1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十年二月二十一日(月曜日)
午前十時六分開議
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議事日程 第十三號 大正十年二月二十一日
午前十時開議
第一 臺灣に施行すへき法令に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 會計法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 會計檢査院法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 明治三十九年法律第三十四號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 臨時國庫證劵法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 鐵道敷設法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 大正九年勅令第四百八十五號(承諾を求むる件) 會議(委員長報告)
第八 船舶滿載吃水線法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 福島縣安達郡太田村に郵便局設置の請願 會議
第十 木次三次間鐵道敷設の請願 會議
第十一 淡路縱貫鐵道敷設の請願 會議
第十二 山田郵便局に集配事務開始の請願 會議
第十三 鹿兒島縣指宿湊郵便局に集配事務開始の請願 會議
第十四 山口縣厚狹郡小野田町に區裁判所出張所設置の請願 會議
第十五 萩小串間竝萩益田間鐵道速成の請願 會議
第十六 萩小郡間鐵道敷設の請願 會議
第十七 北海道上川郡比布村に區裁判所出張所設置の請願 會議
第十八 濱松辰野間鐵道敷設の請願 會議
第十九 日原岩國間鐵道敷設の請願 會議
第二十 貴生川加茂間輕便鐵道敷設の請願 會議
第二十一 川内宇佐間鐵道敷設の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
去ル十八日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可
決ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
大正九年度歲入歲出總豫算追加案(第一號)
大正十年度歲入歲出總豫算追加案(第一號)
無盡業法中改正法律案
同日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
南部支那ニ於ケル領事官ノ裁判ニ關スル法律案特別委員會
委員長候爵佐佐木行忠君副委員長磯部四郞君
帝國鐵道會計法中改正法律案特別委員會
委員長男爵阪谷芳郞君副委員長子爵野村益三君
貴族院規則改正ノ動議特別委員會
委員長候爵德川圀順君副委員長谷森眞男君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
大正九年勅令第四百八十五號(承諾ヲ求ムル件)可決報告書
船舶滿載吃水線法案可決報告書
請願委員會特別報告第二號
同日豫算委員長ヨリ分科擔當委員及其ノ兼務ヲ左ノ如ク決定セル旨ノ報告
書ヲ提出セリ
第三分科擔當、第四分科兼務
男爵藤井包總君
一昨十九日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
煙草專賣法中改正法律案
獨逸國等トノ平和條約賠償條項ニ基キ受領シタル賠償物件ノ輸入稅免除
ニ關スル法律案
大正五年法律第四號中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、日程第一、臺灣ニ
施行スヘキ法令ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、此際諸
君ニ御諮リヲ致シマス、通牒文ノ朗讀省略ノコトヲ一々御諮リヲ致シマシタ
ガ、本會期中總テ通牒文ノ朗讀ハ省略イタシタイト存ジマス、御異議ハゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、法制局長官橫田千之助君
〔左ノ通牒文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之
ニ倣フ〕
臺灣ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正十年二月十七日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字ハ衆議院ノ修正)
臺灣ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律案
第一條法律ノ全部又ハ一部ヲ臺灣ニ施行スルヲ要スルモノハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
前項ノ場合ニ於テ官廳又ハ公署ノ職權、法律上ノ期間其ノ他ノ事項ニ關
シ臺灣特殊ノ事情ニ因リ特例ヲ設クル必要アルモノニ付テハ勅令ヲ以テ
〇〇
別段ノ○定ヲ爲スコトヲ得
第二條臺灣ニ於テ法律ヲ要スル事項ニシテ施行スヘキ法律ナキモノ又ハ
前條ノ規定ニ依リ難キモノニ關シテハ臺灣特殊ノ事情ニ因リ必要アル場
合ニ限リ臺灣總督ノ命令ヲ以テ之ヲ規定スルコトヲ得
第三條前條ノ命令ハ主務大臣ヲ經テ勅裁ヲ請フヘシ
第四條臨時緊急ヲ要スル場合ニ於テ臺灣總督ハ前條ノ規定ニ依ラス直ニ
第二條ノ命令ヲ發スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ發シタル命令ハ公布後直ニ勅裁ヲ請フヘシ勅裁ヲ得サ
ルトキハ臺灣總督ハ直ニ其ノ命令ノ將來ニ向テ效力ナキコトヲ公布スヘシ
第五條本法ニ依リ臺灣總督ノ發シタル命令ハ臺灣ニ行ハルル法律及勅令
ニ違反スルコトヲ得ス
附則
本法ハ大正十一年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
明治二十九年法律第六十三號又ハ明治三十九年法律第三十一號ニ依リ臺灣
總督ノ發シタル命令ニシテ本法施行ノ際現ニ效力ヲ有スルモノニ付テハ當
分ノ内仍從前ノ例ニ依ル
參照
臺灣ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律明治三十九年四月十一日
法律第三十一號
改正四四年第五〇號、大正五年第二八號
朕帝國議會ノ協賛ヲ經タル臺灣ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律ヲ裁可シ茲
ニ之ヲ公布セシム
(總理、內務大臣副署)
第一條臺灣ニ於テハ法律ヲ要スル事項ハ臺灣總督ノ命令ヲ以テ之ヲ規定
スルコトヲ得
第二條前條ノ命令ハ主務大臣ヲ經テ勅裁ヲ請フヘシ
第三條臨時緊急ヲ要スル場合ニ於テ臺灣總督ハ直ニ第一條ノ令令ヲ發ス
ルコトヲ得
前項ノ命令ハ發布後直ニ勅裁ヲ請フヘシ若勅裁ヲ得サルトキハ臺灣總督
ハ直ニ其ノ命令ノ將來ニ向テ效力ナキコトヲ公布スヘシ
第四條法律ノ全部又ハ一部ヲ臺灣ニ施行スルヲ要スルモノハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第五條第一條ノ命令ハ第四條ニ依リ臺灣ニ施行シタル法律及特ニ臺灣ニ
施行スル目的ヲ以テ制定シタル法律及勅令ニ違背スルコトヲ得ス
第六條臺灣總督ノ發シタル律令ハ仍其ノ效力ヲ有ス
附則
本法ハ大正十年十二月三十一日迄其ノ效力ヲ有ス
〔政府委員橫田千之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=3
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004・横田千之助
○政府委員(橫田千之助君) 本案ハ臺灣ノ文化發達ノ現狀ニ鑑ミマシテ、內
地法ヲ勅令ノ力ニ依テ臺灣ニ施行スルノヲ原則ト致シマシテ、臺灣ニ法律ヲ
要スル事項デアッテ、內地法ノ之ニ施行スベキ法律ガナイモノ、若クハ臺灣特
殊ノ事情ニ依テ別箇ノ規定ヲ設ケナケレバナラヌ所ノ立法事項ハ、從來ノ如
ク臺灣總督ヨリ發スル命令ニ俟ツコトニシタノガ本案ノ要旨デアリマス、附
則ニ於キマシテ經過的規定ト致シマシテ、從來法律第六十三號又法律第三十
一號等ニ依リマシテ臺灣總督ノ發シタル命令ハ、急激ニ今日之ヲ廢止改訂ス
ルト云フコトハムヅカシイノデアリマスカラ、當分ノ中從來ノ效力ヲ存續ス
ルト云フノガ、附則ノ要旨デゴザイマス、此三點ガ本案ノ要旨デゴザイマシ
テ、今迄アリマシタ所ノ明治三十九年法律第三十一號ト云フモノハ、本年限
リ之ヲ廢絕スル、斯ウ云フ意味デアリマス、尙ホ衆議院ニ於キマシテハ、本
案第一條ノ第二項ニ「別段ノ定」ト云フコトガ書イテアリマスノヲ、「別段ノ規
定トスルノガ相當デアルト云フコトデ、字句ノ修正ガアリマシタ、政府ハ
之ニ對シテ同意ヲ表シテ居リマス、速ニ御協賛ヲ仰ギマス
〔江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=4
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005・江木翼
○江木翼君 私ハ本法案ニ關シマシテ、一二ノ事項ニ付マシテ、政府ニ質シ
テ置キタイト思フノデアリマス、大體ニ於キマシテ、本法案ハ私ノ最モ贊成
ヲ表スル所デアリマス、極メテ簡單ナル法律デゴザイマスルガ、通覽ヲ致シ
マスレバ、從來アリマシタ所ノ法律第二十一號ノ條文ノ配列ノ順序ヲ書換ヘ
タ、サウシテ極メテ僅カナル變更ヲ施シタト云フ外、大ナル變更ハナイヤウ
ニ認ムルノデゴザイマス、從ヒマシテ私ハ之ニ對シテ大ナル質疑ヲ懷クベキ
理由モナイコトデゴザイマス、殊ニ本法律案ハ元期限ガ付テ居リマシタ、慥
カ初メハ十年デアッテ、續イテ五年ニナルト云フヤウナ譯デ、屢〓本議場ニ現
ハレマシタ法律案デアリマスガ故ニ、議論ノ盡サレルダケノコトハ屢〓繰返シ
盡サレテ居ルコトト思フノデアリマス、殊ニ私ノ極メテ衷心ヨリ贊意ヲ表ス
ル點ハ、今迄期限ノ付テ居リマシタモノガ、今囘期限ヲ撤セラレマシテ、當
分ノ中ト說明セラレマシタガ、恐ラク半永久ノモノデアラウト思ヒマス、少
ナクトモ形ノ上ニ於テハ永久法トナッタト云フコトハ、私ノ非常ニ贊成ヲ惜
マナイ所デアリマス、條文ノ箇々ニ付マシテ、多少疑義ヲ挾ム點ハナイデハ
アリマセヌガ、私ハ此場合コノ箇々ノ條項ニ付マシテ疑ヲ質スト云フ點ハ、
別ノ機會ニ讓ルト致シマシテ、大體本法案ニ關聯ヲ致シマシテ、臺灣其他我
ガ海外領土ニ關スル政府ノ方針ト云フコトニ付テ、伺ッテ見タイト思フノデア
リマス、或ハ此事柄ハ臺灣ニ關スルコトトシテ、臺灣モ朝鮮モ政府ノ方針ト
シテハ同ジコトデアラウト思ヒマスガ、臺灣ニ關スルダケノ質疑ト御覽下サ
レマシテ、臺灣總督ヨリ御返事ヲ承リマシテモ宣カラウト思フノデアリマス、
其點ハ他ノ義デハゴザイマセヌ、內閣總理大臣竝ニ臺灣總督ニ於カレマシテ
ハ、屢〓我ガ海外領土統治ノ方針ト致シマシテ、所謂內地延長主義ナルコトヲ
聲明シテ居ラルルノデゴザイマス、其意味ハ如何ナル意味デアルカト云フコ
トハ、私ハ甚ダ捕捉スルニ苦ンデ居ルノデアリマスガ、例ヘバ我ガ統治ノ方
針ガ內地ノ被治者ニ對スルノモ、將タ又海外領土ノ被治者ニ對スルノモ、
視同仁內地ト其大體ノ趣意ニ於テ變リハナイト云フ意味デ、內地延長主義ト
云フコトヲ聲明セラルルニ當リマシテ、是ハ洵ニ何等ノ疑義ヲ挾ムベキ餘地
ハナイト思ヲノデアリマス、去ナガラ政治ノ方針ガ內地ニ行ッテ居ルヤウナ方
針ヲ何處マデモ、臺灣ナリ朝鮮ナリニ持ッテ行ク方針デアル、斯ウ云フ趣意デ
アルト致シマスレバ、頗ル疑ヲ挾マザルヲ得ナイト思フノデアリマス、臺灣
總督ガ衆議院ノ委員會ニ於テ說明セラルル所ヲ見ルト、凡ソ植民地統治ノ方
針ニハ所謂同化主義ト云フコトト、自守主義トデモ申シマセウカ「オートノ
ミー」ト云フ意味ヲ譯サレタコトト思ヒマスガ、植民地ハ己レ自ラ治メルト
云フ主義ト二ツノ主義ノアルト云フコトヲ說明シテ居ラレマス、是ハ如何ニ
モ左樣ナ主義ガアルデアラウト思ヒマス、併ナガラ是ハ恐ラク所謂學者ノ唱
ヘル所ノ主義デアルノデアルマイカト思フノデアル、凡ソ政治ハ言ハバ其文
化ノ發達ノ度合ニ應ジタル、適當ナル所ノ主義ガナクテハナラヌ譯デアリマ
シテ、其主義ヲ學者ガ或ハ百年二百年ニ亙ッテ居ル所ノ文化政治ノ跡ヲ見テ、
之ヲ同化主義ト云ヒ或ハ自守主義ト云フガ如キ、一ノ學問的ノ講究ニ過ギナ
イモノデハナイカト思フノデアリマス、斯ノ如キ御說明トシテ唯學問上ノコ
トヲ御話ニナリマシタコトトシテ、私共ハ如何ニモ御尤ナル御〓究ノ結果ト
拜聽スル外ナイノデアリマス、併ナガラ今臺灣若クハ朝鮮等ニ對シテ、內地
延長主義ト云フモノガ如何ニ行ハレルカ、私ハ例ヘバ此ノ立法其外二三ノ事
ニ付テ例ヲ以テ御尋シマスナラバ、如何ニ此主義ガ行ハレテ居ルカト云フ
コトノ御說明ヲ得ル上ニ於テ便利デアラウト思ヒマス、第一立法、臺灣ノ立
法ノ根本ヲ爲スモノハ何デアルカト云フト、法律第六十三號ガ第一ニ出タノ
デ、其ノ六十三號ハ臺灣ハ特殊ノ土地デアル故ニ、特殊ノ立法ヲ臺灣總督ヲ
シテ爲サシメ、決シテ內地同樣ニ見ルコトガ出來ナイ、故ニ別箇ノ立法形式
ヲ採ラシメルト云フ主義ガ定ッテ居ルノデアル、而カモ此ノ六十三號制定ノ當
初ニ於テハ、或ハ之ヲ以テ漸次ニ內地ト同樣ニ統治セシメルト云フ主義ヲ有ツ
テ居ル、十年ノ期限ガ付テ居ル、十年ニシテ之ヲ撤廢サレテ、而シテ憲法ガ
完全ナル狀態ニ於テ、臺灣ニ施行セラルルニ至レバ、ソレハ臺灣ニ內地延長
主義ガ實行セラレタト言ハレマセウガ、其後六十三號ガ轉ジテ法律第三十一
號トナリ、三十一號ニナッテモ矢張期限ガ付イタノデ、而シテ其期限ト云フモ
ノハ五年ニナッタノデアリマス、然ラバ五年ニナッタナラバ此ノ特別立法ト
云フモノハ撤廢サレテ、而シテ內地同樣ニ所謂內地延長主義ガ出來ルト思フ
ト、ソレハ決シテ出來ナイノデアリマス、現ニ此ノ御提案ノ此法案ニ付テハ
如何デアルカト云フト、今マデアッタ所ノ十年五年ノ期限ヲ撤廢サレテ而シ
テ永久、少ナクトモ形ノ上ニ於テ·······政府委員ノ說明デハ當分ノ中ト云フケ
レドモ、私ハ法律ノ文面ヲ文面通リニ解釋イタセバ、是ハドコマデモ永久ノ
モノデナケレバナラヌト思ヒマス、此ノ特別立法ヲ許スト云フ所ノ基本法、
所謂臺灣ノ憲法ト云フベキ所ノ此法案ト云フモノガ、永久法律ニナルト云フ
コトデアッテ、果シテドコニ所謂內地延長主義ガアルノデアリマセウカ、立法
ノ上ニ於テモ如何ニモ內地延長主義ナルモノノ實ト云フモノガ、何レノ所ニ
アルカト云フコトヲ疑ハザルヲ得ヌト思ヒマス、ソレカラ又行政ノ形ノ上ニ
於テドウデアルカ、唯今立法ノコトヲ申シマシタガ、行政ニ付テ之ヲ見マス
ト是亦同樣ニ思フノデアリマス、領臺以來今日ニ到ルマデ、多少ノ變化ハ
アリマセウガ、矢張臺灣ニ臺灣ノ事情ニ應ズル所ノ行政ト云フモノガ、漸
次ニ發達シツツアル、ナカ〓〓以テ內地同樣ノ行政ヲ施クナドト云フ所デ、
時期ト云フモノノ來ルベキ形勢ト云フモノヲ、今日ノ上ニ於テ見ルト云フコ
トハ、私ハ絕對ニ出來ナイト思フ、司法ハ如何デアルカ、凡ソ此ノ植民地ノ
統治ノ主義ヲ、田總督ハ衆議院ニ於テ御說明ニナッテ居リマスガ、英吉利ノ如
キハ所謂自治ト云フ所ノ主義ヲ以テ植民地ヲ統治スルコトヲ本則トシテ居ル
ト云フ其ノ英吉利、其ノ英吉利ニ於テスラ、司法ハ········植民地ニ於ケル幾多
ノ司法事件ト云フモノハ、法律ノ解釋ハ彼ノ廣キ領土ヲ通ジテ統一スル趣意
ヲ有チマシテ、或ハ英吉利ノ樞密院ナリ若クハ英吉利ノ上院ナドニ、其ノ上
訴事件ヲ持ッテ來ルコトヲ許スト云フ主義ヲ執ヲテ居ル、然ニ臺灣或ハ朝鮮、
私ハ殊ニ臺灣ニ付テ申シマスガ、其主義ヲ採ラレルカト云フト、決シテ其實
ハ無イノデアル、一體內地延長主義ト云フコトヲ言ハルルコトガ立法行政及
ビ司法ノ上ニ於テ、ドレダケ現ハレテ居ルカト申シマスト、私ガ今日マデ見
マシタ所ニ於テハ、少シモ現ハレテ居ナイモノト思ヒマス、併ナガラ是ハ私
ガ敢テ斯ノ如キ趣意ヲ聲明セラレルカラ、ソレガ甚ダシク惡イトハ申サナイ
ノデアリマスガ、併ナガラ餘リツケ〓〓此主義ヲ聲明サレルコトハ、頗ル誤
解ト云フモノヲ臺灣ノ本土人若クハ朝鮮ノ在住ノ人ニ與ヘルノデハナイカト
云フコトヲ恐レル、現ニ朝鮮ノ如キハ既ニ衆議院議員選擧法ヲ朝鮮ニ施行シ
テ貰ヒタイ、斯ウ云フヤウナ請願モ出テ居ル、尤ナ話デアル、內地ノ延長デ
ハナイカ、內地ノ主義ト云フモノデ果シテ御統治ニナルナラ、少ナクモ何日
カラ施行スルト云フコトヲ御聲明ニナッテ然ルベキコトト思ヒマス、是ハ人情
トシテ起ル事柄デハナイカト思ヒマス、又斯樣ナ主義ガ一方ニ起リマシテ、
衆議院議員選擧法ヲ施行セラルルト云フコトニナルト、又一方ニ於テソレハ
甚ダ面白クナイ、臺灣ハ宜シク臺灣デ議會ヲ起シテヤレト云フヤウナ苦情ガ
一方ニ起ルヤウナ譯デ、玆ニ於テ或ハ臺灣ノ統治ト云フコトニ付テ、根本的
ノ問題トシテ多少ノ紛爭ガ起リハシナイカト云フコトヲ恐ルルノデアリマ
ス、元來私共ハ之ヲ學問上ノ問題トシテ議論ヲ致シマスレバ、特異ノ文化、
特異ノ民族デアル所ノモノニ對シテ、母國同樣ノ立法行政司法ヲ用ヒルト云
フコトハ、甚ダ難イモノデアルト云フ確信ヲ持ッテ居ル者デアリマスガ、是等
ノ點ハ議論ニ亙リマス故ニ避ケマスガ、唯政府ガ斯ノ如ク聲明セラレテ居ル
コトガ、實ト伴ハナイガ爲ニ或ハ誤解ヲサルル、誤解ノ發生スルコトヲ恐ル
ルノデアリマス、此點ニ對シテ政府ハ何等カノ成算ガアッテ、而シテ近キ將來
ニ於テ斯ノ如キ特別立法ヲ撤廢シテ、所謂憲法ヲ完全ナ形ニ於テ臺灣ニ施行
シ、衆議院議員選擧法モ施行スルモノデアルト云フヤウナ確信ヲ、目下ノ狀
態ニ於テ有ッテ御出ニナルカドウデアルカ、私ハ甚ダ疑フノデアル、必ズヤ
有ッテ御出ニナラヌノデアル、有ッテ御出ニナラヌナラバ、宜シク內地延長主
義ト云フ茫漠ナル所ノ御聲明ハナサラナイガ宜イコトト思フノデアリマス、
此點ニ關シテ政府ノ御趣意ノアル所ヲ承リタイト思フノデアリマス、ソレカ
ラ法案ニ付テハ、唯字句ノ末ダケデアリマスカラ、質問ヲ致スコトヲ避ケマ
スガ、法案ニ關聯イタシテ、モウ一箇條承リタイト思フ點ハ、臺灣總督ハ衆
議院ニ於テ、本法施行ノ前後ニ於テ、評議會若クハ協議會ト云フヤウナモノヲ
設置ナサルト云フ御趣意デアルト云フコトヲ承ハルノデ、誠ニ御尤ナル御考
ヘデアルト思フノデアリマス、是非サモナクテハナラヌコトト私ハ考ヘルノ
デアリマス、殆ド世界ノ植民地ヲ有シテ居リマスル國ノ悉クト申シテ宜カラ
ウト思フノデアリマスルガ、英吉利ノ例ヘバ「ジブラルタル」デアルトカ、其
他一二ノ處ニ於キマシテ、評議會樣ノモノガ無イ處モアリマスガ、大部分土
民ヲ有シ、若クハ住民ノ多クヲ有スル地方ニ於テハ、評議會樣ノモノヲ存ス
ルノガ通常ニナッテ居ルガ、今マデノ徑路ヲ見マスルト、或ハ之ヲ置キ或ハ之
ヲ廢シ、或ハ之ヲ置クコトヲ聲明シテ而シテ置ガザルコトアリ、甚ダ區々ニ
亙ッテ居ルノデアリマス、私ハ玆ニ本法ヲ將ニ議定セムトスルニ當リマシテ、
政府ガ評議會樣ノモノヲ永久ノ制度トシテ置ク考デアル、內閣ガ變ラウトモ
本法施行ノ存續セム限リハ、永久ノ制度トシテ置ク考ヘヲ持ッテ居ルノデア
ル、斯ウ云フ御趣意ト云フモノヲ承ルコトガ出來マスルナラバ、甚ダ仕合トス
ル所デゴザイマス必ズシモ本法案ノ中ニ其ノ評議會ノ內容ヲ規定スルノ必
要ヲ認ムルト云フ趣意ハアリマセヌガ、政府ノ御趣意ハ永久ノ制度トシテ斯
ノ如キモノヲ置クノデアルト云フ御考ヘヲ承ッテ置キマスルナラバ、甚ダ良キ
制度ヲ得ルモノトシテ滿足セムト欲スルノデアリマス、以上二點ニ關シマシ
テ政府ノ御趣意ノアル所ヲ承リタイ
〔政府委員男爵田健治郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=5
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006・田健治郎
○政府委員(男爵田健治郞君) 唯〓ノ江木君ノ御質問ニ御答シマス、江木君
ノ御質問ハ大體此度ノ法案ニ付テ贊成デアル、殊ニ無期限ニシタコトニ付テ
ハ最モ我ガ意ヲ得タルモノデアルト云フコトヲ前提ニ仰セラレタコトハ、我
我此案ノ起草者タリ、又說明者トシテ誠ニ滿足ニ感ジマスル、而シテ此御尋
ノ要旨ハ臺灣ノ統治ノ大方針ハ何クニアルカト云フ御尋ト存ジマス、是ハ極
メテ大切ナ御尋デアリマス、私ハ此處デ江木君ガ植民政策、殊ニ學術上ニ付
テ最モ堪能ナ御方デアルト云フコトニ向ッテ、學術上ノ返答ヲスルコトハ致シ
マセヌ、唯事實ニ於テ政府ガ如何ナル臺灣統治ノ方針ヲ執ルカト云フコトニ
付テノ御尋ニ御答シヤウト存ジマス、此臺灣ヲ內地延長主義ト見ルカ、其ノ
内地延長主義ト云ウテモ、無論場合ニ依テハ學者ノ言フ言葉カモ知レマセ
ヌ、或ハ是ハ自治主義デアルト云フコト········是モ學者ノ言フ言葉カモ知レヌ、
兎ニ角此二ツノ何レニ依ルカト云フコトハドウシテモ決メナクテハナラヌ
コトデアルトコロガ此主義ト云フモノハ、領臺當時以來隨分世ノ中デヤカ
マシイ議論モアリ、又貴衆兩院ニ於テモ種々議論ガアッタコトデアリマスル
ガ、其議論ハ何カト云フト、臺灣ニハ憲法ガ施行サレテ居ル········憲法ノ效力
ガ臺灣ニ及ブヤ否ヤト云フ問題ガ、統治以來種々議論サレテ居ッタノデアル、
此コトガ卽チ內地延長主義ナリヤ否ヤト云フコトノ分ルル所デアリマス、私
ノ信ズル所ニ依ルト、臺灣ニ憲法ノ效力ハ及プモノデアルト云フコトハ、疾
クニ決定シテ居ルト存ジマス、卽チ此一番初メ、即チ此法律ノ本トナルベキ明
治二十九年ノ所謂六十三號ト云フ法律ガ出タト云フコト其モノガ、之ヲ決定
シタト思ヒマス、若モ臺灣ニ憲法ノ效力ガ及バヌト云フ、議會ナリ政府ナリ
ガ解釋ヲ執ッタナラバ、六十三號制定ノ必要ハ無イノデ、卽チ議會ノ協賛ヲ得
テ法律トシテ臺灣ニ委任立法ノコトヲ許スヤウナコトヲシナクテモ、憲法ガ
及バナケレバ何モサウ云フ立法上委任立法ヲヤルト云フ必要ハ無イノデ、詰
リ臺灣ニ憲法ガ及ブト云フコトヲ其時ノ政府及ビ議會ガ執ッタガ故ニ、六十三
號ト云フモノデ以テ、臺灣ニ施行スル所ノ法律ハ臺灣總督ガ之ヲ決メルト云
フ必要ヲ生ジタノデアリマスカラ、其時ニ於テ憲法ノ及ブト云フコトハ決定
シテ居ル、而シテ其憲法ノ及ブト云フコトガ決定シマシテ以來、六十三號ガ
三十九年ノ三十一號トナリ、其三十一號ノ期限ガ今日ハ切レテ居リマスルノ
デ、玆ニ此ノ法律案ヲ提出シタ次第デアリマス、ソコニ於テ江木君ガ既ニ內
地延長主義トナル以上ハ、內地ノ通リニナラナクテハナラヌト云フコトヲ仰
セラルル、誠ニ御尤ナコトデアル、政府ハ飽マデ內地延長主義ヲ·······成ベク
目的ヲ達スベク統治ノ方針トシテ行キツツアルノデゴザイマス、詰リ此自治
ト云フ方ノ方針ヲ執ッタナラバ、卽チ內地ノ延長主義デナイ、憲法ガ及バヌモ
ノデアルト云フコトニ取レバ、是ハ又ソレニ施設スベキ、或ハ臺灣ニ於テ臺
灣議會ト云フモノノ必要ヲ生ジテ來ルノデゴザイマセウガ、其方ハ取ッテ居ラ
ヌ、憲法ガ及プト云フコトニスレバ、卽チ之ヲ內地ノ延長主義トデモ形容ス
ルノデゴザイマセウガ、方針トシテ飽マデソレヲ執ッテ居ル、ソレナラバ
直グニサウスルコトガ出來ルヤ否ヤト云フ問題ニナルノデアリマスルケレド
モ、歷史ヲ異ニシ、人情風俗言語、總テノ違フ所ノ民族、之ニ向ッテ內地延長
主義ト云フモノヲ施行スル、其主義ト云フモノハ全ク方針デアリマスル、如
何ニ方針ガサウ云フコトニシテ內地ト差別ノ無イモノニシヤウト云ッテモ、此
全ク歷史、風俗、人情、言語ヲ異ニシテ居ルモノヲ、十年二十年デ忽チ內地
通リニヤルト云フコトハ、是ハ爲シ能ハヌコトデアル、如何ニモ此方針ハ飽
マデモ内地人ト臺灣人トノ差別ヲ段々撤廢シテ、臺灣人ハ遂ニ內地人ト同ジ
ヤウニセシムルト云フ方針デアリマスルケレドモ、其方針ヲ努メテ行ク順序
ガ、卽チ今日ノ法律ノ御協賛ヲ要スル所以デアリマシテ、卽チ前ノ三十一號
ノ時代カラ較ベマシタナラバ、此度ノ改正ノ法律案ニ依リマスルト、餘程ノ
階段ヲ進メタモノニナリマス、卽チ第一條デハ成ベク內地ノ法律ヲ臺灣ニ其
儘施行シ、若クハ多少變更ヲ加ヘテモ施行シテ、內地ノ法律ノ統一ヲ保ツト
云フコトヲ原則トシテ、而シテドウシテモ臺灣ニ限ッテ行フベキ所ノ特殊ノ規
定、內地法ヲ以ッテ行フコトガ出來ヌモノニ限ッテハ、總督ヲシテ之ヲ規定セ
シムル、斯ウ云フコトニナルノハ、前ノ六十三號乃至三十一號ノ法律ヨリ比
較シマスレバ、餘程進ンダモノニナッテ居リマス、之ヲ從來ハ年限ヲ附ケテ、
或ハ三年或ハ五年トシテ參ッタノデアリマスルガ、サウ云フ僅カナ年限デ以
テ、此民族ノ殆ド同化ト言ヒマスルカ、同化ト言ッテハ多少弊ガアリマセウ
ガ、兎ニ角內地ト同ジ程度ニ段々文化ガ進ンデ行クト云フヤウナコトヲ、サ
ウ三年五年デ實效ヲ擧ゲテ行クト云フコトハ難イノデゴザイマスルガ故ニ、
此度ハ期限ヲ附シマセナンダ、此期限ヲ附セヌコトニ付テハ江木君ハ賛同ヲ
下スッテ有難ク存ジマスガ、兎ニ角サウ云フ次第デアリマスルカラ、兎ニ角此
期限ヲ附サナイ、期限ヲ附サナイト云フコトハ、サウ云フ大事業ハ期限ヲ以
テ畫一ニヤッテ行クコトガ出來ヌト云フコトヲ證據立テテ居ル、目的ハ如何ニ
アルカト言ヘバ、內地延長主義ト云フ以上ハ、少シデモ早ク其ノ目的ヲ達シ
タイト云フコトハ無論ノコトデアル、期限ガ無イカラ眞ニ永久的ニヤッテ行ク
カト言ヘバ、サウデナイ、期限ガ附セラレ得ヌカラ期限ハ附セヌゲレドモ
既ニ內地延長主義デ進ム以上ハ、成ベク其目的ヲ早ク逹シテ、此法律ノ無用
ニナルト云フ時期ノ速ニ來タラムコトヲ希望スルノデアル、ソコデ既ニ內地
延長主義ト云ヘバ、其實效ヲ擧ゲナクチヤナラヌ、卽チ臺灣ヨリ代議士、代
表者デモ帝國議會ヘ送ルコトニナラナケレバナラヌガ、ソレハイツヤルカト
云フ御尋デゴザイマスルガ、卽チ其期限ガ此法律ニ記セラレヌト云フコトガ、
臺灣カラ代議士ヲ帝國議會ニ送ルト云フコトヲ何年先キデヤルト云フコトノ
明言出來ヌ所以デアリマス、兎ニ角政府ハ既ニ內地延長主義ト云フコトヲ、
私ガ申シテ居ルバカリデナク、原總理大臣モ衆議院ノ委員會デ申シテ居ラレ
マスルガ、是ガ實效ガ段々擧ッテ來マスレバ、總テノ施政、百般ノ事ガ臺灣
人ノ幸福ヲ害セヌ限リ、臺灣人ノ利害休戚ニ大ナル影響ノナイ限リハ、成
ベク內地ノ法律ヲ施行シ、而シテ臺灣人ノ特殊ノ幸福、特殊ノ利益ヲ保護ス
ベキモノニ付テハ、臺灣特殊ノ法ヲ臺灣總督ヲ以テ行ハシメル、斯ウ云フコ
トニスルノデゴザイマスカラ、段々事實ニ於テ申シテモ、昨年十日カラ地方
制度ヲ行ヒマシタ如キハ、大體臺灣ニハ今マデサウ云フ思想モ無シ規定モ無
カッタノデアリマスガ、內地ノ府縣制度及ビ市町村制ト略〓似寄ッタモノヲ實施
シテ、此ノ公法上ノ行政組織ヲシテ、成ベク內地ト同ジモノニ至ラシメヤウ
ト云フノデ、諸般ノ經營總テサウ云フコトニ致シテ居リマス、デアリマスル
カラ、彼ノ內地延長主義ト云フ結果ヲ、成ダケ其效力ノ擧ガルコトヲ努ムル
コトニ於テハ、政府ハ飽マデ努力ヲスル積リデアリマス、次ニ御尋ノ、評議
會ノ御尋ガゴザイマシタ、此コトハ此度ノ立法ノ關係トハ別ノ問題デゴザイ
〒四、此法律ノ施行ニ關シタ附帶ノ條件デハナイノデゴザイマスカラ、衆議
院デモ其コトヲ斷ッテ置イタノデアリマスガ、兎ニモ角ニモ臺灣總督ガ臺灣ニ
施行スル上ニ於テノ法令其他ノ一般行政ノコトニシテ見テモ、何シロ言語風
俗ノ違フモノデアッテ、而シテ其施政、施設スベキコトモ內地通リニ參ラヌコ
トガ澤山アリマス若シ參ラウトシタナラバ、ソレガ爲ニ臺灣人ノ幸福若ク
ハ利益ニ影響ヲ及ボス虞レアルモノガ澤山アルノデアリマスソレ故單リ立
法事項ト云フコトニ限ラズ、行政事項デアッテモ何デアッテモ、總督ガ臺灣ノ
施政ノ上ニ於テ、臺灣ノ民衆ト言ウテハ語弊ガアルカモ知レマセヌガ、兎
ニ角臺灣ノ有識者ノ意見ヲ徵シ、卽チ民意ヲ徵スルト云フ機關ヲ置クコトハ、
是ハ必要ナコトデアル、殊ニ此特殊ノ事柄ナドニ付マシテハ、內地人デハ
殆ド了解シ惡イヤウナ風俗習慣ナドモ澤山アルコトデ、サウ云フモノヲヤル
二ハ、一番其コトニ當ッテ居ル臺灣人ノ意見ヲ徵スルト云フコトガ、施政ノ上
ニ於テ必要ナコトデ、斯ウ云フ意味カラシテ、勅令ヲ以テ臺灣總督府ニ評議
會ト云フモノヲ置クコトニナル筈デゴザイマス、是ハ所謂自治ノ機關デハ斷
ジテナイノデゴザイマスカラ、役人及ビ內地人及ビ臺灣人是等ノ有識者ヲ二
十五人ホド選拔シマシテ、而シテ臺灣ニ關スルコトニ於テ總督ガ必要ヲ認メ
ルモノニ付テハ、何等ノ區別ナク之ニ諮詢ヲシテ、其意見ヲ徵スル、斯ウ云
フ筈デアリマス此モノハ勿論一時ノ調査會ト云フヤウナルモノデハ斷ジテ
ナイノデアリマス、此法律ガ存在シテ居ル限リハ、無論必要ナモノト存ジテ
居リマス、ズット變ッテ來テ所謂內地通リニナルト云フヤウナ時代ガ來タナラ
バ、サウ云フ評議會ト云フヤウナモノハ必要ナイコトニナルカモ知レマセヌ
ガ、兎ニ角斯ウ云フ特殊ノ法律ヲ要スルト云フ限リハ、サウ云フ評議會ヲ置
テ民意ヲ徵スルト云フコトハ必要ナルコトデアル、斯ウ存ジマスカラ此段御
答シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=6
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007・江木翼
○江木翼君 第一ノ質問ニ付マシテハ、總督ノ御答ニ付テハ甚タ滿足イタ
ス次第デアリマス、一體憲法ガ施行サレタ、是ハ殆ド決ッテ居ルト云フコトハ
極メテ顯著ナル事實デアリマスカラ、何等爭フベキ餘地ハナイ、併ナガラ今
日ニ於ケル憲法ノ臺灣ニ關スル施行ト云フモノハ、實ハ憲法ノ形式的ノ施行
ニ過ギナイ、憲法ガ施行サレル、而シテ臺灣ノ三百六十萬ノ人ガ憲法治下ノ
國民ニナッタト云フコトハ、此三百六十萬ノ臺灣人ト云フモノガ憲法政治ニ參
與スルト云フコトガ行ハレナケレバ、本當ニ憲法ノ施行ト云フコトガアルモ
ノヂヤナイ、是ハ凡ソ政治ヲ語ル者ニ於キマシテ、素ヨリ疑ヒヲ容レヌコト
デアルト思フ憲法政治ノ國デアルト云フノハドウ云フ意味デアルト云ヘバ、
國民ガ政治ニ參與スル其事實ナクシテ、憲法ガ施行セラレテ居ルト云フコト
ハ所謂憲法ノ形式施行ニ過ギナイ、憲法第一條ニ「大日本帝國ハ萬世一系
ノ天皇之ヲ統治ス」苟モ帝國ノ領土ニナレバ憲法ガ施行サレルト云フノデア
ルケレドモ、此施行ハ出來ナイト思ヒマスガ、ソレ等ノ點ヲ私ハ數ヘテ言フ
必要ハナイガ、今日迄ノ形跡ヲ見レバ、唯今モ田總督ガ御述べニナリマシタ
如ク、十年ノ期限デアッタ所ノモノガ五年ニナリ、此順序ニ於テハ、先ヅ此ノ
特別立法ハ十年ヲ一期トシテ多分內地ト同樣ノ制度ガ布ケルデアラウト云フ
意味デアッタカモ知レヌ、次ニ三十一號ニナッテ今度ハ五年ト云フコトニナッ
テ、五年經ッタナラバ此ノ特別立法ノ制度ハ廢スルコトガ出來ルカ知レヌト
云フコトデアッタ、トコロガ唯今ノ御聲明ノ如ク、迚モ內地同樣ノ制度ヲ執ル
コトハ五年十年ノ內ニハ行カナイ、ソレデ無期限ニシタト云フコトハ、兎
ニ角ニ内地延長主義ガ放棄セラレテ、特別立法永久ノ制度ヲ立テラレルト云
フ私ハ御辯明ト考ヘル外ハナイト思フ、如何ニ考ヘテモ之ヲ永久ニセラレタ
ト云フコトハ、未ダ如何ニシテ内地同樣ノ制度ヲ布クカト云フコトニ付テハ、
御考ヘガアルモノトハ如何ニモ受取レヌモノト思フノデアリマス、併ナガラ
是ハ自ラ意見ノ違ヒニナルカモ知レヌガ、此點ヲ確メタイト思ッタノデアリ
マス、唯〓御說明ヲ得タラ滿足スルト思ヒマスノハ司法ノ點デゴザイマス、
司法ノ點ニ關シマシテハ、法曹界ニモ相當ノ意見ハアルノデアリマス、現
所謂自主主義トカ云フヤウナ主義ヲ取ッテ居ル所ノ英吉利、此ノ英吉利ガ苟モ
法律ノ解釋ト云フコトデアレバ、此世界ノ各方面ニ散布シテ居ル所ノ五十有
餘ノ植民地ニ對シテ、矢張英吉利ノ樞密院或ハ上院ニ於テ法律ノ解釋ハ統一
スル、此主義ヲ執ッテ居ルノデアリマス、樞密院ト上院ト分レテ法律ノ解決ガ
統一サレルカト云フ疑義ガ起ルカ知レマセヌガ、是ハ英吉利特殊ノ法制デア
リマシテ、現ニ樞密院ノ法制ヲ扱ヒマスル顧問官ト云フ者ト、上院ノ法律ヲ
扱ヒマス所ノ議員所謂「ロー、ロード」ト云フモノトハ共通シテ居ル部分ガ多
イノデアリマス、デアリマスガ故ニ、自カラ樞密院ノ解釋ト上院ノ解釋トハ
統一サルルコトニナッテ居ル、或ハ印度ノ如キ樞密院ニ行キ、或ハ濠洲「ニユ
ージーランド」ノ如キハ上院ニ行クト云フヤウニ、各〓本國ニ於テ法律ノ解釋
ヲ統一スルト云フ制度ヲ取ッテ居ル、此司法デスラ統一ヲシヤウト云フ主義ヲ
執ッテ居ラレヌヤウデアリマスガ、或ハ內地延長主義トカ、私ハ甚ダ贊成シナ
イ主義デアリマスガ、御執リニナル以上、當然英吉利ノ主義ノ如キモノニ御
依リニナルベキモノデナイカト思ヒマスガ、果シテ左樣ナル御考ヘハナイコ
トデアリマセウカ、ドウデアリマセウカ、此點ヲ承ッテ置キマス、評議會ノコ
トニ付テハ大體ニ於テ御言明ノ點ハ滿足ヲ表スルノデアリマス
〔政府委員男爵田健治郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=7
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008・田健治郎
○政府委員(男爵田健治郞君) 尙ホ御答ヘ致シマス、此ノ內地延長主義ト云
フコトニ付テハ、更ノ御質問デハナイヤウニ思ヒマシタカラ、御答ヘスル必要
ハナイカモ知レマセヌガ、內地延長主義ト云フヤウナコトハデス、是ハ法律
語デモナケネバ、又施政ノ上ニ付テ政府ノ方カラ內地延長主義ヂヤナイト云
フコトハナイノデアリマス、唯寧ロ學術上デ云フヤウナ、社會的デ云フヤウ
ナ言葉トデモ云ウテ宜イカ知レマセヌガ、兎ニ角之ヲ主義トシテ、方針トシ
テ行クト云フコトデアリマス、其方針ガソコニアル、其方針ガアルカラト云ツ
テ、今日直グニ內地ト同然ニナルノカト云フト、ソレハナカ〓〓サウハ參ラ
ヌノデアリマスカラ、詰リ內地延長主義ト云フカ、或ハ憲法ノ實施サレテ居
ルト云フカ、色〓言ヒ方ハアリマセウガ、憲法ノ實施ト云フコトニシマシテ
モ、ソレナラ憲法ノ各條ガ實施サレテ居ルカドウカト云フト、サウデナイト
云フ事實ガアルノデアリマス、ソレデアリマスルカラ學術上デ學者ガ〓究ス
レバ色〓ノ說ガ出來マセウガ、兎ニ角帝國政府ニ於テ桂公爵ノ總理大臣ノ時
代デアッタカト思フノデス、臺灣デハ憲法ガ施行サレテ居ルノヂヤト云フコト
ヲ議會デ返答サレタコトモアルヤウデアリマス、サウ云フ意味デアリマスカ
ラ、念ノ爲申上ゲテ置キマス、ソレカラ今度司法制度ノコトニ付テ御尋ガゴザ
リマシタ、成程英國ナドハ東洋ノ端ニ至ルマデ、總テノ最高審判ハ樞密院ニ
歸著スルトカ云フヤウナル、殆ド世界ニ亙ッタモノガ、殘ラズ中央ノ樞密院ノ
最高審判ニ歸スルヤウナ形ニナッテ居ルヤウニ承ハッテ居リマス、併ナガラ臺
灣ナドニ於テソレヲ直グニ要スルカト云フゴトニ付テハ、未ダソコ迄〓究モ
シテ居リマセヌ、事實ヲ申上ゲルト云フト、此間モ衆議院ノ委員會デ臺灣ハ
裁判ガ獨立セヌカノ如キ或委員カラ質問ヲ受ケマシタカラ、私ハ臺灣ノ裁判
ハ立派ニ獨立シタモノデアルト云フコトヲ答ヘタノデアリマス、總督府下ニ
司法官ノ身分ヲ監督サレテ居ルガ故ニ獨立セヌト云フヤウナコトヲ云フナラ
バ、內地デモ司法大臣ノ下ニ總テノ裁判官ハ監督サレテ居ル、ソレヲスルト
云フト內地デモ裁判ハ獨立セヌト言ヘルモノデ、サウ云フ譯ノモノデハナイ、
內地ニ於テ司法大臣ガ裁判官ノ身分ヲ監督シテモ、決シテ裁判ノ獨立ト云フ
モノハ損スル筈ノモノデハナー、是ト同ジク臺灣ニ於テ臺灣總督府ガ裁判官
ノ身分ヲ監督スルカラ、裁判其モノニ獨立ガナイト云フコトハ決シテナイノ
デアル、其點ニ至ルト內地ト殆ド變ラヌ、裁判ノ獨立ハシテ居ルノデアルト
云フコトヲ言明シタコトガアリマス、ソレデアリマスガ故ニ、詰リ今日ノ所
デハ、初審カラ控訴審及ビ上告審ト云フ迄ガ臺灣デ出來テ居ルノデアリマス、
恰モ內地ニ於テ地方裁判所、控訴院、大審院ト云フモノデ、其上告裁判迄ガ
出來テ居ル如ク、臺灣ニ於テハ初審カラ覆審院ニ參ッテ而シテ上告ヲスルトキ
ニハ、矢張高等法院ノ上告部デ判決ヲスルト云フコトニナッテ居リマスルカ
ラ、內地ト聯絡ガ著イタコトハゴザイマセヌケレドモ、即チ三審制度トシテ
上告裁判迄ヤルト云フコトニ於テハ內地ト同一ノ仕組ニナッテ居リマス、唯英
吉利ノ如ク之ヲ一ツ又或所デ統一シテ全世界ニ亙ッテ居ル所ノ、植民地ノ裁判
迄モ、殘ラズ統一スルト云フコトニナッテハ居リマセヌケレドモ、是ハ英吉利
ノ制度デアリマシテ、必ズシモソレヲ日本デ學バナクテハ斯ウ云フ差支ガア
ルト云フ程ノコトヲ未ダ感ジタコトハアリマセヌ故ニ、是等ノコトニ付テハ
未ダ考慮ヲ致シテ居リマセヌト云フコトヲ御答ヘ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ御質疑モナイト認メマスカラ、特別委員ノ氏
名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
臺灣ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律案特別委員
伯爵川村鐵太郞君子爵西大路吉光君子爵片桐貞央君
仲小路廉君男爵安場末喜君男爵岩倉道倶君
藤田四郞君石渡敏一君高橋源次郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、會計法改正法律案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會、大藏大臣高橋子爵
會計法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年二月十七日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
會計法改正法律案
會計法
第一章總則
第一條政府ノ會計年度ハ每年四月一日ニ始リ翌年三月三十一日ニ終ル
一會計年度所屬ノ歲入歲出ノ出納ニ關スル事務ハ翌年度七月三十一日迄
ニ悉皆完結スヘシ
第二條租稅其ノ他一切ノ收納ヲ歲入トシ一切ノ經費ヲ歲出トシ歲入歲出
ハ之ヲ總豫算ニ編入スヘシ
第三條毎會計年度ニ於ケル經費ノ定額ハ其ノ年度ノ歲入ヲ以テ之ヲ支辨
スヘシ
第四條各官廳ニ於テハ法律勅令ヲ以テ規定シタルモノヲ除クノ外特別ノ
資金ヲ有スルコトヲ得ス
第五條政府ハ日本銀行ヲシテ國庫金出納ノ事務ヲ取扱ハシム
前項ノ規定ニ依リ日本銀行ニ於テ受入レタル國庫金ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ政府ノ預金トス
第六條政府ハ國庫金出納上必要アルトキハ大藏省證劵ヲ發行シ又ハ日本
銀行ヨリ借入ヲ爲スコトヲ得
大藏省證劵及借入金ハ當該年度ノ歲入ヲ以テ之ヲ償還スヘシ
大藏省證劵及借入金ノ最高額ハ每年度帝國議會ノ協賛ヲ經テ之ヲ定ム
第二章豫算
第七條歲入歲出ノ總豫算ハ前年ノ帝國議會集會ノ始ニ於テ之ヲ提出スヘシ」
必要避クヘカラサル經費及法律又ハ契約ニ基ク經費ニ不足ヲ生シタル場
合ヲ除クノ外追加豫算ヲ提出スルコトヲ得ス
第八條歲入歳出ノ總豫算ハ經常臨時ノ二部ニ大別シ各部中ニ於テ之ヲ款
項ニ區分スヘシ
總豫算ニハ帝國議會參考ノ爲ニ左ノ文書ヲ添附スヘシ
-歲入豫算明細書
二各省ノ豫定經費要求書但シ各項中各目ノ明細ヲ記入スヘシ
第九條豫算中ニ設クヘキ豫備費ハ左ノ二項ニ分ツ
第一豫備金
第二豫備金
第一豫備金ハ避クヘカラサル豫算ノ不足ヲ補フモノトス
第二豫備金ハ豫算外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツルモノトス
第十條豫備金ヲ以テ支辨シタルモノハ其ノ第一豫備金支出ニ係ルモノハ
年度經過後其ノ第二豫備金支出ニ係ルモノハ次ノ常會ニ於テ帝國議會ニ
提出シ其ノ承諾ヲ求ムルコトヲ要ス
第十一條政府ハ豫算ニ定ムルモノ及特ニ帝國議會ノ協賛ヲ經タルモノヲ
除クノ外災害事變其ノ他避クヘカラサル事由アル場合ニ於テハ翌年度ニ
亙ル契約ヲ締結スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ翌年度ニ亙ル契約ヲ爲スコトヲ得ヘキ金額ハ每年度帝
國議會ノ協賛ヲ經テ之ヲ定ム
第三章收入
第十二條租稅其ノ他ノ歲入ハ法令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ徵收又ハ收納ス
ヘシ
法令ノ定ムル所ニ依リ當該官吏ノ資格アル者ニ非サレハ租稅其ノ他ノ歳
入ヲ徵收又ハ收納スルコトヲ得ス但シ各廳事務員ヲシテ收納ヲ分掌セシ
ムル場合又ハ日本銀行ヲシテ收納ヲ取扱ハシムル場合ニ於テハ此ノ限ニ
在ラス
第四章支出
第十三條各年度ニ於テ決定シタル經費ノ定額ヲ以テ他ノ年度ニ屬スヘキ
經費ニ充ツルコトヲ得ス
第十四條國務大臣ハ其ノ所管ニ屬スル收入ヲ國庫ニ納ムヘシ直ニ之ヲ使
用スルコトヲ得ス
國務大臣ハ豫算ニ定メタル目的ノ外ニ定額ヲ使用シ又ハ各項ノ金額ヲ彼
此流用スルコトヲ得ス
第十五條國務大臣其ノ所管定額ヲ支出セムトスルトキハ現金ノ交付ニ代
へ日本銀行ヲ支拂人トスル小切手ヲ振出スヘシ但シ他ノ官吏ニ委任シテ
小切手ヲ振出サシムルコトヲ得
第十六條國務大臣ハ債主ノ爲ニスルニ非サレハ小切手ヲ振出スコトヲ得
ス但シ以下四條ノ規定ニ依リ主任ノ官吏又ハ日本銀行ニ對シ資金ヲ交付
スル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第十七條國務大臣ハ勅令ヲ以テ定ムル經費ニ限リ主任ノ官吏ヲシテ現金
支拂ヲ爲サシムル爲勅令ノ定ムル所ニ依リ之カ資金ヲ當該官吏ニ交付ス
ルコトヲ得
第十八條國務大臣ハ日本銀行ニ命シ國債ノ元利拂ヲ爲サシムル爲之カ資
金ヲ日本銀行ニ交付スルコトヲ得
第十九條國務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ現金支拂ヲ爲サシムル爲當該
官吏ヲシテ其ノ保管ニ係ル歲入金、歲出金又ハ歲入歳出外現金ヲ繰替使
用セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ歲出金ニ繰替使用シタル現金ヲ補塡スル爲國務大臣ハ
之カ資金ヲ當該官吏ニ交付スルコトヲ得
第二十條國務大臣隔地者ニ支拂ヲ爲サムトスルトキハ必要ナル資金ヲ日
本銀行ニ交付シ之カ支拂ヲ爲サシムルコトヲ得
前項ノ規定ハ隔地ノ出納官吏ニ資金ヲ交付セムトスル場合ニ之ヲ準用ス
第二十一條國務大臣ハ勅令ヲ以テ定メタル場合ニ限リ前金拂又ハ〓算拂
ヲ爲スコトヲ得但シ軍艦、兵器、彈藥若ハ外國ヨリ直接購入スル機械圖
書ノ代價及官公署ニ對シ支拂フヘキ經費ヲ除クノ外物件ノ製造若ハ買入
又ハ工事ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十二條國務大臣ハ特殊ノ經理ヲ必要トスル場合ニ限リ勅令ノ定ムル
所ニ依リ各廳事務費ノ全部又ハ一部ヲ主務官吏ニ對シ渡切ヲ以テ支給ス
ルコトヲ得
第五章決算
第二十三條會計檢査院ノ檢査ヲ經テ政府ヨリ帝國議會ニ提出スル歲入歲
出ノ總決算ハ翌年開會ノ常會ニ於テ帝國議會ニ之ヲ提出スヘシ
第二十四條總決算ハ總豫算ト同一ノ樣式ヲ用ヰ左ノ事項ノ計算ヲ明記ス
ヘシ
歲入ノ部
歲入豫算額
調定濟歲入額
收入濟歲入額
不納缺損額
收入未濟歲入額
歲出ノ部
歲出豫算額
豫算決定後增加歲出額
支出濟歲出額
翌年度繰越額
不用額
第二十五條總決算ニハ會計檢査院ノ檢査報〓ト倶ニ左ノ文書ヲ添附スヘ
シ
一歲入決算明細書
二各省決算報告書
三國債計算書
第六章歲計剩餘定額繰越過年度支出豫算外收入及定額戾入
第二十六條各年度ニ於テ歲計ニ剩餘アルトキハ其ノ翌年度ノ歲入ニ繰入
ルヘシ
第二十七條豫算ニ於テ特ニ明許シタルモノ及一年度內ニ終ルヘキ工事製
造又ハ物品ノ買入若ハ運搬ニシテ避クヘカラサル事故ノ爲ニ竣功又ハ納
入若ハ運搬ヲ遲延シ年度內ニ其ノ經費ノ支出ヲ終ラサリシモノハ之ヲ翌
年度ニ繰越シ使用スルコトヲ得
第二十八條數年ヲ期シテ竣功スヘキ工事製造其ノ他ノ事業ニシテ繼續費
トシテ總額ヲ定メタルモノハ每年度ノ支出殘額ヲ竣功年度迄遞次繰越シ
使用スルコトヲ得
第二十九條.過年度ニ屬スル經費ハ現年度定額ヨリ支出スヘシ但シ豫備金
ヲ以テ補充シ得ヘキモノヲ除クノ外其ノ經費所屬年度ノ每項定額中不用
ト爲リタル金額ヲ超過スルコトヲ得ス
第三十條出納ノ完結シタル年度ニ屬スル收入其ノ他豫算外ノ收入ハ總
テ現年度ノ歲入ニ組入ルヘシ但シ支出濟歳出ノ返納金ハ勅令ノ定ムル所
ニ依リ各之ヲ支拂ヒタル經費ノ定額ニ戾入ルルコトヲ得
第七章契約
第三十一條政府ニ於テ賣買貸借請負其ノ他ノ契約ヲ爲サムトスルトキハ
勅令ヲ以テ定メタル場合ヲ除クノ外總テ公〓シテ競爭ニ付スヘシ
國務大臣前項ノ方法ニ依リ契約ヲ爲スヲ不利ト認ムル場合ニ於テハ指名
競爭ニ付シ又ハ隨意契約ニ依ルコトヲ得但シ不動產賣拂ニ付テハ此ノ限
ニ在ラス
第八章時效
第三十二條金錢ノ給付ヲ目的トスル政府ノ權利ニシテ時效ニ關シ他ノ法
律ニ規定ナキトキハ五年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス政府ニ對スル權
利ニシテ金錢ノ給付ヲ目的トスルモノニ付亦同シ
第三十三條金錢ノ給付ヲ目的トスル政府ノ權利ニ付消滅時效ノ中斷停止
其ノ他ノ事項ニ關シ適用スヘキ他ノ法律ノ規定ナキトキハ民法ノ規定ヲ
準用ス政府ニ對スル權利ニシテ金錢ノ給付ヲ目的トスルモノニ付亦同シ
第三十四條法令ノ規定ニ依リ政府ノ爲ス納入ノ〓知ハ民法第百五十三條
ノ規定ニ拘ラス時效中斷ノ效力ヲ有ス
第九章出納官吏
第三十五條出納官吏ハ法令ノ定ムル所ニ依リ現金又ハ物品ヲ出納保管ス
ヘシ
出納官吏ハ其ノ出納保管ニ係ル現金又ハ物品ニ付一切ノ責任ヲ負ヒ會計
檢査院ノ檢査判決ヲ受クヘシ
第三十六條出納官吏其ノ保管ニ係ル現金又ハ物品ヲ亡失毀損シタルトキ
ハ善良ナル管理者ノ注意ヲ怠ラサリシコトヲ會計檢査院ニ證明シ責任解
除ノ判決ヲ受クルニ非サレハ其ノ亡失毀損ニ付辨償ノ責ヲ免ルルコトヲ
得
第三十七條國務大臣ハ特ニ必要アル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
各廳ノ事務員ヲシテ現金又ハ物品ノ出納保管ヲ分掌セシムルコトヲ得
出納官吏ニ關スル規定ハ前項ノ事務員ニ付之ヲ準用ス
第三十八條第十五條ニ定メタル小切手振出ノ職務ハ現金出納ノ職務ト相
兼ヌルコトヲ得ス
第十章雜則
第三十九條特別ノ須要ニ因リ本法ニ準據シ難キモノアルトキハ特別會計
ヲ設置スルコトヲ得
特別會計ヲ設置スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
第四十條政府ハ其ノ所有又ハ保管ニ係ル有價證劵ノ取扱ヲ日本銀行ニ
命スルコトヲ得
第四十一條日本銀行ハ其ノ取扱ヒタル國庫金ノ出納、國債ノ發行ニ依ル
收入金ノ收支、第十八條又ハ第二十條ノ規定ニ依リ交付ヲ受グタル資金
ノ收支及前條ノ規定ニ依リ取扱ヒタル有價證劵ノ受拂ニ關シ會計檢査院
ノ檢査ヲ受クヘシ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
明治二十七年法律第十六號、明治三十三年法律第五十號及明治四十四年法
律第二十四號ハ之ヲ廢止ス
本法施行前ニ爲シタル第二豫備金ノ支出竝本法施行ノ日ノ屬スル年度ノ前
年度及前々年度ノ決算ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
本法施行前ニ期滿免除ト爲ラサル權利ニ付テハ本法其ノ他ノ法律中時效ニ
關スル規定ヲ適用ス但シ其ノ期間ノ起算點ニ付テハ從前ノ規定ニ依ル
本法施行前ニ進行ヲ始ノタル期滿免除ノ期間カ本法其ノ他ノ法律ニ定メタ
ル時效ノ期間ヨリ長キトキハ從前ノ規定ニ依ル但シ其ノ殘期カ本法施行ノ
日ヨリ起算シ本法其ノ他ノ法律ニ定メタル時效ノ期間ヨリ長キトキハ其ノ
日ヨリ起算シテ本法其ノ他ノ法律ヲ適用ス
前三項ニ規定スルモノヲ除クノ外本法ノ施行ニ關シ必要ナル規定ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
〔國務大臣子爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=10
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011・高橋是清
○國務大臣 子爵高橋是〓君)會計法改正案提出ニ付マシテ簡單ニ理由ヲ申
述ベマス、現行會計法ハ明治二十二年ニ制定セラレタルモノデゴザリマシテ、
其後多少更正ヲ加ヘラレタルコトモゴザリマスルガ、時勢ノ推移ト從來ノ經
驗トニ鑑ミマシテ、今般之ヲ改正スルノ必要アリト認メマシテ、茲ニ本案ヲ
提出イタシマシテ御審議ヲ待ツコトトナッタ次第デゴザイマス、今改正ノ〓
要ニ付マシテ說明ヲ致シマスレバ、第一點ハ國庫預金制度ヲ採用イタシタル
コトデゴザイマス、國庫金ノ出納ニ關シマシテハ、現今ノ金庫制度ヲ廢止シ
テ、國庫預金制度ヲ採用スルガ宜イト云フ議ハ、既ニ十數年以來唱ヘラレテ
居ッタ所ノモノデゴザリマシテ、政府ニ於キマシテモ多年是ガ實施ノ利害及ビ
實行ノ方法等ニ付マシテハ考究ヲ怠ラナカッタノデゴザイマス、今日デハ
政府ノ財政ト一般ノ金融トノ關係ニ鑑ミマシテ、預金制度ヲ採用スルコトヲ
以テ適當ナリト認メタノデゴザイマス、卽チ改正案ニ於キマシテハ、國庫金
出納ノ事務ヲ日本銀行ヲシテ取扱ハシメマシテ、同行ガ受入レマスル所ノ國
庫金ハ、之ヲ政府ノ預金ト爲スコトト致シマシテ、又政府ノ支拂ニ付マシテ
ハ、從來ノ支拂命令ヲ廢止シマシテ商法上ノ小切手ヲ振出スコトニ致シタノ
デゴザイマス、第二點ハ決算提出ノ時期ヲ繰上ゲタルコトデゴザイマス、決
算提出ノ時期ニ關シマシテハ、現在ニ於テハ事實上翌々年開會ノ帝國議會ニ
提出スルノ慣例トナッテ居ルノデアリマスガ、其時期ガ遲キニ失スルト云フ非
難ハ從來廔〓聞ク所デゴザイマス、依テ改正案ニ於キマシテハ、其提出ノ時期
ヲ一箇年繰上ゲマシテ、翌年開會ノ帝國議會ノ常會ニ之ヲ提出スルコトト致
シマシテ、決算審議ノ效果ヲ一層有效ナラシメムコトヲ期シタル次第デゴザ
イマス、第三點ハ、第二豫備金支出事後承諾案提出ノ時期ヲ繰上ゲルコトデ
ゴザイマス、現行ノ規定ニ依リマスレバ、豫備金支出ノ事後承諾案ハ、第
豫備金デゴザリマシテモ、又第二豫備金デゴザイマシテモ、總テ年度經過後
ノ帝國議會ニ提出スルコトトナッテ居リマス、今般ノ改正案ニ於キマシテハ、
第二豫備金支出ノ事後承諾案ニ付マシテハ、其特別ナル性質ニ鑑ミマシテ、
提出ノ時期ヲ一箇年繰上ゲマシテ、年度經過ヲ待チマセヌデ、最近ノ帝國議
會ノ常會ニ提出シテ、其承諾ヲ求メルコトト致シマシタ、帝國議會ニ於ケル
審議ノ效果ヲ更ニ適切ナラシメムコトヲ期スル次第デゴザイマス、第四點ハ
契約ニ關スル一般競爭入札主義ヲ緩和スルコトデゴザイマス、現行ノ規定ニ
於キマシテハ政府ノ工事及ビ物件ノ賣買貸借ハ一般ノ競爭入札ニ依ルコト
ヲ原則ト致シマシタ、之ニ對シマスル例外ヲ法律ヤ、勅令ヲ持チマシテ規定
スルコトトナッテ居リマス、此ノ改正案ニ於キマシテモ、一般競爭入札ノ方法
ニ依ルト云フコトノ原則ハ之ヲ維持シテ居リマスガ、從來此ノ競爭入札ニ關
スル規定ヲ墨守シマスル爲ニ、却ッテ損失ヲ招クガ如キ弊害ニ陷ルコトガ多々
アリマスルカラシテ、斯ル弊害ヲ防止スルノ必要ヲ認メマシテ、國務大臣ニ
於テ一般ノ競爭入札ニ付スルヲ不利ト認メマシタル場合ニ於キマシテハ、其
宜シキニ從ヒマシテ指名競爭入札又ハ隨意契約ニ依ルコトヲ得ルノ途ヲ開ク
コトト致シタ次第デゴザイマス、其ノ第五點ハ消滅時效ニ關シマスル規定ノ
改正デゴザイマス、現行ノ規定ハ金錢ノ給付ヲ目的トスル政府ノ債權債務ハ、
公法上ノモノナルト私法上ノモノナルトヲ問ハズ、總テ年度經過後五年ニシ
テ消滅スルコトヲ以テ原則トシテ居リマス、併ナガラ私法上ノ債權債務ニ付
マシテヽハ、私法上ノ原則ニ依ルコトヲ議論上カラ見マシテモ、又實際上カラ
見マシテモ之ヲ相當ト認メマスルカラ、改正案ニ於キマシテハ權利ノ性質、
私法ニ屬シマスモノニ付マシテハ民法商法等ノ規定ニ依ルコトト致シマシ
タ、其性質ガ公法ニ屬スルモノニアリマシテハ、特別ノ規定アル場合ノ外ハ
五年ニシテ消滅スルコトト致シタ次第デゴザリマス、以上述ベマシタル條項
ハ改正ノ主ナル事項デゴザリマスルガ、此外ニ或ハ災害事變等止ムヲ得ザル
場合ニ於テハ、毎年度帝國議會ノ協賛ヲ經タル範圍內ニ於キマシテ、政府ハ
翌年度ニ亙ル契約ヲ締結スルコトヲ得ルヤウニ致シマシテ、或ハ出納官吏ニ
於テ善良ナル管理者ノ注意ヲ怠ラザリシコトヲ證明イタシマスル時ハ、其責
ヲ免レルコトト致シタリ、或ハ官吏身元保證金ノ制度ヲ廢止致シマシテ、或
ハ日本銀行ノ國庫金出納、國債事務及ビ政府有價證劵ノ取扱ヒニ關スル、會
計檢査院ノ檢査ニ關シマシテ適當ナル改正ヲ加ヘマシタ、又大藏省證劵及ビ
一時借入金ニ關シマスル規定ヲ會計法中ニ加ヘマシテ、其他會計出納上ノ重
要事項ニ付マシテ、法律上ノ根據ヲ明ニ致シマシテ、法規ノ不備ヲ補ヒマス
ル目的ヲ以テ各種ノ改正ヲ加ヘタノデアリマス、之ヲ要シマスルニ、本改正
案ハ多年ノ經驗ニ鑑ミマシテ、時代ノ要求ニ從ッテ現行會計法ノ全部ニ亙リマ
シテ、重要ナル改正ヲ加ヘタノデアリマス、何卒愼重御審議ノ上速ニ御協賛
アラムコトヲ切望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=11
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012・江木翼
○江木翼君 甚ダ屢〓恐縮デスガ········會計法ハ憲法附屬ノ法律、サウシテ頗ル
重要ナ法律デアリマスルカラ、本案御提出ニ付マシテモ、必ズヤ樞密院ニ
御諮詢ニ相成ッタ上御提案ニナッタコトト思ヒマスルノデ、憲法上ノ議論ニ付
マシテハ十分審議シ盡サレマシタコトト思ヒマス故ニ、或ハ多クノ疑義ヲ
入レル餘地ハナイカモ知レマセヌガ、玆ニ念ノ爲メ憲法ノ條項ニ關係シタ一
項ニ付マシテ、政府ノ御所見ヲ承ッテ置キタイト思フノデアリマス、其條項
ハ衆議院ニ於テモ既ニ削除ノ意見ノ出マシタ所ノ、本案第十一條ノ問題デア
リマス、十一條ノ「災害事變、其ノ他避クヘカラサル事由アル場合ニ於テハ
翌年度ニ亙ル契約ヲ締結スルコトヲ得」ト云フ項ハ、憲法第六十二條ノ第三
項ニ「豫算ニ定メタルモノヲ除ク外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スハ帝國
議會ノ協賛ヲ經ヘシ」、此條項ニ直接ノ交涉ヲ有ツ次第デアルト思フノデアリ
やすく。今日我〓ハ豫算ニ附帶イタシマシテ、豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契
約ヲ爲スヲ要スル件ト云フモノヲ多々議定ヲ致シテ居リマスガ、六十二條ノ
第三項ニ依テ議定サルル次第デアルノデアリマスガ、今玆ニ第十一條ノ規定
ガ出來マシタ場合ニ於テハ、帝國議會協賛權ト云フモノハ無クナッテ、詰リ第
十一條ノ當然ノ結果ト致シマシテ、協贊權ヲ行ハズニ、政府ニ契約締結權ト
云フモノヲ委任ヲシタ結果ニナルノデアリマス、恰モ唯今第一讀會ニナリマ
シタル所ノ、臺灣ノ委任立法ト同樣ニ、契約締結ノ委任立法ヲ玆ニ認メル次
第ニナルノデアリマス、尤モ此場合ハ災害事變其他ノ避クベカラザル事由ノ
アル場合ニ依ルノデアリマスガ、兎ニ角此項目ニ付マシテハ全然政府ニ委任
ヲスル、斯ウ云フコトニナルノデアリマス、其委任ヲスルト云フコトハ果シ
テ適當デアルカドウカト云フコトハ、是ハ自カラ議論ノ問題ニナリマスカラ
取敢ヘズ避ケテ置キマスガ、委員會ニ於テ十分ノ御審議アラムコトヲ希望ス
ル次第デアリマスガ、私ノ御尋セムトシマスル點ハ同條第二項ニ、前項
ノ規定ニ依リ翌年度ニ亙ル契約ヲ爲スコトヲ得ベキ金額ト云フモノハ前年
度帝國議會ノ協賛ヲ經テ之ヲ定メル、斯ウアリマスガ、此金額ヲ定メルト云
フノハ、其ノ年度ノ翌年度使用スベキ所ノ金額ト云フモノヲ編入セラルル次
第デアルカ、或ハ翌年度豫算ニナルガ如キ恰モ繼續費ノ如キ形ニ於テ之ヲ編
入セラルヽノデアルカ、若シ之ヲ前年度ノ分ニ編入セラルヽト致シマスト
翌年度ニ亙ル所ノ經費ト云フモノハ前年度ニ編入セラレテ居ルト云フコトニ
ナル、若シ翌年度ノ豫算ニ揭ゲラレルコトデアルト云フト、恰モ繼續費ニナ
ルト思フノデアリマスガ、其形ハ如何ニナルノデアリマスカ、若シ之ヲ翌年
度ノ豫算ニ編入セラレタモノト致シマスナラバ、其ノ金額ト云フモノハ翌年
度豫算ニ於テ矢張帝國議會ノ協賛ヲ經ルト云フコトニナルノデアリマスカ
ト云フ點ガ一點デアリマス、ソレカラ第二點ハ所謂責任支出ノモノガアリマ
シテ、其ノ責任支出ノ憲法上ノ效力ト云フモノハ、頗ル明確ニナッテ居リマセ
ヌガ、ソレハ暫ク別ト致シマシテ、斯ノ如ク定メラレマシタル所ノ金額ト云
フモノニ對シテ、更ニ責任支出ガ出來ルト云フコトデアリマシタナラバ、折
角此委任ヲ致シマシタル所ノ、例ヘバ三百萬圓、五百萬圓ト云フ範圍ニ止マ
レバ宜イガ、矢張其以外ニ責任支出ガドン〓〓アルト云フコトデアリマシ
タナラバ、第十一條ノ二項ト云フモノハ、非常ニ甚シキモノニナリハシナイ
カト云フコトヲ恐レルノデアリマス、災害事變其他避クベカラザル事由デア
リマスルカラ、多クハ第二豫備金的性質ヲ有シテ居ルモノデアラウト思ヒマ
スルガ故ニ、甚シク多カラザルモノデナケレバナラヌ、今日ハドウデアルカ
ト云フト、第二豫備金ノ性質ヲ有スルモノニ對シテ多ク責任支出ヲセラルヽ
此年度限リ責任支出ヲセラルヽヤウナモノヲ、翌年度ニモドン〓〓責任支出
ヲセラレテ、サウシテ契約ヲ締結セラレルト云フコトニナリマスルト、此十
一條ノ第二項ノ濫用ト云フモノニ依テ、非常ナル弊ガ起リハシナイカト云フ
コトヲ恐レルノデアル此ノ事實上ノ點ニ付テノ政府當局ノ御見込ハ如何デ
アルカト云フコトヲ伺ヒタイ
〔政府委員神野勝之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=12
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013・神野勝之助
○政府委員(神野勝之助君) 江木君ノ御問ニ御答ヘ申上ゲマス、改正案第
十一條ノ如キ場合ニ於テ、豫算關係ハドウナルカト云フ御問ノヤウデアリ
Pv,8是ハ丁度大藏省證劵ノ最高額ヲ豫算ニ於テ帝國議會ノ御協賛ヲ經ルト
同ジヤウナ形式ニ於キマシテ、例ヘバ何百萬圓マデハ此十一條ニ依テ翌年度
ニ亙ル契約ヲ爲スコトヲ得ト云フヤウナ風ニシテ、豫算ニ依テ帝國議會ノ御
協賛ヲ經ル積リデアリマス、併シ其金額ハ其年ノ豫算ノ中ニ編入ハ致サナイ
積リデアリマス、丁度大藏省證劵ノ最高額ヲ極メテ置クト同ジヤウナ形ニ致
シタイト考ヘテ居リマスソレカラ第二ノ御問ハ、若シ責任支出ヲ致シマ
シタナラバ、此規定ガ役ニ立タナイデナイカト云フヤウナ御問ノヤウデゴ
ザイマシタ、責任支出ガ其年ニアリマシテモ、其ノ責任支出ヲ財源トシテ、
直ニ是ガ翌年度ニ亙ル契約ヲ締結スルト云フコトハ出來ナイノデアリマス、
責任支出ハ責任ヲ以テ支出イタシテモ、其責任支出ヲシタル金ヲ以テ、之ヲ
財源トシテ翌年度ニ亙ル契約ヲ責任ヲ以テ締結スルト云フコトハ出來ナイノ
デアリマス、デアリマスカラ御懸念ノヤウナコトハナイト信ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
會計法改正法律案特別委員
伯爵林博太郞君子爵八條隆正君男爵外松孫太郞君
男爵東郷安君若槻禮次郞君勝田主計君
菅原通敬君早川千吉郞君鎌田勝太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、會計檢査院法中改正法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會
會計檢査院法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年二月十七日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
會計檢査院法中改正法律案
會計檢査院法中左ノ通改正ス
第二條中「二員」ヲ「三員」ニ、「八員」ヲ「十二員」ニ、「十七員」ヲ「二十五員」ニ
改ム
第五條中「二部」ヲ「三部」ニ改ム
第十三條第二號ノ次ニ左ノ一號ヲ加へ以下順次繰下ク
三日本銀行ノ政府ノ爲取扱フ現金及有價證劵ノ出納ニ關スル決算
第十四條中「諸項」ヲ「事項」ニ、「各出納官吏」ヲ「日本銀行」ニ改ム
第十六條中「第十三條第三項」ヲ「第十三條第四號ノ」ニ改ム
第十七條中「金庫ノ出納」ヲ「現金物品ノ出納」ニ改ム
第十九條ニ左ノ一項ヲ加フ
前二項ハ會計檢査院ノ檢查ヲ受クル各官廳以外ノモノニ付之ヲ準用ス
第二十條ノ二會計檢査院ハ日本銀行ノ計算ヲ檢査シ正當ナリト決定シタ
ルトキハ其ノ旨ヲ大藏大臣ニ通知スヘシ正當ナラスト決定シタルトキハ
大藏大臣ニ移牒シテ相當ノ處置ヲ要求スルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員橫田千之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=15
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016・横田千之助
○政府委員(橫田千之助君) 本案ハ唯今大藏大臣ニ依テ說明セラレマシタ會
計法ノ改正ニ照應シテ、現行會計檢査院法ニ改正ヲ加ヘムトスルモノデアリ
マス其改正ノ第一點ハ會計法ニ於キマシテ、歲入歳出總決算ノ帝國議會ニ
提出スルコトヲ繰上ゲマシテ、之ヲ翌年ノ開會ノ通常議會ニ提出スルコトニ
シタノデアリマス、之ガ爲ニ增員ヲ必要トスル、次ニハ此ノ改正會計法ニ於
を
キマシテ、國務大臣ノ自由裁量ニ依テ、或條件ノ下ニ隨意契約ヲスル部面ガ
廣ウナッタノデアリマス、此方面ニ付テ會計檢査院ニ於テハ、檢査ハ嚴密ヲ期
サナケレバナラヌ、此二點ヲ必要ト致シマシテ、會計檢査院ニ一部ヲ增設シ、
部長一人.檢査官四人、副檢査官八人ヲ增員スルト云フノガ、增員ノ方ノ理
由ニナッテ居リマス、尙ホ改正會計法ノ國庫金ノ出納ニ付マシテハ金庫制
度ヲ廢シマシテ新ニ國庫預金制度ヲ採用イタシマシタカラシテ、此點ニ照應
シテ、會計檢査院ノ職權事項中、日本銀行カ政府ノ爲ニ取扱フ現金、及ビ有
價證劵ノ出納ニ關スル決算ハ、同院ノ檢査ヲ要スルモノデアルト云フコトヲ
明記イタシタノデアリマス、而シテ會計檢査院ハ各省決算書ノ金額ト、各出
納官吏ノ計算書ノ金額トヲ對照スベキ旨ノ文字ヲ改メマシテ、各省決算書ノ
金額ト、日本銀行ノ計算書ノ金額トヲ對照スベキコトト云フコトニシタノデ
アリマス、次ニ從來金庫ノ出納ニ關スル各省ノ命令ニ付マシテ、會計檢査院
ガ豫メ通知ヲ受ケテ、意見ヲ陳述シ得ルノ規定ガアッタノデアリマスルガ、本
案ハ之ヲ改メマシテ、現金、物品ノ出納ニ關スル各省ノ命令ニ付テハト云
フコトニ規定イタシタノデアリマス、尙ホ從來會計檢査院ニ於キマシテハ、
各官廳ニ對シテ、檢査上必要ナル場合ニ於テハ帳簿其他ノ書類ト云フモノヲ
提出セシメ、辯明書ヲ求メ、或ハ主任官吏ヲ派遣シテ實地檢査ヲ爲スコトガ
出來ルト云フコトニナッテ居ッタノデアリマス本案ニ於キマシテハ此條項ヲ
擴充イタシマシテ、會計檢査院ノ檢査ヲ受クル官廳以外ノモノ、卽チ日本銀
行及ビ政府ヨリ補助金、又ハ特約ノ保證ヲ與フル團體等ニ對シマシテモ、右
檢査方法ト云フモノヲ準用スルコトガ出來ルヤウニシタノデアリマス、其次
ニハ現行金庫制度ノ下ニ於キマシテハ、日本銀行ハ國庫金ノ取扱ニ關シマ
シテ、會計檢査院ノ檢査判決ヲ受ケルト云フコトニナッテ居ツタノデアリマス
ルガ、改正ノ會計法ニ於キマシテハ國庫金ノ出納、政府ノ有價證劵ノ受拂ヒ等
ニ關スル日本銀行ノ責任ト云フモノハ、既ニ大藏大臣ヨリ說明セラレマシタ
通リ、專ラ是ハ民事上ノ責任デアルト云フコトノ趣意ニ則リマシテ、右日本
銀行ノ事務ニ對シマシテハ、單ニ會計檢査院ノ檢査ヲ受ケルニ止メ、其判決
ヲ受クルト云フコトハナイコトニシタノデアリマス、本案ニ於キマシテハ此
趣意ヲ受ケテ、會計檢査院ハ日本銀行ノ計算ヲ檢査シ、正當ナリト決定シタ
ル時ハ、其旨ヲ大藏大臣ニ通知スベシ、正當ナラズト決定シタル時ハ、大藏
大臣ニ移牒シテ相當ノ處置ヲ要求スルコトヲ得ル、斯ウ云フ趣意ニ訂正イタ
シタノデアリマス、最後ニ本法施行ノ期日ハ各條ニ就テ勅令ヲ以テ之ヲ定メ
テアリマスルノハ、本案ハ大體ニ於テ改正會計法ノ實施ニ伴ッテ施行スベキモ
ノデアリマスカラ、會計檢査院職員ノ增員ダケハ、必シモ改正會計法ノ施行
ヲ待タズニ實施イタスノデアリマスガ、其他ノ條項ハ、改正會計法ノ實施ト
竝行シナケレバナラヌモノデアリマシテ、勅令ニ依テ施行期日ヲ一一三ニスル
コトヲ決メタノデアリマス、要スルニ本案ノ趣意ハ改正會計法ノ規定ト關連
シマシテ、檢査院ノ職員ヲ增加シ、其檢査ノ嚴密ヲ期スルト云フコトガ骨子
ニナッテ居ルノデアリマス、然ルベク御協賛ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此ノ特別委員ハ、御異議ガナケレバ會計法改正法
律案ト同一委員ニ付託イタシマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ニ御諮リヲ致シマスノハ、日程第四、第五ハ一括
シテ說明ヲ煩ハシタイト考ヘマス、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フモノアリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君〕 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第四、明治三十九年法律第三十四號中改正法
律案、第五、臨時國庫證劵法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會
明治三十九年法律第三十四號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年二月十七日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
明治三十九年法律第三十四號中改正法律案
明治三十九年法律第三十四號中左ノ通改正ス
第二條中「無記名利札付證劵」ヲ「無記名證劵」ニ、「記名利札付證劵」ヲ「記名
證劵」ニ改ム
第四條中「一箇月間之ヲ停止ス」ヲ「一箇月ヲ超エサル期間之ヲ停止スルコ
トヲ得國債ノ登錄除却ニ付亦同シ」ニ改ム
第九條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ割引ノ方法ヲ以テ發行シタル國債ノ消滅時效ハ五箇年ヲ以テ完成ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
大藏省證劵條例ハ之ヲ廢止ス
參照
明治三十九年法律第三十四號國債ニ關スル法律)
第二條國債ニ對シテハ無記名利札付證劵ヲ發行ス
國債ノ登錄ハ債權者ノ請求ニ因リ之ヲ爲ス此ノ場合ニ於テハ證劵ヲ發行
セス但シ債權者ノ請求アルトキハ記名利札付證劵ヲ發行ス
第四條相續、遺贈及强制執行ノ場合ヲ除クノ外權利ノ移轉ニ因ル國債ノ
登錄ハ其ノ利子仕拂期前一箇月間之ヲ停止ス
第九條國債ノ消滅時效ハ元金ニ在リテハ十箇年、利子ニ在リテハ五箇年
ヲ以テ完成ス
臨時國庫證劵法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年二月十七日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
臨時國庫證劵法中改正法律案
臨時國庫證劵法中左ノ通改正ス
第三條ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣子爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=20
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021・高橋是清
○國務大臣(子爵高橋是〓君) 唯今上程ニナリマシタル二案ニ付マシテ簡單
ニ說明ヲ致シマス、從來國債ニ關シマスル法律ノ外ニ、大藏省證劵條例ト云
フモノガゴザイマシテ、大藏省證劵其他割引ノ方法ヲ以チマシテ發行イタシ
マスル國債ハ、卽チ此ノ大藏省證劵條例ニ依リマシテ、之ヲ適用イタシテ居。ツ
タノデゴザイマス、其結果ハ國債ニ對シマスル取扱方ガ區々ニナリマシテ、所
有者ヲシテ其不便ヲ感ゼシムルコトガゴザイマシタ、依テ今囘會計法ノ改正
ノ機會ヲ以チマシテ、此ノ大藏省證劵條例ナルモノヲ廢シマシテ、サウシテ國
債ニ關スル法規ヲ改正ヲスルコトニ致シタノデアリマス、又法規ノ統一ヲ圖
リマス爲ニ、改正ニ伴ヒマシテ臨時國庫證劵法ニモ改正ヲ加フルコトト致シ
タノデゴザイマス、御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 唯今大藏大臣ノ說明セラレマシタ兩案ノ特別委員
ハ、會計法改正法律案ト同一委員ニ付託イタシマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=22
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023・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第六、鐵道敷設法改正法律案、政府提出、衆
議院送付、第一讀會
鐵道敷設法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年二月十七日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
鐵道敷設法改正法律案
鐵道敷設法
第一條政府ハ帝國ニ必要ナル鐵道ヲ完成スル爲別表ニ揭クル豫定鐵道線
路ヲ調査敷設スル經費ノ豫算ヲ定メ漸次繼續費トシテ帝國議會ノ協贊ヲ
求ムヘシ
第二條豫定鐵道線路ニ該當スルモノト雖一地方ノ交通ヲ目的トスルモノ
ニ在リテハ政府ハ地方鐵道トシテ其ノ敷設ヲ免許スルコトヲ得
第三條豫定鐵道線路ヲ變更シ又ハ豫定鐵道線路中新ニ工事ニ著手スルモ
ノヲ定ムルトキハ鐵道會議ノ諮詢ヲ經ヘシ
第四條鐵道會議ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
明治二十五年法律第四號鐵道敷設法、北海道鐵道敷設法、明治二十七年法
律第六號乃至第十號、同年法律第十二號乃至第十五號、明治二十九年法律
第七十二號乃至第七十七號、明治三十年法律第十一號、同年法律第三十二
號同年法律第三十三號及同年法律第三十五號ハ之ヲ廢止ス
(別表)
本州ノ部
一靑森縣田名部ヨリ大畑ヲ經テ大間ニ至ル鐵道
二靑森縣靑森ヨリ三厩、小泊ヲ經テ五所川原ニ至ル鐵道
三靑森縣弘前ヨリ田代ニ至ル鐵道
靑森縣三戶ヨリ七戶ヲ經テ千曳ニ至ル鐵道
五四
靑森縣三戶ヨリ秋田縣毛馬內ヲ經テ花輪ニ至ル鐵道
六巖手縣久慈ヨリ小本ヲ經テ宮古ニ至ル鐵道
七巖手縣山田ヨリ釜石ヲ經テ大船渡ニ至ル鐵道
八巖手縣小鳥谷ヨリ葛卷ヲ經テ義野附近ニ至ル鐵道及落合附近ヨリ分
岐シテ茂市ニ至ル鐵道
九巖手縣川井ヨリ遠野ヲ經テ高田ニ至ル鐵道
十嚴手縣一戶ヨリ荒屋ニ至ル鐵道
十一巖手縣雫石ヨリ川尻ニ至ル鐵道
十二巖手縣一ノ關ヨリ槻木附近ニ至ル鐵道
十三秋田縣鷹ノ巢ヨリ阿仁合ヲ經テ角館ニ至ル鐵道
十四秋田縣生保內ヨリ鳩ノ湯附近ニ至ル鐵道
十五秋田縣本莊ヨリ矢島ヲ經テ院內ニ至ル鐵道
十六秋田縣十文字ヨリ檜山臺附近ニ至ル鐵道
十七宮城縣氣仙沼ヨリ津谷、志津川ヲ經テ前谷地ニ至ル鐵道及津谷ヨ
リ分岐シ佐沼ヲ經テ田尻ニ至ル鐵道
十八宮城縣松島ヨリ石卷ヲ經テ女川ニ至ル鐵道
十九宮城縣仙臺ヨリ古川ニ至ル鐵道
二十宮城縣仙臺ヨリ山形縣山寺ヲ經テ山形ニ至ル鐵道及宮城縣川崎附
近ヨリ分岐シテ山形縣神町ニ至ル鐵道
二十一宮城縣長町ヨリ靑根附近ニ至ル鐵道
二十二宮城縣白石ヨリ山形縣上ノ山ニ至ル鐵道
二十三山形縣鶴岡ヨリ大鳥ニ至ル鐵道
二十四山形縣楯岡ヨリ寒河江ニ至ル鐵道
二十五山形縣左澤ヨリ荒砥ニ至ル鐵道
二十六山形縣米澤ヨリ福島縣喜多方ニ至ル鐵道
二十七福島縣福島ヨリ宮城縣丸森ヲ經テ福島縣中村ニ至ル鐵道及丸森
ヨリ分岐シテ白石ニ至ル鐵道
二十八福島縣川俣ヨリ浪江ニ至ル鐵道
二十九福島縣柳津ヨリ只見ヲ經テ新潟縣小出ニ至ル鐵道及只見ヨリ分
岐シテ古町ニ至ル鐵道
三十福島縣須賀川ヨリ長沼ニ至ル鐵道
三十一福島縣平ヨリ小名濱ニ至ル鐵道
三十二福島縣石川ヨリ植田ニ至ル鐵道
三十三栃木縣今市ヨリ高德ヲ經テ福島縣田島ニ至ル鐵道及高德ヨリ分
岐シテ矢板ニ至ル鐵道
三十四栃木縣日光ヨリ足尾ニ至ル鐵道
三十五栃木縣鹿沼ヨリ栃木ヲ經テ茨城縣古河ニ至ル鐵道
三十六栃木縣茂木ヨリ烏山ヲ經テ茨城縣大子ニ至ル鐵道及栃木縣大桶
附近ヨリ分岐シテ黑磯ニ至ル鐵道
三十七栃木縣市塙ヨリ寶積寺ニ至ル鐵道
三十八茨城縣水戶ヨリ阿野澤ヲ經テ東野附近ニ至ル鐵道及阿野澤ヨリ
分岐シテ栃木縣茂木ニ至ル鐵道
三十九茨城縣水戶ヨリ鉾田ヲ經テ鹿島ニ至ル鐵道
四十茨城縣常陸大宮ヨリ太田ヲ經テ大甕ニ至ル鐵道
四十一茨城縣勝田ヨリ上菅谷ニ至ル鐵道
四十二茨城縣高濱ヨリ玉造ヲ經テ延方ニ至ル鐵道及玉造ヨリ分岐シテ
鉾田ニ至ル鐵道
四十三茨城縣土浦ヨリ水海道、境埼玉縣久喜、鴻巢、坂戶ヲ經テ飯
能ニ至ル鐵道及水海道ヨリ分岐シテ佐貫ニ至ル鐵道竝ニ境ヨリ
分岐シテ古河ニ至ル鐵道
四十四茨城縣土浦ヨリ江戶崎ニ至ル鐵道
四十五茨城縣古河ヨリ栃木縣佐野ニ至ル鐵道
四十六千葉縣佐原ヨリ小見川ヲ經テ松岸ニ至ル鐵道及小見川ヨリ分岐
シテ八日市場ニ至ル鐵道
四十七千葉縣八幡宿ヨリ大多喜ヲ經テ小湊ニ至ル鐵道
四十八千葉縣木更津ヨリ久留里、大多喜ヲ經テ大原ニ至ル鐵道
四十九千葉縣上總湊ヨリ鴨川ニ至ル鐵道
五十千葉縣船橋ヨリ佐倉ニ至ル鐵道
五十一東京府八王子ヨリ埼玉縣飯能ヲ經テ群馬縣高崎ニ至ル鐵道
五十二東京府大崎ヨリ神奈川縣長津田ヲ經テ松田ニ至ル鐵道
五十三神奈川縣橫須賀ヨリ浦賀ニ至ル鐵道
五十四群馬縣澁川ヨリ中之條ヲ經テ長野原ニ至ル鐵道
五十五新潟縣來迎寺ヨリ小千谷ヲ經テ岩澤ニ至ル鐵道
五十六佐渡國夷ヨリ河原田ヲ經テ相川ニ至ル鐵道
五十七長野縣豊野ヨリ飯山ヲ經テ新潟縣十日町ニ至ル鐵道及飯山ヨリ
分岐シテ屋代ニ至ル鐵道
五十八長野縣小海附近ヨリ山梨縣小淵澤ニ至ル鐵道
五十九長野縣松本ヨリ岐阜縣高山ニ至ル鐵道
六十長野縣辰野ヨリ飯田ヲ經テ靜岡縣濱松ニ至ル鐵道及飯田ヨリ分
岐シテ三留野ニ至ル鐵道
六十一靜岡縣熱海ヨリ下田、松崎ヲ經テ大仁ニ至ル鐵道
六十二靜岡縣御殿場ヨリ山梨縣吉田ヲ經テ靜岡縣大宮ニ至ル鐵道及吉
田ヨリ分岐シテ大月ニ至ル鐵道
六十三靜岡縣掛川ヨリ二俣、愛知縣大野、浦川、武節ヲ經テ岐阜縣大井
ニ至ル鐵道及大野附近ヨリ分岐シテ長篠ニ至ル鐵道竝ニ浦川附
近ヨリ分岐シテ靜岡縣佐久間附近ニ至ル鐵道
六十四富山縣猪谷ヨリ岐阜縣船津ニ至ル鐵道
六十五富山縣八尾ヨリ福光ヲ經テ石川縣金澤附近ニ至ル鐵道
六十六富山縣氷見ヨリ石川縣羽昨ニ至ル鐵道
六十七石川縣羽咋ヨリ高濱ヲ經テ三井附近ニ至ル鐵道
六十八石川縣穴水ヨリ宇出津ヲ經テ飯田ニ至ル鐵道
六十九愛知縣千種ヨリ擧母ヲ經テ武節ニ至ル鐵道
七十愛知縣豐橋ヨリ伊良湖岬ニ至ル鐵道
七十一愛知縣武豊ヨリ師崎ニ至ル鐵道
七十二愛知縣名古屋ヨリ岐阜縣太田ニ至ル鐵道
七十三岐阜縣中津川ヨリ下呂附近ニ至ル鐵道
七十四岐阜縣大垣ヨリ福井縣大野ヲ經テ石川縣金澤ニ至ル鐵道
七十五三重縣四日市ヨリ岐阜縣關ヶ原ヲ經テ滋賀縣木ノ本ニ至ル鐵道
七十六滋賀縣貴生川ヨリ京都府加茂ニ至ル鐵道
七十七滋賀縣濱大津ヨリ高城ヲ經テ福井縣三宅ニ至ル鐵道及高城ヨリ
分岐シテ京都府二條ニ至ル鐵道
七十八京都府園部ヨリ兵庫縣篠山附近ニ至ル鐵道
七十九京都府殿田附近ヨリ福井縣小濱ニ至ル鐵道
八十京都府山田ヨリ兵庫縣出石ヲ經テ豊岡ニ至ル鐵道
八十一奈良縣櫻井ヨリ榛原、三重縣名張ヲ經テ松阪ニ至ル鐵道及名張
ヨリ分岐シテ伊賀上野附近ニ至ル鐵道竝ニ榛原ヨリ分岐シ松山
ヲ經テ吉野ニ至ル鐵道
八十二奈良縣五條ヨリ和歌山縣新宮ニ至ル鐵道
八十三兵庫縣谷川ヨリ西脇、北條ヲ經テ姫路附近ニ至ル鐵道
八十四兵庫縣姫路ヨリ岡山縣江見ヲ經テ津山ニ至ル鐵道
八十五兵庫縣上郡ヨリ佐用ヲ經テ鳥取縣智頭ニ至ル鐵道
八十六兵庫縣有年ヨリ岡山縣伊部ヲ經テ西大寺附近ニ至ル鐵道
八十七淡路國岩屋ヨリ洲本ヲ經テ福良ニ至ル鐵道
八十八鳥取縣郡家ヨリ若櫻ヲ經テ兵庫縣八鹿附近ニ至ル鐵道
八十九岡山縣勝山ヨリ鳥取縣倉吉ニ至ル鐵道
九十岡山縣倉敷ヨリ茶屋町ニ至ル鐵道
九十一廣島縣福山ヨリ府中、三次、島根縣來島ヲ經テ出雲今市ニ至ル
鐵道及來島附近ヨリ分岐シ木次ニ至ル鐵道
九十二廣島縣吉田口附近ヨリ大朝附近ニ至ル鐵道
九十三廣島縣三原ヨリ竹原ヲ經テ吳ニ至ル鐵道
九十四廣島縣廣島附近ヨリ加計ヲ經テ島根縣濱田附近ニ至ル鐵道
九十五島根縣瀧原附近ヨリ大森ヲ經テ石見大田ニ至ル鐵道
九十六山口縣岩國ヨリ島根縣日原ニ至ル鐵道
九十七山口縣岩國ヨリ玖珂ヲ經テ德山ニ至ル鐵道
九十八山口縣德佐ヨリ大井ニ至ル鐵道
九十九山口縣小郡ヨリ大田ヲ經テ萩ニ至ル鐵道及大田附近ヨリ分岐シ
テ於福ニ至ル鐵道
四國ノ部
百香川縣高松ヨリ琴平ニ至ル鐵道
百一愛媛縣川之江ヨリ德島縣阿波池田附近ニ至ル鐵道
百二愛媛縣松山附近ヨリ高知縣越知ヲ經テ佐川ニ至ル鐵道
百三愛媛縣八幡濱ヨリ卯ノ町、宮野下、宇和島ヲ經テ高知縣中村ニ至
ル鐵道及宮野下ヨリ分岐シテ高知縣中村ニ至ル鐵道
百四愛媛縣大洲附近ヨリ近永附近ニ至ル鐵道
百五高知縣江川崎附近ヨリ窪川ヲ經テ崎山附近ニ至ル鐵道
百六高知縣川內附近ヨリ高岡ヲ經テ宇佐ニ至ル鐵道
百七高知縣後免ヨリ安藝、德島縣日和佐ヲ經テ古庄附近ニ至ル鐵道
百八高知縣山田ヨリ蕨野附近ニ至ル鐵道
九州ノ部
百九福岡縣博多ヨリ佐賀縣山本ニ至ル鐵道
百十福岡縣篠栗ヨリ長尾附近ニ至ル鐵道
百十一福岡縣久留米ヨリ熊本縣山鹿ヲ經テ宮原附近ニ至ル鐵道
百十二佐賀縣岸嶽ヨリ伊万里ニ至ル鐵道
百十三佐賀縣佐賀ヨリ福岡縣矢部川、熊本縣隈府ヲ經テ肥後大津ニ至
ル鐵道及隈府ヨリ分岐シテ大分縣森附近ニ至ル鐵道
百十四佐賀縣肥前山口附近ヨリ鹿島ヲ經テ長崎縣諫早ニ至ル鐵道
百十五大分縣中津ヨリ日田ニ至ル鐵道
百十六大分縣杵築ヨリ富來ヲ經テ宇佐附近ニ至ル鐵道
百十七大分縣幸崎ヨリ佐賀關ニ至ル鐵道
百十八大分縣臼杵ヨリ三重ニ至ル鐵道
百十九熊本縣高森ヨリ宮崎縣三田井ヲ經テ延岡ニ至ル鐵道
百二十熊本縣高森ヨリ瀧水附近ニ至ル鐵道
百二十一熊本縣宇土ヨリ濱町ヲ經テ宮崎縣三田井附近ニ至ル鐵道
百二十二熊本縣湯前ヨリ宮崎縣杉安ニ至ル鐵道
百二十三宮崎縣小林ヨリ宮崎ニ至ル鐵道
百二十四鹿兒島縣山野ヨリ熊本縣水俣ニ至ル鐵道
百二十五鹿兒島縣國分ヨリ宮崎縣都城ニ至ル鐵道
百二十六鹿兒島縣國分ヨリ高須、志布志、宮崎縣福島ヲ經テ內海附近
ニ至ル鐵道及高須ヨリ分岐シテ鹿兒島縣川北附近ニ至ル鐵道
百二十七鹿兒島縣鹿兒島附近ヨリ指宿、枕崎ヲ經テ加世田ニ至ル鐵道
北海道ノ部
百二十八渡島國函館ヨリ釜谷ニ至ル鐵道
百二十九渡島國上磯ヨリ木古内ヲ經テ江差ニ至ル鐵道及木古內ヨリ分
岐シテ福山ニ至ル鐵道
百三十膽振國八雲ヨリ後志國利別ニ至ル鐵道
百三十一膽振國京極ヨリ喜茂別、壯瞥ヲ經テ紋鼈ニ至ル鐵道
百三十二膽振國京極ヨリ留壽都ヲ經テ壯瞥ニ至ル鐵道
百三十三膽振國苫小牧ヨリ鵡川、日高國浦河、十勝國廣尾ヲ經テ帶廣
ニ至ル鐵道
百三十四膽振國鵡川ヨリ石狩國金山ニ至ル鐵道及「ペンケオロロツプ
ナイ」附近ヨリ分岐シテ石狩國登川ニ至ル鐵道
百三十五石狩國札幌ヨリ石狩ヲ經テ天鹽國增毛ニ至ル鐵道
百三十六石狩國札幌ヨリ當別ヲ經テ沼田ニ至ル鐵道
百三十七石狩國白石ヨリ膽振國廣島ヲ經テ追分ニ至ル鐵道及廣島ヨリ
分岐シテ苫小牧ニ至ル鐵道
百三十八石狩國比布ヨリ下愛別附近ニ至ル鐵道
百三十九石狩國「ルベシベ」ヨリ北見國瀧ノ上ニ至ル鐵道
百四十日高國高江附近ヨリ十勝國帶廣ニ至ル鐵道
百四十一十勝國上士幌ヨリ石狩國「ルベシベ」ニ至ル鐵道
百四十二十勝國芽室ヨリ「トムラウシ」附近ニ至ル鐵道
百四十三天鹽國名寄ヨリ石狩國雨龍ヲ經テ天鹽國羽幌ニ至ル鐵道
百四十四天鹽國羽幌ヨリ天鹽ヲ經テ下沙流別附近ニ至ル鐵道
百四十五北見國興部ヨリ幌別、枝幸ヲ經テ濱頓別ニ至ル鐵道及幌別ヨ
リ分岐シテ小頓別ニ至ル鐵道
百四十六北見國中湧別ヨリ常呂ヲ經テ網走ニ至ル鐵道
百四十七北見國留邊蘂ヨリ伊頓武華ニ至ル鐵道
百四十八釧路國釧路ヨリ北見國相生ニ至ル鐵道
百四十九根室國厚床附近ヨリ標津ヲ經テ北見國斜里ニ至ル鐵道
〔國務大臣元田肇君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=23
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024・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 鐵道敷設法改正法律案提出ノ理由ヲ陳述イタシマ
ス、現行敷設法ハ明治二十五年ニ制定セラレマシテ、爾來其敷設ニ努力セラ
レテアリマシタ結果、今日デハ僅ニ一二ノ極メテ短線デアリマスモノヲ剰ス
外ハ、或ハ完成ヲ致シ或ハ豫算ノ協贊ヲ經マシテ工事ニ著手スルコトデアリ
マシテ、略〓所定ノ線路ハ終リヲ〓ゲルト云フ程ノ今日ノ場合デアリマス、誠
ニ明治二十五年ニ制定セラレシ以來、斯ノ如ク鐵道ノ敷設ニナリマシタコト
ハ國家ノ爲ニ大慶ノ至リニ存ジマスノデアリマス、然ニ帝國ノ現狀ヲ顧ミマ
スレバ、到底之ヲ以テ滿足スベキデハアリマセヌ、私共ノ考へ、希望ト致シ
マシテハ帝國鐵道ヲ普及スルコト約二萬哩位ニナリマシタナラバ、歐羅巴先
進國ニハ及バズトモ、稍、其後ヘ列スルコトハ出來ル位ニナルデアラウト思ヒ
マス、國家ノ進運ハ是非共サウ云フ域ニ達スルマデニ努メナケレバナラヌト
信ジテ居リマス、勿論既設ノ線路ニ付マシテ改良ヲ致スト云フコトハ、申ス
マデモナイ必要ナコトデアリマス、ソレ故ニ政府ニ於キマシテモ最近ニ於キ
マシテ益〓此方面ニ力ヲ盡シマシテ、數字ノ上ニ於キマシテモ以前ヨリハ遙ニ
多大ノ差ヲ以テ改良事業ニハ盡シテ居リマスガ同時ニ尙ホ新線路ノ建設ヲ
怠ラヌヤウニ致シテ居ル次第デアリマス、デ現行ノ敷設法ハ先刻申上ゲマシ
タヤウニ、既ニ大體ニ於テ濟ミ掛ケテ居ル場合デアリマス、是ヨリ先キ更ニ
輕便式ト稱シマシテ、豫算ノ形式ヲ以テ御協賛ヲ仰ギ奉リマシタ式モ多々出
來テ居リマス、之ニ付マシテハ動モスレバ此形式ノ提出方ニ付テハ御議論
等モアルヤウナコトデゴザイマシテ、此際鐵道敷設ノコトニ關係イタシマシ
テ、法律制度ヲ整理イタシマシテ、最善ノモノヲ提案イタスコトガ必要デア
ルコトヲ確信イタシマス、デ其點ニ付マシテハ昨年ノ特別議會ニ於キマシテ
御院ノ豫算分科會等ニ於キマシテ御希望ガアリマシテ、ドウカ此ノ鐵道敷設
法モ終局ニ近ヅイテ居ルノデアリ、種々ナル議論等モアルコトデアルカラシ
テ、法制ノ整理ヲ圖ッテ、成ベク簡便ナルモノヲ一ツ提案スルヤウニ希望スル
ト云フ御趣意デアッタト私ハ記憶イタシマス、當時私ニ於キマシテモ同樣ノ感
ヲ抱イテ居ル場合デアリマシテ、此ノ御希望ヲ受ケマシタカラシテ、成ベク
御意見ニ應ズルヤウニ整理シタル案ヲ提出シタイト存ジマシテ、先ツ大體斯
樣ナ意味ニ於テ御答ヲ致シテ置キマシテゴザイマス、先刻モ申上ゲマスル通
リニ、今日ノ帝國ノ狀況今後共ニ顧ミマシタ所デ、今日ノ程度ニ建設ヲ止メ
テ置クト云フコトハ到底出來ヌノデアリマシテ、更ニ第二計畫トモ申スベキ
所ノ鐵道網ヲ定メマシテ、而シテ系絡ノ統一、土地ノ開發總テノコトヲ完全ニ
致スト云フコトハ急務デアルト考ヘマシテ、數十年來鐵道部内ニ於キマシテ
調査ヲ致シテ居リマシタ、其線路ノ中、更ニ審議ヲ致シマシテ百四十九ノ線
路ヲ決定イタシマシテ、玆ニ其線路ヲ別表ニ揭ゲマシテ、而シテ敷設法ノ法
文ノ本文ニ於キマシテ、財政ノ方面ニ多大ノ考慮ヲ費サネバナリマセヌカラ
シテ、財政ノ許ス範圍ニ於キマシテ、漸次是ガ豫算ヲ提出イタシテ、議會ノ
御協賛ヲ經テ實行スルコトニ致シタイト云フ規定ニ改メマシタノデアリマ
ス、地方ニ於テ起リマスル所ノ鐵道會社ト、此ノ線路中ニ致シマシテモ、地
方ニ特ニ關係ノ厚イモノデアルカラシテ、之ヲ敷設イタシタイト云フ場合ニ
當リマシテハ、之ニ許可スルト云フコトハ鐵道速成ノ上ニ於テ適當デアラウ
ト存ジマシテ、此點ヲ一箇條加ヘマシタノデアリマス、鐵道會議ニ對シマシ
テハ諮問イタスノデアリマスルガ、線路ヲ變更スルトカ、工事ノ著手等ニ付
テノ重要ナル事項ハ鐵道會議ニ付シマシテ審議ヲ求メ、其上ニ議會ノ協賛ヲ
經テ或ハ變更スルコトガ出來ルト云フコトノ一箇條ヲ設ケテゴザイマス、斯
ク致シテ恰モ法三章ト云フヤウナ有樣ニ簡單ニ致シマシテ、他ノ方面ノ事柄
ノ規定ハ削リマシタ、現行法ニ於キマシテハ年限ガ決メテゴサイマス、ソレ
カラシテ一期線二期線ト云フ區別ガ立。テ居リマス、又公債ニ關係シタ規定モ
ゴザイマス、比較線ノコトモ多少ノ規定ガアッタカト心得マス、現改正案ニ付
マシテハソレ等ノ點ハ削リマシタ、其ノ次第ハ成ホド年限ヲ附シマシテ
ヤルト云フコトハ、計畫ノ最モ正確デアルト云フコトヲ自分モ認メマスル、併
ナガラ國家ノ財政ニ於キマシテハ自ラ緩急ノアルモノデアリマシテ、以前ノ
鐵道敷設法、卽チ現行ノ鐵道敷設法ノ經過ヲ顧ミマシテモ其通リニハ參リマ
セヌ、從ヲテ是ハ年限ト云フコトヲ玆ニ法文ニ現ハスヨリハ、財政ノ許ス範圍
ニ於テ成ベク速ニ完成ヲ圖ルト云フコトニ致シタ方ガ宜シカラウ、寧ロ此方
ガ實地ノコトデ宜カラウト存ジマシテ、其點ハ削リマシタ、公債ニ關係イタ
シマシタ法文ハ他ノ法律ニアリマスルカラシテ、本法ニ定メル必要ハ認メマ
セヌカラ、是ハ削リマシタ、又今囘ノ線路ハ或ハ地圖ノ上デ書イタノデハナ
イカト云フコトヲ言フ者モゴザイマシタガ、是ハ殆ド狀況ヲ知ラヌ人ノ云フ
コトト存ジマス、皆サンニ差出シテハゴザイマスマイガ、鐵道線路調査ノ起
源及ビ沿革〓要ト云フモノヲ一册ニナッテ拵ヘテゴザイマスガ、久シキ間調査
部調査課名前ハ色〓變リマスルケレドモ、鐵道省内ニ於キマシテ此事ノミ
ヲ專ラ調査イタシマスル所ノ部ヲ設ケマシテ、殆ド三十年前後モ全國ノ線路
ヲ調査イタシテ居ッタノデアリマス、其調査イタシテ居リマシタモノヽ中ニ就
マシテ、今囘別表ニ揭ゲタル方ノ線ダケヲ提案イタシタノデアリマシテ、明
治二十五年ニ鐵道敷設法ヲ制定シタ時ノ此ノ何所ヨリ何處ニ至ルト云フ制定
ノ仕方トハ、或ハ文字ノ書キ方ハ同ジデアルカハ存ジマセヌガ、實際ノ計畫
ニ付マシテハ非常ニ違ヒガゴザイマス、實ニ當局ニ於キマシテ部下ノ者ガ
此ノ線路ヲ調ベマスルコトニ付テハ、實ハ心血ヲ注イデ今日マデ幾代ノ內閣
ノ下ニ於テヤッテ來テ居ルノデアリマシテ、其中ヨリ選ビ出シタノデアリマシ
テ、比較線ト云フモノハ故ラニ此處ニ置ク必要ハナカラウト云フノデ、見ば、
今度ノ法律ニハ其ノコトハゴザイマセヌ、先ヅ詳シク申上ゲマスレバマダ諸
所ニ違ッタ點ハゴザイマスル、例ヘバ地方鐵道ヲ許可スルノニ鐵道大臣限リデ
之ヲ許可スルコトノ出來ルト云フコトノ改正モゴザイマスガ、是等ハ別ニ委
員會等ニ於テ十分ノ御質問モゴザイマセウカラシテ其際ニ申上ゲマシテ、先
ヅ大體ノコトニ付テ唯〓ソレダケヲ申上ゲマス、デ斯ノ如ク致シマシテ、第
二ノ········卽チ明治二十五年ノ鐵道敷設法ハ、第一ノ鐵道網トモ云フベキ計畫
ヲ政府ガ示サレタ、而シテ爾來孜々トシテ之ガ完成ニ努メタ結果、今日デハ
其〓ニ就イタ、デ玆ニ第二ノ計畫ヲ樹テナケレバナラヌ場合ニ當リマシテ、
第二囘ノ計畫トモ稱スベキ鐵道網、卽チ今囘ハ種々ノ地方鐵道等ト相俟チマ
シテ、竟ニハ二萬哩ニモ達スベキ所ノ、我ガ鐵道ノ大體ノ規模ト云フモノヲ
完ウスルコトニナラウト云フ鐵道網ヲ、法律ノ上ニ決メテ置ク必要ガアル、
斯樣ニ存ジマシテ、茲ニ提出イタシタ次第デゴザイマス、或ハ鐵道網ト云フ
モノヲ決メテカラニ、ドウ云フ益ガアル斯ウ云フ疑問ヲ受ケタ人モアリマス、
凡ソ家屋ヲ建築イタシマスレバ圖取リガ一番先キデアラウト存ジマス、鐵道
ヲ全國ニ敷クニ付マシテモ、片ッ端カラ少シヅヽヤッテ行クナラバ、非常ニ運
輸ノ連絡、系統ト云フモノハ始終齟齬バカリ致シテイケナイ話デアリマス、
デ玆ニ一定ノ鐵道網ヲ調査審議ノ上ニ決メマシテ、之ニ基イテ漸次鐵道ノ敷
設ニ著手スルト云フゴトハ、最モ必要ナコトデアルコトト確信イタシマシタ
次第デアリマス、又斯ノ如キ多數ノ線路ト云フモノヲ出シテ揭ゲルト云フコ
トハ、或ハ政略的ニ何スルノデハナイカト云フコトヲ衆議院デモ申シマシタ、
是モ此處ニ一言申上ゲテ置キマスガ、是マデノ已ムヲ得ザル仕來リトハ申シ
ナガラ、時ノ政府ガ三本トカ五本トカ四本トカ云フモノヲ隨時ニ持出シテ來
マシテ、御協賛ヲ經テ其時ノ政府ガ實行スルト云フ方法ノ方ガ、却ッテ不都合
ヲ生ズル憂ハアリマスマイカ、今日略〓、是ダケガ必要デアルト云フ線路ヲ三十
餘年ノ調査ニ基キマシテ決定イタシテ、此ノ決定ナルモノハ政府ノミノ決定
デハアリマセヌ、帝國議會ノ御審議ヲ經テ決定イタシテ置キマシタナラバ、何
人ガ他日參リマシテモ、之ヲ變更スル上ニ於キマシテハ又帝國議會ノ御協
贊ヲ經ナケレバ勝手次第ノコトハ出來ナイノデアリマスルカラ、時ノ政府ガ
隨時ニ五本七本出シテ御協賛ヲ求メテ來ルト云フヨリハ、一定ノ鐵道網ヲ設
ケテ此ノ鐵道網ニ向ッテ工事進行ヲ致スト云フコトガ、最モ私ハ適當ナコトデ
アラウト存ジマス、先ヅ大體ニ付テノ提案ノ理由ハ以上ヲ以テ御承知下サル
コトト存ジマシテ此ニ止メマス、何トゾ是モ委員會ニ付セランマシテ、詳細
ナル總テノ點ニ付マシテ御質問ヲ蒙リ、又出來ル限リノ御答辯ヲ申上ゲマシ
タ上ニ、速ニ御協賛相成ルヤウニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) マダ時間ハ早ウゴザイマスガ、通〓者ガ大分ゴザ
イマスカラ、此際休憩ヲ致シマシテ、午後ハ一時三十分ヨリ開會イタシマス
午前十一時五十一分休憩
午後一時三十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=26
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027・松室致
○松室致君 陸海軍軍法會議法外數件ノ小委員會ヲ開キタイト思ヒマスカ
ラ、唯今カラ委員ノ退席ノ御許シヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 松室君ノ小委員會ヘ退席ノ要求ハ許可ヲ致シテ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、是ヨリ通〓順ニ依リマシ
テ質疑ヲ許シマス、辻男爵
〔男爵辻太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=29
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030・辻太郎
○男爵辻太郞君 鐵道敷設法ガ此日程ニ上リマシタ際ニ、私ハ此鐵道ノ軌間
ト云フコトニ付テ伺ヒタイノデス、此問題ニ付マシテハ先日豫算案ガ上程
サレマシタ時ニ、斯波男爵カラシテ御質問モゴザイマシテ、殊ニ技術上、經
濟上、軍事上ノ點カラシテ、御質問ガアリマシテ、盡シテ居ルト思ッテ居リマ
スガ、私ハ又少シク大局ノ上カラシテ鑑ミマシテ、此軌間ト云フコトニ付テ
御質問ヲ致シタイ、私ノ御質問致シタイノハ我ガ日本國ノ鐵道ノ軌間ト云フ
モノヲ統一サルル必要ガアラウト斯ウ考ヘルノデアル、是ハ私ガ統一ト云フ
コトヲ申上ゲルト、我國ノ軌間ハ統一サレテ居ル、斯ウ云フコトガ出ヤウト
思ヒマスガ、私ハ統一サレテ居ラヌト思ヒマス、ソレハ我ガ日本國ハ舊來ノ
日本國ノ如キモノデナシ、新日本ト申シマスカ、或ハ大日本ト申スヤウニ、
此東洋ノ島國デナクシテ、大陸ニマデ延長シテ參ッテ、大ナル日本ニナッテ參フ
タノデアリマス、唯〓デハ日本ハ島國デハナイ、大陸モ含ンデ居ルト云フコ
トニナリマシタノデアリマスカラ、此ノ日本國ノ軌間ヲ統一致シタイ、統
セネバナラヌト云フノガ私ノ考デアリマス、之ヲ政府ガ爲サッテ居ルカ爲サッ
テ居ラヌカト云フコトヲ伺ヒタイ、是デ此軌間ガ何ウ異ッテ居ルカト申シマス
ルト、我ガ內地ノ軌間ト滿洲及ビ朝鮮ノ軌間ト二通リニナッテ居リマス、ソレ
以外ニ輕便鐵道トカ、電氣鐵道ト云フモノガ幾種類モアリマセウガ、ソレハ
別問題ト致シマシテ、滿洲朝鮮ニ於ケル軌間ト我國內地ニ於ケル軌間ト云フ
モノト、二通リアリマシテ統一サレテ居リマセヌ、均一サレテ居リマセヌ、
斯ウ云フコトニナッテ居リマスカラ、是ハドウシテモ同ジモノニ爲サレナケレ
バナラヌト思ヒマス、斯ク申シマスト、我國ハ四面環海、太平洋中ノ孤島デ
アルカラシテ大陸トハ關係ガナイ、從ッテ大陸ノ鐵道ト我ガ內地ノ鐵道トハ沒
交涉ノモノデアルト斯ウ仰セラレルダラウト思ヒマス、併シ是ハ決シテ沒交
渉ナモノデハアリマセヌ、必ズヤ是ハ鐵道ヲ以テ大陸ト日本ト云フモノハ····
···日本ノ本土デゴザイマス是ハ聯絡シナケレバナラヌモノデアラウト思ヒマ
ス、然ラバドウシテ聯絡スルカ、釜山ト下關ノ如キハ距離ニ致シテモ百二十
二哩モアル、之ニ橋ヲ架ケルコトハ至難デアル、隧道ヲ掘ルコトモ亦至難デ
アル、斯ウ仰セラレルニ違ヒアリマセヌガ、併シ是ハ御尤ト私ハ思ヒマス、
橋ヲ架ケルコトソレハ中〓困難デゴザイマセウ、隧道ヲ掘ルコト中〓困難デ
ゴザイマセウ、併シ之ヲ船ヲ以テ渡スト云フコトハ容易ナコトデアル、實、
昨年マデハ私ハ餘程難儀ナコトト思ッテ居リマシタ、併シ茲ニ持ッテ居リマス
外國ノ英字ノ雜誌カラ見マスルト、此事ハ既ニ世界ノ一部分ニ於テ實行セラ
レテ居ル、船ヲ以テ汽車ヲ渡スト云フコトガ出來ル、汽車ハ陸上機關デア
ルガ海ヲ渡ルモノデアルト云フコトガ分リマシタカラ、斯ウ云フ場合ニナリ
マスルト云フト、我國ノ鐵道ハ離島ノ鐵道テアルト云フコトハ言ヘナイ、卽
チ大陸ト聯絡スベキモノデアル、今後我國モ進ミ支那印度、又ソレカラ西比
利亞ノ如キモ軌間ヲ改正サレル場合ニ於キマシノハ、我ガ東京カラシテ世界
寢臺車ニ乘ッタ儘歐羅巴ニ參ル、倫敦巴里ニ達スルト云フコトガ出來ルト云フ
コトハ現實サレベキ事柄デアラウト私ハ思フノデス、假令之ヲ現實サレナイ
ニシマシタ所デ、我國ノ中デ朝鮮ト云フモノガ現今ノ如キ聯絡デハ不十分デ
アル、モウ一步進ンダル所ノ鐵道聯絡ヲ取ラナケレバナラヌト云フコトヲ確
信シテ居ルノデアリマス、私ガ之ヲ考ヘマシタノハ、ソレハ詰リ此ノ外國雜
誌ニ出デ居マスルコトカラシテ可能デアルト云フコトニナリマシタノデ、此
雜誌ニ出テ居リマスコトヲ申述ベマスガ、是ハ歐羅巴ノ戰時中ニ英吉利ト佛
蘭西ノ間ニアリマスル英國ノ海峽、此處ニ渡船ガ行ハレテ汽車ヲ其儘船ニ積
替ヘマシテ英吉利カラ佛蘭西ニ渡シタト云フ事實ガ分リマシタ、是ハ戰時中
ハ祕密ニサレテ居リマシタノデ、玆ニ書イテアリマスノハ戰ガ濟ミマシタカ
ラ發表サレタノデアリマス、何レノ地點カラシテ是ガ行ハレテ居リマスカト
云フト、英吉利ノ方ハ「リッチボロー」、「サウザンプトン」、佛蘭西ハ「カレー」、
「ダンキルク」、、「ヂエップ」ト此三點ニ棧橋ヲ造リマシテ、船ハ第一囘ニ三艘造ッ
タト云フコトデゴザイマス、此船ヲ以デ渡シテ居ルト云フコトガ分リマシタ、
甚ダ其成績ガ良イノデス、其渡船ノ〓略ヲ申上ゲマスルト云フト、三百六十
三尺程ノ長サノモノニ幅ガ六十一尺程デゴザイマス、吃水ハ極ク淺クゴザイ
マシテ、船首ガ九尺デ船尾ガ十尺、排水量三千六百五十四噸、速力ガ十二「ノツ
ト」此船ノ上ニハ線路ガ四本敷イテアル、サウシマシテ鐵道ノ貨車十噸ヲ滿
載シタモノガ五十四輛載セルコトガ出來ル又此外ノ軍事上ノ大砲トカ「タ
ンクレトカ云フヤウナモノハ自由ニ載セラレル、一千噸カラ載セルコトガ出
來ル、サウシマシテ此「リッチボロー」ト「カレー」トノ間ニ於キマシテ二百七
十囘往復シタ其成績ニ依リマスルト、「タンク」ヲ輸出シタノガ六百八十五、
機關車ヲ輸出シタノガ百五十、ソレカラ鐵道ノ車輛ヲ輸出シタノガ六千五百、
此輸出シマシタモノ總體ノ目方ガ十八萬五千八百噸、輸入シマシタモノガ五
萬九千噸、此中ニハ口徑十四吋ノ大砲、其目方ガ砲架共三百噸モアルヤウナ
モノモ這入ッテ居々斯ウ云フ成績ナンデス、而シテ此聯絡ガ出來マシタ爲ニ
今マデ三晝夜モ掛ッテ船カラ汽車ニ積替ヲシテ居。ッタモノガ、僅ニ二十分デ船
ガ著シマシテ、之ニ積ンデサウシテ船ノ燃料マデ積載セテ出シテ居ル、三晝
夜掛ッタモノヲ僅ニ二十分、三十分アレバ十分デアルト斯ウ云フコトガ書イテ
アル、之ヲ以テ考ヘマスト我ガ日本ノ鐵道ト云フモノハ、決シテ孤立ナモ
ノデナイ、日本ト朝鮮トノ間ノ聯絡ハ、鐵道ノ聯絡ト云フモノハ自由ニ取レ
ル、斯ウ云フコトヲ私ハ考ヘル、問題ハ唯經濟ノ問題デアル、斯ウ云フコト
デアル、斯樣ニナッテ參リマスト云フト、我ガ朝鮮モ段々ト開發サレマスレバ
進步イタシテ來マス、之ニ於キマスル物貨ノ集散モ益〓進ンデ來マスルニ違ヒ
ナイ、我ガ日本內地トノ鐵道迚絡ト云フコトハ、今後大問題ダラウト思ヒマ
ス、此時ニ當リマシテ斯樣ナコトガ出來ルニモ拘ハラズ、軌間ガ異ッテ居リマ
スルト、我ガ内地ノ車ガ朝鮮ニ屆クコトガ出來マセヌ、朝鮮ノ車ガ又我ガ內
地へ這入ルコトガ出來マセヌ、茲ニ關門ガ出來テ居ル、甚ダ不便ナモノニナ
ル、其時ニハ我ガ內地ノ鐵道ヲ朝鮮ノ如キ鐵道ニスルカ、然ラザレバ朝鮮ノ
鐵道ヲ內地ノ如キ鐵道ニスルカト云フ問題ガ必ズ起ル、是ハ今後長キ未來ヲ
待タズ二三十年ノ間ニハ必ズ起ラウト思フ、然ニ今囘御提出ニナリマシタ
其敷設法ニ依リマスト、百四十九線路モアリマスル大計畫ノ鐵道敷設法デゴ
ザイマス、是ハ線路モ何デモ六千哩以上アルト云フコトデゴザイマス現在
ノ既成線ノ國有鐵道ガ六千四百二十二哩、是ト殆ド髣髴タル位アル、之ヲ今
後二三十年モ掛ッテ御拵ヘニナル、サウシマスト云フト、唯今ノ既成線ノ倍カ
ラノモノガ出來マス、此外ニ今鐵道省ガ御著手ニナッテ居ル國有鐵道ト云フモ
ノハ三千二百九十一哩、是モ出來マス、約二萬哩カラノモノニナラウト思ヒ
マス、之ヲ改築シナケレバナラヌト思ヒマス、是ハ中〓大問題デゴザイマス、
然ニ現在斯ウ云フコトガ起ラウト云フコトヲ豫期シテ居ルニ拘ラズ、此鐵
道ノ大方針デアル軌間ト云フコトヲ、政府ハ御極メナサラナイデ、サウシテ
唯無暗ニ鐵道ノ線路ヲアチラノ山ノ中、向フノ山ノ中ヘ盛ニ御引張リニナッ
テ、二三十年ノ後ニハ此改築ト云フコトハ大問題ニナル、或ハ至難ナルコト
ニナリハセヌカ、然ニ鐵道省ノ方カラ御發表ニナッテ居リマスル、此ノ大村建
設局長ガ、軌間ノ變更ハ不必要デアル、是ハ多分政府ノ御意見ダラウト思ヒ
マスガ、我國ニハ隧道ガ多過ギル爲ニ出來ナイ、改築スルト隧道ガ多過ギテ
出來ナイ、其金ハ幾ラカト云ヘバ約一億圓出來レバ全部改築ガ出來ル、私
一億ハ掛カラヌト思ヒマス、此隧道ノ如キハドッチ道、改築シナケレバナラヌ
モノデアル、現在ノ軌間デモ是ハ改築スベキモノダラウト思ヒマス、併シ斯
ウ云フコトハ先ツ論ジマセヌガ、一億掛カルモノトシマシタ所デ、是ハ唯今
現ニ每年御拵ニナッテ居ル新線ヲ一年カ一箇年半或ハ二年位御止メニナレバ、
此位ノ費用ハ出ル、新線ノ建設ヲ一年カ二年辛抱ナスッテ、サウシテ改良ヲ爲
サレバ、斯ウ云フ軌間ノ改良ト云フコトハ出來ル、然ニ此片方ノ大陸ト日本
トノ聯絡ト云フモノハ近キ未來ニ於テ必ズ起ッテ來ルノデゴザイマス、之ニ
向ッテ軌間ガ廣イノガ宜イトカ、狹イノガ宜イトカ、惡イトカ云フヤウナ問題
ハ別トシマシテ、ドウシテモ是ハ一致サセネバナラヌト云フコトハ必ズ起ル、
之ヲ政府ハ如何ニ御考ヘニナッテ御出ニナルカ、此ノ大計畫ヲ御提出ニナッタ
時ニ、私ハ此軌間ノ問題ト云フモノヲ、先決問題トシテ御考ヘニナラナケレ
バナラヌコトト思ヒマス、此軌間ハ如何ニ今後御定メニナル積リデアルカ、
現在ノ世界ノ沒交渉、我國ハ鐵道モ亦孤立ト云フコトデ、世間ニ孤立ノヤカ
マシイ世ノ中ニ尙ホ是マデモ孤立サセルト云フコトデゴザイマスルカ、或ハ
改築ナスッテ世界ノモノト一致サセル、斯ウ云フコトデゴザイマスカ、是ガ私
ノ伺ヒタイ要點デゴザイマス
〔國務大臣元田肇君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=30
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031・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 唯今ノ辻男爵ノ御尋ニ御答ヘ申上ゲマス、男爵ノ御
質問ハ簡單ニ申上ゲマスレバ、帝國ノ鐵道ヲ今日ノ所謂狹軌ト云フ有樣ニシ
テ行クカ、更ニ所謂廣軌ナルモノニ改築スルト云フ必要ハ無イカト云フコト
ニ止ルト思ヒマス、ソレニ附加ヘテ、世界ノ大勢、新シキ戰時ノ設備等ノ一例
ヲ御引キニナッテ、廣軌ニシナケレバナラヌト云フ御主張デアッテ、政府當局ハ
如何ニ御考ヘカト云フ御質問ト心得マス、其軌間ノコトニ付マシテハ、昨年
ノ特別議會ノ時ニモ、私ハ屢〓申上ゲテ置キマシタ、當議會ニナリマシテモ何
カノ機會ニ於テ既ニ言明ヲ致シテ居ルノデアリマス先日ノ斯波男爵ノ御尋
ニモ御答ヲシテ置キマシタ、最早彼是申上ゲヌデモ當局ノ意志ノ存スル處
ハ御了解ニナッテ居ルコトト存ジマス、併シ其道ニ最モ御〓究ノ深キ辻男爵ノ
御尋デゴザイマスルカラ、モウ一應簡單ニ申上ゲマスルガ、成程世界ノ歐
羅巴アタリノヤウナ軌間ニシタラバ、彼是交通ハ便宜ニナルコトデゴザイマ
セウガ、辻男爵ノ仰セラレマシタ通リニ、後ハ是ハ經濟問題デアルト云フ御
話、財政問題デアルト云フ、餘アルノ財政ガアルノデアリマスルナラ、如何
ナル鐵道ヲ築クモ宜シウゴザイマセウ、私共ノ執。テ居リマスル見解ハ日本ニ
於テマダ決マラヌト仰セラレルケレドモ、日本內地ニ於テ軌間ハ決マッテ居
ル、卽チ東海道線ヲ初メト致シマシテ、所謂狹軌ト云フコトニナッテ今日マデ
動カヌデ居ルノデアリマス、中ニハ極ク粗末ナ鐵道トハ稱セラレマセウガ、
地方ノ鐵道等ニハソレハ及バヌノモアリマスケレドモ、大體ニ於テ國有鐵道
ノ軌間ト云フモノハ決マッテ居ルノデアリマス、決マラヌ決マラヌト云フコト
ヲ屢〓、承リマスガ、決マッテ居ル、是ハ事實デゴザイマス、此決マッテ居ルモノ
ヲ更ニ改メテ廣軌ニ改築スルノ必要アリヤト云フコトハ問題デアラウト思
フ、私共ノ意見デハ屢〓申上グマスル通リニ、單ニ東海道ノ一部分若クハ馬關
マデ行クト云フモノヲ廣軌ト云フモノニ致シテ見タ所ガ、內地スラ彼是聯絡
ガ出來ナクナッテシマフ、日本ハ島國デアルカラ、大陸ニ關係ナイト云フカ知
ラヌガ、大陸ト離レテシマッテハイカヌト云フ御說デアリマスガ、大陸マデハ
行カヌ前、日本ノ內地デモ聯絡ガ付カナクナッテシマフコトニナルノデアリマ
ス、然ラバ之ヲ改築シテシマフカト申シマスルト、是ハナカ〓〓容易ナルコ
トデハナイ、併ナガラ運輸ノ輸送力ガドウシテモイカスト云フコトデアリマ
スレバ、是ハ一考シナケレバナラヌガ、此點ニ於キマシテハ、改良ニ改良ヲ
加ヘマスレバ、輸送力ハアルト云フコトヲ、確信ヲ以テ今日マデヤッテ居ルノ
デアリマス、而シテ全體ノ線路ニ對シマシテ、廣軌ニ變へテシマフト云フコ
トニナッタナラバソレハ大變ナコトデアリマセウ、男爵ノ仰セラレマスルヤ
ウナ輕々ナコトトハ考ヘラレマセヌ、要スルニ先般モ公式ノ斯ウ云フヤウナ
席デハアリマセメケレドモ、同樣ノ論ヲスル人ガアリマシテ、其論ヲサレル
御方ガ、私共當局ノスルコトニ付テ疑問ヲ挾マレルコトデアリマスルカラシ
テ、結局其疑問ヲ挾マレル人ハ、今日ノ建設ハ中止ヲ致シテシマッテ、サウシ
テ廣軌ノ出來得ル限リニ總テノ財源ヲ擧ゲテ是ニ打込ンデシマッテ行クト云
フ御論ニ歸著ヲ致シマセヌカト問ヒマシタ所ガ、其通リニナルト其人ノ言分
デゴザイマシタ、當局ハ改良ニ於キマシテハ最善ノ注意ヲ拂ッテ居リマス財
源ノ上カラ申シマシテモ、既往ノ内閣ヨリハ以上ノ金ヲ出シテ居ル、金ヲ出
シテ居ルト申シテハ語弊ガアリマスルガ、經費ノ御協賛ヲ仰イデ居リマスノ
ガ、十年度豫算ヲ御覽下サレバ、一ニ對スル三ト云フ位ナ比較ノ請求ヲ致シ
テ居リマス、是マデノ以前ニ溯リマシタナラバ、是ダケノ差ヲ請求イタシ居
ルモノハ餘リ見受ケナイ、或ハ絕無カト私ハ思ッテ居リマス、斯ク改良ニ出來
ル限リノ力ヲ盡スト同時ニ、矢張鐵道ノ普及ト云フコトハ、今日ノ帝國內ノ
狀況ガ最モ必要デアルト云フコトヲ認メマシテ、財政ノ許ス範圍ニ於キマ
シテ、建設ニ力ヲ入レルコトニ又併セテナッテ居ルノデアリマス、此點ガ御見
解ノ相違、財源ハ見ヌコトハアリマスマイガ、先ヅ內地ノ方ノ普及ハ止メテ
置テ、サウシテ東海道線トカ或ハ門司トカト云フヤウナ幹線等ハ差當リ廣軌
ニ變ヘテシマヘ斯ウ云フコトニ歸著スルト思ヒマスガ、當局ニ於キマシ
テハ、ソレハ妥當ナル措置デハナイ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、無論
御見解ノアル所ハ辻男爵ニ限リマセズ、外ニモ色ミ深厚ナル〓究ヲサレタ御
方ガアルノデアリマス、我〓ノ方モ又斷ジテ唯一場ノ速斷ヲ以テ左樣ナコト
ヲ決シタ譯デアリマセヌ、是ヨリ以上ハ議論ニ亙ルコトデアリマスカラ、當
局ノ趣旨ノアル所ダケヲ辯明イタシテ、御了解ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=31
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032・辻太郎
○男爵辻太郞君 唯今當局大臣カラノ御說明ニ依リマスト、經濟上ノ點カラ
シテムヅカシイ、斯ウ云フ御說明ノヤウニ承リマシタ、經濟上カラムヅカシ
イト云フコトニナレバ、政府ニ於キマシテハ此軌間ト云フモノニ付テノ問題
ハ御調査ニナッテ居ッタト見ナケレバナラヌ、御調査ニナッテ居リマシテ、卽チ
幾ラ掛ルカラ經濟上ムヅカシイ問題ト、斯樣ニ御考ニナッタコトト思ヒマスカ
ラ、其內容ヲ承リタイ、ソレデ幾ラ掛ケレバ日本內地ノ鐵道ノ改築ガ出來ル
カ、其數字ヲ承リタイ、ソレニ依テ經濟上困難デアルヤ否ヤト云フコトヲ極
メタイト思ヒマス、現ニ經濟上困難デアルト云フコトハ、金高ガ多イカラシ
テ困難デアルト云フコトデゴザイマセヌ、其モノニ對シテ金高ガ多イカ少ナ
イカト云フコトニ歸著スルノデアリマス、小使ヲ雇フニ五十圓ノ給料ハ多ウ
ゴザイマス、併シ我ガ八八艦隊ニ十萬ト云フ金ハ此少ナ金デアル、此ノ鐵道經
濟ニ對シテハ、是ダケデハ比較上甚ダ困難ト云フコトガ分リマセヌ以上ハ、
經濟上困難デアルカナイカ分リマセヌ、願クハ政府ガ御調査ナサレタ軌間改
良ニ付テハ是ダケノ金高ガ掛ル、故ニ困難デアルト云フ數字ノ御說明ヲ承リ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=32
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033・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 全體ニ通ジテ軌間改良ニ幾ラ費用ヲ要スルカ、正確
ニソレヲ承リタイト云フコトデアリマス、是ハ私ガ當席ニ於キマシテ直ニ御
返事ヲ致スコトハ出來マセヌカラ、取調ベテ御返事ヲ致スコトニ致シマス、
併ナガラ是モ輸送ニ屬スルコトカト存ジマスガ、先日ドナタカノ御質問ガゴ
ザイマシタ、一哩改築スルニ千圓デアルト云フヤウニ私ハ聞キマシタケレド
モ、是ハ多分私ノ耳ノ聽違ヒデアラウカト考へマシテ、其事ニ付テハ一言モ
申上ゲマセヌ、併ナガラ或人ノ書面ニサウ云フコトガ書イテアルノガアルト
云フコトデゴザイマスカラ、サウスレバ聽違ヒデモナカッタト感ジマスガ其
事ハ暫ク措キマシテ、先ヅ大體ニ於テ「スリーバー」ヲ一哩取換ルニハナカナ
カ輕易ナ費用デアリマセヌ、ソレデ何程經費ガ全體ニ對シテ要スルカ、調査
ノ結果ヲ報告シロト云フコトデアリマスガ、私ハ唯今卽答ガ出來マセヌ是
ガ即答ガ出來マセヌデモ、大體ニ於テハ大凡ドノ位ノ費用ガ掛ルト云フコト
ハ御了解ニナラレルコトデアラウト思ヒマス、勿論我〓ハ此點ニ付テ識見淺
薄ニシテ、十分ニ其事ハ了解イタシマセヌガ、眼ノアタリ見マスト、枕木一哩
取換ヘル其費用デモナカ〓〓少ナクナイ金デアル、總テヲ廣軌ニ改築スルト
ナッテハ多大ナル費用ヲ要スルコトハ無論デアリマセウ、又廣軌ノ方ヲ御主張
ナサル方ニ私ハ個人トシテ聞キマシタガ、費用ハ要ルガ、政府ハ新ナル線路
ヲ普及サセルヤウニ承知シテ居ル、廣軌ニ改ムルガ宜イト云フ議論ノヤウニ
私ハ其方ニ承リマシタガ、玆ニ至ッテ建設ハ中止シテ置テ、廣軌ノ改良ニノ
ミ力ヲ盡スカ、又今日ノ軌間ニシテ改良ハ無論輸送力ガ足ルヤウニ努力イタ
シマスガ、同時ニ普及モ圖ルガ宜イカト云フコトガ論ノ岐ルル所デ、我〓ハ
普及ト併セテヤルガ宜イト云フ見解ヲ執ッテ居ルノデアリマス、數字ノ點ハ
唯今御答ガ出來マセヌカラシテ、此邊ハ御了承ヲ願ヒマス、數字ノ點ハアト
ヨリ纒メテ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=33
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034・辻太郎
○男爵辻太郞君 私ハ鐵道大臣ニ伺ッテ抽象的ノ御說明ヲ願ッタノデアリマセ
ヌ、御調査ガアルナラバ、其ノ御調査ノ結果何百何十萬圓掛ルト云フ、斯ウ
云フ御說明ヲ承リタイ、若シ御調査ガナケレバ御調査ナサレタイノデアル、
若シ御調査ナサレルナラバ、速ニ御調査ヲナサレテ、速ニ其金高ノ御返事ヲ承
リタイ、決シテ抽象的ニ枕木ガ太イトカ細イトカ、太イ枕木ト細イ枕木ト使
フコトハ是ハ當局技術者ノ考ニ依ルノデ、私ハ政府ノ計畫デハ幾ラ掛ルト云
フコトヲ承レバ、ソレデ宜イノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=34
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035・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 其正確ナル數字ハ唯今卽答ハ出來マセヌ、取調ベテ
申上ゲルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=35
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036・辻太郎
○男爵辻太郞君 速ニ當議場デ其數字ヲ承リタイト思ヒマス、成ベク是ハ期
日ヲ切ッテ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=36
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037・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 成ベク速ニ取調ベテ申上ゲルコトニ致シマス
〔內田嘉吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=37
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038・内田嘉吉
○内田嘉吉君 私ハ唯〓議題ト相成ッテ居リマスル鐵道敷設法改正法律案ノ
件ニ付テ三箇ノ質問ヲ致シタイノデゴザイマス、午前ニ於キマシテ鐵道大臣
ハ本案ノ提出ニ付マシテノ理由ノ御說明ガゴザイマシタ、注意ヲ拂ッテ聽
取ッテ居リマシタガ、私ガ御尋ヲ致シタイト云フ點ニ付マシテハ、不幸ニシ
テ御說明ガ無カッタヤウデゴザイマスノデ、暫時時間ノ御割愛ヲ願ヒマシテ、
玆ニ質問ヲ致シテ其理由ヲ述ベタイト存ジマス、私ノ質問ハ三ツゴザイマ
スガ、其第一ハ鐵道敷設法改正法律案ノ本期議會ニ提出セラレタル理由如何、
此問題ヲ第一ニ御尋イタシタイノデゴザイマス、政府ハ昨年ノ臨時議會ニ
鐵道敷設法ニ改正ヲ加ヘラレテ、五ツノ線ヲ御加ヘニナッタ、サウシテ豫算ニ
於テ十年計畫ヲ御定メニナッテ、議會ノ協賛ヲ經ラレタノデアリマス、今朝元
田鐵道大臣ハ現行敷設法ハ二十五年前ノ制定デアル、其線路ノ殆ド大部分ハ
敷設シ終ッタノデ、餘ス所ガ少ナイノデアルカラ、本案ヲ提出シタト云フヤウ
ナ御說明ニ聽取ッタノデアリマス、且ツ其ノ敷設法ノ改正案ニ列擧シテアル所
ノ線路ハ三十年來ノ御調査デアル、斯ウ云フ御話デアルノデ、其ノ御說明ヲ
綜合シテ見マスルト、此事柄ハ既ニ昨年ノ臨時議會ニ於テ敷設法ノ改正ヲ御
提案ニナッタ時、既ニ御承知ニ相成ッテ居ルベキ筈デアル、當然御承知ニ相成。ツ
テ居ルベキ筈デアリマシタニ拘ラズ、昨年ハ一部改正ヲ加ヘラレマシテ、本
年ハ更ニ敷設法ヲ御提案ニナッタノデゴザイマス、若シ此事實ガ既ニ御分リニ
ナッテ居ルトスレバ、昨年改正ヲ加ヘラレル際ニ併セテ全部ノ御改正ヲ御提案
ニナッタラ如何デアッタラウカト云フ考ガ起ルノデアリマス、昨年ハ五線ヲ追
加サレマシテ、十年計畫ヲ定メラレタノデゴザイマス、其邊ノ御消息ハ鐵道
大臣ガ當時御就任日淺クシテ、或ハ御判斷ヲナスノニ時ガ無カッタ、斯ウ云フ
理由カトモ私ハ考ヘマスルガ、先程伺ヒマスルト云フト、五ツヤ六ツノ線ヲ
從前ハ度々追加シタリナゾシテ改正ヲ加ヘラレタノデアルガ、ソレハ甚ダ宜
シクナイカラシテ今般ハ三十年來ノ調査ノ結果ニ依テ、茲ニアル所ノ澤山ナ
線ヲ揭ゲラ敷設法ノ改正ヲ企テタノデアル、斯ウ云フ御說明デゴザイマシタ
ガ、私ハ昨年丁度此提案ノアリマシタ際ニ當議場ニ出席スルコトガ出來ナカッ
タノデアリマス、當時ノ大臣ハドナタデアッタカ解リマセヌガ、伺ッテ見ルト
云フト元田鐵道大臣デ御出デヾアッタヤウニモ聞及ブノデゴザイマスルガ、サ
ウ致シマスルト、唯〓御批評ニ相成ッタ所ノ前ニシタコトガ惡イト云フコト
ハ、卽チ過ヲ改ムルニ憚ルナカレト云フノデ、大ニ七筒月カ八箇月以內ニ此
過ヲ御改メニナッタモノト認メテ差支ナイノデゴザイマセウカ、是ハ私ハ先程
從前ノ敷設法ニ對シテ種々御非難ガアリマシタカラ、其事ヲ茲ニ一言伺ッテ見
タイト考ヘタノデゴザイマスル、併ナガラソレハ何レニ致シマシテモ、本年····
···既既昨分分テ居ッタ計畫デ昨年御提案ニナラズシテ、本年ニナッテ御提案ニ
ナッタト云フコトニ付テハ、何カ他ニ理由ガ無イノデハアルマイカト考ヘルノ
デゴザイマス、先程元田大臣ハ衆議院ニ於テ黨派上ノ關係ガアルカト云フヤ
ウナ說ガアッタト云フノデ、左樣ナコトハ無イト云フコトヲ御辯明ニナリマシ
タ、私ハ此議場ニ於テ原總理大臣ヨリ屢〓現內閣ハ公利公益ヲ主トセラレルコ
トノ御辯明ヲ伺ヒマシテ、無論ソレヲ信ズルモノデゴザイマスカラシテ、是等
ヲ以テ本案提出ノ理由ナドトハ毛頭考ヘナイノデゴザイマスル、併ナガラ既
ニ昨年御提案ガアッタ際ニ御了解ニナッテ居ッタコトヲ、本年ニ至ッテ御提案ニ
ナリマシタト云フコトヲ、而モ其事ハ三十年來ノ御調査デアルト云フ御話デ
ゴザイマシテ、何等カノ理由ガ特ニ存在シテ居ルモノト考ヘマスノデ、御差
支ナイ限リ、元田大臣ヨリ特ニ其理由ノ御辯明ヲ伺ヒタイノデゴザイマス、
第二ハ、本案ガ可決セラレ········唯〓御提案ニナッタ敷設法ノ改正案ガ可決サレ
マスル場合ニハ、之ヲ實施ナサル方法ハ如何デアリマスルカ、イツヨリ之ヲ
御始メニナッテ、イツマデニ之ヲ終ラレルト云フ御考デアルカ、ソレヲ伺ッテ
見タイノデゴザイマス、今朝ノ提案ノ際ニ於ケル御說明ニモ又辻男爵ノ御質
問ニ對スル御答ノ中ニモ、財政ノ都合ニ依テ之ヲ實施スルノデアルト云フコ
トノ御辯明ガゴザイマシタ、私ハ提案ノ理由トシテハ餘リニ漠トシテ居ルデ
ハナイカト云フ疑ヲ懷イテ居ルノデゴザイマス、本案ニ揭グル所ノ線路ハ百
四十九線、其哩數ハ六千三百哩ト云フコトニ伺ッテ居リマスル、誠ニ計畫ト致
シマシテハ厖大ナル計畫デアル、大切ナル計畫デアルト考ヘマスノデゴザイ
マスル、今囘御提案ニナリマシタ改正法案ニ於キマシテハ百有餘ノ線ノ
名前ヲ一々列擧ヲ致シテアリマス、從前ノ法律ニ一期線トカ、二期線トカ云
フコトノ區別ヲ付ケタノハ面白クナイカラシテ、線路ノ名前ヲ揭ゲテ豫算ノ
都合ニ依テ·······財政ノ如何ニ依テ之ヲ定メルト云フヤウナ御話デゴザイマシ
ク、而モ先キニモ申述ベマシタヤウニ、元田大臣ハ年々或ハ時々再々五線六
線ヅツノ追加ヲスルト云フコトハイカヌト云フコトデゴザイマスガ、唯今ノ
此提案ノ趣旨、卽チ今朝ノ御說明ニ依テ見マスルト、モウ一層此計畫ガ不確
定デハナイカト云フ感ヲ持ツノデゴザイマス、ナゼト申シマスレバ豫算上ノ
都合ト云フノデアル、百四十有餘ノ線路ノ何レヲ先キニシテ、ドレヲ後ニ
スルカト云フコトノ緩急順序等ノ御考モ無シ、又年ニ依テドレダケノ線ヲ御
實行ニナルカト云フコトモ不確定デアル、從前ノ敷設法ニ於テハ少クモ金額
ト線路ガ一期デアルトカ、二期デアルトカ云フヤウナ區別ハ示シテアッテ、本
案ノヨリモ其點ニ於テハ稍〓明確ナ規定ガアッタヤウニ考ヘルノデゴザイマス
ル、然ニ今囘ノ案ノ如ク、其事モ一期二期ノ區別、若クハ金額ニ付テノ御定
メモ無クシテ、是ハ時々ノ決定ニ俟ツト云フコトデアリマスルト、此法律ニ
之ヲ定メル必要ハナクシテ、寧ロ豫算ニ於テ之ヲ御決メニナッテ少シモ差支ナ
イデハナイカ、唯線路ヲ擧ゲテ置クト云フコトハ鐵道敷設ト云フコトガ地方
ノ人心ニ影響スルコトノ重大ナルコトカラ考ヘテ見マスルト、其都度矢張
年々若クハ豫算ノ編纂ノ時期ニ當リマシテ、地方カラ運動シテ是非自分ノ地
方ノ線路ヲ擧ゲテ吳レ、豫算ニ組ンデ吳レト云フコトヲ申述ベルヤウナ、却
テ繁雜ナ手續ヲ引起スヤウナコトガナイノデゴザイマスカ、之ニ對シテ鐵道
大臣ハ如何樣ニ御考ニナリマスルカ、其考ヲ伺ヒタイ、私ハ思フニ鐵道大臣
ハ極メテ公平ニ御處置相成ルコトト承知イタシテ居リマスノデ、是ハ御腹案
トシテ何カイツカラ始メテイツ終ルト云フヤウナ御計畫ガアルノデアラウ、
ドウゾ本案ニ贊否ヲ決スル上ニ於キマシテ、大變必要ナコトデゴザイマスカ
ラ、大體ニ於ケル御腹案ヲ御示シヲ願ヒタイト思ヒマス、唯漠然線路ノ名ヲ
擧ゲテ豫算ノ決定ニ任セテ時々施行スルト云フヤウナコトデハ、了解イタス
コトハ出來マセヌ、必スヤ御腹案ガアラウト思フノデアル、アルト致シマス
レバドウゾ御示シヲ願ヒタイノデゴザイマス、又此計畫ヲ御實行ニナルノハ
唯〓定ッテ居ル所ノ十年計畫トドウ云フ關係ヲ以テ仕事ヲナサイマスカ、十年
計畫ノ實施ハマダ是カラ先九年十年········約十年モアリマス、又本年ハ十年
計畫ガ定マリマシテ一年モ經タナイ位ナ際デゴザイマスノデ、之ニ對シマシ
テ建設費ダケデモ約五億萬圓ノ金ヲ要シ、大分多大ナ仕事ヲサレルノデアル、
其外ニモ改良ノ仕事モアリマシテ、鐵道省ニハ立派ナ技師ガ澤山御出デニナ
リマスカラ、能率モ從ッテ高クシテ、仕事ヲナサル上ニ於テ一向差支ナイカモ
知レマセヌガ、或ハ私ハ恐ル、此技師ノ方〓ガ足リナイ、ソコヘ持ッテ行ッテ
是ダケノ大キナ六千三百哩ノ御計畫ヲナサルト云フ、重複スル場合ニハ人ヲ
如何ニ御處置ニナリマスルカ、技師ヲ如何ニ御養成ニナリマスカ、是等ノ問
題ガアラウト思フ、其邊ノ御準備ハドウデアリマセウカ、果シテサウ云フヤ
ウニ重複シテ仕事ノ上ニ運ビガ困難ヲ致スカラ、是ハ唯今ノ十年計畫ガモット
進行シタ後ニ於テ、數年ヲ經タ後ニ實行スルノダト云フ思召デアルト致シマ
スレバ、唯今此ノ敷設法ノ改正案ヲ御提出ニナル理由モ無シ、我〓ガ尙ホ之
ヲ懸案トシテ考ヘテ置テ然ルベキ問題デアル、私共ハ鐵道敷設法ノ重要ナ
ルコトヲ能ク了承ヲ致シテ居ル積リデゴザイマス、決シテ此案ニ對シテ、此
案ノ如キモノガ提案サレテ之ヲ論議ヲ致スコトニ付テハ何等異議ハ持チマセ
ヌガ、唯今申述べタヤウニ、十年計畫ナルモノガ現ニ存在シテ居ル、其所ヘ
のは
持ッテ又此厖大ナ六千三百哩ノ豫定案ヲ御提出ニナルト云フコトノ理由、卽チ
之ニ對シテ如何ニ之ヲ御處置ニナル、ドウ云フ風ニ御實行ニ相成ルカ、其時
期ト竝ニ方法ヲ伺ヒタイノデゴザイマス、第三ハ本案ノ實施ニ對スル財源ハ
如何ト云フ問題デアリマス、政府ハ昨年臨時議會ニ於キマシテ、鐵道敷設法
ノ改正ヲシテ五線ヲ加ヘラレ、其外ニ輕便鐵道ニ付マシテ御提案ニナッタモノ
モゴザイマスルガ、兎ニ角豫算ノ上ニ於キマシテ、十年計畫ヲ提出シテ御定
メニナッタノデアル、而シテ唯〓ノ計畫ガ六千三百哩百四十九線デアッテ、之
ヲ何年ニ御實行ニナルノデアルカ、御說明ハ承リマセヌカラ分リマセヌケレ
ドモ、此二ツト云フモノニ對シテハ、莫大ナ金ガ要ルモノデ、卽チ之ニ對シ
テ財源ハ如何ナサイマスカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、私ハ先頃大
正十年度總豫算ガ當院ノ議題トナリマシタトキニ、鐵道經營ニ付マシテ鐵
道大臣ニ御質問ヲ致シマシタ、當時ハ餘リニ數字ヲ列擧シテ甚ダ御迷惑ヲ掛
ケテ、尙ホ唯〓恐縮ヲ致シテ居リマスルガ、之ニ對シテノ御答ガナイ、餘リ
ニ抽象的ノ御返答バカリデアリマシタノデ、更ニ豫算委員會ニ於テ御伺ヒヲ
シタイト云フコトヲ申述ベテ、質問ハ打切ッタノデアリマス、豫算委員會ニ於
キマシテハ、マダ通告ノ順序ニ至リマセヌノデ、其ノ御辯明ヲ受ケル機會ニ
接シテ居リマセヌガ、私ガ過般申上ゲタ所ニ依リマシテモ、十年計畫ニ於ケ
ル鐵道建設ノ豫算ハ、現在ノ豫定額ガ五億五千萬圓程アリマシテ、尙ホ更ニ
四億萬圓ノ追加ヲ致サナケレバナラヌト云フコトヲ申述ベテ置キマシタ、卽
チ十年計畫ダケデモ約十三億ノ建設費ヲ要スルト云フコトヲ私ハ申述べテ置
イタノデアリマス、此ノ十年計畫ノ外ニ唯今提案ニナッテ居ル所ノ改正法律案
ガ、私ノ豫算ニ依ルト云フト約十八億ノ金ヲ要スルト考ヘマス、卽チ一哩ニ
付テ二十九萬圓ノ豫算ヲ必要ト致シマスレバ、六千三百哩デ約十八億ノ金額
ニナラウト思フ、サウ致シマスルト現在ノ敷設ニ要スル金ガ十億萬圓デ、更
ニ是カラ費ス所ノ金ガ十八億萬圓デアルト云フト鐵道ノ御計畫ト云フモノ
ハ二十八億萬圓ノ金ヲ建設ダゲニ要スルノデアル、其外ニ改良費ト云フモノ
ガアッテ、是モ亦尠ナカラザル金額ヲ要スルコトニ相成ルコトハ先日述べタカ
ラ、今日ハ餘リ數字攻メデアッテハ御氣ノ毒デアルカラ申述べマセヌ、而シテ
其豫算ハ如何ニシテ御提案ニナリマスカ、其外ハ尙ホ私共ハ鐵道ノ現在ノ狀
況ニ鑑ミマシテ、改良費ニモット澤山ナ金ヲ必要トスル、種々當院ニ於キマシ
テハ廣軌鐵道ノ敷設ニ關スル御意見モゴザイマシテ、私共モ是ハ必要ナコト
ト存ジマスガ、ソレハ唯今ノ計算カラ除イテ置キマシテモ、現在ノ鐵道運輸
ノ狀況ニ鑑ミマシテ、輸送ヲ圓滿ニ、圓滑ニ致シマスニハ、ドウシテモモット
澤山ノ金ヲ要サナケレバナラヌ、政府ニ於テモ大體此點ハ我〓ト同ジ考ヲ有ツ
テ居ルヤウデアル、旣ニ御說明ニモ政府ハ鐵道改良費ニモ澤山ノ金ヲ使ッテ居
ル、寧ロ建設費ヨリモ餘計ナ金ヲ使ッテ居ルト云フコトノ御說明デアリマシタ
ガ、更ニ此ノ改正法律案、敷設法ノ改正法律案ガ御提出ニナッタ所ヲ見ルト、ナ
カナカ尠カラザル金ガ要ル、十年計畫ニ於テハ如何ニモ建設費ノ方ガ少ナク
シテ、改良費ガ多イノダケレドモ、今度ノ案ガ出テ見ルト云フト、建設費ノ方
ガ更ニ多イモノニ相成リハセヌカト思フ、或ハ是ハ時經テ實行ヲスルモノデ
アル、數年ノ後ニ於テ實行スルモノデアルト云フコトナラバ、今日ハ之ヲ宿
題トシテ置テ、決定ヲ致サヌ方ガ宜クハナイカト考ヘルノデゴザイマス、
私ハ公債ノコトナドハ甚ダ素人デアリマスガ、本年卽チ十年ノ豫算ニ計上シ
テアリマスル公債ノ募集額ハ、四億六千萬圓ニ上ッテ居ルサウデアリマス果
シテ此以上ニ既ニ決ッテ居ル所ノ十年計畫ニ對シマシテ、莫大ナ金ガ要ル、約
十億ノ金ガ要ル、其外ニ尙ホ今度ノ敷設法ニ對シマシテ十八億ノ金ガ要ルト
云フコトデアレバ、鐵道ノコトダケデモ更ニ將來年々募債イタシマスル所ノ
高モ餘程增加シナケレバナラヌノデゴザイマス、鐵道大臣デモ、大藏大臣デ
モドウゾ此點ニ關シマシテ、我〓ガ安心スルヤウニ御辯明アラムコトヲ希望
イタシマス、以上三點ニ付テ御質問ヲ致シマシテ、御答ヲ煩ハシマス
〔國務大臣元田肇君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=38
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039・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 內田嘉吉君ヨリ御尋ノ項ニ對シテ答辯ヲ致シマス、
第一ハ此ノ改正案ヲ今期議會ニ提出シタル理由ハボウ云フ譯デアル、昨年出
サナカッタノハ過チデアルカト云フ御尋デアリマス、是ハ內田君ニモチヨット
善意ニ私ヲ御了解下サルコトヲ希ヒマス、政府ノ當局ニ立チマシテ總テノ御
答ヲスルノデアルカラ、私一個ノ斯ウ云フコトヲ申スノハ筋違ヒデアリマス、
デハアリマスルガ、私ハ先般竝ニ先刻モ申上ゲマシタノハ、貴族院ノ御希望
等モアリマスルシ、斯ク斯クノ事情モ現ニ目擊シタコトデアルカラ、旁〓以テ
此際ニ改正案トシテ整理ヲ致シタ法案ヲ出スガ至當ナリト認メテ、提案スル
コトニナリマシタト云フコトヲ申上ゲタ、誠ニ私ノ積リデハ卒直ニ當局ノ事
情ヲ申上ゲタ積リデアリマス、左樣イタシマスト御尋ハ過チヲ改メタンカト
云フ御尋ヲ蒙リマシテハ〓少シク私ノ申上ゲタ本意ニ背クノデアリマス、昨
年出シマシタノガ、自分ノ過チデアッタト云フコトハ、私斷ジテ申シテ居リハ
致シマセヌ、鐵道敷設法ガ出來マシテ、其ノ敷設法ニ載セラレテアル所ノ線
路モ、略〓終リヲ〓ゲルコトニナッテ何トカ將來ノコトヲ定メナケレバナラヌ
時期ニ際會シテ居ル、昨年ハマダ殘ッテ居リマシタカラシテ、ソレヲ提案イタ
シタノデアリマスガ、今年ニ至ルト殆ド出來テ居ルノデアリマス、斯樣ナ場
合デアリマシテ、而モ是ヨリ更ニ一ノ便法デアリマスルガ、輕便式ト申シマ
シテ直ニ議會ノ協賛ヲ經テ、鐵道ヲ敷設スルト云フ例規ニナッテ居リマシタケ
レドモ、之ニ付テモ動モスレバ物議ヲ釀スヤウナコトガアリマス、旁〓以テ此
度ハ改正ヲ致シテ、左樣ナコトノナイヤウニシテ簡明ナコトニ致スガ、最モ
適當ノ處置デアルト考ヘマシタト云フコトヲ先刻申上ゲテ置キマシタ、此意
味ハ過チデアッタカラ改メタト云フ告白トハ少シク相違イタシテ居ルト自分
ハ認メテ居リマス、左樣ナ場合デアリマスルシ、貴族院ニ於カレマシテモ御
希望モアリマシテ、改正案ヲ提出イタシマシテ何トカ法制ノ整理モ致シマシ
テ、煩雜ナル舊法律ハ廢シマシテ、將來ニ向ッテ立テラルヽ限リノ計畫ヲ立テ、
之ニ伴フ法制ヲ拵ヘルト云フコトハ當局トシテノ責任デアルト、私ハ寧ロ心
得タノデアリマス、其時ニ豫算分科會デ申上ゲテ置キマシタガ、豫算ノ編成上
輕便式ノ鐵道ト云フモノヲ、一括リニ一億五千萬圓ト云フモノヲ目ニシテ置
クト云フノハ不都合デアルカラ、何トカ分ルヤウニセヨト云フ御希望ガアリ
マシタガ、如何ニモ私モ御同感ニ考ヘルカラシテ、將來ニ於キマシテハ、各
鐵道ノ費目ハ分ルヤウニ明細書ニ列記デモスルヤウニ致シマセウト云フコト
ハ、其時ニ申上ゲタ、法制ノ整理ヲスルニ付テ、成ベク速ニシロト云フ御請
求デアリマスガ、精々自分ニ於テハ最善ヲ盡スコトデアルガ、必ズ次ノ議會
ニ出セルカト云フコトハ今玆ニ言明イタシ兼ネルト云フコトマデモ私
卒直ニ申上ゲテ置キマシタ、爾來不肖出來ル限リノ調査審議ヲ盡シマシテ、
而シテ此案ガ提案スル迄ノ運ビニ至ッタノデアリマス、昨年五線路ヲ出ス時ニ
造ルコトハ分ッテ居ッタノデアルカラ、何故出サナカッタカト云フ御言葉デアリ
マスルガ、出シタナラバ尙ホ宜カッタカモ知レマセヌガ、就任早々デ僅カ十四
五日ノ間ニハ迚モ左樣ナ力ハゴザイマセヌカラシテ、ソレハ出來マセナンダ、
御希望モアリ段々自分モ調ベマシテ、適當ト信ジマシタカラシテ、自分デモ
努力シタ積リデゴザイマシテ、此案ヲ提出イタスコトニナリマシタ、御一覽
下サレバ分リマスガ、之ガ爲ニ二十幾件ト云フ法律案モ皆廢止シテ整理ガ付
クコトニナッテ居リマス、法文ノ上ニ於テモ、多數ノ整理ヲ致シテ居ル積リデ
アリマス、而シテ輕便式ニ依テ豫算ヨリ鐵道敷設費ヲ請求スルハ不都合デア
ルトカ、何トカ云フヤウナ御議論モ、此案ガ通過イタシマスレバ、一掃シテ仕
舞フコトニナルノデアリマス、極メテ私ハ皆樣ノ御希望ノ幾部分ヲ充スコト
ニナッタラウカト心竊ニ喜ンデ居ッタ位ノコトデアリマスカラシテ、右樣ノ次
第デゴサイマスカラ、本議會ニ提出シタ理由ハ御承知ヲ願ヒタイ、又此議會
デナクトモ宜カラウ、私ハ寧ロ恐レタノデアリマス、此議會ニ出サナカッタナ
ラバマダ出サヌカト云フ御叱リヲ蒙ルコトガアラウカト私ハ思ッテ、愼重審議
ヲシテ努力イタシタノデアリマスガ、豫算モ伴ッテ居ラヌノデアルカラシテ、
何時出シテモ宜イデナイカト云フヤウナ御趣旨モ、中ニハアッタカト思ヒマス
ルガ、私ハサウ考ヘマセヌ、現行ノ敷設法ハ旣ニ線路ノ大體ヲ終リマシタカ
ラ、今度ハ如何ナル計畫ヲ以テヤルカト云フコトハ、政府ト致シマシテ爲サ
ナケレバナラナイ當然ノコトカト存ジマス、其爲スニ付マシテノ百四十九
線路ト云フモノヲ提供イタシタノガ其中是ハ良クナイトカ、アルトカ云フ
コトハ、勿論諸君ノ御審議ヲ煩ハス次第デアリマスガ、斯ル計畫ヲ立テヽ出
シマスト云フコトハ、最モ適當ニ最モ早ク出スト云フコトガ相當ノコトト私
ハ存ジマスノデス、ソレデ本會議ニ提出サルル理由大體之ニテ御了解ガ
付クカト思ヒマス、卽チ私ノ提出シタル所ノ理由ハ御了解ニナラウカト思フ、
第二ニ之ヲ可決シタル場合ニ實行方法ハドウスルノデアルカト云フ御尋ネ、
誠ニ御尤ナ御尋デゴザイマスル、御尋デアリマスルガ、是ハ先刻提案ノ理由
ヲ申上ゲタ時ニ、略〓御耳ニ達シ置キマシタ積リデアリマス、卽チ何年ヨリ何
年間ト云フコトヲ玆ニ規定スルコトヲ得テ、年々ドレダケノ線路ヲヤルカト
云フコト迄モ細目ニ亙ッテ規定ガ出來レバ、明確ナルコト此上ナシデアリマス
ガ、サウ云フコトハ不可能デアリマス、遺憾ナガラ財政ノ許ス範圍ニ於テ、
國家ガ定メテアル所ノ線路ヲ著々實行ノ〓ニ就ケテ完成ヲシテ行クト云フコ
トニ行クノガ、今日ノ最善ノ方法ト云フ外ナイ場合デアルト云フコトヲ申上
ゲタ、ソレナラバ何時マデ經ッテモ出來ヌ、當局ニ於テハ何モ考ヘナイデ漠然
出シタカ、決シテ左樣デハゴザイマセヌ、唯今內田君ノ御計算ニ依リマスル
ト、十八億圓要ルト云フ御言葉デアリマス、當局ノ今日マデノ種々ノ實驗調
査等カラシテ見マスレバ、約一哩二十萬圓ナラ出來ヤウカト云フコトヲ信ジ
テ居リマス、之ヲ哩數ニ積ッテ見マスト云フト十二億六千幾百萬圓ト云フコト
こく
ニナリマス、今日建設費ヲ出シテ居リマスルノハ、本年ノ豫算卽チ十年度ノ
豫算ニ於キマシテハ六千萬圓餘ニナッテ居リマスガ、此狀況ニシテ繼續ガ出來
ルコトニナリマスレバ、凡ソ幾許ノ年ヲ經テ建設ヲ終ルカト云フコトモ、自
カラ胸中ニ出テ來ル譯デゴザイマス、足ラヌ時ニハ他日ニ延ベレバ宜シイカ
ラ、先ヅ期間デモ設ケタ方ガ此法律ノ體面ガ宜シイト云フノモ、立法ノ一ツ
ノ方法デアリマス、是ハ財政ノ上ニ於テ緩急ヲ計ラニヤナラヌト云フコトモ、
見エテ居リマスカラシテ、法文ノ體裁ノ上ニ於テカッキリ書イテ、他日之ニ反
スルコトガ出來ルヨリハ、法文ノ上ニ於テハ、財政ノ許ス範圍ニ於テ漸次協
賛ヲ求メルト云フ體裁ニ致シテ置ケバ、出來ル限リ實行ヲ急グト云フ方ガ寧
ロ相當ナリト信ジマシテ、斯樣ニナッテ居リマス、何等ノ腹案モナケレバ何年
ニ出來ルカ當局ハ夢中ニ出シテ居ルト云フヤウナコトデハ、斷ジテナイノデ
アリマス、是ニテドウカ其邊ハ御了承ヲ願ヒマス、十年計畫トノ關係ハドウ
ナルカ、十年計畫ハ既ニ豫算ヲ提案致シマシテ、帝國議會ノ協賛ヲ得テ居ル
ノデアリマスじ卽チ其年度ニ基イテ著々實行ノ〓ニ就キタイト思フノデアリ
マス、又之ニ相違スルコトガ出來ルヤウニナリマスレバ、ドノ途議會ノ協贊等
モ煩ハサニヤナラヌコトト思ヒマスルガ、今度デハ實行ガ出來ル積リデアリ
マス、此關係ト云フコトニ付テノ御言葉ハ、衆議院デモ質問ガアッタヤウデゴ
ザイマスガ、或ハ十年計畫ノ通リニ繰上ゲテヤルコトガ出來ルナラバ、前ノ
優先權ヲ得タモノハ早ク繰上ゲタラドウカト云フコトモアル、是モ一ツノ方
法デアリマセウガ、是ハ私技術家デアリマセヌカラ、唯私ノ調査シ聞キ得タ
ル所デアリマスルガ、此鐵道等ヲ完成スル上ニ於キマシテハ金サヘアレバ繰
上ゲテ行クト云フ譯ノモノデハナイサウデアリマシテ、私モ亦サウ信ジマス、
例ヘバ〓海線ノ隧道、逢坂山ノ隧道ヲ金ヲ餘計出スカラ三年ノモノヲ一箇年
デ濟マスト云フコトハ工事能力トシテ出來ナイ、玆ニ於テカ一ツノ線路、二
ツノ線路ガ濟ンダナラバ外ノ線路ヲ繰上ゲテ行クト云フヨリ、玆ニ新ナル線
路ト云フモノヲ始メテ行クト云フコトガ、從來此ノ鐵道敷設ノ上ニ於テ其例
ニ乏シカラヌヤウニ承ッテ居リマス、ソレハ十年計畫ト云フモノト或ハ優劣ヲ
起スヤウナコトガナイカト云フヤウナ御心配デゴザイマスレバ、左樣ナコト
ハナイト考ヘテ居リマス、ソレカラ人及ビ技師ト云フ者ノ準備ガ要ルダラウ、
勿論是ハ擴張スレバソレダケノ用意ヲ致サナケレバナラヌ、是ハ又致ス積リ
デ居リマス、ソレカラ財源ハドウスルカト云フノガ第三問デアッタト思ヒマ
ス、財源ハ是モ提案ノ時カラ申上ゲテ居リマス、財源ナルモノハ財政ノ許ス
範圍ニ於テ、之ヲ完成スル積リデアルノデアリマス、鐵道當局ノ私ト致シテ
一、斯ル有利ナ事業デアリマスカラシテ、三十年カヽルモノハ二十年、二十
年カヽルモノハ十年ニシテ、ドノ途ヲ講ズルマデモ、早ク完成イタシタイノ
デアリマスルガ、左樣ハ參リマセヌノデアリマスカラシテ、ソレ故財政ノ許
ス範圍ニ於テ之ヲ實行スルヨリ外致シ方ガナイノデアリマス、十八億ト云フ
コトヲ此所デ御話ニナリマシタガ、當局ノ見積リハ左樣ニハナッテ居リマセヌ
カラ、是ダケハ申上ゲテ置キマス、ソレカラ先日ノ御尋ノ數字ヲ擧ゲテ問ウ
タガ餘リソレニ對スル答ガナイト云フコトデゴザイマシタガ、私ハ或ル機會
ニ於テソレ以上ナル御滿足ナル細カイコトノ答辯ヲ申上ゲル方ニシタラ宜カ
ラウト思ヒマスノデ、今日マデ御答イタシテ居リマセヌ、ソレハ其機會ニ於
テ御滿足ノ出來ラレルダケ御答辯申上ゲルヤウニ致シタイノデ、左樣御了承
ヲ願ヒタイト思ヒマス、要ハ帝國ノ鐵道敷設法ト云フモノハ第一ノ敷設法ハ
殆ド完結スルコトニナッテ是カラ先キハドウスル、從前ノ慣例ヲ見レバ、豫算
ノ形式ニ依テドン〓〓時ノ政府ガ出スコトニナッテ是ガ例ニモナッテ居ル、丁
度此際第一囘ノ敷設法ト云フモノガ殆ド出來タ機會ニ於テ、第二ノ計畫ヲ立
テテ、其ノ計畫ノ大局ノ上カラ進ンデ、總テノ鐵道工事ヲスルト云フコトガ
至當デアルヤ否ヤ、是ハ大綱ノ問題デアラウト思ヒマス、當局ニ於キマシテ
ハ、此ノ大綱ヲ定メマシテ、而シテ財政ガ許サナケレバ致シ方ガアリマセヌ
財政ノ許ス限リニ於テ鐵道當局ト致シテハ成ベク速ニ交通機關ノ全キヤウニ
實行イタシタイト云フコトニ焦慮イタシテ居ル次第デアリマス、此ノ意味ヲ
宜シク御聽取リ下サイマシテ、速ニ御審議下サレ御協賛下サルヤウニ吳〓モ
希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=39
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040・内田嘉吉
○內田嘉吉君 私ハ度〓質問ヲ繰返シマスコトハ誠ニ恐縮デゴザイマスノ
デ、成ベク御尋ヲ致サナイ積リデ居リマシタガ、唯〓ノ御答ノ中デドウシテ
モ一應伺ッテ置カナケレバナラヌ點ガゴザイマス、極メテ簡單ナコトデゴザイ
マスカラ、此所カラ御尋ヲ致シマス、唯〓鐵道大臣カラノ御辯明ニ依リマス
ト、今囘ノ敷設法、改正法案ノ結果ト致シテ十二三億萬圓ノ金ガ要スルト云
フ御說明デゴザイマス、私ハ是ヲ十八億萬圓ト見積リマシタノハ、是ハ見込
ノ相違デゴザイマスカラ、他日又其ドチラガ正當デアルカ、比較スル機會モ
アラウト思ヒマスガ、而シテ一哩當リノ御計算ガ約二十萬圓ト云フ御積リデ
アルト唯〓承ッタノデゴザイマス、果シテサウ云フコトデアリマスレバ、現在
ノ十年計畫ニ對シテ更ニドノ位ナ御追加ヲ爲サル御見込デアリマスルカ、
ソレヲ御伺ヒ致シタイノデアリマス、ソレカラ唯今御答ノ中ニ第三問ニ對シ
詰リ財源ハ如何ト云フコトニ對シ、內田ハ十八億ト積ルガ政府デハ十二三億
デアルト云フダケノ御答デゴザイマシタ、其ノ十二三億ニ對シマスル政府ノ
財源ノ御見込ハドウデアルカト云フコトニハ、少シモ御答ガナカッタ、是ハ極
メテ大切ナ點デアリマスルカラ、ドウゾ詳細御答ヲ願ヒマス
〔國務大臣元田肇君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=40
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041・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 十年計畫ニ付テノ追加ハドウ云フ見込カト云フ御尋
デゴザイマシタガ、是ハ物價騰貴等ノ點ニ關係シテノ御尋ダラウト存ジマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=41
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042・内田嘉吉
○內田嘉吉君 唯〓鐵道大臣ハ一哩當リノ定額ガ、二十萬圓カカルト云フ御
答デゴザイマシタ、ソレニ對シマシテ其ノ計算カラ見ルト云フト、十年計畫
ニハ大分ナ不足額ヲ生ズル譯デアラウト思フ、サウ致シマシテ其ノ金額ハ、
將來ノ分ヲ除キマシテ、既往ノ既ニ定ッテ居ル十年計畫ノ分ニドノ位ナ不足ヲ
生ズルカ伺ヒタイ、斯ウ云フ質問デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=42
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043・元田肇
○國務大臣 元田肇君)約二十萬圓ト申上ゲマシタノハ、大體ノ先ヅ大摑ミ
デゴザイマスルガ、是カラ先ニ物價上ノ變動等モ十年間ニハドウナルカ分
リマセヌガ、今日ヨリ考ヘマシタ所デ、大體是ダケアレバ足ラウト云フコト
ヲ凡ソニ申上ゲタ譯デアリマス、十年計畫ノ豫算ニ於キマシテモ、繼續費ト
シテズット出シテアリマス、ソレハ當局ハ今日ノ物價ノ狀況デ見マスレバ、昨
年迄ハ少シ不足スル積リデゴザイマシタ、追加ヲ要スルコトト信ジテ居リマ
ス、其邊ノコトモ鐵道當局トシテハ考慮イタシテ居リマス、ソレカラ財源ト
云フコトデゴザリマスルガ、其ノ財源ハ改良建設ニ用ヒマスル所ノ財源ハ、
收益········鐵道收益及ビ公債又ハ借入金ト云フコトニナッテ居リマス、御承知ノ
通リデアリマス、ソコデ此改良ハ旣設ノ鐵道ガ能ク損傷シテ行クノデアリマ
スルカラ、之ニ對シテハ多大ノ力ヲ致サナケレバナラヌノデアリマスルガ、
左樣ナ譯デアリマスルカラシテ、建設費ト云フモノハ、多ク公債又ハ借入金
ニ依ルコトニナルノデアリマセウ、其ノ公債借入金ト云フモノガ財源ニ多ク
ナルノデアリマス、ソレハ時ノ財政ノ狀況、民間經濟ノ狀況ニ依リ、今年ハ
餘計出來ルコトモアリマセウシ、又多少減ルコトモゴザイマセウシ、是ハ鐵
道大臣トシテ私カラ御答ヲスルノハ、寧ロ御遠慮イタシタ方ガ宜カラウト思
ヒマスルケレドモ、私ダケノ考ヲ以チマシテモサウ云フコトニナルノデアリ
マスルカラシテ、財源ナルモノハ唯今申上ゲル通リニ、益金ト公債又ハ借入
金、之ニ依テ財源ヲ求ノルノデアリマス、其ノ公債又ハ借入金ト云フモノハ、
如何ニスルカト云フコトニナリマスルト云フト、財政ノ緩急、經濟界ノ有樣
等ヲ見マシテ、大藏大臣ニ於カレマシテ最善ノ方法ヲ講ズルコトト信ジマス、
此ノ以上ノコトハ私ヨリ御答ヲスルト云フコトハ十分ナラスト思ヒマスカ
ラ、私ノ答辯ハ是デドウカ御諒承ヲ願ヒマス
〔中村是公君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=43
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044・中村是公
○中村是公君 私ハ諸君ノ御質問ヲ承リマシタナラバ、私ノ問ハムト致シマ
ス所モ明瞭致スデアラウト存ジマシテ、差控ヘテ居ッタノデアリマス、併ナガ
ラ私ノ疑問ハ少シモ解ケナイノデアリマス、止ムヲ得ズ玆ニ御迷惑ヲ皆樣ニ
カケル次第デアリマス、御諒察ヲ仰ギタイノデアリマス、本案ヲ審議致シマ
スノニ、私ノ最モ惑ヒトスル所ハ、本案ハ可能性ヲ有スルヤ否ヤ、私ノ可能
性ト申シマスルコトハ、此法律ヲ縱シ發布シタ所デ、是ガ實行ガ出來ルヤ否
ヤ、可能デアルヤ否ヤト云フコトニ付テ、甚ダ迷ヒガアルノデアリマス、又
茲ニ揭ゲテアリマス所ノ百四十九本卽チ六千三百餘哩ノ線路ハ、敷設スベ
キ價値アリヤ否ヤ、例ヘバ二十萬圓、若クハ三十萬圓、一哩ニ掛ケテ敷キマ
シテ、果シテソレダケノ價値ガアルモノデアルヤ否ヤ、斯ウ云フ點ニ付テ甚
ダ疑ヲ挾ンデ居ルノデアリマス、此兩點ヲ明ニ致シマセヌ限リニ於テハ、法
律ガ發布セラレテ、若シ是ガ可能ノモノデナイ、實行不可能ノモノデアルト
云フコトニナレバ、民ヲ惑ハスルノミナラズ、法律ノ威信ヲ害スルノデアリ
やく、又價値ノ無イモノデアルト致シマスレバ、縱シ之ヲ發布シ實行シタ所
ガ、鐵道會計ニ非常ナ煩累ヲ貽スモノデアル、將來鐵道會計ヲシテ紊亂セシ
ムル、破壞セシムルノ因ヲナスモノデアル、愼マザルベカラザルモノデアル
ノデアリマス、故ニ之ヲ審議スルニ當リマシテハ、宜シク可能ナモノデアリ
ヤ、敷設スベキ價値アルモノデアリヤト云フ此兩點ニ對シマシテハ、十分ナ
ル惑ヒヲ當局ガ解カレル義務ガアル、又我〓トシテハ此點ニ向ッテ十分審議ヲ
盡サナケレバナラヌモノデアラウト私ハ考ヘルモノデアリマス、ソレデ可能
デアルカドウカト云フコトニ付マシテ考ヘテ見マスルノニ、過日豫算案ノ
上程ニナリマシタ際ニ、內田君ヨリシテ十年計畫ノ遂行ノ可能ナリヤ否ヤト
云フコトニ付テ、御尋ガアッタノデアル、其際ニ於テ内田君ノ御話ニ依リマス
ルト云フト、約十億ニ近イ金ガ此ノ十年計畫ヲ遂行スルノニ不足スルノデア
ル、一箇年約一億ヲ不足スルノデアル、斯ウ云フ御話デアル、此計算ノ基礎
ニ付テハ、細〓御話ニナッタノデアル、是ハ玆ニ重ネテ申上ゲルノハ甚ダ煩ヲ
增スノデアリマスカラ、其結論ノ結果ヲ私ハ申上ゲル、十億不足スル、一年
ニ一億足ラヌ、斯ウ云フ御話デアル、私ハ至極此ノ御計算ハ········此ノ御計算
ハ尤ナ御計算ト思フノデアリマス、私ノ計算ニ依リマスルトマダ以上足ラ
ヌノデアリマス、何故ト申マスルト云フト、內田君ノ御計算ハ明治四十年ヨ
リ大正七年迄ノ、既往ノ建設費ノ平均ヲ取ッテ將來ヲ推サレタノデアルノデア
ル、所ガ大正六年七年、コレガ先ヅ戰時ノ物價ノ騰貴ノ影響ヲ受ケテ居ルモ
ノト申シテ宜カラウト思フノデアリマスルガ、其中デモ大正六年ノ建設ニ係
ルモノニシテ、戰時ノ物價ノ影響ヲ受ケテ居ルモノハ甚ダ僅少デアル、其當
時ハ私ガ其任ニ居ッタノデアリマスカラ、能ク承知シテ居ルノデアリマス、大
正七年モ亦全部ガ戰時物價騰貴ノ影響ヲ受ケテ居ルモノトハ申サレヌノデア
リマス、受ケテ居ルモノハアリマスケレドモ、是モ亦僅少ナリト言ハナケレ
バナラヌ、故ニ私ハ明治四十年ヨリノ統計ヲ取ルナラバ、八年迄入レテ統計
ヲ取ッテ、之ヲ戰前物價ト看做スガ適當ト思フノデアリマス、八年迄ヲ統計ニ
取リマスト云フト十五萬六千圓ニナル、一哩平均ガ········是カラ推算シマスル
ト云フト、マダ二億以上ノ金ガ內田君ノ計算ヨリハ餘計ノ不足ニナルコトニ
ナルノデアル、併ナガラ暫ク是ハ內田君ノ御計算ニ私ハ信據致シマシテ、內
田君ト共ニ十億內外ノ金ガ不足デアルト云フコトヲ信ゼムトスルモノデア
ル斯ノ如ク既定ノ十年計畫ニ付テ、其遂行ニ付テ疑ガアル、玆ニ此疑ハ私
ハ理據ノアルモノト信ズルノデアリマス、ノミナラズ私ハ此ノ不足額ト云フ
モノハ、輸送ノ現在ノ狀態ニ比ベテ見マスルト云フト、此ノ計畫以外ニ爲サ
ネバナラヌモノハ多々アルノデアル、言葉ヲ換ヘテ申上ゲマスルト云フト、
改良費ト云フモノハ現在ノ十年計畫ニ規定セラレテアル所ノ改良計畫ヲ以
テ、現今ノ輸送狀態ニ適スルモノナリヤ否ヤト云フコトニナル、私ハ斷ジテ
適セザルモノナリト申上ゲタイノデアリマス、然リト致シマスルト云フト、
此ノ十年計畫ニ規定サレテアル所ノ改良計畫ハ、ウントマダ金ヲ增サナケレ
バナラヌコトニナル、計畫自體ニ已ニ十億ノ不足ガアル、又現在ノ計畫ハ此
儘ニ棄テ置ケナイト云フ理由ガアル以上ニハ、此點ニ向ヲテモ亦非常ナル金ヲ
要スルノデアル、例ヘテ申上ゲマスレバ、先程來又前日來度〓耳ニ致シマス
廣軌ノ問題ノ如キ、卽チ其一ツデアル、何故カト申シマスレバ、今ヤ交通ハ巳
ニ國際的デアル、商賣モ國際的デアル、商品ノ荷造リナゾモ總テ段々大キク
ナッテ、廣軌ニ依テ運搬セラレ船舶モ大キクナッテ、是等ノ荷揚ゲ荷卸シノ諸
機械ハ總テ物ガ大キク段々ナッテ行クノデアル、商賣ノ上カラ言ッテモ、又交
通政策ノ上カラ言ッテモ世界的ニナッテ段々進マナケレバナラヌノデアリマ
ス、交通ハ國際的デアル、國際交通ヲ基礎トシテ將來ノ計畫ヲ立テナケレバ
ナラヌノデアリマス、先程辻男爵ノ述ベラレタヤウニ、既ニ此ノ朝鮮海峽ノ
如キモノヲ汽車ヲ渡スナント云フコトハ、モウ明瞭ニ出來ルコトデアル、是
ハ戰時中ニ英吉利ノ海峽ヲ五十萬噸年ニ運ンダト云フ例ハアルノデアル、又
彼處ト朝鮮海峽ト較ベテ見レバ、其難易殆ド同一ノ論デナイ、斯ウ云フ次
第デアリマスカラ、廣軌ナント云フコトニ付テハ大勢カラ言ッテ既ニ論ノナイ
コトデアル、今日此ノ廣軌狹軌ヲ論ズル如キ愚者ハ居ナイノデアル、今日ノ
輸送狀態カラ見テ非常ニ之ヲ年々擴ゲテ行カナケレバナラヌト云フコトニ鑑
ミレバ、現狀カラシテ是モ亦論ノナイコトデアラウト思フノデアリマス、是ハ
詳說スルコトヲ暫ク止メテ置キマス、本問題ガアリマスカラ·······又其他ニ付
テ考ヘテ見テモ、今日ノ輸送狀態ハ如何ナル有樣デアリマス、動モスルト人間
ハ鮨詰デアル、鮨詰ナラマダ宜イガ溢レルノデアル、座席ハ四十一以上五十
ニ垂ントスル、世界ニ例ノナイ人間ヲ虐待シテ居ル、貨物モサウデアル、少
シ出貨甚ダシキ場合ニハ非常ナル貨物ノ停滯ヲ來タシテ、商機ヲ逸スルコト
屢〓デアルノデアリマス、又一朝ニシテ貨物ガ減ジマスルト云フト、空ノ貨車
ノ置場所ガナイ、是ハ何ノ故デアル、計畫ガ總テ齟齬シテ居ル、統一ヲ缺イ
テ居ル、物ガ凡テ一致シテ居ナイ、操車「ヤード」ガ足ラナイ、停車場ノ設備
ガ小サイ、サウ云フヤウナコトガ多々重ナッテサウ云フコトニナルノデアリマ
ス、又海陸ノ聯絡ノ如キニ至ッテハ見ルベキモノガ一モナイノデアリマス、神
戶ト云ヒ橫濱ト云ヒ、此處ニ既ニ無イノデアリマスカラ、他ハ知ルベシデア
リマス、外國貿易港ニ於テ既ニナイ、內國貿易港ニ於テ固ヨリナイ、大都市
ノ停車場ヲ御覽ニナッタラ如何デアル、今日東京ノ如キハ今ヤ兩國ノ線路ハ萬
世ニ繫ガッテ來ル、又東北線モコチラニズット這入ッテ來ル、中央線モ這入ッテ
來ル、併ナガラ今ノ東京驛ト云フモノガ、是ガ日本ノ中央停車場タルノ用ヲ
爲スヤ否ヤ、東京驛ニ參ッテ房總線ニ乘ルコトガ出來マスカ、東京驛ニ行ッテ
中央線ニ乘ルコトガ出來ルカ、私ハ今ノ計畫ニ於テハサウ云フコトハ出來ナ
イデアラウト思フ、是等モ軈テハ東京驛ニ行ケバ、日本全國何レノ方面ニ向ツ
テモ乘降リノ出來ルト云フ位ノ程度マデニ、進マナケレバナラヌモノデアラ
ウト思フ、又名古屋驛ハ如何デアル、僅ニ上リ下リガ一線シカナイ、是デドウ
シテ東海道ノ此繁劇ナル輸送ニ堪へ得ルノデアルカ、思ヘバ寒心ノ至リニ堪
ヘヌノデアリマス、是ハ御計畫ハアルノデアリマセウ、又神戶然リ、總テ大都
市ヲ數ヘレバ頻々トシテ斯ウ云フ停車場ガ揃ッテ居ル、第二流第三流ニ至ッタ
ナラバ申スマデモナイゴトデアリマス、而シテ此ノ停車場ノ改良費ハ幾ラア
ルカ、一億三千萬シキヤナイト私ハ記憶シテ居ル、斯ウ云フヤウナコトデ、
今日ノ狀態ニ適スル改良ガ出來ルカト申セバ、「ノー」ト答ヘルノ外ハナイノ
デアル、又輸送ヲ圓滿ナラシメ、又現在ノ輸送數量ニ適切ナラシムルノニ
ハ、停車場ノ規模ヲ大ニスルノミデナイ、操車「ヤード」モナクチヤナラヌ、
又倉庫モナクテハナラヌ、又停車場內ノ揚卸シノ設備モ十分ニナケリヤナラ
ヌノデアル、色〓ナ點ガ相集ッテ今日ノ行詰リノ狀態ヲナシテ居ルノデアリマ
スガ、唯今計畫シテアル所ノ十年計畫ヲ以テ、私ハ滿足シ得ルト答ヘル者ハ
何人モナカラウト信ズルノデアル、私ハ慥カニ信ジ能ハナイ者デアリマス、左
樣イタシマスト云フト、既定ノ計畫ヲ遂行スル上ニ於テスラ十億デハ足ラヌ、
尙ホ之ヲ今日ノ狀態、尙ホ將來增加セムトスルノ狀態ニ照シテ、既成線ヲ改
良スルト云フコトニナレバ、其不足モ亦大ナル數デアルト私ハ思フノデアリ
マン·斯ウ云フコトヲ考ヘテ見マスレバ、今日茲ニ御提案ニナッテ居ル所ノ、
線路數ニ於テ百四十九、哩ニ於テ六千三百、六千三百ト申シマスルト云フト、
殆ド既成線ヨリハ多イト私ハ記憶スル、ドウ云フ計畫デナサレルノカト云フ
コトヲ承ハラヌ限リニハ、此審議ノ出來ヤウ筈ガナイ、先程來計畫ノ一端ヲ
伺ヒタイト內田君アタリカラ申サレルト云フト財政ノ都合ニ依ル、斯ウ云
フ一點張リデアル、何年カラヤルト云フコトハ申上ゲ兼ネル、財政ヲ按配シ
テヤルノダ、財政ノ按配ガドウシテ出來ルカト云フコトヲ私ハ伺フノデアル、
輸送狀態ハ現今行詰ッテ居ル、十年計畫ハ將ニ破滅ニナラムトスルノ今日ニ於
テ、如何ニ財政ノ遣繰ヲナサルカト云フコトガ、私ノ聽カムト欲スル所デア
ルノデアリマス、又此線ガ既成線六千有餘哩ト云フモノノ平均ノ輸送量ト云
フモノハ幾ラデアルカ、恐ラクハ人ト貨物ヲ合セマスルト云フト、二百四五
十萬人噸ニナルノデアラウト思フノデアル、甚ダシキ所ニナルト、東海道、
山陽線アタリニナルト四五百萬人噸乃至一千萬人噸位アル、實ニドウモ輸送
數量ノ密度ト云フモノハ天下無比デアル、亞米利加、白耳義ヲ除キマス外ハ、
斯ウ云フ所ハ恐ラクハナイノデアル、是程行詰ッテ居ル、サウシテ此度ノ新線
ハ幾ラ位ノ數量ノアルモノデアルカ、是モ私ハ後デ伺ヒタイト思フ、斯ウ云
フ次第デアリマスカラ、財政ノ計畫ハ必ズヤラレナケレバナラヌ、財政ノ唯
都合デヤルンデアルト斯ウ云フコトデハ、ヤルンダカヤラヌノダカ分ラヌ、
私ニ言ハセルナラバ、ヤラヌノデアルト云フ結論ニナル、ヤラナイノデアル
カラ既定ノモノサヘヤリ兼ネヤシナイカト云フ疑ヲ有ッテ居ルノデアリマス
カラ、新シイモノノヤレヤウ餘地ガナイ、餘地ガアルト云フ說明ヲ聽キタイ
ノデアル、又大臣ハ常ニ仰セニナル、改良ハ盛ニ行ッテ居ル、唯今モ御述べニ
ナリマシタ、建設費ガ一ナラバ改良費ハ三位ノ費用ヲ使ッテ盛ニ改良シツツア
ルノデアル、斯ウ云フ御話ヲ唯今モナサッタノデアル、唯今デナイ、先程ナサッ
タ、私ハ此ノ計畫書ニ就テ見テ見マスト、持ッテ居ラヌカラ分ラヌガ、私ノ記
憶スル所ニ依リマスレバ、建設費ハ十年間ニ五億五千餘萬圓ト心得テ居ル、
改良費ハ八億六千餘萬圓ト承知シテ居リマス、是ハ一ト三デハナイ、又此中
ニハ兩方共ニ戰時ノ物價騰貴ガ見テアル、此ノ物價騰貴ノ見方ガ甚ダ不平均
ニ見テアルカラシテ、此ノ物價騰貴ヲ取去ッテ見レバ、正味ノモノノ比較ガ出
來ル、之ヲ取去ッテ見マスルト正確ナ數デハアリマセヌガ、私ノ胸算ニ依リマ
スレバ五億對六億デアラウト思フ、建設費ガ五億位デアレバ改良費ガ、六億
位デアルト思フ、モウ殆ド近クナッテ居ル、之ニ新線ヲ加ヘテ行クト段々建設
費ト改良費ト云フモノハ接近シテ來ル、遂ニハ建設費ノ方ガ改良費ヲ超過ス
ル、私ハ改良費ガ多カレト望マナイ、建設費ガ少ナカレトモ望マナイノデア
ル、建設費ヤ改良費ト云フモノハ、數ヲ以テ比較スベキモノデナイト思フ、
常ニ當局大臣ハ何程何ボノ比例ニナッテ居ル、斯樣ニ仰ッシヤルケレドモ、是
ハ輸送狀態ニ依テ定マルベキモノデアッテ、決シテ建設費一ニ對シテ改良費二
タルベキモノ、建設費一ニ對シテ改良費三タルベキモノ、斯樣ニ比例ノアル
ベキ道理ノモノデナイ、此ノ比例ノ生ズルノハ其ノ輸送狀態ノ如何ニ依テ
行詰ッテ居レバ改良ヲ多クシナケレバナラヌ、潤澤ニ輸送ガ出來レバ改良ハ要
ラヌノデアリマスカラ、其時ノ事情ニ依テ定マルベキモノデアリマシテ、決
シテ此比例ヲ以テ論ズベキモノデナイノデアリマス、併ナガラ常ニ大臣ハ盛
ニ此ノ比例論ヲ御持チニナリマスカラ、申上ゲタ次第デアリマスガ、私ニ言
ハセレバ今日ノ狀態ニ於テハ、斯ノ如キ比例ヲ以テ滿足スベキモノデナカラ
ウト申スノデアリマス又此既往ノ建設費改良費ノ結果ニ就テ見マシテモ
決シテ其同一ノ比例デモ進ンデ居ラヌ、常ニ變遷ガアル、是亦變遷ノアルベ
キ道理デアリマス、時ノ事情ニ依テ、國有當時ハ建設費ガ多カッタ、ソレカラ
四十三四年ノ頃カラ改良費ガ段々多クナッテ、又戰時ニナッテ稍〓少ナクナッテ
今日デハ又下リツツアル、現今ノ狀態デハ改良費ハ寧ロ低下シツツアルト申
上ゲタ方ガ宜シイノデアル、或時節ニハ一ト二、倍ノ比例ヲナシテ居ッタコト
モアル、大正ノ初メ頃カト思ヒマス、能ク年數ハ覺エマセヌガ、確ニサウ云
フ次第デアリマスノデ、其當時ト今日ト輸送狀態ヲ比ベテ見ルト殆ド比例ニ
ナラヌノデアル、今日ノ方ガ餘ホド行詰ッテ居ル、然ルニモ拘ラズ、其當時ト
今日トノ改良費、建設費ノ割合ト云フモノハ非常ニ惡クナッテ居ル、段々低下
シテ居ル、十年計畫ハ既ニ下ガッテ居ルノデアル、故ニ今後改良費ト云フモノ
ハ、盛ニ要ルノデアリマスノミナラズ、十年既定計畫ガ既ニ足ラナイ、ソコ
ニ斯ウ云フ新線ヲ澤山御出シニナル、是ハ何處カラ此金ガ出ルカト云フコト
ヲ伺ハナケレバ、審議ノ途ハナカラウト思フノデアリマス、是ハ第一點ハド
ウシテ金ヲ出スカ、財源ヲ如何ニスルカ、サウスルト今大臣ハ內田君ニ答ヘ
テ、益金モアリ公債モアリ借入金モアル法文ヲ讀ンダ、ソレハ大臣ノ說明ヲ
俟タヌ、ドウ云フモノカラ出ルモノデアルカ、果シテ出ルヤ否ヤヲ御聞キス
ルノデアリマス、次ニ御伺ヒ致シタイノハ、此線路ハ敷設スベキ價値アリヤ
否ヤ、無價値ノモノデハナイカト云フコトデアリマス、私ハ甚ダ疑フノデア
リマス、之ニ付テハ輸送數量ヲ拜見イタサナケレバ價値ノ有無ハ申上ゲ兼ネ
ルノデアリマス、一年一哩ノ輸送數量ハ人ニ於テ幾ラ、貨物ニ於テ幾ラ、此調
ベガナクテハ迚モ是ガ審査ハ出來マセヌ問題デアラウト思ヒマス、又御有リ
ニナル筈デアル、三十年來ノ調査ニ係ルモノト御吹聽ニナッテ、非常ニ精査ガ
シテアルト申サレルノデアリマスカラ、定メテ此線路ノ輸送數量ニ付テハ、
詳細ナル御調ガアル筈デアル、是ガ無クテ計畫ヲスルノハ甚ダ無謀ノ至リデ
アル、如何ナル線路デアルカ、ヤッテ善イカ惡イカト云フコトヲ判斷スベキ材
料ガ無クッテ、線路ヲ計畫スルト云フコトハ實ニ無謀千萬デアリマス、故ニ
定メテ是ハ御調ガアル筈デアル、無クテ計畫ノアル筈ハナイノデアリマスカ
ラ、必ズヤ是ハ御有リニナルデアラウト思ヒマス、故ニ此平均ノ數量デ宜シ
イ、各線每、百四十九本各別ニ伺フ必要ハアリマセヌガ、平均數量ヲ御伺ヒ致
シタイノデアリマス、私ノ察スル所ニ依レバ、恐ラクハ非常ナ微弱ナル僅少
ナル、迚モ建設費ヲ掛ケテ鐵道ヲ敷クニ足ルベキ數量ガアラウト思ヘナイ、
ナゼナラバ昨年臨時議會ニ於テ提出ニナッタ線路ノ平均ヲ考ヘテ見マスニ、凡
ソ人噸合セマシテ二十四五萬位カト思ウテ居ル、既成鐵道ノ約十分ノ一デア
ル、而シテ今囘提案ニナッタモノハ是等ノ擇リ滓ガ殘ッテ居ル、必ズ其以下デ
アルニ相違ナイノデアリマス、又哩數カラ言ッテモ非常ニ短イモノデアル、或
ハ價値ナキモノデハナイカト云フ疑ヲ、私ハ是等ノ點カラシテ挾ム者デアリ
やっ、若シ斯樣ナモノデアルトシマスレバ、一面ニハ多大ナ金額ヲ投ジテ道
路ヲ造リツツアルノデアル、今日自動車輸送ノ盛ナル時、又追〓自動車輸送
ノ盛ニナラムトスル時ニ當ノテ、何ヲ苦ンデ僅ナ數量ヲ運ブニ多大ノ資本ヲ投
ジテ線路ヲ建設スル必要ガアラウカ、誠ニ惑ヒマスノデアリマス、此惑ヲ解
キマスル、ニハ輸送數量ヲ是非拜見イタサナケレバ、甚ダ審議上差支ヘルノデ
アリマス、殆ド私ハ大多數ハ自動車位デ間ニ合フベキモノデハナイカト推測
イタスノデアリマス、次ニ御伺ヒ致シタイノハ、此法律ヲ見マスト云フト、
私ハ甚ダ了解ニ苦シムノデアル、第一條デ別表ニ揭グル線路ヲ段々繼續費デ
要求シテ行ケ、第二條デ何トカ地方鐵道ニ免許スルコトモアル、第三條デ、
增減ヲシテモ宜イト、何ヲ規定シタノダ、法律ハ········法律ノ效力ハドコニア
ル、是ダケ別表ニ揭グルモノヲ國家ガ必ズヤルノデアルカト思ヘバサウデモ
ナイ、地方鐵道ニモヤル、又是ダケデアルト決定シタノカト思ヘバサウデモ
ナイ、說明ヲ聞ケバ此以外ニ幾ラモアル、增減ノ變更ガ出來ナイカト思ヘバ
增減ノ變更モ出來ル、是ハ何ノ爲ニ規定シタ、何ヲ拘束スルノダ、法律ハ
法律ノ規定ヲ要スル本ガ分ラヌ、殆ド法律ヲ要シナイモノデハナイカ、〓
科書ニ鐵道ヲドウトカスルト云フノト殆ド變ラナイ、元ノ敷設法ハ幾ラカ意
味ガアル、完全トハ言ヘヌガ、是ヨリハ意義ヲナシテ居ルノデアル、ナゼカ
ト云ヘバ其當時ハ鐵道ノ會計ト云フモノハ特別會計デハナイ、一般會計ニ屬
シテ居ッタ、政務多端ノ折柄、鐵道ノ急務ト云フコトモアリ、故ニビシット是
ダケノモノハヤラナケレバナラヌ、サウシテ此財源ハドウシテヤル、是ハ何
年デ、一期ハドウスル、二期ハ斯ウスルト、チヤント多少ノ極リガ付テ居
ル、拘束力ガアルノデアル、今囘ノ此ノ法律ニ至ッテハ何ヲ束縛シ、何ヲ規定
シタト云フコトハ、私ニハ分ラナイ、唯別表ニヅラット名モ知ラレザルヤウ
ナ線路ヲ列ベラレテ居ルニ止マルノデアリマス、之ヲ實行シテ行クト云フト
キニハ、又豫算ヲ擧ゲテ來ナケレバナラヌ、豫算ヲ擧ゲテ來ルトキハ非常ナ
騷ギデアル、我勝チニ爭ッテ豫算ノ要求ヲスルノデアル、是ハ一面ニハ社會風
〓ノ爲メ大ニ考慮ヲ要シナケレバナラヌコトト私ハ思フ、行政官トシテ、誠
ニ意ヲ用ヰナケレバナラヌ點デアラウト思フノデアリマス、是ハ考慮セザル
ノ甚シキモノデアル、動トモスルト醜聞ヲ耳ニスルモノデアリマスガ、或ハ
其種ヲ蒔カナイトハ私ハ申上ゲ兼ネルノデアル、舊來ノ敷設法ト今日ノ敷設
法ト較ベテ見マスト云フト其效用ニ於テ私ハ何ノ役ヲナスモノデアルカト
云フコトヲ甚ダ疑フノデアル、又鐵道大臣ハ此ノ改正案ハ昨年ノ臨時議會ニ
於ケル六分科ノ希望、豫算總會ノ希望ガアッタカノ如クニ仰セラルル、是ハ非
常ノ御間違ヒデアルト思フノデアリマス、昨年ノ臨時議會ニ於テ六分科アタ
リデ要求シタト云フコトハ、斯ウ云フ譯デアリマス、輕便鐵道ノ目ヲ擧ゲナ
イデ、金額一方ヲ御擧ゲニナルノハイカヌ、多大ナ金額ヲ以テ何ヲヤルノカ
分ラヌ、何處何處ニ線路ヲ架ケルノカ分ラヌ、斯ウ云フ遣リ方ハ甚ダ不取締
デアル、是ハ明カニ豫算ニ計上ナサルノガ當リ前デハナイカ、又出來得ベク
ンバ法律ニ擧ゲルガ宜イヂヤナイカト云フ、斯ウ云フコトノ私ハ要求デアッタ
ト思フ、斯ウ云フ多大ノ線路ヲ出スト云フヤウナ要求ハ毛頭ナイ、寧ロ昨年
ハ削リタイ位デアッタ、此點ハ御考違ヒデハナイカト思ヒマスノデ、附加ヘテ
申述ベタ次第デアリマス、私ハ唯斯ウ云フ風ナ法律デアルナラバ、豫算ヲ以
テ要求シテ足レリト信ズル者ノ一人デアリマス
〔國務大臣元田肇君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=44
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045・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 御答ヲ申上ゲマス、唯今中村君ヨリ種々御質疑ガゴ
ザイマシタ、私ハ不幸ニシテ此度モ亦御同感ヲ得ルコトノ出來ナイコトヲ甚
ダ遺憾トスルノデアリマス、御述ベニナリマシタコトノ中デ御意見ニ亙ルコ
トハ今日ハ辯明ヲ止メマス、御尋ノ結果ニ付テ一應申上ゲマスガ、併ナガラ
其中ニ或ハ私ハ多少意見ニ亙ラネバ宜シイガ、精々是ハ控ヘル積リデゴザイ
マス第一ハ實行可能ナリヤ否ヤ、財源ニ關係スルデアラウト云フ御說デア
リマシタ、拜聽イタシマシタガ、段々經費ガ增加シテ行クデアラウ、改良ノ
コトハ東京驛ガ中心トナッテ居ラヌガ、之ヲナルヤウニシナケレバナラヌ、斯
樣ナコトハ多々アルノデアル、此際ニ斯樣ナ線路ヲ出シタ所デ到底實行不可
能デアル、是ガ最後ノ御斷定デアル、不可能デアルト云フ御意見ハ、是ハ私ハ
何モ御答へ申上ゲルコトハ出來マセヌ、御再考ヲ願フト申上ゲルダケニ止メ
ルノデアリマスガ、私ハ決シテ實行不可能トハ考ヘマセヌ、政府當局ハ決シ
テ實行不可能トハ考ヘマセヌ、財源ニ付テ內田君ヨリ尋ネラレタノハ、唯益
金、公債、借金ト云フモノガ財源ダト云フ、少シモ要領ヲ得ナイト云フ御言
葉デゴザイマスガ、洵ニ左樣ナ御答辯ヲ申上ゲテ甚ダ遺憾ニ存ジマスガ、私
自身ハソレデ要領ヲ得テ居ル積リデアリマス、財源ハ何カラ取ルカ、益金、
公債、借入金、現ニ今年ノ如キ此益金ハ九千餘萬圓ノ見込デ、アトハ公債又
ハ借入金ヲ入レテ十年ノ豫算ニ出テ居ル、今年ノミナラズ昨年モ出テ居ル
此ノ公債借入金ガ其年ニ澤山出來ルカ出來ナイカト云フコトハ、財政ノ狀態、
民間ノ經濟狀態ニ依ルノデアルカラ玆ニ決定ノ規定ヲ置クト云フコトヲ差控
ヘマシタト云フコトヲ申上ゲマシタノデ、其意見ハ私ハ徹底シテ居ルト自分
ニハ信ジテ居リマス、極メテナカッタガ宜イトカ惡イトカ云フ議論ハ別トシ
テ、私ノ答辯ノ趣旨ハ御解リニナラナケレバナラヌト信ズルノデアリマス、
ソレデ實行不可能デアルト云フ御斷定ニ對シテハ、私ハ實行可能デアルト、
左樣ニ御答申上ゲルホカナイノデアリマス、其財源ニ付テハ、一年ニ何程ノ
財源ヲ供スルト云フコトハ玆ニ御答ハ出來マセヌ、敷設スベキ價値ガナイ、
質問トシテ敷設スベキ價値アリヤ否ヤ、此質問ヲ承ルト、敷設スベキ價値無
シト云フ、是ハ御意見デアリマスカラ致方ガアリマセヌガ、政府當局トシテ
ハ敷設スベキ十分ナル價値アリト確信イタシテ居ルノデアリマス、茲ニ一言
申上ゲテ置カナケレバナラヌノハ、數字ヲ示セト云フ、私ハ不得手ナル數字
ニ於テ廔〓難儀ヲ致シマスガ、數字ヲ示セト云フコトハ、政府ノ經濟狀態ノ收
益ニ關係シタ取調ベカト存ジマス、ソレハ其取調ベハ御氣ニ適フカ知レマセ
ヌガ、取調ベハ出來ル限リ致シマセウガ、併シ茲ニ一言シナケレバナラヌノ
ハ、收支相償ウテ餘リアルモノノミデ鐵道ヲ架ケルコトハ、國有鐵道法ノ精
神デナイト云フコトヲ一言致シマス、鐵道ヲ買收シテ國有鐵道ト致シマシタ
時ノ根本ノ理由ハ、幾多モゴザイマスガ其中ノ重要ナル理由ハ、民間ニ任カ
セテハ有利ナ場合ノ鐵道敷設ノミヲ選リ食ヒシテ、遂ニ不利ナ所ノ鐵道ヲ貫
通スルコトガ出來ナイ、ソレデハイカヌカラシテ、有利ナ所ト不利ナ所トヲ
總テ合セテ有無相通ジテ帝國ノ交通機關ヲ完ウスルコトデ、之ヲ國有鐵道ニ
致シマシタトキモ私共ガ贊成シタ理由ニナッテ居リマス、收支バカリヲ以テ絕
對的ニ論ズルコトハ出來ヌ積リデアリマス、是ハ一言添ヘテ置キマス、ソレ
カラ此處ニ誠ニ遺憾ナ御言葉ニ接シマシタガ、廣軌ト狹軌ヲ彼レ此レ論ズル
ト云フヤウナ愚人ハ今日無イト云フ御言葉デゴザイマス、誠ニ其愚人ニ陷ル
次第デアリマスルカラ遺憾デアリマスルガ、我ガ帝國ニ於キマシテハ、今日
ハ狹軌ヲ以テ足レリトスル意見ヲ飽マデ支持スルノデゴザイマス、之ヲ御答
イタシマス、ソレカラ私ハ第二ニ、法文中ニ讀ンデ見レバ何ノ事カ譯ノ分ラ
ヌ、現行敷設法ニ於テハ多少ノ意味ヲナシテ居ルガ、今囘ノ法文ハ少シモ意
味ガナイ、是ハ考慮セザルノ甚ダシキモノデアルト云フ、是モ矢張御質問
トシテ此ノ御言葉ヲ頂戴イタシマシタ、私ハ決シテ左樣ニ思ヒマセヌ、今囘
ノ法文ヲ御覽下サイマスレバ、今度ノ法文ニ定マッテ居ルノデ如何ニシテ鐵道
敷設ノ豫算ヲ出シタカト云フコトガ分ルシ、ソレカラシテ將來ニ於テ鐵道ヲ
敷設スルニ付マシテハ、御協賛ヲ得テ決定シタル所ノ、此ノ敷設法中ノ鐵
道ヲ提出スベキモノデアルト云フ拘束力モ玆ニ起ルノデアリマス、或者ハ行
政官ノ權限ヲ束縛スルニ至ルカラシテ、如何ナモノデアルカト云フ疑問ヲ出
シタ者モアリマス、ソレガ卽チ此法律ノ最モ妥當ナル所以デアルト、私ダケ
ハ信ジテ居リマス、變ヘムト欲スレバ行政官ガ勝手ニ提案ガ出來ナイ、既
國家ハ之ヲ決メテアル、斯ウ云フコトガアリマスルカラ、拘束力ガ無イト云
フコトハ決シテナイノデ、之ヲ變ヘヤウト思フナラバ、更ニ帝國議會ノ協賛
ヲ經ナケレバ變ヘルコトガ出來ナイト云フコトデアル、ソレデナケレバドウ
デモ勝手次第ニ變ヘル譯デアリマスルガ、サウ云フコトノ出來ナイコトニシ
テアルノハ法律ノ效能デアリマス、ソレカラ豫算ヲ備ヘテ出シテ始メテ效
能アルノデアッテ、豫算ヲ備ヘテ出サナイナラバ、唯法文ヲ出シテモ何ニモナ
ラナイト云フ御說デアリマス、豫算マデ備ヘテ出スナラバ、此上ノコトハゴ
ザイマスマイ、併ナガラソレハ財政ニ顧ミテ茲ニ年々ノ豫算ノ高ヲ決メテナ
イカラト申シテ、三文ノ價ガ無イトハ斷ジテ言ハレヌ、帝國ニ於テ鐵道ヲ經
營イタスト云フコトニ致シマシテ、曾テハ計畫アッテ鐵道敷設法ガ出來タ、此
線路ガ大體ニ於テ終了スル際ニ當リ、第一ニ如何ナルモノヲスルカ、ソレハ
時ノ政府ガ出シタトキ協贊ヲスレバ宜イト云フコトデ、是ガ計畫ト申サレマ
セウカ或ハ申サレルカ知レマセヌガ、私ハ決シテサウ云フコトハ適當ナラ
ズ、卽チ豫メ政府ガ最善ノ法ヲ講ジマシテ提案ヲ致シ、帝國議會ノ御協賛ヲ
經テ法文トシテ之ヲ確定シテ置クト云フコトハ、計畫ヲ明カニシ、將來ノ此
聯絡等ヲ取リマスル地方鐵道ノ許否ヲ決スル總テノコトハ、此ノ鐵道網カラ
出テ來ルノデアリマスカラ、斯ル計畫ヲ明カニ法律ガ規定シテ居ルコトハ、
決シテ失當デナイト信ジテ居リマス、ソレカラ前ニハ別表ニ揭グルモノニ付
テ云々ト書イテアルカト思ヘバ、其次ニハ地方鐵道ニアルモノヲ許スト書イ
テアル、又其次ニハ帝國議會ノ協贊ニ依リ變更スルコトガ出來ルト書イテア
ル之ヲ決メテ置クカト思ヘバ、地方鐵道ニ許スト云フコトモアル、サウカ
ト思ヘバ變更モ出來ルト云フコトデアル、何ノ事ヤラ分ラヌト云フ御質疑デ
ゴザイマスルガ、是ハモウ單リ本法ニ限ラズ、總テノ法文ニ於キマシテカラ
二、少シモ珍ラシイコトデナイト思フ、第一條ニ於テハ大體ヲ決メマシテ、
第二條ニ地方鐵道ニ斯樣ナ場合ハ許スコトガアルト云フ除外例モ揭ゲテア
ル、併ナガラ一旦決マリマシタモノヲ變更スルニハ········絕對デアルト云フヤ
ウニ法律ニハアルガ、絕對ニヤルト云フモノデナイ、斯樣ナ場合ニハ斯ク斯
クノ手續ヲ經、帝國議會ノ協賛ヲ經ナケレバイカヌ、鐵道會議ノ諮詢ヲ經ナ
ケレバイカヌト云フコトヲ、斯樣ナコトヲ規定スルコトハ何ノ訝ルコトガア
ルカト存ジマスル、要スルニ是ヨリ以上ハ御意見ノ相違ト思ヒマスルガ、更
ニ一言チヨット申上ゲテ置キマスルノハ、御院ノ御希望ト云フコトヲ誤解ヲシ
テ居ルト云フ唯今御說デアリマスルガ、勿論別表ニアル百四十九本出セト云
フ御誂ヘデモナカッタト思ヒマスケレドモ、現行敷設法ハ最早終リニ近ヅイテ
居ル、輕便主義ノ鐵道ト云フモノハ止シテ、利益ノ澤山アルモノハ兎角議論
ガアルコトデアルガ、此際整理ヲシテ簡單明瞭ナモノガ出來ルヤウニシテ、
要ラナイ法律ヲ廢スルコトガ出來マイカ、願クハ整理ヲシテ貰ヒタイト云
フ意味ニ拜承イタシマシタ、少ナクモ私ハ左樣ニ拜承イタシテ、此提案ニ努
メタ積リデアルト云フコトヲ御承知ヲ願ヒタイ、先ツ是ガ御不滿足カハ存ジ
マセヌガ、御答ヲシタ積リデゴザイマスガ、更ニ此改良トカ建設トカ云フコ
トニ付テ、精々努メテ居ルト云フコトヲ申上ゲマシタ所ガ、數字ノ比例デイ
カヌト云フコトハ如何ニモ左樣ナコトモゴザイマセウ、併ナガラ是モ諸公ノ
御參考ニ私ハ申シテ置キタイト思フノデ、大正五六年ノ頃カラシテ今日ニ至
ルマデニ於キマシテ、年々ノ成績上如何ナルコトヲ致シテ居ルカト申シマス
レバ、現內閣ノ九年度十年度ト云フ今年ノ豫算等ニ至リマシテ、從前ニ無キ
所ノ比例ノ數字ヲ以テ改良ニ從事スルコトニ致シテ居リマスル、比例通リノ
譯ヲ以テ直ニ宜イトハ云ヘヌ、ソレハサウカモ存ジマセヌガ、併ナガラ少
ナクモ多大ノ費用ノ割合ヲ以テ改良事業ニ我〓ハ從事シテ居ルト云フコトダ
ケハ、確ニ改良ニ重キヲ置キ、其工事ヲ進メテ居ルト云フコトニハナルダラ
ウ、其點ハ御了承願ヒタイト思ウテ申上ゲタ次第デアリマス、是ダケ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=45
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046・中村是公
○中村是公君 幾ラ尋ネテモ分ラスカモ知レマセヌガ、私ノ御尋申上ゲマ
シタ要點ニ、少シ誤解ガアリハセヌカト思フコトガアリマスカラ、簡單ニ要
領ヲ申上ゲマス、私ハ斯樣ニ申シタ、此法案ヲ實行ニナラムトスルノデアル
ガ、出來得ベキヤ否ヤト云フコトヲ審査スル必要ガアル、自分ハ此ノ內田君
アタリノ話ヲ聽イテ見テモ、又自分デ計算シテ見ル所ニ依テモ、ドウモムヅ
カシイヤウニ思フ、ト云フノハ金ガ足ラヌカラシテ、ドウモ出來サウニ思ハ
ヌガ、出來ル出來ルト仰シヤルガ、ドウ云フ風ニシテ金ノ御才覺ヲサレルノ
デアリマスカ、金ノ才覺ノ方法ヲ御聽キシタノデ、ソレガ分ラヌト云フコト
ニナルト云フト、十年計畫自體ガ旣ニ問題デアルノデアリマスカラ、此以上
ノコトハ一層ノ問題ニナルノデ、ダカラ此財源ガアルカナイカト云フコトニ
付テ御答ヲ得ナイト云フト、他ノ諸君ハ知リマセヌガ、私ハ此賛否ニ甚ダ迷
フノデアリマスカラ、此點ヲ御伺ヒシタノデ、又是等ノ線路ハ、多大ナ建設費
ヲ費シテ、價値ガアルカ否ヤト云フコトヲ決メナケレバナラズ、之ヲ決メル
ノニハ輸送數量ト云フモノガ分ラナイト云フト決マラナイ、線路ノ價値ガア
ルカナイカヲ考ヘズニ、線路ヲ法律ニ規定スルト云フコトハ是ハ無謀デアル
ノデアリマスカラ、此價値ノ有無ヲ第一ニ決メナケレバナラヌ、價値ノ有無
ヲ決メルニハ輸送數量ガ唯一ナ判斷ノ材料トナルノデアルカラ、之ヲ聽キタ
イ、是ハ三十年以上モ掛カッテ精細ナル御調査ヲナスッタト云フコトデアルカ
ラ、無イト云フ譯ニハ行カヌ、又有ルベギ道理デアル、故ニ之ヲ拜聽シタイ、
斯樣ニ申上ゲタコトハ附ケテ申上ゲル、私ハドウモ價値ガ無イヤウニ思ハレ
ル、此惑ヒヲ解クノニハ有ルヤ無イヤノ材料ヲ與ヘテ戴カナケレバ甚ダ苦シ
ム次第デアリマスカラ、ソレデ輸送數量ヲ御示シヲ願ヒタイ、是モ百四十九
本一線別ニ御願ヒスルト云フノヂヤナイ、平均デ宜シイ、此大體ガ分ラズシ
テ本案ノ賛否ヲ決スル譯ニハイカヌト思フ、是デ御尋シタノデス、ソレカラ
第三ノ法規ノ話デアリマスガ、是等ハ深ク御尋ネ致シマセヌ、私ニハ御答ハ
要領ヲ得ナイノデアリマスケレドモ、是ハモウ御尋ネ致シマセヌ、前ノ二點
ニ付テ此所デ御答ヲ得ラルレバ尙ホ仕合デアリマスガ、若シ此所デ御答ガ得
ラレナケレバ何レノ機會ニ於テカ御答辯ヲ受ケレバ宜シイノデアリマス
〔國務大臣元田肇君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=46
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047・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 財源ノコトデ再ビ御尋ネデ、私ハ繰返シマシテモ以
前申シタヨリ外ニ御答ガ出來マセヌ、此以上將來ニ亙ッテドウ云フ財政ノ方法
ヲ執ッテヤルカト云フコトデアリマスルナラバ鐵道大臣デ御答ヘスルノハ適
當デアルマイト思フ、唯鐵道ノ當局ト致シマシテハ、法規ノ定メテアル所ノ
財源ニ依テ求メルヨリ外致方ガナイ、左樣御承知ヲ願ヒマス、ソレカラ數量
ノ大體ヲ出セト言ッタノデアル、是ハ御知ラセ申サヌト御答ヘシテ居リマセ
ヌ、唯其事ニ付フハ成ベク御覽ニ入レル手續モ執ルヤウニ致シタイト思ヒ
マスガ、豫メ此所ニ申シテ置キタイノハ、國有鐵道ト云フモノハ收支ノ勘定
ガドレダケアルト云フコトヲ標準トシタモノデナイヤウデアリマスカラ、其
方ハ其方デアリマスケレドモ、玆ニ御答ヘスルト云フコトヲ申上ゲタノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=47
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048・中村是公
○中村是公君 甚ダ重ネテ申上ゲルノモ恐縮ノ次第デアリマスルガ、私ハ此
不急ノ線路ヲ無闇ニ擴ゲテ行クコトニナルト、仕事ガ纏マラヌ、資本ガ寢テ
仕舞フノデアリマスカラ、段々此鐵道ノ會計ニ累ヲ爲スト云フコトヲ憂ヘル
爲ニ承ハリタイノデアリマスケレドモ、幾ラ御尋ネ致シテ見マシテモ要領ヲ
得マセヌノデスカラ、是デ質問ハ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=48
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049・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 唯今鐵道大臣ノ御答ノ中ニ、國有鐵道ハ收支ハ構ハヌト
云フヤウナ御答ガアッタヤウデアリマスガ、是ハ此席ニハ其當時鐵道國有ニ關
係セラレタ山縣君モ居ラレルシ、又仲小路君モ居ラレルガ、鐵道ノ國有ト云
フモノハ全體ノ上ニ付テハ益金ノ出ル計算ヲ以テヤルノデス、此度ノ御計畫
ニナル六千三百哩ガ益金ガ出ヌト云フコトニナレバ、十二三億、內田君ノ計
算ニ依レバ十八億ノ利息ガ拂ヘヌト云フコトニナル、ケレドモ一部ノ小サナ
線路ニ付テハ、是ハ補給線ト言フカ、收支ノ出ヌモノモアルカモ知レマセヌ、
ソレデ百五十本ニ近イ鐵道ノ輸送數量ハ收支償ハヌト云フヤウナコトニナリ
マシタナラバ、非常ナ是ハ國家財政ノ上ニ缺陷ガ生ジテ來ル譯ニナラウト思
フ、其邊ノコトハ如何承知イタシテ宜イデスカ、鐵道大臣ノ唯〓ノ御答辯ニ
付テ疑ヲ生ジマシタカラ、此際確メテ置キタウゴザイマス
〔國務大臣元田肇君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=49
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050・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 誠ニ私ノ言葉ノ足ラヌノデゴザイマシテ、更ニ御質
問ヲ煩ハスニ至ッタノヲ甚ダ遺憾ト存ジマス、百四十九本ノ線路ヲ出シマシテ
收支償ハヌ、唯線路ダケヲ開カウト云フ考デ出シタノデナイコトハ、是ハモ
ウ申ス迄モナイコトデアリマス、此前ニ御尋ネニナッタノハ、百四十九線ガ悉
クト云フ御尋ネデハナイヤウデアリマシタ、百四十九線ト云フ中ニハ收支償
ハヌモノガアルカモ知レヌト云フヤウニ聽取リマシタ、併シソレトテモ全局
ニ對シマシテハ大ナル利益ヲ爲スコトガアルノデアリマスカラ、唯一部分ダ
ケノ收支ノ償ハヌモノガアッテモ、國ハソレヲヤラナケレバナラヌ、斯ウ云フ
意味モ鐵道國有法ヲ作ル時ニハアッタト自分等ハ信ジテ居ルト云フコトヲ申
シタ、全體ニ亙ッテ益ガ無クテモ何デモヤルカト云フノハ、極端ナ御批評デア
リマスガ、左樣ナ意味デナイコトヲ申上ゲテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=50
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051・仲小路廉
○仲小路廉君 私ハ斯ル場合ニ言葉ヲ挾ム考ハゴザイマセヌクレドモ、今日
鐵道問題ヲ議スル際ニ、鐵道國有當時ノコトニ論及サレテ、其ノ國有當時ノ
コトニ付テ、唯〓鐵道大臣ハ殆ド鐵道ノ收支ニ拘ラズニ買收ヲシタヤウダト
云フヤウナコトヲ御漏ラシニナリマシタカラ、玆ニ阪谷男爵ノ疑ヒガ起ッタ、
私ハ鐵道國有當時ニ直接關係イタシマシタ、鐵道國有ハ固ヨリ國家ニ必要ナ
ル線路ヲ買收スル、併ナガラ其線路ノ買收ニ付マシテハ、收支計算ハ極メ
テ明瞭ニ、買收公債ガ何年目ニ償還サレル、如何ニシテ將來ノ經營ガ出來ル
カ、申ス迄モナク其線路ノ實質ニ付テ、今申ス如キ買收公債ノ償還、將來ノ
經營ニマデ、考慮イタシテ居ルコトデ、故ニ唯今鐵道大臣カラ卒爾ニ仰セラ
ルル狀態トハ、當時ノ事情ハ異ッテ居リマス、此點ハ御參考ニマデ申上ゲテ置
キマス
〔國務大臣元田肇君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=51
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052・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 尙ホ一言ヲ私モ添ヘテ答辯ノ趣旨ヲ明カニ致シテ置
キマス、唯今仲小路君ヨリ鐵道國有ノ買收シタ時ノ當時ノ有樣ヲ御紹介ガア
ソマシタ、收支ノ計算ヲ明カニシテ斯樣斯樣デアルト云フコトガアリマシタ、
此點ニ付マシテ私ハ一點ノ疑念、反對ヲスル筈ノモノデハゴザイマセヌ
私ハ買收シタ當時ノ鐵道ノコトヲ申シタノデハアリマセヌ、先刻申シタノハ
鐵道ヲ國有トスルコトノ必要ヲ認メタト云フコトハ、有無相通ジテ、民間會
社ニ任セテ置ケバ、收支ノ點カラ中〓貫通シナイヤウナコトニナッテ仕舞フノ
ハ國家ノ不利ナリ、斯樣ナル意味ニ於テ國有ニスルト云フ必要モ我〓ハ贊成
シタ、蓋シ此意味ハ少ナクトモ私ハアッタコトト思ヒマス、少ナクトモ私ハ左
樣ニ信ジテ居ルト云フコトヲ申上ゲタノガ、ツイ阪谷男爵ノ御疑惑ヲ來スコ
トニナッタ、其ノ御疑惑ニ付マシテハ先刻辯明ヲ致シテ御了解ニナッタト思
ヒマス、此段ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=52
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053・江木翼
○江木翼君 先ホド中村君ヨリ此ノ法律案ノ法律上ノ效力ト云フコトニ付テ
御疑問ガ出マシタ故ニ、私モ豫テ左樣ナ考ヲ有ッテ居ッタノデゴザイマスカラ、
幸ニ鐵道大臣ノ御辯明ニ依リマシテ或ハ惑ヒヲ解クコトガ出來ルカト思ッタ
ノデアリマスガ、甚タ不敏ニシテ惑ヒヲ解クコトガ出來ナカッタノデアリマ
ス詰リ是ハ私ノ寡聞ヲ以テ考ヘテ見マシテモ、或ハ憲法上ノ一點ニ依ラレル
ノデナイカト云フ考ヲ起スノデアリマス、本法案ヲ見マスルト、施行期日ガ
定メテナイノデアリマス、恐ラクハ議會終了後直ニ公布セラレ、而シテ法
令ノ結果ト致シマシテ、公布後二十日ヲ以テ效力ヲ生ズルモノデアラウト思
ヒマス、來年ノ議會終了後、若クハ來年ノ議會開會ニナッテ後ニ公布サレルト
云フコトハ、所謂會期不繼續ノ原則ニ依リマシテ當然出來ナイコトデアリマ
スルカラ、議會終了後、來年ノ議會ノ開會前ニ公布セラレ、サウシテ二十日
後ヲ以テ效力ヲ發生スルモノデアラウト思フノデアリマス、然ニ是ガ公布
セラレ二十日後ニナッタトシテ、果シテ如何ナル法律上ノ效力ヲ生ズルモノデ
アリマスカ、政府ハ之ニ依テ各線ヲ架設シナケレバナラヌ義務ヲ負フモノデ
モナイ、唯此百何十何線ト云フモノヲ豫算ガ出來タナラバ、繼續シテ架設シ
テヤラウト云フ宣言ヲナスノ效力シカナイ、又政府ノ宣言ハ國家ノ宣言ヲナ
スト云フダケノ效力シカナイ、又其地方ノ人民ハ之ニ依テ鐵道ガ架設サルベ
キモノデアルト云フ期待スラ有ッテ居ナイ、五十年先キニナルカ、百年先キニ
ナルカ分ラヌ、憲法ノ所謂法律ト云フ言葉ノ意味ニ付マシテ、或ハ學者ノ間
ニ性質的效力トカ實質的效力トカ云フコトガアリマスガ、少ナクトモ我國ニ
於テ從來出來マシタ法律ト云フモノニハ、何カシラ效力ガアル、國民ニ對シ
テ權利ヲ認メルトカ義務ヲ負ハストカ、或ハ官廳ニ對シテ或義務ヲ負ハスカ、
或手續ヲ定メルカ、或ハ國家ニ對シテ或義務ヲ負ハセルカ、何カソコニ效
力ノ發生スルモノガアルノデアリマス、處ガ本法案ニ付マシテハ、施行シ
タ百四十何線ヲ軈テ出來ルノデアルト云フヤウナ、茫漠タル所ノ所謂宣言的
ノ意味ニ外ナラヌヤウニ思ヒマスガ、左樣ニナリマスルト、本法案ハ從來少
ナクトモアリマスル所ノ普通ノ法律ト、此法律ハ性質ヲ異ニスルモノデナイ
カト思ヒマス、隨ッテ此法律ノ效力其者ガ餘ホド疑ハシクナルモノデハナイカ
ト云フ感ジガ起ルモノデアリマスガ、幸ニ鐵道大臣ハ法律ニ付テハ專門ノ方
デアリマスル故ニ、此點ニ付テ恐ラク明快ナル御答ヲ下サルコトト思ヒマス、
改メテ御伺ヒ致シマス
〔國務大臣元田肇君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=53
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054・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 江木博士ノ御尋ニ對シテ御答申上ゲマス、直ニ豫
算ヲ出シテ敷設ニ從事スルノデモナイ、サウスレバ唯一ツノ宣言ニ止マルノ
デアルカラシテ、何等效力モナイヤウニ思フガト云フコトデアリマス、私
此法律ヲ施行イタシマシタナラバ、其時ヨリ鐵道ト致シマシテハ、此附則ニ
揭ゲテアルモノノ中ヨリ先ヅ出スト云フト、直ニ義務ヲ玆ニ負ハセラレル
ノデアリマシテ、其線路ヲ變更スルト云フコトモ或途ヲ採ラナケレバ出來ナ
イ、其中ノ一部ヲ中央鐵道ノ行政官ガ許スト云フコトハ出來ルカ、出來ヌカ
ト云フコトモ、此法律ニ依テ出來ルコトニナル、斯ウ云フ性質ノコトガ規定
イタシテアルノデアリマスカラ、實行ノ日カラ拘束ヲシタリ、或ハ職權ヲ付
與シタリシテアルモノハ、直ニ實行ノ效力ヲ生ズルモノト思フノデアリマ
ス、何モ豫算ニ決メテ置クト云フコトガ、法律ノ效力ヲ生ズル要件ト云フコ
トハ言ハレナイト思ヒマス、是ハ事ハ變ルカ知リマセヌガ、必ズシモ目前ニ
其法律ヲ以テ法ノ效力ガナイトハ信ジマセヌ、此意味ニ於キマシテ、是ハ法
律ト致シテ決シテ差支ナイコトト信ジテ居リマス、現行ノ敷設法ニ於キマシ
テモ、今日ニアリマシテハ大體之ト同ジコトニナッテ居リマス、卽チ依然トシ
テ法律ノ效力ヲ有ッテ居ルノデアリマス、併ナガラ是以上ノコトデアリマスナ
ラバ、ソレハ議論デアリマス、江木君ハ最モ法律ノ蘊奧ヲ極メラレタ御方デ
アリマスカラ、私共其邊ニ付テハ委員會ニ於キマシテモ、十分ナ攻究ヲ願ヒ
マシテ、自分ノ所信ハ所信ト致シテ、御審議ノコトハ承リタイト思ッテ居リマ
ス、自分ノ所信ト致シマシテハ、之ヲ法律トスルコトニ於テ何等差支ナイ當
然ノコトデアルト云フコトヲ信ジテ居ルコトダケヲ御答イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=54
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055・江木翼
○江木翼君 頗ル大事ノコトト思ヒマスルデ、モウ一應伺ヒマス、本法ヲ公
布スレバソレニ依テ或效力ヲ發生スル、斯ウ云フコトデアリマスルト、此現
ニ揭ゲテアルモノガ、例ヘバ繼續費トシテ豫算ニ提出セラレタ場合ニ於テ、
他日議會ハ憲法第六十八條ノ結果········六十七條デアリマス、其結果ト致シマ
シテ、法律上ノ結果ニ由ル歲出デアルカラ、政府ノ同意ヲ得ナケレバ削除ハ
出來ヌ、斯樣ナ效力ヲ此法律ニ有タシメヤウト云フ御趣意デアリマスカ、ソ
レデアリマスルト是レ事頗ル重大デアル、此法律ヲ先ヅ決メテ置クサウシ
テ茲ニ歲出ハ二十億或ハ十八億ト云フ歲出ニ係ルモノヲ、政府ノ同意ヲ得ナ
ケレバ削減ガ出來ヌト云フヤウナ效果ト云フモノガ、此法律ニ依テ完成スル
ト致シマシタナラバ、ソレコソ私ハ餘ホド考慮ヲ要スルモノト思ヒマスガ、
斯ノ如キ效力ヲ認メラレル趣旨デアルカ、ドウカ、若シソレガ何モ認メラレ
ナイナラバ、私ハ此問題ニ付テ殆ド考ヲ要スルマデモナク、何等法律的效果
ヲ發生スルモノデナイト、斯ウ斷ズルノ外ハナイト思ヒマス
〔國務大臣元田肇君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=55
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056・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 唯今ノ重ネテノ御質問ハ私ニハ不幸ニシテ了解シ得
ヌノデアリマス、政府ノ同意ナクシテ云々ト云フヤウナ憲法上ノ法文ヲ、御
引合ニ出サレタト云フコトハ殆ド了解ガ出來マセヌ、唯〓江木君ノ仰セラレ
ルヤウナコトハ、私ハ申シタ覺エハナイノデアリマス、行政官ガ此法文ニ定
メテアル所ノ線路ヲ、勝手ニハ變更スルコトハ出來ナイト云フコトハ申シマ
シタケレドモ憲法ニドウ斯ウデアルト云フ唯〓ノ趣意ハ申シタ覺エハナイ
ノデアリマスカラ、少々私ハ御答ガシ兼ネマスルガ、尙ホ先刻モ申上ゲマシ
タ通リ、現在ノ行ハレタル法律ニモ之ト同ジヤウナモノガアルト云フコトヲ
申上ゲマシタケレドモ、唯抽象的ニ申上ゲテハ適切デナイノデアリマセウガ、
北海道ノ鐵道敷設法、明治二十九年五月十四日、法律第九十三號ニ於テ同一
ノ形式ヲ執ッテ居リマス、而シテ上下兩院ノ協賛ヲ經テ帝國ノ法律トナッテ居
リマス、何モ此ノ敷設法ニ於テ何等俄ニ怪シムコトハナイト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=56
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057・江木翼
○江木翼君 行政官ニ拘束力ヲ生ズル、是ハ法律ガ通過シテ豫算ガ通ッテ、サ
ウシテ敷設スルナラバコソ、此線ニ依ラナケレバイカヌトカ、此線ヲ變ヘテ
イカヌトカ云フコトガ起ルノデアリマスガ、此法律ガ出マシタ所ガ、豫算ガ
ナケレバ何モシヤウガナイヂヤアリマセヌカ、行政官ガ之ニ對シテ拘束ヲ受
ケルトカ受ケヌトカ云フヤウナ問題ガ起リヤウガナイト思フ、極メテ私ハ明
白ナ問題デアルト思フノデアル、ソレカラ北海道ノ鐵道敷設法ノコトヲ仰ッシ
ヤッタケレドモ違ヒマス、良ク御覽ニナリマスト、或條項ニ付テハ拘束力ノ發
生スル事項ガアルノデアル、良ク私ハ〓究イタシテ居リマス、ソレカラ法律
ノ結果ニ依ル規定ノコトハ、憲法ヲ御覽ニナレバ直グ分ルコトデアリマシテ、
若シ其效力ガ發生スルト云フコトデアリマシタナラバソレコソ我〓ハ斯ノ
如キ大法律ト云フモノヲ、此際通サシムルト云フコトハ斷ジテイカヌ、斯ノ
如キ御趣意デハナカラウ、斯ウ鐵道大臣ノ御答ヲ解釋イタシマシテ私ノ質問
ハ打チ切リマス、他日ニ又機會ガアレバ讓ラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=57
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058・阪本さん之助
○阪本釤之助君 段々ノ御問答ヲ拜承シマシテ了承イタシマシタガ、第三條
ハ當局大臣ノ御說明モアリマシタガ、之ヲ讀ミマスルト、第一ノ豫定線路ト
云フモノハ、鐵道會議ノ諮詢ヲ經レバ片端カラ壞シテ行クコトガ出來ル、斯
ウ云フコトニナッテ居リマスガ、此法案ノ見方ヲ動カスナラバ、諮詢ヲ經ヨト
書イテアリマスガ、之ヲ一面カラ見ルト云フト諮詢サヘ經レバ第一條ハ片
端カラ崩スコトガ出來ル、斯ウ云フ風ニ讀メルノデアリマス、サウスルト誠
ニ此法律ノ力ト云フモノハ薄弱ナモノデアッテ、鐵道會議ト云フモノガ非常ナ
權力ヲ持ツ、行政官ガ如何ニ考ヘテモ、此諮詢サヘ經レバ此法律ハ全ク蹂躪
サレテ仕舞フト云フコトニナリマスガ、左樣ニ解釋スルノデアリマスカ、又
「又ハ豫定鐵道線路中新ニ工事ニ著手スルモノヲ定ムルトキハ」ト云フコト
ハ、ドウ云フコトデアリマスカ、甚ダ分ッタヤウナ御尋デアリマスガ、少シク
分リマセヌカラ、是ハドウ云フコトデアルカ、此二ツノ御說明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=58
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059・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 會議時間ノ延長ヲ宣告致シマス
〔國務大臣元田肇君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=59
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060・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 第三條ニ鐵道線路ヲ變更スルト云フヤウナコトヲ
スル時ニハ「鐵道會議ノ諮詢ヲ經ヘシ」トナッテ居ル、裏カラ返シテ言ヘバ、鐵
道會議ニ諮詢サヘスレバ片端カラ壞シテ仕舞フコトガ出來ル、斯ウ云フ御
尋ネデゴザイマス、理窟ヨリ申シタラサウ云フ結果ニナルカ存ジマセヌガ、
全體ノ法文ノ精神ハ左樣ナコトデナイト云フコトハ御了解ナサレ得ルト存ジ
Pゞ、私モ左樣ニ解釋スルノガ當然ト思ヒマス、併ナガラ法律ノ解釋ハ色〓
ゴザイマセウカラシテ、法律ヲ規定シテ置テ、但書ヲ附ケテ置テ、サウ
シテ片端カラヤッテ行キサヘスレバ壞レテ仕舞フ、見方ニ依テハ壞シテモ宜イ
ト云フヤウナ議論モ出來ルカモ知レマセヌガ、ソレハ適當ナル解釋ニ非ズト
私共ハ信ジテ居リマス、ソレカラ鐵道會議ハ大變ナモノデアルト云フ御言葉
デアリマスルガ、鐵道會議ニ於キマシテハ、其道ノ專門家、有識者等ヲ集メ
テ會議ヲスルコトニ致シタイト存ジテ居リマス、最モ我〓ハ敬意ヲ拂フモノ
ニ致シタイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=60
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061・阪本さん之助
○阪本釤之助君 「又ハ」ト云フ所カラノ御說明モ伺ヒタイノデアリマスガ、
是ハ蓋シ私ガ見マス所デハ、豫定線路ノ工事ニ著手スル時ハ、鐵道會議ノ諮
詢ヲ經ルト云フコトデアラウト思ヒマスガ、ソレナラバ誠ニ御丁寧過ギタコ
トノヤウニ思ヒマスガ、サウ云フ意味デアリマスカ、ソレカラ第一ノコトニ
付マシテ、斯樣ナ解釋ハアルベキモノデナイト云フヤウナ意味ノ御答辯デ
ゴザイマスガ、併シ法律デ帝國議會ノ協賛ヲ經テ定メタ所ノ堂々タル法律ガ、
兎ニ角此ノ鐵道會議ノ諮詢サヘ經レバ變更ガ出來ルト云フコトニナレバ、此
ノ豫定線路ト云フモノハ甚ダ薄弱ナモノニナリマスガ、左樣ナ御趣意ニ相違
ナイノデアルカ、ドウカ、私ノ言葉ガ極端デゴザイマシタカラ、其極端ヲ御
摑ヘニナリマシテ、何カ妙ナコトヲ言フト云フヤウナ御答辯デアリマシタガ、
兎ニ角極ク輕ク見マシテモ此二三ノ線路ヲ地方ニ依テ變ヘヤウト云フ時ニ
ハ、法律ガ規定シテ居ル線路ヲ鐵道會議ノ諮詢サヘ經レバ變更スルコトガ出
來ル、斯ウ云フ御趣意デアリマスカト云フコトサヘ、御答ヲ得レバ宜シイノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=61
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062・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 當席ヨリ簡單ニ答辯イタシマス、先刻ノ御尋ネハ裏
返セバト云フ御話ニ付テ、解釋論ヲ私ハ申上ゲマシタノデアリマスガ、豫定
ノ鐵道線路ヲ一本變更スルトカ、或ハ新ニ工事ニ著手スルモノヲ行政官限リ
デヤルノハイカヌカラ、鐵道會議ノ議ヲ經テヤルト云フコトニ致シタラ、至
當デアラウト見テ此規定ヲ設ケマシタ、今少シ重キニスルガ宜シイトカ、或
ハ議會マデ協賛ヲ經ルガ宜シイトカ云フコトニナリマスレバ、ソレハ御議論
ニナルコトデ大體ニ於テ議會ノ御協賛ヲ經テ居ル、其經タモノニ付テ幾分變
更ヲ致スト云フ時ニ、行政官限リデヤッテハナラヌ、鐵道會議ノ議ヲ經テ初メ
テ出來ルト云フ趣意デ書イタノデアリマス、其趣旨ノ當否或ハ今少シク制限
ヲスルガ宜シイカドウカ、ト云フコトニ付テハ御意見モ拜承イタシマセウ、
本案ノ趣旨ハ左樣デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=62
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063・阪本さん之助
○阪本彰之助君 別ニ意見ヲ申シテ居ルノデハアリマセヌ、唯今ノ御言葉デ
申シマスト、幾分ト云フ御話デアリマスガ、サウスルト起點ト終點等ニハ變
更ナクシテ途中ノ線路デモ變ルト云フコトデアリマスカ、變更ト云フ法文ヲ
讀ミマスレバ、全ク名古屋ヲ發シテドコソコニ至ル、例ヘバ名古屋ヲ發シテ
東京ニ至ルト云フ線路ヲ、岐阜ヲ發シテ靜岡ニ至ルト變ヘルノモ鐵道會議デ
諮詢サヘ經レバヤッテ宜シイ、斯ウ云フコトニ、法ハ讀メルノデアル、サウス
ルト法律ガ折角議院ノ協賛ヲ經テ定メタ此法律ガ、鐵道會議ノ諮詢ニ依テ變
更スルコトニナルカラ、其邊ハ如何デアルカト云フコトヲ御尋ネシタノガ骨
子デアリマス、ソレヲ明瞭ニ御答ヲ願ヒタイ、又第二ノコトハ豫定線路ガモ
ウ既ニ決ッテ居ッテ、而シテ豫算ガ成立イタシテ居ルケレドモ、其工事ニ著手
スルノヲ鐵道會議ニ掛ケナケレバナラヌト云フコトニナレバ大變ナコトニナ
リマスガ、サウ云フ御趣意デアリマスカ、其二ツヲ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=63
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064・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 是ハ極ク實際ニ立入リマシテノ御話トナリマスレ
バ豫定鐵道線路ヲ變更スト云フノモ、全然變更スルモノデハナイノデゴザ
イマス、工事ニ著手スルト云フノハ、ドウ云フ程度デドウスルカト云フコト
ノ御說明ヲ申上ゲルノハ、甚ダ恐入リマスガ、政府委員カラ申上ゲタ方ガ、
實地ニ近クテ宜シカラウト思フ
〔政府委員石丸重美君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=64
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065・石丸重美
○政府委員(石丸重美君) 私カラ御答イタシマス、是ハ帝國議會ノ協賛ヲ經
ルノデアリマス、鐵道會議ニ掛ケマシテ諮詢イタシマシテ、サウシテ其結果
ヲ帝國議會ノ協賛ヲ經ル積リナンデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=65
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066・阪本さん之助
○阪本釤之助君 サウスルト「又ハ」以下ガ可笑シクナリマスガ、新ニ工事
ニ著手スルコトヲ一々帝國議會ニ掛ケルノデアリマスカ、豫算ハ旣ニ成立シ
テ居ルノニ諮詢ヲ經ベシト云フノハ、帝國議會ニ出ス前ニ諮詢ヲ經ルト云フ
手續ダケガ玆ニ御書キニナッタノデアリマセウカ、鐵道會議ダケノ諮詢ヲ經ル
ノナラバ、何モ茲ニ書カナクトモ、鐵道會議規則ニ御書キニナッテ居レバ宜イ
ノデアリマス、第三條ヲ門外漢ガ讀ミマスト是ガ非常ニ力ヲ持ッテ居ッテ、
第三條ハ是ハ議會デ決ッタモノヲ蹂躪シ得ルコトニナル、「又ハ」以下ニナリマ
スト、工事ノ著手ヲ鐵道會議ニ諮詢シテ出來ルコトニナルガ、唯今ノ御答辯
ニ依リマスト諮詢ヲ經テ議會ニ出スノデアリマス、ドウカ私共素人ニ分リ
マスヤウニ御答ヲ願ヒタイ
〔政府委員石丸重美君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=66
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067・石丸重美
○政府委員(石丸重美君) 工事ノ著手ノ順序モ、總テ議會ノ協賛ヲ經ルノデ
アリマス、此ノ工事著手ノ順序ナルモノハ最モ大切ナルモノデアリマス、是
ハ現行法ニ於キマシテモ、矢張鐵道會議ニ諮詢イタシマシテ、サウシテ帝國
議會ノ協賛ハ無論經テ居ルノデアリマス、ソレト少シモ變リハナイ、左樣ド
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ數ニ付テ發議ノアル趣ヲ通〓ヲ
得マシタ、淺田德則君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=68
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069・淺田徳則
○淺田德則君 此ノ鐵道委員ノ數ハ十五名ト致シテ、議長ニ於テ指名セラレ
ムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=69
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070・前田利定
○子爵前田利定君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=70
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071・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 淺田君ノ本案ノ特別委員ノ數ヲ十五名トシ、議長
ノ指名ニ致シタイト云フ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=71
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072・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官
ヲシテ朗讀イタサセマス
〔瀨古書記官朗讀」
鐵道敷設法改正法律案特別委員
子爵靑木信光君子爵新庄直知君大島健一君
平井晴二郞君小松謙次郞君男爵古市公威君
荒井賢太郞君中村是公君男爵斯波忠三郞君
男爵黑川幹太郞君男爵福原俊丸君男爵辻太郞君
橋本圭三郞君片岡直輝君麻生太吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第七、大正九年勅令第四百八十五號承諾ヲ求
ムル件、會議、委員長報告、寺島伯爵
大正九年勅令第四百八十五號
右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十年二月十八日
右特別委員長
伯爵寺島誠一郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵寺島誠一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=73
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074・寺島誠一郎
○伯爵寺島誠一郞君 日程第七、大正九年勅令第四百八十五號承諾ヲ求ムル
件ナノデアリマス、此勅令ハ卽チ緊急勅令デゴザイマシテ、緊急ノ必要アリ
ト政府デ認メラレテ、定規ノ手續ヲ經テ、帝國ト墺太利國トノ間ニ設置スル
混合仲裁裁判所ノ爲ニ公布サレタ勅令ナノデアリマス、之ニ承諾ヲ與フルト
云フコトガ、問題ニナッテ居ルノデアリマス、嘗テ日獨間ノ混合仲裁裁判所ニ
關シテモ、全然同一ノ規定ヲ設ケテ、昨年ノ勅令第八十七號ヲ以テ、公布セラ
レタノデアリマス、デ此勅令ハ第四百八十五號勅令ヲ以テ、日墺間ニ設置ス
ル混合仲裁裁判所ニ關シマシテ、前ニ申上ゲマシタ勅令八十七號ヲ準用スル
ト云フコトナンデゴザイマス、委員會ハ此勅令ハ日墺條約ノ當然ノ結果ト致
シマシテ、之ヲ是認スベキモノト認メテ居リマスノデアリマス、卽チ墺國ト
ノ間ニ混合仲裁裁判所ヲ設置シ、而シテ其設置セラレタル上、其運用ニ關シテ
ハ特別規定ヲ制定スルコトノ要アルコト、及ビ將來ニ其效力ヲ繼續セシムル
ノ要アルコトヲ認メマシテ、玆ニ勅令ニ承諾ヲ與フベキモノト、全會一致デ
可決イタシマシタノデアリマス、極ク簡單明瞭ナモノデアリマス故ニ、本院
ニ於キマシテモ全會一致ヲ以テ直ニ可決アラムコトヲ望ムノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ニ承諾ヲ與フベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマ
ス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=75
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076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=76
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077・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第八、船舶滿載吃水線法案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會ノ續、委員長報〓、堀田伯爵
船舶滿載吃水線法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十年二月十八日
右特別委員長
伯爵堀田正恆
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵堀田正恆君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=77
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078・堀田正恒
○伯爵堀田正恆君 委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、委員會ハ前
後二囘開催イタシマシタ、委員會ニ於キマシテハ、極ク微細ナ點ニ亙リマシ
テ御質問ガアッタ位ニ十分審議ヲ致シマシタ、本案ハ船舶ガ航行イタシマス際
ニ、其安全ヲ期シマス爲ニ重量ノ最大限度ヲ定メマシテ、其重量ノ最大限度
ヲ示ス爲ニ、船舶滿載吃水線ヲ設ケルノデゴザイマス、サウ致シマシテ、其
ノ吃水線以上ニ荷物ヲ積メナイヤウニスル、卽チ其ノ吃水線以上ニ積ムコト
ヲ禁止スルノガ此ノ主眼點デゴザイマス、此法案ノ效果ハ此ノ吃水線以上ニ
荷物ヲ積ンダ場合ニハ、甚ダ危險デゴザイマスカラシテ、其過載ノ危險ヲ防
止スル、豫防スルト云フノデアリマス、尙ホ反對ニ或場合ニ船長ガマダ尙ホ
荷物ヲ積ミ得ルノニ、積惜ミヲ致シマスコトガゴザイマスガ、其積惜ミヲ防
グト云フノデゴザイマス、尙ホ造船ノ計畫ノ標準ニ致ス、是ガ主タル效果デ
ゴザイマス、尙ホ間接ニ此法案ガ可決イタシマスルト、外國カラ互認ヲ得マ
シテ、其結果日本ノ船舶ガ外國ノ港ニ這人リマス際ニ於キマシテ、檢査ヲ受
ケル必要ガナクシテ非常ニ便利ヲ感ズルノデゴザイマス、其不便ト不利益ヲ
省クコトガ出來ルト云フノガ、之ガ間接ノ利益デゴザイマス、デ此制度ハ初
メ英吉利ガ設ケタノデゴザイマシテ、英吉利ガ之ヲ認メテ、各國ガ不便モ感
ズルシ、又非常ニ良イ制度デアル爲ニ、各國ガ此制度ヲ設ケタノデアリマス、
ソレデ日本ノ政府ニ於キマシテモ、其必要ヲ感ジ、又不便ヲ感ジマシテ、大
正六年以來專門ノ技師ヲ外國ニ派遣イタシマシテ、十分調査ヲ致シマシテ、
今囘提出ニナッタノデゴザイマス、本法ノ效力ヲ完全ニスル爲ニハ先程モ申
上ゲマシタ通リニ、本案ガ可決イタシマシタ曉ニハ、外國ノ互認ヲ得ナケレ
バナラヌ、互認ト申シマスノハ、外國カラ本案ヲ認メテ貰フ必要ガゴザイマ
スノデ、此點ニ付マシテ委員ノ橋本君カラシテ、果シテ互認ガ出來ルカト
云フ御質問ガゴザイマシタ、之ニ對シマシテ政府當局ハ確言ハ出來ナイケレ
ドモ、併シ十中ノ八九出來得ル見込デアル、尙ホ十分互認ノ出來ルヤウニ努
力スル積リデアルト云フ返答ガゴザイマシタ、討論ニ入リマシテカラハ、別
段ノ御意見モナク、唯本案ハ時機ニ適シタ法案デアッテ、十分政府當局ハ互認
ヲ圓滿ニ得ルヤウニ努力シテ貰ヒタイト云フ御意見ガアッタ位デ、滿場一致デ
原案通リ可決イタシマシタ次第デゴザイマス、此段御報告ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=78
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079・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=79
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080・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=80
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081・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ第二讀曾ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=81
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082・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=82
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083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ第二讀會ヲ開クト云フ說ニ、御異存ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=83
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084・徳川家達
○議長 公爵德川家達君)御異議ナイト認メマス、第一條ヨリ終リマデヲ問
題ニ供シマス、全部原案ニ異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フモノアリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=84
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085・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=85
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086・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=86
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087・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 直ニ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=88
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089・徳川家達
○議長(公爵德川家達君 御異議ナイト認メマス、第二讀會ノ決議通リデ、
御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=89
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090・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=90
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091・徳川家達
○議長(公爵德川家逹君) 日程第九ヨリ第二十一マデ、請願會議
〔左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之ニ倣
フ〕
意見書案
福島縣安達郡太田村ニ郵便局設置ノ件
福島縣安達郡戶澤村農鈴木正義外六十八名呈出
右ノ請願ハ福島縣安達郡太田村大字上太田及戶澤村ハ農產物ニ富ミ殊ニ養
蠶業盛大ナルヲ以テ貨客ノ集散多ク隨テ郵便、爲替及貯金事務繁多ナルニ
モ拘ラス管轄郵便局ニ至ル距離遠ク道路亦險惡ニシテ村民ノ不便甚シキカ
故ニ同地方交通ノ要衝ニ當ル上太田字下田ニ郵便局ヲ設置シ上太田及戶澤
村ヲ管轄セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿
意見書案
木次三次間鐵道敷設ノ件
島根縣飯石郡吉田村農田部長右衞門外四百六十名呈出
右ノ請願ハ島根縣大原郡木次驛ヨリ三刀屋、掛合、吉田、頓原、赤名ノ諸
村ヲ經テ廣島縣雙三郡三次驛ニ至ル鐵道ハ陰陽兩道ノ連絡上竝地方文化ノ
開發上緊要ナルノミナラス比較線タル三次今市線ニ比シ距離人口及物貨ノ
點ニ於テ遙ニ利益多キヲ以テ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿
意見書案
淡路縱貫鐵道敷設ノ件
兵庫縣津名郡岩屋町酒造業千葉宮次郞外千二百五名呈出
右ノ請願ハ本土四國九州ヲ聯絡セシムルニハ淡路島ヲ經由スルヲ地理上最
便利トナス且淡路島ハ海陸ノ產物ニ富メルノミナラス名勝地モ亦多キヲ以
テ交通ノ利便ヲ開ク爲淡路縱貫鐵道ヲ敷設シテ山陽本線竝四國循環鐵道ト
連絡セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十年月口
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿
意見書案
山田郵便局ニ集配事務開始ノ件
岡山縣吉備郡山田村長福田亮外二名呈出
右ノ請願ハ岡山縣吉備郡山田村ニ在ル山田郵便局ハ設置當時卽明治十二年
ノ交ハ集配事務ヲ取扱シメラレタリト雖其ノ後同事務ハ廢止セラレ距離遠
隔ナル箭田、川邊ノ兩郵便局ニ分管セシメラレタル爲村民ノ不便甚シク同
村ノ發展上遺憾ナルヲ以テ山田郵便局ヲシテ集配事務ヲ取扱ハシメラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿
意見書案
鹿兒島縣指宿湊郵便局ニ集配事務開始ノ件
鹿兒島縣揖宿郡指宿村農德永熊次郞外八名呈出
右ノ請願ハ鹿兒島縣揖宿郡指宿村大字十二町及同大字東方地方ハ商取引、
海運業ノ發達本郡內ノ首位ヲ占ムルノミナラス指宿温泉アリテ浴客常ニ充
滿シ從テ信書其ノ他ノ郵便物輻輳スル狀態ナルヲ以テ指宿湊郵便局ニ集配
事務ヲ開始シテ其ノ利便ヲ計ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣原敬殿
意見書案
山口縣厚狹郡小野田町ニ區裁判所出張所設置ノ件
山口縣厚狹郡小野田町長繩田正治呈出
右ノ請願ハ山口縣厚狹郡小野田町ハ官公署及會社等ノ設置多ク商工業繁盛
ナリ殊ニ町制施行以來ハ益發展ノ機運ニ向ヒ登記事務激增シタルニモ拘ラ
ス之ヲ管轄スル厚狹出張所ハ距離遠ク村民ノ不便尠カラサルヲ以テ同町字
中開作六千百六十七番地ノ一ニ區裁判所出張所ヲ設置シ同町及高千帆、厚
南二村ヲ管轄セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇ス
ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿
意見書案
萩小串間竝萩益田間鐵道速成ノ件
山口縣阿武郡萩町長小倉信恭外十三名呈出
右ノ請願ハ山陰縱貫鐵道ハ其ノ大部分ハ既ニ竣功セルニ拘ラス萩小串間及
益田萩間ハ未工事ニ著手セラレス當地方ハ交通不便ノ爲人民ノ不便不利甚
シキノミナラス水陸ノ產物豊饒ナルモ鐵道ノ開通ナキヲ以テ之ヲ開拓スル
能ハサルニ依リ速ニ萩正明間ヲ起工シテ大嶺線ニ連絡シ次テ其ノ兩端ヲ益
田小串ニ延長セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿
意見書案
萩小郡間鐵道敷設ノ件
山口縣阿武郡萩町長小倉信恭外十四名呈出
右ノ請願ハ山陽鐵道小郡驛ヨリ山陰鐵道豫定線中ノ萩町ニ通スル鐵道ハ施
工容易ナルノミナラス其ノ沿線地方ハ人口稠密土地膏腴農鑛產物ニ富ムコ
ト山口、益田線、大嶺、正明線ノ比ニ非ラサルヲ以テ速ニ該鐵道ヲ敷設シ
テ交通ノ利便ヲ開カレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿
意見書案
北海道上川郡比布村ニ區裁判所出張所設置ノ件
北海道上川郡比布村農村上元吉外五十九名呈出
右ノ請願ハ北海道上川郡ハ人口增加シ商工業ノ發展著シク登記事件頻繁ナ
ルモ現在三箇ノ登記所ヲ有スルノミニシテ不便不利一方ナラサルヲ以テ比
布、當麻、愛別三村ヲ管轄スル旭川區裁判所出張所ヲ速ニ設置セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院
法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿
意見書案
濱松辰野間鐵道敷設ノ件
長野縣上伊那郡小野村長小野三雄外三十名呈出
右ノ請願ハ濱松辰野間鐵道ハ東海道濱松驛ヲ起點トシ天龍川沿岸ヲ遡リ中
央線長野縣下辰野驛ニ至ルモノニシテ之カ敷設開通ノ曉ニハ日本ノ南北兩
海岸ヲ一直線ニ連絡シ交通ノ便ヲ極ムルノミナラス沿線地方ハ米作蠶業ニ
適シ又林產物鑛產物ニ富メルヲ以テ此等ノ產業一大發展ヲ實現スヘキハ蓋
疑ヲ容レサルトコロナリ政府ニ於テモ既ニ豫定鐵道網ノ一線トセラレタル
モノナルニ依リ速ニ第一期線ニ加ヘテ起工セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿
意見書案
日原岩國間鐵道敷設ノ件
島根縣鹿足郡畑迫村士族公吏堀誠道外二百九十九名呈出
右ノ請願ハ島根縣鹿足郡日原村ヨリ柿木、七日市、六日市、藏木諸村ヲ經
テ山陽線岩國驛ニ至ル鐵道ノ敷設ハ陰陽兩道ヲ連絡シ同地方ト京阪、東海
道方面トノ交通ヲ便ナラシメ島根縣鹿足、美濃、那賀三郡ニ於ケル豐富ナ
ル天與ノ利源ヲ開發スル所以ナルノミナラス山口縣北部地方ニ其ノ惠澤ヲ
及ホシ且國防上必要ナルヲ以テ速ニ之ヲ實施セラレタシトノ旨趣ニシテ貴
族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
リ別册及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿
意見書案
貴生川加茂間輕便鐵道敷設ノ件
滋賀縣甲賀郡長野村長奥田二郞外十一名呈出
右ノ請願ハ滋賀縣甲賀郡貴生川村ヨリ北柚、南柚、雲井、長野、小原、朝
宮ノ各村及京都府相樂郡湯船、東和束、中和束、西和束、瓶原ノ各村ヲ經
テ關西線加茂ニ至ル地方ハ陶器、茶、薪炭、木材及石材等ノ產出多キノミ
ナラス附近ニハ紫香樂宮等ノ名所舊蹟アリテ貨客ノ集散頻繁ナルニモ拘ラ
ス交通不便ニシテ地方民ノ不利甚シキヲ以テ草津線貴生川驛ヨリ前記各村
ヲ經テ關西線加茂驛ニ至ル鐵道ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿
意見書案
川內宇佐間鐵道敷設ノ件
高知縣高岡郡高岡町長井上〓水外九名呈出
右ノ請願ハ高知縣高岡郡川內村ヨリ字佐村ニ至ル地方ハ同郡平野ノ要部ヲ
占メ水陸ノ物產ニ富ムノミナラス製絲和紙等ノ製造盛大ナリ殊ニ有名ナル
社寺名所等アリテ旅客ノ來往頻繁ナルニ拘ラス將ニ敷設セラレントスル土
佐鐵道ノ恩澤ニ浴スルヲ得サルハ遺憾ナルヲ以テ速ニ川內村ヨリ宇佐港ニ
達スル同鐵道支線ヲ敷設セラレタク工事モ容易ナルヘシトノ旨趣ニシテ貴
族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
リ別冊及送付候也
大正十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣原敬殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=91
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092・徳川家達
○議長 公爵德川家達君)是等ノ請願ハ請願委員長ノ報告通リデ、御異存ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=92
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093・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、次ノ議事日程ハ決定次第
御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會
午後四時二十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01319210221&spkNum=93
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