1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正七年一月二十四日（木曜日）午後一時十七分開議
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議事日程 第四號 大正七年一月二十四日
午後一時開議
第一 所得税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 通行税法廢止法律案（政府提出） 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 酒造税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 酒精及酒精含有飮料税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第九 麥酒税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十一 清涼飮料税法案（政府提出） 第一讀會
第十二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十三 自家用醤油税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第十四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十五 砂糖消費税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第十六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十七 織物消費税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第十八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十九 石油消費税法廢止法律案（政府提出） 第一讀會
第二十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十一 戰時利得税法案（政府提出） 第一讀會
第二十二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十三 郵便法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第二十四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十五 臨時國庫證券法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第二十六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十七 貨幣法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第二十八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十九 戰時船舶管理令（承諾を求むる件）
第三十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三十一 家祿賞典祿處分に關する法律案（川原茂輔君外十六名提出） 第一讀會
第三十二 沒祿處分を受けたる者に對する家祿賞典祿處分に關する法律案（川原茂輔君外十六名提出） 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=0
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001・大岡育造
○議長(大岡育造君) 諸般ノ報告ヲ命ジマス
〔書記朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
未成年者飮酒取締ニ關スル法律案
提出者根本正君
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
對支政策ノ根本方針ニ關スル質問主意書
提出者伊東知也君
軍人ノ官紀ニ關スル質問主意書
提出者野村嘉六君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=1
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002・大岡育造
○議長(大岡育造君) 會議ヲ開キマス、諮問ノ件ガアリマス、第四部選出決算委員
竹村良貞君、第六部選出決算委員樋口秀雄君、第九部選出請願委員山口俊一
君、右常任委員辭任ノ申出ガアリマス、許可シテ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=2
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003・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナシト認メマス、就テハ各其部ノ諸君ハ、速ニ補缺選
舉ヲ行ヒ御屆出アラムコトヲ望ミマス、日程第一ヨリ第二十三マデハ一括シテ議題ト爲
スヲ便宜ト認メマスガ、一括ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=3
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004・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ハナイト認メマス、第一、所得稅法中改正法律案、第
三、通行稅法廢止法律案、第五、酒造稅法中改正法律案、第七、酒精及酒精含有
飮料稅法中改正法律案、第九、麥酒稅法中改正法律案、第十一〓凉飮料稅法
奏、第十三、自家用醬油稅法中改正法律案、第十五、砂糖消費稅法中改正法律
案、第十七、、織物消費稅法中改正法律案、第十九、石油消費稅法廢止法律案、第
二十一、戰時利得稅法案、第二十三、郵便法中改正法律案、右ヲ一括シテ議題ト
〓シマス
第所得稅法中改正法律案(政府得出)第一讀會
所得稅法中改正法律案
所得稅法中左ノ通改正ス
第三條第一項ヲ左ノ如ク改ム
所得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
第一種法人ノ所得
甲合名會社、合資會社所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅
率ヲ適用ス
五千圓以下ノ金額千分ノ四十五
五千圓ヲ超ユル金額千分ノ五十五
一萬圓ヲ超ユル金額千分ノ六十五
一萬五千圓ヲ超ユル金額千分ノ七十五
二萬圓ヲ超ユル金額千分ノ八十五
三萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百
五萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百十五
七萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百三十
十萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百四十五
二十萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百六十
三十萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百七十五
乙株式會社、株式合資會社、其ノ他ノ法人千分ノ七十五
第二種此ノ法律施行地ニ於テ支拂ヲ爲ス公債ノ利子千分ノ二十、
社債ノ利子千分ノ三十
第三種前二種ニ屬セサル所得所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ
各稅率ヲ適用ス
千圓以下ノ金額千分ノ三十
千圓ヲ超ユル金額千分ノ四十
二千圓ヲ超ユル金額千分ノ五十五
三千圓ヲ超ユル金額千分ノ七十
五千圓ヲ超ユル金額千分ノ八十五
七千圓ヲ超ユル金額千分ノ百五
一萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百二十五
一萬五千圓ヲ超ユル金額千分ノ百四十五
二萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百七十
三萬圓ヲ超ユル金額千分ノ百九十五
五萬圓ヲ超ユル金額千分ノ二百二十
七萬圓ヲ超ユル金額千分ノ二百四十五
十萬圓ヲ超ユル金額千分ノ二百七十
二十萬圓ヲ超ユル金額千分ノ三百
第四條ノ三中「山林伐採ノ所得」ヲ「山林伐採ノ所得、山林譲渡ニ因ル立竹木
ノ所得又ハ立竹木ノミノ讓渡ニ因ル所得」ニ改ム
第四條ノ五中「百圓」ヲ「百五十圓」ニ、、「五十圓」ヲ「百圓」ニ改メ「五百圓以下ナル
トキハ百五十圓ヲ」ヲ削ル
第六條中「四百圓」ヲ「五百圓ニ改ム
第四十二條中「其ノ年十一月一日ヨリ十五日限」ヲ、其ノ年十一月一日ヨリ三
十日限」ニ「翌年一月一日ヨリ十五日限ヲ「翌年一月一日ヨリ三十一日限」ニ、
「翌年三月一日ヨリ十五日限」ヲ「翌年三月一日ヨリ三十一日限」改改
第五十條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第八條ノ申告ヲ爲シタル者ハ大正七年ニ於ケル沖繩縣ノ調査委員、
補闕員及調査委員選舉人ノ選舉ニ關シ第十四條及第十五條ノ規定ノ適用
ニ付テハ前年所得稅ヲ納メタル者ト看做シ第二十四條ノ任期ハ大正七年
ニ於テ選舉シタル沖繩縣ノ調査委員及補闕員ニ限リ三年トス
附則
本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第三種ノ所得ニ付テハ大正七
年分所得稅ヨリ之ヲ適用ス
第三通行稅法廢止法律案(政府提出)第一讀會
通行稅法廢止法律案
通行稅法ハ之ヲ廢止ス
附則
本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前ニ徵收シ又ハ徵收スヘキ通行稅ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
第五酒造稅法中改正法律案(政府提出)第一讀會
酒造稅法中改正法律案
酒造稅法中左ノ通改正ス
第一條ノ六中「稗」ノ下ニ「玉蜀黍、馬鈴薯」ヲ加フ
第四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
酒類ヲ製造スル者ニハ其ノ造石數ニ應シ左ノ割合ヲ以テ造石稅ヲ課ス
第一種酒精分二十三度以下ノ酒類一石ニ付二十三圓
第二種酒精分二十三度ヲ超エ四十五度ヲ超エサル燒酎
一石ニ付酒精分二十三度以上一度
ヲ增ス每ニ八十錢ヲ前號ノ金額ニ
加ヘタル金額
第三種酒精分二十三度ヲ超ユル〓酒、濁酒、白酒、味淋及酒精分四十五
度ヲ超ユル燒酎
一石ニ付酒精分一度每ニ一圓
第五條中「百石」ヲ「三百石」ニ、「五十石」ヲ「百石」ニ、「五石」ヲ「十石」ニ、「第四
條第一項ノ稅率」ヲ「一石ニ付二十三圓ノ割合」ニ改ム
第八條第二項但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ命令ノ定ムル所ニ依リ〓酒ハ査定石數百分ノ五以內ノ滓引減量及貯
藏減量ヲ、味淋ハ査定石數百分ノ二以內ノ滓引減量ヲ控除スルコトヲ得
第三十三條中「處罰又ハ處分セラレタル者」ヲ「處罰若ハ處分セラレタル者
又ハ三年以上引續キ酒類ヲ製造セサル者」ニ改ム
附則
本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
酒類製造ノ免許ヲ受ケ本法施行ノ際現ニ酒類製造者タルモノニ限リ第五條
ノ規定ノ適用ニ付テハ當分ノ内仍從前ノ例ニ依ル
酒類製造ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ本法施行前ヨリ引續キ酒類ヲ製造セサ
ルモノニ付テハ第三十三條第一項ノ期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第七酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案(政府第一讀會
提出)
酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
酒精及酒精含有飮料稅法中左ノ通改正ス
第二條酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料ヲ製造スルトキハ一石ニ付原容量百
分中純酒精ノ容量一箇每ニ一圓ノ割合ヲ以テ其ノ石數ニ應シテ造石稅ヲ
課ス但シ一石ニ付二十四圓ノ割合ヲ下ルコトヲ得ス
第五條ノ二中「金二十一圓」ヲ「二十四圓」ニ改ム
第二十三條ノ二中「處罰又ハ處分セラレタル者」ヲ「處罰若ハ處分セラレタル
者又ハ三年以上引續キ酒精若ハ酒精ヲ含有スル飮料ヲ製造セサル者」ニ改
附則
本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料製造ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ本法施行前ヨ
リ引續キ酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料ヲ製造セサルモノニ付テハ第二十三
條ノ二第一項ノ期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第九麥酒稅法中改正法律案(政府提出)第一讀會
麥酒稅法中改正法律案
麥酒稅法中左ノ通改正ス
第三條中「金十圓」ヲ「十二圓ニ改ム
第十九條ノ二中「處罰又ハ處分セラレタル者」ヲ「處罰若ハ處分セラレタル者
又ハ三年以上引續キ麥酒ヲ製造セサル者」ニ改ム
附則
本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
麥酒製造ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ本法施行前ヨリ引續キ麥酒ヲ製造セサ
ルモノニ付テハ第十九條ノ二第一項ノ期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第十一〓凉飮料稅法案(政府提出)第一讀會
〓凉飮料稅法案
〓凉飮料稅法
第一條本法ニ於テ〓凉飮料ト稱スルハ炭酸瓦斯ヲ含有スル飮料ヲ謂フ但
シ攝氏檢溫器十五度ノ時ニ於テ全重量ノ萬分ノ五以下ノ炭酸瓦斯ヲ含有
スルモノ及酒精分一度以上ヲ含有スルモノハ此ノ限ニ在ラス
前項ニ於テ酒精分ト稱スルハ攝氏檢溫器十五度ノ時ニ於テ原容量百分中
ニ含有スル○、七九四七ノ比重ヲ有スル酒精ノ容量トス
第二條〓凉飮料ニハ一石ニ付五圓ノ割合ヲ以テ〓凉飮料稅ヲ課ス
第三條〓涼飮料ヲ製造セムトスル者ハ政府ニ申告スヘシ其ノ製造ヲ廢止
セムトスルトキ亦同シ
第四條〓凉飮料稅ハ何人ノ製造ニ係ルヲ問ハス製造場外ニ移出セラレタ
ル〓凉飮料ノ石數ニ應シ〓涼飮料製造者ヨリ之ヲ徵收ス
〓凉飮料製造者政府ノ承認ヲ受ケ〓凉飮料ヲ他ノ製造場ニ移出シタル場
合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ〓凉飮料稅ヲ徵收セス
第五條製造場內ニ於テ飮用セラレタル〓凉飮料ハ之ヲ製造場外ニ移出セ
ラレタルモノト看做ス
第六條製造場內ニ現存スル〓凉飮料公賣セラレタルトキハ之ヲ製造場外
ニ移出セラレタルモノト看做ス
第七條〓凉飮料製造者製造ヲ廢止シタルトキ製造場内ニ現存スル〓凉飮
料ハ之ヲ製造場外ニ移出セラレタルモノト看做ス
第八條清涼飮料製造者ハ每月其ノ製造場外ニ移出セラレタル〓凉飮料ノ
石數ヲ翌月五日迄ニ政府ニ申告スヘシ但シ前二條ノ場合ニ於テハ直ニ之
ヲ申告スヘシ
〓凉飮料製造者前項ノ申告ヲ爲サス又ハ政府ニ於テ申告ヲ不相當ト認メ
タルトキハ政府ハ其ノ石數ヲ決定ス
第九條〓凉飮料稅ハ每月分ヲ翌月末日迄ニ納付スヘシ但シ第六條又ハ第
七條ノ場合ニ於テハ直ニ之ヲ納付スヘシ
第十條〓凉飮料製造者カ外國ニ輸出スル目的ヲ以テ製造場外ニ移出シタ
ル〓凉飮料ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ〓凉飮料稅ヲ免除ス
前項ノ〓凉飮料ニ付必要アリト認ムルトキハ其ノ稅金ニ相當スル擔保ヲ
提供セシムルコトヲ得擔保物ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ規定ニ依リ稅金ノ免除ヲ受ケタル者其ノ〓凉飮料ヲ製造場外ニ
移出シタル後六月內ニ外國ニ陸揚シタルコトノ證明ヲ爲ササルトキハ直
ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ天災其ノ他已ムコトヲ得サル事由ユ因リ亡失シ
タルモノニ付政府ノ承認ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一條〓凉飮料ヲ外國ニ輸出シタル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ〓
涼飮料ニ付左ノ金額ノ交付ヲ政府ニ請求スルコトヲ得
一〓凉飮料稅納付濟ノモノナルトキハ其ノ稅金ニ相當スル金額
二砂糖消費稅ヲ課セラレタル砂糖ヲ使用シタルモノナルトキハ其ノ使
用シタル砂糖ノ消費稅ニ相當スル金額以下ノ金額
輸出後一年ヲ經過シタルトキハ前項ノ請求ヲ爲スコトヲ得ス
第十二條〓凉飮料ノ製造者又ハ販賣者ハ〓凉飮料ノ製造、出入ニ關スル
事實ヲ詳細明瞭ニ帳簿ニ記載スヘシ
〓凉飮料ノ製造者又ハ販賣者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ〓凉飮料ノ製造又
ハ販賣ニ關シ必要ナル事項ヲ政府ニ申告スヘシ
第十三條收稅官吏ハ〓凉飮料ノ製造者若ハ販賣者ノ所持ニ係ル〓凉飮料、
其ノ製造出入ニ關スル一切ノ帳簿書類及〓凉飮料ノ製造若ハ販賣上必要
ナル建築物器械材料其ノ他ノ物件ヲ檢査シ又ハ監督上必要ノ處分ヲ爲ス
コトヲ得
第十四條收稅官吏ハ運搬中ニ在ル〓凉飮料ヲ檢査シ其ノ出所及到達先ヲ
質問シ又ハ監督上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ稅金五倍ニ相當スル罰金ニ處シ直
ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ稅金四圓未滿ナルトキハ罰金額ハ二十圓トス
一詐僞其ノ他不正ノ行爲ヲ以テ稅金ヲ逋脫シ又ハ逋脫ヲ圖リタルトキ
二政府ニ申告セスシテ〓涼飮料ヲ製造シタルトキ
第十六條〓涼飮料ノ製造者又ハ販賣者〓凉飮料ノ製造出入ニ關スル帳簿
書類ヲ隱匿シ帳簿ヲ調製セス、其ノ記載ヲ詐リ若ハ怠リタルトキ又ハ第
八條若ハ第十二條第二項ノ規定ニ依ル申告ヲ詐リ若ハ怠リタルトキハ百
圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十七條收稅官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虚僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ
其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、之ヲ妨ケ若ハ忌避シタル者ハ三十圓以下ノ罰金
又ハ科料ニ處ス
第十八條〓凉飮料ノ製造者又ハ販賣者ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人
其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法ヲ犯シタルトキハ其ノ製造者
又ハ販賣者ヲ處罰ス
第十九條清凉飮料ノ製造者又ハ販賣者カ未成年者又ハ禁治產者ナルトキ
ハ本法ニ依リ本人ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ
營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラ
ス
第二十條本法ヲ施行セサル地ニ於テ製造シタル〓凉飮料ハ其ノ地ニ於テ
本法ノ稅率ト同一又ハ重キ稅率ヲ以テ課稅セラルルニ非サレハ之ヲ本法
施行地ニ移入スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ違反シテ〓涼飮料ヲ移入シタル者ハ其ノ石數ニ應シ第二條
ノ稅率ニ依リ算出シタル稅金五倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ稅金四圓未
滿ナルトキハ罰金額ハ二十圓トス
第一項ノ〓凉飮料及其ノ容器ハ之ヲ沒收ス但シ既ニ處分シタルトキハ其
ノ價格ニ相當スル金額ヲ追徵ス
第二十一條本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九
條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十
六條ノ例ヲ用井ス
第二十二條自己又ハ家族ノ用ニノミ供スル〓凉飮料ヲ製造スル者ハ本法
ノ〓凉飮料製造者ト看做サス
第二十三條〓凉飮料ニ付テハ酒精及酒精含有飮料稅法ヲ適用セス
附則
本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前ヨリ〓凉飮料ヲ製造シ本法施行後引續キ之ヲ製造セムトスル者
ハ本法施行ノ日ヨリ一月內ニ其ノ旨政府ニ申告スヘシ
第十三自家用醤油稅法中改正法律案(政府提出)第一讀會
自家用醤油稅法中改正法律案
自家用醤油稅法中左ノ通改正ス
第一條中「五石」ヲ一一石」ニ改メ第二項ヲ削ル
第三條自家用醤油製造者ハ每年五十錢ノ製造稅ヲ納ムヘシ
第四條製造稅ハ其ノ年十月ヲ以テ納期トス但シ納期前製造ヲ廢止シ若ハ
第十一條第二項ニ該當スルニ至リタルトキ又ハ納期後免許ヲ受ケタルト
キハ卽納トス
第十一條第二項ヲ左ノ如ク改ム
本法ニ依リ免許ヲ受ケタル者前項各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキハ
免許ハ其ノ效力ヲ失フ
附則
本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前自家用醤油製造ノ免許ヲ受ケタル者ハ本法ニ依リ免許ヲ受ケタ
ル者ト看做ス但シ大正七年度分ニ限リ第四條及第十一條第二項ノ規定ヲ除
クノ外仍從前ノ例ニ依ル
第十五砂糖消費稅法中改正法律案(政府提出)第一讀會
砂糖消費稅法中改正法律案
砂糖消費稅法中左ノ通改正ス
第一條ニ左ノ一項ヲ加フ
飴ハ本法ニ於テ之ヲ糖蜜ト看做ス
第三條中「百分ノ六十ヲ超エサルモノ」ノ下ニ「及飴」ヲ加フ
附則
本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前ヨリ飴ヲ製造シ本法施行後引續キ之ヲ製造セムトスル者ハ本法
施行ノ日ヨリ一月內ニ其ノ旨政府ニ申告スヘシ
第十七織物消費稅法中改正法律案(政府提出)第一讀會
織物消費稅法中改正法律案
織物消費稅法中左ノ通改正ス
第一條ニ左ノ一項ヲ加フ
「メリヤス」及「フエルト」ハ本法ニ於テ之ヲ織物ト看做ス
第二條消費稅ノ稅率左ノ如シ
一絹織物價格百分ノ十三
二綿織物價格百分ノ八
三其ノ他ノ織物價格百分ノ十
前項ニ於テ絹織物ト稱スルハ全重量百分中九十五以上ノ絹ヲ以テ組成シ
タルモノヲ謂ヒ綿織物ト稱スルハ全重量百分中九十五以上ノ綿ヲ以テ組
成シ絹ヲ交ヘサルモノヲ謂フ但シ人造絹、金屬線、金屬絲、金屬箔、漆絲及
漆箔ハ之ヲ絹ト看做ス
第四條、第九條及第十條中「製造場、稅關又ハ保稅倉庫」ヲ「製造場又ハ保稅
地域」ニッシュ
第四條第二項ヲ削ル
第二十二條本法ニ於テ保稅地域ト稱スルハ關稅法ノ定ムル所ニ依ル
第二十三條政府ハ織物ノ製造者又ハ販賣者ノ組織スル組合ニ對シ徵稅上
必要ナル設備ヲ爲シ又ハ徵收事務ノ補助ヲ爲スヘキコトヲ命スルコトヲ
得
前項ノ組合ニ對シテハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ取扱ヒタル織物中消費
稅ヲ賦課シタル織物ノ價額ノ千分ノ一以內ノ金額ヲ交付スルコトヲ得
附則
本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前ヨリ「メリヤス」又ハ「フエルト」ヲ製造シ本法施行後引續キ之ヲ
製造セムトスル者ハ本法施行ノ日ヨリ一月內ニ其ノ旨政府ニ申告スヘシ
第十九石油消費稅法廢止法律案(政府提出)第一讀會
石油消費稅法廢止法律案
石油消費稅法ハ之ヲ廢止ス
附則
本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前外國ニ輸出スル目的ヲ以テ消費稅ヲ納付セスシテ製造場ヨリ引
取リ消費稅ヲ納付シテ外國ニ輸出シ又ハ消費稅ノ徵收ヲ猶豫シタル石油
ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
第二十一戰時利得稅法案(政府提出)第一讀會
戰時利得稅法案
戰時利得稅法
第一條帝國內本法施行地ニ住所又ハ一年以上居所ヲ有スル者ハ本法ニ依
リ戰時利得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第二條前條ニ該當セサル者本法施行地ニ資產又ハ營業ヲ有スルトキハ其
ノ利得ニ付テノミ戰時利得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第三條戰時利得稅ハ左記各號ノ利得ニ付之ヲ賦課ス
一所得稅法ニ依リ所得稅ヲ課スヘキ法人ノ利得
二所得稅法ニ依リ所得稅ヲ課スヘキ第三種ノ所得中俸給、給料、手當、歲
費、年金、恩給、退隱料ヲ除キタル個人ノ利得
三船舶又ハ鑛業若ハ砂鑛業ニ關スル權利若ハ設備ノ賣却ニ因ル個人ノ
利得
前項第三號ノ船舶ニハ製造中ノ船舶ヲ含ム
第四條戰時利得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賊課ス
一法人ノ利得利得金額百分ノ二十
二個人ノ利得利得金額百分ノ十五
第五條法人ノ戰時事業年度所得金額カ平時事業年度ノ平均所得金額ヲ超
過スル場合ニ於テ其ノ超過額中平時事業年度ノ平均所得金額ノ百分ノ二
十ヲ超過スル金額ヲ以テ法人ノ利得金額トス
前項利得金額計算ノ場合ニ於テ左記各號ニ該當スルモノアルトキハ各其
ノ定ムル所ニ依リ平時事業年度ノ平均所得金額ヲ計算ス
一何レノ平時事業年度ニ於テモ所得金額ナキトキ又ハ平時事業年度ノ
平均所得金額カ平時事業年度ノ平均資本金額ニ對シ年額百分ノ十未
滿ナルトキハ平時事業年度ノ平均資本金額ニ對スル年額百分ノ十ノ
割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ平時事業年度ノ平均所得金額トス
二大正三年八月一日以後第一次ノ事業年度終了シタル法人ニ付テハ戰
時事業年度ノ資本金額ニ對シ年額百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル
金額ヲ平時事業年度ノ平均所得金額トス
三戰時事業年度ノ資本金額カ平時事業年度ノ平均資本金額ニ對シ增減
アル場合ニ於テハ平時事業年度ノ平均資本金額ニ對スル平均所得金
額ノ割合ヲ以テ戰時事業年度ノ資本金額ニ付算出シタル金額ヲ平時
事業年度ノ平均所得金額トス此ノ場合ニ於テ第一號ノ規定ノ適用ニ
付テハ戰時事業年度ノ資本金額ヲ以テ平時事業年度ノ平均資本金額
ト看做ス
四平時事業年度ト戰時事業年度ト期間ニ相違アルトキハ戰時事業年度
ノ月數ニ應シ月割ヲ以テ平時事業年度ノ所得金額ヲ計算ス
資本金額ノ算定方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條個人ノ所得金額カ大正一一年以前二年ノ平均所得金額ヲ超過スル場
合ニ於テ其ノ超過額中大正二年以前二年ノ平均所得金額ノ百分ノ二十ヲ
超過スル金額ヲ以テ第三條第一項第二號ノ利得金額トス但シ所得金額中
相續財產ヨリ生スル所得アル場合ニ於テハ之ニ對スル大正二年以前二年
中ノ被相續人ノ所得金額ヲ相續人ノ所得金額ト看做シ平均所得金額ヲ計
算ス
前項利得金額計算ノ場合ニ於テ大正二年以前二年中所得稅法第四條ノ三
第三號ノ所得アルトキハ之ヲ除算シ大正七年以後其ノ年分所得中所得稅
法第四條ノ三第三號ノ所得アルトキハ其ノ所得金額ニ付命令ノ定ムル所
ニ依リ算定シタル金額ヲ前項ノ平均所得金額ニ加算ス
第一項ノ場合ニ於テ大正二年以前二年ノ平均所得金額千圓未滿ナルトキ
又ハ其ノ平均所得金額ナキトキハ所得金額ノ半額ヲ以テ利得金額トス
所得金額三千圓未滿ナルトキハ戰時利得稅ヲ課セス
第七條船舶又ハ鑛業若ハ砂鑛業ニ關スル權利若ハ設備ノ賣却金額ヨリ命
令ノ定ムル所ニ依リ算定シタル價額ヲ控除シタル金額ヲ以テ第三條第一
項第三號ノ利得金額トス但シ其ノ利得金額カ第三條第一項第二號ノ利得
ニ屬スルモノナルトキ又ハ利得金額三千圓未滿ナルトキハ此ノ限ニ在ラ
ス
前項ノ利得金額ハ前年中ノ總額ニ依ル
第八條所得稅法其ノ他ノ法令ニ依リ所得稅ヲ免除セラレタル所得ニ付テ
ハ戰時利得稅ヲ課セス公共團體又ハ慈善其ノ他ノ公益事業ニ對シ爲シタ
ル贈與ノ價額ハ利得金額ヨリ之ヲ控除ス
第九條第三條第一項第三號ノ利得ニ付納稅義務アル者又ハ第六條第一項
但書ニ該當スル所得ヲ有スル者ハ每年四月中ニ其ノ利得又ハ所得ノ種類
及金額ヲ政府ニ申告スヘシ
納稅義務者前條第二項ノ贈與ヲ爲シタルトキハ每年四月中ニ其ノ金額ヲ
政府ニ申告スヘシ
第十條法人ノ利得金額ハ政府之ヲ調査決定シ個人ノ利得金額ハ所得稅法
第十一條ノ所得調査委員會ノ調査ニ依リ政府之ヲ決定ス
第十一條利得金額ノ決定ニ對シ審査ノ請求アリタルトキハ所得稅法第三
十七條ノ所得審査委員會ノ決議ニ依リ政府之ヲ決定ス
第十二條利得金額ヲ隱蔽シテ連稅シタル者ハ其ノ通稅金高三倍ノ罰金又
ハ科料ニ處ス但シ自首スル者ハ其ノ稅金ヲ追徵シ其ノ罪ヲ問ハス
第十三條利得ノ調査又ハ審査ニ干與スル者其ノ調査又ハ審査ニ關スル事
項ヲ他ニ漏洩シタルトキハ三十圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ規定ニ依リ處罰セラレタル者ハ其ノ職ヲ失フモノトス
第十四條本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書第三十九條第
二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條
ノ例ヲ用井ス
第十五條所得稅法第九條第二項、第十條、第二十九條乃至第三十一條、第
三十四條乃至第三十六條、第三十七條第四項第五項、第三十八條乃至第四
十一條、第四十二條第一項第三項及第四十三條ノ一乃至第四十五條ノ規
定ハ戰時利得稅ニ關シ之ヲ準用ス
第十六條本法ニ於テ所得金額ト稱スルハ所得稅法ニ依リ政府ノ決定シタ
ル所得金額ヲ謂フ本法ニ於テ平時事業年度ト稱スルハ大正三年七月三十
一日以前二年內ニ終了シタル各事業年度ヲ謂ヒ戰時事業年度ト稱スルハ
大正七年一月一日以後ニ於テ終了スル各事業年度ヲ謂フ
附則
本法ハ法人ニ付テハ大正七年一月一日ヲ含ム事業年度分ヨリ、個人ニ付テ
ハ大正七年分ヨリ之ヲ適用ス
本法ハ法人ニ付テハ講和條約調印ノ日ノ屬スル年ノ末日ヲ含ム事業年度分
限リ、個人ニ付テハ其ノ年分限リ之ヲ廢止ス
沖繩縣ニ於ケル法人ノ平時事業年度ノ所得金額及個人ノ大正二年以前二年
ノ所得金額ハ當時ノ所得稅法ニ依リ算出シタル金額トス
本法ハ小笠原島及伊豆七島ニ之ヲ施行セス
第二十三郵便法中改正法律案(政府提出)第一讀會
郵便法中改正法律案
郵便法中左ノ通改正ス
第十八條中「金三錢」ヲ「金四錢」、「金一錢五厘」ヲ「金二錢」ニ改ム
附則
本法ハ大正七年四月一日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=4
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005・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=5
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006・大岡育造
○議長(大岡育造君) 勝田大藏大臣
〔國務大臣勝田主計君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=6
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007・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 唯今議題トナッテ居リマスル所ノ增收ニ關係致シマスル
法案ノ大體ノ趣旨ハ、旣ニ私ヨリ一昨日皆樣ニ申上ゲテ置キマシタ次第デ御坐イマス
ル、詳細ナル說明ハ何レ委員會等ニ於テ致シタイト思ヒマス、ドウカ御審議ノ上、御協
贊ヲ與ヘラレムコトヲ偏ニ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=7
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008・大岡育造
○議長(大岡育造君) 高木益太郎君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=8
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009・高木益太郎
○高木益太郞君 簡單デアリマスカラ、自席デ御許シヲ願ヒタウゴザイマス-政府ニ
御尋致シタイノハ、第一ハ近世財政學者ノ議論ノ傾向ハ、出來得ルダケ租稅ノ種類ヲ
少クシテ、サウシテ人民ノ所得、若クハ純益ニ向ッテ集中スル、斯ウ云フ主義ニ承ッテ居
ル、成ルベク稅ノ科目ヲ少クスルト云フ學說ヲ唱ヘル人ガ多イノミナラズ、實際先進國ニ
於テハ、著々之ヲ實行シテ居ル、現ニ我國ニ於テモ、政治家中ノ最モ尊敬スバキ西園
寺侯爵ハ、稅ハ所得稅ノ一ニ纏メタイ、斯ウ云フコトヲ屢〓仰セニナッテ居リマス、如何
ニモ吾〓後進ノ者ハ、此方針ニ向ッテ進ムノガ適當デアルト信ズル、現ニ佛蘭西ノ如キハ、
戰爭中デ其東北ノ部分ハ、獨逸ニ侵略セラレテ居ルニモ拘ラズ、尙ホ營業稅ヲ廢シ、倉
庫稅ヲ廢シ地租ヲ廢シ、一千九百十六年カラ、之ヲ所得稅ニ纏メルト云フヤウナ方
針ヲ實行シテ居ル、果シテ然ラバ、我國ノ如キハ戰爭ノ關係ハ非常ニ距離ガアッテ、此
間緩急ノ差ハ、非常ニ存スル次第デアリマスカラ、我國ハ未ダ此點ニ付テ綽々タル餘地
ガアル、例ヘバ從前ノ稅法ヲ厲行シタナラバ十分財源ガアル尙ホ吾〓ノ調査スル所ニ
依ルト、官有財產ヲ整理シタダケデモ、今囘陸軍海軍ノ充實ト云フコトハ、其大部分ハ出
來ルトノ考デアル、然ルニ、今回提案セラレタ所ヲ見ルト「フエルト」「メリヤス」、〓凉飮料
水、飴ト云フヤウナ、老人デアルトカ、婦人デアルトカ、子供デアルトカ云フヤウナモノニ、
關係ノ深イ寔ニ些ニタタルモノニ向ッテ、而モ其金額ヲ見ルト、所得稅ナラ一人ノ富豪ニ
對シテ課シテモソレダケノ稅ガ取レルモノデアルノニ、寔ニ微々タル財源ヲ造ル爲メニ、斯ノ
如キ社會ノ一番弱イ者ノ階級、子供トカ、老人トカ、婦人トカ云フヤウナ階級ニ向ッテ
關係深キ徵稅ヲセラルヽト云フコトハ、如何ナル次第デアルカ、世界ノ方針ハ稅ノ種類
ヲ少クスルト云フ方針ニ向ッテ居ルノニ、反對ニ斯ウ云フ細カイ稅ヲ拵ヘテ、其微稅ノ手
續ハ煩瑣デアリ、是ガ爲メニ往々人權問題ガ起ル虞ガアル次第デアリマスカラ、吾〓ハ床
次君ノ御說ニ對シテ大藏大臣ガ、尙ホ妥協ノ餘地アルガ如キ御答辯ガアッタ次第デアル
カラ、外ノ方ヘ持ッテ行ッテ適當ナル財源ヲ求メテ、斯ノ如キ微々タル稅ハ課セヌコトニ御
奮發ヲ願フコトガ、出來ルカ出來ヌカト云フコトガ、第一ノ質問デアル第二ノ質問ハ
今囘戰時利得稅ヲ御提案ニナリマシタガ、吾ミノ解スル所ニ依ルト、戰時利得稅ト云
フモノハ所謂成金稅デアル、戰爭ノ爲メニ偶然ノ利益ヲ得タルモノニ向ッテ課スべく
モノデアル、一般ノ個人ニ向ッテ課スト云フコトハ甚ダ酷ナリト考ヘテ居ル所ガ今度
ノ稅ノ收入ヲ見ルト、大正七年ニ於テ千六百万圓內外、大正八年ハ三千万圓內
外ノ收入ヲ得ルガ爲メニ、御提案ニナッタト云フコトデアリマスガ、是ハ個人ニ對シテ
課セヌデモ、此第三條ノ第三ニアリマス「船舶又ハ鑛業若クハ砂鑛業ニ關スル權利
若ハ設備ノ賣却ニ因ル個人ノ利得」此外戰爭ニ直接影響ノアル商賣、或ハ染料、
或ハ紡績、或ハ綿絲、或ハ鋼鐵、或ハ石炭、其他軍需品ニ關係ノアル商賣ダケヲ先ヅ
ザット調査致シマシテモ、確ニ政府ノ要求スル金額ヨリ-以上ノ增收ガ出來ル計算ヲ
持ッテ居ル少クトモ紡績業ダケデモ昨年度ノ收益ヲ計算シテ見ルト紡績一ツノ商賣
テ、本年政府ガ要求スル千六百万圓位ノ課稅ハ出來ルノデアルサウスレバ何モ戰爭ノ
爲メニ偶然ノ利益ヲ得タル者、所謂成金稅ノ本質ヲ超越シテ、一般ノ個人ニ向ツテ課
稅スルト云フコトハ是ハモウ少シ切迫シタ場合ノ、第二第三ノ財源トシテ留保スベキモ
ノデアラウト思フ、況ヤ先頃ノ所得稅査定ノ結果ヲ見ルト大正六年ノ第三種個人所
得稅ノ査定ノ結果ハ、三千五百四十五万七百六十七圓ニナッテ居ル其前年度ノ第
三種ノ所得稅ハ二千三百九十四万圓、僅カ一箇年ノ間ニ俄ニ飛ンデ、千二百万圓カ
ラ第三種ノ所得稅ダケデモ餘計課稅セラレテ居ル、隨分是ハ堪ヘラレヌ話デアル、中ニハ
恨ヲ呑ンデ之ニ服從シテ居ル者ガアリ、又ハ行政訴訟ヲ起スト云フコトモ、甚ダ不面
目デアルカラ忍ンデ居ル者ガ隨分アルノデアリマス、此個人ノ所得稅ヲ斯ノ如ク徵收
セラルヽノハ、堪ッタモノデハナイ最早下級ノ當該官吏ハ、此上長官カラ如何ナル命
令ガアッテモ、其命令ヲ奉ズルコトハ出來ナイ、實際納稅者ノ狀態ヲ見テ、此上ニ徵
稅スルコトハ出來ナイト云ッテ居ル、如何ニモサウデアラウト考ヘル、甚ダシキニ至ッテ
ハ、所得稅ノ上ニ於テ、或ル場所ノ如キハ、二十割ノ增稅ヲサレ、或ル場所ノ如キハ
十三割ノ增稅ヲサレテ居ル、一箇年ニ二十割ノ增稅十三割ノ增稅ヲ、稅率ハ同ジ事
デ稅務官吏ノ査定如何ニ依ッテ斯樣ニ課セラルヽト云フコトハ如何ニモ迷惑ナ事
ト思ヒマス、ソレヘ持ッテ行ッテ今度ハ戰爭ニ關係アル商賣ノモノナラ特別デアルガ、
此案ヲ見ルト、山林ノ所有者、農業家ニモ課稅スルト云フノハ、何ノ關係ガアリマス
カ、一般ノ所得稅ト云フモノガ既ニアルノデ、戰爭ノ爲メニ偶然ノ利得ヲシナイ者ニマ
デ戰時利得稅ヲ課スルノハドウモ甚ダ氣ノ毒ニ感ズルノデアリマス、政府ハ斯ウ廣クナサラ
ヌデ、營業稅法ノ如ク、列舉主義ヲ採ッテ何〓〓〓ノ職業ニ對シ、戰爭ノ爲メニ偶然
ノ利益ヲ得タモノハ是ダケノ稅ヲ課スト云フコトデ、政府ノ得ントスル財源ハ確ニアルト信
ズルノデアリマスガ、此點ニ於ケル所ノ大藏大臣ノ明細ナル御答辯ヲ仰ギタイト思ヒマス、
第三ニ御尋シテ置キタイ事ハ、所得稅ニ付テ、個人所得ト、法人所得トノ差ガ餘リヒ
ドイノデアリマス、聰明ナル所ノ大藏大臣ハ夙ニ御承知ノ如ク、每日ノ新聞ニ誰々ノ富
豪ガ、個人ノ所得デハ餘リ稅率ガ重イカラ會社組織ニ變ヘテ、サウシテ脫稅スル爲メニ
自分ノ家ノ組織ヲ變ヘルト云フコトガ、每日記載サレテ居ル、大藏省ハ何ト御覽ニナッテ
居ルカ、租稅ハ公平均衡ヲ取ラナケレバナラヌコトハ無論デアルノニ、或富豪ダケハ脫
稅ヲシテ、自分ノ所ノ番頭ヤ手代ヲ社員ニシ、或ハ親族ヲ社員ニ加ヘテ、サウシテ脫稅
ヲシテ居ル個人ナラバ八万圓位納メタモノガ、會社組織ニスレバ二万圓位テ濟ム、斯
ウ云フヤウナコトガアッタ日ニハ、稅法ノ惡イ爲メニ眞面目ニ稅ヲ納メテ居ル者ガ馬鹿
ヲ見テ、詐欺スルモノハ却テ利益ヲ得ル、實ニ立憲政體ノ上ニアルベカラザル惡法デアル
然ルニ大藏大臣ノ提案ヲ見ルト現ニ行ハレテ居ル此弊害ニ就テ、何等指ヲ染メテ居ラ
ヌ、甚ダ感服シ兼ネルノデアリマスガ、之ニ對シテハ弊害ノ事實ヲ御認メニナッテ居ラレル
ノデアルカ、若シ御認メニナッタナラバ、ドウ云フ工合ニシテ直サウト云フノデアルカ、最早
所得稅法ノ會社負擔率ノ規定ヲシテカラ、殆ド二十年ニ及ンデ居ル、此ノ二十年間ノ
實驗ニ於テ、既ニ民間ノ者ニ於テハ定論ガアル又所謂社員二十一人以上タルト否ト
ニ依ッテ區別ヲ立テル規定ノ如キモ苟モ常識ガアル者ハ其法ノ不當ナルコトヲ知ッテ
居ル、今日ノ時代ニ於テ少シク生活ノ大キイ人ハ、自分ノ一家內ダケデ以テ、二十一人
位ノ株主ヲ拵ヘルコトハ何デモナイソレヲ拵ヘレバ非常ニ輕イ負擔ヲスルソレヲ拵ヘナ
ケレバ重イ負擔ヲスル、斯ル不當ノ事ハ許スベキ事デハナイ、、幸ニ此處ニ所得稅法ノ改正案
ガ出タ以上ハヽ斯ノ如キ不當ナ點ニ對シテハ、之ヲ直スコトガ當然ナル事柄ト思フノデア
リマスガ、或ハ會社ノ方ハ脫稅ガ少ナイ、個人ノ方ハ脫稅ガ多イト云フヤウナ愚論ヲ言
フ者ガ有ルヤウデアリマスケレドモ、是ハモウ官僚風ノ形式論デ、二三十年前ハ免モ角
モ今日ノ會社ノ脫稅ノ多イコトハ個人ト違ハナイ、「バランス」サヘ合セレバ稅務官吏ハ
ソレヲ通過スル個人デアレバドウカト云フト假令損ヲシテモソレヲ發表スルノガ苦シ
イカラシテ、痩我慢ヲシテ納稅ヲシテ居ル、或ハ稅務官吏ノ苛歛誅求ニ依シテ、止ムヲ得
ズ其認定額ノ納稅ヲシテ居ル狀態デアル、故ニ個人ト會社トニ依ッテ、區別ガアルト云
フコトハ過去ノ空論デアリマス、然ラバ此點ニ對シテ、大藏大臣ハ如何ナル御考ヲ御持
チニナッテ居ルカ之ラ伺ッテ置キタイ、尙ホ伺シテ置キタイノハ少額所得者ニ對スル免稅點
デアリマス、今日米價ノ騰貴、其他一般物價ノ騰貴ハ、眞ニ吾ミハ深ク考ヘナケレバナラ
ヌ次第デアル、隨ッテ此少額所得者ニ對スル免稅點ヲドノ位ニスルカ、之ニ對シテ矢張
舊式ノ論デ、何百圓以下ト云フ案ガ出テ居リマスガ、等シク何百圓以下ト云フ者ノ中
ニモ獨身ノ者モアレバ或ハ妻帶者モアル或ハ澤山ノ子供ヲ持ッテ居ル者ガアル吾〓
屢"豫算委員會ニ於テ述ベタルガ如ク我民族發展ノ基礎ハ何テアルカト云フニ、人口
ノ增殖デアル大和民族發展ノ基礎ハ人口ノ增殖デアル故ニ總テノ政策モ亦此方面
ニ向ハナケレバナラヌ、然ラバ此稅ノ上ニ於テモ少額所得者ニシテ、所謂貧乏人ノ子澤
山ト云フ者ニ對シテハ、相當ナル寛典ヲ與ヘナケレバ、政策ガ一貫シナイト云フコトヲ屢〓
豫算委員會ニ於テ述べテ居ル、然ルニ此度政府ノ提案ニ依ルト、五人ノ子供ガアッテ
モ六人子供ガアッテモ顧ミナイ、唯ダ金高ガ極メテ、其家庭ノ狀況如何ト一云フコトハ
考ヘナイ、子供ノ數ハ戶籍サヘ見レバ屆出ナキ私生兒ノ外直グ明白デアル、又我帝國
トシテハ、祖先崇拜ハ國家ノ善美ナル習慣トシテ居ル卽チ特ニ尊屬親ヲ尊ブ習慣ガア
ル、此忠孝ノ思想ハ建國ノ基礎デアル、此點カラ言ヘバ兩親ノアル者ニ向ッテハ、相當ナ
免稅ヲシテ然ルベキデアル、然ルニ此點ニ於テハ今度ノ案ニ考慮ガナイ、是等ニ就テ大藏
大臣ハ唯ダ金ノ點デ以テ極メテ、如何ナル頰累ガアルモノデアルカ否ヤト云フコトヲ、見ナ
イデヤルト云フコトハドウカ、歐羅巴ニ於テハ既ニ之ヲヤッテ居ルデハナイカ、然ルニ我國ハ
之ヲ顧ミヌト云フコトハ何故デアルカ、是ガ大藏大臣ニ向ッテ御尋ヲスル所ノ要點デアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=9
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010・大岡育造
○議長(大岡育造君) 勝田大藏大臣
〔國務大臣勝田主計君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=10
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011・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 唯今高木君ノ御質問ノ第一ノ點ハ、課稅ノ餘リ煩雜
ニ亙ルト云フコトハ宣シクナイデハナイカ、例ヘバ外國ノ例ヲ見テモ或ルモノニ集中ヲシ
テ之ニ課稅スルト云フコトヲスル、然ルニ各種ノ色ミナモノニ課稅スルト云フヤウナ、第
方法ガ惡イデハナイカト云フコトデアリマス、是ハ議論ト致シマシテハ、御尤ナ御議論デアラ
ウト思フノデアリマス、外國ノ例ニ見マシテモ、例ヘバ英吉利ノ如キハ高木君ノ仰シヤル
ヤウナ方法ヲ採ッテ居ル、所ガ又一面佛蘭西ノ如キハ稍〓此稅制ガ頰瑣ニ亙ッテ居ル
ト云フコトデアリマス、我國ノ如キハ若シ理想トシテ言ヒマスルナラバ、左樣ナ事ガ出來レ
バサウ致シタイノデアリマスルガ、兔ニ角申ス迄モナク、我國ノ發展ハ最近ニ於キマシテ發
展ヲ來シマシタ譯デアリマシテ、從ッテ之ニ要スル所ノ歲入ト云フモノハ、各種ノ方面ニ於
テ之ヲ求メナケレバナラヌト云フヤウナ事實ニナッテ居ルノデ、ソレガ爲メニ今日ノ如クニ、
各種ノ稅目ヲ列ベテ之ヲ徵稅スルト云フヤウナ歷史的ニ來テ居ルノデアリマス、然ラバ何
カ此處ニ特別ノモノヲ設ケテ、特ニ之ニ重課シテ、他ノモノヲ廢メテ仕舞ウト云フヤウナ
モノガアルカト云フト、中〓今日ハマダ〓〓サウハ參リマセヌノデ、是ハ理想トシテ大ニ〓
究スベキ一ツノ問題デアリマスルガ、我國現下ノ財政經濟ノ狀態ニ於テ直チニ高木君
ノ仰シヤルヤウナ方法ヲ採用スルコトハ出來ヌグラウト思フノデアリマス、次ニ官有財產ノ
整理ノコトナドモ、其一ツノ方法トシテ高木君ガ御述ニナリマシタガ、是ハ御承知ノ通リ
ニ政府ニ於テモ考慮致シテ居リマスルノデ、乃チ今囘ノ豫算ニ於キマシテ、官有財產
ノ調査費ヲ若干要求致シテ居リマス、此調査費ヲ要求致シマシタ所以ハ官有財產ニ
付テ如何ナルモノガアルカト云フコトヲ能ク調査シ、竝ニ之ガ利用管理ノ方法ト云フモノ
ヲ定メタイト云フコトデ、之ヲ要求致シテ居ルノデアリマスルカラシテ、此點ニ就キマシテ
ハ、或ハ高木君ノ御希望ヲ充タスヤウナコトガ將來生ズルデアラウカトモ思ハレルノデアリ
マス尙ホ本項ニ關シマシテ、高木君ハ飴ノ稅デアルトカ、或ハ〓涼飲料稅デアルトカ、
「メリヤス」「フエルトン」稅デアルトカ云フヤウナモノヽ極メテ微細ナル、而モ此等ハ下層
社會ニ影響ヲ及ボスベキ所ノモノヲ玆ニ新ニ取ルト云フヤウナコトハ、面白クナイデハナイ
カト云フヤウナ御尋モアッタヤウニ思ヒマスルガ、此事ニ關シマシテハ旣ニ一昨日來私ガ屢<
他ノ諸君方ノ御尋ニ對シテ申上ゲテ居リマスル如クニ、決シテ斯樣ナル百万圓內外ノ
小稅ヲ、獨立シタル稅トシテカラニ、之ヲ漁ッテ步クト云フ所以デハナイノデアリマシテ、稅
ノ均衡ヲ保ツ爲メニ、稅ノ整理ヲスル必要ノ爲メニ、斯樣ナ、ルモノニ課稅スルト云フ結
果ニナッタノデアリマス、ソレデアリマスカラシテ、此點ハ高木君ニ於テモ特ニ御諒承ヲ願ッテ
置キタイノデアリマス、又或ハ飴ノ稅、或ハ〓凉飮料ト云フヤウナモノガ、下層社會ヲ寧
ロ苦メルモノデナイカト云フ御話モアリマスルガ、今日需要ノ大勢カラ申シマスルト、或ハ
〓凉飮料ニ致シマシテモ、或ハ飴ニ致シマシテモ寧ロ中流以上ニ於テ之ヲ用井ラルヽヤ
ウナ狀況ニナッテ居ルト、私共ハ認メテ居ルノデアリマス、ソレデ然ラバ下層社會ニ何等
ノ影響ガナイカト云フト、サウハ行キマセヌ、サウ潔癖ニ行キマセヌガ、凡ソ制度ヲ定メ物
ヲ按ズルニ當リマシテハ、大體達觀シテヤルヨリ仕方ガナイ、ソレ故ニ詰リ左樣ナル稅ヲ
起シタト云フコトデアリマスカラ、其點ハ左樣御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ第二
ノ御尋が戰時利得稅ノ事デアリマスガ、戰時利得稅ヲ一般ノ所得ヲ標準トシテ、法人
ナリ、個人ナリ、苟モ戰時利得アルモノハ總テ稅ヲ課スル、斯樣ナ遣方ニシタノハイカヌ
デナイカ、何々ノ業體ニ於テ特ニ戰時利得ガアッタモノニ限ッテ課スル、斯樣ナ組織ニシナ
ケレバ、イカヌデナイカト云フ御尋デアリマス、是ハ一應御尤ノ御尋デアリマシテ、外國ノ法
令ニ見マシテモ色〓アリマスガ、例示シテアルモノモアリマス、又一般的ニ規定シテアルモ
ノモアルノデアリマス、併ナガラ私共ノ考ヘマシタ事柄ハ、之ヲ例示スルコトニナリマスト、日
本ノ如キ法制國ニ於テハ餘程六ヶ敷イ、何ガ戰時ノ利得デアルカト云フ事柄ヲ、一々事
體ニ別ッテ詮議スルコトハ甚ダ困難デアリマス、ソレ故ニ此所得ニ於テ戰時ノ影響ヲ受ケ
テ、或ル程度以上增シテ居ルモノハ、是ハ戰時利得トシテ課稅スル方ガ、寧ロ徵稅上
其他ニ付キマシテ、、紛雜ヲ避ケテ簡單デナイカ、獨逸邊リモ矢張此方法ヲ採ッテ居ルヤウデ
アリマス、ソレ故ニ詰リ是モ達觀的ノ提案ノ如ク致シマシタ次第デ御坐イマス、尙又外國ノ例
其他ノ關係ニ付テノ詳細ナル事ハ、是ハ委員會ニ於テノ問答ノ時ニ讓リタイト思ヒマス、尙此
戰時利得稅ノ事ニ付テ、高木君ノ仰シヤイマシタ事ノ中ニ、徵稅ノ方法ノ事ニ付テ仰
セラレマシタ、我國ノ國稅ノ徵收、殊ニ此所得稅等徵收ノ方法ニ付キマシテハ、今日
實ハ二樣ノ說ガアルノデアリマス高木君ノ仰セラルヽ如クニ、如何ニモ政府ガ是等ノ稅
ニ付テ、苛歛誅求ヲシテ居ルガ如クニ言フ人ガアリマス、又或一面ニ於キマシテハ政府
ノ一體所得稅營業稅ノ取リ方ハ頗ル緩漫デアッテ、脫稅ヲスル者ガ幾ラモアルノデアルカ
ラモウ少シウント力ヲ入レテヤレバ、增稅等ヲヤラナクテモ、二千万圓ャ三千万圓ノ金
ガ出ルデナイカト、私共ニ來テ仰セラルヽ方ガアリマス、確ニ左樣ニ兩極端ナ潮流ガアル
ト思ヒマス、ソレデ政府ガ今日ヤッテ居リマス事ハ、卽チ是等ノ中間ヲ採ッテ、餘リ苛酷ニ流
レズ、又緩漫ニ失セズ、其程度宜シキヲ得テ居ルト私ハ思ウテ居ルノデアリマス第三ニ
所得稅ノ事ニ付キマシテ、法人ノ所得ニ對スル課稅ト、個人ノ所得ニ對スル課稅トガ、
權衡ガ取レナイ、ソレ故ニ個人ハ便宜ナル場合ニハ或ハ株式會社等ノ組織ニ變ヘテ、
脫稅ヲスルト云フ傾キガアルト云フヤウナ御話デアリマシタ、此事ニ付キマシテハ議論ト
致シマシテハ、程度論ト致シマシテハ、高木君ノ御議論ト云フモノハ一〓ニ排斥ガ出來
ナイト私ハ思フノデアリマス、卽チ個人ニ對スル所ノ稅率ト、法人ニ對スル所ノ稅率ト、
多少相近ツカサセルト云フヤウナ事柄ニ付テハ〓究ノ餘地ハ有ルダラウト思フノデア
リマス、併ナガラ之ヲ今日特ニ此增稅ヲ致スト云フヤウナ場合ニ於キマシテ、考ヘルダケノ
ソレダケ其必要ナル迫ッタ事柄デアルカト云フトサウデモ私ハナイヤウニ思フノデアリマス
ノデ、此事ハ尙ホ高木君ノ御意思ハ排斥ヲセズシテ、十分ニ政府モ考究致シテ居ルノデ
アリマスカラシテ、詳細ナル事柄ハ矢張委員會等ニ於テ、如何ナル理由デアル如何ナ
ル方法ヲ執ッテ〓究シテ居ルト云フヤウナコトヲ、能ク申上ゲテ見タイト思フノデアリマス、
ソレカラ第四ニ少額所得者ノ免稅ノ點ト云フヤウナ六ケ敷イ辭デアリマシタガ、是ハ高木
君ノ仰セラルヽコトモ、强チ排斥ハ出來ナイノデアリマシテ、微細ニ涉レバ微細ニ涉ッテ、
色ミ遣方ガアルダラウト思ヒマス、併ナガラ是モ稅法ヲ立テル場合ニ於キマシテハ餘リ又
微細ニ渉レバ煩瑣ニ渉ルト云フコトガアリマスノデ今日所得稅法ニ於キマシテモ、單ニ何
百圓以下ヲ免稅スルト云フコトノミナラズ、千圓以下ノモノニ付テハ特別控除金ナルモ
ノヲ置キマシテ、特別ノ控除ヲシテ居ル遣方ヲ致シテ居リマス、ソレデ先ヅ今日ノ所ハ、政
府ハ是等ノ點ヲ以テ丁度好イ適度デナイカ、併シ是ガ社會ノ狀況ノ進ミ方、或ハ財政
上ノ必要、其他經濟上ノ要求等ニ依リマシテ、將來ニ於キマシテ、ドウ變ルカ分リマセ
ヌガ、今日ノ所デハ既定ノ法制ヲ以テ滿足シナケレバナラヌノデハナイカ、斯樣ニ考ヘテ
居リマス、併シ是等ノ事柄ハ要スルニ何レモ議論ヲ致セバ相當ニ議論ノアルコトデアリ
マシテ、是ハ委員會ニ於テ、尙ホ高木君ノ詳細ナル御意見モ承ッテ、相當ナ御答辯ヲ
致シタイト思ッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=11
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012・高木正年
○高木正年君 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=12
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013・大岡育造
○議長(大岡育造君) 高木正年君
〔高木正年君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=13
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014・高木正年
○高木正年君 私ノ質疑ハ極メテ簡單デアルノデアリマス(「ドウカサウ願ヒマス」ト呼フ
者アリ)質疑ノ理由ヲ明カニスル爲メニ、此壇ヲ汚シタノデアリマス、暫ク御〓聽ヲ願ヒマ
ス、一昨日ノ大藏大臣ノ辯明ニ依リマスルト、今囘ノ增稅案ハ單ニ國家ノ收入ヲ要求
スル許リデナク、稅法ノ整理ノ上ニ於テモ、考慮シテ居ルト云フコトヲ言ハレタノデアリマ
ス、私ハ此稅法案ノ總テニ渉ッテ、各稅法每ニ種々ナル疑問ヲ持ッテ居リマスケレドモ、
此際極メテ其要ヲ取ッテ、簡單ニ一ツ政府ノ趣旨ト、此稅法案ニ提出セラレタ理由、
內容ト違ッテ居ル點ヲ質シテ見タイト思フノデアリマス、政府ハ一面ニハ增稅ヲスルガ、他
面ニハ整理ヲスル、ソレガ故ニ廢稅モ爲セバ減稅モ爲スノデアルト、私共ノ最モ耳ニ新シク
是ハ聽イタノデアリマス、所ガ此稅法ノ各法文ヲ諸君ハ御讀ミニナッテ御承知ニナツ
テ居リマセウケレドモ、若シ稅法ノ整理ヲ爲スト云フコトガ主眼デアルナラバ、何故新タニ
最モ厭フベキ煩瑣ナル手數ヲ要スル所ノ新稅ヲ起スト云フコトハ一體ドウ云フ譯デアリ
マスカ又稅法ノ整理ハ單ニ負擔ノ公平ヲ圖ルト云フ許リデナク、產業上ノ政策モ伴フ
テー稅制ガ產業ノ奬勳ヲシナイノハ極ッテ居ルケレドモ、產業ノ發逹ヲ阻害スル點ニ於
テ留意ヲシナケレバナラヌ筈デアリマス、又是ト同時ニ衞生上ノ問題モ伴ハネバナラヌノデア
リマス、今度ノ稅法ノ上ニ付テ、最モ不可解ト感ズル一ツ二ツヲ申シテ見マスルト、國家ノ
收入ヲ要求スル點ニ於テ「メリヤス」及「フェルト」ノ課稅ノ如キハ七年度ニ於テ僅ニ三
十万圓、平年ニ於テ增加シテ漸ク四十万圓、若シ之ヲ稅制整理ヲ爲スト云フ點カラ
申セバ斯カル物ハ却テ課稅シテアッテモ、此際廢稅ヲスルノガ宜シイノデアリマス、殊ニ其
內容ニ對シテハ如何デアリマス、輸出業ノ妨害ヲ爲ス點ニ於テハ金額ハ誠ニ少イガ、其
妨害スル點ニ於テハ、決シテ三十万四十万ノ增稅ト交換スベキ程ノ以上ノ損害ヲ
國家ニ與ヘルモノト言ハナケレパナラヌ、尤モ大藏大臣ハ下樣ノ事ニ御通ジニナッテ居ル
ト私モ懇意デアルカラ、有體ニ申セバ曾テ承知ヲ致シテ居ッタノデアリマス、然ルニ此稅
種ノ上デ見ルト、社會狀態ハ少シモ御承知ガナイ、「メリヤス」ノ中デ所謂家內工業ニ屬
スルモノガ、半數以上ハ彼ノ靴足袋ヲ編ミ手袋ヲ編ム者ハ皆是レ家內工業デニチ·
產額ハ僅カナ金額ニシカ上ッテ居ラナイガ、之ヲ敢テスルノハ何デアルカト云フト、年寄モ
子供モテス、其他ノ家族モ、時間ノ餘リ卽チ畫間會社ニ出デ夜内職ニスルト云フ最
モ時間ヲ有益ニ利用シ得ル點ニ於テハ、有益ノ事業ト言ッテモ宜シイノデアル、斯ル事業
細カキ事業ヲ爲ス家ニ就テ、從來ノ例ノ上ニ依ッテモ、稅務吏ガ押掛ケテ行ッテ一々帳
簿ヲ引繰返シテ、恰モ檢事ガ家宅搜索ヲスルヤウニセラレテハ斯ル良イ事業モ殆ド之
ヲ廢滅ニ歸セシムルモノト言ハナケレバナラヌ、是ハ稅法ト最モ忌ムベキ事柄デアルニモ拘
ラズ、殊ニ之ヲ選ンデ課稅ヲ爲スト云フ事柄ハ、如何ナル點ニ稅法ノ整理ナルモノガ存シ
テ居リマスカ、吾ミガ今度ノ稅法中不可解ト稱スル點ハ、卽チ此點デアリマス、多ク申上
ゲタイケレドモ力メテ省キマスガ、序ニ織物ノ上ニ付テ申シテ置キマス、今度ノ稅法ヲ讀
ンデ見マスト、絹綿交織ガ百分ノ五以上マデニ付テ絹綿交織トシ、從來通リ百分ノ十
ノ稅トスル、百分ノ五以內ノモノハ之ヲ純絹織物ト見做シテ絹織物ノ課稅ヲスル所
ガ此百分ノ五ト百分ノ一ハトノ區別ハドウシテ御調ベニナルカト云フコトヲ私ハ嘗テ聽
イテ見ルト、ソレハ化學試驗ヲシテ見マスト言ハレタ、成程化學試驗宜シイデアリマセウ、
近來此織物ノ發達ハ非常デアッテ、中ミ稅務吏ノ見ル位デハ此區別ハ付カヌノデアル、
或ハ綿ノ入ッテ居ルモノハ一寸分ラヌカモ知レナイ、併ナガラ慣レテ見レバ分ラナイトハ申
サヌケレドモ、百分ノ五ト六トノ間ニハ、必ズヤ稅務吏ト實業者トノ間ニ爭ノ起ルノハ當
然デアル、是ガ起ヲタ時ドウスルカト云フト化學試驗ヲスル、一寸二寸ノ端切レヲ以テ化
學試驗ヲスルナラバ、或ハ完全ニ行ヒ得ラルヽカ知レマセヌガ、所謂一反ヲ假リニ百目ト
シテ、一匁ニ付テ十分多イカ、五分多イカハ、一反ニ付テ所謂百目ノ上ニ起ッテ來ル數
量デアリマス、ケレドモ一反ノ中ノ三分ノ一位ヲ犧牲ニ供シテ化學試驗ヲシナケレバ、本當ニ
ハッキリ實ハ數量ガ出テ來ナイ綿ノ量ハ幾ラ、絹ノ量ハ幾ラ、斯樣ナ煩瑣ナ手數ヲ掛ケテ
絹織物ト絹綿交織物トノ區別ヲ付ケナケレバナラヌト云フコトハ果シテ稅法ノ上ニ吾〓
ガ善良ノ手段ナリト認メルコトハ出來ナイノデアリマス世間モ餘リ氣ガ著イテ居ラレヌ、
政府ハ尙更御氣ガ御著キニナラヌヤウデアリマスが、昨今日本ノ蠶絲業貿易ト云フ上ニ
於テ、絹絲ノ貿易ト云フ上ニ付テ、動モスレバ米國市場ニ於テ不安ヲ感ゼザル能ハザル
傾向ヲ折〓耳ニスルノデアリマス、此機會ニ於テ內地ニ於ケル所ノ絹織物ノ課稅ヲ增加
スルト云フコトハ確ニ內地使ヒノ絲ノ上ニ、價格ノ影響ヲシナイトハ是ハ言ハレヌノデア
リマス、外ニ於テ絹絲ノ貿易ニ不安ヲ感ズル時ニ於テ、國內ノ絹織物ニ課稅ヲシテ、內
地使ヒノ絹絲ノ價格ニ影響ヲサセルト云フコトハ、單ニ織物ノ問題デナイ、日本ノ蠶絲
業ノ上ニ付テ、最モ考慮スベキ問題ヲ惹起スモノナリト私ハ斷言セザルヲ得ヌノデアリマ
ス、又唯今高木益太郞君ハ所得稅ノ事ニ付テ云爲ナサッタ序ニ私モ申シテ此質問ハ
止メマス、所得稅ニ於テモ五百圓以下ヲ御削リニナッタノハ最モ宜シイ、善イ改正ト言ハ
レルカモ知レナイ去リナガラ今日物價騰貴ノ場合ニ於テ、所謂中以下ノ生活ニ屬スル
一箇月百圓位ノ俸給ヲ取ル人、所謂勤勞所得ノ部ニ於テ、千圓以下ニハ大分割安
デアルガ、千圓ヲ超ヘルト既ニ四十五ト云フ從來ノ二十五ニ對スル殆ド數割ノ是ハ增
加ニナッテ居ル左樣ナ事ハ今日ノ社會狀態ヲ考慮スル人ニ於テ是認シ得ラレザル事デ
アルガ、果シテ是ガ稅法ノ整理デアルカ、負擔ノ均衡ヲ求ムル一ツノ手段デアルカト云フ
コトモ亦疑ハザルヲ得ナイノデアリマス要スルニ私ノ質疑ハ、大藏大臣ノ所謂稅法ノ整
理ノ方針ニ付テ疑ヲ持ッテ居ル、何ウモ今度ノ改正增稅案ノ上ニ付テ斯樣ナ事ハ發見スル
コトハ出來ナイ、一方ニ五百万圓ニ垂ントスル所ノ廢稅ヲ爲スカト思フト一方ニハ新タ
ニ平均四十万ニ足ラザル課稅ヲ爲シテ、尙ホ之ヲ以テ稅法ノ整理ナリ、善良ナル方法ナ
リト仰セラルヽニ對シテハコ私共ガ政府ノ意ノ在ル所ヲ解スルニ苦シム、一昨日大藏大臣
ガ言ハレタコトハ、果シテ演說ノ體裁ニ言ハレタコトデ、今日稅法ニ現ハレタ所ニ、毫モ其
痕迹ナシト私ハ了解致シマスガ、果シテ左樣デアルカト云フコトヲ私ハ御尋致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=14
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015・大岡育造
○議長(大岡育造君) 勝田大藏大臣
〔國務大臣勝田主計君登壇〕··
〔拍手起ル〕···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=15
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016・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 唯今高木正年君ヨリ色〓精シキ御尋モアリマシタヤウデ
アリマスルガ、大體ハ既ニ申上ゲテ置キマシタ如キ意味ノ事ニ付テノ矢張御尋デ御坐リ
マシテ、卽チ一面ニ此增稅ヲ致スト云フヤウナ場合ニ稅ノ整理ヲスルト云フ事ハ穩當ナ
事デハナイヂヤナイカト云フヤウナ御話デアリマシタ、此事ニ付キマシテハ屢〓私ハ申シテ居
リマスカラ、此所ニ繰返シハ致シマセヌ、併ナガラ今囘ノ增稅ノ仕方ト申シマスモノハ、大
體ニ於キマシテハ彈力ノアリマスル所ノ所得稅ト酒ニ付テ其財源ヲ求メルト云フノガ、是
ガ大體デアリマスルノデ、其他ハ詰リ程度論ハ別デアリマス-程度論ハ別デアリマスガ、
免ニ角今日マデ色〓〓究サレタ所ノ、出來得ルダケノ整理ヲシタイト云フ意味ヲ以テ、
詰リ整理ノ意味ヲ加ヘテヤッタ事デアリマス此ノ如キ事柄ハ私共ノ考ト致シテハ茲
ニ增稅ヲスルト云フヤウナ事ガアレバ苟モ負擔ノ不均衡ト云フ事ガアレバ之ヲ矯正シ
テ掛ッテ行クト云フ事ガ、當リ前ノ筋途テアラウト云フ考デヤッテ居リマスノデ、此點ニ付
テ或ハ私共ト議論ガ違フカモ知レマセヌガ、ソコハ議論ノ相違ニナル譯デアリマス、ソレデ
高木君ハ特ニ此「メリヤス」「フェルト」或ハ織物稅等ニ付キマシテ色〓精シイ事ヲ御述ベ
ニナリマシタガ、大體ニ於キマシテ、此「メリヤス」「フェルト」ト云フヤウナ、戍程此ノ如キ
物ニ付キマシテ課稅ヲ致シテ見マシタ所ガ、極少額ナモノデアリマスガ、併シ織物稅ト云
フモノガ此ニ在ル以上ハ是等ニ付テ課稅スルト云フ事ハ矢張負擔ノ均衡ト云フ上カ
ラシテ、大體ニ於テ見ナケレバナラヌ事ヂヤナイカト思フノデアリマスサウシテ此稅ニ付テ
ノ最モ非難トシテ聞エルモノ卽チ當業者等ガ私共ノ處ヘ來テ申述ベマスル事ハ高木
君ノ仰セニナル所ノ色〓煩難ナル手續ガ之ニ加ハリハシナイカ、大體「メリヤス」ノ如キモノ
ハ輸出ガ八分、內地消費ハ二分デヱライ事ハナイノデアル併シ此手續ガ詰リ餘
計掛ルト云フコトニナルト非常ニ迷惑ヲスル者ガ起ル、是ガドウモ其當業者等ノ愬
フル所ノ本當ノ事ラシイノデアリマス、此點ニ付キマシテハ、十分手數ノ掛ラヌヤウニ、簡
略ニ致シテ行クト云フコトハ、是ハ又稅務當局トシテハ大ニ努メサセナケレバナラヌ事柄
デアルノデアリマシテ、其點ニ付テハ十分〓究ヲ致シテ居リマス次第デ御坐イマス、織物
稅其他ニ付キマシテモ色ミ御話ガアリマシタガ、何レモ是等ノ事ハ色ミ各論ニナッテ、細カ
イ事ニナッテ來マスカラ、ドウカ委員會モ追付ケ開カレル事デアリマセウカラ、其際ニ於テ
精シク應答シタ方ガ、此處デ簡單ナ事ヲ申上ゲテ引下ルト云フコトヨリハ、其方ガ私ハ
親切ナ遺方デアラウト思ヒマスカラ、サウ願ヒタウ御坐イマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=16
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017・高木正年
○高木正年君 答辯ハ要領ヲ得テ居リマスカラ、是デ質問ヲ止メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=17
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018・大岡育造
○議長(大岡育造君) 吉植庄一郞君
〔吉植庄一郞君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=18
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019・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 此場合ニ政府當局者ノ御意見ヲ伺ッテ見タイ事ガアリマス、政府ガ
今囘提出ニナリマシタ豫算竝ニ此增稅案、ソレニ總テ關聯致シマスカラ左樣御承知ヲ
願ヒマス、戰時ニ際シテ對應スル所ノ政府ノ政策ハ、豫算案竝ニ增稅案ニ於テ認メラレ
ルノデアリマスガ、此豫算ノ數字竝ニ增稅案ニ現ハレタルモノダケデアッテハ、窺フコトノ出
來ナイモノガ二三點アルノデアリマスゝ而シテ其事柄ハ極メテ國家ノ重要ナル問題デアリ
マス、社會ノ深キ處ニ根ヲ持ッテ居ル所ノ極メテ緊切ナル問題ガ殘ッテ居ルヤウニ考ヘマ
ス、第一ハ物價ノ問題デアリマス第二ハ勞働問題、此世界ノ大戰亂ノ影響ヲ受ケタル
日本ガ、非常ニ困ッテ居ル問題ハ物價ノ問題デアル同時ニ之ニ聯關シテ居ルノガ勞働
ノ問題デアルト思フ是ハ直チニ或ル形式ニ依ッテ要求サレテ出テ來ナイノデアリマスケレ
ドモ時々刻々ニ其根ヲ深メ、其禍ヲ大キク致シツヽアルノデアリマシテ、是ハ今日ニ於テ
政府當局トシテハ、之ニ對應スル所ノ根柢アル政策ノ樹立ガ無ケレバナラヌ筈デアルト
本員ハ信ズルノデアリマス既ニ政府ハ此物價ノ昂騰ノ影響ヲ受ケテ、社會政策ノ一
端トシテ一部ノ稅法ノ改廢ヲ企テラレタ事ト考ヘル又豫算ノ上ニ於テモ下級官吏ノ
生活ノ困難ヲ救ハンガ爲メニ、或ル程度ノ一種ノ增俸モ企テラレタト思フノデアル、是ハ
原因何デアルカ物價ノ騰貴ニ依テ生ジタル社會上ノ缺陷、不幸ト云フモノニ對シテ緩
和ノ政策ガ加味サレタモノニ相違ナイ、併ナガラ是等ノ僅カナ通行稅ノ改廢ニ依ッテ、一
部ノ負擔ヲ輕減スル、僅ニ石油ノ消費稅ヲ減ジテ、或ハ廢シテ其一部ノ負擔ヲ輕減スル
ト云フガ如キ、極メテ微溫的ナル方法、若クハ官吏ノ一部ノ增俸而カモ一時的デア
ル增俸ト言ハズシテ一種ノ戰時手當ト云フヤウナ名義ノ下ニ增俸ヲ企テル極メテ一
時的ノモノデアル、斯ノ如キ微溫的ナル一時的ナル方法ニ於テ救ハレルト政府ハ認メテ
居ルカ、此物價騰貴ノ趨勢ハ一時ニ生ジタル幻影デアルト御認メニナッテ居ルカ、極メテ
根柢アル物價騰貴ノ趨勢ト御認メニナッテ居ルノデアルカ、ドチラデアルカ、現ハレタモノカ
ラ見レバ。是ハ一時的ノ幻影假想ト御認メニナッテ居ルヤウニシカ吾ミニハ認メラレナイノ
デアル、現ニ如何デアリマスカ、總テノ物價ハ戰爭以來非常ナル增率ヲ以テ騰貴シリヽ
アルノデアリマス、成程船ニ對スル調節ノ方法、船價若クバ運賃ト云フモノニ對シテノ一
時的ノ暴騰ヲ防ギ止メルダケノコトハ、政府ハ致シタノデアルケレドモ、是ハ一部テアル、最
モ社會上ニ見遁スベカラザルモノハ〓料ノ騰貴デアリマス、國民ノ生活ノ必要品タル所ノ
總テノ衣〓ノ原料ノ騰貴デアリマス、之ニ對シテハ何等カ適當ナル方法ガ無ケレバナラヌ
筈デアルト思フノデアル、之ニ對シテ政府ハ過去ニ於テ如何ナル施設ヲナサレマシタカ、
又將來ニ於テ之ヲ如何ニセントセラルヽノデアルカ、米價ノ如キハ旣ニ二十四圓-一
石二十四圓ノ米價ハ普通ニ考ヘラレタ時代ノ米價ノ約一倍デアリマス、八割乃至十割
ノ騰貴デアル、此米價ノ騰貴ハ直チニ勞銀ノ騰貴ヲ來スノデアル、物價騰貴ノ最モ苦痛
ヲ與ヘル問題ハ是デアル之ニ對シテ何モ御說明モナケレバ、又法案ニ現ハレタモノモ見エ
ナイ、政府ハ之ヲ考慮スルニ足ラズト御認メニナッテ居ルノデアルカ、大ニ考慮シナケレバナ
ラヌト思ッテ居ルナラバ、之ヲ如何ニセントナサルノデアリマスカ、是ハ最モ民生ニ重大ナル
關係ヲ持ッタ問題デアリマス、内閣ノ此時局ノ變態トシテ生シタル物價ニ對スル政策、是
ハ決シテ輕々ニ付スベカラザル問題デアリマスカラ、之ニ對スル明白ナル御說明ヲ承リタイ
ト思フノデアリマス、尙此問題ニ附加ヘテ御尋ヲ致シテ置キタイコトハ、惟フニ政府モ物
價騰貴ハ當然デアル、米價ガ二十四圓シテ居ルノモ少シモ怪ムニ足ラヌ、是ハ慶ブベキ
コトデアッテ、決シテ憂フベキコトデナイト云フヤウナ、正シク御考ハ無カラウ、憂ハ矢張
吾〓ト同ジウセラレテ、斯ノ如キ底止スル所ナキ所ノ〓料其他生活ノ必要品ノ騰貴ト云
フコトハ、最モ憂フベキモノデアルト云フコトニ付テハ、必ズ見解ヲ同ジウセラルヽト思フ、
果シテ然ラバ-果シテ然ラバ此物價ノ而カモ生活品ノ騰貴ノ原因、複雜デ澤山ニナ
リマスケレドモ、直接ニ政府ノ力ヲ以テ、直チニ多少ノ緩和ヲ爲シ得ルノ方法ガアルノ
ニ之ヲ敢テ努メナイト云フ形迹ガアルナラバ政府ハ甚ダ緩怠ノ責ヲ免レヌト思フ、物
價調節ノ如キハ輕ミシク法律ヲ以テシ若シクハ人爲ヲ以テスルト云フコトハ、大ニ考慮
シナケレバナラヌケレドモ、政府ノ當然持ッテ居ル所ノ權能ニ依ッテ爲シ得ル方法ガアルノ
ニ、之ヲ緩慢ニ付シテ居ルト云フナラバ其緩怠ノ責任ハ問ハナケレバナラヌ、試ミニ鐵
道デアル、今日ノ米ノ騰貴、炭ノ騰貴、物資ノ騰貴ト云フモノニ、幾多ノ原因ハアリマ
スケレドモ、我鐵道ノ輸送力ガ不十分デアル一方ニ物資ハ山ノ如ク積ンデアル所ガアッ
テモ、一方ニハ其物資ハ十分ニ廻送セラレテ居ラヌ、貨物ノ停滯シテ居ル爲メニ、卽チ輸
送力ノ缺乏ノ爲メニ、物價ト云フモノガ全國ニ統一ヲ缺キ而シテ一方ニ於テハ甚ダ騰
貴ヲ來スト云フ現象ハ之ハ掩フベカラザル事實デアリマス、此事ニ付テ過日雪ノ爲メニ
生ジタル災害、若クハ昨年中ノ大風害ノ時分ニ生ジタヤウナ天災ハ別問題トシテモ、平
生ニ於テ鐵道輸送力ノ不完全、之ニ付テ政府ハ最善ヲ盡シテ居ルトハ吾〓ニハ認メル
譯ニハ行カヌノデアル、而シテ此事ハ最モ物價ノ問題ニ非常ナル關係ヲ持ッテ居リ決シ
テ是ハ暴利ヲ取締スル法律ガアルダケデ以テ、此物價ノ騰貴ヲ止メル譯ニハ行キマセ
X·発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=19
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020・大岡育造
○議長(大岡育造君) 吉植君、此場合ハ關聯シタル稅法ニ就テ御質問ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=20
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021・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 稅法モアリマス、稅法ニ是ハ聯關シテ居リマスー此場合ニ於テ
鐵道ノ當局者ハ輸送力ト云フモノニ付テ如何ニ是カラ改善ナサル積リデアルカ、十分ノ
御答ヲ得テ置キタイト思フ、ソレカラ農商務ノ當局者ニ付テハ、市場法ノ制定、是等ヲ
如何ニシタナラバ現在ノ如キ狀態フ改善シテ今少シ國民ガ廉イ品物ヲ使フコトノ出來
ル-原料ハ廉イケレドモ、非常ニ中繼其他ノ複雜ナル爲メニ高イ物ニナッテ居ル、サウ
シテ此物價ノ騰貴ヲ愈〓煽リ立テヽ居ルト云フ事實ハ見遁スコトハ出來ナイ、是等ハ戰
時ニ於テ非常ニ物價ガ騰貴シテ來ルト云フ趨勢ハ避ケラレナイト見タナラバ、政府當局
ハ必ズヤ之ニ對シテ適當ナル方法ヲ執ッテ、成ベク原產地ニ於テ賣ルダケノ値ヨリ僅カノ
差金ヲ以テ購賣スルモノガ手ニ入ルコトノ出來ルヤウニスルコトハ社會政策ノ上カラド
ウシテモシナケレバナラヌ問題デアルト思フ、之ニ對シテ當局者ハ過去ニ於テ如何ナル施
設ヲセラレマシタカ、又將來ニ向ッテドウ云フ施設ヲ以テ之ニ對セントセラルヽノデアリマス
カ之ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、第二ニ御尋致シタイ事ハ昨年中我國ニ於テ尤モ
公言スルコトヲ敢テ好マザル所ノ事柄ガ二ツアル併シナガラ是ハドウシテモ一國ノ政治ノ
上カラ看過スベカラザル重大ナ出來事ナリト認メル、ドウシテモ之ヲ議場ニ於テ言ハナケレ
バナラヌ、其一ツハ何デアルカ、日本全國ニ於ケル勞働階級ノ大「ストライキ」デアリマス、
成程此問題ハ其地方々々ニ於テドウニカ斯ウニカ解決セラレテ、昨年ハ濟ンダノデアリマ
ス併ナガラ全國ニ於テ工場ヲ有シ、多數ノ職工ヲ使ッテ居ル處ニ、昨年中一種ノ「ス
トライキ」ノ起ラザリシ處ハ殆ド稀ナリト私ハ見テ居ル、私ハ其事實ヲ多ク知ッテ居リマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=21
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022・大岡育造
○議長(大岡育造君) 吉植君ニ重ネテ御忠告ヲ申シマス、今日唯今議題トナッテ居
リマスルモノハ、增稅及減稅ノ案デアリマス、昨日ノ如キ場合ニ於テ此御尋ノアルノハ御
尤カモ知レマセヌガ議場整理ノ爲メニ更ニ御注意申上ゲマス
〔「言論尊重」「大ニヤルベシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=22
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023・吉植庄一郎
○吉植庄一郎君 誠ニ公平ナル議長ノ御注意デアリマスガ、併シ本議場ニ於ケル此
質問ハ必ズシモ法文ノ第何條ノ何項ニ限ルト云フガ如キ、此議場ニ於ケル吾ミ議員ノ
發言權ハ狹隘ノモノデナカラウト思ヒマス
〔「ヒヤノ」ト呼フ者アリ〕
〔拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=23
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024・大岡育造
○議長(大岡育造君) 然ラバ更ニ申上ゲマス、議院ニハ別ニ質問ノ日ガ設ケテアリマ
ス、題ノ何タルヲ問ハズ御質問ナサル、御演說ヲナサルト云プコトハ、議場整理· 多野く
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=24
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025・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 然ラバ議長ガ御差止ニナルト云フナラバ、私ハ之ヲ止メテ適當ノ日
ニヤリマスガ、私ノ言フコトハ皆關聯シテ參ルノデアリマス、殊更ニ論議スル譯デハナイノデ
スガ、議場整理ニ妨アリト云フ議長ノ御認デアルナラバ、此壇ヲ降ッテ適當ノ時機ニ於テ
質問ヲスルモ妨ナイノデアリマスガドウデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=25
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026・大岡育造
○議長(大岡育造君) 此議場ニ上ッテ居ル議題ハ一括シテ付セラレテ居リマスカラ、
此中ノ問題ニ就テ御述ベニナルナラバ無論御述ベニナルモ御自由デアリマス(「社會問
題ダ社會政策ダート呼フ者アリ)此問題ニ就テ社會政策ヲ如何ニ講ズルカト云フコトヲ
御述ベニナルナラ宜シウ御坐ザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=26
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027・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 此中ニ無論關係スルノデアリマス、今ノ農商務省ノ豫算ニモ關係
ガアレバソレカラ增稅ノ問題ニハ無論關係ガアル、殊ニ通行稅問題ノ如キハ社會政
策ヲ加味シタ所ノ政府ノ提案デアル又〓育ノ問題ニモ關係シテ居ルデアリマスカラ
今日デナケレバナラヌト私ハ申シマセヌガ、恐クハ今日私ノ想像スル所ニ於テ、案件ハ數多
クアリマシテモ、サウ零碎ナル問題ニ就テ今日ノ質問ハアルマイト思フソレデ昨日ト今日
ハ-昨日ト今日ハ政府ノ根木政策ヲ說明スルノ時デアルト認メテ居ル(「然リ」ト呼フ
者アリ)豫算案竝ニ增稅案ハ本年ノ議會ニ於ケル政府ノ根本問題デアル、此根本問題
ヲ御提案ニナッテ居リマスカラ此日ハ餘リ官療式ノ解釋ヲ執ラナイデ(拍手起ル「ヒ
中」ト呼フ者アリ)此政策ノ大體ニ就テ質問スルモ敢テ妨ナイト思ヒマス(拍手起
ル「大ニヤルベシ」ト呼フ者アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=27
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028・大岡育造
○議長(大岡育造君) 然ラバ議長ト見解ガ違フノデアリマス、議長ハ問題ヲ出シタル
時分ニハ、其問題ニ就テノ討論ヲ運ブコトヲ主トシテ居ルノデアリマス故ニ吉植君ノ議
論ヲ壓スルデモナケレバ、止メルデモナケレバ、御降壇ヲ促スノデモアリマセヌ、此增稅案ヲ
主トシテ御討論ニナリサヘスレバ、此議場ハ十分ニ進ムノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=28
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029・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 承知致シマシタ、其方針デ進ムコトニ致シマス(「大ニヤルベシ」ト呼
フ者アリ)昨年ノ各工場ニ起ッタ所ノ問題、是ハ幸ニシテ-幸ニシテ多ク成金會社、
若クハ軍需品ヲ製造スルガ如キ暴利ヲ取ッタ諸會社、諸工場ニ起リマシタカラシテ、其
資本主ノ利益ノ一部ヲ提供シタト云フコトダケニ依ッテ、圓滿ナル段落ガ付イタノデアリ
マヽ、併ナガラ昨年ノ各工場ニ起ッタル「ストライキ」ト云フモノガ、多クハ勞働者ノ勝利
ニナリ終ッタト云フコトハ是ハ見遁スベカラザル問題デアリマス、此問題ニ對シテ政府ハ
如何ナル監督ノ方法ヲ取ラレタカ、又將來-是ハ昨年限リニ起ッタ所ノ事柄デアッテ、
將來日本ニ於ケル資本ト勞働トノ衝突ガ、昨年切ッタ此火蓋ハ愈〓益〓劇シクナルト御
認メニナッテ居ルカ居ラヌカ、之ニ對シテ政府ハ如何ナル調査ヲシ、調節ヲシテ行カント欲
スルノデアルカ、此問題ハ社會問題トシテ將來最大ナル問題デアル、最モ根柢ノ深イ問
題デアルカラ、之ニ對シテ政府ハ必ズ適當ナル御計畫ガ無ケレバナラヌト思ヒマスカラ、之
ニ對スル政府ノ御見込ヲ伺ッテ置キタイノデアリマス、モウ一ツ伺ッテ置キタイコトハ、昨年
早稻田大學ニ非常ナル「ストライキ」ガ起ッタ、學生ノ「ストライキ」が起ッタ(笑聲起ル)諸
君ハ御笑ヒニナリマスケレドモ、併ナガラ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=29
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030・大岡育造
○議長(大岡育造君) 吉植君ニ重ネテ御注意申上ゲマス(拍手起ル)此議場ニ在ル
所ノ慣習及ビ(「惡例ヲ貽ス勿レ」ト呼フ者アリ)規則ハ、自然ノ例ヲナスノデアリマス、此
意味ヲ尊重シテ直接ナル御質問ダケニ止メテ戴キタイ
〔「惡例ヲ貽ス勿レ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=30
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031・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 今ホンノ二三言ヲ言ヘバ宜シイ、是モ不幸ニシテ學生側ノ勝利ニ
ナッタ、此括リハサウ一石フヤウニ思ハレマス、引續イテ全國ニ此種ノ學生ノ、及ビ學校ノ
騷動ト云フモノハ澤山起ッテ居リマス、起リツヽアリマス、之ニ對シテ政府ハ如何ナル將
來方法ヲ執ッテ應ズルカ、此三點ニ就テ伺ヒマス(「答辯ハナイカ」「惡例ヲ貽シテハイケ
ナイ」ト呼フ者アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=31
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032・大岡育造
○議長(大岡育造君) 是デ質問ノ通〓者ハ終リマシテ御坐イマスカラ、之ヲ審議スベ
キ委員ノ選舉ニ移リマス
(「答辯ハドウシタ」「答辯ハナイ」ト呼フ者アリ〕
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=32
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033・岩崎勲
○岩崎勳君 委員ノ數ハ特ニ四十五名トシ、議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=33
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034・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=34
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035・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ此委員ハ四十五名、議長ヨリ指名致シマ
ス、日程ノ第二十五臨時國庫證券法中改正法律案
第二十五臨時國庫證券法中改正法律案(政府提出)第一讀會
臨時國庫證券法中改正法律案
臨時國庫證券法中左ノ通改正ス
第二條中「二億圓」ヲ「五億圓」二段、発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=35
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036・大岡育造
○議長(大岡育造君) 勝田大藏大臣
(國務大臣勝田主計君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=36
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037・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 唯今議題トナッテ居リマスル案ハ、是モ既ニ一昨日來
度〓申上ゲマシタ通リニ、爲替ノ調節竝ニ軍需品代金ノ決濟ノ爲メニ、從來臨時國庫
證券法ト云フモノガ御協贊ヲ經テ、二億圓ヲ發行最高ノ限度ト致シテ居リマシタ、然ル
ニ二億圓悉ク募集シ切リマシタカラシテ、尙ホ三億圓ノ限度ヲ與ヘラレンコトヲ諸君ノ御
協賛ヲ願フ次第デアリマス、ドウカ御審議ノ上御協賛アランコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=37
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038・大岡育造
○議長(大岡育造君) 本案ニハ別ニ通告者ハアリマセヌ、仍テ日程第二十六ニ移リ
マス
第二十六右議案ノ審査ヲ付記スヘキ委員ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=38
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039・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ委員ノ數ヲ九名トシ、議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=39
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040・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異識ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=40
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041・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナケレバ岩崎君發議ノ如ク決シマス-日程第二十
七、貨幣法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、勝田大藏大臣
第二十七貨幣法中改正法律案(政府提出)第一讀會
貨幣法中改正法律案
貨幣法中左ノ通改正ス
第五條第二號ヲ左ノ如ク改ム
二銀貨幣
五十錢純銀八百分參和銅二百分
二十錢十錢純銀七百二十分參和銅二百八十分
第六條第四號乃至第六號ヲ左ノ如ク改ム
四五十錢銀貨幣一匁八分
五二十錢銀貨幣八分
六十錢銀貨幣四分
第十條第二號ヲ左ノ如ク改ム
二銀貨幣五十錢ハ每片一厘八毛一千枚每ニ九分二十錢ハ每片一厘二毛
一千枚每ニ六分十錢ハ每片八毛一千枚每ニ四分トス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
從來發行ノ銀貨幣ハ從前ノ通通用スヘシ
〔國務大臣勝田主計君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=41
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042・勝田主計
○國務大臣(勝田主計君) 唯今議題ニナッテ居リマスル所ノ貨幣法中改正法律案ノ
大體ノ趣旨ハ、御承知ノ如ク從來ノ我國ノ補助貨デアリマスガ、是ガ少シク形ガ大キク
御坐イマシテ、携帶等ニ不便ナト云フ理由モアリマスルシ、尙此時局ノ影響ヲ受ケマシ
テ、銀貨騰貴ノ爲メニ、或ハ鑄潰シノ虞レガアリマスノデ、之ヲ改正致シタイト云フ事柄
デアリマスノデ、是モ詳細ナル事柄ハ委員會デ申上ゲタイト思ヒマス、ドウカ御審議ノ上
御協賛ヲ願ヒタイノデ御坐イマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=42
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043・大岡育造
○議長(大岡育造君) 是モ別ニ質問ノ通〓ハアリマセヌ-日程第二十八ニ移リ
マス
第二十八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=43
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044・岩崎勲
○岩崎勳君 本案モ亦委員ノ數ヲ九名トシ、議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=44
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045・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎君ノ動議ニ異議ナキモノト認メマス、仍テ其ノ如ク決シマ
ス-日程第二十九、戰時船舶管理令ヲ議題ト致シマス、田遞信大臣
第二十九戰時船舶管理令(承諾ヲ求ムル件)
戰時船舶管理令
朕戰局ノ倍々擴大スルニ伴ヒテ外ハ共同〓畫ノ便宜ヲ進メ內ハ產業運輸ノ
調節ヲ圓ル爲船政ヲ統制スルノ極メテ緊急ナルヲ認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ經
テ帝國憲法第八條第一項ニ依リ戰時船舶管理令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシ
御名御璽
大正六年九月二十八日
內閣總理大臣伯爵寺內正毅
內務大臣男爵後藤新平
加藤友三郞
この 大正大島健一
誌表示本野郞
むねむ
松室致
臣臣岡田良平
東京市麴石區小学校男爵田健治郞
明治三十年仲小路廉
大藏大臣勝田主計
勅令第百七十一號
戰時船舶管理令
第一條日本船舶ハ遞信大臣ノ許可アリタル場合ヲ除クノ外之ヲ日本船舶
ヲ所有シ得サル者ニ讓渡シ、貸渡シ、擔保ニ供シ又ハ引渡スコトヲ得ス製
造中ノ船舶ニ付亦同シ
第二條遞信大臣ノ許可アリタル場合ヲ除クノ外日本船舶ヲ所有シ得サル
者ノ注文ニ依リ船舶ヲ製造スルコトヲ得ス
第三條日本船舶ハ政府ノ命令又ハ遞信大臣ノ許可アリタル場合ヲ除クノ
外外國諸港間ノ航行ニノミ從事スルコトヲ得ス
第四條遞信大臣ハ日本船舶ニ對シ外國ノ一港ヨリ外國ノ他ノ港ニ至ル族
客又ハ貨物ノ運送ヲ禁止又ハ制限スルコトヲ得
第五條遞信大臣ハ日本船舶ニ對シ航路ヲ指定シテ航海ヲ命シ又ハ特定ノ
族客若ハ貨物ノ運送ヲ命スルコトヲ得
第六條遞信大臣ハ日本船舶ニ對シ運送賃ヲ制限スルコトヲ得
第七條遞信大臣ハ相當ノ補償金額ヲ定メ日本船舶、造船所又ハ造船ニ要
スル材料器具機械ヲ敗用又ハ使用スルコトヲ得製造中ノ船舶ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テ遞信大臣ハ船舶又ハ造船所ト共ニ其ノ船員又ハ操業者
ヲ供用セシムルコトヲ得
遠洋航路補助法第十一條第三項及第四項ノ規定ハ第一項ノ補償金額ニ對
シ不服アル者ニ付之ヲ準用ス
第八條遞信大臣ハ遠洋航路補助法ニ依ル補助航海ニ使用スル船舶ノ資格
ニ付別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第九條遞信大臣ハ日本船舶ニ對シ船員ノ保護又ハ船舶ノ設備ニ關シ必要
ト認ムル事項ヲ命スルコトヲ得
第十條第一條乃至第三條ノ規定ニ違反シタル者、第五條ノ規定ニ依ル命
令ニ違反シタル者又ハ第七條ノ規定ニ依ル收用使用若ハ供用ヲ拒ミタル
者ハ二年以下ノ懲役ニ處ス
第十一條第四條ノ規定ニ依ル禁止若ハ制限ニ違反シタル者又ハ第九條ノ
規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金
乙酸二入
第十二條第六條ノ規定ニ依ル制限ヲ超エテ運送賃ヲ收領シタル者ハ三月
以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ運送賃ノ制限ヲ超エタル部分ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全
部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第十三條本令ニ依ル遞信大臣ノ職務ハ朝鮮、臺灣又ハ關東州ニ在リテハ
朝鮮總督、臺灣總督又ハ關東都督遞信大臣ノ監督ヲ承ケ之ヲ行フ
附則
本令ハ大正六年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際現ニ日本船舶ヲ所有シ得サル者ニ貸渡シ若ハ擔保ニ供スル日
本船舶又ハ外國諸港間ノ航行ニノミ從事スル日本船舶ニ付テハ本令施行後
遲滯ナク遞信大臣ノ許可ヲ申請スヘシ日本船舶ヲ所有シ得サル者ニ擔保ニ
供スル製造中ノ船舶又ハ其ノ注文ニ依リ製造スル船舶ニ付亦同シ本令ハ講
和條約調印ノ日ヨリ一年ヲ經過シタルトキハ其ノ效力ヲ失フ
〔國務大臣男爵田健治郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=45
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046・田健治郎
○國務大臣(男爵田健治郞君) 唯今議題ニナリマシタ本令ノ制定ノ理由ヲ大體申
上ゲヤウト存ジマス、御承知ノ如ク歐羅巴ノ戰爭ガ勃發シマシタ以來、世界海運ノ狀
況ハ異常ノ動搖ヲ受ケマシテ、何レノ國モ船舶ノ〓乏ヲ愬ヘタノデ御坐イマス、我帝國
ニ於テモ、外トシテハ聯合與國カラ段々需要ノ切ナルモノモ御坐イマス、之ヲ內ニシマシ
テハ貿易交通ノ船舶ノ不足ヨリシマシテ、或ハ運賃、或ハ傭船料ノ非常ナル暴騰ヲ來
シタノデ御坐イマス、ソレガ爲メニ一面ニハ海外貿易ノ大ナル澁滯ヲ招キ、一面ニハ物價
ノ暴騰ヲ促シマシテ、之ガ爲メニ一般國民ハ其生業、其生活ニ向ッテ大ナル打撃ヲ受ケ
タノデ御坐イマス、仍テ政府ハ是等ノ内外ノ必要ニ應ズル爲メニ、此管理令ヲ制定シマ
シタ、而シテ緊急勅令ヲ以テ發布ノ上、昨年ノ十月一日ヨリ實施ヲ致シタ次第デ御坐
イマス、此實施ノ結果トシマシテハ、外ニ對シテハ聯合與國ニ運輸ノ便宣ヲ與ヘマスシ、
內ニ於キマシテハ幾分カ運賃傭船料ナドノ低落ヲ促シマシテ、其上船腹ノ調節モ幾ラカ
便宜ヲ得ツヽアルノデ御坐イマス、尙政府ハ此點ニ向ッテハ將來ニ於キマシテモ、愼重ナ
ル注意ヲ拂ッテ、是非共ニ十分ノ成績ヲ收メタイト云フコトヲ深ク期シテ居リマス、何卒
愼重御討議ノ上、之ニ向ッテ承諾ヲ與ヘラレンコトヲ切ニ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=46
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047・大岡育造
○議長(大岡育造君) 高見之通君
〔高見之通君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=47
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048・高見之通
○高見之通君 私ハ本案ニ就テ其內容ニ立至ルコトハ姑ク之ヲ後ニ讓リマス、唯私ハ
本案ニ就キマシテ、憲法上ノ根據ニ就テ特ニ政府ノ所見ヲ質サント欲スルノデアリマス、
本案ヲ政府ガ議會ニ提出シテ承諾ヲ求メラレタト云フコトノ精神ニ對シテハ、毫モ異議
ハアリマセヌ、併シ何ガ故ニ政府ハ戰時船舶管理令ナルモノヲ憲法第八條ニ依リ發
布セラレタルカト云フコトニ就テ、多大ノ疑ヲ持ッテ居ルノデアリマス、既ニ本令ハ其內容
ハ勿論、其名稱ニ於テモ戰時ノ名ヲ冠セラレテ居ルノミナラズ、其附則ニ依リマシテモ、
最後ニ「本令ハ講和條約調印ノ日ヨリ一年ヲ經過シタルトキハ其效力ヲ失フ」トアルノヲ
以テ見マシテモ、戰時ニ於ケル特別ノ必要ノ爲メニ發布セラレタルモノデアルヤ明カデアリ
マス而モ其內容ハ日本帝國臣民ノ所有權ニ關スル一大制限ヲ以テ骨子トシ、唯ダ其
他ノモノハ唯ダ之ニ附隨スル事項タルニ過ギナイノデアリマス、ソレ故ニ本案ハ憲法上立法
事項ニ關スルモノデアルト云フコトノ點ニ至ッテモ、政府ト本員トノ所見ハ毫モ異ル所ハ
ナイノデアリマス、旣ニ其戰時ナルニ於テ、又所有權ノ制限ナルニ於テ、而シテソレガ立法
事項ト云フコトニ於テ、果シテ本法ハ憲法第八條第一項ニ據ルベキモノナルカト言ヒマスレ
バ、吾人ノ信ズル所ヲ以テ見マスレバ寧ロ憲法第三十一條ノ規程ニ據ルベキモノカト思ヒ
マス、何トナレバ憲法第三十一條ニハ「本章ニ揭ケタル條規ハ戰時又ハ國家事變ノ場合
ニ於テ天皇大權ノ施行ヲ妨グルコトナシ」ト書イテアリマス同條ノ「大權ノ施行ヲ妨
クルコトナシ」トアルノハ、戰時必要ノ場合ニ於ケル所有櫂ノ制限、其他ノ事項ハ天皇
ノ大權命令ニ由ルコトヲ得ルコトヲ規定シテアルモノデアリマシテ、特ニ憲法第八條第一
項ニ據ル必要ノナイト云フコトヲ規定シテアルコトハ明カデアルト信ジマス、ソレデ御坐イマ
スカラ、本令ノ如キハ憲法第三十一條ニ據ルベキモノデアッテ、第八條第一項ニ據ルベ
キモノニアラズト信ジマス、從ッテ本令ニ依リ發布セラルヽ場合ニハ議會ノ承諾ヲ求ムル
コトノ必要ノナイト云フコトハ明カデアリマス、併ナガラ(「大學ニ行ッテヤリ給ヘ」ト呼フ
者アリ)政府ニシテ立法機關ヲ尊重シ、其協賛ヲ求メラレントスルナラバ、法律案トシテ
提出セラルヽノヲ要望スルノテ御坐イマス、吾〓ノ問ハントスルノハ、何ガ故ニ三十一條
ニ據ラズシテ、憲法第八條ニ據ッタノデアルカト云フ理由ノ點ニ關スルコトデアリマシテ、
是ハ軈テ本條ノ內容ヲ審議スル上ニ於テモ重大ナル關係ガアルト信ズルカラデアリマス
〔拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=48
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049・大岡育造
○議長(大岡育造君) 田遞信大臣
(國務大臣男爵田健治郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=49
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050・田健治郎
○國務大臣(男爵田健治郞君) 唯今高見君ノ御質問ハ、憲法ノ解釋ニ渉リマシテ、
事ハ頗ル重大ナル事デ御坐イマスルガ、吾ミガ見解ヲ致シテ居ル所ハ、高見君ノ御見解
トハ少シク違ッテ、當然議會ノ事後承諾ヲ求ムベキモノトシテ提出シタノデ御坐イマスカ
ラ、吾〓ノ所見ヲ御答致スニ止メマス、此憲法ノ八條ニ依リマシテ、緊急勅令トシテ事
後承諾ヲ求ムルト云フコトハ、矢張憲法第一章ノ天皇ノ大權ノ發動ニ依テ此事ガ行
ハレルノデ御坐イマス、面シテ高見君ノ御指シニナリマシタ憲法第三十一條、卽チ是ハ
第二章ノ臣民ノ權利義務ノ事ヲ規定致シテアルモノデ御坐イマス、此臣民ノ權利義務
ノ規定ノ爲ニ、第一章ニ揭ゲテアル所ノ天皇ノ大權ハ戰時若クバ事變ノヤウナ場合
ニ於テハ、拘束セラルヽコトハナイモノデアルト云フ取除キヲ示シタモノデアッテ、第一章ノ
天皇ノ大權ト云フモノニ依テ、第八條ノ事後承諾ヲ求ムルコトヲスルニ及パヌト云フタモ
ノデハナイト私ハ解釋シテ居リマス、モウ一ツ精シク言フナラバ、第三十一條ノ場合ニ於
テ、緊急勅令ヲ用井ルコトノ出來ナイヤウナ切迫ナ事ガアル、一時間ノ猶豫モ置ケナイヤ
ウナ切迫ナ場合ニ於テハ、是ハ此第八條ノ適用ヲヤルコトノ出來ヌ場合ガアルカモ知レ
マセヌガ、サウ云フ場合ハ別デアル、デアリマスカラ今日戰時船舶管理令ヲ樞密顧問官
ノ諮問ヲ經テ、而シテ取除ノ方法ヲ行フト云フ如キ場合ニ於テハ、當然第八條ニ依ッテ
事後承諾ヲ求ムベキモノト解釋シテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=50
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051・大岡育造
○議長(大岡育造君) 正木照藏君
〔正木照藏君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=51
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052・正木照藏
○正木照藏君 本案ハ我ガ海運業造船業ハ申スニ及バズ、一般ノ經濟界ニモ大ナル影
響ヲ及ボシ、又今尙及ポシツヽアル所ノ重大ナル事件デ御坐イマスカラ、何レ詳細ニ亙
リマシテハ、委員會ニ於テ篤ト〓究スベキモノト信ジテ居リマス、ソレニ先ダチマシテ、私
ハ此大體ノ事ニ付テ四五點御尋ヲ致シタイ事ガアル、御斷リ申シ置キマスガ、此案ハ申
ス迄モナク、或ハ米國ノ鐵ノ輸出禁制ヲ解除スルノ手段、又モウ一ツハ遠洋航路補助
法等ニモ關聯ヲ致シテ居リマシテ、大分御尋スル事ガ長クナルカモ知レマセヌカラ、ドウゾ
諸君ニ於テモ其所ハ御勘辨下サレマシテ、暫ク御〓聽アランコトヲ希望致シマス(拍手
起ル)又モウ一ツ是ハ總理大臣ニ申シ置キマスデ御坐リマスガ、追ミ私ノ質疑が進行致
シマスニ付キマシテ、頗ル私ハ重大ト信ズル點ガ御坐リマスルデ、是非是ハ總理大臣
ラ御答辯ヲ戴キタイノデ御坐リマスカラ、是モドウカ暫ク御辛抱アッテ、御離席ニナルヤウ
ナコトノナイコトヲ希望致シテ置キマスデ御坐リマス、昨年ノ特別議會ニ於キマシテ豫算
委員-特別議會ノ豫算委員會第六分科會ニ於キマシテ、私ハ遞信大臣ニ對シテ船
腹調節ノ事ニ付テ色〓ノ問答ヲ致シマシテ御坐リマス、第一ニ當時新聞紙ニ傳フル所
ニ依レバ、我與國ヨリ日本ニ對シテ商船ノ融通ヲ求メタイト申ス事ガ載ッテ居ルガ、果シ
テ事實デ御坐ルカト云フー云フコトヲ御尋シタ所ガ、ソレハ事實デアル、英吉利政府、米
國政府カラモ參ッテ居ル、斯ウ云フコトヲ承ッタ、ソレカラ次ニ私ハ追〓戰爭ガ始マッテ以
來、海運界ハ非常ニ變動ヲ來シテ、我日本ニ於テモ船腹調節ト申スコトハ、由々シキ大
問題ニナッテ居ル、啻ニ貿易商ガ困ッテ居ルノミナラズ、內地ニ於テモ物價ノ騰貴ノ上ニ
大ナル影響ヲ及ボシテ居ル、一例ヲ申シマスレバ、平生日本ノ海運業者ノ運賃ノ標準
ト致シマス所ノ、門司カラ橫濱ニ參リマスル石炭ノ運賃ハ、戰爭ノ前ニハ或ハ一噸ニ付
七八十錢カラ一圓、安イ時ハ五十錢位ニ下ッテ居ッタ時ガアルモノヲ、昨年ノ六七月
頃ニナリマスト、十圓ニモ近クナッテ居ル、十倍以上ニモナッテ居ル、是ハ一例デアル、
其他總テノ運賃ガ其通リニナッテ居ッテ、吾〓日本人ノ生活ノ上ニ大ナル影響ラ及ボシ
テ居ル、最早是ハ日本ノ卽チ船舶ノ整理ノ上ニ於テ、見捨テルコトノ出來ナイ場合デ
ハアリハセヌカ、遞信大臣ノ之ニ對スル御考ハ如何テ御坐ルカト云フコトヲ私ハ御尋ネ致
シタ、ソレニ對シテ遞信大臣ノ御答ハ斯ウ云フ要領デアル、各國ニ於テハ成程船舶ニ關
シテ色ミナ方法ヲ講ジテ居ル、或ハ外國ニ對シテ賣ルコトヲ禁ジ、貸スコトヲ禁ジ、色〓ノ
方法ヲ執ッテ居ル、併ナガラ是ハ皆國家ノ生存問題デアル、國民ノ生活問題ニ因ル
ノデアル、併シ日本ノ國ハ狀態ヲ異ニシテ居ル、今日ノ船腹ノ問題ハ貿易商等ガ八釜
敷ク言フテ居ルニ止マッテ、全ク經濟上カラ起ッテ來テ居ル問題デ、國家ノ生存問題カ
ラ來テ居ル問題デハナイ、故ニ船ノ輸出ヲ禁ジタナラバ船舶業者、造船業者ノ利益ヲ犧
牲ニ供スルヤウニナッテ、甚ダ宜シクナイ、殊ニ造船業ノ如キハ折角發達シツヽアル所ノモ
ノガ、忽チ頓挫スル、大ニ困ル、又海外ニ傭ハレテ居ル所ノ船ノ如キハ、殆ド皆與
國ノ爲ニ使ハレテ居ルモノデアル故ニ、之ヲ取戾ス時ニハ忽チ與國ニ對シテ不便
ヲ與ヘ、其感情ヲ害スル、斯ウ云フヤウナ譯デアル、日本ノ國ノ狀態ハ外ノ交戰國ノ
狀態トハ非常ニ違フ、之ヲ內外兩方カラ觀テモ、今日ハ他ノ交戰國ニ於テ取扱ヲ
致シテ居ルガ如キ方法ヲ設ケル時デハナイ、設ケルコトガ宜シクナイト一云フ考デアルト斷然
ト明ニ-明白ナルコトヲ私ハ承ッテ居ル、速記錄ニモ明ニ書イテアルノミナラズ、此事
ハ私ノミナラズ、貴族院ニ於テモ某議員ノ質問ニ對シテ御明答ニナッテ居ル筈デアル(拍
手起ル)然ルニ何ゾヤ議會閉會後未ダ二十日カ三十日モ經タヌ中ニ、政府ニ於テハ
狼狽ヘテ此管理令ノ調査ニ從事シタ、洵ニ驚入ッタ次第デアル、私共ハ斯ウ云フ事ヲス
ルコトハ必要トハ感ジテ居ルケレドモ、堂々タル國務大臣ガ議場ニ於テサウ云フ事ヲスル
コトハ國家ノ不利益デアル、スベキ事デハナイト明言サレテ居ッテ、其舌ノ根モ乾カヌ中ニ
忽チ之ヲヤルト云フノハ、甚ダ解セヌ事デアル、私ハ國務大臣ノ答辯ヲ敢テ不誠實トハ
言ハヌ、是ニハ何カ動機ガアルニ違ヒナイ、斯ウ云フ事ヲ是非シナケレバナラヌト御考ニ
ナッタ動機ガアルニ相違ナイカラ、私ハ其動機ヲ承リタイ、ドウ云云ココガ動機ニナッテ、僅
ニ議會閉會後二十日カ三十日カ經タヌ中ニ、反覆手ヲ反スガ如キ御舉動ヲ執ラレタカ
ト云フコトハ如何ナル次第デアルカツレヲ伺ヒタイ、モウ一ツ是ト序デアリマスカラ承リ
置ク事ガアル、其委員會ノ節ニ私ガ斯ウ云フコトヲ言フタ、追〓歐羅巴方面ニ於テモ、
獨逸ノ潛航艇ガ橫暴ヲ逞シウ致シマシテ、我歐羅巴航路ノ命令船ハ旣ニ八阪丸ヲ擊
タレ、又引續キ宮崎丸ヲ擊タレタ、是ハ國家ノ爲メニ大損害デアル、第一金ノ上カラ言
ヒマシテモ、國家ガ之ニ對シテ數百万圓ノ保險金ヲ拂ハナケレバナラヌ、撮う。此保險
金ラ今取ッテモ船ガ出來ハシナイ、金ガ有ッテモ今再ビ造ルコトノ出來ナイ、國家ノ爲メノ
寳デアル、之ヲ歐羅巴ノ危險界ニ曝シ置クト云フコトハ、大ニ考ヘナケレバナラヌモノデア
ルノミナラズ、現ニ船ノ入用ハナイデハナイカ、亞米利加邊リデハ澤山船ノ入用ガアッテ、
頻リニ船腹ノ缺乏ヲ感ジテ居ルノデアル、之ヲ此方ニ御〓シニナルト云フコトハ、政府ハ
御考ニナラヌカト云フコトヲ言ッタ所ガ、遞信大臣曰ク、成程ソレモ一ツノ方法カ知ラヌ
ガ、政府ハ未ダサウ云フ考ニナッテ居ラヌ、ヤル積リハナイト云フコトデアル(「ワレハ大隈
內閣ノ時分ダ」「默レ」ト呼フ者アリ)然ルニ議會閉會後僅カ三十日カ二十日カ經タヌ
中ニ、直グニ其通リ御實行ニナッタ、私ニ於テハ私ノ申シタ事ヲ御實行ニナルノハ、甚ダ
本懷デアル、併ナガラ國務大臣トシテノ御答辯ハ、如何ナル點マデ信賴シテ宜シイモノデ
アラウカト云フコトヲ私ハ疑フ(拍手起ル)是ハ私ノ後ノ心證ノ爲メニ伺ッテ置キタイ、如
何ナル理由ガアッテ左樣ナ御答辯ニナッタノデアルカ、卽チ之ヲ變更サレタ理由ガイヅレナ
ケレバナラヌガ、如何ナル理由ガ有ッテサウナッタカト云フコトヲ伺ッテ置キタイ、ソレカラ先
刻御尋致シタ動機、動機ニ付テハ斯ウ云フコトガアル、是ハ當時米國ニ於テ日本ニ對
シ製鐵ノ輸出ヲ禁止サレタ、其解決ノ一ツノ方法ニ運用スル-活用スル所ノ必要ガ有
ツテヤツタモノデナイカト云フヤウナ說モアッテ、大分其時分ノ新聞等ニモ唱ヘラレテ居ツタ
ガ、果シテ關係ガ有ッタノデ御坐ルカ如何デアル、其解禁ノ一ツノ方法手段トシテ、斯ノ如
キ管理令ヲ必要トセラレタノデアルカドウデアルカ、果シテ然ラバ其關係如何、之ヲ伺ヒタ
イ遞信大臣ガ發表サレタ所ノ、米國ノ此ノ鐵ノ解禁-鐵ノ解禁ニ付キマシテノ〓末
ヲ談シテ見ルト、十一月十七日遞信省カラ發表ナサレテ、各新聞ニ傳ヘラレテ居ッタ所
ノ卽チ米鐵不調ノ〓末ト云フモノヲ讀ンデ見マスト、洵ニ私ハ此交渉ノ迂濶ト申スカ、
幼稚ト申スカ、實ニ詰ラナイ交渉ヲナサレタモノデアルト云フコトニ一驚ヲ喫シテ居ル、第
一ドウ云フ事ヲ提議サレタカト申セバ、第一ノ提議ハ斯ウデアル、材料ヲ六十万噸供給
シテ呉レルナラバ、二箇年間ニ總噸數百二十万、卽チ重量噸數ヲ以テ百八十万ヲ提
供致シマスカラ、ドウゾ六十万噸ノ材料供給ガ欲シイ、亞米利加ハ何ト答ヘタカ、吾ミ
ハ船ヲ要スル事ガ非常ニ急デアル、二箇年間ナゾハ迚モ待ツコトハ出來ナイ、ソンナ事ハ
話ニナリマセヌト答ヘタ、極メテ迂濶ナ話、昨日望月君ガ御尋ニナッタヤウデ御坐イマス
ケや、亞米利加ノ國狀ヲ知ラヌ事、是位甚シイコトハナカラウト思フ(拍手起ル)差迫ッ
テ一艘半艘ノ船モ必要デアルト云フ場合ニ、二箇年掛ッテ拵ヘマス、向フカラ云フトサウ
云フ必要ハ御坐イマセヌ、今急テ御坐イマス、斯ウ云フ返事ヲ受ケテ居ル、其次ニハド
ウ云フ交涉ヲサレタカト云フト然ラバ昨年中卽チ大正十ハ年中ニ、重量噸數約十五万
噸ヲ日本カラ提供スルカラ、ドウゾ是ニ對シテ米國カラ昨年中ニ材料十五万噸、又來
年卽チ本年中ニ三十万噸ノ供給ヲ受ケタイ、是ニ依テ日本ガ重量百三十五万噸ノ船
ヲ製造シテ、其中七十五万噸ハ、卽チ本年一月ヨリ來年九月ニ至ル迄順次亞米利
加ニヤル、殘リ六十万噸ハ前ノ十五万噸ヲ提供シタ代リトシテ日本ニ於テ使フ、斯ウ
言フタ、是モ餘程緩漫ナ話、亞米利加答ヘテ曰ク、六年卽チ昨年十一月カラ向フ十
箇月間二、每月重量十五万噸宛、合計百万噸ノ船ガ欲シイ、ソレダケノ船ヲ供給シテ
呉レルナラバ、亞米利加ニ於テハ旣ニ日本ト約束シテ居ル所ノ材料四十万噸ヲ、來年
八月迄ノ間ニ輸出スルコトラ許ス、八月以後ニナッテハ吾〓船ハ一艘モ要リマ
セヌト言ッテ居ル、八月以後ニナッタラ船ハ一艘モ要リマセヌ、船ハ必要ハ御坐イマ
セヌト云フコトラ言フテ居ル、是モ大ナル違ヒデ、此方ハ十五万噸、向フハ百万
噸、恰モ緣日ノ品物ヲ値切ルヤウデ實ハ抱腹ニ堪ヘナイ、其次ニハドウ云フコト
ヲ提議シタ、今度ハ大正六年、卽チ昨年中ニ重要十五万噸ヲ前ノ通リニ提供
スル、ソレカラ當年一月、卽チ一月ヨリ八月迄ノ間ニ、米國カラ貫ッテ來タ所ノ材
料デ、船ヲ造ッテ重量二十万噸ヲヤル、併セテ三十五万噸ヲ提供致シマセウ、其代
リニ米國カラハ六年中-昨年中ニ約十五万噸、又七年一月ヨリ二月迄ニ
二万五千噸、合計十七万五千噸ノ材料ガ欲シイ、斯ウ云フ事ヲ向フニ申遣ハシタ、
其時分ニ懷算用ハ是デ重量五十二万五千噸ヲ造ッテ其中カラ亞米利加ニ提供スル
二十万噸ヲ引去ッテ、殘リ三十二万五千噸ガ亞米利加ニ於テ使用スルト云フ懷勘定
デアル、斯ウ云フコトヲ遞信省ハ明言シテ居ル亞米利加ハ之ニ對シテ如何ナル答ヲ
シタ、十五万噸宜シウ御坐イマス、其通リデ宜シイ、併ナガラ其提供サレル所ノ船ハ、船
齡ガ七年未滿-製造後七箇年以內ノ若イ船デナケレバナラヌ、一番好イ船ハ十年
未滿ノ船デナケレバナラヌ、而モ新シク拵ヘル所ノサウ云フ船ニ對シテハ、代價ハ一噸ニ
付テ百七十弗ヨリ出スコトハ出來ナイ、新シク造ル所ノ船ハ二百弗デアル、斯ウ言ッタ
日本ニ於ケル其時ノ相場ハ如何デアリマス、新ラシク拵ヘレバ千圓以上、古イ船デモ七
百圓八百圓掛ル、斯樣ニ若イ所ノ船ハモット高カック-斯ウ云フコトヲ言ッテ來テ居ル
ノミナラズ、ワレニ對シテ向フカラ供給スル所ノ材料ハ、既ニ日本ノ人ガ約束ヲシテ居ル
所ノ品物ノ中デ、或ハ米國ノ製造所ニ於テ製造シテ、積出ス港ニ著イテ居ルモノ、叉
是カラ積出サントスル所ノモノニ付テ、六年ノ卽チ十一月中ニ一一万五千噸、十二月中
ニ五万噸七年八月中ニ十万噸ヲ提供スル、是ニハ遉ガノ遞信大臣モ御呆レニナッテ斯
ウ減額ニナッテハ到底話ニナラナイト言ッテ、御打切リニナッタ、私共ハ政府ノ仕事ハ知リ
マセヌケレドモ、商賣ヲシテモ左樣ナ馬鹿ナ-馬鹿ナト言ッテハ甚ダ失禮デアリマスガ、
迂濶ノ取引ハ致シマセヌ、第一十五万噸ト云フ船ヲ幾ラデ提供スル、幾ラニシテ上ゲル
ト云フコトヲ言ハヌデ置イテ、左樣デ御坐イマスカト驚イテ破談スル、誠ニ御殿樣-百
万石、二百万石ノ大キナ御殿樣ト町人トノ掛合ノ如キモノデアル、驚入ッタコトデ、是ガ
誰ガ掛合ッタカト云フト、一國ノ遞信大臣ガ本トナッテ、或ハ外務大臣モ御取次ニナッタ
カト思フ、外務省ハ船ノ事ハ御承知ナイト云フコトハ御尤、船ノ事ハ六ケ敷シイカラ御
承知ナイハ御尤デアリマスガ、誠ニ國トシテ-日本ノ國トシテノ掛合トシテハ、大ニ威
信ヲ失ヒ、笑草ヲ撒イタノニ止マルト信ズル、尙ソレニ付キマシテ、此管理令ノ關係ガ御
坐イマスカラ御尋シテ置クコトガアル、抑〓此重量十五万噸ヲ提供スル此船ハ、何處デ
ドウシテ拵ヘルカ、政府ノ手ニハ十五万噸ノ船ノ無イコトハ分ッテ居ル、何レ民間カラ之
ヲ引揚ゲナケレバナラヌ、如何ナル方法ヲ以テドウシテ引揚ゲルカ、初メカラ亞米利加ハ
日本ニ於ケルヤウナ高イ傭船料ヤ、或ハ船ノ代價ハ拂ハヌト云フコトハ分ッテ居ル、ソレニ
對シテ十五万噸ヲ提供スルト云フコトハ、如何ナル方法ヲ以テスル心算デアッタカ、ソレガ
承リタイ、何レ此通リニ御申遣ハサレタ以上ハ、御心算ガ無ケレバナラヌ、尙ホ進ンデ新
造船ノ事等モ承リタイ、ケレドモ是ハ最早過去ッタ事デアリマスカラ省イテ置キマス、唯
タ十五万噸ハ如何ニシテ提供スルカ、如何ナル方法ヲ以テ提供サレル積リデアルカ、或ハ
當時斯ウ云フ說ヲ爲シテ居ッタ者ガアル、遞信大臣ガ管理令ノ說明中ニ、營業航路ノ
補助ヲ維持スルト云フコトガ書イテアル、其理由ニ就テハ後ニ述ベル、或ハ斯ノ如キ恩
惠ヲ受命會社ニ許シテ置イテ、郵船會社、商船會社、東洋汽船會社等ノ受命會社ニ
對シテ、此十五万噸ノ提供ヲ要求スルノデハナイカト、斯ウ云フ說ヲ爲シテ居ッタ者ガア
ル、是ハ尤モ實地ニ現ハレヌ事デアリマスカラ、私ハ何トモ玆ニ批評スルコトハ出來ヌガ、
或ハ遞信省ニ於テサウ云フ御考ガアッタノデハナイカ、序ニ承リタイ、次ニハ此管理令發
布以來ノ運輸方、其效果如何ト云フコトニ付テ少シク御尋致シタイ、先刻遞信大臣ガ、
多少傭船料或ハ船舶代價モ下ッタヤウデアルト云フ御說明デアッタ、或ハ其通リデア
ルカモ知レヌ、併ナガラソレハ此管理令ノ唯一ノ目的デハナイ、此冒頭ニモ何ト書イ
テアルカト云ヘバ、外ハ協同籌劃ノ便利ヲ進メ、內ハ產業運輸ノ調節ヲ圖ル爲メ、此緊
急勅令、卽チ緊急-急イデ勅令ヲ必要トシタノデアルト明言サレテアル、此令發
布以來、私ノ記憶スル所ニ依りマスレバ、或ル船ガ一二艘印度ノ方ニ、遞信省ノ口入デ
迴サレタト云フコトヲ聞イテ居リマスケレドモ、其外ハ殆ド手續ニ對スル-外國ニ
對スル船ノ賣買ヲ禁ジ、或ハ貸渡ニ付テ色〓行政上ノ煩雜ナル手續ガ行ハレテ、
多クノ當業者ヲ苦シメタト云フノ外、何等施設ノ見ルベキモノガナイ、近時門司カ
ラ橫濱ニ來ル石炭ノ運賃ハ幾ラ下ッテモ、矢張七八圓スル、平常ヨリノ十倍モ上ッ
テ居ル、鐵道滯貨ノ如キ如何デ御坐イマス、五六十万噸ノ品物ハ矢張支ヘテ居
ル、本來日本ノ運輸上ノ事ハ、御承知ノ通リ島國デ御坐イマスカラ、到底鐵道ノミ
デハイカヌ、是ハ海陸併セ待タナケレバ到底行ケルモノデナイ、然ルニ此管理令發布以來
色ミナ手續ニ付テ、或ハ鐵道院ニ承リ、遞信省ニ承ッタケレドモ、其海陸ノ聯絡-海
陸相互ニ協力スルト云フコトノ事實ハ一切認メヌ、先ヅ鐵道ニ付テ中村總裁ニ聽イタ、
大ニ荷物ガ支ヘテ居ルコトハ甚ダ困ルデハナイカ、其原因ハ申スマデモナク、一ハ日本ノ
海運ガ杜塞シテ居ル爲デアル、之ニ付テ鐵道院カラ玆ニ私ハ調ヲ貰ッテ居リマスガ、明
カニ書イテアルカラ序ニ此所ニ申シマスガ、鐵道ニ於テハ其主ナル原因ヲ舉グレハ、「各種
工業ノ勃興ニ伴フ建築材料、原料品、製品等ノ輸送增加シタルコト、次ニハ聯合國
行軍事品及雜貨類ノ輸送增加シタルコト、其次ニハ海運賃ノ暴騰ト、沿岸航路ニ於
ケル船腹ノ不足トニ依リ、從來海運ニ依レル貨物ノ鐵道輸送ニ移レルモノ少ナカラザル
コト海運貨物ノ鐵道ニ移レル事實ニ付イテハ、一々是ガ例示ニ遑ナシト雖モ、就中小
穩室蘭等ヨリ汽船ニテ本土ニ輸送セラレタル北海道產麥、牧草、木材類ノ新タニ靑
函聯絡航路ニ移レルガ如キ、或ハ大連埠頭ヨリ船積ニテ神戶橫濱ニ輸入セラレタル滿
洲產大豆、豆粕等ノ關釜連絡航路ニ移レルガ如キ其著シキモノデアル」是ハ申スマデモ
ナイ話、誰ガ考ヘテモ分ッテ居ル、是等ハ北海道ニ於テ從來ハ澤山ノ船ガ參ッテ居ッテ、其
船ガ參ラヌヤウニナッタモノダカラ、悉ク荷物ガ鐵道ニ集リ氣味ニナッテ居ル殊ニ鐵道ノ
運賃ハ、今日ハ依然トシテ元ノ通リデアルガ、海運ノ運賃ハ五層倍、十層倍ニナッテ居
ル、此運賃ノ點ノミデモ、鐵道ニ集ヲテ來ル、鐵道ハ如何ニシタ所ガ俄ニ單線ヲ複線ニ
スル譯ニモ行カヌ、又靑森ト函館ノ間ノ船ヲ急ニ增スコトモ行カス、積替等ニモ幾多ノ手
數ガ掛ル、故ニサウ輸送力ヲ增スコトノ出來ルモノデナイ、其根本ヲ糺サズシテ、其儘ニ見
テ居ルト云フコトハ甚ダ不親切デナイカ、之ニ對シテハ、定メテ遞信省ニ御掛合ニナッテ、
相當ニ海陸共ニ戮力シテヤルコトノ途ヲ講ゼラレタノデアラウカト云フコトヲ尋タ所ガ、
切左樣ナ事ハシテ居ラヌ、斯樣ナ事ハ如何ナ事デアル、遞信省ニ參ッテ私ガサウ云フコト
ヲ、言ッタ所ガ、遞信大臣曰ク、俺ノ方ニハ何處カラモサウ云フコトヲ言ッテ來ナイ、言ッテ
來タラ相談スル積リデアルト云フ御答デアル、是ハ私ハ嘘ヲ言フノデモ何デモナイ、第
船舶管理令ノ中ニ評議員ナルモノガアル、其評議員ノ中ニ鐵道ノ者ハ誰ガ居リマスカ、
農商務省カラモ出テ居リマスガ、鐵道カラ誰モ出テ居ラヌ、是マデ日本ノ國ノ運輸ハ、
海ト陸ト相俟ッテ行カネバナラヌ、必要ナル所ノ其產業運輸ノ調節ヲ圖ル爲メノ此管理
令ハ、其評議員ニ鐵道カラ誰モ出テ居ラヌト云フコトハ驚クベキ事デアル、海ト陸ト相
俟ッテヤルコトハ出來ハシナイ、ソレデ今鐵道ニ於テ矢張五六十万噸ノ荷物ノ滯貨ヲ見
テ、東京ニ於ケル物價ノ如キハ、先刻吉植君デ御坐イマシタカ、誰方デ御坐イマシタカ、
大ニ議論サレマシタガ、其通リ物價ノ高クナル一因ハ、運輸ノ不便ナル爲メニ高クナルコ
トハ明ナル次第、從前ヨリハ運賃ガ十五倍二十倍デ、東京デ出來ハシナイ、皆外カラ
持ッテ來ル、高クナルコトハ極ッテ居ル、鐵道が獨リ澤山ノ荷物ヲ抱ヘテ、色〓改良ノ方
針ヲヤッタ所ガ出來ナイト云フコトハ御尤ナ話デ、私ハ鐵道ノ盡力ヲ多トスル-多トス
ルケレドモ及ブコトハ出來ナイ、所謂不可能ノ事ハ出來ナイ、政府ニ於テ何等ノ統一ガ
付カヌカラ斯樣ナ事ニナルノデアル、船舶管理合ヲ活用スルトスレバ、第一斯樣ナ點カラ
大ニ救濟ノ途ヲ講ジナケレバナラヌ、ソコデ私ノ問ハントスルハ、今ノ如ク鐵道ノ滯
貨ガ五十万噸六十万噸溜ッテ居ッテモ、是ハ致方ナイト、ヂットシテ觀テ居ル御考
デアルカドウカ、鐵道院總裁ニ御尋シ、併セテ遞信大臣ニ此事ヲ御尋スル、船舶
管理令ハ斯樣ナ事ニ活用スルモノデナイノデアルカドウカ、甚ダ其意ヲ得ヌ話デ、何
ノ爲メニ緊急勅令ヲ以テ議會ノ開會ヲ待タズシテヤラレタコトカ薩張リ分ラヌ、其
次ニハ極メテ重大ナル本件ニ付テ問題ガアル、此事ニ付テハ私ハ總理大臣ニ篤ト
御聽取ヲ願ヒタイ、船舶管理令ハ前申ス如タ、當業者ニ對シテハ非常ナル大事ノ
關係ノ有ルモノデアル、當時我國ノ海運業ハ、殆ド兜町蠣殼町ニ於ケル取引市場
ノ如キ形デアッタ、色ミナ成金モ出マシタケレドモ、又損シタ者ヤ得シタ者ガアッテ、船ヲ
賣渡シタリ、買取ッタリ、貸シタリ借リタリスルコトガ一種ノ投機ノ如キ形ニナッテ居ル、之
ヲ制セントスルノガ今日ノ此管理令デアル、其內容ヲ少シク早ク知ルト知ラヌト云フコトハ、
大ナル影響ヲ及ボスモノデアル啻ニ形ノ上ニ於テ影響ヲ及ボスノミナラズ、金錢上損スル
カ得スルカト云フ所ノ、密接ナル最モ直接ナル關係ヲ及ボスモノデアル、爲メニ其取扱ハ何
所マデモ十分愼重ニナサナケレバナラヌモノデアルト云フコトヲ私ハ信ズル、然ルニ如何デ
御坐ル、是レノ發布以前ニ明カニ漏レテ居ル、第一九月七日ノ新聞、東京日日新聞、
此東京日日新聞ニハ、此事ニ付テ七箇條ノ條文トナッテ漏レテ居ル、骨子デアル-今
ノ船舶管理令ノ骨子デアル、ソレガチヤント漏レテ居ル、人ノ話カ或ハ噂カト云フノト違ッ
テ、第一條ハ何ミ、第二條ハ何ミ、第三條ハ何ミ、條項ヲ列記シテ漏レテ居ル、私ハ內
閣ノ事ハ知ラヌケレドモ、或ハ闇議ニ掛ケラレタ原案ノ如キモノデナイカ知ラヌト申スモノ
ガアリマス(拍手起ル)チヤント漏レテ居ル、次ニハ九月九日ノ神戶又新日報ニ、內田
某ガ船主同盟會ニ報告シテ居ル中ニ、是モ殆ド條ヲ舉ゲテ大要ヲ述ベテ居ル、更ニ進
ンテ九月二十一日ノ神戶又新日報ニハ、今ノ此管理令ハ新聞ニ漏レテ居ル、新聞ト
僅カニ違ッテ居ル所ハ、第四條ノ第二項ガ一項ダケ拔ケテ居ル、其外一二字句ノ修正
ガ違ッテ居ルダケデ、新聞ノ儘ニナッテ居ル(拍手起ル)誰ガ漏シタノデアル(「投機大臣
顏色無シ」ト呼フ者アリ)洵ニ奇怪千萬ナル話デアル、恐レ多クモ上御一人ノ御名ヲ
以テ、樞密院ニ御諮詢ニナッテ、發布サレル所ノ緊急勅令、而モ憲法第八條ニ據テ法
律ニ代ル所ノ緊急勅令、其結果ハ當業者ノ上ニ直接ナル、大ナル影響ヲ及ボス所ノ此
勅令、ソレガ九月二十八日ノ御發布前、卽チ九月二十一日ニ此全文ガ漏レタト申ス
ノハ如何ナル事デアル(拍手起ル)是ハ總理大臣ニ御伺ヒシタイ、總理大臣ハ御承知
ガ御坐イマスカ(「威信ヲ如何ニスル」ト呼フ者アリ)斯樣ナ事ハ是ハ少クトモ遞信大
臣ハ無論、總理大臣、其他連署サレタル所ノ各大臣ノ責任問題デアルト思フ(拍手起
ル)速ニ罪ヲ關下ニ待ツベキ所ノ大問題デアルト思フ而モ其事有ッテ以來、今日ニ
至ルマデ四箇月、未ダ曾テ政府ニ於テ之ニ對シテ何等ノ處置ヲ執ラレタト云フコトヲ承
ラヌ、本員ノ寡聞カ知ラヌケレドモ承ラヌ、又御詮議ヲ費サレタコトモ承ラヌ、官紀振肅
ヲ標榜サレル寺內總理大臣トシテ之ヲ如何ニ御認メニナル(拍手起ル)若シ今後之ト
類似ノ重大ナル法律、或ハ是レ以上ノ重要ナル法律ガ此通リ漏レテ、是ガ蠣殼町或ハ兜
町ノ相場ニ關係スルモノデアッタラ如何ニナサル(拍手起ル)何處カラ漏レタカ仕方ガナイ
ト晏然腰ヲ掛ケテ御濟シニナルカ、私ハ初メ又新日報ノ條交ヲ見テ、實ハ悚然トシテ
恐レタ、洵ニ不思議ナ事デアル、誰ガ漏シタノデアルカ、之ニ付テハ私ハ總理大臣ノ御意
見ヲ伺ヒ、併セテ內閣ニ於テハ如何ナル御詮議ヲ爲サレタモノカ、又今後爲サレントスル、
御考デアルカト云フコトヲ承リタイ(拍手起ル)今一ツ之ニ付テ餘程不思議ナ事ガアル
九月二十五日ノ報知新聞ニ斯ウ云フコトガ載ッテ居ル「遞信省ノ內田嘉吉ハ例ノ船舶
管理令ノ内容ガ政友會ノ側カラ漏レタノデアラウト言ッテ居ルガ、政友會ノ方デハ又內
田モ馬鹿ナ男ダ、寧ソノコト私ガ船舶業者ニ漏ラシタヤウニ思ハレテ困リマスト云ッタ方
ガ宣カッタデアラウニト笑ッテ居ル何方ガ何方デアルカ」斯ウ云フ記事ガ出テ居ル、此ニ至ッ
テ私ハ何トモ評シヤウガナイ、或ハ之ニ依ッテ見ルト、先ヅ以テ政友會諸君ニ內閣ガ示シ
テ、御意見ヲ伺ッタヤウニモ考ヘルケレドモ、眞逆左樣ナ事ハアルマイト私ハ考ヘル(「ソン
ナ記事ヲ捉ヘテ何ヲ言フ」ト呼フ者アリ)ソレカラ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=52
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053・大岡育造
○議長(大岡育造君) 靜肅ニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=53
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054・正木照藏
○正木照藏君 遞信大臣ガ此管理令ハ非常ニ能ク切レル所ノ刀デアル、拔カヌ太刀
ノ功名ト云フコトヲ心懸ケテ居ルト云フコトヲ言ハレタト云フコトモ聞キマシタ、續イテソ
レニ依リマスト、或人ハ斯ノ如ク全文ガ漏レタノハ、遞信大臣ガ此鞘ノ中ニハ村正ノ
刀-能ク切レル村正ノ刀ガ這入ッテ居ルカラ、抛ッテ見セテヤッタノデハナイカト云フ說
ヲ爲シテ居ル者モアル、若シ果シテ然ラバ言語道斷ナ語デアル、官紀振肅ノ實孰レニ在
ルヤ、私ハ善意ニ解釋シテ全然左樣ヲ事ガ有ラウ筈ガナイト思ウテ居ル、荀モ堂々タル一
國ノ大臣ガ、左樣ナ小策ヲ弄スベキ筈ハナイト考ヘルゝ是ハ所謂齊東野人ノ語デアルト
考ヘテ居ル、若シ果シテ私ノ言ウタ事實ガアッタナラバ、寺內大臣ニ於テハ淚ヲ揮シテ馬
謖ヲ斬ルト云フ決斷ガ無ケレバナラヌト思フ、私ハ左樣ハ信ゼヌ、孰レ外ヨリ漏レタモノト
思フ、冀クハ其筋ヘ御詮議アッテ、政友會ノ爲メニモ寃罪ヲ雪ガレルト云フコトガ當然ト
信ズル······(「何ヲ言フ」「馬鹿言フナ」「政友會トハ何ダ」「生意氣ヲ言フナ」ト呼フ者ア
リ議場騒然)次ハ此管理令ノ中ニハ遠洋航路ノ補助ト·······(「何ヲ言フ」「取消セ取消
セ」「何ノ爲ニ傾聽シテ居ル」「政友會ガ何ガ寃罪ダ」「抗議ヲ呈シマス」「報知新聞ハ何
ダ」ト呼フ者アリ議場騒然)ソレハ私ガ敢テ自分ノ說ヲ言フノヂヤナイ(「議長御許シニナ
リマセヌカ議長御許シニナリマセヌカ」「エラサウナ顏ヲシテ何ダ」「懲罰ニ附セ」ト呼フ者
アリ議場騒然)取消スガー必要ナレバ此處デ謹ンデ取消シテ置キマス、取消スガ必要
ナレバ私ハ爰デ政友會諸君ニ對シテ取消シテ置キマス、是ハ私ハ枝葉ノ議論デアリマス
カラ取消シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=54
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055・大岡育造
○議長(大岡育造君) 明カニ取消シニナリマシタカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=55
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056・正木照藏
○正木照藏君 左樣デ御坐イマス、ソレカラ次ハ此管理令ト遠洋航路ノ補助法トハ
大ニ關聯シテ、卽チ遞信大臣モ此船舶管理令ノ說明中ニ、遠洋航路補助法ハ之ヲ維
持スルト云フ所ノ必要ヲ說カレテ居ッテ、其理由トシテハ斯ウ云フコトヲ言ハレテ居ル「現
在ノ命令航路ハ平時船價ノ極メテ低廉ナルトキノ計算ニ基キ成立シタルモノナルニ依リ
恰モ傭船料ノ最廉ナルニ當リ、傭入ヲ約シタル船舶ハ依テ生ズベキ運賃モ亦低廉ナルヲ
得ルガ如ク他ノ自由航路ニ比スレバ〓ネ半額以下ノ運賃ニ限定セラレ是ニ依テ貿易上
現ニ公衆ノ享クル利益ハ實ニ鮮少ニ非ズ今是ヲ解除スルハ寧ロ受命會社ニ利益ヲ與フ
ベキモ公衆ニ損害ヲ受クルモノナルヲ以テ海運政策上是ヲ存續スルハ實ニ必要ノ措置タル
ニ因ルナリ」是ハ甚ダ驚キ入ッタ理由、遠洋航路ノ補助ハ、或品物ヲ、卽チ運賃ヲ非常
ニ一方ニ於テ安ク下ゲサセテ置イテ、片一方ニ多クノ補助ヲ與ヘルト申スモノデナイコト
ハ爰ニ私ガ說クマデモナイ話デアル、當時海運上ノ狀態ハ非常ニ變化シツヽアル故ニ、前
ノ內閣ニ於テハ此遠洋航路ノ補助ヲ受命會社ト共ニ契約スルニ方ッテ、議會ニ於テハ
四箇年間ノ期限ヲ定メテ置イタニモ拘ラズ、之ヲ二箇年ニ短縮シテ、其時局ノ變化如
何ヲ俟ツコトニシテ置イタンケ、其內時局ハ如何ニ變化致シタカト申シマスト、海運界ハ
益〓繁昌デアル、受命會社ハ孰レモ非常ナル多クノ配當ヲシテ居ル、最モ航路補助ト會
社補助トハ違ヒマスカラ、私ハ會社ガ繁昌デアルカラ、必ズ此航路ガ繁昌トハ申シマセヌ
ケレドモ、全斑ヲ見テモ其一斑デ推スコトハ難カラヌ、各受命航路モ大ニ好成績ヲ收メ
ツヽアルト云フコトハ分リ切ッタ話デアル、然ルニ此契約ヲ新タニスルニ方ッテ、尙從前通
リ補助金ヲ與ヘルコトヲ必要ナリトセラレタ理由ハ何處ニアルカ、是等ノ歐羅巴航路、
亞米利加航路、南米航路等ハ夫ダケノ不足ヲ補助センケレバ、尙ホ成立チ得ヌ今日狀
態ナルヤ如何デアルカト云フコトヲ承ハリタイ、私ガ遞信大臣ニ逢テ御尋シタ時ニ、遞
信大臣曰ク、今日ハ數字上ノ問題デハナイ、引合ウカ引合ハナイカ調ベテ居ラヌ、運賃
ヲ安クスルノガ必要デアルカラ、今日ハ儲カルモノヲ儲カラヌヤウニシテヤッテ居ルト、斯
ウ云フ話デアッタケレドモ、ソレハ遠洋航路ノ補助ヲ、全然取違ヘタ御話デアッタ、私ハ
其時ニハ笑ッテ御別ヲシタ、然ルニ遞信大臣ハ其意思ヲ實行サレテ、同年一月頃二箇
年ノ契約ヲナサレタ、航路ノ補助ハ申スマデモナク國家ニ取テハ必要ナル航路デアルケレ
ドモ、何分民間ノ自營ニ任セテハ成立ツコトハ出來ナイ、其收支ガ償ハナイ故ニ、其不足
ヲ補助シテ成立タヽスノガ精神デアル、如何ニ航路ガ必要デアルト雖モ、自立スルモノニ
對シテ、補助スル精神デナイコトハ分ッテ居ル、又一旦補助シテ居ッタモノデモ、旣ニ成
立スレバ其補助ヲ廢シ、或ハ減ズルト云フコトハ從來執リ來ッテ居ル所ノ方針デアル、譬
バ日本內地ニ於テ小樽ヨリ神戶ニ行ク所ノ東廻リ航路ノ如キ、長ク補助シテ居ル、
又日本カラ最モ必要ナル孟買航路ノ如キモサウデアル、追〓自立ノ域ニ至ッタカラ、其補
助ヲ廢シ、今日ハ立派ニ獨立ヲ致シテ居ル、必要航路ニ其他ニハ「カルカッタ」ノ如キモア
ル、又巴奈馬航路ノ如キモアル、國家ニ對シテ洵ニ必要デアルケレドモ、孰レモ成立スル
コトヲ得ルカラ補助セズシテ濟ンデ居ル、是ハ國ノ爲メニ大ナル仕合デアル、今ノ歐羅巴
航路デ御坐イマセウトモ、亞米利加航路デ御坐イマセウトモ、若シ果シテ旣ニ成立ノ域
ニ達シ居ルナラバ、其成立ヲ奬勵スルト云フコトハ、當然ナル話デアル、儲カルベキ所ニ
金ヲ儲ケサセヌヤウニシテ、或ハ當リ前ノ運賃ヲ取ラセズシテ、十分收入ノアルモノヲ殊
更ニ其運賃ヲ制限シテ置イテ、片一方カラ國民ノ膏血ヲ絞ッタ租稅カラ是ヲ補助スル
ト云フノハ、甚ダ間違ツタ事デアリハシマイカト思フ、私ハ其委シイ數字ニ就テ遞信省ニ
示サレンコトヲ求メタケレドモ、遞信省ハ之ニ應ジナカツタ故ニ、委シイコトハ知リマセヌケ
レドモ、遞信省ニ於テハ此契約ヲ新タニザレルニ付テハ遠洋航路補助法施行細則ニ
依ッテ、受命會社カラ收支豫算ヲ取リ、一航海幾ラ、一箇年幾ラト云フ收支豫算ヲ御
取リニナッテ、此收支豫算ト申スモノハ、最近ノ成績ニ依テ拵ヘルモノデアル故ニ、先ヅ正
確ニ近イモノデアル、此度ノ補助ヲ繼續スル如キモ、卽チ命令サレタ時ニ付テモ、此收支
豫算ヲ御採リニナッタニ違ヒナイ、其成績ガ如何デアルカト云フコトガ承リタイ、今日本ノ
財政ハ增稅マデモ必要トスルヤウナ場合ニ當ッテ、此四五百万圓ノ財源ハ其儘ニシテ繼
續スルト云フノハ、整理ニモ節約ニモナッテ居ラヌ、私ハ大藏大臣ガ是ニ同意ヲ表セラレ
タト云フコトハ、不思議ニ感ジテ居ル、大阪商船會社ノ如キハ辭退シマシタ、遠洋航路ノ亞
米利加航路ノ補助ヲ辭退シタイト云フコトヲ願書ヲ出シタ、最早今日ハ補助ヲ受ケナ
クテモ、基礎ハ確定シテ獨リデヤリマスカラ、之ヲ辭退シタイト云フ願書ヲ出シタ、運賃
等ハ決シテ上ゲマセヌト云フ願書迄出シテ居ル、ソレニモ拘ラズ、尙之ヲ繼續サレタ理由
ハ如何デアルカ、其航路ノ收支計算ハドウテアルカト云フ事ガ承リタイ、何レ此上ノ詳細
ニ付テハ又管理令ノ委員會ニ於テ御討究ニナルコトヽ考ヘマスカラ、此處ニハ省キマス、
以上述ベタ如ク遞信大臣ヨリ詳細ナル御說明ガ承リタイ(拍手起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=56
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057・廣岡宇一郎
○廣岡宇一郞君 私ハ唯今ノ質問者ニ對シテ質問ガ致シタイ、極ク簡單デアリマスカ
ラ此席ヨリ述べマス、唯今正木君ガ質問ヲ爲シ居ル事ハ、彼ノ報知新聞ノ記事ヲ根據
トシタモノデアリマス、私共一體憲政會ノ機關新聞タル報知新聞ノ記事ヲ信用スル者デ
アリマセヌ、併ナガラ斯ノ如キ捏造記事ニ依テ、世人ヲ誤ラシムル虞ガアリマス、故ニ當
時私ヨリ內田遞信次官ニ交涉シテ、其事實ノ有無ヲ確メマシタ所ガ、此ノ如ク內田君
ヨリ明言シタコトハ無イト云フ結果、內田君ヨリ報知新聞ニ交涉シテ唯今正木君ノ朗
讀サレタ記事ハ、四日ニ於テ、報知新聞紙上ニ前記ノ記事ハ取消シタノデアル、旣ニ報
知新聞ソレ自身ガ取消シタニモ拘ラズ、質問者ハ尙ホ此質問ノ主意ヲ貫カントスルノデ
アルカト云フコトヲ聽カント欲スルノデアル
(「取消スヘシ」「必要ナシ」ト呼フ者アリ發言スル者多シ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=57
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058・大岡育造
○議長(大岡育造君) 各自ノ私語ハ愼マレンコトヲ希望シマス-正木君如何デス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=58
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059・正木照藏
○正木照藏君 新聞デハ取消シタト云フコトハ承知シマセヌ、若シ取消シテアルナラバ
私ノ言フコトハ取消シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=59
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060・廣岡宇一郎
○廣岡宇一郞君 然ラバ私ハ玆ニ報知新聞ガ、明ラカニ取消シタト云フコトヲ責任ヲ
以テ言明シマス、正木君ハ明カニ取消スト一云フコトヲ言明セラレンコトヲ希望シマス
(「言明シタ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=60
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061・大岡育造
○議長(大岡育造君) 廣岡君、今正木君ハ報知新聞ニ取消ノアルコトヲ知ラナン
グ、若シサウナレバ取消シマスト斯ウ申シマシタカラ、ソレデ宜シクハアリマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=61
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062・廣岡宇一郎
○廣岡宇一郞君 宜シウ御坐イマス、以來愼ムヤウニ
〔國務大臣男爵田健治郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=62
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063・田健治郎
○國務大臣(男爵田健治郞君) 正木君ニ御答致シマスガ、正木君ノ御質問ハ頗ル
多端ニ亙リマシテ、中ニハ御質問ノ主旨ヲ能ク伺ヒ兼ネル點モアリマシタガ、私ノ聽イタ
限リニ於テ御答ヲシヤウト思ヒマス、昨年ノ特別議會ノ豫算委員會ニ於テ、正木君ノ
私ニ對スル海運業ニ對スル種々御尋ガ御坐イマシタ、夫ニ向ッテ私ガ御答シタ所ハ、是
ハ其時ノ速記錄ニ載ッテ居リマスカラ、一々ソンナ事ハ申上ゲンデモ、多ク御諒承ノコトデ
アラウ、元來其節正木君カラ此船舶ノ拂底、及ビ賃錢運賃ナドノ暴騰ニ付テ、政府ハ
是ニ對シテ何カ方法ヲ設クルノ意思ガアルヤ否ヤト云フ御尋デアッタノデアリマス、其時ニ
私ハ今日ニ於テマダ其時機ニ達シナイト云フ御答シタノガ大體ノ主意デアリマス、此事
勿論中ミ重大ナ事デアリマシテ、私ハ現ニ一昨年ノ夏大隈內閣ニ於テ、經濟調査會
ト云フモノヲ組織セラレマシテ、私モ其一人トシテ交通ノ方ノ委員ニナッテ、昨年ノ夏大分
永イ間總理大臣ノ官舍デ此問題ヲ〓究シタノデアリマス、此交通部ノ問題ニ第一出タノ
ガ卽チ船腹調節ト云フ問題デアリマス、此船腹調節ノ問題ト云フモノガ別レテ、所謂外
國ヘ船ヲ貸ストカ、賣ルトカ、若クハ運賃ノ騰ルノヲ如何ニシタラ制スルコトガ出來ルカ、
或ハ保險ノコト、造船ノ事、凡ソ海運ニ關スル百般ノ事、有ラユル事ガ〓究セラレタノ
デアリマス、是ニハ前內閣ノ閣僚モ、無論總理大臣ハ會長トシテ、閣僚ハ副會長トシ
テ、此席ニモ御列席ニナッテ居ル方ハ皆御承知ノコトデアリマス、又委員モ歷々タル方ガ、
其交通部ノ委員ニ澤山御出ニナッタ、吾ミガ其〓究スル時ニ、現ニ正木君ガ昨年豫算
委員會ニ於テ尋ネラレタ問題ハ、殘ラズ〓究セラレタ問題デアリマス、是ハ餘程細カク永
イ間〓究セラレタ所ガ、其時ノ結論、其問題ガ如何ナル所カラ出タカト云フト、斯ウ船
ガ拂底デハ今後運賃ガ上ッテ困ル、成ル程其時ニハ傭船料ガ二十圓ト云フ相場ノ出
タ時デアリマス、夫ハ二十圓ト云フト、一寸平時ニ比ベルト十倍ノ運賃ノ相場ノ出タ時
デアル、是デハ困ルカラ何トカシナクテハナラヌデハナイカト云フコトヲ、生產業者若クハ貿
易業者ト云フヤウナ側カラ、色〓意見ガ出タノデアリマス、所ガ其討究ノ結果、今日ハマ
ダ其時機ニ達シナイト云フ論結ニナッタノデアリマスガ、要スルニ此船ヲ外國ニ賣ルトカ、
貸ストカト云フコトヲ止メル、制限スル、若クハ賃錢ヲ制限スルト云フヤウナコトハ、國民
ノ財產權ニ向ッテ非常ナ牽束ヲ加ユルモノデアル、卽チ非常權デアルカラ、國家ノ生
存、國民ノ生活上、捨テヽ置カレヌ場合ガ來タナラバ、是ハ如何ナル非常權モ振ハザルヲ
得ヌデアラウケレドモ、今日此經濟狀態ノ利害得失ヲ見ル場合ニハ、斯カル非常權ヲ振ッ
テ而シテ國民ノ財產權ヲ拘束スルトカ、或ハ犧牲ニスルトカ云フコトハ、マダ其時機ニ達
シナイモノデアルト云フ論結ニナッタ、其論結ガ總會ニ出マシテ、總會ハ卽チ御承知ノ通
リ大隈首相ガ會長トセラレマシテ、私ハ其交通部ノ主任トシテ、其交通部ノ結論ヲ報告
致シタノデアリマス、其報告ニ向ッテ一人ノ異論者モ無イ、卽チ經濟會全會一致ノ
決議デ通ッタノデアリマス、其經過ガ改マルヤ否ヤト云フノガ問題ナノデアル、詰リ昨年ノ
四五月頃ニ至ッテ、又一昨年ノ四五月頃ノ狀況ガ現レテ參ッタノデアリマス、丁度昨年
ノ特別議會ノ開ケタ時分ハ、マラレヨリ少シク騰テテリシシケテド、前ノ經濟會
ノ決議ヲ引繰返シテヤル程ノ、マダ程度デナイト吾ミハ認メテ居ッタノデアリマスカラ、丁度
七月八月、八月ノ末九月ト云フ頃ガ極點ニ急ニ暴騰シタノデアリマス、是ハ物價表ヲ數
字デ現シテ見ルト云フト明カニ分ッテ居ルノデアリマスガ、七八月ノ經過ニ於テ最早所謂
國家ノ生存或ハ國民ノ生活ニ於テ、非常ナル何トカ處置ヲ付ケナクテハナラヌト云フ時
期ガ到達シタト云フコトニナルノデアリマスルカラ、私ノ昨年御答シタノハ、マダ前內閣ノ
時ニ決議サレタ所ノ輿論ノ決議ヲ、變更スル時期ニ達シテ居ラナカッタト云フ時期デ
アッタト御承知ヲ願ヒタイ、ツレカラ亞米利加ノ鐵ノ事ト、管理令トノ關係ハ如何トムフ
御尋ノ點ガ一ツアル、其亞米利加ノ鐵ノ禁止ガ出タ爲メニ、管理令ヲ拵ヘタカノ如キヤ
ウナ御解釋デモアルヤウナ御口氣ニモ見エマスガ、決シテサウ云フヤウナ譯デハナイノデアリ
マス、私ハ亞米利加ノ鐵ノ事ガ管理令ニ毛頭關係ガ無イトハ申シマセヌト同時ニ、亞米
利加ノ鐵ノ問題ハ管理令ニ關係ハアルニシテモ、ソレハ一部ニ過ギナイト云フ程度デアル
ト云フコトヲ申シテ置キマス、ト云フモノハ此管理令ノ制定ハ、外國トノ關係モ多ク御
坐イマシタ、其外國ト云フノハ亞米利加ノ鐵バカリデモナイノデ、他ノ聯合國トノ關係モ
澤山アルノデアリマス、而シテ又內國トノ關係モ、最モ多イ一部分デアッタノデアリマス、
其點ニ付テハ吾〓ハ實際ヲ申上ゲルト云フト、內國ダケノ事ニ付テ、內國デモ海外貿易
ガ多ク御坐イマスカラ、內國人ガ海外デ商賣ヲシ、貿易ヲスル上ニ付テ、斯クドウモ船
腹ガ不足ニナッタ時ハ、モウ商業ハ破滅デアル、斯ク運賃ガ昂ル時ニハ貿易ガ破滅テアル
ト云フコトハ、私ハ之ヲ形容シテ、管理令ノ發布前ニハ、吾〓ハ生產業者貿易業者ノ
爲メニ、每日包圍攻擊ヲ受ケテ居ッタノデアルト云フコトヲ、現ニ形容シテ申シタ
ノデアリマス、管理令ヲ發布スルト云フト、今度ハ船舶業者ノ爲メニ包圍攻擊ヲ受ケタ
ト變シテ來タ、詰リサウ云フ事情ガ御坐イマシタガ故ニ、此管理令ノ必要ヲ感ジタト云云
コトハ、諸種ノ關係ガアルト云フコトヲ申上ゲルノデアリマスルガ、詰リ亞米利加ノ鐵ノ
問題ガ如何ニ關係ガアルカト云フナラバ、亞米利加ノ鐵ノ問題ガ若シモ起ラズシテ、卽
チ自由ニ亞米利加カラ鐵ガ輸入シタナラバ、此船ヲ賣ルトカ貸ストカト云フコトニ就テ
モ、幾ラカ寛容ナル手段ニ出テモ宜カッタカモ知レマセヌ、何トナレバ免ニ角亞米利加
カラ鐵ガドン〓〓入ルト云フコトニナレバ、我造船業ハ餘程發達シテ居ルノデ御坐イマス
カラ、後カラ新イ船ガドン〓〓出來レバ、多少船ヲ餘所ヘ讓ッタリ何カシテモ、日本ニ必
要ナ船ダケハ後カラ出來ルト云フ望ガ有ルノデアリマスルケレドモ、亞米利加カラ鐵ノ入ラ
ナイト云フコトニナッタ曉ニハ、有ル所ノ船ヲドン〓〓人ニ賣ッタリ貸シタリスルヤウナ事ガ
出來マシテハ、ソレコソ日本ニ船ノ饑饉ガ起ルト云フ虞ガ目前ニ現ハレテ來ルコトハ、是ハ
數字ノ明カニ示ス所デアリマスルガ故ニ、亞米利加カラ鐵ノ入ル見込ガナイト云フコトヲ
知ル以上、賣ルコトヲ餘程取締ラナクテハナラヌ、貸スコトモ亦取締ヲシナクテハナラヌト
云フコトガ、玆ニ起ル理由デアリマス、是等ノ點カラ亞米利加ノ鐵問題ガ管理令ニ關
係ガアルト云ヘバ、夫等ノ點カラ起ルノデアリマス、ソレカラ此亞米利加トノ交涉ニ就テ
色〓御批評ガアッタ、素人ダトカ、無才無能ダトカ、御批評ガアリマシタガ、私ハワンナ
御批評ニ對シテ、一々御答スル餘地ハ持チマセヌカラ、是ハ御答致シマセヌ(正木照藏
君「十五万噸ノ點ヲ御答ヲ願ヒマス」ト呼フ)詰リ十五萬噸ト仰シヤルノハ、惟フニ日
本カラ船ヲ貰ヒタイト亞米利加カラ言ッタ時ニ、十五萬噸マデハ渡サウト言ッタ、ソレヲ
如何ニシテ渡スカト云フ事デアラウト存ジマス、此點ハ無論愈〓〓談談ガアッタナラバ、渡ス
コトニ就テ私ハ成算ヲ持ッテ居リマス(「承リマセウ」ト呼フ者アリ)ソレデ此評ニ對シテ如
何ニシテ渡ストカ云フヤウナ事ヲ、今日モウ問題ガ濟ンデ了ッタ時ニ、其政策ナドヲ此處
デ御答スル筋ノモノデナイト思フ、唯ダ私ガ一言云フテ置カナケレバナラヌノハ、其事ヲ此
頃航路補助ノ問題ガ後デ極ッタモノヲ援引シテ、三會社ニ持ッテ行ッテ船路補助ヲ繼續
シテヤルト云フコトヲ暗示シテ、サウシテ船ヲ出サセルヤウナ、遞信大臣ハ考ヲ持ッテ居リ
ハシナイカト云フヤウナ御言葉ガアルヤウニ聞エマシタガ、間違ッテ居ッタラ無論宜ウ御坐
イマスガ、若シサウ云フヤウナ疑惑ヲ挾ンデ御坐ルト云フト、是ハ一言シナケレバナラヌ、
是ハ怪シカラヌ話デアル、怪シカラヌ話ト云フモノハ、此航路補助問題ト云フ事ト、此十
五萬噸ヲ其時ニ出スト云フ事ハ餘程問題ガ違フ、而已ナラズ現ニ航路補助ノ事ヲ三會
社ニ言フタノハ、ソンナ問題ヨリ後ノ事デアル、デアリマスカラ、コンナ事ニ何等關係ノナイ
問題デアル、又航路補助ヲ續ケテヤラウカラト云ッテ、有難味ヲ著セルヤウナ航路補助
ノ問題デナク、寧ロ三大會社ハ、義務トシテ航路補助ヲ繼續スルコトヲ受ケタト云フテモ
宜シイ狀態デアリマスカラ、決シテ恩惠ヲ施シタナドヽ云フ次第デナイコトハ、是ハ正木サ
ンニハ御分リノアリサウナモノダト思ヒマス(「其通リ」ト呼フ者アリ)リレカラ次ニ管理令ノ
效果如何ト云フ御尋テ御坐イマシタガ、此事ハ唯今先ヅザット本案ニ就テ說明申上ゲ
テ置イタ通リデアリマスルガ、之ニ就テ尙御尋デアリマスカラ申上ゲマス、是ハ私ハ聯合與
國ヘ對シテモ、此管理令ノ處分トシテ、船ヲ十三万噸以上ノ讓渡ヲ許可シ、又十四万噸
以上ノ聯合國ノ傭入ト云フコトヲ許可シタト云フコトハ、卽チ聯合與國ニ對シテ、我國
ガ相當ノ航運上ニ對シテ、援助ヲ與ヘテ居ルモノダト云フコトヲ明言スルヲ憚カラヌ積リ
デアリマス、而シテ又內國ノ事ニ就テハ、嚮ニモ申上ゲタ通リ、非常ナ船腹拂底ト云フ
コトガ、甚シキ訴ヲ私ハ受ケテ居ルカラ其訴ハ管理令施行後ニ於テハ、所謂包圍攻擊ガ
變ッタ、卽チ船腹ノ不足、運賃ノ暴騰ノ爲ニ吾ミガ日々數人若クハ十數人ノ人ニ包圍
攻擊デ迫ラレテ居ッタモノガ、ピタット來ヌヤウニナッテ、今度船舶主ノ方カラ斯ウ云フ事
ヲシテハドウモ儲ガナクナリマス、吾ミハ困リマス、困難ニ陷リマスト云フ方面ニ變ッタ事ヲ
以テ見テモ、明カニ如何程功ヲ奏シツヽアルカト云フコトヲ認メ得ラルヽノデアリマスガ、之
ヲ實質的ニ形容シマスルナラバ、丁度橫濱ト門司トノ石炭ノ運賃ガ、十一圓ナニガシマデ
ニ騰ッタモノガ、今デハ先ヅ七圓カラ八圓ソコ〓〓ニナッテ居ル、而シテ遠洋航路ノ船ガ、一
番高値ハ四十七圓マデ騰ッタモノガ、今デハ先ヅ三十圓カラ三十二三圓ニ下ッテ居ル、
近海ノ方ハ三十五圓位マテ騰ッテ居ッタモノガ、今デハ先ヅ二十圓カラ一一十二三圓ニ
下ッテ居ル、約三分ノ一下ッテ居ル、卽チ三割三分程ノモノガ下ッテ居ルノデアリマス、デ
之ヲ又世界的ニ言ウタラバマダ高イト言ヒマス、高イト言ヒマスルガ、免ニモ角ニモ管理令
發布ノ時ニ於テハ、ドコマデ行クカ分ラヌ、詰リ四十七圓ダトカ、四十五圓ダトカ云フモノ
ハ、平時ノ値段ニスレバ二十二三圓位ノモノデアリマス、今下ッタト雖モ尙十五倍-
三十圓ト假リニ見ルナラバ、遠洋航路ノ船ガ十五倍ノ價ヲ有ッテ居ルモノデアリマスカラ、
尙高ウ御坐ルコトハ確カデアル、アルケレドモ今申スヤウニ一時ノ一番高イ時ノ値段ニ比
スルナラバ、三割三分程ノモノガ平均ニ下ッテ居ルト云フコトハ、確カニ管理令ノ效果ガ
現ハレタト云フコトヲ申シ得ルデアラウト思ヒマス、而シテ船ノ方ニ付テモ一時船腹ガ不足
ノ爲メニ、彼方ニ停滯スル、此方ニ停滯スルト云フ譯デ、海外輸出ノ貨物ハ非常ナ停滯
ヲ訴ヘテ居リマシタガ、ソレガ近頃管理令施行以來、段々亞米利加航路若クハ印度航
路ナドニ向ッテ、餘程船腹ヲ廻スコトヲ勸告シ、勸誘シテ見マスルト、今日デハ或ハサウ
云フ所ニ向ッテハ最早船腹ガ此ニト餘リハセヌカナドヽ一云フ說サヘモ、往々聞クノデアリマス、
荷物ノ足ラヌ所ガ印度航路ニ或ハ出來テ居ルト云フヤウチ有樣ヲ承リマスデ兎ニモ角
ニモ此荷物ノ消長ナドト云フコトハ、大抵一律ニハ參ラヌモノデアリマスカラ、或ハ場合
ニ依ッテハ貿易ノ模樣デ非常ニ忙シイ時モアリ、忙シクナイ時モアリマセウガ、要スルニ種々
ニ此貿易業者、生產業者ナドカラ東京ナドデモ、現ニ玩具ノ出ルノハ一時百萬圓位出
タモノガ、今年ハ五百萬圓位ノモノヲ生產シテ居ル、其生產者ハ何人カト云ヘバ裏長
屋ニ住ッテ居ル所ノ十萬人ノ家族的職工デアル、是ハ船賃ガ暴騰シ船腹ガ不足ノ爲
メニ此玩具ガ出ヌヤウニナル時ニハ、十萬人ノモノガ其職ヲ失フ、之ヲドウシテ呉レルト
云フマデ吾〓ハ悲慘ナル訴ヲ承ッテ居ルノデアリマスガ、先ヅ免ニモ角ニモ是等ニ付テハサ
ウ云フ訴ハ段々少ナクナッタ、併シ決シテ之ヲ以テ滿足トハ申サレマセヌ、又社會二ハ之
ニ向ッテ不足ヲ訴ヘル者ガアリマセウガ、一時昨年ノ管理令發布前ノ頃ニ比ベタナラハ、
今日ハ餘程緩和サレテ居ルト云フコトハ申シ得ルノデアリマス、次ニ鐵ノ滯貨等ノ御尋
デ御坐イマシタガ、是ハ先刻ノ正木君ガ仰シヤッタ通リ、私ガ正木君ニ曾テ御答ヲシタ
事ト同ジ事デ、マグ此問題ニ付テ問題ヲ提起サレテ居リマセヌカラ、私ハ鐵ノ滯貨如何ニ
付テ御答ヲスルト云フコトハ御免ヲ蒙ツテ置キマセウ、ソレカラ次ニ此管理令ガ漏レタト
云フコトモ、マア大層ナ御叱リデアリマシタ、是ハ吾ミモ驚キマシタ是ハ吾〓初メ東京日日
新聞ニ出タ時ニモ餘程驚イテ、種々取調モシテ見マシタガ、何分ニモ分ラヌ、如何ニシテ
出タカト云フコトガ分ラヌ、其後神戶ノ新聞ニモ出テ居ルト云フコトデ、又送ッテ呉レタ
人モアリマシテ見マシタ所ガ、如何モ原案ラシイモノデアル、違ハヌモノデアル、尙驚イタノ
デアリマスガ、是ハ如何ニモ漏レマシタガ、甚ダ此點ニ付テ吾ミハ斯ク及ブダケノ注意ヲシ
テ、斯ウ云フ大切ナモノガ万一ニモ漏レテハ相成ラヌト云フコトヲ前以テ注意ヲシテ、チッ
ト蒟蒻版ヲ摺ルノニモ非常ナル監督モ附ケ、非常ナル注意ヲ拂ッテ居ッタンデアリマス、如
何ニセンドウ云プ次第デアリマンタカ漏レマシタ、是ハ甚ダ遺憾ノ次第デ御坐イマスガ、是
ガドウ云ウ手筋デ漏レタカト云ウヤウナコトガ、若シモ證明サレルヤウナ場合ガ出來テ、是
ガ官吏デアルト云ウコトデアリマシタナラバ、無論之ニ付テ相當嚴重ナ處置ヲ施スベキハ
勿論デアリマスガ、奈何ニセン今日如何ニシテ漏レタカト云フコトヲ證明スルコトガ出來マ
セヌノデアリマス〔笑聲起ル「誰カ責任ヲ負フカ」ト呼フ者アリ〕ソレカラ最後ニ御尋ニナッ
タノハ遠洋航路補助ノ繼續ノ關係ヲ御尋ニナリマシタ、デ此事ハ頗ル複雜ナ事デアリ
マスルカラ、詳シイ事ハ何レ委員會カ何カノ場合ニ於テ詳細申述ベヤウト思ヒマスガ、併
ナガラ大體ダケハ此處デ御答ヲシテ置ク必要ガアラウト思ヒマスカラ、極メテ大要ノ事ダ
ケヲ申上ゲテ置キマス、此遠洋航路補助ハ帝國議會ニ於テ四年ノ繼續事業トシテ協
贊ヲ經ラレ、而シテ前內閣ガ之ヲ當業會社ニ命令スル場合ニ於キマシテ、偶〓戰時中
デアルカラ如何ナル變態ニ因テ變ヘナクテハナラヌト云フ譯デ、二年ノ-四年ヲ半分ニ
シテ二年ダケノモノニ變ッタノデアリマス、此變ッタ時ノ事ナドモ遞信省ニハ皆書類ガアリ
マスカラ、能ク判明シテ居リマスルガ、是ハ詰リ言ヘバ尙此儘繼續スル必要ガアルカラ、一
層局面ヲ改メナケレバナラヌト云フ必要ガ生ジテ來ルカモ知レヌト云フコトデ、一一年ニシテ
アッタノデアリマス、所ガ段々其後ノ經過ヲ見ルト云フト、當時改メニヤナラヌヤウナコト
ガ出テ來ルカ、尙繼續スルノ必要ガ强クナルカト云フ點ニ於テ、事實尙ホ繼續セニヤナラヌ
必要ガ强クナッタト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、此點ニ就テハ詳シク申述ベレバ非常
ニ冗長ニナルデ御坐イマセウガ、要スルニ是ハ主トシテ海外貿易ノ事デアリマスルガ、吾ミ
ハ此外國貿易ニ付テノ船腹ト云フ事ニ付、又船ノ運賃ト云フ事ニ付テ、非常ナル要
求ヲ受ケテ居ルノデ、是ハナカ〓〓澤山ナ例ガ御坐イマスガ、モウ諸方ノ生產業者、或
ハ貿易業者、或ハ商業會議所、或ハ遠イ所デハ亞米利加布哇アタリカラモ澤山ナ書
面ナドガ參リマシタガ、此海外貿易ノ船腹ガ足ラヌト云フコトヽ而シテ船腹ガアッテモ、
船賃ガ餘リニ暴騰シテハ、貿易ハ全ク閉塞サレルト云フコトニ付テハ、各種ノ方面カラ
參ッテ居ル、其モノニ就テ一々調ベヲシテ見マスルト、成程此戰時事業ト言ハレルヤウナ
品物デアリマスルト、運賃ノ高下ナドハ左程ノ苦ニハシナイ、サウ云フヤウナ工業者ナドハ、
例ヘテ見レバ銅デアルトカ、鐵砲彈ヲ造ルト云フヤウナ類ノヤウナモノデアリマスレバ、軍需
品ノヤウナモノデアリマスルトヽ非常ニ儲ケガ多イノデスカラ、運賃ノ上ツタリ下ッタリスル位
ノコトハ、餘リ苦ニシナイ、船腹サヘアレバ宜シイト言ッテ居リマスガ、從來我國ニ於テ重
要物產ト稱セラレ、永年亞米利加ナリ其他ノ所ニ出サレテ居ル物資ニ至リテハ、決シテ
サウデナイ、詰リ船賃ノ上リ下リガ、殆ド其品物ガ出ルカ出ナイカト云フ境ニナルト云フ
關係ガアルノデアリマス、從來ノ重要物產ト云フモノハ、大抵皆ツレデアリマスガ、例
テ見レバ生絲ナドハ、近頃ノヤウニ騰貴スレバ別デアリマスガ、生絲モ其中ニ算スルコト
ガ出來マス、就中茶トカ、紀州ノ蜜柑トカ、落花生トカ、名古屋邊ノ陶物トカ、今申ス
玩具トカ、雜貨ト云フヤウナ類ハ、運賃ガ上ガルト出ナクナル(「分リマシタ」ト呼フ者アリ)
故ニドウシテモ安イ運賃デ行カナケレバナラヌノデスガ、今日ハ到底此命令航路船ダケデ
ハ足リマセヌカラ、各社共ニ自由定期船ヲ出シ、又其上ニ臨時船ヲ出シテ居ル、船ノ運
賃ガ三色ニナッテ居リマス、命令航路船ハ非常ニ安イ、一寸茶デ例ヲ舉ゲレバ、命令航
路ハ一噸十三圓ノ運賃デ運ビ、自由航路ノ定期船ハ六十圓テ運ンデ居ル、ソレカラ臨
時船ハ百圓位ニナッテ居ルト云フヤウニ、三段ニモナッテ居ル、所ガ其自由航路或ハ臨
時船ノ方デハ、非常ニ高クナリマスガ、幸ヒ命令航路ガアリマスルガ故ニ、此命令航路ノ
船ト割合セヲシテ見ルト、比較的安イモノニナル、茶ノ如キハ自由定期ノ方テハ六十圓
拂ハナケレバナラヌノガ、此命令航路船ノ十三圓ト平均シタヨリ安イ所ノ率、卽チ十八
弗、三十六圓ニナッテ居リマス、三十六圓デ運バレルト云フコトハ、此茶ノ五万噸程ノ重
要物產ガ、滯リナク亞米利加ヘ行ク證據デアル、若シ之ヲ命令航路ニシナイナラバ、
殘ラズ六十圓ニナリマス、サウナッテ來タナラバ、日本カラ出ル五万噸ノ茶ニ付テモ、運賃
ヲ三百万圓モ餘計ニ拂ハナケレバナラヌコトニナル、サウ云フコトハ比々皆然リデアリマス
ルガ故ニ、今僅カ亞米利加航路ハ六十万圓、殘ラズ上ゲテモ五百万圓足ラズデアリマ
スガ、ソレ等ノ爲メニ、日本カラ出ル重要物產ノ何千若クハ何億ト云フ高ニ上ルベキ輸
出品ニ向ッテ重大ナル打擊ヲ與ヘテモ、是等ノ金ヲ出サヌヤウニスルーガー良イカ惡イカト云
フ問題ニナル、私共ハ是ハドウシテモ、議會ノ協賛ヲ經タ通リ、四年間遣ルガ當然デアル
ト見タノデアリマスカラシテ、之ニ對シテ御意見ノ違フノハ已ムヲ得マセヌガ、吾〓ハ今日
ニ當リテハ、多々益〓命令航路ハ繼續スベキモノデアルト見マシテ、豫テ議會ノ協賛シテ
下スッタ通リヲ實行シタト云フ次第デアリマスカラ、ソレダケ申シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=63
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064・正木照藏
○正木照藏君 唯今遞信大臣ヨリ私ノ質問ニ對シテ御答辯ヲ承リマシタガ、其中漏
洩事件ハ未ダ管理令ガ出ナイ前ニ漏レタト云フコトニ付テハ、遞信大臣モ同ジク驚キナ
サレタト云フ言葉デアル、併シ是ハ何處カラ漏レタカ分ラヌ、分ラナケレバソレデ宜シイト
言ッテ抛ッテ置クカ、是ハ總理大臣ニ御尋ネシタイ、是ハ誰ノ責任デアルカ、此責任ヲド
ウスルカ、總理大臣ハ發布前ニ是ガ漏レタト云フコトヲドウナサルノデアル、責任者ハ誰デ
アルカト云フコトヲ總理大臣カラ承リタイ
〔國務大臣伯爵寺內正毅君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=64
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065・寺内正毅
○國務大臣(伯爵寺內正毅君) 唯今ノ正木君ノ御尋ニ對シテ私ヨリ御返答致シマス
固ヨリ公友ノ漏洩ト云フ事ハ、若シ官吏ノ扱フ場合、漏ラスト云フコトハ官紀ニ背ク譯
デ、サウ云フ事ガアルト是ガ明ニナレバ、無論相當ノ處分ヲスベキモノデアル、又其他ノ方
面ニ於テモ、之ヲ扱フ上ニ於テ漏ラシタト云フ事ガアレバ、何人ト雖モ其責任ヲ取ラナケ
レバナラヌ、其責罰ヲ受ケナケレバナラヌ、是ハ當然デアル、併ナガラ政府ハ今ニ其調査
ハシテ居リマスガ、此當時ニ漏ラシタ者ハ今ニ分リマセヌ、分ラヌ故ニ今何タル處分ノ執
リ方モナイノデアリマス、恰モ自分ノ家ニ泥棒ガ入ッテ分ラヌ時ニ、其主人ヲ罰スル譯ニハイ
カナイ、斯ウ云フ譯デアリマス、今後ニ於テ若シ其證跡ガアレバ、其時ハ處分ヲ怠ラヌ積
リデアリマハ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=65
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066・大岡育造
○議長(大岡育造君) 北井波治目君
〔北井波治目君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=66
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067・北井波治目
○北井波治目君 管理令ニ就キマシテ、本員モ二三ノ御尋ヲ遞信大臣ニ致サウト思
ヒマス、極メテ簡單デ御坐イマスカラ、僅ニ二三分ノ御〓聽ヲ願ヒマス、諸君、現內閣
ノ成立以來各種ノ施設ハアリマスルケレドモ、其施設中國民ノ一部ヲシテ不安ニ陷ラシ
メ、驚カシメタル事迹ニ就キマシテハ、恐クハ此船舶管理令以上ノモノハ無カラウト思フ
此管理令ノ內容ヲ見マスレバ、御承知ノ如ク遞信大臣ハ船舶ヲ賣ル時分ニハ、其許否
ノ權利ヲ有ッテ居ル、又此航路ニ付テモ、外國航路ニ付テハ遞信大臣ノ許可ヲ要スル、
運賃モ遞信大臣ガ制限スルコトガ出來ル、斯ノ如ク吾〓ノ一個ノ所有權ニ向ッテ、法律
ヲ以テ斯ノ如ク制限スルガ如キコトハ最モ愼シムベキコトヽ思ヒマス、故ニ此案ニ付テハ
此ニ事後承諾ヲ致シマスレバ、此法律ガ永久ニ存續スルニ於キマシテハ、船舶業者、及ビ
之ニ關係スル所ノ實業家ハ、一日モ安ンズルコトガ出來ヌダラウト思フノデアリマス、故
ニ吾ミハ此法案此儘ニ置イテ、此ニ事後承諾ヲ與ヘル如キコトニ付テハ、十分ナル考慮
ヲシナケレバナラヌト思フ、唯今承レバ、遞信大臣ハ、此規則ノ效果ヲ喋々サレタ、成程
此規則ノ發布當時ニ於キマシテハ、船價ガ一噸千圓近クニモ騰ッタノデアリマス、此法
律ノ後ニ於キマシテハ漸次下ッテ、今日ハ七百圓、或ハ六百圓以下ニモ下ルヤウナ結
果ヲ生ジテ居リマス、サリナガラ此船舶管理令ノ趣意ハ、此詔勅ノ冐頭ニアルガ如ク、物
價ノ調節、運輸ノドウト云フコトガ書イテアリマシタ、果シテ物價ノ調節ヲ得タデアリマセ
ウカ、此船舶管理令ニ依ッテ物價ガ下ッタト云フ實例ガアリマスカ、本員ハ少シモ見ヌノ
デス、依然トシテ船腹ハ不足シテ、運輸ハ不便ニシテ、鐵道等ニ於テハ物貨ガ堆積シテ、
運輸ガ出來ヌト云フコトガ今日ノ狀態デアリマス、何ヲ以テ運輸及ビ物價ノ調節ヲ得タ
ト云フコトヲ政府ハ言フノデアリマスカ、又外交上管理令ニ依ッテ運用スルコトガ詔勅ノ
一部ニ入ッテ居リマスガ、果シテ外交上如何ナル效果ヲ得タカ、之ヲ承リタイノデアリマ
ス、吾〓ハ寡聞ニシテ、未ダ其效果ヲ認メルコトガ出來ヌノデアリマス、此法律ニ就キマ
シテ第一ニ承リタイノハ、御答辯ノ御便宜ノタメニ質問ノ要旨ヲ申上ゲマス、政府ハ此
法律ヲ永久ニ存續スルノ目的ヲ有スルヤ否ヤ、永久ニ存續スルコトヲ固執スルヤ否ヤ、永
久デナシトシマシテモ、少クトモ此戰時中ニ限ル所ノ意思ハナイカ如何、是ハ戰時ニ限ル
モノダラウト思ヒマス、戰爭後ニ於キマシテモ此法律ヲ必要トサレルヤ否ヤ、若シ此法律
ニ於キマシテ、戰時中有效ト云フ所ノ制限ヲ付シタ時分ニハ、政府ハ之ニ同意サレルヤ
否ヤ、豫メ之ヲ承ッテ置キタイ、其次ニハ、遞信大臣ノ權限ニ就キマシテ、或航路
ヲ-此法律若クハ施行條例ニ於キマシテ、適當ナ場所ニ或外國航路ニ就キマシテ、
政府ガ之ニ範圍ヲ定ムル所ノ御意思ハナイカ如何、之ヲ承リタイ、又此運賃ニ就キマシ
テモ、政府ハ此運賃ニ就キマシテハ、或範圍ヲ定ムルコトガ出來ルヤ否ヤ、若シサウ云フ
範圍ヲ定メ、其指定ヲ爲スコトガ出來マシタナラバ、海運業者ニ於キマシテモ、相當ニ據
ル所ガアリマスカラ、安心致シマセウガ、此法律ヲ此儘ニ置イテ通過シタナラバ、惟フニ此
船舶業者及關係スル所ノ實業家ハ、何日マデモ不安ノ位置ニ居ルコトヲ本員ハ憂フル
ノデアリマス、故ニ政府ハ以上申上ゲマシタ點ニ就キマシテ、明確ノ御答辯ヲ願ヒタイノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=67
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068・大岡育造
○議長(大岡育造君) 田遞信大臣
〔國務大臣男爵田健治郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=68
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069・田健治郎
○國務大臣(男爵田健治郞君) 北井君ノ御質問ニ御答致シマスガ、政府ハ之ヲ永
久ニ存續スルヤ否ヤト云フコトデアリマシタガ、是ハサウ云フ譯デハナイノデ御坐イマシテ、
詰リ戰時中デ御坐イマスルガ、其戰時ト云フモノヲ今見マスルノニ、講和ガ成立ッタラ、
直グニ其時廢メニスルカト云フト、ソレハ迚モサウハ參リマセヌ、他所ヘ行ッテ居ル船モ澤
山アリマスカラ、ソレガ元ノ有樣ニ戾ッテ來ルノニハ、少クトモ一年位ハ掛ラナクチャ元ノ
有樣ニ戾ルモノデハアリマセヌ、故ニ戰時ガ濟ンデカラ一年ト云フコトニ元ナッテ居リマス
カラ、政府ハ飽迄モソレハ必要ダト存ジテ居リマス、サウ豫メ御承知ヲ願ヒタウ御坐イマ
ス、ソレカラ運賃指定若クハ航路指定ト云フコトヲ御尋デアリマスガ、是ハ私ハ御尋ノ趣
意ハ、指定スル意思ガアルカ、又運賃ハ指定シタ方ガ宜イデナイカト云フ御話デ
アリマスガ、是ハナカ〓〓六ヶ敷1問題デアリマス、素ヨリ止ムヲ得ヌ時ニハ指定ヲスル積
リデアリマスケレドモ、是ハ私ハ說明スル時ニモ餘程力メテヤッテ置イタ積リデアリマスル
ガ、之ヲ政府ガ法令ニ依ッテ委任セラレテ居ル權力ガ有ルカラト云フテスポ〓〓ヤル、先刻
正木サンガ拔カヌ大刀ノ功名ト云フコトヲ言ハレマシタガ、其意味デアリマス、之ヲスバッ
ト法令ノ權力ガアルカラ之ヲ必ズヤンニヤナラヌトカ、或ハ運賃ハ是ヨリ以上ヤルコトハ
ナラヌトカ、是丈ニシロトカ云フコトハ、法令ノ上デハ遞信大臣ニ確ニ權力ハ委任サレ
テ居リマスルケレドモ、ソレヲヤルト云フコトハ、餘程愼重ニシテ、成ルタケヤラズシテ、而シテ
目的ヲ達スルヤウニスルノニハ、航海業者ナリ、總テ造船業者ナリナドト、成ルベク合意
ヲシテヤルヤウニシタ方ガ滑カニ行クノデアリマスカラ、成ルタケサウシタイ、ソレデモ話ガ纏
ラズシテイヤダト言ヘバ、ソレハ仕方ガ御坐イマセヌ、國家ノ爲ニハ指定モシナケレバナラ
又、若クハ運賃モ極メナケレバナラヌト云フコトデアリマスルガ、實際ノ運用トシテ遞信大
臣ハ此權力ガアルカラ、ドノ航路ハドノ船ヲヤレ、イヤ運賃ハドレダケヨリ相成ラヌト云フ
コトヲスポ〓〓ヤルト云フコトハ、成ルタケシタクナイ、是ハ法令ヲ執行スル上ニ就テ、サウ
スルニ非ザレバ目的ヲ達セヌ場合ニ於テノミスルカ、若クハ國家ノ必要上サウスルコトニ
止ムヲ得ヌ場合ニ於テスルト云フ積リデアリマスカラ、ドウカサウ御了解ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=69
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070・大岡育造
○議長(大岡育造君) 日程第三十、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題
ト致シマス
第三十右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=70
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071・岩崎勲
○岩崎勳君 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=71
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072・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎勳君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=72
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073・岩崎勲
○岩崎勳君 本案委員ノ數ハ特ニ十八名トシ、議長ニ於テ指名セラレムコトヲ望ミマ
ス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=73
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074・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎君ノ動議ニハ異議無キモノト認メマス、仍テ本案ノ委員
ハ十八名、議長指名ト決シマシタ--日程第三十一、第三十二ノ議案ハ、同種關聯
セル議案ニシテ、且提出者モ同一ナル故ニ、一括議題トナスニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=74
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075・大岡育造
○議長(大岡育造君) 異議ナシト認メマス、仍テ第三十一、家祿賞典祿處分ニ關ス
ル法律案、第三十二、沒祿處分ヲ受ケタル者ニ對スル、家祿賞典祿處分ニ關スル法
律案、右二案ヲ一括シテ議題トナシ、第一讀會ヲ開キマス
第三十一家祿賞典祿處分ニ關スル法律案(川原茂輔第一讀會
君外十六名提出)
家祿賞典祿處分ニ關スル法律案
第一條明治三十年法律第五十號家祿賞典祿處分法第一條及第二條ノ給與
ヲ受ケムトスル者ハ其ノ理由及證據ヲ具シ地方廳ヲ經由シテ大藏大臣ニ
願出ツヘシ但シ大正七年十二月三十一日迄ニ願出サルトキハ本法ノ給與
ヲ受クルコトヲ得ス
第二條前條ノ願出ニ對シ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ其
ノ指令ヲ受取リタル日ヨリ六箇月以內ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第三條明治三十年法律第五十號家祿賞典祿處分法ニ依リ願出ヲ爲シタル
者ニシテ明治四十二年法律第二十一號第二條ノ期限內ニ出訴セサル者ハ
本法施行ノ日ヨリ六箇月以內ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
沒祿處分ヲ受ケタル者ニ對スル家祿賞典祿
第三十二處分ニ關スル法律案(川原茂輔君外十六名第一讀會
提出)
沒祿處分ヲ受ケタル者ニ對スル家祿賞典祿處分ニ關スル法律案
第一條明治三年九月十日太政官布告藩制施行ヨリ同九年八月太政官第百
八號布告實施迄ノ間ニ於テ國事ニ關スル犯罪ノ爲家祿賞典祿ヲ沒收セラ
レタル者及其ノ家名承繼人ニシテ明治二十七年法律第二十號施行ノ際其
ノ沒收セラレタル當時ノ祿高ニ對スル全部ノ給與ヲ受ケサル者若ハ相當
額ノ給與ニ不足アル者ハ明治三十年法律第五十號家祿賞典祿處分法ヲ準
用シ同法ニ依リ發行スル公債證書ヲ以テ之ヲ給與ス
第二條前條ノ給與ヲ受ケムトスル者ハ本法施行ノ日ヨリ六箇月以內ニ其
ノ理由及證據ヲ具シ地方廳ヲ經由シテ大藏大臣ニ願出ツヘシ
第三條前條ノ願出ニ對シ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ其
ノ指令ヲ受取リタル日ヨリ六箇月以內ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第四條明治二十七年法律第二十號ニ依リ給與處分ヲ受ケタル者ニシテ明
治三十年法律第五十號家祿賞典祿處分法第四條ノ願出ヲ爲シ其ノ處分ニ
對シ明治四十二年法律第二十一號ニ依リ行政裁判所ニ出訴シ其ノ訴訟繼
續中ノモノハ本法第三條ニ依リ出訴シタルモノト看做ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=75
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076・川原茂輔
○川原茂輔君 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=76
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077・大岡育造
○議長(大岡育造君) 川原茂輔君
〔川原茂輔君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=77
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078・川原茂輔
○川原茂輔君 家祿賞典祿處分ニ關スル法律案外一件ハ、二十七議會デアリマシタ
カ、二十八議會デアリマシタカ、三十七議會デアリマシタカ、法律案トシテ當議場ニ提出
ヲ致シマシテ、滿場一致ヲ以テ此二案共提案ノ通り御決定ニ相成リマシタ案デアリマ
ス、少シ此沿革ラ申上ゲテ、尙御贊成ヲ得タイト思ヒマスガ、各藩ノ士族ニ公債ヲ付
與致シマシテ、其公債ヲ付與シタル後ニ於テ、公債ヲ貫ハナイ人モアリ、又其計算ノ基
礎ニ於テ誤アルコトヲ發見致シマシタ故ニ、各藩ノ士族ハ盛ニ此議場ニ向ッテ請願ヲ爲シ
タノデアリマス、ソレデ當時政府ニ於テモ一部反對ガアリマシタケレドモ、何トカ此始末
ヲ付ケナケレバナラヌト云フノデ、三十年ノ法律五十號ト云フモノヲ制定致シテ、而シテ
無際限ニ應ズル譯ニハ行カナイカラ、約一千万圓乃至一千五百万圓位ヲ限度トシタラ
バ如何デアラウト云フコトヨリ、遂ニ委員會ニ於テハ一千万圓ヲ限度トシテ、此各藩ノ
士族ニ對スル不足額、若クバ貰ハナイ者ニ向ツテ公債ヲ付與スルコトニシヤウト云フ案ガ
成立シタノデアリマス、其案ニ於テハ、政府ニ向ッテ要求スベキ期間、行政裁判所ニ訴
フベキ期間モアッタノデアリマスガ、各藩ノ中ニ於テハ色〓ナ事情デ、遂ニ其期間ヲ延
長-遂ニ期間ヲ外シタノガアッタノデ、其後ニ於テ屢〓同一ノ請願ガ起り、而シテ當
議場ニ於テハ其請願ガ起リマス度每ニ、總テ之ヲ採擇スルコトニ決定シタノデアリマス、
一ッノ案ハ沒祿處分ヲ受ケ、卽チ國事犯ニ依ッテ沒祿セラレタ者ガ、一部部公債ヲ受ケ
タ者モアリ、又公債ヲ受ケナイ者モアリ、又公債ヲ受ケタ者ニ對シテ、家祿賞典祿ト同
樣ノ計算ノ基礎ニ於テ異動ヲ生ジタモノガアル、ソコデ之ヲ何トカ救濟ヲシテ貰ヒタイト
云フコトデ、或ハ行政裁判所ニ訴ヘタ者ガアリマシタガ、法律ノ不備ノ爲メ、一部ハ受ケ
一部ハ受ケナイト云フ不公平ナル結果ヲ生ジタノデアリマス、此二ツヲ救濟スル意味ニ
於テ、三十七議會デアリマシタカ、法律案ヲ制定致シテ、卽チ當院ハ滿場一致ヲ以テ
之ヲ通過シテ、貴族院ニ至ッテ審議中ニ、不幸ニシテ議會滿了トナッテ、未ダ法律案ノ
制定ヲ見ナイノデアリマス、ドウカ前囘ノ議會當時ノ法律案ノ文字モ其通リデアリマス、
一點モ異ラザル點ニ於テ此處ニ提出ヲ致シマシタカラ、相變ラズ御贊成ヲ願ヒタイト思ヒ
マス、此提案者ガ署名シテ居リマスノハ、福島、石川、福井、三重、愛知、山口、佐賀、
福岡熊本ノ諸藩ノ關係ガ主デアリマスケレドモ、大藏省ニ於テ段々調ベテ見マスト、凡
ソ各藩ニ此法律ガ制定セラレマシタ結果トシテハ、救濟スベキ者ガ段々アルサウデアリマ
ス、前ニ述ベマシタ一千万圓ノ中ニ、大藏省デ請願ヲ受理シテ直ニ公債ヲ下付セラレマ
シタ者ハ、誠ニ數十万圓ノ少ナイ數字デアッタ、行政裁判所ニ訴訟ヲシテ勝訴トナッテ公
債ヲ受ケマシタ者モ三百万圓未滿デアリマス、サウスルト救濟スル意味ニ於テ一千万圓
ト云フ限度ヲ決メタ中ニ、マダ國家ガ支拂ッテ差支ナイ金ガ七八百万圓殘ッテ居ルノデ
アリマスカラ、其案ヲ制定セシメテ、其殘ッタ者ヲ救濟シタイト云フノガ本案ノ大ナル趣意
デアリマス、政府ハ常ニ此案ノ成立ニ向ッテ反對セラレマスガ、併シ議會始マリマシテ以
來、幾多ノ問題ガ出マシテ、其結果ハ或ハ建議トナリ、或ハ法津案ノ制定トナリマシ
タ時モ、矢張リ政府ハ反對シタコトガアルノデアル、併ナガラ其例ヲ示ゼバ煙草專賣法
ノ後ニ於テ、一部ノ煙草業者ニ不幸ヲ與ヘタ爲メニ、之ヲ救濟スル法律ノ制定ノ如
キ、或ハ奈古浦丸ノ遭難ニ依テ船主ニ損害ヲ生ジ、其奈古浦丸ニ搭載シタ貨物ノ損害
ノ如キ、或ハ又熊本縣ニ於ケル賦金問題ノ如キ、日露戰爭ノ時ニ於テ哈爾賓、浦鹽方
面ニ在住シ戰爭ノ爲ニ其貨物ノ損害ヲ被ッタル問題ノ如キ、幾多懸案ノモノモアリマシ
タガ、大〓是迄ニ於テ此幾多ノ問題ハツレ〓〓處分ヲ致シ、其不幸者ヲ救濟シタコトガ
アルノデアリマス、從來ノ懸案ガ殘ッテ居リマスノハ、此案ト及ビ樟腦ノ専賣ニ依テ國民ノ
營業ヲ奪ハレ不幸ニナッタト云フ二ツ位ガ、今殘ッテ居ル位デアリマス、其樟腦ノ事ハ屢、〓
請願ヲサレテ、當議場ニ於テモ其請願ガ採擇ニナッテ居リマスケレドモ、之ヲ法律ヲ制定
シテ救濟スルノ良法ヲ發見スルコトガ出來ナイ爲メニ、如何トモスルコトガ出來ナイ斯ノ
問題ノ如キハ、屢〓議場ヲ騷ガスヨリモ、早ク處分シテシマヒマシテ、全國各藩ノ士族ガ
此問題ニ傾注スル其考ヲ、他ノ事業-其他ノ問題ニ傾注セシメマシタナラバ、蓋シ
國家ノ爲メニモ大ナル利益ナリト存ズルノデアリマス、今ノ寺內內閣ハ群集心理、若ク
ハ社會政策等ノ問題ニ於テ重キヲ置カレル內閣デアリマスレバ、斯ル行掛リガ屢一起ル問
題ハ、早ク反對ヲセズシテ贊成ヲシテ、此案ノ通過ヲセシメテ、處分ヲ爲サレマシタナラ
バ、國家ノ爲メニモ利益、又內閣ガ執ラレル所ノ方針ニ適合スルコトト存ジマスカラ、本
年ハ反對ヲセズシテ通過サレンコトヲ希望シテ置キマス(拍手起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=78
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079・岩崎勲
○岩崎勳君 兩案共議長ノ指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ希望致シ
マス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=79
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080・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト認メマス、仍テ本案ハ一括シテ議
長指名九名ノ委員ニ付記致シマス、日程ハ是ニテ議了致シマシタ、而シテ明後日ニ本
會ヲ開クベキ議案ハ十分デアリマセヌ、ソレ故明後日ハ本會ハ開キマセヌ、今日ハ是ニテ
散會シマス
午後四時二十七分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X00519180124&spkNum=80
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