第40回帝国議会　衆議院　本会議　第22号　大正7年3月12日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　大正七年三月十二日（火曜日）午後一時十八分開議
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  　　議事日程　第二十一號　大正七年三月十二日
  　　　　午後一時開議
  　　　　　　質問
  　　　一　石炭市價調節に關する質問（長田桃藏君提出）
  　　　二　殖民地統治に關する質問（牧山耕藏君提出）
  　　　三　石炭需給に關する質問（工藤善助君提出）
  　　　四　日露日支兩協約の實行竝支那鐵鑛國有に關する質問（一宮房治郎君提出）
  　　　五　東京市政に關する質問（磯部尚君提出）
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  　　第一　東京市區改正條例中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選舉
  　　第三　京都市又は大阪市の市區改正に關し東京市區改正條例及東京市區改正土地建設處分規則を準用し得るの法律案（政府提出）　第一讀會
  　　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選舉
  　　第五　臺彎銀行法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第六　右議案の審査を付託すへき委員の選舉
  　　第七　朝鮮の生産に係る物品の移入税免除に關する法律案（政府提出）　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第八　重要物産同業組合法中改正法律案（土井權大君他一名提出）　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第九　特許法中改正法律案（田中隆三君他一名提出）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十　商標法中改正法律案（田中隆三君外一名提出）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十一　意匠法中改正法律案（田中隆三君外一名提出）　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十二　實用新案法中改正法律案（田中隆三君外一名提出）　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十三　平町小名濱間鐵道建設に關する建議案（高岡唯一郎君外三名提出）
  　　第十四　沖繩縣特別自治制撤廢に關する建議案（奥田榮之進君外二名提出）
  　　第十五　鹿兒島縣大島郡島嶼町村制撤廢に關する建議案（林爲良君外三名提出）
  　　第十六　東京市特別市制に關する建議案（村松恒一郎君外十一名提出）
  　　第十七　（特別報告第八十八號）飛越鐵道敷設速成の請願　　　　　　　　（委員長報告）
  　　第十八　（特別報告第八十九號）「ルベシベ」湧別線鐵道速成の請願　　　（委員長報告）
  　　第十九　（特別報告第九十號）若松柳津間鐵道敷設の請願　　　　　　　　（委員長報告）
  　　第二十　（特別報告第九十一號）瀬棚輕鐵道速成の請願　　　　　　　　　（委員長報告）
  　　第二十一　（特別報告第九十二号號）岐阜富山間鐵道の敷設に關する請願　（委員長報告）
  　　第二十二　（特別報告第九十三號）中央線中野八王子間鐵道電車併用の請願　（委員長報告）
  　　第二十三　（特別報告第九十四號）元忠海税務署復舊の請願　　　　　　　（委員長報告）
  　　第二十四　（特別報告第九十五號）埼玉縣秩父郡名栗村を入間郡に編入の請願　（委員長報告）
  　　第二十五　（特別報告第九十六號）埼玉縣秩父郡吾野村を入間郡に編入の請願　（委員長報告）
  　　第二十六　（特別報告第九十七號）手取川治水費國庫支辨の請願　　　　　（委員長報告）
  　　第二十七　（特別報告第九十八號）紙函製造業に對する工場法適用に關する請願　（委員長報告）
  　　第二十八　（特別報告第九十九號）水難救護法中改正の請願外二件　　　　（委員長報告）
  　　第二十九　（特別報告第百十三號）水難救護法中改正の請願　　　　　　　（委員長報告）
  　　第三十　（特別報告第百號）東京第一衞戍病院移轉の請願　　　　　　　　（委員長報告）
  　　第三十一　（特別報告第百一號）上湧別村に登記所設置の請願　　　　　　（委員長報告）
  　　第三十二　（特別報告第百二號）中込村橋場に區裁判所出張所設置の請願　（委員長報告）
  　　第三十三　（特別報告第百三號）名寄町に區裁判所設置の請願　　　　　　（委員長報告）
  　　第三十四　（特別報告第百四號）醫師受験資格認定に關する請願　　　　　（委員長報告）
  　　第三十五　（特別報告第百六號）航空事業費國庫補助の請願　　　　　　　（委員長報告）
  　　第三十六　（特別報告第百七號）無盡業法中改正の請願　　　　　　　　　（委員長報告）
  　　第三十七　（特別報告第百十號）利根川架橋の請願　　　　　　　　　　　（委員長報告）
  　　第三十八　（特別報告第百十一號）救育費國庫支辨の請願　　　　　　　　（委員長報告）
  　　第三十九　（特別報告第百十二號）藥草栽培補助奬勵の請願　　　　　　　（委員長報告）
  　　第四十　（特別報告第百十六號）豐田下村手洗に三等郵便局設置の請願　　（委員長報告）
  　　第四十一　（特別報告第百十七號）保田村に三等郵便局設置の請願　　　　（委員長報告）
  　　第四十二　（特別報告第百十八號）川西村に郵便局設置の請願　　　　　　（委員長報告）
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• 001・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　諸般ノ報告ヲ命ジマス
  〔書記朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  臺灣銀行法中改正法律案
  日本興業銀行法中改正法律案
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  倭姫命奉祀ニ關スル建議案
  提出者天春文衞君尾崎行濱田國松君
  小林嘉平治君佃安之作丞雄君君君越山太刀三郞君
  川崎克君井島茂堀川美哉君
  神戶市內鐵道改良急施ニ關スル建議案
  提出者坪田十郞君野添宗三君橫田孝史君
  山田琴平間鐵道建設ニ關スル建議案
  提出者白石直治君中野寅次郞君
  古谷久綱君正年君勘上即合
  哲太加入社業務省 分和平君君吉若者 若鶏藤君吉
  田田鳥田上榮信君君君國爾居政治 同學崎敬
  仙富松成河島肇田榮義君君
  幸次郞君市彰一君
  石貢君
  葉煙草耕作組合ニ交付金下付ニ關スル建議案
  提出者高田耘平君大津淳一郞君
  一貴族院ヨリ囘付セラレタル議案左ノ如シ
  大正七年度各特別會計歲入歲出豫算案
  一貴族院ハ本院ノ送付ニ係ル左ノ議案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
  大正七年度歲入歲出總豫算案
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
  (第一號)臨時軍事費豫算追加案
  (第一號)大正七年度歲入歲出總豫算追加案
  (追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
  一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  大正七年三月九日
  內閣總理大臣伯爵寺內正毅
  衆議院議長大岡育造殿
  衆議院議員齋藤紀一君提出精神病者取締ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
  候
  (別紙)
  衆議院議員齋藤紀一君提出精神病者取締ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  精神病者取締ノ完否ハ社會ノ安寧秩亭維持ニ至大ノ關係ヲ及ホスカ故ニ政府ニ
  於テハ特ニ細心ノ注意ヲ拂ヒ以テ之カ遺憾ナキヲ期セリ而シテ精神病者ノ監護其他
  ノ件ニ關シテハ目下保健衞生調査會ニ於テ審査〓究ヲ重ネツヽアルニヨリ近ク其結
  果ニ基キ政府ハ現行法規ニ適當ノ改正ヲ加ヘムトス又本邦ニ於ケル精神病者ノ統
  計ハ精細ナル一定ノ標準ニ依リ確實ニ之ヲ調査シタルモノナリ尙懲惡新聞ニ就テハ
  未タ安寧秩序ヲ紊シ又ハ風俗ヲ害スルノ程度ニ至ラサルモノト認ム而シテ其發行人
  又ハ編輯人ハ新聞紙法ニ據リ屆出ツルヲ以テ足リ許可ヲ要スルモノニアラス
  右及答辯候也
  大正七年三月九日
  內務大臣男爵後藤新平
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
  一去九日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
  狩獵法改正法律案
  〓崟太郎君鳩山一郞君田桃君
  菅野傳右衞門君島義雄君田榮郞肇信藏
  石射文五郞君河林井爲良君伊井岡松成長島
  吉田中君野正義君部次君君君君君
  古屋慶隆君三隅哲雄君原百介
  福田辰五郞君古川〓君東知也
  大正五年度豫備金支出ノ件外七件(承諾ヲ求ムル件)
  山本悌二郞君谷義三君丸山豐治郞君
  中村啓次郞君爲良君河頭本元貞君
  本店の宮房治郞君野徹志君
  書人士課津淳一郞君業區就出一林特方田珠一君加藤政之助君
  耘平君彰一君山口俊一君
  小川〓太郞君藤達兒君牧野鐵九郞君
  神祇ニ關スル特別官衙設置建議
  小久保 喜七君種禮君隆慶君
  遠藤良吉君本田村銳吉君直太君
  高鳥順作君喜七君平紫板凳低 100茂助君
  松浦與三郞君新元第2
  樋口秀雄君崎岩彥君
  關原彌里君村松恆一郞君野口孝治君
  津山上郡間鐵道建設ニ關スル建議案外一件
  福井三郞君頭本元貞君奧田龜造君
  四田銳吉君臼田久內君唐端〓太郞君
  奧田柳藏君古川〓君犬飼源太郞君
  不動產金融改善ニ關スル建議案外一件
  勘重君秦豐助君吉原正隆君
  安雄君小田切磐太郞君高橋本吉君
  磯小河齋氣山上藤賀上哲太君正雄君小鹽八郎右衞門君
  松壽君今西瀧英太郞君小林嘉平治君
  貝浩君村L〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓齋藤宇一郞君
  津末良介君堀川其の詩人川口木七郞君
  一去九日辭任シタル常任委員左ノ如シ
  第九部選出決算委員奧田龜造君
  一去九日鐵道建設ニ關スル建議案委員河野正義君辭任ニ付其補闕トシテ高田
  耘平君ヲ、軍需工業動員法案委員若尾璋八君辭任ニ付其補闕トシテ河崎助
  太郞君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
  一昨十一日大正五年度豫備金支出ノ件外七件(承諾ヲ求ムル件)委員林爲良君
  辭任ニ付其補闕トシテ奧田榮之進君ヲ議長ニ於テ選定セリ
  一昨十一日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
  狩獵法改正法律案委員會
  松島肇君
  委員長〓崟太郞君理事福田辰五郞君
  伊東知也君
  大正五年度豫備金支出ノ件外七件(承諾ヲ求ムル件)委員會
  丸山豐治郞君
  委員長山本悌二郞君理事河野徹志君
  小川〓太郞君
  神祇ニ關スル特別官衙設置建議案委員會
  恆松隆慶君
  委員長小久保喜七君理事村松恆一郞君
  關原彌里君
  津山上郡間鐵道建設ニ關スル建議案外一件委員會
  委員長奧田龜造君理事奧田柳藏君
  不動產金融改善ニ關スル建議案外一件委員會
  河上哲大倉
  委員長氣賀勘重君理事小山
  堀川%課税
  〔左ノ質問書ハ前日政府ヨリノ答辯書送付ニ付參照ノタメ揭載ス〕
  河川ノ制度ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正七年二月二十一日
  提出者佐々木正藏贊成者松岡勝太郞
  外三十一人
  河川ノ制度ニ關スル質問主意書
  政府ハ多額ノ國費ヲ投シ河川改修工事ヲ施行シ其ノ成績見ルヘキモノアリト雖工
  事終了後ハ之ヲ府縣ニ引繼クカ故ニ一河川ニシテ上流下流左右兩岸利害關係ヲ
  異ニスルニ至リ全般ニ涉ル維持保護修繕ニ缺陷ヲ生シ數年ナラスシテ其ノ效果ヲ沒
  却スルモノ尠カラス之レ國家ノ重大ナル損失ナリ依テ直轄改良工事ヲ施行シタル河
  川ハ政府自ラ之ヲ管理シ以テ改修工事ノ效果ヲ萬全ナラシムルノ必要ヲ認ム之ニ對
  スル政府ノ所見如何
  右及質問候也

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• 002・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　是ヨリ會議ヲ開キマス、此場合諸君ニ御諮リヲ致シマス、
  第九部選出決算委員井戶文四郞君、第一部選出決算委員本間三郞君、第七部
  選出請願委員大森與三次君、第四部選出懲罰委員横山金太郞君、右四君ヨリ常
  任委員辭任ノ申出ガアリマシタ、許可シテ御異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 003・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　御異議ガナケレバ許可スルコトニ致シマス、從ッテ各部ノ諸
  君ハ速ニ補關選舉ヲ行ハレテ、議長迄申出アラムコトヲ望ミマス、尙ホ本間三郞君ヨリ
  病氣ニ付十一日ヨリ十日間請暇ノ申出デアリマシタ、許可シテ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 004・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　許可スルコトニ致シマス

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• 005・小西和

  ○小西和君　議長

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• 006・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　小西君、何デスカ

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• 007・小西和

  ○小西和君　是ヨリ請願委員第一分科會ヲ開キタウ御坐イマス、御許可ヲ請ヒマス

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• 008・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　許可致シマス

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• 009・小西和

  ○小西和君　ソレデハ請願委員第一分科ノ諸君、是ヨリ直チニ請願委員室ニ御參
  集アラムコトヲ希望致シマス

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• 010・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　質問第一、石炭市價調節ニ關スル質問、長田桃藏君
  -石炭市價調節ニ關スル質問(長田桃藏君提出)
  石炭市價調節ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正七年二月二十三日
  提出者長田桃藏贊成者板東勘五郞
  外三十二人
  石炭市價調節ニ關スル質問主意書
  一政府ハ現今ノ石炭市價ヲ以テ石炭業者カ不當ノ利潤ヲ獲得シツツアルモノト
  認メサルヤ
  二政府ハ急速ニ徹底的炭價調節ノ方法ヲ講シ之ヲ斷行スルノ意思ナキヤ
  右及質問候也
  〔長田桃藏君登壇〕
  〔拍手起ル〕

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• 011・長田桃藏

  ○長田桃藏君　私ハ石炭ノ市價調節ニ關スル質問ノ趣意ヲ辯明致サウト存ジマスル、
  此質問ハ去ル二月ノ二十三日ニ提出ヲ致シマシテ、本日是ガ辯明ヲスルノデアリマスル
  カラ、丁度十八日間空シク經過シタ譯デアリマス、其間ニ物價調節ニ關スル建議案ガ
  各政派カラ提出セラレマシテ、既ニ特別委員會ノ議ニ付セラレテ居リマス、其特別委員
  會ニ於キマシテハ、石炭ニ對スル調節ノ質問ガ出テ居リマシテ、主務大臣初メ政府委
  員ヨリモ、此問題ニ對シテ答辯ガ御坐イマスル、其答辯ヲ見テ現政府ノ石炭市價調節
  ニ關スル所ノ、現在ノ意向ヲ知ルコトガ出來ルノデアリマスルカラ、或ハ此質問ヲ爰ニ辯明
  スルノ必要ガナイガ如ク見エマスケレドモ、本員ハ尙ホ其答辯ニ對シテ不滿足ナル點ガ多
  イノデアリマスルカラ、姑ク各員ノ寬大ナル認容ヲ請フテ、私共ノ愚見ヲ申述ベテ置キタ
  イト考ヘルノデアリマス(「謹聽」ト呼フ者アリ)此石炭ノ市價ガ騰貴ヲ致シマシタト云フコト
  ノ狀態ハ、私共ガ此處ニ諄ミシク述ベル必要ガナイノデアリマス、既ニ大正六年丁度九
  月ノ物價調節令、卽チ暴利取締令ノ發布セラルヽ項カラノ石炭騰貴ノ勢ハ、殆ド棒
  立チノ狀態デアッテ、此石炭ヲ原料ト致ス所ノ內地ノ總テノ工業、其工業家ノ中デ
  小ナルモノハ、最早其營業ヲ繼續スルコトノ出來ナイヤウナ者ガアルノデ、中ニ又瓦斯會
  社ノ如キモノハ、郡部ナドデ旣ニ解散ヲ致シテ居ルヤウナ狀態デアリマス、現ニ又近クハ
  新聞紙ノ報道スル所ニ據ヲテ見マシテモ、官設ノ鐵道デモ、石炭ノ騰貴ヲ原因トシテ賃
  銀ノ値上ヲ圖ッテ居ラルヽサウデアル、又全國ノ私設鐵道ノ九十六社、之ガ聯合ヲ致シ
  テ、矢張賃銀ノ値上ヲ出願ヲ致シテ居ルト云フコトデアッテ、電氣鐵道ナドモ矢張賃銀
  ノ値上ヲ要求シテ居リマス、瓦斯會社ナドニ、至ッテハ一囘ノ料金ノ値上デハ滿足出來
  ズシテ、更ニ二囘ノ値上ヲ圖ッテ居ルト云フヤウナ狀態デ、是等ガ直接ニ日本ノ工業ノ
  基礎ヲ危クシテ居ルト云フ狀態ヲ示シテ居ルノミナラズ、此總テノモノヽ値上ハ、直ニ國
  民生活ニ轉嫁セラレテ居ル、轉嫁サレテ國民生活ノ日用品ノ昂騰スル最大ノ原因ヲ爲
  シテ居ルト信ジテ居ルノデアリマス、デ學者ノ間ニハ、日本ノ石炭ノ國民ノ生活ニ關係スル
  所ノ狀態ヲ見ルト、歐羅巴各國ノ如ク適切ナルモノデハナイ、石炭ノ日本國ニ於ケル國
  民生活ノ位地ハ、歐米各國トハ、趣ヲ異ニシテ居ルト云フコトデアリマスケレドモ其點
  ハ燃料ヲ日本ハ又石炭以外新炭ニ求メテ居ルト云フコトノ差ガアルノミデス、總テノ工
  業ト致シ、殊ニ日本ノ都會ノ生活ニ於ケル燃料ハ多ク石炭ニ基ク所ノ瓦斯、直接ニ
  又石炭又「コークス」サウ云フモノヽ燃料ヲ多ク使ッテ居ル點カラ見マシテモ、昔日唱ヘラ
  レタ石炭ハ、日本ノ國民ノ必需品デハナイ、生活上ノ必需品デハナイト云フ議論ハ、今
  日ニ於テハ多クノ部分ヲ失ッテ居ルト思フ、多クノ其主張ノ點ガ失ハレテ居ルト思フ、デ
  左樣ナ狀態ニナッテ居リマスノデ、石炭ノ騰貴ニ依テ工業會社ガ非常ニ悲慘ナル狀態ニ
  居ルノミナラズ、國民ノ生活モ危殆ニ赴キツツアルト云フコトヲ、斷言シテ憚ラヌ狀態ニ
  ナッテ居ル、私ガ申ス迄モナク全國ノ新聞紙雜誌、是等ガ口ヲ揃ヘテ石炭調節ノ必要
  ナルコトヲ叫ンデ居リマスノハ、確ニ輿論ノ叫デアリマス、デ試ニ一言丈其騰貴ノ狀態ニ
  費シテ置キタイノハ、若松ノ石炭同業組合事務所ノ報告デアリマス、其報告ハ骸炭、
  切込炭、粉炭ノ値段ヲ合併シタモノヽ其平均値段ヲ、大正元年カラ五年迄平均シテ
  見タ報告ガアリマス、大正元年ニハ三圓六十八錢、一噸ニ付テ-二年ガ四圓三十
  五錢、三年ガ四圓四十七錢、四年ニハ四圓四錢、五年ガ四圓五十二錢、斯樣ナ狀
  態ノ報告ニナッテ居ル、而モ大正六年ノ六七月頃カラ、所謂暴利取締令ノ發布セラル
  ル迄ノ一噸ノ價格ガ、若松港ニ於テ十圓致シテ居ル、更ニ十月頃カラ暴騰致シテ、一
  噸十七圓ト云フ相場ヲ維持シテ居ルノデアリマス、此狀態ヲ申上ゲタナラバヽ石炭ノ
  騰貴ナルモノニ、暴騰ノ狀態ハ明瞭ニナルト私共ハ考ヘテ居リマス、是ガ卽チ直チニ國
  民生活ヲ危殆ニ陷レ、及工業ノ基礎ヲ危クスルト云フ狀態ニナッテ居ルノデアリマス、斯ノ
  如ク騰貴ヲ致ス所ノ原因ガ何デアルカト云フコトモ、新聞雜誌其他學者等モ能ク〓究
  致サレテ居リマスガ、私共ハ極ク此問題ヲ大略申上ゲテ見タイト考ヘマス、騰貴ノ原因
  ヲ需要供給ノ不均一、卽チ不平均ト云フ事ヲ第一ニ數ヘル者、ソレカラ生產費ノ增加
  ヲ數ヘル者、運賃ノ昂騰ヲ數ヘル者、斯樣ニナッテ、居リマス需給ノ不平均ト云フ事柄
  ハ確ニアルヤウニ考ヘラレマスケレドモ、特ニ注意シテ置カナケレバナラヌノハ、物價調節
  取締委員會ニ於ケル所ノ鑛山局長崎川君ノ御說明ニ依ルト、大正六年ノ需給ノ關
  係ハ二千六百万噸內外デ、需給共ニ左程ニ過不足ガアルヤウニ思ハナイト云フ御說明
  デアリマス、此御說ニ從ッテ見ルト、大正六年石炭ノ需給關係ヲ大略平均ヲ得テ居ル
  決シテ不平均ノ狀態ニ居ラヌト云フ事ニナッテ居リマス、併ナガラ現在唯今手ニ致シマシ
  タ所ノ名古屋商業會議所ノ「炭價昂騰ノ趨勢ト其調節策」ト云フ小册子等ヲ見マス
  ト、矢張吾〓ト同ジク需給ノ關係ハ不平均ニナッテ居ルト云フ事ヲ唱ヘテ居リマス、思フ
  ニ大正五年二千二百万噸ノ石炭ノ產出高、之ニ對シテ六年ニ至ッテハ、約二割乃至
  三割ノ增加ハ已ムヲ得ナイ狀態ニナッテ居リマス、矢張需要ニ伴ッテ供給モ多クナッ
  テ居リマスコトハ當然デアリマス、故ニ需給共ニ數量ガ殖エテ、二千六百万噸內外ニナッ
  テ居リマスト云フコトハ、崎川君ノ御說明ニモアリマスガ、吾ミモ亦左樣ニ想像致シテ
  居リマス、併ナガラ其二千六百万噸ト云フ產出高ニ對シテ、實際使フ所ノ數量ハ或ハ
  ドノ位ナモノデアルカ知リマセヌケレドモ、石炭ノ價格ガ此先キハ非常ニ高クナルト云フ先
  ヲ見越シテ、或ハ問屋ノ如キ、若クハ長ク契約ヲ致シテ居ラヌ工業家等ガ石炭買約ヲ
  致シマシテ、實際必要トスル所ノ數ヨリモヽ更ニ多クノ數量ヲ契約スルコトニナリマスカ
  ラ、隨テ其需給關係上ニ於テ、非常ニ差ガ出來タヤウナ狀態ヲ發見シナケレバナラヌト
  存ジマス、此需要供給ノ差額ナルモノガドレ程アルカト云ヘバ實際ハ想像ヲ以テ御答
  スルヨリ仕方ガナイノデアリマスガ、實際ハ百万噸ヨリ二百万噸位ノモノデアラウト專門
  ノ人ノ話デアリマス、私共ナドモ數量ニ於テ調ベテ見マシテモ、左樣ナ事デナイカト思ハレ
  ル、是等ガ矢張石炭騰貴ノ原因ニナッテ居ルモノデ無カラウカト存ゼラレマス、併シ其數
  量ハ極メテ僅カナ數量デアル、又生產費增加、此生產費ノ增加ト云フ事モ確ニ騰貴ノ
  原因デアルト思ハレル近時物價ガ非常ニ騰貴シテ、人夫賃其他ニモ騰貴シテ居リマス
  カラ、凡其業ニ當ッテ居ル者ノ賃銀ガ、三割乃至五割ハ上ッテ居ルダラウト云ヒマスガ、
  吾ミハ其眞中ヲ取ッテ、四割位ハ無論事業費ハ昂上シテ居ルモノト認メテ居リマス、又
  運賃-其次ノ運賃ト云フ關係ニ對シテハ、申迄モナク非常ニ暴騰致シテ居ル運賃デ
  アリマスカラ、是ガ需要地ニ於ケル石炭ノ炭價ノ上ニ、大ナル影響ヲ及ボシテ居ルコトハ
  事實デアリマスケレドモ、船舶管理令ノ發布ニナリマシタ以後、餘程船腹ノ調和ガ出來
  テ居リマスケレドモ、又鐵道院ノ努力ニ依テ、貨車ノ配給モ餘程圓滑ニ參ッテ居ル狀態
  デアリマスカラ、暫ク此運賃ノ關係ヲ離レテ見タイト考ヘマス、今日ニ於テハ餘程調節サ
  レテ、其賃銀ガ低落致シテ居リマスガ、暫ク此問題ヲ離レテ仕舞ッテモ差支ナイ、左樣ニ
  致シテ私共此騰貴ノ狀態ヲ調ベテ見タイト考ヘルノデアリマス、斯樣ニ致シテ若松港ニ於
  ケル石炭ノ騰貴ト云フモノガ、多少ハ需給不平均ト云フ事モアルシ、或ハ生產費ノ增
  加ト云フ事モアル併シ若松デ調ベタノデアルカラ、運賃關係ハ離レテ仕舞フ離レテ仕
  舞ッテ此二ツノ關係ハアルガ、私共ノ見ル今日ノ石炭ノ騰貴ナルモノハ、果シテ此兩者
  ニ依テ按配セラレテ、經濟上ノ原則ニ基ク炭價デアルヤ否ヤト云フ事ヲ調ベテ見タイノデ
  アリマス、此石炭ノ山元ニ於ケル所ノ炭價、卽チ生產費-是ハ如何ナル譯テアリマス
  カ、從來鑛業家ガ祕密ニ致シテ居リマシテ、決シテ公ケニ致シテ居リマセヌノデアリマス、
  併シ大正六年ノ八月ニ、是モ若松ノ石炭組合ノ事務所カラ調書ガ參ッテ居リマス、其
  調書ヲ見マスト、斯樣ニ報〓シテ居リマス、「生產費ハ各坑トモ其狀態ヲ異ニシ且絕對
  ニ祕密ニ付スルニ依り明確ナル調査ハ不可能ナルモ筑豐炭ニ在リテハ貨車積込迄一噸
  二圓五十錢乃至三圓五十錢ノ範圍ヲ出デズ」ト報告シテ居リマス、炭價ノ騰貴ノ狀
  態ヲ調ベルノニ、全國ニ對シテ調ベルノガ本統デアルケレドモ、九州炭ハ全國ノ產量ノ約
  七割ヲ占メテ居ル、殊ニ大部分ハ此筑豐炭デアリマス、此筑豐炭ヲ姑ク標準ニ取ッテ
  若松港ノ狀態ヲ調ベテ見ヤウ、其生產費ハ大正六年八月ヨリハ二圓五十錢乃至三
  圓五十錢ト云フノガ、山元ノ相場デアルト云フコトノ通知ガ參ッテ居ル此通知ノ報告
  ニ依テ平均シテ見ルト三圓デアル、二圓五十錢ト三圓五十錢ノ平均ハ三圓ト見マス、
  此三圓ニ先刻申上ゲタ生產費ノ增加、之ヲ四割ト見テ、卽チ一圓二十錢、之ヲ加ヘ
  ルト四圓二十錢ト云フモノガ、山元ニ於ケル現時ノ高イ人夫賃其他ヲ使ッテ得タ所ノ
  相場ニナラナケレバナラヌ、卽チ山元ニ於テ一噸平均値段四圓二十錢ナレバ掘リ得ラレ
  ルノデアリマス、ソレニ若松港迄參ル鐵道運賃及人夫賃ヲ加ヘテ、〓算之ヲ五圓トシタ
  イ一噸五圓ナレバ平均四五圓アレバ出來ルト云フコトニナル、今日ノ狀態ニ於テ山元
  カラ若松迄平均石炭値段一噸五圓デアルト云フコトガ誤リナイ計算デアリマスレバ若
  松ニ於テ平均値段ハ今日實價ハナンボシテ居ル、平均値段ガ十七圓致シテ居ル、十七
  圓シテ居ルト云フコトナラバデス、此內カラシテ五圓ノ生產費ヲ引キマスト云フト、十二
  圓ト云フ利益ニナル、十二圓ト云フモノヲ生產費ノ五圓、卽チ實價ノ五圓ニ對照シテ
  見マスト云フト、二十四割ト云フ利益ニナッテ居リマス此二十四割ト云フ相場ハ實
  價ノ五圓ト云フモノト對照シテノ話デアリマスケレドモ、假ニ此石炭業者ノ日本內地ノ
  石炭礦ニ投下シテ居ル所ノ資本金、其資本金ノ計算ヲ種々計算ヲ致シテ見マシタケレ
  ドモ明瞭シテ居リマセヌ、併ナガラ農商務省ノ報告其他ニ依リマシテ、約一億万圓ガ投
  下資本デアルダラウト云フコトニ、學者若クハ老練家ナドガ一致シテ居リマス石炭ノ資
  本金卽チ投下資本金ヲ一億万圓ト計上致シテ、ソレニ對スル所ノ利潤ヲ三割假ニ與
  ヘルモノト致シテ、石炭家ハ特別ノ利益ヲ見込マネバナラヌノデアリマスカラ、三割ト云フ
  コトニ致シテ、假ニ大正四年度ノ二千一一百万噸ノ採炭量、之ヲ標準ニ見マスト云フ
  ト、一噸ガ一圓三十六錢トナル、五割計算デ二圓二十七錢トナルカラシテ、是ガ平均
  四割ト致シタ所デ一圓八十一錢六厘、之ヲ假ニ二圓ト見マス、一億万圓ノ資本ニ對
  シテ四割强ノ利益ヲ與ヘ、ソレガ一噸ニ對シテ二圓ト見積レバ宜イノデアリマス、サウ致
  シマスト五圓ト云フ實價ニ對シテ二圓ト云フ利潤ヲ加ヘテ、卽チ合計七圓ト云フモノ
  デ、所謂炭礦業者ハ優ニ四割五分强ノ利益ヲ得テ居ル筈デアリマス、デ七圓ト云フ價
  格デ若松港デ賣買ガ出來タナラバ旣ニ礦業家ハ-炭礦業者ハ四割五分强ノ利益
  ヲ得テ居ルト云フコトニナル、然ルニ實際ハ十七圓ガ相場デアルト云フコトデアッタナラバ、
  其四割五分ヲ見積ッテ七圓ヲ引イタ殘額ノ十圓ト云フモノハ、私共ノ想像スル經濟上
  ノ原則カラ見テ、穩當ナラザル利潤ト算定シタイト思フノデアリマス、必ズシモ民法上ノ
  不當ノ利潤ト云フノデハナイ、經濟上穩當ニアラザル利潤デアルト私ハ判斷シタイ、ソレ
  ハ一噸ニ對シテ十圓デアリマス、玆ニ一噸ヲ十圓ト云フ丈デハ、國民モ左程ノ刺激ヲ蒙
  ラヌダラウト思ヒマスケレドモ、私共此十圓ト云フモノヲ假定シテ、假ニ大正四年度ニ於
  ケル一箇年ノ採掘量二千二百万噸ト云フモノニ乘ジテ見マスト、一噸十圓ノ所謂私ノ
  見ル暴利ナルモノハ金額ニ見積ルト二億二千万圓ノ暴利ヲ得テ居ル譯ニナッテ居リマ
  ス、此二億二千万圓ノ暴利ト云フモノハ、直接間接ニ六千万同胞ノ國民ノ膏血ヲ
  榨ッテ取ル所ノ暴利デアリマス、而シテ其暴利ハ僅ニー我國民中ノ石炭業者幾人
  アルカト考ヘテ見ルト、農商務省ノ說明ニ依リマスト、個人ノ業者ヲ集メテ約百六
  七十名百六十五名位ノモノデ、百七十名ト云フ數ニ達シテ居ラナイ、國民中ノ百
  七十名ノ人間ガ、其二億二千万圓ノ暴利ヲ得テ、盛ニ彼等ガ豪奢ヲ極メル、現
  ニ新聞紙上ニ各位ノ御承知ノ如ク、北九州ノ土地ハ炭礦業者ニ依テ總テ支配サ
  レテ居ルト云フコトヲ言ッテ居ル、此頃ノ北九州ノ怪シムベキ妖雲ハ全部炭礦業者
  ガシタノデアルト云ッテ居ル、ソレ程マデニ石炭業者ハ豪奢ヲ極メ、淫逸ヲ極メ、風〓ヲ
  害シテ居ルノデアル、併ナガラ是ハ唯〓〓算ヲ申シタ丈デアル、今日迄ニ決シテ炭礦
  業者ガ此二億二千万圓ノ暴利ヲ得タト云フノデハアリマセヌ、大正六年ノ六七月頃
  カラ今日ニ至ル迄平均値段、若松港十七圓ト云フ相場ニ依ッテ取引サレタモノハ
  四五百万噸ニ過ギヌノデアリマス、大ナル部分ハ長期ノ契約アルノガ爲メ、矢張廉イ石炭
  ガ供給サレテ居ルト云フコトデアリマスケレドモ、實際調ベテ見マスト、其長期ノ契約ヲ
  履行スベキ石炭業者ハ中〓ニ老獪デス、現ニ私共ノ調査シタ所ノ二三ナドモヽ其契約
  ノ履行ヲ民法上セネバナラヌノニ、決シテ履行シナイノデス、炭ガ無イト號シ或ハ貨車ノ
  配給意ノ如クナラズト號シテ、決シテ廉イ石炭ハ送ラナイ、送ラナイデ契約ノ不履行ヲシ
  テ、訴訟ヲスルナラ勝手ニ訴訟ヲシロト云フ强硬ナ態度ヲ以テ臨ンデ居ル、併ナガラ炭ノ
  供給ヲ受ケントスル需用者ハ一日ヲ空シウスルコトガ出來ヌカラ、非常ニ哀訴嘆願シ
  テ炭ヲ送ッテ貫フト云フ狀態デ、廉イ炭ナルモノヲ長期ノ契約カラシテ履行サレテ居ルコ
  トハ、是モ鑛山局デ崎川君ガ、矢張特別委員會ニ於テ報告サレテ居ルノデアリマス、其
  說モ根柢ニ於テ大分怪ムベキ實際上ノ證據ガアル、故ニ學者ノ謂フ四五百万噸ト云フ
  ノモ、今少シ大ナル數量ニ上ッテ居ルト思ハレマスシ、現在ハ又非常ニ石炭ノ契約ヲ更新
  スルト云フ時期ニ臨ンデ居リマスカラ、今日ニ於テ此炭價ノ調節ヲ致サズニ置キマシタナ
  ラバ、是カラ後契約スル者ハ、卽チ日本全國ニ於テ要求スル所ノ炭ノ全體ガ、此價格
  ニ依テ支配セラルコトニナリマズカラ、私ノ申上ゲタ二億二千万圓ニ略〓近キ金額ガ矢
  張炭礦業者ノ懷ニ入ッテ、サウシテ此金額ハ直接間接ニ國民ノ膏血ヲ榨ラレル結果ニ
  ナルノデアリマス、現ニ政府ハ此頃契約サレテ居ルト號スル所ノ此鐵道院アタリノ炭ナド
  モ、斯樣ニ十七圓ト云フ髙イモノハ御買ニハナリマスマイケレドモ、少ナクトモ其半額位ニ
  ハ買デテルルニ違ヒナイ、半額デ買ッテ居ルモノト致シテ、假ニ四百万噸契約ヲスルモノト
  致シマシタナラバ實際ノ十圓デモ四千万圓トナル、其半額二千万圓ハ確ニ前年度ノ
  狀態ヨリハ高ク買ハネバナラヌ、卽チ國民ノ負擔ヲシナケレバナラヌト云フ所ノ金額ト相
  成ルダラウト考ヘマス、斯樣ナ狀態ニナッテ居リマスノデアリマス、尙ホ此際ニ於テ一言申
  シテ置クベキハ、石炭業者ト云フ者ヲ保護シヤウト云フ傾ガア『ル、之ニ付テ石炭業者ヲ
  保護サレルト云フコトハ私ニ於テモ異存ノナイコトデアリマスケレドモ此間二月ノ上旬
  カラ農商務省カラ九州其他大阪名古屋等ニ迄、需給ノ關係ヲ取調ベニ行カレタ官吏
  ガアリマス、其方ナドハ新聞紙ノ報道スル所ニ依ルト炭價ノ調節ヲ計ルト云フ必要ハナ
  イノミナラズ、一步進ンデ石炭業者ヲ相當ニ保護セネバナラヌト云フヤウナコトヲ、眞實
  ニ言ハレタノデアルカドウデアルカ新聞紙ノ報道ニ依ルト左樣ナ事ヲ言ハレタト云フコト
  デアリマス、斯樣ナ考テ居ラレルト云フコトニナリマスト、民間デ考ヘテ居ル石炭ニ對スル
  苦痛ト、政府者ノ御考トハ月鼈ノ差ガアリハセヌカト云フコトデ、現ニ特別委員會ニ於
  テ農商務大臣ナリ政府委員ナリノ御說明ニ依リマシテモ、委員ノ方カラ切メテハ石炭ノ
  輸出ヲ禁ジタラドウカト云フ御尋ニ對シテ、必要ガアレバ輪出ヲ禁ゼヌト云フコトモナイケ
  レドモ、現在ニ於テハ輸出ヲ禁ズル必要ガ無イト認メテ居ル、斯樣ナ御答辯ニナッテ居リ
  マス、此御答辯ナリ或ハ各地ヲ巡囘サレタ農商務技師ノ意見ナドヲ聽イテ見ルト、政府
  ノ御調査ニ依レバ、石炭業者ハ斯樣ナ暴利ヲ得テ居ル又其暴利ヲ得テ居ル結果ニ因
  テ、工業家及國民ガ非常ナ苦痛ヲ嘗メテ居ルト云フコトニハ、餘リニ御同情ガ無イヤウ
  ナ狀態ニアリハセヌカト思ハレルノデアリマス、デ果シテサウ云フ事デアレバ私共ハ甚ダ遺
  憾ニ堪ヘナイト存ジテ居リマスル、殊ニ特別委員會ニ於テサウ云フ御說ガアッタノデアリマ
  スカ、石炭屋ト申ス者ノ階級ハ、卽チ日本ノ富豪階級ニ屬スル者ガ多イ、現ニ特別委
  員會ニ於テハ名マデ明カニ表ハシテ、是レノノヤウナ富豪モ、其石炭業者デアルト云
  フコトヲ言ハレテ居リマス、私ハ此處ニハ其富豪ノ名前ナドヲ列舉スルコトハ避ケテ置キ
  マスガ、夫等ノ富豪者ガ炭礦業者デアルカラシテ、是等ノ人ノ御機嫌ヲ取ル爲メニハ、
  政府モ石炭ノ市價調節ト云フヤウナ手荒イ事ハ能ウセマイ、斯ウ云フ事ヲ新聞紙ガ書
  イテ居ルノデス、サウ云フ風ノ疑ガ確ニアルト世人ハ思ッテ居ル-國民ハ思ッテ居リマス
  故ニテス、若シ私共ノ述ベタ事ガ富豪ノ方ミノ實際收入セラルヽ所ノ利潤ト趣ヲ異ニシ
  テ居ルノデアルナラバ、寧ロ斯樣ナル場合ニ於テハ、富豪階級ノ石炭業ガ進ンデ、石炭
  ノ生產費ヲ公ニスルガ宜シイ、石炭ノ生產費ヲ公ニシテ、若松港ニ於テハ實際是丈ノ
  費用ヲ要スル、ソレニ對シテ吾〓ハ是丈ノ利潤ヲ加ヘタ、其炭價ヲ以テ賣ルノデアルト云
  フコトヲ明瞭ニシテ、國民ニ對シテ決シテ暴利ヲ貪ッテ居ラナイ、吾〓富豪ナル者モ矢張
  日本國民ノ一人デアルカラ、國民ノ生活ヲ危殆ニ瀕セシメ、若クハ日本ノ工業ノ基礎
  ヲ危ウシテ迄自己ノ「ポケット」ヲ殖サウト云フ考ハ、更ニ無イト云フコトヲ明カニセンガ爲
  ニ、其生產費ノ內譯ヲ明瞭ニ公ニセラルヽト云フコトガ私ハ宜イト思フ、デ是ハ私共ガ
  富豪ニ望ム第一ノ希望デアリマス、斯樣ニ私共ガ陳列ヲ致シタ其計算ノ基礎ニ大ナル
  誤ガ無イト致シタナラバ今日工業ノ基礎ヲ危ウシ、國民ノ生活ヲ危殆ナラシムルト言
  ハレテ居ル此石炭ノ騰貴ノ原因ハ、石炭業者ガ暴利ヲ貪ッテ居ルト云フ事ニ在リハシナ
  イカ私共ハ是ハ暴利ナリト認ムルガ、現在ノ政府當局者ハ吾〓ト其感ヲ同ウシハシナ
  イカドウカ、是ガ私共ノ第一問デアリマス、更ニ斯樣ニ石炭ノ價格ナルモノハ暴騰ヲ來シ
  テ、實際ニ產業政策上看過スルコトノ出來ナイヤウナ狀態ニナッテ居リマスルナラバ、何ガ
  故ニ政府ハ速ニ此炭價ノ調節ヲ講ジナイデアルカト云フノガ第二問ナンデアリマスデ
  政府ハ現在ノ米穀小麥麥粉ト云フヤウナ物ノ價格ガ、高キニ過ギルト云ッテ、是ガ調節
  ニ非常ニ御盡力下サッテ居リマス、ソレガ爲メニ輸出禁止モ實行サレテ居リマスルシ關
  稅問題-輸入增加モ企テラレテ居ルト云フコトデアリマスルガ、果シテ此三者ニ比ベ
  テ見テ、石炭ノ市價ト云フモノガ高キニ過ギナイノデアリマセウカ、私共ノ見ル所ニ依レバ
  今日石炭ノ價ノ騰貴ハ、米穀小麥麥粉等ノ騰貴ノ割合ヨリモ、數等暴騰ヲ致シテ居
  ルト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、デ假リニデス、此米穀ノ方カラ考ヘテ見マスルト、米穀
  一石ノ生產費ナルモノニ對シテハ、調査セラレタ方ガ區々ニナッテ居リマスケレドモ、最モ
  廉イ生產費デアルト言フ人デモ、十七圓ト言フ人ハ少ナイ、十七圓乃至二十四五圓ト
  迄モ唱ヘラレテ居リマスケレドモ、先ヅ米一石ノ生產費ヲ十七圓ト假定致シマス、十七
  圓ト假定シマスルト、實際今日ノ價格ハ二十六圓デアリマス、サスレバ九圓ノ利益デア
  ル、九圓ノ利益ハ十七圓ニ對シテ五割三分弱ノ騰貴ニシカナッテ居ラヌ、然ルニ石炭ハ
  前申シマシタ通リ、一噸ノ利益ガ十二圓テ、實價ニ對シテ二十四割ノ騰貴ノ割合ニナッ
  テ居リマス、此騰貴ノ割合カラ見レバ石炭ノ市價調節ノ急務ハ米穀ノ上ニコソアレ、
  決シテ小麥ヤ麥粉ナドニ負ケル狀態デハナイノデアリマス、更ニ此調節ヲサルヽ所
  ノ供給者ノ側カラ考ヘテ見ルト、米ノ方ノ側デハ御承知ノ如ク、日本國民ノ六
  割ヲ占メテ居ル所ノ此農民ガ、卽チ米ノ供給者デアリマスカラシテ、此米ノ所
  謂九圓ノ利潤ナルモノハ、直接間接ニ是等農民ノ懷ヲ肥スコトニナリ、農村
  ノ振興ト云フコトニナルノデアリマスルカラシテ、國家ノ根幹ニ營養分ヲ加ヘルコトニナッ
  テ、實際言ヘバ此九圓ノ米ノ騰貴、卽チ調節ヲ要スルト號サレル所ノ米九圓ノ利益ト
  云フモノハ非常ニ國民ノ爲ニハ結構ナンデス、國家ノ爲ニハ結構ナ狀態ニナッテ居ルノ
  デアリマス、左樣ニ汎ク分布サレルト云フ性質ニナッテ居ル、然ルニ石炭ノ方ハドウテアリ
  マスカ、私ガ唯今申上ゲタ通リ、石炭ハ僅カニ百七十名ト云フ者ノ懷ニ撒カルヽ所ノモ
  ノデアッテ、其利益ガ決シテ汎ク分布シナイノデス、故ニデス、此調節ト云フ事ノ意味ガ
  若シ國家ノ經濟、國民ノ頭カラ割出サレルト云フコトデアリマスルナラバ石炭ノ方コソ
  早ク調節ヲスレバ害ガ無クシテ、非常ナ利益ガ有ル、米ノ方ノ調節ヲ今八釜敷ク言フヨ
  リハ、寧ロ其方ガ實際急務デアリハシナイカ、斯樣ナ結果ニナリハシナイカト私ハ考ヘルノ
  デアリマス、而モ是等ノ少數者ニ不當ノ利潤ヲ與ヘタ結果ハ、所謂石炭成金ナルモノヲ
  生ジテ、所在ニ奢侈淫逸ニ流レテ風〓ヲ害スルト云フコトデアレバ、益〓是等ノ點カラ考
  ヘテモ、石炭ノ關節ヲシテ置ク方ガ宜イト考ヘル、然ラバ此石炭ノ調節ト云フ事ニ對シ
  テハドウシタラ宜イカト云フコトノ結果ヲ生ズルノデアリマスガ、是モ學者及實業家ガ既
  ニ言ヒ盡シテ居リマス、第一ニハ輸出ノ制限デアリマス、是ハ特別委員會ニ於テモ唱ヘ
  ラレタ所ノ問題デアッテ、三池トカ。或ハ唐津トカ云フガ如キ特種ノ品質ヲ具ヘク所ノ炭
  ハ、無論海外へ賣ッタ方ガ國益デアリマスガ、其他ノ炭ノ如キハ輸出ヲ制限致シテ、內
  地ノ供給ヲ裕カニシタ方ガ必要デハナカラウカト云フ點デ、是ハ特別委員會ニ於テモ旣
  ニ〓究サレテ居リマス、第二ニ輸入ノ增加デアリマス、是モ既ニ論ジ盡サレテ居ル問題
  デ、輸入增加ト云ヘバ撫順炭ノ採掘高ヲ增加スル事、ソレヲ成ベク內地へ多ク持テ參
  ル事、ソレカラ外國ヘ輸出ヲ禁ズル事、撫順炭ノ外國ヘ輸出スル高ハ大正四年度ニ百
  万噸程アリマスカラ、ソレ等ヲ減ジテ內地ヘ持テ來ルト云フ方法ヲ採ッタラドウカト云フ
  事更ニ近時新聞ニモ唱ヘテ八釜敷ク言ハレテ居ルノハ、日本政府ガ必要トシテ居ル
  石炭ノ數量ガ約三百五十万噸以上四百万噸デアル、此石炭ヲ內地ノ炭業者カラ買
  フガ爲ニ、民間ノ需要者ト競爭ヲ致シテ、政府ト民間ノ需要者ト競爭シテ、、炭價ヲ高
  クスルト云フ狀態ニナッテ居ルカラ、是非共是ハ政府ノ需要丈ハ撫順炭カラ買ッテ貰ヒタ
  イ、撫順炭ヲ契約致シテ、政府ハ多少運賃其他ニ於テ損ヲシテモ、內地ヘソレヲ持テ來
  テ貫ヒタイト云フノデアル、是ハ最モ大切ナル時代ノ私ハ叫ナリト考ヘテ居リマス、此等
  ハ政府ニ於テ御〓究ナサラナケレバナラヌト云フ考デアリマス、併ナガラ一部分撫順炭ト
  ノ契約モ出來タト云フコトデアリマスガ、私共ハ之ヲ企テヽ貰ッタナラ、先刻申上ゲタ需
  要供給ノ不平均、卽チ需要ガ供給ニ對シテ百万噸二百万噸モ多イト云フ、是ガ政府
  ノ炭ハ撫順炭カラ買ハレルト云フ事ニ依テ、明カニ調節サレルト考ヘマス、更ニ私共ノ考
  デハ石炭ノ最高價格ノ制限ヲシタラドウカト云フノデアリマス、現ニ或ル炭礦業者ハ斯
  ウ云フ事ヲ言ッテ居ルノヲ耳ニシテ居ル、政府ガ自己ノ權力ヲ以テ石炭ノ價格ヲ調節ス
  ル、卽チ最高價格ヲ制限スルト云フヤウナ事ヲ致シタナラバ、吾〓ハ炭ヲ掘ラナイ許リデ
  アル炭ヲ掘ラズニ置ケバ宜イト云フコトヲ唱ヘテ居ル、左樣ナ考デ炭礦業者ガ居ルナラ
  バ、ドウシテモ私共ハ政府ノ大權力ヲ以テ、市價ノ最高限度ヲ制限スル必要ガアルト考
  ヘル、市價ノ最高限度ヲ制限シテ、是非共必要ナル高丈ハ、採炭ハ政府ガ督促シテ發掘サ
  セルヤウニセネバナラヌト考ヘル、ソレデモ尙ホ效力ガ無イト云フナラバ、少シク蠻勇カ知リマ
  セヌガ、所謂石炭ノ官營論デアリマス、石炭ノ官營論ト云ヘバ甚ダ氣狂染ミタ說ノ如ク
  デアリマスガ、此石炭ノ官營論ハ戰爭中、戰爭ノ終ッタ二箇年ノ間、卽チ米國鐵道官
  營ノヤウナ期間中、一定ノ保證金ヲ石炭業者ニ拂シテ、サウシテ政府ガ其採炭ヲナシ、
  之ヲ國家及自己ノ需要ニ供給スル事ガ一番良イ方法デアリマス、其方法ヲ以テシタナ
  ラバ完全ニ石炭ノ調節ガ出來ルノデアリマスケレドモ、果シテ政策ハ其所マデ御遣リニ
  ナル勇氣ガアルカドウデアリマスカ、此等ハ私共ノ私論デアリマス、固ヨリ私論デアリマス
  カラ、政府ノ御參考ニ供スルニ過ギマセヌケレドモ、私共ノ希望ハ言葉ノ上デ唯〓調節
  ヲスル積リデアルトカ、其調節ハ今少シ過ギテカラスルノガ適當デアルト云フヤウナ御說丈
  デ滿足スルモノデハナイ、十分ニ其實行ヲ願ヒタイノデアリマス故ニ先刻述ベタヤウニ農
  商務省ノ官吏ガ九州其他ニ視察ニ出張セラレテ御取調ニナッタ所ニ依レバ、需給ノ不
  平均ハ稍平衡ヲ得テ居ル、斯樣ナ御說ガアリ、又民間デハ石炭騰貴ノ原因ハ需給ノ
  不平均カラデアルト云フヤウニ、騰貴ノ原因ニ付テ爭ガアルト云フコトデアレバ、民間ノ者
  ト政府者ト相寄ッテ、此炭價騰貴ノ原因ヲモ調査シ、適切ナル調節ノ方法ヲ攻究スル
  事モ必要デアラウト思フ更ニ進ンデ民間ノ實業家或ハ學者等ノ說モ聞カレテ、吾〓ノ
  苦言中ノ一二ヲ共ニ行フトカ或ハ別々ニ行ッテモ構ハヌガ、兔ニ角實行ヲ早クシナケレ
  バ此以上石炭ノ騰貴ガアッテハ、工業ノ基礎ヲ危クシ國民ノ生活ヲ危殆ニ頻セシム
  ル斯ウ云フ事ニ考ヘ及ボサレテ、是非共速ニ通切ナル炭價調節ノ方法ヲ講ジテ戴キタ
  イト云フノガ、本員其ノ考デアリマス、終リニ臨ンデ更ニ私共ハ政府ニ申上ゲテ置キタイ
  ノハ、先刻申述ベタ一富豪階級ガ石炭ノ營業ヲ致シテ居ル、其富豪ノ威力ハ政府ノ大
  權力ヲモ凌駕シテ居ル、又政黨ノ力ヲモ凌グ程ノ大ナル威力ヲ持ッテ居ルノデアリマス、
  是ハ惡口ヲ言フ一二新聞ノ言フ所デハナイ、國民中ノ識者階級ニ於テ明カニ此囁ガ傳
  ハッテ居リマス、明カニ左樣ナ疑惑ヲ持ッテ居リマス、故ニ政府ハ私共ノ御質問ニ對シテ
  答辯ヲ賜ハルニ臨ミ、能ク這般ノ事情ヲ御考ヘ下スッテ、一面ニ於テハ國民ノ疑惑ヲ解
  キ、更ニ現在ニ於ケル工業家ニ安心ヲ與ヘラルヽヤウ、國民生活ニ安定ヲ與ヘラルヽヤ
  ウナ、剴切ナル御答辯ヲ切ニ私ハ願ッテ此壇ヲ降ラウト思ヒマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=11

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• 012・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　質問第二牧山耕藏君
  二殖民地統治ニ關スル質問(牧山耕藏君提出)
  植民地統治ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正七年二年二十三日
  提出者牧山耕藏贊成者松田源治
  外三十三人
  殖民地統治ニ關スル質問主意書
  一殖民地統治ノ實績如何政府ハ將來統治機關ノ組織竝政策ヲ改ムルノ意思ナキ
  ヤ
  右及質問候也
  〔牧山耕藏君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=12

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• 013・牧山耕藏

  ○牧山耕藏君　本員ハ現政府ノ施設ニ對シマシテ、幾多ノ疑團ヲ有スルモノヽ一人デ
  アリマス、併シ是等ノ大體ニ付キマシテハ本議會開會以來旣ニ多數ノ先輩同僚ニ依
  テ、討議〓覈ヲ盡サレタノデアリマスカラ、此等ノ點ニ關シマシテハ、今日玆ニ貴重ナル
  時間ヲ費サントスルモノデハ御坐イマセヌ、唯く一事帝國ノ最モ重要ナル國務ノ一デアル
  殖民地統治ノ事ニ關シマシテ、甚ダ了解ニ苦ム點ガ少カラヌノデアリマスカラ、此等ノ
  點ニ關シマシテ、暫時ノ間諸君ノ御〓聽ヲ煩シタイト思ヒマス、帝國ノ殖民地經營ハ其
  端ヲ臺灣ノ領有ニ發シマシテ、爾來二十有餘年ノ間ニ於テ、或ハ樺太ヲ領有シ、朝鮮
  ヲ併合シ、關東州ニ對シテ帝國ノ勢力ヲ確立致シマシタ、此面積ハ我ガ日本ニ比シマ
  シテ約八割其他ノ勢力圏ヲ加ヘマスレバ優ニ本國ノ二倍ニ相當スル廣大ナル地域
  ニ亙リマシテ、一躍シテ日本ハ世界ニ於ケル所ノ殖民國ノ列ニ八ッタヤウナ譯デ、此點ハ
  實ニ國家ノ爲メニ慶スベキ事デアリマスルガ、此廣大ナル新天地ニ向ッテ、帝國ノ經綸抱
  負ヲ行ヒマスル事ニ付キマシテハ最モ重要ナル國務ノ一テアリマスルコトハ、本員ガ改メ
  テ此處ニ申ス迄モナイコトデアリマス、然ラバ現政府ハ之ニ向ッテ如何ナル經綸抱負ヲ有
  スルカ、又抱負經綸ヲ實行スル上ニ於テ、如何ナル方策如何ナル確信ヲ有スルノデアリ
  マスカ、是レ實ニ帝國ノ殖民地經營ニ關スル根本問題デアリマシテ、其實績ノ如何ハ直
  チニ帝國ノ興廢消長ニ關スル重大問題デアリマス現政府ハ總理大臣タル寺內伯ハ、
  韓國併合條約ノ調印者デアリマシテ、引續イテ七箇年ノ長イ間朝鮮ノ統治ニ當ック人
  デアリマス、又內務大臣タル後藤男爵ハ臺灣及滿洲ノ統治ニ當ラレタ人デアリマス、
  又大藏大臣デアル勝田主計君ハ、短期間トハ申シナガラ朝鮮銀行ノ總裁ノ職ニ在ッタ
  人デアリマス、翻ッテ殖民地統治ノ重任ニ當ッテ居ル者ハ何人デアルカト申シマスレバ悉
  ク武人デアリマス、寺內首相ハ軍部ノ重鎭トシテ總督都督ノ武人制度ノ樹立ニ關シマ
  シテハ、直接間接ニ重大ナル關係ヲ有ッタ人デアリマスカラ、本員ガ殖民地統治ニ關ス
  ル質問ヲ致シマスルハ、此時ヲ以テ絕好ノ機會ナリト信ズルノデアリマス、先ヅ第一ニ政
  府ニ問ハント欲スル點ハ、殖民政策ニ關スル根本ノ方針如何ト云フノデアリマス、我帝
  國ハ非常ナル民族ノ膨脹ヲ致シマシテ、此處數年間ノ統計ニ見マスレバ、每年增加ス
  ル我同胞ノ數ハ殖民地ヲ外ニシテ、本國ノミニ於テ八十万人ヲ下ラヌノデアリマス(2013)
  ニ我同胞ガ殖民地ヲ始メトシテ、世界到ル處ニ散布サレテ居リマスル其數ハドレ位カト
  申シマスルト、先ヅ殖民地ニ於キマシテ、朝鮮ニ於テ三十万人、臺灣ニ於キマシテ十四万
  人、樺太ニ於キマシテ六万人、關東州ニハ約五万人デアリマシテ、此等ノ殖民地竝ニ租
  借地ニ於ケル所ノ同胞ノ總數ハ僅ニ五十五万人ヲ出ナイノデアリマス、此外支那其他
  世界到ル處ニ於テ、我同胞ガ發展ヲ致シテ居リマスルガ、其總數ハ八十五万人ニ過ギナ
  イノデアリマス、卽チ殖民地及ビ其他列國ニ分布サレテ居リマスル所ノ、我同胞ノ總數
  ト云フモノハ、僅ニ百四十万人ニ過ギナイノデアリマス、年々增加致シマスル所ノ我同胞
  ノ數ガ八十万人ト致シマスレバ僅ニ二年分ニモ足ラナイト云フ狀態デアリマス、政府ハ
  將來果シテ何レノ天地ニ向ッテ、我ガ民族ノ發展ヲ期セムトスルノデアリマスカ、現狀ノ
  儘ニ放任ヲ致シテ、自由ニ其趨ク所ニ任スト云フ方針デアリマスルカ、或ハ或特定ノ地
  域ヲ限リマシテ、成ルベク日本勢力ノ及ンデ居ル範圍內ニ向ッテ集中ヲスル、言葉ヲ換
  ヘテ申シマスレバ、散布主義ヲ執ラズシテ、移民政策ニ關シテハ集中政策ヲ執ルト云フ
  方針デアリマスルカ熟〓歐洲列國ノ情勢ヲ觀察致シマスルト、大戰ノ勃發以來、政治
  的ニモ經濟的ニモ、其他國家百般ノ施設上ニ於キマシテ、痛ク根柢ヲ脅カサレテ、來ル
  ベキ戰後經營ニ對シマシテハ殆ド革命的ノ示威運動ヲ起シテ居ルト云フ有樣デアリマ
  ス、就中最モ注目スベキハ、殖民政策ノ上ニ於ケル所ノ顯著ナル動搖デアリマス、卽チ
  英國ニ於キマシテモ、獨逸ニ於キマシテモ、佛蘭西ニ於キマシテモ、從來ノ如ク散布主義
  ヲ執ッテ居ルコトハ國家ノ非常事デアル、將來ハ移民ニ對シテハ、一定ノ地域ニ集中主
  義ヲ執ラナケレバナラヌト云フ方針ヲ定メテ居ルノデアリマス、卽チ自由ニ放任ヲ致シマ
  スル結果トシテハ、移民上云フ者ハドウシテモ賃金ノ高イ所ニ惣クノアリマス、隨テ若イ
  者、此丁年以內ノ者ハ多ク移民ヲ致サナイノデアリマシテ、丁年以上ノ壯丁ガ海外ニド
  シドシ出テ行ッテ、他國ノ生產事業ニ從事スルトー云フコトハ、取モ直サズ自國ニ於ケル
  所ノ生產能力ヲ減ジテ、他國ノ社會的貧血ヲ補フト云フ結果ニナルノデアル、又兵役
  ノ關係ニ於テモ、歐洲ガ大戰以來非常ナル若イ者ヲ要求シテ居ルノデアリマスルガ、列
  國ニ散布致シマシタル者ハ、容易ニ歸ッテ來ナイト云フヤウナ者モ少クナイノデアリマス、
  所謂從來散布ヲ致シテ居ッタル移民ニ對シテハ、兵役ヲ免除致シテ居ッタガタメニ一旦
  國家ニ緩急アル場合ニ於テハ斯樣ナル點ニ於テモ非常ニ注意ヲ拂ハナケレバナラヌト
  云フコトデ、歐洲列國ニ於テハ、戰後政策トシテ移民ノ集中主義ヲ執ルト云フヤウニ見
  エルノデアリマス、殊ニ英吉利ノ如キハ單ニ移民ノミナラズ、將來ハ資本ニ對シテモ集中
  主義ヲ執ラナケレバナラヌト云フコトガ、英吉利ノ富源開發委員會ニ於テモ左樣ナル
  議論ガ多數ヲ占メテ居ルヤウニ伺ッテ居ルノデアリマス、嘗テ我國ノ外務大臣小村侯ハ
  滿韓移民集中論ナルモノヲ唱ヘラレタコトガアリマス、從來我國ニ於ケル移民政策ハ、
  殆ド無方針ト云ッテモ宣シイヤウナ狀態デアッタノデアリマスルガ、小村侯ニ依テ滿韓移
  民集中論ガ唱ヘラレタノデアリマスルガ是ハ果シテ今日歐米先進國ガ主張ヲ致シテ居
  リマスル如キ、散布主義ヲ廢シテノ移民集中論デアッタカドウデアルカ、是ハ大分疑ヲ挾
  マナケレバナラヌト思フノデアリマスルガ、卽チ當時ニ於キマシテハ、此米國ニ於ケル所ノ
  排日熱ガ非常ニ盛ンデアッタ、之ヲ緩和センガタメニ、時ノ外務大臣ガ斯樣ナル集中論
  ヲ唱ヘラレタノデハナイカト察セラルヽノデアリマスルガ、現政府ハ將來優等國竝ニ劣等國
  ニ對シテ、如何ナル移民政策ヲ執ルノデアルカ、又熱帶及溫帶方面ニ於キマシテモ、如
  何ナル移民政策ヲ執ラムト欲スルノデアルカ、我國ハ既ニ南洋ニ於テ占領地ヲ有シテ居
  ルノデアリマスルガ、南洋ノ占領以來我同胞ガ彼ノ方面ニ參リマス者ハ、甚タ少ナクナイ
  ノデアリマス、然ルニ其結果ハ我母國ト氣候風土ヲ異ニ致シテ居リマスガ爲メニ、體力ニ
  於キマシテモ南洋ノ土人ト競爭ヲ致スコトガ出來ナイノデアリマス、隨テ悲慘ナル狀態ニ
  陷ッテ居ルト云フヤウナコトモ、承知ヲ致シテ居ルノデアリマスルガ、歐洲列國ニ於キマ
  シテハ、此熱帶圏ニ對スル所ノ移民政策トシテハ、諸君御承知ノ如ク放資主義ヲ執ッテ
  居リマシテ、資本ヲ出シテ其土地ノ土人ヲ使ッテ產業ノ開發ヲスル、若クハ主トシテ原
  料ヲ南洋熱帶圏ニ於ケル殖民國ヨリ、之ヲ取ルト云フヤウナ方針ヲ執ッテ居ルノデアリマ
  スルガ、現政府ハ是等南洋ニ對シマスル所ノ移民政策ハ、如何ナル方法ヲ執ラムトスル
  ノデアリマスカ、現內閣ハ東拓法ノ改正竝ニ世界的ノ殖民地會社トモ申スベキ海外興
  業會社ヲ起シマスル等、多少國民ノ海外發展ト云フコトニ對シテハ力ヲ盡シテ居ルヤウ
  デアリマス、併シ本員ガ唯今申述ベマシタ如ク、徹底的ニ調査〓覈ヲ遂ゲテ居ラルヽカ
  ト云フト、甚ダ此點ニ疑ヲ挾マザルヲ得ヌノデアリマス、是レ實ニ國家的竝ニ社會的ノ
  重大問題デアルト信ズルノデアリマスカラ、此點ニ關シテ政府ノ明確ナル答辯ヲ要求致
  シタイト思フノデアリマス、第二ニ問ハント欲スル點ハ、政府ガ拓殖局ヲ廢シテ拓殖務省
  ヲ設置スルノ意ナキヤト云フノデアリマス、殖民地ノ狀態ハ唯今申述ベマシタ通リ、實
  本國ノ二倍ニ匹敵スル所ノ領土、及勢力範圍ヲ持ッテ居リマシテ、殖民地ノ統治ハ今
  日我ガ帝國ニ取リマシテハ重大ナル國務ノ一ニ相成ッテ居ルノデアリマス、然ルニ現政
  府ハ此重要ナル植民地ノ統一機關トシテ、拓殖局ナルモノヲ造ッテ居ルノデアリマス、歐
  洲列國ノ例デ見マスレバ、、英吉利ニ於キマシテモ、佛蘭西ニ於キマシテモ、獨逸ニ於キマシ
  テモ、葡萄牙ニ於キマシテモ、白耳義ニ於キマシテモ、其他伊太利ニ於キマシテモ、悉ク
  此植民省ヲ有セザル國ハナイノデアリマス、植民省ヲ置イテ植民大臣ニ依ッテ、植民地ノ
  統治ト云フモノハ統一ヲサレテ居ルノデアリマス、殊ニ英吉利ノ如キハ植民省ノ外ニ印度
  省ヲ持ッテ居ルト云フコトハ、諸君ノ御承知ノ如クデアリマス、唯ニ米國ノミハ聯邦議會
  ガ植民地ニ關スル統治權ヲ總攬致シテ居リマス爲メニ、植民省ヲ持ッテ居ラヌ、我日本
  ノ從來ノ此點ニ於テノ制度ヲ〓究シテ見マスルト、曾テ臺灣ノ領有ノ當時ニ於キマシテ
  ハ、拓殖務省ヲ設置致シタノデアリマス、然ルニ其後此拓殖務省ヲ廢シテ、內閣ノ中ニ臺
  灣事務局ヲ造ッテ、北海道ニ關スル事務ノミガ內務省ニ於テ所管致シタ、然ルニ其後
  ニ至ッテ、臺灣事務局ヲ廢シテ之ヲ內務省ノ所管ニ移シタノデアリマス、第二次桂內閣
  ノ時ニ至ッテ、更ニ拓殖局ヲ新設シ、第二次西園寺內閣ニ至ッテ之ヲ廢シテ、內務省ノ
  所管ニ移シマシタノデアリマス、而シテ今囘寺內內閣ニ依ッテ拓殖局ナルモノガ新設サ
  レタノデアリマスルガ、從來ノ是等ノ經過ニ見マシテモ我ガ帝國ノ殖民地統治ニ關スル
  所ノ政策ハ、朝三暮四デアッテ、甚ダ無定見デアッタヤウニ本員ハ見ルノテアリマス。、現在
  ノ拓殖局ノ官制ヲ見マスルト云フト「拓殖局ハ內閣總理大臣ノ管理ニ屬ス云々」ト書
  イテアルノデアリマスルガ事實ニ於キマシテハ、此事務ハ何人ガ執ルノデアルカト申シマ
  スト、拓殖局長官ガ執ルノデアリマス、卽チ内閣總理大臣ハ他ノ國務ガ多忙デアリマス
  ル爲メニ、主トシテ殖民地ノ統治ニ對シテ力ヲ傚スコトガ出來ヌノデアリマス、拓殖局長
  官ハ一個ノ屬僚デアリマス、事實ニ於テ殖民地統治ノ問題ハ、一個ノ屬僚ニ依ッテ支
  配サレテ居ル結果ニナリマス、殊ニ拓殖局ナルモノヽ組織ハ極メテ不完全デアリマス、帶
  ニモ襷ニモナラヌト云フ中途半端ナ制度デアリマス、殊ニ白仁長官ガ製鐵所長官ニ更ラ
  レマシタ今日ニ於キマシテハ法制局長官ノ有松君ガ御兼任ニナッテ居ルノデアリマスガ、
  法制局ノ仕事モ頗ル多忙デアッテ、殊ニ有松君ハ餘リ植民地ノ事情ニ御精通ニナラヌ
  コトハ御自身ガ特別委員會ニ來テモ仰シヤッテ居ルノデアリマスカラ、御自身モ適任者
  ニアラズト御考ニナッテ居ルノデアリマセウ、然ルニ西園寺內閣ノ當時ニ於ケル拓殖課ハ
  ドウデアッタカト申シマスト、當時ニ於キマシテハ唯〓拓殖課ハ、植民地ニ關スル書類ノ
  通過驛ニ相成ッテ居ッタノデアリマス、五十步百步ト致シマスレバ寧ロ拓殖課ヲシテ
  書類ヲ取次ヲセシメテ、重用ナル案件ノミヲ內務大臣ガ處理スルコトガ適當デナイ
  カト存ジマス、現在ノ拓殖局ノ組織ハ長官次長書記官ヲ以テ組織シテ、臺灣朝
  鮮樺太關東州ヲ第一課、第二課、第三課ト課ガ置カレテ居リマスガ、何レモ高
  等官五等カ六等ノ極ク若イ書記官ガ其事務ヲ取扱ッテ居ラルヽノデアリマスガ、殖
  民地ノ事情ハ其所々々ニ依テ色〓高等政策ノ上ニ於キマシテモ、注意スベキ點ガ
  アルノデアリマスルガ、事實ニ於キマシテ斯樣ナル屬僚政治ニ依テ殖民地ガ統治ヲ
  セラルヽト云フコトハ本員帝國ノ國策ノ上ニ於テ甚ダ悲マザルヲ得ナイノデア
  リマス、殊ニ此經營ノ成敗如何ト云フコトハ、國勢ノ消長ニモ關スル重大問題
  デアリマスルガ故ニ、政府ハ進ンデ拓殖局ヲ廢シテ、拓殖務省ヲ設置スルノ意
  ナキヤ如何ト云フコトヲ御尋致スノデアリマス、此點ニ關シマシテハ政府ノ明確ナル答辯
  ヲ願ヒタイ、若シ拓殖務省ヲ設クルノ必要ナシトセバ、其理由モ併セテ伺ヒタイト思フノ
  デアリマス、第三ニ伺ヒタイノハ朝鮮臺灣ノ總督及關東都督ノ任用資格ヲ、武人ノ
  ミニ限定セズ、之ヲ一般ニ擴張スルノ意思ナキヤ、若シ飽迄現制度ヲ維持スルトセバ
  其必要ナル理由ヲ伺ヒタイ、本員ハ豫算委員總會ノ席上ニ於テ、此問題ニ對シテ後藤
  國務大臣ト簡單ナル應酬ヲ致シタノデアリマスガ、後藤國務大臣ノ答辯ガ甚ダ要領ヲ
  得ナカッタ、悉ク其文句ヲ記憶致シマセヌガ、現在ノ制度ハ約七十五年位ノ間ト云フモ
  ノハ、存置シナケレバ相成ラヌト言ッタヤウナ、殆ド何ノ意味デアルカ了解ニ苦ム所ノ答
  辯ヲ得タノデアリマス、仍テ此處ニ更ニ本員ハ質問ノ要旨ヲ徹底的ニ申述ベマシテ、政
  府ノ所見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、現在ノ植民地ノ制度ハ、本員玆ニ改メテ申迄
  モナク、臺灣ノ總督ハ陸海軍ノ大中將ニ限ラレ、朝鮮ノ總督ハ陸海軍ノ大將ニ限ラ
  レ、關東都督ハ陸軍ノ大將若クハ中將ニ限定ヲ致シテ居ル、而シテ是ハ豫備ノ將官デ
  ハイケナイヽ現役ニアラザレバ其資格ガ無イノデアリマス、本員之ヲ武人ニ限ルト云フ理
  ヲ甚ダ了解スルニ苦ムノデアリマス、列國ノ例ヲ引キマスルコトハ、、賢明ナル諸君ノ前ニ恐
  縮ト存ジマスルノデアリマスガ、政府ノ所見ヲ伺ヒマスニ付キマシテハ世界文明國ノ例
  ヲ引證致シマスルコトモ已ムヲ得ナイノデアリマス、歐洲列國ノ例ヲ見マスルト云フト、
  獨逸ヲ除クノ外ハ悉ク文化政策ヲ執ッテ居リマス、殖民地ニ對シマシテハ武斷政策ハ宜
  シクナイ文化政策ヲ執ラナケレバナラヌト云フ意味カラ、文官總督ヲ採用スルコトヲ主
  義ト致シテ居ルノデアリマス、卽チ英國ガ埃及ヲ統治致シマスルニモ、埃及ノ統監ニハ「ロ
  ードクローマー」ナル卽チ文官出ノ人ガ著任ヲシ、其後ニハ「サアエルドンゴルスト」ト云
  フ人ガ赴任ヲ致シマシタ、此人モ交官デアリマスガ、其次ニ武官デアル元帥ノ「キチナー」
  將軍ガ埃及ニ參ッタノデアリマス、然レバ最後ニ元帥「キチナー」將軍ヲ埃及ノ統監ニ任
  用シタノハ如何ナル譯カト云フト、是ハ日本ト路西亞ガ戰爭ヲ致シマシテ、小國ノ日本
  ガ大國ノ露西亞ヲ破ッタノハ、憲法政治ノ御蔭デアルト云フコトデ、日露戰爭後ニ於テ
  此日露戰爭ノ結果ガ、世界ノ思想界ニ大波動ヲ起シタノデアリマス、而シテ戰敗國ノ
  露西亞ヲ初メトシテ、支那土耳其等ニ於テモ憲法政治ヲ要求シタ、此思想ノ波及ノ結
  果、埃及ノ思想界ニ於テモ大ナル波瀾ヲ生ジタノデ、玆ニ武力壓迫ノ必要ヲ感ジ、臨
  時的ニ「キチナー」將軍ヲ派遣シタノデアリマス、其他印度統治ニ付キマシテモ、本員ガ更
  メテ申ス迄モナク歷代ノ總督ハ文官ヲ任用シテ居ルノデアリマス、嘗テ「キチナー」元帥ガ矢
  張印度ノ軍司令官トシテ赴任シタ事ガアリマスガ、時ノ印度總督ノ「カーズン」卿ト意見
  ノ衝突ヲシテ、雙方喧嘩ヲ始メタコトガアリマシタガ、此時ニモ英吉利ハ「カーズン」卿ノ
  意見ヲ相當トシテ、軍司令官ノ「キチナー」將軍ヲ斥ケタコトハ、諸君御承知ノ事デアリ
  マく、唯一一ツ武人總督論ヲ主張スル者ノ中ニハ、獨逸ノ例ヲ引ク者ガアリマスガ、獨逸
  ノ植民地ハ多クハ亞非利加デ、南西亞非利加東亞非利加「トウゴウランドカメルーン」
  ガ其重ナルモノデ又、東洋ニ於キマシテハ、東洋ノ海軍根據地トシテ膠州灣ヲ持ッテ居ッ
  タノデアリマス、此亞非利加ノ植民地ハ本員ガ玆ニ申ス迄モナク、恰モ臺灣ノ一部ニ棲
  息シテ居ル生蕃人ノ如キ、獰猛ナル土人ノミデアッテ、之ヲ統治致シマスル上ニ於テハ、
  常ニ軍事ヲ必要トシテ居ルノデアリマス、此土人ヲ取締ル上ニ於テ、鎭壓ノ必要上武人
  總督ノ必要ガアリマス、卽チ我ガ臺灣關東州其他朝鮮ノ如キトハ、文化ノ程度ヲ全ク
  異ニシテ居ル爲ニ、武人總督ヲ採用シテ居ルノデアリマス、現ニ亞非利加土人ノ數ハ一
  億一千万人デアリマスガ、白人ノ數ハ僅ニ二万ニ足ラヌ位ノ少數デアリマス、此二万ニ
  足ラナイ人數ヲ以テ、此亞非利加統治ニ於テ成績ヲ得テ行クニハ、所謂武力ニ訴ヘナ
  ケレバナラヌト云フ必要上ヨリシテ、武人總督ヲ任用シテ居ルノデアリマシテ、我殖民地
  ノ狀態トハ全然事情ヲ異ニシテ居ル、然ラバ膠州灣ハドウカト一云フト、是ハ申ス迄モナク
  獨逸ガ東洋ニ於ケル海軍ノ根據地デアッテ、隨ッテ獨逸ノ植民省ノ所管ニアラズシテ、海
  軍省ノ所管ニ在ッタコトハ申ス迄モナイノデアリマス、隨テ「ワルデック」ト云フ海軍大佐
  ガ赴任シテ居ッタコトモ、其意味ヨリシテ參ッテ居ッタノデアリマス、然ルニ日本ノ殖民地
  ノ主腦者ト云ヘバ、一モ二モナク武人デナケレバナラヌト解釋シタノハ、全ク此獨逸ガ亞
  非利加ニ於ケル統治制度ノ翻譯ノ誤リデアルト本員ハ信ズルノデアル、併ナガラ本員ハ
  必ズシモ武人ヲ排斥スルモノデハアリマセヌ、武人ニシテ知識アリ經綸アル人ナラバ、之ヲ
  用ユル最モ可ナリデアリマス、併ナガラ此武人ト云フ小範園ニ限ルノハ、如何ニシテモ了
  解スルコトガ出來ナイノデアリマス、殊ニ總督都督ハ親任官デアッテ、是ガ任命ニ付テ
  ハ聖鑑ニ依テ決スルノデアリマス、廣ク天下ニ人材ヲ求メルト云フ陛下ノ思召ニ適
  ウテ居ルヤ否ヤ、本員ハ疑問ヲ起サザルヲ得ナイノデアリマス、殊ニ武人デアリマシテ、武
  人トシテハ甚ダ尊重スベキ人デアッテモ、殖民地ノ主腦者トシテハ不適任ノ人ガ尠クナイ
  ノデアリマス、現ニ乃木將軍ノ如キ、國民ガ軍國ノ神トシテ大ニ尊敬ヲ拂ッテ居ル
  人デアッテモ、臺灣統治ノ主腦者トシテ乃木將軍ノ治蹟ニ關シテハ國民ノ期待ニ
  反シタ事ガ尠ナカランノデアリマス、本員ハ武名赫々タル武人ヲ尊重スル上カラ考ヘ
  マシテ、無暗ニ畑違ヒノ所ヘ引出シテ味噌ヲ付ケサセルノハ、軍國ノ一大事デアルト
  思フノデアリマス、殊ニ現在ノ制度ニ於キマシテ、非常ナル不利不便デアルト云フ
  コトハ、彼ノ關東都督更任ニ方リマシテ、中村覺中將ガ罷メテ、其後任者ヲ物色
  スルニ方ッテ現役陸軍ノ大將若クハ中將ノ中ヨリシテ之ヲ選プコトガ出來ズ、後
  備役デアル中村雄次郞男ヲ現役ニ復セシメテ、後任ニシタト云フ例ガアリマス、
  又安東總督ハ來ル八月ヲ以テ、現役停年滿期ニ達セラルヽサウデアリマス、陸軍ニ
  於テ最モ秩序ヲ尊重シナケレバナラヌ所ニ於キマシテ、現役ヲ延長シ若クハ後備豫備
  者ヲ現役ニ復サシムルト一云フコトノ如キハ軍紀ノ上カラ考ヘマシテモ、是ハ非常ナル問
  題デアルト考ヘルノデアリマス、武人總督論者ノ側ニ於テハ軍隊ノ統帥權ト云フモノヲ
  始終問題ニサレ、殖民地ノ軍隊ヲ統帥スル上ニ、武人總督ニアラザレバ不便デアルト云
  フ論ガアリマスガ、是ハ非常ナル誤リデ、歐洲列國ニ於キマシテモ、文官總督ガ軍隊ノ
  統帥權ヲ持ッテ差支ガナイ、若シ差支ガアルトスレバ、他ニ軍司令官ヲ置ケバ差支ナイ、
  現ニ朝鮮ノ如キ武人總督ノ外軍司令官ヲ置イテアル、併シ我國ニ於テモ韓國統監ノ
  時代ニ於キマシテ、伊藤公及曾根子ノ如キ文官統監デアリナガラ、軍隊ノ統帥權ヲ持ッ
  テ居ッテ、何等差支ガナカッタノデアリマス、故ニ文官ニ軍隊ノ統帥權ヲ持タセルハ非
  常ナル不利不便ガアルト云フノデ、武官制度ヲ飽迄モ維持セントスルノハ、誤マッタル見
  解デアルト本員ハ解釋セザルヲ得ナイノデアル、然ルニ飽迄モ政府ハ現行ノ制度ヲ維持
  セラルヽカ否ヤ、若シ又我國ニ於テ武人ニシナケレバナラヌト云フ特殊ノ理由ガアリマスレ
  バ、其點ヲ併セテ伺ヒタイト思フノデアリマス、第四ニ伺ヒタイ點ハ拓殖調査會ヲ組織
  スルニ付テ、委員ヲ官僚ト少數ノ學者ノミニ止マラズ、更ニ拓殖事業ニ從事シテ居ル人
  迄加ヘルト云フ意思ハ無イカドウカ、本員ハ此拓殖調査會ノ設置ニ付キマシテハ、滿腔
  ノ贊意ヲ表スルモノデアリマス、併ナガラ其組織內容ノ點ニ至リマシテハ、甚ダ疑ヲ挾マ
  ザルヲ得ナイノデアリマス、既ニ委員ノ顏觸ハ一部ノ官人ト少數ノ學者ニ限ラレテ居ル、
  拓殖事業ニ關係シタル者ハ一名モ加ヘテナイノデアリマス、列國ノ例ヲ申シマシテモ、拓殖
  會議ト云フモノニハ、必ズ實際家ヲ入レテナイ所ハ無イノデアリマシテ、佛蘭西ノ如キハ
  殖民地ニ關係アル商業會議所ノ會頭、拓殖會社ノ重役其他親シク殖民地ニ於テ種々
  ノ事業ニ從事シテ居ル所ノ人ヲ加ヘテ居ルノデアリマス、然ルニ調調査委員會ニ於キ
  マシテハ東洋拓殖會社ノ總裁モ滿鐵ノ總裁モ、朝鮮銀行ノ總裁モ臺灣銀行ノ總
  裁スラモ、之ヲ加ヘテ居ナイノデアリマス、而モ現在ノ組織ヲ以テ拓殖調査ノ目的ヲ達
  シ得ルト考ヘラルヽノデアリマスカ、政府ハ更ニ進ンデ斯樣ナル人物ヲモ網羅シテ、之二
  殖民地ノ事情ニ通ジテ居ル者ヲ加ヘテ、實績ヲ舉ゲル御考ハナイノデアリマスカ、此點ヲ
  伺ヒタイノデアリマス、第五ニ御尋ヲ致シタイ點ハ、朝鮮ニ於ケル財政獨立計畫ニ伴フ
  地租增徵竝ニ市街地稅ノ設定ガ統治上民心ニ及ボシタル影響如何ト云フ點デアリマ
  ス、寺內伯爵ハ朝鮮總督ノ在任中ニ於テ、併合後二年目ニ於テ、早クモ朝鮮ノ財政
  獨立ノ計畫ヲ立テラレテ、地祖ニ於テ約四割、賦課稅ヲ加ヘマスレバ六割デアリマス、又
  從來市街地稅ト云フモノハ無カッタノデアリマスガ、新ニ市街地稅ヲ新設ヲシテ、時價ノ
  千分ノ七ト云フ重稅ヲ課セラレタノデアリマス、植民地ノ財政獨立ハ主義トシテハ何
  人モ反對スル者ハナイノデアリマスガ、併シ是ガ實行ニ至リマシテハ、其方策ヲ誤ラヌコト
  ヲ期セナケレバナラヌ、徒ニ財政獨立ノ美名ニ憧憬シテ、輕々ニ之ヲ斷行スルガ如キハ、
  政治家ノ最モ愼マナケレバナラヌ點デアリマス、朝鮮ガ保護政治ヲ施キマシテ以來、歷代
  ノ統監總督ガ最モ苦心致シマシタ點ハ日本ノ政治ニ對スル朝鮮千五百万人ノ疑惑
  ヲ解クト云フ一點ニ在ッタノデアリマス、我帝國ガ日韓保護條約ヲ締結致シマシテ、統
  監府ヲ設置スルニ當ッテ、朝鮮ノ民心ハ我政策ニ對シテ大ナル疑ノ眼ヲ以テ視テ居ッタ
  ノデアリマス、然ルニ十年ノ歲月ノ間ニ於テ、斯樣ナル問題モ解決ヲ致サレマシテ、朝鮮
  人ガ我ガ新政ニ大分信賴ヲ致シテ來タノデアリマス、初メ我保護政治ノ時代ニ於キマシ
  テハ、殖產工業ノ發展ヲ期スルガ爲ニ、統監府ニ付テハ種籾ヲ朝鮮人ニ配布シ、又蠶
  ノ種紙ヲ與ヘ立派ナル所ノ鷄ノ卵ヲ與ヘテ之ヲ解ヘセバ從來ノ朝鮮ノ鷄ノヤウナモノ
  デナイ、立派ナ鷄ガ產レルシ、又其卵ト云フモノガ非常ニ髙ク賣レルト云フコトデ、斯樣
  ナル微細ナル點ニ渉ッテモ注意ヲ致シテ殖產工業ノ奬勵ヲ致シタノデアリマスガ、此等
  ノ點ニ付キマシテモ朝鮮人ハ非常ナ疑ヲ持ッテ種籾ヲ與ヘラレマシテモ、政府ハ無償デ
  斯樣ナルモノヲ呉レル譯ハナイ、必ラズヤ是ガ立派ニ稔ッタ時代ニハ日本政府ハ之ヲ取
  ルノダラウ、蠶ノ種紙ヲ與ヘラレタ場合ニ於テモ、繭ニ成レバ日本政府ハ之ヲ徵發スルノ
  デハナイカト云フヤウナ疑惑ヲ持ッテ居リマシテ、大小ノ官吏若クハ民間ノ者ガ、此等ノ
  疑惑ヲ解ク事ニ苦心シタ事ハ非常デアリマス、卽チ我ガ政府ハ朝鮮ニ對シテ眞ニ善政ヲ
  施クノデアルト云フコトヲ說明シ、百方苦心ノ結果、此等ノ點ニ關シテモ非常ニ疑惑ガ
  解ケタノデアル、然ルニ併合後二年目ニ當リマシテ、突如トシテ時ノ朝鮮總督ハ地租ニ
  向ッテ又-市街地稅ニ向ッテ重稅ヲ課セラレタノデアリマスカラ、朝鮮人ハ之ニ對シテ
  何ト考ヘタカト思フト「サア御出デナサッタ」ト言ッタノデアリマス、詰リ籾ニシテモ取ラズ、親
  鳥ニシテモ取ラズ、繭ニシテモ取ラナカッタガ、稅金ト云フ形ニ變ジテ誅求ヲ致スノデアルト
  云フ風ニ誤解ヲ致シタノデアル、東洋人殊ニ支那人朝鮮人ノ如キハ、文明政治ノ優劣
  ヲ解スルノ能力ガアリマセヌカラ、直接ニ自己ノ負擔ノ輕キコトヲ以テ、必ズ善政ナリト信
  ジテ居ル民デアリマス、併合ニ致シマシテハ韓國政府ノ要路ノ大官其他主ナル者ニ向ッテ
  ハ公爵、伯爵、子爵、男爵ト云フ榮爵ヲ授ケラレ、又多額ノ恩賜公債ヲ下付セラレタノデ
  アリマスガ、一般民人ニ對シテハ併合記念トシテ、總督府ノ主腦者ハ增稅ヲ斷行致シタノ
  デアリマス、政府者ハ此增稅ニ對シテ、徵稅ノ成績ヲ以テ或ハ何等ノ惡影響ナシト斷ズ
  ルカ知レマセヌガ、實際ニ朝鮮ノ事情ヲ知ッテ居ル者ハ、統治上惡影響ヲ及ボセルモノト
  シテ居ルノデアリマシテ、卽チ日本ノ新政ニ對スル朝鮮人ノ誤解ガ了解シ掛ッタ際ニ於
  テ更ニ民心ヲシテ大ナル疑惑ニ陷ラシメタト云フコトハ少シク朝鮮ノ統治ニ注意ヲシテ
  居ル者ノ悉ク感ズル所デアリマス、朝鮮ハ保護國ノ時代ト異ナリ、今日ニ於テハ帝國ノ
  領土デアリ、千五百万ノ民人ハ皆我同胞デアル、而シテ等シク天皇陛下ノ赤子デア
  リマスカラ、是ガ統治ノ上ニ於キマシテ、新附ノ民人ヲシテ眞ニ併合ノ本旨ヲ了解セシ
  メ、帝國ノ忠良ナル臣民ト爲ラシムルコトニ付テハ、帝國ノ政治家ハ最モ大ナル注意ヲ
  拂ハナケレバナラヌコトデアラウト思ヒマス、本員ハ併合後ニ於キマシテハ、寧ロ一二年ノ
  間ハ若シ財政ガ許スナラバ、幾ラカノ租稅ノ輕減ヲシテモ、日本ノ新政ニ對スル有難味
  ヲ感ゼシメ、且ツ日本ノ政治ニ對スル信賴心ヲ增サシメタイト思フノデアリマスガ、不幸
  ニシテ朝鮮統治ノ任ニ在ッタ寺内伯爵ハ、之ニ反シテ增稅ヲ斷行セラレタノデアリマス、
  歐洲列國ノ例ニ見マシテモ、殖民地財政ノ獨立ト云フコトハ何レノ國ト雖モ之ヲ無
  視スル所ハナイ、然ルニ增稅ニ至ッテハ最モ愼重ナル注意ヲ拂ッテ居ルノデアリマス、殊ニ
  新附民人ノ苦痛ヲ感ズル直接稅ヲ徵收スルガ如キハ餘程同化ノ實ガ舉ッテ、眞ニ國
  ノ政治ヲ了解シタル時機ニ到ルニ非ラザレバ、之ヲ斷行シナイコトヲ以テ例トシテ居リマ
  ス隨テ殖民地ニ於ケル政費ガ足リナイ所ハ、公債支辨ニ仰イデ、其住民ニ政費ヲ負
  擔スベキ義務アルコトヲ知ラシメテ、增稅ヲ行フ場合ニ於キマシテハ、民人ノ直接苦痛ヲ
  感ゼザル間接稅若クハ專賣收入ニ依テ、財政ノ獨立ヲ圖ルコトハ、歐洲文明國ノ悉ク
  採ッテ居ル所ノ財政計畫デアル、此點ニ關シマシテ我ガ臺灣ノ統治ハ實ニ旨クヤッタト思
  フノデアリマス、卽チ臺灣ノ財政ノ獨立ハ、臺灣領有後十年ニシテ之ヲ決行致シタノデ
  アリマスガ、其財源ハ專賣收入若クハ關接稅ニ依テ、完全ナル財政ノ獨立ヲ致シタノデ
  アリマス、本員ハ斯カル意味ニ於キマシテ、地租增稅ハ時機ヲ誤リ、朝鮮統治上ノ一
  大失政デアルト信ズル者デアリマスガ、政府ハ果シテ此點ニ關シテ如何ナル所信ヲ有シテ
  居ラレルノデアリマスカ、此點ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、最後ニ第六ニ伺ヒタイノハ、
  各殖民地ヲ通ジテ其施設經營ガ形式虛飾ニ流レ、一般民人ノ福利ヲ增進スルノ方策
  ヲ缺ケルノ憾アル一事デアリマス、之ニ對シテ政府ハ如何ナル所信ヲ有セラレルノデアリマ
  スカ、我ガ殖民地ニ於ケル施設經營ヲ見マスレバ臺灣ヲ見マシテモ朝鮮ヲ見マシテモ
  亦關東州ヲ見マシテモ、如何ニモ一見立派デアリマス一見堂々タル理想ノ政治ヲ行ッ
  テ居ルヤウデアリマスガ、偖其內面ニ立入ッテ考査ヲ致シマスレバ遺憾ノ點ガ尠カラヌノ
  デアリマス、其最モ大ナル原因トモ申スベキハ政治ノ方策ガ洵ニ形式ニ流レ虛飾ニ
  陷ッテ實際ニ適合スベキ所ガ無イノデアリマス、形式政治虚飾政治カラ生ズル是ハ一大
  缺陷ニ外ナラヌト思フノデアリマス、例ヘバ朝鮮臺灣ノ例ニ見マシテモ是等ノ政策上ノ
  一大缺陷ハ、〓育ノ上ニ於キマシテモ、土木ノ上ニ於キマシテモ、治安維持ノ上ニ於キ
  マシテモ亦殖產興業ノ上ニ於キマシテモ、其他百般ノ政治ノ上ニ於テ現ハレテ居ルヤ
  ウニ信ズルノデアリマス、本員ハ玆ニ一々細カナル例ヲ舉ゲテ論ジマスルコトハ長時間ニ
  亙リマスカラ之ヲ愼ミマス、併ナガラ一二ノ例ヲ舉ゲテ申シマスレバ、先ヅ朝鮮ノ例デ申
  シマシテモ、京城若クハ其他朝鮮ヲ通過サレタ方ハ、悉ク目ニ著カレルコトヽ思ヒマスガ、
  京城ニ於テ最モ人目ヲ惹ク所ノモノハ、總督ノ新官邸デアリマス、而シテ第二番目ニハ
  朝鮮「ホテル」デアリマス、其他汽車デ漢江ヲ渡リマスルト、漢江ノ鐵橋ノ上ニ約一町許
  リノ所ニ堂々タル人道橋ガ架ケラレテ居ルコトデアリマス、其他地方ヲ見マシテモ、鎭南
  浦ニ於テ築港ヲ百四十万圓ノ金ヲ掛ケテ斷行サレテ居リマス、又仁川ニ於キマシテモ聞
  門式ノ大築港ガ行ハレテ、如何ニモ交明的施設ガ到ル所ニ於テ行ハレテ居ルヤウニ思フ
  ノデアリマスガ、然ルニ諸君、總督ノ新官邸ハ朝鮮統治ノ上ニ於テ幾何ノ貢獻ヲ致シテ
  居ルデアリマセウカ、此總督ノ新官郎ハ寺內伯ガ陸軍大臣ノ當時ニ於キマシテ、八十
  万圓ノ大金ヲ投ジテ京城ニ軍司令官ノ官邸トシテ建築ヲ致サレタノデアリマス、然ルニ
  其計畫ガ餘リニ大デアリマシタガ爲ニ、出來上リマシタ後ニ於キマシテ、住ムニ主人ガ
  無イノデアリマス、到底軍司令官ノ僅カナル俸給ヲ以テシテハ之ニ住ウコトガ出來ナイ
  ノデアリマス、隨テ殆ド是ガ出來上リマシテカラ、十年近クニモナルト思ヒマスガ、未ダ
  曾テ之ニ軍司令官ハ勿論、伊藤統監ト雖モ之ニ住ムコトガ出來ナカッタノデアリマス唯〓
  之ヲ一回利用致シマシタノハ昨年ノ朝鮮總督府始政七週年ニ當ッテ、紀念繪葉書
  ノ寫眞ハ使ハレタト云フ位ナモノデアリマス而シテ軍司令官ノ官邸ニハ別ニ五十万圓
  ヲ投ジテ、新ニ建築サレテ居ルノデアリマス、巍然タル朝鮮「ホテル」ハ是モ八十万圓ヲ
  投ジテ居ルノデアリマスガ、是カ朝鮮統治ノ上ニ多數ノ民人ノ福利ヲ增進スル上ニ於テ
  ドレ丈ノ效果ガアルデアリマセウ、少數ノ外國人ハ之ニ來テ泊ッテ居リマスケレドモ、京城
  ニハ立派ナル他ニ「ホテル」モアレバ宿屋モアルノデアリマス、詰リ西洋人ノ泊ル「ホテル」モア
  レバ內地人ノ泊ル宿屋モアルノデアリマス、特ニ官府ガ八十餘万圓ノ大金ヲ投ジテ、斯
  樣ナル「ホテル」ノ設備ヲシナクテモ間ニ合ッテ行クノデアリマス、又漢江ノ人道橋ノ如キモ
  鴨綠江ノ鐵橋ニハ中央ニ汽車ヲ通ジテ、兩方ニ步者ヲ通ズル所ノ立派ナル人道橋ガ併
  セテ設ケラレテアルノデアリマスガ、漢江ノ鐵橋ニハ其鐵橋ノ河上ニ、僅ニ一町許リヲ隔
  テタル所ニ、八十万圓ヲ投ジテ新タニ人道橋ヲ造ッタト云フヤウナ有樣デアリマス、朝鮮
  ニ於キマシテモ臺灣ニ於キマシテモ、幾多ノ緊急施設ヲ要スルコトガ尠カラヌノデアリマ
  スガ、民人多數ノ福利ヲ增進スル上ニ於ケル所ノ設備ヲ後ニシテ、少數ノ外國人ニ對
  スル所ノ設備ニ多大ナル金ヲ掛ケルガ如キハ、本末輕重ヲ誤ッテ居ラナイカト思フノデア
  リマス、鎭南浦ノ築港ニ於キマシテモ百四十万圓ヲ投ジテ、八箇年ニ亙ッテ工事ヲ致シ
  タノデアリマシタガ出來上リマシタ結果トームフモノハ何ノ役ニモ立タヌ、是ハ大正三
  年度ノ決算ニモ現ハレテ、不當支出トシテ會計檢査院ガ報告ヲ致シテ居リマス通り、鴨
  綠江ノ遊泥ガ入リマシテ何等ノ役ニ立タナイ、二艘ノ浚渫船ガ朝カラ晩迄、三百六十五
  日泥ヲ揚ゲルコトニ掛ッテ居リマシテモ尙ホ千噸ノ船ヲ入レルコトガ出來ナイト云フ有
  樣是ハ併シ技師ノ設計ノ誤リデアリマセウ、我國ニ於キマシテモ斯樣ナル築港ノ失敗ハ
  アルノデアリマスカラ、必ズ總督ノ責任ノミト之ヲ論ズルコトハ早計デアリマスケレドモ斯
  樣ナル多額ノ金ヲ投ズルニ當ッテ、豫メ其設計ニ大ナル注意ヲ拂ハナカッタ結果デアルノ
  デアリマス斯ノ如ク都市ニ於ケル經營ニハ非常ナル莫大ナル金ガ投ゼラレテ居ルノデ
  アリマスガ、臺灣デモ朝鮮デモ、一步鐵道沿線ノ地域外ニ入ッテ見マスルト、道路ト云
  フ道路ト云フモノハ殆ド無イノデアリマス成程國費ヲ以テ計畫サレタ道路等ハ朝鮮
  ノ如キハ最モ良ク出來上ッテ居ル所モナイデハアリマセヌ、是ハ主トシテ賦役ニ依テ道路
  ガ建設サレテ居ルノデアリマスガ、金ノ掛カル橋ナンカハ殆ド無イノデアリマス、一度兩ガ
  降リマスレバ交通杜絕ノ狀態ニ陷ルノデアリマス、本員ハ京城ニ八十万圓ノ金ヲ投ジテ
  「ホテル」ヲ造ル金ガアルナラバ、五千圓ヲ投ジテ田舎ノ橋ヲ百六十若クハ溜池ヲ百六十
  造ッタ方ガ、遙ニ民人ノ福利ヲ增進スル上ニ於テ利益デアルト思フノデアリマス、斯樣ナ
  ル例ハ甚ダ尠カラヌノデアリマス、其他政務機關ノ尨大ナル事ニ付キマシテモ、朝鮮總
  督府ハ實ニ七十二人ノ勅任官ヲ有シテ居ルノデアリマス、最モ卑近ナル例ハ獨逸ガ膠
  州灣ヲ經營致シテ居リマシタ時分ニハ、大佐ノ「ワルデック」ト云フノヲ總督トシテ、其下
  ニ僅カナ將校ガ居ッタノデアリマスガ、日本ガ一度之ヲ占領致シマスルト、陸軍ノ中將デ
  アル、軍司令官ヲ置キ、其下ニ民政長官ノ勅任一等官ヲ置キ、其下ニ勅任官ガ二人、
  高等官ガ數人居リマス、實ニ政務機關ノ尨大ニ陷ッテ、徒ラニ繁文縟禮デ政務ガ澁滯
  ヲ致シマス、現ニ靑島ノ如キモ獨逸ガ經營シテ居リマシタ當時ニ比較シマスト、今日ハ非
  常ナ繁文縟禮ニ陷ッテ居ルノデアリマス、獨逸政廳ノ組織デハ一ツノ問題デモ總督ノ所
  ニ行ッテ、僅ニ五分間位ニシテ決定ガ附イタノガ、今日ハ民政署ヲ經由シ、其上ニ部長
  ヲ經由シ、民政長官及總督ノ決裁ヲ得ルコトデ、非常ナル手數ヲ要スルノデアリマス、
  本年度ノ豫算ニ於キマシテ、朝鮮總督ハ釜山ノ稅關長ヲ勅任ニスルト云フコトデ、豫
  算ヲ要求サレタノデアリマスガ、斯ノ如キモ非常ナル誤リデアルト豫算委員會ニ於テモ大
  變物議ヲ釀シタノデアリマス、現ニ釜出ヨリモ約二千万圓位貿易額ノ多イ所ノ敦賀ノ
  稅關ノ主任者ト云フモノハ、判任官五級年俸六百圓位ノ官吏ガヤッテ居ル、對岸ノ門
  司デスラ一億數千万圓ノ輸出入額ガアルノニ、奏任官デ事務ヲ處理シテ差支ナイ、而
  モ今後二箇年後ニ於テ、內地ト朝鮮トノ關稅ノ障壁ハ撤廢サレル、此時ニ於テ特ニ釜
  山ニ勅任ノ稅關長ヲ置カナケレバナラヌト云フガ如キハ、何人ガ見テモ非常識ナル計畫
  デアリマス、現ニ此問題ガ豫算委員會ニ於テ非常ニ物議ヲ醸シマシタ結果、段々〓究
  ヲ致シテ見マスト云フト、釜山ノ現在ノ稅關長ガ高等官三等デ、古ルイノデアルカラ之
  ヲ勅任官ニシナケレバナラヌト云フヤウナ、人間ノ待遇論カラ來テ居ルノデアリマシテ、眞
  ニ勅任官ノ稅關長ヲ必要トスルノデハナイノデアリマス、然ルニ此稅關長問題ガ議會ニ
  於テハ八釜敷クナリマシタ結果、事實ニ於テ之ヲ勅任ニスルト云フコトハ甚ダ不穩
  當デアルトデモ總督府デ解釋サレタノデアリマセウ、八日ノ官報ヲ見マスルト云フト、釜
  山ノ稅關長ハ朝鮮總督府ノ營林廠長ニ轉任ヲシテ勅任官ニナッタノデアリマス、斯樣
  ナ實例ニ見マシテモ、如何ニ此政務機關ノ尨大デアッテ、繁文縟禮ニ陷ッテ居ルカト云
  フコトガ分ルノデアリマス、斯樣ナ點ニ就テ政府ハ大ニ此殖民地ニ於ケル財政行政ノ整
  理ヲ斷行スルノ意思ナキヤト云フコトヲ質問致シマシテ、此壇ヲ降ル次第デアリマス(拍手
  起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=13

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• 014・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　質問第三、石炭需給ニ關スル質問工藤善助君
  三石炭需給ニ關スル質問(工藤善助君提出)
  石炭需給ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正七年二月二十三日
  提出者工藤善助贊成者河上哲太
  外三十一人
  石炭需給ニ關スル質問主意書
  近時炭價ノ暴騰甚シク加フルニ運輸ノ機關充分ナラスシチ石炭ノ〓乏ヲ訴フ七夕一
  少カラス殊ニ各種工業ノ如キハ其ノ蒙ル打擊甚大ナルモノアリ大ニ考慮セサルヘカラ
  サル問題タリ仍テ左ノ事項ニ付政府ノ所見ヲ質問ス
  一外國輸出石炭ヲ制限スルノ必要アリト信ス政府ノ所見如何
  一石炭輸送力增加ノ設備ヲ爲スノ急ナルヲ認ム政府ノ所見如何
  右及質問候也
  〔工藤善助君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=14

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• 015・工藤善助

  ○工藤善助君　本員ハ石炭ノ需給ニ關シテ政府ノ所信ヲ承リタイト存ジテ居ルノデア
  リマス、デ先月二十三日ニ此問題ヲ提出ヲ致シタノデアリマスガ、先刻長田君ヨリ御演
  說ニナリマシタ通リ、爾來物價調節ノ委員會其他ノ委員會ニ於テ、政府ニ對シテ說明
  ヲ求メ、其應答ニ於テ粗〓了解シ得ル事モ出來タノデ、成程先刻長田君ヨリ石炭ノ價
  格ニ對スル所ノ調査ハ綿密周到ニ御演說ニナリマシタカラ、再ビ私ガ此處ニ於テ辯明ヲ
  致スノ必要ハナイノデ、併ナガラ此點ニ付テ長田君ノ御論議中ニハ、全ク單ニ石炭ノ關
  係ヨリ今日ノ暴騰ヲ致シタモノデアル、斯ウ云フ御斷定ニ相成ァテ居ルヤウデアリマスガ、
  私ガ此石炭ニ關係ヲ致シテ想像致シテ居ル所ニ據レバ、運搬輸送力ノ不備ヨリ、大ナル
  此價格ヲ引上ゲテ居ルヤウニ私ハ思フノデアル、故ニ價格ノ上ニ於テ調節ヲ圖ルト云フ
  問題ハ、旣ニ長田君ヨリ明瞭ニ述ベラレテアリマスルカラ、敢テ玆ニ蛇足ヲ加ヘルノ必要
  ハアリマセヌガ、運搬ノ事ニ就テ少シク御話ヲ致シテ見タイト存ジマス、而シテ政府ノ所
  信ヲ質シタイノデアリマス、先刻長田サンヨリ御演說ニナリマシタ通リ、石炭ノ需給ノ關
  全ク全國民ノ生活上ニ多大ナル所ノ影響ヲ持ッテ居ルノデアリマス、直
  係ト云フモノハ
  接ニ申セバ工業家ハ之ニ依テ盛衰與亡ノ岐ルヽ所トナルノデアル、デ近來政府殊ニ農商
  務省ナドニ於キマシテハ、物價ノ調節或ハ米ノ非常ニ騰貴ヲ致シタ爲ニ、暴利取締令
  ニ依テ岡某ガ處分ヲ受ケタナント云フヤウナル實例モ御坐イマスケレドモ、此關係ハ左樣
  ナ事情カラ暴騰ヲ致シタモノニアラズトシテモ、國民ノ困難ヲ感ズル所ハ甚ダ等差ハナイ
  シハ、此中此工業ト云フモノヽ食料トスルモノハ石炭デアル、工業家ガ必要ヲ感ジマスル
  點ハ米デ-食料ト此石炭ト云フモノハ竝ヒ立ッテ必要ナモノデアッテ、若シ石炭ガ缺乏
  致シマスレバ、一日モ此事業ハ出來ナイノデ、此關係ニ就テ廣ク一般ノ調査ノ上ヨリ議
  論ヲ盡シテアリマスカラ、私ハ簡單ニ極メテ此小部分ノ地方ニ向ッテノ感ジヲ御話ヲ申
  述ベテ見タイト思フ、私ハ多少此製絲ト云フ事ニ關係ヲ持ッテ居ル、此製絲ト云フモノ
  ガ今日ノ狀態デ見マスレバ百斤ノ製絲ヲ拵ヘルノニ五倍若クハ六倍ト云フモノデ御坐
  イマシテ、百斤ノモノハ何レ五六千圓ハ石炭ノ費用ノ爲ニ要スルノデアル、デ此ノ如キ多
  額ナ費用ヲ要スルトスレバ、此工業家ハ如何ニシテ之ヲ消費ヲ致シテ參ル、農家ガ苦心
  ヲ致シテ造リ上ゲタ所ノ原料ノ繭ノ價格ヲ減ジテ、此補ヲ付ケルノ外ハ無イノデアル、ソ
  レデ御坐イマスカラ、過刻長田君ノ言ハレル通リ、直接間接ニ此國民ハ此困難ヲ感ジテ
  居ルノデアリマス、然ルニ私ノ輸送力ノ點ニ於テ申上ゲタイト思フノハ、數量ノ上カラ申シ
  マスレバ、需要ト供給ガ甚グ相合致サナイ、斯ウ云フ事デアリマスルガ農商務省ノ鑛山局
  ニ於テ調査セラレタルモノニ依テ見レバ大正二年ハ二千一百三十幾万噸ト云フモノデアッ
  テ、大正六年ニハ二千五百九十幾万、卽チ二千六百万ト云フモノガ產出セラレテ居ル、
  而シテ之ヲ需要致ス所ノ方ハドウデアルカト云フト、二千一百何十万ト云フ調査ノ面ニハ
  見エテ居ルノデアル、ソレデアリマスカラ實際此鑛山ヨリ掘出ス所ノ產額ノ上カラ見レバ、敢
  テ需要供給ガ甚ダ合ハザルモノデアルト云フ斷定ヲ下ス程ノ必要ハナイ寧ロ此殘炭ガ大
  正六年ニ百百十八万八千噸ノ剩リヲナシテ居ル、然ルニ却テ一昨年頃ハ百三十二万
  何千噸ト云フモノヨリ剩ッテ居ラヌ、斯ウ云フ計算カラ參リマスト、今日ノ價額ガ敢テ生
  產額ト需要高トガ不平均ノ爲ニ、此價格ガ騰ッタト云フコトハ申サレナイヤウニ思フノデア
  リマス、極ク小サイ點ヲ御話シ申シタイ事ハ、御承知ノ通リ今日ノ生絲ハ四億ニ垂ント致
  ス所ノ生產力ヲ持ッテ居ル、其內四割若クハ五割ニ近イ所ノ生產ハ長野縣ニ於テ產出
  致シテ居ルノデアリマス、其半ハ此頃新聞デ御承知ニナリマシタ通リ、大ナル椿事ヲ惹起
  シ、碓氷峠ノ見世物ニシテ宜イヤウナ「アプト」式デ圍マナケレバナラヌト云フ此坑ヲ潜ッ
  テ、大ナル事業ノ石炭ヲ供給シテ居ル所ガ、一昨年頃ヨリ非常ニ此石炭ガ-石炭
  許リデナイ貨車ガ〓乏致シマシテ、一切ノ貨物ガアレニ非常ナル所ノ停滯ヲナシテ、石炭
  ナドハ之ヲ運搬スルコトガ出來ナイヤウナ狀態ニ立至ッタノデ、故ニ已ムヲ得ナイカラ高イ
  所ノ九州炭ヲ直江津ノ方ニ廻シテ、之ヲ取ルト云フ有樣、昨年ナドハ終ニ此常磐地方
  ニ現ニ其礦業ヲ持ッテ居ル者ガ、自身ニ此山ヲ持ッテ居ッテ、サウシテ安ク石炭ヲ求ムル
  事ノ出來ル者ガ、此輸送力ノ無イ爲ニ運搬スルコトガ出來ナイ、已ムヲ得マセヌカラ、高
  イ船賃ヲ出シテ直江津力面カラ揚ゲナケレバナラヌト云フ有樣デアッタノデ、ソレデ是ハ餘
  事デアリマスガ、碓氷峠ノ此頃ノ椿事ニ付テ、少シク皆サンノ御參考ニ申述ベテ、政府ノ
  反省ヲ促シタイト思フ事ハ、如何ニ此確氷峠ノ輸送力ト云フモノハ困難デアルト云フコ
  トヲ、少シ申述ベテ見タイ、、昨年別ナ事デアリマスケレドモ、農家ガ主食物トシテハ米麥デ
  アリマスケレドモ、第二ハ年中之ヲ利用スル所ノ味噌ノ仕入ヲ爲シテ居ル、ソレカラ秋ニ
  至レバ菜大根ト云フモノヲ一ノ食料トシテ居ル、農家ハ此三ツヲ以テ生活ヲ爲シテ居ル
  ノデアリマス、所ガ昨年此仕入ニ際シテ豆ヲスッカリ煑込デ、今將ニ仕入ヲ爲サントスル
  時ニ方ッテ、鹽ガ無イト云フ、ソレデ非常ナ騷ギニナリマシテ、長野ノ商業會議所若クハ
  上田ノ商業會議所等ヨリ委員ヲ派シテ、大藏省ニ參ッテ其事情ヲ陳情シ、或ハ鐵道院
  ニ向ッテ運搬要求ヲナシテ、色ミ調ベテ見マスト其時ハ時旣ニ鹽ハ十分出來テアッタケレ
  ドモ、此運搬ノ出來ナイ爲ニ、此仕入ヲナス事ガ出來ナイデ、折角農家ノ豆ハ大多數
  之ヲ腐敗ニ歸セシメタト云フヤウナ場合ニナッタ、此當時ノ縣民ノ怨聲ト一云フモノハ、鐵
  道ハ國有トナリ、鹽ハ專賣トナル、政府ガ之ヲ爲サウトスレバ、吾〓ノ生命ハ-政府
  ニ殺サレテ仕舞フノデアルト云フヤウナル怨聲ヲ發シタ事ハ、實ニ甚シカッタノデアリマス、
  斯樣ナ如ク輸送ガ少イノデアリマスカラ、石炭ナドモ十分ニ運バレナイコトハ當然デアル、
  所ガ此確氷ト云フモノガ、根本ヨリシテ改正工事ヲナスト云フニハ假令其方法ハ立チ
  マシテモ容易ニ出來ナイ事デアル、容易ニ出來ナイ事デアリマスケレドモ、僅カナ改良デ、
  餘程此牽引力ヲ增スコトガ出來ルデアルト私共ハ信ジテ居ル、ソレハドウ云フ事デアルカ
  ト云フト、今日彼ノ牽引力ト云フモノハ、御承知ノ通リ電氣力ト汽熱力ト雙方用井テ居
  ルノデアリマス、電氣ノ力デ遣レバ、此橫川輕井澤間ガ四十分デ達スルコトガ出來ル
  汽熱力ニ依ルト一時間二十分掛カル、之ヲ電氣ニ改メサヘスレバ餘程牽引力ヲ增ス
  ノデアリマスケレドモ、政府ハ是ガ計畫ヲ爲サナイ、然ラバ電氣ノ供給ガ〓乏致シテ居ル
  カト云ヘバ、承ル所ニ據レバ、彼ノ發電所ハ二千「キロワット」ノ供給ガ出來ルノデアル、
  然ルニ現在使ッテ居ルノハ此半分一千「キロワット」シカ使ッテ居ラヌデ御坐イマスカラ、
  電氣汽關車サヘ拵ヘレバ之ヲ增スコトガ出來ルノニ、之ヲ增サナイト云フヤウナルコトハ、
  農商務省ナドノ見ル所ガ、東京ノ眞ン中デ少サナ官吏ガ生活ニ困ルト云フコトガ每日ノ
  ヤウニ耳ニ聞エ目ニ見エルカラ、僅カ二十圓カ二十五圓カ上ッタト云ッテモ非常ナ騷ギヲ
  致シマスケレドモ、田舍ノ百姓ガ此年中用意ヲ致サナケレバナラヌ所ノ味噌ノ仕入ガ出
  來ナイ、其仕入ニ向ッテハ自分ガ申シテハ甚ダナンデ御坐イマスケレドモ、此仕入ニハ一
  時ニ金ガ要ルコトデアルカラ、隨分私ガ融通ヲ付ケテヤッタコトモアル、所ガ折角煑マシタ
  物ハ腐敗セシメテ、再ビ又要求シナケレバナラヌコトハ、眞ニ淚ヲ出シテ眞ニ其恨ヲ言フ
  コトデアリマス、斯樣ナ慘狀ハ政府者ハ能ク御覽ニナラナイ餘リ感ジナイノデ御坐イマ
  スケレドモ、若シ此困難ノ事情ヲ御承知デアルナラバ、鐵道牽引力ヲ增ス計畫位ハ是
  非ヤラナケレバナラヌ筈デアルト私共ハ信ジテ居ル、ソレカラ此常磐方面ノ石炭ヲ取ラウ
  トシマスト、サウスルト此今ノ貨車ガ不足デアル、斯ウ云フコトニナッテ居リマスカラ東
  管-東部管理局ナラ東部管理局ノ貨車係ナドハ非常ナ苦心ヲ以テ色〓ノ經營ヲ
  爲シテ居ル所ガ、是ハ貨車サヘ增シマスレバモット工合ガ能ク往クノデアリマスカラ、之ヲ
  本員ナド行ッテ承ルト云フト日本ノ今日ノ設備デハ貨車ヲ增シテモ實際ニ運搬スル所
  ノ力ガナイト云フコトヲ言ハレマスガ、決シテサウデナイ、マット車ガ增シテ融通ノ出來タ時
  ニハ、ズン〓〓通行ガ出來ル、ソレカラ又各停車場ニ行ッテ能ク聞イテ見マスト、貨車サ
  ヘ澤山アレバ此方ハ幾ラテモ送ラレルト云ッテ居ル斯樣ナコトデ御坐イマスカラ、國家
  ガ今日位困難デアルナラバ、政府ハモウ少シ急激ニ此貨車ノ都合ヲ計リ、機關車ノ增
  設ヲ計リマシタナラバ、今日ノ如キ有樣デナク往クデアラウト私共信ズルノデアリマス、サ
  ウ云フ次第デアリマスカラ、先刻長田君ノ言ハレル通リ、私ハ斷然是ニ於テ爲シ得ラレ
  ル丈ハ輸出ヲ制限ヲサレルノガ、一番急務デアラウト思フ輸出ハドウ云フコトデアルカト
  云フト內地ノ需用ハ二千一百万噸テ、輸出ハ二百三十万噸テアル、サウスルト內地
  ノ需用ニ對シテ一割二三分ノ數量ハ外國ニ必ズ出テ居ルノデアリマス、若シ此二百三
  十万噸ノ石炭ノ輸出ヲ禁ズルト云フコトニナリマシタナラバドウシテモ一千五百艘位ノ
  船ガ浮イテ來ル、此船ト云フモノガ是ハ外國ニ運ブモノガ、沿岸航路ニ之ヲ用ユルト云
  フコトニシマシタナラバ、倍ノ用ハ爲スデアラウ、サウスレバ三千艘ノ船ガ一一千噸ト致シマ
  シテモ浮イテ來ル、左樣致セバ此運搬ノ圓滿ナル所ノ效果ヲ收メルト同時ニ、一方ニハ
  一割三分ノ輸出ヲ減ズルト云フコトニナル、併ナガラ之ヲ仔細ニ考ヘテ見マスト云フト
  全部ヲ之ヲ禁ズルト云フコトハ、到底六ケ敷イコトデアリマセウ、然ラバ是ハ半減デモ宜
  シイ、三分ノ一デモ宣シイ物ノ價ノ上ルト下ルト云フコトハ、僅ノ需用供給ノ差ヨリ生ジ
  テ來ルノデアリマスカラ、一面ニ三分ノ一減ズルト同時ニ、一面ニハ船ノ融通ト云フモノ
  ガズット浮イテ參リマスカラ、此炭價ヲ調節ヲ計リ、需用供給ノ間ヲ圓滿ナラシメルト云
  フコトニハ大ナル效力ヲ有スルト思フノデアリマス、故ニ此價ノ是ニ至ッタト云フヤウナ點
  ハ先刻御斷リ致シマシタ通リ、私ハ玆ニ多辯ヲ要シマセヌ、前ノ質問ニ言ヒ盡シテアリ
  マスカラソレハ述ベマセヌガ、兔モ角モ政府ハ是ニ於テ輪出ニ對スル制限若クハ禁止ヲス
  ル所ノ意思アリヤ否ヤ、此點ヲ政府ノ所見ヲ質シタイト存ジマス、第二ニハ政府ガ唯今
  ノ如ク獨リ石炭ノミナラズ、總テノ物貨ノ輸送力ガ完カラザル爲ニ、非常ナ困難ヲ致シ
  テ居ルノデアリマスカラ、此際ニハモウ全速力ヲ以テ、貨車若クハ機關車ノ增加ヲ計リマ
  シテ、今日ノ如ク不圓滿ナル所ノ輸送ヲ爲シテ居ルト云フヤウナコトノナイヤウニスルノ所
  信ガアリマスカ、ドウデアリマスカ、之ヲ承リタイ、先刻申シマシタ通リ、山ノ此礦山ニハ
  產出シタ所ノ石炭ガ、常磐ナドニアッテ見マスレバ澤山アル、唯〓運搬ノ出來ナイ爲ニ
  此表カラ住ッテ見テモ澤山アルヤウデアッテ、眞ノ需用者ニハ不便ヲ感ジテ居ル、僅カノ廉
  イ石炭ヲズット碓氷峠デ私共ノ方ヘ往クヤウナ奴ガ、高イ石炭ヲ態〓日本海ニ迴シテ揚
  ゲテ仕舞ハナケレバナラヌ、斯ウニ云フコトニナルノモ、政府ノ鐵道ニ對スル所ノ施設宜シ
  キヲ得ナイ爲ニ、斯樣ナ結果ヲ產出シタコトガ、甚ダ大ナルモノデアラウト田心フ、デ斯樣ナ
  次第デアリマスカラ、唯今ノ二點ニ付テ政府ノ所見ヲ承ラウト云フ私ノ意思デアリマス、
  餘リ質問ノ爲ニ隨分皆サンノ御迷惑ニナッテ居ルヤウニ拜察〓シテ居リマスカラ、極ク簡
  單ニ是丈ノ事ヲ申シテ置キマス
  〔拍手起ル〕

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• 016・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　質問第四、一宮房治郞君
  四日露日支兩協約ノ實行竝支那鐵鑛國有ニ關スル質問(一宮
  房治郞君提出)
  日露日支兩協約ノ實行竝支那鐵鑛國有ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據り提出候也
  大正七年二月二十六日
  提出者一宮房治郞贊成者土屋〓三郞
  外三十人
  日露日支兩協約ノ實行竝支那鐵鑛國有ニ關スル質問主意書
  一前內閣當時日露協約成立シ我カ國ハ東〓鐵道ノ一部讓受及松花江航通權ヲ
  得タリトノ說アリ之ト相續キ大隈前首相以下對露關係者ノ授爵アリ然ルニ爾後
  同件ニ關シテ何等ノ消息ヲ聞カス其ノ後ノ成行如何
  二滿蒙ニ關スル日支協約ハ締結後既ニ二三年ヲ經タリ然ルニ條約ノ不備ト支那
  官憲ノ排日的行動トニ依リ同條約ノ骨子タル商租ハ殆ト有名無實ノ觀アリ本問
  題ト重要關係ヲ有スル滿蒙ノ區劃遼西問題及商租ニ對スル見解竝其ノ處置
  如何
  三日支協約ニ依リ獲得シタル鞍山站外八箇所ノ鑛山ハ二三ノ例外ヲ除キ條約上
  權利ノ實行不可能ニ在リ之ニ對スル政府ノ處置如何
  四支那政府ニ於テ鐵鑛假規則ヲ發布シ鐵鑛國有主義ヲ實行セムトスル結果鳳凰
  山桃沖其ノ他邦人ノ關係セル鐵鑛ハ大影響ヲ受ケ對支鐵鑛經營ヲ困難ナラシ
  メツヽアリ之ニ對スル政府ノ處置如何
  右及質問候也
  〔一宮房次郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

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• 017・一宮房治郎

  ○一宮房次郞君　本員ハ極メテ簡單ニ日露協約ノ其後ノ經過、日支協約其後ノ實
  行、竝支那鐵鑛國有問題ニ關スル政府ノ所見ヲホンノ簡單ニ承リタイト思ヒマス、日
  露協約ハ是ハ外交上ノ幽靈デ御坐イマス、私ガ政府ニ問ハント欲スル所ノモノハ、此外
  交上ノ幽靈ニ對シテ其正體ヲ見セテ戴カンコトヲ希望スルノデ御坐イマス、大正五年ノ
  頃デ御坐イマシタガ、我全國ノ新聞ハ日本ト露西亞トノ間ニ協約ガ成立致シマシテ、我
  國ガ露西亞ニ對シテ軍器ヲ供給スル代リニ、露西亞カラ致シマシテハ松花江以南ノ東
  〓鐵道黑龍江竝松花江ノ航海權ヲ、我國ニ讓渡スルコトニナッタト云フ事ヲ傳ヘタノデ
  アリマス、當時我全國ノ新聞紙ハ大隈內閣ガ外交上ニ於ケル一大成功デアルト致シマ
  シン、筆ヲ揃ヘテ大隈內閣ヲ讚美シタモノデ御坐イマス是ト續キマシテ當時外交ノ當
  局者タル大隈首相石井外相竝當時露國駐箚ノ大使デアリマシタ所ノ現首相本野
  (笑聲起ル)現外相ノ本野子爵ナドハ、悉ク昇爵ノ恩命ニ接シタノデ御坐イマス、當時
  世人ハ其昇爵ノ原因ヲ想像致シマシテ、斯ル外交上ノ大成功ニ對スル當然ノ報酬テア
  ルト致シマシテ、何等之ヲ異シム者ハ無カッタノデ御坐イマス、所ガ意外ニモ此日露協
  約ナルモノハ、其後果シテ何處ニ消失セタノデ御坐イマスルカ、今日ニ至ル迄吾〓ハ其
  正體ヲ發見スルコトガ出來ナイノデアリマス、當時此問題ガ樞密顧問ノ問題ニ上リマ
  シタ、石井外相ハ之ニ答辯致シマシテ、此問題ハ大體ニ於テ決定ヲ致シタ、唯〓鐵道ノ價
  格賠償如何ノ點ニ於テ、未ダ決シナイノデアルト云フ甚ダ苦シイ答辯ヲシテ居ルノデアリ
  マス、國家ノ重大ナル所ノ外交上ノ機密ガ、未ダ成立シナイ間ニ天下ニ漏洩ヲシタ是
  ハ實ニ管船問題以上ノ大問題デアルト私ハ信ズルノデアリマス、其結果ハ-之ニ對シ
  マシテ甚シキ反感ヲ與ヘタ其結果デアリマスルカ、ドウデアリマスルカ今日ニ至ル迄モ既
  ニ一一年ニナリマスケレドモ此日露協約ナルモノガ果シテドウナッタカト云フ事ハ、本員首
  メ世人悉ク之ヲ知ラナイノデアラウト私ハ思フノデアリマス、諸君、是ガ外交上ノ幽靈デ
  ナクテ何デ御坐イマセウ、日露協約ナルモノハ實ニ天下ニ於ケル最モ奇怪ナルモノヽ一問
  題デアリマス、今日西比利亞方面ノ形勢ガ非常ニ重大ニナッテ參リマシテ、我國ノ西比
  利亞及北滿方面ニ於ケル關係ト云フモノハ、非常ニ重大ニナッテ參リマシタ、此重大ナル
  關係ガ起ルニ付キマシテモ、吾〓ハ當時世間ノ耳目ヲ聳動致シマシタ此協約ハ果シテ
  如何ナルモノデアルカト云フコトガ先ヅ一番ニ頭ニ來ルノデアリマス、若シ前內閣デ申シテ
  居リマシタ事ガ事實デアリマシテ、單ニ價格ノ點ノミガ決シテ居ナイモノト致シマシタナラ
  バ、其後勿論露國ニ政變ハアリマシタケレドモ、現内閣ト露國トノ間ニハ十分交渉ノ時
  間ガアッタノデ御坐イマスルカラシテ、此協約ノ結果ガ果シテ如何ニ成行イテ居ルカ、帝國
  ノ利權其他ニモ非常ニ重大ナル關係ヲ有スルモノデ御坐イマスルカラシテ、私ハ此問題ニ
  付テ政府ノ詳細ナル御說明ヲ承リタイト思フノデ御坐イマス、勿論本問題ハ外交上ノ
  機關ニ屬スル事デ御坐イマスルケレドモ、今日ノ如タ露西亞ガ既ニ斯ル狀態ニナッテ居リ
  マスル以上ハ、最早此問題ヲ祕密ニ付スル必要ハ無イノデアラウト思フ、政府ハ此際此
  問題ニ付キマシテ、詳細ナル御說明ヲ給ッテ、天下ニ於ケル疑惑ヲ解クト共ニ、吾〓
  ノ西比利亞及北滿方面ニ於ケル覺悟ト自信トヲ決セシメラレンコトヲ偏ニ希望スルノデ
  御坐イマス(拍手起ル)第二ニ承リタイノハ、日支協約ノ實行ノ事デ御坐イマス、日支
  協約ハ所謂前內閣唯一ノ外交上ノ成功デ御坐イマシテ、是ガ爲メニハ利益ニナル國家
  ノ騒動ヲ來シテ、得タ所ノ唯一ノ權利デ御坐イマス、所ガ此日支協約ナルモノガ、本員等
  ノ見テ居ル所ニ依リマスルト、既ニ三年近クニナリマスケレドモ、其實行ハ殆ド困難デアッ
  テ、是ガ爲ニ滿洲ニ於ケル我國ノ利權ト云フモノガ、何程進ンダカト云フコトニ付テ、非
  常ナル疑問トシテ居ルノデ御坐イマス、此事ニ付キマシテハ此實行ガ困難デアルト云フ
  コトハ、種々ナル原因モ御坐イマセウガ、其重ナル原因ハ所謂支那ニ於ケル日本人ニ對ス
  ル一種ノ反感、卽チ過般我同僚伊東君ガ申サレタ所ノ滿洲ニ於ケル排日熱デアラウト
  私ハ信ズルノデアリマス、過般本野外相ハ吾〓ハ滿洲ニ於テ、排日熱ガアルト云フ事ヲ
  認メルコトガ出來ナイト云フヤウナ議論デ御坐イマシタガヽ吾〓ノ觀マスル所デハ、滿洲ニ
  於テハ拭ウベカラザル所ノ排日熱ガ、支那人ノ頭ニ深ク印象サレテ居ルト思フノデアリマ
  ス、其原因ハ種々御坐イマセウガ、其最モ重ナル原因ノ一ハ、日支協商ノ際ニ於キマスル
  我政府ノ失態ト、其後ニ於キマシテ起ッタ所ノ所謂宗社黨事件ナルモノヽ、支那人ヲ
  苦シメタ事ト、此二大原因ガ最モ支那人ノ頭ニ强ク印象致シマシテ、我國ニ對スル反
  感ヲ拭ウベカラザル狀態ニ陷レタモノト私ハ信ジテ疑ヒマセヌ、此排日熱ノ熾ンナ事
  ニ付キマシハ、過般同僚伊東君カラシテ委細ノ說明ガアリマシタカラ、私ハ玆ニ之ヲ省キ
  マスルガ、此排日熱アルガ爲ニ、日支協約ノ實行ト云フモノガ非常ナル困難ニ陷ッテ居
  ル、此排日熱ヲ緩和スル爲メニ、我當局者ハ果シテ如何ナル措置ニ出デラレテ居ルノデ
  アルカドウカ、又此日支協約ガ殆ド實行不能ノ狀態ニ陷ッテ居ル次第デ、原因ハ卽チ條
  約其モノヽ間ニ非常ナル疑義ガ多イ、條約ノ決定ガ甚ダ不完全デアッテ、支那人ヲシテ
  其間ニ乘ジテ種々ナル口實ヲ利用セシムル餘地ガ多イト云フコトガ、最大ナル原因デアラ
  ウト思フサウシテ見マスルト、我國ノ權利ニ於テ卽チ商租ト云フ權利ニ對シテ、最モ
  深キ利益關係ヲ有シテ居ル滿洲蒙古ト云フモノヽ境界ニ付テ、條約上何等ノ決定ガ
  ナイ、又當時當局者ノ報告サルヽ所ニ依リマスト、商租ト云フモノハ殆ド所有權ト同ジ
  ヤウナ權利デアッテ、三十年間ノ期限附デアッテモ、無條件デ之ヲ更新スル事ガ出來ル、-
  種所有權ノ假裝シタモノデアルト云フヤウナ話ガアリマシタケレドモ、此條約文面カラ見
  マスルト種々ナル解釋ガ其間ニ出來ルノデアリマス、現ニ支那政府ノ如キハ商租權ト
  云フモノハ三十年ヲ越エル事ハ出來ナイ、詰リ三十年以內ニ於テ、無條件デ之ヲ更新ス
  ルコトガ出來ルト云フヤウナ解釋ヲ下シテ居リマスルガ、、斯カル解釋ヲ下スコトガ出來ルヤ
  ウナ不完全ナル契約デアッタノデアリマス、其他種々ノアラヲ搜シテ參リマスト、種々御坐イ
  マスガ、支那政府ニ於キマシテハ、此條約ノアララ搜シテ、支那中央政府ノ所謂內務部
  カラシテ、商租須知、商租心得ト云フヤウナモノヲ各地方官ニ配ッテ置キマシテ、此不完
  全ナル條約ヲ爬羅抉剔シテ、我國ヲシテ商租ニ到底堪ヘ得ナイヤウナ苛酷ナ解釋ヲ下シ
  テ居ルノデアリマス是ガ爲ニアレ程大騷ギヲシテ、アレ程ノ犧牲ヲ拂ッテ我國ガ獲得シタ
  日支協約ト云フモノガ、現在ニ於テハ殆ド實行不可能狀態ニアルト申シテモ敢テ過言デ
  ハナイノデアリマス、元來現首相寺內伯ハ、滿蒙問題ニ付テハ非常ニ熱心デアルト傳ヘラ
  レテ居リマスガ、滿洲ニ於ケル各外交官及領事官ハ案外此等ノ問題ニ對シテ不熱心
  デアッタ、勿論此等ノ條約ガ甚ダ不備デアリマスルガ爲ニ、之ヲ有力ニ解釋シ、之ヲ有效
  ナルモノニ引直スノハ非常ナル努力ヲ要スルニ相違アリマセヌガ、寺內首相ノ御〓心ニ似
  ズ、所謂親ノ心子知ラズデ、彼等ハ甚ダ冷淡ナル態度ニ出テ居リマシテ、是ガ爲ニ滿洲
  ニ於ケル帝國ノ經濟的發展、又ハ條約上當然實行セラルベキモノモ甚ダ心細イ次第デ
  アルコトハ、私ガ玆ニ斷言シテ憚ラヌ所デアリマス、此等ニ對シマシテ政府當局ハ果シテ
  如何ナル處置ヲ執ラレツヽアルカ、如何ナル御見解ヲ取ラレツヽアルカ、精シク申上ゲルト
  甚ダ長クナリマスカラ、私ハ大體政府ガ此日支協約ノ實行ニ付テ、如何ナル處置ヲ執
  リ、又如何ナル努力ヲシテ居ルカト云フコトヲ承リタイト思ッテ居リマスコ第三ハ支那ノ
  鐵鑛國有問題デアリマス、是ガ我國ノ鐵工業ノ上ニ非常ナル影響ヲ來シテ居リマス、御
  承知ノ如ク今日ハ所謂鐵ノ時代デアリマシテ、鐵ノ自足自給、進ンデハ鐵工業ノ殷盛
  ヲ來シマセヌケレバ、國家ノ發展ハ到底望ミ得ラレナイノデアリマス、現今世界ニ於キマシ
  テ、强國ト言ハレル諸國ニ於キマシテハ一國トシテ鐵工業ノ發達シテ居ナイ國ハナイノ
  デアリマス、米國ニ於キマシテハ、戰前二千万噸ノ年產額ノアッタモノガ、今日ニ於テハ旣ニ
  四千万噸ノ年產額ヲ持テ居ル、英、佛、獨ヽ露其他ノ國家ニ於キマシテモ、、戰前ニ於
  テモ既ニ數百万噸ノ年產額ヲ持ッテ居タヤウナ次第デアリマス、所ガ之ニ反シマシテ、我
  ガ日本ノ製鐵所ト云フモノハ甚ダ心細イ次第デアリマシテ、僅ニ三四十噸ノ產額シカナ
  イノデ、其主モナル鐵ノ需要ハ悉ク之ヲ米國其他ニ仰イデ居リマシタ、一度米國カラ鐵
  ノ輸入ヲ禁ジラレマスレバ、我國ノ工業上又國防上殆ド死地ニ陷ラナケレバナラヌト云フ
  ヤウナ遺憾ナル境涯ニナッタノデアリマス、最近米國ニ於ケル鐵輸出禁止問題ガ起リマシ
  テカラ、帝國ニ於テハ鐵ノ自足自給ト云フ問題ガ非常ニ盛ンニナッタノデアリマス、帝國ハ
  御承知ノ如ク甚ダ天惠ニ乏シイ國デアリマシテ、此乏シキ天惠ヲ以テ自足自給、進ンデ
  ハ世界ノ鐵ノ供給國トシテ、世界ニ有力ナル國家トナルト云フコトハ、到底是ハ望ンデ
  得ベカラザル狀態デアリマス、此意味カラ致シマシテ、鐵ノ所謂目足自給ナル意義ヲ支
  那ニ擴張シテ、世界ニ於テ最モ豐富デアル所ノ支那ノ鐵ヲ利用致シテ、帝國ノ鐵工業ヲ
  盛ニスルト云フコトハ講者ノ何人モ異存ノナイ所デアリマシテ、吾輩ノ贅言ヲ要シナイノデ
  アリマス、所ガ此支那カラ鐵ノ分與ヲ受クル事ニ對シマシテ、一大打擊ニナリマスノガ、卽
  チ支那ノ鐵國有問題テアリマス、支那ハ元來此鑛業ニ付テハ外資輸入主義ヲ取ッテ
  居リマシテ、其鑛山條例ニ於キマシテモ、半分ノ資本ハ外國ニ之ヲ募リ、支那ト外國
  トノ資本ノ間ニ合辨ト云フ事ヲ認メテ居リマス、所ガ今囘ハ之ニ對シテ非常ナル制限ヲ
  シタ、ソレガ詰リ支那鐵國有主義ノ前提デアリマシテ、其制限ノ出タノハ大正四年十
  一月二十五日ニ發布サレタ鐵鑛暫行辨法ト云フ假規則デアリマシテ、今其內容ヲ申
  上ゲマスト、詰リ其內容ハ是デアリマス一、中國商人ニシテ鐵鑛ノ試採掘ヲ申請スルモ
  ノアレバ、農商部ヨリ資格ノ審査事情ノ體察ヲ爲シ、大總統ノ特別裁可ヲ請フテ、官督
  商辦或ハ官商合辨トシ、鑛業條例及其關係諸法律內ノ優先權ニ關スル規定ヲ適用
  シナイ、前項鐵鑛ヲ試採掘セントスル公司ハ、須ラク完全ニ中國ノ資本ヲ用フベク、鑛
  業條例及其關係諸法律內中外合辦鑛業ノ規定ヲ適用シナイ、、鐵鑛ヲ試採掘セントス
  ル公司ニテハ、技師ヲ除クノ外洋員ヲ-外國人ヲ雇傭スルコトガ出來ナイ、鐵鑛ヲ試
  採掘スル公司ニテ產出スル鑛石ハ、政府デ買收ヲ望ムトキハ優先ニ之ヲ買收スルコトガ
  出來ル、若シ外國人ト會社ガ賣買契約ヲ締結スルトキハ、農商部ノ許可ヲ得ナケレバ無
  效デアルト云フヤウナ規定デ御坐イマシテ、詰リ從來外國人ニ希望シテ居ッタ、此鑛業
  ヲ絕對ニ閉鎖シテ外務農商部政府ノ許可ト云フ蔭ニ隱レテ、全然外國ニ對スル此鐵ノ
  供給ヲ杜絕シヤウトセラルヽ所ノ法令ヲ出シタノデ御坐イマス、又更ニ今年ノ二月八日
  ニ、鐵鑛公司監督規則ト云フモノヲ出シテ、從來外國人ニ對シテ鑛石ヲ供給シテ居ッタ
  支那ノ鐵鑛會社、又ハ外國人ト共同ノ會社ト云フモノハ、今後原鑛ヲ外國ニ供給スル
  場合ニハ政府ノ許可ヲ得ナケレバナラヌト云フヤウナ、一種ノ排外的鑛業條例ヲ出シマ
  シテ、從來外國ニ供給シテ居ッタ所ノ鐵ヲ悉ク支那ノ自身ノ手ニ收メテ一種ノ鐵鑛國
  有主義ヲ實行致シマシテ、日本ニ來テ居ル所ノ原鑛ノ供給ヲ殆ド社絕シヤウトームフヤウ
  ナ、法律規則ヲ今度ハ制定シタノデ御坐イマス、御承知ノ如ク我國ノ鐵工業ハ支那ノ原
  鑛ヲ〓用スルコトニ依ッテ自足自給シ、又發達スルノデアリマセネバ其將來ト云フモノハ
  實ニ寒心ニ堪ヘナイ次第デ御坐イマス、然ルニ今囘斯ノ如キ支那ガ法令ヲ出シマシタノ
  ハ、從來我國ニ供給シテ居ッタ所ノ此支那ニ於ケル鐵鑛ヲシテ、悉ク其門戶ヲ閉鎖シ
  テ、我國ニ於ケル鐵工業ノ基礎ヲ危險ナラシムルモノデ御坐イマシテ、實ニ我國ノ鐵工業
  ノ將來ニ對シテ、寒心ニ堪ヘナイ所ノ重大問題デアラウト思フノデ御坐イマス、例ヘテ申
  シマスルト、現今ノ起業中ニアリマスル所ノ東洋製鐵ハ、支那安徽ニ於ケル桃冲鐵鑛カ
  ラ原鑛ヲ仰グコトニナッテ居リマス、又我製鐵所ハ漢冶萍ノ鐵鑛カラ原鑛ヲ仰グコトニ
  ナッテ居リマスルガ、是等ノ鑛業會社ガ將來我國ニ對シテ、今日以上ノ鑛石ヲ供給スル
  場合ニハ、必ズ政府ノ許可ヲ仰ガナケレバナラヌト云フノガ、今囘發布サレマシタ所ノ鐵
  鑛國有規則ノ原則デ御坐イマシテ、是ハ卽チ許可ノ名義ニ依テ、是以上ノ供給ヲ外
  國ニ社絕シヤウト云フ一種ノ奸策ニ外ナラヌノデ御坐イマス、此問題ハ實ニ我國家ノ鐵
  工業ニ對シテ、非常ニ重大ナル問題ト考ヘルノデ御坐イマスルガ、之ニ對シテ我ガ外務
  當局ハ果シテ如何ナル處置ヲ執ッテ居ラレマスルカ、是ガ私ノ聞カント欲スル所デ御坐イ
  マシテ、噂ニ聞キマスルト此鑛業條例ト云フモノハ、根本的ニ之ニ對スル決定ヲスル
  ヨリモ、寧ロ現今問題ニナッテ居ル鳳凰山其他ノ問題ヲ決定シテ、然ル後ニ之ヲ決定シ
  タイ希望デアルト我公使館デハ言ウテ居ルサウデ御坐イマスルガ此鳳凰山鐵鑛問題ト
  申シマスルモノハ、其裏面ニ種々ナル情實ガ蟠ッテ居リマシテ、到底容易ニ是ハ決定スルコ
  トノ出來ナイモノテ御坐イマス、此困難ナル外交問題ヲ決定シテ然ル後ニ此鐵鑛問
  題ノ根本問題ヲ決定シヤウト云フコトハ、所謂本末ヲ〓倒シタ議論デ御坐イマシテ、
  斯ノ如キ事デハ到底此支那ノ排外的鑛業條例ヲ撤囘サセルコトハ困難デアラウト私
  ハ考ヘルノデ御坐イマス、之ニ對シマシテ政府ハ如何ナル處置ヲ執リ、又ハ執ラムトスル
  カヲ私ハ外務當局ニ向ッテ承リタイト思フノデ御坐イマス尙ホ申落シタ事モ澤山御
  坐イマスヤウデ御坐イマスルガ、餘リ質問ガ長クナリマシテハ諸君ノ御倦怠ヲ招キマスカ
  ラシテ、私ハモウ此質問ハ是デ打止メニ致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=17

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• 018・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　質問ノ第五、磯部尙君
  五東京市制ニ關スル質問(磯部尙君提出)
  東京市政ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正七年二月二十六日
  提出者磯部尙賛成者小川平吉
  外三十七人
  東京市政ニ關スル質問主意書
  一東京市長ノ銓衡未タ決セス市政ノ弛廢識スヘキモノ尠カラス內務大臣ハ尙其ノ
  監督權ヲ行使スルノ必要ヲ認メサル乎
  二東京府ノ海嘯被害ニ對シ之ヲ豫防スル爲政府ハ如何ナル施設ヲ爲サムトスル乎
  三東京市竝隣接町村ノ膨脹ニ對シ市府行政ノ關係上政府ハ之ヲ同一ノ行政區域
  ニ編入スルノ意思ナキ乎
  四重要都市建築法ノ制定ハ焦眉ノ急務ナリト認ム政府ノ所見如何
  右及質問候也
  〔磯部尙君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=18

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• 019・磯部尚

  ○磯部尙君　東京市政ニ關スル質問ト題シマシタガ、質問者ノ問ハント欲スル趣旨ト
  ハ大分離レテ居ルノデアリマス東京市府ヲ中心ト致シマシテ、市府ノ行政ニ關シ主務
  官廳タル內務大臣ハ如何ナル監督權ヲ行使セラレ種々ノ缺陷ニ對シテ如何ナル施
  設ヲ爲サルヽカニ付テ、本員ハ三四ノ此處ニ問題ヲ提ゲマシテ、內務大臣ノ御答辯ヲ
  伺ヒタイト思フノデアリマス、第一ハ東京市長ノ後任銓衡問題、此問題ニ關シテ內務
  大臣ハ如何ニ其監督權ヲ行使セラルヽカト云フコトヲ伺フノデアリマス、御承知ノ如ク
  東京市長ガ關位ヲ生ジマシテ以來、既ニ今日マデ九箇月ヲ閱シテ居ルノデアリマス、成
  程東京市ト申シマスルト、水道一ツデモ一年ニ一千有餘万圓ノ收益ヲ見ルト云フガ如
  〓、大ナル都市ニナッテ居リマス、下水ハ第一期ノ工事許リデモ六百八十万圓其他市
  區改正ノ事ニ致シマシテモ亦學校ノ事ニ致シマシテモ病院ノ事ニ致シマシテモ養育
  院ノ事ニ致シマシテモ、ドレ一ツヲ捉ヘ來リマシテモ、若シ之ヲ會社ニデモ致シマスレバ
  立派ナ社長重役ト云フモノヲ要スル、大ナル結構組織ニナッテ居ルノデ御坐イマスカラ、
  一人一人ヲ以テ統率セラレマシテ、尙ホ帝國ノ首都タル東京市ノ市長トシテ、內外交
  渉ノ任ニ當ラレネバナラヌノデアリマスカラ、隨分重大ナル役目デ御坐イマスカラ、適任者
  ガ容易ニ見付カラヌトー云フコトハ、理由ハアルト思ヒマスケレドモ、十室ノ邑尙ホ其人無
  キヲ憂ヘズ人才欝然タル我ガ帝都ニ於テ、一人ノ市長タル者ガ無イト云フコトハ、私ハ
  情寳ヲ離レ歷史ヲ離レタナラバ、斷ジテアルマイト確信スルノデアリマス、今日迄隨分內
  外社會上御忙ガシイ人〓ガ銓衡委員トナラレマシテ、斷ラルヽコトノ明ニ決ッテ居リマス
  ル人ト新ニ、見込ヲ付ケタ人トヲ候補者トシテ、之ニ寄リ〓〓御交涉ナサレマシタ事ハ、
  私共モ是ハ新聞紙上デ拜見致シテ居ルノデアリマス、然ルニ段々御交涉ノ結果、適任
  者ヲ得ルコトガ出來ナイ、最近ニナリマスルト云フト、目賀田男が亞米利加カラ御歸リ
  ニナッテ、新聞ニ其名前ガ載ッテ參リマスト、其處デ目賀田男ニ交涉ヲシテ見ル、田尻子
  爵ガ會計檢査院ヲ辭サレテ、新聞ニ田尻子爵ノ名前ガ屢〓現ハレル、ソコデ田尻子爵
  ニ交涉ヲシテ見ル、此ノ如ク際物師ガ人氣ヲ寄セムガ爲ニ、際物ヲ扱フガ如キ態度ニ於テ
  此東京市長ト云フ重要ナル地位ニ在ルバキ人ヲ求メテ居ル、私ハ是ニ於テ所謂此統率
  者ヲ缺キマスル爲ニ、內ハ統一ヲ紊リ敏活ヲ妨ゲ、外若シ國賓等ガ來京セラルヽ場合ニ
  於テハ、如何ニ帝國ノ首都タル體面ヲ潰スデアラウカト云フコトヲ、甚ダ憂慮ニ堪ヘヌノ
  デアリマス、今日迄既ニ九箇月ヲ閱シ、今尙一人ノ適者ヲ見出ス能ハズ、之ガ今後幾
  月經ッタレナラバ果シテ此市長ノ候補者ガ出ルデ御坐イマセウ、道聽途說デ御坐イマ
  スレドモ、本年ノ六月ニハ市會議員ノ總選舉ガアル、ソレ迄ハ市長ノ銓衡ヲ暫ク止メテ
  置イタ方ガ宜カラウト云フ、奇怪ナル風說ガ傳ハッテ居ルノデアリマス、私ハ內務大臣ガ地
  方自治ノ上ニ-市政ノ上ニ干渉ヲセラルヽガ如キコトハ、忌ムベキコトヽシテ御憚リ
  ニトリマスコトヲ諒ト致シマス、成ベク市政ト云フガ如キモノニ、行政官ガ指ヲ染メラルヽ
  コトハ望マシクナイコトハ御同感デ御坐イマス、併ナガラ內外ニ威信ヲ失ッテ、遂ニ帝都
  ノ面目ヲ毀損スル如キ今日ノ場合ニ於テ、已ムヲ得ズ內務大臣ガ此處ニ指ヲ染メラレ
  テ、監督權ヲ行使セラルヽコトハ、確ニ適當ノ處置デアルト信ジマス、其惡痕跡ヲ貽ス如キ
  拙劣ナル手段ヲ擇バレナイデ、適當ナル處置ニ依テ當局者ヲ反省セシメテ、適任ノ市長
  ヲ選出スルコトハ、私ハ極メテ難事ニアラズト信ズルノデアリマス、市長ノ〓キマスル故ニ
  色〓市政曠廢ノ事實ガアルト云フコトハ、私共耳ニ致シテ居リマス、此議場ニハ市會議
  員ヲ御勤メニナッテ居リマスル御方モ澤山御アリノコトテ御坐イマスカラ、本員ハ寡聞ヲ
  以テシテ彼此申上ゲズトモ、能ク其邊ハ御承知ノ事ト思ヒマスガ、假ニ二三ノ例ヲ舉ゲ
  テ申シマセウナラバ、一昨年東京市ニ於キマシテ、下水新設擴張ト云フコトニ付キマシテ
  三百万圓ヲ計上致シタ、之ガ諸雜費トシテ十万圓ヲ計上致シマシテ、之ニ對シテ國家
  ノ補助ト云フモノヲ受ケラレタト思ッテ居リマス、然ルニトレ丈其工事ト云フモノヲ進捗セ
  シメラレタカト申シマスルト、三百万圓ニ對シテ僅ニ三十万圓ノ工事シカ進シデ居ラヌノ
  デアリマス、而モ諸雜費トシテ計上セラレマシタル十万圓ト云フモノハ一文モ殘サズ消費
  セラレタト云フコトヲ承リ及ンデ居リマス、上水ノ施設ニ付キマシテモ亦然リ、上水ニ付
  キマシテハ屢〓工事豫算ト云フノヲ提出致シマシタガ、大正五年度ト大正六年度ト施
  行セラルベキ工事ト云フモノガ、今日更ニ著手セラレテ居ラヌノデアリマス、尙且ツ更正
  豫算ニ依ッテ著手セラルベク聲明セラレタル工事ニ付テモ、、今年以テ何モ指ヲ染メズニ恬
  然ト致シテ居ラルヽト云フコトヲ承ッテ居ル、又彼ノ公債ヲ起シマシテ、卽チ利子ヲ拂ヒマ
  シテ資本ヲ投ジマシタ芝浦デアリマストカ、或ハ平久町ノ埋立地ノ如キハ如何デ御坐イ
  マセウ、經濟界洵ニ不順ノ時ニ起工セラレタノデアリマスカラ、思フガ如キ結果ヲ得ラレ
  ナカッタデセウケレドモ、今日ニ至リマシテ既ニ數年ニナルニ拘ラズ、此資本ガ固定ヲ致シ
  テ利子ヲ拂ヲテ居ルノミデ、之ヲ賣却スルノデモナケレバ或ハ賃貸ヲスルデモナク、何等利
  用ノ道ヲ圖ラズシテ、今ハ埋立地ニ茫々ト草ノ生茂ッテ居ル狀況デアリマス、築港問題
  ニ付キマシテ之ヲ言フナラバ如何デ御坐イマセウカ、明治三十二年頃ニ古市博士等ガ
  築港ノ必要ナルコトヲ唱道致サレマシテ、案ガ成立シタノデ御坐イマスケレドモ時ノ政
  府ノ反對ニ依ッテ、其時ハ潰シマシタガ、後阪谷氏ガ東京市長ニ就任ニナリマシテ、熱
  心銳意ニ築港案ヲ實行ヲ試ミラレマシテ、遂ニ二千何万圓ノ築港ノ案ヲ立テラレマシタ
  ノデアリマスケレドモ、是モ市會ニ至ッテ尙ホ愼重審議スベキモノナリト云フノデ、其儘ニ
  握リ潰シニナッテ居リマス、其後築港常設委員ガ確カニ置カレマシテ、旣ニ四年モ五年
  モ經チマスニ、昨日築港委員ニ聞キマスト、四年間ニタッタ一度招集セラレタト云フコト
  デアリマス、築港ト云フモノハ果シテ東京市ノ爲メニ必要デアルカドウカ、築港ト云フモノ
  ハ果シテ竣工シ得ラルヽカドウカ、築港ノ費用ノ負擔ニ市民ガ堪ヘラルヽヤ否ヤト云フコ
  トハ、問題デ御坐イマセウ、出來ナイナラバ出來ナイデ宣シイ然ルニ出來ヌトモ出來ルト
  モ付カズ常設委員が四年ニ一囘召集サレタノミデ東京市民ヲシテ歸趣ヲ知ラシメヌト
  云フガ如キハ甚ダ不親切ナル行動ト言ハナケレバナラヌノデアリマス、是等モ矢張私ハ
  內務大臣ハ御監督ニナッテ然ルベキ筋合ノモノト思ヒマス、又近頃瓦斯會社ガ獨占ノ
  弊ト云フモノヲ遺憾ナク暴露致シマシテ、報償契約ニ屢、反對ヲシ、市民ノ爲メニ甚ダ
  不利益ナル營業ノ手段方法ヲ盡シツヽアルコトヲ耳ニ致シマス、是モ獨占事業ノ弊害デ
  アリマスカラ、宣シク政府ハ玆ニ干渉スルナリ、監督セラルヽナリ致シマシテ、此獨占會
  社ノ弊害ヲ除クト云フコトニ御注意ニ相成ッテ然ルベキコトヽ思ヒマス、道路ニ付キマシ
  テモ、最モ私ハ政府ガ如何ニ監督權ヲ行使セラルヽカニ付キマシテ疑ヲ懷ク者デアリマス
  〔此時副議長濱田國松君議長席ヲ退キ議長大岡育造君著席)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=19

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• 020・磯部尚

  ○磯部尙君　諸君、東京市ノアノ砂利ノ道ハ兩降レバ卽チ泥濘、風吹ケバ卽チ塵煙、
  全ク原始時代ノ道路デアリマス、此處ハ文明ノ最新最高速力ノ利器タル自動車ガ遠慮
  會釋ナク縱橫無盡ニ市內ヲ駈ケズリ迴ッテ、此道路ヲ破壞致シテ居リマス、アノ破壞力ト
  云フモノハ恐ルベキモノデアルト云フコトハ、專門家カラ承ッテ居ルノデアリマスガ、啻ニ道路
  ノ破壞ノミナラズ、今日自動車ノ危險デアルコトハ、日本橋カラ京橋迄人力車ヲ夜驅
  ルノモ甚ダ危險ノ狀態ニアルノデアッテ、唯ニ道路ガ交通機關トシテ充實ヲ完クセヌノミ
  ナラズ、治安警察ノ上カラ極メテ危險ナルモノデアルト云フコトハ申ス迄モナク、諸君モ日
  夜御實驗ニナッテ居ルノデアル、此道路ヲ如何ニセンカト市當局者ニ聞クト、完ク金ガ無
  イノダサウデ御坐イマス、市內ニ於ケル六間以上ノ道路ヲ修築スルニハ千七百万圓掛ル
  ト云フコトデアリマス、然ルニ年々生ズル剩餘金ハ、驚クベシ十万圓內外シカナイノデ、立
  派ニ道路ヲ新設修築スルコトハ思ヒモ寄ラヌコトニナッテ居ルノデアリマス、過般當議會ニ
  現ハレタル通行稅廢止問題ノ如キ、實ハ此道路改修築說ニ眞意ノ胚胎シテ居ル問題
  ニ外ナラヌノデアリマス、東京市ハ此通行稅全廢ニ依テ百万圓ヲ得、隨テ時機ヲ見テ此百
  万圓ヲ道路修築ノ資ニ充テヤウト云フノガ、抑〓此問題ノ眞意デアリマシタ、今日ニ於
  テハ此道路ヲ修築スル費用ハ、何處カラモ出途ガ無イト云フコトヲ聞イテ、甚ダ戰慄ノ
  思ヲナシテ居ル斯樣ナル事ニ付テ免ニ角人口ノ程度ニ於テ全國ノ二十分ノ一ノ人口
  ヲ有スル大都市ト致シマシテ、又產業ノ中心トシテ政治ノ中樞トシテノ我東京市ニ對シテ
  ハ、當該官廳主務官廳トシテ特ニ國庫ノ補助ヲナストー石フコトニ付テ、考慮ヲ拂ハナケ
  レバナラヌト思フノデアリマス、然ルニ是ハ市ノ事デアルト云フガ如キ御觀念ノ下ニ又市
  政ニ干渉スルト云フ嫌ヲ避ケンガ爲ニ、拱手セラレテ何等監督權ヲ行使セラレズ、何等
  ノ修築ノ途ヲ講ゼラレヌト云フコトハ、私共少シク不親切デハアルマイカ、御注意ガ足ラヌ
  ノデハアルマイカト云フコトヲ竊ニ疑フノデアリマス、卽チ第一點トシテ此市長銓衡ノ問
  題竝ニ道路其他ノ問題ニ付テ、內務大臣ハ如何ナル程度ノ監督權ヲ行使セラルヽ
  カ、又行使セラルヽ思召ガアルカト云フ事ヲ伺ヒタイノデアリマス、第二ニハ「東京市竝鄰
  接町村ノ膨脹ニ對シ市府行政ノ關係上政府ハ之ヲ同一ノ行政區域ニ編入スルノ意
  思ナキカ」ト云フ問題デアリマス、東京市ノ人口ハ漸々膨脹シテ參ッテ、今日ハ旣ニ二百
  四五十万ヲ算シテ居ルサウデアリマス、產業モ是ニ伴ヒ段々膨脹シテ、旣ニ昨年度ハ四
  億万圓カラ五億万圓ニ上リ、卽チ戰前ニ比較スレバ二倍ノ生產額ニナッテ居ルノデアリ
  ママ、隨テ段々雜關ヲ極メマシテ、道路ハ狹隘ヲ感ズルニ至リマシタ爲ニ、貨物ノ配送意
  ノ如クナラズ、又物資ノ集散激增ノ爲ニ、甚ダ其用ヲ完ウスルコトガ出來ナイ程度
  ニナッテ居リマス、又土地ノ價格モ段々昂上スルカラ、市民ハ東京市ニ鄰接シタル町
  村ニ住居ヲ移シ、此處ニ住居スルコトニナッテ、郡部ニ於ケル人口モ段々增加シ、年々十
  万ヲ超スト云フコトモ承ッテ居リマス、卽チ何等ノ紀律モ無ク何等ノ秩序モ無ク、武藏
  野ノ原野ニ住所ヲ求ムベク頻リニ展開シツヽアルノデアリマス、既ニ本質問ノ提出後ニ、
  政府カラ御提案ニナッタ市區改正條例改正案ト云フモノヲ見マスト、政府モ恐ラク何
  等カ此點ニ御著目ニ相成ッタモノト見エマスガ、、吾〓ノ憂フル所ハ、近時我東京市ニ神
  宮道路ト云フ問題ガ起リマシタ、此神宮道路ハ矢張郡部ニ屬スルガ、主トシテ東京市
  民ガ負擔シナケレバナラヌ、其設計ニ參畫スル義務ガアルト云フコトデ、是ガ問題ニナッタ
  ト云フ事カラシテ、此市區改正案ト云フモノヲ御提出ニナッタデハナイカト云フ、一ハ懸
  念モアリマスカラ、此點カラ見マシテモ尙ホ私ハ質問ヲ爰ニ揭ゲル必要ヲ認ムルノデアリ
  マス、鄰接町村ヲ市ニ編入スルト云フコトハ、果シテ市ノ爲ニ其利害如何、又編入セラ
  ルベキ町村ノ爲ニ其得喪如何ト云フコトハ、頗ル考慮ヲ要スル問題ト思ヒマス、鄰接町
  村ノ住民ニ聽キマスト、市ニ編入サレテ租稅ヲ納メルトシテモ、到底東京ノ眞中ノ如ク
  電車ヲ敷イテ呉レルコトハ容易テナイ、水道ヲ敷イテ呉レルコトハ容易デナイ、學校ヲ建設
  スルニ付テモ十分ノ注意ヲ與ヘテ呉レマイト云フヤウナ、色〓ノ杞憂ヲ懷イテ市ニ編入ヲ
  望マヌト云フ人間モ多ダヤウニ承ッテ居リマス、市自身ニ於テモ是等鄰接町村ヲ市ニ編
  入スルコトハ、隨分重大問題デアリマス、坊間傳フル如ク之ヲ編入シテ東京市ト爲スノ
  得喪可否ハ、非常ニ識者ノ考慮スベキ問題ト思ヒマスガ、併ナガラ今日御實驗アラセラ
  ルヽ如ク、秩序無ク紀律無ク膨脹シ、又道路ノ如キモ何等ノ節制無ク擴ッテ居ルノデ、
  交通上衞生上將ク風紀上洵ニ憂フベキ影響ヲ市全體ニ及ボスモノデアルト思ヒマス
  段々唯〓膨脹シテ仕舞ッテ後トデ之ヲ所謂東京市トシテ恥ヂザルヤウニ整理スルト言ッテ
  も、無駄ノ經費モ澤山要シ而モ尙ホ幾多ノ不便不利ヲ忍バナケレバナラヌト云フコト
  ハ今日ヨリ識者ノ言ヲ待タズ之ヲ見テ置カナケレバナラヌノデアリマス、傳フル所ニ依レ
  バ政府ハ先ヅ荒川ノ改修ヲ爲シ、此所ニ東京市府ノ工業地帶ヲ設定シ、又六〓川ヲ
  修築サレマシテ、川崎大森附近ヲ工業ノ安定地トサレルト云フコトヲ聞イテ居ル、又横濱
  東京間ノ道路ヲ八間以上ノ大道路トシテヽ所々ニ運河ヲ掘鑿シ、以テ運輸ノ便ヲ圖ル
  ト云フコトデアル、斯ノ如キ大計畫ヲサレルノハ、國家ノ物ニ洵ニ慶事デアルト思フノデアリマ
  スガ、斯ノ如ク設計シタ聽ニ於テ、多クノ住民ノ「サッセッシヨン」ハ此配列調和ト云フ
  カ、按排調和ト申シマスカ、ソレハ如何ニ設計サレル御考デアルカ、今日其成算ガアルナレ
  バソレヲ承リタイト云フノガ、本員ノ質問ノ趣旨デアリマス、將來ニ於テ大東京市ヲ英
  斷的ニ高壓的ニ設計ヲスルト云フ事ガ、府市ノ爲ニ利益アリト御覽ニナッテ居ルカ、何
  ウカヲ承リタイノデアリマス、サウシテ本日御提出ニナリマシタ此東京市區改正條例改
  正案ト如何ナル是ガ關係ガアルカト云フコトヲ承リタイト云フノガ、本員ノ質問ノ趣旨テ
  アリマス第三ハ「東京府ノ海嘯被害ニ對シ之ヲ豫防スル爲政府ハ如何ナル施設ヲ爲
  サムトスルカ」ト云フノデアリマス、昨年ノ十月一日ノ凄マジキ暴風雨ハ其程度ノ恐ル
  ベキコト、人ヲ喪ヒ家ヲ荒サレ、闇夜燈穴無ク飮ムニ給水無ク、電信電話電車等アラ
  ユル交通運輸機關ト云フモノヽ作用ヲ失ヒマシテ、全ク阿鼻呌喚ニ苦ム慘虐ノ光景ヲ呈
  シマシタコトハ、今猶諸君ノ眼前ニ橫ッテ居ルコトヽ思ヒマスカラ、諄々シク此點ニ付テ申
  上ゲルコトハ致シマセヌ、人ガ死シマシタ數ハ五百五十四人、全潰致シマシタ家屋ハ三
  千五百餘棟、半潰ノ家ガ五千二百餘棟、床上ニ浸水致シマシタ家ノ數ガ十三万四
  千九百餘棟、=而シテ財政上ノ損害ヲ計筭致シマスルト是ハ如何ナル基本ニ依テー
  如何ナル計算ノ方法ニ依ッタカ判リマセヌガ、深川一區ノ損害ノミデモ三千五百餘万
  圓デアルト計上セラレテ居ル、是ハ東京丈デモ郡部迄ノ全損害ヲ計上致シマシタナラバ、
  實ニ驚クベキ損害額ト言ハナケレバナラヌノデアリマス、故老傳フル所ノ統計ニ依ッテ見マ
  スルト從來明治維新ニ成リマシテ、五十年間ニ此所謂高潮、海嘯、大海嘯ト云フモ
  ノガ五十年間ニ三十囘モアッタサウデアリマス、其中デモ最モ甚シイ大海嘯ハ、昨年ノ分ヲ
  モ入レテ七囘アッタト云フコトデ、卽チ七八年目ニ一度ヅヽ大海嘯ガ我頭上ヲ襲來スル
  ノデアリマス政府ハ河川ノ氾濫ニ對シテハ--荒川ノ如キハ改修ヲ爲シ、大工事大設
  計ヲセラレテ居リマスガ、此七年目カ八年目ニハ必ズ一度來リマシテ、我帝都ヲ襲ヒ、
  未曾有ノ珍事ヲ釀成致シマスル、高潮海嘯ニ對シマシテハ、如何ナル計畫ヲセラレテ居
  ルカト云フコトヲ私ハ伺ヒタイノデアリマス、勿論防波堤ヲ建造セラルヽコトモ、其一
  ノ方法デアリマセウ、又海竝ニ川ニ面シタル方面ニ堤防ヲ築クコトモ一ノ手段デア
  リマセウ、或ハ低イ地面ニ地盛リヲスルコトモ一ノ方法デアリマセウガ、何レカハ之ヲ
  個人々々ノ考ニ任セテ置クベキコトデナイ、國家トシテ-爲政者トシテ親切ナル考
  ヲ以テ居ラルヽナラバ、此等ノ事ニ對シテモ十分ナル施設ヲセラレテ、何等カ〓究
  會トカ或ハ委員會トカ云フモノヲ御組織ニナッテ、然ルベキモノト考ヘルノデアリマス、政
  府ハ此大海嘯ノ後ニ技師技手四名ト云フモノヲ、岡山縣カラシテ宮城縣ノ間ニ派
  出セラレマシテ、此實害ト云フモノヲ調査セラレタコトハ聽イテ居リマス、或ハ地震ト海
  嘯ノ關係ニ付キマシテハ、大森博士ニ其取調ヲ御囑託ニナッタコトニ聽イテ居リマス、
  併ナガラソンナ手緩イ事デ、明日ヲモ測ラレザル市民區民ノ大危害ニ對シテ、安全ナリト
  御考ニナルコトハ斷ジテ出來マイト思ヒマス、此點ニ關シテ政府ハ將來如何ナル手段方
  法ニ出デヽ、我市民區民ヲ救濟セラルヽノデアルカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス第四
  ハ-是デ終リマス-重要都市建築法ノ制定ハ焦眉ノ急ナリト認ム、政府ノ所見如
  何ト云フ質問デアリマス、是ハ敢テ東京市ニ限ッタコトデアリマセヌ、東京市、大阪市、名
  古屋市、京都市ノ如キハ最モ重要ナル密接ノ關係ヲ有スルコトハ申ス迄モナイコトデ
  アリマスガ、本員ハ主トシテ申上ゲルコトヲ卑近ナラシムルガ爲ニ、東京市ヲ中心トシテ矢
  張所見ヲ申シテ見ル考デアリマス、今日御承知ノ如ク我東京市ハ紛然雜然トシテ膨脹
  ニ膨脹ヲ累ネテ、正シク村落ノ集合體ナルガ如キノ觀ヲ呈シテ居リマス、今日街路系統
  ヲ整理シ、運輸交通ノ便宜ヲ圖リ、市民ノ衞生安全卽チ保健ヲ完ウスルコトヲ努メ、經
  濟活動ノ保護ヲ充實セシメ、併セテ帝都タルノ美觀ヲ完ウスルト云フコト、、卽チ實質的ニ
  我首府東京市ト云フモノヲ整頓シテ往クト云フコトハ是ハ中ミ手緩ルイ手段ヲ以テシ
  テハ到底爲シ得ルコトデナイ、必ズヤ積極的ニ大手術ヲ施シ、高壓的ニ大改良ヲ加ヘナ
  ケレバ、都市トシテノ充實ヲ完フウスルコトガ出來ナイト云フ所見デアリマス、尙之ヲ數多
  ノ點ヨリ考ヘテ見タイノデアリマスガ、先ヅ火災其他ノ天災カラ見マスレバ如何デアリマセ
  ウカ、江戶時代ニハ土藏ヲ以テ火災ヲ防イダノデアリマス、今日ハ之ニ比較スレバ消防術
  ト云フモノモ發逹致シマシタシ、耐火建築法モ進步致シマシタシ、又電燈モ用ウルト云
  フコトヲ以テ、失火ノ災害ヲ防ギ得ルト云フ感ヲ抱クコトデアリマシテ、現ニ統計表ニ依
  テ見マスルト、今日火災ノ數ハ昔ノ統計ニ比シテ其率ヲ減ジテ居ルト云フコトデアリマス
  ガ、併シ殊ニ吾〓重要都市ノ住民トシテ考ヘネバナリマセヌコトハ申ス迄モナク、戰時
  ノ場合ニ於ケル事デアリマス、今日戰爭ノ攻擊防禦ノ最モ著シク進步シタル手段ト致シ
  マシテハ飛行機ヲ以テ爆彈ヲ投下シ、首都ヲ攻擊シテ政治ノ核心タリ、產業ノ中樞タ
  リ有ユル政治商工業等ヲ大キナル傘ノ下ニ抱擁シテ居ル所ノ帝都ヲ襲擊スルコトハ、
  今日最モ戰術ノ著シク發達シタル攻擊手段トシテ、世人モ考ヘテ居ル所デアリ、又現ニ
  歐羅巴ニ於テ實行セラレテ居ル所デアリマス、若シ海岸ニ位置致シテ居リマスル我東
  京市ノ如キ所ニ、飛行機ト云フモノガ將來如何ナル攻擊ヲスルカト云フ場合ヲ想像致
  シマスレバ此大都市ハ一朝ニシテ忽チ火ノ海ヲ現出スルノデアリマセウ、實ニ恐ルベキ
  修羅場ヲ現出スルデアリマセウ、固ヨリ今日經濟上ノ關係ガアリマスカラシテ、立派ナ耐
  火建築ノ家許リヲ建テル事ニシナケレパナラヌト致シマシタ所ガ、到底是ハ實行ガ出來マ
  セヌ事デアリマスケレドモ、尠クトモ粗造ノ木造家屋ニ制限ヲ加ヘ、或ハ經濟上ノ地方
  ニ就キマシテハ、特ニ地帶ヲ設ケテ安全ナラシメ、或ハ防火地帶ヲ設ケル事及ビ豫メ危
  險寰內ニ於テ防水帶ヲ拵ヘマシテ、其災難ヲ一小局部ニ止メシムルガ如キ方法ヲ執ル
  コトガ、甚ダ必要デアルト私ハ考ヘルノデアリマス、又公共建築或ハ娛樂的建築ノ如キ
  モ如何デアリマセウカ、維納ノ大劇場ガ未曾有ノ慘事ヲ呈シタ事ハ記錄ニ殘ッテ居リマ
  スガ、矢張帝都ニ於キマシテモ活動寫眞デアリマストカ、興行場デアリマスルトカ、或ハ劇
  場デアリマスルトカ、角力場デアリマスルトカ云フモノハ、總テ設備ガ不完全ニナッテ居ル
  ヤウデアリマス、曾テ國技館ガサシモ鐵骨デアルカラシテ、耐火建築デアルト謂ハレテ居リ
  マシタ家屋モ、一朝火ヲ失シタ際ニ於テ、時偶〓興行中デアリマセヌカラシテ、市民トシ
  テハ幸ヒデアリマシタガ、彼レガ漏電ノ結果ヨリ生ジタル失火デアルト致シマスレバ、白晝
  興行ノ最中ニ起ッタカモ知レナイヤウナ危險ガアッタト思フノデアリマス、若シ彼レガ興業
  中ニアノ失火ガ起ッタト致シマスレバ、如何ニ人命ノ損害ガ有ルカト云フ事ヲ想像致シマ
  スルト、餘程政府ハ此等ノ建築物ニ對シテ注意ヲ拂ハナケレバナラヌト思フノデアリマス、
  決シテ治安警察カラ命ズル今日ノ警視廳ノ取締ヲ以テ安全ナリトシテ、信賴スル事ハ出
  來ナイノデアリマス、又工場ト云フヤウナモノ卽チ煙ヲ吐キ他ニ響ヲ傳ヘ、發火シ易イ物
  資ヲ堆積シテ居ル工場ガ、靜謐ヲ旨トスル住宅、官衙、病院、或ハ學校等ト軒ヲ竝ベテ
  建テラレテ居ルコトハ、大ニ注意スベキ事デアリマス本員等ノ考ヘル所ヲ以テスレツ、今
  日ノ如キ世界ノ大都會トナリマス以上ハ、工業地帶、商業地帶、或ハ官公衙ノ地帶、住
  宅地帶ト云フ如キモノヲ夫〓決メマシテ、其目的ニ副フ所ノ道路ヲ造リ、、運輸交通ノ便
  ヲ完ウスルト云フコトヲ理想トシナケレバナラヌト四心フノデアリマス、衞生健康卽チ保健ト
  云フ點カラ申シマシテモ、人口ハ稠密致シマシテ、旣ニ寸地ヲ餘サナイ、光線ノ如キモ之
  ヲ攝取スルニ十分ナラナイ、建築ガ雜然紛然ト竝ンデ居ルノデアリマス、之ニ對シテモ或
  ハ上水、下水、屋內下水、貧民ノ住宅勞働者ノ共同浴場ノ如キモノニ向ッテ、十分
  ナル唯今設計ヲ爲シ施設ヲ爲シ計畫ヲ爲スニアラザレバ、他日百年ノ悔ヲ遺スデアラウ
  ト思フノデアリマス、帝都トシテノ美觀ノ點カラ申シマシテモ、是ハ私ハ建築學者テ御坐
  イマセヌカラ、詳シク申上ゲルコトハ出來マセヌガ、二重橋ノ前ノ大通リニ立派ナ煉瓦ノ
  建物ガアルカト思フト、其所ニ東京市ノ「バラック」式ノ建物ガアルナドハ、餘リ見好イ外
  觀デアルマイト思フノデアリマス、是等都會ノ重要都市ノ有ユル方面カラ論及致シ
  マシテ、今日建築法ト云フガ如キモノヲ制定スルト云フコトハ、今日ノ過渡時期ニ於テ、
  私ハ最モ必要ナルコトヽ曰心フノデアリマス、之ヲ外國ノ建築法ト云フモノヲ直譯シタリ、
  模傚シタリスルコトハイケマセヌ、卽チ現在ノ狀況ニ鑑ミ國家ノ前途ニ照シ、又國民ノ好
  尙-好ム所、風俗習慣ト云フモノニ則リマシテ、穩健著實ナル法規ヲ制定スル必要
  ガアルト私ハ考ヘルノデアリマス、旣ニ尾崎行雄君ガ東京市長タリシ時分ニ、玆ニ見ル所
  アラセラレマシテカ何カ建築技師ノ團體ニ御賴ミニナリマシテ、東京市建築條例ト云
  フ立派ナモノガ現ニ出來テ居リマス、私モ一讀ハ致シマシタ、數千圓ヲ費シテ立派ニ出
  來タ條例案ト云フモノモアルノデアリマス、ドウカ私ハ斯ノ如キ既ニ則ルベキ基本トスベキ
  案モアルノデ御坐イマスカラシテ、政府當局ト云フモノハ、斯樣ナルモノヲ鑑ミラレマシテ、
  玆ニ今日ノ如キ過渡時期ニ於テ、ヽ早ク著眼セラレマシテ、建築條例ト云フガ如キモノヲ
  御制定ニナルト云フコトヲ望ムノデ御坐イマスガ、斯樣ナル御意思アルヤト一云フ事ヲ伺フ
  ノデアリマス、卽チ要スルニ東京市ノ永遠ノ發達、市民ノ福祉ヲ增進シ、其健康ト安全
  トヲ保障セラレマシテ、仍テ以テ富國强兵ノ大本ヲ完ウセラレムコトヲ望ミマスノ餘リ、此
  卑見ヲ列ネマシテ、政府ノ是等ノ諸問題ニ對スル御意見ヲ承リタイノデアリマス(拍手
  起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=20

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• 021・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　水野政府委員
  (政府委員法學博士水野錬太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=21

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• 022・水野錬太郎

  ○政府委員(法學博士水野鍊太郞君)　磯部君ノ御熱心ナル而モ眞面目ナル御質
  問ニ對シマシテ、私ニ代ッテ答辯シロト云フ內務大臣ノ命デアリマスカラ、御質問ノ箇條
  ニ對シマシテ御答致サウト思フノデアリマス、第一ノ質問ハ、東京市長ノ銓衡ニ關シテデ
  アリマス、故奧田市長ガ薨ゼラレテ旣ニ九箇月ニナルニ、未ダ後任市長ノ銓衡ヲ經ザルノ
  ハ如何ナル事デアル、內務大臣トシテ是ガ監督ノ任ニ當ッテ居ルノニ、此事ニ付テ何等ノ
  監督ヲ執ラザルノハ、政府トシテノ責任ハ如何デアルカト云フ意味ノ御質問デアリマス
  洵ニ御尤ナ御質問デアリマシテ、此事ニ對シマシテハ政府ト致シマシテモ大ニ焦慮致シテ
  居ルノデアリマス、唯〓併ナガラ市長ノ選任ハ申ス迄モナク、市會ノ選舉ニ依ルノデアリ
  マヽ、國家ノ官吏トハ違ヒマシテ、任命ニ依ルノデアリマセヌカラシテ、自治體ノ道義自
  治體ノ便宜ニ基イテ、之ヲ實行スル外ナイノデアリマス、內務省ト致シマシテモ後任市
  長ノ速ニ銓衡セラルヽコトヲ望ムコトハ極メテ切ナルノデアリマスソレデアリマスカラシテ、
  斯ウ長イ時日ヲ經テ尙ホ後任市長ヲ得ザルハ、極メテ遺憾ナリト考ヘマシテ、內務大臣
  ハ相當ノ順序ヲ經テ是ガ監督ヲ爲シテ居ルノデアリマス、唯ミ御承知ノ如ク市制ノ規定
  ニ依リマスレバ、內務大臣ト致シマシテハ、單ニ〓括的監督ヲ爲スニ止リマシテ、若シ市
  會ニ於テ之ヲ選擧シナイ時ニ當リマシテ、之ヲ强制スルノ途ハ現在ノ法規ノ下ニハ無イノデ
  アリマス、ソレデアリマスカラシテ是ハ市民ノ市政ニ對スル道義心ト市會議員ノ公共的
  誠意ニ待ツノ外ハ無イノデアリマス、此點ニ於キマシテ內務大臣ト致シマシテハ、市會ニ
  對シマシテ相當ニ速ニ-成ベク速ニ市長ヲ選舉スルコトヲ望ムト云フ意思ヲ傳ヘタコ
  トハアルノデアリマス、此以外ニ今日ノ所デハ法規上ニ監督ノ方法ニ無イノデアリマス、是
  ガ卽チ自治體ノ妙味ノアル所ナノデアリマス、若シ此以上ニ進ミマスナラバ、寧口自治體
  ノ本義ヲ破壞スルニ至ランカヲ虞ルヽノデアリママス、今日ノ制度ニ於キマシテハ、市長ノ
  無イ時ニハ助役ガ代理市長トシテ、市長ノ事務ヲ取扱フノデアリマス、其助役ノ無イ場
  合ニ始メテ官吏ヲ派遣シテ、官吏ヲシテ市政ノ事務ニ當ラシムルコトガ出來ルノデアリマ
  ス、旣ニ今日ノ所デハ助役ガ免ニ角アリマシテ、市政ノ事務ヲ鞅掌シツヽアルノデアリマス、
  ソレデアリマスカラ其以外ニ於キマシテ、官吏ヲ派遣スルト云フヤウナ方法ヲ執ルコトハ出
  來ナイノデアリマス、獨リ是ハ東京市ニ付テノミデアリマセヌ、總テノ自治體ニ於キマシテ、
  長ク責任アル當局者ヲ缺クト云フニトハ、甚ダ遺憾ナ事デアリマス、自治ノ範圍ニ於キマ
  シテ、自治ノ道義ノ觀念ヲ破ラザル範圍ニ於キマシテ、內務大臣ハ監督ヲ怠ラナイ精神
  デアルノデアリマス、而シテ此事ガ東京市選出ノ磯部代議士カラ、此議場ニ御質問ニナツ
  タト云フコトハ、一面ニ於テ喜ブベキコトヽ同時ニ一面ニ於テハ最モ悲ムベキコトヽ思フ
  ノデアリマス、制度ノ改革E必要デアリマセウガ、ソレヨリモ市會ニ於キマシテ、若クハ市民
  ニ於キマシテ、相當ノ觀念ヲ以テ此市政ノ革新ヲ圖ルト云フコトニ努メラレルト云フコト
  ハ監督以外ニ內務省トシテ切望スル所デアリマス、單ニ監督ニ依賴シテ市長ノ選舉ヲ
  强制スルガ如キハ、自治ノ本義カラ云フテ甚ダ悲ムベキ事デアルト考ヘルノデアリマス、第
  二ニ東京市ト近接町村トノ關係ニ付テノ御質問デアリマスガ、是モ現時ノ狀態ニ於キ
  マシテ、如何ニモ御尤ナ質問デアリマス、大都市竝ニ大都市附近ノ町村ニ付キマシテ
  ハ、唯今御質問中ノ御意見ニアリマシタガ如ク、是ハ極メテ緊切ナル關係ガアルノデアリマ
  ス、道路ト云ヒ防火方法トムヒ、或ハ上水下水ノ關係ト云ヒ、衞生問題ト云ヒ、獨リ大
  都市ノ設備ノミヲ以テ滿足致シマセズ、之ニ連絡町村ノ關係ヲ深ク考慮セネバナラヌ
  ト云フコトハ、磯部君ノ御意見ノ通リデアリマス、之ニ就キマシテモ附近ノ町村ヲ東京
  市ニ編入シテ、所謂大東京市ナルモノヲ造ルガ得策デアルカ、或ハ其他ノ方法ヲ講ズベ
  キカト云フコトハ、東京市若クハ其他大都市ノ問題トシテ、極メテ重要ナル〓究問題デ
  アルノデアリマス、若シ接續町村ヲ東京市ニ編入致シマス時ニハ、他ノ郡ノ經濟關係財
  政關係ト云フモノニ至大ノ影響ヲ及ボスノデアリマス、從ッテ郡若クバ町村ノ負擔關係
  ノ如キ、是亦大ナル關係ガアル事デアリマス、ソレデアリマスカラ東京市ト接續町村ノ關
  係ヲ如何ニスベキカト一云フコトハ、是亦愼重ニ考慮ヲ要スルモノデアリマス、曾テハ東京
  市ノ制度ニ對シマシテ、東京都制案ナルモノモ出タ事ガアルノデアリマス、此制度ガ今日
  ニ行ハルベキモノデアルヤ否否ト云フ事ニ就キマシテ、是亦大ニ攻究ヲセネバナラヌ事ト考ヘ
  マシテ、附近町村ノ編入ヲ利トスルヤ將タ然ラザルヤト云フ事ニ就キマシテハ、內務
  省ニ於キマシテモ從來〓究ヲ怠ラナカッタノデアリマスガ、之ヲ編入致シテ大都市ト致シマ
  スカ、外國ニモ例ガアルガ如ク、大伯林トカ大倫敦トカ云フガ如キ制ト同ジク、大東京ヲ
  造ルト云フ事ニ就キマシテハ、私共ノ考デハ、今日必ズシモ之ヲ實現シ得ル事ハ困難デ
  アラウト思ヒマス、ソレニ就テ-ソレニ就キマシテハ、先ヅ第一著手ト致シマシテ、今日
  提出シテ居リマス東京市ノ改正條例ノ如キモノヲ變更致シマシテ、大都市竝ニ其附近
  ノ町村ニモ此計晝ヲ及ボスト云フコトガ、最モ適切ナ方法デアルト考ヘルノデアリマス、卽
  チ道路ト云ヒ、下水上水ト云ヒ、公園トー云ヒ、病院ト云ヒ、ソレ等ノ大都市關係ノ交
  通問題衞生問題ト云フモノニ關シマシテ、大都市ト附近町村トノ間ニ或ル連絡ヲ取リ、
  或ル統一ヲ執リ、以テ相互ノ關係ヲ圓滿ニシテ、十分ナル施設ヲスルト云フコトガ、最モ
  今日ノ事情ニ於テ適切デアルト考ヘルノデアリマス、此趣旨ヲ以チマシテ、此度東京市
  ノ改正條例ヲ改正致シマシテ、獨リ東京市ノミナラズ、東京市附近ノ町村ニモ之ヲ及ボ
  シマシテ、以テ唯今磯部君ノ御憂ニナッタガ如キ事柄ヲ整理シ、緩和シ、調和スルヤウ
  ナ方法ヲ執ラナケレバナラヌト云フ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス獨リ是ハ東京市許リデモ
  アリマセズ、大阪市京都市ニモ此事ヲ及ボシタイ、言葉ヲ換ヘテ言ヒマスレバ大都市ニ
  關シテノ事柄ヲ爰ニ根本トハ申シマセヌガ、或ル必要ナ程度ノ方法ヲ講ズル一端ト致シマ
  シテ、此法案ヲ提出スルコトニナッタノデアリマス、、卽チ是ハ磯部君ノ第二ノ御質問ノ御
  趣意ヲ實現スル事ニナラウト信ズルノデアリマス、第三ニ東京市、而モ深川區ノ海嘯ニ
  關シマシテ御問デアリマス、是モ御尤ナ御間テアリマシテ、海嘯ハ近年度〓來タ事デアリ
  マスルカラ、之ニ對シテモ何トカノ方法ヲ講ズルノ必要ハ認メテ居ルノデアリマス、併シナガ
  ラ御承知ノ如ク海嘯ヲ防グト云フコトハ治水問題トハ餘程趣ヲ異ニシテ居ル、治水間
  題ハ雨量水量ト云フヤウナモノヽ調査ニ依リマシテ、一定ノ計畫ヲ立テル事ガ出來ルノデ
  アリマス、而モ是ハ我國ニ於キマシテ二十有餘年ノ經驗モ御坐リマスノデ、治水問題ノ
  解決ハ割合ニ容易デアリマス、海嘯問題ニ就キマシテハ事極メテ重大ナノデアリマス、先
  ヅ第一ニ如何ニシテ海嘯ガ起ルカ、所謂海嘯ト地震ノ關係ト云フモノモ調ベナケレバナ
  ラヌ、而シテ海嘯ナルモノハ海岸總テノ海面ニ通ズル所ノ現象デアリマスカラ、是等ノ事
  ヲ根本的ニ〓究セネバナラナイ譯デアリマスルカラシテ、先ヅ第一著步ト致シマシテ、地
  震學上カラノ〓究ヲスル事ニナリマシテ、磯部君モ御承知ノ如クニ大學〓授ノ大森理
  學博士ニ囑託致シマシテ、此原因、又其原因カヲ生ズル海嘯ガドノ位ノ程度迄上ヲテ
  來ルモノデアルカ、浪ノ高サガドノ位來ル而シテ其影響ガ陸地ニドノ位影響ヲ及ボス、
  斯ウ云フヤウナ事ヲ〓究セネバ其防禦方法ヲ講ズルコトガ出來ナイ、是ハ地震學其モ
  ノガ旣ニ六ケ敷イ問題デアリマスルカラシテ、サウ云フ事カラ〓究シテ行ッテ、初メテソレニ
  應ズル策ヲ立テル事ガ出來ルノデアリマス、デ先ヅ其趣旨ヲ達スル積リヲ以チマシテ、內
  務省ニ於キマシテハ、大森理學博士ノ意見ヲ徵スル事ニ致シタノデアリマス、而シテ獨リ
  是ハ東京ト云フノミノ關係ヲ見ルコトノミデハ足リナイノデアリマス、尙他ノ方面ノ狀況
  ヲモ調ベナケレバナラヌ、是ハ極メテ手緩ルイデハナイカト云フ御說モアッタノデアリマスガ、
  ドウモ其方法ニ據ルノ外ハナイノデアリマシテ、或ハ手緩ルイト云フ御非難ヲ受ルカモ知
  レヌト思フノデアリマスケレドモ、唯〓徒ラニ是丈ノ高サノ防波堤ヲ拵ヘタラバ宜カラウ、
  是丈ノ廣サニ海岸堤防ヲ造ッタラバ宣カラウト云フ、唯〓空虛ノ問題デハナイノデアリマ
  スカラ、基礎ニナル〓究ヲセネバナラヌト云フノデ、甚ダ手緩ルイト云フ御批評ヲ受ケテ、
  洵ニ遺憾デハアリマスケレドモ、其方法ニ據ルノ外ナイト考ヘテ、ソレニ據リマシテ-是
  モ學者ガ唯〓學術的ニ調ベルノデハアリマセヌカラシテ、行政上ト致シシテハ或ル一
  定ノ所ニ判斷ヲ下サナケレバナラヌ、凡ソノ見當ガ附キマスレバ、ソレニ對シマシテドレ丈ノ
  堤防ヲ造ッタナラバ宣シイ、ドレ丈ノ海岸防波堤ヲ造ツタナラバ宜イカト云フ、其決定ヲ
  致シマシテ、而シテ之ニ對シテハ相當ノ費用ヲ要スルノデアリマスガ、其費用ガドノ位ニナ
  ルカ、又其費用ヲ果シテ市ノ負擔ニ堪ヘルモノデアルヤ否ヤト云フコトノ〓究、又莫大ノ
  費用ヲ投ジテ斯ル事ヲ爲ス事ガ、果シテ國家ノ爲ニ利益デアルカト云フ經濟上財政上
  ノ問題ニモ觸レテ〓究シナケレバナラヌ、是等ノ事ハ唯今十分ナル攻究ヲ盡シタイト云フ
  考ヲ以テ、當時〓究中ニ在ルノデアリマスカラ、左樣御諒知ヲ願ヒタイ、次ニ第四ト致
  シマシテ、重要都市建築法ノ御問デアリマスガ、是モ極メテ適切ナ御質問ト考ヘマス
  其當時ノ設計ト申シマスルモノハ、經濟上ノ進步ト都市ノ發展膨脹ニ從ッテ、之ガ設
  備ヲ爲サネバナラヌ、場合ニ依リマスルト、其以前ニ於テ是ガ計畫ヲ立テネバナラヌ筈デ
  アリマスガ、此計畫ト致シマシテハ、是ハ實ニ多年ノ問題デアリマシテ、或ハ建築ニ關係ア
  ル協會カラノ意見モ出テ居リマス、或ハ都市問題ヲ〓究シテ居ル協會ノ意見モ出テ居ル
  ト云フヤウナコトデアリマシテ、政府ト致シマシテモ、所謂都市經營法案ナルモノヲ制定致
  シマシテ、殊ニ大都市商工業都市ニ就キマシテハ是レノ制度ヲ一定シタイト云フ
  考ヲ持ッテ居ッタノデアリマス、卽チソレニ據リマシテ都市ノ商工業地帶或ハ各其他ノ地
  帶ヲ拵ヘマシテ、ソレニ據ッテ一ツノ計畫ヲ立テヽ行カネバナラヌト云フ考ヲ以ッテ、又殊ニ
  此防火ノ關係保險ノ關係カラ致シマシテ、都市ノ建築ニ就キマシテハ、最モ意ヲ致サナ
  ケレバナラヌノデアリマス、ソレニ付キマシテ內務省ニ於キマシテモ、建築條例、建築法ト
  云フモノヲ起草シタコトガアル、今現ニ草案ガ有ルノデアリマス、唯〓之ヲ議會ニ提出スル
  迄ニ至リマセヌノハ、申ス迄モナク之ヲ實施スルニ就キマシテ、多大ノ費用ヲ要スルノデ、獨
  リ國家若クハ市ガ費用ヲ要スルノミナラズ個人トシテモ負擔ヲ爲サネバナラヌト云フコト
  ガアリマスカラ、是ハ十分ナル攻究ヲ盡サナイト云フト、市民ノ利益ヲ圖ラムトシテ却テ弊
  ヲ生ズルト云フ事ガアリマスカラ、之ニ就キマシテハ十分ナ調査ヲ致シタイ若シ事情ガ許
  スナラバ之ニ對シマシテハ委員會ヲ設ケテ、委員會ノ〓究決議ニ依ッテ十分ナル方法ヲ講
  ジタイト云フ考モ持ッテ居ルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ方法ニ依リマシテ、東京市-
  獨リ東京市トハ申シマセヌケレドモ、我國ニ於ケル大都市經營ニ就キマシテ、根本的施
  設ヲ爲サムト云フ考ヲ懷イテ居ルノデアリマス、大體是文ノ事ヲ御答シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=22

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• 023・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　第一日程ニ入リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=23

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• 024・岩崎勲

  ○岩崎勳君　識事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出シマス、卽チ玆ニ貴族院ノ修
  正囘付ニ係ル、大正七年度各特別會計歲入歲出豫算案ヲ議題トシ、曩ニ本院議決
  ノ通リ、鐵道敷設法中改正法律案中四國豫定線ノ內「觀音寺ヨリ池田ニ至ル鐵道」
  ノ削除議定ノ結果、貴族院ガ右豫算案ノ中、乙號大藏省所管帝國鐵道建設及改良
  費ノ追加額三百八十八万九百五十八圓ノ削減、竝ニ之ニ伴フ年割額ノ削減ヲナシタ
  ルニ付、是ニ同意スベキヤ否ヤヲ審議セラレンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=24

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• 025・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 026・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナケレバ日程ハ變更サレマシタ
  大正七年度各特別會計歲入歲出豫算案(貴族院囘付)

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• 027・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　貴族院囘付ノ案ニ付テ意見ヲ問ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=27

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• 028・横田千之助

  ○橫田千之助君　貴族院ノ修正議決、鐵道敷設法中改正法律案ニ關シテハ、本院
  ノ修正議決ニ起因スルモノト考ヘマス、當然是ハ同意スベキモノト考ヘマス、同意スルト
  云フ動議ヲ提出シマス

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• 029・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　貴族院ノ修正ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  起立總員

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=29

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• 030・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　滿場一致デアリマス、仍テ貴族院ノ修正ニ同意スルニ決シマ
  シタ、日程第一東京市區改正條例中改正法律案ト、第三ノ京都市云々ノ日程ハ
  關聯スル議案ナルニヨリ一括シテ議題トナスニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 031・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガナケレバ一括シテ議題ニ供シマス、第一東京市區改
  正條例中改正法律素、第三京都市又ハ大阪市ノ市區改正ニ關シ東京市區改正
  條例及東京市區改正土地建物處分規則ヲ準用シ得ルノ法律案第一讀會ヲ開キマ
  ス-後藤內務大臣
  第東京市區改正條例中改正法律案(政府提出)第一讀會
  東京市區改正條例中改正法律案
  東京市區改正條例中左ノ通改正ス
  第一項中「闇令」ヲ「勅令」ニ改メ第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
  東京市區改正委員會ハ市區改正ノ設計及每年度施行スヘキ事業ヲ東京市
  ノ區域外ニ亙リ議定スルコトヲ得
  第二條及第十三條中「東京府知事」ヲ「東京市長」ニ改ム
  第三條中「東京府區部內」ヲ「東京市」ニ「地方稅」ヲ「府稅」ニ改メ左ノ一號ヲ削ル
  一〓酒區內ニ輸入又ハ區內ニ於テ釀造販賣スルモノ一石ニ付金
  五拾錢以內
  第四條中「租稅滯納、處分法」ヲ「國稅滯納處分ノ例」ニ改ム
  第五條中「東京府區部」及「東京府區部內」ヲ「東京市」ニ「東京府知事」ヲ「東京市
  長」ニ「「京京府區部會」ヲ一東京市會」ニ改ム
  第六條中「府總會規則ニ依リ東京府知事東京府區部會ニ付シ」ヲ「東京市長東
  京市會ニ付シ」ニ改ム
  第九條及第十一條中「東京府知事」ヲ「東京市長」ニ、「東京府區部會」ヲ「東京市
  會」ニ改ム
  第十條中「東京府知事」ヲ、東京市長」ニ、「精算帳及計表ヲ製シ翌年通常會議ノ
  初メニ於テ之ヲ東京府區部會ニ報告シ」ヲ「其決算ヲ東京市會ニ報告シ」ニ改
  第十二條中「東京府區部」ヲ「東京市」ニ、東京府知事」ヲ「東京市長ニ、「東京府區
  部會」ヲ「東京市會」ニ改ム
  第十四條市區改正ノ事業ハ東京市長之ヲ執行スヘシ
  第一條第二項ノ規定ニ依ル事業ニシテ東京市ノ區域外ニ於テ施行スヘキ
  部分ハ前項ノ規定ニ拘ラス其地ノ町村長之ヲ執行スヘシ但シ勅合ノ定ム
  ル所ニ依リ町村長其執行ヲ東京市長ニ委託シ又ハ內務大臣東京市長ヲシ
  テ之ヲ執行セシムルコトヲ得
  市區改正事業ニ依リ生シタル營造物ノ管理ニ付テハ前二項ノ例ニ依ル
  第十四條ノ二前條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ要スル費用ハ東京市又
  ハ東京市及事業地ノ町村ノ負擔トス
  前項ノ負擔ニ付テハ關係市町村ノ意見ヲ聞キ東京市區改正委員會ノ議定
  ヲ取リ內務大臣之ヲ定ム
  前二項ノ規定ニ依ル費用ニ關シテハ市區改正ノ費用ノ例ニ依ル
  第十六條ヲ削ル
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  京都市又ハ大阪市ノ市區改正ニ關シ東京市區改
  第三正條例及東京市區改正土地建物處分規則ヲ準第一讀會
  用シ得ルノ法律案(政府提出)
  京都市又ハ大阪市ノ市區改正ニ關シ東京市區改正條例及東京市區改正
  土地建物處分規則ヲ準用シ得ルノ法律案
  東京市區改正條例及東京市區改正土地建物處分規則ハ勅令ノ定ムル所ニ依
  リ其ノ全部又ハ一部ヲ京都市又ハ大阪市ノ市區改正ニ關シ之ヲ準用スルコ
  トヲ得
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  〔國務大臣男爵後藤新平君〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=31

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• 032・後藤新平

  ○國務大臣(男爵後藤新平君)　唯今玆ニ提出ニナリマシタ東京市區改正條例中
  改正法律案、及京都市竝ニ大阪市ニ、東京市區改正條例及東京市區改正土
  地建物處分規則ヲ準用シ得ルノ法律案ニ付キマシテ、提出ノ理由ヲ甲述ベマス唯今
  磯部君ノ御質問、政府委員トシテ内務次官ノ答辯ニ於テ、此意味ハ盡サレテ居リマシ
  テ、最早贅言ヲ要セザル次第デアリマス、東京市及大阪京都市ノ急激ナル膨張ハ旣
  ニ諸君ノ御認メニナル通リデアリマシテ、營業上衞生上防火上交通上ニ亙リマシテ、此
  各ノノ利害共通ノ地域ニ對シテ、永久公共ノ福利ヲ增進センガ爲ニハ、適當ナル文明
  生活ノ改良方法ヲ講ジナケレバナラヌト云フコトハ、申ス迄モ無イ事デアリマシテ、之ヲ調
  査シ、而シテ其基礎ヲ確定シテ、遂行スルコトヲ期シタイ爲ニ、之ヲ提案シタノデアリマ
  ス、此今直キ前ニ質問應答ノアリマシタコトハ、總テ此案ノ必要ヲ喚ブモノト考ヘマス、
  都市ト科學的生活トノ間ニ大ナル距離ヲ生ジテ居リマシテ、吾人ノ支明生活ヲ妨ゲテ
  居ルト云フ憂ハ多言ヲ要セザル次第デアリマス、ソコデ此改良ノ目的ヲ達シタイ爲ニ此
  案ヲ提出シ又二十一年ニ明治二十一年ニ定メラレタル所ノ東京市區改正條
  例中ニハ改正ヲ要スベキ點モアリマスカラ、是ガ爲ニ此度ソレニ改正ヲ加ヘ、又二十二
  年出マシタ所ノ土地建物處分規則ノ應用ヲ以テ、東京市ニ實行セラレタル通リ、大阪
  京都ニ於キマシテモ、之ヲ應用シ準用シテ此目的ヲ達シタイト云フノデアリマスカラ、御
  審議ノ上協贊ヲ與ヘラレムコトヲ切ニ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=32

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• 033・高木正年

  ○高木正年君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=33

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• 034・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御質問ナレベ通告順ガアリマス、高松正道君
  〔高松正道君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=34

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• 035・高松正道

  ○高松正道君　唯今議題ニ供セラレマシタル東京市區改正條例中改正ノ件、竝
  之ヲ京都市竝ニ大阪市ニ準用スル案ニ付キマシテハ、本案ノ必要ヲ提出ノ理由ハ、內
  務大臣竝ニ次官ノ御話ニ依リマシテ解リマシタガ、本員ノ聞ク所ニ據ルト、此東京市區
  改正條例ヲ改正スルト云フ事柄ハ-事柄ノ動機ハ卽チ大阪市ガ時勢ノ要求ニ應ジ
  マシテ、速ニ此市區改正ヲ行フト云フ所ノ計畫ヲ立テタノガ抑く初メテデアル、東京市ノ
  明治二十一年ニ、此法律案ニ依リマシテ市區改正ヲ行ヒマシタ時ニ於テハ、國庫ノ補
  助ヲ致シマシテ行ヒマシタノデアリマス、大阪市ガ此時局ノ影響ヲ受ケマシテ、甚シク市
  財政ガ豐カニナッテ居ル、ソレ故ニ大阪市ガ財政上ノ自然增收ニ依ル所ノ剩餘金ヲ以
  チマシテ、玆ニ大阪市自カラ此大事業ヲ遂行シヤウト云フ計畫ヲ立テマシタ、卽チ十箇
  年ノ繼續事業デ三千五百万圓ノ金ヲ以テ、獨立シテ獨力ヲ以テ此市區改正ヲ大阪
  市ガヤルト云フ、大阪市區改正ノ條例ノ制定ヲ內務大臣ニ向ッテシタノか、抑〓本案ノ
  動機デアルト私ハ信ズルノデアリマス、ソレ故ニ木員ノ玆ニ質問致ス所ハ、此法律案トサ
  ウシテ、大阪市區改正ト此二ツニ付テ、結付イテ大阪市ヲ中心トスル事實ニ於キマシテ
  私ハ政府ノ所見ヲ叩キタイト思フノデアリマス、一御承知ノ如ク東京市ハ帝國ノ首都トシ
  テ、政治上ノ中心地點デアルコトハ、是ハ何人モ異存ハナイ、是ニ對シテ大阪市ハドウ
  デアル、大阪市ハ我國商工業卽チ經濟力ノ中心地點デアルト云フコトハ、是亦諸君ノ
  御諒承下サル事ト思ヒマス、而シテ大阪市ノ一盛一衰ト云フ事柄ハ、唯〓大阪ト大阪
  市ノ一盛一衰デナクシテ、我帝國ノ經濟ノ上ニ於キマシテ、重大ナル關係ヲ有スルモノ
  デアリマス、大阪市ガ玆ニ市區改正ヲ企テマスト云フコトハ多クハ產業上ノ發達產
  業ノ發展ヲ奬勵センガ爲メ、卽チ國富ヲ增進センガ爲ノ意味ニ於キマシテ、此大計畫ヲ
  行ッテ居ルノデアリマス、此事業ノ遂行ト否トハ玆ニ國家ノ經濟ノ上ニ於テ重大ナル關
  係ヲ本員ハ生ズルモノト信ズルノデアリマス、ソレ故ニ大阪市ノ此事業ニ對シマシテ、大
  阪市ハ獨占デ此事ヲ行ハナケレバナラヌノデアリマスカラ.國家ハ之ヲ助ケテ國家ハ
  國ノ力ヲ以テ之ヲ助ケテ、速ニ完全ナル商工ノ大都市ヲ建設スルト云フコトヲ行フ所ノ
  義務ガアラウト考ヘルノデアリマス、ソレ故ニ大阪市ガ行ハントスル所ノ此計畫ニ對シマシ
  テハ政府ハ國庫ヨリ支辨ヲ致シマシテ、之ヲ行フト云フ所ノ意恩アリヤ否ヤ、此點ヲ第
  一問トシテ御伺シタイ、ソレカラ若シ此事業ガ國庫ヨリ是非支出スルト云フコトガ出來
  ナケレバ、大阪市ガ十箇年三千五百万圓ノ金ヲ出ス餘裕ガアルカラシテ、尙ホ此上ニ對
  シテ政府ヨリ幾テカ金ヲ補助致シマシテ、大阪市ガ計畫シテ居ル所ノモノヨリ、以上ノ計
  畫ヲ遂行セシメルト云フ御考ガ有ルカドウカト云フコトヲ御尋スルノガ第一點デアル、サウ
  シマシテ此法案ニ依テ見マスト云フト此市區改正ノ接續町村區域外ニ及ボスト云フ
  條項ニナッテ居リマスガ、是ハ大阪市ノ計畫スル所ニ依リマスト云フト西成郡九箇町
  村東成郡ノ十一箇町村ニ亙ル計畫ニ於テ、此市區改正ノ道路ヲ延長スルト云フ計
  晝デアリマス、是ハ然ラバ是丈ノ計畫卽チ市部以外ノ區域ニ及ボス所ニ於テ、其經費ハ
  ドウスルカト云フ點デアル此經費ノ點ニ付マシテ市區改正條例ノ第十四條ノ第二項
  ニ於キマシテ、區域外ノ施行ノ費用ハ東京市デ負フト云ヒマスカラ、之ヲ大阪ニ準用致
  シマスレバ、大阪市又ハ大阪市及事業町町村ノ負擔トストナッテ居リマシテ、市部ガ全
  部ノ費用ヲ償フカ若クバ市部ト其所屬ノ町村ノ連帶負擔ニスルカト云フコトニ規定サレ
  テ居ルヤウデアリマスガ、此點ニ付キマシテハ餘程考慮ヲ費サナケレバナラヌト私ハ考ヘルノ
  デアリマス接續町村ハ勿論此市部ノ發展ニ依リマシテ、膨脹シテ來タモノデアリマスカラ
  之ヲ迎ヘルコトハ當然デアリマセウケレドモ、大阪市ノ接續町村ノ膨脹ト云フコトハ、天王
  寺ヲ除ケバ多クハ工業地デアリマシテ、其所ニ住スル住民ノ多クハ職工、其他中流以下
  ノ貧民階級ガ多イノデアリマスカラシテ、卽チ町村ラシテ事業費ノ一部ヲ負擔セシメルト云フ
  コトハゝ其町村ノ財政ノ力ガ當然之ヲ許スコトガ出來ヌノデアル、斯樣ナ點ガアリマスガ
  故ニ、若シ政府ニ於キマシテ『此大阪市ヲシテ相當ナル金ヲ支出セシメ、尙ホ町村ガ負
  擔スベキ必要ガアルナラバ、其經費ト云フモノヲ國庫ヨリ支出シテヤル所ノ御考ガアルカ
  ドウカト云フコト、是ガ第二問テアリマス、而シテ此市區改正ノ目的、市區改正ハ如何
  ナル必要ニ依テ行フノデアルカ、現在ノ大都市ノ要求ニ應ジテ市區改正ノ計畫ヲ定メル
  ノデアルカ、若クハ永遠ノ計畫トシテ此事柄ヲ設計スルノデアルカト云フコトヲ聞キタイ、
  卽チ東京市ニ於キマシテハ、明治二十一年始メテ市區改正ヲ行ッタノデアリマシテ、漸
  ク昨年度ニ於キマシテ大略此事業ガ濟ンダト申シテ居リマスガ、偖私ハ今日此東京市
  ノ市區ノ狀態ヲ見テ見ルト、決シテ此國運隆々タル帝國ノ大都市トシテ交通系統ヲ有
  スルモノデナイ、甚ダ不完全ナル市區改正デアッタト云フコトヲ、私ハ感ジテ居ルノデアリ
  マス、大阪市ニ於テ謂フ所ノ今囘行ハントスル所ノ市區改良ノ目的ト云フモノハ、現在
  ノ大阪市ノ商工業ノ力ヲ基礎トスル所ノ改正ノ設計デアルカ、若クハ之ヲ少クトモ五十
  年、餘裕ヲ得レバ百年位先迄今日先ヅ十分ナリト云フ計畫ヲ定メルト云フ必要ガアル
  ノデアルカ、此點ハ如何ナル方針ヲ以テ政府ハ之ヲ監督スルノデアルカ、ソレヲ承リタイノ
  デアリマス、是ガ卽チ質問ノ第三デアリマス、質問ノ第四、是ハ磯部君ノ御質問ト略〓
  同一デアリマスガ、是ハ大阪市ノ接續町村ト云云モノモ、餘程東京市ノ周圍ノ狀況ト
  似テ居リマスルカラ、之ヲ速ニ併合スルト云フ所ノ方針ヲ立テル必要ガアル、此接續町
  村ヲ併合致シマシテ、大阪市ニ編入スルト云フコトニシタト致シマスレバ、其處ニ殘ル所
  ノ郡村、卽チ西成郡ニ於テ九箇村ヲ引去リ、東成部ニ於テ十一箇村ヲ引去レバ、其
  殘部ノ町村デ以テ其郡ノ獨立ハ保テナイノデアル、ソレ故ニ町村ノ併合ト云フコトデ、大
  阪市編入ト云フコトヲ行ヒマスレバ、ドウシテモ西成郡東成郡ノ郡ノ廢合ト云フコトヲ
  行ハナケレバナラヌ、又府ノ經濟ニ於キマシテ、郡部經濟ニ屬スル所ノ負擔ガ是丈ノ町
  村ヲ大阪市ニ攫ハレルト云フコトニナレバ、非常ニ郡部ノ經濟上ニ於ケル均衡ガ保テナ
  クナルカラ、延テハ之ヲ近府縣ヲ合併シマシテ一ノ新ナル縣ヲ引入レル、卽チ合併スル
  ト云フ必要ガアルデナカラウカ、斯樣ナルコトハ根本的政策ヲ行フト云フ所ノ、政府ノ意
  思ガアルカドウカト云フコトガ第四問デアリマス、ソレカラ東京市ノ例ヲ取リマシテ、大阪
  ニ高架鐵道ヲ建設サレマスカ、是ハ鐵道院ノ御意見ヲ聞キタイト思フノデアルガ、市區
  改正ト云フコトハ市街ヲ改善シ、交通ノ發達ヲ良クシ、衞生上其他防火總テノ點ニ於
  テ市街ヲ改良スルト云フ趣意ニ在ルノデアリマスガ、鐵道院ガ此高架線若クハ市內ニ停
  車場ヲ設ケルト云フ場合ニ於キマシテハ、市ノ方針卽チ健全ナル完全ナル市街ヲ形造ク
  ルト云フ所ノ、都市經營ノ方針ト相俟ッテ、其計畫ヲ立テルヤ否ヤト云フ點ニ在ルノデ
  アル私ガ玆ニ多少ノ杞憂ヲ抱キマスコトハ、彼ノ東京市中央停車場ノ設計ノ有樣デ
  アルノデアル、是ハ如何ニモ帝都ノ大停車場ト致シマシテ、立派ナル外觀ヲ備ヘテ居リマ
  スケレドモ、是ハ商工業ノ中心地ト果シテ聯絡アリヤ否否ト云フコトハ餘程疑問デアル
  鐵道院ガ自分ガ勝手ニ面白半分ニ拵ヘタ停車場デナカラウカト私ハ思フノデアル(拍手
  起ル)又此品川ヨリ中央停車場迄至ッテ居リマス彼ノ高架線、若クハ目下工事中ノ飯
  田町ニ通ズル高架線、是等ノ如キモノハ果シテ東京市ヲ經營スル所ノ方針ト矛盾ス
  ルコトハナイカト云フコトヲ私ハ疑フノデアル、卽チ此高架線ノ爲ニハ非常ニ市ノ中央ニ
  於キマシテ煤煙ヲ飛散サレ、或ハ塵芥ヲ飛散サレ、光線通風ヲ妨ゲラレテ、都市ノ衞
  生ヲ阻害サレルコトガ非常ニ多イノデアリマス、斯樣ナ點ニ於キマシテ、果シテ鐵道院ガ
  此完全ナル市街ヲ建設スル所ノ方針ニ考慮ヲ費シテ、斯樣ナ建設ヲシタノデアルカドウ
  カ、是ハ本員ノ非常ニ疑フノデアルガ、是ニ於テ此疑ガ超ルト同時ニ、非常ニ杞憂ニ堪
  ヘヌノハ、大阪市ニ於キマシテ近ク鐵道院ニ於テ、臨港鐵道ノ施設ヲスルコトニ在ル、卽
  チ天王寺ニ起リマシテ大阪築港ニ通ズル所ノ高架線ヲ開通シマスガ、此時ニ依然タル
  鐵道院一流ノ無頓著ナル施設ヲヤラレテハ吾〓大阪市民ハ非常ニ困難ヲスル譯デア
  リマスカラシテ、此點ニ付テハ如何ナル方針デヤラレル御積リデアルカ、之ヲ承リタイノデ
  アリマス、是ガ卽チ質問ノ第五デアリマス、ソレカラ大阪市ノ端々ニ於ケル場末ノ改良デ
  アリマス、勿論此場末ノ事デアリマスカラ、中流界下層民ノ階級ノ集合地デアル、殊
  大阪ハ工業ノ都市デアリマスルガ故ニ、工場ノ附近ニハ極メテ貧シキ所ノ部落ノ者ガ澤
  山住ンデ居ル、是等ヲ改良スルト云フ-此貧民部落或ハ職工部落ヲ改善スルト云
  フコトノ何等カノ規定ヲ、今囘ノ此市區改正條例ノ中ニ設ケル必要ガ無イカト
  私ハ考ヘルノデアリマス、英吉利ノ例ニ依テ見テモ、職工住宅法ト云フモノヲ英吉利ガ
  拵ヘテ、サウシテ職工保險ノ事ヲ計ルト云フコトニ於テ、十分ニ立派ナル成績ヲ擧ゲテ
  居ルガ、今囘大阪市ガ行ハントスル所ノ市區改正ニ對シテ、監督官廳タル內務省ハ斯
  樣ナ方針ニ向ジテ相當ノ計畫ヲ有スルヤ否ヤト云フコトヲ聞キタイノガ第六デアリマス、ソ
  レカラ私ハ最モ重要ナル問題トシテ、政府ノ意見ヲ聽キタイノハ市區改正ヲ行ッテ、街路
  ハ如何ニモ立派ニナッテ居ル、或ハ「アスフアルト」デアルトカ、或ハ木造デアルトカ、或ハ
  「コンクリート」デアルトカ、非常ニ立派ナル街路ヲ造リマシテモ、此街路ハ到底永ク保テ
  ナイ、卽チ路面ニ對スル施設ガ出來テモ、地下ニ對スル行政ガ行ハレテ居ラヌ、彼ノ四
  谷ノ通ノ如キ、丁度私ガ東京ニ住ンデ居ッタ時ニ、四谷ノ道路ガ市區改正デ大キクナッ
  タノデアリマスガ、之ヲ作ル時ニハ三角ノ栗石ヲ入レテ、其上ニ「バラス」ヲ入レテ十分敲
  キ付ケテ、立派ナル道路ガ出來タノデアリマスケレドモ、地下行政ニ何等ノ制限ガ無イガ
  爲メニ、瓦斯ノ鐵管デアルトカ、或ハ水道デアルトカ、或ハ下水デアルトカ電話線電
  燈線、或ハ電信線ノ如キ地下線ヲ埋沒スル時ニ、肝腎ナル道路ヲ掘リ繰リ返スノデア
  ル、サウシテ又修繕ヲスル時ニモ掘リ繰リ返スノデアル、此場合ニ唯〓外面丈固メテ置ク
  ノデアルカラ、少シ重イ重量ノ車ガ通レバ、直チニ其處ガ壤レテ仕舞フト云フコトデ、四
  谷ノ道路ハ電車側ヲ二尺乃至五六尺位延長サレタ所ガドブ〓〓ニナルト云フ不完全
  ナ道路ガ出來テ居リマス、佛蘭西ノ巴里ノ如キ(笑聲起ル)伯林ノ起キ此外國ノ都市
  ニ於テハ頗ル立派ナ地下行政ガ出來テ居ル-言違ヒヲ笑ッタッテ仕方ガナイ、此道路
  ノ下ニ相當ナル隧道ヲ設ケテ、此地下埋沒線ヲ其內ニ通ズ、或ハ電信線デアルトカ、或
  ハ電話線デアルトカ或ハ瓦斯管デアルトカト云フ埋沒線ヲ集中セシメテ、之ヲ修繕スル時
  ニモ道路面ヲ掘リ繰リ返サズシテ立派ニ修繕ヲスルト云フコトデ、地下ノ行政ガ行ハレテ
  居ルガ、今囘大阪市ニ行ハントスル市區改正ニ對シテ、內務省ハ地下行政ニ對スル方
  針ヲ有シテ居ラルヽヤ否ヤト云フコトヲ聽キタイノデアリマス、是ガ第七ノ問題デアリマス、
  次ニ大阪市ハ御承知ノ如ク水ノ都デアル、此水ガアッテ初メテ百四十万ノ大都會ガ今
  日實現シタノデアリマスカラ、此水ノ交通ガ大阪ノ生命デアル、所ガ水路ノ交通ニ對ス
  ル政策ト云フモノハ、今迄一ツモ立ッテ居ラヌ、卽チ橋脚ノ間隔若クハ橋梁ノ高サノ一
  定シナイト云フ事デアリマス、〓シテ大貨物ノ運輸ニ於キマシテハ、大阪市ニハ彼ノ安治
  川ヨリ土佐堀川ニ通ジテ、淀川ニ通ズル事ガ行ハレテ居ルノデアリマスガ、爰ニ一例ヲ以
  テ申シマスレバ先年靑島戰爭ノ初ニ於テ、大阪砲兵工廠ヨリ大阪築港ニ碇泊スル御
  用船ニ向ッテ、二十八珊ノ榴彈砲ヲ輸送シタコトガアル、其當時ニ於キマシテ此輸送ハ
  非常ニ急グノデアッテ、多數ノ榴彈砲ヲ積出サナケレバナラヌガ、如何セム此橋梁行政ノ
  統一ガ付イテ居ラヌガ爲メニ、天神橋、ヽ難波橋ノ如キ立派ナ橋ガアルカト思ヘバ堂島
  大橋ノ如キ貧弱ナル橋ガアッテ、橋ノ高サガ非常ニ低イ、ソレデアリマスカラドウシテモ干
  潮面ヲ利用シナケレバ此運輸ハ完全ニ行カナイ、卽チ晝夜二囘ノ干潮時ヲ利用致シマ
  シテ、漸ク日ニ一門半乃至二門位シカ輸送ガ出來ナカッタト云フ實例ガアルノデアリマ
  ス、是ハ橋ノ高サノ事デアリマスガ、橋脚ノ幅ニ於キマシテモ少シモ一定シテ居ナイ、或ハ
  其間隔ガ十間モアリ十五間モアルト云フ具合デ、十五間ノ所ガ如何ニ澤山アリマシテ
  も、唯〓一箇所十間ノ所ガアッタナラバ、ソレガ爲メニ荷物ガ通ラヌト云フコトニナリマス、
  斯樣ナ事デアリマスカラ、橋梁行政ノ統一ニ付テ定メテ內務省ハ相當ノ御腹案ガ有ル
  ダラウト考ヘマスカラ、此點ヲ伺ヒタイ、是ガ第八デアリマス、ソレカラ最後ニ於キマシテ
  此市區改正條例ヲ見マスルノニ、市街改良委員會ト云フモノニ絕對ノ權力ヲ與ヘテ居
  ルヤウデアリマシテ、此委員會ノ組織權限ト云フモノハ別ニ勅令ヲ以テ定メルコトニナッ
  テ居リマス、ツコデ東京市ニ今迄行ハレテ居リマシタ所ノ東京市街改良委員會ノ組織
  竝ニ權限ト云フモノハ、勅令ニ依テ見マスルト、此委員會ノ組織ハ內務次官ヲ委員長
  ト致シ、內務省以下各省ノ高等官、鐵道院、東京府ノ各高等官、茲ニ東京市長、市
  參事會議員市會議員一部ヲ以テ組織ストナッテ居ルノデアリマス、所ガ此勅令ハ市區
  改正條例ト云フモノガ、此東京市街ノミニ限ッタ時代ノ勅令デアリマスルガ故ニ、此組
  織ノ中ニハ郡部ガ加ッテ居ラヌ、接續町村ガ加ッテ居ラヌ、所ガ今囘改正ヲシテ此工事
  施行ヲ區域外ニ出スト云フコトニナルト、ドウシテモ豫定サレタ所ノ區域ニ於ケル相當ナ
  ル代表的人物ヲ出ス必要ガアルト思フノデアル、政府ハ果シテ此案ガ通過シテ實行サレ
  ル時ニハ、此委員會ノ組織ニ於テハ其區域ニ屬スル所ノ郡部ノ接續町村ノ代表者ヲ此
  委員ニ任命スルト云フ方針ヲ御持チニナルカドウカ、此點デアリマス、以上九點ニ付キマ
  シテ政府ノ處見ヲ承ッテ置キタイト思ヒマス甚ダ失禮致シマシタ(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=35

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• 036・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　後藤內務大臣
  〔國務大臣男爵後藤新平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=36

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• 037・後藤新平

  ○國務大臣(男爵後藤新平君)　唯今高松君カラノ御質問ガ九點ニ亙ッテ居リマス、
  第一ハ大阪市ノ市區改正ニ於ケル補助金ノ事、第二ハ接續町村ノ負擔ニ關スル事、
  第三ハ市區改正ノ目的ノ事、第四ハ併合郡村ノ經濟關係ノ事、第五ハ高架鐵道ノ
  關係ノコト、第六ハ職工宿舎ノコト、第七ハ街路行政トデモ申シマセウカ、地下物建設
  ニ關スルコト、第八ハ大阪ハ水ノ都府デアルト云フ點カラ、橋梁橋脚ノ關係ノコト、第
  九ハ委員會ノコト、斯樣ナ御質問デアリマス、大要ヲ御答致シマシテ、其中ニハ委員會
  ニ讓ルベキモノガ澤山アルト考ヘラレマスガ、第一ノ補助金ノ事ハ、今此所ニ內務省ニ
  於テ何等特ニ計畫シテ下附スベキモノト定メテ居ルモノハナイノデアリマス、是ハ高松君
  自身モ御承知デアルヤウデアリマスカラ、敢テ此事ハ申述ベマスマイ、第二ノ接續町村ノ
  負擔ノ事デアリマスガ、之ニ對シテハ高根君ノ御意見ハ接續町村ノ市區改正ニ關係ス
  ルモノハ悉ク市ニ併合スルト云フ御意見ノヤウニ考ヘラレマスガ、內務省ニ於テハ市其
  モノノ先ヅ一團ヲ之ヲ第一環トシテ、第二環第三環ト輪ヲ描キマシタ所ノモノガ、卽チ
  此利害共通ノ地域トシテ、市區改正ニ關係スル設備ノ聯絡ヲ保ツヤウニシナケレバナラ
  ヌト云フ考ヲ持ッテ居リマスカラ、强チ悉ク併合スルノデハナイカラ、郡市ノ負擔ノ關係
  ガ無イヤウニシテ置キタイト云フ希望ヲ持ッテ居リマス、此點ニ付テハ何レ委員會ニ於テ、
  能ク盡ス事ニシタラ宜カラウト考ヘマス、第三ニ市區改正ノ目的デアリマス、是ハ高松君
  カラ段々御述ベニナリマシタガ、此目的ニ對シマシテハ時代ト場所トニ從ッテ、吾人ノ文
  明生活ノ基礎ハ科學的生活ニ置クト云フ事ニナルノデアリマスカラ、此等ノ調和ハ十分
  取ルヤウニシテ往カナケレバナラヌト考ヘマス、此事ハ玆ニ詳シク申述ベヌデ、大要丈申上
  ゲテ置キマス、第四併合郡村ノ經濟ト云フ事ニ付テハ、是ハ先刻內務次官モ申述マ
  シタガ、是ハ十分ニ攻究ヲ要スル事デアリマス、此事ニ付テハ郡村ノ今日ノ獨立生活ヲ
  妨ゲナイ程度ニ於テ、市區ト共通ノ生活ヲ全ウスルヤウニ致シタイト考ヘテ居リマスヽ第
  五ニ高架鐵道ノ事ニ付テノ御質問デアリマスガ、此事ハ東京ノ高架鐵道ノ通リヤルデア
  ラウト云フヤウナ御話モアリマシタガ、或點ハサウ云フ事モアリマセウ、併シ是ハ今年月ハ
  忘レマシタガ今ノ高架鐵道ナルモノ停車場ナルモノハ年月ハ分リマセヌガ、白根選相時
  代ニアレハ定メラレタモノデアリマス、ソレデ時代モ餘程變ッテ居リマスカラ、是ハ時代相
  應ノ力ヲ以テ最善ノ努力ヲ竭サナケレバナラヌカト考ヘテ居リマス、ソレカラ第六ハ職工
  ノ宿舍デアリマス、是ハ近世ノ問題トシテ最モ攻究スベキ重要ナ事ニ屬シテ居リマス、此
  等ノ事ハ市區改正委員會ニ於テ、十分攻究シテ適當ニ定メテ往カナケレバナラヌノデア
  ラウト考ヘマス、第七ニ街路ノ行政地下物ノ建設等ニ付テ御懸念ガアリマシタガ、至極
  御尤ノ事デアリマス、併シ之ニ對シテ斯樣ナ事ニスルト云フコトハ內務省ハ考ヘテ居リ
  マセヌ、巴里ノ地下溝渠ノヤウニシヤウトカ又ハ伯林ノヤウニシヤウト云フヤウナ考ハ今
  持ッテ居リマセヌ、此等ハ次ノ第八ノ御問ノ大阪ハ水ノ都府デアルト言ハレマシタ、其一
  言ニシテ盡シテアリマス、此等ノ點カラ考ヘテ其設備ニ付テハ十分近代的ノ思想ヲ以
  テ全ウシタイト云フ考ヲ持テ居リマス、併シ是ハ經濟ト相伴フモノデアリマス、道路ノ路面
  ノ事カラ地下ノ建設物カラ總テ理想ノ過リ達シ得ルヤ否ヤハ別問題トシテ、要スルニ現代的
  ノ事建設ヲ致ス事ニ力ヲ致ス、斯ウ云フコトニナリマス、大阪ニ於テ橋梁竝ニ橋脚ノ關
  係ヨリシテ、彼ノ水運ヲ利用スル事ヲ却テ妨クル事ガアッタト云フ御意見モアリマシタガ、
  市區改正ノ際ニ於テハ、改正委員會ハ必ラズ其點ニ付テ、十分ナ注意ヲ拂フベキコト
  デアッテ、今幾ラノ間隔ニスルトカ、幾ラノ高サニスルト云フヤウナ事ニ付テ、豫斷ヲシテ居
  ルモノハ何等アリマセヌ、次ニ委員會ノ組織ノ事デアリマス、是ハ御懸念モアリマシタガ
  其邊ニハ十分注意ヲ致サウト思ッテ居リマス、免ニ角大阪市ノ此度ノ改正ニ付テハ必
  要ヲ感ズルコトニ於テモ、大阪市民ノ希望ト內務省ノ希望ト決シテ何等ノ相違ナク、密
  接ノ關係ヲ以テ本案提出ノ際申述ベマシタヤウニ都市ト各地方ノ生產トノ間ノ調和
  ヲ全ウシタイト云フ事ノ一三ロヲ以テ御答致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=37

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• 038・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　此際議長ハ議事ノ進行ニ付テ一言致シマス、本議會ハ最早
  大分經過致シマシタケレドモ、唯今ノ傾向ヲ見マスルニ、質問日ノ質問モ本案ニ對スル
  本會ノ質問モ殆ド差別ナク、委員會ノ開カレル場合ニ盡スベキ問題モ此區別無シニ近
  頃頗ル長引ク、今日ハ未ダ此案ニ付テサヘモ二名ノ通告ガアリマス是ハ議事ノ進行
  上本日ニ定メタル質問日ノ質問ハ如何ニ長クトモ、如何ニ詳細ニ亙ラウトモ固ヨリ是
  迄ノ例モアル本案ニ付テ殊ニ政府ノ法案ノ如キハ委員會ニ付セラレナケレバナラヌモ
  ノデアリマスカラ、委員會ニ於テ具ニ御質問ニナルヤウニ顧ヒタイ、ソレニ問ヲ十モ二十モ
  擧ゲテ多キヲ以テ尊シトスルガ如キハ甚ダ宜クナイト思フ此次ノ質問者ニ對シマシテモ
  デスガ、政府ニ對シテモ此事ハ御心得ノ上ニ御答ニナルヤウニ併セテ申シ置キマス-
  村松恆一郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=38

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• 039・村松恒一郎

  ○村松恆一郞君　本員ハ議長ノ御注意迄モナク、極ク簡單ニ自席カラ質問シタイト
  思ヒマス、今日迄既ニ大體一段落ヲ告ゲテ居ルノデアリマスガ、然ルニ今日人口ノ增
  加、從ッテ交通ノ頻繁ナルガ爲ニ、現在一等道路デスラ旣ニ狭隘ヲ感ジテ居ルヤウナ譯
  デアリマス、隨テ種々ノ危險事項モ續イテ超ルヤウナ譯デアリマスガ、無論此市區改正ノ
  事業ハ、市區改正委員會ニ於テノ決定ヲ俟タナケレバナラヌノデアリマスガ、政府トシテ
  現在ノ此東京市ノ道路ヲ現在以上ニ幅員ヲ擴張スルト云フ御方針ガアラレルカ否ヤト
  云フコトヲ、第一ニ伺ッテ置キタイ、第二ニハ縱シ道路ノ幅員ハ之ヲ擴張スル事ガ容易
  ニ出來ナイト致シマシテモ、今日此路面ノ改良ト云フコトハ非常ニ必要ナ事柄デアリ
  マシテ、現在殊ニ此自動車ノ橫行スル爲ニ益〓道路ヲ損ジル、ソレニ依テ又色ミノ危
  害ヲ生ズルト云フ場合デアリマスガ、同時ニ東京市民ハ此路面ノ改良ヲ非常ニ要望致
  シテ居ルノデアリマス、之ニ付テ政府ハ此路面ノ改良ト云フコトヲ、急速ニ實行スルコト
  ニ付テノ御意見ハ如何デアリマスルカト云フ御尋ヲスルノハ、外デモナイ、今日東京市ニ
  於キマシテハ上水道ノ擴張、下水道ノ敷設等ニ於キマシテハ、旣ニ年額四五千万圓ノ
  金額ヲ要スル、其他ニモ種々テ事業ガアルノデ、此路面ノ改良ヲスルニシテモ、東京市ノ
  微力デハ到底出來ナイノデアリマスカラ、勢ヒ道路ノ幅員ノ擴張、若クハ路面ノ改良ニ
  致シマシテモ、相當ノ補助ヲ仰ガナケレバナラヌノデアリマス、併シ唯今國庫補助ノ事ニ
  付キマシテ、政府ノ御意見ヲ伺フト云フノデナイノデアリマスガ、唯〓今日以上ニ此道路
  ノ幅員ヲ擴張スルト云フ御意見ガ政府ニアルヤ否ヤ、第二ニ路面ノ改良ノ急務ナル事
  ヲ御認メニナルヤ否ヤ、此二點ニ付テ極ク簡單ニ御答ヲ求メタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=39

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• 040・後藤新平

  ○國務大臣(男爵後藤新平君)　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=40

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• 041・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　後藤內務大臣
  〔國務大臣男爵後藤新平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=41

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• 042・後藤新平

  ○國務大臣(男爵後藤新平君)　唯今ノ御質問ハ聽漏シタ所モアルヤウデ、シッカリ分
  リマセヌデシタガ、第一ニ道路ノ幅ヲ改良スルノ意ガアルカ第二ハ路面ノ改良ヲスルカ、
  斯ウ云フ御尋ノヤウデアリマシタ、是ハ何レモ今日ノ儘デハイカヌト考ヘマス、今日ノ儘デ
  良イ道幅ノ處ハ宝塚東京市內ノ街路中少ナキモノデアルト考ヘテ居ルノデアリマス

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• 043・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　高木正年君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=43

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• 044・高木正年

  ○高木正年君　私ハ極メテ簡單ニ唯一箇條御尋ヲ致シタイ、此市區改正條例ハ頗
  ル古イ法律規則デアリマスガ、今度改正ニナルノハ確ニ相當ノ事トハ思ヒマスガ、此機會
  ニ於テ、何故ニ東京市區改正土地建物處分法ナルモノヲ、根本ヨリ御改正ニナッテ御提
  出ニナラナイノデスカ、凡ソ我國ノ法律規則ノ中デ、此東京市區改正土地建物處分
  法位野蠻ナ法律ハナイ、從來此土地ヲ收用シ、若クハ建物ヲ收用スル時分ニハ土地
  收用法ニ依ルノガ、相當デアリマスガ此建物處分法ハ收用法ニ依ラズシテ、市區改正
  ノ企業者ハ内務大臣デアル、內務大臣ノ下ニアル市區改正事業ヲ、此市區改正ニ
  當ッテ收用サレル土地及建物ノ賠償ニ付テ、異議アル時分ニハ、內務大臣ニ裁定ヲ乞
  フヨリ外ニ救濟ノ方法ガ設ケテナイノデアリマス、是レ恰モ原告ガ己レノ主張ヲ被告ニ對
  シテ要求スル場合ニ、被告ニ向ッテ救濟ヲ求メルト同樣ナ法律規則デアルノデアリマス、
  是ガ爲ニ市區改正ノ度每、及ビ昨今行ハレテ居ル所ノ市ノ水道及下水事業ニ對シテ、
  郡部ニ於テモ甚シキ此所有權ヲ侵害サレテ居ル者ガアルノデアリマス、此市區改正條例
  ヲ改正サルヽナラバ、先ヅ根本ノ此土地建物處分法ヲ、時代ニ適應ナル法律トシテ御
  改正ニナッテ、獨リ之ガ東京市ノ區域內ニ幸ヒスルノミナラズ、大阪京都ニ新ニ之ヲ適
  用スル場合ニ於テモ、所有權ヲ侵害シナイヤウニ、相當ノ救濟方法ヲ設ケテ之ヲ施行ナ
  サル事ガ適當ナ手段デハナイカト私ハ思フノデアリマス、然ルニ此等ノ事ヲ少シモ御攻究
  ナク、恰モ此法ヲ以テ完全無缺ノモノトナシテ、新ニ大阪ノ市ニマデモ之ヲ適用サレルト
  云フ內務大臣ノ意ガ、一向了解シ兼ネルノデアリマス、此點ニ付テ簡單ナ御答ヲ要求
  シ·マ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=44

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• 045・後藤新平

  ○國務大臣(男爵後藤新平君)　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=45

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• 046・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　後藤内務大臣
  〔國務大臣男爵後藤新平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=46

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• 047・後藤新平

  ○國務大臣(男爵後藤新平君)　高木君ニ御答ヲ致シマスガ、此法律案ハ或ハ高木
  君ノ御意見トシテ述ベラレルヤウナ點ニ、改良ヲ要スル所モアルカモ知レマセヌガ、政府ニ
  於テハ多年ノ經驗上之ヲ以テ實行シマシテ、決シテ差支ナイト認メテ居リマスカラ、之ヲ
  提案致シテ居ルノデアリマス、是等ノ御意見ヲ鬪ハシマスルコトハ、委員會ニ讓ルガ議長
  ノ言ハレルヤウニ適當デアラウト思ヒマスカラ、是丈御答致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=47

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• 048・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　右兩案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
  第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=48

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• 049・岩崎勲

  ○岩崎勳君　兩案ヲ一括シテ委員ノ數ハ特ニ十八名トシ、議長ニ於テ指名セラレムコ
  トヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=49

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• 050・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=50

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• 051・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナイモノト認メマス、仍テ右兩案ハ十八名ノ議長指名
  ノ委員ニ付託スルコトニ決シマシタ-日程第五、臺灣銀行法中改正法律案ノ第一
  讀會ヲ開キマス
  第五臺灣銀行法中改正法律案(政府提出)第一讀會
  臺灣銀行法中改正法律案
  臺灣銀行法中左ノ通改正ス
  第五條中「地金銀ノ賣買」ヲ「地金銀ノ賣買及貨幣ノ交換」ニ、「又ハ興業債券」ヲ
  「興業債券其ノ他主務大臣ノ認可ヲ受ケタル有價證劵ニ改ム
  第五條ノ二臺灣銀行ハ公共〓體、產業組合又ハ畜牛保健組合ニ對シ貸付ヲ
  爲ス場合ニ於テハ擔保ヲ徵セサルコトヲ得
  第六條ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ外國ニ於ケル營業ノ必要上主務大臣ノ認可ヲ受ケタル業務ニ付テハ
  此ノ限ニ在ラス
  第九條中「一千萬圓ヲ「二千萬圓」ニ改ム

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=51

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• 052・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=52

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• 053・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　勝田大藏大臣
  〔國務大臣勝田主計君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=53

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• 054・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　唯今提案ヲ致シマシタ臺灣銀行法中ノ改正ノ要點ハ、
  第一ガ保證準備ノ擴張デ御坐イマス、御承知ノ如クニ臺灣銀行ニ於キマシテハ、明治
  四十三年ニ保證準備ノ制限額ヲ「一千万圓」ト致シマシタ其以來何等ノ變更ハ御
  坐イマセヌノデ、然ルニ臺灣ニ於キマス所ノ產業其他ノ發展ハ、私共ノ申上ゲマスルマ
  デモナイ次第デアリマスルノデ、此「千万圓」ヲ「二千万圓」ニ擴張ヲシタイト云フコトガ、
  是ガ主要ナ點デ御坐イマス、其他臺灣銀行ハ今日ハ海外ニ於テ餘程事業ニ手ヲ出シ
  テ居リマス、隨テ營業課目ノ中ニ海外ニ於テ致シマスル所ノ業務ニ付テハ主務大臣
  ノ認可ヲ得テ致スコトノ出來ル餘地ヲ存シテ置イタラ宜カラウト云フコトガ一點御坐イ
  マヽ、尙ホ臺灣ニ於キマシテハ公共團體、或ハ產業組合ノ如キモノガ今日デハ完全ニ發
  生致シマシテ、其監督等モ十分行屆イテ居リマスカラシテ、之ニ對シテ無擔保ノ貸付ノ
  途ヲ啓クト云フコトニ致シタイト思フノデアリマス、其他一二ノ輕微ナル改正ヲ加ヘタイ
  ト思フノガ此案ノ精神デ御坐イマス、何卒御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ切望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=54

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• 055・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　別ニ御質問ガ無ケレバ、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選
  舉ヲ議題ト致シマス
  第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=55

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• 056・岩崎勲

  ○岩崎勳君　委員ノ數ハ特ニ十八名トシ、議長ニ於テ指名セラレムコトヲ望ミマス
  (「贊成々々」「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=56

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• 057・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ガナイト認メマス、卽チ本案ハ議長指
  名十八名ノ委員ニ付託スルコトニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=57

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• 058・岩崎勲

  ○岩崎勳君　再ビ議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致シマス、卽チ先ヅ政府
  提出ノ日本興業銀行法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ、政府ノ說明ヲ求メテ其審
  議ヲ進行シ、引續キ其審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ行ヒ、次イデ有價證券割賦販
  賣業法案ノ第一讀會ヲ開キ、委員長差支ニ付理事柏原文太郞君ノ報告ヲ求メ、且ツ
  其審議ヲ續行セラレムコトヲ希望致シマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=58

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• 059・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハナイト認メマス、仍テ日程ハ變更セ
  ラレマシタ、日本興業銀行法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス
  日本興業銀行法中改正法律案(政府提出)第一讀會
  日本興業銀行法中改正法律案
  日本興業銀行法中左ノ通改正ス
  第六條中「日本興業銀行ノ業務ヲ分掌ス」ヲ日本興業銀行ノ業務ヲ分掌シ又
  ハ之ニ參與ス」ニ改ム
  第九條ニ左ノ二號ヲ加フ
  第八十五年以內ニ於ケル年賦償還又ハ五年以內ニ於ケル定期償還ノ方
  法ニ依リ船舶又ハ製造中ノ船舶ヲ抵當トスル貸付
  第九造船材料又ハ船舶屬具ヲ擔保トスル貸付
  第九條ニ左ノ一項ヲ加フ
  前項ノ外主務大臣ノ認可ヲ受ケ株式ノ應募又ハ引受ヲ爲スコトヲ得
  「第四章債券」ヲ「第四章興業債劵」改改
  第十六條ノ二日本興業銀行ノ債券ノ模造ニ關シテハ通貨及證券模造取締
  法ヲ準用ス
  第二十條ニ左ノ一項ヲ加フ
  主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ支店代理店ノ設置ヲ命スルコトヲ得

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=59

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• 060・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=60

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• 061・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　勝田大藏大臣
  〔國務大臣勝田主計君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=61

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• 062・勝田主計

  ○國務大臣(勝田主計君)　唯今議題ニ上リマシタ興業銀行法中ノ改正法律案ハ、
  昨年ノ議會ニ於キマシテモ提出ヲ致シマシタノデアリマス、併ナガラ昨年ノ議會ニ提出シ
  タモノト、今囘提出致シマシタモノトハ多少ノ相違ガアルノデアリマス今囘提出致シマ
  シタ所ノ主ナル目的ハ第一ニハ興業銀行ヲシテ工業ノ發展ヲ助長セシムル爲ニ、株券ノ
  引受或ハ應募ト云フコトヲセラセタイト云フコトガ、一ツノ大趣意ニナッテ居リマス、前囘
  提出シマシタモノニハ、絕對ニ左樣ナ事ヲヤラヌト云フ案デアリマシタガ、今囘ノ案ニハ主
  務大臣ノ認可フ受ケタル場合ニ於キマシテ、之ヲ爲スコトヲ得ト云フコトニ致シマシタ、
  卽チ成ベク確實ノ上ニモ確實ヲ期スルト云フ趣旨ヲ以テ斯樣ナ規定ニ致シマシタ、第二
  ノ點ハ船舶金融ニ關係致ス所ノモノデアリマス、卽チ船舶ニ對シマシテ竝ニ船舶ノ附屬
  品ニ對シマシテ、興業銀行ヲシテ金融ノ途ヲ開カシメル、斯樣ナコトデアリマス、此點ニ
  付キマシテモ前囘提出致シマシタモノトハ、多少違ッテ居ル所ガアリマス、卽チ貸船料或
  ハ運賃ニ擔保ト致シマシテ貸付ケルト云フコトガ、前ニ提出致シマシタモノニハアリマシ
  タガ、是等ノ計算ノ點ニ於キマシテモ、甚六ケ敷イ事ガ起ッテ來マスルノデアリマス、是ハ今
  囘ハ除キマシタ次第デ御坐イマス、大體斯樣ナ事ガ今囘提出シマシタ改正案ノ趣旨デ
  御坐イマスノデ、何卒御審議ノ上ニ協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=62

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• 063・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　別ニ御質問モアリマセヌケレバ、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委
  員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
  右議案ノ審查ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=63

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• 064・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ日程第五、臺灣銀行法中改正法律案ノ特別委員ニ併セテ付
  託セラレムコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=64

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• 065・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハナイト認メマス、卽チ動議ノ如ク決
  シマシタ、有價證劵割賦販賣業法案第一讀會ノ續ヲ開キマス、理事柏原文太郞君
  有價證券割賦販賣業法案第一讀會ノ續委員長)
  〔柏原文太郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=65

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• 066・柏原文太郎

  ○柏原文太郞君　委員長ニ代リマシテ有價證劵割賦販賣業法案ノ委員會ノ經過
  及結果ヲ報告致シマス二月ノ二十五日以來數囘ノ委員會ヲ開キマシテ、政府委員
  ト質問應答ノ末御手許ニ迴ッテ居リマスル第六條ノ中ノ第六條第一號中ノ「特
  別ノ法令ニ依リ設立シタル會社ノ」ト云フコトヲ之ヲ「主務大臣ノ認可ヲ受ケタル」ニ改
  メ、其他ハ悉ク政府委員ノ說明ヲ是認致シマシテ、此法案ノ制定ハ時宣ニ適シタルモ
  ノデアルト云フノデ承認ヲ致シタノデアリマス卽チ委員會ハ多數ヲ以テ委員長ノ報告
  案ヲ是認致シマシタ、併シ之ニ付テハ多少修正ノ意見ガアリマス、ソレハ其機會ニ多分
  現ハルヽコトヽ思ヒマス、此段御報告致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=66

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• 067・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ申シマス
  「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=67

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• 068・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガナケレバ本案ハ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=68

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• 069・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直チニ本案ノ二讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=69

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• 070・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　直チニ二讀會ヲ開クニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=70

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• 071・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナイト認メマス、卽チ直チニ第二讀會ヲ聞キ議案ノ全
  部ヲ議題ニ供シマス
  有價證券割賦販賣業法案第二讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=71

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• 072・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本員ハ遺憾ナガラ委員會ノ修正ニ反對シテ、原案ノ通リ可決セラレムコ
  トヲ希望スル者デアリマス卽チ委員會ノ修正ハ單ニ本案第六條第一號中「特別ノ法
  令ニ依リ設立シタル會社ノ」トアルヲ削除致シマシテ「主務大臣ノ認可ヲ受ケタル」ト云
  フコトニ改メテ居ルニ過ギナイノデアリマス、細サニ之ヲ考覈致シテ見マスト、法ト言ヒ令ト
  言ヘバ卽チ其規矩準絕ハ確定シテ居リマス、其解釋適用上ニモ誤リナキヲ原則ト致シテ
  居リマス、ソレガ大臣ノ認可ト云フコトニナリマスト規矩準繩ニ定マリガナク、或ハ運動
  ノ巧拙ニ依リ、或ハ情實ノ如何ニ依ッテ本法ノ運用ニ誤リナキコトヲ保サナーノデアリマ
  ス、卽チ委員會ノ修正ハ其運用ノ圓滑ヲ圖ラムガ爲メニ、却テ立法部ノ權域ヲ縮少シ
  テ、行政部ノ權域ヲ擴大スル結果トナルノヲ恐ルヽノデアリマス、仍テ本員ハ立法部ニ居
  ル立場ヨリ委員諸君ノ御承認ヲ請ヒマシテ、委員會ノ修正議決ハ之ヲ否決シテ、原案
  ノ通リ可決セラレムコトヲ望ミマス、切ニ滿場諸君ノ贊成ヲ望ミマス
  (「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=72

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• 073・横山勝太郎

  ○橫山勝太郞君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=73

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• 074・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　橫山勝太郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=74

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• 075・横山勝太郎

  ○橫山勝太郞君　簡單デアリマスカラ此處デ······

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=75

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• 076・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　宜シイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=76

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• 077・横山勝太郎

  ○橫山勝太郞君　唯今岩崎君ノ御議論ガアリマシタガ、是ハ岩崎君ノ折角ノ御議論
  デアリマスケレドモ、吾〓特別委員トシテ此審議ニ參與シタル者ハ、遺憾ナガラ此動議ニ
  贊成スルコトガ出來マセヌ、其理由ヲ簡單ニ述ベマス、此修正ノ意味ハ岩崎君ノ言ハ
  ルヽヤウナ危險ナ事柄ヲ決シテ包含致シテ居ラヌ、單ニ法文ニ揚ゲラレテアル丈ヲ擔保ニ
  取ラルニ止マルト云フコトハ今日ノ經濟界ノ趨勢ニ顧ミテ餘リニ狹キニ失スルカラ、主
  務大臣ノ認可ガアル場合ハ、此第六條ニ書イテアル以外ノ擔保ニ依ッテモ資金ノ貨出ヲ
  シテ宜シイト云フノデアリマス、事柄ハ極メテ穩健デアリ、圓滿ナルモノデアルト考ヘマス、
  而シテ此事柄ニ付テハ、政友會ノ委員諸氏モ悉ク御贊成ニナリ、而シテ政府委員モ之
  ニ御同意ニナッタノデアリマス、政府委員ガ御贊成ニナリ、而シテ政友會ノ磯部君ヨリシ
  テ修正ノ動議ヲ提出セラレタノデアリマス、之ニ對シテ吾ミハ一人ノ異論ナク滿場一致
  ヲ以テ可決シタ此法律ノ結果、偏頗愛憎ニ依テ適用ガ一一三ニナルト云フ點ガアルト云
  フ薄弱ナル理由ニ依テ、折角委員會ニ於テ可決シタモノヲ本會ニ於テ翻スト云フコト
  ハ、大ニ委員會ノ權威ヲ侮蔑スルモノデアリマス、惡シテ慣例ヲ貽スモノデアルト思ヒマ
  ス、此意味ニ於テ滿場一致ヲ以テ可決致シ、殊ニ政府禾資モ同意セラレタノデアリマス
  カラ、ドウカ委員長ノ報告ノ通リニ滿場ノ御贊成ヲ仰ギタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=77

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• 078・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　先ヅ委員長報告ニ付テ贊否ヲ決シマス、委員長報告ニ贊成
  ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  起立者少數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=78

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• 079・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　少數デアリマス、否決、原案ニ付テ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=79

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• 080・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナシト認メマス、仍テ原案ノ通リニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=80

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• 081・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直ナニ本案ノ三讀會ヲ開キ、、第二讀會ニ於テ議決ノ通リ卽チ原案ノ通
  リ可決確定セラレムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=81

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• 082・大岡育造

  ○議長(大岡育造)　直チニ三讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=82

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• 083・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガナケレバ直チニ三讀會ヲ開キマス、議案全部ヲ議題
  ニ致シマス
  有價證券割賦販賣業法案第三讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=83

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• 084・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=84

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• 085・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガナケレバ卽チ二讀會ニ於テ決議シタル通リ可決確定
  シタルコトヲ宣告致シマス、日程第七、朝鮮ノ生產ニ係ル物品ノ移入稅免除ニ關スル法
  律案第一讀會ノ續ヲ開キマス、委會長小林源藏君
  朝鮮ノ生產ニ係ル物品ノ移入稅免除ニ關ス第一讀會ノ續(委員長)
  ル法律案(政府提出)報告
  〔小林源藏君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=85

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• 086・小林源藏

  ○小林源藏君　本員ハ竝ニ朝鮮ノ生產ニ係ル物品ノ移入稅免除ニ關スル法律案委
  員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、本案ハ法文極メテ簡單ナレドモ國利民福ニ
  至大ノ關係アルモノト認メマシテ、委員會ヲ開ク事前後五囘、政府委員ト質問應答ヲ
  重ネ〓究ヲ致シマシタル結果、大體ニ於テ適當ナル法案デアルト認メマシタガ、唯〓大麥
  卽チ「ゴールデンメロン」種、是ハ麥酒ノ原料トナルモノデアリマスガ、朝鮮ニ於テハ未ダ生
  產ヲシテ居ラヌノデアリマス、本年ノ六月頃ニ初メテ生產ヲスルダラウト云フ、將來ノ事
  ニ關係シテ居ルノデアリマス、且ツ內地ニ於キマシテ、此「ゴールデンメロン」種ノ生產ニ付
  テ、關東地方ノ如キ三十年來ノ苦心慘憺ヲ重ネテ、漸ク生產スルコトニナッタノデ壓迫
  ヲ受クルノモ困難ノ結果ヲ來スダラウト云フノデ、此大麥「ゴールデンメロン」種ノ一項丈ヲ
  削除シテ、他ハ全部政府案ニ贊成スルコトニ大多數ヲ以テ議決致シタノデアリマス、其
  結果ト致シマシテ、第二號以下號數ハ順次繰上ガルコトニナリマス而シテ其修正ニ付
  キマシテ政府委員ノ賛否ヲ求メマシタ所ガ、贊成トモ不贊成トモ遂ニ意見ヲ吐カレナカツ
  タノデアリマスカラ、此修正ノ通リデ宜シイト認メテ居ラレルモノト認定シテ然ルベキモノ
  ト思フノデアリマス、議場ノ形勢ニ鑑ミマシテ、簡單ニ報告スル事右ノ如シデアリマス、ドウ
  ゾ此委員會ニ於ケル修正通リ御贊成アラムコトヲ希望致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=86

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• 087・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　本案ノ二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ諮リマス
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=87

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• 088・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガナケレバ本案ノ一一讀會ラ開クコトニ決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=88

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• 089・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直ニ本案ノ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通り卽チ委
  員會ニ於テ修正議決ノ通り可決確定セラレンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=89

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• 090・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=90

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• 091・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ識案ノ全部
  ヲ議題ト致シマス
  朝鮮ノ生產ニ係ル物品ノ移入稅免除ニ關スル第二讀會(確定議)
  法律案
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=91

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• 092・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガナケレバ三讀會ヲ省略シテ、玆ニ可決確定シタルコ
  トヲ宣告致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=92

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• 093・岩崎勲

  ○岩崎勳君　時間延長ノ御宣告ヲ請ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=93

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• 094・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　時間ガ切迫致シマシタカラ、時間ヲ延長シテ本日ノ日程ヲ議
  了シタイト思ヒマス-日程第八重要物產同業組合法中改正法律案、第一讀會ノ
  續ヲ開キマス-委員長吉田中君
  第八重要物產同業組合法中改正法律案第一讀會ノ續(調節の五郞
  (土井權大君外一名提出)報告
  〔吉田中君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=94

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• 095・吉田中

  ○吉田中君　本員ハ過日本會ニ於キマシテ委員付託ニナリマシタル重要物產同業
  組合法中改正法律案ノ特別委員會ニ於ケル經過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、委員
  會ハ二月二十六日ヨリ今日ニ至ル迄、開會スル事四囘ニシテ、其間提出者竝ニ政府
  委員ニ對シテ質問應答ヲ重ネ、愼重審議ノ結果、諸君ノ御手許ニ迴シテアリマスル通
  リノ修正案ヲ滿場一致ニテ決議致シタノデアリマス、此改正ノ大要ヲ極メテ簡單ニ申
  上ゲマスレバ、現行法ハ諸君モ御承知ノ通り、組合經費又ハ過怠金ノ滯納者アル場
  合ニ、訟廷ヲ煩シテ其處分ヲ求メルノデアリマスルガ、其處分ヲ受ケマシタル所ノ組合員
  ハ之ヲ非常ニ怨ト致シマシテ、遂ニ其組合ニ對シテ敵意ヲ挾ムニ至ルノデアリマス是一
  於テカ一般組合長トナッテ居ル者ハ、組合員ノ反對ヲ虞レマシテ、其處分ヲ勢ヒ緩漫ニ
  シ、等閑ニ付スルト云フコトガ往々例ニナッテ居ルノデアリマス、斯樣ニナリマスレハ遂ニ組
  合ノ威信ト云フモノト、又其基礎トヲ危クスル譯ニナルノデアリマス、デ是ハ畢竟法律不
  備ノ結果デハナイカト思フノデアリマス、然ルニ此改正案ハ、經費又ハ過怠金ノ滯納者
  アル場合ニ於キマシテ、國稅滯納處分法ニ依テ强制徵收ヲナシ得ル規定デアリマスレバ、
  却テ裁判所ニ訴フルヨリハ簡便ニシテ、且ツ滯納者ニ對シマシテモ、不快ノ感ヲ懷カシム
  ルコトガ洵ニ少ナクナリマスルノデ至極穩當ナル處分トナルノデアリマスル、隨ッテ組合ノ
  整理上最モ緊要ナル改正デアルト思ヒマスル、就テハ此改正ハ全國ノ同業組合ガ多年
  希望シテ已マザル所デアリマスガ、政府ハ同業組合中未ダ其內容ガ完全ナラザルモノガ
  多キニ依リ、十分整理シタル上改正スルト申シテ居リマスル、斯ノ如キハ眞ニ政府トシテ
  緩漫ナル方針デアリマシテ、本邦產業界ノ爲ニ遺憾此上モナキ事ニ思ヒマスル、吾〓ハ
  政府ガ言フガ如ク、組合ノ內容ガ充實セザル一大原因ハ是亦法律ノ不備ニ起因スル
  モノト確信シテ疑ハヌノデアリマスル故ニ、政府當局モ此改正案ニ同意セラレテ、貴族院通
  過ニ努力セラレ、萬一貴族院ニ於テ否決又ハ握潰シノ運命ニ屬スル場合ニ於テハ第
  四十一議會ニ御提案アラム事ヲ切ニ希望シテ止マザル次第デアリマス(笑聲起ル)諸
  君、右樣ノ次第デアリマスカラ、滿場一致御贊成アラム事ヲ望ミマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=95

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• 096・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　本案ノ二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=96

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• 097・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ハ無イト認メマス、仍テ二讀會ヲ開ク事ニ決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=97

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• 098・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直チニ本案ノ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シテ可決確定アラム事ヲ希望
  致シマス
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=98

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• 099・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハナイト認メマス、仍テ直直第二讀會ヲ
  開キ議案全部ヲ議題ト致シマス
  重要物產同業組合法中改正法律案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=99

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• 100・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異識ガナケレバ三讀會ヲ省略シテ本案ノ可決確定シタル事
  ノ宣告ヲ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=100

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• 101・岩崎勲

  ○岩崎勳君　日程第九乃至第十二、卽チ特許法中改正法律案外二件ハ委員長ノ
  都合ニ依リ一時延期ノ動議ヲ提出致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=101

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• 102・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　延期ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=102

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• 103・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ハナイト認メマス、仍テ延期ニ決シマス-日程第十
  三、平町小名濱間鐵道建設ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス-高岡唯一郞君
  平町小名濱間鐵道建設ニ關スル建議案(高岡唯一郞
  第十三君外二名提出)
  平町小名濱間鐵道建設ニ關スル建議案
  平町小名濱間鐵道建設ニ關スル建議
  交通機關ノ聯絡ハ國防竝產業政策上ノ要務ニシテ國力ノ發展ニ伴フ必須ノ設備
  タリ殊ニ我カ邦ノ如キ環海ノ地勢ニ在リテハ港灣ト鐵道ト兩ク相俟テ始メテ運輸交
  通ノ目的ヲ達シ得ヘキヤ敢テ論ヲ俟タス
  而シテ新潟縣下新潟ヨリ福島縣下平町ニ至ル磐越線ハ大正五年十月開通シタリト
  雖平町ヨリ南小名濱港ニ達スル約六哩ノ鐵道ヲ延長シテ西日本海ト東太平洋トノ
  聯絡ヲ完成スルニ非サレハ海陸交通ノ目的ヲ達シ得タリト謂フヘカラス此ノ如ク平町
  ヨリ小名濱ニ至ル鐵道ハ兩洋連絡線トシテ極メテ必要ナル線路ト認ムルカ故ニ政府
  ハ速ニ相當ノ措置ヲ採リ之カ建設ニ著手セラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔高岡唯一郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=103

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• 104・高岡唯一郎

  ○高岡唯一郞君　本案提出ノ理由ヲ極メテ簡單ニ說明致シタイト存ジマス、諸君御
  承知ノ通リ磐越線タル所ノ越後新潟ヨリ磐城平町間百七十二哩ハ、昨年十月開通
  致シタノデアリマス、サリナガラ平町ヨリ南小名濱港ニ達スル約六哩間ハ未タ開通致サ
  ヌノデアリマス、ソレデアリマスカラ此六哩間ヲ延長シマシテ、西日本海ト東大平洋トノ
  聯絡ヲ取リ、而シテ海陸ノ聯絡ヲ完成致シテ、交通ノ便利ヲ期シタイト云フノガ、本案
  提出ノ第一ノ目的デアルノデアリマス、諸君モ御承知ノ通リ磐城地方ハ本州ニ於ケル石
  炭ノ唯一ノ產地デアリマスソレデアリマスカラ石炭ハ何レノ方面ニ消費サルヽカト言ヘバ
  東北地方一圓ハ勿論、京濱ノ各工場、南ハ愛知縣名古屋以東西ハ兩毛線ヨリ信
  越ニ及ンデ居ルノデアリマス此方面ノ工場ハ皆常磐炭ヲ燃料トシテ居ルノデアリマ
  ス然ルニ今日ノ場合ニ於キマシテハ先刻石炭ノ調節ト云フ事デ、長田君デアリマシタ
  カ長々シイ御質問ガアリマシタケレドモ、今日ノ磐城地方ノ石炭ハ今燃エツヽアルノデア
  リマス、殆ド一年ノ產額ハ約三百万噸內外デアリマスケレドモ今日ノ鐵道ノ輸送力ト
  云フモノハ、僅ニ二百二三十万噸ヲ輸送スルニ過ギナイノデアリマス所謂鐵道ノ輸送
  能力ハ常磐炭ヲ輸送スル能力ハ、採掘額ノ三分ノ二ヲ運ブニ過ギナイノデアリマ
  ス、左樣ナ狀況デアリマスカラ、今日ノ常磐炭ハ骸炭カラ粉炭ニ至ル迄山ヲ成シテ、殆
  ド今ハ燃エツヽアルノデアリマス、何モ石炭ノ調節ハ必要ガナイ貨車ヲ週シサヘスレバ此
  常磐ノ石炭ハ各工場ニ十分供給セラレルノデアリマス、斯樣ナ狀況デアリマスカラ、單一
  鐵道ノ輸送ノミヲ以テ磐城炭ヲ-常磐炭ヲ各工場ニ輸送スル事ハ困難ナ狀況テ
  アルノデアリマス、デアリマスカラ此鐵道ヲ延長致シマシン、而シテ將來ハ一面ハ汽車
  ニ據リ、一面ハ船舶ニ據テ、サウシテ我帝國ノ工業ノ發展ニ非常ニ深大ノ關係
  アル線路デアリマスカラ、何卒皆サンニ對シハ線路ノ延長ニ御贊成ヲ求メタイト思フノデ
  アリマス、殊ニ本案ハ各派ノ賛成ヲ得テ居ルモノデアリマシテ、我黨ハ勿論憲政會ヨリモ
  國民黨ヨリモ御同意ヲ得タル案デアリマス願クハ啻ニ此案ノ通過ハ一地方ノ利益ノミ
  ナラズ、我帝國ノ工業發展ノ上ニ頗ル深大ノ關係ノアル提案デアリマスガ故ニ、各員一
  致ノ御贊成ヲ望ム次第デアリマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=104

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• 105・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ九名ノ委員ニ付託セラレム事ヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=105

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• 106・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=106

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• 107・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガナケレバ本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託スル事
  ニ決シマス-ー日程第十四、沖繩縣特別自治制撤廢ニ關スル建議案ヲ議題ト致シ
  マスー-提出者兒玉好熊君
  第十四沖繩縣特別自治制撤廢ニ關スル建議案(奧田榮之進
  君外二名提出)
  沖繩縣特別自治制撤廢ニ關スル建議案
  沖繩縣特別自治制撤廢ニ關スル建議案
  沖繩縣ハ明治二十九年以來特別自治制ヲ施行セリト雖同縣ノ狀態ハ最早其ノ必
  要ヲ認メサルヲ以テ政府ハ之ヲ撤廢シ速ニ府縣制竝市町村制ヲ施行スヘシ
  右建議ス
  〔兒玉好熊君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=107

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• 108・兒玉好熊

  ○兒玉好熊君　簡單ニ本案提出ノ理由ヲ申述ベマス、詳細ナル事ハ提出者ノ一八タ
  ル新政會ノ我知古樂一郎君ヨリ更ニ御述ニナル積リデアリマス、唯今沖繩縣ニ町村制
  モ施行セラレテアルノデアリマス、又府縣制モ施行セラレテ居リマスガ、孰レモ內地ニ於テ
  施行セラレテ居ル町村制及府縣制トハ違ッテ居ルノデアリマス殊ニ此肝腎ナル點ニ於テ
  違ッタ點ガアルノデアリマス、先ヅ町村制ニ於キマシテハ明治二十九年ニ始メテ間切リ制
  度ト云フモノガ實施セラレマシテ、是ガ卽チ我內地ノ村會ニ相當スルノデアリマスガ、此
  運用ガ十數年ノ後ニ至リマシテ、卽チ明治四十一年ニ至リマシテ、現行ノ島嶼町村制ナ
  ルモノガ實施セラルヽ事ニナッテ居ルノデアリマス、是ガ內地ノ町村制ト著シク違ッテ居ル
  點ト申シマスノハ、卽チ町村會ガ最モ肝腎ナル權限トモ稱スベキ村長及助役等ノ選舉
  ト云フ事ヲ、許サレテナイノデアリマシテ、沖繩縣及島嶼町村制ニ於キマシテハ總テ村
  長ハ官選ハ云フコトニナッテ居リマス、又收入役モ官選ト云フコトニナッテ居リマス、卽チ
  名譽職ノ村長助役ハ有シナイノデアリマス。他ノ點ニ至リマシテハ著シク內地ノ町村制
  ト違フ所ハアリマセヌ又、府縣制ニ於キマシテモ最モ府縣會ノ肝腎ナル點トスル所ノ参
  事會ト云フモノガ設ケラレテ無イノデアリマス、此參事會ヲ設ケズシテ参事會ニ屬スル所
  ノ權限ハ知事ガ之ヲ行フト云フコトニナッテ居リマスノデ、往々ニシテ此縣廳ト縣會トノ
  意思ノ疏通ヲ缺クト云フコトニナルノデアリマシテ、洵ニ自治制度ノ發展ノ上カラ申シマ
  シテ、是ハ悲ムベキ事柄デアルト思フノデアリマス、既ニ沖繩縣ガ府縣制ヲ實施セラレマ
  シン、十年ノ久シキニ亙ッテ居ルノデアリマシテ、是等ノ運用ニ付キマシテハ既ニ經驗ヲ重
  ネ熟練ヲ經タモノト云フテ宜カラウト思フノデアリマス、又現在ノ沖繩縣ノ狀態ト云フモ
  ノハ、〓育其他ノ事ガ餘程進步致シマシテ、內地ニ此府縣制ガ始メテ實施サレタ明治
  二十三年ノ當時、及內地ニ町村制ガ始メテ實施サレマシタル明治二十二年ノ當時ト
  較ベテ見ルト云フト、決シテ遜色ハ無イト云フコトヲ信ズルノデアリマス、然ルニモ拘ラズ
  此變態ナル自治制度ヲ施行セシメテ置クト云フコトハ同縣ノ發展ノ上カラ申シマシテ、
  又此自治機關ヲ運用スル上カラ申シマシテモ甚ダ其當ヲ得ナイモノト考ヘルノデアリマ
  スカラ、政府ハ宣シク速ニ此特別ナル制度ヲ撤廢シテ、內地ト同樣ナル制度ヲ施スル
  コトニ同意サレムコトヲ望ム次第デアリマス、ドウプ滿場ノ諸君ノ御贊成ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=108

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• 109・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　我如古樂一郞君
  〔我如古樂一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=109

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• 110・島添樂一郎

  ○我如古樂一郞君　諸君、唯今兒玉君ヨリ本建議案ノ理由トシテ御說明ニナツタノ
  デアリマスカラ、大體ニ既ニ御了解ニナッタラウト思フノデアリマス、吾ガ沖繩縣ニ特別制
  度ヲ施カレタノハ曩キニ沖繩縣ノ生活狀態、其他知識ノ程度ガ、マダ他府縣ト足竝
  ミガ揃ハナイト云フ所ノ理由ノ下デアッタラウト思フノテ御坐イマス、仍テ本建議ヲ審議
  致シマスルニ當リマシテ、今日ノ沖繩縣ヲ風俗狀態乃至知識ノ程度ガ如何デアラウト
  云フコトノ御考ガ、必ズ諸君ニ於カレマシテモ起ルダラウト思フノデアリマスソレ等ニ付
  キマシテ簡單ニ申上ゲマシテ、諸君ノ御考慮ヲ請ヒタイト存ズル次第デアリマス偶〓沖繩
  縣ニ見エタ他ノ府縣ノ人こガ、皮相ナル觀察ヲ致シ、間違ッタ見解ノ下ニ、新聞ヤ雜誌
  ナドニ虚構ナ報告ヲ現ハシ、又其話ガ傳ハッテ、沖繩縣ノ眞相ニ付テ世人ガ疑ヲ懷クヤ
  ウニ立至ラシムルノデ、實ニ私共遺憾ト存ズル次第デアリマス、斯カル事柄ハ、昨年沖繩
  縣知事ガ東京ニ見エラレタ時分ニ、沖縄縣ノ話トシテ新聞ニ出サレタノデアリマス、ソレ
  ガ知事ノ話ト新聞記者ノ書イタノトガ大ニ相違シタノデアリマス、ソレデ昨年沖繩縣會
  ニ於キマシテハ知事ハ沖繩縣ノ眞相ニ付テドウモ誠實ニ報告ヲシテ居ナイト云フコトデ
  縣會ノ方デ知事ニ對シテ御意見ヲ求メタノデアリマス、所ガ知事ハワレハ新聞ノ記事ガ
  間違デテルルノデアル、自分トシテハサウ云云コトヲ言ッタノデナイト云フコトノ御辯解テア
  ツタノデアリマス斯樣ナ事デ往々間違ッタ記事ガ出ルノデアリマス、斯樣ナ狀態デアリマス
  カラシテ、此沖繩縣ノ少シク他府縣ト異ッタ所ヲ申上ゲテ見タイト思フノデアリマス、言
  語ニ付キマシテハ成程此本土ヲ距ル海上數百里ノ所デ、昔交通ガ甚ダ不便デ、內地ト
  稍〓異異タタガアリマスルケレドモ、是モ能ク注意シテ聽分ケテ見マスレバ言葉ニ訛リガ多
  イノデアリマス、今ハ如何ナル寒村僻地ト雖モ普通語ヲ解セザル所ハ無イノデアリマス
  風俗ノ方面デモ、舊藩廳時代ノ時ハ男ノ方ハ矢張內地ト同樣テ束髪デアッタノデアル、
  唯〓異ッタ所ハ昔簪ヲ挿シソレカラ服裝ガ少シク異ッタ所ガアリマシタ位デアリマス御維新
  後ハ斷髪厲行シ、服裝モ改マリ、今ハ全ク昔ノ風ガ無クナッテ、女子ノ服裝モ所謂唯〓
  四五十歲以上ノ老イタル女共ニ舊風ヲ見ルノミデアリマス、而シテ勞働者及農民ハ多
  クハ跣足デ働ク、殊ニ女ノ方ハ品物ヲ頭ニ載セ、日々市場ニ往來致シマシテ、日用品ノ
  賣買ヲ爲シテ居ルノデアリマス、ソレカラ夏分ニ於キマシテハ、服裝ハ沖繩特有ノ芭蕉布
  ヲ著テ居ルノデアリマシテ免ニ角服裝ハ質素デアル、斯ノ如ク一小局面ノ狀況ヲ見テ、
  始メテ見タ他府縣ノ人ニ於キマシテハ頗ル奇異ノ感ヲ起シ動モスレバ本縣民ヲ蔑視シ
  テ未開ノ民ト稱スルノデアリマス、是ハ矢張沖繩縣ノ實狀ヲマダ解セザル譯デ御坐イマス
  生活方面ニ於キマシテハ、主ナル農產物甘藷ヲ以テ地方農村民ノ主要〓物トシテ居
  リマス、時ニ米ヲ雜ヘテ〓ベルノデアリマス、此甘藷ヲ〓ベルト云ッテ、强チ沖繩縣民ノ
  生活ガ甚ダ劣等デアルト云フコトハ言ヘナイノデアリマス、自然其土地ニ適合致シマシタ
  ル生產物デ生活ヲ致シマスルト云フノハ、當然ノ事デアラウト思フノデアリマス況ンヤ其
  化學的分析ノ結果ハ米ノ成分ト大差ハナイノデアリマス、私ナドモ家ニ居ル時ハ日ニ
  一食ハ甘藷ヲ食ベテ居ルノデアリマス(「簡單」ト呼フ者アリ)免ニ角甘藷ヲ食ベルト言ッ
  テ、縣民ノ營養上ニ何等ノ妨ゲル所ハナイノデアリマス(「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)
  前申シマシタ如ク、生活、風俗ノ少シク異ッタ位デアリマスル、今ヤ〓育產業ハ進步シ大
  正五年ノ調ベニ依リマスルト、人口五十五万人、生產金額ガ三千五百餘万圓(「謹
  聽」ト呼フ者アリ)明治十三年ニ小學校ガ設置セラレサウシテ同二十年ニ於ケル就學
  兒童ハ百人中六人餘リデアッタノガ、著シク進ンデ大正四年ノ調ベニ依リマスルト、就學
  步合ガ九十六パーセント以上デアリマスル大正五六年ノ壯丁調ベニ依テ見マスレバ學
  問アル者ガ八十五パーセントニナッテ居リマスヽ中等學校ト致シマシテハ男女ノ師範學
  校中學校、高等女學校、農學校、商業學校、水產學校、男女ノ工業學校等ガアッテ
  各方面ニ亙リ人材ヲ養成シツヽアルノデアリマスアリマスルガマダ內地トノ運輸交
  通ガ不完全デ、郵便物ヤ貨物ノ停滯勝チノ爲メ、從ッテ殖產興業ガ十分發達セザルヲ
  遺憾トシテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=110

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• 111・村松恒一郎

  ○村松恆一郎君　議事ノ進行ニ就キマシテ····

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=111

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• 112・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　唯今發言中デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=112

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• 113・島添樂一郎

  ○我如古樂一郞君　唯今申上ゲマシタヤウノ事情デアリマスルカラシテ、諸君ドウゾ御
  審議下スッテ御贊成アラムコトヲ、切ニ希望致ス次第デ御坐イマスル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=113

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• 114・村松恒一郎

  ○村松恆一郞君　議事ノ進行ニ就テ一言-議長ハ先刻各員ニ御忠告ニナリマシ
  テ、會期切迫ノ場合デアルカラ、成ルベク言論ヲ節約スルヤウニト云フ事デアリマシタ、是
  ハ御尤ナ事デアルト思ヒマスヽ唯今此提出ノ理由ヲ御述ニナルノニ、一ツノ案ニ就キマシ
  テ二人トモ御許シニナッタノハドウ云フ譯デアマスカ、本員ハ不敏ニシテ此ノ如キ例ヲ知ラ
  ナイノデアリマスヽ此ノ如キ例ヲ御開キニナルト云フノハ、將來言論ノ爲ニ結構デアルカ知
  ラヌト思ヒマスガ、免ニ角議長ノ御意見ヲ

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• 115・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御答致シマス先刻一言〓シマシタノハ質問ノ性質ニ就テ、
  諸君ニ御注意ヲシタノデ、決シテ言論ノ制限ハ致サナカッタ而シテ一案ニ就テ二人ノ說
  明ヲ許シマシタ例ハ幾多アリマス殊ニ我如古君ハ沖繩縣ノ選出ノ御方デアリマス、諸
  君ハ別ニ說明ヲ要スル理·田ナルモノハ、申サズトモ御同〓ノアルコトダラウト考ヘテ居リリ
  ス
  〔拍手スル者アル〕

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• 116・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託セラレムコトヲ望ミマス

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• 117・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 118・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナシト認メマス、依テ議長指名九名ノ委員ニ本案ハ
  付託スルコトニ決シマシタ、日程第十五、鹿兒島縣大島郡島嶼町村制撤廢ニ關スル
  建議案ヲ議題ト致シマス、提出者林爲良君
  第十五鹿兒島縣大島郡島嶼町村制撤廢ニ關スル建議案(林
  爲良君外三名提出)
  鹿兒島縣大島郡島嶼町村制撤廢ニ關スル建議案
  鹿兒島縣大島郡島嶼町村制撤廢ニ關スル建議
  鹿兒島縣大島郡ハ明治四十一年島嶼町村制ヲ施行シタルモ爾來同町村ノ狀態ハ
  既ニ其ノ必要ヲ認メサルニ依リ政府ハ速ニ之ヲ撤廢シ以テ町村制ヲ施行スヘシ
  右建議ス
  〔林爲良君登壇〕
  〔拍手起ル〕

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• 119・林爲良

  ○林爲良君　諸君、本員ハ本案提出ノ理由ヲ極メテ簡單ニ述ベマシテ、諸君ノ御贊
  成ヲ得ヤウト思ヒマス、御承知ノ通リ鹿兒島縣下大島郡ハ鹿兒島港ヲ去ル二百五哩
  ノ海上ニ散在スル所ノ島嶼ノ名稱デアリマス、本郡全體ノ面積ハ七十五方里デ、人口
  ハ大正五年度ノ現在ニ於キマシテ二十一万五千十五人ト云フ數デ御坐イマス、然ルニ
  此大島郡ハ明治二十二年我帝國ノ各町村ニ町村制が實施サレマシタ際ニ當リマシテ、町
  村制ノ施行地トシテ除外サレタノデアリマス、其後明治三十七年ニ至リマシテ、島根縣
  隱岐ノ國ニハ町村制が實施ニナリマシタ、其町村制ナルモノハ幾分カ普通ノ町村制トハ違
  ヒマシテ、郡長及郡參事會ノ職權ニ屬スル事項、島司縣參事會ニ屬スル事項ハ縣知事
  之ヲ行フ事ニナッテ居リマス、而シテ彼ノ大島郡竝ニ他ノ對馬小笠原島沖繩縣等ニハ明
  治四十二年ニ至リマシテ、島嶼町村制ト云フ一種特別ナル町村制ガ實施ニナッタノデア
  リマス、其制度ノ普通町村制ト異リマシタ所ハ、先程兒玉君ヨリ申上ゲマシタ通リ、其
  町村長ガ官選ニナッテ居ルノデアリマス、而シテ又町村議員ノ選舉資格ガ一級二級ト
  云フ所ノ區別ガナイノデ御坐イマス、此官選ノ町村長ト云フモノガ、必ズシモ不適任ナ
  リト云フコトヲ極言スル者デハ御坐イマセヌケレドモ町村民ノ民意ヲ代表スル所ノ村會
  ニ依ッテ選擧サレマシタ所ノ町村長ト比較シマスレバ、其町村自治ノ進步發達ヲ期スル
  點ニ於キマシテ、其精神上ニ於テ大ナル差異ガアリマスルノミナラズ、又町村自治ノ性
  質上村政ノ圓滑ヲ期スルト云フ點ニ於テ、又大ナル差點アルヲ免レナイト信ズルノデアリ
  さく、申ス迄モナク過去十數年ニ於ケル我ガ帝國ノ國運ノ進展ト云フモノハ、實ニ著シ
  イモノデ御坐イマシテ、從ッテ此大島郡ニ於キマシテモ文物ノ進步發達ト云フモノハ
  日ニ月ニ著シク、明治二十一年ニ普通町村制ガ內地ニ實施サレマシタ時代ニ較ベマス
  レバ、天地宵壤ノ差ガアルノデアリマス、先ヅ〓育ノ方面カラ考ヘテ見マシテモ、大正五
  年度ニ於キマシテ、小學校ガ百四校、中學校農學校各一、ソレカラ其他乙種農學校
  トカ實業補習學校、或ハ實科高等女學校等、各種ノ學校ガ御坐イマスケレドモ、此
  學校トテモ總テノ希望者ヲ收容スルコトハ出來ナイノデ、多數ノ學生ハ鹿兒島ヲ初メト
  シ、東京其他ノ府縣ニ遊學シテ、中等〓育ヲ初メ或ハ各種專門學校、帝國大學等ニ
  學ヒ、或ハ既ニ學校ヲ卒業シテ、或ハ故〓ニ、或ハ他府縣ニ、或ハ海外ニ、種々ナ活動
  ヲシテ居ル狀態デ御坐イマス、又產業ノ方面カラ考ヘテ見マシテモ、各種ノ組織ガ出來
  マシテ其進步發達ヲ企圖シツヽアリマス、先ヅ農業ノ方面カラ見マスルト、町村農會ト
  カ郡農會トカ、或ハ砂糖同業組合、砂糖販賣組合等、又水產業ニ於キマシテモ水產
  組合、或ハ機業ニ於キマシテハ大島紬同業組合ト云フヤウナモノガ組織サレマシテ、總
  テ其專門事業ニ向ッテ進步發達ヲ企圖シテ居リマス、結果トシテ、大島郡ニ於ケル大
  正五年度一箇年間ノ生產高ト云フモノハ、實ニ一千九十三万餘圓ト云フ巨額ニ達シ
  テ居ル狀態デアリマス、以上〓略申述ベマシタル通リ、〓育及產業上ニ於キマシテハ、
  他ト比較シマシテ左程遜色ハナイノデ、又納稅ノ義務或ハ兵役ノ義務ヲ果ス點ニ於
  キマシテモ、何等遜色ナキニ拘ラズ、未ダ以テ町村制ヲ實施ナラヌト云フコトハ縣民一
  同ノ常ニ遺憾トスル所デアリマス、幸ニ諸君ノ御贊同ト政府當局ノ御同意ヲ得テ、此大島
  郡ニ内地同樣ノ普通町村制ヲ施行セラレ、國民ノ最モ尊重スベキ所ノ完全ナル自治
  權ガ付與セラルヽコトニナリマシタナラバ、郡民一同ハ大ニ發憤致シマシテ、益〓町村自治
  ニ向上發展ヲ期スベク努力スルコトハ本員確信シテ疑ハナイ所デアリマス、以上ハ理由
  デ御坐イマスガ故ニ、ドウカ此建議案ニ御贊成ヲ賜ハランコトヲ切ニ希望致シマス

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• 120・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ先キノ日程、卽チ沖繩縣特別自治制撤廢ニ關スル建議案特別
  委員ニ、合セテ付託セラレンコトヲ希望致シマス

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• 121・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認メマス、仍テ第十四ノ委員ニ
  併セテ付託スルコトニ決シマシタ、日程第十六ハ委員長ヨリ延期ヲ申出マシタ
  (「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 122・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　然ラバ延期致シマス、日程第十七乃至四十二ハ請願ノ特別
  報告ナルヲ以テ、例ニ依テ一括シテ議題トナシ、右委員長ノ報告ヲ求メマス
  〔拍手起ル〕
  第十七(特別報告第八十八號)飛飛越鐵道敷設速(委員長報告)
  成ノ請願
  第十八(特別報〓第八十九號)「ルベシベ」湧別線(委員長報告)
  鐵道速成ノ請願
  第十九(特別報告第九十號)若松柳津間鐵道敷(委員長報告)
  設ノ請願
  第二十(特別報告第九十一號)瀨棚輕便鐵道速(委員長報告)
  成ノ請願
  第二十一(特別報告第九十二號)岐阜富山間鐵(委員長報告)
  道ノ敷設ニ關スル請願
  第二十二(特別報告第九十三號)中央線中野八(委員長報告)
  王子間鐵道電車併用ノ請願
  第二十三(特別報告第九十四號)兀忠海稅務署(委員長報告)
  復舊ノ請願
  第二十四(特別報告第九十五號)增玉縣秩父郡(委員長報告)
  名栗村ヲ入間郡ニ編入ノ請願
  第二十五(特別報告第九十六號)埼玉縣秩父郡(委員長報告)
  吾野村ヲ入間郡ニ編入ノ請願
  第二十六(特別報告第九十七號)手取川治水費(委員長報告)
  國庫支辨ノ請願
  第二十七(特別報告第九十八號)紙函製造業二(委員長報告)
  對スル工場法適用ニ關スル請願
  第二十八(特別報告第九十九號)水難救護法中(委員長報告)
  改正ノ請願外二件
  (特別報告第百十三號)水難救護法中(委員長報告)
  第二十九改正ノ請願
  (特別報告第百號)東京第一衞戌病院(委員長報告)
  第三十移轉ノ請願
  (特別報告第百一號)上湧別村ニ登記(委員長報告)
  第三十一所設置ノ請願
  (特別報告第百二號)中込村橋場ニ區(委員長報告)
  第三十二裁判所出張所設置ノ請願
  第三十三(特別報告第百三號)名寄町ニ區裁判(委員長報告)
  所設置ノ請願
  第三十四(特別報告第百四號)醫師受驗資格認(委員長報告)
  定ニ關スル請願
  第三十五(特別報告第百六號)航空事業費國庫(委員長報告)
  補助ノ請願
  (特別報告第百七號)無盡業法中改正(委員長報君)
  第三十六ノ請願
  第三十七(特別報告第百十號)利根川架橋ノ請(委員長報告)
  願
  第三十八(特別報告第百十一號)教育費國庫支(委員長報告)
  辨ノ請願
  第三十九(特別報告第百十二號)藥草栽培補助(委員長報告)
  奬勵ノ請願
  第四十(特別報告第百十六號)豐田下村手洗(委員長報告)
  ニ三等郵便局設置ノ請顧
  第四十一(特別報告第百十七號)保田村ニ三等(委員長報告)
  郵便局設置ノ請願
  第四十二(特別報告第百十八號)川西村ニ郵便(委員長報告)
  局設置ノ請願
  〔板東勘五郞君登壇〕

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• 123・板東勘五郎

  ○板東勘五郞君　其後ニ於キマシテノ請願委員會ノ審査ノ結果トシマシテ、日程ノ
  順ニ依リマシテ例ノ通リ簡單ニ報〓ヲ致シマス、日程第十七、飛越鐵道敷設速成ノ請
  願十八「ルベシベ」湧別線鐵道速成ノ請願、十九、若松柳津間鐵道敷設ノ請願
  二十、瀨棚輕便鐵道速成ノ請願二十一岐阜富山間鐵道ノ數設ニ關スル請願、
  何レモ鐵道ノ問題デアリマシテ、地方ノ發展ト共ニ物產ノ增殖ニ從テ、運輸交通機關
  ノ必要ヲ認メタ次第デアリマス、就中此岐阜富山間ノ鐵道敷設ニ關スル請願中、此度
  岐阜ヨリ太田ト申ス所マデ工事ヲ起スコトニナリマシタ、其間ニ關町ト云フ繁盛ノ都會
  デアリマシテ、是非此關町ナルモノヲ經由シテ呉レト云フ請願ノ趣意テアリマス、尤モノ
  事デ御坐イマシテ、何レモ採擇シタ次第デアリマス、次ハ第二十二、中央線中野八王
  子間鐵道電車併用ノ請願、是ハ文字ノ通リニ中野ヨリ八王子間ノ内ノ電車ノ併用ヲ
  請願致シテ、出來マスレバ便利ナ事トシテ採擇致シマシタ第二十三、元忠海稅務署
  復舊ノ請願、從來稅務署ノ復舊ハ何レモ理由アリトシテ採擇ヲ致シマシタ、第二十四、
  埼玉秩父郡名栗村ヲ入間郡ニ編入ノ請願、第二十五、埼玉縣秩父郡吾野村ヲ入
  間郡ニ編入ノ請願、是ハ何レモ交通ノ便利ニ伴ヒマシテ、此町村ノ分合ヲナシタイト云
  フコトデ、當局ニ於キマシテモ理由アル事ト認メテ居ッテ、調査ヲ進メルト云フヤウナ答辯
  ガアリマシタガ、右ノ理由ニ據リマシテ是モ採擇致シマシタ、第二十六、手取川治水費
  國庫支辨ノ請願是ハ各地方ニモアリマス通リニ、此手取川ノ治水事業ハ最モ急ヲ要
  スルコトデアルカラ、國庫ノ支辨ヲ求メマシタコトデ、採擇致シマシタ、第二十七、紙函
  製造業ニ對スル工場法適用ニ關スル請願一寸是ハ一言致シタウ御坐イマス、紙函
  製造業ハ御承知ノ殆ド手工的ノ家內工業ニ屬シテ居ルモノデアリマス故ニ此工業法
  カラ是等ノ種類ノモノハ除外シテアルノデアリマス、然ルニ除外セラレタ單純ナル性質ノ
  モノモ一度動力機ヲ使用スル事ニナリマスト、假令一馬力デモ半馬力デモ使ヒマスト、
  直ニ工場法ノ支配ノ下ニ立タナケレバナラヌ、是等ノ性質ノ業務ニ對シマシテハ、最モ不
  便不利ナル事ヲ感ジマスガ故ニ、此ノ如キ單純ナル家族工業トモ申ス種類ノモノハ工
  業法施行ノ上ニ於テ、一ノ取除法ヲ設ケタイト云フノデ、至極尤モト思ヒマスカラ採擇
  致シマシタ、ソレカラ第二十九水難救護法中改正-間違ヒマシタ二十八、水難
  救護法中改正ノ請願、第二十九、水難救護法中改正ノ請願、是ハ同一ノモノデアリ
  マシテ水難救護法ニ於キマシテハ漂著シタ土地ニ於テ、其到著物ノ扱ハ町村役所ニ
  屬シテアルガ、種々ナル弊害ガアル、不便デアリマスカラ之ヲ警察ノ取扱ニシタイ、多年ノ
  經驗ニ依リマシタ請願デアリマスカウ、尤モトシテ採擇スルコトニナリマシタ、次ハ三十、東
  京第一衞戌病院移轉ノ請顧、是ハ御存知ノ中央ニ在ル今第一東京衞戌病院ハ、一
  面ニ皇居ニ接シ一面ニハ繁華ノ市街ニ接シテ居リマスノデ、是等ハ病院ヲ置クニハ適當
  ナラズト云フ理由デ、之ヲ適當ノ所ニ移シテ貰ヒタイ、其理由ニ依リシマテ採擇致シマシ
  タ、第三十一上湧別村ニ登記所設置ノ請願第三十二、中込村橋場ニ區裁判所
  出張所設置ノ請願、第三十三、名寄町ニ區裁判所設置ノ請願、何レモ登記事務ノ
  增加ニ伴ヒ裁判所ノ設置ノ必要ヲ感ジタ次第デ、其理由ニ依テ採擇致シマシタ、第三
  十四、醫師受驗資格認定ニ關スル請願、三十九年醫師法ノ制定セラレマシテ、試驗
  資格ガ中斷サレテ居リマス、ソレ等ノ人ニ對シテ特別法ヲ設ケラレタイト云フコトデ、同情
  致ス次第デアリマシテ採擇スルコトニ相成リマシタ、第三十五、航空事業費國庫補助ノ請
  願、是ハ一寸一言致シタウ御坐イマス、今時代ノ時勢ノ要求ニ伴ヒマシテ、民間ノ航空事業
  ヲ發達セシムル爲之ヲ奬勵スルコトハ今日ノ急務デアリマス、故ニ陸海軍ニ於キマシテ
  民間ノ航空事業ヲ歡迎シ、且奬勵スルト云フ事ヲ大ナル聲デ叫デ居ルノデアリマス、然
  ルニ一面ニ對シ何等之ニ奬勵補助ノ方法モ手續モ立ッテ居リマセヌ、誠ニ遺憾ナル次
  第デ、當局ニ對シマシテ種々折衝シテ、尙將來ニ於キマシテ此民間事業ヲ助クベキ方法
  ニ對シテ、十分ノ注意ヲ與ヘ、本請願ノ如キハ所ヲ限リ人ヲ限リ、又金額モ限ッテアリ
  マスガ、此請願ヲ採擇シマシタ趣旨ハ此ノ人竝ニ此金額ニハ限リマセズ一般民間ノ
  航空事業ヲ奬勵スベキ意味ニ於テ、此請願ヲ採擇シタ次第デアリマス、此事ハ併セテ
  申述ベ置キマス第三十六、無盡業法中改正ノ請願、此法ハ近代ニ新ニ出來マシタ
  法律デアリマシテ、從來ノ慣行トハ頗ル撞著ヲ致シテ、圓滿ナル法ノ施行ガ屆キマセヌ
  故ニ、二三ノ箇條ヲ設ケマシテ、無盡法中ノ改正ヲ請願致シテ參リマシタ譯テアリマス、
  其請顧ヲ悉ク採擇スル譯ニハ參リマセヌガ、、免モ角ニモ、此法ハ何トカ改正ヲ致サネバナ
  ラヌト云フ意味ニ於キマシテ、之ヲ採擇致シタ次第デアリマス、第三十七利根川架橋
  ノ請願、東京ヨリシテ日光ニ通ズル要所ニ當リマス利根川ノ橋ト云フモノガ、唯今御坐
  イマセヌガ故ニ、橋ヲ架ケマシテ交通ノ便宜ヲ圖ルト云フ事デ政府モ之ニ對シテ多少ノ
  望ヲ有シテ居ルラシウ御坐イマスノデ、採擇致シマシタ、第三十八、〓育費國庫支辨ノ
  請願、是ハ頗ル八釜敷キ問題ニナリマシタガ、御承知ノ行路病人ノ扱ヒ竝ニ精神病
  者ノ扱ヒガ總テ府縣ノ經濟ニ屬シマシテアリマス、一箇年全縣下デ六十万圓バカリ支
  出シテ居リマス、其中四十万圓許リガ東京府ノ負擔ニナッテ居リマス、故ニ東京ニ於テ國
  庫ノ是ガ費用ノ支辨ヲ求メタ次第デ、是モ特別委員マデ置キマシテ、當局ト折衝致シ
  マシタガ、當局ニ於キマシテモ、國庫支辨ハ出來ナイガ、國費ヨリシテ補助ヲスベキ程度
  方法ハ近キ將來ニ於テ爲サウト云フ言明ガアリマシタ、其意味ニ於マシテ、是モ採擇ヲ
  致シマシタ、第三十九、藥草栽培補助奬勵ノ請願、醫療藥品ヲ製造致シマスルニ、藥
  草ノ栽培ガ近來段々地方ニ行ハレマシテ輸出等ニモ段々增加ヲ致シテ居リマス、之ヲ
  國費ヲ以テ支辨ヲ致シマシテ、一面ニハ農業ノ副業トシ、一方ニハ國庫ノ奬動ヲスル事
  ハ至極尤モナル請願デ御坐イマシテ、其意味ニ於テ採擇ヲ致シマシタ、第四十、豐田下
  村手洗ニ三等郵便局設置ノ請願、第四十一保田村ニ三等郵便局設置ノ請願、第
  四十二、川西村ニ郵便局設置ノ請願、何レモ通信機關ノ必要ヲ感ジマシテ、此郵便局
  設置ノ請願、理由アリト認メマシテ審査ノ結果採擇スル事ニ相成リマシタ、本日ハ是テ
  終リニ致シマス
  特別報告第八十八號
  意見書
  請願文書表第四七四號
  飛越鐵道敷設速成ノ請願富山縣射水郡新湊町長宮林立作外一名呈出(紹介議員上埜安太郞君
  外一名)
  右講願ノ要旨ハ富山縣下伏木港ハ裏日本海ニ於ケル唯一ノ完備セル開港場ニシテ貨客ノ集散夥シキ
  ニ拘ラス陸上運輸機關ハ唯僅ニ私線中越鐵道ヲ有スルニ過キス是レ同港ノ利用ニ依ル地方經濟ノ發
  慶〓ストニテックル上り見て医院品二後進會議論後發現役彼得可愛
  點ドシ小杉驛又ハ富山驛ニ連絡スル飛越鐵道ヲ速成セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第八十九號
  意見書
  請願文書表第四七五號
  〓mベシベ」湧別線鐵道速成ノ請願北海道紋別郡上湧別村字生野東四線二百七十八番地平民農
  須見勝三郞外二百二十七名呈出(紹介議員東武君)
  右請顧ノ要旨ハ北見國ハ北海道ノ寶庫ニシテ氣候適順地味肥沃近時禾穀ノ產出激增シ殊ニ山海ノ利
  源豐富ニシテ其ノ產額ノ饒多ナル實ニ想像ノ外ニ在リ然ルニ海ニ良港ナク陸ニ鐵道ノ設備完カラス
  
  リ著手シ尙湧別線ヘノ連絡驛ヲ速ニ決定セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第九十號
  意見書
  請願文書表第五二二號
  若松柳津間鐵道敷設ノ請願·福島縣河沼郡坂下町長田村利貞外四十七名呈出(紹介議員八田宗
  吉君一
  右請願ノ要旨ハ福島縣下會津若松驛ヨリ越後街道ノ要衝タル坂下町ヲ經テ柳津村ニ至ル延長十七哩
  ノ沿線地方ハ會津平野ノ主要部分ニ屬シ交通機關ノ完備ヲ要望スルコト多年ナリ而シテ大正五年ニ
  至リ漸ク輕便鐵道敷設ノ企畫アリシモ未タ之カ賣施ヲ見ル能ハス爲ニ該地方ノ不便ハ固ヨリ御藏入
  地方一帶ノ產業開發上又ハ林鑛產ノ無盡藏ナル只見川沿岸及金山谷地方ノ遺利啓發上遺憾尠カラス
  依テ速ニ前記若松驛ヨリ坂下町ヲ經由シ柳津村ニ達スル鐵道ヲ敷設セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依り別
  册及御送付候也
  特別報告第九十一號
  意見書
  請願文書表第六七八號
  〓棚輕便鐵道速成ノ請願北海道瀬棚郡東瀨棚村字丹羽三番地士族農丹羽五郞外二千三百五十
  二名呈出(紹介議員吉田三郞右衞門君外四名)
  右請願ノ要旨ハ北海道後志國瀨棚太櫓奥尻久遠ノ四郡ハ同道ノ西南部ニ位シ面積九十一方里農漁林
  鑛諸産物ノ產出年額四百五十萬圓ニ垂ムトシ其ノ他ノ遺利無盡ナルニ拘ラス陸上交通ノ便ヲ缺キ剰
  ヘ海路風波高ク瀨棚港ノ設備全カラスシテ是等富源ヲ開發スルニ由ナク國家經濟上ノ遺憾是ヨリ大
  ナルハナシ而モ瀬棚地方ヨリ函博鐵道線ニ至ル間ノ工事ハ比較的容易ニシテ政府亦既ニ實測ヲ了セ
  リ依テ速ニ瀬欄村會津町ヨリ國縫線若ハ八雲線ヲ經テ函樽鐵道線ニ達スル輕便鐵道ヲ敷設セラレタ
  シト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第九十二號
  意見書
  請願文書表第二六五號
  岐阜富山間織道ノ敷設ニ關スル請願岐阜縣武儀郡關町長西尾一二外七名呈出(紹介議員匹田
  銳吉君外一名)
  右請顧ノ要旨ハ岐阜富山間飛驒縱貫鐵道ハ今ヤ其ノ一部岐阜高山間ノ工事ニ著手セムトシ之カ完成
  一二二五三十万年四号一四十八年 東三好ミル而字交法當品ノネニ
  郡關町タルヘキハ衆目ノ視ル所ナリ然ルニ最近各務ケ原ニ航空隊設置ノ結果軍事上ノ要求ヨリ該鐵
  道線路ヲ同所ニ迂廻セシムルニ至ルヘキハ已ムヲ得スト雖爲ニ前記ノ如キ重妥ナル關町ヲ閑却セラ
  ルルカ川コロックハッヘ機ニヤモヲありまり設立国国公園陸上の公
  ラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第九十三號
  意見書
  請願文書表第七〇一號
  中央線中野八王子間鐵道電車併用ノ請願東京府八王子市明神町二十六番地公吏柴田榮吉外四
  百七十二名呈出(紹介議員村野常右衞門君)
  右請願ノ要旨ハ東京市郊か西北方面ハ地勢上居住ニ適シ市民ノ轉住スルモノ逐年增加シ其ノ發展〓
  外スモクシタリテ訟ヲ縣ノ落属國ノ中議論會學會議員左右課體ヲ用
  靑梅線ニ連絡シ貨客從テ多シ又八王子ハ府下唯一ノ都會ニシテ織物ノ產地タルヲ以テ旅客ノ交通物
  資ノ運輸頻繁ナルニ拘ラス本線ノ電車併用區間ハ中野以西ニ及ハサルカ爲該地方民ノ不便尠カラス
  依テ更ニ中野八王子間ニ電車ヲ併用シ發著囘數ノ增加ト相俟テ往復時間ノ短縮ヲ計ラレタシト謂フ
  三代〇
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト講決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第九十四號
  意見書
  請願文書表第七五三號
  元忠海稅務署復舊費ノ請願廣島縣豐田郡佐江崎村長天野禮次外四十一名呈出(紹介議員望月
  圭介君)
  右請願ノ要旨ハ廣島縣下元忠海稅務署ハ明治三十九年廢止セラレタルモ其ノ舊管轄區タリシ豐田郡
  八四天然町村山上三線の日參
  達シ訥稅額ニ於テハ優ニ他ノ數郡ニ相當セリ從テ同部ノ外他ノ一市二郡ヲ管轄スル尾道稅務署ハ事
  後記カムフラフ芝文學院歡臺灣中隊陽二三澤
  ハ勿諭納稅ニ關スル町付役場ノ事務上不利不便甚大ナリトス依テ前記豐田郡ヲ管轄スル元忠海稅務
  署ヲ復舊セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第九十五號
  意見書
  請願文書表弟四六三號
  埼玉縣秩父郡名栗村ヲ入間郡ニ編入ノ請願埼玉縣秩父郡名栗村大字上名栗三十七番地平民農
  平沼順一郎外四百九十五名呈出(紹介議員谷谷義三君外一名)
  右請願ノ要旨ハ埼玉縣秩父郡名栗村ハ秩父郡ノ管內ニ在リト雖地勢及其ノ他ノ關係上入間郡ニ屬セ
  シムルヲ便益多大ナリト認ム依テ前記名栗村ヲ入間郡ニ編入セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第九十六號
  意見書
  請願文書表第四六四號
  埼玉縣秩父郡吾野村ヲ入間郡ニ編入ノ請願埼玉縣秩父郡吾野村大字高山七番地平民農岩田市
  平外六百三-七名呈出(紹介議員粕谷義三君外一名)
  右請願ノ要旨ハ埼玉縣秩父郡吾野村ハ秩父郡ノ管內ニ在リト雖地勢上其ノ他ノ關係上入間郡ニ屬セ
  シムルヲ便益多大ナリト認ム依テ前記吾野村ヲ入間郡ニ編入セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第九十七號
  意見書
  請願文書表第七二〇號
  手机引用國庫支辨ノ請願石川縣金澤市長町四番町十九番地士族石川縣會議長辯護士西永
  紹介議員中橋德五郞君外五名)
  右請願ノ要旨ハ石川縣下手取川ハ北陸著名ノ河川ニシテ源ヲ白山ニ發シ美川町ニテ日本海ニ注キ流
  路二十餘里水流急ナルノミナラス土砂ノ流出夥シキヲ以テ沿川地方ハ比年洪水ニ苦シメラルル爲之
  治不十二二二三ノ電子の書いてきて元年生かたまで的東京語ノデル
  テ地方費支辨ト爲シタルモ是レ他ノ治水軍務二多六ノ夏溜ヲ爲シ居ル臨民ノ地へ難キ所トス依テ
  冰事業ソ完成ト縣民負主ソ輕減ヨヲ期スル〓前記手取三治水費ヲ國庫支辨ト爲サレタント謂フニ在リ
  
  册及御送付候也
  特別報告第九十八號
  意見書
  請願文書表第七一四號
  紙函製造業ニ對スル工場法適用ニ關スル請願大阪府大阪市西區靱上通二丁目三十八番地大阪
  紙函製造同業組合長加茂庄太郞呈出(紹介議員金澤仁作君)
  右請願ノ要旨ハ紙函製造業ハ操業上毫モ危險ト害毒トヲ伴ハサルニ偶小動力ヲ使用スルトキハ工場
  松葉葉信の一位は盡の
  者ノ苦痛トスル所ナルノミナラス幼種ナル該業ノ發展ヲ阻害スルモノナルヲ以テ「但シ紙函製造業
  者若子王者ハテ風機種類等工上訴ノ品問ふふハモニ
  使用セサルトキ亦同シ」トノ趣旨ヲ以テ工場法第一條第一項又ハ同法施行令第一條ヲ改正シ紙函製
  造業者ニ對スル工場法適用ヲ除外セラレタシト謂フニ在リ
  東部にハラ繰りますリト〓メニュ接受ニキャラリュ該然ロックノ認
  別册及御送付候也
  特別報告第九十九號
  意見書
  請願文書表第六九一號
  水雖救護法中改正ノ請願北海道小樽區稻穗町西八丁目一番地木材業加藤忠五郞外三十一名呈
  出「紹介議員寺田省歸君外二名)
  同第七一〇號
  同上京都府京都市御幸町通松原下ル須濱町二十四番地平民材木商田中庄三郞外二十九名呈出
  (紹介議員森田茂君)
  同第七四三號
  同上靜岡縣庵原郡辻村一千六十一番地平民材木商橋本馬吉外三十名呈出(紹介議員尾崎元次
  郞君)
  右請願ノ要旨ハ海上風波又ハ河川洪水ノ爲ニ漂流セシ木材ニ付テハ明治三十二年法律第九十五號水
  風氣調査
  
  シ其ノ取扱ヲ警察署ニ移シ遭難者ヲ保護セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハラのライブラニクエロ·ハンディエンティ墜スティスティ
  册及御送付候也
  特別報告第百十三號
  意見書
  請願文論表第七七七號
  水難救護法中改正ノ請願靜岡縣志太郡島田町八百七十二番地平民商天野廉外四十三名呈出
  (紹介議員小泉策太郞君)
  右請願ノ要旨ハ海上風波又ハ河川洪水ノ爲ニ漂流セシ木材ニ付テハ明治三十二年法律第九十五號水
  雖救護法ニ依リ沿岸地方ニ於テ拾得シタル阿流木材ハ到著地ノ町村役場ニ於テ之カ取扱ヲ爲スヘキ
  規定ナルモ右ハ實際上所有者ニ不利多クシテ往往非常ノ損害ヲ蒙ルコトアリ依テ水難救護法ヲ改正
  シ其ノ取扱ヲ警察ニ移シ遭難者ヲ保護セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第百號
  意見書
  請願文書表第七〇七號
  東京第一衛戍病院}轉ノ請願東京府東京市麴町區土手三番町三十四番地平民出版業久保三友
  外三十二名呈出(紹介議員鈴木梅四郞君外三名)
  "text "〓文アイスティック·アンド·オブ·ザ·イン·アンド·オブ·ザ·イ一
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第百一號
  意見書
  請願文書表第七五二號
  上湧別何二登記〓設置ノ請願北海道紋別郡上湧別村平民農鈴木峰次外四百三十名呈出(紹介
  議員小池仁郞君)
  右請願ノ要旨ハ北海道紋別郡上湧別村ハ人口一萬五子餘民有地位二萬三千町步ヲ算シ猶未開墾地ノ
  近て税率開発フルニルモノシック」近時結婚公然
  全部ヲ管轄スル紋別登記所取扱件數ノ過半ヲ占ムル狀況ナリ且之ニ下湧別村ノ分ヲモ加ヘムカ其ノ
  
  之前不敷のニューム表題シタニ属性のは
  謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第百二號
  意見書
  請願文書表第七五八號
  中込村橋場ニ區裁判所出張所設置ノ請願長野縣南佐久郡中込村長市用忠治郞外二名呈出(紹
  介議員工藤善助君)
  右請願ノ要旨ハ長野縣南佐久郡野澤町前山村岸野村櫻井村中込村平賀村内山村ハ岩村田區裁判所曰
  出生所合體の人民間中於クル京世界ハ子ニューエムの発売元の言語
  カリリテルノルク
  地ヲ無ハスホホモ前腹ニシュ民民子和平必野タラ而テニコニコロッ
  クッケデ門許料理は長さいは特性情報を南方文次數據之證シャルド
  レタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ踵旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第百三號
  意見書
  請願文書表第七四七號
  名寄町ニ區裁判所設置ノ請願北海道上川郡名寄町字名寄太畑千七百四番地平民農業木原太三
  治外二百五十名呈出(紹介議員東武君)
  右請願ノ要旨ハ北海道上川、中川ノ兩郡ハ同道北半ノ中央郡ヲ占メ其ノ面積二百七十二方里人口七
  
  ス近テハニ可 同時事考は小三國ニ 許歐秀亦發家を加えニ無能ヲ
  管轄ニ屬スル爲地方住民ノ不和不便尠カラス而シテ紋別(上湧別下湧別二箇村ヲ除ク)枝幸ノ兩郡亦
  同シク所證肥裁判所ニ運キヲ不便ト爲スノ事情フ有シ近距離ナル一區裁判所ノ所屬タルヲ要望スル
  コト切アルテフツの鉄道の中心地ニノ警察·中央になる電ゾク電話
  裁判所ヲ設置セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第百四號
  意見書
  請願文書表第四二九號
  醫師受驗資格認定ニ關スル請願神奈川縣横濱市靑木町四十四番地平民無業金井由一外十六名
  呈出(紹介議員伊東知也君)
  右請願ノ要旨ハ明治三十九年五月改正ノ醫師法ニ依リ大正五年九月限リ醫師受驗資格ヲ失ヒタル醫
  學生ハ醫術開業前期及後期學說試驗合格者タルモ永久醫師タルノ素志ヲ達スル能ハサルニ至レリ而
  モ長年月間醫學修業ニ沒頭セル爲他ニ適業ヲ得ルニ由ナク失望困憊ヲ極メ其ノ影響ハ一身ヨリ一家
  春屬ニ及ヒ實情慘憺タルモノアリ依テ之ヲ救濟スル爲醫術開業試驗前期學說合格者ニハ新醫師試驗
  科目中第一部ノ内生理、解剖(組織學ヲ含ム)二學科ヲ省略シ後期學說合格者ニハ第四部臨床實地試
  驗ノミヲ受ケ得ル受驗資格ヲ與ヘラレタシト謂フニ在リ
  
  册及御送付候也
  特別報告第百六號
  意見書
  請願文書表第六九八號
  航空事業費國庫補助ノ請願東京府豐多廢郡澁谷町字中澁谷六百七十九番地平民私立中央飛行
  學校代表者馬結駿太郞呈出(紹介議員兒玉亮太郞君外五名)
  右邊線と云々れる際航空軍ノ後モナハハ國防止區ミュルケノシリア
  中央飛行學校ヲ設立シタルモ資力乏シク經營困難ナリ依テ該校經費ニ對シ大正七年度ヨリ九年度マ
  テ年額金十萬圓ヲ國庫ニ於テ補助シ之カ完成ヲ期セシメラレタシト謂フニ在リ
  
  册及御送付候也
  特別報告第百七號
  意見書
  請願文書表第八一一號
  無盡業法中改正ノ請願東京府東京市小石川區丸山町一番地平民無盡業協會專務理事宮下定次
  郞外四名呈出(紹介議員川原茂輔君)
  右請願ノ要旨ハ無盡業法ハ其ノ發布後ノ經驗ニ依レハ時代ノ進運ト共ニ漸ク營業化シタル現今ノ無
  盡組織ニ對シ不適當ナル點多ク實施上困難尠カラス爲ニ斯業ノ發達ヲ阻害シ當業者ノ苦痛トスル所
  大ナリ彼テ建ニ理行爲發業法 請問等列能ノ如ク改正モフタシト謂
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ
  肝船及御送付候也
  特別報告第百十號
  意見書
  請願文書表第八三三號
  利根川架橋ノ請願英、城縣猿島郡古河町長鷹見銈吾外三十七名呈出(紹介議員齋藤珪次君外七
  名)
  右請願ノ要旨ハ東京及日光陸羽間交通ノ要路タル國道ハ茨城縣新〓村中田ト埼玉縣栗橘町トノ間ニ
  於テ利根川ニ橫斷セラレ其ノ連絡ハ僅ニ民警渡船ニ依ルノミナリ之レ偶該川ヲ江戶城防禦ノ外濠タ
  ラシムル爲架橋ヲ禁シタリシ德川時代ノ遺制タルニ過キスシテ現時ニ於テハ其ノ必要ナキノミナラ
  ス之カ爲洪水强風ニ際シテハ勿論平時ニ於テモ交通運輸ヲ障碍セラルルコト甚シク軍隊輸送等ニ當
  テニ德國際空不明(通過)的。時間臺ノ曰輩サ詔は下手工重重厚川
  樂不而不今利用の爲等主意ヲ未來未必要之家
  ラレタル為爲人馬ノ通行上ノ不利不便ハ便ニ其ノ度ヲ增シ殊ニ降雨時ノ困難ニ至テハ名狀スルニ堪ヘ
  ス而シテ前記箇所ノ如キ重要ナル國道筋遮斷河流ニ架橋設備ナキハ全國稀ニ見ル所ニシテ地方住民
  (四三十年)國際空港第十一種區
  玉縣栗橋町トノ間ニ於テ利根川ニ橋梁ヲ架設セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第百十一號
  意見書
  請願文書表第五三三號
  救育費國庫支辨ノ請願東京府東京市四谷區谷町二丁目二十八番地平民會社員星野佐昭外四十
  五名呈出(紹介議員關直彥君外十五名)
  右請願ノ要旨ハ教育費(行旅病人及死亡人竝精神病者教護費)ハ法律ニ於テ其ノ取扱府縣ノ負擔ト爲
  ス旨規定セラレタル結果東京府ハ他ノ府縣ニ比シテ大ニ其ノ事情ヲ異ニスルヲ以テ爾來年年巨額ノ
  該費用ヲ支辨シ來リ極メテ偏重苛酷ナル狀態ニ在リ之ヲ以テ東京府會ハ該費用ハ國庫支辨ト爲スノ
  獨家チャッチョー電子電話人臣。吾妻三の東陽縣ニ所フス法議院
  爲シ採擇セラレタルモ尙其ノ目的ヲ達スルニ至ラス東京府カ國家的事業ニ對シ獨リ巨額ノ負擔ヲ爲
  スヘ府氏ノ苦痛ススル断ヲリ候ノ點、熱警終ヲ國際王錦ニサザクタ
  
  册及御送付候也
  特別報告第百十二號
  意見書
  請願文書表第七八〇號
  藥草栽培補助奬勵ノ請願東京府北豐島郡巢鴨町千七百八十一番地士族大日本藥草栽培獎勵會
  專務理事日下眞佐市呈出(紹介議員望月圭介君外一名)
  右請願ノ要旨ハ醫療藥品ノ大部分ハ藥用植物ヲ原料トシテ製造スルモノニシテ殊ニ歐洲戰亂ノ爲藥
  品ノ輸入杜絕シ藥草栽培ノ奬勵ヲ最繁要ナラシメタリ而モ藥草栽培ノコトタル我カ國農家ノ副業ト
  シテ最適當セルヲ以テ之カ保護奬勵宜シキヲ得ハ現在ノ輸出ハ益之ヲ增加シ輸入ハ其ノ過半ヲ減少
  シ得ヘキハ必然ナリ然ルニ政府ハ醫藥品製造業者ニ對シ補助政策ヲ執ルニ拘ラス藥草栽培ニ對シテ
  ハ毫モ顧ル所ナキハ遺憾ニ堪ヘス昨年臨時藥草調査會ノ計畫ニ係ル國立藥草園ノ設置ノ如キ巨費ヲ
  投セムヨリハ之ヲ轉用シテ藥草栽培奬勵ノ資ニ充ツルニ如カス依テ速ニ藥草栽培法ヲ制定シ「コカ」
  「キナ」等ノ如キ移植困難ナルモノモ尙ホ我カ國内ニテ之ヲ栽培發育セシメ又海外南米、南洋等ニ於テ
  多量ノ生產ヲ爲シタルモノ成ハ藥用植物ニ代用スヘキ優良種ヲ〓究發見應用スルニ至ラシメタル者
  等ヲ第一位トシ「ホツプ」等ノ如キ從來我カ國生產額ノ少ナキモノノ產出ヲ增加シ又ハ其ノ代用品ヲ
  發見應用シタル者等ヲ第二位トシ除蟲菊等ノ如キ從來多量ニ生產シ内外ニ需要多キモノヲ益發展セ
  シメタル者ヲ第三位トシ是等栽培者〓究者竝製造者ニ對シ相當ノ補助ヲ下附セラレタシト謂フニ在
  リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報〓第百十六號
  意見書
  請願文書表第二七一號
  豐田下村手洗ニ三等郵便局設置ノ請願山口縣豐浦郡豐田下村長松井修三呈出(紹介議員渡邊
  祐策君)
  右請願ノ要旨ハ山口縣豐浦郡豐田下村ハ村內ニ一市街ヲ成セル部落ヲ有シ且小月、西市間輕便鐵道
  停車場ノ所在地ニシテ該地方人民ハ總テ此ノ地ニ來集シ將來益繁盛ナラムトス從テ郵便事務多キニ
  拘ラス一里餘ヲ隔ツル西市郵便局ニ至ラサルヘカラスシテ村民ノ遺憾トスル所ナリ依テ前記豐田村
  大字手洗字下飯塚ニ三等郵便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也
  特別報告第百十七號
  意見書
  請願文書表第六九三號
  保田村ニ三等郵便局設置ノ請願和歌山縣有田郡保田村大字山田原二百十九番地會社員御前喜
  八郞外二十名呈出(紹介議員岡崎邦輔君外三名)
  若晴願多重如設置いてお部屋台科
  ノ除蟲粉製造地タリ而モ近時商工漁業ノ發達著シク爲ニ郵便事務亦甚タ繁多ニシテ箕島局ニ託スル
  特殊郵便物ノミニテモ一年九千箇以上ニ上ルノ狀況ナリ然ルニ之レ皆一里ヲ隔ツル前記箕島局或ハ
  絲我局ニ於テ處辨セサルヘカラスシテ產業ノ發達上不便甚シ依テ前記保田村ニ三等郵便局ヲ設置セ
  の議院"およりり愛するリジェスジ採用ハムモアップ株式会社大森
  朋及御送付候也
  特別報告第百十八號
  意見書
  請願書院議院議員選挙局五九號ノ讀願奈良縣磯城郡川西村長片岡傳一郡呈出(紹介議員中山梅治郞君)
  右請願ノ要旨ハ奈良縣磯城郡川西村ハ人口五千ヲ超エ商工業者頗ル多ク通信事務繁多ニシテ其ノ敏
  速ヲ要スルニ拘ラス一里餘ヲ隔テ且其ノ所在地ト行政區劃ヲ異ニスル二階堂局ニ屬シ不便尠カラサ
  ルニ依リ隣接三宅村ヲ管區トシ前記川西村ニ郵便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リ
  衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及御送付候也

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=123

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• 124・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　委員長ノ報告ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=124

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• 125・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナケレバ何レモ採擇スル事ニ決シマシタ、本日ハ是ニテ
  散會致シマス、諸君ノ御勉强ヲ多ト致シマス
  午後六時四十四分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004013242X02219180312&spkNum=125

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