第41回帝国議会　衆議院　本会議　第22号　大正8年3月11日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  大正八年三月十一日（火曜日）午後一時十二分開議
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  　議事日程　第二十一號　　大正八年三月十一日
  　　　午後一時開議
  　　　　　質問
  　　一　社會主義取締に關する質問（鈴木富士彌君提出）
  　　二　甘蔗作に關する質問（我如古樂一郎君提出）
  　　三　鹽の專賣生産及配給に關する質問（小西和君提出）
  　　四　移民政策に關する質問（土井權大君提出）
  　　五　東京市青山墓地移轉問題の件竝墓地及埋葬取締規則第二條に關する質問（齋藤紀一君提出）
  　　六　小學校教員に給する臨時手當に關する再質問（高田耘平君提出）
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  　第一　軌道條例中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三　仙北輕便鐵道買收費支辨の爲公債發行に關する法律案（政府提出）　　第一讀會
  　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第五　農工銀行補助法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第六　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第七　家畜市場法中改正法律案（齋藤珪次君外十三名提出）　　　　　　　　第一讀會
  　第八　煙草專賣法中改正法律案（小林源藏君外十六名提出）　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第九　織物消費税法中改正法律案（小林源藏君外十六名提出）　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十　朝鮮神社に素盞男尊奉祀に關する建議案（高木益太郎君外一名提出）
  　第十一　山口縣徳山港を特別輸出入港と爲すの建議案（渡邊祐策君提出）
  　第十二　圓山川改修に關する建議案（齋藤珪次君外一名提出）
  　第十三　沖繩縣に於ける「マラリヤ」豫防撲滅に關する建議案（我如古樂一郎君外四名提出）
  　第十四　外客の招致及待遇に關する建議案（小西和君提出）
  　第十五　名勝舊跡其の他著しき事歴ある樹石竝特殊の植物保存及利用に關する建議案（小西和君提出）
  　第十六　帝國博物館完成に關する建議案（柏原文太郎君外一名提出）
  　第十七　北鮮、裏日本聯絡航路延長に關する建議案（上埜安太郎君外九名提出）　（委員長報告）
  　第十八　國立榮養研究所設立に關する建議案（河野徹志君外十四名提出）　　（委員長報告）
  　第十九　日露語學校設置に關する建議案（松本誠之君提出）　　　　　　　　（委員長報告）
  　第二十　新見、庄原間輕便鐵道建設に關する建議案（湯淺凡平君外二名提出）　（委員長報告）
  　第二十一　鶴岡、大泉間國有輕便鐵道敷設に關する建議案（熊谷直太君外五名提出）　（委員長報告）
  　第二十二　財政整理に關する臨時調査機關設置の建議案（犬養毅君外三名提出）　（委員長報告）
  　第二十三　（特別報告第六十四號）郵便局管轄區域變更の請願　　　　　　　（委員長報告）
  　第二十四　（特別報告第六十五號）上河内字宿に郵便局新設の請願　　　　　（委員長報告）
  　第二十五　（特別報告第六十六號）紀伊押手郵便局に電信電話架設の請願　　（委員長報告）
  　第二十六　（特別報告第六十七號）高千帆郵便局に集配事務開始の請願　　　（委員長報告）
  　第二十七　（特別報告第六十八號）鎭西村に郵便局設置の請願　　　　　　　（委員長報告）
  　第二十八　（特別報告第六十九號）崎山村に郵便局設置の請願　　　　　　　（委員長報告）
  　第二十九　（特別報告第七十號）豐田下村大字手洗字下飯塚に三等郵便局設置の請願　（委員長報告）
  　第三十　（特別報告第七十一號）三刀屋村郵便局に電信事務開始の請願　　　（委員長報告）
  　第三十一　（特別報告第七十二號）渡良郵便局に電信事務開始の請願　　　　（委員長報告）
  　第三十二　（特別報告第七十三號）比樂島村に郵便局新設の請願　　　　　　（委員長報告）
  　第三十三　（特別報告第七十四號）大町村福母に無集配三等郵便局設置の請願　（委員長報告）
  　第三十四　（特別報告第七十五號）國分郵便局に電信架設竝集配事務開始の請願　（委員長報告）
  　第三十五　（特別報告第七十六號）大森區裁判所管内登記事務管轄區域變更竝温泉津町に登記所設置の請願　（委員長報告）
  　第三十六　（特別報告第七十七號）元三國區裁判所復舊の請願　　　　　　　（委員長報告）
  　第三十七　（特別報告第七十八號）西條町に區裁判所設置の請願　　　　　　（委員長報告）
  　第三十八　（特別報告第七十九號）私立學校令第五條改正の請願　　　　　　（委員長報告）
  　第三十九　（特別報告第八十號）市町村立小學校教員俸給國庫負擔法支出額増率の請願　（委員長報告）
  　第四十　（特別報告第八十五號）福山今市間輕便鐵道敷設の請願　　　　　　（委員長報告）
  　第四十一　（特別報告第八十六號）山陰本線暗渠改造の請願　　　　　　　　（委員長報告）
  　第四十二　（特別報告第八十七號）日光、足尾間鐵道速成の請願　　　　　　（委員長報告）
  　第四十三　（特別報告第八十八號）熊坂信號所を停車場と變更の請願　　　　（委員長報告）
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  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=0

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• 001・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　諸般ノ報告ガアリマス
  〔原田書記官朗讀〕
  一去八日政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  軌道條例中改正法律案
  仙北輕便鐵道買收費支辨ノ爲公債發行ニ關スル法
  律案
  農工銀行補助法中改正法律案
  一去八日議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  會計法中改正法律案
  提出者澤來太郞君秦豐助君
  松浦五兵衞君
  國立博物館建設ニ關スル建議案
  提出者井原百介君加藤定吉君
  粕谷義三君鵜澤總明君
  横井藤四郞君萩亮君
  山根正次君
  法隆寺防火設備ニ關スル建議案
  提出者小泉策太郞君中村啓次郞君
  田中善立君今村勤三君
  一昨十日議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  八丈島漁港修築ニ關スル建議案
  提出者高木正年君鵜澤宇八君
  小泉又次郞君鈴木富士彌君
  一去八日議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
  陸海軍兵卒ノ給與ニ關スル質問主意書
  提出者高田耘平君
  復權ニ關スル質問主意書
  提出者高田耘平君
  朝解統治ニ關スル質問主意書
  提出者山道襄一君
  一昨十日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ議案ヲ
  可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
  大正六年法律第六號中改正法律案(政府提出)
  一昨十日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  衆詠院議員小橋藻三衞君提出食糧政策ニ關スル質
  問ニ對スル答辯書
  衆議院議員押川方義君提出外交問題ニ關スル質問
  ニ對スル答辯書
  衆議院議員高島兵吉君提出吉野川改修工事ニ關ス
  ル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員荒川五郞君提出市町村吏員優遇ニ關ス
  ル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員田中萬逸君提出靑年指導ニ關スル再質
  間ニ對スル答辯書
  衆議院議員田中善立君提出國民思想ノ善導ニ關ス
  ル再質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員白河次郞君提出高等〓育機關增設ニ
  關聯シテ〓育振興ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  大正八年三月十日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長大岡育造殿
  衆議院議員小橋藻三衞君提出食糧政策ニ關スル質問
  ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員小橋藻三衞君提出食糧政策ニ關スル
  質問ニ對スル答辯書
  政府ハ〓糧問題ニ對シテハ常ニ深甚ノ注意ヲ拂ヒ銳意
  對策ノ實行ニ努メツツアリ卽チ應急策トシテハ或ハ米ノ
  關稅ヲ撤廢スルト共ニ極力外米ノ輸入ニ努メ或ハ重要
  食糧品及肥料ノ輸出ヲ制限シ或ハ食糧農產物ノ增殖
  奬勵ヲ爲シ或ハ代用〓物ノ利用ヲ奬勵シ最近ニ於テハ
  更ニ麥及麥粉關稅ノ減免ヲ期スル等極力食糧ノ供給
  增加ニ努メツツアリ恆久策トシテハ耕地ノ擴張ヲ圖ルハ勿
  論現耕地ノ改良食糧農作物ノ品種及栽培法ノ改良肥
  料ノ供給增加病害蟲驅除豫防ノ勵行農業倉庫ノ普及
  農村金融ノ改善優良技術員ノ養成及運輸ノ改善等適
  切ト認ムル施設ノ實行ヲ圖リツツアルト共ニ朝鮮臺灣ニ
  於テモ極力食糧品ノ增殖ヲ期スルノ方策ヲ講シツツアル
  ヲ以テ今後益是等ノ施設ヲ徹底シ以テ食糧ノ供給ヲ
  潤澤ナラシメントス
  右及答辯候也
  大正八年三月十日
  內務大臣床次竹二郞
  農商務大臣山本達雄
  大藏大臣男爵高橋是〓
  大正八年三月十日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長大岡育造殿
  衆議院議員押川方義君提出外交問題ニ關スル質問ニ
  對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員押川方義君提出外交問題ニ關スル質
  問ニ對スル答辯書
  帝國政府ハ講和ニ關スル聯合與國總會議ニ於テ未タ
  何等講和事項ヲ提案シタルコトナシ之ト同時ニ巴里ニ
  於テ開催中ナル最高軍事會議五大國協議會及各部委
  員會ニ於テハ帝國委員ハ夫々機宜ノ措置ヲ執リツヽア
  ルモ前顯聯合與國總會以外ノ諸會議ニ付テハ其ノ內
  容及經過ハ會議書記局公表ノモノヲ除クノ外之ヲ發表
  セサルノ約アリ從テ右諸會議ニ提出セラレタル帝國委員
  ノ意見又ハ主張ヲ公元スルハ妥當ナラスト認ム他ノ聯
  合與國中亦前記諸會議ニ提案シタル事項ヲ公表セルモ
  ノアルヲ聞カス
  右及答辯候也
  大正八年三月十日
  外務大臣子爵內田康哉
  大正八年三月十日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長大岡育造殿
  衆議院議員高島兵吉君提出吉野川改修工事ニ關スル
  質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員高島兵吉君提出吉野川改修工事ニ
  關スル質問ニ對スル答辯書
  吉野川改修工事ハ適當ナル工法ニ依リ施行中ニシテ築
  堤工事粗略ニ失スルコトナシト認ム又昨年夏季ノ出水
  ニ際シ流材ノ爲メ築堤竣功箇所ニ僅少ノ損傷ヲ受ケタ
  ル部分アルモ決潰ノ虞アル如キ危險ノ狀態ヲ認メス尤モ
  堤腹ノ保護ニ關シテハ目下最善ノ方法ヲ攻究シツヽア
  リ尙流材ニ關シテハ今後一層其ノ取締ヲ勵行スヘキ見
  込ナリトス
  右及答辯候也
  大正八年三月十日
  內務大臣床次竹二郞
  大正八年三月十日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長大岡育造殿
  衆議院議員荒川五郞君提出市町村吏員優遇ニ關スル
  質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員荒川五郞君提出市町村吏員優遇ニ
  關スル質問ニ對スル答辯書
  市町村吏員ニ對シテハ最近九十六箇町村長ニ對シ敍
  勳ノ恩典アリ加之其ノ功勞ノ顯著ナル者ニ對シテハ褒
  章條例ノ定ムル所ニ依リ之カ表彰ヲ爲スノ途アリ政府
  ハ適當ナリト認ムル所ノモノニ對シテハ今後尚之カ優遇
  奬勵ニ勉ムル所アルヘシト雖モ吏員優遇ノ途ハ單ニ政
  府ノ施設ニノミ俟ツヘキニアラス一般社會モ亦市町村
  吏員ノ任務ノ輕カラサル所以ヲ解シ其ノ社會上ノ地位
  ヲ尊重スルコト最モ緊要ナリト思料ス
  右及答辯候也
  大正八年三月十日
  內務大臣床次竹二郞
  大正八年三月十日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長大岡育造殿
  衆議院議員田中萬逸君提出靑年指導ニ關スル再質問
  ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員田中萬逸君提出靑年指導ニ關スル再
  質問ニ對スル答辯書
  一政府ハ曩ニ答辯シタル趣旨ニ依リ靑年ノ指導ニ勉メ
  ツヽアリテ何等其方針ヲ變更シタルコトナシ
  一田中陸軍大臣ハ大臣トシテ何等靑年指導ノ方針ニ
  關シ說示シタルコトナシ
  右及答辯候也
  大正八年三月十日
  內務大臣床次竹二郎
  文部大臣中橋德五郞
  大正八年三月十日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長大岡育造殿
  衆議院議員田中善立君提出國民思想ノ善導ニ關スル
  再質問ニ對シ別紙各辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員田中善立君提出國民思想ノ善導ニ關
  スル再質問ニ對スル答辯書
  曩ニ國民思想善導ニ關スル答辯書中ニ各般ノ施設トア
  ルハ健全ナル思想ヲ普及徹底セシムル各種ノ施設及思
  想ヲ不健全ナラシムル原因トナルヘキ社會狀態ノ改善ヲ
  目的トスル各般ノ社會的施設ノ謂ナリ
  右及答辯候也
  大正八年三月十日
  內務大臣床次竹二郞
  文部大臣中橋德五郞
  大正八年三月十日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長大岡育造殿
  衆議院議員白河次郞君提出高等〓育機關設置ニ關
  聯シ〓育振興ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員白河次郞君提出高等〓育機關增設
  ニ關聯シ〓育振興ニ關スル質問ニ對スル各辯書
  一義務〓育年限ノ延長ハ希望スル所ナルモ諸般ノ事情
  ニ依リ之カ實施ハ尙未タ其ノ時期ニアラスト信ス而シ
  テ特殊ノ地方ヲ撰ヒテ部分的ニ之ヲ實施スルカ如キ
  モ亦愼重ノ考慮ヲ要ス
  二公立中等學校〓員ニ對スル年功加俸ノ制ニ關シテ
  ハ目下調査中ニ屬スルヲ以テ私立學校〓員一般ニ
  對シ國費ヲ以テ年功加俸ヲ支給シ又ハ官立學校若
  ハ公立學校ノ〓員ニ對スル恩給又ハ退隱料ノ制ヲ直
  ニ適用スルカ如キハ今日之ヲ豫定スルコトヲ得ス
  三國政一切ノ事項ニ亙リ之カ處理スルカ如キハ文部大
  臣ノ權限ニアラス而シテ臨時〓育會議ノ如キ機關ハ
  之ヲ常置スルノ意思ナシ
  四社會〓育ノ振興ニ關シテハ目下調査中ニ屬ス
  五海軍兵學校及陸軍士官學校ニ於テ〓育學ヲ必修セ
  シムルコトニ關シテハ目下考究中ナリ
  六國立感化院、商船學校及水產講習所ハ別ニ之ヲ文
  部省ニ移管スルノ意志ナシ而シテ此ノ種ノ機關ニ關
  シテハ必要ニ應シ適當ナル擴張改善ヲ圖リツヽアリ
  七綜合大學又ハ單科大學ニ其ノ組織ノ如何ヲ問ハス
  文學部若ハ文科的講座ヲ必置スルノ要ヲ認メス
  八京都市立ノ學校ヲ國立トシ音樂學校ヲ增設シ又神
  宮皇學館ヲ國立大學トスルハ愼重ノ考慮ヲ要ス
  九佛〓各派ニ於ケル〓育機關ハ之ヲ自然ノ發達ニ俟ツ
  ヲ可トス
  十質問第十四項ノ如キハ愼重ノ考慮ヲ要ス
  右及答辯候世
  大正八年三月十日
  海軍大臣加藤友三郞
  陸軍大臣田中義
  農商務大臣山本達雄
  内務大臣床次竹二郞
  文部大臣中橋德五郞
  遞信大臣野田卯太郞
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載
  ス〕
  一去八日延松鐵道速成ニ關スル建議案委員行德健男
  君辭任ニ付其ノ補關トシテ山田珠一君ヲ議長ニ於テ
  選定セリ
  一昨十日私立學校用地免租ニ關スル法律案委員林毅
  陸君辭任ニ付其ノ補關トシテ氣賀勘重君ヲ、都市計
  畫法案外一件委員山田珠一君辭任ニ付其ノ補闘ト
  シテ森秀次君ヲ、大正六年度豫備金支出ノ件外六
  件(承諾ヲ求ムル件)委員加藤政之助君、鈴木富士
  彌君辭任ニ付其ノ補關トシテ本田恆之君、山田珠一
  君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
  一今十一日私立學校用地免租ニ關スル法律案委員森
  本是一郞君、小田切磐太郞君辭任ニ付其補闕トシ
  テ飯田精一君、隅田豐吉君ヲ議長ニ於テ選定セリ
  一去八日辭任シタル常任委員左ノ如シ
  第六部選出豫算委員井島義雄君
  一今十一日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
  第六部豫算委員毛里保太郞君(井島義雄君補關)
  一昨十日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
  都市計畫法案外一件委員
  前田米藏君
  三角
  委員長小山溫君理事
  3MgO3FeO4SiO24H2O
  河野徹志君
  煙草專賣法中改正法律案外一件委員
  隅田豊吉君
  委員長武藤金吉君理事森本是一郞君
  松井文太郎君
  一今十一日私立學校用地免租ニ關スル法律案委員長
  補關選擧ノ結果左ノ如シ
  私立學校用地免租ニ關スル法律案委員
  委員長氣賀勘重君(委員長林毅陸君補閥)
  外交問題ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正八年二月十日
  提出者押川方義賛成者金杉英五郎
  外三十一人
  外交問題ニ關スル質問主意書
  今囘ノ講和會議ニ於テ帝國政府カ提出シタル重要事
  項ヲ國民ニ對シ公表セサル眞意如何
  右及質問候也
  靑年指導ニ關スル再質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正八年二月二十五日
  提出者田中萬逸賛成者武富時敏
  外三十人
  靑年指導ニ關スル再質問主意書
  一本員ノ提出ニ係ル靑年指導ニ關スル質問ニ對スル答
  辯書ニ依レハ政府ハ靑年ヲシテ健全ナル國民善良ナ
  ル公民タルノ素質ヲ得セシムルヲ以テ方針トシ之カ實
  施ノ方法ハ地方ノ情況ニ應シテ宜シキヲ制セムコトヲ
  期シツヽアリト云ヘルカ果シテ然ラハ從來ノ統一的指
  導ノ方針ヲ一變シタルカ
  一田中陸軍大臣ハ常ニ靑年團ノ指導ニ對シ統一的方
  針ニ遵ルヲ熱心ニ力說セラレツヽアルカ前記床次內務
  大臣、中橋文部大臣ノ指導方針ト扞格スル所ナキカ
  右及再質問候也
  國民思想ノ善導ニ關スル再質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正八年二月二十五日
  提出者田中善立賛成者武富時敏
  外三十三人
  國民思想ノ善導ニ關スル再質問主意書
  曩ニ提出シタル國民思想ノ善導ニ關スル質問ニ對スル
  政府ノ答辯中各般ノ施設ヲ整備シトアルハ如何ナル施
  設ノ謂ナリヤ
  右及再質問候也
  高等〓育機關增設ニ關聯シ〓育振興ニ關スル質問
  主意書
  右成規ニ據リ提出候世
  大正八年二月十五日
  提出者白河次郞賛成者鈴木梅四郞
  外三十二人
  高等〓育機關增設ニ關聯シ〓育振興ニ關スル質問
  主意書
  一高等〓育機關增設ノ必要ハ固ヨリ之ヲ認ムト雖
  義務〓育ノ向上充實モ其ノ機運方ニ迫レリト信ス
  列强戰後ノ文政ニ於テ此ノ趨勢極メテ顯著ナルノ
  ミナラス中等〓育モ亦之ヲ義務〓育トナスヘシト
  ノ議論スラ生シツヽアリ我カ國ニ在リテハ現時ノ義
  務〓育年限カ既ニ列强ニ比シテ短少ナルノミナラ
  ス我カ國ニ特有ナル國字國語ノ〓授ニ時間ヲ要ス
  ルコトノ多大ナルハ一層〓育ノ能率ヲ低下セシムル
  モノアリ國民全般知能ノ水準ヲ高メ國本ヲ培養シ
  國力ヲ增進スルカ爲ニ義務〓育年限ノ延長ハ速ニ
  之ヲ實施セサルヘカラス政府ハ悠々トシテ國費ノ餘
  裕若ハ地方財政ノ豐滿ヲ待タムトスルカ最近ニ於
  テ之ヲ斷行スルノ意思ナキカ
  二若最近ニ之ヲ斷行スルノ意思ナシトセハ必シモ他
  日ヲ待チテ劃一ニ全國一時ニ之ヲ實行スルノ必要
  ナシト信ス財政ニ於テ之カ負擔ニ堪フル地方又ハ
  義務〓育ヲ卒リテ他ノ中等程度ノ學校ニ進マサル
  兒童ノ高等小學ニ入ルモノヽ步合最多キ地方又ハ
  補習〓育ノ稍完備セル地方ヲ擇ヒ先ツ義務〓育
  年限延長ヲ强制スルノ制ヲ定メテハ如何
  三中等學校以上ノ〓員ニ對シテ年功加俸ノ制ヲ設
  ケラルヽハ早晩實行サルヘキモノナリト信スルモ之ヲ
  私立學校〓員ニモ均霑セシメ國費ヲ以テ支給セム
  コトニ對シテ考慮セラレツヽアリヤ
  四官公立學校〓員退職恩給ノ制ハ之ヲ私立學校〓
  員ニモ均霑セシメ同シク國費ヲ以テ支給スルヲ要ス
  當局ノ意向ハ如何
  五臨時〓育會議ヨリ建議シタル〓育ノ本旨貫徹ニ
  關スル決議ノ條項中第二項ノ法制改廢第五項ノ
  社會政策ノ如キハ最贊同スヘシトス是レ所謂社會
  組織ノ〓育化トモ稱スへキ一部面ニシテ此ノ類尙
  尠少ナリトセス文部省ハ單ニ學校行政ノ首脳タル
  ニ止ラス最廣キ意義ニ於ケル帝國文〓ノ振興ノ爲
  ニ博大ナル政策ヲ定メ〓育的見地ヨリシテ國政ノ
  一切ニ涉リテ非〓育的ナルモノ又ハ〓育ノ效果ヲ
  薄弱ナラシムルモノヲ指摘シ善導スルノ雄志ナキカ
  而シテ之カ爲ニハ内閣總理大臣ニ直屬スル今ノ臨
  時〓育會議ノ如キモノヲ常設機關トナスモ亦可ナ
  リト信ス如何
  六前條ノ調査及處理ヲ包括シ更ニ最廣キ意義ニ於
  ケル社會〓育ノ振興ヲ圖ルカ爲ニ文部省ニ社會
  〓育局ノ新設ヲ要セサルカ
  七海陸軍ニ於ケル壯丁ノ訓練ハ之ヲ國民〓育ノ補
  習又ハ完成ト見ラレサルニ非ス將校ハ此ノ意味ニ
  於テ重要ナル普通〓育者ナリ故ニ海軍兵學校及
  陸軍士官學校ノ學科ニ直接兵事ニ關スルモノ以
  外ヲ增設シ特ニ〓育學必修ノ要アリト信ス文政當
  局ハ速ニ軍政當局ト之ヲ協定スルヲ要ス而シテ是
  レ他日現役又ハ豫後備將校ヲ各種學校ノ〓官ト
  爲スノ準備トシテモ須要ナリトス文部大臣ノ意見
  如何
  八〓育行政ノ統一ヲ計ルカ爲ニ内務省ノ國立感化
  院遞信省ノ商船學校農商務省ノ水產講習所等ヲ
  文部省所轄ニ移サムコトヲ欲セサルカ
  九前條ノ統一ヲ斷行シ而シテ更ニ國立感化院及商
  船學校ヲ增設スルノ必要ナキカ水產〓育ニ至リテ
  ハ帝國ノ地理的資源ニ顧ミ最擴張ヲ要ス政府ハ
  現在ニ於ケル水產講習所一校及帝國大學農學部
  ノ水產學科ノミヲ以テ足レリトスルカ
  十物質文明尊重ノ弊害ハ這次ノ高等〓育機關增設
  ノ計劃ニ就テモ亦歷々タルモノアリ精神文明向上
  ノ爲ニ各綜合大學ニ必文學部ヲ設ケシメ單科大
  學ニ在リテモ必須ナル文科的講座ヲ置カシムルノ
  要ナキカ
  十一美術學校及音樂學校カ現在僅ニ一校ノミニ止
  ルハ藝術〓育ニ於テ餘リニ貧弱ナリト信ス又同種
  ノモノ二校以上存立スルハ〓鑚ノ競爭的向上ヲ計
  ル所以ナリ京都工藝學校ヲ國立專門學校ト爲シ
  其ノ美術〓育ヲ向上振興セシメ又別ニ關西方面
  ニ音樂學校ヲ創設シテハ如何
  十二大學文學部ニ於ケル皇學國學ノ〓究ニ關スル施
  設ノ外更ニ神宮皇學館ヲ國立大學ト爲シ別ニ現
  在程度ノ專門部ヲ併設シ我カ皇學國學〓究ノ最
  高淵叢トナシ以テ所謂國體觀念ヲ明徵ニシテ之ヲ
  中外ニ顯彰スルノ中心學府タラシムルハ文化政策
  ノ最須急ナルモノト思惟セサルカ
  十三佛〓各派ニ於ケル特殊ノ〓育機關ノ外佛〓各
  宗ノ連合ヲ以テ一ノ財團ヲ組織セシメ宗派ニ超越
  セル通佛〓ノ最高〓究機關タル大學新設ノ必要
  アリト信ス文部大臣ハ之カ勸奬斡旋ノ勞ヲ執ルニ
  意ナキカ
  十四高等文官及判檢事カ現時ノ如ク單ニ專門ニ偏
  セル學術技能ニ依リテノミ登擧セラルヽハ時トシテ
  行政又ハ司法ノ運用ニ於テ其ノ眞髓ヲ發揮スルノ
  途ヲ謬リ及社會ノ儀表トナリ民心ヲ卒ヒ得ル所以
  ニ非ス故ニ之カ任用試驗ニハ國民道德學社會學
  〓育學及心理學等ノ文科的學科ヲ適宜參酌シテ
  增課セサルヘカラスト信ス文部大臣ハ文〓ノ當局
  トシテ之ヲ提議スルノ必要ヲ認メサルカ
  右及質問候也
  以上述フル所ニヨリ質問ノ趣旨明瞭ナリト信スルカ故ニ
  特ニ議場ニ於ケル辯明ヲ省略スヘク且高等機關增設ニ
  關スル豫算案及法律案ノ審議ト關聯スルモノアルニ依
  リ文部大臣ハ成ルヘク速ニ書面ヲ以テ文政當局トシテ
  ノ意見ヲ忌憚ナク詳細明断ニ答辯セラレムコトヲ望ム

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=1

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• 002・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　是ヨリ會議ヲ開キマス、御諮リ申
  ス事ガアリマス、議員奧村三樹之助君ヨリ辭職ノ願出ガア
  リマス「今般病氣ニ罹リ醫師ノ勸告ニ基キ靜養ノ必要有
  之到底職務ニ難堪候間玆ニ辭任仕候也」右許可スルニ御
  異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 003・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナケレバ許可致シマス、尚
  ホ左ノ議員ヨリ請暇ノ申出ガアリマス、病氣ニ付昨十日ヨ
  リ向ヲ二週間恆松隆慶君、病氣ニ付今十一日ヨリ向フ十
  日間亙理胤正君、右許可スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 004・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナケレバ許可致シマス、更
  ニ第三部選出決算委員川村惇君、第八部選出決算委員
  亙理胤正君、右常任委員辭任ノ申出ガアリマス、許可スル
  ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 005・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　異議ナケレバ許可致シマス、其部
  ノ諸君ハ速ニ補闕選擧ヲ行ヒ、御屆出アランコトヲ希望シ
  マス

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• 006・齋藤珪次

  ○齋藤珪次君　是ヨリ木津川治水ニ關スル建議案ノ委
  員會ヲ開キマスカラ、許可ヲ願ヒマス

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• 007・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　許可致シマス
  〔齋藤珪次君「ドウカ委員諸君ハ委員室ニ御出デヲ
  願ヒマス」ト呼フ〕

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• 008・鵜澤總明

  ○法學博士鵜澤總明君　大正六年度豫備金支出ノ件
  外六件ノ委員會ヲ開キマスカラ、許可ヲ願ヒマス

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• 009・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　許可致シマス
  〔法學博士鵜澤總明君「委員諸君ハ委員室ニ御集
  リヲ願ヒマス」ト呼フ〕

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• 010・中倉万次郎

  ○中倉万次郞君　是カラ耕地整理法中改正法律案ノ委
  員會ヲ開キマスカラ、許可ヲ願ヒマス

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• 011・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　許可致シマス
  〔中倉万次郞君「委員諸君ハ委員室ニ御集リヲ願
  ヒマス」ト呼フ〕

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• 012・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　是ヨリ質問ニ移リマス、社會主義
  取締ニ關スル質問-鈴木富士彌君

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• 013・赤間嘉之吉

  ○赤間嘉之吉君　決算委員第五分科會ヲ開キタイト思
  ヒマスカラ、御許可ヲ願ヒマス

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• 014・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　赤間君-許可致シマス
  〔赤間嘉之吉君「ドウゾ委員室ニ御集リヲ願ヒマス」
  ト呼フ〕
  社會主義取締ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正八年二月十九日
  提出者鈴木富士彌賛成者樋口秀雄
  外三十三人
  社會主義取締ニ關スル質問主意書
  近年社會主義ニ對スル當局ノ取締方針苛酷ニ過キ却
  テ溫和ナル社會主義者ヲ驅テ過激ニ赴カシムルノ危險
  アリ一〓ニ社會主義ト謂フモ其ノ分派數十其ノ總テカ
  國家存立ノ基礎ヲ危クスルモノニ非ス加フルニ歐米諸
  國近代ノ政治的施設ハ悉ク其ノ基礎ヲ社會主義ノ觀
  念ニ置ク然ルニ帝國官憲獨リ此ノ世界的潮流ニ反抗シ
  -社會主義ニ關シテハ一般ニ言論出版ノ自由ヲ奪ヒ
  二特ニ社會主義者ニ對シテハ之ヲ遇スル恰モ罪囚ノ
  如ク
  其ノ迫害ノ辛辣冷酷ナル世界多ク其ノ比ヲ見ス是レ
  實ニ帝國ノ一大汚辱ナルノミナラス却テ國家ノ存立ヲ
  危險ニ導クノ虞アリサレハ當局ハ速ニ其ノ方針ヲ改メ世
  ノ所謂社會主義及社會主義者ナルモノニ對シテハ先ツ所
  說ノ黑白ヲ甄別シ其ノ穩當ナルモノニ付テハ斷乎取締
  ヲ解放シ自由討究竝自由宣傳ノ餘地ヲ與フルヲ以テ刻
  下ノ急務ナリト思料ス內務大臣ノ所見如何
  右及質問候也
  -社會主義取締ニ關スル質問(鈴木富士彌
  君提出)
  〔鈴木富士彌君登壇〕
  〔拍手起ル〕

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• 015・鈴木富士彌

  ○鈴木富士彌君　社會主義ノ取締ニ關シマシテ、政府ニ
  質問ヲ致シタイト思ヒマス、質問ノ要領ハ質問趣意書ニ揭
  ゲテアリマス、今其趣意ヲ一層明確ニスル爲メニ、事實ヲ三
  段ニ分チマシテ、卑見ノ存スル所ヲ申述ベテ見タイト思ヒマ
  ス、第一段、政府ハ社會主義ヲ危險思想ナリト思料スル
  ヤ、第二從來ノ社會主義取締方針ハ苛酷ニ失スルト認メ
  ザルヤ、第三政府ハ社會主義取締方針ヲ改ムルノ意思ナキ
  ヤ、以上三點ニ分チマシテ申述ベテ見タイト思ヒマス、本論
  ニ入リマス、前ニ、一應私ノ立場ヲ申上ゲテ置キタイト思ヒ
  マスルガ、私ハ社會主義者デハアリマセヌ、曾テ社會主義ニ
  關スル論文ヲ書イタコトモナケレバ演說ヲ致シタゴトモアリマ
  セヌ、今囘此質問演說ガ、社會主義ニ關スル言論ノ皮切リ
  デアリマス、將來ノ事ハ神ナラヌ身ノ知ル由モアリマセヌガ、
  少クトモ現在ニ於テ、又過去ニ於テ、私ハ決シテ社會主義
  者デアリマセヌ、又私ノ友人中ニハ、一人モ此社會主義者
  ト云フモノガアリマセヌ、此質問趣意書ヲ議會ニ提出致シ
  マシテカラ後ニ、社會主義者ノ訪問ヲ三囘許リ受ケタコト
  ガアリマスガ、何レモ初對面ノ人デアリマス、卽チ私ハ社會
  主義者ニ非ズ、又社會主義者ノ友人デモナイノデアリマス
  ガ、今囘此質問演說ヲ爲ス所以ノモノハ何デアルカ、政府
  二十年來ノ傳統的ノ社會主義取締方針ガ、餘リニ不條理
  デアリ、餘リニ非常識デアル爲メニ、外ニ對シテハ帝國ノ面
  目ヲ傷ケ、内ニ於テハ帝國ヲ却テ危殆ニ導クノ虞アルガ故
  ニ、見ルニ見兼ネテ此質問ヲ致ス次第デアリマス···
  〔議長大岡育造君退席副議長濱田國松君議長席
  ニ著ク〕

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• 016・鈴木富士彌

  ○鈴木富士彌君　豫メ誤解ノナイヤウニ、政府ニ於テモ御
  認下サランコトヲ願ヒマス、第一段ノ質問ハ、政府ハ社會
  主義ヲ危險思想ナリト思料スルヤ、從來政府ノ執リ來レル
  社會主義取締方針ガ、頗ル苛酷デアッタト云フコトハ、世既
  ニ定評ガアリマス、獨リ日本人自ラガ一般ニ斯ク感ジテ居
  ルノミナラズ、外國人モ亦其事實ヲ認メテ、陰ニ陽ニ日本ノ
  政府ヲ非難致シテ居ルノデアリマス、數年前ニ或ル外國ノ
  雜誌ニ「日本ノ文化ノ程度ノ低イコトハ社會主義者ニ對ス
  ル取締ノ頗ル苛酷デアル一事ニ徵シテモ略、〓想像スルコトガ
  出來ル」ト云フ皮肉ナ批評ヲ揭ゲテ居ッタコトヲ記憶致シテ
  居リマス、其苛酷デアルト云フ實例バ、私ガ手許ニ澤山持ッ
  テ居リマス、是ハ後段ニ申述べマスガ、確ニ事實デアリマス、
  元來日本ノ官憲ハ、ドウシテ斯ク社會主義者ニ對シテ苛酷
  デアルカト申シマスルノニ、是ハ多分社會主義ハ危險思想
  デアルト考へ居ルカラデアラウト思ヒマス、勿論内務省ノ高
  等官ノ連中ハ、何レモ最新ノ〓育ヲ受ケタ方デアリマシテ
  社會主義ニ對シテ、相當ナル了解ヲ有ッテ居ル人とデアリマ
  スケレドモ、奈何セン直接取締ニ從事スル警視廳、竝ニ各
  警察署ノ官憲ハ深キ了解ガ無イ、何レモ社會主義ヲ危險
  ナル思想ナルガ如クニ認メテ居ル形跡デアルノデアリマス、
  社會主義ト一〓ニ申シマシテモ幾多ノ分派ガアリマシテ、
  溫和ナルモノモアレバ、隨分過激ナルモノモアリマス、之ヲ一
  率一體ニ取扱フト云フ事ハ、頗ル亂暴デアルト思フ、視
  同仁ト云フ事ガアリマスガ、官憲ノ遣方ハ、丁度一視同惡
  トモ謂フベキモノデアル、其間何等ノ區別ヲ致サナイノデア
  ル、是ハ畢竟社會主義ノ何物タルカヲ知ラヌカラ、左樣ナ
  事ニナルノデアラウト思ヒマス、マサカ知ッテ居レバ、斯様ナ不
  條理ナ取締ヲスル理由ガ無イ、世ノ中ニ知ラズシテ事ヲ爲
  ス位危險ナコトハアルマイト思ヒマス、丁度盲人ガ杖無シニ
  道ヲ步クヤウナモノデ、傍ノ迷惑ハ假リニ宜イトシテモ、終ニ
  ハ自身ヲ亡スヤウナ事ニナリハシナイカト思フノデアリマス、
  社會主義ガ果シテ危險ナリヤ否ヤニ就テ、今私ノ存ジ寄リ
  ノ事ヲ申上ゲテ、其筋ノ了解ヲ得テ置キタイト思フノデアリ
  マス、第一ニ當局ノ御留意ヲ願ヒタイト思フノハ、社會主
  義ハ經濟上ノ主義デアッテ、政治上ノ主義デナイト云フ事デ
  アリマス、唯〓其主義ヲ實行スルガ爲メニハ政治上ノ力モ
  藉ラナケレバナラヌケレドモ是ハ其手段デアッテ、目的デハナ
  イノデアリマス、政治上ノ變革ヲ目的ノ中ニ强ク包含セシム
  ル主義、例ヘバ無政府主義ノ如キハ、正確ナル意味ニ於ケ
  ル社會主義ト云フコトハ出來ヌノデアリマス、近頃廣イ意
  味ニ於キマシテ「無政府主義」「サンヂカリズム」ノ如キモノ
  モ、一〓ニ社會主義ト申シテ居リマスケレドモ、是ハ恰モ「ビ
  スマーク」ヲ社會主義者ト申スヤウナモノデ、唯〓廣イ意味ニ
  於ケル一ツノ形容詞ニ過ギナイ正確ナル意味ニ於テ政治
  上ノ變革ヲ目的トスル主義ハ、社會主義デハナイノデアリ
  マス、社會主義者ハ、時ニ「革命」ナル文字ヲ用井ルコトガア
  リマスケレドモ、是ハ社會組織ノ革命ヲ意味スルノミデアリ
  マシテ、政治上ノ革命ヲ意味スルモノデハアリマセヌ、社會
  主義者ハ、決シテ國體ノ變革ヲ希望スルモノデハナイノデア
  リマス、唯〓ノ社會組織ガ惡イ爲メニ、資本家ノミガ利益
  ヲ壁斷致シマシテ、勞働者ト云フモノハ洵ニ憫ムベキ狀態ニ
  在リマスカラ、之ヲ矯正シヤウト云フノガ社會主義デアリマ
  ス、此主義其ノモノニ於テ、何等不穩ナル分子ハ認メラレヌ
  ノデアリマス、決シテ國家存立ノ基礎ヲ呪フト云フガ如キコ
  トガアルベキ道理ハ無イ、唯、官憲ガ其本質ヲ知ラズシテ無
  暗ニ壓迫スルノ結果、餘憤ノ迸ル所、時ニ暴力ニ訴ヘルコ
  トガナイトモ限ラナイ、是ハ恰モ大河ノ流レヲ阻ムト、水ガ
  汎濫シテ堤防ヲ缺潰シ、沃野千里ヲ水中ニ埋沒スルノト同
  ジ事デアリマス、是ハ畢竟官憲ガ其處置ヲ誤ルノ結果デア
  リマシテ、社會主義ナルモノハ、本來斯ノ如キ革命的思想ヲ
  有ッテ居ルモノデハナイ「サンヂカリズム」無政府主義ハ此限
  リニ在ラズデアリマスケレドモ、一般ニ社會主義ト稱セラル
  ルモノハ、經濟上ノ主張タルニ過ギヌノデアリマス、此點ヲ
  先ヅ第一ニ御諒解ヲ得テ置カナケレバナラヌト思フノデアリ
  マス、第二ニ於キマシデ、社會主義ハ社會ニ對スル不平ノ
  聲デハナクシテ、其不平ヲ救濟スル爲メニ起シタ所ノ、社會改
  善ノ叫聲デアルト云フコトデゴザイマス、社會ニ不平ガアル
  カラ、社會主義ナルモノヽ起ル必要ガ生ジテ來タノデアル、
  社會ニ不平ガ無ケレバ社會主義ノ起ル必要ハ無イ、其不
  平ヲ根絕スル爲メニ歐羅巴ノ思想家ガ腦漿ヲ榨ッテ考出シ
  タモノガ、卽チ茲ニ社會主義トナッテ現レタノデアリマス、然
  ラバ現代ノ社會ニハ如何ナル不平ガアルカト申シマスノニ、
  (一)產業上ノ利益ハ資本家ガ獨リ之ヲ壟斷シテ、勞働者
  ハ其分配ニ與カルコトガ出來ナイ、是ガ一ツ、(二)資本家
  ガ益〓富ンデ少數トナリ、勞働者ハ益〓貧ニナッテ其數ヲ
  增スト云フ事、是ガ其一ッ、此二ツノ不平ノ聲ト云フモノ
  ハ、現代ノ社會ノ二大病弊デアリマス、此不平、此病弊ノ
  由ッテ起ル根源ハ何デアルカト申シマスルニ、是ハ現在ノ經
  濟組織、卽チ私有財產制度ト產業ノ自由競争制度デアリ
  マス、私有財產制度、產業ノ自由競爭制度ト申シマスモノ
  ハ、第十八世紀ノ工業革新ノ起ル以前マデハ格別ナ弊害
  ガナク、當時ノ社會組織トシテハ、最モ其當ヲ得タモノデア
  ルトシテ何人モ異論ノ無カッタモノデアリマス、然ルニ其後ニ
  至リ弊害ガ段々生ジテ來タノデアリマス、第十八世紀ノ後
  半期千七百六十九年ニ、英國ニ於テ「ワット」ノ蒸汽機關ガ
  發明セラレテ以來、續イテ各種ノ紡績機械、各種ノ工業機
  械ガ發明サレテ、玆ニ自家製造ニ屬シタル工業卜云フモノ
  ガ、一轉シテ工場製造ノ時代トナッタノデアリマス、而シテ勞
  働者ト云フ新シイ階級ガ生ジタノデアリマス、昔年工業ヲ
  以テ生計ヲ營ンデ居ッタ職人、竝ニ副業トシテ工業ヲ營ンデ
  居ッタ農民ト云フモノハ、此大仕掛ナル工業經營者ニ壓倒
  セラレ、彼等ハ職ヲ失ッテ、遂ニ其工場ノ勞働者トナルヤウ
  ニナッタノデアリンス、斯樣ナ憫レナ境遇ニ陷ッタノデアリマ
  ス、是ニ於テ始メテ資本家ト勞働者トノ階級ガ分レテ來マ
  シタ、勞働者ハ如何ナル地位ニ居ルカト見マスレバ、洵ニ憫レ
  ナル狀態ニ在ルノデアリマス、勞働ノ時間及方法ノ如キハ、
  資本家ノ勝手ニ定メタ規定ニ服從シナケレバナラヌ、終日
  工場ニ在ッテ黑イ煙ニ塗レテ、機械ト共ニ棲息シテ、家族〓
  欒ノ樂ヲモ享クルコトガ出來ヌト云フヤウナ有樣ニナリ、又
  衞生設備ノ不完全ナル爲メ、著シク健康ヲ損ジ、又機械ノ
  設備ガ危險ナル爲メニ、或ハ不具者、或ハ癈疾ニナルト云
  フ者モ多イノデアリマス、又一朝恐慌ガ起ッテ不景氣ニナレ
  バ、忽チ其職ヲ失ハナケレバナラヌ、然モ其得ル所ノ賃銀ハ、
  僅ニ自分自身ト家族ヲ、辛ジテ扶持スルト云フ有樣ニ過ギ
  ヌノデアリマス、然ルニ資本家ノ地位ハ著シク懸隔ガアリマ
  シテ、工場カラ生ジタ所ノ利益ノ大部分ハ之ヲ手中ニ收メ
  テ、資產ハ日ニ增大シテ、坐ナガラ勞セズシテ富ミ、酒
  池肉林、飽食暖衣、思フ事成ラザルハナク、爲ス事成就セ
  ザルハナシト云フ有樣デアル、其地位ハ斯ノ如キ雲泥ノ相
  違ガアルノデアリマス、是ニ於テ資本家ト勞働者トノ衝突ノ
  起リマスノハ自然ノ勢デアリマス、勞働者ハ〓結シテ同盟
  罷業ヲナシ、勞銀ノ增加、勞働時間ノ短縮抔ヲ資本家ニ迫
  リマシタ、是ニ於テ勞働問題ガ生ジタノデアリマス、斯クテ
  英吉利ハ第十八世紀ノ末葉ヨリ、佛蘭西ハ第十九世紀
  ノ初葉ヨリ、獨逸ハ第十九世紀ノ中葉ヨリ、而シテ日本ハ
  第十九世紀ノ末葉ヨリ、此勞働者問題ガ起ッテ、私有財產
  制度、生產ノ自由競爭制度ノ缺陷ヲ遺憾ナク暴露スルコ
  トニナッタノデアリマス、勞働問題ハ、畢竟社會組織ニ對スル
  不平ノ聲デアリマス、此不平ノ聲ヲ鎮壓スベク良案トシテ
  考出サレタノガ、此社會主義デアリマス、卽チ社會主義ノ
  理想トスル所ハ、現在ノ經済組織デハ、到底勞働者ノ窮狀
  ヲ救濟スルコトガ出來ヌ、故ニ之ヲ根柢カラ破壞シテ、玆ニ
  新社會ヲ建設シテ、生產機關ナルモノハ總テ之ヲ國有ト致
  シテ、依テ資本家ナル社會階級ヲ絕滅セシメ、而シテ生產
  業ヲ悉ク之ヲ官業トシテ、天下ノ人民悉クヲ官吏、又ハ官
  業ノ使用人タラシムベシト云フニ在ルノデゴザイマス、社會
  主義ノ流派ハ色〓違ヒマスケレドモ、是ガ今日社會主義ニ
  共通ナル觀念デアリマス、故ニ社會主義ハ不平ノ聲ニ非ズ
  シテ、救濟ノ聲デアリマス、隨テ其思想ハ元來危險ノ伴フト
  云フコトガ無イモノデアリマス、ソレカラ第三ニ當局ニ御留
  意ヲ乞ヒタイト思フ事ハ、日本社會主義者ノ大部分ハ、「マ
  ルクス」派ノ純正社會主義、竝ニ「フエヂナンド、ラッサル」派國
  家社會主義者デアルト云フコトデアリマス、無政府主義又
  ハ「サンヂカリズム」ヲ奉ジテ居ル者ハ、極メテ少數デアリマス、
  私ハ此質問趣意書ヲ提出致シマシタ後ニ、封書ヲ以テ束
  京在住ノ著名ナル社會主義者二十名ヲ擇ンデ、其抱懷ス
  ル所ノ社會主義ノ要旨如何ト云フ質問ヲ致シマシタ所ガ、
  返答ヲシテ來夕者ガ十五名、其內「マルクス」派ノ社會主義
  ヲ奉ズル者ハ七人、國家社會主義ヲ奉ズル者ガ五人、共產
  主義者ガ一人、基督〓社會主義者ガ一人、無政府主義者
  ガ一人、斯樣ナル內譯ニナッタノデアリマス、詰マリ此「マル
  クス」派ノ社會主義者ガ一番多數デアリマシタ、然ラバ「マル
  クス」派社會主義ハ、如何ナル事ヲ主張スル所ノ「ソシアルリ
  ズム」デアルカト申シマスト「マルクス」ハ御承知ノ如ク近世
  社會主義ノ鼻祖ト稱セラルヽ程ノ人デアリマス、其著書「共
  產黨宣言」「經濟學評論」「資本論」「餘剩價値學說論」此
  四種ノ著書ニ依ッテ、略ボ其ノ思想ヲ窺フコトガ出來ルノデ
  アリマス、其中デ「資本論」卽チ「ダス、カピタル」ト稱スル大著
  述、是ハ頗ル難解ノモノデアリマシタ、社會主義者ノ「パイ
  ブル」聖書ト稱セラルヽモノデ、是ハ衆議院ノ圖書館ニモ三
  册揃ッテ居リマス、「マルクス」派ノ社會主義ノ要旨ハ、土地
  及資本ノ公有デアリマス、一切ノ生產機關ハ之ヲ公營ト爲
  シ、各生產シタル物ハ勞働ノ功程ニ應ジテ、之ヲ勞働者ニ
  分配シ、消費ニ付テ財產ノ私有ヲ許シ、家事經濟ハ今日ト
  同ジク私經濟主義ヲ維持スルト云フ學說デアリマス、故ニ
  此社會主義ハ半共產主義トモ申シマスシ、又一名集產主
  義トモ申スノデアリマス、而シテ「マルクス」派ノ社會主義ノ
  根柢ハ何カト申シマスルト、其一ハ彼ノ歷史論デアリマシテ、
  歴史ヲ科學的ニ〓究シテ得タル結論、卽チ唯物史觀ガ一
  ツ、次ニ其二ハ彼ノ經濟論デアリマシテ、特ニ餘剩價値論
  ガ其神髓トナッテ居リマス、此唯物史觀、竝ニ餘剩價値論
  ノ二ツ大黑柱トナッテ、玆ニ彼ノ社會主義ハ組立テラレテ居
  ルノデアリマス、詳細ナル事ハ時間ガアリマセヌカラ申上
  ゲマセヌガ、斯ノ如クニシテ彼ハ斯樣ナ結論ヲ與ヘテ居リ
  マス、「總テノ歷史ハ階級戰爭ノ歷史デアッテ現在ノ歷史
  ハ有產階級卽チ「ブルジヨアーシー」ト無產階級卽チ「プロ
  レタリアート」トノ戰爭ニ外ナラヌ、卽チ階級ノ成立ハ一
  定ナル經濟的生產及分配ノ關係カラ起ッテ來ル、權力支
  配ノ關係モ是カラ發芽スルモノデアル、而シテ現在ノ時代
  ニ於テハ有產階級ガ經濟組織ヲ代表シテ居ルガ、來ルベ
  キ時代ニ於テハ無產階級ガ其代表者トナルニ相違ナイ
  卽チ當今ニ於ケル無產階級社會運動ハ、其兵備ヲ整ヘテ
  有產者階級ノ城塞ヲ奪ハンガ爲メノモノデアッテ、私生產組
  織ニ代フルニ共產主義ヲ以テセントスルニ外ナラヌ」斯ウ
  云フコトヲ申シテ居ルノデアリマス、ソレデ「マルクス」派ノ說
  ク所ハ、一ノ制度ヲ主張スルト言ハンヨリモ、歴史上ノ成行ヲ
  論證スルト言ウタ方ガ適當デアルカモ知レヌ現在ノ社會ハ
  進化ノ法則ニ驅ラレテ、否デモ應デモ集產的新社會ノ現出
  ヲ餘儀ナクスルト說イテ居ルノデアル、故ニ人ハ之ヲ溫和ナ
  ル社會主義ト唱ヘテ居ル、又科學的社會主義ト純正社會
  主義「オルソドックス」トモ呼ンデ居ル、尤モ「マルクス」ノ〓義ニ
  ハ矛盾モアレバ誤謬モアルト云フコトハ、經濟學者ガ皆ナ申
  シテ居リマス、「マルクス」ノ流ヲ汲ム所ノ「ベルンスタイン」「カ
  ウツキー」ノ如キニ致シマシテモ、尙ホ其全部ヲ採用シテ居ル
  譯デハアリマセヌガ、此「マルクス」ノ思想ト云フモノハ、今日
  獨逸ノ社會民主黨ノ綱領ノ基礎ヲ成シテ居ルノデアリマス、
  我日本ニ於テモ、此流ヲ汲ム者ガ非常ニ多イノデアリマス、
  安部磯雄君ノ如キ、堺利彥君ノ如キ、其他大部分ノ人ハ
  此「マルクス」ノ社會主義ヲ奉ジテ居リマス、河上博士ノ如
  キハ、新聞ニ雜誌ニ「マルクス」ノ〓義ヲ祖述スルコトガ頗ル
  熱心デアリマス、特ニ博士ガ獨力デ出シテ居リマス所ノ「社
  會問題〓究」ト云フ雜誌ノ如キハ、殆ド「マルクス」主義ノ專
  門雜誌ト云フモ過言デナイノデアリマス、福田博士ノ如キハ
  「マルクス」ノ學說ニハ誤謬ガアルト云フコトヲ申シテ居リナ
  ガラ「マルクス」ノ資本論ヲ紹介スルノニ全力ヲ注イデ居リマ
  ス、且ツ博士ガ昨年出版シマシタ所ノ「勞働經濟講話」ト云
  フ書物ノ如キハ、卷頭ニ「マルクス」ノ肖像ヲ入レテ、彼レノ
  百年ヲ記念スル爲メニ出シタト云フコトヲ書イテアリマス、
  内心ニ於キマシテハ、大ニ「マルクス」ニ傾倒スル所ガアルモノ
  ノ如クニ見エルノデアリマス、ソコデ今度ハ我ガ日本ノ經濟
  組織ヲ考ヘテ見マスルノニ、日本ノ財政經濟政策ノ上ニ、
  段々「マルクス」主義ニ近イモノガ實現セラレツヽアルト云フ
  コトハ、頗ル注目スベキ事デアリマス、例ヘバ鐵道ノ如キハ國
  有デアリマス、煙草ノ官營ガアリ、鹽ノ專賣ガアリ、又製鐵
  所ニ於テハ、政府自ラ鐵ヲ製造シテ居リマス、日本全國ノ
  土地ノ半分以上ト云ワモノハ、公有卽チ國有及町村有、然
  ラザレバ皇室ノ所有ニナッテ居リマス、其等ノ事情ヲ見マス
  ルト云ウト、日本ハ決シテ社會主義的共產組織デハナイケ
  レドモ、社會主義ノ主張スル一切ノ生產機關ノ公有、卽チ
  土地及資本ノ公有ト云フ方面ニ、稍〓近付イテ居ルヤウナ
  現象ヲ呈シテ居ルノデアリマス、而已ナラズ歷史ヲ調ベテ見
  マスルト、大化ノ新政ト云フモノハ、卽チ此社會主義者ノ理
  想ヲ一部分實行シタモノデアルト云フコトモ言ヘルノデアリ
  マス、孝德天皇ノ大化二年ニ、唐ノ制ニ做ッテ班田收授ノ
  法ト云フモノヲ行ヒマシタ、卽チ良家ノ子生レテ六歲トナル
  ヤ、水田二段(女子ニハ其三分ノ二)ヲ給シ、毎六年ニ之ヲ
  移シ、嚴ニ令シテ土地ノ兼併十賣買トヲ禁ジマシタ、是等ハ
  卽チ社會主義者ノ申ス所ヲ一部分實現シテ居ルノデアリマ
  ス、德川幕府ノ末年ニ至リマシテ、儒者ノ佐藤信淵ト云フ
  人ガ現レマシテ、垂統ノ法ト云フコトヲ主張シテ居リマス
  「垂統」ノ法ト云フノハ何デアルカト申シマスルノニ、是ハ卽
  チ今日ノ社會主義ノ理想其儘ノモノデナル「マルクス」ノ社
  會主義ト殆ド符節ヲ合スルガ如キモノデアリマス、是ハ佐藤
  信淵ノ著書ヲ讀メバ、自ラハッキリスルノデアリマスガ、河上
  博士ハ之ヲ〓究致シマシテ「垂統祕錄」ト云フモノカラ、彼
  レ主義ナルモノヲ摘出致シテ、三箇條ノ基本原則ヲ擧ゲテ
  居リマス、卽チ第一ニハ、一切ノ賣買、貸借、雇傭ハ私人之
  ヲ營ムヲ嚴禁シ、凡テ之ヲ國家ノ公營ト爲スコト、第二二ハヽ
  凡テノ國民ハ國家ノ官吏タルカ、然ラズンバ國家ノ勞働者タル
  ベク、要スルニ國民ヲ擧ゲテ國家ノ直接使用人タラシムルコ
  ト、第三ニハ、一切ノ租稅ヲ全廢シ、國家政務ノ費用ハ、凡
  テ事業公營ノ利潤ノ一部ヲ以テ之ニ充ツルコト、卽チ立派
  ニ現在ノ「マルクス」派社會主義ノ綱領ニ合致スルノデアリ
  マス、故ニ「マルクス」派ノ社會主義カ、決シテ危險ナリト云
  フコトノアルベキ道理ガ無イ、日本ノ從來ノ經濟的設備
  ハ、寧ロ社會主義ニ近イモノガアルト云フ事實ニ顧ミタ
  ナラバ、決シテ其性質ガ恐ルベキモノデナイト云フコトガ、
  自ラ明瞭スルノデアリマス、ソレカラ第二ニ日本ノ社會主義
  者ノ比較的多數奉ジテ居リマスルノハ、國家社會主義デア
  リマス、國家社會主義ト申シマスルモノニハ二一類アリマス、
  「フエルヂナンド、ラッサル」ト云フ人ノ唱ヘタ國家社會主義、
  是ハ獨逸ノ皇室ヲ中心トシテ、其下ニ集產的ノ新社會ヲ
  建設シヤウト云フノデアリマス、「マルクス」派ノ社會主義ハ
  萬國的デアリマスガ、併シ別ニ獨逸ノ皇室ヲ否認スル抔ト
  云フヤウナ不穏當ナ說ヲ吐イタコトハ一度モ無イ、民主的
  ノ分子ガ勝ッテ居リマスケレドモ、決シテ政治的革命ヲ說イ
  タモノデハナイ、「ラッサル一ノ社會主義ニ至ッテハ、矢張此點
  ハ同ジデアリマスルガ、更ニ一歩ヲ進メテ皇室ノ力ヲ藉リテ、
  其下ニ社會主義ヲ實行スルト云フコトヲ高調シタノデアリ
  さく、之ガ爲メニ「フエルヂナンド、ラッサル」ハ「普魚西皇室
  御用社會主義」デアルト云フヤウナ批評ヲ蒙ッテ居ルノデア
  リマス、日本ノ社會主義者ノ中、白柳秀湖君ノ如キ、高畠、
  遠藤、尾崎、原、其外二三氏ハ、國家社會主義ナルモノヲ奉
  ジテ居リマス、特ニ皇室中心社會主義ト云フ名前ヲ現シ
  テ、之ヲ主張シテ居ルト云フ譯デアリマス、此主義ハ「マルク
  ス」派ノ社會主義ニ較ベレバ、更ニ危險ノ分子ハ少イノデア
  リマス、寧口是ハ奬勵スベキモノデハナイカト私ハ思フノデア
  リマス、ソレカラ其後ニ至リマシテ獨逸ニ「ビスマーク」ガ一
  種ノ社會政策ヲ行ヒマシタ、千八百八十三年ニ强制勞働
  ト云フ制度ヲ採用致シマシタ、此經濟政策ヲ世ノ人ガ、俗
  ニ「ビスマーク」ノ國家社會主義ト申シタノデアリマス、詰マ
  リ現在ノ社會組織ヲ今日ノ儘ニ繼續ヲシテ、國家ノカデ社
  會政策ヲ行ウテ、別ニ所有權ヲ否認スル譯デモナク、又自
  由競争制度ガ惡イト云フ譯デモナイ、唯〓其個人ノ絕對ニ
  爲シ能ハザル事業、又ハ個人ヨリハ政府デヤル方カ利益アリ
  ト信ズル事業ヲ、國家ヲシテ經營ニ當ラシムルト云フノデア
  リマシテ、是ハ嚴格ナル意味ニ於テ社會主義デハアリマセ
  又、寧ロ社會改良主義ト稱スルノガ適當デアリマス、「ワグナ
  ル」「シユモラー」「ブレンタノ」「「シエーネベルヒ」抔ト云フ學者ガ
  專ラ之ヲ奉ジテ居ルノデアリマス、日本ニ於キマシテ國民黨
  ノ鈴木梅四郎君ガ、皇室社會新政ト云フ新シイ熟語ヲ編
  出シテ居リマス、此皇室社會新政ト云フノガ、詰マリ「ビス
  マーク」流ノ國家社會主義ヲ意味スルモノデアラウト信ジマ
  ス、詰マリ「ワグネル」「シユモラー」ノ國家社會主義ノ別名ニ
  過ギヌノデハナイカト私ハ信ジテ居リマス、嘗テ帝國黨ト云
  フ政黨ガ日本ニ在ッタコトガアリマス、舊國民協會ノ人とガ、
  佐々友房等ヲ中心トシテ組織シタル政黨デアリマス、此帝
  國黨ノ綱領ノ一ニ、確カ國家社會主義ガアッタコトヲ私ハ
  記憶致シテ居リマス、デアリマスルカラ、此國家社會主義ニ
  至ッテハ、尙更危險分子ト云フモノハ少シモ無イノデアリマ
  ス、福田博士ノ如キハ、國家社會主義ハ、社會主義ト國家
  主義トノ私生兒デアル抔ト云フヤウナ批評ヲ加ヘテ居リマ
  ス、是ハ純粹ナル學者ノ立場カラ言ヘバ、種々又非難スベキ
  所ガアラウト思ヒマスケレドモ、兎モ角モ國家社會主義ヲ
  奉ズル人ガ我國ニモ澤山アルコトハ事實デアリマス、少シモ
  危險思想デナイト云フコトハ、勿論絮說スル必要ノナイコ
  トデアラウト思ヒマス、ソレカラ私ノ照會ニ對スル解答中ニ
  共產主義ト目スベキ者ガ一人ゴザイマス、共產主義ト申シ
  マスノハ、共同生產、共同消費ヲ主張スルモノデアリマス、
  卽チ生產財產及享樂的財產ハ、全部ヲ擧ゲテ之ヲ公有ニ
  スルト云フ主義デアリマス、是ハ「マルクス」派ノ社會主義ニ
  較ベルト、生產機關ヲ公有ニスルト云フコトハ兩者相通ジ
  テ居ルノデアリマスケレドモ、消費ヲ公有ニスルト云フ點ハ
  違ッテ居ルノデアリマス、此共產主義ノ理想ト云フモノハ、
  由ッテ來ル所ガ遠イノデアリマス、希臘ノ「プラトー」ハ其著書
  「共和國」「レパブリック」ニ於テ、共產的新社會ヲ描出シテ居
  リマス、其後「トーマス、モーア」ノ「ユートピヤ」ニ於テモ亦之
  ヲ描イテ居リマスガ、最近ノ共產主義ノ代表者トモ目スベ
  キ者ハ、佛蘭西ノ「バボーフ」ト云フ人デアリマシテ、ニック
  土地ヲ平分シテ、極端ナル財產共有制度ヲ主張シタノデア
  リマス、其後ニ至リマシテ各種ノ共產主義ガ現レマシタ、「サ
  ンシモン」ノ如キ、「フーリエー」ノ如キ、「トーマス、オーウエン」
  ノ如キ、其說ク所ハ多少違ヒマスケレドモ、大體ニ於テ共同
  生產、共同消費ノ主義ヲ離レナカッタノデアリマス、是等ノ
  共產主義ハ何レモ皆ナ感情的デアッテ、學理上ノ根據ハ何
  モ無イ、詰マリ架空談デアッテ實際ニ適セナイ、ソレ故ニ何レ
  モ勢力ヲ得ルニ至ラズシテ、遂ニ世ノ中ニ忘レラレテシマッ
  タノデアリマス、然ルニ佛蘭西ニ「ルイブラン」ト云フ人ガ
  現レマシテ、一種ノ共產主義ヲ主張致シマシタ、生產組合
  設立ヲ唱道シマシタ、此說ハ政府ノ採ル所トナッテ、佛國革
  命政府ハ千八百四十八年ニ、彼レノ說ニ從ッテ國立工場
  ヲ造ッタガ、是ハ遂ニ良結果ヲ奏スルニ至ラズシテ、失敗ニ
  終ッタノデアリマス、斯ノ如キ譯デアリマシテ、共產主義ト云
  フモノハ、畢竟空想デアッテ、實際ニ適シナイト云フノガ事
  實デアリマス、今日日本ニ一人斯ウ云フ主義ヲ唱ヘテ居ル
  者ガアリマスガ、是ハ餘リ有力デアリマセヌ、併ナガラ是トテ
  モ別ニ危險ト云フ程ノ者デナイト云フコトハ、其性質ニ見テ
  自ラ明白デアリマス、ソレカラ日本ニハ極メテ少數ノ無政府
  主義者ガアリマス、無政府主義ハ實ニ危險デアリマス、是ハ
  私共モ其危險ナルコトヲ認ムルノデアリマス、是ハ千八百四
  十年頃ニ、佛蘭西ノ「プルードン」ト云フ人ガ初メテ唱ヘテ、一
  切ノ政府ヲ否認スルト云フ極端ナル自由ヲ主張スルノデア
  リマス、露西亞ノ虛無主義モ、畢竟此無政府主義ノ一別名
  ト稱シテ差支ナイノデアリマス、ソレデ無政府主義ト社會主
  義ト何所ガ異ナルカト云フト、社會主義ハ國家万能主義
  デアルノニ對シテ、無政府主義ハ國家ヲ否認スルノデア
  ル、此點ニ於テ兩者ガ雪ト炭ノ相違ガアルノデアリマス、
  又社會主義ハ富ノ分配ヲ公平ニ行フト云フノデアリマス
  ガ無政府主義ハ權力ノ分配ニ重キヲ置キマス、前者ハ經濟
  上ノ革命主義ナルニ反シテ、後者ハ政治上ノ革命主義ヲモ
  含ンデ居リマス、又社會主義ハ或ル部分專制主義ト申シ
  テモ宜シイノデアリマスガ、無政府主義ハ極端ナル自由主
  義デアリマス、ソレ故ニ無政府主義ノ危險ナルコトハ、天下
  何人モ認メナイ者ハ無イ、彼等無政府主義者自身ヲ除イ
  テハ、何人モ危險視シテ居ルノデアル、國家ノ存立ト相容レ
  ザルモノデアリマスカラ、若シ日本ニ此無政府主義者ガアッ
  タナラ之ヲ嚴重ニ取締ルノハ、當然ノ事テ、何人モ異論ハ無
  イノデアリマス、私共モ決シテ是等ノ人ヲモ寬大ニ取締レト
  云フノデハナイ、尤モ無政府主義者ハ極メテ少數デアリマ
  ス、是等ハ今少シク嚴重ニ取締ッテモ宜シイ位ノ考ヲ持ッテ
  居リマス、此無政府主義ト社會主義ヲ混同スルカラ色ニ不
  徹底ナ事ヲスルヤウニナル、此點ハ當局ニ於テモ篤ト御了
  解ノコトヽ信ジマスケレドモ、直接取締ニ從事スル官憲ハ動
  モスルト混同スルノデアリマス、能ク御留意ヲ願ハナケレバナ
  ラヌト思ヒマス、日本ニアリマス社會主義ハ、此外ニ尙ホ基
  督〓社會主義トモ申スベキモノガアリマス、是ハ基督ノ〓
  義ヲ以テ社會主義ヲ行フト云フノデアリマシテ、是モ或ル
  方面カラ言ヘバ一ノ社會改良主義デアリマス之ヲ「ソシアリ
  ズム」ト稱スルノハ聊カ不適當ナ名前デハナイカト思フ、其
  詳細ハ時間ガアリマセヌカラ略シテ置クコトニ致シマス、尙
  ホ此外ニ佛蘭西ノ「サンヂカリズム」ノ流ヲ汲ム者ガアリマス
  ケレドモ、是ハ其主義ヲ奉ズルト云フヨリモ、寧ロ〓究致シ
  テ居ルニ過ギナイ、此「サンヂカリズム」ハ、一ノ革命的勞働
  組合主義デアリマス、其手段ガ極メテ過激デ、直接行動ニ
  依シテ主義ヲ實現シヤウト云フノデ、議會政策、政黨政策、
  議會ヤ政黨ノ力ヲ藉リテ「サンヂカリズム」ヲ主張スルノデナ
  ク、其樣ナ手緩イコトハ一切止メテ、直接行動、同盟罷工
  カ或ハ其他ノ過激ナ運動ニ依シテ、其主義ヲ實現セントスル
  モノデアリマスカラ、是亦危險ナル主義デアルト申スコトガ
  出來マス、併ナガラ是ハ社會主義ト云フヨリハ、寧口無政府
  主義ニ近イ一種ノ過激思想デアルト申シタ方ガ宜カラウト
  思フノデアリマス、其他ニ「ポリシエビズム」露西亞過激派ノ
  主義ガアリマスケレドモ是モ別ニ日本ニアル譯デハアリマセ
  ヌカラ申ス必要ハアリマセヌ、其他ニ共同連帶社會主義法
  的社會主義抔ト云フノガアリマスケレドモ、日本ニハ目下
  之ヲ奉ズル者ガアリマセヌ、斯樣ナ次第デアリマシテ、社會
  主義ハ本來ノ性質ニ於テ經濟上ノ主義デアッテ、政治上ノ
  主義デハアリマセヌ、又勞働問題ガ發生スル以上ハ、社會
  主義ト云フモノハ當然起ルベキモノデアル、資本主義ニ對シ
  テ社會主義ト云フモノガ、反對ニ毒トモナリ、藥トモナルノ
  デアリマス、而シテ日本ノ社會主義ナルモノハ、皆ナ穩和ナ
  ル所ノ「マルクス」社會主義者カ、然ラザレバ國家社會主義
  者デアル無政府主義「サンヂカリズム」ノ如キハ極メテ少數デ
  アリマス然ルニ政府ハ此社會主義者ヲ一列一體ニ嚴重ナ
  ル取締ヲ加フルト云フコトハ、實ニ·當ヲ得タモノデナイト信
  ズルノデアリマス、第二段ノ質問、從來ノ社會主義取締方針
  ハ苛酷ニ失スト認メザルカ政府ノ取締ガ是等ノ穏和ナル社
  會主義者ニ對シテモ、如何ニ苛酷ニヤッテ居ルカト云フ實例
  ハ私此處ニ澤山持ノテ居ルノデアリマス、今二三ノ例ヲ申シ
  マスレバ、言論出版ノ取締ノ如キ、非常ニ今尙嚴重デアリマ
  ス、尤モ原內閣ニナリマシテ、此點ハ稍、こ緩和セラレタ感ガ
  アリマスケレドモ、併ナガラ二十八年來傳統的ノ政策ト云
  フモノガ矢張其形ヲ存シテ居リマシテ、直接此取締ニ從事ス
  ル官憲ハ、中ニマダ六ヶ敷キコトヲ申シテ居リマス、現ニ最近
  ニ於キマシテ堺利彥君ノ「唯物史觀解說」ト稱スル、翻譯書
  ヲ本年一月ニ發賣禁止ヲシマシタ、其內容ハ旣ニ久シク「新
  社會」ト云フ雑誌ニ續物トシテ掲載サレテ居ッタノデアリマ
  ス、ソレヲ纏メテ單行本トスルト直チニ發賣禁止ニナッテシマッ
  タンレカラ言論ノ如キハ最近二十年間ニ於キマシテ、社會
  主義演說會、若クハ社會主義講演會ト名ノ付イタ集會デ、
  無事ニ最後マデ演了シタモノハ殆ド一ツモ無イト云ッテ差
  支ナカラウト思ヒマス、開ケバ直チニ解散ヲ命ズル、ソレ故ニ
  自然社會主義者モ根ガ盡キテ演說會ヲ開カウトシナイ「開
  イテモ無益デアルカラ開カナイト云フ有樣デアリマス又最近
  大正六年ニ堺君ガ社會黨ノ候補者トシテ衆議院議員選
  擧場裡ニ現レタ際ニ、東京市中デ五囘演說會ヲ開キマシタ
  ケレドモ、十分乃至二十分ニシテ悉ク禁止サレテシマッタ、而
  シテ其後ニハ會場ノ持主ニ政府カラ交涉致シマシテ、貸サヌ
  コトニナッテシマッタト云フコトデアリマス、又社會黨宣言
  政見發表ノ印刷物ノ如キ、或ハ演說會ノ「チラシ」ノ如キモ
  ノハ殆ド印刷所ニマデ蹈込ンデ行ッテ之ヲ押收シ、或ハ組
  版マデモ破壞セシメタト云フヤウナ狀態デアリマシテ、誠ニ
  取締ガ峻嚴ヲ極メタノデアリマス、出版物ノ中デ發賣禁止
  ニナッテ居ルモノハ、其數ガ少ナクナイノデアリマス、今一々此
  處デ其名ヲ列擧スルコトハ致シマセヌ又結社ノ如キハ殆ド
  絕對ニ禁止サレテ居リマス、又交通ニ對スル妨害モ中と峻
  嚴ナモノデアリマス、卽チ一人デ道ヲ步クコトガ出來ナイ、外
  ニ出レバ必ズ尾行巡査ガ尾ク、是ハ第二次桂內閣時代ガ
  一番酷カッタサウデアリマスガ、最近ニ於テモ矢張尾行巡査
  ガ廢サレテアリマセヌ、殊ニ最近堺利彥君ノ如キハ尾行巡査
  ガ三人モ尾イテ居ル、尤モ其中ノ一人ハ憲兵デアル、陸軍
  ノ側カラ尾行ヲ一人附ケテ居ルト云フコトデアル、而シテ住
  居ノ如キモノモ下宿ヲ致シテ居リマスト、刑事巡査ガヤッテ來
  テ、下宿ノ主人ニ交涉シテ逐出スヤウナコトヲスル、ソレ故ニ下
  ヲ輾轉シテ、殆ド居ルニ處ガ無イト云フヤウナ憫ナ有樣デアリ
  マス、又家主ヲ說イテ其家ヲ逐出サセルト云フヤウナコト
  モアリマシタ、又職業ニ就キマシテモ、其雇主ニ對シ色ニノ干涉
  ヲシテ逐出サセル、其實例ハ極メテ多イ、商賣ヲシテ居リマス
  ト店ノ前ニ刑事巡査ガ監視シテ居ル、或ハ得意先ニ行ッテ、
  何故アヽ云フ所デ品物ヲ買フカト云フヤウナコトヲ言ッテ干
  涉致シマス爲メニ店モ閉ヂテシマハナケレバナラヌト云フヤウナ
  コトニナッタ實例モ少ナクアリマセヌ、總ジテ就職口ニ對スル
  壓迫ト云フモノモ中ミ酷カッタノデアリマス、詰マリ糊口ノ途
  ヲ塞イデシマフト云フコトヲヤル、世ニ是レ位殘酷ノ事ハナ
  カラウト思フ、又交際ヲ壓迫スルト云フ實例モアリマス、何
  故アヽ云フ者ト交ルカ、アヽ云フ者ト手紙ノ遣取リヲシテハ
  イケナイト云フヤウナコトヲ言ッテ、友人或ハ親戚抔トモ殆ド
  文通ヲ杜絕サレテシマウ、又何カト云ヘバ直チニ檢束シテ、
  身體ノ自由ヲ奪フト云フ實例ハ更ニ多イノデアリマス、而シ
  テ僅カノ罪ヲ犯シマスト嚴罰ヲ以テ之ニ臨ム、其實例モ多
  數アリマス、併ナガラ是等ノ事ハ、マダ社會主義者自身ノ受
  クル所ノ迫害デアルカラ、假リニ宜イトシテ我慢ヲシテモ、我
  慢ノ出來ナイノハ、社會主義者ノ妻子眷族及友人ニ對シ
  テ爲ス所ノ壓迫デアリマス、妻ニ對シテ迫害ヲシタト云フ事
  實モ澤山アリマス、ソレガ爲メニ或社會主義者ハ、協議ノ上
  妻ヲ離婚シ、其妻ハ〓師タルコトガ出來ズシテ產婆ニナッタ、
  サウ云フ實例モアリマス、又結婚セント致シマシ夕所ガ、警
  視廳カラ色ミ惡イ事ヲ報告サレタノデ、破談ニナッタト云フ
  實例モアリマス、其中私ガ非常ニ神經ヲ刺戟スルト思ヒマ
  シタノハ、山口孤創ト云フ人ノ妹ノ某ガ、小倉ノ第十四聯
  隊ノ陸軍中尉ノ村上某ノ細君ニナッタ所ガ、聯隊長ガ其中
  尉ヲ呼出シマシテ、彼ノ妻ヲ離別シナケレバ職ヲ罷メルゾト
  言ッテ壓迫ヲ致シマシタノデ、遂ニ彼ハ離別スルニ忍ビズシ
  テ、休職トナッタト云フコトデアリマス、是等ハ實ニ殘酷極ル
  遣方デアルト思フノデアリマス、又社會主義者ヲ友人ニ持。
  デ居ル關係デ職ヲ失ッタ實例ハ、博文館ニ一人アリマス、又
  中央新聞ノ校正係ニモ一人アリマスガ、名前ハ留保シテ置
  キマス、斯樣ナ次第デアリマシテ、隨分政府ノ-政府ト云
  フヨリハ官憲ノ社會主義ニ對スル壓迫ハ、實ニ峻烈ヲ極メ
  テ居リマス、前述ノ如ク本人ニ對スル事ハ假リニ宜イト致
  シマシテモ、親戚故舊ニ對シテ斯ノ如キ壓迫ヲ加フルニ至リ
  マシテハ、實ニ何トモ申シヤウモナイ殘忍ナル迫害デアルト
  思フノデアリマス、此結果ハドウ云フ事ニナルカ、斯ノ如ク
  殘酷嚴峻ナル取締ヲ加ヘル結果ハドウナルカト云フト、極メ
  テ明白デアリマス、卽チ羊ヲ驅ッテ狼タラシムルモノデアリマ
  ス、人ハ感情ノ動物デアリマス、迫害サルレバ復讐ヲ思ヒ、
  壓迫サルレバ反抗ヲ思ヒマス、是ハ人情デアリマス、特ニ日
  本人ハ向フ意氣ノ强イ感情ノ緊張シタ國民デアリマシテ、
  是ハ佛蘭西人ニ稍〓、似夕所ガアリマスガ、癪ニ觸ルト隨分酷
  イ事ヲヤリ兼ネヌノデアリマス、然ルニ穩和ナル社會主義ヲ
  唱へ、或ハ皇室中心ノ社會主義ヲ唱ヘテ、社會ノ缺陷ニ對
  シテ救濟ノ聲ヲ揚ゲントシテ居ルノニ、無暗ニ政府ガ峻嚴ナ
  ル迫害ヲ加ヘ、親戚故舊マデモ虐メル、其結果ハドウナルカヽ
  其結果ヲ考ヘタナラバ、吾ミハ實ニ悚然トシテ肌ニ粟ヲ生ズ
  ルノデアリマス、私ハ玆ニ一ツノ實例ヲ持ッテ居リマス、大正
  五年ノ夏桑港ニ於テ、日本人ノ或社會主義者ガ領事ノ壓
  迫ヲ受ケタ時分ニ、片山潜ト云フ人ガ遙こ一書ヲ桑港カラ
  內地ニ寄越シテ居リマス、ソレニドウ云フ事ガ書イテアルカ
  ト云フニ「此一事ニ依テモ日本官憲ノ社會主義者ニ對スル
  所ノ壓迫振ヲ想像スルコトガ出來ルト思ヒマス其結果トシテ
  邦人中ノ社會主義者ノ多數ハ漸次無政府主義者トナッテ
  居リマス、彼等ガ少シク社會的活動ヲスレバ日本官憲ハ直
  チニ注意人物名簿ニ記入シテ〓里ノ父兄ニ壓迫ヲ加ヘル
  ノデ自然父兄トモ音信ヲ斷チ日本政府ヲ憎ムト同時ニ曰
  本ヲモ厭フヤウニナリ孤立ノ生活ニ在ッテ唯、絕望的ノ無政
  府主義的思想ガ纔ニ彼等ノ慰安トナッテ居ルノデアル」彼
  等ハ無政府主義ニ於テ一ノ慰安ヲ求メテ居ル、斯ウ云フコ
  トヲ書イテ來テ居リマス、是ガ當時ノ「新社會」ト云フ雜誌
  ニ載ッテ居ルノデアリマス、決シテ私ハ架空ノ事ヲ申上ゲル
  ノデハアリマセヌ、卽チ斯ノ如ク過激手段ガ彼等ノ絕望的
  煩悶ヲ救フ唯一ノ方法デアルト云フコトニナッタナラバ其
  結果ハ如何ニ恐ルベキモノデアルト云フコトハ、想像スルニ
  餘アルノデアリマス、此政府ノ二十年來傳統的ノ社會主義
  ノ取締方針ト云フモノハ、丁度德川幕府ガ關ケ原合戰後
  ニ浪人共ニ加ヘタ取締法ト髣髴タルモノガアリマス、矢張
  同樣ノ道行ニナッテ居リマス、關ケ原合戰後多數ノ浪人ガ
  生ジテ、其浪人ガ衣食ノ道ヲ求ムル爲メニ江戶ニ集シタ、ソ
  レヲ取締ルノニ極メテ峻嚴ノ態度デ臨ンダ、江戶ニ親戚故舊
  ノ在ル者デナケレバ、直チニ引拂フベシト云フ嚴命ヲ下シタ、之
  ガ爲メ左ナキダニ糊口ノ途ヲ失ッテ困却シテ居ル浪人ハ、益
  困窮ヲ致シタノデアリマス、其時分ニ當ッテ、是等浪人ノ身元
  引受人ニナッタ者ガ、卽チ由井正雪デアリマス、由井正雪ハ丸
  橋忠彌ト共ニ德川幕府ノ〓覆ヲ企テマシタ、其動機ニ就テ
  ハ色とナコトヲ歷史家ガ申シテ居リマスケレドモ、其眞相ト云
  フモノハ、卽チ是等浪人ノ德川幕府カラ壓迫ヲ加ヘラレク
  所ノ浪人共ガ、由井正雪ヲ擔イデ幕府ニ弓ヲ彎イテ、ツ
  幕府ヲ引繰返シテヤラウト云フ企ヲシタト云フノガ、眞相デ
  ハナイカト思ヒマス、殊ニ此丸橋忠彌ノ配下ニ屬シテ居ッタ
  所ノ老人隊ト云フモノハ、何レモ六十歲、七十歲、年老イタ
  ル浪人共ガ幕府ノ迫害ヲ受ケテ、モウ此世ニ望ガ無イカラ、
  此世ノ思出ニ彼等老中共ヲ斬ッテ斬ッテ斬捲シテ、自ラ斬死
  ヲシヤウト云フ決心ヲ致シテ、茲ニ決死隊ヲ組織致シタノ
  デアリマス、實ニ悲慘極マルコトデアリマス、政府ガ無暗ニ壓
  迫ヲ加ヘテ、彼等糊口ノ途ヲ斷チマスト、餘憤ノ迸シル所事
  此ニ至ルコトハ、理ノ睹易キ事デアリマス、斯ウ云フ史的事
  實ハ、古今東西其例ガ乏シクナイ、明治四十三年ニ起リマシ
  夕所ノ幸德秋水一派ノ大逆事件ト云フモノハ、矢張慶安
  四年ニ起ッタ所ノ、由井正雪ノ變ト同ジヤウナ形ヲ取ノテ居
  ルノデアリマス、明治四十一年六月ニ赤旗事件ト云フモノ
  ガ、神田ノ錦輝館ニ起リマシタ、是ハ洵ニ詰ラヌ事件デ、白晝
  警官ト赤旗ノ爭奪ヲシタト云フ輕微ナ事案デアリマス、然
  ルニ此赤旗事件ニ連坐シタ所ノ社會主義者ハ、何レモ皆ナ
  重刑ニ處セラレタノデアリマス、官吏抗拒罪トカ、或ハ治安
  警察法違反トカ云フ輕微ナ犯罪デアルニ拘ラズ、皆ナ懲役
  一年乃至二年卜云フヤウナ、重イ刑ヲ宣告セラレタノデアリ
  マス、而シテ其後社會主義者ハ一體ニ非常ニ酷烈ナル所ノ
  監視ノ下ニ、身動キモナラヌト云フヤウナ酷イ壓迫ヲ受ケタ
  ノデアリマス、殊ニ幸德秋水ノ如キハ、自分ノ家ノ前ノ廣場
  ニ警官ガ天幕ヲ張ッテ、二十人三十人晝夜詰掛ケテ之ヲ監
  視シテ、湯ニ行クニモ尾行巡査ガ尾ク、友人ヲ訪問スルニモ
  尾行巡查ガ尾クト云フヤウナ譯デ、非常ニ壓迫ヲ加ヘタノ
  デアリマスカラ、彼等ハ絕望的煩悶ニ陷ラザルヲ得ナカッタノ
  デアリマス、且又此赤旗事件ノ刑罰ガ餘リ酷烈ナリシヲ恨
  ムノ餘リ、是等餘憤ノ迸ル所、遂ニ過激ノ事ヲ企ツルニ至ッタ
  ノデアリマス、大逆事件ト云フモノハ、斯ノ如クニシテ起ッタ
  ノデアリマス、是ハ決シテ祕密デモ何デモナイ、大逆事件ノ
  判決ト云フモノガ雑誌ニ載ッテ居リマス、其雜誌ハ別ニ發賣
  禁止ニモ何ニモナッテ居リマセヌカラ、志アル御方ハ一讀ニナ
  レバ、直チニ明白ニナルコトデアリマス、赤旗事件ニ起因スル
  所ノ絕望的憤激ニ依ッテ、此大逆事件ヲ生ジタノデアル、恰
  モ德川幕府ノ壓迫ニ對シテ、由井正雪ノ變ガ起ッタト同ジ
  形式ヲ取ッテ居ル、洵ニ危險極マル事デアルト私ハ思フノデ
  アリマス、尙ホ方面ヲ變ヘテ觀察致シマスルノニ、今日社會
  主義ガ非常ニ熾ンナ國ハ何處々々デアルト申シマスルト、不
  思議ニモ社會主義ニ對シテ壓迫ヲ加ヘタ國ニ限ッテ居リマ
  ス、比較的自由ナ國ニハ、社會主義ハ餘リ熾ンデアリマセヌ、
  其證據ニハ北米合衆國ハドウデアルカ、自由ノ國デアリマ
  ス、社會主義ノ唱道ニ對シテ、何等壓迫ヲ加ヘルト云フコト
  ハアリマセヌ、隨テ米國ニハ亞米利加社會主義ト云フモノ
  ハ、殆ド發展シテ居ナイ、社會黨抔ト云フモノハ、殆ド勢力ガ
  無イト云ッテモ差支ナイ、英吉利ハドウデアルカ、英吉利ハ矢
  張自由ノ國デアリマス、英吉利ニ於テ勞働黨ト云フモノハ
  可ナリ勢力ヲ得テ居リマスケレドモ、勞働黨ハ全部社會主
  義者デナイ、而モ其勞働黨タルヤ、其數ト云フモノハ極メテ
  少イノデアル、尤モ昨年暮ノ總選擧ニ於キマシテ幾ラカ數ガ
  殖エマシタケレドモ、他ノ黨派ニ比スレバ殆ド論ズルニ足ラ
  ナイ、斯樣ニ自由ナ國ニ於テハ、社會主義ト云フモノハ決シ
  テ熾ニナラヌ、翻ッテ專制國ト稱セラレテ居タ所ノ露西亞ハ
  ドウデアルカ、「カイゼル」ノ下ニ壓迫ヲ蒙ッテ居夕所ノ獨逸ハ
  ドウデアルカ、今日社會主義ノ本場ト云ヘバ獨逸ト露西亞
  デアル、卽チ社會主義ヲ常ニ壓迫シテ來夕所ノ國ハ、此ノ通
  リ社會主義ガ熾ンニナッテ居ル、遂ニ社會主義者ノ爲メニ
  政府ハ〓覆サレテ居ルデハナイカ、露西亞ト獨逸ノ革命ハ
  何人ガ遂行シタノデアルカ、露國、獨逸ノ政府ハ、彼等ガ力
  ヲ擧ゲテ壓迫シタル者ノ爲メニ其身ヲ亡ボスニ至ッタノデア
  リマス、是故ニ無暗ニ社會主義ヲ壓迫スルコトノ如何ニ危
  險デアルカト云フコトハ、此實例デモ知ルコトガ出來ルノデ
  アリマス、獨逸ニ於キマシテ「ビスマーク」ガ社會主義ノ鎭壓
  法ト云フ法律ヲ作ッタコトガアリマス、サウシテ社會主義者
  ニ非常ニ壓迫ヲ加ヘマシタケレドモ、此結果ハドウデアルカ
  ト申シマスルニ、社會主義鎭壓法ガ制定サレタ時分ニ、社
  會主義者ニ對スル選擧投票數ト云フモノハ、僅ニ四十三万
  デアッタモノガ、其法律ノ廢止ヲシタ時分ニハ、社會主義
  ノ投票ト云フモノガ、百四十三万、卽チ百万ノ數ヲ增
  加シマシタ、鎮壓法ヲ出シタ時分ニ勞働組合ノ數ハ僅ニ
  五万シカ無カッタモノガ、之ヲ廢止スル時ニ至ッテ二十万
  ニ殖エタ、社會主義鎭壓法ト云フモノハ、何等ノ效力ヲ
  爲シテ居ナイデアリマスカラ「フェルヂナンド、ラツサル」ノ如キ
  ハ、「社會主義鎭壓法ハ社會主義ヲ鎭壓スルコトガ出來
  ナクシテ、却テ「ビスマーク」ヲ鎭壓シタノデアル」ト云フ皮肉
  ナル批評ヲ致シテ居ルノデアリマス、斯樣ナ次第デアリ
  マシテ、嚴峻苛酷ナル取締方針ハ、獨リ何等ノ效果無キ
  ノミナラズ、穩和ナル社會主義者ヲ驅ッテ過激ニ赴カシメル
  モノデアリマスカラ、政府ハ此傳統的ノ苛酷ナル取締方針
  ト云フモノニ付テハ、大ニ考慮スル所ガ無ケレバナラヌト思
  フノデアリマス、ソコデ私ハ第三ノ質問ト致シマシテ、茲ニ政
  府ハ社會主義取締方針ヲ改ムル意思ナキヤト云フコトヲ
  問ハナケレバナラヌノデアリマス、先ヅ第一ニ申上ゲテ置キタ
  イノハ、危險人物名簿ノ整理ヲスルト云フコトデアリマス、
  承ハリマスレバ、警視廳ニハ要視察人名簿、卽チ注意人物、
  危險人物ノ名簿ガアリマシテ、ソレニハ甲乙丙丁ト分ケテ、
  社會主義者ノ中一番激烈ナル者ヲ甲トシ、稍、穏ガナル者
  ヲ乙トシ、丙丁ト云フヤウニ四種類ニ分ケテアルサウデアリ
  マスガ、此帳面ニ一度名ヲ書カレタ者ハ容易ニ抹殺サレル
  コトガナイ、假令說ヲ改メテ穩和ナル主義ニナリマシテモ、矢
  張危險人物名簿カラ削除サレルコトガ出來ナイ、恰モ南亞米
  利加ニ在ル底無地ニ嵌ッタヤウナモノデ、一度落チレバ再ど
  上ルコトガ出來ナイ、是ガ警視廳ノ危險人物ニ對スル取締
  ノ方針デアル、併ナガラ今日此名簿ニ名ガ載クテ居ル人デ、
  初メカラ極ク嵌和ナル社會主義者ガアリマスルシ、又靑年
  ノ時ニハ隨分過激ナ事ヲ主張シタケレドモ、段々年フ取リ、社
  會ノ經驗ヲ積ムニ從ッテ、是デハイカヌト云フノデ、穏和ナル主
  義ニ改メタ人モ少クナイノデアリマスガ、其等ガ矢張其儘危
  險人物トシテ名簿ニ載ッテ居ル、コンナ固定的ナ危險人物名
  簿ハ整理ヲシテ戴キタイ、何等危險ノ無イ穏和ナル主義者
  ハ、全部削除スルコトニシテ貫ヒタイト思フノデアリマス、勿
  論無政府主義者、或ハ「サンヂカリズム」ヲ奉ズル人、激烈
  ナル主義ヲ奉ズル者ハ此限ニ在ラズ、寧ロモウ少シ嚴重ニ
  取締ッテ差支ナイト思ヒマス、ソレト同時ニ私ガ茲ニ申上ゲ
  テ置キタイノハ、無政府主義「サンヂカリズム」抔ノ危險ノ人
  物モアリマスガ、立憲政體ノ下ニ於テ立憲政治ヲ呪フヤウ
  ナ言動ヲ爲ス者ハ、矢張一ノ危險人物ト思フ、嘗テ或人ハ
  憲法中止論ヲ唱ヘタコトガアル、其人ハ今日果シテ憲法中
  止論ヲ持ッテ居ルカドウカ知リマセヌガ、其後矢張官僚一味
  ノ間ニ、動モスレバ此立憲政治ヲ呪フヤウナ穏カナラヌ言動
  ヲスル者ガアル、是等ハ矢張危險人物デアル、無政府主
  義者「サンヂカリズム」主義者ト共ニ、危險人物名簿ノ中ニ
  載セテ置ク方ガ宜イト思フ位デアル、ソレカラ第三ハ尾行巡
  査ノ廢止ヲ勸告シタイノデアリマス、尾行巡查ト云フモノ
  ハ、獨リ本人ノ業務ヲ妨害シ信用ヲ毀損スルト云フヤウナ
  弊害ガアルノミデナイ、誠ニ無益ナモノデアル、ト中スノハ社
  會主義者モ段々尾行ニ馴レテ來マスト、巡查ヲ出拔クコト
  ハ極メテ上手ニナル、之ヲ捲クコトハ極メテ容易デアル、ト
  云フノハ尾行巡査ガ尾イテ來テモ、途中デ自動車ニ飛乘レ
  バ、直グニハグレテシマウ、又滿員ノ電車ニ飛乘ヲスレバ捲
  クコトガ出來ル、或ハ表カラ入ッテ裏口カラ逃出セバ捲クコ
  トガ出來ル、故ニ彼等ガ眞ニ不穏當ノ企ヲシヤウトスレバ、
  容易ニ捲イテシマウコトガ出來ルノデアル、何ノ役ニモ立夕
  ヌ、殊ニ最近尾行巡査ト社會主義者ト妥協シテ、〓〓
  遊廓ニ女郎買ニ行ッタト云フヤウナ實例抔モアル、或ハ妥協
  シテ一日自分ガ外出シナイ代リニ、尾行巡査ハ妻子ヲ伴レ
  テ淺草公園デ遊ンデ、歸リニ牛肉ヤ餅抔ヲ土產ニ持シテ歸ッ
  タト云フ實例モアル、誠ニ無益ナ事デアル、斯ル事ニ國費ヲ
  濫費スルノハ、誠ニ不都合デアルト思フ、尾行巡査ハ、社會
  主義者ガ旅行ヲスルト儲カルノデアル、社會主義者ガ大阪
  ヘ行クト、本署カラ旅費ヲ貰ッテ尾イテ行ク、儉約シテ歸レ
  バ一度ノ旅行ニ三十圓位ハ殘ル、サウスルト社會主義者ノ
  尾行ニ依テ此尾行巡査ハ儲ケルコトニナリ、甚ダ怪シカラヌ
  譯デアル、斯樣ナ次第デアリマスカラ、一面社會主義者ヲ
  養成スルヤウナ氣味ニモナル、社會主義者ガ全ク無クナルト
  役得ガ無クナルカラ、全部社會主義者ノ無クナラヌヤウニハ
  保護スルト云フヤウナ形モ將來現レテ來ル、ト申スノハ曾テ
  佛蘭西ノ北部ニ非常ニ狼ガ現レタコトガアル、ンコデ狼ヲ退
  治スル爲メ、卽チ狩狼局ガ出來テ、年ヲ經テ旣ニ狼ハ狩盡
  サレタ筈デアルノニ、依然トシテ狼ガ出ル、之ヲ調査致シマ
  シタ所ガ、焉ゾ知ラン內々狼ヲ養ノテ居タト云フコトデアル、
  卽チ取締ルベキ目的物ガ無クナレバ職ヲ失フノ虞ガアルノ
  デ、之ヲ養成スルト云フヤウナ不都合ナル結果ニモ相成ルノ
  デアリマス、斯樣ナ事ハ常ニ在ル譯デハアリマスマイケレド
  モ、何トナク無意識ニサウー云フ形ニナルト云フコトハ、否認
  スベカラザル事實デアリマス、第三ニハ言論出版ヲ今少シク
  開放シテ貰ヒタイ、社會主義ト名ノ付ク書物ハ殆ド出スコ
  トガ出來ナイ、其癖經濟學者ノ書キマシタ書物ノ中ニハ、社
  會主義ノ事ガ澤山書イテアル、唯〓名前ガ社會主義トナッテ
  居ラヌカラ、政府ハ之ヲ許シテ居ルヤウデアリマスガ、名前ハ
  ドウデモ內容ノ方ガ大切デアルノデアリマスカラ、斯樣ナ不
  條理ナル取締ハ、寧ロ廢止シタ方ガ宜カウラト思フ、又演說
  會ノ如キモ、主催者ノ顏觸ヤ、或ハ演說會ノ名稱ヲ見テ、之
  ヲ禁止スルトカ云フヤウナコトハ無意味デアリマス、是抔モ
  餘程手加減ヲシテ貰ハナケレバナラヌト思フノデアリマス、ソ
  レカラ第四ニハ罪ヲ三族ニ及ボスノ主義ヲ改メテ貰ヒタイ、
  本人ガ如何ニ危險人物ナレバトテ、妻子ニ咎ノアル譯ハナ
  イ、友人ニ何ノ責任ガアルカ、本人ガ危險デアルト親族故
  舊マデ迫害スルト云フコトハ、昔ノ專政時代ニ在ッタコトデ
  アリマスケレドモ、今日明治大正ノ御代ニ斯ル蠻風ノ行ハ
  レルト云フコトハ、實ニ悲シムベキ事デアルト思ヒマス、官憲
  ハ傳統的ニ無意識ニ斯ウ云フ蠻風ヲ脫スルコトガ出來ズ
  ニ、動モスレバ親族故舊ニ迫害ヲ及ボスノデアルカラ、此點
  ハドウカ改メテ貰ヒタイト思フノデアリマス、今ヤ世界ハ露
  西亞ノ革命、獨逸ノ革命ノ影響ヲ受ケテ、「ソシヤル、デモク
  ラシイ」ノ思潮ハ靡然トシテ世界ヲ包ンデ居ルノデアル、資
  本侵略主義ニ對シテ、社會主義ノ段々盛ンニナッテ行クト
  云フコトハ寧口當然ノ勢力デアル、世界ノ列强中、何レノ
  國カ內閣ニ社會主義者ノ閣員ヲ一人モ持タヌ國ガアリマ
  セウ、又世界列强中、何レノ國ガ社會主義者ノ代議士ヲ一
  人モ持タナイ國ガアリマセウ、其是レアルハ唯こ日本ノミデ
  アル、日本ハ此世界的大潮流ノ中流ニ船ヲ停メテ置クコト
  ガ出來ルデアリマセウカ、速ニ流ニ從ッテ下ルノデナケレバ、却
  テ船ヲ覆ス虞ガアル、日本政府二十年來ノ傳統的社會主
  義取締方針ト云フモノハ、誠ニ危險極マルモノデアリマスカ
  ラ、ドウカ此點ハ政府ニ於カレマシテモ篤ト御考慮ヲ願ヒタ
  イ、殊ニ原內閣ニ於カレマシテハ、斯ル事ニ了解ノ多イ人ガ
  閣員ニ澤山アルノデアリマスカラ、此點ハ能ク調査ヲ致シマ
  シテ、若シ私ノ唯今申上ゲタ三段ノ質問ニ多少採ルベキ所
  ガアッタナラバ、速ニ方針ヲ改メ、國家及皇室ヲシテ直ニ泰山
  ノ安キニ置クヤウニ盡力セラレンコトヲ、切ニ希望シテ已マ
  ナイモノデアリマス、敢テ誠意アル内務大臣ノ御答辯ヲ囑
  スル次第デアリマス、甚ダ長ク申上ゲテ相濟ミマセス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=16

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• 017・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　質問第二、甘蔗ニ關スル質問我
  如古樂一郞君
  甘蔗作ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正八年二月二十日
  提出者我如古樂一郞賛成者金杉英五郞
  甘蔗作ニ關スル質問主意書
  一砂糖ノ需給關係ニ對スル政府ノ所見如何
  一從來甘蔗作ヲ爲シタル四國、中國、九州地方ニ於テ
  米不足ノ爲米作ニ轉業スル傾向ナキヤ或ハ該地方ニ
  於テハ甘蔗作ニ比シ米作ノ經濟的ナリトスルモ之カ
  爲甘蔗作ニ對スル政府ノ所見如何
  一政府ハ米不足ノ爲關稅廢止及開墾助成法ニ依リ米
  ノ輸入若ハ移入增加又ハ生產增加ヲ實行シ米ノ調
  節ヲ圖リツツアリ隨テ之カ爲臺灣ニ於ケル甘蔗作及
  米作ニ影響ヲ及ホササルヤ政府ノ所見如何
  一日本內地產額ノ六割ヲ占ムル沖繩縣ノ糖業改良奬
  勵ニ就キ政府ノ所見如何
  右及質問候也
  二甘蔗作ニ關スル質問(我如古樂一郎君提出)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=17

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• 018・小川寅六

  ○小川寅六君　唯今ヨリ會計士法案ノ委員會ヲ開キタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=18

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• 019・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=19

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• 020・小川寅六

  ○小川寅六君　會計士法案/委員諸君ハ、第六委員室
  ニ御參集ヲ願ヒマス
  〔我如古樂一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=20

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• 021・島添樂一郎

  ○我如古樂一郞君　私ノ質問ハ、甘蔗作ニ付テ申上ゲヤ
  ウト思ヒマス、歐洲戰亂ノ結果、歐米ニ於キマシテハ甘菜
  糖ガ減ジ、產額ガ半額以上ニナッテ居リマス、其爲メニ亞細
  亞洲ニ於ケル甘蔗糖ガ値段ガ高クナッテ參ッタノデ、吾と國
  民トシテモ、戰前分密糖百斤十五六圓ノ相場デアッタノガ、
  今日デハ既ニ百斤二十二三圓ノ相場デ消費シツヽアルノ
  デアリマス、斯様ニ相場ガ高クナッテ居ルノデアリマスカラ、我
  國內ニ於テモ此甘蔗作ニ付テノ、補給作ニ付テ質問致サ
  ウト思フノデアリマス、我國內ニ於ケル一箇年砂糖ノ消費
  量ハ五六億万斤デゴザイマス、卽チ人口一人當リガ十斤餘
  ニ當ル、之ヲ歐米ノ五六十斤ニ比較シテ見マスレバ、餘程少
  量デゴザイマス、ソレカラ大正三年ヨリ大正七年ニ至ル五
  箇年間ノ輸出入ヲ較ベテ見マスレバ、大正六年ニ於テ九千
  万斤程ノ輸出超過ガアリマシタ、此年ハ日本內地及臺灣
  ノ甘蔗ノ豐作ノ爲メト、ンレカラ歐洲戰亂ノ爲メ輸入ガ減
  少シタノデ、斯樣ナ事ニナッテ居リマスガ、其他ノ年ニ於キマ
  シテハ總テ輸入超過デ、大正七年ノ如キ、既ニ一億七千万
  斤餘ノ輸入超過ニナッテ居ルノデアリマス、而シテ本邦ハ年々
  人口モ殖エ、竝ニ生活程度ノ向上ニ伴ヒ、益〓砂糖ノ消
  費ガ增スノデアリマシテ、今後輸入超過ニナルト云フコトガ
  思ハレルノデアリマスカラ、此砂糖ノ需給關係ニ付テ政府ニ
  御質問ヲ致ス次第デアリマス、ソレカラ國內ニ於テ甘蔗作
  ヲ爲シテ來マシタ所ノ四國、九州、中國邊リニ於キマシテ
  ハ、近年米不足ノ爲メ、米ノ調節ヲ致サレヤウトシテ居ル爲
  メ、國內ニ甘蔗作ガ減リ、又間接ニ臺灣ニ於テモ甘蔗作ガ
  減ッテ、益〓國內ニ於ケル砂糖ノ產額ガ減ルダラウト思フノ
  デアリマスガ、果シテ左樣ナ傾向デアレバ、益〓此砂糖ノ需
  給關係ニ付テハ、餘程ノ注意ヲ拂ハナケレバナラヌト思ヒマ
  スノデ、政府ニ其點ヲ質問致シマス次第デアリマス、ソレカ
  ラ次ニ其質問ノ要點ハ、甘蔗作ノ適當デアル所ノ沖繩縣
  ニ於ケル糖業ノ問題ニ付テ、二通リノ質問ヲ致サウト思フ
  ノデアリマス、一ツハ黑糖ノ工業、一ツハ分密糖ノ工業ニ付
  テ御質問ヲ致ス次第デアリマス、此分密糖ノ工業ニ付キマ
  シテハ、政府ガ旣ニ明治四十二年ニ沖繩縣ニ百噸ノ能力ア
  ル分密糖ノ機械ヲ据付ケマシテ、分密糖業ノ有望ナルコト
  ヲ示サレタノデアリマス、爾後臺南製糖會社ノ工場ガ數箇
  處ニ出來、又今將ニ東洋製糖會社ガ、宮古八重山兩島ニ
  設立サレヤウトスル機運ニナッテ居リマス、斯樣ニ沖繩ハ甘
  蔗作ニ餘程有望ナ土地デアリマシテ、糖業改良事務局ガ
  設置サレタ場合ニ於テハ、僅ニ產額ガ五六千万斤デアリマシ
  タガ、大正五年ニハ一億一千万斤ニナッテ居ルノデアリマス、
  約十年間ニ於テ倍額以上ニナッテ居リマス、斯ル狀勢ヨリ考
  ヘテ見マスレバ、沖繩ニ於キマシテモ、數年ヲ待タズシテ二億
  万斤以上ノ砂糖、卽チ日本國內ニ於ケル消費量ノ約三分ノ
  一以上ヲ得ラルヽ譯デアリマス、是ハ如何ナル譯カト申シマ
  スルト、大正五年ノ甘蔗作ヲ調ベテ見マスレバ、マダ全耕地
  ノ二割强デアリマスカラ、尙ホ其ノ耕地ヲ擴メルノミナラズ、
  開墾ノ餘地モ多イノデアリマス、此砂糖ノ產額ヲ增進セシメ
  ルト云フコトハ、今日ノ糖業政策上最モ緊要ナル事デゴザイマ
  ス、而シテ今分密糖ト黑糖トノ割合ヲ見マスルト、全產額ノ
  一割內外シカ分密糖ハ作ラレテ居ナイノデアリマス、此砂糖
  工業ニ付テ最モ必要ヲ感ジマスルノハ、壓榨器ノ關係デゴ
  ザイマス、卽チ新式壓榨器ト、在來ノンレトノ步止リノ差ヲ
  約一步ト見マシテモ、砂糖一億万斤ニ付テハ、百万斤ノ損失
  ニナルノデアリマス、故ニ政府ハ又黑糖工業ニ付テ必要ヲ認
  メラレテ、大正二年三年ニ於キマシテ、栽培者五十人以上、
  ソレカラ產業組合二十人以上ヲ有スル者ニ對シテ、一晝夜
  五千斤ノ製造能力アル蒸氣器械ヤ、石油發動機ニ依ル壓
  榨器ニ補助奬勵ヲ與ヘタノデアリマス、是ハ黑糖改良上最
  モ適切ナル方法デアリマスガ、マダ一般ニ行渡。テ居ナイノ
  ハ甚ダ遺憾トスル所デアリマス、而シテ此壓榨改良器ニ依
  ル榨汁ヲ焚イテ黑糖ニ仕上ゲル竈ノ釣合ガ良クナイ爲メニ、
  品質ノ惡イ砂糖ヲ製造スルト云フコトガ、今日最モ缺點トシ
  テ居ル所デアリマス、此改良壓榨器ト竈ノ關係ハ、共ニ黑
  糖品質ノ改良上輕々ニ看過スベカラザル問題デゴザイマス、
  故ニ政府ハ之ニ對シテ技術者ヲシテ〓究セシメラレテ、十
  分ナル黑糖改良ノ功績ヲ擧ゲシメラレル御意思ハ無イノデアリ
  マセウカ、之ニ就キ御所見ヲ承リタイノデゴザリマス、此ノ黑
  糖ノ品位ハ、今ノ所三步、二歩半、二步、一步半、一步、半
  分許リノ七等級ニ分タレテ居リマシテ、隨テ其價格ニ於テ
  モ大差ガアリマス、而シテ今二歩ト一步半ノ差ガ、黑糖一
  樽ニ付キ金三十六錢ノ差、一歩半ト一歩ノ差、同ジク金七
  十二錢デアリマス、而シテ大正六、七年ノ沖繩縣黑糖檢査
  所ノ調査ニ依レバ、全產額ノ中二歩以上ガ五〇%位デア
  ル故ニ、黑糖百万樽ノ中、五十万樽ハ一步半以下デアル、
  然ルニ竈ノ改良及製造技術ノ進歩ニヨリ、其中一步半ヨ
  リ二歩ニ上ルモノ十万樽トシ、一步ヨリ一步半ニ上ルモノ
  十万樽トスレバ、前者ハ三万六千圓、後者又七万一一千圓、
  計金十万八千圓ノ利益トナルノデアリマス、ソレカラ分密
  糖業ニ於テ、政府ハ旣ニ奬勵方法ヲ示サレテ居リマスケレ
  ドモガ、マダ其分密糖業ガ十分ニ進步シナイノデアリマス、
  其原因ハ色〓アリマセウケレドモ、甘蔗栽培人ト製糖會社
  トノ間ニ於ケル、賣買上ノ經濟的調和ノ方法ガ宜シキヲ得
  ナイコトガ、主ナル原因デアラウト思フノデアリマス、而シテ
  沖繩縣ニ於キマシテハ、既ニ申シマシタ通リニ、黑糖工業ト
  分密糖工業ノ二ツノ政策ヲ執ッテ居リマスル故ニ、甘蔗栽
  培家ハ自由ニ甘蔗ヲ分密糖會社ニモ販賣シ、或ハ又黑糖
  ノ相場ノ景氣ガ好ケレバ、自分デ又黑糖ヲ製造スルト云フ
  ヤウナ自由制度ニナッテ居リイス是ハ內地ニ於ケル黑糖ノ
  需要ノ關係上、已ムヲ得ナイ事デアラウト思ヒマス、想フニ
  砂糖ノ相場ト云フモノハ、何レノ國、何レノ地方ヲ問ハズ、
  總テ世界的ノ影響ヲ受ケルノデアリマスカラシテ、歐洲戰亂
  以來獨逸ヤ、墺地利、佛蘭西等ニ於キマシテハ、甜菜糖ノ
  產額ガ半額ニ減少シテ居ル今日デアリマス、ソレカラ戰時
  中ハ歐羅巴ニ於キマシテハ、既ニ食糧制限法ノ爲メニ砂糖
  ノ消費量ガ矢張減ッテ居ル、デアリマスルガ、休戰ノ事ガ起
  リマシテ以來、砂糖ノ需要ガ段々多クナッテ亞細亞洲殊ニ
  瓜哇島ニ於ケル砂糖ヲ買込ムト云フヤウナ傾向ニナッテ居
  リマシテ、段々其影響ガ我ガ日本ニ及ヒマシテ、自然高イ砂
  糖ヲ食ハナケレバイケナイヤウニナッテ居ルノデアリマス、言ヒ
  換ヘレバ歐羅巴ニ於テ甜菜糖ノ減ル時ハ、亞細亞ニ於テ甘
  蔗糖ノ景氣ガ好イ、好イケレドモガ、若シヤ亞細亞洲ニ於ケ
  ル甘蔗竝ニ歐羅巴ニ於ケル甜菜糖ガ豐作デアリマシタ場
  合ニ於テハ總テ其値段ガ非常ニ暴落スルノデアリマス、今
  日ハ先ヅ甘蔗糖國ニ於キマシテハ、歐洲戰亂ノ結果景氣ハ
  宜シウゴザイマスケレドモ、若シヤ同地方ニ於テ砂糖ガ豐作
  デアリマシタナラバ、相場ガ非常ニ下落シテ、糖業者ガ非常
  ニ苦シムノデアリマスソレ故ニ我ガ國內ニ於テ甘蔗作ヲ增
  加セシメ、其ノ生產費ヲシテ少ナカラシメテ、世界ノ競爭場
  裡ニ順應シテ行キマスニ於テハ、結局砂糖ノ生產費ヲ減少
  セシメルコトガ、糖業政策ノ根本ダラウト思フノデアリマス、
  斯ル方策ヲ我ガ國内ニ漸次執リテ行クニ於キマシテハ、黑
  糖ハ將來其需要ノ減ッテ行ク一方デアリマスカラシテ、此文
  明的ノ分密糖業ニ自然進ンデ行クト云フコトハ、萬已ムヲ
  得ナイ事ト思ヒマス、此意味ニ於キマシテ甘蔗ヲ作シテ居ル
  所ノ適當ナル地方、例ヘバ小笠原島トカ、鹿兒島縣下ニ於
  ケル大島、沖繩全縣ト云フ甘蔗作ノ適當ナル地方ニ於テ、
  今日ヨリ分蜜糖工業ヲ漸次進メナケレバナラヌ機運ガ到
  來シテ居ルト私ハ信ズルノデアリマス、故ニ斯ル地方ニ於キ
  マシテ、生產組合又ハ產業組合ガ適當ナ分密糖ヲ拵ヘヤ
  ウトスル場合ニ方ッテ、政府ハ之ニ補助奬勵ヲ與ヘラレテ、
  產額ヲ增進セシメラレルト云フヤウナ御方針ガアルヤ否ヤ、
  尙ホ進ンデ此甘蔗ヲ作ル地方ニ於キマシテハ、產業上重大
  ナル關係ヲ持ッテ居ルノデゴザイスカラ、或ハ縣ト其縣民トノ
  合同、卽チ半官半民的ノ事業ニシテ、此砂糖工業及甘蔗糖
  工業、分密糖工業ヲシテ十分ニ發展セシムルト云フヤウナ
  事モ出來ルカ否ヤ、或ハ私立砂糖工業會社ト縣民生產家
  トノ間ニ、最モ適當ノ方法アリヤ兎ニ角沖繩縣ニ於ケル此
  分密糖工業ニ付テ、的確ナル政府ノ御所見ヲ承リタイノデ
  アリマス、質問ノ要點ハ是ダケデアリマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=21

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• 022・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　質問第三、5鹽ノ專賣生產及配
  給ニ關スル質問-小西和君
  三鹽ノ專賣生產及配給ニ關スル質問(小西和
  君提出)
  鹽ノ専賣生產及配給ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正八年二月二十二日
  提出者小西和賛成者鵜澤宇八
  外二十九人
  鹽ノ專賣生產及配給ニ關スル質問主意書
  -政府ハ鹽ノ專賣ハ廢止スルカ若ハ鹽ノ專賣ニ對ス
  ル收益主義ヲ拾テ鹽ノ檢査ヲ行ヒ以テ其ノ品質ヲ
  保證シ且之カ向上ニ努ムル外主トシテ社會政策ノ
  見地ヨリ其ノ需給ノ圓滑ト價格ノ調節ヲ爲スニ止
  ムルノ意思ナキカ
  二政府ハ内地鹽賣渡ノ價格ヲ引上ケサル鞄圍ニ於テ
  先ツ之カ賠償價格ヲ引上ケ且漸次其ノ賣渡價格
  ヲ引下クルノ方法ヲ執ラサルカ
  三政府ハ瀨戶內海沿岸方面ノ如キ製鹽ニ好適セル
  箇處ニ於テ新ニ鹽田ノ開拓ヲ認許シ以テ内地鹽
  產額ノ增加ヲ計ルノ意思ナキカ
  四政府ハ支那政府ニ向ヒテ交涉ヲ遂ケ奉天山東ノ
  兩省ニ於ケル鹽ノ輸出稅ヲ撤廢セシムルト共ニ該
  兩省ニ於ケル鹽田ノ擴張ニ努ムルノ策ニ出テサルカ
  五鐵道及汽船ニ對シテ鹽ノ運賃ヲ低減セシムルト共
  ニ其ノ輸送ヲ迅速ナラシメ特ニ工業用及漁業用ト
  シテ奉天山東兩省ノ鹽ヲ低廉且迅速ニ內地ニ送
  致スルノ策ヲ執ラサルカ
  右及質問候也
  〔小西和君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=22

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• 023・小西和

  ○小西和君　唯〓ノ我如古君ノ甘イ砂糖ノ御質問ニ續
  イテ、私ハ鹼イ鹹鹽ノ質問ヲ致シタイノデアリマス、先日此議
  場ニ於キマシテ豫算案ヲ議決致シマスル際、本院ハ鹽ノ事
  ニ付テ希望條件ヲ附帶致シテ決議ヲ致シタコトデアリマス、
  申スマデモナク、鹽ハ米ニモ增シテ人生ノ必要品デアリマ
  ス、米ト違ッテ代用品ガ無イノデアリマス、而モ我國ハ元來
  鹽ノ潤澤デナイ所ノ國柄デコザイマス、殊ニ昨年來鹽ノ生
  產ノ大不足、之ガ爲メニ國民ハ生活ノ安固ヲ失ヒ又一方
  ニ於テハ產業上多大ノ障害ヲ與ヘテ居ルノデアリマス、斯ク
  鹽ノ不足ノ生ジマスル原因ハ、人口ガ近來著シク增加致シ
  マスル事、又產業ガ大ニ發達致シマスル事、就中工業用ノ
  原料トシテ鹽ガ消費サレル額ガ、非常ニ急激ニ增加ヲ致シ
  マスルコトガ、是ガ鹽ノ不足ヲ招致スル所ノ最大原因デアリ
  マス、卽チ大正ノ初年頃ニ、我國ノ鹽ノ消費額ハ約十二三
  億斤デアリマシタ、所ガ昨年ハ十四億斤ノ上ニ上シタ模樣デ
  アリマスガ、本年ハ更ニ十五億斤ヲ超過致シマスル趨勢デ
  ゴザイマス、然ルニ我ガ內地ノ鹽ノ生產高ハ、大正三年マデ
  ハ年額約十億斤ヲ超過スル狀態デアリマシタ、所ガ其後ハ
  却テ減少ヲ告ゲテ、動モスルト十億斤ノ以下ニ陷ラウトスル
  狀態デアルノデアリマス、斯ノ如クデゴザイマシテ、鹽ノ需要
  ハ年々著シク增加致シマスニ拘ラズ、其生產ハ却テ減少ス
  ル狀態デゴザイマス、斯ウ云フ狀態デゴザイマシテハ、國民生
  活ノ安固ヲ保ツコトガ出來マセズ、特ニ社會政策上、又產
  業ノ發達上、寔ニ寒心ニ堪ヘナイ次第デゴザイマス、是ハ爲
  政者ト致シマシテハ、是非トモ此缺陷ヲ補ヒ、且ツ適當ノ方
  法ヲ確立スル必要ガアルノデアリマス、而モ政府ノ遣方ヲ見
  マスー、鹽ニ對スル政策ハ甚ダ緩漫デアリ、又不徹底デアル、
  ソレガ爲メニ國民ヲ苦シメ、事業ノ發達ヲ阻碍シ、且ツ一方
  ニ於テハ製鹽業者ヲ泣カシテ居ルノデゴザイマスル、斯ル次
  第デゴザイマスルカラ、私ハ此鹽ノ問題ニ付テ質問ヲスルノ
  餘儀ナキニ致ッタノデアリマス、先ヅ第一番ニ伺ヒタイ事ハヽ
  政府ハ鹽ノ専賣ヲ廢止スルノ御意思ガアルヤ否ヤト云フコ
  トデアリマス、御承知ノ如ク鹽ノ專賣ハ明治二十七八年戰
  役ノ際ニ、非常ナ場合財政策ノ一トシテ、特別稅トシテ賦
  課ヲサレルコトニナッタノデアリマス、其後四十一年ニ戰役
  ノ稅制整理ノ場合ニ當然整理セラレテ、卽チ撤廢サルベキ
  筈デアッタモノガ、當時歲入ノ缺陷ヲ生ズルト云フコトニ藉
  口シテ、是ガ其儘存置セラレテ今日ニ至ッテ居ルモノデアリ
  マス、元來鹽ヲ生產致シマス場合ニ、其生產費ハ如何ナル
  狀態デアルト申シマスルト、大體ニ於テ之ヲ三ツニ分ケルコ
  トガ出來マス、第一ハ鹽田費、第二ハ勞力費、第三ハ燃料
  費デアル、所ガ此勞銀竝ニ燃料費ト云フモノハ、是ハ非常ニ
  變動ノ多イモノデアリマス、然ルニ鹽專賣ニ依ル所ノ此賠
  償價格ハ、之ヲ引上ゲルコトモ、亦之ヲ引下ゲルコトモ非常
  ニ緩漫デゴザイマスルガ故ニ、自ラ經濟ノ原則ニ反スルコト
  ニナリマス、卽チ今カラ十年程前ノ如ク勞働賃銀ノ非常ニ
  安イ場合、石炭モ亦非常ニ安イ場合デゴザイマシテモ、鹽ノ
  賠償價格ハ其割合ニ引下ゲラレナイノデアリマス、ソレ故ニ
  自ラ生產ガ過剩ニナリマスノミナラズ、製鹽業者ハ勞力及
  燃料ヲ濫費致シテ、益〓其生產ニ努メテ、ソレデ生產能率ガ
  高マリマスルカラ、鹽ノ生產ハ過剩ノ狀態ニ陷ル、而シテ鹽田
  業者ハ、之ガ爲メニ過當ノ收利ヲ擧ゲルノデアリマス、其結果
  ト致シマシテ、政府ハ鹽ノ收納ヲ致シマスルニ、其倉庫ニ充滿
  シテ、如何トモスルコトガ出來ナイ狀態ニ立至ルノデアリマス、
  又其反對ニ昨年來ノ如ク鹽ガ不足ヲ致ス場合モアル、政府
  ハ此議會ニ於キマシテ昨年來ノ鹽ノ不足ヲ致シマシタノハ、天候
  不良ノ爲メデアル、斯樣ニ申シ、又暴風雨ガアッタ爲デアル····
  〔副議長濱田國松君議長席ヲ退キ議長大岡育造
  君著席〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=23

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• 024・小西和

  ○小西和君　斯樣ニ申シマスケレドモ、其眞ノ大ナル原因
  ハ、此法規ニ拘束セラレテ、且ツ商賣ノ思想ニ乏シイ所ノ
  當局者ガ、鹽ノ生產ニ付テ勞銀ガ非常ニ騰リ、石炭ノ價ガ
  高クナッテ居ッテ、ソレガ爲メニ鹽ノ生產ヲ致シマシテモ、賠
  償價格ガ低イ爲メニ、算盤上引合ハナイニモ拘ラズ、鹽ノ
  賠償價格ヲ引上ゲルコトヲ致サヌ、ソレガ爲メニ非常ニ天
  氣ノ好イ場合ニハ、漸ク生產費ヲ償フコトガ出來ルケレド
  モ、少シ天氣ノ惡イ時ハ、多大ノ手數ヲ掛ケ、燃料ヲ澤山
  使ッテ鹽ヲ製造致シマスルヨリモ、寧口休業致シタ方ガ利益
  デアル、斯ウ云フ勘定ニナリマスルカラ、自ラ鹽ノ生產ガ十
  分デナカッタノデアリマス、卽チ鹽ノ賠償價格ガ安イ爲メニ、
  自ラ勞力ヲ節約ヲ致シ、又燃料ヲ節約ヲ致シマシテ、其結果
  ト致シテ、鹽ノ生產率ガ著シク減ッテ參ックノデアリマス、斯ノ
  如クニ致シマシテ、昨年ノ秋以來我國民ヲ擧ッテ鹽ノ不足
  ニ苦シミマシタ事ハ、喋々スルマデモナイ事デアリマシテ、諸
  君ニ於カレテモ、深ク御承知ノ事デアラウト思ヒマス、昨年
  來ノ狀態ハ恰モ謙信時代ノ甲州ノ人民ノ如キ狀態ニ、日
  本六千万ノ國民ガ陷ッテ居ッタノデゴザイマス、而シテ之ニ對
  スル政府ノ遣方ハ、假令今川義元ノ如クデナイト致シマシ
  テモ、少クトモ上杉謙信ノ如キ態度ニ出ルコトガ出來ナイデ
  居リマスノヲ、深ク遺憾トスルノデアリマス、ンレ故ニ此際ニ
  鹽ノ専賣ノ遣方ヲ改メテ、迅速ニ機敏ニ鹽ノ賠償價格ヲ
  引上ゲ引下ゲフスルコトニ致セバ宜イノデアリマスガ、果シテ
  弊害ヲ醸成スルコト無クシテ、經濟界ノ變化ニ順應致シテ
  ヤルト云フ事ハ、之ヲ政府ニ望ミマスコトハ困難デアラウト
  思ヒマス、故ニ鹽ノ專賣ハ寧ロ廢止ヲシタ方ガ、宜クハナイ
  カト思フノデアリマスルガ、此鹽ノ專賣ノ廢止ノ善惡ト云フ
  事ハ、是ハ大ニ議論ノアル問題デアリマスガ、政府ハ鹽ノ專賣
  ノ廢止ニ付テハ、果シテ如何ナル御方針デアルカ、是ガ伺ヒ
  タイノデアリマス、又此專賣ニ付キマシテハ、現行ノ制度ハ
  元來收益主義ニ出來テ居ル、卽チ利益ヲ目的トシタ鹽ノ
  專賣デアリマス、所ガ收益主義!專賣ハ、租稅思想ノ極メ
  テ幼穉ナ未開ナ國ニ於キマシテ行ハレル制度デアリマシテ、
  殆ド是ハ人頭稅ト變ラヌノデアリマス、而已ナラズ鹽ノ消費
  ハ下級ノ社會ニ於テ、特ニ其量ガ多イノデアリマスガ故ニ、
  卽チ下級社會ノ者ニ酷ニシテ、比較的上級ノ者ニ薄イト云
  ?、卽チ租稅ノ原則ニ餘リ反對ヲ致シテ居ルノデアリマシ
  テ、此點ニ於テ鹽ノ收益主義ノ專賣ハ、甚シキ惡稅ト見ナ
  ケレバナラヌノデアリマス、其故ニ若シモ政府ニシテ、鹽ノ專
  賣制度ヲ廢止スルコトヲ致サナイト云フコトデアルナラバ、收
  益主義ノ專賣ヲ止メテシマッテ、專賣ハ單ニ鹽ノ檢查ヲ致シ
  テ其品質ヲ保證スルト云フコト、竝ニ鹽ノ品質ノ保證ヲ圖
  ルト云フ事ニ止ムルコトガ、恰モ政府デ行ハレテ居リマス所
  1米ノ檢査ト大體同ジ精神ニ致スト云フコトニ致シ、ソレ
  カラ兼ネテ一方ニ於テ社會政策的ノ立場カラ致シテ、鹽ノ
  需要供給ヲ圓滑ニスルト云フコト、又鹽ノ價格ヲ調節スル
  ト云フ事ノ爲メニ、鹽ヲ専賣スルト云フコトニ止メタナラバ
  宜イカト思フノデアリマス、現ニ鹽專賣ノ收益ハ最初一千
  万內外デゴザイマシタガ、追ミニ減少シテ、特ニ大正七年度
  ニ於ケル鹽専賣ノ利益ト云フモノハ、殆ド絕無デアルノミナ
  ラズ、或ハ政府ノ缺損ニ歸シテ居リハシナイカト思ハレルノ
  デアリマス、果シテサウデアリマスレバ、鹽專賣ノ收益主義
  ハ、政府ニ取シテ諺ニ骨折損ノ何トカ儲ケト云フ結果ニ陷ッ
  テ居ルノデアリマス、ソレ故政府ハ專賣ノ御方針ヲ改メマシ
  テ、唯〓申シマシタ如ク、品質ヲ確保スルコト、品質ノ向上
  ヲ圖ルコト、社會政策的見地ヨリ致シテ、鹽ノ需給ヲ圓滑
  ナラシムルコト、竝ニ價格ヲ引下ゲルコトニ努ムルト云フコト
  ニ致シタナラバ、是ガ最モ良イ策ト思ヒマスガ、政府ハ此策
  ヲ採ルノ御考ガアルヤ否ヤ、是ガ第一段ノ質問デアリマス、
  第二ニ伺ヒタイ事ハ、內地ノ鹽ノ價格ヲ引上ゲナイ範圍ニ
  於キマシテ、先ヅ其賠償價格ヲ引上ゲテ、ソレカラ追〓ニ鹽
  ノ賣出價格ヲ引下ゲルト云フコトニスル方法ヲ執リマスコ
  トガ必要ト思ヒマスル、政府ハ果シテ此方法ヲ執ルヤ否ヤ、
  ソレヲ承リタイノデアリマス、御承知ノ如ク我日本ノ鹽ノ價
  格ノ高イコトハ、殆ド世界ニ類ナイト申シテ宜イノデアリマ
  ス、ンレガ爲メ國民、就中下級ノ社會ノ多數ノ國民ニ於キ
  マシテハ、非常ナル苦痛ヲ受ケテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ
  ハ鹽ノ價格ヲ高クシテ置キマスコトハ、多數ノ下級民ニ對シ
  テ、非常ナ殘酷ナル遣方デアリマス、又一方製鹽業ノ狀態
  ヲ見マスト、昨年ノ夏ノ盛ンニ鹽ノ取レマス時カラ、エライ
  天候ノ不良モアリマシテ、ソレカ爲メニ鹽ハ減少ヲ致ス趨勢
  デアッテ、加フルニ勞銀ガ騰リ石炭ノ價格ガ騰貴致シマシタ
  爲メニ、製鹽業者ノ困難ハ一通リデナイノデアリマス、
  ンコデ製鹽業者ハ此苦痛ヲ切拔ケル策ト致シマシテ、或ハ
  低利資金ヲ借入レルトカ、或ハ外ニ融通ヨ求メルトカ
  致シマシテ、漸ク其日ヲ凌イデ居リマスガ、私ノ〓里香川縣
  ノ製鹽業ハ、御承知ノ如ク我國ノ最モ大ナル製鹽地デゴ
  ザイマスガ、私ハ鹽田業者ノ內情ニ相當ニ通ジ、又之ヲ
  目撃致スノデアリマスガ、昨年ノ冬カラ本年ニ越シマスル場
  〓、例年デアリマスレバ、製鹽業者ハ相當ニ金ヲ殘ス、又
  燃料モ殘シ、鹽モ貯ヘテ置ク、又濃厚ニナッタ所ノ鹽水モ、
  貯藏致シテ居ルト云フ狀態デアルニ拘ラズ、昨年カラ本年
  ニ越エマスル場合ニ於テハ、是等ノ貯ガ絕無デアリマスノミ
  ナラズ、多額ノ前借ヲ致シ、若クハ他カラ負債ヲシテ
  居ルト云フ狀態デアリマス、ンレ故ニ今後本年ノ如キ
  物價ガ下落致シ、又勞働賃金ガ下リマスレバ、兎ニ角、又
  ハ勞銀及物價ガ現狀ノ儘デアリマシテ、鹽ノ賠償價格ヲ
  大ニ引上ゲルト云フコトヲ致シマセヌケレバ、本年ノ製鹽
  事業者ノ經營ハ一層困難ニ陷ルノデアリマス、ソレガ爲メ
  此儘デ打過ギマシタナラバ、本年モ亦鹽生產ノ上ニ大ナル
  影響ヲ招キマシテ、ソレガ爲メ需要者タル一般ノ國民ヲ苦
  シメルト云フヤウナコトニ立至ルト云フコトヲ虞レテ居リマ
  ス、斯ル狀態デゴザイマスカラ、政府ト致シマシテハ、先ヅ鹽
  ノ賠償價格ヲ引上ゲル、サウシテ製鹽業者ノ苦痛ヲ輕減ス
  ルコトニ致サナケレバナリマセヌ、其次ニハ追とニ鹽ノ賣渡
  價格ヲ引上ゲテ、一般國民、就中下級ノ多數人民ニ對シマ
  シテ、低廉ナル鹽ヲ供給スルコトニ致シマシテ、サウシテ鹽ヲ
  社會政策ノ一助トスルコトガ極メテ必要ト考ヘマス、之ニ
  對スル政府ノ御考ヲ承リタイノデス、尙ホ此場合ニ於テ政
  府ニ承リタイ事ハ、鹽ノ賠償價格ヲ査定致シマス場合、製
  鹽業者及鹽田ノ持主ニ價格ノ決定ニ付テノ、諮問ヲスルノ
  ガ宜カラウト思フノデアリマスケレドモ、更ニ進ンデ鹽ノ賠償
  價格ヲ定メマスル場合ニ、鹽田持主及製鹽業者ヲ委員ト致
  シマシテ、ソレヲ其相談ニ參加セシムルコトニ致シマスノハ、
  意思ノ疏通ヲ圖リマス上ニ於テ、價格ノ衡平ヲ期シマスル
  上ニ於テ、其他ノ樣〓ノ關係ニ於キマシテ、頗ル美イ事ト思
  ヒマスガ、政府ハ斯ル方法ヲ執ル御考ガアルヤ否ヤト云フコ
  トヲ承リタイノデアリマス、第三ニ承リタイ事柄ハ、瀨戶內
  海ノ沿岸方面ノ如キ製鹽ニ好適セル場所ニ於キマシテ、新
  ニ鹽田ノ開拓ヲ許シ、ンレデ以テ内地鹽ノ產額ノ增加ヲ圖
  ルノ御考アリヤ否ヤト云フコトデアリマス、政府ノ當局ハ、内
  地鹽ノ不足ノ場合ニハ外國カラ鹽ヲ八レル、之デ補給スル
  カラシテ、何モ差支ナイデハナイカ、是ハ當然ノ遣方デアルト
  申スノミナラズ、場合ニ依リマスルト云フト、内地鹽不足ノ
  場合、外國鹽ヲ輸入致シマスルノヲ以テ、政府當局ノ手柄
  ノヤウニ心得テ居ルヤウナ感ガアルノデアリマス、併ナガラ外
  國鹽ヲ輸入致スト云フコトハ、內地ノ鹽ノ製產ニ付テ有ユ
  ル手段方法ヲ講ジテ尙且ツ不足ヲ致シテ、已ムヲ得ザル場
  合ニ始メテ執ルベキ手段デアリマシテ、外國鹽ノ輸入ハ、根
  本ニ於テ餘リ歡ブベキ事デアリマセヌ、若シモ內地鹽ノ不足
  ノ場合ニハ、外國鹽ヲ輸入スルカラ少シモ差支ガナイト云
  フヤウナ御考ヲ以テ、內地鹽ノ生產ノ發展向上ヲ圖ラナイ
  ト云フコトニナリマシタナラバ、ソレハ根本ニ於キマシテ、大
  ナル誤デアラウト思フノデアリマス、又當局者ハ屢〓斯樣ナ
  事ヲ申シマス、内地鹽ト外國鹽ヲ分析ヲ致スト、其化學的
  成分ノ差ト云フモノハ殆ド言フニ足ラナイノデアル、ソレ故
  ニ鹽ノ需要者ガ、舊來カラ因ハレタ所ノ習慣ト云フモノヲ
  破ッテシマウタナラバ、内地鹽ヲ使フモ外國鹽ヲ使フモ差支
  ナイ筈デアル、斯樣ニ申シマス、然ルニ實際ニ於テ内地鹽ヲ
  使フ場合ニ外國鹽ヲ使ヒマシテ、其成績ノ非常ニ不良ブア
  リ相違ノアルコトハ、是レ恰モ日本米ト外國米ノ相違ノ如
  クデアリマス、現ニ染色業者ハ外國鹽ヲ使ッテハ、到底內地
  鹽ヲ使ッタ如キ、良イ色良イ光澤ヲ出スコトガ出來ナイト申
  シテ居ルノデアリマセヌカ、又漁業者、醬油ノ醸造家ハ、外
  國鹽ヲ使ッテハ、到底内地鹽ヲ使ッタト同一ノ味ヲ保ツコトガ
  出來ナイト申シテ居ルデハアリマセヌカ、又製革業者卽チ革
  ノ製造者ハ、外國鹽ヲ使フ場合ニハ斑點ヲ生ジ、且ツ革ノ
  收縮ガ甚シクテ困ルト申シテ居ルデハアリマセヌカ、斯ノ如
  ク實際使用致シマスレバ、內地鹽ガ非常ニ宜シイト云フコ
  トガ現レテ參ッタノデアリマス、是等ノ點カラ考ヘテ見マシテ
  モ、政府ト致シマシテ大ニ内地鹽ノ生產ヲ計リ、之ニ依テ
  國民ノ嗜好ヲ滿足セシメ、又其他ノ點ニ就テ遺憾ナキ方法
  ヲ執ラナケレバナラヌノデアリマス、幸ニシテ瀨戶內海ノ沿
  岸ニハ到ル處鹽田トシテ開拓スベキ場所ガアルノデアリマ
  ス、而モ其鹽田ノ開拓ヲ希望致シマスル者ハ、決シテ尠カラ
  ヌノデアリマス、聞ク所ニ依リマスレバ、政府ニ於テハ瀨戶內
  海ノ沿岸ニ於テ、百二十町步程ノ鹽田ヲ新シク擴張ヲ致
  ス豫定デアリマス、之ニ依テ年額三千万斤ノ鹽ヲ生產サセ
  ルト云フコトデアリマス、果シテサウデゴザイマスルナラバ、瀨
  戶內海ノ沿岸ニ於テノ鹽田ノ擴張ヲ致シマスル事ハ結構
  デアル、併ナガラ折角ノ擴張ガ僅々百二十町步、其產額ノ
  豫想ガ三千万斤ト云フコトデゴザイマシテハ、現在及將來
  ニ於ケル鹽ノ大不足ニ對シマシテハ、到底是デ以テ滿足ス
  ルコトガ出來ナイノデアリマス、ンレ故ニ政府ト致シマシテ
  ハ、此際瀨戶內海ノ沿岸ノ方面ニ於テ大ニ鹽田ノ開發ヲ
  寧ロ奬勵スル位ニ致シテ、之ヲ認許スルト云フ事ガ、此場
  合極メテ必要ナ事ト思ヒマスルガ、政府ニ於テハ此御考ガ
  アリヤ否ヤ、是ガ御尋致シタイノデアリマス、ソレカラ瀨戶內
  海ノ鹽田ノ擴張ト關聯致シマシテ御尋ヲ致シタイ事ハ、昨
  年ノ夏秋來鹽ノ供給ガ不足ニ至ッテ、國民ガ苦ンデ參リマ
  シタ場合ニ、政府ハ供給不能ト云フ事ノ此失態ヲ蔽ハンガ
  爲メデゴザイマセウ、昨年ノ秋冬ノ頃ニ至ッテ、急ニ臺灣竝
  ニ關東州ノ鹽ヲ取寄セテ、ソレヲ粉碎致シテ、卽チ粉ニ致シ
  マシテ供給ヲ圖リマシタ所ガ、美事失敗ヲ致シマシタノデア
  リマス、其次ニ更ニ山口縣ノ三田尻及下松ニ天日製鹽ノ
  再製工場ヲ急設中デゴザイマス、此工場カラハ最早追ミニ
  此再製鹽ガ出テ參ルヤウナ狀態ニナラウト思フノデアリマ
  ス、私ハ政府ガ此再製鹽ノ工場ヲ設ケタト云フコトハ、甚ダ
  晩イト云フ憾ヲ持ッテ居リマス、而已ナラズ寧口斯ル規模ノ
  狹小ナ小任掛ノモノヲ以テ致シマシテ、果シテ是デ以テ滿
  足ヲ致シテ居ラルヽノデアルカ、日本ノ此鹽ノ大不足ニ對シ
  テ、是デ以テ宜シイノデアルト政府ガ考ヘテ居ラルヽカヲ疑
  ハザルヲ得ヌノデアリマス、斯ノ如キ小規模ノ二箇所ノ再製
  鹽工場ヲ以テ致シマシテハ、到底此不足ヲ補フニ足ラナイ
  コトハ分切ッタ話デアル、扨テ此再製鹽ノ工場ノ費用ハ、臨
  時事件費カラ支出ヲシタ筈デアリマスガ、初メノ設備費ハ
  姑ク措キマシテ、單ニ此再製鹽ヲヤリマスル加工費デス、加
  工費ダケノ事ニ付テ考ヘテ見マシテモ、其加工費ヲ瀨戶內
  海沿岸、卽チ十州ノ鹽田方面ニ於ケル製鹽業者ニ其加工
  費ヲ補給致シテ、サウシテ原料鹽ヲ供給ヲ致スト云フコトニ
  スルナラバ、鹽田業者ハ喜ンデ鹽ノ再製ヲ致スノデアリマス、
  サウナリマスレバ政府事業ト致シテ、山口縣邊リニ小規模
  ノ二箇所ノ再製工場ヲ設ケマスルヨリモ、一般的ニ、又自
  由ニ、容易ニ、輕便ニ、經濟的ニ、多額ノ再製鹽ガ出來ル
  ト云フコトニナリマス、斯ク致シマシタナラバ、政府モ生產
  業者モ雙方ノ利益デアル、又之ニ依テ國民ヲシテ鹽ノ不足
  カラ免レシムルコトガ出來ルノデアリマス、然ルニ政府ガ貧
  弱ナル糊塗策ヲ執ッテ居ルト云フコトハ、是ハ政府萬能主
  義ノ結果カト思ヒマスルガ、斯ノ如キハ斷ジテ不可デアルト
  考ヘマスルガ、政府ハ果シテ此方法ニ依リマシテ、十州鹽田
  業者ニ對シテ鹽ノ再製ヲヤラセルト云フ御考アリヤ否ヤ、是
  モ承リタイノデアリマス、第四ニ承リタイ事ハ、支那政府ニ
  交渉致シテ、奉天省、山束省邊リノ鹽ノ輸出稅ヲ撤廢致
  シ、其上ニ此兩者ニ於テ、鹽田ノ擴張ヲスルト一云フ事ニ努
  メル御考ガアルヤ否ヤデアリマス、此支那ノ鹽ヲ日本ニ入レ
  マスノニハ、主トシテ工業ノ原料トシテ用キル爲メデアッタノ
  デアリマス、内地ニ於ケル工業ノ原料鹽トシテ支那ノ鹽ヲ
  取リマスコトハ、我ガ日本ノ爲メニ利益デアリマスコトハ、勿
  論、支那ニ取リマシテモ亦大ニ利益ナ事デアリマス、殊ニ關
  東州方面ノ如キハ、日本人經營ノ鹽田モ少カラヌノデアリ
  やっ、又今後日本人トシテ、彼ノ方面ニ鹽田ヲ開拓スベキ
  場所ハ澤山ニアルノデアリマス、又山東省ノ靑島方面モ矢
  張同樣ノ狀態デゴザリマスル、ソレデアリマスルガ、アチラガ
  鹽ヲ輸出致シマスル場合ニ、百斤ニ付テ十錢ノ輸出稅ガ掛
  リマスコトハ、彼ノ方面ニ於ケル鹽ノ價格ガ、百斤僅ニ二十錢
  內外デアルト云フ點カラ見マスルト云フト、是ハ甚シキ鹽ニ
  對スル價額ノ相違ヲ起サシムルノデアリマス、ソレデアリマス
  カラ此關稅ヲ廢シマスルト、自ラ工業用ノ鹽ガ低康ニ輸入
  セラルヽコトニナリマス、ソレガ爲メニ我國ノ工業發達ヲ助
  長シ、又支那ノ鹽ノ生產ノ發達ヲモ助長致シマシテ、日支
  兩國ノ爲メニ至大ノ好都合デアルノデアリマス、御承知ノ
  如ク鹽ハ主トシテ曹達灰ニ作リマスノデアリマス、ソコデ試
  ミニ外國カラ輸入致シマスル所ノ曹達灰ト、内地デ造リマ
  スル所ノ曹達灰ノ價格ヲ比較致シテ見マスルト、外國ノ輸
  入品ノ方ガ、現在ニ於テハ餘程低廉デアリマス、ソレデアリ
  マスルカラ此狀態ニ於キマシテハ、日本內地ノ鹽ヲ原料ト
  致シテヤルベキ、化學工業ノ發達ヲ期スルコトハ出來ナイノ
  デアリマス、ソレデ外國カラ輸入スル所ノ曹達灰ト、內地製
  ノ曹達灰トガ互ニ對抗シテ參リマスルニハ、其原料タル鹽ニ
  對シテ、卽チ外國カラ輸入スル所ノ曹達灰ニ對シテ關稅ノ
  引上ヲ致スカ、若クハ內地製ノ曹達灰ノ原料夕ル鹽ノ價格
  ヲ安クスルカ、此二ツノ中ヲ採ラナケレバナラヌノデアリマス、
  所ガ曹達ハ申スマデモナク一般化學工業ノ主要ナル原料
  デゴザイマシテ、此原料タル鹽ノ關稅ヲ引上ゲマスルコトハ、
  直チニ我國ノ化學工業ノ發達ヲ阻碍スルコトニナリマスカ
  ラ、採ルベキ策デハゴザイマセヌ、シレ故ニ我國ノ化學工業
  ノ發達ヲ助長スルガ爲メニハ、ドウ致シマシテモ、此鹽ヲ安
  クシナケレバナラヌノデアリマス、其鹽ヲ安クスル方法ト致シ
  マシテハ、先ヅ第一ニ支那カラ取リマスル所ノ鹽ニ付テ、關
  稅ヲ撤廢サレルト云フコトガ必要デコザイマス、又鹽田擴張
  ガ日支兩國ノ爲メニ利益デゴザイマスコトモ、是亦申スマデ
  モナイ事デアリマス、ソレ故ニ政府ニ於テハ支那ノ政府ニ交
  涉致シマシテ、汽ノ輸出稅ヲ撤廢サセルカ、又支那ノ山東省、
  奉天省ノ海岸方面ニ於テ、鹽田ヲ擴張サセルコトニ政府ガ
  致シマスルコトハ、甚ダ必要ナ事ト思ヒマスルガ、政府ハ此事
  ヲ爲サル御考ガアルヤ否ヤヲ承リタイノデアリマス、終リニ承
  リタイ事ハ、鐵道竝ニ汽船ニ對シテ鹽ノ運賃ヲ安クセシム
  ルト共ニ、其運送ヲ迅速ナラシメ、工業用トシテ奉天山東
  兩省ノ鹽ヲ低廉且ツ迅速ニ、内地ニ取ルヤウニスル所ノ策
  ヲ採ラレルヤ否ヤト云フ事デアリマス、ソコデ先ヅ其中ノ前段
  ノ内地ノ鹽ノ運賃及輸送ノコトヲ承ルノデアリマスガ、從
  來鹽ノ運賃若クハ回漕ニ付キマシテハ、政府ハ其主要ナル
  生產地ノ商人ニ對シテ之ヲ勸誘致シ、場合ニ依ッテハ依賴
  スルヤウナル態度ヲ執リマシテ、回漕會社ヲ組織セシメマシ
  テ、其囘漕會社ニ鹽ヲ運ブ所ノ手數料、又取扱費ヲ交付
  シテ居ルノデアリマス、此方法デ鹽ヲ運送致シマスルカラ、
  ソレガ爲メニ運賃ガ自ラ高クナリ、且ツ鹽ノ配給ガ頗ル緩
  漫ニナルノデアリマス、之ヲ改メテ直チニ船會社、若クハ船
  主ニ鹽ノ運送ヲ競爭入札ニサセルト云フコトニ致シマシタ
  ナラバ、第一ニ運賃ガ安ク參リマス、又船ガ今日ノ如ク澤山ニ
  アリマスル場合ニ於キマシテハ、自ラ迅速ニ運搬サルヽコトモ出
  來ルノデアリマス、其上ニ船舶側カラ見マスレバ近來船舶業者
  ハ追ミニ不景氣ヲ喞ツヤウニナリマシタ、中ニハ繋船ヲ致シテ居
  ル者モ出來掛ッテ居リマス、此場合ニ鹽ノ輸送ヲ船舶業者
  ニ直接ニ競爭入札デヤラセルコトニシタナラバ、船舶業者ノ此
  苦痛ヲ輕減スルコトニモ、多大ノ效果ガアラウ卜思ヒマス、
  又鐵道ノ側ハ同ジ政府部內ノ事デゴザイマスカラ、其間ノ
  交涉ハ容易ニ纏マル、隨テ鐵道ニ付テノ鹽ノ運賃ヲ輕減シ
  又運送ヲ迅速ナラシムルコトハ、政府ニ於テハ容易ニ出來
  ル事ト思ヒマス、此策ヲ採ル此考ガアルヤ否ヤヲ承リタイノ
  デアル、又第二段ノ支那ノ鹽ヲ低廉ニ且ツ迅速ニ日本內
  地ニ取ルコトニ付テ申上ゲマスガ、此支那ノ鹽ヲ安ク取リマ
  スノニハ、彼地ノ關稅ヲ撤廢ヲサセル外ニ、此運賃ヲ低減ス
  ルコトニシナケレバナリマセヌ、所ガ現在支那ニ於テ日本ニ
  送ルベキ鹽ヲ船積致シマスル狀態ヲ見マスルト、多クハ船ガ
  著キマシタ場合ニ、人足ガ鹽ヲ脊中ニ脊負ッテ艀ニ運ブ、其
  艀カラ更ニ本船ニ移スト云フヤウナ緩漫ノ事ヲシテ居リマ
  ス、ンレガ爲メニ人夫賃艀賃及ビ船ガ長ク停マル、其船賃
  抔ガ要リマス爲メニ、自ラ運賃モ高クナルコトガ少カラヌノ
  デアリマス、ソレ故ニ政府ニ於テ適當ノ方法ヲ執リ、彼地ニ
  於ケル鹽ノ積込ヲ便ニシ、セメテ棧橋カラデモ積ムコトガ出
  來ルコトニ致シマシテモ、運賃ヲ低廉ナラシメ、延テ鹽ノ價
  格ヲ低廉ナラシメルコトニ於テ、相當ノ利益ガアルト思フノ
  デアリマス、兎ニ角關稅ノ撤廢ト運賃ノ引下ガ出來マシタ
  ナラバ、自ラ鹽ノ價格ガ下ルノデアリマス、サウ致シマスナラ
  バ、鹽ヲ原料トスル所ノ化學工業モ發達ヲ致シ、我國ノ工
  業界ノ發展ヲ助長スルコトハ、蓋シ少カラヌノデアリマス、鹽
  ノ價格ガ若干低廉ニナリマシタナラバ、而シテ曹達灰ノ生
  產費ガ外國カラ日本ニ入ッテ集リマス所ノ價格ト、同ジ位デ
  引合フヤウニスルト云フコトハ、左マテ困難デハナイノデアリ
  マス、此方法ガ出來マシタナラバ、我國ノ化學工業ノ發達ニ
  多大ノ效果ガアルモノト信ズルノデアリマス、ソレ故ニ政府
  ハ支那沿岸カラ工業用、漁業用又農業用トシテ、鹽ヲ安ク
  且ツ迅速ニ内地ニ送ル所ノ御考ガアルヤ否ヤ此點ニ就テ承
  リタイノデアリマス、ドウカ親切ニシテ明確ナル御答辯ヲ希
  望スルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=24

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• 025・岩崎勲

  ○岩崎勳君　緊急事件審議ノ都合上、自餘ノ質問全部
  ニ對シテ延會ノ動議ヲ提出致シマス
  〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=25

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• 026・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=26

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• 027・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナシト認メマス、仍テ以下
  ノ質問ハ延會ニナリマシタ、日程第一、軌道條例中改正法
  律案日程第三、仙北輕便鐵道買收費支辨ノ爲公債發行
  ニ關スル法律案此二案ヲ一括シテ議題ト致スニ御異議ハ
  アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=27

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• 028・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナケレバ一括議題ニ付シマ
  ス、兩案ノ第一讀會ヲ開キマス、床次鐵道院總裁
  第軌道條例中改正法律案(政府提出)
  第一讀會
  軌道條例中左ノ通改正ス
  第四條中「私設鐵道法第二十三條」ヲ「地方鐵道法第
  六條」ニ、「私設鐵道株式會社ニ非サル會社又ハ輕便鐵
  道會社ニ非サル會社」ヲ「地方鐵道會社ニ非サル會社」
  二六六
  第五條地方鐵道法第三十六條ノ規定ハ軌道ニ之ヲ
  準用ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第二仙北輕便鐵道買收費支辨ノ爲公債發
  行ニ關スル法律案(政府提出)第一讀會
  仙北輕便鐵道株式會社所屬ノ輕便鐵道買收費支辨ノ
  爲政府ハ百六萬五千九百五十圓ヲ限リ公債ヲ發行ス
  ルコトヲ得
  〔政府委員床次竹二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=28

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• 029・床次竹二郎

  ○政府委員(床次竹二郞君)　兩案ノ說明ヲ致シマス、軌
  道條例中ノ改正法律案、是ハ曩ニ本院ニ於テ可決セラレ
  マシタ、地方鐵道法第三十六條ニ於テ、政府ガ地方鐵道
  ニ接近シ、又ハ併行シテ鐵道ヲ敷設スル場合ニ、地方鐵道
  ノ被ル損害ヲ補償スル規定ヲ設ケラレタノデアリマス、此同
  ジ規定ヲ軌道ニ接近シ又ハ併行シテ、政府ノ鐵道ノ敷設ス
  ル場合ニ於テモ適用致シタイ考ヲ以テ、玆ニ軌道條例中ニ
  改正ヲ致スノデゴザリマス、尙又地方鐵道法改正ノ結果、
  軌道條例第四條ノ規定ヲ改正スル必要ガアリマシテ、玆ニ
  此案ヲ提出シタ次第デゴザイマス、宜シク御協賛ヲ願ヒマ
  ス··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=29

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• 030・荒川五郎

  ○荒川五郞君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=30

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• 031・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　マダモウ一ツ說明ガアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=31

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• 032・床次竹二郎

  ○政府委員(床次竹二郞君)　仙北輕便鐵道買收費支
  辨ノ爲公債發行ニ關スル法律案、是ハ宮城縣下小牛田ヨ
  リ石卷ニ至ル仙北輕便鐵道、此鐵道ハ鐵道敷設法ノ豫定
  線ニ該當致シマシテ、陸羽ヲ橫斷スル幹線ノ一部デゴザイ
  マスガ、軌間ガ二呎六吋デアリマシテ、國有鐵道トノ運輸
  連絡上支障少カラザル爲メ、此度之ヲ買收致シマシテ、隨
  テ軌間ヲ擴築シテ、交通上遺憾ナキヲ期シタイノデアリマ
  ス、此輕便鐵道ノ買收代價ハ、公債ヲ以テ交付致スノデア
  リマス、仍テ玆ニ公債發行ニ關スル本法案ヲ提出シタ次第
  デゴザイマス、宜シク御協賛ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=32

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• 033・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　荒川五郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=33

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• 034・荒川五郎

  ○荒川五郞君　此軌道條例ニ依テ運轉シテ居リマス電氣
  鐵道ノ實際ノ取締デアリマスガ、軌道條例ニハ一時間二八
  哩以内ト規定サレテ居リマス、然ルニ東京ノ市街鐵道ノ如
  キハ、一時間ニ八哩ドコロデハアリマセヌ、十二哩モ運轉致
  シテ居ル、是等ハ此交通ノ繁キ多忙ナル場合ニ已ムヲ得ヌ
  事卜思ヒマスガ、東京ノ如キ人馬集散幅輳スル市街地デ
  スラ、八哩以上ノ速力ヲ出シテ居ルノニ、地方ノ交通ニ妨
  ゲノナイ所デ、此條例ノアルガ爲メニ、一時間八哩ト云フ制
  限ヲ課セラレテ居リマス、是ハ地方ノ交通上速力ヲ早メテ
  モ、實際ノ交通ニ妨ゲガナイノデアリマスガ、サウ云フ風ニナッ
  テ居ル、要スルニ是ハ法律制定以後、何十年ト經テ居ルノ
  デアリマスカラ、隨テ今日ノ時勢ニ合ハヌノデアリマス、東京
  市ノ如キハ其實際ニ合ハヌコトヲ、確ニ政府ハ日々默認セ
  ラレテ居ル、然ラバ此速力ノ如キハ、此條例ヲ改正セラルヽ
  場合ニハ、先ヅ第一ニ改正セラルベキ箇條デアルト思ヒマス
  政府ノ之ニ對スル意見ハ如何デアリマスカ、ソレカラモウ
  ツハ唯〓床次内務大臣ノ說明セラレタル地方鐵道ノ事ニ
  關スルノハ、地方鐵道法ノ第三十五條デハナイカト思フノ
  デアリマス、此原案ニハ地方鐵道法第三十六條ノ規定ハ、
  軌道ニ之ヲ準用ストアリマス、是ハ地方鐵道法ノ第三十五條
  デ、政府ニ於テ地方鐵道ニ接近シ、又ハ竝行シテ鐵道ヲ敷
  設シマシタトキニ、地方鐵道業者ガ其接近シタリ、又ハ竝行
  スル區間ノ營業ヲ繼續スルコト能ハザルニ至リタルトキハ、
  政府ハ其ノ營業ノ廢止ニ因ッテ生ズル損失ヲ補償スルコト
  ガ出來ル、殘存線路ノミニ付テ營業ヲ繼續スルコト能ハザ
  ルニ至ッタ時分モ、亦同樣デアルト云フコトハ地方鐵道法ノ
  第三十五條ノ規定デハナイカト思ヒマス、此二點ヲ御尋致
  シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=34

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• 035・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　鐵道院總裁
  〔政府委員床次竹二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=35

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• 036・床次竹二郎

  ○政府委員(床次竹二郞君)　荒川君ニ御答致シマス、第
  一問ハ、是ハ「軌道條例取扱方心得」ト云フモノガアッテ、ソ
  レデ定メラレテ居ルノデアリマス、平均ノ速力ヲ定メラレテ
  居ルノデアリマシテ、地方々々ニ依ッテ多少斟酌ヲ加ヘテ行
  ク、第二問ハ政府提出ノ案ハ三十五條デアリマシタガ、本
  院ニ於テ修正セラレマシテ、唯〓私ガ申シタ通リ三十六條
  ニナッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=36

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• 037・正木照藏

  ○正木照藏君　一寸御尋致シタウゴザイマス、政府ハ明
  年ハ此軌道條例總體ノ改正案ヲ御出シニナル御考デアリ
  マスカ、如何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=37

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• 038・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　鐵道院總裁
  〔政府委員床次竹二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=38

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• 039・床次竹二郎

  ○政府委員(床次竹二郞君)　御答シマス、左樣デゴザイ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=39

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• 040・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　右二案ノ審查ヲ付託スヘキ委員
  ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=40

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• 041・岩崎勲

  ○岩崎勳君　日程第一及第三ヲ一括シテ、委員ノ數ハ特
  ニ十八名トシ、議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=41

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• 042・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ」

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=42

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• 043・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガ無ケレバ動議ノ如ク決シ
  マシタ、日程第五、農工銀行補助法中改正法律案ノ第一
  讀會ヲ開キマス-神野政府委員
  第五農工銀行補助法中改正法律案(政府提
  出第一讀會
  農工銀行補助法中左ノ通改正ス
  第五條第二項ヲ左ノ如ク改ム
  前項ノ配當金ハ之ヲ府縣ノ收入ニ繰入レ大藏省預
  金部ニ預入レ地方低利資金トシテ融通スルモノトス
  第六條但書及第七條ヲ削ル
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  〔政府委員神野勝之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=43

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• 044・神野勝之助

  ○政府委員(神野勝之助君)　農工銀行ノ府縣ノ持株ニ
  對シマスル配當金ハ、各府縣每ニ見マスルト至ッテ少額デア
  リマシテ、之ヲ府縣ノ自由ノ處分ニ委シテ置キマスル場合ニ
  ハ、其力ガ小サクシテ效果ガ至ッテ薄イト思ヒマス、ソレ故ニ
  之ヲ大藏省預金部ニ預入レルコトニ致シマシテ、集メテ一團
  ト致シマシテ、以テ公共團體其他各種ノ產業上ノ組合ニ、
  低利資金トシテ之ヲ融通致シマスレバ、適當ナル資金ヲ適
  當ナル場所ヘ向カシメテ、其效果ハ至ッテ大キクナルダラウト
  考ヘマス、サウシテ第七條ノ各府縣ノ持株ヲ市町村ニ交付
  スルコトヲ得ルト云フコトハ、此改正ヲ致サウト云フ趣旨ト
  相容レザルコトニナリマスカラ、第六條/第二項、竝ニ第七
  條ヲ削除致シタイト云フ改正案デアリマス、何卒御協賛ヲ
  願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=44

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• 045・内藤傳禄

  ○内藤傳祿君　一寸御尋致シマスガ、此各府縣農工銀行
  ノ配當額ヲ集メタ總額ハ、ドレダケニナリマスカ、尙又其農
  工銀行ノ配當ヲ集メタモノヲ以テ、產業組合ノ中央銀行ト
  云フヤウナモノヲ設立スル政府ニ考案ハアリマセヌカ、右二
  點ヲ御尋致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=45

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• 046・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　神野政府委員
  〔政府委員神野勝之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=46

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• 047・神野勝之助

  ○政府委員(神野勝之助君)　御答致シマス、農工銀行ノ
  府縣ニ對スル配當ハ、約七十二万圓位ノ見込デアリマヌ、
  之ヲ一府縣ニ平均致シマスレバ約一万五千圓位、全國ノ
  市町村ニ平均致シマスレバ、一年ニ六十圓位ノモノニナリ
  やつく、ソレカラ第二ノ御尋ノ、產業組合中央銀行ヲ設ケル
  ト云フ案ハ無イカト云フ御尋デアリマスガ、是等ハ色々講究
  ハ致シタコトハゴザイマスガ、唯今ノ所デハ、之ヲ直チニ設ケ
  ヤウト云フマデニハ考ハ持ッテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=47

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• 048・大岡育造

  ○議長(大岡百造君)　委員選舉ヲ議題ト致シマス
  第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=48

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• 049・岩崎勲

  ○岩崎動君　本案ハ天春文衞君外十七名提出、農工銀
  行法中改正法律案外一件ノ委員ニ、併セテ付託セラレン
  コトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=49

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• 050・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=50

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• 051・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナケレバ動議ノ如ク決シマ
  シタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=51

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• 052・岩崎勲

  ○岩崎動君　議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致
  シマス、卽チ茲ニ執達吏規則中改正法律案、及執達吏ノ手
  數料及立替金增額ニ關スル法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開
  キ、一括シテ委員長ノ報告ヲ求メ且ツ其審議ヲ進メラシン
  コトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=52

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• 053・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　日程變更ノ動議ニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=53

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• 054・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナシト認メマス、仍テ日程
  ハ變更セラレマシタ、右ノ二案ヲ議題ニ付シマス-委員長
  則元由庸君
  執達吏規則中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)(確定議)
  執達吏ノ手數料及立替金增額ニ關スル法律案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)、確定議)
  〔則元由庸君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=54

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• 055・則元由庸

  ○則元由庸君　執達吏規則中改正法律案、竝ニ執達吏
  ノ手數料及立替金增額ニ關スル法律案ノ委員會ニ於ケル
  經過竝ニ結果ヲ、極メテ簡單ニ御報告致シタウ存ジマスヽ
  第一ノ執達吏規則中改正法律案ハ、此規則中ノ第十九
  條ニ、執達吏ノ收入金額一箇年百八十圓ニ滿タザルトキ
  ニハ百八十圓マデ政府ニ於テ補給スルト云フ規則デアリマ
  スガ、其改正ノ理由トシテ政府ノ說明スル所ニ依リマスレ
  バ、此執達吏規則ノ出來マシタノガ明治二十三年デゴザイ
  マシテ、今日ノ經濟上ヨリ鑑ミテ見マスレバ百八十圓マデノ
  補給デハ、執達吏ノ事務ヲ執ルノニ甚ダ困難デアルカラ、此
  增給額ノ程度ヲ四百五十圓マデニ增額スルト云フ改正ノ
  理由ニナッテ居リマス、第二ノ執達吏ノ手數料及立替金增
  額ニ關スル法律案ノ改正ノ趣意トスル所ハ、是モ現時ノ經
  濟上ノ現狀ニ鑑ミテ、當分ノ間勅令ノ定ムル所ニ依テ、百
  分ノ五十ダケノ增額ヲスルト云フノガ、此改正案ノ趣意ニ
  ナッテ居リマス、第一ノ規則ノ改正ニ就テハ、委員會ニ於テ
  何等異議ヲ唱ヘル人ハアリマセヌデアリマシタガ、此第二ノ
  方ニナリマスト、段々委員中ニ意見ヲ提出サレマシテ、或ハ
  此執達吏ノ中デ東京ノ執達吏ノ如キモノハ一タビ此職ニ
  就キ、兩三年ニシテ多額ノ財產ヲ有スルニ至ルヤウナ人ガア
  ル、ンコデ或ハ東京其他特殊ノ都會ニ於テハ、此增額ヲ爲
  ス必要ハナイデハナカラウカト云フヤウナ意見ヲ提出サレタ
  方モアリマス、其他幾多ノ意見モ出マシタガ、要スルニ此委
  員ノ意見トシテ提出サレマシタノハ、三箇ニナリマシテゴザイマ
  ス、而シテ此三候ノ意見ハ、委員殆ド全部ノ意嚮ト致シマ
  シテ、一ノ希望トシテ此意見ヲ述ベラレタノデアリマス、其第
  一ハ東京及其他ノ裁判所ノ中デ、執達吏ノ職務ヲ執ルニ當
  リマシテ、合同役場ト云フモノヲ拵ヘテアル、其所デ此執達
  吏ノ數名及數十名ガ職務ヲ執ルニ當ッテ、一ツ若ハ數箇ノ
  役場ニ之ヲ併合スルコトニナリマスルト、幾多ノ弊害ガ簇出
  致シマシテ、訴訟人及此訴訟ニ關係ヲ有シテ居リマスル國
  民ガ、非常ニ迷惑ヲ受クルコトモアルカラシテ、何トカ是ハ改
  善ノ途ハナカラウカト云フノガ、卽チ其第一ノ希望デアリマ
  ス、ソレカラ第二ノ希望ト致シマシテハ、東京ノ執達吏ノ收
  入ハ嚮ニ申上ゲマシタヤウニ、聞ク所ニ依レバ甚ダ多額ノ金
  額ニ上ルヤウニモナッテ居ルカラシテ、他ノ裁判所ノ執達吏
  ト同一ニ之ヲ取扱フト云フノハ、其當ヲ得ヌモノデアラウ、ソ
  コデ政府ハ此本案ヲ執行サルヽニ當リマシテハ、宜シク各地
  ノ事情ヲ深ク精査致シマシテ、サウシテ百分ノ五十以內デ、
  十分ニ考慮ヲ費シ、愼重ニ取捨按排セラレンコトヲ希望ス
  ルト云フノデアリマス、ソレカラ第三ハ此執達吏ノ職務ヲ執
  ルニ當ッテ、從來屢、國民ニ不平ヲ陳ブル者モアル、及怨嗟ノ
  聲ヲ聞クニ至ルノデアル、是ハ甚ダ迷惑千萬デアルガ、要ス
  ルニ是ハ此制度ノ不備ナ點モアルデアラウ、及執達吏ノ職
  務ヲ執ル其方法ノ上ニ於テモ、多少ノ缺陷ヲ生ジテ居ルノ
  デハアルマイカ、之ニ對シマシテハ政府モ十分ニ考慮ヲ費シ
  テ、何カ此點ニ就テ改善ヲ施サレンコトヲ希望スルト云フノ
  デアリマス、此三箇ノ希望ニ對シマシテ、政府ハ第一ノ方ニ
  就キマシテハ、全然委員ノ希望トスル所ノ理由ニ賛同ヲ表
  セラレタノデハアリマセヌ、卽チ從來執達吏ノ職務ヲ執ル
  ニ當リマシテ、一人一箇ノ役場ヲ設ケテアッタノデアリマスん
  ガ、ソレニ就テ種々弊害ヲ生ズルカラ、此規則ヲ置キマシタ
  後ニ、此合同役場ト云フモノヲ設ケテ、此合同役場ヲ設ケ
  テ後ハ、却テ一箇々々ニ職務ヲ執ッテ居"タ時ヨリモ、其弊害
  ヲ少クシタノデアルカラ、今日此合同役場ヲ設ケタ爲メニ、
  多大ノ弊害ガアルト云フコトハ認メヌ、併ナガラ大分近年國
  民ノ怨嗟ノ聲ガアルト云フコトヲ耳ニシ、又委員會ノ希望
  モアルコトデアルカラ、政府ハ此東京ノ執達吏役場ヲ三箇
  ニ分立セシメテ-之ヲ三ツニ分チマシテ、而シテ其實行ノ
  期ハ、此法律實施ノ際、及ビソレヨリ餘リ遲カラメ時期ニ於
  テ實行スルヤウニ致スデアラウ、ソレカラ第二ノ手數料ノ率
  ノ問題ニ付キマシテハ、各地方栽判所ノ所長ヲシテ十分ニ取
  調ヲセシメ、之ヲ司法省ニ持出サセテ、司法大臣ガ十分ニ
  調査ヲシテ、而シテ其率ヲ定メルト云フコトニ致シ、サウシテ
  其調查ノ如キモノハ、愼重ニ慎重ヲ加ヘテ、委員會ノ希望ニ
  適フヤウニ、十分ノ考慮ヲ費スデアラウト云フ答辯デアリマ
  ス、ソレカラ第三ニ付キマシテハ、委員ノ希望ニ同感デアル、
  何トカ考慮ヲ費シテ、此國民怨嗟ノ聲ヲ緩ウスルヤウニスル
  デアラウト云フ答辯デアリマス、委員會ハ此政府ノ言明ニ信
  用致シマシテ、之ニ滿足ヲ表シマシテ、全會一致ヲ以テ第
  一、第二案共ニ、政府案提出ノ通リニ可決確定スルニ至ッ
  タノデアリマス、此段御報告ニ及ビマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=55

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• 056・岩崎勲

  ○岩崎動君　兩案ヲ一括シ、讀會ノ順序ヲ省略シテ、省略
  シテ委員長報告ノ通リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=56

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• 057・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議アリマセヌカ
  [「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=57

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• 058・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナケレバ讀會ノ順序ヲ省
  略シテ、兩案共可決確定シタルコトヲ宣告致シマス、日程第
  七、家畜市場法中改正法律案第一讀會ヲ開キマス、提出
  者高橋嘉太郞君
  第七家畜市場法中改正法律案(齋藤珪次君
  外十三名提出)第一讀會
  家畜市場法中左ノ通改正ス
  第一條中「牛馬羊豚」ヲ「牛羊豚」ニ改ム
  〔高橋嘉太郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=58

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• 059・高橋嘉太郎

  ○高橋嘉太郞君　家畜市場法中改正法律案、極ク簡單
  デゴザイマスカラ簡單ニ說明ヲ致シマス、家畜市場法ノ第
  一條ニ「本法ニ於テ家畜ト稱スルハ牛馬羊豚ヲ謂フ」トアル
  ノデアリマス、其中カラ馬ヲ除イテ之ヲ「牛羊豚」ト改ムル、
  斯ウ云フ趣旨デゴザイマス、極ク文字ハ簡單デゴザイマスケ
  レドモ、馬ヲ除クト云フニ付テハ、除クダケノ理由モゴザイマ
  ス、併シ其理由ニ就テ長ク申シマスレバ時間モ費シマスカ
  ラ、大體ノミ申上ゲマスガ、產馬地方ニ於テハ、既ニ產馬組
  合法ニ依テ設置シテアル所ノ市場モゴザイマス、二歲糶駒
  市場ト申シマスガ、又養馬地ニ於テハソレ〓〓從來ノ慣行
  モアリ、事情モアルノデアルカラ、其等ノ點ヲ十分申シマス
  レバ、徒ラニ時間ヲ費スノ虞ガアリマスカラ、ドウモ御採用ニ
  ナッテ委員付託ニナルコトヽ信ジマスカラ、其等ノ詳細ノ事
  ハ委員會ニ讓ル方ガ便利ナリト信ジマス、宜シク御賛成ヲ
  願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=59

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• 060・荒川五郎

  ○荒川五郞君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=60

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• 061・岩崎勲

  ○岩崎勳君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=61

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• 062・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　荒川五郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=62

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• 063・荒川五郎

  ○荒川五郞君　一ツ質問ガゴザイマス、此家畜市場法ハ、
  唯今提出者ノ述べラレマシタ通リニ、牛馬羊豚ヲ支配スル
  ノデアリマス、然ルニ此中デ馬ダケヲ除カウト云フノデアリマ
  スケレドモ、提出者ハ馬ノ產地ノ御方ト心得マス(「其通リ」
  ト呼フ者アリ)我ガ全國ノ農業ハ、馬ヲ多ク產スル處ハ馬ヲ
  農業ニ用ヰマス、牛ノ多イ處ハ牛ヲ農業ニ用ヰマス、牛耕
  馬耕、全國ハ凡ン其地方デ區分シテ居リマス、然ル二馬ノ
  產地デハ馬ヲ農業用ニ使ヒマシテ、農家總テガ馬ヲ持ッテ居
  リマスカラ、隨テ此一人一個ノ農者ガ、賣買其他ニ家畜市
  場法ノ支配ヲ受ケルノハ迷惑ダト言ハレマスガ、ソレト同ジ
  ヤウニ、牛ヲ主ニ農業ニ使ウテ居ル處ハ、等シク馬ト同ジ事
  デアル、中國地方ハ決シテ馬ヲ農家ハ用ヰマセヌ、マルデ牛
  耕デアル、其牛耕地方モ此案ノ精神ト同ジ事デアル、若シ
  サウナリマシテ馬ヲ除キ牛ヲ除クト云フコトニナッタナラバ、
  此家畜市場法ハ全ク骨拔ノモノニナッテシマウノデアリマス、
  豚羊ダケデハ、實際此法律ハ役ニ立タヌコトニナルノデアリ
  マス、豚ノ如キハ千葉縣地方ニアリマスケレドモ、全國カラ
  見レバ甚ダ僅カナモノデアル、羊ハ政府ガ奬勵セラレテ居リ
  マスケレドモ、羊ハ極ク軟カイモノデアリマス、我日本ノ草ハ
  茅ノ質ヲ含ンデ居ル、笹ノ質ヲ含ンデ居ル、極ク日本ノ一般
  ノ草ハ粗イノデアリマス、此粗イ草ハ軟カイ羊ニハ適セヌト
  云フ說ガアリマス、隨テ羊ナルモノハ、政府ハ多大ナ事ヲシ
  テ保護奬勵ヲシテ居リマスケレドモ、前途甚ダ覺束ナイト云
  フコトガアルノデアリマス、サウ云フヤウナ譯デアルカラ、羊モ
  豚モ殆ド微々タルモノデアル、其微々タルモノダケノ家畜市
  場法ダケデハ、此法律ハ全ク骨拔ニナッテシマウノデアリマス
  ガ、提案者ハ全國一般ノ目カラ見テ、牛耕ト馬耕トドチラ
  ガ多イトセラレテ、此馬ダケヲ除クト云フノデアリマスカ、本
  員ノ見ル所ニ依レバ、日本半分カラ西ノ方デハ總テ牛耕デ
  アルト思フノデス、隨テ全國農業者ハ、馬耕ヨリモ牛耕ガ
  多イト思フノデアリマス、此法律ノ精神ニ依レバ、更ニ牛ヲ
  モ此家畜市場法カラ除イテ宜イト云フ意味ニナリハシナイ
  カト思フノデアリマス、大體御尋致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=63

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• 064・高橋嘉太郎

  ○高橋嘉太郞君　御答致シマス、牛ハ除クト云フノデハナ
  イノデアリマス、此改正案ノ通リニ、馬ガケヲ除クト斯ウ云
  フコトデアリマス
  〔「ウマイ〓〓」ト呼フ者アリ拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=64

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• 065・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託
  セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=65

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• 066・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=66

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• 067・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガ無ケレバ、本案ハ議長指
  名、九名ノ委員ニ付託スルコトニ決シマシタ-日程第八
  及第九ハ、同一委員ニ付託セラレタル議案ナルニ依リ、
  括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
  〕「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=67

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• 068・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナケレバ、第八第九ヲ一括
  シテ、委員長ノ報告ヲ求メマス-武藤金吉君
  第八煙草專賣法中改正法律案(小林源藏君
  外十六名提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)(確定議)
  第九織物消費稅法中改正法律案(小林源藏
  君外十六名提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)(確定議)
  〔武藤金吉君登壇〕
  〔拍手スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=68

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• 069・武藤金吉

  ○武藤金吉君　唯今議題ニ供サレマシタ煙草專賣法中
  改正法律案、織物消費稅法中改正法律案、此二案ニ就キ
  マシテ、昨日委員會ハ委員長理事ノ互選ヲ行ヒ、直チニ審
  議ヲ終了致シマシタ、其成績ヲ御報告致シマス、此煙草専
  賣法中ノ改正ノ要旨ハ、第二十條ノ二ヲ改正致シマシテ、
  煙草耕作組合、之ニ組合ノ實費ヲ補償スル目的ヲ以テ奬
  勵ノ意味ヲ以テ交付金ヲ致ス法案デアリマス、其方法ニ付
  キマシテハ、政府ハ命令ヲ以テ適當ノ方法ヲ以テ、段別割、
  人頭割、若クハ箇所割等ヲ能ク〓究ヲ致シマシテ、交付ス
  ルト云フコトデアリマス、其金額ハ十二万七千圓デアリマシ
  テ、何レ追加豫算ヲ以テ要求セラルヽト云フコトデアリマス、
  此織物消費稅ノ方ノ改正ハ、織物消費稅法中ノ二十二
  條ヲ改正ヲ致シマシテ、織物同業組合ニ、此織物稅ヲ徵集ス
  ル手數料トシテ交付スルト云フ案デアリマス、是ハ從來ニ於
  キマシテ組合ガ此徵稅ノ方法ヲ手傳ッテ居ル、其費用ニ當
  嵌ルダケノモノヲ交村スルト云フ案デアリマシテ、卽チ織物
  賣上高ノ千分ノ一、織物消費稅額ノ百分ノ一ニ當ルモノヲ、
  組合ノ出來テ居ルモノニ交付スル、而シテ此金額ハ十五万
  八千餘圓ニ當ルノデアリマス、勿論織物消費稅ハ大正八
  年度ノ豫算ニ依テ見マスルト、二千万圓以上ヲ計上シテア
  リマスガ、組合ノ出來テ居ラヌ所ガアリマスカラ、其組合ノ
  出來テ居ラヌ所ハ約三割ヲ控除致シマスカラ、此十五万八
  千圓ト云フモノガ出ルノデアリマス、是ハ多年ノ懸案デアリ
  マシテ、本案提出ニ付テモ、各派異議ナク大多數ヲ以テ提
  出ニナリマシテ、委員會ハ政府ノ意見ヲ確メマシタ所、二案
  トモ政府ハ同意ヲ表セラレマシテ、委員會ハ滿場一致ヲ以
  テ可決ヲ致シマシタ、何卒全會一致ヲ以テ御賛成アランコ
  トヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=69

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• 070・岩崎勲

  ○岩崎動君　日程第八及第九ノ兩案ヲ一括シ、讀會ノ順
  序ヲ省略シテ委員長報告通リ可決確定セラレンコトヲ望
  ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=70

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• 071・大岡育造

  ○議長(大岡有造君)　御異議ガアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=71

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• 072・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナケレバ、二案トモ讀會ノ
  順序ヲ省略シテ、可決確定シタルコトヲ宣告致シマス-
  日程第十、朝鮮神社ニ素盞男尊奉祀ニ關スル建議案ヲ議
  題ト致シマス、提出者高木益太郎君
  第十朝鮮神社素盞男尊奉祀ニ關スル建議案
  (高木益太郞君外一名提出)
  朝鮮神社ニ素盞鳴尊奉祀ニ關スル建議
  朝鮮神社ニ我カ素盞嗚尊ヲ奉祀スヘシ
  右建議ス
  〔高木益太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=72

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• 073・高木益太郎

  ○高木益太郞君　玆ニ謹デ明治大帝ノ御產土神デアラ
  セラレ、我國海外發展ノ積極的ノ神ト尊バレ、文武ノ神、航
  海ノ神殖林ノ神ト尊崇ヲセラレ、忝ナクモ天皇陛下ハ四
  方拜ノ時ニハ、御姉君ノ天照皇太神宮ニ續イテ御拜アラセ
  ラルヽモノハ、卽チ素盞男尊デアリマス、此素盞男奉祀ニ關
  スル建議案ニ付キマシテハ、此案ヲ提出致シマスル前ニ、先
  年新聞紙上デ今囘朝鮮ニ朝鮮神社ヲ御設ニナルコトガ現
  レマシタカラシテ、或ハ宮內省ノ計畫デハナイカ、斯ウ云フ考
  ヲ持チマシテ宮内大臣波多野敬直君ニ書面ヲ以チマシテ、
  朝鮮ニ朝鮮神社ヲ御設ニナル以上ハ、是非トモ建速素盞
  男尊ヲ第一ニ御祀ヲシナケレバナラヌ筈デアルト、斯ウ云フ
  願書ヲバ出シマシタ、所ガ宮內大臣、ハ貴樣ノ請願ノ趣意
  ハ尤至極デアル、併ナガラ此朝鮮神社ノ設置ハ政府ノスル
  仕事デアル、宮內省ハ與リ知ラヌノデアルカラ、朝鮮總督府ノ
  方へ申出テ然ルベキモノデアルト、斯ウ云フ返事ガ參リマシタ、
  其後暫ク致シマスト、先頃ノ議會ニ朝鮮神社設置ノ豫算
  案卜云フモノガ、諸君ノ御手許ニ配付セラレタノデアリマス、
  ンコデ神社ヲ御設ニナル以上ハ吾〓ハ此同化政策ノ上ニ
  付テ、最モ精神的ニ、最モ歷史的ニ、是非トモ素盞嗚尊ヲ
  奉祀スベキモノデアルト確信シテ居ルノデアリマシテ、朝鮮
  總督府ノ意嚮如何ト云フコトヲ質問致シマシタ、然ルニ朝
  鮮總督府ニ於キマシテハ、山縣伊三郞君ガ、未ダ此神社ノ
  御神體ニ付テハ、何等朝廷カラ仰出サレタコトハ無イノデア
  ル、斯ウ云フ御答デアリマスルカラ乃チ爰ニ朝鮮神社ニ素
  盞男尊奉祀ニ關スル建議案ヲ提出致シマシテ、諸君カラ眞
  ニ精神的滿場一致ノ御賛成ヲ仰ギタイノデアリマス、(拍手
  起ル)大體此山縣サンニハ、私ノ意思ガ未ダ徹底シナイノデ
  アリマスカラシテ、此建議案提出ノ理由ヲ謹ンデ此處デ述
  ベマス、日韓合邦以來、內地民族ト朝鮮民族トハ彼我ノ
  區別フ微底シマシテ、同胞ノ交際漸ク親密ヲ加ヘマシテ、畏
  クモ我ガ皇室ニ於カセラレマシテハ、梨本宮方子女王殿下
  1、王世子李垠殿下トノ婚約ヲ御聽許ニ相成リマシテ、將
  ニ御慶事ヲ擧ゲサセラレントスルニ方リマシテ、洵ニ不幸ニ
  モ李太王殿下ニハ薨去遊バサレ、朝鮮八道ノ人民ハ更ナリ、
  我ガ七千万ノ同胞擧ゲテ哀誠ノ意ヲ表シ、帝國議會ニ於
  テモ、李太王殿下ノ御國葬費ヲ協賛シ奉リ、上下俱ニ渾然
  一家ノ輯睦ヲ示シテ居ルニモ拘ラズ、奈何セン中古以還ノ
  迷霧未ダ全ク鮮民ノ或ル一部ノ心頭ヲ去ラザルモノガアリ
  マシテ、往々ニシテ思想ノ隔絕ヲ來シ、天道〓主孫乗凞ナ
  ル者ノ騒擾事件等ノ爆發ガアリマシタ、爲ニ國家進展上
  ノ一大障礙ヲ招クノ虞アルヲ免レスト云フコトハ、甚ダ遺憾
  千萬ノ事デアリマス、是ハ畢竟皆ナ内地民族ト朝鮮民族ト
  ガ先天的血族ノ正傍ニシテ、遠ク其根本ニ遡レバ、齊シク
  同祖同宗ヨリ生ジ來レル、一河ノ分流タルヲ知ラザルノ過
  ニ坐スルモノデアルト確信致シマス、政府ハ宜シク鮮民ニ
  向ッテ、大和民族タル根本的思想ノ諒解ヲ與ヘ、眞個ニ一
  心同體ノ融合ヲ圖リ、左提右携、以テ報本反始ノ實績ヲ
  擧グルニ努メナケレバナラヌ次第デアルト信ジマス(拍手
  起ル)
  〔此時私語スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=73

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• 074・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=74

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• 075・高木益太郎

  ○高木益太郎君　惟フニ日韓合併ハ、大和民族有史以
  來ノ宿契ニシテ、之ヲ國史ニ稽ヘ、之ヲ事實ニ徵シテ、内鮮一
  家ノ證左ハ歴々トシテ爭フベカラザル事デアリマス、而モ地理ガ
  多少隔絕シテ居ルガ爲メニ-或ル地理學者ハ昔シ連續シテ
  居ッタト云フ說モアリマスガ、兎ニ角現在ニ於テハ、地理ガ多少
  隔絕シテ居ルガ爲メニ、久シク兩者邂逅ノ期ヲ妨ゲマシタガ、時
  運際會シテ、今ヤ全ク同胞握手ノ大理想ヲ實現シマシタ以上
  ハ、内ハ相鬩グノ嫌ヲ避ケ、外ハ侮ヲ禦グノ實ヲ擧ゲテ、相亙
  思想ノ統一ヲ圖リ、眞ニ帝國民タルノ心性ヲ鑄冶シ、朝鮮一
  千六百万ノ民衆ニ對シテ、日本旨義、特ニ日鮮同根的〓念
  ヲ與ヘ、以テ將來不拔ノ基礎ヲ樹テルノハ、誠ニ到下吃緊ノ事
  デアルト信ジマス、之ヲ爲スニ付キマシテハ、明治大帝ノ御詔勅
  中ニ、皇祖皇宗ノ遺訓ニ遵ヒト云フコトヲ仰セラレテ居リマス
  ガ、唯、表面此勅語ヲ奉讀ヲシ、若クハ忠孝-忠孝ト言ッタ
  ダケデハ十分ニ徹底セヌノデアリマス、之ニハドウシテモ開國以來
  ノ歴史ヲ頭ニ刻ミ込ムト云フコトガ、最モ必要デアラウト考ヘ
  マス、吾ニガ小學校ニ在リマシタ時ニ、或ハ仁德天皇ノ、民
  ハ國ノ本デアル、民ノ竈ハ賑ヒニケリト云フ御言葉、若クハ
  醍醐天皇ノ寒夜ニ御衣ヲ脫シ給ヒテ、民ノ疾苦ニ叡慮ヲ
  惱セラレタト云フ御話、或ハ又楠氏歷代ノ忠節、兒島高德
  ノ奮闘ノ有樣ヲ顧ミマスルト、其日本外史ヲ讀ンデ居ル間
  ニ、淚ガポロ〓〓零レタ、是ハ啻ニ私バカリデハナイ、諸君モ
  尙ホ一層感激セラレタ事デアラウト考ヘマス、ソレ故唯ニ忠
  孝ヲ盡セトカ、勅語ヲ奉讀ルストカ云フコトハ、固ヨリ難有イモ
  ノ二ハ相違アリマセヌガ、明治大帝ノ御言葉ニ、皇祖皇宗ノ遣
  訓ヲ紹述スルト仰セラレタノハ何デアルカト云ヘバ、開國以來
  ノ歴史ト云フモノヲ日本民族ノ頭ニ入レル、サウシテドノ位
  皇祖皇宗ガ御盡シニナッタ、卽チ萬世一系連綿タル御皇威
  こガ益〓增シテ、我日本帝國ノ赫々タル光揮ヲ放ツト云フ事ニ、
  ドノ位御苦心遊ハサレタカト云フコトハ、數千年ノ歷史ニ
  就テ明確ノ事デ、如何ニ我國民ガ數千年來御恩ヲ蒙ル皇
  室ニ對シ奉リ、忠義ヲ盡サナケレバナラヌカト云フコトガ、自
  然ニ頭ヲ刻込ムコトハ論ヲ俟タヌ事柄デアルト信ジマス、是
  ハ内地人タルト朝鮮人タルトニ依テ異ル所ハ無イト信ジマ
  ス、ソレデアリマスカラ之ヲ爲スニハ、先ヅ朝鮮人ノ同化政
  策トシテハ、鮮民崇敬ノ標的ヲ定メテ、之ニ依テ人心ノ嚮
  フ所ヲ歸一セシムルニ若クハ無イト考ヘマス、而シテ朝鮮開
  國ノ起源ニ際シマシテ、肇メテ彼國ニ君臨シ、檀君ト崇稱
  セラレ給ヒマシタノハ誰方樣デアルカト云ヘバ、卽チ我ガ建
  速素盞男尊ニシテ、素盞男尊ハ五十猛其他七王子ヲ伴
  ヒ、朝鮮ニ御渡航遊バサレテ、今ノ江原道春川府ノ道廳ニ
  在ル會尸茂梨ノ地ヲ根據トシ、又平安道ニ在ル妙香山ノ跡
  ニ今日モ御寺ガ遺シテ居リマスガ、其處ニ御在デ遊バサレテ、
  朝鮮開發ノ爲メニ日夜其御經營ヲ怠リ給ハズ、櫛風沐雨多
  年御盡瘁ノ間ニ於テ、瘴煙蠻霧ノ爲メニ民生ノ疫癘ニ惱
  マサルヽヲ憫マセ給ヒ、御自身疫癘除ノ守護神ト云フコト
  ヲ誓ハセ給フタ、之ニ依テ其後桓武帝ノ二十八年ニ出來
  タ京都ノ八阪神社ト云フノハ何樣デアルカト一云ヘバ、京都
  ニ非常ナ「サンコロリ」ガ流行シタ時ニ、祇園神社トテ御祀
  リ申シテ、播磨國廣峯神社カラ御移シ申シタ、是ハ明治大
  帝ノ產土神デアル、先般今上帝御大禮ノ時ニ官幣大社
  ニ御昇格ニナッタコトハ、諸君ノ能ク御承知ノ事デアル、播
  磨國廣峯神社ト云フノハドウ云フ神デアルカト云フト、唐ニ
  行ッタ大使吉備眞備ガ、素盞男尊ノ動功ノ偉大ナルコトヲ
  感ジテ、姫路カラ上陸シテ播磨ノ廣峯山ノ麓デ夢ヲ見テ、
  素盞男尊ヲ御祀リ申上ゲタノダ卽チ廣峯神社デアル、斯ノ
  如ク朝鮮ノ人民ノ爲メニ、朝鮮開發ノ根據ヲ造ラセ給フタ
  ノハ檀君卽チ素盞男尊デ、其居ラレタ所ノ曾尸茂梨ノ地、
  若クハ妙高山ヲ一度拜シタル者ハ疑ナイ次第デアリマス、慶
  尙道、江原道ノ人民ハ最モ多ク參詣ヲスルト云フコトハ、天
  下公知ノ事實デアリマス、夫故ニ內地ト朝鮮トノ聯合ノ行
  動ハ此ニ端〓ヲ開イタモノト斷定スルコトガ出來ルノデアリ
  マス、卽チ朝鮮人ニシテ開國ノ檀君卽チ我素盞男尊ト云フ
  コトヲ知レバ、同祖同宗ノ信念ヲ開拓シテ、其障壁ヲ撤廢
  スルコトガ出來マス、斯ウシテ國民性ノ淵源ニ遡ッテ祖先崇
  拜ノ思想ヲ涵養スルコトハ、今日最モ必要ナル時期デアルト
  存ジマス、斯ル趣意デ御手許ニ配付シテゴザイマス通リ、熱
  田神宮宮司角田忠行氏ノ調査ニ係ル「韓國開聞」ニ關ス
  ル古事記、及神代記ヲ根據ニシタル說、竝ニ文學博士原
  秀四郞氏ノ調査ニ係ル日本書記ニ基ク說、及文科大學〓
  授星野恆氏ノ說、文學博士井上賴〓氏ノ素盞男尊ト朝
  鮮ト題スル說、森潤三郞氏ノ調査ニ係ル朝鮮年表、竝ニ
  朝鮮史廣文庫ノ一節、日本書記、謠曲拾葉抄花筐、藻鹽
  革、閑田耕筆、古事記傳、ソレカラ出雲大社宮司千家尊
  統氏ノ大國主祖神傳說、次ニ熊野大社由緒書、是ハ熊
  野權現ハ朝鮮ノ熊川ノ熊ヲ取ッテ、熊野權現ト尊稱シ奉
  タノデアリマシテ、卽チ朝鮮忠〓道公州ニアルノデアリマ
  ス、ソレカラ朝鮮ノ木ヲ持ッテ來テ紀伊國ニ植エテ、木ノ國
  卽チ紀伊國トナッタ、故ニ檀君ト申上ゲル木ヲ取ッテ檀ト云
  フノデス、是ハ八王子ノ一柱デ、五十猛尊ト云フ伊達家ノ
  御先祖デアリマスガ、紀伊國名草郡卽チ高日出ノ上流ニ
  於テ、先達官幣大社ニ昇格遊バサレタル伊太祁曾神社ト
  申上ゲルノデアリマスガ、是ガ神樣ガ父ノ素盞男尊ノ仰セニ
  依テ、紀州へ朝鮮カラ御歸リ遊バシテ名草郡ニ御著ニナッテ
  伊太祁曾神社ガ出來タ、此外紀州ニ有名ナル熊野大社、
  熊野權現ト御祀リ申シタ神社モアル、熊野權現ハ何カラ出
  タカト云フコトハ、歷史ニ於テ明白ナ事デアル、ソレカラ八
  王子ノ中デ最モ動功ノ著シイノハ多岐都姫命、市杵島姫
  命、多紀理姫命、是ハ安藝國嚴島神社、肥前國田島神社
  筑前國宗像神社デアル、傳〓弘法兩大師以來、兩部神道
  デハ竹生島ノ辨天、江之島ノ辨天、安藝ノ宮島ノ辨天ト尊
  稱シ奉ル本尊ト同一デアル、水ニ關係アリ海ニ關係アル所
  デ、大抵御祀リスル辨天ハ何樣デアルカト云ヘバ、素盞男
  尊ノ八王子ノ內、三柱ノ女神デアラセラレル、此女神卽チ
  開運辨天ノ御誓ハ、海原ニ向ッテ大ニ發展セシムルト云フノ
  デアッテ、之ヲ尊崇シテ、如何ナル處ト雖モ日本國中津ニ浦
  津ニ至ルマデ御祀シテアル、又宇佐八幡ノ第二殿ハ邊津宮、
  中津宮、海津宮ト云フ卽チ辨天デアリマスガ、内地ト朝鮮
  トノ平和ヲ守護スルト云フ御誓ニナッテ居ル、成程御内殿ノ
  中ニハ應神天皇仲哀天皇ヲ御祀リ中シテアリマスガ、是一
  神功皇后ガ三韓征伐ヲ爲スッテ後ニ、彼ノ地ニ鎮守府將軍
  ヲ置イテ御歸リニナッテ、其御歸リノ途十二月十四日ニ御
  安產遊バサレタノガ應神天皇デアル、ソレカラ宇佐八幡ニ
  御祀シ申シタノデアルガ、ソレハ後ノ事デ、其前ニ祀ッテアル
  ノハ素鳴男ノ八王子ノ中ノ三柱ノ御神ヲ祀ッテアルト云フ
  コトハ、歷史ニモ明白ナ事實デアル、斯ル國史ノ上ニ於テ明
  確デアリ、又唯今項目ダケヲ申上ゲマシタ出雲大社、其他ノ
  調査書類ニ依テモ明白ナル次第デアリマスノニ、肝腎ナル
  朝鮮總督府ト云フモノハ、朝鮮ハ何人ノ御蔭ニ依テ今日
  開發ガ出來タカ、サウ一云フコトヲ閑却シテ居ルト云フコトハ
  如何ニモ情ケナイ次第デアルト存ズルノデアリマス、ンコデ此
  第四十議會ノ初ニ朝鮮神宮ノ豫算ガ出マシタ時ニ、吉植
  君ガ主査デアリマシテ、サウシテ政府委員山縣伊三郞君、鈴
  木穆君トニ御尋シタ所ガ、何等確カリシタ御答ガナイ、成程
  斯ウ云フ人物ガ朝鮮ニアッテ其本ヲ忘レテ末ニ趨ッテハ、立
  派ノ政治ガ出來ルモノデナイ、矢張政治家ノヤル仕事ハ形
  バカリデハイケナイ、眞ニ歷史ヲ尊重シテ、國民性ニ八ッテ、
  十分ニ彼ト我トノ諒解ガアッテ、初メテ朝鮮ノ同化政策ガ
  成功スル次第デアルノニ、自分ガ朝鮮ノ統治ニ關係シテ居
  リ、樞要ナル地位ニ在ッテ、朝鮮ノ歷史ヲ輕ンジテ居ルト云
  フヤウナ事デハ、甚ダ私ハ歎ハシイ事デアルト存ジマス此第
  四分科ノ豫算委員會ニ於テ、大ニ山縣サン鈴木サント論
  議ヲシタノデアル、我々ハ小學校ニ店ル時カラ、素盞男尊ガ
  朝鮮へ御出遊バシテ御苦勞ナスッタト云フコトハ、我こノ頭
  ニ深ク刻込マレテ居ル、又何人モ知ラヌ人ハ無イノデアル、
  然ルニ朝鮮統治ノ局ニ當ル當局者ガサウ云フ事デハ、朝鮮
  ノ前途ハ甚タ憂慮ニ堪へヌ、ソレデアルカラ吉植君モ是ハ神
  樣ニ關スル問題デナクシテ、他ノ同化政策ノ問題デ段々ト
  論議ヲ盡サレタ時ニ、政府委員ノ說明ガ要領ヲ得ナイノ
  デ、其出席停止ヲシヤウト云フマデニ、警告的要求ガアッタ
  ト云フコトハ、諸君モ速記錄ニ依テ御分リニナッテ居ルコト
  ト思ヒマス、私ハ山縣サン御前サンハ何處ニ居ッタカ、昔
  愛知縣ニ書記官ヲサレタデハナイカ、御父サンノ御蔭デナッ
  タカモ知ラヌガ·····愛知縣ノ熱田ノ神宮ハ何樣ヲ本體ニシ
  テ居ルカ、倭姫カラ受ケタ草薙劒ヲ奉ジテ、サウシテ東夷征
  伐ノ爲メニ日本武尊ハ何デアルカ、此八岐大蛇カラ取ッタ
  所ノ草薙ノ劍ヲ以テ御本體トシテ居ル、愛知縣ニ書記官ト
  シテ居ッテ知ラヌ譯ガナイ、君ガ東京府ノ書記官デアッタガ、
  東京府ノ一ノ宮氷川神社ハ簸ノ川上ノ稱號ニ基イタモノ
  デ、卽チ日本武尊ガ東夷征伐ヲシテサウシテ、大宮へ行ッテ
  彼處へ素盞男尊ノ御遣德ヲ尊崇スル爲メニ氷川神社ガ建ツ
  タ、關東デ武藏ト云フ名前ハソレカラ起ッタノデアル、其名前
  ハ何カト云ウト、素盞男尊ノ御動ヲ日本武尊ガ尊ンデ居ラ
  レル、又神功皇后ガ三韓征伐ヲシテ凱陣ノ時二、須磨明石
  ノ邊カラ御上陸ニナッテ、其第一ニ崇ンダノハ何樣カト云ウト
  素盞男命デ、相生ノ松ガアルノデ有名ノ縣社高砂神社デアル
  此神社ハ神功皇后ガ立ッタノデハナイカ、斯ノ如ク國史上
  明白ナ神樣ニ向ッテ、是カラ〓究ヲシヤウト一云フノハ何事デ
  アルカ、斯ウ云フ工合デ餘程論爭ヲ致シタ所ガ、委員中サ
  ウ云フ心懸デアルト、必ズ天罰立所ニ到ル(笑聲起ル)ト云
  フコトガ委員會ノ筆記ニ載ッテ居リマス、果シテ如何デアリ
  マセウ、マダ其問答ヲシテカラ數箇月經タヌノデアリマスガ、如
  何ナル方面ニ如何ナル事が起ッタカ、識者ノ判斷ニ任セマス、
  畢竟同化ト云フ精神問題ヲ閑却シテ居ルカラデアル、其根
  本ニ誠意ガ無イカラ斯ウ云フヤウナコトニナル、私ハ牧山耕
  藏君ヤ其他ノ諸君カラシテ、第三分科ノ豫算委員會ニ於
  テ、頗ル適切ナル朝鮮同化政策ニ就テノ御問ガアリマシタ
  ケレドモ、彼等ハ赤心カラヤラウト云フ考ヲ持ッテ居ラヌカ
  ラ、何時モ上ノ空デアル、私ハ實ニ國家ノタメ慨嘆ニ堪ヘヌ
  ノデアリマス、ドウカ本案ハ洵ニ一點疑ノ無イ日本國史ニ
  基クモノデアル、尤モ山縣サンガ言フノニ、日本書記ノ中ニ
  素盞男尊ガ永ク朝鮮ニ御出ガナカッタト云フコトガ書イテア
  ル、デアルカラ君ガサウ言ッテモイカヌト云フコトヲ言ハレタ、
  私ハ言ウタ、日本書紀ヤ古事記ハ何時拵ヘタノデアルカ、
  古事記ニシロ、日本書紀ニシロ奈良朝時代ニ拵ヘタノデハ
  ナイカ、稗田安禮等ニ向ッテ編纂ヲサセタノデ、奈良朝時代
  ハモウ佛〓ガ百濟カラ來テ、蘇我氏ヤ物部氏ガ互ニ戰ッテ、
  或ハ牛ヲ喰フ者ハ穢多ニスルトカ云フ佛〓全盛時代デア
  ル、今日吾〓ガ帝國議會ノ此演壇デ論ヲシタコトデモ、或反
  對黨ノ新聞記者ハドウ云フコトヲ書クカト言ウト、右ト言ッ
  タコトヲ左ニ書イテアル、今日デサヘサウデハナイカ、官報ノ
  速記錄ニ出ルコトデモ或ル新聞ニ依ルト、右ニ論ジタコトヲ
  左ニ書イテアル、況ヤ神代ノ幽遠ナ事デアル、ソレガ何千年
  經ッタ後ノ奈良朝ニナッテ、佛〓全盛時代ニ出來夕日本書
  紀ノ中ニドウ云フコトガ書イテアッタ所ガ、ソンナ事ヲ以テ赫
  赫タル尊ノ御事歷ヲ抹殺スルトハ畏入ッタ譯デアル、山縣君
  ニシテモサウヂヤナイカ、朝鮮ニ居ッテ時々自分ノ住居デアル
  所ノ富士見町ノ本邸へ歸ッテ來ルデハナイカ、朝鮮人天ノ
  日第五世ノ孫タル神功皇后ニシテモ、御歸リニナッタニ相違
  ナイノデアルカラ、其御偉蹟ヲ永ク念フベキデアッテ、御歸リ
  ニナッタコトハ關係ナイ、素盞男尊ハ御承知ノ通リ御母伊弉
  册ノ尊ニ非常ナ御孝行デ在セラレタノデアリマス、又出
  雲ノ籔ノ川上ニ御歸リニナッタ、出雲ノ〓ノ川上ニハ稻田
  姫ト云フ奧樣、大國主ト云フ御子供衆モ御在デニナッタノ
  デアル、必ズ朝鮮デ御歿リニナラナケレバ、朝鮮神社ニ奉祀
  セヌト云フ、サウ云フ理窟ハナイデハナイカ、ト言ウタラ山縣
  君ハ何レ調ベテ見ルト云フカラ、乃木大將ガ命ジテ御作リニ
  ナッタ日本合併ノ裏面ト云フ本ニハ、支那ノ書物ノ上カラ
  朝鮮ハ決シテ併合デハナイ、日本ノ昔カラノ領土デアッタ、之
  ヲ唯復舊シタノデアル、斯ウ云フ本ヲ御讀ミナサイト言ッタ所
  ガ、山縣サンハ手帳ヲ出シ、初メテソンナ話ヲ聽イタヤウナ
  顏ヲシテ、吾ミノ說ヲ聽イタノデアリマス、成程斯ウ云フヤ
  ウナ人許リ揃ッテ居ルト、朝鮮デ暴動ヲ起スノハ暴動ヲ起ス
  人間モ惡イケレドモ、又此上ニ居ル役人モ、大ニ私ハ心ヲ
  變ヘナケレバナラヌ、場合ニ依ルト其全部卽チ、アヽ云フ人
  間ヲ追拂ハナケレバナラヌカト云フ感ジヲ持ツノデアル、所デ
  本建議ハ洵ニ精神的、根本的ニ出テ居ル案デアリマスカラ、
  何卒諸君ハ滿場一致ヲ以テ御可決アランコトヲ懇願スル
  次第デアリマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=75

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• 076・岩崎勲

  ○岩崎勳君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=76

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• 077・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎動君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=77

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• 078・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託
  セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=78

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• 079・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=79

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• 080・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナケレバ岩崎君動議ノ如ク
  決シマシタ-日程第十一、山口縣德山港ヲ特別輸出入
  港トナスノ建議案ヲ議題ト致シマス、提出者渡邊祐策君
  第十一山口縣德山港ヲ特別輸出入港ト爲ス
  ノ建議案(渡邊祐策君提出)
  山口縣德山港ヲ特別輸出入港ト爲スノ建議
  政府ハ速ニ山口縣德山港ヲ特別輸出入港ニ指定シ之
  ニ關スル豫算ヲ編成シテ帝國議會へ提出セラレムフトヲ
  望ム
  右建議ス
  〔渡邊祐策君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=80

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• 081・渡邊祐策

  ○渡邊祐策君　今日程ニ上リマシタ所ノ德山港ヲ特別
  ト輸出入港ニスル必要ヲ述ベルニ當ッテ、此德山港ノ位置
  形勢ヲ申セバ、德山港ハ山口縣ノ都濃郡德山町ノ沿岸デ
  アリマス、陸地卽チ北ノ方ハ連峯竝出シテアッテ、北風クヲ能
  防イデ居ルノデアリマス、而シテ西北ノ方ハ仙島、黑髮島、
  大津島等ノ諸島ガ相連"テアッテ、西北ノ風若クハ西ノ風ヲ防
  イデ居ルノデアル、而シテ東南ノ方ハ大島半島ニ圍繞セラレ
  テ居ルノデアル、而シテ束南ノ風ヲ此島ニ依ッテ防イデ居ル
  ノデアル、港内ハ餘程廣ク、其廣サハ三「コンマ」四平方里ア
  ルノデアリマス、而シテ其深サハ干潮時ニ於テ五尋以上ノ
  深サノ處ニテモ、尙ホ二「コンマ」六平方里ハ廣サガアルノデ
  アリマス、而シテ其七尋以上ノ廣サト言ッテモ、尙一平方里
  ノ幅ヲ有シテ居ル、最モ深イ處ハ十八尋ヨリ二十尋ニ至ッテ
  居ルノデアル、而シテ其灣口ニ二十尋以上アルノテアッテ、
  其幅モ十四町餘アッテ實ニ天然ノ良港デアルノデアリマス、
  其天然ノ良港タルヲ實證スルニハ大正六年ノ秋ニ於テ、我
  ガ海軍ノ三艦隊ガ聯合運動ヲ爲ス當時ニ當ッテ、其港内ニ
  戰鬪艦ガ十六隻、驅逐艦ガ十八隻、潜航艇、水雷艇等以
  上港内ニ七十八隻ノ軍艦ヲ按排セラレ、尙ホ其外ニ數十
  隻ノ戰鬪艦ヲ包容シ得ルダケノ餘力ヲ元シタコトニ見テモ、
  明カニ良港ナルコトガ察セラルノデアル、而シテ六年中ニ軍
  艦ガ此港內ヘ入ッタコトガ百五十六デアル、又煉炭所ニ關
  係シテ港内ニ入ッタ汽船、西洋型帆船ヲ通ジテ六百五十六
  隻ノモノガ入ッテ居ル、入港數モ之ト同樣ノ隻數ガアル、入ツ
  タノハソレダケアリマスカラ、出港シタ隻數モソレダケデア
  リマス、其外ニ此德山港ニ物資ヲ輸出入スル所ノ商船ガ
  三百六十六隻入ッテ居ルノデアリマス、此船ノ總噸數ハ
  四十五万八千百七十八噸デアル、而シテ此陸揚ノ貨物ハ
  三十三万百五十九噸デアリマス、而シテ陸カラ積出シタ噸
  數ハ三十五万四百九十九噸、所謂貨物フ輸出入ノ總高
  ハ六十八万六百五十八噸デアリマス、而シテ此總體ノ金
  額ハ千四百七十三万千三百六十二圓、而シテ此本港ヨ
  リ主モニ輸出スル所ノ物ハ所謂煉炭、石材、杭木等ガ主ナ
  ルモノデ、其仕向地ハ支那、朝鮮、靑島方面ニ主モニ仕向
  ケテ居ルノデアル、輸入セラルヽ主ナル物ハ無煙炭、鉛鑛鐵
  鑛石灰斯カル物ガ這入ッテ來ル、此位地ハ英國、米國、近ク
  ハ靑島鎭南浦等ノ如キ方カラ主モニ八ッテ來ルノデアル、斯
  カラ德山港ハ陸ノ通信ニ於テ交通ニ於テ、海ノ便利良好タ
  ルヲ以テ、曩ニ此德山港ノ沿岸ヲトシテ海軍ノ煉炭所ヲ置
  カレテ以來、爾來亞鉛ノ製練所曹達灰ノ工場、或ハ煉瓦
  工場、製鋼所等ガ種々大規模ノ計畫ヲ以テ、此沿岸ニ設
  立セラレテ居ル、殆ド此沿岸ニ於テハ剩ス所ノ無イ程ニ計
  畫セラレテ居ルノデアル、尙ホ諸種ノ事業ガ計畫セラレツヽ
  アルノデアリマス、此上德山港-德山町モ近來人口ヲ數
  万以上ヲ有シ、日ニ月ニ繁榮ヲ極メテアルノデアル、此德山
  港ニ對シテ物價ノ集散ハ近來著シク膨脹シタノデアリマス、
  此場合ニ當ッテ德山港ヲ開港ヲシ、以上述ベタル所ノ諸工
  業ニ對スル原料諸材料、又ハ之ニ生產スル所ノ生產品、若
  クハ地方ヨリ受クル所ノ總テノ產業ヲシテ、輸出入上ニ尚
  ホ一層ノ便益ヲ與ヘテ貿易ヲ助長スルト云フコトハ、國家ガ
  當然ノ施設デアル、殊ニ又最モ急務ヲ要スルモノト信ジテ
  疑ハヌノデアリマス、故ニ此德山ヲ開港スルニ付テハ、昨年
  請願ガ出マシテ本議場ニ於テモ滿場一致ヲ以テ採擇ニナッ
  テ居ル、貴族院ニ於テモ是ナリトシテ之ヲ採擇セラレテアル
  ノデアル、何卒滿場ノ諸君ニ於テ、本建議ニ對シ贊成アラ
  ンコトヲ熱望シテ止マヌ次第デアリマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=81

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• 082・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託
  セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=82

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• 083・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=83

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• 084・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガナケレバ本案ハ議長指
  名九名ノ委員ニ付託スルコトニ決シマシタ、日程第十二、
  圓山川改修ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、提出者齋
  藤珪次君
  第十二圓山川改修ニ關スル建議案(齋藤珪
  次君外一名提出)
  圓山川改修ニ關スル建議
  圓山川ハ第二期政府直轄ノ河川ニ屬スト雖其ノ水害
  年ヲ追フテ甚シク沿岸ノ困難實ニ名狀スヘカラサルモノ
  アリ政府ハ速ニ之カ改修ニ著手セラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔齋藤珪次君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=84

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• 085・齋藤珪次

  ○齋藤珪次君　本建議案提出ノ理由ヲ說明致シマス、圓
  山川ハ御承知ノ通リ、兵庫縣但馬國ノ出石、城崎兩郡ノ
  沿岸其田畑三千五百町歩ト稱スルモノヲ浸害スル所ノ河
  川デアリマス、其水害ハ歲ヲ逐ウテ大ニナルノデアリマス、況
  ヤ昨年九月十四日ニ於ケル彼ノ山陰方面ノ大降雨、大洪
  水ノ結果ト致シマシテ、此河川ノ沿岸ニ於ケル山岳ハ潰
  崩シ、爲メニ土砂ノ非常ナ流出ヲ致シマシタカラ一層河川ノ
  埋沒ヲ致シ、サウシテ此浸害ヤ大ナルモノト信ズル、丁度私
  モ山陰道ノ此水害視察トシテ、實地ヲ見マシタ、如何ニモ
  積年ノ慘害ノ積ッテ居ル、又昨年ニ於ケル此大災害ノ爲メ
  ニ將來一層害ノ大ナルコトガ推案ガ出來ルノデアリマス、是
  ハ是非共速ニ改修ノ必要ガアルト認メルノデアリマス、既ニ
  御承知ノ通リ現行ノ治水政策ガ、四十三年ニ於キマシテ
  確立致シマシタ時ニ、此圓山川ハ第二期川ニ屬シテ居ルノ
  デアリマス、故ニ早晩是ハ致サナケレバナラヌモノトシテ國家
  ハ認メテ居ル、然ルニ唯今申上ゲマシタ所ノ昨年ノ大水害ノ
  此埋沒ハ、一層甚ダシク相成リマシタル故ニ、政府ハ速ニ此
  改修ニ著手セラルヽコトガ相當ト存ジマスルガ故ニ、本案ヲ
  提出致シマシタ次第デゴザイマス、ドウカ滿場諸君ノ御賛
  成ヲ仰ギマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=85

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• 086・岩崎勲

  ○岩崎動君　本案ハ木津川治水ニ關スル建議案委員ニ、
  併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=86

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• 087・大岡育造

  ○議長(大岡育造居)　御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=87

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• 088・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガナケレバ本案ハ岩崎君
  動議ノ如ク決シマシタ、日程第十三、沖繩縣ニ於ケル「マラ
  リヤ」豫防撲滅ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、我如古樂
  一郞君
  第十三沖繩縣ニ於ケル「マラリヤ」豫防撲滅ニ
  關スル建議案(我如古樂一郞君外四
  名提出)
  沖繩縣ニ於ケル「マラリヤ」豫防撲滅ニ關スル建議
  沖繩縣下八重山郡ハ農產物竝水產物ノ產額夥多ニシ
  テ殊ニ石炭ハ沖繩縣唯一ノ產地タリ然ルニ同郡内ハ
  部分ヲ除クノ外殆ト「マラリヤ」病毒彌漫熄ム時ナク爲ニ
  住民ノ健康ヲ害シ作業能率ヲ妨クルコト甚シク事業ノ
  發展進步ヲ阻過シ開拓ノ實ヲ擧クル能ハス故ニ政府ハ
  適當ノ施設ヲ爲シ速ニ之か豫防撲滅ノ方法ヲ講セラレ
  ムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔我如古樂一郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=88

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• 089・島添樂一郎

  ○我如古樂一郞君　諸君、沖繩縣ニ於ケル「マラリヤ」病
  ハ旣ニ明治十八、九年ノ頃、政府ニ於カレマシテモ此慘害
  ハ格別デアルト云フノデ、調査委員ヲ置イテ調查ヲ致サレタ
  ノデアリマス、卽チ此明治十八、九年ニ古河醫學士、ソレカ
  ラ三浦博士、ソレカラ沖繩縣ノ病院ノ醫員、ソレカラ近頃
  守屋醫學士、ソレ〓〓政府トシテモ認メラレテ調查ヲ進メラ
  レテ今日ニ及ンダノデアリマス、何故サウ云フ風ニナリマシ
  タカト云フト
  〔議長大岡育造君退席副議長濱田國松君議長席
  ニ著ク〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=89

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• 090・島添樂一郎

  ○我如古樂一郞君　此沖繩縣ニ於ケル八重山ト宮古ト
  ハ實ニ人口ガ少ナイノミナラズ、開發ニ見込ノアル土地デア
  リマスカラデアリマス、此八重山郡ハ十八ノ島ヲ以テ成立ッ
  テ、沖繩縣ノズット南ノ端ニ位シテ居リマス、其總面積ガ四十
  三方里デ戶數ガ五千二百三十、人口ガ二万六千九百四
  十人有リマスノデアリマス、產物ト致シマシテハ沖繩縣トシ
  テハ獨リ八重山カラ石炭ガ出ルノデアリマス、ソレカラ米、雜
  穀、甘蔗ンレカモ砂糖、上布、材木、牛馬、水產トシテ鰹節
  等ガ出ルノデアリマス、產額ハマダ十分開發サレテ居ナイ
  ノデアリマスカラ、今日トシテハ先ヅ二百十餘万圓位デアリ
  マス、廣原平野ガ多ク、土地ガ沃肥デ未開墾地ヲ調ベテ見
  マスルト、七千六百九十九町歩、牧場トシテモ五千六百六
  町步アリマスケレドモ、各離島ノ中僅カナ部分ヲ除クノ外
  ハ總テ此「マラリヤ」ノ有病地デゴザイマス、其病氣ノ爲メニ
  部落ガ自然消滅シタ處ガ數箇處アルノデアリマス、該島ヲ
  シテ開拓致サウト致シマスケレドモ、此病ヲ恐レテ移住シヤ
  ウト云フ者ガ無イノハ、今日ニ於テ非常ニ遺憾トシテ居ル
  所デアリマス、殊ニ西表島ト云フ所ハ、石炭ガ随分出ル見
  込デアリマス、ソレカラ尙ホ材木モ澤山出ルノデアリマスガ、
  礦夫ヤ樵夫ノ募集ニ應ズル者ガ少ナイ、縱令有ッテモ此病
  ヲ恐レテ間モナク立去ルヤウナ狀況デアリマス、既ニ二三ノ
  事業家ガ隨分資本ヲ卸シテ居ラレタケレドモ、有望ナル事
  業ガ失敗ヲ招イタト云フコトハ、全ク此病ノ然ラシムル所デ
  アリマス、ソレデ十分ニ開墾ヲ要スル土地デアリマスカラシ
  テ、沖繩縣トシテモ明治四十三年以來、大正二年マデ縣費
  一万七千六百餘圓ヲ掛ケテ該病ノ豫防撲滅ト、患者ノ治
  療ニ從事セシメタノデアリマスガ、微カナル縣經濟ノ許サナ
  イ所デアリマシテ、中止スルノ已ムヲ得ナカッタノハ、實ニ吾ミ
  共ノ遺憾トスル所デアリマス、思フニ此「マラリヤ」-瘴癘
  地ヲシテ健康地ナラシメルト云フコトハ、一ニ衞生施設ニ俣
  タナケレバナリマセヌコトハ、世界各國植民地ノ狀況ニ依ツ
  テ見テモ明カナルコトデゴザイマス、而シテ近年又八重山島
  民ハ此「マラリヤ」ノ是非豫防撲滅ヲヤラナケレバナラヌト云
  フ自覺心カラ出マシテ、昨年豫防期成會ト云フモノヲ組織
  シテ、同會カラ縣ヘ豫防撲滅トシテ相當ノ費用ノ寄附ヲ申
  込ンデ居リ現狀デアリマス、而シテ今日ノ醫學上、此「マラリ
  ヤ」病ノ豫防撲滅ヲ期セント致シマスルニハ、第一此病氣ノ媒
  介者タル「アノフエーレス」蚊デアリマス、蚊族ノ發生地デアル
  池沼ヤ原野ヲ開拓シ、樹木雜草ヲ伐リ拂ッテ、日光ヲ能ク
  射入セシムルト云フコトガ第一デアリマス、第一一ニハ此病原
  蟲、卽チ「プラスモジユウム」ト云フモノヽ保有者若クハ患者ノ
  血液ヲ檢鏡シテ、一定ノ期間强制的治療ヲ行フノデアリマ
  ス、ソレカラ第三ノ豫防法トシテハ「キニーネ」ノ服用ヲ致シ
  マシテ、豫防ノ方法ヲスルト云フコト、ソレカラ蚊ニ喰ハレナ
  イ装置デアリマス、ソレカラ第五ニハ衞生組合ヲ組織シテ、
  衞生思想ヲ向上セシムルト云フコト、是ガ今日ノ醫學上ノ
  方法ニナッテ居リマス、是等ノ方法ヲ實行致シマスルニ付キ
  マシテハ、前申上ゲマシタ通リニ、相當ノ費用ガ要ルノデゴ
  ザイマスノデ、同樣ノ經濟ノ今日ノ有樣デハ、十分ニ其目的
  ヲ達シ得ラレナイノデアリマス(簡單々々)要スルニ此「マラリ
  ヤ」病ノ撲滅ヲ致サウトスルニハ、開墾事業ト竝ビ行ッテ行ク
  ノガ、今日最モ捷徑ナル所デアルト存ズルノデアリマスカラ、
  政府ニ於カレマシテモ十分ニ是ガ調査ヲ致サレ、適切ナル
  豫防撲滅ノ方法ノ實行ヲ講ゼラレテ、此八重山島民竝ニ
  開墾事業者ヲシテ、十分ニ其土地ニ安心シテ事業ヲヤラシ
  ムルト云フコトハ、今日此八重山ノ開拓上、竝ニ「マラリヤ」
  病豫防法ノ要點ダラウト思フノデアリマス、此建議ノ趣意
  ハ斯ノ如キ次第デゴザイマスカラ、滿場諸君ノ御同情ヲ以
  テ、御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ深ク希望致ス次第デアリマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=90

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• 091・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託
  セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=91

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• 092・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=92

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• 093・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　御異議ナケレバ岩崎君動議ノ
  如クニ決シマシタ、質問第十四
  〔「質問ニアラズ日程ナリ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=93

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• 094・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　質問ハ間違ヒマシタ、日程第十
  四、外客ノ招致及待遇ニ關スル建議案、小西君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=94

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• 095・小西和

  ○小西和君　十五モ一緒ニ說明シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=95

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• 096・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　十四ガ濟シマスレバ引續イテ御
  發言ニナッテモ宜シイ
  第十四外客ノ招致及待遇ニ關スル建議案
  (小西和君提出)
  外客ノ招致及待遇ニ關スル建議
  我カ帝國風光ノ明媚ナルハ世界ニ冠絕スト謂フモ敢テ
  過言ニ非サルヘシ而シテ往昔以來人工ヲ以テ建築美術
  其ノ他各般ノ施設ヲ爲セルモノモ亦枚擧ニ暇アラス國內
  到ル處名勝舊跡遊覧地ニ富ミ外客ヲシテ感賞措ク能ハ
  サラシムルモノ豈偶然ナリトセムヤ況ヤ瀨戶內海ト之ニ
  臨メル近畿方面竝富士山ヲ中心トセル甲駿及豆相地
  方ノ如キハ眞ニ本邦獨得ノ景趣ナルニ於テヲヤ今ヤ歐
  洲ノ大戰亂モ旣ニ講和ノ時期ニ八レリ國際間ニ於ケル障
  壓ノ撤去セラルルト共ニ列國相互民人ノ接觸愈頻繁且
  親密ヲ加フルヲ疑ハス殊ニ帝國ハ世界ノ樂園トシテ向後
  觀光外客ノ蝟集ヲ見ルヤ必セリ然ルニ現下外客ノ招致
  及待遇ニ就テ殆ト何等ノ施設ヲ見サルニ止ラス更ニ其ノ
  方法ノ確立セルモノナキハ對外關係竝對内事情ノ兩點
  ヨリ見テ有形上又無形上寔ニ遺憾トスル所ナリ依テ政
  府ハ旅館、船車、道路其ノ他外客ニ對スル各般ノ施設ニ
  就テ速ニ適當ノ方法ヲ確立シ著々之カ實行ニ努メラレ
  ムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔小西和君登壇〕
  〔拍手起ル〕

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• 097・小西和

  ○小西和君　日程第十四ノ外客ノ招致及待遇ニ關スル
  建議案ノ趣旨ヲ申上ケマス、御承知ノ如ク我國ニハ、風光
  ノ極メテ明媚ナ處ガ到ル處ニ散點シテ居リマス、又建築美
  術ノ側、其他各般ノ事物ニ亙リマシテ頗ル立派ナ物ガ澤山
  ニアルノデゴザイマス、從ッテ我國到ル處トシテ名所舊蹟、若
  クハ遊覽地ヲ見ザルナシト云フ狀態デゴザイマシテ、外國カ
  ラ參リマスル人ミハ、之ニ對シテ觀賞措ク能ハザル狀態デゴ
  ザイマス、中ニモ瀨戶內海ノ方面及ビ其沿岸ノ樞區タル近
  畿ノ方面ノ如キ、又ハ富士山ヲ中心トシテ甲州、駿河、相
  模、伊豆ノ方面ノ一區域、此瀨戶內海及ビ富士山ノ景色
  メ如キハ、實ニ世界ニ無類、我國獨特ノモノト申シテ宜シイ
  ノデアリマス、偖テ歐羅巴ノ戰爭ハ最早講和ノ時期ニ入リ
  マシタ、今後國際間ノ障壁ガ撤去セラレマシタナラバ、列國
  ノ人〓トノ往來交通ハ益〓頻繁ヲ加ヘ、其親密ノ度ハ益〓深
  キヲ致スニ相違ゴザイマセヌ、而シテ我國ハ唯今申シマシタ
  如キ風光ノ明媚ナ所デアリマスルノデ、所謂世界ノ樂園タル
  名ニ背カナイノデアリマスルガ故ニ、今後觀光ノ外客ガ數多
  集ッテ參ッテ、大ニ外國人ヲ以テ賑ヒマスルコトハ疑フノ餘地
  ハゴザイマセヌ、然ルニ現在我國ニ於キマシテハ、外國ノ此
  等ノ御客人ヲ招寄セマスルコト、竝ニ此等ノ人ミヲ待遇致
  シマスル點ニ於テ、殆ド何等ノ設備モゴザイマセネバ、又何
  等ノ方法モ立ッテ居ナイノデゴザイマス、斯ノ如キ狀態デゴザ
  イマシテハ、對外關係ニ於テ外國ト親交ヲ累ネルト云フ方
  面其他カラ見マシテ、甚ダ遺憾トスル次第デアリマスルシ、又
  折角風光明媚ナ箇所ガ澤山アリマシテ、世界ノ樂園ト稱ヘ
  ラルヽニ拘ラズ、之ヲ利用致シテ外國ノ御客サンヲ呼ブト云
  フコトヲ致シマセヌノハ、折角ノ實物ノ持腐レト云フ狀態デ
  アリマシテ、有形無形ノ兩方面カラ見マシテ洵ニ遺憾ナコト
  ト思ヒマス、ソレ故ニ此外國ノ御客ヲ招寄セルコト、及ビ之
  ヲ待遇スルコトニ付キマシテ適當ナル方法ヲ立テマシテ、是
  ガ實行ニ努ムルノ必要ガアルカラ、之ヲヤッテ貰ヒタイト云
  フコトガ、此建議案ノ趣意デアリマス、其方法ノ如キニ至
  リマシテハ、自然委員ニ御付託ヲ願ヒマシテ御審議ヲ煩
  シタイノデアリマスガ、大體ノ希望ヲ申上ゲマスレバ、先ヅ
  「ホテル」ノ完全ヲ期シ且ツ其數ヲ殖ヤスト云フコトデアリマ
  ス、是ハ「ホテル」ヲ建テマスル場合ニハ、之ヲ政府ヨリ致シテ保
  護スルトカ、或ハ「ホテル」ノ建築ヲ奬勵スルトカ、或ハ又鐵
  道院ニ於テ適當ナ場所ニ「ホテル」ヲ建テルトカ、又船會社
  ニ於キマシテモ例ヘバ瀨戶內海ノ如キ適當ノ島〓、若クハ海
  岸ニ「ホテルヲ拵ヘルトカ、又地方廳ニ於テモ此等ニ付テ相
  當ノ考慮ヲ費ス所ガアリタイト思ヒマス、第二ニ希望致シマス
  事ハ、道路ヲ改善致スコトデアル、名所舊蹟ノ在リマスル所
  ノ外國人ノ散步致シマスル場所ニ、自働車ヲ通ズルヤウニ
  致シマスルトカ、或ハ散步ヲ致スニ都合ノ好イ適當ナル道ヲ
  拵ヘルト云フコトモ必要デアリマス、第三ニハ案內者デアリ
  やっ、卽チ「ガイド」ヲ改善ヲ致シ、且ツ其數ヲ殖ヤシ、又其
  取締ヲ嚴重ニ致シ、又「ガイド」ノ向上ヲ圖ルト云フコトガ
  必要デアラウト思ヒマス、第四ニ必要ナルコトハ船車卽チ
  船ナリ汽車ナリノ問題デアリマス、先ヅ船ノ側ニ於キマシテ
  モ、外國ノ船會社又ハ外國ノ汽車ト互ニ聯絡ヲ致シ、又汽
  車モ聯絡ヲ取ルコトニ致シ、且ツ特ニ遊覽ヲ致シマスル者ニ
  便宜ヲ計ルヤウニ致シ、又遊覧スルニ都合ノ好イヤウナ時
  間割ヲ作リ、又之ニ對スル適當ナ設備ヲスルト云フコトガ、
  必要デアラウト思ヒマス、第五ニハ國民ニ對シテ外國人ヲ
  優遇スルト云フ氣風ヲ吹込ミタイノデアリマス、我日本ノ國
  民ハ世界ノ一等國、又文明國ニモ似合ヒマセズ、外國人ニ
  對シテハ頗ル不體裁ノ事ヲ演ズル場合ガ尠ナカラヌノデア
  リマス、此等ハ公德心ヲ養ヒ、又其外ノ方法ヲ以テ此不體裁
  ヲ無カラシメ、更ニ進ンテ大ニ外國人ヲ歡迎シ優待シ、親
  切ニシテヤルト云フコトニ國民ノ氣風ヲ養ヒタイト思ヒマ
  ス、第六ニハ外國人ノ案内、招致卽チ招寄セルコト、之ニ付
  テ御承知ノ「ジヤバンツーリスト、ビユーロー」ガ出來テ相當
  ニ働イテ居リマス、併ナガラ單ニ是ダケデハ甚ダ遺憾ニ思ヒ
  マスカラ、政府ニ於テ此「ツーリスト、ビユーロー」ヲ指導シ
  保護シ、又益〓其基礎ヲ鞏固ニシテ活動スルヤウニスルコト
  ガ必要デアラウト思ヒマス、第七ニ政府ノ部内ニ適當ナル
  機關ヲ設置スルコトガ必要デアラウト思ヒマス、現ニ佛蘭西
  ノ如キ瑞西ノ如キ、伊太利ノ如キニ於キマシテハ、觀光外客
  ヲ招キ、又之ヲ待遇スベク政府ノ部內ニ相當ノ機關ガ出來
  テ居リマス、我國ニ於キマシテモ斯ノ如キ機關ヲ拵ヘルコト
  ガ必要デアルト思ヒマスシ、又場合ニ依リマシテハ此等ノ事
  柄ヲ處理スル會ヲ拵ヘルコトモ宜イト思ヒマス、先ヅ大體斯
  樣ニ考ヘルノデアリマスガ、此問題ニ付キマシテ宜シク御審
  議ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=97

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• 098・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　此場合一寸議場ニ御諮リヲ
  致シマスガ、日程第十四、第十五ハ提出者同一ノ議案ナル
  ニ依リ、一括議題トナスタメニ、引續キ日程第十五ノ說明
  ヲ求ムルコトニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=98

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• 099・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　御異議ガナケレバ引續キ提案
  者ノ說明ヲ求メマス-第十五、名勝舊跡其他ノ著シキ事
  歷アル樹石竝特殊ノ植物保存及利用ニ關スル建議案
  第十五名勝舊跡其ノ他ノ著シキ事歷アル樹
  石竝特殊ノ植物保存及利用ニ關スル
  建議案(小西和君提出)
  名勝舊跡其ノ他著シキ事歷アル樹石竝特殊ノ植
  物保存及利用ニ關スル建議
  我ガ帝國ニハ自然ノ優秀、由緒ノ特殊又ハ人爲ノ周到
  ナル爲名勝舊跡其ノ他著シキ事歷アル樹石並特殊ノ植
  物類ニシテ價値ノ頗ル大ナルモノ極メテ多シ之カ保存及
  利用ノ方法ヲ誤ラサルニ於テハ永久ニ亙リテ内外人士
  ノ遊覽、觀光ノ目的物ト爲リ或ハ子弟ノ〓育、社會ノ風
  〓上ニ補益シ且國光ヲ宣揚シ國富ヲ增進スルノ一助ト
  爲ルヤ必セリ人爲ノ國寶タル古社寺乃至古器物等ニ對
  シテハ既ニ其ノ保存法ノ制定實施セラルルモノアルニ拘
  ラス人力ヲ以テ創成シ能ハサル天奥ノ國實ニ對シテ深ク
  顧慮スル所ナク甚シキニ至リテハ其ノ荒廢ト滅亡ニ放任
  シテ省ミサルモノアルカ如キハ豈遺憾ナラストセムヤ近年
  是等天然物ノ所在地方ニ於ケル個人、團體又ハ自治體等
  ニシテ如上ノ事項ニ注意シ其ノ保存及利用ニ努ムルモノ
  ナキニ非スト雖素ヨリ之ヲ以テ缺陷ナシト謂フヘカラス
  加之天與ノ國寶ニ對シテ保存及利用ノ方法ヲ講スルハ
  國家當然ノ貴務ナリト信ス此ノ故ニ政府ハ須ラク適當
  ナル法規ヲ制定シテ之ヲ實施シ依テ以テ名勝舊跡其ノ
  他著シキ事歷アル樹石竝特殊ノ植物ヲ保存シ及利用シ
  且永久毀損スルノ虞ナカラシムルニ努メラレムコトヲ望ム
  右建議ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=99

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• 100・小西和

  ○小西和君　ソレデハ引續イテ日程第十五ノ名勝、舊跡
  其他著シキ事歷アル樹石竝特殊ノ植物保存及利用ニ關
  スル建議案提出ノ理由ヲ申上ゲマス、我國ニハ自然ニ風光
  ノ明媚ナル所ガ澤山アルノデゴザイマス、又由緒!特殊ナタ
  メニ保存ヲシナケレバナラヌ、又大切トシナケレバナラヌ所モ
  澤山ニアリマス、又天然物デゴザイマスルガ、人爲ノ周到ナ
  ル注意手段ガ加ヲテ居リマスル爲メニ、價値ノ大ナルモノモ澤
  山ニゴザイマス、又著シキ事情歷史ノアル樹木若クハ岩石
  モ、其處此處ニ見受ケルノデアリマス、又我國ハ特殊ノ植物
  類ニモ乏シクナイノデゴザイマス、ソレデ私ハ我國デ國寶ト
  シテゴザイマスルモノハ、是ハ人ノ力デ拵ヘタモノデアッテ人
  爲ノ國寶デゴザイマスルガ、天地自然ニ我國ニ此等ノ價値
  ノ大ナル物ガ存在致シマスルコトハ、是ハ我國ノ天然ノ國
  寶デアルト申シテ宜イト思フノデアリマス、偖此天然ノ國實
  ヲ適當ニ保存ヲ致シ、又之ヲ利用致シテ、永久ニ滅失スルコ
  トナカラシムルヤウニ努メマシタナラバ、内外人士ノ遊覽、觀
  光ノ目的物トナリマスルコトハ勿論、或ハ子弟〓育ノ良イ
  材料トナリマスルシ、或ハ社會風〓ノ上カラ見マシテモ、洵ニ
  良イ材料トナリマスルシ、或ハ社會風〓ノ上カラ見マシテモ洵
  ニ良イコトデアリマスルシ、卽チ國ノ光ヲ揭ゲルト云フコトニナ
  リ、國ノ富ヲ增ス所ノ一助トモナルノデゴザイマス、所ガ我國
  ニハ古社寺古器物ヲ保存致シマスル所ノ制度ハ、御承知ノ
  如ク備ッテ居リマスルガ、此天然ノ國寶ニ對シマシテ、保存
  及利用ノ方法ニ付テ、何等ノ途ガ立ッテ居ナイノミナラズ、
  殆ド之ニ就テ顧慮スル者モ無イト云フ狀態デアリ、甚シキニぐ
  至リマシテハ、徒ラニ荒廢滅亡ニ委シテアルノデゴザイマス、
  此ノ如キハ洵ニ遺憾千萬ナ事デアラウト思ヒマス、唯〓近來
  個人、或ハ團體、若クハ自治體ニ於キマシテ、是等ノ保存及
  利用ニ就テ幾許カノ方法ガ立チ、注意ガ拂ハルヽヤウニナク
  テ參リマシタケレドモ、是位ノコトデハマダ〓〓行屆イタトハ
  申シ兼ネルノデゴザイマス、ノミナラズ是等ノ天然ノ國寶ヲ
  保存スル途ヲ立テ利用スルコトヲ考ヘマスルノハ、是ハ國家
  ト致シマシテ、當然盡サナケレバナラヌ事柄デアラウト信ジマ
  ス、ソレ故ニ此事柄ニ·付テ、政府ニ於テ速ニ適當ナル法
  規ヲ制定シテ、是ガ實施ヲ希望スルト云フガ、本建議案ノ
  理由デゴザイマスル、此事柄ニ付キマシテハ、私共本建議案
  ヲ提出致シマシテ、數日經マシテ後ニ、貴族院ニ於テ德川
  賴倫侯ヨリ名所舊蹟其他植物保存ニ關スル法律案ガ提
  出ニナッテ居リマス、私ノ此建議案ノ趣意モ、德川侯ノ貴族
  院ニ提出セラレタ所ノ趣意ノ實行ガ出來ルヤウニアリタイ
  ノデゴザイマシテ、其根本ノ考ニ於テハ全ク同一デゴザイマ
  スル、ソレデ御參考秀、特ニ或ハ御氣付キニナラナイカト思
  ヒマスル此樹石、及植物ノ大切ナモノヲ一寸申上ゲマスル
  ガ、植物ノ側ニ於テ、木曾ノ御嶽ニ駒草ガゴザイマスル、是ハ
  殆ド我ガ日本ニ特有ナル大切ナ高山植物ニナッテ居リマ
  スルガ、近來登山ノ氣風ガ流行致シマシテ、而シテ此駒草
  ガ盛ンニ登山者ニ依シテ蹂躪セラレテ、今ヤ將ニ絕滅ニ瀕シ
  テ居ルノデアリマス、又北海道ハ特殊ノ植物ニ乏カラヌノ
  デゴザイマスガ、近來拓地植民ノ進歩ニ伴ヒマシテ、立派ナ
  植物ガ皆無慘々々ト滅失ニ歸シツヽアルノデゴザイマス、或
  ハ又纏マリマシタ植物ト致シマシテ、別段種類ハ良イモノデ
  ハナイト致シマシテモ、舞子ノ濱ノ松、三保ノ松原ノ松、是
  等ハ纏マッテ適當ノ場所ニ生エテ居リマスガ故ニ、價値ガア
  リマスルシ、又鎌倉ノ八幡宮ニアル公孫樹、或ハ唐崎ノ松ノ
  木、京都祇圓ノ櫻ノ如キ、是ハ多大ナ樹齡ヲ經テ適當ナ場
  所ニアリマス上ニ、立派ニ生育ヲ致シテ、植物學上洵ニ麗ハ
  シイ標本デゴザイマス點ニ於テ、又觀光ノ目的物ト致シマシテ
  モ是ハ洵ニ大切ナ物デアリマス、是等モ追とニ被害ヲ受ケツヽ
  アル狀態デゴザイマス、是等ノモノハ是非保存ノ方法ヲ立テ
  ナケレバナリマセヌ、又近年米國ニ於キマシテハ、或ハ「エー
  ロー、ストンバーク」ノ如キモノヲ拵ヘ、或ハ「ナシヨナルパー
  ク」ノ如キモノヲ拵ヘマシテ、是等ノ天然記念物ヲ保存スル
  事ニ努メテ居リマスガ、我國ニ於キマシテハ、或ハ北海道ノ原
  始林ノ生エテ居ル場所、或ハ信州地方、或ハ四國ノ石槌山
  地方ノ如キ所ニ於キマシテハ、此原始林ノ儘、卽チ人ノ足
  跡ノ到ラナイ儘、斧、鋸ノ災害ノ及バナイ、卽チ古代ノ儘デ
  居リマスル場所ヲ、永久ニ保存スル方法ヲ立テマスル事ハ、
  極メテ必要デアッテ、國家ノ天カラ與ヘラレタル所ノ寶物ヲ、
  永久ニ保存スル所以デゴザイマスカラ、是ハ決シテ慰ミ事デ
  モゴザイマセヌ、又閑事業デナイ、是非共ヤラナケレバナラヌ
  事ダト存ジマス、ドウカ第十四、第十五ノ兩建議案トモ、滿
  場一致ヲ以テ御賛成アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=100

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• 101・岩崎勲

  ○岩崎勳君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=101

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• 102・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　岩崎君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=102

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• 103・岩崎勲

  ○岩崎勳君　日程第十四及第十五ハ、一括シテ議長指
  名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=103

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• 104・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=104

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• 105・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　御異議ガナケレバ岩崎君動議
  ノ如ク決シマス、日程第十六、帝國博物館完成ニ關スル建
  議案、柏原文太郞君
  第十六帝國博物館完成ニ關スル建議案(柏
  原文太郞君外一名提出)
  帝國博物館完成ニ關スル建議
  天然ト人文トノ資料ヲ蒐集整理シ學術的說明ヲ施シ實
  物〓育ヲ爲スハ博物館ニ若ハナシ故ニ歐米ノ大都市ニ
  於テハ到ル所廣大ナル國立博物館ヲ設ケ其ノ效果ヲ擧
  クルニ銳意セサルモノナシ然ルニ我カ國ノ博物館ニ在リ
  テハ其ノ規模小ニシテ其ノ利用亦普ネカラス政府ハ宜シ
  ク國費ヲ以テ之カ施設ヲ完成シ以テ民衆ト學生トニ實
  物〓育ノ資ヲ供スルノ方法ヲ講セラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔柏原文太郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=105

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• 106・柏原文太郎

  ○柏原文太郞君　帝國博物館完成ニ關スル建議案ノ理
  由ヲ簡單ニ申述べマス、我國ガ最近五十年間ニ各種ノ方
  面ニ致シマシタル進歩ハ、著シキモノガアルノデアリマスケレドモ、
  尙ホ不完全十點ガ少ナクナイ、學問上ニ卽チ科學ノ上ニ基
  礎學ノ必要ナルガ如ク、文明ノ上ニ於キマシテモ、其文明ノ
  基礎根柢トナルベキモノガ確立致シマセヌデハ、其發達ヲ見
  ルコトガ乏シイノデアリマス、然ルニ我國ニ於テハ、文明ノ具
  體的ノ發達史トモ見ラルヽ、若クハ人生ノ智識若クハ思想
  感情等ノ結晶トモ見ラルル所ノ此博物館ガ、一モ國家ノ經
  營ニ成ルモノガ見當ラヌヤウデアリマス、是ハ誠ニ我ガ文
  運ノ上ニ於テ一大缺點ト言ハナケレバナラヌ事デアラウト
  思ヒマス、一國ノ文運ヲ進メマスニハ、ドウシテモ其國體ノ
  本質竝ニ國民性ノ特長ヲ感得シマシテ、之ヲ以テ其品性ヲ
  陶冶シ、又其趣味ヲ高尙ニ致シマシテ、而シテ創作力若ク
  ハ應用ノ才能ヲ啓發スルト云フコトガ必要デアル、之ヲ爲ス
  ニハ博物館ノ如キモノガ最モ有力ナル機關デアリマス、ソレ
  故ニ歐米ノ各國ニ於キマシテハ、夙ニ此施設ノ完成ヲ圖リ
  マシテ、多大ノ努力ヲ致シテ居リマス、英國ニ於キマシテモ
  二百年前ヨリ博物館ノ創設ヲ見、現ニ今ヨリ三十年前
  ノ調ニ依リマシテモ、二百二十ノ博物館ガアルト共ニ、又
  倫敦ニ於テハ有名ナル六ツノ博物館カアリマス、御承知ノ
  通リ天產物ノ博物館、若クハ「ブリチッシ、ミューゼアム」卽チ大
  英博物館、若クハ「サウス、ケンシントン」博物館、若クハ國立
  ノ繪畫館、ソレカラ「テート」繪畫館、「ワーレス」館ト云フモノ
  ガアリマシテ、其經費ノ如キモ二百万圓ヲ費シ、其他ニ多大
  ノ寄附ヲ得テ此事業ヲ完成致シテ居リマス、其外「オックス
  フォード」「マンチェスター」等ニ於キマシテモ中ニ宏大ナル
  博物館ガアリマシテ、其陳列品ハ頗ル完備致シテ居リマス、
  又亞米利加ニ於キマシテモ、現ニ今ヨリ七十五年前ニ「スミ
  ソニアン、インスチチュート」ノ中ニ於キマシテ、議會ノ決議ニ
  依ッテ一ツノ國立博物館ヲ拵ヘマシテ、之ヲ四十年前ニ全
  然國立ノモノニ移シテシマヒマシタ、各種ノ方面ニ天然物
  若クハ歷史的、若クハ人類學上、若クハ考古學上等ノ部分
  ノ宏大ナル博物館ヲ造ッテ居リマス、是モ何レモ數百万ノ資
  金ヲ投ジテ居ルト云フ有樣デアリマス、斯ノ如クニシテ歐米
  ノ先進國ニ於キマシテハ、博物館ヲ完成シ、而シテ之ヲ利用
  スル方法ヲ講ズルコトニ誠ニ努メテ居ルニ拘ラズ、我國ノ博
  物館ニ於キマシテハ唯一ツノ帝室博物館ガアル許リデア
  ル、而モ其經費タルヤ僅ニ二十五万圓、之ヲ奈良京都東京
  ノ三ツニ分ケテ使フノデアル、サウシテ其物品等ヲ集メマス
  ル費用ニ於テハ、誠ニ申上ゲニクイ位ノ少額デアリマスル
  ニ依シテ、迚モ物資ヲ集メル事ガ出來ナイ、又各種ノ報告
  等モ各國ト交換スルコトガ出來ナイ爲メニ、博物館ニ於テ
  ハ各國ノ資料ヲ得ルニ苦シムト云フヤウナ有樣デアル、斯ノ
  如キ事ハ誠ニ目下ノ我國ニ於テハ一大缺點ト謂ハネバナラ
  ヌト思ヒマス、戰爭ガ濟ミマシテ外來觀光ノ客ガ多ク參リマ
  シテモ、我國ニハ一ノ文明ノ標本デアル所ノ博物館ガナイ、
  斯ウ云フヤウナコトデアリマスルト、我國ノ體面上ニモ如何
  デアラウカ、又現在〓育等ノ爲メニハ中ミ政府ガ御奮發ナ
  スッテ、多大ノ經費ヲ投ジテ居ルニ拘ラズ、此最モ普遍的デ
  アリ最モ一般的デアル所ノ博物館ニ、一ツノ經費モ投ジテ
  ナイト云フヤウナコトハ國民ノ〓育ノ上-民衆〓育ノ上
  ニ於テモ一大缺點ト思ハレマス、ソレ故ニ私ハドウカ政府ガ
  博物館ノ完成ニ付テ、尙ヨリ多クノ-現在アリマスルモノ
  ヲ完成スルナリ、或ハ之ヲ移管ヲシ、若クハ如何ナル方法ヲ
  以テシテモ、一ツノ國ノ經營ト致シテ博物館ヲ、東洋ノ先進
  國デアル我國ノ智識文明ノ標本デアルト云フノニ愧ヂヌダ
  ケノモノニ設備ヲ致シテ貰ヒタイ、斯ウ云フ趣旨ニ依ッテ此
  建議案ヲ提出致シマシタノデアリマス、詳細ナルコトハ委員
  會等ニ於テ必要ガアレバ申述ベルコトヽ致シマシテ、簡單ニ
  提出ノ理由ヲ申シテ置キマス、ドウカ御賛成ヲ願ヒマス(拍
  手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=106

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• 107・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託
  セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=107

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• 108・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=108

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• 109・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　御異議ナケレバ本建議案ハ岩
  崎君動議ノ如ク決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=109

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• 110・岩崎勲

  ○岩崎勳君　日程第十七以下ニ對シテハ延會ノ動議ヲ
  提出致シマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=110

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• 111・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=111

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• 112・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　御異議ナケレバ日程第十七以
  下ハ、延會スルコトニ決シマス、次回ノ日程ハ公報ニ依リ御
  通知致シマス、本日ハ是ニテ散會
  午後五時二十六分散會
  衆議院議事速記錄第二十一號正誤
  頁段行誤正
  二〇上一一應廣
  0上三四比例ヲ比例デ
  三一中一九小選擧區ノ小選擧區モ
  三一二二各候補擧各候補者
  三三三三三三三三二一一一一一一一一九四票人員四人缺員
  三二中下上上下中二武藤齋藤
  三二三五兩憲兩黨
  九四○被選擧人ノ人ノ
  三三〇八「成田榮信君」ハ衍

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02219190311&spkNum=112

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