1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
大正八年三月一日(土曜日)
午前十時一分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十四號 大正八年三月一日
午前十時開議
第一 男爵後藤新平君、杉田定一君、田中源太郎君、三木與吉郎君請暇の件
第二 大正八年度歳入歳出總豫算追加案(第二號)審査期限を定むるの件
第三 道路法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 大正六年法律第六號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 時局の影響に因る地方税制限擴張に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 高等諸學校創設及擴張費支辨に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 裁判所の設立に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第二讀會
第八 大正二年法律第九號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第二讀會
第九 不動産登記法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第二讀會
第十 帝國大學特別會計法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 東京帝國大學及京都帝國大學臨時政府支出金に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 大正七年法律第四號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=0
-
001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報〓ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
去月二十六日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又
可決ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正法律案
大正七年度各特別會計歲入歲出豫算追加案(特第一號)
同日本院ニ於テ採擇スヘキモノト議決シタル銚子港修築ノ請願外十一件ノ
請願ハ各意見書ヲ附シ卽日之ヲ政府ニ送付セリ
同日議決シタル決議文ハ卽日之ヲ外務大臣ニ送致セリ
同月二十七日請願委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表第六囘報告書
同月二十八日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
鐵道敷設法中改正法律案可決報告書
北海道鐵道敷設法、中改正法律案可決報告書
請願委員會特別報告第四號発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=1
-
002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、日程第一、男爵後藤新平
君杉田定一君、田中源太郞君、三木與吉郞君請暇ノ件、後藤男爵海外旅行
ニ付キ會期中、杉田君病氣ニ付キ十二日間、田中君病氣ニ付キ八日間、三木
君病氣ニ付キ八日間ノ請暇デゴザイマス、何レモ許可ヲ致シテ御異存ハゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=2
-
003・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=3
-
004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、大正八年度歲入歲出總豫算追加案第二
號、審査期限ヲ定ムルノ件.本日モ御異議ガナケレバ通牒文ノ朗讀ヲ省略イタ
シタク存ジマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
〔左ノ送付文ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
(第二號)大正八年度歲入歲出總豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正八年二月二十五日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
〔國務大臣男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=4
-
005・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 本案ハ高等諸學校ノ創設及擴張ニ關シマスル
經費デ、其大要ヲ述ベマスレバ、總費額四千四百五十餘万圓デゴザイマス、之
ヲ大正八年度以降六箇年度間ニ支出スルモノデゴザイマシテ、其大正八年度
ノ金額ハ二百九十餘万圓デゴザイマス、其計畫ノ內容ハ大體學校ノ創設擴張
及〓員養成ノ二項目ヲ骨子ト致シマシテ、尙ホ之ニ隨伴スル所ノ事務費ヲ加
ヘテ三項目ニ分レテ居リマス、然ル所右計畫ニ對シマシテ畏クモ御內帑金一
千万圓ヲ下賜相成ルベキ御沙汰ガゴザイマシタニ付キ、右御下賜金及公債又
ハ借入金ヲ以テ之ヲ支辨スルノ計畫ヲ立テタノデアリマス、御内帑金ハ毎年
二百万圓ヅヽ五箇年度ニ亙ッテ下賜セラルベキ御沙汰デアリマスカラ、大正八
年度ニ於キマシテハ九十餘万圓ニ依ル計畫ト致シタノデゴザイマス、御審議
ノ上速ニ御協賛アラムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=5
-
006・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 本員ハ政府ニ質問ガゴザイマス、此案ニモ御下賜ト申シ
マスル字ガゴザイマス、又唯今大臣ノ御說明中ニモ內帑ヨリ賜ハルト云フコ
トガゴザイマシテ、陛下ガ〓育ノコト、殊ニ此靑年ニ對シテノ厚キ御思召ノ斯
クマデアラセラレルト云フコトハ深ク感佩イタシマスルノデ、此深ク感佩イ
タシマスルト共ニ、是ガ御下賜ニ相成リマシタ經過ヲ拜聽イタシマシテ、此
感ヲ深ク致シタウ存ジマス、竝ニ此御下賜ノゴザイマシタノハ如何ナル御沙
汰書ガゴザイマシタカト云フコトヲ拜承イタシマシテ、益〓感深深ク致シタウ
存ジマスノデ、其二ツヲ承リタウ存ジマス
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=6
-
007・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 甚ダ申譯アリマセヌガ、唯今石黑男爵ヨリ御尋
ガアリマシタ御趣意ヲ、少シ遲刻ヲ致シマシテ十分ニ聽取リ兼ネマシタカラ、
勝手デゴザイマスガ、モウ一度ドウゾ御話ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=7
-
008・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 然ラバ繰返シマス、本案ノ說明ニ御下賜金ト云フ文字ガ
ゴザイマス、唯今大藏大臣ノ御說明中ニモ御下賜云々ト云フコトガゴザイマ
シタ、本員ハ陛下ガ斯クマデ〓育ノコトニ御心ヲ寄セサセタマフト云フコト、
靑年ノ上ニ付テ深キ御思召ヲ垂レサセタマフト云フコトニ付キマシテハ、深
ク感激イタシマスノデゴザイマス、此感激イタシマスルト共ニ、此御下賜金
ガ如何ナル經過デ御下賜ニ相成リマシタカト云フコトヲ承リマシテ、且又此
御下賜金ニ付キマシテ如何ナル御沙汰ガゴザイマシタカト云フコトヲ承リマ
シテ、益〓此有難キ感ジヲ深ク致シタウ存ジマスノデ、此二ツノコトヲ承リタ
イ、斯樣ニ質問イタシマシタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=8
-
009・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 能ク分リマシタデス、御答ヲ致シマス、昨年現内
閣ガ成立イタシマシテカラ、豫テ〓育振興ト云フコトモ同志ノ者ガ〓心ニ唱
へ講究ヲシテ居リマシタ結果、先ヅ第一ニ此〓育ノ方ノ振興ニ付テ計畫ヲ立
テタイト云フ考ヲ起シマシテ、ソレ〓〓調査ヲ始メタ譯デアリマス、然ルニ一
昨年以來設ケラレテアリマシタ所ノ彼ノ臨時〓育會議ニ於テ、段々御〓究ニ
ナッテ、御答申ニナッタ答申案モ澤山アリマス、彼レ此レ〓究イタシマシタ中
デ、其答申ニ基イタル計畫モ致シタシ、又他ノ計畫モ致シタイト云フコトノ考
ヲ起シマシテ、一面ニハ上ハ大學ヨリ下ハ初等〓育ニ從事シテ居リマスル〓
官ノ待遇ト云フモノヲ、改善ヲ致シタイト云フ考ヲ起シマシタ、又一面ニハ
高等〓育機關ハ今日設備ガ非常ニ遲レテ居ルト云フコトヲ考ヘマシテ、此缺
陷ヲ補ヒタイト云フコトニ付キマシテ、高等〓育機關ノ增設ト云フモノヲ計
畫スルト云フ案ヲ調査〓究シタ譯デアリマス、色ノ案ヲ調査イタシマスルニ
彼レ此レ日ヲ費シテ居リマシタガ、其事ガ圖ラズモ叡聞ニ達シマシテ、內帑
御下賜ノ御逹ヲ蒙ッタ譯デアリマス、此御內帑金ノ御達ハ總理大臣ヲ御呼出ニ
ナリマシテ、御逹ニナッタノデアリマス、玆ニ其御逹文ヲ朗讀イタシマセウデ
アリマス、昨年ノ十二月二十五日デアリマス、斯ウ云フ文章デアリマス、「高
等〓育機關擴張ノ計畫有之趣被聞食思召ヲ以テ內帑金一千万圓下賜候旨御沙
汰被爲在候」斯ウ云フ御達ガアッタノデアリマス、斯ノ如キ有難キ思召ヲ蒙リ
マシタニ付キマシテハ、當局者ニ於キマシテハ愈、此擴張案ヲ纒メマシテ、熱
心之ガ遂行ニ從事イタスコトニ相成ッタノデアリマス、此纒メマシタモノハ、
卽チ本日本院ノ會議ニ御願ヒ致シマスル第二號大正八年度追加豫算案デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=9
-
010・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 唯今文部大臣ノ御說明ヲ承リマシテ、本員ハ益〓陛下ノ大
御心ヲ有難ク感佩イタシマス次第デアリマス、政府ハ若シ此御下賜金ガゴザ
イマセヌカッタラバ、此計畫ハ如何ニナサルノデゴザイマセウ
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=10
-
011・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 御答イタシマスガ、此下賜金ガ若シナカッタトシ
タトキニハドウスルカト云フ御話デアリマスルガ、ソレハ計畫ノ途中ニ此御
沙汰ガアリマシタカラ、愈〓私共感激ヲ致シマシテ此計畫ヲ進行シタ譯デアリ
マスガ、サウ云フ事實ノ經過ニ相成ッテ來タノデアリマス、蓋シ万一ニモ此御
沙汰ガアリマセヌニ致シマシテモ、多分進行ヲ致シテ居ッタラウト思ヒマス
ガ、ソレハ唯想像ニ過ギマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=11
-
012・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 然ラバ政府ハ此御下賜金ガゴザイマセヌカッタラバ、此計
畫ノ中デ卽チ本年ハ二百九十八万六千四百三十圓トゴザイマスガ、政府ハ九
十八万六千四百三十圓デ之ヲ計畫サレルノデゴザイマセウカ、斯ノ如キ御間
ヲ致シマスノハ、本員ハ政ヲ爲ス人ガ、當然國費ヲ以テ國事ヲ營ミマスト云
フ上ニ付キマシテ、御下賜金殊ニ莫大ノ御下賜金ヲ得マスルト云フコトハ餘
程是ハ考ヘマセヌケレバ相成リマセヌコトノヤウニ考ヘマスデ、斯ノ如キ問
ヲ致シマスノデアリマスガ、若シ御下賜金ガゴザイマセヌカッタラバ、九十八
万圓デ此計畫ヲ爲サレルト云フ積リデゴザイマセウカ
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=12
-
013・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 是ハ斯ウ云フコトニナッテ居リマス、全體ノ計畫
ハ四千四百五十餘万圓ノ計畫デアリマス、其中デ本年度ニ出テ居ルモノガ二
百九十何万圓、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデアリマス、二百九十何万圓デハ
計畫ノ遂行ハ出來ナイノデアリマス、ソレカラ若シ政府ガ此計畫ヲ遂行シマ
スルトスレバ、大體四千四百五十万圓ナクッテハ、是ダケノ學校ハ出來ナイノ
デアリマス、此際ニ併セテ全體ノ計畫ヲ御說明申上ゲテ宜ケレバ、ソレヲ申
上ゲタ方ガ餘程御參考ニナルカモ知レマセヌ、サウ云フコトニ致シマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=13
-
014・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 議事ノ進行ノ爲ニ、私ハ詳シイ御說明ヲ得マセヌデモ宜
シウゴザイマス、尙ホ豫算委員會モゴザイマス、併ナガラ唯今ノ仰セヲ承リ
マスト、本年ハ二百万圓デアリマス、二百万圓ヅヽ十箇年ト云フコトデアリ
マスカラ都合二千万圓ニナリマスコトハ本員ノ粗雜ノ頭デモ勘定ガ出來マス
而シテ今日本年ノ歲出ニ當ッテ申シマスト、二百万圓ト云フモノガ下賜ニナリ
マシテ、アトガ九十何万圓デゴイザマス、若シモ當年下賜ガゴザイマセヌケレ
バ、當年ノ年度割ハ九十何万圓ト云フモノニナル譯デゴザイマセウカ、伺ヒ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=14
-
015・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) ソレハサウデアリマセヌ、御下賜金ノ有無ニ關
ラズ、此計畫ハ二百九十何万圓ノ計畫デアリマス、サウ云フ計畫ニナッテ居
リマス、御下賜金ハ內帑ヨリシテ、本年度ヨリ向ウ五箇年間ニ一千万圓御下
賜ニナルト云フ御達ガアリマシタノデアリマスガ、或ハ大正九年度ヨリ御下
賜ニナリマシテモ、十年度ヨリ御下賜ニナリマシテモ、計畫ニ變リハアリマ
セヌ、一個ノ財源ニナッテ居リマス、サウスルト本年ハ借人金若クハ公債ヲ以
テ二百九十何万圓ト云フモノヲ支出スル譯ニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=15
-
016・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 續イテ伺ヒマス、サウ致シマスト、政府ノ御計畫ハ今大
臣ノ御述ニナリマシタ額デ御計畫ニナッタ所デ、其上ニ一千万圓ト云フモノノ
御下賜金ガゴザイマシタノデ、幸ニ其御下賜金ガゴザイマシタカラ、其中デ
御差引ニナッテ云々ト云フ譯デゴザリマセヌカ
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=16
-
017・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 御下賜金ノ御話デアリマスガ、十分私ハ御尋ノ
御趣意ヲ了解イタシ兼ネマスガ、斯ウ云フニトト思ウテ御返事ヲ致シタイト
思ヒマス、計畫ハ學校ノ數ヲ減スカ何カシマセス以上ハ、金額ハ減ラナイノ
デアリマス、ソレデ四千四百五十万圓デ大體今日アル所ノ官立ノ各種專門學
校以上、大學合セテ三四十アルノデアリマス、私立ガ六十餘アルノデアリマ
ス、是デ生徒ヲ一万三千バカリ、大正六年度ノ統計ニ依リマスト云フト收
容シテ上ノ方ニ上セタ譯デアリマス、所ガ本年········大正六年、七年ノ中學ノ
卒業生ノ總數ハ二万一千有餘ト云フコトニナッテ居ル、是ガ年々增シテ行キマ
スカラ、七年先キニ於キマシテハ是ガ三万ニナルト云フ推定ヲ致シタノデア
リマス、三万ノ中少クトモ二万ハ上級ニ進ムコトニ、從來ノ實驗ニ依リマシ
テ、推定ヲ致シマシタ、二万人全部ヲ收容スル機關ヲ拵ヘルト云フノガ、本
案ノ骨子デアリマス、サウシテ二万人ノ中一万三千餘人、一万四千人バカリト
云フモノハ現在ノ官立學校六千餘········公私立デ七千有餘ト云フモノヲ收容シ
テ居リマス、殘リ六千バカリト云ノモノヲ收容スルモノヲ拵ヘナケレバナラ
ヌ、其六千ノ中現ニ昨年ノ帝國議會ニ於テ御協賛ニナリマシタル十校竝ニ本
年度ノ總豫算ニアリマス四校、此高等機關ニ依リマシテ一千有餘人ト云フモ
ノヲ收容スル計畫ニナッテ居リマス。後トノ殘リ四千有餘ト云フモノヲ此追加
豫算ニ依ッテ收容スル、斯ウ云フ計畫カラ出テ居ルノデアリマス、其計畫デ進
ムノデアリマスカラ、此計畫ヲ實行スル上ニ付キマシテハ財源ノ如何ニ拘ラ
ズ、當局ニ於テハ四千四百五十万圓ト云フモノヲ要スル、斯ウ云フ計晝ヲ立
テタ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=17
-
018・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 尙ホ伺ヒマス、本員ノ質問イタシマスノハ少々不辯デ御
分リニナラナイカト思ヒマスガ、本員ハ斯樣ニ承ルノデ、四千四百五十万圓
ノ金額ヲ要スルト云フコトハ、旣ニ閣議ニ於テ御定リニナッタ所ヘ新ニ一千万
圓御下賜ニナリマシタノデアリマスルト、當リ前ノ計畫ヨリモ其御下賜金ノ
爲ニ、其計畫ノ擴張スルトカ、良クナルトカ云フコトガナクテハナラヌト云
フ譯デアリマスガ、此四千何百何十何万圓ト云フ中ヘ恩賜ニナリマシタノデ
アリマスカ、斯ウ云フコトヲ承リタイ、ソレトモウ一ツハ、唯今ノ段々ノ御說
明ニ依ルト當然國家ガ爲スベキ事デゴザイマスノニ、之ヲ總豫算ニ御出シニ
ナランデ、追加デ御出シニナルノハドウ云フ譯デゴザイマスカ、是モ承リタ
ウゴザイマス
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=18
-
019・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 能ク分リマシタ、政府ニ於テ計畫中ニ御下賜ニ
ナッタノデアリマス、閣議デ決定シタル後ニ出タノデアリマセヌ、考案中ニ御
下賜ニナッタノデアリマス、ソレカラ今一ツハ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=19
-
020・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 ソレヲ追加デ御出シニナッタノヲ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=20
-
021・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) ソレハ斯ウ云フ譯デアリマス、實ハ現内閣ハ昨
年ノ九月二十九日ニ成立イタシマシテ、其當時ニハ既ニ前內閣ニ於テ豫算〓
算ノ編成ヲ結了シテ居ッタ譯デ、〓算ノ審査ハ終ッテ居リマセヌガ、更迭後日
ガ淺クテソレヨリ豫算審査、要求書ノ作成竝ニ印刷等ノ日ヲ勘定シテ參リマ
スト、ナカ〓〓日ガ迫ッテ動キガ取レナカッタノデ、ソコデ大體前ノ〓算ニ依
リマシテ、多少ノ取捨ヲ各省ニ加ヘマシテ、閣議ニ掛ケテ決定シタノデアリ
PV、然ル所ガ其當時ニハ此追加豫算ノ計畫ハ初メテ調査ニ著手シタ譯デ、
マダ纒リ兼ネタノデアリマス、之ヲ待ッテ居リマスト、總豫算等ノ締切ニ間ニ
合ハナイカラ、ソレデ總豫算ハ總豫算デ締切ッテ進行イタシマシテ、サウシテ
此計畫ハ後ノ追加ニイタシタ、斯ウ云フ順序ニナッテ居リマス、此計畫モ度〓
〓究イタシマシテ色〓ニ變ヘタモノデアリマスカラ、相當ノ時日ヲ要シマシ
タ、是ハ殆ド先ニ準備ガナカッタノデ、總豫算ノモノハ昨年六月以來、各省ニ於
テ相當ノ準備ヲシテ、ソレ〓〓ノ手續ヲ經テ、練ッテ出テ居ッタモノデアリマ
スカラ、大變ヤリ易ウゴザイマシタガ、追加豫算ニ致シマシタ趣意ハサウ云
フ譯デ、出來ルナラバ總豫算ニ入レタカッタノデアリマスガ、餘程纏リガ遲レ
テ、之ニ入レルコトガ出來ナカッタ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=21
-
022・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 諄ク伺ッテ相濟ミマセヌガ、唯今ノ御說明ニ依リマスト、
內閣デ此事ヲ審議イタサレマシテ、未ダ決定イタサレマセヌ中ニ、此事ヲ聞食
サレ御下賜ニナリマシタヤウニ承リマシタガ、決定イタシマセヌノニ御下賜
ヲ御受ニナルト云フノハ、何ダカ本員ノ考デハ如何ニモ輕卒ノヤウニ怪ミマ
スガ、ドンナモノデゴザイマセウカ、承ッテ見タウゴザイマス
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=22
-
023・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 是モ御尤ノ御懸念ノヤウニ思ヒマスガ、豫テ〓
育振興ノコトヲ熱心ニ私共ノ同志ハ考ヘテ居ッタノデアリマス········デ是非振
興シタイト云フ考ハ、皆ノ頭ニ存シテ居ッタノデアリマス、唯今申上ゲタノハ
閣議ニ於テ確定シテハ居ナカッタト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス、ドウカ
シテヤッテ見タイト云フ譯デ進行イタシテ居ッタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=23
-
024・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 閣議ニ於テ確定ヲ致シマセヌ中ニ御下賜金ヲ御受ニナリ
マスコトガ出來マセウカ、本員ハ甚ダ右等ノコトヲ心配イタシマス者デ、
甚本員ハ怪ミマス、閣議ノ未ダ決定イタサヌノニ御下賜金ガアッテ、ソレヲ
御受ニナッタ、若シソレガ不確定ニナッタラ、ドウナサル御積リデゴザイマ
セウカ
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=24
-
025・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) ソレハ斯ウ云フコトデアリマス、閣議ニ於テハ
計畫ヲヤラウト云フコトハ相談ヲ決シテ居ッタノデアリマス、併シ年限金額等
ニ付キマシテハ色〓〓究シタモノデアリマス、ソレデ決定イタサナイト申上
ゲタノデアリマス
〔阪本釤之助君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=25
-
026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪本彰之助君
〔男爵石黑忠悳君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=26
-
027・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪本君ニ發言ヲ許シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=27
-
028・阪本さん之助
○阪本釤之助君 私ハ此問題ニ付キマシテハ大ニ意見ヲ持ツモノデアリマス
ガ、豫算委員會其他ノ機會ニ於テ十分ニ尙ホ質問ヲ致シタイト存ジマシテ、
今日ハ差控ヘル積リデアリマシタガ、唯〓石黑男爵ノ御問答ニ付キマシテ、
大ニ疑ヲ生ジマシタ、其事ヲ問ヒタイト存ジマスガ、尙ホ石黑男爵ハ御尋ニ
ナリタイコトガアルヤウニ思ヒマス、或ハ本員ガ問ハムトスル所ニ及ブカ知
リマセヌカラ、先ヅ石黑男爵ニ願ヒマシテ、若シ其所マデノ御質問ガナカタ
トキニハ一囘本員ニモ御許ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=28
-
029・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 唯今ノ文部大臣ノ御答ニ依リマシテ、本員ハ一層疑ヲ起
シマスノデアリマス、或ハ確タル金額上ノ決定ヲセヌデアッタト言ハレマスケ
エ
レドモ、詰リ煎ズル所ガ閣議ノ未ダ確定シナイ、決ラヌ、決ラヌ中ニ御下賜
金ヲ御受ニナッタコトヲ、今明白ニ御自白ニナッテ居ル事實デアル、苟モ陛下ノ
斯ノ如キ思召ノアル御下賜金ヲバ、閣議ノ決定シナイ中ニ御受ニナルト云フ
コトハ、本員ハ益〓之ヲ怪シム、幸ニ總理大臣モ御出席ニナリマシタカラ、總
理大臣ニ承リタウゴザイマス
〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=29
-
030・原敬
○國務大臣(原敬君) 唯今御質問半バニ出席イタシマシテ、御趣意ヲ能ク了
解イタシマセヌガ、ドウゾ簡單ニ質問ノ御趣意ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=30
-
031・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 度〓デゴザイマスガ、繰返シマス、本員ガ承リマスノハ
斯樣ナ譯デゴザイマス、長タラシクテ御聽キ苦シウゴザイマセウガ、最初カ
ラ申上ゲマス唯今日程ニ上ッテ居リマス本案ニ、御下賜金ト申シマス文字ガ
ゴザイマス、又最初ニ大藏大臣ガ御陳述ニナリマシタノニモ御下賜金ノコト
ガゴザイマシタノデ、本員ハ陛下ガ〓育ノコト、學校制度ノコトニ付テ、斯
クマデ厚キ思召ガアラセラレテ、是マデ餘リ類例ノナイ多額ノ金ヲ內帑カラ
御下賜ニナッテ、學校增設等ニ思召ヲ掛ケサセラレルコトハ實ニ感激ニ堪ヘマ
セヌ、故ニ下賜ニナリマシタ經過竝ニ下賜ニナリマシタ御沙汰書ヲ拜承イタ
シマシテ、サウシテ益〓其感ヲ深ク致シタウ存ジマスノデ、此二箇條ヲ承リタ
イ、所ガ御沙汰書ノ讀上ヲ敬承イタシマシテ、益〓其感ヲ深ク致シマシタ、ソ
レカラ下賜ノ段々經過ヲ承リマスト、此事ハ必要ヲ政府デ御感ジニナッテ、闇
議デ議シテ、サウシテ決定シナイ中ニ此金ヲ御下賜ニナッタ、斯樣ナ仰セデア
ル、ソレデ本員ハ閣議デ決定イタサヌ中ニ、其事ヲ聞食サレマシテ御下賜ニ
ナルト云フコトハ、益〓私ハ深ク感嘆イタシマスガ、片一方、閣員ノ方デ閣議
デ決定セヌノニ御下賜ニナッタモノヲ御受ニナリマシテ、萬々一閣議ガ之ヲ否
決イタシタ時ニハドウナル御積リデアルカ、恩賜ト云フモノニハ私ハ頗ル重
ソ置イテ感佩イタシテ、私ハ今日ハ涙組ンデ此事ヲ質問イタシテ居ルノニ、
閣議デ決定シナイ中ニ恩賜ノモノヲ御受ニナルト云フノハ何等ノコトカト本
員ハ怪シム、故ニ本員ノ怪ミノ解ケマシテ、洵ニ此恩賜ニ感嘆イタシマスル
感激ノ心ヲ益〓厚カラシムルヤウニ、明瞭ニ總理大臣カラ御辯明ヲ願ヒタウゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=31
-
032・原敬
○國務大臣(原敬君) 承知イタシマシタ、其事ナラバ先般當議場ニ於テ、詳
シク說明ヲ致シタコトガアルノデアリマスガ、ドウ云フ當局者ヨリ御答ヲ致
もぎさだちゃ
シタカハ私ハ唯今出席イタシマシテ承リ居リマセヌ、居リマセヌガ、先般當
議場ニ於テ私ノ說明イタシタ趣意ヲ玆ニ繰返シマスレバ、御了解ヲ得ルコト
ト存ズルノデアリマス、其事ハ段々〓育機關モ從來歷代ノ當局者ノ施設ニ依
ッテ整理イタシタ、完備イタシタモノガアルノデアリマスガ、其事ハ如何セム
高等〓育機關ガ非常ニ不足デアリマス、之ガ爲ニ年々數万ノ學生ガ依リ途ガ
ナイノデアリマス、玆ニ於テドウシテモ此缺點ヲ補フ計畫ヲ立テズンバ〓育
ノ完全ヲ期スルコトガ出來ナイト考ヘタノデアリマス、而シテ他ノ一面ニ於
テハ臨時〓育會議ノ決議ニ依リマシテ、此決議ノ趣旨ヲ參酌イタシマシテ、大
學令ヲ初トシテ、諸〓育令ノ發布モ致シマシタノデアリマス、制度ガ整ヒ而シ
テ高等〓育機關ハ極メテ不足ト云フコトニナッテ居リマスカラ、ドウシテモ此
〓育機關ノ不足ヲ補ハヌケレバ完全ヲ期スルコトガ出來ナイノデアリマス、
玆ニ於テ此〓育機關ノ完成ヲ期スル爲ニ種々苦心ヲ致シタノデアリマス、固
ヨリドレダケノ學校ガナケレバナラズ、ドウ云フ設備ヲ致セバ宜イト云フコ
トハ調査ニ依ッテ分リマシタケレドモ、此財源ニ於テ甚ダ困難ヲ致シタノデ、
ト申スモノハ唯今ノ財政ヨリ更ニ大ニ財政上ノ計畫ヲ立テ直セバ格別、今日
ノ狀態ヨリ申シマスレバ、ナカ〓〓此財源ヲ得ルノニ困難ヲ致スノデ、故ニ
矢張リ歷代ノ當局者モ苦心ノ結果僅バカリノ機關ヲ漸次ニ立テルノ已ムヲ得
ザルニ在ッタノデアリマス、併シ斯ノ如キコトヲ以テ長ク計畫スルコトハ出來
マセヌカラ、是非今囘十分ナル計畫ヲ立テテ實行イタシタイ、サレバト言ッテ
其財源ニ甚ダ苦シミマス、斯ウ云フ次第デアッタノデアリマス、ソコデ學校
ハドレダケ必要トスルカ、ドウ云フ種類ノ學校ガ宜イカ、此事ハ調査ノ結果ニ
依ッテ決メラレルノデアリマス、偖ソレガ確定イタシマシテ、唯今財源ノ一段
ニ至ッテ如何トモ方法ガアリマセヌ、ソレ故ニ是ハ一時的ノ費用デアリマス、
之ヲ維持スル所ノモノハ經常費ノ普通財源ニ依リマスケレドモ、此機關ヲ擴
張スルト云フダケハ一時的ノ費用デアリマスカラ、已ムヲ得ズ公債竝ニ借入
金ニ依ッテ之ヲ塡補イタサウト云フ計畫ヲ立テタノデアリマス、斯樣ナル計畫
ヲ立テ、議會ノ開會ヲ待ッテ提出スルノ運ビニ致シタイト、政府ニ於テ考慮中、
端ナクモ是ガ上聞ニ達シテ、其費用ノ中ニ一千万圓御下賜ノ御沙汰ヲ拜シタ
ノデアリマス、如何ニモ私共恐懼感激ノ至ニ堪ヘヌノデアリマス、實際ノ〓
末ハ斯樣ナル次第デアリマス、固ヨリ何等ノ計畫モナク、全ク未熟ノ間ニ御
下賜金ガアッタト云フ次第デハアリマセヌ、此計畫ヲ立テ、財源ニ窮シ、其財
源ハ公債借入金ニ依ル外ナイト政府ハ決定イタシタノデアリマス、然ル所有
難クモ思召ニ依ッテ一千万圓ヲ下賜サレタ、ソレニ依ッテ以テ全國年々數万ノ
子弟ハ此恩惠ニ浴スルコトト思ヒマシテ、旁、深ク感激ニ堪ヘヌ次第デアリマ
ス、〓末ハ左樣ナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=32
-
033・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 今ノ總理大臣ノ御說明ニ依リマシテ了解イタシマスト、
斯樣ナコトデゴザイマスヤウデ、閣議ガ決定セヌノニ下賜ヲ御受ニナッタト云
フノデナク、閣議ガ決定シタ上ニ下賜ヲ御受ニナリマシタト云フコトデアリ
マスガ、是ハ文部大臣ノ申サレマスヨリ總理大臣ノ申サレマシタ方ヲ信ジマ
スト、斯樣ナ次第デゴザイマスガ、然ラバ此恩賜ナルモノハ閣議ノ決定後デ
ゴザイマスト、例ヘバ閣議ノ決定ハ例へテ申シマスレバ、學校十ト申シマス
モノヲ恩賜ノ爲ニ二校ヲ增シタトカ、何トカ閣議ノ決定ノ上ニ恩賜ノ金額ノ
爲ニ餘計ニ惠澤ヲ蒙ッテ居ルモノト存ジマスガ、ソレハ此案ノ上デ申シマス
ルト、何レノ所デゴザイマスカ
〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=33
-
034・原敬
○國務大臣(原敬君) 閣議ノ決定ナルモノハ御承知ノ通リ內閣ノ内輪ノ相談
デアリマスカラ、立法府ノ決議ノヤウナモノデハ無論アリマセヌガ、私ハ是
ハ說明スルマデモナイノデ、併ナガラ其決定ガ恩賜ガアッタニ依ッテ或ル一二
ノ學校ヲ增設イタシタイト云フ次第デハアリマセヌ、全部ノ計畫ヲ立テマシ
テ·········全部ノ擴張ノ計畫ニ對シテ恩賜金ガアッタト云フ次第デアリマス、故ニ
四千四百万圓ヲ要スル中ニ、恩賜ニ依ッテ三千四百万圓ハ公債借入金ニ依ッテ
此費用ヲ充タスコトガ出來ルノデアリマス、此四千四百万圓ノ金ハドウ云フ
割出シカト申セバ、旣ニ說明モ致シタデアリマセウガ、三十何校增設擴張ヲ
致スコトガ必要デアッタノデアリマス、ソレ等ニ對シマシテ恩賜ヲ拜シタト云
フコトデアリマス恩賜金ガアッタニ依ッテ或ル一二ノ學校ヲ增設イタシタ次
第デハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=34
-
035・江木翼
○江本翼君 私ハ政府ニ對シ一二ノ質問ヲ致サウト思ヒマス、第一ニ伺ヒタ
イノハ先程文部大臣ノ御說明ニ依リマシテモ、將又唯今ノ總理大臣ノ說明セ
ラルヽ所ニ依リマシテモ、高等〓育機關ノ增設ヲ聞召サレテ御下賜ガアッタノ
ハ如何ニモ恐懼ニ堪ヘヌ次第デアリマスガ、此御下賜金ニ付テ、是ハ憲法上如
何ナル效果ガアッタカト云フコトヲ申シマスト、明ニ豫算ノ上ニ御下賜金ト云
フモノヲ組入レラルヽト云フ當然國務ニ關スル所ノ結果ヲ來タシテ居ルノデ
アリマス、果シテ斯ノ如ク考ヘマシタナラバ、此有難キ思召ト云フコトガ國
務ニ關スル陛下ノ御行動デアルト、斯ウ論結シナケレバナラヌコトト思フノ
デアリマスガ、此御沙汰ニ對シテハ國務大臣ハ御責任ヲ御負ヒニナル、斯ウ
云フコトニ心得テ宜イノデゴザイマセウカ、如何デゴザイマセウ、卽チ國務
大臣ノ輔弼ニ依ッテ此行爲ガアラセラレタト斯ウ承知シテ宜シイノデゴザイ
マセウカト云フコトガ第一點デゴザイマス、ソレカラ第二點ハ本計畫ノ、卽チ
大正八年度ヨリ大正十三年度ニ亙リマスル所ノ、此全計晝ト云フモノハ不可
分ノモノデアルヤ否ヤ、若シ不可分ノモノデアルトスルナラバ、其理由如何
ト云フ點ヲ承リタイノデアリマス、抑〓此繼續費ノ制度ト云フモノハ甚ダ認
メタル國ガ少イノデアリマス、殆ド例外的ニ認メラレテ居ルヤウデアリマス
ガ、我國ニ於キマシテモ憲法六十八條ニハ明ニ其例外的ノ方法デアルト云フ
コトヲ示シテ居ルノデアル、特別ノ須要ニ因ヲテ初メテ繼續費トシテ設定シ
得ルモノデアルト定メテ居ルノデアル從ヒマシテ特別ノ理由ト云フモノガ
ナイ限ハ、繼續費ト云フモノハ甚シク擴張スベキモノデナイ、斯ウ本員ハ信
ズルノデアリマスルガ、本計畫ヲ見マスルト大正八年度ニ著手ニナッテ、而シ
テ九年、十年ニ終了スルモノニ付キマシテハ、繼續費トシテ要求セラルヽト
云フコトハ、或ハ已ムヲ得ヌコトデアルカモ知レナイ、併ナガラ九年度ニ著
手セラルヽモノガ數校アリ、十年度ニ著手セラルヽモノガ數校アリ、十一年
度ニ著手セラレテ十三年度ニ終了スル所ノモノガ又數校アル、而シテ是等ノ
著手セラルヽ所ノ數校ノ關係ト云フモノハ果シテ不可分デアルカドウカ、福
島ニ商業學校ノ創設セラルヽト云フコトト、埼玉縣ニ高等學校ヲ創設セラル
ルト云フコトト何ノ關係ガアルカ、何ガ故ニ是ガ分割スルコトノ出來ナイ、
一ノ計畫デアッテ若シ分割ノ出來ルモノデアルナラバ本年ハ八年以降三年間
ノ繼續費ヲ出ス、來年ハ又九年度以降ノモノヲ出ス、順次其年ニ出ス所ノモ
ノニ付テ要求セラレテ然ルベキモノト思ヒマスガ、此全計畫ガ絕對不可分ノ
モノデアルヤ否ヤ、若シ不可分ノモノデアルトスルナラバ其理由如何、此二
點ヲ伺ヒタイ
〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=35
-
036・原敬
○國務大臣(原敬君) 唯〓江木君ノ御質問デゴザイマスルガ、恩賜金ニ付テ
是ガ全ク思召ニ出デタルコトニ致セ、內閣ヨリ上奏イタシタルコトニセヨ、
切ノ責任ハ內閣ニ於テ負フノデアリマス、而シテ此度ノ御下賜金ハ全ク思
召ヨリ出デタルモノデアリマスルガ、併ナガラ之ニ對スル輔弼ノ責任ニ於テ
ハ御議論ノアリマシタ(聽取シ難シ)又繼續費ノコトデアリマスルガ、全部ノ
計畫ヲ立テマシタ時ニハ、斯樣ナル例ヲ以テ、手續ニ依ッテ協賛ヲ求ムルノデ
アリマス、是ハ數多ノ前例モアルコトデ、繼續費ハドノ繼續費ニ致シマシテ
モ一二切ッテ切ラレヌコトハアリマスマイケレドモ、計畫ヲ全部立テマシタト
キハ之ニ對スル繼續費ヲ求メルト云フコトハ當然ノコトデアリマス、故ニ是
ダケノ學校ヲ必要ト致シ、其金額ノ必要ト云フコトヲ認メマシタ以上ニハ、
數年ニ亙ル所ノ繼續費ヲ提出イタシマシテ其御協贊ヲ得テ、其年度每ニ實行
ヲ致スノデアル、無論其年度年度ニ當リマシテ御承知ノ如ク、豫算ニハ其年
〓ノ豫算ニ計上イタシテ御協賛ヲ得ルノデアリマス、故ニ斯樣ナ計畫ヲ立テ
マシタ時ニハ總額ニ於テ繼續ヲ求ムルハ前例竝ニ法律規則ノ關係ニ於テ更ニ
差支ナイコトト存ジマスルノテゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=36
-
037・山脇玄
○山脇玄君 私ハ當局ニ種々伺ヒタイノデアリマス、唯今御說明ヲ伺ヒマス
ルト、多大ノ金額ヲ以テ高等〓育ノ擴張ヲ御計リニナルト云フコトハ、國家
社會ノ爲ニ誠ニ喜バシイノデゴザイマスル、併ナガラ此中ニハ女子高等〓育
ノ新設或ハ昇格ナド云フコトハ更ニナイヤウニ見エマスルシ、又御說明ノ中
ニモ一向ナイヤウデアリマス、申スマデモアリマセヌ、今日ノ社會ハ男子バ
カリノ社會デハアリマセヌ、男子ト女子ト相竢ッテ協力ヲシテ、國富ノ增進ヲ
計リ、社會ノ進步ヲ計リ、國力ノ充實ヲ計ッテ行カナケレバナラヌ世ノ中デア
リマス、我國ニ於キマシテ第一ノ工業デアル所ノ纖維工業ニナリマスルト云
フト、女子ノ力ハ八割、紡績ニナリマスルト云フト英國デサヘ四割ニ止ッテ
居リマスルモノガ、我國デハ九割ト云フ數ニ上ッテ居ルノデゴザイマス、女子
ノ力ノ偉大ナルコトハ此一例ヲ以チマシテモ證スルニ足ルト考ヘマスル、併
シ是ハ唯殖產ノ一方面ニ止リマスルガ、他方ニハ家庭ニ於テ子女ヲ〓養スル
二 殊ニ人格養成ト云フ大任ニ當ッテ居リマスル、社會ニ出マシテハ〓育事
業、電信、電話、銀行其他百般ノ事業ニ貢獻シテ居ルデハアリマセヌカ、世
人ハ何時デモ萬事ノ基礎ハ〓育ニ在ルト云フコトヲ唱ヘテ居リマスノニ、文
部當局ハ何故ニ女子ノ高等〓育ノ爲ニ御計畫ニナラヌノデアリマセウカ、私
共カラ見マスルト、女子ノ〓育ヲ御忘ニナッタノデハナイカト疑ハレル次第デ
アリマス、ドウ云フ御趣意デアルカ其點ヲ伺ヒタイ、今一ツハ仄ニ聞ク所ニ
依リマスト、京都帝國大學ノ文科ニ女子ノ入學志願者ガアリマシテ、總長ガ
之ヲ〓授會ニ付シタ所ガ、〓授會ハ卽決スルコトガ出來ズ今尙ホ考慮中デア
ルト云フコトヲ聞キマス、如何デアリマセウ、既ニ東北大學デハ三名ノ理學
士ヲ出シテ居ルデハアリマセヌカ、札幌ノ農學校ニハ一名ノ〓究者ガ居ル、帝
國大學デハ公開講演ヲ開ク度每ニ多數ノ女子ガ聽講生トナッテ好成績ヲ擧ゲ
テ居ル實例モアルデハアリマセヌカ、然ルニ何ヲ苦シンデ京都ノ帝國大學ハ
文科ノ入學志願ヲ許サナイカ、甚ダ奇異ノ感ヲ懷クノデアリマス、文部當局
ハ是等ニ對シテ如何ノ考ヲ御持ニナッテ居ルノデアリマセウカ、其二點ヲ伺ヒ
タイノデアリマス
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=37
-
038・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 女子〓育ノコトハ山脇サンモ御承知ノ通リ近來
大變發達シテ來マシテ、就中近年ノ發達ガ餘程著シイヤウニ思ヒマス、既
高等女學校實踐女學校ノ如キモノハ二百何十ト云フ男子ノ中學校ニ、其中ニ
男子ニ追付ク位ノ盛況デ非常ニ喜ンデ居リマス、ソレカラ此女子〓育ヲ尙ホ
高クスルカドウカト云フコトニ付キマシテハ、臨時〓育會議ノ答申ガアリマ
シタガ、段々高クシヤウト云フ方針ニハナッテ居リマスガ、差當リソンナラ大
學ヲ拵ヘルカドウカト云フマデニ至ッテ居リマセヌ、今ノ高等女學校ニ〓究科
ヲ拵ヘル專修科ヲ拵ヘルト云フ方針ニナッテ居リマシテ、時節ト共ニ進行スル
ト云フ方ノ主義ニナッテ居リマスカラ、先ヅサウ云フ程度ガドウダラウカト當
局ハ今考ヘテ居リマス、ドウカシテ次第ニ向上スルコトヲ希望シテ居ル譯デ
アリマス、今囘ノ計畫ニ男子ダケニシテ女子ガ這入ッテ居ナイノハドウカト云
フコトハ、御尤ノ御不審デゴザイマスガ、今囘ノハ單ニ此收容力ノ足ラナイ
無理ノ出來テ居ル部分ニ向ッテノ缺陷ヲ矯正シタイ、マア言葉ヲ換へテ申シマ
スト、競爭試驗ヲ成ルタケ避ケサシテ志望スル所ニ向ッテ靑年ヲシテ其志ヲ逹
シサセタイト云フ方ヲ主眼ト致シマシタノデ、志望者ノ割合ニ少イ卽チ百人
ノ中四十カ五十カ七十カ取レルヤウナノハ餘リ手ヲ著ケマセヌデシタ、非常
ニ志望者ノ志願ニ對シテ收容力ノナイ部分ニ對シテ計畫ヲスル、是ダケニ止
メタ譯デアリマス、サウ致シマスルト云フト、詰ル所今日ノ中學校、男子ノ
中學校ノ卒業生ガヨリ以上高等〓育ヲ受ケヤウト云フ部分ニ向ッテハ極メテ
少イノデ私立ニシテモ殆ド半分位マデ行キマス、官立ニシテモ百分ノ二十ト
云フヤウナコトデアリマスカラ、女子ノ方ハ非常ニ比例ガ宜シイ、ソレデ先
ヅ男子ノ計畫ダケヲ此度ハ致シタヤウナ譯デアリマス、ソレカラ京都大學ニ
女子ノ入學志願者ガアッタト云フコトハ、先日私モ、マダ表向ニ何ハ來マセヌ
ガ、新聞デ見マシタ、向ウデ相談シテ居ルサウデス、マダ本省ヘハ其模樣ヲ
知ラセテ參リマセヌ、併シ御話ノ通リニ東北大學ハ、先年以來旣ニ數名ノ女子
入學者ガアリマシテ、現ニ卒業シタ者モアッテ大變成績ガ好イト云フコトデ、
外ニモボツボツ入レテ居リマスカラ、多分京都デモ入レルコトニスルダラウ
ト思ヒマス、入レナイト云フコトニナリマスレバ、此方カラ相談シナケレバ
ナラヌト思ヒマスガ、マダ報告ヲ得マセヌ、多分入レルコトニナルダラウト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=38
-
039・山脇玄
○山脇玄君 モウ一ツ伺ッテ置キタイ、今日ノ所ハ男子ノ希望者ヲ入レルダケ
ノ缺陷ヲ補フノデアルト云フ御趣意ハ分リマシタ、サウシマスト今玆ニ女子
ガ中學程度ノ學力ヲ有ッテ高等學校ニ這入リタイト云フ志願ヲ致シマスルト
云フト、矢張リ男子同樣ニ試驗ノ手續サヘ經レバ許スト云フ今日ノ當局大臣
ノ御考デアリマスカ、ソレト同ジコトニ大學ヘ入學志願者ガアレバ、資格サ
ヘアレバ許スト云フ當局大臣ノ思召デアルカ、其點ヲ伺ッテ置キマス
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=39
-
040・中橋徳五郎
○國務大臣、中橋德五郞君) 既ニ一番高イ大學ニ向ッテノ志望者ヲ許シテソ
レノ卒業者モ出タ位デアリマス、高等ノ各種ノ專門學校ニ向ッテサウ云フ場合
ガアリマシタ時ニハ、多分サウシナクチヤナラヌト思ヒマスガ、今日マデ其
場合ガ起リマセヌ、尙ホ御趣意ノコトハ能ク分リマシタカラ我〓ノ方デモ詮
議ヲシテ準備ヲ致スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=40
-
041・山脇玄
○山脇玄君 餘リ諄イヤウデゴザイマスガモウ一ツ、希望ニナルカ知レマセ
ヌガ、唯今文部大臣ノ仰セノコトハ能ク分リマシタ、併ナガラデス、ドウカ
御詮議ニナリマシテ、愈、志願者ガアレバ許スト云フコトニナリマシタラ世上
ニ御公表、公ニ御發表ニナルコトヲ希望シタイ、ト云フノハ唯今ノ所デモ折
角自習ヲ致シマシテ試驗準備ヲシテモ、或ハ許可ニナラヌカモ知レナイト云
フ危險ガアルモノデアリマスカラ、甚ダ女子〓育ノ進步ヲ妨ゲテ居ルノデア
リマス、ドウカ當局大臣モ許スベキデアルト云フ御考ノヤウデゴザイマスカ
ラ、其御詮議ガアリマシタナラバ、願ハクバ多少ニ拘ラズ御公表、卽チ公ニ
御發表ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=41
-
042・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 本員ハ此案ニ付キマシテハマダ全ク了解ヲ致シマセヌデ
ゴザイマスルガ、議事ノ進行ノ爲ニ差控ヘマシテ委員會ニ於テ承ハリタイト
存ジマス、打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=42
-
043・阪本さん之助
○阪本彰之助君 石黑男爵ハ一時御打切ニナッタト云フコトデアリマスガ、私
ハ補足的ニ一言ダケ伺ヒタイト思フノデアリマス、文相ノ御答ト首相ノ御答
トハ、少シ閣議ノ模樣ガ相違イタシテ居ルヤウデアリマスガ、暫ク首相ノ御
答辯ヲ確實ナルモノト見マシテ、首相ノ御答辯ニ依リマスト、既ニ計畫ヲ立
テテ議會ニ提出スベク考慮シテ居ッタガ、何分財源ガ困難デ種々苦慮ヲ致シテ
居ル中ニ、御下賜金ノ御沙汰ガアッテ拜受シタト云フヤウニ承知イタシマス、
シマスルト既ニ閣議ニ於テ此案ヲ議會ニ提出スベキ考ハ決ッテ居ッタモノト見
テ宜シイト思フノデス、財源ガ困難ナノニ苦シンデ居ッタト仰ッシヤイマスケ
レドモ、是モ既ニ閣議ガ議會ニ提出スベク決定セラレタトスレバ、先以テ公
債若クハ借入金ヲ以テ四千五百何十万圓支出スルモノト御覺悟ニナッテ居ッタ
ラウト想像スルノデアリマスガ、折角一千万圓ノ御下賜ガアッタモノトスレ
バ、御下賜金ノコトデアリマスカラ、常識ヲ以テ考ヘレバ國家ノ負擔スベ
キ四千五百万圓ハ豫テ覺悟シタ公債、借入金ニ依ッテ支辨シテ、此一千万圓ハ
實ニ有難キ思召デアルカラ、何カ永久ニ聖慮ヲ子孫ノ後マデ傳ヘ得ル所ノ、
高等〓育機關ノ擴張費タル範圍ヲ脫スルコトハ出來マセヌケレドモ、其範圍
ニ於テセネバナラヌコトハ澤山アルノデアリマス、現ニ先日豫算委員會ニ於
テ、文部大臣ニ向ッテ本員ガ、何故七年制ノ高等學校ヲ御立テニナラヌカト云
フコトヲ御尋イタシマシタ時ニ、經費ガ掛カルカラ先以テ三年制ノモノニシ
テタノデアルト云フコトデアル、是等モ總テ此一千万圓ヲ御用ヒニナリマス
レバ、七年制ノ高等學校ヲ造ルコトモ出來ルシ、或ハ大學ノ各學部ノ設備ノ
不十分ノモノモアリマスカラ、ソレニ向ッテ用ヒテ、恩賜ノ金ニ依ッテ是ガ設
備ヲ擴充スルト云フコトニシタナラバ、如何樣ニモ此一千万圓ノ金ハ、永ク
聖意ヲ感體スルコトガ出來ル事業ニ使フコトガ出來ルノデアリマスルニ拘ラ
ズ、幸ニ一千万圓御下賜ニナッタカラ之ヲ四千万圓ノ內ニ加ヘテ、恰モ民間ノ
人カ寄附デモ致シタカノ如クニ、政府ノ負擔スベキ支出ノ內ニ、何トナシニ
收入シテ仕舞フト云フコトハ、ドウモ遺憾ノコトト考ヘマスガ、內閣ハ之ヲ
洵ニ相當ナコトデアル、他ノ事ニ使フモノデナイト云フ御意見デアッタノデア
リマセウカ、此間ノ消息ヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス
〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=43
-
044・原敬
○國務大臣(原敬君) 阪本君ニ御答ヲ致シマスガ、實ハ先般阪本君ノ御質問
ニ依ッテ、御質問以外ニモ渉ッテ詳シク〓未ヲ御答辯イタシタノデアリマスル
ガ、詳細ナルコトハ速記ニモ載ッテ居リマシタカラ、十分御了解ト思フノデア
リマスルガ、唯〓ノ御問モ實ハ其內ニ含蓄シテ居ッタノデアリマス、併シ重ネ
テ申スコトハ更ニ差支ゴザイマセスガ、計畫ヲ立テマシテ之ニ要スル所ノ財
源ハ、今日ノ財政上如何トモ致方ガナイノデアリマスルカラシテ、公債、借
入金ニ依ッテ支辨ト致シテアッタ、偖此公債、借入金ト申シマシタ所ガ數多ノ
公債、借入金モアリマス、ナカ〓〓是ハ容易ナコトトハ存ジマセヌ、併ナガ
ラ臨時ノ費用デアリマスルカラ、其學校ガ出來タ以上ニ維持スル經常費ハ別
ト致シマシテ、之ヲ創設スル擴張スルト云フ費用ダケハ、臨時ノ費用デアリ
マスルカラ、公債借入金モ數多アリマスルケレドモ、已ムヲ得ズ公債借入金
ニ依ッテ支辨シヤウト云フ計畫ヲ立テタノデアリマス、此計畫ヲ立テ豫算等ヲ
編成イタシマシテ、其手順ニ運ビツヽアッタノデアリマス、然ルニ此事上聞ニ
達シテ御下賜金ガアリマシタカラ、ソレダケノ分ハ國家ガ負擔セズニ濟ムノ
デアリマス、而シテ其御沙汰ノコトハ昨年末ニ豫算内示會ノ丁度其少々前ニ
御沙汰ヲ拜シマシタカラ、免ニ角左樣ナ御內沙汰ヲ承ッタト云フコトヲ、豫算
內示會ニ於テ取敢ズ公表イタシタト云フヤウナ次第デアリマス、ソレカラ漸
次手續等ヲ經マシテ、今囘議會ニ提出スルコトニ相成ッタノデアリマス、而シ
テ其御下賜金ナルモノハ、尋常一樣ノ寄附ナドトハ政府ハ毛頭心得テ居リマ
セヌ、恰モ何カ寄附金ヲ募集シテ、之ニ依ッテ金ヲ得タヤウニ見テ居リハシナ
イカト云フ御質問デアリマスレバ、決シテ左樣ナ考デハナイ、併シ一面ニ於
テハ學生ノ年々入學スル途ハナイ、公私ノ學校ヲ通ジマシテ四五万ノ學生ガ
方向ニ迷フノデアリマスカラ、之ヲ救濟スルニハドウシテモ高等機關ヲ擴張
シナケレバナラヌ、之ヲ擴張スルニハ財源ガ無イカラ公債、借入金ニ依ラナ
ケレバナラヌ、斯構ナ狀態ニ在ッタ所ガ、難有キ思召ニ依ッテ一千万圓ノ御下賜
ヲ拜シマシタカラ、是ダケハ確ニ國民ノ負擔ヲ減ジ、而シテ此學校ノ擴張ガ
易々ト出來ルノデアリマス、此恩惠ニ浴スル者ハ矢張リ一般國民デアリマス、
高等ノ〓育ヲ受クル者ハ或ル種類ノ人ニ限ッテ居ルガ如ク論ズル人モアリマ
スガ、決シテ左樣デハアリマセヌ、初等〓育ノ義務〓育ニソ國民ガ是非ヤラ
ヌケレバナラヌガ、其以上ハ是非ヤラナケレバナラヌト云フ譯ノモノデハア
リマセヌケレドモ、併ナガラ國家ノ〓育ハ古同等〓育ガ進步イタサナケレバ發
達シナイト存ジマス、而シテ此高等〓育ニ這入ルモノハ、國民ノ如何ナル部
分ニ於テモ皆這入リ得ルノデアリマス、又如何ナル部分ノ人モ今日ハ高等ノ
學校ニ這入ルコトヲ希望シテ、高等〓育ヲ受ケルコトガ出來ズシテ困難ヲシ
テ居ル、是ガ今囘ノ計畫ニ依リ有難キ思召ニ依ッテ、是ガ安ラカニ此計〓ガ出
來ルト云フコトハ、國民全般此恩惠ニ浴シテ、感泣ノ外ナカラウト存ジテ居
ルノデ、決シテ政府ハ其下賜金ガアッタノヲ、一般寄附ナドノヤウニ心得マシ
テ、ソレダケハ樂ニナルカラト云ッテ、輕卒ニ取扱フナドト云フヤウナ考ハ政
府ニハ毛頭ゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=44
-
045・淺田徳則
○淺田德則君 此日程第二ノ大正八年度歲入歳出總豫算追加案ノ審査期限、
是ハ期限ヲ定メマセズシテ、審査結了次第ニ報告ヲスルト云フコトニセラレ
ムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=45
-
046・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 贊成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=46
-
047・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 淺田君ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=47
-
048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=48
-
049・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、道路法案、政府提出、衆議院送付、第
-讀會
道路法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正八年二月二十五日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
小字ハ衆議院ノ修正-
ハ同削除ノ符號ナリ
道路法
第一章總則
第一條本法ニ於テ道路ト稱スルハ一般交通ノ用ニ供スル道路ニシテ行政
廳ニ於テ第二章ニ依ル認定ヲ爲シタモノヲ謂フ
第二條左ニ揭クルモノハ道路ノ附屬物トシ道路ニ關スル本法ノ規定ニ從
フ但シ命令ヲ以テ特別ノ定ヲ爲スコトヲ得
ー道路ヲ接續スル橋梁及渡船場
二道路ニ附屬スル溝、竝木、支壁、柵道路元標、里程標及道路標識
三道路ニ接スル道路修理用材料ノ常置場
四前各號ノ外命令ヲ以テ道路ノ附屬物ト定メタルモノ
第三條本法ニ於テ橋梁又ハ渡船場ト稱スルハ前條第一號ノ橋梁又ハ渡船
場ヲ謂フ
本法ニ於テ渡船場ト稱スルハ渡船ヲ包含ス
第四條本法ニ於テ他ノ工作物ト稱スルハ堤防。堰堤、護岸、鐵道用橋梁
其ノ他命令ヲ以テ定ムル工作物ヲ謂フ
第五條本法ニ於テ道路ニ關スル工事ト稱スルハ道路ノ新設、改築及修繕
ニ關スル工事ヲ謂フ
第六條道路ヲ構成スル敷地其ノ他ノ物件ニ付テハ私權ヲ行使スルコトヲ
得ス但シ所有權ノ移轉又ハ抵當權ノ設定若ハ移轉ヲ爲スハ此ノ限ニ在ラ
ス
第七條道路、沿道又ハ道路ノ附屬物ニ關スル本法ノ規定ハ命合ノ定ムル
所ニ依リ新ニ道路、沿道又ハ道路ノ附屬物ト爲ルヘキモノニ關シ之ヲ準
用スルコトヲ得
第二章道路ノ種類、等級及路線ノ認定
第八條道路ヲ分チテ左ノ五種トス
-國道
二府縣道
三郡道
四市道
五町村道
第九條道路ノ等級ハ前條記載ノ順序ニ依ル
第十條國道ノ路線ハ左ノ路線ニ就キ主務大臣之ヲ認定ス
-東京市ヨリ神宮、府縣廳所在地、師團司令部所在地、鎭守府所在地
又ハ樞要ノ開港ニ達スル路線
二主トシテ軍事ノ目的ヲ有スル路線
第十一條府縣道ノ路線ハ左ノ路線ニシテ府縣內ノモノニ就キ府縣知事之
ヲ認定ス
-:府縣廳所在地ヨリ隣接府縣廳所在地ニ達スル路線
二府縣廳所在地ヨリ府縣內郡市役所所在地ニ達スル路線
三府縣廳所在地ヨリ府縣內樞要ノ地、港津又ハ鐵道停車場ニ達スル路線
四府縣内樞要ノ地ヨリ之ト密接ノ關係ヲ有スル樞要ノ地、港津又ハ鐵
道停車場ニ達スル路線
五府縣内樞要ノ港津ヨリ之ト密接ノ關係ヲ有スル樞要ノ地又ハ鐵道停
車場ニ達スル路線
六府縣內樞要ノ鐵道停車場ヨリ之ト密接ノ關係ヲ有スル樞要ノ地又ハ
港津ニ達スル路線
七數郡市ヲ連結スル幹線ニシテ其ノ沿線地方ト密接ノ關係ヲ有スル樞
要ノ地、港津又ハ鐵道停車場ニ達スル路線
八地方開發ノ爲必要ニシテ將來前各號ノ一ニ該當スヘキ路線
第十二條郡道ノ路線ハ左ノ路線ニシテ郡內ノモノニ就キ郡長之ヲ認定ス
-郡役所所在地ヨリ隣接郡市役所所在地ニ達スル路線
二郡役所所在地ヨリ郡内町村役場所在地ニ達スル路線
三郡役所所在地ヨリ郡内樞要ノ地、港津又ハ鐵道停車場ニ達スル路線
四郡內樞要ノ地ヨリ之ト密接ノ關係ヲ有スル樞要ノ地、港津又ハ鐵道
停車場ニ達スル路線
五郡內樞要ノ港津ヨリ之ト密接ノ關係ヲ有スル樞要ノ地又ハ鐵道停車
場ニ達スル路線
六郡內樞要ノ鐵道停車場ヨリ之ト密接ノ關係ヲ有スル樞要ノ地又ハ港
津ニ達スル路線
七數町村ヲ連結スル幹線ニシテ其ノ沿線地方ト密接ノ關係ヲ有スル樞
要ノ地、港津又ハ鐵道停車場ニ達スル路線
八地方開發ノ爲必要ニシテ將來前各號ノ一ニ該當スヘキ路線
第十三條市道ノ路線ハ市內ノ路線ニ就キ市長之ヲ認定ス
第十四條町村道ノ路線ハ町村内ノ路線ニ就キ町村長之ヲ認定ス
第十五條市町村長ハ市町村ノ爲特ニ必要アル場合ニ限リ市町村外ノ路線
ニ就キ地元市町村長ノ意見ヲ聞キ路線ノ認定ヲ爲スコトヲ得
前項ノ路線ニシテ市長ノ認定シタルモノハ市道ノ路線、町村長ノ認定シ
タルモノハ町村道ノ路線トス
第十六條上級ノ道路ト下級ノ道路ト路線カ重複スル場合ニ於テハ其ノ重
複スル部分ハ上級ノ道路トス
第三章道路ノ管理
第十七條國道ハ府縣知事、其ノ他ノ道路ハ其ノ路線ノ認定者ヲ以テ管理
者トス但シ勅令ヲ以テ指定スル市ニ於テハ其ノ市內ノ國道及府縣道ハ市
長ヲ以テ管理者トス
第十八條道路ニシテ行政區劃ノ境界ニ係ルモノハ命令ノ定ムル所ニ依リ
前條ノ規定ニ依ル管理者タル關係行政廳ノ一ヲ以テ管理者ト爲スコトヲ
得
道路ト他ノ工作物ト效用ヲ兼ヌル場合ニ於テハ其ノ道路及工作物ノ管理
ニ付前項ノ規定ヲ準用ス但シ私人ヲ管理者ト爲スコトヲ得ス
第十九條道路ノ區域ハ管理者之ヲ定ム
第二十條道路ノ新設、改築、修繕及維持ハ管理者之ヲ爲スヘシ
第二十一條道路ト他ノ工作物ト效用ヲ兼ヌル場合ニ於テハ管理者ハ其ノ
工作物ノ管理者ヲシテ道路ニ關スル工事ヲ執行セシメ又ハ道路ノ維持ヲ
爲サシムルコトヲ得但シ河川法第十條第一項ノ規定ニ該當スル場合ニ於
テハ其ノ規定ニ依ル
第二十二條他ノ工事又ハ行爲ノ爲必要ヲ生シタル道路ニ關スル工事ハ管
理者其ノ工事執行者又ハ行爲者ヲシテ之ヲ執行セシムルコトヲ得
第二十三條前二條ノ規定ニ依ル場合ノ外特別ノ事由アル場合ニ於テハ管
理者タル行政廳ハ下級行政廳又ハ私人ヲシテ道路ノ修繕ニ關スル工事ヲ
執行セシメ又ハ道路ノ維持ヲ爲サシムルコトヲ得
第二十四條管理者ニ非サル者ハ管理者ノ許可又ハ承認ヲ得テ道路ニ關ス
ル工事ヲ執行シ又ハ道路ノ維持ヲ爲スコトヲ得
第二十五條道路ニ關スル工事ノ爲必要ヲ生シタル他ノ工事ハ管理者道路
ニ關スル工事ト共ニ之ヲ執行スルコトヲ得
第二十六條管理者ニ非サル者ハ管理者ノ許可又ハ承認ヲ得テ一定ノ期間
橋錢又ハ渡錢ヲ徵收スルコトヲ得ル橋梁又ハ渡船場ヲ設クルコトヲ得
前項ノ許可又ハ承認ヲ得タル者ハ徵收期間內橋梁又ハ渡船場ノ維持及修
繕ヲ爲スヘシ
第二十七條管理者ハ特別ノ事由アル場合ニ限リ橋錢又ハ渡錢ヲ徵收スル
う?
橋梁又ハ渡船場ヲ設クルコトヲ得
第二十八條管理者ハ交通ヲ妨ケサル限度ニ於テ道路ノ占用ヲ許可又ハ承
認スルコトヲ得
國ノ事業ニ付テハ當該官廳ハ主務大臣ト協議シテ前項道路ノ占用ヲ爲ス
コトヲ得
前項ノ規定ニ依ル主務大臣ノ職權ノ一部ハ之ヲ地方長官ニ委任スルコト
ヲ得
管理者ハ道路ノ占用ニ付占用料ヲ徵收スルコトヲ得但シ前二項ノ規定ニ
依ル占用ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十九條前條第一項ノ規定ニ依ル占用カ法令ニ依リ土地ヲ收用又ハ使
用スルコトヲ得ル公共ノ利益トナルヘキ事業ニ係ルモノナル場合ニ於テ
管理者正當ノ事由ナクシテ其ノ許可若ハ承認ヲ拒ミ又ハ不相當ナル占用
料ヲ定メタルトキハ主務大臣ハ事業者ノ申請ニ依リ占用ヲ許可若ハ承認
シ又ハ占用料ヲ定ムルコトヲ得
第三十條管理者ハ其ノ管理ニ屬スル道路ノ臺帳ヲ調製スヘシ
臺帳ニ記載スヘキ事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十一條道路ノ構造、維持、修繕及工事執行方法ニ關シテハ命令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三十二條道路ノ管理ノ爲必要ナル吏員ノ設置及其ノ職務權限ニ關シテ
ハ勅合ヲ以テ之ヲ定ム
第四章道路ニ關スル費用及義務
〓王トシテ軍事ノ目的ヲ有スル國道其ノ他
第三十三條〓主務大臣ノ指定スル國道ノ新設又ハ改築ニ要スル費用ハ國
庫ノ負擔トス
前項ニ規定スルモノヲ除ク外道路ニ關スル費用ハ管理者タル行政廳ノ統
轄スル公共〓體ノ負擔トス但シ行政區劃ノ境界ニ係ル道路ニ關スル費用
ノ負擔ニ付テハ關係行政廳ノ協議ニ依ル協議調ハサルトキハ主務大臣之
ヲ決定ス
第三十四條前條ノ場合ニ於テ道路ト他ノ工作物ト效用ヲ兼ヌルモノナル
トキハ其ノ費用ノ負擔ニ付テハ前條第二項但書ノ規定ヲ準用ス但シ河川
法第三十條ノ規定」該當スル場合ニ於テハ其ノ規定ニ依ル
とせん
第三十五條第三十三條第二項ニ規定スル費用ニシテ國道ノ新設又ハ改築
ニ要スルモノハ其ノ一部ヲ國庫ヨリ補助スルコトヲ得特別ノ事由アル場
合ニ於テ府縣道以下ノ道路ノ新設又ハ改築ニ要スル費用ニ付亦同シ
第三十六條第二十四條ノ規定ニ依ル道路ニ關スル工事若ハ道路ノ維持ニ
要スル費用又ハ第二十六條ノ規定ニ依リ設クル橋梁若ハ渡船場ニ關スル
費用ハ許可又ハ承認ヲ得タル者ノ負擔トス
第三十七條他ノ工事又ハ行爲ノ爲必要ヲ生シタル道路ニ關スル工事ノ費
用ハ管理者他ノ工事又ハ行爲ニ付費用ヲ負擔スル者ヲシテ其ノ全部又ハ
一部ヲ負擔セシム
第三十八條特別ノ事由アル場合ニ於テハ第二十三條ノ規定ニ依ル道路ノ
修繕ニ關スル工事又ハ道路ノ維持ニ要スル費用ハ管理者同條ノ下級行政
廳ノ統轄スル公共〓體又ハ同條ノ私人ヲシテ其ノ全部又ハ一部ヲ負擔セ
シムルコトヲ得
第三十九條道路ニ關スル工事ニ因リ著シク利益ヲ受クル者アルトキハ管
理者ハ其ノ者ヲシテ利益ヲ受クル限度ニ於テ道路ニ關スル工事ノ費用ノ
一部ヲ負擔セシムルコトヲ得
第四十條特ニ道路ヲ損傷スル原因ト爲ルヘキ事業ヲ爲ス者アル場合ニ於
テ管理者ハ之カ爲ニ要スル道路ノ維持又ハ修繕ノ費用ノ一部ヲ其ノ事業
者ニ負擔セシムルコトヲ得
第四十一條道路ニ關スル工事ノ爲必要ヲ生シタル他ノ工事ノ費用ハ管理
者特別ノ事由アル場合ニ於テ他ノ工事ニ付費用ヲ負擔スル者ヲシテ其ノ
全部又ハ一部ヲ負擔セシムル場合ヲ除クノ外道路ニ關スル工事ノ費用ヲ
負擔スル者ヲシテ之ヲ負擔セシム
第四十二條本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ依リテ爲ス處分ニ
依ル義務ヲ履行スル爲必要ナル費用ハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ
外義務者ノ負擔トス
第四十三條道路ニ關スル費用ノ負擔金ハ費用負擔者カ道路ニ關スル工事
ノ執行又ハ道路ノ維持ヲ爲ス場合ヲ除クノ外第三十三條第一項ノ國道ノ
新設又ハ改築ニ要スルモノニ在リテハ國庫、其ノ他ノモノニ在リテハ管
理者タル行政廳ノ統轄スル公共團體ノ收入トス
前項ノ費用負擔者カ公共〓體ナル場合ニ於テ之ヲ統轄スル行政廳又ハ行
政廳タル管理者カ道路ニ關スル工事ノ執行又ハ道路ノ維持ヲ爲ストキハ
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ費用負擔者之ヲ爲スモノト看做ス
第四十一條ノ規定ニ依ル負擔金ハ前二項ノ例ニ依リ國庫又ハ公共團體ノ
收入トス
第四十四條道路ノ占用料其ノ他道路ヨリ生スル收益ハ管理者タル行政廳
ノ統轄スル公共團體ノ收入トス但シ第二十六條ノ規定ニ依リ許可又ハ承
認ヲ得テ徵收スル橋錢又ハ渡錢ハ其ノ許可又ハ承認ヲ得タル者ノ收入ト
ス
第四十五條道路ニ關スル工事ノ爲必要アルトキハ管理者ハ沿道ノ土地ニ
立入リ又ハ其ノ土地ヲ一時材料置場トシテ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル立入又ハ使用ヲ爲サムトスルトキハ已ムヲ得サル場合
ヲ除クノ外豫メ土地ノ占有者ニ通知スルコトヲ要ス
第四十六條非常災害ノ爲必要アルトキハ管理者ハ道路附近ニ居住スル者
ヲ使役シ、道路附近ノ土地ヲ一時使用シ又ハ土石、竹木其ノ他物品ヲ使
用若ハ收用スルコトヲ得○現ニ生シタル
第四十七條前二條ノ規定ニ依ル立入、使用、使役又ハ收用ニ因リ。損害ヲ
之ヲ
受ケタル者ハ立入、使用、使役又ハ收用ノ後三月內ニ管理者ニ對シ補償
スヘシ
ヲ請求スルコトヲ得
第四十八條沿道ノ土地、竹木又ハ工作物ノ管理者ハ其ノ土地、竹木又ハ
工作物ノ道路ニ及ホスヘキ損害ヲ豫防スル爲必要ナル施設ヲ爲スヘシ
第四十九條道路ノ使用又ハ道路若ハ其ノ交通ノ保全ニ關スル規定ハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム沿道ノ土地ニ於ケル工作物ノ建設其ノ他ノ作爲又ハ不作
爲ノ制限ニシテ道路又ハ其ノ交通ノ保全ノ目的ヲ以テスルモノニ付亦同
シ
第五十條沿道ノ區域ハ管理者之ヲ定ム
第五章監督及罰則
第五十一條左ニ揭クル場合ニ於テハ管理者ハ本法若ハ本法ニ基キテ發ス
ル命令ニ依リテ其ノ爲シタル許可承認ヲ取消シ其ノ效力ヲ停止シ若ハ其
ノ條件ヲ變更シ、道路ニ存スル工作物其ノ他ノ物件ヲ改築除劫セシメ若
ハ之ニ因リテ生スヘキ損害ヲ豫防スル爲必要ナル施設ヲ爲サシメ又ハ原
狀囘復ヲ爲サシムルコトヲ得
-道路ニ關スル法令ノ規定ニ違反シタルトキ
二道路ニ關スル法令ノ規定ニ依ル許可又ハ承認ノ條件ニ違反シタルト
キ
三詐欺ノ手段ヲ以テ道路ニ關スル法令ノ規定ニ依ル許可ヲ得タルトキ
四道路ニ關スル工事ノ爲必要アルトキ
五公益上必要ト認ムルトキ
前項第五號ノ場合ニ於テ損害ヲ受ケタル者アルトキハ管理者ハ道路ニ關
スル工事ノ費用ヲ負擔スル者ヲシテ其ノ損害ノ全部又ハ一部ヲ補償セシ
ムルコトヲ得
前二項ノ規定ハ主務大臣カ第二十九條ノ規定ニ依リテ其ノ爲シタル許可
若ハ承認ヲ取消シ、其ノ效力ヲ停止シ又ハ其ノ條件ヲ變更スル場合ニ之
ヲ準用ス
第五十二條左ニ揭クル事項又ハ其ノ變更廢止若ハ取消ハ第一號ニ在リテ
ハ行政廳ニ於テ、其ノ他ニ在リテハ管理者ニ於テ監督官廳ノ認可ヲ受ク
ヘシ但シ主務大臣ハ輕易ナル事件ニ限リ命令ヲ以テ認可ヲ受ケシメサル
ノ定ヲ爲スコトヲ得
-國道以外ノ道路ノ路線ヲ認定スルコト
二道路又ハ沿道ノ區域ヲ定ムルコト
三道路ノ新設又ハ改築ヲ爲スコト
四第二十一條乃至第二十三條ノ規定ニ依リ道路ニ關スル工事ヲ執行セ
シメ又ハ道路ノ維持ヲ爲サシムルコト
五第二十四條又ハ第二十六條ノ規定ニ依ル許可又ハ承認ヲ爲スコト
六第二十五條ノ規定ニ依リ他ノ工事ヲ執行スルコト
七第二十七條ノ規定ニ依リ橋錢又ハ渡錢ヲ徵收スル橋梁又ハ渡船場ヲ
設クルコト
八第二十八條ノ規定ニ依リ道路ノ占用ヲ許可若ハ承認シ又ハ道路ノ占
用料ヲ徴收スルコト
九第三十七條乃至第四十一條ノ規定ニ依リ費用ヲ負擔セシムルコト
十前條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル處分ヲ爲スコト
第五十三條監督官廳ハ監督上必要ト認ムルトキハ前條ノ行政廳又ハ管理
者ニ對シ前條各號ニ揭クル事項又ハ其ノ變更廢止若ハ取消ヲ命シ其ノ他
命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第五十四條行政執行法第五條及第六條ノ規定竝之ニ基キテ發スル命令ハ
本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ依リテ爲ス處分ニ依リ私人ノ
行フヘキ作爲又ハ不作爲ヲ管理者カ强制スル場合ニ之ヲ準用ス
第五十五條本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ依リテ爲ス處分ニ
依リ私人ノ義務ニ屬スル負擔金、占用料、橋錢、渡錢其ノ他ノ費用ハ管理
者國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徴收スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル徵收金ノ先取特權ノ順位竝其ノ追徵還付及時效ニ付テ
ハ管理者タル行政廳ノ統轄スル公共團體ノ徵收金ノ例ニ依ル
者三
第五十六條私人左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ一年以下ノ懲役若ハ二百
圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
-許可ヲ得スシテ道路若ハ其ノ附屬物ニ關スル工事ヲ執行シ又ハ道路
者
若ハ其ノ附屬物ヲ占用シタルトキ
二許可ヲ得スシテ橋梁又ハ渡船場ノ使用ニ對シ橋錢、渡錢其ノ他ノ財
者
物ノ交付ヲ請求シタルトキ
者
三道路ノ使用ニ對シ路錢其ノ他ノ財物ノ交付ヲ請求シタルトキ
四者
詐欺ノ手段ヲ以テ許可ヲ得タルトキ
五正當ノ事由ナクシテ第四十六條ノ規定ニ依ル管理者ノ命ニ從ハサル
者
トキ
六第四十八條又ハ第二條及第四十八條ノ規定ニ違反シテ道路又ハ其ノ
老
附屬物ニ及キスヘキ損害ヲ豫防スル爲必要ナル施設ヲ爲ササルトキ
第六章訴願及訴訟
第五十七條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定シタル事項ニ付主務
大臣又ハ管理者ノ爲シタル處分ニ不服アル者ハ訴願スルコトヲ得
本法ニ依リ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ル場合ニ於テハ主務大臣ニ訴
願スルコトヲ得ス
第五十八條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定シタル事項ニ付主務
大臣又ハ管理者ノ爲シタル違法處分ニ因リ權利ヲ毀損セラレタリトスル
者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
同條ノ規定スル期間
第五十九條第四十七條ノ規定ニ依リ補償ヲ受クヘキ者補植暗求後三月內
ニ其ノ決定ノ通知ヲ受ケタル場合ニ於テ補償ニ不服アルトキハ通知後六
同條ノ規定スル期間
月內ニ、補償請求後一一内內ニ其テ決定ノ通知ヲ受ケサル場合ニ於テハ其
ノ期間經過後六月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ
訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ス
第七章雜則
第六十條本法中府縣、府縣知事、府縣廳又ハ府縣道ニ關スル規定ハ北海
道ニ付テハ道、道廳長官、道廳又ハ地方費道ニ關シ市、市長、市役所又
ハ市道ニ關スル規定ハ北海道及沖繩縣ニ付テハ區、區長、區役所又ハ區
道ニ關シ郡役所ニ關スル規定ハ北海道ニ付テハ支廳、島ニ付テハ島廳ニ
關シ之ヲ適用ス
第六十一條北海道ニ付テハ道路ノ種類、等級及路線ノ認定竝第三十三條
乃至第三十六條、第四十三條、第四十四條及第五十二條ノ規定ニ關シ沖
繩縣:ハテハ郡道ニ關シ勅令ヲ以テ特別ノ定ヲ爲スコトヲ得
第六十二條道路ノ路線ノ認定ノ變更廢止其ノ他ノ場合ニ於テ不用ニ歸シ
タル道路及其ノ附屬物ヲ構成シタル物件竝材料器具機械等ノ管理及處分
ニ付テハ勅令ヲ以テ特別ノ定ヲ爲スコトヲ得
前項ノ變更廢止ノ場合ニ於テ道路及其ノ附屬物ヲ構成シタル物件ハ勅令
ヲ以テ定ムル期間ノ滿了スル迄第六條ノ規定ヲ之ニ準用シ土地收用法中
第六十六條ノ規定及之ヲ準用スル規定ノ適用ニ付テハ不用ニ歸セサルモ
ノト看做ス
第六十三條左ニ揭クル法令ノ規定ハ本法ニ依ル道路ニ關シ之ヲ適用セス
-明治四年十二月十四日布告治水修路架橋等運輸ノ便利ヲ興ス者ニ稅
金取立方許可ニ關スル件
二明治十一年七月二十二日達郡區町村編制府縣會規則地方稅規則施行
順序ニ關スル件第十二項
三明治十二年二月二十七日達河港道路堤防橋梁費ヲ舊慣ニ因リ支辦シ
得ル件
四陸地測量標條例第二條
五水路測量標條例第二條
六電信線電話線建設條例第一條、第四條及第五條
七軍用電信法第四條第二項ノ規定ニ依リ準用スル電信線電話線建設條
例第一條、第四條及第五條
八河川法第十條第二項第十一條及第三十二條
九砂防法第八條及第十六條
十私設鐵道法第四十二條
十一輕便鐵道法第五條ノ規定ニ依リ準用スル私設鐵道法第四十二條
十二電氣事業法第九條
十三大正三年法律第三十七號
附則
第六十四條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十五條左ニ揭クル法令ハ之ヲ廢止ス
一明治五年第三百二十五號布告
二明治六年第百四十六號布告
三明治六年第四百十三號達
四明治九年第六十號達
五明治十八年第一號布達
六明治二十年勅令第二十八號
第六十六條本法施行補爲シタル處分及之ニ附シタル條件ハ本法又ハ本法
ニ基キテ發スル命令ニ牴觸セサル限リ本法ニ依リ爲シタル處分及之ニ附
シタル條件ト看做ス
第六十七條本法ニ依リ管理者ノ許可又ハ承認ヲ受クヘキ事項ニシテ本法
施行ノ際現ニ存スルモノハ本法ニ依リ管理者ノ許可又ハ承認ヲ受ケタル
モノト看做ス但シ管理者ハ本法施行ノ日ヨリ三月內ニ六月ヲ下ラサル期
間ヲ指定シ其ノ期間經過後ハ許可又ハ承認ノ效力ヲ失フヘキ旨ヲ告示ス
ルコトヲ得
第六十八條本法施行前爲シタル處分ニ關スル訴願又ハ行政訴訟ニ付テハ
仍從前ノ例ニ依ル
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=49
-
050・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 道路法ノ制定ハ三十年來ノ懸案デゴザイマシテ、
最初明治二十一年ニ調査ヲセラレマシタ以來、或ハ地方官ノ意見ヲ徵シ、又
土木曾ニ諮問ニナリ、度、閣議モ決セラレマシタ、議會ニ向ッテモ二十九年ト三
十二年ニ提出ニナッタノデアリマシタガ、何レモ其當時未議了ニ終リマシテ、
遂ニ今日マデ其決定ヲ見ナイデ居ルヤウナ有樣デアリマス、然ルニ今日ノ現
狀竝ニ將來ニ亙ッテ考ヘマスルニ、最早今日ハ其制定ヲ必要トスル時ト考ヘマ
スノデアリマス、現在道路ニ關スル法律ハ、明治九年太政官達六號ト云フノ
ガゴザイマス、其外一二ノ單行法ガアリマスルノミデアリマシテ、其管理維
持、若クハ費用ノ負擔、若クハ監督ニ關スル規定等モ甚ダ十分デアリマセヌ、
ソレ故ニドウゾ是等ノ十分ナラザル規定ヲ補ヒマシテ、此際ソレ〓〓相當ノ
條規ヲ設ケタイ考デゴザイマス、而シテ此法案ニ付キマシテ衆議院ニ於テ二
三修正ヲ致シマシタ箇條ガゴザイマスガ、何レモ相當ナルコトト考ヘマシタ
ノデ、修正ニハ同意ヲ致シタ次第デゴザイマス、前申上ゲル如ク長イ懸案デゴ
ザイマスルシ、其間種々調査〓究モセラレテ今日參ッタコトデゴザイマスノ
デ、何卒御協贊、御審議ヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=50
-
051・阪本さん之助
○阪本釤之助君 本案ノ衆議院ノ修正ヲ見マスルト、此最モ重モナルモノハ
第十一條、第十二條ノ下ヘ持ッテ行キマシテ「地方開發ノ爲必要ニシテ將來前
各號ノ一ニ該當スヘキ路線」、此一號ヲ加ヘルト云フコトニナッテ居リマス、唯
今承リマシスルト、政府ハ御同意ヲナサレタト云フコトデアリマスガ、從來
假定府縣道ト申シマシテ、此修正ノヤウナ路線ヲ町村ノ管理カラ府縣ノ管理
ニ移スト云フコトニ付キマシテハ、地方官ヤ議員有志ト云フヤウナ者ハ大ニ
苦心シタモノデアルノデアリマス、動モスレバ是ガ政黨操縱ノ用ニモナリ、
動モスレバ議員選擧ノ餌トモナリマス、相應ニ弊害ガ伴ヒマシテ甚ダ宜クナ
イコトデアルト感ジテ居ルノデアリマス、此度ノ道路法案ハ兎ニ角國道、府
縣道、郡道等ノ資格ヲ明瞭ニ規定セラレマシテ、是マデノ弊害ヲ幾分ナリト
モ除却スルコトヲ得ルト認メテ居リマシタニ抱ラズ、又斯ンナ修正ガ這入リ
マシテ「地方開發ノ爲必要ニシテ將來前各號ノ一ニ該當スヘキ路線」ト云フヤ
ウナ、見樣ニ依リマシテハドウデモナル曖昧ナモノデアルノデアリマス是
ガ這入リマスルト、再ビ前日ノ如ク種々ナ面倒ガ起リマシテ、而モ之ガ爲ニ
路線ガ非常ニ殖エルノデアリマス、路線ガ殖エマシテ、府縣費ガ增加スルト
云フコトハ掩フベカラザル事實デアルト私ハ思フノデアリマス、政府ガ之ニ
拘ラズ、御同意ヲナサレタト云フコトハドウ云フ譯デアリマセウカ、甚ダ遺
憾ニ存ジマスルガ、此修正ノ成立チ及政府ガ之ニ御同意ナサレタト云フ理由
ヲ承リタイノデアリマス、又郡道ト云フモノヲ此法案ガ認メルコトニナッタ
ノデアリマスルガ、是マデ郡ガ府縣ト町村トノ間ニ介在シテ、唯僅ニ里道ヲ
假ニ郡道ナトド稱シテ管理シテ居ッタノデアリマスガ、今後ハ此法案ガ成立チ
マスレバ、郡ト云フモノモ一ノ獨立ノ主體トナリマシテ、第十二條ニ揭ゲラ
レテ居ル所ノ郡道ヲ認定シ、又ハ管理スルコトニナリマスノデ、郡ノ自治體
ノ世帶ハ餘ホド大キクナルノデアリマス、是マデ府縣ガ各郡ニ土木出張所ト
カ、駐在所トカ云フヤウナモノヲ設ケマシテ、ソレニ府縣吏員ヲ駐在セシメ
テ、事ヲ辨ジテ居ッタノデアリマスルガ、郡ニモ郡道ト云フモノガ出テ來テ、世
帶ガ大キクナッテ來マスレバ、是ニモ矢張リ郡ノ土木吏員ト云フモノヲ作リ、
或ハ郡內ニ在ル所ノ府縣管理ノ道路ト、郡ノ管理ノ道路ト、別々ニ同ジ所ニ
在ル道路ヲ、資格ヲ異ニスル爲ニ兩方カラ役人ガ出テ、別々ニ仕事ヲスルト
云フコトニナリマシテ、甚ダ不經濟デアルノミナラズ、實ハ郡ト云フモノハ
自ラ郡稅ト云フモノヲ取ル資格ハナイ、町村ニ分付ヲシテ今日ノ郡費ヲ取ッテ
居ル、今日ノ現狀ハサウナッテ居リマス、斯ノ如キ畸形ノ法人デアル、卽チ片
輪ノ法人デアル、斯ノ如キ郡ニ斯ノ如キ機能ヲ有タセルト云フコトハ大ニ考
フベキコトデナイカト考ヘマス、之ニ付テ政府ハ如何ニ御考ニナッタノデアリ
マセウカ、是モ併セテ御聞カセヲ願ヒタイト思ヒマス
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=51
-
052・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 第一ノ御尋ハ衆議院ノ修正ノ通リニナレバ地方
ノ情實ニ依ッテ妄ニ道路ヲ開鑿スルト云フ虞ハナイカト云フ御尋デアリマス、
道路ノ認定ヲ致シマスルニ付テハソレ〓〓監督ノ規定ヲ設ケテゴザイマスカ
ラ、監督ノ作用ニ依ッテ餘リ甚シイモノハ制限ガ出來ルト云フ考デ居リマス、
又且今ノ御尋ノ修正ノ個條ハ前各號ニ該當スルモノト云フ言葉ガゴザイマス
カラ、要スル所政府ノ原案ト實質ニ於テハ異ナル所ハナイト考ヘテ居リマス、
ソレカラ第二ノ御尋ノ郡道ノコトデゴザイマスルガ、今日ノ實況ニ於テハ郡
ニ於テ自ラ經營シテ居ルモノモアリ、若クハ經營シテ居ラザルモノモアリマ
ス、今度ノ法案ニ依ッテ俄ニ郡ノ負擔ニ激變ヲ來タスヤウナコトハ避ケタイト
考ヘテ居リマス、併ナガラ大體ニ於キ茲ニ郡道ガ出來ルコトハ明デゴザイマ
スカラ、ソレダケハ自ラ郡ノ負擔ハ殖エルノデアリマスケレドモ、其點ニ於
テハ餘リ負擔ニ堪ヘナイト云フコトハナカラウト考ヘテ居リマス、第二ノ御
質問ハ···サウ云フ風デ宜シウゴザイマスカ、取違ヘテ居リマスカ、是ハ御
伺イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=52
-
053・阪本さん之助
○阪本釤之助君 チヨット········第一ノ御答ニ對シテ少シ疑ガ起リマシタカラ
御尋イタシタイト思ヒマスガ、本員ハデス、本員ノ見マスル所デハ唯〓大臣ノ
御答トハ違ヒマスノデ、將來前各號ノ一ニ該當スヘキ路線ト云フコトデアリ
やすり。現在デハナイ、地方ノ開發ニ依ッテ將來前各號ノ一ニ該當スル道路ト云
フノデアリマス、ソンナコトヲ今カラ府縣道ニシテ置カナイデモ宜イ、郡道ナ
リ町村道ナリニシテ置イテ、愈〓必要ノアッタ時ニ法律ニ依ッテ之ヲ上ゲレバ宜
シイ、是ハ府縣道ニモ郡道ニモ這入ッテ居リマスガ、町村道ノ或ヤツヲ將來郡
道トナルベキ資格ノアルモノハ、之ニ入レルト云フノデ皆一階ヅヽ上グヤウ
ト云フノデアリマスガ、是ガ頗ル弊害ガアルノデアリマス、ソコニ町村ナリ郡
ナリノ負擔ヲ免ジテ府縣ヘ持ッテ行ク、府縣ヘ持ッテ行ケバ自ラ道モ宜シクナ
ルシ金モ要ラナイ、地方ノコトハ能ク御承知デアリマセウガ、非常ニ運動ガ烈
シイ、此間ニ色〓ナ弊害ガ用ヒラレルノデアリマス、卽チ此弊害ヲ釀スベキ箇
條ヲ一箇條入レタト本員ハ認メルノデゴザイマスガ、何故ニ將來ノコトヲ此
ニ入レテアルノデアリマスカ、其事ガ到達シタ時ニ入レレバ宜シイ、將來該
當スベキ道路、將來ト云フモノヲ現在ノモノト同ジヤウニ扱ハナケレバナラ
ヌト云フコトハ、ドウシテモ理解ハ出來マセヌガ、ソレハドウ云フコトデア
ルカ、何故ニ之ヲ必要ト衆議院ハシタノデアリマスカ、又政府ハ何故ニ之ニ
御同意ナサレタカト云フコトヲ承リタイ、第二ハ經費ノコトモアリマスガ、
强チ經費バカリヲ申スノデハゴザイマセヌ、重複スルノデアリマス、府縣ノ
吏員ガ幸ニ郡ニ出張所ナドガ出來テ居ルノデアリマスカラ、ソレガヤリマス
レバ兼ネテ出來ルノデアリマス又小サイ所ナラバ町村デモ出來ルノデアリ
PV·然ルニ郡道ト云フモノヲ公然ト認メラレテ郡役所デ之ヲスルト云フコ
トトナラバ、小サイナガラモ郡役所ニ相當ノ機關ヲ造ラナケレバナラス、是
ガ又相當ニ費用ガ無駄ナコトデアルト思ッテ居ルニ拘ラズ、是非郡道ト云フモ
ノヲ認メネバナラヌト云フノハドウ云フコトデアルカ、本員ノ考デハ府縣道
市町村道デ澤山デアラウト思ヒマス、上ノモノハ府縣道トシテ、又法律ノ定
メヤウニ依ッテハ、府縣道ト云フ名ヲ附ケナイデ府縣知事ガ管理シテ修理保存
スルト云フコトニ規定シテモ宜シイ、兎ニ角郡ノヤウナ畸形ノ法人ニ、他ノ
完全ナル法人、府縣トカ市町村トカ云フ完全ナル法人ト同ジヤウナ仕事ヲサ
セル法律ヲ作ルト云フコトハ、洵ニ詰ラヌコトデアルト思フノデアリマス、
是ハ如何デアリマスカ、何故郡道ヲ置カネバナラヌト云フ理由ハ何處ニ在ル
カト云フコトヲ承リタイノデアリマス
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=53
-
054・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 第一ノ御尋ノニトハ「地方開發ノ爲必要ニシテ
將來前各號ノ一ニ該當スベキ路線」、現在ノ所デハ政府ノ原案ニアリマシタヤ
ウナ箇條ニハ嵌ラナイガ、併シ今日其道ヲ拓ク必要ガ產業上ナリ地方ノ開發
上カラ見テアルト、開イテ置ケハ竟ニハ前各號ノ一ニ該當スルヤウナ線路ニ
ナルト云フ見込ノモノハ、之ヲ開クト云フコトハ、地方ノ爲ニ私ハ宜シイコ
トト考ヘテ居リマス、御心配ニナルノハソレガ爲ニ弊害ガ起リハセヌカト云
フ御心配デアラウト思ヒマス、或ハサウ云フコトモアルカモ知リマセヌガ、
併ナガラソンニハ監督ノ規定モアルノデアリマスカラ、私トシテハ差支ノ無
イ修正箇條デアルト考ヘルノデアリマス、第二ノ御尋ノコトハ或ルホド今マ
デ郡道ヲ經營シテ居ラヌ所ニ、此法律ノ結果、郡道ヲ經營イタスヤウニナリ
マスレバ、府縣ノ土木吏員デ濟マシテ居ッタモノヲ更ニ郡ニ吏員ヲ置カナケ
レバナラナイト云フコトハ、是ハ當然ノ結果デアリマスガ、ソレガ爲ニ殊更
ニ地方ノ負擔ヲ過重スルト云フコトハ、ナカラウト思ヒマス、固ヨリ御尋ノ
如ク幾分カ重クナルコトニナリマスカラ、ソレダケハ大體ノ上カラ見テ不經
濟タルコトハ免レヌト云フコトハ、私モ左樣ニ考ヘマス、併ナガラ大體ニ於
テ此法ヲ布イテソレ〓〓地方ノ自治體ニ仕事ヲ委セルト云フコトニナッタ以
上ハ致方ガナイト考ヘマス、元來イツゾヤ御尋ニモアリマシタ如ク、郡ナル
自治體ガ存在セヌコトニ致シマスレバ、是ハ論ノ無イ話デアリマスケレドモ、
今日郡ノ自治體ヲ認メテ居ル以上、多少ノ重複スルヤウナコトニナリマシテ
千、大體上カラ已ムヲ得ヌ事柄ト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=54
-
055・高崎親章
○高崎親章君 本案ハ先刻主務大臣ヨリ御說明モセラレマシタル通リ、十數
年來ノ懸案デアリマシテ、本會ニ提出セラレタノハ既ニ遲イト申サナケレバ
ナリマセヌ、併ナガラ遲イナガラモ玆ニ提案セラレタト云フコトハ、洵ニ歡
迎スル所デアリマスガ故ニ、敢テ異議ヲ挾ム點ハナカラウトハ存ジマスガ、
二三不明ナ點ガアリマスルデ、當局ニ質問イタシタイト考ヘマス、本案ニ道
路ノ資格ヲ定メラレマシテ、國道、府縣道、市道、郡道、町村道ト斯ウ五階
級ニ分タレテアリマスガ、其第一ノ國道、此國道モ其經費ハ時ニ修繕ノ負擔
ハ管理者ニ於テ之ヲ負擔スルト云フコトニナッテ居リマスガ、旣ニ國道ト稱
シテ廣ク府縣ヲ通ジ國民一般ノ利便トナルベキ道路デアル以上ハ、其費用ノ
負擔ヲ一地方ニ負擔セシムルト云フコトハ如何ナルモノデアルカ、勿論現行
ニ於テ國道ト雖地方ノ負擔ニナッテ居リマスル慣例デアリマスルナレドモ、此
道路法案ヲ定メラレ具權限ヲ明ニセラル·以上ハ、國道ハ國費ヲ以テ支辨ス
ルト云フコトガ當然ノ理由デハナイカ、然ルヲ尙ホ從前ノ慣例ニ依ッテ地方ノ
負擔トスルト云フコトハ如何ナル理由デアルカ、此理由ヲ伺ヒタイノガ第一、
第二ニハ國道ニシテ國庫ノ支辨ニ屬セザルモノ、府縣費ヲ以テ負擔スルコト
ガ出來ル譯デアリマスルナラバ、府縣道ノ經費モ縣費以下ニ負擔セシムルト
云フコトモアッテ然ルベキコトト考ヘマスガ、ソレ等ノ規定ガ本案ニ見エテ居
リマセヌ、ソレハ如何ナル理由デアルカ、之ヲ伺ヒタイ、ソレカラ第三ニ國
庫ガ府縣道以下ニ補助スルト云フコトヲ本案第三十五條ニ規定サレテアリマ
スガ、府縣ガ郡道以下ニ補助ヲ與ヘルト云フコトハ規定ガゴザイマセヌ、是
ハ規定ガナクトモ從前ノ慣例ニ依ッテ補助スルト云フコトハ道路法ニ因ッテ
差支ナイト云フ御見込デアリマスカドウカ、是ガ第三ノ御尋、第四ニ御尋イ
タシタイノハ、從前ノ道路法ニ於キマシテモ矢張リ國道、府縣道或ハ補助道
路ト云フ色〓名ガアリマスルガ、其國道縣道ナルモノニ付テハ、道幅ニ規定
ガアッタ筈デアリマス、今般ハ此法案ニ其規定ヲ定メテアリマセヌ、是ハ或ハ
本案三十一條ニ道路ノ構造ハ命令ヲ以テ之ヲ定ムト云フコトガアリマスルカ
ラ、或ハ命令ノ中ニ其規定ヲサルヽト云フ御見込カハ存ジマセヌガ、此道幅
ノ規定ハ全然定メラレナイ譯デアリマスカ、之ヲ伺ヒタイ、ソレカラ第五ニ
御尋シタイノハ過日衆議院ニ於テ道路ハ國ノ營造物ト云フ問題ニ付テ内務大
臣ノ御說明ガ明瞭ヲ缺イテ居ルヤウニ思ヒマス、此道路ノ國ノ營造物ト云フ
事柄ニ付テハ最モ大切ナル問題デゴザイマシテ、此資格ガ明ニ定リマセヌト、
行政上ノ處分ニ於テ甚ダ混雜ヲ來タスノデアリマス、然ルニ衆議院ニ於ケル
內務大臣ノ御說明ニ於テハ、從來ノ例ニ依ッテ斯ク定メタガ、尙ホ此問題ニ付
テ詳シキ說明ヲ要スルナラバ、法制局長官デモ連レテ來テ說明サセマセウト
云フ御言葉ガアッテ、其後法制局長官ナドノ說明モ一向伺ハナイノデゴザイマ
スガ、是ハ當局ノ責任アル御辯明ヲ要スルコトガ最モ必要デアルト思ヒマス、
之ヲ明ニ御說明ヲ願ヒタイ、マダ外ニモゴザイマスガ、先ヅ是ダケヲ御尋イ
タシマス
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=55
-
056・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 御答イタシマス、第一ハ既ニ國道ト名ノアル以
上ハ總テ國費ニシタラドウカト云フ、斯ウ云フ御質問ト心得マスガ、此案ニ
於テハ此國道ハ全部國費ヲ以テ支辨スルコトニ致シテアリマスルガ、大體
是マデノ慣例ヲ襲フ積リデゴザイマス、其方ガ今日ノ實際ニ適當シテ居ルト
考ヘマシテ、是ハ變更イタサヌコトニ致シマシタ、縣道以外、郡ナリ、若ク
ハ市町村道ノ負擔デ以テ開鑿ノ出來ルヤウニシタラドウカ、斯ウ云フ御話
デアリマシタガ、是等ハ總テ此案ニ於テハ從來ノ例ニ依ルコトニ是亦イタシ
テゴザイマス、第三ハ三十五條ノ御尋デアッタカト思ヒマスガ、之ニハ「特別
ノ事由アル場合ニ於テ府縣道以下ノ道路ノ新設又ハ改築ニ要スル費用ニ付亦
同シ」卽チ國庫ヨリ特別ノ事情ノアル場合ハ補助ヲスル、斯ウ云フコトニナッ
テ居リマス、ソレカラ其次ニ道路ノ道幅ヤナドハ如何ニスルカ、是ハ命令ヲ
以テ定メル積リデゴザイマス、第五ニ國ノ營造物ト云フコトニ付テノ御尋デ
アリマシタガ、大體此案ハ總テ道路ハ國ノ營造物ナリト云フ考ヲ以テ制定イ
タシタノデアリマス、併シ國ノ營造物ト云フコトニ付テハ、色〓學者ノ間ニ
モ議論ガアルヤウニ聞イテ居リマスカラ、ソレデ衆議院ニ於ケル答辯ハ今御
尋ノ如ク申シタノデゴザイマス、此中ニハ其主義ヲ以テ規定シテ居リマス、
何等國ノ營造物ト云フ文字ヲ用ヒタ次第デモ何デモアリマセヌ、其邊ノ議論
ハドウデモ宜カラウト思ウテ返事ヲ致シタ次第デ、但シ主義ハ右樣ナ考ヲ以
テ此法案ヲ作ッテゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=56
-
057・高崎親章
○高崎親章君 唯今ノ御答ノ中ニ第三ノ御答ハ私ノ御尋シマシタ目的ニ外レ
テ居リマス、第三ニ御尋ヲ致シマシタノハ、國庫ガ府縣以下ノ、府縣道以下
ニ補助スルト云フコトハ法案ニ規定ハアルガ、府縣ガ郡道以下ニ補助スルト
云フコトノ規定ガナイ、是ハ現ニ今府縣ニ行ハレテ居ル事柄デアリマシテ、
縣費ヲ以テ市町村ニ向ッテ補助ヲスルト云フコトハ幾ラモアルコトデアリマ
ス、然ルニ其規定ハ少シモ現レテ居リマセヌ、是ハ禁ゼラレタ譯デアルカ、
法案ニ規定ガナクトモ一向差支ナイト云フ見込デアルカ、斯樣ニ御尋ヲ致シ
タノデアリマス、ソレカラ序ニ伺ヒマスルノハ、唯今ノ御說明ノ中ニ國道ニシ
テ全部國庫ノ負擔ニナルベキモノノアルト云フコトヲ言ハレマシタガ、法案
ノ中ニ左樣ナコトハ見エマセヌ、何レモ補助ニナッテ居リマス、其補助ヲ全部
總テ國庫ガスル積リデアリマスカ、ドウデアリマスカ、此二ツヲ伺ヒマス
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=57
-
058・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 唯今ノ第二問ノコトハ三十三條ニ「主務大臣ノ
指定スル國道ノ新設又ハ改築ニ要スル費用ハ國庫ノ負擔トス」トゴザイマス、
ソレヲ申上ゲタ次第デゴザイマス、ソレカラ府縣ナリ、郡ナリカラソレ以下
ノ團體ニ向ッテ補助イタシマスルコトハ是マデ通リデ變更ヲ加ヘナイ積リデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=58
-
059・高崎親章
○高崎親章君 第一ノ御答ヲ見マスルト、此新築、改築、是ハ此法案ニ規定
シテアルノハ新築改築ニ限ラレテ居リマス、維持修繕費ト云フヤウナモノガ
ナケレバナラヌ筈デ、私ノ御尋スル所ハ常ノ經費ト云フコトヲ申スノデアリ
やくろ、併シ是ハモウ別ニ重ネテ御尋ハ致シマセヌ、尙ホ外ノ問題ニ付テ御尋
イタシタイノハ、本案第六條ニ「道路ヲ構成スル敷地」トアリマス、此敷地ト
云フコトハ唯路面ヲ申スノデアルカ、地盤ノ底マデ指シテアリマスノカ、ソ
レモ先刻ノ國ノ營造物ト云フ問題ニ大ニ關係ヲ有ッテ居リマスガ、是ノドウ解
釋イタセバ宜シイノデアルカ、ソレカラ次ニ第八條ノ國道ヨリ町村道ニ至ル
マデ正シク、五階級ニ分タレマシタガ、現在ノ道路ハ國道ト言ヒ府縣道ト
言ヒ、或ハ町村道トモ申シ、且ツ里道トモ申シテ居リマス、ソレデ今般明ニ
第八條ニ斯ノ通リ名稱ヲ定メラレタ以上ハ、此法案實施ノ場合ニ於テハ、ソ
レ〓〓管理者ガ此現在ノ道路ニ向ッテ其道路ノ資格ヲ認定スベキモノデアル
ヤ否ヤハ、是ハ改築、新築若クハ修繕ノ場合ニ於テ認定スベキカ、此道路法
案實施ノ場合ニ於テ悉ク皆現在ノ道路ニ向ッテ其資格ヲ定メラレル譯ニナリ
マスノデアリマスルカ、ソレヲ伺ヒタイ、ソレカラ第十一條、第十二條、之
ニ「鐵道停車場」ト云フコトガアリマス、電軍ノ停留場ト云フコトハ如何デア
リマスルガ、段々電車ト云フモノハ市內バカリデナク郡ノ方ニモ現在モアリ
將來モ敷設セラレル、鐵道停車場ヨリ寧ロ必要ナル電車停留場ノ必要ガ生ジ
テ來ルト思ヒマス、此電車停留場ハ左程ニ見ラレナイノデアリマスカ、或、
先刻阪本君ノ質問ガアリマシタ十一條、十二條ノ衆議院ガ追加シタ此箇條ニ
依ッテ、是等ハ地方開發ノ爲ニ必要ト云フ文字ノ中ニ含マセテアルノデアリマ
スカ、先刻內務大臣ノ御答辯ヲ伺ヒマスト、阪本君ノ御尋ニ對シテ甚ダ疑惑
ヲ生ズルノデアリマス、御答辯ノ趣意ニ依リマスルト、此衆議院ガ追加シタ
ノハ何等效用ガナイヤウデアリマス、卽チ內務大臣ノ御答ハ「前各號ニ該當
スルモノ」ト云フコトガ書イテアルカラ宜イト云フコトヲ言ハレテ居ル、前
各號ニ該當スルモノデアルナラバ、既往將來ヲ問ハズ、後トカラ生ジタモノ
デモ何モ此ニ新ニ書イテ置カナクテモ、卽チ前各號ニ書イテアル鐵道停車場
トデアルカ、其他港津デアルトカ云フヤウナ必要ナコトガ生ジタナラバ、其時
ニ之ヲ認定スレバ宜イノデアリマス、何モ追加ノ必要ハナイノデアリマス、是
ハドウ云フ御解釋ニナッテ居リマスカ、之ヲ伺ヒタイノデアリマスソレカラ
序ニ伺ヒマスノハ第十五條ニ町村長ハ特ニ必要アル場合ニ於テハ、他ノ町村
ニ向ッテ協議ヲスル、意見ヲ聽クト云フコトガアリマスガ、若シ其意見ヲ聽イ
テ同意ヲ得ナカッタ時ニハ、到頭イケナイノデアリマスカ、又見解ガ合ハナイ
デ爭ノ場合ニナッタ時ニハ縣知事ト云フモノカ、內務大臣ト云フモノカガ、之
ヲ裁斷スルノデアルカ、是ハ何等カ規定ハアリマスルカ、是ハサウ云フ衝突
ヲ起シタ場合ニハ如何ナル處置ヲ取ラレル積リデアリマスカ、之ヲ伺ヒタイ
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=59
-
060・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君)此第六條ノ「道路ヲ構成スル敷地」ハ、 詰リ道路ニ
必要ナダケノ意味デアリマスカラ、路面竝ニ幾ラカソレニ必要ナダケノモノ
ハ之ニ含ンデ居ルト、斯ウ御解釋ヲ下サイ、詳シイコトハ却ッテ私ヨリ政府委
員ノ方ガ委員會ニ於テ詳シク御說明ヲ申シマス、第八條、此國道、府縣道等
ヲ認定スルニハ、此法實施ノ際ニ致スノデアルカト云フ御尋デアリマスガ、
此法實施ノ際ニ認定イタス積リデアリマス、第十一條、電車ノ停車場ニ達ス
ルト云フヤウナコトガナイト云フ御尋ノヤウデシタガ、是ハ必要ハアルマイ
ト思ヒマシテ、尤モ極メテ必要ナル地點ガアリマスレバ大〓ハ此ニ列記シテ
アル箇條ニ這入ラウト思ヒマスガ、若シ這入ラナケレバ臨時認定イタスモ差
支ナカラウト考ヘマス、明記シテ置ク必要ハナイト思フノデス、次ニハ先キ
阪本君ノ御質問ニナリマシタ箇條デアリマスガ、例ヘバ樞要ノ地ト申シマシ
テモ現在デハ全ク未開ノ土地デアリマスレバ、ソコニ向ッテ樞要ノ土地トハ申
サヌノデアリマス、併シ將來其邊ニ道路ヲ開イテ置ケバ餘程重要ナ土地ニナ
ルト云フ見込ノアル時ニハ、此修正シタ箇條ニ依ッテ働クノニ都合ガ好カラ
ウト思ヒマス、ソレカラ第十五條デ町村ノ意見ヲ異ニシタ場合ハ監督ノ働キ
ニ依ッテ、何レガ是ナリト云フコトニ決定ヲ致シテ途ハ付ク積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=60
-
061・矢口長右衞門
○矢口長右衞門君 本員ノ質問イタシタイ所ハ、此第十條竝ニ第十一條デア
リマス、第十條ニ「國道ノ路線ハ左ノ路線ニ就キ主務大臣之ヲ認定ス」トアリ
やき、又第十一條ニ於テ「府縣道ノ路線ハ左ノ路線ニシテ府縣內ノモノニ就
キ府縣知事之ヲ認定ス」トアリマス、是ハ何等諮問モセズ、何レベモ相談ヲセ
ズシテ國務大臣ガ國道ヲ決定シ、府縣知事ハ府縣道ヲ決定スルト云フ意思デ
ゴザイマセウカ、旣ニ御承知デゴザイマセウガ、府縣ノ如キハ一等、二等ト云
フコトヲ決スルニハ府縣會ノ協賛ヲ經テ居リマスガ、是等ノ法案ニ付キマシ
テハ何等諮問モセズ、大臣若クハ知事デ道路ヲ決定スルト云フコトデゴザイ
マスカ、チヨット其事ヲ御質問イタシマス
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=61
-
062・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 唯今御尋ノコトハ今日ノ實際ニ於キマシテハ、
地方ニ於テハ或ハ地方議會ニ諮問ヲスルシ、又諮問ヲセザル所モアリマス
此點ニ付テ衆議院ニ於キマシテハ、成ルベク地方議會ニ諮問ヲスルヤウニシ
テ貰ヒタイト云フ希望ガアリマシタ、差支ナイコトト考ヘマシタカラ、其希
望ヲ容レルコトニ返事ヲ致シテ置キマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=62
-
063・高崎親章
○高崎親章君 終ニモウ一件必要ナルコトヲ御尋イタシタイ、第三十三條ニ
衆議院ガ修正ヲ加ヘテ「主トシテ軍事ノ目的ヲ有スル國道」ト云フ文字ヲ挿入
シテ居リマス、是ハ政府ハ御同意ニナッテ居リマスガ、「主トシテ軍事ノ目的ヲ
有スル國道」トアル以上ハ素ヨリ主務大臣ノ指定ニ屬シナケレバナラヌ筈デ
アリマス、主務大臣ガ指定セラレル以上ハ何等特ニ「軍事ノ目的ヲ有スル國
道」云々ト云フ文字ヲ此ニ挿入シナクトモ、矢張リ原案ノ「主務大臣ノ指定ス
ル國道ノ新設又ハ改築」ト云フコトデ事足ルノデアリマス、之ヲ故ラニ此文字
ヲ挿入シタ所以ハ、或ハ新築若クハ改築ノ外ニ、平素ノ維持修繕費マデモ國
庫ガ負擔スルト云フ目的ヲ以テ此修正ヲ加ヘタカト思ヒマス、果シテサウデ
アルナラバ私ノ見ル所デハ「軍事ノ目的ヲ有スル國道其ノ他主務大臣」ト書イ
テハ、其平素ノ維持修繕費ハ是ニ這入リマセヌ、是ハ如何ナル御解釋デ衆議
院ノ修正ニ御同意ニナッタノデアリマスカ、之ヲ伺ヒタイ
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=63
-
064・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 衆議院ノ修正通リニナリマスレバ、「主トシテ軍
事ノ目的ヲ有スル國道」ト云フノハ、殊更主務大臣ノ指定ヲ待ツマデモナク、
明ニナッタ次第デアリマス、左樣ニナリマシテセ別ニ差支ノナイ事柄デゴザイ
マスカラ、是ハ修正ニ同意ヲ致シタノデアリマス、修正ノ趣意ハ主トシテ其
處ニゴザイマス、此外ノ意味ハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=64
-
065・湯淺倉平
○湯淺倉平君 本員ハ此法案ニ依リマシテ、初メテ郡道ナルモノガ國ノ法規
ノ上ニ公認セラレルト云フコトニナリマスルニ付キマシテ、曾テ我ガ政府ニ
聲明シテ居リマシタ所ノ郡制廢止ト云フ問題トノ關係ヲ伺ヒタイノデアリマ
ス、内務大臣ノ御說明ニモアリマシタ通リ、明治九年太政官達ノ第六十號ガ
我國ノ道路ニ關スル法令ノ根本ヲ爲シテ居ルモノデアリマスルガ、其法規及
其他ノ道路ニ關スル法令ノ中ニハ、郡道ト云フモノハ今日マデ認メラレテ居
ラナイノデアリマス、然ルニ今囘御提出ニナリマシタル法案ニ依リマスト云
フト、郡道ナルモノガ第八條ニ於テ認メラレタ、サウシテ此郡道ニ當然編入
セラルベキ資格ノ規定ガ十二條ニ認メテアリマス、第三十三條ニ至リマシテ、
是ガ維持負擔ヲ郡ナル公共團體ニ命ズルト云フコトニナッテ居リマス、其結果
ト致シマシテ、郡制ト云フモノガ此法律ヲ實行スルニ付キマシテハ郡制ヲ
存置スルト云フコトガ第一ノ必要條件デアルト考ヘマス、ノミナラズ此法案
實施ノ曉ニハ先刻阪本君カラモ述ベラレマシタ通リ、郡ナル公共〓ガ發達ヲ
來タスト云フコトハ心然ノ結果ト考ヘル、果シテサウデアルト致シマスルナ
ラバ、此法案ノ實施ト云フコトニ依ッテ郡制存廢問題ト云フコトニ付テハ、是
デ安定ヲ見ルモノト了承イタシテ差支ナイモノデゴザイマセウカ、政府ノ御
考ヲ伺ヒタイ
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=65
-
066・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 御答イタシマスガ、郡道ナル名稱ハ成ル程今迄
ハ無カッタカト記憶イタシマスガ、併シ事實ハ郡道ナルモノハ湯淺君モ御承知
デゴザイマス、今日地方ノ實況ニ於テ郡ガ自ラ郡道ヲ經營シテ居ルモノト、經
營シテ居ラナイモノト兩樣ゴザイマス、此法案ヲ制定スルニ方リマシテハ、
右樣ナ地方ノ實況デゴザイマスルカラ、全ク事實ニ於ケル所ノ郡道ヲ認メナ
イデ定メルヨリハ、郡道ナルモノヲ茲ニ認メタ方ガ、事實適當デアルト考ヘ
タ次第デアリマス、サウナレバ卽チ御尋ノ如ク縣制ニ對シテ前ニ私共郡制廢
止ノ意見ヲ持ッテ居ッタコトガアルカラ、ソレハドウナルカト云フ畢竟御尋ト
思ヒマス、免モ角此法案ヲ作ルニ方リ、今日ニ於テ郡ナルモノハ存在シテ居
ルノデアリマス、此實況ニ付テ郡ヲ認メテ郡道ヲ置ク方ガ宜イト云フ考デヤ
ッタノデアリマス、然ラバ郡制ハ廢止ノ意見ハ捨テカト御尋カモ知レマセヌガ
郡制ハ廢止シタ方ガ宜シイト云フ考ハ今ニ於テモ持ッテ居リマス、併ナガラ其
意見ヲ持ッテ居ルカラ玆ニ郡制廢止法案ヲ提出スルヤ否ヤト云フコトハ是ハ
別ナ問題デアリマス、左樣ニ御答スレバ多少郡制ノ前途ニ對スル不安ノ念ヲ
懷クカドウカト云フ御尋ガ又重ネテ起リマセウガ、多少サウ云フ念ヲ起サレ
テ私ノ腹カラ申セバ致方ガゴザイマセヌ、併シ現在ノ制度カラ申セバ郡制廢
止案ナルモノガ玆ニ提出セラレザル以上ハ、郡制ハ其儘存續シテ居ルノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=66
-
067・湯淺倉平
○湯淺倉平君 唯今ノ御答辯ヲ伺ヒマスルト云フト郡制廢止ト云フコトニ付
テハ、政府ハ郡制廢止ノ方ガ宜シイト云フ考ヲ持ッテ居ルカ、之ヲ實行スルカ
否ヤト云フコトハ答辯ヲ致シ兼ネルト云フヤウナ御答デアッタヤウニ伺ヒマ
スガ、本年道路法案ノ御提出ニ依ッテ、曾テ法ノ上ニ無カリシ所ノ郡道ナルモ
ノヲ、郡ナル公共團體ノ維持負擔スルコトニナリマシテ、澤山ノ郡道ガ出來
ルト云フニトハ、是ハ一點疑ノ無イコトト考ヘマス、唯今內務大臣ノ御答ニ
依リマスト、郡道ナルモノハ現在ニ於テモ事實存シテ居ルト云フコトデアリ
マシタガ、成ル程事實郡費支辨ノ里道或ハ郡道ト唱ヘルモノガ、僅ニ今日二
百三十何郡、其延長六千里バカリノモノガ存在シテ居リマス、此法案實施
ノ曉ニハ全國各府縣ニ及ンデ延長モ非常ナモノニナルト云フコトハ是ハ疑
ナイニトデアルト思ヒマス、詰リ此法案ノ十二條ニ依リマスレバ、從來國道
トスルニハ其値打ガ輕イ、里道トシテ町村ノ支辨ニスルニハ少シク重イト云
フヤウナモノガ、此法案ノ十二條ニ依リマシテ、自然郡道ニナルト云フコト
火ヲ祝ルヨリ明ナコトデアルト思フ、詰リ此法案ニ依リマシテ、郡道ナ
ルモノヲ認メラレ、郡制ノ存置ヲ安定ナラシメ、郡ナル公共團體ノ發達ヲ促
スト云フコトニナルニ拘ラズ、本年ハ郡ト云フ公共團體ノ發達ヲ促スガ、將
來郡制ハ廢止スルカモ知レナイ、斯ウ云フ御答ハ誠ニ奇異ノ感ジヲ懷ク次第
デゴザイマスガ、意見ニ涉ルコトハ避ケマシテ、續イテ伺ヒタイノハ、若シ
郡制ヲ廢止スルト云フヤウナ御考ヲ御持ニナッテ居ルト致シマシタナラバ、郡
制廢止ノ結果ト致シテ郡道ナルモノハ存在スルノデアリマウカ、郡道ト云フ
モノハ無クナルノデアリマセウカ、若シ郡道ヲ存置スルト云フコトデアリマ
スレバ、其郡道ノ維持、負擔ハ如何ナル〓體ガ致スコトニナルノデアリマス
カ、又郡道ヲ廢止スルト云フコトニナリマシタナラバ、郡道ニ該當スル路線
ハ何レノ公共〓體ガ·······何ト云フ名稱ニナルノデアリマスカ、縣道ニナルカ
或ハ里道ニナルカ、ドウ云フコトニナルノデアリマセウカ、場合ニ依レバ郡
制廢止ト云フコトヲ實行スルカ知レナイト云フヤウナ御考ヲ持ッテ居ラルノ
デアリマスレバ、其邊ノ御樣子ヲ伺ヒタイト思ヒマス
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=67
-
068・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 私ノ御答へ申シマシタノハ郡制ヲ廢スルカモ知
レヌトハ申上ゲナイ、郡制廢止ノ意見ハ前年ト變ハル所ガナイト申上ゲタ併
ナガラ郡制ヲ廢スル存スルト云フコトニ付テハ、一點御答ヲ致シテ居リマセ
ヌ、ソレハ唯自分ノ意見ダケ申上ゲレバ宜イト思ッタカラ、左樣ニ申シタノデ
アリマス、免モ角郡廢止案ヲ出サナイ以上、現在ニ於テ郡ナルモノハ現在シ
テ居ルノデゴザイマスカラ、此狀況ニ方ッテ今此道路法案ヲ制定スルニ如何
ニスルカ、郡制ノコトヲ考慮シテ、今カラ郡道ヲ認メヌヤウニスルカ、郡制
トハ別問題ニシテ、現在郡ナルモノガ存在シテ、又郡道ヲ經管シテ居ル所モ
アルノデアルカラ、如何ニ處置イタスガ宜イカト云フ考慮ノ上カラ、現在ノ
實況ニ最モ適應スルニハ此法案ノ如ク致スガ可ナリト信ジテ、今ノヤウナ案
ヲ出シタヤウナ次第デアリマス、將來若シ郡制ヲ廢止スルコトガ行ハレマシ
タナラバ、其時ニハ郡道ハ無クナルコトガ自然デアラウト思ヒマス、其無ク
ナッタノハ如何ニ處置ヲスルカト云ヘバ、或ハ引上ゲテ府縣ノ經營ニナルモノ
モアリマセウ、町村ノ經營ニナルモノモアリマセウト考ヘマス、其事ハ將來
サウ云フコトガアルトスルナラバ、其時ニ至ッテ處置スルモ何等困難ナ事柄デ
ナシ、此法案ヲ決定スルニ其邊マデ審議ヲ盡ス必要ガナイト考ヘタ次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=68
-
069・湯淺倉平
○湯淺倉平君 御答辯ニ對シマシテ尙ホ重ネテ伺ヒタイコトガ多々ゴザイマ
スガ、段々時刻モ遲レマスカラ、一應是デ止メマシテ委員會等ニ於テ御尋イ
タシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=69
-
070・高木兼寛
○男爵高木兼寬君 本案ノ特別委員ハ十五名ト定メテ御選定アラムコトヲ希
望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=70
-
071・中川興長
○男爵中川興長君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=71
-
072・山根武亮
○男爵山根武亮君 先刻本員ハ質問ヲ致サウト思ヒマシタガ、皆サンノ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=72
-
073・徳川家達
○議長(公爵德川家逹君) 今委員ノ問題ニ移ッテ居リマス、高木男爵ノ動議ニ
御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=73
-
074・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、書記官ヲシテ特別委員ノ
氏名ヲ朗讀イタサセマス
〔岡書記官朗讀〕
道路法案特別委員
伯爵林博太郞君子爵榎本武憲君子爵立花種忠君
阿部浩君男爵山根武亮君渡正元君
古市公威君男爵肝付兼行君石黑五十二君
阪本 多之助君山之內一次君高橋作衞君
湯淺倉平君大谷嘉兵衞君橫山章君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=74
-
075・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 休憩ヲイタシマス
午後零時六分休憩
午後一時三十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=75
-
076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、日程第四、大正六
年法律第六號中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
大正六年法律第六號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正八年二月二十五日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
大正六年法律第六號中改正法律案
大正六年法律第六號中左ノ通改正ス
附則第五項中「大正九年一月一日」ヲ「大正八年四月一日」ニ、「大正八年十二
月三十一日」ヲ「大正八年三月三十一日」ニ、「三分ノ二」ヲ「六分ノ一」ニ、「二
分ノ一」ヲ「八分ノ一」ニ改ム
附則第六項中「大正十一年一月一日」ヲ「大正八年四月一日」ニ、「大正八年十
二月三十一日」ヲ「大正八年三月三十一日」ニ、「八分ノ一」ヲ「三十二分ノ一」
ニ改メ「、大正九年一月一日ヨリ大正九年十二月三十一日迄ハ同上ノ差額八
分ノ二、大正十年一月一日ヨリ大正十年十二月三十一日迄ハ同上差額八分
ノ四」ヲ削ル
附則第十三項中「大正九年一月一日」ヲ「大正八年四月一日」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
參照
軍人恩給法中改正法律大正八年七月(大正八年七月)
(法律案第六號)
軍人恩給法中左ノ通改正ス
第十條中「軍人前條ニ該當スル傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルトキノ現官
階」ヲ「第六條ニ依ル官階」ニ改ム
同條第一號中「戰闘ノ爲」ヲ「戰鬪又ハ戰鬪ニ準スヘキ公務ニ因リ」ニ改ム
第十四條第一號中「戰鬪ノ爲」ヲ「戰鬪又ハ戰鬪ニ準スヘキ公務ニ因リ」ニ改
ム
第十五條中「前條ニ該當スル傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルトキ」ヲ「現役
ヲ離レタルトキ」ニ改ム
第十八條中「海軍水雷夫及北海道移住ノ際定規ノ給助ヲ受ケタル屯田兵下
士卒」ヲ「及海軍水雷夫」ニ改メ同樣ニ左ノ一號ヲ加フ
八北海道ニ移住ノ際定規ノ給助ヲ受ケタル屯田兵下士卒ニシテ從軍シ
又ハ屯田兵村監視若クハ屯田兵部隊附トナリ軍隊ノ常務ニ服シタル
トキハ其日數
第二十七條第一號ヲ左ノ如ク改ム
-戰死シ又ハ戰鬪若クハ戰闘ニ準スヘキ公務ニ因ル傷痍ノ爲メ死歿シ
タルトキ
第二十七條ノ二第十條、第十四條及前條ノ戰鬪ニ準スヘキ公務ニ因ル傷
疲ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
附則
本法ハ大正七年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十八條第八號ノ改正規定ハ本法施行前ニ現役ヲ離レ又ハ現役中死歿シタ
ル者ニモ之ヲ適用ス
前項ノ規定ニ該當スル者又ハ其ノ遺族ニシテ本法施行ノ際本法規定ノ退職
恩給、免除恩給、增加恩給又ハ扶助料ヲ受ケサル者ニハ本法施行ノ日ヨリ
本法規定ノ退職恩給、免除恩給、增加恩給又ハ扶助料ヲ給ス
本法施行ノ際退職恩給又ハ免除恩給ト增加恩給トヲ併セ受ケ又ハ受クヘキ
者ニシテ本法規定ノ金額ヲ受ケサル者ニハ本法施行ノ日ヨリ本法規定ノ金
額ヲ給ス
本法施行ノ際扶助料ヲ受ケ又ハ受クヘキ者ニシテ本法規定ノ金額ヲ受ケサ
ル者ニハ大正九年一月一日ヨリ本法規定ノ金額ヲ給ス但シ下士以下ノ者ノ
遺族ニハ本法施行ノ日ヨリ大正七年十二月三十一日迄ハ本法施行前ノ規定
ニ依リ受ケ又ハ受クヘキ金額ニ該金額ト本法規定ノ金額トノ差額三分ノ一、
大正八年一月一日ヨリ大正八年十二月三十一日迄ハ同上ノ差額三分ノ二ヲ
併給シ准士官以上ノ者ノ遺族ニハ大正八年一月一日ヨリ大正八年十二月三
十一日迄ハ本法施行前ノ規定ニ依リ受ケ又ハ受クヘキ金額ニ該金額ト本法
規定ノ金額トノ差額二分ノ一ヲ併給ス
本法施行ノ際退職恩給又ハ免除恩給ヲ受ケ又ハ受クヘキ者ニシテ本法規定
ノ金額ヲ受ケサル者ニハ大正十一年一月一日ヨリ本法規定ノ金額ヲ給ス但
シ大正八年一月一日ヨリ大正八年十二月三十一日迄ハ本法施行前ノ規定ニ
依リ受ケ又ハ受クヘキ金額ニ該金額ト本法規定ノ金額トノ差額八分ノ
大正九年一月一日ヨリ大正九年十二月三十一日迄ハ同上ノ差額八分ノ
二、大正十年一月一日ヨリ大正十年十二月三十一日迄ハ同上ノ差額八分ノ
四ヲ併給ス
前三項ノ場合ニ於テ陸軍卒ニ付テハ陸軍一等卒ノ額ニ依ル
第四項乃至第六項ノ規定ハ第三項ノ規定ニ依リ退職恩給、免除恩給、增加
恩給又ハ扶助料ヲ給スル者ニ之ヲ適用セス
本法施行ノ際陸軍武官傷痍扶助及ヒ死亡ノ者祭粢竝ニ其家族扶助〓則、海
軍退隱令又ハ陸軍武官恩給令ニ依リ扶助料、退隱料又ハ恩給ヲ受ケ又ハ受
クヘキ者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ第四項乃至第六項ノ規定ニ準シ本法規
定ノ金額ヲ給ス
前項ノ規定ニ依リ退隱料又ハ恩給ヲ受ケ又ハ受クヘキ者ノ遺族ニハ前項ノ
規定ヲ準用ス
第五項又ハ第九項ノ規定ニ依リ扶助料ヲ受ケ又ハ受クヘキ者權利消減シタ
ル場合ニ於テ轉給ヲ受クヘキ者ニ給スヘキ扶助料ニ付テハ第五項ノ規定ヲ
準用ス
第三項ノ規定ニ依リ新ニ退職恩給、免除恩給、增加恩給又ハ扶助料ヲ受ケ
ムトスル者及第三項乃至第六項又ハ第九項ノ規定ニ依リ金額ノ增加ヲ受ケ
ムトスル者ハ本法施行ノ日ヨリ七年內ニ之ヲ請求スルニ非サレハ其ノ權利
ヲ抛棄シタルモノトス
第十項又ハ第十一項ノ規定ニ依ル扶助料ヲ受ケ又ハ受クヘキ者ハ轉給ヲ受
クヘキ事由ノ生シタル日ヨリ七年內ニ金額ノ增加ヲ請求スルニ非サレハ其
ノ權利ヲ抛棄シタルモノトス但シ大正九年一月一日以後ニ於テ轉給ヲ受ク
ヘキ事由ノ生シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
〔政府委員栃內曾次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=76
-
077・栃内曾次郎
○政府委員(栃内曾次郞君) 說明ヲ致シマス、明治四十四年ニ軍人恩給法ガ
改正ニナリマシテ、其以前ノ規定ニ依リマシテ恩給ヲ受ケテ居リマシタ者ニ
向ヒマシテ、現行法ニ依ッテ支給ヲ致シタイト云フノガ大正六年法律第六號デ
ゴザイマス、然ルニ此大正六年法律第六號ノ制定セラレマシタ當時ハ、財政
上ノ御都合ト云フコトデゴザイマシテ、之ヲ一度ニ更正スルコトガ出來マセ
ヌノデ、五箇年ニ亙リマシテ、大正七年一月ヨリ五箇年ニ亙リマシテ逐次ニ
更正スルト云フコトニナッテ居リマス、然ル所近年物價騰貴ノ結果ト致シマシ
テ生計上ノ困難ヲ訴フル者ガ多クナリマシテ、其救濟ノ一策トシテ此度ノ改
正案ガ提出サレタ譯デアリマス、之ニ依リマスト大正六年法律第六號ノ更正
ヲマダ經ナイ所ノモノヲ繰上ゲマシテ、一時ニ八年ノ四月一日ヨリ更正ヲス
ル、斯ウ云フコトニナリマスノガ眼目デゴザイマス、ドウカ御協賛ヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=77
-
078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御質問モナイト認メマスカラ特別委員ノ氏名
ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔岡書記官朗讀〕
大正六年法律第六號中改正法律案特別委員
候爵蜂須賀正韶君子爵五辻治仲君柴田家門君
男爵西紳六郞君男爵藤井包總君男爵山內長人君
男爵德川厚君市來乙彥君八木久兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=78
-
079・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第五、時局ノ影響ニ因ル地方稅制限擴張ニ關
スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
時局ノ影響ニ因ル地方稅制限擴張ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正八年二月二十五日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
時局ノ影響ニ因ル地方稅制限擴張ニ關スル法律案
北海道、府縣及市區町村ハ當分ノ內時局ノ影響ニ因リ必要ナル費用ニ充ツ
ル爲內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受ケ明治四十一年法律第三十七號第一條
乃至第三條ノ制限ヲ超過シテ課稅スルコトヲ得但シ左ノ限度ヲ超ユルコト
ヲ得ス
-北海道、府縣ニ在リテハ明治四十一年法律第三十七號第一條乃至第
三條ニ於テ北海道、府縣ニ付規定シタル各稅ノ制限率又ハ制限額ノ
百分ノ八十
-市區町村ニ在リテハ明治四十一年法律第三十七號第一條乃至第三條
ニ於テ市區町村ニ付規定シタル各稅ノ制限率又ハ制限額ノ百分ノ六
十
前項ノ規定ハ明治四十一年法律第三十七號第四條ノ場合ニ之ヲ準用ス
明治四十一年法律第三十七號第五條第三項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準
用ス
附則
本法ハ大正八年度ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=79
-
080・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 本案ノ說明ヲ致シマス、時局以來地方ノ財政
ハ窮迫ヲ〓ゲマシテ、最近甚シキ狀況ニアリマス、依ッテ當分ノ中地方財源ノ
中最モ主ナル國稅附加稅ノ制限ヲ緩和シテ以テ地方財政ノ窮迫ヲ救ヒ、其緩
和ヲ圖ラムト欲スルノデアリマス、御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ望ムノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=80
-
081・阪本さん之助
○阪本釤之助君 本案時局ノ影響ニ因ル地方稅制限擴張ニ關スル法律デゴザ
イマスガ、斯ク表題ヲ設ケマスト穩ノコトノヤウニ聞エマスルガ、實ハ國民
ニ取リマシテハ全ク增稅デアルノデアリマス、名ハ地方稅ノ制限ノ擴張デア
リマスルガ、國稅ヲ增加セラレルト何等選ブ所ハナイノデアリマス、即チ現在
府縣町村ガ附加稅トシテ取ッテ居リマス所ノ稅ハ、府縣ニ於キマシテハ八割、
市町村ニ於キマシテハ六割ノ增加ニナル案ナノデアリマス、大ニ〓究スベキ
問題デアラウト思ヒマスガ、政府殊ニ文部當局ハ之ヲ以テ小學〓員、中學〓員
ノ優遇ニ向ケルノデアルガ、言ヒ換ヘテ見レバ國民〓育、中等普通〓育ノ改
善ノ一手段デアルト云フコトヲ聲明サレテ居ルヤウデアリマス、私ハ其結果
如何ト云フコトヲ大ニ疑フモノデアリマス、併シ是ハ議論ニナリマスカラ、
餘リ多クハ申シマセヌガ、茲デ承リタイノハ各地方ニ增稅ヲ許シテ、而シテ
其結果ガ其必要ヲ感ジデ居ル所ノ地方ノ小學、中學ノ〓員ヲ待遇スルト云フ
コトニ付テドウ云フ效果ヲ見ルノデアリマセウカ、數字カラ申セバ、府縣市
町村ガ其結果トシテ取ル所ノ金ガ總計何程ニナリマシテ、其中何程ヲ如何ナ
ル方法ニ依ッテ小學、中學ノ〓員ニ潤澤ヲ及ボスモノデアリマスカ、尙ホ餘裕
ヲ生ジマセウガ、其餘裕ハ如何ナル費用ニ使ハレルモノデアリマスカ、是ハ
內務ニモ關係ヲ致シマスカラ、實ハ內務大臣ノ答辯ヲモ得タイト存ジマスガ、
先刻承リマスレバ、衆議院トノ關係デ御出席ガムヅカシイト云フ御話ガアリ
マシタカラ、强ヒテハ求メマセヌガ、幸ニ大藏大臣モ御出席ノコトデアリマ
ス、免ニ角文部省ノ〓員優遇ト云フコトニ付テ其結果ガドウ云フコトニナル
モノデアルト御認ニナルカト云フコトト、其他ノ使ヒ方ハドウナルノデアル
カト云フコトハ、是ハ文部以外ノ、內務ナリ、大藏省ノ御解釋ハドウナルノ
デアルカ、此國民ニ········承ル所ニ依レバ、四千万圓カ、五千万圓ノ增稅ニナ
ルノデアリマスガ、其增稅ハ世間ノ唱フル所ノ小學〓員、中學〓員ノ隨分切
迫シタル事情ニ對シテ、ドウ云フ效果ヲ的確ニ現スコトガ出來ルカト云フコ
トヲ極ク的確ニ文部大臣ニ承リタイ、而シテ尙ホ其他ノ金ハ若シ有リトスレ
バ、如何ニ御使用ニナルカト云フコトヲ、他ノ大臣ヨリ承リタイノデアリマ
ス
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=81
-
082・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 御答ヲ致シマスガ、是ハ大體ニ於キマシテ時局
ノ影響ヨリシマシテ、總豫算ニ於テモ、臨時費ニ於キマシテモ此〓官ニ當ル
者ニ付キマシテ增俸ヲ致シ、又一般官吏ニ向フテ臨時手當ヲ支給スル、斯ウ云
フ計畫ヲ立テテ居ルノデアリマス、付キマシテハ此府縣竝ニ町村ニ居リマス
ル所ノ職員ト云フモノニ對シテモ相當ノ手當ヲ支給シタイ、サウシテ釣合ヲ
取リタイト云フコトノ案カラシテ起ッタノデアリマス、是ヨリ徵收シマシタ金
ハ何レ後ニ內務當局ノ方カラシテ御返事ヲ致シマセウガ、臨時手當、增俸、
物價騰貴ニ依ル旅費其他ノモノニ支給スル、斯ウ云フ大體ノ立方ニナッテ居リ
やくろ其中ニ就テ〓育ニ關スルモノヲ御話イタシマス、大體ハ制限ヲ擴張イ
タシマシテ、地方稅ニ於テ、卽チ府縣稅ニ於テ二千二百万圓マデイケルト云
フコトニ制限ヲ付ケタイノデアリマス、ソレマデ必ズ取ルト云フ積リデハア
リマセヌ、各縣ノ狀況ニ依リマシテ、色〓ニ區〓ニナリマセウ、又町村ノ方
ニ付キマシテハ二千万圓バカリノモノマデイケルト云フコトニ制限ヲ擴張イ
タス案デアリマス、而シテ其中デ此〓育ニ從事シマスル中等程度ノ〓員ハ主
トシテ府縣ノ支辨ニナッテ居リマスカラ、其方ニ對シマシテハ幸ニ昨年ノ暮ノ
府縣會ニ於キマシテ、相當ノ金ヲ支出シマシテ、或ハ增俸、或ハ手當、其額
ガ彼是二百万圓餘リニ超エテ居リマス、デ今二百万圓餘リバカリヲ府縣ガ出
シマスルト、大體五割ノ一般官吏ニ對スル手當ト釣合フヤウニナル譯デアリ
マス、ソレマデ成ルベクイクヤウニ心配ヲシタイト云フコトノ仕組ニナッテ居
リマス、ソレカラ町村ノ方ハ小學校ノ〓員、文部ノ關係ニ於キマシテハ是ハ
大變人數モ多イ、從ッテ俸給ノ額モ大體多クゴザイマスカラ、今日彼是支給シ
テ居ルモノガ四千万圓ヲ超エマス、ソレニ對シマシテ、若シウマク最高額マ
デイケレバ、一千百万圓バカリニナル見込デアリマス、是ハ府縣ノ狀況ニ依
リマスカラ、實行上ドウ云フコトニナリマスカ、實行シタ曉デナケレバ正確
ナコトハ分ラヌノデアリマス、大體ハサウ云フヤウナ計畫デ此仕組ガアルノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=82
-
083・高崎親章
○高崎親章君 私ノ今質問セムトスル所ノコトハ阪本君ガ述べラレマシタカ
ラ、大半ハ其御答辯デ分リマシタカラ、尙ホ漏レタル所ヲ伺ヒタイト思ヒマ
ス、此案ハ洵ニ簡單ナルガ如クデアリマスガ、實ニ國民ニ取ッテ容易ナラヌ是
ハ改正案デアルト考ヘマスノデアリマス、阪本君ノ言ハレル如ク、名ハ違ヒ
マスナレドモ、明ニ是ハ增稅ノ結果ヲナスノデアリマス、若シ是ガ地租ト
カ、所得稅トカ營業稅トカ云フモノニ向ッテ町村〓育ノ爲ニ四千万圓乃至五
千万圓ノ增稅ヲスルト云フ案デアリマシタナラバ、大ナル議論ニナルノデア
リマス、然ルニ明治四十一年法律三十七號ノ改正ト云フノデ、僅ナル修正ノ
如クニ見エマスカラ、左マデ國民ガ注意ヲ留メマセヌカ存ジマセヌガ、國民
ノ負擔ノ上ニ於テハ非常ナルモノニナッテ參ルノデアリマス、唯今文部大臣ノ
說明ノ中ニモ地方費ガ幾ラ、町村費ガ幾ラト率ヲ擧ゲラレマシタガ、町村以
外ニ府縣費ト云ヒ、國費ト云ヒ、國民ノ頭ニ負擔ヲ受ケル所ノモノハ皆一ツ
デアリマス、是ハ一人ガ皆脊負ハナケレバナラヌノデアリマス、餘ホド是ハ
負擔ヲ增ス上ニ於テ非常ナル苦痛ヲ感ズルモノトナルノデアリマス、阪本君
ノ質問ニ對シテノ御答デ分ッテ居リマスカラ、此以上ハ申上ゲマセヌガ、唯今
尋ネル所ハ此法律案提出ノ理由ノ中ニ「時局ノ影響ニ因リ」ト云フコトガ書イ
テアリマス、時局ノ影響ニ因ルトアルカラ、ソレノ結果トシテ當分ノ中ト云
フ文字ガ這入ッテ居ル、此當分ノ中ト云フコトハ如何ニ解釋ヲ致セバ宜イノデ
アリマセウカ、是ハ卽チ時局カヲ起ルコトデアリマスル、時局結了ノ後、卽
チ講和談判ノ結了マデノ當分ノ內デアリマセウガ、此當分ノ內ノ御見込ノ解
釋ヲ伺ヒタイ、而シテ文部大臣ノ御答ニ依ルト、此町村〓員ノ手當給料等ノ
コトモアッタヤウデアリマスガ、是等ハ物價騰貴ノ結果ヨリ出ヅルコトト思ヒ
マスガ、若シ物價ガ戰時前ニ復シタ場合ニ於テハ之ヲ如何御處分ニナルノデ
アリマスカ、本案ハ矢張リ現行ノ姿ニ直チニ復セラルヽ御趣意デアリマスル
カ、ソレヲ伺ッテ置キタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=83
-
084・阪本さん之助
○阪本彰之助君 御一〓ニ御答ヲ願ヒタイト存ジマス、唯今文部大臣ノ御答
ニ依リマスルト云フト、府縣稅ノ方ハ僅ニ文部ノ要求ハ二百万圓デ宜シイノ
デアル、サウスルト如何ニモ中學〓員優遇ト云フ言葉ヲ大ニシテ、而シテ二
千二百万圓ノ增稅ヲサセテ、其中文部省ハ二百万圓ヲ御使ニナルノデアル、
私共ガ見マスルト地方ノ〓育改良ニハ、マダマダセネバナラヌコトガ澤由ア
ルノデアルニ拘ラズ、文部省ガ如何ニモ仕事ヲスルカノ如ク世間ニ諒解セシ
メテ置イテ、而シテ僅ニ二千二百万圓ノ內二百万圓シカ文部省ハ使ハヌノデ
アル、町村ノ方へ參リマスルト二千万圓ノ內カラ千百万圓ヲ文部省ガ使フカ
ノ如ク仰ッジヤイマスガ、是モ御言葉ガ濁ッテ居リマシタ、二千万圓ノ內カラ一
千百万圓使ヘバ九百万圓殘ル譯デアリマス、其一千百万圓ト云フ金ガ果シテ
小學〓員ノ優遇ニ使ハレ得ルノデアルカ、此場合其要點ヲ承ッテ置キタイ、尙
ホ數字的ニ僅ニ二百万圓ホカ府縣ニハ御使ニナラヌノニ、町村ニハ千百万圓
御使ニナル御確信ガアルノデアルカ、內務ト大藏トノ御話ガ付イテ居ルノデ
アルカドウカト云フコトヲ、希ハクバ寧ロ內務大藏ノ內カラ御答ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス
〔國務大臣男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=84
-
085・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 內務大臣ガ居ラレマセヌノデ、私カラ最初ノ
御問ニ付テノ御答ヲ致シテ置キマス、不十分デアラウト考ヘマス、當分ノ內
ト云フコトノ解釋ニ付テノ御尋デアリマスルガ、是ハ時局ノ影響ノ續ク間ト
云フコトニ御了解ヲ請ヒマス、此時局ノ影響ニ因リマシテ諸物價騰貴ニ際シ、
地方ニ於キマシテモ多少ノ手當等ヲ與ヘテ居リマスガ、ナカ〓〓十分ニ行カ
ヌノデアリマス、此方ニ依リマシテハ斯樣ナ法律デモ出マスレバ未ダ財源ヲ
得ルノ餘地ノアルニモ拘ラズ、法律ニ制限ガアル爲ニ其事モ出來ナイト云フ
コトデアリマス、ソレデ詰リ地方費支辨ニ係ル道府縣ノ俸給旅費ノ增加、是
モ卽チ時局ノ影響ニ因リマス、又道府縣ノ吏員其他ノ者ノ臨時手當モ給與ス
ル必要ガアルノデ、物價騰貴ニ連レマシテ地方費支辨ニ屬スル廳費、雜費等
モ增加ヲ要求スルノデゴザイマス、從ッテ道府縣ノ各種ノ事業費ニ於キマシテ
モ、物價騰貴ノ影響ヲ受ケテ增額ヲ要スルノデ、又市區町村ニ於キマシテモ
同樣デ、吏員ヲ始メ、文部大臣カラ申上ゲマシタ所ノ學校ノ分ニ屬シマスル
俸給、旅費等ノ增額ヲ要シマスル、ソレニ矢張リ吏員其他ノ手當ニシテ市區
町村ノ負擔ニ屬スルモノノ增額ヲ要シマス、又役場或ハ役所其他ノ事業費竝
雜費等ノ增額ヲモ必要ト致スノデアリマス、又其市區町村ノ負擔シテ居リマ
ス各種事業ノ費用ニ於キマシテ、物價騰貴ノ影響ヲ受ケテ增額ヲスル、斯ウ
云フ狀況デアリマスル故ニ、此時局ノ影響ノ繼續スル間ハ此法律ニ依ッテ、地
方費支辨ニ對シテ臨時ノ財源ヲ求メルト云フコトガ眼目デゴザイマス、最後
ニ御尋ノ學校ニ屬シマスルコトハ、尙ホ文部大臣ヨリ詳シク御說明ヲ申上ゲ
マセウ、尙ホ内務省ニ屬シマスコトデ、此上詳シイコトハ內務大臣出席ノ時
ニ御質問ヲ請ヒタク考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=85
-
086・阪本さん之助
○阪本釤之助君 唯今本員ノ御尋ネ中シタコトハ、大臣ガ御差支ナレバ政府
委員ガ責任ヲ以テ御答ヘ下サルコトナラバ差支ゴザイマセヌ、唯今御尋シタ
コトヲ明確ニ御答願ヒマス
〔政府委員添田敬一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=86
-
087・添田敬一郎
○政府委員(添田敬一郞君) 唯〓御大藏大臣ヨリ御說明ニ相成リマシタ以外
ニ於キマシテ、御質問ノ要旨ヲモウ一度·······甚ダ恐縮デゴザイマスルケレド
モ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=87
-
088・阪本さん之助
○阪本釤之助君 繰返シテ申上ゲマスガ、先刻文部大臣ノ御答辯ニ依リマス
ルト、此法律ノ結果トシテハ、府縣ニ於テハ二千二百万圓ノ增徵ガ出來ル見
込デアル、然ルニ中學校〓員ノ、卽チ府縣ノ經費ニ屬スル中等〓員ノ優遇ニ
付テハ既ニ昨年ノ縣會ニ於テ二百万圓程ハ增加ヲシテ居ルノデアルカラ、ア
トモウ二百万圓モ使ヘバ先ヅ希望通リノ優待ガ出來ル積リデアル、斯ウ云フ
御答デアリマスルカラ、之ヲ考ヘテ見マスルト、詰リ二千二百万圓ノ增徵ノ
內カラ、文部ノ所管トシテハ二百万圓ダケ御使ニナレバ、文部ハ御滿足ニナ
ルト云フ意味ニ聞エルノデ、サウスルト世間デハ、今度ノ「時局ノ影響ニ因
リ」云々ト云フ法律ガ出來タノハ、學校〓員ノ優遇ト云フコトニ使ハレルノ
デアルト云フヤウナ意味カラ、世間ノ異議モ少イヤウニ考ヘルノデアリマス、
然ルニ府縣稅ハ二千二百万圓增徵ガ出來ルト內フ內カラ、僅ニ二百万圓ダケ
使ヘバソレデ宜シイト云フコトデアレバ、アト二千万圓ト云フモノガ、御供
ノ方ガ非常ニ大キイモノニナル、又町村ノ方デ二千万圖ノ增徵ガ出來ル、其
內カラ千百万圓小學校〓員ノ俸給ニ使ハレレバ滿足デアルト云フ文部大臣ノ
御答デアリマシタ、サウスルト是ハ大分多イ、二千万圓ノ中千百万圓ハ小學
校〓員優遇ノ爲ニ使ハレルト、アト九百万圓シカ殘ラヌノデアリマス、サウ
スルト是ハドウナルノデアリマスカ、サウシマスト詰リ府縣ノ方デ二百万圓、
町村ノ方デ千百万圓ハ此〓育ノ優遇ニ使フト云フ意味デアルカ、是ハ他ノ省
ニ於テモ大藏内務ノ方ニ於テモ、承認サレテ居ル········文部大臣ノ言ハレテ居
ル通リ是ダケハ府縣ニヤラセルト云フコトハ御承知ニナッテ居ルノデアルカ
ドウカ、ソレヲ文部、內務、大藏、其方ノ主務大臣カラ明確ナル御答辯ヲ得
テ置キタイ、斯ウ云フコトデアリマス
〔政府委員添田敬一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=88
-
089・添田敬一郎
○政府委員(添田敬一郞君) 御答イタシマスガ、內務省ニ於キマシテモ既ニ
此案ノ理由書ニ書イテアリマスルガ如ク、地方ニ於ケル官公吏ニ對スル增俸、
若クハ臨時手當ノ支給ヲスルト云フコトノ希望ヲ有ッテ居リマス、卽チ先刻文
部大臣ヨリ御述ニナリマシタル學校ノ〓員ニ對スル增俸及臨時手當ト云フモ
ノモ、此官公吏ノ全體ノ中ニ含ンデ居ルコトハ御承知ノ通リデアリマスルカ
ラシテ、內務省ニ於キマシテモ出來得ル限ハ文部省ノ御希望ノ達セラルルコ
トヲ矢張リ希望ハ致シテ居リマスル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=89
-
090・阪本さん之助
○阪本釤之助君 ソレ以上ノ御答ガ出來ネバ巳ムヲ得マセヌガ、現ニ昨年小
學〓員ノ俸給ヲ國庫デ分擔スル法ト云フモノガ出來マシタ時ニ、此一千万圓
ノ金ヲ如何ニ使フカト云フコトハ、當議場ニ於テモ非常ニ議論ノアッタコト
デアリマス、今度ハ國庫ノ金デハアリマセヌガ、矢張リ同ジヤウナコトニ出
テ來タノデアル、然ルニ既ニ今內務當局ノ御答ニ依リマスルト、此理由書ニ
書イテアル通リノコトヲ御述ニナッテ居リマシテ、マルデ〓育ト云フコトガ主
デアルト云フコトハ見エマヒヌデ、サウスルト文部大臣ダケハ左樣ニ御考ニ
ナッテ居リマスガ、偖之ヲ地方ニ實施サレルニ當ッテハ如何ナル使ヒ方ヲスル
內務省ノ方デ餘リ力瘤ヲ入レテ〓育ノ方ヘ使ヘト云フコトヲ仰ッシヤルコト
ニモ見エナイノデアリマス、サウシマスト文部省デハ豫テ高等〓育機關擴張
ニ付テ御尋シタ時ニハ、地方ノ方ノコトハ制限外ノ擴張ヲ圖リ〓育改善ノ爲
ニ使フ積リダト云フ御答ガアルニモ拘ラズ、若シ之ヲ議會ガ認メテ、然ルニ
一向〓育ノ改良ニハ差シタル效果ガナカッタト云フコトニナリマスト、事ガ志
ト違フノデアリマス、此點ヲ內務、大藏ハ此以上ノ御答ハ出來ヌノデアルカ、
サウスルト又幾ラ〓育ノ爲ニ使フト云フコトニ付テ御成案ハナイモノデアリ
マスカ、ソレダケヲモウ一遍繰返シテ伺ヒマス
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=90
-
091・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 尙ホ大藏、內務ノ當局者カラモ御答ヲ致シマス
ルガ、私ガ先ホド御答ヲシマシタノニ補足イタシマシテ、誤解ヲ來タスト云
フトナリマセヌカラ········是ハ單リ〓育費ダケノ爲ニ制限ノ擴張ヲシタノデハ
アリマセヌ、全體時局ノ影響ニ因リマシテ、府縣竝ニ町村ノ事務ニ從事スル
者ニ對シテ手當ヲ出シ其他ノ費用ニ充ツル、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデア
リマス、私ハ其中ノ一部ノモノヲ申上ゲタ譯デアリマス、一部ノモノト云フ
ノハ卽チ中等程度ノ〓員竝ニ初等〓育ニ從事スル〓員ト云フヤウナモノノ增
俸、若クハ臨時手當、卽チ待遇ヲ好クスルト云フ方ノ御話ヲ申上ゲマシタ、
〓育ノ方ニシマシテモソレニ止リマセヌ、他ノ郡役所、其他ノ色〓ノ機關ガ
アリマスカラ、ソレト同ジヤウニ〓育ノ方ニモ矢張リ學校ノ雜費其他イロ
イロノモノガ要ル譯デアリマスカラ、獨リ單ニ〓員ノ待遇ダケデアリマセヌ、
又各地共ニ是ハ事情ヲ異ニスルノデアリマスカラ、必ズ全國一律ニ行クト云
フコトハ豫想イタシテ居リマセヌ、又此最高額ハ各地共ニ行カウトモ考ヘテ
居リマセヌデ、今申シタ金額ノ中デ〓育事業ニ對スル金額ガ稍少イヤウナ
御話ノヤウニモ伺ヒマシタガ、其大小ハ別問題ト致シマシテ、是ハ全體ニ府
縣支辨竝ニ町村ノ支辨ニ當ルモノニ付テ時局ノ爲ニ非常ニ物價ガ上ッテ居リ
ママ、其他經費ガ增シテ居リマスカラ、ソレヲ緩和イタシタイ、之ヲ致シマ
セヌト云フト、ドウモ戶數割ナドニ、其他ノ雜稅ヲ起シタリシテ、地方ニ非
常ニ苦情ガ多ウゴザイマスカラシテ、成ルベク此法デ緩和ヲ圖ルト云フ趣意
モ這入ッテ居ルノデアリマス、ソレデ又先ホド申シマシタ金額ダケニ行ク行カ
ヌハ實行上ノコトデアリマシテ、能ク相談セヌト決リマセヌガ、ソレハ卽チ希
望通リ滿足スルヤウニ御考へ下スッタヤウデアリマスカラ、漸次各種ノ方法ヲ
以テ優遇ノ方法ヲ講ジナケレバナラヌト云フヤウナ考ヲ有ッテ居リマス、ドウ
ゾサウ云フヤウニ御承知ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=91
-
092・鈴木そう兵衞
○鈴木摠兵衞君 私ハ內務、大藏ノ當局ノ方ニ伺ヒタイト思ヒマスガ、此地
方稅ノ制限ヲ擴張サレルコトニナリマスト、從來各地ニハ動モスルト云フト
弊習ガアリマス、或ハ收入ヲ多クスルガ爲ニ新稅ヲ起ストカ、或ハ營業稅ノ
附加ヲ重クスルトカ云フコトガアッテ、大體ノ上ニ意外ナル結果ヲ生ズルコト
ガアリマス、是等ニ對シテハ、內務、大藏兩省ニ於キマシテハ、府縣ノコト
ニ付テハ府縣會、又町村ノコトニ付テハ町村會ノ自治ニ委セテ、之ニ付テ制
裁トカ、或ハ又權衡ヲ得セシメル爲ニ監督ト云フヤウナコトハ嚴ニセラレテ、
不權衡ノナイヤウニ取扱ハレルノハ當然デアリマセヌカ、動モスルトサウ行
カヌ、今ヤ制限ガ擴張ニナリマスレバ、或ハ爲政者ガ地方ノ感情、或ハ其他
ノ情實ノ爲ニ偏重偏輕ノコトノアルヤウナコトガアリマシテハ容易ナラヌコ
トデアリマス、之ニ對シテ是等ノ制裁ノ上ニ付テハ如何ナル御考ガアリマス
カ伺ヒタイ
〔政府委員添田敬一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=92
-
093・添田敬一郎
○政府委員(添田敬一郞君) 御答ヲ致シマスルガ、從來ト雖モ地方稅ノ各種
類ニ付テハ成ルベク權衡ヲ得セシムベキ方針ヲ執ッテ居リマシテ、サウ云フ方
針デ監督イタシテ居リマス、此制限擴張法案ガ愈、實施サレマシタ後ニ於キマ
シテモ矢張リ其方針ハ改メマセヌ、出來得ル限リ此三稅ハ成ルベク權衡ヲ得
セシメル考デ監督ヲシテ參リタイト思ヒマス、即チ內務、大藏兩大臣ノ許可
ヲ受ケマス場合ニハ、ソレ等ノ點ヲ考慮イタシマシテ處置ヲシタイト考ヘテ
居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=93
-
094・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔岡書記官朗讀〕
時局ノ影響ニ因ル地方稅制限擴張ニ關スル法律案特別委員
伯爵松浦厚君子爵稻垣太祥君子爵水野直君
子爵白川資長君荒川義太郞君男爵南岩倉具威君
西久保弘道君中山嘉兵衞君島定治郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=94
-
095・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第六、高等諸學校創設及擴張費支辨ニ關スル
法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
高等諸學校創設及擴張費支辨ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正八年二月二十五日
衆議院議長大岡育造
貴族院議長公爵德川家達殿
高等諸學校創設及擴張費支辨ニ關スル法律案
政府ハ大正八年度ヨリ大正十三年度ニ至ル六年度ニ於テ高等諸學校創設及
擴張支辨ノ爲總額三千四百五十五萬圓ヲ限リ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ爲
スコトヲ得
前項ノ經費中帝國大學ノ擴張ニ關スルモノニ付テハ帝國大學特別會計法ヲ
適用セス
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=95
-
096・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郎君) 唯今議題ニナッテ居リマスル高等諸學校創設及
擴張費支辨ニ關スル法律案、此提出ノ理由ヲ申上ゲマス、是ハ今朝モ段々御
質疑ガアリマシタ大正八年度ノ追加第二號、〓育ニ關スル擴張案ノ財源ニ關
スル法律デアリマス、アノ追加豫算ハ六年ニ亙ル繼續費デ、總額四千四百五
十五万圓ト云フコトニナッテ居リマスルカラ、其中一千万圓ガ御内帑金デ充當
スルコトニナッテ居リマスルデ、三千四百五十五万圓ト云フモノヲ借入金又ハ
公債ヲ以テ之ニ充テタイ、斯ウ云フ計畫ヨリシテ起リマシタル法案デアリマ
スル、極メテ簡單ナル法案デアリマスルカラ、ドウゾ御審議ノ上御贊成ヲ·······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=96
-
097・阪本さん之助
○阪本釤之助君 本案ハ先刻追加豫算ノ場合デアリマシタカ、江木君ヨリ御
尋ガアリマシテ、此案ハ不可分ノモノデアルカ、不可分ノモノデアルナラバ
何故ニ可分ガ出來ナイノデアルト云フ其理由ヲ聽キタイト云フ御尋デアリマ
シテ、本員等モ其御答ハ確ニ承ッテ置キタイト期待シマシタガ、明瞭ナ御答ガ
アリマセヌ、何故ニ斯ノ如キ尨大ナル計畫ヲ、時〓切ッテ御遣リニナッテ宜カ
リサウナモノデアル、ソレヲ六年モ先ノコトマデ極メテ置カナケレバナラヌ
ノハ何故カ、斯ノ如キ繼續案ヲ御出シニナルト云フコトニ付テ、幸ヒ當局ノ
大臣ガ御出席デアリマスカラ、一應御示ヲ願ヒタイノデアリマス
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=97
-
098・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 御答ヘ致シマスガ、此豫算ノ編成ノ仕方ハ申上
ゲル迄モナク、色〓ニ組メルモノデアルノデアリマスガ、併シ成ルベク一ノ
計畫ノ下ニ實行イタシタイト云フモノハ多ク繼續費ニ從來ハ組ンデ居ル譯デ
アリマス、ソレデ今朝ノ提出ニナリマシタ追加豫算ノ如キ學校ノ擴張ハドウ
カ之ヲ一纏ニシテ、サウシテ今日收容シ切ッテ居ナイ所ノ者ヲ全部收容スルダ
ケノ目的ヲ達シタイト云フ所カラ、斯ノ如キ案ヲ提出シタ譯デアリマス、學校
ノコトデアリマスルカラ、一校ガ多ク三年若クハ四年ノ繼續費ニ從來ハ一々
ヤッテ出テ來タ例モアリマス、併シ今囘ノハドウカシテ之ヲ二十九校及大學擴
張ガ、增設ガ十バカリアリマス、ト云フヤウナモノヲ途中デ止メタクナイ、途
中デ止メテハ計畫ガ破レル、結果ガ惡イデアラウ、又其中ノ〓官養成費ノ如
キモノハ、ドウシテモ途中デ止メラレテハ困ルノデアリマス、成ルベクハ此
計畫ト伴ッテ、六箇年繼續シテ行クト云フコトニ致シマセヌト云フト、實行上
餘ホド困難ヲ感ジマス、尙ホ他ノ豫算ニ付テモ、申上ゲル迄モナク鐵道ダト
カ、切レバ切レルモノモ隨分アリマスガ繼續費ニナッテ出テ居ルモノモアル
ヤウナ譯デアリマス、當局ハ是ハ一箇ニシテ計畫ヲ遂行スル方ガ、本計畫遂
行ノ上ニ於テ極メテ宜シイト云フ考ヲ以テ之ヲ提出シタ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=98
-
099・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 過日來豫算委員會ニ於テ大藏大臣ノ御說明ニ依リマシテ
モ公債ハ成ルベク鐵道ノ如キ殖產的ノモノニ限ルト云フ御趣意ノヤウニ承
ッテ居リマシテ、大ニ是ハ本員ニ於テモ同感ニ考ヘマス、本員ノ記憶スル所ニ
依レバ政府ガ每年度財政ノ計畫ヲ立テラレル上ニ於テ、公債ノ支辨ニ依。タ
ト云フコトハ、戰爭ノ費用デアルトカ、或ハ鐵道ノ如キ殖產的ノ性質ノモノ
ニ限ラレテ居ルヤウニ考ヘマス、固ヨリ何モ禁ジタ法律ガアルト云フ譯デア
リマセヌケレドモ、學校ノ建物ヲ造ルトカ、地所ヲ買フトカ云フコトノ爲ニ
一般會計ニ於テ公債ヲ募ラレルト云フコトハ極メテ耳新シイ、殆ド承知イタ
サヌノデアリマス、而モ是ガ五六年度ニ亙ッテ居リマスカラ、一箇年ニシテ見
ルト僅ニ五百万圓位ノ金デアル、今年度ノ豫算ヲ見マスト云フト、臨時軍事
費ヲ合セテ十二億ト云フヤウナ大キナ高ニナッテ居ルノデアリマス、此五六百
万圓ノ金ガ十二億ノ歲計ヲ有ッテ居ル政府ノ財政ノ上ニ於テ計畫ガ立タヌト
云フノハ甚ダ遺憾ナ感ガ致スノデアリマス、殊ニ年々剰餘金モアリ、又政府
ガ豫算委員會ニ御示ニナッタ十年計畫、將來ノ計畫ニ付テモ來年度ハ餘ガアル
ト云フヤウナ御計算モ出テ居ルヤウニ考ヘマスガ、五六年先マデモ矢張リ學
校建築ノ爲ニ公債ヲ募ラナケレベナラヌト云フコトハ、財政ノ計畫トシテ甚
ダ薄弱ニ聞エルヤウニ思フノデアルガ、是ハ何トカ適當ナ財源ヲ求メラレ、
矢張リ從來ノ歷代ノ政府ガヤッテ居ラレタヤウニ、戰爭ノ爲メ若クハ鐵道ノ如
キ殖產的ノモノニ限ルト云フ譯ニ計畫ヲ御改ニナルト云フ譯ニイカヌノデア
リマスカ、一應政府ノ御意見ヲ伺ッテ置キマス
〔國務大臣男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=99
-
100・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 阪谷男爵ノ公債支辨ニ關シテ成ルベク鐵道ノ
如キ、放資シタ資本ヨリ生ズル收益ヲ以テ元利ノ償還ノ立ツ事柄ニ必要ナル
モノハ公債モ宜カラウガ、左樣ナ收益ノ見込ノナイモノノ費用ハ成ルベク公
債ニ依ラヌ方ガ財政計〓トシテハ宜イデハナイカ、ト云フ御趣意カラシテノ
御質問デ、誠ニ御同感デゴザイマスル、唯此高等〓育機關ノ計畫ニ付キマシ
テハ、屢〓總理大臣及文部大臣カラモ陳述イタシマシタル通リ、今日中學ヲ出
タ學生ガ數万收容所ガナイ爲ニ、卽チ高等〓育ノ機關ノ設備不十分ナル爲ニ
年々數万ノ學生ガ方向ニ迷フ、中學ヲ卒業シタ年齡ノ者ガ前途有望ナル光ヲ
見ズシテ方向ニ迷フト云フコトハ、實ニ社會ノ狀態トシテ忍ブベカラザルコ
トデアル、且又此戰爭········歐羅巴ノ戰爭ノ影響トシテ世界中ノ人〓ノ思想ニ
一大變化ヲ來タサムトシツヽアル此時機ニ於テハ、從前ノ如ク年々數万ノ學
生ヲシテ方向ニ迷ハシメルト云フコトハ、如何ニモ棄置キ難イコトデアル、
故ニ此計畫ヲ立テテ、十分ニ最初ノ見込通リ中途ニ頓挫スルコトノナイヤウ
ニ財源ヲ確メテ行カナケレバナラヌト云フコトデアリマシタ、然ルニ一方ニ
於キマシテ、國家ノ將來、時勢ニ順應シテ各種ノ施設ヲシナケレバナラナイ
上カラ考ヘマシテ、迚モ此計畫ヲ中途ニ廢セズシテ、初メカラ立ッタ計畫通
リ遂行スルダケノ財源ヲ一般歲入ノ上求メルコトハ困難デアリマス、而モ此
計畫ニ對シテ要シマスル所ノ四千四百五十餘万圓ト云フモノハ一般ニ繼續4
シテ之ヲ唯今ノ財政ノ狀態デ普通ノ歲入ニ求メルト云フコトハ、計晝ヲ立テ
マス上ニ於テ餘程ノ無理ヲシナケレバナラス、其無理ト云フノ結果卽チ實行
ノ出來ナイヤウナコトニナル虞ガアルノデアリマス、唯今阪谷男爵ノ御話ノ
如ク十箇年〓計表ノ上ニ於テ、九年度ニ於テ一億ト云フ歲入超過ヲ見テ居リ
マスガ、是モ或ル機會ニ於テ既ニ申上ゲタ通リ、臨時事件費カラ唯今出シテ
居リマス所ノ時局ノ影響ニ因リマシテ臨時手當其他廳費ノ補足等ヲ致シテ
居リマス、卽チ物價騰貴ノ影響ヲ受ケテ殖エテ居リマス所ノ支出ハ、直チニ
九年度ヨリ戰爭前ノ諸物價ニ下ッテ、其臨時ノ增加ノ必要ヲ見ザルニ至ルト云
フ確信ハナイノデアリマス、或ハ物價騰貴ノ影響ハ九年度以降ニモ續クモノ
ト見ルト云フコトノ考ヲ以テ計畫ヲ立テナケレバナラヌ、一方ニ於テハ戰時
利得稅ハ講和條約調節ノ年ノ終ヲ以テ廢シマスルノデ、假ニ本年講和ノ條約
ガ調印ニナリマスト、此本年ノ十二月ヲ以テ戰時利得稅ノ歲入ハ無クナルノ
デアリマス、前申上ゲタ物價騰貴ノ影響ヲ受ケマシテ增額ヲ要シマスル所ノ
廳費、旅費、或ハ增俸、增給ノ如キモノハ、普通一般歲入ノ支辨ニ仰ガナケ
レバナラヌノデアリマス、ソレガ唯今ノ見込デハ凡ソ一億二千万圓モ要ルダ
ラウト考ヘテ居リマス、之ニ對シテ十年〓計表ニ於テ歲入超過ヲ一億ト見テ
居リマスノデ、卽チ一億二千万圓ハ要用ガアルタラウト云フ豫定ニ對シテ、
歲入超過額ガ一億デアリマスカラ、數字カラ綿密ニ申シマスレバ二千万圓ノ
不足ヲ生ゼナケレバナラヌ、併シ一方ニハ旣ニ或ル機會ニ申上ゲマシタル如
〃、七年度ニ於ケル歲入增加モアリマスルカラシテ、九年度ノ豫算ヲ立テル
上ニ於テ、是マデ臨時事件費ヨリ支辨シタモノヲ補足スルニハ差支ナイ考デ
居リマスルト云フコトヲ申上ゲテ置キマシタ、左樣ナ目的ノアル所ノ歲入超
過額ガ十年〓計表ニハ揭ゲテアルノデゴザイマス、成ルベクハ學校ノ如キモ
ノハ公債若クハ借入金ナドニ依ラズシテヤルノガ正則デゴザイマス、ソレ故
從來トテモ高等〓育機關ノ設備ヲ急ギマシテ、財政ノ許ス範圍ニ於キマシテ、
高等學校ノ新設若クハ擴張ヲ圖ッテ參ッタノデアリマスガ、如何セム普通歲入
ニ依リマシテハ其計畫ガ十分ニ行ハレマセヌ、然ルニ一方ニ於テハ前申上ゲ
マシタル如ク、今日數万ノ學生ガ方向ニ迷フト云フコトハ此時勢ニ於テ殊
ニ棄置キ難イコトデゴザイマスル、一時ニ大計畫ヲ立テマシタノデアリマス
ルカラ、已ムヲ得ズ財源ヲ公債ニ仰グコトニ至ッタノデアリマスカラ、ドウカ
其邊ノコトノ事情ヲ御酌取リ下スッテ、御審議ノ上御協贊ヲ與ヘラレムコトヲ
請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=100
-
101・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔岡書記官朗讀〕
高等諸學校創設及擴張費支辨ニ關スル法律案特別委員
伯爵大木遠吉君高崎親章君大山綱昌君
男爵神田乃武君男爵阪谷芳郞君男爵池田長康君
木場貞長君田所美治君野々村久次郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=101
-
102・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 報〓ヲ致シマス
〔長書記官朗讀〕
本日議員男爵阪本俊篤君ヨリ三十三名ノ贊成ヲ以テ左ノ修正案ヲ發議セリ
裁判所ノ設立ニ關スル法律案ニ對スル修正案
大正二年法律第九號中改正法律案ニ對スル修正案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=102
-
103・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第七、裁判所ノ設立ニ關スル法律案、政府提
出、衆議院送付、第二讀會········此際問題ト致シマスノハ阪本男爵ヨリ提出セ
ラレマシタ修正ノ箇條ト御承知ヲ請ヒマス、修正案ノ朗讀ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
裁判所ノ設立ニ關スル法律案修正案
右議院法第二十九條ニ依リ提出候也
大正八年三月一日
發議者
男爵阪本俊篤
贊成者
伯爵松浦厚伯爵柳原義光小野田元凞
男爵石黑忠恵荒川義太郞男爵高千穗宣麿
男爵名和長憲男爵西紳六郞男爵阪井重季
男爵内田正敏男爵山內長人男爵船越光之丞
男爵千秋季隆男爵斯波忠三郞男爵安場末喜
男爵伊丹春雄男爵本田親濟男爵福原俊丸
男爵〓水資治男爵永山盛興男爵今園國貞
男爵佐竹義準男爵藤村義朗男爵小畑大太郞
男爵東〓安男爵矢吹省三谷森眞男
藤田四郞高田早苗伊澤多喜男
江木翼湯淺倉平橋本辰二郞
貴族院議長公爵德川家達殿
裁判所ノ設立ニ關スル法律案中第五項ヲ左ノ如ク改ム
栃木縣安蘇郡佐野町ニ區裁判所ヲ置キ之ヲ佐野區裁判所ト稱ス
〔男爵坂本俊篤君演壇ニ登ル]発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=103
-
104・坂本俊篤
○男爵阪本俊篤君 唯今議場ニ向ッテ朗讀サレマシタ所ノ、本員ヨリ提出イタ
シマシタ所ノ修正案ニ付キマシテ單簡ニ其趣旨ヲ申述ベタイト思ヒマス、大
正二年行政整理ノ結果廢止サレマシタル所ノ區裁判所ハ百二十八箇所、其中
今囘ニ至リマスマデ三囘ニ囘復セラレマシタ所ノ區裁判所ノ數ハ九十餘箇所
ニ上ッテ居ルノデアリマス、其中單純ニ元ノ場所ニ復活セラルヽコトナクシ
テ、今囘ノ例ノ如ク佐野ニ復活サレマセズシテ、其隣接ノ町タル足利ニ復活セ
ラレタト云フコトハ、深ク本員ノ注意ヲ惹起シタノデアリマス、ソコデ過日此
委員會ニ於キマシテ、特別委員ノ一人ト致シマシテ政府委員ニ向ッテ其說明ヲ
求メタノデアリマス、然ルニ政府委員ノ說明ハ不幸ニシテ本員ノ疑問ヲ解ク
コト能ハザリシノミナラズ、益〓本員ガ考ヘテ居リマシタ通リ、是ハ足利町ニ
新設サレズシテ、元ノ佐野町ニ復活サレルコトガ適當デアルト云フコトノ信
念ヲ確メタ次第デアリマス、區裁判所ノ箇所ヲ選定スルニ當リマシテハ、勿
論其土地ノ經濟ノ狀況、人口、戶數其他一般ノ經濟狀態等ヲ考慮イタシマス
ルコトハ勿論デアリマスルガ、是ハ第二義ノ條件デアリマシテ、最モ考慮ス
ベキコトハ區裁判所ニ於テ取扱ヒマス所ノ裁判ノ事件數及交通ノ便否ト云フ
コトガ最モ大切デアルト考ヘマス、然イタシマシテ、此裁判所ノ取扱ヒマス
ル件數ト申シマスルモ、是モ究極イタシマス所人民ノ便利ヲ圖ルニ基クコト
デアリマスカラ、交通ノ便否如何ト云フコトガ、問題ヲ決定スルノ第一義デ
アラネバナラヌト考ヘルノデアリマス、ソコデ此便否如何ト云フコトヲ、佐野
町ト足利町ノ兩方ニ渉ッテ見マスルトキハ、是ハ佐野町ニ置ク方ガ此安蘇足利
兩郡ヲ通ジテ最モ適當ナル場所ト云フコトニ判斷ヲ致スノデゴザイマス、勿
論一ト所ニ置イタ區裁判所ガ總テノ地點カラシテ便利デアルト云フコトハ到
底望ムコトノ出來ナイコトデアリマス、何レノ所カ不便ノ所ガ出來ナケレバ
ナラヌノデアリマスガ、總體ヲ通ジテ比較的便利ノ所ニ置クト云フコトニナ
ラネバナラヌノデアリマス、所デ此問題ハ別段議論モ評定モ要ラヌコトデア
ル、地圖ヲ見サヘスレバ直グニ此問題ガ決定サレルモノデゴザイマシテ、試
ニ足利ノ方ニ置ク方ガ宜イト云フ方ノ側カラ見マスルニハ、足利郡ノ方ニハ
菱村ト云フ所ノ遠隔ノ地方ガアル、之ヲ佐野町ニ裁判所ヲ置キマストキニ、
此菱村ト云フ所カラハ餘程距離ガ遠クナル、菱村ニ取ッテ甚ダ困難ナコトニナ
ル、又之ヲ足利町ニ置キマストキニハ安蘇郡ノ中ニ於テ少カラヌ交通上ノ不
便ヲ感ズル村落ガアルノデアリマス、例ヘバ氷室村又ハ野上村ナドト申シマ
スル所ノ村カラ致シマスルト假ニ足利町ニ置キマスルト此村カラ足利町ニ
參ラウトスルニハ五六里ノ道ヲ步イテ參リマス、サウシテ東武線ニ接續イタ
シマス所ノ私設鐵道ノ葛生トカ或ハ田沼ト云フヤウナ途中ノ「ステーション」
ニ辿リ著キマシテ、其「ステーシヨン」カラ又若干汽車ニ乘リマシテ、サウシ
テ佐野町ニ到着イタシマス、ソレカラ今度ハ東武線ヲ乘換ヘテ、サウシテ桐
生ノ方面、足利ノ方ニ參ルノデアリマス、所ガ此線路ハ小山ノ方へ通ズル線路
デアリマシテ、是等乘換トカ鐵道ノ時間ノ關係上カラ餘ホド接續ガ惡ルイト
云フコトデアリマス、ツレ故ニ是等ノ村落カラ足利町ニ參ルト云フコトハ餘
ホド困難ナ事情デアルト云フコトデアリマス、之ヲ足利郡ニアリマス所ノ菱
村アタリカラ二里ノ道ヲ步イテ參リマシテ、桐生カラ足利アタリマデニ涉リ
マスル所ノ或ル「ステーシヨン」ニ著キマシテ、ソレカラ佐野町ニ參ルト云フ
モノニ較ベマスルト遙ニ困難デアルト云フコトデアリマス、是ハ地圖ノ上カ
ラ見テ如何ニモ左樣デアラウト云フコトノ判斷ガ玆ニ付クノデアリマス、ソ
コデ此交通問題ハ地理上ノ關係ニ於キマシテ、足利町ニ置クト云フコトハ安
蘇郡ノ村落ノ一部ニ取リマシテ苦痛ト致シマスコトハ、之ヲ佐野町ニ置キマ
シテ足利郡ノ一部ノ村落ガ苦痛ヲ感ズルヨリモ甚シイト云フコトニナルノデ
アリマス、ソコデ今度ハ論旨ヲ一轉イタシマシテ、政府委員邊リノ說明ヲ聽キ
マスルト安蘇郡ト足利トノ關係ニ於テハ、交通上ニ於テ言ッテ見ルトマア五
分五分デアル、互ニ五分五分ノ不便ガアル、斯ウ我慢スレバ宜シイガ、茲ニ此
五分五分ヲ一方ニ傾ケシメタ理由ト云フモノハ、今囘上都賀郡ニアリマス所
ノ足尾町ト云フモノガ、此管轄區域ニ這入ッテ參ッタモノガアリマスカラ、是
ガ理由トナリマシテ、此足利町ニ置クカ佐野町ニ置クカト云フ問題ニ對シマ
シテ、佐野町ニアラズシテ足利町ニ置ク重ナル理由トサレテ居ルノデアリマ
ス、ソレハ何故ト申シマスルト、足尾町ノ方カラ見マスト、足利町ノ方ガ十
九分バカリ足尾町ノ方へ寄ッテ居ル、距離ニ於テハ約六分ノ一、時間ニ於テハ
約十分ノ一ダケ足尾町ノ方ヘ寄ッテ居ルノデアリマスカラシテ此足尾町ヲ合
セマスレバ、ドウシテモ足利町へ置クガ適當デアル、斯ウ云フ御見解デアリ
マスガ、併シ本員ノ見ル所ニ依リマスルト此點モ矢張リ前ノ安蘇足利兩郡ノ
關係ニ於キマシテ、佐野町ヲ以テ適當トスルト云フ所ノ此同一ノ理由ヲ以テ
私ハ是ハ判斷シテ然ルベキモノト思フノデアリマスト、云フノハ是ハ交通ノ
便否ト云フ矢張リ問題ノ上ニ於テ左樣ニ決定サレナケレバナラヌモノト考ヘ
ルノデアリマス、ト申シマスルノハ足尾町カラ足利町へ到著イタシマスルニ
ハ、足尾鐵道ニ依リマシテ、先ヅ桐生マデ到著イタシマシテ、桐生カラ又東
武線ニ依ッテ足利町ヘ參リマス、此時間ハ約三時間ト二十分、斯ウ云フ時間ニ
ナリマス、サウ致シマスルト足尾町カラ直チニ汽車ニ乘ッテ、サウシテ足利町
マデ、サウ云フヤウニ全部鐵道ニ依ッテカラシテ到著スルコトガ出來ル、其時
問ガ三時間二十分、然ルニ之ヲ一方足利町ニ置キマスレバ、前ニ述ベマシタ
如ク阿蘇郡ニ二三ノ聯絡スル道ヲ五里モ六里モ步キサウシテ或ル私設鐵道ノ
停車場ニ辿リ著イテ、サウシテソレカラ又東武線ニ來テ、ソレカラ乘換ヘテ
行クト云フコトニ、斯樣ナ不便ナコトニナルノデアリマス、若シ其方ガ不便
ト云フコトガ道理アルモノトスレバ、是ハ矢張リ足尾町ニ對シテモ安蘇郡ノ
-35.是等ノ村落ノ理由ノ方ヲ重シトシナケレバナラヌト考ヘルノデアリマ
ス是ガ單純ニ交通上ノ關係ニ於キマシテ左樣ニ斷定スルコトガ適當デアル
ト私ハ解釋スルノデアリマス、尙ホ政府委員ノ說明ニ依リマスルト、足利町
ハ佐野町ニ比スルト、足尾町ニ對シテハ中心ノ位置ニアルカラト云フコトデ
ゴザイマシタ、成程三箇所ヲ見レバ三箇所ノ中、眞中ノ方ニ寄ッテ居ルノハ
疑モナク足利町デアリマスガ、併ナガラ此中心ト云フ文字ハ耳ニハ甚ダ好ク
響キマスケレドモ、併ナガラ先ニモ申シマス通リ、時間トシテ僅ニ十分ノ一
ダケ、ソチラニ寄ッテ居リマスカラ、之ヲ以テ中心トスルノ理由トスルニハ甚
ダ薄弱デアルト私ハ信ズルノデアリマス、カルガ故ニ此足利町ニ區裁判所ヲ
置クト云フコトハ安蘇郡、足利郡、又ソレニ加ハリマシタ足尾町ヲ併セテ、
交通上ノ便否カラ致シマシテ佐野ガ適當ト考ヘルノデアリマス、是ハ單ニ交
通上ノ便否ガ卽チ此問題ノ決定的要素デナケレバナラヌト云フ要件ニ付テ斯
樣ニ判斷スルノデアリマス、又此ノ他ニ本員ヲシテ區裁判所シ置クノハ足利
町ニアラズシテ佐野町デナケレバナラヌト云フ理由ハ、此他ニ理由ヲ認メテ
居ルノデアリマス、ソレハ如何ナルコトカト申シマスルト佐野町ニ區裁判所
ヲ復設イタシテ貰ヒタイト云フコトニ付テ、今日マデ最近請願ガ三囘續イテ
本院ヲ通過イタシテ居ルノデアリマス、所デ若シ是ガ原案ノ如ク佐野町ニア
ラズシテ足利町ニ置クコトニナリマスルト、此請願ニ對スル所ノ本院ノ採擇
サレタル所ノ、此決議ト云フモノヲ甚ダ薄弱ナラシムル譯デアルト考ヘルノ
デアリマシテ、是ハ請願ニ對スル本院ノ權威ト致シマシテ大ニ御考慮ヲ願ヒ
タイ點デアリマス、次ニハ日光町ト足尾町トノ此聯絡ノ關係デアリマス、是
ハ約三里バカリ隔ヲテ居ルト云フコトデアリマシテ、唯今ハ鐵道ノ敷設ガナイ
爲ニ足尾町カラ裁判事件ヲ持ッテ參ルノニハ遙、足尾町ヨリ足利、佐野、小山
ヲ經マシテ、宇都宮ノ區裁判所ニ參ルコトニナッテ居ルノデアリマス、即チ今
囘足尾ハ之ニ加ッタ爲ニ足利町ニ置クコトヲ適當トサレルコトモ、此鐵道ニ依
ルヲ便利トスル所カラ斯樣ニ原案ガ出來テルノト信ジマス、然ルニ此日光ト
足尾トノ間ハ是ハ早晩鐵道ガ架カルモノト信ズルノデアリマス、旣ニ鐵道院
ノ測量線トシテハ地圖ノ上ニモ明瞭ニ現ハレテ居リマス、左樣イタシマスル
ト、早晩此鐵道ガ通ズルト云フコトニナリマスルト、宇都宮ニ參ルノニハ足
尾カラ日光ヲ經テ約二時間デ宇都宮ヘ到著スルノデアリマス、之ヲ現在ノ足
尾町カラ桐生ヲ經テ足利ニ到著イタシマスル時間、約三時間ト二十分ニ比べ
マスト、日光ト足尾町ノ間ハ鐵道ノ時間表ヲ勘定ニ入レマシテ約一時間ダケ
宇都宮ノ方へ足尾町ノ方カラ早ク到著スルコトガ出來ルカラシテ、早晩鐵道
ガ落成イタシマス曉デ、交通ノ便利上カラ致シマシテドウシテモ矢張リ是ハ
宇都宮ノ方ヘ現今ノ如ク區裁判所管轄ヲ復活サレナケレバナラヌヤウナコト
ニナルノデアラウト考ヘル、又斯ク考ヘルノガ相當ノ問題ノ歸結ダト私ハ考
ヘマス、サウ致シマスト、今日足利町ニ區裁判所ヲ置キマシテ、サウシテ足
尾町ヲ之ニ結付ケルト云フコトハ今日一時ノコトデアリマシテ、將來ハ左樣
デナイノデアリマス、一時ノ交通ノ便利上カラ將來ノ施設ヲ誤ルト云フコト
ノ結果ニナルト思フ、是亦考慮スベキ一點ト考ヘマス、ソレカラ尙ホ經費上ノ
問題デアリマスガ、佐野町ニハ從來ノ廳舍モアリ敷地モアルノデアリマス、
廳舍ハ大分腐朽シテ、改築セネバナラヌト云フコトデアリマスガ、併ナガラ
マダ三十年ソコ〓〓ノ建物デアリマスカラ、田舍ニ於ケル斯樣ナ廳舍ト致シ
マシテハ此位ノモノハ外ニモ存在シテ居ルダラウ思フ、サウシテ見マスト、佐
野町ニアル敷地廳舍ト云フモノハ、誠ニ經費上カラ考ヘマシテ便利ナルコト
ニナッテ居ル、然ルニ之ヲ足利町ニ置クト云フコトニナリマスト、新ニ敷地又
廳舍ヲ調ヘナケレバナラヌト云フコトデ、是等ハ地方ノ町民カラ寄附サレル
コトニナルト云フヤウナ御話デゴザイマスガ、成程寄附トナリマスレバ直接
政府ノ經費ニハナリマスマイカ知レマセヌケレドモ、是等地方人民ノ負擔ハ
國家ノ大所カラ見マスト、矢張リ是ハ國家ノ負擔デ、經費上カラ考ヘマシテモ
此點ハ矢張リ佐野町ニ置クコトガ適當ト云フコトニナルノデアリマス、最後
ニ此佐野町ト足利町ト今囘區裁判所囘復ニ關シマシテ少カラヌ紛擾ヲ惹起シ
テ居ルト云フコトデアリマス、從來ハ此町ハ互ニ提携イタシマシテ、〓育ノ
コトニ、其他經濟上ノコトニ、佐野町ノ者デ足利ノ銀行ノ預金者デナイ者ハナ
イ、或ハ足利ノ者デ佐野町ノ銀行ノ預金者デナイモノハナイトカ云フヤウニ、
互ニ仲好クシテ、サウシテ經濟上ノ發達竝ニ〓育上ノ改良ヲ圖ヲテ居ッタモノ
ガ、斯樣ナ紛爭ヨリ致シテ、互ニ反目ヲ致シ、其趣ク所ハ如何ナルコトニナル
カモ知レヌト云フヤウナ陳述等モ見エテ居リマス、ガ是ハ一ハ感情上ノ問題
モ茲ニ混ッテ居ルコトデアリマスカラ、私ハ是等ノコトニ對シテハ相當ナ判斷
ヲ與ヘテ居リマシテ、必シモ左樣ニ酷イコトデナイト思ヒマスケレドモ、從來
此佐野町ト足利町ハ互ニ相携ヘテ本院ヘ請願モ致シテ居ッタ間柄デアリマス
カラ、足利町ガ分離シテ、ソコニ復活サレマスト云フコトハ、佐野町ニ取リマ
シテハ感情上多分左樣ナ狀況デアラウト云フコトハ疑ナイノデアリマス、元
來此區裁判所ノ復設ト云フコトハ、一時政府ガ淚ヲ呑ンデ、サウシテ撤廢サレ
タモノデアリマセウガ、多年ノ民意ヲ容レラレテ、卽チ善政ヲ布ク意味ニ於テ
復活サレムトスルモノガ、却ッテ此兩町民間ニ紛爭ヲ起シ、延イテハ我ガ東北
ニ於ケル所ノ殖產興業ノ殷盛ナル地點ニ、斯樣ナ爭ヲ生ジマスト云フコトハ、
國家ノ爲ニ甚ダ歎クベキコトナルハ勿論ノコト、政府ニ取リマシテモ蓋シ御
不本意ナコトデアラウト考ヘルノデアリマス、是等ノ事情ヲ綜合イタシマス
ト、今囘ハ區裁判所ヲ新ニ足利町ニ設立イタサレルコトナクシテ、二十餘年來
ノ歷史ヲ持ッテ居リマス所ノ此佐野町ニ復活サレルコトガ最モ至當ナ御處分
デアルト考ヘルノデアリマス、斯樣ナ理由ニ依リマシテ、本員ガ修正說ヲ提出
シタノデゴザイマスカラ、何卒滿場諸君ノ御贊同ヲ願ヒタウ存ジマス
〔加太邦憲君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=104
-
105・加太邦憲
○加太邦憲君 諸君、唯今坂本男爵ヨリ本案ニ付キマシテ修正ノ御意見ガ出
マシテ、是ガ議題トナリマシタニ付キマシテハ、私ハ之ニ對シマシテ原案贊成
ノ意見ヲ述ベタウゴザイマス、坂本男爵ガ申サレマスノニ、此裁判所ノ管轄
ニ付キマシテハ、其管內ノ裁判所ヘ通ヒマスル地理上ノコト、又訴訟ノ事件
ノコトガ、最モ必要ナコトデアルト斯ウ云フ御說デゴザイマスガ、最モ是ハ
私ガ贊成スル所デアリマス、今日ノ問題ヲ大體カラ申シマスト、原案ニ於キ
マシテハ東ニアル安蘇郡ノ人民ガ奧カラ出マスルニハ斯ウ出テ、佐野町ヲ經
テ、足利ニ來ル、斯ウナルノデアリマス、若シ佐野ニアルトシマスレバ、足
利ノニチラノ郡民ガ足利町ヲ經テ、佐野ニ出テ來ル、ニチラノ方ノガ爰ヘ來
ルカコチラノ方ノガ爰へ來ルカト云フ、是ガドチラヘスルカト云フ問題デア
リマス、ソレデ雙方ヲ段々地圖ニ依リ又表ニ依リシテ調ベデ見マスルト、安蘇
郡ノ奧ノ方ニ丁度此佐野カラ西北ニ當リマスガ、飛駒村ト云フ僻村ガゴザイ
マスル、其飛駒村カラ佐野ヲ經テ足利マデ出テ來ルノニ、ドレダケノ時間ガ
掛カルカト申シマスト、步クノト鐵道ト兩方アリマスルガ、六時間掛カリマ
ス、之ヲ一ツ除ケマスト云フト、アトハドチラカラモ四里ガ頂上デ、其一ツ
ノ外ハ御互ヒコデゴザイマス、ドチラカラモ同ジデゴザイマス、ソニデ此裁
判所ノコトハ修正論者ノ御說ノ通リ距離モ大事デアリ、事件モ大事デアリマ
スルガ、サウスルト安蘇郡ノ方カラ申シマスト、六里出テ、飛駒村ガ一ツ擢
デテ、遠クデ、之ヲ不便ト云フ一ツノ理由ニナルノデアリマスガ、又事件ノ
コトカラ大ニ考ヘナケレバナリマセヌケレドモ不幸ニシテ私ハサウ云フ統
計ヲ有チマセヌ、或ハ司法當局ニ於テモサウ云フ一箇村ヅヽノ統計ハマア無
イカモ知レマセヌ、私ハ世間一般ノ狀態カラ推シマシテ考ヘマスノニ、此飛駒
村ニドレダケノ事件ガアリマセウカ、多ク考ヘテ、一年三件、十年三十件、
是ダケノ事件ガアリマセウカ、ドウデゴザイマセウカ、私ノ腹一抔言ハシテ
貰ッタラ、一件モ無イカモ知レマセヌ、斯ウ云フ所ハ訴訟ハナイモノデアリ、
絕對ニ無イトハ申サレマセヌガ、殆ド無イモ同樣デアリマス、訴訟ト云フモ
ノハ總テ都會ノ地、交通ノ激シイ、產業ノ多イ所、サウ云フ所ニ多イノデゴザ
イマス唯今ノ關係カラ推シテ申シマスルト、佐野ノ周圍ト足利ノ周圍ト、斯
ウ云フ所ニアルト云フコトニ決ッテ居ルノデス、ソレデアリマスケレドモ、併
ナガラ免ニ角一村或ハ訴訟ガ無イト云フコトハ勿論言ヘマセヌカラ、多少ハ
アルモノト固ヨリ認メナケレバナリマセヌガ、唯距離ノ方カラ言ヒマスルト、
其飛駒村一村ノ爲ニ足利ノ方ガ一ツノ理由ヲ有ッテ居ル、斯ウ云フニトニナル
ノデアリマス、所デ今度ハ足尾町ヲ此管區ニ屬スルト云フコトニナリマシタ
ニ付キマシテハ、之ニ付テハ反對ノ御論ト云フモノハ一向ゴザイマセヌ、此
足尾ト申シマスモノハ陸軍出來ノ地圖デ、コチラガ尺度ヲ取ッテ見マスルノニ
十六七里アルト考ヘラレマスガ、併ナガラ鐵道ガ出來マシテ、三時間デ足利
マデ來レルト云フ今日便利ナ場所ニナリマシタノデゴザイマス、サウシマス
ルト、今日足尾ノ人民ハモウ此足尾ノ鐵道ト云フ唯一ノ鐵道ニ依ッテ平地ニ
出テ來ルヨリ外ハゴザイマセヌノデアリマス、ソレカラ此足尾ト云フモノガ
將來ハ日光ノ方ヘ鐵道ガ出來テ、アノ方カラ交通ノ便利ガ出來テ、元ノ宇都
宮ニ管轄ヲ屬セラレルヤウナコトガアリマスマイカト云フヤウナ御說デアリ
マスガ、ソレハ將來ノコトデ分リマセヌ、日光ノ鐵道ガ出來ルカモ分リマセ
ヌ、併シ足尾カラ日光ト云フモノハ步キマスト七里ト云フコトニ承ッテ居リ
マス、此七里ガ圖ニ依リマスト、一ツノ山脈デゴザイマセヌ、幾ツカノ山ガ
アリマス、ソレデ之ヲ鐵道ヲ造ルト云フコトニナリマシタラ、殆ド熱海線ヲ
起スヤウナ鐵道デアルマイカト私ハ考ヘマス、ソレデ將來出來ルニシマシタ
所ガ、今日カラ計畫シテ、私ハ五年デ出來ルト云フコトハドウモ自分ハ想像
ガ出來マセヌ、或ハ十年モ掛ルカモ知レマセヌ、サウスルト此鐵道ハ假ニ出
來ルモノトシタ所ガ、ソレヲ慮ッテ、今日ノ管轄ヲ宇都宮ノ方ニ移シテ置クト
云フコトハ、是ハ餘リノ早計デ、出來マシタ上ノ便否ニ依ルノ外ハナイト思
ヒマス、此足尾町カラ足利ノ方ニ出マスル地理ハ、是ハ地圖ニ依リマシテハ
山脈ハナイノデス、渡良瀨川ニ依リマシテ弓形ニズット西ニ連ッテ、桐生ヲ經
テ足利ニ出テ來ル、斯ウ云フ次第デ、鐵道ヲ造ルニモ此方面デ餘ホド便利ナ
モノト思ヒマス、ソレデ今日修正論者ノ御說ノ通リ三時間デ足利ヘ出テ來ラ
レルノデアリマスガ、或ハ其日光ノ鐵道ガ出來マシテモ、ヒドイ山デゴザイ
マスカラ、足利へ出テ來ルノト別ニ變リハナイカト思ハレマス、ドッチミチ是
ハドウモ今日ノ論デハナイト思ハレマス、建築ノコト、或ハ佐野、足利ノ兩住
民ノ將來不和ニナリハシナイカト云フヤウナ御說モアリマスガ、多少不和ノ
コトナゾモアルカモ知レマセヌガ、併ナガラ今日仕事ヲ始メタノデアリマス
カラ、裁判所ガ佐野ニ置カレルコトニナッタラ全ク是ガ止ムトモ思ハレマセ
ヌ、ソレカラ此事件ノコトデアリマスガ、今ノ通リ飛駒村ハ殆ド事件ガナイ
ト同樣ト申上ゲマシタガ、反對ニ足尾町ハ民刑合シマシテ、昨年ガ百八十三
件アリマス、三年間合シテ三百六十四件アリマス、先ヅ足尾ヲ除ケテ、安蘇
郡ト足利郡トノ比例ヲ見マスト、安蘇郡ハ此二郡ヲ合併シマシタ廣サノ五分
ノ三ヲ占メテ居ルニ拘リマセズ、事件ハ少イ方デ、三年合シテ四百八十三件デ
アリマス、足利郡ハ五分ノ二ノ小サイ方デアリマスガ、三年デ六百九件アリ
やば、サウシマスト對數ガ安蘇郡ノ五ニ對シテ足利郡ガ六、斯ウ云フコトニ
ナッテ居リマス、ソコデ足利ノ方へ足尾ノ三百六十四件ト云フモノガ附キマス
ルカラ、サウスルト安蘇郡ノ五ニ對シテ足利郡ノ十、丁度佐野ノ倍ヲ占メル、
斯ウ云フコトニナリマスルカラ、此事件ノ上カラ申シマスルト云フト安蘇
郡飛駒村ニ比スベキデハアリマセヌ、唯併ナガラ飛駒村カラ出マスルニハ草
鞋履デ步クノデゴザイマスカラ、勞ハ多ウゴザイマス、足尾カラ出マスルニ
ハ汽車ニ座ッテ出ラレルト云フノデ、至ッテ樂デアリマス、ケレドモ其代リ費
用ガ掛ル、斯ウ云フコトニナリマスカラ、ドウモ件數ナリ地理ナリノ上カラ
較ベルト云フト、足利ノ方ニ裁判所ヲ置カレルト云フコトガ相當デアルト、斯
ウ私ハ考ヘマス、ソレカラ尙ホ銀行ナリ產業上ノコトデアリマスガ、人口ノ
多イ所ノ產業ノィイ所ト云フヤウナ所ハ總テノ人事ガ進步イタシマスルニ連
レテ矢張リ訴訟モ將來殖エテ來ルニ決ッテ居ルノデアリマス、將來ハサテ措キ
マシテ、今日ノ有樣ヲ御話イタシマスルガ、總テ繁昌ノ度合ヲ安蘇郡ト足利
郡トヲ比較イタシマスルニ、大キイ方ノ安蘇郡ノ人口ガ九万一千········其以下
ノ數字ハ略シマス、ソレカラ小サイ方ノ足利郡ガ十万六千、ソレカラ此稅額
ニ付キマシテ安蘇郡ハ六十六万一千、足利郡ハ百一万五千、ソレカラ生產物
ノ額ニ於キマシテハ安蘇郡ハ七百六十三万、足利郡ハ千四百七十五万六千、
斯ウ云フ風デ、安蘇郡ニ較ベマスルト小サイ方ノ足利郡ガ倍ヲ占メテ居ル、
斯ウ云フ有樣デアリマス、ソレカラ今度ハ佐野町ト足利町トヲ比較イタシマ
スルト、佐野町ノ人口ガ一万五千、足利町ノ人口ガ三万四千、直接國稅ハ佐
野町ガ三万九千、足利町ガ九万二千、斯ウ云フ風ニナリマシテ、佐野町ニ較
ベマスルト足利町ガ倍以上アル、斯ウ云フコトニナリマス、ソレカラ尙ホ落
シマシタガ郡村カラ裁判所ヘノ關係ガドウ云フコトガ一番多イカト申シマス
ルト登記デゴザイマス、登記ノコトデハ是ハモウ邊鄙ノ村デモ何處デモ皆裁
判所ヘノ用ガアルノデアリマスガ、安蘇郡ノ方ニ於キマシテハ其方ノ不便ガ
一ツモナイノデアリマス、山ノ方ト佐野町トノ間ニ田沼町ト云フノガアリマ
シテ、是ニ別ニ登記所ガ置イテアリマスルカラ、モウ其方ハ一ツモ苦情モナ
ク、便利ガ出來テ居リマス、唯〓申上ゲマシタヤウナ次第デ、此佐野、足利ト
兩所ヲ比較イタシマスルト、今日ノ狀態デハ足利町ニ置カレルノガ相當デア
ラウト考ヘマス、佐野町ノ方ニハ以前アッタ、以前裁判所ガアッタ歷史ハアリ
マスケレドモ、ソレハ餘リドウモ重ヲ置クニモ及ブマイト思ヒマス、モウ今
日ノ狀態ヲ以テ相當ナ場所ニ置イタラ宜カラウト私ハ思ヒマス、段々述べマ
シタヤウナ次第デ、私ハ修正案ニ反對イタシマシテ、政府ノ原案ニ贊成ヲ致
ス次第デアリマス
〔小野田元凞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=105
-
106・小野田元熈
○小野田元凞君 私ハ修正案ニ贊成スル者デゴザイマス、モウ修正論者カラ
十分ニ諸君ニ申上ゲマシタカラ、申上ゲルコトモゴザイマセヌガ、唯極ク簡
單ニ二點ヲ補ッテ置キマス、第一ハ請願委員ニ自分ハ關係イタシテ居リマシタ
ガ、此問題ハ再三請願ニ出テ參ッタ問題デゴザイマス、付キマシテハ將來ノ關
係ヲ深ク考ヘマシテ、司法省當局者ニ出テ御貰ヒ申シマシテ、如何ニモ朝令
暮改ノヤウナコトノ段々法律ガ出テ參リマスト、前途ドウナリマスルカ、極
ク打明ケタコトヲ請願委員デ述ベテ貰ヒタイト云フコトヲ述ベタノデアリマ
ス、其時ニ殘ラズ復活スル、將來ノ爲ニ········尙ホ一二殖エルカモ知レヌ、其
場所ハ今明言ガ出來ヌ、全ク人民ガ不便ヲ感ジテ居ル、當初ノ行政整理ヲヤ
ッタ當時ハ遺憾ナガラアヽ云フコトデ廢シタノデアッタ、今段々國民ガ發達シ
テ。是ハ甚ダ宜クナイコトデアッタト云フ考ガアル、斯ウ云フコトデアッタデ
スサウ云フコトデアリマシタ故ニ、請願委員ニ於キマシテ十分ニ審議ヲ盡
シマシテ、追ッテ尙ホ經濟ハドウナサルカ、判事ノ定員モ增サナケレバナルマ
イシ、又建物ノ費用モ掛リマセウ、判事ノ方ハ繰合セノ付クダケ都合スル又
建物ノ方ハ從來ノ建物ヲ使用シ、又或ハ賣拂ッタ所ハ土地カラ寄附サセル、斯
ウ云フ問題デアッタ、是ハ請願委員デ審議ヲ盡シマシタ時ノ狀況デアリマス
ソレカラ今度改正案ノ段々司法當局者ノ說明ヲ承リマスルト、足尾ニ非常ニ
重ヲ置カレテ居ル、佐野町ト足利町デアッタナラバ、能ク統計ナド御示ニナリ
マスルガ、是ハ自分ヨリ申上ゲルマデモナイ、織物社會ナド云フモノハ時々
刻々違フ、勝手ナコトヲ云ヘバ佐野アタリデハ昨今縮ト云フモノハ海外ニ餘
程出ル、支那印度地方ニ澤山出マス、是等ハ止メニ致シマシテ、過日司法次
官カラ足尾町ノ刑事ノ統計ヲ御示ニナッタ、刑事問題ハ云フママデモナク勞働
者ガ數多小サナ所ニ有象無象集ヲテ居、コッチデモ喧嘩ヲヤッタ、アッチデモ喧
嘩ヲヤッタト云フコトニナル、彼處ヘ行ッテ御覽ニナレバ分ル、博奕ハ絕ヱナ
イ所デアリマス、刑事問題ハ御示ニナリマシタガ、訴訟問題ハ御示ガナイカ
ラ私カラ質問シタコトガアリマス、サウ云フ狀態デ、昔アッタ所ノ佐野町ヲ足
利ニ換ヘルト云フコトハ、非常ナ理由ガナケレバナラヌト思ヒマス、唯足尾
一町ノ故ヲ以テ足利ニ換ヘルト云フコトニナッテハ本員ノ服サヌ所以デアリ
マス、又不幸ニシテ銅山ニ異變デモアリマシタナラバ、何万人ト云フモノハ
皆逃ゲテ仕舞フ、サウスルト元ノ村落ニナル、到底彼處ニ住ンデ居ル者ハ
從來ノ者ハ率ザ知ラズ、所有權ナドヲ有ッテ居ル者ハ僅々タルモノト考ヘラレ
ル、斯ウ云フ譯デ足尾町ニ重ヲ置イテ足利町ニ置クト云フコトハ、ドウシテ
モ本員ノ服セザル所デゴザイマスガ故ニ、修正案ニ同意シタト云フコトヲ申
述ベテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=106
-
107・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ發言者モナイト認メマスカラ採決ヲ致シマ
ス、本院規則第百七條ニ依リマシテ記名投票ニ依ッテ採決ヲ致シマス、念ノ爲
諸君ニ申上ゲマス、第百八條ニ依リマシテ、問題ヲ可トスル議員、即チ阪本
男爵ノ修正說ニ同意ノ諸君ハ白色票ニ、反對ノ諸君ハ靑色票ニ氏名ヲ御記シ
ヲ請ヒマス、例ニ依リマシテ、議席へ投票ヲ集メニ書記官ヲ差出シマス
〔書記官投票ヲ取集ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=107
-
108・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 投票漏ハゴザイマセヌカ····投票漏ハナイト認メ
マスカラ計算ヲ致サセマス
〔書記官投票ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=108
-
109・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 記名投票ノ結果ヲ御報告ニ及ビマス、投票總數百
八十、阪本男爵ノ修正案ヲ可トスル者八十四、否トスル者九十六、故ニ阪本
男爵ノ修正案ハ否決セラレマシタ········暫ク御靜肅ニ願ヒマス
〔參照〕
贊成八十四名
反對九十六名
贊成者氏名
侯爵德川賴倫君候爵蜂須賀正詔君侯爵德川圀順君
侯爵細川護立君侯爵佐竹義春君侯爵佐佐木行忠君
伯爵柳澤保惠君伯爵廣澤金次郞君伯爵大木遠吉君
伯爵柳原義光君伯爵松平賴壽君伯爵小笠原長幹君
子爵實吉安純君小野田元凞君男爵石黑忠悳君
高崎親章君男爵山根武亮君荒川義太郞君
男爵字佐川一正君男爵高千穗宣麿君男爵坂本俊篤君
男爵名和長憲君古市公威君男爵西紳六郞君
男爵太泰供康君男爵武井守正君男爵阪井重季君
男爵阪谷芳郞君男爵内田正敏君男爵山內長人君
男爵新田忠純君男爵南岩倉具威君男爵山內豐政君
男爵德川厚君男爵船越光之丞君男爵千秋季隆君
男爵北大路實信君男爵斯波忠三郞君男爵眞田幸世君
男爵安場末喜君男爵伊丹春雄君男爵長松篤業君
男爵本田親濟君男爵島津長丸君男爵神山郡昭君
男爵楠本正敏君男爵〓水資治君男爵永山盛興君
男爵橫山隆俊君男爵岩倉道倶君男爵赤松範一君
男爵今園國貞君男爵佐竹義準君男爵藤村義朗君
男爵二條正麿君男爵小畑大太郞君男爵調所恒德君
男爵東鄉安君男爵矢吹省三君男爵岩佐新君
男爵寺島敏三君男爵高崎弓彥君男爵藤田平太郞君
石井省一郞君谷森眞男君三宅秀君
藤田四郞君石黑五十二君仁尾惟茂君
若槻禮次郞君菅原通敬君伊澤多喜男君
江木翼君湯淺倉平君大谷嘉兵衞君
鈴木摠兵衞君野々村久次郞君石橋謹二君
星島謹一郞君矢口長右衞門君橋本辰二郞君
土田萬助君田中〓文君高橋隆一君
反對者氏名
侯爵花山院親家君伯爵萬里小路通房君伯爵〓棲家〓君
伯爵兒玉秀雄君伯爵堀田正恒君男爵小澤武雄君
子爵唐橋在正君子爵一柳末德君子爵大宮以季君
子爵井伊直安君子爵土方雄志君子爵松平康民君
子爵久留島通簡君子爵本多忠敬君子爵樋口誠康君
子爵東坊城德長君子爵松平直德君子爵靑木信光君
子爵冷泉爲勇君子爵牧野忠篤君子爵酒井忠亮君
子爵永井尙敏君子爵五辻治仲君子爵前田利定君
子爵櫛笥隆督君子爵西大路吉光君子爵井上匡四郞君
子爵五條爲功君子爵榎本武憲君子爵京極高備君
子爵京極高義君子爵今城定政君子爵吉田〓風君
子爵大給近孝君子爵本多忠鋒君子爵豐岡圭資君
子爵藪篤麿君子爵秋月種英君子爵伊東祐弘君
子爵松平乘長君子爵堤雄長君子爵白川資長君
子爵野村益三君子爵池田政時君子爵丹羽長德君
子爵〓岡長言君子爵八條隆正君子爵新庄直知君
子爵小笠原勁一君子爵西尾忠方君子爵板倉勝憲君
子爵米倉昌達君男爵高木兼寬君男爵山中信儀君
阿部浩君松室致君大山綱昌君
男爵中川興長君男爵村上 敬次郞君河村讓三郞君
石塚英藏君男爵西村精一君小松謙次郞君
男爵肝付兼行君男爵藤井包總君岡田良平君
荒井賢太郞君中村是公君水野鍊太郞君
男爵小早川四郞君男爵若王子文健君男爵中島久萬吉君
男爵安藤直雄君男爵藤堂高成君高橋琢也君
石渡敏一君加太邦憲君阪本彰之助君
橋本圭三郞君倉知鐵吉君山之内-次君
室田義文君安樂兼道君南弘君
田所美治君江原素六君八木久兵衞君
伊藤傳七君佐藤友右衞門君竹村與右衞門君
伊丹彌太郞君二階堂三郞左衞門君藤本閑作君
高橋源次郞君成〓信愛君櫻井伊兵衞君
〔加太邦憲君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=109
-
110・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 加太君ハ何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=110
-
111・加太邦憲
○加太邦憲君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=111
-
112・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) マダ早ウゴザイマス········是ヨリ原案ニ付テ決ヲ採
リマス、原案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=112
-
113・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス········次ニ問題ニ供シマスノハ、
唯今ノ阪本男爵ノ修正セラレマシタ場所以外全部ヲ問題ニ供シマス、全部原
案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=113
-
114・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=114
-
115・加太邦憲
○加太邦憲君 直チニ三讀會ヲ開カレムコトヲ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=115
-
116・前田利定
○子爵前田利定君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=116
-
117・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 直チニ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=117
-
118・徳川家達
○議長、 公爵德川家達君)御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=118
-
119・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第三讀會ヲ開キマス、全部第二讀會ノ決議通リデ
御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=119
-
120・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、唯〓阪本男爵ノ修正案ガ
否決セラレマシタ結果、日程第八ノ大正二年法律第九號中改正法律案ニ對ス
ル阪本男爵ノ修正案ハ撤囘セラレマシタ、此際規則第百一條ニ依リマシテ採
決イタシマス、阪本男爵ノ修正案撤囘ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=120
-
121・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=121
-
122・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第八、大正二年法律第九號中改正法律案、政
府提出、衆議院送付、第二讀會········全部ヲ問題ニ供シマス、全部同意ノ諸君
ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=122
-
123・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=123
-
124・加太邦憲
○加太邦憲君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=124
-
125・青木信光
○子爵靑木信光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=125
-
126・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=126
-
127・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=127
-
128・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第三讀會ヲ開キマス、第二讀會ノ決議通リデ御異
存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=128
-
129・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=129
-
130・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第九、不動產登記法中改正法律案、政府提出、衆
議院送付、第二讀會、全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案ノ通リデ御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=130
-
131・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=131
-
132・加太邦憲
○加太邦憲君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=132
-
133・八條隆正
○子爵八條隆正君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=133
-
134・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=134
-
135・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=135
-
136・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第三讀會ヲ開キマス、第二讀會ノ決議通リデ御異
存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=136
-
137・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=137
-
138・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ハ御異存ガゴザイマセヌケレバ日程第十ヨリ第
十二マデ委員長ノ報〓ヲ煩ハシマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=138
-
139・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第十、帝國大學特別會計法中改正法律案、第十一
東京帝國大學及京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案、第十二、大正
七年法律第四號中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員
長報告
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス〕
帝國大學特別會計法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正八年二月二十六日
右特別委員長
候爵德川圀順
貴族院議長公爵德川家達殿
東京帝國大學及京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
大正八年二月二十六日
右特別委員長
侯爵德川圀順
貴族院議長公爵徳川家達殿
大正七年法律第四號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正八年二月二十六日
右特別委員長
侯爵德川圀順
貴族院議長公爵德川家達殿
〔候爵德川固順君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=139
-
140・徳川圀順
○侯爵德川〓順君 東京帝國大學特別會計法中改正法律案、東京帝國大學及
京都帝國大學臨時政府支出金ニ關スル法律案、大正七年法律第四號中改正法
律案ノ三案ニ對シテ、委員會ノ經過竝ニ結果ヲ簡單ニ御報告申上ゲマス、委
員會ニ於キマシテハ三案ヲ一括シテ議題ニ供シ、政府委員ヨリ提出ノ理由ニ
付キマシテ詳細ナル說明ガアリマシタ、第一案ハ學術ノ進步發達ヲ圖ルニハ
學者ニ對シテ相當ノ待遇ヲ要シマスノデ、大學ノ〓授、助〓授ニ相當ナル增
俸ヲ爲スコトト、又東京帝國大學ノ文學部ニ〓育科ヲ設置シテ講座ヲ增シマ
スノデ、政府支出金ノ增加ヲスル必要上、特別會計法ヲ改正スル次第デアリ
やき、第二案ハ東京帝國大學工學部竝ニ京都帝國大學工學部及醫學部ノ擴張
ヲナス爲ニ、兩帝國大學ニ對シテ一般會計ヨリ臨時政府支出金ノ繰入ヲ要ス
ル結果デアリマス、第三案ハ此法律制定當時ニ於キマシテハ時局ニ關係シテ
臨時手當ヲ支給セラルヽ場合ハ判任官其他ノ者ニ限ラレテ居リマシタガ、今
般一般官吏ニ臨時手當ヲ給スルコトニ豫算ノ上ニ要求セラレテアル結果、大
學ニ於キマシテモ勅奏任官一般ニ對シテ臨時手當ヲ支給スル必要ガ起リマシ
タノデアリマス、ソレト其他ノ諸經費ノ不足ヲ補充スル爲ノ案デゴザイマス、
委員會ニ於キマシテハ審議ノ結果、時局柄巳ムヲ得ヌモノト認メマシテ、全
會一致ヲ以テ三案共ニ之ヲ可決イタシマシタ、此段御報〓イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=140
-
141・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 諸君ニ於テ御異議ガナケレバ、唯今委員長ノ報〓
セラレマシタ三案トモ束ネテ問題ニ供シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=141
-
142・野村益三
○子爵野村益三君 唯〓委員長ヨリ報〓ガアリマシタル如ク、本案ハ極メテ
簡明ナルモノデアリマス、別ニ御質問モ無イヤウデアリマスルカラ、讀會ヲ
省略サレテ、直チニ可決確定アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=142
-
143・八條隆正
○子爵八條隆正君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=143
-
144・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=144
-
145・秋月種英
○子爵秋月種英君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=145
-
146・伊東祐弘
○子爵伊東祐弘君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=146
-
147・五條爲功
○子爵五條爲功君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=147
-
148・南岩倉具威
○男爵南岩倉具威君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=148
-
149・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=149
-
150・内田正敏
○男爵内田正敏君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=150
-
151・青木信光
○子爵靑木信光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=151
-
152・吉田清風
○子爵吉田〓風君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=152
-
153・本多忠鋒
○子爵本多忠鋒君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=153
-
154・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=154
-
155・高木兼寛
○男爵高木兼寬君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=155
-
156・阪井重季
○男爵阪井重季君 贊成
〔其他「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=156
-
157・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 野村子爵ノ讀會省略ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ
請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=157
-
158・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三分ノ二以上ト認メマス········原案ニ御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=158
-
159・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、次ノ議事日程ハ本院彙報
ヲ以テ御承知ヲ請ヒマス、本日ハ是ニテ散會
午後三時四十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004103242X01419190301&spkNum=159
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。