1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正八年三月八日(土曜日)午後一時十二分開議
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議事日程 第二十號 大正八年三月八日
午後一時開議
第一 都市計畫法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 市街地建築物法案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 衆議院議員選擧法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 衆議院議員選擧法中改正法律案(高木益太郎君外三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 衆議院議員選擧法中改正法律案(武富時敏君外六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 煙草專賣法中改正法律案(小林源藏君外十六名提出) 第一讀會
第九 織物消費税法中改正法律案(小林源藏君外十六名提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=0
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001・大岡育造
○議長(大岡育造君) 諸般ノ報告ガアリマス
〔原田書記官朗讀〕
一去六日政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
都市計畫法案
市街地建築物法案
一去五日議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
煙草專賣法中改正法律案
提出者小林源藏君武藤金吉君
兒玉好熊君長田桃藏君
原田佐之治君高田耘平君
大津淳一郞君高木正年君
森田茂君大堀孝君
渡邊昭君高松正道君
松井文太郞君森本是一郞君
吉田中君秋田〓君
中川隣之輔君
織物消費稅法中改正法律案
提出者小林源藏君武藤金吉君
兒玉好熊君長田桃藏君
原田佐之治君高田耘平君
大津淳一郞君高木正年君
森田茂君大堀孝君
渡邊昭君高松正道君
松井文太郞君森本是一郞君
吉田中君秋田〓君
中川隣之輔君
家畜市場法中改正法律案
提出者齋藤珪次君高橋嘉太郎君
指田義雄君工藤吉次君
佐藤喜八君齋藤安雄君
石射文五郞君小山田信藏君
熊谷直太君工藤卓爾君
遠藤良吉君八田宗吉君
阿部武智雄君野村治三郞君
東京帝國大學醫科大學藥學科擴張ニ關スル建議案
提出者小林源藏君大口喜六君
金杉英五郞君土屋〓三郞君
工業原料植物〓究所設置ニ關スル建議案
提出者鵜澤總明君
大船渡、久慈間鐵道建設ニ關スル建議案
提出者高橋嘉太郞君工藤吉次君
佐藤喜八君小林源藏君
萩亮君中村啓次郞君
一昨七日議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
鐵道統一ニ關スル建議案
提出者柏原文太郎君鵜澤宇八君
關和知君津田毅一君
野村嘉六君
一去五日議員ヨリ提出セラレタル質問(主意書左ノ如シ
宗〓法制定ニ關スル質問主意書
提出者田中善立君
一去六日議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
勞働政策ニ關スル再質問主意書
提出者小山松壽君
一昨七日議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
清凉飮料水營業取締竝內務省令改正ニ關スル質問
主意書
提出者橫山勝太郞君三木武吉君
田中善立君鈴木富士彌君
西伯利ニ關スル質問主意書
提出者加藤定吉君
一今八日議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
朝鮮事變ニ關スル質問主意書
提出者川崎克君
一去五日内閣總理大臣ヨリ議長宛左ノ通發令アリタ
ル旨ノ通牒ヲ受領セリ
農商務技師橘川司亮
農商務省所管事務政府委員被仰付
一昨七日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ議案ヲ可
決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
事業公債金特別會計法案(政府提出)
臨時國庫證劵法中改正法律案(政府提出)
朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出)
臺灣事業公債法中改正法律案(政府提出)
造幣局据置運轉資本增加及設備擴張費ニ關スル法
律案(政府提出)
鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)
北海道鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)
北海道舊土人保護法中改正法律案(政府提出)
一去二月二十五日議決シタル本院ノ決議ニ對シ去六
日左ノ電報ヲ受領セリ
譯文
余ハ深ク閣下カ日本衆議院ヲ代表シテ表明セラレタ
ル感念ヲ感荷シ余ノ誠實ナル謝辭ヲ議會ニ傳ヘラレ
ンコトヲ悃請ス
巴黎千九百十九年三月四日午後八時十分
佛蘭西共和國内閣議長
ヂエ、クレマンソー
東京衆議院議長大岡育造閣下
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載
ス〕
一去五日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如シ
第四部
決算委員菅野傳右衞門君(中野寅次郞君補闕)
一去五日辭任シタル常任委員左ノ如シ
第二部選出決算委員諏訪部庄左衛門君
第八部選出決算委員村松恆一郞君
一去六日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如シ
第二部
決算委員百瀨〓治君(諏訪部庄左衞門君補闕)
第八部
決算委員中川幸太郞君(村松恆一郞君補關)
一去五日私立學校用地免租ニ關スル法津案委員有森
新吉君辭任ニ付其ノ補闕トシテ柏原文太郞君ヲ、水
產講習所內ニ淡水科特設ニ關スル建議案委員唐端
〓太郞君辭任ニ付其ノ補關トシテ鵜澤字八君ヲ、大
正六年度豫備金支出ノ件外六件(承諾ヲ求ムル件)
委員川村精之君辭任ニ付其ノ補闕トシテ高田耘平
君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
一去六日耕地整理法中改正法律案委員小鹽八郎右
衞門君辭任ニ付其ノ補闕トシテ堀尾茂助君ヲ議長
ニ於テ選定セリ
一昨七日財政整理ニ關スル臨時調査機關設置ノ建議
案委員井島義雄君辭任ニ付其ノ補闘トシテ一宮房
治郞君ヲ、農務省新設ニ關スル建議案委員上田彌
兵衞君辭任ニ付其ノ補閥トシテ堀尾茂助君ヲ、延松
鐵道速成ニ關スル建議案委員井島義雄君辭任ニ付
其ノ補闘トシテ原田十衞君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定
セリ
一去六日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
市制中改正法律案外三件委員
委員長小山田信藏君理事野村嘉六君
延松鐵道速成ニ聞スル建議案委員
委員長長峰與一君理事松浦與三郞君
能代、五所川原間鐵道建設ニ關スル建議案委員
委員長池田龜治君理事佐々木平次郞君
鶴岡、大泉間國有輕便鐵道敷設ニ關スル建議案委
員
委員長熊谷直太君理事關原彌里君
新見、庄原間輕便鐵道建設ニ關スル建議案委員
委員長福井三郞君理事湯淺凡平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=1
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002・大岡育造
○議長(大岡育造君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、御諮リ申
ス事ガアリマス、第六部選出豫算委員井島義雄君、右常
任委員辭任ノ申出ガアリマス、許可スルニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=2
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003・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナケレバ之ヲ許可致シマ
ス、第六部ノ諸君ハ速ニ選擧ヲ行ヒ、御屆出アランコトヲ
望ミマス、日程第一及第三ハ、便宜上一括議題ト爲スニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=3
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004・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナケレバ一括議題ト致シマ
ス、第一都市計畫法案、第三、市街地建築物法案-
床次內務大臣
第都市計畫法案(政府提出)第一讀會
都市計畫法
第一條本法ニ於テ都市計畫ト稱スルハ交通、衞生、
保安、經濟等ニ關シ永久ニ公共ノ安寧ヲ維持シ又ハ
福利ヲ增進スル爲ノ重要施設ノ計畫ニシテ市ノ區域
內ニ於テ又ハ其ノ區域外ニ亙リ施行スヘキモノヲ謂フ
第二條前條ニ規定スル市ハ勅令ヲ以テ之ヲ指定ス其
ノ市ノ都市計畫區域ハ關係市町村及都市計畫委員
會ノ意見ヲ聞キ主務大臣之ヲ決定シ內閣ノ認可フ
受クヘシ
第三條都市計畫、都市計畫事業及每年度執行スヘ
キ都市計畫事業ハ都市計畫委員會ノ議ヲ經テ主務
大臣之ヲ決定シ內閣ノ認可ヲ受クヘシ
第四條都市計畫委員會ノ組織、權限及費用ニ關スル
規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條都市計畫事業ハ勅令ノ定ムル所ニ依り行政
廳之ヲ執行ス
主務大臣特別ノ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ム
ル所ニ依リ行政廳ニ非サル者ヲシテ其ノ出願ニ依リ
都市計畫事業ノ一部ヲ執行セシムルコトヲ得
第六條都市計畫事業ノ執行ニ要スル費用ハ行政官
廳之ヲ執行スル場合ニ在リテハ國、公共〓體ヲ統轄
スル行政廳之ヲ執行スル場合ニ在リテハ其ノ公共團
體、行政廳ニ非サル者之ヲ執行スル場合ニ在リテハ其
ノ者ノ負擔トス
主務大臣必要ト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
都市計畫事業ニ因リ著シク利益ヲ受クル者ヲシテ其
ノ受クル利益ノ限度ニ於テ前項ノ費用ノ全部又ハ一
部ヲ負擔セシムルコトヲ得
第七條主務大臣必要ト認ムルトキハ前條ノ規定ニ依
リ公共團體ノ負擔スヘキ每年度ノ金額ノ最低限度ヲ
定ムルコトヲ得
第八條公共團體ハ第四條又ハ第六條ノ費用ニ充ツ
ル爲左ノ特別稅ヲ賦課スルコトヲ得但シ府縣費ヲ市
ニ分賦スル場合ニ於テ市カ營業稅、雜種稅又ハ家屋
稅ヲ賦課スルトキハ主務大臣ノ許可ヲ受ケ其ノ稅率
ヲ定ムヘシ
一地租割地租百分ノ十二半以内
二國稅營業稅割國稅營業稅百分ノ十七以内
三營業稅、雜種稅又ハ家屋稅各府縣稅十分ノ
四以内
四其ノ他勅令ヲ以テ定ムルモノ
公共團體ハ主務大臣ノ許可ヲ受ケ公共〓體ノ他ノ
收入ヲ以テ第四條又ハ第六條ノ費用ニ充ツルコト
ヲ得
第九條都市計畫區域内ニ存スル國有河岸地ニシテ
公共ノ用ニ供セサルモノハ第六條ノ費用ヲ負擔スル
公共〓體ニ之ヲ下付スルコトヲ得
第十條都市計畫區域內ニ於テ市街地建築物法ニ依
ル地域又ハ地區ノ指定、變更又ハ廢止ヲ爲ストキハ都
市計畫ノ施設トシテ之ヲ爲スヘシ
都市計畫區域内ニ於テハ市街地建築物法ニ依ル地
域及地區ノ外土地ノ狀況ニ依リ必要ト認ムルトキハ
風致又ハ風紀ノ維持ノ爲特ニ地區ヲ指定スルコトヲ得
第十一條第十六條第一項ノ土地ノ境域內又ハ前條
第二項ノ規定ニ依リ。指定スル地區內ニ於ケル建築
物、土地ニ關スル工事又ハ權利ニ關スル制限ニシテ
都市計畫上必要ナルモノハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條都市計畫區域內ニ於ケル土地ニ付テハ其ノ
宅地トシテノ利用ヲ增進スル爲土地區劃整理ヲ施行
スルコトヲ得
前項ノ土地區劃整理ニ關シテハ本法ニ別段ノ定アル
場合ヲ除クノ外耕地整理法ヲ準用ス
第十三條都市計畫トシテ內閣ノ認可ヲ受ケタル土地
區劃整理ハ認可後一年內ニ其ノ施行ニ著手スル者
ナキ場合ニ於テハ公共團體ヲシテ都市計畫事業トシ
テ之ヲ施行セシム
前項ノ規定ニ依リ公共團體ノ施行スル土地區劃整
理ニ付耕所整理法ヲ準用シ難キ事項ニ關シテハ勅令
ヲ以テ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
第十四條地方長官土地區劃整理ノ設計ニ關スル認
可ヲ爲ス場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十五條土地區畫整理ヲ施行シタル土地ノ地價ハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ定ム
第十六條道路、廣場、河川、港灣、公園其ノ他勅令
ヲ以テ指示スル施設ニ關スル都市計畫事業ニシテ内
閣ノ認可ヲ受ケタルモノニ必要ナル土地ハ之ヲ收用
又ハ使用スルコトヲ得
前項土地附近ノ土地ニシテ都市計畫事業トシテノ建
築敷地造成ニ必要ナルモノハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
之ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得
第十七條上地區畫整理ノ爲又ハ衞生上若ハ保安上
ノ必要ニ依ル建築物ノ整理ノ爲必要アルトキハ建藥
物其ノ他ノ工作物ヲ收用スルコトヲ得
第十八條前二條ノ規定ニ依ル收田又ハ使用ニ關シテ
ハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外土地收用法ヲ
適用ス
前項ノ規定ニ依ル土地收用法ノ適用ニ付テハ前條ノ
工作物ハ之ヲ土地ト看做ス
第十九條第十六條又ハ第十七條ノ規定ニ依ル收用
又ハ使用ニ付テハ第三條ノ規定ニ依ル都市計畫ノ認
可ヲ以テ土地收用法ニ依ル事業ノ認定ト看做ス
第二十條土地收用法第二十二條第一項ノ協議調ハ
サル場合又ハ其ノ協議ヲ爲スコト能ハサル場合ニ於テ
ハ事業執行者ハ主務大臣ノ裁定ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ收用審査會ノ栽決ヲ求ムルコト
ヲ得ス
前二項ノ規定ハ損失ノ補償ノ協議ニ關シテハ之ヲ適
用セス
第二十一條第九條ノ規定ニ依リ下付ヲ受ケタル土地
及第十六條第二項ノ規定ニ依リ收用シタル土地ノ處
分及管理ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二條都市計畫事業ニ依リ生シタル營造物ノ
管理ニ付特ニ必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
其ノ管理者ヲ定ム
第二十三條行政執行法第五條及第六條ノ規定竝
之ニ基キテ發スル命令ハ本法若ハ本法ニ基キテ發ス
ル命令又ハ之ニ依リテ爲ス處分ニ依リ行フヘキ作爲
又ハ不作爲ヲ行政廳カ强制スル場合二之ヲ準用ス
第二十四條本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之
ニ依リテ爲ス處分ニ依リ私人ノ義務ニ屬スル負擔金
其ノ他ノ費用ハ行政廳國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ
徴收スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル徵收金ノ先取特權ノ順位竝其ノ
追徵還付及時效ニ付テハ行政廳ノ統轄スル公共團
體ノ徵收金ノ例ニ依ル
第二十五條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定
シタル事項ニ付行政廳ノ爲シタル處分ニ不服アル者ハ
訴願スルコトヲ得
本法ニ依リ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ル場合ニ
於テハ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
第二十六條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規
定シタル事項ニ付行政廳ノ爲シタル違法處分ニ因リ
權利ヲ毀損セラレタリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴
スルコトヲ得
附則
第二十七條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八條東京市區改正條例、東京市區改正土地
建物處分規則及大正七年法律第三十六號竝之ニ
基キテ發シタル命令ハ之ヲ廢止ス
第二十九條東京市區改正條例及束京市區改正土
地建物處分規則ノ適用又ハ準用ヲ受クル市ハ第二
條第一項ノ規定ニ依リ指定セラレタルモト看做ス
第三十條東京市區改正條例又ハ大正七年法律第
三十六號ニ依リ内閣ノ認可ヲ受ケタル設計又ハ議定
シタル事業ハ各本法ニ依リ內閣ノ認可ヲ受ケタル都市
計畫又ハ都市計畫事業ト看做ス
第三十一條東京市區改正條例、東京市區改正土地
建物處分規則若ハ大正七年法律第三十六號又ハ之
ニ基キテ發シタル命令ニ依リ爲シタル處分ハ本法又ハ
本法ニ基キテ發スル命令ニ牴觸セサル限リ本案ニ依リ
爲シタル處分ト看做ス
第三十二條東京市區改正土地建物處分規則ノ適
用又ハ準用ニ依リ行政廳ノ爲シタル處分ニ關シテハ同
規則第一條第二項乃至第四項ハ仍其ノ效力ヲ有ス
第三十三條東京市區改正條例又ハ大正七年法律
第三十六號大正七年勅令第百八十四號ニ依リ下付
ヲ受ケタル官有ノ河岸地ハ其ノ下付ヲ受ケタル市ノ所
有ニ屬スル間地租ヲ免除ス但シ其ノ都市計畫事業ノ
終リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ河岸地ヨリ收入スル金額ハ其ノ市ノ都市計畫
事業ノ終ル迄之ヲ他ニ支出スルコトヲ得ス
第一項ノ河岸地ノ下付ヲ受ケタル市ハ之ヲ賣却讓奥
スルコトヲ得ス但シ已ムヲ得サル場合ニ於テ都市計畫
委員會ノ議決ヲ經テ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキ
ハ此ノ限ニ在ラス
第三市街地建築物法案(政府提出)第一讀會
市街地建築物法
第一條主務大臣ハ本法ヲ適用スル區域內ニ住居地
域、商業地域又ハ工業地域ヲ指定スルコトヲ得
第二條建築物ニシテ住居ノ安寧ヲ害スル虞アル用途
ニ供スルモノハ住居地域內ニ之ヲ建築スルコトヲ得ス
第三條建築物ニシテ商業ノ利便ヲ害スル虞アル用途
ニ供スルモノハ商業地域內ニ之ヲ建築スルコトヲ得ス
第四條工場、倉庫其ノ他之ニ準スヘキ建築物ニシテ
規模大ナルモノ又ハ衞生上有害若ハ保安上危險ノ
虞アル用途ニ供スルモノハ工業地域內ニ非サレハ之ヲ
建築スルコトヲ得ス
主務大臣必要ト認ムルトキハ前項ノ建築物ニシテ著
シク衞生上有害又ハ保安上危險ノ虞アル用途ニ供ス
ルモノニ付テハ工業地域內ニ於テ其ノ建築ニ付特別
地區ヲ指定スルコトヲ得
第五條前三條ニ規定スル建築物ノ種類ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第六條前四條ノ規定ノ適用ニ付テハ新ニ建築物ノ
用途ヲ定メ又ハ建築物ヲ他ノ用途ニ供スルトキハ其
ノ用途ニ供スル建築物ヲ建築スルモノト看做ス
第七條道路敷地ノ境界線ヲ以テ建築線トス但シ特
別ノ事由アルトキハ行政官廳ハ別ニ建築線ヲ指定ス
ルコトヲ得
第八條建築物ノ數地ハ建築線ニ接セシムルコトヲ要
ス但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ行政官廳ノ許可ヲ
受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九條建築物ハ建築線ヨリ突出セシムルコトヲ得ス
但シ建築線カ道路幅ノ境界線ヨリ後退シテ指定セラ
レタルモノナルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ建築物ノ
前面突出部又ハ基礎ハ道路幅ノ境界線ヲ超エサル
範圍內ニ於テ建築線ヨリ之ヲ突出セシムルコトヲ得
第十條行政官廳ハ市街ノ體栽上必要ト認ムルトキハ
建築線ニ面シテ建築スル建築物ノ壁面ノ位置ヲ指定
スルコトヲ得
第十一條建築物ヲ建築スル場合ニ於ケル其ノ高又ハ
其ノ敷地内ニ存セシムヘキ空地ニ關シテハ地方ノ狀
況、地域及地區ノ種別、土地ノ情態、建築物ノ構造、
前面道路ノ幅員等ヲ參酌シ勅令ヲ以テ必要ナル規
定ヲ設クルコトヲ得
第十二條主務大臣ハ建築物ノ構造、設備又ハ敷地
ニ關シ衞生上又ハ保安上必要ナル規定ヲ設クルコト
ヲ得
第十三條主務大臣ハ火災豫防上必要ト認ムルトキ
ハ防火地區ヲ指定シ其ノ地區內ニ於ケル防火設備
又ハ建築物ノ防火構造ニ關シ必要ナル規定ヲ設ケル
コトヲ得
防火地區內ニ於テハ建物ノ部分ヲ爲ス防火壁ハ土
地ノ疆界線ニ接シ之ヲ設クルコトヲ得
第十四條主務大臣ハ學校、集會場、劇場、旅館、工場、
倉庫、病院、市場、屠場、火葬場其ノ他命令ヲ以テ指
定スル特殊建築物ノ位置、構造、設備又ハ敷地ニ關
シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
第十五條主務大臣ハ美觀地區ヲ指定シ其ノ地區內
ニ於ケル建築物ノ構造、設備又ハ敷地ニ關シ美觀上
必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
第十六條主務大臣ハ建築物ノ工事執行ニ關シ必要
ナル規定ヲ設クルコトヲ得
第十七條行政官廳ハ建築物左ノ各號ノ一ニ該當ス
ル場合ニ於テハ其ノ除却、改築、修繕、使用禁止、使
用停止其ノ他ノ必要ナル措置ヲ命スルコトヲ得
一保安上危險ト認ムルトキ
二衛生上有害ト認ムルトキ
三本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ達反シテ建
築物ヲ建築シタルトキ
第十八條本法適用區域ノ設定若ハ變更、地域若ハ
地區ノ指定若ハ變更其ノ他ノ場合ニ於テ從來存在
スル建築物カ其ノ後新ニ建築セラレタリトセハ本法又
ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ達反スヘキモノナルトキ
ハ行政官廳ハ相當ノ期間ヲ指定シ其ノ建築物ニ付
前條ニ揭クル必要ナル措置ヲ命スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル措置ヲ命スルトキハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ建築物所在地ノ公共〓體ヲシテ損失ヲ補
償セシム
前項ノ規定ニ依リ補償ヲ受クヘキ者補償金額ニ付不
服アルトキハ其ノ金額決定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三
月内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得此ノ場合ニ於
テハ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ス
第十九條建築主、建築工事請負人、建築工事管理
者又ハ建築物ノ所有者若ハ占有者本法若ハ本法ニ
基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ
タルトキハ二千圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第二十條前條ノ規定ハ前條ニ揭クル者未成年者又
ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス
但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年
者其ノ營業ニ關シ前條ニ規定スル違反ヲ爲シタルト
キハ此ノ限ニ在ラス
前條ニ揭クル者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、
雇人其ノ他ノ從業者其ノ營業ニ關シ前條ニ規定スル
違反ヲ爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以
テ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
前條ニ揭クル者法人ナルトキハ明治三十三年法律第
五十二條ヲ準用ス
第二十一條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規
定シタル事項ニ付行政官廳ノ爲シタル處分ニ不服ア
ル者ハ訴願スルコトヲ得
本法ニ依リ行政栽判所ニ出訴スルコトヲ得ル場合ニ
於テハ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
第二十二條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規
定シタル事項ニ付行政官廳ノ爲シタル違法處分ニ因
リ權利ヲ毀損セラレタリトスル者ハ行政裁判所ニ出
訴スルコトヲ得
第二十三條本法適用ノ區域ハ勅令ヲ以テ指定スル
市、區其ノ他ノ市街地トス
特別ノ必要アル場合ニ於テハ勅令ヲ以テ其ノ定ムル
所ニ依リ前項ノ市街地ノ外ニ亙リ本法適用ノ區域ヲ
定ムルコトヲ得
第二十四條本法ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ建築工事
中ノ建築物、建築工事ニ著手セサルモ設計アル建築
物又ハ建築物ニ非サル工作物ニ之ヲ準用スルコトヲ
得
第二十五條本法ノ全部又ハ一部ノ適用ヲ必要トセ
サル建築物ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條本法ニ於テ道路ト稱スルハ幅員九尺以
上ノモノヲ謂フ
道路ノ新設又ハ變更ノ計畫アルトキハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ其ノ計畫ノ道路ハ之ヲ道路ト看做ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=4
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005・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 近時都市ノ膨脹ハ著シイ
現象デゴザイマス、東京市、大阪市ハ固ヨリノコト、其他ノ
大都市ニ於キマシテモ、市ノ區域內外ニ亙ッテ、膨脹發展ノ
勢ハ殊ニ顯著ナル狀況デゴザイマス、人口稠密ニナリマスル
結果ハ、自ラ都市ノ交通、衞生、保安、經濟等ニ甚シク影
響ノアルコトハ申スマデモゴザイマセヌ、之ニ對スル相當ナル
都市計畫ヲ立テヽ進ミタイト云フコトハ、何レノ都市ニ於キ
マシテモ、要望セラレテ居ル所デゴザイマス、四十議會ニ於
テ兩院ノ協賛ヲ得テ、取敢ヘズ東京市區改正條例中ニ一
部ノ改正ヲ加ヘラレタノデアリマシテ、京都、大阪、其他內
務大臣ノ指定スル地ニモ、之ヲ準用スル途ヲ開カレタノデ
アリマシタガ、是デハ未ダ十分デゴザイマセヌ、將來秩序アル
健全ナル發達ヲ遂ゲシメルト云フノニハ十分デゴザイマセ
ヌ、殊ニ市區改正條例ニ附屬致シマスル土地建物處分規
則ト云フモノハ、三十年前ノ發布デアリマシテ、不備ノ點モ
尠カラズ、當議會ニ於テ問題ニナッタコトモアリマシテ、當時
政府ニ於テハ、適當ノ時機ニ於テ改正ヲ致シタイト云フコ
トヲ言明致シマシタコトモゴザイマス、此法案ノ中ノ要點ヲ
申上ゲマスレバ、第一ハ都市ノ發達ニ應ズル地域設定ニ關
スル規定ヲ致シタコトデゴザイマス、現行法デハ土木又ハ衞
生ニ關スル工事ノ設計ヲ定メルト云フ途ハ開ケテゴザイマ
スガ、住居、商業、工業等ノ地域ヲ設定スルコトニ付テハ、
何等ノ規定ガゴザイマセヌ、目今是等ノ事ハ都市ノ狀況ヨ
リシテ、必要ナルコトヽ考ヘルノデアリマス、尙ホ市街宅地ノ
利用ヲ計ル上ニ於キマシテ、土地區劃ノ整理ニ關スルコト
ハ必要ナル事デゴザイマスルガ、現在ニ於キマシテハ是等ニ
關スル規定ガ無イ爲メニ、已ムヲ得ズ耕地整理法ヲ適用致
シテ居ルノデアリマスルガ、甚ダ遺憾ニ感ズル點ガゴザイマ
ス、又現在ノ法律ニ於キマシテハ、都市計畫ノ實行上、此
收用ニ關スル制度ハ不十分デゴザイマス、仍テ之ヲ今日
ノ時代ニ應ズル土地收用法ヲ規定致シタ譯デゴザイマス、
或ハ又道路ニ沿ウテ建築數地等ノ利用ヲ計ル上ニ於テ、
建築地帶ニ關スル收用ノ規定ヲモ致シマシタ、以上改正ノ
重ナル事柄デゴザイマスガ、大體今日ノ市區改正條例ヲ骨
子トシテ襲用-踏襲致シテゴザイマス、右法案大體ノ說
明デゴザイマヌ、此市街地建築物法案ハ、都市計畫法案ト
相俟テ、始メテ都市計畫ノ實ヲ擧ゲ得ル次第デゴザイマ
ス、此法案ニ於キマシテハ、住居、商業、又ハ工業ノ地域ヲ
設定スル事ニ關スル規定ヲ致シマシタ、尙ホ道路ト建築ト
ノ關係、建築物ノ高サ、若クハ構造等ニ關スル規定ヲ致シ
マシタ、今日ノ時代ニ應ジテ都市ノ計畫ヲ實行致シタイ積
リデアリマス、市區改正條例ヲ發布セラルヽ際ニ當リマシテ
モ政府當局ニ於キマシテハ、同時ニ建築ニ關スル制度ヲモ
立テタイト云フ希望モアッタ趣デアリマシタガ、其當時民度
未ダ進マザルモノアリ、其儘ニナッテ居リマシタノガ、爾來此
建築ニ關スル事、或ハ屋上制限ナリ、若クハ衞生上有害ナ
ル建築ニ對スル取締等ナル、斷片的ニ地方ノ警察令ヲ以
テ取締規則ヲ設ケテアリマスル今日ノ實況デゴザイマスガ、
民度ノ進ミマシテ、段々規模ノ宏大ナル建築物ノ建築セラ
ルヽ今日ニ當リマシテハ、是等ノ取締規則ノミヲ以テ十分
ナリト申スコトハ出來マセヌ、ソレ故ニ此法案ヲ設定致シマ
シテ、都市計畫法案ト相俟ッテ、都市ノ改良事業ノ便利ヲ
團リタイ趣意デゴザイマス、宜シク、御詮議ヲ願ヒマス、尙ホ
重大ナル法案ナルニ拘ラズ、提出ノ期限ノ遲レマシタ事ニ
付テハ、特ニ御斷リヲ申上ゲテ置キマス
〔拍手スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=5
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006・大岡育造
○議長(大岡育造君) 高木益太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=6
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007・高木益太郎
○高木益太郞君 政府ニ御尋ガアリマスガ、本案ノ大體
ハ都市ノ交通、衞生、保安、經濟上ノ利益ヲ增進スル爲メ
ニ、御提案ニナッタコトデゴザイマスカラ、吾〓都市ニ關係ヲ
有スル議員トシテハ、頗ル歡迎スルノデアリマス、併シ二三簡
單ニ御尋ヲ致シタイ事ガアリマスガ、之ニ就テ政府カラノ御
答ヲ望ムノデアリマス、第一ハ勅令デドノ都市ヲ改善スルト
云フコトヲ決メルト書イテアリマスガ、内務大臣ノ御考デハ、
何レノ都市ヲ御指シニナルノデアルカ、其中デ一番早クドノ
都市ヲ御著手ニナルト云フ御考デアルカ、大凡其勅令ノ內
容、内務大臣ノ頭ニ描カレタル所ノ勅令ノ內容如何、何レ
ノ都市ヲ指スノデアルカト斯ウ云フ事ヲ伺ヒタイ、第二ニハ、
此法律ノ運用ニ依シテ爲スベキ改良工事ト云フモノハ、大
凡何億圓掛ル御計畫デアルカ、少ナクモ私ハ東京ニ關係ヲ、
有ッテ居ルノデアリマスカラ、東京市區改正條例ヲ廢シテ此
法律ヲ實行スルト云フコトニ就テ、東京市ニハ改良ノ費用
ト云フモノハ、内務大臣ハ何億圓使フモノト御考ニナッテ居
ルノデアルカ、第三ニハ、工事ヲ何年間ニ完成ナサル思召
デアルカ、第四ニハ、此法案ハ內務省ノ方ガ起草セラレタモ
ノト見エマシテ、交通、衞生、保安ト云フヤウナ內務行政ニ
關スル事柄ハ、中と能ク御調査ノヤウデゴザイマス、併ナガラ
兎ニ角東京ノ大都市ヲ改造スルニハ、何億圓ノ費用ヲ要ス
ルノデアリマスカラ、其財源ハドウ云フ工合ニ算盤ヲ御採リ
ニナッテ居ルノデアラウカ、其財源ハ租稅デ徵收スルトカ、或
ハ、公共團體ニ於テ公債ヲ以テ募集スルトカ、卽チ經濟ノ方
面、此改造ヲ爲ス資本金融ノ方面ニ就テ、ドウ云フ御計畫
ガアラルヽノデアルカ、是ハ一番東京市民ガ聽キタイ所デア
リマスカラ、此經濟方面ノ〓究ト云フモノモ、一ツ御調査ヲ
爲サレタ所ヲバ委シク伺ヒタイ、例ヘバ私等ノ考ニ致シマス
ト云フト、幕府時代ニ於テハ、有名ナ神社佛閣ノ建築資金
ニハ富籤ヲ許シテ居ッタ、是ハ外ノ事ニ就テハ射倖心ヲ挑發
スル虞アルケレドモ、東京デ例ヘバ增上寺山門ノ建築ヲスル
トカ、或ハ湯島ノ天神社ヲ建築スルトカ云ヘバ、其境内ニ於
テ富籤ヲ許シテ、輙スク金ヲ集メル、所謂低利ノ資金ヲ集メ
テ、建築ノ費用ニ供シタト云フコトデアリマスガ、丁度獨逸
ノ「フレデリック」大王ガ伯林ノ都市ヲ建築スルニ就テ、割增
債劵ノ募集ヲ許シタ如ク、東京ニモ或ハ割增債劵ノ發行ヲ
御許シニナル思召デアルカドウデアルカ、例ヘバ最近ニ於テ
勸業銀行ガ一千万圓ノ割增債劵ヲ募ルト云フト、四分ノ
利息デ結局割增金ヲ加へ、五分マデヽ一千万圓ノ募集ガ
出來タ、然ルニ此頃政府ガ三年ノ短期公債五千三百万圓
募集スル爲メニ、實際政府ノ支拂フベキ利子等ハ六分ニ
當ッテ居ル、民間ノ勸業銀行ヨリ政府ノ國債ノ方ガ高イ利
息ヲ拂ッテ居ル、故ニ東京ナリ六大都市ナリヲ改造スルト云
フニハ、成ベク廉イ費用ヲ以テ其資本ヲ得ルト云フコトハ必
要ダラウト思フ、廉クヤレバ地主ノ負擔ガ輕クナル、地主ノ
負擔ガ輕クナレバ借地人ノ負擔ガ輕クナル、借地人へ負擔ガ
輕クナレバ、借家人ノ負擔ガ輕クナルコトハ疑ナイノデアリ
マスカラ、斯ノ如ク正シイ方法ニ依ッテヤルノデアリマスカラ
シテ、割增ヲ許シ、以テ低利資金ヲ注入スルト云フ爲メニハ、
或ハ勸業銀行同樣ニ、割增債劵ノ發行デモ東京市ニ於テ
御許ニナル御考ガアルカドウカ、ソレカラ又此勞働者ノ建物
ノ建築ヲシテヤルト一云フコトハ、歐羅巴各國ガ國家トシテ
ヤンテ居ル、是等ハ社會政策ノ上カラ、何レノ國家ト雖モ、勞
働者ニ向ッテ廉イ費用デ以テ都市ノ生活ノ設備ヲヤッテ居
ル、政府ハ斯ウ云フ點ニ就テ、國家トシテ經營スル御考デアル
カ、此東京市ナリ其他ノ都市ノ經營ニ付テハ、國庫カラドレ
ダケノ補助ヲスルノデアリマスカ、例ヘバ日本全國カラ都市
ニ集ッテ來ル者ガ、全人口ノ十分ノ二以上ニナッテ居ッテ、尙
ホ益〓人ガ集中スル傾ニナッテ居ル、サウスレバ都市問題ハ日
本ノ玄關バカリデナイ、是ハ實ニ國家問題デアッテ、段々人ガ
田舍ヲ離レ都會ニ來ル、現在十分ノ二以上ノ人口ガ集ッテ
居ル、將來ドレ位集ルカ分ラヌ、ソレデ都市ノ一局部問題ト云
フヨリハ、寧口國家問題デアッテ、將來色〓八釜敷イ問題ガ
起ルノデアリマス、政府ハ勞働者ノ方面ニ就テハ、十分ナル
補助金ヲ出ス御考デアルカ、或ハ又政府ガ直接國費ヲ以テ
御遣リナサル御計畫デアリマスカ、斯ウ云フ點ヲ吾〓ハ市
民ノ一人トシテ伺ヒタイノデアリマス、其次ニ伺ヒタイノハ、
借地人、借家人ノ保護計畫ハドウデアルカ、現在例ヘバ東
京デ、下ノ地面ノ價格ハ十億圓デアル、上ニ在ル建物、營業、
住居權ノ評價ハ二十億圓以上アル、其地上ニハドノ位ノ
人口ガ居ルカト云フト、二百五十万人以上居ル、此地主ガ
一万五千人內外、一万五千人ノ地主ガ暴利ラ貪レバー
尤モ中ニハ正當ノ地主モ澤山アルガ、惡地主ノ誅求ハ、直
チニ二百五十万ノ人ガ戰々兢々トシテ其堵ニ安ンゼヌノデ
アリマス、故ニ安心シテ東京市內ニ居住スルコトガ出來ナイ、
凡ン他人ノ土地ニ於テ、借地人ガ勞働ト其資本ヲ注入シ
テ立派ナ家屋ヲ建築シ、其結果都市ノ美觀ヲ添エ、都市ノ、
衞生、交通ヲ發達セシムルノデアルカラ、政府ハ餘程借地人
借家人ヲ保護スル計畫ガナケレバナラスト思ヒマス、是ハドウ
云フヤウナ政策ヲ政府ハ描カレテ居ラルヽカ、內務大臣ハ
豫テ社會政策ニ就テ、餘程御抱負ガアルト云フコトデアリ
マスカラ、吾ミハ敬服ニ堪ヘヌノデアリマス、是ハ東京市民ニ
取ッテ重要ナル案デ、此計畫ガ確定セザレバ、殆ド空中ニ樓
閣ヲ描クト同一デアル、故ニ今度ノ大計畫、永久ノ設備ヲ
スルト云フ以上ハ、矢張「フレデリック」大王ガ獨逸ノ伯林ニ
非常ナル計畫ヲ立ッタルト同ジヤウニ、床次內務大臣ハ、餘
程此都市ニ同情ヲ以テヤラナケレバナリマセヌ、其同情ノ程
度ハドノ位デ、其抱負ハ如何デアルカト云フコトヲ伺ヒタイ
ノデアリマス、ソレカラ最後ニ都市計畫委員ノ組織デアリマ
ス、大抵ノ事ハ行政命令デ認メルヤウデアリマスガ、〓ニ角
所有權ハ憲法上ノ保障ノアルモノデ、今度ノ計畫ト牴觸シ
ナイヤウニセシムルニハ、此都市計畫委員會ノ勅令ハ、ドウ
云フ工合ニ御決メニナリマスカ、其內容ノ大體ヲ伺ヒタイ、
吾ミヲシテ言ハシムルト、東京市ノ如キハ、市會議員ハ存外
東京ノ實情ヲ知ラナイ者ガアリ、却テ土著ノ恆產ノ有ル區
會議員ノ方ガ、東京ノ事情ヲ知ッテ居ル、デアルカラ此案ノ
如ク營業區デアルトカ、工業區デアルトカ、住居區デアルト
カ、區域ヲ定メルニ就テハ、餘程都會ノ事情ニ精通シタ人ガ
入ラナケレバ、此適當ノ運用ガ出來ヌノデアリマス、サウシナイ
ト非常ニ都會ノ經濟關係、營業關係、歴史關係ヲ破壞ス
ル、虞ガアリマスカラ、之ニ就テハドウ云フ組織ヲ以テ御遣
リニナル御考デアルカ、卽チ都市計畫委員會ノ組織ノ如何
ト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=7
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008・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 高木君ニ御答致シマスガ、
勅令ヲ以テ指定スル市ト云フモノハ、今ノ所デドウ云フ考カ
ト云フ御尋ハ、此法案ノ二十九條ニ「束京市區改正條例
及東京市區改正土地建物處分規則ノ適用又ハ準用ヲ受
クル市ハ第二條第一項ノ規定ニ依リ指定セラレタルモノト
看做ス」唯今斯樣ニ承知ヲ下サレテ宜シウゴザイマス、ソレ
カラ第二ノ(高木益太郞君「今六大都市デスナ」ト呼フ)左
樣デアリマス、都市計畫ニ關スル豫算ガアルカト云フコトデ
アリマスガ、ソレハ取調ベテ居リマセヌ、大體ハ法案ニ就テ
御覽下サル如ク、先ヅ此都市デアリマスレバ、現在東京ハ
市區改正條例ニ依シテ市區改正ヲ致シテ居リマスガ、ソレ
ニ今日ヨリモヨリ以上ノ便利ノ途ヲ開キタイト云フコトニ、
承知ヲ下サレバ宜シウゴサイマス、事業ノ計畫、順序、實行
ノ順序等ハ、都市委員會ニ於テ自然定ムル譯デアリマス、ソ
レカラ第三ノ財源ノコトニ就キマシテハ、現行市區改正條
例ニ別段變更ハ加ヘテ居リマセヌ、新タナル考ヲ有シテ居リ
マセヌ、左樣ニ御承知ヲ願ヒマス(高木益太郞君「何年間ニ
完成スル見込デアリマスカ」ト呼フ)ソレハソレ〓〓各都市ニ
於テ、都市計畫委員會ガ何レ組織サレマスカラ、是等ノ委
員ニ於テ十分審議ヲ盡サルヽ積リデアリマス、左樣ニシテ決
定スル積リデアリマス、ソレカラ勞働者ノ家屋問題、其他縷
縷御述ニナリマシタ事ハ、私モ至極御同感デアリマスガ、此
案ニ就テハ、直接其等ノ所マデ考ヲ及ポシテ居リマセヌ、何
レサウ云フ問題ハ、追こ調査ヲ致サナケレバナラヌト考ヘテ
居リマス、第四委員會ノ組織、此委員會ノ組織モ、專ラ現
在東京市區改正委員會ト相異ナラザル組織ヲ致ス積リデ
アリマス、唯〓御注意ノアリマシタ、區ニ從事スル人〓ニシシ
テ、其必要ナリト思フ人ハ、總テヲ加フルコトガ出來ル譯ニ
ナッテ居リマスカラ、注意ヲ致シマス(高木益太郎君「財源ハ
ドウデスカ」ト呼フ)其事ハ考ヘテ居リマセヌ、自然他日必要
ガアル時、更ニ考慮致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=8
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009・大岡育造
○議長(大岡育造君) 兩案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選
舉ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=9
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010・岩崎勲
○岩崎勳君 唯〓ノ日程第一及第三八、一括シテ委員ニ
付託シ、其委員ハ二十七名トシ、議長指名ニセラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=10
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011・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=11
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012・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナケレバ、岩崎君ノ動議ノ
如ク決定致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=12
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013・岩崎勲
○岩崎勳君 議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致
シマス、卽チ玆ニ便宜上政府ノ同意ヲ得テ、日程第八及第
九ヲ一括シテ議題ト爲シ、簡單ニ提出者ノ御說明ヲ求メ、
先ジ其審議ヲ進メラレンコトフ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=13
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014・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=14
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015・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガ無ケレバ-日程變更ニ
政府ハ同意デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=15
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016・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 簡單ノ御說明デアリマスレ
バ、同意致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=16
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017・大岡育造
○議長(大岡育造君) 條件附デアリマス、簡單ノ御說明
デアリマスレバ、政府ハ同意スルト云フコトデアリマス
第八煙草專賣法中改正法律案(小林源藏君
外十六名提出)第一讀會
煙草專賣法中左ノ通改正ス
第二十條ノ二政府ハ煙草耕作者ノ組織スル組合又ハ
其ノ聯合組合二對シ專賣事務執行上必要ナル施設ヲ
爲シ又ハ其ノ補助ヲ爲スヘキコトヲ命スルコトヲ得
前項ノ組合又ハ聯合組合ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依
リ豫算ノ範圍內ニ於テ交付金ヲ下付スルコトヲ得
附則
本法ハ大正八年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第九織物消費稅法中改正法律案(小林源藏
君外十六名提出)第一讀會
織物消費稅法中左ノ通改正ス
第二十二條政府ハ織物ノ製造者又ハ販賣者ノ組織
スル組合ニ對テ徵稅上必要ナル設備ヲ爲シ又ハ徵收
事務ノ補助ヲ爲スヘキコトヲ命スルコトヲ得
前項ノ組合ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ取扱ヒ
タル織物中消費稅ヲ賦課シタル織物ノ價額ノ千分ノ
一以内ノ金額ヲ交付スルコトヲ得
附則
本法ハ大正八年四月一日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=17
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018・大岡育造
○議長(大岡育造君) 小林源藏君
〔小林源藏君登壇〕
〔拍手起リ「簡單」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=18
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019・小林源藏
○小林源藏君 諸君、唯〓議題ニ供セラレマシタ所ノ二
ツノ法律案ハ、各派協同シテ提出致シタノデ、而モ其贊成
者ハ、内閣員竝ニ政府ノ役人タル所ノ議員ヲ除イテハ、殆
ド各派ヲ通ジテ全部賛成セラレテ提出シタル所ノ法案デア
リマス、隨テ爰ニ殆ド說明ヲ要サヌ位デアル、諸君ノ要求ヲ
俟タズシテ、簡單ニ說明シテ宜シイノデアリマスケレドモ、尙
ホ數言ノ說明ヲ爲サヾルベカラザル所以ノモノハ、近クハ政
府ノ賛成ヲ求メ、遠クハ貴族院ノ諸公ニ愬へント欲スル意
味デアルト申シテ宜シイノデアリマス(笑聲起リ「簡單々々」
ト呼フ者アリ)曩ニ此二法案ト殆ド同ジキ所ノ建議案ヲ提
出致シマシテ、政府委員ト反覆質問應答致シマシタル結果
ニ依リマスト、織物組合ガ織物消費稅徵收上ニ於テ多大
ノ便宜ヲ與ヘ、随テ多大ノ金ヲ費シテ居リ、葉煙草ノ耕作
組合ガ、葉煙草收納上ニ於テ、是亦諸般ノ手傳ヲ爲シテ、
其組合自身ガ政府ノ爲メニ金ヲ使ッテ居ルト云フコトハ、明
白ナル事實トナッテ居ルノデアリマス、而シテ政府ハ其事實
ヲ認メテ居ルカラシテ、此議會ニ追加豫算ヲ提出シタイト
思ッテ居ルトモ申シタノデアリマスルガ、退イテ考ヘテ見ルニ、
事實ハ斯ノ如クニナッテ居ルケレドモ、組合ハ政府ノ手傳ヲ
爲スコトヲ拒ムコトモ出來、又政府ハ交付金ヲ與ヘルコトヲ
拒ムコトモ出來ルノデアリマス、是ニ於テ其交付金ノ歳出
ヲシテ、法律ノ結果ニ基ク歲出タラシムルト同時ニ、組合ニ
對シテ政府ガ諸般ノ手傳ヲ命ズコトヲ得ル權力ヲ、政府ニ
與ヘント欲スル所ノ此法律案デアリマス(「分リマシタ」ト呼
フ者アリ)立憲的ニ此行爲ヲ規定セント欲スル所ノ法律案
デアリマスルカラ、各派協同シテ、殆ド全會一致賛成セラレ
タ所以デアルト思フノデアリマス、其内容ニ就キマシテハ、委
員會ニ於テ委シク政府ト質問應答討議ヲ重ネテ宜シイト
思ヒマスルカラ、玆ニハ說明致シマセヌガ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ
者アリ)速ニ委員會ニ付議シテ、可決セラレンコトヲ切望シ
テ已マザルモノデアリマス、本日ハ最モ重要ナル選擧法改正
案ノ上程サレテ居ルニモ拘ラズ、日程ヲ變更シテ此法案說
明ノ機會ヲ與ヘラレタルコトヲ、此ニ謹ンデ感謝致シマス(拍
手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=19
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020・岩崎勲
○岩崎動君 兩案ヲ一括シテ、議長指名ヲ以テ、特ニ十
八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=20
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021・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=21
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022・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガ無ケレバ、岩崎君ノ動議
ノ如ク決シマシタ、是ヨリ日程第五、第六、第七ヲ一括議
題ト爲シ、委員長ノ報告ヲ求メル、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=22
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023・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガ無ケレバ委員長小川平
吉君
第五衆議院議員選擧法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
第六衆議院議員選擧法中改正法律案(高木
益太郞君外三名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第七衆議院議員選擧法中改正法律案(武富
時敏君外六名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
〔小川平吉君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=23
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024・小川平吉
○小川平吉君 衆議院議員選擧法中改正法律案ノ委
員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、委員會ハ八回開
會ヲ致シマシタ、殆ド每囘一人ノ缺席者無ク、非常ナル勵
精ヲ以テ、愼重ニ此案ニ就テ〓究審議ヲ盡サレマシタ、明
治三十三年ノ選擧法改正案ニ於テ、六回十四時間ヲ費
シ、明治四十五年ノ選擧法改正案ニ就テ、四回十一時間
半ヲ費シタニ鞍ベマスレバ、今囘ハ實ニ八回三十六時間半
ト云フ十分ナル時間ヲ費シテ、極メテ愼重ニ審議ヲ盡シマ
シタ次第デゴザイマス、委員會ニ現レタル質問應答ノ趣意
ハ、後ニ通告ガ澤山ゴザイマスルカラシテ、後ノ御方ヨリ十
分ニ精シク述べラレルコトデアラウト思ヒマスルカラ、爰ニハ
極メテ簡單ニ其要旨ダケヲ御紹介申スコトニ止メヤウト考
ヘルノデアリマス、第一、此普通選擧論者ハ、納稅ノ制限ヲ
全ク撤廢ヲシタイ、是ハ世界ノ大勢ニモ從ヒ、日本ノ現狀
竝ニ將來ニ照シテ、今日、ノ財產上ノ制限ハ不必要デアルト
云フ趣意ヲ以テ、質問討論ヲセラレマシタ、之ニ對スル制限
必要論者ハ、今日ノ日本ノ現狀ニ照シテ、財產上ノ制限ヲ
置ク必要ガ有ル、歐羅巴諸國ノ歷史ヲ見テモ、普通選擧ニ
至ルマデニハ、幾多ノ年月ト階級トヲ經テ、然ル後ニ漸ク到
達シタノデアル、今日日本ノ現狀ハ、恆產アル者ハ恆心アリ、
且又相當ノ智識資格ヲモ具ヘテ居ルノデアルカラシテ、矢
張財產上ノ制限ヲ置クノハ、今日ノ現狀ニ於テ、最モ相當
デアルト云フ趣意デゴザイマス、又國民黨竝ニ憲政會ノ財
產上ノ制限ヲ、直接國稅二圓ニ低下スル所ノ論者ノ主張
ハ、選擧權ハ益〓擴張スルコトヲ必要トスル、併ナガラ普通
選擧ニ達スルノハ餘リニ急激デアルガ、今日ノ場合ニ於テ
ハ、出來得ルダケ此制限ヲ低下スル必要ヨリシテ、二圓マデ
下ゲルト云フ論デアリマシタ、政府ノ方ノ主張ハ、今日ノ場
合ハ府縣會議員ノ選擧資格モ、直接國稅三圓以上ヲ納ム
ル者ニ與ヘテ居ル、急激ニ之ヲ飛越エテ二圓ニマデ下ゲルト
云フコトハ、餘リニ穩當デナイ、乃チ三圓ヲ以テ相當トスル、
斯ウ云フ趣意デアリマシタ、又智識階級-之ニ選擧權ヲ
與ヘルト云フ主張ガアリマシタ、之ニ就キマシテハ、中學卒
業以上ノ者、若クハ是ト同等以上ノ學力有リト檢定セラレ
タル者ニ選擧權ヲ與へルノガ相當デアル、殊ニ是等ノ者ニ
選擧權ヲ與ヘル結果トシテ、選擧界ノ弊害ヲ革正スルコト
ガ出來ル、又是等ノ者ハ、都市ニ多クシテ郡部ニハ割合ニ
少イノデアルカラシテ、今日ノ法律ニ依テ、都會ニハ選擧權
者ガ比較的少ク、郡部ニハ比較的多イ、此偏輕偏重ニ向。ツ
テ緩和ヲスル利益ガ在ル、斯樣ナ主張デアリマス、之ニ對ス
ル政府ノ主張ノ〓要ハ、成程智識階級ニ選擧權ヲ與フル
ト云フコトハ、一應尤ノヤウデアルケレドモ、併ナガラ中學卒
業以上ノ者ト云ヘバ、其數五十餘万人ノ中、或ハ旣ニ現。在
ノ法ニ依テ選擧權ヲ享有シテ居ル者ガアル、或ハ又年齡二
十五歲ニ達セザルガ爲メニ、選擧權ヲ與ヘルコトガ出來ナイ
者ガアル、之ヲ差引クトキハ、僅カ十万位ノ數ニ充タナイノ
デアル、之ヲ以テ選擧界ヲ廓〓スルトカ、或ハ現時ノ偏輕偏
重ヲ矯ムルト云フガ如キ事ハ、殆ド望ムベカラザル事デアル、
殊ニ此學校卒業生ダケニ與ヘルト云フコトニナレバ、學校ヲ
卒業セザル所ノ、是レ以上ノ學力ヲ有シ、是レ以上ノ智識
ヲ有スル國民ノ數ハ非常ニ多數デアル、之ニ對シテ選擧權
ヲ與ヘナイト云フコトハ、不公平デアル、不徹底デアル、而シ
テ又是等ノ人ニ向ッテ選擧權ヲ與ヘント欲スレバ、如何ニシ
テ之ヲ與ヘルカ、其標準ヲ見出スコトガ甚ダ困難デアル、到
底實行不可能ノ事デアル、斯樣ナ趣意ヲ以テ反對セラレタ
ノデアル、又大選擧區小選擧區ノ政府ノ主張ニ依レバ、明
治三十三年ニ小選擧區ヲ變ジテ、現在ノ大選擧區制ニ改
メル場合ニ於ケル立法ノ趣意ハ、其後現行法ヲ實行シタル
結果トシテ、十分ニ之ヲ達スルコトノ出來ナイコトガ明ニナッ
テ參クタ、又大選舉區デアルガ故ニ、種々ナル弊害ガ續出致
シテ、選擧費ハ非常ニ膨脹シ、選擧區ハ非常ニ腐敗スルト
云フコトニナッタノデアル、殊ニ今囘改正ノ結果トシテ、選擧
權者ノ數ハ政府ノ案ニ從ッテモ、尚且ツ現在ノ倍數ニ達ス
ル、斯ノ如ク選擧權者ノ數ガ非常ニ增加スルニ從シテ、益〓
斯樣ナ弊害ガ增シテ來ル傾ガアル、又取締上ニ於テモ甚ダ
困難デアル、又現在ノ大選擧區制ハ、相當ニ健全ノ發達ヲ
促スニ付テ甚タ障碍ガアル、之ヲ小選擧區ニズルトキハ、
是等ノ弊害ノ中ノ餘程多クヲ矯正スルコトガ出來ルノデア
ル、斯樣ナ大體ニ於テ主張デアリマス、之ニ反シテ大選擧區
論者ハ、小選擧區トナレバ、少數ノ選擧權者ガ代表ヲ出ス
機會ヲ失フノデアル、大選擧區ニ於テハ比較的其弊ガ少ナ
イ、今日理想トスル所ハ、比例代表ノ制度ニ在ルケレドモ、
比例代表ノ制度ハ、理想ニ止ッテ實行スルコトガ出來ナイ、
切メテ大選擧區ニスレバ、此比例代表ノ趣意ヲ幾分達スル
コトガ出來ル、又取締云々ノ如キコトハ、大選擧區トシテモ、
小選擧區トシテモ殆ド相違ハ無イノデアル、選擧區ノ腐敗、
選擧費ノ膨脹ト云フ事ニ至ッテモ、是亦大選舉區小選擧
區ニ於テ餘リ變ル所ハ無イノデアル、又政府ノ主張ニ依レ
バ、小選擧區制ヲ採用スル結果トシテ、全國ノ中ニ幾多無
競爭ノ區域ガ出來ル、政府ニ於テハ、是ハ最モ喜バシイ現
象デアルト言フケレドモ、大選擧區論者ノ主張ニ從ヘバ、無
競爭ハ必ズシモ喜ブベキ事デナイ、立憲政治ノ原則トシテ、
互ニ政見ヲ發表シテ相爭フノガ寧口原則デアル、又小選擧
區、卽チ政府ノ主張ニ從ヘバ、小選擧區トナッタ結果、候補
者ト選擧人トハ、其關係極メテ密接ト相成リ、選擧人ガ候
補者ノ人物、學識、性行、之ヲ知悉スルコトハ、大選擧區ニ
於ケルヨリモ極メテ便利デアル、斯樣ニ主張スルニ對シテ、
大選擧區論者ハ、小選擧區トナッタル結果トシテ、候補者ガ
或ハ政見ノ發表ヲスル機會ガ極メテ少ナクナリハセヌカ、卽
チ無競爭ノ場合等ニ於テハ、候補者ノ政見發表ノ演說會
ノ如キハ、一回モ開カナイト云フ風ノ現象ヲ呈スルコトニナ
リハセヌカ、却テ是ハ立憲政治ノ原則ニ照シテ不都合デア
ル、大體斯樣ナ議論ト記憶シテ居リマス、次ニ政府ノ小選
擧區ノ區畫ニ就テ、或ハ不公平デアル、斯樣ナ主張ガゴザイ
マシタ、之ニ對シテ政府ハ、人口十三万一人一選擧區ノ方
針ヲ以テ、小選擧區ノ區畫ヲ致シ、之ニ地理、歷史、人情、
風俗、竝ニ交通ノ便否等ヲ參酌致シテ、或ハ二人、或ハ三
人ノ區ヲ設ケタノデアル、少シモ不公平ナ區畫ヲ致シタモノ
デハナト、斯樣ナ答辯デアリマス、何レ詳細ノ事ハ、後ニ議場
ニ於テ通告ノ方ミヨリ御演說ニナラウト思ヒマスカラ、此論
旨ノ御紹介ハ右ノ程度ニ止メテ置キマス、委員會ニ於テハ、
尙ホ今井嘉幸君ヨリ小委員會ヲ組織致シテ、而シテ各派
ノ議論ノ一致點ヲ見出シタイト云フコトノ動議ガ提出セラ
レマシタ、併ナガラ此動議ハ少數ニシテ否決ニナリマシタ、尙
又政府提出ノ法律案ニ對シテ、委員三土忠造君竝ニ津田
毅一君ヨリ、修正ノ案ヲ御提出ニナリマシタ、是ハ今朝印
刷致シテ御手許ニ配付致シマシタカラ、御覽ニナッタコトデ
アラウト考ヘマスカラ、此案ヲ一々玆ニ御紹介致スコトハ省
略致シマス、唯、要點ニ就テ、修正案提出ノ趣意ヲ極メテ簡
單ニ申上ゲテ置カウ卜思ヒマス、卽チ三土君提出ノ修正案
ハ、現行法-デハアリマセヌ、誤リマシタ、政府提出案ノ第
十三條ノ、政府ニ對シ受負ヲ爲ス所ノ會社ノ無限責仕社
員役員等ニ對シテ、被選擧權ヲ與ヘナイコトニナッテ居リマ
ス、此被選擧權ヲ與ヘナイ者ノ中ニ、會社ノ發起人、取締
役、監査役等ヲ包含シテアルノデアリマス、然ルニ修正案提出
者ノ意見ニ依レバ、會社ノ發起人ナルモノハ、取締役、監査
役等ト相違シテ、左マデ政府ト密著ナル利害關係ヲ有スル
者デナイ、又或一定ノ期間ヲ經過スレバ、會社ガ創立セラル
レバ、旣ニ發起人ノ資格ハ無クナルモノデアル、是等ノ者ニ
マデ被選擧權ヲ禁ズルノハ不正當デアル、仍テ之ヲ削除シタ
イト云フノガ、第十三條ニ對スル修正意見デアリマス、ソレ
カラ第五十五條ニ於テハ、今回政府提出ノ法律案ニ依レ
バ、或ハ二郡ヲ合シテ一選舉區トシ、或ハ三郡四郡ヲ合シ
テ一選擧區トスルコトニナッテ居リマス、其結果トシテ投票
ヲ了リマシタ場合ニ於テ、一選擧區全體、卽チ場合ニ依テ
ハ三郡若クハ四郡ト云フ此多數ノ郡ノ投票ヲ悉ク、集メテ、
之ヲ混同致シテ開票スルコトニナッテ居ルノデアリマス、斯ノ
如キハ非常ナル混雜ヲ來ス、殊ニ今囘ノ改正案ニ依レバ、
選擧權者ノ數ハ非常ニ增加シテ居ル、之ヲ三郡若クハ四
郡ノ投票ヲ混同シテ開クト云フコトハ、餘程混雜ヲ來スノ
ミナラズ、其中ノ一部分ノ、或ハ一町或ハ一村ニ於テ無效
投票等ノ起リマシタル增合ニ、其影響ガ卽チ二郡三郡若ク
ハ四郡ト云フガ如キ、選擧區ノ全體ニ及ボスコトニ相成ル
ノデアル、是ハ甚ダ宜シクナイノデアルカラシテ、投票ヲ開ク
場合ニ、各郡ノ投票ハ之ヲ混同スルコトナクシテ、各郡別ニ
之ヲ開票スルト云フ所ノ修正案デアリマス、此趣意ニ關聯
シン、三四ノ條項ノ文字ノ修正ガ行ハレテ居リマス、又第
八十九條ニ、官吏ノ選擧ニ關スル不當行爲ヲ取締ル所ノ、
規定ヲ設ケタイト云フ修正案ガ出テ居リマス、卽チ官吏ガ
選擧ニ關シ、故意ニ其職務ノ執行ヲ怠リ、若クハ職權ヲ濫
用シテ、選擧ノ自由ヲ妨害シタル者ヲ罰スル、斯樣ナ規定
ブアリマス、又其八十九條ノ政府提出案ニアリマスル所ノ、
官吏若クハ吏員其ノ職權ヲ濫用シテ、被選擧人ノ氏名ノ
表示ヲ强要シタル場合ニハ、之ヲ罰スルト云フ規定ニ就キ
マシテ「其ノ職權ヲ濫用シ」ト云フ分ダケヲ削除シタイト云フ
ノガ、三土忠造君ヨリ提出ノ修正案ノ趣意デゴザイマス、又
津田毅一君ヨリ提出ノ修正案ハ、政府案ノ別表、山梨縣
ノ部ニ於テ、第二區西山梨郡、東山梨郡、北巨摩郡、中巨
摩郡、此四郡ヲ合シテ一選擧區トシ、二人ノ議員ヲ選出ス
ルコトニ規定セラレテ居リマス、之ヲ東西山梨二郡ヲ分ッテ
一選擧區トシ、北巨摩郡、中巨摩郡ヲ分ケテ一選擧區ト
シ、各獨立ノ區トシテ、一人ヅヽノ議員ヲ選出致シタイ、斯
樣ナ案デアリマス、而シテ其趣意ハ、此選擧區ハ政府提出
ノ案ニ依ルトキハ、其區域ハ餘リニ應キニ失シテ居ル、而シ
テ此四郡ヲ合併致シマスレバ、其町村ノ數百二十四ト云フ
ガ如キ、全國ニ類例ヲ見ザル所ノ非常ニ多クノ町村ヲ含有
シテ居ル、餘リニ是ハ廣大ニ失スルノデアル、且又東西山梨
ト北巨摩中巨摩トハ、地勢ガ一方ハ山間デアル、一方ハ平
坦地デアル、地勢ノ相違ガアル、人情風俗モ異ンテ居ル、而
シテ人口ノ數ハ、束西山梨ガ十万ニ殆ド達セントシテ居ル、
九万八千某ト云フ〓ニナル、大正二年ノ統計ニ依レバ斯
ノ如クデアルガ、今日ハ既ニ十万以上ニ達シテ居ル、中巨
摩北巨摩ハ今日十六万何千人ト云フ-今日デハゴザイ
マセヌ、大正二年ノ統計ニ依ッテ十六万何千、今日ハ十七
万、斯ノ如キハ他ノ選擧區ニ於テモ、澤山斯ノ如キ例ガア
ルノデアルカラシテ、此區畫ハ之ヲ修正致シタイ、斯樣ナ趣
意ニ依テ修正案ヲ提出セラレマシタ、委員會ニ於キマシテ
ハ、各案ニ就テ審議ヲ致シマシタル結果、高木益太郎君外
三名ヨリ提出セラレマシタル所ノ法律案、竝ニ武富時敏君
外六名ヨリ提出セラレマシタ所ノ法律案、是ハ共ニ否決セ
ラレマシタ、而シテ政府提出ノ法律案ニ對スル所ノ三土忠
造君ノ修正、竝ニ津田毅一君ノ修正案ハ、多數ヲ以テ可
決セラレマシタ、且又政府提出ノ改正案ハ、此修正ヲ除ク
外全部原案ノ通リ可決スルコトニ相成リマシタ、此段
御報告ヲ申上ゲマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=24
-
025・岩崎勲
○岩崎勳君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=25
-
026・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎動君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=26
-
027・岩崎勲
○岩崎勳君 唯〓議題ニナッテ居リマス所ノ三案ハ、共ニ
現行法ニ對スル修正ノ意味デアリマス、又中ニハ共通ノ點
モアリマシテ、各原案ニ對スル賛成論反對論ハ、何レモ第
二讀會ニ於テ之ヲ爲スコトヲ至當ト信ジマスガ故ニ、便宜
上玆ニ三案共ニ第二讀會ニ移スベシトノ決定ヲ與ヘラレ
ンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=27
-
028・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=28
-
029・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナケレバ、三案共ニ二讀會
ヲ開クト云フコトニ決定致シマジタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=29
-
030・岩崎勲
○岩崎勳君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=30
-
031・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎勳君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=31
-
032・岩崎勲
○岩崎勳君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開カレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=32
-
033・大岡育造
○議長(大岡育造君) 直チニ第二讀會ヲ開クニ御異議ハ
アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=33
-
034・大岡育造
○議長(大岡育造君) 三案ヲ一括シ議題トシテ二讀會
ヲ開キマス、通告ノ順序ニ依テ發言ヲ許可致シマス-齋
藤隆夫君
衆議院議員選擧法中改正法律案(政府提出)
第二讀會
衆議院議員選擧法中改正法律案(高木益太郞
君外三名提出)第二讀會
衆議院議員選擧法中改正法律案(武富時做君
外六名提出)第二讀會
〔齋藤隆夫君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=34
-
035・齋藤隆夫
○齋藤隆夫君 諸君、選擧法ノ改正ハ、我國ニ於ケル多
年ノ懸案デアリマス、從來屢〓此議會ノ問題トナリマシテ、
今日ニ至ルマデ未ダ其成立ヲ見ル能ハザルコトハ、國家憲
政ノ爲メニ御互ニ遺憾トスル所デアリマス、然ル所本期議
會ニ當リマシテハ、國民黨先ヅ之ヲ提出シ、續イテ憲政會
之ヲ提出シ、政府モ亦最後ニ之ヲ提出シテ、斯ノ如クニシ
テ此問題ガ全國民ノ注意ヲ喚起ス二至リタルコトハ、御互
ニ大ニ慶ブベキ事デアリマス、過日モ此壇上ニ於テ一言〓
シマシタルガ如ク、選擧法ノ改正ハ、何レノ國ニ於キマシテ
モ、最モ重大ナル、最モ困難ナル問題デアリマス、其形式ニ於
テハ〓ニ角、實質ニ至ッテハ、憲法ノ改正ト殆ド同一ノ效
力ヲ持ッテ居ルモノデアリマス、ソレ故ニ吾〓ハ此問題ヲ審
査スルニ當リマシテ、政府ト云ハズ、政黨ト云ハズ、互ニ胸
襟ヲ披イテ一致點ヲ發見シ、若シ出來得ルナラバ、全會一
致ヲ以テ之ヲ通過セシムルコトハ、吾こガ國家ニ對シ、國民
ニ對シテ酬ユル所以ナリト思料致シテ居リマス、(「ヒヤ〓〓
ト呼フ者アリ)ソレ故ニ委員會ニ於キマシテハ、吾ミノ同志
者ヨリ之ニ關シテ最モ適切ナル所ノ提案ヲ致シ、此目的ニ
向ッテ一歩ヲ進メント試ミマシタケレドモ、不幸ニシテ其議ハ
成立スルニ至ラズ、此問題ニ就キマシテ、今日互ニ議論ヲ
上下セネバナラヌコトハ、固ヨリ吾ミノ本意トスル所デハア
リマセヌ、併ナガラ事此ニ至ッテハ已ムヲ得ナイ、吾ニハ吾ミ
ノ主張ヲ明ニシテ、一ハ以テ政府及反對黨諸君ノ再考ヲ
求メ、一ハ以テ汎ク天下國民ノ判斷ニ訴ヘントスルモノデア
リマス、唯今議題ニナッテ居リマスル所ノ議案ハ、委員長ノ
報告ノアリマシタルガ如ク、國民黨ノ提出案、憲政會ノ提
出案、及政府ノ提出案、此三案デアリマス、而シテ此三案
ヲ通ジテ最モ主ナル事柄ハ、大體三種ニ分レテ居リマス、卽
チ第一ハ選擧權ノ擴張ニ關スル事デアル、第二ハ選擧區制
ノ變更ニ關スル事デアル、第三ハ別票ノ組立ニ關スル事デ
アル、此外選擧取締ニ就テ、僅カナル修正ガ加へラレテ居リ
マスケレドモ、是ハ殆ド議論スルノ値打ガアリマセヌ、ソレ故
ニ以上ノ三點ニ就キマシテ、本員ガ政府案及國民黨案ノ或
ル點ヲ排シ、飽マデ吾とノ提出案ヲバ維持セネバナラヌ所ノ
理由ヲ述ベテ、諸君ノ御判斷ヲ求メントスルノデアリマス、先
ヅ第一ハ選擧權ノ擴張ニ關スル事デアル、更メテ申スマデモ
ナク、選擧權ノ擴張ハ今日時代ノ要求デアリマス、時代ノ
要求デアルノミナラズ、其機運モ最早目前ニ迫ッテ居リマス
ルニ依テ、今日何人ト雖モ選擧權ノ擴張ニ反對スルコトガ
出來ナイ、唯〓問題ハ擴張ノ程度竝ニ其方法デアリマス、此
點ニ就キマシテハ、政府案、國民黨案、憲政會案、此三案
ヲ通ジテ、制限選擧ヲ執ルト云フ一點ニ至ッテハ、一致點ヲ
見出シテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ此三案ニ對シテ吾ニノ
主張ヲ明ニスルニ當ッテ、世ニ所謂普通選擧論ニ對スル所ノ
本員ノ卑見ハ、全ク爭點ニ關係無キモノトシテ、一切省略
スルコトニ致シマス、唯〓誤解ヲ防グガ爲メニ一言ヲ致シテ
置キタイ、本員ハ世ノ普通選擧論者ニ對シテハ、常ニ多大
ノ同情ヲ拂シテ居リマス、多大ノ敬意ヲ拂ッテ居リマス、同時
ニ此議論、此運動ガ益〓盛ントナッテ、全國ノ津ヒ浦〓ニ至
ルマデモ反響シ、日本全國民ガ眞ニ政治的ニ覺醒シ、眞ニ
政治的ニ奮起シ、此聲ニ應ジテ吾〓ガ此議場ニ於テ普通
選擧斷行論ヲ唱ヘル所ノ時機、其時機ノ一日モ速ニ到來
スルコトヲバ、衷心ヨリ希望シテ止マナイモノデアリマス、此
一言ヲ以テ、普通選擧ニ對スル所ノ言說ヲ打切リテ、進ン
デ制限選擧ノ下ニ於キマシテ、吾とガ政府及反對黨ト所見
ヲ異ニスル點ヲ述ベル積リデアリマス、諸君、若シ竝ニ一國
在リ、其國ハ世界ニ對シテ文明國トシテ誇ッテ居リマス、世
界ニ對シテ、我等ハ立憲三十年ノ歷史ヲ有セリト誇シテ居
ル、又我等ハ政黨内閣ヲ有セリト誇ッテ居ル、然ルニ飜ッテ
其實際ノ有樣ヲ見マシタナラバ、參政權ヲ有スル所ノ國民
ハ百人ニ付テ僅ニ二三人半ニ足ラナイノデアル、加之政黨
內閣ト稱スル其政黨所屬ノ代議士ニ向ッテ投票シタル者ハ、
六千万ノ國民中ニ於キマシテ僅ニ五十万ニ足ラナイノデア
リマス、然ルニ此內閣ヲ以テ政黨內閣デアルト稱シ、剩ヘ國
民ニ基礎ヲ置ク所ノ内閣デアルト稱シ、全國到ル處ニ於テ
政黨內閣ノ祝賀會ヲ開ク所ノ一部ノ慌テ者サヘアルコトヲ
聞キマシタナラバ、世界立憲國民ハ之ヲ稱シテ何ト申スカ、
更ニ此內閣ガ國民ノ聲ニ餘儀ナクセラレテ、選擧權ヲ擴張
スルト稱シナガラ、直接國稅三圓以上ヲ納ムル者ハ、如何
ナル愚物ニモ選舉權ヲ與ヘルガ、然ラザル者ニ向ッテハ、如何
ナル智者、如何ナル識者ニモ、斷ジテ選擧權ヲ與ヘヌト定
ムルコトヲ聞キマシタナラバ、世界立憲國民ハ、最早呆然ト
シテ言フ所ヲ知ラナイデアラウト思ヒマス(拍手起ル)諸君、
近時我國ニ於ケル政治界ノ有樣ハ斯ノ如キモノデアル、唯
今吾〓ノ目ノ前ニ現レテ居ル所ノ政府提出ノ選擧法改正
案ナルモノハ、實ニ斯ノ如キモノデアリマス、固ヨリ制限選
擧ヲ維持致シマスル以上ハ、納稅階級ヲ認ムルコトハ萬已
ムヲ得ナイ次第デアル、此點ニ就キマシテハ、吾ミモ政府當
局者ト意見ヲ一ニシテ居ル次第デアリマス、併ナガラ吾ミハ
此主義ノ下ニ於キマシテ、成ベク多クノ有權者ヲ作ルゴト
ハ、今日時代ノ要求ヲ滿足セシムルガ爲メニ、最モ必要ナ
事ト考ヘテ居リマス、ンレ故ニ第一ニハ常識ノ上ヨリ考ヘ、
第一ニハ現時市町村公民權ノ程度ニ考ヘテ、吾ニハ之ヲ
二圓ニ引下ゲントスル者デナリマス、三圓ト二圓、世人ハ之
ヲ以テ無意味ノ爭デアルト稱スルカハ知ラナイガ、實際ハ左
樣デハアリマセヌ、之ヲ三圓ニスルカ、或ハ二圓ニスルカト云
フコトハ、實ニ五十万ノ國民ガ、新ニ選擧權ヲ得ルヤ否ヤト
云フ大問題デアリマス、今日我國ノ選擧人ハ、全國ヲ通ジ
テ百五十万ニ足ラナイノデアリマス、此政府ノ改正案ニ依
リマシテモ、二百九十万ニ足ラナイノデアリマス、此數ノ中
ニ新ニ五十万人ヲ加ヘルヤ否ヤト云フコトハ、決シテ無意
味ナル爭デナイ、國家ノ上ヨリ見テ實ニ大問題デアリマス、
又吾とハ更ニ智識階級ナル者ニ向ッテ、新ニ選舉權ヲ與ヘ
ント主張スル者デアリマス、申スマデモゴザイマセヌガ、國家
ハ納稅者ニ向ッテ選擧權ヲ與ヘルノハ、決シテ彼等ガ納稅ス
ルガ爲メデハアリマセヌ、彼等ガ納稅ノ義務ヲ果スガ爲メニ
非ズ、彼等ガ有シテ居ル所ノ政治能力、之ヲ目的トシテ與
ヘルノデアル、此點ニ就キマシテハ、委員會ニ於キマシテ内
務大臣ハ、或ル委員ノ質問ニ對シ、頗ル答辯ヲバ躊躇セラ
レタ模樣デアリマシタガ、遂ニ吾〓ト同一ノ意見ニ到著セラ
レタルコトハ幸デアル、卽チ內務大臣ノ言ヲ藉ッテ言フナラ
バ、納稅階級ハ恆產アル者デアル、恆產アル者ハ恆心ノアル
者デアル、恆產アル者ハ政治能力ノアル者デアル、故ニ之ニ
選擧權ヲ與ヘルコトニナッテ居ルト云フ、詰マリ吾〓ノ意見
ト同一ノ歸點ニ到著セラレタコトハ、本員等ノ聊カ滿足ス
ル所デアリマス、果シテ斯ノ如ク納稅者ニ向ッテ權利ヲ與ヘ
ルノハ、彼等ガ納稅スル爲メデハナイ、彼等ガ政治能力ヲ有
スル爲メデアルトスルナラバ、玆ニ納稅ノ事實無シト雖モ、他
ノ事實ニ依テ、寧口納稅者以上ニ政治能力有リト認ムル
所ノ階級ガ現存シテ居リマスルナラバ、此階級ニ向ッテ選擧
權ヲ與ヘルト云フコトハ、國家トシテ執ルベキ正當ノ道デア
リマス、此點ニ就キマシテ、委員會ニ於テ文部大臣ハ、確ニ
其能力ニ向ッテ裏書ヲシテ居ラレルノデアル、委員會ニ於テ
文部大臣ハ、如何ナル事ヲ申シテ居ラルヽカト云フト、或ル
委員ノ質問ニ對シ、今日我國ニ於テハ、小學中學ヲ通ジテ、
其〓科書ノ中ニハ、憲法ニ關スル事、及ビ憲政運用ニ關ス
ル事ガ記載シテアル、卽チ常識アリ立憲思想アル所ノ國民
ヲ作ルノガ、從來我國ニ於ケル、普通〓育ノ大目的デアル
ト明言シテ居ラルヽノデアル、更ニ之ニ關スル本員ノ質問ニ
對シテハ、是等ノ學校卒業者ニハ、確ニ政治能力アリト明
言セラレタノデアリマス、又左様デナクテハナラヌノデアリマ
ス、斯ノ如ク國家ハ一方ニ於テハ是等ノ者ニ向ッテ立憲〓
育ヲ施シ、政治能力ヲバ保證シテ居リナガラ、他ノ一方ニ
於テ、彼等ニ向ッテ選擧權ヲ與ヘナイト云フコトニナリマ
シタナラバ、國家ノ行動ニ於テ一大矛盾ガ起ルノミナラ
ズ、〓育ノ效果、〓育ノ權威ト云フモノガ、少シモ發揮ス
ルコトガ出來ナイノデアリマス(拍手)殊ニ諸君モ御承
知ノ如ク、今日直接國稅十圓以上納ムル所ノ階級ニ
於キマシテハ、眼ニ一丁字モ無イ、候補者ノ姓名スラ記
載スルコトノ出來ナイ者ガ、ドノ位アルカ知レマセヌ、之
ヲ三圓ニ引下ゲレバ、寶ニ驚クベキモノガアラウト思フ、
然ルニ一方ニ於テハ、是等ノ階級ヲ目シテ政治能力ガアリ
ト認メテ選擧權ヲ與ヘテ居リナガラ、他ノ一方ニ於テハ、國
家ノ認定ニ依テ政治能力アリト試驗濟ニナッテ居ル階級ニ
向ッテ、選擧權ヲ與ヘルノハ不當デアルト云フ議論ハ、是ハ
何處ニ行ッテモ通用スルコトノ出來ナイ議論デアリマス(拍
手)政府與黨ノ人〓ト雖モ、斯樣ナ議論ヲ聽カレマシタナラ
バ、聊カ失望セラレルト思フ、然ルニ此點ニ關シテ、內務大臣ハ
如何ナル辯明ヲシテ居ラレルカト云フト、内務大臣ノ辯明
ハ大體二ツデアリマス、卽チ第一ハ、選擧權ヲ與ヘル所ノ標
準ハ最モ明確デナクテハナラヌ、然ルニ智識階級ト云フモノ
ハ明確ヲ缺ク、是ハ如何ナル誤解デアリマスカ、若シ吾とガ漫
然ト智識階級ト稱シタナラバ、ソレハ明確ヲ缺キマセウガ、
吾とハ苟モ法律ヲ制定スルニ當ッテ、斯樣ナ漫然タル所ノ文
字ヲ用ヰルモノデハナイ、吾こガ稱スル智識階級ハ如何ナル
者カト云ヘバ、國民黨ノ提案ニ於テ、憲政會ノ提案ニ於テ、
明ニ記載セラレテ居ルノデアル、卽チ中學校、師範學校、若
クハ文部大臣ニ於テ是ト同等以上ト認メタル學校ヲ卒業
シ、又ハ是ト同等ノ學力ヲ有スル者ト檢定セラレタル者ト
云フノデアル、諸君、何所ニ不明確ノ點ガアリマス、若シ之ヲ
不明確ト云フナラバ其人ハ盲目デアル、精神上ノ盲目ニ非
ザル限リ、之ヲ以テ不明確トハ言ハレヌ、アアラウト思ヒマス、
(拍手起ル)第二ニハ如何ナル事ヲ言ハレテ居ルカト云フト、
唯〓委員長ノ報告ノ中ニモアリマシタ如ク、智識有リ能力
有ル者ハ、今日學校卒業者バカリデナイ、學校卒業者以外
ニ於テ、數多ノ智識有リ能力有ル者ガアルニ拘ラズ、單ニ此
階級ノミニ選擧權ヲ與ヘルト云フコトニナレバ、不公平ノ
結果ヲ來スカラ宜シクナイ-實ニ是ハ三百理窟デアリマ
ス(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)三百理窟ダケナラバ
尙ホ宜シイ、斯ル事ヲバ輕率ニ斷言シテ、政府自ラ定メタ所
ノ標準ヲ、政府自ラ打毀シテ居ルコトニ氣ガ付カナイ(ヒヤ
ヒヤ)何故ナラバ若シ斯樣ナ事ヲ申スナラバ、政府ガ定メタ
所ノ財產階級ハ如何ナルモノデアルカ、政府ガ唯一ノ標準
トシテ居ル財產階級ノ中ニ於テハ、悧巧ナ者モ有レバ無智
無識ナル愚物モ澤山有ルノデアル、又政治上ノ智者能力
者ハ、財產階級以外ニ於テモ澤山有ルノデアリス、然ルニ財
產階級ノミニ選擧權ヲ與ヘテ、此以外ノ智者能力者ニ向ッ
テ選舉權ヲ與ヘヌト云フコトハ、甚ダ不公平デアルト反問シ
タナラバ、内務大臣ハ何ト答ヘルデアラウカ、恐クハ答ヘルコ
トガ出來ナイダラウト思ヒマス、凡ン選擧權ナルモノハ、普通
選擧タルト制限選擧タルトヲ問ハズ、何レノ場合ニ於テモ、
或ル階級ヲ標準トシテ與ヘルモノデアル、委員會ニ於ケル內
務大臣ノ言ヲ藉リテ言フナラバ、所謂客觀的事實ヲ標準ト
シテ與ヘルモノデアル、各人各個ノ能力ヲバ逐一試驗シテ
與ヘルモノデハアリマセヌ、是ハ選擧權ノミニ限ラナイ、國家
ノ法制ハ總テ斯ノ如キモノデアリマス、例ヘバ民法ニ於キマ
シテ二十歲ヲ以テ丁年トシテ、彼等ノ全部ニ對シテ民法上
ノ能力ヲ與ヘテ居ル、併ナガウ實際ニ於テハ、十八歳ニシテ
完全ナル能力ヲ揃ヘテ居ル者ガアリ、二十五歳トナッテモ、マ
ダ能力ノ缺乏シテ居ル者ガアルノデアリマス、然ルニ是等各
別ノ事實ヲ捉へ來ッテ一一十歳ヲ以テ丁年トスルノハ不當デ
アルト云フ者ガアリマシタナラバ、誰カ其愚ヲ嗤ハザル者ア
ランヤデアル、此位ノ事ハ如何ニ內務大臣ト雖モ、御承知ニ
ナッテ居ラナケレバナラヌ筈デアリマス、然ルニ是等ノ點ヲバ
無視シテ智識階級ニ對スル選擧權ノ擴張ヲ排斥セラルヽ
ト云フコトハ、現政府ヲバ擁護スル諸君ノ爲メニモ、甚ダ遺
憾ニ堪ヘナイ次第デアル、(「ノウ〓〓」更ニ他ノ點ヨリ考ヘテ
見タナラバ如何デアリマスカ、過日モ此處ニ於テ一言致シマ
シタルガ如ク、若シ此政府ノ原案ノ如ク、直接國稅ノミヲ以
テ標準ト致シマスルト、其結果郡部ト市部トノ間ニ於キマ
シテ、非常ニ不權衡ナル結果ヲ來スノデアル、詳シキ事ハ煩ヲ
省クガ爲メニ省略シマスガ、〓括シテ申シマシテモ、此政府
ノ原案ニ依レバ、選擧權ヲ得ル者ハ郡部ニ於テハ百人ニ付
テ五人六分アリマス、市部ニ於テハ百人ニ付テ、僅ニ三人
二分トナッテ居リマス、更ニ之ヲバ各事實ニ就キ主ナル二
三ノ都市ニ就テ見マスルト、東京市ニ於テハ百人ニ付三人、
大阪市ニ於テハ二人四分、京都市ニ於テハ三人一分位ニ
シカナラヌノデアリマス、其他ノ市街地ハ推シテ知ルベキノ
ミデアリマス、申スマデモナク選擧權ノ擴張ト云フモノハ、全
國各地ヲ通ジテ、成ベク之ヲ平均セシメナケレバナリマセヌ、
市部ニ厚クシテ郡部ニ薄キハ不可ナリ、之ト同時ニ市部ニ
薄クシテ郡部ニ厚キモ、亦片輪ノ擴張タルヲ免レヌノデアル、
然ルニ吾とノ主張スルガ如ク、智識階級ニ向ッテ新ニ選擧
權ヲ與ヘルト云フコトニナリマスレバ、此間ノ不權衡ヲバ、或
ル程度マデ調和スルコトガ出來ルノデアリマス、假令十分ナ
ラズト雖モ、少クトモ一種ノ調和劑トナルハ爭フベカラザル
事デアル、統計ノ示ス所ニ依リマシテモ、智識階級ト云フモ
ノハ、郡部ニ少クシテ市部ニ多イノデアル、直接國稅三圓以
上ヲ納ムル者ノ中ニ就キマシテモ、此階級ハ市部ニ於テハ
千人ニ付テ十七人デアリマス、郡部ニ於テハ千人ニ付テ三
人七分アルノデアリマス、殊ニ納稅セザル所ノ智識階級ト云
フモノハ、其大部分ハ市部ノ住民デアルト云フコトハ、容易
ニ推定スルコトガ出來ルノデアリマス、此點ニ就テモ內務大
臣ハ如何ナル說明ラシテ居ラルヽカト云フト、全國五十三
万ノ智識階級ノ中ニ於テ、三圓以上ノ納稅者ハ十五万人
許リアル、殘リハ僅ニ三十八万人ニ過ギナイ、此中デ二十
万人許リハ二十五歲ニ達シテ居ラヌ、問題ハ僅ニ十八万
人ニ過ギナイノデアル、此ノ位ノ者ニ新ニ選擧權ヲ與ヘルガ
爲メニ、從來ノ立法例ヲ破ッテ、新シキ標準ヲ設ケル程ノ必
要ハ無イト言ッテ居ル、是ハ實ニ不都合千萬ナル、不親切千
萬ナル所ノ申分デアリマス、今日ノ制限選擧ノ下ニ於テ十
八万人ト云フ有權者ハ決シテ少ナイモノデハナイ、現行法
ノ下ニ於テ、東京市ヲ始メトシテ、全國ニ跨ル五十五ノ獨立
市區ニ於テ有權者ガ幾爭アルカト云ヘバ、丁度十八万人
許リデアリマス、又此政府ノ改正案ニ依テ更ニ二十有餘ノ
獨立選舉區ヲバ增加シ、別ニ選擧權ヲ擴張シテスラ、全國
市區ニ於ケル有權者ハ僅ニ二十九万人ニ足ラナイノデアリ
マス、之ヲ對照致シマスレバ、十八万人ト云フ數ハ、決シテ
看過スベカラザル所ノ數デアリマス、殊ニ此數ハ年々增加シ
テ行クコトハ事實デアル、年々幾万ノ卒業生ハ送ラレテ出
ルノデアル、二十万ノ者ハ追〓ト二十四歲ニ達スルノデアリ
マス、此中デ約半數ガ納稅階級ニ屬スル者トシテモ、其他ノ
半數ハ吾ヒノ主張ニ依ッテ、新ニ選擧權ヲ得テ來ルノデアリ
やっ、十八万人ハ增加シテ、年々少クトモ二万內外ノ選擧
權者ハ、吾ミノ主張ニ依テ新シク權利ヲ得ルノデアリマス、
斯ノ如ク之ヲ理論ノ上ヨリ見マシテモ、又實際ノ上ヨリ見
マシテモ、更ニ郡市ノ權衡ヲ維持スル上カラシテモ、此智識
階級ナル者ハ、制限選擧ノ下ニ於テハ、默過スベカラザル所
ノ國家有用ノ分子デアリマス、ソレ故ニ數年以前我國ニ於
テ此主張ガ現レマシタ以來、今日ニ至ルマデ輿論ハ之ヲ歡迎シ
テ居リマス、之ヲ排斥シタル所ノ形迹ハ無イ、然ルニ政府ニ何ガ
故ニ之ヲ排斥シタカ、内務大臣ノ答ヘラルヽ所少シモ要點ニ接
觸セズ、唯〓顧ミテ他ヲ言フニ過ギナイノデアリマス、詰マリ從
來囚ハレタ所ノ自己ノ僻見ヲ抛棄スルコトガ出來ナイニ依テ、
此新シキ標準ヲ採ルコトニ躊躇シテ居ラルヽニ相違ナイト思
フ、此理由ニ依テ吾ミハ飽マデ智識階級ニ向ッテ、此機會ニ於
テ新ニ選擧權ヲ附與スルコトヲ主張スル者デアリマス、唯〓此
處ニ於テ、後ニ立タレル所ノ反對論者ガ辯駁セラルヽ所ガア
ルデアラウト思フ、第一ニ今日我國ノ法制ニ於テハ、獨リ中
央議會ノミナラズ、地方自治體ノ議會ニ於テモ、知識階級
ト云フ者ヲ認メテ居ラヌ、ソレ故ニ中央議會ノ選擧權ノミニ
知識階級ヲ認ムルコトハ宜シクナイト言フカモ知レヌ、併ナ
ガラ吾ミハ、中央議會ノ選擧權ヲ擴張スルト同時ニ、地方
議會ノ選擧權ヲ擴張スルコトハ、旣ニ議案トナッテ提議シテ
居ルノデアリマス、又吾ミガ此智識階級ニ附屬セシメテ居ル
所ノ一ノ條件、卽チ獨立ノ生計ヲ營ムト云フコトハ、甚ダ不
徹底ト言フカモ知レヌ、是ハ不徹底デモ何デモナイ、假リニ
是ガ不徹底トシテ見タ所デ、此條件ヲバ取除クト云フ理由
ニハナッテモ、此根本タル智識階級ニ向シテ選擧權ヲ與ヘルコ
トヲ否定スル理由ニハナラヌ、或ハ諸外國ノ例ヲ元シテ、歐
羅巴ノ或國ニ於テハ智識階級ハ認メテ居ルガ、是ハ財產ノ
外ニ更ニ智識階級ニ向ッテ、一人ニ二三ノ投票權ヲ與ヘテ
居ル、之ニ依テ始メテ智識階級ニ選擧權ヲ與ヘルト云ヲコ
トガ意味ヲ爲スト主張スルカハ知ラヌガ、是ハ少シモ議論ニ
ナラナイノデアル、詰マル所、以上述ベタル理由ニ依リマシ
テ、智識階級ニ向ッテ新ニ選擧權ヲ與ヘルト云フ方法ニ依
テ、今日選擧權ノ擴張ヲ圖ラントスルモノデアリマス、次ハ
選擧區制ニ關スル問題デアリマス、現行ノ大選舉區制ハ、
理論及實際ニ於テ小選擧區制ニ優ッテ居ルバカリデハナイ、
我國ニ於テハ、過去二十年ノ間、比較的圓滿ニ之ヲ行ッテ
來ッタノデアリマス、世ニ謂フ所ノ選擧界ノ弊害ナルモノハ、
決シテ大選舉區制ノ下ニ起ッタモノデハナイ、若シ之ヲバ改
メマシタナラバ、更二一層大ナル所ノ弊害ガ起ルコトハ、容
易ニ想像スルコトガ出來ルノデアリマス、ソレ故ニ從來憲政
會、國民黨、其他ノ各派モ此點ニ就テハ何等ノ主張ヲ致サ
ザルニ拘ラズ、獨リ政友會ノミ問題トスベカラザルモノヲ、强
テ問題トシテ之ヲ爭フテ居ルノデアル、曩ニ第二十八議會
ニ於テ、時ノ內務大臣、今日ノ總理大臣タル所ノ原敬君
ガ、此選擧區制ノ改正ヲ企テントシテ、貴族院ノ爲メニ葬リ
去ラレテシマッタノデアル、次ニ昨年ノ議會ニ於テハ、政友會
ノ名ニ依テ此案ガ現レテ出テ來タガ、是亦故ナク之ヲ撤回
シテ、其無責任ヲバ議場ニ表白シタノデアル、政府及政友
會ノ小選擧區案ナルモノガ議會ニ現レテ出ルノハ、今回ガ
第三囘目デアリマス、然ルニ其度每ニ小選擧區ヲバ稱成ス
ル所ノ所謂別表ノ內容、此別表ノ內容ニ於テ幾多ノ變化
ガ起シテ來テ居ルト云フコトハ、諸君、實ニ奇怪千万ナル次
第デハアリマセヌカ、第一一十八議會ニ提出セラレタル所ノ別
表ト、昨年提出セラレタ所ノ別表トノ間ニハ、確ニ四十有
餘箇所ノ相違ガアリマス、昨年提出セラレタモノト本年提
出セラレタモノトノ間ニハ、是亦確ニ四十六七箇所ノ變化
ガアルノデアリマス、若シ政黨政派ノ觀念ヲ離レテ、公平無
私ニ小選擧區制ヲ主張スルノナラバ、此案ガ議會ニ現レル
度每ニ、其内容ニ至ッテ斯クマデ數多ノ變化ガ起ッテ來ル譯
ハ無イ、此一事ヲ以テモ、此小選擧區案ナルモノガ如何ニ
不公平ナルモノデアルカ、如何ニ不誠實ナルモノデアルカト
云フコトハ、容易ニ想像スルコトガ出來ルノデアリマス(拍手
起ル)大小選擧區ノ利害得失ニ至リマシテハ、是マデ屢〓此
議場ニ於テ論爭セラレテ居ルノミナラズ、昨年ノ議會ニ於テ
ハ、本員モ亦其卑見ノ一斑ヲ披瀝シテ置キマシタ、ソレ故ニ
是等ノ點ニ就テハ重ネテ論及スルコトハ止メマス、殊ニ今回
ノ小選擧區案提出ノ理由トシテ、內務大臣ガ述ベラレタル
所ノ事柄ニ至ッテハ、甚ダ失禮ナガラ、本員ノ見ル所ニ依レバ
實ニ抱腹絕倒ノ至リデアル、此議場ニ於テ論議スルニ足ル
ベキモノハ、唯〓ノ一ツモアリマセン、試ミニ其題目ヲ列ベマス
ト、曰ク大選擧區デハ運動費ガ多ク掛ル、何ヲ根據トシテ斯
樣ナ事ヲ斷言スルカ、小選擧區内ニ於ケル所ノ密ナル運動、
大選擧區內ニ於ケル疎ナル運動、運動費ガ多ク掛ル掛ラナ
イト云フコトハ、全ク其時其場合ノ事情ニ依テ決スルモノデ
アル、小選擧區ノ場合ニ於テモ、隨分多額ノ運動費ヲ使ッタ
者モアリマス、ツイ其處ニ居ラレル所ノ中橋文部大臣ノ如
キモ、先年金澤市ノ選擧ニ方ッテハ、驚クベキ多額ノ費用ヲ
抛タレタト云フコトヲ聞イテ居ルノデアル、曰ク補關選擧ニ
困ル、一體是ハ誰ガ困ルノデアルカ、國民ガ困ルト云フノカ、
政黨ガ困ルト云フノカ、候補者ガ困ルト云フカ、誰ガ困ルト
云フカ、サッバリ譯ノ分ラヌ所ノ困リ方デアル、曰ク同士打ガ
始マル、何ノ事カサッパリ譯ガ分ラヌ(「君ガ分ラナイ」「默ッテ
聽ケ」「何ガ分ラヌ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=35
-
036・大岡育造
○議長(大岡育造君) 静〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=36
-
037・齋藤隆夫
○齋藤隆夫君 曰ク私設選舉區ノ絕張ノ破リ合ヲスル、
是亦何ノ事デアルカ全ク意義ヲ成サナイ事ヂアル、曰ク無競
爭地ガ出來ル、寢テ居ッテモ當選スル、誠ニ喜バシイ、無競
爭ノ裏面ニハ、忌ムベキ事實ガ伏在シテ居ルト云フコトニ氣
ガ付カレナイノデアル、選擧競爭ハ決シテ忌ムベキ事デナイ、
選擧競爭ハ立憲政治ノ花デアル、立憲政治ハ此花ガ立派
ニ開イテ、始メテ果實ヲ結ブノデアリマス(拍手起ル)吾ミハ
選擧競爭ヲ歡迎スル一人デアル決シテ之ヲ排斥スル者デハ
アリマセヌ、曰ク候補者ノ地盤ガ固クナル是亦何ノ事デアル
カ、薩張譯ノ分ラヌ事デアル、大體先ヅ是レ位ノモノデアル、
而シテ是ガ全部ノ理由デアルカ、又一部ノ理由デアルカト
念ヲ押シタ所ガ、是ガ全部ノ理由デアルト明答セラレタルコ
トハ、諸君ノ記憶セラレル通リヂアル、併シ今日斯ル事ヲバ
逐一捉ヘテ議論ヲバ交ヘテ居ッタナラバ、五日經ッテモ十日
經ッテモ盡キルモノデナイ、殊ニ是等ノ事ガ何方ニ決マラウ
ガ、國民ノ側カラ見テ是ガ何ノ關係ガアルカ、議員候補者、
或ハ運動屋ノ側カラ見タナラバ、何カノ理由ニナルカハ知ラ
ナイガ、國家ノ側ヨリ見、國民ノ側ヨリ見タナラバ、全ク沒
交涉ノ事デアリマス、後ニ現レル所ノ反對論者モ、眞逆斯
樣ナ事ヲバ逐一取上ゲテ議論セラレル所ノ閑人デモナカラ
ウト思フ、若シ是等ノ議論ガ現レマシタナラバ、後ニ立タル
ル所ノ吾等ノ同論者ニ於テ、之ヲ粉碎セラレルコトヽ存ジマ
スカラ、本員ハ一切之ニハ論及致シマセヌ、唯ダ之ニ關聯
シテ一言致シテ置キタイ事ガアル、ソレハ何デアルカト云フト
唯〓委員長ノ報〓ノ中ニモアリマシタルガ如ク、小選擧區
ト云フモノハ政黨ノ發達ニ便利デアル、大政黨ノ樹立ニ便
利デアル、二大政黨ヲ對立セシメテ、立憲政治ノ運用ヲ圓
滿ナラシムルニ便利デアル、是ハ言葉ハ違ヒマスガ、內務大
臣モ委員會ニ於テ述べラレタ事デアル、後ニ現ルヽ所ノ松
田君ノ如キモ、確ニ此議席ニ於テ左樣ナ意見ヲ述ベラレタ
コトガアル、大間違ノ甚シキモノデアル、一體一國ニ於テ大
政黨ガ現レルカ、小黨分立スルカト云フコトハ、何レモ其國
ノ歷史、社會ノ狀態、政治界ノ有樣等ニ依テ決セラルベキ
問題デアッテ、選擧區制抔トハ何等ノ關係ノ無イモノデア
ル、其證據ニハ歐羅巴大陸諸國ハ如何デアリマスカ、欧羅
巴大陸諸國ハ悉ク小選擧區制ヲ採ッテ居ル、併ナガラ小黨
分立、實ニ名狀スベカラサルモノガアルノデアリマス、歐羅巴
大陸ニ於テ二大政黨ノ樹立ト云フ國ハ、唯ヘノ一ツモ無イ、
又小選擧區制ヲ採シデ居ル所ノ英吉利ハドウデアルカ、(「英
吉利ハ大陸ヂヤナイ」ト呼フ者アリ)二大政黨ノ樹立ハ「ア
ングロ、サクソン」民族ノ特權デアルト誇シテ居シタ所ノ英吉
利デスラ、昨年ノ總選擧ニ當ッテハ、確ニ九ツノ政黨政派ガ
現レテ來テ居ルノデアル、今日漸ク二大政黨ヲバ維持シテ
居ル國ハ、世界ノ立憲國中ニ於テ、唯一ノ北米合衆國アル
ノミデアリマス、是モ近時勞働者ノ出現ニ依テ、小黨分立
ノ傾向ヲ示サントシテ居ルノデアル、之ヲ我國ノ歴史ニ徵シ
テ見マシテモ、小選擧區時代ニ於キマシテハ、小黨分立實
ニ甚シキモノガアル、大選擧區時代ニ八ッテカラ、初メテ
大政黨ノ樹立ヲ見タノデアリマス、殊ニ文明ガ進步スルニ
從ッテ社會ハ益〓複雜ニナル、階級的利害ガ衝突スル、階級
代表ノ觀念ガ熾ンニナル、隨テ小黨分立ハ、世界立憲國ニ
於ケル現在及將來ノ大勢デアリマス、此事實ヲ知ラズシテ、
法律ノ力ニ依テ選擧區制ヲ變更シ、其助ケニ依テ大政黨
ノ樹立ヲ計ル、二大政黨ノ對立ヲ實現セントスルガ如キハ、
全ク世間知ラズノ明盲目デアリマス、(「ヒヤ〓〓」ト呼ヒ拍
手スル者アリ)慶應義塾ヤ早稻田大學ノ討論會ニ於テナ
ラバ兎ニ角、苟モ活社會ニ游泳スル所ノ政治家ノ口ニスベ
キ事デハナイ、强テ選擧區制ト政黨卜關係ガアルトスルナラ
バ、大選擧區コン却テ大政黨ノ樹立ニ便利デアル、何故ナ
ラバ小選擧區ノ下ニ於キマシテハ、個人的勢力ヲ發揮スル
コトガ出來マスケレドモ、大選擧區ノ下ニ於テハ是ハ出來ナ
イ、併ナガラ一體斯樣ナ理窟ト云フモノハ、選擧區制ノ變
更ニ抑、何ノ關係ガアルカ、斯樣ナ事柄ヲバ百列ベテ見夕所
デ、選擧區制度トハ全ク關係ハ無イノデアリマス、大小選
擧區ノ利害得失ト云フモノハ、其根本ノ主義ハ唯〓一ツシ
カナイ、何デアルカト云ヘバ卽チ比例代表、少數代表ニ關ス
ル事デアリマス、是ヨリ外ニ大小選擧區ノ根本トナルベキ所ノ
爭點ハ無イノデアル、申スマデモナク代議政治ノ下ニ於キマ
シテハ、少數代表ト云フコトハ最モ必要デアリマス、如何ニ
スレバ少數代表ノ實ヲ擧ゲルコトガ出來ルカト云フコトハ、
今日何レノ立憲國ニ於キマシテモ、政治家及學者ノ攻究ヲ
怠ラナイ所デアル、專制政治ハ、少數ヲ以テ多數ヲ支配ス
ル所ノ政治デアリマスケレドモ、代議政治ハ、決シテ多數ヲ
以テ少數ヲ壓倒スル所ノ制度デハナイ、多數少數各"之
比例スル所ノ代表者ヲ送ッテ、國政ノ上ニ彼等ノ自由意思
ヲバ加味セシムルコトガ代議政治ノ要諦デアル、隨テ選擧
區制ヲ定ムルニ當シテモ出來得ル限リ此目的ニ向ッテ便宜
ヲ與ヘルト云フコトハ、施政者ノ當ニ努メネバナラヌ途デア
リマス、此點ニ於キマシテ、現時ノ程度ニ於テハ大選舉區
單記投票ノ右ニ出ヅルモノハ無イ、此外ニ比例代表十云フ
モノモゴザリマスルケレドモ、是ハ尙ホ攻究中デゴザイマシテ、
世界僅ニ二三ノ小國ガ試驗的ニ之ヲ行ッテ居ルニ過ギナイ、
直チニ取シテ以テ之ヲ我國ニ行フコトハ出來マセヌ、固ヨリ
何事ニ就キマシテモ、原則ガアレバ例外モアリマス、或ル稀
有ノ場合ヲバ想像致シマシタナラバ、大選舉區ノ上ニ於キ
マシテモ少數代表ヲ實視スルコトハ出來ナイ、却テ小選擧
區ノ下ニ於テ、少數代表ヲ實現スルコトガナイトモ限ラナ
イ、併ナガラ是ハ全ク稀有ノ場合デアリマス、吾々ガ國家ノ
法制ヲ定ムルニ當リマシテハ、總テ事物ノ原則ヲバ基ト做
ジ、其例外ヲ取除クガ爲メニ努メネバナラヌト云フコトハ是
ハ當然デアル、床次內務大臣ヲ首メトシテ、反對論者ガ動
モスレバ引用スル所ノ例ガアル、大選擧區ノ場合ニ於テモ、
若シ一人ノ候補者ガ非常ニ多數ノ投票ヲ獨占シタナラバ、
少數代表ノ實ヲ擧グルコトガ出來ナイデハナイカト言フ、斯
樣ナ稀有ノ假設ノ例ヲ引擧ゲルナラバ、小選擧區ノ場合ニ
於テハ山程アリマス、斯ル稀有ノ假例ヲ設ケテ此原則ニ抵
抗セントスル如キハ、全ク常識ナキ所ノ空論デアル、斯樣ナ
空論ニ對シテハ別ニ辯駁スル必要ハアリマセヌ、又內務大
臣ハ、過日本會ヨリ引續イテ委員會ニ於テ如何ナル事ヲ明
言シテ居ラルヽカト云フト、少數代表ト選擧區制トハ關係
ハ無イ、小選擧區必ズシモ少數代表ニ不便ナラズ、大選擧
區必ズシモ少數代表ニ便ナラズト斷言シテ居ラルヽ、若シ
冗談デアルナラバ、兎ニ角、眞面目ニ斯樣ナ事ヲ考ヘテ居ラ
ルヽナラバ、本員ハ失禮ナガラ床次君ノ頭ノ程度ヲ疑ハザル
ヲ得ナイノデアル、(「同感々々」「君ノ頭ヲ疑ハザルヲ得ナイ」
ト呼フ者アリ)此點ニ就キマシテハ床次君ヨリ、其處ニ居ラ
ルヽ所ノ三土忠造君ノ方ガ餘程進步シテ居ル、(笑聲起ル)
餘程常識ガアルノデアル、三土君ハ昨日ノ委員會ニ於テ、
此選舉區制ニ就テ如何ナル事ヲ述ベタカト云フト、結局吾
吾ト同一ノ意見デアル、(「見ナケレバ分ラナイカ」「默ッテ聽
ケ」ト呼フ者アリ)靜ニ聽キ給へ、三土君ハ斯ウ云フ事ヲ言ッ
テ居ル「ソレカラ此區制ニ就キマシテハ、是ハ御互ニ根本ノ意見
ヲ異ニシテ居リマスガ、段々小選擧區ト大選擧區トノ便利
ナル點、卽チ利益ナル點ヲ擧ゲテ見マスト、大體ニ於テ大選
擧區ノ方ガ利益ナル點ガ多イノデアリマス」ト言ッテ居ル(「其
通リ」「間違ッテ居ル」ト呼フ者アリ)又少數代表ニ關シテド
ウ云フコトヲ言ッテ居ルカ、「私ハ此少數代表ト一云フコトニ就
キマシテハ、確ニ小選擧區ハ大選舉區ヨリモ不便デアルト
考ヘマス、是ハ同感デアル」ト明言シテ居ルノデアリマス、(拍
手起ル)政友會ガ主張スル所ノ小選舉區制ノ理由ト云フ
モノハ、政友會員自身ノ口ヨリ全ク打破セラレテ居ルノデア
ル、(拍手起リ「皆ナ讀メ」ト呼フ者アリ)其他大小選擧區ニ
關スル利害得失論ハ澤山ニゴザイマスケレドモ、何レ後ノ論
者モ述ベラルヽコトヽ信ジマスルニ依テ、此以上ハ略シマス
ガ、此場合ニ於テ諸君ノ御注意ヲ喚起スベキ所ノ、最モ必
要ナル事實ガ玆ニ一ツアルノデアリマス、(「謹聽」ト呼フ者
アリ)第二十八議會ニ於キマシテ、衆議院ハ小選舉區案ヲ
可決シ、之ヲ貴族院ニ送リマシタ、所ガ貴族院ニ於テハ之
ヲ大選擧區ニ修正シタ、ソコデ兩院協議會ガ開カレマシテ、
其兩院協議會ノ結果ヲバ、時ノ政友會ノ代議士伊藤大八
君ガ此議場ニ報告セラレテ居リマス、其報告ハ最モ簡單明
瞭ニ大小選舉區ノ利害得失ヲ表白シテ居ル、此席上ニ於
テ其一節ヲ朗讀致シマス「伊藤大八君協議委員ハ昨日
二時ニ協議委員室ニ集マリマシテ、抽籤ニ依リマシ
テ、貴族院議員ノ久保由男爵ガ其日ノ會ヲ整理スルコトニ
相成リマシタ、直チニ衆議院側ヨリ貴族院ノ修正ノ御
意思ノ在ル所ヲ質問ニ及ビマシタ、貴族院側ニ於キマシテ
ハ、大要修正ノ意見ヲ四箇ニ大別スレバナルヤウニ考
ヘテ居リマス」是カラガ本當デアリマス、(「是マデハ嘘カ」
ト呼フ者アリ)「小選舉區ヲ大選擧區ニ修正シタルノハ、小
選擧區ト云フモノハ、公明ナル國民ノ代表者ヲ出スニハ
適セナイ、大選擧區ノ方ガ、適當ナル國民ノ代表者ヲ出ス
ニ宜シイ、小選擧區ニ於テ議員ヲ出ス場合ニハ、地方ノ情弊
ニ陷リ易イ、此故ニ小選擧區ハイケナイ、第二ハ小選擧區ニ
ハ、少數代表者ヲ出スニ遺憾ノ點ガアル、大選擧區ニ在リマ
シテハ、斯樣ナル不備ヲ補フノ得ガアル、斯ウ云フコトデアリ
マス、第三ハ小選擧區ニ於テハ競爭ガ激烈ヲ來シテ、自治
體ノ平和ヲ破ル、一家ノ平和ヲ紊スト云フヤウナ虞ガアルカラ
イケナイ、第四二ハ競爭激烈ノ結果、斯樣ナル取締ヲ爲スニ甚
ダ不便デアルカラシテ、現今ノ法律ノ如ク選舉罰ト致サズニ體
刑ヲ科シテサウシテ此取締ニ制裁ヲ加フルガ適當デアル云々」
諸君、此通リデアリマス(「ソレハ貴族院ガ言ッタノダラウ」ト
呼フ者アリ)今日政黨政派ノ外ニ立ッテ、最モ公平無私ニ
大小選擧區ノ利害得失ヲ攻究スル者ハ、必ズ此點ニ到達
ヲスルノデアリマス、(「十年昔ノ議論ダ」ト呼フ者アリ、拍手
起ル)最早諄々シク述ブルノ必要ハアリマセヌガ、之ヲ要ス
ルニ今日世界ノ立憲國ノ大多數ハ、小選擧區制ヲ採用シ
テ居ルコトハ事實デアル、併ナガラ小選舉區制ヲ採用シテ居
ル所ノ國ノ歷史、其事情ニ就テ述ベント欲スレバ述ブル事
ハ澤山ゴザイマスガ、ソレハ一切省略シテ置キマセウ、併シ是
等ノ諸國ハ、此小選舉區ノ爲メニ、實際ニ於テ少數代表ノ
實ヲ擧グルコトノ出來ナイノニ非常ニ苦ンデ居ル、ソレ故ニ
近時比例代表ノ〓究ハ、幾多ノ方法ニ依テ益〓進步シテ
居ルノデアリマス、先日私ガ一言致シマシタル所ノ、最近英
國ノ選擧法ノ調査委員會ニ於キマシテモ、調査委員會ニ
於テハ、市部ヲバ大小擧區ト爲シ、三人以上、五人以下ノ
大選擧區ト爲シテ、或種類ノ比例代表法ヲ行フト云フコ
トヲ決メタノデアリマスガ、保守的ノ國民デアルニ依テ、議
會ニ於テハ暫ク之ヲ待タウト云フコトニナッテ居ルノデアル、
如何ナル種類ノ比例代表デモ、大選擧區制ノ下ニ非ラザレ
バ、斷ジテ行フコトガ出來ナイノデアリマス、今日世界立憲
國ハ、大勢ヨリ見マシタナラバ、小選擧區制ハ段々廢シテ、將
ニ大選舉區制ニ八ラントスル所ノ傾向ヲ示シテ居ルノデア
ル、(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」「嘘ヲ言フナ」ト呼フ者アリ)幸ニシ
テ我國ハ二十年來此制度ヲ行ヒ來リ、多年ノ慣習ト、幾度
カノ經驗ニ依テ、法律的選舉區ノ間ニ自然的ノ選擧區ヲ
生ジ、圓滿ニ此制度ヲ運用シテ來タノデアリマス、本員ハ斷
言致シマス、今日ノ我國ノ選擧法ニ於キマシテ、世界列强
ニ對シテ誇ルベキモノハ一ツモ無イ、唯、誇ルニ足ルベキモノ
ハ大選舉區單記投票法デアリマス、世界列國ガ未ダ曾テ
經驗セザル所ノ、此大選舉區ノ單記投票制ヲ一一十年來我
國ガ行ヒ來ッタト云フコトハ、我國ガ世界列國ニ對シテ誇ル
ベキ確ニ一ノ大事實デアリマス、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)
然ルニ何等堂々タル理由アルニ非ズ、何等公明ナル理由ア
ルニ非ズ、唯〓一黨一派ノ利害ノ爲メニ(「ノウ〓〓」ト呼フ
者アリ、拍手起ル)此選擧區制ノ根本ニ向ッテ打破ヲ企テ
ントスルガ如キコトハ、決シテ國家ヲ念ヒ、黨政ヲ念フ所ノ
道デハアリマセヌ、此點ニ於キマシテ本員ハ、政府ノ小選擧
區案ナルモノニ向ッテハ、根本ヨリ反對スルノ意見ヲ表白致
シマス、次ハ別表ノ改正ニ關スル事デアリマス、卽チ小選擧
區ヲ土臺トシテ組立テラレテ居ル所ノ別表、此別表ノ內容
ニ含マレテ居ル所ノ選擧區ノ構成、及議員ノ配當ニ關スル
事デアリマス、別表ハ其組立ニ依テ、各政黨政派ノ利害ニ
關係スル重大ナルモノデアル、別表ノ組立ニ依テ、一黨ノ爲
メニ利益ヲ圖ラントスルナラバ、或程度マデハ其目的ヲ達ス
ルコトガ出來ルノデアリマス、床次內務大臣ノ言明ニ依リマ
スト、此別表ハ最モ公平ナル考ヲ以テ作ッタノデアルト言ハ
ルヽ、何人ト雖モ不公平ナル考ヲ以テ、法律規則ヲ制定ス
ルト公言スル者ハ無イ、左樣ナ公言ハ全ク無益デアリマス、
又假令本人ハ公平ナル考ヲ持ッテ居ルニシロ、實際ニ於テ
不公平ナル事蹟ガ現レテ居ルナラバ、起案者タル者ハ、之ニ
對シテ責任ヲ負ハネバナラヌノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者ア
リ)此別表ハ床次內務大臣ガ言ハルヽ如ク、果シテ公平ナ
ルモノデアルカ不公平ナルモノデアルカ、本員ハ此別表ノ內
容ノ公平ニ非ズ、甚ダ不公平デアルト云フコトヲ、事實ニ基
イテ論證致シマセウ、(「拍手起ル」「其事實ヲ擧ゲヨ」「是カラ
擧ゲテヤルカラ默ッテ聽ケ」ト呼フ者アリ)先ヅ内務大臣ノ說
明ニ依リマスルト云フト、此別表ハ一區一人ヲ以テ大原則
トシテ居ル、萬已ムヲ得ザル場合ノ外ハ一區二人ニハシナ
イ、又人口十三万ヲ以テ中心トシテ居ルニ依テ、其結果ト
シテ十万ヨリ十八万ニ亙ッテ居ル、已ムヲ得ザル場合ニ於
テ、十九万ノ所ガ五箇所アル、又九万ノ所ガ十一一箇所アル、
是ハ內務大臣ノ別表ニ關スル所ノ說明ノ大體デゴザイマス
ガ、此別表ノ內容ヲバ逐一審査致シマスルト一云フト、內務
大臣ノ說明ト云フモノハ、事實ニ於テ全ク裏切ラレテ居ル
ノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)第一ニドウシテモ一
區ヲ一人ニシナクテハナラヌ所ヲパ、故ラニ一區二人ニシテ
居ル所ガ澤山アル、又ドウシテモ一區二人ニシナケレバナラ
ヌ所ヲ、故ラ一區一人トシテ居ル所ガ澤山アル、又二區以
上ノ組立ニ依リマシテモ、甚ダ不都合千萬ナ組立ヲシテ居
ルモノガ澤山アリマス斯ウ云フ事ヲバ逐一事實ニ就テ申ス、
ト煩雜ニナリマスニ依テ、私ハ其中ノ數箇ヲ爰ニ例證致シ
マセウ、例證スルニ依テ、諸君モ亦靜ニ聽カナケレバナラヌ
(「佐賀ハドウダ」ト呼フ者アリ)何ヲ八釜敷ク言フノデス
カ-先ヅ第一ニ一區一人ヲ原則トスル所デアリマス、諸
君ハ諸君ノ前ニ在ル所ノ別表ヲ御覧ナサイ、大阪ノ第六區
ハ如何デアリマス、第六區ハ二郡デハ人口ハ二十九万二千
七百八十八人、是ガ二人ノ定員ニナッテ居リマス、併ナガラ是
ハ此中ノ東成西成ニドウシテモ分ケネバナラヌ所デアル、人
口ニ於テモ、西成郡ハ十六万二千七百十七人デアリマス、
東成郡ハ十三万七十一人デアリマス、斯ル場合ニ於テ、何
ガ故ニ一區二人ニシタノデアルカ(拍手起ル)更ニ岡山縣ノ
第三區ハドウデアルカ、岡山縣ノ第三區ハ、四郡デ總人口
ガ十九万七千五百人デアリマス、是デ一區二人デアル、此
郡ノ如キハ二郡宛ニ分ケレバ何方モ九万八千臺デ、地勢ノ
位置ニ於テモ十分ニ區分スルコトガ出來ルノデアル、卽チ和
氣郡ト邑久郡、此二郡ヲバ一選擧區ニスレバ九万八千七
百二十人、其他ノ二郡ヲバ合併スレバ九万八千七百八十
人、斯樣ナ場合ニ於テ、何ガ故ニ之ヲ分割シナイノデアル
カ、更ニ香川縣ノ第五區ハドウデアルカ、香川縣ノ第五區
ハ二人デ二十二万〇〇三十六人、是ガ一區二人ノ所デア
リマス、是モデス、綾歌縣ヲ一區トシテ、中多度郡ヲ一區ト
爲シタナラバ、餘リ人口ニ於テ差ハ無イノデアル、一方ハ十
二万餘デ一方ハ九万七千デアリマス、斯ウ云フモノヲバ分
割セズ合併シテ居ルノデアル、ガ、更ニ一方ヲ見マスルト云フ
ト、ドウシテモ合併シナケレバナラヌ所ヲバ、合併セズシテ分
割シテ居ルノガアル、靜岡縣ノ第三區ト第四區ハ如何デア
ルカ、第三區ハ人口僅カ十一万三千、是ガ一人デアリマス、
次ニ四區ハ十八万六千デ、是デ一人デアリマス、此郡ニ於
テハ十一万臺ヲ以テ一人ヲ出シ、隣ノ郡ニ於テハ十八万六
千ヲ程テ一人ヲ出ス、斯樣ナ場合ニハ人口ヲ平均セシムル
爲メニ、合併ヲシナケレバナラヌト云フコトハ當然デハナイ
カ、次ニ石川縣ノ第二區ト第三區ハドウデアルカ、石川縣ノ
第二區ハ十一万三千ヲ以テ一人トシテ居ル、然ルニ隣ノ
第三區ハ千七万一千ヲ以テ一人トシテ居ル、斯樣ニ人
口ノ懸隔シタ所ヲ、何故ニ之ヲ合併セズシテ分割シタノ
デアルカ、或ハ政府當局者ハ地理ガ惡イト言フカモ分ラ
又、地理ト云フ事ニ隱シテ居ルナラバ、長崎縣ノ五區ト六
區ハドウ云フ譯デアルカ、長崎縣ノ六區ニ於テハ、南松浦
郡ト壹岐郡ヲバ合併シテ居ル、此兩郡ハ何レモ島デアル、
南松浦カラ壹岐ニ到ラントスレバ、先ヅ船ニ乘リ、次ニ長
崎縣全部ヲ汽車ニ乘リ、更ニ又船ニ乘ッテ、少クモ三日掛
ルノデアリマス、何ガ故ニ斯ウ云フヤウナ地理上ノ不便ナ
所ヲ合併セラレタカ、合併サレルナラバ、是ハ五區ト六區
トヲ一〓ニシテ、サウシテ一區二人トスルノガ當然ノ事デ
アリマス、次ニ二區以上ノ組合ガ甚ダ不都合極マルモノ
ガ澤山アリマス、例ヘバ静岡郡ノ七區ト八區トハドウデア
ルカ、靜岡縣ノ七區ハ、人口二十万七千二百十六人、是
デ二人ノ所デアリマス、然ルニ隣ノ八區ハ二郡デ十八万
五千七百八十人デ、是デ一人デアリマス、一方ニ於テハ十
万ニ付テ一人ノ議員ヲ出シ、他ノ一方ニ於テハ十八万五
千ヲ以テ一人ノ議員ヲ出ス、斯樣ニ不公平ノ編成ガアリマ
スガ、斯樣ナ事ヲシナクテモ、第七區ヲバ小笠郡、榛原郡、周
智郡、此三郡ヲバ合併シテ一區二人ヲ出シ、殘リノ盤田郡
ヲバ一區ト爲シテ一人トスレバ、人口ハ頗ル平均ヲ得テ居
ルノデアリマス、次ニ福岡縣ノ第九區ト第十區、第十一區、
是モ頗ル不自然ナル所ノ不都合ナル組合セデアリマス、福
岡縣ノ九區ハ二郡デ人口十一万九百七百三十一人、是
デ一人デアル、十區ハ三郡デ人口二十九万三千九百三十
一人是テ三人デアル、十一區ハ二郡デ十七万七千四百
四十一人デ、是デ一人デアリマス、頗ル人口ノ點ニ於テモ不
平均デアル、之ヲバ嘉穗郡ヲ獨立セシメ、第二ニ鞍手、遠賀、
宗像、之ヲ合併シテ一區ト爲シ(「ソンナ馬鹿ナ組合セガア
ルカ」ト呼フ者アリ)第三ハ筑紫、朝倉、糟谷ヲ合併シテ、此
三郡ヲバ合併シテ二人ト爲スト云フコトニスレバ、地理ノ上
ニ於テモ、人口ノ上ニ於テモ、最モ平均ヲ保ツコトガ出來得
ルノデアリマス(拍手起ル)更ニ高知縣ノ第二區及三區モ
同様ノ事デアル、斯樣ナ事ヲ逐一述べマシタナラバ、數限リ
モナイコトデアリマスカラ、是ハ省略致シマシテ、議長ノ許
可ヲ得テ速記錄ニ揭載スルコトニ致シマス、而シテ委員會
ニ於キマシテハ、之ニ類スル所ノ約三十箇所ノ事實ヲ摘示
シテ、逐一政府當局者ニ質問致シマシタ所ガ、政府當局者
ノ答辯ト云フモノハ全ク支離滅裂デアリマス(拍手起ル)
吾ミヲ滿足セシムルニ足ルベキモノガ唯〓ノ一モ無イ、ソレハ
其筈デアル、元來此別表ト云フモノハ、初メテ別表ヲ作ッタ
所ノ其大本ガ間違ヲテ居ルノデアル、明治四十四年ニ於テ、
第二次西園寺內閣ノ下ニ、時ノ原內務大臣ガ選擧法ノ改
正ヲ企テヽ、小選擧區制ト云フモノヲバ調査委員會ニ提出
シタコトガアル、其原案ニ就テ、確ニ政友會側ノ委員ヨリ數
箇所ノ修正ガ加ヘラレテ居リマス、是ガ原案トナッテ第二十
八議會ニ現シタ、所ガ第二十八議會ニ於テハ、更ニ政友會
議員ノ手ヨリ四十有餘箇所ニ向ヲテ修正ガ加ヘラレテ居
ル、其修正ヲ加ヘラレタモタガ、昨年春ノ議會ニ政友會ノ名
ニ依テ提出セラレタル選舉區制ノ原案デアリマス、然ル所ガ
今囘ハ其原案ニ向ッテ、更ニ四十六七箇所ノ修正ヲ加ヘタ
モノガ玆ニ現レタル所ノ小選擧區案デアル、此過去ノ事實
ヲ知ル者ハ、何人ト雖モ此選擧區ノ構成ガ公平ナリト想像
スル者ハ無イデアラウ(拍手起ル)斯様ナ不公平ナル所ノ議
案ト云フモノハ、此議會ニ提出セラレタ所ノ例ガ無イ、斯ル
不公平ナル所ノ議案ヲバ議會ニ提出シテ、議會ニ於テ之ヲ
審議スルト云フ其事スラ、議會ノ體面ヲ汚スコト頗ル大ナ
ル、モノデアリマス(拍手起ル、「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)更ニ甚
シキニ至ッテハ、最前委員長ノ報告ニモアリマシタガ、昨日ノ
委員會ニ於テ、山梨縣ノ第二區ニ向ッテ或ル委員ヨリ修正
ヲ提出シ、政友會ハ之ヲ賛成シテ、此原案トナッテ居ルノデ
アリマス(拍手起ル)山梨縣ノ第二區ト云フモノハドウ云フ
モノデアルカ、委員長ノ報告セラレタル如ク、西山梨、東山
梨、北巨摩、中巨摩、此四郡ヲ合シテ一區二人トシテ居ル
ノデアル、人口ハ總計二十六万五千六百四十五人デアリ
マス、然ル所ガ此各郡ノ人口ヲ見マスルト云フト、ドウシテモ
是ハ二分スルコトノ出來ナイモノデアル、之ヲバ昨日修正ノ
如ク二分スルト云フト、西山梨、東山梨ハ總テ九万八千餘
リデアリマス、然ルニ一方ノ北巨摩、中巨摩ハ合シテ十六万
七千デアリマス、人口ノ不平均ヲ來スコト頗ル大ナルモノデ
アル(「地理ヲ御覽ナサイ」ト呼フ者アリ)若シ斯ウ云フモノヲ
分割スルト云フナラバ、此改正案ニ現レテ居ル所ノ一區二
人制ト云フセノハ、悉ク分割シナクテハナラヌノデアル(拍手
起ル)此分割シタノハ抑、何ニ原因シテ居ルカ、今日ノ新聞
ノ報道ニ依ルト、先日來政友會ノ山梨支部ハ、決議ヲ以テ
此修正ヲバ强要シタト云フコトデアル、卽チ此所ヲバ地盤ト
シテ居ル所ノ政友會ノ議員生原忠右衞門君、穴水要七君、
此兩君ノ地盤ヲバ擁護センガ爲メニ此修正ヲセラレタト云
フコトハ、爭フコトノ出來ナイ事實デアリマス(拍手起ル、「山
梨ノ地理ヲ御存ジガナイ」ト呼フ者アリ)此點ニ就テ昨日モ
内務大臣ニ本員ガ質問致シマシタ所、內務大臣ハ何ト答
ヘタ(「顏色ガ變ッタヨ」ト呼フ者アリ)是ハ或人ガ此點ニ就テ
質問ヲシテ、兩分シタガ宜カラウト言ッタカラ、若シ議會ニ於
テ之ヲ修正スルナラバ、本員ハ同意スルコトニ躊躇シナ
イ-殊ニ昨日委員會終了後我黨ノ望月君ガ、此點ニ就
テ内務大臣ニ質シタ所ガ、內務大臣ハ是ハ君ノ方ノ齋藤
隆夫君ガ、委員會ニ於テ二分シタガ宜カラウト云フコトヲ
提議シタ-實ニ怪シカラヌ事デアル、本員ハ委員會ニ於テ、
山梨縣ノ第三區ニ付テ一言半句モ言明シタコトハ無イ、内
務大臣ハ何ヲ心得テ居ルノデアルカ、自分ノ責任ヲ塗抹セ
ンガ爲メニ、他人ノ姓名ヲ濫用スル、實ニ不都合千萬ナ事
デアル、而シテ先日來委員會ニ於テ、本員ガ別表ノ不公平ナ
ルコトヲ指摘シテ、内務大臣ニ向ッテ詰問シタ所ガ、此別表
ハ最モ公平ニ出來テ居ルニ依テ、此別表ニ向ッテ修正ヲ加
ヘルコトハ、絕對ニ同意シナイト云フコトヲ明言シテ居ルデ
ハナイカ(拍手起ル)然ルニ斯樣ナル場合ニ於テ、自黨ノ議
員カラシテ修正ヲ持出シテ來ルノニ、之ニ尙ッテ默々トシテ
一言半句ノ反對ヲセズニ終クタノハ、內務大臣ノ····(拍手
起ル)、「不公平」「辯明ヲ要ス」「八釜シイ」「何所カラ修正ガ
出タ」「頭ガ惡クナッタゾ」「嘘ヲ言フナ」ト呼ヒ其他發言スル
者多シ)內務大臣ハ動モスレバ、此別表ハ公平ナル考ヲ以
テ作成シタノデアルト言ウテ居ル、内務大臣ノ公平主義ト
云フモノハ、寺內內ノ善政主義ト同ジ事デアル、誰ガ斯
樣ナモノヲ信用致シマスカ、諸君、凡ソ政憲ヲ擴張スルニ
當ッテハ、自ラ其途ガアルノデアリマス、國家ノ權力ヲ藉リ、
法律ノ威力ヲ藉リテ政黨ノ擴張ヲ圖ラジトスル所ノ者ガ、
古今東西ノ何レノ所ニ有ルカ(拍手起ル、「大隈內閣ハドウ
シタ」ト呼フ者アリ)古今東西ノ歷史ニ於テ類例ナキ所ノ亂
暴至極ノ振舞デアリマス(「大隈ハドウシタ」「馬鹿ヲ言フナ」
「靜肅ニ」「ソンナニ苦シイカ」ト呼フ者アリ)斯ル場合ニ於テ
コン、憲法ガ保障シテ居ル所ノ兩院制度ノ得失ガ、始メテ
發揮セラルヽコトデアルト云フコトヲ確信シテ居リマス、尙ホ
論ジタイ事ハ澤山ゴザイマスケレドモ、本員ノ足ラザル所ハ、
後ニ現ルヽ所ノ同論者ニ於テ補足セラレルコトヽ信ジテ居
リマス、以上述ベタル所ノ理由ヲ以チマシテ、本員ハ此政府
ノ提案ノ如キ不徹底ナル所ノ、不論理ナル所ノ、不公平ナ
ル所ノ選擧權ノ擴張、選擧區制ノ變更、別表ノ改正ニ就テ
ハ、根本ヨリ之ニ反對シ、政府提案ノ否決ヲ要望スル者デ
アリマス
〔拍手起ル〕
(參照)
衆議院議員選舉法改正案別表ニ對スル意見
若シ政府原案別表全部ニ涉リテ原案ノ缺點ヲ指摘セハ其箇所非
常ニ多キニ上ルヘキモ玆ニハ唯已ムヲ得サル場合ニ限リ變更ノ
必要アルモノヲ掲クレハ左ノ如シ
大阪府
第六區及第七區ヲ左ノ通リ故ムルヲ要ス
第六區東成人第七區豐西成六
能
第八區三島人
〔北河内
理由原案第六區ハ東成西成兩郡ヲ合シテ一區ト爲セルモ此兩
郡ハ大都市ヲ浹ミテ相隔ツルノミナラス市ノ膨脹ニ伴ヒ兩者ノ
關係益〓疎隔スルノ傾向ヲ有ス又原案第七區中豐能ト北河内ト
ハ三島郡ヲ隔テヽ相互ノ關係甚薄ク人情風俗全ク異ルモノアリ
何レモ地理上適當ノ組合セナリト云フヘカラス而シテ東成郡ハ
其人口十三萬七十一人ナルカ故先ニツ之ヲ獨立ノ一區トシ次ニ
西成豐能ヲ合シテ一區二人三島北河内ヲ合シテ一區一人トセハ
地勢上ノ配合其ノ宜キヲ得之ヲ人口配當上ヨリ見レハ前者ハ二
十一萬八千六人後者ハ十六萬五千三十九人ド爲リ稍不均衡ノ嫌
ヲ免レサルモ原案ニ比シ格別ノ差異アルニ非サレハ寧ロ地理上
自然ノ配合ニ從フヲ當然トス
兵庫縣
第四區第五區ヲ合シテ一區二人トシ第十二區第十三區ヲ合シテ
一區二人ト爲スヲ要ス
理由五區川邊有馬ハ山岳ヲ隔テヽ境域相接ルト雖トモ交通關
係ハ何レモ武庫郡ニ密邇シ地勢上三郡一選擧區ト爲スヲ適當ト
シ之ヲ舊小選擧區區制ノ沿革ニ照スモ亦一區二人ノ制ヲ執リタ
ルノミナラス昨年政友會提案ノ別表改正案中ニモ亦此ノ奮制ヲ
踏襲シタルニ拘ハラス今般ノ改正案中ニ於テ殊更ニ此ヲ分離シ
タルハ不可ナリ第十二區第十三區ハ亦舊小選擧區制ニ於テ但馬
國一圓一區二人ト爲セシヲ特ニ分割シタルモノナルカ由來同國
ハ兵庫縣ノ北隅ニ偏在シ其ノ地勢ハ之ヲ兩區ニ分割スルニ適セ
サルノミナラス五郡共通ノ人情風俗ヲ有シ原案ノ如ク區畫スル
ハ不自然ナルヲ免レサルカ故ニ寧ロ舊制ニ從ヒ一區二人ト爲ス
ノ適切ナルニ如カサルナリ
長崎縣
第五區及第六區ヲ併セテ一選擧區二人ト爲スヲ要ス
理由第六區中ノ壹岐郡ハ舊平戶藩ニシテ風俗慣習第五區タル
北松浦郡ト稍一致シ且ツ汽船ノ交通僅カニ三時間ニ過キス從ツ
テ日常ノ取引交際ノ關係頗ル密接ナリ之ニ反シ南松浦郡ト壹岐
郡トハ共ニ遠隔ノ離島ニシテ舊藩ヲ異ニシ古來何等ノ交涉關係
ナク風俗習慣亦全然相違シ曾テ兩島間ニ航路ノ開ケタルコトス
ラナシ現行區制改正前ノ小選擧區ニ依ルモ第四區ハ北松浦、壹岐、
石田(石田郡ハ後ニ壹岐ニ合併セラル)一人第五區ハ南松浦郡一
人トセルヲ見ル然レトモ若シ此ノ舊制ニ依ルトキハ北松浦壹岐
ハ人口十九萬一千四百二十三人南松浦ハ人口十萬一千八百十一
人ニテ各一人ヲ選出スルコトヽナリ著シク不均衡ヲ來スコトヲ
免レ難キヲ以テ寧ロ修正案ノ如ク兩者ヲ合シテ一區二人ノ選擧
區ト爲スヲ至當ナリト認ム
新潟縣
第七區南滿原古志ヲ分割シテ各獨立ノ一區ト爲スヲ要ス
理由南蒲原郡ハ人口十萬三千二百五人古志郡ハ九萬七千七百
八十九人ニシテ略相均シク之ヲ小選擧區一區一人ヲ原則トスル
原案ノ主旨ヨリ見ルモ兩者ヲ分立スルヲ相當トス況ンヤ此兩郡
ハ接壤地ナレトモ地形狹長ニシテ利害ノ關係薄ク入情風俗モ亦
自ラ異レルニ於テオヤ之ヲ第八區三島郡人口十萬三千二百五人
第九區刈羽郡人口十二萬三千六百七十三人ニシテ最モ密邇セル
此兩郡ヲ分立セルニ對比シ益〓修正案ノ妥當ナルコトヲ推知ス
ルニ足ル
三重縣
第八區度會志摩第九區北牟婁南牟婁ヲ併合シテ一區二入ト爲ス
コット
理由舊小選擧區制ニ依ル沿革上ヨリ見ル第八區第九區ハ分割セ
サルヲ適當トスルノミナラス第八區ハ人口十六萬七千百二十五
人第九區ハ人口十萬三千百三十六人ニシテ隣接セル兩區ノ間其
差六萬以上ニ上ルカ故ニ之ハ人口配當上ノ均衡ヲ圓ル點ヨリ論
スルモ此兩區ハ當然一選擧區タルヘキモノナリ昨年政友會ノ提
出シタル小選擧區案ニ於テモ尙一區二人案ナリシカ這般特ニ兩
者ヲ分離シタルハ其ノ理由ヲ知ルニ苦マサルヲ得ス
愛知縣
第四區中西春日井ハ之ヲ第五區ノ東春日井ト合シテ一區一入ト
シ同區中愛知ハ第九區ノ知多ト合シテ一區三人トシ又第十一區
ヲ分割シテ幡豆郡ヲ獨立ノ一區一人ト爲スヲ要ス
理由單ニ地理上ノ關係ヨリ見ルモ愛知ト西春日井ヲ組合スハ
不自然ナルヲ免レス寧ロ相互密接ノ関係ヲ有スル東西春日井ヲ
合シテ一區トシ愛知郡ハ其ノ隣接地タル知多ト合スルヲ自然ノ區
域ナリトス而シテ之ヲ人口配當ノ上ヨリ見ン乎東西春日井兩郡
ノ人口十六萬九千三百七十六人ニテ一人ヲ選出スルコトトナリ
之ヲ原案ノ知多郡十七萬三千三百七十五人ヲ以テ一人ヲ選出ス
ルニ比シ配當平均ニ近キモノト謂ハサルヘカラス而シテ愛知知
多人口合計三十二萬九千七百四十八人ニテ三人ヲ選出スルカ故
ニ一人平均十萬九千九百十六人ト爲リ是亦不當ノ配當率ニ非サ
ルモノト認ム
原案第十一區中岡崎市ヲ中心トスル額田東加茂西加茂三郡ト西
尾町ヲ中心トスル幡豆郡トハ全然風俗慣習ヲ異ニシ之ヲ舊藩時
代ノ沿革ニ見ルモ將タ現時ノ商業交通等ノ關係ヨリ考フルモ兩者
ヲ併合シテ一選擧區二人ト爲セルハ不自然ノ結合タルヲ免レス
之ヲ舊小選擧區制ニ就テ見ルモ額田東西加茂ハ一選擧區ト爲リ
幡豆郡ハ碧海郡ト合シテ一選擧區タリシハ寧ロ自然ノ地勢ニ從
ヒタル區畫ナリト認メラル而シテ之ヲ人口配當ノ上ヨリ看察セ
ン乎幡豆郡ハ人口九萬一千七百九十四人ニシテ他三郡ハ十三萬
五千六百六十二人ナリ若シ幡豆郡ノ人口過少ニシテ獨立ノ一區
タルニ不充分ナラン乎寧ロ之ヲ碧海郡ニ合シテ一區二人ト爲ス
ヲ可トスルモ同郡ノ人口九萬餘ハ裕ニ一獨立區タルノ資格ヲ有
スルニ足ル例之山口縣佐波郡ノ如キハ縣ノ中央ニ介在スル地方
ナルニ係ハラス人口九萬一千百二十二人ニシテ獨立ノ選擧區タ
リ又德島縣ノ名東勝浦二郡一區ノ如キ他ノ隣區ト組合セ得ヘキ
適當ノ地位ニ在ルニ係ハラス九萬七千八百二十七人ニテ之ヲ獨
立ノ選擧區ト爲セシ例ニ照セハ本修正案ハ當然避クヘカラサル
モノト認ム
靜岡縣
第三區第四區ヲ併合シテ一區二人トシ第八區中ノ周智郡ヲ割キ
テ第七區ニ併合スルヲ要ス
理由原案第四區富士庵原ハ人口十八萬六千二百四十八人ナル
カ其隣區タル安倍ハ人口十一萬三千四百六十四人ニテ其差實ニ
七萬以上ナリ此兩區ハ地勢上何等ノ故障ナキ土地柄ナルカ故ニ
人口配當上之ヲ併合シテ均分ヲ得セシムルハ適當ノ修正ナリト
謂サルヘカラス又原案第七區ハ榛原小笠二郡人口二十萬七千二
百十六人ニテ二人ヲ選出スルカ故ニ一區十萬三千六百八人ノ割
合トナル而シテ其隣區タル第八區周智磐田ハ一區一人ニテ人口
合計十八萬五千七百八十人ニ及フカ故ニ兩區人口配當上ノ差ハ
八萬以上ニ及ヒ著シキ不平均ノ組合セナリト云ハサルヘカラス
若シ修正案ノ如ク周智ヲ第七區ニ組替フルトキハ人口計二十五
萬六千三百六十三人一人平均十二萬八千百八十一人ト爲リ磐田
郡ハ單獨ニテ十三萬六千六百三十三人ト爲リ八口配當上申分ナ
キ割合ト爲ル而シテ地理上ノ關係ニ於テ周智郡ハ磐田ト小笠ト
ニ相接シ之ヲ何レニ組合ストモ格別ノ差異ナキコトハ地圖ヲ一
覽スレハ明瞭ナルヘシ
宮城縣
第四區ノ遠田郡ト第五區ノ玉造郡トヲ組換ヘ第六區及第七區ヲ
併合シテ一區二人ト爲スヲ要ス
理由第五區栗原郡ト玉造郡トハ連山ヲ以テ相境シ彼此全ク其
流域ヲ異ニシテ交通關係決シテ密接ナリト云フヘカラス反之遠
田郡ト栗原郡トハ國道及縣道筋ニテ交通ノ便多シ而シテ玉造郡
ハ其ノ地勢上ヨリ見ルモ鐵道交通ノ關係ヨリ見ルモ志田加美ニ
密接セルカ故ニ修正案ノ如ク組換ヲ行フハ當然トス、府縣制實施
以前ニ於テ志田玉造ハ同一郡衙ノ管轄ニ屬シタル沿革アリ又舊小
選擧區制ノ際ニハ黑川、加美、志田、玉造及遠田ヲ合シテ第三區一
人トシ栗原登米ヲ合シテ第四區一人ト爲セルニ徵スルモ栗原ト
玉造トノ組合セハ地理上ノ關係ニ於テ不自然ノモノタルヲ推知
スルニ足ル、加之之ヲ人口ノ點ニ見ルモ第五區ハ十一萬四千九百
人第四區ハ十四萬四千三百八十人ニシテ其差二萬九千四百八十
人ナリ若シ修正案ノ如クセハ第四區十三萬四千七百四十九人第
五區十二萬四千五百三十一人ニシテ其差僅カニ一萬二百十八人
ト爲リ配當上ノ均衡ヲ得ルニ近シト謂ハサルヘカラス
第六區ト第七區トハ亦前者ハ人口十四萬三千〇九十七人後者ハ
人口十一萬八千八百五十二人ニテ其差二萬四千二百三十五人ニ
及フノミナラス海陸ノ交通關係ニ顧ミ且ツ舊小選擧區制ニ於テ
栗原登米ヲ合シテ一區トシ桃生牡鹿及本吉ヲ合シテ一區ト爲シ
タル沿革ニ顧ミ此兩區ヲ合シテ一區二人ト爲スヲ至當ナリト認ム
山形縣
第五區ヲ分割シテ東田川西田川兩郡ヲ以テ一區一人トシ飽海郡
ヲ獨立ノ第六區ト爲シ第六區最上北村ヲ第七區二人ト爲スヲ要
ス
理由原案第五區ハ二十七萬五千百七十六人ニテ三人ヲ選出ス
ルカ故ニ一人平均人口九萬千七百二十五人ナリ之ヲ其隣區十八
萬千百十六人ニテ一人ヲ選出スル第六區ニ比スレハ非常ニ不權
衡ノモノト爲ル、抑モ原案制定ノ趣旨ハ一區一人ヲ本則ト爲シ人
口配當上巳ムヲ得サル場合ニハ一區二人トシ尙地勢ノ關係其他
ニ於テ萬已ムヲ得サル場合ニ一區三人ノ特別例外ヲ設クルモノ
トス然ルニ本縣第五區ノ如キハ地勢上及人口ノ配當上之ヲ二區
ニ分割スルコト決シテ困難ニ非ラス卽チ東西田川人口十七萬三
千六百九十四人ニテ一區ヲ爲シ飽海ハ獨立シテ人口十萬一千四
百八十二人ヲ以テ一區ヲ形成スルニ於テ何等ノ支障アルナシ此
ノ如ク一區一人ノ原則ヲ以テ選擧區ノ組合ヲ行ヒタル上ニ於テ
原案第六區ハ人口十八萬一千百十六人ニシテ原案第四區又ハ修
正案第六區ニ比シ人口多數ナルカ放ニ殘餘ノ一人ヲ之ニ配當シ
テ一選擧區二人ト爲スハ議論ノ餘地ナキ配當ナリト信ス
秋田縣
第七區平鹿雄勝ヲ分離シテ各獨立ノ選擧區ト爲スヲ要ス
理由平鹿ハ十萬五千九百九十九人雄誘ハ人口八萬七千二百六
十八人ニシテ何レモ優ニ獨立ト爲スニ足ル人口ヲ有ス若シ兩郡
人口ノ差一萬七千餘ニ上ルカ故ニ人口配當ノ均分ヲ得ンカ爲ニ
兩者ヲ併合セルモノナリトセハ第三區ノ山本ハ十一萬一千五百
九十一人ヲ以テ獨立ノ一選擧區トシ、第四區ハ其隣郡タル北秋田
ト鹿角ヲ合シテ十八萬一人ヲ以テ一選擧區トシ其差實ニ七萬人
ニ近キカ故ニ當然此兩區ヲ併合シテ一選擧區二名ト爲サヽルヘ
カラサル理ナリ明治四十五年政府提出ノ小選擧區制原案ニ於テ
ハ修正案ノ如ク平鹿雄勝ヲ分立シ尙昨年政友會提出ノ原案ニ於
テモ亦此兩郡ヲ各獨立トシ爾來何等事情ノ變化ナクシテ之ヲ併
合セルハ其趣旨何レニ任ルヤヲ知ルニ苦マサルヲ得ス
福井縣
原案第二區ハ之ヲ兩區ニ分割シ且ツ第四區ノ丹生南條ヲ今立南
條ニ改ムルヲ可トス卽チ第二區ヲ坂井郡一人トシ第三區ヲ大野
吉田二郡一人第四區ヲ足羽丹生二郡一人第五區ヲ今立南條二郡
一人ト修正スルヲ要ス
理由政府案一區一人ノ小選擧區ヲ原則トスルモノトセハ特ニ
第二區ニ限リ地理上及人口配當上之ヲ兩區ニ區分スルコト容易
ナルニ拘ラス四郡ヲ併合シテ、二人一選擧區ト爲シタル理由ヲ知
ルニ苦マサルヲ得ス卽チ修正案ノ如ク第三區吉田大野ハ地理上
密接ノ關係ヲ有シ其人口十三萬百三十人ニシテ獨立ノ一選擧區
タルニ適シ又足羽丹生ヲ合シテ人口十一萬三千七百六十八人ニ
テ此レ亦通當ナル一選擧區タルヲ見ル而シテ原案ニ於テハ南條
丹生ノ兩郡ヲ合シテ一選擧區ト爲セルモ南條今立ノ兩郡ハ郡制
實施前一郡役所ノ行政區域タリシ舊來ノ關係ヲ有スルノミナラ
ス現ニ區裁判所ノ管轄區域同一ニシテ地形上兩者ヲ組合ハスハ
當然ノ處置タリ而シテ此二者ヲ合シテ人口十一萬六十五人ナル
カ故ニ一選擧區一人トシテ人口配當上亦決シテ不條理ニアラサ
ルヲ見ル
石川縣
第二區第三區ヲ合シテ一區二人ト爲スヲ要ス
理山原案第二區第三區ハ金澤ノ西部ニ位シテ地理上一團ト爲
レルノミナラス前者ハ人口十一萬三千十二人後者ハ人口十七萬
千三十八人ニシテ相互ノ差五萬八千二十六人ニ上ル故ニ人口配
當上ノ均等ヲ得ル上ヨリ見ルモ此兩者ノ併合ハ當然己ムヲ得サ
ル修正ナリト認ム
島根縣
第三區中簸川郡ヲ獨立ノ一區一名ト爲シ仁多大原及飯石ノ三郡
ヲ第二區ニ併合シテ一區二名ト爲スヲ要ス
理由籔川郡ハ人口十三萬二千九百七十七人ヲ有スル大郡ニシ
テ優ニ一郡一選擧區タルニ足ルノミナラス地勢亦出雲國ノ西北
ニ位シ獨立ノ選擧區ト爲スニ適ス而シテ第二區八束能義ニ加フ
ルニ仁多大原及飯石ヲ以テセハ人口二十一萬三千百十八人ニシ
テ二人選出ニ適當ノ人口ヲ有シ地理上ノ關係ニ於テ亦決シテ不
自然ナル結合ニ非サルヲ見ル
香川縣
第三區第四區ヲ併合シテ一選擧區二人ト爲スヲ可トス
理由第三區香川小豆二郡人口計十四萬四千六百二十七人ニシ
テ其ノ隣區タル第四區ハ大川木田二郡人口計十七萬五千三百二
十九人ナリ此兩區ニ對スル人口ノ配當均分ナラサル點ニ顧ミレ
ハ兩者ヲ合シテ一選擧區二人ト爲スヲ相當ナリトス若シ人口ノ
不平均此位ノモノヲ巳ムヲ得サルモノトシテ兩者ヲ二區ニ分割
スル以上ハ第五區綾歌仲多度ヲ合シテ一選擧區二人ト爲シタル
理由ナキ筈ナリ何トナレハ綾歌郡ハ人口十二萬二千八百七人仲
多度都ハ人口九萬七千二百二十九人ニシテ兩者ハ截然分立シ得
ヘキ資格ヲ具備スルモノト云ハルサヘカラス此ノ如ク甲ニ分チ
テ乙ニ合シ一貫ノ主張ヲ缺ク所以ノモノハ一派ノ黨略上ノ便宜
ニ出ツルノ疑ナキ能ハス
高知縣
第二區土佐吾川長岡三郡ヲ合シテ一選擧區二人トセルモ第二區
ハ土佐吾川二郡一人トシ第三區安藝香美ニ加フルニ長岡ヲ以テ
シ一選擧區二人ト爲スヲ要ス
理由原案第二區ハ三郡人口總計二十萬四千五百三十六人ニシ
テ一人平均約十萬二千餘人ノ割合ナリ之ヲ東隣ノ第三區十六萬
四千四百四十七人西隣ノ第四區十五萬二千四百五十人ニ比シ著
シク差異アリ今之ヲ修正案ノ如クセハ第二區ハ人口十二萬八千
九十五人ト爲リ第三區ハ二十四萬八百八十八人ニシテ一人平均
十二萬四千餘人ト爲リ人口配當ノ上ニ於テ最モ公平ノ結果ヲ見
ル而シテ長岡郡ハ地勢上ヨリ見レハ之ヲ第二區第三區何レニ編
入スルモ不可ナキカ故ニ人口配當ノ不均衡ヲ犧牲トシテ第三區
ニ結合スルニ及ハサルナリ
福岡縣
第九區乃至第十三區ヲ左ノ如ク改ム
第九區筑紫朝倉糟屋二
第十區宗像遠賀鞍手二人人
第十一區嘉穗一人
理由原案第十區ハ人口二十九萬九千七百四十一人ニテ三人選
出トシ一人平均人口九萬九千九百十三人ナリ而シテ其ノ隣區タ
ル第十一區筑紫朝倉二郡ノ人口ハ十七萬七千四百四十一人ヲ以
テ一人ヲ選出スルカ故ニ人口配當上彼此著シキ不均衡ヲ免レス
加之第十區ハ地理上及人口配當上必シモ三郡ヲ合シテ特別例外
ノ一區三人制ヲ採用セサルヘカラサル事由ナク嘉穗郡ハ人口十
一萬三千五百六十九人ヲ有シ裕ニ獨立ノ一區ト爲スヲ妨ケサル
ヲ以テ一郡一區ノ原則ニ從ヒ先ツ同郡ヲ單獨ノ一選擧區トシ次
ニ筑紫朝倉糟屋ノ三郡ヲ以テ一區二人、宗像遠賀鞍手ノ三郡ヲ以
テ一區二人ノ組合セヲ行フトキハ啻ニ地理上ノ關係ニ於テ不自
然ナラサルノミナラス人口配當上原案ノ如キ不均衡ヲ見ルノ
比ニアラス卽チ筑紫朝倉糟屋ノ三郡人口合計二十四萬一千四
百四十九人一人平均十二萬七百二十五人ト爲リ宗像遠賀鞍手ノ
三郡人口合計二十三萬七千八百九十五人一人平均十一萬八千九
百四十八人ト爲リ最モ公平ナル按排ヲ得ルモノナリト謂ハサル
ヘカラス
大分縣
第六區西國束、東國東ニ加フルニ速見ヲ以テシ一區二人トシ第七
區ヲ下毛、宇佐一區一人ト爲スヲ要ス
理由宇佐下毛兩郡ハ常ニ豐前二郡ト合稱シ人情風俗相等シク
一般ノ關係亦親密ニシテ舊選擧區制時代ニ於テモ一區タリシナ
リ速見ハ宇佐ト境域ヲ接セルモ豐後ノ中央ニシテ人情全ク豐前
二郡ト異レリ、東國東及西國東ノ一部トハ舊同藩タリシ關係多ク
人情亦相近ク現ニ速見ト束國東トハ同一稅務署ノ所管タリ唯人
口割ヨリ算出スレハ原案ノ東國東、西國東二郡ノ計十一萬五千二
百七十五人下毛宇佐速見三郡計二十五萬三千九百六十五人一人
平均十二萬六千九百八十二人トナルニ比シテ修正案ノ速見東國
東西國東三郡計二十萬八千二百八人一人平均十萬四千百四人下
毛、宇佐計十六萬一千三十二人ト爲リ聊カ不均衡ノ嫌ナキニ非サ
ルモ人口割ニノミ重キヲ置キ地理上自然ノ區劃ヲ無視セルハ不
當ナリ單ニ人口配當ノ上ヨリ論スレハ大分縣内ニ於テスラ第三
區南北海部ノ人口ハ十八萬三千九百九十五人ニ及ヒ之ヲ修正案
第七區ニ比シ二萬二千九百六十三人過多ナリ而シテ第三區ノ隣
區タル第二區大分郡ハ十萬一千三百三十八人ニシテ修正案第六
區ノ一人平均人口ニ比シ二千七百六十六人過少ナリ而シテ單ニ
人口ノ平均ヲ求メント欲セハ第二區ト第三區ハ之ヲ合併シ一區
二人ト爲スヲ適當トス畢意二者ヲ區分セル理由ハ人口配當ノ不
平均ヲ犠牲トシテ地理上ノ關係ヲ顧慮セルニ依ル之ト同一理山
ニ依リ第六區第七區ヲ地理的關係ニ顧ミ修正案ノ如ク改ムルハ
當然ノコトナリト信ス
佐賀縣
第四區小城杵島及藤津ノ三郡二人一區ヲ杵島藤津二郡一人一區
ト爲シ第五區東西松浦兩郡ニ加フルニ小城郡ヲ以テシ二人一區
ト爲スヲ要ス
理由元來小城郡ハ地埋上東松浦郡ト最モ密接ノ關係ヲ有スル
ノミナラス之ヲ人口配當ノ點ヨリ見ルモ原案第五區人口十九萬
七百六十九人ニ對シ一人ヲ選出セシムルハ妥當ニアラス若シ修
正案ノ如クセハ第四區ハ十七萬九千四百十五人ニ對シ一人、第五
區二十五萬八千八百四十一人ニ對シ二人ヲ選出セシムル事トナ
ルカ放ニ比較的ニ均衡ヲ得ルモノト云ハサルヘカラス斯ノ如ク
地理上及人口配當上明白ノ理由ヲ排シテ不自然ナル組合ヲ爲セ
ルハ黨略上ノ理由ニ基クモノト非難セラルルモ辯解ノ辭ナカル
ハン
宮崎縣
第一區ヲ宮崎、南那珂及束諸縣二人第二區ヲ北諸縣西諸縣一人、第
三區ヲ兒湯、東臼杵、西臼杵二人ト爲スヲ要ス
理由原案第二區十八萬六千四百十八人ニテ二人第三區十六萬五
千四百十四人ニテ一人ヲ選出スルハ人口配當上不適當ナリト云
ハサルヘカラス若シ修正案ノ如クセハ第一區二十萬三千百八十
六人ニテ二人第二區十五萬一千五百二十三人ニテ一人第三區二十
四萬四百五十一人ニテ二人ヲ選出スル割合ト爲リ大ニ配當率ノ
不平均ヲ緩和スルコトヲ得、而シテ之ヲ地勢上ヨリ見ルモ兒湯郡
ノ中心ヨリ東西臼杵ノ北端ニ到ル距離ト南那珂郡ノ南端ニ達ス
ル距離トハ寧ロ前者ノ方近クシテ之ヲ何レノ方ニ組合スルモ甲
乙ナシト云フヘク又束諸縣郡ハ西諸縣ヨリハ宮崎郡ノ方特ニ密
邇ノ關係ヲ有スルカ故ニ本修正案ハ地理的關係ニ於テモ決シテ
不自然ナル組合セニ非サルモノト認ム
北海道
第十一區及第十二區ヲ合シテ一區三人ト爲スヲ要ス
理由單ニ人口配當ノ上ヨリ見レハ敢テ原案ヲ不當ナリト云フ
ヘカラサルモ之ヲ地理的關係ユ顧ミレハ函館支廳管内ト檜山支
廳管內トハ地勢交通ノ上ニ於テ密接離ルヘカラサルモノアリテ
原案ノ如ク利害關係相疎隔セル檜山後志ヲ併合シ函館ヲ獨立シ
タルハ大缺點タルヲ免レス此故ニ人口地理ノ二點ヲ顧慮シ兩者
ヲ合シテ一區三人トスルハ已ムヲ得サル配合方法ナリト信ス現
行制ニ於テハ函館檜山兩管內ト後志管内中ノ舊壽都管內トヲ合
セテ一區ヲ形成シ最ニ明治四十五年政府提出ノ原案ニ於テモ亦
函館檜山ヲ合シテ一區トシ別ニ後志ヲ以テ獨立ノ一區ヲ形成セ
シメタリ唯現時ノ人口配當ノ上ヨリ見テ玆ニ四十五年ノ政府案
ヲ踏襲スヘカラサルカ故ニ本案ノ如ク修正スルヲ妥當ナリト認
ム此ノ如ク兩區ヲ合スルモ其境域廣大ナラス之ヲ本道ノ他ノ選
擧區ニ對比セハ地理上ノ區劃寧ロ其ノ宜シキニ適セルコトヲ看
取シ得ヘシ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=37
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038・大岡育造
○議長(大岡育造君) 松田源治君
〔松田源治君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=38
-
039・松田源治
○松田源治君 諸君、衆議院議員選擧法ノ改正案ハ、頗
ル重大ナル法案デアルコトハ、本員モ承知致シテ居ルノデア
リマス、齋藤君ハ昨日ノ委員會ニ於テ、今井君カラ小委員
會ノ請求ガアッテ、本案ヲ一括シテ或一致點ヲ見出ス爲メ
ニ、之ニ付託スル方ガ宜シイト云フ贊成ノ意見ヲ唱ヘタノ
デアリマス、然ルニ吾ミノ之ニ反對スル理由ハ、假令衆議院
議員選擧法ハ憲法附屬ノ法律ナリト雖モ、四十五年以來
ノ懸案デアル、而シテ明治四十五年ニ西園寺內闇ニ於テ、
時ノ內務大臣原氏ハ衆議院ニ提出スルニ當ッテ、其前年ノ
明治四十四年ニ、朝野ノ選擧法ニ精通シテ居ル所ノ委員
ヲ指名シマシテ、內務省ニ於テ衆議院議員選擧法改正調
査會ト云フモノヲ組織シテ、愼重審議ヲシタ績果、四十五
年ノ提案トナッタノデアリマス、其時分ハ主トシテ大選擧區
ヲ小選擧區ニ變ヘルト云フコトデアリマス、其後ニ各黨各
派ヨリ、衆議院議員選擧法ノ改正案卜云フモノハ每年々々
此議場ニ現レマシタ、先達衆議院事務局ヨリ配付サレタル
ル、修正案ノ沿革ガ書イテアル書物ニ依リマスレバ、隨分澤
山ノ修正案ガ出マシテ、其都度々々愼重ナル審議ヲ致シテ
居ルノデアリマス、又昨年ノ如キモ、憲政會カラモ、國民黨
カラモ、我黨カラモ改正案ヲ提出シマシテ、愼重審議ヲ致
シ、小委員ニ付託シマシタケレドモ、遂ニ一致點ヲ見出スコ
トガ出來ズシテ、小委員會ハ閉會シタノデアリマス、斯ノ如
ク旣ニ今日ハ、如何ニ衆議院議員選擧法ヲ改正スルカト
云フ所ノ實行ノ時代ニ移ニテ居ルノデアリマス、吾ミハ國民
ノ代表者トシテ、衆議院議員選擧法ノ改正案ハ、餘程注
意ヲシテ〓究致シテ居ルノデアリマス、徒ラニ小委員會ヲ設
ケテ、之ニ付託シマシタ所ガ、今日ノ形勢ニ於テハ、到底一
致點ヲ見出スコトガ出來ナイト云フコトハ明カナル事實デ
アリマス(拍手起ル)然ルニ拘ラズ、無益ノ小委員會ヲ設ケ
テ、而シテ愼重審議ニ名ヲ藉リテ本案ヲ延期スルト云フヤ
ウナ魂膽ハ、吾人ノ大ニ採ラザル所デアリマス(拍手起リ「ノ
ウ〓〓」ト呼フ者アリ)故ニ私ハ此小委員會ヲ設ケルト云フ
提議ニハ、絕對ニ反對致シタノデアリマス(「ソンナ事ハ餘計
ナ事ダ」「默レ」ト呼フ者アリ)齋藤君ガ之ヲ言ッタカラ言フノ
デアリマス、齋藤君ガ之ヲ言ッタカラ言フノデアリマス、而シ
テ衆議院議員選舉法改正案ノ主タル所ノ項目ハ···
〔「三木君ガ屢〓喋舌ッテ居ル」「三木默レ」「懲罰」ト
呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=39
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040・大岡育造
○議長(大岡育造君) 靜肅ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=40
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041・松田源治
○松田源治君 選擧權ノ擴張デアリマス、次ハ區制デアリ
マス、次ハ罰則デアリマス、衆議院議員選擧法ノ改正案ニ
就テ、選擧權ノ擴張ト云フコトハ是ハ時代ノ要求デアリマ
ス、立憲政治ノ究極ノ目的ハ、制限選擧ヲ撤廢シテ、普通選
擧ニ爲スト云フコトハ當然ノ話デアリマス、併シ此議場ノ模
樣ニ依リマスレバ、國民黨ノ提案モ、憲政會ノ提案モ、政府
ノ提案モ、矢張制限選擧デアリマスカラ、此所ニ於テ普通選
擧ノ可否ヲ論ズル必要ハ本員ハ無イト考ヘルノデアリマス
(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)而シテ此財產資格ヲ何所マデニ
擴張スルカ、政府案ハ三圓デアリマス、國民黨ト憲政會ハ
二圓デアリマス、是ハ主義ノ爭デハナイ、二圓ヲ以テ三圓ヨ
リモ主義上宜シイト云フコトハ言ヘナイノデアリマス、是ハ
五十步百步ノ議論デアリマス、私ハ多ク論ズル必要ハ此點
ニ於テ認メナイノデアリマス今日ノ府縣制其他ヲ斟酌シマ
シテ、府縣會議員ノ選擧權ト同一ノ擴張ノ程度ニ止メ置
クコトガ、當然ノ事ト思フノデアリマス(拍手起ル)ンレカラ
最モ重要ナル問題ハ、智識階級ニ選擧權ヲ與ヘル、智識階
級ト申シマスケレドモ、智識階級ノ總テヲ含ンデ居ルノデハ
アリマセヌ、中學校卒業以上、卽チ中學校卒業以上ノ者ニ
選擧權ヲ與ヘル、國民黨モ然リデアリマス、併シ憲政會ノハ
ソレニ制限ガ附イテ、獨立ノ生計ヲ骨ム者トナッテ居ルノデ
アリマス、是ガ政府案ニ無イ、卽チ中學校卒業以上ノ者ニ
選擧權ヲ與ヘルト云フ事ガ政府案ニ無イ、是ハ無イノガ當
然デアル、智識階級ハ中學校卒業生ノミデハアリマセヌ、他
ニ澤山アルノデアル、政治ヲ了解シ、政治上ノ判斷ヲ爲ス者
ハ、中學校ヲ卒業シタ人ヨリモ、世ノ中ノ世故ニ富ミ、經驗
ニ富ミ、政治上ノ判斷ヲ爲ス者ハ、全國ニ何十万アルカ分ラ
ナイト思ヒマス、之ヲ捨テヽ僅ニ三圓ノ範圍ニ入ラナイ所ノ
十八万、憲政會ノ案ニスレバ十万デアリマス、獨立ノ生計
ヲ營ム者ト云フ事ヲ入レマスカラ十万デアリマス、此十八万
カ十万カヲ保護スル爲メニ、特權階級ヲ設ケテ、其他ノ智
識階級ト區別シテ、不平等ナル取扱ヲスルト一云フ事ハ、自
由平等ノ世界的思想ノ熾ナル今日ニ適シナイモノデアル、
(「ソンナ間違"タ議論ハ無イ」「愚論々々」ト呼フ者アリ)諸君
ハ普通選擧ノ提案ヲセズシテ-普通選擧ノ提案ヲセズシ
テ、斯ル不徹底ナ事ヲスルカラ、特權階級ヲ保護シナケレバ
ナラヌト云フコトニ歸著スルノデアリマス、丁度英國ニ於キ
マシテ諸君等モ御承知デアリマセウ、千八百六十七年ニ「ヂ
スレリー」ガ斯ル案ヲ出シマシタ、斯ル案ヲ出シタ時分ニ、其
時ノ反對黨ノ「グラツドストーン」ハ何ト言ッテ反對シタ、是
ハ「フアンシー、フランチヤイズ」デアル、卽チ勝手ニ定メタル
選擧資格デアル、想像的ノ選擧資格デアルト言ッテ反對シ
テ、此案ハ葬ラレタノデアリマス、諸君等ノ唱ヘル選擧資格
ハ「フアンシー、フランチヤイズ」卽チ想像的ノ選擧資格、勝手
ニ定メタル選擧資格ヲ玆ニ拵ヘテ、其他ノ智識階級ヲ排斥
スルト云フ事ハ、今日ノ時代ニ決シテ容レラレナイモノト、私
ハ斷言致スノデゴザイマス(拍手起ル)總テノ歐米ノ先進國
ヲ御覽ナサイ、普通選擧ニ行カナイ前ニ、制限選擧ヲ採シテ
居ル時ニ、何所ノ國ニ斯ウ云フ制度ガゴザイマスカ(「日本ト
ハ違ヒマス」ト呼フ者アリ)小サイ國ニハアリマス、小弱國ニハア
リマス、白耳義ノ如キニハアリマスケレドモ、憲法政治ノ發
達シテ居ル强大國ニ於テ、制限選擧ヲ採ッテ居ル時分ニ、斯
ル智識階級ノ名ニ隱レテ、サウシテ不平等ナ事ヲシタ國
ハ一ツモ無イト云フコトヲ、私ハ斷言スルノデアリマス(拍手
起ル)又國民黨ノ此現役ヲ了ヘタル所ノ陸海軍ノ軍人ニ
選擧權ヲ與ヘル、是モ頗ル不徹底デアリマス、選舉權ヲ與
ヘル所ノ根本ハ、政治ヲ解スルト云フ事ガ主旨デアリマス、
政治ヲ判斷スルト云フ能力ヲ有シテ居ルト云フ事ガ、其與
ヘル標準デアリマス、兵隊ニ入シテ政治〓育ヲスルノデハアリ
マスマイ、政治〓育ハ禁ズルノデアル、現ニ現行ノ衆議院議
員選擧法ニ於キマシテモ、現役ノ陸海軍人ハ選擧權被選
擧權ヲ有シテ居ラナイノデアル、軍隊ニ入レバ政治〓育ハ致
サヌノデアル、政治〓育ヲ禁ズルノデアル、然ルニ此現役ヲ
了ッタル所ノ人ニ選擧權ヲ與ヘルト云フコトハ、卽チ此兵役
ヲ了ッタル所ノ報酬トシテ與ヘルト云フ論理ヨリ外ニ無イト
私ハ思フ、斯ル事ハ選擧權ノ根本思想ニ合ハナイノデアリ
マス-選擧權ノ根本思想ト合ハナイノデアリマス、卽チ兵
役ノ義務ヲ了レリト云フ報酬ニ、選擧權ヲ與ヘルト云フ嫌
アル事ヲスルコトハ、不徹底極マル所ノ案デアルト私ハ思フ
ノデアリマス(拍手起ル、「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)故ニ此制
限資格ヲ取ル以上ハ、ドウシテモ財產ヲ標準ニ致シ、納稅
資格ヲ標準トスルヨリ仕方ガナイノデアル、中學校以上ノ
卒業生ニ選擧權ヲ與ヘルトカ、現役ノ義務ヲ了ッタル陸海
軍ノ軍人ニ選擧權ヲ與ヘルト云フコトハ、是ハ普通選擧ガ
施行セラレル時分ニ、解決スルヨリ外仕方ガナイト私ハ申スノ
ヂアリマス(「議員倶樂部デ待ッテ居ル」「默ッテ居レ」ト呼フ者
アリ其他發言スル者多ク議場騒然)ソレカラ次ハ區制デア
リマス
[「默レ、脅迫トハ何ダ」「何ヲ言フノダ」「議員倶
樂部デ待ッテ居ルトハ何ノ事ダ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=41
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042・大岡育造
○議長(大岡育造君) 靜肅ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=42
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043・松田源治
○松田源治君 次ハ區制デアリマス
[「靜肅ニ致シマスガ、議員倶樂部ノ脅迫トハ何事デ
ス、而モ政友會ノ幹事デスゾ」「默レここ」ト呼フ者ア
リ議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=43
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044・大岡育造
○議長(大岡育造君) 靜肅ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=44
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045・松田源治
○松田源治君 吾ヒハ大選擧區ヲ小選擧區ニ變ヘルノデ
アリマズ、現行ノ大選擧區ニ變ヘタル時分ノ-小選舉區
ヲ大選擧區ニ變ヘタル時分ノ主タル理由ハ、床次內相ヨリ
モ說明ガアリマシタガ、第一ニ小選舉區ハ大人物ガ出ナイ、
大選擧區デナケレバ大人物ガ出ナイ、國家的ノ人物ガ出ナ
イ、小選擧區ノ時分ハ地方的ノ人ノミデアル、故ニ小選擧
區ヲ大選擧區ニ變ヘルノデアル、又小選舉區デハ少數代表
ガ出來ナイノデアル、多數ノ代表モ出來ナイノデアル、區ガ
小サクナルカラ投票ガ分裂サレルガ故ニ、多數ノ代表モ出
來ナイノデアル、故ニ小選擧區ヲ變ジテ、大選擧區ト爲シタ
リト云フ理由デアリマス、然ルニ果シテ小選舉區ハ大人物
ヲ選出スルニハ不都合デアリマセウカ、私ハ決シテ不都合デ
ハナイト思ヒマス、選擧區ノ大小ト云フモノハ、人物ノ大小
ニハ關係ガ無イノデアリマス、實際ノ例ヲ擧ゲテ申シマスレ
ハ、今日大臣ニナラレテ居ル人モ、議長ニナラレテ居ル人モ、
小選擧區時代カラ出テ居ル人ガ多イノデアル、内閣總理大
臣ノ原氏ハ盛岡市、卽チ小選擧區カラ出テ居ルノデアル、
(拍手起ル)床次內務大臣ハ鹿兒島ノ市カラ出テ居ルノデ
アル(拍手起ル)床次內務大臣ハ鹿兒島ノ市カラ出テ居ル
カト思ヘバ、中橋文部大臣ハ金澤ノ市カラ出テ居ルノデア
ル(拍手起ル、「野田卯太郎ハドウダ」ト呼フ者アリ)斯ノ如
ク私ハ····(「武富ハ如何」ト呼フ者アリ)選擧區ノ大小ニ依
テ、人物ノ大小ガアルト云ヲコトハ考ヘヌノデアリマス、何方
ニ致シマシテモ是ハ當然ノ事デアリマス、何方ニシテモ區別
ハ無イコトデアリマス、又小選擧區ガ少數代表ノ制度デナ
イ、是ハ大選擧區モ少數代表ノ制度デハアリマセヌ、卽チ大
選擧區ニ立ッタ少數黨ガ一人出ル場合ハ、是ハ或ハ少數
代表ガ出來マセウ、然ルニ二人以上出ル時分ニ於テハ其黨
ニ規律節制ガ無ケレバ、二人ノ勢力ヲ持シテ居ッテモ、一人ハ
落選シテ、タッタ一人シカ當選スルコトガ出來ナイノデアリマ
ス(拍手起ル)又大多數ノ黨派デ五人出ル所ノ勢力ガアリ
マシテモ、其規律節制ガ紊ルレバ、五人ハ三人ニ減シテ三人
シカ當選ガ出來ナイト一云フコトハ、數多ノ例ガ之ヲ證シテ居
ルノデアリマス(「制度ノ罪ニ非ズシテ人ノ罪ナリ」「默レ」「ノ
ウ〓〓」ト呼フアリ)卽チ第八回ニ東京市ニ於テ政友會ハ
二千百八十七人ノ有權者デ以テ三人出シテ居リマス、憲
政本黨ハ二千四百五十一人デ二人選出致シテ居リマス
是ハ二千四百五十一ト云フ多數ノ投票ヲ以テ當選セラレ
タル數ハ僅ニ二人、政友會ハンレヨリモ少數デ以テ、二千百
八十七票、デ三人當選致シテ居ルノデアリマス、又奈良縣ノ
郡部ニ於テハ、政友會ハ三千九百三十二票デ一一人出テ居
リマス、憲政本黨ハ三千九百七十五人デ一人出テ居リマ
ス、卽チ憲政本黨ノ方ガ、投票ノ數ニ於テハ多イケレドモ、
一人シカ出スコトガ出來ナイノデアリマス(「ソレハ過渡時代
ノ例ナリ」ト呼フ者アリ)又秋田縣ハ郡部ニ於キマシテハ六
千六十九票デ政友會ハ二人出シテ居リマス、憲政本黨ハ
ソレヨリモ少數、卽チ五千二百七十二票デ三人出シテ居ル
ノデアリマス、又愛媛縣ノ郡部ニ於テハ、四千七百二十票
デ以テ二人政友會ハ出シマシタ憲政本黨ハ四千六百八十
八票デ以テ三人出テ居ルノデアリマス、又十二回ノ選擧ニ
於キマシテハ、山形縣ノ郡部ニ於テ一万千四百五十六票
デ政友會ハ二人出テ居リマス、同志會ハ九千七百二十一
票デ三人出シテ居ルノデアリマス、又廣島縣ノ郡部ニ於テハ
五千七百五十九票デ政友會ハ二人出テ居リマス、同志
會ハソレヨリモ多數ノ投票、卽チ九千三百六十三票デ以
テ、一人シカ出テ居リマセヌ第十三囘ノ選擧ニ於キマシテハ
茨城縣ノ郡部ヨリ政友會ハ一万七千七百一票デ五人出
テ居リマス、憲政會ハ一万八千四十七票デ以テ四人シカ
出テ居リマセヌ、福島縣郡部ニ於テハ、一万三千四百八十
八票デ政友會ハ四人出テ居リマス、憲政會ハ一万八千八
百四十三票デ、三人シカ出テ居リマセヌ、高知縣郡部ニ於
テハ、政友會ハ六千九百五十四票デ二人出テ居リマス、憲
政會ハ六千四百五十二票デ以テ三人出テ居リマス、斯ノ
如ク大選舉區ニ於テハ、規律節制ガ紊ルレバ多數モ決シテ
多數ノ議員ヲ出スコトガ出來ヌト云フコトハ、之ヲ見テモ明
カナル、私ハ例證デアラウト思フノデアリマス(拍手起ル、「制
度ノ罪ニ非ズ政黨ニ節制ナキガ故ナリ」ト呼フ者アリ)又小
選擧區ガ少數代表ガ出來ナイ、是ハ決シテ出來ナイノデハ
ナイノデアリマス、事實ガ證シテ居リマス、今日ノ市ハ小選
擧區デアリマス、然ルニ國民黨モ出テ居リマス、憲政會モ出
テ居リマス、政友會モ出テ居レバ、無所屬モ出テ居リマス、
各〓其勢力ニ應ジテ、少數代表ト云フモノハ、完全ニ出來
テ居ルト云フコトヲ、我輩ハ斷言致スノデアル(拍手起ル)又
大正六年寺內内閣ノ下ニ行ハレタル所ノ投票デス、之ヲ各
選擧區ニ割當テマシテ、按分比例ヲ拵ヘタル表ガアリマス、
其表ニ依リマスレバ、東京市ノ第一區ハ國民黨ガ三割ノ投
票ガアリマスカラ、是ハ一番多イカラ國民黨ガ當選致シマ
ス第三區ハ憲政會ガ五割四分アリマスカラ、憲政會ガ當
選致シマス、ソレカラ第十區ハ政友會ガ四割二分アリマスカ
ラ、是ガ一番多數ノ勢力ガアリマスカラ、此所デハ政友會ガ
當選致シマス、又少數黨タル國民黨ニ於キマシテモ、福岡
縣ニ於キマシテハ、第八區デ以テ五割二分ノ勢力ヲ維持サ
レテ居リマスカラ、是ハ國民黨ガ當選致シマス、福岡縣ノ第
十四區ニ於キマシテハ、國民黨ガ四割九分ヲ占メテ居リマ
スカラ、此所デモ大多數ノ勢力ヲ占メテ居ルカラ、當選致
シマス、今日ノ國民黨ノ狀態ニ於キマシテ、福岡縣ハ一人
ノ代表者ヲ出シテ居リマスケレドモ、小選擧區ヲ施行シマ
スレバ、二人ノ代表者ヲ得ルト云フコトニナルノデアリマス、
其他一々朗讀スルト繁雜ニナリマスカラ、議長ノ許可ヲ得
テ是ハ速記錄ニ添付致スコトニ致シマス、此勢力ノ分布シ
タルモノヲ見マシテ之ヲ合計致シマスルト、如何ナル結果ガ
出マスカト申シマスレバ今回改正シタル所ノ、小選舉區ニ依
リマスレバ、憲政會ガ百六十五人出ルノデアリマス、政友會ガ
百八十六人出マス、國民黨ガ三十七人出ルノデアリマス、無所
屬ガ七十一人出ルノデアリマス其他大垣市及北海道、不
明ナル所ガ二箇所アリマシテ、勢力ノ均衡ヲ得テ居ル所ガ
三箇所アリマスカラ、不明が五人ニナリマス、斯ノ如ク國民
黨モ無所屬モ其代表者ヲ出スコトガ出來、政友會ノ如キハ
百八十六人、今ニ較ブレバ僅カノ數ガ增シテ居リマスケレド
モ、憲政會ハドウデアリマスカ、憲政會ハ百六十五人ヲ選出
スルヤウナ、利益ノアル所ノ選擧區制ニナッテ居ルデハアリマセヌ
カ(拍手起ル)斯ノ如ク小選擧區ヲ以テ少數代表ガ出來ナ
イト云フヤウナコトハ事〓貝ガ否認シテ居ルノデアル(笑聲起ル)
此事實ニ依リマスレバ、小選擧區ハ大選擧區以上ニ、少數
代表ト云フコトガ私ハ出來ル制度ナリト申上ゲテ差支ナイ
ト思ヒマス(拍手起ル)唯〓彼所ニ二十票、彼ノ隅ニ百票、彼
ノ所ニ五十票ト云ノテ全縣下デ掻集メテ、何等ノ根抵、何
等ノ勢力ノ無イ者ヲ出ス必要ハ無イノデアリマス、斯ル少
數代表ハ憲政治下ニ於テ、私ハ腐敗ノ根源デアルト云フコ
トハ斷言致スノデアリマス、斯ノ如ク少數代表ハ小選擧區
ニ於テモ出來ルノデアリマス、又多數代表ノ如キハ、小選擧
區ニ於テハ完全デアリマス、一區一人ガ原則デアリマスカ
ラ、多數黨ガ勝ツノデアル、投票ノ分列モ無イノデアリマス、
故ニ小選擧區ハ大選舉區ニ比較スレバ、多數代表ニ就テ
ハ、最モ完全ナル制度ト申シテ私ハ差支ナイト思フノデアリ
マス、(「多數代表ニ完全デアレバ少數代表ニ不完全ナルコ
トハ分リ切ッテ居ル」「三木默レ」ト呼フ者アリ)ンレデ先程齋
藤君ガ比例代表ノ制度ヲ唱ヘマシタ、成程比例代表ノ制
度ハ、少數者ハ其小數ニ應ジテ當選セシムルコトガ出來マ
ス、多數黨モ比例シテ其多數ガ當選スルコトガ出來マスケ
レドモ、之ニハ大ナル缺點ガアル、今日世界各國ニ於テハ
比例代表ヲ採リ掛ッテ居ル傾向ガアルト云フコトハ齋藤君
ハ述ベラレマシタケレドモ、是ハ大ナル間違デアリマス(「知ラ
ナイノダ」ト呼フ者アリ)英國ニ於キマシテハ、昨年選擧法ノ
改正ニ於テ、比例代表ノ制度ヲ採ラントシテ、選擧法改正
案ノ二十條ニ之ヲ規定シテ、「グレートブリテン」カラ三名以
上七名以下ノ選擧區ヲ拵ヘテ、百人ダケ比例代表ノ制度
ニ於テ、議員ヲ選出セント云フコトヲ企テタノデアリマス、而
シテ此爲メニ勅命ニ依リ、委員會ヲ組織スベシト云フコトニ
ナッタノデアリマス、然ルニ委員會ガ組織サレテ、其委員會デ
ハドウナリマシタ、昨年五月十二日ニ於テ比例代表ノ制度
ハ廢棄サレタ、今日比例代表ノ制度ハ、英國ニ於テ採用シ
ナイト云フコトニナッタデハアリマセヌカ、ソレハ如何ナル理由
デ廢棄サレタカト申シマスレバ、少數代表ト云フコトハ、立
憲政治ニ於テハ尊敬シナケレバナラヌ事デアルケレドモ、ソレ
以上ニ注意シナケレバナラヌ事ガアルノデアル、卽チ如何ナ
ル政府ニ如何ナル政治ヲ爲サセルカト云フコトハ、立憲政
治ニ於テ、少數代表以上ニ考ヘナケレバナラヌ事デアル、卽
チ大多數ノ黨派ニ依テ、鞏固ナル政黨ノ地磐ニ依テ維持サ
レタル政黨内閣デナケレバ、大ナル政策ヲ國家ノ爲メニ、徹
底的ニ斷行スルコトガ出來ナイト云フコトニナッテ居リマス
(拍手起ル)是ガ立憲政治ニ於テハ、最モ注意シナケレバナ
ラヌ所デアリマス、少數代表ト云フ事モ餘程注意シナケレバ
ナラヌケレドモ、少數代表以上ニ如何ナル政府ニ如何ナル
政治ヲサセルカト云フコトハ、最モ注意シナケレバナラヌノデ
アリマス、日本ニ於キマシテモ近クニ例ガアリマス、官僚内閣
ノ爲シタル政治ノ迹ヲ見、政黨內閣ノ爲シタル政治ノ迹ヲ
見タナラバ、此事ハ最モ明瞭ニ判斷サレルコトガ出來ルト思
フ(拍手起ル)現内閣ハ申スマデモナク、政友會ナル多數黨
ニ維持サレテ居ル所ノ政黨內閣デアリマス、就任以來日未
ダ淺キニ拘ラズ、反對黨ハ如何ナル批評ガアルカハ知リマセ
ヌケレドモ(「君等ノ言フコトデナイ」ト呼フ者アリ)〓育ヲ改
善シテ、高等諸學校ノ大擴張ナル政策ヲ徹底的ニ爲シタデ
ハアリマセヌカ、鐵道問題ニ就テモ、交通機關ヲ速成スル大
ナル政策ヲ徹底的ニ斷行シタデハアリマセヌカ(拍手起ル)
官僚內閣ノ如キ時代ニ於テ、假令少數代表ガ完全ニ出來
テモ、左顧右眄何等ノ事ヲスルコトガ出來ナイト云フコト
ハ、立憲治下ニ於ケル所ノ大ナル缺點デアルト私ハ考ヘルノ
デアリマス(拍手起ル)斯ノ如ク少數代表ト云フコトモ注意
シナケレバナラヌケレドモ、ソレ以上ニ立憲政治ニ於テ注意
スベキ點ガアルト云フコトデ、比例代表ノ制度ハ今日ハ廢
棄シテ、何所ノ立憲國ニ於キマシテモ-小弱國ヲ除イテ
何所ノ立憲國ニ於キマシテモ、今日ハ小選擧區ヲ以テ世界
共通ノ制度ト致シテ居ルデハアリマセヌカ(拍手起ル、「山梨
縣ノ辯解ヲ願ヒタイ」「默レ」ト呼フ者アリ)大選舉區單記ト
云フコトハタッタ日本一箇所シカ無イ、而シテ此大選擧區
單記デアル故ニ、私ガ申シタヤウニ、少數ヲ比例シテ其少數
通リニ代表スルコトガ出來ズ、多數ヲ其多數ニ應ジテ代表
スルコトガ出來ナイ、世界ニ於ケル最惡ナル制度ヲ以テ、區
藤君ガ完全ナル制度デアルト言フコトハ、私ハ何事デアルカ
ト申サナケレバナラヌ(拍手起ル)ソレカラ小區選擧デアル
ト、賄賂トカ暴行脅迫ガ盛ニナル、是モ大變間違ック議論デ
アリマス、買收ノ如キハ大選舉區ニナッテ非常ニ盛ンニナッテ
來テ居ル、小選擧區ノ時代ハドウデアリマス、今日ト比較シ
タ時分ニハ物價ガ廉イデアリマセウ、物價ガ廉イノデアリマ
セウケレドモ、選擧費用ハ小選擧ノ場合ハ最モ少額デアッテ、
今日ノ如ク多額ニナッタノハ、大選擧區ニナッテカラデアルト
申上ゲル(「其通リ」ト呼ヒ拍手スル者アリ)或者ハ一万、或
者ハ二万、或者ハ三万、或者ハ五万ノ選擧費ヲ使ッテ當選
スルコトガアルデハアリマセヌカ(「例ヘバ穴水君ノ如シ」「止
セ」「默レ」ト呼フ者アリ)又之ニ就テハ大選擧區ニ於テ選舉
區ガ腐敗シタト云フコトハ、茲ニ統計ヲ以テ立證スルコトガ
出來ルノデアリマス、卽チ二十三年ノ選擧ニ於キマシテ··
〔此時發言スル者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=45
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046・大岡育造
○議長(大岡育造君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=46
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047・松田源治
○松田源治君 選擧法ノ違反ニ依テ處罰サレタ者ハ、僅
ニ二百八十六人デアリマス、第二囘ノ選擧ニ於キマシテハ
三百二十三人デアリマス、第三囘、四回ヲ合併シマシテ、是
ハ明治二十七年ニ二度選擧ガアリマシタカラ、之ヲ合併シ
テ千百五十三人デアリマス、第五回、第六囘ハ、之ヲ合併
シテ千二十九人デアリマス、然ルニ第七囘選擧カラ大選擧
區ニナッテ、此數ハ一躍シテ千八百六十一人ニナリ、八回ニ
ハ千九百九十八人ニナリ、九囘ハ僅カデアリマス、十回ハ千
九百二十一人ニナリ、十一回ハ三千九百五十人ニナリ、十
二回ハ八千三百三十二人ニナリ、十三囘ハ二万三千三百
七十七人ニナッテ居ルデハアリマセヌカ、是ハ檢擧ニ付テ寛
嚴ト云フコトハアリマセウ、私ハ此統計ヲ以テ絕對的ノ眞
理トハ言ヒマセヌケレドモ、大選擧區ニナルト云フト、成金
トカ、或ハ選擧區ノ地盤ヲ持ッテ居ラナイ人ガ、先程申シタ
ヤウニ其所デ百票二百票、此所デ三百票ト云フコトデ、全
縣下デ投票ヲ掻集メテ田選スル爲メニ、買收行爲ト云フ者
ガ盛ンニ行ハレルノデアリマス、其爲メニ選擧ノ地盤テ持ッテ
居ル候補者ハ非常ニ迷感ヲスル、大選擧區デアリマスト、假
令定員ガ十人デモ、其中ニサウ云フ候補者ガ一人出テ-
一人出テモ全體十人ノ候補者ガ影響ヲ受ケルノデアリマス、
故ニ大選擧區ニナッテ以來買收行爲ガ盛ンニナッタト云フコ
トハ、實ニ私ハ顯著ナル事例デアルト申上ゲテ差支ナイノデ
アリマス、又暴行脅迫ノ事デアリマスガ、是ハ今囘ノ選擧法
ハ舊小選擧區制トハ違ッテ居ル、舊小選擧區ノ場合ハ記名
投票デアリマス、而シテ二人以上ノ場合ハ連記デアリマス、
今囘ノ小選舉區ハ無記名デアリマス、單記デアリマス、而シ
テ大選擧區ト同ジク郡別ケニ投票ヲ開クノデアリマス、故ニ
暴行脅迫ハ今囘ノ小選擧區ニナリマシテモ、以前ノ舊法時
脅ノ小選擧區トハ、全ク其相違ヲ生ズルデアラウト思フノデ
アリマス、卽チ此以前ノ小選擧區ニ於テハ、暴行脅迫ガ行
ハレタト云フコトデ、今囘改正シタ所ノ小選擧區ノ矢張暴
行脅迫ガ行ハレルト云フコトハ、記名投票ト無記名投票ノ、
區別ヲ爲サミル所ノ誤ニ陷ッテ居ルモノト私ハ考ヘルノデア
リマス、又大選擧區ガ小選擧區ニ變リマスレバ、各候補擧
ハ地區ノ關係ガ狹少ニナリマスカラシテ、政見ヲ選擧區民
ニ徹底スルコトモ出來マス、立憲政治ノ爲メニハ、非常ナル
發達ヲ期スルコトガ出來ルノデアリマス、又選擧取締ニ於
キマシテモ、無競爭ナル選擧區ガ澤山出來マスカラシテ、他
ニ力ヲ用キルコトガ出來マシテ、選擧取締モ完全ニ徹底的
ニ私ハ行フコトガ出來ルト考ヘルノデアリマス、又選擧干涉
ノ點ハ如何デアルカト申シマスレバ、選擧干涉ノ點ハ、小選
擧區ニナレバ政黨ノ地盤ガ鞏固ニナル、大選舉見タヤウナ
散漫ナモノデハアリマセヌ、薄弱ナモノデハアリマセヌ、故
事實ヲ以テ例證致シマスレバ、明治二十五年ノ小選擧區
ノ時代ニ於テ大干涉ヲヤッタケレドモ、政府黨ガ負ケテ民黨
ガ萬歲デアッタデハアリマセヌカ、然ルニ大正四年ノ選擧
干涉ニ於キマシテハ、大選舉區ノ下ニ行ハレタモノデアリマ
スカラシテ、政府黨ハ一躍シテ倍數ニナリ、在野黨ハ半減シ
タデハアリマセヌカ(「十三回ハドウダ」ト呼フ者アリ)斯ノ如
ク小選擧區ハ政黨ノ地盤ヲ鞏固ニシ、無競爭ナル選擧區
ヲ各地ニ生ズルノデアリマス、例ヲ申シマスレバ、第一回ノ
時分ハ十箇所出來テ居リマス、第二回ハ九箇所出來テ居
リマス、第三囘ノ時ハ三十七箇所出來テ居リマス、第四回
ノ時ハ三十八箇所出來テ居リマス、第五囘ノ時ハ五十八
箇所出來テ居リマス、第六回ノ時ハ百十一箇所出來テ居
ルノデアリマスカラ、世ノ所謂大人物卽チ國家有用ノ材ハ、
其過半數ガ無競争デ當選ガ出來ルト云フコトトハ、國家ノ
爲メニ私ハ慶賀ニ堪ヘザル次第デアルト思フノデアリマス
(拍手起ル)又補缺選舉ノ如キニ至リマシテハ、大選擧區ハ
弊害ガアルト云フコトヲ憲政會ノ諸君モ認メテ居ル、全縣
下ヲ騒ガシ、無益ノ競爭ヲ爲シ、實ニ繁雜極マル所ノ制度
デアリマス、故ニ憲政會ハ不徹底ナル改正案ヲ出シテ居ル
デハアリマセヌカ、大選舉ノ場合ハ、同一ノ選擧區ニ於キマ
シテ三分ノ一以上ノ關員ガ生ジナイ場合ハ、補閱選擧ヲ行
ハナイト云フコトノ規定ヲ設ケテ居ルデハアリマセヌカ、私ハ
是ハ實ニ不徹底ナル規定デアルト思フノデアリマス、立憲政
治ニ於テ關員ガアレバ、直チニ選擧スルコトハ國家ノ要求デ
アリマス、然ルニ同一選舉區ニ於テ、三分ノ一以上ニ達セ
ズンバ補闕選擧ヲ行ハナイ、東京市ノ如キハ十五人、是ガ
四票人員ヲ生ジマシテモ、五名以上ニナラナケレバ補關選
擧ヲ行ハナイト云フコトニナレバ、立憲治下カラ見タナラバ、
頗ル不徹底ナル制度ト申サナケレバナラヌノデアリマス、又
東京市ノミデハナイ、諸方ノ選擧區ニ關員ガ生ジマシテ、三
分ノ一ニ達シナケレバ選舉ヲ行ハヌト云フコトニナッタナラバ、
百二三十人ノ闕員ガ生ジテモ選擧ヲ行ハナイト云フコトノ、
大缺點ヲ生ズルデハアリマセヌカ、斯ル事ハ杞憂ノ事デアリ
マセウ、併シ法律ヲ規定スル以上ハ、其事モ考ヘナケレバナ
ラヌ、斯ル不徹底ナル所ノ奇妙ナル所ノ規定ヲ設ケテ、大選
擧區ノ補關選舉ノ弊害ヲ彌縫スルヨリモ、其論ヲ擲ヲテ、吾
吾ノ小選擧區ニ降參シ夕方ガ、餘程男ラシイ態度テアルト
私ハ考ヘルノデアリマス(拍手起ル)又小選擧ニナリマシテ
ハ、同志相爭ヒ、同志相侵スト云フ事ハアリマセヌケレドモヽ
今日ノ大選舉區ニ於テハ、同志相爭ヒ、同志相侵シ、選舉
ノ時分ニ於テハ、同志ノ間ニ於テ激烈ナル競爭ヲ生ズルノ
デアリマス、是ガ立憲治下ニ於テ賞スベキ事デアリマスカ、斯
ル事ヲシテ、決シテ立憲政治ハ圓滿ニ發達ヲ期スルコトハ
出來ナイト私ハ思フノデアリマス、政黨ノ發達ヲ爲シ、政黨
ノ地盤ヲ鞏固ニスルニ就テハ、今日世界共通ノ小選擧區ヲ
採ルヨリ外仕方ガナイト申上ゲルノデアリマス(拍手起ル)ン
レカラ別表ノ事デアリマス、別表ノ事ハ是ヨリ後ニ我黨ノ武
藤君ガ述ベラレマスカラ、武藤君ニ讓リマス(「山梨縣ダケヤリ
給へ」ト呼フ者アリ)而シテ武藤君ノ述ベタル事ハ理由ノ無
イト云フコトハ、其時ニ明瞭ニナルデアラウト田心フノデアリマ
ス、併シ郡ヲ割カズ町村ヲ割ラズシテ小選擧區ヲ作製スル
時分ニ於キマシテハ、今囘政府ガ拵ヘタ案ヨリ、誰ガヤッテモ
私ハ仕方ガナイト思フ、或ハ地勢ヲ考ヘ、或ハ交通ノ狀態ヲ
考へ、或ハ舊選擧制時代ノ狀態ヲ考へ、國ノ歴史ヲ考へ人情
ヲ考ヘタナラバ、此所ノ人口ハ此人口ニ較ベテ五万ノ差ガア
ル、此所ノ人口ハ之ニ較ベテ六万ノ差ガアルト云フコトハ、當
然出來ル次第デアルト考ヘマス、諸君決シテ選擧法ニハ、多
數黨ガ何時マデモ多數黨デ居レト容シテ居ラヌ、少數黨ハ
何時マデモ少數黨デアルト云フ規定ハ無イ、是カラ立憲政
治ガ盛ンニナリマスレバ、政策ニ依テ與論ガ動クノデアリマ
ス、政策ニ依テ輿論ガ動クノデアリマスカラ、今日ノ多數黨
ガ、決シテ多數黨ヲ永久ニ維持スルコトガ出來ナイノデアリ
マス、今日ノ少數黨ハ復タ輿論ノ歡迎ヲ受ケレバ、多數黨ニ
ナルコトモ出來ルノデアリマス、昨年ノ英國ノ選擧ハドウデ
アリマス、戰爭ヲ徹底的ニ遂行スルト云フコトヲ唱ヘタ所ノ
政黨ハ、大多數デ當選シタデハアリマセヌカ、不徹底ニ平和
論唱ヘタル所ノ政黨ハ、慘メナル目ニ遭シタデハアリマセヌ
カ「アスキス」黨ノ如キ、百何人カラ二十六人ニ減ッタデハア
リマセヌカ、而シテ「アスキス」氏モ落選シ、院內幹事モ落選
シ、前大臣モ落選シ、二十六人ハ、之ヲ指導スル人ガ無イ
所ノ團體ニナッタデハアリマセヌカ、而シテ政府黨ハ反對黨
ヲ超過スルコト二百六十二人、今マデ無イ所ノ絕對的ノ多
數ヲ占メタデハアリマセヌカ、立憲政治ガ段々發達シマスト、
政策ニ依テ國民ノ輿論ノ關係ハ違フノデアリマス、諸君等
ガ今マデノ歷史ヲ以テ-四十五年以來歷史ヲ以テ、小選
擧區ニ反對スルト云フコトハ、其抱負ノ小、其意氣ノ小、共
ニ立憲政治ヲ談ズルニ私ハ足ラナイト思フノデアリマス(拍
手起ル)ソレデ小選擧區ハ政黨ノ便利ヲ圖リ、政黨ノ地盤
ヲ鞏固ニスル所ノ案デアリマス、政黨ハ今マデノ感情ヲ棄テ
テ今マデノ歷史ヲ棄テ、此小選舉區ヲ維持サレテ、而シテ
日本ノ政治ヲ改善シ、日本ノ政黨政治ノ發達ヲ期シ、而シ
テ兩憲交と朝ニ立ッテ、大ナル政策ヲ徹底的ニ行フト云フ
コトハ、是ハ國家ニ盡ス所ノ義務デアルト云フコトヲ私ハ申
上ゲルノデアリマス、終ニ臨ミマシテ、齋藤君ハ四十五年ノ
貴族院ノ協議會ノ速記錄ヲ朗讀致シマシテ、貴族院諸公
ノ同情ニ訴ヘマシタガ、今日ハ四十五年ニ小選舉ヲ行ハン
トシタ時代ヨリ、時代ガ餘程進步シタ、必ズヤ貴族院諸公
ハ憲政ノ進步ニ利益アル所ノ小選擧區制ヲ、歡迎スルコ
トヽ私ハ考ヘルノデアリマス(拍手起ル)之ヲ貴族院ニ迫ッテ
マデ貴族院ニ救濟シテ呉レト云フヤウナコトヲ言フノハ、衆
議院ノ權威ヲ失墜致スコトヽ吾ミハ思ウテ居ルノデアリマ
ス、衆議院ガ憐ヲ貴族院ニ乞ヒ、衆議院ガ同情ヲ貴族院ニ
乞フニ至ッテハ、將來ノ立憲政治ハ如何ニナルデアリマセウカ、
實ニ私ハ憲法政治ノ上ヨリ〓嘆ニ堪ヘヌ次第デアリマス(拍
手起ル)ドウカ衆議院ノ權威ヲ發揮シ、政黨政治ノ完全リ
期シ、立憲政治ノ發達ヲ期スルナラバ、諸君ハ吾こノ如ク小
選擧區ニ贊成シテ、此小選擧區制ヲ絕對ノ大多數ヲ以テ
通過セラレンコトヲ、私ハ希望スルノデゴザイマス
〔拍手起ル〕
〔參照〕
各派地盤一覽
小選擧區制ニ基ケル
政府ノ選擧法改正案ニ依リ小選擧區制ニ基ケル別表ニ就キ各
派ノ各選擧區ニ於ケル地盤關係ヲ見ルニ左ノ如シ尤モ左表ハ
前囘總選擧當時ニ於ケル各派候補ノ得票ヲ各選擧區每ニ合計
シ百分率ニ依ツテ各勢力ノ分布ヲ算出シタルモノニテ今囘ノ改
正案通過後選擧權擴張ノ結果當然有權者ヲ增加スル事トナルヘ
ク各派カ此新有權者ノ投票ヲ前囘總選擧當時ト同樣ノ標準ヲ以
テ獲得スルヲ得ルヤ否ヤハ疑問ナルモ大體各派ノ勢力ハ此標準
ニ依リ分布サルヘキモノト見ルヘシ(表中政ハ政友會、憲ハ憲政
會、國ハ國民黨、中ハ新正會、無所屬等ノ中立派、各政派左側ノ數字
ハ各選擧區ニ於ケル各派勢力ノ百分率ヲ示セルモノナリ)
東京府(定員二十五名)
員各派勢力員各派勢力
選擧區數選擧區數
政憲國中政憲國中
一÷二七등二三三元등三
五四二一九九〓五0
七五三一區區區區區一三六五二五三三三-一一
元六五六〇九十十八六四二一一三三一一四八一五
一二四五三九一九四三
六二區區區區區區區區
九三三六六四二二七七
十一區云三九一〇二七九五五11
十三區三五三四七I六四二二五四四六11
十五區1十十七〇三〇
一七〇三〇1二11
京都府(定員九名)
一二西元二三三五二一三三三二七二七
區區一區區區
三二七二I八六四二一四四六1三
七五四五四二,三一三五〇1元
區區
一八〓四
大阪府(定員二十名)
區三八二七二1六
三一三九三元
1六二九六五二三二1五六
一三四二
五區區區區六!四二十八六四二區區區區區一八四四一〇二
七ニ三四五二三一一三六四四西五六八
九--一只六
一一五〇三四五元
十一區三〇六〇七三
神奈川縣(定員十名)
一三5층六〇11ー一〇六八1三
三區區一四五二七一九里1三九
1六四二區區區
五九五50-三二九1五八
七區區
一四四-五五
兵sesquichlorati.入れ)
三二九三三五三一四七〓11
區區區一1八〇四大一五六八三三
九七五三一-四七六七七三四三二五一
三六六四十十十八六四二區區區區區區區-三三三八三四一
一三五三
十九七〇三五三三四一〇ニ三〇六五
二一八〓五〇四八五〇一
一大四二11
十三區-二六六三一〇二四六五四
長崎縣(定員九名)
一區-三〇三1三九三四六四九1
三二四〇區區區二一四二1四二
區五四五一六四二一六
五區六八三〇二一八一九1|
七區-三六1六四
新潟縣(定員十七名)
-五五四五1西五九七1
三一區區一三五三九1八四二1
二六
五區二五.三、三九八1四三五九五八三1
十十八六四二區區區區區區二一一二一-
七二三一六六三-二五八1-
區區三六四夫1
九六四11二
十一區五二四〇八1二五四二三1
十三區一五七四三
埼玉縣(定員十名)
-區二四五三1六二二七五三-1
三區二七六二四11區區區ニ四四五四1二
六四
五區九八1-一四五九--
群馬縣(定員九名)
一區--一〇〇六〇四〇11
三區二六九三1一八六四二區區區二ー三九二六1三五
五區二三五三八1毛一三九四1四七
千葉縣(定員十一名)
區-三四三五四二七五二一〇三〇
區四四三三一二四七一七八
八六四二區區區區二二一一三三二三
九七五三一二六大七二三七四一二〇
圖區區〓〓|一一四〇三七-三
七三
-三五四八
茨城縣(定員十一名)
五六1四四五四三-一六
六九元1二一五四四六1
區區區二
九七五三一二九六七1四十八六四二區區區區區五一1二
三四九七
區一四三五〇1七四二1九九
區--六九1二
一三四八三二九
栃木縣(定員九名)
-五五四五11一四三大1四
三一區區區區區二九
一三〇三九1三六四二ニ三五三六1
區-三三九1三〇一一九五八-三
七五
區二六〇三五H五
奈良縣(定員五名)
一區-四九三-二區一三八一三四九1
三區二五二八四七四區一四〇三七三!
五區六〇三四六1
三重縣(定員十一名)
-四五1五五-三三1
三一七一六
區區區一二三九五六三八七〇
五二三五五〇五一〇十八六四二區區區區區量四七三一二六八五七
一〇四三三三四드四八四三
九七區區
-二五四五二一-四五五三
愛知縣(定員十七名)
區三三五六四-三二四八六七
區三三六五二1ニ四七四六
七五三一二七七一
區一五量五三三八五五1
十十八六四二區區區區區區
七四二六-1六四三四1
區區
九三八五九!三四五1一二一
十一區ニ四四三五二ニ-二五六四六一
十三區一四七一五三七-
靜岡縣(定員十三名)
區七〇1三〇--三三〇三八
一四四三八1一八二七一
九七五三一八四三五十八六四二區區區區區三六四三1四1一三
區區區區四七四三-1四九一八
ニニ四〇五
二-三〇二八ニ五三四〇七四
山梨縣(定員五名)
一區ー三五1七五二區二三七四八1一五
三區元六四1九四區一四〇三四1二六
滋賀縣(定員六名)
一區六명칭1四四一三二五츠二
三區四五二三四六四二區區區一一天六四九
五區二六八一六五〇一〓-一一三七
岐阜縣(定員十名)
呉1五四-(不明)
區區區三〇四八三二九八六四二ニ一二六量元
區區區區九四
九七五三一一六四六三三一三五二一
區五〇三五ニ三一二五六五ニ八八
區ー九九
長野縣(定員十三名)
一六五三五11-三七〓1-
八二
七三二三三一六三二
九七五三一七二二五五四三三三
區區區區區區十十八六四二區區區區區區一
二五三三五四三二三九二六三四
八一九二三1
四七四八-五四三三
+一三四三三二五二五五四一四〇
宮城脇(定員七名)
一區五四四六1-四二四九九
三區五八三七1五六四二區區區三五五五1一〇
五區六〇三三1毛六九-四
一七
七區六〇三九1
福島縣(定員十一名)
四〇五七-四九二四九
三一區區二ー
三九五四四一등三八三二
區三七八天一五六二十八六四二區區區區區ニ五五四七一四
九七五區三三三二三四五四二九二
區-二五
五五二八元六〇一一
巖手縣(定員七名)
區010:1一七三三1
三一區三四11三二
六六六四二區區區츠三六1
七五區五三四三1四-四七四二1二
區四四二九二七
靑森縣(定員七名)
區一七四七1一九ー六九三〇一一
三一區
六六三四11六四二區區區一四六五四11
五區七二二八11九三七1-
七區五五四五11
山形縣(定員九名)
-區一六四1二六五五四五1-
三區二七二三五一ニ六四二區區區---七三四二三
五區三三九1三三六七二云二1
秋田縣(定員八名)
-區六二三三五一五四○九1
三區四三五四三-六四二區區區一五0三三七-
五區二九六四七-六五三四1
七區二三五四三1
福井縣(定員六名)
一區三三1六七二區二三四四四1三
三區一八八八1四四區一二八四六1〓
五區三四七1五〇
石川縣(定員六名)
一區一五四四六11ニ區一八〇二〇11
三區-七〇三〇1:四區ニ四九프11
五區三六六四1-
富山縣(定員七名)
一區一七三二七I-ニ區一六六三四-1
三區-二七五三1ㅎ四區ー五〇四四!六
五區ニ吾四四1ニ六區-五二四1三五
鳥取縣(定員四名)
一區一二五三二二八三五二區一四六五三1ニ
三區四〇五1九四區-ニ三七1六
島根縣(定員七名)
一區一1六二1三八一六三1八
三區ニ三五七1三六四二區區區六七三三-1
五區一七〇三〇一1七-八三
岡山縣(定員十名)
一六三三七一ニ七三三
二四ー五〇三五一四二1九二四
七五三一區區區區八六四二區區區區
二一八六三一七四二四
二六一〇八四六100三三四六
廣島縣(定員十四名)
一四五九1二-四C八
-一〇〇四七一
四二
九七五三一一五六一三三-七四七三一五五
區區區區區區區區區區區區二一一二一--五五
ニ六五三三十八六六二
四八一〇〔四二--〇二
〇六
十一二三九三四二五十二-二三六六
十三區三三六-六〇
山口縣(定員九名)
一三四六六一二五九六二
四四四四三八五三〇三四
八六四二區區區區二一
八五
九七五三一區區區區區三三五八五五六六一〇六
-二八一六四五二一九三二六七
二二九ニ六七
和歌山縣(定員六名)
區-三五三五二1二一七六五四五
三一區區
區ニ七四四一八四四ニ三〓四二八
德島縣(定員六名)
區一三八四二1二〇三四1五九五七
五三一區六六三三六四二區區區一一一二八1六七
區一一三四1四九毛三
一八七
香川縣(定員七名)
區一四四五六I二五四三四七三四
五三一區-三六1六三六四二區區區一一一一二1四八
區二四七八ー四五四六五-三
愛媛縣(定員九名)
一四六1五四ニ五六四〇四1
三一區區區區區一
ニ五三五西1六四二五四三四三
-五九三九ニ1一五八三〇三1
七五區區一
四〇二三九1
高知縣(定員六名)
五四四六1四二區二四六五四11
五三一區區區一五九四一11區一五四三六1
三八六二1-
福岡縣(定員十九名)
區一-一〇〇一1四七1五三
三一區五三三〇二一五六1二七三
五區三六三二二七三四四二四
十十八六四二區區區區區區區一九二九至-
七區七四一二
九區五四三九三六三二〇三五
四一六四一一六一一五四四四八四四
十一區一六〇三三
十三區八六一〇六四二一四〇二四九1
十十一一六〇天一三
十五區六九三區
十七區五六364-5722-5638九三四
一區-三八六二1-一四三五七11
三區三五六五11六四二區區區一六〇四〇11
五區六〇四〇11一五二四八11
七區二四六五四1
佐賀縣(定員六名)
一區-六三三七二區一西八〇1六
三區二七六六1七四區二五四四六1
五區三三三八1二九
熊本縣(定員十名)
一-四四五六-二一三七六三1-
三區區一三九六1-區區區二三七六三11
六四五三四七1-
區二三三六七1二
七五一
區三六六四
宮崎縣(定員五名)
一區二四四九四七二區ニ六〇一1三九
三區一七四九1三五
鹿兒島縣(定員十一名)
一區一八11一九一五四11四六
三區二七二11二八七〇11三〇
八六四二區區區區七六1-西
五區ニ七七-三
七區二七五八七一六二11三八
沖繩縣(定員五名)
一區二六二1.六三二ニ二〇七1六〇
三八四區區一二八三五〇
三區二七三五-
北海道(定員十六名)
-五四四六五五四四--
一一二五1四三
區區區四九1五三二
七五三一八六四二區區區區六六三四-
一(不明)
區二六五三四1二六四三六-1
九區二四八五二11十區一七〇SO-1
十一區四〇六〇十二區ニ三六四二三
卽チ右ノ表ニヨレハ一區一人ノ選擧區ニ於イテ政憲兩派對立ノ
場合ハ百分ノ五十パーセント以上ノ得票ヲ以テ當選スル者ト爲
スヘク隨ツテ三派鼎立ノ場合ハ三十三パーセント以上四派以上
二十五パーセント以上ノ得票ヲ要スヘク旁右表ニヨリ大體小選
擧區制ニ基ケル各派勢力ノ消長ヲトスルヲ得ヘキカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=47
-
048・大岡育造
○議長(大岡育造君) 西村丹治郞君
〔西村丹治郞君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=48
-
049・西村丹治郎
○西村丹治郞君 選擧區擴張問題ニ就キマシテハ、齋藤
君ヨリシテ詳シク御辯論ガゴザイマシタカラ、私ハ此問題ニ
對シテハ甚多クヲ語ラズ、尙ホ吾と同志人ガ後ヨリ出テ、此
問題ニ對シテハ十分ニ辯論ヲ致スト云フコトデアリマスカ
ラ、此問題ニハ多ク觸レズシテ、私ノ最モ重要視スル所ノ別
表ノ問題、卽チ區制ノ大小ト云フ問題ニ就テ、十分ノ意見
ヲ述ベテ見タイト思フノデアリマス
〔議長大岡育造君退席副議長濱田國松君議長席
ニ著ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=49
-
050・西村丹治郎
○西村丹治郞君 併ナガラ極ク簡單ニ私ハ、唯〓松田君
ノ御述ニナッタ所ノ選擧權擴張ノ吾黨提案ニ對スル御批評
ニ對シテ、一言御答シテ置キタイト思フノデアリマス、吾黨
提案ノ中學程度以上ノ者ニ選擧權ヲ與ヘルト云フコトハ、
不徹底ナリト云フコトヲ論斷サレタノデアリマス、中學校卒
業程度以外ノ者ニモ、智識ヲ有ッテ居ル者ニ與ヘヌト云フ
コトハ、不公平ヲ缺クモノデアル、故ニ不徹底極マルト云フコ
トヲ論斷致サレタノデアリマスガ、然ラバ私ハ松田君ニ反問
セン、政府ノ提案タル直接國稅三圓ニ限定サレタノハ、何カ
其議論ノ根底ガアルカト云ヘバ、內務大臣ノ申サレタ如ク、
恆產アル者恆心アリト云フ點カラシテ、三圓ト限定致シタ
ノデアルト云フコトヲ申サレク、然ラバ諸君、世間ニハ恆產
ナシト雖モ恆心ノアル者ハ許多アルト云フコトハ、諸君ガ御
認ニナルト思フ、然ラバ此點ニ就テハ、松田君ノ御賛成ニナ
ル政府案モ、斷ジテ徹底的ト申スコトハ出來ナイノデアル、
ソレ故ニ私ハ吾黨ノ提案ハ徹底的トハ申シマセヌガ、併ナガ
ラ政府案モ徹底的デナイノデアル、今日モ尙ホ松田君ノ御
話ノ中學卒業程度以上ノ者ニ選擧權ヲ與ヘタ所ガ、僅ニ
十万人内外ニ過ギナイノデアル、ソレ故ニ斯ル少數ノ石ニ
選擧權ヲ與フルノ必要ハ、殆ド無イカノ如キ御辯論デアリ
マシタガ、私ハ少數多數ヲ以テ論斷スベキ問題デナイト思フ
ノデアル、理窟上原則上與フベキモノナラバ、十万ハ偖措テ、
五万人デモ與フルガ、國家立法機關トシテ、參政ノ義務ト
シテヤラナケレバナラヌト思フノデアリマス(拍手起ル)先年
餘程舊イ話デアリマスガ、日露戰役以後ノ議會ニ於テ、確
ニ西園寺內閣時代デアッタラウト思ヒマス、其時ニ日本海
ニ於テ擊沈サレタル、奈古浦丸ト云フ汽船ノ損害ヲ賠償シ
テヤルト云フ法律案ヲ、時ノ西園寺內閣ハ本院ニ提出シタ
ノデアリマス、何デアル、僅ニ一商船デアル、其損害ヤ數万
圓ニ過ギナイノデアル、タッタ此奈古浦丸一隻ノ救濟ヲナサ
ンガ爲メ、一ノ法律案デスラ、此議會ニ提出シタデハナイカ、
是ハ決シテ量ノ多少ニ依ラズ、理窟上當然救濟スベキモノ
デアルガ故ニ、態〓一ノ法律案ヲ提出シテ、此救濟ヲサセタ
ノデナイカ、然ラバ國家立法機關ニ於テヤルベキ事ハ、決シ
テ量ノ多少ニ依ルベキモフニ非ズシテ、其性質、其原則、其
理論ニ於テヤルベキモノナラバヤッテ宜シイト云フノガ、當然
デアラウト思フノデアリマス(拍手起ル)ソレカラ更ニ又兵役
義務ヲ了ヘタル者ニ現-現役ヲ了ヘタル者ニ選擧權ヲ與
フルト云フコトニ就テ、何カ物ヲ賣買スルガ如ク、一箇ノ報
酬デアルガ如キ御論デアッタノデアリマスガ、吾と同志ハ斷ジ
テ左様ナル考ヲ以テ提出致シタノデゴザイマセヌ、苟モ國家
ノ干城タルベキ責任義務ヲ果シタル者ハ、確ニ國家ノ運命
ヲ荷フニ足ルデハアリマセヌカ、既ニ國家ノ運命ヲ荷フニ足
ルトシタナラバ、之ニ向ッテ參政權ヲ與フルニ何ノ不都合ガ
アルカ(拍手起ル)免ニ角選擧權ノ問題ニ就キマノテハ、後
ニ同志ヨリ詳シク辯明致ス都合デアリマスカラシテ、私ハ此
位ニシテ置キマシテ、次ハ別表卽チ區制ノ問題ニ就テ、少シ
ク辯明致シテ見タイト思フノデアリマス、第一ニハ、大選擧
區ヲ利益トスル點ヲ先ヅ第一ニ御話シ申上ゲマス、然ル後
ニ小選舉區論者ノ主張ニ向ッテ、一二批評ヲ加ヘテ見タイ
ト思フノデアリマス、大選擧區ノ第一ノ利益ハ、大人物フ
出スノニ適スルトカ、不適當デアルトカ云フコトハ申シマセヌ
カ、大人物カ小人物カハ知リマセヌガ、免ニ角一國ノ政治
ヲ議スルト云フコトニ於テ、比較的適當ナル人物ヲ選出シ
得ルノ機會ハ多イト云フコトハ、私ハ確ニ爰ニ言ヒ得ルト思
フノデアリマス、卽チ廣キ區域ニ於テ人ヲ求メル、小サキ一
町、一村、若クハ一郡ニ於テ人ヲ求メルト、全縣下ニ於テ人
ヲ求メルト、何レガ適當ナル人ヲ得ルニ易キカ否カト云フニ
トハ、私ハ殆ド何等ノ辯論ヲ費ス必要ハナイト考ヘマス(「選
舉權ト選擧資格ヲ別ニシテ居マスヨ」ト呼フ者アリ)此點ニ
就キマシテ、小選擧區ヲ主張ナサル所ノ御方モ、小選擧區
ヲ大選舉區ニ變ヘル當時ニ於テ、小選擧區デハ大人物ヲ
得ルコトハ出來ナイ、ンレ故ニ大選舉區ニセネバナラヌト言ッ
テ、大選擧區ニシタニモ拘ラズ、一向大人物ハ出テ來ナイ、
何モ小選擧區時代ト變ッタコトハ無イト〓日言ハレルノデ
アッデ、決シテ大選擧區トナッタ爲メニ、却テ大人物ガ議會ニ
送ラレナクナッタト云フコトハ申サレヌノデアル、謂ハヾ小選
擧區時代モ大選舉區時代モ、人物ヲ得ルト云フ點ニ就テ
ハ同一デアルト云フコト以上ニハ、能ウ御辯論ナサラヌノデ
アル、此一事ヲ以テ見テモ、諸君、大選舉區時代ト小選擧
區時代ト、人物ヲ得ルニ同ジ事デアルト致シマシタナラバ、
何ゾ故ラニ此法律ヲ改正スル必要ガアリマセウカ、吾ミハ確
ニ吾ニハ一人信ズルノミナラズ、恐ラク滿天下ノ人一人ダ
モ、大選擧區ト小選擧區ト孰レガ適當ナ人ヲ得ルノニ易キ
カ六ケ敷キカト云フ位ノ事ハ、輒スク判斷シ得ルト思フノデ
アリマス、故ニドウシテモ小選擧區ニナッタナラバ、唯〓地
方ニ偏在セル豪族トカ、一郡ノ名望家デアルトカ、殆ド國政
ト云フモノニ對シテハ、何等ノ決心、何等ノ抱負、況ヤ世界
ノ局面、世界ノ大勢抔ト云フ事ニ就テハ、何等ノ智識、何
等ノ考モ持タヌヤウナ者ガ、彼方カラモ此方カラモ、多ク此
議政壇上ニ送ラレルト云フ傾向ヲ持ツト云フコトハ、明ナ
事デアリマス(拍手起ル)ンレ故ニ私ハ飽マデモ此大選擧區
ハ、議政壇上ニ送ルベキ適當ナル人ヲ得ルノニハ、比較的善
良ナル制度デアルト云フコトヲ、爰ニ斷言シテ憚ラヌ所以デ
アリマス(拍手起ル)更ニ少數代表此事ハ〓松田君ハ餘程御
辯論ニナリマシタガ、齋藤君モ申サレタ如ク、政友會ノ委員會
ニ於ケル代表演說トシテ確ニ大選擧區制ハ、少數代表ノ主義
ノ徹底スルニ適ッテ居ルト云フコトヲ斷言致サレタノデアル、故ニ
此點ニ就テハ、確ニ政友會諸君ノ間ニモ、我黨ノ提案ニ內心
賛同シテ居ラルヽ御方ガ、中〓多イノデハナイカト云フコトヲ
(拍手起ル、「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)疑ハザルヲ得ヌノデアリマ
ス、(「其通リ其通リ」ト呼フモノアリ)此大選擧區少數代表ノ
意味ヲ徹底スル上ニ於テハ、無論私ハ絕對的ト申スノデハア
リマセヌガ、比較的便利デアル、所謂小選舉ニ比スレ
バ、確ニ小數代表ノ主義ヲ徹底スルノニ、便利デア
ルト云フコトヲ申上ゲルノデアリマス、ガ此事ハダ、
唯、政友會ノ-全部トハ申シマセヌ、政友會ノ諸君ノ
或ル一部ヲ除クノ外ハ、恐ラク此議場ノ人々ノ殆ド
六七分デハナイ、八九分通リハ、御同意ナサルダラウト思フ
ノデアリマス、(拍手起ル、「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)唯〓黨ノ
節制、黨ノ羈束ヲ受ケラレルガ爲メニ、已ムナク之ニ御從ヒ
ニナッテ居ルト云フコトハ(笑聲起ル)實ニ御洞察申スノデア
リマス(「ヒヤ〓〓」一六人組ハゴザイマセヌ」ト呼フ者アリ)デ
之ニ就キマシテハ私ハ-之ニ就テヾハアリマセヌ、卽チ大選
擧區制ヲ維持スル所ノ理由ヲ、更ニモウ一ツ此上ニ附加ヘ
ルコトヲ得ルノデアリマス、現在ノ大選舉區-現在ノ大選
擧區ハ、床次內務大臣ノ申サレタガ如ク、又政友會諸君ノ
中ニモ、仰シヤッタ方ガアルカノ如ク記憶シテ居リマスルガ、
現在ノ大選擧區ハ、其實大選擧ニ非ズシテ小選擧區デア
ル、大選擧區ノ內ニ候補者各、其勢力範圍ヲ確定シ、其
繩張ヲ定メテ、其區域ノ内、其繩張ノ內デ競爭ヲスルノデ
アルカラ、大選舉區デアッテモ、其實ハ小選擧區ノ實ヲ行ンテ
居ルノデアルト云フコトヲ、大選擧區制ヲ否認スルノ理由
トシテ申サレタノデアル、併ナガラ私ハ此內務大臣ガ、大選
擧區制ヲ否認スル理由ノ一トシテ引カレタル、此大選擧區
デアッテ、而モ小選擧制ノ實ヲ行シテ居ルト云フ此事柄ハデ
ス、寧ロ私ハ大選擧區制ヲ維持スルノ、有力ナル一ノ理由
ト爲シ得ルト思フノデアリマス、(拍手起ル)何故デアル、卽
チ大選擧區制ノ下ニ於テ小選擧區制ノ主義ヲ行ッテ居ル、
而シテミス-而シテ行詰タナラバ、小選擧區ノ弊害ヲ矯メ
直スコトヲヤリ得ルモノデアル、何トナレバ同志ノ中デ若シ
投票ガ足リナイ、甲ノ人ハ投票ガ餘ル、斯ウ云フ場合ニ於
テハ、其餘ルモノヲ取ッテ足ラザル者ニ補フ、又一縣下ヲ通
ジテハ、彼ノ郡ニモ百票、此郡ニモ百票、彼方ニモ三百票
ト云フヤウニ、縣下十票郡ニ散在シテ居ル所ノ投票ヲ-
投票デハナイ勢力ヲ持ッテ居ル人モ、確ニ各郡カラ搔集メル
ナラバ當選點ヲ得ルコトガ出來ルノデス、乃チ現在ノ大選
擧區ナルモノハ、大選擧區制ノ下ニ、小選擧區制ノ主義ヲ
實行シテ、而シテ小選舉區ノ缺點ヲ補ヒ得ル所ノ、謂ハヾ
大選擧區ノ長所ト小選擧區ノ長所トヲ兼併セタ所ノ、立
派ナル制度デアルト云フコトヲ私ハ斷言スルニ憚ラヌノデア
ル、ソレカラ更ニ大選舉區制ノ害トシテ、反對論者ノ言ハル
ル第一ハ何デアルカト中シマスレバ、非常ナル費用ヲ要スル、
大選擧區ハ小選舉區ニ比スレバ大ナル費用ヲ要スル、是卽
チ大選擧制ノ害ナリト斯ク中サレルノデアリマスガ、私ハ費
用ノ問題ハ、決シテ制度其ノモノニ喰付イテ居ル問題デハ
ナクシテ、人ト場所ト時ト、サウシテ反對候補者ノ如何ニ
依シテ、費用ノ多寡ハ定マルモノデアルト云フコトヲ斷言シ
テ憚ラナイ、(「場所ノ廣キハ大選舉區ナリ」「同ジ事ヲ何遍
モ言フナ」ト呼フ者アリ)場所ノ廣キハ狹キヨリ費用ガ多ク
掛ルト小選舉區制ヲ主張サレル御方ガ申サレルガ、是ハ何
等選擧ノ事ニ經驗ヲ有セズ、選擧ノ實情ヲ知ラザル所ノ素
人騙トシテハ、頗ル好イ御議論デアルカモ知レマセヌガ、(拍
手起ル)併ナガラ苟モ選舉ノ實情ニ通ジ、選擧ニ經驗ノ有
ル者ハ、大選擧區制ナルガ故ニ澤山ノ費用ガ掛ル、小選擧
區制ナルガ故ニ少イト云フガ如キコトハ、恐ク諸君ガ自ラ
胸ニ手ヲ置イテ御考ニナッタナラバ、サウ云フ事ハ、決シテ口
外ノ出來得ル事デハナイト思フノデアル、(拍手起ル「政友
會顏色無シ」ト呼フ者アリ)現ニ此議席ニ列セラレテ居ル御
方ノ中ニモ、小選舉區ノ內デモ十有餘万ノ金ヲ費サレタト
云フ御方ガ、噂ニ聞ケバ在ルト云フデハアリマセヌカ、小選
擧區ト雖モ-小選舉區デハアリマセヌ、郡部ノ大選擧區
ニ於テモ、數千圓ヲ費サズシテ、易々ト出ル人ガ今日在ルデ
ハアリマセヌカ、故ニ私ハ費用ノ多イ寡イト云フコトハ素人
騙シニ、大選擧區ハ廣イカラ、澤山費用ガ掛ルト諸君ガ仰
セラレルナラバソレハ宜シイ、併ナガラ玄人對手ニハ、全ク
不通ノ議論デアルト私ハ斷言シテ憚ラヌ(拍手起ル、「君ハ
玄人デスカ」ト呼フ者アリ)ソレカラ又大選擧弊ハ、同士討
ノ弊ガアル、随テ政治道德ヲ破壊スル、憲政ノ發達進步ノ
爲メニ、洵ニ忌ムベキ事デアルト云フコトヲ申サレマスルガ、
是亦大小選舉區ノ制度其ノモノヽ罪ニ非ズシテ、全ク人ノ
罪デアルト斷言シテ憚ラヌノデアル(「ヒヤ〓〓」「ノウ〓〓」ト
呼フ者アリ)私ハ爰ニ活ケル事實ヲ捉へ來ッテ、御話シ申上
ゲタイ事ガアルノデアリマス、此所ニ福井君ノ居ラレザルヲ
私ハ頗ル遺憾トスル、我ガ岡山縣ニ於キマシテ、大選擧區
制トナッテ以來數回ノ選擧ガ行ハレマシタガ、同志間互ニ
相侵シ、互ニ投票爭奪ヲ爲スト云フガ如キハ、未ダ曾テ其
例ヲ見ザル所デアリマス、現ニ同士討ドコロデハアリマセヌ、
私ノ縣ニ於テ明治三十七年、卽チ第九回ノ總選舉ノ場合
ニ當リテ、同志ノ中或ル一人ノ候補者ガ危險ニ瀕セリトノ
故ヲ以テ、我黨ノ總理犬養先生ノ割當ノ地盤ヨリシテ、數
百票ノ投票ヲ選擧ノタッタ二日以前ニ割ッテ、同志ノ中危
險ナリト思ハルヽ候補者ニ與ヘ、ソレガ爲メニ支部公認ノ
候補者ハ全部當選ヲ見ルコトガ出來タト云フコトハ、確ニ
現在此議席ニ列シテ居ラルヽ政友會ノ或ル代議士ハ、必
中デ確ニサウデアッタト言ッテ、首肯セラルヽ事柄ガアッタノデ
アリマス、是杯ハ同士打ドコロデハナイ、寧ロ選擧場裡ニ於
ケル一ノ美風トシテ、社會一般ノ惡風潮、惡傾向ニ對シテ
一ノ〓凉劑トナリ、一ノ刺戟劑トナッタ位、我ガ岡山縣下ニ
於テハ、一ノ美譚ト稱セラレテ居ルノデアリマス、故ニ私ハ
大選擧區ナルガ故ニ同士打ガ澤山出來ル、小選擧人ナル
ガ故ニ同士打ガ無イト云フガ如キハ、決シテ政治ノ上カラ
論斷スベキモノニ非ズシテ、ソレハ黨ノ節制、若クハ其人ノ
公德心ノ多少如何ニ依テ論斷スベキモノデアッテ、斷ジテ制
度其ノモノニ罪ヲ歸スベキモノデナイト私ハ考ヘルノデアリ
マヘ、ソレカラ次ニ大選舉區ノ弊トシテ御擧ゲニナルノハ、補
關選擧ノ弊デ、全縣下ヲ騒ガスガ如キ紛擾ヲ見ル、補闕選
擧ノ弊トシテ之ヲ御擧ゲニナルノデアリマスガ、憲政會ノ御
方ハ、何ダカ此弊ハ弊デアルト云フ如キ言葉ヲ申サレタトカ、
曩ニ松田君ハ此所デ申サレマシタガ、私ハ斷ジテ弊ニ非ズ、
寧ロ憲政ノ進步、憲政ノ發達ヲ期スル上カラ申シマスルナ
ラバ、偶マニハ全縣下ヲ一ノ舞臺トシテ、政治的ノ訓練、政
治的ノ〓育ヲ爲スト云フ事モ、亦必要デハナイカト考ヘル、
丁度大演習ヲ爲スガ如ク、一縣下ヲ一ノ大演習場トシテ、
所謂政治的訓練ノ大演習ヲヤルト謂ッテモ、私ハ差支ナイ
ト思フノデアリマス、是ガ一年ノ間ニ何十囘-一年ノ間
ニ數十囘ト云フ數多イノデアルナラバ、或ハ其間ニ非常ナ
弊ガアルカモ知レマセヌガ、一年ノ間ニ彼縣二一ツ、此縣ニ
一ツト云フガ如ク、全國彼方此方ニ偶、此位ナ事ガアルト云
フ事コン、寧口憲政發達ノ上ニ於テ、政治的ノ訓練ヲ爲ス
上ニ於テ、或ハ此位ノ刺戟ヲ偶マニハ與ヘルノガ、私ハ必要
デハナイカト云フ位ニ田心ッテ居ルノデアリマス、(「國民黨ハ御
心配ハ入リマセヌ、其點ハ····」ト呼フ者アリ)ソレカラ小選
舉區ノ利益トシテ擧ゲラレタ中ニ、無競爭ノ區ガ小選擧區
ニスレバ澤山出來ル、是ガ憲政ノ進步發達ノ上ニ、慶ブベ
キ事デアルト云フコトヲ申サレタ、私ハ小選擧區制ナル故ニ
無競爭ノ所ガ澤山出來、大選擧區ナルガ故ニ今回ガ競爭
舞臺ニナルト云フコトハ、是亦制度ノ上カラ來ル問題デハ
ナイト私ハ思フ、是モ人ニ依ル問題デアルト思ヒマスルガ、併
ナガラ日本ノ現狀-我帝國ノ現狀ハ、確カニ松田君ノ申
サレタ如クナッテ居ルノヂアル、無競爭ノ小選舉區ト云フモ
ノハ、隨分澤山アルト云フコトハ現在ノ事實デアル、併ナガ
ラ此現在ノ事實ガ、果シテ憲政ノ運用ノ上ニ、憲政ノ進
步發展ヲ期スル上ニ於テ慶ブベキ事デアルカ、將タ憂フ
ペキ事デアルカト云フコトハ、私大ニ疑ハザルヲ得ヌノデ
アリマス、私ハ申スマデモナク、憲政ノ進步發展ヲ期スル上
カラ申シマスルナラバ、競爭アッテコン、喧嘩アッテコソ、茲ニ
政治上ノ進步發展ト云フモノヲ期シ得ラレルト思フノデア
リマス、私ハ玆ニ無競爭ノ區域ノ多イト云フノハ-大選
擧區ニ比シテ、小選舉區ナルモノハ無競爭ノ箇所ガ澤山出
來ルト云フ日本現在ノ事實ハ、私ハ洵ニ憂フベキ事デアル
ト思フノデアリマス、諸君、昨年十二月十四日英吉利ニ行ハ
レタル所ノ彼ノ衆議院議員選擧ノ狀態ヲ御覽ニナッタナラ
バ、如何ナル感ジヲ諸君ガ起サレルカ、英吉利ハ申スマデモ
ナク、御承知ノ通リ小選擧區制度ノ國デアリマス、小選擧區
制度ノ英吉利ニ於テ、昨年十二月十四日ニ行ハレタル選擧
場裡ノ狀態ハ、果シテ如何デアリマシタカ、衆議院ノ議席
ハ僅ニ七百十一デアリマス、七百十一ノ議席ヲ贏チ得ンガ
爲メニ、果シテドレダケノ候補者ガ選擧場裡ニ現レタカト申
シマスレバ、千五百七十四人ト云フ候補者ガ現レタト云フ
コトハ、今カラ三月經タヌ前ノ英吉利ノ現在ノ話デアル、諸
君、日本デハ小選擧區制度ノ下ニ選擧ヲ行ヘバ、無競爭ノ
所ガ澤山出來ル、憲政ノ進歩ノ爲メニ慶ブベキ事デアルト
斯ク論斷サレマシタガ、先進國タル英吉利、憲法政治、議會
政治ノ最モ發達シテ居ル所ノ英吉利デハ、近キ選擧ニ於
テ、僅カ七百十一人ノ議席ヲ贏チ得ンガ爲メニ、ソレニ殆ド
三倍スルノ候補者ガ現レタト云フコトハ、是レ呆シテ何ヲ意
味スルノデアルカ(「二倍デハナイカ」ト呼フ者アリ)三倍ト
言ッタノハ大袈裟デアルカ知レマセヌ(笑聲起ル)三倍ガ二
倍ニナッテモ宜シイ、二倍以上デアル、是ハ何ヲ意味スルカ、
日本ニ於テハ次第々々ニ小選擧區ニナレバ無競爭ノ所ガ
澤山出來ル、向フデハ段々其競爭場裡ニ於ケル爭ハ激烈ニ
ナッテ來テ、候補者ガ澤山現レル、是レ果シテ英國ノ狀態ガ
悲ムベキデアルカ、日本ノ狀態ガ喜ブベキデアルカ、私ハ寧ロ
日本ノ如キ現在ノ狀能ニ向ヒツヽアルト云フコトハ、確ニ憲
政ノ進步發達ヲ害スルモノデアル、寧口是アルガ故ニ-是
アルガ故ニ、斯ル傾向ナルガ故ニ、私ハ小選舉區ハドウシテ
モ否認シナケレバナラヌト云フ、取ッテ以テ反對論ノ一ツノ
理由トシテモ、私ハ差支ナイ位ナ事柄デアラウト思フノデア
リマス、(「駄目々々」ト呼フ者アリ)是ハ何故ニ斯ウ云フコト
ガ日本デハ出來ルノデアルカ、英吉利ト違ウテ何故ニ斯クナ
ルノデアルカ、私ハ確ニ是ハ時代錯誤ノ一ツデアルト斷言シ
テ憚ラナイノデアル、何故ニ時代錯誤デアルカ、我國デハ人
物崇拜ト言ッテハドウカ知レマセヌガ、兎モ角虚名ヲ崇拜ス
ル所ノ傾ガアル、(「虚名ヲ賣ル人ガアルカラダ」ト呼フ者ア
リ)政黨ガ次第々々ニ宗〓化シツヽアルノデハナイカト云フ、
私ハ疑ヲ持ッテ居ルノデアル、(「オ手前ノ方ヲ詮議シテカラ
仰シヤイ」ト呼フ者アリ)我國ノ政黨發達ノ歷史ヲ調ベテ見
テモ、親爺ガ自由黨デアッタナラバ、其子モ自由黨デアル、其
孫モ自由黨デアル、親爺ガ政友會デアッタナラバ、息子ガ又
政友會、孫モ政友會デアル、殆ド私ハ日本現在ノ政黨卜云
フモノハ、宗〓化シツヽアルヤウナ傾向ガアリハセヌカト田心フ
ノデアリマス(「ソンナ事ハアリマセヌ」ト呼フ者アリ)全體ノ
政黨トハ申サヌノデアリマス(「ソレハ岡山縣ダケダラウ」ト呼
フ者アリ)ツレ故ニ虚名崇拜、人物崇拜、政黨ガ-或ル政
黨ハ宗〓化シツヽアル故ニ、選擧區ト云フモノト人ト云フモ
ノト密著ナル關係ヲ生ジテ、殆ド或ル小選擧區ニ向ッテハ、
敵ハ一指ダモ染メルノ餘地ハナイト云フヤウナ有樣ニ、次第
次第ニ推移ッテ居ルノデアル、是ハ主義政策ノ如何ニ依テ、
無競爭ガ出來ルト云フナラバ慶ブベキ事デアルケレドモガ、
サウデハナイノデアル、主義政策ノ如何デハナクシテ、人ト其
選擧區ト云フモノト密著ナル關係ガ付イテ來ル、恰モ宗〓
的ノ觀念ヲ持シテ來ル、恰モ骨董品ヲ弄ブガ如キ傾向ニナッ
テ來テ居ル、是ガ無競争ノ出來ル私ハ重大原因デアラウト
思フノデアリマス、ソレ故ニ日本ニ於テハ、世ニ所謂第一流
ノ人物ト云フガ如キ人ハ、議會始ッテ以來今日ニ至ルマデ、
ズット〓シシ居ル人ハ隨分澤山居ル、第一期ト云ッテハ弊
ガアリマセウガ、兎ニ角十數年間續イテ居ル人ハ澤山アル、
是ハ何デアルカ、何故デアルカト云ヘバ、卽チ宗〓觀念、人
物崇拜、英雄崇拜、虚名崇拜ト云ヲ爲メニ、殆ド選擧區ト
云フモノト人ト云フモノトガ、結著イテシマウト云フ開係カ
ラ生ズルノデアルト、私ハ爰ニ斷言シテ憚ラヌノデアル、諸君
御覽ナサイ、英吉利ノ昨年ノ選舉ニ於テ-昨年前ニ擧ゲ
マシタ十一月ノ選擧ニ於テドウデアルカ、嘗テハ飛ブ鳥モ落
スガ如キ評判ノアッタ、執カ力ノアッタ、名望ノアッタ前內閣ノ首
相「アスキス」ハドウデアルカ、一陸軍大佐ニ向ッテ競爭ノ端
ヲ開イテ、遂ニ大佐ノ爲メニ破ラレテシマッタデハナイカ、(「政
策ヲ誤ッタ爲メデス」「心配スルナ」ト呼フ者アリ)失敗シタデ
ハナイカ、更ニ勞働黨ノ首領「ヘンダーソン」ハドウデアッタカ、
更ニ「アスキス」ノ大藏大臣デアッタ「マツケンナー」ハドウデア
タカ、總テ是等ノ者ハ落選シタデハナイカ、(「獨探ヲシタ爲デ
スヨ」ト呼フ者アリ)宜シイ、其所ニ理窟ガアルノデアル、斯ノ
如ク此三大政治家ノ破レタト云フノハ何ガ爲メデアルカ、
(「今モ言ッタ通リ」ト呼フ者アリ)國民ガ其主義政策ノ如何
ニ依テ、其人ニ對スル所ノ賛否ノ判斷ヲ決メタカラデアル、
然ルニ日本デハドウデアルカ、前內閣總理大臣、前大藏大
臣抔ト云フヤウナ人ガ、諸君、選擧場裡ニ立ッテ御覽ナサイ、
殊ニ小選舉區ニ立シテ御覽ナサイ、殆ド萬代不易、死ヌルマ
デノ間ハ確ニ其選舉區ヨリ落チルコトハ無イノデアル、何デ
アルカ、主義政策ニ依テ判斷スルノデハナイノデアル、其人ニ
依テ、其人物ニ依テ、全ク主義政策ト云フモノヲ第二ニ置
イテシマッテ、第一ハ人ト人トノ關係デアル(「岡山縣モデス
カ」ト呼フ者アリ)斯ル事情ヨリシテ(「簡單」ト呼フ者アリ)
此選擧區ニ於ケル弊害ト申シマスルモノハ、日本現在ノ如
キ狀態デアッタナラバ、洵ニ忌ムベキ憂フベキ結果ヲ呈スルト
云フコトヲ、私ハ爰ニ斷言シテ憚ラナイノデアル、次ニハ又候
補者ト選擧人トノ關係ガ密接ニナッテ來ル、是ハ洵ニ慶ブベ
キ事デアルト斯フ云フノガ、小選擧區ヲ主張サレル一ノ理
由ニナッテ居ル、私ハ是亦小選擧區ヲ主張スルノ理由ドコロ
デハナイト思フ、是アレバコソ、斯ル關係ヲ生ズレバコソ、小
選擧不可ナリト斷言ヲ玆ニ下サントスルモノデアル(拍手起
ル)選擧人ト候補者ノ關係ガ密接ニナル、何ヲ意味スルノデ
アルカ、情實、資緣緣故、何等政治上ノ意味、政治上ノ主義
ヲ以テノ密接關係デハナイノデアル、ソレ故ニ諸君、小選
擧區トナッテ候補者ト選舉區民トノ關係ガ密接ニナッテ來
タナラバデス、或ハ鐵道ノ間題、港灣ノ問題、道路ノ問題、水
道ノ問題、學校ノ問題ト云フガ如キモノヽ或ハ建議、夷ヘ
請願、或ハ運動、恐ラク選擧區民ト關係ガ密接ニナレバナ
作った。是等地方ノ小問題ニ沒頭スル所ノ議員ガ、更ニ多ク
此議會ニ送ラルヽト云フコトハ免ルベカラザル事實デアリマ
ス(拍手起ル)今日ニ於テスラ隨分-斯ル事ヲ申シテ諸君
ノ逆鱗ニ觸レルカ知レマセヌガ、隨分下ラナイ地方ノ鐵道ノ
問題、若クハ學校ノ問題、水道ノ問題、港灣ノ問題カ、或
建議、或ハ請願トナッテ、此議會ニ現ルヽト云フコトハ、寧ロ
私ハ帝國議會ヲシテ、地方ノ議會ニ其性質ヲ變ゼシメタノ
デナイカト云フヤウナ疑ヲ、世間挿ム者アリト雖モ、之ヲ否
認スルコトガ出來ナイト云フヤウナ事ニ、ナッテ來ハセヌカト
云フコトヲ憂フルノデアル、ソレカラ更ニ小選擧區ノ制度ヲ
行フト云フ事ハ政黨ノ爲メニ便利)デアル、政黨ノ地盤ヲ鞏
固ニスル所以デアルト云フ事ヲ、內務大臣モ當議場ニ於テ
言明セラレタノデアル、私ハ選擧區ノ大小ニ依シア、區制ノ
大小ニ依テ、政黨ノ發達、政治ノ地盤ガ鞏固ニナルトカ、ナ
ラナイトカ云フヤウナ事ヲ言フノハ、寧ロ私ハ政黨ノ一大恥
辱デハナイカト思フノデアル、決シテ政黨ノ發達ハ、法律ノ
力、規則ノ力、制度ノ力ニ依ルベキモノデハ斷ジテナイノデア
マリス(拍手起ル)然ルニ何ゾ、小選擧區制度ニシテ政黨ノ
便利ヲ圖リ、政黨ノ地盤ヲ鞏固ニスル、何タル事デアリマス
ルカ、私是アルガ爲メニ、日本現在ノ如キ重大思想ニ漂シテ
居ル今日ノ有樣、又曩ニ申シマシタ人物崇拜、若クハ政黨
ノ宗〓化セントスルガ如キ或ル方面ノ傾向、此傾向カラ申
シマシタナラバ、成程小選擧區ニシタナラバ、其政黨ノ地盤
ガ益、鞏固ニナルデアリマセウ、其政黨ノ爲メニハ確ニ便利
ニナルカモ知レマセヌ、併ナガラ英吉利ノ如キ、若クハ他ノ先
進國ノ如キ、主義政策ニ依テ、國民ガ一票ノ投票ヲ投ズル
ト云フヤウナ狀態ニ推移ッタナラバ率ザ知ラズ、今日ノ如キ
曩ニ申上ゲマシタヤウナ國家ノ狀勢ニ於キマシテ、小選擧
區ニ致シマシクナラバ、則チ或ル政黨ノ地盤ハ鞏固ニナリ、
或ル政黨ノ爲ニハ便利デアルカ知レマセヌガ國民ノ大多
數ハ、其政黨ノ爲ニ犧牲ニ供セラレ、其政黨ノ爲メニ、スッカ
リ蹂躪サレルト云フヤウナ不幸ヲ見ヌトモ限ラヌト云フコト
ヲ、私ハ非常ニ憂フルノデアリマス(拍手起ル)ンレカラ松田
君ハ、小選擧區時代ニハ選擧違犯者ガ非常ニ少ナカッタガ、
大選擧區制度ニナッテカラ、選擧違犯者ガ非常ニ澤山ニナッ
タト云フコトヲ申サレマシタガ、其統計ヲ御讀上ゲニナッタ所
カラ見マスルト云フト、成程松田君ノ言ハルヽヤウナ統計ニ
ナッテ屋リマスガ、併ナガラ一步退イテ考ヘルナラバ、私ノ如
キ法律ニ對シテ門外漢ナラバ率ザ知ラズ、松田君ノ如キ法
律ノ專門家ガ、之ヲ以テ小選擧區時代ヨリハ、大選擧區時
代ニナッテ選擧違反者カ澤山ニナッタ、是ハ全ク制度ノ罪デ
アルト云フ如キ事ヲ、此壇上ニ於テ憶面モナク申サレタト云
フコトハ、松田君ノ爲メニ之ヲ惜マザルヲ得ヌノデアリマス
(拍手起ル)其證據ヲ玆ニ擧グテ御話申シタイト思フ、松田
君ノ論斷ノ全ク誤レリト云フコトヲ、玆ニ證據ヲ擧ゲテ御
話ヲ申シタイ、卽チ御承知ノ如ク、大選擧區制ヲ行ハレタ
ノハ、明治三十五年ヨリデアリマス、小選擧區ハ明治三十
一年ノ選擧ヲ最終ト致シテ居ッタノデアリマス、此明治三十
一年ヲ最終トシタ時分ニハ、選擧違犯者ハ甚ダ少ナカッタ、
三十五年ニ大選舉區ヲ行フヤウニナッテ違犯者ガ澤出殖エ
タ、是レ大選擧區ノ罪ナリ、斯ク論斷サレタノデアル、先ヅ第
一ニ松田君ニ問ハントスル、選擧法ヲ實施サレダ明治二十
三年ヨリ三十一年ニ至ル間ニ、選擧ニ對スル取締檢擧ノ
方針ハ、果シテ今日ト同一デアッタカ否ヤ、ヨモヤ同一デアッ
タト云フ事ヲ申サレマイト思、ヒマス、卽チ三十一年以前ト、
ソレカラ其後次第ニ年ヲ經、月ヲ經ルニ從ッテ、選擧ノ度每
ニ檢擧ノ方針ガ次第々々ニ重クナッテ居ルト云フコトハ、松
田君ハ決シテ否認シ能ハザル事デアラウト思フノデアル、(拍
手起ル)而已ナラズ明治三十一年以前ニ於ケル選擧有權
者ノ總數ト申シマスルモノハ、僅ニ四十五万三千餘人ニ過
ギナカッタノデアル、然ルニ其後松田君モ御承知ノ通リ、地
租ガ增徵致サレ-地租ガ增徵致サレ選擧權ガ擴張致サ
レ、卽チ十五圓ノモノガ十圓ニ低下サレタ爲メニ、大選擧區
制實施ノ卽チ明治三十五年ニ於テハ、有權者ノ總數ハ九
十八万三千ニナッテ居ル、殆ド小選擧區最後ノ明治三十
一年ニ比スレバ、有權者ノ數ハ倍以上ニナッテ居ルノデアル、
更ニ明治四十一年ニハ如何ニナッテ居ルカト云ヘバ、是ガ增
加シテ、卽チ日露戰役ノ爲メニ營業稅地租ガ增徵致サレタ
メニ、有權者ノ數ガ增シテ、百五十八万人ト云フモノニ增
加致シテ居ルノデアル、諸君、檢擧ノ手心、檢擧ノ方針ニ於
テ、小選擧區時代ト、ンレカラ段々今日ニ至ルマデノ間ニ
ハ選擧有權者ノ數ハ、四十万ガ五十万ニナリ、九十万ガ百
五十万ニナッテ居ルト云フ今日ノ狀態デアル、諸君、犯罪者
ノ多イト云フコトハ、何モ是ガ制度ノ罪ト云フコトヲ論斷ス
ルコトハ出來ナイデハアリマセヌカ(拍手起ル)私ハ玆ニ最後
ニ選擧區ノ區制ノ事ニ就キマシテ簡單ニ一言費シテ、諸君
ノ御參考ニ資シタイト思フ(謹聽)私ハ齋藤君見タヤウニ博
識デアリマセヌカラ、サウ澤山ノ事例ヲ擧ゲルコトハヨウ致シ
マセヌ、私ノ縣ノ事情ヲ先ヅ第一ニ御話シテ、皆サンノ御參
考ニ供シタイト思フノデアル、小選擧區提案ノ理由トシテ
申サレタル如ク、一區一人ヲ原則トスル、地理、人情、風俗、
交通、區史ノ上ニ鑑ミテ、出來得ルダケ事情ノ許ス限リハ、
一人一區ヲ原則トスルト云フコトヲ申サレタノデアル、是ハ
當然ノ事デアル、小選擧區制ヲ採ル以上ハ、二區三人ハ變
則デアル、ドウシテモ一區一人ナラザルベカラズ、若シ極端ニ
言フナラバ、郡ヲ割キ、町ヲ割イテモ、一區一人制度ヲ徹底
的ニヤルノガ當然デアル、併ナガラ私ハサウ極端ナ事ハ申サ
ヌノデアル、私ノ申上ゲントスルノハ、卽チ岡山縣第五區、齋
藤君ハ曩ニ岡山縣第三區ヲ御擧ゲニナリマシタガ、第三區
ハ無論齋藤君ノ仰セラレタ通リデアル、四縣ヲ縱斷シヤウト
モ、横斷シヤウトモ、縱斷横斷何レヲ問ハズ、二郡々々ニ別
テハ、人口ガ約十万人程ニナルノデアル、地理、人情、風俗
歷史、何レニ依リマシテモ、差支ノナイ所デアリマス、然ルニ
之ヲ四郡一ノ選擧區トシテ、二人出サレルト云フコトニナッ
タノハ、如何ナル意味デ爲サレタカ、ソレハ知リマセヌガ、私ノ
判斷スル所ニ依レバ、ドウシテモ斯ル判斷ヲ下サネバナラヌ
ノデアル、四郡ヲ以テ一選擧區トシテ二人出スト云フコトニ
スレバ、政友會ノ議員ハ恐ラク無競爭デ此區カラ出シ得ラル
ルト云フコトハ、私ガ玆ニ保證シテ憚ラナイノデアル、若シ之ヲ
二郡宛ニ割ケバ、如何ニ割イテモ、四郡ノ組合セデ如何ヤウ
ニ割イテモ、南北ニ割イテモ東西ニ割イテモ、之ヲ二ニ割ッタ
ガ最後、一方デハ絕對ニ望ガ無イノデアル(拍手)唯〓一方ニ
於テ、可ナリ、競爭ガ出來ルデアラウト云フ位ノモノニナッテ
シマウノデアル(拍手)ソレカラ更ニ私ガ唯今第一ニ申上ゲ
マシタ岡山縣第五區ナルモノハ、淺口郡、小田郡、後月郡、
此三郡ヲ合シテ二人ヲ出スト云フコトニナッテ居リマス、而
シテ總人口ハ二十二万七千四百四十九人デアル、之ヲ三
郡合併セネバナラヌカ、所謂風俗人情、地理、交通、歷史ノ
上ニ於テ、二ニスルコトハ出來ナイカト云ヘバ寧口人情モ
違ヒ、地理ハ無論ノコト大違ヒ、歴史モ違ッテ居ル、如何カ
ナル點カラ見テモ人情、風俗、習慣、歴史、地理、有ユル點
カラ見テ、是ハ二ニ割ルノガ當然ナンデアル(拍手)恐ラク福
井君モ其所ニ居ラレマスガ、此三郡ガ分割出來ナイ程、地
理人情、風俗、交通、歷史ニ差ガナイト云フコトハ、御認
ニナルマイト思フ、然ルニ之ヲ三郡一ニシテ二人出スト云フ
コトニサレタノハ、私ノ判斷スル所ニ依レバ、淺口郡ノ一部
ニモ政友會ノ分子ガアル、小田郡ノ一部ニモ政友會ノ分子
ガアル、後月郡ノ一部ニモ政友會ノ分子ガアル若シ之ヲ二
ツニ割イテシマッタナラバ、如何ニ有力ナル政友會ノ人ガ來
ラレヤウトモ、斷ジテ望ヲ囑スルコトハ出來ナイノデアル、(拍
手)然ルニ三郡ノ一ノ選擧區ニ做スト、國民黨ハ無論二人
候補者ヲ立テルニ決シテ居ル、ンコデ淺口郡ノ零レル搔集
メ、後月郡ノ零レヲ搔集メ小田郡ノ零レヲ掻集メレバ、
二人ニ對シテ一人ノ競爭ハ出來得ラレルダラウ、所謂萬
一ヲ僥倖シテ、此邊モ斯ウシテ置ケバ、一人ノ政友會員ヲ
出セルト云フヤウナ考ヲ以テサレタノデアラウト申シテモ、恐
ラク內務大臣ハ辯解ノ言葉ガアルマイト思フ(拍手)何故ナ
ラバ人口ノ上カラ申シテモ、淺口ハ一郡ニ於テ十万三千人
程ヲ有シテ居ル郡デアリマス、小田、後日兩郡ヲ合シテ約十
二人デアル、諸君、十万三千人ノ淺口ハ、是ハ立派ニ獨立
サセルコトガ出來ルデハアリマセヌカ、山梨ノ例ヲ御覽ナサイ
(拍手)一方ハ十二万人デ、是亦獨立サセルニ適當デハアリ
マセヌカ、併シ是ガ二ニ分レテハ、何レノ選擧區ニ於テモ恐
ラク三分ノ一-當選點ニ達スル三分ノ一ノ投票ヲモ得ル
コトハ、斷ジテ出來ナイト保證シテ置クノデアル(拍手)更ニ
第七區、第八區、是等ニ就キマシテモ大ニ論議ノ地ガアリマ
ス、詳シイ事ハ申シマセヌガ、是モデス從來ノ歷史カラ申シマ
シテモ又人口代表ノ主義カラ申シテモ、此政府ノ原案ナル
モノハ、確ニ其當ヲ得テ居ラヌト云フコトヲ申上ゲテ差支ナ
イノデアル、歷史的カラ言ヘバドウデアル、第七區第八區ト
云フモノハ元ノ小選擧區ノ組立ト申シマスモノハ、眞庭郡
ト蘆田郡ト云フモノヲ以テ、一選擧區トシテ居ッタノデアル
モウ一ツハ久米郡、勝田郡、英田郡ヲ一ツノ選擧區トシテ
居ッタノデアリマス、然ルニ此度ハ之ヲ變更致サレテ、眞庭、
久米ヲ一選擧トシテ居ル、而シテ其總人口ハ十一万一千
人デアル、以前第七區ニ屬シテ居っタ所ノ蘆田ヲ七區カラ
割イテ、之ヲ第八區ニ加へタカラ、蘆田、勝田、英田ノ三郡
ヲ一選擧區トシテ居ラレル、此人口ガ幾ラデアルカト云フト、
十七万二千人デアルノデアル、一方ハ十一万千人ヲ以テ一
人ノ議員ヲ出シ、一方ハ十七万二千人ヲ以テ一人ノ議員
ヲ出ス、斯ル不公平ガ出來テ居ルノデアリマスガ、之ヲ從來
ノ小選擧區ノ如ク、又地方ノ地勢ノ上カラ申シマシテモ眞庭
蘆田ヲ一選舉區トシテ元ノ通リニスルナラバ、人口ハ十三
万九千人ニナル、一方ノ久米、勝田、英田ノ三郡ハ十四万
八千人ニナル、サウスレバ人口代表ノ主義ニ適合スルト云
フ點カラ申シマシテモ、元ノ如ク致シテ置ク事ガ當然ナノデ
アル、然ルニ斯ク人口代表ノ原則ニ遠ザカル所ノ一方ハ十
七万人、一方ハ十一万人斯ル事ヲ致サレタト「云フコトハ、
私共地方ニ居ッテ地方ノ實情ヲ能ク知ッテ居ル者カラ申シ
マスト、如何ニモ政友會ノ爲メニ便利ニ出來テ居ルト云フ
コトヲ發見スルニ苦シマヌノデアリマス、若シ之ヲ以前ノ如
ク致シマシタナラバ、福井君ヲ前ニ置イテ言フノハ御無禮ナ
申分カモ知レマセヌガ、作州ニ於ケル七區、八區デモ、決シ
テ第三區ノ上道、赤磐、和氣、邑久ノ四郡ヲ一選擧區トシ
テ、此所デ福井君ガ競爭サレルヨリハ更ニ多クノ困難ガア
ルト云フコトハ、恐ラク「福井君モ御反對ハアルマイト思フ、
唯夫レ政友會ノ便利ヲ圖ランガ爲メニ、斯ク出來テ居ルノ
デハナイカト云フコトヲ、私共縣ノ事情、選擧ノ事ニ二十有
餘年ノ間沒頭シテ居ルガ故ニ、殆ド螻蟻ノ這フガ如ク知ッテ
居ルカラサウ云フ疑ヲ起サザルヲ得ヌノデアリマス(拍手起
ル)ソレカラ今度ハ内務大臣ノ御膝元ニ就テ一言申シタイ
ト思フ、(「內務大臣ノ方ガ能ク知ッテ居ル」ト呼フ者アリ)無
論鹿兒島縣ニ就テハ私ガ申上ゲルノデアルカラサウ仰シヤ
ルノハ無理ナラヌ、サウ御感ジニナルノハ無理カラヌ事デア
リマスケレドモ、併ナガラ私ガ之ヲ調ベルガ爲メニハ、餘程各
方面ノ事情ヲ聞イタ、輕卒ニ申上ゲルノデアリマセヌ、鹿兒
島縣ノ第二區ハ、鹿兒島郡ヲ以テ一ツノ選擧區トサレテ、
此處カラ一人出ルヤウニナッテ居ル、第六區ハ熊毛、肝屬、
此二郡ヲ一選舉區ト爲シ、一人ヲ出スト云フコトニナッテ居
リマス、一方ハ第二區ノ鹿兒島郡ノ方ハ十万四千デアリマ
ス、ソレカラ第六區ノ熊毛、肝屬ヲ合セレバ十万一千人ニ
ナッテ居ル、若シ人口代表ノ主義ヲ徹底的ニヤラウト思ヒマ
シタナラバ、熊毛郡ヲ鹿兒島郡ニ附ケマシタナラバ、一方第
二區ノ方ハ人口十五万人ニナリ、片方ハ十三四千人ニナ
ル、所謂人口代表ノ主義ニハ、確ニ熊毛郡ヲ鹿兒島郡ニ附
ケタ方ガ宜イト云フコトハ、是ハ數理ノ上デ明カデアル、是ハ
恐ラク何人モ否認出來ナイ數理ノ結果デアル、ンコデ數理
上ハ、サウデアルガ事宜貝ハドウデアルカ、交通其他ノ關係ノ
上カラ熊毛郡ナルモノハ肝屬郡ニ合シタ方ガ宜イカ鹿兒島
郡ニ合シタ方ガ宜イカ、事實ノ上ニ於テ判斷スルノ外ハナイ
ノデアル、而シテ事實ノ上カラ判斷スレバドウデアルカ、熊毛
郡ヨリ鹿兒島郡ニ至ラントスルノニハ、一度鹿兒島ニ來テ
鹿兒島カラ復夕後戾リヲシテ、船ヲ乘換ヘテ肝屬郡ニ行カ
ナケレバナラヌヤウナ狀態デアル、卽チ熊毛郡ナルモノト肝
屬郡ナルモノノ間ニハ、何等直接ノ聯絡ハ無イ所デアル、ド
ウシテモ熊毛郡カラ肝屬ヘ行カント欲スルナラバ、一度鹿兒
島ニ行ッテ、船ヲ乘換ヘテ、後ニ戾メテ肝屬郡ニ行クト云フ交
通狀態ニナッテ居ルト云フコトハ、恐ラク內務大臣モ御否認爲
サルマイト思フ、成程地圖ノ上カラ申シマスレバ、近イノハ肝
屬ノ方ニ近イノデアル、併ナガラ交通狀態ト云フモノハ近キ肝
屬郡ニハ大々的不便デアッテ寧ロ遠キ鹿兒島郡ニ交通上
非常ナ便益デアルト云フコトハ、其地方ノ事情ニ精通シテ
居ル所ノ人ハ、何人モ否認シ能ハザル所デアル、是抔ハ何ガ
爲メニ斯ノ如ク出來夕ノデアルカ、私ハ其事情ハ知リマセ
ヌガ、矢張其地方ノ事情ニ通ジテ居ル所ノ人カラ聽ケバ、是
亦政黨地盤擁護ノ上カラ出來タノデアルコトヲ申シテ居リ
マス、(拍手起ル)其他モウ一ツ申上ゲテ置キタイト思ヒマス
ノハ、和歌山縣ノ問題デアル、和歌山縣ノ第二區ハ、海草
郡ト云フ郡ヲ獨立サレテ、一人出スコトニナッテ居リマス、第
三區ハ伊那、那賀、有田ノ三郡是亦獨立選舉區トシテ一
人出スコトニナッテ居ル(「郡ノ名前ヲ知ラヌ」「ソンナコトデハ
論ズル資格ガ無イ」「伊都ダ々々ダ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=50
-
051・濱田國松
○副議長(濱田國松君) 靜肅ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=51
-
052・西村丹治郎
○西村丹治郞君 兎ニ角伊都ガ伊那デアラウト、ソンナ事
ハ一向構ハヌ、兎ニ角此三郡ヲ以テ第三區ト爲シ、海草一
郡ヲ以テ一ツノ選擧區トナサレタト云フコトハ、其地方ノ地
理ニ精通サレテ居ル人ノ話ヲ聽ケバ、海草郡ト云フモノヲ
中ニ挾ンデ、有田郡ト云フモノハ向フニ懸離レ夕所ノ郡ダサ
ウデアリマス、一ツノ郡ヲ中ニ挾ムト云フコトハ、(「間違ッテ
居ル」ト呼フ者アリ)若シ間違ッテ居ルト仰セラルヽナラバ、
私ハソレハ斯ウ云フ意味デアラウト思フ、唯、地續キデアルト
云フニ過ギナイ、成程地ハ續イテ居ルケレトモ、那賀郡、伊
都郡ノ方面ヨリ有田郡ニ至ラントスルノニハ、縣道若ク
ハ郡道ト云フモノハ、ドウシテモ海草郡ヲ通過シナケレバ行
ケナイノデアル(「其通リ」ト呼フ者アリ)斷巖絕壁ノ山ヲ越
エレバ有田郡ニ行ケルカモ知レマセヌガ、縣道郡道ニ依テ有
田郡ニ到ラントスルナラバ、必ズヤ海草郡ヲ通過シナケレバ
ナラヌノデアル、是レ私ガ懸離レテ一ツノ海草郡卜云フモノ
ヲ中ニ挾ンデ、有田郡ト云フモノガ隔絕シテ居ル所ニアルト
申スノハ斯ウ云フ意味デス、是ガ否認シ得ラレマスカ、斯カ
ル事ガ何故ニ出來タノデアルカト云フコトハ、私他縣ノ事デ
スカラ、玆ニ斷定的ニ諸君ニ申上ゲマセヌ、是ハ諸君自ラ
公平ニ御判斷ヲ願フコトガ出來ルダラウト思ヒマス(拍手ス
ル者アリ)其他一區一人制-苟モ小選舉區ヲ採ルト云フ
以上ハ、事情ノ許ス限リドウシテモ一區一人トスル方針ヲ
以テ、徹底的ニ事情ノ許スダケハヤラネバナラヌニモ拘ハラ
ズ、二區ニ割キ得ルモノニシテ、二人トシ若クハ三人ニシテ
居ル所ガ隨分數多イト云フコトハ、私ガ申上ゲヌデモ、是ハ
モウ政府ノ案ヲ見レバ諸君御承知ノ通リデアル、而シテ私
ハ一々ニ付テハ申上ゲマセヌケレドモ、一端ヲ見テ私ハ其全
斑ヲ判斷スルノハ左程困難デハアルマイト思フ(拍手スル者
アリ)ソレ故ニ僅カ二三ノ事例ヲ申上ゲマシテ、他ノ二人若
クハ三人出テ居ル所ハ、諸君ガ愼重ニ御調ニナッタナラバ、
必ズヤ其間ニ何等カノ因緣、何等カノ魂膽アリト云フコトノ
御發見ナサルノハ、決シテ苦シクナイト思フ(拍手起ル)
〔副議長濱田國松君議長席ヲ退キ議長大岡育造
君著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=52
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053・西村丹治郎
○西村丹治郞君 此意味ニ於テ私ハ若シ此小選擧區制
ナルモノガ本院ヲ通過シ-無論本院ヲ通過スルト云フ事
ハ、唯〓ノ議場ノ大勢已ムヲ得ヌコトヽ思ヒマスガ、若シ是
ガ兩院ヲ通過スルト云フヤウナ事ガアリマシタナラバ、或ル
一派ノ政黨ノ地盤ヲ鞏固ニシ、或ハ一派ノ政黨ノ爲ニハ便
利デアルカモ知レマセヌケレドモ、我ガ帝國憲政前途ノ爲ニ
ハ、洵ニ憂慮スベキ一大不祥事デアルト云フコトヲ玆ニ斷
言シテ、此壇ヲ降ルノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=53
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054・大岡育造
○議長(大岡育造君) 武藤金吉君
〔武藤金吉君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=54
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055・大岡育造
○議長(大岡育造君) 此場合時間ノ切迫ヲ豫メ避ケタイ
ト思ッテ居リマス、最早僅カ三十分ニ足ラヌノデアリマス、此
選擧法ノ最後ノ決ヲ採ルマデ時間ヲ延長シタイト思ヒマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=55
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056・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナケレバ時間ハ延長サレマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=56
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057・武藤金吉
○武藤金吉君 衆議院議員選擧法中改正法律案ハ多
年ノ懸案デアリマシテ、此度政府提出案及憲政會、國民黨
ノ各案共ニ、從來ニ比シマシテ、其案ノ內容ノ一段ノ進步
ヲ見タルハ、憲政運用ノ上ニ甚ダ喜ビニ堪ヘナイ次第デア
ルト考ヘマス、今ヤ斯ク有力ナル主張ニ基イテ其經綸ヲ行
ハントスルニ、此重大ナル法律案ヲ決定セントスル場合ニ際
シテ、政府提出案ニ贊成ヲシ、我ガ立憲政友會ノ方針ト合
致スルヲ闡明シテ、之ニ反對セラルヽ憲政會及國民黨其他
ノ御主張ニ對シテ、玆ニ暫クノ間論戰ヲ交フル機會ニ際シタ
ルハ、本員ノ最モ光榮トスル所デアリマス、諸君、本案ニ關
シテノ論點ノ要旨ハ數點デアリマス、選擧權ノ擴張ノ事、大
小選擧區制利害得失ノ事、又之ニ伴フ別表改正ノ事、選
擧取締ニ關スル一切ノ事デアリマス、我黨ノ松田君ヨリ述
ベラレマシタ點ハ、重複ヲセヌヤウニ是等ノ事ハ一切避ケマ
シテ、簡單ニ時間ヲ活用致シテ私ハ宣明スル積リデアリマ
ス、諸君、衆議院議員タル吾ミ御同樣ハ、此衆議院議員ノ
選擧法ニ付キマシテハ、何事ヨリモ能ク〓究ヲ致サレテアル
ノデアリマス、又能ク實情ニ御同樣ハ精通致シテ居ルノデア
リマス(「御同樣ハ困リマス」ト呼フ者アリ)然ルニ選擧ノ時
ト否トヲ問ハズ、選擧ニ付テハ尠カラザル苦痛辛酸ヲ嘗メル
コト玆ニ幾年デアリマスガ、然ルニ此實際ノ問題ニナッテ、我ガ
衆議院ノ論議ガ聊カ眞面目ヲ缺クガ如キコトハ、甚ダ私ハ
遺憾トスル、諸君、諸君ハ最モ有力ニシテ、各家ノ主張ハ最モ信
用ハアル所ノ論旨ヲ、國民及一般ニ之ヲ徹底セシムルト云フコ
トハ、蓋シ吾ニガ努メテ此事ヲシナケレバナラヌ所デハナイカ
ト思フノデアリマス、故ニ本案提出以來本員ハ本會議及委
員會ニ於テ、諸君ノ御論旨ノ在ル所ヲ謹ンデ拜聽致シマシ
タ、又本日ノ會議ニモ諸君ノ御論旨ヲ拜聽致シテ居リマシ
タガ、吾ニハ此上ニ提案ノ精神ニ背カズ、衆議院ノ權威ヲ
傷ケナイヤウニ、自ラ大ナル注意ヲ拂ッテ、此立法ノ事業ノ
完成ヲ告ゲタイト期スルノデアリマス、諸君、而シテ問題ト
ナリマシタノハ、大小選擧區制ノ利害得失ガ最モ主ナル論
點ニナッテ居リマス、此點ニ付キマシテハ我松田君ノ論議セ
ラレタ點ハ一切避ケマシテ、松田君ノ言ハナイ點ヲ私ハ三
四申シタイト思フ、小選擧區制ハ地盤鞏固ナルヲ以テ、議員
ノ議會ニ望ム時ニ、何囘解散ガアッテモ之ヲ恐レズ、議員ヲ
シテ確ニ其所信ヲ行ハシメルノニハ最モ適當ナル良イ制度
デアルト私ハ感ジマス、ンレカラ運動費ノ減少ヲ圖リ、之
依ッテ資產ノ乏シキ適當ナル人材ヲ候補者ニスル事デアリ
マス、諸君ハ運動費ノ事、費用ノ事ハ問題ノ如ク考ヘラレ
テ居ラヌガ知レマセヌカ、選擧ニ於テ一大苦痛トスル所ハ、
選擧運動費ヨリ外ニ重イモノハナカラウト思ヒマス、諸君、
此運動費ノ減少ヲ圖リ、金力ガ無クテモ此衆議院ニ各階
級カラ代表者ヲ送ルト云フコトニ付キマシテハ、小選擧區ト
大選擧區トノ得失利害ト云フモノハ、自カラ小選擧區ニア
ルト云フコトハ申スマデモナイ話デアリマス、而シテ更ニ重要
ナ點ハ、候補者ト選擧區トノ關係ヲ密接ニシテ、能ク候補
者ノ人物政見ヲ選擧區民ニ知ラセ、而シテ常ニ有意義ナル
所ノ選擧民ノ意思ヲ代表スル議論ヲ、此衆議院ニ於テ行
ハシメルト云フコトガ此小選擧區制度ノ上ニ於テ最モ有力
ナル力ヲ持ツノデアリマス、諸君、現在ノ大選擧區ニ於キマ
シテハ、何レノ縣ニ於キマシテモ比例代表ヲ行フコトハ出來
マスガ、其比例代表ハ殆ド其人物モ、名前モ、品性モ、何モ
知ラナイ者ガ、何レノ縣ニ於テモ一名ヤ二名ハ選擧每ニ當
選シテ居ルデハアリマセヌカ、而シテ其人ハ選擧區トハ沒交
涉デアリマシテ、選擧民ガ選擧シタ以上ハ、何等關係ノナ
イト云フヤウナ關係ヲ持ッテ居ルノハ、候補者其人ノ罪デモ
ナケレバ、選擧人ノ罪デモナイ、大選擧區制度ノ弊害ノ最
モ甚シイモノデアリマス、是等ノ點ヲ矯正ヲ致シマスルニハ、
小選擧區ノ利害得失、大選擧區トノ比較卜云フコトハ、自
カラ明カデアリマス、又小選擧區ハ大人物ヲ得ラレナイ、又
選擧區ノ大小ニ影響ヲ蒙ラナイト申シマスガ、松田君ハ大人
物ノ例ニ原首相等ヲ引合ニ出サレマシタガ、私ハ尊敬スル
憲政會ノ領袖諸君ノ御名前ヲ申上ゲテ見タイ、河野サン、
武富サソ、尾崎サン、箕浦サン、島田サン、是等ノ領袖諸君
ハ小選擧區當時ニ於キマシテモ一回モ落選セズ、議會開設
以來今日マデ當選サレテ居ル、又國民黨ノ犬養君ニ於テモ
小選擧區ノ當時カラ每回出ラレテ居ルノデアリマス、故ニ
大選擧區デアルカラ大人物ガ出ナイ、小選擧區デアルカラ
小人物ガ出ルト云フヤウナ比例ハナイノデアリマス、選擧區
ニ致シマシタ所ガ、決シテ大人物ガ出セヌト云フコトハ議論ニ
ナリマセヌ、殊ニ小選擧區ニナリマシテモ、少數ノ代表者ヲ出
セルコトハ松田君カラ述ベラレマシタカラ、私ハ之ヲ略シマスガ、
要スルニ大選擧區ト小選擧區トノ利害得失ニ付キマシテハ、
選擧上ノ弊害ヲ矯メ、又人物ヲ出シ其他總テノ取締ノ點
等ニ就キマシテモ、一點ノ議論ヲ挾ムコトハナイト信ズル、更
ニ智識階級ニ選擧權ヲ與ヘルト云フコトニ付キマシテハ、是
ハ松田君カラ述ベラレマシタカラ、私ダケハ避ケマスガ、此小
選擧區ニ伴フ別表ノ改正ニ付キマシテハ、憲政會ノ諸君カ
ラモ、亦國民黨ノ西村君カラモ、其缺點不公平ヲ指摘サレ
マシタ、是ハ委員會ニ於キマシテモ數時間ニ亙ッテ齋藤君モ
述ベラレマシタ、又本議場ニ於キマシテモ一々之ヲ列擧シテ
述ベラレマシタカラ、私ノ調ベマシタコトヽノ比較ヲ致シマシ
テ、間違ッテ居ルカ不公平デアルカト云フ御判斷ニ預リタイ
ト思フノデアリマス(「岡山縣」「山梨縣」ト呼フ者アリ)京都
府ノ第五區、第六區ニ付キマシテハ、委員會ニ於テ問題ニ
ナッテ居リマシタシ、本會ニ於キマシテモ攻擊的質問ヲ齋
藤君ハセラレマシタガ、是ハ自分ノ質問ガ誤デアルト云フコ
トヲ悟ッテ、今日ハ述べラレマセヌカラ、敢テ攻撃ハ致シマセ
ヌガ、是ハ大變違ッテ居リマス、合併スル時ハ區域ガ極メテ
廣ク適當デナイ、岐阜縣ニ五郡一選擧區ノ所ハアルガ、是
ハ各郡トモ狹小ニシテ、比較ニハナラヌモノデアリマス、此五
區六區トモ、斯ノ如ク組合スト云フコトハ、地理ノ上カラ言
ヒマシテモ、人情、風俗、交通ノ上カラ言,テモ、嵌ッテ居ルノ
デアリマス、ソレカラ大阪府デアリマス、大阪府ノ六區、西成
郡、東成郡ヲ一選擧區トシテ、二人ヲ出スト云フノハ、何故
之ヲ二ツニ分ケヌカト云フ攻撃デアリマシタガ、是ハ大阪府ノ
他ノ區ニ於テハ、第七區ガ十一万、第八區ガ十一万九千、
第九區ガ十一万五千、第十區ガ十万五千、第十一區ガ十
三万四千、十三万臺ノ一區ト云フモノハ第十一區ニアルダ
ケデアリマシテ、此西成郡ノ十六万二千七百十七ト云フモ
ノハ、餘リ大キニ過ギマスガ故ニ、此東西成郡ヲ合併致シマ
シテ、他區ノ標準ニ傚ッタノデアリマシテ、大阪府全體ニ付テ
ノ均衡ヲ取ル爲メニ、是ハ斯樣ニ編成サレタノデ、是ガ最モ
公平ナル所ノ(「地理ノ關係ヲ言ッテ下サイ」ト呼フ者アリ)
區制ト思ヒマス、ソレカラ又(「違ッテ居ル」「地理ノ關係ヲ言
へ」「默レ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=57
-
058・大岡育造
○議長(大岡育造君) 注意致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=58
-
059・武藤金吉
○武藤金吉君 次ハ(「次ハ何デス」ト呼フ者アリ)岡山縣
ノ別表ニ付キマシテ申上ゲタイト思ヒマス、岡山縣ノ第五區、
淺口郡、小田郡、後月郡、此三郡二人ニ付テ、淺口郡ハ十
万二千、小田郡ハ八万五千、後月郡ハ三万九千デアリマシ
テ、合計二十二万七千四百四十九ノ數ニナッテ居リマスガ、
何故之ヲ分ケヌカト云フ御議論デアリマス、淺口郡ヲ獨立セ
シムル時ニハ、第八區ニテ人口十七万二千九百四人ヲ以
テ一區トシテアルノニ、較ベマシテ、餘リニ人口ノ開キガ多過
ギル、又地形交通ヲ斟酌シテ斯樣ニ組セタノデアリマス、現
ニ舊選擧區ノ時モ此三郡ハ一選擧區ニテ居ツタト云フ歴史
ヲ有ッテ居リマスカラ、右樣ノ次第デ是ハ三郡二人トスルト云
フコトハ、最モ適當ナリト吾ミハ信ズル、更ニ第三區ノ上道
赤磐、和氣、邑久、此四郡二人ニ付キマシテ、十九万七千
五百、之ヲ何故和氣、邑久ノ二郡ヲ以テ一區トシナイカト
云フ駁論デアリマスガ、此四郡ハ極東四郡ト稱サレマシテ、
一地方トナッテ居ルコトハ、其地方ノ御方カラ私ハ親シク承
ハッテ居ルノデアリマス、邑久、赤磐、上道ノ三郡交通至便
ナルモ、和氣ハ交通不便デ、殊ニ邑久和氣トノ間ニ於テ最
モ交通ガ困難デアル、故ニ此四郡ヲ强テ分割セシメルトナ
ラバ、舊選舉區時代ノ如ク、邑久、和氣、赤磐及上道ダケヲ
以テ一選擧區トシナケレバナラヌト云フコトハ、是ハドウシテ
モ此和氣、赤磐ノ兩部ハ九万六千デアル選擧區デアルカラ
シテ、原案ニ比シテ一層他區ト權衡ヲ失スルニ至リマスカ
ラ、已ムヲ得ズ斯ウ云フ風ニ組合セタト云フコトニ御諒察ナ
サレテ然ルベシト思ヒマス、單ニ此地形、此數字許リニ依ッ
テ、此縣ガ斯ウ云フ風ニ組合セタモノデナイト云フコトヲ、想
像スルニ餘リアルト思フノデアリマス(「山梨縣ヲ願ヒマス」
「時間ノ割當ヲ願ヒマス」ト呼フ者アリ)靜岡縣ノ問題ガ出
マシタデアリマスルガ、靜岡縣ノ第三區及第四區ハ、何故ニ
之ヲ人口ノ平均ヲ期スル爲メニ、合併シナイカト云フ御議
論ガアリマシタガ、是ハ一郡一區ト云フコトガ之ヲ決メマス
ル原則トナッテ居ルノデアリマシテ、別段此安部郡一郡デ十
一万三千ト云フコトハ、人口ノ點ニ於テモ差支モナシ、又三
區四區ヲ合併致シマスルト、地積ガ餘リ廣汎デアリマシテ、
中選舉區トナル故、一郡宛之ヲ分割シタト云フ此原案ノ趣
旨ニナッテ居リマシテ、此駁論ニ付キマシテハ一向其意味ヲ爲
サヌト思ヒマスカラ、念ノ爲メニ之ヲ辯明シテ置キマス、更ニ
(「辯明ナラ山梨縣ヲ言ンテ下サイ」ト呼フ者アリ)石川縣ノ
二區ト三區ヲ何故人口ノ公平ヲ期スル爲メニ、兩區ヲ合
併シテ二人一區トシナイカト云フコトガアリマシタガ、是ハ
石川縣ノ各區ヲ見ルト大體ニ於テ人口ハ公平デアリマス、
又石川、江沼ヲ合併スル時ハ地域ガ擴大スルダケデアッテ、交
通不便トナル譯デアリマス、又石川郡ノ人口ハ十一万三千
餘アッテ、强テ之ヲ他ニ合併スル程ノ必要モ見ナイノデアリ
マス、殊ニ原案ハ舊選擧區昨日ノ選擧區ヲ全然其儘襲用
致シタノデアリマスカラ、是ハ何故合併ヲシナイカト云フコト
ノ御希望ハ、甚ダ無理ナル御希望ナリト信ジマス、次ニ福
岡縣ノ事デアリマス、福岡縣ノ事ハ同僚ノ諸君カラ、福岡
縣ノ事情ハ唯〓御話ヲ承リマシタ、又何故此第十區ト第
十六區ヲ公平ヲ期スル爲メニ、三郡ヲ以テ二人區トシナイ
カト云フコトニ付キマシテハ、是ハ洵ニ十區ノ遠賀、鞍手、
嘉穗ト十六區ノ企救、田川、北五郡ヲ一人宛ニ割リマスル
ト、反對黨ノ諸君ガ御心配爲サルノハ政友會ノ爲メニヤッタ
久政友會ノ爲メニヤッタノダト申シマスガ、諸君ノ言ハレ
ル通リニ直シマスルト、此五郡カラ遠賀、企救ノ一一郡ヲ合併
致シマシテ四ツニ分ケマスルト、政友會許リ全部出テシマフ
ト云フヤウナコトニナルノデ、却テ是ハ諸君ガ政友會ノ爲メ
ニ作ッタト云フコトニ、反對スル現象ニハ事實ナラナイノデア
ル、諸君遠賀鞍手ハ筑前デアリマシテ、企救ハ豐前デアリ
マス、又遠賀方面ト企救トノ便利ナル交通ハ、獨立選擧區
デアッタ八幡市ヲ經由スル許リデアリマス、其他ノ方面ハ山
脈續キデ、此組合ハ決シテ適當デナイノデアル、諸君ハ地圖
モ知ラナイデ唯人口ダケヲ見テ、政友會ノ爲メニ此郡ハ勝
手ニヤッタトカ云フガ如ク言フノハ、甚ダ無理ナ主張ナリト
私ハ思フノデアリマス、更ニ(「違ッテ居リマス」ト呼フ者アリ)
長崎縣ノ六區デアリマス、長崎縣ノ六區ニ付テハ先刻不
公平デアルト云フヤウナ說明ヲ承リマシタガ、是ハ其選出區
ノ同僚カラモ唯〓御話ヲ承リ、又地圖ヲ見マスレバ長崎縣
ノ五區六區ハ北松浦、南松浦、壹岐、壹岐ハ御承知ノ通
リ島デアリマシテ、之ヲ何故此通リニシタカト云フコトデア
リマスルガ、地圖ヲ御覽ナサレバ分リマスガ、交通ノ便カラ
考ヘテ、舊選舉區カラ鑑ミマシテ、原案ハ最モ其交通ニ於
テモ、行政區劃ニ於テモ、適當ノ割方デアルノデス、此長崎
縣ノ北松浦、南松浦、其間ニモウ一ツ島ガアリマシテ、更ニ
對馬ヲ入レロト云フコトデアリマスガ、到底是ハ交通ノ上カ
ラ總テノ取引ノ上カラ、サウハナラヌモノデアルト云フコトハ、
此圖ヲ御覽ナサレバ是ハ貴方ガタノ中ニモ長崎ノ御方ガ御
出デヽアリマセウカラ、能ク實際ニ臨ンデ見マスレバ、何モ私
ノ說明ヲ聽クマデモナク、無理デナイト云フコトガ明カニナ
ルデアラウト思ヒマス、以上ノ次第デアリマシテ、卽チ此選
擧區制ニ付キマシテハ、政府ニ於テノ調査ハ相當ノ理由ト
相當ノ根據ガアッテ、決シテ一黨派トカ、一部ノ政黨ノ爲メ
ニヤッタモノデ無イト云フコトハ明カデアリマス(「ノウ〓〓」ト
呼ビ拍手起ル)殊ニ此高知縣ノ事デアリマス(「山梨ヲ願ヒ
マス」「山梨一ツデ問題ハ解決ガ出來ル」「時間活用ノ意味
ニ於テ山梨ダケデ降壇ヲ願ヒマス」ト呼フ者アリ)高知縣ノ
第二區ト第三區ヲ何故ニ平均ヲ期スル爲メニ、第三區ノ
長岡ヲ合併シテ二人區トシナイカ、斯ウ云フ主張デアリマ
スガ、長岡ハ交通上土佐ト極メテ密接ノ關係デアリマシテ、
舊選舉區ニ依リマシテ、土佐長岡ヲ以テ一區トシテアッタノ
デアリマス、又安藝ハ縣ノ東端ニアリマシテ、交通不便ノ地
域デアッテ、香美ヲ中間ニ挾ンデ長岡ト此兩方ヲ合併スルガ
如キハ、交通及地形上適當デナイノデアル、故ニ原案ノ第三
區ハ小選擧時代ノ區域ト同ジデアリマシテ、政府ガ此二
區三區ヲ定メタト云フコトハ、最モ適當ナル所ノ是ハ組方
デアルノデアリマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)次ハ山梨縣ノ
事ヲ說明セイト云フコトデアリマスカラ、山梨縣ノ事ヲ謹デ
說明シヤウト思フノデアリマス(「謹聽々々」「ヒヤ〓〓」ト呼
フ者アリ)山梨縣ノ問題ニナッテ居リマス第二區ハ、東山梨、
西山梨、北巨摩、中巨摩ノ四郡二人區デアリマス、是ハ原
案ハ二人區ニナッテ居リマスモノヲ津田君カラ昨日修正案
ガ出マシテ、束西山梨ヲ一區トシ、北巨摩、中巨摩ヲ一區ト
シ、之ヲ二分スルト云フコトニナッタノデアリマシテ、吾黨ハ
之ニ贊成致シタノデアリマス(「贊成ノ理由ハ」ト呼フ者アリ)此
賛成ノ理由ハ、元來二人區ト云フモノハ-原則ハ一人區
デ出セルナラバ一人區デ出スノガ宜イノデアルカラ、此趣意
ニ於テ二ツニ分ケルト一云フコトハ原則ニ合致スルノデアル、
又人口ノ點カラ行キマスト、片ッ方ハ九万何千、片ッ方ハ十七
万ニナッテ居リマスカラ權衡ハ取レマセヌガ、併ナガラ地勢ヲ
見マスレバ、東西山梨ト中巨摩、北巨摩ト云フモノハドウ
云フ所デアルカ、諸君ノ如キハ先頃名士諸君ガ擧ッテ山梨
縣ニ御出デダヤウデアリマス、山梨ノ地勢ト云フコトハ私ガ
說明スルヨリモ、殊ニ下岡君、西君ノ如キハ能ク知ッテ居ラ
レルカラシテ、之ヲ二分スルト云フコトニ付テハ御賛成デナ
ケレバナラヌノデアリマス(「能ク知ッテ居ルカラ反對致シマス」
ト呼フ者アリ)殊ニ此四郡ノ町村ノ如キハ、組合町村ハ百
三アリマス、又町村ノ數ハ百二十四アル、全國ニ於テ、一選
擧區ニ於テ村ノ數ガ百以上アル所ハ三箇所有ルヤウデアリ
マス、其一ハ紀州デアリマス、紀州ノ日高、東西牟婁ガ百
十一アル、又モウ一ツハ百十五有ル處ガアリマス、其外ニ三
箇所有ルヤウデアリマス、其一ハ紀州デアリマス、紀州ノ日
高、東西牟婁ガ百十一アル、又モウ一ツハ百十五有ル處ガ
アリマス、其外ニ町村ノ數ガ百二十四有ルト云フノハ此山
梨縣ノ第二區ヨリ外ハ無イノデアリマスカラ、此理由ニ依。ッ
テ吾〓ハ之ヲ二分スルト云フコトハ相當ナリトシテ之ニ賛
成致シタ次第デアリマス(拍手起ル)諸君ハ今日此議場ニ
於テ左樣ニ囂々反對サレマスケレドモ、(「ノウ〓〓」ト呼フ者
アリ)諸君ノ中デ選擧ノ事ニ最モ精通セラレテ居ル所ノ安
達謙藏氏ハ-不幸ニシテ議席ニ居ラレマセヌガ、安達謙
藏君ハ何ト言ハレテ居ル、山梨縣ノ二區ニ就テ何ト語ラレ
テ居ル、諸君、二月二十日ノ束京朝日新聞ノ、別表原案
ニ對スル安達謙藏氏ノ責任ヲ持シタ談話ニ何ト書イテアル
(「誰ガ責任ヲ持ッタト書イデ居ル」ト呼フ者アリ)責任ヲ持ッ
タト書イテ無クテモ、省モ政黨ノ首領ガ斯ノ如キ-是ハ二
分スルノガ相當デアルト云フ事ヲ明カニ書イテ居ルテハナイ
カ(拍手起ル)諸君、諸君ノ如キハ徒ラニ其時ト其場合ニ
依シテ(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)喧々囂々トシテ其都度ニ
依シテ反對セラレテ居ル(「徒ラニ言フノデハナイ」「何ンダ
徒ラトハ」ト呼フ者アリ)委員會及ビ其他ニ於テ別表ニ對シ
テ問題ニナッタ府縣ハ澤山アリマスガ、此議場ニ於テ問題ニ
ナッタ分ダケヲ說明致シマシテ、決シテ此別表ハ私心ヲ以テ
拵ヘタノデナイト云フコトヲ(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)私ハ
認メル者デアリマス(拍手起ル)諸君(「別表ハ私心ノ結晶
ナリ」ト呼フ者アリ)諸君ハ此別表ノ如何ト云フ事ニ付キマ
シテ、別表ノ非難ヲスルヨリモ、モウ少シ御同樣ニ政黨ノ發
達ノ上ニ努力シテ、正々堂々ト御戰ヒニナル方ガマダ宜シ
イノデアリマス、諸君、諸君ハ大選舉區制ヲ主張シ、又或ハ
普通選擧ヲ提唱セラレテ居リナガラ、私ハ今諸君ノ提唱ス
ル所ヲ見マスルト、全ク其非難ヲ別表ノ上ニ注ガレテ居ル
ヤウデアリマスガ、此別表ノ爲メニ實ハ我黨內ニ於キマシテ
モ隨分別表ニ賛成スルニ付キマシテハ、我黨内ニ於テモ非
常ニ苦痛ヲ忍ンデ居ル者モ澤山アルノデアリマス、實際我
黨ノ中ニ於テ、決シテ選出ノ代議士ガ之ニ滿足シテ居ル
者デハナイ、又諸君ノ方ノ側ヲ見マシテモ、諸君ノ黨議デ御
決定ニナッテ、三木君ノ如キハ元氣デアリマスガ、三木君ノ
本當ノ心事ハドウダ(拍手起ル)諸君本當ノ心事ハドウダ、
ドウ云フ感ジガスル、諸君、サウ云フヤウナ事デハイケマセヌ
(笑聲起ル)憲政會ノ中ニ於テモ黨議ハ黨議トシテ、大體小
選擧區ニ於テ-別表ニ於キマシテハ數十囘直サレタトカ三
囘目ニドウトカ申サレルガ、此別表ハ段々精撰サレテ-交
通ノ便否、總テノ上カラ非常ニ精撰サレテ居ル、今囘ノ政府
提出案ハ、數字ナドハ幾ラ喰ッ付ケタイト言ッテモ、木ヲ割ッタ
竹ヲ割ッタヤウニハイクモノデハナイ、地勢人情總テノ點カラ
見テ、全ク公平ニ出來テ居ル、之ヲ行フ上ニ付テモ虛心坦
懷黨派カラ離レテ見タ時ニハ公平ニ見エルノデアリマス、諸
君私ハ政友會トカ憲政會トカ或ハ國民黨トカ云フ黨派ヲ
離レテ、假リニ吾〓代議士-衆議院議員ガ此處デ無記
名投栗ヲシタ時ニハ、此別表ニシテモ、小選擧區ニシテモ、
最大多數デ決スルデアラウト思フノデアリマス(拍手起ル)
諸君、實ニ此別表ニ付テノ御非難ハ此根據デアリマスケレ
ドモ、吾こノ見ル所デハ、最モ公平ニ出來テ居ッテ、非難スル
所ノ廉ハナイ、落度ガナイ、斯ノ如キコトデアリマスカラ、吾
吾ハ此政府ノ別表ニ對シテ同意致シマシテ、之ヲ是ナリト
認メル者デアリマス、更ニ最後ニ私ハ一言致シタイト思ヒマ
スガ、齋藤君ハ-憲政會ノ齋藤君ト三土君ガ、委員會ニ
於テ我黨ヲ代表シタ所ノ演說ノ言葉尻ヲ捉へマシテ-大
選擧區ト申シタノハ小選擧區ノ誤リデアル-小選擧區ノ
事ヲ申シタノヲ大選擧區ヲ採ッタヤウニ御報告セラレマシタ
ガ(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)三土君ノ演說ノ筆記ヲ御覽ナ
サレバ明カニナッテ居ル、諸君、ソレデ此席上ニ於テ三土君ガ
憲政會ノ主張ノ如キ事ヲ主張シタノデ無イト云フコトハ、熱
シテ居ナイデ能ク冷靜ニシテアレヲ御覽ナサレパ明カニ分ル
ノデアリマス(「ソレ故ニ速記錄ヲ早ク調製スルコトヲ請來シ
タノダ」「男ラシクヤリ給ヘ」ト呼フ者アリ)決シテ卑怯デハナ
イ、サウ云フ譯デアリマス、更ニ國民黨ノ西村君カラ別表ノ
事ニ付キマシテ御說ガアリマシタ、岡山縣ノ事ハ西村君ハ
岡山縣デ御委シイカラ、唯今私ガ申上ゲタ事ヲ-兩者ヲ
御比較ニナッテ御判斷ヲ願ヘバ宜シイガ、鹿兒島縣ノ事デア
リマス、諸君、鹿兒島縣ノ事ハ偏頗ナ事ヲシタトカ、間違ッ
タ事ヲシタト云フ御說デアリマスガ、鹿兒島縣ニハ私ノ狸ヤ
狐ヤ憲政會ヤ國民黨ハ無イヤウニ承知シテ居ル、若シ有リ
マシタナラバ少數ノモノデ出セル地盤ハ無イノデアル、出セル
所ノ地盤ノ無イ所ヲ直ス必要ハ無イノデアリマス、何カ内
務大臣タル床次君ガ自分ノ縣ニ都合ノ好イヤウニシタト
申サレマスガ、鹿兒島縣ハ何ヲ苦ンデ選擧區ナドヲ變更ス
ル必要ガアリマスカ、殊ニ此別表ノコトニ就テ(「失言々々」
ト呼フ者アリ)又和歌山縣ノ御說モアリマシタガ、和歌山縣
ノ事ハ決シテ無理デナイ、又和歌山縣ノ事情ニ通ゼラレテ
居リマシタナラバ、多少ノ理窟ヲ付ケマスレバ、山ノアル處ト
カ川ノアル處トカ、理窟ハ付キマセウガ、和歌山縣ニ於テハ
國民黨ニ於テ大堀君前川君ガ居ラレマスコトデゴザイマス
カラ、多少ノ御批判、多少ノ理窟ハ付キマセウガ、此大體ノ
組立ヲ覆ス程ノ根據ノアル議論トハ受取レマセヌカラ、私ハ
此原案ノ方ガ適當ナリト信ジテ申上ゲル次第デアリマス、之
ヲ要スルニ別表ノ議論ハ是ハ悉クドノ縣デモ吟味ヲシテ參
リマシテ、理窟ヲ付ケルトシマスレ、バ三府四十六縣悉ク理
窟ガ付キマス(「ソレハ三百ダ」ト呼フ者アリ)ソレハ三百ダカ
ラ言ハナイ方ガ宜シイカラ、諸君モゴテー〓言ハナイデ、滿場
一致ヲ以テ此別表ヲ認メマスコトニ御賛成ニナッタラ宜イノ
デアル、デ之ヲ要スルニ(「何ヲ言フノダ」ト呼フ者アリ)諸君
ノ(「支離破滅」ト呼フ者アリ)諸君ノ御主張モ決シテ私ハ
無理デハナイト思フ、此改正案ニ付キマシテノ主張ハ、假令
二圓ト言ヒ三圓ト言フモ其差ハ一圓デアル、唯〓金ノ一圓
ノ差ノミデアッテ、其重大ナル點ハ政府案モ吾〓ノ主張スル
所モ、憲政會諸君、國民黨諸君ノ主張スル所モ大差ガ無イ
ノデアル、唯〓問題トナッタノハ(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)少
シノ差デアリマス、諸君ハ大變ナ差ガアルヤウニ御考ニナリ
マスガ、私ハソレ程ノ差ノアルモノトハ思ハナイノデアル、決
シテソレ程ノ差ノアル問題デハナイ、問題大選舉區、小選擧
區、此別表ガ本統ノ問題デアリマシテ、此點ニ付キマシテノ
議論ハ別デアリマスガ、選擧資格ナドニ付キマシテハ、ソレ
程靑クナッタリ赤クナッタリシテ論ズル程ノ事ハ無イノデアル、
若シ諸君ガソレラヤルトスルナラバ、ソレハ街フノデアル(「汝
ガ街フノダ」ト呼フ者アリ)諸君、之ヲ要スルニ此案ハ諸君
ニ於キマシテモ、此政府案ト云フモノハ決シテ無理デナイト
云フコトニ大體ハ腹ノ中デハ御了承ニナッテ居ルモノト私ハ
受取ルノデアリマス、故ニ此場合ニ於キマシテ諸君ハ男ラシ
ク諸君ノ案ヲ御撤回ニナリマシテ、政府提出、我黨ノ贊成
スル所ノ此度ノ改正案ニ快ク贊成ヲセラレマシテ、諸君ノ
希望スル滿場一致ヲ以テ此政府案ヲ可決シマシテ、其上デ
今度ハ改策ニ依ッテ爭ッテ、議員ノ頭數ノ爭ヲヤルト云フ御
決心ヲ持タレタ方ガ、國家ノ爲メニ私ハ宜シカラウト思ヒマ
シテ、政府案ヲ贊成致シマシテ此主張ヲ爲ス所以デアリ
マス
〔拍手起ル〕
〔政友會ハホット一息ダ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=59
-
060・大岡育造
○議長(大岡育造君) 本田恆之君
〔本田恆之君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=60
-
061・本田恒之
○本田恆之君 諸君、此憲法ノ附屬ノ重大ナル衆議院議
員選擧法改正案ヲ議スルニ當リマシテ、屢〓是迄ノ御辯論ノ
傾向ヲ伺ッテ見マスノニ、一時ヲ瞞過シテ此案ノ通過ヲ圖
ラントスルヤウナ(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)奇怪ナル御議論
ヲ屢〓伺ヒマスノハ、私ハ甚ダ遺憾ニ存ジマス(「ノウ〓〓」ト
呼フ者アリ)御互ニ此重要ナル法案ヲ議スルニ當リマシテ
ハ、最モ眞摯ニ、最モ眞面目ニ(「君ノ方ガ不眞面目ダ」ト呼
フ者アリ)論ジマシテ、而シテ其間ニ眞理ヲ發見スルコトヲ
努メマスルノガ、國家ノ前途永遠ノ爲デゴザイマス。苟モ此
議論ヲ通過スルトカ、通過シナイトカ云フ、唯〓目前ノ目的
ノ爲ニ此重大ノ法案ニ對シテ奇妙ナ議論ヲスルト云フコト
ハ、御互ニ遠慮シタイト考ヘマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)ソ
レデ私ガ申上ゲマスル事モ議論ノ順序ト致シマスレバ、前ノ齋
藤君ノ申述ベタ事ヲ繰返ス點ガアラウト思ヒマスガ、私ハ成
ベク之ヲ避ケマス、出來得ル限リ重複ニ出ヅルト云フコトヲ
止メマシテ、而シテ是マデ反對ノ意兄ヲ論ゼラレタ諸君ノ御
辯論ノ中ニ、殆ド一笑ニ附シテ可ナリト思フ點ニ付テハ、一
切ノ反駁ヲ省略致シマス、極ク出來ル限リ時間ヲ儉約致
シマシテ、後ノ尙ホ殘ッテ居ル所ノ多數ノ人ニ、十分ナル時
間ヲ讓ルト云フコトガ、私ノ此場合ニ於ケル德義ダラウト
考ヘマス、大體緊要ナ一一三ノ點ニ向ッテ卑見ヲ申上ゲマス、
屢、是マデノ論者モ論ゼラレタル如ク、此法案ノ緊要ナル點
ハ二點アリマス、第一ハ選擧區制ノ問題、第二ハ選擧權ノ
擴張ノ問題、此二點ニ外ナリマセヌ、其選擧權擴張ノ方ノ
側ニ於キマシテハ、國民黨カラ出テ居リマスル案モ、吾ミノ
案モ政府案モ、兎モ角モ十圓ト云フ納稅額ヲ、二圓若クハ
三圓ニ減ジタト云フ點ハ、同一ノ方向ニ向シテ居リマス、更
ニ智識階級、詰リ中學校師範學校ノ卒業生若クハ是ト
同等以上ノ學力アリト認メタル所ノ檢定試驗ノ及第者、
此智識階級ニ對スル點ニ向ヒマシテハ、國民黨卜吾〓ト同
一方向ニ立ッテ居リマスケレドモ、政府案ト云フモノハ全ク
反對ニナッテ居リマス、此點ニ向ッテ大體ハ齋藤君カラ御辯
論ニナッテ居リマスガ、更ニ一應ノ批評ヲ試ミテ見タイト思
フノデゴザイマス、一體床次内務大臣ガ此點ニ向ッテノ說
明ノ大要ヲ申シマスレバ、今中學校ノ卒業生ガ日本ニ五十
三万人居ル、其中ノ十五万人ト云フ者ハ三百圓以上ノ納
稅者デアルカラ、此中カラ引カナケレバナラヌ、更ニ二十万
人ヲ引キマシテ、詰リ殘ル所ガ十八万人デアルシ、ソレニ又
我ガ憲政會ノ法案デ見マスレバ、之ニ獨立ノ生計ヲ營ム者
ト云フコトヲ加ヘテ居リマスルカラ、餘ル所ガ十万カ十二三
万ニ過ギマイ、斯ウ云フ御推定デアリマス、吾こノ考デモ多
分其位ノ計算ニナルデアラウト考ヘマス、此十八万ノ中カ
ラ獨立ノ生計ヲ營ンデ居ル者ト云フ者ヲ取除ケマスレバ、
約三分ノ二ガ此方デアルト云フ計算ヲ致シテ居リマスカラ、
十二万ト云フ數字ガ出ル、此十二万ト云フ數ガ出ルノハ'
政府ノ御計算モ吾ニノ計算モ一致イタシテ居ルノデアリマ
ス、此十二万ト云フ數ニ對シテ何故ニ之ニ選擧權ヲ與ヘヌ
カト云フ吾〓ノ攻撃ニ對シマシテ、政府ノ辯明ニ依リマスレ
バ、政府ハ斯ウ言フノデアル、第一二學校ノ卒業生以外ノ
者ニモ智識ヲ持ッタ者ガ澤山居ル、澤山居ルカラソレニ與ヘ
ルノハ不公平デアルト云フノガ第一ノ理由、第二ノ理由ト
致シマシテハ、僅カ十万ヤ十二三万ノ人問ニ選擧權ヲ與ヘ
タ所ガ、今度擴張サレル所ノ選舉權ノ總數ト云フモノハ三
百万デアル、其三百万ニ對シテ十万ヤ十二三万ノ(此時發
言スル者多ク「謹聽々々」ト呼フ者アリ)與へルト云フコト
ハ、寔ニ大海ノ一滴デ、何等選擧權ヲ擴張スル上ニ影響ガ
ナイト言ハレルガ、政府ガ所謂吾〓ノ主張スル所ノ智識階
級ニ選擧權ヲ與ヘナイト云フ所ノ理由ハ、此二箇ノ理由ニ
基イテ居ルノデアリマス、(「能ク分ル」ト呼フ者アリ)然ルニ
(「簡單々々」ト呼フ者アリ)政府ハ甚ダ此間ニ-サウ云フ
說明ヲ致シテ居リマスルケレドモ、此間ニ大ナル誤謬ノアル
ト云フコトヲ政府ハ發見シナイノデアル、先ヅ數ノ方カラ申
シマスレバ、政府ガ吾〓ニ與ヘマシタ所ノ此表ニ依ッテ見マス
レバ、今度擴張致シマシタル-今度三圓ニマデ選擧權ヲ
擴張致シマシタル市部ノ有權者ノ總數ト云フモノハ、二十
八万九千三百四十五人ト云フコトニナッテ居リマス、約三
十万、是ガ郡部ノ方ニナリマスレバ、二百五十七万八千二
百六人ト云フコトニナリマス、約倍ニナルト云フコトニナッテ
居リマス、ソレデ此十圓ヲ三圓ニ選擧權ヲ低下シタ結果ト
致シマシテ、郡部ノ方ノ增加率ガドウナルカト申シマスルト、
其增加率ガ十割一分、市部ノ方ノ增加率ハ六割ニナッテ居
ルノデアリマス、是ガ郡市ノ均衡ヲ保タナイ、不公平デアル
ト云フコトヲ申シマスル重要ナ點ニナッテ居リマスノヂゴザイ
ひぐ、然ルニ唯今申シマシタ(「辯士交代」ト呼フ者アリ)十
二万人ト云フモノヽ中ニ、又之ヲ假ニ郡部ニ三分ノ一、市
部ニ三分ノ二住ッテ居ルト致シマスルト、市部ニ住ッテ居リマ
ス所ノ學校卒業生ト云フモノハ八万ニナル、其八万ノ有權
者ト申シマスル者ハ、二十万九千人ノ市部ノ有權者ニ較ベ
マスルト、約三割六分ト云フ數ガ出ルノヂアリマス、諸君、
政府ノ當局者ハ、三百万ニ對シテ十二三万ト云フモノハ、
大海ノ一滴デナイカ、サウ云フモノニ選擧權ヲ與フルノハ、
與フルモ、與ヘナイモ大シタ影響ハ無イヂヤナイカト言ハ
レルノガ、政府ガ此智識階級ニ選擧權ヲ與ヘナイト云フ理
窟ノ一ツニナッテ居ルノデアリマス、是ハ大ナル間違デ、智識
階級ガ市部ニ多ク住ッテ居ルト云フコトハ、政府モ異存ガナ
イ、大體ニ於テ政府ニ於キマシテモ、認メテ居リマスノデゴ
ザイマスル、サウ致シマスレバ、市部ノ有權者ハ僅ニ三十万
デアル、三百万足ラズデアリマス、三十万足ラズニ對シマシ
テ十万ノ有權者ヲ增スト云フコトハ、是ハ非常ナル增加デ
アル、詰リ正確ニ申シマスルト三割六分デアリマス、三分ノ
一-約三分ノ一ト云フ有權者ヲ增スノデゴザイマスルカ
ラ、此有權者ヲ市部ニ增加致シマスレバ、初メテ郡市ノ均
衝ヲ得ルト云フコトヲ吾ミハ主張スルノデアリマス、其割合
ハドウナルカト申シマスルト、郡部ノ方ノ增加率ハ十割一
分、市部ノ方ハ六割デアリマスカラ、之ニ持ッテ參リマシテ三
割六分ト云フモノヲ加へマスレバ、卽チ郡部ハ十割一分、市
部ハ九割六分ト云フコトニナリマシテ、略〓其均衡ヲ保ツト
云フ狀態ニナルノデアリマス(「些トモ分ラヌ」ト呼フ者アリ)
內務大臣ハ寔ニ大ザッバナ計算デ、十万ヤ十五万、或ハ十
八万位ノ數ヲドウスルカ、斯ウ云フ事ヲ言ハレマシタガ、假
ニ之ヲ八万ト致シマシテモデス、八万ト致シマシテモ、諸君
ノ御考慮ヲ願ハナケレバナラム事ガゴザイマスルノハ-(「聞
ヱヌ」「靜肅ニ」ト呼フ者アリ)今度ノ改正案ニ依ル市部ノ議
員ノ定數ガ全部デ百八人デアリマス、議員定數ハ百八人デ
アリマシテ、今度ノ市部ノ有權者總數二十八人九千三百
四十五人ト云フモノヲ割ッテ其平均數ヲ見マスレバ、一人ノ
當選點ト云フモノガ二千六百七十九人ト云フコトニナリマ
ス、二千六百七十九人ノ市部ノ選擧權ト云フモノハ、一人
ノ代議士ヲ選出スルコトガ出來ル所ノ力ヲ持ッテ居ル權利
デアリマス、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)此二千六百七十九人
ト云フ數ヲ以チマシテ、市部ニ住居シテ居リマスル智識階
級ノ獨立ノ資格ヲ具へテ居ルト見込ンデ居ル八万人ヲ割
リマスレバ、三十一人ノ代議士ヲ選出シ得ル所ノ力ニナル
ノデアル(拍手起ル)唯〓十五万ダ、或ハ十八万ダ、十二万
ダ、或ハ十万ダ、ソレ位ノ數ハドウデモ宜イヂヤナイカト云フ
コトガ、內務大臣ノ口吻トシテアリマスルケレドモ、吾ミハサウ
大ザッパニシテ此法律ヲ定ムベキモノデナイ(「ヒヤ〓〓」ト呼
フ者アリ)唯今申上ゲル通リニ、八万ダケ市ニ住ッテ居ルト
云フ計算ヲ致シマシテモ、此八万ノ有權者ノ力ヲ以テ三十
人ノ代議士ヲ選出スル力ガアルノデアリマス、サウ致シマス
ルト、私ハ此八万ノ有權者ニ輕々ニ看過シテ、僅カソレ位ノ
數ハドウデモ宜イト云フガ如キコトハ、此選擧權ト云フヤウ
ナ緊要ナル大法律ヲ決定スル場合ニ於テ、餘リニ杜撰、餘リ
ニ輕卒デアルト云フコトヲ免レヌデアラウト思ヒマス(拍手起
リ「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)ソレカラ此場合ニ内務大臣ガ-
此間モ說明ニナリマシタガ、凡ン今度ノ有權者ハ三百万デ
アル、三百万ニ對シテ十万ソコ〓〓ノ權利ト云フモノハ、寔ニ
數ニナラヌヂヤナイカト言ハレルガ、是ハ比較ノ根柢ヲ謬ッテ
居ル、吾ヒハ此十万ト云フ市部ニ住ッテ居ル人間、之ニ選擧
權ヲ與ヘルナラバ、郡市ノ均衡ヲ失フ所ノ-郡市ノ此偏
重偏輕ナル不結果ノ均衡ヲ全ウスルコトガ出來ルト云フ主
張ヲスルノデアル、然ルニ內務大臣ハ此ニ於テ耄ケマシテ、
三百万ノ數ト云フモノヲ土臺ニ置イテ勘定ヲ致シマスカラ、
十万ノ數ト云フモノハ僅カデアリマスルガ、市部ノ全部
ノ有權者ノ數ハ三十万足ラズデアリマスルカラ、之ニ對シ
テ十万ノ數ト云フモノハ看過スベカラザル大數デアルト云フ
コトハ、諸君ニ於テモ爭フコトノ出來ナイ一ツノ事實デアラ
ウト思ヒマス(拍手起ル)又吾ミハ此智識階級ニ選擧權ヲ
與ヘル利益ノ一ツト思ヒマスルノハ、選擧界ヲバ廓〓スルト
云フ上ニ於テ非常ナル利益ガアルト思フノデアル、御承知ノ
通リ屢、此演壇デ御述ニナリマスル通リニ、現在ノ日本ノ選
舉界ノ腐敗ト云フモノハ、殆ド極點ニ達シテ居ル、甚ダ御互
ニ國家ノ爲メ憲政ノ爲メニ〓歎ニ堪ヘヌト思ヒマス、此選
擧界ノ腐敗ヲ如何ニシテ矯正スルカト云フコトハ實ニ重大
ナル問題デアル、是ハ吾こモ矢張普通選擧ト云フ方式ニ於
テ非常ニ有權者ヲ增シテ、之ヲ救濟スルノガ一番良イト思
ヒマスルケレドモ、此普通選擧ヲ實行スルニ付テハ、其時ノ
社會ノ狀態ト適合シナケレバイカヌ、我國ノ社會ノ有樣ハ
未ダ普通選擧ヲ實行スルニ不適當デアルト認メテ、制限選
擧ヲ認メマシタ以上ト云フモノハ、此場合ニ於テハ切メテハ
此智識階級ニ選擧權ヲ與ヘマシテ、之ヲシテ日本ノ選擧界
ノ腐敗ト云フモノヲ覺醒セシムルト云フ利益ガアル(「分リマ
シタ」「分ッタラ賛成ナサイ」「簡單々々」ト呼フ者アリ)ソレ故
ニ僅ニ三百万ニ對スル十万カ十八万ノ數ハ、內務大臣ガ
言ハレマス通リニ僅カナ數デハアリマスケレドモ、是ガ一ノ〓
凉劑トナル、例へハ十人ノ腐敗シタル分子ノ中ニ、一人ノ立
派ナ人間ガ居リマスレバ、立派ナル人間ノ行爲ニ恥ヂテ、十
人ノ者ガ襟ヲ正シウスルヤウナモノダ、ワイノ〓シタ連中ガ居
リマシテモ、其中ニ一人偉イ人ガ居ル、例ヘバ此多數ノ中
ニ-先程例ニ出マシタカラ私モ名ヲ引クコトハ憚リマセヌ
ガ、原敬君ノ如キ偉イ人ガ一人居レバ、何百人カ居ル者ノ
行ガ原敬君ト同一ノ行動ニ行クノデアル、是ハ偉イ人ガ一
人居レバ、百五十人二百人ノ人ヲ率ヰルコトガ出來ル、三
百万ノ人間デ十万ノ正シイ人間ガ居リマスレバ、是ガ選擧
界ノ腐敗ヲ救濟スルニ付テ非常ナ利益ガアル、譬ヘテ申シ
マスレバ、腐ッテ居ル水ノ中ニ明礬ヲ投込ムヤウナモノ、僅カ
ナ明礬ヲ入レマシテモ、其濁水ガ悉ク奇麗ニナルヤウナモノ
デゴザイマスカラ、少數ナリト雖モ此〓凉ナル分子、智識ア
ル分子、德義アル分子ト云フ者ニ、選舉權ヲ分配スルー云
フコトハ、此日本ノ腐敗シタル選擧場裡ヲ覺醒スルニ就テ、
最モ必要ナル手段ノ一ツト考ヘマスカラ、此點カラ考ヘテモ
吾ミガ此智識階級ニ選擧權ヲ分配スルコトハ、必要ナ事デ
アルト思フノデアル(拍手起ル)選擧權ノ擴張ノ點ニ付キマ
シテハ、多クハ其他ニ亙ル點ハ齋藤君カラ御話ニナリマシタ
カラ、省略致シマス(「今度ハ何ダ」「分リマシタ」ト呼フ者ア
リ)他ニ論點フ變ヘマシテ申上ゲマス、卽チ選擧區ノ事ニ就
テ申上ゲマス、選舉區ノ事ニ就キマシテモ、屢〓論ゼラレテ居
リマスガ、私ハ此點ニ就テ殆ド項目ダケヲ申上ゲル、詰リ私
ノ考デハ選擧區ト云フモノガ非常ニ狹クナリマスレバ、選擧
區ノ彈力ヲ失フト云フノガ、私ガ不適當デアルト考ヘテ居ル
一點デアリマス、此點ハ物ノ見方ニ依リマスルガ、政府トハ
全ク反對デアル、政府ハ選擧區ガ小サクナレバ、ソレガ固定シ
テ固クナッテ、サウシテソレカラ選出スル代議士ト云フ者ノ基
礎ガ固クナル、ソレ故ニ政黨ノ發達ノ上ニモ宜イト、斯ウ云
フコトヲ言ハレマシタガ、私ハソレガ寧口選擧區ヲ小サク致
シマスル所ノ弊害ノ一ツトシテ勘定スルノデアル、私ハ選擧
區ト云フモノハ頗ル彈力ニ富ンデ居ナケレバナラヌ、彈力ニ
富ンデ居ナカッタナラバ、此立憲政治ト云フモノハ發達スル
モノデナイト云フコトヲ考ヘルノデアル、殊ニ我國ノ今日ノヤ
ウナ政情ニ於キマシテハ、最モ是ガ必要デアリマス、我國ノ
政情ハドウ云フ有樣デアルカト中シマスレバ、或ハ直接若ク
ハ間接ニ於キマシテ、選舉區ガ狹クナリマスレバ、代議士ト選
擧區ノ人民ト云フモノノ間ニ、政見ヲ以テ離合集散スルニ非
ズシテ、情實ニ依ッテ此間ガ結合サレルヤウナ傾向ガアル、是
ハ私ガ言フマデモナク、諸君ガ能ク御承知ノ通リデアリマス、
斯ウ云フ場合ニ於テハ此選擧區ト云フモノヲ狹クスレバ狭
クスル程、其情實ノ關係ト云フモノガ必ズ密接ニナッテ來ル
ト思フノデアリマス(「新シイ說デハアリマセヌナ」ト呼フ者ア
リ)ソレデドウ致シマシテモ此選舉區ヲ廣ク致シマシテ、其主
義政策ニ依シテハ、其人ノ當選ガ忽チ危クナル、又主義政策
ガ洵ニ正シクアッテ、國民多數ノ同意ヲ得レバ、其人ノ當選
ト云フモノガ確實ニナルト云フヤウニ、屈仲自在、彈力ガアル
ト云フコトデナカッタナラバ、日本ノ憲法政治ハ發達シナカラ
ウト私ハ考ヘル、此點ニ於テ全ク政友會及政府ノ意見ト吾
吾ハ反對ノ意見ヲ持ッテ居リマス、又唯今モ武藤君ニ依シテ
昨日ノ三土君ノ演說ノ趣意ヲ訂正サレマシタガ、政府ト云
ヒ、政友會ト云ヒ、此小選擧區ト云フモノガ少數代表ニ不
適當デアルト云フコトハ斷言シナイ、唯、三土君ノミハ昨日
ノ委員會ニ於テ斷言サレマシタガ、政府ノ從來ノ主張ニ依
リマシテハ、小選擧區ト云フモノガ少數代表者ヲ選出スル
ノニ不適當デアルト云フコトハ斷言シ切ラナイノデアル、而
シテ適當デアルカト云フノニ、適當デアルト云フコトヲ斷言
ガ出來ナイ、ドッチカ分ラヌト云フヤウナ瞹味ナコトヲ言ッテ
居リマス、私ハ此少數代表、或ハ他ノ言葉デ申シマスルト、
勢力相應ナル代表者ヲ此議場ニ出スト云フコトガ、立憲政
治ノ發達ノ上ニ於テ必要ナリヤ否ヤト云フコトヲ考ヘテ見
マスルノニ、無論私ハ必要ヂアルト思フノデアル、世界ノ現
今ノ學者政治家ガ、勢力相當ノ代表ヲ以テ此各種ノ勢力
ヲ議場ニ現ハサウ、如何ニスレバ現ハレルカト云フコトハ、議
論ノ一ツトシテ〓究致シテ居リマス、言葉ヲ換ヘテ申シマス
レバ、少數代表ヲ議場ニ送ルニハ、如何ニシテ送ルカト云フ
コトヲ〓究致シテ居ルノデゴザイマス、然ルニ內務大臣ハ此
點ニ付テ少數代表ト云フモノヲ出シ得ルト云フノハ、小選
擧區ト大選擧區ト孰レガ善イカ惡イカ不明デアル、ハッキリ
分ラヌト云フコトヲ、此壇上ニ於テモ內務大臣ガ言ッテ居ル
ノデアリマス、併ナガラ私ハ斯ウ云フ選擧法ノ如キ法律ヲ議
スベキ場合ニ、此重要ナル論ヲ逸シテ、不明ニ置イテ、曖
昧ニ付シテ、其儘ニ議決スルト云フコトハ、甚ダ私ハ宜クナ
イ遣方デアルト考ヘル、吾ミハ明ニ少數代表ヲ選出スルノニ
不便デアルト云フコトヲ確信致シテ居リマス、唯〓其論ヨリ
モ證據ヲ諸君ノ御覽ニ供シタイト思フ(「モウ分リマシタ」
「簡單」「謹聽」ト呼フ者アリ)少々咽喉ヲ痛メテ御聽苦シウ
ゴザイマセウケレドモ、暫ク御聽キヲ願ハヌト、益"時間ガ掛カ
ルダケデゴザイマス、第一囘カラ第六囘マデガ、御承知ノ通
リニ小選擧區デ實行サレ夕我國ニ於ケル選舉ノ度數デアリ
マイ、第七囘カラ第十三囘マデガ、大選擧區デ選擧ヲ致シ
マシタ實例デゴザイマス、此選擧ノ結果ヲ見マスルノニ、落
選者ガ取得致シマシタ得票ガ、當選者ガ取リマシタ得票ノ
ドウ云フ割合ニナッテ居ルカト申シマスレバ、第一回ガ御承
知ノ通リニ九割一分、第二囘ガ六割六分三厘、第三囘ガ
五割三分四厘五毛、第四囘ガ五割、第五回ガ四割七分五
厘六毛、第六回ガ二割五分一厘七毛、斯ウナッテ居リマス、
詰リ落選者ノ取リマシタ廢ッタ票ノ割合ハ有效ニナッタ票ト
殆ド六分通リニナッテ居リマス、之ヲ正確ナル計算ヲ致シマ
シテ、一回カラ六囘マデノ落選者ノ取リマシタ票ノ步合ヲ
平均致シテ見マスレバ、五割五分五厘八毛ト云フコトニナッ
テ居リマス、是ハ小選擧區ニ於テ斯ノ如ク多數ノ無效ノ票ガ
現ハレタト云フコトノ一ツノ證據デアリマス、更ニ第七回カ
ラ第十三回ヲ見マスルニ、一々擧ゲマセヌガ、平均致シマス
ルト二割六分五厘三毛トナル-二割六分五厘三毛落
選者ノ得票デゴザイマスカラ、全ク廢ッタ票デ-廢ッタ票ガ
小選擧區ノ場合ハ平均致シマシテ五割五分五厘八毛トナ
ル、大選擧區ノ場合ニナリマスト二割六分五厘三毛トナッ
テ居リマス、如何ニ此表ヲ見マスレバ、小選擧區ト云フモノ
ガ少數代表ヲ選出スルニ不便デアル、少數代表ヲ選出スル
ニ不便デアルト云フノハ、單リ理論及常識ヲ以テ判斷シ得
ルノミナラズ、實際ノ證據ニ基イテ否定スルコトノ出來ナイ
事實デアリマス(「選擧ノ狀態ガ變ッテ居ル」ト呼フ者アリ)左
樣-是ガ第一囘カラ第六囘マデヾアル、內務大臣モサウ
言ヒマス、段々ソレカラ發達シタト言ヒマスカラ、私ハ更ニ最
近ノ例ヲ此場合ニ申上ゲテ見タイ(「簡單ニ」「一向聽取レ
マセヌ」「簡單々々」ト呼フ者アリ)ソレハ昨年ノ十二月英國
ニ行ハレマシタ例デアリマス、昨年ノ十二月英國ニ執行致
シマシタ(「何遍モ聽キマシタ」ト呼フ者アリ)致シマシタル總選
擧ノ結果ヲ私ノ議論ヲ確メル爲ニ申上ゲマス、總投票數ガ
九百六十八万千十四票デアリマス、其中ノ聯立派、卽チ政
府黨ガ取リマシタ總數ガ五百九万千五百二十八票デアリ
やっ、反對黨ガ取リマシタ總數ガ四百五十八万九千四百
八十六票デアリマス、サウ致シテ政府黨ガ五百九万卽チ約
五百万ノ得票ニ於キマシテ當選致シマシタル代議士ノ數ガ
四百四十七人デアル、デゴザイマスルカラ之ヲ人平均ニ
割リマスト、約一万六百人-約一万六百人ニ付テ一人
ノ代議士ヲ出シテ居リマス、ンレガ政府黨ガ取ッタ卽チ當選
ノ數ト得票ヲ割當テタ結果デアリマス、之ニ對シマシテ之ヲ
反對黨ガ取リマシタ、四百五十万ト云フ票ニ割當テマスレ
バ、四百三十人ト云フモノガ、當選シナケレバナラヌ、所ガ實
際ハドウナッテ居ルカト云ヒマスト、二百三十九人ノ當選シ
カナイノデアリマス、是ハ何故デアルカト云フコトハ、諸君ニ
向ンテ說明スル必要ガ無イ位デアル、英國ハ御承知ノ通リニ
極ク小サナル小選擧區ヲ實行シテ居ル所ノ國デアリマスカ
ラ、詰リ少數代表ノ票ト云フモノガ非常ニ廢シテ居ル、四百
三十人ヲ當選シ得ベキ投票ヲ持チナガラ、僅ニ二百二十
九人ト云フモノヲ當選セシメマシテ、二百一人失シテ居ル
ト云フモノヲト云フノガ、此少數代表ヲ擧ゲルノニ小選擧
區ガ非常ニ不便デアル不都合デアルト云フ的確ナル證據
デアリマス(拍手スル者アリ)是ハ何誰ト雖モ此少數代表
者ヲ出スノニハ不便デアルト云フコトハ爭フコトガ出來
ナカラウト思ヒマス、唯〓此爭フベカラザル事實ガアリマス
爲メニ、内務大臣ハ此事實ヲ正直ニ話ヲスレバ、少數代表
ニ不便デアルト云フコトガ顯著ニナルガ爲メニ、此事實ヲ蔽
ハンガ爲メニ、内務大臣ハ少數代表ヲ出スノニハ、大小選擧
區孰レガドウナルカ、ンコノ所ハ不明デアルト云フコトヲ言
ハレル、明敏ナル床次君ニシテ不明ナル筈ハナイ、ハッキリ
分ッテ居ル、日本ノ例ニ依リマシテモ、英國ノ例ニ依リマシテ
モ明瞭ニ分ッテ居ル事實デアリマスケレドモ、其結論ガ自然
ニ不利益デアル爲メニ、其點ガ不明デアルト言ッテ、其言葉ヲ
濁サレルト云フ態度ハ、甚ダ此選擧法ヲ決スル場合ニ於キマ
シテ、内務大臣ノ態度トシテ不眞面デアルト云フコトヲ甚ダ
遺憾ニ考ヘマス、ソレカラ小選擧區ニナリマスレバ候補者ガ
非常ニ增加致シマス、候補者ノ數ガ非常ニ增加スルコト
ハ、是ハモウ理窟ジヤナクテモ、選擧區ガ狹イ郡長デモ二三
年シテ居ッテ、其有力者ト懇意ニナレバ、直グニ候補者トナレ
ルト云フ便利ガアリマスガ爲メニ、候補者ガ非常ニ簇出ス
ルト云フ弊ガアリマス是ハ爭フコトノ出來ナイ事實デアル、
ソレカラソレ故ニ候補者ノ數ガ增加スル結果ト致シマシテ、
競争ガ非常ニ激甚ニナル、サウシテ競爭ヲ致シマスル性質
ガ、非常ニ險惡ニナッテ參リマス、是ハ日本ノ現在ノ此選擧
法ノ改マル前ノ狀態ヲ御承知ニナッテ居リマス方ハ、皆サン
御承知ノ筈デアル、第一囘第二囘第三回四囘ト云フヤ
ウナ選擧ノ場合ニ於キマシテ、日本ノ各地ニ行ハレマシタ所
ノ殺人ノ事實、殺人放火毆リ合非常ナ亂暴ナ狀態ニ陷ッタ
ト云フコトハ諸君御承知ノ通リデハアリマセヌカ、選擧區ガ
狹クナリマシテ、非常ニ競爭ガ激シクナルト共ニ、競爭ヲ致
シマス、性質ガ非常ニ險惡ニナッテ來ル、是ハ又言フマデモ
ナク數ガ迫ッテ狹イ間ニ戰ヒマスレバ、非常ニ激シクナルト云
フコトハ分リ切ッテ居ル、此弊ニ堪ヘズシテ大選舉區ニ改メタ
ノデハナイカ、此險惡ナル、此亂暴ナル競爭ガ餘リニ激シク
テ、ソレガ爲ニ殆ド親族友人故舊ノ間、或ハ地方ノ自治體
ナドヲ破壞スルト云フヤウナ非常ノ場合ニナッタ爲メニ、此
大選擧ヲ設ケタト云フ一ツノ基礎ニナッテ居ルデハアリマセ
ヌカ(「モウドウデス」「宜イデセウ」ト呼フ者アリ)デゴザイマス
カラ、小選擧區ヲ-小選擧區ガ宜イト言ハレルノハ唯〓政
黨ニ屬スル所ノ代議士ガ當選ガ仕易イ、唯〓是ダケガ政府
ナリ政友會ノ諸君ナリガ、極力主張セラルヽ所ノ理由ニナッ
テ居リマスガ、是ハ或ハサウカモ知レヌ、大キナ政黨ガテ豫
勢力ヲ張ッテ居ル政黨ハ、選擧區ヲ狹ク致シマシテ、他人ノ
侵入ヲ防グト云フ爲メニ、其候補者ガ當選仕易イ便利ガ
アルト云フコトナラバサウデアルケレドモ、サウデアルカモ知レ
マセヌガ、ンレガ決シテ國家ノ爲メニハ私ハ利益ニナラヌト
思フ、卽チ原案者ハ無競爭ガ非常ニ殖エル、無競爭ガ殖エ
ルト云フノガ、國家ノ利益デアルト云フヤウナ口吻ヲ以テ言
ハレマスケレドモ、無競爭ノ場所ガ殖エルト云フノハ、選擧區
ガ狹ッテ、他ノ人ガ這入リ込ムト云フノヲ杜絕シタ結果デア
リマス、決シテ是ガ國家ノ爲メナリ憲政發達ノ爲メナリトシ
テ利益デハアリマセヌ、斯樣ニ考ヘテ見マスレバ私ハ、小選擧
區ノ利益ト云フモノハ殆ド無イ、又況ヤ大人物ト小人物ト云
フ論ガ大分出マスルガ、是ハ言フマデモナク廣イ間ニ候補者
ヲ求メ、候補者ガ廣イ範圍ニ於テ競爭スル爲メ二、色ニノ人
ガ出テ來ルコトハ論ズルマデモアリマセヌ、小選擧區時代ト大
選擧區時代ヲ比較致シマスレバ、自ラ此代議士ト云フモノ
ノ心持、代議士ト云フモノヽ氣風、代議士ト云フモノヽ識
見、代議士ト云フモノニ大變ナ差ガアルト云フコトハ、是ハ
申上ゲルマデモナク、諸君ノ實驗セラレタ所デアラウト考ヘマ
ス、唯〓此場合ニ、松田君ハ小選擧區ト雖モ必ズシモ偉イ人
ヲ出サナイ譯ハナイ、偉イ人ヲ出シタデアル、出シタデアルト
云フ證據ノ爲メニ原敬君、床次君及中橋君ヲ例ニ引カレ
テ小選擧區ノ時代カラ、斯ヤウナ偉イ人カ出テ居ルノデアル
カラ小選舉區ト雖モ決シテ偉イ者ヲ出サヌ理窟ハ無イジヤ
ナイカト松田君ハ言ハレマシタ、私ハ此例ニ對シマシテハ實ニ
驚イタノデアル、私ハ一體斯ウ云フ議論ヲ此場合ニ、眼ノ前
ニ居ル人ヲ擔キ出シテ證據ニ供スルト云フコトハ餘リ、穩當
ノ遣方デナイト思フ、原君、中橋君及床次君ガ偉イカ偉ク
ナイカ知ラナイ、偉イカ偉クナイカ、或ハ偉イカモ知レヌ、偉
イカモ知レヌガ眼ノ前ニ居ル所ノ生キタ所ノ人間ヲ持ッテ來
テ是ガ小選擧區制ノ良イ所デアル、現ニ斯ウ云フ人ガ出テ
居ルト云フコトヲ反對黨ニ差向ケテ言ハレルト云フコトハ、
私ハ一體卑怯ナ遣方デアルト思ヒマス、私ヲシテ若シ忌憚
ナク言シムレバ、忌憚ナク私ノ意見ヲ述ベルコトガ私ノ體面
ヲ害セヌトスルナラバ、私ハ申シテ見タイ、併ナガラ苟モ私ハ
紳士デアル、紳士デアルカラ、決シテ紳士ノ人格上ノ非難或
ハ其人ノ人物上ノ事ヲ露骨ニ此公席ニ於テ論評スルコト
ハ、私ハ洵ニ愼マナケレバナラヌ事デアルト思フ、且又私ノ好
マザル所デアリマス、ソレハ人間ノ禮トシテ當前デアル、反對
ノ出來ナイ例ヲ持テ來テ、斯ヤウナ譯ジヤナイカト云フコト
ハ、自分ノ論據ヲ確ムル上ニ於テ、松田君ハ甚ダ卑怯ナ遣
方デアル、從來私ノ知ッテ居ル松田君トシテ、如何ニシテ斯
ヤウナ窮シタ事ヲ言ヒ出タカト考ヘテ見ルト、蓋シ松田君ノ
冷靜ナル理窟ノ上ニ鬪フ根據ガナイカラ、斯ウ云フ窮策ヲ
ヤッタノデアラウト私ハ考ヘル、如何ニモ私ハサウ思フノデア
ル、是ハ私許リデアルマイ、滿場ノ諸君悉ク同ジデアルト思
フ、甚ダ此眼ノ前ニ居ル人ヲ持ッテ來テ、此人ガ偉イカ偉クナ
イカト云フコトヲ討論ノ材料ニ供スルト云フコトハ怪シカラ
ヌ、反對ノ出來ナイ事ヲ自分ノ論據ニ供スルト云フ程卑怯
ノ事ハナイノデアリマス、反對スルノモ宜カラウガ、私ハ諸君
ノ德義心ニ訴ヘテ甚ダ不似合ナ反對ダト思フ、眼ノ前ノ人
ノ人物ヲ非難スルコトハ、諸君ハ不德義ト思ハヌカ知
ラヌガ、私ハ斯ノ如キ事ハ議論ノ材料トスベキ事デナ
イト考ヘル、ソレカラ松田君ハ唯今ノ改正案ヲ實行致
シマスレバ、松田君ノ御計算デハ政友會ガ百八十何名
憲政會ハ百七十何名ガ選スル、國民黨ハ三十何名當選
スル、斯ウ云フコトヲ言ハレマシタ、是ハ御互ノ見込デアリマ
スカラ論駁スル必要ガアリマセヌガ、吾々ノ計算スル所ニ依
レバ、是ハ偶然デアリマセウガ、非常ニ政友會ニ都合好ク編
成サレタ之政友會ニ都合ガ好イヤウニ區制ト云フモノガ
編成サレテ居リマスカラ、吾々ノ計算シタ所ニ依リマスレ
バ、之儘ニ實行致シマスレバ、政友會ノ當選スル者ハ二百
三十名、此二百三十名ト云フ算盤ガ吾々ニ出マス、恐ラク
松田君ト雖モ百八十名ハ出ルダラウト謙遜サレタ數ヲ御
出シニナッテ居リマスガ、是ハ恐ラク極ク間違イノナイ、堅イ
堅イ、堅イ上ニモ堅イ詮ジ上ゲタ數デアリマセウガ、何トナク
選擧法ヲ實施シタ結果、政友會ガ多數出ルノヲ憚ル所以
デナイカ、何故ニ斯ノ如キ事ヲ言ハレマスカ、何モソンナニ
遠慮スルニハ及バヌ、三百人出サウト四百人出サウト、政友
會ハ大ナル勢力ヲ有スルノデアル、何モ憚ルコトハナイ、ソレ
デ吾々ガ極ク公平ト云フ所ヲ見テモ、二百三十人ハ出ルダ
ラウト思フ、政友會ハタッタ百八十人、憲政會ハ百七十人、
國民黨ハ三十人シカ出ナイ、政友會ハ改正案ニ對シテ利
益ヲ得マセヌト云フコトヲ辯解セラレ憚カラレタト云フノハ、
抑々心中ニ疚シイ事ガアルカラ斯ウ云フコトヲ言フノデアリ
マセヌガ(拍手起ル)當前ニー堂々タル議會デアルナラバ、
政友會ハ勢力ガ多イカラ三百名出ル、三百五十名出ルト
言フテモ、何モ不都合ハナイト思フ、如何ニモ政友會ガ餘
計出マセヌト云フ爲メニ辯解サルヽノハ、此案ハ政友會ノ
利益/爲メ解決サレテ居ルト云フコトヲ頻リニ打消サント
スル辯解デアッテ、甚ダ女こシキ次第デアリマス、ソレカラ此
大選擧區ニナルト、非常ニ違反者ガ殖エルト云フコトハ、西
村君ガ前囘ニ辯駁ニナリマシタノデ、私ハシレデ西村君ノ
言ヲ拜借シテ置キマス、唯〓此場合松田君ハ逸サレタ事實
ガアル、松田君トモアラウ人ガ、何故此事ヲ忘レタカ、此小
選擧區時代ニハ、非常ニ酒ヲ飮ミ、懇親會ヲ遣ッタリ、御馳
走ヲシタ事ハ檢舉シナカッタ、ソレ故ニ選擧競爭ニ行キマス
ト、一村集ッテ大ニ酒ヲ飮ミ、其處デ演說ヲシテ、互ニ演說
シ合ッテ、意志投合シテ選擧シタコトハ、古イ諸君ハ皆ナ御
承知ノコトデアル、然ルニ選擧法改正後ハドウデアル、有權
者ガ來タラ「ラムネ」一本飮マシテモ是ガ選擧違反トナッテ拘
留サレル、茶菓子ヲ出シタト云ヘバ拘留サレル、斯ウ云フ風
ナ苛察ナ苛酷ナ檢擧ノ仕方、檢擧ノ方針ト云フモノガアリ
マスガ、前ニ酒ヲ飮ングリ飯ヲ〓っタリシテモ檢擧シナカッタ
時代ト比較シマシテ、ドッチガ犯罪ガ多イカ、卽チ大選擧區
制ガ違犯者ガ多イ、小選擧區制ガ少ナイト一云フコトハ、物
ノ比較ニナラヌモノヲ比較スルノデアリマス、根抵ニ於テ大
ナル誤リガアリマス、私ハ衷心尊敬スル松田君ガ、斯ヤウナ
事ヲ御存知ナイ筈ハナイト思フ、知ッテ居ルカラ斯ウ云フ比
較ノ出來ナイモノヲ比較シテ、此議場ヲ瞞過シヤウト云フニ
至ンテハ、確固タル證據ガナイカラデアリマス、(拍手起ル)之
ニ對シテ政府ノ態度及ビ政友會ノ態度ニ付テー-說明ニ
付キマシテ私ハマダ了解シナイ點ガ一ツアリマス、而シテソ
レハ重要ナ點デアルカラ申上ゲマス、此間モ私ガ委員會デ
言シテ置キマシタガ、更ニ此場合言フ必要ガアルト云フノハ、
此案ヲ議スルニ眞面目デナイト思フ、例ヘバ大選擧區ハ選
擧ニ費用ガ非常ニ多イ、選擧範圍ガ擴クナレバ選擧費用ガ
餘計ニ掛カル、是ガ良クナイト云フコトガ大選擧ノ弊害ト
政府ガ述ベラレテ居リマス、或ハ大選擧區ト云フモノハ全
部ニ涉ッテ競爭致シマスカラ、或ハ郵便代ニ致シマシテモ、車
代ニ致シマシテモ、多少ノ費用ガ殖エルト云フコトハ間違ナ
イ、雜費等ニ於テモ間違アリマスマイ、併ナガラ內務大臣自
身ガ言ハレル如ク、大選擧區トハ申シナガラ、其中ニ各私
設ノ小選擧區ガ設ケテアル、各政黨共ニ私設ノ小選擧區ヲ
設ケテ居ルカラ、結果ニ於テ小選擧區デナイカト云フコトヲ
云ハレル、其通リデアリマス、大選擧區デアリマシテモ、各政
黨共ニ私設ノ小選擧區ヲ設ケル、各"根據地ヲ置クト云フ
コトニ於テ、或ル範圍ヲ限ッテ競爭ヲスルノガ今日實際ノ有
樣デアリマス、ソレガ自然ノ分配ニナリマスカラ、少シモ各
政黨共無理ガ行カナイ、如何ニモ其通リデアリマス、ソレデ
アリマスカラ私ガ選擧費用ハドチラニシテモ同一デアル、選
擧區ノ大小ニ依ラナイト云フノハ、此理由アルガ爲メデアリ
やっく。大選擧區制ニ致シマシテモ、實際ニ於テ私設ノ小選
擧區デ戰ッテ居ル、小選擧區ニ致シマシテモ同樣デアリマス
カラ、選擧費用ト云フモノニ、大シタ違ヒハナイト主張スル
ノハ此故ダケデアリマセウ、然ルニ內務大臣ハ一方ニ於キマ
シテハ大選擧區ト云ヒナガラ、實際ハ現在ノ有樣ニ於テハ、
私設ノ小選擧區デ戰ッテ居ルデナイカト云フコトヲ主張スル
カト思ヒマスレバ、(「高聲ニ願ヒマス」「分リマセヌ」「分リマ
ス又「簡單々々」ト呼フ者アリ)主張ヲスルカト思ヒマスレバ、
又其費用ノ點ニ付テノミ、大選擧區ハ範圍ガ非常ニ廣イカ
ラ、金ガ餘計掛ルト言ハレマス、如何ニモ大選舉區制ガ內務
大臣ガ此國家ノ重要ナ法律ヲ決定スベキ說明ト致シマシテ
ハ、餘リニ誤魔化シデハアリマセヌカ、受取リ惡イデハアリマセ
ヌカ、他ノ一般ノ條項ヲ說明スル場合ニハ、選擧區ノ全體ニ
亙ッテ選擧スル如キ口吻ヲ用ヒ、他ノ一面ヲ說明スル場合ニ
於キマシテハ、大選擧區ノ中ニ小サナ選擧區ヲ設ケテ、狹イ
範圍ニ於テ競爭スルト云フ事實ヲ認メナガラ、右ニ於テハ狹
イコトヲ主張シ、左ニ於テハ大ナリト主張スルニ至リマシテハ、
此案ガ通過致シマシタナラバ、此案ノ精神、此案ノ根據ト云
フモノハドウナラウガ構ハヌト云フヤウナ態度ヲ政府ガ執ッテ
居リマスノハ、甚ダ此眞面目ヲ缺イテ居ルト云フ點ニ於テ遺
憾ニ存ジマス(拍手起ル「モウ止シタラドウダ」「ヤリ給へ〓〓」
又「簡單々々」ト呼フ者アリ)ソレカラ同志打ガ多イト言ハレ
ル-同志打ガ多イト言ハレル、或ハ多少アルカ知ラヌ又(「簡
單々々」ト呼フ者アリ)私ハ此點ニ就テ內務大臣ニ對シテ大
選擧區デドレ位同志打ガアッテ、小選擧デドレ位同志打ガ
アッタカ、事實ニ付テ伺ハナケレバナラヌト云フコトヲ質問致
シマシタ所ガ、內務大臣ハ調ベタコトガナイト言フ調ベタコ
トガナイト言フノガ內務大臣ノ責任ノ答辯デアリマスヨ、サ
ウ致シマスト大選擧區ハ同志打ガ多イト云フ、大選擧區ノ
惡イ-非ナル一點トシテ擧ゲタル事實ハ、何等根據アル
事實ガナイ、床次君ノ一ノ想像カラ割出シテ居ル論點デア
リマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)諸君ガ如何ニ「ノウ」ト言ハ
ウガ、諸君ガ如何ニ反對サレヤウガ、主張サレル內務大臣ガ
其點ヲ調査シタコトハナイト云フコトヲ明言シテ居ルノデス、
小選擧區ガ同士打ガ多イカ、大選擧區ガ同志打ガ多イカ
ト云フコトハ、是ハ調査シナケレバ不明ノ事實デアリマス、然
ルニ內務大臣ハ之ヲ何等調ベタコトモナク、何等根據ナク、
唯〓同志打ガ多イト云フ一ノ想像ヲ畫イテ、內務大臣ニ言
ハセマスルト、之ヲ達觀シテ-内務大臣ハ想像ト云フ言
葉ヲ達觀ト云フ、之ヲ達觀シテ、サウシテ之ヲ此法案維持
ノ一ノ理由ニ供スルニ至ッテハ、如何ニモ亂暴デアリマセヌカ
(「簡單」ト呼フ者アリ)甚ダ風聲デ御聽苦シイダラウト云フ
コトハ承知シテ居リマス(「簡單-」「靜肅ニ」ト呼フ者アリ)デア
リマスガ、モウ止メマスガネ、止メマスガ、甚ダ生憎ト此大問
題ヲ議スルニ當ッテ、風聲デ御聽苦シカラウト思ヒマスガ、御
騒ギニナルト尙ホ聞エナイ、ソレカラ先程松田君ハ大選擧
區デアリナガラ、少數黨ガ、卽チ少數ノ得票ヲ有チナガラ、
多數ノ代議士ヲ當選シタト云フ事實ニ付キマシテ、日本ニ
數年間行ハレタノヲ此所ニ朗讀ニナリマシタガ、ソレハサウ云
フ事ガアリマシタラウ、サウ云フ事ガアッタト云フコトヲ私ハ
認メマス、認メマスガ、シレニ反對ニ小選舉區ト云フモノハ、
又多數ノ得票ヲ有チナガラ、多數ノ勢力ヲ有チナガラ、代議
士ヲ餘計出シ損ナッタト云フ憂ガアリマス、一ツヤ二ツノ例
ヲ持ッテ參リマシタナラバ、雙方共ニ絕對ノモノデハナイノデ
アリマス、大選擧區ダッテ必ズシモ勢力ノ割合ニ對シテ當選
者ヲ出スト云フノニ一向間違ナイトハ言ヘナイ、小選擧區
デアルガ爲メニ少數代表者ガ絕對ニ出セナイト云フコトハ
言ヘマセヌ、是ハ何方ニ致シマシテモ、絕對ノモノデナイ、ケ
レドモ此大多數ヲ比較論究致シマスレバ、私ノ申シマス結
果ヲ生ズル、デアリマスカラ私ハ何處迄モ此小選擧區ト云
フモノハ實ニ今日弊害ノ多イ、殊ニ我國ニ之ヲ實行シテ非
常ナ弊害デアル、大選舉區ニ於テ僅ニ我國ノ此政治界ノ
弊害ヲバ救済シ得テ居ルノデアリマスカラ、此際ニ更ニ此選
擧區ヲ元ニ戾スト云フノハ我國ノ憲政ニ非常ナ逆轉ヲセシ
ムルト云フ結果ヲ惹起スト云フコトヲ斷言致シマシテ、此政
府案ニ反對ヲ致シマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=61
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062・大岡育造
○議長(大岡育造君) 中西六三郞君
〔中西六三郞君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=62
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063・中西六三郎
○中西六三郞君 懸案ノ各議案ニ就キマシテ、先程ヨリ
旣ニ長時間論難討議ヲ盡サレテ居リマス、靜ニ諸君ノ御論
議ヲ拜聽致シテ居リマスルノニ、要スルニ主題トナッテ居リ
マスル各論點ハ、純理ヲ以テ解決スルコトノ出來ル論點デ
ハゴザイマセヌ、要スルニ實際ノ經驗ト、當面ノ實狀ニ於テ
判斷サレベキ問題デゴザイマスガ故ニ、私ガ今此所ニ又多
少自分ノ心付ク事柄ヲ重ネテ論ジマシテモ、最早此議場ノ
御判斷ノ上ニ何物ヲモ加フルナシト認メマスガ故ニ、丁度此
機會ヲ汐時ト致シマシテ、私ハ委員長ノ報告ニナリマシタル
政府案ノ修正ニ贊成ヲ表スルニ付テ、一言ヲ費シテ置キタ
イト思フ、是ハ政府案ニ反對セラルヽ諸君ノ爲メニハ殆ド
無用ノ業ニ感ゼラレルカ知レマセヌガ、我院ニ於ケル當然
ノ義務デゴザイマスカラ、極ク壓榨シテ簡單ニ申述べマスカ
ラ、暫ク御忍ビヲ願ヒマス(「謹聽」ト呼フ者アリ)修正ハ政
府案ノ中八箇條ニ涉ッテ居リマスルガ、委員長ガ報告サレ
マシタル通リ、此中意義ノアル修正ハ僅ニ三箇條デアリマ
ス、卽チ第十三條、第五十五條、第八十九條、此三箇條ニ
止リマシテ、其以外ハ全ク法文ノ整理、自然ノ修正ニ過ギ
ナイノデアリマス、此三箇條ノ中ニ就テモ、十三條卽チ法人
ノ發起人ヲ原案カラ削ルト云フコト、五十五條卽チ開票ヲ
各郡市別ニ於テ行フト云フコトノ如キハ、各派共ニ一致サ
レテ居ル點デゴザリマシテ、何等費成ノ趣旨ヲ辯ズル必要ガ
無イ、實ニ明白ナル事デアル、八十九條ニ就テモ、大體ニハ
左シタル議論ノ無ノコトデゴザリマスルガ、是ハ本案審査ノ
上ニ於テ吾ミガ一應辯明ヲシテ置ク必要ガアルト感ズル、ソ
レハ此修正ノ如クニ致シマスルト云フト、八十九條ハ內容
ノ異ナル別箇ノ刑罰ガ三ツ列ブコトニナルノデス、卽チ第一
項ニハ投票漏洩ノ罪、第二項ニハ此度追加サレテ居ル卽チ
修正ニ係ル所ノ選擧妨害ニ關スル罪、第三項ニハ投票表示
强要ノ罪、一箇條ニ斯ノ如ク罪ノ內容性質ヲ異ニスル所ノ
形罰ガ三ツ列記サレルコトニナリマシテ、此種類ノ事ハ唯
今ノ刑罰法規ノ制定ノ例ニ依リマスルト、甚ダ異例デアル、
例ヘバ是ハ八十九條ノ一二、三トデモ致シマスレバ、他ノ
法文ト權衡ガ取レルカト云フコトニ心付イタノデアル、併ナ
ガラ更ニ此法文全體ヲ見マスルト云フト、現行ノ法律ノ中
ニ改正スベキ箇條ハ改正シ、削除シタノハ削除シ放シ、其箇
條ノ整理モシナイト一云フ風ナコトガ、近來行ハレル一種ノ
改正ノ仕方デアル、大體ガ左樣ナ改正ノ仕方デゴザリマス
ルカラ、他ノ刑罰法規ノ文例トハ稍、趣ヲ異ニスル嫌ハアル
ガ、故ラニ其體裁ヲ直スマデノコトハナイトシテ、此列記ノ修
正ニ同意ヲシタ次第デアル、尙又第三項ノ修正卽チ「官吏
又ハ吏員其職權ヲ濫用シ」トアル此職權濫用ト云フコトヲ
削ルト云フ、是ハ勿論委員會ニ於テモ何等異議ノ無イ點デ
ゴザイマシタガ、政府案ノ如ク致シマスルト云フト、職權ノ濫
用ト云フコトト、内容表示ノ强要ト云フコトノ、此二ツノ
要素ヲ具ヘテ初メテ罪ガ成ルト云フコトニナルノデゴザリマ
スルガ、職權ノ濫用卜內容ノ表元ノ强要、此二ツノ事ハ殆
ド多クノ場合ニハ原因ト爲リ結果トナリ、互ニ因果ノ關係ノ
アル事柄デゴザリマスルガ故ニ、之ヲ法文ノ上ニ別箇ノ獨
立ジタル二箇ノ構成要素ト致シマスルト云フコトニナルト、
却テ實際運用ノ上ニ於テ幾多ノ疑義ガ生ジマス、寧ロ是ハ
此修正ノ如クニ職權濫用ヲ削ッテ、單一ノ表示ノ强要ヲ以
テ罪ヲ構成スル要素トシテ何等差支ナイト認メルノデアリマ
ス、委員會ニ於テハ一步ヲ進メテ、此內容ノ表示ト云フコ
トヲモ、强要スル文字ヲ取ッテ、單ニ表示ヲ求メタト一云フコト
ニ於テ罪ノ成立スルコトニシタ方ガ然ルベシト云フ意見モゴ
ザリマシタガ、左様ニ單純ナル行爲ヲ罰スルコトニ致シマス
レバ、全ク公正ナル見地ニ居ル吏員ガ、適ニ不用意ノ間ニ
訊ネヲ致シマシタ其事柄ガ、直ニ罪ヲ成スト云フコトハ餘
リニ官吏公吏ヲ危險ナル位置ニ置ク嫌ガゴザリマスルカラ、
矢張此修正ノ如ク致スガ最モ妥當デアルト信ジタ次第デア
ル、此案ヲ審査致シマスル上ニ於テ、以上申上ゲタ外ニモ、
各箇條ニ就テ十分ナル注意ヲ怠ラナカッタノデアリマス、各
法文ノ間ニハマダ此外ニ字句ノ難解ノモノ、或ハ意義ノ不
明ノモノト認メラレルモノ、或ハ法文例トシテハ多少不體裁
ノ嫌ガアリト感ズルモノ無シトシナカッタノデアリマス、例ヘバ
七十四條ノ如キ、又ハ八條ノ二號三號ノ如キ、若クハ五十
條ノ但書ノ如キ、或ハ十一條ノ四號ノ中ニ「終リ」トアル文字
如キ、是等ハ若シ吾ニノ最モ滿足スル法文ニ爲サント欲ス
レバ、多少ノ修正ヲ爲セパト考ヘタノデアリマスルガ、併ナガ
ラ五十條或ハ十一條ノ如キハ、現行ノ他ノ法律ニ同ジ文
例ガ在リマス、又七十四條ノ如キハ、之ヲ解シ易キ文章ニ
改ムルガ爲メニハ、眇カラザル修正ヲ加ヘナケレバナラヌノデ
ゴザイマスル、旁、是等ハ政府ノ說明ヲ聽イテ、然ル上ニ此
法文ニ臨メバ、强チ解シ難キモノデナイト認メマシタカラ、必
ズ修正スルノ必要アリトモ認メヌ、總テ原案ノ儘ニ賛成スル
コトニ致シタ次第デアリマス、法文ノ修正ニ就テハ、〓要斯
ノ如キ次第デアリマスルガ、更ニ別表ニ於テ津田毅一君ノ提
議ニ依リ山梨縣ノ第二區ノ修正、之ニ就テ贊成ヲ致シマシ
タコトヲ矢張責任上一言致スノデアリマスルガ、併シ此事ハ
先刻來盛ニ討論ヲサレマシテ、私ガ〓改メテ論難ヲスル必
要ガ無イ、唯〓私ガ賛成ヲ致シマシタト云フ其所信ヲ極ク
〓括シテ申述ベテ、修正賛成ノ理由ヲ明カニシテ置キタイト
思フ、別表ヲ如何ニシテ當局者ガ拵ヘタカト云フコトニ就
テハ、委員會ニ於テモ、此本議場ニ於テモ、內務大臣ガ極
メテ責任アル言明ヲサレテ居リマス、卽チ或ル種ノ原則ヲ豫
メ元シテ置イテ、其原則ニ基イテ屬僚ノ手ニ調ヲサセタノデ
アル、熬ヒニ色〓實地ニ關係アル者ガ之ニ口ヲ入レルト云フ
ト却テ多クノ論議ヲ惹キ起シテ、公平ヲ破ル虞ガアルカラ、
原則ヲ與ヘテ屬僚ニ机上デヤラシタノデアルト云フコトヲ大
臣ガ言明サレテ居ル、而シテ此大臣ノ言明サレタ所ニ向ッテ
ハ、委員會ニ於テ吾ニノ認メタル所デ、總テノ委員ニ於テ其
大臣ノ誠意ヲ諒トサレテ居ッタト信ズルノデアリマス(「ノ
ウ〓〓」ト呼フ者アリ)委員會ノ速記錄ヲ御覽ニナレバ分リ
マスガ、現ニ委員會ニ於テ反對黨諸君ノ發言ノ中ニモ、大
臣ノ誠意ヲ直チニ非難スル御言葉ハ全ク吾ゝハ聽カナカツ
タノデアル、假令大臣ハ左樣ナ方法デ屬僚ニ命ゼラレタニシ
テモ、其出來タモノガ結果ニ於テ不公平デアレバト云フ事柄
ノ詮議ハ色こゴザイマシタ、併ナガラ吾ミハ諸君ト共ニ此大
臣ノ言明ヲ信ジマシタ以後、今迄ノ經過カラ考ヘマスルト
今日小選舉區ヲ採用シタ以上、別表ヲ作ルニハ此大臣
ノ執ラレタル手段ガ最モ妥當デアル、若シ今日ニ於テ實地
ノ關係ニ審カナル人ノ各般ノ情勢ヲ聽クト云フコトニナレ
バ、此實地ノ關係ト云フコトハ、同時ニ利害ノ矛盾ヲ意味
シテ居ルノデアルカラ、容易ニ纏ルモノデハナイ、故ニ斯樣ナ
方針デ大臣ガ命ジテ作ラシマシタ結果トシテ、此別表ニ對
シテハ反對黨諸君ガ色ミ非難サレルガ、常ニ反對黨諸君ノ
不滿足バカリデナイ、吾〓政友會同志ノ中ニ於テモ、澤山
此別表ヲ見テ一驚ヲ喫シタ人ガアル、是デハ困難デアル、或
ハ是デハ不條理デアル、不公平デアルト云フコトノ如キ、異
議不平ハ數々聞エテ居ッタノデアリマス、併シ各派ヲ通ジテ
斯ノ如キ不平異議ガアルト云フ事柄ガ、取リモ直サズ此案
ヲ制定スル上ニ於テ、當局者ガ公平ヲ目的トサレタト云フ
コトガ分ルノデアル、此點ニ於テ吾ミハ(「何故ニ改正セヌカ」
ト呼フ者アリ)御聽キナサイ、唯〓私ガ申スノハ其意味ニ於
テ當局ノ發案ヲ信用シテ、原案ノ儘修正セザラント欲シテ
居ッタノデアル、現ニ吾〓ハ諸君ガ御承知デモアラウガ、原案
ハ修正シナイト云フコトヲ以テ目的方針トシテ居ッタ、併ナ
ガラソレハ唯今言フ通リニ、大體當局者ノ趣意ヲ信用シテ
居ルカラ、吾ミカラ之ニ對シテ之ヲ直ストカ、ソレニ觸レルト
云フコトヲシナイ、斯樣ニ大體定メテ居ルガ、併ナガラ右樣
ナ見解カラ生ジ來ッテ居ルノデアルカラ、若シ他派ニシテ道
理アル主張ガアリマシタナラバ、ソレマデモ拒ムニハ及バヌ話
デアル(「誰ガ津田君ニ賴ンダ」ト呼フ者アリ)委員會ニ於テ
津田君ノ提議フ静ニ承リマシテ、吾ミカラ斯ノ如キ事ヲ發
議スルコトハ好マナイガ、本來ノ目的ニ向ッテ、卽チ原則ニ
向ッテ近ヅク所ノ分割案デゴザイマスカラ、能ク〓〓其點ニ
於テ不條理ガアレバ一致ハ致シマセヌガ、其土地ノ狀勢及
人口ノ關係カラ見テ、必ズ之ヲ拒ムベキ必要ナシト考ヘタガ
爲メニ同意ヲ與ヘタ次第デアル、斯樣ナ次第デアリマスルガ
故ニ、此別表ニ就テハ吾こノ信ズル所ハ當局者ガ之
ヲ編成シタル其所信ニ於テ信用ヲ與ヘ、其信用ノ下ニ
何等異議ヲ挾マナイノデアルト云フコトヲ御了解ヲ願
ヒタイ、齋藤君ハ先程別表ヲ攻撃セラルヽ時ニ當ノテ、委員
會ニ於テ數多ノ質問ヲ爲シタ、ソレニ對スル內相ノ辯明ハ
一モ信ズベキモノナシト云フコトヲ大聲疾呼サレタノデアル、
(「其通リ」ト呼フ者アリ)然ルニ現ニ昨日ノ委員會ニ於テ、
下岡忠治君ハ此別表ニ就テー當局者ガ說明サレタモノヽ中
デ、多クヲ承認サレテ居リマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)「ノ
ウ」ト御仰シヤレバ速記錄ヲ讀ム、下岡君ノ御話ハ斯樣デア
ル「其中三四ハ確カニ道理アルモノガアッタト思ヒマス、齋
藤君ノ質問ニ對シテハ全然惡イトハ思ヒマセヌ、其例ヲ申
セバ、群馬縣ノ如キ、神奈川縣ノ如キ、其一例デアリマス、其
他數箇所ニ就テ政府委員ノ說明ガ當ヲ得ヌモノト、私ハ
首肯シ得ベキモノガアッタコトヲ認メテ居リマス」現ニ下岡
君ハ斯クノ通リニ政府ノ辯明ノ多數ヲ首肯シテ居ラル
ルノニ、齋藤君ガ一モ首肯スベキモノナシト玆ニ確言シテ、
漫ニ政府ノ信用ヲ攻撃セラルヽコトノ如キハ、アノ思慮ノ周
到ナル齋藤君ニシテハ、甚ダ責任ナキ公言デアルト、私ハ齋
藤君ノ爲メニ惜シムノデアル(拍手起ル)「ソレガ山梨縣ノ選
舉ニ何ノ關係ガアルカ」ト呼フ者アリ)私ガ此修正案ニ就テ
賛成致シマシタル〓念ハ斯クノ通リノ次第デアル、其他詳シ
イ事ハ先刻來ノ議論デ盡キテ居リマスカラ、是デ私ノ責任ヲ
了ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=63
-
064・大岡育造
○議長(大岡育造君) 村松恒一郞君
〔村松恒一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=64
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065・村松恒一郎
○村松恒一郞君 諸君、今日ハ大問題ノ爲メデモアリマ
スルガ、前刻來ノ發言者諸君ガ可ナリ多クノ時間ヲ費ヤサ
レマシタ爲メニ、旣ニ八時ニモ垂ントスル有樣デアリマス、今
日ハ現ニ病蓐ニ在ラルヽ方ミモ力メテ御登院ニナッテ居ル場
合デアリマスカラ、本來ナラバ私ハ發言ヲ抛棄シテモ宜シイ
ノデアリマスルガ、今日吾こノ立場ハ少シク異ル境遇ニ居ル
ノデアリマシテ、現ニ局外カラ見レバ何ト評セラルヽカ知リマ
セヌか、他年所屬團體ト別レ、多年提携セシ所ノ政友ト手
ヲ切ッテ、今日此壇ニ上ラナケレバナラヌト云フ場合デアリマ
スカラ、暫時御靜聽ヲ願ヒタイノデアリマス、併ナガラ私ハ德
義ヲ守ッテ、今マデノ辯士ノ如ク唯一人デ一時間モ二時間
モ述ベルヤウナコトハ致シマセヌ極メテ簡單ニ私ノ主張ダケ
ヲ申上ゲテ置キタイト思ヒマス(「謹聽」「同感」ト呼フ者ア
リ)ソレデ前列來選擧權擴張ノ問題ニ就キマシテ、或ハ二
圓ト云ヒ、或ハ三圓ト云フ、之ニ就テ賛否交〓ニ御意見ガ
出タノデアリマス、之ニ就キマシテハ政府案ニ對シテ憲政會
ノ諸君ノ非難セラルヽ點ハ、憲政會ノ諸君ノ言ハレル所ガ
兎ニ角當ヲ得テ居ルヤウニ思フノデアル、又憲政會、國民黨
ノ案ニ對シテ、政友會ノ諸君ノ非難セラルヽ點ハ、是亦尤ノ
ヤウニ聞エルノデアリマス、此二ツヲ綜合致シマスルト云フ
ト、政府案モ、憲政會案モ、國民黨案モ、共ニ不徹底ニシテ
共ニ姑息ナルモノデアルト云フコトハ、旣ニ證明セラレルノ
デアル(拍手スル者アリ)故ニ私ハ此處デ此點ニ就テ諄ミシ
ク申上ゲル必要ハ無イト存ジマスルノデアリマスルガ、唯〓政
府案卜、憲政會案ト、國民黨案トノ中ニハ、兎ニモ角ニモ幾
分ノ相違ガアル、幾分ノ差ガアルノデアリマスルカラ、是ニ就テ
ハ多少ノ批評ヲ試ミナケレバナラナイノデアリマス、ソレデ今
更申上ゲルマデモナイノデアリマスルガ、選擧權ナルモノハ極
メテ廣ク、極メテ多ク、極メテ平等ニ、極メテ公平ニ與ヘルト
云フコトガ原則デアルノハ勿論ノ事デアルノデアル、然ラバ
現在此議場ニ現ハレテ居リマスル政府案ハ、果シテ此目
的ニ適ウテ居ルカ否ヤト申シマスレバ、極メテ此原則ニ遠イ
モノデアル、極メテ偏頗ニシテ、極メテ不公平ナルモノデアル
ノデアル、成程十圓ヲ三圓ニ引下ゲル、甚ダ多ク政府ガ選
擧權ヲ擴張シタ如ク見エルノデアル、又政府ノ辯明ニ依リ
マシテモ、現在ノ有權者數ノ倍額ニ增加シタノデアルカラ、
是ハ大擴張デアルト言ハレル、之ヲ聽クト如何ニモ尤ラシク
聞エルノデアリマスルガ、現在ノ數ガ既ニ百四十何万、倍額
ニナリマシタ所デ僅ニ一百八十万人、現在ノ日本ノ人口ハ、
大正二年末ノ調デサヘモ五千二百万人、今日ハ恐ラク六
千万-內地ダケデ六千万ニモ達シテ居ルデアラウト思ヒ
やくろ、シテ見マスレバ假ニ現在ノ有權者ノ數ガ倍額ニナリマ
シタ所ガ、僅ニ九牛ノ一毛、百人ニ割當テマスレバ、則チ僅
ニ五人二分ト云フガ如キ低率ノモノデアルノデアル、是ガ
果シテ國民ヲ意思ヲ代表スベキ代議士ト云フコトガ言ヘル
ノデアルカ、又此代議士ニ依テ組織サレル議會ガ、果シテ國
民ノ意思ヲ代表スル議會ト云フコトガ出來ルノデアルカ否
ヤ、而モ此三圓ナルモノハ成程十圓カラ三圓ニ引下ゲタト
言フケレドモ、現在此所得稅ニ致シマシテモ、營業稅ニ致シ
マシテモ、殆ド十圓以下ハ先ヅ無イト言ウテモ宜イ位ノモノ
デアルノデアル、又三圓ニ引下ゲル爲メニ均霑スル者ハ唯一
郡部ノ農家ダケデアル、若クハ市街地ニ於ケル極ク少數ノ
地主ニ止ルモノデアル、此點ハ最モ偏頗不公平ト言フノデ
アルノデアル、然ラバ此現在ノ政府案ガ極メテ不徹底ナルモ
ノデ、極メテ姑息ナルモノデアルコトハ、今更申上ゲル必要
モナカラウト思フ、然ラバ此憲政會若クハ國民黨、此案ニ依
リマスルト、一圓下ゲテ二圓ト、云フノデアル、三圓ヨリハ二
圓ノ方デ幾ラカ割安ニナッテ居ルニハ違ヒハナイノデアル(笑
聲起ル)然ラバソレガ爲メニドノ位殖エルカト言ヘバ、先刻
來代ル〓〓述べラレタ通リ、僅ニ五十万ノ人ガ殖エルニ過ギ
ナイノデアル、之ヲ政府案ニ引較ベマシテモ、其率步合ト致
シマシテ僅カ二厘ノ差ニ過ギナイモノデアル、不徹底ナル
コトハ共ニ同ジモノデアル、先刻齋藤君ハ頻ニ政府案ノ不
徹底ヲ非難サレタノデアリマスルガ、是ハ俗ニ所謂猿ノ尻笑
ヒ、三圓說ガ不徹底ナラバ、二圓說モ矢張不徵底デアル、
唯、此憲政會及國民黨案ニ於キマシテハ、智識階級ニ選擧
權ヲ與ヘルト云フコトガ、政府案ヨリハ稍〓進ンデ居ルノデア
ル-稍〓進ンデハ居リマスルガ、是モ亦共ニ不徹底ヲ免レ
ナイ、是モ先刻來旣ニ御議論ガ出マシクカラ、私ハ繰返シテ
申シマセヌガ、單ニ中學校卒業以上ニ與ヘルト云フコトデ
ハ、決シテ智識階級ヲ網羅シタモノデハナイ、既ニ中學卒
業以上ノ者ニ權利ヲ與へルト云フノナラバ、何故ニ一步進
ンデ小學校ノ卒業生ニモ矢張權利ヲ與ヘルト言ハナイノ
デアルカ、今日學科ノ上ニ於キマシテハ、中學校ト小學校デ
ハ多少ノ相違ガアルノデアル、併ナガラ是ガ社會ニ出テ働
ク上ニ就テ、果シテ幾許ノ相違ガアルカ、故ニ若シ此智識階
級ト云フ名ハ不穩當デアルカ知リマセヌガ、多少ノ〓育ヲ
受ケタ者ニハ選擧權ヲ與ヘルト言フナラバ、總テ此小學校
ノ卒業生マデニ及ボサナケレバ、決シテ徹底シタモノト言フ
コトハ出來ナイノデアル、ンレデ其結果、今日ハ何レノ案モ悉
ク不徹底ノ點ニ於テ同一ノモノデアルノデアル、殊ニ此政府
案ニ致シマシテモ、憲政案ニ致シマシテモ、國民黨ノ案ニ致
シマシテモ、二圓以下ハ與ヘナイト云フコトニナルト、二圓以
下ノ納稅額ニ居ル所ノ人ミ、竝ニ全ク納稅シナイ所ノ人ニ
ハ、全ク選擧ノ能力ナシト云フコトヲ表明セラレタモ同ジ事
柄デアル、一面カラ言ヘバ、國民ニ對スル大ナル侮辱デアル
ト私ハ思フノデアル、元來此立憲ノ本義カラ申シマスレバ、
少數ガ多數ニ服從スルト云フノガ、是ガ立憲ノ本義デアラ
ウト思フ、今日ノ選擧制度ニ於キマシテハ、僅ニ此現在ニ
於テハ十圓以上デアルガ、之ヲ擴張シテ二圓以上或ハ三圓
以上ト致シマシテモ、僅ニ二百八十万若クハ三百五十万
位ナ人間ニ依シテ代表セラルヽ所ノ此議會、是ガ六千万ノ
國民ニ支配サレルト云フコトニナレバ、卽チ少數ヲ以テ多
數ヲ服從セシメルト云フ結果ニ相成ルノデアル、立憲ノ本
義ニ遠キコト亦甚ダシト言ハネバナラヌノデアル、勿論此選
擧權ノ擴張ト云フコトニ就テハ、恐ラク總テノ諸君ニ御異
議ノナイ事柄デアラウト思フノデアル、現ニ床次內務大
臣モ、此政府ノ案モ尙ホ不十分デアルト云フコトハ認メテ
居ラレルノデアル、唯、内相ハ急激ナル選擧權ノ擴張ハ却ッ
テ弊害ガアルカラ、現在ノ所ガ丁度宜イト云フコトヲ言ッテ居
ラレルノデアリマスルケレドモ、此案ノ如キハ却テ寧ロ此害ヲ
多クスルモノデアルト私ハ思フ、デ吾ニノ主張スル所、必ズシ
モ急激ニ選擧權ノ擴張ヲシヤウト云フ者デハナイノデアリマ
シテ、單ニ現在ノ納稅資格ヲ撤廢シテ、サウシテ二十五歲以
上ノ獨立ノ-二十五歲以上ノ男子ニシテ獨立ノ生計ヲ
營ム者ニ、選擧權ヲ與へヤウト云フノデアリマシテ、マダ理想
的ノ普通選擧ニ達スルコト遠イノデアリマス、唯〓今日納
稅資格ヲ撤廢スルト云フコトノ、卽チ普通選舉ノ第一步ニ
踏入ルモノトシテ、吾〓ハ暫ク之ニ甘ンジナケレバナラナイノ
デ、是ガ何故ニ大切デアルカト申シマスレバ、納稅資格
ヲ存スル以上ハ、此二圓若クハ三圓ノ納稅ヲスル者ニ非ズ
ンバ權利ヲ與ヘズト云フ玆ニ一ツノ制限ヲ置クノデアル、隨
テ多數ノ國民ハ悉ク除外ヲセラレ、排斥ヲセラルヽト云フ
コトニ相成ルノデアル、吾ミノ主張スル所ニ依リマスレバ、此
納稅資格ヲ撤廢シテ、如何ナル者ニモ權利ヲ與ヘルト云フ
原則ダケハ、茲ニ打立テルコトガ出來ルノデアル、其原則ヲ
打立テタ以上、此實際ノ國情ニ依リ國民ノ智識ノ進度ニ
依リ姑ク之ヲ男子ニ止メ、其男子ノ中デモ先ヅ以テ此獨立
ノ意思ノ確立スルト云フ時代、卽チ二十五歲ヲ基礎ト致シ
テ、而モ此獨立ノ生計ヲ營ム者ニ與ヘタイト云フノデアル、
何故トナラバ苟モ二十五歲ニモ達スル所ノ男子ニシテ、獨
立ノ生計ヲ營ムコトノ出來ナイ者デアルナラバ、獨立ノ能
力ノ無イ者デアル、獨立ノ能力ノ無イ者ガ自己ノ代表者ヲ
選ブ資格ハ無イ、國政ニ參與スル資格ハ無イノデアリマス
カラ、是ハ卽チ自業自得デアル、ソレダケノ能力ガ無イノデア
ルカラ是ハ已ムヲ得ナイノデアル、併ナガラ他日自ラ反省シ
自ラ悟ッテ獨立ノ生計ヲ營ムコトニナレバ、忽チニ權利ヲ與
ヘル、是ガ吾ミノ現在ノ納稅ノ資格ヲ基礎トスル諸君ノ意
見ト吾〓ノ意見ト異ナル根本デアルノデアル、斯クシテ幾何
ノ選擧人ヲ增加スルカト申シマスレバ··
〔議長大岡育造君退席副議長濱田國松君議長席
ニ著ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=65
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066・村松恒一郎
○村松恆一郞君 今日此二十五歲以上ノ男子ト云フモ
ノガ千三百万人アルノデアリマス、ソレカラ其中デ獨立ノ生
計ヲ營ム者ガドノ位有ルカト云フコトハ、明白ニ知ルコトハ
出來マセヌガ、少クモ茲ニ現在ニ戶主ト稱スル者ガ九百六
十五万人アル、中デ男子ノ戶主ガ八百八十三万人有ルノ
デアリマス、此八百八十三万人ノ戶主ハ無論獨立ノ生計
ヲ營ンデ居ルノデアル、此以外ニ假令戶主ニ非ズトモ、或下
宿生活ヲ致シテ居ル者、或ハ埴生ノ小屋ニ住ッテ居ル者ニ致
シマシテモ、或ハ二男トカ三男トカ稱スル者ニモセヨ、兎ニ
角獨立ノ生計ヲ營ム者ガ二百万ヤ三百万ハ必ズ有ルニ相
違ナイノデアリマスカラ、吾〓ノ主張ニ從ヘバ一千万人ノ選
擧權ガ生ズルノデアル、此一千万ノ選擧權ト申シマスレバ、
現在ノ人口カラ言ヘバ先ヅ五分ノ一許リニ當ルノデ、先ヅ二
十「パーセント」ニ相成ルノデアリマスカラ、先ヅ以テ理想的
ノ選擧人員ト言フコトガ出來ルト思ヒマス、吾ニガ如何ニ
何デモ今日ノ此世界ノ大勢、今日ノ國民思想ノ上カラ、
此位ノ選擧權擴張ハ是非致サナケレバナラヌモノデアル
ト考ヘルノデアル(「簡單々々」ト呼フ者アリ)唯〓玆ニ-in
辯ジテ置キタイ事ハ、斯ノ如ク致シマスレバ或ハ此下宿屋
生活ヲ致シテ居ル所ノ者デ、甚シキハ木賃宿ニ生活致シテ
居ッテ、半年一年ヲ過シテ鶴嘴ヲ擔イデ鐵道線路ニ赴ク人
人モ、或ハ靑服ヲ着ケテ工場ニ働ク所ノ人〓ニマデモ、選擧
權ヲ及ボスト云フ事ニナルト、ソレガ爲メニ或ハ一種ノ危害
ガ生ズルコトガナイノデアルカ、或ハ危險思想ヲ生ズル事ガ
アルカモ知ラナイ、ト云フヤウナ危惧ヲ抱キ杞憂ヲ懷ク人ガ
アルカ知レマセヌガ、是亦吾〓ノ甚ダ意見ヲ異ニスル所デ
アリマシテ、苟モ人トシテ其局ニ當レバ必ズ責任感念ノ生ズ
ルモノデアリマス、責任感念ノ生ズル以上ハ必ズシモ常規ヲ
逸シタ思想ヲ懷キ、常規ニ逸シタ行ヒヲスルモノデナイ、今
日ハ奈何セン五千万人ノ國民中僅ニ百四十万、之ヲ政府
案ノ通リニ擴張致シマシテモ二百八十万ノ人ニ權利ヲ與
へ、其他ノ者ハ悉ク除外スルコトニナレバ、除外セラレタ者
ガ果シテ眞ニ國家ニ對シテ自覺アル徹底シタル責任感念ヲ
生ズルヤ否ヤト云フコトハ、疑問デアウト思フノデアル、若シ
モ此埴生ノ小屋ニ住ム水呑百性、或ハ此鶴嘴ヲ擔グ所ノ
工夫ニ至ルマデモ、我ハ國家ノ政治ニ參與スベキ權利有リ
ト云フ自覺ヲ與ヘマシタナラバ、彼等ハ恐ラク此國家ヲ念ト
致シテ、益〓國家ノ隆昌ヲ圖リ、此國家ノ基礎ヲ鞏固ニシ
ナケレバナラヌト云フ感ジハ必ズ起スニ相違ナイノデアル、今
日ノ國家ハ卽チ國民全體ガ維持シナケレバナラヌ上ハ、萬
世無窮ノ帝室ヲ戴キ、下ニハ五千万國民ガ一致シテ此國
家ヲ維持スルト云フ事デナケレバ、迚モ此世界列强ノ競爭
ノ間ニ立テ國運ヲ盛ンニスル事ノ出來ナイト云フ事柄ハ
明カデアル、之ニ就テハ斯ク申上グル通リ苟モ獨立ノ生活
ヲ營ム位ノ男子ニハ、悉ク選擧權ヲ與ヘテ、彼等ヲシテ政治
上ノ感念、國家ノ基礎ヲ鞏固ニスルト云フ念ヲ生ゼシムル
コトハ極メテ必要ナ事デアルト同時ニ、是ハ唯、私ノ申上ゲル
選擧權ノ擴張ニ依シテ、始メテ目的ヲ達セラルヽモノト私ハ
信ズルノデアル、デ床次內相ハ現在ノ此制度、此政府案ニ
對スル維持ノ理由トシテ、例ノ恒產有ル者ハ恒心有リト云
フ事ヲ主張セラルヽノデアリマスルケレドモ、由來此日本人
ハ支那人ノ如ク物質本位ノ人間デナイ、日本人ノ中ニハ物
質以外ニ犠牲的ノ崇高ナル精神ヲ持ッテ居ルモノデアル、故
ニ恒產無シト雖モ恒心有ル者ガ澤山有ル、之ニ反シテ現在
ノ選擧場裡ノ有樣ハ如何デアルカ、十圓以上ト言ヘバ地
方ニ於テハ最モ恒產有ル所ノ人デアル、其恒產有ル人とノ
選擧上ニ於ケル狀態ハ如何デアリマスルカ、今日諸君ガ運
動費ガ多ク掛ルト言ハレル、其運動費ハ何物ニ費サルヽカ
ト云フ事ヲ考ヘタナラバ、此恒產有ル者ハ恒心有リト云フ
事ハ、何等ノ價値ノ無イト云フコトガ明カデアル、(拍手スル
者アリ之ニ反シテ現在地方ノ靑年、何等ノ選擧權ノ無イ
靑年デアリマスケレドモ、彼等ハ自己ノ地位ヲ自覺シ、現在
ノ政治ノ狀態ヲ理解シテ、所謂犧牲的精神ヲ以テ諸君ヲ
助ケ來ッテ居ルニ相違ナイ、何レノ地方ニ於キマシテモ、靑
年ハ極メテ崇高ナル犠牲的精神ヲ以テ選擧場裡ニ働イテ
居ルト云フ事ハ疑ナイ事實デアル、然ラバ內相ノ言ハルヽ
恆產有ル者ハ恆心有リト云フ事ハ、何等ノ根據ノ無イ議論
デアラウト思フノデアル、斯ク申シマスレバ吾ミノ主張吾ミ
ノ意思ト云フモノヲ、今日實施スルニ於テ何等差支ハナイ、
何等ノ不都合ハナイト云フコトハ、最早明カデアラウト思
フ、然ルニ動モスレバ此一種ノ尙早論ト云フモノガアル、多
數ノ人〓悉ク前置キニハ普通選擧ハ反對デハナイ、唯〓併ナ
ガラ時期ガ早イト言ハルル、從來此維新前ニ於キマスル開
國論ニ對スル尙早論、或ハ明治七年ノ民選議院ノ建白ニ
對スル尙早論、或ハ明治二十年頃ノ內地雜居ニ對スル尙
早論、是等ハ皆ナ事實ニ於テハ無期延期ノ意味ノ尙早論
デアルカラ、是ハ多少ノ理由ガ立ツカ知レナイ、今日ノ尙早
論ハドウデアルカ、全部トハ申シマセヌガ、少ナクモ議場ノ
過半數ノ人ミガ今回ハ此儘ニ致シテ置イテ、此冬ニハ納稅
資格ヲ撤廢スルノ案ヲ出サウト云フ下心ハ、恐ラク持ッテ居
ラルヽデアラウト思フノデアル、私ハ千里眼ハ持チマセヌ讀心
術ハ得テ居リマセヌガ、是ハ恐ラク間違ノナイ推測デアラウ
ト思フ、然ラバ時期尙早ト云ウテモ纔カニ一年ヲ出デナイ、
半年ヲ出デナイ時期尙早トナリ、甚ダ無意味ナル時期尙早
デアル、然ラバ何故ニ進ンデ納稅資格撤廢ノ案ヲ出サレナ
イノデアルカ、之ニ向ッテ賛成ヲセラレナイノデアルカ、此點ガ
私ガ甚ダ怪訝ニ堪ヘザル點デアリマス、デ今日吾〓共ハ唯
今申上ゲタ通リ苟モ獨立ノ生計ヲ營ム所ノ二十五歲ノ男
子ニ向ッテ、全部選擧權ヲ與ヘルト云フ此案ハ、兎ニモ角ニ
モ一度此議會ノ壇上ニ實現サセタイト云フコトヲ努力致シ
タノデアリマスルガ、不幸ニシテ時至ラズ、僅ニ一名ノ人ヲ一
方ニ得レバ一方ニ失ヒ、遂ニ此議場ニ現ハスコトノ出來ナ
イノハ、甚グ私遺憾ニ感ズルノデアリマス、併シ諸君ガ總テ
之ニ反對デアルナラバ、兎ニ角、諸君ハ納稅資格ノ撤廢、若
クハソレ以上ノ選擧權ノ擴張ニハ、恐ラク御異論ハアルマイ
ト思フ、就中政友會ノ松田君ノ如キ、ツイ最近ニ至ルマデ、
私ノ目前ニ於テ今日ハ二圓三圓ノ姑息論ヲ唱ヘル時期デ
ハナイ、宜シク普通選擧ニ依ノテ進マナケレバナラヌト云フ
コトヲ高唱サレテ、餘リニ其氣焰ノ高イ爲メニ、私ハ寧ロ大
ニ驚イタ位ノ程度デアッタノデル、若シ此松田君ニシテ黨議
ト云フ柳ガ無カッタナラバ、黨議ト云フ轡ガ嵌ッテ居ナカッタナ
ラバ、恐ラク吾〓以上ノ急進的普通選擧論ヲ唱ヘルデアラ
ウト思フガ、併シ此處ガ所謂黨ノ節制、黨ノ一致ノ上カラ、
今日此演壇デ松田君ノ御高說ヲ伺ハナカッタノハ、誠ニ遺
憾千萬デアル、單リ松田君ノミナラズ、政友會內ニ於テ尙ホ
其他ニ數十名ノ急進論者ガアルト云フコトヲ確信シテ居ル
是ハ私ガ最モ力强ク感ズル所デアル、又憲政會內ニ於テモ、
同樣、三木武吉君、横山勝太郎君、岡部次郞君、大竹貫
一 や、ら、是等ノ人〓ハ政友會ノ人ヨリ今一步進ンデ、院外ニ
於テ盛ニ普通選擧ヲ唱ヘラレ、現ニ大會ノ決議ニ於テハ速
ニ普通選擧ヲ實行スベシト云フ決議ニマデ加ンテ居ル方〓デ
アル、是亦此黨議ト云フ足枷手柳ノ爲メニ、此議場デ御高
說ヲ伺フコトノ出來ナイノハ、甚ダ私遺憾ニ思フノデアリマ
ヌ、其處ニ至リマスルト、私共ハ局外者カラ見レバ狂ト云フ
カ愚ト云フカ知レマセヌガ、唯〓吾〓少數ノ者ガ玆ニ吾ミカ
ラ申セバ姑息ナル選擧擴張案、吾とトシテハ不滿足ナル納
稅資格ノ撤廢ノコトスラモ實現スルコトノ出來ナイノハ、甚
ダ遺憾デアリマスゲレドモ、既ニ內面ニ於テハ斯ノ如キ熱烈
ナル普通選擧論者ガ多數アラレルト云フコトハ、卽チ此次
ノ議會ニ於テ確ニ微々タル吾ミノ主張ガ、此議場ニ大多
數ヲ以テ迎ヘラレルト云フコトヲ信ジマシテ、ソレヲセメテモ
ノ慰メト致シマシテ、此處ニ私ハ此主張ヲ述ベテ置キマス
(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=66
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067・濱田國松
○副議長(濱田國松君) 松本誠之君
〔松本誠之君登壇〕
〔拍手起ル〕
〔簡單々々」「大ニヤルベシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=67
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068・松本誠之
○松本誠之君 宜シイ-滿堂ノ諸君、何時モ私ハ殿リ
ヲ引受ケタヤウナ風ニナッテ居リマスガ、極ク簡單ニ申上ゲマ
ス、故ニモウ私ノアトニハ何誰モ出ル方ガアリマセヌカラ、暫
クノ間ノ御辛棒ヲ願ヒマス(謹聽々々)
〔副議長濱田國松君議長席ヲ退キ議長大岡育造
君著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=68
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069・松本誠之
○松本誠之君 先刻村松君ハ現在ノ立場ヲ御話ニナッ
テ諸君ノ同情ヲ御買ニナッタガ、私ガ此演壇ニ立チマシタノ
ハ、決シテ新政會ヲ代表シテノ「演說ブハナイノデス、又御承
知ノ通リ我輩ノ屬シテ居ル新政會ハ、此選舉法ノ改正案
ニ付キマシテハ、自由行動ヲ取シタノデアル、故ニ吾輩ハ自由
行動ヲ取ッテ議長ニ申込ンデ此演壇ニ立ッタノデアルカラ、
卽チ自分ノ愚見ヲ暫ク諸君ニ御聽取ヲ願ヒタイ、誠ニ新政
會卜云フ一〓體ガアリマシテ、斯ノ如キ國家ノ重大ナル問
題ニ對シテ、自由行動ヲ取ルト云フヤウニナリマシタノハ、誠
ニ自分ニ取リマシテモ不愉快ニ感ズルノミナラズ、他ノ大黨
ノ政友會、憲政會、或ハ國民黨ニ對シテ誠ニ慙愧ノ至リニ
堪ヘナイノデアリマスガ、是ハ已ムヲ得ナイ、而シテ私共ハ諸
君モ御承知ノ通リ何等政黨政派ニ關係ハゴザイマセヌ、全
ク不偏不黨嚴正中立ノ態度ヲ以テ、今日自分ノ立場ニ居
ルノデゴザイマス、失禮ナガラ固ヨリ眼中ニ今日政黨政派ヲ
持ッテ居リマセヌケレドモ、他日憲政會ノ諸君ガ私ノ氣ニ入
ルヤウナ事ヲヤッテ吳レタナラバ、或ハ其驥尾ニ從ッテ御伴ヲ
スル時ガ來ルカモ知レナイ
〔「御免ダ〓〓」ト呼フ者アリ笑聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=69
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070・大岡育造
○議長(大岡育造君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=70
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071・松本誠之
○松本誠之君 總テ何事ヲ爲スニモ大小トナク事ヲ起シ
マスル上ニ於キマシテハ、一利ノ之ニ伴ヒ、一害ノ之ニ隨ッテ
來ルノハ當リ前デアル、又事ヲ改メル上ニ於テ、其結果タル
ヤ改メタ事ガ改善トモナリ改惡トモナルト云フコトハ、是ハ
免レナイケレドモ、諸君、苛モ今日吾ミガ好意ヲ以テ擁護セ
ントスル所ノ此現内閣デアル、此內閣ガ天下ノ廣居ニ立チ、
天下ノ正位ニ立チ、天下ノ大道ヲ行ハント欲シテ、此度此
衆議院議員選舉法改正案、是ガ卽チ國利民福デアル、是
ガ社會ノ爲メデアルト田心ッテ信ジテ出シタコトナレバ、是ガ改
惡ニナルカ改善ニナルカ其結果ハ分ラヌケレドモ、能ク之ヲ
〓究審査シタ上ニ於テ、ヤラセテ見ルガ宜カラウト思フノデ
アル、而シテ自分ガ聞ク所ニ據リマスルト云フト、或ハ觀察
スル所ニ據リマスルト、明治三十五年以來此大選擧區制
ヲ以テ、今日マデ押通シテ來タノデアリマスガ、現在ノ有權
者諸君ニ於キマシテモ、多クハ此大選舉區ノ繁雜ニ厭忌致
シマシテ、小選擧區制ナルモノヲ希望スルト云フ今日ノ時
代ニナッテ居ル、又唯今大選擧區-現行法ニ依シテ、卽チ
諸君ト共ニ此競爭場裏ニ立ッタノデアリマスケレドモ、私ノ
思フニハ恰モ實質ニ於テハ小選擧區ノ形ヲ成シテ居ル、何
故ナレバ一郡ニ於テ、某ハ千何百票ヲ持ッテ居ル、此郡ニ於テ
ハ千五六百票ヲ持ッテ居ル、此處ニハ八百票持ッテ居ル、アトノ
足ラナイ所ハ一府縣下ヲ跋涉奔走シテ、投票ヲ取ルト云フ
ヤウナ風デ、所謂應仁年間ノ如ク群雄割據シテ、各地ニ居
ルデハナイカ、是ガ恰モ小選擧區ノ形ヲ爲シテ居ルト云フ吾
輩ノ議論デアル(拍手)サウシテドウデアルカ、能クマア憲政會
ノ諸君モ御聽キナサイ、若シモ此小選擧區ト云フコトニナリマ
シタナラバ、私ハ之ニ賛成デアルカラ申スノデアル、大正六年
ニ諸君ト共ニ隨分戰ッテ見タガ、マダ今日ヨリ物價ハ安ウゴ
ザイマシタガ、彼ノ時ハドウダ、諸君、二万圓ノ金ヲ使ッタ人
間ハ大正十年ニハ四万五六千圓ダ、三万圓ヲ使ッタ人ハ七
万五千圓ノ金ヲ持タナケレバ到底選擧場裏ニ立ツコトガ出
來ナイ、小寺謙吉ハヤルダラウガ、其他ノ者ハ此戰ハ恐ク
ハ不可能デアウラト思フ、困難デアラウ、是等ノ點カラシテ選
擧費用ノ輕減ト云フコトニ付テ、自分ハ、是ハ各候補者ノ
卽チ戰鬪場裏ニ立ツ人ノ爲メニ、選擧ノ費用ガ減ズルト
云フ上ニ於テ宜カラウト云フノデ、此小選擧區ニ賛成ヲ致シ
タノデアル、又其狹域ガ狄隘ニナリマスニ付テハ、選擧ノ上
ニ於テモ取締ト云フモノガ十分能ク行屆キマシテ、必ズヤ選
擧違反ト云フモノガ無イトハ云ヘナイガ、今日ノ如ク大勢出ル
ヤウナコト無クシテ、其法網ニ罹ルト云フヤウナ人ガ却テ此
小選擧區ニスレバ少ナクナルト云フヤウナコトガアラウカモ
知レヌト、私ハ思ヒマス、是等ノ事ニ付テ自分ハ此ノ小選
擧區ノ方ガ宜シカラウト云フコトデ、卽チ嚴正ノ態度ヲ以
テ、中立ノ態度ヲ以テ贊成ヲ致シタノデゴザイマス、又候補
者其人デアリマス、今日大選擧區ニ致シテ置キマスト云フ
1、區域ガ廣イカラ東西南北ニ跋涉致シ駈迥シテ、サウシテ
政見發表、ホラ演說、ホラ有志會ノ談話會、色〓ナ事ニ臨マ
ナケレバナラヌ、中〓行屆カナイ、是ガ小選擧區ニナリマシ
タナラバ、自分ノ政治上ニ於ケル所ノ政見ノ發表ニ付テハ、
能ク行渡ルト同時ニ、國民ニ對シテハ政治道德ノ訓練ヲ
十分ニ與へ、又政治思想ヲ十分ニ養成シ、政治〓育ヲバ
十分ニ與ヘルト云フコトノ利益ガアルト深ク信ジテ居ルノデ
アル、是ハ卽チ選舉區域ガ狹クナルト十分政見發表ガ出
來ル、ンコデ有權者其者ハ彼ノ人ナラバト云フコトデ、適當
ナ人間ヲ擧ゲルコトガ出來ル、此意味ニ於テ小選擧區ニ贊
成デゴザイマス、所ガ年齡ノ事ナリ、或ハ智識階級ノ事ナリ、
現役兵ヲ濟シテ來夕者ニ權利ヲ與ヘルト云フコトニ付テハ、
色と自分ハ議論ヲ持ッテ居ルケレドモ、モ時間モ迫ッテ居ルガ
爲メニモウ極ク簡單ニ申シマスガ、唯〓三圓二圓ト云フコト
ニ付テ政府案ニ賛成ノ意見ハ、是ハ三圓卜云ヒ、二圓ト云
ヒ、實ハ五十步百步デアル、二圓ト致シタ所デ格別大シテ
有權者ガ殖エルト云フコトデモナケレバ、三圓デアッテモサウ
減ズルモノデモナイト思フ、ケレドモ私思フニ、現行府縣會
議員ノ選擧權モ三圓ノ納稅ヲ程度ト致シデ居ル、然ラバ此
衆議院議員ノ選擧權ノ納稅資格ヲ三圓トスルト云フコト
ハ、是ハ府縣會議員ノ選擧資格ノ納稅ニ於テ權衡ガ保タ
レマシテ、之ヲ二圓トスルト、少シク箸ヲ逆サ向ケニシタ
ヤウナコトデハアルマイカト信ジマス爲メニ、私ハ此三圓ニ贊
成シタノデアリマス、ソレカラ別表ノ事柄ニ付テ大分言ヒタ
イ事ガアルケレドモ、是ハ省イテ置ク、唯〓最後ニ私ガ一言ヲ
申シテ、賢明ナル滿場ノ諸君ノ御耳ヲ汚シテ置キタイノハ、
他ヂハゴザイマセヌ、ソレハ能ク諸君ガ御聽取ヲ願ヒタイ、
殊ニ憲政會ノ賢々明々ナル諸君ノ御聽ヲ願ヒタイ、吾輩ハ
兵庫縣、僕ノ〓里ノ事ヲ一ツ御話スルガ、僕ノ〓里ハ兵庫
縣川邊郡デアル、能ク聞ケ(笑聲起ル)天下ニ名高キ金モア
リ有力ナル小寺謙吉君ハ有馬郡デアル、此有馬郡ト吾輩
ノ貧弱ナル川邊郡ト總合シテ一名ノ代議士ヲ出スノデア
ル、ドウダ(笑聲起ル)サウシテ隣郡ノ武庫郡ハ一名ノ議員
ヲ出ス、尾崎ハ獨立シテ一人出ス、他日大正十年ニ於テ此
貧弱ナル吾輩ハドウダ(笑聲起ル)金ノ上ナリ、他ノ事ハ別
問題トシテ小寺謙吉君ト松本誠之、何十万何百万ノ金ヲ
投リ出シテモ構ハヌト云フ人間ト、大正十年ニ於テ戰ヲ
交ヘナケレバナラヌト云フヤウナ境遇デアル、宜シイカ、
然ラバ此松本誠之ハ大選擧區ヲ贊成シテ、憲政會ノ諸君、
國民黨ノ諸君ニ共鳴ヲ致シマシテ、政府案ニ反對ヲシナケレ
バナラヌノデアリマス、自分等ノ立場カラ考へテ見レバ-
所ガ先刻來政友會、憲政會、國民黨ノ先輩諸君、歷々ノ諸
君ノ御說ヲ聞ケバ、此別表ノ事ニ付テ御話ニナルノハ、矢張
幾分カ此黨派的ノ感情ガアリ、或ハ自分一身ノ立場ノ事
ガアリ、友人ノ立場ノ事ヲ仰シヤルヤウニ私ハ思ッタノデア
ル、苟モ天下ノ廣居ニ立ッテ諸君ト共ニ此議政壇上ニ立ッ
ツタ限リニハ、幾分カ自分ノ立場カラ見テ、現在ハ斯ウダ、
將來ハ斯ウダ、大選擧區ハ不利益ダ、小選擧區ハ利益ダト
云フヤウナ區々タル自分ノ私心ノ爲メニ、私ノ爲メニ今日ハ
彼此云フベキコトデハアルマイト思フ、幾ラカ國ヲ思ヒ、國
ヲ憂ヒ、民ヲ思ヒ、國家ヲ思ウテ善政良法ヲ布カントスル所
ノ念慮アル者ナラバ、所謂善政良法ヲ布カントスル念ノアル
人ナラバ、所謂先憂後樂ノ人デアルナラバ、幾分國ノ爲メ
ニ公共ノ爲メニ云フ事ノ眼ヲ以テ、此案抔ニ對シテハ賛否
ノ決心ヲシナケレバナラヌト思フ、ソレニ立場ガドウダ、黨派
ノ主張ガドウダ、勢力ガドウダト云フコトハ、吾々ノ知キ、卽
チ不偏不黨嚴正中立態度ノ眼カラ見レバ、政友會、國民
黨憲政會、實ニ笑フニ堪ヘタリ(笑聲起ル)吾輩ハ卽チ此
見地ヨリシテ大正十年ニ今此處デ言ウテ置クガ、小寺謙吉
君潔ク戰ハウ、下岡忠治君ヤッテ見ヤウ、大正十年ニヤッテ
見ヤウ、前ノ次官ヤラ金持ハ決シテ恐レナイ、此意味ヲ以テ
政府案ニ贊成ヲ表スルト云フコトヲ申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=71
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072・岩崎勲
○岩崎勳君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=72
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073・大岡育造
○議長(大岡育造君) 岩崎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=73
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074・岩崎勲
○岩崎勳君 討論終結ノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=74
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075・大岡育造
○議長(大岡育造君) 討論終結ノ動議ニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ異議ナント」呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=75
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076・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ナシト認メマス、仍テ討論
ハ終結ニナリマシタ、此場合諸君ノ御聽ヲ願ッテ置キマス、
議員中ニ病氣ヲ推シテ御登院ノ方ガアリマス、投票ノ際登
壇ニ不自由ナ御方ヲ見受ケマス、既ニ屆出モアリマス、是ハ
先例ニ依ッテ書記官ヲ其席ニ遣シテ投票ヲ受取リ、代ッテ投
票スルコトヲ許可致シマス(拍手起ル)決議ヲ採リマスル方
法順序ヲ宣告致シマス、區制ト納稅、此二ツハ各別ニ採ッテ
記名投票ヲ行ヒマス、智識階級、選擧被選擧人ノ年齢、是
ダケハ起立ニ問ヒマス、其他ハ委員長ノ報告ニ付テ是亦起
立ニ問ヒマス、此順序ヲ御承知ヲ願ヒマス、而シテ其決ヲ採
ル度每ニ、唯〓區制ト簡單ニ中シタノハ斯ウ云フ意味ダト
云フコトノ說明ヲシテ、諸君ノ御了解ヲ得タイト思フノデア
リマス、之ニ御異議ガナケレバ此方法フ用ヒタイト思ヒマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=76
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077・大岡育造
○議長(大岡育造君) 然ラバ之ニ依リマス-第一ニ區
制、委員長ノ報告、卽チ政府提出案、小選擧區、他ノ二案
ハ大選擧區、仍テ委員長報告ニ付テ採決ヲ致シマス、採決
ハ記名投票ヲ用ヒマス、委員長報告ニ賛成ノ諸君ハ白票、
之ニ反對ノ諸君ハ靑票-唯〓投票ヲ致シマスル、其採決
スベキ案ハ委員長ノ報告卽チ政府案、小選擧區、之ニ贊成
ノ諸君ハ白票、之ニ反對ノ諸君ハ靑〓示デアリマス-閉
鎖-指名點呼ヲ命ジマス
〔原田書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=77
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078・大岡育造
○議長(大岡育造君) 投票漏ハアリマセヌカ-投票漏
レハナイト認メマス-開鎖-開匣ヲ命ジマス-是ヨリ
投票ノ結果ヲ書記官長ヨリ報告致シマス
〔寺田書記官長朗讀〕
投票總數三百四十九
可トスルモノ二百五
否トスルモノ百四十四
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=78
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079・大岡育造
○議長(大岡育造君) 仍テ小選擧區制ガ可決致シマシ
タ
〔拍手起ル〕
政府案委員長報告ヲ可トスル議員ノ氏名左ノ
如シ
磯部尙君井坂光暉君今井今助君
岩崎動君井上敬之助君岩崎總十郞君
石射文五郞君伊東重君池田龜治君
井上角五郎君一宮房治郞君井島義雄君
鳩山一郞君秦豐助君生原忠右衞門君
八田宗吉君原敬君原田佐之治君
林教陸君原田十衞君萩亮君
林爲良君西村正則君西村種禮君
堀切善兵衞君戶狩權之助君戶水寬人君
床次竹二郞君陣軍吉君長田桃藏君
小山田信藏君尾見濱五郞君小山溫君
奧村三樹之助君小川平吉君小田切磐太郞君
大石五郞君奧田龜造君小川藏次郞君
岡田榮君奧田榮之進君若尾幾造君
渡邊陳平君渡邊祐策君粕谷義三君
河上哲太君川原茂輔君神川長久君
吉植庄一郞君横田千之助君米田穰君
吉原正隆君田邊熊一君高橋光威君
高橋順作君田村順之助君瀧正雄君
高岡唯一郞君高橋嘉太郞君高橋辰二君
田中隆三君高橋本吉君高見之通君
竹內明太郎君坪田十郞君土谷全次君
土屋〓三郞君頭本元貞君恆松隆慶君
根本正君中倉万次郞君中村喜平君
鳴海文四郞君中橋德五郞君中村啓次郞君
成田榮信君中野寅次郞君南里琢一君
長峰與一君中西六三郞君村野常右衞門君
武藤金吉君漆昌巖君鵜澤總明君
上野松次郞君上埜安太郞君則元由庸君
野村治三郞君野田卯太郞君工藤善助君
工藤吉次君工藤卓爾君熊谷直太君
熊谷五右衞門君藏內次郞作君山本悌二郞君
八木逸郞君柳原九兵衞君山內範造君
山口恆太郞君前田米藏君牧山耕藏君
丸山豊治郞君丸山嵯峨一郞君松浦五兵衞君
政尾藤吉君松田源治君氣賀勘重君
福本寅松君福井三郞君藤野正平君
小久保喜七君小泉策太郞君小林源藏君
兒玉亮太郞君兒玉好熊君遠藤良吉君
江藤哲藏君寺田省歸君秋本喜七君
赤尾彥作君秋山金也君天春文衞君
穴水要七君阿部武智雄君赤間嘉之吉君
東武君指田義雄君齋藤安雄君
齋藤珪次君齋藤壽雄君佐々木文一君
澤來太郞君佐藤喜八君齋藤紀一君
榊田〓兵衞君木村政次郞君宮本逸三君
三輪市太郞君南澤宇忠治君三土忠造君
〓水市太郞君島田俊雄君志々目藤彥君
廣岡宇一郞君匹田銳吉君廣瀨鎭之君
百瀨〓治君望月圭介君毛里保太郞君
森田正路君元田肇君關矢儀八郞君
〓空太郞君鈴木錠藏君諏訪部庄左衞門
菅野傳右衛門君隅田豐吉君大堀孝君
湯淺凡平君石川玄三君花井卓藏君
堀尾茂助君尾崎元次郞君大林森次郞君
尾崎敬義君大藪房次郞君若尾璋八君
金杉英五郎君金澤仁作君河野徹志君
河崎助太郎君我如古樂一郞君吉田羊治郞君
橫井藤四郞君田島達策君津田毅一君
上田彌兵衞君松井文太郞君松島肇君
松浦與三郎君小鹽八郞右衞門越山太刀三郞君
佐々木平次郞君北田豊三郞君北井波治目君
平田健太郞君石原正太郞君飯田精一君
林平四郞君富島暢夫君小川〓太郞君
吉田中君武市彰一君佃安之丞君
中川隣之輔君松本剛吉君松本誠之君
松田三德君古川〓君近藤慶一君
秋田寅之介君美禰龍彥君肥田景之君
關原彌里君臼井哲夫君
同上否トスル議員ノ氏名左ノ如シ
井原百介君井島茂作君磯貝浩君
今村七平君井戶文四郞君石川又八君
井原喜代太郞君岩佐善太郞君橋本喜造君
半谷〓壽君早速整爾君西川太治郞君
西英太郞君本田恆之君本間三郞君
戶井嘉作君富田幸次郞君大森與三次君
大竹貫一君大津淳一郞君岡部次郞君
奥田柳藏君岡崎運兵衞君大谷高寛君
亙理胤正君片岡直溫君川崎安之助君
片木政治郞君唐端〓太郞君加藤政之助君
河野正義君川村惇君川崎克君
加藤定吉君河西豊太郞君河野廣中君
川村精之君加治壽衞吉君河波荒次郞君
横山勝太郞君横田孝史君横山金太郞君
賴母木桂吉君高木正年君田中萬逸君
竹村良貞君高田耘平君田中善立君
高橋久次郞君武富時敏君添田飛雄太郞君
長島律太郞君內藤傳祿君長尾元太郞君
武藤嘉門君村松龜一郎君鵜澤宇八君
上村耕作君野村嘉六君黑須龍太郎君
久須美東馬君山口俊一君山道襄一君
山田珠一君正木照藏君牧口義矩君
松岡勝太郞君町田忠治君前田卯之助君
古屋慶隆君降旗元太郞君藤澤幾之輔君
小泉又次郞君小寺謙吉君小林嘉平治君
小山松壽君小西和君小池仁郞君
護得久朝惟君綾部摠兵衞君淺野順平君
荒川五郞君齋藤隆夫君櫻井庄平君
坂口仁一郞君柵瀨軍之佐君齋藤宇一郞君
櫻井兵五郞君佐々木正藏君行德健男君
三木武吉君三隅哲雄君箕浦勝人君
下岡忠治君日比野寛君樋口秀雄君
平島松尾君平山岩彥君森田茂君
森秀次君望月小太郞君關和知君
仙石貢君鈴置倉次郎君杉山東太郞君
鈴木富士彌君今村勤三君犬養毅君
犬飼源太郎君濱田國松君西村丹治郎君
堀川美哉君土井權大君大口喜六君
大內暢三君渡邊昭君川口木七郞君
柏原文太郞君高木益太郞君高戶郁三君
高島兵吉君中川幸太郞君植原悅二郞君
野添宗三君野口孝治君牧野鐵九郞君
前川虎造君藤井善助君古島一雄君
近藤達兒君小橋藻三衛君有森新吉君
白河次郞君關直彥君鈴木梅四郞君
今井嘉幸君小川寅六君中村靜興君
赤木龜一君山根正次君兒玉右二君
秋田〓君坂本金彌君木下謙次郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=79
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080・大岡育造
○議長(大岡育造君) 次ニ選擧資格中委員長ノ報告、
卽チ直接國稅三圓以上ト直接國稅二圓以上トヲ比較シ
テ採決致シマス、卽チ委員長報告三圓以上ヲ可トスル者ハ
白票、三圓以上ヲ否トスル者ハ靑票-閉鎖-氏名點
呼ヲ命ジマス
〔田口書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=80
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081・大岡育造
○議長(大岡育造君) 投票漏ハアリマセヌカ-投票漏
ハアリマセヌカ、投票漏ハ無シト認メマス-開鎖-開匣
ヲ命ジマス-投票ノ結果ヲ書記官長ヨリ報告致シマス
〔寺田書記官長朗讀〕
投票總數三百四十五
可トスル者白票二百三
否トスル者靑票百四十二
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=81
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082・大岡育造
○議長(大岡育造君) 仍テ直接國稅三圓以上ト決シマ
シタ
〔拍手起ル〕
政府案委員長報告ヲ可トスル議員ノ氏名左ノ
如シ
磯部尙君井坂光暉君今井今助君
岩崎動君井上敬之助君岩崎總十郞君
石射文五郞君伊東重君池田龜治君
井上角五郞君一宮房治郞君井島義雄君
鳩山一郞君豊助君生原忠右衛門君
八田宗吉君原秦
敬君原田佐之治君
林毅陸君原田十衞君萩亮君
林爲良君西村正則君西村種禮君
堀切善兵衞君戶狩權之助君戶水寬人君
床次竹二郞君陣軍吉君長田桃藏君
小山田信藏君尾見濱五郞君小山溫君
奧村三樹之助君小川平吉君小田切磐太郞君
大石五郞君奧田龜造君小川藏次郞君
岡田榮君奧田榮之進君若尾幾造君
渡邊陳平君渡邊祐策君粕谷義三君
河上哲太君川原茂輔君神川長久君
吉植庄一郞君橫田千之助君米田穰君
吉原正隆君田邊熊一君高橋光威君
高鳥順作君田村順之助君瀧正雄君
高岡唯一郞君高橋嘉太郞君高橋辰二君
田中隆三君高橋本吉君高見之通君
竹內明太郞君坪田十郞君土谷全次君
土屋〓三郞君頭本元貞君恆松隆慶君
根本正君中倉万次郞君中村喜平君
鳴海文四郞君中橋德五郞君中村啓次郞君
中野寅次郞君南里琢一君長峰與一君
中西六三郞君村野常右衞門君武藤金吉君
漆昌巖君鵜澤總明君上野松次郞君
上埜安太郞君則元由庸君野村治三郞君
野田卯太郞君工藤善助君工藤吉次君
工藤卓爾君熊谷直太君熊谷五右衞門君
藏内次郞作君山本悌二郎君八木逸郞君
柳原九兵衞君山內範造君山口恆太郞君
前田米藏君牧山耕藏君丸山豐治郞君
丸山嵯峨一郞君松浦五兵衛君政尾藤吉君
松田源治君氣賀勘重君福本寅松君
福井三郞君藤野正年君小久保喜七君
小泉策太郞君小林源藏君兒玉亮太郞君
兒玉好熊君遠藤良吉君江藤哲藏君
寺田省歸君秋本喜七君赤尾彥作君
秋山金也君天春文衞君穴水要七君
阿部武智雄君赤間嘉之吉君東武君
指田義雄君齋藤安雄君齋藤珪次君
齋藤壽雄君佐々木文一君澤來太郞君
佐藤喜八君齋藤紀一君榊田〓兵衞君
木村政次郞君宮本逸三君三輪市太郞君
南澤宇忠治君三土忠造君〓水市太郞君
島田俊雄君志々目藤彥君廣岡宇一郞君
匹田銳吉君廣瀨鎭之君百瀨〓治君
望月圭介君毛里保太郞君森田正路君
元田肇君關矢儀八郎君〓崟太郞君
鈴木錠藏君諏訪部庄左衞門君菅野傳右衛門君
隅田豐吉君石川玄三君花井卓藏君
堀尾茂助君尾崎元次郞君大林森次郞君
尾崎敬義君大藪房次郞君若尾璋八君
金杉英五郞君金澤仁作君河野徹志君
河崎助太郞君我加古樂一郞君吉田羊治郞君
横井藤四郞君田島達策君津田毅一君
上田彌兵衞君松井文太郞君松島肇君
松浦與三郞君小鹽八郞右衞門君越山太刀三郞君
佐々木平次郞君北田豐三郞君北井波治目君
平田健太郞君石原正太郞君飯田精一君
林平四郞君富島暢夫君小川〓太郞君
吉田中君武市彰一君佃安之丞君
中川隣之輔君松本剛吉君松本誠之君
松田三德君古川〓君近藤慶一君
秋田寅之介君美禰龍彥君肥田景之君
關原彌里君臼井哲夫君
同上否トスル議員ノ氏名左ノ如シ
井原百介君井原茂作君磯貝浩君
今村七平君井戶文四郞君石川又八君
井原喜代太郞君岩佐善太郞君橋本喜造君
半谷〓壽君早速整爾君西川太治郞君
西英太郞君本田恆之君本間三郞君
戶井嘉作君富田幸次郞君大森與三次君
大竹貫一君大津淳一郞君岡部次郞君
奥田柳藏君岡崎運兵衞君大谷高寛君
亙理胤正君片岡直溫君川崎安之助君
片木政治郞君唐端〓太郞君加藤政之助君
河野正義君川村惇君川崎克君
加藤定吉君河西豐太郞君河野廣中君
川村精之君加治壽衞吉君河波荒次郞君
橫山勝太郞君横田孝史君橫山金太郎君
賴母木桂吉君高木正年君田中萬逸君
竹村良貞君高田耘平君田中善立君
高橋久次郞君武富時敏君添田飛雄太郞君
長島律太郎君內藤傳祿君長尾元太郞君
武藤嘉門君村松龜一郞君鵜澤宇八君
上村耕作君野村嘉六君久須美束馬君
山口俊一君山道襄一君山田珠一君
正木照藏君牧口義矩君松岡勝太郞君
町田忠治君前田卯之助君古屋慶隆君
降旗元太郞君藤澤幾之輔君小泉又次郞君
小寺謙吉君小林嘉平治君小山松壽君
小西和君小池仁郞君護得久朝惟君
綾部惣兵衞君淺野順平君荒川五郞君
齋藤隆夫君櫻井庄平君坂口仁一郞君
柵瀨軍之佐君齋藤宇一郞君櫻井兵五郞君
佐々木正藏君行德健男君三木武吉君
三隅哲雄君箕浦勝人君下岡忠治君
日比野寛君樋口秀雄君平島松尾君
平山岩彥君森田茂君森秀次君
望月小太郞君關和知君仙石貢君
鈴置倉次郞君杉山東太郞君鈴木富士彌君
今村勤三君犬養毅君犬飼源太郞君
濱田國松君西村丹治郞君堀川美哉君
土井權大君大口喜六君大內暢三君
渡邊昭君川口木七郎君柏原文太郞君
高本益太郞君高戶郁三君高島兵吉君
中川幸太郞君植原悅二郞君野添宗三君
野口孝治君牧野鐵九郞君前川虎造君
藤井善助君古島一雄君近藤達兒君
小橋藻三衞君有森新吉君白河次郞君
關直彥君鈴木梅四郞君今井嘉幸君
小川寅六君中村靜興君赤木龜一君
山根正次君兒玉右二君秋田〓君
坂本金彌君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=82
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083・大岡育造
○議長(大岡育造君) 其次ニハ中學校及師範學校卒業
以上ノ者ト且ツ獨立ノ生計ヲ營ム者ニ選擧權ヲ與フベシ
ト云フ此點ニ付テ決ヲ採リマス(「反對」ト呼フ者アリ)暫ク
御聽ヲ願ヒマス、是ハ一一通リアリマス、中學及師範學校卒
業以上ノ者ニ選擧權ヲ與フルト云フノト、其卒業者ニシテ
且ツ獨立ノ生計ヲ與フル者(笑聲起ル)ト云フ此二種類ア
リマス·····生計ヲ營ム者-中學及師範學校卒業以上ノ
者ニシテ、且ツ獨立ノ生計ヲ營ム者ニ選擧權ヲ與フベシト
云フニ、同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
起立者少數
〔「反對」「大多數」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=83
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084・大岡育造
○議長(大岡育造君) 少數デアリマス、否決-此次ハ
中學及師範學校卒業以上ノ者ニ選擧權ヲ與フベシト言
フ、此點ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
起立者少數
〔「反對」「多數」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=84
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085・大岡育造
○議長(大岡育造君) 少數-否決-次ニ選擧人ノ
年齡ヲ二十年ニスベシトノ點及ビ兵役義務ヲ終リタル者ニ
選擧權ヲ與フベシトノ點ニ付テ決ヲ採リマス、贊成ノ諸君
ノ起立ヲ求メマス
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=85
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086・大岡育造
○議長(大岡育造君) 少數デアリマス、否決サレマシタ、
其他ハ總テ委員長報告通リニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマ
ス
起立者多數
〔「賛成々々」「少數々々」ト呼フ者アリ、〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=86
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087・大岡育造
○議長(大岡育造君) 大多數デアリマヌ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=87
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088・大岡育造
○議長(大岡育造君) 唯〓ノ決議ノ結果、議員ヨリ提出
ノ二案ハ廢棄セラレ、政府案ハ總テ委員長報告ノ通リニ決
シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=88
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089・岩崎勲
○岩崎動君 直チニ政府提出衆議院議員選擧法中改
正法律案ノ第三讀會ヲ開キ、第二讀會議決ノ通リ可決確
定セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=89
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090・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=90
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091・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ガナケレバ直チニ三讀會ヲ
開キマス
衆議院議員選擧法中改正法律案(政府提出)
第三讀會
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=91
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092・大岡育造
○議長(大岡育造君) 御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=92
-
093・大岡育造
○議長(大岡育造君) 本案ハ二讀會決議ノ通リ三讀會
ニ於テ可決確定シタルコトヲ宣告致シマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=93
-
094・大岡育造
○議長(大岡育造君) 今日ハ是ニテ散會
午後八時五十一分散會
衆議院議事速記錄第十九號正誤
頁段行誤正
ニモニ下三七五百石六百石五百万石六百万石
二三五上三六三十五万町步二十五万町步
二三七三上三九石二石
= 25m中一六議事ガ議事デ
二八〇下三○(委員長報告)(委員長報告)(確定議)
二八〇下三四(委員長報告)(委員長報告)(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02119190308&spkNum=94
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