1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正九年七月十四日(水曜日)
午前十時七分開議
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議事日程 第九號 大正九年七月十四日
午前十時開議
第一 大正八年法律第九號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 所得税法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 所得税法の施行に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 酒造税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 酒精及酒精含有飮料税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 麥酒税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 明治四十一年法律第二十四號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第八 明治四十年法律第二十一號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第九 議院法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十 大正九年勅令第五十二號(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第十一 國運發展に適切なる社會組織及風俗慣習調査機關設置に關する建議案(前田正名君發議) 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
一昨十二日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付
セリ
明治二十九年法律第十三號中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
大正九年勅令第五十二號(承諾ヲ求ムル件)
大正八年法律第九號中改正法律案
昨十三日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
所得稅法改正法律案
所得稅法ノ施行ニ關スル法律案
酒造稅法中改正法律案
酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
麥酒稅法中改正法律案
明治四十一年法律第二十四號中改正法律案
明治四十年法律第二十一號中改正法律案
議院法中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=2
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003・廣澤金次郎
○伯爵廣澤金次郞君 是ヨリ郵便貯金法中改正法律案特別委員會ヲ開會イタ
シタイト考ヘマス、就キマシテハ右委員ノ退席ノ御許可ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 廣澤伯爵ノ特別委員會へノ退席ノ要求ハ、許可ヲ
致シテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=5
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006・阪本さん之助
○阪本釤之助君 本日ノ日程ニ入リマス以前ニ、一二,〇、御許シヲ願ヒタイト
思ヒマスガ、十二日ノ會議ノ速記錄ヲ今朝受取リマシテ、一讀イタシマシタ
所ガ、本員ノ尼港ニ關シマスル質問ニ對シマシテ、陸軍大臣ガ御答辯ニナラレ
マシタコトノ一節ハ九十七頁ニ載ッテ居ルノデアリマスガ、當時陸軍大臣ノ御
答辯ハ情意ヲ竭サレタモノデアリマシテ、殊ニ末節ノ一語ハ私共ノ甚ダ·
後ニ申シタ通リ、佩服イタシマシテ質問ヲ打切リマシタ次第デゴザイマスガ、
其卽チ速記ヲ讀ミマスルト、甚ダ意外デアルノデアリマス、是ハ併シ或ハ速
記者ガ文字ヲ書違ヘタノデハナイカトハ存ジマスルガ、併シドウモ當時彼ノ
コトハ確ニ記憶イタシマセヌガ、是ハ滿場ノ諸君ニモ御記憶ノ御喚起ヲ願ヒ
タイノデアリマスガ、速記ヲ讀ミマスガ、一番仕舞ヒニ至リマシテ、「又此事
柄ハ別トシテ、斯樣ナ事柄ガアリマシテ、陛下ニ對シ奉ッテハ、誠ニ宸襟ヲ
惱シ奉ッタ次第デアリマス、國民ノ義憤ヲ招イタ次第デアリマス、其點ニ付キ
マシテハ、私ハ親切ヲ缺カヌ積リデアリマス」、斯ウゴザイマスガ、此「親
切」ナル文字ハ親ト云フ字ト切ト云フ字、卽チ俗ニ云フ親切ヲ盡スト云フ親
切ト云フ字ガ書イテアリマスルガ、當時「シンセツ」ト云フ字ハドウデアラウ
カト云フコトハ、何人モ耳ヲ傾ケテ聽キマシタガ、私共解釋スルニハ君臣ノ
臣、節操ノ節、臣節ヲ缺カヌ、內閣大臣ノ責任ノアル臣節ヲ瞭カニスルト云
フ誠意ヲ籠メタ、又其當時ノ態度ガ如何ニモ私共敬服スル態度ヲ以テ、臣節
ヲ缺カヌ積リデアルト仰シヤッタト云フコトニ確ニ記憶シテ居リマスルガ、唯
漫然ト親切·······物事ヲ親切ニスルト云フ親切デハ薩張リ折角ノ御演說ガ體ヲ
成サヌ次第デアリマス、而カモ又此前ノ「陛下ニ對シ奉ッテハ、誠ニ宸襟ヲ惱
マシ奉ッタ次第デアリマス、國民ノ義憤ヲ招イタ次第デアリマス」、是モドウ
モ斯ウデハナカッタ、モウ少シ申譯ガナイトカ、恐懼ノ至リトカ云フ御言葉ガ
アッタカト存ジマスケレドモ、是ハ或ハ水掛論ニナリハシマセヌカト思ヒマス
ガ、斯樣デアルト事務局デ御承認ニナリマスレバ致方ナイノデアリマスルガ、
此「親切」ト云フ字ハ、確ニ矢張リ單ニ親切デナク君臣ノ臣節操ノ節デアルト
私共解釋ヲ致シテ居リマシテ、當時大ニ大臣ノ御話ヲ御丁寧デ、佩服ヲ致シ
マシタト、斯ウ自分ハ申シテ居ルノデアリマスガ、矢張リ「親」ト云フ字ト
「切」ト云フ字ガ大臣ノ本意デアッタカ、若クハ私共ノ解釋スル如ク、君臣ノ節
操デアッタカト云フコトヲ一應陸軍大臣ニ御質シニナリマシテ、直チニ此席デ
ハ御答ニハ及ビマセヌガ、御質シニナリマシテ、議場ニ徹底スルヤウニ議長
ヨリ御報告ヲ願ヒタイト存ズルノデアリマス、是ダケノコトヲ申述べマシテ、
尙ホ其前ノ所ニ脫字ハナイカ、卽チ此「陛下ニ對シ奉ツテ」云々以下ノ所ニ脫
字ハナイカ、又「シンセツ」ト云フ字ハドウ云フ字デアッタカト云フコトヲ御
確カメニナリマシテ、御報〓ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ私ノソレニ付
テ述ベマシタ裏ノ頁ノ數行ノ所ニ「ハイフク」ト云フ字ガ拜スル········御辭儀ヲ
スルト云フ「拜」ノ字ガ書イテアリマス、私ノ「ハイフク」ト申シタノハ感佩ノ
佩、何モ御辭儀ヲシテ服サウト云フノデハアリマセヌ、感佩シタト云フノデ
アリマスルカラ、「ハイフク」ノ「ハイ」ハ佩ブルト云フ字デナケレバナラヌノ
デアリマスガ、是ハ私ヨリ正誤ヲ求メテ置キマス、「ハイフク」ト申シタ所以
ノモノハ、卽チ臣節ヲ缺カヌト言ハレタ御言葉ニ、非常ニ佩服シタノデアリ
PV·ガ唯〓申述ベタ「親切」ト云フ字デハ甚ダ感服イタシマシマセヌ、此點
ハ議長ニ御願ヒ旁、一言申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯今陸軍大臣ハ出席シテ居ラレマセヌカラ、阪本
釤之助君ノ御希望ノ點ハ、早速議長ヨリ田中陸軍大臣ニ傳ヘマセウ、左樣御
承知ヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本日ノ議事日程ニ移リマス、日程第一、大正八年
法律第九號中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、本日モ通牒文
ノ朗讀ハ省略イタシタク存ジマス、御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
〔左ノ送付文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之
ニ倣フ〕
大正八年法律第九號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正九年七月十二日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
大正八年法律第九號中改正法律案
大正八年法律第九號中左ノ通改正ス
「大正十年度」ヲ「大正十一年度」ニ「二百六十一萬四千九百五十二圓」ヲ「三
百四十五萬二千二百二十九圓」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
參照
大正八年法律第九號
大正八年度ニ於テ造幣局据置運轉資本ニ百五十萬圓ヲ增加ス
前項資本ノ增加及大正八年度乃至大正十年度ニ亙リ造幣局ノ設備擴張ニ要
スル經費ニ充用スル爲造幣局資金ノ內二百六十一萬四千九百五十二圓ヲ限
リ一般會計ニ繰入ルルコトヲ得
〔國務大臣男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=9
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010・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 唯今議題トナリマシタル本案ハ、浩幣局ノ設
備擴張ニ要シマスル所ノ費用ニ充テマスル爲ニ、造幣局ノ資金ノ一部ヲ一般
會計ニ繰入レマスル爲ニ提案ヲ致シタノデゴザイマス、其趣意ノ大要ヲ申シ
マスレバ、曩ニ第四十一議會ニ於キマシテ、補助貨ノ需要ガ增加シマスルニ
應ジマスル爲メ、造幣局ノ貨幣鑄造能力ハ一箇年約二億枚デアリマスノデ、
二倍ニ增加イタシマスルガ爲ニ、大正八年度以後三箇年ノ繼續費ト致シマシ
テ總額百十一万餘圓、設備擴張費ノ御協賛ヲ得マシタノデゴザイマスルガ、
其後銀塊相場ノ狀勢ニ鑑ミマシテ、銀貨ノ鑄造ハ之ヲ見合セマシテ、新タニ
十錢ノ白銅貨ヲ制定イタシテ鑄造スルコトニシマシテ、尙ホ五錢ノ白銅貨ト
一錢ノ靑銅貨ヲ一層增鑄スルノ必要ガゴルイマシテ、茲ニ更ニ鑄造能力ヲ一
箇年一億枚增加スルノ計畫ヲ立ツルコトニ致シマシタ此計畫ヲ實行イタシマ
スル爲メ、既定計畫ノ設備擴張費ノ外ニ、更ニ設備擴張ノ爲ニ七十三万餘圓
ノ經費ヲ要シマスル、ソレト又物價騰貴ノ爲ニ既定經費ニ九万餘圓ヲ追加ス
ルノ必要ガゴザイマシテ、合計八十三万餘圓ヲ既定繼續費ニ增額スルコト
致シマシタ、且ツ此繼續年限ヲ一箇年延長イタシマシテ追加豫算ニ計上イタ
シタ次第デゴザイマス、右增加ヲ要シマスル經費ノ財源ト致シマシテ、造幣
局資金ヨリ之ニ相當スル金額ヲ一般會計ニ繰入レマスル必要ガゴザリマスノ
デ、玆ニ本改正案ヲ提出イタシマシタル次第デゴザイマス、御審議ノ上御協
贊アラムコトヲ切望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御質疑モナイヤウデゴザイマスカラ、特別委
員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
大正八年法律第九號中改正法律案特別委員
伯爵川村鐵太郞君子爵稻垣太祥君子爵本 多忠鋒君
男爵毛利五郞君男爵矢吹省三君大谷嘉兵衞君
津村紀陵君高橋源次郞君高橋隆一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=11
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012・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際議長ハ諸君ニ御諮リヲ致シマス、日程第二ヨ
リ第七マデ束ネテ說明ヲ煩ハシ、議題ト致シタイト考ヘマス、御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、所得稅法改正法律案、第三、所得稅法
ノ施行ニ關スル法律案、第四、酒造稅法中改正法律案、第五、酒精及酒精含
有飮料稅法中改正法律案、第六、麥酒稅法中改正法律案、第七、明治四十一
年法律第二十四號中改正法律案、政府提出衆議院送付、第一讀會
所得稅法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正九年七月十三日
衆議院議長奥繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
小字ハ衆議院ノ修正、
ハ同削除ノ符號ナリ
所得稅法
第一條本法施行地ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ハ本法ニ依
リ所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第二條前條ノ規定ニ該當セサル者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ所
得ニ付テノミ所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
本法施行地ニ資產又ハ營業ヲ有スルトキ
二本法施行地ニ於テ公債、社債、銀行定期預金又ハ定期預金ノ性質ヲ
有スル銀行預金ノ利子支拂ヲ受クルトキ
三本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ利益若ハ利息
ノ配當、剩餘金ノ分配又ハ利益若ハ剰餘金ノ處分タル賞與若ハ賞與
ノ性質ヲ有スル給與ヲ受クルトキ
第三條所得稅ハ左ノ所得ニ付之ヲ賦課ス
第一種
甲法人ノ超過所得
乙法人ノ留保所得
法人ノ配當所得
丁戊丙丁丙法人ノ〓算所得
本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セサル法人ノ本法施行地
ニ於ケル資產又ハ營業ヨリ生スル所得
第二種
甲本法施行地ニ於テ支拂ヲ受クル公債、社債、銀行定期預金又ハ定
期預金ノ性質ヲ有スル銀行預金ノ利子
たききの
乙第一條ノ規定ニ該當セサル者ノ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務
所ヲ有スル法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當、剩餘金ノ分配又
ハ利益若ハ剩餘金ノ處分タル賞與若ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與
第三種
第二種ニ屬セサル個人ノ所得
第四條法人ノ所得ハ各事業年度ノ總益金ヨリ總損金ヲ控除シタル金額ニ
依ル但シ保險會社ニ在リテハ各事業年度ノ利益金又ハ剩餘金ニ依ル
本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セサル法人ノ所得ハ本法施行地
ニ於ケル資產又ハ營業ニ付前項ノ規定ニ準シ之ヲ計算ス
法人カ事業年度中ニ解散シ又ハ合併ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テハ其
ノ事業年度ノ始ヨリ解散又ハ合併ニ至ル迄ノ期間ヲ以テ一事業年度ト看
做ス
第五條法人ノ各事業年度ノ所得カ同年度ノ資本金額ニ對シ年百分ノ八ノ
割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ以テ法人ノ
超過所得トス
第六條法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ各月末ニ於ケル拂込株式金額、出
資金額又ハ基金及積立金額ノ月割平均ヲ以テ之ヲ計算ス
前項計算ノ場合ニ於テ繰越缺損金アルトキハ其ノ各月末ニ於ケル金額ノ
月割平均ヲ以テ之ヲ計算シ資本金額ヨリ控除ス
第七條本法施行地ニ本店若ハ主タル事務所ヲ有セサル法人又ハ所得稅ヲ
課スヘキ所得ト其ノ他ノ所得トヲ有スル法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ
命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第八條本法ニ於テ積立金ト稱スルハ積立金其ノ他名義ノ何タルヲ問ハス
法人ノ所得中其ノ留保シタルモノヲ謂フ
第九條法人ノ各事業年度ノ所得中積立金ト爲シタル金額ヲ以テ法人ノ留
保所得トス
法人カ積立金ヲ減少シタルトキハ其ノ減少額ヲ塡補スルニ至ル迄其ノ後
ノ各事業年度ノ留保所得ニ付所得稅ヲ課セス
積立金ヲ減少シタル法人カ合併ニ因リテ消滅シタルトキハ合併後存續ス
ル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ニ付前項ノ規定ヲ適用ス但シ合
併ノ際合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ積立金ヲ以テ合併後存續スル法人
又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ノ株式金額又ハ出資金額ニ充當シタル
モノニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十條法人ノ各事業年度ノ所得中利益ノ配當又ハ剰餘金ノ分配ニ充當シタル金額ヲ以テ法人ノ配
當所得トス
法人ノ積立金ヲ減少シテ利益ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ニ充當シタル金額ハ之ヲ前項ノ配當所得
ニ加算ス
十一
第十條法人解散シタル場合ニ於テ其ノ殘餘財產ノ價額カ解散當時ノ拂込
株式金額、出資金額、積立金及最後ノ事業年度ニ於ケル留保所得ノ合計
金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ以テ法人ノ〓算所得トス
法人合併ヲ爲シタル場合ニ於テ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ株主又ハ
社員カ合併後存續スル法人若ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ヨリ合併ニ
因リテ取得スル株式ノ拂込濟金額又ハ出資金額及金錢ノ總額カ合併ニ因
リテ消滅シタル法人ノ合併當時ノ拂込株式金額、出資金額、積立金及最
後ノ事業年度ニ於ケル留保所得ノ合計金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金
額ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ〓算所得ト看做ス
二
第十一條合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ハ合併ニ
因リテ消滅シタル法人ノ所得ニ付所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
三
第十二條第二種ノ所得ハ其ノ支拂ヲ受クヘキ金額ニ依ル
四
第十三條第三種ノ所得ハ左ノ各號ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
俸給給料歲費年金恩給退隱料及此等ノ性質ヲ有スル給與、營業ニ非
サル貸金ノ利子竝第二種ノ所得ニ屬セサル公債社債及預金ノ利子ハ
其ノ收入豫算年額
二田又ハ畑ノ所得ハ前三年間每年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除
シタルモノノ平均ニ依リ算出シタル收入豫算年額但シ前三年以來引
續キ自作セス、小作セス又ハ小作ニ付セサル田又ハ畑ニ在リテハ近
傍類地ノ所得ニ依リ算出シタル收入豫算年額
三山林ノ所得ハ前年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
四賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ハ前年四月一日ヨリ其ノ年三月末
日ニ至ル期間ノ收入金額
五法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剰餘金ノ分配ハ前年四月一
三
日ヨリ其ノ年三月末日ニ至ル期間ノ收入金額ヨリ其ノ十分ノニニ相
當スル金額ヲ控除シタル金額但シ無記名式ノ株式ヲ有スル者ノ受ク
三
ル配當ハ同期間ニ於テ支拂ヲ受ケタル金額ヨリ其ノ十分ノ二ニ相當
スル金額ヲ控除シタル金額
六前各號以外ノ所得ハ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル收入豫
算年額
法人ノ社員其ノ退社ニ因リ持分ノ拂戾トシテ受クル金額カ其ノ退社當時
ニ於ケル出資金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ其ノ法人ヨリ受
クル利益ノ配當ト看做ス株式ノ消却ニ因リ支拂ヲ受クル金額カ其ノ株式
ノ拂込濟金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額亦同シ
五
第十四條前條ノ規定ニ依リ算出シタル金額一萬二千圓以下ナルトキハ其
ノ所得中俸給給料歲費年金恩給退隱料賞與及此等ノ性質ヲ有スル給與ニ
付テハ其ノ十分ノ一、六千圓以下ナルトキハ同十分ノ二ニ相當スル金額
ヲ控除ス
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用
ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同シ
六
第十五條前二條ノ規定ニ依リ算出シタル金額三千圓以下ナル場合ニ於テ
其ノ年四月一日現在ノ同居ノ戶主及家族中年齡十八歲未滿若ハ六十歲以
上ノ者又ハ不具癈疾者アルトキハ其ノ所得ヲ有スル者ノ申請ニ依リ其ノ
所得ヨリ左ノ各號ノ規定ニ依ル金額ヲ控除ス但シ第二條ノ規定ニ依ル納
稅義務者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
一所得千圓以下ナルトキ
年齡十八歲未滿若ハ六十歲一人ニ付百圓
以上ノ者又ハ不具癈疾者
二所得二千圓以下ナルトキ
同一人ニ付七十圓
三所得三千圓以下ナルトキ
同一人ニ付五十圓
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用
ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テハ所得ヨリ控除セラルヘキ金額ハ各其ノ所得ニ案分シ
テ之ヲ計算ス
同一人ニシテ山林ノ所得ト山林以外ノ所得トヲ有スル場合ニ於テハ前三
項ノ規定ニ依ル控除ハ先ツ山林以外ノ所得ニ付之ヲ爲シ不足アルトキハ
山林ノ所得ニ及フ
第一項ノ不具癈疾者ハ命令ヲ以ヲ之ヲ定ム
七
第十六條北海道府縣郡市町村其ノ他命令ヲ以テ指定スル公共團體、神社、
寺院、祠字、佛堂及民法第三十四條ノ規定ニ依リ設立シタル法人ニハ所
得稅ヲ課セス
八
第十七條第三種ノ所得ニシテ左ノ各號ニ該當スルモノニハ所得稅ヲ課セ
ス
一軍人從軍中ノ俸給及手當
二扶助料及傷痍疾病者ノ思給又ハ退隱料
三旅費、學資金及法定扶養料
四郵便貯金、產業組合貯金及銀行貯蓄預金ノ利子
五營利ノ事業ニ屬セサル一時ノ所得
六日本ノ國籍ヲ有ヤサル者ノ本法施行地外ニ於ケル資產、營業又ハ職
業ヨリ生スル所得
七乘馬ヲ有スル義務アル軍人カ政府ヨリ受クル馬糧、繫畜料及馬匹保
續料
九
第十八條勅令ヲ以テ指定シタル重要物產ノ製造業ヲ營ム者ニハ命令ノ定
ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間其ノ業務ヨリ生スル所得ニ
付所得稅ヲ免除ス
二十五
第十九條第三種ノ所得ハ六百圓ニ滿タサルトキハ所得稅ヲ課セス第十四
六
條及第十匠候ノ規定ニ依ル奪除ヲ爲シタル袋ハ百圓ニ滿クサルニ至
ルトキ亦同シ
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用
ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同シ
第二十〓條第一種ノ所得ニ對スル所得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲超過所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用ス
所得金額中資本金額ニ對シ年百分ノ八ノ割合ヲ以テ算出シタル金額
ヲ超ユル金額百分ノ二
同百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額
百分ノ四
同百分ノ二十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額
百分ノ八
同百分ノ三十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額
百分ノ十五
百分ノ七、五
百分ノ四
|丁戊|丙丁丙乙百分ノ七、五
百分ノ七、五
法人ノ事業年度末ニ於ケル積立金及其ノ事業年度ニ於ケル留保所得ノ合
計金額カ其ノ事業年度末ニ於ケル拂込株式金額、出資金額又ハ基金及之
ニ代ルヘキ積立金ノ合計金額ノ二分ノ一ニ相當スル金額ヲ超過スルトキ
ハ其ノ超過金額ニ屬スル其ノ事業年度ノ留保所得ニ對スル稅率ハ百分ノ
十五トシ其ノ事業年度末ニ於ケル拂込株式金額、出資金額又ハ基金及之
ニ代ルヘキ積立金ノ合計金額ニ相當スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過
金額ニ屬スル其ノ事業年度ノ留保所得ニ對スル稅率ハ百分ノ三十トス但
シ其ノ事業年度ニ於ケル所得ノ二十分ノ一ニ相當スル金額以内ノ金額ニ
付テハ其ノ稅率ハ百分ノ七、五トス
二
第二十一條第二種ノ所得ニ對スル所得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲公債ノ利子百分ノ二
其ノ他百分ノ三
乙百分ノ七、五
三
第二十二條第三種ノ所得ニ對スル所得稅ハ所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ
遞次ニ各稅率ヲ適用シテ之ヲ賦課ス但シ山林ノ所得ト山林以外ノ所得ト
ハ之ヲ區分シ各別ニ稅率ヲ適用ス
〇、五
八百圓以下ノ金額百分ノ一
一
八百圓ヲ超ユル金額百分ノ一五
千圓ヲ超ユル金額百分ノ二
千五百圓ヲ超ユル金額百分ノ三
二千圓ヲ超ユル金額百分ノ四
三千圓ヲ超ユル金額百分ノ五
六、五
五千圓ヲ超ユル金額百分ノ比
八
七千圓ヲ超ユル金額百分ノ仇
九、五
一萬圓ヲ超ユル金額百分ノ十一
十一
一萬五千圓ヲ超ユル金額百分ノ十三
十三
二萬圓ヲ超ユル金額百分ノ十五
十五
三萬圓ヲ超ユル金額百分ノ十七
十七
五萬圓ヲ超ユル金額百分ノ十九
十九
七萬圓ヲ超ユル金額百分ノ二十一
二十一
十萬圓ヲ超ユル金額百分ノ二十三
二十三
二十萬圓ヲ超ユル金額百分ノ二十五
二十五
五十萬圓ヲ超ユル金額百分ノ二十七
二十七
百萬圓ヲ超ユル金額百分ノ三十
百分ノ三十
二百萬圓ヲ超ユル金額ハ其ノ百萬圓迄每ニ遞次百分ノ三ヲ加ヘ百分
ノ四十ニ至リテ止ム
三百萬圓ヲ超ユル金額百分ノ三十三
四百萬圓ヲ超ユル金額百分ノ三十六
前項ノ場合ニ於テ戶主及其ノ同居家族ノ所得金額ハ之ヲ合算シ其ノ總額
ニ對シ稅率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ各其ノ所得金額ニ案分シテ各其
ノ稅額ヲ定ム戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得金額ニ付亦同シ
四
幼二十億條第一種ノ所得ニ付納税義務アル者ハ命分ノ定ムル所二依
產目錄、貸借對照表、損益計算書又ハ〓算若ハ合併ニ關スル計算書竝第
四條乃至第十○條ノ規定ニ依リ計算シタル所得及資本金額ノ明細書ヲ添
附シ其ノ所得ヲ政府ニ申告スヘシ但シ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務
所ヲ有セサル法人ハ本法施行地ニ於ケル資產又ハ營業ニ關スル損益ヲ計
算シタル所得及資本金額ノ明細書ヲ添附スヘシ
前項ノ規定ハ第一種ノ所得ニ付所得稅ヲ課セラルヘキ法人ニ付其ノ所得
ナキ場合ニ之ヲ準用ス
五
第二十四條第三種ノ所得ニ付納稅義務アル者ハ每年四月中ニ所得ノ種類
及金額ヲ詳記シ政府ニ申告スヘシ
六
第十五條ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケムトスル者ハ前項ノ申告ト同時ニ命令
ノ定ムル所ニ依リ其ノ申請書ヲ提出スヘシ
六四
第二十五條第一種ノ所得金額ハ第二十三條ノ申告ニ依リ、申告ナキトキ
又ハ申〓ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定
シ第三種ノ所得金額ハ所得調査委員會ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定
ス
所得調査委員會閉會後第三種ノ所得ヲ有スル者納稅義務アルコトヲ申出
テ又ハ納稅義務者所得金額ノ增加アルコトヲ申出テタルトキハ政府ニ於
テ其ノ所得金額ヲ決定ス
七
第二十六條稅務署長ハ每年第三種ノ所得ニ付納稅義務アリト認ムル者ノ
所得金額ヲ調査シ其ノ調査書ヲ所得調査委員會ニ送付スヘシ
八
第二十七條各稅務署所轄內ニ所得調査委員會ヲ置ク但シ稅務署所轄內ニ
在ル市又ハ北海道、沖繩縣ノ區ニ付テハ命令ヲ以テ特ニ所得調査委員會
ヲ置クコトヲ得
調査委員ノ定數ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム但シ定數ノ增減ハ改選期ニ於テス
ルノ外之ヲ爲スコトヲ得ス
九
第二十八條調査委員ハ各選擧區ニ於テ之ヲ選擧ス調査委員ヲ選擧スルト
キハ同時ニ之ト同數ノ補闕員ヲ選擧スヘシ
三十
第二十九條調査委員及補闕員ノ選擧區域ハ所得調査委員會ヲ置クヘキ區
域ニ依リ投票區及開票區ハ市町村又ハ北海道、沖繩縣ノ區ノ區域ニ依ル
但シ市制第六條ノ規定ニ依リ指定セラレタル市ニ在リテハ區ノ區域ニ依
ル
第三十〇條選擧區域內ニ住居シ前年第三種ノ所得稅ヲ納メ其ノ年第二十
五
四條ノ申〓ヲ爲シタル者ニシテ選擧人名簿ニ登錄セラレタルモノハ調査
委員及補闘員ヲ選擧シ又ハ調査委員若ハ補闘員ニ選擧セラルルコトヲ得
但シ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ此ノ限ニ在ラス
-無能力者
二破產若ハ家資分散ノ宣〓ヲ受ケ復權セサル者又ハ身代限ノ處分ヲ受
ケ債務ノ辨濟ヲ了ヘサル者
三國稅滯納處分ヲ受ケタル後一年ヲ經サル者
四六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ又ハ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處
セラレタル者
五六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ニシテ其ノ刑ノ執行
ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
四六
六第七十三條乃至第七十五條ノ規定ニ依リ處罰セラレタル後五年ヲ經
サル者
前項ノ場合ニ於テ被相續人ノ爲シタル納稅又ハ申告ハ其ノ相續人ノ納稅
又ハ申〓ト看做ス
選擧人名簿ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
二
第三十一條投票及開票ニ關スル事務ハ市區町村長又ハ戶長之ヲ擔任シ選
擧會ニ關スル事務ハ稅務署長之ヲ擔任ス
三
第三十二條稅務署長ハ調査委員及補闕員ノ選擧期日ヲ定メ之ヲ市區町村
長又ハ戶長ニ通知スヘシ
市區町村長又ハ戶長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ少クトモ選擧期日七日
前其ノ旨ヲ公示スヘシ
四
第三十三條選擧ハ無記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ調査委員及補闘員ノ各選擧ニ付一人一票ニ限ル
選擧人ハ選擧ノ當日投票時間內ニ自ラ投票所ニ至リ被選擧人各一人ノ氏
名ヲ各別ノ投票用紙ニ記載シテ投票スヘシ
投票用紙ハ選擧ノ當日投票所ニ於テ之ヲ選擧人ニ交付ス
五
第三十四條市區町村長又ハ戶長ハ投票ヲ調査シ直ニ其ノ結果ヲ稅務署長
ニ報告スヘシ
六
第三十五條稅務署長前條ノ報〓ヲ受ケタルトキハ選擧會ヲ開キ之ヲ調査
スヘシ
七
第三十六條投票、開票及選擧會ニハ立會人ヲ立會ハシムヘシ
立會人ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
八
第三十七條投票ノ多數ヲ得タル者ヲ以テ當選人トス投票ノ數同シキトキ
ハ年齡多キ者ヲ取リ年齡同シキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
調査委員ニ當選シタル者同時ニ補闕員ニ當選スルモ補關員タルコトヲ得
ス
九
第三十八條調査委員及補闕員ノ選擧終了シタルトキハ稅務署長ハ當選人
ノ氏名ヲ公示シ且之ヲ當選人及市區町村長又ハ戶長ニ通知スヘシ
市區町村長又ハ戶長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ當選人ノ氏名ヲ公示ス
,
四十
第三十九條調査委員又ハ補闘員ニ當選シタル者ハ正當ノ事故ナクシテ之
ヲ辭スルコトヲ得ス
第四十〇條調査委員及補關員ノ任期ハ選擧期日ノ屬スル月ヨリ四年トス
但シ選擧區域ニ變更ヲ生シタル場合ニ於テハ其ノ任期ハ選擧區域ニ變更
ヲ生シタル日ノ屬スル月ヲ以テ終了スルモノトス
二
第四十一條調査委員及補闕員ノ改選ハ前任者ノ任期終了ノ月ノ翌月ニ於
テ之ヲ行フ
三
第四十二條調査委員ニ關員ヲ生シタルトキハ投票ノ最多數ヲ得タル補闕
員ヨリ順次之ヲ補充シ投票ノ數同シキトキハ年齡多キ者ヲ取リ年齡同シ
キトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
調査委員ニ關員ヲ生シ之ヲ補充スヘキ補闕員ナキトキハ調査委員ノ補闕
選擧ヲ行フ
四
第四十三條前條ノ規定ニ依リ調査委員又ハ補闕員ト爲リタル者ハ前任者
ノ殘任期間在任ス
選擧區域ノ變更ニ因リ新ニ選擧セラレタル調査委員及補闕員ノ任期ハ選
擧區域變更前ニ於ケル調査委員及補關員ノ選擧期日ノ屬スル月ヨリ四年
ヲ以テ終了ス
五
第四十四條調査委員又ハ補闕員第三十〓條第一項各號ノ一ニ該當スルニ
至リタルトキ、第三種ノ所得ニ付納稅義務ヲ有セサルニ至リタルトキ又
ハ其ノ選擧區域内ニ住居セサルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
六
第四十五條所得調査委員會ノ開會日數ハ三十日以內トシ地方ノ情況ニ依
リ命令ヲ以テ之ヲ定ム
七
第四十六條所得調査委員會ハ稅務署長ノ通知ニ依リ之ヲ開ク
八
第四十比條所得調査委員會ハ每年開會ノ始ニ於テ調査委員中ヨリ會長ヲ
選擧スヘシ
九
第四十八條所得調査委員會ハ定員ノ過半數ニ當ル委員出席スルニ非サレ
ハ決議スルコトヲ得ス
議事ハ出席員ノ多數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ會長ノ決スル所
二枚ノ
五十
第四十九條調査委員ハ自己及自己ト同一戶籍內ニ在ル者ノ所得ニ關スル
議事ニ與ルコトヲ得ス
第五十〇條八月三十日迄ニ所得調査委員會成立セサルトキハ政府ニ於テ
所得金額ヲ決定ス
六
所得調査委員會開會ノ日ヨリ第四十五條ノ期間內又ハ八月三十日迄ニ調
査結了セサルトキハ政府ニ於テ調査未濟ノ所得金額ヲ決定ス
二
第五十一條政府ハ所得調査委員會ノ決議ヲ不當ト認ムルトキハ七日以內
ノ期間ヲ定メ之ヲ再調査ニ付ス仍其ノ決議ヲ不當ト認ムルトキ又ハ再調
査期間內ニ調査結了セサルトキハ政府ニ於テ所得金額ヲ決定ス
三
第五十二條稅務署長又ハ其ノ代理官ハ所得調査委員會ニ出席シ意見ヲ陳
述スルコトヲ得
四
第五十三條調査委員ニハ手當及旅費ヲ給ス
五
第五十四條本法施行地ニ於テ利子支拂ヲ爲スヘキ公債又ハ社債ヲ募集シ
タル者ハ遲滯ナク其ノ公債又ハ社債ニ付左ノ事項ヲ記載シタル調書ヲ政
府ニ提出スヘシ
ー公債又ハ社債ノ名稱及其ノ總額
二利子支拂期限及利率
三償還ノ方法及期限
四數囘ニ分チテ拂込ヲ爲サシムルトキハ其ノ拂込ノ金額及時期
六
第五十五條第三種ノ所得ニ屬スル俸給給料歲費年金恩給退隱料賞與若ハ
此等ノ性質ヲ有スル給與ノ支拂ヲ爲ス者又ハ利益若ハ利息ノ配當若ハ剩
餘金ノ分配ヲ爲ス法人ハ命令ノ定ムル所ニ依リ支拂調書ヲ政府ニ提出ス
ヘシ
前項ノ支拂調書ヲ提出シタル者ニ對シテハ命令ノ定ムル金額ヲ交付スル
コトヲ得
七
第五十六條稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ納稅義務
者。約稅義務アリト認ムル者又ハ前條第一項ノ支拂調書ヲ提出スル義務
アル者ニ質問スルコトヲ得
八
第五十七條稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ納稅義務者
又ハ納稅義務アリト認ムル者ニ金錢又ハ物品ヲ支拂フノ義務ヲ有スト認
ムル者ニ對シ其ノ金額、數量、價格又ハ支拂期日ニ付質問スルコトヲ得
九六二
第五十八條第二十五條、第五十〇條又ハ第五十一條ノ規定ニ依リ第一種
又ハ第三種ノ所得金額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納稅義務者ニ通知
スヘシ
本法施行地內ニ住所又ハ居所ヲ有セサル納稅義務者納稅管理人ノ申告ヲ
爲ササルトキハ前項ノ通知ハ公〓ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於
テ公〓ノ初日ヨリ七日ヲ經過シタルトキハ其ノ通知アリタルモノト看做
ス
六十
第五十九條納稅義務者前條ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル所得金額ニ對
シテ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日內ニ不服ノ事由ヲ具シ
政府ニ審査ノ請求ヲ爲スコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ト雖政府ハ稅金ノ徵收ヲ猶豫セス
第六十〇條前條第一項ノ請求アリタルトキハ所得審査委員會ノ決議ニ依
リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得審査委員會ハ前條第一項ノ請求ヲ爲シタル者ニ對シ其ノ所得ニ關ス
ル事實ヲ質問スルコトヲ得
二
第五十一條ノ規定ハ所得審査委員會ノ決議ニ之ヲ準用ス
二
第六十一條各稅務監督局所轄內ニ所得審査委員會ヲ置ク
所得審査委員會ハ左ノ審査委員ヲ以テ之ヲ組織ス
一收稅官吏中ヨリ大藏大臣ノ命シタル者三人
二稅務監督局所轄內各府縣又ハ北海道ニ於テ調査委員ノ互選シタル者
府縣ニ在リテハ各一人北海道ニ在リテハ四人
所得審査委員會、審査委員及其ノ補闘員ニ關スル事項ハ本法ニ定ムルモ
ノヲ除クノ外命令ヲ以テ之ヲ定ム
三
第六十二條調查委員ヨリ選擧セラレタル審査委員ニハ日當及旅費ヲ給ス
四
第六十三條第三種ノ所得ニ付納稅義務アル者收入豫算年額四分ノ一以上
ヲ減損シタルトキハ政府ニ所得金額ノ更訂ノ請求ヲ爲スコトヲ得但シ翌
年一月三十一日ヲ過キタルトキハ此ノ限ニ在ラス
所得金額決定後贈與ヲ爲シタル爲所得金額ヲ減損シタル場合ニハ前項ノ
規定ヲ適用セス
五
第六十四條前條第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ所得金額ヲ査覈シ收
入豫算年額ニ對シ四分ノ一以上ノ減損アルトキハ之ヲ更訂ス
六-
第六十五條納稅義務者第六十〇條ノ決定又ハ前條ノ更訂處分ニ對シ不服
アルトキハ訴願又ハ行政訴訟ヲ爲スコトヲ得
七
第六十六條第一種ノ所得ニ付テハ事業年度每ニ所得稅ヲ徵收ス但シ〓算
所得ニ付テハ〓算又ハ合併ノ際之ヲ徵收ス
第二種ノ所得ニ付テハ其ノ金額支拂ノ際支拂者其ノ所得稅ヲ徵收シ翌月
十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムヘシ
第三種ノ所得ニ付テハ所得稅ノ年額ヲ四分シ左ノ四期ニ於テ之ヲ徵收ス
但シ納稅義務者納稅管理人ノ申〓ヲ爲サスシテ本法施行地外ニ住所又ハ
居所ヲ移ストキハ直ニ其ノ所得稅ヲ徵收スルコトヲ得
第一期其ノ年九月一日ヨリ三十日限
第二期其ノ年十一月一日ヨリ三十日限
第三期翌年一月一日ヨリ三十一日限
第四期翌年三月一日ヨリ三十一日限
八
第六十比條前條第二項ノ規定ニ依リ徴收スヘキ所得稅ラ徵收セサルトキ
又ハ其ノ徵收シタル稅金ヲ納付セサルトキハ國稅徵收ノ例ニ依リ之ヲ支
拂者ヨリ徵收ス
九
第六十八條法人解散シタル場合ニ於テ〓算所得ニ對スル所得稅又ハ前條
ノ規定ニ依リ徵收セラルル稅金ヲ納付セスシテ殘餘財產ヲ分配シタルト
キハ其ノ稅金ニ付〓算人連帶シテ納稅ノ義務アルモノトス
七十四
第六十九條第六十〓條第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ更訂度分ノ確
定スルニ至ル迄稅金ノ徵收ヲ猶豫スルコトヲ得
第七十〇條第三種ノ所得ニ付二以上ノ稅務署所轄內ニ於テ所得金額ノ決
定アリタルトキハ政府ハ納稅義務者ノ住所地以外、住所ナキトキハ居所
地以外ニ於ケル所得金額ノ決定ヲ取消スヘシ
二第三種ノ所得ニ對スル所得稅ハ納稅義務者ノ住所地、住所ナ
第七十一條
キトキハ居所地ヲ以テ納稅地トス但シ住所地以外ニ在ル者ハ申〓シテ居
所地ニ於テ所得稅ヲ納ムルコトヲ得
本法施行地ニ住所及居所ナキ者ハ納稅地ヲ定メ政府ニ申〓スヘシ申〓ナ
キトキハ政府其ノ納稅地ヲ指定ス
三納稅
第七十二條納稅義務者納稅地ニ現在セサルトキハ其ノ所得ノ申〓、
其ノ他所得稅ニ關スル一切ノ事項ヲ處理セシムル爲納稅管理人ヲ定メ政
府ニ申告スヘシ本法施行地外ニ住所又ハ居所ヲ移サムトスルトキ亦同シ
四
第七十三條詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ因リ所得稅ヲ逋脫シタル者ハ其ノ通
脫シタル稅金ノ三倍ニ相當スル罰金又ハ科料ニ處ス但シ自首シタル者又
ハ稅務署長ニ申出テタル者ハ其ノ罪ヲ問ハス
前項ノ場合ニ於テ第三種ノ所得ニ付所得稅ヲ連脫シタル者ノ所得金額ハ
六
第二十五條第一項ノ規定ニ拘ラス政府ニ於テ之ヲ決定シ直ニ其ノ稅金ヲ
徵收ス
五六
第七十四條正當ノ事由ナクシテ第五十五條第一項ノ規定ニ依リ政府ニ提
出スヘキ支拂調書ヲ提出セス若ハ不正ノ記載ヲ爲シタル支拂調書ヲ提出
シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ規定ニ依リ處罰セラレタル者ニ對シテハ其ノ提出ニ係ル支拂調書
六
ニ付第五十五條第二項ノ規定ニ依ル金額ヲ交付セス
六
第七十五條所得ノ調査又ハ審査ノ事務ニ從事シ又ハ從事シタル者其ノ調
査又ハ審査ニ關シ知得タル祕密ヲ正當ノ事由ナクシテ漏洩シタルトキハ
五百圓以下ノ罰金ニ處ス
七
第七十六條本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九
條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六
十六條ノ例ヲ用ヰス但シ前條ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
附則
八
第七十七條本法ハ大正九年八月一日ヨリ之ヲ施行ス
六
第三種ノ所得ニ付テハ大正九年分所得稅ヨリ本法ヲ適用ス但シ第十五條
ノ規定ハ大正九年分所得稅ニ付テハ之ヲ適用セス
賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ニシテ從前ノ規定ニ於テ第三種所得ト
シテ計算スヘキモノニ付テハ本法施行前ニ於ケル收入金額ニ限リ、銀行
定期預金又ハ定期預金ノ性質ヲ有スル銀行預金ノ利子ニ付テハ支拂期ノ
本法施行前ニアルモノニ限リ大正九年分第三種所得トシテ計算ス
九
第七十八條所得稅法ニ依リ所得稅ヲ課セラレタル法人又ハ所得稅法其ノ
他ノ法律ニ依リ所得稅ヲ免除セラレタル法人ノ本法施行前ニ終了シタル
四
各事業年此分ニ屬スル第十三條第一項集四鑑及第五號ノ所得其ノ他
四
施行前ニ於ケル第十[[第第一項第四趾ノ所得ニ付スハ本法ヲ適用
八十
第七十九條本法施行前ニ終了シタル法人ノ各事業年度分ノ所得ニ付テハ
仍從前ノ規定ニ依ル
第八十〓條法人ノ超過所得ニ付テハ本法施行ノ日ヨリ大正十年七月三十
六
一日ニ至ル間ニ終了スル各事業年度分ノ超過所得ニ限リ本稅ノ比割比分
ヲ增徴ス
大正九年七月一日以後ニ於テ法人ノ事業年度ノ期間ニ變更アリタルトキ
ハ前項ニ該當スル舊事業年度ノ期間內ニ始期又ハ終期ヲ有スル各事業年
六一
度分ノ超過所得ニ付本法ニ依リ所得稅ヲ課シ仍本稅ノ化割比分ヲ增徵ス
二
第八十一條所得調査委員及所得審査委員ニ關シテハ大正十年五月一日迄
ハ仍從前ノ規定ニ依ル但シ從前ノ規定中八月三十日トアルハ九月三十日
トス
從前ノ規定ニ依ル所得調査委員、補闘員及所得審査委員ノ任期ハ大正十
年五月一日ヲ以テ終了ス
三
第八十二條第三種ノ所得ニ付テハ大正九年分所得稅ニ限リ第一期ノ納期
ヲ大正九年十月一日ヨリ三十一日限トス
四
第八十三條所得稅法ハ當分ノ內小笠原島及伊豆七島ニ之ヲ施行セス
所得稅法ノ施行ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正九年七月十三日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
小字ハ衆議院ノ修正、
ハ同削除ノ符號ナリ
所得稅法ノ施行ニ關スル法律案
第一條所得稅法ハ朝鮮、臺灣及樺太ニハ之ヲ施行セス
第二條朝鮮、臺灣、關東州又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法
戊
人ノ所得税法第二候第一神甲及子數第三雄乙ノ所得ヘ付テハ所得稅
依ル所得稅ヲ課セス
第三條朝鮮、臺灣、關東州又ハ樺太ニ於テ所得稅ヲ免除スル各當該地ノ
製造業ヨリ生スル所得ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ所得稅法ニ依ル所
得稅ヲ免除ス
附則
本法ハ大正九年八月一日ヨリ之ヲ施行ス
酒造稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正九年七月十三日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
酒造稅法中改正法律案
酒造稅法中左ノ通改正ス
第一條ノ五第二項ヲ左ノ如ク改ム
左ニ揭クルモノハ味淋ト看做ス
-前項原料ノ外味淋粕又ハ水ヲ混和シ濾過シタルモノ
二味淋又ハ味淋ト看做シタルモノヲ粕漉シタルモノ
第一條ノ六中「若ハ甘藷」ヲ「、甘藷若ハ味淋粕」ニ改ム
第四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
酒類ヲ製造スル者ニハ其ノ造石數ニ應シ左ノ割合ヲ以テ造石稅ヲ課ス
第一種酒精分二十三度以下ノ濁酒
一石ニ付三十圓
第二種酒精分二十三度以下ノ〓酒白酒及酒精分三十度以下ノ味淋燒酎
一石ニ付三十三圓
第三種酒精分三十度ヲ超ヱ四十五度以下ノ燒酎
一石ニ付前號ノ金額ニ酒精分三十度ヲ超ユル一度每ニ一圓
二十五錢ヲ加ヘタル金額
第四種酒精分二十三度ヲ超ユル〓酒濁酒白酒、酒精分三十度ヲ超ユル
味淋及酒精分四十五度ヲ超ユル燒酎
一石ニ付酒精分一度每ニ一圓五十錢
第五條中「二十圓」ヲ「三十圓」ニ、「二十三圓」ヲ「三十三圓」ニ改ム
第八條第二項但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ命令ノ定ムル所ニ依リ〓酒ハ査定石數ノ百分ノ五以內、味淋ハ査定
石數ノ百分ノ二以內、燒酎ハ査定石數ノ百分ノ一以內ノ滓引減量又ハ貯
藏減量ヲ控除スルコトヲ得
第八條ノ二同一製造場內ニ於テ酒類ヲ製造スルカ爲原料トシテ使用スル
酒類ニハ造石稅ヲ課セス
前項ノ原料用酒類ハ製成ノ時石數ノ檢定ヲ受クルコトヲ要ス
第十條ニ左ノ一項ヲ加フ
第八條ノ二ニ依リ檢定シタル酒類前項各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ
其ノ檢定石數ヲ以テ査定石數トシ造石稅ヲ課ス
第十三條中「金四圓」ヲ「七圓」ニ改ム
附則
本法ハ大正九年八月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第十三條ノ改正規定ノ適用ニ
付テハ大正九年九月三十日迄仍從前ノ例ニ依ル
酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正九年七月十三日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
酒精及酒精含有飮料稅法中左ノ通改正ス
第二條中「一圓」ヲ「一圓五十錢」ニ、「二十四圓」ヲ「三十五圓」ニ改ム
第五條ノ二中「二十四圓」ヲ「三十五圓」ニ改ム
附則
本法ハ大正九年八月一日ヨリ之ヲ施行ス
麥酒稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正九年七月十三日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
麥酒稅法中改正法律案
麥酒稅法中左ノ通改正ス
第三條中「十二圓」ヲ「十八圓」ニ改ム
附則
本法ハ大正九年八月一日ヨリ之ヲ施行ス
明治四十一年法律第二十四號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正九年七月十三日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
明治四十一年法律第二十四號中改正法律案
明治四十一年法律第二十四號中左ノ通改正ス
第一條中「沖繩縣及」ヲ削ル
附則
本法ハ大正九年八月一日ヨリ之ヲ施行ス
沖繩縣酒類出港稅則ハ之ヲ廢止ス
本法施行前沖繩縣內ニ於テ製造シタル〓酒濁酒白酒味淋又ハ燒酎ヲ沖繩縣
外ニ移出スル場合ニ於テハ仍從前ノ例ニ依ル
參照
明治四十一年法律第二十四號
第一條沖繩縣及東京府小笠原島伊豆七島ニ於テハ酒造稅法第四條ニ依ル
造石稅ハ當分其ノ三分ノ一トス
第二條東京府小笠原島伊豆七島ニ於テ製造シタル酒類ハ之ヲ帝國內ノ他
ノ地方ニ移出スルコトヲ得ス犯ス者ハ其ノ石數ニ應シ酒造稅法第四條ノ
稅率ニ從テ算出シタル稅額五倍ノ罰金ニ處ス但シ五十圓ヲ下ルコトヲ得
ス
前項ノ酒類及其ノ容器ハ何人ノ所有ニ屬スルヲ問ハス之ヲ沒收ス
第三條舊慣ニ依ル沖繩縣酒造免許稅ハ自今之ヲ徵收セス
第四條舊慣ニ依リ酒造ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ本法施行後引續キ酒類
ヲ製造スルモノハ酒造稅法ニ依リ免許ヲ受ケタル者ト看做ス
前項ノ製造者ニハ常分酒造稅法第五條第二項ノ規定ヲ適用セス
附則
本法ハ明治四十一年十一月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=14
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015・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 唯今議題トナリマシタル法案ニ付キマシテ、
其要領ヲ說明致シマス、所得稅法改正法律案ハ曩ニ第四十二議會ニ提出イタ
シマシタル所、衆議院ニ於キマシテ其一部ニ修正ヲベテ之ヲ可決イタシテ、
而シテ本院ニ提出イタシマシタガ、議曾解散ノ結果、遂ニ不成立ニ歸シマシタ
ノデゴザイマス、然レドモ財政計畫上諸稅ノ收入增加ヲ要シマスルコトヽ、又
此收入ヲ圖リマスル爲ニハ、所得稅法改正ノ必要ガゴザイマスルコトハ、既ニ
四十二議會當時ト何等其事情ヲ異ニシテ居リマスセヌノデアリマス、依テ茲
ニ再ビ本案ヲ提出スルニ至リマシタ次第デゴザイマス、本案ノ內容ニ付キマ
シテハ、前議會本議場ニ於キマシテ詳細申述べマシテゴザイマスルガ故ニ、此
度ハ其要點ノミヲ說明イタシタイト考ヘマス、第一、法人ノ所得ニ對シマシテ
從來所謂源泉課稅ノミニ止メマシテ、配當ヲ受ケタル個人ニ對シマシテハ、何
等ノ課稅ヲモ致サナカッタノデゴザイマスルガ、此度ハ之ヲ個人ニ綜合イタシ
マシテ課稅スルコトヽ致シタノデゴザイマス、尤モ法人ノ配當ヲ受ケルニ付
キマシテモ、相當ノ經營ヲ要スルモノデアリマスルカラ、其配當金ノ二割ヲ控
除イタシテ計算スルコトニ致シマシタノデゴザイマス、第二ニハ法人ノ社内
ニ留保イタシマスル金額ニ對シマシテ、留保所得トシテ課稅スルコトニ致シ
マシタ、第三ニハ法人ノ所得ガ其運用スル所ノ資本ニ對シマシテ年八歩以上
ノ利〓トナリマシタルトキハ、其部分ニ對シマシテ課稅ヲ爲スコトヽ致シマ
シタ、第四ニハ個人ノ所得ヲ計算スルニ當リマシテ、勤勞所得ニ對スル控除步
合ヲ增加イタシタノデゴザイマス、第五ニハ所得納稅者ノ扶養スル所ノ幼者
老者及ビ不具癈疾者ノ數ニ應ジマシテ、一定ノ金額ヲ其所得金額中ヨリ控除
スルコトヽ致シマシタ、第六ニ本稅ノ課稅最低限五百圓ト現行法ニナッテ居リ
マスルノヲ六百圓ニ引上ゲマシタ、之ヲ大正七年ノ改正ト通算致シマスレバ
結局五割ノ引上グトナッテ居ル次第デアリマス、第七ニ從來第三種所得稅ノ稅
率ハ、最低百分ノ三ヨリ最高百分ノ三十ニ至ル超過累進率トナッテ居リマス
ガ、此度之ヲ改メマシテ、最低百分ノ一ヨリ最高百分ノ四十マデ累進セシム
ルコトニ改メマシタノデアリマス、第八ニ銀行定期預金利子ニ對シマシテ、
新ニ第二種ノ所得ヲバ課スルコトヽ致シマシタ、第九ニ山林所得ニ付キマシ
テハ、現行法ハ其伐採ヲスル場合ニ課稅スルコトヽナッテ居リマスルガ、今囘
之ヲ改メマシテ、立木ノ儘賣却シタル時モ矢張リ之ヲ所得ニ計算スルコトニ
致シ是ト同時ニ山林所得ニ對シマシテ、他ノ所得ト區分シテ別々ニ稅率ヲ適
用スルコトニ致シマシタ、以上ハ政府ノ衆議院ニ提出致シマシタルモノヽ大
體デゴザイマスルガ、衆議院ニ於キマシテハ之ニ對シマシテ、次ニ述ベルガ
如ク修正ヲ加ヘマシタ、第一點ハ第三種ノ所得計算上、法人ノ配當金ニ對シ
マスル原案ノ二割ノ控除ヲ、更ニ一割ヲ增加シテ三割控除スルコトニ改メタ
ノデゴザイマス、第二點ハ第三種ノ所得稅率ヲ改メマシテ、最低百分一トアル
ノヲ、百分ノ零「コンマ」五ヨリ最高百分ノ四十トアルノヲ百分ノ三十六マデ
累進セシムルコトヽ致シタノデアリマス、第三點ハ以上ノ二點ノ修正ニ依リ
マスル歲入ノ減少ヲ補塡致シマスルガ爲ニ法人ノ所得ニ對シマシテ其超過所
得及ビ留保所得等ニ課稅致シマスル外ニ其配當金ニ對シマシテモ、配當金ノ
所得トシテ課稅スルコトニ致スノデアリマス、以上ノ修正ハ其歲入ニ於キマ
シテ殆ド變化ナク、又政府ノ改正法案ノ大體ノ趣旨ニ於テモ皆反セザルモノ
デゴザイマスル、依ッテ政府ハ之ニ同意ヲ致シマシタ次第デゴザイマス、以上
ハ所得稅ニ對スル改正案ノ大體デゴザイマスルガ、尙ホ此法律案ニ關聯致シ
マシテ、所得稅ニ付キ內地ト植民地トノ間ニ於キマスル課稅ノ重複ヲ避クル
爲ニ、別ニ相當ノ規定ヲ要シマスルノデ玆ニ所得稅法ノ施行ニ關シマシテ法
律案ヲ提出致シマスル次第デアリマス、次ニ酒造稅法中改正法律案外三件ノ
大體ノ說明ヲイタシマスルガ、本案ニ付キマシテモ所得稅法案ト同樣前囘ニ
本議場ニ於キマシテ詳シク說明イタシマシタカラ、此度ハ其要點ノミヲ說明
イタシタイト存ジマス、今囘ノ改正ハ財政計畫上歲入增加ノ必要ニ依リ酒稅
一般ノ稅率ヲ增加スルト同時ニ、酒造稅法ニ付キマシテハ、從來當業者ガ最
モ不便ヲ感ジツヽアリマシタル點ニ改正ヲ加ヘマシテ、尙ホ二三法文上ノ不
備ヲ補ハムトスルノデゴザリマス、第一ニ酒類稅率ハ大體ニ於テ現在一石二
十三圓トアリマスノヲ十圓ダケ引上ゲマシテ一石三十三圓トスルコトニイタ
シマシタ、最モ酒精分三十度ヲ超ユル燒酎ニ付キマシテハ其性質及ビ市場取
引ノ實狀ニ鑑ミマシテ度數課稅トスルコトニイタシマシタ、次ハ酒造稅ノ納
稅保證物ハ從來一石ニ付キ四圓ノ割合デアリマシタガ、此度ハ一石七圓ニ之
ヲ引上ゲルコトニ致シマシタ、尙ホ燒酎ニ付キマシテハ貯藏減料トイタシマ
シテ、査定石數ノ百分ノ一以內ヲ控除スルコトヽ致シマシタ、次ニ酒精及酒精
含有飮料稅法竝ニ麥酒稅法中改正案、是ハ何レモ單ニ稅率ノ改正ノミニ止マ
ルモノデゴザイマシテ、酒精及酒精含有飮料ハ酒精分一度每ニ稅率一圓トア
リマスルノヲ一圓五十錢ニ改メマシタ、麥酒一石十二圓トアリマシタノヲ十
八圓ニ改メムトスルノデゴザイマス、次ニ明治四十一年法律第二十四號中改
正ハ、從來沖繩縣及東京府小笠原島、伊豆七島ノ酒造稅率ハ內地ノ三分ノ一
デアリマシタガ、沖繩縣ハ近來民度昂進イタシマシテ、既ニ他ノ諸稅法モ殆
ド全部內地ト同樣ニ施行サレテ居リマスルカラ、特ニ酒稅ニ限リマシテ之ヲ
輕減スルノ理由ガナイト認メマシテ、內地ト同樣ニスルコトヽイタシマシタ、
是ト同時ニ沖繩縣酒類出港稅則ハ其必要ガナクナリマシタカラ、之ヲ廢止セ
ムトスルノデゴザイマス、以上ハ增稅計畫ニ對スル大體ノ說明デゴザイマス、
審議ノ上御協賛アラムコトヲ切ニ希望イタシマス
〔矢口長右衞門君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 矢口君ハ何ンデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=16
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017・矢口長右衞門
○矢口長右衞門君 質問デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=17
-
018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 通〓ガゴザイマスカラ、暫ク御待チヲ願ヒタイ、
是ヨリ通告順ニ依リマシテ發言ヲ許シマス、東〓男爵
〔男爵東〓安君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=18
-
019・東郷安
○男爵東〓安君 私ハ唯〓提出ニ相成リマシタ所得稅法案竝ニ酒稅法案其他
ノ改正案ニ付キマシテ、此際二三ノ質問ヲ致シタイト思フノデアリマス、唯
今大藏大臣ヨリ御說明ガゴザイマシタ通リ、改正案ノ提出理由ハ一ツニハ國
防計畫ニ屬スル新規要求ニ應ズル財源ヲ得ンガ爲メト、今一ツハ今次ノ大戰
ニ依ル國家經濟上多大ナル變化ニ應ズルガ爲メ、新ニ社會政策的意義ヲ加味
シタル稅制ヲ實施致シタイト云フ、此二ツノ理由ニ基キマシテ改正案ヲ御提
出ニナッタノデアリマス、從ッテ所得稅ノ實質ニ立入ッテ是カラ我〓ガ審議ヲ遂
ゲマスニ先チ、此提出ノ理由トナッテ居ル所ノ國防充實計畫ト、社會政策トニ
付テ相當ノ考慮〓究ヲ試ムルノ必要ガアルコトハ玆ニ改メテ申上ゲルマデモ
ナイコトヽ信ジマス、斯ノ如ク今囘ノ改正案ハ其關スルトコロ極メテ廣汎デ
アリマシテ、單リ所得稅法ノ改正ニ止マリマセヌ、又其他附帶ノ諸稅法ノ改
正ニ止マリマセズ、汎ク國防計畫、竝ニ百般ノ社會政策的事項ニ亙ッテ居ル
ノデアリマスカラ、我〓トイタシマシテハ此際最モ愼重ナル態度ヲ以テ〓究
シ、社會各方面ノ須要ニ應ズル必要ガアルノデアリマス、而シテ其ノ總テノ
事項ニ亙リマシテ、此處ニ私ノ抱イテ居ル質疑ノ全部ヲ提出イタシマスルノ
ハヽ今日ノ場合甚ダ諸君ニ對シ恐レ多イコトデアリマスカラ、今日ハ唯其中
ノ主ナル提出理由トナッテ居リマスル國防充實計畫、就中新規要求ニカヽル海
軍計畫ニ付テ海軍當局ノ御說明ヲ煩ハシタイト思フノデアリマス、併シ此質
疑ハ私個人ノ質疑デアリマス、決シテ何等他ノ意見其他ヲ代表シテ居ルノデ
ハアリマセヌ、從ッテ極メテ貧弱デアリ且ツ素人論デアリマスカラ、此點ニ付
テハ豫メ諸君ノ御諒恕ヲ願ッテ置キタイト思フノデアリマス、然ラバ私ガ何故
是等ノ質疑ヲ提出イタスノデアルカ、又私ノ質問ノ目的ハドウ云フ所ニアル
ノカト云フコトニ付テ、豫メ御了解ヲ得テ置クコトハ此際極メテ必要デアラ
ウト存ジマスカラ、聊カ玆ニ二三言ヲ費シテ置キタイト思フノデアリマス、
元來去ル二月二十六日突如トシテ衆議院ガ解散ニナリマシテ、其結果今次ノ
臨時議會ヲ召集セラルヽニ至リマシタ、從ッテ今囘提出セラレタル追加豫算ノ
性質內容ニ就テハ、憲法上會計法上其ノ範圍、其ノ經費ノ實質ニ付テ極メテ
限局セラレテ居ルコトハ、前日目賀田男爵ヨリ當壇上ニ於テ徹底的ニ且ツ的
確ニ而シテ極メテ意味深長ナル御質問ガアリマシタカラ、私ハ此點ニ付テハ
重ネテ辯ヲ費ス必要ハナイト信ジ、此處ニ諸君ト倶ニ目賀田男爵ノ御論ニ對
シ敬意ヲ以テ反覆イタサヌノデアリマス、次ニ私ハ今囘改正案ノ提出ニ至リ
マシタ理由、卽チ提出イタサレマシタル經緯ニ付テ暫ク考ヘテ見タイト思フ
ノデアリマス、御承知ノ通リ二三年此方經濟界ハ非常ナル好景氣デアリマシ
ク、ソレガ爲メ何ンデモカンデモ諸色ガ〓ガル一方デアリマシタ、ソコデ當
局ニ於キマシテハ昨年來此好景氣ノ絕頂ヲ目懸ケテ、多年計畫サレテ居リマ
シタ所得稅ノ根本的改正ヲ企テ、斯ル場合ニハ常ニ、有ラユル手段ヲ以テ反
對ヲ事トスル、資本家諸君ノ口實ヲ成ル可ク少ナカラシムル爲ニ、此好景氣
ヲ目懸ケテ今囘ノ如キ根本的改革、換言スレバ社會政策的ノ意味ニ於テ、資
本家ニ不利ナル條件ヲ有ッテ居ル改正案ヲ、一氣呵成ニ通過セムト試ミタノデ
アリマス、而シテ財務當局ニ於カレマシテハ、先日目賀田男爵ガ御指摘ニナ
リマシタル通リ、年々莫大ナル自然增收ガアルニモ拘ハラズ、之ヲ棄テヽ顧
ミズ新ニ今度國防充實計畫ニ屬スル新規要求ニ應ズルガ爲、此增徵案ヲ提出
セラレタノデアリマス、則チ政府ハ國防計畫ニ屬スル新規要求ノ財源ニ供ス
ルノデアルト言フ名義ヲ以テ、一氣ニ此ノ重要ナル根本的改革案ノ通過ヲ試
ミラレタノデアリマス、而カモ當局ノ魂膽ハ之ニ止マラズ、是ダケデハ未ダ
對議會策トシテ安心ガ出來ナイト云フ御積リデアリマシタラウカ、更ニ名ヲ
國防充實財源ニ藉リテ、國防計畫ニ對シテハ容易ニ人〓ガ反對出來ナイト云
フ關係ヲ見テ、ソレト是レトヲ彼此結付ケタナラバ、恐ラク議會ノ通過ハ容
易デアリ安全デアルト云フ、極メテ周到ナル御畫策ノ下ニ、此改正諸案ヲ御
提出ニ相成ッタコトヽ想像スルノデアリマス、然ルニ幸カ不幸カ第四十二議會
ハ解散ニナリマシテ、提出中ノ所得稅其他關係諸法ノ改正案ハ葬リ去ラレテ
シマッタノデアリマス、而シテ議會解散後アノ好景氣デアッタ所ノ財界ハ間モ
ナク急轉直下ノ勢ヲ以テ、非常ナル悲境ニ陷ッテ來タノデアリマス、卽チ大小
ノ成金ハ勿論、堂々タル富豪ニ至ルマデ皆何レモ大小幾許カノ手傷ヲ負ヒ、
苟モ商工業等產業ニ從事セルモノハ何等カノ形ニ於テ、殆ド皆手傷ヲ蒙ラナ
カッタ者ハナイト斷ズルモ、敢テ過言デナイ位ナ痛擊ヲ蒙ッタノデアリマス、
是ハ今私ガ改メテ玆ニ諸君ニ申上ゲル迄モナイ次第デアリマス、而カモ今日
ハ是等榮耀榮華ヲ盡シテ居ッタ資本家階級ノミナラズ、戰時中ヨリ非常ナル物
價騰貴ノ爲メ大ニ困難ヲ嘗メ來ッタ所ノ所謂中產階級、竝ニ戰時中好景氣デ
アッタ勞働者階級ニ至ルマデ、日用必需品ニ關スル物價ガ一向下落セザルガ爲
メ戰時中ヨリ引續キ今日ニ至ル迄モ依然トシテ生活上ノ苦痛不安ヲ免カルル
コトガ出來ナイノデアリマス、卽チ今ヤ社會ノ上下ヲ通ジ、悉ク其ノ生活ノ
安定ヲ脅サレテ居ル有樣デアリマス、此點ニ付キ私共ハ今日最モ憂慮スベキ
コトデアルト信ズルノデアリマス搗テ加ヘテ世界大戰ノ影響ハ、各國ノ思想
界ニ絕大ナル動搖ヲ與へ、延イテ我國ノ思想界精神界ニモ極メテ不安ナル影
響ヲ及ボシマシタコトハ、是亦諸君ノ既ニ御了解ニ相成ッテ居ル所デアラウ
ト思ヒマス、斯ノ如ク我國ノ現狀ハ物質上カラモ精神上カラモ極メテ不安ナ
ル狀態ニアルノデアリマス、從ッテ此際爲政者ガ若シ一步ヲ誤ッテ其政策ヲ取
違ヘマシタナラバ、玆ニ最モ重大ナル悲ムベキ危險ニ遭遇スベキ形勢デアル
コトハ、今日迄屢〓諸君ノ御耳ニ達シテ居ルコトデアラウト存ジマス、斯ル險
惡ナル社會的不安ノ空氣ガ漲ッテ居ル、此時此際ニ當リ所得稅ノ根本的改正
案ヲ提出セラレ、而カモ政府ノ原案ハ前囘ト何等ノ變化ナク、其ノ理由トス
ル所モ何等ノ差違ナク、前囘其儘ニ提出サレテ居ルノデアリマス、然ラバ私
共ハ立法府ノ一員トシテ、一般國民ト政府トノ間ニ立ッテ、此社會的ニモ經濟
的ニモ種々困難ナル事情ノ輻湊セル間ニ立チ、果シテ如何ニセバ最モ能ク國
民一般ノ幸福安寧ヲ增進スルコトガ出來ルカ、又一面ニ於テハ、如何ニセバ
我〓ノ重要トシ緊急ト認ムル國防充實計畫ニ對シ滿足ヲ與ヘルコトガ出來ル
カ、或ハ又、此兩者ヲ何レノ程度迄互ニ讓合ハセ得ベキカ、是等ノ諸點ニ付、
此機會ニ於テ私共ガ最モ愼重ニ且ツ最モ周密ナル〓究考慮ヲナスベキハ、當
ニ吾人ノ大ニ努ムベキ仕事デアリ、本務デアリ義務デアルト思フノデアル、
斯クスルコトガ實ニ國民ノ爲ヲ圖ッテ忠ナル所以デアルト信ズルノデアリマ
ス、貴族院ハ從來ノ關係上國防計畫ニ對シ、餘リ强イコトヲ言ヘナイ立場ニ
アル行懸リモアル因緣モアルト云フコトヲ申シテ居ルノデアリマス、私ハ此
點ニ付テ相當調査モシ考慮モシ又自分ノ記憶ヲ繰ッテ見マシタケレドモ、私ノ
了解スル範圍內ニ於テハ、決シテ左樣ナ經緯ハナイノデアリマス、元來我國
.ノ國防計畫ニ付、我〓ハ明治四十年、先帝陛下ガ御策定相成リマシタ國防ノ根
本方針、卽チ陸軍ニ於キマシテハ二十五箇師團、海軍ニ於キマシテハ八八艦
隊完成ノ爲ニ、コヽ十數箇年ニ亙リ、貴族院ノ諸公ガ歷代內閣ヲ通ジテ屢〓懇
切ナル指導ヲ與ヘ、當局ガ往々路跙送巡シテ豫算ノ提出ヲ躊躇シテ居ルノヲ
鞭撻シテ、出來ルダケノ便宜ヲ與ヘ、出來ルダケノ助力ヲ與ヘタ事實ガアル
ノハ、是ハ諸君ノ御記憶ニ尙新タナル所デアラウト存ジマス、併シ此經濟ヲ以
テ直チニ貴族院ガ國防計畫ニ囚ハレテ居ルト斷ズルノハ甚ダ早計ニ失スルト
思フノデアリマス、卽チ我〓ハ國防計畫竝ニ其ノ實施ニ要スル豫算協賛上ニ
何等囚ハレテ居ル者デハナイ、何等ノ拘束ヲ受ケテ居ルモノデハナイ、又何等
傳統的ニ國防計畫ニ對シテ喙ヲ差挿ンデハナラヌト云フ理由ハナイノデアリ
マス、加フルニ明治四十年ニ御策定ニ相成リマシタル國防上ノ大方針中、當時
ノ戰略單位タル陸軍ノ一個師團ノ兵力ト今日ノ所謂一個師團ノ兵力トハ全ク
其實質內容ヲ異ニシテ居ルノデアリマスカラ、固ヨリ彼レト是トヲ比較スル
コトハ困難デアリマスケレドモ、大體ニ於テ國軍ノ主力部隊タル步兵及ビ砲
兵部隊ノ實力ニ徵シテ見マシタナラバ、四十年御策定當時基準トセラレマシ
タ二十五個師團ノ兵力ハ既ニ業ニ大略其實力ヲ充シテ餘リアルノデアリマ
ス、次ニ海軍ニ於テモ八八ト艦ノ數ヲ以テ御策定ニ相成テ居リマスルカラ、
今日表面ノ製艦計畫ヨリ申シマスレバ、所謂八六艦隊迄ハ既定ノ計畫トシテ
成立シテ居ルノデアリマス、卽チ餘ス所僅ニ主力艦二隻ガ殘ッテ居ル計算デア
リマス、此說明ハ稍〓數字的ニ漠ト致シテ居リマスガ、是レ以上ノ說明ハ熊ト
玆ニ申上ゲルコトヲ省略致シタイト思フノデアリマス、要スルニ我〓ガ明治
四十年以來軍事當局ノ爲ニ、極メテ懇切ナル態度ヲ以テ國防ノ充實ニ貢獻シ
來ッタガ爲メ、陸海軍ヲ通ジテ今日迄ニ恰ド其ノ豫定ノ計畫全部ノ完成ニ近イ
所迄進ミ來ッテ居ルト云フコトヲ申上ゲテモ、決シテ過言デナイト思フノデア
リマス、從テ又我〓國防計畫ニ對シ何等ノ行懸リモナク、何等ノ拘束モナイ
ト見ルノガ至當ナル見解デアルト信ズルノデアリマス、今ヤ世界大戰以來世
界ノ形勢ニ非常ナル大變革ヲ生ジ、就中東洋ニ於ケル形勢ハ一變シ、從來ノ
國防計畫上變更ヲ要スルモノ極メテ多岐多端ニナッテ來タノデアリマス、加之
大戰ニ因ル兵器其他各種武器ノ進步發達ニ促サレテ我國ノ國防モ亦大ニ其計
畫內容ヲ變更セナケレバナラヌ必要ニ迫ッテ來タノデアリマス、卽チ今囘提出
ニ相成リマシタル陸軍充實計畫ノ全部竝ニ海軍計畫中、主力艦計畫及ビ之ニ
附帶ノ經費ヲ除キテハ、大體ニ於テハ新規ノ要求デアル、新時代ノ形勢ニ基
ク計畫デアルト見テ差支ナイノデアリマス、卽チ今囘ノ國防豫算ヲ以テ、我
ガ國防上眞ニ時代ヲ劃スベキ新計畫ニ入ルノ時期デアルト見テモ、敢テ不當
デナイト信ジマス、此點カラ見マシテモ、我〓議員ハ今囘提出ニカヽル國防
豫算ニ付テ、何等其內容ヲ審査スル所ナク、何等其ノ根本方針ニ付テ窺知ル
所ナクシテ盲判ヲ捺スコトハ上陛下ニ對シ奉リ、下ハ國民ニ對シテ我
我ノ職責ヲ盡ス所以デナイト信ズルノデアリマス、私ハ微力ト雖モ此點ニ付
キ極力我〓ノ最善ヲ盡シテ、出來得ル限リ愼重ナル審査ヲ試ミタイト思フノ
デアリマス、唯是ヨリ軍事當局ニ向ッテ質問ヲ發シマスル事項ハ、軍事當局ト
シテハ極メテ御迷惑ナコトデアラウカト思ハレマスガ、決シテ軍機ノ祕密ニ
亙ルヤウナコトヲ申上ゲル譯デハアリマセヌガ、單ニ素人論トシテ雜駁ナ議
論ヲ申上ゲルコトハ、當局ニ取ッテ必ズ御迷惑ノ點ガ多イトハ存ジマスガ、是
ハ私ノミナラズ、此機會ニ汎ク一般國民ニ御〓ヘニナル意味ヲ以テ、國民ノ
國防デアル、國民ノ爲ニ國防ノ內容ヲ知ラシテヤルト云フ點ニ重キヲ置カレ
マシテ、ドウゾ成ベク御懇切ナル御〓ヘヲ賜ハラムコトヲ特ニ御願ヒスル次
第デアリマス、尙モウ一ツ私ハ此際御斷リヲ申上ゲテ置カナケレバナラヌコ
トガアリマス、私ハ今日ノ一般國防方針ニ對シ、ドウ云フ考ドウ云フ態度ヲ
有ッテ居ルカ、此コトヲチヨット申上ゲテ置キマセヌト、或ハ思ハザル誤解ヲ
惹起シ、當局其他皆サンニ御迷惑ヲ掛ケルコトニナラヌトモ限リマセヌカラ、
暫ラク此點ニ關シ數言ヲ費スコトヲ御許シアラムコトヲ希望イタシマス、私
ハ今日ノ世界ノ大勢、帝國四圍ノ狀況ニ鑑ミ、國防ノ充實ハ我國ノ存立上極
メテ必要ナルコトデアルト確信致シマス、彼ノ世間平和論者ガ申スガ如ク、
軍備縮小、軍備制限若クハ撤廢ト云フコトニ付テハ、斷ジテ反對ノ意見ヲ持
ツノデアリマス、併ナガラ是ト同時ニ、今日ノ軍事當局ニ對シテハ、從來ノ
計畫竝ニ、今日御計畫ニナッテ居ル計畫ノ實質ニ付キ遺憾ナガラ甚ダ不徹底デ
アリ、小規模デアルト思フノデアリマス、世界ノ大戰ハ各國國防計畫ニ對シ
テ、非常ナル動搖變革ヲ齎ラシ來ッタコトハ唯今申上ゲルマデモナイコトデア
リマス殊ニ今次ノ大戰ハ所謂國家總動員ノ絕對的必要ヲ、徹底的ニ各國民ニ
〓ヘタノデアリマス、然ルニ我國ニ於テ從來一般國民ガ國防ニ對スル態度ハ
如何デアリマスカ、國民ト國防トハ殆ド何等相關セザルガ如ク、國民ハ國防
ニ對シ殆ド無關心ノ狀況デアル、國防ト申シマスレバ「サーベル」ヲ下ゲ、短
劔ヲ吊ッタ軍人ニノミ任カシテ居ル、偶〓兵役ニ取ラルレバ、其間國防ノ爲ニ
義務ヲ盡スト云フ位ナ、極メテ低級ナ、極メテ貧弱ナル考ヲ有ッテ居ルノデア
リマス、私ハ此點ニ付テ國民ガ今日マデ其態度ガ甚ダ宜クナカッタト思フノデ
アリマス、彼ノ動モスレバ軍人ト見レバ何人ヲ問ハズ、軍閥呼バリヲスル人ナ
ドモ畢竟スルニ矢張リ國防ニ對シ斯ウ云フ考ノナイ、「インジフエレント」ナ
態度デアッタガ爲メ、其結果誤解ヲ生ジ來タノデハナイカト思フ節モアルノデ
アリマス、故ニ今後我國ノ國防ハ、宜シク全國民ノ利益ヲ考慮シ、國家ノ全
經濟組織ノ上ニ鞏固ナル基礎ヲ有スル大規模ノ計畫ニ依ラナケレバ、到底完
全ニシテ徹底的ナル國防計畫ヲ組織シ能ハザルモノデアルト思フノデアリマ
ス近時世間ニハ頻リニ改造論ヲ唱ヘテ居ル者ガアルノデアリマス、其言固
ヨリ宜シウゴザイマスガ、併シ彼等ハ一體何ヲ改造スルノデアリマスカ、何
ヲ改造セムト企圖シツヽアルノデアリマスカ、其ノ內容ニ立入ッテ見マスレ
バ、殆ド茫漠トシテ捉ラル所ガナイノデアリマス、私ハ此點ニ付テ、彼等急
進論者ノ爲メ極メテ惜ムノデアル、私ハ今日我國ニ於テ最モ改造ノ急ヲ要ス
ルモノガアリトスレバ、實ニ先刻來申上ゲマシタ所ノ、國家存立ニ關スル大
目的ヲ經トシ、產業組織ノ基礎ヲ一層健實ナラシメ、國民的活動能力ヲ極度
ニ發揮セシムベキ政策ヲ緯トスル官民一致ノ協同動作ヲ、一日モ速カニ實
現セシムル手段方法ヲ講ゼザルベカラズト信ズルノデアリマス、併ナガラ此
コトハ餘リ長ク申上ゲマセヌ、時間ヲ取リマスカラ此位ニ切上ゲマス、而シ
テ以上申上ゲマシタコトハ要スルニ是ハ國防方針ニ對スル一ノ理想デアリ
やっゝ之ヲ以テ今直ニ其主義ヲ實行シヤウト、軍事當局ニ迫ル譯デハナイノ
デアリマス、卽チ私ハ何等ノ顧慮何等ノ割引モナク此理想ニ向ヲテ直進セント
スル積リデハアリマセヌ、凡ソ物ニハ順序アリ、手段モアルデアリマス、
彼ノ維新以來古キ歷史長キ沿革、厖大ナル組織ヲ以テ存立シ來ッテ居ル今日
ノ軍事機關ハ、一朝一夕ニ此理想ニ向ッテ改造ヲ斷行スルコトガ出來ナイコト
ハ是ハ申スマデモナイゴトデアル、唯今後ハ成ルベク此理想ニ基キ、諸般
ノ國防計畫ヲ實行致シタイ、是ハ單リ軍事當局ニ向ッテ希望スルノミデナイ、
我〓一般國民ガ其決心ヲ取ラナケレバナラヌト、斯ウ思フノデアリマス、言
葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、今日マデノ國防計畫ハ、唯單ニ軍人ノ實行シ計畫
スル範圍ニ止ッテ居ルノデアリマスルガ、私共ノ新ニ申シマスル國防ノ意味
ハ苟モ帝國ノ國民デアリ帝國ノ領土內ニアル所ノ、生キトシ生ケル者ハ無
論ノコト無生物ニ至ルマデ、又精神力ノ如キ目ニ見エナイモノ迄モ、一切合
切ヲ蒐メテ、之ヲ將來ノ國家總動員ノ目的ノ爲ニ、豫メ組織按配ヲシテ置ク
コトガ、今日ノ國防ノ第一義デアル、戰後經營上國策ヲ樹立スルコトヲ必要
トスルナラバ、正ニ此主義ヲ以テ其ノ第一義トスルコトガ、極メテ必要デア
ルト申スノデアリマス、併ナガラ主義ト實際トハ違ヒマス、此主義ヲ有ッテ居
ルト云ウテ、此度提出セラレムトスル九年度ノ豫算ヲ、此主義ノ爲ニ理想化
セムト試ミルモノデハアリマセヌ、唯此考ヲ以テ現實ノ問題デアル、九年度
ノ國防ヲ〓究シテ見タイト思フノデアリマスカラ、其點ニ付テハドウカ御誤
解ノナイヤウニ願ヒマス、今一度繰返シテ申上ゲマスレバ、國防ノ必要ハ
日モ忽諸ニ付スベカラズト能ク人ガ申シマスガ、私モ同意デアリマス、併ナガ
ラソレハ主義ノ問題デアリマス、一日モ忽諸ニスベカラズト云ッテ、直チニ九
年度ノ豫算ヲ丸呑ミニ致シテ、何等審査ヲ行ハズトモヨイト云フ論理ニハ直
チニ歸著シナイノデアリマス、此點ハドウカ皆樣モ徹底的ニ御諒解アラムコ
トヲ希望致シマス、以上甚ダ長イ前置ヲ申上ゲマシテ洵ニ相濟ミマセヌ次第
デアリマス、此種ノ國防ニ關シマスル論議ハ貴族院ニ於キマシテハ、私ハ
承知致シマス範圍ニ於テ、極メテ其數ガ稀レデゴザイマス、又私ト致シマシ
テモ諸君ノ前ニ立チ、一般國民ノ前ニ立チマシテ、斯ノ如キコトヲ申シマ
スノハ實ハ初メテヾゴザイマス、從ッテ餘分ニ長タラシク唯今マデノコトヲ申
上ゲマシタノハ、一方ニ於テハ誤解ヲ避ケヽ又一方ニ於テ私ガ是カラ御質問
申上ゲヤウト思フノハ、ドウ云フ考ニ基イテ居ルカ、ドウ云フ頭デサウ云フ
コトヲ申スノデアルカト云フコトニ付テ、皆樣ノ御諒解ヲ得ムガ爲ニ、斯ク御
〓聽ヲ煩ハシマシタ次第デゴザイマス、是ヨリ私ハ海軍大臣ニ對シ、九年度
ノ追加豫算ニ提出致サレマシタ國防計畫、殊ニ主力艦計畫ニ付テ一一三ノ質問
ヲ致シタイト思ヒマス、第一ニ艦齡ノ計算ニ付キマシテ御尋ネ致シタイト思
ヒマス、所得稅改正問題ガ朝野囂々トシテ論議サレテ居リマス內ニ、所得稅
法一年延期ヲ希望スル論者モアリマス、又之ニ伴ヒ之ト密接ノ關係アル國防
計畫ヲモ亦一年延期ヲシタイト云フ議論モアルノデゴザイマス、併ナガラ彼
等ノ云フコトノ多數ハ、何等特別ノ根據ニ基キ國防計畫延期ヲ主張スルモノ
デナイト私ハ認メテ居ルモノデアリマスガ、之ニ對シ海軍當局ハ、十六年度
末迄ニ、八八艦隊ノ完成ヲナシナケレバ甚ダ困ルノダト云ッテ、艦齡ノ點カラ
駁擊ヲ加ヘラレテ居リマス、是ハ衆議院ノ委員會ノ質問ニモ出テ居リマス
又世間ニモ度〓御發表ニナッテ居リマス、海軍當局ノ御趣意ヲ申シマスレバ、
「我海軍ハ大正十六年度末ニ至リテ主力單位トシテ戰艦長門、陸奧、加賀、土
佐ノ四隻ニ、今囘要求スベキ四隻ヲ加フル八隻ト、巡洋戰艦天城、赤城、愛
宕、高雄、ノ四隻ニ新計畫ノ四隻ヲ加ヘテ八隻トシ、以テ第一期艦齡ニアル
八八基本艦隊ヲ完成セントスルモノナルガ、今若シ此計畫ヲ一箇年延期スル
トセバ大正十六年度末ヲ以テ第一期艦齡ヲ了ルモノ戰艦ニ長門、陸奥アル
ヲ以テ、差當リ大正十七年度末迄ニ八八ヲ整備セムニハ、此年度マデニ此二隻
ノ代艦ヲ建造セズンバ、大正十七年迄ニ完全ナ八八艦隊ヲ得ルコト能ハズシ
テ、結局八六艦隊ヲ得ルニ過ギズ、而カモ其數ハ僅カ二隻ナリト雖モ、我現
在ノ造艦能力ニテハ大正十七年迄ニ補充艦二隻ヲ建造スルガ如キコトハ思ヒ
モ依ラズ」云々斯ウ申サレテ居ルノデアリマス、此文字ノ末ハ扨テ措キ意味
ニ於テ大體ドノ場合ニ於テモ同ジ樣ニ申サレテアリマス、私ハ此點ニ付テ海
軍大臣ニ伺ッテ見タイノデアリマス、實際ノ計畫進行上ヨリ申セバ、唯今述べ
マシタ中ノ、戰艦陸奧ハ、本年五月ニ橫須賀デ盛大ナル進水式ヲ擧ゲラレタ
コトハ、諸君御承知ノ通リデアリマス、然ラバ其竣工ハ十六箇月後ノ大正十
年九月ニナリ、從ッテ第一期艦齡ヲ了リマスノガ大正十八年度ノ半デアリマ
ス。卽チ十七年度ニ於キマシテハ陸奥ハマダ第一期ニ在ルノデアリマス、然
ルニ海軍當局ハ第二期ニ這入ルト申サレルノデアリマス、又諸君ノ御手許ニ
配付サレテ居リマス、軍艦艦齡表ニヨリマシテモ、明カニサウ書イテアルノ
デアリマス、併シ實際ノコトヲ申上ゲマスレバ、サウ云フ計算ニナルノデア
リマス從ッテ大正十八年カラ陸奥ハ第二期ニ這入ルノデアリマス、長門モ本
年十一月頃ニハ竣工スル豫定デアリマスカラ、大正十七年ノ十月デナケレバ
第一期艦齡ヲ終ラヌノデアリマス、依ッテ大正十七年度ノ始メノ三分ノ二ダケ
ハ第一期艦齡ニ當然這入ッテ居リマス、アトノ三分ノ一ダケハ·······四箇月第二
期艦齡ニ這入ルノデアリマス、從ッテ若シ此四箇月ヲ宥恕スルナラバ長門ハ矢
張リ陸奥ト同ジク、第二期ニ這入ルノハ大正十八年度カラト申サレルノデア
リマス、此四箇月ヲ宥恕スルノハドウカト申スコトハ、既ニ先例モゴザイマ
シテ、扶桑其他ニ於テモ既ニ諸君ガ御認メニナッテ居ル所デアリマス、加之全
艦齡ヲ二十五箇年ト致シ、其內ノ最初ノ二期ヲ八箇年宛ニ分ケテ艦齡ヲ計算
スルコトハ、是ハ御承知アラセラレマスル通リ、大隈内閣當時ニ於ケル防務
會議ノ際、確定シタコトデアリマス、是トテモ今日迄必ズシモ嚴格ニ守ラレ
テ居ラヌ、假ニ守ラレテ居ルトモ、何モ八年ト九年トガサウサウ明確ニ艦ノ
勢力ニ差違ヲ生ズキモノデナイト云フコトハ、是ハ事理ノ當然デアリマス、
卽チ艦齡ノ一年位ハ他ニ緊要ナル事由ガアリマスレバ、必ズシモ忍ベナイコ
トハナイノデハナイカト、斯ウ云フ疑ヲ私ハ持ッテ居ルノデアリマス、其他現
在既ニ起工シ、若クハ起工準備中デアル戰艦、加賀、土佐ノ如キハ、何レモ
大正七年度ニ起工スル豫定デアリマシタガ、加賀ハ本年十月頃、土佐ハ本年
二月ニ起工サレテ「キール」ヲ据ヱタノデアリマス、其竣工ハ加賀ハ大正十二
年度半、土佐ハ、大正十一年度終リニ竣工シ、從ッテ第一期艦齡ヲ終ルノハ
加賀ハ二十年度ノ半、土佐ハ、大正十九年度ノ終リデアリマス、卽チ豫定計
畫ガズット下ッテ來テ居リマス、此表ノ線ガ豫定ヨリ下ッテ居ルノデアリマス、
其他天城、赤城ノ二巡洋戰艦ニ於キマシテモ、八年度ニ起工致サルベキモノ
ガ尙ホ未ダ著手サレテ居ラナイ狀況デアリマス、斯ノ如ク考ヘテ見マスルナ
テバ、餘リニ艦齡論ニコダワリマスノモドウカト思ヒマスガ、假リニ艦齡論
ニコダワッテモ、先刻讀上ゲマシタヤウナ意味ヲ以テ海軍當局ガ延期論ヲ駁ス
ル爲メ、艦齡論ヲ主張セラルヽコトハ、海軍ノ爲メニ誠ニ取ラザル所デアリ、
且ツ事實ニ相違スルト思フノデアリマス、此點ニ付テ當局ノ懇切ナル御辯明
ヲ煩ハシタイノデアリマス、次ニ、軍艦ノ製造能力ノ方面カラ、此今囘ノ計
畫ガ延期ヲ許サナイモノデアルカ、ドウカト云フコトノ〓究ヲ致シテ、其結
果ヲ御尋ネ致シタイト思フノデアリマス諸君ノ御手元ニ配付サレテ居リマ
ス海軍ノ豫算書ヲ御覽ニナリマスト、我國ノ軍艦製造費ハ、大正三年卽チ戰
前ノ噸當リノ直段ヲ基礎トシテ、本年ハソレニ七割ヲ掛ケ、大正十年以後ハ
ソレニ二割ヲ掛ケテ、繼續費トシテ要求サレテ居ルノデアリマス、此計畫ガ
果シテ宜イカ惡イカ、殊ニ大正十年度、卽チ來タルベキ冬ノ議會ノ豫算ニ提
案サルベキモノ、及ビ其以後ノ計畫ガ僅ニ戰前ニ比ベテ二割ノ增加シカ見込
ンデナイト云フコトガ、果シテ適當ナル計算ノ仕方デアルカ、ドウデアルカ、
其間ニハ相當ノ魂膽ガアル、斯ウ思ハレテモ仕方ナイデハナカラウカト思ハ
レマス、併シ是ハ本論デアリマセヌ、又茲デ强ヒテ御尋ネ致シマセヌ、唯私
ハ戰前ノ値段ニ或物價騰貴ノ率ヲ掛ケテ、今年ノ豫算及ビ其以後ノ豫算ヲ請
求サレマスガ、是ハ要スルニ海軍工廠デ御造リニナル値段デ、民間ニ御出シ
ニナル上ニ付テハ、今少シ餘裕ヲ取ッタモノヲ御出シニナルカノ如ク伺ッテ居
ル、併ナガラ民間ノ造船所ニ於テハ尙ホソレデモ足ラナイノデアル、殆ド海軍
ハ自分ノ工廠デ造ルト同ジ單價、同ジ値段ヲ以テ民間ニ注文セラレルト言ッテ
モ過言デナイ程度ノ餘裕シカ、民間ノ注文ニ對シテ御與ヘニナラナイ、從つけ
營利事業デアリマス以上ハ、此引合ハナイ、動モスレバ損失ニナル、若クハ
實行不可能ニ陷ル注文ニ對シテ出來ルダケ手ヲ締メテ、經濟上若クハ精神的
ニ、成ルベク此海軍ノ計畫ニ對シテ敬遠主義ヲ取ルト云フコトハ採算上已ム
ヲ得ナイ、又實際サウ云フ嫌ヒガアルカノ如ク私ハ仄聞シテ居ルノデアリマ
ス、然ラバ將來民間ノ造船能力ニ對シテ相當ノ擴張······其能力ヲ向上セシムル
コトガ必要デアル、卽チ若シ造艦計畫ガ逼迫シテ來テ········詰ッテ來テ、ドウシ
テモ早ク工程ヲ進ムル必要ガアルナラバ、豫算ノ上ニ於テ相當ノ餘裕···
業費、諸償却金、相當ノ利潤等ニ對シテ相當ノ餘裕ヲ御與ヘニナッテ、彼等ニ
對シテ出來ルダケノ能力ヲ發揮セシムルト云フコトガ極メテ必要デナイカト
思フ、海軍工廠ニ於ケル設備ニ於テモ同樣デアリマス、是ハ姑ク論ジマセヌ、
又一面海軍ノ既定計畫ニ屬シマス所ノ豫算ノ上カラ研究イタシテ、今日マデ
ノ、既定計畫ニ屬スル海軍ノ造艦能力ハドノ位カト言フコトヲ考ヘテ見マス
ルナラバ、大正十年ニ於テ始メテ我國ノ造艦能力ガ、一隻ト七分ニナルト私
共ハ調査イタシテ居リマス、卽チ既定海軍計畫ノ繼續費ダケヲ見マシテモ、
七年ヨリ十二年度ニ亙リマス內、十年度ニ於テ最モ澤山ノ豫算ガ計上サレテ
居ルノデアル、是レ卽チ海軍大臣ガ前年當院ニ於キマシテ、凡ソ大正十年頃
ニナッタナラバ更ニ新タナル要求ヲ提出スルカモ知レナイト言ハレタ、理由ノ
一ツデナカラウカト思フノデアリマス、卽チ今日ハ大艦ヲ造リマス造船能力
ハ最早手一杯ニナッテ居ル、大正十年ニナッテ旣定計畫ニ屬スル一「ポイン
ト」七隻ト云フモノヽ能力ガ出來ルノデアリマス、今日唯今要求サレテ居リ
マス········新計畫ト云フモノニ對シテハ、ソレ以後デナケレバ著手出來ナイ、
斯ウ申シテモ私ハ甚ダ見當違ヒノ論デナカラウカト思ハレル卽チ水陸設備
費及ビ民間ノ造船能力ヲ增大スルコトニ依ッテ、今後ノ海軍計畫ニ相當餘裕ガ
出來得ルモノデアラウト思ヒマスガ、此點ニ付テ海軍大臣ノ御〓ヘヲ請ヒタ
イト思フノデアリマス、第三ニ私ハ、今囘ノ御要求ニナリマシタ海軍計畫ノ
或物殊ニ戰鬪艦其他補助艦ニ於キマシテ延期ガ出來ルノデハナカラウカト云
フ疑點ノ一ツトシマシテ、玆ニ一ツノ提案ヲ申上ゲテ、御〓ヲ請ヒタイト思
フノデアリマス、ソレハ過日來世間ニ能ク出テ居リマスル軍艦ヲ海外ニ注文
スルト云フ點デアリマス、陸奥ガ此間進水シマシタ當時ニ或ル東京ノ新聞ニ、
陸奥ト英吉利ノ新艦「フード」トノ建造費ノ比較ヲ擧ゲテ陸奧ノ方ガ高クテ
「フード」ノ方ガ安イカラ、ドウモ軍艦ハ英吉利邊リへ注文シタガ宜クハナイ
カト云フ、議論ガ出テ居ッタ、端ナクモ此問題ガ朝野專門家ノ間ニ興味アル問
題ノ一ツトシテ〓究サレマシタ、海軍當局ニ於テモ種々御〓究ニナッタヤウニ
伺ッテ居リマス、私ハ此比較論ハ少シ無理デハナイカ、艦ノ種類、卽チ戰艦陸
奧ト快速戰艦「フード」トハ全ク種類ヲ異ニシテ居ル、是ハ比較スルノガ不當
デアル、其艦種カラ申シテモサウデアルノミナラズ、一般ノ經濟狀況殊ニ開
戰中聯合國ノ軍器ヲ補充イタシマスル色〓ノ狀況其他ヲ綜合シテ見マシテ、
陸奥ノ建造ノ時ノ狀況ト「フード」ノ建造ノ時ノ狀況トハ、是ハ全ク根本ガ違
フ、之ヲ比較シテ陸奧ガ高イ「フード」ガ安イト議論スルノハ、ソレハ私ハ不
適當デアルト思フ、從ッテ是ノ比較論ヲ私ハ此處デ致シタクナイ、唯極メテ通
常ナル場合、「ノーマル」ナル場合ヲ考ヘテ見マシテ、英吉利ニ於キマスル製
艦費ト、我國ニ於ケル製艦費ト較ベテ見タナラバ、是ハ素人デヨク分カリマ
セヌガ、先ヅ英吉利ニ於テ造ル方ガ、便宜ナ點ガ多クハナカラウカ、斯ウ思
フノデアリマス、是ハ私ハ專門家デアリマセヌシ、又其時〓ニ依ッテ事情ガ違
フノデアリマス、今日ノ知キ大戰後ノ餘波ヲ受ケタ、極メテ普通デナイ場合
ニ於テハ、此議論ヲ强ヒテ致スコトハ面白クナイト思フ、唯若シ價格ヲ比較
スルナラバ、同時ニ爲替相場ノコトモ考慮ノ中ニ入レル必要ガアルト思フ、
今日ノ如ク對英爲替ガ非常ナ變化ヲシテ、日本ノ爲ニ極メテ有利ナ場合ニ於
テハ、一億二億ノ海外注文ヲ致スニ依ッテ、莫大ナ爲替ノ差益ガアルト云フコ
トハ、相當考慮ノ價値ガアルト思ヒマスガ、姑ク此二點、卽チ算盤勘定ヲ除
外シテ考ヘテ見マシテモ、尙ホ軍艦製造ト云フコトニ付テ、之ヲ海外ニ注文
スルト云フ案ヲ考ヘル價値ハ十分アルト思フノデアリマス、卽チ技術ノ輸入
デアリマス、軍艦ヲ海外ニ注文スルコトニ依リマシテ、彼ノ卓越シテ居ル造
船上優秀ナル技術、諸種ノ祕密、諸種ノ特權ヲ比較的容易ニ輸入シ得ラレル
利益ガアルノデナカラウカト思フ、造船技術其モノヽ輸入ガ利益ヲ與ヘタコ
トハ、先年明治四十五年金剛ヲ注文シマシテ、其雛型ニ依ッテ我國ノ橫須賀、
川崎、三菱ノ造船所デ比叡、霧島、榛名ノ三艦ガ出來タト云フコトハ、是ハ
諸君ノ御記憶ニ新タナルコトデアルダラウト思ヒマス、併シ私ハ是ハ進ンデ
强クハ申サレナイコトモアルダラウト思フ、近時我國ニ於ケル造船界ニ於テ、
殊ニ軍艦製造ニ關シ著シキ發達ヲ致シテ、所謂日本型ト稱スルヤウナモノガ
出來テ居ル、是等ノ祕密ヲ彼ニ與ヘル危險モアリマスカラ、是等ノ點ニ付テ
ハ宜シク專門家ノ御考慮ヲ煩ハシタイト思ヒマス、又造船業ハ極メテ澤山ノ
工業ヲ綜合シテ出來ルモノデアル、從ッテ英吉利其他各國ニ於ケル大戰、其他
ニ依ッテ得タ〓訓ヲ、此際軍艦注文ト云フ事實ニ依ッテ輸入シ得ラレルト云フ
便宜ガアルノデアリマス、此事ニ付キマシテハ尙ホ委シク申上ゲタイト思ヒ
マスガ、是ハ事祕密ニ涉ルコトデアリマスカラ、公開ノ席上ニ於テ言及スル
ノハ避ケタイト思ヒマス、唯一ツ例ヲ申上ゲマスレバ、亞米利加ハ參戰以後、
一ツノ「リパチイ、モートル」ヲ完成スル爲メニ、四億圓ノ國幣ヲ費シテ惜マ
ナカッタト云フコトニ鑑ミマシテモ、如何ニ是等ノ新技術ヲ輸入スルコトガ、
國家ノ爲メニ利益アリ、國防ノ爲メニ極メテ重要デアルカヲ申上ゲタイノデ
アリマス、ソレカラ次ニハ技術者ノ養成デアリマス、軍艦ヲ建造スルト共
ニ、高級ノ技術者ハ勿論職工ノ如キモ、多數彼ニ就テ實地ノ〓育ヲ受クルコ
トモ出來ルノデアリマス加之我國製艦計畫ハ既定計畫ニ屬スルモノガ非常
ニ後レテ居ルノデアリマス、殊ニ主力艦ニ於テ其點ガ著シイノデアル、卽チ
長門ハ大正五年ニ起工セラルベキモノガ大正六年八月、陸奧ガ六年度ノ豫定
ガ大正七年六月、加賀ハ七年ノモノガ大正八年七月、天城ハ八年五月ノモノ
ガ大正九年十月、又赤城ニ至ッテハ、八年ノモノガマダ著手サレナイト云フヤ
ウナ工合ニ、計畫ガズット後レテ居ルノデアリマス、此後レテ居ルコトヽソ
レカラ製艦能力ニ局限ガアルコトヽサウ俄ニ膨脹シ得ナイコトヽ又其他
種々此處ニ公開ノ席デ申上ゲラレナイ遺憾ナ事實ガゴザイマシテ、假ニ私共
ガ今日全部、戰艦四隻、巡洋戰艦四隻、其他ノ巡洋艦ニ對シテ協賛ヲ與ヘタ
トシマシテモ、果シテ十六年度末マデニ出來ルカドウカト云フコトハ、極メ
テ疑ハシイ、卽チ今日ノ現況及ビ從來ノ實績ニ鑑ミマシテ、大正十六年度末
マデニ出來ルト云フニハ、是ハ餘程ノ決心ガナケレバ出來ナイ、其決心ヲ付
ケル爲ニハ此處ニ製艦能力ノ向上ト、ソレカラ海外ニ注文スルト云フコトモ
一ツノ案デナカラウカト、斯ウ思フノデアリマス、尙ホ最後ニ今一點國防ノ
計畫、殊ニ主力艦計畫ノ延期ガ可能デハナイカト云フ點ニ付テ、謹ンデ海軍
大臣ノ〓ヲ乞ヒタイト思フノデアリマス、ソレハ私ガ仄聞スル處ニ依リマス
レバ海軍ニ於キマシテハ九年度ノ新計畫ヲ編成セラルヽニ當リマシテ、省內
ノ會議ニ於テ、先ヅ第一ニ大正十二年度マデニ所謂八八艦隊ナルモノヲ完成
スルトシタナラバ、ドウ云フ計算ニナルダラウ、ドウ云フ計畫ニナルダラウ
ト云フコトヲ〓究シテ見ラレタノデアリマス、然ルニ是ハ今日カラ十二年マ
デノ僅カノ間デアリマスカラ、非常ナ金高ニ上ルノデアリマス、平均年度割
ガ非常ノ額ニ上リマシテ、チヨット勘定シマシタ所デモ、四億圓以上ニ上ルノ
デアリマス、是ハ到底何人ガ考ヘマシテモ、日本ノ財政上許サナイ、ソコデ
第二案トシテ、モウ二年延シテ十四年ニ完成スルコトニシタナラバドウデア
ルカ、ドウ云フ風ノ計算ニナルダラウカト云フコトヲ考ヘマシテ、戰艦ニ於キ
マシテハ扶桑、山城、伊勢、日向ノ代艦ヲ作リ、巡洋戰艦ハ榛名、霧島ノ代
艦ヲ作リ、其外ニ今囘要求セラレマシタ巡洋戰艦、卽チ八八ニ至リマス新シ
イ二隻ノ巡洋戰艦ヲ作ル計畫ヲセラレ、其他巡洋艦六隻ヲ作ル計畫ヲ立テタ
ト仄聞シテ居リマス、併シ此計數ガ果シテ正確デアルカドウカ分ラヌガ、兎
ニ角サウ云フヤウナコトニ計算セラレマシタケレドモ、ソレデハ非常ナ金高
ニ上ル、併ナガラ海軍當局トシテ一日モ早ク八八艦隊ヲ實現シタイ、殊ニ彼
ノ景氣ノヨイ時ニ臨ンデ租稅ノ增收案ナドハ易々トシテ出來ルカラ、實ハ十
年度ニ提出スル豫定デアッタケレドモソレヲ一年繰上ゲテ九年度ニ提出シ
テ、而シテ增徵案ト相應ジテ、此八八ノ理想ヲ實現シタイト云フヤウナ御考
デアッタノデアラウカト思ヒマスガ、サウ云フヤウナ意味ニ於テ十四年度完成
案ト云フモノガ出來テ居ッタノデアリマス、ソレデ之ヲ以テ大藏省ト折衝セラ
レタモノデアルマイカト推測スル理由モアルノデアリマス、所ガ實際愈ノ決
著トナリマシテ、唯今提出シテ居ラレル通リニ大正十六年度末ニ至ッテ完成ス
ルト云フ案ガ確定シタノデアリマス、但シ其要求ノ戰艦ノ艦艇ノ數ニ於テハ、
多少ノ相違ハアリマス、又金高ニ於テモ相違ガアリマス、併シソレハ委シイ
コトデアリマスカラ、述ベマセヌガ、兎ニ角十二年度マデニ完成シテ見ヤウ
ト初メニ考ヘタガ、ソレデハ餘リ金高ガ上ルカラト云フノデ、十四年度ニ計
畫ヲ變ヘテ、ソレデモ尙ホ大藏省當局ト折衝シタガ議ガ纏マリマセヌカラ、
十六年度案ト云フモノヲ拵ヘテ見タ、ソレデアリマスカラ、海軍ガ此十六年
度案ニ對シテ一日モ延期スルコトハ出來ナイ、是非今囘ノ議會ニ於テ協贊ヲ
與ヘテ貰ハナケレバ困ルト云フコトハ如何ナル點ニ於テ言ハレルノデアリ
マセウカ、若シ十二年度案ニ於テ、九年度カラ始メテ殘リノ二艘ヲ完成スル
ト云フノカ、若クハ十四年度迄ニ完成シヤウトナラバ、私ハ是ハ出來ルダケ
早ク著手シナケレバイカヌト思ヒマスケレドモ、旣ニ十六年度マデ負ケラレ
タ、卽チ延長サレタノナラバ、當局ニ於キマシテ今日必ズシモ通過シナケレ
バナラヌト云フコトガ、果シテ絕對的言ヒ得ラレルデアリマセウカ、是ハ私
ハ主力艦ニ付テ申スノデアリマス、ノミナラズ先刻申上ゲマシタ通リニ、製
艦能力ト云フモノニハ限リノアルモノデ、大正十二年ニ至ッテ既定計畫ノ最高
程度ニ達スルノデアリマス、今日要求セラレテ居ル豫算ガ通過シマシテモ、
主力艦ノ工事ニ付テハ、マダ著手スルコトハ出來ナイト云フ推測ハ、誤リナ
イノデナカラウカト思フノデアリマス、然ラバ大正九年度ニ於テ是等ノモノ
ヲ御延期ニナリマシテ、十年ニ於テ改メテ御出シニナリマシテモ宜シクナイ
カト私ハ想像スルモ、必ズシモ見當違ヒノコトデナカラウカト思フノデアリ
マス、是等ノ點ニ對シテ謹ンデ海軍大臣閣下ノ〓ヲ乞ヒ、國民ト共ニ我〓ノ
最モ急務トシ最モ必要デアルトスル所ノ國防計畫ニ付テ、徹底的ナル了解ヲ
得タイト思ヒマス、唯繰返シテ申上ゲマスガ、前ニ申上ゲマシタ通リ、斯ノ
如キ議論ヲ立テマスコトハ、今日所得稅案問題卽チ我〓一家ノ經濟上ニ於テ
申セバ、米櫃ノ問題ト、外ニ出マス時ノ紋付羽織袴ノ問題ト何レヲ取ルカ、
若シ兩立シ得ナイモノナラバ、ドツチカ取ラナケレバナラヌ、若シ兩立シ得ル
モノナラバ、ドノ程度ニ於テ取ルカト云フコトデアリマス、若シ更ニ進ンデ
海軍當局ガ我〓ニ善良ナル了解ヲ與ヘラルヽナラバ、我〓ハ三度ノ飯ヲ二度
ニ減ラシテモ、斷ジテ國防計畫ニ缺陷ヲ生ゼシメナイト云フダケノ覺悟ヲ持ツ
テ居ルト云フコトヲ申上ゲタイノデアリマス、以上誠ニ粗雜ナ素人論ヲ遠慮
モナク此席デ申シマシタコトハ、當局ニ對シテ恐縮デアルノミナラズ、本日
ハ殊ニ酷暑ノ砌、長時間諸君ノ御〓聽ヲ煩シマシタコトニ付、玆ニ謹ンデ御
詫ビヲ申上ゲマス
〔國務大臣加藤友三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=19
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020・加藤友三郎
○國務大臣(加藤友三郞君) 東〓男ノ御質問ノ第一點ノ、艦齡ニ關スル御質
問ノ要旨ヲ捕捉シ兼ネタノデアリマス、チヨットモウ一度簡單ニ第一ノ御質問
ヲ御話ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=20
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021・東郷安
○男爵東〓安君 簡單ニ申上ゲマス、世間ニ國防計畫ヲ一年延期シテ宜イジ
ヤナイカト云フヤウナ議論ガアリマス、又衆議院ニ於テモ、サウ云フヤウナ
質疑ガ出タノデゴザイマス、ソレニ對シマシテ大臣竝ニ當局ハ十七年度ニ
ナッテハ陸奥、長門ノ代艦ヲ造ル必要ガアル、艦齡ヲ八年トスルナラバ、此十
七年度ニ於テ我國ノ造艦能力デハ達シ得ナイ、造リ得ナイ、餘裕ガ無イ、ダ
カラ今日延期スルト云フコトハ、海軍ノ計畫ニ於テハ甚ダ迷惑ナコトデアル
ト云フコトデス、尤モ其言葉ノ末ニ至ッテハ正確トハ私申上ゲマセヌガ、其趣
意ニ於テ多クノ機會ニ於テ御答辯ニナッテ居ル、併ナガラ私共ガ自分デ〓究シ
テ見マスル所ニ依リマスト、海軍當局ノ御說明ハ甚ダ事實ニ違ッテ居ル、表ノ
上ニ於テハサウデアリマスルケレドモ、事實発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=21
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022・加藤友三郎
○國務大臣(加藤友三郞君) 大體了解イタシマシタ、御答ヲ致シマス、御質
問ノ出マシタ原因ハ、私ガ衆議院ニ於テ答辯イタシマシタ速記ヲ基礎トシテ
ノ御質問ト考ヘルノデアリマス、衆議院ノ質問ニ接シマシテ、卽チ延期云々
ニ關シテ、延期ガ出來ナイト云フ意味ヲ說明イタシマシタ主モナル趣旨ハ
單ニ此陸奥、長門ガ艦齡ガ來ルカラト云フコトノミデハナイノデアリマス、
御話ノ通リ豫定ト致シマシテハ、陸奥ト長門ガ艦齡ガ大正十七年ニナルト八
年ヲ經過スルノデアリマス、長門ハ本年ノ十月乃至十一月ニ完成スル豫定デ
アリマス、是ハ艦齡ヲ經過スルノデアリマス、又陸奥ハ少シク工事ガ遲レマ
シタカラ、技術官ノ見込ニ依リマシテ、本年度一杯ニ完成スル今日ハ豫定ヲ
持ッテ居リマス、ソレデ此艦齡ニ付キマシテ、八年ト云フコトニ付テ云々ト云
フ御話モアリマシタガ、御承知ノ通リ列國ノ艦齡ヲ起算ヲ致シマス基礎ハ、
八年ヨリ多イノハ私ノ承知シテ居ル所デハナイノデアリマス、而モ日本ノハ
完成イタシマシタ時期ヲ以テ始メトシテ、サウシテ八年ヲ計算イタシマスガ、
國ニ依リマシテハ起工イタシマシタ時ヲ以テ艦齡ヲ計算スルノモアリマスノ
デ、要スルニ日本ノガ一番長イ、斯ウ云フ意味ニ相成ルノデアリマス、ソレ
カラ第二ノ質問ハ能力ノ問題デアリマスガ、十年ニナルト既定ノ設備ガ完成
スレバ一「ポイント」七內外ノ能力ヲ有ツノデアル、然ルニ今日カラ計畫ヲ出
スノハ符合セヌデハナイカ、斯ウ云フヤウナ御趣旨ノヤウニ拜聽シタノデア
リマス、理論上カラハ一應御尤ナ御意見ト考ヘマス、併ナガラ此能力ハ工廠
ノ實際仕事ヲ致シマス能力ヲ重ニ意味シテ居ルノデ勿論能力ノ中ニハ材料ノ
蒐集、其他萬般ノ事ガ含マレテ居リマスルナレドモ、主ナルモノハ工廠ノ所
謂工業能力デアルノデアリマス、一面カラ申シマスルト、今日ハ材料ノ蒐集
ニ一番困難ナ時期デアリマス、外國ニ注文ヲ發シマシテモ、殆ド得ラレナイ
ト云フ狀況デアルノデアル、今年計畫ヲ立テマシテ、是ガ材料ノ蒐集ニ當局
ハ非常ナ苦心ヲシテ、工廠ノ一切ノ工事ヲ起工イタシマスル迄ニハマダ間ガ
アルノデアリマス、若シ萬事ノ事情ガ許シマシタナラバ、昨年グラヰニ御協
贊ヲ經テ置キマシタナラバ、ヨリ以上便宜デアッタラウト思フ、是ハ材料ノ點
ノミカラ申スノデアリマス、ソレトモウ一ツハ唯〓ノ御話ハ、主トシテ大艦
ノミニ付テノ御話デアリマシテ、私モ主トシテ大艦ニ付テ申上ゲルノデアリ
マスガ、小艦艇ニ於キマシテハ、マダ能力ノ餘力ガ多少アルノデアリマスガ、
モ少シ早ク此計畫ヲ提議イタシマシテ、御協賛ヲ經テ居リマシタナラバヨ
リ以上最モ便宜デアッタラウト思フノデアリマス、斯樣ナ事情デアリマスル
カラ、既定ノ計畫ニ依ッテ、來年度ニ於テハ一「ポイント」七ト云フ大體ノ數字
ハ、是ハ唯今記憶イタシマセヌケレドモ、略〓其位デアッタラウカト思ヒマス
併シ實際問題ト致シマシテハ、何等之ニハ影響ナイノデアリマス、今年ハ御
承知ノ通リ年度割モ少額デアリマス、今年ハ材料ノ注文ニ全力ヲ注グノデア
リマス、其材料ノ注文ハ來年度ニ要スルモノモ本年度カラ發スルノデアリマ
ス、從ッテ本年度ハ豫算ヲ有チマセヌデモ、村料ノ注文ヲナシ得ルト云フ斯
ウ云フ事情ノ下ニ在ルノデアリマスカラ、曩ニ十年頃ト申シマシタノハ、別
ニ必ズ十年度ニ提議スルト云フ意味ヲ以テ申上ゲタノデハナカッタ、財政上ノ
關係其他ノ關係ニ於テ、或ハ九年度ニナルカ、或ハ十一年度ニナルカ、豫メ
此十二年度迄ノ計畫ヲ提議イタシマシタ時ニハ、ハッキリトシタ見込ガ立タナ
カッタ爲ニ、常ニ「頃」ト云フ一字ヲ拔カシタコトハ私ハナイノデアリマス、サ
ウ言フ事情デアルカラ御了承ヲ願ヒタイ、ソレカラ此延期ト云フコトニ付テ
縷々御話デアリマシタ、卽チ其御趣旨ノ主モナル點ハ、海外注文ト云フ御趣
旨ダラウト思フ、是ハ其理由トシテハ技術ヲ輸入スル上ニ於テモ必要デアラ
ウ、又早ク造ルト云フ上ニ於テモ必要デアラウ、斯ウ云フヤウナコトガ主モ
ナル御趣旨ノヤウデアリマス、是ハ度〓聽ク議論デアリマス、勿論外國ヘ注
文ヲ致シマスレバ內地ニ注文ヲ致シマスルヨリモ、一定ノ期間ニ於テ數ノ
出來ルト云フコトハ、數ノ多ク出來ルト云フコトハ是ハ論ノ無イ話デアル、
又或ル一定ノ數ヲ造ルト致シマスルナラバ、ソレガ早ク出來ルト云フコトモ、
是モ議論トシテ論ノナイコトデアリマス、私共ハ海外注文ト云フコトハ常ニ
念慮カラ去ッタコトハナイノデアリマス、御話ノ通リ技術ヲ輸入シ、技術官ヲ
派遣イタシマシテ、是等モ種々ナル新ラシキ知識ヲ得テ來ル、萬事便利ナコ
トガアル、其點ニ付キマシテハ全然御同感デアリマス、併ナガラ現ニ計畫ヲ
致シテ居リマスル大艦ニ付テ申シマスレバ、之ヲ外國ヘ注文イタシマスルト、
一面ニ於キマシテハ內地ニ於ケル工業力ノ多少發達ヲ阻止スルト云フ嫌ヒナ
キニシモアラズデアリマス、例ヘバ私立會社ニ注文イタシマスルモノモ、總
テ今囘計畫イタシマシタ艦艇ハ、現在ノ設備デハ不足ノ點ガアルノデ、多少
ノ增備ヲ私設會社ガ致シマセヌケレバ、此計畫ヲ遂行スルニ不便ナル理由ガ
アルノデアリマス、ソレ等ニ付キマシテモ、私立會社ト內議イタシマシテ、
增備ノ計畫ヲモ立テサセテ居ルト云フヤウナ事情モアリマス、是ハ他ノ方面
カラ申シマスレバ、私立會社ノ能力ヲ增加スル、斯ウ云フ意味ニモ相成ルノ
デ、若シ外國ヘ注文ヲ發シマシテ、之ヲ私立會社ニ注文イタシマセヌト云フ
コトニナレバ、ソレダケ內地ニ於ケル工業能力ニ多少ノ不足ヲ感ズル、是化
有事ノ際ニ內地ニ於ケル工業能力ヲ維持スル上ニ於テハ、多少ノ不便其他ハ
忍ンデモ、私立會社ニ注文スルコトガ有利デアラウ、斯樣ニ私共ハ.考ヘテ居
リマス故ニ大艦ニ於キマシテハ、今日ハ外國へ注文イタスト云フ考ヲ有ッテ
居リマセヌ、併ナガラ小艦艇ニ於キマシテハ········潜水艦ノ如キ、其他特殊ノ
艦ニ於キマシテハ、多少外國ニ注文シタイト云フ考ヲ有ッテ居リマス、併シ此
處ニ更ニ御考ヲ願ヒタイノハ、大艦ト云ハズ小艦ト云ハズ、今日外國ニ注文
ヲ發シテ直チニ其注文ニ應ジ得ルヤ否ヤト云フコトハ、大ナル疑問デアル
現ニ小サナ艦ノ注文ニ付キマシテ、英米等ニ種〓交涉ヲ致シテ居リマスケレ
ドモ、中〓思フヤウニ參ラナイノデアリマス、恐ラク大艦ニ於キマシテモ、
同樣デアラウト考ヘテ居リマス、デ斯樣ナルコトヲ算ニ入レマシテ計畫ヲ立
テマスルコトハ、當局ト致シマシテ甚ダ苦痛デアリマス、一應議論トシテハ
成立ツ問題デアリマスケレドモ、必ズ外國ニ注文ヲ致セバ計畫通リ出來ルト
云フコトハ········責任ヲ有ッテ出來ルト云フ御答辯ヲ致スコトハ甚ダ困難デア
リマス、右等ノ事情ノ爲ニ總テ大艦ハ內地デ造ルト云フ計畫ヲ立テテ居ルノ
デアリマス、從ッテ之ヲ延期スルト云フコトニ付キマシテハ、唯今ノ計畫ヲド
レダケ延期ト云フ御考デアルカ存ジマセヌガ、將來········今年ノ暮ノ議會ニ出
セト云フ仰セデアリマスレバ、完成期ハ十七年ニ後レルト云フコトハ已ムヲ
得ナイ、十六年度迄ノ完成ハ到底見込ガアリマセヌ、ソレカラ又是迄ノモノ
ハ多少後レテ居ルト云フ御話デアリマスガ、ソレハ其通リデアリマス、遺
憾ナガラ後レテ居リマス、是ハ此時局ノ影響ヲ受ケマシテ、主トシテ此材料
ガ意ノ如ク手ニ入リマセナカッタノト、職工ガ多少民間ノ造船所ノ發達ニ伴ヒ
マシテ出テ行ッタ、其不足ヲ補フコトノ困難、此二ツガ原因シテ一般ニ多少ヅ
ツ工事ガ後レテ居リマス、後レテ居リマスルガ、是等ノ後レテ居リマスルノ
ハ十六年度迄ニ取返ヘシ得ルト云フ計畫ヲ立ッテ居ルノデアリマス、其具體的
ノコトハ私說明ヲイタシ兼ネマスケレドモ、此技術上ノ計畫ハ總テ左樣ニ相
成ッテ居ルノデアリマス、從ッテ主ナルモノハ材料デアリマス、內地ニ於キマ
シテモ、此時局ノ結果トシテ、製鐵業者モ多少出來テ居ル、既往ニ於キマシ
テハ內地ニ於ケル材料ハ枝光製鐵所ノミデアリマシタノガ、今日ハソレ以外
ニ私立會社カラモ多少得ラレルト云フ狀況デアリマス、唯値段ガ少シ高イト
云フコトデアリマス、又現在ニ於キマシテハ外國カラ材料ヲ輸入スルコトハ
甚ダ困難デアリマスケレドモ、一兩年後ニ一般ニ安定イタシマシタナラバ
若シ內地デ得ルコトガ不足デアルナラバ、多少得ラレヤウカト思フ、併ナガ
ラ當局トイタシマシテハ計畫全部ヲ內地ノ材料ニ依ッテヤル、斯ウ云フ算ヲ立
テヽ此計畫ヲ立テタ次第デアリマス、ソレカラ最後ノ御質問ハ能ク御趣意ノ
アル所ハ分リマセヌダッタガ一日モ早ク國防ノ充實ヲ圖リタイト云フナラバ
十四年度頃ニ完成スルヤウナ計畫ヲスルヤウニシタラドウカサウ云
フ案ヲ大藏省ニ提議シテ、ソレガ成立タズシテ今囘提案シタヤウナモノニナッ
タト云フコトハ信ズベキ理由ガアルト云フヤウナ御話デアリマス、大藏省ニ
案ヲ出シテ種々査定ナリ應接ナリヲ致シマスルコトハ、總テノ豫算ニ於テア
ルノデアリマス、其內容ヲ一々申上ゲル必要ハアリマスマイ、併シ十四年度
マデノ計畫ヲ立テヽ大藏省ト交涉ヲイタシタコトハナイノデアリマス、單一
軍事當局者ノ見地ノミヨリ申シマスレバ、十四年度ノモノハ十三年度マデニ
モ致シタイノデアリマス、併ナガラ御承知ノ通リ財政計畫ト伴ヒマセヌケレ
バ實行ハ出來ナイノデアリマス、今囘ノ十六年度迄ノ計畫ニ於テスラ、御話
ノ如ク增收案ガ出ルト云フ事情デアリマシテ、尙ホ是ガ十四年度迄ニ云々ト
云フ御話デアリマスガ、十六年度マデノ計畫ヲ立テマスルニ於キマシテモ、艦
ノ數ナドニ於テモ財政計畫上カラ多少斟酌ヲイタシテ居ルノデアリマス、要
スルニ是等ノ點ハ總テ我〓軍事當局ノ見地ノミヨリ提出イタシタルモノガ、
ソックリ通ル譯ニハ中〓參リ兼ネル、是ハ軍事當局トシテ遺憾デアリマスケレ
ドモ、是ハ已ムヲ得ナイ次第デアリマス、要スルニ御話シノ根本ハ、所得稅
問題ニ關聯シテ、此計畫ハ延バスコトハ出來ナイカト云フノガ御質問ノ要旨
カト思ヒマス、其點ニ付テハ別ニ御問ヒハナ、カッタヤウデアリマスガ、併ナガ
ラ其點ハ大體ニ於キマシテ、私ノ腹藏ナキ考ヲ御參考マデニ申上ゲタイト思
ヒマス、御承知ノ通リ軍備補充費、卽チ國防計畫ト申シマスレバ、先刻ノ御
議論デハ非常ニ範圍ノ廣イ意味ニ於テノ御議論デアリマシタ、ソレハ其通リ
デアラウト思ヒマス、唯海軍當局トイタシマシテ國防費、其中ノ主ナルモノ
ハ軍艦製造費デアルノデアリマス、軍艦ガ製造セラレマシテモ、之ヲ有效ニ
活用サセル爲ニハ種々ナル費用ヲ要スルノデアリマス、夫等ヲ包含イタシ
マシテ、單ニ豫算面ニハ前ニ書イテアル譯デアリマセヌケレドモ、國防費ト
稱シテ居ル、併シ軍艦製造費ナルモノハ既ニ多年ノ問題デ、皆サン御承知ノ
通リ、寧ロ我〓ハ意氣地ガナイト云フ御叱リヲ受ケタコトガ度〓アル、漸ク
此案ガ出來テ議會ニ提議イタスト云フ運ビニ相成テ、玆ニ於テ先ヅ一段落ヲ
告ゲ得ルト喜ンダノデアリマスガ、不幸御話ノ如キ解散ノ結果ニ陷リマシタ、
此點ハ軍事當局ノ見地ノミヨリスレバ誠ニ遺憾デアリマス、併ナガラ他ノ政
治上ノ意味ニ於テ已ムヲ得ザル事情ガアルト云フコトデアリマスノデ、軍事
當局トイタシマシテハ、是ガ特別議會卽チ四箇月間後レテ通過スルト云フヤ
ウナ確信ヲ得、且ツ此四箇月間ヲ後レタノハ完成期ニ影響ヲ及ボサナイ、斯
ウ云フ技術上ノ確信ヲ得、是ヲ私ガ信ジテ以テ卽チ十六年度マデノ完成期ニ
變更ヲ來サナイ限リ、四箇月間ノ遲延ニ對シテハ之ヲ戾スト云フ信念ノ下ニ、
議會解散ニ賛成ヲシタト云フノガ私ノ心事デアリマス、斯樣ナ譯デアリマシ
テ、之ヲ又今日延バスト云フヤウナコトニナリマスト、軍事當局トシテ到底
堪へ得ルコトハ出來ナイノデアリマス、殊ニ戰爭ノ結果ト致シマシテ、列國
ハ如何ナル狀態デアルカ、或國ノ如キハ既定ノ計畫ヲ遂行スルノミナラズ、
尙ホ之ニ加へタル計畫ヲ將ニ爲サムトシツヽアルト云フ狀況デアリマス、又
或國ノ如キハ、爲シタクモ大戰ノ後トシテ爲シ得サルガ爲ニ、多少延期シテ居
ルト云フ國モアリマス、御承知ノ通リ我國ニ於キマシテハ、軍艦ヲ急ニ多數
造ラウト云フ考ヲ起シテ、金ガ有ルトシテモサウ急ニハ出來ナイ、況ンヤ金
モサウ澤山一時ニ貰フコトハ出來マイト思ヒマス、併ナガラ歐米ノ强國ニ於
キマシテハ、爲サウト思ベバ直チニ爲シ得ル、金力能力共ニ有ッテ居ルノデア
リマス、斯樣ナル國ノ眞似ハ到底我國デハ出來ナイ、故ニ時機ヲ逸セズ速ニ
之ヲ完成イタシテ置クト云フコトハ、國家ノ爲メニ有利デアラウト斯樣ニ考
ヘルノデアリマス、大體御質問ニ對シマシテハ御答ヘシ得タ積リデアリマス
〔國務大臣田中義一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=22
-
023・田中義一
○國務大臣(田中義一君) 私ガ不在中阪本サンカラ、此間私ノ申述べマシタ
コトニ付イテ御尋ガアッタサウデゴザイマス、ソレハ速記錄ヲ見マスルト、先
達テ申シマシタ言葉ノ最後ニ於テ、「陛下ニ對シ奉ッテハ誠ニ宸襟ヲ惱シ奉ッタ
次第デアリマス、國民ノ義憤ヲ招イタ次第デアリマス、其點ニ付キマシテハ
私ハ親切ヲ缺カヌ積リデアリマス」、而シテ其「シンセツ」ナルコトノ文字ハ
「親」ト云フ文字ト切腹ノ「切」ト云フ字ガ書イテアリマス、是ハ文字ハ速記ノ
間違ヒデ「シン」ハ臣下ノ臣、「セツ」ハ節義ノ「節」、斯ウ御了解ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=23
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024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 東〓男爵ニ伺ヒマス、唯今ノ海軍大臣ノ答辯ニ對
シテ、尙ホ質疑ノ御希望ガゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=24
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025・東郷安
○男爵東〓安君 簡單ニ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 極ク短カイノデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=26
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027・東郷安
○男爵東〓安君 左樣デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 短カケレバ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=28
-
029・東郷安
○男爵東〓安君 チヨット海軍大臣竝ニ諸公ノ御了解ヲ願ヲテ置キタイト思ヒ
マス、私ガ先刻陳述イタシマシタノハ、艦齡ノコト、內地ノ製艦能力ノコト、
海外ニ軍艦ヲ注文スルコト、此三ツヲ合セテ主力艦計畫延期ハ不可能デハナ
カラウト云フ質問デゴザイマス、其間ニハ固ヨリ輕重ハゴザイマス、其三ツ
ハ同一ノ目的ノ爲メニ進ンデシタイト思ヒマス、ソレカラ海外ノ注文ニ對シ
一應御說明ガゴザイマシタガ、元來我國ハ軍器ノ獨立上、內地ノ工業力助長
ノ爲、軍艦其他ヲ內地ノ造船所ニ注文スルコトハ當然ノコトデアリ、又必要ノ
コトデアルト云フ御論デアル、是ハ本員ニ於キマシテモ全然御同感デアリマ
ス、日露戰後桂內閣ノ當時ニ其方針ヲ確定サレテ今日ニ及ンデ居ル、其效果
極メテ善良ナルコトモ我〓ハ明瞭ニ了承イタシテ居リマス、唯私ノ申シマシ
タノハ、艦齡ノ方カラ見マシテ、工事能力ノ不足及ビ實際ニ建造ガ遲延シテ
居ル點カラ申シマシテモ、或ハ將來ニ於テ時機ヲ見テ海外ニ注文スルコトガ
便宜デアリハシナイカ、斯クシテ十六年度迄ニ是非トモ完成スル方ガ便宜ノ
方法デハナカラウカト云フコトデアリマスガ、同時ニ今日私ハ注文サレルノ
ニハ何種ノ艦ヲ注文スルガ最モ良イカト云フコトハ申シテ居リマセヌ、今日
御承知ノ通リ英吉利ノ造船界デハ商船ヲ造ル必要ガアリ、澤山ノ船臺ヲ使用
シテ居リマス、大正十六年迄ノ八箇年間ニ於テ、英吉利ノ造船界ガ今日ヨリ
モ他日、以上或ハ更ニ便宜ノコトガ出來ヤシナイカ、其時機ヲ狙ッテ我國トシ
テ注文スベキガ當然デアル、若シ誤ッテ十六年度迄ニ完成スルコトガ出來ナイ
ナラバ、其餘分ダケヲ海外ニ注文シタ方ガ宜クハナイカト云フコトヲ一案ト
シテ申上ゲタノデアリマス、尙ホチヨット申上ゲテ置キマスガ、コノ議論ハ同
時ニ國防上必要ノ場合ニハ亞米利加ノ上院ガ、度〓試ミマスガ如ク、海軍計
畫ヲ繰リ上ゲルト云フ議論ニ進ム場合ガアルカモ知レマセヌ、十六年ト言ハ
ズ、十五年度、十四年度ト繰上ゲルコトハ畢竟當局ト國民ノ決心如何ニ依ッテ
決スルノデアリマス、是ハ將來ノコトデ此所デハ私一己ノ言トシテ申上ゲル
ノデアル、尙ホ御懇切ナル御說明ヲ得タイト思ヒマス
〔國務大臣加藤友三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=29
-
030・加藤友三郎
○國務大臣(加藤友三郞君) 多少誤解ヲシテ御答ヘヲシテ居ルヤウデアリマ
ス、唯此計畫ガ十六年度迄ニ出來マイト云フ心配ノヤウデアリマシタガ、私
共モ極メテ此點ニ付テ隨分技術官ヲ鞭撻シタノデ、技術官ハ十分ナル確信ヲ
以テ私ニ建議シテ、出來ルト云フコトヲ責任ヲ以テ申出マシタ之ヲ私ハ信ジ
テ居リマス、斯樣ナ次第デアリマス、其邊ハドウカ宜シク御了承ヲ願ヒマス、
海外ニ注文ノ御趣旨ハ承知シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=30
-
031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際休憩致シマシテ、午後一時三十分ヨリ開會致
シマス
午前十一時五十七分休憩
午後一時三十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=31
-
032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日請願委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
請願文書表第二囘報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=32
-
033・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午前ニ引續キマシテ午後ノ會議ヲ開キマス
〔伯爵松浦厚君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=33
-
034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 松浦伯爵ハドウ云フコトデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=34
-
035・松浦厚
○伯爵松浦厚君 大正八年勅令第八十七號ノ承諾ヲ求ムル件ニ付キマシテ、
委員會ヲ開キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 松浦伯爵ノ特別委員會ニ退席ノ許可ヲ致シテ御異
議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、目賀田男爵
〔男爵目賀田種太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=37
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038・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 今囘提出所得稅法其他ノ改正ハ、是ハ追加豫算ノ
經費ニ對スル財源ト考ヘマスルガ、然ルニ茲ニ大ニ疑惑ヲ生ズル所以ノモノ
ハ日露戰後ニ於テ當時ノ戰時稅率ヲ輕減セズシテ之ヲ繼續シ來タッタノハ、
是ハ無論公債償却········還債ヲ急グ所ノ趣意ニ基イタノデアリマス、其間ニ於
テ多少ノ改正ハアリマシタケレドモ大體舊時ノ戰時稅率ヲ繼續シ來タッタノ
デアリマス、全ク還債ヲ急グノ趣意ニ外ナラヌノデアリマス、早ク公債ヲ整
理シタイト云フ歷代ノ政府ノ方針ニ基イタコトヽ考ヘマス、然ルニ今各稅法
ノ整理モナサズ、輕減モナサズ、殊ニ所得稅法其他ノ稅法ノ改正ニ依ッテ增收
ヲ圖ラルヽ然ラバ是ハ尙更一層公債ノ償却ヲ急ガルヽ方針ノ如クニモ見エ
マスル、併ナガラ又願ミテ見ルト、國債償還基金ノ執行ハ一時中止トカ云フ
コトデゴザイマス、暫ク中止スルトカ云フコトデアリマシテ、一方ニハ此度
ノ所得稅法等ノ改正ト共ニ、公債發行ノ計畫モ伴ウテ居ルヤウニ存ジマス、
然ラバ其點ヨリ見レバ稅率ハ据置キ尙ホ增徵モスルガ、公償ノ償却ハ急ガヌ
ト云フ風ニモ見エル、所ガ公債ノ償却ニ付テハ從來ノ成行モアリマシテ、其
中殊ニ外債ノ償却、是ハ御承如ノ如ク大正十四年ニ至レバ四分半利付ノ英貨
公債ヲ幾分カ償却ニハナッテ居リマセウガ、マダ存在シテ居ル、各〓、第一囘
第二囘各〓二億七千万圓ト云フモノガアル、此中幾分カ償却ニナッテ居リマ
ス。併シ大部分ハマダ存在シテ居ル、大部分存在シテ居ルノミナラズ、此二
ツノ公債ニ向ッテハ擔保ガ這入ッテ居ル、勅令デ規定シテ專賣收入ヲ以テ之ガ
擔保ニ供セラレテ居ル、故ニ返サネバ無論擔保ヲ要求スルコトニナッテ居リマ
ス、私モ暫ク遠ザカッテ居リマスガ、其擔保ナドハ既ニ解除セラレタモノデア
ルカ、此戰役ノ關係ニ於テ彼此關係上解除セラレタルモノデアルカ、其邊ハ
審カニ存ジマセス、殊ニ此度ノ增稅其他ノ計畫ニ依ッテ大正十二年頃ハ隨分巨
多ノ國費ヲ要スル場合デアル、然ラバ矢張リ歲出ノ豫算トシテ其時ニ於テハ
是等擔保ノ義務アル公債ニ向ッテハ、確實ナ公債償還ノ途ヲ講ジテ置カナケレ
バナラヌト思フ、ソレ故ニ今マデ戰時稅率ヲ据ヱ置イテ、公債ノ償却ヲ急ガル
ル方針ヲ採ラレタノデアリマスルガ、段々顧ミテ見ルト更ニ公債ヲ募集セラ
v、或ハ國債償還ノ基金ノ執行ハ一時休止ト云フガ如キコトデアルナラバ、
公債ノ償還ヲ急ガレナイヤウデアル、又或ハ玆ニ大イニ飜ッテ考ヘテ、今ハ從
來歷代內閣ノ採リタル局面トハ違フ、更ニ大イニ新ナル局面ニ向ヲテ計畫ヲ立
テラルヽナラバソレハ一ツノ道理デアル、然ラバ大體各稅法ノ整理ヲセラレ、
總豫算ニ於テ總テノ問題ヲ提出セラレテ、之ガ解決ヲ求メラレタラバ宜カラ
ウト存ジマス、今日ハサウデナイ、故ニ私ハ政府ニ御尋ネシタイノハ、此今
度ノ增稅或ハ公債計畫ニ依ッテ從來ノ方針ヲ變ヘラレタノデアルカ、變ヘラレ
ナイノナラバ、矢張リ從來執行シテ參ッタル此國債償還ト云フコトハ確實ニ順
次行ハルヽヤ否ヤ、外國貿易ハ、是ハ一時ノ變態ニ依ッテ隨分盛況ヲ極メマシ
タガ、自然ニ返レバ從來ノ如クニハ參ラヌ、然ラバ在外正貨等ノ狀態ハ又變ッ
テ來ル、此邊ヨリ大イニ將來ヲ憂慮シテ一應伺ヒマスルガ、矢張リ政府ハ從
來ノ如ク戰時稅率ヲモ尙ホ手ヲ付ケラレザル以上········主トシテ未ダ手ヲ付ケ
ラレザル以上、矢張公債償還ヲ急ガルヽ方針デアルカ、又或ハ是ハ急ガヌ方
針デアルカ、此二ツヲ伺ヒタイノデアリマス、ソレカラ今一ツハ最前ノ議會
ニ於テ大藏大臣ガ本員ノ質疑ニ答辯セラレマシタガ、追加豫算ヲ提出スル、
其追加豫算ハ繼續費ニ亙ルモノハ憲法ニ追加豫算ノ規定ハ無イガ、矢張リ憲
法六十八條ヲ適用シテ差支ナイ如クデアルトカ、差支ナイトカ云フ御說明デ
アリマシタガ、ドウモ何分理由ヲ示サレヌモノデスカラ、本員未ダ分ラズニ
居リマスル、元來會計法ニ於テ追加豫算ヲ規定シタル場合ハ、必要避クベカ
ラザル經費ノ外ハ出シテハイカヌ、必要避クベカラザルモノ········憲法六十八
條ノハサウ云フモノヂヤナイ、特別ノ樞要ニ依リ豫メ年限ヲ定メテ繼續費ト
シテ提出セラレムト云フコト、特別樞要ト云フノハ豫算ノ順序ヲ云ッタノデア
ル。憲法六十八條ノ中ニハ急グ經費モ急ガヌ經費モアル、急不急共ニ包含シ
テ居ル、唯其次第ニ特別ノ性質ヲ有スルガ故ニ特別ノ樞要ニ依ッテ年限ヲ定メ
テ繼續費トスル、會計法五條ノハ誠ニ急ニ急グモノバカリ多イノデアリマス、
是ハ兩者各〓違ッテ居ル、兩者違フガ當然デアル、卽チ一ハ法律ニ規定シ、
ハ憲法ニ規定スル、之ヲ混用スルコトハ出來ナイト私ハ思ヒマスル、此點ニ
向ッテ理由ヲ示シテ一應御說明ヲ願ヒマス、又追加豫算ヲ出シテ繼續費トシテ
出シタル前例モアルト云フコトデアリマス、其前例ニ付テモ、審カニ御說明
ヲ得タイト思ヒマス
〔國務大臣男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=38
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039・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 唯今ノ目賀田男爵ノ御質問ニ對シテ御答ヲ致
シマス、最初ノハ公債償還ノコトニ付テ從來政府ノ採リ來ッタ所ノ方針ヲ變
ヘタノデアルカドウカト云フ御問ヒデアリマス、從來ノ方針ヲ根柢カラ變ヘ
タト云フコトハ申上ゲ兼ネル、ソレハ戰時利得稅カラノ········戰時ノ········日露
戰爭時代ノ特別稅カラノ御話デアリマシタガ、是ハモト、日露戰爭ノ爲ニ起
債シタ所ノ公債ヲ償還スル爲ニ特別稅ヲ其儘通常稅ニ引直シテ減債基金ナル
モノヲ設定セラレタノデアリマス、其後漸次其減債基金ニ依ッテ從來ノ政府
ハ償還ヲシテ參ッタノデアリマス、サウシテ其償還ナルモノハ、主トシテ日露
戰爭ノ當時外國ニ於テ起債シマシタ所ノ公債ヲ償還スルコトヲ、主タル目的
トセラレテ居ッタ、其間ニ於テ、一時此減債基金ノ公債償還ニ向ケル高ヲ減ジ
テ、サウシテソレダケノソレニ依ッテ生ズル餘裕ヲ以テ、他ノ目的ニ使用シ
タ場合モアッタノデアリマス、而シテ一面公債ノ總高ニ於キマシテハ、年々鐵
道其他政府デ經營イタシマス所ノ事業ノ爲ニ起債ノ必要ヲ生ジテ居ルノデア
リマス、是等ハ其事業ヨリ生ズル所ノ收益ヲ以テ元利償却ノ方針ニナッテ居
ルノデアリマス、租稅ヲ以テ償還スル所ノ公債ノ主ナルモノハ戰時中ニ起タ
所ノ公債デアリマス、偖唯今御述べニナッタ外債ノ中デ、最モ多額ニシテ償還
年限ノ近付イテ居リマスモノガ彼ノ四分半利附英貨公債、來ル大正十四年ニ
償還期日ノ到來スルモノデゴザイマス、從來政府ハ減債基金ヲ以テ、成ベク
此四分半利附ノ買入償還ヲ實行シテ參ッタノデアリマス、今日デハ三億七千万
圓バカリ合セテ········一一度ニ募リマシタ、四分半利附公債ガ第一囘第二囘トヲ
合セテ、今日ノ計算ハ、大正十四年ニ至ッテ三億七千万圓バカリ殘ルコトニ
ナッテ居リマス、是ハ確カ前議會ニ於テモ豫算ノ節ニ申上ゲタト考ヘテ居リ
マスガ、今囘減債基金ヲ四箇年間中止シマシテ、其是マデ一般會計ヨリ減債
基金ニ繰入レテ居リマシタ金ヲ、國防充實ノ方ノ經費ニ充テルコトニ致シタ
ノデアリマス、元〓非常特別稅ヲ以テ、此減債基金ノ基礎ヲ作ッタノデアリ
マスガ故ニ、若シ減債基金ヲ中止スルニトノ出來ル場合ニハ、或ハ是ヲ廢止
スルコトノ出來ル場合ニ於テハ、第一ニ租稅ニ於テ廢減稅ヲ行フガ正當デア
ラウト思ヒマスル、併ナガラ一方ニ於テ今日租稅ノ增收ヲ計ラネバナラヌト
云フ場合ニ於キマシテ、一時此減債基金ヲ繰入レテ、其費用ニ充テレバ今日
ソレダケノ增稅ヲ行ハズト濟ム、卽チ增稅ノ高ガソレダケ減ッテ宜イト云フ
玆ニ計畫ガ立チマスレバ、國民ニ向ッテ新ニ增稅ヲ行フ代リニ、此減債基金
ヲ一時特別ノ費用ニ向ケルト云フコトハ已ムヲ得ヌコトデアッテ、且ツ是ガ妥
當ナリト考ヘルノデアリマス、而シテ四分半利付公債ニ對シマシテハ、擔保
ガ付イテ居ル、名義上ノ擔保ハ無論付イテ居リマス、而シテ之ニ向ッテハ既ニ
償還ノ計畫ハ今日ハ立ッテ居ルノデアリマス、卽チ外債ヲ償還シテ代ッテ是ガ
內國債ニ於テ殖エルト云フダケノ計畫ハ立ッテ居ルノデアリマス、嘗テモ申
上ゲマシタ通リ、今日預金部ノ所有シテ居リマス所ノ在外正貨ハ三億八千万
圓程ニナッテ居リマス、故ニ今日直ニ其計畫ヲ實行セムトスレバ、國債整理
基金ノ特別會計ニ於テ、英貨公債償還ノ目的ヲ以テ、預金部ノ內國債ヲ發行
シ、預金部ヨリハ其應募金トシテ在外正貨ヲ受取ッテ、此公債整理ノ會計ニ於
テ持チマスレバ、十四年ニ至ッテ確實ニ償還ガ出來、又今日減債基金ヲ廢シ
マシテモ預金部ノ計算ナリ、唯今ノヤウナ計算ヲ執リマシテ、公債整理ノ基
金ノ方ノ勘定ナリ時ニ市場ニ於テ賣物ガ出マスレバ、買入レテ償還スル手段
モ執ルコトガ出來ルノデアリマス、寧ロ今日ニ於キマシテハ、若シ賣ルモノ
ガ餘計アリマスレバ、減債基金ニ依ッテ制限セラレタル金高以上ニ進ンデ買
入償還ガ出來ルヤウナ自由ガアルノデゴザイマス、故ニ決シテ從來ノ政府ノ
執リマシタ方針ノ主トシテ多額ニシテ且償還期限ノ近クアル所ノ四分半利附
ノ償還ニ付テノ方針ハ一向變ラヌノデアリマス、又公債償還ハ急グカ急ガナ
イカト云フ御尋ガ第二デアリマシタガ、政府ト致シマシテハ公債ノ如キハ
成ルベク餘裕ガアリマスレバ、早ク償還イタシタイト云フコトハ無論ノ話デ
アリマス、併シ一方ニ於テ公債ヲ募リツヽ又一方ニ於テ減債基金ヲ中止ス
ルガ如キハ恰モ急ガヌカノ如キ感ヲ致シマスケレドモ、一方ニ於テ起シマス
所ノ公債ハ、從來所謂事業公債デアリマシテ、是ハ先刻モ申シマシタル通リ、
其事業ヨリ生ズル所ノ收益ヲ以テ元利ヲ償還スルト云フ計畫デアリマシテ、
國民ノ租稅ヲ以テ之ニ充テルト云フ計畫デハナイノデアリマス、唯近頃公債
買入金ト云フ手段ニ依ッテ臨時軍事費ヲ賄ッテ居リマス、是ハ利益ヲ生ズル事
業ニ放資スルモノデアリマセヌカラシテ是ハ矢張リ一般會計カラ·········歲入ノ
中カラ繰入レテ償還スルコトニナリマシテ、玆ニ於テ日露戰爭ノ時ニ起シマ
シタ公債以外ニ是ガ亦增加シタト云フコトニナルノデアリマス、今日デハ軍
事費ハ借入金、若クハ公債トナッテ居リマシテ、大部分借入金ノ方デ支辨シ
テ居リマスガ、此借入金ナルモノハ今日ノ所デハ國庫ニ色〓ノ會計、特別會
計ニ於テ餘裕ガアリマシテ、ソレヲ以テ一時繰替ヘテ居ルノデアリマス、併
シ結局ハ是ハ公債ニナラナケレバナラヌモノデアリマス、ソレカラ最後ニ憲
法第六十八條ト會計法第五條ノコトニ付キマシテ、是ハ詰リ追加豫算ト云フ
モノガ憲法ニ依ッテ出ルカ·······會計法ノ第五條ニ依ッテ提出スルノデアリマセ
ウカ、憲法ニハドウ云フ因ミガアルカト云フヤウナ御尋ト私ハ御質問ノ趣意
ヲ受取ッタノデアリマス、憲法ニハ追加豫算ノコトハ目賀田男爵ノ御述べニ
ナッタ通リ何等條項ハナイノデアリマス、而シテ會計法ニ於テハ第五條ニ依ツ
テ追加豫算ヲ提出スル規定ガアルノデゴザイマス、追加豫算ナルモノハ何レ
モ通常議會マデ待ツコトガ出來ヌト云フ緊急ノモノニ對シテ協賛ヲ仰グモノ
デアルコトハ無論ノ話デアリマス、而シテ此追加豫算ノ中ニ、新ニ繼續事業
ノ豫算ヲ計上シテアリマスガ、是ハ矢張リ會計法第五條ニ謂フ所ノ必要ナル
急ヲ要スルト云フ見地カラシテ出スノデアリマシテ、然ラバ其憲法トノ關係
ハドウカト申シマスレバ、矢張繼續事業ニ付テハ憲法ハ議會ノ承認ヲ求メヨ
ト云フコトニナッテ居リマスカラシテ强ヒテ憲法ノ條項ニ付テ其關係ヲ見出
サントスレバ、六十八條ニ依ルヨリ外ハナイノデアリマシテ、卽チ追加豫算
ニ於テ緊急ヲ要スル、急ヲ要スル繼續事業ノ計畫ハ之ヲ立テ、其豫算ヲ議定
スル、ソレデ追加·········其繼續費ト云フモノガ········憲法ノ六十八條ニ依リマシ
テ、其繼續費ナルモノガ必ズ通常議會デナケレバ提出スルコトハ相成ラヌト
云フ意味ニモ解セラレヌノデアリマス、故ニ是ハ追加豫算ニ於テモ矢張リ提
出スルコトハ出來ルト解釋シテ居リマス、左樣私ハ了解シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=39
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040・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 唯今從來ノ例ヲ伺ヒマシタガ、先日例モアルコトダ
ト仰シヤイマシタカラ、ソレヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=40
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041・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 唯今玆ニ手許ニ書類ヲ持ッテ居リマセヌノデ
後ニ取調ベテ御答イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=41
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042・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 大藏大臣ニ伺ヒマスガ、此位ナ重大ナ事件ヲ提出シ
マシテ、其據ル所ノ例ハ今答ヘヌ、ソレデハ本員等ガ此豫算ヲ協賛スルニ甚
ダ難澁イタシマス、又先般來ノコトニ對シテモ、唯〓ノ御說明ハ唯矢張リ〓〓
ト仰ッシヤル、私ハ矢張リヲ伺ッタノデハナイ、其理由ヲ伺ッタノデアル、ドウ
ゾ其例ヲ御在席中ニ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=42
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043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 目賀田男爵ニ伺ヲテ見タイト思ヒマス、唯今ノ最後
ノ御質問ニ對シテ未ダ答辯ガ間ニ合ハナイヤウデアリマス、暫時目賀田男爵
ノ質疑ハ留保致シマシテ次ノ通告者ニ移ッテハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=43
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044・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) ソレデ宜シウゴザイマスカ········矢口長右衞門君
〔矢口長右衞門君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=45
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046・矢口長右衞門
○矢口長右衞門君 本日ノ議事日程第二所得稅法案ニ付キマシテ、私ハ質疑
ヲ致シタイ積リデゴザイマス、先刻東〓男爵竝ビニ目賀田男ヨリ質問ガゴザ
イマシタ、ソレデ重複シタ所ノ質問ハ力メテ避ケル積リデゴザイマス、唯〓
要ダケニ付キマシテ、二三點當局大臣ニ伺ヒタイ積リデゴザイマス、此所得
稅法ハ御承知ノ如ク昨日衆議院ニ於テ決定致シマシテ、本日茲ニ上程サレマ
シタノデゴザイマス、之ニ付キマシテハ、國民ハ非常ニ此問題ニ付テ注意ヲ
拂ッテ居ル、此問題ハ果シテ如何ニナルノデアルカ衆議院ニ於テハ旣ニ可
決サレテアルノデ、貴族院ニ於テハ如何ナル態度ヲ以テ、如何ナル考ヲ以テ、
此問題ヲ處スルカト云フコトハ、是ハ朝野ヲ擧ゲテ注目スル所デ、所謂國家
ノ視聽ノ中心トナッテ居リマス、斯ル際ニ於テハ我〓議員ハ最モ心ヲ公平ニ
シ、國家ト云フモノヽ見地ヨリ致シマシテ之ヲ討究シ、眞正ニ國家人民ノ期
待ニ背カナイノガ我〓議員ノ本分デアルト心得マスルノデ、私ガ玆ニ質問ヲ
提出イタシマスルノモ矢張リ其本意ニ外ナラヌノデゴザイマス、私ガ第一ニ
伺ヒタイノハ、本案ヲ提出スルニ付テハ政府ハ十分ノ審議ヲ致シタカ、十分
ナル調査ヲ遂ゲラレタカ此問題デゴザイマス此提出サレマシタ········第一讀
會ニ提出サレマシタ所ノモノハ、四十二議會ニ於テ可決サレタ所ノモノヲ其
儘何等ノ修正ヲ加ヘナイデ、而シテ其儘提出サレタモノデゴザイマス、アノ
當時ト今日ノ財界トハ如何ナル違ヒガゴザイマセウカ、雲泥ト云ハウカ霄壤
ト云ハウカ、非常ナ差異ノアルモノデゴザイマス、而シテソレ等ニ對シテ何
等ノ考ヲ用ヒナイデ、當時ノモノヲ其儘玆ニ出スト云フコトハ、調査上ニ於
テ審議上ニ於テ、十分盡シ得タリト云フコトハ、私ハ考ヘ得ヌノデゴザイマ
ス、假リニ又大臣ノ言フ所ニ委シテ、是ハ十分ノ審議アリトシタナラバ餘リ
修正ニ同意スルノガ甚ダ早クハナイカ、苟モ一ツノ議題ヲ出ス以上ニハ十分
ノ確信ト云フモノヲ持タナケレバナラヌ、其確信ヲ持ッテ議場ニ立ッテ、十分
ノ意見ヲ鬪ハシテ、而シテ之ヲ決スルノガ本來デアルノニ、其修正ニ對シテ
殆ドスラ〓〓ト何等異議ハナイト云フ位ニ之ニ同意サレタノデアリマス、苟
モ緊要ノ問題ヲ出スノニ斯ノ如ク十分ナ審議ヲ盡サナイデ、又ソレニ十分ノ
論議ヲ盡サナイデ、修正ニ對シテ早クモ同意イタスト云フノハ、果シテ確信
ト云フモノハ何レニアルカト云フコトヲ疑フノデアリマス、現內閣ト云フモ
ノハ衆議院ヲサヘ解散シテモ、自分ノ所信ヲ決行シヤウト云フ勇氣ト決心ト
ヲ持ッテ居ルモノデアル、而シテ其内閣ガ自分ノ議案ヲ出スニ付テ、何等ノ
確信ヲ持タズニ出シタト云フコトハ、甚ダ審議調査ト云フモノガ十分デナイ
ト云フコトニ付テ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、次ニ伺ヒタイノハ、財界
ノ救濟ト本案トノ關係デアリマス、政府ハ財界ノ救濟ヲシナケレバナラヌ、
財界ニ安定ヲ與ヘナケレバナラヌト云フコトヲ言ハレタ、ソレハ施政ノ方針
ニ於テモ確ニ言明サレタノデアル、而シテ此所得稅法案ナルモノガ、財界ノ
救濟ト云フコトヽ兩立サレルモノデアルカ、是ハ兩立スベキモノデナイト思
フ、財界ヲ救濟シナケレバナラヌ、財界ヲ安定サセナケレバナラヌト一方ニ
言ウテ、而シテ此場合ニ斯ウ云フ議案ヲ出スト云フ政府ノ眞意ガ疑ハレルノ
デアリマス、或ハ言ハン、國防充實ノ必要ガアルト言フカモ知ラヌガ、ソレ
ニ付キマシテハ外ニマダ幾ラモ方法ガアルノデアル、財界ノ安定ヲ侵シテ、
財界ノ動亂マデ侵シテ出スト云フ必要ハナイ、之ニ對スル政府ノ所見ハ如何、
大藏大臣ハ常ニ是ハ社會主義ヲ加味シテアルト········社會主義ト云フハ········其
社會主義ト云フモノヽ上カラソレヲ加味シテ、之ヲ政策トシテ居ルモノデア
ル、既ニ富豪征伐ト云フヤウナ言葉ガアルカラ、是等ニ對シテサウ云フモノヲ
緩和イタスニハ、ドウシテモ所得稅ト云フモノハ實行シナケレバナラヌ、是
ハ前議會ニ於テモ申サレタコトデアリマス、而シテ現在ノ社會ハドウデアル
カ、社會ハ隨分倒產スル會社モアル、又財界ノ不況ノ爲ニ非常ナル失業者ト
云フモノガ起ッテ居ル、一方ニハ失業者ヲ拵ヘテ、社會政策ノ上カラ云ッテ、
斯ウ云フ事ヲスルト云フノハ、矢張リ是ハ撞着イタシテハ居リマセヌカ、社
會政策ヲ加味シテアルト言ッテ居ル、其言ッテ居ル中ニ、其法案ノ爲ニ失業者
ガ澤山出來ルト云フヤウナコトハ、矢張リ自家撞着ト云フヤウナ譏リハ免レ
ヌト思ヒマス、本員ハ其疑ヒヲ解クコトハ出來ヌノデアリマス、以上ノ三點
ニ付キマシテ、當局大臣ノ要領ヲ得タル辯明ヲ願ヒタイノデゴザイマス
〔國務大臣男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=46
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047・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 矢口君ノ御尋ニ對シテ御答イタシマスガ、第
一ハ政府ガ此案ニ付テ十分ナル調査審議ヲ遂ゲタノデアルカト云フ御尋ニ對
シテハ、十分ナル審議調査ヲ致シタト御答スルヨリ外ハナイノデアリマス、
而シテ第二ニハ十分ナル審議調査ヲシテ確信アッテ出シタモノナラバ、サウ
容易ク修正ニ同意スル筈ハナイト云フヤウナ御尋ダト思ヒマス、政府ハ最初
ヨリ此增收計畫ノ案ヲ提出スルニ當ッテ、申述ベテ居ルノハ、詰リ國防充實
ノ爲ニ要スル所ノ經費ニ充用スル爲ニ、新ナル財源ヲ要スルノデ、新規ノ財
源ヲ得ルノガ、第一ノ眼目デアリマス、其增收計畫ヲ爲スニ當ッテハ、何レノ
稅種ニ付テ之ヲ行フガ妥當ナリヤト云フコトヲ考慮シテ、卽チ所得稅ト酒稅
ニ求ムルガ最モ適當ナリト、政府ハ考ヘマシテ、而シテ十分ニ所得稅ニ付キ
マシテハ審議ヲ遂ゲタノデアリマス、其財源ヲ得ルト云フコトガ第一デアリ
マシテ、扨所得稅ニ付キマシテ、今日行ハレテ居ル所ノ所得稅ヲ其儘ニシテ
置イテ、其率ヲ唯高ムレバ宜イト云フヤウニモ思ハレマスルガ、現在ノ所得
稅ナルモノガ如何ニモ負擔ノ均衡ヲ缺イテ居ルト云フコトハ、明カナル事實
デアリマスルカラ、其不權衡デアル所ノ稅法ヲ其儘ニシテ、增稅ヲ計リマス
レバ、愈〓其不權衡ナルコトガ甚ダシクナルノデアリマスルカラシテ、已ムヲ
得ズ稍、根本ニ觸レテ改正ヲ致シタト云フコトヲ申述ベテアルノデアリマス、
此已ムヲ得ズシテ、稍〓根本ニ觸レテ改正ヲ行ッタト云フ點ハ、從來株式配當
金ハ個人ニ歸屬シタ場合ニ於テ、個人ノ所得稅トシテハ何等課稅シテ居ラヌ
ノデアリマス、唯法人稅ノミデアリマス、是ガ現所得稅法ニ於テ最モ負擔ノ
不公平ナルコトヲ現ハシテ居ル點デアリマス、或ハ數百万圓ノ所得ヲ得ナガ
ラ、所得稅トシテハ僅カニ數千圓ヲ納メテ居ルト云フヤウナ今日狀態デアル
ノデアリマス、ソコデ政府ハ此會社ノ配當金及ビ賞與金等ノ如キモノニ、個
人ノ所得ト之ヲ綜合シテ私人ニ課稅ヲスルト云フコトニ改メタノデアリマ
ス、故ニ此改正案ヲ提出スルニ當ッテハ、政府ノ目的ハ二ツアル、第一ハ必
要ナル財源ヲ得ルコト、收入ヲ得ルコト、第二ハ此收入ヲ得ルニ付テ現行法
ノ負擔ノ不公平ヲシテ益〓甚ダシカラシムルコトヲ避ケタイ、成ルベク負擔
ノ公平ヲ得ルヤウニシタイト云フノガ希望デアリマス、此二ツノ外ハ何モナ
イノデアリマス、而シテ政府ガ此二ツノモノニ·······此二ツノ目的ヲ破ラレザ
ル範圍ニ於テ、其稅率ノ按配等ニ於テ修正ガ加ハリマシタ所デ、是ハ敢テ政
府ニ於テ確信ガナイトマデ非難サレル謂ハレハナイト考ヘルノデアリマス、
必ズ此稅法ノ如キニ於キマシテハ、殊ニ增收計畫ヲ立テル場合ニ於キマシテ
ハ、政府ノ提案ガ其通リ一ツモ修正ナクシテ通ルコトヲ期待スルコトハ、今
日ノ狀態ニ於テハ出來マセヌノデアリマス、政府ガ旣ニ其目的トスル所ノ二
ツノモノヲ達シ得ル以上ハ、稅率ノ按配等ニ付テハ、衆議院ニ於テ之ヲ修正
スル、此修正ガ尤モナリト考へテ政府ニ於テ之ニ同意スルコトハ、決シテ政
府ニ始メヨリ確信ナクシテ出シタト云フコトニハナルマイト考ヘルノデアリ
やじろ財界ノコトニ付テ今日ハ救濟ヲ政府ハ叫ンデ居ル、民間モ救濟ヲ求ム
ル、斯樣ナ場合ニ於テ增稅案ヲ出スノハ矛盾シテ居ルデハナイカ、一方ニ於
テ財界ノ救濟ヲシナガラ、一方ニ於テ增稅案ヲ出スト云フコトハ矛盾デアル
ト云フヤウナ御說デアリマスルガ、財界ノ救濟ト、今囘ノ增收計畫ト云フモ
ノトハ、是ハ一ニシテ論ズルコトハ出來ナイノデアラウト思フ、假令財界救
濟ヲ要シナイ場合ニ於キマシテモ要ナキニ當ッテ政府ガ增收ヲ計ルコトハ
無論スベカラザルコトデアリマス、併ナガラ財界ガ不況ニナッタカラト云ッテ、
國民ニ擔稅力ガアル以上ハ、國家ノ必要ナル經費ニ向ッテ、新ニ增收計畫ヲ
立テルト云フコトハ、是ハ差支ヘナイコトヽ考ヘル、民間ニ於テ色〓此改正
案ニ付テ樣〓ノ運動モ起リ、ソレ〓〓〓體カラ意見ヲ申述ベテ居リマスルケ
レドモ、此際增收セラレルノガ困ルト云フヤウナコトハ殆ドナイノデアリマ
ス國民ハ國防充實ト云フコトノ一日モ忽セニスベカラザルコトヲ能ク了解
シテ居リマス故ニ金ハ出ス、唯取リ方ニ於テ變ヘテ貰ヒタイ、若シソレガ變
ヘルコトガ出來ナケレバ、財政經濟調査會ニ於テ總テノ稅ヲ根本的ニ改正セ
ラルヽト云フコトデアルカラ、ソレ迄今日ノ稅法ノ儘デ增率スルカ、他ニ工
夫シテ一年待ッテ貰ヒタイト云フヤウナ希望モアルノデアリマス、絕對ニ此
增收ヲ否認スルト云フヤウナコトハナイノデアリマス、勿論此增收ヲ否認ス
ルト云フコトニナレバ、國防充實ヲ今日ニ於テ計畫スルコトヲ否認セナケレ
バ順序ガ立タヌノデアリマス、成程世間デハ、是マデ配當金ナルモノハ、配
當ヲ受クル人〓ガ自分ガ稅ヲ出シテ居ルト云フ考ハ殆ドナイノデアル、是ハ
習慣ノ致ス所、會社デ稅ヲ拂ウテ、配當ヲ取ル身ニナッテ此配當金ト云フモ
ノハ殆ド無稅〓云フ觀念ヲ持ッテ居ル、株式ノ賣買、取引所ニ於テモ、矢張リ
配當金ニ稅ガ掛カルト云フ考ハナイノデアリマス、無稅ダト云フ考ヲ持ッテ
居ルモノニ付テ、直チニ之ガ個人ニ集積セラレ、綜合セラレテ、累進稅ヲ課
セラルヽト云フカラシテ、非常ニ是ハ驚クノモ無理ハナイ、是ハ最初ノ衆議
院ニ於テ修正シテ通過シマシタ改正案ハ、此配當金ニ付テ二割ヲ控除スル、
負擔力ノ强イ者ハ國費ノ負擔ヲ餘計スルト云フコトハ、是ハ當然ナコトデア
ル併ナガラ苟モ所得ヲ得ルニ付テハ、如何ナル種類ヲ問ハズD何等カソコ
ニ所得ヲ得ル爲ノ費用ガアルト云フコトハ認メナケレバナラヌ、故ニ配當金
ヲ得ルニ付キマシテモ、二割ヲ控除シタト云フコトハ、其配當所得ヲ得ル爲
ノ必要ナル費用ト達觀的ニ是ハ定メラレタモノデアリマシテ、之ニ依ッテ政府
ハ同意ヲシタノデアリマス、今囘ハ更ニ之ヲ三割控除スルト云フコトニ致シ
タイ、未ダ二割デハ今日借財ヲシテ事業ヲ起ス········我國ノ事業家ト云フモノ
ハ悉ク皆私財豊富ナル人ノミデハナクッテ、多クハ負債ヲ起シテ仕事ヲスル
モノガ多イノデアッテ、ソレデ我國ノ產業ハ發達ヲシテ行クノデアル、ソレ
故ニ此配當ノ控除額ヲ更ニ一割殖シテ三割ニスルガ、產業發展上ニ於テ必要
ト認メラレタノデアリマス、併ナガラ矢張リ配當金ヲ個人ノ他ノ所得ニ綜合
シテ、累進率ヲ課スルト云フ政府ノ主義ハ、之ガ爲ニ聊カモ傷ケラレテハ居
ラヌノデアリマス、ソレカラ社會主義ヲ加味シタ········是ハ社會政策ノコトデ
アリマセウガ、決シテ政府ハ社會主義ナルモノヲ今日加味シテ居リマセヌ
能ク社會政策ト云ヒマスルガ、此社會政策ト云フ意味ハ、詰リ稅ノ上デ申シ
マスレバ、貧富ノ間ニ於テ國費ノ負擔ヲ公平ナラシムルト云フコトニ歸著ス
ルモノデアル、故ニ擔稅能力ノ薄キモノニハ課稅ヲ輕クシテ擔稅能力ノ强イ
者ニ向ッテハ負擔ノ率ヲ高カメル、斯ク云フコトデアリマシテ、今日御覽下
サルト能ク分リマスルガ、第一個人ノ第三種所得稅ノ課稅率ト云フモノハ、
現行法ニ比較シマシテ、著シク低下シテ居ルノデアリマス、又五百圓ノ免稅
點ヲ六百圓ニ引上ゲテモ居リマス、而シテ現行法ハ百分ノ三デアルモノヲ、
其六分ノ一ニ課稅率ヲ下ゲテ、百分ノ零「コンマ」ノ五ト云フコトカラ、出發
シテ居ル譯デアリマス、其他勤勞所得ノ控除額モ現行法ヨリハ多クナッテ居
ル其他、幼者.老者、不具癈疾等ノ扶養ノ義務ヲ認メマシテ、サウ云フモ
ノニ付テハ、所得ノ多少ニ依ッテ一人ニ付キ百圓、七十圓乃至五十圓ト云フ
モノヲ控除シテ、然ル後尙ホ六百圓以上ノ所得ガアルモノニシテ初メテ三圓
ノ所得稅ヲ納メルト云フヤウナコトニナッテ居リマスルカラシテ、是ハ所得
者ニ對シマシテハ現行法カラ見マスト云フト、著シク課稅率ハ輕減サレテ
居ルノデアリマス、是ハ決シテ社會政策ト矛盾シテ居ル譯デモナイノデアル、
私ハ此等ヲ以テ矢張リ社會政策ノ主義ニ適フモノト考ヘテ居ル、唯今失業者
ノ出ル場合ニ於テ斯ノ如キ稅法ヲ出スノハ矛盾ダト仰ッシヤル、失業者ノ出ル
原因ト此稅法トハ餘リ關係ハナイト申シテ宜シカラウト思フ、失業者ガ出ル
カラ增稅ハ相成ラヌト云フコトモ、道理ガ立ツカモ知レマセヌガ、ドウシテ
モ玆ニ增收計畫ガ必要デアッテ、國民多數モ之ヲ潔ク認メルノデアリマス
國防費用ヲ出スト云フコトニ付テハ········而シテ今ノ少額所得者ニ向ッテハ著
シク課稅ヲ輕減シテ居ルノデアリマスルカラシテ、失業者ニ取ッテモ改正案
ノ方ガ宜シイコトニナルノデアリマス、失業者ノ生ズル原因ト申シマスレバ、
是ハ經濟界ノ一體ノ狀勢ノ然ラシムル所、今日所得稅法案ヲ出スガ故ニ失業
者ガ澤山殖エルト云フコトハ、私ハ認メラレナイト考へルノデアリマス、是
ダケ御答ヲ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=47
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048・矢口長右衞門
○矢口長右衞門君 唯今大藏大臣ノ色〓御辯明ガアリマシタガ、唯今ノ御辯
明ノ如キコトハ恐ラク此議會中ニハ先キニ知ッテ居ラナイ人ハナイト云フ位
ノモノダラウト存ジマス、唯今伺ッタヤウナコトハ御答ヲ得ヌ內ニ私ハ分リ
マシテゴザイマス、先刻ハ何カ私ガ租稅ト云フモノヲ此際納メルノハ嫌ダカ
ラト云フ意味モゴザイマシテ輕減スル········サウ云フ趣旨ハ申シマセヌ、臣民
ハ納稅ノ義務ガアル、又國家トシテ徵收スル租稅ノ一部ヲ負擔スルノハ我〓
ノ義務デアリマスカラ、サウ云フヤウナコトニ了解サレテハ誠ニ困ルノデア
リマス、唯此際ニ公平ヲ期スルコトヽ且ツ他ノ直接國稅トノ均衡ヲ得ルヤ
ウニ、斯ウ云フコトガ我〓ノ希望スル所デアリマス、一方ニハ既ニ經濟調査
會等モアル今日、今玆ニ此私ノ目カラ見ルト缺點多キモノヲ玆ニ出スト云フ
ヨリハ、何レカノ方法ヲ以テ、而シテ之ヲ延期スルガ相當ト思ッテ居ル位、
今大藏大臣ト私ノ間ニ種々質疑ヲ致シマスレバ、應答ヲ致シマスレバ時間ノ
ミヲ要シマス、議事ノ進行上ニ甚ダ差支ガアルト存ジマス、私ハ大藏大臣ノ
申シタコトハ能ク又味ハヘルト共ニ、私ノ申上ゲタコトモ、能ク又御考ヘ置
キヲ願ヒタイ、私ハ質問ハ是デ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=48
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049・阪本さん之助
○阪本釤之助君 マダ通告ガアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=49
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050・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) マダアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=50
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051・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 私ハ矢口君ヘ、大藏大臣ノ答辯ニ付テ少シ御尋シテ見タ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 後デ願ヒマス、鈴木摠兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=52
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053・鈴木そう兵衞
○鈴木摠兵衞君 私ハ簡單デゴザイマスノデ議席カラ述ベサシテ戴キタイ、
此所得稅法改正案ニ付キマシテ、大藏大臣ニ質問イタシタイノデアリマス、
ソレハ數多アリマスルガ、其中大體ニ付イタ所ヲバ二三伺ヒタイノデアリマ
ス,此改正案ハ政府ニ於テ既ニ本年ノ初メニ於テ御提出ニナリ、既ニ衆議院
ニ於テハ修正ニナッタノニ御同意ニナリマシタ、今般又此案ヲ提出ニナッテ、
衆議院デ再ビ修正ニナッタ、是ニ對シテ又矢張リ御同意ニナリマシタ、實ハ
政府ニ於テ交讓ト云フ美德デアリマスレバ、其邊マデハ敢テ疑フノデハアリ
マセヌガ、斯ノ如ク度〓御修正ガアル度ニ御同意ガアルトナリマスルト、其
上ハ最早一步モ讓ラヌト云フ御方針カ、本院ニ於テ相當ナル所ノ修正ガ出タ
レバ、矢張リ御同意ニナルト云フノカヲ第一ニ伺ヒタイ、ソレカラ第二ニハ、
本法ハ八月一日ヨリ施行スル、卽チ附則ノ項目デアリマス、此上ニモ個人ノ
第三種ノ所得ニ付テハ大正九年度ヨリ行フ、卽チ今日議シテ既往ニ溯ルト云
フ場合ニ當リマスルガ、是ハ自分ノ考ヘル所ニ依リマスルト云フト、一 附.
國防費ハ此決定後デ可決セラルヽト數月ヲ經過シタ後デ見積ラレタ所ノ經
費モ自然全額ハ使ヘヌダラウト思ヒマス、取ルモノハ溯ッテ取リ、歲出ノ方ニ
於テハサウ使ヘナイト云フコトデアル、其邊ノ所ハ如何デアリマスカ
〔國務大臣男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=53
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054・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 御答イタシマス、本院ニ於テ修正セラレタ場
合ニ於テ、政府ガ同意ヲスルカシナイカト云フコトヲ豫メ確メテ置キタイト
云フ御考デアリマスルガ、絕對ニ修正ヲ認メヌトモ政府ハ言ハレヌ譯デアリ
マント。唯今申シタ通リ又過日來申シマシタ通リ、政府ノ目的トスル財源ヲ得
ルコトニ妨ゲナク、歲入ノ計畫ハ矢張リ行ハレテ、而シテ政府ノ所得稅ニ取
リマスル所ノ納稅ニ付テ執リマシタル所ノ主義、卽チ配當金ヲ以テ個人ニ增
課スル、其主義ヲ破ラヌ範圍ニ於テノ修正デアリマシテ、而モ現在ノモノヨ
リ好キ修正デアルト申スコトガ出來マスレバ、而シテ兩院ヲ通過シマシタナ
ラバ、政府ハ是ニ同意スルコトニ吝カナラヌノデアリマス、ソレカラ又第二
ノ御問ハ、成程一月一日ニ溯リマスルケレドモ、此八月一日以後ニ實行スル
法律ヲシテ一月一日ニ溯ラセル點ハ、納稅者ノ利益ニナル點ノミ溯ラセマス
卽チ率ヲ減ズト云フヤウナコトデ詰リ減少ニナル方ヲ溯ラセタイ、增徴ニナ
ル方ハ溯ラヌノデアリマス、ソレ故ニ國防計畫モ軈テ三分ノ一ハ減ッテ居ル
ノデ、四箇月後卽チ增收モソレダケ九年度ノ增收ガ減ッテ居ルノデアリマス、
サウシテ此納稅者ニ對シテ利益ニナル點ノミヲ一月一日カラ施行スル其他
ノモノハ矢張リ是ハ八月一日以後ト御承知下サレバ疑ヒナイコトデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=54
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055・鈴木そう兵衞
○鈴木摠兵衞君 尙ホ伺ヒタイコトガアリマスガ、餘リ長クナリマスカラ是
デ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=55
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056・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 先刻目賀田男爵ヘノ例ヲ玆ニ一ツ持ッテ來マ
シタガ、是ハ主計局長ヲシテ御答セシメタ方ガ、詳シクテ宜カラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=56
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057・鈴木そう兵衞
○鈴木摠兵衞君 モウ一應········唯今ノ二點ニ付テノ御答ハ略ボ了解致シマシ
夕、其所得稅ノ調査ト云フモノハ、御承知ノ如ク每年八月一日カラ三十日間
ヲ期限トシテ調査會ガ開カレル、此改正案ノ決定ニナリマシテ一般ヘ公表サ
レルノガドウシテモ八月ノ初デアリマス、其際ニ各稅務署ガ原案ヲ調ベラ、
調査會ニ付スト云フコトハ餘程至難ナコトデアリマス豫メ此位デ議會ハ通過
スルデアラウト云フ豫想的カラ斯樣ナモノヲ拵ヘレバ別デアリマス、其決定
ヲ見テカラ、而シテ後ニ調査計畫ヲバ調査會ニ出スト云フコトハ容易ナ業デ
無イト思ヒマス其邊ハ差支ナイト云フ御見込デヤッテ仕舞フト云フノ御精
神デアルカ、モウ一ツ伺ヒタイコトハ、ソレハ少シク細目ニ亙リマスガ、法
人ノ上ニ於テ百分ノ八ヲ控除シ、ソレカラ以上ハ累進率ヲ以テ課稅スルト云
フコトガ初メニアリマスガ、既ニ戰時利得稅デ百分ノ十二ヲ控除サレタモノ
デアル、ソレガ百分ノ八ト定メラレタモノガ一般ノ率ト云フ上カラ見テモ
又申上ゲタ如ク戰時利得稅ノ比較カラ云ッテモ、其當ヲ得ヌカト思ヒマスル
ガ、其邊ハ如何ナル御趣意デアリマスカ其邊ノ解釋ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=57
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058・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 此席カラ申上ゲマス、調査期限ハ、此法案ニ
シテ成立致シマスレバ、九年度ニ對シマシテハ一箇月遲クラカスコトニ規定
シテアリマスガ、ソレカラ百分ノ八ト云フモノガ、是ハ資本卽チ總資本積立
金或ハ繰越金總テ斯ウ云フモノヲ、拂込基本金以外斯樣ナモノニ割當テヽノ
八步デアリマスカラ、基本金ニサウシテ、多クハ一割以上ニナルト云フ心積
リヲシタ譯デアリマス
〔政府委員西野元君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=58
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059・西野元
○政府委員(西野元君) 先刻、目賀田男爵ヨリ御尋ノゴザイマシタル要旨ハ、
私ハ此席ニ居リマセヌデ、或ハ自分ノ伺ヒ違ヒガゴザイマスカ、了解違ヒガ
ゴザイマスカ知レマセヌガ、多分政府ガ追加豫算ヲ以テ繼續費豫算ヲ要求シ
タル先例アリヤ否ヤト云フ御質問ノヤウニ承知イタスノデアリマス、其意味
ニ於テ御答ヘイタシマス、ソレハ先例ニ依リマスレバ大分澤山ゴザイマス、
最近ノ例ヲ申上ゲマスレバ、四十一議會ニ於キマシテ、高等諸學校ノ創設及
擴張費、神戶港修築費、門司港修築費等ノ追加豫算ヲ提出イタシマシタノハ、
何レモ繼續費豫算ノ形式ニ相成ッテ居リマス、又此少々前ノ三十九議會ニ於
キマシテ、丁度特別議會ニ於キマシラ大分澤山繼續費豫算ノ要求ガ出テ居リ
マスガ、其一二ヲ御參考ニ申シマスレバ、鹽釜港ノ修築費、新潟港ノ修築費、
其他陸海軍ニ於ケル軍備充實ノ爲メ、或ハ機關銃隊ノ充備費、山砲隊ノ充備
費、若クハ軍事補充費ト云フヤウナコトニ付キマシテ、多數ノ繼續費豫算ノ
要求ヲ致シテ成立シテ居リマス、此點ダケヲ御答ヘイタシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=59
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060・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 大藏大臣ニ伺ヒマスガ、唯今主計局長ノ答ヘラレマ
シタノハ、是ハ蓋シ通常議會ノ場合ノ追加豫算ト思ヒマス、ソレナラ又一理
アルト思ヒマスガ、臨時議會ニ於テ追加豫算ニ繼續費ヲ設ケラレタ例ハ、唯
今局長ノ言ハレタ例トハ違フト思ヒマス、ソレノアルコトハ私モ承知シテ居
リマス、是ハ現ニ三十二、三十三、三十四議會ニ於キマシテ、此三議會ハ皆
臨時議會殊ニ對獨宣戰ノ場合デアリマス、如何ニモ形式ニ於テハ不十分デア
リマスガ、誠ニ國家重大ノ場合ニ於キマシテハ、斯ノ如キ例ガアッタラウト
存ジマス、併ナガラ之ニ對シテ矢張リ議院トシテハ政府ニ注意ヲ致シテ居リ
マス次第デアリマス、偶〓斯ウ云フ案ガ多數ヲ以テ通過シタカラト云ッテ、政
府ハ之ヲ以テ宜シトセラレベキモノデハナイト思ヒマス、本年度ニ於テ大藏
大臣ハ無論御承知デアリマセウ、豫算ハアル、七十一條ニ依ッテ前年度ノ豫
算ハ成立シテ居ルノデアリマス、何ガ故ニ其他ニ斯ノ如キ普通豫算ト同ジモ
ノヲ提出セラルヽカ、我〓ノ前ニハ殆ド二ツノ豫算ガアルノデアリマス、七
十一條ニ依ッテ前年度ノ豫算ガ成立シテ居ル、又同時ニ殆ド是ト性質ヲ同ジ
ウスル豫算ガ今日提出セラレタノデ、ソレハ憲法ノミナラズ憲法ノ精神ニ反
スルコトニ付テ御質疑ヲ致シタノデアリマス、前ノ例ハ適當ノ例デハアリマ
スマイト思ヒマス、實ハ私ハ例ノ講究ニ餘リ重キヲ置イテ居リマセヌ、アリ
マシテモ是ハ惡イ例ガアリマス、惡イ例ハ採ラナイデ、憲法ノ精神ニ遵由セ
ラルルガ適當ト思ヒマス、ソレカラサウ云フコトデアリマシテ、憲法ハ適宜
ニ施行シテ行クト云フ御趣意デアリマスレバ、是ハ又重大ナ問題デアリマス、
全體ニ於キマシテ大藏大臣ハ成ルホド七十一條ニ依ッテ前年度ノ豫算ヲ施
行スルガ、其中ニハ事實嵌ラヌモノモアル、嵌ラヌモノガアレバ少シハナブッ
テモ宜イノデアルト云フコトヲ仰ッシヤル、少シハ手ヲ入レテモ宜イノデア
ルト、是ハ私ハイクマイト思フ、現ニ實行豫算ト云フモノガアリマス、歲入
ハ卽チ政府ノ大正九年度ニ向ッテ提出セラレタ歲入ハ總額八億九千万圓デア
リマス、是ハ施行豫算デ、政府ノ提出セラレタ豫算デアリマス、然ルニ實行
豫算ヲ見ルト五億九千万、最初提出セラレタ其總額デ成立シテ居ル、卽チ豫
算ヲ提出シテ、施行セラルル豫算ト、實行豫算トサウ云フ增減ノアルノハ如
何デアルカ、是ハ私ハ能ク分ラヌ殆ド分ラヌ、サウ云フ風ニ憲法七十一條ニ
依ッテ前年度豫算ヲ施行スル際ニ於テ、サウ云フ御手入レガアッテ宜イ譯デア
リマスカ、甚ダ私ハ憲法ノ上ニ於テ分ラヌカラ御尋シタノデ、例ニハ餘リ重
キヲ置カヌノデアリマス、今一應大藏大臣ニ於テ御說明ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=60
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061・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 此席カラ御答イタシマス、簡單デアリマス、
豫算不成立ノ場合ニ於テハ前年度ノ豫算ヲ施行スルコトニ極ッテ居リマス、
其前年度豫算ノ範圍ニ於テ政務ヲ進行スレバ宜イヂヤナイカト云フコトニ、
結局サウ云フ御精神ノヤウニ、結末ガサウ云フ議論ニナルヤウニ承リマシタ、
實行豫算ヲ設ケマスノハ、前年度豫算其儘デハ實行不可能デ、憲法ノ精神モ
其前年度豫算ヲ其文字通リ、總テ其數字ヲ前年度通リ歲入歲出共ニ行ヘト云
フ意味デハ決シテナカラウト思ヒマス、詰リ前年度豫算ノ範圍ニ於テ此豫算
不成立ニナッタ年度ノ政務ヲ出來ルダケ遂行シテ行ケト云フ意味ダラウ、而
シテ其前年度豫算ノ範圍ニ於テ國務ノ進行ヲ圖ル上ニ於テ、差支ヘルト云フ
コトガアリマスニ依テ、玆ニ更ニ追加豫算ヲ立テヽ御協賛ヲ仰グニ至ッタ次
第デアリマス、此以上ハ詰リ意見ノ相違ト云フコトニ立至ラウト思フノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=61
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062・徳川家達
○議長(公爵應川家達君) 阪本君ニ御尋イタシマスガ通告者ハ是デ終リマシ
タ、國務大臣ニ何カ此法案ニ付テノ質疑デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=62
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063・阪本さん之助
○阪本釤之助君 所得稅ニ付キマシテ極ク簡單ニ御尋シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=63
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064・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=64
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065・阪本さん之助
○阪本釤之助君 所得稅法案ハ重大ノ案デアリマシテ、多分多數ノ委員ヲ設
ケラレマシテ、愼重審議ニナルコトヽ存ジマス故ニ、內容ニ立入リマシテ此
席ニ於テ御尋スルコトハ差控ヘマスガ、唯一事此一讀會ニ於テ御尋シタイト
存ジマスノハ、所得稅法案ノ第八十三條ニ、「所得稅法ハ當分ノ內小笠原島及
伊豆七島ニ之ヲ施行セス」トアリマスノデゴザイマスガ、何故ニ相變ラズ小
笠原島伊豆七島ハ除外サルヽノデアリマセウカ、此度ノ改正ハ增稅ノ上ニ於
テ、成ルベク取レルダケ取ルト云フ精神デ出來テ居ルト存ジマスニ拘ラス、
相變ラズ東京府下ノ離島ヲ優遇セラルヽト云フコトハ、少シ了解イタシ兼ネ
TV 〓ナゼカト申シマスト、鹿兒島縣ニ屬スル大島ノ群島及ビ沖繩縣ニ屬ス
ル群島ハ人文ノ程度進步ノ程度ニ於テ、無論東京府下ノ小笠原島ナドハ隔絕
シテ居リマスカラ、問題ニ致シマセヌトシテモ、物資等ニ於テ裕ニ是等ノ諸
島ニ優ヲテ居ルノデアリマス、然ルニ遠キ所ノ島ニ一般ノ島〓ニ法律ヲ施行
サレテ、殊ニ伊豆ノ大島或ハ八丈島ノ如キ、殆ド頻々東京ト交通シテ今ハ開
ケテ居リマスノデゴザイマスガ、之ヲ除外ナサルト云フコトハドウ云フ理由
デアリマスカ、四十一年ノ法律第二十四號ノ改正法案ニ於テ見マスト、沖繩
縣ニ於ケル民度ノ昂進ニ鑑ミテ、酒造稅ノ輕減ヲ廢スルト云フコトノ改正デ
アリマシテ、沖繩縣ノ民度ガ、非常ニ〓進シタト云フノデ、是マデ輕減シタ
酒造稅ヲ沖繩デハ改メラルヽニ拘ラズ、所得稅法ニ於テハ東京府ノ小笠原島、
伊豆七島ニ限ッテ除外セラルヽノハ、如何ニモ調査ガ普ク行渡ッテ居ナイト思
ヒマス、何カ目ノ先ニ見エテ居ルモノハ善クシテヤルノデアルカ、從來斯ウ
ナッテ居ルカラ、マア斯ウシテ置カウト云フ姑息ナ御考デアリマセウカ、誠
不可思議ニ存ジマスカラ、此點ニ付テ明確ナル御說明ヲ請ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=65
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066・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 唯今ノ御尋ノ伊豆七島、之ニ對シテ所得稅ノ
及ビマセヌノハ、沖繩其他ニ對シテ較ベテ見マスト云フト、民度ガ低イ、卽
チ產業ノ發達ガ後レテ居ル、民度ガ低イト云フコトダケデゴザイマス、民度
ガ低イ故ニ從來ノ通リ此所得稅ヲ施カヌ、是ダケノ理由デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=66
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067・阪本さん之助
○阪本釤之助君 簡單ノ御說明デ宜ク分リマシタガ、希クハドウカ沖繩ヤ大
島へ直チニ人ヲ御出シニナリマシテ、伊豆七島ト民度ノ違ッテ居ルコトヲ篤
ト御調査ヲ願ヒマスアノ位開ケテ居ル所ノ伊豆七島ガ沖繩ヤ大島ノ離島ヨ
リ民度ガ低イト思ッテ居ルヤウナ觀察デ政治ヲセラレテハ困リマスカラ、實
際ノ御調査ヲ願ヒマス
〔若槻禮次郞君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 先刻奧平伯爵ニ發言ヲ許シマシタ、德義上奧平伯
爵ニ御讓リニナッタラ宜カラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=68
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069・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 此法案ヲ審議イタシマスニ付キマシテ大體伺ッテ置キマ
シタ方ガ便利デアラウト思ヒマスカラ伺ヒマスガ、先程矢口君カラ御質問ニ
ナリマシタ點ニ付キマシテ········慎眞ナル考慮ヲ政府ガ爲シテ居ルカト云フコ
トノ御質問カラ、私ハ少シク大藏大臣ノ御答辯ニ依ッテ疑惑ノ點ヲ生ジマシ
タカラ一應申シマスガ、段々御說明ヲ承ハッテ居リマス中ニ、政府ハ國費ノ
負擔ヲ期スル爲ニ本案ヲ提出シタト云フコトヲ申サレテ居ラレマスガ、何故
ニ所得稅ノミヲ選バレタノデアリマスカ、此理由ニ付テ少シク徹底シタ御說
明ヲ願ヒタイト思ヒマス、若シ政府ガ所得稅ノミヲヤリマシタコトノ理由ニ
付キマシテ、商工業者其他ガ戰時ニ於テ非常ナ富ヲ蓄積シタト云フ所カラシ
テ、此本案ヲ選ンダト云フコトデアリマスナレバ、如何ニモ戰時ニ於キマシ
テ、空シク富ノ蓄積ヲシタモノモアルデアラウ、例ヘバ米ノ如キハ戰時ニ於
テ非常ナ騰貴ヲシテ居ル、負擔力ノ點カラ云ヘバ、商工業者ノ負擔力カラ之
ヲ選ブト云フコトハ同ジク負擔力ノ點ヲ論ジテ見マスレバ、農業者モ米價ノ
騰貴ニ依リ且又副業トシテ、蠶絲其他ノモノニ於テ、是マデ十分利得ヲ得テ
居ルノデアル、尤之ニ對シテ調査ヲナサルコトハ因難デアルカラ、出來ナイ
ト云フコトヲ言ハレルナラバ、同ジク所得稅ニ付キマシテモ困難デハナイカ
ト思ヒマス、其財源ニ付テ御調査ヲナサルコトハ困難デアラウト思ヒマス、
例ヘバ戰爭ニ於テ綿糸、綿布、其他船舶工業ノ如キハ非常ナ富ヲ得マシタデ
セウケレドモ、此二月以後ニ於キマシテ、段々御承知ノ通リ物價ガ急激ニ暴
落シテ居ル、富ノ異動ト云フコトモナカ〓〓ゴザイマス、其御調査ヲナサル
コトニ付キマシテモ、非常ナ御困難デアラウト思ヒマス、ソレ等モ顧ミマセ
ズシテ本案ヲ御提出ニナリマシタニ付キマシテハ、富及ビ物價ガ下落シテモ、
政府ハ豫算ニ計上シタヾケヲ取ルト云フ御見込デ、御提出ニナッタノデアリ
マスカ、其點ヲ伺ッテ見タイト思ヒマス、又矢口君ノ御質問ニ對シテ大藏大
臣ノ御答辯ノ中ニ、國民ノ負擔ハ公平ヲ期スルト云フコトデアリマスカラ、
御尋ネシタイト思ヒマスガ、今囘衆議院ニ於キマシテ本案ヲ修正サレタト云
フコトニ付キマシテハ、アノ修正ノ方ガ政府ノ御出シニナッタ原案ヨリモ負
擔ノ公平ヲ期スルノデゴザイマスカ、ソレヲ承ハッテ置キタイト思ヒマス、
ソレカラ社會政策ヲ加味シタト云フコトカラ申セバ、卽チ政府ノ社會化ト云
フコトニナラナケレバナラヌ、卽チ是ガ國民ノ負擔ガ公平デナケレバナラヌ
ト云フコトニナルナラバ、獨リ所得稅ノミヲ選ブト云フコトハナカラウト思
ヒマス、先程矢口君ノ言ハレマシタ權衡ヲ得ザル云々ハソレデアル、營業稅
其他ニ就テ按分的ニ政府ハ何故ニ御調査シナカッタカト云フ御質問デアリマ
ス、此點ニ就テハ政府ニ詳細ニ御調べニナッタコトガアリマスカ、如何デアル
カト云フコトヲ御尋ネシタイノデアリマス、簡單ニ是ダケヲ伺ヒマス
〔國務大臣男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=69
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070・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 奧平伯ノ御尋ネノ第一ハ何故ニ此增徵計畫ヲ
計ルニ當ッテ政府ハ所得稅ノミヲ捉ヘルカト云フ、斯ウ云フ御趣意デアリマ
スガ、無論所得稅及ビ酒造稅ニ取ッタノデアリマス、所得稅ナルモノハ最各種
ノ稅ノ中デ彈力ノアルモノデアリマス、且是ハ廣ク國民ニ及ンデ居ル、農家
ノ方ニモ農業所得ト云フモノガアル、山林ノ所得モアル或ハ工業ノ所得モア
ル。所得ナルモノハ凡テノ人ニ皆掛カルモノデ、單ニ或ル種類トカ云フモノ
デナイノデ、最廣ク國民ニ是ハ負擔スル所ノモノデアッテ、而シテ最モ彈力ノ
アルモノデアル、國稅ノ中デ最モ所得稅ナルモノハ、諸稅ノ親柱ニナッテ居
ルト云ウテ宜イ、故ニ之ニ取ルノハ當然ノコトヽ考ヘマス、ソレカラ物價ガ
下落シタガ、政府ノ豫算ニ計上シタ所ノ收入ニナルト思フカト云フ御尋デア
リマスガ、是ハ成程今日財界ガ不況ニ陷ッテ凡テノ物價ガ下落ヲシタト云フ
ヤウナ場合ニ從ッテ各人ノ利益モ減ッタト云フ狀況デアリマスカラシテ、一應
其點ニ付テ御懸念ナサルノハ、御尤ナ次第デ此點ニ付テハ政府モ深ク〓究モ
シ、考慮モ致シタノデゴザイマスルガ、元〓九年度ノ豫算ヲ立ッルニ方リマ
シテハ殊ニ此所得稅改正ニ付テ調査ヲ遂ゲマシテ、之ヲ基礎ニシマシタル數
字ハ大正六年度ノ實績ヲ基礎トシタノデアリマス、大正六年度ノ實績ヲ基
礎トシマシテ、大正七年度ノ現在ノ情況ニ鑑ミテ多少ノ取捨ヲ加ヘタ、斯ウ
云フコトニナッテ居リマス、世間デハ大正七年ガ好景氣ノ絕頂デ、八年カラハ
下リ阪ニナルト云フコトガ一般ノ豫想デアリマシタ、併ナガラ大正八年ノ歲
入ノ實績モ今日デハ分ッテ居ルノデアリマス、斯ウシテ此大正八年ノ實績ニ
付テ、大正九年度ノ豫算ノ收入ノ見込如何ト云フコトヲ考慮イタシマスルト
云フト、決シテ歲入不足ヲ告ゲルヤウナ憂ヒガ········虞レガ無イト云フ、斯ウ
云フコトニ斷定ヲ致シタノデゴザリマス、是ハ詳シイコトハ委員會ニ於キマ
シテ、政府委員ヨリ表ヲ以テ御答スルコトガ出來ヤウト考ヘマス、大體ニ於
テ八年度ノ實績カラ見ルト云フト、九年度ノ歲入計畫ハ三割モ控除シタ形ニ
ナッテ居ル、ソレ故ニ目的ノ金額ヲ收ムルコトニ於テハ違算無カラウト、斯
ウ確信ヲ致シテ居リマス、ソレカラ最後ハ社會政策発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=70
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071・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 モウ一遍申シマセウカ、最後ノ點ハ斯ウ云フ點デゴザイ
やす、詰リ要領ダケヲ申セバ、所得稅法案ノ如キハ共ニ世間ニ色〓非難モア
ル申サバ完璧ノモノデハナカラウト思フ、假リニ完璧ノモノデナイトスル
ナラバ、國防計畫ナラ國防計畫ノ爲ニ、政府ガ御提出ニナッタ所トスレバ、
他ノ地租トカ營業稅トカ、是等ノモノニモドウシテ手ヲ著ケナカッタカ、卽チ
一方ニ於テハ所得稅ニ御手ヲ御著ケニナルニ付キマシテハ、充分ナル御調査
ト云フモノモ隨分困難デアリマセウシ、社會ノ實體ヲ御調ベニナルノモ困難
デアリマセウ、ドウセ調査ニ付テ御困難デアラウト云フコトニシマスルナラ
バ同ジク地價ニ付テモ御調査ガ御困難デアラウ、困難デアラウト云フモノ
同士ヲ取組合セテ、一時ナリトモ國費ノ負擔ヲ各種ノ稅種ニ分ケタナラバ、
一層稅ノ社會化ト云フコト、社會政策ヲ加味シタコトガ徹底的ニ行ハレハシ
マイカ、斯ウ云フ點ヲ御聽キ申シタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=71
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072・高橋是清
○國務大臣 男爵高橋是〓君)分リマシタ、社會政策ト云フコトヲ以テ稅ノ
負擔ノ公平ヲ期スル、是ハ確カニ社會政策トシテ必要ナコトデアリマスルガ、
此所得稅改正案ニ於テ政府ノ申シマスル、社會政策ヲ加味シタルト申シマス
ルノハ、擔稅能力ノ低イ者ニハ之ヲ輕クシ、負擔力ノ多イ者ニハ之ヲ强クス
ルト云フ、從來ト其點ガ變フテ居ルト云フ主トシテ意味デアリマス、ソレカ
ラ諸稅ノ調査ヲシテ各稅ノ間ノ比較公平、是ハナカ〓〓容易ノ業デアリマセ
ヌ、今日稅トシテ負擔力ノ非常ニ强イ稅種モアリマス、又一方彈力ノナイモ
ノモゴザリマス、或ハ此上ニ稅率ヲ增加スレバ、最早堪ヘ切レヌト云フコト
ニ立至ッテ居ルモノモ、中ニハアルノデアリマス、斯ノ如キ各種ノ稅ニ向ッテ、
此國防計畫ノ爲ニ要スル費用ヲ按分的ニヤリマシタナラバ、是ハ到底ソノ圓
滿ニ通過スルコトヲ期シ難イト、私ナドハ考ヘテ居リマス、營業稅、通行稅、
織物稅、有ラユル稅ニ向ッテ此國防ノ經費ノ負擔ヲ按分シテ掛ケルト云フコ
トハ、今日ノ所得稅法ニ對シテ色ミ苦情ノ生ズル所ヲ以テ見マシテモ、ナカ
〓〓容易デナイコトダラウ、サウシテ之ニ付キマシテハ先刻モ申シマシタ
通リ、先ヅ所得稅ト云フモノハ最モ彈力ニ富ンデ居ルモノ、サウシテ農商工
總テ勤勞者ニ至ルマデ皆總テ是ハ負擔スル所ノ稅、稅ノ大宗デアリマス依ツ
テ之ト酒稅ニ取ッタノハ、政府ノ計畫トシテハ穩當ナルモノト、政府デハ信
ジテ居ルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 若槻禮次郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=73
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074・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 モウ一ツ殘ッテ居リマス、簡單デゴザイマスケレドモ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 若槻君ヲ呼ビマシタカラ、後デ願ヒタイト存ジマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=75
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076・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 ソレデハモウ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=76
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077・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 私ハ此法案ニ付テ伺ヒタイコトハ、大抵是マデニ質問者ノ
御尋ネニナッタ所ニ大體同ジイノデアリマス、デ御答辯ハ御尤ト申上ゲル譯
ニハ參リマセヌカラ、何レ尙ホ御說明ヲ伺フ機會ガアラウト存ジマスルカラ、
繰返シテ伺ヒマセヌガ、唯鈴木摠兵衞君トノ御間答ニ付テハ、ドウシテモ茲
ニ伺ッテ置カヌケレバナラヌト思ヒマス、元來私ハ此臨時議會ニ於テ、所得
稅法ヲ御決メニナルト云フコトハ宜シクナイト考ヘテ居リマスガ、ソレニハ
色〓ノ理由デ左樣ニ考ヘテ居マス、其大體ノ理由ハ年ノ七箇月モ過ギテカラ、
年ノ初メマデ溯ッテ、增稅セラレルト云フコトデハ國民ハ堪マラヌ、ソレデア
ルカラ八月一日ニナッテカラ一月カラ溯ッテ增稅スルト云フコトハ宜シクナイ
ト、斯樣ニ私ハ考ヘテ居リマス、然ルニ鈴木君ノ質問ニ對シテ大藏大臣ハ、
ソレハ減稅スル所ダケノ稅種ヲ取ルノデアッテ、增稅スルノハ溯ルノデナイト
云フ御答辯デアリマス、此御答辯ハ此法案ノドノ條文ニ依ッテ御答ニナッタカ、
ソレヲ承ハリタイ
〔政府委員松本重威君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=77
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078・松本重威
○政府委員(松本重威君) 法文ニ關係イタシマスカラ、私カラ申上ゲマス、
今囘提出イタシマシタ改正所得稅法案ノ附則ニ、「本法ハ大正九年八月一日ヨ
リ施行ス」ト書イテアリマス、從ッテ原則トシマシテハ八月一日以後ノ所得ニ
適用セラルルコトニナッテ居リマス、其二項ニ持ッテ參リマシテ第三種ノ所得
ニ付テハ大正九年分所得稅ヨリ本法ヲ適用ス斯ウ書イテアリマス、其結果第
一種ノ所得稅第二種ノ所得稅言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ法人ノ所得稅及第二
種卽チ公債社債竝ニ定期預金ノ利子ニ關シテハ、八月一日カラ新法ヲ適用
サレマス第三種卽チ個人ノ所得稅ダケハ「大正九年分所得稅ヨリ本法ヲ適
用ス」トアリマスカラ、個人ノ所得稅ハ一年ヲ通ジテ新法ヲ適用サレマスカ
ラ新法ハ大體ニ於テ稅率ヲ低減シタモノハ一月カラ適用サレルコトニナッ
テ居リマス、其外勤勞所得ハ二割ヲ控除スルトカ、或ハ山林所得ニ付テハ他
ノ所得ト各別ニ稅率ヲ適用スルトカ云フコトハ、何レモ稅ノ低減ヲ目的トシ
テ新法ハ規定サレテ居リマス、此法案ヲ適用イタシマスノデアリマスカラ、
結局第三種ノ所得稅ニ付テハ改正稅法ヲ適用スルコトニナッテ、負擔ヲ輕減ス
ルコトニナッテ居リマスカラ、此關係ヲ先程大藏大臣ハ御說明ニナッタモノト
思ヒマス、法文ニ涉リマスカラ私カラ御答イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=78
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079・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 法文ノ解釋デハアリマセヌカラ、私ハ大藏大臣ニ伺ヒタイ、
大藏大臣ハ減稅スル所ハ適用スル、增稅スル所ハ適用セヌト云フ御答デアリ
マシタ、今ノ政府委員ノ說明ニ依ルト、減稅ノ分モ增稅ノ分モ共ニ適用スル
ト云フ御說明デアリマスガ、間違ッテ居ルカラ御取消シニナルト云フノナラ
バソレデ宜シイ、大藏大臣カラハッキリ御說明ヲ願ヒマス
〔國務大臣男爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=79
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080・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 第三種所得稅ハ一月カラ十二月マデノ分ニ掛
ケルノデアリマス、私ノ申シマシタノハ實績ニ依ッテ第三種所得稅ハ掛ケル
ノデアリマスルカラ、是ガ實行ハ綜合所得トシテ配當金ヲ綜合所得ニシテ掛
ケルト云フコトハ、大正九年ノ八月一日カラソレガ起ッテ來ルノデ、一 ハ
日ニ溯ッテ第三種ノ所得稅ノ働クト云フコトハ、詰リ政府委員ノ申シマシタ
輕減スル方ノ、所謂勤勞所得ノ控除ヲ多クスル或ル稅率ヲ輕クシテ行クト
云フ方ノコトガ、大正九年一月カラ十二月マデノ分ニ及ンデ行クノデアリマ
ス、サウシテ大正十年一月以後ニ至ッテ其前ノ實績ニ依テ、個人ニ對スル第
三種ノ增徵ハ實際行ハレテ行クコトニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=80
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081・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 是ハ私ハ擧ゲ足取リニ申スノデハナイノデアリマス、私ハ
元來此度ノ所得稅法案ハ、此臨時議會デ決定スルノハ反對デ、一年延バサレ
ルガ相當ダト思ヒマス、其理由ノ重モナルモノガ唯今申上ゲル點ニアルノデヽ
大藏大臣ノ仰シヤルノハ間違ッテ居ルノデ、政府委員ノ答辯サレルノガ本當
デアルト私ハ思ヒマス、然ルニ大切ナル點ヲ間違ヘテ御答ヘニナッテ居ル、
何ダカ增稅ハ溯ッテ適用ハセヌト云フヤウニ仰シヤルト、此稅ハ通過シテモ
宜イト云フ感ジガ一般ニ行渡ル、此處ガ大切ナ點デアルカラ伺フノデ何モ一
遍御間違へニナッタカラ、何處マデモ大藏大臣ヲ追究スルト云フ考デハアリ
マセヌガ、間違ッタラ間違ッタト云フコトヲハッキリ仰セニナッテ戴キタイ、サ
ウシテソレガ善イカ惡イカト言フコトハ、是ハ又大ニ意見ヲ鬪ハセナケレバ
ナリマセヌガ、條文ニ無イコトヲ言ウテ、何ダカ政府ハ恩興ダケハ溯ッテ適
用スル、國民ノ負擔ヲ增スコトハ適用セヌト言フヤウナコトヲ國民ニ思ハセ
テ、法律ヲ通過サセテ置イテ、ソシテアトカラソレヲ以テ負擔ヲサセテ適用
スルト云フコトニナリマスレバ、私共ガ是カラ次ニ主張スルコトニ大變影響
ガアルノデアリマス、擧ゲ足ヲ取ルト云フノデハアリマセヌガ、前ニ仰シヤツ
タコトガ御間違ナラバ、間違ッタト仰シヤレバ其以上ハ意見ニナリマスカラ
强ヒテハ申シマセヌガ、其點ハドウカ大藏大臣カラハッキリト此議場ニ於テ、
鈴木君ノ質問ニ對シテ增稅ニ溯ラヌト仰シヤッタノハ間違デアル、矢張リ第
三種ノ所得稅ニ溯ッテ一月カラ御取リニナルノデアルト云フコトヲ、明ラカ
ニ御答ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=81
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082・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 若槻君ノ溯ッテ一月カラ增徵スルト云フノハ、
是ハ何ニ依ッテ御見解ニナルノデアリマスカ、私ニハ御質問ガ分ラナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=82
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083・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 ソレナラバ申上ゲマス、「第三種ノ所得ニ付テハ大正九年分
所得稅ヨリ本法ヲ適用ス」ト云フコトガドウ云フ意味ニナルカ、第三種ノ所得
稅ダケハ大正九年ノ一月カラ十二月マデニ付イテ此法案ニ依ル稅率ヲ適用ス
ルト云フコトデハアリマセヌカ、サウナレバ溯ッテ增稅スルト云フコトニハナ
ラヌノデスカ
〔政府委員松本重威君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=83
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084・松本重威
○政府委員(松本重威君) 唯今ノ御尋デアリマスガ、大藏大臣ガ增稅ニナル
分ハ溯ヲテ適用セヌト斯ウ言ハレマシタノハ、詰リ第三種ノ所得ノ如キモノハ
新法ヲ適用スル、卽チ改正法案ヲ適用スル、而シテ第三種ノ所得ニ對スル改
正法律案ハ、大體ニ於テ現行法ヨリモ其負擔ガ輕クナルト云フ結果ニナルカ
ラ、ソレデ第三種ノ所得ニ付テハ本年一月ヨリノ分ニ付テ新法ヲ適用スル、
併ナガラ之ガ爲ニ現行法ヨリモ大體ニ於テハ負擔ヲ增スコトハナイ、第一種
ノ所得ノ如キハ是ハ明ニ增稅ニナリマス、併ナガラ此モノハ八月一日以後ノ
モノニ對シテ增稅スルノデアル、故ニ大體ニ於テ國民ノ負擔ヲ增スベキモノ
ニ對シテハ遡ラセナイ、負擔ヲ增サナイ分ニ對シテハ年ノ初カラ適用サセル、
斯樣ニ御答ニナッタモノヽ如ク解釋シテ居リマス、ソレデ大抵御滿足カト思ヒ
マスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=84
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085・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 サウ云フ御答辯ナラバ、私ハ此席上デ稅率ヲチヨット算出シ
テ出シテ居リマスガ、ドウゾ現行ノ稅率ト此度ノ稅率ト比較シテ御示シヲ願
ヒタイ、果シテ減ジテ居リマスナラバ其比較ヲ御示シヲ願ヒタイ、自分ノヤツ
タ計算ガ誤ッテ居ルカ知レマセヌガ、下ノ方ハ減ジテ上ノ方ハ增シテ居ルヤウ
ニ出テ居リマスノデ、私ハ此增稅ヲ如何ナサルカト云フコトヲ御尋スルノデ
アリマス
〔政府委員松本重威君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=85
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086・松本重威
○政府委員(松本重威君) 唯〓稅率ヲ示セト云フ御話デゴザイマスガ、成程
極ク多額ノ所得者ニナリマシテ、何デモ四五百万圓以上ノ所得者ニナリマス
ト改正所得稅法ニ依ッテ課稅セラレル方ハ、第三種ノ所得ニ付テモ、少シ重
クナリマス、併シソレハ殆ド稀有ノ場合ト想像致シマス、先ヅ大體ヨリ申セ
バ第三種ノ所得卽チ個人ノ所得稅ハ輕減セラルヽノデアリマスカラ、ソレデ
溯ッテモ宜シイト申シタノデ、私ハ先程カラ說明ノ大體ノ上ニ於テ申上ゲタノ
モ其意味デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=86
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087・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 若シ四五百万圓ノ所得稅ノ悉ク輕減シタナラバ、先程申上
ゲタコトハサウ云フコトナラバ成ルベク湖ッテ適用スルコトヲ望ムノデアリ
マスガ、唯一言御確メ致シマスガ、四百万圓カ、五百万圓カ、ドッチカ存ジマセ
ヌガ、ソレカラ以下ノ所得者ニハ增稅デナイ、却ッテ皆減稅ニナルト云フ言葉
ハソレハ確デアルノデアリマスカ、先ヅソレダケ
〔政府委員松本重威君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=87
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088・松本重威
○政府委員(松本重威君) 唯今私ガ申上ゲタコトハ詰リ四百万デシタカ三百
万圓デシタカ、兎ニ角三四百万圓以上ト記憶シテ居リマス、其以上ノ場合ニ
ハ新稅ノ方ガ重クナルト思ヒマシタガ、ソレ以下ノ分ニ付キマシテハ九年度
ニ限ッテハ、此改正案ヲ適用スルコトニ依テ負擔ハ增加シナイト自分ハ信ジテ
居リマス、若シ之ニ九年度所得稅ニシテ所謂株式ノ配當ヲ加算セラレマス場
合ニ於テハ增スカモ知レマセヌガ、九年度ニ於テハ株式ノ配當金ハ加算シナ
イコトニ法律ガ出來テ居リマスカラ、而シテ此株式ノ配當金ヲ加算シナイ九
年度ノ所得ニ對シテ新稅率等ヲ適用シマスレバ頗ル巨額ノ所得者ヲ除イテハ
大體ニ於テ減稅ニナルト信ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=88
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089・若槻禮次郎
○若槻禮次郞君 モウ私ハ質問ヲ止メヤウト思ヒマシタガ今ノ御說明ニ付テ
モウ一遍御尋シナケレバナラヌ、私ガ誤ヲテ居レバ自分ノ說ハ撤囘スルノデア
リマスガ、株式ノ配當ガナケレバ減稅スルト云フコトデアルガ、ソレハ株ヲ
持ッテ居ル人ダケノ話デアリマス、世間ニハ株ヲ持ッテ居ル者、持タナイ者、
イロ〓〓アルノデアリマス、株式ヲ持ッテ居ル者、株劵ノ所有者ダケノコトヲ
私ハ御尋シタノデナイ、所得稅法ガ所得幾ラニ對シテ稅率ガ玆ニ極ッテ居ル
ガ、此稅率ダケハ私ハ現行法令ノ租稅ノ關係ダト思フノデアル、大正九年度
ニ限ッテ減稅ニナルコトハナイ、大正九年ノ家族ノ數ニ依ッテ幾ラカ減稅スル
ト云フコトヲ適用セヌト云フコトニナッテ居リマスカラ、大正丸年度ハ寧ロ稅
ガ增ストモ減ラナイ譯デアル、ソレデアルカラ今ノヤウナ御說明ハ困ルノデ、
本當ニ皆減稅セラレルノデアリマスガ、私ハ增稅セラレル者ハ溯ヲテ適用如何
ト云フコトハ議論デアル、增稅ガナケレバ私ノ議論ノ根柢ガ立タナイ、果シ
テ其通リデアルカ、簡單デ宜シウゴサイマスカラ御答ヲ願ヒタイ
〔政府委員松本重威君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=89
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090・松本重威
○政府委員(松本重威君) 唯今ノ重ネテノ御尋モアリマスカラ、尙重ネテ申
上ゲマスガ、自分ノ計算ト自分ノ信ズル所ニ於キマシテハ大正九年度ノ第三
種ノ所得稅ハ現行法ヨリモ改正稅法ニ依ル方ガ確ニ大體ニ於テ負擔ガ輕減サ
ルヽト確信シテ居リマスガ、ソレトモ又私ガ申スコトガ誤ッテ居ル、斯樣ニ
ナッテ居ルノデナイカト云フヤウナ何カ御調ベニナッタモノデモアリマスレバ
ソレヲ拜見シマシテ、若シ誤リマシタナラバ誤ッタコトヲ申上ゲマスガ、自分
ガ唯今考ヘテ居リマス所デハ自分ニ於テハ誤リナイト信ジテ居リマス次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=90
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091・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 奧平伯爵ニ御約束ヲシテ置キマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=91
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092・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 私ハ極ク簡單ナコトデアリマスガ、大〓ハ今若槻君ガ問
ハレマシタ負擔ノ問題、大〓分カリマシタカラ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=92
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093・鈴木そう兵衞
○鈴木摠兵衞君 私ハ松本政府委員ニ御尋致シマス、前ニ自分ガ大臣ニ伺ヒ
マシタ時ニハ誠ニ簡單ナル御答辯デ、然ラバ增稅ハ何處カラ出ルカ能ク調べ
テ見タイト思ウテ其儘質問ハ止メマシタガ、今政府委員ノ御答辯デアリマス
ト、今若槻君ト數囘ノ御應答ノ上カラ考ヘマスト、唯第三種所得ト言ッテモ營
業、勤勞ト云フ分ニ限ッテ減ズル、株式ノ配當ハ此限ニ非ズト云フヤウナ風ニ
伺ヒマシタ、果シテサウ云フ御趣意デアリマスカ、ドウモソコガハッキリシマ
セヌ、株式ノ配當ハ是マデハ七五ノモノハ衆議院ノ修正デハ四トナッテ三半ヲ
減ズル、併ナガラ舊法ハ累進稅ニ依ッテ增シテ居ルガ、三半ガ三ニナリ二ニナ
ルガ、ケレドモ一面人數ノ上カラ申シマスト、金額ハ確ニ增稅トナル、コ
等ハ除外シテノ御答デアッタト心得テ宜シウゴザイマスカ
〔政府委員松本重威君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=93
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094・松本重威
○政府委員(松本重威君) 唯今私ハ若槻サンニ御答イタシマシタノハ、大正
九年分第三種ノ所得稅ハ現行法ニ依ルヨリモ改正法案ニ依リマシタ方ガ大體
ニ於テ負擔ガ輕減セラレル、斯ウ申シタノデアリマス、サウシテ其場合大正
九年分ノ所得中ニハ株式ノ配當金ヲ加算シマセヌカラ、ソレデ配當金ノ綜合
課稅ト云フ關係ハ大正九年度ニ於テハ起リマセヌト斯ウ申シタノデアリマ
ス、右ニ關シテ唯今鈴木サンヨリ配當金ノコトハ何カ除外シテ居ルヤウニ說
明スルガ、配當金ニハ配常金相當ニ配當課稅トシテアルノデナイカト云フ風
ノ御尋ガアリマシタガ、是ハ法人所得稅ト個人ノ所得課稅ト區分シテ御考ヲ
願ヒタイト思フガ、勿論此改正法案ガ通過シマシテ、八月一日ヨリ施行セラ
レマスレバ、法人ノ所得ニ付テハ法律ニ規定シテアル通リ、或ハ超過所得ガ
アッタ場合ニハ超過所得ニ課稅セラレル、留保所得ガアッタ場合ニハ留保所得
ニ課稅セラレルト云フコトハ其通リデアリマス、唯個人ノ所得ニ關シテハ大
正九年度分ニ限ッテ法人ヨリ受クル配當金ハ加算イタシマセヌコトニ法律ハ
規定シテ居リマス、其關係ヲ先程申上ゲタノデアリマス、是デ御了解ダト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=94
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095・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 本員ハ大藏大臣ニ御尋致シタイト存ジマス、ドウゾ
大臣ヨリ御說明ヲ願ヒマス、最前大藏大臣ハ主トシテ減稅ニナルモノガ多イ、
大正九年一月ヨリ課稅シテモ主トシテ減稅ニナルモノガ多イト云フ御答辯デ
アッタヤウニ伺ヒマシタ、元來稅ノ減ズルト增ストヲ問ハズ、何レノ區別ヲセ
ズニ其人ノ財產、人ノ權利ニ關シテ、以前ニ法律ノ效力ヲ及ボスト云フコト
ハ頗ル私ハ不法ト思フ、溯及スルト云フコトハ法理ニ於テ何レノ國モ之ヲ可
トセヌノデアル、何ガ故ニ斯ウ云フコトヲ必要トセラルヽノデアルカ、是ハ
大臣ヨリ伺ヒタイト思フ、ソレカラ今一ツハ、稅ノ場合ニ限ラズシテ納稅者
ハ所得稅ヲ納ムルコトニ依ッテ國ニ對スル選擧權ヲ得或ハ地方ノ議會其他ニ
對スル選擧權ヲ得テ、公權ヲ得タル者ガ法律ヲ溯及セラルヽガ爲メニ其公權
ヲ毀損セラルヽ場合ハ無論生ズルト私ハ思ヒマス、今迄是々ノ稅額ヲ納メ、
直接國稅トシテ是々ノ稅額ヲ納メテ選擧權ヲ有シタル者ガ事前ニ法律ヲ溯及
セシムル爲メニ其權利ニ影響ガアルカナイノカ、是等ニ付テ大臣ノ說明ヲ伺
ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=95
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096・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 九年度ノ納稅者ハ皆減稅スルト云フヤウナ廣
イ意味ニ對シテ御答ヲシタノデナイノデ、尙ソレハ速記ニ付テ御調ベヲ願ヒ
タイ、詰リ溯及スルノガ惡イ·········溯及スルモノハ輕減ノ意味ニ於ケルモノデ
アル、增稅ノ意味デハナイ、斯ウ私ハ申シタノデアル、大正九年ニ於テ一月一
日ヨリノ第三種ノ所得ニ對シテ此改正案ノ働ク所ハ納稅者ニ輕減トナルモノ
ガ行ハレルノデアリマス、斯ウ云ウコトヲ申上ゲタノデアリマス、ソレカラ
選擧權ニ關シテハ、前來ノ所デハ五百圓ニ對シテ百分ノ三、ソレダケノ稅ヲ
出シテ居ル、サウシテ十圓ガ納稅資格ニナッテ居ル、今度ハ三圓ニナル、サウ
シテ輕減ヲシマシテ率ガ千分ノ五卽チ百分ノ零「コンマ」五ニナリマシテ、六
百圓ガ最低度デアリマス、卽チ矢張リ所得稅ヲ納ムル者ハ丁度三圓納ムルコ
トニナリマス、卽チ選擧權ニハ大シテ關係ハナカラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=96
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097・淺田徳則
○淺田德則君 此日程ノ第二ヨリ第七ニ至ル各案ハ何レモ極メテ重大ナル案
件ト存ジマス、此特別委員ノ數ハ十八名ト致シマシテ議長ニ於テ指名アラム
コトノ動議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=97
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098・前田利定
○子爵前田利定君 唯〓ノ動議ニ賛成デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=98
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099・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 淺田德則君ノ日程第二ヨリ第七マデノ議案ノ特別
委員ノ數ヲ十八名トナス動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ乞ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=99
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100・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシ
テ朗讀ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
所得稅法改正法律案外五件特別委員
公爵德川慶久君子爵田尻稻次郞君子爵靑木信光君
子爵八條隆正君男爵村上敬次郞君和田彥次郞君
男爵阪谷芳郞君荒井賢太郞君男爵藤村義朗君
男爵〓誠之助君男爵藤田平太郞君若槻禮次郞君
伊澤多喜男君市來乙彥君早川千吉郞君
田中源太郞君中村圓一郞君島定治郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=100
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101・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第八、明治四十年法律第二十一號中改正法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
明治四十年法律第二十一號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正九年七月十三日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
明治四十年法律第二十一號中改正法律案
明治四十年法律第二十一號中左ノ通改正ス
第一條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
四所得稅
附則
本法ハ大正九年八月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前ニ終了シタル法人ノ各事業年度分ノ所得ニ付テハ仍從前ノ例ニ
依ル
參照
明治四十年法律第二十一號
第一條樺太ニ於ケル租稅ハ左ノ目ニ從ヒ徵收ス
-戶數割
二營業稅
三雜種稅
前項租稅ノ種類及課率ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條租稅ノ徵收及滯納處分ニ關シテハ國稅徵收法ヲ準用ス
第三條本法ニ規定スルモノノ外租稅ノ賦課徵收其ノ他必要ナル事項ニ關
スル規程ハ樺太廳長官之ヲ定ム
附則
本法ハ明治四十年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員古賀廉造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=101
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102・古賀廉造
○政府委員〔古賀廉造君〕 本案ハ樺太ニ於ケル租稅課目中所得稅法ノ一課目
ヲ追加シヤウト云フ案デゴザイマス、現在ニ於テ樺太ニハ所得稅ノ一部ガ施
行セラレテ居ラナイ、今度所得稅法ガ改正ニナリマシテ、是ガ執行セラル
曉ニハ、樺太ニ於テハ所得稅ヲ免ズルト云フコトニナッテ居リマス、所得稅ガ
ナクナッテ了フノデアリマス、ソレ故ニ樺太デハ財源ニ窮スルコトニ相成リマ
スカラ、更ニ樺太限リニ行ハルベキ所得稅ノ一課目ヲ加ヘマシテ、從來ノ如
クニ之ヲ徵收シヤウト云フ法案デアリマス、何卒御審議ノ上協賛ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=102
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103・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 諸君ニ御諮リヲ致シタイト存ジマス、唯今古賀政
府委員ノ說明セラレマシタ議案ハ、第二ヨリ第七マデノ議案ト同一委員ニ付
託シタイト考ヘマス、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=103
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104・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=104
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105・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第九、議院法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會
議院法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正九年七月十三日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
議院法中改正法律案
小字ハ衆議院ノ修正、
-ハ同削除ノ符號ナリ
議院法中左ノ通改正ス
第十九條中「五千圓」ヲ「七千五百圓」ニ、「三千圓」ヲ「四千五百圓」ニ、「二千
圓」ヲ「三千圓」ニ改ム
附則分適用
本法ハ大正九年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員橫田千之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=105
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106・横田千之助
○政府委員〔橫田千之助君〕 一般經濟事情ノ推移ヲ鑑ミマシテ、貴族院議長、
衆議院議長、竝ニ兩院議員ノ歲費增加ノ計畫ニ基キマシテ、本案ヲ提出シタ
ノデアリマス、卽チ其精神ヲ實現スベク議院法中第十九條ヲ改正スルノデア
リマス、而シテ本法ノ附則トイタシマシテ本法ハ大正九年七月一日ヨリ之ヲ
施行スト云フコトニナッテ居ッタノデアリマスガ、衆議院ニ於テハ既ニ七月半
バ以上、經過シタ今日ニ於テ七月一日ヨリ之ヲ施行スルト云フ法文ハ穏カデ
アルマイ、斯ウ云フ議論ガ出タノデアリマス、他ノ法律ノ立法例ニ鑑ミテ見マ
スト云フト、衆議院ハ「大正九年七月分ヨリ之ヲ適用ス」ト修正シタノデアリ
マスガ、是ガ穩カノヤウデアリマス、政府ハ之ニ同意ヲ表シタノデアリマス、
何卒速カニ御協賛アランコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=106
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107・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御質疑モナイト認メマスカラ、特別委員ノ氏
名ヲ書記官ヲシテ朗讀致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
議院法中改正法律案特別委員
侯爵蜂須賀正韶君伯爵兒玉秀雄君子爵井上匡四郞君
男爵目賀田種太郞君男爵山內長人君男爵黑田長和君
谷森眞男君佐藤友右衞門君今井五介君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=107
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108・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十、大正九年勅令第五十二號承諾ヲ求ムル
件、衆議院送付、會議
大正九年勅令第五十二號
右本院ニ於テ承諾スヘキモノト議決セリ因テ議院法第五十四條ニ因リ及送
付候也
大正九年七月十二日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
大正九年勅令第五十二號
右帝國憲法第八條第二項ニ依リ承諾ヲ求ムル爲
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
大正九年七月三日
內閣總理大臣原敬
海軍大臣加藤友三郞
外務大臣子爵內田康哉
大藏大臣男爵高橋是〓
陸軍大臣田中義
農商務山本達雄
內務大床次竹二郞
但した人だ
文部大中橋德五郞
遞信大野田卯太郞
鐵道大臣元田肇
司法大臣伯爵大木遠吉
朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝國憲法第八條第一項
ニ依リ大豆、生牛肉、鳥卵、綿織絲及綿織物ノ輸入稅ノ低減又ハ免除ニ關
スル件ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正九年三月二十四日
內閣總理大臣原敬
兼司法大臣
海軍大臣加藤友三郞
外務大臣子爵內田康哉
大藏大臣男爵高橋是〓
陸軍大臣田中義
農商務大臣山本達雄
內務大臣床次竹二郞
文部大臣中橋德五郞
遞信大臣野田卯太郞
勅令第五十二號
政府ハ當分ノ內勅令ヲ以テ期間ヲ指定シ大豆、生牛肉、鳥卵、綿織絲及綿
織物ノ輸入稅ヲ低減又ハ免除スルコトヲ得
附則
本令ハ大正八年勅令第四百七十八號失效ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=108
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109・山本達雄
○國務大臣(山本達雄君) 昨年以來一般ノ物價ガ騰貴イタシマシテ、殊ニ食
料品其他生活上必要ナルモノヽ價ガ著シク騰貴ヲ致シマシタノニ付キマシ
テ、之ヲ緩和セムガ爲メニ昨年ノ十一月ニ於キマシテ、緊急勅令ニ依リマシ
テ大豆、生牛肉、又綿織絲、綿織物、鳥卵、此五品ノ關稅ヲ免除イタシマシ
テ、此事後承諾ヲ得ムガ爲メニ、前議會ニ於テ其案ヲ提出イタシマシタガ、
不幸ニシテ解散ト相成リマシテ、ソレノ當然ノ結果ト致シマシテ、本年ノ三
月二十四日ニ於テ此效力ヲ失フコトニナッタノデアリマス、ソレデ同日ニ於キ
マシテ再ビ緊急勅令ヲ發シマシテ、本年ノ十一月末日迄矢張リ右五品ノ關稅
ヲ撤廢スルコトニ相成ッテ居ルノデゴザイマス、從ヒマシテ、憲法第八條ノ第
二項ニ依リマシテ事後承諾案ヲ提出シタ所以デゴザイマス、ドウカ御協賛ア
ラムコトヲ祈リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=109
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110・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマ
ス
〔成瀨書記官朗讀〕
大正九年勅令第五十二號(承諾ヲ求ムル件)特別委員
伯爵柳原義光君子爵榎本武憲君男爵小早川四郞君
男爵橫山隆俊君男爵東郷安君小池靖一君
大村彥太郞君橋本辰二郞君秋山源兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=110
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111・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十一、國運發展ニ適切ナル社會組織及風俗
慣習調査機關設置ニ關スル建議案、前田正名君發議、建議案ヲ朗讀ヲ致サセ
マス
〔成瀨書記官朗讀〕
國運發展ニ適切ナル社會組織及風俗慣習調査機關設置ニ關スル建議案
右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
大正九年七月十日
發議者
前田正名
賛成者
淺田德則高崎親章大山綱昌
男爵沖原光孚小牧昌業荒川義太郞
和田彥次郞平井晴二郞男爵村木雅美
仲小路廉男爵肝付兼行男爵島津長丸
石黑五十二加藤恆忠福永吉之助
山之內一次室田義文安樂兼道
市來乙彥大谷嘉兵衞麻生太吉
鈴木摠兵衞伊藤傳七犬上慶五郞
石谷傳四郞矢口長右衞門中村圓一郞
高橋源次郞竹內權兵衞中山嘉兵衞
成〓信愛
貴族院議長公爵德川家達殿
國運發展ニ適切ナル社會組織及風俗慣習調査機關設置ニ關スル建議
國體ノ美風ヲ維持シ國家ノ基礎ヲ鞏固ナラシムルニ適切ナル社會組織及風
俗慣習ヲ調査スルノ特別機關ヲ設ケ以テ我國運發展ノ基礎ヲ確立セムコト
ヲ望ム
右建議ス
〔前田正名君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=111
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112・前田正名
○前田正名君 殘念ナガラ今日ハ十分說明スルコトハ無理ト存ジマスルカ
ラ、皆樣ノ御賛成ヲ得テ、再ビ詳シク說明申スコトヲ希望スル次第デアリマ
ス、極ク簡單ニ要領ダケヲ申上ゲテ置キタイト存ジマス、此調査ニ付キマシ
テハ、數十年來朝野ニ在ッテ聊カ經驗モアル次第デアリマス、議院ニモ建議ヲ
屢〓シタ積リデアリマス、時勢ノ進運ニ從ッテ益〓其必要ヲ感ズルコトデアリマ
スカラ、此調査機關ノ設置セラレムコトヲ切望スル次第デアリマス、此精神ハ
相變ラズ國力增進ニ關スルコトデアリマス、マ一ツハ段々ト世ノ進ムニ付ケ
マシテ、尙ホ此上ニ世ノ中ノ組織ヲ完全ニセナケレバナラヌト云フ必要ガゴ
ザイマス、マ一ツハ御承知通リ內外ヲ始終旅ヲシテ居リマスガ、中ニハ非常
ナル名案ヲ有シテ居ル人ガ隅〓ニアリマス、又ハ誤解シテ居ル方ガ非常ナル
モノデアル、第三ニハ不平家ガ多ウゴザイマス、皆其不平ニ負ケル、其不平ノ
目的ヲ達スルコトガ出來ナイ、名案ガアッテモ名案ニ負ケテ居ッテ、其目的ヲ
達スルコトガ出來ヌ、又誤解ノ如キハ御承知通リ、我ガ日本ニハ此誤解ノ爲
ニ取返スコトノ出來ナイ不幸ヲ被ッテ居ルコトハ非常ナコトデアリマス、願ク
ハ其不平其誤解其名案ノ目的ヲ達シサセル爲ニ其機關ガ欲シイ次第デアリマ
ス、此頃ニ至ッテ調査調査ト云フコトガ行ハレテ來マシテ、殊ニ我〓ハ非常ニ
之ヲ歡迎スルモノデアリマス、卽チ此書物ハ明治十八年ニ、政府ニ於カレマ
シテ、國勢調査ヲセラレタモノデアリマス、卽チ是レ國力ノ增進ノ方法、其
增進ニ從ッテ國家ノ機關ヲ進メテ行カナクチヤナラナイト云フ方針デアッテ、
丁度明治十八年十二月二十七日ヲ以テ、三條太政大臣ヨリ各府縣廳ニ斯ウ云
フモノヲ三十卷、方針トシ、國是トシ、參考トシテ皆差出サレタモノデアリ
PV、私ガ此調査ト云フコトニ付テハ、聊カ經驗ノアルト云フコトハ右申上
ゲル次第デアリマス、益〓此調査ノ必要、益〓此人ノ氣合ヲ········目的ヲ達シサ
セル不平家ニハ不平ヲ釋イテヤル、誤解シテ居ル者ハ之ヲ充分明瞭ニサシ
テヤル、名案ハ之ヲ採取·······廣ク聽カシテヤルト云フコトハ、最モ必要ト考
ヘマスルカラ、此機關ノ設置ヲ必置ト認ムル次第デアリマス、極ク短カク申
上ゲマス、第二ハ殖產興業、殖產興業ノ目的ハ何デアルカト云フト、國民ラ
シク、早ク衣〓住ヲ足ラセテ獨立シテ、又海外ノ國民ト對立スルダケノ力ニ
サセタイト云フニ外ナラヌ次第デアリマス、我〓ハ此國民ノ權利、第一ニ民
力是レ權利、衣〓住足ッテ是レ卽チ人間タル本分ヲ盡シタモノデアリマスルト
考ヘマスル故ニ、始終民力民力ト云フコトヲ目的トシテ居ル次第デアリマス、
第二殖產興業ノ目的ハ、申スマデモナク、早ク此世ニ相當スル國家ニ爲シタ
イノデアリマス、何レニ一等國ト見ル所ガゴザイマセウカ、何ヲ以テ今日ニ
相當スル國家ノ組織ガ出來テ居リマセウカ、嗚呼此大切ナル國ニシテ港一ツ
モ無シ、道路モ無シ、山村モ無シ、衣〓住モマダ足ラヌト云フヤウナ有樣デ
アル、不合格ナ國ト言ハナケレバナラヌ、殘念ナコトデアル、又國民トシテ
到底外國ノ國民ト對立ハ出來ナイ次第デアリマス、是レ卽チ殖產ノ目的デア
リマス、國家········國家ト云フト、何ニ付ケテモ國家トシテハ百年ノ計畫ヲ遂
行シテ行ク國是ガ立ッテ居ナイト、人更ハレバ物變ハル、時移レバ物變ハル、
此點ハ眞ニ日本國ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイト考ヘマス、第二過失、極
ク短ク申上ゲマス、過失········過失ガ多イ、併ナガラ此過失ト云フモノハ經驗
ノ一ツデアル、又成功ノ初級デアルト考ヘマス、唯其過失ニ負クルカ勝ツカ
ノトコロデアリマス、若シ過失ト見タナラバ之ヲ潔ク改メテ行カナクチヤナ
ラヌ、是ハ利益デアリマス、過失ナルモノヲ何處カラ何處マデモ彌縫シテ行
ケバ是ハ非常ナル害ニナル次第デアリマス、故ニ此非常ナル今日ノ世ノ中
ニナッテ、是等ノコトヲ改メナクテハ非常ナル國家ノ不利ト云フコトガ眼前ニ
橫ヲテ居ル、決シテ其誤リデハナイ、折角國家ノ爲ニ忠義ヲシタ人ガ、今日ニ
ナッテハ其結果甚ダ惡イコトガアリマスカラ、潔ク後進ノ者ハ之ヲ改メテ行カ
ナケレバナラヌ責任ヲ有シテ居ル、外交·······外交、私ハ此五十三年ノ間ニ今
囘デ八囘行ッテ居リマス、行ク每ニ國ヲ憂フルコトガ重サナリ重サナリシテ來
テ居リマス、今日ハ········五十三年前ニ行キマシタ時ニハ珍ラシ氣ニ可愛ガラ
レル、辱シメラレル、非常ナ目ニ逢ヒマシタ、其時ト今日トスルト、寧ロ五
十二年前ニ刀········大小ヲ帶シテ日本服デ行ッテ辱シメラレ、窘メラレ、珍ラシ
ガラレルト云フ見物ニナッタ時ガ、寧ロ宜シイト云フヤウナ感ヲ起スノデアリ
やする。何トナレバ貿易モ盛ニナル、此貿易ノ爲ニ、卽チ品ハ日本ノ魂トシテ
一ツトシテ濫造粗製デナイモノハナク、非常ナル立派ナ世界ニ歷史アル民族
戰シテモ何ト言ッテ宜ウゴゴイマスカ、危ナイ奴デアル油斷ハナラヌト云フヤ
ウナ鹽梅ニ今日ハナッテ居ル次第デアリマス、實ニ今日大切ナコトハ信用
信用恢復、是ヨリ外交········此外交ハ日本ノ爲ニ國民ガ、非常ナル努メヲシナ
クチヤナラヌ時代ト思ヒマス、一遍不信用ヲ得タモノハ必ズ恢復ハ出來マス
ル、第一ニ此信用ト云フコトハ恢復シナクチヤナラヌ、チヨット玆ニ第三ニ擧
ゲマスルガ、海外ヨリ日本ニ來ル人ハ第一金儲ケ、第二見物、第三學者、第
四學校、日本國民ヲ造ッテ吳レルト云フ學校ガ出來テ居リマス、厚イ志ノモノ
デアリマス、我ガ日本國民ハ書生········書生、役人········役人、書ク程ニ書カレ
テ仕舞フ、書カレル、言ハレル、其言ハレルコトハ橫濱ニ著スル、日光ニ行
ク、箱根ニ行ク、歸リハ奈良京都ヲ見テ歸ル、其急行列車ニ乘ッテ見物スルヤ
ウナ人カラ、此日本國ヲ皆書カレ、言ハレテ居リマス、日本國デハ決シテサ
ウ云フ類ノ人ハ先ヅ少ナイト言ハナクチヤナラヌ、殆ドナイト言ハナケレバ
ナラヌ、是等ノコトハ餘程御熟考ヲ煩ハシタイト思フ、先刻申上ゲル通リ、
皆サンノ御贊成ヲ得マシテ、ドウゾ不日緩ックリト此說明ヲ實例ヲ擧ゲテ申上
ゲタイト思ヒマス、マ一ツハ私玆ハムヅカシイ所デアリマスケレドモ、此篤
志家、御承知デアリマセウガ、我〓ハ六十年前ヨリ先輩ノ驥尾ニ附イテ居ツ
テ、如何ニモ感心スル、如何ニモ命モ惜シクナイト云フヤウナ人ニ接シテ居
リマスガ、國ハ其當時ドコロデハナイ、十倍モ百倍モ實ニ危險ナ場合ニナッテ
居ルニ拘ハラズ、誠ニ此篤志家ト云フモノガ少ナクナリマシタ、成程世界ノ
地球ノ歷史ヲ視テ見マスルト、篤志家ノナイ國家ハ如何デゴザイマセウ
カ、或ハ屬國トナリ、世界ニ一等國ト云フ國ハナイ、屬國ハナイ、或ハ財ハナ
イ、或ハ有ッテモ權利ナク嗚呼實ニ油斷ノナラヌコトデアル、國ニ篤志家ノ缺
乏スルトキハ、國ハ第一ニ覺悟シナクチヤナラヌ次第デアリマス、愛國
愛國ト云フコトハ其情ハ切ッテモ切レナイ、忘レササウトシテモ忘レサスコト
ハ出來ナイ、ケレドモ、セメテ國民ニ愛國ト云フコトガナクチヤナラヌ今日
デアルト存ズル次第デアリマス、次ニ國體········國體上ヨリ風土、國風、是等
ノコトニ付テモ長ク御話シシタウゴザイマスケレドモ、先ヅ茲ニ措キマス、
此維新·······維新ノ時ノ戰、此維新ノ戰ト云フモノヲ以テ、全國ニ今モ根氣ノ
アラン限リ言ッテ聞カセルコトデアリマス、維新ノ戰ニアッテ官軍賊軍ト言ッテ
居ル、是ハ決シテ官軍賊軍ト云フコトハナイ國ト思ヒマス、是ハ今日最モ國
民ガ心得ナクチヤナラヌ次第ト思ヒマス、若シモ賊ト云フモノガ眞ニ此反對
ノモノデ、名ノ如ク賊デアッタナラバ、今日ニ今日ヲ見ルコトハ出來マセヌ、
我〓ハ兄ハ一人長州ニ殺サレ、一人ハ會津ニ殺サレテ居リマスケレドモ、少
シモ怨ミヲ持タヌ、是ハ何デアルカト云フト、是ハ賊トカ官軍トカ言ハレヌ
次第ノモノデアル、何デアルカト言フト、皆賊ノ他ニ薩長土肥ガ擅マニシ····
····此國家ヲ擅マニスルト云フ考ヨリ反對ニ起ッタ、決シテ朝敵デハナイ········官
軍ハ又夫〓理窟ガアッテ戰ッタ、後ニマア實ニ何トモナイヤウニナッタト云フコ
トハ、是ハ世界ノ歷史ニ見テ卽チ此國體ノ有難イトコロデアリマス、此國體
ヲ皆サンニ申上ゲル必要ハゴザイマセヌガ、不幸ニモ下級ニ居ッテ家庭モ〓育
ガ出來ナイ人ハ今日ハ餘程注意シナクチヤナラヌ場合デアリマスカラ、ドウ
ゾ五十年前カラノ歷史ハマダ消エテ居リマセヌカラ、是ヲ親シク一人デモ多
ク聞カセルト云フコトハ、最モ今日急務ト思ヒマス、是モ一ツ調査ノ機關ヲ
置ク必要ナコトヽ思ヒマス又政治上ニシテモ、是等ノコトハ深ク立入リタ
クアリマセヌ又此議場ニ話シタクナイケレドモ、一ツ申上ゲテ置キタイコト
ハ宗〓デアリマス、印度モ九遍ホド行ッテ見マシテ御寺ヲ見ル、坊サンモ見マ
シタケレドモ、印度ニ釋迦ガナイト言ッテ宜イ、支那ニモ度〓行ッテ見マシタ
ケレドモ、孔子ノ道ガドコニアルカト云フト、淺ク見テ居リマスカラ深イ所
ハ知リマセヌケレドモ、孔子ノ道ハドコニアルカ、皆日本ニ來テ居ルト言ハ
ナケレバナラヌ、孔子ノ道モ釋迦ノ道モ皆日本ニ眞ニ化シテ仕舞フ、決シテ
外國ノモノデハナイコトニナッテ居リマス、其孔孟ノ道、其釋迦ノ道ヲ失フ所
ノ國ハ悉ク誠ニ名ヲ言フニ憚ルカラ實ニ申スニ忍ビヌ位ニナッテ居ル、今旣ニ
此日本ノ國體ノ根源ト孔孟ノ道ト佛ノ道ヲ入レテ今日ニナッテ來タ所ノコト
ハ忘却シテ仕舞ッテ、濫リニ寺ヲ排スル、或ハ佛ヲ排スル、或ハ鐘ヲ收メル如
何ニシテ此政治ノ機關ガ出來テ居リマスカ、論ヨリ證據僅カ五十年ノ間ニ變
リモ變ッタモノ、非常ノ變化デアリマス、故ニ私ハ言フ、文明ノ歐羅巴ハ進步
進步、日本ノハ變化變化シテ行クヤウナ氣味ガスル次第デアリマス、先ヅ私
ノ申スコトハ是ダケデ措キマシテ、希ハクハ私ハ議事法ヲ能ク心得マセメガ、
委員ヲ設ケラレテ御賛成ヲ得マシテ、緩〓五十有餘年內外ノ調査見聞ニ依ッテ
御參考ノタメ申上ゲタイコトガ多クゴザイマスガ、唯コヽニ一事ダケヲ、
言申上ゲテ置キタイト云フノハ四五十年間、朝野ニアッテ實行シタコトヲ申上
ゲマス、決シテ私自身ノ仕事ハ申上ゲマセヌ、是ハ幸ニシテ此次ノ說明ヲ申
上ゲマス種トシテ、唯讀上ゲテ置キタイト思ヒマスカラ、チヨット御耳ヲ拜借
シタイノデアリマス、先ヅ育種場、是ハ明治九年デアリマス、是ハ西洋ヨリ
野菜類、穀物類、果實類、花類ヲ之ヲ日本ニ初メテ私ガ歐羅巴ノ十年間ノ土
產トシテ持ッテ來テ、三田ノ四國町ニ育種場ヲ開イタ次第デアリマス、皆之ニ
付テノ事ヲ此度ノ建議ニ依ッテ行ハレタイト思ッテ居ルノデアリマス、萬國博
覽會、恐ク明治十一年ノ佛蘭西ノ萬國博覽會ノ如キ、日本國ヲ世ニ知ラセタ
コトハ外ニナイデアラウト信ジマス、是ハ私ノ力デナイ、日本ニ態〓其爲ニ
歸ッタ先輩諸子ノ、此書生ノ身ヲ充分御容レナサレタ其效ト、又外國デハ佛蘭
西デハ、或ハ「チッスラン」「レセップス」地中海ヲ掘ッタ、「ガンベタ」ナドヽ云フ
人ヨリ非常ニ愛顧ヲ受ケ可愛ガラレテ居リマシタカラ、全クソレ等ノ御蔭ヲ
以テ成功シタ次第デアリマス、此目的ハマダ達シテ居ナイ、殘念デアリマス
カラ幸ニシテ餘計ナ金ヲ戴キマシタカラ芝居ヲシテ見セマシタ、マア冒險デ
アリマシタガ、此芝居ヲ見セマシテ、日本國ノ風俗ヲ知ラセ、尙ホ物產ノ用
ヒ方ヲ知ラセタ次第デアリマス、是ハ效力ガアリマシタ、直接貿易、是ハ隨
分骨ガ折レタモノデアリマス、ソレマデハ丁度、長崎、神戶、橫濱ト云フ所
ノ商人ハ奴隷ノ如キモノデ、アレハ卽チ外國ノ城ヲ········例ヘバ五十万ノ產業
ニ從事シテ居レバ向フノ虜ニナル、或ハ百二十万ノ茶業者ノヤウナモノモ
唯言ハレル儘ニシタモノデアリマス、幸ニシテ篤志家ガ出テ居ルノデアリマ
ス、速水堅曹氏或ハ其他ノ篤志家ガ產業ノ發達ヲ今日ノ如ク養成シタ、茶業
ノ百二十万、是ハ大谷嘉兵衞君等ガ非常ニ盡力ニナッタモノデ、ソレガ城ヲ陷
シタト云ッテ宜イ、今靜岡ニ我ガ城ヲ築イテ、コヽニ外國ノ人ガ來テ茶ノ〓究
ヲスル次第デアリマス、是ハ軍人ガ敵ノ城ヲ陷スト其ノ等差ハナイト思ヒマ
ス、是ハ直接貿易ノ御蔭ト思ヒマス、農工商業ノ調査、是ハ各府縣ニ數百千
アリマス、興業意見、是ハ先刻申シマシタ、コレデアリマス(書册中ノ表ヲ
示ス)コレガ國力デアリマス、此國力ノ充實進步ニ連レテ日本ヲ國ニナス、
港ヲ造ラナケレバナラヌ、道路ヲ造ラナケレバナラヌ、種々樣ゝノ力ヲ以テ
行カナケレバナラヌ、唯單ニ收入ヲ以テスベキモノデナイト云フノガ其當時
ノ政府ノ方針デアリマシタ、其次ニ勤勉貯蓄、是ハ私ガ免職ニマデナッタ次第
デアリマス、農工商公報、此公報ガゴザイマシタナラバ餘程此官民ト外國ト
ノ意思ガ、非常ニ疏通シテ居ルノデゴザイマシタラウケレドモ、甚ダ遺憾ナ
ガラ皆人ガ變レバ物ガ變ッテ行ク不幸ノ目ニ遭ヒマシタ、全國農工商ノ篤志
家、是ハコヽニ申上ゲル次第デアリマセヌケレドモ此二百五十名ノ日本ノ篤
志家ヲ集メタ時ハ非常ナ有難イコトニナリマスガ、此席コヽニ說明スルコト
ハ措キマス、次ニハ全國各實業團體ガ十二〓體出來マシタ、次ニ各府縣ノ大
會或ハ町村是調、伊勢大廟ノ下ノ大會內外巡視巡囘、各府縣ノ篤志會ノ組
織都合十五件デアリマス、是ハ御記憶ヲ願ヒマシテ、願ハクバドウゾ此問
題ハ委員ヲ設ケラレマシテ御贊成ヲ得マシテ再ビ詳シク內外ノ事情ヲ申上ゲ
タイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=112
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113・高崎親章
○高崎親章君 本建議ニ對シテハ之ヲ委員ニ付託シ、其委員ノ數ハ九名トシ、
議長指名ノ特別委員ニ付託セラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=113
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114・千秋季隆
○男爵千秋季隆君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=114
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115・鈴木そう兵衞
○鈴木摠兵衞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=115
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116・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯今ノ高崎親章君ノ本建議案ハ九名ノ特別委員ニ
付託スルコトヽシ、其委員ハ議長ノ指名ニ任セルト云フ動議ニ御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=116
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117・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ御報〓
ニ及ビマス
〔成瀨書記官朗讀〕
國運發展ニ適切ナル社會組織及風俗慣習調査機關設置ニ關スル建議案特別
委員
伯爵萬里小路通房君子爵蒔田廣城君男爵肝付兼行君
男爵船越光之丞君男爵安藤直雄君三宅秀君
永田秀次郞君石谷傳四郞君成〓信愛君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=117
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118・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 明十五日ハ本會議ハ休ミマス、明後十六日ノ會議
ハ午前十時ヨリ開會イタシマス、議事日程ハ本院彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマ
ス、本日ハ是デ散會イタシマス
午後四時十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004303242X00919200714&spkNum=118
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