第41回帝国議会　衆議院　本会議　第27号　大正8年3月21日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  大正八年三月二十一日（金曜日）午後一時十三分開議
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  　議事日程　第二十六號　大正八年三月二十一日
  　　　午後一時開議
  　第一　史蹟名勝天然紀念物保存法案（貴族院提出）　　　　　　　　　　　　第二讀會
  　第二　和氣神社昇格に關する建議案（小橋藻三衞君外八名提出）
  　第三　朝鮮及臺灣の産米増殖に關する建議案（牧山耕藏君外十名提出）
  　第四　新聞紙法改正に關する建議案（松田源治君外十二名提出）
  　第五　狩野川改修に關する建議案（岩崎勲君外一名提出）
  　第六　農業政策に關する建議案（赤間嘉之吉君提出）
  　第七　陸軍下士卒優遇に關する建議案（高田耘平君提出）
  　第八　北海道拓殖完成に關する建議案（寺田省歸君外二名提出）
  　第九　發電用水利權の法規制定に關する建議案（石原正太郎君外一名提出）
  　第十　能代、五所川原間鐵道建設に關する建議案（工藤卓爾君外四名提出）　（委員長報告）
  　第十一　延松鐵道速成に關する建議案（長峰與一君外三名提出）　　　　　　（委員長報告）
  　第十二　山口縣徳山港を特別輸出入港と爲すの建議案（渡邊祐策君提出）　　（委員長報告）
  　第十三　圓山川改修に關する建議案（齋藤珪次君外一名提出）　　　　　　　（委員長報告）
  　第十四　水産講習所内に淡水科特設に關する建議案（西川太治郎君外五名提出）　（委員長報告）
  　第十五　水産業統一機關設置に關する建議案（唐端清太郎君外二名提出）　　（委員長報告）
  　第十六　水産銀行設立關する建議案（鵜澤宇八君外二名提出）　　　　　　　（委員長報告）
  　第十七　（特別報告第百五十四號）葉煙草耕作段別に對し補助金交付の請願　（委員長報告）
  　第十八　（特別報告第百六十三號）航空事業國庫補助の請願　　　　　　　　（委員長報告）
  　第十九　（特別報告第百六十四號）大任村に郵便局設置の請願　　　　　　　（委員長報告）
  　第二十　（特別報告第百六十五號）皆瀬郵便局に集配竝電信事務開始の請願　（委員長報告）
  　第二十一　（特別報告第百六十六號）濱田郵便局に電信事務開始の請願　　　（委員長報告）
  　第二十二　（特別報告第百六十七號）枝幸村字音標に郵便局新設の請願　　　（委員長報告）
  　第二十三　（特別報告第百六十八號）吉城郡へ配達する小包郵便物遞送線路變更の請願　（委員長報告）
  　第二十四　（特別報告第百六十九號）坂上郵便局と幸野郵便局との間に遞送開始の請願　（委員長報告）
  　第二十五　（特別報告第百七十一號）茅沼に無集配郵便局設置の請願　　　　（委員長報告）
  　第二十六　（特別報告第百七十二號）東國分郵便局に集配事務開始の請願　　（委員長報告）
  　第二十七　（特別報告第百七十三號）中和郵便局に集配事務開始の請願　　　（委員長報告）
  　第二十八　（特別報告第百七十四號）大崎村字大崎に郵便局設置の請願　　　（委員長報告）
  　第二十九　（特別報告第百七十五號）東太良郵便局に集配事務開始の請願　　（委員長報告）
  　第三十　（特別報告第百七十六號）山崎郵便局に集配事務取扱開始の請願　　（委員長報告）
  　第三十一　（特別報告第百七十七號）木下郵便局に特設電話設置の請願　　　（委員長報告）
  　第三十二　（特別報告第百七十八號）田平村に無集配郵便局設置の請願　　　（委員長報告）
  　第三十三　（特別報告第百七十九號）膝折村に郵便局設置の請願　　　　　　（委員長報告）
  　第三十四　（特別報告第百八十五號）鵜川村に登記所設置の請願　　　　　　（委員長報告）
  　第三十五　（特別報告第百八十六號）人舞村字清水に登記所設置の請願　　　（委員長報告）
  　第三十六　（特別報告第百八十七號）日野春村に登記所設置の請願　　　　　（委員長報告）
  　第三十七　（特別報告第百八十八號）喜連川町外二箇村を宇都宮區裁判所管轄に變更の請願　（委員長報告）
  　第三十八　（特別報告第百八十九號）大野村大字黒野に登記所設置の請願　　（委員長報告）
  　第三十九　（特別報告第百九十號）八束、川上、中和三村中に區裁判所出張所設置の請願　（委員長報告）
  　第四十　（特別報告第百九十一號）盲唖教育令發布の請願外一件　　　　　　（委員長報告）
  　第四十一　（特別報告第百九十二號）公立盲唖學校設置の請願外十九件　　　（委員長報告）
  　第四十二　（特別報告第百九十三號）三陸沿岸鐵道敷設の請願外三件　　　　（委員長報告）
  　第四十三　（特別報告第百九十四號）八戸、久慈間輕便鐵道延長の請願　　　（委員長報告）
  　第四十四　（特別報告第百九十五號）天鹽線速成の請願　　　　　　　　　　（委員長報告）
  　第四十五　（特別報告第百九十七號）弘前、田代間輕便鐵道速成の請願　　　（委員長報告）
  　第四十六　（特別報告第百九十八號）天鹽線速成の請願　　　　　　　　　　（委員長報告）
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• 001・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　諸般ノ報告ガアリマス
  〔原田書記官朗讀〕
  一今二十一日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ議
  案ニ對シ承諾スルコトヲ議決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ
  受領セリ
  大正七年勅令第三百七十三號(承諾ヲ求ムル件)
  一今二十一日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ議
  案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
  道路法案(政府提出)
  時局ノ影響ニ因ル地方稅制限擴張ニ關スル法律案
  (政府提出)
  私立學校用地免租ニ關スル法律案(政府提出)
  耕地整理法中改正法律案(政府提出)
  地租條例中改正法律案(本院提出)
  一昨二十日議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  本邦基礎工事ノ保護ニ關スル建議案
  提出者田中隆三君鈴木錠藏君
  小松島港改良修築ニ關スル建議案
  提出者原田佐之治君秦豐助君
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭
  載ス〕
  一去二十日辭任シタル常任委員左ノ如シ
  第一部選出豫算委員渡邊陳平君
  第四部選出豫算委員磯部尙君
  第八部選出豫算委員元田肇君
  一去二十日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
  第一部
  豫算委員寺田省歸君(渡邊陳平君補闕)
  第四部
  豫算委員大石五郞君(磯部尙君補閥)
  第八部
  豫算委員今井今助君(元田肇君補關)
  一今二十一日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
  朝鮮輕便鐵道補助法案委員
  小泉策太郞君
  委員長小林源藏君理事土井權大君
  秋田寅之介君
  北海道拓殖鐵道補助ニ關スル建議案委員
  委員長粕谷義三君理事佐々木平次郎君

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• 002・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　是ヨリ會議ヲ開キマス、日程第一、
  史蹟名勝天然紀念物保存法案/第二讀會ヲ聞キマス-
  前田米藏君
  第史蹟名勝天然紀念物保存法案(貴族院
  提出)第二讀會(確定議)

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• 003・前田米藏

  ○前田米藏君　本案ハ第三讀會ヲ省略シテ、委員長報
  告ノ通リ可決確定セラレンコトヲ希望致シマス

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• 004・大岡育造

  ○議長(大圖育造君)　御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 005・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガ無ケレバ二讀會ニ於テ
  三讀會ヲ省略シテ、可決確定シタルコトヲ宣告致シマス

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• 006・岩崎勲

  ○岩崎勳君　議事日程ノ變更ニ關スル緊急動議ヲ提出
  致シマス、卽チ玆ニ第三號大正八年度歲入歲出豫算追加
  案、特第一號大正八年度各特別會計歲入歳出豫算追加
  案、追第三號豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約フ爲スヲ
  要スル件ヲ一括議題ト爲シ、委員長ノ報告ヲ求メ、且ツ其
  審議ヲ進メラレンコトヲ求メマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 007・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　日程變更ニ就テ御異議ハ無イト
  認メマス、仍テ齋藤委員長ノ報告ヲ促シマス
  (第三號)大正八年度歲入歲出總豫算追加案
  (特第一號)大正八年度各特別會計歲入歳出豫算
  追加案
  (追第二號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲ス
  ヲ要スル件
  〔齋藤珪次君登壇〕
  〔拍手スル者アリ〕

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• 008・齋藤珪次

  ○齋藤珪次君　茲ニ第三號大正八年度歲入歲出總豫
  算追加案外二件ノ案件ニ對シマスル、委員會ノ經過及結
  果ヲ御報告申シマスル、本案ハ一般會計經常部ニ關シマ
  シテハ、内務、大藏、文部、遞信ノ各省ニ涉リマシテ、臨時部
  ニ於テハ陸軍省、海軍省、農商務省ニ涉ッテ居リマス、後ト
  特別會計ニ於キマシテハ、大藏省、文部省、ソレカラ豫算外
  國庫ノ負擔トナルヘキ契約ニ關スル件ハ、內務省、大藏省、
  農商務省ノ所管ニ屬シマス、斯ク幾多ノ關係ヲ有ッテ居リ
  マスルガ、其支出ノ合計等ニ就キマシテハ玆ニ略シマシテ、
  大體ニ於テ本案ハ必要缺クベカラザルモノトシテ、委員會
  ニ於キマシテモ、議論ノ無カリシモノガ多イノデアリマス、例
  ヘバ大阪府ニ於ケル警察費ニ關スル國庫下渡金ノ割合ノ
  增加ノ如キ、或ハ織物消費稅徵收事務ニ關スル補助ノ組
  合交付金ノ如キ、又臨時軍事費、高等諸學校創設竝ニ擴
  張費支辨ノ爲メ公債ヲ發行スル爲メノ利子ノ如キ、費用
  ノ如キ、或ハ軍人恩給法附則ノ改正ニ件フ恩給增加ノ如
  キ總テ餘リ質問モゴザイマセヌ、質問ノゴザイマシタモノハ、
  神戶門司築港ニ關スル事、及鳥取縣外四縣ニ於ケル災害
  土木費借入金ニ對スル利子補給ノ其金額ニ對スル質問、
  及今回新ニ帝國開墾株式會社ナルモノガ設立セラルヽニ
  付テ、食糧問題ノ解決ノ必要トシテ、政府ガ之ニ向ッテ八
  朱ノ補給ヲ爲スト云フコトノ提案ノモノニ就テハ、是ハ最モ
  質問ノ多カリシモノデアリマス、質問ノ經過ノ大體ニ就テ申
  シマスルニ、神戶門司兩港ニ對スル質問ノ如キハ、何レモ其
  事業ノ洵ニ適當ニシテ必要ナルハ皆ナ認メマス、唯ハ將來ニ
  於テ此事業ガ擴張若クハ完成ヲ告グルニ於テ、支障ナキヤ
  否ヤヲ確メラレタノデアリマシテ、卽チ將來ノ擴張ニ於テ、
  今日ノ小規模デハ却テ妨ヲ爲シハシナイカ、或ハ又鐵道ト
  ノ水陸連絡ニ於テ、其宜シキヲ得ザルモノアラザルヤ等ノ點
  ニ就テ質問ヲ致サレマシタガ是等ニ就テハ政府當局者ヨリ
  適當ニ皆ナ答辯ヲ致サレテ、遺算ナキヲ示サレタヤウニ存ジマ
  ス、鳥取縣外四縣ニ於ケル災害土木費借入金ニ對シ利子
  ヲ補給スル點モ是ハ又甚ダ遺憾デアリマス、卽チ同時ニ災
  害ヲ受ケ、最モ部分的災害ノ非常ナルモノト認メラレタル
  兵庫縣但馬地方ニ於ケル分、及京都府下丹後方面ニ於ケ
  ル部分ガ、此借入金ヲ爲シ得ラレマシテモ、補給ノ利子ヲ國
  庫ヨリシテ下付サルヽト云フコトハ出來ナイ、是ハ卽チ國庫
  ニ於ケル内規ガアリマシテ、其内規ニ未ダ適合セザル爲メニ
  此補給ヲ支給スルコトガ出來ナイト云フノデゴザイマシテ、
  兩縣ノ其慘狀困難ハ、實ニ當局者モ之ヲ深ク諒ト致シテ、
  內務、大藏兩大臣モ、之ニ對シテ厚キ同情ヲ表シテ居リマ
  スルガ唯〓内規ノ示ス所已ムヲ得ズ、是ニ補給ヲスルコト能
  ハザルノ實況デアル、併ナガラ此内規ナルモノモ、必ズシモマ
  ダ完全ノ内規トバカシハ申サレナイガ、兎ニ角何カ條規ガ無
  ケレバ濫ニ陷ルガ故ニ、今日ハ此內規ニ依ッテ已ムヲ得ズ補
  給ヲ差控ヘテ居ル、併ナガラ何カ特例ノ方法ヲ見出スニ於
  テハ之ヲ補給スルニ決シテ吝ナラザルモノデアル、故ニ今日
  ニ於テハ、何カ將來ニ於テ他ニ濫出ノ弊ヲ起サヾル範圍ニ
  於テ特例ヲ見出シタナラバ、之ニ依ッテ支給スルト云フコト
  ニ付テハ躊躇シナイ、唯〓其方法ヲ攻究中デアルト云フコト
  ノ上ニ於テ、是ガ未ダ保留サレテ居ルト云フノデ、質問者ニ
  モ十分ナル滿足ヲ與ヘザリシコトヲ遺憾卜思ヒマスル、其他
  ニ於テハ帝國開墾株式會社ノ補給ニ關スル外ハ、餘リ質
  問モゴザイマセヌシ、又何等ノ議論モゴザイマセヌ、獨リ問
  題ノ最モ八釜敷キモノハ、此帝國開墾株式會社ノ一條デ
  ゴザイマス、是ニ就テハ兎ニ角ニ先頃本院ニ於テ可決セラ
  レタ所ノ否ナ貴族院ニ於テモ既ニ通過セラレタ所ノ開墾
  助成法ナルモノガ、政府ニ於テ提出致サレ、而シテ之ニ依ソ
  テ免ニ角食糧問題ヲ解決スルト云フコトノ政府ノ聲明ア
  リシ爲メニ、後ヨリ又帝國開墾株式會社ナルモノヲ出スト
  云フコトハ、其貪糧問題ニ於テ矛盾ヲセヌカト云フコトガ、
  主トシテ其質問デアリマシタ、又此帝國開墾株式會社ナル
  モノハ、天下呼ンデ富豪ト稱スル人〓ノ發起タルガ故ニ、何
  等カ其間ニ於テ富豪ヲ援助スルカノ如キ疑惑モ生ジタヤウ
  ナ傾ガアリマシテ、爲ニ其發起人ノ姓名ヲ示セ、其定款ノ内
  容ヲ說明セヨト、政府ニ對シテ質問ハ隨分頻發サレタノデ
  ゴザイマス、故ニ大體ヲ私ヨリ御報告申シマスルガ、先ヅ以
  テ帝國開墾株式會社ノ發起人ナル者ノ氏名ヲ順序トシテ申
  シマスレバ、政府ニ請願シ來リシ所ノ發起人ナル者ハ二十一
  名デアリマシテ是ハ政府ヨリシテ、提出サレタモノデアリマス、卽
  ヲ其人名ハ澁澤榮一武井守正、大倉喜八郞、益田孝、藤
  山雷太、村井吉兵衞、大橋新太郞、根津嘉一郞、内藤久
  寛、木村久壽彌太、松方巖、杉原榮三郞、植村澄三郞、中
  島久萬吉、團琢磨、馬越恭平、〓誠之助、古川虎之助、藤
  村義朗、加藤正義、安田善三郎、以上二十一氏ガ卽チ發
  起人トシテ請願ヲ致シタノデアリマス、而シテ之ヲ前申スガ
  如ク、開墾助成法案ガ旣ニ通過シテ居ルノニ、更ニ又之ヲ
  立テシ政府ノ意見ハ如何ナモノデアルカト云フコトノ質問
  ニ對シマシテ、政府ハ斯樣ニ辯明致シテ居リマス、食糧問
  題ハ何レノ方面ヨリモ攻究セザルベカラザル問題デアル、未
  開墾地ヲ開拓シテ米穀ノ產額ヲ豐富ナラシムル事ハ、刻下
  措キ難キ方法ノ一ナリト信ジツヽ居ッタル所、偶〓東北振興
  會及國產獎勵會ヨリ同樣ノ建議ヲ爲ス者ガアリシ故ニ、
  政府ノ所見ト同一ナルヲ以テ、雙互ノ利益ヲ慮ッテ遂ニ本
  案ヲ提出シタト云フコトガ、政府ノ骨子ノ趣意デアリマス、
  而シテ尙ホ開墾會社ノ內容ト開墾助成法トヲ比較シテ、
  政府ノ說明スル所ニ依リマスレバ、開墾助成法ノ趣旨ハ、
  未開ノ地所ヲ有スル者ニシテ開墾ヲ爲サントスル者ニ對シ
  テ、其資金ノ利子ヲ補給セントスルモノデアル、卽チ是ハ自
  ラ開墾シ自ラ耕作ヲ爲サントスル者ニ資金ノ利子ヲ補給
  スル、卽チ補助スルノデアル、今度政府ノ補給セントスル帝
  國聞墾株式會社ノ趣旨ハ、其會社ハ開墾事業ヲ以テ目
  的トシテ居ル、卽チ耕作ハ目的デナイ、故ニ收利モ亦目的
  デナイ、收益モ目的デナイ、開墾事業ガ目的デアル、卽チ大
  面積ノ開墾ヲ爲シテ、其出來上リシモノハ總テ之ヲ自作農
  タラントスル者、或ハ緣故アル者、公共〓體等ニ廉價ニ賣
  却スルヲ目的トシテ居ル、故ニ言ヒ換へテ見マスレバ、宮口
  社會政策ノ一方法デアリ、又國家的ノ事業デアルト云フコ
  トガ趣意ノ違ウ所デアル、而シテ前者卽チ開墾助成法案ニ
  依ル補助ハ、六朱ト云フコトニハナリマスガ、併ナガラ此開
  墾助成法ニ依シテ開墾ヲ爲サントスル者ガ出願シテ、而シテ
  補助ヲ受ケル其額ハ、一段步ニ付テ十九圓八十錢ト云フ
  積算ニ當ルノデアル、サウシテ之ニ依シテ自耕自作ヲスル者
  デアル、而シテ後者卽チ開墾會社ノ方ハ、八朱ト云フコトハ
  確ニ八朱デアルケレドモ、開墾會社ノ請求スル所ノモノハ、
  十五年間ノ期限トハ云ヒナガラ、其期限ハ十五箇年ニシテ
  モ、開墾會社ノ事實請求スル補助額ハ四年間、而シテ四
  年間ニ對スル六百万圓、四年間トシテ居ルノハ何故デアル
  カト申セバ、四年間ニ於テ三千万圓全部ノ資本金ヲ拂込
  ム、其八朱ノ利子六百万圓ヲ補助サレヽバ、之ニ依ッテ開
  墾會社ハ一通リノ開墾ヲ致シテ、五年目ヨリ此出來上リ
  シ土地ヲ賣却致シ、卽チ小作農タラムトスル者、或ハ公共
  團體ニ賣渡シテ、其得タル全員ヲ以テ更ニ又第二ノ開墾
  ニ著手スルノデアルカラ、モウ五箇年後ハ政府ノ補給ヲ要
  サナイ、卽チ四箇年ヲ補給サレヽバ足リルト云フコトガ、事
  實ニ於ケル希望ナノデアリマス、請願デアルノデアル、併ナガ
  ラ十五箇年八朱ノ補給ト云フコトヲ公ニスル所以ノモノ
  ハ、此八朱ノ補給ト云フ後援力ニ依シテ、此株ニ應ズル所ノ
  人達ニ安心ヲ得テ放資セシメテ、サウシテ爰ニ圓滑ナル運
  用ヲ起スト云フコトニシタイト云フノデアル、卽チ八朱ノ補
  給ハ是ハ向フニ見セル看板デアル、此後援力ニ依シテ天下
  ヨリシテ應募者ヲ得テ、此仕事ヲ爲スト云フコトニナルノデ
  アル、而シテ其株ノ方法ハ如何デアルカト云へバ、三千万圓
  ノ五十圓劵デスカラ六十万株、其六十万株ノ中發起人ハ
  天下ノ富豪ト云ハレルケレドモ、是ハ十万株シカ持タナイ、
  殘リ五十万株ハ天下ニ之ヲ公募スル、而シテ其發起人一
  人ニ付テハ又一千株以上ヲ持ツコトヲ許サナイ、一人一千
  株以內タル事、サウシテ百人許リノ人達デ凡ン十万株ヲ
  持ッテ、殘リ五十万株ハ確ニ之ヲ一般ヨリ、「プレミアム」付
  ケズノ公募ヲ爲スト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、卽チ
  此五十万株ニ應ズルノ人達ガ、八朱ト云フコトノ後援力ニ
  依ッテ、安ンジテ之ニ應ゼシムルト云フガ爲メニ、此八朱ハ表
  面ニ之ヲ揭ゲテ居ル、事實ニ於テハ四箇年ニシテ足レリ、斯
  ウ云フコトニナッテ居ルト說明ヲ致シマシタ、而シテ此等ノ
  事ニ對シテ此八朱ノ利子ヲ得ル開墾會社ガ、自作農タラ
  ントスル六朱ノ補助ヲ得ル開墾希望者ノ事業ヲ壓迫シハ
  セヌカ、或ハ土地ノ競争ヲ惹起シハセヌカト云フコトニ對シ
  テハ、政府ハ又之ヲ防グベク、土地利用調査會ヲ設ケテ、是
  等ノ事ニ就テモ相當防グコトニ致ス、斯樣ニ聲明サレマシ
  タ、是等ガ先ヅ大體ニ於ケル開墾會社ニ對スル質問ノ要
  點デアリマス、此ニ於テ質問四日間ニ亙リマシテ、結局質
  問ヲ打切リマシタガ、最後討論ニ移リマシテ、井上角五郞
  君ヨリシテ、以上ノ如キ種々ナル質問ヲ綜合致シテ、政府ニ
  確メテ置キタイト云フコトデ、更ニ最後ノ質問ヲ試ミマシ
  タ、其最後ノ質問ハ、株式ハ公平ニ募集セシムルコトニスル
  ノデアルカ、卽チ會社ニ向ッテ政府ガ命令ヲスルト云フコト
  ニ付テ、株式ハ公平ニ募集セシムルコトニスルカ、ソレカラ計
  算ヲ監督シ、特ニ重役報酬、總係費用ニ對シ、嚴重ニ監督
  スルト云フコトニ致スカ、年々開墾埋立スベキ地積ヲ豫定
  セシメ、個人乃至法人ノ助成案ニ依ルモノト、素池ノ收得
  其他ニ關シテ競爭セズ、卽チ個人乃至法人ノ開墾助成法
  案ニ依テ開墾セントスル者ト、其帝國開墾會社ノ開墾セン
  トスル素地ニ就テ、ンレヲ奪フト云フガ如キ競爭ハセヌト云
  フコトニ命令ヲスルカ、第二ニハ天災其他ニテ損害ノ虞多
  キモノニ著手セザル事トスルカ、損ヲスルト云ヘバ、國家ガ帝
  國開墾會社ニハ損失ヲ補償スル義務ガゴザイマスガ故ニ、
  天災其他ニ於テ損害ノ虞多キモノハ、漫リニ之ニハ著手セ
  ヌトシナケレバナラヌ、斯樣ナ事モスルカ、第三ニハ豫定ノ
  町步ノ著手ヲ、徒ラニ減少スルニ至ラザルコトヲ期スルコト
  ガ出來ルカ、場合ニ依ノテハ以上ノ開墾埋立ニ關スル地積
  ヲ豫定スルニ付テハ、先ニ申上ゲマシタ通リ、土地利用調
  査會ト云フモノヲ設ケルコトガ出來ルカ、ソレカラ助成案ニ
  依ル開墾者ガ其工事ヲ委託シタルトキハ、之ガ請負ヲ爲サ
  シムル事、卽チ開墾者ガ助成法ニ依シテ開墾ヲ許サレテ、之
  ヲ更ニ帝國開墾株式會社ニ仕事ヲ賴ンダトキニハ、ソレヲ
  請負卜爲サシムルコトガ出來ルカドウカ、但シ其開墾者ニ
  對シ、其爲メニ助成法ニ依ルノ補助交付ヲ妨ゲザルモノト
  ス、卽チ賴ンダカラト一云ッテ、助成法ニ依ル補助六朱ガ取レ
  ナイト云フヤウナ事ガ無イモノデアルカ、斯樣ナ事ガ帝國開
  墾株式會社ニ對スルノ命令條項トシテ、政府ハ斷行スルコ
  トガ出來得ラルヽカト云フ事ニ就テ、結局ヲ確メマシタ所ガ
  大藏大臣ガ政府ヲ代表シテ、是等ノ事ニ就テハ總テ政府モ
  同一意見デアルカラ、之ヲ實行致サウト云フコトヲ言明致
  サレタノデアリマス、ンコデ更ニ希望ヲ提出致シマシタ、卽チ
  井上君ヨリシテ希望ヲ提出致シマシタ、ツレハ帝國開墾會
  社ニ對スル政府ノ命令事項ガゴザイマスルガ、ソレニ追加ヲ
  シテ、以下玆ニ申上ゲマスル五項ヲ追加スルコトヲ、必ズ實
  行シテ貰ヒタイト云フコトノ希望デゴザイマシタ、ソレハ第一
  配當ハ如何ナル場合ニ於テモ、八分ヲ超ユルコトヲ得ザル
  事、八分ヨリハ決シテ超ユルコトハ出來ナイ、前項ノ配當ヲ
  爲シ尙ホ餘アルトキハ、旣往ニ於ケル資本ノ缺損ニ對スル
  補給ヲ返還セシメ、尙ホ餘アルトキハ、其餘ニ應シ開墾地
  賣拂代金ヲ減額スル事トシ、其減ズベキ金額ハ各年度ニ於
  テ政府ノ承認ヲ經ル事、第三開墾地ハ自作農タラントスル
  者、緣故者、又ハ公共團體ノ順位ヲ以テ優先賣渡ヲ爲ス
  事、第四前項ノ場合ニ於ケル開墾地ノ賣却價格ハ、開墾
  成功費ノ五割增ニ當ル金額ノ範圍內ニ於テ之ヲ定ムル事
  但シ其他ノ場合ハ政府ノ承認ヲ得テ、此標準ニ依ラザルコ
  トヲ得、是ハ卽チ自作農、緣故者、公共團體ノ外ニ賣ルト
  キノ事ヲ意味シテ居リマス、但書以下ハ-ソレカラ第五北
  海道ハ除外ス、但シ北海道長官ノ要求アルトキハ此限ニ在
  ラズ、是ハ私ヨリ說明申上ゲザルモ、又討論ノ場合ニ於テ
  當事者ノ御方ヨリシテ御話ガアラウト思ヒマスカラ、別ニ私
  申シマセヌ、唯〓玆ニ一言申シテ置キマスルノハ、帝國開墾
  株式會社ガ、助成法案ニ依ッテ六朱ノ補助ヲ受ケル、開墾
  者ノ土地ヲ請負ノテ爲スト云フコトニ就キマシテ、是ガ二重
  ニナルカナラナイカノ問題ニ就テ、委員會ニ於テ鈴木梅四郞
  君、吉植庄一郞君等ヨリ質問致シマシタ、之ニ就テ多少言
  語カ錯綜致シマシテ、其解釋ニ苦シムヤウナ點ガゴザイマ
  シタガ、最後井上君ヨリ質問ニ對シテ政府ガ言明ヲ致シ
  テ居リマスカラ、此言明ニ依ルモノヲ相當トシテ之ニ牴觸
  シマスモノハ、取消サレルコトニ御承知置ヲ願フコトニ致
  シマス、先ヅ以上ノ趣旨ニ依リマシテ質問希望等ガ出デ
  マシテ、玆ニ討論ニ移リマシタ、討論ニ移リマスルト、憲政
  會ヲ代表致シマシテ町田忠治君ヨリシテ、此追加豫算外
  二件中ニ於テ、帝國開墾株式會社ニ關スル費用、卽チ大
  正八年度ニ於テ、政府ガ八朱ノ補助トシテ支出セントスル
  三十万圓ト云フモノヲバ、總テ之ヲ削除スル、卽チ總豫算
  ノ農商務省歲出ノ產業獎勵費ノ中カラ之ヲ削除シ、更ニ
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スノ件ニ於テ、此三
  十万圓ノ支出ヲ削除スル、斯ウ云フ動議ヲ提出致サレマシ
  タ、而シテ其論旨ハ、帝國開墾株式會社ノ事ニ就テハ種々
  疑惑ヲ有ッテ居ッタガ、唯〓井上君ノ質問ニ對スル政府ノ辯
  明、又井上君ノ說明ニ對スル希望條件等ニ依ッテ-希望
  條件ト云フノハ、卽チ會社ノ命令條件ノ希望等ニ依ッテ大
  ニ其疑惑ハ緩和致シタ、緩和致シタケレドモ、併ナガラ政府
  ノ食糧問題ノ根本ニ於テマダ疑フ點アルヲ以テ、是ハ容易
  ニ賛成ガ出來ナイ、卽チ玆ニ否決ヲ致サントスルモノデアル、
  併シ其理由ニ至ッテハ本會議ニ於テ之ヲ陳述スル、斯樣ナ
  コトデ否決ノ動議ヲ提出致サレマシタ、之ニ對シテ國民黨
  ノ鈴木梅四郞氏ガ之ニ贊成致サレマシタ、其理由ハ他日
  後トデト云フコトデアリマシテ、理由ハ述ベラレマセヌ、玆
  井上角五郞氏ハ此原案總テニ贊成ノ意志ヲ表シマシテ、
  是ハ〓糧問題解決法トシテ、帝國開墾會社ノコトハ必要
  ノモノデアル、其他ニ於テモ必要缺クベカラザル費途デアル
  ガ故ニ、全部原案ヲ「賛成スルト云フコトデアリマシタ、而シ
  テ北井波治目君ヨリモ亦賛成ノ御趣旨ガ演說サレマシタ
  ガ、是モ最初多少疑ヲ持ッテ居ッタガ、今日ハ全ク此開墾會
  社ニ對スル疑霽レテ、唯〓將來ニ於テ政府ハ宜シク監督ヲシ
  テ、國費ノ支出ヲ十分ニ愼シムヤウニシテ欲シイ、愼シムト
  云フコトモ十分ニ管理シテ欽シイ、開墾會社ニ餘リ多クノ
  補助ガ行カナイヤウニシテ欲シイト云フ希望ヲ述ベマシタ、
  兒玉右二君ハ無條件ニ於テ、此帝國開墾會社ノ補助ハ最
  モ賛成スル所デアル、而シテ豫算全體モ之ヲ認ムル、斯樣ナ
  結果デゴザイマシテ、是ニ於テ討論終結シテ採決ヲ致シマ
  シタ、卽チ町田君提出ノ否決意見ハ擧手ニ問ヒマシタル所
  二十四名デゴザイマシタ、卽チ出席五十九名ニ付キマシテ
  二十四名デゴザイマシタノデ、是ハ否決ニナリマシタ、尙ホ念
  ノ爲メ原案賛成ヲ問ヒマシタ所、三十五名デゴザイマシタ、
  卽チ多數ニ依テ委員會ハ全部原案ノ通リ決定致シマシタ
  次第デゴザイマス、此段御報告申上ゲマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=8

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• 009・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　本案ニ就テハ討論ノ通告ガアリマ
  ス、町田忠治君
  〔町田忠治君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=9

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• 010・町田忠治

  ○町田忠治君　私ハ此追加豫算案中農商務省所管ノ
  中、帝國開墾株式會社助成金ニ關スル金三十万圓ヲ削
  除シタイト云フ修正動議ヲ提出致シマス、斯ク申シマスト、
  此金額ハ今年ニ於テ現ルヽ所極メテ少額デ、大體ニ於テ、
  大ナル利害關係ノ無イ問題カノ如ク見エマス、去リナガラ
  此案ヲ將來ニ亙フテ考へマスト、啻ニ此案ニ依シテ國庫ガ、
  三千五百万圓ノ補助金ヲ少ナクトモ支出セザルベカラザル
  ノミナラズ、若シ此會社ガ缺損ヲ重ネ、此缺損ヲ補塡シタ上
  ニ、年八朱ト云フノ補給ヲ致ス場合ニ於テハ、恐クハ十五
  箇年間ニ、四五千万圓ヲ政府ガ支出スル義務ヲ負フベキ
  大ナル問題デアリマス、御承知ノ通リ曩ニ我衆議院ガ、開
  墾助成法案ニ對シテ各派小委員會マデ開キマシテ.國家
  食糧問題ノ解決ヲ急トスルガ爲メニ、國家問題トシテ、各
  派虛心平意ニ開墾助成法案ヲ修正致シマシタ、而シテ之
  ガ爲メニ國民ハ、少ナクトモ五千万圓ヲ支出スルコトハ躊
  躇シナカッタノデアリマス、然ルニ其案僅ニ衆議院ヲ通過ス
  ルト、政府ハ遽然トシテ又此開墾株式會社ノ補助ノ案ヲ
  提出サレタノデアリマス、御承知ノ通リ連日委員會ニ於キ
  マシテ質問應答ニ依シテ、政府ノ此案ヲ提出セラレタル趣意
  ノ大要、又吾〓議員ガ之ニ對シテ種々ナル質問ヲ致シタコ
  トハ、新聞ニ依ッテ天下ニ公ニセラレテアリマスカラ、私ハ玆
  ニ詳シク申シマセヌ、而シテ昨日ノ豫算總會ニ於テ、政友會
  ノ井上君ヨリ此帝國開墾株式會社ノ命令案ニ對シア、頗
  ル重大ナル修正ヲ加ヘラレ、政府之ニ同意セラレマシタ、若
  シ此修正セラレタル命令書ヲ以テ、政府ガ曩ニ吾〓ニ示シ
  タル所ノ命令書ト比較シマシタナラバ、其内容モ頗ル改良
  サレ、其體面モ頗ル改良サレテ居リマス、去リナガラ此兩者
  相比スレバ彼レ此ヨリ善キノミデアリマシテ、食糧問題ノ解決
  ノ根本ニ至ッテハ、二者何等異ナル所ハアリマセヌ、私ハ此
  國家問題ヲ決スルニ當ノテ、諸君ニ向ッテ聊カ玆ニ希望ヲ述
  ベテ置キタイノハ、此問題ハ一昨日政友會總理ノ方ヨリ內
  交涉ノアリシ如ク、私ハ之ヲ黨派問題トハ致シタクナイ、飽
  マデモ國家問題トシテ、出來ルナラバ一致點ヲ見出シテ、衆
  議院一致ノ希望トシテ之ヲ決議致シタイ希望ヲ持ッテ居リ
  マス、故ニ是ヨリ私ガ申上ゲル事ニ對シテハ、事數字ニ涉ル
  煩瑣ナル問題モアリマスガ、努メテ省略シテ大體ヲ申ス筈デ
  アリマスガ故ニ、暫時御〓聽ヲ煩シタイト思ヒマス、本問題
  ヲ解決スル要點ハ分ッテ二ツト致シマス、第一ハ曩ニ衆議
  院ガ各派一致決議シタル開墾助成法案ハ、今後我國ノ食
  糧問題ヲ根本的ニ解決スルニ定ルヤ否ヤ、若シ假リニ政友
  會諸君ノ御考ノ如クニアラズトシテモ、開墾助成法案ト帝
  國開墾株式會社ノ此兩者ハ、果シテ兩立シ得ルカ否ヤ、此
  二ツノ問題デアリマス、申上ゲルマデモナク、開墾助成法案
  ノ本會ニ提出セラレ、開墾助成法案ノ委員會ニ於テ、政府
  當局ノ言明スル所ニ依レバ、此助成法ニ依シテ、今後十一
  年ニシテ日本ノ主タル米ノ問題ハ解決シ得ラレル、政府ノ
  言明斯樣デアリマス、而シテ此開墾助成法案ニ依ッテ開墾
  スベキ地區如何ト云ヘバ、唯〓豫算委員長ノ御報告トハ
  全然相違シテ居リマス、政府ハ斯樣ニ申シテ居ル、是ガ要
  點デアリマス、日本內地ニ今後開墾スベキモノ凡ン二百万
  町歩、其中內地ニ於キマシテ開墾シ得ベキ見込ノアル所ハ
  百三十万町步アル、而シテ政府ガ昨年來十三班ノ委員ヲ
  派遣シテ實地ニ調ベタ結果ニ依ルト、大集團--百町以上
  ノ集團地トシテ開墾シ得ラルベキモノハ全國ニ千六百箇所
  アル、故ニ政府ハ此開墾助成法案ニ依ッテ、先ヅ第一著手
  トシテ十五箇年間ニ百町以上ノ大集團地ニ向ッテ、其内二
  十五万町步ヲ開墾致シ、此二十五万町步ヲ開墾スレバ、其
  他ノ農事改良等ノ方法ニ依シテ得タル收穫ノ增加ト相俟。ツ
  テ、今後十一年ニシテ、日本ノ米ニ關スル食糧問題ハ解決
  シ得ラレルト云フノガ、開墾助成法案ヲ吾ミニ提出セラレ
  タル所ノ大體ノ趣意デアリマシテ、唯〓委員長ガ申サルヽカ
  如キ開墾助成法案ハ、小規模ノ開墾、自作農ノ意味デ出
  來タモノデナイト云フコトハ明カデアリマス、若シ唯〓ノ委
  員長ノ報告ノ如ク、政府ハ此開墾助成法案ニ依ッテ開墾
  スベキモノハ、小規模自作農-自ラ耕ス者ニ限定シテ居
  ルト云フ意味デアッタナラバ、何故政府當局者ガ開墾助成
  法案ヲ本會ニ提出スルニ當ンテ、此助成法案ノ目的トスル
  所ノ百町以上ノ大集團地、二十五万町步ヲ開拓スルヲ以
  テ目的トスル、斯樣ナ言明ヲ爲サレタノデアルカ、此矛盾ヲ
  承リタイ、吾ミ委員ハ御承知ノ通リ、政府ノ開墾助成法案
  ニ對スル-政府ノ原案ニ對シテ大ナル修正ヲ加ヘマシ
  タ、此修正ヲ加フルニ田ッテハ、獨リ我憲政會ノミデハアリ
  マセヌ、國民黨、殊ニ政友會ノ委員諸君モ御熱心ニ之ニ大
  修正ヲ加ヘタ、其修正ノ主ナルモノハ、第一ハ原案ニハ豫
  算ノ範圍內ニ於テ支出スルト致シマシテ、八年度ニ現レタ
  金額ハ十万以內デアリマス、併ナガラ目下ノ食糧問題ヲ解
  決シ、竝ニ將來ノ食糧問題ヲ解決スルニハ、斯ル小規模ノ
  計畫デハ宜カラヌ、宜シク豫算ノ範圍內ト云フ文字ヲ削ン
  テ、苟モ他ノ條項ニ相當スル開墾業者ニ向ッテハ、今後法
  律ノ結果トシテ之ヲ支出スルガ宜イト云フノガ、衆議院一
  致ノ希望デアリマス、貴族院ニ於キマシテハ、之ニ對シテ種
  種ナル解釋ヲ加ヘラレ、大藏大臣ハ、豫算ノ範圍內ト云フ文
  字ヲ削ッテモ削ラズトモ、同樣デアルト云フ說明ヲシタト承
  リマスガ、少クモ衆議一致ノ希望ハ、憲法上法律ノ結果ト
  シテ、之ヲ支出スル意味ニ於テ吾ニハ修正ヲ加ヘタノデア
  リマス、此修正一ツ、第二ノ修正ハ、政府ノ原案ハ開墾地
  五十町以上大集團地ニ向ノテノミ開墾スル、補助ヲ致スト
  云フ原案ヲ修正シテ、吾ニハ之ヲ五町マデ引下ゲテ、小規
  模ノ開墾モ大規模ノ開墾モ、齊シク此法律ノ惠ニ浴セント
  云フノガ吾ミノ提案デアリマス、唯ダ五町步ニ向ッテ、國民
  黨ノ委員ノ方ノ御希望デアリマスガ、一町步五町步ト雖
  モ、一計畫ノ下ニ此開墾ガ出來ルナラバ、集メテ之ヲ五町
  トシタナラバ、齊シク之ニモ助成法ニ依ッテ補助ヲ與ヘル、社
  會政策ニ依リ現ニ我國ノ自作農ハ年々減ジ、一方大地主
  ニ兼併ノ弊ガアル、此社會ノ狀態ヲ改良シ、農村ノ開發ヲ
  計ル爲メニハ、各村ニ向ッテ出來得ルダケ自作農ヲ植付ケ
  ルト云フ、此趣意ニ依シテ我衆議院ハ各派一致シテ、之ヲ
  五町步ニ引下ゲタノデアリマス、曩ニ農商務大臣ハ、或ハ
  此五町ニ引下ゲタル意味ヲ以テ、開墾助成法ハ、恰モ小規
  模ノ開墾ニ限ラレルガ如キ言ヲ弄サレマシタガ、斷ジテ吾ニ
  衆議院ノ修正ハ左樣デアリマセヌ、大規模ノ開墾モ此助
  成案ニ依シテ行ヒ、小規模ノ開墾モ此助成案ニ依ッテヤル、
  大小孰レモ此惠ニ浴スルノガ吾こノ本旨デアリマス(拍手
  起ル)然ルニ政府ハ曩ニ此案ヲ出スノハ、今後十五箇年
  二十五万町步ヲバ開墾助成法ニ依シテ開墾シ、然モ大規
  模ノ面積百町步以上ノモノヲバ之ニ依ッテ開墾ヲシテ、
  先ヅ今後數十年ニシテ、我國ノ〓糧問題ハ解決シ得ルト
  吾〓ニ先刻說明サレタガ、併ナガラ吾ミハ、更ニ此意味ヲ擴
  張シテ、一層大ナル開墾ノ面積ヲ得ンガ爲メニ、此制限ヲ
  五町ニ擴メダガ爲メニ、若シ十五年ニ二十五万町步出來
  ル政府ノ案デアッタナラバ、吾〓ノ修正ニ依ッテ三十万町步
  乃至三十五万町步ハ、此ノ助成法ノ結果ヨリ得ラレルト思
  フノデアリマス、然ルニ此案ガ僅ニ衆議院ヲ通過スルヤ、何
  故カ直チニ帝國開墾株式會社ト云フ、一種廣大ナル補助
  ノ下ニ、特殊ノ會社ヲ造ルト云フコトヲ提出サレマシタ、私
  ハ前申上ゲマシタ如ク、開墾助成法案ニ依ッテ、政府ガ啻ニ
  今後十五箇年間ニ、我國ノ不足トスル所ノ食糧問題ヲ解
  決シ得タノミナラズ、吾こノ修正ニ依ッテ、更ニ多クノ米ノ
  生產ガ茲ニ得ラレルト云フコトヲ確信致シマス、然ルニ政
  府ガ更ニ之ヲ出シタ趣意ヲ承リマスレバ、其趣意何レニ在
  ルカト云フト、諸君御承知ノ通リニ、總理大臣ノ之ヲ提出
  サレタ動機、意思、農商務大臣ガ此案ヲ提出サレタ理由、
  又大藏大臣ガ農商務大臣ニ代ッテ此案ヲ提出サレタ趣
  意、ソレ〓〓異ッテ居リマス、總理大臣ハ曰ク、豫テ斯ル會社
  ヲ以テ、開墾助成法案ト相俟ッテ、日本ノ食糧問題ヲ解決
  シタイト思ウテ居ル矢先、幸ヒ富豪ノ某々相集ッテ此希望
  ヲ提出シタルガ故ニ之ヲ容レタ、豫テ斯樣ナル考ヲ持ッテ
  居ッタト云フノガ總理大臣ノ言明デアリマス、農商務大臣
  ハ曰ク、斯樣ナ考ハ無カッタ、唯、衆議院ガ開墾助成法案
  ヲ改正シテ、小規模ノ開墾ヲスルコトヲ補助スルニ至ッタガ
  故ニ、大規模ノ開墾ハ此會社ヲシテ其任ニ當ラシメヤウ、
  斯樣ニ言明サレテ居ルコトハ、豫算總會委員諸君ノ何レモ
  御承知ノ次第デアリマス、此點ニ就テ前ニ私ガ說明致シタ
  如ク、吾ミノ修正ハ大規模ノ開墾ハ、此法以外ニ排除スル
  ノデハアリマセヌ、大規模小規模併セ之ヲ行フノガ、開墾助
  成法案ノ趣意デアル以上ハ、此修正ニ依ッテ農商務大臣ガ
  食糧問題ニ對スル政策ヲ直チニ變化シテ、大規模ノ開墾
  ハ會社ヲシテ之ヲヤラシムルト云フ其意味ガ、吾ニハ了解ニ
  苦シム所デアリマス、更ニ大藏大臣ハ曰ク、吾こハ斯樣ナ案
  ヲ出ス考ハナイ、唯〓富豪連中カラ希望ガアッタカラ、受働的
  ニ此案ヲ受ケテ帝國議會ニ出シタノダ、大藏大臣ノ演說ハ
  斯樣デアリマス、而シテ此計畫ノ內容ニ於テ吾こ委員ノ質
  問ニ對シ、連日ノ政府ノ答辯ハ、或ハ右シ、或ハ左シ、一向
  其歸著スル所ヲ知ラヌノハ私ノ申スマデモアリマセヌ、凡ソ
  計畫ノ杜撰-屢。議會ニ現レマス計畫ノ杜撰トシテ、計
  畫ノ不十分ナルコトヲ評スルコトガ多イガ、若シ眞ニ如何ナ
  ルモノガ杜撰デアルカト云ヘバ、先ヅ帝國開墾株式會社ノ
  如キモノハ、杜撰ノ最モ好イ適例デアルト思ヒマス(拍手起
  ル)若シ內務大臣ノ說明ニ矛盾若クハ支離滅裂ト云フコ
  トガアルナラバ、此案ニ對スル首相、大藏大臣、農商務大
  臣、此三大臣ノ答辯ホド支離滅裂、矛盾ノモノハアリマセ
  ヌ(拍手起ル)凡ソ我ガ今日ノ財政ニ於テ、食糧問題解決
  ノ爲メニ、開墾助成法案ニ於テ五千万圓ヲ支出スルト云
  フコトハ、頗ル愼重ノ態度ヲ要スベキ問題デアリマス、之ヲ
  決シナガラ、而シテ今後十五箇年ニ於テ食糧問題ハ之ニ
  依シテ解決シ得ラレルト、諸君ト吾〓ガ信ジテ大修正ヲ加ヘ
  ナガラ、其事ガ未ダ實施セラレザルニ當リ、尙ホ之ヲ以テ足
  レリトセズ、更ニ少クトモ三千五百万圓ヲ要スル所ノ帝國
  開墾株式會社ニ向ッテ助成ヲ致スト云フナラバ、少クトモ
  衆議院トシテハ、輕擧妄動タルヲ免レヌト私ハ甚ダ遺憾ニ
  思フ(拍手起ル)若シ吾とヲシテ言ハシムレバ、諸君モ御同
  感デアリマセウ、開墾助成法案ニ於テ若シ實行ガ出來ザル
  點ガアリトスレバ、ソレハ其開墾スル者ニ向ッテ、如何ニシテ
  資金ヲ供給スルカト云フ此機關ノ備ラヌコトガ、開墾助成
  法案ノ實施ニ於ケル一大故障デアリマス、吾ニハ委員會ニ
  於テ、此開墾助成法案ヲ實施スルニ於テ、政府ガ農工銀
  行若クハ勸業銀行法ヲ改正シテ、開墾資金ヲ直接ニ供給
  スルノ意志無キヤ-有ルヤ否ヤト云フコトヲ問ヒマシタ、
  政府ハ斯ル意志ハ無イト答ヘタ、農工若クハ勸業銀行法
  ヲ改正シテ、其資金ヲ裕ニスル途微ッセバ、私ハ更ニ開墾
  ニ關スル一ノ特別ナル金融機關ヲ設ケルト云フ爲メニ
  ニ、天下ノ富豪相集ッテ會社ヲ作リ、ソレニ向ッテ補助ヲ希
  望スルナラバ、一考ノ價アルモノト私ハ斯樣ニ考ヘル、併ナ
  ガラ政府ハ更ニ其邊ノ考ヲ持タズシテ、俄ニ之ヲ提出シタ、
  若シ-私ハ眞ニ斯樣ニ思フ、政府ガ開墾助成法ヲ提出
  セズシテ、單ニ此會社ヲ保護シテ、日本ノ開墾ニ從事セシム
  ル意味ヲ以テ、特殊ノ開墾會社ヲ作ルト云フ提案デアッタ
  ナラバ、國家社會主義ノ點カラ考ヘテ見テ、此內容ヲ幾分
  カ訂正致シタナラバ、國家ニ代ッテ事ニ當ル所ノ一種ノ保
  護會社トシテ、之ヲシテ開墾ニ從事セシメ、其成功シタル土
  地ヲ以テ、公共〓體若クハ自作農ヲ植付ケルト云フ社會
  政策ヲ實行スルデアッタナラバ、私ハ此趣意ハ一考ノ價ガア
  ルト思ヒマス、又更ニ一步ヲ讓シテ政府ガ開墾助成法案ヲ
  提出スルト同時ニ、此帝國開墾株式會社補助ノ議案ヲ出
  シテ、此兩者ノ按排ヲ攻究シ、兩々相進ミ行カルヽ一ノ考
  ヲ吾〓ニ求メタナラバ、或ハ開墾助成法案ニモ修正ヲ加へ、
  此帝國開墾株式會社ノ命令ニ向ッテモ修正ヲ加ヘテ、兩者
  相進ミ得ル所ノ一ノ成案ヲ得タカモ知レマセヌ、然ルニ政
  府ハ開墾助成法案ヲ審議スルニ當ッテ其意味ヲ問ヒ質ス
  ト、政府ハ更ニ斯樣ナ會社ヲ以テ、開墾助成法案ト連絡ヲ
  取ルガ如キ會社ヲ作ル意味ガ無イト斷言サレテ居ル、私ハ
  今ニ於テ當時政府ハ、何故ニ斯ル言明ヲ吾〓ニシタカ、其
  心事ヲ頗ル疑ヒマス、若シ更ニ一歩ヲ讓ッテ、同時ニ此兩案
  ヲ提出セズトモ、吾と開墾助成法案ヲ審議スルニ際シテ、首
  相ガ言明セラルヽ如ク何等カノ方法ニ依ッテ、政府保護ノ一
  ノ會社ヲ作ル意志アリト云フコトヲ言明シタナラバ、吾とハ
  開墾助成法案ヲ審議スルニ際シテ、之ニ向ウテ十分ノ考
  慮ヲ加ヘル餘地ガアリマシタ、政府ハ之ニ向ッテ何等言明
  致サズ、寧ロ斯ノ如キ計畫アルコトヲ隱蔽シテ、先ヅ助成法
  ヲ通過セシメ、然ル後ニ此案ヲ遽然トシテ出ス、恰モ吾ミガ
  審議シ、各派一致シテ、國家問題トシテ取扱ッタ開墾助成
  法案ヲ裏切スルガ如キ態度ニ至ルノハ、吾こノ甚ダ遺憾ト
  スル所デアリマス、將タ大藏大臣ハ、此會社ヲ希望シタ富
  豪ハ更ニ一點私益ヲ圖ルノ考ハ無イト斯樣ニ仰シヤル、私
  モ今委員長ノ此處デ示サレタ發起人ノ顏觸、其人格、其聲
  望ノ點カラ眞ニ彼ノ人ニハ、食糧問題ヲ憂フルノ餘リ、國ヲ
  愛スルノ餘リニ出テ、此會社ヲ發起セラレタト云フコトニ對
  シテハ一點ノ疑ヲ持チマセヌ、併ナガラ何故ニ此會社ニ向ツ
  テ政府ハ斯ル遠慮-世間ノ非難ヲ恐ルヽガ如キ態度ヲ執
  ルカ、若シ八朱ノ補給ヲシ-缺損ヲ補塡シタ上二更二八
  朱ノ補給ヲスルニ非ザレバ、此財界ノ有力ナ人ガ發起人ト
  シテ手ヲ下サヌト云フナラバ吾こハ異論ガアリマス、去リナ
  ガラ若シ眞ニ大藏大臣ガ言ハルヽガ如ク、斯ル會社ニ向ッテ
  ハ、少クトモ八朱ヲ補助スルニ非ザレバ出來ヌ、大藏大臣ノ
  言ヲ藉リテ言ヘバ、是等ノ人〓ノ此計畫ハ、愛國心ノ發動
  デアルト言フ、若シ愛國心ノ發動ニシテ尙ホ缺損ヲ補塡シ、
  更ニ八朱ノ利益ヲ保障スルコト十五箇年ニ及ブニ非ラザレ
  バ此會社ガ成立タヌト云ヘバ、恐ラクハ斯ル民間一流ノ富
  豪ノミナラズ、天下ノ人〓ハ何人ト雖モ、勃然トシテ斯ル愛
  國心ヲ出スコトハ容易デアリマス(拍手起ル)若シ眞ニ開
  墾助成法案ト合セテ一種ノ會社ヲ作ッテ兩々相對シテ此
  重大ナル食糧問題ヲ解決スルノ誠意アラシメバ、何故ニ富
  豪ノ連中ハ、開墾助成法ニ與フル所ノ六朱ノ配當ヲ以テ
  滿足シテ、天下ニ率先シテ、六朱ヲ以テ大ニ開墾スベキノ
  先例ヲ作ラヌノデアリマセウカ(拍手起ル)甚ダ大藏大臣ノ
  先頃ノ此處ニ於ケル辯護ハ私ハ採ラヌ、發起人ハ千株ヅヽ
  ヨリ取ラズシテ、天下ニ成タケ之ヲ凡ク與ヘル、若シ愛國心
  ノ發動デ、資產豊ナル富豪ガ天下ノ爲メニ此業ニ從事スル
  ナラバ、天下ノ應ジ得ラレヌダケノ不利益ナル條件ヲ以テ、
  寧口全部之ヲ引受クベキコン當然デアラウト思フ(拍手起
  ル)然ルニ自ラ利益ヲ考ヘズ、國家ノ爲メニヤルト云フ事ガ
  主デアリナガラ、此利益保障ノ廣大ナルガ爲メニ世間ニ遠
  慮シテ、發起人自身ガ多クノ株ヲ持タヌト言明スルノハ、此
  會社ノ保護ノ狀態ガ、頗ル優遇過ギルト云フコトヲ證明シ
  テ餘リアルノデアル(拍手起ル)井上君ガ昨日政友會ヲ代
  表シテ、政府ノ命令ニ頗ル重大ナル修正ヲ加ヘラレ、前私
  ガ申ス通リ內容ニ於テモ面目ニ於テモ頗ル改良シタ、唯ス
  一點玆ニ疑ノアルノハ、委員會ニ於テ國民黨ノ鈴木君カラ
  農商務大臣ニ向ッテ質問サレタ際、其質問ノ趣意ヲ一言
  申シマスレバ、開墾助成法案ニ於テ六朱ノ利益ヲ受ケ、更
  ニ此助成ヲ受ケテ居ル開墾業者ガ、開墾會社ニ事業ヲ委
  託シタトキハ、更ニ八朱ノ保護ヲ此部分ニ對シテモ、帝國
  開墾株式會社ニ與フルカト云フ質問ニ對シテハ、農商務
  大臣ハ、公平ニ眞面目ニ、其重複スル點ハ與ヘマセヌト言
  明シタ筈デアリマス、吾〓モ是ハ當然ト思フ、然ルニ昨日井
  上君ノ質問ニ對シテハ、恰モ二重ノ保護ニ近キ助成金ヲ
  雙方カラ與フルト云フヤウナ答辯ガ大藏大臣カラアリマシ
  タ、此計算ノ仕方ハマダ不明デアリマス、唯〓唯今委員長ノ
  報告スル所ニ依ッテ見ルト、諸君御聽ノ如ク、何等カ二重ノ
  利益ヲ得ラレル方法ガ、裏面ニ隱在シテ居リハセヌカト云
  フ疑ガアリマス(拍手起リ「アリマセヌヨ」ト呼フ者アリ)是ハ
  計算不明デアリマス、計算不明ナルガ故ニ、吾ニハ疑問トシ
  テ更ニ之ヲ〓究スル餘地ガアリマス、故ニ吾ミノ希望ハ、帝
  國議會ガ既ニ五千万圓ヲ費シテ、今後十五箇年間ヲ限リ
  食糧問題ヲ解決シ得ラレルト信ジテ、既ニ衆議院ヲ通過シ
  貴族院ヲ通過シタ今日ニ於テ、少クモ此開墾助成法ノ實
  績ヲ見ルガ當然ト思フ、今後數年ニ亙ッテ、果シテ此方法ノ
  實績如何ヲ見ルガ當然デアル、若シ其結果吾こノ豫期スル
  如ク至ラナカッタナラバ、更ニ今日提出サルヽ如ク、帝國開
  墾株式會社ノ事ヲ-斯樣ナモノヲバ提出サレテ、吾〓更
  ニ之ヲ審議スルモ晩シト致シマセヌ、更ニ百步ヲ讓ッテ、若シ
  此帝國開墾株式會社ガ、開墾助成法案ト兩立シ得ラルヽ
  モノト政友會諸君ノ信ゼラルヽ如クアリトスルモ、此兩者ノ
  關係甚ダ明瞭ヲ缺クガ故ニ、先ヅ本年ハ之ヲ見合セテ、來
  年更ニ十分之ヲ審議シ、更ニ聞墾業者ニ向。テ金融機關
  タル性質ヲ加ヘタ所ノ、一種ノ保護會社ヲ造ルモ亦晩シトセ
  スト云フノガ、吾ミノ論旨ノ大要デアリマス(拍手起ル)井
  上君ノ今後ノ之ニ對スル御演說ヲ承リマシテ、更ニ吾〓同
  志カラ詳細ナル意見ヲ申述べマセウガ、私ハ此修正動議ヲ
  提出スル理由トシテ、大要右ノ事ヲ申上ゲテ、諸君ノ御參
  考ニ供スルノデアリマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=10

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• 011・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　井上角五郞君
  〔井上角五郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=11

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• 012・井上角五郎

  ○井上角五郞君　諸君、私ハ豫算全體ニ賛成ヲ表スル
  者デゴザイマス、サウ致シマシテ、私ノ議論ハ卽チ此豫算中
  ニ於テ、削減修正ヲ加へラレントスル點ニ就テ、原案維持ノ
  議論ヲ爲スニ限ラウト思ヒマス、諸君、開墾ニ依リ、埋立ニ
  依リ、耕地ヲ擴張スルト云フ事ハ啻ニ食糧問題ノ上ニ於
  テ必要ナルノミニ止マリマセヌ是ゾ所謂富源ノ開發デアリ
  マシテ、多々益〓其必要ヲ感ズルノデアリマス、故ニ吾ニハ開
  墾助成法案ニ向ッテ賛成ヲシダ、其助成法案ノ成立ヲ見ナ
  ガラ、尙ホ〓日帝國開墾株式會社ノ補助契約ノ件ニ關シ
  テ、贊成ヲ表スルノデアリマス、此點ニ就キマシテハ、最早何
  モ議論ヲスル事ガゴザイマセヌケレドモ、反對論者ノ議論、又
  世間ニ傳ヘテ居ル所ノ議論ンレハ內容ヲ知ラズシテ傳ヘテ
  居ル議論モアリ、內容ヲ知ンテ稍〓反對ノ意ヲ表シテ居ル者
  モアリマスガ、是等ヲ擧ゲテ論ズル前ニ當シテ、先刻豫算委員
  長ガ報告セラレタル命令條項ノ一二ヲ擧ゲテ、其意味ヲ先
  ヅ以テ明白ニシテ置キタイト思ヒマス、命令條項ノ中ニハ個
  人法人ノ開墾助成法案ニ依ッテ開墾ヲスル者ト、此會社ト
  ハ、競争ヲセシメナイト云フ一箇條ガアル、例へバ玆ニ一ノ國
  有山林ガアル、之ヲ拂下ゲテ開墾ヲシタラ定メテ宜カラウト
  思ッテ、個人ガ此山林ノ拂下ヲ望ム場合ニ當ッテ、會社ガ-
  堂々タル大會社、三千万ノ資本ヲ有シ、立派ナ者ガ株主ニ
  ナッテ居ル會社ガ又其山林ノ拂下ヲ望ンダナラバ、時ノ政府
  ノ如何ニ依ッテハ、或ハ會社ノ爲メニ其山林ガ取ラレルカモ
  知レナイ、故ニ土地ノ收得其他ニ關シテ競爭ヲセシメナイト
  云フ、命令條項二一ノ特ナル箇條ヲ加ヘタノデアリマス、斯
  ウ云フヤウナ競争ハサセヌ積リデアリマス、又啻ニ此會社ハ
  利益ノミ八朱トシテ補給スルノデハナク、萬一損失ガアッタ
  時ニハ、其損失ヲ補塡シテヤルノデアルカラ、如何ニ其損失
  ガ多クナッテ、國家ノ負擔ガドノ點ニ至ルカ分ラヌト心配ス
  ル者ガアルカラ、命令條項ハ卽チ著手スル前ニ當ッテ、天災
  其他ノ危險損害ノ虞ノ多イモノハ、之ヲ差止メルト云フ條
  項ヲ加ヘテアルノデアル、又十五箇年間ニ二十五万町歩ノ
  開墾ヲスルノデアルカラ、之ヲ一年ニ割ッテ見レバ一万六七
  千町歩、必ズ此會社ハ、一万六七千町ノ町步ハ著手シナケ
  レバナラヌト云フコトモ、又命令條項ニ書イテアルノデアル、
  果シテ然ラバ此開墾會社ハ、開墾助成法案ニ依ル所ノ開
  墾ノモノト、決シテ競爭シナイ、衝突シナイ、而モ大ナル損
  害ヲ受ケズ、而モ豫定ノ地積ハ開墾シ得ル、必ズ得サセルト
  云フノガ、此命令條項ノ趣意デアルト云フコトハ、諸君モ御
  了解デアラウト思フ、又此開墾會社ガ、聞墾助成法ニ依ツ
  テ開墾ノ權利ヲ得、許可ヲ受ケ、其助成法ノ交付金ヲ貰ヒ、
  其仕事ヲ請合フコトガ-其時ニハ請合ハヌト云フコトガ、命
  令條項ノ一箇條ニハ載ッテ居ルノデアル、此點ニ就テ唯今
  町田君ガ、ソレデハ開墾助成法案ニ依ルノ六朱ノ補給ヲ
  爲シツヽ、又更ニ會社ニ對スル八朱ノ補給ヲ受ケテ、補給
  ノ二重取ヲスルノデハナイカト云フコトヲ言ハレマシタ、町
  田君ニシテ斯樣ナ疑問ノ起ルノハ、如何ハシク私ハ承リマ
  シタケレドモ、併シ町田君ハ但書ヲ加ヘテ、尤モ計算ハ能ク
  知ラヌケレドモト仰シヤッタ、計算ヲ能ク知ラヌコトハ、町田
  サンダッテ間違フダラウト思シテ、私ハ此點ニ就テハ强チ深ク
  ハ咎メナイノデアル(拍手起ル)試ミニ考ヘテ御覽ナサイ、五
  町歩以上ノ開墾ヲスル、假リニ五町步以上ノ開墾ヲスル
  者ガ、五万圓之ヲ實費トシテ政府ニ屆出デヽ、サウシテ五
  万圓ニ對シテ六年乃至七年間年々六朱ノ補給ヲ受ケル、
  之フ會社ニ持ッテ行ッタラバドウスルデセウ、會社ガ矢張五万
  圓デ引受ケルデセウカ、之ヲ五万圓デ引受ケタナラバ政府
  ハ會社ヲ保護スル趣意ニ外レタル重役ノ行爲ト、之ヲ認メ
  ザルヲ得ナイ、何故ナラバ政府ガ會社ヲ保護スルノハ、三千
  万圓ニ對シテ年々八朱ノ配當ハ必ズ爲サシメル、之ヲ義務
  トシテ、之ガ報酬トシテ、一一十五万町步ノ開墾ヲスルト云フ
  ノガ命令デアル、其二十五万町步以上ノ開墾ヲシテ得タ
  所ノ土地ハ、自分デ所有スルコトガ出來ナイ、之ヲ安ク賣レ
  ト云フノガ、之ガ命令デアル、人ノ仕事ヲシテー-唯〓シテヤ
  レ、人ノ仕事ヲ請合ッタラ實費デ自分ノ諸入費ハ持出シテ
  ヤッテヤレト云フ命令ハ無イ、故ニ唯今ノ五町步ノ開墾ヲス
  ル個人ガ會社ニ賴ミニ行ケバ、此五町歩ノ開墾ノ實費、例
  ヘバ五万圓トスルナラバ、五万圓以外ニ會社ハ相當ノ手數
  料ソレニ掛ル所ノ役人ノ監督費、竝ニ會社ガソレニ向ッテ
  要スル所ノ資本ノ利益ダケハ別ニ要求スルノデアル、此點
  ガ町田サンニマダ御分リニナラナイ、私ハ政府委員ニ對シ
  テ、豫算委員會ニ於テ斯樣ナ事ハ聽キマセヌ、質問ハシナ
  カッタカラ、政府委員モ答ハセヌデシタケレドモ、凡ン斯樣ナ
  場合ニハ斯樣ニナルベキモノダ、決シテ是ハ二重ニナルモノ
  デナイト云フコトハ、申上ゲテ置カナケレバナリマセヌ、會社
  ノ配當ハ年利八朱デアル、此八朱ト云フコトノ意味ハ、是
  カラ先ニ私ガ議論ニ入ルニ當ッテ必要ガアルカラ、明瞭ニ申
  上ゲテ置キマス、會社ガ損失ヲシタトキニハ政府ハ補塡シマ
  ス、サウシテ八朱ノ配當ヲシマス、幾ラ利益ヲ出シテモ、會社
  ハ八朱ノ配當シカ出來マセヌ、八朱以上ノ利益ガアレバ、
  或ハ前日ノ損害補塡ヲ返還セシメ、或ハ成功シタル土地ノ
  直段ヲ減價セシメテ、會社ニハ少シモ八朱ノ配當以外ノ利
  益ヲ殘シマセヌ、故ニ解散ノ時ニ當シテ會社ハ如何ナル狀
  態ニナルカト云ヘバ、所謂法定積立金-年々幾ラカ積ン
  ダ所ノ法定積立金ガ五箇年間殘ルト云フノト、株金
  三千万圓殘ル外ニハ何モ殘ラヌ、其法定積立金ハ、
  取モ直サズ會社ノ解散ノ費用其他ニナルノデアルカラ、此
  會社ノ株主ハ十五箇年間ノ極メテ長イ年限間、八朱ノ定ッ
  夕利子ヲ以テ金ヲ貸付ケタト、同ジモノデアルト云フコトニ
  了解スルコトガ出來ルノデアル、尙ホ玆ニ命令條項ニ就テ
  一ツ申上ゲテ置カナケレバナラヌコトハ、其出來上ッタ所ノ
  田畑ハ、自作農タラントスル者、緣故者、又ハ公共團體ノ
  順位ヲ以テ之ニ賣渡ス、此値段ハ如何ニスルカト云ヘバ卽
  チ開墾實費ノ五割以內-開墾實費ノ五割增以內、例へ
  バ開墾實費ガ千圓掛ッタモノナラバ、千五百圓以内、斯樣
  ニシテ自作農者、緣故者、公共團體ニ賣渡ストー云フノデア
  ル、千圓掛ッタモノガ或ハ二千圓モスル、三千圓モスルト云
  フ場合ガアッタナラバ、中ミニ其土地ハ買手ハ多イ、ソレデモ
  尙且ツ千五百圓デ賣ラス、若シ又千圓掛ノタ土地ガ、實際
  ノ相場ガ千二百圓シカシナイ、或ハ千圓シカシナイト云フ時
  二八、時ノ相場デ之ヲ賣ラス、是ガ卽チ命令條項ノ五割增
  以内ト云フ言葉ニ當ルノデアル、諸君、此五割增以內ト云
  フコトヲ吾こガ決メテ、又之ヲ政府ガ賛成シタル點ニ就キマ
  シテハ、少シク御聽取ヲ願ヒタイ事ガアルノデアリマス、私モ
  町田君ニ倣ッテ、稍〓數字ガ交ルト云フコトガアリマスカラ、
  ソレハ能ク間違ハヌヤウニ御聽取ヲ願ヒタイト云フコトヲ
  願ッテ置カナケレバナリマセヌ、開墾助成法案ノ第二條ニ
  「助成金ハ命令ノ定ムル所ニ依リ工事開始ノ年ヨリ工事終
  了後四年ニ至ル期間內ニ於テ」云々トアリマス、果シテ第
  二條ノ如シトスレバ、開墾ニ著手シテ終了スルマデ、是ガ假
  リニ三年掛ルトスル、其後四年間デアル前ガ三年掛ッテ後
  ガ四年デアルナラバ合計シテ六年、若シ工事ノ期間ガ四年
  掛ッタナラバ、工事ノ期間ガ四年、其後ガ四年デアルカラ、合
  計シテ七年一年ハ八重ルノデアル、開墾助成法案ニ依ッテ
  年利六朱ノ交付ヲ受ケルノハ、先ヅ通常六年間或ハ七年
  間ト見テ宜カラウト思ヒマス、玆ニ一人ノ人ガアッテ、開墾助
  成法案ニ依シテ開墾スル場合ニ當ッテ、其人ガ幸ニ金ガ有ッ
  タナラバ此上モ無イ仕合デアル、若シ金ガ無カッタナラバ、借
  財ヲシテ開墾ニ著手ヲシナケレバナラヌ、此借財金利ハ正
  ニ幾何ト見テ相當デアリマセウカ、殊ニ自作農タラントスル
  者ト云フ如キ身分ヲ以チマシテ、他人ニ金ヲ借リテ開墾ヲ
  スルトシタナラバ、年利一割二分ハ已ムヲ得ナイ利子デア
  ラウト思ッテ居ル、年利一割二分ノ金ヲ借リマシテ開墾ニ著
  手シテ、六朱ハ助成法案ニ依ッテ交付セラレテ、殘リ六朱ト
  云フモノハ、開墾實費以外ニ之ヲ何トカシテ融通セザルヲ
  得ナイ、其殘リ六朱ノモノヲ融通スルニ付テ、六朱ヲ長利
  デ計算スレバ、六年掛レバ卽チ四割一分八厘ニナル、七年
  ニスレバ卽チ五割二分ニナル、故ニ開墾助感法案ニ依ッテ
  開墾ヲスル者ガ、資本ヲ一割二分デ借リテヤッタトスルナラ
  バ、他人ニ開墾ヲシテ貰シタ、一割五分以內デ買ッタノト別
  段ノ違ハナイト云フコトガ起ッテ來ル、五町步以上ノ開墾ヲ
  自ラ企テ得ル人ハ旣ニ中農デアリマス、或ハ場合ニ依ッテハ、
  五町歩以上ノ開墾ヲ企テル者ハ、地方ニ於ケル金持ト謂ッ
  テ宜シイノデアル、將ニ自作農者タラントスル者ノ如キハ、
  斯樣ナ計畫ハ出來マセヌ、斯樣ナル計畫ガ出來ナイモノガ、
  此開墾助成法案ニ依ッテ其計畫ヲスル者ト同ジヤウナ計算
  ヲ以テ、土地ヲ我所有ニ歸スルコトガ出來ル、況ヤ會社ガ
  利益シテ居ル時ハ、其値段ヲ一層減ジラレテ居ル、況ヤ政
  府ハ左樣ナル自作農者若クハ公共〓體ニ向ッテ、低利資金
  ノ融通ヲシテヤルト言ッテ居ルナラバ、此開墾助成法案コン、
  中農以下ノ農民ヲ救助スル唯一ノ便宜ナルモノデアッテ、公
  共〓體之ニ依シテ、初メテ自治ノ精神ヲ發揮シ得ルモノデ
  アルト云フコトヲ言ヒ得ルト、私ハ信ジテ疑ハヌノデアリマ
  ス(拍手起ル)諸君、斯樣ニ政府ノ命令條項ニ對シテ解釋
  ヲ企テヽ見マスレバ、恐クハ此案ニ對シテ反對スベキ者ハ無
  イデアラウト思ハレルノデアリマスケレドモ、尙且ツ町田君
  ノ如キ經濟ニ長ジタル御方ヨリ反對ノ議論ヲ聽クニ至リマ
  シテハ、更ニ進ンデ十分ナル議論ヲ試ミザルヲ得ナイノデア
  リマス、其私ガ試ミントスル所ノ議論ハ、第一ガ米麥ノ過多
  ニ至ルノヲ虞レルト云フノハ、果シテ眞實ノ虞デアルカ、所
  謂杞憂ニ屬スルモノデアルカト云フコトガ第一デアリマス、
  第二ハ補助ガ厚キニ失スル、殊ニ開墾助成法案ト此會社
  契約ノ案トヲ較ベテ權衡ヲ失ッテ居ルト云フノハ、果シテ道
  理アル反對デアラウカ、第三ニハ是ゾ所謂開墾ノ本旨ヲ果
  タシ、是ゾ所謂農民ノ救濟デアルト云フコトヲ、反對論者
  ハ忘レテ居ルノデハナイカト云フ、此三點ニ就テ論ジテ見ヤ
  ウト思フノデアリマス、町田君ハ必ズ記憶セラレルデアラウ、
  否ナ確ニ記憶セラレテ居ル、開墾助成法案ヲ提出スル時ニ、
  政府ハ說明シテ斯樣ニ言ウテ居ル、斯樣ニ開墾助成法案
  ヲ實行シ、尙ホ從來ノ如キ手段ニ依ル所ノ開墾ヲ進メ、耕
  地整理ヲ爲シ、農事ニ改良ヲ爲シ、竝ニ朝鮮臺灣ノ米麥
  ヲ我國ニ移入シタナラバ、米ハ十年以後ニシテ初メテ自給ス
  ルコトヲ得ル、麥ハ二十年以後ニシテ初メテ自給スルコ
  トヲ得ル斯樣ニ開墾助成法案ヲ說明スル時ニ政府ハ
  說明ヲシテ居ル、幾度カ委員會ニ於テ、政府委員ハ開墾助
  成法案ニ於テ說明ヲ致シテ居リマス、私ハ實ハ其委員會
  ニ臨ンデモ見マセヌガ爲メニ、委員會ノ速記錄ヲ調ベテ見マ
  スルノニ、政府委員ガ誰一人トシテ、此開墾助成法案ガア
  レバ、最早米麥ノ供給ハ十分ナリトハ申シテ居リマセヌ、斯
  ク色とノ方法ヲ行ヒ、併セテ此開墾助成法案ガ豫期ノ如ク
  進メバ、米ハ十年以後ニシテ自給スル、麥ハ二十年以後ニ
  ハ自給スベシト申シテ居ルノデアリマス、十年間ハ足ラナク
  テモ宜シイノデアラウカ、二十年間ハ不足シテモ構ハヌノデ
  アラウカ、國家自給自足ヲ望ムト云フ點ハ、實ハ明日ヲ待
  タズ今日ヨリ自給自足ヲ望ムノデアル、故ニ開墾助成法案
  ヲ出ス時ニハ、之ヲヤッタナラバ十年二十年後ハ幾ラカ安心
  ニナレルト思ッタガ、今ヤ帝國開墾株式會社ト云フモノヲ發
  起シテ、開墾助成法案ト稍〓效力ノ匹敵シタルモノヲ出シ
  テ來タカラ、モウ一ツ之ヲ實行シテ、米ノ十年デ自給スルモ
  ノハ、切メテ縮メテ五年ニシ、麥ノ二十年ニ自給スルモノハ、
  切メテ縮メテ十年ニシヤウト云フノガ此案ノ出タ所以デア
  ル、町田君ハ彼ノ案ヲ出シタ時ニ一緒ニ出シテ呉レタラ宜
  カラウ、彼ノ案ヲ出シテ吳レ夕時ニ、切メテ斯ウ云フ案ヲ出
  スト云フコトデモ言ッテ呉レタラ宜カラウ、此問題ハ黨派問
  題デハナイ、此問題ハ卽チ國家問題デアル、根本的ニ之ヲ
  論ジナケレバナラヌト仰シヤル御方ガ、何モ其議案ヲ出スノ
  ニ、同時デナカッタラウガ、遲カッタラウガ、早カッタラウガ、ソン
  ナ手續ノ彼此ヲ言ハズ(拍手起ル)其手續ノ彼此ヲ言ハズ
  シテ、十年ガ五年ニナルノハ仕合デアル、二十年ガ十年ニナ
  ルノハ仕合デアルト論ジラレテコン、國家ノ根本問題ニ觸レ
  タモノデアラウト私ハ信ジテ居ルノデアリマス(拍手起ル)諸
  君、果シテ然ラバ其五年十年經ッタ後ニ自給自足ガ濟ン
  デ、開墾助成法案ニ依ッテ二十五万町歩成功シ、此會社
  補助ノ案ニ依ッテ、二十五万町歩成功シテ、五十万町步ノ
  田畑ガ殖エタナラバ、米麥過多ト云フコトニ苦シム虞ハ無
  イカト言フカモ知レナイ、諸君、是卽チ强テ言ヘバ意氣地ノ
  無イ議論、桑ガアルデハナイカ、麻ガアルデハナイカ、蒟蒻玉
  モアル(笑聲起ル)馬鈴薯モアル、海外ニ輸出スベキ農產ハ
  甚ダ少クナイノデアリマス、現ニ〓日我國ノ耕地面積ニ較
  ベテ唯今ノ五十万町步ヲ計算シテ見レバ、僅ニ百分ノ八ニ
  過ギナイ、幾ラ我日本國ノ田畑ガ百ニ付テ八ノ割合デ增
  加シタカラ、之ガ爲メニ耕作ニ堪ヘナイ、之ガ爲メニ米麥ノ
  多キニ苦シム、之ガ爲メニ新シキ農產ヲ見付ケテ、海外ト
  貿易ヲ開キ得ルト云フニ至ラヌト云フ程ノ農家デモナカラ
  ウヂヤナイカ、ソレ程ノ我國デモナカラウヂヤナイカ、要スル
  ニ根本ノ問題ニ就テ二十五万町歩既ニ開墾シ、更二二十
  五万町步開墾スルト云フノハ、根本ノ問題ニ觸レルト言ハ
  レルケレドモ、何所ガ觸レル、自給自足ヲ早メテ、尙ホ其上
  ニ海外ノ貿易ヲ助ケル、毫モ根本問題ニ觸レル所ハ無イ、
  唯〓觸レルノハ議案ノ提出其宜シキヲ得ナカッタノガ、癪ニ
  障ル位ノ障方ヨリ外ニハ無イノデアル(拍手スル者アリ「百
  分ノ八、ソンナ算盤ガ何所ニアル」「算盤ガ違フ」ト呼フ者ア
  リ)諸君、十五箇年利八朱ノ貸付同樣ノ株式ハ、株主ニ
  取ッテ果シテ厚キニ失スルモノデアラウカ、私ハ之ヲ以テ薄キ
  ニ失スルトハ言ハナイケレドモ、決シテ厚キニ失スルモノトハ
  言ハナイ、今日ノ經濟狀態カラ考ヘ、今日ノ金融狀態カラ
  考へ、或ハ三年乃至五年ノ据置デ借リルノスラ、七朱八朱
  ノ利子ハ皆ナ出シテ居ル、十五箇年間ヲ据置イテ、十五箇
  年目ニ忽チ總テヲ戾ザレルト云フヤウナ斯樣ナル貸金ニ對
  シテ、八朱ト云フモノハ强チ喜ンダ金利デハナイノデアル、尤
  モ此八朱ガ全クドウモ捨テタ金利デモナイノハ、政府ノ保
  障カ付イテ居ルカラ、確ニ貫ヘルダケバ信用ガアルノデアル、
  之ヲ若シ南滿鐵道ノ株トカ、或ハ東洋拓殖ノ株トカ、近ク
  ハ染料會社ノ株ノ如キニ較ブレバ、年利八朱、年利八朱デ
  ナクテ七朱デモ、現ニ此頃水力電氣鐵道會社抔ヲ始メレ
  バ、年利五朱ノ株ヲ喜ンデ人ガ持ツ、年利五朱デモ喜ンデ
  う
  人ガ持ツト云フノハ、前途ニ望ガアル、南滿會社トカ、東洋
  拓殖、乃至若クハ染料會社ノ如キハ、或ハ大ニ擴張セラレ
  テ、株劵ガ尙ホ增加スルノ見込ガアル、或ハ利益ガ增加シ
  テ配當ガ殖エテ來ルト云フ望ガアル、前途ニ望ガアルカラ、
  輕便鐵道、水力電氣ノ如キハ、五朱ノ利子デモ尙且ツ之
  ヲ持ツ者ガアル、之ヲ今囘ノ此事業ハ年利八朱、ドンナニ
  藻搔イテモ騒イデモ年利八朱ヨリ多クハナイ、但シ減ラナ
  イ、減ラナイトハ云ヒナガラ、重役ガ-之ヲ監督シテ行ク
  重役モ人間デアル、萬一間違ガナイトハ言ヘナイ、其重役
  個人ノ間違カラ會社ニ生ジタル損害ハ、會社株主ノ負擔
  トナラザルヲ得ナイ、多少危險ハ帶ビテ居ルケレドモ、唯、八
  朱ニ決ッテ居ルト云フノデアッテ、何等面白味モ樂ミモナイカ
  ラ、之ヲ南滿、東拓、染料、若クハ輕便鐵道トカ、水力電
  氣ノ如キ株式ト同視スル譯ニハ行カナイ、或ハ言ハン、公
  債ヨリハ利子ガ宜シイ、其通リデアルケレドモ、公債ノ如キ
  便利ナ融通ノ品物トハナラナイ、郵便貯金ヨリハ甚シク利
  子ガ宜シイ、郵便貯金ハ旦ニ預ケテタニ出スコトガ
  出來ル、左様ナモノヂヤナイ、是ガ決シテ今日ノ經濟
  狀態カラ考へ、金融ノ狀況カラ考ヘテ、金利ガ高キニ失
  シテ居ルモノトハ言フコトガ出來ナイノデアル、唯〓一ツ茲
  ニ殘ル所ノ問題ハ、開墾助成法案ニ於テハ六朱、此會社
  ノ補助契約ハ八朱デアル、六朱ヨリハ八朱ガ多イト云フコ
  トヲ意味シテ居ラルヽト見エテ町田君モ助成法案ハ六朱ダ
  ガ云々ト云フコトヲ言ハレル、町田君、-君ノ如キ計算ニ
  達シタ御方ハ、計算ニ於テ目標ガ違ヘバ、卽チ其答ハ違ウ
  モノデアルト云フコトハ、御承知ニナラナケレバナラヌノデア
  ル(拍手スル者アル)開墾助成法案ハ、支出シタル實費ニ對
  シテ年々六朱、ソレヲ貰ウノガ開墾助成法案ノ取極メデア
  ル、支出シタル實費ノ總額、今囘ノ會社補助ノ契約ハ資本
  ニ對シテ八朱、此資本ナルモノハ折返シ、折返シ、折返シ使
  ハレタモノガ支出ノ總額デアル、(笑聲起ル)之ヲ私ガ論ズル
  ニ當ッテ、或ハドウダラウト御疑ノ御方ガアルト見エテ笑ッテ
  居ル、笑ッテ居ル御方ニ向ッテ餘リ數字ノ事ノミ言ッテ居ルノ
  モ、少シ倦キガ來ルデセウカラ、外ノ御話ヲ申上ゲル、小學
  校ニ於テ四年級、此生徒ニ向ッテ先生ガ日給一圓ノ職工ト
  時給十錢ノ職工ガアルガ、何方ガ餘計取ルカト一云フ問題
  ヲ出シタ、一日ノ給金一圓ノ職工ト一時間ノ給金十錢ノ
  職工ガアルガ、何方ガ多ク取ルカト云フ問題ヲ出シタ、一番
  劣等ナ生徒答ヘテ曰ク、一圓ノ方ガ多イト言ッタ、稍〓優ヲテ
  居ル方ノ生徒ハ答ヘテ曰ク、十錢ガ多イト言ッタ、最モ優ッタ
  生徒ガ、先生時給ノ職工ハ、日ニ何時間働キマスカト斯ウ
  言ッタ、日ニ九時間働ケバ一圓ヨリ少ナイケレドモ、日ニ十
  一時間働ケバ一圓ヨリ多イノデアル、徒ラニ數字ノ八ト六
  トヲ較ベテ八ヨリ六ガ少ナイ、六ヨリ八ガ多イト云フコトヲ
  言フノハ、算術ヲ知ラヌ議論ト言ハナケレバナラヌ(拍手起
  ル)左樣ナ有樣デアリマスカラ、御覽ナサイ(「違ウ〓〓」ト呼
  フ者アリ)唯〓町田君ノ言ハレタ如ク、此開墾助成法案ニ
  依シテ二十五万町步ヲ成功スル(「議題ガ違ウ」「何ガ分ルカ」
  ト呼フ者アリ)其補給ハ一年一朱デアル、開墾助成法案ニ
  依シテ二十五万町歩ヲ成功スル、其補給ハ一年六朱デアル、
  然ルニ合計デ政府ノ豫算ハ四千九百万圓ニナッテ居ル、帝
  國開墾株式會社ハ同ジク二十五万町步ヲ成功スル、其補
  給ノ利子ハ、始メカラ終リマデ悉ク利益ガ無カッタトシテ三
  千六百万圓デアル、一方ハ二十五万町歩ヲ扱ヘルニ三千
  万圓ノ金ヲ以テ掛ル、政府カラ貰ヘルモノハ三千六百万圓
  一方ハ年々六朱デ一ツし〓ヤッテ行ク、其金高ハ政府ノ豫
  算ニ依レバ四千九百万圓、何故ニ斯ンナ六朱ノ方ガ八朱
  ヨリ多イト云フ答ガ出テ來ル、是ニ於テ日給ト時給ノ差ヲ
  諸君ハ能ク知ラナケレバナルマイト思フ(「駄目ノ價値ガ下
  ルゾ」ト呼フ者アリ)諸君、會社ハ三千六百万圓ノ金ヲ、年々
  八朱ヤルトスレバヤラナケレバナラヌケレドモ、會社ハ其目論
  見書ニ於テハ、僅ニ六百万圓貰ヘバ後トハ貰ハヌデ濟ムデ
  アラウト言ッテ居ル、是ハ會社ノ言ッテ居ルコトデ、吾ニハ之
  ヲ當テニシナイケレドモ、豫算ハ卽チ豫算デ、恐クハ六百万
  圓内外ノ補給デ濟ムト思ッテ居ル、是ハ何故デアルカト云ヘ
  バ、卽チ資本ニ對シテノ補給デアルカラ左様デアリマス、若
  シ此開墾株式會社ガ、助成法案ノ如ク支出シタ總高ニ向ツ
  テ六朱ノ補助ヲ受ケルモノトシタナラバ、如何ナル計算トナ
  リマスカ、開墾株式會社ノ目論見書ニハ、十五年間著手ス
  ル、其田畑ノ總計、其算出ノ資金總高ハ一億六千二百五
  十万圓ヲ計上シテ居ル、此一億六千二百五十万圓ニ對シ
  テ、開墾助成法案ハ卽チ六年若クハ七年掛ル、之ヲ六年ト
  見テ、六箇年間六朱ツヽノ利子ヲ掛ケテ見タナラバ幾ラニ
  ナルカ、五千八百五十万圓ノ金ヲヤラナケレバナラヌノデア
  ル强テ狹イコトヲ言ヘバ、帝國開墾株式會社ガ斯樣ナル會
  社ヲ立テヽ、斯樣ナル補助ヲ貰フ、サウシテ契約ヲシテ命令
  ヲ受ケテ窮ニニテテヤルヨリモ、開墾助成法案ニ依ッテドン
  ドンヤッテ行キマスレバ、貰フベキ補助多クシテ、出來上ッタ品
  物ハ、自分勝手ニ自在ニ始末ガ出來ル、ソレニモ拘ラズ斯
  樣ナルモモノヲ拵ヘテ、幾ラカ國家ニ富豪ノ面目ヲ保ッテ見タ
  イト云フノハ、近頃富豪トシテ上出來ナルコトデアルト、私
  ハ思ッテ居ルヤウナル次第デアリマス、然ルニ之ニ對シテ豫算
  委員會抔ニ於キマシテ、諸君カラ是ハ政府カラ勸メタカ、是
  ハ實業家カラ望ンダカト云フテ、甚ダ富豪々々ト云フ言葉
  ヲ頻リト言ッテ、前年ノ鋼片拂下問題ト類似シタ問題デナ
  イカト云フ如キ念慮ヲ聽ク人ニ起サシメタノハ、片腹痛キ次
  第デアルト私ハ思フ(拍手起ル)諸君、開墾ハ一種ノ營利事
  業デアリマス、開墾ハ一種ノ營利事業デアル、儲ケルガ爲メ
  ニヤル仕事デアル、何レ儲ケルガ爲メニヤル仕事デアルノヲ、
  開墾助成法案ハ一ツとミニ打切ッテ、之ニ補助ヲヤルノデア
  ル、故ニ開墾助成法案ニ依シテ開墾シタ者ノ中ニハ、大變ナ
  仕合ナ者モアリマセウ、開墾シタ土地ハ實費ノ倍ニモナリ三
  倍ニモナル、然モ其間ノ利子六朱ヲ貰ッテ、又甚ダ不仕合ノ
  人モアリマセウ、開墾シタケレドモ物ガ出來ナイ、物ガ出來
  ハ出來タケレドモ、丁度翌年水害デ流シテシマッタト云フ不
  仕合ナ人モアリマセウ、是等ハ利子ノ補助額ヲ貰ッタト云フ
  コトガ、天カラ役ニ立タナイ、要スルニ開墾助成法案ハ一ツ
  一ツニ切ッテ補助スルノデアルカラ、或者ハ仕合ヲ受ケ、或者
  ハ不仕合ヲ受ケル、帝國開墾株式會社ハ、始メカラ終リマ
  デ二十五万町步ヲ一纏メニシテ、之ニ對シテ補助ヲ加ヘル
  ノデアルカラ、或者ハ儲ケル、或者ハ損ヲスル、復夕或者ハ儲
  ケ、或者ハ損ヲスルコトヲ重ネ〓〓テ行シテ、然ル後ニ所謂營
  利會社デアル、徒ラニ損ノ立ツ仕事ヲスルモノデナイ、結局儲
  カルト云フコトガアルカラ、年八朱ヅヽノ配當ヲ爲スダケノ補
  助ヲ貰ッテ居ルケレドモ、僅ニ四年モ經テバ、六百万圓位ヲ貰
  ヘバ、殘リ三千万圓ハ貫ハヌデ濟ムト云フ計算ガ出ルノデア
  ル、是ニ於テ乎八朱ノ補助ヲ爲ス場合ニ在ッテハ、缺損ヲ補
  塡シテヤルト云フコトノ問題ガ生ジテ來ル、一ツここノ場合ニ
  缺損ヲ補塡シテ來ルト云フ問題ハ生ジナイ、一方ニ缺損ヲ補
  塡シテヤリ、一方ニハ補塡シナイト云フコトハ、其間ニ於テ權
  衡ヲ失フデハナイカト一云フ反對、是ハ町田君カラ聽カナカッ
  タケレドモ、サウ云フ反對ガアルノハ、唯〓ノヤウナ譯デアル
  カラ是亦權衡ヲ失ッタモノデナイト云フコトハ、玆ニ明白ニ
  シテ置クコトガ出來ルノデアル、諸君、八朱ノ配當ヲ補給ス
  ルト云フコトハ、今日ノ經濟狀態、金利ノ有樣カラ考ヘテ、
  決シテ厚キニ失シナイ、サウシテ其八朱ト六朱ト較ベテ、若
  クハ一方ハ損害ヲ補塡シ、一方ハ損害ヲ補塡シナイト云フ
  コトガ、助成法案ハ、會社契約トノ間ニ何等權衡ヲ失ッタモ
  ノデナイ、是ダケノ事ハ明瞭ニ御分リニナリマセウ、先刻町
  田君ガ御演說ヲ爲スッテ、井上ノ說ハ今聽ケヌ、聽イタラ更
  ニ代ッテ論ズル積リデアルト仰シヤッタカラ、願クハ明瞭ニ、左
  樣ナラズト云フコトノ反證ヲ擧ゲテ戴キタイト思フノデアリ
  マス、加之此五町步以上ノモノハ、卽チ助成法案ニ依ルノ
  開墾ハ、開墾シタル土地ハ自ラ所有スルコトガ出來ル、人ニ
  賣ルコトモ出來ル、又自分ニ所有シテ人ニ小作サスコトモ
  出來、勝手次第ニ其土地ノ處分ガ出來ル、會社ニ於テハ
  必ズ之ヲ自作農タラントスル者、或ハ緣故者、若クハ公共
  團體ニ賣拂ハナケレバナラナイ、然ラザレバ則チ之ヲ普通ニ
  賣ルトシテ、白ラ所持スルコトガ出來ナイ、開墾助成法案ニ
  依ルモノハ、自由ニ土地ノ撰擇ヲ爲シ得ルノデアル、此會社
  ハ左樣ナ事ハ出來ナクテ、政府ノ命令ニ從ハナケレバナラヌ
  モノデアル、サウシテ政府ヨリ補給サレマシテ、補償セラレタ
  ル金高ニ至ッテハ、先刻モ申上ゲタヤウナモノデアルトスルナ
  ラバ、此會社コン助成法案ヨリハ、惡キモノナリト云フコト
  モ言ヒ得ルト思ヒマスガ、私ハ徒ラニ惡キモノナリト玆ニハ
  申シマセヌガ、願クハ斯樣ナル會社ガ成立チ得レバ宜シイガ
  ト心配シテ居リマス、是非成立タセタイノデアリマスカラ、マ
  ア相當ニ申シテ置キタイト思ヒマス、諸君、果シテ然ラバ、
  第一ノ米麥ノ過多ニ至ルヲ怖レルト云フ問題ハ、既ニ杞憂
  ニ過ギナイ、第二ニ其補助ガ厚キニ失シ、就中雨者權衡ヲ
  失シテ來ルト云フ問題ハ、要スルニ算術ヲ知ラザル者ノ頭
  カラ言ッタノデアル、否ナ多少ノ理由ハ此ニ在ル、ソレハ會社
  ガ-帝國開墾株式會社デアリマス、目論見書ト云フモノ
  ヲ印刷シテ、其目論見書ノ定款第三十五條ニハ斯樣ナ事
  ガ書イテアル「前條ノ配當金ガ拂込濟株金額ニ對シテ年
  百分ノ八ノ割合ヲ超ユルトキハ其超過額ノ半額ハ特別準
  備金トシテ之ヲ積立テ其殘額ハ各株主ニ配當シ又其一
  部ヲ役員ノ賞與金又ハ後期繰越金トス、但シ其超過額ヨ
  リ特別準備金ヲ控除シタル殘額ハ拂込株金額ニ對シ年
  百分ノ四ノ割合ヲ超ユルトキハ其超過額ハ之ヲ特別準備
  金トシテ積立ルモノトス」斯樣ナ事ガ書イテアル、言ヒ換へ
  レバ損ヲシタトキハ、總テ損ヲ埋メテ貰ッテ八朱ノ配當ヲス
  ル、愈、儲カッタナラバ八朱ドコロデナイ、一割二分マデ配當
  スル、而モ利益ノ半分ハ積ンデ置イテ、後日何カノ時ニ之ヲ
  分配スル、斯ウ云フヤウナコトニシタイト云フコトガ定款ニ
  書イテ、印刷ニマデシタノデアルカラ、世ノ耳目ヲ以テ任ゼラ
  レル新聞記者其他ノ人ミハ、早クモ此事ニ注意シテ、此開
  墾會社ノ要求ハ甚ダ多キニ過ギル、此開墾會社ニ對スル
  手當ハ、甚ダ厚キニ過グルト云フ議論ガ起ッタノデアリマス、
  私共モ當時此印刷物ヲ見タ時ニハ、此案ニ反對シヤウト
  思ッタ、然ルニ政府ハ左様ナ事ヲ排斥シテ、八朱以上ノ配
  當ハサセナイ、若シ餘ル金ガアレバ、之ヲ重役ニ分タサセナ
  イ、之ヲ積立テヽ置クコトハサセナイ、卽チ政府ノ補給シタ
  ル金ヲ返還セシメテ尙ホ餘アレバ、成功シクル田畑ノ値打
  ヲ安クサセル、況ヤ其田畑ヲ賣却サセルニハ、自分ノ思ヒ思
  ヒノ値段ヲ以テ賣ラシメナイ、開墾實費ノ五分マデヲ制限
  トシテ、其制限ニ於テ賣ラシメルト、斯ウ制限ヲ付ケタ、諸
  君ハ或ハ昨日豫算委員會ノ結果、一度何カノ御都合デ離
  席ヲシテ、今日豫算委員長ノ御報告ヲ御聽ニナラヌデ、其
  前ノ事ヲ以テ彼此言ウテ居ルノデナカラウカト私ハ思フヤ
  ウナ心持ガスル(拍手起ル)是ハ旣ニ取消シテ、今日ノ政府
  ノ態度ニ立戾レバ、何所ニ權衡ヲ失シタモノガアル、何所ニ
  厚キニ失スルモノガアルカト云フコトハ、恐クハ故ラニ反對
  スル意思ナキ諸君ニハ、明瞭ニ諒解セラレタコトデアラウト
  思フ(拍手起ル)諸君、最後ニ-最後ニ-最後ニト云フ
  ノハ、卽チ第三番目ノ議論、今日地方農家ノ利益ヲ圖ラン
  トスルナラバ何ガ必要デアルカト云フナラバ、自作農ノ數
  ヲ殖ス、卽チ中流以下ノ農民ヲシテ、安堵ヲ得セシムルト云
  フコトガ大切ナ事デアル、第二ニ何ガ必要デアルカト云ヘ
  バ、自治團體、町村、是等町村ヲシテ相當ナル基本財產ヲ
  得セシメ、相當ナル收八ヲ得セシムルト云フコトガ、是ガ一
  番大切ナ事デアル、地方農民ノ便益ヲ圖リ、地方農家ノ改
  良ヲ圖ル、勿論金融機關モ設ケナケレバナラヌ、勿論農事
  ノ改良ヲサセテ行カナケレバナラヌ、彼等ニ對シテ又〓育ヲ
  十分ニシテヤラナケレバナラヌト云フコトハ、分リ切ッテ居ル
  ケレドモ、就中公共團體ト云フモノハ、相當ノ財産ノ餘裕
  アラシメ、殊ニ自作農ヲ多クシテ、農民ニ安堵ノ場所ヲ得セ
  シムルト云フコトハ、目下第一ノ急務デアルト云フコトハ分
  リ切ッテ居ル、若シ此開墾問題ハ取リモ直サズ食糧問題デ
  アル、食糧サヘ得ラレヽバ宜シイノデアル、其他ノモノハ顧ミ
  ルニ及バヌト言ハレルナラバ兎モ角モ、開墾問題ハ單ニ食糧
  問題デナイ、卽チ富源ノ開發デアル、富源ヲ開發シテ、自ラ
  富源ニ近ヅキ得ザル者ヲシテ近ヅカウメルト云フノガ、開墾
  奬勵ノ本旨ナリトセバ、自作農ヲ進メルコトヽ、公共團體ヲ
  シテ財產ノ餘裕ヲ得セシメルト云フコトハ、自ラ開墾其ノモノト
  相次イテ起ル問題ト言ハナケレバナラヌ、然ルニ昨日モ議論ヲ
  聽クコトヲ得マセヌデシタケレドモ、隣リニ列ンデ居ル鈴木梅四
  郞君、私ハ此鈴木梅四郞君ニ對シテ、從前ヨリ敬意ヲ拂ッテ
  居リマスケレドモ、兎モ角モ今日ニ至ルマデ所謂社會政策
  ニ沒頭シテ、中流以下ノ農ト云ハズ、商ト云ハズ、工ト云
  ハズ、中流以下ノ人民、就中無資無產ノ人とヲ救濟スルト
  云フコトニ殆ド日ニ夜ヲ次イデ、所謂實生活主義ヲ實行
  セラレテ居ルノハ感心シテ居ルノデアリマス、故ニ私ハ言ツ
  夕、貴下ガ若シ開墾ト云フ問題ヲ、社會政策ト云フコトノ
  上ニ引較ベテ御考下サイマスナラバ、假シ開墾助成法案ニ
  ハ反對スルトモ、此案ニハ賛成ナサル筈デアルト斯ウ私ハ
  言ッタガ、中ミ賛成ハ爲サラヌ、要スルニ失禮ナガラ數字ガ
  御分リニナラヌト云フコトヲ申上ゲル外ナイノデアル(「其通
  リ」ト呼フ者アリ)何故ト云フナラバ、五町步以上ノ開墾ヲ
  スルト云フコトハ、尋常一樣ノ者ニハ出來マセヌ、今ヤ將ニ
  自作農トナリタイ、人間ト生レテ鋤鍬ヲ擔イデ、朝ニ家ヲ出
  デヽタニ歸ルノデアルケレドモ、切メテハ生キテ居ル內ニ、自
  分ノ名義ノ土地ガ五段步デモ一町步デモ有ッテ見タイト云
  フ位ノ人間デ、五町步以上ノ開墾ヲスル資力ハゴザイマセ
  ヌ、又町村ニ依ッテハ色とノ狀態ガアリマスケレドモ、此町
  村ニハ五十町歩或ハ七十町步ノ荒地ガアル、森林ガアルト
  云フガ如キ町村ニ行ッテハ、五十町步七十町步ト云フ土地
  ヲ開墾スル資金ヲ調達スルカハ、其町村其公共團體ニハ
  ゴザイマセヌ、斯樣ナル場合ニ於テ、帝國開墾株式會社ガ
  大ナル資本ヲ以テ開墾ヲシタモノヲ、怡モ開墾助成法ニ依
  ルト同一ノ直段デ以テ、オ前五段步要ルナラヤラウ、七段
  要ルナラヤラウ、此村デ之ヲ全部持ツト云フナラバ、持タシ
  テヤラウト云フコトガアッタナラバ、五町步以上ノ者ハ開墾
  助成法ノ恩惠ニ與リ得ルモ、五町步以下ノ者ハ、此會社
  ニ居ラザレバ其恩惠ニ與カレナイ(拍手起ル)然ルニ徒ラニ
  富豪ノ發起デアルカラト云フ言葉ニ拘泥シテ、鈴木君ガ之
  ニ反對サレルニ至ッテハ、私ハ極ク分リ易イ一例ヲ申上ゲ
  ル、丁度昨年モ米ガ高クテ、其時ニ米ヲ安ク賣ルガ宜シイ
  ト云フノヂ、志アル者ハ多少ノ義捐ヲシタ、畏多クモ天皇
  陛下ヨリ御賜金ガアリ、政府ニハ臨時ノ支出ヲ爲シタ、金
  持ハ皆ナ多少ノ金ヲ義捐シタ、所ガ是ハ村ノ名ヲ申シテ宜
  シイガ、或縣ノ或郡ノ或一村ニ於テハ、吾ミハ天子樣ノ御
  金ヤ政府ノ金ハ貰フケレドモ、何モ金持ノ金ヲ貰ハヌデ宜
  シイ、ソレ程困ッテ居ラヌト言ッテ、之ヲ拒絕シタ處ガアルト
  云フコトヲ知ヲテ居ル(〓然リ〓〓」ト呼フ者アリ)之ヲ拒絕シ
  夕其者ノ精神ハ兎モ角デアルケレドモ、苟モ義捐ト名ノ付
  イテ救助ニスベキ金ガ集ッタナラバ、其金ガ何處カラ集マラ
  ウガ、救助スル目的ガ達スレバ宜イヂヤナイカ、救助ノ目的
  ニ足ラヌモノナラバ、如何ナル金トテモイケナイケレドモ、救
  助ノ目的ニ足ルモノナラバ、金持ノ金ダトテ宜シイ、貧乏人
  ヲ救フガ宜シイノデアル、然ルニ此會社ハ富豪ガ目論ンダノ
  デアルカラ、小農若クハ地方團體ノ利益ニハナラヌデアラウ
  1、一モ二モナク排斥シテ、折角永年ヤ,テ居ラッシヤッタ社
  會政策實行ニ聊カタリトモ(「八朱々々」「八朱ハドウシタ」
  「マダ分ラナイノダ」ト呼フ者アリ)社會政策ノ上ニ於テ如
  何カト云フ考ヲ起サシメルノハ、鈴木君ニ不似合ナヤウナ心
  持ガスルノデアリマスガ、恐ラク此點ニ就テハ、鈴木君ヨリ
  後カラ聽クコトヲ得ルコトガ出來ヤウト思ウテ、之ヲ樂ミニ
  シテ居ルノデアリマス、諸君、斯樣ニシテ小農ガ土地ヲ得、
  斯樣ニシテ公共團點ガ土地ヲ得、其土地ハ一時ニ金ヲ出
  サヌデモ得ラレルノデ、低利資金ヲ借リテ得ラレルトシタナ
  ラバ、實ニ此案コン、地方救濟ニ最モ大切ナルモノデアルト
  申スコトガ出來ルノデ、反對論者ガ忘レタ所ノ良點、反對
  論者ガ言ハナイケレドモ-反對論者ノ氣付カイ所ノ此案
  ノ最良ナル點ハ、是デ自ラ御了解ヲ得タコトヽ思フノデアリ
  マシー、諸君、私ハ一昨年歐洲戰爭ノ眞最中ニ於テ、一ノ印
  刷物ヲ拵ヘテ、諸君ノ御手許ニモ差上ゲタコトガアル、要ス
  ルニ此際大ナル公債ヲ募ッテ、サウシテ置イテ戰後必ズ來ル
  ベキ所ノ反動ガ來ッタ時分ニハ、其公債ノ金ヲ出シテ、鐵道
  ヲ架ケルナリ、治水事業ヲヤルナリ、其他港灣改良可ナリ、
  道路ノ建設可ナリ、各種ノ事業ヲ戰後ニ起シテ、其來ル反
  動ヲ幾ラカ防グガ宜カラウト云フ事ヲ論ジタコトガアル、今
  原內閣ガ出來テ以來ノ全體ノ施政ヲ見ルノニ、卽チ原君
  ノ在野ノ時ニ長ク唱へラレタルガ如キ積極政策ヲ實行シ
  テ、既ニ今マデニ於テ成立シタル所ノ豫算ニ於テ諸君ガ了
  解セラルヽガ如ク、鐵道ノ建築ガ大ニ增加シタ、道路、港
  灣、治水ノ改良モ亦大ニ增加シタ、其他各種ノ事業ヲ積極
  的ニ企テタ、之ニ依ッテ地方ガ現ニ米デモ安クナレバ、地方
  ガ不景氣ヲ增スノデアラウケレドモ、其不景氣ヲ幾ラカ抑ヘ
  ルコトガ出來ルデアラウト、私ハ原君ガ從來積極的方針
  ヲ唱ヘラレ、原內閣ノ積極的方針ガ、國家施政ノ上ニ最
  モ適シテ居ルガ爲メニ、之ヲ專ラ實行スルト云フ(拍手
  起ル)此點ニ於テ甚ダ私ハ原君ノ內閣ヲ謳歌スル者デ
  アル、況ヤ此內閣ハ苟モ左樣ナル事ヲシテ、戰後ノ不景氣
  ヲ防グニ足ル機會アレバ、之ヲ捉ヘテ不景氣ヲ防ガントシ
  テ、卽チ開墾助成法案ノ成立シテ未ダ日淺キニ、早クモ此
  帝國開墾株式會社ノ補助契約ノ案ヲ出シテ、更ニ此處彼
  處ニ幾百幾十ノ人ガ這入ッテ仕事ヲシテ、地方ヲ賑ハスノ
  手段ヲ執ルト云フ事ニ就テハ、獨リ開墾其ノモノニ對シテ
  此內閣ガ能ク要領ヲ得テ居ルノミナラズ、國家ノ大勢ニ通ジ
  社會ノ氣運ニ通ジテ爲スベキ仕事ヲ爲スベキ時ニ於テ企テヽ
  居ルモノデアルト云フコトヲ、爰ニ斷言シテ憚ラヌモノデア
  リマス(拍手起ル)是ダケヲ以テ本案賛成ノ理由ト致シマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=12

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• 013・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　鈴木梅四郎君
  〔鈴木梅四郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=13

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• 014・鈴木梅四郎

  ○鈴木梅四郞君　諸君、開墾會社ノ問題ニ就キマシテ、
  立論ノ基礎ニ於テハ多少ノ差ハゴザイマスル點モゴザイマス
  ルガ、大體ニ於テ私ト所見ヲ同シウスル町田君ガ此案ニ對
  シテ、政府ノ矛盾、衝突、其他有ユル失態ヲ來シテ、議場ニ
  一種ノ感ヲ與ヘマシタ事ニ就テハ、遺憾ナク御話ニナッテ居
  リマスルカラ、私ハ此點ニ就テ爰ニ繰返シテ申スコトハ止シマ
  ス、唯ニ此案ノ賛成者デアル所ノ井上君ガ長々ト雄辯ヲ揮
  ハレマシタ、ソレヲ謹聽致シテ居リマシタガ、此井上君ノ御
  議論ニ對シテモ、大シタ駁撃ヲ加ヘル程ノ値打ガ無イト私
  ハ信ジテ居リマス「ヒヤ〓〓」「生意氣言フナ」「分ラヌナ」ト
  呼フ者アリ)此點モ餘リ深クハ論ジマセヌ(「大ニ論ジロ」ト
  呼フ者アリ)私ハ本案ニ賛成ヲ致シマスコトノ出來ナイ根
  本的ノ理由ヲ、一二申上ゲテ見タイト思フ、政府ガ開墾助
  成法案フ提出致シマシテ、此案ニ依ッテ米麥ノ供給ハ近キ
  二三十年ノ間ハ、之ニ依テ確ニ米麥ノ調節ヲ全ウスルコト
  ガ出來ル、所謂國民ノ食糧問題ヲ解決シ得ルト云フ、責任
  ヲ持ッテ提出サレタル助成法案-其助成法案ト云フモノ
  ガ、町田君ノ御說明ノ如ク、殆ド根本的ト申シテモ宜シイ
  位ナ大修正ガ出來マシテ、衆議院ヲ通ッテ居ルノデアリマス
  ル、ソコデ此案ニ就キマシテハ、各派一致シテ賛成致シテ居
  ルノハ、卽チ政府ノ提案ノ趣意ニ對シ、更ニヨリ多クノ望ヲ
  繫ケテ修正ヲシテ、是ナラバ大丈夫デアラウト云フノデ、是ガ
  出來テ居ルノデアリマスルガ、此案ニ對シマシテ政府モ同意
  ヲシテ置キナガラ、後トカラ開墾會社ナルモノヲ造ルコトノ
  提案ヲシテ、之ニ優渥ナル補助ヲ與ヘルト云フコトニナッタガ
  爲メニ、折角ノ此開墾助成法案ト云フモノニ、非常ナ打擊
  ヲ與フルト云フコトノ結果ヲ生ズルト云フコトヲ、第一ニ私
  ハ說明致シタイノデアリマス(「謹聽」ト呼フ者アリ)御承知
  ノ如ク開墾會社ハ、政府ノ提案ト較ベマスルト一云フト、大分
  斧鉞ヲ加ヘラレマシテ、形ガ變ッテ居リマス、併ナガラ此會社
  ノ特色ト申シマスモノハ何所ニアルカト申シマスレバ、如何
  ニ營業上ニ損失ヲ致シマシテモ、資本金ヲ損ヲスルコトハ
  絕對ニ無イト云フ大安心ヲ持ッテ居ル、ソレカラ第二ニハ其
  資本金ノ損失-資本金以上ノ損失ガ有ッタトスレバソレ
  ニ對シテモ何等ノ不安心ノ無イ上ニ、必ズ年八朱ノ利益配
  當ヲ得ラレルト云フコトデアリマス、ソレカラ此會社ニハ競
  爭者ガ無イ、私ガ質問シマスルト、モウ此會社ノ外ニハ、是ト
  同一ノ目的ヲ以テ會社ヲ拵ヘルト云フ人ガアッテモ許サヌ、
  絕對ニ此開墾事業ト一云フモノヲ、専賣ニスルコトガ出來ル
  ト云フ事デアリマス、此三ツガ先ヅ主ナル特典ノ箇條デアリ
  マス、卽チ之レ有ルガ爲メニ、折角吾ミガ心血ヲ注ギマシテ
  修正ヲ致シマシタ開墾助成法案ナルモノハ、非常ナ實行上
  ニ妨害トナッテ、殆ド目的ヲ達スルコトハ出來ナイコトニナル
  ノデアル、何故カト申シマスト、若シ此會社ガアリマセヌナラ
  バ、吾〓ノ修正致シマシタル開墾助成法案ニ依リマシテ、開
  墾シテ見込ノアルベキ土地ハ必ズ事業ニ著手サレ、又之ヲ
  助ケテ世間ノ資本家ガ之ニ金融ヲ與ヘ、若クハ其他ノ便宜
  ヲ與ヘテ、十分ニ此開墾ノ事ヲ助ケルト云フコトハ、自然ニ
  起ツテ來ルノデアリマスルガ、特殊ノ性質ヲ帶ビタ特權ヲ
  持ノタ所ノ開墾會社ト云フモノガ出來夕爲メニ、左樣ナモノ
  ハ最早出來ナクナッタ、起ッテ來ナクナッタ(「ソンナ事ハアリマ
  セヌヨ」ト呼フ者アリ)是ハ所謂計算ニ明カナル者ハ能ク分
  ル、斯樣ナ者ガアッテヤルト云フ事ニナリマスレバ、決シテ資
  本家ト云フ者ハ、所謂開墾助成法案ニ依シテヤル者ニ大
  ナル力ヲ與ヘマセヌ、ソレカラ又何故ソレガ與へナイカト云ヒ
  マスレバ、此助成法案ニ依シテ若シ開墾會社ガ無ケレバ、大
  仕掛ニ隨分大キナ開墾ヲ企テル、所ガシレガ斯樣ナ優渥ナ
  ル所ノ保護ノアル會社ト云フモノガアル以上ハ、ドウモ種々
  ノ點ニ於テ競爭スルコトハ出來ナイ、縱シ其助成法案ニ
  依シテ開墾スル者ハ、自分ノ所有ニスルコトガ出來ルト申シ
  マシテモ、開墾地ヲ得ルト云フ點ニ於テ、ドウシテモ大仕掛
  ノ者ハ之ヲ得ルコトガ出來ナイ事ニナル、是ハ卽チ開墾
  會社ガアルガ爲メデアリマス、ソレカラ井上君ノ御說明ノ中
  ニ斯ウ云フ事モアリマシタ、極ク計算ヲシテ見ルト云フト、
  割二分ノ利息ヲ借リテ開墾ヲシタ其計算ト、開墾會社ガ
  開墾ヲ致シマシタ拂下値段ガ、實價ノ一割五分ト云フモ
  ノニ實價ノ五割ト云フモノヲ加ヘテ賣ル値段ト云フモノト、
  丁度同ジ位ニナルト云フコトヲ昨日モ說明サレマシタガ、今
  日モ一寸御說明ニナッタヤウデアリマス、サウ云フ計算ニナル
  ト致シマスト、是ガ又此開墾助成法案ニ依ッテ開墾シヤウト
  云フ者ヲ妨ゲル、一ノ支障ニナリマス、何故カナレバ開墾助
  成法案デ色ヒノ面倒ナ手續ヲシデヤッテモ、開墾會社デ拵
  ヘタ物ヲ買受ケル、ドウ云フ場合ニソレト同等若クハソレヨ
  リ以下ノ代價デ簡便ニ手ニ入レラルル、公共團體若クハ自
  作農ト云フモノガ得ラルルト云フコトガアリマスカラ、是一
  何ヨリ數字ノ上カラ申シマシテ、少クトモ地方ノ公共團體
  ガ、其地方ノ爲メニ開墾事業ヲシヤウト云フ者ガ、之ガ爲メ
  ニ確ニ其望ヲ起スコトガ出來ナクナル、其望ヲ起ス者ガ馬
  鹿デアル、色〓ノ苦心ヲシナイデモ、開墾會社ガ拵ヘテ賣ルモ
  ノヲ買ッタ方ガ、手取リ早イト云フコトニナルノデアリマス、斯
  樣ナ點カラ致シマシテ、計算上カラ此開墾助成法案ヲ妨ゲ
  テ居リマスルガ、其結果ドウナルカト申シマスト、開墾助成
  法案デ出來マスル開墾ハ、洵ニ少ナクナッテシマッテ、開墾會社
  デヤル方ガ若シ豫定ノ通リ出來タトスレバ、ソレダケノ開墾
  ガ出來ナクナルト云フコトデアルカラ、卽チ此〓糧問題ニ最
  モ大事デアル所ノ開墾事業ト云フモノガ、此特權會社ノ爲
  メニ限ラレテシマック結果ニナルノデアリマス、是ハ能ク御考
  ヲ願ヒタイ、是ガ若シ第二第三ノ會社ガ出來タ場合ニ許シ
  タモノデアルナラバ宜シイケレドモ、開墾事業ト云フモノハ、
  此會社ノ全ク專賣ニシテシマッタノデアリマス、デアリマスカ
  ラ、開墾助成法ニ依ルニ非ザル以上ハ開墾スルコトハ出來
  ナイ、數字ノ上カラ之ト競爭スルノハ、馬鹿氣テ居ルト云フ
  コトデヤラヌト云フコトニナリマスト、卽チ二百万町步モ開
  墾シ得ベキ土地ガアルニモ拘ラズ、斯ル特權ヲ持ッテ-今
  日ノ時勢ニアル間敷キ特權會社ヲ拵ヘタ爲メニ、却テ開墾
  ヲ非常ニ妨害シテ居ルト云フ結果ニナルコトハ、私ノ玆ニ斷
  言シテ憚ラザル所デアリマス、(「開墾事業ノ性質ヲ知ラヌ」
  ト呼フ者アリ)是ガ私ガ此開墾會社ニ反對ヲ致シマスル第
  一ノ理由デアル、第二ハ何デアルガ、開墾會社ナルモノハ性
  質ハ、唯〓申シマシク通リニ限ラレテアル、今ノ發起人ノ顏
  觸デ拵ヘマシタ其會社ノミニ限ラレタノデアルカラ、是ハ今
  日一般ニ衆議院ニ於テモサウデアルガ、總テ公平、機會均
  等ト云フ近代ノ意思ニ反シタ所ノ、非常ナ退步シタ仕事ガ
  出來ルト云フコトデアリマス、殊ニ此開墾會社ノ専ラ最初
  計畫サレマシタ所ト較べマスト、大ニ其利益ハ減少サレテ提
  案サレテ居リマスルガ、併シソレニシテモ此開墾會社ナルモ
  ノハ、マダ〓〓中〓ヱライ安心ナモノデアルト云フコトハ、私ガ
  曩ニ說明シタ通リデアリマスガ、今日ノ時勢ニ於キマシテ、
  此天下第一流ノ富豪ノ企テタ者ダケニ許シテ、其他ニハ許
  サヌ、斯ウ云フ事ハドウー云フ理由ニ基クノデアルカ
  〔議長大岡育造君退席副議長濱田國松君議長席
  ニ著ク〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=14

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• 015・鈴木梅四郎

  ○鈴木梅四郞君　ソコニ何等ノ理由ガ無イ、私ハ此點ニ
  就テ當局大臣ニ再三質問シタノデアル、何故ニ此發起者ノ
  計畫シタ會社ノミニ許シテ他ニハ許サヌカ、全體此人ニハ
  山林ヲ開拓シ、沼澤ヲ開ク、此仕事ニ就テ實際ノ經驗ヲ
  持ッテ居ル人とデアルカ、或ハ其仲間ノ中ニ斯道ニ堪能ナル
  所ノ技術ヲ有フテ居ル人ガアルカ、斯ウ御尋シタ所ガ、ンレハ
  無イノデアル、然ラバ何デアルカ、天下ノ富豪デアルト云フ爲
  メニ、斯樣ナ特權ヲ與へルノデアルカト斯ウ質問シマスルト、
  イヤサウ云フ譯デモナイケレドモ、兎ニ角天下ノ富豪デアル
  カラシテ、是等ノ人〓ガヤルコトデアルナラバ、間違ハアルマイ
  ト思フ(拍手起ル)唯、理由ヲ尋ネルト云ウト、是ダケニ過ギ
  ナイノデアリマス、諸君、今日進ンダル所ノ此世ノ中ニ於キマ
  シテ、斯樣ナ薄弱ナル理由ヲ以テ、一ツノ會社ノミニ此大事
  ナ開墾事業ト云フモノヲ許シテ、僅ニ十五箇年ニ二十五万
  町步ヨリモヨリ多クハ開クコトノ-開墾スルコトノ出來ナ
  イ會社ニ專賣權ヲ與ヘテ、マダ百七十万町步以上モアル其
  開墾ト云フモノヲ、何人ノ手ニ依ッテ開墾シ得ルコトガ出來
  マセウカ、是ガ卽チ近代ノ政治ノ意義カラ考ヘマシテ、非常
  ナ不當ナ事ナノデアリマス、如何ニ致シマシテモ若シ此開墾
  ガ必要、デアッテ、斯樣ナ會社ノ成立ヲ望ム必要ガアリマスル
  ナラバ、第二第三ノ會社ニ矢張許シテ宜シイ、決シテ此專
  賣ヲ與ヘルト云フコトハ、モウ理論ニ於テ惡イ事デアリマ
  ス、斯樣ナ事ヲ致シマスルト云ウト、今日ノ世ノ中ニハ種々
  ナ議論モアリマスル、色ミナ間違ッタ事モ其間ニハアリマシ
  テ、天下ノ人心ニ甚ダ面白クナイ所ノ印象ヲ與へルト云フ
  コトハ、私ガモウ玆ニ明言シテ憚ラナイ所デアリマス(拍手起
  ル)實ハ此點ニ就キマシテハ、政府ノ當局者ニモ念ヲ押シマ
  シタガ、政府ノ當局者ハ之ニ對シテ、左様ナ心配ハ無イト仰
  シヤッテ居リマスルガ、是ハ自ラ欺クノ甚シイモノデアリマシ
  テ、試ニ天下ノ新聞紙雜誌ノ御覽ナサイ、此開墾會社ニ對
  スル天下ノ輿論ノ非難ト云フモノガ、如何ニ猛烈デアルカト
  云フコトハ、政府當局者及與黨ノ諸君ハ御永知無イノデア
  ラウカ(拍手起ル)今日ノ時勢ニ斯ル開拓使時代ノ遲レタ
  ル所ノ方法ヲ以テ、開墾事業ヲヤルト云フヤウナ如キ事ハ、
  是ハ寧ロ私ハ國辱トシデモ宜シイト、玆ニ斷言致シマスノデ
  アリマス(拍手起ル)ソレカラ更ニ私ハ此開墾會社ノ爲メニ、
  現政府及政友會政黨ノ諸君ガ、心ニモアラナイ誤解ヲ來ス
  所ノ、一ツノ虞ガアルト云フコトヲ警告シテ置キマスル、何故
  ニ誤解ヲ來スカ、私ハ必シモ世間ノ或人ノ申シマスル如ク、
  此開墾會社ノ發起ト云フモノガ、政友會ガ天下ノ金權者ト
  近ツク爲メニ、强テ拵ヘタモノダ抔ト云フコトハ決シテ信ジテ
  モ居リマセヌ、左樣ナ事ハ信ジテ居ラヌノデアリマス、併ナガラ
  今日此說ヲ信ズル者ガ中〓多イト云フノハ、事實デアルコト
  ヲ奈何センヤデアリマス(拍手起ル)ソレハ何故ニ斯樣ナ疑
  感ヲ起サセルカト申シマスルト、此開墾會社ノ成立ニ於テ
  頗ル辻褄ノ合ハナイ他人ヲシテ疑ハシムル事柄ガ澤山アル、
  第一ハ政府ハ此助成法案ト開墾會社ト兩々相俟ヲテ、此
  開墾ヲ十分ニサセルノデアルト云フコトヲ聲明シテ居リマス
  ルガ、之ヲ裏切ル事實ハ澤山アル、何カ之ヲ裏切ツテ居ルカ、
  開墾助成法案ヲ出シマシタ政府ノ案ハ最初ハ年六朱ノ
  利息ヲ貸シテ之ヲ助ケルト云フニ過ギナイ、二十年間
  成功後二十年間ニ之ヲ返サシムルト云フノデアル、補給ヲ
  與ヘルト云フノデハナイ、唯〓之ヲ助ケテ、成功ノ上ニハ返却
  セシムルト云フノ原案デアッタ、ソレガ衆議院ノ修正ニ依ッテ、
  年六朱ヲ與ヘテモ返スニ及バヌト云フコトニナッタノデアリマ
  スルカラ、非常ニ根本的ニ案ハ改クテアルコトハ、先刻申ス通
  リデアリマスルガ、斯樣ナ案ヲ出シテ、サウシテ此案ノ委員會
  ニ於キマシテ、眞面目ニ委員ノ中カラ政府當局者ニ向クテ、
  國產獎勵會若クハ東北振典會ト云フヤウナ所カラ、斯樣ナ
  會社ガ出來ルト云フヤウナ事ヲ承ッテ居ルガ、此事業ト主要
  ナ關係ガアルガ、其邊ノ消息ハ如何テアルカ、說明ヲ得タイ
  ト云フ質問ヲ委員カラシテ居ル、所ガ之ニ對シテ政府ノ當
  局者ハ何ト答ヘタカ、左様ナモノハ殆ド存ゼヌト云フ答ヲ
  シテ居ル、何故ニ兩々相俟ッデ開墾ヲヤルト云フナラバ、此案
  ヲ出シタ時分ニ、實ハ斯ウ云フ計畫モアルト云フコトヲ言ヒ
  得ナイノデアルカ、ンレヲ强テ隱スガ如クニシテ居クタノハ何
  デアルカ、而モ其後餘リ時日ヲ經ザル間ニ、總理大臣官
  邸ニ天下ノ富豪ヲ集メラレテ、此問題ノ話ノアッタ時分ニ
  ハ、定款ナルモノガ確ニモウ印刷シテ出來上ッテ、チヤント
  發起人モ定マッテアッタト云フ事實ガ茲ニ明カデアリマス、何
  故ニ此衆議院ニ出スベキ其案ヲ、此委員カラ質問シタ時分
  ニ隱シテ置イテ、何カ其委員會デソレヲ報告ヲシ、知ラセテ
  ハ、都合ガ惡イカノ如キ態度ヲ執ラレタカ、ソレガ今日ニ至
  ルマデ不思議ニ堪ヘチイ、左樣ナ態度ヲ執ッテ居ランル、サウ
  シテ此案ガ出テ天下ノ非常ナ非難ヲ受ケ、殊ニ與黨ノ間カ
  ラモ非常ナ反對的ノ質問抔モ出テ參リ、八釜敷ナッテカラ
  色ミナ說明ヲサレテ、兩々相俟ッチヤルノデアルトカ云フヤウ
  ナ御話モアリマシタガ、要スルニ是等ノ事實ヲ擧ゲテ見マシ
  テモ、甚ダ此會社ノ成立ニ付テ、ドウモ世人ヲシテ疑ハシム
  ル點ガアリノデアリマス、私共ハ決シテ左樣ナ事ヲ信ズルノ
  デハアルマセヌ、併ナガラ歴代ノ内閣ガ此所謂富豪階級金
  持ト接觸ヲ保シテ、其金持ノ御機嫌ヲ取ルト一云フコトヲ、-
  ツノ務ノ如クニシテ居リマシタノガ過去ノ實際デアル、桂內
  閣ハ其最モ甚シイモノデ、大隈內閣ガ之ニ負ケズニ又富豪ノ
  歡心政策ヲ執ッタ、寺內内閣モ同樣ナ事ヲシタ、併シ政友
  會內閣、此政黨ヲ基礎トシテ居ル所ノ所謂純政黨內閣ハ、
  眞逆ニ左様ナ事ハアルマイト私共ハ信ジテ居ッタノデアリマ
  スルガ、此開墾會社ノ設立ニ方リマシテ、日本一ノ富豪ダケ
  ヲ集メテ、而シテ是ダケニ許シタ、此開墾事業ヲ、外ノ者ニハ
  許サヌト云フヤウナ事ヲ計畫サレルニ至リマシテ、マダ此儀
  ガ所謂政黨內閣ガ矢張金權政治ヲ行フ所ノ、所謂日本
  ノ政治家ノ舊套ヲ脫シ得ザル所ノ內閣デアルカト云フ、疑
  ヲ起サザルヲ得ヌノデアル、是ハ確ニ斯樣ナ疑ハ私バカリ
  デナクシテ、ドウモ天下ノ人ハ、之ヲ信ゼントスル傾向ガアル
  ノデアリマス、此點ニ於キマシテ、私ハ本案ハ政治上ノ純理
  カラ申シマシテ、今日ノ時勢ニ斯樣ナ計畫ト云フモノハ、全
  ク相反シタル所ノ計畫デアル、天下ノ人心ニ一種ノ疑ヲ起
  サシムル所ノ惡政策デアルト云フコトヲ、斷言スルニ憚ラヌ
  ノデアリマス(拍手起ル)井上角五郞君カラ挑戰ヲ受ケマ
  シテゴザイマスカラ、一言酬ヒテ置キマス、井上角五郞君ハ
  長〓ト雄辯ヲ揮ハレマシテ、私ハ謹聽致シテ居リマシタガ、要
  スルニ私ハ井上君ノ議論ニ反駁ヲ加ヘル必要ハナイト云フ
  コトヲ先刻申シマシタガ、ソレハ實際必要ガ無イ、何故ナラ
  バ吾ミノ此案ヲ否認スル根本ノ理由ニ於テハ、何等觸レテ
  居ラナイ、唯〓揚足的ノ議論ヲ爲サレテ、サウシテ此案ノ辯
  護ニ汲々トシテ居ラレタニ過ギナイト云フカラデアル、其一例
  ヲ擧ゲテ見マスルト云フト、開墾會社ヲ保護シタイト云フ爲
  メニデス、同ジ事實ヲ二樣ニ使分ヲシテ居ラシッヤル、警告ヲ
  シテ此會社ニ專橫ヲ許サヌト云フ爲メニ、若クハ不測ノ損
  害ヲ起サシメナイ爲メニト云フノデ、此會社ガ許可ヲ得テ開
  墾ヲスルト云フニハ十分ナ吟味ヲシテ、危イ所ハヤラセナイ
  ヤウニ一ノ箇條ヲ設ケタト云ッテ、此事ニ就テハ餘程意氣
  揚々御得意ニ說明サレテ居ル、是ガ一ツノ事實、所ガ之ヲ會
  社ガ失策ヲシナイ、損ヲシナイ爲メニ、斯樣ニ注意ヲスルト
  云フ此方ニ一ツ之ヲ御使ニナッテ、又今度ハ反對ニ之ヲ御使
  ニナッテ居ラッシヤル、ドウ使ッテ居ラッシヤルカト一云フト、開墾助
  成法ニ依ル開墾ト、此會社ノ開墾トハ、大變違フト云フ此時
  ノ話ニ之ヲ特ニ使ッテ居ラッシヤル、ドウ云フ風ニ使ッテ居ラッ
  シヤルカト言ヘバ、開墾會社ハ自由ニ選擇スルコトハ出來
  ナイ、此開墾助成法案ニ依ッテ開墾スル者ハ、好キナ所ヲ擇
  取ヲシテヤルコトガ出來ルガ、開墾會社ハ政府ノ檢定ヲ得
  テ、サウシテ自由ナ事ガ出來ヌ、斯ウ云フ同ジ材料ヲ彼方
  此方ニ反對ノ意味ニ使用サレテ居ル、是ハ卽チ唯〓政府ノ
  辯護ヲスル爲メニ汲々トシテ居ラレル一ツノ何ヨリノ證據デ
  アル、斯樣ナ譯デアリマスルカラ、私ハ井上君ノ長とト御述
  ニナリマシタ其說ハ、辯護トシテハ如何ニモ巧妙デアリマス
  ケレドモ、論理ト致シマシテハ、其ダ薄弱ノモノデアルト云
  フコトヲ唯、申シテ置キマスル、更ニ私ニ向ッテ、私ガ社會政
  策ノ事ニ就テ心配ヲシテ居ルガ、其心配ヲシテ居ル點ハ贊
  成ダガ、此案ニ賛成シナイノハ社會政策云々ト云フ御話デ
  アリマシタガ、是ハ大ナル見當違デアリマス、是ハ井上君ガ
  社會政策ノ何物タルヲ、能ク御〓究ニナッタ上ノコトデアラ
  ウト存ジマスガ、私ノ信ズル所ニ依リマシテハ、所謂今日ノ
  社會政策ナルモノハ、斯樣ナ富豪ノミニ特權ヲ與ヘタ其會
  社デ拵ヘタモノヲ、恩惠的デモアリマセヌケレドモ、先ヅ形カ
  ラ申シマスルト、恩惠的ニ安ク賣ッテ貰フト云フヤウナコト
  ハ、必シモ所謂眞ノ社會政策デアルカ否カト云フコトハ、近
  代ノ政治意義ヲ了解シテ居ル者ハ能ク分リマス、凡ソ社會
  政策ヲ主トシテ致シマスルナラバ、公平、機會均等、斯ウ云
  フ立派ナモノニ根據シテ行カナクテハナラヌノデアリマス、デ
  私ハ實ハ此會社ガ、果シテ井上君ノ言ハル通リニ、社會政
  策ノ一部分ヲ助ケルコトガ出來ルカ否ヤト云フコトヲ大ニ
  疑ッテ居リマスルカラ、此點ニ就テハ、私ハ社會政策ニハ熱
  心デアリマスルケレドモ、此案ニ反對スルヲ以テ、社會政策ニ
  微塵モ害ヲ與ヘテ居ラヌ、否、斯ノ如キ時勢遲レノ怪物ヲ
  拵ヘルト云フコトニ反對スルノガ、眞ノ社會政策ノ意義ニ
  適ウテ居ルモノト私ハ確信シテ居ルノデゴザイマスカラ(拍
  手起ル)此點ヲ一言申シマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=15

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• 016・濱田國松

  ○副議長(濱田國松君)　吉植庄一郞君
  〔吉植庄一郎君登壇〕
  〔拍手起ル〕

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• 017・吉植庄一郎

  ○吉植庄一郎君　段々憲政會ノ町田君ノ御演說、竝ニ
  國民黨ノ鈴木君ノ御演說ヲ拜聽致シマシタガ、町田君ノ
  御演說ニ對シテハ、同僚井上君ノ明細正確ナル反駁ガアリ
  マシタノデ、ソレニ格別反對黨ノ方カラモ、「ノウ〓〓」ノ聲ガ
  出ナカッタノデアリマスルカラ、是ハモウ御承認ニナッタモノト
  考ヘマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)餘リ追究スルコトハ感心
  致シマセヌカラ、其方ハンレトシテ置イテ、國民黨ノ代表者
  タル鈴木君ノ御演說ハ、井上君ガ少シク豫備的ニ議論ヲシ
  テ居リマシタガ、是ハ大分鈴木君カラ反對ノ御意見ガアリ
  マシタカラ、大要鈴木君ノ御議論ニ對シテ、自分ノ反對ノ
  意味ヲ申シテ見タイ、併シ追究セヌトハ申シマシテモ、時ニハ
  憲政會ノ方ノ議論ニモ論及スル場合ガアルカモ知レマセヌ
  カラ、是モ御斷リヲ致シテ置キマス、鈴木君ハ、平生吾ミハ同
  君ノ該博ナル學識ト、其雄辯ニ多大ノ敬意ヲ拂ッテ居リマ
  シテ、本日ノ如キ、殊ニ同君獨得ノ壇上トモ謂フベキ問題ニ
  對シテハ、深遠博大ナル御雄辯ガアルコトヽ、實ハ先刻來
  謹聽致シテ居ッタノデアリマス、平日トハ違ッテ極メテ簡單
  デアリマシテ、而シテ甚ダ遺憾ナガラ不明瞭デアッタノデアリ
  マス、鈴木君ノ反對ノ要旨ハ三點ニ分レテ居ル、若シ私ノ
  聽キマシタノニ誤ガアリマスレバ、後トデ御訂シヲ願ヒタイノ
  デアリマス、第一ノ反對ノ理由ハ本案ガ成立テバ、卽チ帝國
  開墾株式會社ナルモノガ此儘ニ通過スルナラバ、過日本會
  ヲ通過シタ所ノ開墾助成法ニ大打撃ヲ與ヘル、ソレガ宜シ
  クナイ、第二ノ反對ノ理由ハ、時代思潮トカ申シマシテ、機
  會均等下云フ近來ノ思潮ニ反クカラ、宜シクナイト云フ御
  主張ノヤウニ拜聽致シマシタ、第三ハ政府ガ曩ニ開墾助成
  法案ヲ提出スル場合ニ、何等帝國開墾株式會社ヲ補助ス
  ル積リノアルコトヲ言ハナイデ、サウシテ助成法案ノ通過後ニ
  突如トシテ之ヲ出シタ爲メニ、天下ニ種々ノ疑惑ヲ招イテ
  居ル、殊ニ富豪ニ阿ッテ、金權政治ヲ爲スモノデアルト云フ
  非難ヲ招クト云フ、斯樣ニ拾上ゲテ見、マスト、此三ツニ歸著
  サレルヤウニ考ヘラレマス
  〔副議長濱田國松君議長席ヲ退キ議長大岡育造
  君復席〕

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• 018・吉植庄一郎

  ○吉植庄一郞君　此第一ノ反對理由ノ、助成法ニ大打
  撃ヲ與ヘルト云フ其理由ヲ更ニ二ツニ御分ケニナッテ、此會
  社以外ニ同ジヤウナ會社ヲ拵ヘヤウトシテモ出來ナイ、卽チ
  助成法ニ依ッテ事業ヲ計畫セントスル者、若クハ之ニ資本
  ヲ供給セント欲スル者ガアル場合ニ於テモ、此帝國開墾株
  式會社ト云フ厖大ナ會社ガ出來ル爲メニ、其成立ヲ妨ゲ
  ル虞ガアルカノヤウニ申サレテ居ル、併シ此御論ノ殆ド理由
  トスルニ足ラヌコトハ、先刻井上君ガ數字上ニ於テ詳シク
  述ベラレタ、卽チ單ニ會社若クハ個人ガ、政府ヨリ一段步
  ノ土地ヲ開墾センガ爲メニ受ケントスル金額ヲ計上シテ見
  マスルト、開墾助成法ニ依レバ、一段步ニ對シテ十九圓八
  十錢ノ補助ヲ受ケラルヽニ反シテ、帝國開墾株式會社ノ
  方依レバ、一段步ニ對シテ十五圓デアル、會社ノ聲明ス
  ル如クスルナラバ、僅ニ三圓デアル、併シ十五箇年全部打
  通シテ保護ヲスルトシテモ、其總額ハ十五圓ニ過ギナイ、-
  段步當リ保護ノ少ナイコト四圓八十錢デアル、此開墾會
  社ナルモノハ、助成法ニ依ル所ノ保護ヨリモ、一段步ニ付
  テ、四圓八十錢安イ保護ヲ受ケテ滿足シテ居ルノデアリマ
  スカラ、開墾助成法ニ依シテ個人ガ政府ヨリ補助ヲ受ケン
  トスルナラバ、其爲メニ打撃ヲ被ルト云フコトハ、殊ニ數字
  ニ明カナル所ノ同君トシテ、如何ナル論理ノ矛盾デアルカ、
  私ハ了解ニ苦シムノデアリマス、勿論是ハ假想ノ議論デア
  リマス、同君ノ議論ハ推測ノ議論デアリマス、併シ推測ハ
  必ズ數理ヲ以テ推サナケレバナラヌ、現實ノ事實ヲ捉ヘタ
  議論ニ非ズシテ推斷ヲスル以上ニハ、正確ナル數字ノ根柢
  ヨリ論斷シナケレバナラヌガ、同君ノ推論ハ漫然タル推論
  デ數字ニ基礎ヲ置カナイノデアリマス、斯ノ如キ反對ノ御議
  論ハ、吾〓根柢ニ於テ尊敬ノ價値ヲ認メルコトガ出來ナイノ
  デアリマス、殊ニ私カラ更ニ進ンデ之ヲ論ゼシムルナラバ、開
  墾會社ニ依ラズシテ、開墾助成法ノ方ノ補助ノ金額ガ多
  イノデアルカラ、斯ノ如キ會社ノ力ニ依シテ多數ノ田畑ノ出
  來ルト云フコトハ、國家全體ノ利益デアリマス、五町步以
  上ノ土地ヲ開墾スル者ハ中流以上ノ人デアル、卽チ資本
  階級デアッテ、勞働階級庶民階級デハアリマセヌ、此者ニ對
  シテ一段步ニ付テ十九圓八十錢補助ヲシテ居ル、却テ帝
  國開墾株式會社ナルモノハ、一段步ニ付十五圓ニ過ギナ
  イノデアル、是ガ何デ富豪援助ニ當ルデアリマセウカ、富豪
  ノ保護ニドウシテナルノデアリマセウカ、富豪ト云フ文字ハ、
  甚ダ曖昧ナ文字デアッテ、所謂比較的ノモノデアリマス、庶
  民階級ニ比較スレバ、同君ノ所謂庶民階級ト云フモノニ
  之ヲ比較スルナラバ、五町步以上ノ土地ノ開墾ヲスル者
  ハ、矢張或富豪デアリマス、是ハ平素ノ同君ノ御議論ニ對
  シテ、ドウモ了解ニ苦シムノデアリマス、第一一ノ機會均等云
  云ノ御論デアリマスガ、國際聯盟ノ御議論ヂモナサル場合
  ニハ、所謂機會均等ハ近代ノ思潮トシテ御尤デアリマスガ、
  吾〓不學ニシテ、此帝國開墾會社ガ是非他ニヤリタイ者ガ
  アッテモヤラセヌト云フコトガ、機會均等ト云フ時代思想ニ
  反クト云フコトハ、餘リニ鷄ヲ割クニ牛刀ヲ御用井ニナリ過
  ギハセヌカ、元來鈴木君モ亦憲政會ノ町田君モ、彼ノ會社
  ハ一割二分以上ノ配當モ出來ル、又其儲ケタモノヲ積立
  チヽ置イテ、重役ノ配當モ出來ルト云フ會社ノ希望デアッタ
  所ノ、頗ル會社ニ有利ノ條件ヲ具備シテ居ッタモノヲ其儘
  ニ御覽ニナデテ居ッタ、是ガ頭ニ先入シテ居ル、サウシテ此壇
  上ニ井上君ガ明言サレタ如ク、十五箇年ヲ通ジテ如何ニ會
  社ガ利益ガアッテモ、年八朱以上ノ配當ハ絕對ニ許サヌト
  云フ此命令條件ニ依シテ、此會社ハ八朱ノ十五箇年ノ公
  債ト化シ去シタコトヲ閑却セラレテ居ルノデアルト思フ、年
  八朱ノ十五箇年ノ公債ト少シモ性質ノ變ラヌ此資本ニ對
  シテハ、鈴木君自身モ喜ンデサウ云フモノニ御投資ニナルダ
  ラウト私ハ思フ、現ニ日本染料株式會社ノ保護ハ、是ハ嘗
  テ大隈內閣ノ時ニ御造リニナッタコトヽ私ハ記憶シテ居リ
  マスガ、此染料株式會社ノ保護ハ、殆ド此帝國開墾株式
  會社ニ與ヘタ所ノ保護ト同一デアル、缺損モ補ヒ、利益配
  當モ保障スル、同ジク八朱デアル、而シテ此日本染料株式
  會社ノ本日ノ市場ニ於ケル市價ハ如何デアルカ、先刻大
  藏省ヲ介シテ株式市場ニ問合セタ、之ニ依リマスルト四十
  圓拂込ノモノガ、或店デハ三十三圓デアル、或店デハ三十
  三圓四十錢、一日々々新聞ノ相場表ノ所ヲ調ベテモ三十
  三圓四十錢、卽チ拂込ヨリ約六圓七十錢乃至七圓ノ低
  價デアルノデアリマス、卽チ八朱ヲ保障サレダ所ノ日本染
  料株式會社ガ市價ニ於テ其拂込ヨリ蹴込ムコトニ二割以
  上デアリマス、此現在ノ事情ニ於テ、會社ガ株式ヲ募集セ
  ントスル時ニ既ニ成立ッテ居ッテ、補助ヲ十分ニサレテ居ルモ
  ノガ三十三圓四十錢デアルナラバ、之ヲ拂込ム者ハ、餘程
  ノ愛國心ガ無ケレバ出來ナイヂハナイカ、先刻來屢〓町田
  君ハ、愛國心心アルナラバ、富豪者ハ何故ニモ少シ〓發ヲ
  セヌカト云フコトヲ言ハレマシタガ、若シ愛國公債若クハ義
  捐金ト云フコトデアルナラバ御議論ハ立チマセウ、併ナガラ
  資本家ト雖モ、元モ子モ無クシテマデヤレト云フ事ハ、國家
  ハ之ヲ强ユルコトハ出來ナイ、三井、三菱ノ如キ富豪ガ一
  人デ三千万圓出シテ、無代デ之ヲヤルト云フコトデアルナラ
  バ、是ハ至極奇特ナ事デアリマスガ、左樣ナ事ハ立法府ニ
  於テ、金持ガ斯樣ナ事ヲヤル場合ニハ、算盤勘定ヲ外ヅシ
  テ愛國ノ爲メニ金ヲ出セト云フ、左樣ナ事ハ是ハ「トロッキ
  ー」「レーニン」ノ政府デナケレバ、出來ナイ事デアルト私ハ思
  フノデアリマス(拍手起リ「誰ガ强ヒロト言ッタ」「默レ」ト呼フ
  者アリ)殊ニ同君-デハアリマセヌ、鈴木君ノ第二段ニ申
  サレタ機會均等云々ノ事ハ、是ニ由ッテ觀テモ恐ラク今日鈴
  木君ガ曾テ此原案ヲ提出セラレタ場合ニ、會社ノ目論見書
  ヲ見タ時ノ、先入主ノ誤レル觀念カラ結論ヲ導イタノデナケ
  レバ、今日八朱ノ補助ヲサレテ居ル會社ガ、四十圓ノモノガ
  三十三圓ト云フ狀況ニ於テ、之ト競争シテ帝國開墾株式
  會社ノ多クノ競爭者ガ出來ヤウト思召シニナルコトハ、是ハド
  ウモ誤リタル御推斷デハアルマイカ、御推斷ハ勝手デアリマ
  スガ、併シ是ハ無理ナ御推測デアリマスナラバ、此問題ハ
  多ク論議スルノ價値ハ無イ、此故ニ機會均等ノ御議論ハ
  是デ止メテ置キマス、第三點ノ疑惑ト云フコトハ、甚ダ町
  田君モ餘程疑惑ト云フコトニ因ハレテ居ル、併シ此疑惑
  ハ昨日委員會ニ於テ、井上君ヨリ此會社ニ種々ナル命令
  條件ヲ附スルコトニ於テ、政府ガ全然同意デアルト云フ此
  聲明ヲ聽イタ時ニ、先ヅ自分ノ疑ト云フモノヽ大部分ハ、
  除却サレタト云フコトヲ同君ハ明言サレテ居ル、同君ハ洵
  ニ公平ナル方デアリマス、併ナガラサウハ仰シヤッタガ、矢張
  此壇上ニ於テハ復タ疑惑ヲ繰返サレタ、ドウモ先入バ拔ケ
  ナイモノデアルト見エテ、先入ニ因ハシテ居ル、卽チ八朱ノ
  補助ヲ政府ガシテ居ル會社ガ、四十圓ノモノガ三十三圓ノ
  時價ニナッタ時ニ拵ヘタ會社ガ、是ト同一ノ條件ノ下ニ募
  集スルト云フ場合ニ、何所ニ運動ヲシタリ請託ヲシタリスル
  餘地ガアリマスカ、是ガ多クノ「プレミアム」ガ付クトカ、或ハ
  製鋼會社トカ何トカ云フガ如キ、拂込ノ十倍ニモナルヤウ
  サウ云フ「プレミアム」ノ付ク會社デアッタナラバ、此間ニ株ヲ
  分配シテ貰フト云フヤウナコトモアリマセウ、併ナガラ其事
  業ト此事業トハ全ク違ッテ居リマスカラ、御懸念ニハ及ビマ
  セヌ(「ノウ〓〓」)旣ニ此幾多ノ疑ト云フモノハ、手續ガドウ
  ナッテ居ルトカ、前ニナッタトカ後ニナッタトカ云フコトハ、サウ
  云フ事ハ問題ニナラヌ、要スルニ事實ガ問題デアル、內容ガ
  問題デアル、此會社ガ暴利ヲ貪ル會社デアリ、富豪ガ非常
  ニ利益ヲ貪ル會社デアルナラバ、玆ニ政府トノ間ニ怪シイ
  事ガアルノヂハナイカ、シレニ關係スレバ報酬ガアルノデハナ
  イカト云フ、當然疑ガ生ズルノデアリマスケレドモ、ソレガ拂
  込ヨリ引込ンデ居ルト云フ實例ガ出テ居ルナラバ、何ノ疑
  ガアルカ、之ヲ疑フ者ハ、柳ヲ幽靈ト見ル以上ノ臆病者ト
  言ハナケレバナラヌ(拍手スル者アリ)是ハ詭辯ヲ以テ人ヲ
  感スモノデアル、最後ニ鈴木君ニ私ハ、唯〓新シキ社會政
  策ノ講義ヲ承リマシテ洵ニ有難ク存シマスガ、吾ミハ社會
  政策ナルモノヲ、學者ノ講釋其儘ニ用井ントスル者デハナイ
  ノデアル、學者ハ一體勝手ナ熱ヲ吹キタガルモノデアリマス、
  併デ政治家ガ時代ニ相當スル政策ヲ立ツル場合ニ於テハ、
  其間ニ餘程時代ト云フモノヲ考ヘテ見ナケレバナラヌノデア
  ル、今日ノ場合ニ於テ、鈴木君ノ如ク熱心ニ曩ニ「皇室社
  會新政」ヲ著シテ私共ニ下サレ、又今囘ハ「社會政策ノ基
  礎」ト云フ書籍ヲ着シテ私共ニ下サレ、又同僚ニモ下サレ
  タノデアリマス、平生同君ハ筆ニ熱心ニ論ゼラルヽノミナラ
  ズ、社會政策ノ實行ニ常ニ非常ニ御盡力ニナッテ、大阪ニハ
  「大大阪」ト云フ新聞ニ向ッテ同君ハ努力セラレ、近來其勞
  働國ノ總裁ニナラレタヤウニ新聞ニ見エテ居ルノデアリマス、
  資本ヲ投ジ、勞力ヲ投ジ、又時間ヲ費シテ、非常ニ努力ヲ遊
  バサレテ居ルコトハ敬意ヲ表シマス、併トガラ同君ニシテモ、社
  會政策ノ實行ト云フコトヲソレ程ニ御努メニナッテ居ルナラ
  パ、假ニ鈴木君ノ十分滿足セラルヽ所ノ學說ニ合致シナクト
  モ、兎ニ角日本ニ於ケル今日ノ地方ニ於テ、多クノ勞働者
  ガ開墾セントスルニ資本無ク、耕サントスルニ地所無クシ
  テ、年々增加スル人口ハ海外ノ移住トナリ、或ハ都市ニ集
  中シテ、農村ガ漸次荒廢ニ赴クト云フコトハ、是ハ同君ニ
  於テモ憂慮スベキ事デアルト云フ點ハ、定メテ御同威デアラ
  ウト思フ、今日是等ノ者ニ何トカシテ產ノ與へ、是等ノ者
  ニ土著ノ希望ヲ與ヘルト云フコトハ、是ハ政治家トシテ、凡
  ソ何派ヲ問ハズ、悉ク一致スル問題デアラウト思フ、諸君ハ
  助成法案ニ於テ、五十町步ト云フ原案ヲ五町步ニ引下ゲ
  ラレタト云フコトモ、稍〓サウ云フ意味ヲ加味サレテ居ッタト
  記憶シマス、併シンレデハ尙ホ徹底シナイ、五町步以上ハ
  前刻私ガ申シマシタ通リ、比較的富豪デアル、此富豪階級
  ニ援助ヲ與ヘテ置イテ、五段百姓モ、一緒デ宜イト云フノデ
  ハ、此多クノ最大多數ノ是等ノ地方ノ農民ニ對シテ、何等
  ノ恩惠ヲ及ボスコトハ出來ナイデハナイカ、助成法ノ之ニ
  依ッテ出來ナイガ爲メニ此案ヲ出スノデアル、之ニ依ッテソレ
  以下ノ者ニ二十箇年間ノ低利資金デ以テ、此會社ガ拵ヘ
  タ所ノ土地ヲ或ハ一町歩、或ハ二町步、其人員ニ應ジ、其
  勞働力ニ應ジテ之ヲ分配シテ、將ニ流離セントスル所ノ全
  國ノ多イ農民ヲシテ、土著ノ安心ヲ與ヘ、生活ノ安定ヲ圖
  ルト云フコトハ、是ガ-社會政策ト云フモノニ色ミアルガ、
  色〓項目ハアルケレドモ-サウ云フモノモ少ナクトモ、其
  中ノ大ナル項目ト爲サナケレバナラヌ、鈴木君ノ社會政策
  ガ、果シテ斯ノ如キ問題ヲ除外シタル社會政策ナリトスレ
  バ、吾とハ此社會政策ニ對シテハ、絕對ニ反對ヲスルノデア
  リマス(拍手起ル)斯ノ如キ問題ヲ鈴木君ハ、何ガ故ニ此場
  合ニ欣ンデ率先シテ御賛成ニナラナカッタカト一云フト、私ノ
  推測スル所ニ依レバ、平素潔癖ナル所ノ同君ハ、此富豪階
  級、若クハ資本家階級ニ向ッテ保護スルコトハイケナイ、金
  權政治ニ反對スルト云フ趣意ニ取ラレテ、富豪ノ輩ニ斯ウ
  云フ事ヲサセルノハ、イケナイト云フ議論ヲ致サレタノデアリ
  マセウ、若シ此筆法ヲ以テスルナラバ、同君ガ其豊富ナル財
  囊ヲ開イテ、中民階級ノ爲メニ今日新聞ヲ拵へ、色ミ運動
  ヲシテ種々ノ援助ヲ與ヘテ居ラルルコトモ亦宜シクナイト
  思フ、同君ハ我國富豪ノ一人デアリマス、併ナガラ富豪ノ
  口ニシタ社會政策ハ社會政策ニ非ズ、富豪ノ手ニ依ル社
  會政策ハ社會政策ニ非ズト云フノハ、堅白同異ノ言ニ非
  ラズシテ何ゾヤ(拍手スル者アリ)斯ウ論ジテ見マスルト、此
  會社ハ名コン富豪ト云フ名前ニナッテ居ルケレドモ、其手ヲ
  通シテ全國多數ノ細民ヲ地主タラシムル所ノ、堅實ナル社
  會政策ヲ徹底スル爲メニナッテ居ルノデアリマス、是卜五町
  歩以下ノ開墾ヲ爲スト云フ者ト、兩方相俟ッテ此政策ヲ遂
  行セントスルノデアッテ、卽チ先刻町田君ガ、原總理大臣ハ
  此案ヲ提出スルニ當ッテ、豫テ考ヘテ居ツタ事デアルト言ハ
  レタ、他ノ大臣ハサウハ言ハナカッタガ、原總理大臣ハ豫テ
  考ヘテ居ッタ事デアルト言ハレタト云フコトハ、卽チ一面ニ
  於テハ、資本家階級ヲ援ケテ土地ノ開墾ヲ爲サシメル、
  面ニハ此機關ヲ通ジテ全國多數ノ農民、小民ヲシテ自作
  農業家タラシメテ、一ツノ徹底セル社會政策ノ實行ヲスル、
  是デ兩々相俟ッテ行ク、卽チ豫テ考ヘテ居シタト云フノハ是
  レデアル、何モ之ヲ怪シム所モ無ケレバ、不思議モ無イ、是
  ガ後ニナッタ、前ニナッタ爲メニ之ニ議論ノ生ズルト云フコト
  ハ、私ノ甚ダ了解ニ苦シム所デアリマス、最後ニ町田君ニ
  一言致シテ此壇ヲ下ラント欲スルノデアリマスガ、憲政會ノ
  諸君ハ、染料ノ問題-染物ノ事ダケデモ、政黨内閣ノ時
  分ニモ、是ト同樣ナル八朱ノ補給ヲ御出シニナッテ居ルト思
  ヒマス、然ラバ全國ノ食糧問題、此食糧問題ニ就テハ、諸
  君モ非常ニ御心配ニナッテ居ルデハアリマセヌカ、現ニ前內
  閣時代ニ於テ、僅カ半年許リノ間ニ米ノ不足シタ爲メニ、
  ドレダケノ金ヲ使ッテ居リマス、前後ヲ通ジ二千五百万圓、
  國庫ハ之ニ對シテ米價調節費ヲ費シテ居リマス、僅カ半年
  ノ間ニデモ、米價調節ト云フ問題カ事實起リ、卽チ食糧ノ
  調節ガ起レバ、二千五百万圓ト云フ金ヲ煙ニシテ居ルノデ
  アル、ソレデモ十分米價調節ハ出來ナカッタ、然ラバ此會社
  ノ三千六百万圓、十五箇年全部ヲ補助シテ見タ所デ、ソ
  レデ二十五万町步出來テソレニ依ッテ食糧ノ調節ヲ圖ルコ
  トノ補助トナルナラバ、諸君ハ困ッタ時ノ二千五百万圓ハ
  吝ムニ足ラズトシテ、永久ニ善良ナル效果ヲ有スル所ノ此
  確實ナル政策ニ向ッテ、反對スルト云フ理由ハ無イト私ハ
  思フ、是デ私ハ此原案ノ通過セラレンコトヲ希望致シマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=18

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• 019・岩崎勲

  ○岩崎動君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=19

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• 020・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎勳君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=20

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• 021・岩崎勲

  ○岩崎勳君　討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
  〔「賛成々々」「反對々々」ト呼フ者アリ〕

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• 022・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　討論終結ノ動議ハ先決問題デア
  リマス、討論終結ノ動議ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  起立者多數

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• 023・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　多數デアリマス、仍テ討論ハ終結
  セラレマシタ-唯今ヨリ決ヲ採リマス、委員長ノ報告セラ
  レタル中、農商務省所管臨時部第一款產業獎勵費金三
  十万圓、第十八項帝國開墾株式會社補助金十三万圓、
  之ヲ削除スルト云フ意味デアルト思ヒマスガ間違ヒアリマ
  セヌカ-此修正ニ成規ノ賛成ガアリマスカ
  〔「アリマスニアル〓〓」ト呼フ者アリ〕

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• 024・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　成規ノ賛成ハアルト認メマス、仍
  テ此修正ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  起立者少數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=24

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• 025・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　少數デアリマス、委員長ノ報告ニ
  同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=25

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• 026・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　多數デアリマス、委員長報告ノ通
  リニ可決致シマシタ-日程第二、和氣神社昇格ニ關スル
  建議案ヲ議題ト致シマス、小橋藻三衞君
  第二和氣神社昇格ニ關スル建議案(小橋藻
  三衞君外八名提出)
  和氣神社昇格ニ關スル建議
  和氣〓麻呂公ノ忠烈天日ヲ貫キ經綸靑史ヲ照スハ固
  ヨリ贅言ヲ須タス其ノ姉法均尼公ノ忠誠仁慈モ亦天下
  後世ノ敬仰措カサル所ナリ然ルニ其ノ墳墓ノ地ニ於テ公
  ノ一族ヲ祭レル岡山縣和氣郡藤野村和氣神社ヲ永ク
  村社ノ列ニ置クハ世道人心ヲ鼓舞スル所以ノ道ニ非ス
  政府ハ宜シク速ニ本社ヲ別格官幣社ニ昇格シ法均尼
  公ヲ合祀シ以テ神靈ヲ慰メ民心ヲ滿タサシメラレムコト
  ヲ望ム
  右建議ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=26

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• 027・天春文衞

  ○天春文衞君　吾ミハ農會法ノ委員會ヲ開キタイト思ヒ
  マスカラ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=27

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• 028・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=28

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• 029・小林源藏

  ○小林源藏君　朝鮮輕便鐵道補助法ノ委員會ヲ開キタ
  イト思ヒマスカラ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=29

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• 030・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　許可致シマス
  〔小橋藻三衞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=30

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• 031・小橋藻三衞

  ○小橋藻三衞君　和氣公ノ事蹟ニ就テハ、今更呶々述べ
  ル必要ハゴザイマセヌ、唯〓簡單ニ一言ヲ致シテ置キタイト
  存ジマスルノハ、諸君御承知ノ通リニ、此當時宇佐八幡ノ
  神官ガ、我ガ光輝アル國體ト、我ガ此尊嚴ナル歷史ヲモ破
  壞致スベキ、恐ロシイ事柄ヲ奏上致シタトキニ當リマシテ、
  時ノ政府ハ此重大ナル問題ヲ如何ニ取扱ッタカト申シマス
  レバ、時ノ道鏡ノ權威ハ朝ノ内外ヲ傾ケマシテ、廟堂ノ大官
  鉅公ハ、悉ク一身ノ安全ヲ計ルコトニ是レ急ニ致シマシテ、
  全ク其道鏡ノ權威ニ媚ビテ、誰一人起ッテ此恐ルベキ計畫
  ヲ遮リ、之ヲ防グト云フコトニ努力ヲ致シタ者ハ無イノデア
  リマス、此時ニ勅命ニ此和氣公ニ下リマシテ、今一應神慮
  ヲ伺ヘヨト云フコトデアリマシタ、所ガ道鏡ハ極烈ナル脅迫
  ト、非常ナル甘言トヲ以テ、兩面ヨリ之ニ壓迫メ加ヘタノデ
  アリマス、此時ノ我國ノ狀態ト云フモノハ、洵ニ累卵ノ危サ
  ト申シマスルカ、千鈞一髮ノ危機ト申シマスルカ、實ニ恐ル
  ベキ時機デアッタノデアリマス、然ルニ此和氣公ハ非常ナル
  大決心ヲ以テ、我ガ大和魂ノ大權化トナッテ、非常ニ貢獻
  ヲ致シタノデアリマス、卽チ所謂天柱ハ折ケ地維ハ將ニ缺
  ケントスル時ニ當ッテ、公ハ一人ノカヲ以テ、斷然トシテ所
  謂五色ノ石ヲ鍊リ、鰲ノ足ヲ斷ッタノデアリマス、我國ノ歷
  史ニ於テ忠臣ノ鑑ト稱セラルヽ人ハ幾人モアリマスケレド
  モ、時ニ於テ、事ニ於テ、處ニ於テ、此和氣公ノ如キ大ナル
  忠烈、大ナル偉動ト云フモノハ、我ガ三千年來ノ歷史ニ於
  テ、未ダ曾テ見ザル所デアルノデアリマス、(拍手起ル)其姉
  法均尼公ニ於テモ、御承知ノ通リニ此公ノ忠烈ヲ御助ニ
  ナリマシテ、又一面ニハ孤兒ヲ澤山收容サレマシテ、卽チ後
  世ノ孤兒院ノ濫觴トモ申スベギ、慈仁ナル厚德ヲ當時ニ施
  サレタノデアリマス、斯ル此大忠臣!人ガ、其〓里ニ於テ如
  何ニ取扱ハレテ居ルカト申シマスレバ、此和氣公ノ祖先以
  來ノ廟〓セラレタ神社ハ、今ニ此眇タル一ツノ村社ト致シ
  マシテ、寒烟蔓草ノ中ニ封ジラレテ居ルノデアリマス、志アル
  者ヲシテ低徊顯望、無量ノ感慨ニ打タレルノ有樣デアリマ
  ス、故ニ吾ミハ第三十七帝國議會ニ於テ、此神社昇格ノ
  提案ヲ致シマシテ、滿場一致ノ御賛成ヲ得タノデアリマス
  ガ、今日尙ホ村社ノ列ニ立ッテ、官幣社トモ國幣社トモナラ
  ナイノデアリマス、若シモ一社一神デアルト云フ事ノ爲メニ、
  旣ニ京都ニ護王神社ノアル以上ハ、同一祭神ヲ、外ニ於テ
  官國幣社トスルノ要無シト云フコトデアルト致シマスレバ、
  旣ニ菅公ノ如キハ、各所ニ官幣社トシテ祀ラレテ居ルト云
  フ例モアリマス、又若シモ左様デナクシテ、考證ガ如何デア
  ルカト云フコトデゴザリマスレバ、今日ノ官國幣社ト致シマ
  シテモ、之ヲ學說上ヨリ見マスレバ、其考證ニ於テ、頗ル議
  スベキモノガ無シトセヌト考ヘルノデアリマス、若シ又京都ニ
  旣ニ護王神社ノアル以上ハ、斷ジテ是ガ其〓里ニ於テ祭ル
  事ガ不都合デアルト云フコトデアリマスレバ、和氣公ノ祖先
  ヲ繹ネマスレバ、御承知ノ通リニ人皇第十一代垂仁天皇
  ノ御子鐸石別命三世ノ孫ノ弟彥王ハ、神功皇后ノ征韓ノ
  役ニ隨ハレマシテ、當時武略ニ於テ、又其勇氣ニ於テ非常
  ニ秀絕サレテ居リマシテ、征韓ノ役ニ於テハ、絕大ノ戰績ヲ
  擧ゲラレタノデアリマス、神功皇后御凱旋ノ時ニ當リマシテ
  ハ、是亦歴史上御承知ノ通リニ、鏖坂、忍熊ノ二皇子ハ確
  ニ逆謀ヲ企テ、サウシテ播磨ニ兵ヲ出シテ神功皇后ヲ邀擊
  ヲ致シタノデアリマス、此時ニ神功皇后ハ數多ノ群臣ノ中
  ヨリ、最モ軍略ニ優レ、最モ武勇ニ長ケタ人ヲ選拔致サレマ
  シテ、卽チ弟彥王ヲ差向ケテ、播磨備前ノ間ニ關所ヲ構ヘ
  テ、遂ニ此二皇子ノ亂ヲ平ゲラレタノデアリマス、ソコデ此
  功ニ依シテ備前國ノ磐梨ノ縣、卽チ藤野〓ヲ、永ク弟彥王
  ニ賜ッタノデアリマス、ソレ以來歷代子孫繁榮ヲ致サレテ、
  和氣公ノ時代ニナッタノデアリマス、此永イ間ノ歴史ヲ此地ニ
  持ッテ居リ、其祖先以來ノ墳墓ガ此地ニ在リ、サウシテ玆ニ
  和氣神社ガアルノデアリマスルケレドモ、若シ一神一社デナケ
  レバナラヌト云フ當局ノ御意見デアルト致シマスレバ、斯ノ
  如キ國家ニ大功勞アル、歷史上ニ光輝ノアル弟彥王ハ、何
  レノ地ニ於テモ未ダ曾テ祀ラレテハ居ナイノデアリマス、斯
  ル國家ノ大忠臣ガ祀ラレザルノ神トシテ御隱レニナッテ居ル
  ト云フコトハ、吾〓日本人ノ祖先ヲ崇敬致シ、歷史ヲ尊重
  スル國民性ニ於テハ、甚ダ遺憾ナ事デアルト考ヘルノデアリ
  マス、願クハ此弟彥王ヲ主神ト致シテ、官幣社ニ之ヲ祀ラ
  レマシテ、之ニ合祀ヲ致サレマシテ、和氣公及廣虫公ヲ祀ラ
  レルト云フコトニ相成リマスレバ、當局ノ一社一神ト云フ
  御趣意ニ適フコトカトモ考ヘルノデアリマス、斯ル趣意デア
  リマスルガ故ニ、願クハ滿場一致ノ御賛成ヲ以テ、速カニ此
  建議ノ可決セラレンコトヲ御願スル次第デアリマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=31

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• 032・岩崎勲

  ○岩崎動君　本案ハ、朝鮮神社ニ素盞鳴男奉祀ニ關ス
  ル建議案/委員ニ併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=32

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• 033・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=33

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• 034・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガ無ケレバ動議ノ如ク決シ
  マシタ-日程第三、朝鮮及臺灣ノ產米增殖ニ關スル建
  議案ヲ議題ト致シマス、提出者牧山耕藏君
  第三朝鮮及臺灣ノ產米增殖ニ關スル建議案
  (牧山耕藏君外十名提出)
  朝鮮及臺灣ノ產米增進ニ關スル建議
  我カ國〓糧問題ノ根本的解決ハ國民生活ノ基礎ヲ確
  立シ國家生存ノ安定ヲ期スル上ニ於テ最喫緊重要ノ急
  務タラサルヘカラス今ヤ我カ國ノ主要食料ハ國內ノ生產
  全部ヲ以テスルモ遠ク其ノ需要ヲ充スコト能ハス而モ
  毎年夥シキ人口ノ增殖ハ年ト共ニ益其ノ不足ヲ增大
  シ三十年後ノ產米不足高ハ實二三千二百万石ニ達ス
  ヘク應サニ之レ國民生活ノ一大脅威タラスムハアラス政
  府ハ之ニ對シ開墾助成法ヲ制定シ以テ其ノ解決ヲ期セ
  ムトスト雖憾ムラクハ其ノ範圍僅ニ日本內地ニ限ラレ彼
  ノ天與ノ米產地トシテ將來多大ノ餘力ヲ有スル朝鮮及
  臺灣ノ地ニ及ハス卽チ是等植民地ニ於ケル灌漑開墾事
  業及金肥ノ施用獎勵等各種積極的施設經營ハ直ニ以
  テ我カ國食糧問題ノ解決ニ絕大ノ效果アリト認ムルヲ
  以テ政府ハ速ニ是ニ關スル方策ヲ樹テ本建議ノ主旨ヲ
  達成セラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔牧山耕藏君登壇〕
  拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=34

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• 035・牧山耕藏

  ○牧山耕藏君　朝鮮及臺灣ノ產米增殖ニ關スル建議案
  提出ノ理由ヲ、簡單ニ申述べタイト思ヒマス、今囘ノ歐洲
  大戰ハ、世界ノ有ユル方面ニ向ッテ大ナル波動ヲ與ヘタノデ
  アリマスルガ、就中產業政策ニ就キマシテ、自給自足ノ必要
  ナルコトヲ自覺セシメ、特ニ食糧ノ獨立ガ、國家生存ノ上ニ
  於テ極メテ緊要ナルコトヲ痛切ニ吾人ニ〓ヘタノデアリマス
  我ガ帝國ニ於ケル食糧ハ-主要食糧タル米麥ハ、國內ニ
  產出ヲ致シマスル全部ヲ以テシマシテモ、尙ホ遠ク其需要ヲ
  充タスコトガ出來ナイノデアリマス、而シテ年々臺灣及朝鮮
  ノ餘剩米ヲ移入致シマスル外ニ、二三百万石ノ外國米ヲ輪
  入致シテ居ルト云フ有樣デアリマス、而シテ尙ホ我ガ同胞ハ
  年々非常ナル膨脹ヲ致シマシテ、推定ノ增加ニ依リマスレ
  バ、十年ノ後ニハ八百六十四万八千人ヲ增加致シマス、之
  ニ伴フ所ノ米ノ消費量增加ハ、實ニ八百八十二万一千石
  ヲ算スルノデアリマス、又二十年後ニ於キマシテハ一千八百
  六十一万二千人、之ニ伴フ所ノ米ノ消費量增加ハ一千八
  百九十八万四千石、更ニ三十年後ニ於キマシテハ三千九
  万三千人、之ニ伴フ米ノ消費量增加ハ三千六十九万五千
  石ヲ算スルノデアリマス、然ル時ハ現在ノ不足及ビ將來ノ
  不足增加ヲ合計致シマスレバ、十年後ニ於テハ一千万石
  二十年後ニ於テハ二千万石、三十年後ニ於テハ、實ニ三千
  二百万石ノ不足ヲ生ズルノデアリマス、是實ニ國民生活ノ
  一大脅威デアリマシテ、是ガ解決ニ就テハ、朝野ノ政治家
  ガ最モ苦·心ヲ致シテ居ルノデアリマス、政府ハ是ガ對應策ト
  シテ開墾助成法ヲ制定シテ、向フ十五箇年ヲ期シテ、田畑合
  シテ二十五万町歩、水田ノミデ十二万五千町步ノ開墾ヲ
  實現セント企テ、更ニ其實行ヲ確實ナラシメンガ爲メ、資本
  金三千万圓ノ帝國開墾株式會社ノ創立ニ盡カヲセラレ、
  唯今之ニ要スル補給三十万圓ニ對シテ、本院ハ協賛ヲ與
  ヘタノデアリマス、是ハ洵ニ機宜ニ適セル企劃トシテ、國家
  ノ爲メニ慶ブベキ事デアリマス、併ナガラ此計畫ハ唯〓單ニ
  日本內地ノミニ實施セラルヽモノデアリマシテ、臺灣及朝鮮
  ノ地ニ及バズトハ、政府當局者ノ言明ヲ致シテ居ル所デア
  リマス、朝鮮及臺灣ハ、本員ガ此處デ更メテ申スマデモナク
  天與ノ米產地デアリマシテ、改良及開墾ノ餘地ガ頗ル多イ
  ノデアリマスルカラ、此方面ニ向ッテ、母國ト通ジテ此開墾助
  成ノ計畫ヲ立テラレナカッタノハ、洵ニ遺憾ニ存ズル次第デ
  アリマス、大正六年度ニ於キマスル臺灣ノ米作付面積ハ約
  四十七万町步デアリマシテ、其收穫高ハ四百八十三万石
  ヲ算シテ居リマス、臺灣ニハ糖業政策ト云フヤウナ重大ナ
  問題ガアリマスルノデ、此點モ大ニ考慮シナケレバナラヌノ
  デアリマスルガ、兎モ角一年二囘ノ米作ガ出來ルト云フヤウ
  ナ所デアリマシテ、尙ホ開墾灌漑ノ餘地モ少カラヌノデアリ
  マイ、灌漑設備ヲ施スベキ餘地ハ、尙ホ十万町步モアルト
  云フコトデアリマス、然ルニ大正八年度ノ臺灣總督府豫算
  ヲ見マシテモ、此產米增殖ニ關スル計畫ハ一向見當ラナイ
  ノデアリマス、更ニ朝鮮ハ洵ニ天與ノ米產地デアリマシテ、
  同時ニ我國唯一ノ溫帶植民地デアリマス、朝鮮ニハ現在
  水田ノ面積ガ百五十万町歩有ルノデアリマス、此中ニ灌漑
  設備ノ施サレマシタノハ、僅ニ三十万町歩ニ過ギヌノデアリ
  マシテ、殘ル百二十万町歩ト云フモノハ、未ダ灌漑ガ施サレ
  テナイ、所謂乾田デアッテ、天水ヲ待ッテ收穫ヲ期スルノデア
  リマス、内地ニ於キマシテハ水田總面積ノ八割ハ既ニ灌漑
  設備ガ有ルノデアリマスガ、朝鮮ニハ二割シカ灌漑ガ施サレ
  テ居ラヌノデアリマス、ンレデ朝鮮ト內地トハ、丁度反對ノ
  狀態ニ相成ッテ居ルノデアリマス、此百二十万町步ノ八割、
  卽チ九十万町歩ノ灌漑面積ヲ增加スルコトガ出來マシテ、
  之ニ一反歩ニ付テ八斗ノ增收ヲ得ルト致シマスレバ、蜜一
  七百二十万石ノ增收ヲ得ルコトガ出來ルノデアリマス、尙
  ホ朝鮮ニ於テハ河邊荒蕪地七万町步、干潟地ガ二十一
  万町歩、畑地ガ二百九十万町步、山林原野ノ可耕地ガ七
  十二万町歩、合計三百九十万町歩ノ内、水田ト爲シ得ベ
  キ所ハ五十万町步ノ廣イ面積ガ有ルノデアリマス、之ヲ今
  一段步ノ平均收穫ヲ一石五斗ト假定致シマスレバ、七百
  五十万石ノ產米增加ノ爲シ得ルノデアリマス、之ニ前申シ
  マシタ所ノ灌漑ニ依ル增收七百二十万石ヲ加算致シマス
  レバ、實ニ千四百七十万石ノ產米增殖ヲ望ミ得ルノデアリ
  マス、併シ是ハ農事改良其他肥料ノ普及等ニ依ッテ、此成績
  ヲ得ラレルト思フノデアリマス、尙ホ朝鮮ガ天與ノ米產地
  トシテ、唯一ノ溫帶植民地トシテ、又其計畫ニ對スル餘地
  ノ廣大ナルニ於テ、我國ノ產米增殖計畫上重要ナル地步
  ヲ占メテ居ルト云フコトハ、之ニ依ッテモ知ルベキデアリマス、
  右ノ理由ヲ以テ、本負等ハ開墾助成案ノ趣旨ガ、植民地ニ
  向ッテ擴充セラレンコトヲ希フ者デアリマス、尙ホ朝鮮總督
  府ハ大正八年度ノ豫算ニ、水利事業組合補助費トシテ十
  五万圓ヲ計上サレテ居リマス、是ハ向フ十箇年ニ亙ッテ、十
  万六千町歩ノ水利計畫ヲ助成スル、其一端ガ現レタノデア
  リマスガ、先刻モ申シマシタヤウニ水利ノミデナイ、尙ホ開墾
  ノ餘地ガ非常ニアル、又水利ト開墾トハ離ルベカラザル關
  係ヲ有ッテ居ルノデアリマス、ソレデ灌漑事業ト水利事業ト
  ハ、之ヲ併セテ致サナケレバ徹底致サナイノデアリマス、尙ホ
  朝鮮ニハ肥料ヲ使用スルコトガ甚ダ行渡ッテ居ラヌノデアリ
  マス、ソコデ金肥ノ使用ヲ奬勵致シマスレバ、玆ニ數百万石
  ノ增收ヲ得ルコトガ出來ルノデアリマス、之ヲ要スルニ政府
  ハ產米增殖ノ方策ニ就キマシテ、多大ノ心血ヲ注イデ居ラ
  レルト云フコトハ認メマスケレドモ、其計畫ガ唯、單ニ日本
  内地ノミニ限ラレマシテ、天與ノ米產地デアル朝鮮及臺灣
  ニ是ガ及バナカッタト云フコトハ、龍ヲ畫キテ未ダ其晴ヲ點ゼ
  ザルノ憾ガアルノデアリマス、ソレデ本員建議ノ要旨ハ、内地
  植民地ヲ通ジテ徹底セル產米增殖ノ計畫ヲ立テ、食糧問
  題ノ解決ヲ完フセンコトヲ切望シテ止マザル次第デアリマ
  ス、尙ホ詳細ノ點ニ至リマシテハ、精シイ調査書類ヲ持ッテ
  居リマスカラ、何レ委員會ニ於テ陳述シタイト思フノデアリ
  マスガ、提案ノ要旨ハ以上述べマシタ通リデアリマス、ドウゾ
  滿堂ノ諸君ニ於カレマシテモ、本案ニ御同意アランコトヲ切
  ニ希望シテ已ミマセヌ(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=35

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• 036・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名、九名ノ委員ニ付託セラレ
  ンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=36

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• 037・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=37

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• 038・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議無ケレバ、議長指名九名
  ノ委員ニ付託スルニ決シマシタ-日程第四、新聞紙法改
  正ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、提出者松田源治君
  第四新聞紙法改正ニ關スル建議案(松田源
  治君外十二名提出)
  新聞紙法改正ニ關スル建議
  現行新聞紙法ハ時勢ノ進運ニ適應セス政府ハ速ニ之カ
  改正案ヲ起草シ次期議會ニ提出セラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔松田源治君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=38

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• 039・松田源治

  ○松田源治君　諸君、本案ハ各派聯合ノ提出デアリマシ
  テ、私ヨリ提案ノ趣旨ヲ說明致スノデアリマス、言論ノ自由
  ハ憲法ノ保障スル所デアリマス、併シ我國ノ憲法ニ於キマシ
  テハ、言論ノ自由ハ法律ノ範圍內ニ於テ之ヲ許シテアルノ
  デアリマス、故ニ新聞紙法ト云フ法律ニ於テ嚴重ナル取締
  ヲシ、制裁等ヲ加ヘマスレバ、憲法ノ認メテ居ル自由ハ、新
  聞紙法ニ於テ全ク破壞サレルノデアリマス、而シテ新聞紙
  法ハ憲法附屬ノ法律デアリマス、卽チ憲法ニ於テ言論ノ自
  由ハ此法律ニ依ルト云フコトニナッテ居ル、恰モ衆議院議員
  ノ選擧ハ衆議院議員選擧法ニ依ルト云フコトニナッテ居ル
  ノト同ジク、衆議院議員選擧法ガ重大デアレバ、新聞紙法
  モ同一ニ重大ナル所ノ法律デアリマス、故ニ私ハ此會期切
  迫ノ場合デアリマスケレドモ、少々提案ノ趣旨ヲ述ベマシテ、
  諸君ノ御〓聽ヲ汚シタイト思フノデアリマス、言論ノ自由ハ
  素ヨリ尊重シナケレバナラヌ、併シ言論ノ自由ニ就テ是ト相
  對的ノモノハ新聞紙ノ責任デアリマス、新聞紙ガ責任ヲ重
  ンジナケレバ、言論ノ自由ヲ極端ニ開放スルコトハ出來ナイ
  デアリマス、然ルニ日本ノ新聞紙ハ、全部トハ申シマセヌ、全
  部トハ申シマセヌガ、無責任ノ記事ヲ掲載スル新聞ガアル
  ノデアリマス、ンコデ私ハ新聞社ニ望ム、憲法ノ保障シテ居
  ル所ノ言論ノ自由ヲ得ントスルナラバ、先ヅ自ラ責任ノ重
  大ナルコトヲ自覺サレンコトヲ望ムノデアル、此點ニ於テハ
  英國ノ新聞紙等ハ頗ル責任ノ重大ナルコトヲ感ジテ居ルノ
  デアル、諸君モ御承デアリマセウ、歐洲ノ大戰ガ開カレタ時
  ニ、英國ニ於キマシテ臨時原稿檢閱局ト云フモノガ出來タ
  ノデアリマス、軍事ニ關スル行動ハ、總テ此臨時原稿檢閱
  局ノ檢閱ヲ受ケルコトニナッタノデアル、檢閱局ハ多忙デア
  リマスカラ、今日出シタル所ノ新聞ニ載セル原稿ハ明日デ
  ナケレバ返ッテ來ナイ、是デハ新聞紙ハ大變掲載ニ不便ヲ感
  ズルト云フコトデ、集會ヲ開イテ如何ニスルカト云フコトヲ
  〓究セントシタノデアリマス、然ルニ其內ノ一人ガ、若シモ之
  ヲ檢閲ヲ受ケズシテ出シタ時分ニ於テハ、制裁ガ英國ノ法
  規ニ於テ有ルノデアルカ無イノデアルカト云フコトガ問題ニ
  ナッタノデアル、調査ノ結果、ソレハ無イノデアル、卽チ臨時
  原稿檢閲局ノ檢閲ヲ受ケズシテ出シテモ、制裁ハ無イノデ
  アル、無イケレドモ英國ノ新聞紙ハ面目ニ掛ケテモ國家ノ
  害ニナル事ハシナイノデアルト云フコトヲ申シタ、卽チ新聞
  紙ノ面目名譽ト云フコトガ、言論ノ自由ヲ得ルニ付テ、新
  聞紙ノ大ニ重ンジナケレバナラヌ事デアルト私ハ考ヘルノデ
  アル、而シテ日本ノ新聞界ノ現狀ヲ見マスレバ、私ハ決シテ
  政府ノ取締ガ可ナリトハ申シマセヌ、矢張藩閥政治、専制
  政治カラ傳來的ニ取締ヲシテ居ル、新聞紙法モ傳來的ニ
  記載サレタル條項ガ數多アルノデアリマス、曰ク安寧秩序
  ヲ紊亂シ、曰ク朝憲ノ紊亂、曰ク政體ノ變改、斯ウ云フコ
  トハ皆藩閥政府以來傳來的ノ文字デアル、而シテ藩閥政
  府ガ新聞紙ヲ取締ルヤ、峻嚴ナル法律、苛酷ナル所ノ刑罰
  ヲ以テ臨ンダノデアリマスカラ、新聞紙ノ方ニ於テモ其法律
  ヲ潜ルコトヲ考ヘタノデアル、ソレガ卽チ新聞紙ノ編輯人ノ
  犠牲的ノ人物ヲ拵ヘル、活版ノ職工ヲ以テ編輯人トシ、實
  際ノ編輯人ハ何等責任ガ無イト云フヤウナコトニ、新聞紙
  ガ法律ヲ潜ッテ爲シタノデアル、此事ガ矢張今日ノ新聞紙
  ニモ殘シテ居ル、全部トハ申シマセヌケレドモ或ル新聞紙ハ
  此傳來的ノ慣行ヲ受ケテ居ル、政府ノ刑罰、政府ノ法律
  上ノ制裁ヲ免レントスルガ爲メニ、活版ノ職工其他無責任
  ナル者ヲ編輯人トシテ、其責任ヲ免レントスルノ態度ヲ取ツ
  テ居ルト云フコトハ、是ハ言論ノ自由ヲ許スコトニ就テ、頗
  ル私ハ遺憾ナリト考ヘルノデアリマス(拍手起リ「ヒヤ〓〓」ト
  呼フ者アリ)故ニ新聞紙法ヲ改正セントスルナラバ、政府モ
  言論ヲ尊重スル、新聞紙モ國家社會ニ影響スルコトガ重
  大ナリト云フコトヲ考ヘ、自己ノ責任ニ鑑ミテ、責任ヲ負
  フ所ノ-責任ヲ負擔スル所ノ實ヲ明カニスルト云フコト
  ガ、是ガ新聞紙法改正ノ第一ノ根本義ニナラナケレバナラ
  ヌト私ハ考ヘルノデアリマス(拍手起リ「ヒヤ〓〓」ト呼フ者ア
  リ)次ハ何カト申シマスレバ、第二ノ根本義ハ、思想問題ノ
  取締ニ關スル事デアリマス、新聞ハ思想ヲ發表スル重要ナル機
  關デアリマス、卽チ歷代ノ內閣ハ-現內閣ハ私ハ新聞紙取
  締方針ニ就テ未ダ伺ハナイカラ知リマセヌケレドモ、歷代ノ政
  府ノ思想ヲ取締ル所ノ考ハ間違ッテ居ル、ドノ內閣デモ間違ッ
  テ居ル、思想ヲ取締ルニ、法律ヲ以テ取締リ、刑罰ヲ以テ取
  締ルト云フコトハ、是ハ抑、末デアル、思想ト云フモノ思想ヲ以
  テ取締ラナケレバナラヌ、卽チ日本ノ國體ニ害ガアリ、安寧
  秩序ヲ妨害スルヤウナ所ノ思想ガ發表サレタ時分ニハ、ソレ
  ヨリモ善良ナル醇化シタル所ノ思想ヲ以テ牽制セシメ、制限
  セシメ、善導セシメテ、其惡イ思想ヲ取締リ、サウシテ惡イ思
  想モ之ヲ同化セシメテ、而シテ日本ニ害ガ無イ所ノ思想ニス
  ルト云フコトガ、是ガ私ハ根本義デアルト考ヘルノデアル(拍手
  起ル)ソレデアルニ拘ラズ-サウシナケレバナラヌ、ニ拘ラズ、今
  マデノ歷代ノ內閣ガ、藩閥政府ノ殆ド遺物ト謂ッテ宜シイ所
  ノ「安寧秩序ヲ紊亂シ」ト云フ總括的ノ言葉ヲ以テ、總テノ
  言論ヲ停メルダケノ絕對ノ專權ヲ持ッテ居ルヤウナル新聞
  紙法ヲ振廻シテ、サウシテ言論ノ自由ヲ壓迫スルト云フコ
  トハ、私ハ立憲治下ニ於テ頗ル遺憾ニ感ズル一人デアルノデゴ
  ザイマス、諸君、我國ハ申スマデモナク萬國ニ秀デヽ居ル所ノ國
  體ヲ持ッテ居ル、下六千萬ノ國民ハ陛下ニ直隸致シ、君意
  民心ハ同一體不可分デアル、一ツアッテ二ツナキモノデアル、
  二ツアッテ一ツモノデアル、此君民一致ノ國體ニ於テ、世界
  各國カラ來ル所ノ思想ヲ同化シ、之ヲ善導シテ日本ノ國體
  ニ適スル所ノ思想タラシムルコトハ日本民族ノ出來ナイ
  事デハナイ、斷ジテ私ハ出來ル事デアルト考へルノデアリマ
  ス(拍手起リ「謹聽々々」ト呼フ者アリ)卽チ我國ハ東西兩
  文明ノ思想ヲ受八レ之ヲ咀嚼シ、之ヲ同化シテ醇良ナル思想
  トシテ又之ヲ吐出シ、而シテ世界ノ文明ニ寄與スル所ノ重
  大ナル責任ヲ持ッテ居ル帝國ナリ民族ナリト私ハ考ヘルノ
  デアル、卽チ思想ハ思想ヲ以テ醇化シ、思想ヲ以テ善導ス
  ルト云フコトガ、是ガ新聞紙ヲ取締ル所ノ第二ノ根本義ニ
  ナラナケレバナラヌト私ハ思フノデアル、今日新聞紙法ナル
  モノガアルコトハ、新聞紙ノ不名譽デアル-新聞紙ノ不
  名譽デアルト考ヘル、出來得ベクンバ私ハ新聞紙法ノ全廢
  論ヲ爲ス者デアル、新聞紙ガ責任ヲ自覺シ、國家社會ニ影
  響スルコトノ大ナルコトヲ考へ、新聞ノ面目名譽ニ掛ケテモ
  國家社會ニ害ノアル事個人ノ名譽ヲ毀損スル事ハ絕對ニ
  新聞紙ニ記載シナイ所ノ態度ヲ取シタナラバ、新聞紙法ナ
  ルモノハ不必要ナリト私ハ論斷ヲ致スノデアル、理想トシテ
  ハ私ハ新聞紙法ノ廢止論者デアル、併シサウハ參リマセヌ、
  惡イ新聞モアル、言論ノ責任ヲ重ンジナイ所ノ新聞モアル
  依テ憲法ニ許シタル所ノ言論ノ自由ヲ如何ニ法律デ制限
  スルカト云フコトガ、是ガ立法家ノ苦心スル所デアル、先ヅ
  英國等ニ於キマシテハ、新聞紙ハ完全ニ言論ノ自由ヲ享
  有致シテ居リマス、極ク制限ハ僅デアル、殆ド一般法カラ來
  ル制限ノミデアル、個人ノ名譽ヲ毀損スルコトハ出來ナイ、
  誹譏罪カラ來ル所ノ制限デアル、第二ガ刑法カラ來ル制限
  デアル、第三ガ法廷侮辱罪ニ關スル制限デアル、此三ツノ
  制限ヲ除ケバ、言論ハ自由デアリマス、唯〓反亂罪ヲ〓唆ス
  ル所ノ新聞紙ハ、裁判所ノ命令ニ於テ差押フルコトガ出
  來ルト云フ規定ガアリマス、米國ノ如キハ補修憲法ノ第一
  條ニ於テ議會ハ言論ヲ制限スル一ノ法律ヲモ制定スルヲ
  得ズト書イテアル、米國ハ言論ノ自由ヲ憲法ニ依ッテ完全
  ニ保障サレテ居ル、卽チ言論ノ自由ヲ減縮又ハ制限スル所
  ノ一ツノ法律ダモ、議會デ制定スルコトガ出來ヌトナッテ居
  ル、但シ郵便法ニ於テ例外ガアリマス郵便法ニ於テ風俗ヲ
  壞亂スル所ノ記事ヲ掲載シタル新聞ヲ郵便ニ於テ發送シ
  タル時分ニ於テハ、郵便局ガソレヲ差押ヘテ、サウシテ發送人
  ヲ告發スルト云フコトノミガアリマス、其事ヲ除ケバ實ニ言
  論ノ自由ヲ享有シテ居ル國デアリマス、佛蘭西ノ如キモ言
  論ハ自由ニ享有サレテ居リマス、卽チ犯罪ヲ〓唆スル事項
  ハ制限シ、又犯罪人ヲ賞恤スル爲メニ義捐金ヲ募ル廣告ス
  ル事項ヲ掲載シ、又ハ公判前ノ訴訟ノ事件ヲ掲載スルコト
  ハ出來ナイ、此位ナ制限ナモノデアリマス、日本ノ新聞紙法
  ノ如ク、安寧秩序ヲ紊亂スト云フ總括的ノ條文ニ其名ヲ
  藉リテ、行政官ガ專制ヲ爲ス規定ハ、英吉利、佛蘭西、亞米
  利加ノ立法ニハ毫モ無イト云フコトヲ私ハ斷言致スノデア
  ル、唯"安寧秩序ヲ紊亂シト云フヤウナ總括的ノ規定ヲ設ケ
  行政官ノ專權ニ一任シテ居ル國モアリマス、ンレハ官僚政
  治、軍閥政治ノ盛ナル國デアル、獨逸ノ如キ、墺太利ノ如キ
  露西亞ノ如キ、是ナリト申スノデアリマス、併シ獨逸デモ、墺
  太利デモ、日本ノ如キ專制ハヤラナイノデアリマス、假令公
  安ヲ害シ公益ヲ害スルト云フ事デ新聞ノ發賣ヲ禁止シマ
  シテモ、ソレヲ司法栽判所ニ於テ爭フ途ガ聞イテアルノデア
  ル、絕體ノ専權デハナイ、而シテ司法裁判所ガ其事件ヲ審
  理スル上ニ於テハ、二日間ニ-二日內ニ審理判決シナケ
  レバナラヌト云フ條件モアッテ、新聞ノ自由ト云フモノハ、官
  僚軍問タル所ノ獨逸墺太利等ニ於テモ、日本ヨリモ完全二
  保障セラレテ居ルノデアル、而シテ此分界ヲ決メルー言論
  ノ自由ニ分界ヲ決メルノハ如何ニスルカト申シマスレバ私
  ノ考デハ六ツノ制限ガ矢張必要デアラウ、ンレハ第一ニ皇
  室ノ尊嚴ヲ冒瀆ズル事項、第二ガ國體ヲ害スル事項、第三
  ガ犯罪ヲ煽動シ若クハ曲庇シ刑事被告人-犯罪人ヲ賞
  恤救護シ又ハ刑事被告人ヲ陷害スル事項、第四ガ風俗ヲ
  害スル事項、第五ガ名譽ヲ毀損スル事項、第六ガ公判ニ付
  スル以前ニ於テ豫審判事ノ特ニ指定シタル豫審ノ內容竝
  ニ檢事ノ差止メタル捜査事項、此六ツハ矢張言論ノ自由
  ヲ如何ニ尊重致シマシテモ、今日ノ日本ノ現狀ニ於テハ制
  限シナケレバナラヌ事ト考ヘルノデアリマス、而シテ個人
  ノ名譽ヲ毀損スル事項ニ付テハ、新聞紙ニ於テ例外ヲ設ケ
  ル必要ガアルト思フ、卽チ新聞紙ガ惡意ニ出デズ、專ラ公益
  ノ爲メニスル場合ニ於テハ、新聞紙ニ事實ノ證明ヲ許シテ
  其證明ガ立ッタ時分ニ於テハ無罪ヲ宣告シ、損害賠償モ遁
  ガレル、此六ツノ制限ガ今日ノ日本ノ現狀ニ於テハ必要デ
  アリマシテ、其他ノ制限ハ私ハ必要ハ無イト考ヘル、之ヲ是
  ヨリ我國ノ新聞紙-現行ノ新聞紙ニ適用シテ論ジテ見
  タイト考ヘマス、第一ニ現行ノ新聞紙法ニ於キマシテハ、安
  寧秩序ヲ紊亂シ風俗ヲ害スル事項ヲ記載シタル時分ニ於
  テハ、二ツノ制裁ガアル、一ツノ制裁ハ司法的ノ制裁デアリ
  マス、一ツノ制栽ハ行政的ノ制裁デアリマス、司法的ノ制
  栽ハ刑罰ヲ以テ之ヲ制栽シ、行政ノ制裁ハ安寧秩序ヲ紊
  シ風俗ヲ害スル所ノ記事ヲ記載シタル新聞紙ハ、內務大臣
  ガ絕對ノ專權ヲ以テ其發賣頒布ヲ禁止致シマシテ、其新
  間ヲ差押ヘルコトガ出來ルト云フコトニナッテ居ルノデアリマ
  ス、然ルニ安寧秩序ヲ紊亂シト云フヤウナル所ノ標準ノ不明ナ
  ル文字ヲ以テ、言論ノ自由ヲ尊重シナイト云フコトハ、立憲
  治下ニ於テ私ハ許スベカラザル事デアラウト思フ、私ハ此安寧
  秩序ヲ紊スト云フコトヲ政府ニ具體化シテ貫ヒタイ、私ノ
  申スヤウニ列記的ニシテ貰ヒタイ、列記的ニシテ、其以外ニ
  ハ制裁ヲ與ヘナイト云フコトニシナケレバ、新聞紙ハ筆ヲ執
  ルニ付テ標準ガ無イ、先達テマデ-先達テデハアリマセヌ
  ガ、近キ過去ニ於テ例ガアル、官僚内閣ニ於テハ政府ト國
  家卜云フモノヲ混同致シテ居ル、國家ニ何等ノ害ガ無クテ
  モ政府ニ害ガアル事ハ、安寧秩序ヲ紊亂スト云ッテ、直チニ
  告發シ、其新聞紙ノ發賣頒布ヲ禁ジ、差押ヘル譯ニナルデ
  ハアリマセヌカ、近キ過去ノ內閣ニ於テ此例ハ澤山アル、或
  ル內閣ニ於テハ、事實ノ報道ヲ以テ安寧秩序ヲ紊スモノナ
  リトシテ此處分ヲヤッタモノモアリマス、此安寧秩序ヲ茶ス
  ト云フコトハ、先程申シタヤウニ、藩閥專制政治ノ遺物ト
  申シテ差支ナイ、之ヲ具體的ニスル、政府ハ私ノ述ベタル所
  ノ六項ノ制限以外ニ尙ホアルト云フコトナレバ、一二ハ加
  ヘテモ差支ナイ、國家ニ害ガアリ、國體ニ害ガアル事項ハ、
  新聞社ガ-新聞記者ガ放縱ニ之ヲ論ズト一云フコトナラ
  バ、私ガ今元シタル所ノ六項ガ、七項ニナッテモ宜ケレバ、八
  項ニナッテモ宜シイ、要ハ安寧秩序ト云フヤウナコトハ今ノ
  裁判官ノ認定、行政官ノ認定ニ依シテ、如何ニモナルト云フ
  コトヲ今日存在セシメテ置クハ、立憲法治下ニ於テ許スベ
  カラザル事ト考ヘルノデアル、此安寧秩序ヲ紊スト云フコト
  ハ削除シテ貰ヒタイ、是ガ私ノ此現行法ニ對スル第一ノ要
  求デアリマス、而シテ私ノ述べマシタ所ノ、例ヘバ六項ノ中
  ノ皇室ノ尊嚴ヲ冒瀆スル事トカ、國體ヲ害スルトカ云フコト
  ハ、是ハ日本ニハ起リマスマイ、起リマスマイガ、法ヲ拵ヘル
  以上ハ、是ハ矢張書イテ置カナケレバナラヌ、此二ツノ事項
  及風俗ヲ害スル事項、犯罪ヲ煽動スル事項ト云フコトヲ新
  聞紙ガ記載シタ時分ニハ、ソレハ內務大臣ハ矢張發賣頒
  布ヲ禁止シテ差押ヘテ差支ナイ、國家社會ニ害ヲ爲ス新
  聞紙ハ、其發賣頒布ヲ禁止シテ差支イナイノデアル、併シ
  私ハソレニ就テモ要求ガアル、絕對的ニ内務大臣ノ專權ニ
  屬セシムルコトハ宜シクナイ、新聞紙ノ發賣頒布ヲ禁止ス
  ル權ヲ、內務大臣ノ絕對認定權ニ一任スルト云フコトハ、
  立憲國ニ於テ決シテ許スベカラザル制度デアル、故ニ私ハ
  是ハ裁判所ニ於テ爭フ途ヲ開イテ貰ヒタイ、內務大臣ガ私
  ノ申述ベタル所ノ六項ノ中ノ三項位ナ重大ナモノ-重大
  ナ事項ヲ記載シタル場合ニ於テハ、其發賣頒布ヲ禁止シ、
  其禁止シタル所ノ行政處分ハ、裁判所ニ於テ、新聞紙ヲシ
  テ爭ハシムルト云フコトノ途ヲ開カナケレバイケナイト思フ、
  之ヲ行政裁判所ニスルカ、司法裁判所ニスルカト言ヒマス
  レバ、私ハ法律ノ系給カラ言ヘバ、是ハ行政裁判所ガ當然
  デアリマスケレドモ、各國ノ立法例ヲ見マスレバ、新聞ニ爭
  アル事ハ皆司法栽判所デ決シマスカラ、日本ニ於テモ憲法
  ニ據ッテ保障セラレテ居ル天皇ノ名ニ於テ裁判スル所ノ
  司法裁判所ニ內務大臣ノ爲シタル處分ノ當否ヲ爭フ途ヲ
  開クコトガ當然ダラウト考ヘル、是ハ內務大臣ノ絕對專權
  ニ向ッテ制限ヲ加ヘル、而シテ言論ノ自由ヲ尊重スルコトニ
  ナルデアラウト考ヘル、次ハ何カト申シマスレバ、次ハ現行ノ
  新聞紙法ノ「皇室ノ尊嚴ヲ冒瀆シ政體ヲ變改シ又ハ朝憲
  ヲ紊亂スル事項ヲ記載シタル者ハ」云々ト云フ條文ガアル、
  之ニ司法的ノ制裁ガアリマス、刑罪的ノ制裁ガアリマス、皇
  室ノ尊嚴ヲ冒瀆スル記事ニ向ッテハ、嚴罰ヲ以テ之ニ臨ム
  コトハ、我ガ帝國ノ臣民トシテ希望スル所デアル、斯樣ナ事
  ハ起リマスマイガ、起ツ夕場合ニ嚴罰ヲ以テ制裁ヲスルコト
  ハ、私ハ固ヨリ當然トスル所デアル、然ルニ立憲治下ニ於
  テ、政體ヲ變改スルトカ、朝憲ヲ紊亂スルトカ云フヤウナ、藩
  閥政府以來ノ傳來的支字ガ此ニ在ル、是モ安寧秩序ヲ紊
  スト云フコトヽ同ジク、頗ル曖昧ナ文字デアリマス、政體ヲ
  變改スルト云フコトハ、立憲政治ヲ專制政治ニデモスルト
  云フコトデアリマス、併シ今日立憲政治ヲ專制政治ニスル
  ト云フヤウナ議論ヲ書イテモ、國家社會ニサウ大シタ害モ
  與ヘマスマイ、又今日ノ憲法ハ不十分ナ事ガアルカラ、之ヲ
  改正スル必要ガアルト一云フコトヲ論ジテモ、政體ヲ變改スル
  モノト裁判官カラ認定サレルカモ知レナイ、然ルニ我ガ立憲
  治下ニ於テ、我ガ國體ヲ重ンジ、憲法ニ斯ル不完全ナル事
  ガアルカラ、之ヲ改正シナケレバナラヌト云フコトヲ平和的
  ニ論ズルコトハ當然デアル、又朝憲ヲ紊亂スト云フコトモ頗
  ル瞹昧ナ文字デアル、學者ガ之ヲ定義シテ、政治組織ヲ變
  更スルコトガ朝憲ノ紊亂デアルト斯ウ言フ、併シ國體ヲ害
  セズニ政治組織ノ變更ヲ求ムルト云フ者ヲ罰スル必要ハ
  無イ、斯ル政治組織ニシタナラバ、立憲治下ニ於テ適當ト
  信ズルガ故ニ、斯ウ云フ政治組織ヲ望ムト云フコトヲ書イ
  テモ一向差支ハナイ、國體ヲ害サナイ範圍デ論ジテ、政治
  組織ハ斯ルモノニシタ方ガ宜イト云フコトヲ論ジテモ差支
  ハ無イ、斯ル議論ヲシテモ朝憲紊亂ト云フ事ニ當ルヤウナ
  疑ガアル、斯ル條文ヲ適用スル場合ハ殆ド無イノニ、刑法ニ
  於テハ朝憲ヲ紊亂シ暴動ヲ爲シタル者ハ處罰スルト規定
  シテ居ル、暴動ヲ爲シタル時分ニハ固ヨリ之ヲ處斷スルモ可
  ナリ、併シ是ハ朝憲紊亂ト暴動トガ原因結果ノ關係ヲ爲ス
  ニ非サレバ、刑法ニ於テモ之ヲ罰シタイ、平和的ニ我國ノ憲
  法ハ斯ク改正スルガ宜シイ、我國ノ政治組織ハ斯ル政治組
  織ニ變更スルガ宜イト云フコトヲ論ジテモ、私ハ一向差支
  ナイト思フ、斯ノ如キ藩閥政府以來ノ傳來的文字ハ、斷然
  新聞紙法ヨリ削除スルノガ當然デアルト私ハ考ヘルノデアリ
  マス、ソレカラ次ニ要求スベキ問題ハ、官署公署又ハ法令ヲ
  以テ組織シタル議會ニ於ケル公ニセザル文書、公開セサル所
  ノ議事ヲ新間ニ記載スルコトガ出來ナイ、請願書又ハ訴願書
  モ亦同ジト云フ條文ガアリマス、是モ官僚政治ノ遺物デア
  ル、今日役所ニ於テハ、祕密デナイ所ノ文書ニ「祕」ノ字ガ
  捺シテアル、見レバ一年モ前ニ公ニサレタ文書ガアルノニ、之
  ニ「祕」ノ字ガ捺シテアル、之ヲ新聞紙ニ揭載シテ何ノ害ガ
  アルカ、又今日貴族院、衆議院ノ委員會ハ公開シマセヌ、
  併ナガラ公開セザル委員會ノ議事ヲ記載シテモ、罰セラレタ
  新聞紙ハナイ、世人モ少シモ之ヲ疑ハナイ、斯ル事ハ決シテ
  禁ズル必要ハ無イ、唯〓貴衆兩院ニ於ケル祕密會ノ議事ヲ
  掲載シタ時分ニハドウスルカ、是ハ新聞紙ノ自省ニ俟チ、責
  任ヲ自覺シテ掲載シナイヤウニスル、是ハ又議員ガ祕密ヲ
  漏サナケレバ洩レル氣遣ヒガナイ、斯ル事ヲ新聞紙ニ揭載ス
  ルコトガ出來ナイトシテ、司法的ノ制裁ヲ以テ之ニ臨ムト
  云フコトハ、私ハ立憲治下ニ於テ是ハ官僚政治ノ遺物ナリト
  申サナケレバナラヌノデアル、又議會ニ出タル所ノ請願書ヲ
  掲載スルコトガ出來ナイ、是ハ先達テ例ガアル、或ル雑誌社
  ガ自分デ請願ヲ議會ニ出シマシタ、其出サナイ前ニ請願ノ
  全文ノ雜誌ニ掲載シタノデアリマス、東京區裁判所ノ檢事
  ガ呼出シテ、オ前ノ雜誌ニハ請願書ガ載ッテ居ル、新聞紙法
  違反デアルカラ百圓ノ罰ヲ科スルガ宜イカ、所ガ取調ノ結
  果、ソレハ議會ニ出サナイ前ニ發行シク雜誌デアル、是ハ議
  會ニ出タル請願ト謂フコトハ出來ナイノデ、罰セラレズニ済
  ンダ、議會ニ出サナイ前ノ請願書ハ、新聞雜誌ニ揭載シテモ
  差支ナイ、議會ニ出シタル後ノ請願ト雖モ、之ヲ新聞紙ニ
  掲載スルコトヲ、刑罰ヲ以テ之ニ臨ムト云フコトハ、私ハ時
  代後レノ法律デアル、又主務官廳ニ出ル所ノ訴願書ヲ掲
  載スルコトガ出來ナイト云フ、是モ立憲治下ニ必要ガ無イ、
  斯ル專制政治ヤ官僚政治ヲ擁護スルヤウナ規定ハ、立憲
  治國ノ法律ヨリ削除ヲ願ヒタイノデアル、官僚政治、專制
  政治ハ祕密ヲ貴ビ、立憲政治ハ公開ヲ貴ブノデアル、然ル
  ニ斯ル規定ヲ殘スト云フコトハ、官僚政治ヲ保護シテ、立憲
  政治ノ發達ヲ阻碍スルト云フコトニナルノデアリマスカラ、斯
  ル規定ハ斷然新聞紙法ヨリ削除シテ、言論ノ自由ヲ尊重
  サレンコトヲ望ムノデアリマス、次ノ問題ハ何カト申シマスレ
  バ、平時ニ於キマシテ軍事外交ニ付テ陸海軍大臣、外務大
  臣ガ新聞ノ記事ヲ禁止制限スル權利ヲ有シテ居ル、是ガ果
  シテ必要デアルカドウカ、而シテ軍機ノ祕密ヲ保護スル法律
  ハ、別ニ在ル、軍機保護法ト云フ法律ガ在ルノデアル、卽チ
  軍機ノ祕密ヲ漏洩シ、軍機ノ祕密ヲ公ニ示シタ時分ニ於テ
  ハ嚴重ナル刑罰ヲ以テ制裁シテ居ル、故ニ軍事ノ祕密ニナ
  ラナイモノヲ、陸海軍大臣ガ平時ニ於テ新聞紙ヲ制限禁止
  スルト云フコトハ、是ハ矢張言論ノ自由ヲ尊重スル上ニ於
  テ、頗ル遺憾ニ感ズル條文デアルト思フノデアル、斯ウ云フ
  必要ハ無イ、軍事ノ祕密ニナレバ軍機保護法ガ之ニ制裁
  ヲ加ヘ、又他ノ法律ヲ以テ之ヲ所罰スルコトガ出來ルノデ
  アル、其以外ノモノヲ立憲法治國ニ於テ、陸海軍大臣ニ軍
  事ノ祕密ニ涉ラザル新聞紙ヲ制限禁止スル所ノ權利ヲ持
  タセルコトハ、却テ私ハ立憲政治ノ主義ニ反スルモノト論斷
  スルノデアル、外交上ノ問題-外交上ノ問題モ、祕密ハ
  當局者ガ漏サナケレバ新聞ニ載ル譯ガナイ、又今日ハ外交
  ハ公ニセヨ、外交ハ公開セヨト云フ論ガアル、新聞紙ガ外交
  ヲ論ズルト云フコトハ、國民外交ノ實ヲ擧ゲルノデアル外國
  ニ於テハ講和問題等モ、當局者ガ輿論ヲ喚起シ、新聞紙ガ
  輿論ヲ喚起シ、而シテ國論ヲ統一シテ外ニ向フカラ、其主張
  ガ强イノデアル其主張ガ貫徹スルノデアル、故ニ日本ノ外交
  ニ於テ、外務大臣ガ新聞紙ノ制限禁止ヲ爲サズ、之ヲ開放
  シテモ差支ナイ、新聞紙ガ責任ヲ重ンジ、全國ノ輿論ヲ喚起
  シ、國論ヲ統一シテ政府ノ後援ヲ爲スガ如キ態度ヲ以テ、
  外交問題ヲ解決スルト云フコトニシタイノデアリマス[(拍手
  起ル)併シ戰時非常事變ノ場合ハ此限ニ在ラズ、戰時若ク
  ハ非常事變ニ於テ、陸海軍大臣及外務大臣ガ、軍事外交
  ニ向ッテ、新聞紙ニ對シテ禁止制限ノ權利ヲ有シテ居ルト
  云フコトハ私モ認メル、併シ戰時非常事變ノ場合ハ、戰時
  非常立法デアリマスカラ、平時ノ新聞紙法ニ規定スル必要
  ハ無イ、戰時非常事變ノ場合ハ天皇ノ大權施行モ妨ゲ
  ナイ、戒嚴令モ發布スルノデアル、故ニ言論ノ由自ト云フモ
  ノハ、或ル場合ニ於テハ全ク蹂躪サレテ居ルト云フコトハ、
  我國ノ新聞紙ガ覺悟シナケレバナラヌ、戰時非常事變ノ場
  合ニ此制限禁止ガアルノデアルカラ、平時ノ場合ニ於テ軍
  事ノ祕密ニ涉ラザル事項ニ就テハ、陸海軍大臣及外務大
  臣ガ、新聞紙ノ制限禁止ヲスルト云フコトハ、絕對ニ新聞
  紙法ヨリ削除シテ貰ヒタイト私ハ考ヘルノデアリマス、私ハ
  先程申シタヤウニ、安寧秩序ヲ紊亂スル文字ヲ削際シテモ
  餘リ妨ハナイガ、私ノ希望スル六項ノ制限、其以外ノ制限
  ハ、政府ガ必要ガアレバ揭ゲテモ差支ナイ、今マデノヤウナ
  官僚政治其他ノ政府ニ於テハ、社會ノ安寧秩序ハ官僚政
  治ノ官吏ノミガスル事ト考ヘテ居ル、是ハ大變間違デアル、
  官吏バ少數デアリ人民ハ多數デアル、立憲治下ニ於テハ、
  官吏モ安寧秩序ノ維持者デアルケレドモ、人民凡テガ安寧
  秩序ノ維持者デアルト私ハ考ヘル、新聞紙ノ如キハ無論ノ
  話、有識ノ士ガ新聞ヲ書クノデアリマス、安寧秩序ヲ維持
  スルコトハ、新聞紙ノ一大任務ナリト申シテモ差支ハナイノ
  デアル、故ニ此安寧秩序ヲ紊亂スト云フコトヲ削除シテモ
  之ヲ具體化シテ新聞紙ヲ制限禁止スル所ノ條項ヲ揭ゲテ
  居レバ、少シモ國家社會ニハ害ヲ爲サヌト云フコトヲ論斷
  致スノデアル、諸君、其他ニ新聞紙ノ枝葉ナル改正ハアリマ
  ス、例ヘバ今日ノ新聞紙法ニ編輯人以外ニ實際ニ編輯ヲ
  擔當シタル者ヲ制栽スル規定ガアリマス、今日デハ必要デア
  リマス、併シ私ガ述べタルヤウニ、實際ノ編輯人-今日ノ
  新聞紙デ申セバ編輯長トカ、主筆トカ、社長トカ云フ者ガ、
  責任ヲ帶ビテ編輯人ニナレバ、ンレ以上實際ニ擔當シタル
  所ノ記者ヲ罰スル必要ガ無カラウト思ヒマス、私ノ議論ガ
  通レバ、責任ヲ帶ビタル紳士ガ編輯人ニナレバ、實際ニ編
  輯ヲ擔當シタル者ヲ處罰スル必要ハ無カラウト思ヒマス、其
  他論ズル事ハ餘程アリマスケレドモ、是ハ私ハ委員會ニ讓リ
  マシテ、此新聞紙法ノ專制主義、官僚主義ヲ變更致シテ、
  新聞紙法ノ民主化ヲ請求シ、立憲化ヲ請求スルノデアリマ
  ス、政府ニ於テモ私ノ述ベタル事ヲ容レラレマシテ、部分的
  ノ改正トセズシテ、根本的ノ改正案ヲ作リ、藩閥政治、專制
  政治ノ時分ニアッタル所ノ遺物タル文字ハ削除シテ、而シテ
  民主化シタル立憲化シタル所ノ新聞紙法タラシメ、根本的
  ニ我國ノ言論尊重ノ實ヲ擧ゲルト云フコトニ願ヒタイノデ
  アリマス、又新聞紙ニ於キマシテモ、責任ヲ重ンジ、編輯人
  モ實際ニ局ニ當ル所ノ編輯人ヲ編輯人ニ致シマシテ、其責
  任ノ實ヲ明カニシテ、而シテ相偕ニ共ニ社會ノ安寧秩序ヲ
  維持スル所ノ態度ヲ持ッテ貰ヒタイト云フコトガ私ノ希望デ
  アリマス、本案ノ大要ノ說明ハ是デ止メテ壇ヲ降ルノデアリ
  マス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=39

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• 040・岩崎勲

  ○岩崎勳君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=40

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• 041・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎動君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=41

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• 042・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ、特ニ十八名ノ委員
  ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=42

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• 043・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=43

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• 044・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガ無ケレバ議長指名十八
  名ノ委員ニ付託スルコトニ決シマス-日程第五、特野川
  改修ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、說明者、小泉策太
  郞君
  第五狩野川改修ニ關スル建議案(岩崎動君
  外一名提出)
  狩野川改修ニ關スル建議
  政府ハ速ニ相當ノ計畫ヲ立テ靜岡縣下狩野川ノ改修
  ヲ爲サムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔小泉策太郎君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=44

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• 045・小泉策太郎

  ○小泉策太郞君　建議案ノ趣意ヲ極メテ簡單ニ申上ゲ
  マス、狩野川ハ天城山カラ沼津ノ海へ出ル川デアリマスル
  ガ、其水害ノ程度ガ年々激シクナリマシテ、此川ノ流域ニ
  屬シマスル伊豆ノ田方郡、又駿河ノ駿東郡ノ約二十箇町
  村許リハ、其都度非常ナル慘害ヲ受ケテ居リマス、此川ノ
  氾濫ノ程度ガ年々激シクナルト云フ原因、又沿岸町村民
  ノ被リマスル損害ノ程度、其事實ノ調査モ略、、出來テ居リ
  マスケレドモ、今ノ場合此處デ委シク申上ゲルノハ甚ダ御
  迷感デアラウト思ヒマスカラ、是ハ委員會デ詳細ニ申上ゲ
  ルコトニ致シマシテ、結局此洪水ノ被害ヲ除クニハ、河川ヲ
  改修ヲシテ治水事業ヲ完成スルト云フ以外ニ方法ハ無イノ
  デアリマスルガ、地方費トシテ全部此費用ヲ負擔スルト云
  フコトハ、到底不可能ノ事デアリマスルカラ、國家トシテ此
  治水事業ノ經營ヲシテ、相當ノ調査ヲ爲シ、又速ニ實行シ
  テ貰ヒタイト云フノガ、此建議案ノ趣意デアリマス、ドウゾ
  宜シク御賛成ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=45

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• 046・岩崎勲

  ○岩崎勳君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=46

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• 047・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　岩崎勳君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=47

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• 048・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付
  託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=48

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• 049・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ハアリマセンカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=49

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• 050・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議無クレバ議長指名九名ノ
  委員ニ付託スルコトニ決シマス-日程第六、農業政策ニ
  關スル建議案ヲ議題ト致シマス、提出者赤間嘉之吉君
  第六農業政策ニ關スル建議案(赤間嘉之吉
  君提出)
  農業政策ニ關スル建議
  政府ハ各種ノ農業政策ヲ立テ之ヲ實行シツツアリト雖
  未タ充分ナラサルモノアリ或ハ更ニ計劃スヘキモノアリ故
  ニ左ノ政策ヲ立テ之ヲ實行セムコトヲ望ム
  一農業勞働者增加ノ方法ヲ講スルコト
  一農具改良ノ方法ヲ講スルコト
  一農業上ノ發明者及篤志者ヲ推奬スルコト
  肥料ノ廉價購入ノ方法ヲ講スルコト
  一牛馬耕ヲ奬勵シ農業用牛馬廉價購入ノ方法ヲ講ス
  ルコト
  一耕地ノ排水的整理ヲ更ニ大ニ奬勵スルコト
  右建議ス
  〔赤間嘉之吉君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=50

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• 051・赤間嘉之吉

  ○赤間嘉之吉君　歐洲戰爭ノ〓訓ニ依リマシテ、我國ニ
  モ幾多ノ新シイ問題ヲ生ジテ參リマシタ、其中ニ付キマシ
  テ、食糧問題ハ昨年ノ議會以來、官民ノ間ニ隨分論議セラレ
  マシタ重大ナ問題デゴザイマスルガ、此食糧問題ヲ解決致シ
  マスルニ付キマシテ、本期議會ニ於テ政府カラモ色ニナ提
  案ガゴザイマシテ、吾〓モ之ニ對シテ協賛ヲ與ヘマシタガ、食
  糧問題ヲ根本的ニ解決致シマス所ノ要點ハ、第一ハ農業
  政策ヲ確定スルニ在ルト云フコトヲ私ハ信ジテ居リマス、農
  業政策ノ上ニ付キマシテハ、先程モ論議セラレマシタ開墾
  助成法、或ハ開墾會社トカ云フヤウナ事モ必要デゴザイマ
  スルガ、新タニ開墾ヲシ、埋立ヲシ、干拓ヲ致シマスルト同
  時ニ、從來既ニ開墾セラレテ居リ、耕作セラレテ居ル所ノ
  土地ノ利用ヲ增大スルト云フコトハ、食糧問題ヲ解決致シ
  マスルニ付キマシテ、最大急務デアルト私ハ信ジテ居リマス
  ル、從來開墾セラレテ居ル所ノ土地ノ利用ヲ增大スル第一
  ハ、耕地ノ排水的整理ヲスルノガ一番必要デアルト思フ、現
  ニ東京府近ヲ見マシテモ、郊外ニハ幾多ノ水田ガ今水ガ溜ッ
  テ其儘ニナッテ居ル、冬ノ問ハ之ヲ耕作スルコトガ出來ナイ
  コトニナッテ居ル、汽車ニ乘ッテ束海道線ヲ見マシテモ、鐵道
  沿線ニハ幾多ノ水田ガ冬ノ間ハヂット遊ンデ居ルト云フヤ
  ウナ有樣デアル、隨テ農民ハ冬ノ間ニハ仕事ガ出來ナイ、夏
  ハ農民ハ農事ニ忙殺サルヽケレドモ、冬ノ間ハ遊ンデ居ルト
  云フヤウナ有樣デアル、東京ノ附近ノ如キ野菜ナンゾニ致
  ウマシテモ、隨分高價ノ物ヲ買ッテ居ル、其東京市外ノ周
  圍ノ方ニハ水田ガヂット遊ンデ居ルト云フヤウナ有樣デアル、
  斯ウ云フ土地ニ對シマシテハ、第一ニ耕地ノ排水的整理ヲ
  スルト云フ事ガ最モ必要デアルト思フ、從來政府ノ方デモ
  耕地整理、排水整理ト云フヤウナ事ハ色と奬勵モ致シマス
  ルシ、之ニ對シテ補助金モ與ヘテ居ル、又耕地整理ノ基本
  調査ヲスルニ付テモ、補助金ヲ與ヘテ居リマスルガ、マダ甚
  ダ不十分デアリ、極ク僅カナモノデアル、昨年ノ議會デアリ
  マシタカ、一昨年ノ臨時議會デアッタカ、土地ノ利用ニ關ス
  ル經費ト云フモノヲ、初メテ議會ニ政府カラ提案ヲ致シマ
  シデ、吾ニハ協賛ヲ與ヘタノデアリマス、是ハ新タニ開墾スベ
  キ土地埋立ヲスベキ土地、或ハ干拓スベキ土地ヲ政府ノ方
  デ調査ヲ致シマシテ、ソレニ對シテ十分ナル設計ヲ立テ、收
  支豫算マデモ政府ノ方デ致シテ、サウシテ土地ノ所有者、
  或ハ地方ノ人ニ開墾埋立干拓ヲ勸誘スルト云フコトニナッ
  テ居ル、新タニ土地ヲ拓クコトモ必要デアルケレドモ、今申
  上ゲルヤウニ現在開墾サレテ居ル土地ガ遊ンデ居ル、其利
  用ヲ增大スルニ付テハ、政府ハ僅カニ基本調査ヲスルニ付
  テ、補助金ヲ與ヘルト云フコトニ止マッテ居ル、新タニ開墾
  スルニ付テ政府ガ多額ノ經費ヲ投ジ、其調查ヲシ、設計ヲ
  シ、收支豫算ヲ出シテ居ルナラバ、既ニ開墾サレテ居ル土地
  ニ對シテモ、排水的整理ノ基本調査ヲ政府ノ方デヤ,テ宜
  シイト思フ、サウシテ土地ノ所有者ニ向ッテ排水整理ヲ勸
  誘スルコトニナレバ、此事業ハ從來ヨリモ一層長足ノ進步
  ヲシ發達スルコトデアラウト考ヘマス、從來政府ノ遣方ヲ
  見マスルト、農業者或ハ農業ニ對スル政府ノ遣方ハドウモ
  甚ダ不滿足ノ點ガアル、明治政府ノ初メニ於キマシテ地租
  改正ヲ斷行シタ時ニハ、其經費ノ大部分ハ民地トシテ土
  地ノ所有者ガ負擔シテ居ル、又二十一二年ノ頃地租輕減
  ノ目的ヲ以テ地價修正ヲシタ時ニモ、其大部分ノ經費ハ
  土地ノ所有者ガ負擔シテ居ル、當然政府ガ負擔シナケレバ
  ナラヌ經費ノ大部分ヲ、土地ノ所有者ガ負擔シテ居ルノデ
  アリマス、今耕地ノ排水整理ヲスルニ付テモ、政府ハ僅カノ
  補助ヲシテ、大部分ハ土地ノ所有者ニ設計シ調査サセルコ
  トニナッテ居ル、甚ダ私ハ斯ウ云フ點ハ遺憾デアルト思ヒマ
  ス、願クハ政府ノ方ガ排水整理ノ基本調査ヲ致シマシテ、
  土地ノ所有者ニ大ニ勸誘スルガ最モ必要デアラウト考ヘマ
  ス、次ニ耕地ノ面積ヲ開墾シ排水整理ヲ致シマシテ、土地
  ノ利用ヲ增大スルニ付テ、直接必要ヲ感ズルノハ農業勞働
  者ノ缺乏デアル、段々鑛山或ハ製造工業等ガ發達シマスル
  シ、都市ガ發展スルニ付テ、農民ガ都會ノ地ニ移住シ、或ハ
  轉業スルコトニナッテ、農業勞働者ガ少クナル、今衆議院ヲ
  通過シタ開墾助成法、或ハ開墾會社等ガ出來マシテモ、農
  業勞働者ガ段々減少スルヤウデハ此目的ヲ完成スルコトハ
  出來ナイ、隨テ農業勞働者ノ增加ト云フコトハ、政府ノ方
  デモ餘程考ヘナケレバナラヌ問題デアラウト思フ、如何ニシ
  テ農業勞働者ヲ增加スルカト申シマスト、私ノ考デハ支那
  ノ勞働者、支那苦力ヲ日本ニ入レルコトヲ政府ノ方デ考ヘ
  テ貰ヒタイ、支那トハ確カ條約ノ關係モアルト思ヒマスカ
  ラ單リ農商務省ダケノ問題デナク、外務省、農商務省、内
  務省アタリト共ニ、此問題ニ向ッテ何トカ致シテ支那勞働
  者ヲ日本ニ入レル、或ハ鑛山ナリ或ハ製造工業ナリ、
  サウ云フ方面ニ支那勞働者ヲ八レルコトニナルト、消
  極的ニハ農業勞働者ノ去ルノヲンレヲ以テ引留メルコトガ
  出來ルト云フコトニナッテ參リマス、次ニハ農具ノ改良、從
  來我國デ用井テ居ル農具ハ、各地方各様ノ物ヲ用キテ居
  ル、此農具ノ改良ニ付テハ、從來農業試驗所或ハ農學校
  トカ、農科大學トカ云フヤウナ各種ノ學校モゴザイマスケレ
  ドモ、此農事試驗場トカ或ハ各學校ニ於キマシテ、農具ノ
  改良ニ向ッテハ餘リ力ヲ用ヰテ居ナイノデアリマスガ、是
  勞力ヲ節約シ、勞働者ノ減少スル半面ニ於テハ、農具ノ改
  良ヲ致シマシテ、勞働者ノ減少ニ對スル補ヲ付ケルト云フ
  コトガ、最モ必要デアラウト思フノデアリマス、願クハ政府ノ
  方ニ於キマシテ、此農具ノ〓究所ヲ置キマスルトカ、或ハ學
  校十カ、農事試驗所ニ於キマシテ、農具改良ノ事ニ今少
  シ〓究ヲシテ戴キタイト思フノデアリマス、次ニハ勞働節約
  ノ一端ト致シマシテ、牛馬耕ノ奬勵デアリマス、此牛馬耕
  ノ奬勵ニ付テ全國ヲ見渡シマスルト、マダ田畑ヲ耕スニ人
  ノ手デヤッテ居ル所ガ多イノデアル、是ハ牛馬耕ヲ用キルコ
  トニナルト、人ノ勞力ヲ節約シ工程モ餘提進捗スルト考ヘ
  マス、現在我國ニ於テハ牛馬ヲ產出スルコト甚ダ少ナク、對
  岸ノ支那ニハ陝西省四川省河南省等ニ澤山牛馬ヲ產出
  シ、又有名ナル山東牛、是等ヲ輸入スルト云フト餘程我國
  ノ牛馬ノ缺乏ヲ補フコトガ出來ル、サウ云フコトニ致シマシ
  テ牛馬ノ不足ヲ補ヒ、一面ニ於テ牛馬耕ヲ獎勵スルト云フコ
  トハ、最モ農事ノ改良ヲ圖リ勞力ヲ節約スル上ニ於テ必要
  デアルト考ヘマス、次ハ肥料ノ問題、我國ノ肥料ハ段々改
  良サレテ參リマスケレドモ、マガ金肥所謂購買スル所ノ肥
  料ハ價格ガ高イ、肥料會社ハ隨分多額ノ利益ヲ得テ居リ
  マスガ、農民ハ此高イ肥料ヲ農業ニ用ヰナケレバナラヌ、何
  トカ致シマシテ此肥料ノ康價購買ノ方法ヲ政府ノ方ニ於
  テ考ヘテ貫ヒタイ、次ニハ農業ノ進歩發達ヲ圖ル上ニ於テ、
  農業上ノ發明者及ビ篤志者ヲ奬勵スルコトガ最モ必要デ
  アルト思フ、軍事上ノ關係或ハ軍器ノ發明改良ヲ致シタト
  云フコトニ付テハ、直チニ動章ヲ與ヘル途ガアルケレドモ、農
  業上ノ發明者ニ向ッテハ、サウ云フ途ガ未ダ営テ開カレテ居
  ルコトヲ聞キマセヌ、是ハ甚ダ遺憾ニ思フ、今日ノヤウニ食
  糧問題ノ解決ニ官民共ニ力ヲ注グト云フヤウナ時ニ方ッテ
  ハ、一層此農業上ノ發明者篤志者等ニ對シテ、獎勵スル
  途ヲ開イテ貰ヒタイト田心ヒマス、或ハ稻種ノ鹽水撰ノ發明
  トカ、或ハ權田式ノ麥ヲドウシタトカ、近來私ノ地方アタリ
  デハ一地方ノ役場ノ農業技手ガ稻作ノ改良ニ付テ非常ナ
  發明ヲシテ、麥ノ權田式ヨリ以上ノ發明ヲシタ者ガアリマ
  ス、サウ云フヤウナ者ニ對シテ未ダ嘗テ之ヲ推獎スル途ガ開
  カレテ居ラヌノハ遺憾ト思フ、或ハ藍綬褒章綠綬褒章ト
  カ、褒章ヲ與ヘル途ハアルケレドモ、未ダ是等ノ者ニ向ッテ
  敍勳セラレタコトハ聞キマセヌ、願クハ斯ウ云フ者ニ向ッテモ
  軍事上ノ發明或ハ軍器ノ改良シタ人ト同ジヤウニ、優遇ノ
  途ヲ開クトカ、或ハ其他ニ推奬ノ途ヲ開クコトニ致シマシ
  タナラバ、農業ノ改良進步ノ上ニ餘程ノ效果ガアルト私ハ
  信ジテ疑ヒマセヌ、デ以上申上ゲマシタ政策ト相俟シテ、政
  府ガ〓期議會ニ提案サレマシタ開墾助成法ナリ、開墾會社
  等ノ事業ト共ニ保護シマシタナラバ、〓糧問題ノ解決ハ決
  シテ難事デナイト信ジマス、敢テ本建議案ヲ提出シタ所以
  デアリマス

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• 052・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ日程第三ノ委員ニ、併セテ付託セラ
  レンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 053・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議無シト認メマス、仍テ岩崎
  君動議ノ如ク決シマス、日程第七、陸軍下士卒優遇ニ關ス
  ル建議案ヲ議題ト致シマスー提出者高田耘平君
  第七陸軍下士卒優遇ニ關スル建議案(高田
  耘平君提出)
  陸軍下士卒優遇ニ關スル建議
  陸軍下士卒ノ給與甚夕菲薄ニシテ現役ノ兵卒ニ對シ父
  兒等ヨリ送金シツヽアルハ目下一般ノ狀況ナリ尙下士
  ノ生活モ極メテ困難ナリ依テ政府ハ成ルヘク急速ニ下
  士卒ノ給與ヲ改善スルノ方法ヲ採ラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔高田耘平君登壇〕

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• 054・高田耘平

  ○高田耘平君　大分御倦怠ノ所デコザイマスカラ、長ク申
  上ゲル積リデアリマシタケレドモ、極メテ大綱ダケヲ申上ゲマ
  ス、目的ハ陸軍ノ下士卒ノ給與、卽チ給料食糧トモ甚ダ菲
  薄デアルカラ、之ヲモウ少シ改善スル必要ガアル、斯ウ云フ
  事デゴザイマス、ソレダケデハ餘リ簡單デゴザイマスカラ、其
  理由ヲ簡單ニ申上ゲマス、卽チ現在ノ陸軍ノ下士卒ノ給
  與ガ果シテ十分デアルヤ否ヤト云フコトヲ見ルト、之ヲ各兵
  卒ノ家庭ガ每月幾分宛カ其父兄ヨリ兵卒ニ送金スルノ狀
  況ヲ見テモ、其ノ不足スルト云フコトハ明カデアル、又唯〓送
  金スルカラソレガ不足デアルト云フコトデハ徹底シマセヌガ、
  實際ニ陸軍省ノ調ベラレタモノヲ見マシテモ、確ニ不足ノ狀
  況ニ在ル、委シイ數字ニナリマスカラ是ハ略シマスガ、現在
  不足デアルト云フコトヲ第一申上ゲマス、ソレカラ第二ニハ、
  其兵卒ノ多クガドウ云フ家庭カラ出テ居ルカト云フ事、卽
  チ兵卒ノ多クノ財產程度ハドウ云フモノデアルカト云フ事
  モ、是モ一ノ理由ニナラウト思フ、是ハ私ガ陸軍省デ調ベテ
  貰ラタモノデ、詰リ第一師團、第十四師團、第十五師團ノ此
  三箇師團ノ兵ニ就キマシテ、大正六年ノ兵卒ノ總員ニ就キ
  マシテ、ドウ云フ風ナ財產狀態ニナッテ居ルカト云フコトヲ調
  ペテ貰ヒマシタガ、千分比例ニ致シマシタ、直接國稅百圓以
  上ヲ納ムル家庭ノ者ガ、千分比例デ十五人ゴザイマス、ソレ
  カラ直接國稅百圓未滿二十圓以上ノ納稅者ノ家庭ノ者
  ガ百三十人デゴザイマス、ソレカラ直接國稅二十圓未滿ノ
  納稅者ノ家庭ノ者ガ五百三十人デアリマス、直接國稅不
  納者ノ家庭ノ者ガ三百一一十五人、是ハ第一師團、第十四
  師團、第十五師團ノ三箇師團ニ就キマシテ、陸軍ノ當局ノ
  手ニ依ッテ調ベテ貰ヒマシタ、其書類モゴザイマス、此書類ハ
  必ズ全般ニ涉ルトハ申シマセヌケレドモ、尠ナクトモ之ヲ以テ
  我帝國ノ陸軍ノ兵卒ノ財產狀態ヲ窺ヒ知ルコトガ、大體ニ
  於テ出來ヤウト思ヒマス、之ヲ見マスルト中產階級以下ニ
  屬スル、直接國稅二十圓以下ノ者ト、直接國稅不納者ト
  ヲ合セテ、全體千人ニ付八百五十五人ト云フコトニナッテ
  居リマス、是ハ餘程看過スベカラザルコトデアラウト私ハ思
  フノデアリマス、卽チ此等ノ中產階級以下ガ國家最大ノ兵
  役ノ義務ヲ負ウテ居ッテ、其上ニ尠ナカラズ二三年間年々
  小遣ノ足リナイモノヲ受ケルト云フ現狀ハ、見ヤウニ依ッテハ
  餘程大問題ト謂フコトガ出來ルト信ジマス、是ガ第二ノ理
  由、第三ノ理由ハ是モ一寸數字ニナリマスケレドモ、徴兵令
  施行以來今日マデノ陸軍ノ兵卒ノ給料ヲ比較シテ見ルト
  ドウナッテ居ルカ、委シイコトハ略シマスガ、ザット申上ゲマスル
  ト、明治四年ニ一等卒ト云フモノハ一箇月二圓デアリマス、
  卽チ一日七錢デアッタ、ツレカラ明治三十二年頃ハ幾ラデア
  ルカト云フト、一等卒二等卒ヲ通ジテ一日四錢デアル、ソレ
  ガ明治四十三年ヨリ一日五錢二厘ニナッテ、サウシテ大正
  七年四月ヨリ二割五分ヲ增シマシテ、九月ヨリ四割增トナ
  リ、現在一、二等卒ガ一日七錢二厘ト云フコトニナッテ居リ
  マス、斯ウ云フヤウナ風デゴサイマシテ、徴兵令施行當時ハ、
  非常ニ今日ヨリ待遇ガ好カッタノデアル、此歷史カラ見マシ
  テ、私共ハズット古キ以前ノ兵卒ノ手當ト其當時ノ物價ト、
  今日ノ手當ト今日ノ物價トヲ對照シテ見マスルト、不足デ
  アルト云フコトハ、歷史上ヨリモ明ニ證明シ得ルト思フノデ
  アリマス、第四ハ陸軍ト海軍トノ比較問題デゴザイマス、之
  ヲ食糧ノ方面ト給料ノ方面ヨリ觀察シマスルト、陸軍ノ方
  ノ上等兵ト云フモノガ定額六錢五厘デ、之ニ四割增シマシ
  テ九錢一厘トナッテ居リマス、ソコデ海軍ノ一等卒ハドウデ
  アルカト云フト、一日ノ定額ガ二十六錢デ、是ニ四割ヲ增シ
  テ三十六錢トナッテ居リマス、サウスルト陸軍ノ上等兵ハ海
  軍ノ一等卒ト比、較シテ、一日ノ給料ガ陸軍ヨリ海軍ノ方ガ
  四倍デアリマス、是ハ總テノ兵卒ニ通ジテ其通リデコザイマ
  ス、詳シイコトハ略シマス、ソレカラ又陸軍ノ兵卒ト海軍ノ
  兵卒トノ食糧ガドウデアルカト云フト、米麥等ニハ大差ハゴ
  ザイマセヌガ、野菜類ニモ大差ハゴザイマセヌ、唯〓肉類ニナ
  ルト非常ニ差ガアル、海軍ノ方ノ食糧ノ表ヲ見マスルト、一
  日ノ食糧ガ牛肉六十匁、魚肉ガ四十匁、合計百匁トナッテ
  居リマス、所ガ是ガ第十四師團ニ就キマシテ肉類ノ調ベタ
  物ヲ見マスルト、一週間ニ九十匁デアリマス、魚肉、豚肉、牛
  肉ヲ通ジテ九十匁、是ガ一週間分デアリマス、所ガ海軍ニ
  於テハ魚肉牛肉ヲ通ジテ一日必ズ百匁ノ肉類ヲ食ハセテ
  居リマス、斯ウ云フコトニナッテ居リマシテ、甚ダ權衡ヲ得ナ
  イノデアリマス、若シ今日ノ儘デ往キマスルト、海軍ニ志願ス
  ル人ハ悅ビマスケレドモ、陸軍ニ居ル人ハ甚シク不平ヲ持ツ
  ヤウニナルト思フ、此意味ヨリシテモ、ドウシテモ陸軍ノ給與
  ヲモウ少シ高メル必要ガアルト思ヒマス、以上四點ガドウシ
  テモ陸軍ノ下士卒ノ給與ヲ更ニ改善シナケレバナラヌ理由
  トナルノデアリマス、是ハ餘程見ヤウニ依ッテハ大問題ト思ヒ
  マスカラ、是非一ツ諸君ノ御賛成ヲ請ヒタイ積リデゴザイマ
  ス、何レ詳細ノコトハ委員會デ申シマス

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• 055・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ官吏恩給法、及ビ之ニ關聯スル諸規
  定ノ改正ニ關スル建議案ノ委員會二、併セテ付託セラレン
  コトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 056・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ガナケレバ動議ノ如ク決シ
  マシタ-日程第八、北海道拓殖完成ニ關スル建議案-
  寺田省歸君
  第八北海道拓殖完成ニ關スル建議案(寺田
  省歸君外二名提出)
  北海道拓殖完成ニ關スル建議
  現今北海道拓殖事業計畫ノ財源タル自然增收ハ拓殖
  完成ニ至ル迄本道經營ノ資源ニ供スルハ北海道拓殖
  計畫案ノ精神ナリ故ニ左記事項ニ對シ更ニ時代ニ適
  應スル計畫ヲ樹立セムコトヲ望ム
  一拓殖鐵道敷設
  一港灣及漁港ノ修築
  治水事業
  土地改良事業
  一其ノ他必要ナル事業
  右建議ス
  〔寺田省歸君登壇〕

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• 057・寺田省歸

  ○寺田省歸君　時間ガ切迫致シマシタカラ、極ク簡單ニ
  說明致シマス「北海道拓殖事業計畫ノ財源夕ル自然增收
  ハ拓殖完成ニ至ル迄本道經營ノ資源ニ供スル」ハ明治四
  十四年ニ定メラレタル拓殖計畫ノ精神デアリマス、仍テ「左
  記事項ニ對シ更ニ時代ニ適應スル計畫ヲ樹立センコトヲ望
  ム」ト云フノガ、此建議案ノ精神デアリマス、卽チ拓殖鐵道
  ノ敷設、港灣及漁港ノ修築、治水事業、土地改良事業、其
  他必要ナル事業デアリマス、理由ヲ聊カ說明致シマス、北海
  道ハ明治二年拓殖長官東久世通禧卿ガ先帝陛下ノ優
  渥ナル詔勅ヲ奉戴シマシテ、開拓ニ從事シテ以來、旣ニ五
  十餘年ヲ經過致シマス、其間官民共ニ銳意熱心開拓ニ從
  事致シマシタ結果、今ヤ人口二百有餘万、開墾地七十餘
  万町歩、生產高三億万圓ニ上リマシテ、其進步稍、見ルベ
  キモノガアリマス、然レドモ廣袤六千方里ニ亙ル北海道ノ
  大ニ比シマスレバ、未ダ開墾ノ工程ハ其半ニモ達シナイノデ
  ゴザイマス、海ニ於テハ、沿海漁業ハ稍〓〓〓ノ傾ガアリマス
  ケレドモ、遠洋漁業ニ至リマシテハ未ダ一指ヲモ染メズ、無
  盡ノ魚族ニ富ミ、此魚族ヲシテ空シク北海ニ游泳セシムル
  有樣デアリマス、又山ニ在リマシテハ、千右不伐ノ森林ハ廣
  大ノ地區ニ亙リマシテ、晝猶暗キ所ガアリマス、又各種ノ鑛物
  ハ無限ノ鑛量ヲ包藏シテ、事業家ヲ待ッテ居ル有樣デゴザイ
  マス、更ニ原野ヲ見マスレバ、尙ホ吾ニノ見ル所デハ、百万町
  步ノ開墾適地ガ存シテ居ルノデアリマス、刻下朝野ノ最モ
  苦心ヲ爲シツヽアル米穀ニ於テモ、今後殆ド五一ハ百万石ヲ
  產出シ得ベキ餘他ガ十分アルノデアリマス、工業ニ至ッテハ
  各所ニ豐富ノ原料ヲ產スルヲ以テ、多大ノ發展ヲ見ルコト
  ガ出來マス、其外畜產ニ、養蠶ニ、數へ來レバ日モ亦足ラヌ
  ノデアリマス、故ニ北海道ノ開拓ノ仕事ハ寧口是カラト言
  ウテモ宜イノデアリマス、故ニ若シ北海道拓殖完成シ、產業
  大ニ發達スルノ時ニハ、人口ニ於テ七八百万人、生產總高
  十億万圓ニ上ルコトハ、敢テ難事デナイト思ヒマス、故ニ此
  點カラ申シマスレバ、北海道ハ一ハ米穀ノ調節ヲ助ケ、一八
  內地ニ於テ年々增加スル過剩ノ人民ヲ移入レマシテ、彼等
  ヲシテ土著永住ノ樂土ヲ得セシムル使命ヲ有シテ居ルノデ
  マザイマス、政府ハ明治四十二年拓殖事業計畫ヲ立テヽ
  以來時運ノ形勢ニ鑑ミマシテ、豫定ノ計畫ニ多少ノ改正
  追加ヲ爲シ、是ガ遂行ニ努メツヽアリマスケレドモ、拓殖ノ完
  成ヲ期セント欲セバ、未ダ不備不足ト謂ハナケレバナリマセ
  時々
  ヌ、然ルニ一面時代ノ進運ハ、北海道拓殖ノ速成ヲ要望シ
  テ止マヌノデアリマス、又一面本道自然ノ增收ハ(「詳細ハ
  委員會」ト呼フ者アリ)一時豫定ノ如キ收入ガアリマセヌ
  デシタガ、近年ニ至リマシテ頗ル好況ヲ呈シ、此既定計畫ノ
  完成期、卽チ大正十五年ニ至ルマデ、少クモ二千有餘万ノ
  金高ニ上ル豫想デゴザイマスルカラ、吾とハ此最初ノ計畫ニ
  基イテ、此二千有餘万ノ金ヲ支出シテ、以テ此拓殖ノ完成
  ヲ期セント欲スル者デゴザイマス、ドウカ御賛成ヲ願ヒマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=57

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• 058・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託
  セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=58

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• 059・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=59

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• 060・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナケレバ岩崎君動議ノ如
  ク決シマス-日程第九、發電用水利權ノ法規制定ニ關
  スル建議案ヲ議題ト致シマス、石原正太郞君
  第九發電用水利權ノ法規制定ニ關スル建議
  案(石原正太郞君外一名提出)
  發電用水利權ノ法規制定ニ關スル建議
  近時石炭ノ價格暴騰シタルト各種工業勃興ノ結果水
  力電氣ノ事業ハ益盛大ヲ加へ而シテ國家ノ產業上重ナ
  ル位置ヲ占ムルニ至レリ而シテ水力電氣ノ根原タルヘキ
  水利ハ國家ノ所有物ニシテ之カ使用許可ノ方法ノ宜シ
  キヲ得ルト否トハ國家經濟上重大ナル關係ヲ有シ且事
  業家ノ利害消長ニ影響スルトコロ大ナリ然ルニ此ノ水
  利權使用ノ許可ニ關シ未タ統一的法規ノ定マレルモノ
  ナク所謂行政官廳ノ手加減ニ依リテ決定セラルヘキヲ
  以テ時トシテ其ノ間不正ノ運動行ハレ公明ナル經濟上
  ノ發展ヲ阻害スルコト少カラス依テ政府ハ速ニ適當ナル
  方策ヲ講シ本建議ノ趣旨ヲ遂ケシメラレンムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔石原正太郞君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=60

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• 061・石原正太郎

  ○石原正太郞君　極ク簡單ニ趣旨ヲ申述ベマス、最近水
  力電氣ノ事業ハ非常ニ勃興致シマシテ、殊ニ時局以來石
  炭ノ價格ガ騰貴シ、工業ノ勃興ニ伴ウテ此水力電氣ガ非
  常ナ發達ヲ來シタノデアリマス、近イ調ニ依リマスルト、水力
  ニ依ル發電ガ約九十万馬力、之ニ投下セラレテ居ル資本ガ
  約三億五千万圓ニ達シテ居ルノデアリマス、數年前遞信省
  ニ臨時發電調査局ト云フモノヲ置キマシテ、全國ノ主要ナ
  ル河川百四十七ニ付キマシテ、經濟上利用シ得ベキ發電
  力ヲ調査シタコトガアリマス、其調査ノ報告書ニ依リマスル
  ト、此百四十七ノ河川ニ付テモ尙ホ六百五十万馬力ノ、經
  濟上利用シ得ベキ水力ガアルト云フコトデアリマス、左樣ナ
  譯デアリマスルカラ、今後此水力電氣ニ投下セラルベキ資
  本ハ、恐ラク十五億乃至二十億ヲ下ラヌモノデアラウト思
  フノデアリマス、誠ニ水力電氣ハ、國家ガ所有シテ居ル富源
  ノ最モ大ナルモノヽ一ツデアッテ、幾ラ之ヲ使用シテモ-之
  ヲ使ッテモ盡キナイト云フ點ニ於キマシテハ、或ル意味ニ於テ
  ハ鑛山ヨリモヨリ以上價値アル國家ノ一大富源デアラウト
  思フノデアリマス、此富源タル-鑛山ニ付キマシテハ鑛業
  法ト云フモノガアリマシテ、是ガ取扱ノ規定ガ完全ニ規定サ
  レテ居ルノデアリマスルガ、此水力ノ水利權ニ就キマシテハ、
  統一サシテアル纏マック法規ガ無イノデアリマス、各府縣勝
  手ナ手續書ノヤウナモノヲ設ケ、遞信省ハ遞信省デ內規ノ
  ヤウナモノヲ設ケ、内務省ハ內務省デソレニ類シタルヤウナモ
  ノヲ設ケ、其爲メニ此貴重ナル富源ノ開發ヲ薄カラシメ妨グ
  ルコトガ非常ニ多イノデアリマス、ノミナラズ斯樣ナ有用ナ
  富源デアル爲メニ、其權利ヲ獲得スベク色とノ緣故ヲ辿ク
  テ、忌ムベキ運動ナドモ行ハレテ、官紀上寔ニ厭フベキ事柄
  モ起ルノデアリマス(「分リマシタ」ト呼フ者アリ)色〓當業者
  ガ此水力電氣ノ水利權ノ許可ニ對シマシテ、政府ガ現ニ執
  リツヽアル方針ニ就テ、尠カラズ不安ヲ懷イテ居リ、又多ク
  ノ疑點ヲ持ッテ居ルノデアリマス、是等ニ就キマシテハ、詳細
  ニ委員會ニ於キマシテ政府ノ御說明ヲ願ヒタイト思ッテ居
  リマス、ドウゾ御賛成アランコトヲ希望致シマス
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=61

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• 062・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託
  セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=62

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• 063・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　動議ニ御異議ハナシト認メマス、
  乃チ岩崎君動議ノ如ク議長指名九名ノ委員ニ付託スルコ
  トニ決シマシタ、日程第十、能代、五所川原間鐵道建設ニ
  關スル建議案ヲ議題ト致シマス、委員長池田龜治君
  第十能代、五所川原間鐵道建設ニ關スル建
  議案(工藤卓爾君外四名提出)
  (委員長報告)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=63

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• 064・池田亀治

  ○池田龜治君　極ク簡單デアリマスル故ニ、此席カラ說明
  致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=64

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• 065・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=65

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• 066・池田亀治

  ○池田龜治君　唯〓日程ニ上ッテ居リマスル所ノ能代五所
  川原間鐵道建設ニ關スル建議案ノ委員會ノ經過竝ニ結果
  ヲ御報告致シマス、委員會ニ於キマシテハ、回ヲ重ヌルコト
  三回、提案者ニ質問ヲ致シ、政府ノ說明ヲ聽キ、愼重ニ審
  議致シマシテ、其結果滿場一致ヲ以テ可決スルコトニナリ
  マシタ、今此大要ヲ申上ゲマスルト(「簡單々々」ト呼フ者ア
  リ)極ク簡單ニヤリマス(「靜肅ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)此
  鐵道ハ奥羽線機織驛ヨリ分岐シテ能代マデハ支線ニナッテ
  居リマスガ、能代ヨリハ森、岩館ヲ經テ、靑森縣ノ鰺澤ニ到リ、
  ソレカラ五所川原間ハ私設鐵道ニ依シテ、靑森縣奧羽線ノ
  川部驛ニ連絡スル線デアリマシテ、政府ニ於テモ其線ハ相
  俟ッテ重要ナル路線デアルト云フコトデアリマシテ、既ニ大
  體ニ於テ調査ハ遂ゲテアルサウデアリマス、其說明ヲ聞キマス
  ト、五所川原鰺澤間ノ延長十三哩六十六鎖最急勾配ハ
  六十分ノ一、建設費總額八十四万七千八百六十四圓、
  哩平均六万千三百二十八圓、資本ニ對スル收益ノ割合ガ
  六分七厘、利用者ノ利益ハ二割六分三厘、總益金ノ割合
  ハ二割六分九厘、ソレカラ能代鰺澤間ノ延長ハ六十二
  哩七十一鎖、最急勾配ハ五十分ノ一、建設費總額ハ五百
  六十八万六千餘圓、一哩平均九万圓餘、利用者ノ利益ハ
  五分七厘、斯ウ云フ風ニナッテ居リマシテ、私設鐵道ヲ設ケ
  テモ十分ヤレルト云フヤウナ線デアリマス、併シ是ハ大正元
  年十月ノ調査デアリマスガ故ニ、今日ノ物價ヲ以テシテハ
  此價格デ出來ナイト云フコトハ當然デアリマスケレドモ、此
  鐵道ヲ敷設シタ後ノ向上發展ハ夥シイモノガアラウト思ヒ
  マスガ故ニ、此利益ノ步合ハ決シブ下ラヌト云フコトハ、
  政府委員ノ辯明ニモアリマス、其他地方ヲ開發スベキ色と
  ナ質問應答ガアリマシタケレドモ、最早時間モ切迫シテ居リ
  マスカラ、是ダケ申上ゲマシテ、委員會ニ於キマシテハ右ノ事
  態ヲ諒ト致シマシテ、成ベク速ニ建設スルノ希望ヲ付シテ、
  滿場一致ヲ以テ可決シタ次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=66

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• 067・岩崎勲

  ○岩崎動君　本案ハ委員長報告通リ可決セラレンコトヲ
  望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=67

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• 068・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=68

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• 069・大岡育造

  ○議長(大岡育造君)　御異議ナイト認メマス、仍テ本建
  議案ハ可決セラレタルコトヲ宣告致シマス、最早時間モ切
  迫致シマシタカラ、今日ハ是ニテ散會
  午後五時五十六分散會
  衆議院議事速記錄第二十四號正誤
  頁段行誤正
  三中一七化學科學
  中ニ化學
  三三三三九九九九九七六六六六中六五〇三化學滿科科科洲學學學
  上中一三三化〓
  四百圓

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004113242X02719190321&spkNum=69

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