1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
大正九年七月二十七日(火曜日)午前十時十四分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十八號 大正九年七月二十七日
午前十時開議
質問
一 特別市制制定に關する質問(森下亀太郎君提出)
二 不當解散外八項に關する再質問(小橋藻三衞君提出)
三 明治會館に於ける警察官の職權濫用に關する質問(横山勝太郎君提出)
四 外交に關する再質問(中野正剛君提出)
五 官紀紊亂に關する質問(田中萬逸君提出)
六 海面埋立に關する質問(高木正年君外一名提出)
七 府縣立病院の改善及公立病院と醫師會との協調に關する質問(山田永俊君提出)
━━━━━━━━━━━━━
第一 決議案(小川平吉君提出) (前囘の續)
第二 刑事訴訟法中改正法律案(祷苗代君提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 軌道條例中改正法律案(高見之通君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 決議案(古島一雄君外五名提出)
第五 貴生川、加茂間輕便鐵道敷設速成に關する建議案(西村伊亮君外四名提出)
第六 思想問題臨時審議會設置に關する建議案(星島二郎君提出)
第七 小松島港改良に關する建議案(原田佐之治君外三名提出)
第八 朝鮮の石炭需給に關する建議案(阪上貞信君外一名提出)
第九 高松港擴張工事國庫補助に關する建議案(田中定吉君外一名提出)
第十 恩給其の他の恩典に雇員在職年數通算に關する建議案(鳩山一郎君提出)
第十一 監獄醫、教誨師、教師、警察醫等及是等に準すへき者の優遇法制定に關する建議案(萩亮君外二名提出)
第十二 不具病弱兒童の教育振興に關する建議案(河上哲太君外三名提出)
第十三 貧困兒童就學保護に關する建議案(河上哲太君外三名提出)
第十四 葉煙草罹災補償に關する建議案(萩亮君外四名提出) (委員長報告)
第十五 國都鐵道建設に關する建議案(日野辰次君外三名提出) (委員長報告)
第十六 隈森宇鐵道建設に關する建議案(一宮房治郎君外二名提出) (委員長報告)
第十七 延松鐵道建設に關する建議案(上塚司君外三名提出) (委員長報告)
第十八 日南東部鐵道建設に關する建議案(長峰與一君外三名提出) (委員長報告)
第十九 南日隈鐵道建設に關する建議案(津崎尚武君外三名提出) (委員長報告)
第二十 官幣大社出雲大社境内擴張費國庫補助に關する建議案(原夫次郎君提出) (委員長報告)
第二十一 敦賀港擴張に關する建議案(河崎清君外七名提出) (委員長報告)
第二十二 島根縣斐伊川治水工事速成に關する建議案(原夫次郎君外五名提出) (委員長報告)
第二十三 勢和鐵道速成に關する建議案(津野田是重君外十名提出) (委員長報告)
第二十四 五條新宮間鐵道建設に關する建議案(玉置良直君外五名提出) (委員長報告)
第二十五 遠信鐵道速成に關する建議案(北井波治目君提出) (委員長報告)
第二十六 信越東線鐵道速成に關する建議案(丸山嵯峨一郎君外一名提出) (委員長報告)
第二十七 福山三次間輕便鐵道速成に關する建議案(永屋茂君外三名提出) (委員長報告)
第二十八 勝倉鐵道速成に關する建議案(福井三郎君外四名提出) (委員長報告)
第二十九 姫津鐵道速成に關する建議案(福井三郎君外六名提出) (委員長報告)
第三十 因美鐵道支線敷設に關する建議案(清瀬規矩雄君外二名提出) (委員長報告)
第三十一 四國循環鐵道完成に關する建議案(原田佐之治君外十九名提出) (委員長報告)
第三十二 阿豫鐵道池田、川之江線敷設に關する建議案(原田佐之治君外七名提出) (委員長報告)
第三十三 四國縱貫鐵道琴平、池田、山田間線工事速成に關する建議案(原田佐之治君外二十名提出) (委員長報告)
第三十四 松山、高知間縱貫鐵道速成に關する建議案(高山長幸君外十名提出) (委員長報告)
第三十五 帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案(八田宗吉君外二名提出) (委員長報告)
第三十六 (特別報告第十九號)名改稱許可法制定の請願 (委員長報告)
第三十七 (特別報告第二十號)物部神社昇格の請願 (委員長報告)
第三十八 (特別報告第二十一號)社寺境内地無償交付に關する法律制定の請願 (委員長報告)
第三十九 (特別報告第二十三號)仙臺市上水道工事費増加に依る國庫補助の請願 (委員長報告)
第四十 (特別報告第二十四號)横須賀市上水道工事費増加に依る國庫補助の請願 (委員長報告)
第四十一 (特別報告第二十五號)福岡市上水道工事費増加に依る國庫補助の請願 (委員長報告)
第四十二 (特別報告第二十六號)鹿兒島市上水道工事費増加に依る國庫補助の請願 (委員長報告)
第四十三 (特別報告第二十七號)山形市上水道工事費増加に依る國庫補助の請願 (委員長報告)
第四十四 (特別報告第二十八號)水道敷設費國庫補助の請願 (委員長報告)
第四十五 (特別報告第二十九號)長崎市上水道増設工事費増加に依る國庫補助の請願 (委員長報告)
第四十六 (特別報告第三十號)熊本市上水道工事費増加に依る國庫補助の請願 (委員長報告)
第四十七 (特別報告第三十一號)東京市上水道擴張工事費増加に依る國庫補助の請願 (委員長報告)
第四十八 (特別報告第三十二號)奈良市上水道工事費増加に依る國庫補助の請願 (委員長報告)
第四十九 (特別報告第三十五號)巡査看守退隱料法改正の請願 (委員長報告)
第五十 (特別報告第三十七號)沓形港修築の請願 (委員長報告)
第五十一 (特別報告第三十八號)紋別港修築の請願 (委員長報告)
第五十二 (特別報告第四十一號)未成年者飮酒取締法制定の請願 (委員長報告)
第五十三 (特別報告第四十二號)日本住血吸蟲病豫防撲滅事業費國庫補助の請願 (委員長報告)
第五十四 (特別報告第四十三號)湯本温泉保護の請願 (委員長報告)
第五十五 (特別報告第四十四號)マツサーヂ術營業許可の請願 (委員長報告)
第五十六 (特別報告第四十八號)傷病兵優遇の請願 (委員長報告)
第五十七 (特別報告第四十九號)調布町に登記所新設の請願 (委員長報告)
第五十八 (特別報告第五十號)田川郡内に區裁判所設置の請願 (委員長報告)
第五十九 (特別報告第五十一號)小清水村清水市街地に登記所設置の請願 (委員長報告)
第六十 (特別報告第五十二號)浦幌村に登記所設置の請願 (委員長報告)
第六十一 (特別報告第五十三號)淨法寺村に登記所新設の請願 (委員長報告)
第六十二 (特別報告第五十四號)吉田村に登記所新設の請願 (委員長報告)
第六十三 (特別報告第五十五號)斜里に網走區裁判所出張所新設の請願 (委員長報告)
第六十四 (特別報告第五十六號)寺院竝佛堂財産管理に關する法律制定の請願 (委員長報告)
第六十五 (特別報告第五十八號)染料工業保護の請願 (委員長報告)
第六十六 (特別報告第五十九號)森林火災保險官營の請願 (委員長報告)
第六十七 (特別報告第六十號)八海山拂下の請願 (委員長報告)
第六十八 (特別報告第六十一號)三條貯木所撤廢の請願 (委員長報告)
第六十九 (特別報告第六十二號)氷見漁港修築の請願 (委員長報告)
第七十 (特別報告第六十五號)上士幌「ルベシベ」間鐵道(石勝線)速成の請願 (委員長報告)
第七十一 (特別報告第六十六號)帶廣苫小牧間鐵道(日勝線)速成の請願 (委員長報告)
第七十二 (特別報告第六十八號)五所川原小泊間鐵道敷設の請願 (委員長報告)
第七十三 (特別報告第六十九號)梨ケ原信號所を貨物取扱所若は停車場に變更の請願 (委員長報告)
第七十四 (特別報告第七十號)網走釧路間鐵道海岸線變更の請願 (委員長報告)
第七十五 (特別報告第七十一號)一戸荒屋間鐵道敷設速成の請願 (委員長報告)
第七十六 (特別報告第七十三號)紋別中湧別間鐵道(名寄線)を紋別下湧別間に變更の請願 (委員長報告)
第七十七 (特別報告第七十四號)孝道復興に關する請願 (委員長報告)
第七十八 (特別報告第七十五號)南北兩極探險調査に要する經費の下附竝飛行機及船舶貸與の請願 (委員長報告)
第七十九 (特別報告第七十六號)小墾田神社創立の請願 (委員長報告)
第八十 (特別報告第七十九號)陽暦励行の請願 (委員長報告)
第八十一 (特別報告第八十號)御肖像新聞雜誌に奉掲方取締の請願 (委員長報告)
第八十二 (特別報告第八十一號)濱田港築港の請願 (委員長報告)
第八十三 (特別報告第八十二號)多摩川改修費水源涵養費國庫支辨の請願 (委員長報告)
第八十四 (特別報告第八十三號)膽澤川河身改修の請願 (委員長報告)
第八十五 (特別報告第八十四號)大島港擴張の請願 (委員長報告)
第八十六 (特別報告第八十五號)木曾川架橋の請願 (委員長報告)
第八十七 (特別報告第八十六號)函館上水道工事費増加に依る國庫補助の請願 (委員長報告)
第八十八 (特別報告第八十七號)荒地免租年限延長の請願 (委員長報告)
第八十九 (特別報告第八十八號)自家用醤油製造税納入方法の請願 (委員長報告)
第九十 (特別報告第九十號)税種變更に關する請願 (委員長報告)
第九十一 (特別報告第九十一號)煙草取扱所營造物買上の請願 (委員長報告)
第九十二 (特別報告第九十二號)輕油輸入關税廢止の請願 (委員長報告)
第九十三 (特別報告第九十三號)本宿郵便局に電信電話架設の請願 (委員長報告)
第九十四 (特別報告第九十四號)笹津郵便局に集配竝電話事務開始の請願 (委員長報告)
第九十五 (特別報告第九十五號)入野村星賀に三等郵便局新設の請願 (委員長報告)
第九十六 (特別報告第九十六號)切木村に郵便局新設の請願 (委員長報告)
第九十七 (特別報告第九十七號)稻築村大字鴨生に郵便局新設の請願 (委員長報告)
第九十八 (特別報告第九十八號)小平郵便局集配事務復舊の請願 (委員長報告)
第九十九 (特別報告第九十九號)蘭留郵便局に集配事務開始の請願 (委員長報告)
第百 (特別報告第百號)温泉村に郵便局新設の請願 (委員長報告)
第百一 (特別報告第百一號)下分上山村に集配郵便局設置の請願無 (委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=0
-
001・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔原田書記官朗讀〕
一昨二十六日議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
陸海軍職工優遇ニ關スル建議案
提出者田中善立君
決議案
提出者小川平吉君
一昨二十六日議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
府縣立病院ノ改善及公立病院ト醫師會トノ協調ニ
關スル質問主意書
提出者山田永俊君
一昨二十六日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員作間耕逸君外一名提出道路ノ管理權
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員早川龍介君提出民心統一ニ關スル質問
ニ對スル答辯書
衆議院議員鮎川盛貞君提出勞働立法ニ關スル質問
ニ對スル答辯書
衆議院議員田中善立君提出政治ノ要道ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
衆議院議員植原悅二郞君提出海外發展ニ關スル再
質問ニ對スル答辯書
衆議院議員三木武吉君提出選擧干涉ニ關スル質問
ニ對スル答辯書
衆議院議員木檜三四郞君提出選擧干涉ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
衆議院議員橋本喜造君提出米國新船舶法ニ對スル
再質問ニ對スル答辯書
大正九年七月二十六日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員作間耕逸君外一名提出道路ノ管理權ニ
關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員作間耕逸君外一名質問道路ノ管理
權ニ關スル件答辯書
一道路法施行以前ニ於ケル道路ノ管理ハ專ラ慣例ニ
依リタルヲ以テ一定セサリシト雖大體ニ於テ市町村
費ヲ以テ施行スル道路ノ築造維持修繕ハ市町村長
之ヲ擔任シ來レルカ故ニ道路法ハ之ヲ基礎トシテ管
理關係ヲ明確ニ規定シタルモノニシテ自治體旣存ノ
權限ヲ不當ニ縮少セルカ如キコトナシ
二道路ノ管理關係ニ付道路法ニ改正ヲ加ヘサルモ道路
管理上支障ヲ生スル虞ナシト認ム尤モ大都市ニ於ケ
ル道路管理ノ方法ニ關シテハ目下考慮中ニ屬ス
右及答辯候也
大正九年七月二十六日
内務大臣床次竹二郞
大正九年七月二十六日
内閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員早川龍介君提出民心ノ統一ニ關スル質問
ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員早川龍介君提出民心統一ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
國民思想ノ健全ナル發達ヲ見ムコトハ政府ノ最モ庶幾
スル所ニシテ之カ爲ニ〓化ヲ擴充シ風紀ヲ振厲シ各般
ノ事項ニ亙リ國民思想ノ善導ニ力メツヽアリ今後倍々
力ヲ此ニ致シ效果ヲ擧ケムコトヲ期ス
右及答辯候也
大正九年七月二十六日
內務大臣床次竹二郞
文部大臣中橋德五郎
大正九年七月二十六日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郞殿
衆議院議員鮎川盛貞君提出勞働立法ニ關スル質問ニ
對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員鮎川盛貞君提出勞働立法ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
政府ハ勞働組合法ヲ制定スルノ趣旨ヲ以テ目下之ガ成
案中ニ屬ス從テ立案ノ方針及各工場ニ於ケル相談會ト
ノ關係等ニ付テハ未タ言明スルノ時機ニ到ラス尙同法
成案ノ上ハ速ニ議會ニ提出セムトス
右及答辯候也
大正九年七月二十六日
農商務大臣山本達雄
內務大臣床次竹二郎
內閣總理大臣原敬殿
大正九年七月二十六日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員田中善立君提出政治ノ要道ニ關スル質問
ニ對シ別紙各辯書差進候
(別紙)
衆議院議員田中善立君提出政治ノ要道ニ關スル
質問ニ對スル答辯君
現內閣ノ施設經營力信義ノ觀念ニ背キタルモノナク又
國務大臣ノ答辯カ毫モ質問書記載ノ如キ詭辯ヲ弄ガタタ
ルコトナキハ速記錄ニ明カナリ
右及答辯候也
大正九年七月二十六日
內閣總理大臣原敬
大正九年七月二十六日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郎殿
衆議院議員植原悅二郞君提出海外發展ニ關スル質問
ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員植原悅二郎君提出海外發展ニ關スル
再質問ニ對スル答辯書
政府ハ本件ニ關スル七月二十二日附各辯書ハ其ノ要
ヲ盡シタルモノト信ス
右及答辯候也
大正九年七月二十六日
外務大臣子爵內田康哉
大正九年七月二十六日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郞殿
衆議院議員三木武吉君提出選擧干涉ニ關スル質問ニ
對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員三木武吉君提出選學干涉ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
一本年五月施行セラレタル衆議院議員選擧ニ關シ司
法機關ニ於テ黨ニ組シ法ヲ曲ケテ與黨候補者ヲ擁護
シタルカ如キ事實ナシ
三本年ノ總選擧ニ於テ質問書記載ノ如キ官紀紊亂ノ
事實ヲ認メス
四本年ノ總選擧前ニ行ヒタル恩赦ノ上奏ニ付一黨ニ偏
シタルカ如キ事實アルコトナシ
追テ二ニ付テハ二十四日遞信次官ヨリ口頭ヲ以テ
答辯セリ
右及答辯候也
大正九年七月二十六日
內閣總理大臣原敬
遞信大臣野田卯太郞
司法大臣伯爵大木遠吉
大正九年七月二十六日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員木檜三四郞君提出選舉干涉ニ關スル質問
ニ對シ別紙各辯書差進候
(別紙)
衆議院議員木檜三四郞君提出選擧干涉ニ關スル
質問ニ對スル答辯書
一府縣道ノ認可ニ付テハ愼重調査ノ結果ニ基クモノニ
シテ漫然之ヲ認可シタル事實ナシ而シテ質問書記載
ノ群馬懸管內ニ於ケル縣道中赤城及榛名ニ通スルモ
ノハ兩地ノ樞要區タルニ鑑ミ將來開發ノ必要上之ヲ
認メタルモノニシテ其他ニ付テハ當時縣内外ノ關係
事項ニ關シ交涉調査ノ完了セサル點アリ縣ニ於テ之
カ手續ヲ爲シ得サリシモノナリ從テ群馬縣知事ニ於テ
道路法施行ヲ機トシ縣會議員選擧ニ利用シタルノ事
實ナシ
二警部橫森大作ハ大正八年九月十八日以降群馬縣
警部ニ任用セラレ同縣吾妻郡ニ出張選擧取締監督
ノ事務ニ從事シ何等選擧ニ干涉シタル事實ナシ
三土木課長安永倶作ハ利根吾妻兩郡ニ出張道路橋
梁堤防等暴風雨被害狀況ヲ視察セルモノニシテ質問
書記載ノ如ク官權ヲ濫用シ選擧ニ干涉シタル行爲ナ
シ
右及答辯候也
大正九年月日
內務大臣床次竹二郞
大正九年七月二十六日
內閣總理大理原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員橋本喜造君提案米國新船舶法ニ對スル再
質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員橋本喜造君提出米國新船舶法ニ對
スル再質問ニ對スル答辯書
本件ハ前ニ答辯ノ通リ政府ニ於テ最善ノ措置方ニ付篤
ト考慮中ナリ
右及答辯候也
大正九年七月二十六日
外務大臣子爵内田康哉
逸信大臣野田卯太郎
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載
ス
一昨二十六日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
境、飯能間輕便鐵道速成ニ關スル建築案外二件委
員
山崎猛君
委員長田村順之助君理事石井三郞君
飯塚春太郞君
競馬法制定ニ關スル建議案委員
八田宗吉君
委員長井上敬之助君理事吉野小一郞君
大口喜六君
道路ノ管理權ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正九年七月七日
提出者作間耕逸太田信治郞
贊成者牧口義矩
外三十人
道路ノ管理權ニ關スル質問主意書
一道路ノ管理權殊ニ築造修繕及維持竝占用ニ關スル
事項ハ當該地方自治體ニ於テ權限ヲ有シタルコトハ
從來法令判決及慣習ノ上ヨリ明ナルニ拘ラス政府ハ
道路法令ノ施行ニ依リ道路ノ管理全部ヲ國ノ行政
ニ移シ市町村ヲシテ單ニ其ノ經費ヲ負擔セシムルニ
止メムトスルカ如シ斯ノ如キハ第四十二囘議會ニ提
出セル道路法案審議ノ本會及委員會ニ於ケル國務
大臣辯明ノ趣旨ニ戾リ自治體既存ノ權限ヲ不當ニ
縮少シテ時勢ノ進歩ニ逆馳セムトスルモノナリ政府ノ
見解如何
二政府ノ方針前項ノ如シトスルモ其ノ經費ヲ負擔セシ
ムル地方自治體ヲシテ全然道路ノ管理ニ干與セシメ
ス國ノ行政トシテ自ラ其ノ全部ヲ施行セムトスルハ啻
ニ不條理ナルノミナラス實際ニ於テ不便宜甚タシカル
ヘク反テ道路行政ノ運用ヲ阻害スルノ虞アリ政府ハ
自治體ニ對シ其ノ地方道路ノ管理殊ニ前項明
示ノ權限ヲ費用負擔ノ限度ニ於テ是認シ又ハ之ヲ委
任スルノ法令ヲ設クル意思ナキヤ若一般的ニ之ヲ爲
サストスルモ少クモ大都市ニ對シテハ道路管理ノ權
限ヲ特ニ是認シ又ハ委任スルヲ相當ト認ム政府ノ所
見如何
右及質問候也
民心統一ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正九年七月二十日
提出者早川龍介賛成者淺賀長兵衞
民心統一ニ關スル質問主意書
世界戰亂ノ影響ヲ受ケ我カ國民ノ思想ニ動搖ヲ來スヲ
憂ヘ之カ防止ニ力ヲ致スモノ尠シトセサルモ容易ニ統一
ヲ見ル能ハサルモノノ如シ之レ蓋皇道ノ根基ヲ明示セサ
ルニ依ルナラム歟今後政府ハ如何スヘキカ
右及質問候也
勞働立法ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正九年七月十日
提出者鮎川盛貞賛成者鉛木梅四郞
外三十三人
勞働立法ニ關スル質問主意書
一政府ハ勞働組合ノ公認ニ關スル法律案ヲ本議會ニ
提出スルノ意思ナキヤ假ニ其ノ意思ナシトスルモ次期
議會迄ニハ之ヲ提出スルノ意思ナキヤ
二政府ノ制定セムトシツツアル勞働組合法案ノ立案方
針
イ職業ニ於テ同一職業ノミニ制限スルノ方針ナリヤ
或ハ之ヲ勞働者ノ自由ニ放任スルノ方針ナリヤ
口地域ニ於テ之ヲ一府縣若ハ一工場ニ限定スルノ方
針ナリヤ或ハ全國ヲ通シテ之ヲ承認スルノ方針ナ
リヤ
三近時國家經營ノ各工場ニ於テ相談會ナルモノヲ設立
シ勞働運動ノ緩和ヲ謀リツツアルカ是等ノ相談會ナ
ルモノハ勞働組合法發布ノ曉如何ナル關係ヲ有セシ
ムルノ方針ナリヤ
右及質問候也
政治ノ要道ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正九年七月二十一日
提出者田中善立賛成者武富時敏
外二十九人
政治ノ要道ニ關スル質問主意書
抑政治ノ要道ハ信義ヲ本トスルモノナルコトハ古今ヲ通
シテ一貫セル所ナリ然ルニ現內閣成立以來將ニ二箇年
此ノ間内治外交上ニ於ケル百般ノ施設經營ヲ觀ルニ
一モ信義ノ觀念ヲ基礎トセルモノナク徒ニ目前ヲ糊塗
シ殊ニ其ノ議會ニ於ケル國務大臣ノ答辯ニ至リテハ詐
辯僞言ヲ以テ天下ヲ欺瞞シテ能事終レリトナスモノノ如
敢テ其ノ所見ヲ問フ
右及質問候也
海外發展ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正九年七月二十二日
提出者植原悅二郞贊成者鈴木梅四郞
外二十九人
海外發展ニ關スル再質問主意書
七月八日本員ノ提出シタル海外發展ニ關スル質問主
意書ニ對スル七月二十二日付書面ニ依ル答辯ハ抽象
的ニシテ要領ヲ得ス更ニ具體的答辯ヲ求ム
右及再質問候也
選擧干涉ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正九年七月二十二日
提出者木檜三四郞賛成者松井鐵夫
外二十九人
選舉干涉ニ關スル質問主意書
一群馬縣知事大芝惣吉ハ大正八年九月二十五日群
馬縣會議員總選舉ニ際シ大正九年四月ヨリ道路法
實施ヲ機トシ縣會議員選擧ニ利用セリ
之カ爲群馬縣ニ於ケル道路法ノ實施ハ却テ一般交
通ニ不便ヲ生スルニ至ル想フニ主務大臣ハ縣道認可
ニ際シ大芝知事ノ申請ニ從ヒ漫然認可ヲ與ヘタルカ
爲ナリ卽チ主務大臣ハ中請線路竝從來ノ縣道ニ對
シ比較調査ヲ爲シ其ノ決定ヲ見タル上ニ於テ可否ヲ
決スヘキモノナルニ之カ注意ヲ爲サヽルノ理由如何
左ニ一二廢止路線ノ實例ヲ擧ク
一三國後閑道群馬縣ヨリ新潟縣ニ通スル唯
一ノ縣道
一十石峠道群馬縣ヨリ長野縣ニ通スル縣
道
一豊岡中野道群馬縣ヨリ長野縣ニ通スル縣
道
一澁川原町道群馬郡澁川町ヨリ吾妻郡原
町ニ通スル縣道
一草津澤渡道草津溫泉ヨリ澤渡溫泉ニ通ス
ル縣道
以上五線路ノ如キハ縣道トシテ交通上必要ナルモノ
ナルニモ拘ラス政友會地盤ナラサル爲廢道トナシタリ
此ノ外實例多々アルモ枚擧ノ煩ヲ避ク
右ニ反シ從來一線ノ縣道ナキ赤城山ニ二線ノ縣道ヲ
新設シ又榛名山ニ二線ノ縣道ヲ新設セムトスル申請
ヲ認可セルニ拘ラス前掲ノ如キ交通上必要ナル線路
ヲ廢止シ以テ多數人民ニ不利不便ヲ與フルガ如キ不
當ノ處置ヲ默過シ毫モ民衆ノ利益ヲ顧ミサルハ何故
ナルヤ其ノ理由如何
二佐賀縣警部橫森大作ハ大正八年九月二十五日執
行ノ群馬縣會議員總選舉ニ際シ群馬縣巡査部長茂
木島五郞ヲ從へ同年九月十九日同縣吾妻郡ニ出張
シ同月二十四日迄滯在選擧ニ干涉シタリ如斯ハ官
紀紊亂ノ甚シキモノニシテ之ヲ放任スル理由如何
三大正八年九月二十五日群馬縣會議員總選擧ニ當
リ群馬縣土木課長安永倶作ハ大芝群馬縣知事ノ命
ニ依リ同年九月十七日ヨリ二十一日迄同縣吾妻郡
ニ滯在シ道路調査ノ名義ヲ以テ政友會所屬縣會議
員候補者二名(吾妻郡)ト共ニ北村土木技手及第五
中之條土木管區武藤主幹ヲ伴ヒ同郡高山村、名久
田村、中之條町、原町、坂上村、長野原町ノ各役場ニ
道路關係町村ノ有力家ヲ町村長ヲシテ召集セシメ以
テ縣會議員選舉ニ際シ大芝知事ノ系統タル政友會
ノ候補者ヲ選出スヘキ旨勸誘セリ同時ニ大正九年四
月ヨリ實施ニ係ル道路法ヲ適用シテ大芝知事ノ意見
ニ添フコトノ得策ナルヲ力說セリ
更ニ又電氣事業ニ對スル水利權獲得ノ出願アル村
落卽チ高山村、伊參村、太田村ノ各村關係有力家ヲ
或ハ役場ニ或ハ同郡中之條町鍋屋旅館ニ呼ヒ寄セ
以テ水利權ノ認可ヲ得ムトセハ先ツ大芝知事ノ意ニ
添フ縣會議員ヲ選出スヘキ樣示諭セリ如斯ハ官權ヲ
濫用シテ選舉ニ干涉セルモノト認ム政府ノ所見如何
右及質問候也
米國新船舶法ニ對スル再質問主意言
右成規ニ據リ提出候也
大正九年七月二十三日
提出者橋本喜造賛成者田中萬逸
外三十六人
米國新船舶法ニ對スル再質問主意書
本問題ハ旣ニ論難〓究ノ餘地ナク現實ニ帝國ノ產業
貿易及船舶ノ運命ヲ賭スル重大問題ニシテ且焦眉ノ
急ヲ要スルモノナルヲ以テ成規ノ手續ニ依リ質問書ヲ
提出シタルニ政府ノ答辯極メテ簡單ニシテ何等ノ要領
ヲ得ル能ハス是レ茲ニ再ヒ質問書ヲ提出スル所以ナリ
米國新船舶法ハ本年六月四日米國上下兩院ノ協議
會ヲ經テ翌五日ウ井ルンン大統領ノ裁可ヲ受ケ法律ト
ナリタルモノニシテ本法ハ四十三箇條ノ規定ヨリ成リ最
露骨ニ米國產業貿易竝海運ノ發展ヲ保護スル意味ニ
於テ外國船舶ニ對シ過酷峻烈ナル壓迫ヲ加ヘ以テ米
國港灣ヨリ悉ク之ヲ驅逐シ米國ノ貿易ハ米國ノ船舶ニ
依リテ發展スヘキモノナル旨ヲ明ニ指摘セリ試ニ新船舶
法ノ第一條ヲ見レハ本法ノ精神ノ存スル處ヲ窺フニ足
ル卽チ
第一條合衆國ハ國家自衛ノ必要上卽チ内地產業及
外國貿易ノ適當ナル發展ノ目的ヲ以テ多量ノ商品
ヲ輸送スルニ充分ナル船舶ヲ所有セサルヘカラス獨リ
商品輸送ニ止ラス同時ニ米國ハ一旦緩急アルニ際シ
テハ陸海軍御用船トシテ任務ヲ完フセシムル爲ニ完
全ナル設備ト優秀ナル船舶トヲ併セ有セサルヘカラス
但之等ノ船舶ハ米國市民ニ依リテ個人的ニ所有セ
ラルルヲ以テ理想トス而シテ之ト同時ニ米國トシテ宣
言スヘキハ斯ノ如キ船舶維持竝發達奬勵ニ關シテハ
政府ハ其ノ事ノ如何ヲ問ハス之ヲ斷行スヘク云々
日米間卽チ太平洋航路ハ獨リ其ノ航海ニ於テ困難
ナルノミナラス又經營者其ノ者ニ於テモ經濟上非常
ナル困難ヲ感シ甲倒レ乙倒レ丙起リ丁又倒ルト云フ
カ如キ有樣ニシテ有ユル苦心慘憺ヲ重ネ帝國政府ニ
於テモ亦多大ノ犠牲ヲ拂ヒ〓ヤ漸ク完全ニ亞細亞
對北米間ニハ最改良セラレタル帝國ノ客船又ハ荷客
兩用船ヲ以テ定期航海ヲ續ケ又貨物船トシテハ幾
多ノ新造汽船ヲ以テ頻繁ナル非定期航海ヲ開始シ
米國ヲシテ何等不自由ヲ感セシメサルニ至リシニモ拘
ラス米國政府ハ亂暴ニモ假令戰後ニ於ケル窮餘ノ窮
策トハ云ヘ永キ海運界ノ歴史習慣竝情誼ヲ考慮セス
國際通商關係ヲモ無視シ二十世紀ノ今日ニ於テ有
リ得ヘカラサル復古的排外的ナル彼ノ鎖國的ノ航海
條例ニモ等シキ船舶法ヲ制定シ自他ノ船舶ニ對シ極
端ナル差別待遇ヲナサムトスルカ如キハ常ニ正義平
等ヲ口ニシ有ユル不合理ヲ矯正セムコトヲ努ムル米
國トシテハ實ニ言語同斷ノ所業ト云ハサルヘカラス
況ヤ世界各國ハ平和ノ〓日ニ於テ口ヲ揃エ排外的
獨占的差別的ノ方法ヲ根本ヨリ排斥シテ自由平等
機會均等ノ大方針ニ進マムコトヲ主張シツツアルニ
非スヤ
海洋ノ自由ハ誰ニ依リテ叫ハレシヤ、ウイルソン大統
領ハ十四箇條ノ媾和綱領ニ於テ何カ故ニ海洋ノ自
由ヲ叫ヒタルカ
戰後ノ今日英國ハ猶世界船舶ノ四割一歩ニ當ル卽
チ三千万噸ノ船舶ヲ以テ英本國及其ノ領土ヲ中心
トスル世界航路ヲ繼續シ又ハ開始シテ世界何レノ港
灣ニ於テモ英國旗ヲ飜ルヲ見サル處ナク又米國ハ世
界船舶ノ約二割二歩卽チ千六百万噸ノ船舶ヲ以テ
北米合衆國ノ東西兩岸及其ノ領土ヲ中心トスル世
界航路ヲ開始シ就中太平洋ニ於テハ海ノ覇權ヲ握ラ
ムト欲シ多大ノ犠牲ヲ拂ヒ彼ノ尨大ナル船舶ヲ以テ
有ユル陋策ヲ弄シ諸種ノ畫策ニ向テ猛進シツツアルナ
リ此ノ間ニ處シテ我カ日本帝國ハ僅ニ二百七十万噸
ノ船舶ヲ以テ東ハ亞米利加太平洋岸ヲ初トシ西ハ支
那フイリツピシ印度濠洲ヲ航海シ地中海及大西洋ニ
至テハ其ノ數實ニ尠少ニシテ帝國船舶ノ約八割ハ常
ニ太平洋航路ニ從事シ而モ米國ノ新船舶法ノ最嚴
密ニ支配スル航路區域ナルコトヲ記憶セサルヘカラス
英國及諸外國ハ此ノ新船舶法ニ依リ全ク損害ヲ蒙
ラサルニ非ルモ全然我カ帝國ト立場ヲ異ニシ其ノ關
係スル處微少ナルニモ拘ラス新聞紙ノ報スル處ニ依レ
ハ英國宰相ロイドジヨージ氏ハ既ニ米國ニ對シ第一
囘ノ抗議ヲ申込ミタリト傳ヘラル
又他面ニ於テ英米ノ大會社及宣〓師等ハ今尙支那
印度濠洲朝鮮等ニ於テ盛ニ排日思想ヲ鼓吹シ又ハ
排日貨ヲ煽動セリ彼ノ英米ノ商人輩カ日貨ヲ排斥ス
ルハ所謂商人同士ノ商賣敵トシテノ所業ヲ以テ目セ
ムカ稍恕スヘキ點ナキニ非ルモ宣〓師ハ何カ故ニ排日
思想ヲ宣傳スルカ又彼等ノ背後ニハ何者カ潜伏スル
カ其ノ行動タルヤ實ニ怪訝ニ堪エサル處ナリ帝國政
府ハ一日モ速ニ其ノ眞相ヲ確メ其ノ責任ヲ問ハサル
ヘカラス
事情旣ニ斯ノ如シ太平洋ニ於ケル我カ產業貿易竝
船舶ハ海陸兩面ヨリ峻烈ナル壓迫ヲ受ケ其ノ運命ハ
將ニ旦夕ニ迫ラムトス此ノ危急存亡ノ時ニ當リ政府
當局ニ於テハ逡巡スル處ナク斷乎タル方針ニ出テ速
ニ對應策ヲ講スルニ非ムハ如何ナル大事ヲ惹起スルカ
測リ知ルヘカラス遂ニハ彼我國交上悲シムヘキ結果ヲ
招來スルノ止ムヲ得サルモノアルヘキカヲ憂フルモノナリ
故ニ之ニ對スル的確ナル答辯ヲ望ム
右及再質問候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=1
-
002・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、諮問致シ
マス事ガアリマス、第七部選出懲罰委員橫山金太郞君當
任委員辭任ノ申出ガアリマシタ、許可スルニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=2
-
003・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ部ノ
諸君ハ速ニ補闕選擧ヲ行ウテ、其結果ヲ屆出ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=3
-
004・小山松壽
○小山松壽君 此場合、昨日ノ議事中ニ於テ議長ノ御
宣告ニナリマシタ件ニ就テ、議長ノ釋明ヲ求メタイト思ヒマ
スカラ、發言ヲ御許ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=4
-
005・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 小山君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=5
-
006・小山松壽
○小山松壽君 昨日議場ノ光景ハ諸君ノ御認ノ通デア
リマス、而シテ佐々木安五郞君ノ動議ノ提出ガ甚ダ不明瞭
デアリ、而シテ此動議ニ對スル議長ノ採決ガ、又不徹底デア
ルコトニ端ヲ發シマシタ其結果、議場ハ騷擾混亂ニ陷リ、續
イテ休憩ニ入ッタ譯デアリマス、休憩後ニ於テ更ニ小川平吉
君ノ動議ガ其手續ヲ誤リ、議事進行上最モ重大ナル件ト
考ヘマシタカラ、本員ハ議長ニ對シテ、其正シキ道ヲ履ムベ
キコトノ質問ヲ致シマシタ、此間ニ於テ議長ト本員トノ間ニ
ハ數次ノ應答ヲ重ネテ居リマス、這ハ本日配付ニナリマシタ
速記錄ニ於テ明瞭ニナッテ居リマス、決シテ本員ハ濫リニ發
言ヲ致シタモノデハアリマセヌ、一々議長ノ許可ヲ得、若クハ
議長ガ許可スベキ理由アリト認メテ發言ヲ許サレ、之ニ質
問シ、議長亦之ニ答ヘラルヽノ形式ヲ、議事錄ノ上ニ明カニ
而シテ居リマス、然ルニモ拘ラズ、議長ハ委員ニ對シテ突如
發言ノ禁止ヲセラレマシタ、何カ故ニ發言ヲ禁止セラレタカ
ハ、本員之ヲ諒解スルニ苦シミ、重ネテ之ヲ問ハント致シタ
ノデアリマスガ、議長ハ斷乎トシテ發言ヲ禁止スルノ態度ヲ
執ラレマシタ、然ル處我黨ノ同志本田君ノ質問ニ對シテ、
議長ハ議院法八十七條ニ依シテ發言ヲ禁止シタト云フコト
ノ御答辯デアリマス、然ルニ八十七條ハ會議中議長ハ議員
ニ對シテ警戒シ、若クハ制止シ、之ニ服セザル場合ニ至ッテ、
始メテ其發言ヲ禁止スルト云フ規則デアリマス、是ハ議院
法ニ明カニ明記セラレテ居ル所デアリマス、然ルニ唯〓述べ
マシタル通リ、議長ハ本員ニ對シテ更ニ警告ヲ與ヘズ、制止
モセズ-尙又警告シ、制止スル場合デモアリマセヌ、議長
ト本員ト一問一答ヲ致シテ居ッタ場合デアリマスカラ、議長
ハ本員ノ發言ヲ明カニ認メテ居ラレタノデアリマス、然ルニ
動議ノ採決ニ當ッテ、本員ノ主張スル所正シクシテ、議長ノ
執ラレタル處置、全ク誤レルハ滿場ノ認ムル所、其議長ノ進
退谷ッタル結果、其職權ヲ濫用シテ、本員ノ發言ヲ禁止シタ
モノト思ヒマス、(拍手起リ「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)其點ハ
如何ナル御解釋ヲ執ラレルノデアリマスカ、議員全體ノ發
言ニ關スル重大ナル問題ト思ヒマスカラ、是ハ一黨一派ノ
問題デアリマセヌ、總テノ議員ノ重大問題ニ關スルモノデア
ル、而シテ議長ハ公平ニ議事ヲ取扱ハレルモノデアリマスガ
故ニ、此釋明ヲ求メマス、更ニ第二點トシテ御尋ヲ致シマス
事ハ議長ハ本田恒之君ノ質問ニ對シ、其御答辯ノ中ニ「小
山君ノ發言ニ對シ議長ガ禁止ヲシタト云フコトハ八十七
條ニ依テ議長ハ會議ノ終ルマデ禁止スルコトノ出來ル權利
ヲ有ッテ居リマスケレドモ」-「ケレドモ」ト此所ニアリマス
「私本日ハ重要ナル案件ガ數多アリマスカラ、當日ノ會議ヲ
終ルマデノ積リデハナイノデス、又一通リ答辯ガ盡キテ居ラ
ヌノニ、尙ホ發言ヲスルカラ禁止シタノデアリマス」ト斯ウア
リマスガ、此禁止シタト云フコトニ就テハ、前申上ゲマシタ
ル通リニ御承知ト存ジマスガ、更ニ「此案件ガ濟メバ直グ許
スノデアリマス」斯樣ニアリマス、斯ノ如キ御答辯デアルト致
シマスレバ、昨日ノ發言ノ禁止ハ、唯ダ一時其場合ダケノ發
言禁止デアルカ、若シ其場合ダケノ發言禁止デアルト云フ
ノナラバ、其場合トハ如何ナル事ヲ言フノデアルカ、若シ本
案件ガ終了スルマデト云フコトデアルナラバ、昨日ノ會議ノ
中ダケハ發言ヲ禁止スルノデアルカ、而モ會議中ハ終日禁
止スル意味デナイト云フコトガ、此所ニ曖昧ナ點ガアリマス、
而シテ尙ホ本件ガ終ルマデトアリマスガ、昨日ノ決議案、卽
チ小川平吉君ノ提出セラレタル決議案ガ尙ホ引續イテ爰
ニ議題トナル譯デアリマスガ、其案件ガ終ラザル中ハ、尙ホ
發言ヲ禁止セラルヽト云フコトデアルカ、議長ノ御答辯ハ頗
ル曖昧不徹底デアッテ、私ハ了解ニ苦ムノデアリマスカラ、第
二點トシテ此辯明ヲ求メマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=6
-
007・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 逆ニ第二點ヲ申シマスガ、第二點
ニ就テハ私ノ昨日述べマシタ意義ハ、議長ハ八十七條ニ依
リテ、終日ノ會議終ルマデ發言ノ禁止ヲスル權限ヲ持フテ居
リマスガ、併ナガラ其權限ハ之ヲ縮小シテ、或ハ一時ノ間或
ハ一件ノ終ルマデ縮小スルト云フコトハ、無論出來ルト云フ
意味デ申シタ、ソコデ案件ノ終ルマデト云フナラバ、本日尙
ホ案件ガ繼續シテ居リマス、本日ニ亙ッテト云フヤウナコト
ハ無論八十七條ニ於テ議長ノ權限ガ無イノデ、十分權能
ヲ發揮シタ所ガ、當日ノ會議ノ終リマデト云フコトニ議長ハ
解釋シテ居リマス、ソレヲ分ヲテ幾分分割スルコトガ出來ル
ト解釋致シタト云フ意味ニ御了解ヲ願ヒタイ、ソレカラ前
段ノ御尋ハ、小山君ガ議長ニ釋明ヲ求メラレマシテ、一通リ
答ヘマシタ、同一ノ事ヲ二度モ三度モ御尋ニナリマシタカラ
注意ヲ與へ與ヘタニ尙ホ御尋ニナリマスカラ禁止シタ、所ガ
注意ヲ與ヘタ點ガ速記錄ニ現レテ居リマセヌ、速記錄ニ現
レテ居リマセヌカラ、議長ハ速記錄ヲ根據ト致シマシテ、注
意ヲ與ヘマシタ事ガ現レテ居ラヌ以上ハ、速記錄ニ依リマシ
テ、昨日ノ小山君ニ對スル命令ハ玆ニ潔ク取消シマス(拍
手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=7
-
008・小山松壽
○小山松壽君 唯〓ノ釋明ニ依テ一ト通リ諒承致シマシ
タ、然ラバ昨日本員ニ對シテ發言ヲ禁止スルト云フ議長ノ
御宣告ハ、明カニ御取消ニナルト云フ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=8
-
009・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 今申シタ通リ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=9
-
010・小山松壽
○小山松壽君 而シテ尙ホ御尋シマス、唯今議長ノ御宣
告ニ依テ、一時間若クハ二時間ト云フコトデ、其場合ガ甚
ダ不明瞭デアリマスガ、斯樣ナ場合ニ於テ、議長ハ一時間
若クハ二時經クテ適當ト認メル場合ニハ、更ニ本員ニ尙ホ
御許シニナッテ、是ヨリ發言ヲ許スト云フ御宣告ニナルノデ
アリマスカ、此點ハ後日ノ爲メニ伺ッテ置キタ】イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=10
-
011・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) ソレハデス、ソレハ場合ニ依リマス
ノデス、ソレハ場合ニ依リマスノデス、貴方ニ對シテ新ニ起ル
事ヲ、ドウモ今カラ豫期シテ答ヘテ置クコトハ出來マセヌ、而
シテ玆ニ御諮リヲ致シマスガ、本日ノ公報ニハ質問ガ載ッテ
居リマス、是ハ本日ハ質問日ナルニ依テデアリマス、サリナガ
ラ昨日會議ノ終リニ於テ宣言モ致シマシタ如ク、昨日ノ決
議案ノ議事ヲ、二十七日ノ午前十時ヨリ開會ノ上繼續ス
ト宣言シマシタカラ、先ツ以テ昨日ノ小川君提出ノ決議案
ノ議事ヲ繼續スル考デス、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=11
-
012・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 異議ナイト思ヒマスカラ、サウ致シ
マス、而シテ此小川君ノ決議案ニハ、佐々木安五郞君ヨリ
修正說ガ出テ居リマス、ゾレニ先タチマシテ、鈴木富士彌君、
小泉又次郞君ヨリ小川君ニ對スル質問ノ通告ガアリマス、
先ヅ質問ヲ許シマス、ソレカラ佐々木君ノ修正意見ヲ聽キ
マス、ソレカラ賛否ノ通告順ニ基ツイテ討論ヲ許シマス
決議案(小川平吉君提出)(前會ノ續)
〔鈴木富士彌君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=12
-
013・鈴木富士彌
○鈴木富士彌君 議員小川平吉君ハ、昨日當議場ニ於
テ、議員島田三郞君ニ處決ヲ迫ル意味ノ決議案ヲ提出サ
レマシタ、此決議案ニ關聯致シマシテ、二三點提案者タル
小川君ニ疑ヲ質シテ見タイト思ヒマス、此案ハ申スマデモナ
ク、議員島田三郞君ニ詰腹ヲ切ラセテ、同氏ノ議員タル資
格ヲ剝奪スル爲メノ議案デアリマス、事態極メテ重大デゴザ
イマス、先例ノ事ハ深ク知リマセヌケレドモ、舊イ議員ニ就イ
テ聽キマスト云フト、議員ノ資格ヲ剝奪スル目的ヲ以テ提
出サレマシタ所ノ議案ハ、餘リ數多クナイノデアリマス、第五
議會ニ於キマシテ、明治二十六年ニ星亨君ノ除名問題ガ
起ッテ居リマス、其後明治三十七年卽チ第二十議會ニ、秋
山定輔君ニ係ハル處決ヲ迫ル意味ノ決議案ガ提出ニナッテ
居リマス、前後唯ダ此二ツデアルカニ承ッテ居リマス、議會
始ッテ以來年ヲ閱スルコト三十有餘年、囘ヲ重ヌルコト四
十有三回、此間ニ於キマシテ、僅ニ二」回シカ先例ノ無イト
云フ程ノ大切ナ事案デアリマス、一人ノ議員ヲ活カスカ殺
スカト云フ此重大ナル議案ヲ提出スルニ當リマシテ、議員
小川平吉君ハ、此案ヲ極メテ無造作ニ不注意ニ(「ノウ〓〓」
ト呼フ者アリ)一層適切ニ申シマシタナラバ、極メテ輕率ニ
取扱ハレタト云フコトハ、甚ダ遺憾ニ感ズルノデアリマス(「ノ
ウ〓〓」「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)先ヅ第一ニ小川君ニ問ハンヽ
小川君ハ三大臣ガ投機ヲ爲シタリト云フ所ノ非難ヲ、全然
虚構デアルト申サレマシタガ、其根據ハ唯ダ三大臣ノ答辯
書ニ求メラレテ居ルヤウデアリマス、三大臣ハ被嫌疑者デア
リマス、之ヲ被告ト云フノハ聊カ穩當ヲ缺クカモ知レマセヌ
ガ、之ヲ被嫌疑者ト云フノニ少シモ差支ナイ、被嫌疑者ノ
陳述ヲ全然信用シテ斯ル決議案ヲ出スニ至ッテハ、實ニ驚
カザルヲ得ナイ、(拍手起ル)若シ被嫌疑者若クハ被告ノ言
ヲ信ジテ獄ヲ斷ズルナラパ、(「獄トハ何ダ」「違ウ〓〓」ト呼フ
者アリ)ソレハ違ヒマスケレドモ物ノ譬デアル(「何ヲ言フ」ト
呼フ者アリ)物ノ譬デアル、(「モウ少シ冷靜ニシロ「政友會
冷靜ニ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=13
-
014・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜肅ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=14
-
015・鈴木富士彌
○鈴木富士彌君(續) 實例ヲ以テ之ヲ申シマスルナラバ、
中橋文部大臣ノ答辯書ヲ見マスルト云フト、日本窒素肥料
株ヲ賣却シタト云フ一事ニ就キマシテ、其中ノ二千株ハ長女
縫子ニ與ヘタノデアッテ、殘餘ノ七百七十九株ハ、明治二十
九年以來引續イテ忠勤ニ勤績致シマシタ所ノ老女ノ石渡
ヒサニ對シテ、養老ノ資トシテ贈與シタルモノヽ如クニ言ハ
レテ居リマス、併ナガラ是ハ中橋君ダケガ斯ウ言フノデアッテ、
此件ニ就キマシテ、玆ニ又新タナル證據ト云フモノガ舉ッテ
來タノデス、卽チ老女石渡ヒサナル者ハ、熱海ノ石渡金之
助ナル者ノ妹デアリマス、極ク近イ親戚ニ當ル者ガ此議院
ニ見エマシテ、陳述告白シタル所ニ依リマスルト云フト、此
石渡ヒサナル者ハ屢、中橋家ノ家庭ニ出入致シテ居リマス
ルガ、此株ハ決シテ貰ッタ譯デハナイ、(拍手起ル「ンコダ〓〓ㄴ
ト呼フ者アリ)若シ貰ッタノデアルナラバ、親類一統悉ク中橋
家ニ禮ヲ言ハナケレバナラヌ、(「離緣サレテ居リマス」ト呼フ
者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=15
-
016・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜ニ〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=16
-
017・鈴木富士彌
○鈴木富士彌君(續) マア靜ニ御聽ナサイ、(「臭イミこ」ト
呼フ者アリ)若シ又果シテ遣ッタノデアリマスルナラバ、七百七
十九株ト云フ此刻ンダ數ハドウ云フモノダ、凡ソ人ニ物ヲ遣
ル時分ニ、此數ニ於キマシテモ、ハッキリ極メタ數ヲ遣ルノガ從
來ノ慣例テアリマス、ノミナラズ中橋家ニ於キマシテハ大凡
慣例ガアリマシテ、女中十年ヲ勤メタ者ハ百圓デアル、五年
勤メタ者ハ五十圓デアルトカ云フコトデ、極メテ些細ナ金ヲ
與ヘル所ノ慣例ニナッテ居ルト云フコトデアリマス、如何ニ十
何年居タカラト云ッテ、此老女石渡ヒサナル者ニ、斯ノ如キ
莫大ナル株劵ヲ授與スルト云フ謂レハナイ、斯樣ナ事ハ是
ハ私ガ申スノデハアリマセヌ、親戚ノ者ガ來テ申スカラ茲ニ
御取次ヲスルノデス、乃チ斯ノ如キモノデアリマシテ、唯ダ被
嫌疑者ノ申ス所ノミヲ信ズルナラバ非常ナ誤ガアル、何カ他
ニ確乎タル證據ト云フモノガナケレパナラヌ、小川君ガ此決
議案ヲ出シマシタニ就キマシテハ、單ニ三大臣ノ答辯書ノミ
ヲ根據トサレタモノデアルカ、或ハ其以外ニ確實ナル證據ガ
アルノデアルカ、此點ヲ先ヅ第一ニ伺ッテ見タイノデアル(拍
手起ル)
〔此時發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=17
-
018・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩本君、靜ニ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=18
-
019・鈴木富士彌
○鈴木富士彌君(續) 第二ニ三大臣ノ答辯書ナルモノハ、
縷縷數萬言ヲ費シテ居リマスケレドモ、島田三郎氏ノ質問書
ノ要點ニ觸レテ居ナイノデアル、質問書ヲ能ク御覽ニナレバ
直チニ判ル、私ハ小川平吉君ガ、果シテ島田氏ノ質問書ト
三大臣ノ答辯書トヲ能ク討究シテ、比較〓究ナサレタ上デ
ノ御言議デアルカト云フコトヲ、甚ダ私ハ疑フノデス、質問
書ヲ見マスルトドウ云フ事ガ書イテアルカト申シマスルニ、此
中ニ「想フニ先キ物ヲ賣リ市場相場ノ高低ニ據リテ其益
ヲ收メタル金額ハ實際所有株ヲ賣リタルモノヨリモ多額ナ
ルヘシ」此點ガ島田氏ノ質問ノ要點ノ一ツ一ナッテ居リマス、
又其先キニ至リマスルト云フト「由來所謂紳士特ニ官僚ガ
此ノ如キ機祕ノ賣買ニ自己ノ名ヲ公稱スルコト絕無ニシテ
必ズ他人ノ名儀ヲ借用シ或ハ腹心ノ者ヲ親昵ノ仲買店ニ
出入セシメ或ハ各會社ノ要部ニ配置シ本人ハ其背後ニ潜
在シテ賣買ノ事實ヲ行フヲ常習トスルカ故ニ或機會ニ於テ
偶々世ニ公評セラルヽハ九牛ノ一毛ノミ」ト斯樣ニ言ハレテ
居リマス、是ガ矢張要點ノ一ツトナッテ居リマスルノニ、此三
大臣ノ答辯書ヲ見マスルト、此要點ニ觸レテ居ナイ、唯ダ要
點ニ觸レテ居ルノハ僅ニ(「事實ヲ擧ゲテナイ」ト呼フ者アリ)
苟モ答辯ト云フ以上ハ、斯ノ如キ事ノ必要ガアッタナラバ、
明カニ之ヲ答辯シナケレバ、有ルトカ無イトカ云フコトガ判
ラヌ、唯ダ中橋德五郞氏ノ答辯ノ中ニ「子ハ曾テ定期ナル
モノニ手ヲ染メタルコトナク大正七年以來株式ノ引受ヲ爲
シタル事實アルモ之ヲ賣却シタルコトハ斷シテ之レナキコト
ヲ責任ヲ以テ言明ス」中橋君ノ答辯ノ中ニ此一語ガアルノ
ミデ、他ノ二大臣ノ答辯書ニ此事ガ謠ッテナイ、是ガ島田氏
ノ質問書ノ最モ重要ナ骨子ノ一ツトナッテ居ルノニ、顧ミテ
他ヲ言フト云フノハ、果シテ何事デアル、(拍手起ル)何故ニ
此點ニ論及ヲシナイノデアルカ、此點ニ論及ヲシナイノハ、或
ハ此事實ヲ認ムルモノト看テモ差支ナイノデアル、(拍手起
ル、「事實ガ無イノダ」「具體的ノ事實ヲ舉ゲテナイ」ト呼フ者
アリ)定期ト云フモノハ、或ハ賣リ或ハ買ッテモ、是ハ轉賣、買
戾ニ依テ其差額ヲ利スルノデアルカラ、人ノ名前ニ依テヤレ
パ帳簿ニハ載リマセヌ、(「質問スルノガ間違ッテ居ル」ト呼フ
者アリ)デアリマスカラ此點ニ於テ若シ疚シクナイト云フナラ
バ、此點ヲ何故書カナイカ、此點ヲ逸スル道理ハ無イ、小川
君ガ此點ヲ如何ニ御考ニナッテ居ルノカ(「刑事問題ニナラ
ヌカラソンナ事ハ言ッテ居ラヌノダ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=19
-
020・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜カニ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=20
-
021・鈴木富士彌
○鈴木富士彌君(續) 小川君ノ決議案中ニサウ云フ點ガ
逸シテ居ルノハ、甚ダ遺憾トスルモノデアリマス、第三ニ凡ソ一
國ノ國務大臣ナルモノハ、斯ノ如キ嫌疑ヲ受ケマシタナラ
バ、進ンデ自己ノ財產ヲ公開スルノガ至當ノ處置デアルト
私ハ信ズル、(拍手起ル「ソンナ事ハ何遍モ聽ク必要ガ無イ」
ト呼フ者アリ)御解リニナラナケレバ實例ヲ以テ申上ゲマス、
英國ニ於テ「ロイドジヨージ」ガ、「マルコニー」ノ無線電信ノ
事ニ就テ疑ヲ受ケタ時ニ、財產ヲ公開シタデハナイカ、(「ソン
ナ事ハ誰デモ知ッテル」ト呼フ者アリ)知ッテルナラ尙更ノ事デ
アル、卽チ自ラ財產ヲ公開シテ、己レノ財產ハ幾ラアッテ、此
財產ノ由ッテ來ル所ハドウ云フコトヽ云フヤウニ明カニ說明
サレテ、而シテ後何等疑ガナイト云フコトニナッテ、始メテ提
案者ニ處決ヲ迫ルト云フノガ至當ノ順序デアラウト思フ、
此點ニ於テ小川君ハ順序ヲ誤ッテ居ルト私ハ信ジマスカラ、
此點ニ關シテ如何ナル御見解ヲ持タレルカ、以上三點ニ就
テ質問致シタイト思フノデアリマス、人盛ナレバ天ニ勝チ、天
定ッテ人ニ勝ツト云フコトガアリマスガ、今政友會ハ多數ヲ恃
ンデ、一議員ノ資格ヲ將ニ剝奪セントスルヤウナ暴擧ヲナサ
レテ居ル、極メテ近キ將來ニ於テ、天定クテ人ニ勝チ、多數黨
ノ政友會ニ一大打撃ヲ加フルコトハ、必ズ近キニ來ランコト
ヲ私ハ信ズルモノデアル、願クハ小川君ノ誠意アル御答辯ヲ
要求致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=21
-
022・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 小川君
〔小川平吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=22
-
023・小川平吉
○小川平吉君 鈴木君ノ御質問ニ御答致シマス、第一ノ
御問ハ、私ガ決議案ヲ出スニ就テ、其證據ヲ持ッテ居ルカド
ウカト云フ御尋デアリマス、是ハ甚ダ奇怪千萬ナル御問デア
ル、殊ニ法律家タル所ノ鈴木君ノ口ヨリ斯ノ如キ質問ヲ受
クルニ至ッテハ、驚カザルヲ得ヌノデアル、苟モ人ヲ彈劾セント
欲スルナラバ島田君ノ言ハルヽ如ク原告デアル、原告先ヅ
以テ立證スル所ノ責任ガアルデハナイカ、然ルニ島田君ハ昨
日モ私ガ此演壇ニ於テ述ベタル如ク、株式ノ賣却ヲ致シタ
ト云フ事實ヲ列擧シナガラ、何時ニ於テ何人ニ賣リタリヤト
云フ事スラモ述ベラレテナイ、斯ノ如ク何等ノ事實ニ對スル
證據ヲ舉ゲズシテ、斯ノ如キ重大ナル彈劾問題ヲ起シテ居
ルノデアリマス、實ハ斯ノ如キモノニ向ッテ、吾ミハ證據ヲ擧
ゲル必要ハ無イノデアル、併ナガラ折角ノ御質問デアリマス
カラ、私ハ爰ニ明カニ證據ヲ擧ゲルノデアル、昨日御聽取ニ
ナリマシタ所ノ答辯書ニ何ト書イテアリマス、此株式ノ賣却
ハ株主名簿ニ明カニ書イテアルトアル、此株主名簿ヲ島田
君ハ御覽ニナッタノデアルカ、苟モ政府ノ大臣ヲ彈劾セント
欲スルニ當ッテ、株式ヲ賣却シタル事實ヲ擧ゲテ、之ニ依テ
經濟界ヲ攪亂シタリト稱シナガラ、株主名簿ノ一ツモ御調
ニナラヌト云フコトハ何タル疎漏デアルカ、證據ハ斯ノ如ク
明カニアルノデアリマス、第二問ハ三大臣ガ先物ノ賣買ヲ
致シタ、定期ノ取引ヲシタル所ノ疑ガアル、此株ヲ賣却ス
ル以上ハ、定期ニ於テ賣却シタル額ハ更ニ多額ナルベシト
書イテアル、島田君ノ質問書ニハ-是ハ島田君ノ推測デ
アル、昨日私ガ列擧致シテ決議案ヲ提出致シタル事柄ハ、
島田君ガ斷定ヲ致シタ事柄デアリマス、此斷定ノ事實ニ
向ッテ私ハ島田君ノ責任ヲ問ウタノデ、島田君ノ推測ニ止
リマシタ部分ニ對シテハ、私ハ寛大ナル度量ヲ以テ、之ヲ
不問ニ附シタノデアル、政府ノ大臣ガ之ニ向ッテ答辯ヲセザ
ルコトハ如何ナル理由デアルカ、私ハ之ニ向ッテ答フル責任
モ義務モ無イノデアリマス、斯ノ如キ事ヲ鈴木君ノ口ヨリ御
問ニナルコトハ、誠ニ奇怪千萬ト存ズル、第三ノ質問ハ聽取ル
コトガ出來ナカッタノデアリマス、第三ノ質問ノ趣意ハ、私ハ
聽取ルコトガ出來ナカッタ、之ニ對シテハ答辯スルノ必要ハ
無イト考ヘマス、若シ更ニ答辯ヲ求メラルヽナラバ、更メテ明
カニ御質問ニナレバ、更メテ又ソレニ答辯ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=23
-
024・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 小泉又次郞君
〔小泉又次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=24
-
025・小泉又次郎
○小泉又次郞君 私モ昨日此議場ニ於テ小川平吉君ヨ
リ御提出ニナリマシタル決議案ニ就テ、同君ニ質問ヲ試ミ
タイト思フモノデアリマス、小川君ノ決議案ノ御演說中ハ、
議場ガ混亂致シテ居リマシテ、詳細ニ其要旨ヲ聽クコトヲ
得マセナンダノハ、甚ダ遺憾ニ思フノデアリマス、併ナガラ今
朝ノ各新聞紙上ノ掲載ニ依リマシテ、聊カ趣意ノ在ル所ヲ
承知致シタノデアリマス、其小川君ノ提案ノ要旨ハ、島田
君ノ三大臣ニ對シテ瀆職ノ嫌疑ニ關スル質問書ニ、三大臣
ヨリ答辯ガアッタ、其答辯書ニ於テ事實ハ明白デアル、明白
デアル故ニ、島田君ハ誣妄虚構ノ事ヲ構ヘテ徒ラニ人ノ名
譽ヲ毀損シタモノデアル、故ニ島田君ハ潔ク自ラ處決スベシ
トノ御提案ノ意思デアルヤウニ思フノデアリマス、島田君ノ
質問書中ノ要旨ニ於テ、其責任ハ吾〓ハ之ヲ取ルニ吝カナ
ラヌモノデアル、若モ三大臣ノ瀆職ニ關スル嫌疑ガ果シテ的
確ニ明白ニナリシ以上ハ、人ヨリ自決ヲ促サレズト雖モ、自
ラ責任ヲ重ンジテ潔ク處決スルト云フコトハ、質問書中ニ
立派ニ書イテアルコトデアルノデアリマス、然ラバ島田君ノ
處決ト云フコトハ、結局三大臣ノ濱職問題ガ的確ニ明瞭
ニ相成タル曉ニ於テ始メテ斷行サレルモノデアルト私ハ信ズ
ルノデアル、然ルニ三大臣ノ答辯ニハ、悉ク肯綮ヲ外レテ居
ルノミナラズ、就中高橋藏相ニ對スル質問中ニ、昨年ノ九
月ノ頃カラ、高橋藏相ハ日本銀行ニ向ッテ利子ノ引上ヲ傳
ヘテ居ッタ、然ルニ十月ノ六日、十一月ノ十九日ノ兩度ニ於
テ、日本銀行ガ利子ヲ引上ゲルト云フノ時ニ於テ、鹽水港
ノ株ヲ忰何某ノ爲メニ賣放ッタリト」云フノ此質問ニ對シテ
ハ、啻ニ事實無根デアル、卽チ知ラヌ、存ゼヌノ一點張ノ答
辯デアッタノデアリマス(拍手起ル)私共ハ此一片ノ知ラヌ、
存ゼヌノ答辯ニハ、滿足ヲ表スルコトガ出來ナイノデアリマ
ス(拍手起ル)吾〓一人ガ之ニ滿足セナイノミナラズ、天下
萬衆ガ認メテ是ハ大不滿足デアルト思フノデアリマス、(拍
手起ル)私共ガ一人之ヲ疑フノミナラズ、昨日現ニ同僚ノ
佐々木君ヨリ、原告ノ島田三郞君、被告タル所ノ三大臣ノ
此嫌疑ハ、啻ニ一片ノ質問應答ノ文書ニ依テハ、誰カ鳥ノ
雖雄ヲ知ラン、是ニ於テ一問一答ヲ盡シテ、此事ヲ天下ニ
明白ニスベク、全院委員會ヲ開クベシトノ動議マデ是ハ提
出サレタト云フコトハ、是亦諸君ガ旣ニ御承知ノ點デアルノ
デアリマス、此三大臣ノ答辯ニ滿足ヲセラルヽノ諸君ハ、獨
リ此政友會員ノ諸君ノミニシテ、他ノ議員ハ、一人トシテ是
ニ滿足スル者ハ無イノデアリマス、(拍平起ル)況ヤ天下萬
衆認メテ誰カ之ニ滿足ヲ與ヘル者ガ、一人モアルデアリマセ
ウカ、(拍手起ル)島田君ノ言責ニ於テハ、島田君ノ高潔ナ
ル人格ニ於テ、此島田君ガ三大臣ノ瀆職ノ嫌疑ナキト云フ
コトガ明カニナリシ上ニハ、自ラ處決ヲスルト云フコトハ、前
以テ申上ゲタ通リデアリマス、平素吾とガ畏敬スル所ノ小
川平吉君ト雖モ、此島田君ノ人格ニ於テハ、私同樣デアル
ト私ハ思フノデアリマス、(拍手起ル)況ヤ質問ノ本人タル島
田君ハ、昨日現ニ此議場ニ於テ、三大臣ノ答辯書ハ、啻ニ朗
讀ヲ聽イタノミデアッテ、其眞相ガ能ク相分ラヌ、一モ肯綮
ニハ中ッテ居ラヌ、靜ニ之ヲ閲讀セシ後ニ於テ、更メテ新タナ
ル證據ヲ提ゲテ質問ニ及ブト云フコトヲ、發言ノ保留ハ確
ニシテアルノデアリマス、(拍手起ル)今日マデ議會ノ慣例ト
致シマシテ、議員ヨリ政府當局ニ質問ヲ試ミ、政府ヨリ之ニ
答辯ノアッタ時ニ於テ、此答辯ニ滿足ガナイト致シマスレバヽ
議員ヨリ更ニ再質問ヲスルト云フコトハ、此神聖ナル議場
ニ於テ、愼重審議ヲ盡スベキ精神ヲ以テ、誠實-所謂公
平ナル意義ニ於テ、此好慣例ガ貽シテアルノデアリマス、此大
切ナル問題ニ對シテ、啻ニ一片ノ大臣ノ答辯書ヲ以テ是ガ
事實明白デアルト斷定スルコトハ、壟斷專斷モ亦甚シイ
ト言ハナケレバナラヌト思フノデアリマス、(拍手起ル)私ハ是ニ
於テ小川君ニ問ハントスル者デアリマス、小川君ハ此議場
ニ、於キマシテ、政府當局者ニ對シテ、島田君カラ斯ル重要ナ
ル問題ノ質問ヲ試ミ、政府當局者ハ此演壇ニ出テ、詳細ニ
之ヲ述べ盡スノ策ニ出デスシテ、陋劣ニモ一片ノ書面ヲ以
テ應答シタニ就テハ、島田君之ヲ快シトセズ、再ビ此演壇ニ
於テ、新タナル證據ヲ提ゲテ詰問セントスル、此議員ノ發言
ノ保留ヲ抑壓シテマデモ、島田君ニ處決ヲ促スト云フ御意
味デアルノデアリマスカ、(拍手起ル)此大切ナル議員ノ發言
權ノ此好慣例ヲ壓迫シテ、之ヲ破ラントスルノ意思デアルカ、
伺ハントスル者デアル、第二/要點ハ島田君ガ此瀆職嫌疑
ニ對スル質問書ハ、私モ之ニハ確的タル斷乎タル決心ヲ以
テ、同意ノ署名ヲ致シテ居ルノデアリマス、島田君ガ假リニ
處決ヲ促サルヽトスルナラバ、私モ亦其連帶者ノ一人デアル
ノデアルカラ、小川君ガ此斷乎タル決心ヲ以テ島田君ニ望
ンダト共ニ、私ニ對シテ處決ヲ促スノ勇氣アルカ否ヤ、此二
點ニ就テ、明細ナル答辯アランコトヲ望ムノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=25
-
026・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 小川平吉君
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
〔小川平吉君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=26
-
027・小川平吉
○小川平吉君 第一ノ小泉君ノ御質問ハ、政府ノ答辯ニ
對スル非難ト、島田君ノ辯護、其他總テ小泉君ノ御意見
御議論デゴザイマスルカラ、之ニ向ッテ答辯ノ必要ハナイト
考ヘマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)、第二ノ點ニ就テハ、小泉
君モ質問主意書ニ賛成ヲセラレタト云フコトヲ唯今承リ
マシタ、凡ン罪ヲ犯シタル場合ニ於テ、附和隨行ノ者ニ對シ
テハ、極メテ寛大ナル處分ヲ執ル原則デアリマス、(拍手起
ル)私ハ小泉君ニ向ッテハ處決ヲ促ス考ハ無イノデアリマス(拍
手起ル)
〔「附和雷同ハ何ダ」ト呼フ者アリ其他發言スル者多
ク、議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=27
-
028・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜肅ニ··
〔此時議場騒然〕
〔佐々木安五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=28
-
029・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君 議長、議場ヲ整理スベシ(議場騒然)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=29
-
030・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜〓ニ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=30
-
031・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君(續) 諸君、靜マレ、佐々木安五郞發言
ノ權利ヲ得タ
〔拍手起ル、「降リ給べ」「議長此議場ヲドウスルノデ
ス」ト呼フ者アリ、議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=31
-
032・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君 諸君、(拍手起ル)本員ハ島田君ノ
引責處決ヲ促スベク提出サレタル小川君ノ動機-決議
ニ對シテ修正案ヲ提出致シマス、(「賣名ノ佐々木安五郞」
ト呼フ者アリ)分ラヌ事ヲ言フト承知シナイゾ、苦シイ時ニ
ハ色と悲鳴ヲ揚ゲル、其悲鳴モ人ノ妨害ニナラザル位ノ程
度ニ揚ゲテ貰ヒタイ、小川君ノ島田君ニ對シテ引責處決ヲ
求ムル所ノ其理由ハ、虚構ノ言說ヲ以テ他人ヲ傷ケタト云
フコトニナッテ居ル、虚構ト云フコトハイツ、何時ニ確定シタ
モノデアルカ、唯ダ小川君一人ノ獨斷ヲ以テ、之ヲ虚構ナリ
ト斷定スル理由ハ何所ニ在ルカ、(拍手起ル)島田三郞君ト
云フ一個人ノ問題デハナイノデ、衆議院議員ノ言說ニ對シ
テ虚構ナリト云フコトニ就テハ、愼重審議シタ上ニ、確的ナ
ル證據ガ無ケレバ言ハレスコトデアル、(拍手起ル)證據モ何
モ無ク況ヤ當リ前ノ手續ヲ執ッテ居ラズ、若シ當前ノ手續ヲ
執ルト云フコトニナリマスレバ、島田君ノ言說ニ對シテモ、-
應ノ調査委員會ナルモノヲ設ケル必要ガアルノデアル、(拍
手起ル)ソレハ既ニ先例ガアル、前衆議院議長デアル大岡
育造君ガ現レテ、我輩ノ眼前ニ在ル明治二十七年-明
治三十七年三月二十六日議員ノ秋田定輔君ガ露探
ノ····(「秋山ダ」ト呼フ者アリ)秋山デモ宜シイ、末節ハドウ
デモ宜シイ、大體ヲ聽ケ、秋山定輔君ガ露探ノ嫌疑ヲ以テ
引責處決ヲ求メラレ夕時モ、調査會ナルモノガ設ケラレ、其
調査會ノ報告ヲ聽イテ後ニ、大岡育造君ガ建議ヲ出シテア
ルト云フコトハ、現ニ此先例彙纂ニ現レテ居ル如クデアルヽ
(拍手起ル)今日ノ島田君ノ言フコトハ、マダ議論ノ餘地ガ
保留シテアル、再質問ヲスルト云フコトヲ、昨日ノ議場ニ於
テ明言セルニモ拘ラズ、其再質問ノ如何ヲ盡サセズニ、單ニ
獨斷ヲ以テ虚構ナリトスル理由ハ何レノ所ニ在ルカ、(拍手
起ル)斯ク言ハヾ或ハ言ハン、議院ニ絕對多數ヲ占メテ居ル
政友會ガ虚構ナリト認メルカラ、ソレデ虚構デアルト言フカ
モ知レヌガ、多數必ズシモ眞理デナイ、秦ノ二世皇帝-秦
ノ始皇帝-後嗣ノ二世皇帝ノ時ニ、鹿ヲ獻上シテ馬ト言
ウタ者ガアッタ、其時ニ一世ノ奸臣趙高ハ、己レノ勢力ノ偉
大ナルヲ示サンガ爲メニ、鹿ヲ捉ヘテ馬ナリヤ否ヤト云フ問
題ヲ出シタ、趙高ニ媚ビル多數ノ宮中ノ人間ハ、一聲ニ口
ヲ揃ヘテ鹿ヲ捉ヘテ馬ナリト言ウタガ、此馬ナリト言ウタ人
間ハ、其當時ノ多數黨デアッタノデアル(拍手起ル)併ナガラ
天下後世ノ眼カラ見レバ、趙高ニ媚ヲ求メテ鹿ヲ捉ヘテ馬
ナリト言ウタ言葉ガ、馬鹿ト云フ言葉ノ始マリデアル、(拍手
起ル)千匹ノ猿ガ居ッテ、九百九十九匹マデ鼻ガ缺ケテ居ル
一匹ノ鼻ノ完イ猿ヲ目シテ片輪ナリト言ウタ、鼻ノ有ル方
ガ片輪ト言ハレテ、鼻ノ無イ方ガ多數決デ片輪デナクナッタ、
(拍手起ル)多數々々ト言ハレルケレドモ、爰ニ黨議ト云フモ
ノヲ止メテシマッテ、黨議ノ拘束ナルモノヲ取ッテ、自由ノ意
思デ諸君ガ判斷シタナラバ、此問題ハ當然島田君ノ方ガ多
數デアッテ、大政黨ガ少數デアル(拍手起ル)黨議ニ
拘束サレテ良心ノ命ズル所ニ反シ、良心ノ命ズル
所ニ耻ヅルコトヲ知ラズ、黨議一片ニ拘束サレテ、此重大ナ
ル問題ヲ卽決スルトハドウ云フ不屆デアルカ、若シ政友會ニ
シテ-若シ政友會ニシテ己レノ大臣ヲ信ズルト云フナラ
バ、何故ニ内輪ノ事情ヲ聽取ルト云フ會合ヲ催シタカ、政
友會自身ガ三大臣ノ事ハ、一ツモ-一點ノ疑點ナク疑フ
事ガ無カッタナラバ、政友會代議士ノ事情聽取ノ會ヲ催ス
必要ガ無カラウト思フ、聽取ラネバ分ラヌト云フコトハ、既ニ
疑問ノ存スル所デアル、況ヤ唯〓吾輩ハ其人ニ會ウテ來タヽ
石渡フサト云フ者-之ニ對シテ七百何十株八百ニ近イ
モノデアリマス、金ニ換算スルト八万圓吳レタ、其労ナル者
ハ唯〓現ニ此衆議院ノ傍聽席ニ來テ居ル、(拍手起ル)彼
ハ曰ク、石渡フサナル者ハ-石渡フサナル者ハ非常ニ不幸
ナ女デアッテ、唯〓親戚ガ寄ッテ掛ッテ醵金ヲシテ、一千圓カ
二千圓位ノモノデ、家デモ建ッテヤラウカト云フ相談ヲシテ
居ル、中橋家カラ貫フタ物ハ、奧サンノ著古シノ染直シカ何
カ、一枚貰ウタト云フノハドウデアルカ(拍手起ル、「顏色ナ
シ」ト呼フ者アリ)若シ大臣ニシテ徹頭徹尾明リヲ立テルト
云フナラバ、石渡フサハ未ダ死セル者ニ非ズ、此世ノ中ニ現
存シテ居ル者デアル-現存シテ居ル者デアル、其親戚ヲ使
トシテ呼寄セルナラバ、コイツ唯今デモ呼寄七ルコトガ出來
ルガドウカ、(拍手起ル)斯ノ如ク活キタル證據ノ有ルニモ拘
ラズ、天下萬衆ヲ欺カントシテ、八万株モ吳レタ、(「八方圓
ダ」呼フ者アリ)揚足ヲ取ルナ、オ前達ノ論ズルノハ揚足シカ
取レナイ、大體ノ議論ヲ聽ケ、斯ノ如ク唯ダ一時ヲ誤魔化
サントシタ所ガ、是ハ到底天下萬衆ノ耐ヘラルヽモノデナイ、
(拍手起ル)屢。引カレル「ロイド、ジヨージ」「プライアン」ノ、新
シイヤウナ古イヤウナ引例ハ此席ニ於テ言ハヌデモ宜シイガ
一千何百年前ニ於テスラ、支那ノ馬接ガ雲南征伐カラ還
ルトキニ、寶玉ヲ持ッテ歸ッタヂヤナイカト云フ疑ヲ受ケタトキ
ニ、己ノ身代ヲ曝ケ出シタ所ガ珠數玉デアッタ、或ハ三大臣
ノ中ニハ、寶玉デナク珠數玉ノ人ガアルカモ知レヌ、故ニ吾
吾ハ好意ヲ以テ、全然委員會ヲ開キ、査問ヲ開ケトマデ言ッ
タデハナイカ、然ルニモ拘ラズ査問會ヲ否決シ、全院委員會
ヲ否決スル以上ハ、斯ノ如キ燈明臺ノ下ニ照ラシ出セバ何
物カ暗イ物ガアルト云フコトヲ自白シタト同ジ事デアリマス、
(拍手起ル)故ニ一應ノ査問會モ開カズ、調査會ヲモ開カズ
シテ、島田三郞君ニ處決ヲ求ムルノ權利ガアルト言フナラバ
轉ジテ官紀振肅、風〓維持ノ上ヨリ、三大臣ハ自ラ處決ス
ルノ責任アルト云フコトニ修正シタイ、此意味ニ於テ小川
平吉君ノ所謂島田三郞君ノ引責處決ヲ求ムト云フ文字
ニ換フルニ、三大臣ハ速ニ引貴處決スベシト云フコトニ換へ
タイノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=32
-
033・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 唯〓關和知君ヨリ發言ノ通告ガ
アリマシタカラ、關君ノ發言ヲ求メマス-關和知君、(此時
發言スル者多シ)-關和知君
〔關和知君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=33
-
034・關和知
○關和知君 諸君、本員ハ(「謹聽々々」ト呼ヒ拍手起ル)
小川平吉君ノ提出セラレタル、島田君ノ引責處決ヲ促スト
云フ所ノ決議案ニ絕對ニ反對ヲ表シ、其意味ニ於テ唯今
佐々木君ヨリ提出セラレタル、三大臣ニ向ッテ引責處決ヲ
促スト云フ修正案ニ贊成ヲ表スル者デアリマス、(「ヒヤ〓〓」
ト呼ヒ拍手起ル)元來此問題ノ性質ガ如何ナルモノデアル
カト云ヘバ、(「島田君ノ邪推」ト呼フ者アリ)今日政界ニ於
ケル腐敗ヲ廓〓スル所ノ意味、政治道德ヲ振作スル所ノ意
味、政治上ニ於テモ、社會上ニ於テモ、殊ニ一般風〓道德
ノ上ニ於テ、重大ナル意味ヲ含ンダ所ノ問題デアリマス、近
來我政界ノ腐敗ト云フコトハ、一般共ニ認メテ悲シミ居ル
所ノ事實デアリマス、此政治界ノ腐敗ハ卽チ政治道德ノ腐
敗デアリマス、(「憲政會ガ火元ダ」ト呼フ者アリ)此腐敗ト
云フコトニ就テハ、唯ダ事實ヲ認ムルト云フコトノミニ依テ
ハ、吾とハ滿足スルコトガ出來マセヌ、(拍手起ル)腐敗ノ事
實ガアリトスレバ、其腐敗ニ對スル所謂公ノ憤ヲ促サナケレ
バナリマセヌ、又其腐敗ノ事實ガアリトスレバ、之ヲ根本的
ニ廓〓スルガ爲メニ努力ヲ必要トスルノデアリマス、(拍手
起ル)政界ノ廓〓、政治道德ノ振作ト云フコトニ就テ、特ニ臺
閣ノ上ニ在ル所ノ宰臣ノ身ノ上ニ係ッテ、言フニ忍ビザルノ疑
惑ノ雲ノ橫シテ居ル時、先ヅ此問題ニ向ッテ其眞相ヲ明ニ
シ、延テ政冶道德ノ刷新、社會風〓ノ維持ニ努メントスル
所ノ用意、卽チ島田君ノ質問ノ起シタ所以デアリマス、(拍
手起ル)故ニ此島田君ノ質問ニ就テハ、其動機ニ於テモ、其
性質ニ於テモ、御互最モ愼重ニ考慮シ、且ツ十分ナル敬意
ヲ以テ之ヲ取扱フベキノガ當然ノ事ト信ジマス、(拍手起ル)
島田君ノ質問ノ其内容ニ對シテ、昨日當該三大臣ヨリノ
答辯ガアッタ、其答辯書ヲ根據ト致シテ、直チニ提出セラレ
タル所ノ小川君ノ決議案ナルモノハ前ニ述ベタ所ノ島田
君ノ用意ニ出デタ其質問ヲ、大臣ノ答辯ヲ根據トシテ、直
チニ之ニ向ッテ殆ド極端ナル所ノ、否ナ不法不當ナル所ノ制
栽ヲ加ヘテ、島田君ノ議席ヲ脅迫シ、之ヲ剝奪セントスル所ノ
恐ルベキ企ヲ玆ニ提出セラレタノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼
ヒ拍手スル者アリ)私ハ島田君ノ質問ニ對シ三大臣ノ答辯
セラレタル點ニ於テ、幾百ノ株ガ幾百賣レテ、幾百減ッタトカ
增シタトカ云フコトニ就テノ爭ヲ、此壇上ニ於テ私ハ玆ニ爲
スコトヲ好ミマセヌ、(「出來ナイノダラウ」ト呼フ者アリ)其等
ノ事柄ニ就テハ、自ラ事實明瞭ニナルベキ所ノ方法ガアリ、
手續ガアルデアラウト思フノデノアル、小川君ノ決議案ノ提
出ハ島田君ガ大臣ニ對シテ質問シタル事柄ヲ斯樣ニ言ハ
レテ居リマス「今日旣ニ斯ノ如キ重大ナル問題ヲ提起シテ
人ノ名譽ヲ傷ケ、延イテ全國ノ人心ヲ攪亂致シ、風〓上ニ
迄モ容易ナラサル影響ヲ及ホシタル以上ハ、島田君自ラ述
ベラルヽ如ク、此妄言ニ對シテ責ヲ引カルヽト云フコトハ當
然ノ歸結デアルト考ヘルノデアリマス」是ガ小川君ノ本案ヲ
提出シテ、島田君ノ處決ヲ促シタル要旨デアリマス、島田君
ガ如何ナル妄言ヲ言ハレタノデアリマスカ、又島田君ノ質問
ガ、如何ニシテ人ノ名譽ヲ傷ケ、社會ノ風〓ニ迄及ボスヤウ
ナ迷惑ヲ與ヘタカ、斯樣ナル質問ノ由ッテ起ッテ來ル所ノ原
因ヲ繹ヌレバ、社會風〓ニ向ッテ、若クハ人ノ名譽ニ關スル
事柄ノ忌ムベキ所ノ事態ヲ惹起シタト云フコトハ、卽チ當
該三大臣ノ責任デアッテ、當該三大臣ノ間ニ斯ノ如キ行
爲、若クハ斯ノ如キ嫌疑ヲ惹ク如キコトガナケレバ斷ジテ島
田君ノ質問ハ現レテ來ナカツタノデアリマス、(「ノウ〓〓」「ヒ
ヤ〓〓」ト呼ヒ拍手起ル)小川君ハ島田君ノ質問ヲ妄言ナ
リトシ、妄言ノ責ヲ引イテ處決セヨト言ハレマスルガ、島田
君ノ質問ノ間ニ如何ナル妄言ガアリマスルカ、(「全部妄言
ダ」ト呼フ者アリ)假リニ不穏ナル多少ノ言葉ガアルト致シ
テモ、此議場ニ於テハ、苟モ公ノ心ヲ以テ、國家國民ノ爲メ
ニ利害休成ヲ論ズル場所デアル以上ハ、其言論ニ向シテハ、
互ニ自由ヲ尊重シナケレバナリマセヌ、(拍手起ル)無論自
由ヲ尊重スルト同時ニ、放縱ナル言葉ヲ戒ムルノガ御互ノ
責任デアリマス、併ナガラ又事每ニ些末ノ點ヲ捉ヘテ
之ヲ問題トシ、之ニ依テ人ヲ陷レントスルガ如キ事ハ、
甚ダ卑ムベキ所ノ行爲デアリマス、(拍手起ル)若シ或ル疑ト
カ嫌疑トカ云フコトニ就テ、他人ノ名譽ニ係ハル事ガ、直チ
ニ議員ノ引責處決ヲ促スベキ問題デアルト云フナラバ、私ハ
直チニ茲ニ政友會ノ諸君ニ向ッテ、反省シテ戴キタイ事柄ガ
アリマス、ソレハ遠クモアラヌ第四十議會ノ當時ノ事デアツ
タ、採本公司ノ問題ガ決算委員會ニ於テ政友會ノ諸君ガ
盛ニ論議セラレタル當時、氏名ヲ擧ゲルコトハ聊カ憚リマス
ルケレドモ、今日ノ政友會ノ要部ニ居ル所ノ三土忠造君、
此三土忠造君ガ此問題ノ決算委員會ニテ論ゼラルヽ時、
如何ナル言葉ヲ述ベラレテ居リマスカ、斯樣ナコトヲ言ハレ
テ居ル「極端ニ申セバ前內閣ノ總理大臣、外務大臣、大藏
大臣ハ無論フン縛ノテシマハナケレバナラス、刑事上ノ問題
ニナル問題デアル」(「其通リダソレガ何ダ」ト呼フ者アリ)殆
ド總理大臣、外務、大藏兩大臣ヲフン縛ッテシマッテモ宜シイ
所ノ、刑事上ノ問題デアルト云フコトマデ言ハレテ居リマス、
(「其通リ」ト呼フ者アリ)若シ人ノ身上ニ關シ名譽ニ關スル
所ノ事ヲ、確實ナル證據ナクシテ、恣ニ放言スルコトガ戒ム
ベキ事柄デアリ、責ムベキ事デアルトスルナラバ、斯ノ如キ事
ハ更ニ島田君ノ質問ニ於テ述ベタル所ノ言葉以上ニ、其意
味合以上ニ、人ノ身上名譽ニ向ッテ、非常ナル是ハ毀損ヲ
加ヘタ所ノ言葉デアリマス、(拍手起ル)而シテ此事ニ就テ
當時小林嘉平治君ガ三土君ノ此事ニ就テ、然ラバ如何ナ
ル事實ニ依テ斯樣ナル刑事問題ニナル程ノ問題デアルト言
ハルヽカ、之ヲ言ハレタル勇氣ニ向ッテ敬服致ス、此事ニ就テ
事實ヲ明ニシタイ」ト言ウテ小林君ガ同君ニ問ハレタ時ニ、
三土君ハ斯樣ニ答ヘテ居リマス(「ドウダ〓〓」ト呼フ者アリ)
「私ハ極端ニ言ヘバト云フ言葉ガ使ッテアル總テ言葉ニハ形
容詞ガアル、副詞ガアル、之ヲ除イテ考ヘルト大變ナ間違ニ
ナル、私ハ極端ニ言ヘバ、問題ノ性質カラ言ヘバ、刑事問題
ニナルヤウナ問題デアル、サウ云フ事マデ私ハ論究セヌノデア
リマスガ、兎ニ角國民疑惑ノ問題デアル故、政治道德ノ上
カラ言ッテ、早ク解決シタラ宜カラウト斯ウ感ジタノデアリマ
ス、島田君ノ演說若クバ質問趣意書ノ上ニ於テ、此三土君
ノ言葉ヲ藉リテ用キルナラバ、此文章ノ中、此演說ノ中ニ
ハ、幾多ノ形容詞ガアル、副詞ガアル、其形容詞副詞ヲ取除
ケテ、或ル些末ノ點ヲ捉ヘテ、直チニ之ヲ妄言ナリトシテ引
貴處決ヲ求ムルト云フ如キコトデアルナラバ、更ニ此三土君
ノ答辯ハ、政友會トシテハ殆ド今日ノ場合意味ヲ爲シマセ
ヌ、若シ三土君ノ言フガ如ク極端ニ言ヘバサウデアルガ、是
ハ政治道德ノ問題トシテ、自分ハ刑事上ニ於テノ問題トス
ル積リデハナイ、道德問題トシテ解決ガ欲シイ、斯ウ云フコ
トガ三土君ノ眞ノ精神デアッタトスルナラバ、島田君ノ今囘
ノ此問題ニ對スル質問ハ、全ク形容詞副詞ヲ除ケバ、政治
上ノ道德問題トシテ、其眞相ヲ明カニスルガ至當ナル事ト
信ズルノデアル、私共ハ當時三土君ノ言葉ニ就テ、聊カ穏
カナラザル事ヲ感ジテ居リマシタケレドモ、御互ニ議院ニ
立ッテ言論ノ自由ヲ尊重スル者、三土君ト雖モ亦一點
私心ヲ以テ論ズルニ非ズシテ、國家ノ公ノタメニ議論
ヲ立テラルヽ場合、斯ノ如キ言說ノ奔ヲテ危激ニ亙ル
コトモ、政治家ノ立場トシテ、御互ニ之ヲ許スコトガ至當デ
アルト心得テ、深ク追究スルコトヲ致サナカッタノデアリマス、
(拍手起リ「ドウダ〓〓」ト呼フ者アリ)然ルニ此度ハ偶〓島
田君ヨリ斯ノ如キ、質問ガ出デタト云フコトニ依テ、直チニ
政府大臣ノ答辯ヲ聽キ、其答辯ノ中ニモ、島田君ノ質問ニ
對シ讒誣罵詈、人格ニ係ハル言葉ヲ、一國宰相ノ答辯トシ
テハ聽クニ忍ビザル事マデモ用井テアリマスガ、(拍手起ル)
其低級ナル道德心ヨリ出デタル所ノ其答辯書ヲ根據ニシ
テ、直チニ島田君ニ向ッテ其位置ヲ奪ハントスルガ如キコト
ハ、餘リニ是ハ輕卒デハアリマセヌカ、餘リニ是ハ不用意デハ
アリマセヌカ、又餘リニ自ラ御互議員ノ職責、神聖ナル責任
ヲ輕ンズルモノデハアリマスマイカ、(拍手起ル)私ハ當該大
臣ニ向ッテモ、洵ニ是ハ御迷威ナル問題デアルトシテ、竊ニ氣
ノ毒ニ感ジテ居リマス、併ナガラ既ニ是ガ議會ノ問題トナリ
天下疑惑ノ焦點トナッタ以上ハ、此問題ニ就テハ、進ンデ一
切ヲ天下ニ公表シテ、大臣自ラノ公明正大ヲ表白スルト云
フコトガ、此問題解決ニ就テノ最モ適切ナル是ハ方法デア
ルト信ズル、(拍手起ル)是ハ議會ニ於テ査問會ノ要求ヲ待
タズトモ、全院委員會ノ開會ヲ待タズトモ、寧口積極的二大
臣自ラ進ンデ說明セラルベキガ當然デアリマス、(拍手起リ
「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)然ルニ此事ヲ爲サズシテ、與黨ノ多
數ヨリシテ斯ノ如キ突飛ノ決議案ヲ出シテ、己レニ向ッテ深
切ナル質問ヲ出シタ、其質問ハ其疑ヲ解キタイ、對手方ノ
疑ヲ解キタイト云フ其深切ナ質問者ニ向ッテ、斯樣ナル決
議案ヲ出シテ、而シテ當該大臣ハ恬然トシテ居ルト云フコ
トハ、餘リニ恥ヲ知ラサル所ノ大臣デハナイカ、(拍手起ル)
又小川君ニシテモ、政友會ニシテモ、大臣ノ靑天白日、其潔
白ヲ表明セントスルナラバ、何故ニ査問會ヲ開カナカッタカ、
何故ニ全院委員會ノ要求ニ贊成ヲシナカッタカ、斯樣ナル
機關ニ依テ而シテ愼重審査シテ取調ノ上、全ク事詳細ニ
分ッテ、島田君ノ質問ガ誤デアッタ、大臣ノ身上ニハ一點ノ
私無シ、疑無シト云フコトガ明白ニナッタナラバ、斯樣ナル
決議案ヲ出スニ及バズシテ、三大臣ノ名譽ヲ恢復シ、而シ
テ政友會諸君モ亦威信ヲ全ウスルコトガ出來タノデアラウ
ト思フ、(拍手起ル)況ヤ島田君ハ昨日ノ大臣ノ答辯ニ對
シテ、更ニ此政府ノ答辯ニ對シテハ、再質問ヲ致スト云
フコトノ聲明ヲ致シテ、聞ク所ニ依レバ、今朝右再質問書
ヲ事務局ノ方ニ既ニ提出サレテ居ルト云フコトヲ承知シ
テ居リマス、(拍手起ル)凡ン片言以テ訟ヲ聽クベカラズ、
諸君ガ三大臣ノ言說ニ對シテ確信ヲ措クト云フコト
ハ、黨ノ領袖デアル、先輩タルガ故ニ、諸君ガ彼等ヲ信ズ
ル所ノ感情德義ノ上カラ、或ハ然ランデアラウ、併シ同時
ニ吾ヒハ其黨ノ先輩夕ル、殊ニ議會ニ於テハ、否ナ議會
以前ヨリ日本ノ憲政ニ於テ功勞アリ、政治上、社會上、
〓育上ニ於テモ一般定評ノアル人格者タル、其島田君ノ
言說ニ向ッテ、吾ミガ其人格ヲ尊敬シ、其言說ニ重キヲ措ク
所ノ、吾〓ノ同志デアリ、先輩デアルト云フ德義上ノ觀念ヲ
諸君モ亦之ヲ當然是認シナケレバナラヌ所ノ義務ヲ有フテ
居ルノデアリマス、(拍手起ル)吾ミガ島田君ノ質問ニ確信
ヲ措クト云フ事ト、諸君ガ三大臣ノ答辯ニ向ッテ確信ヲ措
クト云フ事ハ、是ハ御互ノ立場ニ於テ同等ノ意味合デアリ
マス、(拍手起ル)己ノ信ズル大臣ノ答辯ノミヲ以テ信ズベク
反對黨ノ島田君ノ言說ヲ以テ信ズルニ足ラズ、而シテ其信
ズベシ信ズベカラズト云フコトヲ、多數ノ頭數ニ依テ之ヲ決
セントスルト云フコトハ、餘リニ是ハ不道理千萬ナル態度デ
アリマス、(拍手起ル)尙ホ島田君ニ處決ヲ促スト云フコトハ
成程議會ノ先例ニ一一一之ヲ見ナイデハアリマセヌ、併ナガラ
議員御互ノ間ニ於テ、議員ニ向ッテ處決ヲ促スト云フガ如
キ權能ハ、憲法ノ上ニモ、議院法ノ上ニモ、議事規則ノ上ニ
モ、是ハ私共認メルコトガ出來マセヌ、若シ御互議員ノ間ニ
責ムペキ者、罰スベキモノアレバ、是ハ法規ノ規定ニ基ヅイテ
相當ノ手當ト形式トヲ履ンデ、自ラ制裁ノ方法ガ儼乎トシ
テ存在シテ居リマス、其當然履ムベキ所1ノ手續ヲ履マズ、據
ルベキ所ノ機關ニ據ラズ、法規ノ上ニ根據ナクシテ、唯ダ單
純ニ自分ノ黨派カラシテ、氣ニ入ラナイ反對黨ノ言說ナル
ガ故ニ、之ヲ壓迫スルト同ジキヤウナ其態度ヲ此上ニ加ヘテ、
而シテ一人ノ大切ナル議席ヲ奪ハントスルガ如キハ、道德ノ
上ニ於テ許サマルノミナラズ、法規ノ上ニ於テモ亦是ハ許サ
ザル所ノ行爲デアリマス、(「ノウー〓」ト呼フ者アリ、拍手スル
者アリ)諸君ハ爲サント欲スレバ何事モ爲シ得ルノデアリマ
ス、議院政治ニ於テハ、諸君ノ多數、其多數ノ力ヲ十分ニ
振廻ストキニハ、殆ド男子ヲ女子ニ反スコトノ出來ナイト云
フ事ヲ取除ケテ、政治上ニ於テ諸君ノ意見行動ハ自由デア
ル、其多數ヲ有チ、其自由ヲ有ッテ居ル諸君ガ、當然若シ責
ムベキ罰スベキ所ノ島田君ヲ發見シタナラバ、其島田君ニ
向ッテ加ヘル所ノ制裁ハ、何故ニ法規ノ上ニ據ラザルカ、何故
ニ正當ノ機關ニ據ラザルカ、(拍手)又假リニ斯ノ如キ場合、
斯ノ如キ手續方法ニ依テ、輕ミシク議員ノ進退ヲ決スルト
云フガ如キコトヲ、之ヲ慣例トシテ、若シ許スナラバ
吾〓此議場ニ於ケル一人ノ其位地ト云フモノハ、宜一
不安危險之ヨリ甚シキハナイノデアル、何ニ依テ安ンジテ
國民ヲ代表シ、、安ンジテ陛下ニ報ヒ奉ル所ノ公ノ議
務ヲ盡スコトガ出來マスカ、(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)殊
ニ權利ヲ尊重シ、自由ヲ尙フト云フコトハ、政友會諸君
ガ自由黨以來、傳統的ニ、歷史的ニ、主張ノ存スル所デハ
ナイカ、政友會ガ如何ニ變化シ、世ノ中ガ移リ變リ、如何
ニ人情ガ輕薄ニナリ、如何ニ政治道德ガ腐敗シテ居ル今
日トハ云ヘ、其政友會ガ斯ノ如キ事ニ出ルト云フコト
ハ、其歷史ニ對シ、其主張ニ對シ聊カ東心恥ヅル所ナキ
カヲ私ハ問ヒタイノデアリマス、(拍手起ル)殊ニ島田君ハ
如何ナル人デアリマスカ、先刻モ私ハ簡單ニ島田君ノ人格
ト歷史ヲ語リマシタガ、此人ノ議會ニ存在スルト云フコトハ
此一人ノ我ガ政治界ニ存在スルト云フ事ハ、敵ト味方トノ
感情ハ別ト致シテモ、大局ノ上カラ觀テ、是ハ尊重スベキ所
ノ人物デアル(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ拍手スル者アリ)大
政治家デアリマス、然ルニ此島田君ニ向ッテ、諸君ノ言フガ
如キ卑ムベキ批評ヲ政友會ノ人とカラ聽クト云フコトハ、
私其由ッテ來ル諸君ノ心術ヲ疑ハザルヲ得マセヌ、(拍手起
ル)惟フニ斯ノ如ク島田君ニ向ッテ輕侮ノ批評ヲ加ヘラルヽ
ト云フ事ハ、若シ人アッテ政友會ノ歷史ト島田君ノ歴史ト
ヲ對照シテ之ヲ回顧シテ見マシタナラバ、曾テ星亨君ニ向、ツ
テ政治上最後ノ制裁ヲ與ヘタ者ハ島田君デアル、島田君
ハ「シーメンス」事件ヲ天下ニ喝破シテ、我ガ腐敗セル海軍
ニ廓〓ヲ促シ、同時ニ之ガ因ヲ成シテ同時ニ政友會內閣
ト稱スベキ山本内閣ニ、最後ノ宣告ヲ與ヘタ者モ島田君デ
アル、若シ卑劣ナル言葉ヲ以テ島田君ニ加フルナラバ、一部
ノ人之ヲ評シテ、政友會ノ諸君ハ嘗テ其歷史的先輩ニ對
シ島田君ノ正義ノ銳鋒ノ爲メニ、倒レタ所ノ犠牲者ニ向シ
テ、其恨ヲ晴スガ爲メニ斯樣ナ卑劣ナ手段ヲ講ジ、斯樣ナ
態度ニ出ルノデアルト、斯樣ニ風評スル者ガアッテモ、之ヲ辯
解スルノ言葉ニ或ハ苦シムデハナイカト窃ニ察スルノデアリ
マス、(「ノウ〓〓」拍手)如何ニ黨派政治ノ弊トハ云ヘ、斯ノ
如キ事ハ餘リニ是ハ極端デアリマス、互ニ是ハ愼ムベキ事デ
アリマス、曩ニ佐々木君ハ趙高鹿ヲ指シテ馬ト云フノ例ヲ
引カレマシタガ、後漢ノ末ニ支那ニ於ケル朋黨ノ盛ナルトキ、
世ノ中ニ於テ信用アリ尊敬スベキ所ノ人格者ニ向ッテ、當
時ノ濁リ且ツ汚レタル所ノ輩ガ勢力ヲ得テ居フタガ爲メニ、
其〓キ人正シキ人ヲ捉へテ、此輩〓流宜シク濁流ニ投ズベ
シト、之ヲ黃河ノ流ニ投ジタ、サウシテ朋黨此周ノ弊ヲ後世
ニ遺シタ事ガアリマス、(拍手)今日ノ議會ニ島田君ノ如キ
心術ヲ以テ、島田君ノ如キ所ノ態度ヲ以テ、政治道德ノ腐
敗ヲ改メ、社會風〓ノ維持ニ力メルト云フ人ニ、輕ミシク斯
ノ如キ決議案ヲ提ゲテ、此人ヲ議會ヨリ逐ハントスル事ハ、
所謂島田君ノ〓流ヲ此議會ヨリ逐ハントスルモノデハナイ
カト言ハレテモ、果シテ諸君何ノ言葉ガアルカ、黨派ヲ離レ
テモ、人物ハ人物トシテ、政治家ハ政治家トシ、長者ハ長者
トシテ、國民トシテ尊敬ヲシナケレバナラヌ、若シ然ラズシテ
斯樣ナル忌ムベキ心術ヨリ出デタルモノナラバ、寧ロ島田君
ヲ排斥スル以前ニ、諸君ノ戴イテ居ル所ノ諸君ノ先輩、殊
ニ諸君ノ與黨トシテ之ニ奉公致シテ居ル所ノ現內閣ノ大
臣ノ中ニ、更ニヨリ以上排斥スベキ、ヨリ以上卑ムベキ、憎ム
ベキ人ガ或ハ有リハシナイカト云フ事ヲ諸君ニ問ヒマ
ス、(拍手起ル)故ニ私ハ島田君ニ向シテ引責處決ヲ
促スト云フガ如キ、小川君ノ提案ニ向シテ、私ハ絕對ニ反對
ヲ表シテ、佐々木君ノ說、卽チ若シ島田君ニ向ッテ是位ノ問
題、是位ノ質問ニ依ッテ、妄言ノ罪社會風〓ノ上ニ害アリト
シテ引責ヲ促ス程ノ問題デアルナラバ、寧ロ其以前ニ、斯樣
ナ時代斯樣ナ問題ニ於テ、天下ノ疑惑ヲ惹キ、而モ其疑惑
ノ中ニハ何トシテモ言ヒ解クコトノ出來ナイ所ノ答辯ヲ爲
セル者ハ、更ニ大ナル害デアル文〓ノ局ニ當ッテ居ル大臣ガ、
議會ニ答辯シタル所ノ其事實ニ於テ、七百七十七株ト云
フモノヲ、二十五年カ家ニ仕ヘタ所ノ老女ニ對シテ報酬ト
シテ與ヘタ、慰勞トシテ與ヘタ、小川君ハ之ニ向ッテ恐ロシキ
所ノ讃辭ヲ與ヘテ、家庭ニ養ウテ居ッタ所ノ老女ニ窒素株
ノ七百七十九株ヲ與へタ、當時ノ時價ニ積ッタナラバ、私斯
樣ナル事ニハ甚ダ迂遠デアリマスケレドモ、聞ク所ニ依レバ
殆ド十万圓ヲ以テ數ヘルト云フ、此多額ノ株ヲ一老女ニ與
ヘタト云フコトハ、家庭ノ美事デアル、中橋文相ノ爲メニ喜
ブベキ所ノ褒ムベキ事柄デアルト言ッテ、推賞ノ言葉ヲ奉ラ
レテ居リマス、而モ其推賞セル事柄ハ、全ク虚僞ノ事實デア
ルト云フコトハ、今日其直接ノ關係ノアル所ノ者カラ明カニ
言明セラレチ居ルノデアリマス、(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」拍手
超ル)然ラバ先ツ政友會ノ諸君ハ、島田君ニ引貴處決ヲ促
スト云フヨリモ、人ヲ正サント欲スレバ先ヅ己レヲ正ス、此多
數ヲ有スル所ノ諸君ノ力ヲ以テ、斯ノ如キ行爲ノアル、斯ノ
如キ社會風〓ヲ紊亂ス所ノ疑アル」大臣ニ向ヲテ、先ヅ以テ
引貴處決ヲ促シテ、然ル後島田君ニ及ブト云フコトガ、眞ニ
大政黨ノ雅量デアリ、眞ニ國家ヲ思フ政治道德ニ忠ナル所
以デアルト思ヒマスカラ、此意味ニ於テ修正案ニ賛成シ小
川君ノ決議案ニ絕對ニ反對ヲ致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=34
-
035・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 川原茂輔君
〔川原茂輔君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=35
-
036・川原茂輔
○川原茂〓君 諸君、私ハ小川君ノ提出セラレマシタ、島
田三郞君ニ對スル引責處決スベシト云フ決議案ニ贊成ノ
意ヲ表スル者デアリマス、暫ク御〓聽ヲ願ヒマス、島田君ハ
初期以來ノ人デアッテ、會テハ衆議院議長ノ職ニ就カレ、其
言動ハ一世ノ模範トナテナケレバナラヌノデアル(「模範ダ」
「默ッテ聽ケ」ト呼フ者アリ)而シテ初期議會以來引續キ當
選シテ居ル政治上ノ先輩諸君ハ、河野君デアレ、箕浦君デ
アレ、犬養君デアレ、武富君デアレ、元田君デアレ、大岡君デ
アレ、總テノ先輩ガ既ニ壹閣ノ一人トナッテ、而シテ島田君
ハ不幸其域ニ至ラザルモ、亦衆議院議長トシテ、一院ヲ代
表スル歴史アル政客デアル、此人ニ向ッテ引責處決ヲ促スト
云フコトハ、甚ダ御氣ノ毒ニハ存ジマス、(「ソソナラバ反對シ
ロ」ト呼フ者アリ)御氣ノ毒ニハ存ジマスガ、併ナガラ其島田
君ノ言動ニ對シテハ、御氣ノ毒ニハ思フガ、遺憾ナガラ引責
處決ヲ促サナケレバナラヌノデアル、(拍手起ル)近時歐洲ノ
戰亂勃發シテ以來、國民ノ思想ノ問題ノ上ニ於テ、或ハ勞
働問題、政治經濟、總テノ問題ニ向ッテ非常ナル變化ヲ來
シ、我國ノ前途ニ於テモ甚ダ憂慮スベキ今日デアリマス、然
ラバ責任アル政治家ノ言動ハ、卽チ國家社會ニ向ッテ、其總
テノ問題ニ就キ、善導スベキ所ノ行動ヲ爲サナケレバナラヌ
ト思ヒマス、若夫レ此場合ニ於テ責任アル人ガ一朝方針ヲ
誤フテ、此變化セントスル所ノ思想問題、其他ニ向ッテ惡化
ヲ援助スルガ如キコトガアリマシタナラバ、國家ノ前途ハ如
何デアリマセウカ、(「ヒヤ〓〓」「問題外」ト呼フ者アリ拍手起
ル)ソコデ此見地ヨリシテ、此見地ヨリシテ島田君ノ言動ハ、
遺憾ナガラ惡化ヲ援助スル嫌ガナイカト思フノデアリマス、
言論ノ自由ハオ互ニ尊重シナケレバナラヌ、併ナガラ言論ノ
自由ヲ尊重スルト同時ニ、言論ノ放縱ハ戒メナケレバナラヌ
ノデアリマス、若シ此質問書ガ瀆職嫌疑ニ關スル質問
書-瀆職ト云ヘバ官吏ガ職務取扱ノ上ニ於テ不都合ナ
ル行爲ヲ爲シテ、其職ヲ辱メ汚スコトガ瀆職デアル(「サウデ
ス其通リ」ト呼フ者アリ)例ヘバ自家ノ財產ヲ其忰ニ讓リ、
或ハ其女中ニ讓ル、何デソレガ瀆職デアル、(「ソレガ惡イノ
ダ」ト呼フ者アリ「何デ瀆職デアル」「瀆職ダ」「默レ」ト呼フ者
アリ)若シ之ガ瀆職ナリト云フナラバ君ハ人殺ノ嫌疑ニ關
スル質問書トシテモ差支ナイノデアル、是ハ卽チ言論ノ放縱
デアリマス、(拍手起ル)又或ハ君ハ强窃盜ノ嫌疑デナイカト
云フコトモ、是モ言論ノ自由デハアルガ、卽チ言論ノ放縱デ
アリマス、(「ヒヤ〓〓」「ノウ〓〓」靜ニ聽ケト呼フ者アリ)頻リ
ニ此文部大臣-文〓ヲ司ル所ノ文部大臣ニ對シテ、日
本窒素肥料會社ノ株式ニ就テ、盛ニ諸君ハ批評ヲ爲ス誹
議ヲ爲スガ、人ノ言フコトヲ如何ニ鷺ヲ烏ト言ヒ曲ゲルト雖
モ、事實ハ事實トシテ認定ヲセラレテ居ルノデアル、事實ハ
卽チ石渡ヒサト云フ株主名簿ニ列記シテアル以上ハ、是ガ
卽チ事實デハナイカ、(「株ハシレダケデスカ」ト呼フ者アリ)ン
レデ此事實無根ノ事柄ヲ提ゲテ、國務大臣ノ濱職ニ關スル
質問ヲ出スト云フコトハ、是ガ果シテ國民ノ思想ノ上ニ於
テ、風〓ノ上ニ於テ、是ガ果シテ-果シテ是ガ善導スベキ
手段デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=36
-
037・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 中野寅吉君ニ警告致シマス、靜ニ
ナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=37
-
038・川原茂輔
○川原茂輔君 甚グ島田君ノ此言動ニ對シテハ、遺憾ナ
ガラ賛意ヲ表スルコトハ出來ナイノデアル、若シ-若シ其
國務大臣ノ人〓ガ財產ガアッテ、サウシテ其財產ノ處分ノ上
ニ嫌疑ヲ與ヘ、是ガ果シテ瀆職ナリト云フナラバ、假ニ加藤
高明君ガ他日政局ニ立ッター政局ニ立ッタ時分ニ三菱ト
ハ姻戚デアル、姻戚デアルカラ加藤君ハ政機ヲ漏ラシ、而シ
テ三菱ニ向フテ利益ヲ與ヘタト云フ嫌疑ガアッタナラバドウ
ナサル、是レ言論ノ自由ト云フノデアルカ、ソレハ言論ノ放
縱デアリマス、斯ノ如キ論理ヲ以テ人ヲ誣ヒントスルコトハ、
甚ダ諸君ハ心得違デアリマス、(拍手)關君ハ-關君ハ又
法規ニ依テ何故仕事ヲシナイカ、儼トシテ法規ガ在ルモノヲ
法規ニ依ラズシテ卽チ引責處決ノ決議ヲ爲スト云フコトハ
甚ダ宜クナイ、斯ウ仰ッシヤル、是ハ法規ニ依テ引責處決ヲ
促スノ手段ヲ執ルト云フコトハ、洵ニ易々タル事デアル、併ナ
ガラ前ニ言ッタ通リ島田君ハ初期議會以來ノ議員デアル、
曾テハ一院ヲ代表スル榮職ニ就カレタ人デアル(「洵ニ尊敬
スベシ」ト呼フ者アリ)其尊敬スベキ人ガ斯ノ如キ言動ヲシ
タル上ハ、武士道ニ依テ、卽チ武士ノ情ヲ以テ引責處決ヲ
促スノデアリマス、(拍手)其大藏大臣及農商務大臣ニ向ツ
テ言ハレル所ノ其瀆職ノ嫌疑ト云フモノガ、悉ク無根デアル
無根ノ事柄ヲ以テ此議場ヲ騒ガシ、或ハ世間ヲ騒ガセルト
云フコトガ、此戰後ノ今日ニ於キマシテ、轉夕思想ノ變化セ
ントスル時ニ當ッテ斯ノ如キ妄斷ヲ爲シテ、以テ世道ノ人
心ニ利益アリト爲スカ、(拍手)是ハ甚ダ世道人心ヲ或ハ惡
化シハセヌカト云フ疑ガアルノデアリマス、是ハ既ニ一世ノ
模範トナラナケレバナラヌ島田君ニシテ斯ノ如キ言動ヲ爲
ス以上ハ、遺憾ナガラ引責處決ヲ促スノ外ハナイノデアリマ
ス、關君ハ又曰ク、訴ヲ聽イテ、片言以テ之ヲ糺スト云フコ
トハ甚ダ宜シクナイ、唯ダ國務大臣ガソンナ事ハアリマセヌ
ト云フタ其一言ヲ聽イテ、而シテ島田君ニ引責處決ヲ促ス
ト云フコトハ甚ダ輕卒デアル、斯ウ云フ話デアル、其輕卒デ
アルト云フ言葉ノ中ニ、卽チ諸君ハ諸君ノ信ズル所ヲ以テ、
三大臣ノ處決ヲ促スト云フコトハ尙ホ輕卒デナイカ、(拍
手)斯ノ如キ論理ガ何所ニアル、言論ノ自由ニ言ヲ藉ッテ言
論ノ放縱ヲ逞シウシ、世間ヲ騒ガシ、議院ヲ騒ガシ、斯ノ如
キ事ガ風〓ノ上ニ利ガアルト云フコトハ心得違デハアリマセ
ヌカ(拍手)諸君、昨日ノ議場ハドウデアリマシタカ、諸君ノ
其騒方ト云フモノハ何タル事デアル、(「政友會ガ橫暴ナルガ
故ダ」ト呼フ者アリ)卽チ總テノ方面ノ傍聽者ガ集ッテ、是デ
ハ實ニ帝國議會ト云フモノハ賴ムニ足ラヌ斯ノ如キ亂暴ナ
議會ト云フモノハ、國家國民ノ利益ヲ圖ルナドヽ云フコトハ
木ニ緣ッテ魚ヲ求ムルヤウナモノデアル、(拍手)斯ノ如キ感
想ヲ與ヘタト云フモノハ誰ノ罪デアル、(「憲政會ダ」ト呼フ
者アリ)互ニ言論ノ自由ヲ尊重スベキタメナラバ、何故謹ン
デ之ヲ聽カナイノデアル、唯夕徒ラニワイ〓〓騒イデ、而シテ
其日ヲ暮スト云フコトガ諸君ノ任務デアルカ、斯ノ如キ事ヲ
シテ以テ、戰後ノ今日ニ於テ總テノ問題ガ變化セントスル
時ニ方ッテ、此一院ノ行動ハ天下ノ模範トナラナケレバナラ
ヌ、其模範トナルベキ此議會ニ於テ、唯ダ亂暴狼藉ヲ常トシ
テ、卽チ少數黨ノ橫暴ヲ事トシテ、事實無根ノ事ヲ以テ此
議場ヲ騒ガスト云フコトハ、諸君ノ責任デアリマス、(「亂暴
狼藉トハ何ダ」ト呼フ者アリ)斯ノ如キ事實無根ノ事ヲ捉ヘ
出シテ、(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)而シテ徒ラニ議院ヲ騒ガ
シ-議院ヲ騒カシ而シテ天下ノ風〓ノ上ニ於テ、或ハ惡
化ヲ助長スル嫌ヒアルガ如キ行動ハ、島田君ノ爲メニ於テ
甚ダ遺憾トスル所デアル、斯ノ如キ行動ヲ爲サレル以上ハ、
遺憾ナガラ此決議案ニ賛成シテ、足下ノ引退處決ヲ促ス所
以デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=38
-
039・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 湯淺凡平君
〔湯淺凡平君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=39
-
040・湯淺凡平
○湯淺凡平君 本員ハ近時頻々トシテ起ル所ノ懲罰權ノ
濫用ヲ排斥シ、議院ニ於ケル言論ノ自由ヲ擁護スル見地ヨ
リ、小川君提出ノ此決議案ニ對シテ反對ヲ表スルモノデア
リマス、(拍手)吾ヒハ佐々木君ヨリ提出ノ本案ニ對スル修
正案ニ對シテモ反對ヲ致ス(「公平々々」ト呼フ者アリ)其佐
々木君ノ修正案ニ反對スル所ノ理由ガ、卽チ小川君ノ決議
ニ反對スル所ノ理由トナルノデアリマス、惟フニ本案提出ノ
動機ハ、本月五日ノ議場ニ於テ、旣ニ其兆候ヲ現シテ居ッタ
ノデアル、卽チ當日佐々木君ヨリ島田君ノ質問ニ關シ、島
田君ノ答辯ヲサレタル其事柄ニ對シテ、政友會ノ院內總務
デアル所ノ廣岡君ガ、島田君ニ對シテ質問ヲ爲サント試ミ
ラレタコトガ卽チンレデアル、然ルニ如何ナル事情ノアッタノ
デアリマスカ、廣岡君ハ急ニ論鋒ヲ轉ゼラレテ、佐々木君ノ
動議ニ贊成ノ演說ヲ爲サレタノデアル、而シテ此廣岡君ノ
所信ヲ翻サレタルト云フコトガ、卽チ此現レント致シマシタ
ル所ノ本案ノ動機ヲ一掃シタト云フコトハ、偶然ノ變化ト
ハ中シナガラ、議院ノ體面ニ於テ、私ハ非常ニ之ヲ喜ンダノ
デアル、然ルニ此低氣壓ハ昨日ノ議場ニ於テ圖ラズモ再ビ
發生スルニ至ッテ、今ヤ天候甚ダ不穩ナラントスルノ兆ヲ現
ハシマシタト云フコトハ、本員ノ甚ダ遺憾トスル所デアリマ
ス、(「同感々々」「天候ハ其前ニ惡イノダ」ト呼フ者アリ)本案
ハ、島田君ニ對シテ、引責處決ヲ爲スベシト云フ問題デアリ
マスケレドモ、其結果ハ遂ニ同君ノ除名ヲモ意味スルト云フ
コトニ立至ルノデハナイカト私ハ之フ虞レルノデアル、一國ノ
選良、國民ノ代表者ニ對シテ、最モ峻烈ナル所ノ意義ヲ宣
告スルト云フコトノ歸著ヲ見ルモノデアリマスガ故ニ、實ニ
重大ナル問題ト言ハネバナラヌノデアリマス、而シテ島田君
ハ果シテ斯ノ如キ峻烈極マル所ノ宣告ヲ受ケネバナラスノ
デアルカ否ヤ、是レ私ノ大ニ述ベントスル所デアリマス、抑ミ
此本案ノ内容ニ於ケル事實ヲ調ベデ見マスノニ、至ッテ簡單
デアリマス、卽ナ島田君ハ其與ヘラレタル所ノ權能ニ依ッテ、
三大臣ニ對シ瀆職ノ嫌疑ニ關シテ質問ヲ試ミタノデアル、
吾ミハ若シ疑フ所ガアリマシタナラバ、何時デモ質問ヲ爲ス
所ノ權利ヲ有シテ居ルノデアル、併ナガラ此質問ノ事實ガ
若モ全ク所謂火モ無ク煙無ク、架空虚無ノ事實ヲ捏造シ
タモノデアルト云フナラバ、自ラ制裁ヲ免レナイデアリマセウ
(「捏造シタヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)併ナガラ本案ニ現レマ
シタル所ノ事實ハ、既ニ新聞ニ依テ社會ニ公ニサレタル事
實デアルノミナラズ、多數ノ國民ハ此問題ニ對シテハ、頗ル
甚大ナル所ノ疑ヲ持ッテ居ルノデアル、(拍手起リ「其通リ」ト
呼フ者アリ)殊ニ甚シキニ至リマシテハ、經濟界反動ノ原因
モ此國務大臣瀆職ガ其因ヲ成シテ居ルト云フコトモ、信ジ
テ居ル者モアルノデアル、又更ニ甚シキニ至リーマシテハ、政府
與黨ノ選擧ニ於ケル運動費ノ出處ニ就テサヘモ、關聯ヲ致
シテ疑ッテ居ル者モアルノデアル、(拍手起ル)斯ノ如ク種々ナ
ル風說ガ流布サレテ居ル、此場合デアル故ニ、此問題ヲ以テ
唯ダ一場ノ架空的捏造說ト斷ズルコトハ出來ナイノデアル
(拍手起ル)殊ニ又島田君ハ本問題ヲ取扱フニハ、失禮ナガ
ラ餘リ適當ナル人柄デハナイト思フノデアル、株ノ賣買ヲ爲
トス云フガ如キハ、島田君ナラズトモ自ラ他ニ其人アリト私
ハ信ジテ居ル、然ルニ其柄ニナイ所ノ島田君ノ口ヨリシテ尙
且ツ是ダケノ事實ガ曝露サレルト云フコトガアルナラバ、更ニ
之ヲ精査糺問致シマシタナラバ、恐ラクハ是レ以上重大ナル
所ノ事實ガ存在シテ居ル筈デアルト云フコトハ、疑フ者ハ無
イノデアル、(拍手起リ「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)斯
樣ナ次第デアリマスカラ、苟モ斯ノ如キ問題ノ提議サレタ以
上ハ、國務大臣タルモノハ之ニ對シテ、最モ公明正大ナル方
法ニ依テ、是ガ感ヲ解クト云フ義務ハ、當然有シテ居ルベキ
筈ノモノデアル、(拍手起ル)公明正大ナル所ノ方法トハ何
ゾヤ、卽チ佐々木君ヨリ二回マデモ發議サレタル所ノ議院ニ
於ケル査問ニ依テ、始メテ「之ヲヲカニスルト云フコトガ、
是レ以上公明正大ナル方法ハ無イノデアリマス、(拍手起
ル)而モ佐々木君ノ動議ニ對シテハ、政友會ニ於テモ一旦ハ
賛成ヲサレテ居ルノデハナイカ(「ヒヤ〓〓」ト呼ヒ拍手起ル)
前ニモ私ガ述ベマシタル通リ、政友會ヲ代表スル所ノ院內
總務ノ廣岡君ハ、明カニ此壇上ニ於テ查問會ニ賛成ヲ表
シテ居ラレル方デハナイカ、同ジ總務ノ鷄澤總明君、又政友
會ノ長老タル所ノ藏內次郞作君ハ、佐々木君ノ議席ニ就
テ、政友會ハ此佐々木君ノ動議ニ賛成ヲスルモノデアルカ
ラ、廣岡君ノ演說ハ謹聽ヲシテ呉レヨト哀願ヲサレタルノ事
實ガアルノデアル、(拍手起リ「其通リ間違ナシ」ト呼フ者ア
リ)若シ此場合ニ於キマシテ、或ル高處ヨリ落下シタル所ノ、
落チ懸ッタ所ノ或ル壓力ニ對シテ、若シモ猿ノ如ク羊ノ如ク
從順ナラザル所ノ多數ガアッタナラバ、恐ラクハ此査問會ナ
ル動議ハ、完全ニ成立ヲ致シタニ違イナイノデアル、(拍手起
ル)面シテ此査問會ニ於キマシテ、公明正大ナル所ノ審議ガ
進メラレタナラバ、恐ラクハ政友會諸君ガ、最後マデ擁護ヲ
サレタ所ノ山本內閣ノ末路ニ讓ラザル所ノ、一大事實ガ曝
露サレタノデハナイカト信ズルノデアリマス、〓(拍手起ル)然ル
ニ此公明正大ナル所ノ判決ニ訴フルコトヲ爲サズシテ、唯ダ
徒ラニ被嫌疑者タル所/彼ノ三國務大臣ノ手前勝手ナル
所ノ辯明ノミヲ唯一ノ論據トシ、テ而モ此辯明ニ對シテモ、
其內容ニ於テハ頗ル疑ハシキモノガアル、(ヒヤ〓〓ト呼フ者
アリ)現ニ先刻來列ベラレマシタル所ノ、彼ノ多年使用シタ
ル所ノ老女ニ向ッテ七百七十九株ヲ分與シタリト云フガ如
キハ、法律上ノ見解トシテハ何ト言ハレルカモ知レナイ、併ナ
ガラ常識ヲ以テ判斷ヲ致シタナラバ、此事柄ガ抑〓疑惑
ノ中心トナルベキモノデアルト云フコトハ私ハ疑ハナイノデア
ル、斯ノ如キ曖昧ナル、斯ノ如キ偏頗ナル、被嫌疑者ノ陳述
ノミノ唯一ノ論據ト致シマシテ、而モ國家ノ選良國民ノ代
表デアル所ノ島田君ニ對シテ、戰慄スベキ大侮辱ヲ與ヘル
ト云フガ如キハ、何タル輕率ナ事デアラウカ、之ヲシモ多數ノ
横暴ヲ以チ言論ノ壓迫ヲ爲スモノト言ハズシテ、將夕之ヲ
何トカ言ハンヤ、(「橫暴完膚ナシ」ト呼フ者アリ、拍手起ル)
若シ夫レ島田君ノ質問中ニ用キタル用語ノ中、其言辭ノ
穏カナラザルモノアリト致シタナラバ、之ニ對スル所ノ處置
ハ議院ノ規則アリ、慣例アリ、自ラ其途ガアルノデアル、然ル
ニ之ヲ爲サズシテ、直チニ島田君ニ向ッテ斯ノ如キ侮辱ヲ與
ヘルト云フコトハ、單リ島田君ノ問題ニ非ズシテ、議會全體
ヲ侮辱スル所ノモノデアル、(拍手起ル)卽チ神聖ナル所ノ言
論ノ壓迫ヲ爲スモノデアルト私ハ斷ズルノデアル、(「ヒヤ〓〓」
ト呼フ者アリ、拍手起ル)之ヲ要スルニ島田君ハ其與ヘラレ
タル所ノ當然ノ權利ニ依テ質問ヲ爲シタノデアル、其質問
ヲ爲シタ、其事柄デス、質問ヲ爲シタト云フ點ニ於テ、今日
ノ如キ嚴酷ナル所ノ處分ヲ受ケネバナラヌト云フコトハ、何
ト致シテモ承認スルコトハ出來ナイノデアリマス、(拍手)諸
君ハ或ハ多數ヲ以テ、一島田君ヲ此院內ヨリ葬リ去ルコト
ハ出來ルデアリマセウ、併ナガラ一步議院ノ門ヲ出デマシタ
ナラバ、更ニ數千万人ノ島田君有リト云フコトヲ記憶致サ
ネバナリマセヌ、(拍手)此數千万人ノ島田君ニ對シテハ、如
何ニ多數ヲ以テモ、諸君ハ之ヲ如何ニスルコトモ出來ナイノ
デアリマス、(拍手)以上ノ理由ニ依リマシテ、本員ハ此問題
ハ速ニ否決サレンコトヲ希望致スモノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=40
-
041・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 林毅陸君
〔林〓陸君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=41
-
042・林毅陸
○林教陸君 諸君、私ハ只今玆ニ小川君ニ依テ提出セラ
レタル決議案ニ賛成致スモノデアリマス(「良心ガアルカ」ト
呼フ者アリ)議會ニ於テ平常尊敬シテ居リマスル先輩島田
君ニ對シテ、斯ノ如キ決議案ガ提出セラレマシテ、之ニ向ッテ
賛成ヲ表シ、島田君ニ引責ヲ勸告スルト云フコトハ、甚夕情
ニ於テ忍ビナイノデアリマスゲレドモ(「義ニ於テモ然リ」ト呼
フ者フリ)議會ノ權威ノ爲メニ(ノウ〓〓)必要ナル問題デア
ルト思ヒマスカラ、敢テ賛成ノ意見ヲ表シタイノデアリマス、
(拍手起リ「多數黨ノ權威ヂヤナイノデスカ」「默ッテ居レ」ト
呼フ者アリ)近來ノ此議會ノ形勢ヲ見マシテ、私ノ最モ遺
憾ニ感ジマスノハ言論ノ甚ダ放縱ニ流レテ、無責任ナル言
議ガ濫リニ弄バルヽト云フコトデアリマス(拍手起リ「林君ニ
於テ最モ然リ」「ヒヤ〓〓」「良心ニ恥ヂナイカ」ト呼フ者アリ)
或ハ院外ニ於テ、近來ニ於ケル衆議院ノ墮落デアルトカ、色
色ナコトヲ世問デ申シマス、私ハ所謂衆議院ノ堕落ナルモ
ノガアルトハ思ハナイガ
〔「學者ノ堕落」ト呼フ者アリ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=42
-
043・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=43
-
044・林毅陸
○林教陸君(續) 然ルニ此衆議院ノ信用ニ對シテ-權威
ニ對シテ、世間疑ヲ懷キツヽアルト云フコトハ事實デアル、(「政
友會ハドウカ」ト呼フ者アリ)甚ダ私ハ衆議院ノ爲メニ悲ム
ペキ事デアルト思フノデアリマス、(拍手)而シテ(「多數ガ橫
暴ヲ極ムル故ナリ」ト呼フ者アリ)其所謂議會ノ信用ヲ傷ケ
議會ノ權威ヲ辱シメルニ於キマシテ、低級ナル野次云々ノ
如キハ之ハ論ズルニ足リナイ、サウ云フ者ハ私ハ眼中ニ措カナ
イ(「ヒヤ〓〓」拍手起ル)併ナガラ(「低級ナル學者ハ眼中ニ
無シ」ト呼フ者アリ)世間ヨリ見テ信用スベキ政治家ト看做
サレテ居ル人ガ、幾多ノ經歷ヲ持シテ居ル政治家ガ、世間ニ
向ッテハ模範ヲ與フベキ地位ニ居ル政治家ガ、其人ガ餘リニ
無責任ナル(「何ガ無責任ダ」ト呼フ者アリ)言論ヲ弄シテ、
議會ニ於ケル言論ノ信用ヲ傷ケルト云フニ至リマシテハ、如
何ニシテモ私ハ之ヲ見棄テヽ置クコトガ出來ナイノデアル、(拍
手)世間ニ於テ重キヲ措カレナイガ如キ人こノ事柄ハ、マダ
比較的私ハ重キヲ措カナイ、唯ダ島田君ナルガ故ニ大ニ重
キヲ措イテ、此問題ヲ鄭重ニ論ゼザルヲ得ナイ、(拍手)此問
題ニ就キマシテ、實ハ私ハ密ニ島田君ニ同情ヲ寄セテ居ル
ノデアリマス、初メニ於テハ或一新聞ノ記事ヲ材料トセラレ
マシテ、自分ニハ確タル信念モ無イケレドモ、自分ニハ責任
ヲ負フト云フマデノ考モ無イケレドモ、卽チ是ハ新聞社ノ責
任デアルガ、免モ角斯ウ云フ事ガアル、斯ウ云フヤウナコトデ
先ヅ質問ヲ始メラレタノデアリマス、是ハ島田君ノ正直ナル
所ヲ現シタルモノト私ハ思フ、若シ不正直ナ人デアリマシタ
ナラバ、サウ云フ淡白ナ自白ハ爲サラナカッタデアリマセウ、故
ニ私ハ其點ハ島田君ニ對シテ、寧口同情ヲ以テ見ルノデア
ル(「詰ラヌコトヲ言フナ」ト呼フ者アリ)然ルニ斯ノ如キ己レ
ニ確信ナク、唯ダ新聞ニ出テ居ッタカラ新聞ガ責任ヲ持ツノ
デアル、唯ダ新聞ニ出テ居ッタカラ、免ニ角之ヲ御尋スルト云
フヤウナコトデ始リマシタガ、此問題-自分ニ確信ガ無ク
シテ始ッタル此問題ガ(「確信ガアル」ト呼フ者アリ)氣ノ毒ニ
モ意外ノ發展ヲ來シタノデアル、吾〓ハ島田君ニ言フ、何故
君ハ自分ニ確信ナイ問題ヲ持出シタノデアル、(「確信ガア
ル」ト呼フ者アリ)總理大臣ハ曰ク、證據ヲ出シテ來イ(「確
信ガアル」「默ッテ聽ケ」ト呼フ者アリ)證據ヲ出シテ來イ、吾
吾ハ之ニ向ッテ果シテ責任ヲ負フコトガ出來ルナラバ、其實
證ヲ擧ゲヨト迫ル、是ニ於テ島田君ハ餘儀ナクモソレニ釣
込マレテ、深味ヘ深味ヘト入ッテ來マシタノデアリマス、(拍
手)退却スルコトガ出來ナイ破目ニ陷ラレタノデアル、是一
私ハ甚ダ同情スル、寧ロ始リカラ淡白ニ、是ハ實ハソレ程ノ
モノトハ思ッテ居ナカッタ、サウ云フ事實デアルナラバ、我輩ハ
强テ此事ハモウ追窮シナイ、潔ク退却セラルヽナラバ、ソレ
デ宜シカッタノデアル、然ルニ誤レル出發點ヨリ始リタル島田
君ノ質問ガ、勢ニ乘ジ、否ナ勢ニ制セラレテ益〓深味ヘ入ッテ
シマハレタノデアル、サウシテ更ニ第二回ノ質問書ニ於テハ、
始リニ述ベラレタル所ハ好イ加減ニシテシマッテ、其事ハ十
分言フコトガ出來ナイデアリマセウ、サウシテ更ニ新タナル事
實ヲ擧ゲテ、内閣大臣ニ向ッテ瀆職ノ嫌疑デアルト云フヤウ
ナ、又新ラシイ問題ヲ出シタ、益〓深味へ入ラレタノデアリマ
シテ、甚ダ氣ノ毒ニ思フ、而シテ其新タニ提起セラレタル所
ノ事柄ニ就テハ、初メニ述ベテ居ラレタル事柄ト併セテ、當
局大臣ヨリ極メテ的確ナル答辯ヲ與ヘ、辯明ヲ與へ、其證
據ナク杜選極マル所ノモノデアルト云フコトガ明白ニナッタ
ノデアリマス、(拍手)斯ノ如ク明白ニナリマシタ以上ハ、(「何
ガ明白ダ」ト呼フ者アリ)島田君自身モ己レノ言フ所ニ對シ
テハ、責ヲ負フト云フコトヲ自ラ宣言セラレテ居ルノデアリ
マスカラ、其御言葉通リ、男ラシク責ヲ引カレルト云フコトハ
當然デアルノデアリマス、(拍手)若シ之ヲ不問ニ附シテ置キ
マシタナラバ、卽チ無責任ナル言論ヲ其儘看過スルコトニナ
ル、私ハ議會ノ言論ノ權威、議會ノ放縱ナル所ノ言論ニ對
スル世間ノ不信用、之ヲ深ク氣遣ヒマスルガ故ニ、飽迄モ此
點ニ就テノ責任ヲ明ニスル必要ガアルト思フ、(「ヒヤ〓〓」
「林君良心ガアルカ」ト呼フ者アリ)此事ニ就テ反對黨ノ諸
君ヨリ述べマシタ點ニ、一ノ私ハ同感ヲ表スル點ガアル、ソレ
ハ島田君ガ此質問ノ件ニ就テ、再ビ意見ヲ述ベヤウト求メ
ラレテ居ラレル、然ルニ其機會ヲ與ヘナイ儘デ、此決議ヲシ
テシマハウト云フコトハ宜シクナイ、(「其通リ」ト呼フ者アリ)
斯ウ云フ事ヲ言ウテ居ラレマス、是ハ如何ニモ私ハ御尤ダト
思フ、(「其通リこここ」ト呼フ者アリ)併ナガラ此決議案ハ島
田君ノ身上ニ關スル事柄デアリマスルカラ、愈〓最後ノ決ヲ
採ルト云フコトニ先ダチマシテ、必ズ島田君ニ發言ノ機會ヲ
與ヘラルヽコトデアラウト私ハ思フ、(「ソレハ當然ダ」ト呼フ
者アリ)然ラバ其場合ニ於テ、島田君ノ言ハント欲スル所ヲ
十分ニ御述ニナルガ宜シイ、吾ニハ十分之ヲ傾聽スル積リ
デアル、島田君ニ對シテ何等發言ノ機會ヲ與ヘズ、闇カラ闇
ニ葬ルト云フコトハ無イノデアリマス、若シ島田君ガ更ニ意
見ヲ述ベント欲スルナラバ、其決議案ノ採決以前ニ於テ、機
會ハ與ヘラルヽデアラウト私ハ思フ、故ニ此點ニ於テノ反對
黨ノ御議論ニハ同情ヲ表シマスケレドモ、是ハ御心配ニハ
及バナイ、島田君ガ若シ辯明セント欲セラルヽナラバ、其機
會ハ與ヘラルヽデアラウト私ハ思フ(「餘計ナ事ヲ言フナ」ト
呼フ者アリ)色〓唯今マデニ述ベラレタ事柄ニ就テ、政府當
局ノ辯明ガ信用スルニ足ラナイト云フコトニ就テ、(「其通リ
ヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)中橋文部大臣ノ老女タル石渡ヒ
サナル者ノ事ニ就テ、段〓御說ガアッタサウデアリマス、(「ソレ
ハ老女ヂヤナイ」ト呼フ者アリ)其以外ノ事ハ餘リ耳ヲ傾ケ
ルコトハ致シマセヌ、耳ヲ傾ケルダケノ値打ガ無カッタヤウデ
アリマスガ、此石渡ヒサナル者ニ就テハ、事實ガ間違ッテ居ル
ト斯ウ云フ御議論ガアッタノデアリマス、此石渡ヒサナル者ニ
七百七十九株ト云フモノヲ與ヘタト云フノハ、何ダカ僞リデ
アルカノ如ク言ハレタノデアリマス、(「其通リ「然リ〓〓」「君
ノ辯論ノ如シ」ト呼フ者アリ)併シ是ハ唯ダ事實ノ問題デア
リマス、議論ノ事デハアリマセヌ、其石渡ヒサナル者ハ私ノ聞
ク所ニ依レバ、中橋家ニ長ク事ヘテ居リマシテ、中橋文部大
臣ノ息子ガ家ヲ成ス場合ニモ、又其令孃ガ結婚セラルヽ場
合ニ於テモ、常ニ其身邊ニ伴ウテ、一方ナラザル世話ヲ爲シ
(「嘘ヲ吐クナ」「苦シイナ」ト呼フ者アリ)中橋家トハ舊イ關
係ヲ持シテ居ル人デアッテ、現ニ今日ニ於テモ中橋家ニ居ル
ノデアリマス、(「駄辯々々」ト呼フ者アリ議場騒然)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=44
-
045・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御静ニ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=45
-
046・林毅陸
○林教陸君(續) デ或ハ此大林某トカ云フ者ガアッテ、此
議院へ來テ斯ウ云フ事ヲ言ウタト云フコトヲ、憲政會ノ方ハ
言ハレテ居ッタヤウデアリマスガ唯〓聞ク所ニ依レバ、此大林
某ナル者ハ、石渡ヒサナル者ノ長ク相見ザル所ノ人デアリ、最
近ニ於テノ石渡ヒサナル者ノ身上ガ、如何ナル事情ニナッテ
居ルカト云フ事ヲ、一向知ラナイ筈ニナッテ居ルト云フ事ヲ
確メタノデアリマス、(拍手起ル)石渡ヒサナル者ガ中橋家カ
ラドレダケノ扱ヲサレテ居ルカト云フヤウナ事ハ、少シモ與リ
知ラザル所デアル、(拍手起ル)サウ云フ人ガ憲政會ノ諸君
ノ所ヘヤッテ來テ、何カ彼ニカ申シタカラトテ、何モ採用スル
ニ足ラナイノデアル、(拍手起ル)若シ本人ノ石渡ヒサナル者
ガ之ヲ否定スル、本人ガ否定スルト云フコトデアッタナラバ是
ハ問題ニナル、併ナガラ本人ハ否定シナイ、寧口却テ此大林
某ナル者ノ言フコトハ、少シモ信用スベキデナイト云フコトヲ
本人ハ言ッテ居ル、是ハ總テ事實ノコトデアリマス、唯ダ事實
ダケノコトデ議論ノ餘地ハ無イ(「中橋ノ辯護ハ止シ給ヘ」ト
呼フ者アリ)中橋家ト此老女トハ如何ナル關係ニ在ルカト
云フコトハ、單純ナル事實ノ問題、之ヲ以テ强イテ議論ヲセ
ラルヽト云フコトハ、甚ダ吾〓ノ了解シ難イ點デアル(拍手
起ル)況ヤ此場合ノ問題ニナッテ居リマスルノハ、單ニ此石
渡云々ダケノ事デナイ(「皆ナ臭イノデアル」ト呼フ者アリ)其
娘ニ幾ラ株ヲ遣シタ、其息子ニ幾ラ株ヲ分ケテ遺アタ、其事ハ
誰モ否定シナイデハナイカ、サウ云フ二千株ハ息子ニ渡シタ
他ノ二千株ハ娘ニ分ケテ遣ッタ、其餘リ七百餘株ト云フモ
ノヲバ、老女ノ養老ノ資トシテ與ヘテ遣シタトカ、唯ダ一小部
分ノ事デアル、其一小部分ノ事ダケ捉へ來テ、而モ事實ニ
無イ事ヲ言ウテ、强テ之ヲ以テ全體ノ問題ヲ晦マサウト云
フノハ、餘リ卑怯ナ遣リ方デアル、(拍手起リ「ヒヤ〓〓」ト呼
フ者アリ)私ハ此場合ニ於テ多ク言フ必要ハ無イ、若シ論ズ
ルニ足ラザル人物ナラバ免モ角、島田君ノ如キ人ガ、斯ウ云
フ無責任ナル放縱ナル言論ヲ爲シテ、之ニ何等ノ制栽ヲ加
ヘナイトシタナラバ、將來益〓惡惡向ヲ助長スル危險ガアル、
拍手起リ「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)議會ノ信用ヲ高ムルガ
爲メニ、議會ニ於ケル言論ノ權威アラシムル爲メニ、斯ノ如
キ無責任ナル言論ニ對シテハ、斷然タル制裁ヲ加ヘラレンコ
トヲ希望致シマス
〔拍手起リ議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=46
-
047・岩崎勲
○岩崎動君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=47
-
048・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎動君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=48
-
049・岩崎勲
○岩崎勳君 討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
〔「贊成々々」「反對々々」ト呼フ者アリ拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=49
-
050・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ヨリ討論終結ノ動議ガ出
マシタ、之ヲ採決スル先ニ、唯〓島田君ヨリ自己ノ身上ニ
就キ辯明シタイト云フ通告ガアリマシタ、島田三郞君ニ發
言ヲ許シテ、其演說ヲ聽イタ後ニ、岩崎君ノ動議ヲ採決ス
ル考デアリマス
〔拍手起リ「公平々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=50
-
051・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス-島田三
郞君
〔島田三郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=51
-
052・島田三郎
○島田三郞君 諸君、此問題ハ極メテ重大ナル問題デア
リマス、此事ハ內閣ノ信用竝ニ議會ノ信用全部ニ對シテノ
重大問題デアリマス、本員ガ一タビ之ヲ提出シ、再ビ之ヲ提
出スルノ機會ヲ得ントシタル際ニ、其事ノ總テノ手續ヲ中
斷シテ、昨日ノ小川君ノ動議ガ提出セラレタノデアリマス、
其小川君ノ演說ハ議場極メテ喧囂デ、聽取ルコトガ出來ナ
カッタノデアリマス、ソレ故ニ議長ガ之ヲ速記錄ニ記シテ、明
日諸君ニ示シテ、サウシテ之ヲ靜ニ論ゼント云フコトデ、昨
日ノ散會デ告ゲタノデアリマス、大臣ハ列席セラレマシタケ
レドモ、喧囂ノ議場ニ於テ、應酬ヲスル時モ無カッタ位デアリ
マスカラ、本員ガーー議議場騒然)静ニ御聽ナサイ-本員ガ
文書ヲ以テ世ノ中ニ發表致シマシタル彼ノ長キ-僅ニ一
部分ヲ擧ゲテ、大臣ガ自己ノ便利ニ論法ヲ立テヽ答ヘラレ
タト云フコトハ、今朝之ヲ發見スル迄ハ、僅ニ其寫ヲ見テ、
其一端ヲ知ルニ過ギナカッタノデアリマス、斯樣ニシテ本員ハ
其文書ヲ議長ヨリ受取リマシテ、更ニンレニ對シテ再質問ヲ
爲スト云フ、此發議ヲ昨日致シテ、其權利ヲ保留致シタノ
デアリマス、凡ン斯ノ如キ問題ハ、甲是カ、乙非カ、之ヲ決ス
ルニハ、若シ本員ノ議ガ世ノ中ニ容レラレマシタナラバ、少ク
トモ三大臣ハ其椅子ヲ去ラナケレバナラヌ所ノ境遇ニ立ツ
ノデアリマス、(拍手起ル)若シ本員ノ議ガ容レラレザルニ方ツ
テハ、本員ハ諸君ノ請求ヲ待タズシテ、自ラ決スル位ナコト
ハ何デモナイノデアリマス、然ルニ何事ゾ、勿々總テノ應酬ヲ
中斷シ問答ノ機會ヲ與ヘズ、更ニ再度ノ質問書ヲ出サヽル
ニ方ッテ、勿々トシテ諸君ハ此未決ノ問題ヲ確定ノ問題トシ
テ、斯ノ如キ處決ヲ請求セラレルノデアリマスガ、諸君モ亦
甚ダ輕躁ナリト謂ハナケレバナラヌト思フノデアリマス、(拍
手起ル)本員愈〓其事ガ分レバ、自ラ決スルコトハ何デモナ
イノデアリマス、御請求ヲ待タヌノデアリマス、併ナガラ大臣
ノ答甚ダ要領ヲ缺イテ居リマシテ、本員ノ問ウタ所ノモノニ、
巧ニ其論點ヲ避ケテ各ヘラレタノデアリマス、併ナガラ此事
ハ餘儀ナキ境週デ、本員ハ甚ダ不便ヲ感ジタノデアリマス、
若シ幸ニ本月五日佐々木君ノ議ガ容レラレテ、特別ニ調査
委員會ヲ開クコトニナリマシタナラバ、本員モ亦其言ハント
スル所ヲ盡シ、大臣モ其答ヘントスル所ヲ答へラレテ、雙方
天下ニ向ッテ快ク爭ヲ決シ得タルニ、何ノ譯デアルカ匆々ト
シテ廣岡總務ノ議ヲ覆シテ、而モ佐々木君ノ語ル所ニ依レ
バ、是非之ヲ問題トシタイト云フノデ、佐々木君ニ此議ノ提
出ヲ促シタ、政友會議員アルニ拘ラズ、總務廣岡君ノ發議
ヲ無視シテ、直チニ之ヲ暗中ニ葬ッタト云フニ至ッテハ、先ヅ
以ッテ多數ノ御方ガ議會ヲ自由ニシ得ルニ拘ラズ、此決スベ
キ問題ヲ横ニ抑ヘテ、之ヲ未決ニ附シタ所ノ責任ヲ問ハナ
ケレバナラヌト本員ハ思フノデアリマス、(拍手起ル)斯ノ如
クニシテ天下ノ疑ハ懸。テ此議會ニ在リト言ハンヨリハ、多
數黨諸君ノ身邊ヲ蓋ヒ、且ツ三大臣ノ頭上ノ黑雲總テノ
上ヲ隱蔽シタノデアリマス、ソレ故ニ本員ハ再ビ此問題ヲ提
起シテ、諸君ノ判決ヲ乞ハンガ爲メニ、但シ此議場ハ動モス
レバ適當ナル議論、殊ニ其身ニ甚ダ痛烈ナル議論ガアル時
ニハ、常ニ之ヲ支ヘテ、人ヲシテ言論ノ自由ノ甚ダ達シ難キ
ヲ憂ヘシムル傾向ガアリマス、(拍手起ル、議場騒然)現在ン
レガイケナイノデス--ソレガイケナイノデス、貴方ガタガ今私
ノ言ウテ居ル所ノ事ガ、偶〓其實例ヲ現シタノデハアリマセヌ
カ、(拍手起ル「島田ハ惡化シタ」ト呼フ者アリ)靜ニ聽イテ
議スヘキヲ御議シナサイ、(「無證據ノコトヲ言フナ」「此方モ
一個ノ議員ダ」ト呼フ者アリ)靜ニナサイ-ンレ故ニ本員
ハ先ヅ以テ此議會ノ言論ノ自由ノ甚ダ乏シキヲ感ジテ、長
文ヲ草シテ、之ヲ議會ノ中ト同時ニ、議會ノ外ノ人ノ判斷
ヲ乞フコトノ便利ヲ圖ヲタノハ、本員ノ自白スル所デアリマス、
幸ニ天下此議院ノ多數ヲ除イテハ、多大ノ反響ヲ生ジタコ
トハ、本員快ク此議席ヲ去ッテモ(拍手起ル)目的ヲ達シ得
テ、甚ダ快ク感心スルノデアリマス、諸君ハ多數ノ意ヲ以テ
本員ヲ此議場カラ去ラシムルナナバ、甘ンジテ受ケルノデア
リマス、(拍手起ル)最早議論ハ無イト思フ、然ラバ何故ニ此
場合ニ於テ本員ガ此處ニ立ッタカト申シマスレバ、昨日匆卒
ニ本員ニ催促ヲセラレタ所ノ手續ガ、甚ダ違法違例デアル、
若シ本員ニ加ヘルニ斯ノ如キ宜シカラザル例ヲ以テシタラ
バ、明日ハ諸君ノ上ニ矢張斯ノ如キ事ノ起ルト云フコトハ、
議院ノ爲メニ痛嘆息シナケレバナラナイノデアリマス、(拍手
起ル)ソレ故ニ先ヅ以テ本員ハ此手續ヲ非難シナケレバナ
ラヌ、何故ニ大臣ノ答ガ終リノ決定ノ事實デアルト斯樣ニ
申サレルノデアルカ、本員ノ論ジタ所ニ較ブレバ殆ト四分一
位キヨリ外言ッテナイノデアル、本員ハ總テノ問題ニ亙ッテ今
ノ政界ノ腐敗、殊ニ政黨社會ト商業家ト全ク同心一體ノ
如ク陷ッテ、天下ノ腐敗今ノ時ニ極マルコトヲ世ノ中ニ告ゲ
テ、此廓〓ヲ圖ルノ端〓ヲ啓キタイト思ウタノデアリマス(拍
手起ル)再質問ニハ詳シク之ヲ論ジテ、證ヲ擧ゲ實ヲ告ゲテ
殊ニ高橋君ガ自ラ傲然トシテ過去ノ歴史ヲ飾ルガ如ク言
做サレタ祕露事件ノ眞相モ、私ノ提出シタ再質問ニ載ッテ
居リマス、此再質問ヲ議場ニ讀ムノ暇モ與ヘズ、此再質問
ガ出タト、云フコトノ報告モナイ中ニ、直チニ大臣ノ陳列シタ
彼ノ無意味ナ形式的ナ答辯ヲ以テ、最後ノ確定ノ事實ノ
證據ダトシタト云フコトハ、抑〓吾〓同志ノ受ケザル所、本
員モ亦之ヲ甘受セザル所ノモノデアリマス、本員ノ考ニ依リ
マスルト、政治上ノ栽決ト裁判所ニ於ケル法律上ノ裁決ト
ハ、全ク範圍ガ違シテ居リマス、議會ハ政治道德ノ上ニ立ッテ
社會ノ信用ニ依ッテ論ズベキ所ノ廣キ範圍ヲ有ッテ居リマス、
直接ノ證據ヲ擧ゲントスレバ、證人ヲ呼バナケレバナラヌ、議
會ハ此權限ガ無イ、嫌疑ヲ受ケタ人ノ家ノ證據ヲ押へ、或
ハ彼ノ相場的證據物ニ就テハ、帳簿モ押ヘナケレバナラヌノ
デアリマス、是モ議會ニハ權限ガ無イ本員ガ指摘シタ所ノ
住友銀行ニ預ヶ置イタト云フコトハ是ハ住友銀行ノ帳簿
ヲ調ヘレバ、確ニ私ハ確信シテ、昨日ノ大臣ノ答辯ハ僞デア
ルト云フコトノ斷言ヲ致シマス、(拍手起ル「裁判所へ願ヒ
給マヘ」ト呼フ者アリ)裁判所ハ刑法其他ノ法律ノ支配ス
ル所、立法部議會ハ左樣ナ狹キモノデハアリマセヌ、總テノ
證據ハ間接ナリ直接ナリ、世ノ中ノ周ク見ル所ノ前ニ立ッテ、
信用何レニ屬スルカト云フコトヲ栽決シ得ベキ所ノ立法部
デアリマス、諸君ガ之ヲ區裁判所ニ較ベルコト勿レ、又之ヲ
地方裁判所ト竝ブルコト勿レ、諸君ノ權限ハ更ニ是ヨリ
大ナルモノガアリマス、(拍手起ル)但シ證據ノ擧ゲ難キ事恰
モ、和姦罪ト同ジキ所ノ相場案デアリマス、預ケル者モ尙且
ツ託セラレタ者モ祕密ニ、雙方互ニ便宜ノ爲メニ隱レ合ウ
モノデアリマス、加フルニ今擧ゲタ所ノ直接證人ヲ喚ブコト
能ハズ、帳簿ヲ調ベルコト能ハズ、如何ニシテ一家ノ事ヲ修
飾シテ僞リノ答辯ヲ與ヘルト云フコトニ、的確ナル反證ヲ擧
ゲルコトガ出來マスカ、之ガ裁判所ト議會ニ於ケル所ノ辯
論ノ違デアリマス、併シナガラ本員ハ既ニ世ノ中ニ前ノ質問
ヲ公ニスル機會ヲ得タノデアリマスカラ、僅ニ此議會ニ居ル
所ノ二百八十名ノ非難ヲ何トモ心ニ留メヌノデアリマス、
(「泣言ヲ言フナ」ト呼フ者アリ)、拍手起リ議論騒然)且ツ
以テ議長ノ手許ニ差出シタル所ノ、速ニ公ニセンコトヲ請ウテ
置イタ所ノ第二回ノ質問書ニ依テ、略〓其眞相ヲ知ルト云フ
コトヲ私ハ信ジテ居リマス(拍手起リ發言スル者多シ)之ヲ
此議場ニ公ニセシメザルノハ、本員ノ責任ニ非ズシテ、諸君
ガ今迄此問題ヲ遷延セシメタ所ノ五日ノ彼ノ結果デアリマ
スル、更ニ相當ナル手續ヲ經ズシテ再質問モ爲サシメズシテ
直チニ此問題ヲ提出セラレタル所ノ諸君ノ責任デアリマス、
併シナガラ私ハ明カニ言フ、(「又新聞カ」ト呼フ者アリ、議場
騒然)新聞デナイ、確カナ事デアル-證人デアル、昨日ノ文
部大臣中橋德五郞君ノ答ハ虛僞デアルコトヲ、私ハ爰ニ明
言致シマスル、虚僞ノ證據ヲ擧ゲマスル、略〓此事ニ就テハ前
ニ(「發言スル者多ク議場騒然)靜ニ御聽ナサイ-石渡ヒ
サト云フノハ、昨日文部大臣ガ云々セラレ、更ニ小川君ガ一
家ノ美事トシテ之ヲ披露セラレタル所ノ本人デアリマス、此
本人ノ籍マデモ總テ私ノ手ニ入ッテ居リマス、是ハ靜岡縣下
ノ豆州吉濱ノ住人デアリマス、(「發言スル者多ク、議場騒
然)諸君ハ本員ノ適切ナル證據ヲ聽クノガ耳ガ痛イノカ痛
クナケレバ御聽ナサイ-默ッテ御聽ナサイ(、「發言スル者多
ク議場騒然)幾ラ貴方ガタガ妨ゲテモ此處ニ咫尺ノ間ニ在
ル所ノ速記者ノ手ヲ借リテ、之ヲ記シテ天下ニ告ゲルノデア
リマス、然ル時ハ文相其椅子ニ安ズルヲ得ルヤ否ヤ-的
確ニヤリマス、是ハ大林デアリマセヌ、大村虎雄ト云フ人デ
アリマス、是ハ石渡ヒサノ姪ニ當ル所ノ主人、卽チ良人デア
リマス、此者ガ今日出京ヲシテ、數人ノ前ニ此關係ヲ明白
ニ述ベタノデアリマス、是ハ天ノ與ヘタル所ノ證人ヲ喚ブコ
トノ出來ナイ議會ノ爲メニ、自ラ奮ッテ證人トナッタノデアリ
マス、多數ノ傍聽者ノ耳ニ達シ得ベキ所ノ此〓末ヲ披露ス
ルヲ得ルノハ、今ノ內閣ノ大臣ハ信用薄キコト、紙ノ如キモ
ノデアルト云フコトヲ議會ニ披露スルコトノ出來ル證人デ
アリマス、(拍手起ル)石渡ヒサハ曾テ或人ニ嫁シマシテ、再
ビ戾ッテ中橋家ニ住ヘテ居リマシタ、仕ヘテ居ルノハ十四五
年ノ間、テアリマス、二度目ノ良人橋本某ニ此ヒサガ曾テ語ッ
テ中シマスルニハ、奧樣ノ名義ニスルコトガ出來ヌカラ、オ前
ノ名義ヲ貸セトノ思召ノ依賴ガアリマシタ、(拍手起リ發言
スル者多ク議場騒然)是ガ唯今ノヒサノ明言デアリマス、此
株劵ハ(「發言スル者多ク議場騒然)靜ニ御聽ナサイ-怖
クナケレバ靜ニ御聽ナサイ(「島田君ユックリ」ト呼ヒ議場騒
然)靜ニ爲サイ-別ニ同僚ノ述ベタル如ク、此株ノ數ハ時
價ニ積リマシテ十七万圓程ノモノデアリマス、(「發言スル者
多ク議場騒然)先ヅ段々ニ事實ヲ吐クカラ默ッテ御在テナサ
イ、騒ゲバ何時マデモ立ッテ居リマス、此通リ明白ニ言フカラ
本人ガ此事ガイケナケレバ自ラ退クノデアリマス、當前ノ事
デ、催促ヲ受ケルマデモナイノデアリマス、(「發言スル者多ク
〓場騒然)痛クナケレバ默ヲテ居ラッシヤイ-此說ヲ話シ傳
ヘタト云フコトハ、今申シマスル大村虎雄君ノ數人ノ前ニ、
明白ニ語ッタ談話デアリマス、然ルニ其後ニ打絕ヘテ何ノ報
告モナク、石渡ヒサノ生計甚ダ裕デナイガ爲メニ、親族知己
ノ者ノ常ニ心添ヲ致シテ居ルト云フノガ、是亦物語ッタ所ノ
一部デアリマス、所ガ故〓ニ在ッテ時事新報ヲ讀ンデ斯ウ云
ウコトガアッタ、中橋文相ノ答辯ノ日ニハ、(「發言スル者多
ク議場騒然)痛イカ諸君-痛ク感ズルカ-痛ク感ジナケ
レバオ默リナサイ-痛クナケレバオ默マリナサイ(「議長ハ議
場ヲ制スベシ」ト呼フ者アリ)此有樣ハドウダ-甚ダ妨ゲテ
居ル-今朝ノ時事新報ヲ讀ンデ、中橋文相ノ答辯、小川
平吉君ノ決議案ノ演說中ニ、孰レモ日本窒素株式會社株
式七百餘株ヲ報酬トシテ贈ラレタ-疑團デアルト吹聽サ
レタト聞ク、大村虎雄君ハ直チニ大村君ノ細君ノ母、卽チ
石渡ヒサノ姉ニ、此記事ヲ示シテ之ヲ質シタルニ、之ヲ否定
致シマシタ、何故ナラバ斯ノ如キ厚キ酬ヲ受ケテ居ルナラバ、
相當ナ禮儀ヲ盡サナケレバナラヌ、不斷文書ノ往來アルニ
拘ラズ、曾テ左樣ナルコトヲ承ラヌ、加フルニ親戚一同其身
元ヲ甚ダ案ジテ常ニ苦心シテ居ルト云フ事實ヲ、併セテ物
語ッタノデアリマス、是ニ至ッテ吾〓ハ求メズシテ、中橋文相ハ
人ヲ欺イタト云フコトヲ表明ヲ致スノデアリマス、(拍手起
リ發言スル者多ク議場騒然)洵ニ疑事ニ非ズシテ、而モ文
〓ヲ掌リ、風化ヲ掌ル人ガ、斯ノ如キ事ヲ言ッタニ至ッテハヽ
本員斷然其所見ヲ(議場騒然)····シナケレバナラヌト思ヒ
マス、本員ハ最モ公平ナル決議ニ依リ、順序ヲ經テ本員ノ
處決ヲ促スナラバ、唯々トシテ命ヲ奉ジマス、又然ラザルモ
本員ノ良心ガ、斯ノ如キ事ノ虚僞デアルト云フコトヲ語ッタ
ナラバ、本員自ラ退クノハ何トモ思ウテ居ラヌノデアリマス、
議決ノ御手數ハ要ラヌノデアリマス、併ナガラ今申シタ大村
虎雄君ハ傍聽劵ヲ得テ、唯〓此傍聽席ニ居ッテ、本員ガ之
ヲ披露スルコトノ親シク聽イテ居ル所ノ一人デアルト云フコ
トヲ、私ハ玆ニ明言致シマス、(拍手「貧弱ナリ」「ソレダケカ」
ト呼フ者アリ)其餘一般ノ政務ニ當ル所ノ不正事件、其他彼
等ノ-(發言スル者多ク、議場騒然)過去ニ遡フタ所ノ高
橋君ノ人格ヲ信ゼサル所以ノ事實、卽チ(「島田君老イタ
リ」ト呼フ者アリ)秘露事件モ私ハ質問者ニナッテ居リマスガ
若シ諸君ガ之ヲ聽クダケノ雅量ガアッタナラバ、緩と御覽ニ
ナルコトヲ本員ハ渴望ニ堪ヘヌノデアリマス、(拍手一貧弱貧
弱」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=52
-
053・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 討論終結ノ動議ニ就テ採決シマ
スルガ、一寸一言シマス、島田三郞君ノ再質問書ハ、本日
午前十時四十分頃ニ出マシタ、本會議ヲ開イテ三十分程
經チマシテカラ出マシタ、早速謄寫ヲシテ一通ハ十二時頃
ニ內閣ヘ廻シマシタ、議長ハ速ニ手續ヲ運シデ居ルコトヲ一
言シテ置キマス-岩崎動君ノ討論終結ノ動議ニハ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=53
-
054・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 異議ナイト認メマス、採決致シマス
佐々木安五郞君ノ修正案ハ起立ニ諮ヒマス、此修正案ハ
演說ニ於テ述べラレマシテアリマセウデ、諸君ハ能ク御承知
デアラウト思ヒマスガ念ノ爲メ申シマス、小川君提出ノ決議
案中「議員島田三郞君提出高橋大藏大臣云々ノ質問ハ」
ソレ以下ヲ削除シテ、其質問「ニ對シ以上三大臣ハ進ムデ
徹底的闡明ノ態度ヲ取ラズ一片ノ辯明書ヲ以テ七千万
人民ノ視線ヲ糊塗セムトスル者ト認ム斯ノ如キハ官紀振
〓風〓維持ノ上ヨリ國民思想ヲ惡化スル虞アリ依テ以上
三大臣ハ速ニ引責處決スヘシ」斯ウ云フ修正案デアリマス、
此修正案ニ同意ノ諸君ニ起立ヲ命ジマス
〔修正案賃成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=54
-
055・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 修正案ハ卽決ニナリマシタ-小
川君ノ····(「卽決デハ判ラヌ」「卽決否決ダラウ」ト呼フ者ア
ツ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=55
-
056・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 否決ニナリマシタ-小川君ノ島
田君ニ對シテ處決ヲ求メルト云フ決議案、是ハ記名投票ニ
依テ採決シマス、小川君ノ決議案ニ賛成ノ諸君ハ白票、反
對ノ諸君ハ靑票-閉鎖-指名點呼ヲ命ジマス
〔原田書記官氏名ヲ點呼ス」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=56
-
057・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 投票漏ハアリマセスカ
〔「アル〓〓」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=57
-
058・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 投票漏ハアリマセスカ
〔「アリマセヌ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=58
-
059・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 投票漏ハ無イト認メマス-開
鎖-開匣-投票ノ結果ヲ報〓シマス
〔寺田書記官長朗讀〕
投票總數四百二十一
可トスル者二百六十四
否トスル者百五十七発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=59
-
060・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 小川平吉君提出ノ決議案ハ可決
サレマシタ(拍手起ル)
決議案ヲ可トスル議員ノ氏名左ノ如シ
石井三郞君今井今助君今泉嘉一郞君
石川善盛君岩崎宗茂助君市村貞造君
岩切重雄君一宮房治郞君禱苗代君
飯島信明君伊藤虎助君岩崎動君
井上敬之助君池田龜治君井坂豐光君
岩崎幸治郞君井上角五郞君石川玄三君
岩本平藏君伊坂秀五郞君伊澤平左衞門君
磯田条三郞君伊藤廣幾君池田猪三次君
原田十衞君八田宗吉君林毅陸君
花岡次郞君長谷川宗治君長谷場敦君
花城永渡君原田佐之治君原夫次郞君
原田藤次郞君濱口吉兵衞君萩亮君
波多野承五郞君秦豐助君鳩山一郎君
西澤定吉君西川嘉門君西村正則君
西村伊亮君本多貞次郞君堀切善兵衞君
友常穀三郞君戶狩權之助君富安保太郞君
陣軍吉君小田切磐太郞君岡崎邦輔君
小山田信藏君小川平吉君大久保虎吉君
大石大君岡田伊太郞君大島實太郞君
大林森次郞君長田桃藏君大岡育造君
岡順次君渡邊修君若尾幾造君
若林德懋君渡邊祐策君河相三郞君
柿原政一郞君河崎清君金光庸夫君
加藤重三郞君改野耕三君海原〓平君
粕谷義三君加藤久米四郞君川原茂輔君
川村數郞君神田重義君風間八左衞門君
海江田準一郞君河上哲太君吉植庄一郞君
吉原祐太郞君吉原正隆君吉木陽君
米田穣君米澤與三次君吉野小一郞君
横山寅一郞君高橋本吉君高見之通君
高橋辰二君瀧正雄君高柳淳之助君
田中定吉君田邊熊一君高橋義信君
田村順之助君高島七郞右衞門君高木第四郞君
竹澤太一君高橋光威君高田良平君
玉置良直君高野毅君高山長幸君
竹上藤次郞君龍野周一郞君武田德三郞君
田中隆三君高橋善五郞君津野田是重君
津崎尙武君塚原嘉藤君土屋興君
坪田十郞君鶴見孝太郞君根本正君
中山佐市君中村〓造君成田榮信君
成田直一郞君中倉万次郞君南里琢一君
長峰與一君中島守利君永井作次君
中島鵬六君永屋伐君仲田德三君
中村喜平君向井倭雄君武藤金吉君
梅田潔君上塚司君植塲平君
字野勇作君鵜澤總明君上埜安太郞君
植竹龍三郞君內山安兵衞君野村勘左衞門君
野村治三郞君野副重一君野口忠太郞君
野呂駿三君國重政亮君久木田叶君
黑住成章君熊谷直太君久慈貫一君
藏内次郞作君久下豊忠君國澤新兵衞君
山口義一君山本条太郞君山本〓三郞君
山田永俊君山口熊野君安原仁兵衞君
谷津新八郞君柳原九兵衞君矢野丑乙君
山本悌二郞君山崎猛君八木逸郞君
山口嘉藏君牧山耕藏君松岡俊三君
前田米藏君舞田壽三郞君松田源治君
松野鶴平君松山常次郞君松本孫右衛門君
牧野良三君丸山嵯峨一郞君松浦五兵衞君
益谷秀次君麓純義君福井三郞君
福井甚三君深見寅之助君小鹽八郎右衞門君
古林與六君古林新治君小泉策太郞君
小久保喜七君小坂順造君江崎幸太郞君
遠藤良吉君穴水要七君阿部武智雄君
淺石惠八君靑木恆太郞君有馬秀雄君
秋本喜七君赤田瑳一君靑柳郁次郞君
佐藤寅太郞君坂本素魯哉君齋藤壽雄君
佐藤良平君三枝彦太郞君阪上貞信君
佐野正雄君指田義雄君崎山克治君
櫻內幸雄君佐々木志賀二君澤來太郞君
榊田〓兵衞君齋藤鷲太郞君菊池長右衛門君
〓澤規矩雄君吉良元夫君菊川惣吉君
木下甚三郞君宜保成晴君木村〓三郞君
木下謙次郞君北井波治目君木村作次郞君
木下十四三君北山一郞君三好德松君
宮崎三之助君三善清之君水野吉太郞君
宮崎友太郞君宮古啓三郞君三土忠造君
白井博之君志賀和多利君下出民義君
島本信二君島田俊雄君〓水市太郎君
廣岡宇一郞君匹田銳吉君廣瀨鎭之君
樋渡次右衛門君日野辰次君平田民之助君
廣瀨爲久君樋口伊之助君毛里保太部君
門田新松君森恪君望月圭介君
妹尾順平君〓崟太郞君菅原傳君
管野傳右衞門君鈴木巖君鐸木三郞兵衞君
鈴木錠藏君鈴木義隆君井內歡二君
若尾璋八君上田彌兵衞君松田三德君
越山太刀三郞君佐々木平次郞君三輪市太郞君
決議案ヲ否トスル議員ノ氏名左ノ如シ
一柳仲次郞君磯貝浩君石井〓二君
井上剛一君橋本喜造君早川龍介君
濱口雄幸君早速整爾君本田恆之君
本間三郞君中馬興丸君大竹貫一君
岡本幹輔君大津淳一郞君太田信治郞君
小野重行君尾崎行雄君春日俊文君
加藤定吉君香川保忠君川副綱隆君
門屋尙志君金澤安之助君神谷彌平君
河野廣中君金尾稜嚴君金田平兵衞君
横山勝太郞君吉田磯吉君横山金太郞君
吉川吉郞兵衞君武內作平君田川大吉郞君
田中武雄君賴母木桂吉君龍口了信君
高田耘平君高橋久次郞君田中萬逸君
武富時敏君高木正年君田中善立君
添田飛雄太郞君津原武君内藤濱治君
永井柳太郞君中野寅吉君紫安新九郎君
鵜澤宇八君野村嘉六君野尻彌重郞君
野呂丈太郎君野田文一郞君黑金泰義君
山移定政君山道襄一君山邊常重君
八並武治君正木照藏君松井鉄夫君
牧口義矩君藤井啓一君福本〓之輔君
降旗元太郎君古屋慶隆君古賀三千人君
小山松壽君木檜三四郞君小泉又次郞君
出口直吉君手島鍬司君淺賀長兵衞君
安達謙藏君秋乕太郞君荒川五郞君
阿由葉勝作君淺野順平君綾部惣兵衞君
佐々木千秀君作間耕逸君佐竹庄七君
齋藤宇一郎君坂口仁一郞君齋藤巳三郞君
定行八郞君佐藤啓君菊池良一君
三浦得一郞君箕浦勝人君重松重治君
〓水留三郞君下田勘次君下岡忠治君
樋口秀雄君平出喜三郞君森達三君
森山儀文治君森田茂君關和知君
鈴木周三郞君鈴木富士彌君板野友造君
石川長右衞門君濱田國松君西村丹治郞君
星島二郞君土井權大君大口喜六君
渡邊昭君高柳覺太郞君高草美代藏君
中川幸太郞君長場龍太郞君村田虎之助君
植原悅二郞君倉石知藏君前川虎造君
福地錢吉君古島一雄君近藤達兒君
鮎川盛貞君有森新吉君〓瀨一郞君
湯淺凡平君最上直吉君關直彦君
鈴木梅四郞君砂田重政君飯塚春太郞君
奥村千太郞君奧村安太郞君荻田悅造君
鎌田三郞兵衞君難波作之進君上畠益三郞君
納富陳平君矢島專平君山邑太三郞君
小菅劍之助君南鼎三君森下龜太郞君
守屋松之助君仙波太郞君富永孝太郞君
大濱忠三郎君押川方義君田淵豊吉君
副島義一君中野正剛君野溝傳一郞君
山本厚三君山科愼次郎君松下禎二君
松本君平君安藤正純君秋田〓君
佐々木安五郞君
〔島田三郞君發言ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=60
-
061・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 島田三郞君-議長ハ島田君ガ
此決議ノ結果ニ就キマシテ、發言ヲ求メラレマシタモノト認
メマシテ、之ヲ許シマス
〔島田三郎君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=61
-
062・島田三郎
○島田三郞君 本員ハ小川君提出ノ決議案ガ可決セラ
レテ、本員ノ自決ヲ促スト云フコトノ報告ヲ承リマシタ、本
員ハ此不當ノ決議ニ服從シマセヌ、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者ア
リ拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=62
-
063・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 一時間許リ休憩致シマス
午後一時十九分休憩
午後三時二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=63
-
064・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔原田書記官朗讀〕
一今二十七日貴族院ヨリ廻付セラレタル政府提出案
左ノ如シ
道路公債法案
所得稅法改正法律案
明治四十一年法律第三十七號中改正法律案
一今二十七日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ議
案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)
北海道拓殖鐵道補助ニ關スル法律案(政府提出)
大正八年法律第五號中改正法律案(政府提出)
朝鮮ニ於ケル國勢調査ニ關スル法律案(政府提
出
電信事業公債法案(政府提出)
電話事業公債法中改正法律案(政府提出)
朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出)
臺灣事業公債法中改正法律案(政府提出)
樺太事業公債法中改正法律案(政府提出)
國債償還資金ノ繰入ヲ爲サヽルコトニ關スル法律
案(政府提出)
事業公債金特別會計法中改正法律案(政府提
〓
大正五年法律第四號中改正法律案(政府提出)
國債整理基金特別會計法中改正法律案(政府提
也
家祿賞典祿處分法施行法中改正法律案(政府提
也
鐵道國有法中改正法律案(政府提出)
京釜鐵道買收法中改正法律案(政府提出)
成田鐵道及中越鐵道買收ニ關スル法律案(政府
提出)
一今二十七日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ議
案ニ對シ承諾スルコトヲ議決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ
受領セリ
大正七年度豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
大正七年度豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外
支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
大正七年度特別會計豫備金支出ノ件(承諾ヲ求
ムル件)
大正七年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算超過
及豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
大正七年度大正三年度臨時事件豫備費支出ノ
件(承諾ヲ求ムル件)
大正七年度大正三年度臨時事件豫備費外ニ於
テ豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
大正七年度帝國鐵道特別會計積立金支出ノ件
(承諾ヲ求ムル件)
大正七年度帝國鐵道特別會計積立金外ニ於テ
豫算超過支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
一今二十七日議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
茨城縣ニ於ケル人權蹂躪ニ關スル再質問主意書
提出者横山勝太郞君鈴木富士彌君
大津淳一郞君
高橋大藏大臣、山本農商務大臣、中橋文部大臣
瀆職ノ嫌疑ニ關スル再質問主意書
提出者島田三郞君
一今二十七日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員松本君平君提出普通選擧ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
衆議院議員森下龜太郞君提出特別市制制定ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員橫山勝太郞君提出明治會館ニ於ケル
警察官ノ職權濫用ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員中野正剛君提出外交ニ關スル再質問
ニ對スル答辯書
大正九年七月二十七日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郎殿
衆議院議員松本君平君提出普通選擧ニ關スル質問ニ
對シ別紙答辯書差進候也
(別紙)
衆議院議員松本君平君提出普通選擧ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
政府ハ現在ノ國情ニ於テ現行衆議院議員選擧法ノ規
定ヲ適當ト認メ亦一般國民モ之ニ滿足ヲ表スルモノー
思惟ス市制町村制ニ付テハ次期ノ帝國議會ニ改正案
提出ノ見込ナリ
右及答辯候也
大正九年七月二十七日
內務大臣床次竹二郞
大正九年七月二十七日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郞殿
衆議院議員森下龜太郞君提出特別市制制定ニ關ス
ル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員森下龜太郞君提出特別市制制定ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
特別市制ノ制定ニ關シテハ政府ハ目下攻究中ニシテ未
タ成案ヲ得ルニ至ラス
右及答辯候也
大正九年七月二十七日
內務大臣床次竹二郞
大正九年七月二十七日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員横山勝太郞君提出明治會館ニ於ケル警察
官ノ職權濫用ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員橫山勝太郞君提出明治會館ニ於ケル
警察官ノ職務濫用ニ關スル質問ニ對スル答辯書
本月二十二日明治會館ニ於ケル演說會ハ會衆騒擾ノ
結果混亂ニ陷リタルヲ以テ解散ヲ命シタルニ尙煽動不
穏ノ行動ニ出ツルモノアリ益、騒擾ヲ極メ會衆中爭鬪
ヲ爲スモノアルノ狀況ナルヲ以テ警察官ニ於テ公安維持
上檢束其他必要ナル措置ヲ講シ漸ク事ナキヲ得タリ而
シテ質問書記載ノ如キ警察官カ某々ニ對シ暴行ヲ加ヘ
又ハ殘酷ナル取扱ヲ爲シタル事實ヲ認メス
言論集會ニ對シテハ政府ハ常ニ其自由ヲ尊重シ公安維持
上必要ナル限度ニ於テ之ガ制限フ加フルノ方針ヲ執リ
警察官吏ニ於テモ職務執行上亦此趣旨ヲ體シ法規ノ
範圍ヲ逸シ橫暴不法ノ行爲ニ出ツルモノアルヲ認ハス唯
世上往々虛構ノ事實ヲ流布シ官民ノ間ニ於ケル感情ノ
疎隔ヲ謀ルカ如キモノアルハ甚遺憾トスル處ナリ
右及答辯候也
大正九年月日
內務大臣床次竹次郞
大正九年七月二十七日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郎殿
衆議院議員中野正剛君提出外交ニ關スル再質問ニ對
シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員中野正剛君提出外交ニ關スル再質問
趣意書ニ對スル答辯書
一質問者ノ所謂革命露西亞トハレーニン政府ノ下ニア
ル露西亞ヲ指稱スルモノノ如シ果シテ然ラハ政府ガ從
來革命露西亞ト接近ヲ計ラザリシハ決シテ宗〓的ニ
之ヲ嫌忌シタルガ故ニ非ス其政策施爲ニ於テ到底承
認シ難キモノアリシガ爲ナリ乍去之ヲ國際的實在トシ
テ取扱フノ意ナキヤ否ヤノ質問ニ對シテハ旣ニ或程度
ニ於テ右ノ通之ヲ取扱居レリト答フルヲ得ヘシ
二英國政府カレーニン政府ノ通商使節ト交涉ヲ爲シタ
ルハ果シテレーニン政府承認ノ前提ト爲ルベキヤ否ヤ
今日ニ於テハ未タ斷言シ難シ
三列國ハ未タレーニン政府ニ對シ事實上ノ承認ヲ與ヘ
タルモノト認メス
四列國ガレーニン政府ヲ承認スルノ方針ニ傾ケルヤ否ヤ
未タ遽ニ斷定シ難シサガレン州内必要地點竝沿海州
ノ駐兵ハ七月三日宣言ノ事情ニ因ルモノニシテ右駐
兵ノ結果生スルコトアルヘキ今後形勢ノ發展ハ不絕
注意ヲ拂フヨリ致方ナキヲ信ス
五米國ノ對露方針ガ果シテ質問者ノ見ル所ノ如キヤ否
ヤ言明シ難シ駐兵ノ趣旨ハ宣言ニ明カナル如ク公明
正大ナルヲ以テ列國ニシテ我趣旨ヲ諒解スル以上駐
兵ノ爲排日ノ氣勢ヲ猛烈ナラシムル虞アリト認ムルコ
トヲ得ズ支那ニ於テハ排日運動ハ爾來下火トナリ露
西亞ニ於テモ別ニ排日ノ勢昂進シタリトハ認ムル能ハ
ス
六英國海外領土ノ日英同盟ニ對スル態度ハ政府ニ於
テ未タ之ヲ確知セス政府ハ英國政府ト接觸ヲ保チテ
事ヲ處理スルノ決心ナリ
七南太平洋諸島ニ對スル委任統治ノ問題ニ關シテハ目
下交涉中ニ屬シ其ノ內容ニ至ッテハ未タ之ヲ言明スル
ノ時期ニ達セス
八政府ハ國際關係ニ於テ帝國利益ノ維持及伸長ニ最
善ノ努力ヲ爲シツツアリ
九政府ハ七月三日ノ宣言ノ趣旨ニ於テサガレン州內ノ
必要地點ヲ占領セルモノニシテ今日質問者ノ言フカ
如キ趣旨ノ表明ヲ爲ス所存ナシ政府ハ內外ノ情勢ニ
顧ミ其ノ最善ヲ盡シツツアル次第ニテ豫見シ難キ事
體ノ發展ニ關シテハ今日ニ於テ明言シ難シ
右答辯候也
大正九年七月二十七日
外務大臣子爵內田康哉
奈良縣第二區選出議員森岡京次郞君ノ補閱トシテ去
二十二日福井甚三君當選確定シタル旨ノ通牒ヲ受領
セリ
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭
載ス〕
普通選擧ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正九年七月三日
提出者松本君平賛成者佐々木安五郞
外三十二人
普通選擧ニ關スル質問主意書
一明治四十四年第二十七囘議會ニ於テ納稅資格ヲ撤
廢シ二十五歲以上ノ男子ニ選擧權ヲ與フヘシトスル
普通選擧法案ハ多數ヲ以テ衆議院ヲ通過シタリ此ノ
事實ハ當時既ニ輿論カ普通選擧ヲ認メタルモノト信
スヘキ理由アリ之ニ對スル政府ノ所見如何
二今回ノ總選擧ノ結果政府黨カ多數ヲ制シタルハ國民
カ普通選擧ノ實施ニ反對スル意思表示ナリトスルヤ
之ニ對スル政府ノ所見如何
三政府ハ本議會又ハ近キ將來ニ於テ普通選擧法案ヲ
議會ニ提出スルノ意思ナキヤ
四政府ハ現行市町村三級制度ヲ廢シ普通選擧制ヲ實
行スル意思ナキヤ
五急激ナル時代ノ變化ニ對スル政治的施設ノ之ニ伴ハ
サルヨリ生スル反動的不平カ遂ニ民衆ヲ驅テ直接行
動ニ賴ラシメムトスル險惡ナル現時ノ傾向ニ對シ普通
選擧ノ實施カ此ノ社會的政治的危機ヲ緩和スル效
果ナシトスルヤ之ニ對スル政府ノ所見如何
六婦人參政權ノ要求及獲得ハ戰後ニ於ケル世界的現
象ニシテ同一ノ運動ハ現ニ我カ國ニ於テモ勃興シツヽ
アリ之ニ對スル政府ノ所見如何
右及質問候也
特別市制制定ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正九年七月十日
提出者森下龜太郞賛成者奧村安太郞
外三十一人
特別市制制定ニ關スル質問主意書
政府ハ東京市及大阪市ニ特別市制制定ノ意アリヤ其
ノ意アリトセハ之カ法律案提出ノ時期如何
右及質問候也
明治會館ニ於ケル警察官ノ職權濫用ニ關スル質問
主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正九年七月二十四日
提出者橫山勝太郞賛成者吉川吉郞兵衞
外二十九人
明治會館ニ於ケル警察官ノ職權濫用ニ關スル質
問主意書
一大正九年七月二十二日午後六時ヨリ神田明治會
館ニ於テ富士紡績株式會社ノ勞働者同盟罷工事件
批判ニ關スル演說會ヲ開催シタル者アリ聽衆中喊聲
ヲ揚ケテ演說ノ妨害ヲ爲シタル者アリ場內大混亂ニ
陷リタルヲ以テ臨場ノ警察官ハ之カ解散ヲ命シタリ
其ノ際勞働歌ヲ高唱シタル者アル外何等不穩ノ擧動
ナク聽衆ノ一人杉原正夫ハ場內ニ洋傘ヲ忘却シタル
ヲ取ルヘク引返シタルニ警察官數名之ヲ取圍ミ之ヲ
亂打スルコト甚シキヲ以テ杉原正夫ノ知人タル岩淵忠
次郎ナル者警察官ニ對シ之ヲ救解セムトスルヤ警察
官ハ更ニ忠次郞ニ對シ暴行ヲ加へ遂ニ階上ヨリ階下
ニ突キ落スニ至レリ當時聽衆ノ一人タル野村正ナル
者亦勞働歌ヲ唱ヘタリトテ警察官約二十名殺到シ
非常ナル暴行ヲ受ケタル結果階下ノ一室ニ檢束セラ
レ警察官數人ノ爲ニ監視シ居リタル所へ右忠次郞ヲ
引摺リ込ミタルモ當時既ニ同人ハ昏倒シ人事不省ノ
狀態ナリシヲ以テ野村正ハ警察官ニ對シ至急醫師ノ
手當ヲ爲サシメムコトヲ求メタルモ之ヲ放任シテ顧ミ
サルヲ以テ居合セタル野村正等ハ水ヲ吹キ懸ケ水ヲ
飮マシメ僅ニ蘇セルヲ以テ同夜九時神田區北神保町
神保醫院ニ入院セシメ醫師ノ手當ヲ受ケ漸ク翌二十
三日午後四時退院スルコトヲ得タリ此ノ如キ殘酷非
道ナル取扱ハ何ノ必要アリテ之ヲ爲スヤ
二頃者集會ノ開催セラルル每ニ警察官ノ之ニ對スル態
度ハ法規ノ範圍ヲ逸脫シ不法橫暴其ノ極ニ達セリ此
ノ如キハ官民一途上下一致ノ美風ヲ破リ抗上反官
ノ危險思想ヲ釀成スルノ虞アリト信ス政府ハ此ノ點
ニ關シ如何ナル所見ヲ有スルヤ
三現内閣ノ成立スルヤ大正七年十月十日岡警視總監
ハ署長會議ニ於テ「公衆ニ對シテハ飽迄懇切ト叮嚀
トヲ旨トシ彼ノ職權ヲ笠ニ苛酷ノ取扱ヲ爲スカ如キ
行爲ハ絕對ニ之ヲ避ケ人民ト應接ノ際ノ如キモ叮嚀
ヲ要シ決シテ鷹柄ニ流ル可ラス(中略)要ハ公衆ト警
察トヲ接近セシメ其ノ融和ヲ圖ルニ在リ若人民ヲシテ
反感ヲ懷カシムル如キコトアラム乎反テ警察ノ威信ヲ
傷ケ不測ノ害ヲ招クコトアラム(後略)」ト訓元シタルニ
拘ラス頃者警察官ノ行動ハ全ク此ノ訓示ノ精神ニ背
戾シ官民反目ノ端ヲ作ラムトスルモノアリ本員等ノ深
憂ニ勝ヘサル所ナリ政府ハ此ノ時弊ヲ如何セムトスル
乎
四假令警官横暴ノ事實ナシトスルモ常ニ本案ノ如キ疑
感ヲ受クルハ警察官ノ素質ノ底下シタルニ依ルカ將夕
又他ニ其ノ原因アル乎政府ハ現下ノ如キ警察官ノ言
論集會ニ對スル取締方法ヲ改善スルノ意思ナキヤ
右及質問候也
外交ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正九年七月二十四日
提出者中野正剛賛成者鈴木梅四郞
外二十九人
外交ニ關スル再質問主意書
七月十四日本員ノ提出シタル外交ニ關スル質問主意
書ニ對スル外務大臣ノ答辯書ハ簡單ニシテ質問ノ要旨
ヲ誤解セルカ如シ依テ更ニ左ノ條項ニ就テ明快ノ答辯
コルボ
一日本政府ハ從來革命露西亞ノ性質ヲ究メス單ニ宗
〓的ニ之ヲ嫌忌シ來ルカ如シ今日以後列國最近ノ
態度ニ鑑ミ之ヲ國際的實在トシテ取扱フノ意ナキカ
二英國政府ハ「レイニン」政府ノ通商使節ト交涉ヲ遂ク
對露貿易中央局ヲ設ケテ之ト通商ヲ開始スルニ決シ
「レイニン」政府ヲシテ英領内ニ宣傳ヲ中止スルヲ約セ
シメタリ是レ顯著ナル英國對露政策ノ變調ニシテ軈
テ「レイニン」政府承認ノ前提トナルニ非サルカ政府ノ
所見如何
三最高會議ハ倫敦ニ露西亞對波蘭ノ講和會議ヲ開カ
シメムトシ革命露西亞、芬蘭、西ガリシヤノ委員ヲ會セ
シメ露、波兩國ヲ平等ニ取扱ハムトス是レ列國カ事實
上「レイニン」政府ヲ承認シタルモノニ非サルカ政府ノ
所見如何
四列國ハ既ニ「レイニン」政府承認方針ニ傾ケリ此ノ際
日本ハ依然トシテ舊策ヲ改メス沿海州ノ一部及サガ
レン州ニ駐兵シ前途ニ不安ヲ感セサルカ
五米國ノ對露方針ハ既ニ一變シ露西亞ト支那トヲ誘ヒ
テ大陸ニ共同排日ノ勢ヲ長セムトス我カ駐兵ハ此ノ
勢ヲシテ一層猛烈ナラシムルノ虞ナキカ
六日英同盟ノ改訂期迫レルニ際シ政府ハ英米間ノ交
涉ヲ如何ニ見ルカ巴里會議以後ノ形勢ニ見レハ英國
ハ米國ノ好意ヲ維カムカ爲日本ヲ顧ミサル勢ヲ呈セリ
且英領タル濠洲、新西蘭、加奈太等ノ排日ハ米國ノ
排日的氣勢ト相呼應セリ而シテ巴里會議ハ英領植
民地ニ許スニ一國トシテノ發言權ヲ以テセリ然ラハ日
英同盟ノ改訂ハ此等太平洋ヲ點綴セルアングロ、サク
ソンノ排日熱ニ禍セラルル所ナキカ濠洲ノ如キハ白人
濠洲主義ヲ認メサル日英同盟ニ反對スト公言セリ政
府ノ之ニ對スル決心如何
七濠洲ハ白人濠洲主義ヲ延長シテ南太平半ノ委任統
治領ニモ及ホサムトス斯ノ如キハ前領有者タル獨逸モ
之ヲ爲ササリシ所ナリ政府ハ之ヲ默認スルカ
八大陸ニハ列國共同ノ排日ヲ見ムトシ太平洋ニモ亦英
米及其ノ屬領ノ排日益猛烈ナラムトス日本ハ海ニ陸
ニ孤立ノ勢ニ臨メリ政府ハ之ニ對應スル胸算アルカ
九北樺太以外全部ノ兵ヲ撤シ同時ニ北樺太ヲ尼港損
害ノ賠償トシテ獲得スルノ意ヲ表明シ帝國ノ爲ス所
ト爲ササル所トヲ中外ニ表明スルヲ要セサルカ「オムス
ク」ニ失敗シ「チタ」ニ失敗セシ所更ニ之ヲ沿海州ニ繰
返スノ虞ナキカ政府ハ前途復不得要領ノ裡ニ撤兵ヲ
宣スルノ窮境ニ陷ルナキヲ保證シ得ルカ
右及再質問候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=64
-
065・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 休憩前ニ引續イテ會議ヲ開キマス
御諮リヲスル事ガアリマス、第七部選出懲罰委員小野重
行君常任委員辭任ノ申出ガアリマス、許可スルニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=65
-
066・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ第七
部ノ諸君ハ速ニ補闕選擧ヲ行ヒ御屆出アランコトヲ望ミマ
ス-川原茂輔君ヨリ、議員島田三郞君ヲ懲罰委員ニ付
スルノ動議ガ出テ居リマス、是ハ日程ニ依ラズ此動議ノ趣
旨ヲ聽イテ決議ヲ致シマス-川原茂輔君
〔川原茂輔君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=66
-
067・川原茂輔
○川原茂輔君 唯〓議長ヨリ報告セラレマシタル通リ、議
員島田三郞君ヲ懲罰委員ニ付スルノ動議ヲ提出致シタノ
デアリマス、同君ニ對シテ、瀆職ニ關スル質問ニ對シテ、過刻
小川君ノ提案ノ決議案ガ本場ニ於テ採用セラレタノデアリ
さく、然ルニ島田君ハ此院議ヲ無視シテ、御承知ノ通リノ
發言ヲセラレテ、卽チ院議ヲ承諾セザルト云フコトヲ言明セ
ラレタノデアリマス、此以上ハ遺憾ナガラ卽チ懲罰委員ニ付
スルノ外ハナイノデアリマス、ドウカ滿場大多數ノ御賛成ア
ランコトヲ希望シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=67
-
068・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 島田三郞君ヲ懲罰委員ニ付スル
ノ動議ハ、討論ヲ用ヰズ採決致シマス、此採決ハ記名投票
ヲ用井マス、此川原茂輔君提出ノ動議ニ賛成ノ諸君ハ白
票、反對ノ諸君ハ靑票ヲ御持參ヲ願ヒマス-閉鎖-氏
名點呼
ノ〔田口書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=68
-
069・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 投票漏ハアリマセヌカ-投票漏
ハ無イト認メマス-開鎖-開匣-投票ノ結果ヲ報告
致シマス
〔寺田書記官長朗讀〕
投票總數三百九十五
可トスル者二百四十四
否トスル者百五十一発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=69
-
070・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 投票ノ結果島田三郞君ヲ懲罰委
員ニ付スルコトニ決シマシタ
議員島田三郞君ヲ懲罰委員ニ付スヘカラストスル議員
ノ氏名左ノ如シ
一柳仲次郞君磯貝浩君石井〓二君
井上剛一君早川龍介君濱口雄幸君
早速整爾君本田恒之君中馬與丸君
大竹貫一君岡本幹輔君大津淳一郎君
太田信治郞君小野重行君尾崎行雄君
春日俊文君加藤定吉君香川保忠君
川副綱隆君門屋尙志君金澤安之助君
神谷彌平君河野廣中君金尾稜嚴君
金田平兵衞君橫山勝太郞君吉田磯吉君
橫山金太郞君吉川吉郞兵衞君田川大吉郞君
田中武雄君賴母木桂吉君龍口了信君
高田耘平君高橋久次郞君田中萬逸君
武富時敏君高木正年君田中善立君
添田飛雄太郞君津原武君內藤濱治君
永井柳太郞君中野寅吉君鵜澤宇八君
野村嘉六君野尻彌重郞君野呂丈太郞君
野田文一郞君黑金泰義君山移定政君
山道襄一君山邊常重君八並武治君
正木照藏君松井鐵夫君牧口義矩君
藤井啓一君福本〓之輔君降旗元太郞君
古屋慶隆君古賀三千人君小山松壽君
木檜三四郞君小泉又次郞君出口直吉君
手島鍬司君淺賀長兵衞君安達謙藏君
秋乕太郞君荒川五郞君阿由葉勝作君
淺野順平君綾部惣兵衞君佐々木千秀君
作間耕逸君佐竹庄七君齋藤宇一郞君
坂口仁一郞君齋藤已三郞君定行八郞君
佐藤啓君菊池良一君三浦得一郞君
箕浦勝人君重松重治君〓水留三郞君
下田勘次君下岡忠治君樋口秀雄君
平出喜三郞君森達三君森山儀文治君
森田茂君關和知君鈴木周三郞君
鈴置倉次郞君鈴木富士彌君板野友造君
濱田國松君西村丹治郞君星島二郞君
土井權大君大口喜六君渡邊昭君
高柳覺太郞君高草美代藏君中川幸太郞君
長場龍太郞君村田虎之助君植原悅二郎君
倉石知藏君前川虎造君福地錢吉君
古島一雄君近藤達兒君鮎川盛貞君
有森新吉君〓瀨一郞君湯淺凡平君
最上直吉君關直彥君鈴木梅四郞君
砂田重政君飯塚春太郞君奥村千太郞君
奧村安太郞君鎌田三郞兵衞君上畠益三郞君
納富陳平君矢島專平君山邑太三郞君
小菅劍之助君南鼎三君森下龜太郎君
仙波太郞君林田龜太郞君富永孝太郞君
大濱忠三郞君押川方義君田淵豊吉君
副島義一君中野正剛君野溝傳一郞君
山本厚三君山科愼次郞君松下禎二君
松本君平君安藤正純君秋田〓君
佐々木安五郞君
議員島田三郞君ヲ懲罰委員ニ付スヘシトスル議員ノ氏
名左ノ如シ
石井三郞君今井今助君今泉嘉一郞君
石川善盛君岩崎宗茂助君市村貞造君
岩切重雄君一宮房治郎君禱苗代君
飯島信明君岩崎動君井上敬之助君
池田龜治君井坂豊光君岩崎幸治郞君
井上角五郞君石川玄三君岩本平藏君
伊坂秀五郞君伊澤平左衞門君磯田粂三郞君
伊藤廣幾君池田猪三次君原田十衞君
八田宗吉君林毅陸君花岡次郞君
波多野喜右衞門君蓮井藤吉君長谷川宗治君
長谷場敦君花城永渡君原田佐之治君
原田藤次郎君濱口吉兵衞君萩亮君
波多野承五郞君秦豊助君鳩山一郞君
西澤定吉君西川嘉門君西村正則君
西村伊亮君本多貞次郞君友常穀三郞君
戶狩權之助君富安保太郎君陣軍吉君
小田切磐太郞君岡崎邦輔君小山田信藏君
小川平吉君大石大君岡田伊太郞君
大島實太郞君大林森次郞君長田桃藏君
大岡育造君渡邊修君若尾幾造君
若林德懋君渡邊祐策君柿原政一郞君
河崎〓君金光庸夫君加藤重三郞君
改野耕三君海原〓平君粕谷義三君
加藤久米四郞君川原茂輔君川村數郞君
神田重義君風間八左衞門君海江田準一郞君
河上哲太君吉植庄一郞君吉原祐太郞君
吉原正隆君吉木陽君米田穣君
米澤與三次君吉野小一郞君横山寅一郎君
高橋本吉君高見之通君高橋辰二君
瀧正雄君高柳淳之助君田中定吉君
田邊熊一君高橋義信君田村順之助君
竹內明太郞君高島七郞右衞門君高木第四郞君
竹澤太一君高橋光威君高田良平君
玉置良直君高山長幸君竹上藤次郞君
龍野周一郞君武田德三郞君田中隆三君
高橋善五郞君津野田是重君津崎尙武君
塚原嘉藤君坪田十郞君鶴見孝太郎君
根本正君中山佐市君中村〓造君
成田榮信君成田直一郞君中倉万次郞君
南里琢一君長峰與一君中島守利君
永井作次君中島鵬六君永屋茂君
中村喜平君武藤金吉君梅田潔君
上塚司君植場平君宇野勇作君
鵜澤總明君上埜安太郎君植付龍三郞君
內山安兵衞君野村治三郞君野副重一君
野口忠太郞君野呂駿三君國重政亮君
久木田叶君黑住成章君熊谷直太君
久慈貫一君久下豊忠君國澤新兵衞君
山口義一君山本条太郎君山本〓三郞君
山田永俊君山口熊野君安原仁兵衞君
谷津新八郞君柳原九兵衞君矢野丑乙君
山本悌二郞君山崎猛君八木逸郞君
牧山耕藏君松岡俊三君前田米藏君
舞田壽三郎君松田源治君松野鶴平君
松山常次郞君松本孫右衞門君丸山嵯峨一郞君
松浦五兵衞君益谷秀次君麓純義君
福井甚三君深見寅之助君小鹽八郎右衞門君
古林與六君小久保喜七君江崎幸太郞君
遠藤良吉君阿部武智雄君淺石惠八君
靑木恆太郞君有馬秀雄君秋本喜七君
赤田瑳一君靑柳郁次郞君佐藤寅太郞君
坂本素魯哉君齋藤壽雄君佐藤良平君
三枝彥太郞君阪上貞信君佐野正雄君
指田義雄君櫻內幸雄君佐々木志賀二君
澤來太郞君榊田〓兵衞君齋藤鷲太郎君
菊池長右衞門君〓瀨規矩雄君吉良元夫君
菊川惣吉君木下甚三郞君宜保成晴君
木村〓三郞君木下謙次郞君北井波治目君
木村作次郞君木下十四三君北山一郞君
三好德松君宮崎三之助君三善〓之君
水野吉太郎君宮崎友太郎君宮古啓三郞君
三上忠造君白井博之君志賀和多利君
下出民義君島本信二君廣岡宇一郞君
匹田銳吉君樋渡次右衞門君日野辰次君
廣瀨爲久君樋口伊之助君毛里保太郎君
門田新松君森恪君望月圭介君
妹尾順平君〓崟太郞君菅原傳君
鈴木隆君菅野傳右衞門君鈴木巖君
鐸木三郞兵衞君鈴木錠藏君鈴木義隆君
井內歡二君若尾璋八君難波作之進君
佐々木平次郞君木村權右衞門君三輪市太郞君
井上孝哉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=70
-
071・岩崎勲
○岩崎勳君 議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致
シマス、卽チ玆ニ政府提出貴族院ノ送付ニ係ル、大正九年
勅令第八十七號承諾ヲ求ムル件ヲ議題ト爲シ、政府ノ說
明ヲ求メ、引續キ之ガ審査ヲ行ハレンコトヲ希望致シマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=71
-
072・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=72
-
073・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 仍テ日程ハ變更サレマシタ、大正
九年勅令第八十七號ヲ議題ニ供シマス
大正九年勅令第八十七號(承諾ヲ求ムル
件)(政府提出、貴族院送付)
大正九年勅令第八十七號
朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝
國憲法第八條第一項ニ依リ帝國ト獨逸國トノ間ニ設置
スル混合仲裁裁判所ニ關スル件ヲ栽可シ之ヲ公布セシ
ム
御名御璽
大正九年四月七日
內閣總理大臣兼司法大臣原敬
海軍大臣加藤友三郞
外務大臣子爵內田康哉
大藏大臣男爵高橋是〓
陸軍大臣田中義
農商務大臣山本達雄
內務大臣床次竹二郞
文部大臣中橋德五郞
遞信大臣野田卯太郎
勅令第八十七號
第一條同盟及聯合國ト獨逸國トノ平和條約第三百
四條ノ規定ニ依リ帝國ト獨逸國トノ間ニ設置スル混
合仲栽裁判所カ司法栽判所ニ於テ受理シ得ヘキ性
質ノ事件ニ關シ爲シタル判定ハ司法栽判所ノ確定ノ
判決ト同一ノ效力ヲ有ス
前項ノ判定ニ依ル强制執行ニ付テハ外國栽判所ノ
判決ニ依ル强制執行ニ關スル民事訴訟法ノ規定ヲ
準用ス
第二條司法栽判所ハ前條ノ混合仲裁裁判所ノ囑託
ニ因リ書類ノ送達及證據調ニ付法律上ノ輔助ヲ爲
ス
前項ノ法律上ノ輔助ノ手續ニ付テハ勅令ノ定ムル所
二郎ん
第三條第一條ノ混合仲裁裁判所ニ對スル事件ノ提
起ハ時效ノ中斷ニ關シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做
ス
附則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔松田政府委員登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=73
-
074・松田道一
○松田政府委員 大正九年勅令第八十七號ノ承諾ヲ
求ムル件デゴザイマス、本件ハ提出ノ理由ニモ說明シテアリ
マス通リ、對獨平和條約ノ規定ノ結果ト致シマシテ、日本
國ト獨逸國トノ間ニ、混合仲裁裁判所ヲ設クルノ規定デゴ
ザイマス、此混合仲栽栽判所ハ、條約ノ規定ニ依リマシテ、
條約ノ實施ノ時カラ三箇月內ニ設クルト云フコトニナッテ
居ル、卽チ本年ノ四月九日マデニ之ヲ設クルコトニナッテ居
ルノデアリマス、此混合仲裁栽判所ノ判定ノ效力其他ニ就キ
マシテ、内國ノ立法ヲ要シマスルガ爲メニ、此勅令第八十七
號ヲ公布シマシタ次第デゴザイマス、此勅令デ尙ホ將來ニ
向ッテモ、其效力ヲ認ムルト云フ必要ガゴザイマスルニ依テ、
何卒御審議ノ上デ承認ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=74
-
075・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ヲ議題ニ供シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=75
-
076・岩崎勲
○岩崎動君 本案ハ委員ノ數ヲ九名トシ、議長ニ於テ指
名セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=76
-
077・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=77
-
078・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 異議ナシト認メマス、仍テ議長ハ
直チニ九名ノ委員ヲ指名致シマス、宮崎三之助君、花岡次
郎君、大道寺慶男君、岩崎幸治郞君、佐々木志賀二君、永
井作次君、井上剛一君、佐々木千秀君、長場龍太郞君、以
上ノ九君ヲ指名致シマス、委員ハ直チニ委員室ニ於テ委員
長理事ヲ互選シ、引續キ審査ニ著手セラルヽコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=78
-
079・岩崎勲
○岩崎動君 再ビ議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提
出致シマス卽チ唯〓書記官ヨリ報告サレマシタ通リ曩ニ本
院ヨリ貴族院ニ送付シタル政府提出道路公債法案ニ對シ
テ、貴族院ハ之ヲ修正シテ本院ニ囘付セラレマシタ、仍テ玆
ニ本案ヲ議題トシ、右修正ニ同意スベキヤ否ヤヲ審議セラ
レンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=79
-
080・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=80
-
081・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 仍テ日程ハ變更サレマシタ、道路
公債法案ヲ議題ト致シマス
〔「議案ガ無イ」ト呼フ者アリ〕
道路公債法案(政府提出、貴族院回付)
道路公債法
第一條國道改良費支辨又ハ國道、府縣道若ハ市ノ
重要街路ノ改良費補助ニ關スル經費支辨ノ爲政府
ハ當該經費豫算ノ範圍內ニ於テ公債ヲ發行シ又ハ
之カ繰替支辨ノ爲借入金ヲ爲スコトヲ得
第二條前條ノ規定ニ依ル公債ノ發行價格差減額ヲ
補塡スル爲必要アル場合ニ於テハ前條ノ制限以外ニ
公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
〔「議案ガ無イ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=81
-
082・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 修正ノ分ヲ朗讀サセマス
〔原田書記官朗讀〕
道路公債法案中貴族院囘付ノ箇所左ノ如シ
第一條中「二億八千二百八十万圓ヲ限リ」トアルヲ「當
該經費豫算ノ範圍內ニ於テ」ト改ム
〔「分ラヌ·····」「頭ガ惡イノダ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=82
-
083・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜ニ-本案ニ就キマシテハ、別ニ
發言ノ通告ガアリマセヌカラ、直チニ採決致ス考ヘデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=83
-
084・三土忠造
○三土忠造君 唯〓ノ貴族院ノ修正案ハ、道路改良計
畫ニ何等ノ支障ナキモノト認メマスガ故ニ、同意致シマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=84
-
085・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 此貴族院ノ回付ノ案ニ同意ナル
ヤ否ヤヲ起立ニ依テ決シマス、貴族院ノ修正ニ同意ノ諸君
ノ起立ヲ求メマス
〔同意者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=85
-
086・奧繁三郎
○議長(臭繁三郞君) 多數、同意スルコトニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=86
-
087・岩崎勲
○岩崎勳君 更ニ議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提
出致シマス、同シク曩ニ本院ヨリ貴族院ニ送付シタル政府
提出所得稅法改正法律案ニ對シテ、貴族院ニ於テ修正ヲ
爲シ、本院ニ囘付セラレマシタ、仍テ茲ニ本案ヲ議題ト爲シ
右修正ニ同意スベキヤ否ヤヲ審議セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=87
-
088・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ日程變更ノ動議ニ御異
議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=88
-
089・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 仍テ日程ハ變更サレマシタ、所得
稅法改正法律案ヲ議題ニ致シマス、貴族院ノ修正案ヲ朗
讀致シマス
所得稅法改正法律案(政府提出、貴族院囘
付
所得稅法改正法律案中貴族院修正ノ箇所
第五條法人ノ各事業年度ノ所得カ同年度ノ資本金
額ニ對シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ
超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ以テ法人ノ超過所得
トス
第十四條第三種ノ所得ハ左ノ各號ノ規定ニ依リ之
ヲ算出ス
-俸給給料歳費年金恩給退隱料及此等ノ性質
ヲ有スル給與、營業ニ非サル貸金ノ利子竝第二
種ノ所得ニ屬セサル公債社債及預金ノ利子ハ
其ノ收入豫算年額
二田又ハ畑ノ所得ハ前三年間每年ノ總收入金額
ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタルモノノ平均ニ依リ
算出シタル收入豫算年額但シ前三年以來引續
キ自作セス、小作セス又ハ小作ニ付セサル田又ハ
畑ニ在リテハ近傍類地ノ所得ニ依リ算出シタル
收入豫算年額
三山林ノ所得ハ前年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經
費ヲ控除シタル金額
四賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ハ前年四月
一日ヨリ其ノ年三月末日ニ至ル期間ノ收入金
額
五法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘
金ノ分配ハ前年四月一日ヨリ其ノ年三月末日
ニ至ル期間ノ收入金額ヨリ其ノ十分ノ四ニ相當
スル金額ヲ控除シタル金額但シ無記名式ノ株式
ヲ有スル者ノ受クル配當ハ同期間ニ於テ支拂ヲ
受ケタル金額ヨリ其ノ十分ノ四ニ相當スル金額
ヲ控除シタル金額
六前各號以外ノ所得ハ總收入金額ヨリ必要ノ經
費ヲ控除シタル收入豫算年額
法人ノ社員其ノ退社ニ因リ持分ノ拂戾トシテ受クル
金額カ其ノ退社當時ニ於ケル出資金額ヲ超過スルト
キハ其ノ超過金額ハ之ヲ其ノ法人ヨリ受クル利益ノ
配當ト看做ス株式ノ消却ニ因リ支拂ヲ受クル金額カ
其ノ株式ノ拂込濟金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金
額亦同シ
第二十條第三種ノ所得ハ八百圓ニ滿タサルトキハ所
得稅ヲ課セス第十五條及第十六條ノ規定ニ依ル控
除ヲ爲シタル爲八百圓ニ滿タサルニ至リタルトキ亦同
シ
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額
ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ
同居家族ノ所得ニ付亦同シ
第二十一條第一種ノ所得ニ對スル所得稅ハ左ノ稅
率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲超過所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ、遞次ニ各稅
率ヲ適用ス
所得金額中資本金額ニ對シ年百分
ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ
超ユル金額百分ノ四
同百分ノ二十ノ割合ヲ以テ算出シタ
ル金額ヲ超ユル金額百分ノ十
同百分ノ三十ノ割合ヲ以テ算出シタ
ル金額ヲ超ユル金額百分ノ二十
百分ノ五
丁丙乙百分ノ五
百分ノ七、五
戊百分ノ七、五
法人ノ事業年度末ニ於ケル積立金及其ノ事業年度
ニ於ケル留保所得ノ合計金額カ其ノ事業年度末ニ
於ケル拂込株式金額、出資金額又ハ基金及之ニ代ル
ヘキ積立金ノ合計金額ノ二分ノ一ニ相當スル金額ヲ
超過スルトキハ其ノ超過金額ニ屬スル其ノ事業年度
ノ留保所得ニ對スル稅率ハ百分ノ十トシ其ノ事業年
度末ニ於ケル拂込株式金額、出資金額又ハ基金及
之ニ代ルヘキ積立金ノ合計金額ニ相當スル金額ヲ超
過スルトキハ其ノ超過金額ニ屬スル其ノ事業年度ノ
留保所得ニ對スル稅率ハ百分ノ二十トス但シ其ノ事
業年度ニ於ケル所得ノ二十分ノ一ニ相當スル金額以
內ノ金額ニ付テハ其ノ稅率ハ百分ノ五トス
第二十二條第二種ノ所得ニ對スル所得稅ハ左ノ稅
率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲公債ノ利子百分ノ四
其ノ他百分ノ五
乙百分ノ七、五
第八十一條法人ノ超過所得ニ付テハ本法施行ノ日
ヨリ大正十年七月三十一日ニ至ル間ニ終了スル各
事業年度分ノ超過所得ニ限リ本稅ノ三割五分ヲ增
徴ス
大正九年七月一日以後ニ於テ法人ノ事業年度ノ期
間ニ變更アリタルトキハ前項ニ該當スル舊事業年度
ノ期間內ニ始期又ハ終期ヲ有スル各事業年度分ノ
超過所得ニ付本法ニ依リ所得稅ヲ課シ仍本稅ノ三
割五分ヲ增徵ス
〔原田書記官朗讀〕
所得稅法改正法律案中貴族院回付ノ箇所左ノ如シ
第五條中「百分ノ八」ヲ「百分ノ十」ニ改ム
第十四條第一項第五號中
「十分ノ三」ヲ「十分ノ四」ニ改ム
第二十條中「六百圓」ヲ「八百圓」ニ改ム
第二十一條第一項甲號中
「百分ノ八ヲ「百分ノ十」ニ、「百分ノ二」ヲ「百分ノ四」
ニ、「百分ノ十五」ヲ「百分ノ二十」ニ改メ「同百分ノ十
ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額百分ノ四」
アル
同乙號中
「百分ノ七、五」ヲ「百分ノ五」ニ改ム
同丙號中
「百分ノ四」ヲ「百分ノ五」ニ改ム
同條第二項中
「百分ノ十五」ヲ「百分ノ十」ニ、「百分ノ三十」ヲ「百分
ノ二十」ニ、「百分ノ七、五」ヲ「百分ノ五」ニ改ム
第二十二條甲號中
「百分ノ二一ヲ「百分ノ四」ニ、「百分ノ三」ヲ「百分ノ五」
三枚入り
第八十一條中
「六割一分」ヲ「三割五分」ニ改ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=89
-
090・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 鈴木富士彌君
〔鈴木富士彌君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=90
-
091・鈴木富士彌
○鈴木富士彌君 諸君、唯〓貴族院カラ所得稅法改正
法律案ガ囘付ニナリマシテゴザイマス、本員ハ院議尊重ノ
意味ヲ以テ、此案ニ同意ヲ與フルコトヲ拒ムモノデゴザイマ
ス、(拍手)御承知ノ如ク我憲政會ハ本年ノ春、卽チ第四十
二議會ニ於キマシテ、政府ヨリ提出サレマシタル所ノ所得
稅法改正案ハ、其内容杜撰ナルガ故ニ、一年延期ノ趣旨ヲ
以テ、之ニ反對ヲ致シタルモノデアリマス、當時全國ノ商業
會議所、工業倶樂部、銀行倶樂部、其他實業家ノ諸團體
ハ、皆ナ此一年延期論ニ共鳴サレマシタ、同ジ政友會員ノ
諸君ノ中デモ、亦之ニ同意セラレタ」ル方ガ隨分アッタヤウニ
御見受ヲ致シタノデアリマス、然ルニ其後時日ノ經過ニ從
ヒマシテ、此法律案ノ內容ノ杜撰ナルコトガ、益〓證據立テ
ラレルコトニナッタノデアリマス、卽チ政府提出ノ原案ハ、是
デ丁度三回大斧鉞大修正ヲ加ヘラレテ居リマス、本年ノ二
月カラ此七月ニ至ル迄僅カ半年ノ問ニ一囘ハ-二回ハ
衆議院ニ於テ、今一囘ハ貴族院ニ於テ、『殆ド原案ガ完膚ナ
キマデノ大修正大斧鉞ヲ加ヘラレテ居ルノデアリマス、(拍
手)是ガ卽チ如何ニ政府提出ノ原案ガ孟浪杜撰デアッテ、
且ツ不徹底デアルカト云フコトノ證據デアルト私ハ信ズルノ
デアリマス、(拍手)而モ第四十二議會ノ此法案ノ委員會ニ
於キマシテ、大藏大臣ハ何ト言明サレマシタ、此處ニ居ラレ
ル所ノ高橋大藏大臣ハ、當時昂然タル態度ヲ以チマシテヽ
本案ハ最モ名案ト信ズルモノデアリマスカラ、此根本主義ヲ
傷ケザル範圍ニ於キマシテ、名案ガアレバ賛成スルケレドモ、
若シ此根本主義ヲ傷ケルヤウナコトデアレバ、如何ナル名案
ト雖モ、賛成ハ出來ヌト明言サレタノデアリマス、然ルニ其
後ノ三回ノ修正ハ、如何ナル點ニ於テ加ヘラレテ居ルカト
申シマスルニ、政府ノ最モ力ヲ入レマシタ所ノ所謂綜合課
稅主義、此綜合課稅主義ガ殆ド大部分破壞サレテシマッテ
居ルノデアリマス、(拍手)此事實ヲ何ト見ルノデアリマスカ、
卽チ株ノ配當金ヲ各配當ヲ受ケル人ノ所得ニ綜合シテ、其
人カラ稅ヲ取ル、是ガ社會政策ノ立場カラ、是非必要ナ事
デアルト云フ大藏大臣ノ御說明デアリマシタガ、其後株ノ
借金ノ利子ニ相當スル金額ト致シマシテ、二割ヲ控除スル
コトニシテ、先ヅ第一ニ玆ニ綜合課稅主義ト云フモノヽ一
部分ガ破壞ヲサレマシタ此議會ニ於キマシテ更ニソレガ三
割ニナッテ今一層破壞サレテ、今度ハ貴族院ニ於キマシテソ
レガ四割ニ修正サレテ、殆ド綜合課稅ノ-綜合所得ノ半
額ニ近イ所ノ、源泉課稅ニ戾シタト云フ狀態ニナッテ居ルノ
デアリマシテ、是等ノ點ハ大藏省トシマシテハ、飽クマデ固執
ヲシテ、此案ニハ不贊成ノ意ヲ表セナケレバナラヌノニ、曩ニ
斯ノ如キ〓然タル態度ヲ以テ之ニ反對ヲシナガラ、此修正
ニ對シテ、唯々諾々トシテ之ニ賛成ノ意ヲ表サレタ其態度
ハ、若シ極端ナル言葉ヲ以テ申シマスルナラバ、或ハ厚顏無
耻ト云フヤウナ形容詞ヲ以テ言ハレテモ、致方ナカラウト思
ヒマス、(拍手「厚顏無耻大藏大臣」「院議尊重」ト呼フ者ア
リ)翻ッテ貴族院ノ修正サレマシタル所ノ內容ヲ見マスルト、
或點ハ餘程私共ノ意ヲ得タリト思フ點ガアルノデアリマス、
卽チ免稅點ヲ引上ゲタルガ如キ、或ハ留保所得ノ累進率ニ
輕減シタルガ如キハ、或ハ良修正ト言ヒ得ルコトガ出來ルノ
デアリースケレドモ、其綜合課稅主義ノ根本ヲ破壞シタル
點ニ於テ、此修正ニハ甚ダ同意ハ出來ナイノデアリマス、前
ニモ申シマシタル如ク、我黨ハ一年延期ノ意味ニ於テ之ニ
反對致シタノデアリマスケレドモ、旣ニ當衆議院ニ於テ可決
サレタル以上ハ、院議ヲ尊重スルト云フ意味ニ於テ政府
ノ-衆議院ノ此修正案ニハ同意ヲ致スコトハ出來ナイノ
デアリマス、(拍手「貴族院ダラウ」ト呼フ者アリ)貴族院ノ修
正案ニハ同意スルコトハ出來ナイノデアリマス、尙ホ詳シキ
事ハアリマスガ、大體右ノヤウナ次第デ、此貴族院ノ案ニハ
同意致シ兼ネル次第デゴザイマスカラ、此點ヲ明カニ致シテ
置ク次第デアリマス、(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=91
-
092・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 三土忠造君
〔大口喜六君「議長質問ガアルノデアリマスカラ御
許シ下サイ」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=92
-
093・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 此次ニ許シマス
〔三土忠造君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=93
-
094・三土忠造
○三土忠造君 本院ノ送付ニ係ル所得稅法案ニ對シテ、
貴族院ニ於キマシテ修正ヲ加ヘラレマシタコトハ、洵ニ遺憾
ト致ス所デアリマス、併ナガラ此修正案ヲ詳ニ拜見致シマス
ルト云フト、稅法ノ根本主義ヲ害スルコトナク、(「ノウ〓〓ㄴ
噓ダ」ト呼フ者アリ)金高ニ於テ增減スル所ナク、隨テ政府
ノ財政計畫ニ影響ナキモノト認メマスルガ爲メニ、茲ニ(「政
友會ニ主義主張ナシ」ト呼フ者アリ)兩院交讓妥協ノ精神
ヲ發揮シ、貴族院送付ノ修正案ニ同意ノ意思ヲ表明致シ
マス、(此時發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=94
-
095・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜肅二·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=95
-
096・三土忠造
○三土忠造君 而シテ序ニ唯〓ノ鈴木君ノ御批評ニ對シ
テ一言致シテ置キマス、鈴木君ハ此貴族院ノ修正ニ依テ、根
本ノ綜合課稅主義ガ破壞セラレタ如ク言ハレマシタケレド
モ、綜合課稅主義ハ少シモ破壞サレテ居リマセヌ、(「何故
ダ」ト呼フ者アリ)綜合課稅主義ト云フモノハ、源泉ニ於テ
課稅シタモノハ綜合ニ於テ課稅セヌトスレバ、是ハ破壞デア
リマス、併ナガラ本修正案ハ、御覽ノ通リ源泉ニ於テ課稅ス
ルト同時ニ、綜合ニ於テモ課稅スルノデアリマスルガ故ニ、少
シモ綜合課稅主義ノ根本ハ破壞サレテ居ラヌノデアリマス、
此點ハ設解ノナイヤウニ願フノデアリマス、玆ニ同意ノ意思
ヲ言明致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=96
-
097・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 大口喜六君
〔大口喜六君登壇、拍手起ル〕
〔「無用々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=97
-
098・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=98
-
099・大口喜六
○大口喜六君 私ハ此際政府ニ質問ヲ致シタイノデアリ
マス、實ハ總理大臣ガ御出ニナレバ、總理大臣ニ承ルガ順
序デアルト存ジマスガ、唯今大藏大臣ダケノヤウデアリマス
ガ故ニ、私ハ大藏大臣ニ對シテ、此際質問ヲ致シテ置キタイ
ト思フノデアリマス、要ハ我政府ハ再ビ貴族院ニ於テ修正
サレタル所ノ此修正案、卽チ貴族院ノ再修正ニ對シテ、政
府ハ之ニ同意スルヤ否ヤ、斯ウ云フ事デアルノデアリマス、之
ニ對シテ一言ヲ費シタイト思ヒマスルノハ、既ニ鈴木富士彌
君カラモ一應述ベラレマシタ如ク、政府ガ此四十二議會ニ
於テ所得稅ノ增稅案ヲ提出サレタル所ノ趣意ハ、大體ニ於
テハ增收ヲ圖ルノデアリマスガ、一面ニ於テハ社會政策ノ一
部ヲ加味シ、竝ニ稅制整理ノ一端ヲ玆ニ現シタルモノト看
做サレテモ宜シイト、斯ウ云フノガ其時ニ於ケル政府ノ言明
デアリマス、而シテ其主義ニ於テ其主ナルモノトシテ、所謂
綜合課稅主義ガ行ハレル、殊ニ此綜合課稅主義ト云フモ
ノニ對シテハ、政府ハ極メテ力ヲ盡シテ之ヲ主張サレタノデ
アリマス、若モ此綜合課稅主義ノ主義ニ瑾ガ付クノデアル
ナラバ、政府ハドウシテモ同意スルコトハ出來ナイト、斯ウ云
フコトヲ飽マデ力說サレタノガ、四十二議會以來政府ノ立
場デアッタノデアリマス、唯今三土君ハ、一面ニ於テ源泉課
稅主義ニ還元シテ居ルガ、尙且ツ一面ニ於テハ、綜合課稅
主義ヲ主トシテ居ルノデアルガ故ニ、決シテ矛盾シナイモノ
デアルト論ゼラレタノデアリマスガ、吾ミノ信ジマス所ニ依レ
バ、社會政策ヲ行フ土ニ就テ、決シテ綜合課稅主義ト源泉
課稅主義トハ、兩立スベキモノトハ信ジテ居ナイノデアリマ
ス、一面ニ於テ綜合課稅主義ヲ置クト云フナラバ、一面ニ
於テ源泉課稅主義ヲ廢シナケレバ、差引上社會政策ハ立
タナイノデアリマス、此主義ニ於テ、大藏大臣ハ現ニ四十二
議會以來、堂々トシテ吾ミニ說イテ居ラレタノデアリマス、然
ルニ一面ニ於テ四十三議會ニ於テ衆議院ガ此綜合課稅
主義ニ修正ヲ加ヘテ、源泉課稅主義ニ還元シタ、成程一面
カラ見レバ、唯〓三土君ノ言ハレマシタ如ク、一面ニ於テハ
源泉課稅主義デアルガ、一面ニ於テ綜合課稅主義デアルカ
ラ宜イヤウデアルガ、之ヲ算盤ノ上カラ見レバドウデアリマス
カ、源泉課稅ハ最低百分ノ七五デアッタモノヲ百分ノ四トナ
シ、之ニ依テ三ヲ減ジタノデアルガ、ソレダケハ綜合課稅ニ
持ッテ行ッテ綜合サレテ居ル、卽チ金高カラ言ヘバ半分ハ綜
合課稅カラ収ッテ、半分ハ源泉課稅主義ニ基クト云フノガ
事實デアル、此事實ノ上ニ於テ政府ガ社會政策ト申サレタ
所ノ根本ハ、半バ打碎カレテ居ルノデアリマス、(拍手起ル)
之ニ對シテ政府ハ少シモ相當ノ理由ヲ言ハズシテ、唯ダ收
入主義デアル收入ヲ完カラシメンガ爲メニ、之ニ同意スルモ
ノデアルト稱ヘラレテ贊成サレ、而シテ貴族院ニ於テ再修正
ヲサレタモノヲ見レバ、更ニ進ンデ綜合課稅主義ノ一部ヲ
割イテ、源泉課稅主義ニ還元サレテ居ルノデアリマセヌカ、
之ヲモ尙且ツ政府ハ默フテ贊成ヲスルト云フコトナラバ、四十
二議會以來吾ミニ唱へタル所ノ政府ノ社會政策ト稱スル
モノハ、何所ニ存在スルノデアリマス、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者ア
リ拍手起ル)苟モ斯樣ナ事ヲ爲シテ收入サヘアレバ、宜イ吾
吾國民カラ金サヘ取レバ宜イ、陸海軍ノ費用ガドウカナレバ
宜シイ、收入サヘアレバ宜シイト云フコトデ、此大切ナル稅
金ノ增稅ヲ吾〓國民ニ對シテ、來年カラ一億三千五百万
圓ノ大金ヲ取ラウト一云フモノハ苟モ内閣ノ責任ヲ持ッテ居
ルニモ拘ラズ斯樣ナ主義ニ於テ根本ノ事ヲ打棄テヽマデモ
之ニ贊成サレルナラバ、政府ノ威信ト云フモノハドウシテ立
チマス、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ、拍手起ル)吾ニハ此點ニ
向ッテ、政府ハ明カニ之ヲ說明サレテ國民ニ對シテ飽マデ信
ヲ保タレルヤウニ致シタイト思ヒマス、此點ヲ質問シテ置キ
マス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=99
-
100・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 高橋大藏大臣
〔國務大臣男爵高橋是〓君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=100
-
101・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 唯〓政府ニ對シテ、此
貴族院ノ修正案ニ同意スルヤ否ヤト云フ御尋デアリマス、
續テ此修正案ナルモノハ、政府ガ豫テ本案ヲ提出スルニ當ッ
テ主張シタル所ノ主義ヲ、全ク破壞サレテ居ルデハナイカ、
(「然リ」「其通リ」ト呼フ者アリ)少シク冷靜ニ御〓聽ヲ煩シ
タイ、源泉課稅綜合課稅ト云フコトヲ頻リニ仰シヤリマスル
ガ、政府ノ申シタ所ノ綜合課稅ノ趣意ハ、最初ヨリ是マデ
會社カラ受ケル所ノ配當金ニ對シテ、個人ガ所得稅ヲ納メ
テ居ラヌト云フノヲ之ヲ個人ニ歸屬シテ、他ノ所得ト綜合
シテ、之ヲ個人カラ累進課稅ヲスルト云フノガ、政府ノ綜合
課稅ト云フ主義デアルノデス、又社會政策ヲ加味シタト云
フコトハ此點ニ於テ重キヲ措イテ言ウテ居ルノデハナイ、卽
チ負擔ノ公平、負擔ノ力ノ弱イ者ニハ、ソレダケ輕減ヲスル、
負擔力ノ多イ者ニ多ク負擔ヲサセルト云フノガ、社會政策
ト云フモノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)卽チ第三種ノ稅
率ヲ低下シタルコト、又免稅點ヲ引上ゲタルコト、ンレカラ
(「共產主義デスカ」ト呼フ者アリ)其ナンノ-扶養ノ義務
アル老人幼者、不具者、是等ノ爲メニ相當ノ控除ヲ爲シ、
勤勞所得ニ對シテ控除金額ヲ殖シタ、此點ガ社會政策ヲ
意味シタ主ナル點デアル、而シテ〓般ノ此修正ハ、綜合主
義ト政府ガ主張シタル所ハ、少シモ傷ケラレテ居ラヌノデア
ル、(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)如何トナレバ個人ガ會社ヨリ
受ケル所ノ配當金ニ對シテ、個人ノ他ノ所得ト綜合シテ之
ニ課稅スルト云フ主義ガ貫イタ以上ハ、少シモ破壞サレテ
居ラヌノダ、而シテ一方ニ於テ源泉課稅ト言ハレルケレドモ、
是ハ會社ノ所得ニ對スル課稅デアル、法人課稅デアル、源
泉課稅ト綜合課稅ト云フモノハ、貴方ノ仰シヤルヤウナモノ
デハナイ、會社ニ課ケル所ノモノハ、會社ノ所得ニ對シテ課
ケル稅デアル、個人カラ取ル所ノモノハ、配當金ガ個人ニ歸
屬シタ以上ハ、之ニ對シテ個人カラ所得稅ヲ取ルト云フノ
ガ、卽チ是ガ綜合課稅デアル、(「不明瞭」ト呼フ者アリ)是ニ
於テ政府ハ聊モ政府ノ主張シタル所ノ主義ヲ傷ツケラレズ
シテ、而シテ他ノ修正ト云フモノハ、是ハ負擔ノ稅率ノ按排
ヲサレタダケデアル、故ニ政府ハ貴衆兩院ニ於テ修正案ニ
定マリマスル以上ハ、政府ハ同意ヲ致スノテアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=101
-
102・大口喜六
○大口喜六君 議長々々-マダ分リマセヌ(「無用々々」
ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=102
-
103・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 大口喜六君
〔大口喜六君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=103
-
104・大口喜六
○大口喜六君 是ハ極メテ大切ナル問題デアリマスルガ
故ニ、(「分ッタここと」ト呼フ者アリ)唯今大藏大臣ノ御答ニ
對シテ今一言承ッテ置キタイ、唯〓大藏大臣ハ斯ウームフコ
トヲ言ハレタ、私ノ申シタコトガ違フ、源泉課稅ト綜合課稅
ト云フモノハソレハ違フ、源泉課稅ト云フノハ會社ニ課ケル
稅デアル、綜合課稅ト云フノハ個人ニ課ケル稅デアルカラ、
左樣ナ衝突ハシナイ、斯ウ云フコトヲ今私ニ答ヘラレタ、所
ガ四十二議會ニ於テ、政府ガ所得稅增稅案ヲ提出サレタ
トキニ何ト言ハレタノデアルカ、是マデ會社カラノミ取ッテ居ッ
タ所ノ所得稅ヲ全廢シテ、所謂源泉課稅ナルモノヲ取ッテシ
マッテ一文無シニシテ、全部ヲ個人ニ課ケテ、綜合課稅ニサ
レル案ヲ出サレタノデアリマス、其時ニ政府ハ何ト言ハレタ
カ、會社カラ直接稅ヲ取レバ、大株主モ小株主モ同ジ率デ
稅ヲ取ラレル結果ニナル、又同ジ百株ノ株主デモ、大ナル財
產ノ人ト小サイ財產ノ人ガ持ッテ居シテモ、同ジ百株デアルカ
ラ、百株ノ稅ヲ取ラレルノデアルカラ、是デハ社會政策ニナラ
ナイ、大キナ人ハ大キイダケニ、同ジ百株デモ個人ニ綜合シ
テ稅ヲ取ル、小サイ人ハ小サイヤウニ之ヲ綜合シテ、ソレ相
應ノ率ヲ以テ稅ヲ取ル、而シテ大株主ト小株主トハ違ッタ
稅ヲ取ルヤウニシナケレバ、社會政策ニナラナイノデアルト云
フコトヲ、頗ル自慢ラシク御高ニロニナッタノデアル、(拍手起
ル)ソレヲ今日貴放院ノ修正ニ御同意ナサルニ就テ、私ノ說
ヲ御非難サレヌナラバ、私ハ默ッテ聽イテ居ル、所ガ如何ニモ
吾ミガ違ッタコトヲ言フガ如クニ言ハレル、貴方ハ綜合課稅
ト云フノハ、個人ニ課ケル所ノモノデアル、一方源泉課稅ハ
會社ニ課ケルカラ一向街突ガ無イ、オ前ガ違ッテ居ルト云フ
ガ如キコトヲ言ハレルト、吾ニハ國家ノ爲メニ默。テ居ラレナ
イ、(拍手起ル)大藏大臣ハ四十二議會カラ言ハレタコトヲ
何ト思ッテ居ラレルカ、四十二議會カラ言ハレタコトヲ考へ
ラレタナラバ、唯〓ノ事ハ違ッテ居ルト云フコトハ判ラナクテ
ハナラナイ、之ニ對シテモ尙且ツ此綜合課稅主義ノ半バヲ
捨テヽ、源泉課稅主義ニシテ、前ノ主義ヲ殆ド捨テヽ、ソレ
デ且ツ貴族院ノ修正ニ同意シテ、ソレデ收入主義ノミデナ
イ、是デモ果シテ社會政策ヲ行シテ居ル、嚮ニ言ッタコトヽ違
ハナイト言ヒ得ラルヽデアリマセウカ、(拍手起ル)明カニ大
藏大臣ハ兜ヲ脫イデ、安只ハ困リマシタ、吾ミハ此樣ナ事柄ハ
吾〓ノ主義トハ違フケレドモガ、此際收入ヲ圖ラネバナラヌ
ノデアルカラ、ドウカ抂グテ貴族院ノ修正ニ贊成シテ貰ヒタイ
ト、此處デ兜ヲ脫ガレタラドウデス(拍手起ル)ソレヲ吾ニニ
對シテ、如何ニモ吾ミガ間違ヘテ居ルヤウナコトヲ此議場ニ
於テ、天下公衆ニ向ッテ公言シ、而シテ己レノ考ヘタコトヲ
宜イヤウニシヤウトスルカラ、吾とハ默ッテ居ラレナイノデアル、
此點ハ果シテドウデアルカラト云フコトヲ私ハ承リタイ(拍
手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=104
-
105・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 高橋大藏大臣
〔國務大臣男爵高橋是〓君登壇、拍手起ル〕
〔「大藏大臣顏色ナシ」「兜ヲ脫ケ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=105
-
106・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=106
-
107・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 唯今大口君ノ第二ノ質
間デ能ク御趣意ハ判リマシタ、成程度〓是マデモ申シタル
通リ、(「兜ヲ脫ゲ」「兜ハナイ」ト呼フ者アリ、笑聲起ル)此改
正案ノ提出ニ對シテ(「眼鏡ヲ取レ」ト呼フ者アリ)第一ノ目
的トスル卽チ增收ニ在ルノデアル(「兜ヲ脫イダ兜ヲ脫イダ」
ト呼フ者アリ)第二ニハ現在ノ所得稅ヲ其儘ニシテ置イテ
ハ、負擔ノ均衡ヲ彌と失ハレル、ソレ故ニ此儘デ增稅ノ計畫
ハ出來ナイカラ、稍〓根本的ニ總テニ手ヲ著ケタト斯ウ申シ
タノデアル(「苦シイゾ」ト呼フ者アリ、議場騒然)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=107
-
108・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御靜ニ-発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=108
-
109・高橋是清
○國務大臣(男爵高橋是〓君) 而シテ其說明ノ節ニハ、
私ハ先刻貴方ノ仰シヤッタヤウナコトヲ、言ッテ居リマシタラ
ウケレドモ、是ハ能ク一ツ考ヘテ戴カナケレバナラヌ、初メカ
ラ主義ヲ主張スルノデハナイノデアル、「主義ガ無イノカ」ト
呼フ者アリ、笑聲起ル)而シテ配當案ヲ個人ニ歸屬シタ上
ニ於テ、之ニ對シテ個人カラ累進率ヲ課シテ稅ヲ取ルト云
フコトガ、卽チ綜合課稅ノ趣意ヲ貫イタノデアル、ソレデ今
貴方ノ仰シヤッタ所ノ、成程百分ノ四ヲ會社ノ配當ニ課ケ
心ノハ、不公平デハナイカト云フコトハ私モ認メル、併シ理想
カラ言ヘバ、初メニ政府ノ提出シタノハ最上デアルト私ハ今
デモ信ジテ居ル、併ナガラ主義ヲ主張シタノデナイノデアルカ
ラ、(「主義モ主張モ無イノカ」ト呼フ者アリ)ソレハ第一ニ收
入ガ目的デアル、會社ノ配當金ヲ個人ニ歸屬シテ、是カラ
所得稅ヲ取ルト云フコトハ、全ク所得稅法ニ於テ新規ノ事
デアル、新タノ事デアル、此主義ヲ貫ケバ政府ハ滿足シテ宜
シイノデアル、(拍手起ル)其他ノ事ハ經濟界其他ノ事情ニ
依テ、餘リ一時ニ理想ニ飛走ルヤウナコトハ考モノデアル、
(「笑聲起ル」ソレ故此儘ニ衆議院ノ修正ヲ政府ハ之ヲ認メ
テ、同意ヲシタ譯デアリマスカラ、御了承ヲ願ヒタイ(拍手
起ル)
〔「大藏大臣ハ無能ヲ表白セリ」ト呼フ者アリ其他
發言スル者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=109
-
110・岩崎勲
○岩崎勳君 緊急動議ヲ提出致シマス、討論ヲ終結シ、直
チニ採決セラレムコトヲ望ミマス
〔議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=110
-
111・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ヨリ討論終結ノ動議ガア
リマシタ、之ニ御同意ノ御方ハ起立
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=111
-
112・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 多數、討論ハ終結サレマシタ
〔「異議アリ異議アリ」ト呼フ者アリ、議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=112
-
113・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 討論終結ニ異議ガアリマスカ
〔「異議ガアリマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=113
-
114・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 賛成ガ無イヤウデアリマス、(議場
騒然)仍テ討論ハ終結サレマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=114
-
115・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 採決致シマス、所得稅法改正法
律案、貴族院ノ修正ニ同意スルヤ否ヤヲ決シマス、同意ノ
諸君ハ起立
〔同意者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=115
-
116・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 多數
〔拍手起ル「少數々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=116
-
117・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 仍テ同意スルコトニ決シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=117
-
118・岩崎勲
○岩崎勳君 重ネテ議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ
提出致シマス、曩ニ本院ヨリ貴族院ニ送付シタル政府提出
明治四十一年法律第三十七號中改正法律案、卽チ地
方稅制限擴張ニ關スル[件ニ對シマシテ、貴族院ハ之ヲ修
正シテ本院ニ囘付サレマシタ、仍テ爰ニ本案ヲ議題トシ、右
修正ニ同意スベキヤ否ヤヲ審議セラレンコトヲ望ミマス
〔拍手起ル「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=118
-
119・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ日程變更ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=119
-
120・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 異議ナシト認メマス、仍テ日程ハ
變更サレマシタ、明治四十一年法律第三十七號中改正法
律案ヲ議題ト致シマス、貴族院修正ノ部分ヲ朗讀致シマス
明治四十一年法律第三十七號中改正法律
案(政府提出、貴族院囘付)
明治四十一年法律第三十七號中改正法律案
明治四十一年法律第三十七號中左ノ通改正ス
第一條中「百分ノ十三」ヲ「百分ノ三十四」ニ、「百分ノ三
十二」ヲ「百分ノ八十三」ニ、「四十錢」ヲ「一圓」三、「百分ノ
九」ヲ「百分ノ二十八」ニ、「百分ノ二十一」ヲ「百分ノ六
十六」ニ改ム
第二條中「百分ノ十一」ヲ「百分ノ二十九」ニ、「百分ノ十
五」ヲ「百分ノ四十七」ニ改ム
第三條中「百分ノ四」ヲ「百分ノ三、六」ニ、「百分ノ十五」
ヲ「百分ノ十四」ニ改ム
第六條北海道府縣以外ノ公共團體ニ對スル前條ノ
許可ノ職權ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ地方長官ニ
委任スルコトヲ得
附則
本法ハ大正九年度分ヨリ之ヲ適用ス
大正八年法律第二十九號ハ大正八年度分限リ其ノ效
力ヲ失フ
大正九年七月三十一日迄ニ制限外課稅ノ許可ヲ受ケ
タル大正九年度分ノ地租附加稅、營業稅附加稅、所
得稅附加稅又ハ段別割ノ賦課率又ハ賦課額ハ從前ノ
規定ニ依ル制限率又ハ制限額ヲ通シテ本法ニ依ル制限
ヲ超過セサルトキハ之ヲ『制限內ノ賦課率又ハ賦課額ト
看做シ其ノ制限ヲ超過スル。トキハ其ノ超過部分ニ限リ
之ヲ本法ニ依リ許可ヲ受ケタル制限外ノ賦課率又ハ賦
課額ト看做ス但シ大正八年法律第二十九號ニ依リ制
限外課稅ノ許可ヲ受ケタル所得稅附加稅ニ付テハ前項
ノ規定ヲ適用ス
〔原田書記官朗讀〕
『第三條中「百分ノ四」ヲ「百分ノ三、六」ニ「百分ノ十五」
ヲ「百分ノ十四ニ改ム』ヲ加フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=120
-
121・奧繁三郎
○議長(臭繁三郞君) 發言ノ通告ガアリマセヌカラ、直チ
ニ採決致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=121
-
122・三土忠造
○三土忠造君 唯〓ノ修正ハ洵ニ輕微デアリマスカラ同
意致シマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=122
-
123・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 明治四十一年法律第三十七號
中改正法律集ハ、貴族院修正ニ同意スルヤ否ヤヲ決シマス
〔「異議ナシ」ト呼ノ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=123
-
124・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 同意ノ諸君ハ起立
〔同意者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=124
-
125・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 多數仍テ同意スルコトニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=125
-
126・岩崎勲
○岩崎動君 重ネテ議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ爰ニ日程第四、古島一雄君外五名提出
決議案ヲ議題ト爲シ、提出者ノ說明ヲ求メ、且ツ之ヲ審議
セラレムコトヲ望ミマス
〔拍手起リ「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=126
-
127・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ日程變更ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=127
-
128・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 異議ナイト認メマス、仍テ日程ハ
變更サレマシタ-提出者古島一雄君
第四決議案(古島一雄君外五名提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=128
-
129・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 前川虎造君
〔前川虎造君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=129
-
130・前川虎造
○前川虎造君 此決議案ハ極メテ簡單ナモノデアリマス
「今囘政府ガ城東線ノ一部拂下ノ契約ヲ爲シタルハ不當
ト認ム」ト云フ案ニ過ギナイノデアリマス、此理由ヲ說明スル
以前ニ於キマシテ、此事柄ガ如何ナル事柄デアルト云フコト
ヲ、先ヅ諸君ニ申上ゲル必要ガアルト云フノデアリマス、政
府ハ鐵道建設及改良費ノ既定額五億千八百七十万圓ト
云フモノニ、更ニ追加致シテ八億五十五万圓ト云フモノヲ
加ヘテ、大正十八年ニ至ル間ニ於テ、總額十四億千九百
二十九万圓ト云フモノヲ使フト云フコトニナッテ居ルノデア
リマス、ザウシテ此中改良費ハ既定ノモノト追加ノモノトヲ
加へマシテ、大正十八年迄ニ八億六千三百三万圓餘ヲ使
フノデアリマス、之ヲ本年度ニ幾ラ要求致シタカト云フト、本
年度分トシテ追加豫算ニ於テ、二千二百九十万圓ノ改良
費ヲ要求致シテ居ルノデアリマス、此改良費ノ中ニ大阪湊
町間線路、竝高架改築費四十七万五千圓ト云フモノノ要
求ガアルノデアリマス、此要求ハ如何ナル所ニ使ハレルノデ
アルカ、卽チ大阪ノ城束線ノ一部一哩八分ト云フ、此線路
ヲ新ニ高架式ニ變ヘルト云フ、此改築費ノ中ノ一部ヲ本年
度ノ豫算ニ要求致シテ居ルノデアリマス、ソレデ此要求ニ對
シテ、豫算委員ニ於キマシテモ問題ニナッタノデアリマス、何
故問題ニナッタカト云フト、此改築ヲシタ後ノ一哩八分ト云
フ此鐵道ヲ、如何ニ處分スルカト云フ問題デアルノデアリマ
ス、所ガ此質問ノ結果ト致シマシテ、鐵道大臣ハ一ノ新シキ
事實ヲ發表サレタノデアル、ドウ云フ事實デアルカト云フト、
是ハ此後ノ不用ニナッタ鐵道ヲ京阪電鐵會社ニ約束ヲシテ
居ルト云フ-契約ヲ致シタト云フ事實ヲ發表サレタノデ
アリマス、其契約書ナルモノニ依リマスルト、價格全體五百
七十万圓ト最低價格ヲ定メテ、サウシテ若シ此價格ト云フ
モノガ、政府ガ新ニ敷カント欲スル所ノ高架線路ガ五百七
十万圓デ行ケバ宜シイガ、萬一五百七十万圓デ是ガ目的
ガ達シナイ時分ニハ、其不足額ハ矢張此京阪電鐵會社ガ
負擔ヲスルト云フ附帶契約ヲ附ケテ、此書類ノ交換ヲ致シ
テ居ルノデアリマス、ンコデ此問題ガ本議場ノ問題トナッタノ
ハ、中越鐵道成田鐵道ノ買收法案ヲ議スルノ際ニ於テ、此
問題ガ本議場ノ問題トナッタノデアリマス、引續イテ委員會
ニ於テモ、此問題ヲ政府ニ說明ヲ求メタノデアリマス、是ガ
是迄ノ經過デアリマス、ンレデ是カラ私ハ此決議案ノ說明ヲ
致スノデアリマス、政府ハ此鐵道ノ一部ヲ改良スルニ當ッテ、
之カ爲メニ不用トナッタ所ノ鐵道ヲ、私立會社ニ賣渡スト
云フコトガ、如何ナル法律ニ依テ之ヲサレタカ、如何ナル條
規ノ定ムル所ニ依テ此處分ヲ爲シタカト云フコトガ一ノ問
題デアリマス、政府ノ言フ所ニ依レバ、是ハ鐵道デハナイ、旣
ニ之ニ代ルベキ所ノ高架鐵道ガ出來ル以上ハ不用ニナルノ
デアル、故ニ不用物ヲ拂下ゲルノデアル、斯ウ云フコトヲ繰
返シ繰返シ說明サレタノデアリマス、如何ニモ一方ニ鐵道ヲ
造レバ、是マデ使ッテ居ッタ線路ハ不用ニナルト云フコトハ、
是ハ明カデアリマス、併ナガラ此不用ナル所ノ線路ナルモノ
ハ、矢張依然トシテ一ノ鐵道トシテ使ハレル時ニハ如何ナル
モノデアルカ、不用デハナイ、卽チ矢張鐵道デアル、鐵道デア
ル以上ハ是ハ鐵道ノ拂下デアル、若シ此上ニ載セテ居ル所
ノ橋桁デアルトカ、「レール」デアルトカ云フモノヲ、切レ〓〓ニ
政府ハ御賣拂ニナルノデアルナラバ、是ハ當然不用物ノ處
分デアルカ知ラヌガ、之ヲスッカリ原形ノ儘ニ會社ニ賣渡ス、
會社ハ依然トシテ之ヲ線路ニ使フノデアレバ、當然是ハ鐵
道ノ拂下デナケレバナラヌノデアル、故ニ吾ミハ之ヲ頻リニ
追窮スルト、政府ハ終リニ斯ウ云フコトヲ言出シテ居ル、實
ハ是ハ物ト物トノ交換デアル、精神ガ拂下ニ在ラズシテ、政
府ハ一面ニ改良スル費用ガ要ルカラ、其費用ニ相當ナル代
價ヲ以テ之ヲ交換シタノデアル、政府ハ交換デアルト云フコ
トヲ度〓繰返シテ說明サレテ居ル、一體此官有物ヲ拂下ゲ
ル上ニ於テ、自分ノ方ニ或物ガ要ルカラ、其ノ要ルダケノ物
ヲ出セバ、其品物ヲ代ト交換シテヤルト云フコトハ、是ハ又
如何ナル所カラ斯樣ニ御割出シニナッタノカ、不用ノ物ハ宜
シク賣ルヘシ、又入用ノ物ハ宜シク買フベジ、是デコソ明カデ
アル唯ダ此一ツノ價ノ有ル物ヲ、自分ガ之ヲ不用ニナッタカ
ラト云ッテ、或物ヲ持ッテ來レバ或物ヲ遣ルト云フ遣方ハドウ
デアルカ、斯樣ナ遣方ハアルベキ筈デナイ、ソレデ段々追窮
致シマスルト、終リニハ是ハ契約デハナイ、是ハ意思ノ表示
ニ過ギナイノデアル、契約デハナイト云フノデアル、契約デハ
ナイノデアレバ何故ニ之ヲ豫算委員會ニ於テ、斯樣ナ
書類ヲ公表ニナッタノデアルカ、意思ノ表示ニ過ギナ
イモノデアルナラバ、何ガ故ニ此處ニ於テ物ノ交換ノ
約束デアルト云フコトヲ言ハレルノデアルカ、吾ミニハ
一向其意ヲ得ヌノデアル、殊ニ其線路ノ拂下ト云フコ
トニ伴ウテ、交換ト云フコトニ就テハ、斯ウ云フモノヲ出シ
テ來テ居ルノデアル、此線路ノ拂下ハドチラノ方カラ言
出シタカト云フト、現在ノ豫算ガマダ提出サレルヤラサ
レヌヤラ判ラヌ以前ニ於テ、本年二月二十一日ニ會社
側カラシテ、此度鐵道省ハ是ニノ線路ヲ御改良ナサル
由デアル、若シ左樣ニナッタナラバ、是カラ生ズル不用ノ分ハ
私ノ所へ御賣拂下サイト云フ願書ヲ出シタノデアル、ソレヲ
五月二十日ニ政府ハ、斯ウ云フ條件ナラバ賣ッテヤルト言ッ
テ出シタノハ曩ニ申シタ條件、之ニ對シテ又確ニ其通リ心
得マシタト云フ受書ヲ出シタト云フノデ、一ノ契約ハ成立
致シテ居ルノデアル、ンコデ私ハ此線路ハドウ云フ方面ノ線
路カト云フト、是ハ大阪湊町間ノ線間、竝高架改築費ト豫
算ニハ出テ居リマスガ、實際此不用線ナリトシテ拂下ゲベキ
所ノ線路ハ、城東線ノ中、中野町連絡所附近ヨリ本庄葉
村町市電新設線附近ニ至ル一哩八分デアリマス、ソレデ此
拂下バ假リニ之ヲ一步譲リマシテ、鐵道デハナイ、是ハ不用
デアルカラ拂下ゲルノデアルト云フコトニ一步讓リマシテ、サ
ウシテドウ云フ結果ニナルカト云フト、若シ之ヲ不用ナリト
シテ拂下ゲル時分ニハ、ドウシテモ此都市計畫委員ニ諮ラ
ナケレバナラナイノデアル、都市計畫法ハ大正八年四月五
日法律第三十六號ヲ以テ發布サレ、本年一月一日ヨリ實
行サレテ居ル、此都市計畫法ノ第一條ニドウ云フコトガ書
イテアルカト云フト「本法ニ於テ都市計畫ト稱スルハ交通
衞生保安經濟等ニ關シ永久ニ公共ノ安寧ヲ維持シ又ハ
福利ヲ增進スル爲メ重要施設ノ計畫ニシテ市ノ區域內ニ
於テ又ハ其區域外ニ亙リ執行スルモノヲ謂フ」ト云フコト
ヲ規定シテ、第二條ニハ斯ウ云フ規定ガアル「前條ニ規定ス
ル市ハ勅令ヲ以テ之ヲ指定ス其ノ市ノ都市計畫區域ハ關
係市町村及都市計畫委員會ノ意見ヲ聞キ主務大臣之ヲ
決定シ内閣ノ認可ヲ受クヘシ」ト斯ウ云フコトニナッテ居ル
ノデアリマス、ソレカラ此都市計畫委員會官制ト云フモノヲ
更ニ政府ガ十一月二十七日ニ-大正八年ノ十一月二
十七日ニ勅令ヲ以テ發布サレテ居ルノデアル、之ヲ本年一
月カラ施行ニナッテ居ル、其都市計畫委員會ノ官制ニ依リマ
スレバ、斯ウ云フコトガ聿ロイテアル「都市計畫委員會ノ議決
ヲ經ヘキ事項ニシテ左ニ掲クルモノハ地方委員會ノ議決ヲ
經タル後中央委員會ノ議決ヲ經ヘシ、一都市計畫區域ノ
全部ニ亙ル計畫及其ノ變更二、都市計畫事業ニシテ都市
計畫區域內ニ居住スル者ニ特ニ重大ナル利害關係アルモ
ノ及其ノ變更」ト云フコトガアルノデアル、ソレデ假令鐵道
省ト雖モ、苟モ其都市ニ重大ノ關係ノアル線路ヲ變更セン
ト欲スル時分ニハ、先ヅ其都市計畫法及ビ此都市計畫委
員會ノ官制ニ依テ、諮問サルベキ筈ノモノデアル鐵道省自
ラ此線路フ如何ニスルモ、都市ノ委員會ヲ無視シテ此計畫
ヲ立テルコトハ出來ナイコトニナッテ居ルノデアル、況ヤ又之
ヲ一ツノ私設會社ニ賣渡スト云フコトノ契約ヲ爲スガ如キ
ニ至ッテハ、其不法モ亦甚ダシト吾ミハ思フノデアル(拍手起
ル)ンコデ又此拂下ハ如何ナル所カラ拂下ゲルト云フコトニ
シタカト云フコトヲ詰問シマスルト云フト、是ハ明治二十三
年七月二十一日ノ勅令第百三十五號官有地特別處分
規則ト云フモノガアル、其中ニ「內務大臣ハ左ノ場合ニ限リ
官有地ヲ競爭ニ付セス随意ノ契約ヲ以テ貸渡又ハ賣渡ス
コトヲ得」ト云フ其中ノ第一項ニ「直接公用ニ供、スル爲又
ハ公共ノ利益トナル事業ノ爲縣郡市町村及公共組合又
ハ其他ノ起業者ニ官有地ヲ貸渡シ又ハ賣渡ストキ」ト云フ、
此第一項ニ依シテ此契約ヲ爲シタモノデアルト、斯ウ云フノデア
ル、所ガ第一條ノ初メニ「內務大臣ハ左ノ場合ニ限リ」トア
ル、鐵道大臣ガ權能ノ無イコトハ明カニナッテ居ルノデアル、
(拍手起ル)所ガ之ニ對シテハ慣例ガアル、是迄段々此慣例
ヲ用井來シテ、ソレガ爲ニ今日迄ハ若シ斯樣ナ事ヲ鐵道省ガ
勝手ニヤッテモ、會計檢査院ハ問題ニシナイ、又議會デモ問
題ニナッタコトハナイト、斯ウ言ハレルノデアル、如何ニモ左
樣カモ知レナイ、然シナガラ之ヲ物ニ譬ヘテ言ッテ見マスレバ、
或ル泥棒ガ一軒ノ家ニ屢〓泥棒ニ這入シテ物ヲ取ッタ、併シ
ナガラ其都度告訴シナカッタ、最後ニ告訴ヲシタ、サウスルト
其泥棒ガ抗辯ヲシテ曰ク、私ハ度々這入ッタガ曾テ一遍モ
告訴ニナラナカッタカラ、アノ家ノ物ヲ取ッテモ差支ナイト思ツ
テ取ッタノデアルト云フガ如キコトデ、世ニ之ヲ稱シテ盜人
猛〓シト云フ、此ノ如キ比喩ハ斯樣ナ問題ニハ不敬デア
ルカ知ラヌガ、是迄此事ニ就テ問題ニナラナカタカラヤツ
タノデアルト云フコトハ何タル事デアルカ(拍手スル者ア
リ)明カニ如何ニ内務大臣ト鐵道大臣ノ間ニンレハ御交渉
ガアラウト、此官有地特別處分規則ニ依ッテヤッタト言ハル
ル以上ハ、此第一條ノ內務大臣ニ限リト云フ、內務大臣ノ
特ニ許サレタ權能デアル、鐵道大臣ガ許サレテ居ラヌ、ソレ
ヲ御互ノ唯職務ノ便宜上ノ勝手ニヤッタト云フ一ツノ慣例
ヲ以テ、其勅令ヲ無視スルコトガ出來ルカドウカ、斯樣ナ事
ガ私ハ餘リニ法規ヲ無視シ、此法律ニ違反シタ所ノ行爲デ
アルト吾とハ信ズルノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)ソレカ
ラ序、アニ申上ゲテ置キマスガ、餘程此事ニ就テハ私共怪訝
ニ堪ヘナイコトガアルト云フノハ、此鐵道ハ不要デアルカラ
拂下ゲルト言ッテ、五月二十日ニ政府ト-鐵道大臣ト京
阪電鐵トノ間ニ契約ヲ結ビ、其契約ヲ結ブト同時ニ、四月
ノ二十九日ニ電鐵會社カラ梅田乘入レノ特許願書ガ出テ
居ルノデアル、此願書ヲ如何ニ取扱ハレタカ、大阪府知事、
京都府知事ニ向ケ五月二十九日ニ出シタ、鐵道省カラ諮
問サレタ、之ハ三十日、三十一日、二日ヲ經ッテ六月一日、
三日ノ間ニ之ヲ裁決シテ、鐵道院ニ差支ナイト云フ回答ヲ
シタト云フ一事デアル、吾ミハ平生此地方廳ノ事務ヲ取扱
フコトノ頗ル遲緩ナルヲ憂ヒテ居ルノデアリマス、故ニ此ノ
如ク敏捷ニ運バレルト云フコトハ、洵ニ吾とトシテ喜ブベキ
事デアリマス、併ナガラ斯樣ナ事ヲ是迄取扱ヒニナッテ、遲キ
モノハ八箇月、早キモノデモ二三箇月ハ必ズ御留置ニナル
ベキコトニナッテ居ルノデアル、然ルニ此問題ニ限リ二十九
日ニ出シタモノガ、直ニ六月一日ニ之ガ決定ガ出來ルト云
フ位迅速ニ運バレタト一云フノハ、如何ナル事デアルカ、是一
甚ダ迅速ニヤッタノガ惡ルイト云フノデハナイノデアリマスガ、
斯樣ナ工合ニ甘ク運ンデ、トン〓〓拍手ニ之ガ契約ガ出來
ルガ-一方ノ乘入レハ直グ斯樣ニ運ビ、サウシテ豫算ガマ
ダ發セラレナイ、若シ此帝國議會ガ此鐵道ノ建設ニ協賛ヲ
與ヘナンダ時ニハ、ドウナルノデアリマスカ、是ハ今日ノ事情
カラ言ヒマスレバ、ドン〓〓何デモ成立スルト云フ御豫想ハ
付クカモ知レナイ、付クカモ知レナイガ、マダ未必ノモノデア
ル、未必ノ以前ニ於テ斯樣ナ契約ヲ爲サレルト云フコトハ、
私ハ其意ヲ得ナイト思フノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者ア
リ)ソレデ殊更不思議ナノハ斯ウ云フノデアル、是ハ五百七
十万圓ノ價ノナイモノデアル、三百五十万圓、好ク積ッテモ
三百三十万圓カ五十万圓ノモノデアル、然ルニ會社ガ五百
七十万圓ニ買フト云フノハ、餘程良イ相手ヲ見附ケタノデ
アル、故ニ是ハ鐵道省トシテ喜ンデヤラネバナラヌ仕事デア
ルト云フコトヲ頻リニ言ハレルノデアル、諸君、新聞社ノ器
械ヲ賣ルト云フ或ル一ツノ新聞社ヲ買ウ時分ニハドウデスカ、
其新聞社ニアル所ノ輪轉機、活字ト、ソレカラ古新聞ト古
机ト云フモノガ、直チニ新聞社ノ價格ヲ作スモノデアリマスカ
決シテサウ云フモノデナイ、何トナレバ新聞社トシテ今日マデ
經營シ來ッタ所ノ其價格ト云フモノガ之ニ加ハルカラ、或ハ
五万圓トナリ、十万トナルノデアル、鐵道モ其如キモノデアル
此鐵道ガ廢物トナルナラバ、或ハ地面ガ幾ラ、橋桁ガ幾ラ、
古鐵ガ幾ラト云フコトヲ計算シナケレバナラヌガ、京阪電車
ガ多年希望シテ居ル所ノ目的ヲ達シテ、大阪市ノ或ル部分
マデ此線路ヲ延バスト云フコトニナッタ時分ニハ、全體ノ線
路ノ利益ト云フモノハ、殆ド是マデノ倍以上ニ算スルコトガ
出來ルノデアル、(拍手)故ニ是ハ古鐵トシテ賣ルノト、會社
ガ鐵道トシテ使フノト、同ジ價格ヲ以テ論ズベキモノデハナ
イノデアル、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)私ハ必シモ此五百七
十万圓ノ安イ高イヲ云フノデハアリマセヌ、斯樣ナモノヲ恰
モ何等ノ形式ニ依ラズ、唯ダ鐵道大臣ト會社ガ祕密ノ間ニ
契約シテ、サウシテ世間ガ一ツモ知ラヌ間ニ、一ノ契約ガ成
立シテシマフ、サウシテ大正十四年若クハ十八年ニ此線路
ガ始メテ不用デアルト云フ時ニ、今日契約シタ所ノ此契約
書ヲ出シテ、此不用地ハ旣ニ京阪電車ト斯樣ナ契約ノアル
モノデアルト云フノデ、總テノ競爭者ヲ抑ヘヤウト云フヤウナ
形ニナッテ來タ時分ニハ、ドウ政府ハ之ニ向ッテ御處置ヲナサ
ルノデアルカ、殊ニ又大阪都市デアリマス、大阪都市ハ是ハ
今尙ホ都市ト云フト雖モ、都市ニナリカカッテ居ルノデアル、成
程人口ハ澤山アリマス、家モ澤山アリマス、併ナガラ大阪市
ハ由來道ガ極テ狹イ道デ、稍、電車ヲ通シテ居ル所ダケハ道
ラシイ道デアリマスガ、尙ホ北ノ方ノ葉村町邊へ參リマスル
ト、極メテ建築が不完全、道路ガ不完全デアル、是ハ大阪市
ガ將來最モ力ヲ用ヰテ此都市ノ計畫ヲシナケレバナラヌ場
所ニナッテ居ルノデアリマス、然ルニモ拘ラズ此處ノ鐵道ヲ不
用ニナッタカラト言ッテ、此鐵道ヲ大阪市ト云フモノト何等ノ
關係モナシニ、祕密ノ間ニ御契約ナサルト云フコトハ、是ハ
將來大阪市ト內務省ト鐵道省ト、此三者ノ間ニ一大紛
授ヲ貽ス原因ニ相成ルノデアル、(拍手)現ニ-現ニ此事
ガ一タビ大阪市民ノ耳ニ入ルヤ、大阪市ハ非常ナル勢ヲ以テ
之ニ反對ヲシテ居ルヂヤナイカ、既ニ今日デスラ斯ノ如キ紛
擾ノ端〓ヲ啓イテ居ルノデアル、若シ之ヲ祕密ノ間ニ置イ
テ、他日此都市計畫ト衝突ヲ致シタ時分ニハ、一大紛議
ノ原因トナルノデアリマス、斯ノ如キ事ガ判ッテ居リナガラ、
何等ノ法規ニモ據ラズ、勝手氣儘ニ鐵道省ガ之ヲ御取極
ニナッテ、サウシテ之ヲ追及スレバ意思ノ表示デアルト云
フ、意思ノ表示ト云フノハ何事デアルカ、私ハ法律ノ知識
ハ極テ低イ者デアル、併ナガラ或ル一方カラ一ノ條件ヲ
提出シ、或ル一方カラ承知シタト言ッテ、御互ニ書面ヲ
交換スレバ、ソレデ直チニ契約ハ成立スベキ筈ノモノデ
アル、常識ヲ以テモ是ハ判ルノデアル、尙ホ不思議ナ事ハ、
鐵道大臣ハ斯ウ云フ事ヲ言フノデアル、引込ト云フコトヽ
鐵道ノ引込ト云フコトヽ拂下ト云フコトハ全然別デアルト
言フノデアル、全然別物デアルナラバ、何カ故ニ政府ハ三百
五十万圓ノ値シカナイモノヲ、五百七十万圓ニ賣リ、ソレカ
ラ之ニ對スル說明トシテ是ハ物ト物トノ交換デアルト言フ
ノハ何事デアルカ、旣ニ此契約ヲナサル當時カラ、引込ト云
フコトヲ一ノ條件ニシテ居ルカラ、之ヲ言ハレルノデアル、ソ
レニ全然別物トハ何事デアルカ、別物デモ何デモナイ、相關
聯シテ離ルベカラザルモノデアル、故ニ若シ此京阪電鐵ニ此
引込ヲ許サス、特許シナイト云フコトニナラバ、京阪電鐵ハ
果シテ此契約ニ從シテ五百七十万圓ノ最高額デ橋桁ヤ地
面ヲ引取ルカドウカ、決シテ引取ルモノデナイ、是ハチヤント
相結ビ付イテ離ルベカラザルモノデアル、故ニ是ハ全然別物
デハナイ、ソレカラ又政府ノ說明スル所ニ依レバ、斯ウ云フ
事ヲ言フノデアル、是ハ實ハ鐵道ノ拂下交換ト云フコトデア
ルケレドモ、形ハサウデハナイ形ダケヲ不用物トシテ之ヲヤ
ルノデアルト云フコトヲ屢〓明言サレテ居ル、何ト云フ事デア
ルカ、政府ハ此鐵道ヲ拂下ゲテ、新シイ鐵道ト舊イ鐵道トヲ
交換シテ、舊イ鐵道ハ民間ニ使ハセル、新シイ鐵道ハ自分ガ
使フノダ、ソレダカラ物ト物トノ交換デアルガ、ソレハ法規ニ
無イカラ之ヲサウ云云コトニセズシテ、之ヲ不用ト云フコトニ
シテ拂下ゲルノダト、斯ウ云フ不用ト云フコトニシテト云フ
ノハ如何ナル事デアルカ、不用ナラハ不用、又有用ナラハ有
用トハッキリスベキ筈ノモノデアル、不用トシテ拂下ケルカラ、
此規則デヤレルノデアルト、之ヲ使フガ使フマイガ、政府ハン
レハ知ラナイ、或ハ電鐵ニ拂下ケレバ、京阪電鐵ハ鐵道トシ
テ使フカモ知レヌ、併シソレハコチラハ知ラナイ、免ニ角鐵道
トシテ拂下ゲル規則ガ無イカラ不用トシテ拂下ゲルノダト
云フノデアル、ソレカラ又驚クノハ、三百三十何万圓ノ價値
シカナイト云フ見積額ノ中、二百七十万圓ハ地所デアリマ
ス、地面ニ對スル價格デアリマス、アトハ僅カナモノデアリマ
ス、其二百七十万圓ノ地所、此大部分ノ地所ガ、而カモ大
阪市ノ土地卜大關係ヲ持ツノデアル、何モ橋桁ヤ軌道グラ
イハ邪魔ニナレバ拾テタラ宜イノデアル、此土地其モノハ大
阪市ガ存在スル限ハ、大阪市トハ離ルベカラザル關係ノアル
モノデアル、此大阪市トシテハ、京阪電鐵ナル一ノ法人會社
ガドン〓〓市ノ眞中ニ權利ヲ持ツト云フコトハ、將來市ノ發
展ト云フコトニ如何ナル影響ヲ及ボスカト云フコトヲ御承
知テアルカドウデアルカ、總テ是カラ都市ヲ經營シテ行カン
トスルモノハ、成ベク都市自分自身ニ於テ處理シテ行ケルコト
ヲ望ムノデアル、然ルニ玆ニ故ラニ-斯樣ナ政府ノ不用ニ
ナッタ物ヲ其都市ニ拂下ゲテヤルナラバ、是ハ格別デス又其
都市ガ之ヲ要ラヌ、又其都市ニ於テ鐵道トシテハ要ラヌ、要
ラヌノミナラズ、他ノ計畫ニモ必要ガナイ、斯ウ云フ場合ニハ
ソレハ鐵道院トシテドウ賣拂ヒニナラウト御勝手デアリマス
ケレドモ、都市ガ今尙ホ進步シツヽアル所ノ此大都市ノ改
良時期ニ、此時期ニ於テ、都市ヲ出シ拔イテ一ノ會社ニ之
ヲ拂下ゲテ知ラヌ顏ヲシテ居ルト云フコトハ、私ハ此內務行
政、卽チ内務大臣トシテモ、將來此都市經營ト云フコトヲ
如何ニ御取扱ニナルノカ、一體內務大臣ノ私ハ心事ヲ疑ハ
ザルヲ得ヌノデアル、(拍手)現在內務大臣ハ中央ニ都市計
畫委員ヲ置キ、地方ニモ都市計畫委員ヲ置イテ、地方ト中
央ト相俟ッテ都市ノ改善ヲ計ノテ行クト云フ計畫ヲ立テラ
レ、而シテ都市法ナルモノヲ作ラレ、ソレカラ都市法ノ官制ナ
ドモ作ラレ、明カニ條項ヲ擧ゲテ、是ハ斯ウスベキモノ、是ハド
ウスベキモノト云フコトヲ決定シテ居ルニモ拘ラズ、之ニ何
等ノ御相談モナクシテ、鐵道大臣ニ委シテ居ルノデアルカラ
シテ、鐵道大臣ガ地所ヲ隨意ニ賣ラウト、ドウシヤウト、乃公
ノ方ハ構ハヌノデアルト、內務大臣ハ御答ニナルノカドウデ
アルカ、甚ダ私ハ其意ヲ得ナイノデアル、要スルニ徹頭徹尾
是ハ不當ナル拂下デアリマス、故ニ私ハ此不當拂下ハ宜シ
ク取消スベキモノデアル、ヨシ取消サナクトモ、是ハ當然無效
ニナルモノデアルト思フ、尙ホ附加ヘテ言ッテ置キマスガ、是ガ
取消シタカラト云ッテ、鐵道大臣及內務大臣ノ責任ハ決シ
テ解除セラレルベキモノデハアリマセヌ、(拍手)是ハ別問題
デアリマス、是ハ取消ス取消サヌト云フコトヽ別問題デアリ
マス、是ハ今日此處ニ言フベキ問題デアリマセヌカラ、此處
デハ唯ダ此交通機關ト云フモノヽ趣意ヲ述べ、徹頭徹尾此
鐵道ノ一部分ヲ京阪電鐵會社ニ拂下ノ處分ヲ爲シタ契
約ト云フモノハ、是ハ不當ナル契約デアル、故ニ是ハ破棄ス
ベキモノデアル、ヨシ破棄シナクトモ、是ハ當然無效ニ歸スベ
キモノデアルト云フコトダケヲ私ハ此處デ述ベマシテ、是デ降
壇ヲ致シマス、(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=130
-
131・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 鈴木錠藏君-鈴木君著席ガア
リマスカ(「今出テ居リマス」「眼ヲ開イテ御覽ナサイ眠シテ居ッ
テハイケマセヌ」ト呼フ者アリ)
〔鈴木錠藏君登壇、拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=131
-
132・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 私ハ前川君ニ依テ提出サレタル所ノ決議
案ニ反對ヲ表シ、政府ノ處置ヲ是認スルモノデゴザイマス、
抑モ此城東線ナルモノハ、過日來貴衆南議院ニ於テ連日
論難應酬セラレマシテ、天下ノ耳目ヲ唆リ、恰モ大事件ノ
如ク宣傳セラレテ、今日又決議案卜云フガ如キ仰々シキ名
目ノ下ニ上程セラレタノデアリマスルガ、其内容ヲ審査スル
時ニハ、寧口政府ニ於テ何等ノ手落モナク、吾ニハ之ヲ大成
功ト云フニ憚ラヌノデアリマス、唯〓前川君ノ說明ニ依テ
見マシテモ、非難攻撃空疎薄弱ニシテ、前川君自身ニ考ヘ
タナラバ、今日此提案ヲサレタノヲ後悔サレテ居ルダラウト
信ジテ居リマス、(拍手起ル「低能」ト呼フ者ナリ)併ナガラ一
般國民ノ前ニ此問題ガ展開サレタ以上ハ、國民ノ爲メニ其
疑惑ヲ除キ、事理ヲ宣明シ、而シテ事實ノ無根ナル事ヲ明
カニスルト云フ必要ガアリマスカラ、私ハ前川君ガ此所デ說
明サレタノハ、前川君ノ爲メニハ御都合ガ好イカ知ラヌケレ
ドモ、私ハ詳カニ此城東線ナルモノヽ成行ヲ申上ゲテ、諸君
ノ參考ニ供シタイト思ヒマス、(「謹聽々々」「代辯」ト呼フ者ア
リ)全體此城東線ト云フノハ、梅田カラシテ關西線ノ天王
寺ニ至ル所ノ六哩六分ニ當ルノデ、鐵道省ハ城東線ナルモ
ノガ交通頻繁ナル所ノ道路ヲ切斷スル爲メニ、ドウシテモ之
ヲ將來高架線ニシナケレバナラヌト云フ考ヲ持シテ居クタ、併
ナガラ其場所ニ於テ高架線ニスルガ宜イカ、或ハ別ナ所ヲ
擇ンダガ宜イカト云フコトハ、調査〓究ノ結果、之ハ現在ノ
所ヨリモモツト人家ノ稠密デナイ、而シテ土地ノ價格ノ安イ
所ヲ擇ブノガ宜イ、斯ウ云フ事カラシテ此事ハ起ッテ居ル、
(「ソンナ事ヲ聽ク必要ナシ」ト呼フ者アリ)此事ヲ聽カナクチ
ヤ分ラヌ、然ルニ京阪電車鐵道會社ハ、幸ニ京都ト野江
間ノ軌道ノ特許權ヲ得夕場合ニ、ドウシテモ大阪市内マデ
乘込マナケレバナラヌト云フ條件ガ附セラレタノデアルカラ
シテ、是ガ他日不用ニナッタ場合ニ於テハ、之ヲ自分ノ方ニ
拂下ゲテ貰ヒタイ、故ニ政府ニ於テハ若シサウナラバ、新高
架線ヲ設置スル爲メニ要スル所ノ最低五百七十万圓ヲ負
擔スルナラバ、其事ヲ高架線完成ノ後ニ於テ、現在ノ詰リ
梅田カラ一哩六十五鎖ノ鐵道ノ廢線ニナツタ部分ヲ拂下
ゲテモ宜シイト云フ囘答ヲシタノデ、故ニ此京阪電車鐵道
會社ハ其回各ヲ得タ爲メニ、此一部乘入線ノ變更ヲ今申
請シテ居ルノデアル、政府ガ決シテ鐵道ヲ賣ルノデハナイ、後
ニナツテ廢線ニナルベキモノヲ賣ルノデアル、(「詭辯々々」ト
呼フ者アリ)此事ニ就キマシテハ京都府知事カラモ大阪府
知事カラモ追申ガアッテ····
〔「讀ミ給へ」「其所ガ胡麻化シダ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=132
-
133・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜ニ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=133
-
134・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 淀川ノ右岸ヲ高架線ニスルナラバ差支ナ
イト云フ所ノ上申ガ出テ居ル、大阪市長モ亦其事ハ承知シ
タ上ニ於テ(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)市內-大阪市内ハ
卽チ高架線ニスルナラ差支ナイ、大阪市會ト雖モ他日發達
ノ見込ノアル所ハ、高架線ニスルヤウナ準備サヘスレバ差支
ナイト云フコトハ、卽チ大阪京都兩知事ト及大阪市長ノ三
名カラ出テ居ルノデアルカラ、大阪市ノ意見モ此時ニ於テ
發表ザレタモノト云フコトハ言ヘルノデアリマス
〔「市會議長ハ反對シテ居ルデハナイカ」ト呼フ者ア
リニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=134
-
135・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=135
-
136・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 政府ニ於キマシテモ、目下提出シテアリマ
ス所ノ豫算ガ通過シタ上ニ於テ、而シテ此一方ノ會社ガ廢
線敷地ヲ利用シテ、市內ヘ乘入ノ特許ヲ得タ暁ニ於テ、初
メテ効力ヲ生ズルノデアリマスカラ、今日ニ於テ之ヲ契約シ
テ置キマシテモ、卽チ三四年ノ後ニ此事ガ完成スルノデアル
カラ、之ヲ今日ニ於テ契約シテ申合ヲ爲スト云フコトハ必
要ダラウト云フ見地カラ、此事ガ出來テ居ルノデアリマス
(「必要ナシ」「朗讀々々」「其儘其方ノ方ニヤレ」ト呼フ者ア
リ)其後ニ本月二十二日ニ大阪市長ガ詰リ大阪市會ノ決
議書ヲ提出シテ、城束線ノ一部ヲ拂下ゲテ、之ヲ京阪電鐵
會社ノ電車軌道敷ニ許容セシムルノハ、市ノ都市計畫ニ關係
ガアルカラシテ、都市計畫ト共ニ之ヲ都市計畫委員ニ諮詢
シテ之ヲ決定シテ貫ヒタイ、隨シテ拂下及特許ヲ中止シテ貫
ヒタイ、少ナクトモ特許ノ事ハ都市計畫委員ノ意見ヲ徴シテ
貰ヒタイト云フ陳情ガアッタ、併ナガラ政府ハ之ヲ拂下ヲ中
止スルコトハ出來ナイケレドモ、特許ニ就テハ大阪市竝ニ都
市計畫委員ノ意見ノ決定上デ決定スルガ當然デアルト云
フコトヲ、市長ニ向ヲテ回答シテアル、此經過ヲ諸君ガ冷靜
ニ判斷スルナラバ、唯〓ノ前川君ノヤウナ疑ハ起ラヌノデアッ
テ、更ニ吾ヒハ是ヨリ以上辯ヲ弄シテ此決議案ニ反對論ヲ
唱ヘル必要ハ無イケレドモ、而モ尙ホ此ノ理由ヲ知ラナイ人
ニ於テハ、恰モ此間ニ何等カノ事件ガ伏在スルガ如クニ認
定セラレル爲メニ、私ハ更ニ各條ニ亙シテ辯明ヲ試ントスル
者デアリマス、第一ノ前川君ノ攻擊ハ何デアルカト云フト、
鐵道拂下デアルノデ、公用ニ使用シテアル所ノ鐵道ヲ鐵道
大臣ガ拂下ゲタノデアル、若シ鐵道ヲ拂下ゲルコトヲ得ルナ
ラバ、鐵道大臣ハドンナ鐵道デモ拂下ゲルト云フノガ、貴族
院アタリニ於テ隨分色と議論ガアリマシタケレドモ、鐵道大
臣ノ言フノニハ、是ハ鐵道其物ヲ拂下ゲタノデハナイ、鐵道
ガ他日不用ニナッタ場合ニ於テ、其廢線ト「ステーシヨン」所
在地敷地ノ全部及之ニ存在シテ居ル所ノ軌條橋桁等ヲ
拂下ゲテ、建物トソレカラ附屬物ハ除イタノダト云フ、他日
不用ナル物ヲ拂下ゲタト云フ、是ハ諸君ガ如何ニモ怪シイ
モノヽ如ク思ハレマスケレドモ、鐵道ニ於テハ斯ウ云フ慣例
ハ幾ラモアル、(「言明ノ必要ナシ」ト呼フ者アリ)諸君ノ前ニ
二三ノ例證ヲ示シテ、諸君ノ諒解ヲ求メテ見ヤウト思フ、ソ
レハ院線ノ吹田カラ淀川ニ至ル所ノ線路ガ、線路變更ノ爲
メニ不用ニナック、其不用ニナラナイ前ニ於テ、北大阪電車
鐵道會社ハ、之ヲ將來不用ニナルナラパ、私ノ方へ拂下ゲテ
貫ヒタイト云フコトヲ鐵道省ニ中込ンダー其時ハ鐵道
院デアッタ、鐵道院ニ申込ンダトキニ、他日ハ拂下ゲテヤラウ
ト云フ申合ガアッテ、其中合ニ依テ、今北大阪電氣鐵道ノ
敷設ガ出來ルヤウニナッタノデアリマス、又今日諸君ガ大阪
方面ニ御出ニナルトキニ通ル所ノ、逢坂山ノ隧道ナルモノモ
早晩不用ニナル、不用ニナッタ場合ニ於テ之ヲ貰ヒタイト云
フコトヲ、今大津市カラ申出テ居ル、故ニ鐵道院ニ於テハ、
相當ノ價格ヲ提供スルナラバ、拂下ゲテ差支ナイト云フコト
ヲ大津市ニ言ッテヤッタ、斯ウ云フ例ハ幾ツモアルノデアリマ
スカラ、之ヲ鐵道ヲ拂下ゲルト云フ如ク、恰モ其儘鐵道ヲ使
ヘルガ如ク言フノハ大變ナ誤デアッテ、(拍手起ル、「ノウ〓〓ㄴ
ト呼フ者アリ)京阪鐵道會社ト雖モ、此儘之ヲ使用スルコ
トハ出來ナイノデアル、申スマデモナク特許ヲ受ケテ、高架
鐵道ニ之ヲ變更シナケレバナラヌノデアルカラシテ、鐵道
其物ヲ拂下ゲルノデナイト云フコトハ、最早明カナル事實
デアリマス、(拍手起ル「何デ是ガ鐵道デナイト言フノダ」
「鐵道ヲ賣"タノデハナイカ」ト呼フ者アリ)第二ニ公用ヲ
廢シタ所ノ土地ハ、官有地特別處分規則ニ依テ、當然內
務大臣ノ所管ニ歸スルモノデアルカラ、鐵道大臣ガ專斷ヲ
以テ拂下ゲルノハ違法デアルト云フ、是ハ法規ニ依テ明カナ
ル事柄ニシテ、別段論議スル必要ハ無イノデアル、私ハ玆ニ
法規ニ依テ明カニ證明シテ御覽ニ入レル、卽チ明治八年十
一月太政官達第百九十八號ニ依テ見ルト、鐵道用地ト云
フモノハ鐵道廳限リ處分シテ差支ナイト云フコトニナッテ居
ル(「變更サレテ居ルヨ」ト呼フ者アリ)次ニ明治二十三年七
月二十二日勅令第百三十五號官有地特別處別處分規
則ニハ、內務大臣ハ「直接公用ニ供スル爲又ハ公共ノ利
益トナル事業ノ爲ニ府縣郡市町村及公共組合又ハ其他ノ
起業者ニ官有地ヲ貸渡又ハ賣渡ストキハ隨意契約ヲ以テ
貸渡又賣渡スコトヲ得」トアリマスケレドモ、鐵道ノ用地ト
云フモノハ、他ノ普通ノ官有地ト異リマシテ、事業上ノ須要
ニ從ッテ、鐵道廳限リ處分シテ差支ナイト云フコトガ、明治
二十四年八月四日內務省總務局長ノ通牒ト、ソレカラ明
治二十七年三月八日內務大臣ノ回答ニ依テ明白デアリ
マス、(「勅令ニ依テ改正サレタ」ト呼フ者アリ)又帝國鐵道
會計規則明治四十三年三月二十九日勅令第五十五號
ノ第三十一條ニ斯ウ云フコトガアル、「鐵道事業用ノ諸材
料、車輛、船舶、器具、機械、機械運轉用品、被服及船舶、
旅館ノ營業用ノ物品ヲ賣買スルトキハ所管大臣ノ隨意契
約ニ依ルコトヲ得」ト云フコトガ書イテアリマス、詰マリ是等
ノ規程ニ依テ、鐵道ノ用地及諸材料ヲ、鐵道院總裁限リデ
拂下ゲタ件數ハ、是迄ニ中ミ澤山アルノデアリマス(「何件ア
ルカ」ト呼フ者アリ)今詳ニ申シマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=136
-
137・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 中野君、再ビ警戒ヲシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=137
-
138・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君(續) 未ダ會テ其事ニ就テハ、會計檢査院、
樞密院ヨリ何等ノ異議ナク、又帝國議會ニ於テモ承認シテ
居ルノデアリマス、其例ヲ申シマスレバ、大正三年ニ五十九件、
大正四年ニ四十件、大正五年ニ三十八件、大正六年二五
十一件、如何ニ大隈內閣ノ時代ニ斯ノ如キ拂下ガ大クア
ルカガ判ルノデアル、(拍手起ル)之ヲ以テ見マシテモ、鐵道
院ニ一ツモ缺點ノ無イ上云フコトハ、諸君ガ、御分リニナッタ
ト信ズルノデアリマス、(拍手起ル、「違ウ〓〓」「內容ヲ示セ」
ト呼フ者アリ)其次ニハ大正十八年ニ完成スル城東線ヲ今
急ニ拂下ゲタノハ、ドウデアルカト云フ意味ノ質問ラシイ、成
程城東線ガ全部完成スルノハ、大正十八年マデ掛リマスケ
レドモ、其拂下ゲタ線路ノ變更線ハ、大正九年カラ始マルノ
デアリマス、此一哩六十五鎖ノ所ハ、將來三四年ノ間ニ
之ヲ完成スルモノデアリマスカラシテ、鐵道省ト致シマシテハ
將來ノ見込ガ確立スルト云アコトハ、國家經濟上捨置クベ
カラザルモノト考ヘルノデアリマス、諸君、鐵道省ガ新線路ヲ
選定致シマシテ、舊線路ヲ廢スルト云フコトガ起リマシタナ
ラバ、其選定ト同時ニ、正舊線路ノ始末ヲ如何ニスベキカト
云フコトハ、第一ニ考へナケレバナラヌ問題デアル、(拍手起
ル)之ヲ賣下ゲルト致シマシテモ、鐵道省ノ豫算ニ依テハ、僅
ニ三百三十万圓ニシカ賣ルコトガ出來ナイ、然ルニ京阪電
車鐵道會社ハ鐵道省ノ條件ヲ承認シテ、最低五百七十万
圓以上ノ負擔ヲ敢テシテモ、此拂下ニ應ズルト云フノデアリ
マスカラ、鐵道省ノ如キハ歲入ヲ目的トスル所ノ場所ニ在
リマシテハ、寧口今日ニ於テ拂下契約ヲシタノハ、賢明ナル
遣方ト信ズルノデアリマス(拍手起ル「ノウ〓〓」ト呼フ者ア
リ)又豫算編成ヲ待タナイデ契約シタノハ、云々ト云フヤウ
ナ御話モゴザイマシタケレドモ、是ハ詰マリ豫算ガ通過シテ、
特許ガ成立シタ後ト云フ未必條件ガ附イテ居ルカラ、苟モ
法律ノ一ツモ知ッテ居ル以上ハ、是等ノ事ニ疑問ノ起ル筈
ハ無イノデアリマス、(拍手起ル)ソレカラ鐵道省ガ或ハ都市
計畫法ヲ無視シタトカ云フ御話ガアリマスケレドモ、此件ニ
就テハ、卽チ大阪市ニ向ッテ諮詢スルト云フコトヲチヤント
囘答シテ居ルノデアリマスカラ、是ヨリ以上論ズル必要ハ無
イト信ズルノデアリマス、(「問題ガ起ッテ後ノ場合デスヨ」ト
呼フ者アリ)後デモ繼續シテ居リマス、要スルニ此城東線ノ
成行ヲ靜ニ觀察シテ、唯今起リツヽアル所ノ疑問ニ就テ、私
ガ解釋シタ所ヲ諸君ガ冷靜ニ判斷サルヽナラバ、景早·總テ
ノ問題ガ氷解シタモノト言ヘル、(拍手起ル「ノウ」ト呼フ者
アリ)然ルニ前ニモ言フガ如ク、仰々シク決議案ナルモノヲ提
出スル諸君ノ心理狀態ヲ私ガ假リニ解剖シテ見ルナラバ、
反對黨ハ此議會ニ於テ、第一ニ普選案ニ敗レ、第二ニ彈劾
案ニ敗レ、第三ニ豫算案ニ敗レ、所謂滿身創痍、近頃ノ慣
用語ヲ以テ言フナラバ、慘敗ノ極ニ達シタモノト思フ、故一
再ビ之ニ依テ諸君ガ潰滅ニ陷ルト云フコトハ、如何ニモ同
情ニ堪ヘヌノデアリマス、(拍手起ル)私ハ諸君ニ勸告ス、諸
君ハ速ニ之ヲ撤廢セラレテ、姑ク冷靜ニ復ッテ、捲土重來、
來ル四十四議會ニ此議場ニ於テ再ビ相見エンコトヲ、私ハ
立憲的武士道ヲ以テ勸告スルモノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=138
-
139・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 紫安新九郞君
〔紫安新九郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=139
-
140・紫安新九郎
○紫安新九郞君 諸君、本員ハ前川君ノ御述ニナリマシ
タ、城東線拂下ヲ不當ト認ムルノ決議ニ賛成スル意見ヲ述
ペントスルモノデアリマス、鈴木君ハ唯〓治々ト千百言御
述ニナリマシタガ、併ナガラ本員ヲ以テ見レバ、一モ此城東
線ノ疑惑ヲ解クニ足ルベキ論據ヲ見出スコトガ出來ナカッタ
ノデアリマス、城束線拂下ノ問題ハ、今ヤ天下ノ疑惑ノ裡ニ
包マレテ居ルノデアル、故ニ公平ナル識者ハ、何人ト雖モ此
拂下ノ不當ナルコトヲ認メナイ者ハ無イノデアル、本員ガ此
拂下ヲ不當ト認ムル理由ハ先ヅ三箇條ノ論據ガアル、第一
ハ行政上ノ手續ヲ誤ッテ居ルコトデアル、前川君モ申ザレタ
ル通リ、政府ハ大阪驛ヲ移轉改築スルニ就テ、城東線ノ一
部二哩餘ノ線路ガ、本年度ヨリ大正十八年度ニ至ル間ニ
於テ廢線トナルニ就テ、之ヲ京阪電鐵會社ニ拂下ゲルガ爲
メニ、本月二十日附ヲ以テ京阪電鐵トノ間ニ拂下ノ契約
ヲ爲シタノデアル、其事ニ就テ先刻前川君ガ、何故ニ此事ヲ
爲スニ際シ、城東線ト重大ナル利害關係ヲ有シテ居ル所ノ、
大阪市ニ諮問シナカッタノデ「アルカト云フ攻擊ヲセラレタル
ニ對シテ、政友會ノ鈴木君ハ、此攻撃ヲ解クニ足ルダケノ論
據ヲ有シテ居ナカッタノデアル、政府ガ此問題ノ議會ニ現レ
タル以來、衆議院及貴族院ノ委員會ナリ、本月二十三日
公表セル城東線拂下ニ關スル辯明ニ依レバ、(此時發言ス
ル者多シ)議長此邊ノ囂々トシテ妨害者ヲ御整理下サイ、
貴下方ハ本員ノ演說ガ是カラ進ムト耳ガ痛イダラウト思
フ、-拂下ノ目的物ハ、公用ヲ廢止スベキ不要ノ線路、敷
地、土工、橋梁、軌條等デアッテ、鐵道其物デナイト云フコト
ヲ二十三日ニ政府ガ公表シタ、辯明書ニモ亦鈴木君ノ演
說ニモアッタノデアル、併ナガラ此事ニ就テハ前川君モ述ベラ
レタル如ク、城東線ヲ京阪電鐵ニ拂下ゲルニ就テハ、京阪
電鐵ガ大阪市内ニ乘入ルヽコトヲ特許スルト云フコトヲ條
件トシテ居ルノデアル、故ニ京阪ハ特許ヲ、受クル『手續ガ殘ッ
テ居ルカナレドモ、政府ガ條件ヲ履行シテ特許サヘ與ヘタナ
ラバ、今日ノ城東線ハ、現在ノ儘直チニ使用スルコトガ出來
ルノデアル、然ルニ政府ガ鐵道ヲ賣ルノデハナイ、土地ヲ賣ル
ノデアル、軌條ヲ賣ルノデアル、橋梁ヲ賣ルノデアルト云フノ
ハ、恰モ家屋卽チ廳舍ヲ賣ル場合ニ、廳舍ヲ賣ッタノデハナ
イ、木ヲ賣ッタノデアル煉瓦ヲ賣ッタノデアル、瓦ヲ賣ッタノデア
ルト云フノト、更ニ異ル所ガナイノデアル、ンコデ斯樣ナル論
法ヲ以テ國ノ營造物ヲ處分スルト云フナラパ、公用ヲ廢ス
ルト云フコトハ、政府ノ自由裁量デ出來ルコトデアル、故ニ
此政府ノ筆法ヲ以テスレバ、日本全國ノ鐵道モ之ヲ公用ヲ
廢シテ、而シテ軌條ヲ賣ルナリ、道路ヲ賣ルナリ、橋梁ヲ賣ル
ナリトシタナラバ、日本全國ノ國有鐵道デモ、悉ク之ヲ賣買
スルコトガ出來ルノデアル、(拍手起ル)ンコデ斯樣ナル筆法
ハ、世間ニ於テハ之ヲ三百的理窟ト謂フノデアル、斯樣ナル
杓子定木ト云フモノハ、官僚内閣ノ時代ニ於テモ、未ダ曾
テ見ザル所デアッタノデアル、然ルニ政黨內閣ト自ラ稱セル現
政府ガ、平然トシテ斯ル筆法ヲ用ヰルニ至ッテハ、現政府ノ
政治的道義觀念ノ、極メテ低キモノデアルト云フコトヲ認メ
ザルヲ得ナイノデアル、(拍手起ル)又今假リニ百步ヲ讓ッテ
政府ノ主張ヲ是ナリトスレバ、何故ニ官有地特別處分規
則ニ依ラナカッタノガアルト云フコトヲ、前川君ガ責メラレタ
ルニ對シテ、鈴木君ハ斯樣ナ事ヲ言ッテ居ルノデアル、官有
地特別處分規則ニ依ラナカッタノハ、二十三年ノ內務省總
務局長ト鐵道廳長官トノ申合ニ依ッタノデアル、又二十七
年ノ遞信大臣ト内務大臣トノ申合ニ依ッタノデアルト云フ
コトデアリマス、所デ此鐵道長官ト內務省總務局長トノ申
合、遞信大臣ト內務大臣トノ申合ハ、二十三年勅令ニ
何ノ力ヲ以テ、對抗シ得ルノデアルカ、大臣ハ何ノ權能ヲ以
テ勅令ニ對抗シ得ルカ、内務省ノ一局長ガ何ノ力ヲ以テ勅
令ニ對抗シ得ルカ、斯樣ナ事ハ苟モ法學通論ノ一部デモ讀
ンデ居ッタ者ハ明カニ理解シ得ル事デアル、故ニ政府ガ之ヲ
知ラズニヤタク、或ハ知ッテ之ヲ爲シタカト云ヘバ、其孰レニ
在ルニシテモ、不都合デアルト云フコトハ一ナリト斷ゼザルヲ
得ナイノデアル、シレカラ第二ノ不當ナ理由ハ、是ハ前川君
モ申サレタル通リ、法律ヲ犯シテ居ルト云フコトデアル、政府
ガ貴衆兩院ニ於テ公言セル所、二十三日政府ノ發表セル
城東線拂下ニ關スル辯明ニ依レバ、大阪市長ハ去ル六月
十二日附デ以テ、城東線ノ一部ヲ會社ニ拂下ゲ、之ニ高速
電車ヲ、許可セラレル場合ハ、高架式ナラバ異存ナキ旨ヲ申
シ來レリト云フ意味ヲ公ニシテ居ル〓ノデアル、併ナガラ大阪
市長ノ意見書提出ノ日附ト、拂下ノ契約ヲ爲セル日附ト
ヲ對照スレバ、政府ノ辯明ガ全然牽强附會ナリト云フコト
ハ、爭フベカラザル事實デアリマス、(拍手起ル)此事二〇七
ハ昨日ノ大阪每日新聞ニモ、大阪市長ハ政府ノ城東線拂
下ニ就テ發表セル事實ハ、虚構デアリト云フコトヲ斷言シテ
居ルノデアル、(拍手起ル)卽チ大阪市長ノ意見書ガ六月十
二日附デアッテ、拂下ノ契約ハ五月二十日デアル、故ニ五月
二十日ニハ、大阪市ハ拂下計畫ニ就テ全然知ル所ハ無イ
ノデアル、隨テ其意見ヲ形造ルベキ何等ノ基礎事實ヲ有シ
ナイノデアリマス、然ルニ政府ハ大阪市長ノ六月十二日附
ヲ以テ提出セル意見書ヲ、恰モ鬼ノ首デモ取ッタル如クニ言
ヒ觸ラシテ居ルコトハ、餘リト云ヘバ見エ透イタル白ヽシキ
言分デアルト言ハザルヲ得ヌノデアル、(拍手起ル)政府ニシ
テ從來ノ慣例ニ從ヒ、地方自治團體ノ意見ヲ尊重スルコト
ヲ知ッテ居ッタナラバ、先ヅ第一ニ此城東線ノ拂下ニ就テハ、
十分ナル材料ヲ大阪市ニ[提供シ其上ニ堂々ト市ノ意
見ヲ聽ク方法ヲ執ラナケレバナラナカッタノテアル、(ヒヤ
ヒヤ」ト呼フ者アリ)然ルニアラウコトカ拂下契約ヲ
完了シタル後、自發的二大阪市長ガ提出シタル意見
書ヲ逆用シテ、其拂下手段ノ不當ナラザリシ口實ト
シテ居ルノデアリマス、是ダケノ事實ニ依リマシテモ、鐵
道省ノ立場、及唯今鈴木君ノノ〓明ガ粉碎セラレタトノ
云フコトハ、爭フベカラザル事實デアラウト思フノデアリ
マス、(拍手起ル)現政府カ大都市ノ計畫ヤ意見ヲ顧
ミナイデ、交通上ノ設備ヲ改變シテ憚ラザルガ如キコ
トハ、都市ノ發達向上ノ上ニ於テ、最モ悲ムベキ事ト言
ハザルヲ得ヌノデアリマス、殊ニ大阪市ノ如キ場合ニ於
テハ、目下大規模ノ都市計畫ガ審議サレツヽアル際デ
アル、然ルニ此計畫ニ大ナル關係ヲ有スル交通系統ニ
就テハ、一層愼重ナル調査ヲ遂グルト共ニ、政府トシテハ此
大計畫ニ順應セシムルヤウニ心掛ケナケレバナラヌノデアリ
マス、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)若シ今囘ノ如キ處爲ガ政府
ニ許サルヽナラバ、折角ノ都市計畫モ、實行ノ場合ニ於テ、
左視右顧遂ニ畸形的ノモノトナラナケレバナラヌノデアリマ
ス、城東線拂下問題ハ、前川君モ申サレタル通リ、獨リ自治
權ヲ蹂躪シタルノミナラス、都市計畫法ヲ明白ニ無視セル行
爲デアッタト云フコトハ、爭フベカラザル事實ト言ハザルヲ得ヌ
ノデアル、然ルニ此拂下ヲ爲スニ當ッテ、之ヲ大阪市ニ諮問
シナカッタト云フコトハ、政治道德ノ上カラ論ズレバ、政府ガ
自治權ヲ蹂躪セルノミナラズ、從來執リ來レル行政上ノ慣
例ヲ、故ナクシテ破レルモノデアルト言ハナケレバナラヌノデ
アリマス、故ニ鐵道大臣ガ都市計畫委員會ニ之ヲ諮問シナ
カッタト云フコトハ、卽チ法律ニ依ッテ都市計畫施行區域內
ノ交通線路ニ在ル交通機關ヲ、政府ガ勝手ニ處理シタルモ
ノデアルカラシテ、法規上是ハ明カニ越權ノ行爲デアルト言
ハザルヲ得ヌノデアル、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)ソレカラ私
ハ第三ニハ前川君モ申サレタル通リ、此城束線ノ拂下契約
ハ、明カニ議會ノ豫算審議權ヲ無視セルモノデアルト言ハザ
ルヲ得ヌノデアル、(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)大阪
驛移轉改築ニ關スル經費ハ、今期議會ハ追加豫算トシテ
提出セラレテ、今尙ホ貴族院ニ於テ審議中デアルノデアリマ
ス、然ルニ其豫算ノ成立セザル以前卽チ五月二十日ニ、追
加豫算ト重大ナル因果關係ヲ有セル城東線ノ一部ヲ拂下
契約ヲ爲シタト云フコトハ、明カニ帝國議會ノ豫算審議權
ヲ無規セル、不法ナル行爲デアルト言ハザルヲ得ヌノデアル、
(拍手起ル)又城東線ノ廢線トナルト云フコトハ、大正十八
年度ニ至ルマデノ間デアル、別ニ急ヲ要スルコトデハナイノデ
アル、然ルニ其未ダ豫算ノ成立ザル以前ニ於テ、何故ニ急
速ニ京阪電鐵ニ對シテ拂下ノ契約ヲ爲シタカト云フ、此質
問ハ我黨ノ江木君ガ貴族院ニ於テモ、幾度カ繰返サレタル
コトデアリマス、然ルニ政府ハ何故ニ豫算ノ成立セザル前ニ
而モ本年度ヨリ十八年度ノ間ニ廢線トナルベキモノデアル
ニモ拘ラズ、之ヲ取急イデ京阪電鐵ニ拂下ノ契約ヲシナケ
レバナラナカッタ理由ハ、斯クここ斯樣デアルト云フコトニ就
テハ、政府ハ未ダ一言半句モ之ニ對シテ、明答ヲ與ヘテ居ラ
ヌノデアリマス、(拍手起ル)十八年度ニ至ル間ニ於テ改築
ノ竣工スルモノデアル、別ニ早ク拂下ノ契約ヲシナケレバ、軌
條ガ腐ルモノデモ何デモナイノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ
者アリ)然ルニ何故ニ政府ハ取急イデ之ヲ爲シタデアリマセ
ウカ、是ガ卽チ今日城東線拂下ニ就テ、天下疑惑ノ集中シ
テ居ル所以デアリマス、(拍手起ル)私ヲ以テ言ハシムレバ、
政府ガ京阪電鐵ニ對シテ拂下契約ヲ急イダル、大ナル理由
ノアルコトヲ知ッテ居ルノデアル、(拍手起ル)何トナレバ此城
東線ガ廢線トナル場合二於テ、之ヲ希望セル有力ナルモノ
ガアルノデアル、其有力ナルモノハ大阪市是デアル、ソコデ政
府ハ此城東線カ廢線トナル場合二ハ、大阪市ガ此拂下ヲ希
望シテ居ルカラシテ、此拂下ヲ大阪市ガ此拂下ヲ希望シテ
居ルカラシテ、此拂下ヲ大阪市ニ於テ知ラセナイデ、急速ノ
間ニ大阪市ニモ諮問ヲシナイデ行ハントシタノデアル、是ガ
卽チ政府ノ拂下ヲ急ゲル腹ノ底デアルト言ハザルヲ得ヌノ
デアル、(拍手起ル)又甚ダ政府ノ今日城東線問題ニ就テ
追窮セラレテ、如何ニモ困難セル結果、如何ニモ白ヒシキ辯
明ヲ爲シテ居ル、卽チ本月二十三日公表セル城東線拂下
ノ辯明書中ニ、政府ハ斯樣ナ事ヲ申シテ居ル「城東線ノ高
架改築ノ豫算通過ノ上ハ大正九年度ニ於テ梅田附近ヨ
リ直チニ工事ニ著手スル豫定ナルヲ以テ拂下ニ該當スル部
分ハ遲クモ三四年以内ニ廢線トナル見込デアル」ト言ッテ
居リマス-遅タモ三四年以内ニ廢線トナルベキ見込デア
ルト言ッテ居ルノデアリマス、此事項ハ大阪ノ地理ヲ知リ、大
阪ノ交通狀態ヲ知レル者カラ見マスレバ、能クモ白ミシク斯
ル事ガ言ヘルモノデアルト言ハザルヲ得ヌノデアリマス、(拍
手起ル)何トナレバ城東高架線ト云フモノガ、政府ノ所謂
遲クトモ三四年以內ニ出來上ッタト致シマシテモ、大阪驛ノ
改築移轉セラレザル所ニ、城東線ノ改築セルモノガ頭ヲ出
シタ所デ、交通上是ハ何ノ役ニ立ツノデアリマスカ、大阪驛
ノ移ラザル所ニ城東線ガ頭ヲ出シテ、之ガ何ノ役ニ立チマス
カ、大阪驛ハ今年度ヨリ十八年度ヲ間ニ改築移轉ヲ完了
スルノデアル、然ルニ此大阪驛ノ改良移轉ノ竣工セザル、卽
チ政府ノ所謂遲クトモ三四年以内ニ城東線ガ廢線トナッテ、
而シテ新線路ガ之ガ何ノ要ヲ爲スモノデアリマスカ、是ハ大
阪市ノ地理ヲ知リ、大阪市ノ交通狀態ヲ知ッテ居ル者デア
レバ、一笑ニ付スルノ外十イノデアリマス、(拍手起ル)之ヲ
堂々タル政府ガ城東線拂下ノ問題ヲ追窮セラレテ窮餘ノ結
果、斯ル白とシキ辯護ヲ爲シテ恥ヂザルト云フニ至ッテハ、現
政府ノ政治的道義ノ觀念ガ、如何ニ低イモノデアルト云フ
コトヲ、明白ニ表明セルモノデアルト言ハザルヲ得ヌノデアル、
(拍手起ル)又此拂下問題ニ就テ鐵道大臣ハ、前後子盾セ
ル言ヲ爲シテ居ルノデアル、本月十日ノ豫算委員會ノ第六
分科會ニ於テ、鐵道大臣ハ我黨ノ荒川君ノ質問ニ對シテ、
斯樣ナ事ヲ申シテ居ルノデアル、「何モ事無キニ唯ダ私
立會社ニ斯ウシテヤラウト云フ意味デ出來タモノデハナイ、
外ニ政府ノ非常ニ利益ト認メルモノガアルカラシ
テ、ソレデ起ッテ來テ他日市モ承知シテ總テガ出來
ルナラバ、斯クミニニモシテヤラウ、斯ウ云フコトガ
アッタト私ハ思シテ居リマス、或程度マデ其事柄ハ御話申セ
バ直グ分ルノデアリマス」ト言ッテ居ルノデアリマス、卽チ他日
大阪市ガ拂下ヲ承知シテ、異存ガ無カッタ場合ノ意義ヲ公
言シテ店ルノデアル、然ルニ一方大阪市ハドウデアル、十九
日ニ緊急市會ヲ開イテ、市制第四十六條ニ依テ、城東線
拂下問題ニ就テ意見書ヲ總理大臣、内務大臣、鐵道大臣
ニ提出シテ居ルノデアル、其意見書ノ中ニハ「希クハ該拂下
及ヒ特許ヲ中止セラレ度云々」ト言ッテ居ルノデアル、仍テ鐵
道大臣ガ曩ニ豫算第六分科會ニ於テ公言セル通リヲ履行
スルナラバ、先ヅ第一ニ城東線ノ拂下ヲ中止ヲスルト云フコ
トガ、當然ノ處置デアルノデアル、(拍手起ル)然ルニ政府ハ
今日ニ於テモ、尙ホ拂下中止ノ意思ノ無イト云フコトヲ公
言シテ居ルト云フコトハ、明カニ是ハ前後矛盾セル言動デア
ルト言ハザルヲ得ヌノデアリ】マス、(拍手起ル)斯樣ナ事ハ政
府ノ場合ニ於テハ、果シテ何ト形容シテ宜シイカハ知リマセ
ヌカ、一般世人ノ間ニ於テハ、斯ル前後矛盾シタル言葉ヲ
使ヘバ、一般世人ノ間ハ之ヲ二枚舌ヲ使フモノト言ッテ居ル
ノデアリマス、(拍手起ル)尙ホ更ニ私ハ政府ニ對シテ、攻撃
ヲ加ヘテ置カナケレバナラヌ事ガアルノデアル、鐵道省ノ政
府委員佐竹三吾氏ハ、城東線拂下ニ就テ二十一日貴族
院ニ於テ、我黨ノ江木君ノ質問ニ對シ、本員等ノ絕對ニ首
肯スルコトノ出來ナイコトヲ申シテ居ルノデアル、ソレハ斯樣
デアリマス「會社トシテ考ヘテ見マスレバ成程梅田附近ニ線
路ヲ乘入レルコトハ將來ニ於テハ餘程ノ利益ヲ持チ來スト
云フコトハ想像出來ルノデアリマスガ併シ此利益ハ會社或
ハ會社ノ株主ノ利益トナルノデナクシテ大阪市民或ハ大阪
市外ニ居住シテ居ル者ノ利益デアル卽チ市ノ內外ニ涉ル
所ノ交通機關トシテ其基點ガ國有鐵道ノ梅田驛ニ起ルト
云フコトハ其電車ヲ利用スル者ニ取ッテ非常ニ利益デアリ
マス決シテ是ハ會社ノ利益或ハ株主ノ利益ト云フ譯デハナ
イノデアリマスル」ト申シテ居リマス、又鐵道大臣ノ元田君
モ此拂下ノ價格ハ非常ニ廉イト云フコトヲ申シテ居ラルヽ
ノデアリマス、故ニ佐竹政府委員及元田鐵相ノ說明ニ依リ
マスレバ、京阪電車ナルモノハ、城東線ヲ拂下ゲルコトハ、恰
モ公益ヲ圓ルト云フ事ヲ第一ノ眼目トシテ居ルヤウニ見ラ
レルノデアリマス、所ガ是ハ飛ンデモナイ間違デアリマス、政
府當局ガ斯ル言明ヲ爲ス以上、本員ハ更ニ遡ッテ、何故ニ
京阪電鐵ガ城東線拂下ヲ熱望セルカト云フコトヲ明カニシ
ナケレバ、世人ヲ誤ルト田心フノデアリマス、故ニ更ニ此點ニ於
テ本員ノ知レル所ヲ述べントスルノデアル、(「謹聽々々」ト呼
フ者アリ)、京阪鐵道ガ大阪梅田附迄ニ乘客ノ呑吐口ヲ求
ムベク、目ヲ光ラシテ居ッタノハ是ハ多年ノ事デアリマス、(「ヒ
ヤ〓〓」ト呼フ者アリ)京阪電鐵ハ何ガ故ニ梅田附近ニ乘客
ノ呑吐口ヲ求ムルガ爲メニ、多年目ヲ光ラシテ居ッタノデアリ
マスカ、京阪電鐵ハ現在ノ經營線タル大阪天滿橋ヨリ起ク
テ京都ニ入ル、其外ニ淀川北岸ニ沿ウテ京都ニ入ル間ノ特
許ヲ、昨年七月ト本年ノ二月トニ得テ居ルノデアリマス、卽
チ大阪ヨリ京都ニ入ルニ淀川ヲ挾ミテ、束カラ入ル一線ト
西カラ京都ニ入ル一線トヲ持ッテ居ルノデマリマス、ソレデ京
阪ハ此舊線ヲ如何ニ利用スルカト言ヘバ、大阪ノ櫻ノ宮停
車場東方ニ於テ、現在ノ京阪線トハ全然別物デアル所ノ、
京都四條大宮ニ至ル新線ト結付ケテ、京阪ノ交通動脈ヲ
擅ニセントスルノ計畫ヲ持ッテ居ルノデアリマス、併シ京阪電
鐵ガ此新線路ノ特許ヲ得タル間ニ於テ、鐵道院トノ間ニ十
分聞クニ堪ヘザルガ如キ奇怪千萬ナル事ヲ演ジテ居ルノデ
アリマス、大正七年以來新ニ京阪間ノ電氣軌道、又ハ電氣
鐵道ノ敷設ヲ出願致シマシタモノハ、前後六線ノ多キニ至ッ
タノデアリマス其中三線ハ地方廳ニ握リ潰サレテ、殘リノ三
線ニ就テ各、祕術コ盡シテ運動シテ居ッタノデアリマス、其事
柄ニ就テ政友會員ニシテ前代議士タル三谷軌秀君、此三
谷軌秀君ハ此京阪ノ新線ヲ得ル運動ニ就テハ、今日ハ此
議場ニ御顏ヲ見ナイヤウデスガ、政友會ノ代議士植場平君
ト一〓ニナッテ運動ヲシテ居ッタ事ガアリマス(拍手スル者ア
リ)其三谷軌秀君ガ「京阪間新線許可〓末下題スル小册
子ノ中ニ、斯樣ナル事ヲ告白シテ居ルノデアリマス(「謹聽」
ト呼フ者アリ)「此大阪トノ妥協成立ハ岡崎氏ガ鐵道院ニ
對スル運動ノ口實ヲ打破セシメタルヲ以テ如何ニ岡崎氏
ガ協約ヲ無祝シ信義ニ戾ルモ自己ノ利益ノタメニハ敢
テ顧慮セザルノ人ナリト雖モ(拍手「ヒヤ〓〓」ト呼フ者ア
リ)三會社ノ妥協ヲ遂行シ前記上申書ニ調印シテ阪京
ノ出願線ニ許可ヲ得セシムルノ餘義ナキニ至レリ是
ニ於テカ奸智ニ長ケタル彼等ハ再ビ詐言ヲ用ヒ」トアリ
マス「既述ノ如ク社長印大阪ニ在リトカ實行上ニ關ス
ル事項ヲ覺書ニ追加スル必要アリトカ一種ノ口實
ヲ設ケテ余等ヲ大阪ニ歸ラシメ其間岡崎氏ハ極力石
丸副總裁ニ運動シ」石丸氏ハ當時ノ鐵道院副總裁デ
アリマス「石丸副總裁ニ運動シ如何ナル祕術ヲ行ヒ
タルカ鐵道院ノ最高幹部ヨリ最モ適當ニシテ且三會社
ノ妥協線タル阪京ノ出願線ヲ排斥シ最モ不適當ニシテ且
妥協反對線タル京阪ノ出願線ニ許可ノ內諾ヲ得タリ其
內諾ヲ得ルヤ直チニ阪京ニ對シ既述ノ理由ヲ以テ上申書
ノ調印ヲ拒絕シ來レリ其理由ノ如キモ石丸副總裁トハ豫
メ打合セアリタルモノト見エ六月二日石丸副總裁ガ余ニ
告ゲタル北大阪トノ妥協ヲ排斥シ京阪ニ許可ヲ與フルト
云フ理由ト全ク符合セリ是レ果シテ正當ナル行動ニシテ且
公平ナル處置ナリト謂フヲ得ベキカ大正八年五月三十日
鐵道院ニ前記上申書提出ノ際佐竹局長ハ上申書ヲ受理
シ且石丸副總裁ノ命ヲ承ケ余等ニ告ゲテ曰ク上申書ハ事
實相違ナキモ如何セン旣ニ上局ニ於テ京阪ニ許可シ阪京
ハ不許可ニ內定セシヲ以テ阪京ノ出願線ハ許可セラレザルモ
ノト承知セラレタシト鳴呼其ノ事ノ突發ニシテ且意外千萬
ナルニ驚愕シ其然ル所以ヲ尋ネタルモ總裁ノ命ナレバ監督
局トシテハ如何トモ爲シ難シ上依シテ已ムナク退席シ其翌
三十一日床次總裁ニ面會シテルイ〓〓(笑聲起ル)隙述セシ
ニ其前面會ノ際ハ一線ダケハ許可ノ必要アリト認ム、」(「ノ
レハ何ノ雜誌ダ」ト呼フ者アリ)京阪ガ何故ニ此大阪梅田
口ニ出ル線路ヲ熱望シテ居ッタカト云フ事ヲ說クニハ、此歷
史ヲ說カネバ分ラヌノデアリマス(「ルイ〓〓トシテ說ケ」ト呼
フ者アリ)故ニ說クノデアル「其前面會ノ際ハ一線ダケハ許可
ノ必要アリト認ム、其何レニ許可スベキカハ明言ノ限リニア
ラザルモ妥協成立セバ無論妥協線ニ許シ妥協成立セザレ
バ一番良キ線ニ許スモノト見テ差支ナシト言明セシニ反シ
今囘ハ唯ダ取調べ置クトノミニテ更ニ要領ヲ得ズ依テ六月
二日石丸副總裁ヲ訪ヒ京阪出願線ニ許可スルハ非理ナリ
妥協線タル阪京ニ許可スルノ適當ニシテ且公平ノ處置ナ
ルコトヲ百方陳辯セシニ石丸副總裁ハ傲然トシテ曰ク未ダ
決裁ハ濟マザルモ京阪線ニ許可スルノ内定ナリ其何レニ許
可スルモ政府ノ自由ニシテ不當ノ處置ニアラズト言ヒ其甚
シキニ至ッテハ政府ハ京都大阪間ヲ連結スベキ一線ヲ許ス
ニ在リテ其線路ノ起點及終點ノ如キハ當業者ノ經濟的選
定ニ一任シテ可ナリトノ暴論ヲ吐露シ其線路ノ適否處分
ノ是非善惡ノ如キハ恬トシテ顧ザルモノヽ如シ豈ニ憾歎ノ
至ニ甚フベケンヤ抑モ軌道ノ敷設ヲ許否スルハ國家ノ最高
行政權ノ發動ニシテ其事務ハ固ヨリ國家ノ公務ニ屬シ之
ヲ處理スルニハ自カラ依據スベキ規矩準繩アリ決シテ出願
者其人ニ依リ之ヲ左右シ得ベキモノニアラズ然ルニ我ガ政
當內閣ノ下ニ在ル鐵道院ノ處置殊ニ石丸副總裁ノ今次
ノ取扱及假令京阪ノ社長タル資格ニ於テ爲シタリトスルモ
我黨總務ノ地位ニ在ル岡崎氏其人ノ前記ノ行爲ハ正當
トシテ香過スベキモノニアラズ」(拍子スルモノアリ)「乃チ其
非違ヲ糺シ之ヲ是正シ其公平ナル取扱振ヲ社會ニ公元シ
以テ政府及政黨ノ信ヲ天下ニ博シ人心ヲ收攪スルハ正ニ
是レ政黨ノ本務ナリト信ズ依テ子等ノ最モ尊敬スル元田
總務以下」卽チ此處ニ御在ニナル元田鐵道大臣デアル
(「判ッテ居ルワ」「餘計ナ言ハ止メロ」ト呼フ者アリ)「元田總
務以下我黨幹部諸公ニ事情ヲ具シ善後策ヲ講ゼラレンコ
トヲ訴へ又余等ノ先輩ニシテ最モ親友ナル奧黨務委員長
卽チ此處ニ御在ニナル議長デアリマス「奧黨務委員長ハ岡
崎氏ノ行爲ニ憤慨シ余等ノ微力ヲ佐ヶ適當ナル方法ヲ講
ジ圓滿ナル解決ヲ爲シ以テ黨トシテモ亦京阪及阪京ニ對シ
テモ其面目ヲ維持セシメンコトヲ期シ自ラ進ンデ其幹旋ノ
任ニ當タレリ爾來元田總務及望月幹事長之ニ參加シ專
ラ調停ノ勞ヲ取ラレ殊ニ奧氏ガ奔走大ニ努メラレタルヲ深
ク感謝ス然レドモ其結果ハ余等ノ最モ不滿ニシテ其指元
ニ服從スルコト能ハザリシヲ遺憾トス卽チ奧氏ハ鐵道院及
岡崎氏ノ非違ヲ糺シ之ヲ是正スルニアラズ、又新タナル條
件ヲ提示シテ三會社ノ妥協ヲ勸ムルニモアラズ、反テ岡崎
氏ヲ助ケ其非ヲ遂行セシメ、阪京ト北大阪トノ契約ノ如キ
ハ打捨テ置ケバ可ナリト云ヒ、又余等ニ對シテハ奧氏ガ岡
崎氏ヨリ京阪ノ新株ヲ貰フノ約ヲ爲シタルヲ以テ、」(拍手
起ル「ドウダ議長」ト呼フ者アリ)今後ノ增資ニ依ルト云フ
註ガ入レテアリマス、(「ソレハ何ノ雜誌ニ出テ居リマスカ」ト
呼フ者アリ)是ハ政友會前代議士三谷軌秀君ノ發表セル
此「京阪間新線許可〓末」ト云フノデアリマス「奧氏ガ岡崎
氏ヨリ京阪ノ新株ヲ貰フノ約ヲ爲シタルヲ以テ憐愍的ニ其
若干ヲ與フト云フニアリ余等如何ニ不敢ナリト雖モ敢テ愚
壽愚福ヲ希フ者ニアラズ是レ余等カ其言ヲ聞キ其說ニ服
從スルコト能ハザル所以ナリ茲ニ於テ乎止ムナク六月二十
日ニ至リ原政友會總裁ニ左ノ意味ノ陳情書ヲ呈シ且ツ親
ク陳述シ以テ〓鑑ヲ仰ギタルモ遂ニ其目的ヲ達スルコトヲ
得ザリキ」トアルノデアリマス、此原總裁ニ差出セル陳述書
ハ長イノデアリマスカラシテ私ハ朗讀ヲ省キマス(「謹聽」「速
記錄ニ載セヨ」ト呼フ者アリ)唯〓私ガ讀上ゲタルコトニ依ツ
テ、京阪ガ淀川ノ北ニ沿ウテ新ニ京都ニ入ルノ線路ヲ得ン
トセルコトニ如何ニ狂奔熱中シタカト云フコトガ明白ニナル
デアラウト思フノデアリマス、而シテ此新線路ニハ梅田驛
ニ其頭ヲ出スコトガ條件ニシテアッタノデアリマス、故ニ
昨年此新線路ガ許可セラレタル其當時ヨリシテ、京阪ハ
機會ダニアラバ、如何ニシテモ大阪梅田驛附近ニ其頭ヲ出
サンコトヲ熱望シテ居ッタノデアリマス、故ニ京阪ガ此城東
線ノ拂下ヲ熱望シテ居ルト云フコトハ、是ハ殆ド金錢ノ安
イ高イノ論デハナイノデアリマス、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)
然ルニモ拘ラズ元田鐵道大臣及鐵道院ノ政府委員ガ、恰
モ此城東線ノ拂下ヲ受ケテ公益增進ヲ第一ノ眼目トシテ
居ルガ爲メニ、此城東線ハ是ハ別ニ會社ガ利益スルノミデ
ハナイ、大阪市ノ住民ガ利益スルノデアル、大阪市街ニ住ン
デ居ル者ガ利益スルノデアルト言ッテカラニ、何カ京阪電鐵ノ
代辯者ノ如キ口吻ヲ弄スルト云フコトハ、本員ハ甚ダ疑惑
ヲ懷カザルヲ得ヌノデアリマス、故ニ此問題ハ政府及先刻
ノ鈴木君ノ演說ニアリシ唯ダ土地ヲ賣ルトカ、軌條ヲ賣ルト
カ、橋梁ヲ賣ルトカト云フ問題デハナイノデアリマス、此問題
ヲ論究スレバ、是ハ卽チ如何ニ現政府ノ官紀ガ敗頽シテ居
ルカト云フコトヲ、明ニ示セルモノデアルト言ハザルヲ得ヌノ
デアリマス、(拍手起リ「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)現內閣ノ成
立以來、鐵道院ガ如何ニ政友會ニ關係ノアル鐵道會社及
其人とニ對シテ、奇怪千萬ナル行動ヲ演ジタカト云フコトハヽ
私ガ今讀上ゲマシタル卽チ京阪間新線許可ノ此〓末ノ一
節ニ於テモ、明白ナコトデアラウト思フノデアリマス、(「拍手
起ル)而シテ是ハ政友會ノ現在ノ黨員デアッテ、前代議士タ
ル三谷軌秀君ノ公ニシテ居ルコトデアリマスカラシテ、(拍手
起ル)是ハ先ヅ一點ノ疑ノ無イモノデアラウト思フノデアル、
(「奧議長ノ乾分ダ」ト呼フ者アリ)此點ニ於テモ岡崎君ニシ
テ政治的道義ノ觀念ガ高カッタナラバ、私ハ私ノ今言ヘル所
ハ確ニ岡崎君ノ肺腑ヲ抉リシ感ガスルモノデアラウト私ハ思
フノデアリマス、(拍手起リ「岡崎ハ逃ゲテ行ッタモウ」ト呼フ
者アリ)故ニ此城東線拂下ノ問題ノ如何ニ始末セラルヽヤ
ト云フコトハ(「處決々々」ト呼フ者アリ)現政府ガ立憲的ノ
道義ニ於テ如何ナル觀念ヲ有シテ居ルカ、又鐵道大臣元
田君ガ立憲的政治家トシテ如何ナル心得ヲ持ッテ居ラルヽ
カト云フコトヲ、明ニ現ハスベキ最モ大切ナル重要ノ問題デ
アルト思フノデアリマス、(拍手起リ「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)
此意味ニ於テ私ハ現政府ノ官紀頽敗ヲ責ムルト共ニ、多
年政界ニ馳驅セル元田鐵相トシテハ、私ハ此爭フベカラザ
ル拂下ニ對スル責任ヲ負フト云フコトガ、私ハ立憲的政治
家トシテノ適當ノ處置デアルト云フコトヲ玆ニ斷言スルノデ
アリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=140
-
141・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 上畠益三郎君
〔上畠益三郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=141
-
142・上畠益三郎
○上畠益三郞君 私ハ政友會ノ鈴木君ト全然相違セル
所ノ別箇ノ理由ニ依ッテ本案ニ反對致ノデアリマス(「謹聽」
ト呼フ者アリ)本案ノ理由書中ニ明記セラレマシタル如ク、
大正十八年度ニ至ラザレバ廢線トナラザル國有鐵道ノ一
部ヲ、私設鐵道會社ニ拂下ノ契約ヲ爲シタルハ不當ナリ、
此一點ニ對シテハ私ハ全然提出者ノ趣意エ同意デアルノ
デス、併ナガラ私ノ見ル所ヲ以テスレバ、鐵道省ト京阪電氣
鐵道會社トノ間ニハ、未ダ所謂城束線ノ拂下ト云フ契約
ガ成立シテ居ラナイノデアル、私ハ此拂下ノ契約ガ成立シテ
居ラナイト云フコトハ、決シテ鐵道省ヲ辯護スル爲メデハナ
イ、(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)又京阪電氣鐵道會社ヲ辯護
スル爲メデモナイノデアル、唯ダ此拂下ガ未ダ契約成立セズ
ト云フコトハ、大ニシテハ國民一般、小ニシテハ大阪住民ノ
利益トナルコトデアッテ、而モ此認定ガ最モ能ク事實ノ眞相
ニ適スルカラデアリマス(「ヒヤ〓〓」「成立タナケレバ宜シイ」
ト呼フ者アリ)本件ノ唯一ノ文書タル所ノ五月二十日附ノ
鐵道大臣ノ書面ニ依リマスルト第一項ニ斯樣ナ事ガ書イ
テアル、是ハ國民黨ノ諸君モ憲政會ノ諸君モ能ク御覽ヲ願
ヒタイ、其第一項ノ根本的規定ノ中ニデスナ「市ノ外方ニ
高架式複線ニ變更シ其變更工事竣工ノ後現在線路ヲ廢
シ之ヲ拂下下ゲ其引渡ヲ爲スモノトス」(「其通リ」ト呼フ者ア
リ)卽チ此城東線ト云フモノヲ改築ヲシテ、之ヲ高架式ノ複
線ニ變更ヲスル、而シテ此變更工事ガ竣工ヲシテ出來上〃
テカラ後、現在唯今ノ線路ヲ廢止シテ然ル後、廢止シテカラ
後、此現在ノ線路ヲ拂下ゲル、斯クノ如クナルガ故ニ、今日
ニ於テハ未ダ此變更工事ト云フモノガ竣工ヲシナイ、未ダ
現在ノ線路ハ廢線トナラナイ、變更工事未ダ竣工セズ、現
在ノ線路未ダ廢止セラレズ、此故ニ今日拂下ノ契約ハ未ダ
成立シナイト云フコトハ、此明文ニ昭々タル所デアリマス、明
文ニ昭々タル事ハ、明文ヲ御一覽ナサレバ直チニ分ルコトデ
アル、ソレカラ其次ニ政府委員ノ辯明甚ダ暖眛多岐ニ亙ツ
テ、明確ナル答辯ヲ得ルコトガ出來ナカッタノデアリマスガ本
月ノ二十一日ノ貴族院ニ於ケル佐竹政府委員ノ答辯ニ
依リマスルト、或ハ此申合セノ效力ヲ、人ニ依ッテ契約ト見ル
人ガアルカモ分リマセヌガ、自分ノ方ノ心得デハ唯夕大體ノ
方針ヲ示シテ、サウシテ京阪電氣鐵道會社ハ是デ大體差
支ガアリマセスト云フ所ノ大體ノ意嚮ヲ漏シタニ過ギズシテ
未ダ之ヲ以テ契約ト認メルコトガ出來ナイト云フ所ノ、元田
大臣ノ意ヲ受ケテ言明ヲ致シテ居ルノデアル、諸君、此契約
ノ明文ニ、現在線路ヲ廢止シテカラ後ニ拂下ゲルト云フ明
文ガアル、明文斯ノ如ク、而シテ此明文ノ契約ヲ-此書面
ヲ起草シタル所ノ當事者タル政府委員/說明彼ガ如シ明文
ト當事者ノ說明ト相俟ッテ、今日未ダ此契約ト云フモノハ成
立シナイト云フコトヲ斷定スルノハ、最モ穏健ニシテ最モ至當ナ
ル所ノ解釋デハアリマセヌカ、(拍手起り「成立シナケレバ宜イ」
「サウダ〓〓」ト呼フ者アリ)ンレデ私ハ斯ウ云フ理由ニ依テ
今日ハ未ダ契約ハ成立シナイ、此故ニ他日廢線トナリタル
曉ニ於テモ、政府ハ何等ノ契約ガナイ以上ト云フモノハ、何
等ノ拘束ヲ受ケルコトハナイ、唯夕今日ニ於キマシテハ、線
路ノ廢止トナッタ時ニ大體斯ウ云フ意嚮デ以テ拂下ゲルコ
トガアルカモ知レヌト云フ打合セニ過ギヌノデアル、他日廢
線トナリタル時ニ、ヨリ以上ノ利益アル所ノ條件ガアレバ、
元田鐵道大臣ハ岡崎邦輔氏ニ遠慮セズニ、ドシ〓〓他ニ拂
下ゲルコトガ出來ルノデゴザイマス、ソレデ私ガ此反對ヲ致
シマスト云フコトハ、此點ニ於テ精神ハ前川君ト其揆ヲ同
ウスルノデアル、前川君ハ本件ノ拂下契約アリタルコトヲ前
提トセラレテ居ルノデアル、此前川君ノ拂下契約ノ存在ヲ、
前提トスル決議案ガ通過スレバ、成程政府攻擊ノ目的ハ
十分ニ達スルコトガ出來ルノデアル、併ナガラ半面ニ於テ是
ト同時ニ、此鐵道線路ハ京阪ニ拂下ゲラレタモノデアルト
云フコトデ、此拂下契約ノ效力ヲ裏書スルノト同然デアル
ト云フコトヲ記憶シテ戴キタイ(拍手起リ「名案々々」ト呼フ
者アリ)故ニ此私ノ見解卜云フモノハ、精神ニ於テハ前川君
ト一致シ、而シテ政府ニ於テモ、國法ニ於テモ、此契約ノ拘
束ヲ受ケナイト云フ點ニ於テ、私ハ前川君ガ私ノ主張ニ對
シテ、自己ノ決議案ヨリハ一層ニ滿足ヲ表セラルヽモノト感
ズルノデアリマス(拍千起ル)併ナガラ私ハ此ニ至ッテ一應念
ノ爲メニ政府ノ判然タル言明ヲ得タイト考ヘマス(「ヒヤ〓〓
ト呼フ者アリ)元田鐵道大臣、佐竹政府委員ノ是迄ノ態度
ハ、此契約ガ成立シテ居ルノデアルカドウカ、政府ハ之ガ爲
メニ拘束ヲ受ケルモノデアルカドウカト云フ事ニ就テ、其御
說明ガ甚ダ曖昧多岐ニ亙ッテ居ルノデアル、法學博士タル
所ノ此佐竹君ノ說明モ其點ハ色とトシテハゴザイマセウガ、
先ヅ大體申合セニ過ギナイヤウニ思ヒマスト云フヤナ、甚ダ
鮮明ヲ缺イテ居ルノデアル、鮮明ヲ缺クコトハ、卽チ疑惑ヲ
招ク所以デアルノデアリマス、故ニ私ハ此吾ミガ辯護士界ノ
先輩トシテ、多年尊敬ヲシテ居ル元田鐵道大臣ハ、宜シク
此席ニ出テ此契約ノ成立ヲ認メルカ、認メザルカ、判然タル
所ノ言明ヲナサル義務ガアルト私ハ思ヒマス(「ヒヤ〓〓」ト
呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=142
-
143・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 時間ノ延長ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=143
-
144・上畠益三郎
○上畠益三郞君(續) 尙ホ吾ミノ聞知スル所ニ依レバ、此
鐵道ノ拂下ノ申合セト云フモノハ、元田君ノ御就任以前ニ
於テ、床次内務大臣ノ手ニ於テ其話ガ餘程進メラレタト云
フ事デゴザイマスカラ、或ハ時宜ニ依ッテハ床次内務大臣ガ其
言明ヲナサルコトモ宜カラウト思ヒマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者
アリ)ソレデ若シ此政府ノ言明ニシテ、不幸ニシテ私ノ意見
ト一致シナイ、之ハ既ニ此鐵道ト云フモノハ、京阪電氣軌
道ニ拂下ゲタモノダト云フガ如キ御解釋デアルナラバ、吾こ
ハ自己ノ態度ヲ一變シテ、反對カラ賛成ニ移ラナケレバナラ
ヌト思ヒマス、(拍手起リ「旨イ」「贊成カ」「反對カ」ト呼フ者ア
リ)一體拂下ト云フ處分ハ、之ハ十二分ニ政府委員ノ御承
知ノ如ク、行政法上ニ於ケル執行處分デアリマス、執行處
分ト云フモノハ、固ヨリ御承知ノ如ク玆ニ一ツノ事實ガア
リ、此事實ニ法律ヲ適用スルト云フ事ガ卽チ執行處分デア
ル、此事實ナクンバ此處分無シ、此事實アッテ初メテ此處分
ガアル、諸君、未ダ廢線トナラザル所ノモノニ對シテ、拂下處
分ガアルベキ筈ガナイ、廢線ト云フ事實ガアリ、不用物ト云
フ事實ガ既ニ出來テ來テ、然ル後ニ拂下處分ト云フモノガ、
必要ガ出來テ來ルノデアリマス、城東線ガ今日ニ於テ未ダ
廢線ニナッテ居ラナイ、未ダ不用物トナッテ居ラナイコトハ、最
モ明カナル事實デアリマス、未ダ廢線トナラズ、未ダ不要物
トナラザルモノヲ、之ヲ不要物トシテ拂下ゲルト云フ事ハ執
行處分ノ行政法上ノ原則トシテ、吾ミハ其存在ヲ認メルコ
トガ出來ナイ所デアリマス(拍手起ル)加之今日既ニ公用ニ
供シツヽアル所ノ公有物デアル以上ハ、公有物トシテ此公
有物ノ上ニ、所有權ノ移轉ガ出來ナイト云フコトハ明カデ
アリマスカラシテ、假令條件附ト雖モ、現ニ公用ニ供シツヽア
ル所ノ此鐵道ニ對シテ、之ヲ拂下ケルト云フコトハ、行政上
ニ於テハ權力ノ濫用タルト同時ニ、民法上ニ於テハ私ハ不
法ニシテ無效ナル處分デアルト考ヘル(拍手起ル)此點ヲ能
ク御考ヲ願ヒタイ、政府ニ於テモ條件附ノ拂下、他日不用
トナリタル時ヲ考慮シテ、其場合ニ於テ拂下ゲルト云フコト
ハ、是ハ法律上決シテ意味ヲ成サナイ事デアル(「コッチヲ向
ケ」ト呼フ者アリ)今日ニ於テ若シモ公用ニ供シツヽアル所
ノモノヲ、他日不要物トナルト云フコトヲ見越シテ條件附デ
拂下ガ出來ルモノデアルト云フコトニ致シマシタナラバ陸
軍省ハ砲臺カラ銃砲彈藥ヲ拂下ゲルコトガ出來ル、海軍省
ハ軍艦モ水雷艇モ船渠モ拂下ゲルコトガ出來ル、而シテ吾
吾ガ演說ヲシテ居ル間ニ大藏省ハコッソリト他日不要物ト
ナルト云フコトヲ見越シテ、此議院ノ土地建物ヲ拂下ゲル
コトガ出來ルノデアリマス(拍手)諸君、是等ハ固ヨリ極端ナ
ル想像デハゴザイマスケレドモ、今日現ニ公用ニ供シツヽア
ル所ノモノヲ、他日ノ條件附ヲ以テ拂下ゲガ出來ルト云フ
コトニスレバ、此原則カラ當然此結果ト云フモノハ、推
理的ニ合理的ニ認メナケレバナラヌ結果デアリマス
(「其通リ」ト呼フ者アリ)果シテ斯ウ云フ結果ハ、是ハ內
閣ノ肯定セラレル所デアリマセウカ、ドウカ此故私ハ、
斯ノ如キ現實ニ拂下ヲ爲スモノハ、現實不要トナリタ
ル物件デアル、未ダ不要トナラザル物件ハ、條件附デ拂
下ヲスルコトガ、出來ナイト云フノガ吾ミノ解釋デアル、他
日ノ條件附ヲ以テ拂下ヲスルコトガ出來ルトスレバ、是レ
政府ハ恰モ彼ノ問題トナッテ居ル所ノ綿絲綿布ノ商人ノ
如ク、投機的ニ先物約定ヲスルコトガ出來ルノデアル、斯ノ
如キ處分ト云フモノハ、無益ニ後繼內閣ヲ拘束シテ、サウシ
テ長キ累ヲ後日ニ貽スモノデゴザイマスカラ、私ハ賢明ナ
ル、政友會內閣ニ於テ決シテ斯樣ナル御解釋ヲ御取リニナ
ル筈ハナイト思フガ、此事ヲ念ノ爲メニ此席ニ於テ十分明
ナル所ノ言質ヲ私ハ得タイト思フノデゴザイマス、(「ヒヤ〓〓〓
拍手起ル)以上ノ理由ニ依リマシテ、私ハ此五月二十日附
ノ文書ニ信用ヲ措キ、サウシテ佐竹政府委員ノ言明ヲ信
シ、之ヲ行政法ノ理論ニ照シテ、此契約ハ未ダ成立ヲシテ
居ナイモノト考ヘル、成立ガシテナイ以上ハ此契約ヲ不當ナ
リトスル、此決議ト言フモノハ畢竟敵ナキニ矢ヲ放ツモノデ
アルト云フコトニ、私ハ論結スルノデアリマス、此故ニ私ハ本
案ニ反對スルト共ニ、主務大臣ノ說明ヲ求メ、說明ノ如何
ニ依テ更ニ吾ミノ態度ヲ一變スルコトガアル、玆ニ其理由ヲ
陳述シテ此席ヲ退クノデアリマス(拍手)
〔國務大臣元田肇君登壇、拍手〕
〔「政友會シッカリシロ」「能ク聽イテ居給へ」「默ッテ居
ロ」「詳細願ヒマス」「高聲ニ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=144
-
145・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 諸君、本問題ニ就キマシテ、政
府ノ意見ヲ述ベマス、本問題ノ經過ニ就キマシテハ、既ニ豫
算分科會、總會又其後ニ聲明書ヲ鐵道省ヨリ發表致シマ
シタ、ソレニ於テ來歷ハ詳シク述ベテアリマス、玆ニ私ハ再ビ
ソレヲ繰返スノ必要ハナカラウト思ヒマス、結局城東線ノ改
築ヲ致サナケレバナラヌト云フ計畫ヲ立テヽ居リマス中ニ、
計畫ヲ實行致シマスレバ不要線ガ出來ル、其不要線ガ出
來タ場合ニ拂下ヲ受ケルコトガ出來ヤウカト云フコトデアリ
マシテ取調べノ結果其場合ニハ支障ナシト一云フコトヲ-
先刻既ニ朗讀シタ御方モアッタガ、通知書ニ依リマシテ京阪
電鐵ノ方ニ通知ヲ致シマシタ、回答ヲ致シマシタ(「ソンナニ
簡單ナモノデハアリマセヌヨ」ト呼フ者アリ)ソンデ其回答ニ
於キマシテハ、詳細ノ事項ハ追テ協定スル、尙ホ最末項ニ於
テ線路ニ關シテハ、又更ニ協商スルト云フヤウナコトガ書イ
チアリマシテ、唯ダ大綱ヲ擧ゲテ斯樣ナコトナラバ未來左様
ナコトガアッタ場合ニ、拂下ゲテモ支障ガナイト云フダケノ意
思表示ヲ送ッタノデアリマス、此意思表示ヲ送リマシタ、卽チ
囘谷致シマシタニ對シマシテ、京阪電鐵會社ヨリ右御受仕
リ候也ト云フ書類ガ參シタ之ヲ····(「立派ナ契約ダ」ト呼フ
者アリ)私考ヘマスノニ、自分ノ考ヘデハ不要ニナッタ時分
ニ、京阪電鐵ガ拂下ヲ受ケタイト云フコトデアリマシテ、審
議ノ末ニ是レ〓〓ノコトヲ盡スナラバ、拂下ゲテ支障ハナイ、
是ハ未來ノコトヲ豫想シタコトデアリマシテ、固ヨリ茲ニ直
チニ有效ナル契約實行サレルモノガ出來タノデハアリマセ
ヌ、其意思ヲ表示致シマシタ、意思表示ヲ致シマシタ所ガ、
受ケルト申シテ來タノデアリマスカラ、是ガ契約ト看做サレ
ルトカ看做レナイトカ云フ議論ハ別トシテ、法曹界ニ於テ假
令契約ト看做シタ場合ニハ、未必ノ場合ノ契約デアレバ、
差支ナイト云フコトノ慣例ニ基イテ述ベタノデゴザイマス、
併ン此解釋ハ諸君ノ解釋ニ御讓リヲ致シマス、意思表示ニ
對スル回答ダケデアッテ御受ケヲスルト云フコトガ契約ニナ
ル豫約ニナルナラヌト云フコトハ、ソレハ如何樣ニ御考ヘニ
ナッテモ宜シイ、契約ニナルト之ヲ致シマシタ所ガ、契約ヲ結
ブト云フコトガ、出來ルカ出來ヌカト云フコトカ、大問題デア
ラウト思ヒマス、ンコデ此論據ハ屢、聽カレタ方モゴザイマセ
ウガ、政府ハ明治八年太政官達第百八十九號ノ布告鐵
道用地處分ニ關スル特別法ト云フノガ出デ居リマス、此法
律ニ依シテ土地ノ處分ガ出來ルノデアリマス、然ルニ其後ニ
至リマシテ二十三年デアリマスカ、一般ノ不要土地ト云フ
ヤウナモノニ關スル官有地ノ處分法ガ勅令デ出マシタ、此
場合ニ疑義ヲ生ジマシテ、其疑義ヲ生ジタ結果、明治八年ノ
太政官達ハ鐵道ノ用地不要物等ニ對シマスル特別ノ法デ
アル、一般ノ場合ノ規定外デアルト云フコトニ解釋ガ定リマ
シテ、爾來今日ニ至ルマデ、此法ヲ根據ト致シマシテ、何十
年ト云フ間鐵道省ニ於キマシテ-鐵道院トモナレバ、鐵
道局トモナリ、當時ハ遞信大臣ガ所管長官デ、其後鐵道院
總裁、ソレカラ今日ハ鐵道大臣ト斯ウナリマシタ、名前ハ色
色デアリマスガ、鐵道省ニ於テ處分ヲスルコトガ出來ルコト
ニナッテ處分ヲ致シ來ッテ居リマス、是ガ歴史デアリマス、而シ
テ未來ヲ想像シテ豫約ヲスルト云フコトガ如何デアル
カ之モ亦從前ノ事歴ニ於キマシテ斯樣ナルコトハ決
シテ今囘初メテアルノデハアリマセヌ、初メテデアラウガ
ナカラウガ惡イト云フ御論ナラバ、又是ハ是デ御答ヲ
致シマスガ、初メテアルノデハナイ、不肖ガ當局トナッタ場
合ニ之ヲ始メタノデハナイ、從前ヨリ例規トナッテ居ルト
云フコトヲ御承知下サルヤウ、左様ナ次第デアリマスル
カラシテ、法規ノ上カラ論ジマシテ太政官ノ達ハ根據ト
スベカラズト云フコトデアリマスルナラバ、左樣ナ法制
デモ出來マシタナラバ免モ角モ特別法デアッテ鐵道ノ
所有地處分ニ就キマシテハ、特別法ヲ設ケラレテ今日
マデ處分シ來ッテ居ルノデアリマシテ、既ニ何十年ノ間此例
規ニ依ッテ處分シ來ッテ居ル以上ハ今日私ガ其當局者トナク
テ其例規ニ從ッテ處分シタ所ガ何等不都合ハナイト確信致
シテ居ルノデアリマス、是ハ先刻ノ-一寸名前ガ出マセヌ
ガ御方ノヤウナ契約デナイ無效デアルト云フナラバ免モ角
モ-無效デアルト云フナラバ論ズル必要ハナクナリマスガ、
無效デナイ未必ノ條件ヲ帶ピタ契約ト致シマシテモ、斷ジテ
法規違反デナイト云フコトヲ確信シテ居ルノデアリマス、ソ
レカラ次ニ十八年度ニ完成スベキ工事ヲ何故ニ急遽ニ之
ヲヤッタカト云フコトヲ申サレタヤウデアリマス、一言申上ゲ
テ置キマス、十八年度ニ完成スルノハ全線デアリマス、今囘
不用ニナッタナラバ云々ト申シマス土地ハ一哩八分位デア
リマシテ、是等ノ線路ト云フモノハ成ベク急速ニ著手スル積
リデアリマスカラ、決シテ十八年マデ待ツノデハアリマセヌ、
是ハ斷言致シテ置キマス、(「一方ガ出來ナケレバ役ニ立チマ
セヌ」ト呼フ者アリ役ニ立チマス、一方ガ出來レバ一方ガ役
ニ立チマス、左樣ナ事ヲ言ハレルノハ鐵道ノ事ニ通ジテ居ラ
ヌノヂアリマス、次ニ急遽拂下ゲノ契約ヲ爲シタル云々ト云
フコトデアリマスケレドモ、決シテ急遽拂下ゲノ契約ヲシタ
ノデハナイ、會社ハ本年二月二十一日ニ拂下ノ出願ヲ爲シ
夕、ソレニ對シテ鐵道省カラ先刻申シマシタ回答書ヲヤリマ
シタノハ五月二十日デアリマス、二月ニ出テ居ルモノニ對シ
テ五月二十日ニヤルト云フコトハ急遽ト何デ言ハレマセウ、
少シモ急遽デナイ、(「大臣ニナッテ何日目ダ」ト呼フ者アリ)
大臣ニナッテ何月目デアリマセウトモ左樣ナ事ハ申シマスレ
バ、輕便鐵道其他ノ總テノ提案ト云フモノハ大臣ニナッテ何
日目ニ出テ居リマス、不肖ハ斷ジテ正當ナル調ヲシテヤッタ
積リデアリマス、(拍手起リ「ソンナニ怒リナサンナ」ト呼フ者
アリ笑聲起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=145
-
146・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 靜〓ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=146
-
147・元田肇
○國務大臣(元田肇君) ソレカラ第三ニ鐵道ノ一部ヲ拂
下ゲルト云フコトハ、法規違反デアルヤウナ御論ガアリマシ
タガ、是ハ辯ジテ置カナケレバナラヌ、靜ニ御聽下サイ鐵道ノ
一部ヲ拂下ゲルト云フナラバ法規違反ニナリマセウ、鐵道
省ノ支障ナシト囘答致シマシタノハ鐵道ノ一部デハアリ
マセヌ、廢線トナッタモノヲ申スノデアリマス、(「廢線デハナイ」
ト呼フ者アリ)「レール」モアレバ土地モアル、之ヲ別々ニ言ヘ
バサウナルガ一緒ニシタナラバ例ヘバ家ハ家デナイカト云フ
先刻ノ御話デアリマス、如何ニモサウデアリマセウガ、鐵道其
物ノ拂下ヲスルト云フナラバ鐵道ノ敷イテアルノミデナイ、
車輛モ運轉シテ居ル、營業權モ有ッテ居ル、特許モ有ッテ居
ルト云フノデ初メテ鐵道ノ拂下ニナルノデアリマス、(拍手起
ル)廢線トナリマシタ時分ニ線路ガアル、此廢線ハ不用デア
ルカラ或ハ「レール」ヲ離シテ賣ルコトモアリマセウ、一緒ニ賣
ルコトモアリマセウ、今囘ノ買受ノ事ハ幸ニ特許ヲ受ケタ場
合ニ改築ヲシテ、高架線ニシテ用井ルト云フ、此下地ノ材料
ニ使フ爲ニ拂下ゲタノヲ何デ鐵道ノ拂下ト言フコトガ出來
マセウ、斷ジテ左樣ニハ思ッテ居リマセヌ、ソレカラ豫メ斯樣
ナ意思ノ表明ヲスルト云フコトハ不都合デアルト云フ事デ
アリマスガ、是ハ又一向不都合ト思ヒマセヌ、田心ヒマセヌノミ
ナラズ鐵道省デハ斯樣ニシ來ッテ居ルノデアル、先刻大隈內
閣ノ時代ニモドウトカ斯ウトカ言ハレマシタガ、私ハ强ヒテ
大隈內閣ヲ引出ス必要ハアリマセヌ、アリマセヌガ幾多ノ例
ガアル例ガアルノニ不肖當局トナッテ此例規ニ依シテ斯樣ナ
回答ヲ致シタト云フコトハ斷ジテ不都合デナイト私ハ信ズ
ル、以上ノ外ニ(「脫線シナイヤウニ」ト呼フ者アリ)何故ニ諮
問シナイカト云フコトデアリマス、關係ノ都市計畫委員會ニ
諮問セヌガ、市ニ諮問セヌカ、ト云フ事デアリマスガ、特許ニ
就テハ諮問スル積リデアリマス、或ハ府知事ヲシテ諮問サセ
ル、都市計畫ニ就キマシテハ直接ニ諮問スル事モアリマセ
ウ-諮問スル積リデアリマス、併ナガラ未來ノ不用ニナッタ
時ニ鐵道省ノ專權ヲ以テ處分ノ出來ル土地ノ賣拂ヲスル
ニ異議ガナイトカアルトカ云フ事ニ就テハ市ニ諮問スル必
要ハ斷ジテアリマセヌ、鐵道大臣ノ職權デアリマスカラ斷ジ
テ御答へ申シテ置キマス、(拍手起リ「事理明白ナリ」「之ヲ
稱シテ濫用ト言フ」ト呼フ者アリ)又豫算議定權ヲ無視シ
タトカ云フ事ヲ御述ニナッタガ(「其通リ」ト呼フ者アリ)政府
ハ豫算議定權ヲ無視シテハ居リマセヌ、是ダケ御答シテ置
キマス、ソレカラ紫安君ノ御引用中ニ二哩餘云々ト云フコ
トガアリマシタガ、一哩八分位ト云フコトニ私ハ承知シテ居
リマスカラ、是ハ一寸申上ゲテ置キマス、以上此拂下ゲノ事
柄ニ就キマシテハ大體ノ答辯ヲ致シタ積リデアリマス、第
ハ契約ニナラウガ意思ノ表示ニ止マルニ致シテモ、決シテ法
規ニ背イタモノデハナイ、旣ニ例規モ澤山アル、サウシテ急速
ニヤッタモノデハナイ、適當ナル考慮ヲ加ヘテヤッタモノデアル、
是ダケ申上ゲマスレバ御分リニナル事デアラウト思ヒマス、
拍手起ル)更ニ特許ヲ與ヘルヤ否ヤト云フコトニ就キマシ
テハ、唯〓申シタ通リニ都市計畫委員會ニ諮問スルコトモ
アリマセウ、或ハ府如事ヲシテ市ニ諮問スルコトモアリマセウ、
是デ御分リノ事ト思ヒマス、(拍手起ル)更ニ其外ニ先刻何
カ刷物ヲ御引キニナリマシテ、ヤレ石丸ガドウシタトカ誰ガド
ウシタトカ云フ事ガアリマシタガ、此當時京阪電鐵ニ新規ノ
線路ヲ許可致シタト云フコトハ適當ノ評議ヲ經テ十分ナル
審議ヲ加ヘテ適當ナリト認メテ時ノ當局ハ認可シタモノト
思慮致シマス、個人ノ-何等ノ爲メニスル所ガアリマスカ、
書物ヲ此處ニ御持ニナッテ一〓御答辯ヲ求メラレテモ私ハ
一〓之ニ向ッテ答辯スル限リデナイト思ヒアス、是ダケ申上
ゲマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=147
-
148・岩崎勲
○岩崎勳君 討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=148
-
149・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ヨリ討論終結ノ動議ガ出
マシタ異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」「議長々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=149
-
150・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 異議ナシト認メマス
〔「異議アリ異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=150
-
151・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ討論終結ノ動議ニ異議
ガアリマスナラバ決ヲ採リマス··
〔「議長々々」ト呼フ者アリ、前川虎造君「私ハ通告
シテアリマス」ト呼ヒ「無用々々」「討論終結」ト呼フ
者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=151
-
152・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 通告ガアリマシテモ討論終結ノ動
機ガ出テ採決シタノデアリマス
〔前川虎造君「討論デハナイ質問デス」ト呼ヒ「無用
無用」「採決」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=152
-
153・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 質問デモ討論終結ノ動議ガ出マ
シタナラバ採決センナリマセヌ
〔「先決問題ガアリマス」「議長々々」「採決」ト呼ヒ議
場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=153
-
154・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) (議場騒然聽取スルコト能ハ
ス)····討論ハ終結サレマシタ
〔「議長々々」ト呼ヒ其他發言スル者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=154
-
155・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜カニ·····前川虎造君ノ決議案
ヲ記名投票ニ依ッテ採決シマス
〔前川虎造君「質疑ガアリマス」ト呼ヒ「無用々々」ト
呼フ者アリ、議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=155
-
156・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 討論ハ終結シマシタ
〔「ノウ〓〓」「採決々々」ト呼ヒ議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=156
-
157・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) (議場騒然聽取スルコト能ハ
ス)····前川虎造君ノ決議案ニ贊成ノ諸君ハ白票、反對ノ
諸君ハ靑票-閉鎖
〔土岐書記官氏名ヲ點呼ス〕
〔「議長々々」ト呼ヒ議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=157
-
158・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) モウ一應宣告シマス、討論ハ終結
サレマシタ
〔「ノウ〓〓」「質問ヲ許スベシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=158
-
159・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 終リ迄宣言ヲ御聽キナサイ-岩
崎君ノ動議ニ依シテ討論ハ終結サレマシタ
〔「ノウ〓〓」「採決サレテ居リマセヌ」「計論終結ニ反
對シマシタ」其他發言スル者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=159
-
160・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 静カニ御聽キナサイ-又諸君ノ
意見モ靜カニ聽キマス、岩崎君ノ討論終結ノ動議ニ依ッテ
討論ハ終結サレマシタ
〔「終結シテ居リマセヌ」「マダ採決シナイ」「横暴々々」
「對手ニナルナ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=160
-
161・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜カニ御聽キナサイ-討論終結
ニ異議ハアリマセヌカト云ッタ時分ニ、諸君ハ異議ノ聲ヲ放
タレマセナンダ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=161
-
162・小山松壽
○小山松壽君 議長-議長ハ諸君ノ意見ヲ聽クト云フ
御宣告デアリマス、私ハ意見ヲ述べマス、御許シヲ願ヒマス
ト呼ブ(「無用々々」「議長々々」ト呼フ者アリ、議場騒然)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=162
-
163・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 玆ニ於テ前川虎造君ノ決議案ヲ
記名投票ニ依シテ採決致スト宣告致シマシタ
〔拍手起リ「ノウ〓〓」「議長々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=163
-
164・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 既ニ討論終結ノ動議ニ異議ノ有
ルカ無イカヲ尋ネタ時分ニ異議ノ聲ヲ聽カズ(「ノウ〓〓」「異
議アリ」ト呼ヒ議場騒然聽取スル能ハス)····採決スルト宣
言シテ既ニ贊成ノ諸君ノ白票、反對ノ諸君ハ靑票、閉鎖迄
宣言シタノデアリマス(拍手起ル)
〔土岐書記官氏名點呼ヲ繼續ス〕
〔原田書記官中途交代氏名點呼ヲ爲ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=164
-
165・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 宣言シマス、氏名ハ悉ク點呼致シ
マシタ、ケレドモ中ニ投票ヲナサラヌ方ガアルコトヲ認メマス、
是ハ抛棄ト認メマス
〔「ノウ〓〓」「議長々々」「議長進行ノ動議ヲ提出致
シマス」「議長横暴」「投票漏ガアリマス」ト呼フ者ア
〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=165
-
166・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 投票漏ガアレバ投票ナサイ-若
シ投票ナサラヌナラバ抛棄ト認メマス-投票ノ結果ヲ報
告致シマス
〔「議長々々」「投票漏ガアリマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=166
-
167・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 投票漏ガアレバ速ニ投票ナサイ
〔此時發言スル者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=167
-
168・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 開鎖-開匣
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=168
-
169・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 投票ノ結果ヲ報告致シマス
〔「議長々々緊急問題ガアリマス」ト呼フ者アリ、議
場騒然〕
〔寺田書記官長朗讀〕
投票總數二百四十三
可トスル者(白票)零
否トスル者(靑票)二百四十三
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=169
-
170・奧繁三郎
○議長(繁繁三郞君) 仍テ古島一雄君提出ノ決議案ハ
否決ニナリマシタ(議場騒然)
決議案否トスル者投票者氏名二四三人
石井三郞君今井今助君今泉嘉一郞君
石川善盛君岩崎宗茂助君市村貞造君
岩切重雄君一宮房治郞君禱苗代君
飯島信明君岩崎動君井上敬之助君
池田龜治君井坂豐光君石川玄三君
岩本平藏君伊坂秀五郞君伊澤平左衛門君
池田泰親君磯田粂三郞君池田猪三次君
原田十衞君八田宗吉君林毅陸君
花岡次郞君波多野喜右衞門君蓮井藤吉君
長谷川宗治君長谷場敦君花城永渡君
原田佐之治君原夫次郞君原田藤次郞君
濱口吉兵衞君萩亮君波多野承五郞君
秦豊助君鳩山一郞君西澤定吉君
西川嘉門君西村正則君西村伊亮君
本多貞次郞君堀切善兵衞君友常毅三郞君
戶符權之助君富安保太郞君床次竹二郞君
小田切磐太郞君岡崎邦輔君小山田信藏君
小川平吉君大久保虎吉君大石大君
岡田伊太郞君大林森次郞君長田桃藏君
大岡育造君岡順次君渡邊修君
若尾幾造君若林德懋君渡邊祐策君
河相三郞君柿原政一郞君河崎〓君
金光庸夫君加藤重三郞君改野耕三君
海原〓平君粕谷義三君加藤久米四郞君
川原茂輔君川村數郞君風間八左衞門君
海江田準一郞君河上哲太君吉植庄一郞君
吉原祐太郞君吉原正隆君吉木陽君
米田穣君米澤與三次君橫山寅一郞君
高橋本吉君高見之通君高橋辰二君
瀧正雄君高柳淳之助君田中定吉君
高橋義信君田村順之助君竹內明太郞君
高木第四郞君竹澤太一君玉置良直君
高山長幸君竹上藤次郞君龍野周一郞君
武田德三郞君田中隆三君高橋善五郞君
津野田是重君津崎尙武君塚原嘉藤君
坪田十郞君鶴見孝太郞君根本正君
中山佐市君中村〓造君成田榮信君
成田直一郞君中倉万次郞君南里琢一君
長峰與一君中島守利君中橋德五郞君
永井作次君中島鵬六君永屋茂君
中村喜平-君向井倭雄君武藤金吉君
梅田潔君上塚司君植場平君
宇野勇作君鵜澤總明君上埜安太郞君
植竹龍三郞君內山安兵衞君野村治三郞君
野副重一君野口忠太郞君國重政亮君
久木田叶君黑住成章君熊谷直太君
久慈貫一君久下豐忠君國澤新兵衞君
山口義一君山本条太郞君山田永俊君
山口熊野君安原仁兵衛君谷津新八郞君
柳原九兵衛君矢野丑乙君山本悌二郞君
山崎猛君八木逸郞君牧山耕藏君
松岡俊三君前田米蔵君舞田壽三郞君
松田源治君松野鶴平君松山常次郞君
松本孫右衞門君牧野良三君丸山嵯峨一郎君
松浦五兵衞君益谷秀次君麓純義君
福井三郞君深見寅之助君福井甚三君
小鹽八郎右衞門君古林與六君古林新治君
小久保喜七君小坂順造君江崎幸太郞君
遠藤良吉君穴水要七君阿部武智雄君
淺石恵八君靑木恆太郞君有馬秀雄君
秋本喜七君靑柳郁次郞君佐藤寅太郞君
坂本素魯哉君齋藤壽雄君佐藤良平君
三枝彥太郞君阪上貞信君佐野正雄君
指田義雄君崎山克治君櫻內幸雄君
佐々木志賀二君澤來太郞君榊田〓兵衛君
齋藤鷲太郞君菊池長右衞門君〓瀨規矩雄君
吉良元夫君菊川惣吉君木下甚三郞君
宜保成晴君木村〓三郞君木下謙次郞君
木村作次郞君木下十四三君宮崎三之助君
三善〓之君水野吉太郞君宮崎友太郎君
宮古啓三郞君三土忠造君白井博之君
志賀和多利君下出民義君島田俊雄君
清水市太郞君廣岡宇匹田銳吉君
樋渡次右衞門君日野長寿諸君平田民之助君
廣瀨爲久君樋口伊之助君毛里保太郞君
元田肇君森恪君望月圭介君
妹尾順平君清崟太郞君菅原傳君
鈴木巖君鈴木錠藏君鈴木義隆君
井內歡二君奧村千太郞君若尾璋八君
吉村鉄之助君難波作之進君上畠益三郞君
松田三德君佐々木平次郎君三輪市太郞君
森下龜太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=170
-
171・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 最早時刻モ過ギマシタカラ是デ散
會スル考デアリマス····(「議長横暴」ト呼フ者アリ、議場騒
然)明日ハ午前十時カラ本會ヲ開キマス
〔「議長横暴」「議長横暴」ト呼フ者アリ〕
午後六時四十三分散會
衆議院議事速記錄第十八號正誤
頁段行誤正
三七五下一八工學士理學士
三七五下九春雄晴雄
〔參照〕
〔衆議院議事速記錄第十七號三木武吉君質問演說
參考書〕
愛媛縣ニ於ケル大干涉
第短刀直入候補者ヲ狙フ
愛媛縣ニ於ケル選擧干涉ハ、他府縣ニ於ケル尋常手段
ト大ニ趣ヲ異ニシ、在野黨候補ニ對シテ短刀直入司法
警察權ヲ濫用シ、選擧界稀ニ見ル大壓迫ヲ加ヘタリ、是
ヨリ先衆議院ノ解散セラルヽヤ、政府ハ比較的公平ナリ
シ前任警察部長金澤正雄ヲ群馬縣ニ轉任セシメ、政友
會總務委員國勢院總裁タル小川平吉ト緣故淺カラス、
曾テ北海道小樽ノ選擧場裡ニ辛辣ナル怪腕ヲ揮ヒタル
東京區裁判所檢事久保田金次郞ヲ其ノ後任トナシ、
三月十九日新部長就任スルヤ、上ハ警察署長ヨリ下ハ
駐在巡査ニ至ルマテ更迭シ、以テ選擧干涉ノ準備ヲ爲
シタリ
本縣第五區(喜多上浮穴兩郡)ノ憲政派ハ、初メ大洲
銀行頭取檜田一ヲ候補ニ推薦シ、運動著々効ヲ奏シテ
既ニ必勝ノ成算アルニ方リ、三月下旬久保田部長ハ突
如トシテ同區ヲ巡視シタリ、之ト同時ニ同地ノ政友派ハ
「檜田一カ同郡大瀨村へ德岡文四郞ニ對シ、運動費ト
シテ金二十圓ヲ提供セントシテ拒絕セラレタル事實アリ」
ト聲言シ、人ヲ以テ檜田ニ面談セシメ、「政友派ニ加祖ス
ルカ、然ラサレハ候補ヲ辭退ス可シ、久保田警察部長ハ
旣ニ告發ノ手續ヲ爲サンカ爲ニ此地ニ來レリ」ト脅迫シ
タレハ、檜田ハ勢ヒ抵抗シ難キヲ知リ、恨ヲ呑ンテ候補ヲ
辭退シタリ、而シテ前記ノ德岡文四郞ハ警察側ノ間牒
ナリシト傳フルモノアリ、是ニ於テ憲政派ハ已ヲ得ス五
月一日ヨリ更ニ池田龍一ヲ推薦シタルモ遂ニ敗戰シタ
リ、第三區(越智周桑)ノ八木春樹カ立候補ヲ見合セタ
ルモ官憲ノ脅威ニ由リ、第四區(新居宇摩)候補者森達
三、第六區(東西宇和)ノ本多眞喜雄ニ對シテモ、或
駐在巡査ヨリ、或ハ親屬中ノ政友派ヨリ「政府反對ノ
候補者ニ對シテハ、必ス恐ル可キ禍害降下スヘシ、宮口
候補ヲ斷念ス可シ」トノ脅喝行ハレタリ
第二司法參事官來リテ檢擧頻發
警察ハ在野黨ノ候補者及ヒ運動者ニ對シ、日夜刑事
巡查ヲ尾行セシメ、苟クモ違反ノ嫌疑ヲ見出シ得レハ、
假籍ナク告發シタリシカ、檢事局ハ初メ警察ノミニ信任
シ能ハスト爲シタルモノヽ如ク、現ニ憲政派新聞記者ニ
對シテ「在野黨ノ違反事件ハ警察ヨリ之ヲ告發スルモ、
政府黨ノ非違ハ當局ニ於テ知ルニ由ナシ、諸君モ亦躇
躊ナタ反對黨ノ不正行爲ヲ告發スヘシ」ト語レリ、去レ
ハ久保田警察部長モ檢事局ノ手緩キニ慊爲タリシ故ニ
ヤ、四月月末ニ至リ突然其ノ所在ヲ晦マシ、密カニ上京
シテ政府部內ニ何等カノ運動ヲ爲シタルモノヽ如ク、五
月二日司法省參事官宮城長五郞ハ屬官一名ヲ隨ベテ
松山市ニ出張シ、五月九日卽チ選擧ノ前日マテ滯在シ
タルカ、不思議ニモ同參事官ノ出張前後ヨリ、警察署檢
事局ノ猛威ハ在野黨ニ對シテ一綱打盡的ニ發揮セラレ
タリ、則チ候補者ノ檢擧セラレタルモノ、曰ク村松恆一
郞、曰ク本多眞喜雄、曰ク門屋尙志、警察署ニ召喚サレ
タルモノ曰ク村上紋四郎、其他在野黨側ノ被告事件總
數四十件ニ上リ、政府黨側ノ違犯事件ハ僅カニ三件ニ
過キス
第三當選妨害ノ告發
第六區候補者本多眞喜雄ハ、西宇和郡ノ海岸三瓶村
ニ於テ一般ノ和船ヲ傭ヒ、沿岸地方ヲ運動シタルカ、案
內者安田熊太郞ハ多年本多家ニ出入シ、緣故淺カラサ
ルモノナレハ、船賃初メ諸種ノ支拂ヲ爲サシムル爲ニ金
三十圓ヲ同人ニ委託シタリ、而シテ熊太郞ハ選擧權ヲ
有セス、又タ選擧競争上何等ノ關係ナキニ拘ハラス、同
地警察署ハ選擧法違反ノ嫌疑者トシテ之ヲ告發シ、松
山地方裁判所森田檢事ハ、五月一日東字和郡宇和町
旅館旭屋ニ出張シテ、本多眞喜雄ヲ召喚シ、午前十時
ヨリ正午マテ種々ノ訊問ヲ爲シ、一旦中止シテ本多ヲ
留メ置キ、同夜八時頃ヨリ十時頃ニ到ルマテ再ヒ訊問
スル所アリ、漸ヤク歸宅ヲ許シタルモ、明二日又々取調ヘ
ノ必要アレハ、必ラス自宅ニ在リテ何分ノ沙汰ヲ待ツヘ
シト申渡シタリ、選擧競争上最モ重要ナル時期ニ於テ、
空シク檢事ノ沙汰ヲ待ツハ得策ニ非スト信シ、本多眞
喜雄ハ二日午前白カラ檢事ノ滯在セル旭旅館ヲ訪問
シタル所ロ、森田檢事ハ意外ニモ「最早訊問ノ必要ナシ」
ト言明シタルヲ以テ、嫌疑全ク氷解シタルモノト信シテ
運動ヲ續ケ居タルニ、五月九日謂ユル「最後ノ五分間」
ニ到リ、松山地方裁判所渡邊豫審判事ハ、何ノ必要ア
リテカ、特ニ事件ノ發生地タル三瓶村ニ出張シ、數里ノ
山道ヲ隔テタル野村市街地ノ演說會場ヨリ本多眞喜
雄ヲ三瓶村ニ召喚シテ豫審ヲ開キタリ、其ノ後本多眞
喜雄ハ豫審免訴ヲ云渡サレタリト雖モ、五月一日森田
檢事ノ喚問及ビ五月九日渡邊判事ノ審問ハ啻ニ緊急
ナル時機ヲ逸セシメタルノミナラズ、反對派ハ盛ンニ「本
多眞喜雄ハ拘引セラレタリ」トノ流言ヲ放チ最モ有效ニ
當選妨害ノ目的ヲ達セシメタリ
第四政友派ノ一言檢擧見合ス
第三區(越智周桑)ノ憲政派候補村上紋四郞ハ、五月
五日今治警察ニ召喚セラシ、無事放還サレタリト雖モ、
反對派ハ「村上拘引サレタリ」ト巧ミニ宣傳シ、彼等ヲシ
テ當選妨害ノ目的ヲ遂ケシメタルハ、第六區ノ本多候補
ニ對スル同一筆法ナリ、偶、越智郡九和村ノ村上派運
動員選擧法違犯ノ嫌疑ヲ以テ今治警察署ニ召喚セラ
レ、長井警部補同村ニ出張シ、事件擴大セントスル兆ア
リ、同派運動員山本定吉ハ、之ヲ未發ニ防カント欲シ、
政友派候補山本事務所ヲ訪問シ、「飽マデ我黨ヲ檢擧
セバ、我々モ亦政友派違犯ノ實況ヲ握レルヲ以テ、之ヲ
檢事局ニ告訴セン」ト談判シタルニ、川上派ノ參謀日野
松太郞ハ「夫ハ御互ニ不利益ナリ、自分ヨリ警察ニ交涉
シテ檢擧ヲ見合スヘシ」ト答ヘ、直ニ今治警察署ニ交渉
シタル結果、果シテ前ノ嫌疑者モ放免セラレ、同村內ニ
一ノ違犯事件ヲ發生セサリシ、此一事以テ警察カ國家
ノ公器タルヲ忘レ、黨爭ノ道具ニ使ハレタルヲ知ルニ足ル
可シ
第五甲ハ處刑乙ハ不問
愛媛縣七區(南北宇和)ハ政友會公認候補渡邊修ト
中立候補村松恒一郞ノ競爭地ナリシカ、村松ノ形勢漸
次優勢トナルヤ、官憲ノ干涉日ヲ追フテ露骨トナリ、宇
和島町ノ村松選擧本部ニハ、刑事巡査畫夜出入シ、特
ニ夜間ハ私服巡査附近ヲ徘徊シ、或ハ事務所ノ階下ナ
ル自働車會社車庫内ニ潜伏シテ、運動員ノ動静ヲ覗ヒ、
而シテ候補村松及ヒ主タル運動員ニハ常ニ巡査ノ尾行
ヲ附シ、東京ヨリ來援シタル岡部某ニ對シテサヘ、絕ヘス
尾行シテ一擧一動悉ク監視シタリ、是ヨリ先村松恆一
郞ハ立候補宣言書中ニ
(前略)特ニ地方問題ニ就テハ甚大ノ注意ヲ爲シ、就
中四國循環鐵道中伊豫土佐聯接線ノ完成ハ、地方
開發上最モ急務ニ有之候故、小生ハ多年此方面ニ
微力ヲ盡シ候處、政府ハ四十二議會ニ於テ松山八幡
濱迄ハ敷設ノ提案ヲナシタルモ、夫ヨリ以南ニ及ハサ
リシハ、最モ我々ノ遺憾トスル所ニシテ、將來ハ是非共
八幡濱以南ノ線路開通ノ目的ヲ達セサル可ラスト存
候
ト聲明シ、四月二十日八幡濱ニ於テ政見發表ノ演說ヲ
爲シタル際、前記宣言ノ趣旨ヲ布衍シ
聖書ニ所謂求メヨ、然ラハ與ヘラレンニテ、運動ノ如何
ニ依リテハ速ニ鐵道敷設ノ目的ヲ達スル事ヲ得ヘシ
(中略)自分ハ今回當選スルト否トニ拘ハラス終始此
問題ノ爲ニ努力スヘシ
ト演說シタルハ、利益ヲ以テ投票ヲ誘導シタル者トシテ
警察ヨリ告發シ、宇和島支部ノ檢事局ハ、四月三十日
村松恆一郎ヲ喚問シ、翌五月一日直チニ豫審ニ移シ、
同六日豫審判事ハ村松カ宇和島ヨリ七里ヲ距ツル三
島村ニ於テ、演說會開催中、電報ヲ以テ宇和島ニ召喚
取調ヲ爲シタリ、其ノ前後ニ於テ村松ノ政見發表演說
ヲ傍聽シタル有權者十數名モ亦證人トシテ喚問セラ
レタレハ、反對派ハ之ヲ奇貨トシ、「村松ハ收監セラレタリ
假令當選スルモ失格スヘシ、寧口渡邊ニ投票セヨ」ト宣
傳シ、之ト同時ニ警察側ハ何ノ罪ナキモノト雖モ村松派
ノ運動員ト見レハ引致喚問シタルヲ以テ、人心恟々タリ
シ、抑モ村松カ立候補宣言書ヲ發シタルハ四月中旬ニシ
テ、演說モ亦同月二十日ナリシニ拘ラス、選擧期日切迫
シテ後ニ檢舉シ、選擧期ニ先チテ豫審ヲ開キタルハ、其ノ
何故タルヤ、知ルニ由ナシト雖モ、係リ檢事ハ村松ニ對シ
「此場合取調ヲ爲サハ選擧ニ影響シ、迷惑察シ入ルモ、
事情已ヲ得ス是ニ及ヒタルコトヲ諒セヨ」ト挨拶シ、豫審
判事モ亦「個人トシテハ氣ノ毒ニ感スレト、四圍ノ事情
已ヲ得ス、選擧中ニ喚問シタリ」ト言ヘリ、」然ルニ村松ノ
敵手タル渡邊修ハ、公開ノ演說會ニ於テ同一ノ四國循
環鐵道問題ヲ論述シ、之ガ速成ヲ希望セハ、政友會ニ信
賴スル外ナキ旨ヲ、最モ具體的ニ說明シ、其他選擧法違
反ト信スヘキ行爲寡カラサリシヲ以テ、有權者ノ一人柴
田芳久ヨリ左ノ告發狀ヲ檢事局ニ提出シタリ
告發狀
北宇和郡宇和島町大字九穗村
告發人柴田芳久
北宇和郡泉村大字岩谷
現住所東京市麹町區平河町
被告人渡邊修
右被告人ニ對スル選擧違反被告事件ニ付告發ヲ爲ス
要領左ノ如シ
第被告人渡邊修ハ大正十年ニ行ハルヘキ衆議院
議員候補者トシテ出馬セン事ヲ畫策シテ大正八年九
月ニ執行セラレタル縣會竝ニ郡會議員選舉ニ際シ旣
ニ其豫備行爲ニ著手シ次ニ執行セラルベキ衆議院議
員選擧ニ自己立候補ノ地盤擁護ノ爲メ自黨タル政
友會系ノ縣會議員候補者ヲ多數ニ立タシムル必要上
多額ノ金員ヲ出金シ其內金貳千圓ヲ太宰孫九金壹
千圓ヲ赤松泰苞ニ分與シ之レヲ受領セシメ又南宇和
郡ニ於ケル縣會議員候補者小西喜代太ニ金千圓ヲ
贈呈シテ逐鹿場裡ニ立タシメ又一面ニ於テハ赤松泰
苞等ヲ介シ金千圓ヲ分配スル條件ヲ以テ井谷正命ノ
縣會議員立候補ヲ勸誘セシメタルモ井谷正命ハ之レ
ヲ應諾セサリシ事ハ世間衆知ノ事實ナリ
猶又郡會議員選擧ニ付キ自黨政友會系ニ屬スル議
員數名ニ其當時被告人渡邊修ハ當選ヲ祝スル意味
ニ於テ各金五十圓宛ヲ贈呈シテ各地方有力者ノ歡
心ヲ買ヒ今回ノ立候補ニ就キ其運動援助ヲ得ントス
ル豫備行爲ニ外ナラサルナリ
以上ノ關係ニアラサルカ赤松泰苞太宰孫九小西喜
代太ハ今囘ノ選擧ニ付渡邊派ノ參謀長トナリ策戰
怠ラサルノミナラス渡邊修竝ニ參謀太宰孫九ハ宇和
水電株式會社ノ社長又ハ專務取締役ナルヲ以テ近
來各所頻リニ電燈々火ノ供給ヲ申込ミ居ルヲ奇貨ト
シテ之レヲ利用セント企テ株主ニ加入セシメ又ハ電燈
供與ヲナスヘシト仄メカシ選擧卜電燈點火トヲ最モ密
接ニ締結センコトヲ畫策シ現ニ丸穗村字谷川部落八
幡村藤江、大浦部落來村川內藥師谷部落奧南村高
近村各部落竝ニ南宇和郡西外海村船越御莊村貝
塚部落等ニ於テ以上ノ關係ヲ仄シ以テ運動ノ方法ニ
供シ居ル事ハ人口ノ膾灸シツヽアル事實ナリ
第二被告人渡邊修ハ今囘ノ衆議院議員選擧ニ際シ
立候補ヲナシ各所ニ於テ演說會ヲ開會シ其政見トシ
テ四大政綱ヲ說キ交通機關ニ於テ四國循環鐵道問
題ヲ具體的ニ論シテ日ク四十二議會ニ於テ松山八
幡濱線ハ既ニ提案ヲ見ルニ至リタルモ夫レヨリ以南ノ
中央線、又ハ海岸線卽チ中村町ヲ起點トシテ宿毛南
宇和郡通過線ノ問題ハ鐵道院技師ノ調査シ何等難
工事ニアラサル事ヲ聞ケリ又先年後藤元鐵道院總裁
ハ自ラ之レヲ踏査シタル次第ニシテ政府ハ其何レニ採
ルヤハ之レヲ明言シ得サルモ其經畫ノ小額案ヲ立ツル
ヤ明カナリ
然レトモ國民黨又ハ新政會ノ如キ反對黨ニ於テ如何
ニ畫策スルモ到底實行覺束ナキ空論ニシテ之レヲ實
行セントセハ大政黨タル政友會ニ依ラスンハ何事ヲモ
完成スルコトヲ得サルナリ國民黨新政會ノ如キハ今
囘ノ選舉ニ於テ二十五名ノ議員ヲ得ル事疑ハシク交
涉團體トシテノ資格ヲ缺ク黨派ニ於テ何事カ爲シ得
ンヤト論シ其一例トシテ福岡縣ノ如キ十七名ノ議員
中僅カニ一名ノ反政友會議員アルノミニシテ殆ント
政友會系ノ代議士ニ於テ獨占シ居ルノ形勢ニアリ故
ニ同縣ノ如キハ交通機關ノ完備ハ勿論商業ノ發展等
著シク最近ニ於テハ高等學校ノ設置ヲ見又近來長
崎控訴院ヲ福岡市ニ移サントシ近キ將來ニ於テ現實
スルニ至ルヤ明カナル問題ナリ然ルニ我四國ノ代議士
ヲ見ルニ憲政會アリ國民黨アリ種々黨派ヲ異ニシテ
著シク一致ヲ缺クカ爲メ現狀ノ如ク交通機開ノ完備
ヲナサヽル一大原因ニ外ナラス
又自分ハ決シテ實行シ得ラル事ヲ說ク者ニアラス現ニ
愛媛縣理事官ヲ奉職中偶々高知縣海ニ於ケル愛媛
縣南宇和郡ノ入漁問題ニ付キ紛擾ヲ生シタル際自
分ハ時ノ郡長警察署長ト共ニ其衝ニ當リ最モ有利ニ
解決シ現ニ南宇和郡ニ於ケル漁業者ノ勝手ニ高知
縣海ニ於テ漁業シ得ルニ至ラシメタル事實アリテ自分
ハ此南宇和郡トハ多大ノ干係ヲ有スルモノナリト說キ
以上ノ次第ニシテ大政黨ニ據ラスンハ何事ヲモ實行
シ得サルナリ依テ政友會公認候補者タル自己ノ爲メ
ニ投票セラレン事ヲ冀フモノナリト述ヘタリト間知セ
リ
右ハ衆議院議員選擧法罰則ニ違反スル行爲ト被存候
條御取調相成度此段及告發候也
大正九年五月三日
右
柴田芳久
字和島區裁判所
檢事局御中
然ルニ檢事局ハ村松ニ對シテハ、選擧中迷感ヲ察シツヽ
四圍ノ事情已ヲ得ス檢擧スト稱シナカラ、渡邊ニ對シテ
ハ選擧終了ニ至ルマテ一囘ノ取調タモ爲サス、五月十三
日ニ至リ、檢事ヨリ渡邊ニ對シ、協議シタキ事アリ出頭ヲ
求ムル旨ヲ電話シ、渡邊ハ翌十四日檢事局ニ出頭シ、其
儘歸京シテ、此事件ハ瞹昧裡ニ消滅シタリ
第六平沼檢事總長ニ陳情書
村松ト渡邊トニ對スル檢事局ノ處置餘リニ差別アルヲ
憤慨シ、村松恆一郞ハ五月十七日附ヲ以テ左ノ陳情書
ヲ平沼檢事總長ニ提出シタリ
謹啓初夏好適之候益御〓榮御座被遊奉大賀候、陳
者乍突然今回ノ選擧ニ關シ、聊カ尊臺ニ訴ヘ、御判
斷ヲ乞度事有之候間左ニ開陳仕候、何卒御一讀奉
願度候
自分儀今回ノ立候補ニ際シ、四月二十日議會
報告ヲ兼ネ政見發見演說會ヲ開キ演題ハ「四十二
議會報告」ト題シ、議會ニ於ル諸問題ノ經過ヲ報
告シテ、四國鐵道ノ速成問題ニ言及シ、
「今後之カ速成ヲ期セントセハ、到底一二ノ代議士
ノ力ヲ以テ爲シ得ヘキ事ニ非サルカ故ニ、地方人士
ハ政派ノ異同ヲ問ハス一致〓結シテ之カ目的ヲ貫
徹スル事ニ努ムヘシ、其場含ニ於テ自分ハ當落ノ如
何ニ拘ラス、地方民ノ一人トシテ倶ニ此事ニカヲ盡
スヘシ」
ト述へ、尙誤解ナカランカ爲メ、其結末ニ於テ
「此問題タルヤ固ヨリ國家事業ニ屬シ自分一人ノ
力ヲ以テ如何トモ爲シ難キ事前述ノ通リナルヲ以
テ余カ當選セハ、此事ニ盡力スヘシトカ、此事ニ盡
力スヘキカ故ニ、余ニ投票セラレ度トカ云フ如キ意
味ハ毛頭之ナシ」
トノ事ヲモ附加へ置キタルニ、本縣警察側ニ於テハ、之
ヲ以テ選擧法違犯ナリトシ、當時右演說全體ノ趣旨
ヲ包含シタル依賴狀ヲ發送シタルニ、之ヲモ併セテ證
據物件トシ、檢事ニ告發シタリ、檢事ハ直ニ之ヲ受理
シテ、取調ニ著手シ、小生ハ勿論當時ノ傍聽者數名ヲ
召喚シテ、演說ノ內容ヲ聞取タル後之ヲ豫審ニ移シ、
豫審廷ニ於テモ小生及傍聽者ヲ喚問シテ取調ヘラレ
今尙審理中ニ御座候
右ハ恰カモ五月初旬選擧戰關ナルノ時ニ有之候間
反對候補者ノ側ニ於テハ奇貨措ク可シトナシ、之ニ關
シテ百方流言蜚語ヲ放チ、甚タシキハ「村松ハ收監セ
ラレタリ」ナト言ヒ觸ラシ、其結果新聞紙上ニモ掲載ス
ルニ至リ、小生ノ不利言フ可ラス、今囘選擧失敗ノ最
大原因ハ此ニ在リト迄言ハルヽ程ニ御座候處、是迚
モ既ニ國法ニ遵ヒ、執行セラルヽモノナル以上、之ニ對
シテ異議ヲ唱フヘキニ非ス、況ンヤ其後ノ進行及結果
ニ就テハ公明ナル司法部ノ栽斷ニ俟ツノ外無之候間
小生ハ敢テ此等ノ事ニ關シ、愁訴スルモノニハ無之、
唯タ特ニ尊臺ノ御一考ヲ煩シ度ハ四月下旬卽チ小
生カ未タ訴起セラレサル以前政友派候補渡邊修カ南
宇和郡ニ於テ同シク政見發表ノ演說中、是亦四國鐵
道ノ事ニ言及シタル後チ
少數黨ハ如何ニ大言壯語スルモ之ヲ實現スル能ハ
サルニ反シ、我政友會ハ大政黨ナルヲ以テ、其言フ
所ハ必ス之ヲ實行スルヲ常トス、其一例ハ福岡縣ノ
如キ、其代議士ハ大部分政友會ナルヲ以テ、現ニ鐵
道ハ縱橫ニ敷設セラレ、大學及各種ノ高等學校モ
設置セラレ、近クハ長崎控訴院モ此處ニ移サレント
ス、此實例ヲ見テモ地方民カ鐵道ノ速成ヲ希望セ
ラルヽナラハ、我政友會ノ力ニ依ラサル可ラス、從而
此際自分ノ爲ニ一票ヲ投シ、自分ヲ當選セシメラル
ルニ於テハ極力之カ實現ニ付テ力ヲ盡スヘシ
ト述タル事實アリ、右ハ前記小生ノ趣旨ト異ナリ徹頭
徹尾其實現ヲ主眼トシ、自己ノ力ニ依テ之ヲ解決ス
ル事ヲ明言シ、併テ投票ヲ依賴セシモノナレハ、是コン
眞ニ違犯事項ナリト云フヲ得ヘク、從テ此事實ニ付當
時檢事ニ告發セシモノアリ、檢事ハ其際告發者及一
二ノ證人ヲ喚問セシカ、本人渡邊修ハ選擧後去十四
日檢事ノ通知ニ依リ字和島警察署ニ出張シタリトノ
事ナルカ、何故カ同人ハ當初十九日出發歸京ノ旨發
表シタルニ、俄然右十四日夜ノ汽船便ニテ出發途中
松山ニ立寄リ、直ニ歸京スル由ニ有之而シテ坊間噂
スル所ニ依レハ同人ノ急遽歸京シタルハ、該事件ニ關
シ、政府當局ニ哀願シテ之ヲ不起訴タラシメンカ爲ナ
リト申ス者有之、右ハ固ヨリ臆測ニ止マルノミナラス、
彼カ如何ニ政府黨ナリトテ、法ヲ抂テ之ヲ特免サルヽ
カ如キ事ハ、公正ナル司法部ニ於テ、固ヨリ有リ得ヘカ
ラサル事ニシテ殊ニ小生ノ如ク初ヨリ毫モ責任ヲ負ハ
ス、且ツ夫カ爲特ニ投票ヲ依賴スルノ趣旨ニ非サルコ
ト明白ナルモノスラ豫審ニ移サレタル以下、夫ヨリ具
體的ナル渡邊修ノ演說ハ、無論起訴セラルヘキカ當然
ナリト愚考仕候、但シ今囘ノ選擧ニ際シ警察側ノ偏
頗不公平ハ極度ニシテ、極力政府反對側ニ壓カヲ加
ヘ、干涉ヲ行フニ反シ、政府黨ニハ出來得ル限リ庇護
ヲ與ヘタル事實歷然タルノ時、或ハ警察側ニ於テ其筆
記ヲ改竄シ且ネ渡邊修ニ不利ナル材料ハ提出セサル
ヤモ難測候得共、苟クモ多衆會同セル公會ノ席上ニ
於テ公言シタル事ヲ其儘抹殺シ得ヘキ儀ニ無之ト存
候
右偏ニ御明鑑ヲ仰度奉願候匆々
五月十七日村松恆一郞
平沼驥一郞樣貴下
副申今回ノ選舉ニ付警察側ノ偏頗不公平ハ極度
ニシテ、殊ニ反對候補者ニ對シテハ、最モ峻嚴ヲ極メ、
些細ノ事柄ニテ檢舉ヲ受ケシモノ小生共ニ三名ニ及
ヒ、尙ホ其事務所ニハ晝夜數名ノ刑事張リ込ミ、之ナ
ル運動者ニハ悉ク尾行ヲ附シ、且ツ投票兩三日前ニ
至テハ罪ノ有無ヲ問ハス、有力ナル運動者ハ種々ノ名
義ノ下ニ警察又ハ駐在所ニ引致シテ取調ヘ、微罪ト
雖モ優藉セス、且ツ選擧人ニ對シテハ駐在巡査カ一々
誰人ニ投票スルヤノ質問ヲ爲シ、甚シキハ何某ニ投票
スヘシト勸誘セシモノアリ、之カ爲メ各運動者及一般
選擧人ハ極端ニ畏怖心ヲ生シ、夫カ爲メ一旦贊成シ
タル者ニシテ、離反セシモノ少カラス、之ニ反シテ政府
黨候補者ニハ何等右樣ノ掣肘ヲ加ヘス、買收饗應等隨
意ニ之ヲ爲サシメ、目前違犯ノ事實アルヲ知ラサル如
クニシ、遇々告發スルモノアルモ、更ニ採用セス、實ニ不
法ヲ極メタリ、是亦併セテ御參考ニ供シ候
第七警察官ノ干涉實例
第一例第七區村松恆一郎ノ運動員岡島某外一名
ハ四月中旬北宇和郡遊子村ノ親戚藤田某方ニ到
リ、村松ノ爲ニ盡力セン事ヲ依賴シ、藤田方ニテハ遠
來ノ親戚岡島ニ酒食ヲ供シタルニ、數日ヲ經タル深
夜、水上警察船ノ內ニ藤田ヲ拉シ去リ、乘組ノ警官
四五名交々同人ヲ責メ「汝ハ岡島ヨリ金ヲ貰ヒ、酒食
ヲ供シタリ」ト自白ヲ强ヒ、藤田ハ「決シテ左樣ノ事實
ナシ」ト辯明シタレハ、「當夜ノ事ヲ他言スル勿レ」ト口
留シテ釋放シタリ、其後同村駐在巡査ハ村內毎戶ニ
就キ「藤田カ村松ノ名刺ヲ配附シタル際、金ヲ添ヘテ
依賴セスヤ」ト尋問シ、何レモ之ヲ否定スレハ、「然ラハ汝
ハ誰ニ投票スルヤ、若シ村松ニ贊成セハ汝等ノ不利益
ナルヘシ」ト威嚇シタリ、而シテ五月三日ニ到リ前記ノ
藤田ヲ初メ松澤福島等數名ヲ水上警察船ニ召喚シ、
午前九時ヨリ午後九時マテ止メ置キ、百方尋問スル
モ何等違犯ノ事實ヲ發見セス、遂ニ放還シタルカ、斯
ノ如キ數回ノ威嚇ハ慥カニ干涉ノ效ヲ奏シ、質樸ナル
同村選擧人ハ孰レモ後害ヲ畏レテ全部棄權シタリ
第二例五月八日北宇和郡三間村字宮ノ下ニ於テ村
松派ノ演說會アリシ時、同村ニ出張シ居タル警部巡
査部長及ヒ數名ノ巡査ハ村松ノ運動員長岡某ホカ
五名ヲ夜中强雨ヲ冒シテ宇和島警察署ニ引致シ、候
補者村松ヨリ飮食ノ饗應ヲ享ケタルモノトシテ告發
シ、檢事直チニ出張訊問ヲ送ケタル所ロ、全然事實ヲ
捏造シタル告發ナルヲ判明シ直チニ放還セラレタリ
第三例北宇和郡三島村駐在所ニテハ、投票ノ前日
松丸分署ノ巡査數名應援ニ來リ、村松派ノ運動員
選擧人等十數名ヲ交ル々々駐在所ニ引致シ、種々ノ
言ヲ構ヘテ嚴重ニ取調ヘ其內數名ハ飮食シタル事實
ヲ捕へ得テ直テニ檢擧シ、「見ヨ村松ニ賛成スルモノハ
斯ノ如シ」ト威嚇ノ效ヲ奏シタリ
第四例北宇和郡吉野生村ノ麻生田某ハ五月初旬、
松丸分署ニ召喚セラレ、「汝ハ部下ノ運動員ニ金ヲ渡
シタル違犯アリ、今後運動ヲ爲サヽルニ於テハ放免ス
ヘシ、然ラサレハ留置スへシ」ト嚇サレ、餘儀ナク運動中
止ヲ誓ウテ放免サレタリ
第五例北宇和郡成妙村字會根ノ駐在巡査ハ各選
擧人ヲ訪問シ「誰人ニ投票スルヤ、村松ニ賛成セハ汝
ノ爲ニナラス」ト威迫シタリ
第六例北宇和郡吉野生村ノ渡邊派選擧事務所ニ
於テハ屢と有權者ニ酒食ヲ饗シ甚タシキ時ハ一一名ノ藝
妓ニ給仕ヲ命シタル事アリ、巡查モ亦往々酒食シタル
事アリ、而シテ彼等ハ曰ク「我々ハ政府黨ナルカ故ニ何
等ノ心配ナシ」ト
第七例第三區越智郡宮窪村助役矢野有志夫ハ憲
政派ノ有力ナル運動員ナルカ、四月十七日政友派ノ八
塚好治ト酒ノ上ニテ喧嘩ヲ爲シ、翌日仲裁者アリテ圓
滿ニ解決シタルカ、四月三十日ニ至リ突然今治警察ノ
警部渡邊多助檢事開發松三郞君出張シ、八塚好治
ヲ同村巡査部長派出所ニ召喚シテ、矢野有志夫ニ對ス
ル傷害罪ハ告訴ヲ提出セシメ、直チニ矢野ヲ拘引シテ、
喧嘩ノ原因ハ選擧ニ關スル脅迫ニ在リト云フヲ動機
ニ、矢野ト運動員トノ間ニ運動費授受ノ事アルヘシト徹
霄訊問ヲ續ケ、遂ニ五月一日今治警察ニ引致シ同五
日マテ留置シ、且ツ選擧運動ハ全然中止セヨト勸告
セラレタリ、其結果ハ數名ノ違反者ヲ發見シタリト雖
モ、政友派ハ殆ンド公然運動費ヲ授受スルモ之ヲ放
任シ、獨リ憲政派ニ對シテ爬羅別抉至ラサル無キハ
之ヲ干涉ト云ハンヨリ寧口暴政ト稱ス可シ
第八例越智郡鏡村附近ノ各部落ニテハ刑事巡査白
神某ナルモノ候補者村上紋四郞ノ親屬ト詐稱シテ同
派ノ形勢ヲ探リ、五月一日ノ夜鏡村ノ運動員藤原房
太郞方ニ到リ、「小生ハ村上ノ親屬ナルガ、運動費ニ不
足アラバ渡ス可シ」ト語リ、房太郞ハ欺カルヽトハ知ラ
スシテ「村上候補ノ子息隆逸ヨリ十圓ダケ預カレリ」ト
答ヘタレハ、有無ヲ云ハサス直ニ引致シ、之ヲ動機トシ
テ拘引セラルヽモノ十八名ニ及ヒ、中ニハ全ク無關係
ノ人民モアリタリ、憲政派ニ對スル警官ノ所置如何ニ
辛辣ナリシカヲトスルニ足ル可シ
第九例警察官ハ憲政派優勢ノ地ヲ目シテ激戰地ト
稱シ、他ノ應援巡查ヲ增派シテ候補者及ヒ運動員ニ
尾行セシメ、政友派ニ對シテハ一切放任シタルハ各地
同樣ナルカ、第二區憲政派候補門屋尙志力四月二
日縣會議員林實正武知勇記川瀨儀太郎等ト共ニ
伊豫郡廣田村及中山村ヲ訪問シタル時ノ如キ、巡査
部長國田ナルモノ口髯ヲ剃リ商人風ヲ裝フテ終始尾
行シ旅館ニ宿泊スレハ變装巡査モ同一旅館ニ泊リ
運動員有權者等ニ畏怖心ヲ懷カシメタリ、第三區候
補村上紋四郞カ四月二十八日ヨリ數日間大三島ノ
各村落ヲ歷訪シタル時ハ刑事巡査白神某ホカ一名
絕エス尾行シ、村上ノ訪フタル每戶ニ付キ「村上ハ何
事ヲ語リタルヤ、汝ハ何ト答ヘタリヤ」抔、五月蠅ク質
問シタリ、有權者ハ候補自身ノ訪問ヲ受ケテ喜フカ
世上一般ノ狀態ナルニ拘ラス、今回ハ異口同音ニ「憲
政派候補ノ訪問ハ實ニ迷惑ナリ、警察官ノ調ヘヲ受
ケテ家族等迄モ困難セリ」ト稱シタリ
第十例東宇和郡野村ノ本多派選擧事務所運動員
河野伊左衞門ヨリ特使ヲ以テ同郡土居村滯在中ノ
縣會議員別宮良ニ宛テ一通ノ封書ヲ齎ラシタル途
中、豫テ密偵中ノ警官ハ「必定送金ノ使者ナリ」ト早
合轉シ、封書ヲ差押ヘテ野村分署ニ引上ケ、發信人
河野伊左衞門ヲ召喚ジ數時間ニ亙リテ導問スル所
アリ、最後ニ證據物ノ封書ヲ突キ附ケ、面前ニ於テ開
封シタル所ロ、何ソ圖ラン、金ハ一錢モ見ヘス、大金ト
見ヘタルハ一葉ノ電報ナリシニ、警察官モ啞然タリキ
第八通信機關ノ不都合
選擧競爭中、松山郵便局ニハ廣島遞信管理局ヨリ二
名ノ屬官差遣セラレ、在野黨間ニ往復スル電報ハ一々
檢閲サレタル形跡アリ、第七區宇和島郵便局ニ於テハ、
五月六日東京新橋局ノ引受ニ係ル在京宇和同〓會有
志ヨリ差出タル村松恆一郞推薦ノ郵便物ヲ五月十日
ノ投票終了後ニ配達シ、村松派ノ抗議ニ對シテ「九日
午前五時四十五分當局へ著スヘキ處、松山當局間ニテ
遲延シ(中略)這ハ延著ノ結果ニテ如何トモ難致」ト回答
シタリ
廣島縣ニ於ケル干涉
廣島縣ニ於ケル干渉手段ハ、廣ク全國ニ行ハレタル干渉
方法ト大差ナク、郡吏ハ政府ノ解散理由宣傳ヲ口實ト
シテ各町村ノ有權者ヲ集合セシメ、原首相ノ訓示演說
ヲ傳達スルト同時ニ、政府黨候補ヲ選出セン事ヲ勸誘シ
警察官ハ各有權者ニ就キ「何人ニ投票スルカ」ヲ問ヒ、間
接直接ニ政友會ノ運動ヲ助ケ、憲政派ノ運動員ハ謂レ
ナク召喚拘留シテ、彼等ノ機敏ナル行動ヲ妨害シ、且ツ
政府ニ反對スルノ危險ヲ感セシメ、政府黨ノ候補者及
ヒ運動員ニ對シテハ、明白ナル選擧法違犯ト雖モ之ヲ放
任シタリ、今マ其ノ二三ノ實例ヲ左ニ揭ク可シ
(イ)安佐郡長川崎壽太郞ハ、各町村ニ於ケル解散理由
傳達會ニ於テ、憲政會ヲ攻擊シ普通選舉論ハ共產主
義ナリト脫線的暴論ヲ吐露シタリ
(ロ)高田郡長ノ訓示傳達會ニハ、政友派候補同行シ、
郡長ノ口ヨリ憲政派候補金尾稜巖ヲ攻擊シ、特二三
田村志屋村等ニ於テハ金尾候補ノ政見發表アリタル
後、郡長ハ再ヒ集會ニ臨ミテ金尾攻撃ヲ爲シ、却テ有
權者ノ惡威ヲ買ヒタリ、第十三區沼隈郡内ニ於テモ
岩田派ノ運動員二名ヲ駐在所ニ召喚シ唯タ徒ラニ
時間ヲ空費セシメテ放還シタル實例アリ
(ハ)祇園警察署ハ五月七日何ノ理由モナク突然憲政
派ノ參謀玉田達吾、及ヒ竹本竹藏、松田德藏ノ三名
ヲ召喚シ、夜ニ人ルマテ拘束シ、同派ノ運動ヲ妨害シ
タリ
(ニ)政友派縣會議員山崎周次郎ハ、公開演說ニ於テ山
縣郡役所移轉問題、廣濱鐵道問題、竝ニ縣道編入問
題等、地方人民ノ利益ヲ好餌トシテ投票ヲ勸誘シ、且
ツ是等ノ問題ハ同派ト當局者トノ間ニ連絡アルモノヽ
如ク吹聽シタルモ官憲ハ一切不問ニ附シタリ、又タ同
派ノ配布シタル印刷物ニハ、憲政會ハ耶蘇〓ノ集團
ナリト讒誣シテ選擧妨害ヲ爲シタルモ是亦夕官憲ハ
放任シタリ
(ホ)郵便電信ノ遲延ハ言語ニ絕シ、僅カニ三里ノ距離
ニ於テ三日ヲ費シタルモノアリ、又タ往々郵便物ノ行
衞不明トナリタルモノモ寡カラス、
(C)福山市ノ警察ハ選擧事務所運動員ノ數ニ付キ
警告シタルカ、政友派ハ一千百有餘ノ有權者ニ對シ、
三百名以上ノ運動員ヲ使用スルモ、敢テ咎ムル所ナク
憲政派事務所ニ對シテハ深夜蕎麥ヲ食スルサヘ嚴重
ニ戒告シナカラ政友派ノ事務所ニ對シテハ全ク自由
放任ノ態度ヲ採リ、特ニ市民ノ熱望スル芦田川國庫
支辨問題ヲ選擧ニ利用シ、此請願ヲ貫徹セント欲セ
ハ、政府黨タル河相三郎ヲ選出セヨト勸誘シ、公然選
擧法ヲ犯スモ官憲ハ之ヲ不問ニ附シタリ
大分縣ニ於ケル干渉
第官權濫用ノ訓令
大分縣知事新妻駒五郞ハ大正九年四月七日警察署
長會議ニ臨席シ「今回ノ衆議院議員選舉ハ極メテ重大
ノ意義ヲ有スルヲ以テ政府黨ノ多數ヲ制スル如ニ努力
スヘキ旨」ヲ調示シ公然干涉ノ命ヲ下シタリ新妻知事ノ
態度斯ノ如クナルヲ以テ同縣各課長ハ部下ノ屬僚ニ對
シ政府黨候補者ニ投票セムコトヲ勸誘シ各郡長ハ配下
ノ小學校〓員ニ政府黨援助ヲ委嘱シタリ上ノ好ヌ所下
之ニ傚フトハ是等ノ謂乎而シテ大分地方裁判所檢事
正男庭善之助ハ警察署長會議ノ第二日目ニ臨席シ某
署長ヨリ選擧法第八十九條中「選擧人ニ對シ其投票セ
ムトシ又ハ投票シタル被選擧人ノ氏名ノ表示ヲ强要シ
タル時」云々ノ强要ノ意味ノ質問ニ對シ「警察官カ職務
上ノ必要ヨリ單ニ有權者ノ意志ヲ問フハ差支ナシ但タ
其ノ意志表示ヲ强要スル場合ニ於テ禁令ニ牴觸ス」云
云解釋ヲ與ヘタリ是ニ於テ警察官ハ何ノ憚カル所ナノク
各町村ノ有權者ニ就キテ「汝ハ何人ニ投票スル乎」ト質
問シ甚タシキハ政友會ノ運動員ト同伴シテ有權者ヲ訪
問シ彼等ヲシテ一種ノ恐怖心ヲ懷カシムルト同時ニ一
面ニハ斯クシテ選擧ノ形勢ヲ明カニ探知シ、政府黨ニ大
ナル便宜ヲ與ヘタリ今マ其ノ顯著ナル實例二三ヲ左ニ
揭ク
第一例東國東郡上國束村駐在巡查後藤和藏ハ五
月十日午後十時頃同村ノ馬車曳栗林豊ナル者ヲ使
者トシテ憲政會派ノ同情者有松松吉ニ左ノ喚出狀
ヲ送レリ
相尋ネノ儀有之候條本日卽日本村駐在所ニ出頭
セラルヘシ
大正九年五月七日上國東村駐在
有松松吉殿
松吉命ニ隨ヒ駐在所ニ出頭スレハ後藤巡查ハ彼ニ對
シ「汝ハ從來政友派ノ味方ナリシカ今回憲政派ノ安
藤亮ニ加祖セルハ五圓モ貰ヒタルナラン云々」ト威喝
シ其意志ヲ飜カヘサント試ミ翌八日ハ後藤江崎ノ二
巡査同伴シテ有松松吉宅ニ到リ飽マテ威壓セントス
ル折柄憲政派ノ有力者ニ發見セラレテ其儘引取リタ
リ
第二例大分郡明治村ニ於テハ政友會ノ運動員カ巡
査ト同伴シテ有權者ヲ勸誘シ將ニ買收セントスル所
ヲ憲政派ニ抑ヘラレタリ然モ警察ハ之ヲ不問ニ附セリ
第三例大分郡桃園村ニ於テハ政友會員後藤某ナル
モノ巡査ト共ニ有權者ヲ訪問シ切リニ威力ヲ以テ勸
誘スル所ニ同家ノ靑年出テヽ親ヲ扶ケ「選擧ハ自由ナ
リ他ノ壓迫ヲ許サス」ト叫ヒ巡查ノ名刺ヲ執ラントセ
シカ彼等ハ靑年ノ勢ヒニ避易シテ立去レリ
第四例大分市ニ於テハ刑事巡査等政友派ノ自働車
ニ乘リテ奔走シタリ
第五例東國東郡來浦村ノ駐在巡查佐藤鐵雄ハ同
村憲政派ノ同情者奥田壯九郞宅ニ於テ「汝ハ元ト政
友派ニ拘ハラス今囘憲政派ニ與ヨスルハ金ヲ貰ヒタル
爲ナラン後日ノ迷惑ヲ恐レヌカ云々」ト叱責シ威力ヲ
以テ意思ヲ抂ケシメント試ミタリ
第六例大分郡戶次村ニ於テ政友派運動員足立百
太郞ガ同村上戶次字上尾部落ノ有權者ヲ買收シタ
ル形跡アリ新聞記者東司馬徹翁コレヲ聞知シ鶴崎
分署ニ訴へ出タルモ同分署ハ默殺シタリ
第七例大分郡吉野村ニ於テハ保護鳥「目白」ヲ飼育
セル者ヲ取調ヘ政友派ニハ之ヲ放タシメ憲政派ハ之
ヲ告發シタリ
第八例五月九日大分郡阿南村字中尾ノ飮食店森
山喜重方ニ於テ憲政派首藤觀八ナルモノ飮食シ居ル
所ニ駐在巡査染矢某入リ來リテ叱責スル所アリ觀八
ハ「餘リ干涉スル勿」ト云フヤ染矢巡査ハ突然觀八ヲ
路傍ニ引出シ毆打負傷セシメタリ店主重喜出テヽ兩
人ヲ引分ケントスルヤ政友派ノ運動員宮崎普吾大野
明ノ兩人巡査ヲ助ケテ重喜ヲ突飛シタリ依テ觀八ハ
巡査部長廣田太市ニ訴へ出テ廣田モ其事實ヲ認メ
タルニ拘ハラス何等處分スル所ナシ
第九例五月五日大分郡判田村巡査駐在所ニ出張
中ノ警部補土谷藤造ハ同村憲政派運動員鹿兒島
彥太郎ノ意志ニ反シテ同人ノ運動員タルヲ取消サシ
メタリ
第十例吉野郡大野村駐在巡査片桐一ハ五月六日
午前二時コロ政友會運動員由布叶ト同伴シ字吉野
原ヲ密行中憲政派運動員ヲ誰可シテ行先ヲ尋ネ逆
サマニ巡査ノ行動ヲ問ハレテ踪跡ヲ闇マシタリ
第二告發ノ代リニ投票セヨ
大分郡高田村ニ於テハ政友派仲摩瀧三郞ト巡査某ト
カ協力シテ憲政派仲摩宇五郎ホカ二名ヲ威嚇シ同村
常泉寺住職ヨリ金十一圓ヲ授受シタル事ヲ自白セシメ
住僧ニ返金シテ政友派候補金光庸夫ニ投票セムコトヲ
强要シ遂ニ其目的ヲ遂ケタリ同郡三佐村ニ於テハ政友
派運動員江口大四郞ナルモノ憲政派ノ有權者一名カ
同派ノ加藤半三ヨリ運動費五圓ヲ受取タル事ヲ探知シ
告發セント爭ヒ居ル所ニ鶴崎警察分署ノ岡田巡查カ入
リ來リ「運動員ハ返金セヨ而シテ政友派ノ爲ニ運動セ
ヨ」ト慰撫シテ其目的ヲ達シタリ此類ノ行動ハ全縣下到
ル所ニ遍ネク行渡リ一般的干涉手段トシテ實行セラレ
タリ
第三通信ノ祕密侵害
通信機關ヲ利用シテ巧妙ナル選擧干涉ヲ爲スハ政友派
ノ常套手段ナルガ、大分郵便局ニ於テハ寄怪ナル電話
漏洩疑獄事件ヲ惹起シタリ、同縣ノ競爭日ヲ迫ウテ激
甚トナルヤ、熊本遞信管理局事務官補平井出貞三ハ同
局書記西垣太郞、池田房市及ヒ電話係田添野田ノ四
人ヲ隨へ、大分市ニ出張シ、平井出事務官補ハ政友派
ノ旅館糀屋ニ滯在シ、他ノ随員ハ大分郵便局內ニ宿泊
セシメ、而シテ同局電話交換所ノ加入電話ノ內、三十一
番(憲政會支部)二七四番及ヒ二二二番(箕浦勝人選
擧事務所)五三四番(篠崎豐彥選擧事務所)竝二二三
○審(大分新間)ノ電詰線ヲ、隣接ノ倉庫內ニ引キ込ミ、
田添野田兩人ハ晝夜憲政會側ニテ交換スル電話ヲ盜
ミ開キ、其要領ヲ筆記シテ西垣池田兩書記ニ渡シ、兩書
記ハ暗號電報ヲ以テ之ヲ熊本管理局ニ送達スルト同時
ニ政友派旅館ニ滯在中ノ平井出事務官補ニ報告シ、熊本
本局及ヒ平井出ヨリ直チニ政友派幹部ニ漏洩サレタリ、
此ノ奇々怪々ナル祕密力端ナク憲政派ノ耳ニ入リタレハ
同黨支部幹事長ナル長野綱良ハ五月十一日午後五時
檢事正男庭善之助ヲ官邸ニ訪問シ口頭ヲ以テ右ノ事
實ヲ訴へ之カ取調ヲ求メタル所正式ノ告發ナキニ於テハ
其ノ手續キ困難ナリトノ答ヲ得テ直ニ引返シ事實ノ發
見者ナル大分新聞記者吉野安藏ヲシテ告發書ヲ作製
セシメ兩人同伴再ヒ檢事正ヲ訪問シ檢事正ハ取敢ヘス
外部ノ狀況ラ實檢セシム可キヲ約シ翌十二日午後愈、
眞實ニシテ一點疑ナキ事ヲ慥メタリンカハ進ンテ內部ノ
實檢ニ着手セントスル場合ニ至リ檢事谷田勝之助ハ
「該事件ハ申告罪ナルヲ以テ利害關係者ノ告訴ヲ必要
トス」ト稱シテ檢證ヲ躊〓スル內ニ同日午後九時過キ奇
怪ナル架設電線ハ収除カレ熊本管理局ヨリ出張シ居夕
ル局員モ亦同日奇怪ノ任務ヲ果シテ歸任ノ遂ニ就キ長
蛇ヲ逸スルノ感アラシメタリ然レトモ斯ノ如キ公器濫用
ノ弊害ハ根本的ニ排除セサル可カラサルヲ以テ憲政會
大分支部ハ五月二十五日左ノ告訴狀ヲ檢事局ニ提出
シタリ
告訴狀寫
大分市大字大分字荷楊町
憲政會大分支部常任幹事
告訴人長野綱食
被告不明
電信法違反ノ告訴
右告訴ノ要領左ニ開陳仕候
告訴人ハ憲政會大分支部常任幹事トシテ本日十日施
行ノ衆議院議員總選擧運動ニ參與シタルモノニシテ
特ニ大分縣第一區大分市選出議員候補者箕浦勝
人選擧事務所ナル電話二百七十四番竝ニ同縣第二區
大分郡選出議員候補者篠崎豐彥選擧事務所ナル電話
五百三十四番ト憲政會大分支部ナル電話三十一番ト
ハ尤モ頻繁ニ通話シタルモノナル所選擧運動ノ常トシテ是
等ノ通話ハ機密ヲ要シ他聞ヲハヽカルモノニシテ若シ該
機密ノ通話ニシテ反對運動者ノ知ル處トナランカ爲メニ
蒙ル處ノ運動上ノ損害實ニ漠大ナルモノアリ然ル處大
分郵便局ハ電信電話等公平且ツ敏活ニ運用處理サル
ルコトヲ目的トナシアルモノナラント思惟シ居リシニ意外
ニモ何人ナルカ姓名ハ判明セサルモ告訴人竝ニ同僚ノ
運動員等カ憲政會大分支部ト箕浦候補事務所竝ニ條
崎候補事務所トノ間ニ於ケル相互通話ノ機密ヲ侵シタ
ル不法行爲アルモノト思料仕候其故ハ自分ガ本月十一
日午後三時頃大分郵便局北側一般加入電話線引出
口ト約一尺ヲ隔テタル同場所ヨリ約六七個分ト思シキ
電話線ヲ東側ニ向ケ新ニ架設シアルヲ發見セルガ右ハ
全ク前揭ノ憲政會大分支部電話三十一番箕浦候補
選擧事務所電話二百七十四番同二百二十二番篠崎
候補選擧事務所電話五百三十四番竝ニ憲政會派機
關新聞タル大分新聞社電話二百三十番トノ間ニ於ケ
ル相互選擧運動上ノ通話ノ機密探知ヲ目的ニ架設シ
タルモノト認メラレ候而シテ犯人ニ於テハ右祕密侵害ノ
設備ヲナシ以テ機密ヲ探知シタルモノニシテ右ハ電信法
第三十一條ノ規定ニ該當スル犯罪行爲ナリト思料仕
候
追テ右新電話線ハ五月十二日朝ニ至リ交換機ヨリ取
外レタルモノト思ハレ約一一尺計リ弛線致シ居候更ニ同
日正午前ニ至リ全部ノ電話線ヲ取除カレタルモ該電話
取付ノ場所ト思ハルヽ同局東側新倉庫二階ニ至ル間ニ
釘孔其他ノ形跡ヲ殘シ居ルモノト思料致シ候
右及告訴候也
大正九年五月二十二日
右
長野綱良印
大分地方裁判所
檢事局御中
第四郡長ノ當選妨害宣傳
大分縣第六區憲政會候補者安藤亮ハ〓黨ノ多年渴
望セル國東鐵道會社ヲ整理シ之カ開通完成ヲ圖ルニ熱
心努力セル一人ナルカ偶マ同會社取締役高木次郞ノ
名ヲ以テ本年四月十一日左ノ如キ通知狀ヲ一般株主
ニ發セラレタリ
陳者今回東京市麹町區內幸町一丁目五番地ニ國
東鐵道整理事務所ヲ設置仕候ニ就キ豫メ得貴意度
御報告申上候由來國束鐵道ノ現狀ニ就テハ株主諸
氏ニ對シ少カラサル不安ノ念ヲ與ヘ居候處幸ヒニ完
全ナル整理方針相立チ昨今東京方面ニ於ケル有力
ナル實業家ノ賛同ヲ得殊ニ御縣出身ノ新進實業家
ナル安藤亮君ノ熱心ナル援助ヲ受ケ益〓小生ト相提
携シ關西方面ハ不肖專ラ之ニ當リ東京方面ハ右安
藤君ニ一任シ豫定ノ整理方針ニ基キ是非トモ明年
大分市ニ開催セラルヽ共進會迄ニハ一部ノ開通ヲ爲
サシメ度目下著々其方針ニテ進行致居候間此儀御
含ミ置被下度尙早晩一般株主ニ對シ具體的ノ御報
ヲ爲シ御協議可仕ハ勿論ニ候得共先ツハ不取敢如
斯御座候
其ノ後安藤亮ノ立候補宣言セラルヽヤ區內有志翕然ト
シテ集リ政府黨ノ元田肇ヲ凌ク勢ヒアリ是ニ於テ官憲
等大ニ驚キ束國束郡長宇都宮喜六ハ選擧期日ニ先タ
ツ四日卽チ五月六日附ヲ以テ左ノ書面ヲ作製シ同郡
內株主ニ配布シタリ
拜啓益々御〓適奉賀候扨先月十一日附國東鐵道
會社取締役高木次郞ノ名義ヲ以テ株主ニ發シ候書
面ノ儀ニ關シテハ會社側ヨリ株主へ夫々書面差出候
趣ニ候處過般來郡株主ノ一人タル本職ヨリ高木氏
ヘ照復ヲ重ネ居候結果尙聞調候處トニヨレハ曩ノ高
木名義ノ書面ハ高木本人ヨリ發セシモノニ無之認メ
ラレ候條誤解之無樣致度此段及御通知候早々
五月六日宇都宮郡長
宇都宮郡長ノ書面ト同封シタル國束鐵道株式會社ノ
書面ハ左ノ如シ
拜啓愈々御〓昌奉賀候扨乍唐突客月十一日當
會社高木次郎名義ヲ以テ各株主ニ對シ書面差出タ
ル趣ニ候處本件ニ關シテハ地方電役ニハ何等ノ相談
ナク當郡ノ大株主タル郡長ニモ更ニ通知無之ニ付直
ニ郡長ヨリ書面ノ內容ニ關シ高木重役へ照會相發
候處左記ノ通リ電報之有候趣ニ候間御參考迄御報
申上候條御了知相成度此段得貴意度候早々
大正九年五月五日國束鐵道株式會社
附記電報文「安東ヨリ出シタ文書ニハ、大變行違ヒ
アリ、委細使者遣ツタ、立候補イマ元田氏ニ聞キ驚
ヒタ、少シモ關係ナイ、」
鐵道會社ノ内部ニ如何ナル事アルヤハ之ヲ別問題トナ
シ、郡有財產ヲ代表スル一株主タル郡長ガ、恰カモ鐵道
會社重役ノ總代タル如キ態度ヲ以テ該問題ニ臨ミ、高
木ト安藤トノ關係ヲ引離ス事ニ極力熱中シタルハ、畢竟
安藤ノ聲望ソ傷ケンカ爲ナリシヲ想像スルニ餘リアリ
第五檢事局ヲ利用シタル僞電
大分縣第六區ノ憲政派候補者安藤亮ノ勢力日ヲ追フ
テ旺盛トナルヤ敵派ノ口ヨリ「安藤ハ五月十日拘引セラ
ルヘシ」トノ謠言ヲ流布スルモノアリ憲政會支部ハ屢〓同
志ノ警告ニ接シタルモ固ヨリ一笑ニ附シ居タルガ選擧ノ
前夜卽チ五月九日午後七時コロ西國東郡高田町高田
警察署ヨリ同町ノ安藤選擧事務所ナル〓颯園ニ對シ
電話ヲ以チ左ノ如ク通達シタリ
明十日大分地方裁判所檢事正ヨリ安藤候補者ニ出
頭セヨトノ命令アリタリ云々
高田警察署ハ更ニ同夜十時コロ刑事巡査ヲ安藤事務
所ニ派出シテ翌十日檢事局ニ出頭スルヤ否ヤノ請書ヲ
差出スヘシト迫リタリ是ニ於テ安藤事務所ヨリハ直チニ
憲政會大分支部ニ右ノ〓末ヲ電話シ五月十日午前九
時支部幹事長野綱良報知新聞記者御手洗辰雄兩人
檢事正ニ面會シテ其ノ實否ヲ照會シタルニ檢事正ハ安藤
候補ヲ召喚シタル事實ナシト明言セラレタリ然ルニ高田
警察署ガ檢事局ノ名ヲ以テ安藤候補召喚ノ電話ヲ爲
シタル夜卽チ九日午後十一時高田電信局ヨリ兩郡四
十二箇村ノ元田肇選擧事務所ニ宛テ左ノ如キ電報ヲ
發シタルモノアリ
安藤亮昨夜大分地方裁判所檢事局ニ召喚サレタリ
ト確聞スサレト進撃セヨ
此ノ奇怪ナル僞電ハ忽チ各町村ノ投票場入口又ハ公
衆ノ見易キ場所ニ特筆大書シテ貼附セラレ電報ノ寫シ
ハ電光石火ノ如ク有權者ニ配布セラレタリ就中東國東
郡竹田津町ノ投票所附近ニハ十日ノ拂暁ヨリ縱三尺
横一尺五寸內外ノ、唐紙ニ左ノ如ク大書シテ廣告セラ
レタリ
高田通信
憲政會候補安藤亮昨日檢事局ニ召喚サレタリ
豊州新聞社支局
安藤事務所員ハ之ヲ剝キ取リテ元田選擧事務所ニ居
合セタル大坪巡査ニ訴へ之カ證明ヲ求メタルニ元田方
運動員禿末如是ナルモノ之ヲ奪取シ「電報アリタルニ相
違ナキヲ以テ豐州新聞支局主任高盛關三郎ヲシテ廣
告セシメタリ」ト言明シタルニ拘ラス巡査ハ斯ル明白ナル
當選妨害ノ違反事件ヲ不問ニ附シタリ特ニ奇怪ナル事
實ハ西國東郡各町村ノ元田派運動員ハ高田警察署カ
安藤候補ニ對シテ「檢事正召喚」ノ電話ヲ通達スルニ先
タツコト數時間前ヨリ各有權者ニ對シテ「安藤亮ハ拘
引セラレタリ彼ニ投票スルハ無益ナリ云々」ト宣傳シタリ
顧フニ宇都宮郡長ノ國東鐵道會社株主ニ對スル書面
ト云ヒ高田警察署ノ不思議ナル電話ト云ヒ高田郵便
局ノ奇怪ナル僞電報ト云ヒ四十二箇町村ニ亙ル巧妙
ナル宣傳ト云ヒ若クハ又夕五月初頭ヨリ安藤拘引ノ謠
言流布ト云ヒ何レモ連絡アルモノヽ如ク頗フル巧妙ナル
當選妨害策ナリシ事ハ想像スルニ餘リアリ依テ安藤亮
ハ斯ク事件ノ〓末ヲ明カニセンガ爲ニ五月十二日大分
地方裁所所檢事正ヲ訪問シタルカ男庭檢事正ハ安藤
カ任意出頭シタルモノトシテ同人ノ立候補ニ關スル意志
ノ決定時期ヲ尋問セラレタリ蓋シ何ノ理由タルヤ知ルニ
由ナシ
第六片手落ノ復權
大分縣大野郡ニ於テハ大正六年四月二十日施行ノ衆
議院議員總選舉ノ際選擧法違反トシテ左ノ如ク處罰
サレタルモノアリ
政友會派
禁錮四箇月(五年間選擧被選擧權停止)
後藤肅藏
同四箇月(同上)伊藤靑
同三箇月(同上)吉良精
同三箇月(同上)永井喜久馬
同三箇月(同上)麻生寛
同二箇月(同上)江藤幸太郞
同同(同上)久保壽獲
同同(同上)吉良柳吉
體刑外十三名
憲政會派
(五ヶ年間選舉し
禁錮四箇月(被選擧權停止)長野綱良
禁錮二箇月(同)よ土谷益太郞
同同同と岩井岩吉
)日小田太郞
上上
同同同同同同)佐藤背一郞
同同同同
는三代貞夫
同同と森壽一郞
同同同占工藤休太郞
然ルニ政友會所屬ノ者ハ今回ノ總選擧期日前一日卽
チ大正九年五月九日ヲ以テ全部恩赦ノ大命ニ浴シテ
選擧權ヲ囘復シ憲政會派ニ屬スルモノハ一人タモ恩命
ヲ拜スル能ハス空シク皇恩ニ隔テアルヲ嘆シタリ斯ノ如
政友會所屬納稅者 申請町稅戶數割等級
大正大正大正大正大正大正大正八年度
三大年正四年五年六年七年八年九年
所得決定額
三三三三三五七八、二二三
三三三三三五七三、四七一
四四四四六六七一、八八三
三三三三四五七一、九〇二
六七八六七七八八〇四
五五四五六八一、八四一
四四四四五七九一、八四四
五五五五七九三、五四九
三三三四八一〇一〇一、七九二
五五五五五七一0六八八
九九九一○二三一、一〇六
九九
一0二一〇三三一三八三八
九九八-0一ニ-三六十六
九九八〓0二〇三一三-乃八三九
九九九三一三-1一、〇四七
三-三一三-三ー八ー三五四六六
〓0----ー-三ー三〒1七二五
一〇二ー-二三三六
二一一ー二二一二一五七六三六
二三三三五三八三五四
知ラス畏レ多クモ
大ナリト謂フ可シ
第七大分縣ノパルチザン
大正九年度氏名(APPS)○印役場員
戶數割負擔
円円発
一三四·二〇伊藤精
一三四·二〇佐藤伊吉
一三四·二〇佐藤喜五郞
一三四·二〇芦刈友五郞
一一六·四五佐藤彌五郞
-一六·四五赤峰山五郎
一〇二·八九鎌倉伊三郞
八九·四七平岡仙
八九·四七有田鐵
八九·四七三浦一
七六·一九二村良人一士一郎平八
七一·五七。赤嶺九洲
七一·五七森迫戶
六七·一〇赤嶺久
六二·六三三浦篤五郞
六二·六三△伊藤留五郞
六二·六三赤嶺光五郞
五八·一五佐藤濱五郞
五三·六八阿部角一
四九·二〇安藤寬
キ政府當局ノ處置ハ黨派アルヲ知リテ國家國民アルヲ
皇恩ヲ私シテ黨爭ノ具ニ供シタル罪
大野郡三重町ハ殆ント無政府狀態ニシテ政府黨ハ町
役場吏員及ヒ町會ノ大多數ヲ制スルヲ奇貨トシ政友會
ノ味方ニハ悉ク戶數割ノ等級ヲ低下シテ縣稅町稅ノ負
擔ヲ輕減シ反對派ニ對シテハ亦タ「悉ク「等級ヲ引上ケテ
其負擔ヲ重加シ兩者ノ懸隔餘リニ甚タシキモノアリ其
一例ヲ擧レハ政友派ノ伊藤〓一ハ郡會議長郡農會長
ノ名譽職ヲ有シ酒造ヲ業トシテ大正八年度ノ所得決定
額八千二百二十三圓ナルニ拘ラス戶數割等級別ハ七等
ニ在リ之ニ反シテ憲政會ノ神山廣喜ハ所得稅納稅ノ資
格ナク多年十六等ニ在リシヲ故ナク一等ニ引上ヶ馬車
曳ヲ業トシテ家計困難ナル赤峯馬次郞ナルモノハ從來
十七等乃至二十二等ノ納稅者ナリシモノヲ急二七等ニ
引上ケテ村內第一ノ富豪ニ伊藤〓一ト同額ノ賦課ヲ
決定セラレタリ特ニ甚タシキハ伊藤〓一ノ姻戚丹後萬
吉ハ所得決定額一千三十三圓ノ資產家ニシテ從來戶
數割ノ等級六等ナリシモノヲ本年二十七等ニ引下ケ他
人ノ借家ニ細キ烟リヲ上ケツヽ露天商人ヲ營ム吉野丈
二三三三
三四四四
三三-三三
九三-三三
八三六八
七七モ七
六六六七
九九一九一九一九
元じ三毛七
天二三ニ
六六六六
二0三三三
三五九元一九
八八二〇二〇
一九一三三一〇
一大モ三111
八一三八11
五二六六
二七二七二七二七
太郎ハ最下級ノ三十等ヨリ二十等ニ引上ラレ其他土
方稼キ日傭稼キノ貧民カ十五等ノ稅額六十二圓餘ヲ
賦課セラレテ重稅ニ泣クモアリ小學校〓員宇薄伊三次
ハ元ト十五等ナリシカ政友派ノ意ニ逆ラフ事アリテ昨年
三等ニ引上ケラレ本年ハ政友派ノ頭目伊藤〓一ノ愛
孫某ノ爲ニ端午ノ祝賀ヲ爲シタル功空シカラス忽チ十
五等ニ輕減セラレタリ之ト同一ノ例ハ小野龜齡ト稱ス
ル老翁ハ多少ノ素養アリト雖モ資產ナク從來二十七等
ノ貧民級ナリシニ大正六年憲政派ヨリ出テヽ村會議員
ニ當選シタル爲ニ怱チ三等ノ一級民ニ列セラレ遂ニ納
稅ノ義務ヲ完フスル能ハスシテ已ヲ得ス政友會ニ降リ忽
マチ三十等ノ最下級ニ引下ケラレタリ斯ノ如キ橫暴惡
辣ナル自治政治ハ天下ニ類例ナシト信セラルヽニ拘ラス
監督官廳ハ政友會ノ爲スカ儘ニ放任シテ顧ミル所ナシ
是ニ於テ彼等ノ橫暴愈、益〓甚タシク今回ノ總選舉ニ先
タチ警察官カ有權者ヲ集メテ選擧ニ關スル訓示ヲ爲シ
タル際モ伊藤〓一ハ其席上ニ於テ戶數割等級別ヲ云々
シ我意ニ從ハサルモノハ重稅ヲ負荷セシメントノ意味ヲ
暗示シタリ今マ參考トシテ左表ヲ揭ク
一五三一〇大·〇四〇·二六(%田武
一六三一〇四〇·二六盛雄
藤田
-八三二四五一九二二·三六平山熊太郞
二〇三二五三八〇一七·八九阿南仲次郞
八三二五the一七·八九麻生善五郞
九三二五一七·八九森迫政市
or三二五六三一一七·八九麻生顯一部
一九三ニ六一五〇六五工藤勝五郞
七三二六一五*六五芦刈秋生
11四天一五〇六五亦並鶴家
九二五二七一、〇三三一三·四二丹後萬吉
二二七二七一三·四二多田安次郞
元一一·三二櫛野藤次郞
九二五一一·三二多田今朝太
二 七六三六元ー一·三二玉田
二六一昭
二六-一●三二岡本健
九元元同じの一一·三二河南安馬
二〇三元一一·三二川野浪雄
八三二五一七·八九ム麻生左馬五郞
二六등六·七一金本米造
三三〇三〇六·七一余野亀齡
二九八·九四石坂久吉
六六二六六一五·六五布施成世
憲政會所屬納稅者縣稅戶數割等級
町稅
大正大正大正大正大正大正大正大正八年度大正九年度氏名(▲印議員)
三年四年五年六年七年八年九年所得決定額戶數割負擔
円円錢
五五五五四三一二、二一〇四四七·三六〓久多羅岐直
七七七四一七三〇四四七·三六兒玉彌十郞
八六伊藤基
八七七一五三丁四四七·三六
八七太郞
六九八八六八八一一、五四五四四七·三六鎌倉繁
六八七一〇一〇六六八一一一八一四四四七·三六赤嶺房五郞
一一六一六一四四七·三六神山廣喜
六六
-0○-0一○二三三五●七九平山登美男
二一一一一一三八八八二一、八一五三三五·七九平川辰藏
六六六四二六一〇三三五·七九大津市五郞
八六多田眞一
七七八七五二一、〇三〇三三五·七九
四四四四四五ニ三、二八一三三五·七九足立惣次郎
六五九九六六ニ五五三三五〇七九曲万五郞
五五六六七五ニ一、二一五三三五〇七九麻生庄平
一三四一六一六三六二三三五●七九中村喜三郞
一一八三三六五ニ프o三三五●七九赤嶺龜壽
一一一〇-一一一九五二一、〇〇九三三五●七九植田政太郞
一六三七七三六二三三五七九佐藤壽太郎
七七七八六六三久大八二九〇·一五赤嶺利光
一○八八三二九〇·一五阿南米
七七七七七九三一四二二二九〇·一五玉田彌
五五三六、八六二二九〇·一五多田東太尙一藏
八一九六三四二〇二九〇·一五岡本林
四四四三三三三三·一四九二九〇·一五伊東
四八一九一九一二一二三九〇·一五立道山五郞
一六一五大一六-0一五三二九〇·一五近藤島五郞
一〇=三三二一표三二九〇·一五芦刈寉市
一〇一0一〇〓0八四四五六二四六·一八赤嶺市五郞
九八
六五大六九四一、一六七二四六·一八桑原常五郞
一仏一九一九-五九一五四二四六·一八後藤玉五郞
一三三一三一三三六五一、一一七二〇一●四五多田十太郞
七一六一六一六三一九五tlin二〇一·四五〓水豐五郎
二七二七二七一七二七二七六一五六·七一古畑際
二四二七二七二七二七二七六一五六·七一川野新
佐賀縣ニ於ケル干渉
佐賀縣内務部長間野一ハ、曩ニ大分縣警察部長在職利益問題ヲ利用シ、各町村ニ於テハ選擧心得訓〓、
中、政友派ト結托シテ縣政ヲ紊亂シ、其ノ統率セル警察
界ハ腐敗ノ極遂ニ「警察漬職事件」ノ大獄ヲ惹起シタル人
ナリ、今回佐賀縣ニ於ル選擧干涉モ〓ネ其方寸ニ出テ成ヲ求メ、全然公私ヲ混同シタリ
タルモノヽ如ク、内務部長邸ニハ絕エス政友派ノ參謀等第瀆職警部ノ重任
出入シ、同邸ノ電話ハ夜半ニ至ルマテ政友派候補副島
義一、田中猪作選擧事務所ツノ他トノ間ニ通話ノ聲斷
續シタリ
一〇二〇二〇二〇一九一九六一五大·七一赤嶺ひ
三三三三四一九六一五六·七一佐藤宗平
西-60二〇三六六六一五六·七一佐藤宇三郞
二七二七二七二七三〇三〇七一三四·二〇佐藤惠五郞
八元八三七七七一三四·二〇赤峯馬次郞
三一九一九一九一九一九七一三四·二〇首藤榮市
一七七七-100四七一三四·二〇後藤米夫
二三三三五大七三六八一三四·二〇河村太郎
万百
一大一大一大四-0五圓一一六·四五飛田五郞
二四一一六·四五麻生一
二六六二六二六二六二六一一六·四五川野三代吉
一大六六天六一大一六九八八八八八 八一一六·四五近藤幸次郞
三三三三三-二一一六·四五三代久五郞
一四三四四四三一一六·四五赤嶺濱五郞
CO三三三一九九九一〇二·八九後藤九八
元一九orさ·日八九·四七玉田平太郞
八八一九一九一九一九-0八九·四七長尾音吉
七八九一九四八-0八九●四七平迫品平
二〇10二〇二〇二〇三一〇八九0四七三浦鹿五郞
二七二四二六二九二三三一〇八九·四七吉川小四郞
八八八八八八一0八九●四七麻生義夫
元二三二五二五八六六-1八九〇四七赤嶺照吉
七六六六大一大一〇一五一〇八九·四七多田定市
一九九九一九一九-0八九〇四七小野確一
三三三三一五11一-八〇·五二神志那周平
八八-c一七一九一八三六二八七六·一九矢野春和
九八三七六·一九永澤亀丸
二四二六二六二六二六二〇.一三七一·五七廣瀨福次郎
÷四六七·一〇曲恕平
二七二七二六二六三一五一五六二·六三安東市三郞
二七二七一七二七二五二五二五六二·六三岡本政市
二五二五二五二五二八二八-九六二·六三首藤幸太郞
二四二四二四二四二〇三七五三·六八田中源藏
〓m〓二八二八二八二八八四九·二〇高山今朝太郞
二八元三〇등二〇四〇·二六西準
三〇三〇등三〇三〇二〇四〇·二六吉野丈太郞
本縣ニ於ル干涉方略ハ主トシテ道路問題其他ノ地方ノ事件」ニ連坐シテ体職トナリ、衆議院解散ノ後卽チ三月
解一日間野ノ推擧ニ依リテ佐賀縣保安課ニ採用セラレ、
散理由傳逹ヲ名トシテ有權者ヲ集合セシメ、先ツ郡吏四月九日何等ノ過失ナク地方人民ノ信望ヲ有スル唐
警官ノ訓示アリテ後、政友派候補若クハ運動員ヨリ賛津警察署長古川義人ヲ鹿島ニ左遷シテ其後任トナシ、
彼ヲシテ選擧干涉ノ辣腕ヲ揮ハシメタルナリ、其人物ノ
如何ハ警官瀆職事件ノ被告ノ一人タル貸座敷營業近
警察ノ干涉最モ激甚ナリシハ第五區(東西松浦)唐津庄六ノ罪狀(贈賄)第六項ニ左ノ如ク明白タリ
警察管內ナリシカ、同署長赤嶺惟ハ昨年間野內務部大分警察署長警視小野忠藏カ警部ニシテ別府警察
長ノ大分縣警察部長在職中ソノ部下ニ在リ「警官瀆職署長タリシ中、大正七年六月中旬某夜忠藏ノ求メニ
依リ、同人並ニ同人カ客トシテ遇スヘク案內シ來レル
其當時ノ竹田警察署長タル警部赤嶺惟ニ對シ、酒
食ヲ供シテ饗應シ、且藝妓三名ヲ席ニ出シテ酒興ヲ
助ケシメ、准ニハ特ニ藝妓ヲ充テ之ト同衾宿泊セシメ
因リテ忠藏ノ歡心ヲ買ヒ、同人ヲシテ金二十六圓餘
ニ相當スル利益ヲ享受スルニ至ラシメ云々
當時大分縣ノ警察部ハ百鬼夜行ノ伏魔殿タリシコト、
豫審決定書ニ依リテ暴露サレタルカ、其主人公タリシ間
野赤嶺等ノ手ニ依リテ議員選擧ヲ執行ス、不當干涉ノ
行ハルヽ固ヨリ怪シムニ足ラス
第二道路利用郡書記干渉
第二區佐賀郡ハ憲政會領袖武富時敏ニ對シ、政友派
田中猪作ノ競爭地ナリシカ、同書記御厨德次郞ハ五月
六七八ノ三日ニ亙リ同郡南川副村ニ出張シ、村役場ノ
樓上ニ宿泊シテ兩派ノ有力者ヲ說キ、名ヲ犬井道路ノ
完成一村ノ平和ニ藉リテ投票ヲ分割シ、武富四分出中
六分ノ妥協案ヲ作リ、有權者ノ自由意思ヲ抑制シテ之
ヲ斷行セシムル事ニ努力セリ蓋シ間野内務部長ノ內
命ニ由ルト稱ス、同時ニ佐賀警察署ノ警部補某ハ多數
ノ巡査ヲ引率シ來リテ四分六部ノ投票分割ヲ基トスル
選擧人名別ヲ受取リ、右ノ妥協案卽チ選擧法違犯ノ
申合セニ違背セサラン事ヲ取締リタリ、元來同村ハ憲政
會ノ鞏固ナル地盤ニシテ敵派ノ一指タモ染メ難キ所ナ
リシカ本年二月臨時縣會ノ際、政友會ノ策士等ハ同村
ノ犬井道線ヲ縣道ニ編入スル條件ヲ以テ黨勢ヲ擴張シ、
議會解散ノ後四月初旬ニ至リ愈、縣道認定ノ發表セラ
レタルニ依リ、之ヲ以テ直チニ選擧競爭ニ利用シタルナ
リ、其ノ〓末ハ佐賀市ノ各新聞紙上ニ明記セラレタルモ
未ク曾テ選擧法違犯事件ノ提起サレタルヲ聞カス、却テ
郡書記御厨德次郞ハ間モナク縣屬ニ抜擢セラシタリ
第三巡查ノ歸省運動
佐賀郡出身ノ警官郡吏技手等ニシテ、他郡ニ在勤セル
モノハ、歸省休暇ノ名ノ下ニ歸宅シ、政友派出中ノ爲ニ
親屬故舊ヲ勸誘セン事ヲ命セラレタリ、卽チ唐津署ノ小
久、森、野田等モ其命ニ接シタルカ、小久ハ勸誘スヘキ有
權者ナシト稱シテ拒絕シタリ
第四政友派ニ罰則ナシ
第五區政友派ハ徹頭徹尾地方ノ利益問題ヲ以テ有
權者ヲ勸誘シ、唐津高等女學校ノ昇格ハ川原茂輔ノ
働キナリ、故ニ謝禮トシテ投票スヘシ、唐津入野間ノ切
木道路ハ政支派ニ信賴セハ縣道ニ認定サルヘシ、故ニ川
原フ援助セヨ名護屋道路モ亦然ルヘシ、伊万里ノ築港
モ盡力スヘシ、博多ヨリ唐津ヲ經テ伊万里ニ達スル北九
州輕便鐵道ノ速成ヲ希望スルモノハ川原ニ助カスヘシ、
大川村ニ對シテハ國有林ヲ地下ケ、排地整理ヲ爲シ與
フヘシト、彼等ハ公開演說ヲ避ケテ懇談會ヲ催フシ、旺
ンニ利益問題ヲ餌ニカケタルコト公然ノ事實ナルニ拘ハ
ラス、官憲ハ一切之ヲ放任シタリ、東松浦郡入野村田野
尋常小學校ニ對シ、候補川原茂輔カ衆議院解散ノ前
日卽チ二月二十五日ヲ以テ金五十圓ヲ寄附シタル如キ
若シ在野黨ナリセハ必ラス一問題タルヘキナリ、第二區
佐賀郡ノ田中猪作派モ亦縣立農學校移轉問題若クハ
縣道認定問題タルヲ提唱シテ有權者ヲ勸誘シ、第三區
神崎郡ノ木下十四三派ハ三瀨村縣道問題ヲ以テ投票
ヲ得タリ、而モ司法警察ハ全然是等ヲ放任シタリ、佐賀
市ニ於テハ政友派候補副島義一ノ主宰スル佐賀新聞
紙上ニ於テ、反對候補福田慶四郞ニ對シ、虛構ノ記事
ヲ揭ケテ當選ヲ妨害シ、檢事局ニ告訴スルモノアリテ取
調中ナリシカ、大木遠吉司法大臣ニ親任セラルヽヤ否ヤ
不起訴ニ決定シタリ
宮崎縣ニ於ケル干涉
宮崎縣三選擧區ノ内、第一第二ノ兩區ハ政府黨獨占
シ、獨リ第三區ハ政友憲政兩派ノ激戰ヲ演シタルヲ以
テ、官憲ハ全力ヲ玆ニ集中シ、内務部長警察部長ノ出
張各二回、多數ノ應援巡査ヲ放チ、有ラユル手段ヲ以テ
憲政派ヲ壓迫セント試ミ選擧法違犯者ノ檢擧セラル
ヽモノ十八件、凡テ憲政派ニ屬シ、政友派ノ違犯行爲ハ
動カスヘカラサル確證アリト雖モ一切放任セラレタリ、今
左ニ干涉壓迫ノ最モ顯著ナルモノヲ列擧ス可シ
第故ナク幹部ヲ拘束ス
(一)警察ハ三浦派ノ參謀河野通カ四月十五日執行ノ
縣會議員選擧ノ際違犯行爲アリタリト稱シテ、將ニ拘
引セント企テタルカ、河野ハ味方ノ氣勢ニ關セン事ヲ恐
レテ身ヲ逃レ、遂ニ事ナキヲ得タリ、罰スヘキ罪アラハ速
カニ處分スヘキニ拘ハラス、其當時ハ之ヲ棄テ置キ、衆議
院議員選擧ニ際シテ處分セントスルハ、謂ユル敵本主義
タルヲ知ル可シ
(二)延岡警察署ハ西臼杵郡ニ於ケル三浦派ノ總參謀
田尻藤四郞ヲ狙ヒ居タルカ、偶マ延岡選擧本部ノ吉羽
會計主任カ檢擧セラレタレハ之ヲ動機トシテ、直チニ田
尻ヲ喚問シタリ、然レトモ何等違犯ノ事實ナク無事放還
セラレタルカ、政友派ハ之ヲ奇貨トシテ田尻拘引說ヲ流
布シ、警察ハ毫モ之ヲ制止セサリシ
(三)舊延岡藩主內藤子爵家ノ工業所役員ニシテ三浦
派ノ援助者タル大谷治忠ハ電燈點火ノ利益供與ヲ豫
約シタリト跡方モナキ嫌疑ヲ以テ召喚セラレ、徹宵訊問
ヲ續行シ、翌日正午漸ヤク放還サレタリ、而シテ政友派
カ大谷拘引說ヲ流布シ警察之ヲ知ラサル風ヲ装フコト
例ニ依テ例ノ如シ
(四)多數ノ警察官カ變裝シテ各村落ニ入込ミ、辛辣ノ
手腕ヲ揮フ由ヲ聞キ、三浦派運動員中野仙平ハ變裝
警官ニ尾行シテ其行動ヲ監視中、政友派ノ運動員九
名檢擧セラレタリトノ風說ヲ聽キ、之ヲ他人ニ語リタリ
トノ理由ヲ以テ直ニ警察處罰令ニ照サレ五日ノ拘留ニ
處セラレタリ、然ルニ政友派ハ前述ノ如ク如何ニ憲政派
拘引說ヲ流布スルモ罪ナシ、之ヲ不公平ト云ハスシテ何
トカ云ハン
第二警察ノ勸誘句調
東白杵郡岩脇村平岩ノ有權者松葉初治ハ四月二十
八日違反嫌疑者トシテ細島警察署ニ召喚セラレ、山下
警部ノ訊問ヲ受ケタルカ、其ノ問答ハ大要左ノ如シ
問オ前ハ政友會ト憲政會ノ是非優劣ヲ知ツテ居
ルカ
答知リマセン
問誰ニ投票スル積リカ
答三浦サンニ入レル積リテス
問夫ハイケナイ、オ前達ハ農民ヂヤナイカ、憲政會ノ
政府ニナレハ米カ下ル、薪炭モ賃銀モ皆下ル、政
友會ニ投票スレハ、今迄通リ物價ハ高ク景氣ハ
良クナル、夫カオ前達ノ爲テハナイカ
警察官ハ種々ノ口實ヲ設ケテ有權者ヲ召喚シ、訊問ス
ル所ハ〓ネ此類ニシテ、同署附ノ木下赤野雨巡査ナル
モ岩脇村内ノ有權者ニ對シ、米價ノ騰貴ヲ望マハ政友
派ニ投票セヨト說キ廻リタル形跡アリ
第三何故三浦ニ贊成スル乎
(一)細島警察署長山下警部ハ大羽刑事等ヲ隨へ、束
白杵郡西〓村ニ出張シ、土地ノ有志竹本甲斐ヲ喚ヒ出
シ「三浦ニ賛成スルハ何故カ、他ニ適當ノ候補アルニ非
スヤ、金ヲ貰ヒタルヘシ自白セヨ」ト脅威ツ、如何ニ無實
ヲ辯明スルトモ許サス一夜留置シテ翌日放免シタリ、之
ト同一筆法ヲ以テ三日間ニ亙リ有權者ヲ脅威シタル數
ハ同村内ノミニテ四十餘名ニ及ヒ、政府黨ニ反對スレハ
コン斯ル憂目ニ遭フトノ危虞心ヲ懷カシメタリ
(二)岩切警部ハ東臼杵郡南〓村ノ佐藤竹吉ニ對シ「何
故ニ三浦ニ投票スルカ」ト詰問シタリ
(三)東臼杵郡恆富村ノ西田直作ハ道ニ變装言官要要要要要要
セラレ「三浦ノ運動ヲ爲サハ拘引スヘシ」ト脅迫サレタリ、
同村ノ谷口源藏ハ延岡警察ノ重山刑事ヨリ「政友派甲
斐ニ投票セヨ」ト勸誘サレタリ
(四)東臼杵郡南方村ノ柳田利三郞、甲斐彌三郞、富山
嘉十郞ノ三人ハ、投票ノ前夜延岡警察ニ召喚セラレ「三
浦派ノ金ヲ貰ヒタルヘシ」ト問ハレ、極力無實ヲ辯明スレ
ハ「然ラハ圖師派(政友非公認)ヨリ貰ヒタルヘシ」ト號シ、
故ナク一夜留置シテ憲政派ノ運動ヲ妨害シタリ
(五)東臼杵郡南〓村ノ黑田政右衞門ハ五月五日村內
〓水谷部落ニ運動セシ爲ニ警察ニ召喚セラレ、宿泊料
其他ノ支掛額ヲ訊問セラレ、一夜留置キ翌日放免サレ
タリ、而シテ同人及ヒ芦至幸太郎ノ家宅ハ搜索サレシカ、
何ノ違犯モ出テス畢竟三浦派ニ對スル一種ノ脅威ニ過
キス、
第四比類ナキ警察權濫用
東臼杵郡東海村字鹿狩瀨ニハ、豫テ舊藩主內藤子爵
家ニ於テ林道開鑿ノ計畫アリ頃日著手中ナルカ、同部
落二十有餘名ノ有權者ハ何レモ警察ニ召喚セラレ、林
道開通ノ利益ヲ享クル爲ニ、三浦派ニ賛成シタル嫌疑
アリト稱シ甚タシク壓迫ヲ加ヘタリ、又西臼杵郡岩井村
字古園ニハ有權者十四名アリ、未タ電燈ノ設備ナキヲ
不便トシ内藤子爵家工業部ニ電燈引込ミノ交涉ヲ爲
サント協議シ居タルヲ、高千穗警察ハ、之ヲ以テ選擧ニ利
用スルモノト猜疑シ、有權者全部ヲ召喚シテ詰問叱責
至ラサルナク、約一晝夜留置シテ其儘放還シタルカ、斯ノ
如キ亂暴ナル警察政治ハ世界何レノ文明國ニ於テモ見
ル能ハサル可シ、然レトモ同警察ハ有權者ヲ虐待シテ
「政府ニ反對スレハ斯ノ如キ禍害アリ」トノ實證ヲ元シタ
ルカ爲ニ、同村六十名ノ有權者中三割以上ノ棄權者ヲ
出ス事ヲ得タリ
第五三浦派ニ對スル脅迫電報
三浦派ノ有力ナル參謀矢野力治ニ宛テ左ノ電報ヲ發シ
タルモノナリ
貴下ノ身ノ上危シ、逃ケヨ
坪谷郵便局長那須九市ニ宛テヽハ
免職ノ覺悟テ、三浦ヲ援ケヨ、今ニ縛サレルン
右ハ反對派ノ脅迫ナルコト論ヲ待タス、而シテ少シク搜
索セハ發信人ヲ發見スルコト左マテ困難ナル事件ニ非
サルモ、官憲ハ訴ヘヲ聞キテ更ニ搜索シタリトモ見ヘス、
政府反對黨ハ法律ノ保護サヘ受ル能ハサルノ憾ミナキヲ
得ス
島根縣ニ於ル大干涉
島根縣ニ於ケル不當干涉ハ局部的ナリシト雖モ、其ノ第
五區憲政派候補俵孫一ヲ落選セシメンカ爲ニ採リタル
官憲ノ干涉手段ハ、到ラサル所ナク、盡サヽル事ナク、警察
官全部カ政友派ノ運動員トナリ、憲政派ヲ敵ト呼ヒ、政
友派ヲ味方ト稱シテ毫モ憚カル所ナク、鹿足郡津和野
警察署員ノ如キ、五月十五日俵派運動員靑木音吉ニ
對シ「選擧後ハ御互ニ敵味方ノ感情ヲ棄テ親密ニスヘ
シ」ト語リ、同郡木部村駐在巡査高橋鶴次ノ如キ盛ンニ
敵味方ノ言葉ヲ用爲セリ、以テ彼等ノ心情ヲ察スルニ足
ル可シ、今其一般ニ實行サレタル惡辣手段ヲ〓記スレハ
左ノ如シ、
-、選擧期切迫スルニ隨ヒ、憲政派運動員ニハ、必ラ
ス尾行巡查ヲ附シ、或ハ其留守宅ニ巡査出張シテ家
族ヲ恐怖セシメ或ハ公然運動員ト同行シテ有權者勸
誘ノ妨害ヲ爲シ、其ノ選擧事務所ニハ數名ノ立番ヲ
附シテ行動ヲ監視セシメ、運動員及ヒ有權者ヲ恐怖
セシメタル事
一、廣ク各町村有權者ニ就テ「何人ニ投票スル平」ヲ
訊問シ、其ノ形勢ヲ政府黨ニ通知シ、運動上ノ便利ヲ
與ヘタル事
-、投票期日一兩日前ヨリ、巡査ハ政友會運動員ト
共ニ有權者ヲ訪問シ、「政友會ニ賛成スルハ御上ノ命
ナリ、若シ違フ事アレハ他日警察ニ於テ考アリ」ト威
嚇シタル事
一、憲政派運動員ニ對シ「汝ハ候補者ヨリ金錢ヲ受ケ、
饗應ニ與カリタル嫌疑アリ告發スヘシ」ト威嚇シ、運
動ヲ中止セシメタル事
一、選擧ノ決勝點ト稱スヘキ五月八九日頃、何等ノ
嫌疑ナク何等ノ理由ナキニ拘ラス、多數ノ憲政派運
動員ヲ警察ニ召喚シ、數時間留置シテ運動ヲ妨害シ
タル事
以上ハ競爭地一般ニ適用サレタル干渉方略ナルカ、猶ホ
特別ノ方略、特ニ惡辣ナル干涉ニ關シテハ項ヲ追フテ順
序列擧ス可シ
第政府黨援助ノ命令
島根縣知事財部時秀ハ、五月六日部下ノ官吏ニ對シテ
左ノ通牒ヲ發シタリ
本月十日行ハルヘキ衆議院議員選擧ハ、極メテ重大
ナル意義ヲ有スルニ付別紙解散理由ヲ部下ニ徹底セ
シメ、進ンテ選擧權ヲ行使セシムヘク、特ニ內務次官ヨ
リ通牒ノ次第モ有之候條、部下有權者ニ對シ、遺策
ナキ樣處置相成度此段及通牒候也
五月六日島根縣知事財部時秀
原總理カ普選論ハ社會階級ノ打破ナリ、國家ノ基礎ヲ
危フクスル危險思想ナリト斷シタル解散理由ヲ部下ニ徹
底セシメヨ、有權者ニ對シテ遺策ナキ樣處置セヨ、トノ命
令ハ穏カナル文字ヲ以テ强キ干涉ノ意味ヲ包ミタルコト
如何ニ神經遲鈍ノモノト雖モ看取セサルモノナカルヘシ
第二知事ノ巡視ト道路利用
俵孫一ト島田俊雄ノ競爭正ニ關ナルノ時、縣知事財部
時秀ハ名ヲ農林學校敷地見分ニ藉リテ、俵派ノ優勢ト
聞ヘタル那賀郡益田町ニ出張シ、四月二十八日同二十
九日二日間同町ニ滯在シ、學校敷地ニ何等關係ナキ同
郡三隅村長、西隅村長竝ニ美濃郡二川村長等ヲ招致
シタリ、蓋シ是等ノ各村ハ三隅村ヨリ二川ヲ經テ美濃
郡道川ニ至ル道路ヲ縣道ニ編入セラレン事ヲ希望スル
地方ナリ、三村長ノ陳情ヤ推シテ知ルヘク、知事カ選擧
競爭中特ニ彼等ヲ引見シタル事情モ多言スル要ナシ、兩
者ノ談ハ自然選擧ノ事ニ及ヒ、知事ノ聲トシテ「那賀郡
ハ島田ノ勢力不振ナリ、一層ノ努力ヲ要ス」トノ意味モ
聽取サレタリト稱ス
那賀郡波佐村及ヒ都川村ノ有權者等多數政友會ニ引
入レラレタルモ亦縣道編入ノ希望アルニ乘シ、縣參事會員
田中勝總等ノ幹旋ニ係リ、同郡大麻村ハ鐵道停車場
設置ヲ餌トナシテ岩田藤吾ナルモノ主トシテ勸誘ノ任ニ
當リタリ
第三山口警察部長ノ應援
警察部長山口織之進ハ投票期日前三日卽チ五月七日
ヲ以テ保安課長ヲ引率シテ那賀郡益田町ニ出張シ、保
安課長ハ同夜十時頃憲政派ノ選擧事務所ニ臨檢シテ
帳簿ヲ檢閱シタリ、山口部長ハ同夜西尾郡長ヲ旅館ニ
招キ、何事カ密カニ談スル所アリ、同郡ニ書記ノ選擧權ア
ルモノ政友派ニ投票スルヲ餘儀ナクセラレタリ、山口部
長ハ第五區內ノ警察署長ニ對シ「島田俊雄ハ政友會幹
部ノ一人ナレハ落選セシム可ラス」ト內命シタル事、益田
警察署長ガ俵派ノ梅尾某ニ語リタル所ナリ、
第四上長官ノ命令
島根縣理事官東ハ其事務室ニ部下ヲ招キ、今回ノ選擧
ハ現政府擁護ノ爲ニ政友派ニ投セヨト語リ、命令ハ忽チ
廳内全般ノ有權者ニ傳達セラレ、警察部員ノ如キハ自
己ノ投票ノミナラス、他ニ向テ運動セヨト命セラレ、中ニ
ハ不當ノ命令ニ憤慨シテ、官吏生活ノ腑甲斐ナキヲ嘆シ
タルモノアリ、然レトモ命ニ背ケハ心ス崇アリ、縣廳ノ御
用商人、警察ノ取締ヲ受クル宿屋料理屋等ノ如キ、何レ
モ其ノ餘波ヲ蒙ラサルハナシ、而シテ松江稅務署同郵便
局等ノ有權者ハ何レモ長官ニ引率セラレテ投票所ニ赴
キタルハ抑モ何事ヲ語ル乎
第五憤〓辭職シタル巡査
那賀郡雲城村駐在巡査河田繁ハ、憲政派ニ屬スル同
村長山東吉三郞ト眤懇ナル故ヲ以テ、伊南村ニ轉勤ヲ
命セラレタリ、然ルニ伊南ノ村長岡本俊人モ亦憲政派ニ
シテ而モ河田巡査ノ知人ナル旨ヲ聞キ、署長ハ更ニ辭令
ヲ變更シテ井野村駐在ニ轉勤ヲ命シ以テ選擧ニ干涉セ
シメントセリ、是ニ於テ河田巡査ハ大キニ憤〓シテ辭職
ヲ願ヒ出テタリ
第六甲ニハ許シ乙ニハ禁ス
那賀郡江津町地方ノ政友派ハ島田俊雄推薦ノ連名帳
ヲ作リ各有權者ノ記名調印ヲ求メタリシカ、同地警察
分署長ノ選擧ニ關スル訓元會ニ際シ、憲政派中ヨリ右
ハ推薦豫約ノ如ク誤解スル有權者アリ、禁止スルカ當然
ナラスヤト質問シタルニ、分署長ハ「何等差支ナシ」ト卽
答シタリ、因テ憲政派ニ於テモ同樣ノ連名推薦狀ヲ作
製シ贊成者ノ調印ヲ求メタリシニ、分署長ハ〃心チ之ヲ差
止メ、「其後熟考セシカ連名帳ハ穩當ニ非ス故ニ白今禁
止ス」ト口述セリ、島田推薦ナラハ何等差支ナク、俵推薦
ハ穩當ナラスト爲ス、是レ法ヲ弄フモノト謂フ可シ
俵派ニ對シテハ有權者三十名ニ對シ、運動員一名ヲ超
ユヘカラスト嚴命シ、偶マ那賀郡周布村ノ俵派運動員
カ制限數ヲ超ヘタリトシテ、濱田警察ノ渡邊警部ハ五月
三日特ニ出張シテ制限外ノ運動員ヲ中止セシメタリ、然
ルニ鹿足郡六日市村ノ島田派カ百八十人ノ有權者中
三十人ヲ以テ運動員トナシ、制限數ヲ超過スル餘リニ甚
タシキヲ以テ、俵派ヨリ警察ニ警告スレハ「運動員ノ制限
ハ單ニ注意事項ニ止マリ、假令注意ヲ用ヰサルモ如何ト
モ爲シ難シ」トシテ、其儘放任シタリ、事小アリト雖モ警
察カ政友派ヲ味方ト稱シ、憲政派ヲ敵ト呼フ決シテ偶
然ニ非サルヲ知ル可シ、
第七非常識ナル壓迫三則
第憲政派俵孫一ノ名刺ニ「投票用紙ニハ俵孫一ト
記載ヲ願ヒマス、外ノ文字ヲ書クト無效テス」ト附記シ
タル所ロ、江津警察分署ハ該名刺ノ配布ヲ差止メ、
「外ノ文字」トハ島田俊雄ト解セラレ、島田ニ投票スレ
ハ無效ナリトノ意味ヲ含ミ、穏當ナラスト口達セリ、干
涉モ玆ニ到レハ滑稽ノ妙ヲ極メ、聞ク者ヲシテ思ハス
噴飯セシム
第二津和野警察署ハ四月二十八日津和野町ノ俵
派選擧事務所ニ對シ、憲政會本部ヨリ公ケニシタル
「比類ナキ惡政府」「政友會ノ變節改論」ト題スル二種
ノ印刷物ハ不穩當ノ文字アルニ付キ、公衆ニ配布ス
可ラスト差止メタリ、日本全國ニ配布セラレテ、何人モ
咎ムルモノナク、而モ衆議院ノ公文ヲ拔萃シタル印刷
物ニ故障ヲ挿ムカ如キハ、常識ヲ以テ判スヘカラス、
第三津和野警察署ハ五月一日津和野町ニ於ケル若
槻禮次郞政談演說會ノ廣告ビラハ規定ノ寸法ニ適
セサルヲ以テ直チニ取替フヘシト嚴達シタリ、主催者ハ
演說ノ廣告ニ規定ナシトシテ之ヲ拒絕スレハ、警察ハ
島根縣ノ規則ニ依リ廣告ノ許可ヲ受クヘシト命シタ
リ、而シテ該規則トハ風俗公安ヲ害スル虞アル廣告ノ
取締ニ過キス、顯フニ演說會ノ廣告ニ對シテマテ干涉
シタル例ハ恐ラク全國ニ比類ナカルヘシ
第八奇怪ナル訓示四則
第美濃郡益田警察署長ハ、署長ニ對シ、有權者ト
差向ヒニテ「何人ニ投票スルカ」其意思ヲ問ヒ假令强
要ノ程度ニ至ルヒ、證人ナケレハ犯罪立證ノ手段ナシ
ト語リタル由
第二津和野警察署長ハ四月二十五日鹿足郡日原
村ノ有權者ヲ集メテ、選擧注意ヲ訓示ノ際、「運動者
ノ情實ニ迷フ可カラス」ト論シテ同村ニ於ル俵派運動
員ノ職業別ヲ並へ、此種ノ營業柄ノ緣故ニ引カルヽ
事アルヘカラスト警告シタリ
第三鹿足郡長和久利善三郞ハ五月四五日同郡日
原須川靑原諸村ノ選擧心得訓示會ニ臨ミ、普通選
舉ハ危險思想ナリ賛成ス可カラスト演述シ、且ツ配下
ノ屬官ニ對シテハ、文書ヲ以テ普通選擧論者ニ投票
ス可カラスト內命シタリ
第四第二區ナル能義郡長モ亦各町村ノ有権者ヲ集
メテ解散理由ヲ說明シ且ツ「普通選擧ハ社會階級ノ
打破ナリ、國家ノ基礎ヲ危フスル危險思想ナリ」ト演
說シ政友會候補ノ爲ニ應援シタリ
第九選擧訓示ト應援演說
那賀郡波佐、久佐、雲城、美又、今市、和田、都川、本田
ノ各村ニ於テ、選擧心得ニ關スル訓示會ノ日割定マルヤ
政友會候補島田俊雄ノ政見發表會モ亦之レト同一ノ
日割ヲ定メ、警察側ヨリ選擧心得ノ訓示終ルヤ否ヤ、其
席サヘ改メス、直ニ島田候補登壇シテ政見ヲ發表シタリ、
兩者ノ聯絡如何ニ密接ナルカヲ知ルヘシ、特ニ四月二十
八日同郡美又村字迫原ニ於ル警察訓示會ニ於テハ島
田派阪根孫六ナルモノ起チ上リ「選擧ノ後ニハ屹度御
禮スル故島田ニ投票セヨ」云々ト公言シ、臨席ノ佐々木
巡査部長ハ聞カサル風ヲ裝ヒ居タリ
第十巡查ノ投票勸誘實例
警察官カ政友派運動員ト同行シ、或ハ單獨ニテ同派ノ
爲ニ有權者ヲ勸誘シ、政友派事務所ニ於テ飮食シタル
等ノ實例ハ、競爭地到ル所ニ實證多シ、今其ノ顯著ナル
モノヲ列擧セン
第一例那賀郡長濱村駐在巡査松島某ハ每夜有權
者ヲ訪問シテ「島田俊雄ニ投票セヨ」ト勸誘シ、中ニモ
和田爲太郞ニ對シテハ「汝ハ三字名(俵孫一)ヲ書ク
カ、四字名(島田俊雄)ヲ書クカト質問シ、明答ヲ與ヘ
サルヨリ、屹度四字名ヲ書ク可シト云渡シ、小川親吉
同倉次郞ノ親子兩人ニ對シテハ、一票宛兩候補二分
與スルハ無益ナリ、二票トモ島田俊雄ニ投セヨト戒シ
メタリ
第二例五月八日那賀郡美又村字追原ニ出張中ノ
警部高濱鎌之助ハ、岩本種市ニ對シ島田俊雄ノ運
動ヲ依賴シ、有權者カ意志ヲ明カニ示サヽル間ハ其席
ヲ離レス强請スヘシト〓ヘタルカ、岩本種市ハ「左樣ノ
事ハ違犯ニ非スヤ、今市村巡査部長ノ警告中ニ在リ
タリ」ト答ヘシニ、高濱警部ハ「否ナ夫ハ巡査部長ノ誤
解ナリ、若シ咎メラレタル際ハ高濱カ申セリト答ヘヨ」
ト言放テリ
第三例濱田警察ノ山本刑事ハ五月八日頃同町藤
井安平方ノ店員戶津川ヲ通シテ政友派ニ贊成セン
事ヲ求メタリ
第四例鹿足郡畑ケ廻村駐在巡查大間輝雄ハ村内
有權者三浦寅藏、岩本勝太郞等ニ對シ、島田俊雄ニ
投票セン事ヲ依賴シ且ツ俵派ノ動靜ヲ內報セン事ヲ
求メタリ、三浦寅藏ノ兄阪口菊松ハ桑村刑事、橋本
巡査部長ヨリ何故ニ俵派ヲ援助スルカト詰問サレタ
リ
第五例津和野警察詰山口巡査部長ハ五月九日同
町字下市ノ馬車營業藤村鹿太郞方ニ至リ、親子三
票トモ島田俊雄ニ投票セヨト勸誘セリ、鹿太郞ハ商
賣柄後難ヲ恐レテ表面服從ノ意ヲ示シタリ
第六例津和野署長ハ部下ニ對シ「將來ハ駐在地ヲ變
更スヘキニ付遠慮ナク大ニ努力スヘシ」ト口達シタル
由
第七例那賀郡中西村駐在巡査ハ受持管內ノ各有
權者ニ對シ政友派ニ投票セン事ヲ勸誘シタリ
第八例那賀郡岡見村ニテハ五月八日政友派ノ齋藤
德太郞細川竹次兩人連レ立チ細川鶴次初メ多數ノ
有權者ヲ訪ヒ「我々ハ警察ヨリ賴マレタリ」ト稱シテ島
田推薦狀ニ記名捺印ヲ强ヒタリ、因テ俵派事務所員
ハ三隅町巡査部長派出所ニ至リ、右ノ事實取調方ヲ
申出テシニ當時出張中ナリシ警部渡邊辨吉ハ「取調
ルト否トハ當方ノ權限ナリ」ト刎ネ付タリ、同村渡邊
榮之助モ亦タ一册ノ帳簿ニ大山寅次渡邊直吉等ノ
記名調印ヲ求メ「此書面ハ警察ニ差出スモノニ付キ
嘘ヲ云ヘハ後害アリ」ト公言シタリ、又タ齋藤治太郞
ナルモノハ同樣ノ手段ヲ以テ同村床並部落ヲ纏メタ
リ、何レモ巡查大谷ノ命ニ出テタリト稱ス
第九例那賀郡石見村字河内ニテハ警官每戶ヲ歷訪
シ「島田ハ農家ナリ俵ハ然ラス農民ハ島田ニ投票セ
ヨ」ト說廻レリ
第十警察ノ反對派妨害
警察ハ一面政友派ノ運動ヲ幇助シ、他面ニハ憲政派ノ
運動ヲ極力妨害シタリ、其ノ例證ノ顯著ナルモノ數項ヲ
左ニ揭ク
第一例鹿足郡木部村ニ於テ四月二十四日憲政派
運動員靑木音助、領家寅市ノ兩人戶別訪問ヲナシタ
ル際同村駐在高橋巡查、太田署ノ應援堀田巡查カ
絕エス尾行シテ有權者ニ不快ノ感ヲ與フルヨリ、有權
者右田常吉方ニ至リシ時、靑木ハ巡査高橋ニ向ヒ
「貴官ハ何故斯ク我々ニ尾行シ行動ノ自由ヲ害スル
ヤ」ト詰レハ巡査ハ「上官ノ命令ナレハ致方ナシ」高橋
「然ラハ干涉セヨトノ命令カ」巡査「否ナ干渉ニ非ス極
端ニ取締ヲ爲セヨトノ命令ナリ」云々
第二例五月八日鹿足郡靑原村ニ於テ憲政派ノ增野
盛雄、岡村豐兩人、戶別訪問ヲ爲シタル際、笹谷駐在
大谷巡查、日原駐在岡省三ノ兩人午後二時頃ヨ
リ七時過ルマテ絕ヘス尾行シ、有權者ノ家ニ入リテ談
話スレハ、巡査モ亦タ其傍ラニ腰掛ケ、勸誘ノ妨害ヲ
爲スコト餘リニ甚タシキヲ以テ岡村ハ巡査ニ向ヒ穩カ
ニ「斯ク尾行セラレテハ有權者カ恐レヲ爲スニ付、小生
等ノ訪問前又ハ後ニ有權者ト接見セラレ度」ト懇談
セシニ、「上官ノ命令ユヘ如何トモ仕難シ」ト答ヘタリ
第三例濱田警察ノ原田巡査部長ハ五月九日那賀
郡杵束村ノ飮食店平田繁太ヲ何ノ理由ナク駐在所
ニ呼出シ、酒類販賣ヲ禁シタリ、同人ハ俵派ノ運動者
ナルカ故ニ警察ノ怒ニ觸レタル次第ナルカ、斯ノ如キハ
實ニ野蠻ノ暴政ト評スル外ナシ
第四例五月一日那賀郡周布村ノ區長憲政派佐々
本平太郎カ同村駐在所前ヲ通過スルヤ、巡査ニ呼ヒ
留メラレ、何心ナク駐在所ニ入レハ、出張中ノ大森警
察署長渡邊辨吉ハ諄々トシテ選擧運動ヲ中止スヘキ
旨ヲ諭シ、遂ニ一旦承諾シタル運動ヲ謝絕スルヲ餘儀
ナクサレタリ
第五例那賀郡岡見村ニ於テハ五月五日俵孫一ノ政
見發表アリ六日各有權者ノ推薦承諾ヲ確カメ翌七
己連名調印ヲ採ル運ヒトナルヤ、警察ト政友派ハ大ニ
〓〓復シ、八日俵派ノ運動幹部タル三浦織一、川上源
吉、右藤吉太外一名ヲ駐在所ニ召喚シ、數日前各自
分擔シテ飮食シタル事件ヲ取調ヘ、數時間拘束シ置
キテ其間ニ俵派推薦者ノ切崩シ運動ヲ爲シタリ
第六例大森警察署長渡邊辨吉ハ五月八日三隅派
出所ニ出張シ、三保村ノ俵派運動員井上莊二郞ヲ
召喚シ、長時間ニ亙リテ運動心得ヲ訓示シ、以テ其行
動ヲ妨害セントセリ、四月二十九日ニ屆出タル運動
員ニ對シ、投票前二日ノ最モ大切ナル時機ヲ擇ミテ
召喚訓示スルハ運動妨害ノ目的ニ外ナラス
第七例那賀郡西隅村駐在巡査秋枝某ハ同村ノ俵
派三浦新太郞太平竹次兩人ヲ說伏シテ運動ヲ中止
セシメタリ
第八例那賀郡岡見村駐在大谷巡査ハ同村寺戶磯
五郞カ陸軍ノ恩給ヲ受ケナカラ選擧運動ヲ爲スハ不
都合ナリト勸告シ、同シ恩給ヲ受クル渡邊榮之助ニ
對シテハ、盛ンニ政友派ノ爲ニ運動スルヲ援助シタリ
第九例美濃郡美濃村ノ中島幸兵衞ハ某巡査部長ノ
爲ニ、俵派ヨリ運動費ヲ貰ヒ、酒食ヲ供セラレタル嫌
疑アリト頻リニ威嚇サレタリ
第十例那賀郡大麻村駐在會田巡査ハ各有權者ノ
意志ヲ尋問シ、五月八日夜ハ俵派運動員齋藤逸司
方ニ赴キ、何人カ同家ニ宿泊シ居ルヘシトテ種々ノ威
壓ヲ加ヘ、翌九日同人カ駐在所ニ赴キタル際「汝ハ俵
孫一ノ當選疑ヒナシト稱シテ有權者ヲ說クハ選擧法
違犯ナリ」ト威喝シタリ
第十一例那賀郡大内村及ヒ附近村落ニテハ、五月
八日夜ヨリ九日ニ亙リ、憲政派ノ運動員、何ノ理由ナ
ク巡查駐査所ニ召喚セラレ、運動中止ノ間隙ニ乘シ
テ、政友派ヲシテ活動セシメタリ
第十二例那賀郡波佐村ノ摩按業谷七太ハ俵派ノ運
動ヲ止メサレハ汝ノ營業ヲ停止スヘシト警察官ニ威
嚇サレタリ
第十三例那賀郡三隅町巡査部長派出所ハ五月八
日俵派ノ運動員四名ヲ召喚シ、長時間ニ亙リテ何等
根據ナキ事ヲ尋問シ、運動ヲ妨害シタリ
第十四例那賀郡今市村ノ俵派運動員岩田要吉ハ
五月八日人夫ヲ雇フテ俵孫一ノ名刺ヲ一部ノ有權
者ニ配布セントセシニ、同村出張ノ警部高濱鎭之助
ハ、「候補者ノ名刺ヲ配布スレハ人夫ト雖モ運動員ナ
リ、運動員ハ警察ニ屆出ヲ要ス」ト稱シテ、遂ニ人夫ノ
名刺配リヲ抑制シタリ
第十五例鹿足郡小川村ナル鐵道工事土木受負者
平井儀市方ニテ四月二十九日憲政派ノ演說會ヲ開
キクルニ、津和野警察ハ鐵道建設事務所ニ對シテ、平
井カ其住宅ヲ在野黨ニ貸與シタル不都合ヲ鳴シ、建
設事務所ハ平井ニ對シテ注意スル所アリタリ
第十六例第二區八束郡伊能村駐在巡査來間鶴之
助ハ五月九日投票ノ前夜十一時頃憲政派ノ運動主
任多久和權市ヲ政友派河瀨嘉一郞方ニ呼出シ、其
處ニ待受タル松江警察ノ刑事ト共ニ一里餘ヲ距タル
美野巡査駐在所ニ同行シ、一時間餘リハ空シク控ヘ
サセ四五十分間ハ「野津ノ爲ニ勸誘スル辭句ハ如何」
「金錢物品ヲ授受シタル事ナキヤ」杯、何ノ理由モナキ
尋問ヲ爲シ、歸宅ヲ許シタリ、畢竟選擧界ニ於テ一刻
千金ト稱スル三四時間ヲ空費セシメン爲ノ僞計タリ
シナリ、而シテ政友派ハ野津派ノ幹部拘引サレタリ、
同派ニ與スルモノハ皆此ノ危險アリト宣傳スルコト各
地同一ノ筆法ナリ
第十七例松江市字石橋ノ憲政派有志等ハ、數年前
ヨリ購買組合ヲ組織シ居タルカ、五月初メニ至リ警
察ハ同組合ノ會計ニ不正ノ嫌疑アリト稱シテ、片岡
儀助、吉岡覺太郞櫻井佐七等數名ノ幹部ヲ拘引シ、
數日問選舉運動ヲ妨害シタリ
第十八例第二區能義郡廣瀨村廣瀨警察分署角田
巡査ハ、五月八日午前九時頃憲政派運動員近藤祐
三郎ノ通行中ヲ呼ヒ留メ、往來ニテ身體檢査ヲ爲シ
タルカ、所持ノ金員少額ナリシ故ニ其儘放還シタリ
第十一巡査ノ暴行三件
第那賀郡石見村字淺井梨田惣太ハ五月二日午
後一時頃耕作地ニ出テヽ働キ居ル所ニ、濱田警察署
ノ巡査藤山保一來リテ同署ニ伴ヒ刑事室ニ於テ「汝
ハ俵派ノ爲ニ扇某ニ金二圓ヲ與ヘシナラン扇ハ既ニ
自白シタリ、其他上野新吉、淺附要八、佐々木益一
等ヲモ買收シタル嫌疑アリ」ト訊問シ、惣太ハ全然無
根ノ事ナリト否認スルヤ巡査藤山ハ手ヲ以テ惣太ノ面
部ヲ亂打スルコト五六囘、居合セタル姓名不詳ノ巡査
ハ扇子ヲ以テ頭部ヲ打ツコト十五六囘惣太ハ非常ノ
痛苦ヲ忍ヒツヽ訊問ニ答へ、同夜ハ其儘留置セラレ
翌日午後五時頃漸ヤク歸宅ヲ許サレタルカ、何等ノ
罪科ナキモノニ對シ、斯ノ如キ暴行虐待ヲ加フルハ、
文明國ニ有ルマシキ事ナレハ被害者ハ醫師ノ診斷書
ヲ添ヘテ告訴シタリ
第二那賀郡石見村ノ樋野新吉モ亦五月二日午前
十一時頃山林ニ出テヽ作業中濱田警察ノ巡查藤
山保一ニ連レ行カレ、刑事室ニ於テ「俵派運動員ヨリ
金ヲ貫ヒタル覺アラン白狀セヨ」ト貴ラレ、斷シテ左樣
ノ事ナシト云ヘハ散々面部ヲ毆打セラレ、夜九時ニ至
ルモ、午ハ勿論晩ノ食事サヘ與ヘス、辨當ヲ依賴スレ
ハ所持金ノ有無ヲ問ヒ、不幸持合セナカリシ爲ニ、絕
食ノ儘同夜留置セラレ、翌三日午前九時頃知人小
松某來リテ漸ヤク食物ヲ與へ同日午後四時頃歸宅
ヲ許サレタリ、依テ新吉ハ同六日口頭ヲ以テ濱田區
裁判所ニ暴行巡査藤山ヲ告訴シタリ
第三那賀郡濱田町字京町ノ土井長一ハ五月九日
夜十時頃賴母子講ノ掛金ヲ集メテ歸ル途中、地獄
谷ニ於テ和服巡査ニ呼ヒ留ラレ、何ノ用件ニテ何處
ニ行キシヤト問ハレ、有ノ儘ヲ答ヘシニ巡査ハ「嘘ヲ云
フカ」ト一喝シテ長一ヲ投倒シ、左頰部ニ負傷セシメ、
財布、傘、風呂敷等モ暗中ノ泥路ニ飛散シタリ、長一
ハ其儘逃ケ歸リ、同夜十一時頃濱田警察署長靑山
ニ事ノ次第ヲ訴ヘ置キタルカ、翌日正午頃同署ノ野
津刑事巡査來リテ慰メ、財布風呂敷等ハ飮食店大
場方ニ在リ酩酊ノ餘リ置忘レタルナラント語リ居タリ
第十二警察ハ政友派ノ味方
第益田警察署長鎌田竪市ハ四月十二日ノ夜美
濃郡豊田村ニ於テ政友派演說會ニ臨監シ、其ノ歸
途政友派候補島田俊雄ノ自用自働車ニ巡査部長
等ト同乘シテ、歸署シタリ俵派ハ之ヲ檢事局ニ告訴
シタルカ、遂ニ不起訴トナレリ
第二美濃郡益田町ノ政友派渡邊稻之助ハ豊川村
原田吉左衞門方へ金一圓ヲ持參シ、投票買收ヲ爲
サントシ、原田ノ拒絕スルニ拘ラス、强テ差置キタルヲ
以テ、五月一日益田警察署ニ事實ヲ申告シタル所口、
鎌田署長ハ「渡邊ヨリ聞ケハ君ニ運動ヲ依賴シタル
由、運動費トシテ取置クハ差支ナシ」トシテ、其儘放任
シタリ
第三美濃郡高津村ニ於テ、四月二十四日政友派政
談演說ノ際、同村大谷茂ハ「我カ高津ハ國有林ノ拂
下、停車場ノ設置ニ付、島田俊雄ノ援助ヲ受クル事
多シ、故ニ投票セヨ」ト利益ヲ以テ誘フコト如何ニ露
骨ナルモ、警察ハ之ヲ放任シタリ
第四松江市ノ憲政派事務所ハ警察ノ取締ヲ受ケル
コト嚴重ニシテ、投票前日ノ如キ、警部自カラ臨檢ス
ルコト三回、之ニ反シテ政友派ハ初ヨリ公然事務所
ヲ設置スルコト少ク、內密ニ料理店ノ裏座敷ナル休
憩所ヲ設ケ運動者有權者等ニ酒食ヲ供スルモ、警察
ハ全然不問ニ附シタリ
第十三電報延著八日間
美濃郡橫田郵便局ハ四月二十二日東京發ニ係ル憲
政會加藤總裁ノ俵候補推薦電報ヲ配達セサルコト數
日、受信人ヨリ督促セラレテ四月三十日漸ヤク配達シ
タリ
第十四賴ムハ司法權
以上述フルカ如キ無警察ノ狀況ヲ現出シタル際、良
民ノ信賴スル所ハ唯一ノ司法權アル而已、而モ檢事ノ
手足トナルヘキ警察カ純然タル政黨ノ機械トナリ果タル
際ハ、檢事モ亦タ遂ニ活動スル能ハサル爲ニヤ、憲政派
側ヨリ告發シタル幾多ノ事件ハ選擧終了マテ檢擧セラ
レタル事實ナシ、就中那賀郡濱田町ニ於テハ四月三十
日頃政友政派ノ有力ナル運動員ノ買收手帳ヲ拾得シタ
ルモノアリ、買收ノ全額六百九十餘圓ニ及ヒ、其範圍大
ナリシト雖モ夫サヘ選擧前ニ處罰スル能ハス、獨リ憲政
派ノミ警察官ノ欲スルマヽニ壓倒蹂躪セラレタルコト、
聖代ノ一大恨事ナリ
千葉縣ニ於ケル大怪事
選擧取締トハ在野黨ニ對スル壓迫干涉ノ意義ニシテ、
政府黨ニ對シテハ選擧法ノ罰則モ凡テ空文徒法タリシ
コト全國一樣ナリシカ、就中露骨ニ之ヲ實現シクルハ千
葉縣第九區(安房郡)ニ於ケル政友派竹澤太一ト憲政
派小林勝民トノ競爭是ナリ、其一端ハ五月八日告發
人駒井〓太郞ヨリ被告發人竹澤太一ニ係ル選擧法違
反事件ノ告發狀ニ依リテ明白ナリ、其要ニ曰ク
安房郡ヨリ立候補セル政友派竹澤太一ハ與黨ノ利
劍ヲ亂用シ、盛ンニ買收ニ努メツヽアリ、其實例ヲ一
二掲出シテ貴官ノ公明ナル御處置ヲ仰ク
-、竹澤太一ハ去五月三日北條町八幡方面ヲ縣會
議員辰野安五郞ト共ニ戶別訪問ヲ爲セル際、恰度
同町八幡神宮ニ區內ノ人々集マリ居タルヲ幸ヒニ
區長杉田壹次郎ニ對シ、竹澤太一自身懷中ヨリ
十圓紙幣卜自己ノ名刺數枚ヲ出シ、金十圓ハ神
社ニ寄附シタシト辰野氏ト共ニ差出セルカ、杉田ハ
絕對ニ之ヲ拒絕シタリ、然ルニ彼等二名ハ此ノ場
ヲ去ルニ當ツテ、何分〓回ハ宜シク御賴ミシマスト
云殘シ立去レリ
二、大山村々長宮崎德藏ハ、竹澤派ノ運動員ニシテ、
過日村內組長及區長ヲ自宅ニ招集シ、今回選擧
ニ際シ、竹澤氏ヨリ公共事業費トシテ金五百圓ヲ
自分ニ渡セルヲ以テ、何分今囘ハ御盡力ヲ願フ、但
シ受取リシ金圓ハ選擧後迄自分保管シ置クヘシト
依賴セル半實アリ、此事實ハ同村區長等ノ周知ス
ル所ナリ云々
右ノ事件ハ告發人ヨリ豫メ司法警察官ニ密告シ、同地
方ノ新聞紙亦之ヲ明記シタルニ拘ハラス、官憲ハ速カニ
適法ノ處置ヲ爲サス、荏再數日ヲ經過シテ證據湮滅ノ
機會ヲ與へ、五月十五日形式的ニ被告發人等ヲ喚問シ
テ空シク不起訴トナリタリ、若シ逆サマニ在野黨候補ニ
シテ前掲ノ如キ行動アランカ、忽チ大獄ヲ惹起シタルハ
云フ迄モナカル可シ
政友派カ鐵道敷設ヲ條件トシテ黨爭ノ具ニ供シタルハ、
一昨年來ノ事ナルカ、今回ノ選擧ニハ盛ンニ此利益問題
ヲ以テ有權者ヲ勸誘シタリ、而シテ在野黨ニ對シテハ毫
末モ寛假セサル官憲カ、政友派ノ是等ノ行動ニ關シテハ
一切放任シタリ
秋田縣ニ於ケル干涉
第秋田縣第二區(南秋田郡)意政派候補村山喜
一郞ニ對スル警察ノ干涉ハ頗フル猛烈ニシテ、同派ノ
主ナル運動員ニハ出入ニ刑事巡査追隨シ、夜間腕車
ヲ飛シテ通行スレハ、必ス車ヲ留メテ種々ノ曾迫的尋
問ヲ爲シ、演說會ヲ開催セントスレハ會場ノ妨害ヲ爲
シ、或ハ演說者ノ辯論ニ注意ヲ與ヘ若クハ中止ヲ命
シ、尾崎學堂ト雖モ猶且ツ土崎湊ノ演說ニ於テ一警
官ノ爲ニ注意セラレタリ
第二區內各警察ハ各町村ノ消防組頭ニ對シ、村山
候補ノ爲ニ運動スヘカラスト命令シ、一日市村ノ組頭
小林楊藏ハ、五條目警察ノ壓迫ニ堪ヘスシテ、心ナラ
ス運動ヲ中止セントシ、富津內村ノ組頭大石安五郞
ハ敢然命令ヲ拒ミタリ、命令ヲ傳ヘタル五條目警察
ノ某巡査部長ハ大石ニ對シ「强テ村山候補ノ運動ヲ
爲スニ於テハ取締上困難ニ付キ辭職セヨ」大石曰ク
「然ラハ辭職セン、其理由ヲ何トスヘキカ」部長日ク
「都合上辭職スルコトニセヨ」大石「否ナ貴官申聞ケノ
趣旨ヲ明記セン」部長「夫ハ否カン」結局押問答ニ終
リタルカ、翌日同警察笹森部長ノ送別會アリ、其席
上ニ於テ大石ハ出席ノ同僚ニ對シ、前揭ノ〓末ヲ告
ケタレハ、何レモ袂ヲ連ネテ辭職セント申合セ、旣ニ消
防用具ヲ警察ニ返還セントシタルカ、警察署長ノ慰
撫ニ依リテ無事解決シタリ
第三南秋田郡書記鈴木久米治ハ、五月十二日同郡
役所ノ選擧會ニ立會ヒ、政友派候補池田龜次ヲ當
選セシメンカ爲メ、投票點儉ノ際密カニ憲政派村山
喜一郎/完全ナル得票百二十餘票ニ黑點ヲ附シ、無
效トナシタル疑アリトシテ有權者丸山松藏ヨリ告發
セラレ、今槍ホ審理中ニ屬セリ、加フルニ投票讀上ケ
ノ際村山ノ得票五十票ハ之ヲ讀上ケス、池田ノ得票
五十票ハ重複ニ讀上ケタル形跡アリトシテ、一一樣ノ選
舉訴訟提起セラレツヽアリ、斯ノ如キハ我邦選擧アツ
テ以來ノ珍事ニシテ同裁判ノ成行ハ大ニ世人ノ注目
スル所ナリ
福島縣ニ於ケル干渉
第官吏ノ選擧運動
(イ)內務部長佐藤信安ハ五月五日耶摩郡猪苗代町ニ
出張スト稱シテ、同町長〓水悌五郞ニ人力車雇切ヲ
命シナカラ、同町ニ下車セス若松市ニ潜行シ、某料理
店ニ投宿シテ密カニ市長松本時政、河沼郡長永山
芳之助ト會見シ、密談ノ末若松市第五小學校長甲
斐保之ヲ招キ、同市內學校職員ノ有權者六十八名
ニ對シ、政友派候補日下義雄ニ投票セシメン事ヲ命
令シ、郡長永山ハ急キ歸郡シテ學事視察ノ名ヲ藉リ、
各町村ヲ巡廻セリ、蓋シ政友派ノ候補八田選舉事
務所ヨリ同日「八田危シ」ノ悲電飛來シタレハナリ
(ロ)内務郡長佐藤信安ハ五月七日西白河郡ニ出張シ
政友派候補石射文五郞ノ參謀室角次郎、鈴木茂平
ノ二名ヲ郡長室ニ招キ密談約三時間、具サニ選擧運
動ヲ協議シタリ、因ミニ同郡書記橋本甚四郞ハ憲政
派ノ根據地田村郡出身ナルノ故ヲ以テ五月一日突
然休職ヲ命セラレタリ
(ハ)佐藤內務部長ハ選擧數日前郡山町太田屋本店ニ
出張滯在シ、警察署ノ各町村別豫想投票數ヲ徴シ、
之ヲ政友派川口候補ニ授ケテ、運動上ノ便宜ヲ與ヘ
タリ
(二)元ノ福島警察署長高橋義信ハ公平誠直ニシテ市
民ノ信賴深カリシカ、政府黨ハ之ヲ好マス、四月十三
日何ノ理由ナク休職ヲ命シ、同縣高等課詰ノ本居警
部ヲ其後任トナシ、五月五六日頃ヨリ多數ノ巡查ヲ
指揮シテ、市內各有權者ノ意志ヲ問ヒ警察ノ威カヲ
以テ政友派ノ爲ニ勸誘シ、最モ巧妙ナル干涉ヲ爲シ
タルク、選擧終ルヤ否ヤ、同月二十二日ヲ以テ知事官
房祕書課象地方課ニ轉勤ヲ命セラレタリ、福島警察
署長タルコト僅カニ四十日、畢竟干涉セシメンカ爲ノ
交迭ナリシヲ推察スルニ餘アリ
(ホ)郡山町ナル大藏省專賣支局ノ有權者ハ本局ノ內
命ニ依リ政友派ニ投票シタリ
第二壓迫公益事業ニ及フ
安積郡消防各組頭ハ郡內有志ノ賛成ヲ得テ消防信用
組合ヲ組織シ、縣ノ認可ヲ申請シタル所ロ、當局ハ其發
起人カ憲政派ニ屬スル故ヲ以テ容易ニ認可ヲ與ヘス且
ツ創立委員ニ對シ斷然政黨ノ關係ヲ絕チ選擧運動ヲ
中止スヘシト諭示シタリ、之カ爲ニ組頭中ニハ已ヲ得ス
憲政派粟山博ノ運動ヲ辭退スルモノアリ、而シテ同組合
ノ理事ニ推薦セントシタル安積郡書記橋本甚四郞ニ對
シテハ、憲政系ノ疑ヒアリトシテ認可ヲ與ヘサルノミナラ
ス遂ニ休職ヲ命シ、而シテ選擧ノ當日卽チ五月十日ニ
至リ、漸ヤク同信用組合ノ認可ヲ與ヘタリ
第三警察官ノ干涉
(イ)第四區憲政派候補栗山博ノ主ナル運動員ニハ殆ン
ト全部尾行巡査ヲ附シ、運動員カ有權者ヲ訪問スレ
ハ、其後ヨリ談話ノ始終ヲ尋問シ、甚タシキハ憲政派
幹部ノ玄關ニ張番シテ出入者ヲ物色シ、行動ノ自由
ヲ妨害シタリ、粟山博ノ推薦者法學士荒川淳カ偶マ
某醫學士某銀行員ヲ自宅ニ招キテ圍碁ヲ戰ハシ
ビール數本ヲ傾ケタリシニ、張番巡査ハ鬼ノ首ヲ取タ
ル如ク署長ニ報告シ、署長ハ直チニ檢事局ニ訴ヘタル
カ、檢事ハ之ヲ一笑ニ附シタリ
(ロ)第五區田村石川兩郡ニハ、特ニ取締應援ト稱シテ
信夫伊達兩郡ヨリ多數ノ警官ヲ派遣シ、之ヲ憲政派
優勢ノ地方ニ配置シテ、運動員ノ出動ヲ防止シ、政友
派ニ對シテハ一切放任シテ顧ミサルハ他地方ト同様
ナリシ
第四公然選擧法ヲ犯ス
政府黨カ鐵道、道路、學校等ノ利益問題ヲ餌トシテ、選
擧民ヲ籠絡スルハ全國同一筆法ナルカ、就中福島市ノ
政友派ハ當面ノ問題トシテ
一、福相鐵道敷設問題ハ來議會ニ於テ福島市及ヒ信
夫伊達相馬各區ノ選出ニ係ル政友派議員ヨリ提案
スル豫定ニシテ、政友會ノ多數ニ依リ支障ナク通過實
行ノ期ニ入ルヘシト雖モ、萬一同地方ニ於ケル代議士
ノ選出ヲ誤ル時ハ如何ニ運動スルモ遂ニ達成セサル
ヘシ云々
、官吏優遇問題現政府ハ官吏ノ優遇ヲ徹底的ニ
斷行スルノ意志アリ、來議會ニハ必ス提案セラルヘク、
物價ノ低落ト相俟テ生活ノ安定ヲ期スヘシ云々
右ハ印刷シテ各有權者ニ配布シ、且ツ口頭ヲ以テ勸誘
シタルカ、若夫レ愛媛縣ニ於ル村松恆一郞ノ四國循環
鐵道問題カ、選擧法違犯トナル以上ハ、福島市ニ於ケル
福相鐵道問題モ選擧法違犯タル可シ、然ルニ同地ノ官
憲ハ全然之ヲ不問ニ附シタリ
第五郵便局謝罪ス
相馬郡憲政派候補佐藤富十郞ハ四月二十九日小高
町ニ於テ政見發表會ヲ開催スル旨端書通知狀ヲ附近
ノ各村落ニ發送シタルカ、二十八日夜ニ入ルモ、各受信
人ニ到達セサルヨリ、西村兵太郞時田岩太郎二人小高
郵便局ニ就キ調査シタルニ、該郵便物ハ正ニ局內ニ停
滯シアルヲ發見シタリ、同局長ハポストノ網ニ引懸リ居タ
ル爲エ配達遲延シタリト辯明シ、結局謝罪狀ヲ差出シテ
同夜中ニ配達シタリ、猶ホ右ノ演說會ニ出演ス可キ雙
葉郡龍田村ノ小松幹夫ニ充テタル電報ハ四月二十九
日午後一時小高局ニ受付ケナカラ、之ヲ受信人ノ居村
龍田驛ニ發送セスシテ數里ヲ隔テタル廣野局ニ送リ、同
局ヨリ郵便配達トナシタル爲ニ、翌三十日午後四時ニ
到達シ、演說會ニ支障ヲ來サシメタリ
熊本縣ニ於ケル大干涉
第選擧ニ干涉シ官紀ヲ紊亂ス
熊本縣知事川口竹治ハ大正八年七月衆議院議員補
關選擧ニ際シ、天下ニ隱レナキ大干涉ヲ試ミタルニ拘ハ
ラス、遂ニ政府黨ノ失敗ニ歸シ、且ツ其結果ハ縣會及縣
民多數ノ排斥運動ヲ惹起シタルカ、今回ノ選擧ニ方リテ
ハ先ツ道路視察ヲ名トシ、郡長ヲ先導トシテ各郡ヲ巡視
シ到ル所ノ人民ニ對シテ道路ノ開通ヲ希望セハ、縣知事
ノ歡心ヲ買ヒ、政府黨左袒スルノ外ナシトノ暗示ヲ與
ヘタリ、去レハ多數ノ縣官ハ機會アル每ニ政友會ノ爲メ
ニ奔走シ特ニ内務部長、學務課長、學務屬等ハ中等程
度學校職員ヲ威壓シテ政友會候補者ニ投票セシムルコ
トニ努メタリ
各警察署ニ於テハ苟クモ憲政會側ノ有權者ト見レハ過
去ニ於ケル微細ノ過失ト雖モ嚴重ニ調査シ政友會ノ希
望ニ副ハサルモノハ直チニ之ヲ告發スヘシト脅迫シ警察
ノ威令ノ及フヘキ營利例ヘハ質屋、古物商、料理屋、宿
屋、理髮屋、湯屋等ヲ營ム者ニ對シテハ、不意ニ出張シテ
物品及ヒ帳簿ヲ峻嚴ニ調査シ、營業者ヲ警察ニ召喚シ、
若シ憲政會ノ爲メニ運動スルトキハ後日不利益ナルヘキ
旨ヲ告ケテ運動ヲ中止セシメ、脅威ヲ怖レスシテ政友會
ニ降ラサリシカ爲メニ突然告發セラレタルモノ數十名ニ
上リ、或ハ警察ノ干涉ヲ憤〓シテ質屋營業ヲ廢業シタル
モノモ有リ、憲政會派ノ事務所ニハ全部刑事ヲ立番セシ
メ、運動員ノ主ナルモノニハ私服巡查ヲ尾行セシメ、以テ
其運動ヲ牽制シ、一面政友會側ニ對シテハ一切之カ取
締ヲナサヽルノミナラス、警察官ト政友會運動員トノ間
ニハ「松ト問ヘハ竹ト答フル」合言葉ヲ定メテ、陰ニ之ヲ
援助シ、憲政會運動員ハ頗ル危險ヲ感シ、九日夜ノ熊
本市ノ如キハ殆ト無警察ノ狀態ニ陷リ、遂ニ檢事局全
員及ヒ憲兵ノ出動ニヨリテ漸ク小康ヲ保チ得タリ
特ニ熊本市ノ選擧ニ關シテハ、小橋內務次官カ在官ノ
マヽ競爭渦中ニ投シタル爲メ、如何ナル名義ノ下ニ出張
シタルヤ不明ナルモ、東京府内務部長岩田衞、内務屬矢
野寛、文部屬宮川宗德、内務省書憶官佐上信一群馬
縣內務部長馬場一衞、農商務屬西川正雄、東京太平
署長坂口鎭雄、東京府警視緒方惟一郞、大分縣某郡
長荒木猛、水戶商業學校長澤村秀夫其他中央地方ノ
官吏熊本市ニ滯在シテ小橋一太ノ爲メニ選擧運動ニ
從事シタルモノ八十名ヲ以テ算ス
啻々不法干涉ノ罪科ノミニ非ス、實ニ官紀ヲ紊亂スルノ
甚シキモノト謂フ可シ
第二警察官ノ干涉實例
第一例熊本警察森署長ハ吉田良弼ヲ召喚シ「汝ハ
古物商ノ出願ヲ爲サスシテ道具類ノ賣買ヲナセルヲ
以テ告發スヘシ」「汝ハ憲政會ノ運動ヲ爲ス由ナルカ
選擧人ノ心得ニ前科者ハ運動者タルコトヲ得サル旨
記載アルニヨリ若シ中止セサレハ浮浪罪トシテ拘留ス
ヘシ云々」ト申渡シタリ、側ニアリタル渡邊警部補ハ
「將來種々ノ便宜モアル可キニヨリ、此際運動ヲ中止
シテハ如何」ト勸告シ吉田ハ止ヲ得ス戶別訪問ヲ中
止センコトヲ誓言シテ辭去シタリ、森署長猶ホ心ヲ安
ンセス九州日日新聞記者ヲ召喚シ「吉田ハ前科者ナ
レハ運動ヲ中止セシムヘシ」ト談シタリ
其後森署長ハ吉田ノ身邊ニ二名ノ刑事ヲ附シ出入
每ニ連行セシムルニヨリ、辯護士本田柳藏ハ檢事正ニ
狀ヲ具シテ警察ノ不法干涉ヲ訴ヘ檢事正ハ警察ニ向
ツテ尾行ヲ廢スヘキ旨注意ヲ與エタルモ尙之ニ從ハサ
ルノミナラス、署長ハ更ニ吉田ヲ召喚シテ「今尙ホ運動
スル乎」ト叱責シ、刑事宿直室ニ四時間以上留置シタ
リ、而シテ吉田ノ留守宅ニハ警官屢々入リ來リ其妻
ニ對シテ「保安課ヨリ呼ヒ出シ來レリ」等無根ノ事實
ヲ告ケテ婦人ヲ恐怖セシメタリ
第二例鹿本郡山鹿町古物商某ハ夜中料理屋ニ呼ヒ
出サレ警察署長ヨリ「政友會ニ入黨セサレハ營業上
不利益ナルヘシ」ト强要セラレタリ
第三例熊本警察森署長ハ同市水道町ノ古物商米
村茂一郞ニ對シ「若シ憲政會ノ爲メニ運動セハ今後
商賣上ノ取締ヲ嚴ニスヘシ」ト稱シ其運動ニ中止セシ
メタリ
第四例菊池郡大津町分署長甲斐直人ハ何等ノ理
由ナク憲政派ノ石原榮五郞ヲ召喚シ同人カ區長トナ
リタル理由等ヲ訊問シテ選擧運動ヲ妨害シタリ、猶ホ
同分署長竝ニ某巡査部長ハ屢々政友會事務所ニ出
入シ或ル時ハ頗ル酩酊シ居タリ
第五例天草郡魚貫村駐在巡査ハ村內ノ有權者ニ對
シ「憲政會ニ投票スレハ夏季中裸體ニナリテモ又牛ノ
挽キ樣カ惡タテモ罰スルソ」ト威迫シタリ
第六例蘆北郡二見村ノ駐在巡査ハ制服ノ儘「何人
ニ投票スルカ」ヲ戶每ニ調査シタリ
第七例天草郡高戶村駐在巡査岩本安太ハ酒類小
賣商辻本三造ニ對シ屢こ選擧スヘキ人名ノ表元ヲ强
要シ最後ニハ三造ノ妻ニ對シ「今度ノ下リ船ニテ本渡警
察ニ報告セサルヲ得サルニ付キ其時刻迄ニ人名ヲ通
知セサル時ハ爾來營業上ノ檢查ヲ嚴重ニスヘシ」ト申
渡シ三造ハ已ヲ得ス「池田泰親(政友會候補)ニ八レ
マス」ト書キ娘ヲシテ巡査駐在所ニ屆ケシメタリ
第八例球磨郡渡村ノ駐在巡査ハ憲政派選擧事務
所ノ主人山口岩作ヲ呼出シ「選擧ニ關係スレハ違反
事件ヲ惹起スルニヨリ馬鹿ナ運動ヲ止メヨ」ト說示サ
レ遂ニ同事務所ヲ閉鎖スルニ至レリ
第九例飽託郡本庄村ノ駐在巡査ハ屢〓政友會ノ事
務所ニ於テ飮食シ同村質屋荒尾新藏、米穀商福岡
政一郞ニ對シ憲政派ニ與スレハ營業上不利益ヲ蒙ル
コーアルヘシ」ト說示シテ運動ヲ中止セシメタリ
第十例玉名郡高瀨警察署ノ本田巡査部長ハ同郡
東〓村ニ於テ多數人民ニ向ヒ「普通選擧ハ危險思想
ニシテ之カ爲メニハ陛下モ叡慮ヲ惱マシ給フ」等ヲ公
言シ皇室ニ政爭ノ累ヲ及ホサントスルカ如キ口吻ヲ以
テ政友會ノ爲メニ勸誘シタリ
第十一例鹿本郡植木警察分署長ハ政友會ノ爲メニ
飽託郡川上村ノ谷富某ヲ說キ「憲政會ノ運動員大
塚某ニハ巡査一名ヲ附シ置クニ付キ、君ハ同巡查ト
共ニ大塚ヲ監督サレタシ」ト語リタリ
第十二例熊本市横町ノ政友會事務ニ於テ二名ノ巡
査カ酒食ノ饗應ヲ受ケタル事ヲ憲政會運動員ニ探知
セラレ驚キテ告發セサル如ク嘆願シタリ
第十三例飽託郡〓水村ノ駐在巡査桑原某ハ同村
大字本村ノ林萬太郞ニ對シ「汝ハ同村字免谷ノ中山
ヨリ金ヲ貰ヒタルヘシ」ト嚇シ右ノ中山ニ對シテハ「汝
ハ本村ノ林ニ金ヲ與ヘタニ相違アルマイ」ト詰リ兩人
ヲ威伏セントシタルモ固ヨリ虛構ノ事ナレハ兩人ハ何
ノ憚ル所ナク否定シタリ
更ニ同巡査ハ同村字本村本田敬次郞ニ對シ「汝ノ選擧
違反ハ鎮西館(憲政會熊本支部)ノ帳簿ヲ調フレハ直ニ
分明ス可シ速ニ白狀セヨト誣ヒタルヨリ敬次郞ハ大ニ
憤慨シテ同巡查ヲ叱責シ巡査ハ赤面シテ退出シタリ
第十四例憲政派運動員ノ主ナルモノニハ〓ネ尾行巡
査ヲ附シテ行動ノ自由ヲ妨ケタリシカ熊本市ノ菅村
三之ニ對シテハ暮參ノ場合ト雖二名ノ巡査影ノ形ニ
隨フ如クニ附隨シ甚シキハ憲政會支部邸內ニサヘ侵
入シタリ
第三警察官巧ニ檢事ヲ欺ク
五月九日ノ夜熊本市政友會小橋一太ノ運動員ハ同派
雇切リノ自働車ヲ以テ應援ノ刑事巡查ヲ迎ヘンカ爲メ
ニ洗馬派出所ニ至リ數名ノ刑事ヲ乘セテ進行中取締ノ
爲メ出動セル檢事ノ自働車ト行合ヒ檢事ハ停車ヲ命シ
テ何人カ乘リ居ルヤヲ問ヒタルニ、自働車ハ警察ノ專用
ニシテ搭乘者ハ全部警察官ナリト答ヘ、其儘通過セント
シタル所へ憲政會員橋本壽七通リカヽリ其ノ虛欺ナル
事ヲ檢事一注意シタルヲ以テ檢事ハ再ヒ停車ヲ命シ車
內ヲ取調ヘタル結果政友會運動員藏原惟昶ノ同乘シ
居ルヲ發見シ檢事ハ警察官等ノ氏名ヲ間キ取リテ引上
ケタリ
第四熊本ノ無警察三項
(イ)投票ノ前日熊本市政友會小橋一太ノ運動員カ自
働車ヨリ市中ニ宣傳ビラヲ撒布シタルヲ以テ憲政會
ノ山田珠一派モ亦自働車ヲ驅リテ同様ノ撒布ヲシタ
ルニ、各巡査派出所ハ一々憲政派ノ自働車ニ停車ヲ
命シテ定員以上乘車セサルヤ否ヤヲ取調ヘ機敏ナル
運動ヲ妨ケタリ、之レニ反シテ政友會ノ自働車ニハ定
員以上群リ乘リテ大旗ヲ立テ萬歲ヲ大呼シ甚シキハ
兒器ヲ携ヘタル醉漢搭乘シ居ルニ拘ラス警察官ハ更
ニ之ヲ制止セス、憲政會側ヨリ再三注意ヲ與フルモ、
何等答フル所ナカリシ、龍田口巡査駐在所ニテハ、阿
部彥三郞ノ注意ニヨリ森署長ノ許ニ電話シ政友會ノ
暴狀ヲ報告シタルニモ拘ハラス、何等ノ取締ヲ爲サヽ
ルヲ以テ阿部彥三郞自ラ森署長ヲ訪問シ其不都合
ヲ鳴シタル所カ署長ハ斯ル事實ヲ認メス、又何等ノ報
告ニモ接セスト放言シタリ然ルニ夜ニ入リテ政友派ノ
暴狀益〓甚シク全然無警察ノ狀況ヲ現出シタルニ依リ
憲政會ニテハ其狀況ヲ檢事局ニ訴へ檢事全員ノ出
動トナリタルカ、逸早ク警察ヨリ政友派各事務所ニ之
ヲ通知シタルモノト見エ檢事ノ法網ニ罹ルモノ少數ニ
止リシハ洵ニ長蛇ヲ逸スルノ感アリ
(ロ)熊本市內流長院ニ於テ政友派ノ演說中憲政派近
森茂カ「政友會ニモ缺點アリ」ト唱ヘタルニ巡査數名
ハ同人ヲ場外ニ呼出シ毆打負傷セシメタリ、此ノ事ハ
檢事局ノ聞ク所トナリ取調ノ結果證據明白ナリシモ
被害者ハ告訴ノ希望ナキヲ以テ加害者ニ訓戒ヲ與エ
タルノミニテ不起訴トナリタリ
(ハ)五月十日宇土郡不知火村ノ投票場ニハ前科十三
犯ノ惡漢カ、數名ノ特殊部落民ヲ率ヒテ門前ニ立チ塞
リ憲政會員ト見レハ鐵拳ヲ振ンテ毆打シ或ハ儉ヲ吐キ
カケ言語ニ斷ヘタル暴行ヲナスモ警察官ハ何等取締
ヲナサス候補者、山移定政藤井敬愼ノ兩人警察署
ニ出頭シテ交涉シタルモ人員不足ノ故ヲ以テ之ニ應
セス、遂ニ檢事局ノ聞知スル所トナリ檢事出張取調ノ
上事實明確トナレリ
第五道路問題利用ノ實例
(イ)飽託郡河内村々會議員六名ハ政友會熊本支部ニ
於テ后、派ノ候補者高木第四郞ニ面會シ河内道路改
修ニ關スル協議ヲナシ歸村後數回ノ協議ヲ重ネ五月
四五日頃同村長ハ他託郡長ト共ニ川口知事ニ面會
シ「河內道路ハ必要ナリ現在ノ二間中ヲ更ニ一間半
擴大スヘシト」ノ言質ヲ得其歸途村長ハ熊本市明十
橋通リ片澤民八方ハ於テ、高崎新藏、鑪數馬、宮本
某等ト共ニ高木第四郞ニ面會シ「子モ亦知事ト同意
アルナリ大ニ盡力スヘシ」トノ言明ヲ得タリ其結果政
友派ニ加擔スルモノ尠カラス
(ロ)天草郡本村々長倉田以文ハ五月八日各區長及ヒ
各區員一名宛ヲ召集シ特ニ郡長ノ臨席ヲ求メテ、同
村ノ道路ヲ郡道ニ編入センコトヲ協議シ終リテ郡長
歡迎ノ酒筵ヲ聞キ村長助役警官各區長竝ニ有志列
席シタルカ是レ選擧投票期日前二日ノ事ナリ、其目
的ノ存スル所多言ヲ要セス
第六郡天ノ選擧運動
玉名郡長村山則貞ハ昨年ノ衆議院議員補缺選擧ノ際
部下ノ吏員ニ對シテ政友派ニ投票セン事ヲ强要シ遂ニ
中央ノ政治問題トナリ床次内相モ已ヲ得ス相當ノ處分
ヲ爲スヘシト言明シタリシカ今猶ホ依然トシテ其職ニ在
ルヲ幸トシ今囘ノ總選擧ニ際シテハ郡書記冲末ナルモノ
ニ對シ其居村月瀨村大字靑木ノ有權者全部ヲ政友派
ノ爲メニ纏メンコトヲ命シ之カ爲メニハ勤務ヲ缺クモ敢
テ尤メスト慫慂シタリ、先ツ同村ノ助役辛島德藏ヲ說キ
辛島ノ承知ナキニ拘ハラス區民ニ對シテハ既ニ其ノ甘諾
ヲ得タリト吹聽シ實費支辨ト稱スル奇怪ナル條件ノ下
ニ區民全部ノ連名簿ヲ調製シ送ニ悉ク調印セシメタリ
其ノ後玉名郡書記堀亮策ナルモノ齊シク村上郡長ノ命
ヲ受ケ運動監督ノ爲メニ同地ニ出張シ前配ノ連名簿ヲ
一見シ曰ク「是レ何ノ名簿カ借金ノ連名カ選擧ノ推薦
カ」而シテ自ラ筆ヲ採リ「政友會入黨名簿」ト表記シタ
リ、然ルニ區民中ノ主立タル立野卯平次、辛島安太、同
德藏、同菊太、同喜代之、坂本才平、沖末、前田卯吉立
野文藏等集會協議シタルカ政友會反對ノ意見ヲ有スル
モノ少カラス爲メニ全村一致ハ破レ前記名簿ハ選擧法
違反ノ恐アリトシテ燒棄シタリ
第七通信機關ノ不都合
憲政會熊本支部竝ニ幹部員ト在東京安達謙藏ノ往復
文書ハ「全部開封取調フヘキ旨」祕密命令アリタル趣ハ
當局内部ヨリ漏レタル奇怪事ナルカ果セル哉同支部ニ
配達セラレタル郵書中ニハ一旦開封シタル後更ニ糊ツケ
シタル形跡アルモノ寡カラス
玉名郡憲政會候補松村亀源ハ四月九日數千通ノ推
薦狀ヲ高瀨局ヨリ發送シタルカ江田村局取扱分二千
通木葉局區內ノ分一千通ハ高瀨ヲ距ル僅ニ一一里內外
ノ行程ナルニ拘ラス數日ヲ經テ猶ホ配達セラレス依テ四
月十三日村井信實、藤村末彥兩人ヨリ熊本遞信局ニ
對シテ照會スル所アリ同局ハ同月二十二日ニ至リ左ノ
如ク回答シタリ
臨監第七號囘答大正九年四月二十二日
熊本遞信局
村井信實役
藤原末彥殿
郵便物配達遲延ノ事
本月十三日申出相成候高瀨局へ御差出ニ係ル江田及
木葉局區內配達郵便物遲延ノ件ハ卽日局員ヲ特派シ
嚴重調査セシメタル處兩局共一時郵便物激增シタルト
臨時者雇上ヶ困難ノ爲メ幾部ノ配達ヲ遲延シ候コト判
明セシフ以テ直ニ相當手配ノ上配達セシムルコトニ取計
置申候條不惡御諒察相煩シ度候
追テ本件事故ノ責任者ニ對シテハ相當措置スルト共ニ
今後ノ配達方ニ對シテハ嚴重警告シ置候條爲念申添
候
第八投票ノ左側ニ小橋一太
縣廳内ノ官吏ハ投票用紙ノ左側ニ「小橋一太」ニ記入
スヘキ旨內訓アリト喧傳サレタリシカ果セル哉左側記載
ノ投票寡カラサリシ事ハ開票立會人ノ認ムル所ナリ此ノ
一些事ヲ以テモ如何ニ干涉サレシカヲ證スルニ足ルヘシ
事實
-大正九年五月行ハレタル衆議院議員總選擧ニ當
リ鹿兒島市ニテハ政友會候補者床次竹二郞卜憲政
會候補者春島東四郞トノ競爭アリタリ
二床次竹二郎ノ方ハ政友會ト實業親睦會市民親睦
會ヨリ推薦ノ形式ニナリ居ルモ(其ノ實該幹部ノ専決セ
シモノ)四月二十三日春島カ政見ヲ發表シテ言論戰
ヲ以テ猛烈ナル攻撃態度ニ出テ間際ニ至リ形勢頗ル
有望ノ狀況ヲ呈シタル爲メ床次派ノ最高幹部ハ非常
ニ狼狽シ自ラ各町ニ奔走シ且ツ六百ノ運動員ヲ指揮
シテ殊ニ銀行員ヲシテ取引先ニ勸誘セシムル等惡辣
ナル運動ヲ試ミタルカ形勢尙樂觀ヲ許サヽル狀態ナリ
シナリ
三、仍テ選擧前日タル五月九日午後五六時頃ヨリ夜半
ニ涉リ床次竹二郎ヲ發信人トシ發信局ヲ「東京」トセ
ル電報「何卒御投票ヲ願ヒマス」トイフ悲鳴的文句
八)ハ三千餘ノ市內有權者ニ配達セラレタリ
四、然ルニ右ハ其ノ實鹿兒島市ニ於ケル床次派選擧事
務所ニ於テ午前十一、一一時頃ヨリ三千餘通ノ賴信紙
ヲ乞ヒ受ケ同事務所ニ於テ之ニ記入シタル上鹿兒島
郵便局ニ之カ發信ヲ托シ鹿兒島郵便局卽チ之ヲ受
理シ同局ニ於テ發信シタルコト明白ナル事實ナリ
四、右ハ春島派ニ於テ九日午前十時頃選擧ニ關スル印
刷文書ヲ有權者ニ配付スル爲メ三千餘通ヲ郵便局
ニ差出シタル後チ此ノ事床次派ノ運動員ニ洩レ(其ノ
實郵便局ヨリ通知シタリトノ說アリ)之ヨリ床次派ノ
幹部之カ對抗策トシテ俄カニ前記ノ手段ヲ採リタル
狀況ナリ
六、前記ノ次第ニテ前記三千餘通ノ電報ニ其ノ實鹿兒
島局ニテ受理シ同局ニテ發電シタルニ拘ラス發信局
ヲ「東京」ト掲ケタルハ其ノ公文書僞造ノ犯罪ヲ構成
スルコト寸毫モ疑フヘカラス
七、床次氏カ大每記者ニ語ルトコロニヨレハ便宜ノ取扱方
法トシテ至當ナリトアルモ然レトモ(一)電報ノ配達時
間ヲ指定シテ豫メ之ヲ起信シ置ク規定アリ此ノ事ハ
鹿兒島局長其以前注意シタルコトアリ床次派事務
所ニモ勿論注意シタルナラン免ニ角此カル便法アルコ
ト明カナリ(二一若シ俄カニ發電ノ必要アリトスルモ實
際鹿兒島局ニテ受理發信スル場合ニ事·實通リ發信
局ヲ同局トシ發信人ヲ床次竹二郞トスルニ於テ通信
ノ目的ヲ達スルニ於テ何等ノ支障アル筈ナク特ニ之ヲ
東京局ト詐ルヘキ便宜的理由ヲ存セス
八、右ノ次第ナルニ付該電報ニ發信局ヲ東京ト僞造セ
ルハ決シテ通信ノ便宜問題ニアラスシテ其ノ實ハ唯選
擧運動上市ノ有權者ヲ欺瞞シテ其ノ氣受ケヲヨリ多
ク良好ナラシメントスルノ奸手段ニ外ナラス
蓋シ若シ事實通リ鹿兒島局ヲ發信局トスレハ受信人
ヲシテ床次派ノ運動員カ床次ノ召ヲ以テ發信シタル
カ如ク疑ハシメ彼レ是レ痛切ノ感ヲ惹起サシノサルニ
反シ之ヲ東京局トスレハ床次氏自ラ東京ヨリ態々發
信シタルモノト認メ受信人タル選擧人ノ情ヲ動カスコ
ト多大ナルヘキハ何人モ見易キコトナルヲ以テ右賴信
者ハ深ク茲ニ慮リテ前記ノ賴信ヲ爲シ郵便局ニ於テ
モ固ヨリ右ノ事情ヲ當然ニ知悉シテ電報僞造ノ行爲
ニ出テタルハ明カニ推測セラルヽトコロナリ
九、現ニ之カ爲メ春島ニ投票スヘキ選擧人カ之ニ動キテ
其ノ意思ヲ飜シタルモノ多シ春島ニ投票スル意思ヲ
有セシ或人ノ如キハ右電報ヲ受ケタル後チ一タヒ情ニ
動キテ床次ヲ選擧スル意思トナリタルニ偶前記夜間
電報タルコトヲ洩レ聞キテ更ニ初志ニ復シタリトノ事
實アリ以テ僞造電報ノ影響ヲ察スヘク以テ僞造者ノ
考慮ヲ知ルヘシ
十、右ノ次第ニテ前記官文書僞造ノ電報カ其ノ影響ノ
大ナルハ勿論其ノ犯罪動機ノ貴重ナル選擧權ノ意思
ヲ左右セントスル謀計ニ出テ斷シテ恕スヘカラサル情
狀ヲ具スルモノナリ
十一、且ツ夫レ電報ノ記載ハ通信信用上重大ナル關係
アリ若シ前記ノ如キ僞造ヲ看過ストセハ例セハ鹿兒
島市ノ某株屋カ株價ニ關シ多數ノ關係者ニ發電スル
ニ當リ其ノ實鹿兒島局ニテ發信シナカラ發信局ヲ東
京又ハ大阪トスヘク依賴シ郵便局亦之ニ應シテ電報
ヲ僞造スルモノトセンカ其ノ影響極メテ重大ナルニ拘
ラス尙之ヲ看過スルヲ至當トスヘシ若シ之ヲ看過スル
ヲ得ストセハ本件電報僞造行爲ハヨリ以上之ヲ看過
スヘキニアラサルナリ
十二、政府黨候補者ニ便スル爲メ通信機關カ公文書僞
造ヲ敢テスルコトノ官紀上恕スヘカラサルハ勿論司法
官憲ハ之ヲ知リテ檢擧ニ出テサルコトノ我司法權ヲ
犯タルノ不法ナルコト是レ亦恕スヘカラサル聖代ノ汚
點ナリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004313242X01919200727&spkNum=171
-
本文はPDFでご覧ください。
3. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。