第44回帝国議会　貴族院　本会議　第18号　大正10年3月10日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　大正十年三月十日（木曜日）
  　　　　午前十時十七分開議
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  　　議事日程　第十八號　大正十年三月十日
  　　　　午前十時開議
  　　第一　男爵阪井重季君請暇の件
  　　第二　大正九年度歳入歳出總豫算追加案（第二號）審査期限を定むるの件
  　　第三　大正九年度各特別會計歳入歳出豫算追加案（特第一號）審査期限を定むるの件
  　　第四　豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件（追第一號）審査期限を定むるの件
  　　第五　豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件（追第二號）審査期限を定むるの件
  　　第六　大正十年度各特別會計歳入歳出豫算追加案（特第一號）審査期限を定むるの件
  　　第七　取引所法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第八　貯蓄銀行法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第九　銀行條例中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　第一讀會
  　　第十　公有水面埋立法案（政府提出、衆議院送付）　　　　　　　　　　　第一讀會
  　　第十一　一年現役小學校教員俸給費國庫負擔法案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十二　國有土地森林原野下戻に關する法律案（衆議院提出）　　　　　　第一讀會
  　　第十三　義務教育費國庫負擔金増額の請願（文書表第三號、第十二號、第十五號、第二十三號、第二十六號、第三十號、第三十三號、第三十八號、第三十九號、第四十七號乃至第五十號、第七十五號乃至第七十七號、第九十四號乃至第九十六號、第百六號、第百七號、第百三十六號乃至第百四十一號、第百五十二號、第百五十七號乃至第百六十七號、第二百十六號、第二百三十三號乃至第二百三十五號、第二百三十七號乃至第二百四十四號、第二百五十八號、第二百六十七號乃至第二百七十三號、第三百三十四號乃至第三百四十一號、第三百七十號乃至第三百七十九號、第四百四號、第四百十九號）　會議
  　　第十五　明治二十三年法律第九十一號中改正の請願　　　　　　　　　　　會議
  　　第十五　大田瀧原間鐵道敷設の請願（文書表第九號）　　　　　　　　　　會議
  　　第十六　國分岩川間鐵道敷設の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第十七　府縣税徴收に關する交付金増額の請願　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第十八　石川縣珠洲郡内に鐵道敷設の請願　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第十九　群馬縣山田郡毛里田村外三村を新田郡に編入の請願　　　　　　　會議
  　　第二十　松前鐵道敷設の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第二十一　大田於福間鐵道敷設の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第二十二　義務教育費國庫負擔金増額の請願（文書表第九十二號）　　　　會議
  　　第二十三　義務教育費國庫負擔金増額の請願（文書表第九十三號）　　　　會議
  　　第二十四　富山縣氷見郡氷見町に漁港修築の請願　　　　　　　　　　　　會議
  　　第二十五　御肖像掲載の印刷物取締に關する請願　　　　　　　　　　　　會議
  　　第二十六　八尾金澤間鐵道敷設の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第二十七　秋田縣雄勝郡仙道村に無集配郵便局設置の請願　　　　　　　　會議
  　　第二十八　山口縣大島郡安下庄町に登記所設置の請願　　　　　　　　　　會議
  　　第二十九　大田瀧原間鐵道敷設の請願（文書表第百九十五號）　　　　　　會議
  　　第三十　宮崎福島間鐵道施設の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第三十一　八雲利別間鐵道敷設の請願　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第三十二　五條新宮間鐵道敷設の請願（文書表第二百一號）　　　　　　　會議
  　　第三十三　飛行事業擴張に關する請願　　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第三十四　新舊文官の恩給竝遺族扶助料不權衡更正に關する請願　　　　　會議
  　　第三十五　帝國在郷軍人會國庫補助の請願　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第三十六　天鹽沿岸鐵道延長敷設の請願　　　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第三十七　柳津小出間竝只見古町間鐵道敷設の請願　　　　　　　　　　　會議
  　　第三十八　帝國在郷軍人分會資源設定の請願　　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第三十九　五條新宮間鐵道敷設の請願（文書表第三百十五號、第三百六十六號）　會議
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• 001・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
  〔瀨古書記官朗讀〕
  一昨八日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決
  ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
  獨逸國等トノ平和條約賠償條項ニ基キ受領シタル賠償物件ノ輸入稅免除
  ニ關スル法律案
  作業會計法中改正法律案
  海軍燃料廠ノ石炭、煉炭又ハ燃料油ノ買入ニ關スル法律案
  同日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
  國有財產法案特別委員會
  委員長伯爵副島道正君副委員長高橋琢也君
  同日政府ヨリ左ノ報〓書ヲ受領セリ
  大正七年四月一日ヨリ大正八年三月三十一日ニ至ル各省所管官有財產增
  減異動報告書
  大正八年四月一日ヨリ大正九年三月三十一日ニ至ル各省所管官有財產增
  減異動報告書
  同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
  大正九年度歲入歲出總豫算追加案(第二號)
  大正九年度各特別會計歲入歲出豫算追加案(特第一號)
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第一號)
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第二號)
  昨九日政府ヨリ左ノ法律案ヲ提出セリ
  取引所法中改正法律案
  同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
  大正十年度各特別會計歲入歲出豫算追加案(特第一號)
  貯蓄銀行法案
  銀行條例中改正法律案
  公有水面埋立法案
  同日衆議院ヨリ左ノ法律案ヲ提出セリ
  國有土地森林原野下戾ニ關スル法律案
  同日議員公爵德川慶久君外八名ヨリ百十五名ノ贊成ヲ以テ風〓ニ關スル決
  議案ヲ發議セリ
  同日內閣總理大臣ヨリ左ノ通政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
  農商務省所管事務政府委員
  農商務書記官長滿欽司君
  同日請願委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
  請願文書表第八囘報告書

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• 002・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス
  〔上山滿之進君發言ノ許可ヲ求ム〕

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• 003・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　上山君ハドウ云フコトデスカ

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• 004・上山滿之進

  ○上山滿之進君　私ハ議事ノ進行ニ付テ總理大臣ニ質問ガアリマスガ、此際
  御許シ下サイマスカ

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• 005・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御述べニナッタラ宜シウゴザイマセウ

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• 006・上山滿之進

  ○上山滿之進君　會期切迫ノ今日、多數ノ豫算案法律案ガ提出サレテ、現ニ
  審議中デアリマス、之ニ付テ私ハ甚ダ心配ヲ致シマスニ依テ、總理大臣ニ御
  尋ネヲ致シタイト考ヘマス、今日本院ニ繫屬シテ居リマス法律案ガ四十五件、
  豫算案ガ六件、サウシテ衆議院ニ現ニ繫屬シテ居リマス法律案ガ、政府提出
  ガ十九件、衆議院提出ガ二十九件、尙ホ此外ニマダ今日以後新ニ帝國議會
  ニ御提出ニナルモノガ尠カラヌヤウニ仄ニ聞及ビマス、殊ニ郡制廢止案迄モ
  御出シニナラウカト云フヤウナ新聞ノ記事ヲ見マシタ、今會期ハ剰ス所僅カ
  ニ二週間、我〓ハ夜ヲ日ニ繼イデモ之ヲ議了スルコトガ出來ルカ出來ヌカト
  云フコトヲ甚ダ疑フノデアリマス、本來何故ニ會期切迫ノ今日斯ノ如キ多數
  ノ議案ガ溜ッタカト云フト、政府ノ議案御提出ガ色〓御都合モアリマセウケレ
  ドモ會期半バヲ過ギテ澤山ニ御出シニナッタト云フコトガ一ノ原因デアル、
  或ハソレガ主モナル原因デアラウカト思フノデアリマス、之ヲ如何ニシテ處
  理シタラ宜シイカト云フコトハ、私ノ憂慮スル所デアリマス、常任委員ノ中
  デ、資格審査委員ト懲罰委員トハ、實際ニ於テ用務ガアリマセヌカラ、是ハ
  別ニ致シテ、豫算委員、決算委員、請願委員等ハ現ニ非常ニ多忙デアルノ
  デアリマス、之ニ加ヘテ唯今申上ゲタ現ニ本院ニ繫屬シテ居ル法律案ダケデ
  モ四十五件デアリマス、之ヲ部ニ充テマスト大變ナ數ニナリマス、其ノ特別
  委員ト常任委員トヲ加ヘマスト夥シキ數ニ上ルノデアリマス、サウシテ本院
  ニ出席セラルル議員諸君ノ數ハ、病氣、或ハ海外旅行、或ハ國務大臣、政府
  委員トシテ居ラレル諸君、之ヲ除イテ二百三十人バカリデアル、此ノ二百三
  十人バカリノ人デ、斯ノ如キ多數ノ委員ノ職務ヲ勤メナケレバナラナイ、而
  シテ剰ス所ノ會期ハ僅カニ二週間、如何ニシテ此議案ガ無事ニ議了サルルモ
  ノト御考ヘニナリマスカ、私ハ誠ニムヅカシキコトト思フノデアリマス我
  我ハ議員ノ一人ト致シマシテ、全力ヲ盡シテ此職務ニ從事イタシマス、幾ラ
  全力ヲ盡シマシテモ、此議案ヲ全部議了スルト云フコトハ、事實ニ於テ不可
  能デアルト思フノデアリマス、政府ハドウシタラ宜シイト、之ヲ御考ヘニナ
  ルノデアリマスカ、私ハ斯ノ如キコトヲ申スノハ甚グ好マナイノデアリマス、
  併ナガラ道理ダケハ申上ゲナケレバナラナイ、先日來委員會ガ開カレマシテ
  モ、政府ノ方ノ御出席ノ遲イ爲ニ、普通議事ガ定刻ヨリ數十分遲レルノデア
  リマス、又一昨日ノ如キハ、此議場ニ於テ政府提出ノ法律案ガ審議サルルニ
  拘ラズ、國務大臣ハ一人モ御出ニナラヌノデアル、又先達テ豫算總會ヲ日曜
  ニ勉强シテ開キマシタニ拘ラズ、國務大臣ハ仕舞ヒノ頃ハ一人モ御出ニナラ
  ヌノデアリマス、政府ハ決シテ此議案ノ議事ノ進行スルコトヲ好マナイ譯ハ
  勿論ナイ、大ニ之ヲ希望シテ居ラレルコトハ疑ヒナイノデアリマス、併ナガ
  ラ此ノ政府御意思ノ如何ハ別トシテ、事實ニ於テ政府ガ餘リ御勉强ナサレナ
  イ爲ニ、ソレダケ遲レタト云フコトハ明カナコトデアリマス、私ハ政府ヲ攻
  擊スルノデハアリマセヌ、之ヲ伺ハナケレバ後ノ質問ガ申上ゲラレナイ、今
  後如何シタラ宜シイカト云フコトデアリマス、唯今迄申上ゲマシタ質問ニ付
  テ、總理大臣ノ一般的御意見ヲ第一ニ伺ヒタイノデアリマス、其次ニ伺ヒタ
  イコトハ、斯ノ如キ多數ノ法律案ノ中ニハ自ラ輕重ノ別ガアルト思フノデア
  リマス、勿論政府トシテ是ハ必要ハナイト仰セラレル筈ガナイ、必要ガアル
  カラ御出シニナルノデアリマスガ、其必要ノ程度ニ自ラ差異ガナケレバナラ
  ナイ、我〓ハ會期切迫ノ今日、斯ノ如キ多數ノ豫算案、法律案ヲ處理スルニ
  付テ、其輕重ヲ區別シテ進マナケレバイカナイノデアリマス、政府ニ於テ此
  中ニ輕重ノ別ヲ御立テ下サルコトガ出來ルナラバ、餘程審議ノ上ニ都合ガ宜
  カラウト思ヒマス、勿論表向ニ是ハ輕イカラ審査未了ニナッテモ宜シイト仰セ
  ニナル譯ハナイ、ソンナコトハ初メカラ要求ハ致サヌノデアリマス、併シ其
  意味ニ於テ相當ノ方法ヲ御採リ下サレバ、審査ノ上ニ大變都合ガ宜イ、又政
  府ノ方モ大變便宜ガアラウト思フノデアリマス、何カソレニ付テ相當ノ御考
  ガゴザイマスルカ、ソレカラ尙ホ今日提案ニナッテ居ル以上ニ、マダ澤山御出
  シニナルノデアリマスカ、如何デアリマスカ、私ハ御出シニナラナイコトヲ
  希望スルノデアル、御出シニナッテモ此ノ會期切迫ノ場合ニ議スルコトハ出來
  ヌト思フ、殊ニ郡制廢止案ノ如キ重要ナモノヲ御出シニナッテ、是ガ審議ガ濟
  ムト御考ヘニ若シナレバ、餘程私ハ不思議ニ思フ、又審査未了ニ終ルデアラ
  ウカモ知レヌト云フコトガ御出シニナルトシタナラバ、是ハ何トモ仕樣ノナ
  イコトデアリマス、ソレデ御尋ネ致シマスノハ、尙ホ今後多數御出シニナル
  ノデアリマスカ、ドウデアリマスカ、私ノ希望ハ御出シニナラヌ方ニアルノ
  デアリマス、御出シニナリマシタラ、徒ラニ手續ノ嵩ムダケデ、到底審査ハ
  出來ナイヤウニ考ヘル、ソレカラ今一ツ伺ヒタイコトハ、コンナ場合デアリ
  マスカラ、我〓議員ハ此職務ヲ盡ス爲ニ、場合ニ依レバ、日曜デモ、祭日デ
  モ、夜分デモ、勉强シナケレバナラヌト考ヘル、斯ノ如キ場合ニ於テ、政府ハ
  議員ト共ニ努力シテ下サル御考デゴザイマセウカ、甚ダ皮肉ナ御質問ノヤウ
  デアリマスケレドモ事實ヲ見レバドウモサウデナイ點ガアルヤウニ思ハレ
  ル、色〓ノ御都合ガアルト思ヒマスカラ、强ヒテ之ヲ咎メルノデハアリマセ
  ヌケレドモ、此ノ會期切迫ノ場合ニ斯ノ如キ重荷ヲ背負ッテ居ル議員ノ境遇ヲ
  御諒察ニナレバ、萬障繰合セテ御勉强下サルコトガ必要デアルト思フ、足球
  如何デアリマセウカ、殊ニ國務大臣ハ御所管ノ議案ニ付テハ勿論、御所管ニ
  アラザル重要ナル議案ノ審議ノ場合ニハ、一同御出席ニナルガ至當デアラウ
  ト思フ、若シ他ノ公務ノ爲ニ御出席ガ出來ナケレバ、宜シク其公務ノ種類ヲ
  疏明サレルコトガ、斯ノ如キ場合ニ於ケル國務大臣ノ御態度デナケレバナラ
  ヌト私ハ考ヘルノデアリマス、多數ノ先輩諸君ヲ差措イテ私ハ斯ノ如キコト
  ヲ申シマスノハ、甚ダ僣越ノ至リデアルト云フコトヲ自カラ知ッテ居ルノデア
  リマス、又私ハ之ヲ申スニ付テ何等ノ他意ハナイ、全ク自分トシテ見マスル
  ト、先日來ノ友人ノ手紙ニ對スル返事モ書ケナイ位ニ困ッテ居ル、私ハ澤山ニ
  サウ云フ諸君ガアラウト思ハレルノデアル、ソレヲ其忙サノ中ニ、遂ニ如何
  ニシテ斯ノ如キ多數ノ議案ヲ片付ケルカ、議院ガ片付ケルカト云フコトヲ常
  ニ考ヘル、其憂慮ノ餘リニ御尋ネ致スノデアリマシテ、何等ノ他意モアリマ
  セヌシ、又先輩諸君ヲ差措イテ斯ノ如キコトヲ申スコトハ僣越ニ聞エルガ、
  思フニ諸君ハ之ヲ諒セラレルコトト思フ、ドウカ總理大臣ハ御誠意ノアル御
  答辯ヲナスッテ下サルヤウニ希望イタシマス
  〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕

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• 007・原敬

  ○國務大臣(原敬君)　唯今ノ上山君ノ御質問ニ御答イタシマスガ、此法案ガ
  會期半バ頃ニナッテ多ク出ルト云フコトハ度〓議會ニ於キマシテハ見ル事實
  デアリマス、是ハ甚ダ政府ニ於テモ遺憾ニ存ズル、議員諸君ニ於テモ審査ヲ
  ナサルニ會期モ切迫ニナッテ御困難デアラウト恐察スルノデアリマス、故ニ每
  每現内閣ノミデハアリマセヌ、何レノ內閣ニ於テモ成ベク早ク提出スベキ法
  案ヲ法制局等ニ廻シテ、其審査ヲサセルヤウニト云フコトヲ毎々督促イタス
  ノデアリマスガ、兎角遲レ勝ニナリマシテ、假ニ會期半バ頃カラ多ク出ルヤ
  ウナル傾キヲ近年見ルノデアリマスガ、甚ダ遺憾ノコトデアリマシテ、始終
  督促ヲ致スノデアリマス、併シ多ク左樣ニ相成ルノデアリマス、尤モ其中ニ
  豫算關係ノ法律案デアリマスレバ、是ハ豫算ト前後シテ提出ニ相成リマスル
  カラ、是ハ初メヨリ豫算ノ審査ニ妨ゲナイヤウニ提出ヲ致シマスケレドモ
  其他ノ法案ニナリマスルト兎角遲レ勝、甚ダ政府ニ於テモ困ッテ居ル次第デア
  リマス、故ニ此事情ハ上山君ニ於テモ御了承ヲ願ッテ、決シテ政府ノ意思デハ
  ナイ、政府ハ遲レサシタクナイノデアリマスガ、色〓ナル審査ノ爲ニ時ヲ費
  ヤシ、遂ニ提案ノ遲レルト云フコトノ事實ニ立至ルノデアリマス、是ハ將來ニ
  於テモ十分ニ注意ヲスベキ事柄ト考ヘルノデアリマス、又今後ニ於テ尙ホ多
  數ノ議案ヲ提出スルカドウカ、最早左マデ多クハ提出イタサヌ積リデアリマ
  ス、併ナガラ尙ホ數件ハ提出セザルヲ得ヌカト思フノデアリマスガ、成ベク
  會期モ迫リマシタ今日、多クノ案ハ提出シナイヤウナル方針ヲ執ッテ居リマ
  ス、併シ幾件カハ提出セザルヲ得ヌカト思ッテ居ルノデアリマス、斯樣ナル狀
  況デアリマスガ、ソコデ此ノ御審査ニ際シマシテ、政府ハドウ云フ積リデア
  ルカ、ト云フコトデアリマスルガ、政府ハ本會議竝ニ委員會ニ國務大臣ヲ始メ
  ト致シマシテ、成ベク努メテ出席イタス積リデアリマス併シ如何セム兩院
  ニ亙ッテ本會議又ハ委員會ヲ開カレルノデアリマス、故ニ一方ノ委員會、本會
  議ニ出席スレバ、他ノ方ニハ出席ガ出來ナイト云フコトハ往々見ルノデアリ
  マス、國務大臣悉ク每日登院イタシテ居ルノデアリマスガ、左樣ナル事情ノ
  爲ニ往々出席スルヲ得ヌコトガアルノデアリマス、又其間ニハ種々ノ公務ニ
  妨ゲラレ或ハ出席出來ヌコトモアリマス、併シ私ノ如キハ公務上出席ノ出來
  ヌ時ハ、委員會等ニ於テハ其都度斯樣ナル事情デ今日何時カラ出ラレヌトカ、
  明日ハドウ云フ時ニハ出ラレヌト云フコトヲ御斷リ致シテ居ル位デアル、此
  間ノ日曜ノ事ナドハ是ハ國務大臣一人モ居ラナカッタト云フヤウナ話、私ハ
  其次ノ豫算委員會ニ其事情ヲ申シテ遺憾ノ意ヲ表シタ次第デアル、是モ實ハ
  私ナドハ伊澤君ヨリ質問ガアルト云フコトヲ知ッテ出席イタシテ居ッタ、所ガ
  他ノ岡田君デアリマシタカ御質問ガアッテ、尙ホ十一時ヨリ外國ニ赴任スベキ
  公使ガアリマシテ、之ニ打合セヲシナケレバナラヌ用事デ、前カラ約束イタ
  シテ居リマシタカラ、十一時カラ退席イタサナケレバナラヌノデアリマシタ
  ケレドモ、十一時半マデ實ハ御待チ致シタ、併シ御出席ガナカッタガ故ニ多分
  午後デアラウト推測イタシテ、其事ヲ御斷リ致シテ退出イタシタノデアリマ
  ス.而シテ午後參ヲテ見レバ旣ニ時ニ遲レテ居ッタト云フヤウナ、斯ウ云フヤ
  ウナル次第デアル、他ノ國務大臣モソレゾレ事情ガアリマシテ退席イタシマ
  シタラウガ、中ニハ矢張出席イタシタ所ガ其時ガ間ニ合ハナカッタト云フヤ
  ウナ次第デアル、固ヨリ誰〓ニ今日ハ御質問ガアルト云フコトヲ前以テ承ハッ
  テ居ルノデアリマスカラ、其人〓ハ出席イタシタ筈ト思フノデアリマスガ、
  悉ク出テ居ルコトノ出來ナカッタノハ甚ダ遺憾ナルコトニ考ヘテ、翌日其事ヲ
  申シタノデアリマス、斯ウ云フ次第デアリマス、今後ニ於テ本會議竝ニ委員
  會ニ公務上巳ムヲ得ザルコトノナイモノハ、他ノ一院ニ出席イタサナケレバ
  ナラヌヤウナル場合ニ差繰リノ出來ヌ時ハ別デアリマスガ、其他ノモノハ十
  分政府ニ於テハ差繰ヲテ、國務大臣其他ノ役員モ出席イタス積リデアリマス、
  尙ホ左樣ニ致スコトヲ閣僚其他ニハ申スコトニ致シマセウ、要スルニ殊更ニ
  會期切迫ニ際シマシテ議案ヲ提出スルト云フ次第デハアリマセヌ、又政府ノ
  國務大臣其他ノ役員ハ日々定刻ヨリ參院イタシテ居ルノデアリマス、殊更ニ
  怠慢ノ意味ニ於テ委員會其他ニ出席イタサナイト云フコトハ決シテナイノデ
  アリマス、議院ニ參フテ居ル以上ハ何ノ爲ニ出席ヲ見合セテ居ルト云フ理由モ
  ナイコトデアリマス、必ズ差繰リ致スノデアリマス、議案ニ付テドレガ重要
  デアルカラ是非議決ヲ願ヒタイ、ドレハ左マデヾナイカラ未了デモ已ムヲ得
  ヌト申スコトガ出來レバ、誠ニ審査上御便利デアラウト御察シ致シマスケレ
  ドモ、政府トシテハ左樣ニハ參リマセヌノデ、何レモ御協賛ヲ得ヤウト云フ
  希望ヲ以テ提出イタシタ次第デアリマス、併シ議員諸君ニ於テモ自ラ見ラレ
  ル所モアリマセウガ、實際ノ事實ニ於テ未了ニナルノハ自ラ是ハ已ムヲ得ナ
  イコトデアリマスガ、政府ノ希望トシテハ、甚ダ御氣ノ毒ニ考ヘマスケレド
  モ、政府ノ事情ハ斯樣ナル譯ヲ以テ議案ガ輻湊イタス次第デアリマス、此中
  ニ於テ區別ノ附ケヤウガアリマセヌノデ、ドウゾ甚ダ御迷惑ト察シマスケレ
  ドモ、是等ノ案ニ付テ十分ノ御審査ヲ希望スル次第デアリマス、固ヨリ委員
  會其他ニ於テモ、本會議ハ尙更ノコト、御開キノ場合ニハ國務大臣其他モ已
  ムヲ得ザル公務若クハ他ノ議院ニ出席スルコトノ場合ノ外ハ、必ズ出席イタ
  スヤウニ致シタイト考ヘマスカラ、是モ御承知ヲ願ヒマス

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• 008・江木翼

  ○江木翼君　私ハ唯〓ノ總理大臣ノ御辯明ニ對シマシテ、質問ヲ致シタイト
  思ヒマス、御許シヲ願ヒマス

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• 009・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマス

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• 010・江木翼

  ○江木翼君　大體上山君ノ御質問ニ對シマシテハ、私モ頗ル同感ニ堪ヘナイ
  次第デ、現ニ私自身ニ於キマシテモ極メテ浩翰ナル法律案ノ委員ヲ命ゼラレ
  テ居リマシテ、頗ル當惑シテ居ル次第デアリマスガ、併ナガラ職務上固ヨリ
  巳ムヲ得ヌ、努メナケレバナラヌノデアリマスガ、唯今總理大臣ノ御辯明ニ
  依リマスト更ニ法律案ヲ出ス、是ハ私是非サモナクテハナラヌ事柄ガ多々
  アルト思フノデアリマス、其中ニ付マシテ私ハ一二ノ項ニ付テ總理大臣ノ御
  辯明ヲ得テ置キタイト思フノデアリマス、平和條約ノ成立イタシマシタノハ
  大正八年ノ六月二十八日デアリマス、而シテ其條約ニ伴ヒマシテ、爲サナケレ
  バナラヌコトガ澤山アル、多クノモノハ進行シテ居ルコトト思ヒマスガ、其
  中ニ付マシテ第一ニ行ハナケレバナラヌ所ノモノハ、同條約ノ第二十二條ニ
  南洋諸島ノ委任統治ノ事柄ガ規定シテアルノデアリマス、而シテ其ノ南洋諸
  島ノ委任統治ニ關スル事項ニ付テハ、英吉利政府トノ間ニ多少ノ見解ヲ異ニ
  シタニ拘ラズ、既ニ先般ノ國際聯盟ノ理事會ニ於テ大體見解ガ一致シテ、所謂
  委任統治ノ條項ナルモノハ略〓確定シタト云フヤウニ承ハッテ居ルノデアリマ
  ス、故ニ外務大臣モ左樣ナル報告ヲセラレタノデアル、斯樣ニ考ヘマスルト、
  同條約ニ依リマシテ南洋諸島ハ所謂帝國ノ領土ノ一部トシテ、構成部分トシ
  テ、其國ノ法律ノ下ニ統治セラルル部分ニナルト考ヘラルルノデアリマス、
  卽チ大日本帝國ノ一部ヲ構成スルモノトシテ、帝國憲法ナリ、或ハ其他ノ法
  律ガ直ニ之ニ施行サレルト云フ狀態ニ於テ、是等ノ南洋諸島ト云フモノガ
  置カルル結果ニナルノデアル、斯樣ニ私共信ズルノデアリマス、斯樣ニ致シ
  マスト今日ノ海軍ガ軍政ヲ布イテ居リマス狀態ト云フモノハ速ニ撤去セラ
  レナケレバナラヌ、撤去セラルレバ必ズ內地ノ憲法ナリ、其他ノ法律ト云フ
  モノガ施行サルルト云フコトハ甚ダ不便デアルガ故ニ、或ハ臺灣ニ施行サレ
  タ所ノ六十三號デアルトカ、或ハ朝鮮總督ノ制令權ヲ認メタト云フガ如キ、
  委任立法ノ手段ヲ御執リニナルニ非ザレバ、甚ダ不都合ナル事態ガ發生スル
  ノデアラウト思フノデアリマス、必ズヤ或特殊ノ立法ト云フモノヲ本議會ニ
  御提出ニナラナケレバナラヌコトト思フノデアリマスガ、斯樣ナ立法ノ手續
  ヲ、甚ダ後レタルコトト申シナガラ、政府ハ此際御提出ニナル御考デアルヤ
  否ヤ、ソレカラモット私ハ重要ナル事柄ト思ヒマスノハ、昨年ノ十二月華盛頓
  ニ於テ是亦平和條約ノ結果ト致シマシテ、第一囘ノ勞働會議ト云フモノガ開
  カレヽ現ニ鎌田君ノ如キハ政府ヲ代表セラルル側ノ委員トシテ之ニ出席セラ
  レタノデアル、此會議ニ於テ凡ソ五ツノ條約、或ハ勞働時間ノ條約案、或ハ
  失業ニ關スル條約案、或ハ產前產後ノ婦人ノ勞働ニ關スル條約案、或ハ女子
  ノ夜間作業ニ關スル條約案、或ハ少年工業勞働ニ關スル條約案等、五ツノ條
  約案ト云フモノガ決定セラレタ、又六ツノ各國政府ニ對スル所ノ勸〓案ト云
  フモノガ總會ニ於テ決定ニナッテ居ルノデアリマス、是等ノ條約案及ビ勸告案
  ト云フモノノ中ニハ、全部殆ド法律ヲ以テシナケレバナラヌ事柄バカリデア
  ルト思フノデアリマス、殊ニ條約案ニ關シテハ、然リト思フノデアル、殊
  其中デモ勞働時間ニ關スル條約案ニ於キマシテハ非常ナル長イ時間ヲ費シ
  テ、サウシテ日本ノ爲ニハ特ニ除外例ヲ設ケテ、其ノ除外例ト云フモノガ日
  本ノ意見通リニ略〓極ッテ居ルノデアル、デ斯ノ如ク決定ニナリマシタ所ノ條
  約案ナルモノハ、必ズヤ講和條約ノ定ムル所ニ從ッテ、講和條約ノ第四百五條
  ニ定ムル所ニ從ヒマシテ、一年以內ニ權限アル機關ニ提出セラレテ、遲クモ
  十八箇月以內ニハ權限アル所ノ機關ニ提出セラルル所ノ義務ヲ政府ハ負ッテ
  居ルコトト私ハ信ズルノデアリマス、然ラバ華盛頓會議カラ十八箇月ヲ數ヘ
  マスレバ、本年ノ七月二十幾日ヲ以テ其期間ガ來ルノデアリマス、本年ノ七
  月ト云フ時期ハ丁度議會ガナイ時デアリマスカラ、今期議會ニ是等ノ條約案
  等ハ法律案ノ形ニ於テ議會ニ御提出ニナルニ非ザレバ、到底條約ノ批准ヲ爲
  サルコトハ出來マイ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、是等ノ諸案モ亦此際御提
  出ニナルベキコトト私ハ確信ヲ致スノデゴザイマスガ、左樣デゴザイマセウ
  カ、如何デゴザイマセ、ウカ、若シ左樣デゴザイマスルト致シマスト、私ハ甚
  ダ其後レタルヲ憾ムノデアリマス、華盛頓會議ハ一昨年ノ十二月デ、而シテ
  其結果ト云フモノハ既ニ鎌田君ガ直ニ持ッテ歸ラレテ、之ヲ法律案ニスルト
  云フコトハ極メテヤサシイコトデアル、而カモ日本ガ態〓提議ヲシテ除外例
  マデ設ケ得タモノヲ、今更之ヲ法律案ニシナイ、或ハ條約ヲ批准シナイトカ
  云フコトハ出來ル筈ノモノデナカラヴト思フノデアリマス、而シテ又各國ノ
  事例ヲ見マスト、各國トモ是等ノ條約案ニ關スル所ノ法律ヲ制定スルト云フ
  コトニ付テ、手續ヲ執ッテ居ラヌ國ハ確カ無イト思フ、唯一箇國、議會ニ提出
  シナイ國ガ先日マデアッタト思ヒマスガ、今日ハ殆ド全部議會ニ提出濟ニナッ
  テ法律ニナッテ居ルト思フ、然ニ日本獨リ之ヲシナイト云フコトハ如何ニモ遲
  レタルヲ憾ムンデアリマスガ、政府ニ於テハ速ニ之ヲ御提案ニナル積リデア
  ルカ、ドウカ、尙ホ唯今ノ上山君ノ御趣意ハ誠ニ御尤ト思フノデアリマス
  ガ、今ヤ將ニ僅ニ二週間ヲ餘ス所ノ此議會ニ於テ、是等ノ澤山ノ法律案ヲ議
  了スルト云フコトハ甚ダ難イノミナラズ、更ニ唯今私ガ述ベマシタル如キモ
  ノヲ御提案ニナルベキモノト確信イタシマスルガ、左樣ニ致シマスルト到底
  此會期ヲ以テ致シマシテハ議了甚ダムヅカシキヲ感ズル次第デゴザイマス
  ガ、政府ハ更ニ多少ノ日子ノ、會期ヲ延長セラレルト云フ御趣意ハナイノデア
  ルカ、此點ヲ承ハッテ置キタイト思ヒマス
  〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕

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• 011・原敬

  ○國務大臣(原敬君)　唯今江木君ノ御質問ノ第一點デアリマスガ、委任統治
  ノ形式ハ先般確カ外務大臣ヨリ申シタカト記憶イタシマスルガ、兎ニ角ニ決
  リマシタ、依テ我國ニ於テモ此ノ委任統治ノコトニ付マシテ相當ナル處置ヲ
  致サナケレバナラヌノデアリマス、併シ是ハ急速ニ運バヌノデアリマス、デ
  今日ハ軍事占領ノ儘居リマス、何時マデモ軍事占領ノ儘デハ置ケヌノデアリ
  マスケレドモ、委任統治ノ形式モ近頃定ッテ、如何ナル狀況ニ依テ之ヲ統治イ
  タサナケレバナラヌカト云フコトハ原則ニハ決ッテ居リマスガ實行上ニハ
  餘程ノ審議ヲ要スルコトト考ヘマスデ、是等ノ決定スルマデハ軍事占領ノ儘
  置ク外アリマセヌ、從ッテ今期議會ニ之ニ關スル法律案ヲ提出スルカ、シナイ
  カ、今日ニ於テハ未定デアリマス、恐ラク提出ハ出來マイト考ヘテ居ルノデ
  アリマス、ソレカラ勞働會議ノ結果デアリマス、是ハ實ハ列國ニ於テモ色〓
  說ガアリ、聯盟事務局等ニ往復モ致シテ居ルト云フコトハ承ハッテ居リマス
  ガ、確定イタシテハ多クアリマセヌ、ト申シマスルモノハ我國ニ於テモ、條
  約デアリマスレバ條約ノ取計ヒヲスルコトハ甚ダ容易デアリマス、所ガ條約
  案デアリマス、條約案ト云フガ爲ニ此ノ取扱上餘ホドノ詮議ヲ要スルノデア
  リマス、又此決議ノ箇條中悉ク採用スベキヤ否ヤ、列國共各、詮議ヲ要スルコ
  トデアリマス、故ニ今日ニ於テハ是モ果シテ議會ノ御協賛ヲ得ル法律ヲ提出
  スルカ、サウ參ラヌカ、是モ十分ナ銓議ヲ要スルコトデアリマス、何レニ致
  シマシテモ此儘ニ置クコトハ相成ラヌノデアリマスケレドモ、我國ニ取リマ
  シテハ條約ニモ非ズ、法律ニモ···無論法律ニナリヤウハアリマセヌガ、條
  約案ト云フ爲ニ甚ダ詮議ヲ致ス時ヲ費シテ居ルノデアリマス、何レニカ決定
  次第相當ナル處置ヲ致シタイ、殊ニ權威アル機關ト云フコトニ付テハ、何ヲ
  指スノデアラウカト云フコトモ色〓詮議ヲ要スルコトデアラウ、旁是ハ今日
  未定ナリト申スヨリ外アリマセヌ、ソレカラ會期ノコトデアリマス、今日政
  府ハ會期ヲ必ズ延長スルト云フヤウナル豫期モ致シテ居リマセヌ、成ベク會
  期中ニ御審査ヲ仰ギ、結了イタシタイト思ヒマス、併シ萬已ムヲ得ザレバ、
  ソレハ其時ノ取計セヲ致ス外ナイト考ヘマス、是ハ其時ニ起ル實際問題デア
  リマスカラ、豫メ今日ヨリ申シニクイノデアリマス、左樣御承知ヲ

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• 012・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第一、男爵阪井重季君請暇ノ件、阪井男爵病
  氣ニ付八日間ノ請暇デゴザイマス、許可ヲ致スコトニ御異存アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 013・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕

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• 014・原敬

  ○國務大臣(原敬君)　此場合ニ於テ一言シテ置キタイノデアリマスガ、先般
  學校紛糾問題ニ付ラ、當院ヨリ建議セラレマシタ其當時御答イタシテ置イタ
  ル次第モアリマスルガ、政府ニ於キマシテハ此ノ學校問題ヲ成ベク早ク解決
  スルコトヲ希望イタシマシテ、私ノ手許ニ於テ大體ノ案ヲ定メマシテ、所謂
  骨組ヲ造リマシテ、之ヲ決定イタシタノデアリマス、是ヨリ更ニ參考ニ相成
  ルベキ種々ノ書類等モ纒メナケレバナラヌノデアリマスカラ、直ニトハ參
  リ兼ネマセウケレドモ、左樣ニ取計フ積リデアリマス、是モ御了承ヲ得タイ
  ト思ヒマス、又風紀問題、是モ建議中ニ含蓄セラレテ居ルコトト承知イタシ
  やぎ、此ノ學校問題ニ付テハ豫算總會ニ於テ種々ノ應答問題モ致シマシタノ
  デアリマスカラ、自然御承知ノコトデアリマセウガ、併シ此ノ風紀問題ニ付
  テハ遂ニ政府ノ所見ヲ述ブルノ機會ガナカッタノデアリマス、併シ政府ニ於キ
  マシテ風紀問題ニ付テハ、從來其處置ヲ怠ッタ次第デハアリマセヌケレドモ、
  併シ尙ホ一層ノ注意イタシマシテ、部下ヲ戒飭イタシテ、十分ニ其效果ヲ擧
  グルヤウニ致ス積リデアリマス、是モ併セテ御了承ヲ得テ置キタイ次第デア
  リマス、此場合ニ於キマシテ政府ノ取リマシタ大體ノコトヲ申上ゲテ置キマ
  ス
  〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕

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• 015・中橋徳五郎

  ○國務大臣(中橋德五郞君)　私ヨリモ此場合一言申上ゲテ置キタイト思ヒマ
  ス、唯今總理大臣ヨリ申サレマシタル通リ、學校ノ問題ハ此通リニ處理ヲ致
  ス積リデ當局ハ居リマス、又風紀問題ニ付マシテハ、文部當局ニ於キマシテ
  ハ殊ニ注意ヲ加フベキコトハ申スマデモナイ譯デアリマス、故ニ從來之ヲ怠ッツ
  タ譯デハアリマセヌケレドモ、今後ニ於テハ尙ホ更ニ一層ノ注意ヲ致サウト
  思ツテ居リマス、又學校ノ騷動ノ如キ數年前ヨリ致シマシテ、連續シテ居ッタ
  コトニハ相違アリマセヌガ、併シ最近文部當局ニ於キマシテ計畫中ノ一部ガ
  他ニ漏洩イタシマシテ、是ガ爲ニ一層ノ紛糾ヲ重ネルニ至リマシタルハ、官
  紀上注意ノ至ラザリシ點モアリマシタカラシテ、殊ニ其邊ニ付マシテ今後私
  ニ於キマシテモ十分注意ヲ致シマスルシ、又部下ニモ十分注意ヲ致スヤウニ
  致ス積リデアリマス、ドウカ右樣ニ御了承ヲ下サルヤウニ願ヒタイト思フ次
  第デアリマス

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• 016・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　此際總理大臣竝ニ文部大臣ノ發言ニ對シテ質疑ノ
  通〓ヲ得マシタ、通告順ニ依リマシテ發言ヲ許シマスガ、議長ハ此發言ハ質
  疑ノ範圍ニ御止メヲ願ヒタク存ジマス、是ダケ念ノ爲メ申上ゲテ置キマス

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• 017・酒井忠亮

  ○子爵酒井忠亮君　此席カラ申上ゲテ宜シウゴザイマスカ

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• 018・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマス

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• 019・酒井忠亮

  ○子爵酒井忠亮君　豫ネテ本院ヨリ建議ヲ致シマシタ所ノ、例ノ高等〓育機
  關ニ關スル建議ニ付テ、唯今總理大臣竝ニ文部大臣ヨリ、之ニ對スル御辯明ガ
  アリマシタニ付マシテ、更ニ一言御意思ノアル所ヲ十分確メテ置キタイト思
  ヒマス、此建議ノ趣旨ハ諸君モ御承知ノ通リニ、第一ハ學校昇格問題、是ハ
  如何ニモ政府ハ逡巡サレテ居ッテ、學生ハソレガ爲ニ歸嚮スル所ヲ知ラヌ、從ツ
  テ大ニ騒擾ヲ釀シタト云フコトニ付テハ、政府モ其原因ノアル所ヲ御考慮ニ
  ナッテ、既ニ政府部內ニ於テ委員會ヲ御造リニナリマシテ、益〓此問題ニ付テ
  考慮ヲセラレテ、旣ニ成案モ得ラレ、將來ノ執ルベキ途、執ルベキ方法ヲ執ツ
  テ、成ベク速ニ之ヲ御解決ナサルト云フコトニ付テハ本員ハ了承イタシマシ
  タ、第二ノ風〓問題ニ付マシテハ最モ肝腎ナコトデアリマスカラ、念ノ爲ニ
  更ニ御伺ヲ致シマスルガ、文部當局ノ方ハ此問題ニ付テハ固ヨリ當局ノ現在
  ニ照シ、過去ニ鑑ミテ注意ノ屆カヌ點モアッタト云フコトハ、詰リ今日マデノ
  コトニ付テ缺點ガアルト云フコトヲ自覺セラレタモノト存ジマスルガ、現在
  過去ノコトニ於テハ最早問フ必要ガアリマセヌガ、將來ニ向ッテハ十分此問題
  ニ付テハ、風〓維持ニ付テ、出來ルダケノ御努力ヲ以テ、風〓維持ヲ御努メ
  ニナルト云フコトニ拜承イタシマシタガ、ソレニ付テ具體的ノコトヲ伺フト
  云フコトハ、今日ハ伺ヒマセヌガ、御決心ハ十分アルコトヲ今日御言明ニナッ
  タト、我〓ハ承知イタシテ宜シウゴザイマセウカ、一言總理大臣ニ、ソレニ
  付テノ御言明ヲ願ヒマス
  〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕

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• 020・原敬

  ○國務大臣(原敬君)　學校問題竝ニ風紀問題ニ付マシテ先刻申上ゲマシタ趣
  意ハ、唯〓酒井子爵ノ御述ベノ如ク、學校ハ此計畫ニ基キ進行イタシマスル、
  風紀問題ハ將來ニ於テ政府ハ十分ナル注意ヲ拂ヒマシテ、其效果ヲ擧ゲルコ
  トニ努メル積リデアリマスカラ、左樣御承知ヲ願ヒマス
  〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕

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• 021・阪谷芳郎

  ○男爵阪谷芳郞君　唯今總理大臣ノ釋明デアルカ、陳謝デアリマスルカ、御
  話ガアリマシタガ、其コトニ付テ伺ヒタイノデゴザイマス、去ヌル九日ニ
  先月ノ九日ニ本院ヲ通過イタシマシタ建議案、高等〓育機關ニ關スル建議案
  ニ付マシテ、其後政府ニ向ッテ種々質問モアリマシタコトハ御承知ノ通リデゴ
  ザイマス、又議員ノ側ニ於キマシテモ、成ベク今日內外多難ノ際、圓滿ニ解
  決ノ著クコトナラ著ケタイト云フコトハ、全院諸君ヲ擧ゲテ熱心ナ希望デアッ
  タノデアリマス、依テ政府ノ色〓御辯明モ聽キ、各派交渉會モ開イテ、色〓
  相談致シタノデアリマスガ、ドウモ政府ノ御處置ガ一同滿足シナイ、デ唯今
  總理大臣竝ニ文部大臣ヨリ御話ニナッタヤウナコトモ、一案トシテ上ッタノデ
  アリマスルケレドモ、是ハ到底滿足スベキモノデナイ、相當ナル處置トシテ
  十分ニソコノ責任ヲ明カニスル途ガナクテハナラヌト云フガ故ニ、此ノ決議
  案ガ既ニ多數ノ賛成ヲ得テ提出ニナッタ、デ今日ノ勢ヲ以テ見レバ旣ニ贊成者
  ガ百二十何名ト云フヤウナ勢デアリマスルカラ、是ガ上程セラレタ場合ニハ
  或ハ全會一致ニナルカモ測ラレヌト云フヤウナ場合デアルノデアリマスル
  ガ、唯今何ノ必要ガアッテ、突然此豫算ノ審査期限デモ定メルト云フ際ニ、總理
  大臣文部大臣ヨリ御話ガアッタノデアリマセウカ、ドウモ我〓ニハ意味ガ解ラ
  ヌ、一體釋明スルトカ、陳謝スルトカ云フヤウナコトハ、一ツノ紛糾シタル
  事件ヲ解決スル場合ニ、議員ノ方ト內閣ノ方ト互ニ能ク胸襟ヲ披イテ內談ヲ
  遂ゲタ上ノ話ナラバ、ソレハ聞エテ居リマス、サウ云フコトハ前例モアッタコ
  トデアルケレドモ、旣ニ多數ノ賛成者ガ此ニ記名シテ出テ、是ガ愈〓表決サレ
  ル時ニ、全會一致デモ行クカ知レヌト云フヤウナ場合ニ、既ニ捨テラレタ案
  ヲ以テ此ニ釋明セラレテモ、我〓ハ受ケヤウガナイ、釋明セラレテモ陳謝セ
  ラレテモ、受ケヤウガナイ、ドウ云フ意味デ突然ト斯ウ云フ際ニサウ云フコ
  トヲセラルルノデアリマスカ、甚ダ惑ハザルヲ得ヌノデアリマスルガ、或ハ
  政府ニ於テ相當ナル此ノ決議案ノ意味スル如キ處置ヲ執ルカラ之ヲ撤囘シテ
  吳レト云フヤウナ御意味デモアルノカ、チヨット其、甚ダ本員ハ惑ヒマスルノ
  デ、明瞭ナル御答ヲ得テ置キタイト考ヘマス
  〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕

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• 022・原敬

  ○國務大臣(原敬君)　唯今阪谷君ノ御質問デアリマスルガ、政府ハ先般適當
  ト認ムル處置ヲ執ルト云フコトヲ、建議ヲ議決セラルル場合ニ申シテ置イタ
  ノデアリマス、依テ政府ハ適當ナル措置ヲ執ッタト云フコトヲ、議員諸君ニ申
  スノガ政府ノ義務デアラウト考ヘタノデアリマス、故ニ此場合ニ於テ其コト
  ヲ申シタノデアリマス、其趣意ハ旣ニ申シタル通リ、又前刻酒井子爵ノ御質
  問ニ答ヘマシタ通リ、卽チ御質問ニ對シマシテハ、大體御質問ノ通リナリト
  御答イタシマシタノデアリマス、之ニ依テ阪谷君ニ於テモ御了承アルコトト
  信ズル、政府ニ於キマシテハ、決議案ノ如何ニ相成ルカハ敢ヘテ彼是申ス所
  デハアリマセヌ、併シ先般建議ノ際ニ、政府ノ認メテ適當ナル措置ヲ執ル積
  リデアルト云フコトヲ申シマシタカラ、適當ナル措置ヲ執ッタト云フコトヲ、
  玆ニ議員諸君ニ申シ置クコトガ適當ナコトト考へテ之ヲ辯明イタシタニ過ギ
  ヌノデアリマス、左樣御承知ヲ願ヒマス

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• 023・阪谷芳郎

  ○男爵阪谷芳郞君　强チ決議案ヲ撤囘シテ呉レト云フ意味デモナイト云フヤ
  ウニ伺ヒマシタガ、一向本員ハ何ノ爲ノ釋明デアルカ、陳謝デアルカ、能ク
  意味ガ分リマセヌ、既ニ決議案ガ提議ニナッテ居リマス以上ハ、其際ニ十分ニ
  本員等ノ意見ハ申述ベル、又政府ノ意見モ伺ヒマスガ、今日兩大臣ヨリ御言
  明ニナルコトハ、一向滿足ヲシ能ハヌノデアリマス、此際私ノ質問ハ是デ打
  切ッテ置キマス

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• 024・仲小路廉

  ○仲小路廉君　極メテ簡單ナ質問デアリマス、此席上ヨリ一言イタシマス、
  總理大臣ニ伺ヒタイ、二月九日貴族院ニ於テ、滿場一致ヲ以テ決議イタシマシ
  タ此ノ建議案ハ其趣旨ヲ政府ハ御採納ニナルノデアリマスカ、ナリマセヌ
  ノデアリマスカ、此事實ヲ簡單ニ承ハリタイ、採用スルノデアルカ、採用セ
  ヌノデアルカ、先ヅ其點ヲ簡單ニ伺ヒマス
  〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕

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• 025・原敬

  ○國務大臣(原敬君)　先刻述べマシタ所ノ事柄ハ、卽チ建議ノ趣意ニ副フモ
  ノナリト政府ハ考ヘテ居リマス、建議ノ御趣意ハ學校問題ノコトト、風紀問
  題ニアッタト解釋イタシマシタカラ、學校ハ斯ノ如ク致シ、風紀問題ハ斯ノ如
  ク致ス、卽チ是ハ政府ニ於テハ建議ノ御趣意ニ副フモノナリト信ジテ居リマ
  ス

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• 026・仲小路廉

  ○仲小路廉君　唯今總理大臣ヨリ貴族院ノ建議ニ付テハ、其意思ニ副フ考ヲ
  以テ陳述シタノデアルト申サレマシタガ、元來二月九日當院ノ議決イタシマ
  シタ所ノ建議案ハ、此中ニハ極メテ重要ナ意味ヲ包含シテ居ル、殊ニ國民的
  風〓道義ノ點ニ於テ、極メテ嚴肅ナ意味ヲ包含シテ居ルノデアリマス此嚴
  肅ナル建議案、而モ貴族院ニ於テ滿場一致ヲ以テ決議イタシマシタル此ノ建
  議案ニ對シテ、唯今陳謝ト申シマスルカ、釋明ト申シマスルカ、兩大臣ヨリ
  御述べニナリマシタノデゴザイマスルガ、此點ニ付マシテハ私共ハ阪谷男爵
  ト全ク感ヲ同ジクスル次第デアリマス、當院ニ於テ滿場一致ヲ以テ議決シタ
  ル建議案ニ對シテ、唯今政府ノ御執リニナリマシタ處置ハ、我〓ハ極メテ不
  滿足デアリマス、故ニ此ノ不滿足ヲ表示イタシマスルガ爲ニ、貴族院トシテ
  ハ適當ナル方法ヲ執ル考ヲ以テ、ソレゾレ其手續ヲ盡シテ居ル譯デアル、尙
  ホ此際ニ於テ我〓一同ノ

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• 027・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　仲小路君ニ伺ヒマスガ

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• 028・仲小路廉

  ○仲小路廉君　此趣旨ヲ以チマシテ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=28

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• 029・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　尙ホ質疑ナサルノデアリマスカ、如何デアリマス
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=29

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• 030・仲小路廉

  ○仲小路廉君　暫ク

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=30

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• 031・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　暫ク········質疑デゴザイマスカ、御意見ガゴザイマ
  スカラ確メテ置キマス

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• 032・仲小路廉

  ○仲小路廉君　其趣意ヲ以テ、私ノ質問ハ是デ終ル積リデアリマス

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• 033・江木千之

  ○江木千之君　私ハ第一ニ總理大臣ノ唯今ノ釋明デアリマスカ、說明デアリ
  マスカニ對シテ、質問ヲ致サウト考ヘルノデアリマス、此質問ヲ致サウト考
  ヘル點ハ、唯今總理大臣ノ述ベラレタコトハ、過日各派ノ交涉委員ヲ大臣室
  ニ招カレテ、其節述ベラレタコトト少シモ變リハナイノデ、是ハ內閣書記官
  長ヨリ、書面ヲ以テ私共ノ手許ヘ通ジテ居ル、ソレト少シモ違ッテ居ラヌノデ
  アリマスルガ、是ハ甚ダ不條理、了解スベカラザルコトノミヲ申シテ居ラレル
  ノデアル、ト申スノハ唯今昇格ニ付テハ總理大臣ガ委員長ノ如キ位置ニ於テ
  骨組ノ調査ヲ終ッテ、是ヨリ文部ノ諮問機關ニ付議スル積リデアル、斯ウ云フ
  コトヲ仰セニナッテ居リマスガ、斯ノ如キコトヲ御答ヘニナッテ何ノ用ヲナス
  ノデアルカ、實ハ總理大臣ハ文部省ノ諮問機關ノ原案ヲ作ル所ノ官吏トナラ
  レタノデアリマセウカ、諮問機關ガドウ決メルカモ分ラヌガ、先ヅ案ヲ作ッタ
  ト云フ御話ナラバ、是ハ唯諮問機關ノ原案ヲ作ル官吏ノ言葉ト聞クヨリ外仕
  方ガナイ、又總理大臣トシテ意見ヲ定メタト云フコトデアルナラバ、大體ノ
  骨組ヲ總理大臣ガ決メタ以上ハ、諮問機關ニ掛ケテ斯ウスルノデアル、諮問
  機關ハ骨組ヲ變ヘサセナイノデアルト云フコトナラバ、有力ナル調査機關ニ
  與ヘルト云フ豫テノ御言葉ハ丸デ反古ニナッテ仕舞フノデアル、如何ニシテモ
  此說明ノ如キハ受取リ難イノデアリマスルガ、併シ何デ斯ノ如キコトヲ總理
  大臣ガ述ベラレタノデアルカト考ヘルト、是ハ建議ノ說明ヲ少シ誤解サレタ
  カラ、斯樣ナコトニナッタノデアラウカト考ヘル、建議案ノ說明ニ於テハ此年
  度ニ昇格ヲ實現セシムルカドウカ、追加豫算ヲ出サレルヤ否ヤト云フコトヲ
  能ク責メタノデアリマス、ソレ故ニ總理大臣ハ此年度ニ實現ササウ、實現サ
  スコトハ出來ナイニシテモ、實現サス方ニ向ッテ進行シヤウトシテ斯ノ如キコ
  トヲサレタトシカ思ハレナイ、併ナガラ是ハ決シテ此建議ノ本旨デナイ、建
  議ハ必ズ斯ウ云フコトヲ爲サルヤウニト云フコトヲ望ンデハ居ラヌ、本年度
  ニ實現ト云フコトハ恐ラクハ出來マイト考ヘル、出來ナイト仰セラレタナラ
  バ卽チ言責不實行、食言ガ實現セラレルト云フコトヲ考ヘタノデアリマシテ、
  ソレヲ確メル爲ニ建議ノ說明ニ於テハ此點ニ力ヲ用ヒタノデアリマス、何
  ゾ圖ラム、ソレハ昇格ヲ急グノデアルト云フ、斯ウ御考ヘニナッタカ、頻ニ昇
  格ノ方ニ向ッテ進マレルガ、斯ノ如キ調子デ昇格ガ實現シタナラバ、〓育ノ制
  度ハ殆ド紊サレテ了フノデアル、實ニ總理大臣ノ此間ノ御處置ハ、少シク御
  狼狽ノ氣味デアルカ、洵ニ了解イタシカネルガ、此點ハ質問イタサウト考ヘ
  マシタガ、私ハ是ハ質問スル方ハ宜シクナイト唯今考ヘタノデアリマス、此
  順デ推シテ行ッタナラバ、大事ナ〓育制度ガドウ云フヤウニ損壞サレルカ測ラ
  レヌノデアル、是ハ私ハモウ總理大臣ニ向ッテ此點ハ暫ク責メヌ方ガ宜シイト
  考ヘル、〓育制度ガ大事デアル、之ヲ推詰メテ行ッテ、〓育制度ニ妄ニ變更ヲ
  加ヘラレタナラバ、實ニ取返シノ付カヌコトニナルデアリマセウカラ、質問
  ノ通告ハ致シテ置キマシタガ、總理大臣ニ對スル質問ハ私ハ止メマスル、次
  ニ文部大臣ノ唯今ノ釋明デアリマスルガ、實ニ何タルコトデアル、曩ニ內閣
  ノ罫紙ニ書イテ通ゼラレタ趣意ニ於テハ「官紀上渝ニ遺憾至極ノ次第デアリ
  マスカラ」ト斯ウ云フコトガアリマス、ソレヲ「注意ノ至ラザル點モアリマシ
  タカラ」、唯此一句ヲ少シ變ヘラレタノデアル、是ハ我〓各派ノ間ニ於テハ、
  斯樣ニ修正ヲ求メタラ如何デアラウカト云フ話ハ出マシタガ、如何ニシテモ
  ドウモ小刀細工デ、小刀細工ノ最モ甚ダシイモノデアルカラ、堂々タル貴族
  院ガ天下ニ嗤ヒヲ貽シテハナラナイト云フ考デ、是ニハ同意ヲシナカッタノデ
  アリマス、加之此一句ヲ改メテ見タ所ガ、文部大臣ノ冒頭ニ述べラレタ「學校
  騷動ノ如キハ數年來連續シテ居ルモノ」云々、此ノ校紀風紀ノ弛廢ヲ視テ、
  渝ニ輕〓シク之ヲ言ヒナサムトシテ居ラレル、事モナゲニ申シテ居ラレル、
  無論是ハ是迄ノ學校騒動ヲ咎メタノデハナイ、玆ニハ我〓ノ眞意ガ存シテ居
  ルノデアル、卽チ天下ノ憂ニ先ダチテ憂ヘラレル所ノ諸君デナケレバ、此意
  味ヲ解スルコトハ出來ナイノデアル、斯ノ如キ實ニ何トモ申サレヌ小刀細工
  ヲ以テ、堂々タル貴族院ハ決シテ滿足ハ出來ナイノデアリマスガ、是モ私ハ
  之ニ付テハ十分ナル意見ヲ述プルノ機會ガ橫ハッテ居リマスカラ、文部大臣ニ
  對スル質問モ止メテ、其機會ニ讓ルコトニ致サウト存ジマス

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• 034・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　此際議長カラ一言申上ゲテ置キタイト思ヒマス、
  江木君ハ國務大臣ノ發言ニ對シテ、質疑ヲ許サレタイト云フ趣デ通〓イタサ
  レマシタカラ、發言ヲ許シマシタ、然ニ是〓ノ理由ガアルカラ質疑ヲ止メル
  ト云フコトヲ御述ベニナル、質疑ヲ御止メニナルナラバ、何モ仰シヤラズニ
  御止メニナルノガ宜イノデアリマス、少シク德義ヲ御守リヲ願ヒタイト存ジ
  やじ、將來ノ爲ニ一言申上ゲテ置キマス

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• 035・江木千之

  ○江木千之君　本員ハ德義ハ十分守ッタ積リデアリマス、議長ヨリ德義ヲ守ラ
  ヌト云フ御言葉ヲ頂戴シラハ私ハ懲罰委員ニ付セラレル外ハナイト思ヒマス
  ガ、私ハ今日迄他ノ點ニ於テハ非難モ受ケマシタラウガ、德義ヲ守ラヌト云
  フ言葉ヲ頂戴シタコトハナイノデアリマスルガ、唯今ノ議長ノ御言葉ハ私ガ
  德義ヲ守ラヌト云フコトヲ仰セラレタノデアリマセウカ、如何デアリマセウ
  カ、モウ一應伺ッテ置キタイト思ヒマス

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• 036・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　質疑ヲ通〓サレタ御方ハ、質疑ヲ爲サルコトヲ望
  ム、德義ヲ守ラレタイ云々ト云フコトハ一般ニ申シタ積リデゴザイマス
  〔子爵大河內正敏君發言ノ許可ヲ求ム〕

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• 037・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　大河內子爵ハ何デゴザイマスカ

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• 038・大河内正敏

  ○子爵大河內正敏君　私モ唯今ノ點ニ付意見ヲ述べタイト思ヒマス

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• 039・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　意見トハ何デアリマスカ

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• 040・大河内正敏

  ○子爵大河內正敏君　江木君ノ質問ニ付テ議長ハ

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• 041・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　チヨット御待チヲ願ヒマス、只今質疑ノ通告モアリ
  マスカラ、ソレガ濟ミマシテカラ願ヒマス

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• 042・藤村義朗

  ○男爵藤村義朗君　私ハ唯〓中橋文部大臣ノ御聲明ニ付マシテ、少シク解義
  シ兼ネマスル點ガゴザイマスノデ、御尋ネヲシタイト思ヒマスガ、御席ニ御
  出デニナリマセヌ、ドウゾ御呼出シヲ願ヒマス

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• 043・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　文部大臣ハ出席シテ居ラレマス

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• 044・藤村義朗

  ○男爵藤村義朗君　柱ニ隱レテ御出デニナリマス、文部大臣ノ御言葉ノ中ニ
  風紀問題ニ付テハ文部當局ニ於テ從來注意ヲ怠。ッテ居タ次第デハナイガ、今後
  ハ更ニ一層注意ヲスルト云フ仰セガアリマシタガ、右ハ〓育界ノ風紀ガ近來
  特ニ紊亂弛緩シテ參ヲタト云フ事實ヲ御認メニナッテ左樣ニ仰シヤッタノデア
  リマスカ、念ノ爲ニ先ヅ之ヲ伺ヒマス
  〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕

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• 045・中橋徳五郎

  ○國務大臣(中橋德五郞君)　唯今此方ノ御方ノ御質疑ガアリマシタノデ、少
  シ御聽キ取リ兼ネマシテ、席ヲ移シテ居ッダ譯デアリマス、唯今アナタハ此方
  側デアリマスカラ、此方ニ復席イタシマシテ、能ク承知イタシマシタ、私共
  ノ唯今申上ゲマシタノハ、學校ノ多少動搖ヲ致シマシタト云フコトハ、色〓
  ノ原因ヨリ致シマシテ時々アルノデアリマス、又此頃ニ計畫ノ一部ガ世間ニ
  漏レマシタニ付マシテ、稍〓其不安ヲ增シタト云フヤウニ見受ケタノデアリ
  マスルデ、是ガ爲ニ一般ノ道德ニ如何ナル影響ヲ及ボシ、國民ノ風俗ニドウ
  ト云フヤウナコトハ考ヘテ居リマセヌ

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• 046・藤村義朗

  ○男爵藤村義朗君　更ニ伺ヒマスガ、唯〓文部大臣ノ御言葉ノ中ニ、文部當
  局ニ於テ學校ノ昇格問題ニ關スル計畫中ノ一部ガ他ニ漏洩イタシテ、爲ニ一
  層紛糾ヲ重ネルニ至ッタ、是ハ官紀上遺憾ノ事デアルト云フ御意見ガアリマシ
  タガ、文部當局ノ誰ガ之ヲ洩ラシタノデゴザイマスカ、故意ニ誰ガ洩ラシタ
  カ、或ハ偶然ニ洩レタノデアルカ、又漏洩セシメテ、學界ノ紛糾ヲ重ネマシ
  タ責任ハ、無論糺サレルコトデアラウト思ヒマスガ、左樣心得テ宜シウゴザ
  イマスカ
  〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕

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• 047・中橋徳五郎

  ○國務大臣(中橋德五郞君)　御答ヲ致シマスガ、此漏洩ヲ致シマシタノハ何
  分今日マデ分リマセヌ、甚ダ殘念ニ存ジマス、何レ洩ラシマシタ人ガアラウ
  ト思ッテ居リマスガ、色〓詮索イタシマスケレドモ何分今日マデ分リマセヌ、
  併シ此洩レマシタニ付マシテ、學校ノ職員等ニ付テノ不安ノ念ヲ與ヘマシタ
  ト云フコトハ、寔ニ殘念ナルコトデアリマシタ、私ハ此點ニ付テハ非常ニ遺
  憾ヲ感ジマスルカラ、斯ノ如ク御述べヲ致シタヤウナ譯デアリマス

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• 048・藤村義朗

  ○男爵藤村義朗君　尙ホ伺ヒマス、學校問題ノ紛糾ヲ重ネマシタコトニ付
  マシテハ、文部大臣ハ御自身ノ注意ノ到ラザリシ所デアルト云フコトヲ、先
  程仰シヤッタヤウニ記憶シテ居リマス、是ゾ卽チ過日本院ニ於キマシテ建議案
  ガ提出セラレマシタ際ニ、提出者前田子爵ノ、文部大臣ノ大失策デアル、
  大輕卒デアル、裏切デアルト攻メラレタ所デアルダラウト思フ、文部大臣ハ
  ソレヲ今日初メテ御承認ニナッタノデアルト思フ、サスレバ文部大臣ハ御自身
  ノ不注意デ斯樣ナ遺憾至極ノコトヲ來シタニ付マシテハ、當然責ヲ引カレテ、
  相當ノ御覺悟ヲナサルデアラウト私ハ存ジマスガ、天皇輔弼ノ重責ヲ負ハレ
  ル文部大臣トシテ、左樣ノ御覺悟ハ當然ノコトデアラウト思フ、如何デゴザ
  イマスカ、御所見ヲ伺ヒマス
  〔國務大臣中橋德五郎君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=48

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• 049・中橋徳五郎

  ○國務大臣(中橋德五郞君)　此計畫ノ一部ガ他ニ漏洩イタシタト云フコトハ
  寔ニ殘念ナコトデアリマシテ、私ハ其點ニ付マシテ大體モウ少シ注意ヲ致シ
  テ居ッタラバ、決シテ漏洩ハシナカッタカモ知レヌト云フコトヲ申上ゲタ次第
  デアリマス、寔ニ是ハ殘念デゴザイマス、是ガ若シ洩レマセヌケレバ、或ハ皆
  樣ニ是程ノ御心配ヲ掛ケルノ必要ナカッタト、今更思ッテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=49

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• 050・藤村義朗

  ○男爵藤村義朗君　ソレデ宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=50

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• 051・徳川家達

  ○議長　公爵德川家達君)日程第二、第三、第四、第五、第六ハ諸君ニ於テ
  御異議ガナケレバ、一括シテ問題トシ、說明ヲ煩ハシマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=51

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• 052・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第二、大正九年度歲入歳出總豫算追加案、第
  二號、第三、大正九年度各特別會計歲入歲出豫算追加案、特第一號、第四、
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件、追第一號、第五、豫算
  外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件、追第二號、第六、大正十年
  度各特別會計歲入歲出豫算追加案、特第一號、審査期限ヲ定ムルノ件
  〔左ノ通牒文ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之ニ倣フ〕
  (第二號)大正九年度歲入歲出總豫算追加案
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正十年三月八日
  衆議院議長奧繁三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (特第一號)大正九年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正十年三月八日
  衆議院議長奧繁三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正十年三月八日
  衆議院議長奧繁三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (追第二號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正十年三月八日
  衆議院議長奧繁三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (特第一號)大正十年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
  右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正十年三月九日
  衆議院議長奧繁三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔國務大臣子爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=52

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• 053・高橋是清

  ○國務大臣(子爵高橋是〓君)　唯今上程ニナリマシタル日程第二ヨリ第六ニ
  至ルマデヲ一括シテ、其說明ヲ簡單ニ申上ゲマス、今日提出イタシマシタル
  大正九年度一般會計追加豫算ハ、歲入歲出各〓五千八百餘萬圓デアリマシテ、
  其ノ歲出中主ナルモノハ、經常部ニアリマシテハ、大藏省所管諸拂戾金ニ於
  テ二百餘萬圓、陸軍省所管被服費兵器彈藥等ノ不足額八百餘萬圓、海軍省所
  管醫療費ノ增加二百餘萬圓等デゴザイマス、又臨時部ニアリマシテハ大藏省
  所管關東廳「ペスト」防遏ノ爲ニ要シマシタル經費補充ノ追加二十五萬圓、海
  軍省所管軍艦製造費ノ追加三千七百餘萬圓等デゴザイマシテ、何レモ物價騰
  貴ノ影響ヲ受ケタルモノ、若クハ災害ノ發生其他至急支出ノ已ムベカラザ
  ルモノデゴザイマス、而シテ右ニ對スル財源ト致シテハ主トシテ戰時利得稅
  ノ增加額二千百餘萬圓及ビ前年度剰餘金繰入三千六百餘萬圓ヲ以テ之ニ充當
  イタシマス、各特別會計ニ於キマシテモ、大體一般會計同樣必要已ムベカラ
  ザル經費ノ追加ニ屬スルモノデゴザイマス、又追第一號豫算外國庫ノ負擔ト
  ナルベキ契約ニ關スル件ハ、山形縣ノ災害土木費借入金ノ利子補給ノ契約デ
  ゴザイマシテ、大正九年度一般會計追加豫算、卽チ唯今前ニ述べマシタルモ
  ノニ伴フモノデゴザイマス、次ニ追第二號豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約
  ニ關スル件ハ、蠶絲業救濟貸付金ノ補償ニ關スルモノデアリマス、卽チ帝國
  蠶絲株式會社ニ對シテ、日本興業銀行及ビ日本勸業銀行ガ資金ノ貸付ヲ爲シ
  タル場合ニ於テ、帝國蠶絲株式會社ガ精算ノ際ニ、其資產ヲ以テ右兩銀行ニ
  對スル貸付金ノ辨濟ヲ爲スコトノ能ハザル場合ヲ生ジ、兩銀行ニ於テ、ソレガ
  爲ニ損失ヲ生ズル場合ニ於テ、政府ガ此損失ヲ補償スルコトヲ、前ノ兩銀行
  ニ對シテ契約ヲ爲シ得ルト云フコトノ案デゴザイマス、但シ其ノ損失補償ノ
  限度ハ三千萬圓ト致シマシテ、此程度ニ於キマシテ兩銀行ニ對シテ損失補償
  ノ契約ヲ致シマスレバ帝國蠶絲株式會社ニ於テ右兩銀行ヨリ資金ノ融通ヲ
  受クルノ便ヲ得マシテ、蠶絲業救濟ノ實ヲ十分ニ擧グルコトガ出來ルト云フ
  見込デアルノデゴザイマス、又大正十年度特別會計追加豫算特第一號ハ、米
  穀法ノ施行ニ伴ヒマスモノデゴザイマス、卽チ米穀需給調節特別會計ノ大正
  十年度ニ於ケル豫算デゴザイマス、米穀法ノ實施ニ要シマスル事業費、事務
  費等デアルノデ、其實行ノ方法ニ付マシテハ既ニ米穀法案及ビ米穀需給調節
  特別會計法案ノ御審議ヲ願フ際ニ於キマシテ、詳細說明ヲ致シマスル所デア
  リマシテ、諸君ノ御承知ノコトト存ジマス、國債整理基金特別會計ノ追加豫
  算ニ、右米穀需給調節特別會計ノ歲入タル借入金ニ相伴フモノデアリマス、
  以上何レモ至急ヲ要スルモノデゴザイマスカラシテ、何卒御審議ノ上速ニ御
  協賛ヲ與ヘラレムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=53

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• 054・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ質疑ノ通告ガゴザイマスカラ、順次許シマ
  ス
  〔若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=54

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• 055・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　私ハ豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ニ關スル追第二號ニ
  付テ質問ヲ致シタイノデアリマス、是ハ所謂蠶絲救濟ニ關スル問題デアリマ
  ス、此前ニ總豫算案ガ議場ノ問題ニナリマシタ時ニ、私ハ此コトヲ政府ニ伺
  ヒマシテ、當時質問ノ趣意ヲ述ベマスニ當ッテ、凡ソ買占ニ依テ價格ノ維持ヲ
  シヤウト云フ事柄ハ、餘リ長カラザル間ノ價格ハ結局維持スベキ所ニマデ至
  ルト云フ、十分ナル見込ノアル時デナケレバナラヌト云フコトヲ申シタノデ
  アリマス、所ガ政府ノ御答辯ヲ伺ッテ見マスト云フト、農商務大臣、大藏大臣
  共ニ此點ニ付テ御見込ガナイヤウデゴザイマス、此度蠶絲業救濟ガ從前ノ通
  リデハ結局イケナイト云フ所謂失敗ヲ致シタ爲ニ、今日ノヤウナ契約案ヲ御
  出シニナラナケレバナラヌヤウナコトニナリマシタノハ、全ク此見込
  ヲ立テズシテ此ノ大事業ヲ著手セラレタト云フコトノ結果デアルノデアリマ
  ス、失敗ニ終ッタコトハ私共驚キハ致シマセヌ、政府ノ如キ御考デ此事業ニ手
  ヲ御出シニナレバ、玆ニ至ルノハ當然デアルノデアルノデス、大藏大臣ハ私ノ
  質問ニ對シテ蠶絲救濟ハ成功シタ、亞米利加ノ堆積シテ居ル荷物ヲ之ニ依テ
  捌クコトガ出來タカラ、大ニ成功シタト云フコトヲ御述ベニナリマシテ、大
  藏大臣ハモウ一ツ成功シテ居ルコトヲ御忘レニナッテ居ルノデアリマス、蠶絲
  救濟ニ依テ支那ノ滯貨ガ一掃セラレタト云フ結果ガ生ジテ居ル、是ハ大藏大
  臣ヲシテ言ハシメタナラバ成功ダト仰セニナルカモ知レマセヌガ、之ヲ附加
  ヘルコトヲ御忘レニナッタト私ハ思フノデアリマス、農商務大臣ハ初メカラ政
  府ガ損ヲスル覺悟デ之ニ著手スレバ成功スルノデアッタ、併シ政府ガ損セナイ
  ヤウニ、卽チ剰餘金支出ト云フヤウナコトヲシナイヤウニシヤウト思ッタカ
  ラ、巧ク行カナンダト云フ御答辯デアリマス、蠶絲救濟ト云フ此ノ大事業ニ
  著手セラレテ、一方カラ言ヒマスト私ハ是ハ非常ナ冐險ナ施設デアルト思ヒ
  マスガ、斯樣ナ冐險ノコトモ蠶絲救濟ノ爲ニハ已ムヲ得ヌト云フ御考デ著手
  ナサレルナラバ、必ズ結果ハ良クナルヤウニ御努メニナラナケレバナラヌ、
  剰餘金支出ヲ愼ンダ爲ニ斯ウナッタト云ウテ、如何ニモ政府ノ責任支出ハ容易
  ニ出來ナイカノ如キコトヲ仰セニナルケレドモ、一昨年ノ外米買入ノ爲ニハ
  政府ハ四五千萬圓ノ責任支出ヲナサレタト思フノデアリマス、ソレダケニ政
  府ハ此問題ニ付テダケ責任支出ハシナイト云ッテ、成功スベキコトハ知リナガ
  ラ其方法ヲ採ラナカッタト云フコトヲ仰セニナルニ至ッテハ、私共農商務大臣
  ノ御若ナルミノラ理族スルコトカ出来ヌ位デアルラデス人公=マデツ
  テ來ラレタ政策ガ、實際ニドウ云フ結果ヲ生ジテ居ルカト申シマスト、政府ハ
  此度ノ蠶絲救濟ナルモノハ昨年ノ十月カ十一月ノ頃ニ著手サレタヤウニ思ヒ
  マスガ、其確ナル事實ハ承知イタシマセヌケレドモ兎ニ角秋ニナッテカラ
  著手ナサレタ、ソレデアリマスカラ去年ノ春及ビ夏ノ繭ト云フモノハ、所
  養蠶家ガ大部分賣ッテカラ後ニ此事ニ著手ヲサレタノデアリマスカラ、政府ハ
  蠶絲救濟ナルモノハ養蠶家ノ大部分ニ對シテハ少シモ其效果ヲ及ボシテ居ナ
  イト言ッテ差支アルマイト思フノデアリマス、又此事業ニ著手スルト共ニ政府
  ハ操業休止、生絲ヲ製造スルコトハ暫ク止メロト云フコトヲ勸告サレテ、當
  業者ハ之ヲ守ッタノデアリマスカラ、其結果トシテハ全國多數ノ工女職工等ガ
  生活上ニ於テ非常ナ脅威ヲ覺エタ次第デアルノデアリマス、ソレナラバ政府
  ノ救濟方法ニ依テ、生絲ノ値段ハ信州上一番格ノ物ガ一梱千五百圓ト云フ、
  政府ノ豫期セラレル價ニ保タレテ行ッタカドウカト言ヒマスト、事實ハサウ
  行フテ居ナイヤウニアリマス、帝蠶會社ハ如何樣千五百圓デ買フノデアリマセ
  ウ。併ナガラ市場ノ値段ハサウ云フヤウニ維持サレタト云フコトハ見エナイ
  ノデアリマス、現ニ取引所ナドハ殆ド相場ヲ立テルコトガ出來ナカッタコトハ
  御承知ノ通リデアリマス、又外國へ輸出スルモノデモ、何トカ暗商ヒトカ稱
  ヘテ、此價ノ以下ニ於テ密ニ賣ッタト云フ事實ハ多々アルヤウデアリマス、ソ
  レデアリマスカラ政府ガ此事ヲ實行ナサレテモ、政府ノ所期ノ價格ヲ維持ス
  ルコトガ出來テ行カナカッタト云フコトハ疑ナイ事實デアルノデアリマス、又
  是ガ爲ニ操業ヲ短縮スルト云フコトニ致シタノデアリマスカラ、繭ガ養蠶家
  ナリ製絲家ノ手許ニ殘ッテ、今日ハ貯藏ノ繭ガ澤山殘ッテ居ルノデアリマス、從
  ッテ本年拵ヘル所ノ繭ト、是ガ重ッテ參リマスカラ、昨年ノ施設ガ今年ニマデ累
  ヒヲ殘シタト云フコトヲ申サンケレバナリマセヌ、一方買溜メヲ致シテ外國
  ニ賣ラヌト云フ仕組ヲ立テラレタノデアリマスカラ、帝蠶會社ノ手許ニ生絲
  ガ澤山殘ッテ、今日ハ如何ホドニナッテ居ルカ、能ク存ジマセヌガ、約三萬梱位
  ハアルト云フコトデアリマス、ソレダケハ詰リ此ノ方法ニ依テ絲ノ輸出ヲ止
  メタノデアリマスカラ、此政府ノ政策ニ基イテ橫濱市場ニ生絲ヲ堆積セシメ
  タト云フ結果ヲ呈シテ居ルノデアリマス、而シテ日本ガ斯樣ニ致シマシタ爲
  二、日本ノ生絲ノ大敵デアルト云ウテモ宜イ位ノ支那ノ絲ニ對シテハ大變
  是ガ便宜ニナッタノデアリマス、卽チ一方ニハ日本ノ方カラ賣出サヌノデアリ
  マスカラ、安イ値段デ支那ノ方カラ賣出シテ、支那絲ガ盛ニ亞米利加等ニ輸
  出セラレルト云フ結果ヲ呈シタノデアリマス、他ノ一方ニハ日本ノ絲ハ人爲
  デ價格ガ吊上ゲテアルカラ、內地ノ織物業者ガ賣ルモノハ幾ラカ其値段ニ拘
  ラヌト云ウテモ、一方デ吊上策ヲ講ジテ居ルノデアリマスカラ、內地使用ノ
  モノモ矢張絲ガ高イノデアリマス、其絲ヲ使ッテ織物ヲ拵ヘルノハ引合ハナ
  イノデアリマスカラ、內地ノ絹織物業者ガ支那ノ絲ヲ使フ、殊ニ支那ノ柞〓
  絲ヲ使ッテ織物ニシテ、亞米利加ニ出スト云フヤウナ、原料ガ日本ニアリナガ
  ラ其原料ヲ捨テヽ置イテ、支那ノ原料ヲ使ッテ仕事ヲスルト云フヤウナ結果ヲ
  呈シテ居ルノデアリマス、又此政策ハ亞米利加ノ絹織物製造業者ヲシテ一ツ
  ノ誤解ヲ懷カシメテ居ルノデアリマス、日本ノ政府ハ自分等ノ事業ノ原料ニ
  ナル生絲ノ價ヲ高メテ、サウシテ內地ノ絹織物業者ノ原料ニナル生絲ノ價ヲ
  低クスル政策ヲ執ッテ居ル、斯ク亞米利加ノ絹業者ガ誤解スルヤウニナッテ、
  其結果日本カラ來ル絹物ハ政府ノ特別ノ保護ヲ受ケテ居ル絹物デアルカラ、
  之ヲ亞米利加ニ賣出ス場合ニ於テハ、亞米利加ノ絹織物業ヲ保護スル爲ニ、
  特ニ此場合關稅政策其他ノ方法ニ依テ防禦ノ手段ヲ講ゼンケレバナラヌト云
  フ考ヲ、亞米利加ノ絹織物業者ニ懷カシメタ結果ヲ生ジテ居ルノデアリマス、
  斯ウ云フヤウナコトヲ擧ゲテ申上ゲマシタナラバ、マダ幾ラモアリマセウト
  思ヒマスガ、政府ノ施設セラレタ蠶絲救濟ナルモノハ私ノ今日見テ居ル所デ
  ハ斯樣ナ結果ヲ生ジテ、全然成功シテ居ナイト云フコトヲ申サヌケレバナリ
  マセヌ、此成功シテ居ナイト云フコトハ農商務大臣モ前囘ノ議場ニ於テ明ニ
  之ヲ認メラレタノデアリマスカラ、細カク申上ゲヌデモ既ニ御承知ニナッテ居
  ルコトト思ヒマス、ソコデ此度此ノ契約案ヲ出サレタノデアリマスガ、斯ウ
  云フヤウナ情勢ノ下ニ於テ止マッタラ宜シイガ、私ハ二ツノモノノ其一ツニ居
  ラナケレバナラヌト思フ、卽チ茲デ更ニ大ニ資金ヲ投ジテ、大ニ生絲ヲ買込
  ンデ、殆ド徹底的ニ價格ヲ維持シテ行ク、斯ウ云フ手段ヲ執ルカ、然ラザレ
  バ斯ウ云フヤウナ人爲デ價格吊上ゲト云フヤウナコトハ玆デ打切ッテ仕舞フ、
  此二ツノ手段ノ孰レカ其一ツニ出デラレルガ相當デアラウト思ヒマス、併シ
  徹底的ニ價格ヲ吊上ゲルト云ウテ、大ニ是カラ金ヲ出シ、國民ノ膏血ヲ絞ッテ
  作ッタ國家ノ金ヲ澤山出シテ、サウシテ結果ハ如何ニナルカト云フト、日本ノ
  品物ヲ內地ノ市場ニ堆積セシムルコトニナリマスカラ、後日非常ニ生絲貿易
  ノ脅威ニナルノデアリマス、私共斯樣ナ方法ニ出ヅベキモノデナイト思ヒマ
  ス、サウシテ殘ル所ハ斯樣ナ出來モシナイ救濟方法ハコヽラ邊デ打切ッテ仕
  舞フノガ相當デアルト思ヒマス、併ナガラ打切ルカラト云ウテ、是デ以テ捨
  テヽ仕舞フト云フノデハ、ソレデハ大變デアリマス、政府ガ初カラ見込ノナイ
  斯ウ云フ事業ニ手ヲ著ケラレヌナラバ、ソレデ宜シイノデアリマス、一旦手
  ヲ著テ茲マデヤッテ置イテ、アトハドウデモ宜イト云フヤウニセラレタラ、ソ
  レコソ大變デアリマス、斯ウ云フヤウナ失敗ヲナサレタ政府ノ責任ハ、是ハ
  別ニ政治上ニ論ジナケレバナリマセヌガ、旣ニ茲マデ來テ居ル以上、後始末
  ヲセヌケレバナリマセズ、後始末ヲスル爲ニ國家ノ金ヲ使フ、ソレガ三千萬
  圓デアリマスカ、二千萬圓デアリマスカ、ソレハ存ジマセヌガ、兎ニ角後始
  末ヲスルコトハ必要デアリマスカラ、サウ云フコトデ玆ニ案ガ立ッタノデアル
  ナラバ私共已ムヲ得ヌトシテ之ニ贊成シタイノデアリマス、然ニ政府ハ其
  孰レニモ出デズ、徹底的ニ絲價ヲ維持スルト云フ政策ニ出デズ、ソレナラバ
  玆デ打切ルト云フ政策ニモ出デズ、玆ニ何ダカ不徹底ナ案ヲ出サレタノデア
  リマス、卽チ三千萬圓ダケノ金ヲ出シテ、銀行ニハ損ガ行カヌヤウニシテヤ
  ルゾト云ウテ、銀行ハ貸付ダケハ安心シテ貸付シテ宜シイト云フ仕組ダケ執ツ
  テ玆ヘ出サレテ、是デ日本ノ生絲ノ價格ノ維持ガ出來ルヤウナ說明ヲ茲ニナ
  シテ居ラレルノデアリマスガ、私共大ニ是ニハ迷ウテ居ルモノデアリマス、
  今囘ノ案ハ三千萬圓ヲ場合ニ依テハ銀行ニ補償シテヤルト云フダケノコトデ
  アリマスソレダケノ補償ガアッタカラト云ウテ、日本ノ生絲ヲ、此値段ヲ豫
  定ノ通リ一梱千五百圓ニ維持シテ行クト云フコトハ、是ハ到底出來サウモナ
  イノデアリマス、ノミナラズ政府ノ原案ニ依リマスト、大正十年五月三十一
  日以前ニ生產セラレタル信州上一番格以上ノ生絲デ、輸出ヲ目的トスルモノ
  ダケニ適用スルト云フノデアリマスカラ、其結果ハ本年拵ヘタ繭ヲ以テ作ッタ
  モノハ之ヲ適用セヌト云フノデアリマス、サウデアリマスカラ是ノ及ブ所ノ
  モノハ誠ニ少ナイノデアリマス、此及プ所ノモノ誠ニ少ナクシテ、而シテ
  一方三千萬圓ノ金ヲ使ッテ、其結果ハ私共ノ見ル所ニ依レバ一梱千五百圓ノ價
  格ノ維持ガ出來サウニモナイト云フノハ卽チ此案デアリマス、ノミナラズ此
  案ニ依リマスト帝蠶會社ハ補償ヲ受ケルト云フコトニナッテ居リマセヌ、補償
  ヲ受ケルモノハ銀行ダケデ、帝蠶曾社ハ補償ヲ受ケルノデアリマセヌカラ、
  是デ帝蠶會社ガ仕事ヲシテ損ヲシタ時、其損ハ皆帝蠶會社ノ負擔デアル、言
  葉ヲ換ヘテ申上ゲレバ、帝蠶會社ノ株主ガ全部ノ負擔ヲシナケレバナリマセ
  ヌ、若シ此仕事ガ帝蠶會社ノ資金全部ヲ失フヤウナ損ヲシタトスレバ、是ハ
  株主ガ出資シタモノ全部失ハナケレバナラヌト云フコトニナリマス、ソレデ
  アリマスカラ、ドウシテモ此ノ帝蠶會社ガ買入ヲ躊躇スルダラウト思ヒマス、
  銀行ノ保護ガアッテモ、帝蠶會社ガ進ンデ勉强シテ生絲ノ買入ヲスルト云フコ
  トヲスマイト思ヒマス、サウナルト云フト、之ヲ出サレタ所ガ其效果タルヤ
  知ルベキモノト思ヒマス、而モ案自體ハ矢張買占ヲシテ價格ノ吊上ヲシヤ
  ウト云フコトノ案ガアリマスカラ、帝蠶會社ガ躊躇シテモ兎ニ角政府ガ勸メ
  テ買ハセラレル、其結果ハ生絲ガ外國ニ出テ行カヌデ橫濱市場ニ堆積スル、
  衆議院ニ於テ述ベテ居ラルル所ニ依リマスト、此度ノ此補償サヘスレバ帝蠶
  會社ガ更ニ七萬梱ヲ買入レルト云フコトデアッタト思ヒマス、是ハ私ガ記憶違
  ヒカ知レマセヌガ、サウ云フヤウニアッタヤウニ思ヒマスガ、サウナルト今迄
  既ニ三萬相買ヲテ居ル上ニ、更ニ七萬梱ヲ買入レマスレバ、玆ニ橫濱市場ニ
  堆積サレテ來ル生絲ハ十萬梱カラニ上ルコトニナリマス、サウ云フモノガ市
  場ニアッタナラバ、此後ノ生絲貿易ト云フモノハ始終是カラ押ヘラレテ、相當
  ノ値段ヲ出スト云フコトハ出來マイト思ヒマス、救濟ガ却ッテ後日ノ累ヒニナ
  ルヤウナコトニナリハシナイカト思ヒマス、昨今銀ノ値段ガ大層廉クナッタト
  云フコトハ御承知ノ通リデ、銀ガ廉クナルト支那ノ品物ヲ外國ニ輸出スルコ
  トガ大變便利ニナリマス、苟モ銀ガ廉クナッテ支那ノ品物ヲ外國ニ出スコトガ
  便利ナ時ニ、日本自身ハ自分ノ絲ハ人爲デ價格ヲ吊上ゲテ、ソレヲ外國ニ出
  サナイト云フコトニナレバ、此ノ契約案ナルモノハ此支那ノ絲ヲ大ニ出サシ
  ムルト云フ結果ニナッテ、之ヲ行ッタ結果トシテ支那ノ生絲ナルモノニ貿易市
  場ヲシテ非常ニ鞏固ナ地位ヲ得セシムルト云フコトニナリマス、日本ガ斯樣
  ナコトヲシタ結果、日本ノ生絲ハ堆積シ、支那ノ絲ニ非常ニ便宜ヲ與ヘテ、支
  那ノ生絲ノ輸出上ノ地位ヲ鞏固ニスルト云フ結果ニナラウト思ヒマス、ノミ
  ナラズ斯樣ナ方法ニ實行サルルト養蠶家ハ見込ガ立タヌト思ヒマス、今年蠶
  ヲ作ル者ハドウ見込ヲ立テテ宜イカ、生絲一梱千五百圓ニナルト云フ積リデ、
  ソレナラバ繭一貫目幾ラニ買ッテ貰ヘルト云フ勘定デ桑ノ葉ヲ買ッタリ、其他
  ノコトヲヤルト、ソレハ恐ラクハサウハ行クマイ、サウスルト此ノ人爲ノ遣
  リ方デ何處ヘ値段ガ落付クカ見當ガ付カヌノデアリマス、養蠶家ガ養蠶スル
  ニ斯ウ云フコトニナッテハ見當ガ付カヌコトニナルト、私ハ思フノデアリマ
  ス、左樣ナ次第デアリマシテ、善後策ヲナサルルトナラバ私共ハ巳ムヲ得ナ
  イト思ヒマスガ、更ニ玆ニ新ニ此ノ蠶絲救濟デ帝蠶ノ買入ト云フコトニ依
  テ繼續シテ行カウト云フ案ヲ立テラレマス以上ハ、私ハ玆ニ政府ニ向ッテ其ノ
  御見込ヲハッキリト伺ッテ置カヌケレバナラヌト思ヒマス、第一ニ伺ヒタイノ
  ハ、政府ハ此ノ契約案ニ依テ矢張從前通リ信州上一番格ノ生絲一梱千五百
  圓ノ價格ヲ維持スルト云フ目的デ、此契約ヲ御立テニナッタノデアルカ否ヤ、
  若シサウデアリマスレバ三千萬圓ノ金デ銀行ヲ補償シテヤルコトニ依テ其目
  的ヲ達スルコトガ出來ルト云フ御見込ノ立ッタ、其根據ハ何處ニアリマスカト
  云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、第二ニ伺ヒタイノハ帝蠶會社ハ躊躇スル
  ダラウト思フ、然ニ丸損ヲシナケレバナラヌ場合ガ起ルノデアリマス、此買
  入ナルモノヲ躊躇スルトナルト、或ハソレヲ政府ハ鞭撻シテ、今私ハ八百萬
  圓拂込ンデ居ルト思ヒマスガ、更ニアトノ八百萬圓ヲ拂込マシメタ上ニ、出
  來ルダケ銀行カラ金ヲ借リサセテ、何處マデモ生絲ノ買占ヲサセテ、ソレガ
  爲ニ或場合ニハ帝蠶會社ハ全部ノ損失ヲ負擔シナケレバナラヌ場合ガ來ルカ
  モ知レヌガ、ソレデモ構ハズ尙ホ帝〓會社ヲ鞭撻シテ、ソレマデノコトヲナ
  サレルノデアリマスカ、又帝蠶會社モソレヲナス覺悟デ今日アルノデアリマ
  スカドウデアリマスカ、ソレガ第二トシテ伺ヒタイノデアリマス、第三ニ伺
  ヒタイノハ前ニモ申上ゲマシタガ、斯ウ云フコトノ結果トシテ、愈〓横濱市場
  ニ十萬梱カラノ生絲ガ堆積シタコトニナリマシタナラバ、今後ノ日本ノ生絲
  貿易ニ非常ナ脅威ニナルモノト思フノデアリマス、ソレガ左樣ニナラヌデ、
  橫濱ニ十萬梱カラノ生絲ヲ積ンデモ日本ノ生絲貿易ハ是カラ先キ何等障害ナ
  ク、能ク外國ニ輸出サレ得ルト云フ御考ハ何處カラ出テ參ルノデアリマスカ、
  能ク理義ヲ明カニシテ其點ヲ御答辯ニナリタイト思ヒマス、最後ニ伺ヒタイ
  ノハ此救濟ヲ唯今實行セラレテ、又本年ノ五六月頃カ或ハ十月十一月頃ニナッ
  テ、アレデハマダ足リナイカラ、モウ一ツヤッテ貰ハナケレバナラヌト云フ救
  濟ノ聲ノ起ルコトハナイノデアリマセウカドウデゴザイマスカ、一旦此處マ
  デ來テ、是ハ私ガ前ニモ申上ゲタ通リ、手ヲ著ケタ以上ハ善後策ハドウシテ
  モ必要デアル、其手ヲ著ケタ所へ更ニ之ヲ增シテ事業ヲサレル、其時ノ善後
  策ナルモノハ三千萬圓デハ迚モ利カヌノデアリマス、一段ト又大キイモノヲ
  要スルト思ヒマスガ、サウ云フコトニナラナイデ濟ムノデアリマスカドウデ
  アリマスカ、ソレヲ伺ッテ置キタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=55

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• 056・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　此際休憩ヲ致シマシテ、午後一時三十分ヨリ開會
  イタシマス
  午後零時八分休憩
  午後一時三十九分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=56

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• 057・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=57

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• 058・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　唯今若槻君ヨリ御質問ニナリマシタル條項ニ
  付テ御答ヘ致シマスガ、其前ニドウモ此生絲ニ政府ガ低利資金ヲ貸シマシタ
  ルコトニ付テ、ドウモ根本的ニ御取違ヒガアリハシナイカト思フノデアリマ
  スソレデ最初ノ成行カラ申述ベマシテ御答ヲ致シタイト思フ、此蠶絲ノコ
  トニ付マシテハ、昨年ノ五六月ノ交ニ生絲ガ大變下リマシテ、サウシテ繭ノ
  價ガ五圓前後マデ下リマシタ、初メ春繭ヲ造リマスル時ニハ大〓値段ハ十圓
  前後ニモ賣レルデアラト希望ヲ致シテ造リマシタモノガ、五圓前後ニ價ガ下
  リマシテ、ソレガ爲ニ養蠶家ニ付テ非常ニ難澁ガ起ッテ來タ、ソレデ重立ツ養
  蠶地方ヨリ、養蠶救濟ノ聲ガ高マッテ參リマシタノデアリマス、其結果ト致シ
  マシテ中央蠶絲大會、是ハ御承知ノ通リニ、生絲貿易商、養蠶家、製絲家、
  總テ斯道ニ關係ノアル者デ組織サレテ居ル、其ノ中央〓絲會デアリマス、ソ
  レヨリ、ドウモ今日ノ狀態デハ甚ダ將來思ヒヤラレルカラシテ、ドウカ救濟
  ヲシテ吳レヌカト云フコトガ起リマシテ、政府モ調ベタ結果、ドウモ是ハ捨
  テ置ケヌカラシラ、何カ方法ガアルナラバ政府ニ於テモ助ケタイ、ソコデ其
  時ニ中央銀行ヲ初メトシテ、勸業銀行ナドヨリ成タケ融通ヲスル製絲家養蠶
  家ニ資金ヲ供給スルコトニ相成リマシテ、普通ノ中央銀行ニ於テ融通ヲシマ
  スル外ニ、一千萬圓ノ養蠶資金ノ低利資金ヲ貸シマシタノデアリマス、ソレ
  ガ爲ニ段々生絲モ値ヲ持チマシテ、又養蠶ニ於テモ繭ノ値ガ段々高マリマシ
  テ、其五圓前後ヲ極點ト致シマシテ、段々繭ノ値ガ八圓、九圓ト云フ如キ所
  マデ高マッテ參ッタ、ソコデアリマスカラシテ、自ラ救濟ノ聲モソレト同時ニ
  鎭マッテ、又價モ紐育邊リノ市價ニ於テモ値ヲ持ッテ來タノデアリマス、而シ
  テ夏蠶秋蠶モソレソレ終リマシタル當時ニ於テ又再ビ下ッテ來タ、此度ハ繭ノ
  價ガ四圓前後マデ落チテ參リマシタ、是デハ他日ノ養蠶ニ容易ナラヌ結果ヲ
  生ズルカラシテ、何トシテモ國家ガ何等カノ方法ニ於テ、融通ノ途ヲ附ケサ
  ウシテ機宜ノ處置ヲ執ッテ吳レヌト容易ナラヌ、全國ニ於テ百五六十萬ノ養蠶
  家ガアル、ソレニ付テ非常ナル苦痛ヲ感ズルト云フ聲ガ高マリマシテ、再ビ
  今ノ中央會ニ於テ其コトガ決議ニナリマシテ、サウシテ救濟ヲ求メテ參ッタノ
  デアリマス、サウシテ參リマスル時ニ於テ、如何ナル途ニ於テ救濟ヲスルカ
  ト申シマスルト、第一ニ政府ガ其損得ヲ負擔スルト云フ意味ニ於テ救濟ヲシ
  テ貰フ、ソレデ一方ニハドウカ融通ヲ付ケテ貰ヒタイ、ドウモ融通ガ甚ダ不
  敏活デアル故ニ、投賣ナドガ起ッテ、ソレガ爲ニ言フベカラザル事業ニ變化ヲ
  來シテ參リマスル爲ニ、第一ニ價格ヲ維持スルト同時ニ、品物ノ量ヲ餘リ出
  テ來ナイヤウニシナケレバナラヌ、ソレデ自分等ハ皆申合セテ操業ノ短縮、
  若クハ又或時期ノ間製絲ノ休止ヲシテ、サウシテ之ヲ救濟スルト云フコトガ
  必要デアル、如何セム融通ガ此ノ經濟社會デハ付キ兼ネル故ニ、融通ヲシテ
  貰ヒタイ、斯ウ云フコトガ要求デアッタノデアリマス、然ニ政府ニ於テ之ノ
  損得ヲ負擔シテ救濟スルト云フコトハ容易ナラヌコトデアリマス、卽チ責任
  支出ニ相成リマスル故ニ、果シテ責任支出マデモシテ、之ヲ今日助ケルカド
  ウカト云フコトニ付テ考ヘマスト、ソレダケニ、議會ノ協賛モ俟タズニ責任
  支出ヲスルト云フ程ノ窮境ニ至ッテ居ルトモ、考ヘナカッタノデアリマス、加
  之大正四年ニ於テ大隈內閣ノ當時ニ救濟ヲ致シマシタ其當時ニハ、製絲家ヨ
  リ百萬ノ資本ヲ集メマシテ、サウシテ政府ヨリ五百萬即チ資本ニ對スル五倍
  ノ政府ハ貸金ヲシタノデアリマス、其時ニ於テハ損ヲシタナラバ政府ハ五百
  萬ヲ限ッテ損ヲスル、得ヲシタナラバ、其中ノ幾ラカヲ取ヲテ政府ニ納メヤウ
  ト云フノデアリマシテ、別ニ·········之ヲ救ヒマスル其ノ生絲會社ガ百萬圓出シ
  マシタガ、ソレヲ損ヲスルノデナシニ、政府ノ方カラ最初ヨリ損ガアレバ五
  百萬ヲ限ッテ損ヲシテヤルト云フコトニナッテ居ッタノデアリマス、ソコデアリ
  マスル故ニ、後ニ至リマシテ當議會ニ協賛ヲ求メマシタノデ、其時ノ事後承
  諾ヲ求メマシタル時ニ於テ、貴族院デハ一ツノ警告文ヲ以テ、サウシテ可決
  ニ相成リマシタノデアリマス、其警告文ノ貴族院ノ言葉ハ蠶絲救濟及ビ米價
  調節ノ支出ハ時局ニ鑑ミ已ムヲ得ザルモノトシテ、多少ノ效果アリトシテ
  認メ承諾スベシト雖モ、斯ノ如キ支出ハ最モ愼重ヲ要シ、且ツ實行方法ニ至
  リテモ遺憾ナキ能ハズ、依テ政府ハ斯ノ如キ支出ヲ爲サザルコト、斯ウ云フ
  意味ニ於テ警告ヲ與ヘラレテ、是ガ可決ニナッタノデアリマス、ソレデ昨年ニ
  於テモ、斯ノ如キ警告モアリ、サウシテ責任支出ト云フモノハ重大ナルコト
  デアルカラシテ、是ハ成ベクヤリタクナイ、唯政府ガ低利資金ノ途ニ於テ、
  是ガ救濟シ得ルナラバ、其程度ニ於テ先ヅ最初救濟ト云フコトガ、ソレナラ
  バ今日預金ノ剰餘金ヲ以テ支出ヲスルコトニシヤウ、斯ク相成リマスト、唯
  其ノ營業者ガ救濟ヲシテ吳レト云ッテ救濟ヲシテモ、若シ損ガ生ジタラドウス
  ルカ、是ハドウモ政府トシテドウシテモ損ノ出來ナイモノデアリマスカラ、
  ソコデ彼等ガ一ノ會社ヲ造リ、自身ノ財產ヲ或程度ニ支出ヲシテ、サウシテ
  其損ハ自身デ以テ總テ負擔ヲスル、政府ハ融通バカリ付ケテ吳レレバ宜シイ、
  斯ウ云フコトノモノデアルナラバ、政府ハ之ニ應ジテ、御前等ノ請願ヲ容レ
  テ助ケテ上ゲマセウ、ソレニ付テハ、先ヅ其時ノモノヲ約五千萬位ナル低利
  資金ガナイト困ル、サウスルトソレニ對シテ、其會社ノ責任ヲ負ヒマスモノ
  ハ、千五百萬乃至二千萬位ノ會社ヲ拵ヘテ、サウシテソレダケノ損ヲ彼等ガ自
  ラ負擔スルト云フ意味ニ於テ貸スナラ、政府ニ於テハ貸シテモ決シテ損ハナ
  イ、ソレデ貸シマスルモノニ付テハ、相當ナル割合ニ於テ擔保ヲ入レル、而
  カモ其間ニ興業銀行、勸業銀行ト云フ、確實ナル銀行ヲ中ニ入レマシテ、サ
  ウシテ抵當ヲ取ッテ來ルナラバ、政府ハ若シ此絲ガ安クナッテ、サウシテ損ヲ
  會社ガ見ルト雖モ、自身ノ損、續イテハ兩銀行ノ負擔ニ歸スル、兩銀行ヲ中
  ニ入レテ保證ヲサセ、而シテ其會社ガ千六百萬圓ト云フモノニ於テ支出ヲシ
  テ、責任ヲ負ッタナラバ、政府ニ於テハ、假令五千萬圓ヲ貸シテモ何等損ハ行
  カヌモノデアル、此コトデ商賣ノコトデアリマスカラシテ、如何ナルコトニ
  見込違ヒデ損ガ行クカモ知レヌ、先ヅ自ラソレダケノ金ヲ出ス、兩銀行ガ中
  ニ立ッテ居レバ大丈夫、其意味ニ於テ約束ヲシマシタ、ソレナラバ是非玆デ、
  此絲ノ賣レナイ、又絲ノ出來ル盛リニ融通ハ出來ナイ、絲ハ賣レナイ遂ニ投
  賣ヲスルト云フヤウナコトガアリマスト、大變ナコトニ立至ルノデアリマス
  ルデ、彼等ハ自ラ其會社ヲ拵ヘマシテ、ドウゾ融通ヲシテ吳レ、一切此モノ
  ニ付テハ自分等ガ負擔ヲシテ、政府ニハ迷惑ヲ掛ケナイト云フコトデ、始メ
  テ昨年十一月ノ初メデアリマシタ、此會社ガ成立ッタ、サウシテ其時ニ價格ノ
  點デアリマスガ、此價格ヲ千五百圓ニスルトカ、千六百ニスルト云フ如キハ、
  政府ハ何等ノ指圖ヲシタノデハナイ、唯其時ニ於テ彼等ノ相談デ、ドウシテ
  モ此養蠶ノ繭ハ一貫目ニ付テ六七圓ハ何トシテモ原價カ掛ル、故ニソレヲ維
  時スル上ニ付テハ千五百圓ニハ賣レテモ、之ヲヤット償フカ償ハヌカノ間ニア
  ルノデアル、其ノ生產費ヲ償フト云フダケノコトハ決シテ無理ハナイコトデ
  アル、遂ニ數箇月前ハ四千圓以上モシタモノガ、今日千五百圓ト云フモノノ
  維持ノ出來ヌコトハナイ、ソレナラバ自身等モ損ヲセズシテ、サウシテ相當
  ニ投賣ヲセズシテ維持ガ出來ルダラウ、斯ウ云フコトヲ彼等ガ色〓協議ヲ盡
  シ、サウシテ銘々ニ經驗ノアル生絲業者、貿易業者ガ相談ヲ致シマシテ一致
  シタノガ、此ノ千五百圓ト云フ價デアル、ソコデ此原價ヲ維持スルダケノコ
  トハドウシテモ維持シナイト困ル、而シテ是ハ維持スルコトハ出來得ル見
  込デアル、故ニ此値ヲ以テ、ソレゾレ對策ヲスル、ソレデ承知シテ吳レト云
  フコトデ、固ヨリ政府ハ貸スト云フコトニナリマスレバ、ソレゾレ命令ヲ與ヘ
  テ、重要ナル事件ニハ政府ノ認可ヲ得テ行クト云フコトニ相成ッテ居ルノデ
  アリマス、此コトノ如キハ最モ重要ナル事件、ソレデ維持ヲスル目的デヤリ
  マセウ、政府ハソレニ認諾ヲ與ヘタ次第デアリマス、而シテ一方ニ於テハ、
  彼等ハ餘リ絲ノ賣レナイ時ニ、全國ノ製絲家ガ、絲ヲ自由ニ操業ヲスルコト
  ニナルト、彌ガ上ニ堆積ヲシテ益〓困難ニ陷ル、是ハ銘々ノ約束ニ於テ、サウ
  シテ操業ノ中止、初メハ短縮ヲシ、後ニ至ッテハ、遂ニ八十日間ノ中止ヲスル、
  ソコデ彼等ハ苦痛ヲ感ジテ此價格ヲ維持スルコトニ努メタ、其コトニ付マ
  シテモ、約束ヲシテ全國ニ履行スルガ、深ク此實行ト云フコトニ付テ困難ガ
  短ア、反則者ガ起ッテ、ソレデ政府ハ此コトヲ決議シタ以上ハ、成タケ是ノ
  實行ノ出來ルヤウニ取締ヲ願ヒタイ、又橫濱ニ於テ貿易商、生絲商、總テノ
  重立ツ者ガ之ヲ約束ヲシタト云フ以上ハ、ソレヲ厲行スル、ソレヲ厲行スル
  ニハ第一ニ定期市場デ此ノ製絲家ガ賣買ヲスルソレデ賣ルト云フコトハセ
  ナイ、又橫濱ニ或時期ノ間ハ絲ヲ入レルコトヲ許サナイ、又荷受ヲシナイ、
  サウシテ地方デハ又製絲ヲ愼シム、斯ウ云フヤウナコトニシテ、成タケ橫濱
  ニ絲ガ滯ッテ、彌ガ上ニモ此人氣ヲ紊シテ、サウシテ融通上ニ困難ヲ來スヤウ
  ナコトヲ避ケタ、是モ尤モナリトシテ政府ハソレヲ承諾シテ、成タケ彼等ノ
  約束ノ厲行ノ出來ルヤウニ努メタ、斯ク致シマシテ、サウシテ買入レタル生
  絲ガ、今迄約三萬相ト云フモノヲ入レタ、サウシテ千六百萬圓ト云フ資本ノ
  中デ、十一月ノ初ヨリ今日ニ至ル迄八百萬圓ノ拂込ヲ致シタ、サウシテ自身
  ノ拂込ヲ八百萬、サウシテ政府カラ借入レル五千萬圓ノ中ヲ、此ノ八百萬圓
  ノ力デハ興業銀行ヨリ金ヲ借リマスノハ、千五百圓ヲ借リマスト云フトソレ
  ヲ七掛デアル、七掛デ千五十圓ヲ興業銀行ハ貸スノデアリマスカラ四百五
  十圓ハ自身ノ資本ヲ以テ、其差ヲ拂ハナケレバナラヌト云フヤウナル狀態デ
  アルノデアリマスカラシテ、八百萬圓ノ金ヲ拂込ミマシタガ、此約束ハ四千
  萬圓ノ中約二千二百萬圓シカ借ルコトガ出來ナイ、政府ニ今抵當ヲチヤント
  納メ、必要ナル道ヲ取リ、玆ニ銀行ハ七掛ト云フコトデアリマシタ故ニ、其
  物ヲ皆買出スコトガ出來ナイノデアリマス、而シテ今日マデ拂込ハ八百萬圓、
  サウシテ生絲ハ三萬梱ト云フモノヲ買ヒマシタガ、此先ハドウスル、如何ニ
  モ此ノ經濟社會ノ狀態ニ於テマダマダ容易ニ囘復ヲシナイ、ソレガ爲ニ僅カ
  數箇月ノ中ニ於テ八百萬圓ノ拂込ヲスルト云フコトハ、非常ニ困難ヲ感ジタ
  ノデアリマス、此上拂込ヲ尙ホ續ケルト云フコトハ色〓不拂ナドガ起ッテ實際
  困難デアル、此上ハ拂込メマセヌ、サウスルト三萬相ヲ以テ、サウシテ今ノ
  後カラ來ル生絲ヲ停止シ、ソレデヤッテ來テ居リマスガ、是デ濟ムカト言ヒマ
  スト、是カラ後ニ絲ノ參リマスコトハ、丁度二月十六日ヨリ全國ニ於テ又生絲
  ノ操業ヲ始メマスカラシテ、追〓製絲ノ絲ガ出テ來ル時ナンデアリマス、ソレ
  デアリマスカラシテ是ヲ捨テテ置キマスト云フト追〓絲ガ出テ來マシテ、唯
  資產ガ八百島圓ノ資本、サウシテ二千三四百萬圓政府カラ低利資金ヲ融通シ
  テ參リマシテモ、ソレデ後ヲ維持スルト云フコトハ餘程困難デアル、ソコデ
  捨テテ置キマスルト價格モ下リ、品ガドッサリ出來テ融通ガ出來ナクナル、遂
  ニハ投賣ヲスルト云フコトニ相成ッテ、自身等ノ力デハ維持ハ出來ナイ、今申
  ス如クナッタラ······此上ニ捨テテ置クト云フコトニ相成リマスルト、生絲社會
  ニ又其反動トシテ容易ナラヌ事ガ起ルノデアリマス、ソコデアリマスカラシ
  テ、ドウカ一ツ自身等ノ力デヤリマシタ、ヤリマシタガ此上ニ損ヲシテモヤ
  ルト云フコトハ、如何ニシテモ斯業者ノ力デハ能ハヌノデアリマス、能ハヌ
  カラ仕方ガナイ、損ヲシテモ放ッテ置クト云フコトニナッテ來マスト、養蠶生
  絲ニ重大ナル關係ヲ及ボシマシテ、延イテハ經濟社會ヲ一層悲境ニ陷ラシム
  ルハ申スマデモナイコトデアリマス、ソコデ其際ニ於テ何トカ國家ガ今度ハ
  救ッテヤル、今マデハ唯金ノ融通ハシテ貰ッタガ損ハ一文モ掛ケナイ、併シ此
  程度デハドウモイカヌカラシテ、是ハ國家ノ唯一ノ輸出物デアッテ、其消長ハ
  容易ナラヌ、國民一體ニ關係ヲ持ツコトデアルカラ、是ハ政府ガドウカ一ツ
  ノ法ヲ設ケテ、サウシテ後ノ維持ノ出來ルダケノ道ヲ取ッテ貰ヒタイト云フ、
  政府ハ考ヘマシタ所ガ、此後ニ於テ內地ノ地遣ヒヲ維持シ、外國ニ出シマス
  ル絲等、色〓ナコトヲ考ヘテ見マスト、當時ノ大體ノ計算、又是カラ後ニ外
  國ニ出スベキ絲ガドウシテモ十萬棚バカリガ此五月末マデニハ出ル如キ算盤
  ニナッテ居ル、ソレデ十萬梱ト云フ物ヲ其儘捨テテ置クト云フコトハイカヌカ
  ラシテ、是ヲ一ツ何トカ政府ニ於テ助ケテ、サウシテ市場ニ溢レヌヤウナ道
  ヲ取ルコトガ今日必要デアル、ソレニ付テハ政府ハ此度ハ前トハ違ッテ政府ガ
  責任ヲ負フ、若シ損ガイッタナラバ或程度ニ於テ政府ガ責任ヲ負フト云フコト
  ニ相成リマセヌト、銀行モ絲ニ融通ハ付ケナイノデ、政府ガ責任ヲ負フト云
  ヘバ大變銀行モ安ンジテ此融通ヲ致シマスガ、サモナケレバ融通ヲシナイ、
  濫リニスレバ銀行ガ損ヲシナケレバナラヌ、ソコデアリマスル故ニ此前後ヲ
  考ヘマスルト、ドウシテモ是ハ棄テ置ケヌ、政府ガ或程度マデ救濟スルト云
  フコトハ、今日ノ狀勢ニ考ヘテ至當ナルコレハ途デアッテ、然ルベキ途ヲ講ジ
  ナケレバナラヌト云フノガ此ノ三千萬圓ノ問題トナリマシタルモノデアリマ
  ス、ソレハ彼等ガ千六百萬圓ノ資本ト云ッテ八百萬圓拂込ンデ居ル、是カラ後
  ニ於テ絲ヲ買入レル時ニ付テ、ドウモ相場ノコトデアリマスカラ、見込ハア
  リマスガ如何ナル物デモ是ガ相場ハ斯クナル、必ズ往クト云フモノハ保證ノ
  出來ナイモノデアル、ソコデアルカラシテ政府ハ之ヲスルノニ、初メカラス
  ル譯ニイカナイノデアルカラシテ、御前等ニ千六百萬ト云フモノヲ、資本ヲ
  負ウタナラバ、此買ッタ絲ニ付テ若シ損ガイッタナラバ今ノ八百萬圓、固ヨリ
  後ノ未拂ノ八百萬圓、之ヲ責任ヲ負ッテ、而シテ或時期ヲ以テ支拂ヲシテ、尙
  ホ損ガ起ルト云フコトガアッタナラバ、政府ハ此三千萬圓ニ付テ損ノ補助ヲシ
  テヤラウ、三千萬ニ限ッテ·······又幸ニシテ彼等ノ資本バカリデ損ガ濟ンデ來ル
  ト云フモノナラバ、政府ノ三千萬圓ハ少シモ疵ガツカズシテ、サウシテ政府
  ニ返ルト云フコトデ、ソコデアルカラシテ之ヲ御前等ハ今迄ノ通リ止メズシ
  テ、千六百萬圓ダケノモノハ自身ノ計算ニ於テ負擔シテ、尙ホ足ラナイ時ニ
  於テ政府ガ補助シテ吳レル、斯ウ云フコトニスル見込ガ立チマスナラバ、我
  我ハ千六百萬圓ノ資本ハ皆棄テテ、サウシテ此維持ニ掛リマセウカラ、ドウ
  カ此裏ニ付テ補償ヲ持ッテ政府ガ支拂ヲ負擔シテヤルト云フコトニシテ貰ヒ
  タイ、サモナケレバトテモ往クコトハ出來ナイ、サウスルト云フト自身等ハ
  自ラヤリマスルカラ、是ハドウカ一ツ茲デ實行シテ吳レマセヌト、將來絲ニ
  大關係ヲ持ツ、ソコデ政府ニ於キマシテハ彼等ノ要望ヲ尤モナリト致シテ、
  サウシテ先ヅ今ノ程度ニ於テ三千萬圓ノ負擔、此三千萬圓ノ負擔ヲシテヤル
  ト云フコトニナリマスルト、今迄興業銀行ハ千五百圓ノ品物ヲ千五十圓トカ
  百圓デ貸スト云フモノガ、此絲ヲ取リマシテモ千ハ百萬圓ノ損ヲシテ、尙ホ
  其上ニ三千萬圓政府ガ補償シテヤルト申シマスレバ、銀行ニ於テモ確ナ、丈
  夫ナリトシテ買爲替モ付クルコトガ出來ルカラ、買入レタ値段デモッテ貸出ス
  コトモ出來ルノデアル、ソコデ丁度申サバ極點ニ損ヲ致シマシテ、彼等ノ千
  六百萬圓ト三千萬圓、四千六百萬圓ト云フモノノ損ヲスレバ、此後ニ於テ尙
  ホ七萬梱、今マデノ三萬相ニ加フルニ七萬梱ト云フモノヲ以テシテ十萬梱ダ
  ケノモノハ維持ガ出來ルコトニナル、幸ニシテ價格ガソレマデ維持ガ出來テ
  アルナラバ何モ買ヒタクナイ、無論彼等自身、千六百萬圓損ヲシテ買ヒハ致
  シマセヌガ、維持ガ出來ナイカラ已ムヲ得ズ買フト云フコトデアッテ、カウシ
  テ約十萬相ノモノハ買入レルコトニシタイト云フ積リデ案ヲ出シタ次第デア
  リマス、而シテ此モノニ付マシテ斯クスレバ將來ニドウナルカト云フヤウナ
  ルコトデアリマシタガ、政府ハ之ヲ起シマシタル所以ハ今申上ゲル通リデア
  リマス、ソレカラ私ガ前ニ失敗シタ、失敗シタ故ニ云々ト云フコトガアリマ
  シタガ、私ハ失敗ト云フコトハ一言モ申シテ居ラヌ積リデアリマス、唯是マ
  デ失敗失敗ト人ハ言フガ、別ニ失敗ハ致シテ居リマセヌ、千五百萬圓ヲ程度
  ニシテ價格ヲ維持シテ、サウシテ今日彼等ハ此目的ヲ遂ゲツツアルノデアリ
  マス、併シ將來ニ付テ此上助ケテ行キマセヌト云フト不結果ニ終ルト云フ虞
  ガアリマス、今マデハ宜シウゴザイマスガ、是カラ後ハ國家ガソレヲ助ケテ、
  サウシテ彼等ノ目的ヲ達セラレル途ニ進マセヌト、終ニ失敗ニ歸スルヤウナ
  虞ガアルノデアリマス、是マデハ宜シウゴザイマスガ、今後ニ於テ餘程是ハ
  考ヘナケレバナラヌコトデアルト云フコトヲ述ベタ積リデアリマス、ソレカ
  ラ政府ハ第一ニ責任支出デアル、責任支出容易ナラヌコトト云フガ、米ニ於
  テハ責任支出ヲ大正七八年ニシタノデハナイカ、ソレニドウモ蠶絲ニ付テ躊
  躇スルノハドウカト云フ御疑デアリマスガ、是ハ今日ノ生絲モ必要デアリマ
  スガ、前米ヲ責任支出ヲ致シマシテ、政府ガ數千萬ノ損ヲ覺悟デナシマシ
  タト云フ時代ハ困難デアリマスガ、困難ナ程度ニ於テ、又其物ノ性質ニ於キ
  マシテ餘程私ハ違ッテアルカト信ジテ居リマス、大正七年ニ於テ米ノ責任支出
  ヲ前內閣ニ於キ、又八年ニ於テ現政府ニ於テ責任支出ヲ致シマシタノハ、如
  何ニモ米ガ高クテ、サウシテ不作デアル、米ガ五十圓、六十圓ト云フガ如キ
  モノニナッテ、其上、世間ニハ容易ナラヌ生活ヲ脅威イタシマシテ、甚シキニ
  至ッテハ、アチラコチラ不穩ノ擧動ヲ見ルニ至ッタト云フヤウナ狀態デアリマ
  ス、是ハドウモ責任支出デアルガ、如何ニモ國民ノ安定ヲ害シテ容易ナラヌ
  狀態ニ進ンデ居ル時デアリマス、而モ其物ハ一日モナケレバナラヌ食料ノコ
  トデアリマス、ソコデアリマス故ニ政府ハ理解ヲナシ、遂ニ責任支出ヲ以テ
  此救濟ノ任ニ當ッタノデアリマス、サウ云フヤウナ狀態デアリマス、今日ノ絲
  ハ既ニ昨年十一月ニ起リマシタガ、初メ申ス通リ前斯ノ如キ警告モアル上ニ、
  十二月ニナレバ議會ガ始マッテ來ル、其間ト云フモノハ彼等ガ今申ス如ク、自
  身ニ千六百萬圓ノ金ヲ集メテ、政府ニ融通シテ吳レ、融通ノ意味ニ於テ助ケ
  テヤッタ譯デアリマスソレデ行キマシタガ、其上又愈〓必要ト云フコトガ起
  ルナラバ、能ク其時ノ事情ニ依テ國家ノ協賛ヲ以テ、サウシテ之ヲ助ケルト
  云フヨリ外仕方ガナイ、ソレマデハ今ノ通リ維持ガ出來ルナラバ成タケシ
  タイト云フ意味ニ於テ、其時助ケタ譯デアル、ソコデアリマシテ、マア今日
  ニ至ッタノデアリマスガ、此間ニ付テ政府ガ今ノ不成功ニ終ッタドウ斯ウト云
  フコトトサウシテ何カ彼等ニ强要シテ政府ガ操業ノ中止ヲシ、或ハ價格ヲ
  定メテ、是ダケデヤレト云フガ如キコトニナッテ、政府ガ原動力ニナッテ商人
  ヲシテ爲サシメルト云フ如キ御考ニ依テ起ッタヤウデアリマスガ、全ク今申ス
  通リデアリマス、彼等ノ要求ハ尤モナリトシテ、前ハ貸渡シ、今日ハ又彼等
  ノ要求ガ國家ノ爲ニ是ハ捨テ置ケヌ必要ナルコトトシテ政府ハ之ヲ助ケタイ
  ト云フノデ、此豫算ヲ組ミマシタ次第デアリマス、ソレカラ此御論ノ中ニ、
  唯人爲デ政府ガ千五百圓ノ價ヲ維持スル、ソレデアルカラシテ品物ガ賣レナ
  イ、賣レナクシテ彌ガ上ニ滯ッテ來ル、其隙ニ乘ジテ支那ノ絲ガドシドシ賣レ
  テ來テ、サウシテ自身ハ持ッテ居ッタノデ、賣レズシテ、人カラ得意ヲ取ラレ
  テ仕舞フヤウナ現象ガアルノデハナイカト云フコトモアッタヤウデアリマス
  ガ是ハドウ云フ所カラサウ云フ御判斷ニナッタカ存ジマセヌガ、政府ノ調べ
  マスル所ニ依リマスト此千五百圓ヲ維持スルガ爲ニ支那ノ絲ハドシドシ賣
  レテ居ラナイノデアリマス、矢張紐育ニ滯ッテ居リマスル、其救ヒマス時ニ
  於テハ約六千幾ラト云フ絲ガ紐育ニアリマシタガ、ソレハ支那、伊太利、日
  本、此三箇所ニ於テ在リマシタル高デアリマス、ソレガ今日ニ至リマシテ段
  段減ジテ參リマシテ、四萬兩ホドニナッテ居リマスガ、其紐育ニ於テ絲ノ減リ
  マスル割合ニ於キマシテハ、日本ト伊太利ト支那ニ於テ矢張減ル割合ハ殆
  ド同ジヤウナ減リ方ヲシテ居ルノデアリマシテ、日本ガ滯ッテ向フガ賣レテ居
  ルト云フコトハ調ベマシタ上ニ於テハ殆ド無イト云ウテ宜イヤウナ調ベニ
  ナッテ居ルノデアリマス、是ハ御注文ニ依リマシテ數字ヲ調ベサシタモノヲ差
  上ゲテ宜シイノデアリマス、ソレカラ尙ホ其上ニ證據立テマスルノハ、支那
  ニ於キマシテ重ニ輸出ニ相成リマスルモノハ廣東ト上海デアリマス、此方ニ
  於テノ絲ノ在高ニ於テモ昨年ヨリモ却テ本年ノ今日ノ方ガ絲ガ堆積シテ居ル
  ノデアリマス、是ハ最近ノ調ベニ依リマスト、サウ云フコトニナッテ居リマ
  ス、是ハ農商務省ガ直グニ調ベタノデハアリマセヌ、三井物產會社ノ如キ向
  フデ調ベマシタモノニ依テ聞キマストサウ云フモノデアリマス、ソレカラ又
  上海ノ山崎總領事ノ最近ノ報告ニ依リマシテモ、支那ニ於テハ日本ト同樣ニ
  非常ニ絲ノ堆積ニ苦シンデ居ルノデアリマス、上海ニ於ケル無錫ニ於ケル生
  絲業者ガ斯ク絲ガ安クテ賣レナイト云フコトニナルト、悉ク絲屋ハ潰レルト
  口までこえわ
  云フ如キ有樣ニナッテ、ヒドク難澁シテ居ル、ソコデアリマスカラシテ、彼等
  ガ絲組合會社ト申シマスカ、此組合ト申シマスカ、此絲商製絲家ガ寄リマシ
  テ、矢張日本ト同樣ノ決議ヲ致シマシテ、中央政府ニ至ッテ、ドウカ今日相當
  ノ金ヲ貸シテ、サウシテ維持シテ吳レヌト困ル、先ヅ二百萬元ノ金ヲ當座是
  非彼等ニ貸シテ貰ヒタイ
  〔副議長候爵黑田長成君議長席ニ著ク〕
  斯ウ云フコトハ一方デハ支那ニ於テハ、絲ニ輸出稅ガ掛ッテ居リマス、其ノ輸
  出稅ヲ掛ケテ、其上ニ來ルト云フコトハ頗ル當業者ハ難澁スルカラシテ、
  是ハドウカシテ當分ノ間ハ絲ノ輸出ニ限ッテハ關稅ヲ免除シテ貰ヒタイ、是モ
  中央政府ニ請願シテ居ル次第デアリマシテ、矢張日本ト同樣ニ絲ニ於テハ
  困ッテ居ルハ第デアリマス、又伊太利ノ方ニ於キマシテモ、紐育ノ數ハ今申シ
  マスル通リニ、殆ド日本ト比例的ニ減フテ居ルヤウデアリマスガ、是ハ前農商
  務省ノ道家ガ農業ノコトニ付テ歐羅巴ニ派遣ヲサレテ、其最近ノ手紙ニ依リ
  マスト、伊太利ニ於テハドウシテモ絲ト云フモノニ付テハ或一定ノ價格ヲ維
  持スルコトガ必要ダ、是ハ唯ノ製造工業トハ違ッテ、農產物ノ一ツトシテ、サ
  ウシテ產物ニ限リガアル、ソレヲ唯安クスルト云フコトニナルト、大變ニ此
  ノ生絲製產地デ困ル、故ニ日本ト伊太利ト云フモノハ、何カノ條件デ價ヲ維
  持スルヤウナコトノ特別約束デモ出來ナイカ、前大藏大臣ヲシテ、又後ニ至ッ
  テハ總理大臣ヲ致シテ居リマス所ノ、今日私ハ名ヲ記憶シテ居リマセヌガ、
  其人ヨリ態〓ト話ガアリマシタ、前ニモサウ云フコトヲ企テタ事柄デアルカ
  ラドウシテモ捨テ置ケヌカラ、御互ニ考ヘナケレバナラヌ、「ミラン」ニ參
  リマシタ所ガ、今ノサウ云フヤウナ話がアッタカラシテ、日本ノ同業者カラ何
  トカ宜イ考ガナケレバナラヌ、實ハ待ッテ居ルト云フヤウナ譯デ、是ハ餘ホド
  將來考ヘタラ宜カラウト云フ意見ヲ付シタ手紙ガ參ッタヤウデアリマス、是等
  ヲ色〓綜合シテ見マスルト、皆今日ハ此維持ト云フコトニ困難ヲシテ居ル狀
  態デアリマスソコデアリマスカラシテ、日本ガココニ持ッテ居ルノニ、ソレ
  ヲ傍カラ又行タノヂヤト云フコトハドウモ私等ノ調デハ今日マデ見出シ得
  ナイノデアリマス、又是ガ何カ報〓ニ依リマスト、千五百圓ハ高イ、高イガ
  爲ニ賣レナイ、賣レナイ故ニ、之ヲ幾ラカ下ゲタナラ賣レルダラウト云フヤ
  ウナコトデ、追ッテ大ニ見込ガ立チマシタナラバ、ソレハ又ソレニ依テ適當ナ
  處置モ致サナケレバナラヌノデゴザイマセウ、決シテ一定不動ノモノデナイ
  ノデアリマシテ、ソレガ爲ニ若シ損ヲシタナラドウ斯ウト云フコトデ取フテ居
  ルノデ、今日ハ其位ナ處置デ宜イ、併シ高イカラ賣レナイ、安クナレバ大變
  賣レルカラ、餘ホド考ヘナケレバナラヌ、今日ハ高クテモ安クテモ値段ノ如
  何ニ依テ居ナイ、亞米利加ハ一體ニ商況ガ不可ナルガ爲ニ、此生絲モ無論賣レ
  ナイト云フ狀態ニ陷ルノデ、生絲單リガ高イカラ賣レナイト云フ現象ハ見出
  シ得ナイノデ、ソコデ御質問ノ中ニ不成功ニ終ッタト云フコトハ、今ノ通リデ
  アリマシテ、又操業休止ハ政府ハ何故サウ云フコトヲシタカ、總女工ヲ初メ
  實ニ困難ナ有樣デアルガ、ソレニ付テハソレゾレ製絲家モ相當ノ停業ヲシテ、
  其停業ノ間ハ休業スルト云フノデアルガ、是ハ政府カラ命ジタノデモ何デモ
  ナイ、唯彼等ガ厲行的ニ有效的ニシタカラ、政府ハソレヲ尤モナリトシテ居
  ル次第デアリマス、ソコデ第一ノ御質問ノ千五百圓ヲ維持スル目的タルヤデ、
  是ハ玄人ノ商人ガ寄リマシテ、今申ス通リニ原價ヲ本位トシテ、是位ナラ賣
  レルダラウト云フコトデ、彼等ハソレヲ土臺トシテヤッテ居ッタ、政府ハ至極
  尤モナリトシテ、之ニ同意シテ居ル譯デアル、先ヅ彼等ノ見ル所ニ依リマス
  ト、玆ニ政府ガ三千萬圓ヤッタカラ、之ヲ維持シテ成功スルト云フ見込デア
  ル、斯ウ云フコトデアリマシテ、其衝ニ於ケル貿易商製絲家ノ擧ッテノ要求デ
  アルカラ、是ハ實行ノ出來ルコト、又目的ヲ達スルコトトシテ、ソレニ同意
  シテ融通シテ居ル次第デアリマス、併シ今申ス通リ値段ハ千五百圓下ニ賣ル
  コトガ出來ナイゾト云フコトハ、政府ガシタ譯デハアリマセヌ、彼等ノ損得
  ハ彼等ガ持テ居ル、千六百萬圓ハ彼等ノ負擔ガ多イノデ、ソレニ依テ其絲ニ
  經驗ノアル者同志ガ斯クスルノデアルカラ、之ヲ信ズル以上ハ、政府ハソレ
  ハ高イカラドウ、安イカラドウヂヤト云フコトハ政府ニ於テハ確乎タル調ヲ
  持ッテ居リマセヌ、彼等ノ言フコトヲ信ズルコトガ適當トシテ居ル次第デアリ
  やく、ソレカラ第二ノ千六百萬圓ノ損失ヲ會社ハ覺悟スルヤト云フコトニ付
  テハ是ハ今申ス通リ最初ヨリコチラデハ少シモ仕入レヌ、彼等自身ニ於テ
  斯ノ如クシテ千六百萬圓ハ矢張自身ガ負擔ヲスル、其上損ヲシタラ政府ガ三
  千萬圓デドウゾ損ヲ負擔シテ吳レ、其上自身ハ損ヲスル力ガアリマセヌト云
  フカラ、是モ無論此コトハ覺悟シテ彼等ハ掛ッテ居ルノデアリマス、第三ノ十
  萬梱ノ堆積ハ養蠶業者ニ委託セザルヤト云フ意味ニ於テノ御話デアリマシタ
  ガ、是ハ若シ今ノ三萬梱ニ尙ホ其上六萬梱ヲ買ヒマシテ、其處ニ貯ヘテ居ル、
  斯ウ云フコトニナリマスナラバ、第一ニ養蠶家製絲家ト云フモノハ、將來ニ
  於テ如何ニスルカト云フコトニ付テ是ハ餘程考ヘベキコトデアリマス、是化
  無イヨリモ斯ウ云フモノガアリマスナラバ、餘程ソレハ彼等ノ此後養蠶ヲス
  ル上ニ付マシテ、如何ニスルカト云フコトニ付テ躊躇スル是ハ數量ト信ズ
  ルノデアリマス、併ナガラ之ヲ捨テ置キマスト云フトデス亞米利加ニハ今
  言フ通リ安イカラ賣レルト云フ譯デハアリマセズシテ來テ居ルノデアリマ
  ス、此生產ガ、之ヲ政府ニ持ッテ居リマスレバ、市場ニ浮動シテ居リマス其物
  ヲ貯ヘテ居ルノデアリマスケレドモ、之ヲ捨テテ置キマシタナラバ全國ノ製
  絲家ガ製絲ヲシテ、サウシテ之ヲ橫濱ニ持出シテ、ドシドシ投ゲルト云フヤ
  ウナコトニ行キマスト、尙ホシモ此十年ノ養蠶ニ於テハ脅威ヲスルコトト思
  フノデアリマスドウモ賣レナイト云フコトニ今日時勢ノ狀況ガナッテ居リマ
  スカラ、勿論其中デ脅威モセズ安心シテヤリ得ル途ハ如何ニシタラ宜カラウ
  ト云フト、ソレハ自然ノ成行キニ任セズシテ、貯ヘテ價ヲ待チ時勢ヲ待ッテ徐
  ロニ處理スルト云フコトニナリマシタナラバ、捨テ置クヨリモ養蠶製絲ノ此
  後ニ於テヤリマスコトニ付テ見込モ立チ、秩序モ立ッテ參ルコトト確信シテ居
  ルノデアリマス、ソレ故ニ今迄ノ物ヲ捨テ置イタラ大變ダ、政府ガ斯ノ如ク
  シテサウシテ餘ル物ヲ持ッテ、或時期マデ維持スルト云フコトハソレニ比べ
  ルト餘程脅威ノ程度ガ輕イ、又養蠶家ガ安心ヲ餘程スルダラウ又是カラ製
  絲ヲスル上ニハ、今迄アル物デハアリマセヌ、是カラ造ルノデアリマスガ故
  ニ、是ガドウシテモ價ヨク賣レヌ、ドウモ賣レ兼ネルト云フ見込ガ强カッタナ
  ラバ、此春ノ養蠶ハ餘程掃立ヲ愼ミ、又製絲家ニ付マシテモ矢張爭ッテ之ヲ
  買ッテ行クト云フヤウナコトナクシテ、餘程考ヘガ付イテ來ルダラウト信ズ
  ル次第デアリマス、ソレカラ同ジ政府ガ斯ノ如キコトヲスルナラバ、短イ時
  期ニ於テヤルト宜イ、此短イ時期ト云フコトハドノ位ノ程度ヲ以テ短イト云
  フカ否カト云フコトヲ存ジマセヌガ、政府ハ大正九年度ニ於テノ絲ニ限ッテ、
  此融通ヲ付ケルト云フコトニ限ッテ居ル次第デアリマス、是ガ九年モヤッタカ
  ラ十年モ助ケルカドウカト云フコトニ相成リマスルト、御話ノ期限ガナイノ
  デアリマスルカラシテ、同ジ物ニ於テ先ヅ大正九年度ノ······十年ノ五月末、
  卽チ此ノ大正九年ノ養蠶ニ限ッテヤル、アトハ考ヘテ養蠶ヲナサイト云フ程度
  ニ限ルト云フコトガ至常デ、一番短イ間ノ所デ、サウシテ其年限ヲ限ッテヤル、
  二箇年デ成ベク處理ヲサセルト云フ積リデ年限ヲ限ッテ居ルノデアリマス、
  是ハ一萬トカ二萬トカ云フモノデアリマセズ、十萬以上ノ絲ニ付マシテモ少
  ナクトモ此位ノ期限ヲ以テ見込ヲ立テマセヌケレバ、成功スルコトガ餘程困
  難デアラウト思フノデアリマス、是モ其時ハ長短ハ分リマセヌガ、私等ハ餘
  程限ラレタ短イ間ニ於テヤル、前ノ時ニハ三月ニ起ッタモノガ六百萬圓デ一年
  半ト記憶シテ居リマスガ、今日ハ先ヅ二年位ニ處理ヲスル、其間ニ低利資金
  ヲ貸サウ、三千萬圓ヲ二年ノ間貸サウ、サウシテ損ヲシタラ斯ウト云フコト
  ニ先ヅ彼等ノ言フコトヲ信ジマシテ、是カラ後ニ斯ノ如クシタラ成功スル、
  縱ンバ見込ガ外レテモ彼等ハ千六百萬圓ハ自ラ吐出シテ損ヲ致シマス、其以
  上デナケレバ政府ニ御迷惑ハカケマセヌ、斯ウ云フコトニナッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=58

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• 059・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　農商務大臣ハ私ノ質問シナイコトヲ澤山御答ヘニナリマシ
  タ、質問事項以外ノ理由トシタコトニ付テ一々反駁ノ意味デ、答辯ト云フ形デ
  反駁ヲサレタヤウデアリマスガ、是ハ農商務大臣ニ於テ必要トナサルナラバ
  左樣ナサルコトハ一向何等異議ハ申サヌノデアリマス、併シ願クバ質問ハ質
  問ノ箇條ニ付テ答ヘテ置イテ、質問者ニ答辯ヲ滿足セシメテ置イテ、ソレカラ
  農商務大臣ガ誤解ヲ招クトイケナイカラト云フコトデ、議場デ辯明ナサルナ
  ラバ何時間御辯明ニナッテモ宜シウゴザイマスガ、先ヅ自分ノ御都合ノ意見
  ヲ先キニ御述べニナッテ、質問ノ事項ハ簡單ニ御答ニナッテ居リマスノデ、大變
  錯雜シテ分リ兼ネタノデアリマス、ソレデ是カラ私ガ御伺ヒマスノハ一項一
  項伺ヲテ、伺フ理由ヲ言ヒマスカラ、其理由ニ付テ何カ仰シヤルコトガ必要ナ
  ラバ、後デ仰シヤッテ戴イテ、御尋ネ申スコトニ先ヅ御答ヲ願ヒタイノデス、其
  中第一ニ正シテ置カナケレバナラヌノハ、此問題ハ短イ間ニ此事ヲ行ハナケ
  レバナラヌト云フコトヲ言ウタガ、是ハ大正九年度ノ繭デ造ッタモノダケヤル
  ノデ、是カラ先キ二年位デ大變時期ガ短インダト云フ御答ガアリマシタガ、
  私ハサウ云ウコトヲ云ウテ居ラナイノデアリマス、サウ云フ事柄ヲ議場ニ御
  聽カセニナル必要ガアルナラバ、大臣ガ勝手ニ御聽カセニナッテ宜シイノデア
  リマスガ、私ノ理由ヲ述ベタ中ニハサウ云フコトヲ言ウテ居リマセヌ、短イ
  間ニ行ハナケレバナラヌトハ言ハヌノデアリマス、斯ウ云フ仕事ハ短イ期間
  ノ間ニ價格ヲ維持スル目的ニドウシテ行クノデアルカ、而シテ止メテモ、アト
  續イテソレダケノ價格ガ維持セラレルト云フ見込ガナケレバ手ヲ著ケテハナ
  ラヌト云ウタノデアリマス、仕事ヲ短イ間ニヤラナケレバナラヌト云フコト
  ハ、私ハ申サヌノデアリマス、是ハ別ニ御答辯ハ要ラヌノデアリマス、私ノ
  申シタコトヲ誤解シテ仰シヤッタカラ、私ハ之ヲ正シテ置クノデアリマス、而
  シテ元來此買占メテ價格ヲ吊上ゲラ置カウト云フ仕事ハ、是ハ大博奕デアリ
  マス、屢〓歐羅巴ヤ亞米利加ニ於テ、小麥ノ買占、銅ノ買占ト云フコトデ價格
  ノ吊上ゲヲ試ミタコトガアリマスガ、是ハ皆失敗シテ居ルノデアリマス、ソ
  レデアリマスカラ價格ノ吊上ヲ無理ニヤルト云フコトハ大博奕デアリマス
  此ノ大博奕ヲヤルニ付テハ餘リ長カラザル時期ニ必ズ上ガルト云フ餘程理由
  ノアル場合ニ限ルノデアル、ソレデナカッタナラバ必ズ失敗スル、ソレデアル
  カラ價格ガ短イ期間ノ間ニ必ズ千五百圓ニ上ガルト云フ見込ガ立ッテ居リマ
  シタカ、此事ヲ御止メニナッタ後ニモ尙ホ千五百圓ト云フ價ヲ保タレルト云フ
  御見込ガ立ッテ居リマシタトカト云フコトヲ伺ッタノデアリマス
  〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
  ソレニ付テ私共ノ考ハ大隈內閣ノ時ニ斯ウダト仰ッシヤイマシタガ、私ハ此
  前モ申上ゲマシタカラ成ベク其事ハ言ハヌ積リデ一言モ言ハヌノデス其
  時ニハ目的ヲ逹シタト思ッテ居リマスサウ云フコトヲ此所デ言フノハ、自慢
  ラシイコトヲ言フノハ面白クアリマセヌカラ、私ハ一言モ申上ゲマセヌノデ
  アリマスガ、ソレヲ唯今御遠慮ナサッテ色〓御言葉ガアル、其時ハ責任支出デ
  貴族院トシテハ、アヽ云フコトヲヤラナクテハナラヌト云フ院議ガアッタノ
  デ、ソレニ顧ミマシテソコデシナケレバナラヌト云フヤウナ御話デアリマス、
  今申シマシタル通リ中〓ムヅカシイ博奕デアル、サウ云フコトヲヤッテ國民ニ
  非常ニ後ヘ累ヒヲ殘スコトガアルカモ知レマセヌ、商賣ノ上ニ於テモ、貿易
  ノ上ニ於テモ大變壓迫ヲ加ヘテ、サウ云フコトヲ此所デ始メテ、責任ヲ逃ガ
  レヤウト云フナラバ、政治家トシテノ態度ヲ執ッテ御ヤリニナルナラバ成功ス
  ベキ道ガアル、政治上ニハ十分責任ヲ負ウテ、間違ッタラ直グ責任ヲ十分負フ
  ト云フコトハ當リ前ノコトデアリマス、斯ウ云フ御決心ガアッテ、斯ウ云フコ
  トデアッタト云フコトヲナサズシテ、成功スベキコトガアッテモ之ヲナサズシ
  テ、斯ウ云フ大博奕ニ御著手ナサルト云フコトハ、私ハドウモ政治家ノ御態
  度トシテ、甚ダ失禮ノ申分カモ知レマセヌガ、今少シ御勇氣ガアリ、ソレダ
  ケノ責任ヲ負フテ、政府ニ勇氣ガアル、ソレナラバ斯ウ云フコトヲヤラヌト
  云フコトデアル、農商務大臣ノ唯〓一時間モ掛ッテ御述べニナッタ大部分ハ
  是ハ政府自身ガヤッタノデハナイ、當業者ガ運動ヲヤッタカラ、彼等ノ要求ニ
  依テヤッタ、何事モ彼等ノ言ッタ通リニヤッタト云フノガ御說明ニナッタ主デアッ
  タノデアリマス、ソレヲ以テ責任ヲ免ガレルニハソレデ宜イカ知レマセヌガ、
  り
  併ナガラ是等ノ重大ナルコトヲヤッテ行ッテ、後へ非常ナ結果ヲ殘スニナルベ
  ク責任ノ來ナイヤウニシテ御著手ニナッタト云フコトハ、私ハ是ハ今一段御勇
  氣ヲ出シテ、政治家トシテノ御態度ヲ要求シナケレバナラヌト思フ、ソレカ
  ラ私ハ事柄ヲ御伺ヒ致シマスガ、一梱千五百圓ト云フノハ、是ハ當業者ガサ
  ウ云フノデ、政府ガヤッタノデナイト云フコトヲ言ウテ居リマスガ、併ナガラ
  今日ノ帝蠶會社ガ政府ノ命令ニ依ルコトハ新聞ニモ現ハレテ居ルノヲ見マス
  ルト云フト、帝〓曾社ハ定款ニ於テ其仕事ノ色〓、實際仕事ヲスルニ付テ
  一々政府ノ指揮ヲ受ケテヤルト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、重ナル事
  項ハ千五百圓ノ價格ヲ維持スルコトガ政府ハ御承知ナイカ分ラナイガ、帝蠶
  會社ガ此積リデ價格ヲ維持スル、斯ウヤリマスト政府ニ言ッテ居ルニ違ヒアリ
  マセヌ、之ニ付テ積極的ニ宜イト云フコトハ言ヘヌデモ、ソレヲヤッテ默ッテ
  居ルノハ政府ハ卽チ其責任ニナルト云フコトデアル、ソコデ政府ヘハ既往ノ
  コトヲ御尋ネシテ居ルノデハアリマセヌ、既往ハ其積リデアリマシタラウガ、
  政府ノ御考ノ通リニ行カナカッタ、私ハソレヲ失敗シタト云フガ、失敗シナイ
  ト仰シヤル、失敗シナケレバ失敗ト云フ言葉ヲ使ハヌデモ宜イ、政府ノ思フ
  通リニ行カナカッタノデアリマスガ、既往ハ其通リデアリマスガ、私ハ既往ノ
  コトハ御尋ネシテ居ルノデナイ、此ノ契約案ヲ出シテ、此ノ契約案ノ目的、
  帝蠶會社ノ千五百圓ノ價格ヲ維持シテ置キタイ、政府ガ認メテ御居デニナル、
  其ノ御趣意ノ基礎ニ反シタノカドウカヲ御尋ネシテ居ル、ソレデアルカ、ソレ
  デナクテ、モット安クシテ價格ヲ維持スル積リデアル、或ハ帝蠶會社ガ買フニ
  ハ必ズ一梱千五百圓ト云ウテモ、市場ニハ自由ニ賣ッテ宜イト云フヤウナコト
  ヲ、具體的ノモノデ御答ヘ願ヒタイ、ソレ以外ノコトハ私ノ申シタコトデ、
  何カ必要ナコトハ幾ラ申シテモ宜シイガ、ソレハ後デ御述べヲ願ヒタイ、ド
  ウカ千五百圓以下ト云フコトデ是迄帝蠶會社ハヤッテ居ッタノデアルガ、ソレ
  デ此契約ヲ實行スル意味デ御出シニナッタノデアルカドウカ、而シテ農商務大
  臣ハ、ソレハ帝蠶會社ノ人間ガ、サウシテ出來ル、當業者ガサウ出來ルト云
  フタカラ、サウ出來ルデアラウト仰シヤッタ、私ノ御尋ネシタノハ一梱千五百
  圓ト云フコトヲ維持スル目的デヤッタカ否カ、ソレヲ目的トスルナラバ、其御
  見込ヲ御立テニナッタ根據ハドウカト云フト、ソレハ當業者ガサウ出來ルト
  云ッタカラ、出來ルデアラウト云フコトヲ仰シヤッタノデ、ソレカラ思ヒマス
  ト、農商務大臣ノ御見込ミノ根據ハ、唯當業者ガサウスレバ宜イト言ッタ、ソ
  レヲ大體根據ニ爲サレタト云フヤウニ思ッタノデアリマス、ソレデハアリマセ
  ヌカ、ソレ以上ニ何カモット據ル處ハアリマセヌカ、只當業者ガ宜イト云フダ
  ケデハ如何ニモ私ハ不安ニ感ジマスケレドモ、農商務大臣ノ御見込ミノ根據
  ハ只ソレダケデアリマスカ否ヤ、之ヲ極ク簡單ニハッキリ願ヒタイ、ソレカラ
  モウ一ツハ帝〓會社デ向フデ進ンデ作ッタノデ、政府ガ無理ニヤラセタノデナ
  イドコ迄モ政府ハ受身デアル、ソレデ私ノ第二ノ間ハ斯ウ云フ契約ヲ御出
  シニナルニハ、ソコニ目的ガアルガ、ソレハ千五百圓ノ價格ヲ維持スルト云
  フ目的デアル、其目的ヲ達スルニハ鞭撻ヲ爲サレルヤ否ヤ、帝蠶デヤラナケ
  レバヤラヌデモ宜イ········或ハ帝蠶デヤラヌケレバ政府ノ方カラ鞭撻シテ後ニ
  殘ッテ居ル八百萬圓ノ拂込モ鞭撻シテ之ヲ爲サシメル、尙ホ帝蠶ガ買入ヲ躊躇
  セバ政府ハ之ヲ促シテ買入ヲ爲サシメラレルヤ、之ヲハッキリ御答ヲ願ヒタ
  イ、ソレカラ十萬梱カラノ品物ガ橫濱ニ堆積シテ居ルノハ將來養蠶家ヤ生絲
  業者ガ此堆積ト云フモノハ帝蠶ニ入レテヤルカラ差支ナイト云フヤウナ御
  答辯ダッタト思ヒマスガ、若シソレデアリマスト云フト、私ハ又是デ今日ノ價
  ヲ維持スレバ、將來ノ養蠶家製絲家ニモ、先ツ戰前位ノ生產ヲサセテ價ヲ維
  持サシテ行クト云フコトガアルト思ヒマスガ、農商務大臣ノ御考ハ是デアリ
  アスヤ否ヤ、ソレカラモウ一ツ私共御尋ネシタノニ御答辯ガナカッタノデアリ
  マス、是デ一通リヤルト云フト又本年ノ夏ノ頃、秋ノ頃ニ至ッテアレデハマダ
  足リナイカラ救濟シテ下サイト云フヤウナコトハアリマスマイカ、私ハサウ
  云フ風ニ引キヅラレテ行クヤウナ傾向ガアルデナイカト思フノデアリマス、
  ソレハアリマセヌカト云フコトニ對シテ御答辯ガナカッタノデアリマス、是モ
  是ハナイナラバナイデ宜イノデアリマス、强ヒテ詳シイ御答辯ヲ伺ハヌデモ、
  簡單ニ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、併ナガラ私ノ眞ニ尋ネタイノハ、ソ
  レダケデアリマシタガ、私ハ支那ノ絲ガ日本ガ止メテ居ル爲ニ便宜ヲ得テ、
  亞米利加ノ方ヘ大變ニ餘計行ッタト云フコトヲ申シタニ付テハ、サウデナイ、
  斯ウ云フ御話ノ中ニ紐育ニアッタ日本ナリ伊太利ナリ支那ノ絲ガ皆減ッテ居ル
  ノデアリマス、又若干ハ殘ッテ居ルノデアリマスカラ、日本バカリデナイト云
  フヤウナ御言葉ガアッタ、材料ハ見セテヤラウト云フノデアリマス、ソレハ私
  ノ御尋ネシタ趣意ニ適ヒマセヌケレドモ、其材料ガ頂キタイノデスカラ、ド
  ウゾ頂戴イタシタイノデアリマス、ソレカラ支那ノ絲ハ上海香港カラサウ出
  ナイト云フノデ、彼方モ依然ト薄イノダト云フコトデアリマスガ、此材料モ
  頂戴シタイノデアリマス、昨年ノ今頃ナリ、或ハ四月デモ宜シウゴザイマス
  ガ、五月デモ宜シイ、或ハ一月デモ宜シイ、材料ヲ御持チニナッテ居ルコトデ
  アルナラバ、何時デモ宜シイガ、其時ノ香港竝ニ上海ニハ生絲ガドレダケ停
  滯シテ居ルカ、ソレカラ支那カラ輸出シタ生絲ノ數量ガドレダケニ上ッテ居ル
  カ、今日上海方面ニドレダケ停滯シテ居ルカ、此材料モ領事館ノ報告ニアッタ
  サウデアリマス、又三井ヤ、モウ一ツドコダカ知レマセヌガ、サウ云フ所カラ
  ノ調ベモアルサウデスカラ、ソレニ依テ農商務大臣ガ唯今御述ベニナリマシ
  タ以上ハ、農商務大臣モ御承知ニナッテ居ラレルラシイノデアリマス、ソレモ
  併セテ頂戴イタシタイ、是ハ書面デ宜シイノデアリマシテ、書面デアリマセ
  ヌト、口頭デ伺ヒマスト、記憶ガ出來難ウゴザイマスカラ書面ニシテ御送リ
  ヲ願ヒタイ
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=59

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• 060・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　若槻君ハ成ルタケ質問ニ付テノ答辯ハ要點ヲ
  極ク簡單ニシテ貰ヒタイト云フコトデアル、私モ成ルタケ簡單ニシタイノデ
  アリマス、シタイノデアリマスガ御質問ノトキニ於テ、色〓理由ヲ述べラレマ
  シテ御質問ニ相成リマスカラシテ、矢張私モソレハ斯ク斯クニナッテ居リマ
  スル、故ニ斯ウ云フヤウナコトニ相成リマシタ、ト云フ理由ヲ詳細ニ述ベマセ
  ヌト云フト、大變ナ行違ヒガ起ルノデアル、貴方ハ簡單ニ述ベルガ宜シイ、私
  ハ貴方カラ簡單ニ聽イテ貰ヒタイ、サウシタラ簡單ニ述ベマス、ケレドモ御
  質問ニ付テ長イコト理由ヲ付ケマシテ行キマスル故ニ、ドウモ遂ニソレニ依
  リマシテ長ク說明ヲ致サナイト云フト、ドウモ分リ兼ネルト思ヒマス、故ニ
  言フノデアリマス、ソレデ今ノニ付マシテモサウデアリマシテ、簡單ニ述べ
  ヨト云フコトデアリマスガ、ドウモ誠ニ錯雜シテ居リマシテ、簡單ニ述ベル
  コトヲ、餘程困難ヲ感ズルノデアリマス、ドウカ此一條、二條ニ付テ逐一デ
  宜シウゴザイマスカラ、簡單ニドウゾ御質問ヲ願ヒマス、サウスレバ簡單ニ
  御答ヘイタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=60

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• 061・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　第一ハ此度ノ契約案ハ矢張依然トシテ一梱千五百圓ノ價格
  ヲ維持スルト云フ目的デアルヤ否ヤ、ソレニモウ一ツ附加ヘテ、其見込ミデ
  其目的デアルナラバ、其見込ミハ先程御答ニナッタノニ、當業者ガソレデ出來
  ルト言ッタカラソレデサウシタト仰シヤッタガ、其通リデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=61

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• 062・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　千五百圓ト申シマスルモノハ生絲貿易商、生
  絲業者、總テ彼等ガ相談イタシマシテ、此位ナラバ維持ガ出來ル、又シテモ
  無理ノナイモノダ、又其位ノコトヲ維持ガ出來ナケレバ蠶業ノ將來ニ餘程影
  響ガ及ブ、先ヅソレガ適當ナリトシテ、サウシテ其見込ヲ以テ彼等ガ買入レ
  ルノデアル、政府ニ於テハソレハ高イ、高イ故ニ安クシロトカ、先ヅ高クシロ
  ト云フダケノ········政府ニ於テ別ニ是ト云フ調べヲ持ッテ居ラナイノデアリマ
  ス、矢張彼等ノ言フコトガ適當ナリト政府ノ方デ考ヘマシテ、是ガ適當ナリ
  ト自身ハ思ヒマスル故ニ、ソレニ一致シテ居ルコトデアリマス、是ハ亦彼等
  ニ於テ千五百圓ト言ヒマスガ、ドウモ時勢ノ變化ニ依テ千五百圓ニ賣レナイ
  故ニ千四百圓ニ致シマセウト云フヤウナコトガ起レバ、其事情ニ應ジテ、ソ
  レモ變ジラレナイモノデナイ、故ニ初メカラ損ヲスル、損ヲ補償スルト云フ
  コトハ卽チ見込ガ違ッテカラ始メテ損ガ出ルノデアリマス、ソコデアルカラ
  シテ五千萬圓ヤル上ニ付テモ千六百萬圓カラ負擔スルダケノ金ヲソコデ積
  ミナサイ、サウシテ安心スルヤウニナサイ、是ハ見込ガ違ッテ損ヲスルト、貸
  シタ政府ノ貸金ニモ傷ノ著クヤウナコトガ起キマス、故ニ是ハサウシテ居ル
  譯デアリマス、先ヅ之ヲ維持スルト云フ目的ニ於テ進ム次第デアリマス、ソ
  レカラ二ハドウゾ一〓

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=62

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• 063・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　矢張リ長クナルノデ困リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=63

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• 064・山本達雄

  ○國務大臣　男爵山本達雄君)ドウゾ簡單ニ御質問ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=64

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• 065・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　今ノ農商務大臣ノ御答辯デハ千五百圓ト彼等ガ言フカラシ
  テサウシタ、サウシテ置キナガラ彼等ガ千四百圓ト言ッテ來レバソレデ宜シイ
  ト云フ御答辯デアッタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=65

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• 066・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　サウデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=66

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• 067・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　政府デハ此ノ契約案ヲ御當テニナッテ生絲ノ價格ノ維持ヲ
  努メヤウトナサルノニ、今日ハ何等確定シタ御計算ハナイヤウニ思ヒマスガ
  サウデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=67

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• 068・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　原案ガアルノデアリマス、斯ノ如ク價ヲ定メ
  ルトカ云フヤウナコトハ、唯政府ガ所謂皮相ノ論デ理窟デ行クモノデハアリ
  マセヌ、必ズサウ云フモノハ其途ニ堪能ナル商賣人ノ信用スベキモノガ集。ツ
  テ、サウシテ行クト云フコトガ誠ニ確實ナモノト前提ニ於テ考ヘルノデアリ
  マス、サウシテソレヲ出來マスト云フト、ソレハ尤モデアル、生產ノ上カラ
  考ヘテモ、或ハ紐育ノ有樣ニ於テ考ヘテモ、內ノ生產ノ高ニ於テ考ヘテモ、
  製造工業ノ品物デハナイ、農產物ニ付ラハ一箇年ノ生產ニ凡ソ限リガアル、
  以上ニ付テモ色〓ナコトヲ考ヘテ、是ハ尤モデアルト信ジテ、サウシテ承認
  シテ居ル次第デアル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=68

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• 069・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　餘リ執拗イデスガ、極ク簡單ニサウスルト此ノ契約案
  ニ依テ維持セムトスル價格ハ、當業者ガ是位デ宜カラウト言ッタ、其價格ヲ維
  持シヤウト云フ御考デアリマスカ

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• 070・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　サウデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=70

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• 071・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　ソレカラ其次一々簡單ニ御尋ネ致シマス、帝蠶會社ハ農商
  務大臣ノ仰シヤルヤウニ·········仰シャル通リニ從ヒマスト、丁度公益事業ヲ目
  的トシテ居ルモノノヤウニ聞エマス、自分ノ財產ハ皆捨テ·モ此生絲ノ價格
  ヲ維持シヤウト云フ、斯ウ云フヤウナ會社デアルヤウニ聞エマス、ソコデ自
  分ハ皆損シテデモヤルカラサウヤラセルト仰シヤッタヤウニ御答辯ニナリマ
  シタガ、ソレデ今日デモ帝蠶會社ハ皆損シテデモ公益ノ爲メ、生絲事業ノ全
  體ノ爲ニ已ムヲ得ナイカラト農商務大臣ハドコマデモ解釋シテ、凡ソ見當ヲ
  付ケテ居ラレルカ、是カラ先キ七萬梱カラヲ買フ、ソレガ爲ニ拂込ヲ要スレバ
  拂込金モスルト云フ覺悟ヲ持ッテ居リマスカ否ヤ餘リ長クナク御答辯ヲ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=71

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• 072・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　先刻申シマシタル千六百萬圓ノモノヲ八百萬
  圓拂込ンダ、此上ハドウモ自身等ノ力デ今日ノ經濟ノ狀態デ困難デアル、ソ
  レ故ニ政府ニ於テ後ノ此維持ヲスル上ニ付テ國家ニ助ケテ貫ヒタイト云フ、
  併ナガラ自身等ハドコ迄モ千六百萬圓ト云フモノハ責任ガアルノデアリマ
  ス、彼等ノ千六百萬圓ヲ損ヲスルニアラザレバ政府ノ三千萬圓ニハ少シモ損
  ハ來ナイト云フコトニ彼等ハ承知シテ居ルノデアル、是ハ私ハ實ニ情ニ於テ
  考ヘルト能ク奮發シテ、ソコマデ爲シテ居ル、彼等ガ唯商賣ノ爲ニヤラズ、
  斯業ノ維持ノ爲ニ各自身等ガ奮發シテヤルコトニ付テ、自身ノ信賴シテ居ル
  株劵ダケノモノハ皆ナ負擔イタシマスト公言シテ掛ッテ居ル、非常ナル奮發デ
  アルト思ッテ、斯ウ云フ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=72

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• 073・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　其次ハ十萬梱モ堆積シタ生絲貿易ト云フモノガ、果シテ出
  來ルモノデアリマスカ、是モ御答辯下サルト云フコトニナリマスト、餘程又
  御答辯ガ長クナリマスカラ此方ハモウ質問ヲ致シマセヌ、私ハサウナルト思
  ヒマスケレドモ、ソレダケハ御答辯ヲ得ヌデモ宜シウゴザイマス、次ハ是キ
  リ救濟ハナイカ否、又今年ノ秋ノ頃ニナッテカラ、アレデハイケナカッタカラ
  モウ一遍ヤッテ貰ヒタイト云フヤウナコトハ起ラヌノデアリマスカ否ヤ、之ヲ
  伺ヒマス

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• 074・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　ソレハ起ラヌト云フコトノ保證ハシ兼ネマ
  ス、併シ政府トシテハ大正九年度ニ於テノ絲ニ限ッテ補償ヲスルト云フコトニ
  區切リヲ付ケテ居リマス、ソコデアリマス故ニ大正十年度絲ヲ兎ヤ角、政府
  ガ具體的ニ助ケルト云フコトハ更ニ考ヘナイノデアリマス

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• 075・上山滿之進

  ○上山滿之進君　私ハ蠶絲救濟ノ問題ニ付テ質問ヲ致シタイノデアリマス、
  此問題ハ現在ノ狀態ガ、現在ノ蠶絲市場ノ狀態ガ進退兩難ノ立場ニアル、進
  ムニモ困リ退クニモ困ル、千仭ノ崖ノ眞ン中マデ引張リ上ゲマシテ、眞ン中
  程ニチヨット出テ居ル岩ノ上ニ据ヱラレタ、斯ウ云フ譯ニナッテ居ル、誠ニ厄
  介至極ナ問題デ、先日來種々考ヘマシタケレドモ、白狀イタシマスト、マダ
  此案ニ對スル贊否ノ意見ガ私ニ決マラナイ、私ハ蠶絲救濟ニハ多少ノ以前緣
  故ヲ有ッテ居ル人間デアリマス、少シ位蠶絲ノコトハ承知シテ居リマスガ、到
  底判斷ガ出來ナイ、ソコデ二三ノ當業者デナイ人デ、能ク此方面ノコトヲ承
  知シテ居ル人ニ、實ハ〓ヲ請フタノデアリマス、〓ヲ請ヒマシテモ、マダ判
  斷ガ決マラナイノデアリマス、私ニ取ッテハ斯クノ如ク非常ニムヅカシイ問題
  デアリマス、ソレデ此處デ此全ク自分ノ疑ヲ解ク爲ニ政府ニ質問ヲ致スノデ
  アリマス、質問ヲ致シマスル前ニ昨年帝國蠶絲株式會社、約メテ帝蠶ト申ス
  ヤウデアリマスガ、此帝蠶ノ著手シタ、蠶絲救濟ノ歷史ニ付テ一言言ハナケ
  レバナラメ、此歷史ヲ索ネル所以ガ今日以後ニ於テ如何ナル方面ニ向ッテ國ガ
  手ヲ著ケナケレバナラヌカ、或ハ著クベカラザルカト云フコトヲ決スル、重
  要ナル材料ニナルノデアリマス、先刻來今度ノ蠶絲救濟ハ失敗デアルトカ、
  ナイトカ言フ、段々御議論ガ交換セラレタノデアリマス、私ハ農商務大臣ガ
  政府ガ政治上ノ立場カラ强ヒテ是ハ失敗デナイト仰セラルル立場ニハ同
  情ヲスルノデアリマスガ、併シ政治上デハ何トデモ仰ッシヤッテ宜シイ、失敗ト
  云フ字ガ惡ケレバ、ヤリ損ヒト變へテモ宜シイ、「アルハー」ト書イテモ、「ビー
  ター」ト書イテモ、ソレハ何デモ宜シイノデアリマス、併シ事實ハ失敗ニ違ヒ
  ナイ、ソレハ政府ノ責任デアルカドウカ、ソレヲ私ハ論ズルノデハナイガ、
  併ナガラ事實ハ失敗デアルコトハ是ハ明瞭デアル、丁度此ノ救濟事業ガ昨年
  起リマシタノハ私ガ外國旅行中デアリマシテ、旅行先デ聞キマシテ、其時斯
  ノ如キコトヲ申シタ、餘程是ハ大正四年ノ時トハ狀況ガ違ッテ居ル、違ッテ居
  ルガ斯ンナ狀況ニナッテ、生絲ノ値段ガ一時ニ暴落スルト云フコトニナッタナ
  ラバ何トカシナケレバナラヌデアラウ、併ナガラ大ニ情況ガ違ッテ居ル、ド
  ウカ成功ヲスレバ宜イガ、併ナガラ何時モ鰌ノ居ル上ニ柳ガ必ズ立ッテ居ルト
  ハ決ッテ居ラナイ、困ッタモノダト云フコトヲ申シマシタ、歸朝シマシテ、段
  段樣子ヲ聞イテ見マスト、此時私ノ考ヘマシタ事情ノ違ッテ居ルト云フコト
  以外ニ、其以上ニ又實ハ驚クベキコトヲ聞イタノデアリマス、ソレ等ガ失敗
  ノ原因デアル、第一、事情ノ大正四年ト違ヒマス所ハ、生絲ノ主モナ得意先
  デアル亞米利加ノ景氣デアリマス、大正四年ノ時ハ景氣ガ上向キノ時デアッ
  タ、今日ハ下向キノ時デアル、昨年蠶絲救濟ヲ始メタ時ガ恰モ下向キニナッテ
  來タ時デアル、上向キト下向キト全ク方向ガ違ッテ居ル、是ガ一番此問題ノ大
  事ナ事情ノ差異デアル、ソレデ大正四年ノ時ハ上向キノ時デアリマシタカラ、
  都合好ク行ッタ、今度ハ下向キデアルカラ逆ニ行ク、斯ウ云フ譯ニナル、ソレ
  カラ今一ツ事情ノ違フコトハ大正四年ノ時ト昨年ノ時ト、橫濱ノ在荷ノ生絲
  ノ分量ニ大變ナ相違ガアル、申スマデモナク、分量ガ少ナケレバ之ヲ荷捌キ
  ヲスルニ極ク簡單デアリマス、分量ガ多ケレバ多イダケソレガムヅカシイ、
  是ガ一ツ、今一ツ違ヒマスコトハ、此賣止メ價格デアリマス、是ハ大正四年
  ト昨年ト直ニ其數字ヲ以テ、比較スル譯ニハ參リマセヌソレハ總體ノ物
  價ノ關係ガアリマスカラ、是ハ數字ヲ以テ直ニ比較スルコトハ出來マセヌガ、
  問題ハ此千五百圓ト云フコトガ相當デアッタカ高過ギハシナイカ斯ウ云フコ
  トニナル、此三ツノ事情ガ大變違ッテ居ル、其千五百圓ハ私ハ高過ギタト思フ
  ノデアリマス、其三ツノ事情ガ違ヒマス、ソコデ私ガ歸ッテ來マスト、先ヅ驚
  入ッタコトハ、初メノ二ツノ事情ハ是ハ其時ノ事實デゴザイマスカラ別トシ
  ツ
  テ、賣止メ價格千五百圓ニシタト云フコトハ純粹ニ蠶絲救濟、大正四年ニ起
  タト同ジ意義ニ於ケル蠶絲救濟ヲスルト云フコトノミニ非ズシテ、蠶絲救濟
  ニ依テ金ヲ儲ケヤウト云フ連中ノアッタコトガ發見セラレタノデアリマス、明
  カニ其時ノ事情ヲ、私ノ知ッテ居ル限リ申上ゲル方ガ、此議題ヲ御審議ニナル
  ニ付テ必要ナリト思フノデアリマス、當時價格ヲ幾ラニシタラ宜カラウト云
  フコトガ勿論第一ノ問題ニナッテ、橫濱ノ當業者ハ此價格ヲ千二百圓ト云フ論
  者モアリ、千三百圓ト云フ論者モアリマシタガ、先ヅ千二三百圓ト云フコト
  ノ論デアッタノデアル、ソレデ外ノ方面カラ、ソレデハ安イ、千五百圓ニシヤ
  ウト言フ、或ハ六百圓論モアッタヤウデアリマス、サウ云フコトデ結局千五百
  どじど
  圓ニナッタ、其當時ノ價格ハドウデアッタカト申シマスルト、ハッキリシタ數字
  ヲ覺エマセヌケレドモ、千百二三十圓ドコロデアッタト思フノデアリマス、千
  百二三十圓デアッタモノヲ、橫濱ノ當業者ハ、此道ニ掛ケテ多年ノ經驗ヲ持ツ
  テ居リ、海外ノ事情モ十分承知ヲ致シテ居ル、是等ノ人ノ意見ハ千一一三百圓
  デアッタ、ソレヲ外ノ方カラ、ドノ方ト私ハ申シマセヌ、外ノ方カラ千五六百
  圓ノ論ガ出テ、結局千五百圓ニナッタ、農商務省ガ千五百圓ニシロト仰ッシヤッ
  タトハ申シマセヌケレド、併シ農商務省ハ其計畫ヲ是ナリトシテ、大藏省ニ
  相談ヲシテ、低利資金ノ五千萬圓モ此ノ會社ノ爲ニ、支出ヲシテヤラウト云
  フダケ、肩ヲ御入レニナッテ、農商務省ハ此千五百圓論ヲ是認セラレタコトハ
  勿論デアリマス、千五百圓ガ適當デナカッタナラバ、農商務省ハ是ニ責任ガナ
  イトハ言ヘナイ、私ハ責任ヲ問フノヂヤアリマセヌケレドモ、强ヒテ責任ガ
  ナイト仰セラルレバ、左樣デゴザイマスカト云フテ御辭儀ヲシテ居ル譯ニハ
  參ラナイ、私ハ帝蠶ノ株主ノ名前モ承知シテ居リマス、是ハ御披露致シマセ
  え、其株主ノ中ニハ、千五百圓ニ賣止メヲスルト云フト人爲ヲ以テ生絲ノ價
  格ハ持ヲテ行ケルモノト思ッタト見エテ、大ニ儲ケル積リデ居ッタ人ガ二三ニシ
  テ止マラナイ、私其考ハ惡イトハ申サヌ、是非善惡ヲ論ズルノデアリマセヌ、
  餘リニ御見當違ヒデアッタト云フコトヲ寧ロ其人〓ノ爲ニ悲シム、悲シンデ
  濟メバ宜シイノデアリマスガ、是ガ失敗ノ大キナ原因デアル、當時或ハ千二
  百圓或ハ千三百圓ニシテ置ケバ今日ノヤウナ苦境ニ陷ラナイノデアル、一 -
  ニ言ヘバ慾ガ付イタト云フコトハ、此失敗ノ大ナル原因ノ一ツデアルト云フ
  コトガ爭ヘナイノデアル、尙ホ帝蠶ノ遣リ口ニ付テ申シマスル、折角帝蠶ヲ
  立テタケレドモ、中〓株主ノ拂込ガ容易ニ行カナイ、從ッテ此品物ヲ買フコト
  ガ中〓運バナイ、斯ノ如キ場合ニ於テハ此ノ製絲場ノ方ノ操業短縮ヲ早速ヤ
  ラナケレバナラヌ、操業短縮ヲヤッテ、橫濱ニ出テ來ル荷ヲ、成ベク少ナクス
  ルト云フコトガ最モ必要デアル、此ノ操業短縮ガ中〓行ハレナカッタ、是等ガ
  總テ此純粹ノ蠶絲救濟ト云フ頭カラ、仕事ガ割出シテナイト云フ結果デアル
  ト云フコトハ疑ヲ容レナイ、是ハ總テ事實デアリマス、マダ詳シイ事實ヲ承
  知シテ居リマスガ、サウ〓〓ハ此議場デハ申上ゲマセヌ、斯ノ如キ誤ッタ考ヲ
  以テ始メラレタル蠶絲救濟ハ、如何ナル結果ヲ來シタノデアリマス、農商務
  大臣ハ失敗デナイト仰セニナリマス、農商務大臣ノ御失敗デアルカ御失敗デ
  アラザルカハ別トシテ、帝蠶會社トシテハ、明々白々ノ失敗ヲ致シタノデア
  ル、第一初メ千六百萬圓ノ會社ヲ立テ五千萬圓ノ低利資金ヲ融通シテ貰ヘバ、
  蠶絲救濟ハ出來ルト見込ンダカラ、此仕事ヲ始メタニ違ヒナイノデアリマス、
  出來ルカ出來ナイカ分ラナイガ、何ガナシニ始メテ見ヤウト云フ宙腰デ掛ッタ
  ノデナイコトハ、是ハ明瞭デアラウ、果シテ然ラバ如何デゴザイマス、其見
  込ガ外レタ、失敗シタ、失敗シタカラ此度ハ政府ニ縋ッテ、三千萬圓ノ補償ヲ
  得ヤウト云フノデアリマス、是位明瞭ナ失敗ハナイ、見込違ヒモ失敗モ同ジ
  コトデアル、株金ハ如何デアル、千六百萬圓ノ會社ヲ造ッテ、半額ヤット拂込
  ンデ、殘ノ半額ヲ拂込メバマダ仕事ガ出來ルノデアリマス、半額拂込ンダガ、
  半額拂込ミ得ナイ、是ガ失敗ノ一ツ、是ニ伴ッテ折角政府ガ出シタ低利資金ノ
  五千萬圓ノ中ヲ半分ヲ借リ得ナイ、是ガ失敗ナンダ、尙ホ少シ細カイコトデ
  アリマスケレドモ問題ハ重大デアリマスガ、百斤千五百圓ト決メテ居ル、
  是ハ信州上一ガ目標ニナッテ居ル、此ノ上一ヨリ高イ品ヲ以テ、優良品ガ「エ
  キストラ」トカ色〓私名前ヲ一々記憶シマセヌガ、澤山ナ名前ガアル、是等ノ
  優等品或ハ上一ニ對シテ相當ノ値開キヲ以テ賣買サレテ居ルノハ勿論ノコト
  デアル、所ガ千五百圓賣止メト言ッテ置キナガラ、上一ガ千五百圓以下デ、闇
  カラ闇ヘ賣ラレルト云フコトモ聞キマシタガ、是ハ大シタ數デナイト云フコ
  トノ論モアル、所ガ上一以上ノ優等品ガ、本來ナラバ上一ガ千五百圓ナラ
  バ優等品ハ千八百圓トカ二千圓トカ、或ハモウ少シ上迄モ行クノデアリマス
  ガ、相當ノ値開キヲ以テ居ナケレバナラヌ、優等品ノ上一ノ賣止メ價格ガ千
  五百圓ナラバ、外國へ賣ッテモ宜イト云フ扱ヒ、又現ニ賣ッテ居ル、是ハ非常
  ナ失敗デアル、其他數ヘ擧ゲレバ幾ラデモアリマスガ、失敗ノ跡ハ歷然タル
  モノデアル、其失敗ヲシタ帝蠶ヲ御助ケニナッテ、帝蠶ノ初メノ計畫ヲシタコ
  トヲ宜シイトシテ、ソレヲ援助セラレタコトハ勿論失敗ト言ハナケレバナラ
  ナイ、私ハ何モ政治上ノ責任ヲコンナ問題デ何モ問フノデモアリマセヌガ、
  餘リニ失敗デナイ、失敗デナイト仰ッシヤルカラ、言ハザルヲ得ヌ、私ハ遣リ
  損ヲタコトハ遣リ損ッタ、遣リ損ハナイコトハ遣リ損ハナイデ突張ル、是ガ男
  ノ遣リ口ト思フ、遣リ損ッタコトヲ一カラ十マデ神カ佛ノヤウニ、完全無缺ノ
  ヤウニ主張シナイデモ宜イト思フ、非常ニ不思議ニ思フ、サウ云フコトヲ始
  終仰ッシヤル爲ニ議事ハ益〓長引クヤウニナル、之ヲ明瞭ニシタイ爲ニ問フノ
  デアル、何モ政治上ノ責任ヲ問フノデモナイ、帝蠶ハ失敗ニ相違ナイ、斯ノ
  如キ失敗ヲ失敗デナイト强ヒテ辯ジテ、强辯ヲシテ扨是カラ先ノ計畫ヲ、數
  字ノ正シイ計畫ヲ立テルト云フコトハ出來ヌ、矢張失敗ハ失敗ト認メテ、
  矢張覆轍ヲ踏マナイヤウニシテ行カナケレバ本當ノ仕事ハ出來ナイ、失敗
  ヲ失敗ニ非ズト强辯スルト覆轍ヲ踏マナケレバナラヌコトニナル、此故ニ私
  ハ申スノデアリマス、扨今後ドウシタラ宜イカト申シマスト、要領ハ極ク簡
  單デアル、九年ノ絲、昨年ノ絲ノ荷捌キヲ早クシテ仕舞フコト、十年ノ新絲
  ノ生產ヲ制限スル、是ヨリ外ニ要領ハ無イ、唯此要領ヲ達スルノニ、ドウ云
  フ手段方法デ行クカト云フコトガ問題デアル、又其問題ガ極メテ厄介デアル、
  厄介ノ上ニ其厄介ナル程度ハ進退兩難ノ所ニ今置カレテ居ルト云フコトデア
  リマス、斯ノ如キ私ハ考ヲ有ッテ居リマス、又過去ノ帝蠶ノ遣口ニ付テ私ハ斯
  ノ如キ批評ヲ私ハ有ッテ居ルノデアリマス、サウシテ私ノ本案ニ對スル考ハ現
  ニ定マッテ居ラヌノデアリマス、サウ云フ立場カラ私ハ質問ヲ致スノデアリマ
  ス、私ノ質問ハ丁度八ツ程アリマス、政府委員御面倒デゴザイマスガ、御書
  取リヲ願ヒマス、是ガ御書取リ下サラヌト復尋ネタ尋ネヌト云フヤウナコト
  ニ色〓ニナッテ來ル、數ガ多イモノデスカラ混雜ヲ起シテハイケマセヌ、私ハ
  質問ニ付テハ極ク簡單ニ其意味ヲ申シマシテ、其後デ質問ノ文句ヲ此處デ悠
  クリ讀ミマスカラ御面倒デモ政府委員御書取リヲ願ヒマシテ大臣ニ御差出シ
  ヲ願ヒマスルト大變私モ便利デアリマス、第一ニ御尋ネ致シマスノハ「救濟
  ヲ打切ラバ米國へノ賣行キ進ムト思フ如何」救濟ヲ打切ラバ米國へノ賣行キ
  進ムト思フ如何、是デアリマス、先刻若槻君カラ同樣ナル········類似ノ御質問
  ガアリマシテ農商務大臣ノ御答辯モアリマシタガ、私ノ聽イテ居リマス所ニ
  依リマスト、日本ガ蠶絲救濟ヲ始メタ爲ニ日本ノ絲ノ値ト、伊太利ナリ支那
  ナリノ生絲ノ値ト、其間ニ差ガ生ジテ居ル、ソコデ伊太利ヤ支那ノ生絲ハモ
  ウ僅カノ間ニスッカリ荷捌キガ付テ仕舞ッタ、ソレカラ其後モ出テ來ル物ガ
  續々賣レテ行ク、紐育市場ニ於テ支那ノ廣東絲ト、日本ノ信州上一ト同ジヤ
  ウナモノニ値開キガアル、日本ノ絲ガ不利益デアル、斯ウ云フ風ニ聞イテ居
  リマス農商務大臣ノ先刻ノ御說明ハ何カ之ヲ否定サレルヤウデアリマシタ
  ガ、ソレハ若槻君ハ材料ヲ要求セラレタカラ、同ジヤウナ材料ヲ私ニモ戴キ
  タイノデアリマス、併シ唯〓ノ事實ノ如何ニ拘ハラズ、救濟ヲ打切ルト云フ
  ト絲ノ値段ノ下ルコトハ勿論デアル、下レバ困ル、救濟事業ヲ打切レバ下ル、
  下ルト云フコトハ勿論安クナルト云フコトト同ジ意味デアリマスガ、安ケレ
  バ多ク賣レルト云フコトモ當前ノコトデアル、極端ニ言ッテ見レバ之ヲ只ニシ
  タナラバ如何ニ亞米利加市場ト雖モ貰ッテ行クト思フ、又此千五百圓ノ物ヲ三
  倍五倍ニシタラ如何ニ亞米利加ニ需要ガアッテモ一梱モ賣レナイ、極端ニ言ヘ
  バサウデアリマス、併シ眞理ハ此中間ノ所ニ行ハレルノデアル、例ヘバ千五
  百圓ノ物ヲ之ヲ千二百圓ニシタラ其處ニ三百圓ノ違ヒガ出來テ、多ク賣レテ
  行クト云フコトハ勿論ノ話ト私ハ思フ、是ニ付テ今一應申シマス、救濟ヲ打
  切レバ米國へノ賣行キ進ムト思フ如何、是ガ第一ノ質問、第二ノ質問ハ「救
  濟ヲ打切ラザレバ新絲安見越シニテ豫定ノ八萬梱ヲ賣ルヲ得ザルベシ如何」
  「救濟ヲ打切ラザレバ新絲安見越シニテ豫定ノ八萬梱ヲ賣ルヲ得ザルベシ如
  何」、現在此議場ヘ上ッテ居リマス案ガ通過致シマスト、帝〓ノ計畫デハ今後三
  四五六ノ四箇月間ニ月〓二萬梱、合セテ八萬梱賣レマシタラ其殘リノ七萬梱
  ヲ買ハウ、斯ウ云フ計畫ダサウデス、所ガ救濟ヲ打切ラナイデ、今ノ案ヲ通
  シテ往キマスルト、此六月迄ハマア持ツカモ知レマセヌ、併シ七月一日頃ニ
  ナレバ新絲ガ出來マスカラ、新絲ノ値段ハ俄ニ落チルト云フコトハ勿論、ド
  ノ位ノ程度ニ落チルカ分リマセヌガ、矢張千二百圓、千百圓ト云フ所ニ落チ
  テ來ルダラウト思フ、是ハ亞米利加ノ商人ハ勿論能ク見當ヲ付ケテ居ルコト
  デアリマセウ、二三箇月先デ安絲ガ買ヘルノニ、何モアワクッテ態〓帝〓ノ御
  命令通リニ高イ絲ヲ買ハナイデモ宜イ筈、ドウモ是ハ豫定ノ梱ガ賣レナイダ
  ラウト思フ是ハ如何ニ御覽ニナリマスカ、是ガ第二ノ質問、卽チ「救濟ヲ
  打切ラザレバ新絲安見越ニテ、豫定ノ八萬梱ヲ賣ルヲ得ザルベシ如何」、第三
  ノ質問ハ「養蠶家ノ思惑經營ヲ如何ニシテ防止スルヤ、之ヲ防止シ得ズトセバ
  多大ノ思惑損ヲナサシメ、又未來ノ荷閊ヘヲ生ズベシ如何」「養蠶家ノ思惑經
  營ヲ如何ニシテ防止スルヤ、之ヲ防止シ得ズトセバ多大ノ思惑損ヲナサシメ、
  又未來ノ荷問ヘヲ生ズベシ如何」、今ノ此案ガ通過イタシマシテ、矢張帝蠶ハ
  千五百圓ノ價格ヲ維持スルモノナリト云フコトニナリマスルト、全國ノ養蠶
  家ハドウ云フ態度ヲ執リマセウカ、是ガ問題ナンデ、先刻今後ノ方針トシテ
  愚見ヲ申述べマシタ中ニ、十年ノ新絲ノ生產ヲ成ル可ク制限スルト云フコト
  ガ今日蠶絲問題ニ處スル最モ重要ナル點デアルト申スノデ、デ此ノ春蠶ハ
  勿論ナリ夏蠶モ秋蠶モ少ナク生產サスト云フコトガ必要ナノデ、少ナク生產
  サスレバ需要供給ノ關係カラシテ値段ガ恢復シテ來ル、故ニ極力此場合ニ於
  テ養蠶ノ不奬勵ヲ行ラナケレバナラヌ、農商務省ハ養蠶ノ奬勵ハ始終行ッテ居
  ルノデアリマス、併シ斯ウ云フ場合ニハ其反對ノ不奬勵ヲシナケレバナラヌ
  ノデアリマス、實ハ今日迄農商務省ノ養蠶不奬勵政策ガ、早ク又徹底的ニ御
  著手ニナラナカッタコトヲ、寧ロ私ハ遺憾トスルノデアリマス、サウ云フ狀態
  ノ今日ニ當ッテ千五百圓ノ生絲ノ價格ヲ維持スルト云フコトガ帝國議會ニ於
  テ決定シタ曉ニ、地方ノ養蠶家ハドウ云フ風ニ考ヘルデアリマセウ、是ハ勉
  强シテ大ニ養蠶ヲ行ルベシト斯ウ向イテ來ルデアリマセウ、能ク此議事ノ進
  行ノ狀況ヲ詳ニスレバサウ云フ疑問ハ起リマセヌケレドモ、地方ノ津〓浦〓
  山〓村〓ノ末ニ至ルマデ議會ノ狀況ニ審ナル人ヲ以テ充タスト云フコトハ勿
  論出來ヌノデアリマス、其結果ダケ見ル、其結果ハ千五百圓ノ絲ノ價ヲ維持
  スルト云フコトヲ承知スルノデアリマスサウスルト是ハ養蠶ヲ奬勵スルコ
  トニナル、詰リ思惑ヲ以テ來年モ高ク賣レル、千五百圓ノ生絲、千五百圓ノ
  割合デ繭ガ賣レル、斯ウ云フ風ニ思フノデアリマス、是ハ餘程重大ナ事柄デ
  アラウト思ヒマスガ、是ハ防ガナケレバナラヌノデアリマス、政府ハドウシ
  テ之ヲ御防ギニナリマセウカ、若シ之ヲ防ギ得ナイデ澤山ナ繭ガ出來タト致
  シマスト、其養蠶家ハ春蠶ノ賣出シ、春蠶ノ賣出ノ時ニ至リマシテ全ク其期
  待ヲ裏切ラレルノデアリマス、此繭ヲ買フ人ハ養蠶ヲシテ居ル人ヨリモ比較
  的能ク西洋ノ市場、横濱ノ市場ノ狀況ヲ知ッテ居ルノデゴザイマス、來年ノ絲
  ハ、大正十年ノ絲ハ決シテ救濟ハシナイノデアル、自然ニ放任スルノダ、隨
  テ其價格ハウント落チルノデアルト云フコトヲ能ク知ッテ居ルカラ決シテ高
  イ繭ハ買ハナイ、養蠶家ハ安クテモ其繭ハ賣ラナケレバナラナイノデアリマ
  ス、ソコデ養蠶家ハ甚シキ損ヲスル、政府ハ此ノ蠶絲救濟ヲスルコトガ養蠶家
  ヲ救フヤウナ風ニ仰セニナルケレドモ、私ノ見ル所ハ遺憾ナガラ反對ノ結果
  ヲ生ズル場合ガ多イヤウニ思フノデアリマス、自ラ養蠶家ヲ奬勵シ奬勵セラ
  レテ造リ出シタ繭ハ安クシカ買ハレナイ、斯ウ云フ結果ニ陷ルデス、養蠶家
  ノ立場、餘リ世ノ中ノ都會ノ有樣·······外國ノ市場ニ通曉ヲシナイ養蠶家ニ對
  シテハ甚ダ氣ノ毒ナ感ヲ懷抱セザルヲ得ナイノデアリマス、サウシテソレノ
  ミナラズ斯ノ如ク誤ッタル思惑カラシテ多數ノ養蟲家ガ澤山ニ蠶ヲ飼ヒマス
  ト是モ忽チ大正十年ノ絲ハ大ナル荷問ヘヲ生ジテ來ル、大正九年度ノ荷捌
  サヘ既ニ付カヌ所へ更ニ新シイ繭ガ出テ、新シイ生絲ガ出テ、ドウ一體始末ヲ
  スルカ、斯ウ云フ疑ヲ抱カザルヲ得ヌノデアリマス、是ガ「第三養蠶家ノ思惑
  經營ヲ如何ニシテ防止スルヤ、之ヲ防止シ得ズトセバ多大ノ思惑損ヲナサシ
  メ、又未來ニ荷間ヘヲ生ズベシ如何」第四ノ質問ハ「三千萬圓ノ補償ニテ九年
  絲全部ヲ始末スルヲ得ザリシ時ハ如何ニスルヤ」三千萬圓ノ補償ガアレバ九
  年ノ絲ハ始末ガ出來ルト云フ今ハ見込デアリマス、帝蠶ノ見込ハ、其見込ハ
  今橫濱ニ在ル生絲及ビ地方カラ春挽キニ依テ出テ來ル生絲、之ヲ合セテ外國
  向ガ十五萬梱、其中デ八萬梱ハ外國へ行キ、七萬相帝〓ニ買フ、其七萬梱ト買
  入レタ三萬梱ヲ合セテ帝蠶ハ十萬梱ノ生絲ヲ持ツト斯ウ云フコトニナル、是
  ハ豫定デアリマシテ豫定通リニ參ルトハ限ラヌ、現ニ先程申シマシタ若シ外
  國ニ充テテアル八萬梱ガ思フヤウニ行カナカッタナラバ、詰リ新絲ガ廉イト云
  フ見込ヲ以テ思フヤウニ賣レナカッタナラバアトハドウナル、斯ウ云フ問題、
  三千萬圓ノ補償デ行キマスト、今ノヤウナ計畫ガ豫定通リニ進行シタ時ノ場
  合、進行シナカッタラドウスル、是デハ補償ガ足ラヌト云フコトニナルノデハ
  ナイカト思フノデアリマス、サウスルト當然第二ノ救濟ヲシナケレバナラヌ
  ト云フコトニ陷ルノデハナイカ、此點ヲ伺ヒタイ、三千萬圓ノ補償ニテ九年
  絲全部ヲ始末スルヲ得ザリシ時ハ如何ニスルヤ、第五ハ「株金未拂込八百萬圓
  ハ必ズ拂込マシムル確信アリヤ、若シ之アラバ何故ニ今日直ニ之ヲ拂込マ
  シメザルヤ」今提出ニナッテ居リマス案ハ三千萬圓ノ補償ハスルガ、ソレハ株
  金ノ全部、卽チ千六百萬圓拂ッタ、ソレヲ使ッテ了ッタ後ノ補償デアル、ソレヲ
  使フ迄ハ補償金ハ出サナイノダト云フコトダサウデス、所ガ今八百萬圓シカ
  拂込ンデナイ、半額シカ拂込ンデナイノデアリマス、殘リノ半額ヲ拂込ミマ
  ス確信ガ御有リナサルカドウカ、甚ダ私ニハ分ラナイ、株式會社ノコトデア
  リマスカラ、株ヲ投出シテ行ケバ先ヅ何トモ仕方ガナイノジヤナイダラウカ
  ト云フ風ニ私ハ思フノデアル、若シ拂込マス確信ガ御有リナサルナラバ今拂
  込マセレバ宜イ話デアル、所ガ今拂込ミガ若シ出來ルナラバ何モ三千萬圓ノ
  補償ヲシナイデモ、マダ二千何百萬圓ト云フ低利資金ハ何時デモ御貸申スカ
  ラト云ッテ、興業銀行ニ政府カラ預ケテアルカラ、ソレヲ借リレバ仕事ガ出來
  ルデ八百萬圓ノ殘額ヲ拂込マナイデ、政府ニ投ゲテ來ル、政府ハソコデ補
  償シテヤル、今拂込メナイケレドモ其金ハ後ニ拂込ムト云フコトヲ言ッテ居ル
  ト云フコトハドウモ私ニハ辻褄ガ合ハヌヤウニ思フ·何故今拂込マセラレ
  ナイカ、私ノ見込ニ依レバ是ハ拂込マナイト思ヒマス、何故ダト申スト、百
  斤千五百圓デ十萬梱ノ絲ヲ帝蠶會社ガ持ツ、斯ウ云フ今計畫ニナッテ居ル、其
  中ノ三萬梱ハ既ニ買ッテ居ル、新ニ七萬梱買フ、豫定通リニ行ッタト致シマ
  スト、十萬梱ノ絲ヲ持ツコトニナル、十萬梱ハ五萬五千俵ニナル、一俵ト百
  斤ハ同ジデアリマズカラ、卽チ一俵ノ價ガ千五百圓、五萬五千俵デアリマス、
  ソコデ新絲ガ出ルト同時ニ、此生絲ノ直段ガ俄ニ下ガルト云フコトハ勿論ノ
  話、是ハドウシテモサウ下ガル、如何ナル程度ニ下ガルカ分リマセヌガ、丁
  度昨年橫濱ノ當業者ガ蠶絲救濟ノ賣止價格ヲ千二百圓ニシタラ宜カラウト
  云ッタ所ヲ取ッテ千二百圓ト假定致シマスト一俵デ三百圓ノ値開キガアル、
  其三百圓ヲ五萬五千俵ニ掛ケマスト千六百五十萬圓ト云フモノニナル、損失
  デス、損失ガ千六百五十萬圓ト云フモノニナル、之ニ倉敷金利ガアリマス、
  サウスルト帝蠶絲ノ株主ハ今拂込ンデ居ル八百萬圓ハ勿論棒ニ振ラナケレバ
  ナラヌ、是ハ拂込ンデ居ルカラ仕方ガナイカ知レマセヌガ、アトノ八百萬圓
  ヲ棒ニ振ル目的ヲ以テ態ヽ帝蠶會社ニ獻納ニ來ルデアリマセウカ如何デアリ
  マセウカ、ソレダケノ慈善心ハ想フニ私持ッテ居ナイダラウト思フデス、サウ
  スルト私ニハドウモ殘リノ半額ヲ拂込マシムル見込ガ立タナイ、政府ハドウ
  シテソレガ立ツト御思ヒニナリマスカ、尤モ今一俵ニ付テ損ガ三百圓ト見マ
  シタガ、之ヲ十圓トカ二十圓トカ五十圓トカ百圓トカ僅ニ見レバ是ハドンナ
  ニモ見ラレルノデアリマス、併シ千二百圓ハ私一箇ノ空論デハナイ昨年蠶
  絲救濟ヲスルトキニ賣止價格ハドノ位ニシタラ宜イカト云フ協議ノ時ニ、橫
  濱ノ當業者ハ全部デアッタラウト思ヒマス、少ナクモ是ハ多數ハ千二百圓デス
  カラ三百圓ト云ウテ居ル、シテ見ルト結局此十萬梱ニ對スル損金ト云フモノ
  ハ帝蠶會社ノ全株ヲ突込ンデモ足ラナイ、其場合ニ殘リノ半額ヲ謹ンデ拂込
  ミニ來ルト云フ非常ナ武士道ニ富ンダ株主ガドレダケ居ルカト云フコトヲ私
  ハ疑フ、株金ノ未拂込ミ八百萬圓ハ必ズ拂込マシメル確信アリヤ否ヤ、若シ
  是アルナラバ、何故ニ今日直ニ之ヲ拂込マシメザルカ、是ガ五デアリマス、
  モウ少シデアリマスカラ、ドウゾ·······「救濟ヲ繼續スルトシテ賣止價格一千五
  百圓ヲ低下スルヲ得ザル理由如何」救濟ヲ此場合ニ打切ッテ仕舞ッテ此案ヲ否
  決シテ仕舞ヘバ勿論價格ハ下ガルデアリマセウ、之ヲ可決シテ救濟ヲ續ケ
  ルト云フコ。トニナルト、人爲デ以テ或相當ノ價格ガ維持サレ、千五百圓ヲ維
  持出來ルカモ知レマセヌガ、併シ其場合ニ於テ此千五百圓ヲ下ゲルト云フコ
  トハ出來マセヌカト云フコトガ私ノ質問デアリマス、ナゼサウ云フコトヲ申
  スカト云フト、今千五百圓デ以テ突ッ張ッテ、三、四、五、六、六月ノ中頃カラ
  末頃ニナッテ新絲ガ出テ來ルト、ソレニ依テ値段ガズット落チテ來ル、サウ云フ
  風ニ急轉直下ニ値ヲ落スト云フコトハ餘程考ヘモノデハナイカ、ソレニ付テ
  後ノ絲ヲ何トカ助ケテ吳レト云フ問題ガ起ル、斯ウ云フコトハナイ方ガ宜イ、
  私ハサウシヤウト云フ意見デハアリマセヌガ、假ニ救濟ヲ繼續スルトシテ、
  サウシテ賣止價格千五百圓ヲ下ゲタラドウカト云フノデアリマス、下ゲテイ
  ケナイナラバ其理由ヲ承ハリタイ、下ゲタラドウカト云フ理由ハ急激ニ六月
  ノ末、七月ニ行ッテ落スヨリ今カラ落シテ行ッタ方ガ宜クハナイカ、斯ウ云フ
  コトデアリマス、救濟ヲ繼續ストシテ賣止價格千五百圓ヲ低下スルヲ得ザル
  理由如何、ソレカラ今一ツ「帝蠶買入絲ノ賣拂時期ノ見込如何」此點ハ先刻二
  年ノ內ニ片ヲ付ケルト仰セニナッタノニ依テ、豫メ御答ヲ得テ居ルカノヤウニ
  思フ、其御話ノ意味ハ二年ノ內ニ賣ッテ仕舞フ、斯ウ云フ御話ダラウト思ヒマ
  ス、是ハ今一應伺ヒタイノデアリマスガ、私ノ見込デハドウモムヅカシクハ
  アリマセヌカ、亞米利加ノ景氣ガ上向イテ居ッテ繁昌シテ居ルナラバ、ソレハ
  モウ構ヒマセヌ、併シ繁昌ニ向フ意氣旺盛ナ大正四年ノ時デモ先刻仰セニナ
  ルヤウナ僅ナ絲ノ始末ヲスルニモ相應ノ時間ガ掛カッタ、況ヤ今日ノヤウナ段
  段景氣ノ下向キニナッテ居ル時機ニ於テ、二年間ニ賣ルト云フコトハ餘程我國
  ノ新絲ノ市場ヲ脅迫シハシマセヌカ、十萬梱ト申ストナカナカ大キナ分量デ、
  戰前ノ高ト比べマスト輸出高ノ三分ノ一カ、或ハ四分ノ一位ノ、可ナリ大キ
  ナ高ニナッテ居リマス、ソンナ大キナ分量ヲ、大正十年ナリ、十一年ノ新絲市
  場ニ投出スト云フコトニナッタナラバ、非常ニ市價ヲ攪亂スルデハアリマセ
  ヌカ、サウスルト此絲ハ先ヅ亞米利加ノ景氣ノ恢復スルマデハ一切賣ラナイ
  ヤウニシテ、シマッテ置カナケレバナラヌ、サウ云フ風ニ思ハレル、デ亞米利
  加ノ景氣ガイツ恢復スルカト云フト、戰爭デ非常ニ困ッタ歐羅巴大陸ノ景氣ガ
  恢復スルニアラザレバ亞米利加ノ景氣ハ迚モ以前ノヤウナコトニ恢復シナイ
  ノデアリマス、大體ニ於テ亞米利加ノ景氣ノ將來ハ甚ダ悲觀シテ居リマス、
  是ハ人〓ノ見込デアリマス、少ナクモ現在ノ狀態ニ於テハ容易ニ恢復スル見
  込ハ立タナイノデアリマス、其場合ニ當ッテ、而モ斯ノ如キ多額ノ分量ヲ擁シ
  テ居ッテ、之ヲ僅カ二年バカリノ間ニ片ヲ付ケルト云フ御見込ニ依テ來タル所
  以ガ私ニハ分ラナイ、之ヲ出來マスレバドウゾ御說明ヲ願ヒタイ、此點ガ、
  折角買ッタ生絲ノ後始末ヲドウスルカ、イッソノコト燒イテ仕舞ヘバ誠ニ始末
  ガ宜イノデアリマス、燒ク譯ニ行カナイデ之ヲ持ッテ居ラナケレバナラヌ、サ
  ウシテ其持ッテ居ル期間ガ非常ニ長キニ亙ルト云フコトニナルト、色〓玆ニ困
  難ガ起ル、其意味ヲ以テ伺ヒマス、「帝鐵買入絲ノ賣拂時期ノ見込如何」是ガ
  私ノ質問デアリマス
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=75

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• 076・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　御質問ノ要綱ガナカナカ精密デアリマシテ、
  却ッテ私ヨリ御答ヲスルヨリモ當局ノ政府委員ヨリ御答ヲシタ方ガ詳シカラ
  ウト思ヒマス、尙ホソレニ付テ必要ガアレバ又補足スルコトニ致シマス
  〔政府委員田中隆三君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=76

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• 077・田中隆三

  ○政府委員(田中隆三君)　御答へ申上ゲマスガ、隨分多岐ニ亙ッテ居リマスノ
  デ、或ハ遺漏ナキコトヲ保セマセヌノデ、ドウゾ又不足ノ所ハ後デ御申聞ケ
  ニ依テ補充イタスコトニ致シマスガ、大體ニ互リマシテ此生絲ノ價格ノコト
  ニ付テ、千五百圓ヲ當局ガ認メマシタコトニ付テ色〓御疑念ガアルヤウデア
  リマスガ、ソレハ御入用トアレバ詳シイ細項目ニ亙ッタ調書キヲ差上ゲマス、
  是ハ唯漠然ト千五百圓ガ宜シイト申シタノデハナイノデアリマス、先程來大
  臣カラ繰返シ御話ガアリマシタ如ク、凡ソ斯ノ道ニ經驗ノアル者モ、其邊ガ
  相當ノ價格デアルト云フコトヲ申シテ居リマスシ、又農商務ガ當局トシテ其
  絲ヲ作リマストキカラ、生絲ヲ拵上ゲマス間ノ總テノ生產費等ノ關係カラシ
  テ、此邊ガ適當デアルト認メテ出テ居ルノデアリマス、是ハ各項目ニ亙ッテ、
  通ジテノ御議論ノヤウニ承ハリマシタカラ、豫メ申上ゲテ置キマス、ソレ
  カラ第一ノ御尋トシテ救濟ヲ打切ッタナラバ米國ヘノ賣行ガ一層進ンデ行ク
  ト思フガドウカト云フコトデゴザイマスガ、是ハ今日ノ日本ノ生絲ノ思フヤ
  ウニ捌ケナイト云フコトハ、千五百圓ト云フ價格ノ爲ニ捌ケナイモノト當局
  ハ認メテ居リマセヌノデス、素ヨリ御質問ノ如クタダデ進上シヤウト云フヤ
  ウナ極端ナ場合、又タダデナクテモ非常ナ安價デ之ヲ投賣シヤウト云フ場合
  ハ是ハ別問題デゴザイマセウケレドモ、百圓下レバ賣レル、二百圓下レバド
  ウト云フヤウナ場合デナイノデ、各般ノ景氣ノ上カラドウシテモ思フヤウニ
  賣レナイノデアリマス、又今迄調べマシタ結果ニ依リマスルト詰リ安定ヲシ
  ナイ、先キノ見込ガ立タヌト云フコトガ此商賣ノ思フヤウニ進マナイ主ナル
  一ツノ理由ニナッテ居ルト云フコトヲ認メマシタノデ、帝蠶會社等ヲ後援イタ
  シマシテ、其價格ノ安定ヲ圖ル方針ニ出デタダケデアリマス、從テ例ヘバ日本
  ノ絲ヨリモ割安ノ絲ガ、或ハ支那ノ絲ニシマシテモ、其他ノ絲ニシマシテモ、
  其方ガ賣レテ行クカト云フト矢張賣レテ行カナイ、此事モ先程來ノ御注文
  モゴザイマシテ總テノ統計ハ差上ゲ得ルノデアリマスカラ、ソレ等ヲ御參酌
  ノ上ニ十分御〓究アラムコトヲ御願ヒ致シマス、ソレカラ第二ノ御質問ハ十
  分ニ聽取リ兼マシタノデ、或ハ間違ガアルカモ知レマセヌガ、此救濟ヲ打切
  ラナケレバ、新絲ノ安見込ノ爲ニ今外國ニ行ク八萬梱ト云フモノガ賣ルコト
  ガ出來ナクナルダラウ、斯ウ云フ御考ノヤウデアリマシタ、是ハ數囘申上ゲ
  タ如ク、生絲ハ要スルニ千五百圓內外ヲ以テ賣ルト云フ其生絲ノ値段ガ、千
  五百圓內外ト云フコトハ適當ナル値段ト云フノハ、生產費其他カラ割出シマ
  シテモ適當ナル値段ト認メテ居リマスカラ、其適當ナル値段ニハ世ノ中ノ特
  別ノ事情ノ起ラヌ限リハ、何カ特殊ノ事情ノ起ラナイ限リハ、其所謂安定ス
  ベキ所ニ將來ニ於テ安定スルモノト大體ハ認メテ居ルノデアリマス、從ッテ將
  來二箇年ナラ二箇年ノ計畫ヲ立テマシテ、帝蠶會社ガ此絲ヲ持ッテ居ルト云フ
  方針ヲマア立テテ居ル譯デアリマス、其間ニ必ズヤ相當ニ賣捌キノ出來ル時
  機ガ來ルダラウト、斯ウ見テ居ルノデアリマス、ソレデアリマスカラシテ、
  帝蠶會社ハ容易ニソレダケノ買込ンダモノハ今直グニ離スト云フコトニナッ
  テ居リマセヌカラ、此買込ミノ爲ニ千五百圓デ買ッタカラ新絲ガ安クナルト
  カ、或ハ買ハナイカラ打切ッタラドウトカ、打切ラナイカラドウトカ云フ、此
  打切ルト打切ラザルトニ依テ、絲ガ安クナル高クナルト云フコトハ直接ノ關
  係ハナイト思ヒマスノミナラズ、寧ロ打切ッテ自然ノ成行キニ委セテ、此實際
  ニ日本ニ餘ッテ居リマスル七萬梱ナリ八萬梱ナリト云フモノガ、自然ノ儘ニ此
  市場ニ殺到シテ來ルト云フコトニナリマスレバ、ソレコソハ益〓此市場ヲ攪亂
  イタシマシテ、價格モ益〓低落セシムルコトニナラウト思フノデアリマス、打
  切ルト御心配ニナレバ寧ロ打切レバ却ッテ非常ナ茲ニ市場ノ紛亂ガ出來テ安
  クナルト云フ虞ガアルト思ヒマス、確ニ私ハ現ハレテ來ル現象デアラウト思
  ヒマスノデ、丁度御尋ト反對デ、打切ラナケレバ安見込ミデアルト仰ッシヤル
  ケレドモ、打切ッタラバ大變安見込ミガ起ッテ來テ大騒動ガ經濟社會ニ、單リ
  蠶絲業ノミナラズ他ノ事業ニモ大影響ノ起ルコトト信ジテ居リマス譯デアリ
  やべ、ソレカラ第三ノ御尋ハ養蠶家ノ思惑ヲ如何ニシテ防グカ、若シモ防ギ
  得ザルモノトスレバ多大ノ生產ガ玆ニ出來テ參リマシテ、從ッテ價格モ下リ、
  養蠶家ガ大變ナ困難ニ陷ルダラウト云フヤウナ御尋ノヤウニ承知イタシマシ
  タガ、是ハ思惑ヲ特別ニ或手段ヲ以テ防グト云フ、特別ノ方法ニ依テ防グト
  云フコトハ唯今ニ於テ考ヘテ居リマセヌケレドモ、既ニ御承知ノ通リ先程カ
  ラモ此市場ノ甚ダ思ハシクナイ結果トシテ製絲家等モ各自相戒メマシテ、生
  產ノ制限ヲ致シタヤウナ次第デゴザイマス、又現在ノ如ク此市場ノ模樣ガ甚
  ダ捗〓シクナイト、斯ウ云フ事實ガゴザイマスレバ、從ッテ是カラ相當ノ資金
  ヲ投ジテ養蠶ノ業ヲ營ムト云フ者ノ上ニハ、自然ノ間ニ所謂其餘計作ルト思
  フ思惑ヲ手控ヘマシテ、生產ハソレガ爲ニ減ジテ來ルヤウナ結果ニナラウト
  思フノデアリマス、デアリマスカラシテ此市場ノ景氣ガ直ラヌニモ拘ハラズ、
  續々春蠶、夏蠶、秋蠶ト云フヤウナモノヲ拵ヘテ、サウシテソレガ爲ニ市場
  ニ大變ナ生產過剩ノ結果ヲ來シテ、養蠶家等ガ大困難ニ陷ルダラウト云フ
  ヤウナコトモ、決シテ今ノ模樣ニ於テハドウモ御心配過ギルコトデハアル
  マイカト存ジテ居ルヤウナ次第デアリマス、ソレカラ第四ノ御尋ト致シマシ
  テ三千萬圓ノ此度ノ補償ヲシテモ、九年度ノ全部ヲ買入レルコトガ出來ナカッ
  タナラバドウスルカ、斯ウ云フ御尋ネデゴザイマシタヤウデアリマスガ、是
  ハ繰返シ既ニ大臣ヨリモ申上ゲタ如ク、總テ斯ノ道ニ經驗モアリ各般ノ事情
  ヲ斟酌イタシマシテ、政府ニ於キマシテ此度ノ補償ヲスルト云フ手續ヲ取リ
  マスレバ唯今停滯シテ居リマスル所ノ、將ニ市場ニ現ハレントシテ居リマス
  ル所ノ大正九年度ノ生產額全部ハ買收シ得ルモノト見込モ立テテ居ル譯デア
  リマス、殊ニ上山君ノ御考ノ如ク千五百圓ト云フ價格ハ無理デ、寧ロソレヨ
  リモ下ガル、値段ガ安クナルト云フヤウナ御見込デアリマスガ、安クナルト
  云フ御見込ノ程度ハドレダケ安クナルト云フ御見込カ知レマセヌケレドモ、
  多少ナリトモ安クナルト云フコトガアリマスレバ、是ダケノ既ニ未拂込ニナッ
  ヲ居ル八百萬圓、ソレカラ又更ニ此政府ノ三千萬圓、之ヲ併セマシタ補助ガア
  ルトシテ、此九年度ノ生產ノ額ヲ買入レルコトニ於テ差支ガ生ジヤウト云フ
  コトハドウモ起リ得ナイト思ハレマス、ドウシテモ是ダケノモノガアレバ
  大體買入レニ於テ差支ヲ生ゼヌモノト認メテ居ル譯デアリマス、ソレカラ八
  百萬圓ノ殘額ノ拂込ノ見込ガアリヤ否ヤ、何故ニ直ニ拂込マシメザルヤ否
  ヤト云フ御尋デアリマスガ、是ハ申上ゲマスマデモナク、將來其拂込ノ必要
  ヲ認メマシテ、拂込マシムル場合ニ於テ拂込ミ得ザル者モ或ハ出來ルカモ知
  レマセヌ、是ハ何人ト雖モ果シテ全株主ガ聊カノ滯リナク總テ拂込ミ得ルト
  云フコトハ保證シマセヌ、併ナガラ株主タル者ハ拂込マナケレバナラヌ所ノ
  法律上ノ義務ガアルノデアリマスカラ、若シ不心得ノ人ガアリマシテ、拂込
  マナイヤウナ場合ニハ法律上ノ制裁ニ依テソレヲ强制スルヨリ外致方ナイト
  思ヒマス、併ナガラ今日何故ニ直ニ拂込マシメザルヤト云フコトニ付テハ、
  少シク御無理ナ御注文ノヤウニ考ヘラレマス、今日ハ御承知ノ通リノ經濟界
  ノ、殊ニ產業ニ從事スル者ノ事情ハ十分上山君ニ於テモ御承知ノ事情デゴザ
  イマス而カモ今斯ノ如ク難儀シテ居ル所ノ仕事ヲ進メマス上ニ於テ、先日
  第二囘ノ拂込ヲシ、又直ニアト全部ノ拂込ヲ强制スルト云フヤウナコトハ、
  ソレコソ非常ニムヅカシイ、心配シナケレバナラヌ問題デ、今日直ニ拂込
  マセルト云フコトハ確ニ出來得ラレナイ、不可能デアルト申上ゲテ宜シイノ
  デ、將來ニ於テ拂込ヲスルト云フコトニ付テハ不能ノコトデアルト申上ゲテ
  差支ナイト認メマス、ソレカラ又是ハ申上ゲルマデモナイコトデアリマスケ
  レドモ、兎モ角モ株主ハ全部ノ責任ヲ脊負ヲテ六百萬圓ノ拂込金ヲ皆損シテ
  モ構ハナイ覺悟ヲスル、尙其上ニ政府ガ又三千萬圓マデノ補償責任ヲスルト
  云フコトトナリマスレバ、殊ニ局ニ當ッテ居リマス勸業銀行ニ致シマシテモ、
  興業銀行ニ致シマシテモ、其ノ取扱方ニ基イテ快ク諸種ノ融通ヲ與ヘル譯デ
  アリマスカラ、ソレニ依テ直ニ拂込ヲセヌデモ仕事ノ進行ヲ見ルコトガ出來
  ル譯ニナルノデアリマス、ソレカラ第六ノ御尋ハ將來繼續スルモノトシテ、
  千五百圓ヲ低下スルヲ得ザル理由如何、是ハ多分千五百圓ハ高イカラ、モット
  此際切下ゲテハドウカト云フ御考ノ下ニ出タ御質問ト承知イタシマス、ソレ
  ハ既ニ前提ニ於テ申上ゲマシタ如ク、千五百圓ト云フモノハ相當ナ値段デア
  ルト云フ見込ヲ立テテ居ル譯デアリマス、併ナガラ今後諸般ノ事情ニ依リマ
  シテ、千五百圓ト云フモノハ到底維持スルコトガ出來ナイト云フコトモ起リ
  得ルノデアリマス、起リ得ルガ故ニ、卽チ此會社ガ或場合ニ於テハ自己ノ拂
  込ノ千六百萬圓モ丸デ捨テナケレバナラヌ、更ニ政府ガ三千萬圓ノ補償ヲシ
  ナケレバナラヌト云フ懸念ノ起ル所ハ其處ニアルノデ、必ズシモ千五百圓ト
  云フモノハ永久マデモ動カスベカラザルモノデアルト云フ譯デナイノデアル
  ケレドモ、生產費カラ割出シテモ、諸般ノ事情カラ致シマシテモ、正當ナル
  價格ナリト認メテ居リマスカラシテ、ソレハ極ク遠イ將來ハ兎ニ角ト致シマ
  シテ、二年マデハ持チ堪ヘルト云フ決心ヲ以テ品物ヲ抱込ンダ以上ハ、其正
  當ナル價格ノ到來スベキ時期ガアラウト思ヒマス、況ンヤ其抱込ンデ居ルコ
  トガ出來ナイト云フ場合ハドウカト云ヘバ、寧ロ世間ノ價格ハソレヨリ下ッタ
  場合デ、生產費以上ニ價格ガ下ッテ居ルト云フコトニナリマスレバ、自然ニ養
  蠶ヲスル者、製絲ヲスル者ハ手控ヘヲスルコトニナリマスカラ、世ノ中ノ生產
  ハ自然ノ間ニ減ッテ來ル、生產ガ自然ニ減レバ價格モ亦ソレニ連レテ自然ニ騰
  ルト云フコトガ起リマスカラ、帝蠶會社ノ持ッテ居ル品物ガ卽チ自然ノ有樣ニ
  立戾ッテ、正當ノ價格デ賣捌クト云フ途ガ付テ來ルダラウト私ハ思フノデアリ
  や、、第七ハ帝蠶ノ買入絲ノ賣拂ノ見込如何ト云フ御話デアリマスガ、丁度
  唯〓第六ニ於テ御答ヲ申上ゲタコトテ、其ノ御疑問ガ盡キテ居ルモノト認メ
  やく、大體右ダゲヲ御承知ヲ

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• 078・上山滿之進

  ○上山滿之進君　今ノ御答辯ノ點ニ付テ種々疑問ヲ持ッテ居リマスガ、一々ソ
  レニ付テ再質問ヲ致シマスト、時モ移リマスカラ差控ヘマス、唯一二件大切
  ナ點ニ付テ伺ッテ置キマス、政府ノ御考デハ一俵千五百圓ト云フ値段、生產費
  ニ當ル、斯ウ仰セニナルノデアリマスカ、チヨットソレヲ伺ヒマス
  〔政府委員田中隆三君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=78

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• 079・田中隆三

  ○政府委員(田中隆三君)　御尋ノ通リデゴザイマシテ、先ヅドチラカト申シ
  マスト少ナクトモ千五百圓デナケレバナラヌ、無論全國デ總テ生產費ハ同
  一デハゴザイマセヌ、所ニ依リ種々違ヒガアリマスケレドモ、其中マデ行キ
  マセヌデモ、寧ロ中ヨリモ割安ニ出來ル所ヲ目度ト致シマシテ、千五百圓ト
  云フモノデナケレバ是ハ引合ハナイ商賣デアルト云フ結論ヲ得テ居ルノデア
  リマス

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• 080・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　會議時間ノ延長ヲ宣〓イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=80

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• 081・上山滿之進

  ○上山滿之進君　唯今ノ生產費ト仰セニナルノハ、九年絲ノ生產デアラウト
  思ヒマス、十年絲ヲ造ルニハ肥料其他ノ生產費ガ非常ニ下ッテ居ルノデアリマ
  スカラ、十年絲ハ千五百圓以下デ宜イ、斯ウ云フ自然ノ歸結ニナルヤウニ思
  フノデアリマス、是ハ別ニ御質問シナイデモ勿論サウデアラウト思ヒマス、
  サウシテ別ニ質問ヲ致シマス、宜ク分リ兼ネマシテゴザイマスガ、段々伺ッテ
  見ルト、政府ハ大正十年ノ絲モ一俵千五百圓ガ相當デアル、又一俵千五百圓
  ノ價格ヲ大正十年絲モ維持スルモノデアル、斯ウ御見込ニナッテ居ルヤウデア
  リマスガ、其通リデアリマスカ、是ダケト云フト、根本ニ於テ私ハ違フノデ
  アリマス、此點ヲ極ク明カニ今一應繰返シマス、政府ハ大正九年ノ絲ヲ千五
  百圓デ適當ナリト、斯ウ御見込ニナッテ居ル、是ハ申サヌデモ宜シイ、大正十
  年度········今年ノ新絲モ千五百圓ヲ以テ適當ナリト思フ、又此適當ナル價格ガ
  實現スルモノデアル、斯ウ御考ヘニナッテ、其根抵ノ上ニ先般ノ御答辯ト思フ
  ノデアリマスガ、此點ヲ明カニ伺ッテ置キマス
  〔政府委員田中隆三君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=81

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• 082・田中隆三

  ○政府委員(田中隆三君)　御答申上ゲマスガ、先刻來申上ゲマシタ其價格ノ
  計算ハ固ヨリ十年度ノ·九年度ノ絲ニ付マシテ、生產費ニ付テ申上ゲタノ
  デアリマス、而シテ之ヲ十年度ノ絲ニ付テドウ考ヘルカト云フ御尋デアリト
  スレバ、十年ハ多少事情ガ違ヒマスルカラシテ、幾ラカ安クナルカモ知ラヌ
  ケレドモ、大體ニ於テ矢張大差ガ無イモノト認メテ居リマスル、殊ニ此價格
  ノ一番元ヲ致シテ居リマスル勞力ノ、勞働賃ガ一向ニ變化ヲ見テ居リマセヌ
  ノデゴザイマス、大シタ區別ガ無イモノト思ウテ居リマスガ、多少ノ變化ハ
  ソレハゴザイマセウ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=82

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• 083・上山滿之進

  ○上山滿之進君　先刻來ノ御說ニ依テ能ク分リマシタ、但シ分リマシタガ實
  ハ甚ダ驚入ッタノデアリマス、是ハ私バカリデハアリマセヌ、思フニ當業者ハ
  決シテサウハ考ヘテ居ナイ、大正九年度ノ絲ハ、ソレハ其通リデスガ、十年
  ノ絲ハ餘程下ガルト私思ウテ居ル考デゴザイマス、是ハモウ意見ノ相違デア
  リマス、大ニ驚キナガラ···此上申上ゲヤウハ無イ、其御考デ此問題ヲ御答
  辯ニナルト、極メテスラ〓〓ト參リマスガ、其根柢ガ甚ダ驚愕ノ外ナイノデ
  アリマス、是ダケ述ベテ質問ヲ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=83

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• 084・江木千之

  ○江木千之君　唯今議題ニナッテ居リマスル豫算案ハ、審査期限ヲ審査結了マ
  デト致シタイト思ヒマス、ドウゾ御贊成ヲ

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• 085・八條隆正

  ○子爵八條隆正君　贊成
  〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=85

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• 086・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　江木君ノ審査期限ニ關スル動議ハ御異存ゴザイマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=86

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• 087・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=87

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• 088・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第七、取引所法中改正法律案、政府提出、第
  一讀會
  取引所法中改正法律案
  右
  勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
  大正十年三月九日
  內閣總理大臣原敬
  農商務大臣男爵山本達雄
  取引所法中改正法律案
  取引所法中左ノ通改正ス
  第四條株式會社組織ノ取引所ハ他ノ株式會社組織ノ取引所ヲ合併スル場
  合ニ限リ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ存在シタル地區內ニ支所ヲ設クルコトヲ
  得支所ノ數ハ其ノ合併ニ依リ消滅スル取引所及支所ノ數ヲ超ユルコトヲ
  得ス
  第六條中「仲買人及」ヲ削リ「仲買人ニ」ヲ「取引員ニ」ニ改ム
  第八條取引所ハ政府ノ認可ヲ受ケ取引所ノ賣買取引ニ附帶スル業務ヲ營
  ムコトヲ得
  第三章取引所ノ會員及取引員
  第十條第一項ヲ削リ同條中「仲買人」ヲ「取引員」ニ改ム
  第十一條中「帝國臣民」ノ下ニ「又ハ帝國法令ニ依リ設立シタル會社」ヲ加ヘ
  「仲買人」ヲ「取引員」ニ「婦女、未成年者、」ヲ「無能力者、」ニ、「其ノ執行ヲ受
  クルコトナキニ至リ」ヲ「刑ノ執行ノ免除ヲ得」ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加
  フ
  合名會社、合資會社又ハ株式合資會社ニ在リテハ其ノ無限責任社員ノ全
  員カ帝國臣民タルモノ、株式會社ニ在リテハ其ノ資本ノ半額以上及議決
  權ノ過半數カ帝國臣民又ハ帝國法令ニ依リ設立シタル法人ニ屬シ其ノ取
  締役其ノ他ノ業務ヲ執行スル役員ノ全員カ帝國臣民タルモノニ非サレハ
  會員又ハ取引員トナルコトヲ得ス無限責任社員又ハ取締役其ノ他ノ業務
  ヲ執行スル役員中前二項ニ該當スル者アル場合亦同シ
  第十一條ノ二中「第十條第一項ノ要件ヲ缺キ又ハ」及「第十條第一項ノ要件
  ヲ缺キ若ハ」ヲ削リ「第一項若ハ第二項」ヲ「第一項、第二項又ハ第四項」
  ニ、「第一項第二項」ヲ「第一項、第二項若ハ第四項」ニ、「仲買人」ヲ「取引員」
  ニ、「第一項又ハ第三項」ヲ「第一項、第三項又ハ第四項」ニ、「第一項若ハ第三
  項」ヲ「第一項、第三項若ハ第四項」ニ改ム
  第十一條ノ三取引員取引所ノ役員タル認可ヲ受ケタルトキハ其ノ免許ハ
  效力ヲ失フ
  第十一條ノ四會員又ハ取引員ハ第二項但書ノ場合ヲ除クノ外支店、出張
  所其ノ他何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハス二以上ノ場所ヲ以テ同一取引
  所ノ賣買取引ノ取扱ヲ爲ス場所ト爲スコトヲ得ス
  何人ト雖取引所ノ賣買取引ノ委托ノ代理、媒介又ハ取次ヲ營業ト爲スコ
  トヲ得ス但シ會員又ハ取引員ニシテ農商務大臣ノ認可ヲ受ケタルモノハ
  此ノ限ニ在ラス
  第十二條第一項ヲ削リ同條中「仲買人」ヲ「會員又ハ取引員」ニ改ム
  第十三條中「取引所ノ仲買人」ヲ「取引員」ニ改ム
  第十四條中「取引所ノ會員及仲買人」ヲ「會員又ハ取引員」ニ改ム
  第十五條中「仲買人」ヲ「取引員」ニ、「五百圓」ヲ「千圓」ニ改ム
  第十五條ノ二中「若ハ仲買人」ヲ「若ハ取引員」ニ、「又ハ仲買人ノ」ヲ「又ハ其
  ノ」ニ改ム
  第十五條ノ三中「仲買人」ヲ「取引員」ニ改メ「死亡シ」ノ下ニ「解散シ」ヲ、「死
  亡、」ノ下ニ「解散、」ヲ加フ
  第四章取引所ノ役員及商議員會
  第十六條中「取引所ノ仲買人」及「仲買人」ヲ「取引員」ニ改メ「取引スル」ノ下
  ニ「株式會社組織ノ」ヲ加フ
  第十六條ノ二、第二十七條及第二十八條中「仲買人」ヲ「取引員」ニ改ム
  第十七條中「役員又ハ取引所ノ」ヲ「株式會社組織ノ取引所ノ役員又ハ」ニ、
  「仲買人」ヲ「取引員」ニ改ム
  第十七條ノ二取引所ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ商議員會ヲ置キ取引所ニ關
  スル重要ナル事項ヲ附議スヘシ
  第十八條取引所ノ賣買取引ノ期限ハ有價證劵ニ在リテハ二箇月、米ニ在
  リテハ三箇月、蠶絲ニ在リテハ六箇月、其ノ他ノ商品ニ在リテハ勅令ノ
  定ムル期間ヲ超ユルコトヲ得ス
  第二十二條第一項ヲ左ノ如ク改ム
  取引所ハ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ賣買取引ノ違約ヨリ生スル損害ニ付賠
  償ノ責ニ任スルコトヲ得
  第二十二條ノ二株式會社組織ノ取引所ハ前條ノ規定ニ依リ賠償ノ責ニ任
  スルトキハ營業保證金ヲ政府ニ納ムヘシ
  第二十四條ノ二取引所ノ賣買取引ノ委託者ハ會員又ハ取引員カ委託契約
  ニ違ヒタル場合ニ於テ其ノ違約ニ因ル債權ニ關シ違約シタル會員又ハ取
  引員ハ身元保證金ニ付他ノ債主ニ對シ優先權ヲ有ス
  前條ノ優先權ハ前項ノ優先權ニ對シ優先ノ效力ヲ有ス
  第二十五條中「仲買人」ヲ「會員又ハ取引員」ニ、「定期取引」ヲ「賣買取引」ニ、
  「三箇月」ヲ「一箇月」ニ改ム
  第二十六條中「各仲買人」ヲ「各會員又ハ各取引員」ニ改ム
  第二十六條ノ二差金取引ヲ爲ス取引所類似施設ヲ爲シ又ハ其ノ施設ニ依
  リテ取引ヲ爲スコトヲ得ス
  第三十一條第十七條第一項ノ規定ニ違反シ又ハ同條第二項ノ特別ノ利害
  關係ヲ生スルコトヲ目的トスル行爲ヲ爲シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ
  處ス
  第三十二條ノ三第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
  四第二十六條ノ二ノ規定ニ違反シタル者
  第三十二條ノ六中「仲買人」ヲ「取引員」ニ改メ「若ハ第十二條第一項」ヲ削ル
  第三十二條ノ七本法ノ罰則ハ法人ニ在リテハ其ノ行爲ヲ爲シタル理事、
  取締役其ノ他ノ業務ヲ執行スル役員ニ之ヲ適用ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十八條ノ改正規定中有價證劵ノ賣買取引ノ期限ニ關スル規定ハ勅令ヲ以
  テ他ノ規定ヨリ後ニ之ヲ施行スルコトヲ得但シ其ノ施行ノ期日ヲ大正十三
  年四月一日ヨリ後ト爲スコトヲ得ス
  本法施行ノ際現ニ營業スル仲買人ハ其ノ營業部類ニ付本法ニ依リ其ノ取引
  所ノ取引員タル免許ヲ受ケタルモノト看做ス
  本法施行前ニ爲シタル取引所ノ賣買取引ニ付テハ其ノ取引ノ結了ニ至ル迄
  仍從前ノ例ニ依ル
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=88

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• 089・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　唯今議題ト相成リマシタル取引所法案ノ說明
  デゴザイマスガ、此ノ取引所ノ一國產業經濟ノ發達ニ至大ノ關係ヲ有スル、極
  メテ重要ナル職責ヲ持ッテ居ル機關デアルコトハ今更申述ベルコトモナイノ
  デアリマスガ、現在取引所法ハ明治二十六年ノ制定ニ係ッテ居リマス、政府ハ
  爾來必要ニ應ジマシテ、同法及ビ關係法令ノ改正ヲ爲シマシテ、以テ時勢ノ
  進運ニ件ハシムル處ノ處置ヲ執ッテ居ル次第デアリマスルガ、我ガ經濟界ハ近
  時非常ナル發達ヲ遂ゲマシテ、現行取引所制度ヲ以テシテハ、社會ノ需要ニ
  應ジテ其本來ノ職責ヲ全クセシムル上ニ於キマシテ、遺憾ノ點ガ少ナクナイ
  ノデアリマス、加フルノニ當業者竝ニ一般國民中ヨリモ、取引所制度ノ改善
  ヲ求ムル聲ガ漸次ニ高マリツヽアル狀態デアリマス、此時ニ當リマシテ、政府
  ハ速ニ適當ナル改善策ヲ講ジマシテ、其解決ヲ計ルノ必要ヲ認メマシテ、昨
  年ノ特別議會ニ於テ調査費ノ協賛ヲ得テ、其後取引所法改正調査委員會ヲ設
  ケマシテ、改善ニ關スル調査〓究ヲ爲サシメ、其調査ニ基キマシテ、法規ヲ
  改正シテ社會ノ實際ニ適應セシメ、取引所本來ノ機能ヲ發揮セシムル上ニ於
  テ遺憾ナカラシムルノ趣旨ヲ以チマシテ、玆ニ取引所法中改正法律案ヲ作成
  イタシテ本議會ニ提出シタル次第デアリマス、今囘改正ヲ致シマシタル、其
  ノ根本義ニ於キマシテハ、直物取引ヲ助成シ、無謀ナル投機取引ヲ成ベク抑
  制シテ、取引所ガ當業者ノ〓體トシテ物資ノ需給ヲ調節シ、公正ナル相場ヲ
  公定スル機關タル機能ヲ十分發揮シタイト云フ趣旨ニアルノデアリマス、此
  趣旨ニ依リマシテ取引所ノ組織、賣買取引ノ擔保、賣買取引方法、及ビ現物
  市場ニ關スル事項ヲ主トシテ考慮ヲ致シ、諸般ノ改正ヲ加ヘタ次第デアリマ
  ス卽チ取引所ノ組織ニ付マシテハ急激ナル改廢ニ依ル經濟界ノ動搖ヲ十
  分顧慮イタシマシテ、現在ノ制度ニ對シ、大ニ此ノ會員組織、其長所ヲ加味
  イタシマシテ、併セテ將來ニ於キマシテハ會員組織ノ取引所ノ實現ヲ容易ナ
  ラシムル方ニ努メタ次第デアリマス、又賣買ノ擔保ニ付マシテハ、任意擔保
  ヲ原則ト致シ、賣買取引上ノ信用ヲ基礎トシテ堅實直正ノ取引ヲナサシメ、
  取引者ノ自治自制ニ依テ放漫ナル投機ニ陷ラザラシメルコトニ注意ヲ致シマ
  シタ、最モ必要ニ應ジ政府ノ認可ヲ受ケテ取引所ガ擔保ノ責任ヲ負フノ制度
  モ設ケテ居ル次第デゴザイマス、次ニ賣買ニ付マシテハ不健全ナル投機取引
  ノ抑制上、有價證劵ノ最長期ヲ二箇月ニ短縮イタシマシテ、長期ノ取引ニ付
  テハ證據金ヲ掛ケ合ハサシメ、其他ノ方法ニ付テハ社會ノ要求ニ應ズルコト
  ヲ期シタノデアリマス又直物取引ニ傾カセルコトニ、前申ス如キモノニシ
  テ之ニ力ヲ費シタ次第デアリマス、又此大量ノ取引ニ付マシテハ需給ヲ
  一箇所ニ集中シテ、公定相場ヲ決定スルコトヲ至當ト致シタ次第デアリマス、
  且ツ有價證劵ハ最モ完全ナル投機物件ナル爲ニ、有價證劵ノ取引所ハ總テ取
  引所內ニ於テ取引所法ニ依ラシムルコトトシタノデアリマス、更ニ取引所以
  外ニ於テ差金取引ヲ爲ス取引所類似施設ヲ爲シ、又斯ル施設ニ依リテ取引ヲ
  爲スコトヲ嚴禁ヲ致シマシタ、徒ラニ投機心ヲ抑壓シ、社會ニ害毒ヲ流スコ
  トヲ防止セムトスル趣意ニ外ナラヌノデアリマス、以上ノ趣意ニ依リマシテ
  制定シタ次第デゴザイマス、ドウカ御審議ノ上御協贊アラムコトヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=89

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• 090・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　私ハ一二囘ニ亙ッテ農商務大臣、一囘大藏大臣ニ質問イ
  タシタウゴザイマス、極メテ簡單デゴザイマスカラ當席カラ發言致シマス、
  御許シ下サイマスカ

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• 091・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマス

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• 092・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　今朝本員ガ此法案ヲ受取リマシテ熟讀イタシマシテゴ
  ザイマスガ、ドウモ杜撰孟浪、殆ト一夜造リト言ッテ宜シカラウカト思ヒマス、
  唯〓ノ說明ヲ承リマスト益〓其感ヲ深ク致シマス、ソレデ疑ヒハ澤山アリマシ
  テ質問モ澤山イタシタイノデゴザイマスガ、今朝來上山君江木君カラモ度〓
  御話ガアリマシタ如ク、會期モ最早餘日モゴザイマセズ重要ナル案ガ由積シ
  テ居ル際デアリマスカラ、此貴重ナル時間ヲ澤山費スト云フコトハ心苦シウ
  ゴザイマスデ、要點二三ヲ質問イタシマス、第一ニ農商務大臣ニ承リタイノ
  デゴザイマスガ、此法案中ニ印刷ノ何カ誤リカ、脫漏ガアルト云フヤウナ話
  ガアリマスガ、ソレハアルノデアリマスカ無イノデアリマスカ、シッカリ其處
  ヲ伺ヒマス
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

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• 093・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　私ハツイ申述ベルノヲ落シマシタ、此御配リ
  申シマシタル改正案ノ中ニ文字ノ誤植、遺漏ガアルノデアリマス、ソレヲ今
  朝氣付マシタノデゴザイマスガ、早速印刷イタシマシテ、改メテ一刻モ早ク
  御〓シスルヤウニ當局へ申付ケテ居リマス、何レ出來次第ニ御手許ヘ差上ゲ
  ルコトニ致シマス、ツイ申上ゲ落シマシタ

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• 094・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　其條項ヲチヨット承リ置キタイノデアリマス、論議スル
  都合モゴザイマスルデ御讀ミヲ願ヒタウゴザイマス
  〔政府委員田中隆三君演壇ニ登ル〕

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• 095・田中隆三

  ○政府委員(田中隆三君)　申上ゲマスガ、此法案ノ中ニ「附」ト云フ〓ニニ
  キマシタ「附」ト云フ字ガゴザイマスガ、ソレハ〓扁ヲ取ッタ「付」ト云フ字ニ直
  ルノデス、ソレカラ「委托」ト「托」ト云フ字ガ手扁ニ書イテゴザイマスガ、ソ
  レハ言扁ニ直ルノデアリマス、ソレカラ「見做」ト云フ所ガ一箇所ゴザイマス
  ガ、ソレハ「見」ノ字ガ書イテゴザイマスガ、ソレヲ「看」ト云フ字ニシテ「看
  做」ト云フ風ニ直スコトガ文字ノ誤リデゴザイマス、ソレカラ重要ナコトデゴ
  ザイマシテ、第四條ノ二トシテ「有價證券ヲ賣買取引スル市場ハ本法ニ依ルニ
  非サレハ之ヲ設立スルコトヲ得ス」ト云フ一條ガ脫漏イタシタノデアリマス、
  其一條ガ脫漏イタシマシタノガ肝腎ナル誤リデゴザイマス、アトハ今申上ゲ
  ダ文字ヲ印刷所デサウ云フ間違ヒヲ致シマシタ、ソレダケ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=95

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• 096・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　ドウカ今後モアルコトデアリマスカラ、ドウゾ十分御
  注意ヲ願ヒマス、ソレカラ法案ノ第十八條、取引所賣買取引ノ期間ニ關シテ
  特ニ大臣ノ御說明ガアリマシテ、是ハ無謀ナル長期ノ取引ヲ、改正調査委員
  ガ立案シタ最モ改善シタ案ニ依テ之ヲ出サレタト云フ御話デアリマス、然ラ
  バ其案ヲ此所ニ御示シヲ願ヒタイ、ソレカラ之ニ依リマスルト云フト有價證
  劵ハ現在三箇月ヲ二箇月ニシテ一箇月短縮サレ、米ハ現在ノ儘デ、蠶絲ハ三
  箇月ヲ六箇月ニ延バシタ、是ハ大臣ノ御話ガアリマシテゴザイマスガ、抑〓物
  ノ賣買取引ト云フモノハ、現物ノ賣買交易ト云フモノガ根本ノ趣意デアリマ
  スソレヲ米トカ或ハ其他生產ヲ要スル物品ト云フモノハ、生產ニ或期間ヲ
  要シ、又生產地カラ需要地、詰リ市場ヘ持ッテ來ル間ノ輸送期間モアルヤウナ
  場合ニハ、其期間ノ間ニ相場ノ變動ガアッテ、價格ノ維持ヲ保ツ爲ニ、現物賣
  買ニ於テ便宜上定期ノ賣繫ギヲ致スノデアリマス、ソレデドウモ此米、此所
  ニ書イテゴザイマス蠶絲其他ヲ除イテ、有價證券ニ至ッテハ期限ヲ定メズ賣買
  スルト云フコトガ本則デアラウト思ヒマス、ソレデ三箇月ヲ一箇月減ジテ二
  箇月ニサレタト云フコトハ、先程大臣ノ御說明ガアッタ無謀ナル長期ノ取引ト
  云フコトヲ意味スルノデアラウト思ヒマス、サウスレバ何故全然根本カラ御
  改善ノ意味ヲ以テ、此定期ノ取引ト云フコトヲ御止メニナラナンダノデアル
  カ之ヲ承ハリタイ、ソレカラ此附則ニ依リマスト云フト、殊ニ此ノ有價證劵、
  最モ其期間ヲ定メテ賣買スルト云フコトノ弊害ノアル有價證劵ニ限リ、本案
  ノ實施ト云フモノヲ十三年ノ四月一日、三年モ後ニキメラレタト云フノハド
  ウ云フ譯デアルカ、此二點ヲ承ハリタイ
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

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• 097・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　此ノ有價證劵ノ賣買ヲ二箇月ニ致シマシタト
  申シマスルノハ、御承知ノ通リニ今日ハ三箇月ニ相成ッテ居リマス三箇月ニ
  ナッテ居リマスカラ、ソレヲ今日餘リ短縮シテ激變ヲ生ズル如キコトヲ爲シマ
  スト、現在ノ取引所ノ利害ニ大關係ヲ持ッテ來マス、從ヒマシテ經濟上ニ激變
  ヲ生ズル虞レガアルノデアリマス、ソコデ漸次ニ斯ウ云フモノハ矯正スルガ
  宜シイト云フコトデ、先ヅ此所デ或年限ヲ與ヘマシテ二箇月ト云フコトニシ
  タナラバ、ヒドイ變動モ起キズシテ此改正ガ出來ヤウカト信ジマシテ、斯ク
  致シタルコトデアリマス御承知ノ通リニ明治三十三四年ノ頃ト記憶シテ居
  リマスガ、時ノ政府ハ三箇月ヲ二箇月ト致シマシテ、大ニ取引所ノ取引ニ大
  關係ヲ持ッテ來マシテ、遂ニ一度斯ク致シマシタガ餘儀ナク又勅令ヲ改正イタ
  シマシテ三箇月ニ復活シタヤウナコトデアリマシテ、ドウモ斯ウ云フコトハ
  餘リ經濟社會ニ利害ノ關係ノアル、殊ニ激變ノ生ズルコトハ宜シクナイト云
  フ積リデ、斯ク致シマシタル譯デアリマス、ソレカラ米、絲ト云フ如キ物品
  ノ賣買デ見マスト、餘程株劵トハ趣ガ違ッテ居リマス、絲ノ如キハ外國ニ向ヒ
  マシテ關係ノアルモノデアリマシテ、御承知ノ如ク綿糸トカ又棉トカ云フ如
  キ世界的物品ノ賣買ハ、約一箇年ト云フコトヲ以テ其期限トシテアルヤウナ
  ルコトデアリマスカラシテ、先ヅコヽラアタリニシタ方ガ宜シイト云フ積リ
  デアリマス、ソレカラ定期ニ付テナゼ斯ウ云フ期間ヲ定メテスルヤウナコト
  ヲスルカト云フ、是ハ申ス迄モアリマセズ世界的ノ、取引所ハ多ク會員組織
  ニナッテ居ルノデアリマス、此ノ會員組織ハ至極宜シイコトト思ヒマスル、思
  ヒマスガ矢張リ是マデ殆ド四十何年ト云フ間ノ習慣ヲ以テ定期ノ取引ヲ開イ
  テ居ル我國ノコトデアリマスカラ、ソレヲ此所デ統一ノ爲ニ餘リ激變ヲ生ズ
  ベキ改正ハ面白クナイ、故ニ先ヅココラアタリノモノニシテ會員組織ノモノ
  ヲ改正ノ點ニ加味シテ居ッタナラバ、追〓理想的取引ニ向フノデアラウト云フ
  積リデ斯ク致シタ次第デアリマス

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• 098・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　私ノ質問イタシマシタコト以外ノ、蠶絲ノ取引法トカ
  或ハ會員組織トカ言フ御話ガアリマシタガ、私ハサウ云フコトハ御尋ネイタ
  シマセヌ、此ノ有價證劵ヲ二箇月ニ縮メラレタト申スノハ、先程御話ガゴザ
  イマシタ改正調査委員會デ立案サレタ改善ノ成案ニ依テ出來タモノデアリマ
  スカ、其ノ調査會ノ成案ヲドウゾ御示シヲ願ヒタイト云フコトガ一ツ、ソレ
  カラ三箇月ノモノヲ二筒月、タッタ一箇月縮メラレタト云フモノハ、今ヒドイ
  變動ヲ起スト困ルカラト云フコトハ能ク分リマシタ、併ナガラ附則ヘ持ッテ
  行ッテ三年ノ後ニ之ニ限リ實施ヲスルト云フ、有價證劵ヲ除イテ外ノモノト云
  フモノハ生產スルニ或期間ヲ要シ、生產地カラ需要地ヘ卽チ市場ヘ持ッテ來ル
  ニハ運搬ノ期間ヲ要スル、其間ニ價格ノ變動ガアルト困ルカラト云フノデ、
  詰リ價格ノ保險ヲスルト云フ意味デ其意義ガアルコトデアル、所ガ有價證劵
  ニ於テサウ云フ期間ヲ定メルト云フコトハ無意義ナ話、無意義ナモノデアル
  ニ拘ラズ、依然ト是ヘ矢張期間ヲ置カレルト云フモノハドウ云フモノデア
  ルカ、所ガソレヲ承ハリマスト云フト一箇月縮メタト仰ッシヤルノハ、詰リ經
  濟界ニ大ナル變動ヲ與ヘテハナラヌカラ一箇月縮メタト言ヘバ其所ハ能ク
  分リマシタ、サリナガラ其上へ、無クッテモ宜イモノノ上ニ又之ニ限リ施行期
  日ヲ大正十三年四月一日、三年モ先キニ行フト言ハレルノハドウ云フコトデ
  アルカ、ソレヲ承ハリタイ、其二點デス
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=98

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• 099・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　三年ノ後ニ決メマシタノハ、矢張今此所デ
  突然之ヲ施行シマスト云フト、變動ガ生ジ易イノデアリマスカラシテ、成べ
  ク其變動ヲ、激變ヲ防ギタイト云フノ精神ニ於キマシテ、先ヅ永イ間ノコト
  デゴザイマスルカラ、其久シイ間ノ規則ヲ改正シマスルニ付テハ、先ヅ三年
  位ナ年限ヲ設ケテ、サウシテ徐ロニ用意ヲサシタナラバ、ヒドイ變動ヲ來サ
  ズシテ行クデアラウト云フ見込ニ於テ、斯ク致シタ次第デアリマス、ソレカ
  ラ調査ニ付シマシタル書類ニ於キマシテハ、何レ御手許ニ御〓シ申上ゲルコ
  トニ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=99

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• 100・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　餘リ諄ウゴザイマスガ、モウ一應承ハリマスガ、現在
  ノ定期取引所ト云フモノハ、大正十一年或ハ一兩年ノ內ニ滿期ニナル筈デア
  リマス、ソレニ施行期日ヲ大正十三年ト御決メニナッタノハドウ云フモノデア
  リマスカソレモ伺ヒタイ
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=100

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• 101・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　是ハ取引所ニ依リマシテ種々ニナッテ居リマ
  シテ、其前ニ期限ノ達シマスルモノモアレバ、又ソレヨリハズット遲レテ來ル
  モノモアルノデアリマス、唯是ハ約三年位ナ年限ヲ置テ、サウシテ定期ノ月
  ヲ短縮シタナラバ、餘リ變動ガ起ラズシテ宜カラウト云フ方カラ起リマシタ
  ノデス、其期限ナドノコトニ付テハ餘リ重キヲ置テ爲シタノデハアリマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=101

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• 102・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　矢張附則デゴザイマスガ「本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム」トアリマスガ、イツカラ實施サレル御考デアリマスカ、ソレヲ
  承ハリタイ
  〔政府委員田中隆三君演壇ニ登ル〕

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• 103・田中隆三

  ○政府委員、田中隆三君)　此ノ施行期日ハ成ベク早ク準備ヲ整ヘマシテ、實
  施イタシタイ積リデゴザイマスケレドモ、色〓當局トシテノ準備モ必要デゴ
  ザイマスルシ、又各取引所ニ於テモ種々ナ準備ガ要ルノデゴザイマスカラシ
  テ、矢張數箇月ヲ要スルコトト認メテ居リマス、ソレカラ先程御尋ネノ期限
  ノコトヲ序デニ申上ゲマスガ、大部分ハ十二年ノ六月頃ト記憶シテ居リマ
  ス、ケレドモ大臣ノ御話ノ如ク其後ズット長イ後迄モ、十六年以後ニ及ンデ居
  ルノモゴザイマス、多クノモノハ今後二箇年半以上、三年內外ノ所デ消滅ス
  ルヤウナコトニナッテ居リマス

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• 104・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　今度ハ大藏大臣ニ御尋ネ致シマス、現行ノ取引稅法ト
  云フモノハ不備不完全ナ點ガ澤由アリマス、ソレデ何レ此法案ニ關聯シテ稅
  法ノ改正ト云フモノガ必要デアラウト思ヒマス、是ハドウ御考ヘデアリマス
  カ伺ヒマス
  〔國務大臣子爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕

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• 105・高橋是清

  ○國務大臣(子爵高橋是〓君)　御答ヘ致シマス、稅法ノ改正ハ全ク別ト致シ
  マシテ、此ノ取引所法改正ガ行ハレマシタガ爲ニ、ソレノ爲ニ改正ヲ要スル
  ト云フコトハ今日見テ居テ居リマセヌノデアリマス、現行ノモノヲ適用シテ
  行ケルト斯ウ信ジテ居リマス

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• 106・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　鈴木摠兵衞君ハ、先刻何カ御發言ヲ御求メニナル
  趣デアリマシタガ

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• 107・鈴木そう兵衞

  ○鈴木摠兵衞君　左樣デゴザイマスガ此際申述べテ宜シウゴザイマスカ

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• 108・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマス

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• 109・鈴木そう兵衞

  ○鈴木摠兵衞君　第十八條デ各取引ノ限月ヲ定メラレマシタガ、綿糸ト云フ
  モノガ揭ゲテアリマセヌ、勅令ヲ以テ定メルト云フ部分ニ這入ルコトトハ思
  ヒマスルガ、昨年ノ經濟界ノ變動ノ際ニハ、綿糸ノ暴落ト云フコトガ一般ノ
  上ニ非常ナ影響ヲ與ヘタ、其原因ニハ種々アリマスケレドモ、其時ノ輿論ハ
  餘リ此期限ガ長イカラ、却ッテソレガ爲ニ種々ナ弊害ガ生ズルト云フコトハ一
  般ノ認メタ所デゴザイマス、農商務大臣ニ於テハ此期限ヲ玆ニ定メズニ置カ
  レタト云フコトハ、矢張一箇年位迄ハ許ス積リデアリマスカ、或ハ〓絲同樣
  ニ六箇月位ヲ期限ニスルノデアリマセウカ、既ニ綿糸業者ノ救濟ト云フ時ニ
  モ、其筋ニ於テハ六箇月位ノ期限ニ縮メネバナルマイト云フ御內議ガアッタト
  云フヤウニ伺ヒマス、如何ナル譯デ定メテナイノデアリマスカ、チヨット伺ヒ
  マス
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

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• 110・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　是ハ御承知ノ通リ綿糸綿布ノ取引ハ世界的ニ
  於テ一年ヲ極度トシテ居ルノデアリマス、而シテ是ハ唯取引ニ於テ一年ヲ最
  長期トシテ居ルノデアリマスルカラ、我國ノ綿糸ノ定期取引ハ六箇月ニナッテ
  居ル、ソレデ定期トシテ參リマスレバ矢張此ノ六箇月ヲ以テ期限トシタイ、
  生絲同樣ニト云フ政府ハ腹案デアリマス、併シ今申シマスル如ク一年以內ヲ
  以テ約束シテ居ルノデアリマシテ、之ヲ定期バカリニ於テ六箇月ガ果シテ適
  當ナモノカ、又昨年ノ如キ大阪ナドデ綿糸ノ組合ニ於テハ容易ナラヌコトガ
  起ッテ參リマシタ、是ハ法律デ制スルコトノ出來ナイコトニナッテ居リマスガ、
  其取引ハ一年以上ヲ以テ取引ヲスルモノガ往々アルヤウナコトデ、爲ニ弊
  害ガ起ッテ參リマシタガ、是ハドウ云フコトニ致シマシテモ一年以内ノモノニ
  ハ無論シナケレバナラヌト思ヒマス、其邊ニ外國ノ取引ニ付テノ關係ナドガ
  アリマスカラ、此所デ法律デ定メルヨリモ勅令ニ依テ、適當ナルモノニ定メ
  タイト思フノデアリマス、併ナガラ只一年以上ハ如何ナルコトヲシテモイケ
  ヌト云フコトハ此所デ申上ゲテ宜イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=110

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• 111・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　是ハ非常ニ重大ナル法律案デアッテ、初メテ受取リマシタ
  ガ、實ハ斯樣ナモノハ能ク調査スルコトガ出來ヌノデアリマス、斯樣ナ法案
  ハドウゾモウ少シ早ク御出シニナッテ、能ク調査スルコトノ出來ル餘裕ヲ與ヘ
  テ頂キタイト思ヒマス、ソレデ只一ツ伺ッテ置キタイノハ、二十二條ノ二デ、
  今後ハ取引所ハ擔保ヲ入レテ賠償ノ責ニ任ジナイノガ任ズルコトニナッタ、任
  ズル方ガ例外ノ規定ノ方ガ正當ニ爲サレルヤウニナッタヤウデアリマス、是ハ
  農商務大臣ノ說明ノ通リデアリマシタガ、斯ウ御變ヘニナッタノハ何カ現時ノ
  實狀ニ必要ガアッテ、斯ウ御變へニナッタノカ、又此現在ノ取引所ニシテ賠償
  ノ責ニ任ジナイ者ガ出來サウデアリ、又農商務大臣ハ如何ニ考ヘテ此改正ヲ
  爲サレルノデアリマスカ、ソレヲ伺ヒマス
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=111

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• 112・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　取引所ハ會員組織ヲ本義トシテ改正シタイト
  云フコトデアルノデアリマスガ、是迄ニ現物取引所ガアリマシテ、之ヲ直
  ニ斯ク致シマスト云フト、非常ナル變化ヲ起シテ參リマスカラ先ヅ此場合ニ
  於テハ元ノ强制擔保ヲ矢張農商務大臣ノ許可ニ依テ許ス、併ナガラ本義ト
  シテハ任意ノ擔保デヤリマシタ方ガ、餘程時勢ノ進運ニ伴フ必要ナルコトト
  シテ、サウシテ設ケタ次第デアリマス

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• 113・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　チヨット今ノハ分リマセヌガ、强制擔保ト云フノハドウ云フ
  意味デアリマスカ、取引所ガ任意デ賠償ノ責ニ任ズルト云フノデアリマスカ、
  或ハ取引所ガ御互ニ保證スルト云フノデ取引所ニハ關係ナイト云フ意味デ任
  意ト云フノデアリマスカ、ドウ云フ意味デアリマスカ
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=113

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• 114・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　是迄ノ取引所ハ擔保ヲ皆入レサセマシテ、サ
  ウシテ手數料ヲ徵シマシテ行カナケレバナラヌ、强制的擔保ニナッテ居リマ
  ス、此度ノモノハ仲買人ト成ベク其ノ賣買者ト雙方ノ間ニ於テ、信用ヲ以テ
  取引ヲスルト云フコトニナルノデアリマス、此仲買ノ向上ヲ計ッテ、サウシ
  テ仲買同志ニ於テ互ニ取引ヲ致スト云フコトニ致シテ、サウシテ取引所ト云
  フモノガ、强制擔保ヲ徵セズニ爲シ得ルト云フ箇條ヲ設ケタノデアリマス、
  是ハ此三者ノ····注文スル者ガ强制擔保ヲ入レテサウシテ矢張取引所ヲ信
  ズルト云フコトニ相成リマスレバ、ソレニ依テ其方モ宜シ、或ハ仲買ノ確實
  ナル者ヲ信ジテ、サウシテ其方ニ付テ賣買ヲスルト云フコトヲ客ガ好ムナラ
  バソレモ宜シイ、ドウシテモ會員組織ニナリマスト云フト、强制的擔保ハ出
  來ナイノデアリマスカラシテ、ソレヲ此會員トナルベキ、此度ノ改メマスル
  會員トナルベキ者ノ間デ、信用ヲ以テ取引ヲスルト云フ意味デゴザイマス

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• 115・若槻禮次郎

  ○若槻禮次郞君　サウ迄詳シク御說明ハ要リマセヌ、私ノ伺ヒマシタノハ····
  ···會員組織ノ取引所ニ付テハモウ御尋ネヲセヌノデアリマス、サウデナク、
  今日會員組織ノ取引所ト云フモノハ日本ニハ無イヤウニ思ヒマスガ、有ルノ
  デアリマスカ、今有ルノハ大低株式會社デアラウト思ヒマスガ、株式會社ノ
  取引所ヲシテ、賠償ノ責ニ任ゼナイヤウニ、今度原則ヲサウ御直シニナルノ
  ハ、サウ云フコトヲ希望スル者ガアッテ、斯ウ御直シニナルノデゴザイマセウ
  カ、或ハ政府ガ希望スル爲ニ、此法律ヲ御作リニナルノデアリマスカ、此法
  律ヲ改正ニナッタナラバ、株式組織ノ取引所ニ於テ賠償ノ責ニ任ゼヌモノガ出
  來ルト云フ御見込デアリマスカ、又出カス積リデアルカト云フ、唯ソレダケ
  デアリマス
  〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=115

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• 116・山本達雄

  ○國務大臣(男爵山本達雄君)　出來ル見込ミデアリマス、又成ダケ出カシタ
  イト、政府ハ考ヘテ居ル次第デアリマス

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• 117・阪谷芳郎

  ○男爵阪谷芳郞君　モウ質問ハゴザイマセヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=117

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• 118・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　モウ無イヤウデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=118

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• 119・阪谷芳郎

  ○男爵阪谷芳郞君　此法案ハ段々問題ガアリマスヤウデゴザイマスカラ、特
  別委員ノ數ハ十五名トシテ、議長ノ指名ニ願ヒタウゴザイマス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=119

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• 120・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　贊成ニハ、議長ト御呼ビヲ願ヒタク思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=120

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• 121・佐竹義準

  ○男爵佐竹義準君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=121

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• 122・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　阪谷男爵ノ動議ハ賛成者ガゴザイマシタカラ成立
  イタシマシタ、阪谷男爵ノ本案ノ委員ノ數ヲ十五名、其委員ハ議長ノ選定ニ
  任スト云フ說ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=122

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• 123・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官
  ヲシテ朗讀致サセマス
  〔長書記官朗讀〕
  取引所法中改正法律案特別委員
  子爵靑山幸宜君子爵酒井忠亮君大久保利武君
  男爵村上敬次郞君和田彥次郞君仲小路廉君
  男爵武井守正君男爵中島久萬吉君男爵島津久賢君
  男爵岩倉道倶君倉知鐵吉君早川千吉郞君
  伊藤傳七君中村圓一郞君安田善三郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=123

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• 124・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　玆ニ於テ御諮リヲ致シタイコトハ、日程第八、第
  九ハ、一括シテ說明ヲ煩ハシ、特別委員モ同一委員ニ付託シタイト考ヘマス、
  御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=124

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• 125・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=125

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• 126・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第八、貯蓄銀行法案、第九、銀行條例中改正
  法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
  貯蓄銀行法案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正十年三月九日
  衆議院議長奧繁三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  貯蓄銀行法案
  貯蓄銀行法
  第一條左ニ揭クル業務ヲ營ム者ハ之ヲ貯蓄銀行トス
  -複利ノ方法ニ依リ預金ヲ受入ルルコト
  二一囘十圓未滿ノ金額ヲ預金トシテ受入ルルコト
  三豫メ拂戾ノ期限ヲ定メ定期ニ又ハ一定ノ期間內ニ於テ數囘ニ預金ヲ
  受入ルルコト
  四期限ヲ定メテ一定金額ノ給付ヲ爲スコトヲ約シ定期ニ又ハ一定ノ期
  間內ニ於テ數囘ニ金錢ヲ受入ルルコト
  貯蓄銀行ニ非サルモノハ前項ノ業務ヲ營ムコトヲ得ス但シ貯蓄銀行ニ非
  サル銀行カ預金取引ヲ有スル者ヨリ其ノ者トノ取引ノ結果生シタル十圓
  未滿ノ金額ヲ其ノ預金ニ受入レ又ハ小切手ニ依リ支拂ヲ爲スヘキ預金取
  引ヲ有スル者ヨリ十圓未滿ノ金額ヲ其ノ預金ニ受入ルル場合ハ此ノ限ニ
  在ラス
  第二條貯蓄銀行業ハ主務大臣ノ免許ヲ受クルニ非サレハ之ヲ營ムコトヲ
  得ス
  前項ノ免許ヲ受ケムトスル者ハ申請書ニ定款及業務ノ種類及方法ヲ記載
  シタル書面ヲ添附シ之ヲ主務大臣ニ提出スヘシ
  第三條貯蓄銀行業ハ資本金五十萬圓以上ノ株式會社ニ非サレハ之ヲ營ム
  コトヲ得ス
  第四條貯蓄銀行ハ其ノ商號中ニ貯蓄銀行ナル文字ヲ用ウヘシ
  貯蓄銀行ニ非サルモノハ其ノ商號中ニ貯蓄銀行タルコトヲ示スヘキ文字
  ヲ用ウルコトヲ得ス
  第五條貯蓄銀行ハ第一條第一項ノ業務ノ外左ニ揭クル業務ヲ併セ營ムコ
  トヲ得
  一定期預リ金
  二保護預リ
  三債權ノ取立
  四公共團體又ハ產業組合ノ金錢出納事務ノ取扱
  五公共團體又ハ產業組合ヨリノ要求拂預リ金
  第六條貯蓄銀行ハ本法ニ規定セサル業務ヲ營ムコトヲ得ス
  第七條貯蓄銀行カ貯蓄銀行ノ營ムコトヲ得サル業務ニ屬スル契約ニ基ク
  權利義務ヲ合併ニ因リテ承繼シタル場合ニ於テハ其ノ契約ノ完了スル迄
  仍其ノ契約ノ屬スル業務ニ限リ之ヲ繼續スルコトヲ妨ケス
  第八條貯蓄銀行ハ小切手ニ依リ支拂ヲ爲ス第一條第一項第一號第二號ノ
  預金取引ヲ爲スコトヲ得ス
  第九條貯蓄銀行ハ第一條第一項及第五條第一號第五號ノ規定ニ依リ受入
  レタル金額ノ三分ノ一以上ノ金額ニ相當スル國債ヲ供託スヘシ但シ供託
  金額中受入金額ノ四分ノ一ヲ超ユル額ニ付テハ第十一條第一項第一號ノ
  有價證劵ヲ以テ國債ニ代フルコトヲ得
  前項ノ受入金額ハ每半年末日現在ニ依リ之ヲ定ム
  第十條預金者及第一條第一項第四號ノ規定ニ依ル給付金ノ債權者ハ其ノ
  預金及給付金ニ關シテハ前條ノ規定ニ依リテ供託シタル國債及有價證劵
  ニ付他ノ債權者ニ先チ辨濟ヲ受クルノ權利ヲ有ス
  第十一條貯蓄銀行ハ左ノ方法ニ依ルノ外其ノ資金ヲ運用スルコトヲ得ス
  一國債、地方債、社債又ハ株式ノ應募、引受又ハ買入
  二國債其ノ他前號ニ揭クル有價證劵ヲ質トスル貸付
  三不動產ヲ抵當トスル貸付
  四預金者ニ對シ其ノ預金額ヲ限度トスル貸付
  五第一條第一項第四號ノ規定ニ依ル給付金ノ債權者ニ對シ其ノ給付金
  額ヲ限度トスル貸付
  六銀行ヘノ預ヶ金又ハ郵便貯金
  七銀行引受手形ノ買入
  前項ニ規定スル社債及株式ニ付テハ其ノ種類ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受
  クヘシ
  第十二條貯蓄銀行ノ所有シ又ハ貸付金若ハ預ケ金ノ擔保トシテ受入ルル
  一會社ノ株式ハ該會社ノ總株式ノ五分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス
  第十三條一人ニ對スル貸付金額ハ拂込資本金及準備金ノ十分ノ一ヲ超ユ
  ルコトヲ得ス
  第十一條第一項第三號ノ規定ニ依ル貸付金ノ總額ハ拂込資本金及準備金
  ノ總額ヲ超ユルコトヲ得ス
  第十一條第一項第五號ノ貸付金額中既ニ受入レタル金額ヲ超過スル額ニ
  付テハ確實ナル擔保又ハ保證アルコトヲ要ス
  第十四條一銀行ニ對スル預ヶ金及其ノ銀行ノ引受ケタル手形ノ買入高ノ
  總額ハ第一條第一項及第五條第一號第五號ニ規定スル受入金ノ十分ノ一
  ヲ限度トシ且該銀行ノ拂込資本金及準備金ノ四分ノ一ヲ超ユルコトヲ得
  ス但シ其ノ總額中國債其ノ他第十一條第一項第一號ニ揭クル有價證劵ヲ
  以テ擔保セラレタル額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
  第九條第二項ノ規定ハ前項ノ受入金ノ額ニ付之ヲ準用ス
  第十五條貯蓄銀行カ其ノ財產ヲ以テ債務ヲ完濟スルコト能ハサルニ至リ
  タルトキハ第一條第一項及第五條第一號第五號ノ規定ニ依ル契約ニ基ク
  銀行ノ債務ニ付各取締役ハ連帶シテ其ノ辨償ノ責ニ任ス
  前項ノ責任ハ取締役ノ退任登記前ノ債務ニ付退任登記後二年間仍存續ス
  第十六條貯蓄銀行ハ左ノ場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
  一定款ヲ變更セムトスルトキ
  二業務ノ種類又ハ方法ヲ變更セムトスルトキ
  三代理店ヲ設置セムトスルトキ
  主務大臣ハ必要ト認ムルトキハ業務ノ種類若ハ方法ヲ制限シ又ハ其ノ變
  更ヲ命スルコトヲ得
  第十七條貯蓄銀行ノ解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其
  ノ效力ヲ生セス
  第十八條主務大臣ノ免許ヲ受ケスシテ貯蓄銀行業ヲ營ミタル者ハ五千圓
  以下ノ罰金ニ處ス
  第十九條左ノ場合ニ於テハ貯蓄銀行ノ取締役、監査役又ハ〓算人ヲ十圓
  以上千圓以下ノ過料ニ處ス
  一第六條、第八條、第九條、第十一條乃至第十四條及第十六條第一項
  ノ規定ニ違反シタルトキ
  二第十六條第二項ノ規定ニ依リ主務大臣ノ爲シタル命令ニ違反シタル
  トキ
  第二十條第四條第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ十圓以上百圓以下ノ過料
  二錢、
  第二十一條本法ニ別段ノ規定ヲ設ケサル事項ニ付テハ銀行條例ニ依ル
  銀行條例第二條ノ三ノ規定ノ適用ニ付テハ第一條第一項第四號ノ規定ニ
  依ル給付金ノ債權者ハ之ヲ預金者ト看做ス
  第二十二條貯蓄銀行業ヲ營ム者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ營業稅額ノ二
  分ノ一ヲ免除ス
  附則
  第二十三條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第二十四條貯蓄銀行條例ハ之ヲ廢止ス
  舊法ニ依リテ營業ノ認可ヲ受ケタル貯蓄銀行ニシテ本法施行ノ際現ニ存
  スルモノハ本法ニ依リテ免許ヲ受ケタル貯蓄銀行ト看做ス
  舊法ニ依リテ爲シタル認可、處分其ノ他ノ行爲ハ本法中之ニ相當スル規
  定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ爲シタルモノト看做ス
  第二十五條前條第二項ノ貯蓄銀行ノ資本金ニ付テハ本法施行後五年ヲ限
  リ仍舊法ニ依ル
  第二十六條第二十四條第二項ノ貯蓄銀行ニシテ現ニ其ノ商號中ニ貯藏銀
  行又ハ貯金銀行ナル文字ヲ用ウルモノニ限リ第四條第一項ノ規定ニ拘ラ
  ス仍其ノ商號ヲ用ウルコトヲ得
  第二十七條第二十四條第二項ノ貯蓄銀行カ第九條ノ規定ニ依リテ爲スヘ
  キ供託ニ付テハ本法施行後二年ヲ限リ仍舊法ニ依ル但シ其ノ期間內ニ於
  テ新ニ供託ヲ爲ス場合ニ於テハ第一條第一項ノ規定ニ依リ受入レタル金
  額ノ四分ノ一迄ハ國債ニ限ル
  第二十八條本法施行前貯蓄銀行ノ爲シタル契約ニシテ本法ニ依リ貯蓄銀
  行ノ爲スコトヲ得サル業務ニ屬スルモノニ付テハ其ノ契約ノ完了スル迄
  仍其ノ契約ニ屬スル業務ニ限リ之ヲ繼續スルコトヲ得
  第二十九條本法施行ノ際現ニ貯蓄銀行ノ所有スル公債、社債又ハ株式ニ
  シテ第十一條第一項第一號ノ規定ニ依リ應募、引受又ハ買入ヲ爲スコト
  ヲ得サルモノハ本法施行後三年ヲ限リ仍之ヲ所有スルコトヲ得
  本法施行ノ際現ニ貯蓄銀行ノ所有スル株式ニシテ第十二條ノ規定ニ依ル
  限度ヲ超ユルモノニ付テハ本法施行後三年內ニ之ヲ其ノ限度ニ適合セシ
  ムヘシ
  第三十條本法施行ノ際一銀行ニ對スル預ヶ金及其ノ銀行ノ引受ケタル
  手形ノ買入高ノ總額カ第十四條第一項ノ規定ニ依ル限度ヲ超ユル場合ニ
  於テハ本法施行後二年內ニ之ヲ其ノ限度ニ適合セシムヘシ
  第三十一條貯蓄銀行ノ取締役ニシテ本法施行前退任シタル者ノ貯蓄銀行
  條例第三條ノ規定ニ依ル責任ニ付テハ仍舊法ニ依ル
  第三十二條本法施行前貯蓄銀行條例第一條ノ事業ヲ廢止シタル者ハ既ニ
  締結シタル契約ノ完了スル迄仍其ノ契約ノ屬スル業務ニ限リ之ヲ繼續ス
  ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ貯蓄銀行條例第三條乃至第六條ノ二及第九
  條ノ二ノ規定ヲ準用ス
  第三十三條本法施行ノ際貯蓄銀行ニ非スシテ現ニ大正四年法律第二十三
  號附則第四項ノ規定ニ依リ本法第一條第一項第三號第四號ノ業務ヲ繼續
  スル者ニ關シテハ仍舊法ニ依ル
  銀行條例中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  大正十年三月九日
  衆議院議長奧繁三郞
  貴族院議長公爵惠川家達殿
  銀行條例中改正法律案
  銀行條例中左ノ通改正ス
  第二條ノ五中「貯蓄銀行條例第一條ノ事業」ヲ「貯蓄銀行法第一條第一項ノ
  業務」ニ、「貯蓄銀行條例第三條乃至第六條ノ二及第九條ノ二」ヲ「貯蓄銀行
  法第九條、第十條、第十五條及第十九條」ニ、「同法第三條及第九條ノ二」ヲ
  「同法第十五條及第十九條」ニ改ム
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法施行前第二條ノ五ノ規定ニ依リ貯蓄銀行條例第一條ノ事業ニ屬スル契
  約ニ基ク權利義務ヲ承繼シタル銀行ニ關シテハ其ノ契約ノ屬スル事業ニ付
  仍從前ノ例ニ依ル
  〔國務大臣子爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=126

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• 127・高橋是清

  ○國務大臣(子爵高橋是〓君)　日程第八、及ビ第九ヲ束ネテ說明ヲ申上ゲマ
  ス、貯蓄銀行ハ零細ナ資金ヲ確實安全ニ保管蓄積シテ、國民ノ貯蓄ヲ奬勵ス
  ルコトヲ目的ト致スモノデアリマシテ、公益慈善ノ性質ヲ有シテ居リマシテ、
  普通ノ銀行ガ一般經濟界ニ於ケル金融ノ媒介、乃至商工業ノ資金ノ運用利殖
  ヲ任ト致スモノトハ、全ク其職能ヲ異ニ致シテ居ルノデアリマス、故ニ其監
  督ニ付マシテモ、普通銀行ニ較ベマスレバ嚴格周到ナルヲ要シマシテ、其業
  務ノ範圍放資ノ方法等ニ關シテ、相當ノ制限ヲ設クルノ必要ガアルノデゴザ
  リマス、然ニ現行貯蓄銀行條例ハ、制定ノ後幾多ノ改正ヲ經マシテ、漸次ニ
  其特色ヲ失フニ至リマシタ、現在ニ於テハ貯蓄銀行ハ當然普通銀行ノ業務ヲ
  兼營スルコトガ出來テ居リマシテ、其業務ノ範圍及ビ資金運用ノ方法等ニ關
  シマシテ、何等ノ制限ガゴザリマセヌ、故ニ其受入レマシタル所ノ零細ノ貯
  蓄預金ヲ、他ノ一般商業ノ資金ト何等ノ區別ナク、一樣ニ商工業ノ資金ニ運
  用セラレタラ、或ハ不確實ナル擔保ニ對シ、又ハ全ク擔保ノナイ貸出ヲナシ
  マシタリ、甚ダシキハ一人ニ對シマシテ其銀行ノ運命ヲ左右スルガ如キ多額
  ノ貸出ヲナシマシタリ、或ハ所謂親銀行ノ預金吸收ノ機關トナリマシテ、其
  預金ノ殆ド全部ヲ親銀行ニ預入レマシテ、親銀行ト運命ヲ共ニスルモノナド
  ガ生ジテ參リマシタ、誠ニ遺憾ノ至リデゴザイマス、近頃貯蓄銀行ノ取付或
  ハ休業、或ハ破綻ノ多クハ、其原因ハ固ヨリ一ニシテ足ラナイ譯デアリマス
  ルガ、是等ノモノガ此原因ノ多キヲナシテ居ルヤウニ考ヘマス、固ヨリ斯ノ
  如キハ銀行業者ノ經營其宜シキヲ得ザルニ因ルモノデゴザイマスルガ、又貯
  蓄銀行ニ關シマスル現行法規ノ上ニ於テ、又缺陷ガアルト云フコトニ基クコ
  トモ亦大ナルモノデアルト信ズルノデアリマス、就キマシテ今囘貯蓄銀行條
  例ニ改正ヲ加ヘマシテ、業務ノ範圍ヲ限定シマシテ、資金運用ノ方法ヲ制限
  イタシ、擔保供託ノ割合ヲ增加イタシマスル等、幾多ノ改善ヲ施シマシタ、
  零細資金保管ノ機關トシテヨク其機能ヲ發揮セシメムトスルノデゴザイマ
  ス、而シテ此改正ノ要項ガ如何ニモ多クアリマスルガ爲ニ、此際寧ロ貯蓄銀
  行條例ヲ廢止イタシマシテ、新ニ貯蓄銀行法ヲ制定スルヲ以テ適當ナリト
  認メマシテ、本案ヲ提出イタシタル次第デゴザイマス、尙ホ現行銀行條例中
  ニ貯蓄銀行條例ノ規定ヲ引用イタシタモノガゴザリマスルデ、此點ニ付マシ
  テハ、本法案ノ制定ニ伴ヒマシテ、當然銀行條例中ニ改正ヲ要スル次第デア
  リマスルカラシテ、之ニ關スル銀行條例中改正案ヲモ併セ提出イタシマシタ
  ル次第デゴザイマス、而シテ本法ノ施行期限ハ、法案中ニ勅令ヲ以テ之ヲ定
  ムルトアリマスルガ、是ハ大正十一年一月一日ヨリ施行イタス法案デゴザイ
  やく、何卒御審議ノ上速ニ御協贊ヲ與ヘラレムコトヲ願ヒマス

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• 128・矢口長右衞門

  ○矢口長右衞門君　簡單デゴザイマスカラ此席デ········大藏大臣ニチヨット伺
  ヒマスガ、是マデ主トシテ地方ニアリマシテハ何〓銀行ト云フ名稱下ニ、貯
  蓄ヲ大〓兼營イタシテ居リマス、併シ本法ガ愈〓制定サレルコトニナリマスレ〓
  バ兼營ト云フコトハ絕對ニ出來ナイコトニナル、所謂普通ハ普通、貯蓄ハ
  貯蓄ト斯ウ明カニソコニ區別ヲ立テルコトニナルダラウト思フノデアリマ
  ス、サウ致シマスルト一ツ私ノ疑問ヲ生ズルノハ、地方等ニ於テ兼營銀行ハ
  必ズ貯蓄ト云フモノヲ私ハ無論廢止スルヤウナルコトニナル譯デアリマス、
  又サウシナクチヤナラナイ、然ニ一銀行ナリ數銀行合同イタシマシテ、新タ
  ナル貯蓄銀行ヲ玆ニ拵ヘテ其代理店ニナルト云フヤウナ風ニナルノデアリマ
  ス、斯ル際ニ當リマシテ大藏當局ニ於テハ之ヲ保護シ成ベク之ヲ許可スルト
  云フヤウナ方針ニ出デラレルノデアリマスカ、ソレトモ此趣意ハ成タヶ貯蓄
  銀行ト云フモノヲ整理ヲスルノデアルカラ、詰リ段々此數ヲ減ズルノデアル
  カラ、成ベク許サヌ方針ヲ執ッテ、サウ云フ際ニハ許サヌト云フ御考デアリマ
  スカ、其邊ニ付テ簡單デ宜シウゴザイマスカラ御答辯ヲ願ヒマス
  〔國務大臣子爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕

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• 129・高橋是清

  ○國務大臣　子爵高橋是〓君)普通銀行ニシテ貯蓄銀行ヲ兼營スル、兼營銀
  行ナルモノニ付テノ政府ノ當局ノ考ハ、最初ニ御述べニナッタ御考ノ通リデ、
  變リマセヌデゴザイマス

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• 130・矢口長右衞門

  ○矢口長右衞門君　第二ノ御考ハドウデアリマスカ、只今ノ第二ノ御考ハ如
  何デゴザイマスカ、第二ニ問ヒマシタ所ノ
  〔國務大臣子爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕

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• 131・高橋是清

  ○國務大臣　子爵高橋是〓君)第二ノ御質問モ自分カラ先刻ノ御答デ含ンデ
  居ル積リデアリマスガ、餘リ簡單過ギテ甚ダ恐縮イタシマシタ、是ハ十分ニ
  便宜ヲ與ヘル積リデアリマス、決シテ貯蓄銀行ヲ撲滅スルトカ云フヤウナ考
  ハ毛頭ナイノデアリマス、左樣御承知ヲ

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• 132・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　私モ極ク簡單ニ大藏大臣ニ一言質問イタシ度ウゴザイ
  マスカラ當席カラ發言ヲ御許シヲ願ヒマス、宜シウゴザイマスカ、本來貯蓄
  銀行ガ破綻ヲ來シテ社會ニ迷惑ヲ掛ケル、其上カラ本法案ガ出タコトデ、唯
  今大臣ノ御說明ガアリマシタ通リ、當然ノコトト思ヒマス、併ナガラ如何ニ
  法ヲ嚴重ニ致シマシテモ、取締ガ緩ヤカデアッタナラバ反古同然デアラウト思
  フ、ソレカラ遺憾ナガラ現在ノ取締法ト云フモノハ十分デナイト私ハ思フ、
  將來ニ於テドウ云フ風ニ御取締ヲナサル御積リデアルカ、チヨット一例ヲ申
  上ゲマスト云フト、特殊銀行ニハ監理官ト云フモノガ置イテアル、昨年ノ四
  十三議會ニ私ガ銀行條例ノ改正法律案ノ委員ニナリマシテ、其節勸業銀行ノ
  貸出資金ノコトニ付テ統計ヲ求メマシタ、監理官ガ居ラレルコトデアルカラ
  明細ナ而モ最近ノ御答ガアラウト思ヒマシタ、所ガ本日ハ持合セガナイカラ
  一兩日待ッテ吳レト云フコトデ、甚ダ意外ノ感ニ打タレタ、當時御持合セガナ
  カッタカラ待チマシタ、一一三日經チマスト云フト御答ガゴザイマシタガ、其御
  答ハ遺憾ナガラ一年モ前ノ統計デアル、實ニ意外千萬ニ私ハ思ッタノデアリマ
  ス、一體監理官ハ銀行ノ資金運用ニ付テ始終注意ヲ與ヘテ行カナケレバナラ
  ヌ筈デアル、其者ガ一年モ前ノ統計ヨリ知ラヌト云フコトデハ、實ニ案外ノ
  感ニ打タレタノデアリマス、一體ドウ云フコトニ今後ハ御取締ニナルカ、ソ
  レカラ殆ド此案ヲ拜見イタシマスルト云フト、嚴重過ギテ現在ノ貯蓄銀行ノ
  存在ガムヅカシイ位デアル、ケレドモ只今申シマシタ通リ、取締ヲ寬ニスレ
  バ是ハ反古同然デアラウト思フ、ドウ云フ風ニ御取締ニナルカ承リタイ
  〔國務大臣子爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=132

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• 133・高橋是清

  ○國務大臣(子爵高橋是〓君)　只今ノ取締ノコトニ付マシテハ、獨リ貯蓄
  銀行ノミナラズ、普通銀行ニ至ル迄相當ノ取締ヲ致サネバナラヌ必要ヲ當局
  ハ認メテ居リマス、サウシテ是ガ取締ノ方法ハ一定ノ檢査機關ヲ置キマシテ、
  常ニ其機關ヲシテ銀行ノ檢査ニ從事セシムルヨリ外ニナイノデアリマス、而
  シテ此檢査ヲ致シマシテ取締ニ付マシテモ、先ヅ以テ法律ニ缺陷ガアリマシ
  テハ取締モ十分出來ナイ次第デアリマシテ、玆ニ先ヅ改正案ヲ出シマシテ、
  偖此ノ檢査機關ト云フモノヲ設ケマスニ付テ現在今日デモ未ダ〓究シテ審議
  シテ居ルノデアリマスガ、直ニ之ニ適當ナル所ノ役員ヲ備ヘルト云フコト
  ガ困難デアル、又銀行ニ臨ンデ檢査ヲスルト云フコトハ、取引先キノ祕密ガ
  悉ク分ル譯デアリマシテ、是ニハ當局モ甚ダ苦ンデ居ル、而シテ完全ナル機
  關ヲ拵ヘテ、此二千數百ノ銀行ヲ少ナクトモ年ニ一囘檢査ヲセムトスレバ、
  非常ニ厖大ナ機關ヲ置イテ、非常ナ經費ヲ掛ケナケレバナラヌト云フコトニ
  ナルノデ、只今マデノ所デハ如何ニシテ完全ナル檢査機關ヲ拵ヘ得ルカト云
  フコトニ付テ、頻ニ〓究ヲシテ居ル次第デアリマス、今日ト雖モ大藏省ニ於
  テ銀行局ガアリマシテ、何時デモ必要ト認メル時ニ於キマシテハ、檢査員ヲ
  派出スルコトニナッテ居リマス、其人員モ極メテ亦少ナイコトデアリマス、十
  分ニ行キマセヌ、ソレカラ又今日ノ所デハ、從來檢査ト云フモノハ國庫金ノ
  檢査ハ世間ニ普ク知ラレテ居リマシタガ、普通ノ銀行ニ臨ンデノ檢査ト云フ
  モノハ、何カ事ガアッテ檢査ヲスル必要ガ生ジテ後ニ檢査スル、ソレ故ニ事ノ
  起ル前ニ防グ爲ノ檢査ト云フコトハ今マデ行ッテ居ラヌノデアリマス、何レ檢
  査ノ機關ヲ拵ヘテ檢査ノ方法、又檢査スル人達ノ服務規律、サウ云フヤウナ
  モノモ十分ニ拵ヘマシテ世ノ中ニ之ヲ公ニシテ、然ル後ニ檢査ニ臨メバ一
  般公衆モ檢査ヲ受ケタ銀行ニ對シテ敢テ怪ミヲ起サナイノデアル、サウ云フ
  機關ヲ備ヘ、方法ヲ公ニシテ能ク知ラシメテ、然ル後ニ此檢査ト云フコト
  ヲ致シマセヌト云フト、從來ノ慣習デ大藏省カラデモ檢査ヲ受ケルト云フト、
  アノ銀行ハ何カ怪シイコトガアルノデハナイカト云フ、疑ノ眼ヲ以テ見ルノ
  デアリマス、ソレデ徒ニ取付ナドト云フコトヲ誘導セヌトモ限ラヌ、之 吸
  ニ先ヅ法ヲ嚴重ニシマシテ檢査機關ヲ作リ、檢査ノ方法、檢査官ノ服務規律
  ト云フヤウナモノヲ拵ヘマシテ、世ノ中ニ公ニシマシタ上ニ於テ、是ハ著手
  スル必要アリト當局ハ認メテ居ルノデス、是ダケヲ今日申上ゲテ置ク次第デ
  アリマス

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• 134・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　兩案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサ
  セマス
  〔長書記官朗讀〕
  貯蓄銀行法案外一件特別委員
  侯爵佐佐木行忠君子爵八條隆正君子爵渡邊千冬君
  男爵小畑大太郞君男爵藤田平太郞君仁尾惟茂君
  小山健三君菅原通敬君八木久兵衞君

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• 135・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十、公有水面埋立法案、政府提出、衆議院
  送付、第一讀會
  公有水面埋立法案
  右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
  候也
  大正十年三月九日
  衆議院議長奧繁三郞
  ,
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (小字ハ衆議院ノ修正文ナリ)
  公有水面埋立法案
  公有水面埋立法
  第一條本法ニ於テ公有水面ト稱スルハ河、海、湖沼其ノ他ノ公共ノ用
  ニ供スル水流又ハ水面ニシテ國ノ所有ニ屬スルモノヲ謂ヒ埋立ト稱スル
  ハ公有水面ノ埋立ヲ謂フ
  公有水面ノ干拓ハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ埋立ト看做ス
  本法ハ耕地整理法ニ依ル溝渠又ハ溜池ノ變史ノ爲必要ナル埋立其ノ他勅
  令ヲ以テ指定スル埋立ニ付之ヲ適用セス
  第二條埋立ヲ爲サムトスル者ハ地方長官ノ免許ヲ受クヘシ
  第三條前條ノ免許ハ地方長官期間ヲ指定シテ地元市町村會ノ意見ヲ徵シ
  之ヲ爲スヘシ
  第四條地方長官ハ埋立ニ關スル工事ノ施行區域內ニ於ケル公有水面ニ關
  シ權利ヲ有スル者アルトキハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ヲ除クノ外埋
  立ノ免許ヲ爲スコトヲ得ス
  -其ノ公有水面ニ關シ權利ヲ有スル者埋立ニ同意シタルトキ
  二其ノ埋立ニ因リテ生スル利益ノ程度カ損害ノ程度ヲ著シク超過スル
  トキ
  三其ノ埋立カ法令ニ依リ土地ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ノ爲
  必要ナルトキ
  第五條前條ニ於テ公有水面ニ關シ權利ヲ有スル者ト稱スルハ左ノ各號ノ
  一ニ該當スル者ヲ謂フ
  一法令ニ依リ公有水面占用ノ許可ヲ受ケタル者
  二漁業權者又ハ入漁權者
  三法令ニ依リ公有水面ヨリ引水ヲ爲シ又ハ公有水面ニ排水ヲ爲ス許可
  ヲ受ケタル者
  四慣習ニ依リ公有水面ヨリ引水ヲ爲シ又ハ公有水面ニ排水ヲ爲ス者
  第六條埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第四條ノ權利ヲ
  有スル者ニ對シ其ノ損害ノ補償ヲ爲シ又ハ其ノ損害ノ防止ノ施設ヲ爲ス
  ヘシ
  漁業權者及入漁權者ノ前項ノ規定ニ依ル補償ヲ受クル權利ハ共同シテ之
  ヲ有スルモノトス
  第一項ノ補償又ハ施設ニ關シ協議調ハサルトキ又ハ協議ヲ爲スコト能ハ
  サルトキハ地方長官ノ裁定ヲ求ムヘシ
  第七條前條ノ規定ニ依リ漁業權者ニ對シ損害ノ補償ヲ爲スヘキ場合ニ於
  テ其ノ漁業權カ登錄シタル先取特權又ハ抵當權ノ目的タルトキハ埋立ノ
  免許ヲ受ケタル者ハ其ノ補償ノ金額ヲ供託スヘシ但シ先取特權者又ハ抵
  當權者ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
  前項ノ規定ハ埋立ニ關スル工事ノ施行區域內ニ於ケル公有水面ニ付存ス
  ル漁業權又ハ入漁權カ訴訟ノ目的タル爲訴訟當事者ヨリ請求アリタル場
  合ニ之ヲ準用ス
  登錄シタル先取特權若ハ抵當權ヲ有スル者又ハ訴訟當事者ハ前二項ノ規
  定ニ依ル供託金ニ對シテモ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
  第八條埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ第六條ノ規定ニ依リ損害ノ補償ヲ爲ス
  ヘキ場合ニ於テハ其ノ補償ヲ爲シ又ハ前條ノ規定ニ依ル供託ヲ爲シタル
  後ニ非サレハ第四條ノ權利ヲ有スル者ニ損害ヲ生スヘキ工事ニ著手スル
  コトヲ得ス但シ其ノ權利ヲ有スル者ノ同意ヲ得タルトキ又ハ地方長官ノ
  裁定シタル補償ノ金額ヲ供託シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
  埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ第六條ノ現定ニ依リ損害防止ノ施設ヲ爲スヘ
  キ場合ニ於テハ其ノ施設ヲ爲シタル後ニ非サレハ第四條ノ權利ヲ有スル
  者ニ損害ヲ生スヘキ工事ニ著手スルコトヲ得ス但シ其ノ權利ヲ有スル者
  ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
  第九條第六條ノ規定ニ依リ損害ノ補償ヲ爲スヘキ漁業權ヲ目的トスル先
  取特權又ハ抵當權ヲ有スル者ハ前條第一項但書ノ規定ニ依ル供託金ニ對
  シテモ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
  第十條公有水面ノ利用ニ關シテ爲シタル施設カ埋立ノ爲其ノ效用ヲ妨ケ
  ラルルトキハ地方長官ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ埋立ノ免許ヲ受ケタル者
  ヲシテ其ノ施設ヲ爲シタル者ニ對シ之ニ代ルヘキ施設若ハ其ノ效用ヲ保
  全スル爲必要ナル施設ヲ爲サシメ又ハ損害ノ全部若ハ一部ヲ補償セシム
  ルコトヲ得
  第十一條地方長官埋立ヲ免許シタルトキハ其ノ免許ノ日及其ノ事件ノ要
  領ヲ〓示スヘシ
  第十二條地方長官ハ埋立ニ付免許料ヲ徵收スルコトヲ得
  前項ノ免許料ノ徵收及歸屬ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十三條埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ埋立ニ關スル工事ノ著手及工事ノ竣
  功ヲ地方長官ノ指定スル期間內ニ爲スヘシ
  地方長官正當ノ事由アリト認ムルトキハ前項ノ期間ノ伸長ヲ許可スルコ
  トヲ得
  第十四條埋立ノ免許ヲ受ケタル者埋立ニ關スル測量又ハ工事ノ爲必要ア
  ルトキハ地方長官ノ許可ヲ受ケ他人ノ土地ニ立入リ又ハ其土地ヲ一時材
  料置場トシテ使用スルコトヲ得
  前項ノ規定ニ依ル立入又ハ使用ヲ爲サムトスル者ハ其ノ日時及場所ヲ少
  クトモ五日前ニ其ノ土地ノ市町村長ニ通知スヘシ
  市町村長前項ノ規定ニ依ル通知ヲ受タルトキハ其ノ旨土地ノ占有者ニ通
  知スヘシ通知スルコト能ハサルトキハ〓示スヘシ
  前三項ノ規定ハ埋立ノ免許ヲ受ケムトスル者ニ關シ之ヲ準用ス
  第十五條前條ノ規定ニ依ル立入又ハ使用ニ因リテ生シタル損害ハ其ノ立
  入又ハ使用ヲ爲シタル者之ヲ補償スヘシ
  第十六條埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ地方長官ノ許可ヲ受クルニ非サレハ
  埋立ヲ爲ス權利ヲ他人ニ讓渡スルコトヲ得ス
  前項ノ規定ニ依リ埋立ヲ爲ス權利ヲ讓受ケタル者ハ埋立ニ關スル法令又
  ハ之ニ基キテ爲ス處分若ハ其ノ條件ニ依リ讓渡人ニ生シタル權利義務ヲ
  承繼ス但シ第六條第一項、第十條又ハ前條ノ規定ニ依ル義務ハ讓渡人及
  讓受人連帶シテ之ヲ負フ
  第十七條埋立ノ免許ヲ受ケタル者ノ相續人ハ其ノ被相續人ノ有シタル埋
  立ヲ爲ス權利ヲ承繼ス
  前條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
  第十八條埋立ヲ爲ス會社ノ發起人カ會社成立ノ後ニ於テ會社ノ爲ス埋立
  ニ付免許ヲ受ケタル場合ニ於テ會社成立シタルトキハ埋立ヲ爲ス權利其
  ノ他ノ埋立ニ關スル法令又ハ之ニ基キテ爲ス處分若ハ其ノ條件ニ依リ生
  シタル權利義務ハ會社之ヲ承繼ス
  第十九條埋立ノ免許ヲ受ケタル會社合併ニ因リテ消滅シタルトキハ埋立
  ヲ爲ス權利其ノ他ノ埋立ニ關スル法令又ハ之ニ基キテ爲ス處分若ハ其ノ
  條件ニ依リ生シタル權利義務ハ合併後存續スル會社又ハ合併ニ因リテ成
  立シタル會社之ヲ承繼ス
  第二十條前三條ノ規定ニ依リ權利義務ヲ承繼シタル者ハ其ノ承繼ノ日
  ヨリ起算シ十四日內ニ地方長官ニ屆出ツヘシ
  第二十一條第十六條乃至第十九條ノ規定ニ依ル權利義務ノ承繼アリタル
  場合ニ於テハ本法ノ適用ニ付テハ其ノ權利義務ヲ承繼シタル者ヲ以テ埋
  立ノ免許ヲ受ケタル者トス
  第二十二條理立ノ免許ヲ受ケタル者ハ埋立ニ關スル工事竣功シタルトキ
  ハ遲滯ナク地方長官ニ竣功認可ヲ申請スヘシ
  第二十三條埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ前條ノ竣功認可前ニ於テ埋立地ヲ
  使用スルコトヲ得但シ埋立地ニ埋立ニ關スル工事用ニ非サル工作物ヲ設
  置セムトスルトキハ命令ヲ以テ指定スル場合ヲ除クノ外地方長官ノ許可
  ヲ受クヘシ
  第二十四條第二十二條ノ竣功認可アリタルトキハ埋立ノ免許ヲ受ケタル
  者ハ其ノ竣功認可ノ日ニ於テ埋立地ノ所有權ヲ取得ス但シ公用又ハ公共
  ノ用ニ供スル爲必要ナル埋立地ニシテ埋立ノ免許條件ヲ以テ特別ノ定ヲ
  爲シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
  前項但書ノ埋立地ノ歸屬ニ付テハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第二十五條公共ノ用ニ供スル國有地ニシテ埋立ニ關スル工事ノ施行ニ因
  リ不用ニ歸シタルモノハ勅令ノ定ムル所ニ依リ有償又ハ無償ニテ埋立ノ
  免許ヲ受ケタル者ニ之ヲ下付スルコトヲ得
  第二十六條前二條ノ規定ハ耕地整理法第十一條ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
  第二十七條埋立地ニ關スル權利ノ設定又ハ讓渡ニ付テハ埋立免許條件ヲ
  以テ地方長官ノ許可ヲ受クヘキ旨ヲ定ムルコトヲ得
  前項ノ規定ニ依リ埋立地ニ關スル處分ノ制限ヲ定メタル場合ニ於テハ地
  方長官ハ第二十二條ノ竣功認可ヲ爲シタル後遲滯ナク其ノ登記ヲ登記所
  ニ囑託スヘシ
  不動產登記法第百二十九條ノ規定ハ前項ノ登記ニ付之ヲ準用ス
  地方長官登記シタル處分ノ制限ノ全部又ハ一部ヲ解除シタルトキハ遲滯
  ナク其ノ登記ノ抹消又ハ變更ヲ登記所ニ囑託スヘシ
  第二十八條前條第二項ノ登記ヲ爲シタル埋立地ニ關スル權利ノ設定又ハ
  讓渡ニシテ同條第一項ノ許可ヲ受クヘキモノハ其ノ許可ヲ受クルニ非サ
  レハ效力ヲ生セス
  第二十九條前條ノ許可ヲ受ケ權利ヲ取得シタル者ヲ除クノ外第二十七條
  第二項ノ登記ヲ爲シタル埋立地ニ關スル權利ヲ取得シタル者ハ其ノ取得
  ノ日ヨリ起算シ十四日內ニ地方長官ニ屆出ツヘシ
  第三十條地方長官ハ前二條ノ埋立地ニ關スル權利ヲ取得シタル者ニ對
  シ埋立ノ免許條件ノ範圍內ニ於テ義務ヲ命スルコトヲ得
  第三十一條第八條第一項ノ規定ニ依リ埋立ニ關スル工事ニ著手スルコト
  ヲ得ル場合ニ於テハ地方長官ハ其ノ工事ノ施行區域內ニ於ケル公有水面
  ニ存スル工作物其ノ他ノ物件ノ除却ヲ其ノ所有者ニ命スルコトヲ得
  第三十二條左ニ揭クル場合ニ於テハ埋立ニ關スル工事竣功認可前ニ限リ
  地方長官ハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ニ對シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル
  命令ニ依リテ其ノ爲シタル免許其ノ他ノ處分ヲ取消シ其ノ效力ヲ制限シ
  若ハ其ノ條件ヲ變更シ、埋立ニ關スル工事ノ施行區域內ニ於ケル公有水
  面ニ存スル工作物其ノ他ノ物件ヲ改築若ハ除却セシメ、損害ヲ防止スル
  爲必要ナル施設ヲ爲サシメ又ハ原狀囘復ヲ爲サシムルコトヲ得
  -埋立ニ關スル法令ノ規定又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ達反シタルトキ
  二埋立ニ關スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ處分ノ條件ニ違反シタルトキ
  三詐欺ノ手段ヲ以テ埋立ニ關スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ處分ヲ受ケ
  タルトキ
  四埋立ニ關スル工事施行ノ方法公害ヲ生スルノ虞アルトキ
  五公有水面ノ狀況ノ變更ニ因リ必要ヲ生シタルトキ
  六公害ヲ除却シ又ハ輕減スル爲必要ナルトキ
  七前號ノ場合ヲ除クノ外法令ニ依リ土地ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得
  ル事業ノ爲必要ナルトキ
  前項第七號ノ場合ニ於テ損害ヲ受ケタル者アルトキハ地方長官ハ同號ノ
  事業ヲ爲ス者ヲシテ損害ノ全部又ハ一部ヲ補償セシムルコトヲ得
  第三十三條埋立ニ關スル工事竣功認可後埋立ニ關スル法令ニ依ル免許其
  ノ他ノ處分ノ條件又ハ第三十條ノ規定ニ依リ命スル義務ニ違反スル者ア
  ルトキハ地方長官ハ其ノ違反ニ因リテ生シタル事實ヲ更正セシメ又ハ其
  ノ違反ニ因リテ生スル損害ヲ防止スル爲必要ナル施設ヲ爲サシムルコト
  ヲ得
  第三十四條左ニ揭クル場合ニ於テハ埋立ノ免許ハ其ノ效力ヲ失フ但シ地
  方長官ハ宥恕スヘキ事由アリト認ムルトキハ效力ヲ失ヒタル日ヨリ起算
  シ三月內ニ限リ其ノ效力ヲ復活セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ埋立
  ノ免許ハ始ヨリ其ノ效力ヲ失ハサリシモノト看做ス
  一免許條件ニ依リ埋立ニ關スル工事ノ實施設計認可ノ申請ヲ要スル場
  合ニ於テ申請ニ對シ不認可ノ處分アリタルトキ又ハ免許條件ニ於テ
  指定スル期間內ニ申請ヲ爲ササルトキ
  二第十三條ノ期間內ニ埋立ニ關スル工事ノ著手又ハ工事ノ竣功ヲ爲サ
  サルトキ
  前項但書ノ規定ニ依リ免許ノ效力ヲ復活セシメタル場合ニ於テハ地方長
  官ハ免許條件ヲ變更スルコトヲ得
  第三十五條埋立ノ免許ノ效力消滅シタル場合ニ於テハ免許ヲ受ケタル者
  ハ埋立ニ關スル工事ノ施行區域内ニ於ケル公有水面ヲ原狀ニ囘復スヘシ
  但シ地方長官ハ原狀囘復ノ必要ナシト認ムルモノ又ハ原狀囘復ヲ爲スコ
  ト能ハスト認ムルモノニ付埋立ノ免許ヲ受ケタル者ノ申請アルトキ又ハ
  催告ヲ爲スニ拘ラス其ノ申請ナキトキハ原狀囘復ノ義務ヲ免除スルコト
  ヲ得
  前項但書ノ義務ヲ免除シタル場合ニ於テハ地方長官ハ埋立ニ關スル工事
  ノ施行區域內ニ於ケル公有水面ニ存スル土砂其ノ他ノ物件ヲ無償ニテ國
  ノ所有ニ屬セシムルコトヲ得
  第三十六條第三十二條第一項及前條ノ規定ハ埋立ノ免許ヲ受ケスシテ埋
  立工事ヲ爲シタル者ニ關シ之ヲ準用ス
  埋立ノ免許ヲ受ケスシテ埋立工事ヲ爲シタル者アル場合ニ於テ地方長官
  原狀囘復ノ必要ナシト認ムルルトキハ埋立ノ追認ヲ爲スコトヲ得此ノ場
  合ニ於テハ追認ノ日ニ於テ埋立ノ免許アリタルモノト看做ス
  埋立ノ免許ニ關スル規定ハ前項ノ埋立ノ追認ニ關シ之ヲ準用ス
  第三十七條地方長官第六條第三項ノ裁定ヲ爲シ又ハ第十條若ハ第三十二
  條第二項ノ規定ニ依ル補償ヲ爲サシムル場合ニ於テ鑑定人ノ意見ヲ聞キ
  タルトキハ其ノ鑑定ニ要スル費用ハ第三十二條第二項ノ場合ニ於テハ同
  ミミ
  項ノ事業ヲ爲ス者、其ノ他ノ場合ニ於テハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ノ負
  擔トス
  第三十八條第十二條ノ免許料ニシテ國ニ歸屬スルモノ及前條ノ鑑定ニ要
  スル費用ハ地方長官國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得但シ
  先取特權ノ順位ハ國稅ニ次クモノトス
  第三十九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下
  ノ罰金ニ處ス
  一埋立ノ免許ヲ受ケスシテ埋立工事ヲ爲シタル者
  二詐欺ノ手段ヲ以テ埋立ニ關スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ處分ヲ受ケ
  タル者
  三埋立ニ關スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ處分ノ條件ニ違反シ公有水面
  ノ公共ノ利用ヲ妨害シタル者
  第四十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
  -第二十三條但書ノ規定ニ違反シ工作物ヲ設置シタル者
  二第二十七條第二項ノ登記ヲ爲シタル埋立地ニ於テ埋立ニ關スル法令
  ニ依ル免許其ノ他ノ處分ノ條件ニ違反シ工事ヲ爲シタル者
  三第三十條ノ規定ニ依リ命スル義務ニ違反シ埋立地ニ於テ工事ヲ爲シ
  タル者
  第四十一條第二十條又ハ第二十九條ノ規定ニ依ル屆出ヲ怠リタル者ハ百
  圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
  第四十二條國ニ於テ埋立ヲ爲サムトスルトキハ當該官廳地方長官ノ承認
  ヲ受クヘシ
  埋立ニ關スル工事竣功シタルトキハ當該官廳直ニ地方長官ニ之ヲ通知ス
  ヘシ
  第三條乃至第十一條、第十四條、第十五條、第三十一條、第三十七條及
  第四十四條ノ規定ハ第一項ノ埋立ニ關シ之ヲ準用ス但シ第十四條ノ規定
  ノ準用ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受クヘキ場合ニ於テハ之ニ代ヘ地方長官
  ニ通知スヘシ
  第四十三條地方長官ハ公共ノ用ニ供スル爲必要アルトキハ勅令ノ定ムル
  所ニ依リ國ニ於テ埋立ヲ爲シタル埋立地ノ一部ヲ公共〓體ニ歸屬セシム
  ルコトヲ得
  第四十四條第六條第三項ノ規定ニ依ル補償ノ裁定ニ不服アル者ハ其ノ裁
  定書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ起算シ六月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコト
  ヲ得此ノ場合ニ於テハ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ス
  第四十五條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定シタル事項ニ付行政
  廳ノ爲シタル處分ニ不服アル者ハ訴願スルコトヲ得
  本法ニ依リ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ル場合ニ於テハ主務大臣ニ訴
  願スルコトヲ得ス
  第四十六條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定シタル事項ニ付行政
  廳ノ爲シタル違法處分ニ因リ權利ヲ毀損セラレタリトスル者ハ行政裁判
  所ニ出訴スルコトヲ得
  第四十七條本法ニ依リ地方長官ノ職權ニ屬スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ
  依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケシムルコトヲ得
  第四十八條本法ニ依リ地方長官ノ職權ニ屬スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ
  依リ其ノ輕易ナルモノニ限リ下級行政廳ニ之ヲ委任スルコトヲ得
  第四十九條本法中市會又ハ市長ニ關スル規定ハ北海道區制又ハ沖繩縣區
  制ニ依ル區ニ付テハ區會又ハ區長ニ關シ之ヲ適用ス
  本法中町村會又ハ町村長ニ關スル規定ハ町村制ヲ施行セサル地ニ付ラハ
  町村會又ハ町村長ニ準スルモノニ關シ之ヲ適用ス
  第五十條本法ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ公有水面ノ一部ヲ區劃シ永久的設備ヲ築造スル場合ニ之ヲ
  準用ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法施行前爲シタル處分及之ニ附シタル條件ハ本法又ハ本法ニ基キテ發ス
  ル命令ニ牴觸セサル限リ本法ニ依リ爲シタル處分及之ニ附シタル條件ト看
  做ス但シ地方長官ハ公益上必要アリト認ムルトキハ本法施行ノ日ヨリ起算
  シ三月內ニ限リ第三十二條ノ規定ニ拘ラス處分ニ附シタル條件ヲ變更シ又
  ハ處分ニ條件ヲ附スルコトヲ得
  地方長官ニ對スル申請其ノ他ノ埋立ニ關スル手續ニシテ本法施行前爲シタ
  ルモノハ本法ニ依リ之ヲ爲シタルモノト看做ス
  〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕

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• 136・床次竹二郎

  ○國務大臣(床次竹二郞君)　說明ヲ申上ゲマス、公有水面埋立ニ關スル現行
  法規ト致シマシテハ、明治二十三年勅令第三百七十六號、官有地取扱規則中
  ニ唯一箇條ノ規定アルニ止マリマシテ、頗ル不備デゴザイマシテ、遺憾ノ點
  ガ少ナクゴザイマセヌ、依テ此際埋立ニ關スル法規ヲ制定イタシマシテ、時
  勢ノ要求ニ應ゼムトスル次第デゴザイマス、衆議院ニ於テ一箇條追加修正ガ
  ゴザイマシテ、特ニ巨費ヲ投ジテ築造セル魚池、船渠ノ如キ永久的施設ニシ
  テ埋立ニ準ズベキモノニ適用スル趣旨ヲ以テ追加セラレマシタ、政府ハ此修
  正ニ同意ヲ致シマシタ、ドウカ宜シク···

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• 137・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
  〔長書記官朗讀〕
  公有水面埋立法案特別委員
  伯爵〓棲家〓君子爵藤谷爲寬君江木千之君
  男爵南岩倉具威君男爵安藤直雄君男爵今園國貞君
  阪本 多之助君西久保弘道君中山嘉兵衞君

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• 138・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十一、一年現役小學校〓員俸給費國庫負擔
  法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、花山院侯爵
  〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス〕
  一年現役小學校〓員俸給費國庫負擔法案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正十年三月八日
  右特別委員長
  侯爵花山院親家
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔候爵花山院親家君演壇ニ登ル〕

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• 139・花山院親家

  ○侯爵花山院親家君　唯今日程ニ上リマシタ一年現役小學校〓員俸給費國庫
  負擔法案委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、此ノ委員會ハ前後三囘
  開會イタシマシテ、政府當局ノ出席ヲ求メマシテ、ソレゾレ應答質疑ヲ重ネ
  マシテ、愼重審議ヲ盡シタノデゴザイマス、本案ノ大體ノ趣旨ハ、從來師範
  學校ノ卒業生ハ、六週間現役ヲ以テ其ノ兵役義務ヲ終ッテ居ッタノデアリマス
  ガ、大正七年ニ徵兵令改正ノ結果、現役一年ヲ勤メルト云フコトニナッタノデ
  ゴザイマス、從ヒマシテ何等〓職ニ從事シテ居ラヌ、實際〓職ニ就テ居ラヌ
  者ノ俸給ヲ市町村ニ於テ支辨スルト云フコトハ、甚ダ苛酷ナコトデアルト云
  フノデ、國庫ガ之ヲ負擔ヲスルト云フノガ本案ノ趣旨デゴザイマス、委員會
  ニ於キマシテ、ソレゾレ質疑ガゴザイマシテ又政府委員ヨリ之ニ對スル御答
  辯ガゴザイマシタガ、旣ニ速記錄ニ於テ御覽濟ミノコトト存ジマスデ、茲ニ
  省略イタシマス、委員會ニ於キマシテハ、此法案ハ大正七年徵兵令改正ノ時
  ニ其俸給ノ八割ヲ支給スルト云フコトヲ當局大臣ヨリ言明セラレタノデアリ
  マシテ、誠ニ結構ナ案デアル、適當ナ案デアルト認メマシテ全會一致ヲ以テ
  可決スベキモノナリト議了イタシタノデゴザイマス、右御報〓申上ゲマス

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• 140・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 141・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=141

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• 142・八條隆正

  ○子爵八條隆正君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=142

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• 143・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=143

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• 144・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=144

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• 145・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス、全部ヲ問題ニ供シマス、
  全部原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 146・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=146

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• 147・八條隆正

  ○子爵八條隆正君　直ニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=147

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• 148・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=148

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• 149・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直ニ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=149

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• 150・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ナイト認メマス、第二讀會決議ノ通リデ御
  異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=150

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• 151・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ナイト認メマス

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• 152・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　日程第十二、國有土地森林原野下戾ニ關スル法律
  案、衆議院提出、第一讀會
  國有土地森林原野下戾ニ關スル法律案
  右本院提出案及送付候也
  大正十年三月九日
  衆議院議長奧繁三郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  第一條明治三十二年法律第九十九號國有土地森林原野下戾法第一條ノ期
  限內ニ下戾ノ申請ヲ爲ササル者ハ大正十一年三月三十一日迄ニ主務大臣
  ニ下戾ノ申請ヲ爲スコトヲ得
  第二條前條ノ申請ニ對シ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ行
  政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
  第三條明治三十二年法律第九十九號國有土地森林原野下戾法ニ依リ申請
  シタル者又ハ此ノ法律施行以前ニ下戾ニ關スル申請書又ハ願書ヲ差出シ
  此ノ法律ニ依リタルモノト看做サレタルモノニシテ主務大臣ノ處分ニ對
  シ期限內ニ出訴セサル者ハ大正十一年三月三十一日迄ニ行政裁判所ニ出
  訴スルコトヲ得

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• 153・山脇玄

  ○山脇玄君　農商務ノ政府委員ハ御出席ニナッテ居ラレマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=153

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• 154・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　居ラレマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=154

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• 155・山脇玄

  ○山脇玄君　ソレデハチヨット

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=155

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• 156・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　質問デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=156

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• 157・山脇玄

  ○山脇玄君　質問デアリマス、宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=157

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• 158・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=158

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• 159・山脇玄

  ○山脇玄君　此ノ下戾法案ハ數囘出マシテ、段々ニ下戾ニナリマシタガ、未
  ダ下戾ニナラヌモノガアッテ權衡ヲ得テ居ラヌノデアリマス、御承知ノ通リニ
  此ノ下戾ヲ受ケマスニハ證據物ノ蒐集ト云フコトガ非常ニ困難デアルノミナ
  ラズ、大林區署ヲ經テ農商務省ニ達スルノデアリマスカラ、其間ニハ隨分面
  倒ナ手續ヲ經ル爲ニ期限モ後レルト云フコトニナッテ居ル、洵ニ困ッタ是ハ手
  續デアリマス、ケレドモ一旦下戾ヲ許スト云フコトニナリマシタ以上ハ、公
  平ニ御處置ニナラナクテハナルマイト思フ、既ニ下戾ヲ受ケタ者ト未ダ下戾
  ヲ受ケナイ者トノ權衡ヲ得ヤウト云フニハ、ドウシテモ殘ッタモノヲ下戾シテ
  ヤルト云フ必要ガ無論アルノデアリマス、デアリマスカラ政府モ定メシ此案
  ニハ御同意ニナッテ居ルコトトハ存ジマスガ、其御意見ヲ承ハリタイ、萬一若
  シ此案ニ同意ヲナサレヌト云フコトデアルナラバ、下戾ヲ受ケタノト、下戾
  ヲ受ケナイモノトノ權衡ヲ得ル爲ニ、他ニ御考デモアルナラバ、其コトヲ伺
  ヒタイ
  〔政府委員田中隆三君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=159

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• 160・田中隆三

  ○政府委員(田中隆三君)　御答申上ゲマスガ、御尋ノ通リ此法案ハ六度、今
  度デ七度衆議院カラ當院ニ御送付ニナッテ居ル案デアリマシテ、段々ノ御事
  情此法案ヲ提出イタサレマスル理由ニ付マシテハ、誠ニ御同情ニ堪ヘヌコ
  トトハ存ジマスルガ、元〓此林野ノ下戾ト申シマスルノハ、地租改正ノ際ニ
  其時ノ處分ニ誤謬ガアル、誤ッテ民有タルベキモノガ官有地ニ編入サレタト云
  フ其ノ誤謬手續ヲ改メテ貰ヒタイト云フコトニナルノデアリマス、而シテ其
  手續ハ固ヨリ十數年來、明治十年前後カラ地租改正ガ始リマシテ、其終了十
  四五年以來カラ考ヘテ見マシテモ、明治三十二年迄モ十七年餘ノ年月ガアル、
  其十七年ノ間ニ誤謬ヲ訂正スベキモノハ誤謬ヲ訂正スルト云フコトデ、段々
  ト順序ヲ經テ來テ居リマス、而シテ其十數年ノ間ニ或ハ訓令トナリ、或ハ省
  合トナッテ、諸般ノ手續等ヲ人民ニ示シテ居ルノデアリマス、サウ致シテ居
  リマスルガ、何時マデ經ッテモ其區切ガ付カヌ、ソレガ爲ニ此ノ國有財產ノ經
  營ノ上ニ於テモ方針ノ立テ方ガナイ、折角政府トシテ整理ニ手ヲ著ケタモノ
  モ、所有權ノ恢復ヲ求メテ來ルト云フヤウナ次第デ、全般ニ亙ッテノ計畫ノ上
  ニ諸般ノ支障ヲ起シマシタノデ、ソレ故ニ明治三十二年ニ所謂下戾ナルモノ
  ヲ發布セラレマシタガ、實ハソレハ新ニ下戾ヲスル法律デハナクシテ、此下
  戾手續ヲモウ一年デ打切ラウト云フ法律デアル、打切ル法律デアル、ソレニ
  依テ三十二年カラ詰リ三十三年六月マデデ、最早此ノ誤謬訂正、言葉ヲ換ヘ
  テ申シマスレバ下戾ノ出願ハ、最早許サヌゾト云フ法律デアルノデアリマス
  ソレデ以テ濟ンダノデアル、ソレヲ又其後ニ至リマシテ、段々漏レタモノガ
  アルカラ、モウ一遍下戾手續ヲ開始シテ呉レト云フコトデアリマス、デ漏レ
  タモノガアルト云フ、ドレダケノモノガ漏レテ居ルカ、勿論廣イ日本國中ノ
  コトデゴザイマスカラ、漏レタモノガアルデゴザイマセウケレドモ、漏レタ
  モノガアルカラト申シマスレバ何時マデモ際限ガ付カヌ、ドウシテモ前ノ方
  針ヲ國家ノ爲ニ所謂打切リト云フモノヲチヤント區切ヲ立テテ、勿論其立テ
  タ以後全體ノ國有林ニ付デ諸般ノ經營ヲ致シテ居ルノデアリマスカラ、今又
  國有林ノ中或部分ニ缺陷ヲ來スト云フコトハ、政府トシテドウシテモ國有財
  產ノ經營上ドウモ御同意イタシ兼ネル、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデアリマ
  ス、併ナガラ國有林ノ下戾ヲ願フ、或部分、或動機ノ中ニハ誠ニ其同情ニ堪
  ヘヌコトガアルノデアリマス、卽チ此ノ國有林ト、其ノ國有林ノ所在地、其
  ノ町村部落トノ關係ガ如何ニモ圓滿ヲ缺クヤウナコトガアルノデアリマス、
  實際ノ上カラ申シマスルト、百姓家ノ軒先カラ直グ官有デ「ステッキ」一本取ッ
  テモ、栗一ツ拾ッテモ、嚴重ナ法律ノ上カラ申シマスルト、制裁ヲ受ケナケレ
  バナラヌト云フヤウナコトガアル、國有林ヲ監理スル所ノ役人ニ對シテモ、
  殆ド敵人デアルガ如キ感ヲ以テ村民ガ之ニ臨ムト云フガ如キコトモ、往々ニ
  シテ世間デ申スノデアリマス、ソレハ今申シマスル如クデナイカモ知レマセ
  ヌガ、確ニ或場所或部分ニ於テハ偶〓官林ニ野火ガ起ッテモ喜ンデ勇ンデ之ヲ
  消スト云フヤウナコトガナカッタリ、盜伐ヲ見テモ見テ見ヌ振ヲシタリスルコ
  トガ段々アッタサウデアリマス、此點ハ如何ニモ殘念ナコトデアリマス、ドウ
  シテモ此間ノ調和ヲ取ラナケレバナラヌト感ジマシテ、幸ニ現行ノ法律ニ於
  テハ此ノ國有林ノ保護ヲ、其ノ所在町村部落等ニ委託スル方法ヲシテ宜イコ
  トニナッテ居リマス、ケレドモ現在ニ於テハ、ソレハ致シテ居リマセヌノデア
  リマス、此ノ委託保護ノ方法ヲ是非急イデ致シタイ、卽チ所在ノ町村ガ官林
  ノ保護ノ委託ヲ受ケテ、只今申上ゲマシタヤウナ、或ハ盗伐デアリ或ハ蟲害
  デアリ、或ハ野火デアルト云フヤウナコトニ付テ、始終部落町村ガ見廻リヲ
  シテ呉レル、保護ヲシテ吳レル、其代リ其町村カラ生ズル所ノ副產物デアリ
  マストカ、或ハ町村民ノ要スル所ノ薪炭材デアリマストカ、或ハ山カラ生ズ
  ル所ノ枯損木デアリマストカ、或ハ官行事業ヲ致シマシタ場合ニ段々途中デ
  間伐スルヤウナ、手入レノ爲ニ伐拔キヲスルヤウナ材木モ出マス、又本當ノ
  本材ヲ伐リマシタ時ニハ其枝木デアリマストカ、末木デアリマストカ云フヤ
  ウナ、相當ナ財產トナルベキモノガ出マスノデ、ソレ等ノモノヲ村民ニ無償
  給與スル、前申上ゲマスル其保護ニ對スル報酬トシテ、村民ヲシテ其山林ヲ
  愛護スルノ念ヲ起サシメテ、憂ヘテ居ル所ノ其官林ニ對スル惡感情ヲ一掃シ
  タイト存ジマシテ、唯〓折角其取調ベヲ進メテ居リマス、近キ將來ニ於キマ
  シテソレヲ實現イタシタイト思ヒマス

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• 161・板倉勝憲

  ○子爵板倉勝憲君　議長····

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• 162・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　板倉子爵ハ

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• 163・板倉勝憲

  ○子爵板倉勝憲君　私モ同樣ノ質問ヲ致シタイト思ヒマス、私モ簡單デゴザ
  イマスカラ、此處カラ中上ゲマスガ、此法案ハ今政府委員カラ御說明ニナリ
  マシタ通リ、屢、從來繰返サレタモノデアル、元〓此ノ國有林ヲ拂下ゲルト云
  フコトハズット前ノコトデアッテ、無論其當時ノコトデゴザイマスカラ、或
  ハ長州デアルトカ、或ハ九州デアルトカ云フ風ノモノハ、悉ク官有林ガ拂下
  ゲニナッタト云フヤウナ事實ガアリ、語弊ガアルカモ知レマセヌガ、サウ云フ
  事實ガアル、然ニ東北ノ如キハ極メテ引キガ薄カッタ爲メ或ハ納稅ガ遲レ、或
  ハ證據ガ完備シナイ、種々ノ手續ノ錯誤、證據ノ不十分ト云フヤウナコトデ、
  拂下ヲ受ケナカッタ地面ガ非常ニ多イ、其爲ニ今日デモ唯今、農商務次官カラ
  御話ノ通リ、自分ノ軒先カラ直グニ官有ノ土地デアル、官有林デアル、私ノ
  知ッテル所ニ依リマスルト、却テ自分ノ庭先ヲ越エテ向フノ山ハ自分ノ村ニ
  ナッテ居ル、自分ノ村ナドガ證據ガナイ爲ニ國有ニナッテ居ル、斯ウ云フヤウ
  ナ不條理ナコトガ、殊ニ東北地方ニ非常ニ多イト考ヘル、其爲ニ段々人口ガ
  殖エテ稠密ニナッテ來ルト、自然盜伐········從來ハ自分ノ村ノ所有地トシテ
  扱ッタモノガ、官有林デアルカラ自然盜伐ガ行ハレル、地方ニ於テ政府ノ役人
  ト村民ト始終爭ヒヲスル、甚ダシキニ至ッテハ栗ノ實ヲ拾ッテモ、枯木ノ枝ヲ
  取ッテモ直グニ拘引サレルト云フヤウナコトハ、甚ダ多イ事實ノヤウニ思フ、
  是ハ國家トシテ甚ダ私ハ、國有林ダ國有土地ダト云フヤウナ觀念デ、村民ノ
  土地ヲ證據ノ不十分、或ハ手續ノ遲延ト云フノデ、國有ニドンドン繰入レテ
  仕舞ッタ、昔カラ其村ノ村林デアルベキ軒先ノ地面等ヲ國有林ニスルト云フコ
  トハ非常ニ怪シカラヌコトデハナイカ、是ハ政府ガ人民ヲ敵トスルモノデア
  ル、然ラバサウ云フ現狀デアルナラバ、六遍デモ七遍デモ常ニ此期限ヲ延シ
  テ成ベク證據ノアルモノハ取上ゲテ、採擇シテ、サウシテ之ヲ人民ニ拂下ゲ
  ルト云フコトガ、是ハ政府ノ政策トシテ當前ノコトデアル、今日ノ如ク丸
  デ山林ノ役人ト人民トガ喧嘩ヲシテ、其人民ノ總代ガ牢屋ニ這入ル、俺達ハ
  總代デ這入ルト云フヤウニ總代ヲ決メテ置イテ、サウシテドンドン盜伐ヲス
  ル、或ハ草ヲ刈ルト云フヤウナコトヲシテ居ル地方ガ非常ニ少ナクナイト云
  フノハ、甚ダ國家ノ爲ニ私ハ悲シムベキコトデアルト思フ、サウ云フコトヲ
  考ヘマスト云フト、斯ウ云フ法律ハ手續ヲ忘レタ者モアルシ、知ラヌ者モア
  ルシ、又證據ガ不十分デアル者ガ段々アル、ソレヲ採用スルコトガ當然ノコ
  トダラウト思ヒマスカラ、之ニ對スルモウ一ツ政府ノ感想ヲ伺ヒタイ
  〔政府委員田中隆三君演壇ニ登ル〕

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• 164・田中隆三

  ○政府委員(田中隆三君)　御答申上ゲマスガ、唯今モ申上ゲタ如ク、此ノ町
  村ト國有林トノ間ノ關係ニ付テ、兎角圓滿ヲ缺ク傾ガアルト云フコトニ付テ
  ハ甚ダ遺憾ニ感ジテ居リマス次第デゴザイマス、併ナガラ過去ノ實蹟ニ徵
  シテ見マシテモ、何萬ト云ッテ出テ參リマシタ下戾ノ願ノ中ニ、證據ガ備ッテ
  下戾ヲ許可スルト云フノハ甚ダ比例ガ少ナイノデゴザイマス、今後假ニ此規
  則ヲ又更ニ出シマシテモ、十分確實ナル證據ガ澤山ナリトシテ願ッタモノサヘ
  モ、今申上ル通リニ非常ニ許可ヲ得ル比例ガ少ナイノデゴザイマスカラ、今
  後出テ參リマスモノハ、今選リ拔イタ後ノ出願ニナルノデ、其比例ハ益〓減ル
  モノデナカラウカト實ハ存ジテ居リマス、而シテ此下戾ヲ願ヒマシテ、幸ヒ
  許可ヲ得マシタ各町村等ノ實蹟ニ付テ大體ヲ觀察イタシマシテモ、其ノ出願
  中結局行政裁判所等迄參リマシテ、費用ヲ使フ者モアリ、行政裁判所迄參ラ
  ヌ者ニ致シマシテモ、何レ證據調べノ世ノ中デアリマスルノデ、矢張専門
  家ノ手ニ渡ラナケレバナリマセヌノデ、段々費用ニ掛リマシテ、村ノ方ニ殘
  ル所ノモノ幾許モナイ、却テ下戾ヲ得テ非常ナ苦痛ヲ感ジテ居ル町村モアル
  ヤウナコトニ聞及ンデ居リマス、今後處分ヲスルニ致シマシテモ證據ガナイ
  モノニ下ゲル譯ニ參リマセヌカラ、矢張ドコ迄モ證據問題ニナラナケレバ
  ナラヌ、而シテ確實ナル證據ヲ持ッテ居ルト云フノハ前申上ゲル通リ非常ニ
  比例モ少ナイコトデゴザイマスルカラ、同情ニハ堪ヘヌコトデハゴザイマス
  ケレドモ、又前申上ゲタ方針デ打切ッタモノヲ、又玆ニ囘復ヲシテ、サウシテ
  村民トシテハ非常ニ手續モ費用モ掛リ、サウシテ割合ニ效果ノ薄イ手續ヲス
  ルト云フコトハ考ヘモノデアル、ソレヨリハ村民トノ關係ニ於テハ、前申上
  ゲタヤウナ手續ヲ致シマシテ、所在地ト官吏トノ間ノ闕係ヲ圓滿ナラシムル
  所ノ方ガ、實效ガアッテ容易イコトデナカラウカト思ッテ居リマス次第デゴザ
  イマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=164

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• 165・板倉勝憲

  ○子爵板倉勝憲君　モウ一ツ伺ヒマスガ、今ノ政府ノ御同情アル御話デアル
  ガ、然ラバ何モ其法律ヲ作ッテ置イテモ宜カラウト考ヘル、成程證據ガ集ル前、
  完備トハ行クマイケレドモ、何百何千ト云フ中ニハ完備シタモノガ出テ來ル
  カモ知レヌ、ソレヲ何モ强ヒテ打切ル必要ナカラウト思フ、法律ヲ拵ヘテサ
  ウシテサウ云フ證據ノ出タ者ハ、假令一ツカ二ツデモ今又ソレハ完全ナル證
  據ト信ジテモ、ソレヲ行政裁判所ナリ何ナリデ審査シテ、證據ガ不完全トスレ
  バ、ソレヲ以テ判決ヲ下セバ納得スル、ソレデ納得サシテヤラレルノガ宜カ
  ラウト思フ、唯モウソレヲ打切ッテ仕舞ッテ受取ラヌト云フヨリモ、ドンドン
  受取ル、證據アルモノハ千ノ中ニ一ツモ出テ來ル、又千ノ中ニ百二百出テ來
  ル、其證據ハ不完全ナラ不完全ト言ヘバ、納得シテ參ル、御前ノ證據ガ不完
  全ダト言ヘバ納得スル、又住宅地ノヤウナ話モアリマシタガ、是ハ近キ將來、
  近キ將來ト云フ言葉デアリマスガ、近キ將來ト云フノハ三年掛ルカ、五年掛
  ルカ分ラヌ、サウ云フ近キ將來ト云フコトヲ唯言フダケデ、此法規モ何モ否
  定スル必要ハナカラウ、其法律ヲ置ク爲ニ非常ナ費用ガ掛ルトカ、非常ナ手
  續ガ要ルトカ云フノナラバ、又ソレハ考ヘモノデアリマスガ、單ニ之ヲ置イ
  テモ左程ノ費用モ掛ラナケレバ、手數モ掛ラヌ、サウシテ一方ニハ極メテ
  新シイ證據ガ出ルカモ知レヌ、又サニ非ズシテ出願者ハ立派ナ證據ト信ジテ
  居ル證據ガ不十分デアッテモ、不十分ダト言ッテ納得サスレバ宜イ、然ニ之ヲ
  打切ッテ仕舞ッテ、今後ハ相成ラヌト云フコトハ、甚ダ政府トシテハ面白クナ
  イコトデナイカト考ヘル、モウ一應其點ヲ伺ヒタイ
  〔政府委員田中隆三君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=165

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• 166・田中隆三

  ○政府委員(田中隆三君)　御答申上ゲマスルガ、此法律ガ出マスルト云フト、
  矢張ソレガ爲ニ數十人ノ役人ヲ、矢張拵ヘマシテ、特別ニサウシテ中
  〓綿密ナル且嚴重ナル調査ヲシナケレバナラヌノデアリマス、中〓其簡單
  デナイノデアリマス、殊ニ兎角世間カラ何ノカンノト云フ疑惑ヲ招クヤウナ
  職務デアリマスルノデ、特別ニ此コトニ專門ニ當ル所ノ數十人ノ役人モ使ハ
  ナケレバナラス、ソレ等ノ半ハ餘リ格別デナイト致シマシテモ、國家トシテ
  ノ一番ノ苦痛ハ國有林ノ計畫ヲ中止シナケレバナラヌノデアリマス、ソレガ
  一番困ルノデ、ソレカラ又此度ノ法案ニ致シマシタ所デ、一年ト云フ期限デ
  アル、丁度只今御提案ニナッテ居リマスノハ一年期限デアル、一年經ッテ又同
  ジ問題ヲ繰返シテ來年迄ニ願フコトガ出來ナカッタ、證據ガ調ハナカッタト云
  フ者ハ、又來々年ニナッテ又何故私ニヤラセヌカト云ッテ苦情ヲ云フ者ガ出ル、
  理窟ノ同ジコトヲ繰返スコトニナルカラドウシテモ是ハ官民相互ノ爲ニ同ジ
  ク憂ヒテ居リマス所ノ町村ノ關係トカ何トカ云フコトハ、別ノ方ニ依テ治メ
  タ方ガ實績ガアルモノト思フ、此方法ヲ執ルコトハ不得策デアル、斯ウ認メ
  テ居ルノデアリマス、根本ノ事情ニ於テハ洵ニ同情ニ堪ヘヌ點ハゴザイマス
  ルケレドモ、國家ノ上カラシテドウシテモ是迄既ニ手續ヲ運ンデ居リマスカ
  ラ、此上ニ更ニ此山林ノ經營ヲ、爭ヒノ一切治マルマデ中止スルト云フコト
  ハ洵ニ困ル譯デ、其點ニ於テ政府ハ御同意致シ兼ネテ居ル次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=166

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• 167・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　諸君ニ於テ御異議ガナケレバ、本案ノ特別委員ハ
  國有財產法案ト同一ノ委員ニ付託致シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=167

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• 168・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　モウ一ツ諸君ニ御諮リヲ致シマス、議事日程第十
  三ヨリ第三十九マデハ、請願ノ會議デゴザイマスガ、諸君ニ於テ御異議ガナ
  ケレバ、全部一括シテ問題ト致シタイト思ヒマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
  〔左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之ニ倣
  フ〕
  意見書案
  義務〓育費國庫負擔金增額ノ件
  長野縣松本市〓員三村壽八郞外六名呈出
  秋田縣秋田市長野下堀端町〓員井口益吉外一名呈出
  佐賀縣佐賀市大字水ヶ江町〓員濟木庄八外十名呈出
  新潟縣南蒲原郡栗林村佐藤謹二外四十六名呈出
  愛知縣南設樂郡長篠村〓員山田國一外二十六名呈出(四通)
  大分縣下毛郡東城井村〓員角野善治外三百七名呈出(三十一通)
  茨城縣水戶市下市十軒町〓員川上春次郞外八十名呈出(二通)
  京都府南桑田郡龜岡町平民〓員淺井榮次郞外八十一名呈出(二通)
  栃木縣下都賀郡栃木町官吏原島正助外六十九名呈出
  京郡市上京區室町通〓員田村作太郞外八百五十九名呈出
  山梨縣甲府市富士川町〓員保坂茂吉外百六十八名呈出(七通)
  德島縣板野郡川內村〓員手塚猪九郞外十名呈出
  新潟縣長岡市愛宕町〓員星野廣外六十四名呈出(四通)
  秋田縣平鹿郡淺舞町長眞田龜治外百四名呈出(二通)
  埼玉縣兒玉郡賀美村〓員永澤角太郞外七名呈出
  佐賀縣三養基郡北茂安村〓員岡村織三郞外百七名呈出
  靑森縣靑森市大字浦町〓員山內元八外百九十三名呈出
  和歌山縣和歌山市湊紐屋町酒造業南方常楠外三百七十五名呈出(十二
  通
  滋賀縣蒲生郡八幡町松原廣吉外三百十一名呈出(二十九通)
  福井縣大野郡阪谷村〓員山村福松外二百二十二名呈出(二十八通)
  東京市神田區錦町華族東京府〓育會長岡部長職外九十五名呈出(七
  五通)
  埼玉縣大里郡御正村長松本定吉外一名呈出(二通)
  群馬縣高崎市柳川町高崎市〓育會長平井八太郞外四十二名呈出
  新潟縣南蒲原郡長澤村農石月佐傳次呈出
  長野縣上伊那郡伊那町上伊那郡〓育會長原才三郞外三百九十四名呈出
  (二十七通)
  長野縣北佐久郡蘆田村公吏岩下政三外二百一名呈出(十二通)
  長野縣更級郡八幡村〓員中嶋惣左衞門外千二百三十二名提出(百六十
  三通)
  山口縣下關市關後地村〓員西原主馬外九十九名呈出(五通)
  長崎縣北松浦郡平戶村〓員白川富太郞外二百八十二名呈出(五十二通)
  熊本縣玉名郡阪下村〓員中島熊五郞外八百七十三名呈出(十通)
  秋田縣平鹿郡增田町〓員柴田熊藏外二百二十五名呈出(六通)
  埼玉縣大里郡新會村長荒木常四郞外二十九名呈出(十七通)
  滋賀縣野洲郡玉津村〓員石田篤造外九百八十七名呈出(九十三通)
  岡山縣御津郡福濱村〓員正本龜太郞外十四名呈出
  茨城縣水戶市上市櫻町官吏松本喜一外三十名呈出
  廣島縣高田郡三田村農己斐秋一外一名呈出
  滋賀縣蒲生郡鎌掛村〓員小林八重吉外六名呈出
  富山縣氷見郡布勢村〓員中野良吉外二十八名呈出
  東京市本所區新小梅町華族本所區〓育會長德川圀順呈出
  埼玉縣大里郡吉岡村長長井茂吉外四名提出(五通)
  岐阜縣大垣市室町〓員竹中薰外七十六名呈出
  島根縣能義郡廣瀨町〓員妹尾信敏外十一名呈出
  千葉縣千葉市千葉縣〓育會長折原巳一郞呈出
  神奈川縣津久井郡與瀨町醫師小林藤治外四名呈出
  鹿兒島縣揖宿郡頴娃村〓員上村新之助外二百八十名呈出(二十通)
  熊本縣玉名郡南關町〓員久我末尾外千九百二十二名呈出(百四通)
  大阪市南區天王寺南河堀町官吏和田廉之助外三十二名呈出
  岐阜縣郡上郡奧明方村〓員喜多七五郞外八十五名呈出(八通)
  神奈川縣津久井郡三澤村〓員加藤銀造外八百三十五名呈出(二十通)
  北海道白老郡白老村〓員遠山隆外二百八十五名呈出(三通)
  島根縣安濃郡波根西村〓員今岡增太郞外百四十五名呈出(三通)
  巖手縣盛岡市加賀野官吏勝山信司外三十四名呈出
  神奈川縣橫濱市老松町〓員星年松外七百六十九名呈出(三十二通)
  德島縣德島市南佐古町〓員藤本達治外百六十二名呈出(十六通)
  山形縣米澤市關東町〓員椿辰之助外百三十名呈出(七通)
  埼玉縣大里郡男沼村平民農中里小源治外八十五名呈出(五通)
  山梨縣東八代郡下曾根村〓員大木惠吉外七十五名呈出(五通)
  熊本縣鹿本郡田原村〓員生田長太郞外五十三名呈出
  秋田縣雄勝郡湯澤町〓員藤井秀三郞外二百九十三名呈出(三十五通)
  山形縣山形市小鷹銳健呈出
  京都府南桑田郡篠村〓員木村作次郞外四百五十五名呈出(五通)
  高知縣土佐郡秦村公吏大平茂樹外四百九十三名呈出(十七通)
  三重縣宇治山田市中之町〓員靑木家平外三百四十九名呈出(三通)
  兵庫縣神戶市夢野町〓員辻信一外二百五名呈出、三通)
  熊本縣鹿本郡山鹿町〓員堀井勇三外二百三十四名呈出(十九通)
  長崎縣壹岐郡田河村〓員松本德衞外十三名呈出(二通)
  福岡縣大牟田市松浦町〓員眞武莊一外三百十八名呈出(三通)
  神奈川縣中郡吾妻村平民〓員福泉義飽外三十二名呈出
  岡山縣小田郡陶山村〓員惣津三郞外二十四名呈出
  福岡縣糸島郡前原町〓員白水卯之吉外百六十六名呈出(二通)
  長野縣下高井郡倭村〓員渡邊巨海外三千三百十五名呈出(五十三通)
  和歌山縣伊都郡花園村〓員山內由松外七百十五名呈出(八通)
  岡山縣御津郡圓城村〓員石井一郞外百十五名呈出(五通)
  福岡縣早良郡原村〓員福田丑之助外九名呈出
  山形縣山形市旅籠町〓員高野甚太郞外百十六名呈出
  千葉縣夷隅郡東村〓員高原直吉外二百三十六名呈出(二通)
  三重縣度會郡瀧原村〓員稻田州三外三百六十五名呈出(三通)
  神奈川縣橫濱市元濱町橫濱市〓會長大谷嘉兵衞外一名呈出二通)
  長野縣北佐久郡志賀村〓員赤岡一男外六名呈出
  右ノ請願ハ曩ニ政府ハ市町村義務〓育費國庫負擔法ヲ制定シ小學校〓員優
  遇ノ途ヲ開カレタリト雖町村ノ一般ノ經費ハ漸次膨脹シテ〓育費ノ支出ニ
  苦ムノ狀態ニ在リ斯ノ如キハ小學校〓員ノ地位ノ安定ヲ得サラシメ義務〓
  育上ノ一大障礙ナルヲ以テ國庫負擔金ヲ小學校〓員俸給ノ半額ニ達セシム
  ルヤウ增額セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモ
  ノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  明治二十三年法律第九十一號中改正ノ件
  佐賀縣東松浦郡唐津町平民〓員中村敬吉呈出
  右ノ請願ハ明治二十三年法律第九十一號第七條第二項第一號ノ規定ハ公立
  學校ノ囑託員及雇員ヲ除外セサル爲退隱料受給資格者カ囑託員及雇員トシ
  テ更ニ公務ニ就キタル場合退隱料ノ全部又ハ一部ヲ停止セラルルハ文武官
  ニ比シ權衡ヲ失スルノミナラス同規定ハ大正九年ノ俸給令及恩給法改正以
  前ニ退職シタル公立學校職員ヲシテ實收入ノ減少ヲ來タサシムルモノナル
  ヲ以テ同號ヨリ囑託員及雇員ヲ除外シ且「退職現時ノ給料額」ノ下ニ(大正
  九年ノ俸給令改正以前ニ於ケル退職者ニハ其ノ退職現時ノ給料ノ一、七倍
  額)ノ一節ヲ加ヘラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
  キモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月11
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  大田瀧原間鐵道敷設ノ件
  東京市赤坂區仲ノ町士族醫師河島右一外六十五名呈出(二通)
  右ノ請願ハ島根縣邑智郡濱原村大字瀧原ヨリ週摩郡大森町ヲ經テ安濃郡大
  田町ニ至ル鐵道ハ該地方ニ於ケル文化ノ發達竝富源ノ開拓上最必要ナルヲ
  以テ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇ス
  ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  國分岩川間鐵道敷設ノ件
  鹿兒島縣噌唹郡岩川村長川崎和夫外九名呈出
  右ノ請願ハ鹿兒島縣噌唹、肝屬二郡及宮崎縣南那珂郡ハ農產畜產等ノ業盛
  ナリト雖交通運輸ノ便ヲ闕キ經濟上密接ノ關係ヲ有スル鹿兒島市トノ連絡
  完カラス地方開發上甚遺憾ナルヲ以テ鹿兒島線鐵道國分驛ヨリ鹿兒島縣噌
  唹郡岩川村ニ至ル鐵道ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
  體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
  也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  府縣稅徵收ニ關スル交付金增額ノ件
  宮崎縣宮崎郡宮崎町長若松悌二呈出
  右ノ請願ハ明治三十三年勅令第八十一號ニ依リ定メラレタル府縣稅徵收ニ
  關スル交付金ハ他ノ租稅徵收ニ關スル交付金ニ比スレハ少額ナルノミナラ
  ス近時町村ニ於ケル各種自治事業ノ勃興ニ伴ヒ地方民ノ負擔益加重シ府縣
  さき
  稅徵收ノ煩勞益增大シタルヲ以テ同交付金ヲ相當增額セラレタシトノ旨趣
  ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
  五條ニ依リ別冊及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  石川縣珠洲郡內ニ鐵道敷設ノ件
  石川縣珠洲郡飯田町長八木久八郎外九名呈出
  右ノ請願ハ石川縣珠洲郡ハ海陸ノ產物豐富ナルニモ拘ラス交通機關ハ甚不
  備ニシテ殊ニ冬季ハ風波ノ爲定期船ノ航海ヲ杜絕スルコト多ク郡民ノ不便
  不利甚シキヲ以テ北陸線鐵道ヨリ分岐シテ鳳至郡輪島町ニ至ル鐵道ヲ敷設
  スル場合ニハ之ト同時ニ同鐵道ヲ珠洲郡ニ延長敷設セラレタシトノ旨趣ニ
  シテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
  條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  群馬縣山田郡毛里田村外三村ヲ新田郡ニ編入ノ件
  群馬縣山田郡毛里田村長野村直次郞外三名呈出(四通)
  右ノ請願ハ群馬縣山田郡毛里田、矢場川、韮川及休泊ノ四村ハ郡內ニ於ケ
  ル他ノ町村トハ地利上竝歷史上人情、風俗、習慣及業務ヲ異ニシテ却テ新
  田郡トハ古來密接ナル關係ヲ有シ公私ノ事務總テ同郡ニ依ルノ狀態ニアル
  ヲ以テ右ノ四村ヲ新田郡ニ編入セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
  大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付
  候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  松前鐵道敷設ノ件
  北海道松前郡福山町平民農早川鐵冶外二百八十名呈出
  右ノ請願ハ函館ヲ起點トシ松前郡福山町ニ至ル松前鐵道ノ豫定地方ハ農業
  牧畜養蠶ヲ業トシ前途有望ナルノミナラス水產物亦豐富ニシテ殊ニ柔魚漁
  ノ如キ百萬圓ノ收獲アルニ拘ラス交通機關ノ完成セサルハ地方民ノ苦痛ニ
  堪ヘサルトコロナルヲ以テ速ニ該鐵道ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴
  族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
  リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  大田於福間鐵道敷設ノ件
  山口縣美禰郡共和村於福大田間鐵道期成同盟會長阿武義一外十名呈出
  右ノ請願ハ山口縣美禰郡ハ氣候温和ニシテ農產、林產、畜產及鑛產等ニ富
  ムモ交通不便ニシテ車馬ニ依リ僅ニ用ヲ辨スルニ過キス殊ニ大田於福間ハ
  交通頻繁ナル爲道路ハ破壞シ人民ノ不便甚シキヲ以テ速ニ同郡大田ヨリ秋
  吉別府ヲ經テ於福ニ至ル鐵道ヲ敷設シ伊佐正明市間輕便鐵道ト連絡シテ同
  地方文化ノ開發ニ資セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
  スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵徳川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  義務〓育費國庫負擔金增額ノ件
  新潟縣中蒲原郡小須戶町長齋藤一外三十六名呈出
  右ノ請願ハ曩ニ政府ハ千萬圓ヲ國庫ヨリ支出シ〓員優遇ノ資タラシメムト
  セラレシモ町村一般ノ經費ハ漸次膨脹シテ困難ヲ感スル狀態ニ在リ斯ノ如
  キハ小學校〓員ノ地位ノ安定ヲ得サラシメ〓育上ノ一大障礙ヲ釀スノ虞ア
  ルヲ以テ小學校〓員ノ俸給ニ對スル國庫補助ヲ相當增額セラレタシトノ旨
  趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
  十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵徳川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  義務〓育費國庫負擔金增額ノ件
  新潟縣東頸城郡安塚村長丸山吉五郞外十三名呈出
  右ノ請願ハ小學校ノ經費ハ逐年膨脹シ市町村費ノ大半ハ之ニ投セラレ產業
  衞生土木等ノ施設ハ之カ犧牲トセラルルノミナラス町村財政ノ如何ニ依リ
  テハ〓育設備及〓員ノ待遇ニ甚シキ差異ヲ生ス斯ノ如キハ國民〓育ノ振興
  上遺憾ニシテ且自治體ノ發達ヲ害スルコト多大ナルヲ以テ速ニ小學校〓員
  俸給ノ半額ヲ國庫負擔トスルノ制ヲ定メ之ヲ救濟セラレタシトノ旨趣ニシ
  テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條
  ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  富山縣氷見郡氷見町ニ漁港修築ノ件
  富山縣氷見郡氷見町長大井義昌呈出
  右ノ請願ハ富山縣氷見郡氷見町地方ハ富山灣ニ而シ近海及遠洋ノ漁業盛大
  ニシテ漁獲高多キモ漁業ノ最盛ナル冬期ハ天候險惡ニシテ漁船ノ遭難頻頻
  タリ斯ノ如キハ同地方ノ發展ヲ圖ル所以ニ非サルヲ以テ地勢上最好適地タ
  ル氷見町ヲ漁港トシテ修築セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
  ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  御肖像揭載ノ印刷物取締ニ關スル件
  山梨縣甲府市柳町鍼治業長田保春呈出
  右ノ請願ハ御肖像ヲ新聞雜誌其ノ他ノ印刷物ニ奉揭スルハ不知不識ノ間ニ
  不敬ヲ犯スノ因トナルヲ以テ取締法ヲ制定シ之ヲ禁止スルカ或ハ附錄等ニ
  奉揭シテ永久保存ヲ爲シ得ルヤウセラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
  ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
  付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  八尾金澤間鐵道敷設ノ件
  石川縣金澤市西町金澤商業會議所會頭橫山章呈出
  右ノ請願ハ飛越線鐵道ノ停車場設置豫定地タル富山縣下八尾ヨリ石川縣金
  澤市ニ至ル鐵道ノ敷設ハ沿線地方ニ於ケル產業ヲ發逹セシムルノミナラス
  飛越線鐵道及北陸本線鐵道等ノ營養線トナリ且工事モ容易ナルヲ以テ速ニ
  之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
  ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  秋田縣雄勝郡仙道村ニ無集配郵便局設置ノ件
  うち
  秋田縣雄勝郡仙道村平民農高橋初藏呈出
  右ノ請願ハ秋田縣雄勝郡仙道村ハ山間ノ僻村ナルモ近ク縣道ノ開通アリテ
  交通繁ク通信機關ノ必要ヲ感スルコト切ナルニモ拘ラス之ヲ管轄スル田代
  郵便局ノ距離遠ク村民ノ不便甚シキヲ以テ同村ノ中央ニ位スル中仙道字眞
  木ニ無集配郵便局ヲ設置セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
  採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  山口縣大島郡安下庄町ニ登記所設置ノ件
  山口縣大島郡安下庄町長中本章三外三名呈出
  右ノ請願ハ請願人等ノ町村ハ時勢ノ進運ニ伴ヒ登記事務激增シタルモ之ヲ
  管轄スル岩國區裁判所西方出張所若ハ同區裁判所屋代出張所ハ距離遠隔ニ
  シテ峻阪多ク町村民ノ不便甚シキヲ以テ山口縣大島郡安下庄町大字西安下
  庄字眞宮ニ區裁判所出張所ヲ設置シ安下庄、久賀ノ兩町、平郡村及沖浦村
  大字秋ヲ管轄セラレタク廳舍倉庫等ハ安下庄町ニ於テ建築ノ上無償ヲ以テ
  提供スヘシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
  候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  大田瀧原間鐵道敷設ノ件
  島根縣安濃郡長久村平民農恆松嘉吉外六名呈出
  右ノ請願ハ山陰線大田驛ヨリ島根縣邑智郡濱原村大字瀧原附近ニ於テ未成
  線三次江津間鐵道ニ接續スル鐵道ハ同地方ニ於ケル文化開發ニ必要ナルノ
  ミナラス陰陽連絡ノ最捷路タルヘキヲ以テ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨
  趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
  十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  宮崎福島間鐵道敷設ノ件
  宮崎縣宮崎郡宮崎町長若松悌二外二十九名呈出
  右ノ請願ハ宮崎縣宮崎郡宮崎町ヨリ縣ノ南東部ヲ經テ南那珂郡飫肥町ニ至
  リ更ニ福島ニ達スル鐵道ハ沿線地方ニ於ケル豐富田ナル天與ノ富源ヲ開發ス
  ル所以ナルノミナラス七浦七峠ノ勝地、官幣大社鵜戶神宮ニ至ル旅客ニ利
  便ヲ與ヘ且內海、油津兩港ノ利用ヲ完カラシムルモノナルヲ以テ速ニ之ヲ
  敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
  決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  八雲利別間鐵道敷設ノ件
  北海道山越郡八雲町士族公吏木村定五郞外四百十七名呈出
  右ノ請願ハ北海道由越郡八雲町ヨリ瀨棚郡利別村ニ至ル鐵道ノ敷設ハ沿線
  地方ニ於ケル豊富ナル農產、林產、鑛產ヲ開發スル所以ナルノミナラス同
  地方ハ函館トノ交通ヲ便ニシ且拓殖ニ及ホス效果ハ遙ニ國縫瀨棚間鐵道ノ
  比ニ非サルヲ以テ速ニ之ヲ實施セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
  大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付
  候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  五條新宮間鐵道敷設ノ件
  奈良縣宇智郡五條町林業栗山藤作外二千四百六十四名呈出
  右ノ請願ハ關西線五條驛ヨリ奈良縣下野原、南宇智、賀名生、大塔及十津
  川ノ諸村ヲ經テ和歌山縣下新宮町ニ至リ未成線タル紀勢鐵道ニ連絡スヘキ
  鐵道ハ同地方ニ於ケル豆富ナル海陸ノ利源ヲ開發スルノミナラス賀名生、
  十津川ニ於ケル南朝ノ遺蹟及熊野地方ニ於ケル瀞八町、九里峽、郡智等幾
  多ノ名勝舊蹟ヲ探ル旅客ニ利便ヲ與ヘ且國防上必要ナル爲既ニ第四十三囘
  議會ニ於テ採擇セラレタルモノナルヲ以テ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨
  趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
  十五條ニ依リ別冊及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  飛行事業擴張ニ關スル件
  東京市麴町區有樂町帝國飛行協會長華族大隈重信呈出
  右ノ請願ハ我國航空界ノ實況ハ今尙幼稚ニシテ國防上竝交通上甚遺憾ナル
  ヲ以テ之ヲ發達セシムルカ爲速ニ航空中央機關ヲ設置シテ航空一般ニ關ス
  ル行政ヲ統轄セシメ又東京大阪間ヲ始メ滿鮮臺灣等ニ至ル航空路ヲ開設シ
  テ飛行ニ便ニシ且航空機及其ノ發動機製造奬勵法及航空補助法ヲ制定シテ
  斯業ノ進步ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
  モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  新舊文官ノ恩給竝扶助料不權衡更正ニ關スル件
  茨城縣水戶市上市五軒町士族無職業立花三七郞外三十七名呈出
  熊本縣熊本市南千反畑町士族無職業江良惟一外三十九名呈出
  福岡縣門司市大字門司士族無職業進逞藝外二十五名呈出(二通)
  右ノ請願ハ明治四十三年四月官吏增俸以前ニ退職シタル文官及死亡シタル
  文官ノ遺族等ハ增俸ノ恩惠ニ均霑スルヲ得スシテ其ノ恩給及扶助料ハ薄給
  時代ノ俸給ニ基クカ故ニ其ノ額少ク新舊文官恩給ノ不權衡甚シ既ニ軍人ニ
  對シテハ新舊恩給等差撤廢ノ例モアレハ新舊文官ノ恩給及扶助料ニ對シテ
  モ其ノ不權衡ヲ更正セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
  スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  帝國在〓軍人會國庫補助ノ件
  東京府西多摩郡西秋留村平野昌吉外二十三名呈出
  右ノ請願ハ在〓軍人會ノ事業ハ國運ノ消長ニ至大ノ關係アルヲ以テ其ノ事
  業遂行ノ基金トシテ國庫ヨリ相當ノ補助金ヲ下附セラレタク帝國議會ニ請
  願シ旣ニ採擇セラレタルモ未其ノ運ニ至ラサルハ國勢ノ發展上甚遺憾ナル
  ヲ以テ速ニ之ヲ實施セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
  スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  天鹽沿岸鐵道延長敷設ノ件
  北海道留萌郡留萌町平民漁業菅原直治郞外八百二十六名呈出
  右ノ請願ハ未成線留萌羽幌間鐵道ノ終點タルヘキ羽幌村ヨリ沿岸各村ヲ經
  テ未成線稚内線鐵道ニ連絡スヘキ鐵道ヲ敷設スルハ海陸交通ノ不便ヲ除キ
  同地方ニ於ケル豐富ナル利源ヲ開發スル所以ナルノミナラス留萌築港ノ效
  果ヲ大ナラシムルモノナルヲ以テ速ニ之ヲ實施セラレタシトノ旨趣ニシテ
  貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
  依リ別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  柳津小出間竝只見古町間鐵道敷設ノ件
  福島縣南曾津郡伊北村平民農新國長次外百二十名呈出
  右ノ請願ハ福島縣下柳津村ヨリ新潟縣下小出町ニ至ル鐵道及福島縣下只見
  ヨリ同縣下古町ニ至ル鐵道ハ沿線地方ニ於ケル鑛產林產等ノ豐富ナル利源
  ヲ開發スルモノナルヲ以テ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
  ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
  册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵徳川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  帝國在〓軍人分會資源設定ノ件
  愛媛縣周桑郡壬生川町長一色耕平外十六名呈出
  右ノ請願ハ帝國在〓軍人分會ノ基礎ヲ鞏固ナラシムルハ國防上最必要ナル
  ニモ拘ラス內容不備ノ觀アルハ要スルニ活動ノ資源乏キニ基因スルヲ以テ
  適當ナル方法ニ依リ同會ノ資源ヲ設定セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
  願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
  及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿
  意見書案
  五條新宮間鐵道敷設ノ件
  和歌山縣東牟婁郡新宮町士族公吏遊木保太郞外千四十一名呈出
  三重縣南牟婁郡鵜殿村公吏竹原樸一外七十九名呈出
  右ノ請願ハ關西線五條驛ヨリ奈良縣下十津川ヲ經テ和歌山縣下新宮町ニ至
  リ未成線タル紀勢鐵道ニ連絡スヘキ鐵道ノ敷設ハ同地方ニ於ケル豐富ナル
  海陸ノ利源ヲ開發スルノミナラス皇祖發祥ノ靈地タル熊野ニ鎭座セル熊
  野座、熊野速玉ノ兩官幣大社ヲ始メ瀞八町、那智ノ瀑布、湯ノ峯温泉等幾多
  ノ名勝舊蹟ヲ探ル旅客ニ利便ヲ與ヘ且工事容易ニシテ既ニ貴族院ニ於テ採
  擇セラレタルモノナルヲ以テ速ニ之ヲ實施セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
  院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
  別册及送付候也
  大正十年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣原敬殿

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=168

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• 169・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十三ヨリ第三十九マデノ請願ハ、皆請願委
  員長ノ報告通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=169

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• 170・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス、明十一日ノ議事日程ヲ御
  報〓致サセマス
  〔成瀨書記官朗讀〕
  議事日程第十九號大正十年三月十一日金曜日
  午前十時開議
  一風〓ニ關スル決議案(公爵德川慶久君外八名發議)會議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=170

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• 171・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本日ハ是ニテ散會
  午後五時四十三分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X01819210310&spkNum=171

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