ巧ニ飾ッテモ、結局片方ハ存立ノ所以
ヲ失ッテ居ルノデアル故ニ政府者ハ寧ロ傳染病〓究所ヲ廢スルト云フ方ガ宜イカモ知レナ
イ、故ニ此行政整理ヲ爲ス爲ニ、此移管ト云フコトヲ說明セラレテモ吾〓ハ首肯スルコト
ガ出來ナイ所デアリマス、次ニ是ハ最モ重要ナル案件デアリマスルガ、本員ハ本議場ニ於テ
又委員會ノ席上ニ於キマシテモ政府當局者ニ質問ヲ致シマシタ、其質問ハ元來傳染病〓
究所ハ傳染病ノ流行甚ダシク、地方官憲及中央ノ當局ガ活動スル場合ニ於テ、此傳染
病ナルモノガ非常ニ發生シテ激烈デアル又傳播ガ猛烈デアル、而シテ。或ル場合ニ於キ
マシテハ今マデ分ラヌヤウナ傅染病ノ發生ヲ見ル、サウ云云時ニハ勢ヒ專門的ナル所ノ此傳
染病〓究所ノ所長ヲ初メ技術員ト云フモノヽ力ヲ借リマシテ、卽チ中央ニ於テハ內務
大臣ガ其衞生行政ヲ遂行スル所ノ手段方法ト致シマシテ、是ガ補助機關ヲ活動セシメ
テ居ッタノデアル、所ガ文部省ニ移スト云フト內務大臣ガ左右ノ手足ノ如ク之ヲ運用
スルニ甚ダ不便デアル、尙一步進ンデ今度ハ之ヲ大學ノ方ノ所屬ニ移シマシタナラバ如何
デアラウカ、其距離ハ頗ル遠ザカッテ來ルノデアル、其衞生行政ノ目的ヲ遂行スル上ニ於
テ、必ズヤ隔靴搔痒ノ感ガアルデアラウト思フ卽チ不十分ナル結果ヲ來シハシナイカト云
フコトヲ氣遣ッテ質問致シマシタ、所ガ斷ジテ其憂ナシト云フコトヲ答辯セラレタノデアル
併ナガラ諸君、先程モ申シマス通リ一方ニハ大學ノ講座ヲ持ッテ居ル所ノ〓授デアル、
其〓授ガ片手間ニ傳染病〓究所ニ於テカラニヤッテ居ルノデアリマスカラ、斯ウ云フ若シ
十分ノ活動ヲセシメント欲スルナラバ、必ズ其本務タル所ノ〓授ノ任務ニ支障ヲ來スノ
デアル、此支障アルニモ拘ラズ、尙且之ヲ使ハントシマスレバゝ文部大臣ノ責任ヲ如何ニ
スルノデアル內務大臣ハ大ニ衞生行政上ノ必要ニ使ハント欲シ、而シテ文部大臣ハ
之ニ對シ自己董督ノ責任上、其講座ヲ漫リニ休マスコトハ出來ナイトナッタナラバ、茲ニ
於テツマリ權限ノ抵觸ヲ惹起シテ、伴レテ行ク、イヤヤラレナイト云フ間ニ於テ傳染病ハ
構ハズドンノ〓流行ヲ激シクシツヽアル斯ノ如クシテ尙且衞生ノ行政ヲ完ウスル上ニ於
テ、何等支障ナキヲ得ラレルカドウカ、是レ殆ド三尺ノ童兒ト雖モ分ッテ居ルノデアル、卽
チ衞生行政ヲ遂行スル上ニ於テ、頗ル不十分デアルト考ヘマス、斯ノ如ク論ジ來リマス
ト云フト、政府ガ曩ニ內務省カラ致シマシテ文部省ニ移管ヲシタコトハ無論失當デアル、
而モ尙其失當ニ一步ヲ進メテ東京帝國大學ノ所屬ニ移スト云フコトハ、失當ノ尙一
層甚グシキヲ加フル所以デアリマス、而モ其失當ナル移管ヲ無責任ニモ無定見ニモ輕々
ニ實行シタ結果、血〓收入ノ減收ハ文部大臣ノ說明ニ依リマスルト、單ニ其價格ノ引
下ト云フコトヲ申シマスケレドモ、是ハ價格ノ引下ノミデナイ、價格ノ引下ノミデナイ證
據ハ、二十一日ノ委員會ノ席上ニ於テ、本員ノ質問ニ對スル松浦政府委員ノ答辯ヲ
聞キマスルト思半ニ過グルモノガアル、卽チ賣行ノ實績ト云フモノハ過去三年ニ對比シテ
段々減少ヲシテ來テ居ルノミナラズ、「ヂフテリヤ」血〓ニ於テ第二號ノ千單位ノモノガ減
リマシテ、第三號ノ千五百單位ノモノガ著シク增シテ居ル、是等ハデス、ドウシテモ血〓
ノ效力ノ薄弱ヲ來シテ居ルト云フコトヲ示シテ居ル、是ハ政府ガ無責任ナル移管ヲ斷行
致シマシテ、サウシテ惹起シタルトコロノ血〓ノ收入減ナルモノヲ補ハンガ爲ニ、本年三
万圓ヲ增ス案ヲ提出シテ居ルノデアルガ、此景況ヲ以テ進ミマシタナラバ、來年又何万
圓ヲ增スノデアルカ、其翌年又何万圓ヲ增スノデアルカ、殆ド朝令暮改ノ法律案ノ提出
ヲ見ルノデアル、故ニ根本ニ於テ無責任ナル所謂無定見ナル所ノ此移管ノ結果ヨリ來
シタ所ノ此本案ニ對シマシテ、吾〓ハ絕對的ニ反對ノ意見ヲ表明シ、直ニ此案ナルモノ
ヲ否決シ去ラントスルト云フ意見ヲ提出致シマス
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=22
023・島田三郎
○議長(島田三郞君)　鈴木萬次郞君
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=23
024・鈴木萬次郎
○鈴木萬次郞君　私ハ贊成ノ演說ヲ致シマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=24
025・島田三郎
○議長(島田三郞君)　演壇ヘ
〔鈴木萬次郞君登壇〕
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=25
026・鈴木萬次郎
○鈴木萬次郞君　唯今杉山君カラ御反對ノ御意見ヲ御述ベニナリマシテ、誠ニ再三
私ヲ御引合ニ御出シ下サイマシテ名譽ノ至リデアリマス、不幸ニシテ御熱心ナル御演說
ニ贊成ヲ致スコトガ出來マセヌノデ、私ハ聊カ私ノ今日ノ場合之ニ贊成スルノ相當ナル
コトヲ認メマス、杉山君ノ御論ジニナリマシタコトニ付テ、高田文相ガ當議場ニ於テ本
案提出ノ砌「ヂフテリヤ」病ニ近頃此血〓ヲ多量ニ用井ル云々ト云フコトハヽ杉山君ノ
御說ノ如ク何カ是ハ素人ナル高田文相ハ御承知ナイノデ、御間違ニナッタ御說明デアッ
タラウト思ヒマス傳染病卽チ「ヂフテリヤ」ノ病毒ガ近頃流行ル、「ヂフテリヤ」ガ多量ノ血
〓ヲ用井ンケレバ其效ガナイト云フコトハ絕對ニアルベキモノデナイ「ヂフテリヤ」血〓ハ比
較的此價ノ高イモノデアリマス、是ハ血〓注射ハ金ノ掛カルモノデアリマス、併シ段々此效
用ノ著シイコトヲ知リマシテ、中以下ノ貧民ト雖モ之ニ信賴シテ用井タイト云フ傾向ガ
餘程多クナッタノデ、以前ハ高イモノデアリマスカラ、此馬脾風ト稱ヘテ「ヂフテリヤ」ニ
罹ッテモ貧民ハ之ヲ用井ルニ由ナカッタノデアル、此頃ハ其效力ヲ知ルト同時ニ貧シイ者
デゴザイマシテモ、此「ヂフテリヤ」血〓ヲ用井ルト云フコトニナリマシタノデ、貧民ニモ之ヲ用
井ルヤウニナッタカラ、成ルベク其望ニ應ジテ「ヂフテリヤ」血〓ノ價ヲ廉クサセタイ、斯ウ云
フ說明ノ御間違デアッタラウト思ヒマス、委員會ニ於テ私ガ尋ネマスルト、曩キノ說明ハ
少シ違ッテ居ルト云フヤウナコトデゴザイマシタカラ、是ハ非常ニ力ヲ用井テ御攻撃デゴザ
イマスケレドモ、今日流行致シマスル「ヂフテリヤ」ガ多量ヲ用井ンケレバ治ラヌカラト云フ
ガ如キコトハ荒唐無警ノ言デアリマス、是ハ杉山君ノ御意見ニ私ハ同感デアリマス、ワレ
ナルガ故ニ是ガ何モ理由ニハナリハセヌー反對ノ理由ニナリハセヌカラ是ハ是デ措キマ
ス、ソレカラ今日之ヲ大學ニ移シテ大學ノ林或ハ石原、其他ノ諸博士ガ之ヲヤッテ居ル
ニ對シテ、杉山君ハ餘程御心配ノヤウニ血〓製造ノ未熟ノヤウニ御論難デゴザイマシタ
カ、是ハ反對ノ側ニ立ッタ勢テ斯ノ如ク御論ジニナッタコトデアラウト思ヒマス、我帝國大
學ノ「バクテリヤ」學者ガ血〓位今日拵ヘ得ヌヤウナ阿呆ナ學者ハ居ラナイ、サウ云フ未
熟ナ學者ハ-帝國大學ノ名譽トシテ相當ヤハリ腕モアリ能力モ有ッテ居リマス、此〓
ニ付テハ杉山君ナドハ御承知ニナッテ居ルコトデアラウト思フカラ、決シテ大學ニ移シテ大
學ノ諸博士連中ガ、此血〓製造ニ從事致シマシタト云フテモ、マサカ疝氣ノ藥ヲ頭痛
ノ藥ニ拵ヘ間違フヤウナコトハナイ、又利クベキ或一程度ノ效力ヲ有シ得テ居ルカ得テ居
ラヌカ分ラヌヤウナヤ血〓ヲ造ル氣遣ハナイ、日本帝國大學ニ於テ專門デ修得セラレタ
名譽アル是等ノ博士ガ從事致シマシテモ、今日ハ立派ナ血〓ヲ拵ヘル力ハ綽々トシテ餘
裕ガゴザイマスカラ、此點ニ付テハ深ク御心配ガ要リマスマイト存ジマス、ソレカラ元來私
ハ此傳染病〓究所ヲ彼ノ名譽アル北里博士ノ手カラ之ヲ離スニ至ッタト云フコトニ付テ
ハ、私ハ遺憾ニ存ジテ居ル、甚ダ宣シカラザルコトデアッタトハ杉山君ト感ヲ同ジウ致シテ
居リマス、併シモト〓〓此北里博士ヲシテ傳染病〓究所ヲ大學ト別ニ獨立サセタ所以
ハ何處ニアル、其原因ハ何處ニアル、成ルベク學問ハ競爭的ニ攻究的ニ、互ニ甲ト云ヒ
乙ト云ヒ競爭的ニヤラセルト云フコトガ、學問〓究學理〓究ノ一ツノ要デアル、故ニ大
學ノ別科ノ大學ノ別科ニ初ハ私立デ北里博士ガ〓究所ト云フモノヲ置クト云フコ
トニ贊成シテ、尊敬スベキ故長谷川泰氏等ト吾ミトガ此〓究所ヲ置イタノデアル斯ウ
云フ歷史ヲ有ッテ居ルカラ私ハ杉山君ト同感デアッタガ、今日ハ既ニ離レテ、離レルト同
時ニ世ノ中ハ北里博士ノ手腕、此高遠ナル學術ヲ尊崇シテ別ニ私立デモハヤ堂々タル
私立〓究所ガ出來タ、出來ルト同時ニ大學ノ方ニモ出來タ、大學ニ於テハ學生養成ノ
上ニ於テ、〓授ノ上ニ於テ、今日マデノ有樣ハ傳染病〓究ニ關スル血〓製造、其他病
毒〓究治療ニ付テノ設備十分ナラズ、其〓授ニモ多少憾ガアッタノデアル然ルニ一方
ハ大學ニ於テ之ヲ〓究シ、一方ニハ北里博士ガ私立〓究所ヲ置イテ之ヲ〓究スル、今
日マデノ偶然ノ行懸リデモアリマセウガ、例ヘバ肺結核ノ治療ニ付テモ大學ハ「ツペルク
リン」ハ利カヌ、斯ウ言フト北里博士ハ大ニ「ツペルクリン」ノ利ク材料證據ヲ舉ゲテ
之ヲ論ズル、大學ガ甲ト言ヘバ北里博士ハ乙ト言フ、北里博士ガ乙ト言ヘバ今度大學
ニ於テハ反對ノ例ヲ持ッテ來テ甲ト言ハレテ居ル、此間ノ論難、此間ノ爭ガ餘程進步ニ
進步ヲ重ヌルト云フヤウニ、餘程學術上ノ進步ヲナシテ居ルノデアル、此學者連ガ御
殿女中ノヤウニ野卑ナ根性ヲ持ッテ居ッテ、唯分立シテ居ルカラ彼ガ是ト言フカラ我ガ非
ト言フノデハナイノデ、學術上ノ〓究カラ兩々相對シテ大ニ進步ヲ促シタト云フコトニナッ
テ居ル、然ルニ今囘ハ遺憾ナガラ--偶然ニモ大學ニモ〓究所ガ出來ル、北里博士モ
ヤッテ居ル、求メズシテ兩々相對シテ禍ヲ轉ジテ一大幸福ヲ競爭學術ノ上ニ來タスト云フ
結果ニナリマスコトハ、定メテ杉山君ニ於テモ御喜ビデアラウト考ヘマス、私共北里博士
ノ技術ヲ尊崇シ、私立ニヤッタ所以ヲ一步進メテ今日ノ現況ニ相成ッタノデアルカラ、是
ニ對シテ御反對ヲナサルト云フコトハドウモ意味ガ分ラヌカラ、私ハ之ヲ別ツ時ニ於テハ甚
ダ愚擧デアルト思ヒマシタガ、今日ニナッテ見マスト勿怪ノ幸デ、寧ロ是ハ兩々相對シテ
競爭的〓究ヲスルト云フ形ガ備ッタカラ、我日本帝國ノ學界ノタメニ喜ブベキ現象デア
ルト考ヘル、ソレカラ血〓ヲ支部省ニ於テ拵ヘテ販賣ヲスルト云フコトハ、ドウモ文〓ノ府ト
シテ面白カラヌト云フコトデゴザイマスガ、是モ御同感-御同感ダガ物ハ比較的デアリ
マス、成ルベク先ヅ害ヲ除カント欲スレバ大ナルモノヨリ之ヲ除カナケレバナラヌ、大學ハ御
承知ノ通り今日ハ貧民病院的ニナッテ居ラヌ、市中ニ開業シテ居ル醫者ト相竝シデ藥
賣リヲシテ居ル、此點ハドウダ、是ハ私ガ明治二十三年ニ議院ニ出タ、二三十年前ニヤ
カマシク言ッタガ、ヤハリヤッテ居ルデナイカ、市中ノ開業醫ト同ジク純粹ニ貧民ヲ扱ッテ居
リハシナイ、御客樣同然ニ持ッテ來タモノヲ〓究ノ具ニ供シテ居ル、謂ハヾ藥賣リヲシテ
居ル先ヅ大學文〓ノ府ヲ文部省ニ之ヲ云々ト云フナラバ拵ヘタ血〓ヲ賣ルト云フコ
トガ商人ノスルヤウナコトデ、文〓ノ府ノヤルベキコトデナイト云フナラバ先ヅ大學ガ普通
ノ患者ヲドン〓〓集メテ、サウシテ藥ヲ賣ッテ居ル、是カラ先キニ止メテ貫ハナケレバナル
マイ是ハ私ハ贊成スルノデハナイ、販賣ナドト云フコトガ出來ナケレバソレハ洵ニ結構デ
アリマスケレドモ、併シ文部省ニ於テ管轄ヲ致シテ大學デ血〓ガ出來テ、切メテハ今マデ
儲ケテ居ッタヤウナモノヲ自カラ廉クシテ、之ヲ一般ノ需要ニ者ニ販賣スル、斯ウ云フコト
ハ少シモ文〓ノ府カ之ヲヤッタカラト云ッテ、官紀ニ觸レル譯デモナケレバ風〓ノ上ニモ觸
ハルコトデモナカラウト思ヒマス、是ハ餘リ力ヲ入レテ議論スベキ程ノコトデモナカラウ、最
後ニ杉山君ハ衞生局長ヲヤッテ居ラレタガ、成程傳染病流行ナドノ時ニハ餘程北里
博士ノ〓究所時代ニハ杉山君ノ御命令ノ下ニ、各博士モ國家ノタメニ此傳染病防遏
ノ場合ニハ手足トナッテ働カレマシテ、眞ニ之ハ多謝スベキコトデアリマス、併シ是ガ文部
省ニ移ッタカラ、或ハ大學デアルカラ出來ヌト云フコトハナイ、若シ時間ヲ傳染病流行防
遏ノタメニ割クト云フナラバ、北里博士ノ下ニアッタ技師ガ時間ヲ割クモ、大學ノ〓
授ガ割クモ、割クニ至ッテハ同ジコトデアル、人ヲ要スルコトモ五人ナラバ今日ト雖モ五人
デ間ニ合フ、唯學科ヲ持ッテ居ッテ學科ノ時間ヲ捨テハシナイカト云フ多少御議論ガゴザ
イマスレバ、敢テ私ハ强テ反對スル譯デハアリマセヌケレドモ、傳染病〓究所ニ於テ〓究
ニ從事シテ居ル者ガ、流行時ニ方ッテ火消ノヤウニ其局面ニ當リマスト云フコトハ確カニ
アッタ、アッタト致シマシタトコロガ、今日デモヤハリサウ云フ場合ニハ內務大臣ノ御相談
ヲ受ケテ、サウシテ是等ノ諸博士ガヤハリ其事ニ從事スルコトガ出來ルノデアル、前ニ時
間ヲ割イタノガ惡イト云ヘバ、今日モ惡イノデアル前ニヤッタコトガ善イト一云フナラバ今
日從事シテ居ル〓究所ノ所員ガヤハリ喜ンデ國家ノタメニ從事サレルコトデアラウト思ヒ
マヽ、是モ餘程力ヲ入レテ御論ジニナリマシタケレドモ、餘リ此問題ニ對シテ强イ御反對
ノ理由ニハナルマイト思フ、斯ク申シテ參リマスルト、御熱心ノ段ハ洵ニ敬服ノ至リデゴ
ザイマスガ、本案ニ付テハ之ニ反對スル、或ハ否決ヲナサルト云フニ對シテハ餘リ有力
ナル御議論デモナイヤウニ存ジマスシ結果ハ却テ此〓究所ヲ最初獨立致サセマシタ上
ニ而モ一歩ヲ進メタモノニ相成ッタ譯デゴザイマスカラ、願クハ杉山君モ本案ニ御贊成ア
ランコトヲ切ニ希望ノ至リニ堪ヘマセヌ
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=26
027・島田三郎
○議長(島田三郞君)　討論ハ盡キタト認メマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=27
028・福田又一
○福田又一君　本案ニ對シテ二讀會ヲ開クコトニシ、直ニ二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ
省略シテ委員長報告通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=28
029・島田三郎
○議長(島田三郞君)　要スルニ反對論ハ全部否決說、卽チ二讀會ヲ開クベカラズト
云フノデアリマス、本案ニ付テ第二讀會ヲ開クベシト云フニ同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒ
マス
起立者多數
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=29
030・島田三郎
○議長(島田三郞君)　多數-第二讀會ヲ開クコトニ決シマシク、福田又一君ニ御
照會致シマス、開クト云フコトニ決シタノデアリマスガ、改メテ此場合ニ··
帝國大學特別會計法中改正法律案第二讀會(確定議)
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=30
031・福田又一
○福田又一君　直チニ第二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シテ委員長ノ報告通リ可決確
定セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=31
032・島田三郎
○議長(島田三郞君)　第二讀會卽チ唯今ノ場合ニ於テ三讀會ヲ省略シ、直ニ可
決確定ヲ望マレル福田又一君ノ說ニ同意ノ諸君ハ起立
起立者多數
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=32
033・島田三郎
○議長(島田三郞君)　多數-本案ハ可決確定致シマシタ、次ハ日程第三、造幣
局設備擴張費ニ關スル法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長大西五一郞君ノ
報告ヲ求メマス
第三造幣局設備擴張費ニ關第一讀會ノ續((一)
スル法律案(政府提出)(報告
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=33
034・大西五一郎
○大西五一郞君　極メテ簡單ナコトデゴザイマスガ故ニ、本席ヨリ報告ヲ致シマス、造
幣局設備擴張費ニ關スル法律案、是ニ對シマスル委員會ハ二一囘開キマシテ當初ニ於キ
マシテ不肖五一郞委員長トナリ、理事ニ目黑孝平君ガ當選サレマシタ、三囘開キマシ
タ中ノ一囘、卽チ二囘目ハ少數ノ爲ニ開ケマセヌ、漸ク三囘目ニ開キマシタ、而シテ其
時ハ各委員會ガゴザイマシタタメニ、速記者不足ヲ告ゲテ速記者ヲ付ケテ居リマセヌガ
故ニ、巳ムナク此處デ其理由ヲ聊カ陳ズルヤウナ次第ニ成相リマシタ、造幣局精製場ハ明
治二十一年ノ設備ニシテ、現時ノ狀態ニテハ其餘力極メテ僅少デ精製ノタメ該局ニ輸
納致シマス金銀地金ノ高ハ明治四十一年度ニ於キマシテハ金銀ノ量ニ於テ··
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=34
035・島田三郎
○議長(島田三郞君)　靜肅ニ
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=35
036・大西五一郎
○大西五一郞君　大正三年度ニ至リマスマテ此七年間ノ金銀ノ數量ヲ集メタモノヲ
見マスレバ二年ヨリ三年ニ至リマス間ニ於キマシテ、倍數ニ殆ド上ッテ居リマスヤウナ有
樣デアリマス、然ルニ依ッテ此目下ノ機械デハ總テノ事ヲナシ得マセヌヤウナ狀態ニナッテ
居リマス、トコロヘ露西亞ヨリ更ニ此金貨ノ鑄造ヲ委托シテ居ルヤウナ有樣デアリマス、
之ヲ契約ヲ致シマスレバ尙更此機械力ニ於キマシテハ不足ヲ生ズルト云フノデアリマス
故ニ此問題ヲ解決スルノ點ニ於テ、ソレダケノ設備ヲシナケレバナラヌト申シマスルノデ、
本案ヲ提出サレマシタト云フノ理由デアル、其事ニ付キマシテ速記者ガ居リマセヌ故ニ、
協議的談話ヲ致シマシテゴザイマス、要シマスルニ原案ヲ相當ナリト認メテ滿場一致ヲ
以テ可決致シマシタ、此段御報告致シマス(拍手起ル)
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=36
037・福田又一
○福田又一君　本案ニ對シテ二讀會ヲ開キ直ニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シ、
委員長報告ノ通リ可決確定サレムコトヲ望ミマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=37
038・島田三郎
○議長(島田三郞君)　福田君ノ動機ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=38
039・島田三郎
○議長(島田三郞君)　御異議ガナケレバ福田君ノ說ノ通可決確定致シマシタ、是ニテ
日程ニ掲ゲマシタ政府案ハ二一案トモ議決致シマシタ、本日開會ニ先立ッテ報告致シマシタ
政府提出ノ二案ガアリマス、何レモ豫算ニ關係アル議案デス、依テ政府ヨリ緊急ニ議決ヲ
シテ貰ヒタイトノ要求ガアリマシタ、先例ニ據リマシテ此際議事日程ニ加ヘテ直ニ議題ト
爲スコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=39
040・島田三郎
○議長(島田三郞君)　御異議ガナケレバ左樣ニ決シマス、第一案ノ大正三年臨時事
件ノ經費支辨ニ關スル法律案、之ヲ議題トシテ第一讀會ヲ開キマス-武富大藏大臣
大正三年臨時事件ノ經費支辨ニ關スル法律案(政府提第一讀會
四
大正三年臨時事件ノ經費支辨ニ關スル法律案
大正三年臨時事件ニ關スル經費支辨ノ爲政府ハ特別會計ニ屬スル資金ヲ緣
替使用シ又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔大藏大臣武富時敏君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=40
041・武富時敏
○大藏大臣(武富時敏君)　本案ハ大正三年臨時事件費ノ經費ヲ支辨スル財源ヲ
造ルタメ、特別會計ノ資金ヲ繰替使用スルコトヲ許スト云フ法律案デゴザイマス、御審
議ノ上ニ協贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=41
042・島田三郎
○議長(島田三郞君)　異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異識ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=42
043・元田肇
○元田肇君　唯今ノ御宣告ハ二讀會ト云フヤウニ聽取リマシタガ······
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=43
044・島田三郎
○議長(島田三郞君)　否一讀會デス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=44
045・元田肇
○元田肇君　異議ガアルカナイカト云フ御尋ハドウ云フノデアリマスカ
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=45
046・島田三郎
○議長(島田三郞君)　前カラ斯ウナッテ居リマス、直之議題トナシテ異議ハアリマセヌ
カ-ソレニ異議ハアリマセヌカ、分リマシタカ-別ニ發議ガナイト認メマス、仍テ右
議案ノ審査ヲ託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=46
047・福田又一
○福田又一君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託シ審議セラレムコトヲ望ミマ
ス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=47
048・島田三郎
○議長(島田三郞君)　御異議ガナイト認メマス、依テ福田又一君ノ說ニ決シマス、次
ニ朝鮮森林特別會計法廢止法律案、之ヲ議題トシテ一讀會ヲ開クコトニ致シマス、御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
朝鮮森林特別會計法廢止法律案(政府提出)第一讀會
朝鮮森林特別會計法廢止法律案
朝鮮森林特別會計法ハ大正四年度限之ヲ廢止ス
朝鮮森林特別會計ニ屬スル現金ハ朝鮮總督府特別會計ノ歲入ニ繰入レ其ノ
收入支出ノ未濟額ハ之ヲ同特別會計ニ移スハ>
〔政府委員藤澤幾之輔君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=48
049・藤澤幾之輔
○政府委員(藤澤幾之輔君)　朝鮮森林特別會計法、本案ハ御承知ノ通り營林廠
ノ作業ニ關シマスル經理ノタメ、明治四十四年度カラ施行致シ來ッタモノデアルノデアリ
マス、爾來實施致シマスルコト數年、其經驗ニ依リマスレバ最早收支ノ狀態ガ明確ニナッ
テ居リマス、故ニ朝鮮ノ特別法ノ上ニ、又特別會計法ヲ置クト云フダケノ必要ハ最早
ナイノデゴザイマス、殊ニ本來此特別會計法ハ成ダケ多クナイ方ガ利益デ、豫算ハ簡明
ナルヲ尊ビマスコトハ申スマデモナイコトデゴザイマス、故ニ斯ル本案ヲ提出致シマシタガ、
殊ニ曩ニ既ニ提出致シマシテ諸君ガ現ニ御調査ニナッテ居リマスル所ノ豫算案ニ、此結
果ガ明カニナッテ居リマス、旁〓速ニ御協賛アラムコトヲ請ヒマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=49
050・島田三郎
○議長(島田三郞君)　發議ガナイト認メマス、右議案ヲ審査スベキ委員ノ選舉ニ移
リマス、之ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=50
051・福田又一
○福田又一君　本案ヲ議長指名九名ノ特別委員ニ付託シ、審議アランコトヲ望ミ
マス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=51
052・島田三郎
○議長(島田三郞君)　御異議ガナイト認メテ福田君ノ說ニ決シマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=52
053・福田又一
○福田又一君　此場合ニ於テ日程ヲ變更致シマシテ、裁判所ノ設立及移轉ニ關スル
法律案、大正二年法律第九號ノ中改正法律案、及明治三十二年法律第七十號
中改正法律案ヲ議題ニ供セラレムコトノ緊急動議ヲ提出致シマス、其理由ハ本案ハ豫
算ニ關係ヲ持ッテ居リマシテ、急速ニ御審議ヲ請フベキ必要デゴザイマス、此段諸君ノ
御贊成ヲ請ヒマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=53
054・島田三郎
○議長(島田三郞君)　福田又一君ノ日程ヲ變更シテ三案ヲ議題ト爲ストー石フコトノ
動議ガアリマス、之ニ異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=54
055・島田三郎
○議長(島田三郞君)　御異議ガナケレバ右三案ヲ議題ト致シテ委員長ノ報告ヲ求メ
マヽ、鹿島秀麿君
裁判所ノ設立及移轉ニ關スル法律案(政府第一讀會ノ續(委員長)
提出)報告
大正二年法律第九號中改正法律案(政府第一讀會ノ纜委員長)
提出)報告
明治三十二年法律第七十號中改正法律案(委員長)
(政府提出)第一讀會ノ續( 〓
〔鹿島秀麿君登壇〕
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=55
056・鹿島秀麿
○鹿島秀麿君　裁判所ノ設立及移轉ニ關スル法律案外二件、之ニ對シマスル
特別委員會ノ經過結果ヲ御報告ヲ致シマス、本案ノ中問題ニナッテ居リマスモノハ長
崎控訴院ヲ福岡ニ移サウト云フ、此件ガ最モ討論ヲ盡シマシタ利害問題ノアル點アゴザ
リマシテ、其他ハ格別議論ガナイノデアリマス、ソレ故ニ此裁判所ニ設立及移轉ニ關ス
ル法律案ナルモノヽ第一條、卽チ今申上ゲマシタル長崎控訴院ヲ福岡ニ移轉スルト云フ
件ニ付キマシテ、委員會ニ於テ幾多ノ議論ヲ〓ハセマシタ經過及結果ヲ申上ゲル積リデ
ゴザイマス、デ政府ハ此說明ニアリマスル通リ土地ノ狀況交通ノ便否ト云フモノニ基イ
テ、是ガ移轉ノ必要ヲ認メテ本案ヲ出シマシタ譯デ、長崎ノ地タル九州ノ偏ッタル地ニ
在し、段々交通機關ノ發達商工業ノ進步ニ伴ヒマシテ不便デアル、ソレ故ニ此地ヲ變
ヘルノデアルト斯ウ云フノガ一〓デアリマシテ、又長崎控訴院ハ目下殆ド耐ヘラレザル位
ナ腐朽ニナッテ、前年ヨリ白蟻ノタメニ侵サレマシテ、殆ド危險狀態ニ居ルト云フ、是モ
亦一ツノ理由ニナッテ居ルノデアリマス、而シテ本年ノ豫算ニ是ガ移轉ノ經費三十六万
圓ナルモノヽ繼續費ガ現ハレテ居リマスルガ、併シ是ハ卽チ變ヘムト致シマスル福岡縣、
卽チ福岡ノ控訴院ヲ望ムトコロノ方ヨリ致シテ、其全額ヲ寄附スルノデアル、故ニ豫算
ニハ計上シテアリマスルケレドモ、其經費全額ハ福岡ヨリ出スモノデアルト云フ、是モ亦一
ノ理由ニナッテ居ル、然ルニ之ニ對シマシテ此第一條ニ對シテ反對ヲ致シ、第一條ヲ削
除シヤウト云フノ論者ハ、成程長崎ノ控訴院ハ餘程老朽デハアルケレドモ、危險狀態ニ
在ルト云フ程ノモノデハナカラウ、今一年二年ハ待タレヌトームフ程ノモノデハナカラウト云
フ、卽チ朽廢ハ見テ居リマスケレドモ、朽廢ノ程度ニ付テ疑ヲ存シテ居ルノデアリマス、ワ
レカラ改築ト云フコトヲ縱シセヌナラヌト致シタトコロガ、其改築ニ要スル經費ハ須ク國
庫ヨリ出スベキモノデアッテ、寄附ヲ以テスルト云フコトハ餘リ面白ウナイ、公ノ建物モイ
ロイロアリマスルガ、就中控訴院ノ如キ卽チ裁判所ノ如キハ最モ神聖ヲ要スルモノデアル
カラ、土地カラシテ其全額ノ寄附ヲ以テスルナドト云フコトハ威嚴ニモ關係シ、多少ノ弊害
ヲ免レヌト云フ虞ガアル斯ウ云フコトヲ言フノガ一ツノ理由ニナッテ居ル、ソレ故ニ今日
目下ノ財政ガ許サヌナラバ今少シク財政ノ整フマデ辛抱ヲシテ、而シテ國庫ヨリシテ卽チ
國費ヲ以テ建テラレナケレバナラヌモノデアル、ソレカラ又長崎ノ控訴院ハ旣ニ置カレテヨ
リ、今日マデ四十箇年ノ長キ間、何等格別ノ不便ト云フモノヲ感ジタコトモナクシテ存
立シ來ッタモノデアル且又長崎ノ控訴院ハ支那ニ於ケル領事裁判ノ管轄ヲモ含ンデ居
ル譯デアルカラ、內外ノ上カラ見テモ決シテ左程不便ヲ感ジテ居ラザルトコロノモノニシ
テ、四十箇年ノ長キニ亙ッタモノヲ、一朝遽ニ之ヲ他ニ轉ズルト一云フコトハ大ニ利害ニ關
スルモノデアッテ、考ヘナケレバナラヌモノデアル、斯ウ云フヤウナ點デアリマス、斯ノ如キ沿
革ヲ有シテ居ルモノニ對シテハ之ヲ動カサムトスルニハ特別ノ-特殊ノ明カナル事情
ガアラズンバ爲スベカラザルモノデアル、斯ウ云フ〓デアリマス、ソレカラ此寄附三十六万
五千圓ノ中十万圓ト云フモノヽ如キハ福岡縣ヨリ出スト云フコトデアルガ、縣ヨリ十万
圓ト云フ金ヲ出スナドト云フコトハ少シク法律ニ觸レルヤウナコトハナイカト斯ウ云フ點
モアル、又此一條削除ト云フ說ニ贊成ノ中ニハ區々アリマシテ、免ニ角前ニ申スヤウナ事
情デアルカラ、モウ少シ愼重ニ時日ヲ與ヘテ調ベタレバ宜カラウ、何レガ果シテ適當ナル
置クベキトコロノ場所デアルカト云フコトヲ幾重ニモ十分調ベルノガ宜カラウ、全體輕舉デ
ハナイカ、前年區裁判所ノ廢止ノ如キ廢シテ置イテ、又此頃ハ復活ヲ頻リニ努メテ居ル
ト云フヤウナコトガアッテ、事ハ違ヒマスケレドモ免ニ角控訴院ノ位置ヲ變ヘルト云フコト
ハモウ少シク時ヲ與ヘテ而シテ調ベタレバ果シテ何レニ置クノガ宜イト云フコトガ分ル
デアラウ、ソコデ地圖ノ上カラ卽チ地圖ノ上デハアリマセヌガ、免ニ角九州全體ヨリ見テ
熊本ガ全ク中心デアルト云フコトヲ信ズル、殆ド九州九百万人ノ中ガ五百万人マデハ贊成
ヲスルハ熊本デアル、熊本ニ置クベシト云フコトヲ望ム者デアル、斯ウ云フヤウナマア御說モ
アル、又鐵道ト云フモノハ兔ニ角交通ノ第一ノ機關デアルカラシテ、此便宜ヲ見ルノニ
ハ鐵道統計ニ依ルニ限ル、、果シテサウスレバ佐賀ガ最モ中心デアッテ移轉スルノナラバ佐賀
ニ動カサナケレバナラヌモノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)斯ウ云フ說モアルノデアリマス、
免ニ角全部寄附ニ依ルナドト云フコトハ弊害ヲ釀シ或ハ俗ニ言フ運動ト云フモノヲ奬
勵スル虞モアルカラ、免ニ角餘リ好マザル點デハナイカ、以上申シマスルヤウナコトガ卽チ
此第一條削除ニ付テノ理由デアリマス、之ニ對シ卽チ此原案ヲ贊成スル方ノ御說ハ
長崎ハ兔ニ角最早時代ハ去ッテ居ル、長崎ハ控訴院ヲ置ク所ノ時代ハ最早過去ニナッ
テ居ル、ソレデ何ト申シテモ九州ノ諸般ノ事情、有ユルモノヽ事情ヨリシテ看來ッテ福岡
ガドウシテモ中心デアル、福岡ニ移轉スルト云フコトガ適當ナルモノデアル、福岡ハ九州ノ
三分ノ一ノ實力ヲ有シテ居ル、斯ウ云フコトヲ言ハレルテ九州ノ中心論ト云フモノハ
互ニ爭フテ居ルガ、免ニ角此爭ノ勝敗卽チ此中心論ノ優劣ト云フモノハ、大分縣ト云
フモノヲ附ケルト附ケヌトニ在ルノデアル、大分縣ヲ附ケ得ルモノハ優勢、大分縣ヲ附ケル
能ハザルモノハ劣勢ニナルト云フヤウナ御說デアル、ソレ故ニ何トシテモ福岡ガ中心テアル
ト云フコトヲ認メルト云フ說テアル、ソレカラ此原案贊成ノ說デハ寄附ト云フモノヲ非常
ニイカヌヤウニ申スケレドモ、左程嫌フベキモノデハナイ、又先例ニ於テモ多々アルノデアッ
テ、裁判所デアルカラ寄附ガイカナイト云フ理窟ハ無イ、寄附モ適法ニヤレバ一向差支
ナイト認メル、斯ウ云フ說、免ニ角此原案贊成ノ方ハ延期ヲスルト云フ意味ニ於テ、十
分調査ヲ一二年シヤウト云フ說トハ反對デアリマシテ、此時期ガ卽チ此移轉ヲ斷行スル
ノ好時機ナリト認メルト一ムフ說デアル、全體斯ウ云フ位置ノ爭ハ種々利害ヲ異ニシテ
相爭フモノデアルガ、今日ハ最モ此政府ノ當局者中ニ九州ノ人ガ多イカラ、然ルベク協
議モ出來ルダラウト云フ譯デ、此事ガ卽チ一番好イ時機デアルト云フ御說デツマリ以上ノ
如キモノデ甲乙互ニ討議ガゴザイマシタガ採決ニ及ビマシテ七名ニ對スル八名ノ多數
デ、此第一條ヲ削除スルコトニ決シマシタ、而シテ此案中ノ第二條及第三條ハ可決ニ
ナッタノデアリマス、從ッテ此外二案中ノ明治三十二年法律第七十號中ノ改正ハ以前
ノ結果トシテ否決ニナリマシタ、次ノ大正二年法律第九號中ノ改正案ハ同案中ノ控訴
院ノ欄中「長崎ヲ福岡ニ改ム」斯ウアリマスル所ダケガ此決議ノ結果トシテ否決ニナリマ
シテ、其他ノ改正案、卽チ行政區域裁判區域ノ改正變更ハ全部原案ニ可決スルコト
ニナリマシタ、而シテ少數意見ガ森田委員長ヨリ御申出ニナリマシテ、少數意見ガイヅ
レ出マセウト存ジマス-望月君カラ出マス、チヨット改メテ置キマス、右大略的ノ報告ヲ
致シス
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=56
057・島田三郎
○議長(島田三郞君)　少數者意見ノ報告ヲ求メマス-望月長夫君
〔望月長夫君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=57
058・望月長夫
○望月長夫君　委員會ニ於ケル少數意見ヲ御報告申上ゲマス、本案ニハ三四ノ事項
ヲ含ンデ居リマスガ、少數意見ハ三案トモ全部原案ヲ贊成スルト云フノデアリマス、而シ
テ三案ノ中デ問題トナリマシタノハ長崎控訴院ヲ福岡ニ移スト云フ點ノミガ問題ニナリ
マシタノデ、卽チ少數意見ハ長崎控訴院ヲ福岡ニ移スコトヲ至當ト認メルノデアリマス
其理由ハ唯今略〓委員長ヨリ御述ベニナリマシタ通リデアリマス、長崎控訴院ヲ現在ノ
儘ニ存置スルコトハ到底不當デアルト信ズルノデアリマス長崎控訴院ハ政府者ノ
說明ノ如ク、事實ニ於テ殆ド破壞ニ近キモノニナッテ居ッテ、到底其儘ニ維持スルコトハ
出來ナイ狀態ニアルコトハ疑ガナイノデアリマス、實地ニ立入ッテ三日保タナイカ、一年
保タナイカ、何十日保タナイカト云フヤウナコトニナリマスレバ、ソレハ程度ノ問題デゴザイ
マスガ、常識ニ於テ控訴院トシテ控訴裁判事務ヲ執ル官署トシテ、到底現在ノ儘デ存
置スルコトノ出來ナイコトハ是ハ何人ニモ判斷シ得ベキ狀態ニ在ルノデアリマス、而シテ
此建物ハ改築ノ時期ニ迫ッテ居リマスト同時ニ、長崎ト云フ位置ガ至當デアルカドウデア
ルカ、長崎ハ以前ニ於テハ九州ノ中樞デアッテ最モ適當ナ場所デアッタコトハ其設置當
時ニ遡リマスレバ誰シモ異論ノ無イ點デアリマス殊ニ歐羅巴亞米利加何カノ各國
ガ治外法權ヲ有ッテ居ル時代、領事裁判ノ範圍ノ最モ廣カッタ時代ニ於テハ、九州唯一
ノ貿易港デアッタ、長崎ニ控訴院ヲ置カレタコトノ至當デアッタコトハ是ハ論ハナイノデアリマ
ス、併ナガラ爾來四十有餘年ノ歲月ヲ閱シテ時勢ノ變遷ハ總テノ點ニ於テ長崎ノ位置
ヲ變ジ、、是ト同時ニ他ノ場所ニ於テ大ナル發展ヲ來シタ場所ガアリマシテ、今日ノ長崎ハ
遺憾ナガラ九州ノ中樞ト申スコトガ出來ヌコトハ、是ハ單ニ土地ガ西北ニ偏在シテ居ル
ト申スノミナラズ、人口、訴訟數、富ノ力、生產ノ力、有ユル取引ノ件數、總テノ點カラ
見マシテ何人モ爭ヒ得ナイ點デアルノデアルカラ、長崎ニ控訴院ヲ此儘存置スルコトハ到
底出來ナイ、卽チ長崎控訴院ヲドウシテモ急ニ改築シナケレバナラヌト云フ事實ト、長崎
ガ既ニ控訴院ノ所在地トシテ適當デナイト云フ事宜買トニ於テ、長崎ヲ他ニ移轉スルト
云フコトハ當然來ルベキ必要デアル長崎ヲ其儘ニ存置スベシトノ議論ニ對スル反對ノ
理由ハ卽チ是デアルノデアリマス、次ニ長崎ヲ他ニ移轉スルトシテ原案ノ如ク之ヲ福岡
ト定メルコトガ至當デアルカ、ドウデアルカ、此問題ニ對シマシテハ委員會デ反對ノ幾多
ノ議論ヲ承ハリマシタガ、此議論ハ全ク統一セラレヌ議論デアリマシテ、、各委員ノ所說ハ
銘々個々ノ意見ニナッテ居リマシテ、或ハ熊本ヲ適當ナリト主張サレル方モゴザイマスレ
バ佐賀ヲ適當ト主張サレル方モアル又福岡ヲ適當ト主張サレル方モアリマシテ、何レ
モ地方々々ノ效能ヲ澤山ニ述ベラレタノデアリマス、ケレドモ公平ノ立場カラ考ヘテ見マス
ルト、政府ノ原案ハ最モ適當デアル、委員長カラ御述ベニモチヨットナリマシタガ、政府ハ政
府ノ案ヲ維持スルガ爲ニ各種ノ表ヲ出シテ居リマス、熊本ノ方カラ私共ノ手ニ熊本デ御調
ベニナッタラシイ參考ニ資スベキ統計ナンカヲ書イタモノモ受取リマシタ、是ハ主トシテ人
口及訴訟ノ件數デ比較ガシテアリマシテ、長崎ヲ便トスルモノト長崎ハモウ此問題
ニ除キマスガ、福岡ヲ便トスルモノト、熊本ヲ便トスルモノトノ比較ガ書イテアリマシテ、
政府ノ方カラ出テ居ルノト、熊本デ出來タモノトヲ見マスルト例ヘバ人口ニ於テ殆ド
百万程違フ、事件數ニ於キマシテモ略〓是ニ比例シタヤウナ違ヒガアリマス、是ハ專ラ大
分ヲ福岡、卽チ政府ノ側デハヤハリ福岡ヲ便利トスルモノヽ中ニ算入シテ居リマスルシ
熊本ノ方デハ大分ヲ全部熊本ヲ便トスルモノトシテ算入サレテ居リマシテ、此大分ト云
フモノガ果シテ全部福岡ヲ便トスルカ、全部熊本ヲ便トスルカト云フコトニ付テハ、疑
ヒガゴザイマスルゲレドモ、何レニシテモ大分ノ全體ニ亙ッテノ利便ハ決シテ一方ニ偏セズ
シテ、略〓相半バスルト見テ判斷ヲシタナラバ至當ナコトデアラウト思フ、是ハ政府ノ方
ノ統計モ熊本ノ方ノ統計モ、、相匹敵スルモノトナッテシマヒマシテ、是デハ判斷ノ致シ
方ハナイノデゴザイマスルガ、人口訴訟件數ヲ今ノヤウニ見タ點ヨリ見ズシテ、他ノ總テノ
點例ヘバ生產額トカ、納稅額トカ、銀行ヤ會社ナンカノ資本、及其取引狀況、爲替ヤ
振替貯金ナンカノ口數、活動狀態及ビ鐵道港灣、道路ナンカノ現狀ナンカカラ〓括シ
テ之ヲ見マスレバ福岡ガ熊本ヨリモ遙ニ優勝ノ地位ニ立ッテ居ルコトハ甚ダ明白ナンデ
アル、是等諸般ノモノヽ比較ヲ單三福岡ト熊本ノミデナク致シマスルト、他ノ總テノモノ
ハ大體ニ於テ熊本ハ福岡ノ半バニ達シマセヌ、福岡ヲ九州ノ全部ニ比較シマスレバ殆ド
大體ノモノニ於テ其半額、若クハ三分ノ一ヲ占テ居ル、訴訟件數ノミニ付テ考ヘテ見
マシテモ熊本ニ於ケル訴訟件數、長崎ニ於ケル訴訟件數、福岡ニ於ケル訴訟件數ヲ比
較致シマスレバ福岡ハ確ニ熊本長崎ノ一一縣ヲ合セタルモノヨリ多ク、若シ一縣每ニ
比較致シマスレバ福岡ハ殆ド三分ノ二ヲ占テ居ルモノガ多イ、控訴院ヲ必要トシ高等
裁判所ヲ必要トスル有ユル狀態ガ、斯ノ如ク熊本ヨリモ福岡ニ多イト致シマスレバ、福岡
ヲ正當ノ位置トスルコトハ多言ヲ要シナイト思フ、唯熊本ガ福岡ヨリモ重要デアラウカ
ト思ハルヽ點ハ、沖繩カラ九州ノ西北端ニ達スル里程ノミヲ計算致シマスレバ熊本ノ
方ガ中央ニ近イコトニナリマスケレドモ、斯ノ如キ問題ヲ解決致シマスル中央ナル言葉
ハ決シテ里程ノ延長ノミニ依ルベキモノデハナクシテ、前來申シマシタヤウナ總テノ狀況
ヲ考察シテ、實力ノ中樞ヲ以テ卽チ中心ナリト見ナケレバナラヌノデゴザイマスカラ、是等
ノ諸點ヨリ致シテ福岡ハ優勝デアルコトハ甚ダ明白デアリマスノミナラズ、更ニ福岡ト熊
本ノミヲ比較スル場合ニ於テ、熊本ハドウシテモ福岡ニ及バヌノハ、是ハ前ニ申シマシタ卽
チ尙長崎ヲ主張サルヽ人ノ論據ニナリマスル領事裁判ノ上訴デアリマス、領事裁判ノ上
訴ト云フモノハ今日其必要ガ非常ニ少クナッテハ居リマスルケレドモ、今日是アルコトハ勿
論デゴザイマスガ、福岡ニ致シマスレバ博多、若松、門司、數多ノ港ヲ控エテ居リマシテ、
長崎ニ比較シテ餘リ讓ラズ、寧ロ或ハ今日ニ於テハ實際便利カモ知ラヌ位デアリマスガ、
熊本ハ全然此便利ヲ缺イテ居ル、故ニ若モ長崎ヲ他ニ移ストシテ委員會ニ現ハレタ
各地ヲ相比較シマシテ、其最モ適當ナルモノヲ選ミマスレバ、ドウシテモー福岡ガ最モ適當デ
アル故ニ原案ガ福岡ニ位置ヲ取ッタコトハ甚ダ正當デアル、之ニ對シテ反對ノ理由トシ
テ政府ガー福岡ニ控訴院ヲ新設スル經費ヲ寄附ニ取ッタノガイケナイ、最モ公平嚴格ニ
裁判事務ヲ扱フベキ控訴院ノ新設費ヲ、人民ノ私財ヲ寄附セシメテ設立スルコトハ
甚ダ宜シクナイ、裁判所ノ權威ニ關スルカラ之ヲ否定シナケレバナラヌト云フ議論モゴザ
イマシテ、私共モ原則トシテハ公ノ役所ヲ建築スル費用ハ、勿論公ノ經費ヲ以テ支出ス
ベキモノデアッテ、此原則タル道理ニ於テ敢テ反對ヲ致スノデハゴザイマセヌ、寧ロサウアル
コトヲ希望スルノデゴザイマスガ、國庫ガ充實シテ有ユル費用-有用ノ國費ヲズン〓〓
出シテ行クコトノ出來ル場合ニ於キマシテハ、此正論ヲ主張スルコトハ勿論當然デゴザイ
マスガ、今日ノ國庫ノ狀態ハ遺憾ナガラソレ程ニ達シテ居ナイコトハ何人ニモ能ク分ルコ
トデアル、而シテ寄附ヲ以テ斯ウ云フ事柄ヲ補供スルコトハ決シテ此問題ノミデハナイ、
福岡ニ控訴院ヲ建ツル費用ノミデハナイ、他ニモ澤山アル、殊ニ省令カ何カデ公ニ極メテ人
民カラ持ッテ來タ金デ公署ヲ拵ヘル規定スラ設ケテアルノモ澤山アル、而シテ控訴院ガ寄
附デ出來タガ爲ニ、控訴ノ裁判ニ公平ヲ缺クガ如キ疑ヲ容レルト云フコトハ、實ニ問題ニ
ナラヌ話デ全ク無用ノ難癖デアル、殊ニ從來裁判所ト申セバ(「長イト福岡ニ贊成ガアリ
マセヌ」「時間潰シダ」ト呼フ者アリ)恰モ惡人カ何カデ無ケレバ出入リシナイ如ク思ッテ、サ
一般人民ハ之ヲ嫌忌スル狀態モアッタノデアルノニ、今日人民ガ進ンデ私ノ財產ヲ抛
テ其建築ヲ希望スルト云フノハ一面ニ於テ裁判事務ノ信用ガ非常ニ高マッタ象徵ト見
テモ宜イノデアルカラ、敢テ之ヲ以テ此案ヲ非難スルノ理由トナスニハ足ラヌ、若シモ是ガ
絕對ニ非ナリトノ意見デアルノナラバ、唯今一〓ニ出テ居リマスル北海道ノ旭川ノ裁
判所ノ新設ノ如キモ無論反對ヲサレナケレバナラヌ譯デアル、此方ニモ明カニ寄附ノ土
地、寄附ノ金ガ新設ノ財源ニナッテ居ルコトハ明瞭デアリマスニ拘ラズ、此方ニ向ッテハ一
言モ反對サレタ方ハ無イノニ、單リ福岡ニ對シテノミ之ヲ以テ口實トセラルルノハ、是
ハ所謂口實デアッテ、彼ノ福岡ヨリ優越ナル道理ヲ占メナイトコロノ人ガ殊更ニ設ケタ口
實ト解釋シテモ差支アルマイ、中ニハ此案ガ不調ベデアルカラ一年ヤ二年延バシテモ宜シ
イト云フ理由デ、反對サレタモノモアッタヤウデアリマスガ、此點ニ對シマシテモ今日ハ此
問題ヲ解決スルニ最モ適當ナ時期デアッテ、且斯ノ如キ問題ハ最モ速ニ解決スルヲ公ノ
幸福トスル斯ウ云フ位置ノ問題ノヤウナ、イツ出シテモ去年出シテモ今年出シテモ、爾來
二年三年經ッテ出シテモ、必ラズ爭ノアルコトハ極リ切ッテ居ル、今日ガ最モ適當デアルト
申スノハ前キニ鹿島委員長カラ略〓申シマシタ如ク、現ニ廢セラレル長崎ニハ田川參政
官ガ居ラルヽ或ル一部ノ人ガ主張セラレル佐賀ニハ總理ナル大隈大臣ガ出テ居ラレ
ル、大分ニハ箕浦遞信大臣ガ出テ居ラレル、熊本ハ現政府ヲ擁護スルトコロノ同志會
ノ根據地トシテ、假令政府ニハ(「無用々々」ト呼フ者アリ)直接ニ關與シテ居ル人ガ無
イトシテモ十分實力ノアル人ガ多イノデアル、九州ノ利害、九州各地ノ利害ハ最モ公
平ニ、最モ適確ニ、政府ニ表明セラレル時期デアル、此時期ニ於テ政府ガ特ニ福岡ヲ以
テ適當ナリトシテ提案ヲサレタノデアルカラ、一面ニ於テ是ハ福岡ガ最モ適當ノ候補地デ
アルコトヲ表明スルコトニナルト同時ニ、又是等候補地以外ノ土地ノ方モ、十分ニ慰藉
シ得ラルル餘地ガアルト信ジ得ラレルノデアル、是ガ現在ニ最モ此問題ヲ解決スルニ適當
ナ時期デアルト云フ譯テアッテ、更ニ前ニ申シマシタ如ク、斯ノ如キ問題ヲ後年ニ延バシテ
置ケバ、ソレダケ人心ニ波動ヲ與ヘ紛爭ノ種ヲ蒔クコトニナッテ、公益上甚ダ面白クナイ
コトデアルカラ速ニ決スルガ宜イ、寧ロ私共一個ノ立場カラ申シマスレバ、此位吾ミノ反
對側ノ諸君ニ動搖ヲ與ヘル問題ハナイ、斯ウ云フ問題ガ長ク生キ殘ッテ居ッテ、政府與
黨ニ覺隙ヲ生ジ壞ハレテ來ルコトハ若シ亂ヲ好ミ勝ヲ望ム心カラ申セバ其方ガ宜イカモ
知ラヌ(「無用ケ々」ト呼フ者アリ)公益上ノ意見ト致シマシテハ決シテ左樣ナコトハ言ハ
レヌノデアリマスカラ、是ハ此時期ニ於テ速ニ解決スルガ相當デアルカラ原案ヲ通過セシ
ムルコトガ最モ適當デアル、斯ウ云フ理由デ全部原案ヲ贊成スルコトニナリマシタ、速ニ原
案通リ御贊成ニナリマシテ、全部原案ノ通過致シマスルヤウニ希望致シマス(拍手起ル)
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=58
059・宮原幸三郎
○宮原幸三郞君　私ハ極ク簡單ナル質問デゴザイマスカラ自席ヨリ申シマス(「登壇
登壇」ト呼フ者アリ)登壇致スダケノ問題デゴザイマセヌ、僅ニ一ツダケデゴザイマス私ノ
政府ニ問ハント致シマスルトコロハ、政府ハ近キ將來ニ於テ控訴院ノ數ヲ增減シ若クハ
位置ノ變更等ヲナスノ內議ガアルヤ如何、若シ大臣其他ノ諸氏ニ於テ其意思ガアルト
致シマスルト伺ヒタイノデアリマス、極ク簡單デゴザイマス
(「八百長」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=59
060・島田三郎
○議長(島田三郞君)　豐島政府委員
〔政府委員法學博士豐島直通君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=60
061・豐島直通
○政府委員(法學博士豐島直通君)　長崎控訴院ノ移轉ノ問題ニ付キマシテハ、廣
島控訴院廢止ヲ結果トシテ招カヌカト云フ御疑ガ、大分委員會ニ於テモゴザイマシタノ
デアリマスガ是ハ唯今政府ニ於キマシテ少シモ此廣島控訴院ヲ廢止スルト云フ如キ考
ハ有ッテ居リマセヌノデゴザイマス、事件ノ件數カラ致シマシテモ、大正二年ニ於キマシテ
ハ、東京大阪ノ控訴院ニ亞ギマシテ長崎ノ控訴院ノ受理件數ト云フモノガ一番多ウゴ
ザイマス、又大正三年度ニ於キマシテハ廣島控訴院ノ控訴事件ノ受理件數ガ多イノデ
ゴザイマス、斯ウ云フヤウテ狀態デゴザイマスカラシテ、廣島控訴院ヲ廢スルトー云フガ如キ
考ハゴザイマセヌ(「高聲ニ望ム」ト呼フ者アリ)又其他ノ控訴院ニ付テ之ヲ動カストカ云
フヤウナ考ハ、今日ノ所ハ有ッテ居リマセヌ、此段御答ヲ致シマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=61
062・相島勘次郎
○相島勘次郞君　チヨット御伺ヒシタイ
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=62
063・島田三郎
○議長(島田三郞君)　質問デスカ-相島勘次郞君
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=63
064・相島勘次郎
○相島勘次郞君　長崎ガ適當ナ地デナクナッタト云フコトハ、假令大臣デナクテモ現政
府ニ對シテ有力ナル田川參政官ナドガ贊成ヲシテ居ルノダカラ、長崎ガ惡イト云フコトハ
モウ私ハ分リマシタ、ケレドモ私ハ此福岡ト熊本ノ何レヲ取ルカト云フコトニ付テ今惑ッテ
居ルノデアリマスガ、私ノ聞ク所デハ長崎控訴院ニ現ハルヽ刑事民事事件ハ誠ニムヅ
カシイ人ノ裏ミヲ搔イテ陰險惡辣ナル事件ハ何處カラ來ルカト云フト、熊本縣カラ多ク
來ルト聞イテ居ル(拍手起ル)併ナガラ其事件ハ陰險デアッテモ數ハドウデアルカト思ッテ
居ッタ所ガ、今望月君ノ說明ニ依ルト、刑事民事ノ訴訟ノ數ト云フモノハ福岡縣ノ方
ガ多イト云フ說明デアリマシタガ、多イト云フコトハ數ノ上ニ多イノカ、人口ニ比例シテ多
イノカ、少ナイノカ、其事ヲチッヨト聞イテ置キタイ、政府ノ御答辯ヲ願ヒマス
〔政府委員法學博士豐島直通君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=64
065・豐島直通
○政府委員(法學博士豐島直通君)　唯今ノ御尋ニ付キマシテ福岡ノ人口ニ比例シ
テハ福岡ノ地方裁判所ノ判決數ガ多イノデゴザイマス、之ニ反シテ長崎控訴院ニ於テ
受理スル控訴ハ殆ト長崎地方裁判所ノ方カラ出テ來ル控訴事件ト福岡地方裁判所
ノ方カラ出テ來ル控訴事件ト、同ジ位ノ數ニナッテ居リマス、其理由ハ恐ラク控訴院ノ
所在地ニ於テハ控訴ガ遣リ易イカラシテ、割合控訴ガ多ク出ルコトハ考ヘラレマスル之
ヲ福岡ニ移シマスレバドウシテモ判決數ガ遙ニ福岡ノ方ガ餘計ニナッテ居リマスルカラ、控訴
ノ件數ト云フモノハ福岡ノ方ガ餘計アルダラウト思ヒマス、從ヒマシテ唯人口ト控訴件數
トノミヲ比較シマスレバ、福岡ノ控訴件數ハ今日ノ表ノ上デハ少ナクナッテ居ルト云フ譯
ニナッテ居リマス、此段御答ヲ致シテ置キマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=65
066・小池仁郎
○小池仁郞君　質問ガアリマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=66
067・島田三郎
○議長(島田三郞君)　小池仁郞君
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=67
068・小池仁郎
○小池仁郞君　政府ニ御尋シテ置キタイコトガアリマス、根室地方裁判所移轉ガ議題
ニ上ッテ居リマスガ、根室地方裁判所移轉後ノ處置ハドウ云フコトニナリマセウカ、地方
裁判所ノ支部ヲ直ニ設置セラレルト云フコトニナリマスルカ、地方裁判所ノアッタ所ヲ直
グニ移サレテ、其後ガ普通ノ區裁判所デアルト云フコトハ、地方人民ノ爲ニ不便不利益ハ
蓋シ想像ニ餘ルコトデアル、政府ハ之ヲ如何ニ處置セラレル方、簡單ニ御尋ヲ致シマス
〔政府委員法學博士豐島直通君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=68
069・豐島直通
○政府委員(法學博士豐島直通君)　唯今ノ御尋ハ釧路裁判所ヲ移轉スル-根
室地方裁判所ヲ釧路ニ移轉スルト云フコトニ付テノ御尋デアリマス、地方裁判所ヲ移
轉シタ後ハ支部ヲ設クルト云フコトニ考ヘテ居リマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=69
070・古谷久綱
○古谷久綱君　斯ノ如キ司法省ニ取ッテハ重大ナル問題デアリマスガ、當局ノ司法大
臣ガ御見エニナラヌヤウデアリマスカラ、ドウカ御出席ヲ願ヒタイモノデ··
(「贊成」「質問終結」「討論ニ入ルベシ」「採決ヲ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=70
071・島田三郎
○議長(島田三郞君)　通告致シマス-一讀會ノ場合ニ於テ討論ハ盡キタト思ヒマ
ス
〔「通〓ガアリマス」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=71
072・島田三郎
○議長(島田三郞君)　ソレニハ二讀會ノ場合··
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=72
073・望月長夫
○望月長夫君　三案併合サレテ居リマスカ、併合サレテ居ルト··
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=73
074・島田三郎
○議長(島田三郞君)　全部二讀會ニ移シテハ··
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=74
075・望月長夫
○望月長夫君　サウハ行キマセヌ
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=75
076・島田三郎
○議長(島田三郞君)　採ル時ニハ區別シテ·······一一讀會ニ移スヤ否ヤニ付テ決ヲ採
ル、其採決ノ方法ハ今御諮リ致シマス、三案中明治三十二年法律第七十號中改正法
律案ハ委員長ノ報〓ハ否決、卽チ二讀會ヲ開カズト云フコトニナリマス、他ノ方ハ皆修
正ニナッテ居リマス、サウスルト是ハ別々ニ採リマス、前ノ二案ニ付テハ二讀會ヲ開クヤ否
ヤノ決ヲ採リマス、前ノ二案ニ付テ二讀會ヲ開クト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=76
077・島田三郎
○議長(島田三郞君)　ソレデハ直ニ二讀會ヲ開クコトニ又御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=77
078・島田三郎
○議長(島田三郞君)　ソレデハ二ツトモ御異議ガアリマセヌカラシテ、直ニ二讀會ヲ開
キ尤モ前ノ二案ダケデ之ヲヤリマス、之ヲ御斷リシテ置キマス
(「ハッキリト言ウテ下サイ」ト呼フ者アリ〕
第三ハ別ニ致シマス、明治三十二年法律第七十號中改正法律案卽チ第三番目ハ別
ニ致シマス、玆ニハ裁判所ノ設立及移轉ニ關スル法律案、大正二年法律第九號中改
正法律案、此二讀會ノ場合デアリマス
(「分リマセヌ、ハッキリ云フテ下サイ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=78
079・本田恒之
○本田恆之君　本員ハ委員長ノ報告ニ贊成ノ通告ヲシテ置キマシタ、ソレハ二讀會ニ
入ル前ニ贊成意見ヲ述ベル方ガ相當ト考ヘマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=79
080・島田三郎
○議長(島田三郞君)　ソレハ卽チ修正意見デアリマスカラ、第二讀會ニ御述ベニナラ
ヌト-前案ヲ二讀會ニ付シマスカラ其時ニ委員長ノ報告通リノ修正案トシテ御提出
ニナッタラ宣カラウト思ヒマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=80
081・本田恒之
○本田恆之君　然ラバ其場合ニ·····
裁判所ノ設立及移轉ニ關スル法律案(政府提出)第二讀會
大正二年法律第九號中改正法律案(政府提出)第二讀會
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=81
082・島田三郎
○議長(島田三郞君)　ソレデハ通告順ニ依ッテ許ス積リデゴザイマス-本田恆之君
〔本田恆之君登壇〕
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=82
083・本田恒之
○本田恆之君　諸君、私ハ委員長ノ報告ニ贊成致シマス所ノ一人デアリマス、詳シイ
コトハ委員長ノ報告ニゴザイマスカラ私ハ簡單ニ贊成ノ意見ラ申上ゲテ諸君ニ委員長
報告ニ贊成セラレルヤウニ希望致シマス、長崎控訴院ハ御承知ノ通リ開廳以來既ニ四
十餘年ニナリマスルガ、一體私ノ考デハ古イ歷史ヲ有ッテ居リマスル所ノ官廳ノ位置ヲ
變更スル如キ事柄ハ、餘程特別ナル理由ニ依ルニアラズンバ容易ニ之ヲ斷行スベキ
モノデナイト考ヘマス、申上ゲルマデモナク地方ノ小サナル都市ニ於キマシテハ一
ノ官廳ヲ中心ト致シマシテ種々ナル經濟上ノ關係其他社會的ノ社會上ノ一ノ關
係ヲ惹起シテ居リマスル、之ヲ甲ノ地カラ乙ノ地ニ移スト云フコトニ至リマシ
テハモト在リマシタ所地方ノ社會事情一ニ大變化ヲ惹起スコトハ言フマデモナ
〃、其影響ガ其關係ヲ有シテ居リマスル所ノ市民ノ經濟的ニ大打擊ヲ受ケルト云
フコトハ申上ゲルマデモナイ事柄デアリマス、新ニ此處ニ役所ヲ設ケルト云フノハ別問
題デアリマス、長イ歷史ヲ有シ、長イ歷史ヲ有シタ結果トシテ種々ナル經濟上其他ノ關係
ヲ惹起ス所ノモノヲ、他ニ移轉セシムルト云フニハ、餘程特殊ノ事情ガ無ケレバナラヌ、確
乎タル事情ガ無カッタナラバ是ガ爲ニ人民ノ蒙リマスル所ノ打擊ト云フモノハ少カラヌモノ
デアルト考ヘル、然ルニ今政府ノ計畫致シテ居ルトコロノ長崎控訴院ヲ福岡ニ移轉
シヤウト云フニ付テノ理由ヲ、政府委員カラモ段々承ッテ見マシタガ、其理由ハ甚タ薄弱
第一ハ長崎ト云フ所ハ地理上ノ中心デナイト云フノガ第一ノ理由、第二ノ理由ハ事件
數ガ福岡ノ方ガ長埼ヨリモ比較的多イ、多イカラ控訴院ノ如キモ事件ノ多イ所ヘ持ッテ
行ッテ置クノガ相當デアル此二ツノ理由ガ政府委員ガ委員會ニ於テ說明致シマシタ所
ノ主ナル理由、尤モ本年八月司法省ニ於キマシテ私ハ當時長崎市民ノ委員ノ資格ヲ
以テ司法次官ニ面會致シマシタトキニ、司法次官ハモウ一ツノ理由ヲ加ヘタノデアル、行
ク行クハ日本ノ控訴院ヲ整理スル必要上ヨリ廣島控訴院ヲ廢シテ、廣島控訴院ノ
管轄ニナッテ居ルノヲ一部ハ大阪ニ移シ、一部ハ長崎ニ移スト云フ意見デアル、若シ此
意見ヲ實行スル場合ニ於テ、旁、〓長崎ニ置クハ長崎ハ地ハ西ニ偏シテ居ッテ不便デアルカ
ラ、福岡ニ移ストコロノ一ノ理由デアルト云フコトヲ司法次官ハ吾ミニ對シテ明言セラレテ
居ル、今日ノ政府委員ハ長崎ヲ福岡ニ移シテ廣島控訴院ヲ廢スル考ハアリマセス、其
他ノ控訴院ニ付キマシテモ多分ハ移シマセヌト言ハレマスケレドモ、確ニ司法次官ハ司法
次官トシテ吾ミニ公ノ資格ヲ以テ會見ヲ致シマシタル時ニ、私共ニ明言致サレタ事柄デ
アリマス、併ナガラ此三ノ理由共ニ殆ド私ハ理由ヲ爲サヌト思フ、第一長崎ガ西ニ偏シ
テ居ルト云フコトヲ言ハレマスルガ、長崎ガ西ニ偏シテ卽チ九州トシテ西ニ偏シテ居リマス
コトハ長崎控訴院ヲ設置セラレタ當時カラ西ニ偏シテ居ルノデアル、政府委員ノ言葉デ
ハ先年マデハ長崎ガ九州ノ地理上ノ中心デアッタケレドモ俄ニ西ニ偏シタ如キ口氣ヲ以テ
其說明ヲセラレマスノハ如何ニモ不思議ニ考ヘル、長崎ハ九州トシテハ西ニ偏シテ居ルニ
拘ラズ、長崎ニ控訴院ヲ置クト云フコトハ必要ナ理由ガ外ニアル、長崎控訴院ノ管轄
致シマスル所ハ申上ゲルマデモナク九州ノミデアリマセヌ、諸君御承知ノ通リ支那ニ於ケル
帝國領事館ノ控訴事件ト云フモノハ、總テ長崎控訴院ガ管轄致シテ居ル、勿論現在ニ
於キマシテモ支那ニ於ケル帝國領事館ノ控訴事件ト云フモノヲ、長崎控訴院デ裁判致
シマスノハ僅ナ件數デアリマスケレドモ、段々ニ日支ノ關係ヲ考ヘテ見マスレバ私ガ諸君
ニ申上ゲルマデモナク、此後ニ一層種々ナル複雜ナル關係ヲ惹起シテ、移住民モ殖エマセ
ウシ、商取引モ殖エマセウシ、其他政治上、經濟上、商業上ノ關係ニ於テ、非常ニ密
接ナ關係ガアルト云フコトハ申上ゲルマデモナイ、サウ致シマスルト此長崎控訴院ノ管轄
ガ支那マデ及ンデ居ルト云フ關係ヲ以テ考ヘテ見マスルナラバ、西ニ偏シテ居リマス所ノ
長崎ガ、必シモ地理ニ於テ不當デアルト云フコトハ言ヘナカラウト考ヘマス、長崎ニ最初
政府ガ明治初年ニ置キマシタ理由ガ、畢竟是等ヲ包含サレテ居ル理由デアル、其理
由ガ俄ニ消滅シテ居ル譯デハアリマセヌ、又今日マデ四十幾年間長崎ニ控訴院ヲ置
カレタト云フ爲ニ、如何ナル不都合支障ヲ生ジタノデアル、司法當局者ハ一モ事實上ノ
說明ヲ致シマセヌ、長崎ハ九州ノ西ニ寄ッテ居ルカラ不便デアルト云フノミデ、是ガ爲ニ
裁判事務ノ上ニ如何ナル不都合ヲ生ジ如何ナル支障ヲ來シタカト云フ事實ヲ舉示スル
コトガ出來ナイ、申上ゲルマデモナク、明治十年前後ニ置カレタ控訴院デアリマスカラ、其當
時九州ニ鐵道ハ勿論アリマセヌ、海運モ甚ダ不便デアッタニ拘ラズ、何等裁判上ニ差支
ハナカッタノデアル、現在ニ於キマシテハ九州ニハ縱橫ニ鐵道ガ架ッテ居ル隅カラ隅ニ至ル
鐵道ノ長距離デモ僅カニ十五時間掛レバ參レマス、十五時間以上掛ッテ交通致ス所
ハアリマセヌ、鐵道ノ交通ハ便利トナリ海運ノ交通モ非常ニ發達致シテ居リマス今日ニ
於テ、俄ニ地ノ利ガ惡ルイト云フコトヲ理由ニ供セラレルノハ、殆ド私ハ理由トシテ承ルコト
ハ出來ナカラウト考ヘマス、第二ノ理由ト致シマシテ事件ノ數ガ違フ、長崎ヨリモー福岡ノ
方ガ事件ガ多少多イ、斯ウ云フ辯解デアリマスガ、司法省ガ吾ミニ渡シタ所ノ表ニ依ッテ
見マスレバ、事件ノ數ト云フモノハ年々ニ相違シテ居ル、或ハ控訴事件トシテ扱フ事件ノ
如キハ、長崎ノ方ガ福岡ヨリモ多カッタ年モアリ、或ハ福岡ノ方ガ多イ年モアリマス、民
事刑事ノ事件ニ於ケル事柄ト云フモノハ社會ノ種々ナル關係ヨリ起ッテ來マスルカラ、一
年事件ガ多カッタト云ッテ、必ズシモ永久ニソレガ多イト云フコトヲ斷言ハ出來ヌ、是一
申上ゲルマデモナイ、例ヘバ長崎控訴院デ扱ヒマシタ事件ニシテ明治四十三年、四十四
年ノ如キハ、確ニ福岡ノ方ガ多イ、然ルニ大正三年ニ至ッテハ長崎ノ方ガ福岡ヨリモ多
イノデアル、是ハ司法省ガ提供致シマシタ表ニ明示スル所デアリマス、斯ノ如ク事件ノ
多少ト云フガ如キコトハ種々ナル事情、種々ナル關係ヨリ起ッチ來ル一種ノ變態デアリマ
スカラ、此事件ノ數ナドヲ標準ニシテ控訴院ヲ移スト云フコトハ容易ナラヌコト、若シ
礦山ガ一ツ起リマスレバ控訴事件ガ數百件ニ上ルノハ當リ前デアル、今日福岡ノ方ガ多
イノハ礦山ガ殖エテ來タ結果デアル長崎ノ方ニ礦山ガ殖エテ來タナラバヤハリ福岡ニ負
ケナイヤウニ控訴事件ガ起ッテ來ル原因ニナルノデアル、久留米ニ事件ガ多クナッタカラ置
〃熊本ニ置ク、鹿兒島ニ置クト云フヤウニ、一々特殊ノ事情ガ起ッタ爲ニ控訴院ヲ移
轉シタナラバ限リガナイデゴザイマスカラ偶〓事件數ガ多カッタト云フガ如キコトヲ以テ、
控訴院ヲ移轉スル理由ニハ更ニナリマセヌ、其外人口デアルトカ云フヤウナコトヲ申サレ
マスルケレドモ、福岡ハ縣ガ大キイカラ人口ガ多イ、人口ガ多イカラトテ人口ガ密接シタ
意味デハナイ、唯今望月君ノ御議論ニ致シマシテモ、政府ノ議論ニ致シマシテモ、甚ダ議
論ノ根據ニ感服致シマセヌ、福岡ハ人間ガ多イ、裁判事件ガ多イト申シマスケレドモ、福
岡縣ハ長崎縣ニ倍スル程廣イ所デアルカラ多イノデアル、ケレドモ廣イ割合ニ人間ガ多タ
カト申シマストサウハナイ、土地ノ面積ト人口ノ密粗ノ關係ニ付テハ長崎縣ノ方ガ餘程
人間ノ數ガ多イ、富ノ程度ノ如キモ望月君ガ比較セラレマシタガ何ヲ見テ比較セラレマシ
タカ存ジマセヌガ、唯是ハ福岡ノ方ガ多イト云フ望月君ノ放言ニ過ギナイ、何等證據ヲ
示サレナイ、吾〓ノ調査ニ於キマシテハ長崎市ノ富ト福岡市ノ富ヲ今日比較シテ見ルト、
銀行ノ預金ニ於テモ著シク相違ガアル著シク長崎ノ方ガ多イノデアル唯福岡ガ縣ガ
廣イカラ總テノ取引ガ多イヤウニ思ヒマスケレドモ、範圍ヲ廣クシテツレデ多イト云フノハ
眞ニ多イノヂヤナイ斯ウ云フ譯デゴザイマスカラ私ハ此司法省ガ移轉スルー云フ理由ハ、
悉ク移轉スル理由ニナラヌト考ヘマス、ソレカラ第二ノ司法省ノ理由ハ長崎控訴院ガ腐
朽ニ達シテ居テ、モウ一年モ保テナイカラ改築セナケレバナラヌト云フコトヲ一ツノ理由ニ
供セラレテ居ル、是ハ現ニ長崎ニ住居シテ居ル吾〓ハ承認スルコトハ出來ナイ、吾〓每日
長崎控訴院ニ出入シテ居リマスガ、成程九州一般ニ行ハレテ居ル白蟻ノ害ヲ受ケタコト
ハ曾テアリマス嘗テアリマスガ其白蟻ノ害ヲ受ケマシタ當時ニハ、司法省ハ或ハ數千圓ノ
金ヲ掛ケテ大修繕ヲ加ヘテ鐵ノ「ポート」ヲ以テ柱ヲ取替ヘル、新シイ木ヲ以テ柱ヲ取替ヘ
ル、而シテ大修繕ヲ加ヘテ立派ナ控訴院ニナッテ居ル、此儘ニ於キマシテモ吾ミノ想像デハ
五年デ潰レルカ十年デ潰レルカ、二十年三十年繼續スルカ、吾ミハ何時マデ保テルデア
ラウト云フコトハ想像スルコトノ出來ナイ立派ナモノニナッテ居ル司法省ハ明年ニモ今年
ニモ倒レルヤウナコトヲ吾ミニ說明致シマシタガ、何ニ依テサウ云フ事ヲ言フカト云フコトヲ
質問シタトコロガ、司法省ノ技師ガ出張シテ檢査ヲシタ結果デアルト言ハレル、然ラバ司法
省ノ技師ノ檢査シタ報告書ヲ拜見シタイト言ヘバ報告書ハ無イト云フコトデ、態〓司法
省カラ勅任技師ヲ特派サレテサウシテ長崎控訴院ヲ審査サレテー此調査ヲ致シマシタ
結果、書面上ノ報告ガ司法省ニ無イト云フノハ諸君不思議ヂヤナイカ、私ハ恐ラクアルデア
ラウト思フ、司法當局者ノ言葉ヲ信用セヌトナレバ甚ダ失禮デアリマスケレドモ、如何ナル
官廳ニ於キマシテモ或事ノ調査ヲ命ジテ、調査ノ爲ニ特派サレタ者ガ其調査シタ結果ヲ書
面ヲ以テ當該官廳或ハ其長官ニ報告セヌト云フコトハ今日役所ノ取扱上アルベカラ
ザルコトデアル司法省ト雖モ斯ノ如キ事ヲヤルノニ悉ク私ハ調査ガアルニ相違ナイ、報
〓書ガアルニ相違ナイ、然ルニ長崎控訴院ノタメニ山下ト云フ勅任技師ヲ特派シタニモ
拘ラズ、其報告書ガ來テ居ナイト云フ、唯口頭ヲ以テ報告ヲ受ケタト斯ウ云フノガ政府
委員ノ說明デアリマス、諸君、政府委員ガ-司法省ガ存在スル間政府委員ガ司法
省ニ居ルナラバソレデモ宜カラウガ、今日ノ役人ハ明日廢メルカ知レナイノニ、技師ノ調
査ノ結果ヲ口頭ヲ以テ報告シテ、サウシテ其報告ヲ聞イタト云フノハ司法大臣ガ聞
イタカ、司法次官ガ聞イタカ分ラヌガ、免モ角モ之ヲ聞キ流シニシテ居ルト云フノデ、何等
調査シタ事ニ付テ一片ノ報告書ガ司法省ニ無イト云フノガ政府委員ノ說明テアル、私ハ
其說明ヲ信用シナイ、必ズ報告書ガアルニ相違ナイ、、報告書ガアルナラバ司法當局者ノ辯
ズルガ如ク、本年一抔經テバ-明年一抔位ニハ潰レテシマフト云フ報告ガ出來テ居
ナイト云フコトヲ私ハ疑フ、サウ云フ風ニ多少ノ修繕ヲ加ヘレバ數年若クハ十數年保テ
ルト云フ報告ヲシテアルカラ、政府委員ノ來年ニモ潰レルト云フ言明トハ一致セヌカラ
報告書ヲ出サナイノデアルマイカト云フ疑ヲ私ハ持ツ、此疑ヲ司法當局者ニ掛ケルノハ甚
ダ失禮デゴザイマスケレドモ、疑ヲナシ得ル道理ガアルト私ハ考ヘルソレデ花井傅士ナド
ハ屢〓長崎ヘ御出デニナッテ能ク御存知デアル私ガ言フバカリデナク長崎ノ事情ヲ知ッテ
居ル御方ガ此外ニモ澤山アリマセウ、屢〓白蟻ノ害ヲ受ケタト云フコトデアルガ、其度
度ニ修繕ガシテアル、修繕ガシテアルカラ五年十年先ニナッタカラトテモ、必シモ危險デアル
ト云フコトハナイ、司法省ノ一年待ツコトハ出來ナイト云フ司法省ノ言葉ヲ信用致シマセ
ヌ、一ツ之ニ付テ委員會ノ出來事モ諸君ニ御報告シテ、其政府者ノ說明ノ信用スベカラ
ザルコトノ材料ニ供シタイト思フ、政府委員ハ一年待ツコトガ出來ナイト云フコトヲ極力
辯解シテ居ラレルノデアル、トコロガ委員ノ諸君ノ中デ一體此福岡ニ移スト致シタナラ
バ何時カラ移スカト云フコトヲ問ハレタ時ニ、政府ノ全體ノ原案、移スト云フ法律案
ガ極マリ豫算ガ極マルト同時ニ、假廳舍ヲ設ケテ司法事務ヲ執ルノガ本則デアリマスケ
レドモ、諸君ガ希望サレルナラバ一三年位後ニ移スト云フコトヲヤッテモ差支ナイト云フコ
トヲ政府委員ガ吾ミニ說明シタノデアル、一面ニハ一年モ延バスコトハ危險デアル、
危ブナイ覺悟ヲシテ事務ヲ執ラナケレバナラヌト云フコトヲ言ヒナガラ、一面ニハ二三年位
延期シテモ差支ナイト云フコトヲ明記シテ、其事ガ調査ニ書イテアル(笑聲起ル)ソレヲ以テ
私ハ司法當局ヲ詰問致シマシタ、何故サウ云フ不都合ナ答辯ヲスルカト言ヒマシタトコロ
ガ、其政府委員ノ說明ニハソレハ危險デアルケレドモ鐵ノ棒カ何カ突ツカイ棒デモシテ、
控訴ノ事務ヲ執ルト云フ意味デアリマシタト云フコトヲ後ニ補ハレマシタガ、諸君、、控訴院
ヲ-倒レカヽッテ居ル控訴院ヲ突ツカイ棒ヲシテ維持シテ居ルト云フ、ソレデモ差支ナ
イト云フコトヲ說明スル筈ハナイデハアリマセヌカ、鐵ノ棒ヲ以テ突ツカッテモ宜シイト云フ
コトヲ言ハレタノハ私カラ突留メラレタトコロノ辯解遁辭ニ過ギヌト思ヒマス、彼ハ言フ
ニ落チズ語ルニ落ルト云フ俗語ノ如ク委員會ノ形勢ガ怪シクナルト此法案サヘ通シテ呉
レヽバ實施ハ二三年位後ニシテモ差支ナイト云フ、卽チ司法省ハ三年五年安全ニ
行ケルト云フ一ツノ證據デハナイカ實ニ無責任極ッテ居ル、一面ニハ報告書ガ無イト
言ヒ、一面ニハ今潰レルト言フカト思ヘバ、忽チニ二三年延バシテモ宜イト云フコトハ、
司法當局者ノ言フコトヲ信用スルコトガ出來ナイ、私ハ每日殆ド此裁判所ニ出入シテ
居リマシタノデアリマスカラ、不肖ナル私ノ此演壇ニ於テ諸君ニ申上ゲルコトヲ御信用下
サレテ私ハ然ルベキコトヽ思ヒマス、サウ致シマスト今裁判所ハ潰レル裁判所デハナイ此
建物ハマダ保テルノデアル、何ノ必要アッテ今福岡ニ移ス、全體福岡ガ適當デアルト云
フ政府ノ意見デ、ドウシテモ控訴院ト云フモノヲー福岡ニ移サナカッタナラバ不都合デアル、
長崎デハ控訴事務ガ執レヌト云フ考デ、ソレ程ニ政府ハ福岡ヲ重大視スルナラバ、何故
ニ政府ハ此費用ヲバ國庫ニ要求シテ正々堂々ト此建築案ヲ數年前ニ出サナイカ、今
日之ヲ出スト云フノハ長崎ガ腐ッテ居ル、長崎ノ控訴院ノ建物ガ腐ッテ居ルト云フノガ
主モナル理由ニナッテ居ル、之ニ付テ私ハ甚ダ政府ノ遣口ニ感服致シマセヌコトハ、此法
律案ヲ實行スル豫算ニ付テチヨット一言申上ゲマスガ、此裁判所控訴院ヲ移轉スル
ト云フコトニ付キマシテハ新築スルト云フ新築スルニハ三十六万五千圓ト云フ金
ガ要リマス、此金ヲソレ程司法省ガ重要ナ必要ナモノデアルナラバ、何故國庫ノ金ヲ以
テ之ニ流用シナイ、國庫ノ金ヲ以テ之ヲ造ラナイカ、望月君ハ國庫ガ非常ニ貧乏シテ居
ルト言ヒマスケレドモ、裁判所ト云フノハ三等郵便局デアルトカ、三等電信局デアルトカ
云フヤウニ、半分商業ヲシテ居ルモノトハ違ヒマス、申上ゲルマデモナク最モ嚴正ニ事務ヲ
取扱ヒ、天皇陛下ノ御名ニ於テ最モ嚴止ニ事務ヲ取扱ヒ、相當ノ威嚴ヲ保タナケレ
バナラヌ所デアリマス、政府ガ三十六万五千圓ノ金ト云フモノハ國家必要ノ機關ヲ造
ルナラバ出ス餘地ガアルト思フ、政府ハ國家有要ノ機關ノ爲ニハ數千万圓ノ金ヲ出ス餘
地ガアルデハナイカ、獨リ控訴院ガツレ程ヤカマシイモノデアルナラバ、三十六万五千圓
位ハ出スコトガ出來ル、然ルニ此點ニ付テ諸君ニ訴ヘテ、併セテ政府ノ反省ヲ求メタイ
ノハ三十六万五千圓ハ寄附デアル、此寄附ト云フモノモ普通ノ寄附ナラバ差支ナイ、此
寄附ト云フノハ程度問題、茲ニ一ノ政府ガ十万圓ノ事業ヲヤルカラ人民ガ喜ンデ祝セ
ノ意味ヲ以テ其事業ヲ助ケル爲メニ一万圓トカ二万圓トカヲ寄附スルト云フナラバ誠
ニ是レハ結構ナ事柄デアリマス、然ルニ控訴院ノ金額ノ-費用ノ建築ノ全額ノ費用
三十六万五千圓三十六万五千圓デアリマスガ、其三十六万五千圓ノ全部ヲ人民
ノ寄附ヲ仰グト云フガ司法省ノ計畫、人民ガ最初カラ三十六万五千圓ヲソレヂヤ寄附
シマセウト申出タノカト一云フトサウヂヤナイ、福岡ノ諸君モ此中ニゴザル、私ハ確カニ聞イ
テ居ル、最初二十万圓ダケ寄附スル、此間ニ司法省ノ役人ト福岡ノ當局トドウ云フ相
談ガアッタカ知リマセヌガ、一一十万ダケ寄附スルト云フ話デアッタ、處ガ長崎ノ方カラモ是
非是レハ長崎ノ方ヘ存置シテ貫ヒタイト云フ意見書ヲ司法省ニ出シタ、長崎市會議長
其他市會議員ガ司法次官ニ面會致シマシタトキニ、アナタ方ノ意見書ハ確カニ拜見致
シマシタ、確カニ受取ッタ、受取ッタガ、長崎ノ意見書ニハ寄附ノコトガ何ニモ書イテアリマ
セヌナト謎ヲ掛ケタ、意見書ニ堂々タル意見ハアルガ寄附ノコトハ一言モ書イテナイナト
云フコトヲ、長崎市會議長丸毛兼通ト云フ者ガ長崎市ニ報告ヲシテ、是ハイカヌ、又
吾ミハ議論バカリデ司法省ガ通ルト思フト大間違ヒ、長崎ニ存置シナケレバナラヌト云
フ意見ニ就テハ、司法次官ハ私ハ確カニ拜見シタガ寄附ノコトガ何ニモ書イテナイノデ
ハナイカト云フ話ガアッタ、是レハ一番工風シヤウヂヤナイカト云フコトヲ長崎市會議員ヲ
寄セテ協議會ヲ開イタソレデ十五万圓出サウ二十万圓出サウト云フタガ、先キニ福岡ガ
二十万圓出スト云ッタト一云フ司法次官ノ口裏ダカラ、アノ模樣デハ二十万圓デハイケナ
イイッソ思ヒ切ッテ三十六万五千圓一時ニ出スコトニシヤウヂヤナイカ、是ガドウシテ金
ヲ作ッタカト云フト、縣廳ニ掛合ヒ旁、〓イロノ〓致シマシテ、長崎市ハ此借金ヲ五年間ニ償
却スル途ヲ立テマシテ、ヤラウト云フノデ、三十六万五千圓ノ金ヲ長崎ガ出シマセウト云フ
コトヲ司法省ニ書面デ通信ヲ致シマシタ、所ガ司法省ハ其書面ヲ福岡ニ見セタモノダ、
是ハドウダ、長崎ノ方ハ三十六万五千圓ヲ投ズル積リダト云フ、福岡ノ方デモヤリ切レナ
イ苦シイガ三十六万五千圓出サウト云フコトヲ申出タ、之ヲ聞イタ熊本ハナカノ
威勢ガ宜イ、熊本カラハ忽チ委員ガ司法省ニヤッテ參リマシテ、談判ノ末五十万圓デモ
百万圓デモ幾ラデモ出ス(拍手起ル)ドウダ是レガ天皇ノ名ヲ以テ行フ國家高等ノ司
法機關ヲ造ルトコロノ手段デスヨ(拍手起ル)斯ウ云フコトヲ以テカラニ寄附ヲ受ケテモ決
シテ裁判所ノ神聖威嚴ニ關係シナイト云フ理屈ガ何處ニアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)
極ク卑近ナ言葉デ云ヘバ品物ヲ一ツブラ下ゲテサア幾ラダ幾ラダト競賣ヲヤッテ居ル極
ク劣等ナ連中ハ自分ノ方カラ三圓ト云ヘバ仲間カラ五圓ト釣上ゲ、十圓、十五圓ト掛ケ
テ賣ルト云フヤリ方ヲ市井ノ間デハヤッテ居リマスガ、司法省ガ此控訴院ト云フ役所ヲプ
ラ下ゲテブラ〓〓ヤッテ居ル內ニ、到頭三十一ハ万五千圓ノ金額ノ寄附ノ全部ヲ出サシ
タ、實ニ私ハ怪シカラヌト思フ、今日ノ地方自治團體ノ財政ハドウ云フ有樣ニナッテ居
ルカ、諸君、大藏大臣、内務大臣ハ地方自治體ノ財政ノ紊亂ヲ心配致シマシテ嚴重ナル
監督ヲシテ居ルコトハ諸君御承知ノコトデアル、公債ヲ起スコトモ出來ナイ、、何ヲスルコト
モ出來ナイト云フノデ非常ニ嚴重ナ訓令ヲ與ヘ監督ヲシテ、地方自治團體ノ財政ノ鞏固
ビ發達ヲ圖ルコトヲ心配シテ居ル、大藏大臣、內務大臣嘗テハ文部大臣、三名ノ連名
ヲ以テ訓令ヲシタコトハ昭トシテ明カニナッテ居リマス一方ニハ地方財政ノ鞏固ヲ圖ッテ
居ルニ拘ラズ、司法省ハ物ヲブラ下ゲテサア金ヲ出ス方ハ之レヲ持ッテ行クガドウスルト云
フヤリ方ヲ致シマシタナラバ、苦シイガドンナニ苦シクテモ仕方ガナイカラ出サウヂヤナイカト
云ッテ之レヲ出シマス、長崎デモ出サウ、福岡デモ出サウ、或ハ熊本モ出サウト云フガ、何
レモ苦シイ、苦シイ問ニモ拘ラズ金ノ寄附ガナケレバ-政府デハ金ヲ出サヌ、移轉スル
必要ガアルガ金ガナイト云フ話バカリシテ居ルカラ、移轉ヲ希望スル方カラ、ソレデハ私ノ
方カラ幾分寄附シマス、サウ云フノハ當リ前、所ガ一方ノ方デハモット高イ寄附ガ出タ、ド
ウ云フモノダラウ、ソレデハ仕方ガナイヽ私ノ方デハヨリ以上出シマスト云フ有樣デ此福
岡ノ寄附ガ成立ッタ、是レガ福岡ニナッタ經過、是レハ嘘モ僞リモナイ、私ガ現ニ此ノ夏
カラ長崎市ノ委員トナッテ直接司法當局者ニモ面會シ、或ハ福岡ノ當局者ニモ面會シ、
其他有志知己ノ間ニイロ〓〓奔走致シマシテ得タトコロノ一ノ事實デアル斯ノ如キ狀
態ヲ以テ控訴院ヲ作ルニ金ノ寄附ヲシテモ差支ナイト云フ望月君ノ御議論ノ如キハ恐
ラク望月君ハ此事實ノ徑路ヲ知ラナイノデアラウト思フ、顧クハ諸君控訴院ハ今潰レル
譯デハナイ、長崎控訴院ハマダ五年十年ハ保チマス、一方ハ國家ノ經濟財政ハ非常ナ
困難ナ場合デアル又地方自治體ハ將ニ亂レントシテ非常ニ苦シデ居ル場合ニ於キマシ
テ、之レヲ今是非造ッテ移轉シナケレバ來年ハ危ナイカラヤルト云フヤウナコトヲスル必要
ハナイノデアル根本正確ノ事實ニ基イタ事ナラ溶別デアリマスガ、司法當局者ノ辯解
ハ事實ト大ニ〓齬シテ居ルト云フコトヲ此壇上ニ於テ斷言シテ憚カラヌドウゾ委員長
報告通リ多數諸君ノ御贊成ヲ得テ、此移轉問題ヲ否決サレムコトヲ希望致シマス
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=83
084・島田三郎
○議長(島田三郞君)　今二讀會ノ場合デスカラ、委員長ノ修正通り差支ナイト云フ
意見デスナ
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=84
085・本田恒之
○本田恆之君　サウデス、ソレデ宜シイ
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=85
086・島田三郎
○議長(島田三郞君)　森田茂君
〔森田茂君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=86
087・森田茂
○森田茂君　私ハ委員長ノ報告ニ反對スル意見ヲ持ッテ居リマスノデ、少數意見ト致
シマシテハ既ニ望月君ヨリ詳細ナル演說ガアリマシタ故ニ、敢テ多クヲ申上ゲル必要ハナ
イノデアリマス、唯二三私ノ氣付イテ居リマス點ヲ申上ゲマシテ、自分ノ意見ノアルトコロ
ヲ明カニ致シテ見タイ、斯ウ云フ考デアリマス、昨日ノ委員會ニ於テハ御承知ノ如ク八
ニ對スル七ノ少數ヲ以テ原案ガ敗レタノデアリマス、併ナガラ私共ハ此少數ノ方ニナッテ
居リマスルト雖モ事實ニ於キマシテハヤハリ多數デアルト云フ事柄ヲ實際ニ於テ考ヘテ
居リマス、ソレハドウ云フ譯デアルカト申シマスレバ、昨日ノ委員會ノ內容ナルモノハ、、唯今
御演說ニナリマシタ本田君又橫山寅一郞君、此ノ方ハ長崎ノ方ニ之ヲヤハリ置クガ然
ルベキモノデアルト云フ理由ニ依テ、原案ニ反對サレタ方デアリマス、又原田君ト尾越君
トハ之レヲ熊本ノ方ヘ移轉ナサルノガ至當デアル、斯ウ云フ理由ニ依テ反對サレタコトニ
ナリマス、豐增君ハ又佐賀ニ之ヲ置クノガ至當デアル斯ウ云フ理由ニ依リマシテ、結局
原案ニ反對ヲサレタ、斯ウ云云コトニナリマス、其他ニ於キマシテ江間俊一君ト小河源一
君、橫山金太郞君、此三名ハ明カニ其理由ハ申上ゲマセヌガ、免モ角原案ニ反對サレマ
シタ、所デ初メニ申上ゲマシタ本田、橫山、原田、尾越、豐增、此五君ハ全ク位置ノ爭ノ
上カラ致シテ原案ニ反對スル、斯ウ云フ理屈ニナリマス、ソコデ實際ニ於キマシテ之レヲ
福岡ノ方ニ移轉スルト云フ原案ニ贊成ヲ致シタ者ハ何人デアルカト申シマスルト、望月長
夫君、石田平吉君、阿部熊之輔君、奧村七郞君、西田庄助君、金子元三郞君、サ
ウシテ私ト七名デアリマス、此意味カラ申シマスト福岡ノ方ハ移轉スルト云フ議ガ多數デ
アルト云フ事柄ハ私ハ確信ヲシテ居ルノデアリマス、ソレデ此福岡ニ移轉スルト云フ原案
ハ少數デアリマシテモ實質ニ於キマシテハ多數デアルト云フコトデ、私ハ此場合申上ゲ
テ敢テ當ラヌコトデナイト云フ事柄ヲ申上グルノデアリマス、偖九州ニ於キマスルトコロノ
繁華ノ土地、或ハ長崎ト云ヒ若クハ佐賀ト云ヒ、熊本ト云ヒ、福岡ト云ヒ、將來ニ
於キマシテ果シテ九州ノ商業上及工業上、又學問上ノ中心地點ナルモノガ何處ニアル
ト云フコトヲ申上ゲマシタナラバ、餘リ多クヲ申上ゲル必要ハナクシテ、福岡デアルトームフ
コトハ是ハ私共ガ局外カラ目九マシテ爭フベカラザル事實デアルト云フコトヲ信ジテ居ルノデア
リマス、此移轉致シマスル理由ノ上カラ申シマスルト云フト、或ハ訴訟事件數ト云フモノ
ヲ比較致シマスガ、是モ亦一面ノ觀察ト致シマシテハ辯護士數ヲ數ヘナケレバナラヌノモ、
是モ必要ナ問題ニナッテ居ルノデアリマス、所ガ現在ニ於キマシテ是等ノ諸縣ニ於テドウ
云フ辯護士ノ配置ニナッテ居ルカト申シマスルト云フト、長崎ニ於テ四十三名、熊本ガ
三十一名、佐賀ガ二十一名、福岡ハドウデアルカト申シマスルト現在ニ於テ尙且是デ
六十九名ノ多數ヲ有ッテ居ルノデアリマス、之ヲ控訴院所在地ノ辯護士ノ數ニ比較致
シマスレバ廣島ガ三十五名、仙臺ガ四十五名、名古屋ガ六十九名、現在名古屋控
訴院所在地ノ辯護士數ト福岡ノ辯護士數ト伯仲ノ間ニアルト云フ事柄ハ實際ノ事實
デアリマス、左スレバ將來福岡ニ控訴院ガ移轉致シタ上ニ於テ、更ニ辯護士ノ數ガ增シ
テ、少ナクモ百四五十名ノ辯護士ガ福岡控訴院ノ所在地ニ於テ事務ヲ執ルコトハ是
ハ實際ニ現ハレテ來ル問題デアルト云フコトヲ考ヘマス、控訴院ニ於テノ
事件數、或ハ其他ノ事柄ヲ調ベル一面ニ於テ、私ノ唯今申シマシタ如ク辯護士
數ナルモノヲ考ヘマシテ、如何ニ其土地ガ訴訟ガ最モ澤山アル所デアリ、又如何
ニ控訴院所在地トシテ適當ナル場所デアルト云フ事柄ガ、是ニ依ッテ判斷シ得ラ
ルコトデアラウト信ジテ居ルノデアリマス、ソレカラ又將來ニ於テ福岡ニ工科
大學ガ設置サレルト云フ事柄ハ、是ハ見落スベカラザル必要ナ問題デアリマス、工科大
學ガ設置サレルト云フコトニナリマシタナラバ大學ハ控訴院ニ於キマシテ實地問題ヲ〓究
スルト云フ便利モアリ、又控訴院ハ大學ニ付キマシテ學理問題ヲ〓究スルト云フ事柄
ハ是ハ洵ニ必要ナル問題デアリマシテ、兩々相待ッテ大學ト控訴院ト云フ事柄ヲ考ヘテ
見マシタナラバ將來ノ福岡ノ土地ナルモノガ如何ニ控訴院所在地ト致シマシテ必要ナ
モノデアルカト云フコトハ、私ハ洵ニ明瞭ナコトダト考ヘマス、其他良判檢事ヲ得ルト云
フ上ニ付キマシテ、實際ノ事實ト致シマシテ、ドウシテモ便宜ノ土地若クハ將來子弟ヲ〓
育スルト云フ上ニ於テ、餘程其點ヲ考ヘナイト云フト良判檢事ヲ得ルコトガ實際ニ於テ
ムヅカシイノデアル、此意味カラ申シマスレバ私共ノ見ル所ニ依リマスレバ、ヤハリ福岡ノ將
來ナルモノハ良判檢事ヲ得ル上ニ於テ洵ニ適當デアルト云フコトモ私ハ考ヘテ居ル、ソレ
カラ又一般ノ上カラ申シマシテ總テ裁判所ノ改築ナル事柄ハ、一般ノ輿論デアッテ、唯
司法省ガ經費ノ都合ニ依リマシテ現在ヤリタイ所ガアリマシテモ、之ヲ仕遂ゲルコトガ出
來ナイ、斯ウ云フ實際ノ場合ニナッテ居ルノデアリマスガ、私共又他ノ地方ニ居リマスモ
ノヽ關係カラ申シマシテモ、早ク長崎控訴院ノ問題ヲ解決シテ、順次是ガ他ニ及ンデ貫
フコトヲ考ヘナケレバナラヌ、長崎ガ迫ッテ居リマスカラ他ニ及バヌ、斯ウ云フ實際不都合
ナ事實ガアル、是ガ唯今本田君ノ御意見ヲ聞キマスト云フト未ダ急ガナイ、未ダ二三年
ハ構ハナイ、斯ウ云フ御議論ガアル是ハドウモ本田君ノ御意見ト致シマシテハ御尤デ
アッチ、私共御同情ニ堪ヘナイケレドモ、本田君ニ長崎控訴院移轉ト云フ問題ヲ拔キ
ニ致シマシテ、長崎控訴院ノ改築ナルコトガ是ガ必要デアルカ否ヤト云フ事柄ヲ御考ヲ
願ヒマシタナラバ是ハドウモ私ハ本田君ト雖モ此問題ハ一日モ猶豫スルコトガ出來ナイ
問題デアルト云フ事柄ヲ仰シヤルニ違ヒナイト考ヘマス、デ獨リ是ハ本田君ハ改築ト云フ
事柄ニ伴ッテ移轉ト云フ事柄ガアリマス故ニ、腹ガ減シテ物ハ食ヒタイケレドモ、是ニハ
毒ガアルカト云フ考カラ、腹ガ減ッテ居テモ空腹デナイト仰ルヤルト同一ノ御議論デナイカト
私ハ考ヘル、ドウモ私ハ先日以來委員長ノ所謂報告通リ、原案ヲ否決致シマスルトコ
ロノ說ニ付キマシテ、是等ノ諸君ノ御說ヲ拜聽致シマスルノニ、是ハ望月君ノ所謂少數
意見トシテ報告セラレタルモノニ比シテ、決シテソレニ優ツタル理由ハナイ、移轉ヲ拒ムト云
フ事柄ノ全ク理由ノナイト云フ事柄ヲ信ジマス、故ニ私ハ委員長ノ意見ニ反對ノ意見
ヲ此壇上ニ於テ述ベル次第デアリマス
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=87
088・島田三郎
○議長(島田三郞君)　川原茂輔君
〔川原茂輔君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=88
089・川原茂輔
○川原茂輔君　諸君、唯今問題トナッテ居リマスル卽チ第一條ノ削除、長崎控訴院
ヲ一福岡市ニ移轉セシムルト云フコトニ付キマシテハ、私ハ委員長ノ報告卽チ動カサナイト
云フノニ贊成ヲスルノデアリマス、段々諸君ノ御議論ヲ承リマシタが、此九州ノ地理ニ付
テ餘程御間違ニナッテ居ルトコロガアリハセヌカト思フノデアル、デ私ハ九州人トシテ此長崎
ガチヨット承ハリマスト大變ナ不便ナヤウナ御話ガアリマスガ、事實ニ於テ然ラズト云フ此
處デ證據ヲ提供シテ、諸君ニ御參考ニ供セント思フノデアル先ヅ鐵道ニ依ッテ計算ヲシマ
スレバ、門司カラ長崎ニ引張リマスト百六十五哩其中間ハ佐賀デアリマス、ソレカラ鹿
兒島カラ門司ニ達スルノ鐵道ガ二百三十八哩ノ中央ヲ取ッテ見レバ熊本デアリマス、
(「簡單ケ々」ト呼フ者アリ)ソコデ鹿兒島カラ福岡ニ移シタトシテ、福岡迄參ルトコロノ時
間ハ何時間掛ルカト云ヘバ九時間掛ルノデアル例ヘバ朝八時ニ出マシタトコロガ九時
間掛リマスカラ、其日ニ訟廷ノ辯論ハ出來ヌノデアル、卽チ一晩泊ラナケレバナラヌ長
崎ニ往ケバドウデアルカ、鹿兒島カラ福岡ニ往クノト長崎ニ往クノト比較シマスト、僅三
二時三十分間程長崎ノ方ガ遠イノデアリマス、是ハ鐵道ノ時間表ニ依ッテ計算シタノデ
アルカラ少シモ間違ガナイ、又鹿兒島若クハ宮崎ノ方ヨリ長崎ノ方ニ向ッテモチヨット近路
ヲ取レバ肥後ノ三隅ニ往ッテ、三隅カラ島原ニ船テ渡リ、島原カラ島諫鐵道ト云フ諫早
ニ往ク鐵道ガゴザイマス、ソレニ乗レバ二時間、ソレカラ諫早·カラ長崎マデ約一時間之ヲ
總計スレバ卽チ鐵道デグルリト週ルヨリモ尙早イ時間デ來ルノデアルチヨット聽ケバ長崎
ハ非常ニ片一方ノ端デアルカラ大變不便ノヤウニ仰シヤルケレドモ、事實ハサウデナイ
鐵道デ週ルモ船デ週ルモ卽チ斯ノ如キモノデアッテ、長崎ハ非常ナ不便ト云フ御議論ハ乃
チ之ニ依ッテ打消スコトガ出來ルト思フ、又此控訴院ノ問題ニ付テハ二十年以前デアリ
マシタカト記憶シマスルガ、控訴院ヲ移シテ貰ヒタイト云フコトガ九州ニ於テ段々唱ヘラレ
タコトガアル、ソレハ熊本ガ初メテ聲ヲ發シタノデアル、其次ガ佐賀デアリマス、福岡ニ控
訴院ヲ移シテ貫ヒタイト云フコトハ一番量後ノ希望テアッタカト私ハ記憶スルノデアル、地
理ノ上カラ論ズレバ斯ノ如キモノデアリマシテ、長崎ノ控訴院ニ往クニ付テハ大變ナ不便
ト云フコトハ餘リ不便デナイ、便利トハ云ヘマセヌガ餘リ不便デナイト云フコトハ御諒承
ヲ願フノデアル、ソレカラ今ドナタデアリマシタカ此辯護士ノ數ニ付テ福岡ノ方ガ大變多
1、長崎ハ少イト云フ御議論ガアッタト記憶シマスルガ、私ノ調ベル所ニ於テハ長崎
ニ辯議士ガ四十三人福岡ハ三十七人、是ハ福岡ト云ヘバ小倉ヲ御掛ケナサルカラ
大變數ガ多クアリマスガ、長崎モ他ノ方ニ散在ヲシテ居ル辯護士ヲ集メテ來タラマダ
多イカモ知レナイ、斯ウ云フ統計デチヤント證據ガアリマスカラ、如何トモスルコトハ出來
ヌノデアル(「議論公平」ト呼フ者アリ)ソレカラ今ドナタデアリマシタカ福岡ニハ大學ガア
ル、控訴院判事ハ學術ニ依テ〓究シナケレバナラヌト云フ御議論ガアリマシタガ、福岡ニ
ハ法律大學ハ無イノデアル(「其通リ」ト呼フ者アリ)醫學ガアル、若クハ工學ハアリマス
ガ、控訴院ニ必要ナ法科大學ハアリマセヌカラ、斯ノ如キコトハ全クノ誤解ヨリ生ジタル
御議論ト思フノデアリマス(拍手起ル)私ハ考ヘマスルニ前論者モ言ハレマシタ通リ、此
役所ノ改廢ナドト云フモノハ容易ニ是ハヤルベキモノデハナイノデアル(「其通リ」ト呼フ者
アリ)司法省トシテハ司法ノ當局者ハ御承知モアリマセウガ、秋田縣ノ大曲區裁判所ノ
移轉ニ向ッテハ如何ナル騷動ヲ起シタノデアルカ、所謂竹槍蓆旗マデ起シタト云フヤウナ
コトハ御記憶デアラウト思フノデアル、司法當局者-司法部內デハアリマセヌガ、長
崎縣ノ對洲ニ竹敷ノ要港ト云フモノヲ海軍省ガ一時起シタコトガアル、其爲ニ是迄ハ
一般僅カニ二百圓三百圓ノモノガ一坪何十圓ト云フコトニ地價ガ騰貴ヲシテ、忽チ大
厦高樓ガ建築ヲサレテ非常ナ繁榮ヲ爲シマシタガ、ドウ云フモノデアッタカ此竹敷要港ヲ
ビシット廢シタ爲ニ、非常ナ經濟上ノ大變亂ヲ起シテ、ナカ〓〓地方經濟ヲ紊亂シタト
云フコトハ近イ實例デアリマシタ、同ジ海軍省デ舞鶴ノ軍港デアル、初メハ非常ナ大擴
張ト云フコトデアッテ、家モ土地モ騰貴シマシタガ、年々歲々縮小ノ結果、地方ノ財政ニ
非常ナ攪亂ヲ與ヘタト云フコトモ亦近キ實例デアル、今委員會ニ於テ橫山金太郞君、
又本會ニ於テドナタデアッタカ廣島ノ控訴院ヲ移スカ移サヌカ、將來ノ事ニ付テ非常ナ御
心配ニナッタ結果ノ此發言デアリマシタガ、凡ソ斯ノ如キモノデアッテ既設ノ役所ヲ移ス、
若クハ廢スルト云フコトニ付テハ地方ニ非常ナ大關係ヲ來ス、延イテ經濟財政ノ狀態ニ
モ影響ガ及ブノデアリマス、長崎ニ控訴院ヲ置イタカラト云ッテ何ガ不便デアルカ、汽車
ノ時間ヲ云ヘバ鹿兒島カラ鳥栖ヲ週ッテ博多ニ往クノト、ソレカラ長崎ニ行クノト僅ニ二
時三十分ノ違ヒ、尙早メントスル時ニ於テハ船デ往ケバ尙且ツ早クナルト云フコトノ利
便ガアル、唯氣ノ毒ナノハ大分縣、大分縣ハ是ハ併シ福岡ニ移シマシタ所ガ朝御出デナ
サン·其日ニ訴廷ノ辯論ヲ濟スト云フコトハ不可能デアラウト思フ、是ハ土地ノ關係デ
アリマスカラ先ヅ致方ガナイト御諦メニナラナケレバ仕方ガナイ、由來長崎ト云フ所ハ御
承知ノ通リ、江戶長崎ト云ッテ(笑聲起ル)日本ニ於テハ歷史上著明ナ處デアル、デ此
日本國ノ文明若クハ技藝或ハ醫術、斯ウ云フ事ハ總テ長崎ガ發祥地ナリト言ッテモ差
支ナイ、又維新ノ當時ハ如何テアルカ、現代ノ總理大臣大隈伯爵ガ八太郞時代ニハ、
此長崎ニ在ッテ盛ニ此勤王論者ト氣脈ヲ通ジタ、發祥地ガ此長崎デアル、ソレガ段々此
社會ノ進運ニ伴ヒ、門司ノ開港トナリ神戶ノ開港トナッテ、段々長崎ハ衰微一方ニ趨イ
タノデアル、ソコデ此長崎ガ一番得意トシテ居ッタノガ卽チ露西亞デアリマス、長崎ノ稻佐
ト云フ所ハ諸君モ御承知デアリマセウガ、日本語ハ知ラヌデモ露語ハ知ッテ居ルト云フ位デ、
長崎ノ得意ハ卽チ露西亞デアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)其露西亞ト日本ト戰爭ノ
結果船ガ壞ハサレル得意ハ來ナクナッタト云フコトデ、忽チ衰微ニ陷ッタト云フコトデ、長
崎ノ衰微ハ國家的ノ衰微デアル、是ハ國民トシテハ齊シク同情ヲシテヤランケレバナラヌ
ト私ハ思フノデアリマス而シテ長崎ノ港ハ御承知ノ通リ餘リ廣クハナイ、廣クハアリマ
セヌガ實ハ港灣ノコトデアリマスカラ、政府自ラガ此港灣事業ニ向ッテ手ヲ著ケナケレバナ
ラヌノニ、政府ノ方ニ於テ財政ノ都合上土地ノ人ヲ段々勸誘シテ、現在ノ長崎ハ築港
其他ノ費用トシテ三百三十万ノ負債ヲ持ッテ居ルノデアリマス、五朱ニシテ年々十六
万何千圓ト云フ利子ヲ出シテ行カナケレバナラヌ、如何ニモ明治維新以來斯ノ如ク江
戶長崎ト言ハレタ所ガ、日露戰爭ノ結果トシテ段々衰微ニ赴キ借金ハ三百万圓アリ
マ、以上ハ國家トシテ長崎ニ向ッテ同情ヲスルノハ當然ナコトデアル(「簡單」ト呼フ者
アリ)長崎縣ハ肥前國デアッテ、元ト佐賀ト一緒デアッタ、十六年ニ佐賀ヲ分割シタ以來
面積ハ愈〓益〓狹クナッテ來タ、其時ト今日ト比シマスルト長崎ノ衰微ハ實ニドウモ同情
ニ堪ヘナイ、僅ニ三菱ノ造船所ニ依ッテ長崎ハ保タレテ居ルノデアリマス、其上又控訴院
モ取ッテシマフ、度島ノ人ガ今心配セラルヽ通リ長崎ハ今大騷ギ、何ノ必要ガアッテ長崎
ヲ廢メナケレバナラヌノデアルカ、不便々々ト云フコトハ今申上ゲル通リ餘リ不便ハナイ、
而シテ福岡ハドウダ、成程高イ所ニ土ヲ持ッテ行ケバ多々益〓高クナル、一福岡ハエライニ違
ヒナイ、卽チ一縣ニ於テ師團ガ一一ツアリマス、佐賀ノ如キハ僅ニ一ツノ聯隊ホカナイ、福
岡ハ師團ガ二ツアッテ大學モアリマス、製鐵所モアル、現在ニ於キマシテハ製鐵所ノ擴
張トシテ近キ將來ニ於テ二三千万圓ノ大國費ヲ投ゼナケレバナラヌカモ知レナイ、或ハ若
松ノ築港遠賀川ノ改修工事、幾多ノ國費ヲ費シタ此多大ノ國費ヲ費シタ結果ガ、卽
チー岡岡縣ノ今日ノ發達シタ所以デアリマス、控訴院ヲ一ツ長崎ニ置イタトコロガ少シモ差
支ナイ、是ガ福岡ニアラズンバ裁判上非常ナ不便ナリトスレバ忍ブコト能ハザルモ、何等
長崎ニ控訴院ヲ置キマシタトコロガ差支ガナイト思フノデアリマス、若シ中央--中央ヲ
便利ノ土地ト云フナラバ府縣ノ合併ヲナゼナサラヌカ、現在ノ縣ニ於テモ埼玉縣ノ如キ
ハ非常ナ邊鄙デス、長崎縣亦然リ、若シ中央デアルカラ總テノ政治機關ヲ直サナケレバ
ナラヌト云フナラバ、日本ハ多々益〓擴張シ北緯五十度南ノ臺灣マデ入レタラ中央ガ九
州カモ知レナイ、然ラバ帝都ヲ九州ニ移スト云フ議論ヲシナケレバナラヌデハアリマセヌカ、
中央ダカラ之ヲ置カナケレバナラヌト云フコトハナイト私ハ思フ、長崎ノ歷史沿革、長崎
ノ現狀斯ノ如シ、諸君、長崎ノ衰微シマシタ原因ハ日露戰爭ノ結果デアリマシテ、卽チ
國家的同情多大ノ同情ヲ以テ斯ノ如キ原案ハ排斥シ、卽チ委員長報告ニ御贊成アラ
ムコトヲ希望シマス(拍手起ル)
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=89
090・島田三郎
○議長(島田三郞君)　奧村七郞君
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=90
091・齋藤隆夫
○齋藤隆夫君　議長:
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=91
092・島田三郎
○議長(島田三郞君)　通告ガアリマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=92
093・齋藤隆夫
○齋藤隆夫君　本員ハ司法大臣ニ向ッテ質問ガアリマス御許シヲ願ヒマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=93
094・島田三郎
○議長(島田三郞君)　奧村君ニ許シマシタカラ其後デ··
〔奧村七郞君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=94
095・奧村七郎
○奧村七郞君　私ハ議論ハ除ケマシテ、前辯者ノ事實ノ點ニ付テ間違ッテ居ル所ヲ二
三訂正ヲ致シマシテ退ル考デアリマス、左樣御承知ヲ願ヒマス(「簡單々々」ト呼フ者ア
リ)長崎控訴院ノ目下ノ現狀ハ辯護士諸君モ御承知ノ如ク、斯ノ如ク大キナ公判廷
ノ間ニ鐵ノ棒ガ釣ッテ天井ヲ支ヘテ居ル、是ハ御異存ゴザイマスマイト思ヒマス、ソレカラ
建物ノ中ニ白蟻ガ食ヒマシテ大騷ギヲヤッタコトモ事實デアル、本田君モ又委員會デハ
此事實ヲ認メテ居ルノデアル、ソレカラ政府デ-司法省テ三十七年以來大小修繕ヲ
數囘ヤッタコトモ事實デゴザイマス、斯ウ云フ建物デゴザイマス、是ハ辯護士以外ノ諸君ハ餘
リ御承知デアルマイト思ヒマスカラ此點ヲ紹介致シマス、ソレカラ地理ノ〓ニ付テ長崎市
ノ〓ヲ一言辯ジマスルガ、長崎ノ土地タルヤ九州ノ一角カラ東北ノ方ニ突出致シテ居ル
トコロノ半島デアリマス、半島デアリマスルガタメニ今日ノ鐵道ハ福岡市附近カラ長崎ニ
向ッテ一線ガ出來デ居ル、一面デハ熊本鹿兒島、斯ウ云フコトニ線ガ岐レテ居ルコトニナツ
テ居リマスコトハ御承知ノ通リ、ソコデ此門司カラ博多熊本鹿兒島ノ線ガ今日本線ニナツ
テ居ルガ、半島ノ長崎ニ向フ線ガ支線ニナッテ居ルノハ辯ズルマデモゴザイマスマイ、辯護士諸
君モ本線タルトコロノ福岡市カラ僅カ四十分デ行ケルトコロノ島栖ト云フ處デ乘換テ長
崎ニ行カレルノデゴザイマシテ(「鐵道案内」ト呼フ者アリ)支線デアリマスレバ汽車ノ度
數時間ハ如何デゴザイマス(「簡單々々」ト呼フ者アリ)是ダケノコトヲ私ハ陸ノ上ニ於テ
辯シマス、ソレカラ海ノ上ノ關係ニ於テハ是ハ多ク辯ジマセヌ、滿韓ノ關係支那ノ關係ニ
於テモ福岡縣ノ門司ト長崎トハ如何ニナリツヽアルカト云フ關係、是モ私ガ辯ズルマデモ
ナイ、ソレカラ委員會デカラニ司法當局カラ事件ノ件數人口、ソレカラ諸般ノ關係ガ長
崎ト熊本ト福岡ト三縣ノ對照ガシテアリマス、之ニ依リマスレバ少數委員者ノ報告ノ通
リ福岡縣ガ失禮ナガラ他ノ二縣ニ超越致シテ居ル、超越致シテ居ル事實ハ爭ヘナイト考
ヘマス、然ラパ九州内ニ於テモ多數ノ事件ヲ有スル福岡縣ノ縣民ハ、控訴ヲ致シマスル
タメニ無用ノ日子ト無用ノ費用ヲ使ヒ、權利ノ擁護ハ如何デゴザイマスカ、控訴院ニハ
遠イガタメニ事件ガ減ッテ居ルト云フコトハ司法當局ノ辯明ノアリマシタノハ尤ノコトデア
ル今日ノ長崎ノ控訴件數ト福岡ノ地方裁判所ヲ比較スレバ、福岡地方裁判所ガ無
論多イケレドモ、事件ノ澤山アリマス、福岡市ニ置キマシタナラバヨリ以上又事件ガ殖
エルコトハ當然デアル、此點カラ言ヒマスレバ福岡縣ノ人民ハ權利ノ伸張ヲ侵サレテ居ル
ト考ヘマス、是ハ尤ノコトヽ考ヘマス、ソレカラ尙一言熊本ノ關係ヲ述ベマスルガ、是ハ地
理ノ上ニ於テハ熊本ガ幾分福岡ヨリカモ宜シイト云フコトハ是ハ私モ爭ヒマセヌ、爭ヒマ
セヌガ第一ニ犯罪數ノ關係交通ノ關係ニ於テハ、是ハ熊本ヨリカモ福岡縣ノ方ガ宜イト
云フコトハ皆サン御承知デアラウト考ヘマスソレカラ尙ホシマイニ私ハ是テ事實ノ關係ハ
終リマスガ、一言私ハ此壇ヲ退キマスニ付テ諸君ノ御考慮ヲ乞ヒタイコトハ此控訴院
ノ移轉問題ハ今日ニ始ッタ問題デナイコトハ御承知ノコトデアリマス、是ハ十數年以
前カラ三囘モ四囘モ長崎控訴院ノ移轉問題ハ、建物ノ改築每ニ起ッテ居ル問題デア
リマス、而シテ本田君ノ言ハレマスル如ク司法當局ガ果シテ面白カラザル寄附金ニ依ッテ
之ヲ纒メタリトスルナラバ、サウ云フヤウナコトガ果シテ有ルト致シマスルナラバ、此長崎控
訴院ナルモノヽ移轉ガ確然ト極マリマセナイ限リハ、今後幾囘トナク此問題ガ繰返サレ
ルノデアリマセウカラ、私ハ何レナリトモ此際ニ決定スルノガ當然デアル將來サウ云フ非
難ヲ免レルノデアル、此ニ至ッテ見マスレバ委員會デ森田君ガ言ハレマスル如ク、此本案
ニ對スル反對ノ理由ハ佐賀ノ人ハ佐賀ヲ以ヲ適當ト致シマスルシ、長崎ハ無論、熊
本ハ熊本ト主張致シテ居ル(「簡單ケ々」ト呼フ者アリ)ソレナラバ熊本ノ人モナゼ熊本ガ
適當デアルト云フコトヲ原案ニ向ッテ修正ヲ出シマセヌカ、佐賀ハナゼ修正ヲ出シマセヌカ
(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)而シテ佐賀ト長崎ト熊本ト、福岡ト、之ヲ竝ベテ見タナラバ
(「泣イチヤイケナイ泣クナ」ト呼ヒ笑聲起ル)最後ノ解決ガ出來ルデハアリマセヌカ、而し
テ結論ニ於テハ-結論ニ於テハ原案不贊成ト仰シヤルナラバ、此問題ハ相寄ッテ政府
案ガ倒レルデアリマセウ、而シテカラニ他日熊本ノ案ガ出マシタナラバ今度ハ長崎ト福
岡ト佐賀ガ相組ンデ同樣ナコトヲスル、何時此問題ノ解決ガ出來マスカ、ドウカ此〓ハ
諸君御考慮ヲ願ッテ正當ノ御判斷ヲ請ヒタイト思ヒマス、隨ッテ私ハ委員長說ニ反對
致シマス(拍手起ル)
(「採決々々」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=95
096・島田三郎
○議長(島田三郞君)　齋藤隆夫君
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=96
097・齋藤隆夫
○齋藤隆夫君　本員ハ尾崎司法大臣ニ向ッテ一言質問シタイコトガアリマスカラシテ、
尾崎君ノ著席ヲ望ミマス(「無用々々」「ヤルベシヤルベシ」「採決々々」「登壇ヒヨ」ト呼フ者ア
リ)極ク簡單デアリマス、最前本田恆之君ノ演說ヲ承リマスルト、司法省ハ此建設物ヲ
拵ヘルニ付テ、福岡縣民ニ寄附ヲ强要シタト云フコトデアリマス、是ハ本田君ノ口ニ依
テ初メテ私ガ承リマシタノミナラズ、福岡ノ有志諸氏ガ本員ニ向ッテ直接ニ語ラレタ所テ
アル、福岡ノ有志諸君モ實ニ困ル-實ニ困ルガ寄附ヲセザレバ拵ヘテ呉レヌニ依テ、
已ムヲ得ズ應ジタノデアルト云フコトハ直接ニ私ニ話サレタノデアリマス、此事實ガ眞實デ
アルト見マシタナラバ頗ル不都合ナコトデアリマス、尾崎司法大臣ハ自ラ斯カル寄附ヲ
强要セラレタルコトガアルヤ否ヤ、若シ然ラズトセバ司法大臣ノ監督ニ屬シテ居ルトコロ
ノ或屬僚ガ、斯カル强要ヲ爲シタルコトノアル事實ヲ知ルヤ否ヤ(「無用々々」ト呼フ者ア
リ)若シ然ラズト言ヘバ、是ハ少シク不都合ナコトデアル、知ラズトスレバ怠慢ノ責任ハ免
ルヽコトガ出來ナイノデアリマス、之ニ對スル尾崎司法大臣ノ御答ヲ願ヒマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=97
098・尾崎行雄
○司法大臣(尾崎行雄君)　議長
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=98
099・島田三郎
○議長(島田三郞君)　尾崎司法大臣
〔司法大臣尾崎行雄君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=99
100・司法大臣(尾崎行雄君)
○司法大臣(尾崎行雄君)　齋藤君ノ御尋ニ御答ヲ致シマスルガ、委員會ニ於テモソ
レニ類似シタ御說ガアリマシタ、併ナガラ司法省ニ於テハ上カラ下マデ寄附ヲ强要シタナ
ドト云フ事實ハ斷ジテゴザイマセヌ、若シ左樣ナコトヲ申ス者ガアルナラバ、ワレハ申ス人
ノ過デアッテ、本省ニ於テハ私ハ無論ノコト、下僚ニ於テモ斷ジテ强要致シタコトハゴザイ
マセヌ
(「採決々々」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=100
101・議長(島田三郞君)
○議長(島田三郞君)　豐島政府委員
〔政府委員法學博士豐島直通君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=101
102・政府委員(法學博士豐島直通君)
○政府委員(法學博士豐島直通君)　特別委員會ノ御決議中、長崎控訴院移轉ノ
條ヲ削除ニナルト云フ點ニ付テ政府ノ原案ノ通り提出ノ通リニ御協賛ヲ願ヒタイ
タメニ一言致シテ置キタイト思ヒマス(「モウ澤山ダ」ト呼フ者アリ)此問題ハ司法省ニ於
キマシテ十數年前ヨリゴザイマスル問題デ、唯今ノ内閣ノ下ニ於テ生ジタ問題デハゴサイ
マセヌ、隨ヒマシテ大臣ヨリ此事ヲ御願ヒスルト云フノデナク、古ク司法省ニ居リマスル私
ヨリ御願ヒヲ致シタノデゴザイマス(「策ヲ弄スル勿レ」ト呼フ者アリ)此問題ハ既ニ「(何
ヲ言ッテ居ルノダ」ト呼フ者アリ)屢(〓究サレテ居リマス所デ、寄附ノ問題ニ付テモ前カ
ラ話ガアッタノデゴザイマシテ、福岡ガ寄附ノコトヲ申出タト云フノハ熊本ノ方テ先ニ寄
附ヲ申出マシタ爲ニ、其競爭ト云フモノヲスルニ付テドウシテモ寄附ヲシナケレバ福岡ノ
移轉ガ貫徹シナイト云フノデ申出テ來タノデゴザイマシテ、其事ハ福岡縣知事ノ報告ニ於
テモ現ハレテ居リマス、決シテ司法省ノ方デ寄附ヲ强イタト云フコトハゴザイマセヌ、サウシ
テ今日ニ至ッテ此問題ヲ解決シヤウト云フノハ、既ニ九州全體ガ長崎ハ一方ニ偏シテ居ツ
テ(「簡單々々」ト呼フ者アリ)到底移轉ヲ免レヌノデアル、何處カニ移サナケレバナラヌト
云フ意向ニナッテ來テ居ルノデゴザイマス、サウシテ政府ハ何レニ移スカト云フ點ニ付キマ
シテハ福岡ヲ以テ至當ナ地位ト認メタノデゴザイマス(「分ッテ居ルデハナイカ」ト呼フ者
アリ)又長崎ノ建物ニ付テモ此建物其レ自身ニ於テ白蟻ニ侵サレテ、全部ガ侵害サレテ
空虛ニナッテ居ルト云フコトヲ認メラルヽノデ、別ニ書面上ノ報告ハ要ラナイ、建物其モノ
事實ガ證明シテ居ルノデアリマス、ソレデアリマスカラ技師ノ調査ノ結果ニ依ッテ相當ノ報
告ヲ受ケテ、ソレデ事ヲ決シタ譯デアル(「簡單々々」ト呼フ者アリ)尙ホ御疑ガアルカラ委
員會ニ於キマシテ技師ノ出席ヲスルヤウニシテ說明サセタイ希望ヲ述ベテ置キマシタ所ガ
之ヲ容レラレナカッタノハ甚ダ遺憾ニ存ジルトコロデゴザイマス、尙附加ヘテ申上ゲテ置キタ
イノハ廣島控訴院ノ移轉ナドト云フコト、又ハ廢止ナドト云フコトニ付テハ、少シモ今日
考ヘテ居リマセヌ、此段ハドウカ御心配ナク政府ノ提出案通リニ御協賛ヲ願ヒタイ次第
デゴザイマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=102
103・福田又一君
○福田又一君　討論モ盡キタリト考ヘマスカラ、此場合直ニ三讀會ヲ開キ本案ノ採決
ヲサレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」「二讀會ダ」「二讀會省略デセウ」「誤ッテ居リマス」「言ヒ直シ給
ヘ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=103
104・議長(島田三郞君)
○議長(島田三郞君)　議長ガ投票ノコトヲ宣告シテ議會ニ御諮リ致シマス、討論ガ
終ッタト云フコトダケガアッテ、ソレカラ後ノ三讀會云々ト云フコトガ續イテ居リマスルガ、
先ヅソレヲ切分ケマシテ討論終結ト云フコトニ御異議アリマヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=104
105・議長(島田三郞君)
○議長(島田三郞君)　討論ハ終結致シマシタ、ソコデ委員長ノ報告ト少數意見トガ
アリマス、委員長ノ報告ハ卽チ修正意見デアリマシテ少數意見ハ其反對トシテ卽チ原
案ト同一デアリマス、ソレニ付テ委員長ノ修正、之ヲ(「委員長ノ修正デハナイ」ト呼フ者
アリ)委員長ノ報告ヲ議題トシテ決ヲ採リマス、御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」「ハッキリ分ラナイ」ト呼フ者アリ〕
〇議長(島田三郞君)ソレデ御異存ガナケレバ更ニ投票ノ方法ヲ申上ゲマス、是ハ極
メテ複雜シテ居リマスルカラ愼重公平ニ採リタイト思フテ之モ御諮リ致シマス(「謹聽シマ
ス」ト呼フ者アリ)ソレハ無記名投票デ御異存ガナケレバ無記名投票ニ致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=105
106・議長(島田三郞君)
○議長(島田三郞君)　ソレデハ無記名投票デ採リマス、尙念ノタメニ申シテ置キマスガ、
裁判所ノ設立及移轉ニ關スル法律案、大正二年法津第九號中改正法律案、此
二ツニ付テ決ヲ採ルノデアリマスカラ念ノタメニ申シテ置キマス-委員長ノ報告通リニ
贊成ノ諸君ハ白球、反對ノ諸君ハ黑球、-名刺ヲ御持參アラムコトヲ望ミマス-
閉鎖-氏名點呼ヲ致シマス
〔書記氏名ヲ點呼ス〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=106
107・議長(島田三郞君)
○議長(島田三郞君)　投票漏ハアリマセヌカ
〔「アリマス」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=107
108・議長(島田三郞君)
○議長(島田三郞君)　アリマスカ-アルナラバ速ニ御入レナサイ-投票漏ハ無イ
ト認メマス-開鎖--開匣ヲ命ジマス
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=108
109・議長(島田三郞君)
○議長(島田三郞君)　投票ノ結果、球數ガ名刺ノ數ヨリ一箇少ナイノデアリマス、併
シ此全體ノ結果ニ於キマシテハ異動ヲ生ジマセヌ、之ヲ有效ト認メマスルニ御異議ハアリ
マセカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=109
110・議長(島田三郞君)
○議長(島田三郞君)　書記官長ヨリ投票ノ結果ヲ御報告致サセマス
〔岡崎書記官長朗讀〕
投票總數三百二
可トスル者百六十四
否トスル者百三十七
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=110
111・議長(島田三郞君)
○議長(島田三郞君)　委員長報告通決シマシタ
(「尾崎君ハ健在ナリヤ」ト呼フ者アリ〕
本案ニ付投票シタル議員ノ氏名左ノ如シ
今井喜八君江間俊一君黑須龍太郞君守屋此助君
加藤小太郞君片岡溫君山口俊一君谷口武兵衞君
君西田戶井嘉作君小泉又次郞君
孝藤小寺直秀謙爲直塚龍君齋藤隆夫君
口田宮井鹿部政太郞君本田恆之君
仁一新年郎風吉ゼ君君君君川合島君黑孝平君久須美東馬君
利加(株)平須綾目岡肥部惣兵衞君福田又一君
高河鈴矢高坂橫山川田野木島木口田宮井
八(原則本間三藤嘉吉君榎本次郎右衞門君
中村尙山午介君大津淳一郞君
正義君石田橋茂君原脩次郞君初見八郞君
耘平君米實君正君福井三部
辻寬君磯森貝浩君
加賀卯之吉君小林前方式
田了君早川龍介君鈴置倉次郞君杉山東太郞君
崎彥雄君望月小太郞君市川文藏君根津嘉一郞君
川太治郞君坂口次郞君
(90%)雞玉子元元營養師健康診所襄拙鶴間コース
藤山澤道中種一三君君君君秀雄君
首村藤松陸山幾之市民調區文庫大師貳君
胤3 435君河野勇廣
木寅治助彥三君阿部治君柵瀨軍之佐君
勝之君竹村欽次郞君野悌治君
上池廣良居一田口
忠君室伊中藤
嘉橋松二郞君阿部エンジング
戶寅松無添加味玉米粒子富武福石臼田山町江鈴喜太全體驗小笠原名
內田田田中口荒三野
陽國民公社會議論總統一治君郞郞平平吉內郞七田口隅川浦村木
根正次君作民孝久平雄哲五倫嘉君の名言書者老君君君の路
わからないの君君君君君君君君君君陽隆源敏環吉幸雄郞吉
田佐世保安井宮城県南南市南南大南部野人吉德一
君君君君君君武森石濱三
(下龍謙幸次次次浦
五分店豐木三太勝
田增英郞郎富時
井原喜代太郞君山珠雄一郎三津家傳之君
岡辰喜君尾越辰達手藏君護得久
喜謙朝惟君
佐藤榮右衞門君池仁七君村野常右衞門君
野尻岩次郞君植小場平郎君君君君君
川上海溢線堀豐彥君
廣岡宇一郞君中倉万次郞山豐治郞君
川上榮太郞君高橋光威有高知識鳥順作君邊熊一君
根山本悌二郎君指田義雄君安雄君牛大長田丸島鷲太郞君
本正君小久保喜七君友常穀三郞君島久滿次君
三輪市太郞君〓小泉策太郞君田唯一君
井上敬之助君四田水銳純米吟醸川
平吉君翠川鐵三君
玉井權右衞門君鹽川原傳君堀切善兵衞君
平井六右衞門君工藤吉幸
郞衞次太金作君加藤户所
細梅三郞君榊田〓兵君君君君君忠治君西村正則
木津太郞平君谷欽〓成三上名高管小田土埜村杉安太郞君
定太望月圭介君
兒玉亮太郞君田中吉忠造君古谷久綱君
渡邊修君政尾藤書店榮信君竹內明太郞君
石直治君吉原正廣君崟太郞君山內範造君
川富白安 €大阪府国安部熊之輔君田肇君松源治君
原茂輔君南里琢一君原元田十藤田
衞君江哲藏君
森雄介君河野庄太郞君滿義君兒玉好熊君
田榮之進君志々目藤彥君平武田禎雄中西
野古奧小君君六三郞君
島一雄君高木益太郞君關直彥鈴木梅四郞君
添宗三君中川幸太郞君柏原文太郞君相島勘次郞君
引起移郞君犬高柳覺太郎君望月長夫君伊東知也君
犬飼源太郞君養毅君池田寅治郞君西村丹治郞君
藤原元太郞君小橋藻三衞君萬代嘉平治君佐々木安五郞君
堀孝君前川虎造君森田茂君川崎安之助君
原武君石橋爲之助君大西五一郞君田川大吉郞君
貫一君加瀨禧逸君阿由葉鎗三郞君
池田崎竹行君小林嘉平治君川崎克君大阪市出身上
平有花葫森尾大津大小六德郞雄君加藤定吉君島田保之助君龍橋岡田松郎
武君八田裕二郞君早速整爾君藤野口本部中本
井卓藏君橫山金太郞君宮原幸三郞君彰金了太次善信吉
溫三君小山谷藏君小西和君高重君君君君
賴母木桂君木正年君廉
安新九郞君金澤君金高澤種次郞君平加沼三君
亮
芳介君下岡忠大池忠助君齋藤喜十郞君
和知君戶叶君君君鬼紋七君重信近君
木太太人間鬼之家人生山松壽君增田次河九崎助太郞君古屋盛
慶隆君
茂馬君今村七山章君井兵五郞君
親〓君原木本田渡橫邊新太郞君今林櫻平四郞君
三與大吉三
淵貞四郞君西林三郞君
飯森辰次郎君吉田磯吉君的野半介君山眞平君
三浦得一郞君田中省三君岸本賀昌君金高子元三郞君
秋山定輔君臼井哲夫君長島隆二君湯淺凡平君
川眞田德三郞君大久保弁太郞君
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=111
112・福田又一
○福田又一君　直二三讀會ヲ開キ第二讀會決議ノ通確定セラレンコトヲ望ミマス
裁判所ノ設立及移轉ニ關スル法律案確定議
大正二年法律第九號中改正法律案確定議
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=112
113・島田三郎
○議長(島田三郞君)　直ニ三讀會ヲ開イテ二讀會ノ決議通卽チ委員長報告ノ通
可決シタイト云フ福田又一君ノ說ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=113
114・島田三郎
○議長(島田三郞君)　御異議ガアリマセヌカラ委員長報告通可決確定致シマシタ、
是ヨリ大正二年法律第九號中改正法偉案ノハ號數ガ間違ッテ居リマシタカラ、唯
今ノ宣告ハ取消シマヽ、モウ一度讀ミマス明治三十二年法律第七十號中改正法
律案、是ニ付テ決ヲ採リマス、本案ハ前二案カ委員長報告通可決確定致シマシタ、結
果自然委員長ノ報告通リニ決セラルベキモノト認メラレマスカラ、是ハ二讀會ニ移スベ
カラザルモノト委員長報告通可決確定ト見テ異議ハアリマセヌカ
(「必要ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=114
115・島田三郎
○議長(島田三郞君)　ソレデハ之ニ付テ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=115
116・島田三郎
○議長(島田三郞君)　本案ニ付テ異議ガナケレバ委員長報告通決定致シマス
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=116
117・福田又一
○福田又一君　此場合ニ於キマシテ日程ヲ變更致シマシテ東京砲兵工廠及大阪砲
兵工廠ノ据置運轉資本增加ニ關スル法律案ヲ付議セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=117
118・川上榮太郎
○川上榮太郞君　議長-議長
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=118
119・島田三郎
○議長(島田三郞君)　是ハ委員長ノ報告ヲ議題トスル其意味デ、直ニ一讀會ヲ開
クト云フコトハ含マレテ居リマスカ
(「其通リ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=119
120・島田三郎
○議長(島田三郞君)　御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=120
121・島田三郎
○議長(島田三郎君)　ソレデハ東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ据置運轉資本ニ
關スル法律案ノ一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ望ミマス、高橋久次郞君
東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ据置運轉第一讀會ノ續(報告調理工作室
資本增加ニ關スル法律案(政府提出)
〔高橋久次郞君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=121
122・高橋久次郎
○高橋久次郞君　ソレデハ私カラ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、本案
ハ御承知ノ如ク文章ハ誠ニ簡單デアリマシタケレドモ、其及ブトコロ頗ル重大ナモノデア
リマシテ、質問應答モ非常ニ重ネマシテ、尙愼重審議ヲ凝シマシタ、結果、反對ガ一ニ對
シテ贊成ガ五アリマシタ、其理由ハデス、今日國家內外ノ事情ニ照シマシテハ誠ニ已ム
ヲ得ヌ、併ナガラ陸軍省ニ於テ成ベク此軍器卽チ砲兵工廠テ拵ヘマストコロノ器具ヲデ
ス、民間ノ工業ニ移シテ差支ナイ限リハ成ベク民間ノ工業發達ヲ期スル上ニ於テ移シテ
貰ヒタイト云フ意見ヲ附シテ贊成ヲスルト云フコトデアリマス、此段御報告ヲ申シマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=122
123・島田三郎
○議長(島田三郞君)　委員長ノ報告ガ濟ミマシタ
S
東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ据置運轉資本增加ニ二、三讀曾
關スル法律案
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=123
124・福田又一
○福田又一君　別ニ反對ノ通告モゴザイマセヌノデアレバ直ニ二讀會ヲ開クコトヽシ卽
時二讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シテ委員長報告通可決確定セラレンコトヲ望ミマス
、「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=124
125・島田三郎
○議長(島田三郞君)　御異議ガナイト認メマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=125
126・池田寅治郎
○池田寅治郞君　アリマス、反對ノ意見ガアリマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=126
127・島田三郎
○議長(島田三郞君)　ソレデハ反對ノ意見ヲ御發表ニナッテ宜シウゴザイマス
〔池田寅治郞君登壇〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=127
128・池田寅治郎
○池田寅治郞君　小石川及大阪砲兵工廠ノ運轉資金ヲ三百五十万圓ヲ增シテ、
七百万圓トスルト云フ此議案ニ對シマシテ唯今委員長ノ報告ハ頗ル簡單デアリマシタ
ガ、私ハ之ニ對シテ反對ノ意見ヲ委員會ニ於キマシテモ縷々申述ベテ置キマシタ、元來
此案ニ反對スル理由ハ幾ラモアリマスガ、先ヅ其中デ最モ必要ナル三箇バカリノ理由ヲ
陳述シテ置キタイト思ヒマス、第一ニ此陸軍ニ要スルトコロノ軍器軍需品ハ、絕對的ニ
陸軍ヲシテ獨占的製造ヲ爲サシメル必要ハナイト一云フ此理由ノ一トシテ之ニ反對ヲ
スル、御承知ノ通ニ日本ノ國防ハ海陸兩軍ニ依シテ完全ニ遂行セラレルノデアル、然ルニ
此海軍ニ要スルトコロノ軍器軍需品ガ如何ニシテ供給セラレテ居ルカト云フコトヲ御考
ヘニナルナラパ、寔ニ明白ナル話デアル何ガ故ニ此陸軍ダケ之ヲ陸軍ノ獨占的直營ニシナ
ケレバナラヌカト云フ理由ヲ私ハ發見スルコトガ出來ナイ、陸軍當局者ハ從來屢〓軍器
ノ祕密ヲ唯一ノ楯ト致シテ、此陸軍ノ獨占的直營ヲ主張シテ來マシタガ、今日ニ至ッテ
ハ其主張モ昨日ノ委員會ニ於キマシテ陸軍大臣ノ說明ニ依リマシテモ、旣ニ抛棄セラレ
テ居ルヤウニ思フ、成ルベク之ヲ公開シタイ。御尤モナ話デアル祕密ト言ヘバ知ラヌ人ニ
向ッテハ何カドウモ大シタ祕密ガアルヤウニ思フケレドモ、左程大シタ祕密ガ此陸軍ノ軍
器軍需品ヲ製造スル上ニ於テアルベキ筈ガナイ、例セバ三十八年式ト云ヒ若クハ四十
一年式ト云ヒ、知ラヌ門外漢ニ向ッテハ是ハ大イナル祕密ガ存在サルヽカノ如ク見エ
ルケレドモガ、少シク專門ノ知識ヲ有シ、而モ其軍器ヲ取扱フトコロノ當局ノ位地ニ居
ル者ハ、日本ダケデナイ列國ノ當局者ハ皆知ッテ居ルニ違ヒナイ、之ニ反シテ日本ノ當
局者モ亦列國ノ此軍器ノドノ程度マデ行ハレテ居ルカト云フ位ナコトハ、確ニ知ッテ居ラ
ナケレバナラヌ筈デアル若シ之ヲ知ラズ、唯祕密ノ二字ノ下ニ葬ラレテ、餘所ノ方ノコ
トヲ〓究セヌト云フコトデハ國防ヲ遂行スル上ニ頗ル不親切ナコトヽ言ナケレバナラヌ斯
ノ如キ有樣デアリマスカラシテ、陸軍営局ニ於テモ公開主義ヲ執ル斯ウ云フ御話デア
ル、サウシテ此公開主義ヲ執ルノニ何カ故ニ之ヲ本當ニ事實ニ現ハサナイカト言ヘバ是
ハ過去ノ歷史ニ囚ハレテ居ルニ過ギナイ、昨日政府委員ノ御說明ニ依リマスルト舊
藩時代カラノ沿革ヲ喋々御講釋ヲ拜聽致シマシタ、而シテ今日尙此日本ニ於テ安心
シテ依托スベキダケノ工業會社ガ無イカラ、巳ムヲ得ズヤッテ居ルノダト斯ウ云フコト
デアル、斯ノ如ク當局ニ於テモ亦實際ノ事實カラ申シマシテモ、此陸軍ノ所要軍需品ヲ
陸軍ヲシテ獨占的ニ直營セシムルダケノ必要ノ無イト一云フコトハ明白デアリマスカラ、第一
此理由ニ於テ、此据置運轉資本ノ增加ニ反對スル、第二今日ハ日本ガ如何ナル時デ
アルカ日本ハ大ニ此工業政策ヲ確立シテ將來ノ此世界ノ大勢ニ順應シテ行クダケニ
工業政策ヲ確立シテ行カナケレバナラヌ時デアル此時ニ臨ンデ相變ラズ舊來ノ筆鋒ヲ
墨守致シマシテ、此日本國ニ於テ所要額ノ最モ大ナル一シノ品物ヲ占メテ居ル軍器ノ
如キモノヲ政府ノ唯獨占的直營ニ委シテ置クコトニナレバ經濟上殊ニ工業政策ヲ確
立スル上ニ於テ大ナル障害ヲ來スノデアル、陸軍大臣モ本日ノ委員會デアリマシタカ御
說明ガアリマシタ「アームストロング」會社ノ如キ此軍器ヲ單ニ製造シテハ儲カラヌカラシ
テ、他ノ機械類ノ製作工業ヲ兼營シテ、而シテ始メテ此會社ノ基礎ガ立ツノデアルト云
コトノ御說明ガアッタ是ハ陸軍大臣ノ御說明ヲ待タズシテ確ニ一部ノ眞理ヲ含ンデ居ル
ト云フコトハ私共モ從來承知シテ居ルトコロデアル(「聞イタノダラウ」ト呼フ者アリ)果
シテ然ラバ此際ニ臨ンデ此軍器製造ヲ政府ガー陸軍當局者ガ之ヲ直營シテ、要アイ
軍器軍需品ダケ製造シテ居レバ經濟上確カニ資本ニ對スル收支勘定ニ於テ損ガイカナイト
云フコトハ、是ハ決シテ許サヌ筈デアル、經濟上ノ大法ハ是ハ單リ歐羅巴ダケデハナイ、日
本ニ於テモ正シク此實ハ行ハレルノデアル果シテ然ラバ此際ニ是ガ而モ砲兵工廠ノ据
置運轉資本ヲ增加シ、且一方ニ於テハ砲兵工廠ノ土地建物機械、器具其他材料
諸器購入ノ爲ニ多額ノ資金モ要求セラレテ居ルヤウナ斯ウ云フ際ニ臨ンデ、是ハ過渡ノ
時テ一番工業政策ヲ將來ニ確立スル時トシテハ殆ト千載一遇デアル、此一遇ニ際シ
テ、政府ハ主義ニ於テモ陸軍ノ軍器軍需品ハ之ヲ公開スル主義ヲ執ッテ居ラレル、而シテ
單純ナル工業政策ノ意味カラ言フテモ、斯ウ云フ千載一遇ニ際會シテ居ル時ニ臨ンデ、
殊ニ從來カラ同ジ國防ノ任ニ當ルトコロノ海軍ノ方ニ於テハ單ニ之ヲ民間ニ製造サセ
ルノミナラズ、外國ニマデ注文シテ居ルヤウナ時ニ、陸軍ニハ祕密ガアッテモ海軍ニハ秘密
ガナイト云フ議論デナイ、、唯其時々ノ都合デイロノ〓ノ理窟ヲ付ケテ今日ノ歷史ヲ來シ、
サウシテ其歴史ニ因ハレテ種々ノ辯解ヲ試ミラレテ、今日ノ狀態ヲ來シテ居ル、幸ニ今日
ハ各般ノ方面ニ於テ、殊ニ此工業政策ヲ將來ノ爲ニ確立スル時トシテハ一番好イ時デ
アルカラ、而モ陸軍當局ニ於テ据置運轉資本ノ增加ヲ要求セラレ一面ニ擴張費ヲ要
求セラレテ居ル際デアルカラ、之ヲ能ク料理鹽梅シテ日本國將來ノ爲ニ工業政策ヲ確
立スル必要上、私ハ此据置運轉資本ヲ增加スル必要ヲ認メナイ、政府ノ眞意ガ果シテ
此ニアルナラバ、何モ此際ニ當ッテ增ス必要ハナイ、是ハ第二ノ理由デス、第三ニハ豫算
ノ編成ノ上カラ言ウテモ斯ウ云フコトヲスルノ必要ガナイ、是ガ理由トシテハ餘リ重大ナモ
ノデナイカモ知ラヌ、御承知ノ通リニ當春特別議會ノ時ニ於テハ豫備金ヲ三百万圓
ヨリ八百万圓ニ增スト云フ法律案ガ通過シテ居リナガラ、政府ノ今囘議會ニ提出
セラレタル豫算面ニ於テハ、ヤハリ舊ノ通リ三百万圓ニナッテ居ルガ如ク、此財政上ノ遣
繰リハ頗ル窮屈ナコトニナッテ居ルノデアル此窮屈ナル豫算ヲ編成シ而シテ之ヲ遂行
セントシナガラ、一面重大ナル理由ガアッテ之ヲ民間ニ移シテ相當ニヤラセ得ルト云フコト
ノ理由ガ存在シテ居ル以上ハイツモ軍事當局者ノ方ハ海陸共ニ理想ハ高遠ナル理想
ヲ有ッテ居ルケレドモ、財政ガ許サヌカラト云フノガ始終ノ辯解ノ辭デアル此辯解ノ辭
ガ或ル程度マデ應用セラレテ居ルトスルナラバ、殊ニ一囘ニ於テ之ヲ一般ニ公開スル主
義ヲ認メラレテ居ル以上ハ、此際奮ッテ折角ニ確立シタル陸軍當局者ノ方針ヲ實行
セラレルノハ、又財政ノ上カラ言ンテモ確ニ私ハ是ハ必要ナコトデアルト心得ル斯ノ如
ク考ヘテ來マスレバ、此三箇ノ理由ノ一ツガアッテモ、旣ニ此案ニ反對スベキ理由ヲ
ナスト思フ、況ヤ三箇共ニ併立シテ居ルニ於テハ、斷ジテ此案ニ贊成スベカラズト云フ意
見ヲ有ッテ居ル、而シテ唯今委員長ノ報告セラレマシタル通リニ、多數ノ人ハヤハリ大體
ノ意見ニ於キマシテハ、本員ト同ジコトノ意見ヲ懷抱セラレマシテ、政府ヲシテ成ルベク民
營主義ヲ執ラセルト云フ條件付ノ下ニ、此案ニ贊成スルト云フ方ガ多數デアル、是ハ法
律案トシテ甚ダ不徹底ナ條件附ノ贊成ダラウト思フ、若シ此條件ヲ附ケテ置イテ、据置
運轉資本ノ增加ダケハ時々之ヲ增加シテ行クケレドモ、民營ニサスコトハシナカッタ時分
ニ、之ニ向ッテ如何ナル制裁ヲ加ヘル、何等ノ效力ナイ條件デアル、スルカセヌカハ當局者ノ
意中ニ在ッテ存シテ居ル更ニ效力ノナイ唯一時體費ヲ繕フト云フヤウナ不黴底ノ條件
付ノ案デアル、大體ノ主義ニ於テハ全體ハ民營主義ヲ執ッテ居ラレル、果シテ然ラバ禾資會
ハ全會一致ヲ以テ此民營主義ヲ贊成スルト云ッテモ差支ナイ、唯與黨ノ諸君ガ多イ爲
ニ斯ウ云フ條件附ヲ以テ政府ノ意思ヲ遂行サレルヤウニナルダケデアル、此國防ノ上カ
ラ云ッテモ經濟、工業政策ノ上カラ云ウテモ又財政上ノ都合カラ云ウテモ、此案ヲ通
過サスノ不可ナルコトハ他ノ委員諸君ニ於テモ十分御承知デアッタラウ、私ハ然ルニモ拘
ラズ他ノ委員諸君ガ不徹底ナル條件附ノ此案ヲ通過セラレタト云フコトハ頗ル遺憾ニ
思ヒマスルカラ、此際私共ノ意思ノアル所ヲ玆ニ陳速致シマシテ、以上述ベタル三箇ノ理
由ニ付テ篤ト御熟考ノ上、ドウカ本員ノ所見ニ御賛成アランコトヲ希望スル次第デアリ
マス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=128
129・島田三郎
○議長(島田三郞君)　議ハ盡キタト思ヒマス、二讀會ヲ開クヤ否ヤノ決議ヲ採リマ
ス、本案ニ付テ第二讀會ヲ開クベシト云フ諸君ハ起立ヲ乞ヒマス
起立者多數
(「少數」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=129
130・島田三郎
○議長(島田三郞君)　多數デアリマス、二讀會ヲ開クニ決シマシタ
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=130
131・福田又一
○福田又一君　此場合三讀會ヲ省略致シマシテ委員長ノ··
〔「マダ二讀會デナイ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=131
132・福田又一
○福田又一君　直ニ二讀會ノ宣言ヲ受ケマシタ、議長ハ二讀會ヲ開クトー云フ宣言ガア
リマシタ二讀會ヲ開クト云フ宣言ガサレテアリマス。仍テ直ニ二讀會ヲ開クト云フコト
ノ宣言ガアリマシタカラ(「アリマセヌ」ト呼フ者アリ)三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ
ニ可決確定ヲ望ミマス
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=132
133・島田三郎
○議長(島田三郞君)　何レニシテモ此方カラ宣告致シマス、意義ヲ明白ニ致シマス、直
ニ二讀會ヲ開イテ三讀會ヲ省略シテ可決確定シタイト云フ說ト云フコトヲ宣告致シマス
東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ据置運轉資本增加ニ關確定議
スル法律案(政府提出)
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=133
134・島田三郎
○議長(島田三郞君)　之ニ同意ノ御方ハ起立ヲ乞ヒマス
起立者多數
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=134
135・島田三郎
○議長(島田三郞君)　多數、可決確定致シマシタ-日程第四、海洋調査及〓究
機關整備ニ關スル建議案之ヲ議題ト致シマス-小西君
第四海洋調査及〓究機關整備ニ關スル建議案(小西和君提
〓
海洋調査及〓究機關整備ニ關スル建議案
海洋調査及〓究機關整備ニ關スル建議
海洋調査及〓究ノ爲適當ナル機關ヲ整備シ之カ調査及〓究ノ遂行ヲ期セムコト
ヲ望ム
右建議ス
〔小西和君登壇〕
〔「モウ分リマシタ」「定足數ナシ」ト呼フ者アリ〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=135
136・小西和
○小西和君　大分時間ガ移リマシタカラ極メテ簡單ニ一言申上ゲテ壇ヲ降リマス、海
洋調査及〓究機關整備ノ必要ノゴザイマスルコトハ、我ガ帝國ノ位置ニ鑑ミマシテ又
世界ノ趨勢ニ鑑ミマシテモ極メテ必要且急務トスル所ノモノデアリマス、而モ現在行ハレ
テ居ル所ノ此種ノ狀態ヲ見マスルト云フト水產講習所ニ於ケル漁業地基本調査ノ如
キ、海軍ニ於ケル水路調査ノ如キ、或ハ帝國大學其外ノ〓育機關ニ於テヤッテ居ル所
ノ〓究ノ如キ、何レモ甚ダ不十分不完全デゴザイマシテ、刻下ノ必要ニ應ズルニ足ラナ
イノデアリマス、斯ウ云フ理由ニ依リマシテ完全ナル海洋調査竝ニ〓究機關ヲ置クノ必
要ヲ認メマスル、是ガ本案ヲ提出致シタル所以デアリマス、幸ニシテ委員會ニ付託下サイ
マスルナラバ又其必要ガゴザイマスルナラバ委員會ニ於テ尙詳シク辯明ヲ致サウト思ヒ
マリ、ドウゾ御贊成アランコトヲ望ミマス(拍手起ル)
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=136
137・福田又一
○福田又一君　本案ハ議長指名九名ノ特別委員ニ付託審査セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル)
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=137
138・島田三郎
○議長(島田三郞君)　福田君ノ發議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=138
139・島田三郎
○議長(島田三郞君)　異議ナケレバ福田君動議ノ通ニ決シマス-日程第五、米
澤高等工業學校ニ關スル建議案-提出者竹村欽次郞君
第五米澤高等工業學校ニ關スル建議案(竹村欽次郞君外七
名提出)
米澤高等工業學校ニ關スル建議案
米澤高等工業學校ニ關スル建議
米澤高等工業學校授業科目中紡織、色染ノ二科目ハ之ヲ存置セラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔竹村欽次郞君登壇)
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=139
140・竹村欽次郎
○竹村欽次郞君　簡單ニ提出ノ理由ヲ述ベマス、諸君モ暫ク御〓聽アランコトヲ顧ヒマ
ス抑〓米澤ノ高等工業學校ナルモノハ二十二議會ノ時ニ貴衆兩院ニ請願書ガ出マシ
テ、又衆議院ニハ建議書ガ出マシテ、ソレカラ始マッタコトデアリマシテ、三十九年ニ至〃
テ初メテ開校ノ準備ガ出來タノデアリマス、其時ノ請願ノ趣意竝ニ建議書ノ趣意ヲ見
マスルト、御承知ノ通リニ米澤市ハ機業地デゴザイマスルカラ、染織ノ二科目ヲ主トシテ
建議シ又請願シタノデアリマス、政府モ之ヲ諒トシマシテ市カラシテ一万圓、三郡カラ一
万圓、縣カラ八万圓、ソレカラ市カラ二万坪ノ敷地ヲ獻納スルコトヲ條件トシテ、愈ニ之
ヲ創立スルコトニナリマシタ而シテ創立シマシテ四十三年初メテ卒業生ヲ出スヤウナコト
ニナリマシテ、マダ三回シカ卒業生ヲ出シテ居リマセヌ、故ニマダ此高等工業學校ト云フ
モノヽ成績果シテ如何ニ發展スルカト云フコトノ見込ハ十分付キマセヌガ、今後大ニ發
展スルト云フコトハ統計表ニ照シテ分ッテ居リマス、然ル所ガ政府ハ此五年度ノ豫算ニ
於キマシテ、行政整理ノ名ニ於テ、僅三千五百圓ト云フ金額ヲ節約スルガ爲ニ中止ヲ
スル、此染織二科目ヲ中止スル、斯ウ云フ案ニナッテ居リマスサウシマスルト云フト當
初ノ目的ニ反シ、世ノ希望ニ反シマシテ、米澤地方ト云フモノハ何ノ爲ニ斯ウ云フ學校
ヲ建テル金額ヲ寄附シタカ、又機業ト云フモノヽ發展ヲ圖ルガ爲ニ斯樣ナコトヲシタモノ
デアラウカ、殊ニ今日ハ歐洲戰亂ノ結果トシテ、實業ノ方ニ大ニ力ヲ注ガナケレバナラヌ
時ニ當リマシテ、此奧羽ノ發展ノ一助トモナルベキ此染織二科目ノ講習ガ出來ヌト云
フコトニナリマスノハ甚ダ遺憾ノ次第デアリマシテ、政府トシテ斯ノ如キコトヲ僅ノ間ニ改
廢スルト云フコトハ、餘リニ早計デハアルマイカト私ハ信ジマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)
故ニ是ハ是非存續セラレンコトヲ希望シテ止マヌノデアリマス、滿場諸君ノ御贊成ヲ偏
ニ希望致シマス
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=140
141・伊東知也
○伊東知也君　本案ハ唯今ノ御說明ニ依ッテ甚ダ明瞭ナ案デアリマス、斯ノ如キ案ハ
委員會ニ付セズシテ、此場合卽決セラレンコトヲ希望致シマス(拍手起ル)
(「贊成々々」ノ聲起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=141
142・島田三郎
○議長(島田三郞君)　別ニ御發議ガアリマセヌケレバ、伊東君ノ說ニ付テ決議ヲ採リ
マス
(「贊成々々」「異議ナシ」ノ聲起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=142
143・島田三郎
○議長(島田三郞君)　御異議ナイト認メテ確定致シマシタ-日程第六、教育費
國庫支辨ニ關スル建議案、是ハ提出者鈴木萬次郞君ヨリ說明ノ延期ヲ要求セラレマ
シタ、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=143
144・島田三郎
○議長(島田三郞君)　ソレデハ延期致シマス-日程第七ヨリ第十三マデハ請願特
別報告デアリマス、例ニ依リ一括シテ議題ト致シマス-委員長ノ報告ヲ求メマス-
加藤彰廉君
第七(特別報告第二號)濱四〓村黑目ニ郵便局(委員長報告)
設置ノ請願
第八(特別報告第三號)元田島區裁判所復舊ノ(委員長報告)
請願
第九(特別報告第四號)元社區裁判所復舊ノ請(委員長報告)
願
第十(特別報告第五號)元加治木區裁判所復舊(委員長報告)
ノ請願
第十一(特別報告第六號)手莊村ニ登記所設置(委員長報告)
ノ請願
第十二(特別報告第七號)作木村ニ區裁判所出(委員長報告)
張所設置ノ請願
第十三(特別報告第八號)都城飫肥間ノ鐵道速(委員長報告)
成ノ請願
(加藤彰廉君登壇)
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=144
145・加藤彰廉
○加藤彰廉君　是ハ請願委員會ニ於キマシテソレ〓〓相當ノ理由アルモノト認メマシ
テ何レモ採擇ニ決定致シマシタ、ドウゾ御贊成ヲ願ヒマス
〔拍手起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=145
146・島田三郎
○議長(島田三郞君)　委員長ノ報告ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=146
147・島田三郎
○議長(島田三郞君)　委員長報告通リ決定シマシタ
特別報告第二號
請願文書表第九五號
濱四〓村黑目ニ郵便局設置ノ請願福井縣坂井郡濱四〓村黑目四號十
九番地平民農橋本茂兵衞外九名呈出(紹介議員大橋松二郞君)
右請願ノ要旨ハ福井縣坂井郡濱四〓村及棗村附近ハ耕地少キヲ以テ他府縣ニ
行商又ハ出稼スル者多クシテ常ニ其ノ數數百人ヲ下ラス從テ郵便電信爲替等ノ郵
便事務繁多ナリ然ルニ周圍何レノ郵便局ニ至ラムトスルニモ一里餘ノ距離アリテ其
ノ不便不利甚シ依テ前記濱四〓村大字黒目ニ郵便局ラ設置セラレタシト謂フニ在
リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第三號
請願文書表第五八號
元田島區裁判所復舊ノ請願福島縣南會津郡田島町長鈴木弘二外十二
名呈出(紹介議員鈴木寅彥君)
右請願ノ要旨ハ福島縣下元田島區裁判所ハ大正一一年四月廢止セラレ若松區裁
判所ノ管轄ニ移サレタリ元田島區裁判所ノ管轄地タルヤ地域廣漠山間僻陬ノ地ニ
シテ交通機關備ラス殊ニ冬)季積雪中ハ交通ノ杜絕屢次ニシテ其ノ不便極メテ甚シ
ク且田島町若松市間ハ十二里ニシテ遠キハ三十二里ヲ隔テ往復十數日ヲ要スル地
方アリ從テ其ノ勞費增加ノ爲權利抛棄ノ已ムナキニ至ルモノ往往ニシテ之アリ是レ
關係町村民ノ痛苦トスルトコロナリ依テ元田島區裁判所ヲ復舊セラレタシト謂フニ
在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第四號
請願文書表第七三號
元社區裁判所復舊ノ請願兵車縣加東郡社町長松本彌一郎外三十四名
呈出(紹介議員橫田孝史君)
右請願ノ要旨ハ兵庫縣下元社區裁判所ハ大正二年四月廢止セラル而シテ舊管轄
地タル加東加西、多可三郡ノ訴訟件數ハ其ノ廢止後或ハ減少セルモノアラムト雖
是レ健訟ノ弊ノ減セシニ非スシテ勞費增加ノ爲權利抛棄ノ止ムナキモノアルニ因ルナ
リ其ノ結果トシテ貸借其ノ他ノ取引等警戒ヲ加ヘ相互間ノ融和疏通及經濟ノ圓
滑ヲ缺クニ至ル加フルニ交通機關發達セリト雖其ノ便利ヲ享クルモノハ極メテ尠少ニ
シテ前記三郡民ノ受クル苦痛ヤ甚大ナリ依テ元社區裁判所ヲ復舊セラレタシト謂フ
三行印
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第五號
請願文書表第一二二號
元加治木區裁判所復舊ノ請願鹿兒島縣姶良郡加治木町長牧〓澄外二
十五名呈出(紹介議員柚木慶二君外一名)
右請願ノ要旨ハ鹿兒島縣下元加治木區裁判所ハ大正二年四月廢止セラレ其ノ
管轄地タリシ始良、伊佐ノ兩郡及囎唹郡ノ一部ハ鹿兒島區裁判所ノ管轄ニ移サレ
タリ前記三郡ノ地ハ東西一一十里南北十八里戶數三萬四千六十四人口二十一萬
千百三十七ヲ有スル廣濶ノ地域ニシテ從テ訴訟件數夥シク將來尙增加ノ傾向ニア
リ然ルニ其ノ廢止ノ結果管轄裁判所トノ距離遠隔ト爲リシヨリ勞費增加ノ爲權利
ノ保全及伸張ヲ阻害セラレ關係町村民ノ受クル不利不便甚大ナリ依テ元加治木
區裁判所ヲ復舊セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第六號
請願文書表第七二號
手莊村ニ登記所設置ノ請願岡山縣川上郡手莊村長赤松佳衞外三名呈
出(紹介議員西村丹治郞君)
右請願ノ要旨ハ岡山縣川上郡手莊村、大賀村、日里村、高山村ノ四箇村ハ高梁
區裁判所成羽出張所ノ管轄ニ屬シ其ノ間ノ距離遠隔ニシテ交通亦最不便ヲ極メ
關係村民ノ困難甚シ依テ大正五年度ニ於テ前記地方ヲ一區域トシテ管轄スル登
記所ヲ其ノ中央ナル手莊村大字地頭ニ設置セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第七號
請願文書表第一二一號
作木村ニ區裁判所出張所設置ノ請願廣島縣雙三郡作木村助役三上秋
太郞外一名呈出(紹介議員橫山金太郞君)
右請願ノ要旨ハ廣島縣雙三郡作木村ハ戶數千百八十人口七千百有餘東西三
里南北七里面積六方里四分ノ廣漠タル村落ニシテ管轄登記所トノ距離ハ其ノ北
端ヨリ九里餘ヲ隔テ簡單ナル登記申請ニ就テモ二日乃至四日ヲ要シ年末繁忙ノ際
ノ如キハ書面推問ニ尙一週間ノ日子ヲ費スコト尠シトセス爲ニ漸次登記申請ヲ避ク
ルノ傾向アリテ事業ノ發展ニ影響スルコト尠カラス又高田郡川根村ハ戶數三百七
十二人口千八百六十東西一里二十四丁南北一里十丁面積一方里三分五厘ニ
シテ比較的小村落ナリト雖管轄北村登記所出張所トハ三里三十四丁ヲ隔テ道路
險惡ニシテ前者ト同一ノ狀態ニアルヲ以テ前記二箇村ヲ管轄スル爲作木村ニ三次
區裁判所出張所ヲ設置セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第八號
請願文書表第五一號
都城飫肥間ノ鐵道速成ノ請願宮崎縣南那珂郡福島村長津野文夫外百
十四名呈出(紹介議員小森雄介君外七名)
右請願ノ要旨ハ鹿兒島縣囎唹郡、宮崎縣北諸縣郡及南那珂郡ノ地ハ禾稼豐沃
林產富饒沿海亦無限ノ漁利アリテ九州南部ノ一大富源ナルヲ以テ之カ開發ヲ計ル
爲前記北諸縣郡都城ヨリ分岐シテ囎唹郡志布志ヲ經更ヘニ南那珂郡飫肥ニ達スル
支線ノ鐵道ヲ速成セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及御送付候也
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=147
148・島田三郎
○議長(島田三郞君)　此際諮問ヲ致スベキ事項ガアリマス、併ナガラ其事ノ事實ヲ申
述ベテ、サウシテ御異議ガナケレバ延期致シマス、ソレハ演說ノ參考トシテ速記錄ニ文書
ヲ揭載シタイト云フコトデアリマス、此事ニ付テ其事項ハ揭載スベキヤ否ヤト云フコトヲ院
議ニ諮フ必要ガアラウト思ウテ居リマス、今日ハ此事ヲ延期シタイト思ヒマスガ別ニ御異
議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=148
149・島田三郎
○議長(島田三郞君)　ソレデハ延期スルコトニ致シマス、次圓ノ議事日程ハ公報ヲ以
テ御通知致シマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後五時三十一分散會
衆議院議事速記錄第九號小河源一君貪リ陋態ヲ極メタルモノアリトノ意味ノ物
演說ノ參照(其二)語ヲ爲シタル際被告ハ橫田千之助、三土忠
造等ト共ニ同席シ右友一ノ談話ヲ聽取シタ
豫審請求書ルニ拘ハラズ斯ノ如キ事實ナキ旨僞證シタ
僞證增田穰三リ
右者左記ノ犯罪アリト思料候條求豫審候也被告人增田穣三訊問調書
大正四年七月十九日大正四年七月十九日高松地方裁判所ニ於テ云々
高松地方裁判所檢事局1問氏名ハ
檢事山下覺次郞答增田穢三
高松地方裁判所2問年齡ハ
豫審判事御中答平方な
犯罪事實3問接受
被〓穰三ハ大正四年七月十九日白川友一板答平民
4問國際大
倉中等ニ對スル瀆職被告事件ニ付高松地方答ハ上
裁判所豫審廷ニ出頭シ證人トシテ宣誓ノ上5問住前所同
陳述ヲ爲スニ當リ大正三年十二月帝國議會答前同上
解散後白川友一ヨリ橫田千之助、三土忠造6問原籍ハ
等ト共ニ東京市赤阪區待合花屋ニ招待セラ答同上
レ其席上ニ於テ友一ガ關東派議員ノ一部ハ7問出生地ハ
非常ノ「スレツカラシ」ニテ實ニ驚クノ外ナ答同上
シ就中增師案ニ贊成シタル關東派議員中ニ8問位記動章從軍記章年金恩給ヲ有セザルヤ
ハ陋劣極マルモノアリテ關東派ニ屬スル衆答日露戰後ノ功勞ニヨリ勳章靑色桐葉章ヲ
議院議員ノ一部ガ右增師案ニ贊成スベク買下賜サレテ居リマス
收セラレタル事及議員中ニハ甚シク金錢ヲ9問是迄刑事上ノ處分ヲ受ケシコトナキヤ
答ナシ
1時間被告ニ對スル起訴ノ事實ハ被告ハ大正四
年七月十九日白川友一、板倉中等ニ對スル
瀆職被告事件ニ付高松地方裁判所豫審廷ニ
出頭シ證人トシテ宣誓ノ上陳述ヲ爲スニ當
リ大正三年十二月衆議院解散後白川友一ヨ
リ橫田千之助三土底造等ト共ニ東京市赤阪
區待合花屋ニ招待セラレ其席上ニ於テ友一
ガ關東派職員ノ一部ハ非常ノ「スレツカラ
シ」ニテ實ニ驚クノ外ナシ就中增師案ニ贊
成シタル關東派ニ屬スル衆議院議員ノ一部
ガ右增師案ニ贊成スベク買收セラレタル事
及右議員中ニハ甚シク金錢ヲ貪リ陋態ヲ極
メタルモノアリトノ意味ノ物語ヲ爲シタル
際被〓ハ橫田千之助、三土忠造ト共ニ同席
シ右友一ノ談話ヲ聽取シタルニ拘ハラズ斯
ノ如キ事實ナキ旨爲證シタリト云フニ在ル
如ガ如何
答前刻證人トシテ御取調ヲ受ケタル際申上
ゲマシタコトハ總テ眞實ニシテ御尋ノ如ク
爲證シタモノデハアリマセヌ
右讀聞ケ云々
被告人增田穰三
函大正四年七月十九日
高松地方裁判所ニ於テ
同廳
裁判所書記中條延次團
豫審判事代理
判事角南美貴國
聽取書
增田穣三
大正四年七月廿二日高松地方裁判所檢事局ニ
出頭ノ任意左ノ通リ陳述シタリ
私ハ本年七月十九日白川友一、板倉中濱
職被〓事件ニ付證人トシテ當地方裁判所豫
審判事ノ訊間ヲ受ケルニ當リ爲證シタル爲
メ拘束セラレマシタガ一時ノ不心得ヨリシ
テ不實ノ事ヲ申立テ何ントモ申譯デナイコ
トヲシタト悟リマシタカラ今朝其旨ノ上申
書ヲ認メ監獄署ヨリ角南豫審判事ニ宛テ差
出シマシタ實ハ本年六月廿日上京中ノ私ニ
對シ白川友一ノ支配人阪本和吉ヨリ至急歸
國セヨトノ電話デアリマシタカラ私ハ同月
廿二日高松ニ歸リ同夜八時頃高松市一番丁
ナル白川友一方ニ參ツタ處白川ハ私ニ對シ
僕ト板倉トノ關係ニ付テハ板倉ガ高松ニ來
テ互ニ首ガ飛ンデモ云ハヌコトニ約束シテ
置イタカラ君モ其積リデ如何ナル事ガアツ
テモ板倉トノ干係ヲ口外シテハナラヌト云
ハレタコトモアルシ若シ口外スレバ實ニ意
外ナコトニナリマス故遂ニ爲證スルニ至リ
マシタガ私情ノ爲メ又自己ノ利益ノ爲メ同
家ノ大事ヲ隱シ立テスルコトハ如何ニモ苦
悶ニ堪ヘマセヌ故私ノ干係シテ居ル事柄ハ
全部申上ゲル決心ヲ致シマシタ私ノ切ナル
心情ヲ御察シ願ヒマス
昨年十二月召集セラレタル第三十五議會ニ
政府案トシテ增師案ヲ提出セラレマシタガ
其當時私所屬政友會ノ幹部ハ政府ノ政策ハ
總テ反對スルト云フ意氣組デアリマシタ然
シ私ハ既ニ政友會內閣トシテモ增師ヲ必要
ト認メタルノミナラズ擧國一致ヲ破ツテ迄
モ增師ニ反對スルコトハ不穩當デアルト云
フ意見デアリマシタ
而シテ白川友一モ同一意見デ私ト行動ヲ共
ニシテ居リマシタ然ル處昨年十二月中同厚
生舘ニ於テ白川ガ私ニ對シ林田書記官長ガ
政府ヘ此議會ニ政府案ヲ通過サスル爲メニ
金ヲ出シテ政友會ノ切リ崩シヲスル方針デ
アルカラ增師案及其他ノ政府案ニ付キ政府
ノ目的ヲ達スル樣ニ盡力シテ吳レ政府カラ
金ヲ出スト云フテハ變ダカラ白川己人ガ金
ヲ出ス樣ナ風ニシテ奔走シテ吳レト云フカ
ラ是非盡力ヲ賴ムト云フテ夫レヲ承諾シマ
シタ然シ金錢問題ハ成ルベク口ニ出サヌ樣
ニシテ同志ヲ糾合シヨウト約シ次第ニ同志
ヲ集メ厚生舘組ト云フモノガ出來タノデア
リマス
其人名ハ白川及私ノ外ニ
武市庫太愛媛
水間此農夫宮崎
濱田政藏同
村井善四郞大奈良
井阪光暉阪
長谷川敬一郎佐賀
丸尾光春兵庫
高鍋篤郞大同
本出保太郞阪
高橋直次北海道
天野壯三郞愛媛
瀬戶山〓彦宮崎
光森德治高知
森川源吾滋賀
吉田虎之助同
等デアリマシタ
三、右同志ノ者等ニ對シテハ政府ヨリ金ガ出
ルト申シマセンガ時々厚生舘ニ於テ白川ガ
同志ノ前デ增師案ニ贊成スルモノニハ費用
ハ出スト云フテ居リマシタカヲ同志ノ者ハ
何レノ筋カラカ金ガ出ルコトハ承知シテ居
ツタコトヽ信ジテ居リマス林田ノ云フ處ニ
ヨレバ政府ヨリ金ヲ出スト云フコトデアリ
マスカラ何レ政府筋ヨリ金ガ出ルコトハ確
カデアリマスガ果シテ誰ノ手カラ出金セラ
ルヽモノカ私ニハ判リマセン是レハ白川ニ
御尋子ニナレバ判ルコトヽ思ヒマス
五、私ト林田書記官長トハ議會ニ於テ顏ヲ合
ハスル位ノ間抦デアリマシタガ白川ヨリ右
買收相談アリシ前後ノコトナリシガ厚生舘
ノ白川ノ室ニ於テ白川ノ紹介ニヨリ林田ト
挨拶シ夫レ以來林田方ニ出入スル樣ニナリ
マシタ私ハ白川ト買收ノ相談ヲシタ後ノコ
トデ確カ昨年十二月十九日頃林田ヨリ白川
ニ金ヲ受取リニ來ヒト云フテ來タ處白川ガ
差支アリシ爲メ私ニ行ツテ取ツテ來テ吳レ
ト云フノデ私ハ同日夜築地料理店琉琳亭ニ
參リ二階座敷ニ於テ林田ニ面會シ白川ノ代
リニ來タト申スト是レヲ御渡シスルト云フ
テ壹萬貳千圓ヲ渡シテ吳レマシタカラ夫レ
ヲ受取リ直ニ厚生舘ニ歸リ白川ニ右金員全
部ヲ渡シマシタ其紙幣ノ種類ハ覺ヘテ居マ
センガ五百圓トカ千圓トカ云フ風ニ束ニナ
ツテ居ツタ紙幣デ壹萬貳千圓受取ツタノデ
アリマス
六、右金員ヲ林田ヨリ受取リシ時モ白川ニ渡
シタ時モ互イニ差向ヒノ處デ受渡ヲシタノ
デ誰レモ其席ニハ居リマセンデシタ
七、林田氏ヨリ受取リシ金ハ總テ白川ガ保管
シ同人ガ收支ヲ扱フテ居リマシタ而シテ白
川ガ直接林田氏ヨリ受取リシ數字ハ判リマ
センガ一二度林田ヨリ金ヲ受取ツテ來タト
白川ガ云フテ居リマシタカラ私ノ受取ツテ
來タ分ト合セ三四萬圓位受取ツタモノト思
ヒマス
八、右受取リシ金ハ白川ガ主トシテ取扱ツテ
居リマシタカラ同人ガ直接扱ツタ分ハ私ニ
ハ判リマセンガ私ガ白川ヨリ受取リタル金
ヲ同志ニ渡シタ分ヲ申シ上ゲマス
昨年十二月廿日頃厚生舘ニ於テ白川ガ私ニ
對シ關東組ノ者ヲ纏メル爲メニ板倉中ガ壹
萬圓入要デアルト云フガ五千圓丈ヶ遣ツテ
置クコトニシヨウ君カラ渡シテ吳レト云フ
テ紙幣ノ種類ハ覺ヘアリマセンガ束ニシタ
紙幣デ五千圖出シマシタカラ私ハ夫レヲ持
ツテ直ニ厚生舘出入ノ人力ニテ待合藤村屋
ニ參リ同家二階座敷ニ於テ板倉中ニ面會シ
白川ヨリ寄越シタト云フテ右五千圓ヲ板倉
ニ渡シタ處板倉ハ之レハ約束ガ違フ壹萬圓
ナケレバ足ラヌト云フノデ直ニ右人力ニテ
厚生舘ニ戾リ白川ニ右ノ話ヲシタ處仕方ガ
ナイカラ今五千圓丈ヶ持ツテ行ツテ吳レト
云フテ前同樣束ニシテ紙幣デ五千圓出シマ
シタカラ夫レヲ持ツテ直ニ藤村屋ニ參リ前
ノ座敷デ板倉ニ五千圓ヲ渡シテ直グ厚生舘
ニ戾リ白川ニ板倉ニ金ヲ渡シタ時ハ二度共
私ト板倉ト差向イデアッテ傍ニハ誰レモ居
リマセンデシタ
九、其後同月二十三日頃白川ガ何處デ聽イテ
來ルカ知レマセンガ板倉ト云フ奴ハ酷イ奴
デ私ノ方カラ金ヲ取ツテ置イテ又政府カラ
モ金ヲ貰ツテ居ル二重ニ金ヲ渡ス必要ハナ
イカラ金ヲ取リ戻シテ遣ルト云ツテ居リマ
シタ其後數日シテ白川ガ私ニ對シ板倉ニ談
判シテ金ヲ取戾シタト云フテ居リマシタガ
何處デ談判シタモノカ又其取戻シタル金額
ハ何程カ私ニハ判リマセン實ハ關東組ノ方
ハ私ハ少シモ關係セズ白用ガ專ラ交涉シテ
居リマシタカラ白川モ私ニハ關東組ノコト
ハ餘リ話ヲ致シマセンデシタ夫レ故私ハ板
倉ニ金ヲ渡ス時ニ初メテ藤村屋ニ行ツタ位
デ其前後ニ於テ同家ニ參ツタコトハアリマ
セン
一、右金ヲ渡シタ當時白川ハ關東組ハ七八
名纏マツテ居ル樣ニ申シテ居リマシタカラ
右壹萬圖ノ金ハ夫レ等ノ增師案贊成者ニ與
ヘル金デアルコトハ承知シテ居リマシタガ
果シテ何人ニ渡スモノカ其邊ノコトハ知リ
マセンデシタ
一、尙私ガ買收ニ關係シタ部分ヲ申上ゲマ
ス實ハ前申上ゲタル厚生舘ノモノハ私等ト
行動ヲ共ニシ何レモ脫黨シテ增師案ニ贊成
シタモノデ其中デ金ヲ欲シイト云フモノニ
ハ金ヲ出ス方針デアリマシタカラ同志ノモ
ノデ金ガ欲シイト私ニ申シ出タモノニ對シ
テハ白川ニ話シ同人ヨリ金ヲ受取ツテ居リ
マシタ夫レハ
(一)昨年十二月二十六日頃厚生舘ニ於テ壹干
五百圓ヲ武市庫太ニ與ヘタノデアリマス
是レハ同月二十日頃武市ガ白川ヨリ金ヲ
貰ツテ吳レト云フコトデアリマシタカラ
其當時白川ニ話シテ置イタ處白川ガ同月
二十六日頃武市ニ渡シテ吳レト云フテ寄
越シマシタカラ厚生舘ノ私ノ室ニテ武市
ニ手渡シシタノデアリマス
(二)同月二十三日頃厚生舘ニ於テ村井善四郞
ガ白川ヨリ金ヲ貰フテ吳レト申シマシタ
カラ其事ヲ白川ニ話シ壹子五百圓ヲ白川
ヨリ受取リ同日厚生舘ノ私ノ室ニ於テ村
井ニ其壹千五百圓ヲ與ヘタノデアリマス
(三)同月二十二日頃ヨリ同月二十五日頃迄ノ
間ニ二囘ニ高鍋篤郎ニ三百圓カ四百圓與
ヘマシタ夫レハ二度共高鍋ガ白川ヨリ金
ヲ貰フテ吳レト云フノデ白川ニ其事ヲ話
シ同人ヨリ受取リ厚生舘ノ私ノ室ニ於テ
高鍋ニ手渡シ致シマシタ初メニ渡シタ金
ハ百圓位デアッタト思ヒマス兎ニ角二度
デ三百圓カ四百圓デアツタコトハ違ヒア
リマセン
)
四同月二十六日頃厚生舘ニ於テ稻田政莊ガ
長谷川敬一郞ニ金ヲ遣ツテ吳レト云フノ
デ壹子圓ヲ濱田政莊ニ私ノ居ル次ノ室ニ
於テ渡シマシタカラ濱田ヨリ長谷川ニ渡
シタコトヽ思ヒマス實ハ其金ハ濱田ガ私
ニ對シ長谷川ハ貧乏シテ困ツテ居ルカラ
白川ニ云フテ壹千圓程遣ツテ吳レト賴ミ
マス故直グ白川ニ話シ白川ヨリ壹千圓受
取リ濱田ニ渡シタノデアリマス
ーニ、右金員ヲ受取リタ人々ハ增師案ニ贊成
シテ政友會ヲ脫黨シタ報駲ヲ吳レト明カニ
云フタ譯デモナク又私ノ方デモ報酬デアル
ト明カニハ申シマセンガ右ノ人々ハ增師案
ニ贊成スレバ白川ノ手ヨリ金ノ出ルコトハ
承知シテ吾々ト行動ヲ共ニシ現ニ金ヲ吳ト
云フテ白川カラ金ヲ貰フタノデアリマスカ
ラ無論報酬ナルコトハ承知ノコトト信ジマ
ス夫レ故右金ノ交換ニ付テハ證書ナゾヲ取
ツタコトハアリマセン
一二、昨年十二月二十八日午前中厚生舘ノ白
川ノ室ニテ白川ガ是レヲ取ツテ置イテ吳レ
ト云フテ紙幣ノ種類ハ覺ヘアリマセンガ紙
幣ニテ千圓ヲ出シマシタカラ私ハ其金ヲ全
部貰フテ置キマシタ其際白川ハ其金ノ性質
ニ付テハ增師案ニ付盡力シタ報酬ニ林田ヨ
リ出テ居ル金ヲ吳レタモノト思ツテ居リマ
シタ又前ニ申上ゲタル武市外三名ニ與ヘル
金ハ無論林田ヨリ出タ金ヲ渡シタモノト信
ジマス
一四、白川ガ三千圓ヲ私ニ吳レタル際白川ハ
都合ガアルカラ歸國スル迄壹千貳百圓丈ケ
貸シテ置イテ吳レト云フノデ參千圓ヲ無證
書デ白川ニ貸シテ置キマシタ其後本年一月
七八日頃銀行ノ送金小切手ニテ壹千貳百圓
ヲ白川ガ返ヘシテ吳レマシタカラ高松ノ第
百十四銀行ニ於テ受取リ直グ其金ヲ全部同
銀行ニ當座預金ニ致シマシタ其金ハ其後私
ノ選擧費ニ全部引出シテ仕舞ヒマシタ
一五、私ハ本年三月上旬上京シ江木内閣書記
官長ニ面接シ選擧費ノ援助ヲ求メテ置キマ
シタ其後同月十日總理大臣官邸ニ於テ江木
氏ヨリ參千圓貰ヒマシタ其金ハ江木氏ガ如
何樣ニシテ心配シテ吳レタモノカ私ニハ御
答ガ出來マセン
增田穰三
右錄取シ云々
檢事田中健之助團
被〓人增田穰三第二囘調書
1問增田穰三ナルヤ
答左樣デアリマス
2問被〓ガ前囘證人トシテ本職ニ對シ申立テ
シ事實ハ其通リ相違ナイカ
答甚ダ恐入リマシタ夫レハ僞リデアリマス
前囘御訊ネノ通リ昨年十二月二十七八日頃
赤阪ノ待合茶屋ニ於テ白川友一ガ自分等ヲ
招待シマシタ當夜其席上ニ於テ白川友一ガ
關東派ノ一部ハ非常ナ「スレツカラシ」デ實
ニ驚クベキモノデアル今度ノ二ケ師團ヲ贊
成シタ關東派ノ中ニハ晒劣極マルモノガ在
ルト云フ樣ナコトヲ話シタノハ事實相違ア
リマセヌ
3問其通愈事實相違無イカ
答確ニ相違アリマセヌ
4問何故白川友一ハ左樣ナコトヲ申シタカ
答夫レハ斯樣ナ次第デアリマス昨年十二月
第三十五議會開會中增師問題ニ關シ政府ト
政友會ノ衝突アリテ政友會中議員ノ步調整
ハズ黨中稍ヤ不穩ノ傾キアリシヨリ其虛ニ
乘ジ政府ガ政友會ノ議員ヲ買收シ之レガ切
リ崩シヲ實行シタルヨリ其間ニ處シテ運動
シテ居ツタ白川友一ト關東組ノ板倉中トノ
間ニ於テ板倉ガ一方政府ヨリ金ヲ貰ヒ居リ
ナガラ重子テ白川友一ヨリ金ヲ握ツタト云
フノデ板倉中ノ此處置ヲ憤慨シ暗ニ白川友
一ガ板倉中ヲ攻擊スル爲メ左樣ナ語氣ヲ洩
ラシタモノデアリマス
5問斯ル事實アリタルニ拘ラズ何故被〓ハ其
際之ヲ否定シタカ
答夫レハ外デハアリマセヌ實ハ先月下旬白
川友一ノ支配人阪本和吉ヨリ在京中ノ自分
ニ對シ至急歸國スル樣電話ヲ以テ申シ來リ
タルニ依リ歸國シタル處白川友一ノ話ニ板
倉中ト白川友一トノ關係ニ付テハ板倉中ハ
高松ニ來リ互ニ首ガ飛ンデモ云ハヌト確ク
約束シテ置イタカラ貴殿モ必ズ口外シテ吳
レナトノコトデ在リマシタカラ如何ニ問ハ
レテモ云フマイト思ヒ居リシノミナラズ左
樣ナ事實ヲ申上ゲマシテハ白川友一ハ勿論
之ニ關係アル人々ニ對シ少ナカラズ迷惑ヲ
掛ケルコトヽ思ヒマシタカラ出來得ル事ナ
ラバ同人等ヲ庇護セシモノト存ジ心ニモナ
キ不實ノ申立ヲ爲シタ次第デ誠ニ恐縮ニ堪
ヘマセヌ
併シナガラ私情ノ爲メ又ハ自己ノ利益ノ爲
メニ國家ノ一大事ヲ無視スルガ如キ譯ニハ
參リマセンコト衷心深ク感ジマシタカラ之
レヨリ殘ラズ赤心ヲ披瀝シ隱サズ全部之ニ
關聯シテ申上ゲマス
昨年十二月ノ議會ニハ政府案トシテ年來ノ
懸案タル增師案ガ提出セラレ其當時自分等
ノ意見トシテハ增師ハ國防上必要デアル已
ニ此問題ハ政友會ノ西園寺内閣ノ時代ニ胚
胎シ政友會自身ニ於テモ衷心其必要ヲ認メ
テ居ツタ次第デアリマシテ我々ハ勿論之レ
ガ通過ヲ希望シテ居リマシタ
然ルニ政友會ニ於テハ總裁ハ戰目睫ニ迫ツ
テ居ル時期ニ至ルモ增師問題ニ付テハ尙ホ
白紙デ在ルト云ヒ自己ノ意見ヲ發表セズ又
政友會總裁幹事ハ增師案ニ反對シテ政府ニ
突進スルト云フ方針デアリ又一方東海組ト
稱シ
伊藤要藏靜岡
〓崟太郞同
松城兵作
福岡精知
石黑盤三同同同愛同
吉春原田教大聯盟附近時間
井上重
森茂生同
早川六三郞岐阜
關東組ト稱シ
板倉中馬葉
日向輝武
高溫度每信使用法介郎郎
關同同同茨同同群千城
濱名信平
太田直次
小山田信藏
厚生舘組ト稱シ
森川源吾滋賀
吉田虎之助同
本出保太郞阪
井阪光暉
村井善四郞
金子圭介
高鍋篤郞
丸尾光春
長谷川敬一郞
濱田政莊小同香高同愛同同宮佐兵同山奈同大
水間此農夫樽川知媛崎賀庫口良
瀨戶山〓彥
武市嵐水媛
汽車上司
光森友德一治
白川川知
自分
高橋直次
佐藤信吉山形
ノ如キ增師贊成者デアリテ自然ニ其步調整
ハザリシガ政府ハ其虛ニ乘ジテ啗ハスニ利
ヲ以テシ大ニ切崩シ策ヲ講ジタル結果一時
大ニ其効ヲ奏セントセシガ中途ニシテ政友
會ヨリ鎭撫策ヲ講ズルニ至リ井上敏夫外十
名ノ東海組ノ如キハ全部擧テ政友會ノ意見
ニ殉ズルニ至リ關東組厚生舘組中ニモ軟化
スル者アリテ結局最後マデ奮闘シ政友會ヲ
脫黨シタルモノハ
關東組ニテ
板倉中
日向輝武
關信之介
根岸峮太郞
濱名信平
太田直次
厚生舘組ニテ
本出保太郞
村井善四郞
井阪光暉
丸尾光春
高鍋篤郞
長谷川敬一郞
濱田政莊
水間此農夫
武市庫太
高橋直次
白川友一
自分
トデアリマス
而シテ政府ノ切崩シ策ニ付テ申上ゲマス前
ニモ申上ゲマシタ通リ白川友一ト自分トハ
等シク京橋區木挽町二丁目厚生舘ニ止宿シ
テ居マスノデ昨年十二月中旬頃日ハ能ク記
憶シマセヌガ或ル日白川友一ガ自分ノ部屋
ニ女中ヲ以テ只今自分ノ部屋ニ衆議院書記
官長林田龜太郞ガ來テ居ルカラ御越シヲ顯
ヒ度イト申シ出デマシ々カラ同人ノ部屋ニ
參リマシタ處之レ迄衆議院ニ於テ額ハ見知
リ居ルモ言葉ハ未ダ交ハシタコトハナイ林
田翰長ト白川友一ト對座シテ居リマシタ其
處デ白川友一ノ紹介ニ依リ互ニ林田デ增田
デアルト名乘ツテ挨拶ヲシマシタ處其際白
川友一ガ自分ニ對シ只今林田輸長ガ見ヘテ
ノ話ニ此際政府ハ本期議會ニ政府ノ提出案
ヲ是非通過セシメント思ツテ之レガ通過ヲ
計ル爲メニハ金ヲ投ジテ政友會ノ切崩シヲ
スル方針デアルカラ之レガ目的ヲ達スル樣
盡力シテ吳レ政府カラ金ガ出タト云フテハ
甚ダ面白クナイカラ金ハ總テ白川友一ハ自
ラ出シタ樣ニ裝フテ奔走シテ吳レト云フコ
トデアツタカラ自分モ之レヲ承知シマシタ
其傍カラ林田翰長自身モ口ヲ添ヘテ何分宜
敷賴ムト云フコトデアリマシタ而シテ金錢
問題ニ付テハ可成沈默ヲ守リテ同志ヲ糾合
スベク約束致シマシタ其時ハ其位ナ話ニ止
リ餘リ多ク相談シタモノデハアリマセヌ
林田翰長ノ云フ政府ヨリ金ヲ出スト云フハ
誰カラトモ具体的ニ其氏名ハ申シマセナン
ダガ自分ハ夫レハ大浦子爵ノ手ヨリ出テ居
ルモノダト想像シテ居リマス
昨年十二月十九日頃デ在ツタ樣ニ思ヒマス
林田翰長ヨリ白川友一ニ一寸來テ吳レト云
フコトデ在ツタガ自分ハ差支ガ在ツテ行ケ
ヌカラ君一ツ行イテ吳レマイカ處ハ築地二
丁目ノ琉琳亭デアルト白川友一ガ自分ニ對
シ申シマシタカラ自分ハ之ヲ承知シ同日午
後六七時頃右珠琳亭ニ參リ同家二階座敷ニ
於テ林田翰長ニ面會シ白川友一ノ代理ニ參
リタル旨申出デマシタ處林田翰長ハ然ラバ
之ヲ渡スト云フテ切崩シニ要スル買牧費ヲ
渡シテ吳レマシタ其後其翌日カ翌々日ナリ
シガ能ク記憶シマセヌガ重テ又右珖〓亭ニ
於テ同樣林田翰長ヨリ買收費ヲ受取リマシ
タ以上ニ囘ニ自分ガ受取リマシタ金額ハ確
カ壹萬貳千圓デ在ツタ樣ニ思ヒマスガ或ハ
金額ノ點ハ間違ツテ居ルカモ知レマセヌ其
金ハ二囘共厚生舘ニ持歸リ白川友一ニ交付
シマシタ自分ハ林田翰長ヨリ受取リタル際
モ自分カラ白川友一ニ之ヲ交付シタル際モ
當事者ノ外ニハ誰レモ其傍ニ居リマセヌデ
シタ林田翰長ヨリ受取リマシタ金ノ種類ハ
記憶シマセヌガ五百圓トカ千圓トカ云フ風
ニ束ニ爲ツテ居ツタ紙幣デアリマシタ自分
ガ受取ツテ來テ白川友一ニ渡シタ金額ノ外
ニ尙ホ白川友一ガ直接林田ヨリ受取ツタ金
ガ貳參萬圓以上アルト思ヒマス尤モ會計ハ
全部白川友一ガ遺ツテ居リマシタカラ自分
ガ白川友一ヨリ買收金ヲ受取リ買收シタ部
分ハ一々同人ニ報告シテ置キマシタ從テ同
人ハ一切ノ事實ヲ知ツテ居マスガ自分ニ於
テハ果シテ同人ガ林田翰長ヨリ幾何ノ買收
金ヲ受取ツテ如何ナル人ヲ幾何宛デ買收シ
タカハ自分ニ於テハ分リマセヌ併シ薄々ナ
ガラモ記憶ニアル分丈ケヲ申シ上ゲマス本
出保太郞井阪光暉ガ各一千五百圓宛受取ツ
テ居ルト云フコトデアリマス尙ホ森川源
吾吉田虎之助モ其位受取ツタト云フコト
デアリマス尤モ吉田虎之助ハ軟化シタ際返
ヘシタト云フコトデアリマス丸尾光春、水
間此農夫、濱田政莊等ハ受取ツテ居ルカ居
ラヌカ自分知リマセヌ
自分ガ政府カラ出タ買收金ヲ白川友一ヨリ
受取ツテ買收シマシタノハ一昨年十二月二
十日頃ノ夜七時頃自分等ノ止宿セル厚生舘
ニ於テ白川友一ガ自分ニ對シ關東組ノ者ヲ
纏メル爲メニ板倉中ニ五千圓持ツテ行ツテ
遺ツテ吳レト云フコトデ在ツタカラ白川友
一ヨリ紙ニ包ンダ五千圓ヲ受取リ厚生舘出
入ノ人力車ニ乘リ日本橋上槇町ノ藤村ト云
フ待合ニ參リ同家二階座敷ニ於テ板倉中ニ
面會シ白川友一ヨリ君ニ渡シテ吳レト云フ
テ五千圓預ツテ來タト申シチヤブ臺ノ上ニ
差出シタル處板倉中ハ夫レハ約束ガ違フ壹
萬圓ト云フ約束デ在ツタノデ五千圓デハ足
ラヌデハナイカト申シマスカラ自分ハソー
カ其樣ナ事實ハ知ラナンダノデアルカラ夫
レナラ歸ツテ白川友一ニ其話ヲスルガ免ニ
角之レヲ受取ツテ置イテ吳レト申シマシタ
處秘密ノ金デアルカラ同人モ直ニ取ツテ之
ヲ懷中シマシタ而シテ自分ハ直ニ乘ツテ來
タ人力車ヲ厚生舘ニ引返シ白川友一ニ其話
ヲ致シマシタ處白川友一ハ仕方ガナイカラ
夫レデハモー五千圓持ツテ行ツテ遣ツテ吳
レト申シマスカラ同人ヨリ再ビ五千圓ヲ受
取リ同夜厚生舘ニ出入ノ人力車ニ乘リ前同
樣二階座敷デ板倉中ニ又五千圓ヲ渡シ直ニ
厚生舘ニ歸ツテ其旨白川友一ニ報告シテ置
キマシタ右二囘共金錢授受ノ際ニハ其當
事者以外ニハ誰レモ知リマセンデシタ其後
同月二十三日頃白川友一カ何處デ聞イテ來
タコトカ知リマセヌガ板倉ト云フ奴ハヒド
イ奴デアル政府ヨリ金ヲ取ツテ居ルノニ尙
ホ自分ノ方カラモ金ヲ絞ツタ二重ニ金ヲ渡
ス必要ハナイカラ自分ガ渡シタ分ハ取戾シ
テ遣ラ子バナラヌト申シテ居リマシタガ其
後數日ヲ經テ金額ハ何程デアツタカ分リマ
セヌガ板倉中ト談判シテ金ヲ取戾シタト云
ツテ居リマシタ談判ノ樣子ハ自分ハ知リマ
セヌケレトモ何デモ大分劇シイ談判ヲシタ
ト云フ事デアリマシタ
尙ホ自分ノ手カラ買收シマシタ者ハ武市庫
太、村井善四郞、高鍋篤郞、長谷川敬一郞デア
リマシテ武市ニ對シテハ昨年十二月二十六
日頃厚生舘ニ於テ壹千五百圓ヲ與ヘマシタ
之レハ同月二十日頃同人ガ白川友一ヨリ金
ヲ貰ツテ吳レト切ニ賴ンデ居リマシタノデ
之ヲ承諾シ其當時白川友一ニ話シタ上遣ル
約束シテ在ツタノデ其約束ニ基イテ二十六
日頃ニ厚生舘ノ自分ノ部屋デ直接同人ニ手
渡シタノデアリマス
次ニ村井善四郞ニ對シテハ同月二十三日頃
前同樣厚生舘ノ自分ノ部屋デ自分ヨリ直接
同人ニ金壹千五百圓ヲ與ヘマシタ之レモ同
人ガ自分ニ白川友一ヨリ金ヲ貰フテ吳レト
申シテ居リマシタカラ其事ヲ白川友一ニ話
シタル上貫ツテ遣ツタモノデアリマス次ニ
高鍋篤郞ニ對シテハ同月二十二日頃ヨリ二
十五日頃迄ノ間ニ始メ二百圓カ三百圓渡シ
テ後ニ確カ百圓渡シタト思ヒマス兎ニ角二
同デ參百圓デ在ツタカ四百圓デ在ツタカ與
ヘタニ相違アリマセヌ之レモ同人ガ白川友
一ヨリ金ヲ貰ツテ吳レト云フノデ白川友一
ニ其事ヲ話シタ上渡シタモノデアリマシテ
之レモ前同樣ニ囘共厚生舘ノ自分ノ部屋デ
本人ニ渡シタモノデアリマス同人ニ渡シタ
金額ガ他ノ者ニ渡シタ額ヨリ少ナイノハ同
人ハ增師案ノミニ贊成シ其他ノ政府案ニ贊
成シナイ樣子ハ白川友一ガ認メテ少ナク遣
ツタモノデアリマス
次ニ長谷川敬一郞ニ對シテハ同月二十四五
日頃厚生舘ニ於テ濱田政莊ガ自分ニ對シ長
谷川ハ貧乏デ困ツテ居ルカラ白川友一ニ云
フテ壹千圓程貰ツテ遣ツテ吳レト切リニ賴
ミマスノデ直グ白川友一ニ話シタル上同人
ニ遺ルコトヲ約束シ二十六日頃厚生舘ノ自
分ノ部屋ノ次ノ間ニ於テ濱田政莊ニ壹千圓
ヲ渡シマシタ確カ同人ハ長谷川敬一郞ニ右
壹千圓ヲ渡シタト思ヒマス其後長谷川敬一
郞ヨリ白川友一ニ宛テ色々御世話ニナツテ
有難シトノ禮狀ガ參ツタノデ其事ヲ白川友
一ガ自分ニ話シタコトガアリマス以上板倉
中、武市庫太、長谷川敬一郞等ニ各交付シマ
シタ金錢ハ前ニモ已ニ申上ゲマシタ通リ政
友會切崩シノ爲メニ政府ヨリ林田翰長ノ手
ヲ經テ送ツテ吳レタ買收金デアリマシテ板
倉中ニ渡シタ壹萬圓ハ獨リ之ヲ同人ニ與ヘ
タ譯ノモノデハナイノデアリマシテ同人ガ
之ニ依ツテ關東組七八名ノ者ヲ白川友一ノ
目的通リ增師案ニ贊成セシムル條件ノ下ニ
交付シタモノデアリマス武市庫太其他自分
ヨリ買收金ヲ渡シタ連中ガ白川友一ニ金ヲ
貰フテ吳レト賴ンダ場所ハ暗ニ白川友一ガ
政府ヨリ買收金ヲ握ツテ居ルコトヲ察知シ
ミテ居ツタモノダロート思ヒマス之等ノ關係
上金ヲ貰フテ居ル連中ハ大〓政友會ヲ脫黨
シテ居マス
右樣ナ趣旨ニ基イテ金錢ノ授受ハ行レタモ
ノデアリマスカラ總テ此等ノ人カラ證書一
モ一々受取ツテ居リマセヌ
尙ホ昨年十二月二十八日午前中ノコトデ在
リマシタガ厚生舘ノ白川友一ノ部屋デ同人
ガ自分ニ對シ之ヲ取ツテ置イテ吳レト申シ
紙幣ニテ三千圓ヲ自分ノ前ニ提出シマシタ
カラ自分ハ全部之ヲ貰フテ置キマシタ其際
白川友一ハ其金ノ性質ニ付テハ何トモ申シ
マセヌガ自分ガ思フニハ自分ガ政府案通過
ニ付色々盡力シマシタカラ其報酬トシテ林
田翰長カラ出タ買收金ノ內ヲ吳レタモノダ
ロート思ヒマス同日同人ガ三千圓ヲ自分ニ
吳レタ際都合ガ在ルカラ歸國スル迄千貳百
圓丈ケ貸シテ吳レヌカト申シマスカラ同人
ノ云フガ儘ニ無證書ニテ同人ニ貸與シマシ
タ其後本年一月廿七八日頃銀行ノ送金小切
手ニテ千貳百圓ヲ同人ガ返還シテ吳レマシ
タカラ高松第百十四銀行ニ於テ之ヲ受取リ
其後一兩日ヲ經テ右千貳百圓ノ外ニ自分ノ
所持金參百圓ヲ加ヘ同銀行ニ千五百圓ヲ當
座預金ニ致シマシタ其金ハ本年ノ自分ノ選
擧費用ニ全部引出シテ使用シマシタ
尙ホ本年三月上旬自分ガ上京シタル際內閣
書記官長江木翼ニ面會シ選擧費ノ援助ヲ求
メテ置キマシタ處其後同月十日頃總理大臣
官邸ニ於テ同氏ヨリ參千圓貰ヒマシタ其金
ハ同氏ガ如何樣ニシテ心配シテ吳レタモノ
カ夫レハ自分ニ於テハ分リマセヌ其金ヲ授
受スル際ニハ傍ニハ誰レモ居リマセナンダ
右讀聞云々
被〓人增田穰三
大正四年七月二十三日
於高松地方裁判所
印同廳
裁判所書記中條延次〓
豫審判事代理
判事角南美貴面
聽取書
白川友、
大正四年七月廿四日高松地方裁判所檢事局云
々
私ハ今日迄昨年末ノ帝國議會ニ於ケル增
師案ニ關シ議員ヲ買收シタコトヤ所謂壹萬
圓問題ニ付種々間違ツタコトヲ申上ゲ置キ
マシタガ種々御說諭モアリ又增田ヤ坂本等
モ夫レ夫レ關係事項ヲ詳細申上ゲタ趣デア
リマスカラ最早何モ彼モ全部ノ事實ヲ申上
ル事ニ致シマスコレ迄間違ツタ事ヲ申上ゲ
タノハ人樣ニ御迷惑ヲ掛ケズシテ私一人全
責任ヲ負フ決心ヲ致シテ居ツタ爲メデスガ
斯クナル以上ハ何時迄モ御手數ヲ掛ケルハ
何等ノ効果ナキ事ト考ヘ自白スル事ニ致シ
タノデス何卒私ノ心中御諒察ヲ願ヒマス大
浦子爵ヤ林田氏ノコトニ言及スルノハ實ニ
斷腸ノ思ガアリマスガ今日デハ最早止ムヲ
得マセヌカラ包マズ申上ゲマス兩氏ニ對シ
テハ實ニ氣之毒ニ思ツテ居ルノデス
ニ、私ガ增師問題ニ盡力シタ理由ハ是迄申上
ゲタ通リデ何毛利益問題ヲ條件トシテ贊成
致シタ譯デハアリマセヌ全ク朝鮮ノ實狀ヲ
見テ增師ノ必要ヲ痛切ニ感ジタ爲メ誠心誠
意コレヲ主張シタノデコノ事ハ前ニ詳細申
上タ通リデアリマス
三、右ノ如ク增師問題ニ盡力致シテ居リマシ
タ處昨年十二月十七八日頃ト思ヒマスガ林
田氏ガ私ノ泊マツテ居ル厚生舘ニ遊ニ來タ
事ガアリマスガ其折同氏ハ增師問題ニハ盡
力シテ居ルネー十分ヤリ給ヘト申サレタ樣
ニ記憶致シテ居リマス
四、處ガ十二月二十二日正午過頃使ノ者ガ厚
生舘ナル私ノ處ニ林田氏ノ手紙ヲ持參シマ
シタガ夫レニハ至急面會シタヒカラ珖琳亭
迄來テ吳レト云フ趣旨ガ記載シテアリマシ
タノデ同亭ニ參リマシタ處座敷ハ二階デア
ツタカ下座敷ニアツタカ只今覺ヘテ居リマ
セヌガ林田氏ハ一人デ酒ヲ飮ンデ居リマシ
タ君ノ方モ隨分增師問題ニ就テ盡力サレテ
居ル樣デアルガ政友會ノ方モ所屬議員ノ結
束ニ努力シテ居ル樣子ダカラ一ツ目的ヲ達
スル樣ニ働ヒテ吳レ同志ヲ纏メルニハ費用
モ要ルダローカラ多少ノ金ハ何トカ工面シ
テモヨイカラト申シマシタノデ夫レハ有リ
難イ實ハ自分モ多少ノ金ハ持ツテ居ルカラ
御厄介ヲカケヌデモヨイガ多額ノ金ガ要ル
樣ニナレバ御願ヒ致シマスト云ツテ暇乞致
シマシタ處ガ同日夕刻再ビ使ノ者ガ林田ノ
手紙ヲ持參シマシタガ又面會シタヒカラ洗
琳亭迄來テ吳レトノ趣旨ガ書イテアリマシ
タノデ直グ出掛ケマシタ處矢張リ林田氏一
人酒ヲ飮ンデ居リマシタガ數字デ帶封ニ一
〇〇〇〇ト書イテアツタ百圓札ノ束ヲ出シ
テ兎ニ角費用ガ入用デショウカラ差當リ壹
萬圓丈ケ差上テ置ク預ツテ居ツテ下サイ尙
ホ不足ノ節ハ取リニ來テ吳ルレバ差上グル
カラ十分纏メテ下サイ金ガ當方カラ出タト
云フコトニシテハ都合ガ惡イカラ君ノ名前
ニシテ置ヒテ下サイ左樣ニスレバ大層ウツ
リガヨイカラト申サレマシタノデ之ヲ承知
ノ上右壹萬圓ヲ受取リ厚生舘ニ歸ヘリマシ
タ林田氏ガ君ノ名前ニシテ吳ルレバウツリ
ガヨイト云フタノハ私ガ朝鮮ニ於テ手廣ク
工事ヲヤツテ金ノ融通モヨイ處カラ政府筋
ヨリ金ヲ出シタ事ヲ隱ス爲メニ私ノ名義デ
ヤツテ吳レト云ハレタ事ト思ヒマシタ
五、林田氏ト第一囘珖琳亭デノ會見ノ〓末ハ
厚生縮ニ歸ツタ際增田君ニハ物語ツテ置キ
マシタガ同君ハ何等ノ異存モ申シマセンデ
シタ
第二囘ニ壹萬圓ヲ受取ツテ歸ツタトキモ詳
細ノ事情ヲ增田君ニ物語リマシタ處同君ハ
成ルベク金ヲ使ハヌ樣ニシテ纏メル事ニ盡
力シヨウデハナヒカト云ハレテ居リマシタ
尙ホコノ際增田君ト打合ハセノ上表面政友
會員ヨリ同志ヲ集メル事ニ付テハ私ガ其ノ
衝ニ當リ裏面ニ於テ同志ヲ纏メル事增田君
ニ於テ盡力スルト云フ事ニ取極メマシタ
六、丁度此ノ二十二日ノ夜ノ事デアリマスガ
厚生舘ノ集會ニ板倉モ君ニ關東組ヲ纒メル
ニ付費用ガ入用ダカラ出シテ吳レトノ話ガ
出タ模樣デ其事ヲ增田君カラ私ニ傳ヘタノ
デ夫レデハ金ヲ出ス事ニシテ纒メテ貰フ事
ニシヨウデハナイカトイフ事ニナリ板倉ノ
方デ十人程纒メルニハ五千圓程ナケレバト
云フタ爲メ私カラ增田君ニ五千圓ヲ渡シ增
田君ガ私ノ部屋ノ次ノ室デ板倉ニ手渡シタ
樣ニ覺ヘテ居リマス處ガ其翌二十三日ノ朝
板倉ガ又厚生舘ニ參リ增田君ニ出金ヲ迫ツ
タモノト見ヘ增田ハ私ノ室ニ參リ實ニ板倉
ニハ困マル尙五千圓出セト云ツテ居ルガド
ウシヨウカト云ハレタノデ止ムヲ得ズ夫レ
丈ケ與ヘル事ニシテ增田ヨリ五千圓ヲ其日
板倉ニ渡シマシタガ其ノ時ト場所トハ私ニ
於テ覺ヘテ居リマセヌ
七、二度目ニ板倉ニ渡シタ五千圓ハ林田氏カ
ラ二囘目ニ受取ツタ金ノ内デアリマスガ林
田氏ヨリ金ヲ受取ツタノハ總テデ三囘デ最
初ノトキハ私ガ琉琳亭ニ於テ壹萬圓受取リ
ニ度目ト三度目トハ何レモ增田君ガ琉琳亭
デ林田氏カラ受取ツタノデ受取ツタ金ハ三
囘分合セテ參萬七千餘圓デアリマシタ
八右參萬七千餘圓ノ金ハ最初私ガ林田氏ヨ
リ壹萬圓ヲ受取ルトキハ單ニ政府ノ方デ何
レヨリカ調金ノ上出シテ居ルモノト思フテ
居リマシタガ其後此ノ金ハ大浦子爵カラ出
タ金デアルト云フ事ガ判リマシタ夫レハ昨
年十二月廿五六日頃林田氏ガアノ金ハ大浦
子爵カラ出タノデ僕ハホンノ取次ヲシタノ
デアッタト云ハレタノデ知ツタノデス
九、私ト增田君トガ增師案ヲ通過サセル事ニ
贊成シタ議員ニ金ヲ分配シタノハ板倉以前
ニ尙ホ多數アリマスカラ夫レヲ申上ゲマス
レバ
武市庫太
村井善四郞
高鍋篤郞
長谷川敬一郞
井阪光暉
本出保太郞
吉田虎之助
森川源吾
水間此農夫
濱田政莊
等デアリマスガコノ内ニハ私ガ渡シタノト
增田ガ渡シタノトガアリマスカラ細別シテ
申上ル事ニ致シマセウ
一〇、私ノ渡シタノハ森川源吾ト吉田虎之助
ト本出保太郎ト水間此農夫ト增田トデアリ
マス又增田君ノ渡シタノハ武市ト村井ト高
鍋ト長谷川ト井阪ト濱田トデアリマス尤モ
增田カラモ水間ニ渡シタ金デアリマス
二森川ト吉田トニ渡シタノハ十二月二十
三日午後三時過頃デ厚生舘ノ私ノ部屋デア
リマシタ兩名分ヲ一纏メニシテ森川ニ渡シ
タノデ其金額ハ貳千圓デアリマシタ吉田ハ
其際立會マセンデシタガ其後同人ニ出會フ
タトキ尋子テ見マシタ處慥ニ森川カラ千圓
丈ケ受取ツタト申シテ居リマシタ
一二、私カラ本出ニ渡シタノハ一囘デ金額ハ
壹千圓デ十二月二十七日厚生舘ノ私ノ部屋
デ渡シタノデス
一二、私カラ水間ニ渡シタノハ七百圓カ八百
圓カデアツタ樣ニ覺ヘテ居リマスガ場所ハ
矢張リ厚生舘デ十二月二十五日ノ朝デアツ
タ樣ニ記憶シテ居リマス同人ニハ總計壹千
五百圓渡シタ樣ニ覺ヘテ居リマスカラ私ノ
渡シタ以前ハ增田ニ於テ渡シタ事ト信シマ
ス
一四、增田ガ渡シタ金額ハ十二月二十七八日
頃同氏カラ報〓ヲ受ケマシタガ只今正確ナ
ルコトハ記憶ニ存ジマセヌガ何デモ武市ト
村井濱田トニ各壹千五百圓高鍋ニ四百圓長
谷川ニ壹千圓デアツタ樣デス
同人等ニ渡シタ日時場所ハ增田ニ御尋子ヲ
願ヒマス增田カラ板倉ト水間トニ渡シタ金
ノアルコトハ前ニ申上ゲタ通リデス
一五、右ノ外私ト增田ト連立ツテ赤阪ノ本出
ノ寓居ヲ訪子タ際增田カラ本出ニ貳千圓丈
ケ渡シマシタコレハ本出ト井阪トノ分デ井
阪ニハ本出カラ渡シテ吳レル樣ニ賴ンデ置
ヒタノデス時ハ十二月二十六日午前中デア
リマシタ
一一、以上ノ外私ノ手ヨリ增田ニ贈ツタ金ガ
參千圓アリマスコレハ十二月二十七八日頃
厚生舘デ增田ト私トデ出納ニ付計算シタ際
殘金ノ內カラ引去ツテ增田ニ與ヘタノデス
一七、右ノ人々ニ金ヲ與ヘタノハ彼等ガ增師
案ニ贊成スルコトヲ約シタ上私共ト行動ヲ
夫ニシタ爲メデス
夫レハ增田ニ對シテ是等ノ人々カラ金ノ請
求ガアツタ爲メ與ヘタノデアレバ明ラサマ
ニ請求ハナクトモ與ヘタモノモアリマス
本出ニ私カラ與ヘタ壹千圓ハ同人ガ一寸貸
シテ吳レト云フタカラ渡シタノデアリマス
本出ノ考ヘハ增師案ニ贊成スベク盡力シタ
爲メ其報酬ニデモ貰フ積リデアツタモノト
思ハレマスガ同人ニハ旣ニ井阪分ト共ニ參
千圓與ヘテアルノデスカラコノ壹千圓ニ付
テハ返ヘシテ吳ルレバ受取ル積リデ本年一
月催促シテ見マシタガ返ヘシテモ吳レマセ
ヌノデ其儘ニ放任致シテアリマス
一八、右ノ人々ニ渡シタ金ノ總額ハ貳萬五千
四百圓程ナル樣ニ思ヒマスガ此ノ內板倉ヨ
リ四千圓取返ヘシタノト森川源吾ガ自己ノ
分ト吉田ノ分ト合セテ壹千圓丈ヶ十二月廿
六日返ヘシマシタノデ此ノ合計五千圓ヲ引
去リマスレバ全ク渡シ切リニナツタモノハ
貳萬四千圓程ノ金高デアリマス
一九、森川ト吉田トガ貳千圓ノ內壹千圓ヲ返
金シタノハ同人等ハ二十四日吾妻屋支店會
合後政友會ニ復黨シタノデ半分ヲ返ヘシタ
ノデス
二〇、板倉ヨリ四千圓取返ヘシタノハ是迄申
上ゲ置ヒタ通リ二十三日ノ夕刻迄關東組ガ
增師案ニ贊成スルカ堂カ其旗幟ヲ鮮明ニシ
ナカツタ爲メト尙ホ一ツノ理由ガアルノデ
アリマスコノ事ハ今日迄憚ル處ガアツタ爲
メ申上ズニアリマシタガ今日ハ何モ包ミ隱
シヲスル必要ガアリマセヌカラ申上マス夫
レハ外デモアリマセヌガ板倉ニ增田ノ手カ
ラ二囘ニ五千圓宛壹萬圓ヲ與ヘタ後何ニモ
十二月二十三日ノ議會ニ出席シタ際林田氏
ノ室デ同人カラ板倉ハ私ヨリ以前ニ大浦子
爵カラモ直接金ヲ受取ツテ居ル樣デ話ヲ聽
イタ爲メ甚ダ不快ニ思ヒ取戻ス氣ニナリ遂
ニ藤村屋ニ談判ニ出掛ケル事ニナツタノデ
ス林田氏ガ私ニ右ノ話ヲシタノハ私ガ板倉
ニ金ヲ與ヘタニ拘ラズ態度不鮮明デ困マル
ト云フ事ヲ話シタ際板倉ハ大浦子爵カラモ
直接金ヲ貰フテ居ル樣デアルヨト云フタノ
デアリマス
二一、私ト增田トガ林田氏カラ受取ツタ金ニ
付テハ其支出ヲ明カニシテコレヲ林田氏ニ
報〓スル積リデ十二月二十七日デアッタカ
二十八日デアツタカ此ノ兩日ノ內增田ト共ニ
厚生舘ノ私ノ部屋デ計算ヲ致シマシタガ約
壹千圓程ノ經費ト右ニ申上ゲタ人々ニ與ヘ
タ金トヲ引去リ手許ニ戾ツタ板倉、森川、吉
田分五千圓ヲ殘金ニ加ヘテ壹萬六千餘圓丈
殘リマシタノデ渡シタ人ノ氏名金額等ヲ計
算書ニ認メコレニ右壹萬六千餘圓ト板倉カ
ラ受取ツタ六千圓ノ借用證書トヲ林田氏ニ
渡ス考ヘテ其事ヲ林田氏ニ申シマシタ處同
氏ハ私ニ對シ君ガ直接大浦子爵ニ會フテ支
拂先等モ報告シテ吳レイ金ノ事ダカラ其方
ガヨイト申サレマシタカラ尤モノ事ト考ヘ
私ヨリ直接子爵ニ返金シ其〓末ヲ報〓致シ
マシタ
二二、子爵ニ殘金ヲ返ヘシタノハ十二月二十
九日カ三十日カノ午前中デアツタト記憶
致シテ居リマスガ前代議士デアツタ林永太
君ガ子爵ニ揮毫ヲ賴ムト云フテ居ツタノデ
同時刻ニ訪問スル事ヲ約シ私一人麻布ノ子
爵邸ニ出掛ケマシタ處林君ト應接室ニテ一
〓ニナリ兩人トモ二階ノ應接室ニテ子書ニ
面會致シマシタガ子爵ハ林君ノ請ヲ容レラ
レタ爲メ林君ハ持參ノ絹ヲ託シ私ヨリ先ニ
子爵家ヲ辭シマシタ其後デ私ヨリ子當ニ對
シ林田氏ヨリ賴マレテ增師案ニ贊成スル事
ニ約束ノ出來タ前述ノ人々ニ金ヲ渡シタ事
ヲ報〓シ計算書ト板倉ノ借用證ト殘金全部
(壹萬六千餘圓〕トヲ子爵ノ前ニ差出シマシ
タ處子爵ハ金ト計算書トヲ對照セラレタ上
コノ金ノ内カラ七千圓文ケヲ私ノ前ニ差出
シ國ヘ歸ヘラレタナラバ此ノ金デ非政友派
ノ爲メニ新聞ヲ經營シテ同志ノ爲メニ盡力
シテ吳レト申サレマシタカラ有リ難ク頂戴
シテ歸リマシタ
大浦子爵ガ新聞經營ノ爲メ右七千圓ヲ私ニ
吳レタノハ十二月二十七日私ト增田君トガ
子爵邸ニ參リマシタ際今度ノ總選擧ニハ香
川縣カラ多數ノ非政友代議士ヲ出ス樣ニシ
テ吳レトノ話ガアツタ際非政友派ノ機關新
聞ヲ發行スル事ノ話ガ出タノデ子爵モ此ノ
話シカラ私ニ新聞ヲ經營シテ吳レト云フテ
右七千圓ヲ下サレタコトヽ思ヒマシタ夫レ
デ私ハ本年二月カラ丸龜新聞ヲ經營シ三月
ノ選擧ニハ同志ノ爲メニ大ニ盡力致シマシ
タ
二三、右大浦子爵ニ返ヘシタ壹萬六千餘圓ノ
金ノ事ヤ參萬七千圓程ノ金ノ內ヲ前述ノ人
人ニ分配シタ事ハ林田氏ニ報告スルノガ頗
序デスカラ大浦子爵ハ無關係デアル樣ニシ
テ林田氏ニ殘金モ計算書モ波シタ樣ニ申シ
上ゲタヒノデスガコレ等ノ事ハ關係者ヲ御
取調ベニナレバ直ニ判明スル事抦デアリマ
スカラ此上僞リノ申立ヲスルノハ實ニ心苦
シクアリマス爲メ有リノ儘ノ事實ヲ申上ル
次第デアリマス何卒私ノ心中御察シヲ願ヒ
マス
陳述人白川友一
右錄取云々
大正四年七月二十四日
於高松地方裁判所檢事局
檢事一松定吉國
同田中健之助團
聽取書
增田穰三
大正四年七月二十六日高松地方裁判所檢事局
ニ出頭シ任意左ノ通陳述シタリ
昨年十二月末ノ議會ノ問題ト爲リシ增師
案ニ贊成シタル政友會ニ屬ス議員ニ金ヲ贈
リタルコトハ前囘申立テ置キマシタガ尙申
殘シタル點ガアリマシタ實ハ同年十二月二
十六日頃ノ午前中厚生舘ニ於テ白川ガ私ニ
向ヒ本出ニ金ヲ持ツテ行ツテ遣ルカラ一〓
ニ行ケト云フノデ一〓ニ行クコトニナリマ
シタスルト白川ガ是レヲ持ツテ行ツテ吳レ
ト云ツテ何程這入ツテ居タカ判リマセンガ
紙幣ヲ紙ニ包シデ私ニ渡シマシタカラ私ハ
夫レヲ懷中ニ納メ白川ト共ニ赤阪ノ本出保
太郞方ニ參リ同家二階ニ於テ本出ト面會シ
雜談シテ居ル中ニ白川ガ私ニ向ヒ彼ノ金ヲ
出シテ吳レト云フノデ白川ヨリ渡サレタ紙
幣ノ色ヲ白川ノ前ニ出スト白川ハ本出ニ向
ヒ是レヲ取ツテ吳レト云ツテ右紙幣ヲ包ン
ダ紙包ヲ本出ノ前ニ出スト本出ハソーカト
云フテ右包ヲ取リマシタ
二、右金員ハ本出ノ分デアルトカ井阪光暉ノ
分デアルトカ指定シテ渡シタノデハアリマ
センガ議會解散ノ二三日前ヨリ本出ハ白川
ニ對シ井阪ニ金ヲ遣ツテ吳レト云ツテ居リ
マシタカラ右金員ハ井阪ノ分デアツテ本出
ノ分ハ其以前ニ白川ヨリ直接本出ニ渡シテ
アル樣ニ思ヒマス然シ私ニハ右包ノ中ニ何
程金ガ遭入ツテ居タカ分ラヌ位デアリマス
カラ或ハ私ノ想像ガ違ツテ本出ト井阪ノ分
デアツタカモ判リマセン
三、私ガ本出方ニ金ヲ持參シタノハ別ニ意味
アル譯デハアリマセン厚生舘ヲ出ル時白川
カ君カ持ツテ行ツテ吳レト云フテ渡シマシ
タカテ何氣ナシニ懷中ニ入レ本出方ニ行ツ
タノデアリマス
四、本出ニ渡シタ以外ニハ前囘申上ゲタル通
リ板倉中、武市庫太、村井善四郞、高鍋篤郞ニ
渡シタノト長谷川敬一郞ノ分トシテ溜田政
藏ニ渡シタノデアリマス其他ニハ私ガ扱カ
ツタモノハアリマセン
五私ガ林田ヨリ受取リシ金額ハ壹萬貳千圓
デアルト前囘申上ゲテ置キマシタガ段々考
ヘテ見ルト右ノ外ニ昨年十二月二十二三日
頃珠琳亭ニ於テ林田ヨリ受取ツタ金ガアリ
マシタ其金額ハ八百カ八千カ兎ニ角頭ニ
「八」ト云フ數字ノ付イタ金額デアリマシタ
是レハ白川ト面接シテ其當時ノコトニ話シ
テ見レバ判ルコトヽ信ジマス
六、林田ヨリ受取リシ金員ノ收支ハ白川ガ扱
カツテ居ツタノデアリマス私ハ前申上ゲタ
板倉中外數名ノ分ヲ扱ツカッタ丈ケデアリ
マス又右金員ノ收支ニ付白川ト立會ヒ決算
シタコトハアリマセンガ昨年十二月二十八
日頃ノ朝厚生舘ニ於テ白川ヨリ參千圓貰フ
タ時ト思ヒマスガ白川ガ私ニ向ヒ計算ガ出
來タト云フテ何ニカ罫紙ニ書イタ計算書ノ
樣ノモノヲ白川ノ机ノ上ニ載セテアリマシ
タガ私ハ夫レヲ見マセンデシタ
又其時デアツタガ其翌日デアッタカ其翌日
デアッタカ覺ヘアリマセンガ白川ガ私ニ向
ヒ金ガ剩餘ツタカラ先方ヘ返ヘスト云フテ
居リマシタガ何程剰餘ツタモノカ其數額ハ
聞キマセンデシタ私ニハ白川ガ林田ヨリ何
程受取ツタカ又其金ヲ誰レニ與ヘタルカ判
明致シマセヌ故剩餘金ノ如キモ何程カ全ク
判リマセン
七、私ハ昨年十二月二十七日頃ノ午前中白川
ト共ニ麻布ノ大浦私邸ヲ訪問シ二階ノ應接
室ニ於テ大浦子爵ニ面接シタル處同子爵ハ
白川ト私トニ向ヒ今度ハ非常ニ盡力シテ吳
レタ御苦勞デアツタト云フ意味ニ禮ヲ云ハ
レテ居リマシタカラ是迄申上ゲタ通リ政府
ノ御用ヲ勤メタ爲メ禮ヲ云ハレタモノト思
ツテ居リマシタ其後選擧ニ關スル話ナゾラ
シテ私ハ白川ヨリ先ニ子爵邸ヲ辭シ去リマ
シタ
八私ガ大浦子爵ニ面接シテ居ル間ニ白川ト
大浦子爵トノ間ニ新聞經營ニ關スル話ハア
リマセンデシタガ私ハ白川ヨリ先ニ子爵邸
ヲ辭シタノデアリマスカラ私ノ去ツタ後其
話ガアツタカモ判リマセン
九、其後十二月三十日頃迄ノ事ト思ヒマスガ
厚生舘ニ於テ白川ガ私ニ向ヒ漸ク新聞ヲ經
營出來ル樣ニナツタト云フテ居リマシタカ
ラ大浦子爵カラ何程カ新聞經營費ヲ援助シ
テ貰フタコトヽ思ヒマス
實ハ林田ガ白川ニ渡シタ議員買收ニ要スル
金ハ政府カラ出ルノデアルト云フコトデア
ツテ政府トハ大浦子爵デアルト想像シテ居
リマシタ夫レ故買收金ノ剩餘ヲ生ジタ金ノ
內カラデモ何程カ新聞經營費トシテ貰フタ
コトヽ思ヒマシタ
增田穰三
右錄取シ云々
於高松地方裁判所檢事局
檢事田中健之助團
被〓人白川友一第七囘調書
1問白川友一ナルヤ
答左樣デアリマス
2問前囘被〓ハ板倉中ニ渡シタ壹萬圓ハ會社
銀行又ハ親戚ニアラザル二三ノ友人ヨリ東
京其他ニ於テ其當時調金シタル金デアロー
ト申立タガ愈々夫レニ違ヒナイカ
答夫レハ全ク僞リデアリマス多數ノ人ニ迷
惑ガ罹ルデアロート思ヒマシテ自分ガ總テ
本件ニ付テハ責任ハ自分一身ニ脊負ヒ友人
ナリ其他位置ノアル方々ニ迷惑ヲ掛ケマイ
ト思ヒ今日迄左樣ナ間違ツタコトヲ申上ゲ
テ居リマシタガ最早今日トナツテハ到底左
樣ナ間違タコトヲ申上ゲテ通シ了ウセルモ
ノデナイト云フコトヲ能ク觀念シマシタカ
ラ何時迄モ御手數ヲ相掛テハ濟マヌ次第故
包ミ隱サズ有ノ儘ノコトヲ全部申上ゲテ爰
ニ一切事實ヲ自白致シマス此ノ如ク自白ス
ルニ付テハ勢大浦子爵ヤ林田輸長等ノコト
ニ言及セザルベカラザルニ至リ實ニ斷膓ノ
思ガ致シマス切ナル心事御諒察ヲ願ヒマス
是迄板倉中ニ渡シマシタト申上ゲマシタ買
收金以外ニ尙他ニ多數ノ人ヲ買收シテ居リ
マスガ夫レ等ノ金ハ質ハ全部衆議院書記翰
長林田龜太郞ヨリ受取ツタモノデアリマス
2問林田ヨリ受取ツタ金ハ然ラバ合計デ幾許
ナリヤ
答其總額ハ確ニ記憶シマセヌケレ〓何ンデ
モ約參萬七千圓デアツタ樣ニ思ヒマス只
今記憶シテ居ル處デハ三回ニ受取ツタ樣ニ
思ヒマス最初自分ガ琉亭デ林田カラ壹萬
圓受取リ次ニ增田穰三ガ仝所ニ於テ仝人ヨ
リ二回受取ツテ來マシタ樣ニ思ヒマス尙受
取タ度數及其都度受取ツタ數額等ニ付テハ
今一應能ク考ヘテ見マス
3問被〓ト林田龜太郞トハ如何ナル關係ノ間
柄カ
答自分ハ林田龜太郞トハ明治四十一二年頃
カラ知合デアリマス自分ハ是迄代議士トナ
ツテカラハ勿論其以前デモ時代ニ遲レザル
爲メ每年一月上京シ諸般ノ事情ヲ〓究スル
事ヲ例トシテ居リマシタカラ上京ノ際ハ縣
ノ先輩鎌田勝太郞氏ヨリ何時デモ招待セラ
レマスノデ同氏ハ林田氏トハ極メテ懇意ノ
間柄ニシテ同席シ自然自分モ林田氏ト懇意
ノ度ヲ增シテ來タノデアリマス近來ニ至リ
テハ同氏モ自分ノ性格ヲ能ク承知シ自分モ
又能ク同人ノ性行ヲ知テ居リマス從テ親密
ニ交際シテ居リマス
4問林田龜太郞ガ被告等ニ此ノ如キ議員買收
費參萬七千圓カラノ金ヲ渡スニ至ツタ譯ハ
如何カ其筋道ヲ申述ベヨ
答林田氏ト自分トノ干係ハ以上申述ベマシ
タ如ク非常ニ親密ナ間柄デアリマシタガ時
恰モ昨年十二月第三十五議會開會中政府ヨ
リ增師問題其他幾多ノ政府案提出セラレタ
ルニ方リ多數黨タル政友會議員中ニ是等政
府ノ提出案就中增師問題ニ付テ當初貴官ニ
申上ゲマシタ通リ全然政府ニ反對スル突進
組、增師案等ニ贊成セル点海組、關東組、厚生
舘組等〓ニ議會ヲ圓滿ニ送ラセ度イト云フ
議長官舎組等ニ異分子ヲ生ジ政友會ノ態度
其步調整ハザルニ方リ我々ハ厚生舘組ニ屬
シ極力增師案等ノ通過ニ熱狂シ居リタルモ
ノナルガ當時林田氏ノ意向ハ如何デアツタ
カ其邊ハ自分ハ知ラヌガ圖ラズモ昨年十
二月廿二日正午過頃林田龜太郎氏ヨリ使ヲ
以テ厚生館ナル自分ノ宿所ニ至急面會シタ
イカラ珖琳亭迄御越ヲ願ヒ度ヒト云フ趣旨
ノ手紙ヲ寄越シマシタノデ早速同亭ニ參リ
同家二階奧ノ間ニ通リ林田氏ニ面會シマシ
タ其時同氏ハ獨リデ酒ヲ飮ンデ居リマシタ
ガ自分ガ參リマスト自分ニ向ヒ君モ增師問
題ニ付テハ熱心ニ之ガ通過ニ盡力サレテ居
ルト云フコトデアルガ一方政友會ノ方デハ
極力所屬議員ノ結束ニ努メテ居ル樣子デア
ルカラ是非君等ノ目的ヲ達スル樣奮鬪シテ
吳レ同志ヲ纒メルガ爲メニハ自然金ガ入ル
デアローカラ多少ノ金ハ自分ノ方デモ何ト
カ工面スルカラト申シマシタノデ自分モ夫
レハ誠ニ有リ難多額ノ金ガ入ル樣ナラバ御
願致シマスト云テ其場ハ其儘別レテ歸リマ
シタ
然ル處同日夕刻再ビ林田氏ヨリ使ガ參リ球
琳亭迄來テ吳レト云フ意味ノ手紙ヲ差出シ
マシタカラ直ニ同亭ニ參リマシタ此時モ同
ク同家二階ノ奥ノ間ニ於テ林田氏ニ而會シ
マシタ此時モ同氏ハ一人デ酒ヲ飮デ居リマ
シタガ數字デ帶封ニ一〇〇〇〇ト書テアツ
タ百圓札ノ束ヲ出シテ差當リ壹萬圓丈ケ差
上ゲテ置ク不足ノ節ハ取リニ來テ吳ルレバ
渡スカラ充分纏メテ貰ヒ度而テ自分カラ金
ガ出タト云フコトニシテハ都合ガ惡イカラ
君ハ朝鮮滿洲等ニ於テ手廣ク遣ツテ居ルカ
ラ人モ信用スル故ニ君ノ名前ヲ貸シテ貰ヒ
度從テ此金ハ君ガ自分ノ懷ロカラ出シタモ
ノヽ樣ナ風ニ裝テ居テ吳レ左スレバ萬事都
合ガ良イカラト申シマシタノデ自分ハ之ヲ
承知ノ上右壹萬圓ヲ受取リ懷中シテ厚生舘
ニ歸リマシタノガ午後六七時頃デアリマシ
タ
右琺琳亭デ會見シマスル以前十二月十七八
日頃ト思ヒマスガ林田氏ガ自分ノ止宿セル
厚生舘ニ遊ビニ來タコトガアリマス其際ハ
別段ニ体シタ咄ハシナカッタ樣ニ思ヒマス
只ダ同氏ガ自分ニ對シ增師問題ニ付テハ麓
分熱心ニ盡力シテ居ル樣デアルガ十分遣リ
賜ヘト申シタ位ノコトデアリマス
其後前申上ゲマシタ珖琳亭ハ自分ガ林田ヲ
同人ノ招ニ依リ訪問シタルトキ迄ノ間ニ尙
一囘同氏ガ厚生舘ヘ遊ビニ來タコトガアル
樣ニ記憶シマス其時デアツタカ始メニ來タ
トキデアツタカ夫レハ能ク記憶シマセヌガ
增田穰三ヲ引キ合シタコトガアリマス尙自
分ガ林田氏ト琉琳亭ニ於テ第一囘ニ會見シ
マシタトキ〓末ハ厚生舘ニ歸リテ增田穰三
ニ話ヲ致シマシタ第三囘モ會見シマシタト
キノ樣子モ增田君ニハ詳細其事情ヲ物語リ
マシタ增田君ニ於テモ前ニ何等ノ異存モ無
ク同人ハ成ルペク金ヲ遣ハヌ樣ニシテ纏メ
ル事ニ盡力ショウデハナイカト云フテ居リ
マシタ尙此際同氏ト打合セノ上表面政友會
幹部連ノ訪問ニ對シテハ自分ハ其看板トシ
テ樽爼折衝ニ方リ裏面ニ於テ增田君ガ同志
ヲ糾合スルノ任ニ當ルコトニ取リ極メ事實
其通リ遣リマシタ
5問林田龜太郎ヨリ受取ツタ參萬七千圓ノ金
ハ林田ガ自分ノ懷ロヨリ出シタ金カ
答右參萬七千圓ノ金ハ自分ガ最初班琳亭デ
林田氏ヨリ壹萬圓ヲ受取ツタ時分ニハ只ダ
單ニ政府ノ方デ何レヨリカ調金ノ上出シテ
居ルモノト思フテ居リマシタガ其後昨年十
二月廿六七日頃林田氏ノ宅デアツタカ琥琳
亭デアツタカ其處ハ能ク記憶シマセヌガ金
ノ計算ニ付テ自分ガ林田氏ニ面會シタ際林
田氏ガ彼ノ金ハ大浦子爵カラ出タノデ僕ハ
ホンノ取次ヲシタノミデアツタト云ハレタ
ノデ此時始メテ慥カニ右參萬七千圓ガ大浦
子爵カラ出タ金デアルト云フコトガ分タノ
デアリマス尙一言付加ヘマスガ板倉中ニ自
分カラ增田ノ手ヲ經テ壹萬圓渡シタノデ取
返シタノハ十二月廿三日ノ議會ニ出席シタ
際林田氏ノ室ニ於テ同人ガ自分ニ對シ板倉
中ハ自分ヨリ增田ノ手ヲ經テ同人ニ壹萬圓
渡シタ以外ニ大浦子爵カラモ直接金ヲ受取
テ居ルト云フ樣ナ話ヲ致シマシタカラ之ヲ
開テ自分ハ非常ニ不快ノ感ニ打タレ二重ニ
渡ス必要ハナイト信ジタルノミナラバ板倉
中ガ自分ニ二名乃至十名ノモノヲ結束スル
ト約束シナガラ而カモ其旗幟更ニ鮮明ナラ
ズ到底目的通リ進行スルモノニアラズト見
テ取リマシタカラ前ニ申上ゲマシタ通リ待
合藤村ニ乘込ミ板倉中ニ對シ取戻ノ談判シ
タモノデアリマス
6問以上ノ如ク被〓ハ林田ヨリ受取タ金ヲ以
テ多數議員ヲ買收シタカ
答其金ヲ以テ板倉中、武市庫太、村井善四郞、
高鍋篤郞、長谷川敬一郞、井阪光暉、本出保太
郞、吉田虎之助、森川源吾、水間此農夫、濱田
政藏等ニ自分ト增田君トデ各分配致シマシ
タ
7問買收終始計算ニ付テハ林田龜太郞ニ其旨
報告シタカ
答自分ト增田君トガ林田氏ヨリ受取タ金ニ
付テ其支出ヲ明カニシ之ヲ同氏ニ報告スル
積リデ昨年十二月廿七八日頃厚生舘ノ自分
ノ部屋デ計算ヲ致シマシタガ結局金ガ壹萬
六千餘圓殘リマシタノデ買收シタ人ノ氏名
金額等ヲ計算書ニ認メ其計算書ハ旣ニ前囘
申上ゲマシタ板倉中ヨリ受取リタル六千圓
ノ借用證書ト右殘餘金トヲ林田氏ニ渡ス考
ヘデ同氏ニ其事ヲ話シタ處同氏ハ自分ニ對
シ金ノコトデアルカラ君カラ直接大浦子爵
ニ逢テ支拂先等モ報告シテ吳レ其方ガ宜イ
ト云ハレマシタカラ自分カラ直接大浦子爵
ニ返金シ且大要其〓末ヲ報告シテ置キマシ
タ大浦子爵ニ其報〓ニ參ツタノハ十二月廿
九日カ三十日カノ午前中デアツタト記憶シ
テ居リマス此日前代議士林永太君ガ大浦子
爵ニ揮毫ヲ賴ムト云ツテ居タノデ自分ト同
時刻頃ニ訪問スルコトヲ約シ自分ハ老人デ
麻布ノ大浦子爵邸ニ出掛ケマシタ處下ノ應
接室デ林君ト一〓ニナリ二人共二階ノ應接
室ニ案內サレ其處デ大浦子爵ニ面會致シマ
シタガ子爵ハ林君ノ請ヲ容レラレタル爲メ
同氏ハ持參ノ絹地ヲ托シテ自分ヨリ子爵ニ
對シ林田氏ヨリ賴マレテ增師案ニ賛成スル
コトニ約束ノ出來タ前述ノ連中ニ金ヲ渡シ
タコトヲ報告シ其計算書ト板倉中ノ借用證
書殘金約壹萬六千圓等ヲ子爵ノ前ニ差出シ
マシタ子爵ハ金ト計算書トヲ受取ラレタ以
上其金ノ內ヨリ七千圓ヲ自分ノ前ニ差出シ
歸國ノ上ハ此金ヲ以テ香川縣ニ於テ非政友
派ノ爲メニ機關新聞ヲ經營シ同志ノ爲メニ
盡力シテ吳レト申サレマシタカラ自分ハ難
有項戴シテ歸ヘリマシタ
8問板倉中ヨリ差入レタ六千圓ノ借用證書ヲ
大浦子爵ノ面前ニ差出シタ際子爵ハ之ニ對
シテ何ト云フタカ
答子爵ハ何トモ申シマセヌ
9問昨年十二月廿三日ノ議會ニ出席シタ際林
田龜太郞ノ室ニ於テ同人ガ被〓ニ對シ板倉
中ハ被〓カラ渡シタ以外ニ大浦子爵カラモ
直接金ヲ受取テ居ル樣ナ話ヲシタ際被告ハ
林田ニ對シテ何ニカ之レニ付テ返答シタカ
答何ニモ致シマセヌ
右讀聞云々
被〓人白川友一
大正四年七月廿七日
高松地方裁判所ニ於テ
同廳
裁判所書記北岡權二郞〓
豫審判事代理
判事角南美貴〓
被〓人白川友一第八囘調書
1問白川友一ナルヤ
答左樣デアリマス
2問昨日被〓ノ申立テタ處ニ依レバ林田翰長
ヨリ被〓〓ニ增田穰三ガ受取タ金ハ大浦子
爵ヨリ出テ居ルコトハ相違ナイ樣デアルガ
果シテ然ラバ少クトモ林田ガ金ヲ渡ストキ
又ハ其以前ニ必ズ其旨被告ニ咄シテ居ル譯
デハナイカ
答御尋子ハ御尤モデアリマスガ其當時林田
輸長ヨリ金ハ大浦子爵ヨリ出ルノデアルト
云フ樣ナ咄ハ決シテアツタモノデハアリマ
セヌ
3問被告昨日申立テタ通リ林田龜太郞ヨリ受
取タ金ヲ板倉中、武市庫太等數名ノ者ニ供
與シタ詳細ノ事實ヲ申立ヨ
答自分カラ直接渡シタモノト增田穰三カラ
直接渡シタモノトアリマスガ先ヅ自分ガ直
接渡シタモノヲ申シ上ゲマスレバ
森川源吾
吉田虎之助
交叉點を示す
濱田政策
本出保太郞
增田穰三
ノ六名デアリマス
然シテ又增田穰三ヨリ直接渡シタモノヲ申
上ゲマスレバ
板倉太中アリマスカラ金錢ノ授受ノ約束等ハ無カツ
武市庫タノデアリマス
高鍋筆二十五日ハ衆議院解散後ニ至リ始メテ國ノ
(原雀氏)新聞ヲ經營スル爲メト云テ出金ヲ求メタノ
長谷川敬一郞デ渡スニ至ツタ次第デアリマス又本出ノ千
本出保太郞圓ハ前申上ゲマシタ通リ一寸貸セトノコト
井阪光暉デ渡シタノデ之モ約束ニ基クモノデハアリ
ノ七名デアロート思ヒマス
今其各自ニ渡シタ金高ヲ申シ上ゲマスレバ
森川源吾ニ對シテハ同人ガ吉田虎之助ガ金
ガ無クテ困ツテ居ルカラ千圓計貸シテ遣テ
吳レ又自分ニモ子圓計貸シテ貫ヒ度イト申
シマスカラ同人ノ分ト吉田虎之助ノ分ト二シ
人分トシテ金貳千圓ヲ昨年十二月廿三日頃
自分ノ止宿セル厚生舘ニ於テ交付シマシタ
ガ同廿四日自分等ガ吾妻屋支店ニ於テ團体六日頃赤阪ノ本出ノ宅ニ行キ井阪ノ選擧
ヲ解散スルノ止ムナキニ至リマシテカラ廿
六日頃森川源吾カラ同人ト吉田虎之助ノ二モノデ別ニ前以テ本出ニ金ヲ渡ス約束ヲシ
名分トシテ千圓丈ヲ返ヘシニ參リマシタカテアツタモノデハアリマセヌ
ラ厚生舘デ之ヲ受取リマシタ5問林田龜太郞ヨリ被〓ガ金ヲ受取テカラハ
水間此農夫ニ對シテハ同氏ガ衆議院解散ト厚生箱ニ出入スル連中等ニ對シ增師案ニ賣
ナリ再ビ候補ニ立チテ極力競爭スルニハ機成シテ吳レル者ニハ金ガ入レバ少々ハ渡シ
關新聞ガ必要デアルカラ宮崎縣下ニ於ケルテバカイハ云フ樣ナコトヲ度々云テ居タノ
自己ノ從來關係セル政友派ノ機關新聞ヲ同
氏ト濱田政藏ノ兩名ノ手二買收スル爲メデ答
アルトテ出金ヲ求メラレタカラ廿六七日頃
34.20
北京市公安局海淀分局15217330112
シタカラ其場デ同人ニ金一千圓ヲ渡シマシ6問高鍋篤郞ニ渡シタ金ハ他ノ人ヨリハ少額
タ本年一月中之ガ返還ノ催促致シマシタケナル理由ハ如何
レドモマアノ〓待テ吳レトノ返事デアリマ答同氏ハ自分等ト行動ヲ共ニシテハ居タケ
シテ其儘今日ニナツテ居リマスレドモ十二月二十五日ノ議會ニ於テ增師案
增田穰三ニ對シテハ二十七八日頃同氏ハ林裁決ノ際離席シ賛否ノ數ニ加ハラザリシ爲
田ヨリ預リタル金ノ決算勘定ヲ爲シタル際メ自分ハ增田君ニ對シ彼レニハモウ遣レン
厚生舘ノ自分ノ部屋ニ於テ金參千圓ヲ渡シヅト注意シテ置キマシタカラ夫レデ遣タ額
マシタ增田ノ渡シタ分ハ增田ニ御聞キ被下ガ少イノジヤト思ヒマス
バ能ク分ルトハ思ヒマスガ同人ヨリ報〓ヲ7問森川源吾、吉田虎之助等ガ受取タ金ノ內
受ケ薄々ナガラモ記憶ニ存ジテ居ル丈ケノ千圓丈ヶ返シタ理由ハ如何
コトヲ申上ゲマスレバ板倉中ニ壹萬圓、武答十二月二十四日吾妻屋支店ニ於テ我々同
市庫太ヽ村井善四郞、各壹千五百圓、高鍋篤
郞ニ四百圓、本出保太郞、井阪光暉ノ兩名二志ガ主張ヲ抛チ解散ヲ爲シ各自任意ニ進退
貳千圓、長谷川敬一郞ニ千圓渡シテアルトスルコトニナンタ際同人等ハ政友會ニ復歸
思ヒマス右ノ内板倉中ニ渡シタ壹風圓中自シマシタノデ夫レデ金ヲ返シテ來タモノト
分ニ於テ取返ヘシマシタノガ四千圓デアル思ヒマス
ト云フコト竝ニ其四千圓ヲ取返ヘシタ理由8問板倉中ニ渡シタ壹萬圓ノ干係ハ是迄申立
ニ付テハ前囘申上ゲマシタ通リデアリマス通リ違イナイカ
ガ是等增田ノ分ヨリ渡シタル分ハ其日時及答今日迄ハ總テノ貴ヲ自分一身ニ擔ヒ之ニ
場所等ハ自分ニ於テハ存ジマセヌ猶ホ金高干係シタ增田等ニ責ヲ分タザランコトヲ期
ノ點ハ慥カナリトハ申上ゲ兼ネマスシ自分カラ直接板倉ニ四千圓ト六千圖ト二
問二十六七日頃以後ニ渡シタ連中ニ對シテ
ハ其以前ニ既ニ增師案賛成ヲ條件トシテ金
ヲ遣ルコトヲ約束シテアツタ爲メデハナイご飯
カ
答自分ノ直接渡シマシタ水間此農夫ノ參千
圓及本出ノ千圓ハ約束ニ基テ渡シタモノデ
ハアリマセヌ水間、濱田ノ兩氏ハ宮崎縣ニ申上ゲマシタ通り實ハ大浦子爵ノ手ニ交付
於ケル鐵道敷設案ガ第三十五議會二豫算トシテ置キマシタノデアリマス
シテ提出セラレマシタノデ同縣ハ政黨政派9問大浦有子爵ガ被告ニ機關新聞經營費トシテ
ノ如何ニ拘ハラズ一致シテ豫算ノ通過ヲ希七千千〓圓ヲ吳レタノハ被〓ガ同人ノ爲メニ働
望シテ居マシタノデ從テ增師案ニ對シテハタ御禮カ
他ノ勸誘ヲ待タズ熱心ニ賛成シテ居ルノデ答左樣デハアリマセヌ子爵ガ私ニ香川縣ニ
於テ非政反ノ機關初用ヲ經營シテ大ニ來ル
ベキ總避擧ニ政府與黨ノ一人ニテモ多ク當
選スル樣輿論ヲ皷吹シ援助ヲ與フルコトニ
シテ吳レトノ趣意デ渡サレタモノデアリマ
ス固ヨリ自分ハ從來政友派ノ機關新聞ヲ增
田氏等ト共ニ經營シテ店リマシタガ脫黨ノ
結果右新聞ヲ自分等ノ意見通ニスル譯ニユ
カザルコトニナツタノデ新タニ一新聞ヲ起
シテ同志ノ主張ヲ縣下ニ周知セシメントノ
二十七七言日子爵士ヲ訪問ノ際話シタコトガアリ希望計〓致シツヽアリマシタ此事ハ十二月
云フカラ受取ツメノデアリウスール二日締
縣以來直ニ機械活字等ヲ買人レ又一面記者
活版職工晝夜兼行ニテ準備ヲ整ヘ二月一日丸
龜市ニ丸龜新聞ナルモノヲ起シテ同志ノ爲
メニ選擧ノ聲援ヲ與ヘ非政友熱ヲ皷吹シ今
日ニ至テ居ル次第デアリマス既ニ今日迄ニ
投資シテ居ル金高モ八千圓ヲ越ヘテ居リマス
10問昨日ヨリ引續キ今日ニ至ル迄被告ガ申立
タ以上ノ事實ハ眞實ニ相違ナイカ
答今日ニ至テハ昨日モ申上ゲマシタ通リ能
ク觀念シテ居リマスカラ最早何物モ僞ナド
ヲ申上ゲマセヌ尤モ多少ノ記憶違ヒハ中ニ
ハアルカモ知レマセヌガ記憶ノアル限リハ
眞實有ノ儘申上ゲタノデアリマスカラ當初
ヨリ今日迄ノ陳述ニシテ本日及昨日ノ陳述
ニ反スル部分ハ全部取消シマス何卒御読察
ヲ願ヒマス一言申上ゲマスガ十二月二十三日林田翰長
子爵ヨリモ金ヲ取ツテ居ル樣デアルト聞タリ室ニテ同氏カラ板倉中ハ君ノ外ニ尙大浦
ト申上ゲテ居リマスノハ十分考ヘテ見マス
ルト林田氏ノ云フタコトハ大浦子爵ト云フ
タノカ政府筋ト云フタノカ其處ハ實ハ能ク
記憶モアリマセヌ兎ニ角外カラ貰テ居ルラ
シイトノ咄ノアツタコト丈ゲハ違ナイ樣ニ
記憶シテ居リマス此點ハ御訂正ヲ願ヒマス
1問昨年來ノ議會ニ於ケル被告ノ立場ハ結局
ドー云フコトニナルノカ
答自分一己ノ立場ヲ標準ニ露骨ニ申上ゲマ
スレバ始メハ自分ハ極力增師案ヲ通過セシ
メント圖リ政友會總裁總務等ヲ種々說得シ
マシタケレドモ漸次總裁總務等ノ意見ガ增
師反對ニ傾キツヽアルコトヲ看取シマシタ
カラ到底總裁總務等ヲ說得シテ政友會ヲシ
テ增師案ヲ贊成セシメ擧國一致ノ實ヲ揚ゲ
シムルコトノ不能ナルヲ悟リ此上ハ最早政
國兩黨ノ一部同志ヲ糾合シ以テ當初ノ目的
ヲ貫徹スルニ若クハナシト思惟シ其方法ヲ
自分ニ對ニアンデール ()方政友會ノ割腸ヲモリ
"text "〓〓一
ヲ盡シ刀折レ矢盡キテ後我々ハ固ヨリ政友
會ヲ惡ムモノニアラザルガ故ニ增師通過ノ
目的ヲ到底遂ゲ得ザルモノナリセバ敢テ政
友會ヲ離ルヽ理由ガナイノデアルカラ終ニ
淚ヲ呑デ增師贊成論ヲ抛チ黨ニ復歸シヨウ
ト云フ考ヘヲ起シマシタガ俄然廿五日ノ午
揃三四時頃ニ至リ我々同志ノ內五名ノ者ニ對シ前ニ申上ゲマシタ通リ除名ノ通知ガ參
リマシタ爲メ止ムルヲモ聞キ入レズ更ニ我
我ト共ニ拾名許リノ者ガ情誼上我々ニ殉死
スルニ至ツタモノデアリマス從テ我々モ亦
此殉死者ニ向テ多少自己ノ持金ヲ分配スル
樣ナコトニ立至リ之ガ爲メ今日ノ如ク我々
ナッカリラックアリ天下記載館大東京都港区京区大丁二三-七六三
ヌ之ガ眞實ノ事實デアリマシテ囘顧スレ
慚愧ニ堪ヘマセヌ
右讀〓云々友
被〓人白川
大正四年七月廿八日
髙松地方裁判所ニ於テ
印同廳
裁判所書記北岡權二郞〓
豫審判事角南美貴國
豫審請求書
東京市麴町區内幸町
二丁目一番地
瀆職林田龜太郞
右者左記ノ犯罪アリト思料候條求豫審候也
高松地方裁判所檢事局
檢事山下覺次郞
大正四年七月二十八日
高松地方裁判所
豫審判事御中
犯罪事實
被〓ハ大正三年十二月第三十五議會ニ於テ政
千葉県伊豆市塩竈町三丁目酸辣粉粿糖炒飯熱力冷暖水壓力
スル議員ニシテ該案ノ通過ヲ欲シ同志ノ糾合
1本地価格表示,
ヲ約セシメタル上同人等ニ約四萬圓ヲ交付シ
タルモノナリ
被〓人增田穰三第三囘調書
1問增田穰三ナルヤ
答左樣デアリマス
2問昨年十二月中旬林田翰長ガ厚生舘ニ來リ
白川友一ノ室ニ於テ白川及被告等ト會見シ
切崩束ニ付テ依賴シタ際林田翰長ハ金ハ大
浦子爵ガ出スノデアルト云フ話ヲシタノデ
ハナイカ
答前囘申上ゲマシタ通リ自分ハ白川カラ林
田翰長ガ來テ居ルカラ來テ吳レト招カレテ
參タノデアリマス
自分ガ參ル迄ニ既ニ白川ト林田トノ間ニハ
話ガ遂ゲラレテ居タ風デアリマシタ前同申
上ゲマシタ通リ自分ガ參ツテカラ自分ト白
川ト林田ト三人ノ面前デ白川ガ自分ニ對シ
只今林田君ガ政府ハ政友會ヲ切崩ヲスル方
針デアルカラ之レガ目的ヲ達スル樣盡カシ
ヲ吳レ金ハ政府ヨリ出ス併シ政府カラ金ヲ
出スト云フテハ面白クナイカラ自分自身ガ
出ス樣ナ風ヲ裝フテ遣ツテ吳レト云フテ來
テ居ルカラ一ツ君モ盡力シテ吳レト申シマ
シタカラ自分モ盡力スルコトニナリマシタ
其時前申上ゲマシタ通リ自分ハ直覺的ニ政七日頃ニ至リ厚生舘ニ於テ白川ガ本出ニ此
府カラト云フハ大浦子爵カラデアローカト強ハ耕一ノーリーアンスタンチンジンジャント申シャスカラカ
思ヒマシタガマダ林田ガ居ル中デアツタカ分ハ夫レハ
林田ガ歸ツテカラ後デアツタカ其處ハ能クト答ヘマシタラ白川ハ君ハ僕ヨリ年長者デ
北京明惠国际集团有限公司アップラスターミルクエクト牛肉炒飯海鮮炒飯
"text "〓〓ガ出ルノデアルナラバ隨分働キ榮("text "〓〓ケレ〓白川カラ渡シテ吳レタ
電話(〇五〇九)一一-七八
神田
3問被告等ガ政友會切扇策ニ盡力スルニ至リ
シ當時ノ增師問題ニ對スル態度ハドーデア
ツタカ
答白川ナリ自分等ハ是迄度々申上ゲマシタ週刊ビーガンディ大阪府中国語旅行中心クラームーショッパーシー
通リ夙ニ增師ノ必要ヲ認メ增師案通過ヲ熱
心ニ希望シテ居リマス者ノ一人デアリマシシタ自分ニハ紙ノ分ガ當リマシタ
タガ昨年十二月十九日頃迄ハ只其希望ヲ述右樣ナ次第デアリマシテ本出ノ宅ヘ白川ト
ベテ居ルニ過ギズシテ別ニ此增師運動ニ付自分ガ同意シテ金ヲ渡シタコトハ相違アリ
テ特筆大書スル程ノ行動モアリマセナンダ
ガ十九日ニ至リ政友會ノ總務連卽床次竹次セガガガチンイカフェイン横濱ライダーカードカードカード
郞岡崎邦輔、村野常右衞門及ビ幹事長永井
純一等四名ガ連名ニテ增師反對ノ演說會ヲ
築地ノ靜養〓デ催スカラ出席シテ貰ヒ度トハ千五百圓宛合計参千圓ヲ渡シテ居
云フ案內狀ヲ送ツテ來タノデ斯ク幹部ノ連アンドル
中ヨリ增師反對ノ演說會ヲ催スニ於テハ政
"title "〓文愻"
生活佛教
總裁ガ增師ニ關シ此ノ如キ白紙說デアル一貫 ···························ニルヘルガー街道36.38分ハ夫レハ遣
ラバ其中軸ダル幾接等ガ增師反對ノ演說會
北方大学家一覽證明書き有人道路三星高照大學古川味
志ノ仲間ニ於テモ增師贊成ノ旗揚ゲヲシヨテンルートリンスターズマスカラカ自由ケー特典機ノ酸
ウト云フコトニナリ此トキヨリ盛ニ增師テ置キマス
賛成熱ガ加ツタノデアリマス此時分ニハ既5問然ラバ本出ト井阪ノ分ハ渡ス約束ノアツ
ニ一方林田ヨリ大浦カラ金ヲ出スカラ宜敷タノハ解散前ノコトカ
初心生育てから中国国旅行第200號-ダ答白川カラ自分ニ本出ガ井阪ニ金ヲ遣ツテ
日本科学大会附属中心吳レト云テ申込ンデ居ルカト云ウ話ヲシタ
ノハ前申上ゲマシタ通リ十二月廿三日頃デ
ル金ヲ以テシタノデ一層其度ヲ昂メ遂ニ事アリマスカラ約束ハ解散前デアツタコトハ
爰ニ至タノデアリマス相違アリマセヌ
4問被〓ガ林田ヨリ受取タ金ヲ以テ買收シタ6問白川ガ被〓ニ對シ板倉中ハ自分等ノ手ヨ
議員ハ前囘申立タ通リデモー外ニハナイカリ渡シタ以外ニ尙大浦子爵カラ直接金ヲ握
答先日申上ゲマシタコトニ申殘シテ居ルコテ居ルカラ取返ヘシテ遣ラネバナラヌト
トガアリマスカラ申上ゲマス本出保太郞ニ云フ樣ナコトヲ話シタコトハナイカ
金ヲ渡シタ事ガアリマス夫レハ昨年十二月答アリマス夫レハ昨年十二月廿三日白川ガ
二十三日頃厚生舘ニ於テ白川ガ自分ニ向ヒ厚生舘デ自分ニ對シ林田輸長ガ板倉中ハ君
本出ガ井阪ニ金ヲ少シ遺テ吳レト申シマス等カラ金ヲ取テ居ル以外ニ尙大浦子爵カラ
直接金ヲ握テ居ルノデアルト云フコトヲ注
一覽用意大利麵意シテ吳レタカラ何ニモ二重ニ遺ル譯ハナ
BUND CENTER大地方特大行列車イカラ自分等ノ手カラ渡シタ分ハ取返シテ
遣ラネバナラヌ一體板倉ハ不都合千萬ナ奴
デアル是カラ直グ行テ取返ヘシテ來ルト云
フテ居タコトガアリマス
自分モ其時夫レハ取返ヘシタテヨイ何ニモ
二重ニ遣ル必要ハナイト申シマシタ夫レデ
今日夕方白川ハ待合藤村ヘ乘込ミ板倉ト面
會ノ上取返ヘシノ談判ヲ致シマシタガ其時
本出モ一緒ニ參ツタト云フコトデアリマス
其夜非常ニ遲ク歸ツテ來マシテ朝早ク厚生
舘ノ番頭ニ寫眞屋ガ何トカ寫眞ニ撮ルトカ
何トカ命ジテ騒イデ居リマシタ其後數額ハ
覺ヘマセヌケレドモ金ハ幾許カ取返ヘシタ
足ラヌ處ハ證書ニシタトカ云フコトヲ云フ
テ居リマシタガ詳細ナコトハ知リマセヌ
7問被〓ガ白川ニ代リ林田カラ金ヲ受取ツテ
來タノハ何囘デ總計幾許カ
答タシカ三囘デアツタト思ヒマス然シテ自
分ガ受取ツテ來タ金ノ總額ハ約貳萬圓位カ
ト思ヒマス受取ル際別ニ勘定シテ受取ツタ
モノデモアリマセヌ歸ツテ白川ニ渡ス際勘
定シテ渡シタモノデアリマセヌカラ確カナ
コトハ申上ゲ兼ネマス
8問被〓ガ金ヲ受取リニ行タ際其都度林田ハ
何ト云フタカ
答仕舞ニハドチラデモヨイカラ受取ニ來テ
貰ヒ度ヒト云フ樣ナ風ニナリマシタケレト
モ始メノ程ハ白川ニ渡スノデアツタカラ白
川ガ差支ノ爲メ自分ガ代リニ受取リニ行キ
マシタ樣ナ譯デ最初ハ只金ヲ渡シテ吳レタ
丈ケデ別ニ深イ話モアリマセナンダガ自分
モ度々受取リニ行クニ連レ其都度ドーユウ
成行ニナツテ居ルカ其景况ヲ細密ニ聞カレ
ル樣ニナリマシテカラ自分モ其都度委敷ク
成行ヲ報〓スル樣ニナリマシタガ具体的ニ
如何ナル話ヲシタカト云フコトハ只今記憶
ニ存ジマセヌカラ詳細申上ゲ兼ネマス
9問切崩ノ結果其計算勘定ノ報告ヲ林田ナリ
大浦ニシタカ
答其報告ハ白川カラシタモノニ相違ハアリ
マスマイケレトモ自分カラハ致シマセヌカ
ラ收支決算ハ如何ナツタカ自分ハ知リマセ
ヌ元來始メカラ白川ガ切崩ヲ委託セラレ會
計ノ點ニ於テモ全部同人ガ鎖鑰ヲ握ツテ居
リマスノデ同人ハ切崩シニ關スル一切ノ事
情ヲ知ツテ居リマスケレトモ自分ハ只自分
ノ遣ツタ部分以外ニハ知リマセヌ自分ノ遺
ツタ部分ハ白川ニ報告シテアリマス昨年十
二月二十七八日頃デアツタ樣思ヒマス白川
ガ自分ニ對シ計算ガ出來タカラ之ヲ見テ吳
レト云フテ御承知ノ罫ノ入レタ書箋ニ認メ
タモノヲ示シマシタガ自分ハ固ヨリ白川ヲ
信用シテ居リマスカラ君ガシタモノナラ見
ンデモ夫レデヨイト申シマシタラ白川ハ金
ハ大分餘ツタゾト申シマスカラ自分ハ夫レ
ハ結構デアルト申シタ位ノコトデアリマス
從テ大浦子爵カラ總計幾許ノ金ガ出テ夫レ
ヲ如何樣ニ分配シ幾何ノ剩餘金ヲ生タカ委
敷ハ知リマセヌガ壹萬圓餘リ餘ツタト白川
ガ云フテ居タ樣ニ記憶シマス何レ計算報告
ハ白川ヨリ林田翰長ナリ大浦子爵ナリニシ
テ居ルコトデアロート思ヒマスカラ右書箋
ニ認メタ計算書ヤ板倉カラ取ツタト云フテ
居タ借用證ヤ剩餘金ハ子爵ノ手ニ渡ツテ居
ルモノト思ヒマス
10問被告ト白川ト同道ニテ大浦子爵邸ヘ決算
報告ニ參ツタノデハナイカ
答左樣ナコトハアリマセヌ尤モ此事十二月
二十七八日頃ノ午前九時頃挨拶ノ爲メ大浦
子爵ノ宅ニ參ツタコトガアリマス其時白川
モ自分ト一緒ニ厚生舘ヲ出マシタガ途中デ
自分ト別レマシタ白川ハ其時林田ノ內ヘ行
タモノダロート思ヒマス自分ガ大浦邸ヘ參
ツテ暫クシテ白川モ亦參リマシタガ同人ガ
參ツテ後自分ハ白川ト共ニ子爵ニ面會シマ
シタ其ノ時子爵ハ此間ハ非常ニ御苦勞デア
ツタ猶將來黨ノ爲メニ然ルベク盡力シテ吳
レト云フ意味ノ挨拶セラレマシタ自分等モ
出來ル丈ケ盡力シマスト答ヘテ暫ラク來ル
ベキ總選擧ノ問題ニ話移リ色々子爵意見ヲ
聽キマシタガ別ニ其際ハ切崩費ノ決算報告
ハ致シマセナンダ約二十分許リヲ經テ白川
ガ自分ニ對シ君ハ一足先キヘ歸ツテ吳レト
申シマシタカラ直ニ同邸ヲ辭シ歸リマシタ
歸ル際二階ノ應接室カラ玄關ヘ降リテ來マ
シタラ玄關ノ向フノ控室ニ林田翰長ガ來テ
居リマシタ
自分ガ歸ヘツテ後白川ガ林田等立會ノ上デ
決算報〓ヲ致シマシタカ如何カ夫レハ自分
ハ知リマセヌ其後自分ハ三十一日ニ立テ歸
國スル迄子爵ノ宅ヘハ參リマセヌ
11問其時子爵ハ機關新聞ヲ起スコトニ付テ話
ハシナカツタカ
答自分ノ居ル間ハ致シマセヌ自分ガ厚生舘
ニ歸ツテ後其日デアツタカ其翌日デアツタ
カ記憶シマセヌガ白川カラ自分ニ對シ決算
報告ノ濟ンダコト〓ニ香川縣デ愈機關新聞
ヲ起スコトニシタト申シテ居リマシタガ同
人ガ子爵カラ金ヲ貰ツタコトナドハ其時ハ
咄シマセナンダ其後本年ニ到リテタシカ三
月頃ダト思ヒマス白川ガ本年二月ニ起シタ
丸龜新聞ノ爲メニ壹萬圓カラ金ヲ遣ツタト
申シタカラ自分ハ壹萬圓カラ入ッタト云フ
タ處デ補助ガアローカト申シマシタラ白川
ハ七千圓子爵カラ貰ツタケレドモ足ルドコ
ロデハナイト申シタコトガアリマズ
14問大浦子爵ト林田翰長トノ關係ハ親密ノ間
柄カ
答ドレ程親密ノ間柄カ自分ハ能ク知リマセ
ヌ併シナガラ元來白川ハ昨年末ノ切崩ニ關
係スル迄ハ餘リ子爵ニ知過ヲ受ケテ居ルト
云フ程デアリマセヌカラ子爵ガ斯ル大事ヲ
白川ニ一任スル理由ガナイ樣ニ思ヒマス林
田翰長ガ譬へ白川ト懇意デアリマシテモ子
爵ガ林田ト懇意ナ間柄デナケレ子バ左樣ナ
大事ナ事柄ヲ林田ヲ經テ白川ニ一任スル譯
ノモノデアリマセヌカラ林田ハ大分子爵ノ
信用ヲ受ケテ居ルノデアロート思ヒマス之
ハ自分ノ想像デアリマセヌ
右讀聞云々
被〓人增田穰三
大正四年七月廿九日
高松地方裁判所ニ於テ
印同廳
裁判所書記北岡權二郞團
豫審判事角南美貴〓
聽取書
麹町區內幸町二ノ
林田龜太郞
文久三年八月生
右者大正四年七月廿八日云々
東京地方裁判所檢事局ニ出頭シ左ノ陳述ヲ爲
シタリ
昨年十二月半頃議院内ナリシト覺フ白川
友一ガ自分ニ對シ一芝居打チ度シト思フ四
五十人ノ同志ヲ結合シテ議會ノ解散ヲ免ガ
レ度シト思フ夫ニ付テハ軍資金ガ入用ダガ
金策出來ズヤ後日自分ニ金融出來レバ返金
スルカラト申出マシタ自分ハ當時ノ狀勢ハ
内心增師案ニ贊成シ居ルモ黨派ノ壓迫其他
種々ノ事情ノ爲メ餘儀ナク反對スルモノ鮮
カニス之等ニ糾合スルトキハ優ニ一勢力ヲ
作リ得ベシト思ヒタル故之ニ贊成シ差當リ
有合金參千圓ヲ同人ニ渡シマシタ
議會開會中ハ若干ノ機密費ヲ議會操縱係ヨ
リ預カリ居ルコトガアリマス其際モ預リ居
リシ機密費中ヨリ右ノ參千圓ヲ支出シタ譯
デアリマス元來何レノ政府ニモ議員操縱係
ナルモノガアリマスガ其際ハ大浦子ガ其係
ニシテ機密費モ同氏ヨリ預ツテ居リマシタ
機密費ハ自分ノ專斷デ支出スルモ差支ナキ
モノデアリマス然モ專斷デ支出シタ件ハ一
一操縱係ニ報〓セ子バナリマセン
ニ、右參千圓ヲ白川ニ渡スヤ直ニ大浦子ニ會
ヒ白川ガ一芝居打ツト云フカラ如何ナルコ
トヲスルカ知ラザルモ取敢ヘズ參千圓ヲ渡
シ置キタル旨報告シマシタ
其後一兩日ヲ經テ白川ヨリ同志糾合ニ付テ
ハ纏マツタ金ガ入ルカラ心配シテ吳レヨト
ノ申出アリタルニヨリ其通大浦子ニ話シ
タルニ同子ハ内閣デハ寧ロ議會ノ解散ヲ希
望シテ居ルカラ議員ノ買收ハ一切遣ラヌ方
針デアルガ然モ君ガ白川ヲ信用シテ遣ルナ
ラバ干涉ハセヌ金ハ自分ガ心配スルカラト
云ハレマシタ
依テ八月二十二三日頃迄ニ四五度大浦子ヨ
リ金ヲ受取リ白川ヨリ請求アル都度同人ニ
渡シマシタ其額ハ通計參萬貳千圓ナリト覺
ヘマス尤モ最初參千圓ノ時ハ自分ノ金ノ樣
ニシテ白川ニ渡シタルモ後ニハ大浦子ヨリ
出デタル金ナルコトヲ同人ニ打明ケマシタ
三、其後二十五六日頃ト覺フ議院內書記官長
室ナリシト記憶ス白川ガ來リ彼ノ金ハ未
ダ精算勘定ハ濟マザルモ壹萬五六千圓ハ殘
ル見込ナルガ大浦子ニハ未ダシミ〓〓御目
ニ懸カラヌカラ其内行ツテ自分ノ精神モ吐
露シタヒト思ヒ居ル故其際右殘金モ御返ヘ
シヽ決算書モ御覽ニ入レタシト思フト云ヒ
マスカラ自分ハ夫レガヨカロウト同意シマ
シタ其後白川ヨリハ何モ聞カザルモ本年正
月頃大浦子ニ會ヒタル際同子ハ白川ハアー
云フ業体ニ似合ハヌ正直ナ奴デアルト譽メ
テ居ラレマシタカラ白川ハ其通實行シタ事
ト思フテ居リマス
大浦子ニ白川ガ右殘金ヲ返シタル際同子ガ
白川ニ其內何程分與セラレタルヤ自分ハ知
ラズ然モ昨年末カ本年ニナツテノ事カ確ニ
覺ヘザルモ丸龜新聞經營ノ爲メ同子ヨリ特
別ノ寄附金ヲ貰フタト白川ガ云フテ居ルヲ
聞キマシタ
四白川ガ自分ヨリ渡シタル金ノ內壹萬圓ヲ
板倉中ニ渡シタリトノコトハ白川ヨリハ曾
テ聞キマセン二十三日頃ノ夜ニ晚ク白川ガ
板倉ト爭論シタリト云フテ自分方ニ來リ一
芝居打ウト思フタガ駄日ダト云じ怒ツテ居
リマシタ當時同人ハ大ニ醉ヒ且非常ニ激昂
シテ居リマシタ一時間半許モ居リマシタガ
何ニモ纒マツタ話シハアリマセンデシタ
議會解散ノ前日ノ事ト覺フ大正倶築部員ノ
屆出アリタルモ政友會ヲ脫會シタルコトナ
シト申出タルモノアリ故同倶樂部ノ幹事本
出保太郞ガ武市庫太カ誰レナリシカヲ呼ビ
質シタルニ夫レハ此通自署ノ脫黨屆ガアル
トテ寫眞ヲ示サレタコトガアリマス自分ハ
何故コンナモノヲ寫眞ニ取リタリヤト聞キ
タルニ誰ナリシヤ其場ニアリシモノカ表裏
反覆常ナラザル奴等ダカラ後日ノ證據ニス
ル爲メ取ツタノダト云ヒマシタ
林田龜太郞〓
右讀聞云々
大正四年七月廿八日
於東京地方裁判所檢事局
檢事大田黑英記印
調書
被〓人
林田龜太郞
右被告人ニ對スル瀆職被告事件ニ付キ大正四
年七月二十八日東京地方裁判所ニ於テ
豫審判事潮恒太郞
裁判所書記神田多智馬
列席ノ上豫審判事ハ被〓人ニ對シ訊問ヲ爲ス
コト左ノ如シ
1問氏名ハ
答林田龜太郞
2問年齡ハ
答五十三歲
3問身分ハ
答士族
4問職業ハ
答衆議院書記官長
5問住所ハ
答東京市麴町區内幸町二丁目一番地
6問本籍地ハ
答熊本市新一丁目四十四番地
7問出生地ハ
答同市熊本城二ノ丸
8問位記勳章從軍記章年金恩給又ハ公職ヲ有
セザルヤ
答從三位勳二等
9問是迄刑罰ニ處ヒラレタルコトナキヤ
答アリマセヌ
10問衆議院議員書記官長ニ就職シタノハ何時
カ
答明治三十年中デス
11問被〓ハ白川友一ト懇意ニシテアルカ
答明治四十二三年頃香川縣貴族院議員鎌田
勝太郞ノ宴會ニ初メテ面會シテ知合ニ爲ツ
タ樣ニ思ヒマス
12昨年十二月中旬頃被告ハ築地ノ厚生舘ニ
白川ヲ訪ネタ事ガアルカ
答或ハアルカモ知レマセヌ
13時其際增田穰三モ同席シタ樣デアルガ如何
答增田穰三及白川友一ト厚生舘ニ於テ面會
シタコトガアリマスカラ多分其時デアツタ
デシヨウ
14問其際議員ヲ買收スルト云フ話ガアツタノ
デハナイカ
答其當時政友會ハ政府提出ノ增師案ニ反對
スル形勢ヲ示シテ居リマシタガ厚生舘ニ於
テ面會シタ際白川ハ政友會所屬議員中增師
賛成ノ者少ナカラザルモ黨議ヲ拘束サレテ
公然反對意見ヲ立ツル事ガ出來ズニ居ルノ
デアル箇樣ナ者ヲ結合スルハ一芝居出來ル
カモ知レヌト申シマシタ
夫レデ私ハ國家ノ爲メ何分盡力ヲ賴ムト申
シマシタガ議員ヲ買收セヨ抔トハ申シマセ
ヌデシタ
15問白川ハ其際幾人位結合ガ出來ルト申シテ
居タカ
答三四十人位ハ既ニ同志ノ者ガアルト申シ
テ居リマシタ
1個被〓ハ其際ハ如何ナル用向ヲ主トシテ厚
生舘ニ參ツタノカ
答私ハ勢力アル議員ノ處ハ常ニ訪問シテ形
勢ヲ開イテ居リマス其當時ハ厚生舘組ト云
フモノガ出來テ一勢力ヲナシテ居リマシタ
カラ主トシテ其形勢ヲ聞キニ參ツタノデス
問被〓ハ白川ニ對シ國家ノ爲メニ何分賴ム
ト申シタトスレバ被〓モ增師案ニ贊成意見
ヲ有シテ居タノカ
答私ハ增師ニ贊成ノ意見ヲ有シテ居リマシ
タ加之議員ヲ黨議ヲ以テ束縛スルト云フ又
憲法ノ精神ニ戻ツテ居ルト信ジマスカラ白
川ガ黨議ノ束縛ヲ受ケズ自由意見ニ依ツテ
行動スルト云フ議論ヲ立テタカラ誠ニ適當
ノ事ト思ヒ右樣ニ申シタノデス
18問被〓ハ白川ニ金參千圓ヲ渡シタ事ガアル
カ
答昨年十二月十九日ト思ヒマス塲所ハ議院
デアリマシタガ其他デアリマシタカ能ク記
憶シマセヌガ白川ハ此ノ話ノ繼續トシテ私
ニ向ヒ同志ヲ糾合スルニ付テハ事務所ヲ設
ケ集會ヲナシ印刷所モ致サネバナラヌカラ
軍用金ガ必要デアル何程カ金ヲ出シテ吳レ
ト申シマシタ依ツテ私ハ手許ニ在ツタ機密
費ノ參千圓ヲ同人ニ渡シマシタ
19問其機密費ハ政府カラ受取タモノカ
答左樣デス議員ノ操縱掛タル大浦子爵ヨリ
受取ッテ居タ金デス
20問何レノ内閣ノ時モ衆議院書記官長ニ機密
費ガ渡ツテ居ルノカ
答左樣デハアリマセヌ私ヲ信用スル内閣ノ
時丈機密費ヲ渡サレテ居ルノデス
2個衆議院書記官長ハ何レノ政派ニ屬セズ公
平ニアルベキモノデアルカラ時ノ內閣ノ爲
メニ操縱掛ヨリ機密費ヲ受取ツテ之ヲ內デ
側ノ利益ノ爲メニ使用スルト云フ樣ナ事ハ
ナイ譯ハナイカ
答職務上カラ申セバ左樣デス
然シ操縱掛カラ特ニ賴マレヽバ職務外ニ多
少ノ盡力ハ致シマス
22問白川ニ右參千圓ヲ渡シタ事ヲ大浦子爵ニ
報〓シタカ
答直チニ報告シタト思ヒマス
32問其後又白川ニ金ヲ渡シタデハナイカ
答白川ハ同志ノ糾合ニ付テ纒マツタ金ガ要
ルト云フタカラ其後十二月二十三日迄ノ間
數囘ニ貳萬九千圓渡シマシタ而シテ其金ハ
白川ニ直接ニ渡シタ分モアリ白川ノ代人ト
シテ增田穰三ガ來タカラ同人ニ渡シタ分モ
アリマス今詳細ヲ記憶シテ居リマセヌ
24問其金ハ何處デ渡シタカ
答議院デ渡シタ事モアリ築地二丁目十六番
地鳥料理珠琳亭ニ於テ渡シタ事モアリマス
25問右貳萬九千圓ハ其時ニ大浦子爵ヨリ出シ
テ貰ツタノカ
答左樣デス白川ガ同志ヲ糾合スルニハ纒ツ
タ金ヲ準備シテ置カナクテハナラヌカラ心
配シテ吳レヨト申シタカラ其旨ヲ大浦子爵
ニ話シ出金シテ貰フテ白川ニ渡シマシタ
26問白川ガ同志ヲ糾合スル爲メニ金ガ要ルト
云フノハ要スルニ議員ヲ買收スルト云フ意
味ヲ持ツテ居ルノデハナイカ
答白川ハ其邊ノ事ハ何ントモ申シマセヌデ
シタ
27問白川ガ明言セズトモ被告ニ於テ其邊ヲ想
像シタデアロフ
答私ノ感想ヲ申セバ同志議員ニ融通シ又多
少運動費ニ分配スルモノデアロト思ヒマシ
タ
28問同志議員ニ融通スルト云フハ如何ナル意
味カ
答其當時困ツテ居ツタ議員モ澤山アツタ樣
デスカラ白川ハ是等ノ者ニ多少貸スノデハ
ナイカト思ヒマシタ
29問然シ其貸借ハ後日白川ヨリ返濟ヲ要求ス
ルト云フ樣ナ意味ノモノデハナイノデアロ
ウ
答左樣デス箇樣ナ貸借ハ後日返濟ヲ要求ス
ルト云フ意味ノモノデハアリマセヌ其實私
ハ其當時白川ノ用途ニ付キ何ノ考ヘモナク
唯ダ今日ニ至ツテ色々想像スルノデス
30問大浦子爵ニ於テモ白川ガ金ヲ如何ナル方
面ニ用井ルカハ承知シテ出サレタノデアロ
ウ
答大浦子爵ハ内閣ニ於テハ寧ロ議會ノ解散
ヲ希望シテ居ルカラ此際議員ノ買收等ハ致
サナイ方針デアル然シ君ハ白川ヲ信用シテ
遣ルナラバ自分ハ干涉セヌ金ハ自分ガ心配
シテ出シテ遣ルト云ハレマシタ
31問大浦子爵ガ議員ノ買收等ハ致サナイ方針
デアルト云ハレテモ參萬貳千圓ト云フガ如
キ大金デアルカラ自川ガ之ヲ同志議員ニ分
配スルノデアルト云フ事ハ想像シテ居ラレ
タデハナイカト思ハルヽガ如何
答或ハ想像サレタカモ知レマセヌガ私ヨリ
ハ前申立タ事丈ヲ話シタノデス
32問被〓ガ白川ニ渡シタ參萬貳千圓モ同人ヨ
リ後日返濟スベキ約束ハナイノデアロウ
答白川ハ儲ケタラ御返シマスト云フテ居リ
マシタガ私共ヨリ返濟ヲ要求スベキ筋合ノ
金デハアリマセヌ
33問白川ハ被〓ヨリ受取ツタ金ヲ如何ニ使用
シタカ報〓セシヤ
答一向何ノ報告モアリマセヌデシタ尤モ昨
年十二月二十五六日頃院內ニ於テ白川ハ私
ニ對シ未ダ〓算シテ居ナイガ壹萬五六千圓
ハ殘ル見込デアル大浦子爵ニハ未ダ染々御
目ニ懸ラヌカラ其内伺ヲテ自分ノ精神ヲ話
シ且ツ〓算書ヲ御覽ニ入レテ殘金ヲ御返シ
シタイト思フト云ヒマシタカラ私ハ金ノ事
ダカラ夫レガ可カロート答ヘテ置キマシタ
34問其後白川ハ大浦子爵ニ面會シタカ
答白川ヨリハ何ニモ聞キマキヌデシタガ本
年一月大浦子爵ニ面會シタ時白川ハ風體ニ
似ヌ正直ナ男デアルト賞メテ居ラレマシタ
夫レデ私ハ白川ガ大浦子爵ニ面會シタモノ
デアロウト想像シマシタ
35問其後白川ガ大浦子爵ヨリ金ヲ貰フタ事ヲ
開カナイカ
答本年一二月頃白川ハ丸龜新聞經營ノ爲メ
特別ノ寄附金ヲ貰フタト云フテ居リマシタ
ガ其金額ハ聞キマセンデシタ
36問被〓ハ白川ト板倉中ノ關係ニ付テ聞イタ
事ハナイカ
答昨年十二月二十三日頃ノ夜分一時カ二時
頃白川ガ酒ニ醉ヒ非常ニ激昂シテ私方ニ參
リ板倉ト喧嘩シテ來タガ板倉ト云フ奴ハ酷
イ奴ダト一芝居打タウト思フテ計畫ダガス
ツカリ壞ハサレタト云フテ居リマシタ
被〓人
林田龜太郞
右讀聞ケタル處相違ナキ旨ヲ申立テ署名シ無
印ト述ベタリ
裁判所書記神田多智馬〓
豫審判事潮恆太郞〓
被〓人增田穰三第四囘調書
1問增田穰三ナリヤ
答左樣デアリマス
2問林田翰長ノ手ヲ經テ大浦子爵ヨリ受取ツ
タ金ノ總額ヲ被〓ハ知ラヌ譯ハナイ樣ニ思
フガ如何
答御尋ネハ御尤デアリマスガ前ニモ申上マ
シタ通リ會計ハ全部白川ガ遣ワテ居リマシ
タノデ實際自分ハ知リマセヌ
3問譬ヒ白川ガ會計全部ヲ遣ツテ居ルニシテ
モ白川ト共ニ切崩シタ實行シタ被告ガ受取
ツタ總額位ハ知ラヌ筈ハナイ樣ニ思フガ如
何
答御尤デアリマス知ラナイ譯ハナイ筈デア
リマスガ實際知ランノデアリマス收支決算
ノ際モ白川ガ自分デ爲シタモノデ決算書ハ
出來テ居リマシテモ自分ハ前申上ゲマシタ
通り白川ガ一寸書箋ニ計算ヲシテ居タコト
ヲ見タ切リデ君ガシタノナラ見ンデモヨイ
ト云フテ之レヲ見マセナンダ位デスカラ總計
幾許ヲ受取リテ幾許宛ヲ幾人ニ供與シ幾許
殘ツタカ詳細ノコトハ知リマセヌ今考ヘテ
見マスルト白川ヲ信ジテ其當時同人ノスル
コトニ深ク注意ヲ拂ハナカツタノハ自分ノ
大ナル失策デアリマス
4問何等大ナル失策カ
答夫レハ外デハアリマセヌ今ニナツテ考ヘ
テ見マスルト自分ニ知ラシメザル樣ニ白川
ガ尙他ニ金ヲ撒イテ居ルノデアルマイカト
思ヨ當ルノデアリマス
其金ハ迚モ同人ガ御調ヲ受ケテモ申上ゲル
コトノ出來ヌ譯デアツテ或ハ夫レヲ自分ニ
冠セント企テヽ居ルノデハアルマイカト思
ヒマス
5問其譯ト云フノハ何ニカ
答之ハ只自分ノ想像スル處デアリマスカラ
確言ハ得致シマセヌ併シ自分ニ白川ガ參千
圓吳レタ際自分ハ白川ニ對シ君モ貰ウノカ
ト申シマシタラ同人ハウント答ヘタコトガ
アリマシタ
依テ先ズ同人ガ金額ハ分ラヌガ幾許カ貰フ
テ居ルニ相違アリマセヌ夫レハ前囘申上ゲ
マシタ新聞費ノ七千圓以外カト思ヒマスガ
其邊ハ能クハ分リマセヌ尙自分ニ參千圓白
川ガ吳レタ前日デアツタ樣ニ思フ厚生舘デ
林田カラ請求ガアツタノカ如何カ夫レハ知
リマセヌガ白川ガ自分ニ對シ林田翰長ニモ
金ヲ少シ遣ラネバナラヌト申シテ居リマシ
タコトガアリマス故ニ林田ニ金ヲ遣ツテ居
ルモノト思ヒマス幾許遣ツテ居ルカ夫レハ
自分ハ知リマセヌ
右申上ゲタ樣ナコトガアリマスカラ前申上
ゲマス通リ御調ニ逢フテモ白川ハ申上ゲル
コトガ出來ヌノデ夫レヲ或ハ自分ニ冠セン
トスルノデアルコトカト思フノデアリマス
6問被〓ガ今日迄申立タコトハ其通リ違ヒナ
イカ
答以上是迄申述ベタ通リ昨年十二月末切崩
一件ニ付キ自分ガ干與シタコトハ大〓申述
ベタ次第デアリマシタ決シテ夫レニ相違ハ
アリマセヌ
更ニ包ミ隱シハ致シマセヌ當初虛僞ノ陳述
ヲ致シマシタ所以ハアレハ前ニモ申上ゲマ
シタ通リ全ク白川ヨリ此事件勃發前同人ガ
假令首ガ飛ンデモ自分ハ云ハヌカラ君モ云
フテ吳レルナト固ク同人ノ爲メニ口ヲ緘セ
ラレマシタカラ同人ヲ庇護スル爲メニ出デ
タルモノデ之レニ依リ自然自分ノ僞證セシ
所以モ明瞭ニナリマスガ旣ニ白川ガ彼レ程
ニ云フテ居リナカラ自ラ先ツ以テ口ヲ割タ
樣ナ風デアリマスカラ自分モ全部自白致シ
マス從テ自分ノ僞證ノ行爲モ明白ニナツタ
コトヽ思ヒマス今日ニ於テハ速ニ之レガ御
取調ヲ受ケ公平ナル御裁判ヲ謹デ待チ居リ
マス何卒自分ノ切ナル心情ヲ御諒察願ヒマ
ス
右讀聞ケタル處承認セリ
被〓人
增田穰三
大正四年七月三十一日
於高松地方裁判所
印同廳
裁判所書記北岡權二郞〓
豫審判事角南美貴〓
被〓人增田穰三第五囘調書
1問增田穰三ナリヤ
答左樣デアリマス
2問只今檢事ヨリ被告ガ林田絶太郞及白川友
一等ト共謀シテ昨年十二月板倉中外數十名
ノ議員ニ約四萬圓ヲ交付シ以テ之ヲ買收シ
タモノデアツテ卽同人等ト瀆職ノ共犯デア
ルト云フ起訴ガアツタガ是迄僞證被〓事件
ニ付被〓ガ申述ベタ通リ事實ハ總テ違ヒナ
イカ
答瀆職ニ付テノ起訴アリタルコトハ承知致
シマシタ是迄申立テマシタ事實ハ違ヒアリ
マセヌ卽昨年十二月林田ヨリ政友會切崩シ
ノ爲メ同會議員買收費數萬圓ヲ自分ト白川
トニ於テ受取リ之ヲ以テ自分ガ板倉中ニ二
囘ニ壹萬圓武市庫太村井善四郞ニ各壹千五
百圓宛高鍋篤郞ニ參四百圓長谷川敬一郞ニ
千圓何レモ增師贊成ヲ條件トシテ交付シ以
テ是等議員ヲ買收シタコトハ相違アリマセ
ヌ尙本出保太郎、井阪光暉其他數名買收ノ
點ニ關スル白川友一ノ行爲ニ付テモ前林田
輸長ヤ大浦子爵ノ關係ニ付キテモ是等總テ
僞證事件ニ於テ本年七月廿三日同月廿九日
及本日御取調ヲ受ケタル際申上ゲマシタ通
リ何レモ相違アリマセヌ
右讀聞ケタル處承認シタリ
被〓人
增田穣三
大正四年七月卅一日
於高松地方裁判所
印同廳
裁判所書記北岡權二郞〓
豫審判事角南美貴團
聽取書
白川友、
大正四年七月卅一日高松地方裁判所檢事局ニ
出頭シ任意左ノ通リ陳述シタリ
議員ニ金ヲ與ヘテ增師案ニ贊成サセル樣
ニ私ト林田君ト打合ラシタノハ昨年十二月
十八九日頃デアル樣ニ林田君ヤ增田君ノ方
デ申上ゲテ居ルカモ判リマセヌガ私ノ考ヘ
デ矢張十二月廿二日ノ午後珖琳亭デ林田君
ト會見シタトキ林田君カラ話ガ出タモノデ
アルト記憶致シテ居リマス
尤モ十八九日頃厚生舘デ林田君ト會見シタ
事實モアルノデスカラ其折左樣ナ話ガアツ
タノカモ判リマセヌカラヨク考ヘテ見ル事
ニ致シマセウ金ヲ林田君カラ受取ツタノハ
總テ琉琳亭デアツタト思ヒマスガ或ハ增田
ノ受取ツタ場所ハ他ノ所デアツタカモ判リ
マセヌ
ニ、林田君カラ私ガ金ヲ受取ツタノハ度デ
アツタ樣ニ申上ゲテ置キマシタガ其後考へ
テ見マスルト二囘デアツタ樣ニ記憶シテ居
リマス尤モ最初ノ二十二日ノ夕刻受取ツタ
金額ハ壹萬圓デアツタ事丈ハヨク覺ヘテ居
リマスガ二度目ニ私ノ受取ツタ金額ハ何程
デアツタカ只今判然致シマセヌガ增田ノ受
取ツタ二囘分ト合セテ四萬圓弱ノ金デアツ
タ事ハ聞違ハアリマセヌ尤モ茲ニ御含ミ願
ヒタヒノハ外デモアリマセヌガ右四萬圓弱
ノ金ハ全部私ナリ增田君ナリニ林田君カラ
渡サレタノデハナヒノデアリマス其内貳千
五百圓デアツタカ貳千七百圓デアツタカ只
今其金額ハ確カニハ記憶致シテ居リマセヌ
ガ夫レ丈ノ金ハ私共ノ手ニハ受取テナカツ
タノデアリマスガ林田君ノ依賴ニヨリ右ノ
金モ一旦私共ノ手ニ受取リ然ル後支拂ハレ
タ事ニ計算尻ヲ作ツタノデアリマスコノ事
ニ就テハ林田君ガ二度目ニ私ニ金ヲ渡シテ
吳レル際コノ内少シ許リ僕ノ方デ借用シタ
カラ含ンデ書イテ吳レト申サレマシタガ當
時ハ其金額ガ何程デアツタノカ私ニハ判ラ
ナカツタノデアリマス然ルニ十二月二十六日
林田君ノ官邸デアツタカ珖琳亭デアツタカ
私ヨリ林田君ニ金ノ收支ニ付キ計算ヲシヨ
ウト申〓タトキ同氏ハ私ニ對シ此間借リタ
金ハ貳千七百圓(或ハ貳千五百圓ト云フタ
ノデアツタカ今記憶ヲ存ゼヌコトハ先ニ申
上タ通リデアリマス)デアルカラ君等ニ渡
シタ金以外ニコノ金モ君ニ於テ一旦僕カラ
然ル後支拂フタ事ニシデ吳レソシテコノ金
ハ總テ大浦子爵カラ出タ金デアルカラ子爵
ニ面會シテ直接金ノ支拂等ヲ報告シテ吳レ
金ノ事ダカラ其方ガヨイト云ハレタノデコ
ノ金ヲ出シタ人ハ大浦子爵デアツタ事モ林
田ガ借リタカラト云フタ金額ガ貳千七百
圓(或ハ貳千五百圓)ナリシコトモ此時ヨリ
判ツタノデアリマス
右樣ノ次第デスカラ私共ガ林田カラ受取
ツタ金額ハ實際ノ處參萬七千餘圓デアツ
タノデス併シ林田君カラノ賴ミヲ無ニス
ル事モ出來マセンデシタカラ大浦子爵ニ差
上タ計算書中ニハ林田君ノ引去タ金ハ私ニ
於テ特別ニ支出シタモノノ如ク記載シテ書
キマシタソシテ子爵ニ對シテコノ特別ニ支
出シタ金ハ私ニ於テ頂戴致シテ置キマシタ
併シコレハ私ノ懷ニハ這入ツテハ居リマセ
ヌ或人ニ私ノ專斷ニテ渡シタモノデアリマ
スガ其人ノ氏名ハ只今申上ゲル事ヲ憚リマ
スカラ惡カラズ御承知ヲ願ヒマスト申上ゲ
テ置キマシタ林田ハ彼ガ引去ツタ金ヲ以テ
他ノ議員ヲ買收シタモノトハ思ハレマセン
デシタガサリトテ何ニ使用シタノカハ私ニ
ハ判リマセンデシタガコノ事ヲ大浦子爵ニ
露骨ニ報告スルコトハ林田氏ノ爲メニヨク
アルマイト思フタノデ事實ノ通リ報〓セズ
右樣曖昧ナル報〓ヲ致シテ置キマシタノデ
アリマス
三、私ガ大浦子爵ニ金ノ收支ニ付報告シタノ
ハ十二月二十九日カ三十日カデアツタ樣ニ
申上ゲテ置キマシタガ其後ヨリ考ヘテ見マ
シタ處十二月三十一日デアツタ事ガ判リマ
シタ
コノ日林永太君ト共ニ井上角五郞君ヲ麹町
一番町ノ屋敷ニ訪子マシタガコレハ子爵邸
ヲ辭シタ後チ林田君ハ私ヨリ一足先キニシ
乞シ其後デ私カラ子爵ニ大略ノ報〓ヲ致暇
マシタノデコノ事ハ前囘申上ゲタ通リデア
リマス
右報告ノ際板倉ヨリ受取ツタ六千圓ノ借用
證書ヲ計算書ト共ニ子爵ニ差上ゲマシタカ
別段右借用證書ノ事ニ付私ト板倉トノ關係
ハ報告致シマセンデシタ夫レハ外デモアリ
マセヌ私ガ板倉ニ對シ返金ヲ迫リ其末同人
カラ四千圓ヲ取、戻シタ事モ右六千圓ノ證書
ヲ受取ツタ事モ其都度林田君ニ詳細物語ツ
テ置キマシタノデ同氏ヨリ大浦子爵ニ夫
レ〓〓報〓シテアルコトト思フタカラデア
リマス果シテ林田君カラ子爵ニ報告シタカ
ドウカハ斷言ハ出來マセヌガコノ點ニ關シ
子爵ヨリ何等ノ質問ナカリシ處ヨリ察スル
ニ林田君ヨリハ最早報告濟デアツタ樣ニ思
ハレマシタ
四、右報〓ノ際大浦子爵ハ今度ハ御苦勞デア
ツタト云フ樣ナ趣旨ノ謝意ヲ述ベラレマシ
タガ其文句ハ只今判然覺ヘテ居リマセヌ十
二月二十七日增田ト共ニ大浦邸ヲ訪ネタト
キ子爵ハ私共ニ對シ今囘ハ非常ナル盡力デ
有リガタカツタト云フ趣旨ノ挨拶ガアリマ
シタコレハ私共ガ增師案ニ對シ盡力シタ爲
メノ謝辭デアルト思フテ居リマシタ
陳述人白川友一
右錄取ニ卽時讀聞ケタル處之ヲ承認シ署名シ
タリ
於高松地方裁判所檢事局
檢事松定吉〓
儉事田中健之助團
(未完)
発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003713242X01119151223&spkNum=149

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118・川上榮太郎
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119・島田三郎
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121・島田三郎
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122・高橋久次郎
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123・島田三郎
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