1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十年三月二十三日(水曜日)
午前十時八分開議
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議事日程 第二十四號 大正十年三月二十三日
午前十時開議
第一 會計檢査院法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 職業紹介法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 大正十年度歳入歳出總豫算案竝大正十年度各特別會計歳入歳出豫算案 會議(委員長報告)
第四 豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件 會議(委員長報告)
第五 臨時軍事費豫算追加案(第一號) 會議(委員長報告)
第六 大正九年度歳入歳出總豫算追加案(第二號) 會議(委員長報告)
第七 大正九年度各特別會計歳入歳出豫算追加案(特第一號) 會議(委員長報告)
第八 豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件(追第一號) 會議(委員長報告)
第九 關税定率法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十 製鐵業奬勵法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十一 會計法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 明治三十九年法律第三十四號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 臨時國庫證券法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 國有財産法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 明治三十八年法律第十七號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 貯蓄銀行法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 銀行條例中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 水道條例中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 供託法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 簡易生命保險特別會計法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十一 樺太の地方制度に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 埼玉縣下郡界變更に關する法律案(衆議院提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報〓ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
昨二十二日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可
決ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
執達吏規則中改正法律案
民事訴訟費用法中改正法律案
刑事訴訟費用法案
公有水面埋立法案
黃燐燐寸製造禁止法案
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
大正九年度歲入歲出總豫算追加案(第二號)、大正九年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案(特第一號)、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ
要スル件(追第一號)可決報告書
請願委員會特別報告第六號
會計法改正法律案修正報告書
會計檢査院法中改正法律案可決報告書
明治三十九年法律第三十四號中改正法律案可決報告書
臨時國庫證劵法中改正法律案可決報告書
明治三十八年法律第十七號中改正法律案可決報告書
貯蓄銀行法案修正報〓書
銀行條例中改正法律案可決報告書
水道條例中改正法律案可決報告書
地方鐵道法中改正法律案可決報告書
地方鐵道補助法中改正法律案修正報告書
職業紹介法案可決報告書
供託法中改正法律案可決報告書
朝鮮私設鐵道補助法案可決報告書
樺太地方鐵道補助法案可決報〓書
小田原電氣鐵道株式會社所屬軌道經營廢止ニ對スル補償ノ爲公債發行ニ
關スル法律案可決報告書
簡易生命保險特別會計法中改正法律案可決報告書
樺太ノ地方制度ニ關スル法律案可決報告書
埼玉縣下郡界變更ニ關スル法律案可決報告書
同日特別委員副委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
國有財產法案可決報告書
同日特別委員伯爵林博太郞君外三名ヨリ會計法改正法律案特別委員會ノ報
告ニ對スル少數者意見ヲ提出セリ
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
關稅定率法中改正法律案
製鐵業奬勵法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ法律案ヲ提出セリ
刑法中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=2
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003・前田利定
○子爵前田利定君 此際本員ハ動議ヲ提出イタシタイト存ジマス、ソレハ昨
日ノ貴族院彙報ヲ見マスルト大正十年度歲入歲出總豫算追加案第三號、大
正十年度歲入歲出總豫算追加案第四號、大正十年度特別會計歲入歲出豫算追
加案第三號、是ガ參考送付ニナッテ居リマス、思ヒマスルノニ、不日衆議院ヨ
リ此豫算案ガ貴族院ノ方ニ送付セラルヽデアラウト思フノデアリマス、普通
ノ順序デ申シマスルナラバ、衆議院ヨリ送付ヲ御受ケニナリマシタ節ニハ、
此ノ本會議ニ懸ケマシテ、審査期限ヲ定メタ後ニ豫算委員ノ方ニ御付託ニナ
ルト云フノガ順序デアリマス、併ナガラ會期切迫ノ折柄、前例モアルヤニ
存ジマスルノデ、是等ノ諸案ガ衆議院ヨリ貴族院ノ方ニ送付サレタ場合ニ於
キマシテハ、直ニ豫算委員ノ方ニ御廻シニナルト云フコトヲ、豫メ御許シヲ
願ヲテ置キタイ思フノデアリマス、ドウカ御賛成ヲ願ヒタイト思ヒマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 前田子爵ニ伺ヒマスガ、今審査期限ヲ附セズシテ
ト云フ御積リデアッタト存ジマスガ、其御言葉ガナカッタヤウデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=4
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005・前田利定
○子爵前田利定君 審査期限ハ定メマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=5
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006・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 唯今前田子爵ノ御話ノ豫算案ハ、軍法會議ノ結果ニ依ル
···過日本院ヲ通過シマシタ法律案ノ結果ニ依ル簡單ナモノデアリマス、前
例モアリマスデゴザイマスカラ、前田子爵ノ動議ニ賛成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=6
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007・江木千之
○江木千之君 前田子爵ニ贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯〓前田子爵ノ述ベラレマシタコトハ、第十五囘
議會ニ前例モゴザイマスノデ差支ナイト存ジマスガ、一應採決イタシマス、
前田子爵ノ動議ノ通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第一、會計檢査院法中改正法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、林伯爵
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之ニ倣フ〕
會計檢査院法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
大正十年三月二十二日
右特別委員長
伯爵林博太郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=10
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011・林博太郎
○伯爵林博太郞君 會計檢査院法中改正法律案ノ委員會ノ經過ヲ簡單ニ御報
告申上ゲマス、此ノ會計檢査ノ周到ヲ期シテ會計法ガ今囘改正ニナリマシタ
ニ伴ヒマシテ、之ヲ自然改正ニ相成ッタノデゴザイマス、從來決算ノ報〓ガ非
常ニ遲レマシテ、我〓議員トシテ之ヲ審査スルノニ頗ル不都合ヲ感ジタノデ
アリマス、此多年ノ問題ヲ解決サレマシテ、今後ハ一年早クナッテ決算ガ迅速
ニ議會ニ出テ來ルト云フコトヲ期スル爲ニ、茲ニ主ナル改正ガ起ッタノデアリ
マス、卽チ檢査院ノ中ガ從來二部組織デアッタノヲ三部組織ニ改メタ次第デア
リマス、從ッテ役員ノ增員ト云フコトモ起ッテ來タノデアリマス、又日本銀行ノ
出納管理ガ單ニ此預金ト云フコトニナッタ以上ハ、是ニ應ズル所ノ檢査院ノ仕
事モ亦變ヲテ來ルノハ巳ムヲ得ナイノデアリマス、日本銀行ト政府トノ關係
ガ、此預金ト云フコトニ依リマシテ民事的トナッタノデアリマス、勿論會計檢
査院ハ日本銀行ニ於テ之ヲ審査スルト云フコトノ權限竝ニ其仕事ハ致スノデ
アリマスルケレドモ、若シ會計ノ審査ノ結果トシテ不都合ナ點ナドガアッタナ
ラバ、今度ハ民事上ノ關係ニ依ルノデアル以上ハ、是ハ大藏省ニ申請シテ、大
藏大臣ニ依テ相當ノ措置ヲ執ッテ貰フト云フヤウナ改正モ起ッタノデアリマ
ス、又國務大臣ガ、今度ハ競爭入札以外ニ隨意契約等ノコトガ出來ルコトニ
ナリマシタノデアリマスルカラシテ、又ソレ等ニ對スル監視ト云フコトモ必
要ガ起ッテ來タノデアリマス、要スルニ會計法ノ改正ニ伴ヒマシテ、是等ノ有
益ナル改善ヲ促シタ次第デゴザイマス、委員會ニ於キマシテハ、是ハ全會一
致ヲ以テ可決ニ相成リマシタ次第デゴザイマス、此段御報告ニ及ビマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=11
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012・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御發議モナイト存ジマスカラ本案ニ付テ採決
ヲ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=13
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014・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=14
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015・大山綱昌
○大山綱昌君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌ
カ
[「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、全部ヲ問題ニ供シマス、
全部原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=18
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019・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=19
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020・大山綱昌
○大山綱昌君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、第二讀會ノ決議通リデ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=22
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023・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=23
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024・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第二、職業紹介法案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會ノ續、委員長報告、內田嘉吉君
職業紹介法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十年三月二十二日
右特別委員長
內田嘉吉
貴族院議長公爵德川家達殿
〔內田嘉吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=24
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025・内田嘉吉
○內田嘉吉君 職業紹介法案特別委員會ノ經過及ビ結果ヲ御報告申上ゲマ
ス、本案ニ付マシテハ二囘委員會ヲ開キマシテ、詳細ニ政府委員ヨリ說明ヲ
聽キ又質問ヲ致シタノデゴザイマス、其結果全會一致ヲ以テ可決スベキモノ
ト認メタノデゴザイマス、唯今審査ノ要領ヲ御報告ヲ申上ゲタイト思ヒマス
第一ニ本案制定ノ要旨ハ、職業ノ紹介ハ社會事業ノ重要ナル事項デゴザイマ
シテ、既ニ本邦ニ於テモ或程度迄實施イタシテ居リマスルガ、更ニ法律ヲ以
テ之ヲ定メ益メ此事業ヲ普及イタシタイト云フ考デゴザイマス、要スルニ失業
ヲ防止イタス上ニ於テ此事業ノ如キモノハ目下ノ需要ニ必要ヲ認メル所デゴ
ザイマス、機關ト致シマシテハ市町村ヲ以テ之ニ充ツル豫定ニナッテ居リマ
ス、市町村ガ進ンデ此仕事ヲ經營イタシマスカ、又場合ニヨリマシテハ中央
政府ヨリ指定ヲ致シマシテ之ヲ設置イタサセルコトモアリマスル、其他市町
村以外ノ公益〓體等ニ於キマシテ此ノ職業紹介所ヲ設ケタイト云フ場合ニ於
キマシテハ、行政官廳ノ認可ヲ得テ之ヲ設置スルコトヲ許ス譯デアリマス、
何レニ致シマシテモ此ノ職業紹介ニ關シマシテハ無料ト云フコトヲ原則ト致
シテ居ルノデゴザイマス、デ唯今營利的ノ職業紹介所ガ尙ホ多々ゴザイマス
ル、全國ニ約八千六百箇所モゴザイマスルガ、之ニ對シマシテハ俄ニ之ヲ廢
止スルト云フ譯ニモ參リマセヌノデ、公益ノ市町村其他ノ職業紹介所ガ普及
イタシマスルノヲ待ッテ、適當ナル措置ヲ執ッテ漸次廢止ヲ致シタイト云フ考
デ居ルサウデアリマス、ソレニ付マシテハ別ニ勅令ヲ以テ制定ヲ致ス筈デゴ
ザイマスル、第二ニハ本案ノ職業ヲ紹介イタシマスル勞務ノ種類ニ付マシテ
ハ各種工業ニ關スルモノハ一般ニ之ヲ包含イタシマスルガ、海上ノ勞働ニ
付マシテハ別ニ國際條約ノ決定等モゴザイマシテ、海洋航海ニ從事スル船舶
ノ乘組員ハ之ヲ除外スルコトニナッテ居リマス、其他職業ノ種類ニヨリマシテ
ハ市町村等ノ紹介所ニ於テ紹介ヲ致シマスルコトノ不適當ノモノモアルヤウ
デアリマシテ、是等ニ付マシテハ追テ詳細ニ命令ヲ以テ決定ヲ致ス筈デゴザ
イマスル、次ニ經費デアリマスルガ、經費ハ先程申述べマシタ通リ無料デ紹
介ヲ致スト云フコトノ原則ニナッテ居リマス、而シテ市町村ニ於テハ市町村ノ
經費ヲ以テ之ヲ支辨スル譯デアリマスガ、元來ハ國ノ事務ヲ市町村ニ於テ執
行イタシマスルノデ、之ニ對シマシテハ國家カラ二分ノ一以內ノ補助ヲ支給
イタスト云フコトニ相成ッテ居リマス、斯ウ市町村ニ此ノ職業紹介所ノ仕事ヲ
施設イタサセマスルニ付テハ、聯絡統一ト云フコトガ最モ必要デアリマス、
之ニ對シマシテハ中央竝ニ地方ニ職業紹介事務局ト云フモノヲ置クコトニ相
成ッテ居リマス、又職業紹介委員會ト云フモノモ置クコトニ相成ッテ居リマス、
而シテ此ノ事務局ニ付マシテハ目下直ニ之ヲ實行致シマセヌノデ、職業紹介
所ノ設置ガ尙ホ普及イタシマスルノヲ待ッテ中央竝ニ地方ニ凡ソ五箇所ニ事
務局ヲ設置スル豫定デアルサウデゴザイマス、現在ノ所ニ於キマシテハ中央
事務局ノ仕事ハ內務省內ノ地方局ニ於テ之ヲ扱ヒ、其一部分ノ仕事ハ勞資協
調會ニ於テ之ヲ取扱ハサセル豫定デアルサウデアリマス、又地方ノ事務局ノ
仕事ハ知事若クハ郡長ヲシテ之ニ當ラセル豫定ニ相成ッヲ居リマス、委員會ハ
勞務者、使用者、官吏又ハ此道ニ經驗ノアル人ヲ寄セテ九人乃至十五人ノ人
ヲ以テ委員會ヲ組織スル豫定デアリマスソレカラ仕事ノ種類、卽チ職業紹
介所ニ於テ致シマスル仕事ノ種類ニ付マシテハ、色〓質問モアリマシタガ、
要スルニ現在實行シテ居ル制度ヲ完備サセルト云フヤウナ豫定デアリマス、
尤モ質問ノ中ニハ身元引受ヲスルカシナイカト云フ問題ガゴザイマシタガ
是ハ現在ノ市等ニ於テ經營イタシテ居リマスル職業紹介所ニ於テハ身元引受
ヲ致シテ居リマセヌノデ、此點ハ從來ノ通リニ身元引受ヲセナイト云フコト
ニ於テ經營スルト云フ豫定デアリマス、其他種々質問モゴザイマシテ、殊
條約等ノ關係ニ付マシテ質問モゴザイマシタガ、要スルニ尙ホ華盛頓會議ニ
於テ決定イタシマシタル條約案竝ニ勸〓ハ未ダ手續ヲ經テ居リマセヌノデ、
此法律ニ定メテアリマスル處ノ趣旨ガ直ニ右條約案竝ニ勸〓ノ趣旨デアル
ト云フコトハ申上ゲラレマセヌガ、要スルニ歸スル所ハ、同一ニ相成ルト云
フ譯デゴザイマスル、將來條約案若クハ勸〓ガ實行イタサレマシテモ、本案
ノ制定ニ付マシテハ差支ヲ生ゼヌ譯デゴザイマスル、而シテ又職業紹介ニ關
シテ、無料ノ施設ヲサセタイト云フ勸告ノ趣旨ハ大體ニ於テ、本件ニモ採用
ヲイタシマシタ、而シテ有料若クハ營利ノ職業紹介ニ關シマシテハ、別ニ勅
令ヲ以テ定メマシテ、其間ニ何等ノ牴觸ヲ致サヌト云フコトニ說明ヲ承知イ
タシタノデゴザイマスル、左樣ナ說明ヲ聽キマシテ全會一致ヲ以テ可決ヲ致
シタノデゴザイマスルガ、此決議ノ場合ニ二三ノ希望ガゴザイマシタ、其第
一ハ職業紹介所ノ仕事ノ如キハ公衆ニ直接ニ接觸ヲ致スノデゴザイマシテ、
之ニ關係スル人ガ其宜シキヲ得マセヌト云フト、折角ノ施設ノ效果ヲ生ゼヌ
コドニナルノデアルカラシテ、十分其人ヲ得ルコトニ付テハ、當局者ニ於テ
努メテ貰ヒタイト云フノガ一ツ、又職業紹介事務局ヲ置クト云フコトハ、後
ニ之ヲ實行スルト云フ政府ノ話デアルケレドモ、寧ロ此ノ職業紹介ノ仕事ヲ
效果アラシムルニハ、前ニ事務局ヲ設置シタ方ガ宜クハナイカト云フコトノ
希望ヲ述べラレタ方モゴザイマス、ソレカラ無料ノ職業紹介ハ結構デアルケ
レドモ營利的若クハ有料ノ職業紹介ニ付テハ成ベク華盛頓ノ勞働總會ノ決議
ノ趣旨ニ依テ成ベク早ク之ヲ廢止スルヤウニシタラ宜カラウト云フヤウナ希
望モ出マシタ、又職業紹介所ノ數ガ少ナイト云フト效果モ甚ダ薄イ譯デアリ
マスカラ、成ベク速ニ經費ノ許ス限リ職業紹介所ヲ普及スルヤウニ致サセタ
イ、又職業紹介所ニ於テ仕事ヲスル上ニ於テハ圓滑ニ事務ノ運ブヤウニシテ
貰ハヌト云フト、折角ノ此ノ職業紹介所公營ノ效果ガナクナッテ仕舞フデアラ
ウト云フヤウナ希望モアリマシテ、ソレニ對シマシテハ政府ニ於テモ大體同
意ヲ表セラレテ、各委員カラ申述ベラレマシタ希望ハ政府ニ於テモ十分考慮
ヲ加ヘルト云フコトノ囘答ヲ得タ次第デゴザイマスル、デ要スルニ本案ハ豫
算ニモ關係ノアルモノデゴザイマスルノデ、速ニ可決決定セラレムコトヲ希
望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ發言モナイト認メマスカラ採決イタシマス、
本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=26
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027・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=27
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028・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=28
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029・内田嘉吉
○內田嘉吉君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、本案全部ヲ問題ニ供シマ
ス、全部原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=32
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033・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=33
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034・内田嘉吉
○內田嘉吉君 贊成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、第二讀會ノ決議ノ通リデ
御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長 公爵德川家達君)御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=37
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038・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 諸君ニ於テ御異議ガナケレバ日程ノ第三、第四、
第五、三案束ネテ委員長ノ報告ヲ煩ハシマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=38
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039・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、大正十年度歲入歲出總豫算案竝大正十
年度各特別會計歲入歲出豫算案、第四、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ
爲スヲ要スル件、第五、臨時軍事費豫算追加案第一號、會議、委員長報〓、
豫算委員長前田子爵
一大正十年度歲入歲出總豫算案
大正十年度各特別會計歲入歲出豫算案
一豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
一臨時軍事費豫算追加案(第一號)
右衆議院ヨリ送付シタル各案ヲ審査シ總テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモ
ノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十年三月十七日
豫算委員長子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵前田利定君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=39
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040・前田利定
○子爵前田利定君 唯今日程ニ上ボッテ居リマスル大正十年度歲入歲出總豫
算外三案ニ對シマシテ、豫算委員會ニ於キマシテ是マデ審議イタシマシタ經
過竝結果ヲ御報告申上ゲマス、便宜上先ヅ結果ヨリ申上ゲマス、豫算委員會
ニ於キマシテハ右四案ニ對シマシテ審議ノ結果、衆議院議決案ノ通リニ何等
ノ削減修正ヲ試ミルコトナク全部可決相成リマシタ、此際ニ於キマシテ大正
十年度豫算ノ梗〓ヲ御參考ニ申述べタイト思ヒマス、政府ノ說明スル所ニ依
リマスト云フト、十年度豫算ノ編成ニ關シマシテ、恰モ財界變轉ノ期ニ際シ
タ所カラ、財政經濟ノ前途ニ付テ多大ノ考慮ヲ要スルコトヨリ、專ラ財政ノ
將來ニ於ケル鞏固ヲ圖ルト云フ目的デ、用ヲ節シ費ヲ省イテ成ベク新規ノ計
畫ヲ抑制ヲ致サレタト云フコトデアリマス、成程大正十年度ノ豫算ヲ見マス
ト云フト、總額ニ於キマシテ十五億六千餘萬圓デアリマシテ、前年度卽チ大正
九年度ノ實行豫算ニ比べテ見マスト、二億二千七百餘萬圓ノ增加ニナッテ居リ
やく、併ナガラ仔細ニ之ヲ點檢イタシテ見マスト云フト、何等新規ノ事業、
新經綸ト認ムベキヤウナモノガ、目ニ立ツヤウナモノガ無イノデアリマス、
併ナガラ其中ニ就テ目新シキモノヲ强ヒテ求メマスト云フト、社會〓育ノ施
設竝ニ思想問題ニ付テノ善導ニ要スル經費ヲ多少見出シマスケレドモ、是ト
テモ口ヲ合セマシテ七十一萬圓ニ過ギナイノデアリマス、斯樣ナ次第デアリ
マシテ、形ハ厖大ナル所ノ豫算デアリマスケレドモ、其中味ハ至ッテ小ナルモ
ノデアリマス、是モ物價騰貴上既定計畫竝ニ新規計畫ノ上ニ於テモ其累ヲ被ッ
テ居ルコトガ甚大デアルノデアリマス、政府ノ說明スル所ハ眞ニ其實情ヲ語ッ
テ居ルモノト思フノデアリマス、右ノ次第デアリマシタガ故ニ、豫算委員會
ニ於キマシテハ、歲出ノ方面ニ付マシテハ、餘リ問題ハ出ナカッタノデアリマ
ス、而シテ歲入ノ方面ニ於キマシテハ、愼重ナル審議ヲ致ス上ニ付マシテ、
質問ガ續出サレタノデアリマス、即チ之ヲ簡明ニ申上ゲマスレバ、歲入ノ見
積リ方ガ過大デアル、過大ニ見積ッタガ故ニ將來豫期スル如キ收入ガ這入ッテ
來ナイデアラウ、然ル時ニハ豫算ノ實行ガ覺束ナイコトニナルデアラウ、
方ニ於テハ歲入ガ減少シ而シテ物價騰貴ノ爲ニ益.歲出ノ增加ヲ來スト云フ
コトニナッテハ、將來ニ於テ財政ガ行詰リハセヌカ、斯ウ云フノガ一ツ、今一
ツニハ政府ノ執ッテ居ル所ノ公債政策ニ付テノ疑義デアリマシテ、政府ガ募債
ステガ爲ニ金融市場ヲ壓迫スルコトハナイカ、又豫期スル如キ募債ガ實際ニ
於テ實行ガ出來ルカドウカト云フコトガ最モ注目サレタル所ノ點デアッタノ
デアリマス、政府ノ說明スル所ニ依リマスト、決シテ歲入ノ見積リハ過大デ
ハナイノデアル、成程大正十年度ノ歲入ノ中ノ租稅收入ニ付テ言ヘバ、大正
十年度ニ於テハ約七億五千萬圓デアル、之ヲ前年度ノ實收見積額ニ比ベテ見
ルト云フト、七千二百萬圓餘ノ增加ニナッテ居ル、併ナガラ其中ニハ增稅ノ結
果當然增收シ得ベキモノ、又其他ノ關係ニ付テ當然增スベキモノガアルカラ
シテ、ソレ等ノモノヲ差引クト云フト實際ニ於テハ三千五百萬圓寧ロ減少
シテ見積ッテアルト云フコトデアリマス、尙ホ收入ノ目的タル所ノ課稅ノ物質
ニ付テモ、將來必ズシモ減收スルト云フコトハナイノミナラズ、戰時竝ニ戰
後ノ資本ガ大ニ活動シテ居ルカラシテ、物ニ依テハ寧ロ增收スルモノモアル
カラ、決シテ歲入ノ見積リハ過大デハナイ、斯ウ云フコトヲ申サレテ居ルノ
デアリマス、若モ政府ノ此說明ヲ是認スルト致シタナラバ、歲入ノ見積リノ
過大デナイト、斯ウ言ハナケレバナラヌヤウニ思フノデアリマス、又公債政
策ニ付テ政府ノ說明スル所ニ依リマスト、大正十年度ノ募債總額ハ二億九百
萬圓デアルノデアリマスガ、其中ノ二千七百萬圓ハ借入金其他ノ方法ニ依テ
支辨シ得ルノデアリマスカラ、實際ニ於テハ一億八千萬圓ガ大正十年度ニ於
テ募債スル所ノ額ニナルノデアルト云フコトデアリマス、而シテ過去ノ實績
付ニテ考ヘテ見マシテモ、此位ノ募債額ハ十分アルト思フノデアリマス、ソ
レガ爲ニ市場ヲ壓迫スルト云フコトハナイノミナラズ、募債モ必ズ實行ガ出
來ルト云フ確信ヲ有ッテ居ルノデアル、尙ホ又既定計畫ニ付テハ成ベク費用ヲ
節約シテ其遂行ニ努力ヲスル、ソレト共ニ新規ノ計畫ニ付テハ緩急ヲ考ヘ、
輕重ヲ考ヘ、機ニ應ジ變ニ臨ンデ抑制其宜シキヲ得タナラバ、決シテ將來ニ
於テ我ガ財政ハ行詰ルト云フコトハナイ、斯ウ申サレテ居ルノデアリマス、
政府ノ說明スル所ヲ是認スルト致シタナラバ此點モ取越苦勞ニ終ルノデアリ
やマ、併ナガラ豫算委員會ニ於キマシテモ、分科會上ニ於キマシテモ此點ニ
付マシテハ人ヲ異ニシ時ヲ異ニシテ質問ガ繰返サレタノデアリマス、果セル
カナ豫算採決ニ臨ミマシテ警告的希望決議ガ出マシテ、此歲入竝ニ將來ノ財
政ニ付テノ心配ノ餘リニ、十分ニ政府ニ警告スル所ノ附帶決議ガ出タノデア
リマスルガ、是ハ後段ニ申述ベルコトニ致シマス、尙ホ大正十年度ノ豫算全
體ニ亙リマシテノ內容、數字ハ諸君ニ於カレマシテモ、十分ニ御調査濟
ノコトデアラウト考ヘマスカラ、此際ソレヲ申述ベルコトハ省略イタシマス、
次ニ豫算委員會ノ經過ヲ申述ベヤウト思ヒマス、本會議ヨリ豫算委員ニ此豫
算案ヲ御付託ニナリマシタ翌日、卽チ二月ノ十六日ヨリ三月ノ七日マデ卽チ
二十日ノ間ニ豫算委員總會ヲ開キマシタコトガ實ニ十七囘デアルノデアリマ
ス、而シテ其十七囘ノ豫算委員總會ニ於キマシテハ、總テ質問應答ヲ繰返サ
レタノデアリマス私思ヒマスルノニ貴族院ガアッテ以來、斯樣ニ長ク總會ガ
續イラ質問應答ガ繰返サレタルコトハ空前ノコトデアルト思フノデアリマ
ス而シテ三月ノ八日ヨリ三月ノ十五日マデハ分科ノ審議ノ爲ニ、分科ノ方
ニ之ヲ付託致シタノデアリマス然ル所各分科ニ於キマシテハ三月十五日マ
デニソレゾレ擔當ノ部分ニ付マシテ御審議ニナリマシテ、其結果ヲ十六日ノ
豫算委員總會ニ御報〓ニナリマシタ、ソレニ基キマシテ翌十七日ノ豫算委員
總會ニ於キマシテ先刻申上ゲマシタル通リニ、豫算案四案ハ悉ク全部可決ニ
相成ッタ次第デアリマス、各分科ノ主査ノ報告ニ依リマシテモ、各分科會ニ於
テ夥シキ質問ガ繰返サレタノデアリマス、又豫算總會ニ於キマシテモ是亦數
多キ質問ガ繰返サレタノデアリマス、豫算總會ハ前後十九囘開クコトニナッタ
ノデアリマスルガ、諸君モ御承知ノ通リ豫算ノ審査期限ヲ前後二囘ニ各、五日
間ノ審査期限延長ヲ本會議ニ御諮リイタシマシテ、御許シヲ得マシタト云フ
コトニ依リマシテモ如何ニ豫算委員總會ニ於テ夥シキ所ノ質問ガ交換サレタ
ト云フコトハ、諸君ノ御想像ノ容易ク付クコトデアラウト思フノデアリマス、
而シテ其質問ハ皆有用ナモノデアリマシテ、或ハ政治ノ要諦ヲ說キ、時弊ヲ
論ジ、內政ニ、外事ニ、或ハ過去現在ヨリ遠キ將來ニ及ンデ言及サレマシタ
モノデアリマシテ、皆有用ノモノデゴザイマスケレドモ、會期切迫ノ今日遺
漏ナク之ヲ諸君ニ御紹介申上ゲマス時間モゴザイマセヌコトハ甚ダ遺憾ニ存
ズル次第デアリマス、併ナガラ幸ニモ速記錄ハ全部出揃ッテ居ルコトデアリマ
スルカラ、何卒其詳細ナルコトハ速記錄ニ就テ御覽ヲ願フコトニ致シマシテ
此ノ豫算委員會ヲ通ジマシテ、大々的質問ガ二ツアリマシタ、其二大質問ヲ
爰ニ御紹介ヲ致シマシテ、他ハ省略ヲ致シタイト存ズルノデアリマス、二大
質問ノ第一ハ滿鐵ニ關スル所ノ質疑デアリマス、第二ハ學校昇格ノ問題ニ關
スル質疑デアリマス、此二ツノ質疑ニ付マシテハ、多クノ時ヲ割キ、多クノ
委員ヨリ質問ガ百出、千出シタノデアリマス、先ヅ滿鐵ニ關スル所ノ質疑ヨ
リ其大要ヲ御紹介イタサウト思フノデアリマス、委員ノ一人ハ國家ノ爲ニ最
近特ニ痛心ニ堪ヘヌコトガアルソレハ綱紀ガ弛廢シテ、動トモスルト云フ
ト醜怪ナル所ノ事柄ガ續出シテ、官紀ガ動モスレバ地ニ委スルト云フヤウナ
虞ガアルコトハ、誠ニ痛嘆ニ堪ヘヌ次第デアルト云フコトヲ前提ニ申サレマ
シテ、就中滿鐵ニ關スル所ノ問題、又滿鐵ノ經營ニハ關シナイケレドモ取引
所ノ問題、阿片問題、是等ノ問題ニ對シテハ、世間カラ群疑ノ焦點ニ立ッテ居
ル問題デアル、此眞相ハ此際明ニシナケレバナラナイ、併ナガラソレニ先ヅ
此滿鐵ニ對シテ直接ニ監督スル所ノ關東廳ニ於テ之ヲ監督スル所ノ機能アル
カドウカ、若シ機能ガアリトシタナラバ、果シテ實際ニ於テ其機能ヲ發揮シ
得テ居ルカ、ドウカト云フコトヲ先ヅ以テ第一ノ質問トサレタノデアリマス、
之ニ對シマシテ、關東長官ハ職責上、關東廳ハ滿鐵會社ニ對シテ監督スベキ所
ノ官廳デアル、併ナガラ實際上ニ付テ之ヲ言ヘバ、誠ニ十分ナル監督ガ出來
惡イ狀態ニアルト云フコトハ誠ニ遺憾ニ堪ヘヌ次第デアル、先ヅ第一ニ滿鐵
ノ重役ノ任免ハ中央政府ニ於テ直接ニ之ヲ行フノデアル、又滿鐵ニ屬スル所
ノ役員、社員ハ數多イケレドモ、關東廳ニ於テハ人員ハ誠ニ至ッテ少ナイノデ
アル、ソレガ爲ニ監督ノ屆カヌノミナラズ、人才ヲ集メルト云フ上ニ付テモ
甚ダ遺憾ガ多イノデアル、且ツ又管理官ハ直接ニ拓殖局ニ於テ之ヲ取締ルト
云フコトニナッテ居ルノデアルカラ、關東廳ニ於テハ實際監督上ニ於テハ、誠
ニ都合ノ惡イ次第ニナッテ居ルト云フコトヲ率直ニ答ヘラレタノデアリマス、
同委員ハ總理大臣ニ對シマシテ、此滿鐵問題ニ付テハ世間囂々タル聲ヲ聞イ
テ居ル、就中塔蓮炭坑ノ買收、鳳山丸ノ買收、是等ノ如キモノハ殆ド明白ナ
ル事實ノヤウニ自分ハ考ヘル、總理大臣ハ是等ノ事實ヲバ了知セラレルヤ否
ヤ、此質問ニ對シマシテ總理大臣ハ答ヘラレマスニハ、自分ハ十分ニマダ其
事件ニ付テ承知シテ居ラナイ、併ナガラ若シ左樣ナコトガアルト云フコト
デアルナラバ捨テ置クコトハ出來ナイコトデアルカラシテ、十分ニ取調ベテ
戒飭ヲスベキコトハ戒飭シナケレバナルマイト云フコトヲ申サレタノデアリ
マス、ソレニ基キマシテ同委員ハ元滿鐵社員タル所ノ山田某ナル者ノ手記ヲ
朗讀サレマシテ、サウシテ司法權ノ活動ヲ政府ニ對シテ促サレタノデアリマ
ス、總理大臣ハ其ノ山田某ナルモノノ記述ガ悉ク之ヲ信ズル譯ニハ參ラヌ、何
分ニモ片言デアルカラシテ十分ニ直ニ其通リデアルト思ハレヌノデアル、併
ナガラ左樣ナ事柄ハ勿論捨テ置クコトハ出來ナイ事柄デアルカラシテ、之一
對シテ適當ナル措置ヲシテ、公明正大ナル措置ヲ執ルト云フコトヲ申サレタ
ノデアリマス、同委員ノ御希望ニ依リマシテ委員會ニ御諮リヲ致シマシテ
此ノ山田某ナル者ノ手記ハ豫算委員會ノ議事速記錄第六號ノ追錄トシテ諸君
ノ御手許ニ配布ヲシテ置キマシタ、念ノ爲ニ申添ヘテ置キマス、又他ノ一委
員ヨリハ滿鐵ノ事業ノ方針ハ今日ノ儘デ捨テ置クト云フコトハ宜シクアルマ
イト考ヘル、ドウシテモ滿鐵ノ事業方針ニ付テ大刷新ヲ行ハナケレバナラヌ
ト思フガ、政府ノ所見如何ト云フ質問ガ出タノデアリマス、之ニ對シマシテ
總理大臣ハ勿論不正ノコトガアルト云フコトデアルナラバ、十分ニソレヲ糺
彈シ、措置シナケレバナラヌコトハ申スマデモナイ、又事業ノ方針ニ付テモ緊
縮一點張デモヨクアルマイト思フガ、又放慢ニ流レルヤウナ經營ノヤリ方デ
モヨクアルマイト思フ、ソレ等ノ點ニ付テハ何トカ考慮ノ上ニ刷新ヲスル考
デアルト云フコトヲ申サレタノデアリマス、何分ニモ此滿鐵ニ關スル所ノ
質疑ハ五日間ノ委員會ニ跨リマシテ質問應答ガ繰返サレタコトデアリマスノ
デ、ソレヲ遺漏ナク申上ゲルコトハ甚ダ困難デアリマスルガ故ニ、大要ヲ茲
ニ申述ベテ置クコトニ致シタイト思ヒマス、第二ハ學校昇格ニ關スルコトノ
質疑デアリマス、是ハ豫算委員會ヲ開キマス前ニ諸君モ御承知ノ通リ二月九
日ニ高等〓育機關ニ關スル建議案ト云フモノガ當議場ニ出マシタ位デアリマ
シテ、定メシ此問題ニ付マシテハ、質問者モ多ク質問ノ時間モ多ク要スルコト
ト私ハ考ヘテ居ノタ譯デアリマス、然ル所豫算委員會ノ一人ヨリ御希望ガアリ
マシテ、此問題ニ付テハ十分遺憾ナク質問ヲ致シタイト思ヒマスカラ、適當ナ
ル所ノ時日ヲ費シ質問ヲスルヤウニ取計ッテ貰ヒタイト云フ御希望ガ御提出
ニナリマシテ、委員會ニ御諮リヲ致シマシタ、委員會ニ於キマシテモ御異存
ゴザイマセヌニ依リマシテ、二月二十二日二十四日二十五日ノ三日間、此ノ
學校昇格問題ニ關スル所ノ質疑ノ時間ニ割當テタ次第デアリマス、質問セラ
レル前ニ當リマシテ委員會ノ光景ハ、誠ニ緊張イタシテ居リマシテ、而シテ質
問ヲサレル方〓ハ何レモ熱辯ヲ縱橫ニサレタノデアリマス、今其質問ヲ之ヲ
分類致シテ見マスト云フト、先ヅ第一ノ質問ト致シマシテハ、先般ナサレタ
所ノ建議案ノ趣意ガ能ク了解サレテ居ラレルカドウカ、固ヨリ我〓共ハ穩ナ
ルコトヲ好ムノデアル、故ニ穩ナル建議案ト云フ形式ヲ以テ其體樣ニ致シテ
居ルノデアルケレドモ、政府ニ於テハ其末ニ走ラナイデ、其ノ本ヲ宜ク顧ミテ
貰ヒタイト云ヒ、尙ホ又文相ノ食言ニ付テ如何ニ之ヲ處置サレルノデアルカ
ト云フ御質問デアリマス、之ニ對シマシテ總理大臣ハ建議ノ趣意ハ建議案ノ
文面ニ現ハレタル所ノ意味ニ依リ適當ノ處置ヲ取ルヨリ外仕方ガナイト思フ
ノデアル、文相ヲ食言ト言ハレルケレドモ、自分ハ文相ハ食言ノ事實ハナイ
ト斯ウ思フ、文相ハ希望ヲバ、學校關係者ニ斯〓シヤウト云フコトヲ通ゼラレ
タカ知レヌケレドモ、併ナガラソレハ多ク言フ中ノコトデアッテ、之ヲ以テ直
チニ文相ガ約束ヲシタトカ食言ヲシタト云フモノデナイト自分ハ思フノデア
ル、又或一委員ヨリハ風〓ノ維持ノ上カラシテ、總理大臣ハ此文相ノ食言ヲ
閑却セラレルノデアルカト云フ痛烈ナル所ノ質問ニ對シマシテモ、總理大臣
ハ文相ガ假ニ學校關係者ニ其希望ヲ話シタトシテモ、此事柄タルヤ文相一人
ノ思フヤウニ行カナイ問題デアル、閣議モアルシ、種々ノ機關ヲ經由シナケ
レバ實現ノ出來ナイコトデアルカラシテ、苟モ常識ノアル者ハ假令文相ノ希
望ヲ聽イタト致シテモ、ソレヲ以テ直ニ昇格ガ實行シ得ルモノト卽斷スルノ
ハ是ハ間違ヲテ居ル、兎ニモ角ニモ文相ノ食言ノ事實ガナイノデアルカラ、之
ニ付テハ何等ノ處置ヲ執ルコトガ出來ナイト云フ御答デアリマシタ、此問題
ニ付マシテハ、質問ガ繰返サレ、應答ガ之ニ對シテ繰返サレマシタガ、遂
ニ押問答ニ過ギナイノデ、進捗ハ致シマセヌノデアリマス、又或一委員ヨリ
抑〓先般ノ建議案ノ趣旨ト云フモノハ、大正十年度ニ於テ昇格ヲサセルト云フ
所ノ文相ノ言明ニ對シテ適當ナル處置ヲ執ルト云フノデアル、實際ニ付テ考
ヘテ見ルノニ、大正十年度ニ於テ學校ヲ昇格サレルト云フコトハ、到底不可能
ノコトデアル、サウシテ見レバ文相ノ言明ヲ取消スヨリ外ニ途ガナイノデア
ル、文相ノ言明ヲ取消スト致シタナラバ、決シテ我〓ハ彈効ヲスル積リデハナ
イケレドモ、其結果ニ於テハ彈効ト同樣ナル現象ガ茲ニ起ッテ來ナケレバナラ
ヌヤウニ考ヘマス、又第二ハ弛廢シタ所ノ〓育界ノ風紀ヲ肅正シ、振興スル
ト云フコトモ建議ノ第二ノ趣意デアル、之ニ付テノ政府ノ所見如何ト云フコ
トデアリマシタ、總理大臣ハ之ニ對シテソレハ質問者ノ御自分ノ是ハ御解釋
デアル、政府ニ於テハ建議ノ提起者ガ爲シタル所ノ說明、文面ニ現レタル所
ノコトニ付テ解釋スルヨリ外ニ仕方ナイノデアル、質問者ノ御演說ヲ基礎ト
シテ建議ノ趣意ヲ解釋スル譯ニハ行カナイノデアル、詰リ學校問題ノ斯ク紛
糾シタ根源ニ遡ッテ此問題ヲ適當ニ解釋スルト云フコトガ建議ノ御趣意ニ添
フモノデアルト政府ハ斯ウ信ジタノデアル、故ニソレ〓〓內部ノコトデアル
ケレドモ、委員ヲ設ケテ著々其成案ヲ急イデ居ル次第デアル、斯ク申サレタ
ノデアリマス、尙ホ此點ニ付マシテモ押問答ガアリマシタ末ニ、總理大臣ノ
申サレマスニハ質問者ノ言ハレルヤウナ謎ミタヤウナコトデ、謎デハ立憲
政治ト云フモノハ運用ガ出來ナイト云フコトヲ申サレマシテ、此問題ハ此
程度ニ於テ物分レニナッタノデアリマス、是ガ昇格第一日ノ質問ノ要領デ
アリマス、昇格問題ノ第二日ニ於キマシテ、或一委員ヨリハ學校昇格ニ關ス
ル所ノ豫算ヲ大正十年度ノ追加豫算トシテ御提出ニナル御考デアルカドウ
カ、之ニ對シテハ總理大臣ハ根本ノ案ガ出來ナイ以上ニハ豫算ニハ出ストモ
出サヌトモ、此際言明スルコトハ出來ナイト云フ御答デアリマシタ、又或委
員ヨリハ、文部大臣ニ對シマシテ我〓ハ本豫算ヲ審議決定スル上ニ付テモ、
學校問題ニ關スル所ノ追加豫算ヲ御出シニナルカ御出シニナラヌカ、其邊ガ
分ラヌト云フト大ニ採決ノ上ニ於テ惑ハザルヲ得ヌコトデアル、此點ニ付テ
ハ如何デアルカト云フ御問ニ對シテ、文部大臣モ總理大臣ト同樣ナル御答デ
アリマシタ、兎ニ角解決案ガ未ダ茲ニ出來ナイ今日ニ於テハ、何トモ左樣ナ
コトヲ申スコトハ出來ナイト云フ御答デアッタノデアリマス、此際ニ豫算委員
會ノ一人デアリマシテ而シテ此ノ學校問題ニ付テハ最モ深イ關係ヲ有シテ居
ラレル所ノ委員ノ御方カラ、其當時ニ於テ文部當局トノ會見ノ〓末ヲ豫算委
員一同ノ參考ノ爲ニ御述ベニナッタノデアリマス、其御述べニナリマシタ大體
ニ於キマシテハ、文部大臣モ是認サレタノデアリマス、尙ホ委員會ノ一人ヨ
リハ專門學校ト云フモノハ自分ハ必要ナモノデアルト思フガ、此ノ專門學校
中ヨリ五六ノ學校ガ昇格ヲシテ大學ニナッタ曉ニ於テハ、專門學校ヲ減少スル
譯デアルガ、何等差支ハナイカドウカト云フ質問ニ對シテ、文部大臣ハソレ
ハヤリ方ノ如何ニ依ルコトデアル、學校ノ組織ノ如何ニ依テハ、必ズシモ專
門學校ノ數ヲ減少スルヤウナ虞ハナイト云フコトヲ申サレタノデアリマ
ス、尙ホ又同委員ハ學校昇格ヲ決スルトシテモ其財源ヲドウナサルノデアル
カ。隨分此學校ノ昇格ト云フコトノ問題ヲ外ニ考ヘテ見テモ、義務〓育ノ延
長、或ハ視學官ノ改善或ハ又小學校〓員ノ俸給ヲ國庫デ以テ負擔スルト云フ
ヤウナ議論モ大ニ行ハレテ居ル今日デアルガ、ソレ等ノモノヲ差置イテモ學
校昇格ヲ急トスルノデアルカ、ドウカ、ト云フヤウナル御質問應答ガアッタノ
デアリマス、是ガ第二日ノ狀況デアルノデアリマス、第三日ニ於キマシテハ
段々質問戰ガ露骨ニナリマシテ、或委員ノ方ヨリハ此建議案ノ趣旨ト云フモ
ノハ問責デアルノデアル、問責ノ趣旨デアルノデアル、ソレヲ政府ノ方ニ
於テハ問責デナイト云フノハドウ云フ譯デアルカ、之ニ對シマシテ總理大臣
ハ自分ハ此建議ノ趣旨ハ善意ニ解釋シテ、是ハ問責ニ非ズト解釋ヲシテ居ル
ノデアル、斯樣ナ問答ガ繰返ヘサレマシテ、恰モ政府ト質問者トノ間ニ白兵
戰ガ行ハレタノデアリマス、次デ或一員ハ決然トシテ申サレマスノニ、此ノ
建議案ノ趣旨ノ說明ヲ致サヌ前ナラバ格別デアル、既ニ此ノ建議案ノ趣旨ヲ
說明シタ以上ニ於テハ矢ハ弦上ヲ離レタノデアル、貴族院ハ貴族院トシテノ
結末ヲ付ケナケレバナラナイノデアル、ガ此際ニ尙ホ一應政府ノ考ヲ確メテ
置クガ、此ノ建議案ノ趣旨ハ問責デアルノデアルガ、ソレヲ御採用ニナルノ
カ、ナラヌノカ、承ッテ置キタイト云フコトデアリマシタ、之ニ對シマシテ總
理大臣ハソレハ自分ノ考ト根本カラ相違シテ居ルノデアル、自分ハ何處マデ
モ建議案ノ趣旨ハ問責ニ非ズト解釋シテ居ルノデアル、卽チ紛糾ヲ釀シタ所
ノ學校ノ問題ヲ解決ヲスレバ、政府ノ方モ、貴族院ノ方モ、ソレ〓〓體面ヲ
全ウシテ、國政ガ圓滿ニ進行スルト云フ考デアル、又左樣ニスルコトガ國家
ニ對スル所ノ奉公ノ途デアル、斯ウ信ジテ居ルノデアル、左樣ナ御答ガアリ
マシテ、委員會ハ誠ニ悽慘タル光景ヲ呈シタノデアリマス、或委員ハ最後ニ
質問ヲ打切ラレタ後ニ、此問題ニ付テハ至誠ヲ披瀝シタ餘リ、或ハ陳述中ニ
非禮ノコトガアッタカモ知レヌ、非禮ノ言葉ガ御互ニ交換サレタカモ知レナイ
ケレドモ、是ハ事情已ムヲ得ヌコトデアルカラシテ、閣員ニ於カレテモ了解
ヲシテ貰ヒタイト云フ御挨拶ガアリマシタ、之ニ付テ文部大臣モ同樣ナ御挨
拶ガアッタノデアリマス、私ハ其當時誠ニ是ハ美シイ紳士ノ禮デアルト思ウタ
ノデアリマス、左樣ナ次第デアリマシテ、委員會ハ誠ニ恰モ支那ノ詩ニアリ
マスヤウニ、山雨將ニ臻ラムトシテ風樓ニ滿ツト云フヤウナ內ニ、豫算委員
會ヲ散會ヲ〓グタノデアリマス、果セル哉未ダ幾許ノ日ヲ經ナイ內ニ風〓ニ
關スル決議案ガ本議場ニ提出セラレマシテ、一大論爭ノ花ヲ咲カシタ次第デ
アルノデアリマス、右樣ナ大キナ質問ガ通過シマシタ後ハ所謂大風一過デア
リマシテ、十六日ノ······十七日ノ豫算委員總會ニ於キマシテモ格別ナル質問
モ出マセスデ、衆議院議決案ノ通リニ各案ガ可決ニ相成ッタ次第デアルノデア
リマス、而シテ其ノ可決ニナリマスル前ニ當リマシテ、或一委員ヨリ此四ツ
ノ豫算案ヲ協賛スルニ當ッテ、斯樣ナル所ノ警告的希望決議ヲ附シタイト思
フ、斯樣ナ希望ヲ申述ブルト云フコトヲ理由ニシテ協贊ヲ與ヘタイノデアル
ト云フコトヲ申サレマシテ、一ツノ警告的希望決議ヲ御朗讀ニナッタノデアリ
マン·其ノ希望決議ヲ玆ニ朗讀イタシマス
「近來國家ノ綱紀ノ漸ク弛廢シ外國威ノ進暢ヲ礙ゲ內民心ノ安定ヲ缺キ征利
私ヲ計リ義勇奉公ノ氣節將ニ萎靡セントス國家ノ大患之ニ過グルモノナク
洵ニ深憂ニ堪ヘザルモノアリ政府ハ速ニ適切ノ方途ニ由リ時弊ヲ矯正シ庶
政ヲ釐革シ公正ヲ主トシ民心ヲシテ倦怠ナカラシメンコトヲ望ム」
斯樣ナ警告的希望決議デアリマス、是ハ御說明ヲ申上ゲルマデモナク近來單
リ滿洲ノミナラズ、輦糓ノ下ニ於キマシテモ、誠ニ不正ナル事件ガ簇出シテ居
ル狀態デアリマス、尙ホ又橫溶ノ稅關ニ於キマシテモ、亦稅務署等ニ於キマ
シテモ、刑事犯罪ノ問題ガ出テ居ルノデアリマス、斯樣ニ國家ノ綱紀ガ漸ク
弛廢イタシマシテハ、自然外交ノ上ニ於キマシテモ差障リヲ生ジマスルシ、
內ニ於キマシテモ民心ノ安心ヲ缺クヤウナ次第ニナリマスノデアリマシテ、
私利ヲ計ルヤウナ風ガ瀰漫イタシマスト云フト、義勇奉公ノ氣節モツイ地ヲ
掃フト云フコトニナルノデアリマシテ、誠ニ國家ノ大患之ニ過グルモノハナ
イ次第デアリマス、此ノ希望決議ハ抽象的ニ起草サレタノデアリマスケレド
モ、試ニ之ヲ例示的ニ申シマスレバ例ヘバ滿鐵ノ如キ、是ハ諸君申上ゲルマ
デモナク國家的事業ヲ營ンデ居ル機關ト申シテモ差支ナイノデアリマス、而
シテ其歷史カラ申シテモ、滿洲經營ノ使命ノ上カラ申シマシテモ、亦資本額
ノ上カラ申シマシテモ、之ニ肩ヲ竝ブルモノハナイ位ノ大キナ國家的機關デ
アルノデアリマス、然ルノニ此大ナル所ニ國家的機關ヲ委託サレテ居リマス
所ノ重役ガ若シモ道途傳フルヤウナ、又山田某ノ手記ニ現ハレテ居リマスヤ
ウナ不正ナコトヲ若シ爲シタコトガ眞デアリマシタナラバ、如何デアリマセ
ウ、此大ナル所ノ國家的機關ハ徒ニ不正ノコトヲ爲ス所ノ機關ニ化シテシマ
フノデアリマス、若シ左樣デアリマシタナラバ、如何ニ倫理ヤ修身ノ〓師ガ口
ヲ酸クシテ講釋ヲ致シマシタ所ガ、義勇奉公ノ氣節ヲ涵養サセルト云フコト
ハ徒爾ニ屬シテシマフコトハ明カナコトデアルノデアリマス、故ニ政府ニ於
キマシテハ速ニ司直ノ府ヲシテ司法ノ淨玻璃ノ鏡ニ照シマシテ、正邪曲直、
是非善惡ヲ明ニサレマシテ、善ノ尊ムベク、惡ノ憎ムベキモノ、勸善懲惡ノ事
柄ヲ國民ノ前ニ實物〓訓トシテ示サルヽト云フコトガナカッタナラバ、到底此
ノ國民ノ心ヲ安定サセルコトガ出來ナイノミナラズ、國家ニ對スル所ノ奉公
ノ精神ヲ涵養スルコトハ、到底出來ナイコトデアルト思フノデアリマス、此
ノ建議案ノ御提出ニナリマシタ趣旨モ其點ニアルト思フノデアリマスガ、豫
算委員會ニ於キマシテハ、全會一致ヲ以チマシテ此ノ希望決議ニハ賛同ヲサ
レタノデアリマス、而シテソレニ續イテ、各案ガ可決通過サレタ次第デアリ
9+3尙ホ此際ニ申添ヘテ置キマスコトハ、各分科主査ヨリ豫算總會ニ御報
告ニナリマシテ、而シテ豫算委員總會ノ希望決議トシテ、矢張本會ノ方ニ報
告シテ貰ヒタイト云フ所ノ御希望デアリマシタ、委員總會ニ諮リマシタ所ガ、
ソレヲ是認サレマシタニ依リマシテ、其ノ希望決議ヲ此ニ順次ニ御披露ヲ申
シマス、其第一ハ
「大正十年度ノ歲計豫算ヲ審査スルニ、歲出ハ近年頻ニ膨脹ノ趨勢ヲ止メズ、
將來物價騰貴ニ伴フ不足、軍艦補充費社會事業費等幾多增加ヲ來スベキモ
ノアリ、反之歲入ハ昨年春以來、經濟界ノ激動、次デ一般商工業ノ不況貿
易ノ激減、失業者ノ增加等ニ伴ヒ、將來減退ヲ來スノ趨勢ヲ呈スルニ至レ
リ、之ニ加フルニ政府ノ財政計畫ハ今後年々巨額ノ公債發行ヲ必要トス
ルモノニシテ大正十年度歲計豫算ノ實行ハ、頗ル困難ナルモノト思考セラ
ル。尙ホ同年度豫算總額ハ未曾有ノ巨額ニ上リ、我邦ノ經濟力ニ比シ已ニ
過大ノ感アリ、特ニ其豫算金額ノ半額ハ之ヲ陸海軍費ニ供用スルニ至リテ
ハ、假令國防上巳ムヲ得ザルモノアリトスルモ、將來國家經濟ノ發展上頗ル
惡影響ヲ及ボスモノナキヲ保シ難シ、又各特別會計豫算竝近時府縣市町村
費經濟ニ於テモ、歲出ノ激增ニヨリ著シク民力壓迫ノ狀況アルヲ免レズ、右
ノ次第ナルヲ以テ政府ニ於テ、大正十年度豫算實行上極メテ愼重ノ注意ヲ
拂ヒ、豫算內ニ於テモ充分節約ニ力ムベキハ勿論、將來豫算編成ニ就テハ
大正十年度豫算ノ上ニ現ハレタル不良ノ趨勢ニ鑑ミ、大ニ改善ニ力メラレ
ムコトヲ望ム」
是ハ先刻陳述イタシマシタ所ノ、歲入見積ノ過多デアルマイカ、將來ノ財政
ハ行詰ラヌカト云フコトニ付テノ質問ガアッタト云フコトヲ申上ゲマシタガ、
ソレニ是ハ照應シタ所ノ希望決議デアルノデアリマス、第二ハ
「大正十年度歲計豫算ヲ審査スルニ、歲出豫算ニ就テ、從來數項ニ分レタ
ルモノヲ一項ニ合併セラレタリ、右ハ取扱ヲ便ニシ、經費豫算節約ノ趣旨
ニ出タルモノナルベキモ自然流用自由トナルノ結果、年度末ニ至リ不要不
急ノ支出ノ弊ニ陷ルナキヲ保セズ、右ハ政府ニ於テ嚴重ニ取締アランコト
ヲ望ム」
是ハ本年度豫算ニ於キマシテ、款項ヲ約メマシテ、サウシテ是迄數項ニ分カ
タレテアリマシタ所ノモノヲ、一項ニ詰メタノデアリマス、是ハ斯ウ致シマス
ルト云フト、節約ヲスル上ニ付テ、大變ニ便利デアルノデアリマスガ、ソレ
ト同時ニ弊害トシマシテハ、自然流用ノ自由ニナルト云フコトモアリマスノ
デ、ソレニ付テ戒メタ希望決議デアルノデアリマス、第三
「一、現在ノ高等専門學校ニ關シ、臨時〓育會議決定ノ趣旨ニ大ナル變更ヲ
加ヘントスル場合ニ於テハ、該會議ノ如キ有力ナル調査機關ノ審議ニ付セ
ラレンコトヲ望ム」
是ハ學校昇格問題等ニ對スル事柄デアラウト思フノデアリマス、今一ツハ
「二、大正十年度文部省豫算ハ主トシテ高等〓育ノ方面ニ重キヲ置キ普通〓
育ヲ閑却セルノ嫌アリ、政府ハ現下一般一國民ノ智德ヲ增進スルノ緊要ナ
ルニ顧ミ、次年度以降ニ於テハ普通〓育ノ發達改善ニ一層ノ力ヲ致サレン
コトヲ望ム」
次ニハ陸海軍ニ關シマス所ノ希望決議デアリマス
「一般會計各省所管內豫備金ノ性質ニ屬スルモノヲ置クハ、穩當ヲ闕クヲ以
テ、陸軍省所管歲出臨時部物件費補足ハ、本年度限ノ費途トシテ之ヲ認ム
ルモ、右ニ關シテハ政府ハ左ニ揭グル事項ヲ確守センコトヲ望ム
陸軍ニ對スル臨機ノ處置ニシテ本年度ニ限定シ、後年度再ビ斯ノ如キ
費目ヲ揭ゲザルコト
二、大藏省政府委員ノ言明シタル五科目ニ限リ必要已ムヲ得ザルニ際シ補
足シ、他ノ費途ノ補足ニ充當セザルコト
三、事實上若クハ結果ニ於テ款項流用ノ形跡ヲ留メザラシムルコト」
是ハ總豫算ノ歲出臨時部陸軍ノ歲出臨時部ノ第十七款ノ物件費補足トシテ千
萬圓ガ計上サレテ居ルノデアリマス、是ハ恰モ陸軍省所管ノ豫算ニ對シマ
シテハ一種ノ豫備費ノヤウナ形ヲ現シテ居ルノデアリマシテ、豫算ノ形式ニ
於キマシテハ新例デアルノデアリマス、是ハ唯〓希望決議モゴザイマシタ通
リニ、本年度ダケハ之ヲ認メルケレドモ、次年度カラハ、斯樣ナコトハ豫算
ノ形式上面白クナイカラ、止メニシナケレバナラヌト云フコトヲ警告シタノ
デアリマス、而シテ其費途ニ付マシテモ、限定ヲシテ他ニ流用シナイヤウニ
防イダノデアリマス、海軍ニ關シマシテ
「一、近年我ガ海軍ノ經費ハ異常ノ膨脹ヲ致セリ、當局ハ我ガ財政ノ前途ニ
鑑ミ銳意費用節減ノ途ヲ講ゼラレンコトヲ望ム
二、液體燃料問題ハ我ガ海軍ノ前途ニ橫ハリ重大ノ意義ヲ有ス、當局ハ銳意
其解決ニ努メラレンコトヲ望ム」
次ハ農商務省所管デアリマス
「森林ノ經營其宜シキヲ得ルト否トハ國策上重要ノ關係ヲ有ス、北海道ニ於
ケル廣大ナル森林ハ實ニ我ガ重要ナル國家的資源ナレバ政府ハ內地森林ト
同樣統一的計畫ノ下ニ於テ速カニ適切ナル施設方針ヲ定メ經營上遺憾ナキ
コトヲ期セラルベシ」
是ハ林政統一ニ付テノ希望決議デアリマス、是迄北海道ノ森林ハ農商務省ニ
於テ、內地ノ森林同樣ニ統一的ニ經營サレテ居ラナカッタノデアリマス、是ハ
林政統一ノ急務ナルコトヲ說イタ結果、斯ウ云フ希望決議ガ出タノデアリマ
ス、次ニハ遞信省所管デアリマスガ
「交通通信機關ノ機能ヲ發揮シ、完全ニ其效果ヲ收ムルハ我產業貿易ノ發達
上必要ナルノミナラズ一般社會ニ於テ殊ニ其切要ヲ感ズル所ナリ、當局者
ハ銳意此點ニ力ヲ致シ一般社會ヲシテ滿足セシメラレンコトヲ望ム」
是ハ申上ゲル迄モナイ、小サナ問題ト致シマシテハ、電信ノ遲達、其他信書
類ノ配達ガ大變ニ遲レマシテ、ソレガ爲ニ種々ナル不都合ヲ釀スコトガアル
ノデアリマス、ソレ等モ勿論是ハ含ンデ居ルノデアリマス、次ニハ是ハ鐵道
省ニ關シマス事柄デアリマス
「鐵道省所管十年計畫ノ豫算ハ大正九年度豫算ノ執行及本年度豫算追加ノ
實狀ニ鑑ミ、大正十一年度以降ノ年割額ニ對シ更ニ精密ナル調査ヲ遂ゲ適
當ナル計畫ヲ立テラレ度、又ハ鐵道ノ改良ニ關シ遺憾ナキ施設ヲナサンコ
トヲ望ム」
是ハ關東廳ニ對スル希望決議デアリマス
「南滿洲鐵道株式會社業務ノ監督其宜シキヲ得ザルモノアルハ遺憾ノ至ナ
リ、政府ハ宜シク其監督機關ヲ整備シ業務ノ刷新ヲ期セラレムコトヲ望ム」
是ハ先程申上ゲマシタ通リニ關東廳ハ滿鐵直接ノ監督官廳デアリマスガ、其
監督ヲナスベキ十分ナル機能ガ備ッテ居ラスノデアリマス、ソレハ關東長官ノ
質問ニ對スル率直ナル答辯デ明カニナッテ居ル事柄デアルノデアリマシテ、十
分ニ其監督ノ機關ヲ整備シテ、是等ノ大會社ニ對スル監督上ノ遺憾ヲナカラ
シメムトスル希望決議デアルノデアリマス、以上ヲ以チマシテ大正十年度歲
入歲出總豫算外三案ノ豫算委員會ニ於ケル審議ノ經過竝ニ結果ノ報〓ヲ完了
イタシマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=40
-
041・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通〓順ニ依リマシテ質疑ヲ許シマス、坂本
男爵
〔男爵坂本俊篤君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=41
-
042・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 私ハ大正十年度歲入歲出總豫算ヲ協贊イタシマスルニ臨
ミマシテ、唯今委員長ヨリ報〓ニナリマシタル通リ、第四分科ニ於キマシテ
希望條件ヲ提出イタシマシテ、滿場委員ノ御贊同ヲ得マシタ事柄ノ內容ヲ聊
カ玆ニ披瀝イタシマシテ、當局大臣ノ辯明ヲ請ヒ、併セテ大戰後世界海軍ノ
變動ニ對シマシテ、帝國海軍ガ將來取ラムトスル所ノ大體ノ方針ニ付テ、當
局ノ所見ヲ伺ヒタイト存ジマス、其第一ハ唯今委員長ヨリ朗讀ニナリマシタ
海軍經費節減ノ事柄デゴザイマス、我ガ海軍ハ大戰五箇年ノ間ニ於テ、約五倍
ノ激增ヲ致シタノデアリマス、是ハ各國ノ例ニ照シマシテ、誠ニ驚異イタス
ベキ現象デアルノデアリマスサリナガラ仔細ニ其內容ヲ點檢イタシ、其因
テ來ル所ヲ尋ネマスレバ、又斯樣ナ經費ニ達スルコトモ已ムヲ得ナイ理由ガ
アルノデアリマス如何トナレバ多年我ガ國民ノ翹望イタシマシタ所ノ、此八
隻二隊ノ所謂俗ニ八八艦隊ノ計畫ナルモノガ、玆ニ完成ヲ〓ゲルコトニナリ
マシテ、十六年度マデニ亙ル所ノ豫算ハ當初起算イタシマシテ無慮十八億ニ
達スルノデアリマス、是ヨリ大正九年度マデノ繼續費ヲ控除イタシマシテ、
玆ニ十一億餘ノ繼續費ヲ餘スノデアリマスガ、此ノ繼續費ニ對シマシテ年度
割ニ於テカラ、一般物價騰貴竝ニ海軍ノ豫算ガ近年ノ軍器ノ發達ニ伴ヒマシ
テ、其膨脹ヲ來シマシタ事柄ニ原因スルノデアリマシテ、本年ノ豫算ニ於キ
マシテモ殆ド五億ニ垂ントスル所ノ豫算ニ達シタノデアリマス、世間ノ
一部論者ニハ此厖大ナル所ノ豫算ヲ見テ、如何ニモ軍費ノ過重ニ驚イテ何等
カ豫算ノ上ニ輕減ヲ致サナケレバナラヌヤウナ說ヲ爲ス者モゴザイマス
ルガ、併ナガラ是ハ靜ニ此理由ヲ考ヘマシタナラバ、自ラ氷解スルコトデア
ラウト思ヒマス、ト申シマスルノハ是ハ先ニ協賛イタシマシタル所ノ海軍
計畫ノ遂行ニ伴フ所ノ豫算デアリマシテ、是ハ既ニ協賛ヲ與ヘタ以上ハ此計
畫ニ伴フ所ノ此厖大ナル豫算ハ、是ハ國民ガ忍バナケレバナラヌモノデアル
ノデアリマス、例ヘバ橋ヲ中途マデ架ケテモ何ノ役ニ立タヌノデアリマス、
若シ其橋ノ建造費ノ厖大ナルニ驚イテ之ヲ云々シマスルコトニナリマスレ
バ、寧ロ其橋ヲ架ケル以前ニ於テ此計畫ヲ贊スル際ニ述ベナケレバナラヌ議
論デアラウト思ヒマスサリナガラ斯樣ナ五億ニモ垂ントスル所ノ豫算ニ對
シマシテハ、國民ガ軍費ノ過重ヲ感ジマスルコトハ、是ハ尤ナルコトデア
リマスルカラ、此事柄ニ顧ミマシテ當局大臣ハ宜シク經費節減ノコトニ付テ、
最モ注意ヲ致サナケレバナラヌコトデアラウト思ヒマス、私ハ嘗テ英國ノ大
將「チヤーチル」ガ若シ英國ノ海軍ニ一隻ノ艦艇ノ必要以上ノ勢力ガアッタナ
ラバ、自分ハ其責ニ任ジナケレバナラヌト云フコトヲ記憶イタシタノデアリ
マスガ、多年ノ宿望タル所ノ此ノ海軍計畫ヲ完成サレマシタ、其局ニ居ル所
ノ加藤海相ハ若シ一錢一厘ノ冗費ガアリマシタナラバ之ヲ省キ又一錢一厘
ノ節約スベキモノガアレバ之ヲ節約セラレル責任ガ御有リニナルコトト存
ジマス、而シテ此節約ハ如何ナル項目ニ向ッテ施サルベキカト考ヘマスレバ私
ノ考ヘマス所ニ依ルト、主トシテ是ハ廢艦ノ處分ガ先ヅ以テ第一ノコトデア
ラウト考ヘマス、英國ハ戰後ノ經濟ト致シマシテ、百四十隻餘ニ亙ル廢艦ヲ
斷行イタシマシタ、又最近ノ報告ニ依リマスルト、十二吋ノ砲ヲ備ヘル所ノ
努級戰艦ハ皆之ヲ廢艦ニ致シタト云フコトデアリマス、卽チ之ヲ我國ノ例ニ
求メマスレバ香取、鹿島ヲ初トシ安藝、薩摩、攝津マデモ此廢艦ノ部類ニ這
入ルノデアリマス併ナガラ是ハ英國ニシテ初メテ行ハルベキモノデアリマ
シテ帝國ニ於テ左樣ナコトハ行ヒ兼ヌルト致シマシテモ、此點ハドウシテモ
御遂行ヲ望マナケレバナラヌ、且ツ英國デハ種々斯樣ナコトヲ申シテ居リマ
ス、國民ガ虛僞ノ上ニ安心ヲスルコトハ、甚ダ面白クナイト申シマスルノハ、
戰闘力ノ足リナイ艦船ヲ備ヘテ其艦船ガ何十萬噸アリ何百萬噸アルト云フコ
トデ安心スル如キハ最モ危險ノコトデアルカラ、是ハ宜シク其實力ニ應ジテ
早ク艦籍ヨリ去ッテ、サウシテ國民ヲシテ戰闘力ノ實在ヲ知ラシムルト云フコ
トハ必要デアル、是ハ尤ナル所見デアリマシテ、今後軍備制限等ニ付テ各
國ガ艦艇ノ數字ヲ以テ比較スル場合ニ於テハ大ニ考慮シナケレバナラヌ問題
デアルト思フ、又軍港要港ノ整理ノコトデアリマスガ、世界大戰ノ後ハ各國
ノ形勢ニ重大ナル所ノ變化ヲ及ボシタノデアリマス、東洋ニ於キマシテモ矢
張其通リデ、大戰前ニ於テ必要ノアッタ軍港ヤ要港モ今日ニ於テハ或ハ軍港
又ハ要港トシテ存在スル必要ガナイモノガアルカモ知レヌ、斯樣ナモノニ對
シテハ相當ノ御整理ガアッテ然ルベキモノカト考ヘマス、又工廠ノ整理デアリ
マスガ、各海軍工廠ハ最モ經費ヲ要スル所デアリマシテ、又軍艦ノ製造等ニ付
マシテ、之ヲ民間ノ製造ニ比較イタシマシテ其價等ヲ比較シテモ頗ル廉價ニ
海軍工廠ノハ出來ルヤウデアリマスケレドモ、併ナガラ是ハ計算ノ上ニ於テ
基礎ニ疑ガアルノデアリマスカラ、是ハドウ致シマシテモ、此民間ノ工場ニ
於テ、所謂、算盤、秤ノ目ヲセセッテ錙銖ヲ爭ウテ造ル程度ニ至ッテ、初メテ此
ノ經費節減ノ實ガ擧ガルノデアラウト思ヒマスカラ、其工廠ノ整理ノ方面ニ
於テモ大ニ力ヲ盡サレル餘地ガアラウト思ヒマス、又豫備艦ノ制度ニ依テ人
員ノ減少等ニ至ッテ大ニ節減ノ餘地ガアラウト思ヒマス、尙ホ一般ノ行政整理
ト云フ如キ、山本內閣當時ニ斷行サレタ經費ハ、今日ノ海軍經費ニ比ベレバ
五分ノ一ノ程度ニアルノデアリマシテ、今日行政ノ整理ハソレヨリ以上ノ餘
裕ガアルコトト思フノデアリマスカラ、是等モ整理ノ中ニ數ヘラレテ宜シカ
ラウト考ヘマス、是等ノ事柄ハ國內的ノコトデアリマスガ之ヲ國際的ニ致
シマシタナラバ如何ト云フコトガ茲ニ問題ヲ生ズルノデアリマス、彼ノ軍備
制限ト申シマスル事柄ハ國際聯盟ニ於テ種々〓究中ニ屬スルノデアリマス
ガ、マダ國際聯盟、卽チ斯樣ナ方ノ事柄ハヤット呱々ノ聲ヲ擧ゲタニ過ギナイ
ノデアリマス、是又聯盟中ニ有力ナル國ガ加ハラヌト云フヤウナ事情モゴザ
イマスカラ、此方面ニ於テカラシテ軍備制限ノ實ヲ擧ゲルト云フコトハ、是亦
急ニ望ムコトガ出來ナイ事柄ダラウト存シマスガ、併ナガラ玆ニ近來問題ニ
ナリマシタ日英米三國間ノ海軍ノ協定ト云フコトガ起ッタノデアリマス、併ナ
ガラ是ハマダ公ナル問題トシテ取扱ハルベキ問題デハゴザイマスマイガ、或
ハ英國ノ如キハ戰後ノ經營ト致シマシテ、海軍ノ經費節減ヲ望ムコトノ切ナ
ルモノガゴザイマス、又米國モ稍〓之ニ應ゼムトスルヤウナ傾モゴザイマス
ガ、併ナガラ、彼ノ米國ノ案トナリ.マシタ「ボラー」ノ案ノ如キモノハ、例
バ唯〓カラシテ五箇年ヲ限ッテ經費ヲ半減スルト云フガ如キ、各國ノ事情ヨリ
シテ、サウシテ斯樣ナ提案ヲ致スト云フ事柄ハ、果シテ之ニ協賛ノ出來ルモ
ノデアルヤ否ヤ、大ニ疑ハナケレバナラヌノデアリマス、要ハ是等ノ點ニ付
テハ協定ノ要件如何ニアルモノト存ジマスガ、果シテ國際間ニ是等ノ問題ガ
成リ得ルヤ否ヤト云フコトハ聊カ疑問トセネバナラヌ、併ナガラ甞テ此席ニ
於テ申述ベタコトモゴザイマスガ、此軍備ノ競爭卽チ之ヲ細カク申シマスレ
バ、軍器ノ競爭ト云フガ如キハ誠ニ無意味ノモノデアリマシテ、假ニ例ヲ以
テ致シマスレバ、當年ノ一千二百萬圓ノ戰艦三笠モ今日ノ五千萬圓ノ長門モ
相對的ノ勢力ニ於テハ何等變ハル所ガナイノデ、唯軍備競爭ノ結果、當年ヨ
リ今日ニ至ッテ四倍ノ玆ニ負擔ヲ此軍器ノ上ニ於テ見出スト云フコトニ過ギ
ヌノデアリマスカラ、是等ノ事柄ヨリ、軍備ノ競爭ノ甚ダ愚劣デアルト云フ
コトヨリ覺醒サレマシタ此一般ノ政治家ノ覺醒ハ、大ニ今日考慮スル必要ガ
アラウト存ジマス、尤此軍備ノコトハ四圍ノ事情ニ依テ定マルモノデアリ
マシテ、一國ガ彼レ此レ決定スルコトハ出來ヌノデアリマスガ、其要點ハ各
國ノ協調ノ程度如何ト云フモノニ屬スルノデアリマス、此點ニ付テ當局ノ考
慮ヲ拂フ必要ガアルト存ジマスガ、其御考ハ如何デアリマセウ、ソレカラ其
第二ハ先刻委員長ヨリ報告ニナリマシタ通リ液體燃料ノ問題デアリマス、此
ノ液體燃料卽チ石油ノ問題、是ハ國防問題ト同時ニ解決サレナケレバナラヌ
問題デアル、卽チ不可分ノ問題トシテ取扱ハナケレバナラヌ間題ト存ジマス
ガ、未ダ其點ニ付テ明確ナル御計畫ヲ伺ヒマスルコトノ出來ナイノハ甚ダ遺
憾トスル所デアリマス御承知ノ通リ此ノ液體燃料ヲ以テスル戰艦、ソレカ
ラ石炭ト液體燃料ヲ以テスル卽チ混燒ノ戰艦トヲ比較シマスレバ、其勢力ニ
於テ又取扱上ニ於テカラ、是ハ同一ノ比デナイ、卽チ我ガ戰艦ハ生レナガラ
シテ、英國ノ戰艦ト比較シテ此弱點ヲ有ツト云フコトハ、是ハ國防上實ニ容
易ナラヌ問題デアリマシテ、此問題ヲ解決スルニハドウ致シテモ、石油卽チ
液體燃料メ問題ヲ解決セネバナラヌノデアリマス、此問題ヲ解決イタシマス
ルノニハ、ドウ致シマシテモ、此油田ノ開發ト云フコトガ第一デアリマス、
然ニ我國ノ油田ハ年々減少ヲ致シ生產高ガ少ナイ、前途ニ見込ガナイト云フ
ガ如キ聲ヲ聞クノデアリマスガ、是ガ果シテサウデアルヤ否ヤト云フコトハ、
是ハ實際ノ所甚ダ不明デアリマス、今迄油田ノ無イト云フ所ニ油田ヲ發見ス
ル例モアリマシテ、大戰當時ニハ英國ノ如キハ今迄無イト思ッタ所カラ國民又
ハ國家ノ力ヲ以テカラニ遂ニ油田ヲ發見スルト云フヤウナ實例モゴザイマ
ス、我國ノ如キ油田ノ點ニ付テハ世界各國ノ中ニハ米露ヲ除イテハ天惠ヲ有
スル國デアリマスカラ、若シ國家ガ之ニ力ヲ致シテ、國民ト共ニ油田開發ニ
努力イタシマシタナラバ、今後油田ヲ開發スルコトガ出來ルカモ知レマセヌ
要ハ是ハ國家ノ力ヲ以テ先ヅ此點ニ努力致スト云フコトニ歸スルノデアリマ
ス海軍ハ年々巨額ノ石炭ヲ煙ニ致シ、又巨額ノ彈藥ヲ消費イタシテ訓練ヲ
致シテ居ルノデゴザイマスガ、此ノ燃料問題ノ如キ矢張是ハ軍器ト同樣ニ
取扱ッテ然ルベキ問題ト致シマスレバ、此費用ヲ割イテサウシテ油田開發ノ助
成等ヲ致ス上ニ於テハ少シモ惜ムニ足ラヌコトト存ジマス、又其他海外ノ油
田ノ獲得ト云フ如キコトモ、是亦今迄世界各國トモ爭ッテ皆爲スコトデアリマ
スガ、獨リ我國ガ之ニ後レルト云フコトハ甚ダ遺憾ノコトデアリマシテ、
今ニ於テカラシテ之ヲ行ヒマセヌ時ニハ最早世界ノ何レノ國ニモ是等ノ油
田ヲ見ルコトガ出來ナイノデアリマス又此油田ノコトハ獨リ海軍又石油ノ
管掌廳タル農商務ノ事柄デハゴザイマセヌ、關稅ノ關係モゴザイマス、又外
交上ニ依テ油田開發、又米國等ニ於テハ近來禁輸ノ說等モゴザイマスレバ、自
然是ハ國際的ノ關係ニモ及ブノデアリマスカラ、是等ノ官廳皆等シク之ニ力
ヲ添ヘナケレバナラヌコトデアリマス、ドウカ關係ノ廣イコトデゴザイマス
レバ、政府ノ力ヲ以テ茲ニ一大官民ノ調査ロヲ開イテ、官民ノ智能ヲ集中イ
タシテ、此問題ヲ解決サレルヤウニ望ムノデアリマス、既ニ衆議院ニ於テモ
燃料ニ付テハ、建議案モ通過イタシ、國民ノ聲トシテ齊シク之ヲ希望イタス
コトアリマスレバ、本院ニ於カレテモ何卒當局ニ於テハ之ニ向ッテ十分努
力アラムコトヲ希望スル次第デアリマス、最後ニ此世界ノ大戰後國際間ノ海
權ノ消長ノ上ニ於テ非常ニ異動ヲ生ジタ事柄ニ付テ、將來我ガ海軍ハ如何ナ
ル方針ヲ以テ進マレルカト云フコトニ付テ大體ノ方針ヲ伺ヒタイノデアリマ
ス、四十一議會ノ終リニ於キマシテ本席ヨリ當時講和會議ノ議ガ纒リマシテ、
其結果ニ依テ獨逸ノ海軍ガ殆ド世界ノ海軍ヨリ消滅スル狀態トナラムトスル
ニ際シマシテ、世界ノ海權ニ如何ニ均衡上ノ變化ヲ來シタカト云フコトニ付
テ御尋シタコトヲ記憶イタシテ居リマスガ、果シテ二箇年ヲ隔ッタ今日ニ於テ
世界ノ海權ノ中心ニ變動ヲ來シマシテ、大西洋ヨリ太平洋ニ移ラムトシツ
アルノデアリマス、英國ハ獨逸ノ海軍消滅ニ依リマシテ大西洋ノ南北ニ於テ
餘裕ヲ生ジテ、延イテ米國ハ大西洋方面ヨリ一部ノ艦隊ヲ東洋ニ派遣スルノ
餘裕ヲ見出シタノデアリマスガ、尙ホ最近ニナリマスト英米ノ間ニ何等カ此
海權ノ分配ニ付テ一ノ了解ヲ得テ、大西洋ハ英國ガ之ニ當リ、太平洋ハ米國
ガ之ヲ守備スルト云フガ如キ狀態ヲ呈シテ來タヤウニ見エマス、是ハ世界海
權ノ中心ノ移動ト致シテ、當然ノ歸屬デアリマス、又米國ノ東洋方面ニ於テ
政治的ニ、商業的ニ其權利ヲ保護スル上ニ於テ今日ノ事アルコトハ、當然デ
アリマスガ、又帝國ニ於キマシテモ、此新現象ニ對シテ米國ト手ヲ携ヘテ、此
太平洋ノ安寧ヲ維持スル上ニ於テ相當ノ考慮ガ拂ハレルコトガ必要デアリマ
ス、尙ホ帝國ノ海上ノ警備ニ付マシテハ、更ニ南洋方面ニ於テカラシテ、廣
大ナル所ノ面積ヲ擴大イタシタノデアリマスカラ、之ニ對シテ帝國ノ海軍ノ
任務ハ更ニ重キヲ加へタノデアリマス、此新現象ニ對シテカラニ、且ツ世界
大戰後此戰艦ノ建造等ニ付マシテハ、戰艦ヲ可トスルカ或ハ飛行機潜水艇ノ
發現ニ依テ水面上ノ戰艦ハ、或ハ是ハ消滅スルニ至ラムカト云フガ如キハ、
英國ノ海相アタリノ有力ナル權威アル說トシテ論議サレテ居リマス、所謂海
軍ハ是等ノ新現象ニ對シテ何等カ懷疑的ナル不安ノ感ヲ抱クヤウニナッテ來
タノデアリマス、又一面ニ國際聯盟、延イテ軍備制限ト云フガ如キ、是等ノ
方針ニ付テ、動搖ヲ來サムトスルノ狀況デアリマスガ、此際海軍大臣ニ於テ
我ガ海軍ニ對シテノ大方針ニ付テ、御辯明ヲ得マスコトハ我〓ノ大ニ希望ス
ル所デアリマス、是等三點ニ付テ政府ノ御所見ノアル所ヲ伺ヒタイ爲ニ此演
壇ニ立ッタ次第デアリマス
〔國務大臣男爵加藤友三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=42
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043・加藤友三郎
○國務大臣(男爵加藤友三郞君) 唯〓坂本男爵ヨリ經費節減、燃料問題ニ付
テ種々ナル御意見ヲ拜聽イタシマシタ、是等ノ御意見ハ委員會ニ於テ度〓質
問應答ヲ致シタ問題デアリマス、茲ニ多ク申上ゲル必要モアルマイカト考ヘ
マスルガ、先ヅ經費節減ト云フ問題ニ付マシテハ、男爵ハ種々ナル事項ヲ御
擧ゲニナッテ、斯ク斯クノコトヲ斯樣ニシタナラバ經費節減モ出來ルデアラウ
ト云フヤウナ御趣旨デアリマシタ、其中ニハ私共モ出來ルデアラウト考ヘテ
居ルモノモアルノデ、又甚ダ困難ナ問題デアラウト考ヘテ居ルモノモアルノ
デアリマス、併ナガラ要スルニ十年度ノ豫算ニ於キマシテ、此軍備費ガ非常
ニ膨脹イタシタト云フコトハ事實デアリマシテ、將來此比ヲ以テ進メバ非常
ナル經費ニナルト云フコトハ、恐ラクハ間違ノ無イコトデアラウト思フノデ
アリマス、爲ニ十一年度豫算ヲ編成イタシマスルニ當リマシテハ、努メテ經
費ノ節減竝ニ種々ナル整理ヲ致シマシテ出來得ル限リ豫算ノ膨脹ヲ防グト云
フコトノ主義ハ私モ至極同感デゴザイマス、又現ニ其方針ヲ以チマシテ調査
ニ從事イタシテ居ルヤウナ次第デアリマス、其主義ノ一部分ハ既ニ昨年ニ於
テ實行イタシテ居ルモノモアリマス、又今年度ニ於キマシテモ、若干ハ實行
イタサウト考ヘテ居ルモノモアル、如何ナル程度ニ節減シ得ルヤ、如何ナル
程度ニ整理シ得ルヤト云フコトハ、今後十分ニ調査〓究イタシタ上デアリマ
セヌケレバ、具體的ニハ申上ゲ兼ネマスルケレドモ、其趣意ヲ出來得ルダケ
實行イタスト云フコトハ、茲ニ申上ゲ得ルト信ズルノデアリマス、又燃料問
題ニ付マシテハ御話ノ通リ大切ナ問題デアリマス、此問題ハ農商務其他ト
目下攻究中ニ屬シテ居ルノデアリマシテ、御趣意ノアル所ヲ我〓モ十分努メ
テ出來得ルダケ速ニ確立シタル方法ヲ設ケタイト考ヘテ居ルノデアリマス、
何分問題ハムヅカシイ問題デアリマス、又複雜イタシタ問題デアリマス、種
種ナル事柄ニ影響イタス問題デアリマスルノデ、之ガ〓究調査ヲ遂ゲマスル
ノニ、若干ノ時日ヲ要スルコトハ信ジテ居リマス、併ナガラ出來ルダケ早ク
御意見ノ如ク致シタイト云フ希望ヲ持ッテ居ルト云フコトヲ申上ゲテ置キタ
イト思フノデアリマス、又此海權ト云フ問題ニ付テ縷々御意見ガアッタヤウデ
アリマス、今日此場合ニ於テ我ガ海軍ガ海權上、今日マデ執ッテ居ル所ノ方法
若クハ方針ヲ特ニ變更シナクテハナラナイト云フ感ジハ私ハ持ッテ居ナイノ
デアリマス、何等不安ノ狀態ニアルト云フコトヲ私ハ考ヘテ居リマセヌノデ、
新聞報ニ依リマスト云フト、英米ノ間ニ何等カノ協約ガ出來テ、英國ハ大西
洋、米國ハ太平洋ニ艦隊ヲ集中ヲスルト云フヤウナ新聞報ハアリマスルケレ
ドモ、斯樣ナル事柄ハマダ何等公報ニハ接シナイノデ、又米國ノ當事者ハ之
ヲ打消シテ居ルト云フ新聞報モアリマスルガ、私ハ此打消シタノヲ信ジテ居
ルノデ、斯樣ナルコトハ今日ノ場合出現ハ致スマイト考ヘテ居ル、從ッテ海軍
ニ致シマシテハ海權上特ニ是マデ執リ來ッテ居ル所ノ方法方針、之ヲ變更スル
必要ハ認メナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=43
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044・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 坂本男爵ハマダ御質問デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=44
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045・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 一言海軍大臣ノ辯明ニ對シテ言明ヲ致シテ置キタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=45
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046・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 質疑デナケレバ唯今御免ヲ願ヒタイト思ヒマス
ガ、質疑ノ繼續ナラバ御許シイタシマスガ、言明ト云フコトハ少シドウダラ
ウカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=46
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047・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 唯今チヨット··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 質疑ノ御繼續ナラ御許シイタシマス、サモナクテ
ハ御免ヲ蒙リタク存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=48
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049・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 言明ト申シマスルノハ唯今海軍大臣ガ御辯明ニナリマシ
タガ、私ノ申シマシタ言葉ニ誤解ガゴザイマシタヤウデアリマスルカラ、ソ
レヲ明瞭ニ致シテ置キタイト存ジマス、究極私ノ質問ノ繼續ニナラウト存ジ
マス、御許シヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=49
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050・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議長ハ坂本男爵ノ御趣意ヲ伺ヒ違ヒマシタノデス
カラ、唯今御述ベニナッタヤウナコトナラ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=50
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051・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 唯〓海軍大臣ハ私ガ不安ト申シマスルコトニ付テ誤解サ
レタヤウニ存ジマス、私ノ不安ト申シマスル言葉ハ此軍艦ノ形式ノ變更、卽
チ大艦ヲ可トスルヤ、或ハ潜水艇ヲ可トスルヤ、或ハ軍備制限問題、又艦隊
ノ移動ト云フガ如キ考ガ、不安又ハ懷疑ニ落チテ居ルト云フ事柄ヨリ致シテ、
之ヲ極ク明瞭ニ致シテ置キタイト云フ考カラ、海軍大臣ノ辯明ヲ求メタノデ
アリマス、何等此ノ海權上ニ付テ不安ト云フコトヲ申シタノデハゴザイマセ
ヌ、其事柄ヲ言明イタシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ質疑ノ通告者ハ終リマシタ、此際休憩ヲ致
シマシテ午後ハ一時三十分ヨリ開會イタシマス
正午十二時休憩
午後一時三十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、通〓順ニ依リマシ
テ豫算案ニ對スル發言ヲ許シマス、橋本辰二郞君
〔橋本辰二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=53
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054・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 私ハ豫算委員ノ一員ト致シマシテ他ノ委員諸君ト同一ノ步
調ヲ取ルコトノ出來ナイコトヲ深ク遺憾トスル者デアリマス、殊ニ本豫算案
ニ付マシテハ既ニ各派ノ申合セモ出來マシタルヤウニ承ッテ居リマスルノデ、
假令私ノ玆ニ述べマスルコトニ御同感デアラセラレルニ致シマシテモ、御贊
同ヲ得ルコトノ希望ハ到底出來ナイノデアリマス、ソレ故ニ私ガ如何ニ此壇
上ニ於キマシテ大聲疾呼イタシマシタ所ガ是ハ畢竟徒勞ニ屬スルノデゴザイ
マスルデ、私ハ成ベク低音ニ且ツ靜ニ話ヲ進メタイト考ヘマス、併ナガラ私ノ
期シマスル所ノモノハ單ニ多數諸君ノ御贊成ヲ希望スルト云フ意ヨリハ外ニ
アルノデアリマス、ソレハ私ハ帝國財政ノ前途ヲ非常ニ憂慮スル者デアリマ
スル、從ヒマシテ財政上幾多ノ危機ヲ抱擁スルカノ疑ノアル所ノ此豫算案ニ
贊成ヲスルト云フコトハ躊躇シナケレバナラナイノデゴザイマスル、私ハ先
程豫算委員長ノ此演壇ニ於ケル所ノ報告ヲ承リマシタ、其中ニ一分科ノ希
望決議ト云フモノガゴザイマシタガ、此一分科ノ希望決議ナルモノハ、私ノ
將ニ此席ニ於テ述ベムトスル所ノモノヽ縮圖デアリ、又私ノ言ハムトスルモ
ノヽ汎論デアルノデアリマス、私ハ此議員中ニ於キマシテモ、私ト同感ノ方
方ノ多數アルコトヲ非常ニ心强ク思フノデアリマス、大正十年度ノ一般會計
總豫算ハ、先程委員長モ御述べニナリマシタル通リ、無慮五億六千三百餘萬
圓ト云フ高ニ上ッテ居ルノデアリマスガ、此巨額且ツ厖大ナルニモ拘リマセ
ズ、委員長モ此席デ述ベラレタ通リ、現內閣ノ經綸、又ハ抱負トシテ認ムバ
キ何等ノ新規ナル計畫施設等ノ見ルベキモノハ何モナイノデアリマス殊ニ
政府當局者ガ隨時隨所ニ於テ發表セラレタ所ノ積極政策ノ如キモノハ殆ド
破產ニ瀕シマシテ、殊ニ此豫算ノ上ニ於キマシテハ、貧弱言フニ足ルベキモ
ノハナイノデアリマス、唯放漫政策ノ結果ト致シマシテ、茲ニ物價ノ騰貴ヲ
招來イタシマシテ、其物價騰貴ヲ埋合セルガ爲ニ、殆ド他ヲ顧ミルニ遑ガ
ナカッタカノヤウニ、私ハ考ヘルノデアリマスル、政府ハ豫算ノ編成ニ付テハ
少カラザル注意ヲシ、尙ホ將來ノ計畫ニ付テハ、愼重ナル考慮ヲ加ヘタト云
フコトヲ云ヒマスルガ、先日私ハ此壇上ニ於キマシテ是等ノ形跡ハ自分ハ認
ムルコトハ出來ナイト云フコトヲ申シマシタガ、今日ニ於キマシテモ、依然ト
シテ私ハ政府ノ言フ所ハ、徒ニ言葉ヲ飾ルニ過ギザルモノトヨリ外考ヘラレ
ヌノデアリマスル、此ノ物價騰貴ノ埋合セト致シマシテ、茲ニ不當ナル所ノ、
自然增收ヲ見込ミマシテ、又ハ歲計剰餘金ヲ繰入レマシテ、辛ウジテ一時ヲ
糊塗シ、僅ニ歲出入ノ辻褄ヲ合セマシテ、實ニ財政ノ行詰リヲ暴露シタ悲
慘ノ極ミデハナカラウカト私ハ思フノデアリマス、世間デハ此總豫算ヲ稱シ
マシテ、恰モ物價騰貴ト剰餘金トフ取組相撲ノ如キモノデアルト云フコトヲ
言ウテ居リマス、抑〓豫算ニ大影響ヲ及ボシタル所ノ此ノ物價騰貴ナルモノ
ハ、如何ニシテ來リシカヲ、少シク論及スルノ必要ガアラウト思ヒマス、此
ノ物價騰貴ナルモノハ、一面ハ世界的デアルニ相違ナイノデアリマスガ、戰
時中非常ニ我ガ物價ガ他ノ國ニ比較ノ出來ナイ程暴騰イタシマシタルモノ
ハ畢竟是ハ政府ノ放漫政策ガ之ヲ誘致シタモノト私ハ信ズルノデゴザイマ
スル、政府當局ハ物價ノ騰貴ヲ誘導シタコトハナイト云フコトヲ頻リト辯解
セラレマスルガ、是ハ現内閣ノ與黨ノ外ハ、天下盡ク之ヲ認メテ居リマス、
啻ニ我ガ識者ガ之ヲ認メルノミナラズ、亞米利加ノ準備銀行ノ總裁初メ、總
テノ人ガ日本政府ノ物價ニ對スル所ノ政策ハ、實際放漫ヲ免レナカッタト云フ
コトヲ公言シテ居リマス、大藏大臣ハ常ニ物價ハ政策ニ依リ左右シ得べキモ
ノデナイト云フコトヲ言ハレマス、過日モ豫算委員會ニ於キマシテハ物價ハ
政府ノ力、若クハ政策ニ依テ支配スルコトハ出來ナイモノデアル、又爲スベ
キモノニ非ズト云フコトヲ言ハレルノデアリマス、但シ鎖國時代ニ壓制的ニ
ヤレバ出來ルカモ知レヌ、又歐洲交戰國ノ如ク國運ヲ賭シテ戰フ場合ニ於テ
ハ其必要モアラウ、併ナガラ我國ノ狀態ハ、戰時中ト雖モ歐洲諸國トハ丸デ
違ッテ居ルモノデアルト云フコトヲ仰セニナッテ居リマスル、此御意見ニ依リ
マスレバ曩ニ寺內内閣ガ執リヌシタ所ノ物價政策ハ、爲スベカラザル無謀
ナルコトヲ爲シ、又其爲シタル事柄ハ何等ノ效果ガナカッタト言ハレタヤウニ
私ハ受取リマスルガ、御承知ノ通リ寺內內閣ハ大正六年ノ八月ニ暴利取締令
ヲ布キマシテ、之ニ依テ物價ヲ無制限ニ吊上ゲ、又ハ暴利ヲ貧ル手合ヲシテ、
實ニ其心膽ヲ寒カラシメタノデゴザイマスル、次デ同年十月ニ船舶管理令ヲ
緊急勅令ヲ以テ發布シタノデゴザイマスガ、此ノ事後承諾ヲ求ムルニ當リマ
シテ、時ノ遞信大臣ハ說明シテ曰ク、運賃ガ非常ニ暴騰シテ、而シテ直ニ
此運賃ノ暴騰ハ延イテ物價ノ騰貴ヲ促シタノデアル、物價ノ騰貴ハ玆ニ國民
ノ生活ヲ脅威シ國民生活ノ脅威ハ國民ノ不安ヲ誘致シタノデアル、是ガ緊
急勅令ノ必要ナル所以デアルト云フコトヲ述ベラレテ居リマス、但シ是ハ唯
一ノ理由デハナカッタノデアリマスルガ、其主タル理由ノ一デアッタノデアリ
マス、卽チ此ノ船舶管理令ノ如キモノモ、明カニ物價調節ノ意味ヲ以テ發布
セラレタルモノデアルノデアリマス、更ニ寺內內閣ハ米價ノ無制限ニ底止ス
ル所ナク暴騰スルヲ防ガムガ爲ニ穀物收用令ヲ布カレタノデゴザイマスル
ガ、大藏大臣ノ意見ニ依リマスレバ是等寺內內閣ノ執リタル物價政策ニハ
全然御反對ノヤウニ承ルノデゴザイマスルガ、私共カラ見マスレバ此ノ寺內
內閣ノ執リマシタル物價政策ハ、決シテ失敗デハナカッタ、其當時ニ於キマシ
テ、ソレ相當ナル效果ガアリマシテ、尤モ一部ノ人士ハ之ヲ喜バナカッタノハ
當然デアリマスガ、多數ノ國民ハ悉ク其恩典ニ浴シタモノト私ハ信ジマス、
事實ハ明ニ之ヲ證明シテ居リマス、寺內内閣ノ時代ニハ、物價ハ二百八十ヨ
リ以上ニハ上ラナカッタノデアリマス、然ニ現內閣成立以來、寺內內閣ノ執リ
マシタル所ノ物價政策ヲ以チマシテ、傳家ノ寶刀トシテ之ヲ高閣ニ束ネテ用
キナイノデアリマス、其結果トシテ市井ノ黃白是レ崇拜スル射倖者流ヲシテ、
恣ニ跳梁跋扈セシメタルノミナラズ、現內閣ノ不注意不謹愼ナル言動ハ、動
モスレバ奬勵煽揚ノ如ク、國民ヲシテ、誤解セシメタノデアリマスル、是ガ
爲ニ物價ハ日ニ月ニ騰貴ヲ致シマシテ、遂ニ倫敦ヤ紐育ヲ凌駕イタシマシテ、
其指數ハ四百二十五ト云フコトニ上ッタノデゴザイマスル、卽チ放漫政策ガ如
何ニ物價ノ騰貴ヲ招來シ、適切ナル政策ハ以テ物價ヲ調節スルコトノ出來ル
ト云フコトハ、是デ明ニ私ハ證明ガ出來ルト考ヘマス、全體政府當局者ハ好
景氣ト云フモノハ物價ノ騰貴ヲ意味シ、不景氣ハ物價ノ下落ヲ意味スルト云
フコトヲ御承知ノ上デ、成ベク人氣ヲ煽ッテ好景氣ヲ招カムガ爲ニ將來ニ顧慮
スルコトナク、只其騰貴ヲ熱望セラレタルヤウニ私共ハ見受ケルノデアリマ
ス現ニ當議會ニ於テ提出イタシテ居リマス幾多ノ救濟案ノ如キモノモ、其
背後ヲ見マスレバ悉ク物價ヲ上ニ、卽チ高價ニ導カムトスル所ノ政策ガ潜ン
デ居ルト私ハ見ルノデゴザイマス卽チ此ノ物價騰貴ナルモノハ一面ハ政府
ソレ自ラ招イタル所ノモノデアリマスルガ、ソレガ爲ニ遂ニハ此處ニ空前
ノ豫算膨脹ヲ來シマシテ、其ノ埋合セニ忙殺セラレマシテ、將來ノ財政計
畫モ顧慮スルノ遑ナク且ツ其ノ一枚看板デアッタ所ノ積極政策モ抛棄セラレ
マシテ、目前ノ糊塗ニノミ焦心苦慮セラルヽト云フコトハ實ニ御氣ノ毒ノ至
リデアリマス、是ヨリ本員ハ豫算ノ內容ニ亙リマシテ、簡單ニ其ノ實行難ノ
要領ヲ述ベタイト思ヒマスル歲入歲出全般ニ亙リマシテ巨細ニ論究スルト
云フコトハ時間ノ許サナイノミナラズ、皆サマニ御迷惑ヲ掛ケル虞ガアリマ
スルデ、私ハ單ニ歲入ノ實行難ノ四五ヲ指摘イタシマシテ、私ノ論ヲ結ビタ
イト考ヘルノデゴザリマス、第一ハ所得稅デアリマス、此ノ所得稅ニ付マシ
テ、私ノ意見ヲ述ベル前ニ政府ガ如何ニ所得稅ヲ見積ッテアルカト云フコト
ヲ御紹介スルノ必要ガアリマス、政府ハ法人ノ運用資金ヲ百九億萬圓ト致シ
マシテ、是ヨリ純益ガ一割二分生ズルモノト云フコトニ致シテ居リマス、即
チ十三億ノ純益ガ生ズルノデゴザイマスルガ、是ハ留保ガ四億三千萬圓、配
當ガ八億千萬圓、賞與約六千萬圓ト云フコトニナッテ居ルノデゴザイマス、諸
君此ノ運用資金ト云フモノハ會社ノ資本金デハナイノデゴザイマス、積立金
及ビ繰越金モ此內ニ包含セラレテ居ルノデゴザイマスガ、會社ノ決算報告ヲ
御覽ニナッタ御方ハ皆御承知デゴザイマセウガ、何レノ會社ニ於キマシテモ、
此積立金、繰越金ハ現金デ保有シテ居ルモノハナイノデゴザイマス、其大部
分ハ機械工場、原料、製品、諸製品等ニ皆變ヲテ居ルノデゴサイマス、然ニ今
日ノ狀態ハ如何デアリマスルカ、機械ヤ工場ハ操業短縮ト云フ名目ノ下ニ、
半バ休止シテ居ルノデゴザイマス、卽チ此ノ運用資金ノ過半ト云フモノハ、
全ク死シタト同樣ニナッテ居ルノデアリマス、加フルニ原料、製品ナルモノハ
日ニ月ニ下落ヲ致シマシテ、少ナクモ損失ヲ免カレルト云フコトノ希望茲ニ
存セザルヤウナ有樣デアリマスル、之ニ依リマシテ十三億ノ利益ノ生ズルト
云フコトハ、如何ニ樂觀シテモ湧出ルモノデハナカラウト思ヒマスル、是ヨ
リ第三種ノ所得ハ九年度ノ實績ガ十八億七千萬圓アル、之ヲ五分引ニシテ此
上ニ配當所得ヲ加ヘタルモノヲ基礎ト致シテ居ルノデゴザイマスガ、大正九
年度ノ實績ノ十八億七千萬圓ノ五分引デ當年ハ止マルカドウカト云フコトハ
皆サマノ御承知ノ通リデアラウト思ヒマスル、大藏大臣ハ銀行ノ拂込ガ大正
八年ニハ十三億デアッタガ、大正九年ノ末ニハ二十一億八千萬圓ニ上ッタト云
フコトデ、非常ニ樂觀ヲセラレテ居リマスルガ、此激增ナルモノハ、畢竟ス
ルニ其業務ガ盛ンナルガ爲ニ、其必要ニ應ジテ拂込又ハ增資シタモノデハ
アリマセヌ、即チ所得稅ノ改正ヲ見越シマシテ、負擔ノ輕減ノ爲ニ此拂込
ヲ爲シタノデアリマスルデ、之ニ依テ所得稅ハ減ズルトモ增スト云フコト
ハ殆ド望ミ難イノデアリマス、斯ノ如ク政府ノ見積リマシタモノニ付マシテ
ハ私等ハ全然同意ハ出來ナイノデアリマスル、大正十年度ノ所得稅總額デ
二億六千八百餘萬圓ト云フコトニナッテ居リマスル、之ヲ九年度ノ實行豫算ニ
比較イタシマスルニ、八千六百五十餘萬圓ノ增加デアリマス、更ニ之ヲ歐洲戰
爭前ノ我ガ所得稅ニ比較イタシマスルト約八倍ニ當ルノデアリマスル、戰爭
前ニ於ケル我國ノ所得稅ハ三千五六百萬圓ニ過ギナカッタノデアリマス、卽チ
國民ハ所得稅ニ於テノミ戰爭前ニ比シマシテ八倍ノ負擔トナルノデアリマ
ス、千圓ノ所得稅ヲ納メマスル者ハ、十年度ニ於キマシテハ八千圓ノ稅ヲ納
メナケレバナラヌコトニナルノデアリマス、誰カ言フ、國民ノ收入ハ戰爭前
ニ八倍セシト、歐洲戰亂ノ發生後、我國ニ收得イタシマシタルモノハ、人〓
ノ見積方ハ色〓アリマスルガ、私ハ約三四十億內外ノモノデアラウト思ヒマ
ス、是等ノモノハ私等ノ見ル所ニ依リマスレバ、我國ノ國富ノ一割內外ニ過
ギナイノデアリマス、假ニ此戰爭中ニ獲得イタシマシタルモノガ全部其儘保
存セラレマシテ、是ガ悉ク活動的資本ニ化シテ相當ノ利益ヲ擧ゲ得タリト假
定イタシマシタ所ガ、八倍ノ負擔ト云フコトハ果シテ是ハ國民ノ堪へル所デ
アリマセウカ、況ヤ昨春財界ノ變動後戰時中ニ於ケル所ノ成金ハ步ニ還リマ
シテ、其富ハ黃粱一炊ノ夢トナリ、其榮華ハ槿花一朝ノ榮ト化シタノデアリ
pr、而シテ大小ノ事業ハ慢性的萎縮病ニ罹リマシテ、今ヤ或者ハ重患ニ陷
リ、或者ハ將ニ危篤ニ瀕スル者モ亦少カラヌノデアリマス、此處ニ二三ノ例
ヲ申上ゲマスレバ、戰時中ニ於キマシテ、國民羨望ノ的トナリマシタ所ノ
各種ノ事業ハ今日如何ナル狀態デアリマスルカ、個中ノ雄タリシ所ノ船舶業
ハ今ヤ船腹ヲ充タスニ由ナク、繋船相次グト云フ有樣デアリマス、而シテ偶〓
航海ニ從事スル者モ得ル所ヲ以テ失フ所ヲ償フニ足ラヌノデアリマス、又未
曾有ノ成績ヲ擧グタル所ノ紡績業者ハ今日ハ如何ナル狀態デアリマスルカ、
七百圓ノ棉花ハ百五六十圓ニ暴落イタシマシテ、今後ノ維持ニ付マシテ少カ
ラザル苦慮ヲ致シテ居ラウト思ヒマス、造船業、蠶絲業、製糖業、肥料業、
燐寸業等モ是亦收支相償フ者ト云フノハ僅ニ指ヲ屈スルニ足ラナイノデアリ
マスル、其他幾多ノ事業悉ク氣息奄々トシテ將ニ瀕死ノ狀態ニ沈淪シテ居ル
ト言ハナケレバナリマセヌ、此ノ物價ノ下落ヲ辿リツツアル所ノ今日ノ我ガ
經濟界ノ現況ノ下ニ於キマシテ、如何ナル事業ニ致シマシテモ收支相償フモ
ノト云フモノハ殆ド無イノデアリマス、斯ノ如キ場合ニ於テ政府ハ如何ナル
努力ヲ以テ如何ナル方法ノ下ニ徵稅ノ目的ヲ達成セムトスルカ、實ニ吾人ノ
憂慮ニ堪ヘザル所ノ次第デアリマスル、私ハ十年度ノ財界ノ前途竝ニ貿易額
ノ見込ニ關シマシテ、大藏大臣ノ御豫測ヲ伺フコトガ出來マシタ、曰ク本邦
ノ經濟界ハ今ヤ整理ノ時代デアル、或者ハ整理ヲ遂グ堅實ナル基礎ヲ確立ス
ル者モアラウシ、其薄弱ナル者ニ至ッテハ或ハ倒壞スルモノモアラウト云フコ
トヲ言ハレテ居リマス、大藏大臣ノ御觀測ハ吾人モ亦同感デアリマシテ、是ハ
異議ナイ所デアリマスル、全體整理ト云フモノハ事業ノ好況時代ニ於キマシ
テハ殆ド影ヲ潜メマシテ、唯悲況ノ場合ニ於キマシテノミ起ルベキ所ノモノ
デアリマス、此整理時代ニ在ル所ノ事業界ニ相當ナル利益ヲ生ズルコトヲ期
待スルト云フコトハ如何ニ樂觀イタシマシテモ私ハ出來ナイコトデアラウト
思ヒマス、況ヤ整理不能ニシテ倒產スル者ニ於テヲヤデアリマスル、尙ホ貿易
額ニ付キマシテ大藏大臣ハ本年度ノ輸出入ノ合計ヲ約三十億萬圓內外ト御豫
測ニナッテ居ラッシヤルヤウデアリマスルガ、本年ノ一月末及ビ二月末ニ於ケ
ル所ノ累計ヲ以チマシテ、之ヲ前年ニ比較イタシテ見マスレバ、實ニ激減驚ク
ベキモノガアルノデアリマス、卽チ一月ハ五割二分五厘、二月末ニ於キマシ
テハ五割四分五厘ノ大減額デアリマス、昨年ノ貿易總額ハ四十二億八千萬圓
デアリマシタ、之ニ對シテ一月以後ノ實績減率ヲ乘ジマスレバ、本年中ノ貿易
額ハ二十億圓內外ニ過ギヌヤウニ私ハ思ヒマスル、大藏大臣ノ御樂觀トハ大
分差ガアルノデゴザイマス、斯ノ如ク二月末ノ實績ヲ見マシテ將來ヲ推シマ
スルナラバ、本年ノ貿易ト云フモノハ前途實ニ暗澹タルモノデアリマス、而モ
此貿易品ニシテ輸出品ニシテ生產費ヲ償フモノハ殆ドナク、又輸出品ニシテ
原價ヲ償フモノハ殆ドナイノデアリマス、所謂今日ノ貿易ハ單ニ貨物ヲ右ヨ
リ左ニ動カスニ過ギザル如キ有樣デアリマス、斯ノ如キ現狀ノ下ニ於キマシ
テ、所得稅ノ負擔ニ堪ヘル者ハ果シテ幾ラアリマセウカ、凡ソ內地ノ貿易ナ
ルモノハ普通ノ場合ニ於キマシテ、斯ノ如キ貿易ノ五倍乃至六倍ニ上ルモノ
デアリマスル、卽チ本年ノ外國貿易ガ前ニ述ベマシタヤウニ、昨年ノ半額ニモ
達セヌト致シマシタナラバ、內地ノ商業モ勿論之ニ準ズルノデアリマスル、果
シテサウデアリマスルトスレバ、昨年ニ於キマシテ二百五十億ノ內地ノ商業
ガアリマシタモノガ、本年ハ是ガ百二十億位ニ激減スルダラウト思ヒマス、斯
ノ如キ商業ノ有樣、加フルニ物價下落ノ今日ニ於キマシテ、此影響ヨリシテ
眞ノ利益ヲ生ミ出スト云フコトハ、到底是ハ望ムベキコトデハナイノデアリ
マスル、斯ノ如ク我ガ貿易竝ニ財界ノ現狀ハ皆樣御承知ノ通リデアリマルガ、
此ノ失望的狀態ノ下ニ於キマシテ、好況ノ絕頂ニ達シマシタル大正七年、八
年及ビ好況ノ惰力ガ未ダ衰へマセヌ所ノ九年度ノ實績ヲ標準ト致シマシテ
收入ヲ計上セラレタル所ノ十年度所得稅ノ負擔ト云フコトニ、商業ノ若クハ
事業會社ニ當用スルニ至リマシテハ、結局誅求ニ終ルノ外其途ハナカルベシ
ト云フコトヲ私ハ恐レルノデアリマス、第二ニハ營業稅デアリマス、十年度
ノ營業稅ノ豫算額ハ四千八百六十七萬圓デ、之ヲ前年度ノ實行豫算ニ比シマ
スレバ、正ニ五百四十萬圓、更ニ八年度ノ調定額ニ比較致シマスレバ、四百
三十萬圓ノ增加デアリマス、營業稅ハ御承知ノ通リ、法規上前年度ノ實額ニ依
ルコトデアリマスレバ、其調定額ハ所得稅ホドニハ困難デナカラウト私ハ思
フノデアリマス、併ナガラ是ハ好況期ノ絕頂デアッタ所ノ大正七年、八年ノ實
績以上ニ五百餘萬圓ノ增收ヲ見込ンデアル、是ハ全體無謀ト言ハナケレバナ
リマセヌ、本年度ノ營業稅ハ九年度ノ實績ニ依ルモノデアリマス、サウシテ
旣ニ財界ノ激變ノ後ヲ承ケタル所ノ九年ノ實績ハ、七年度八年度ニ比シマシ
テ、少カラザル減少ヲ來スト云フコトハ何人モ亦想像ニ難カラザル所デアラ
ウト思ヒマス、然ニ拘ラズ大藏當局ハ、反對ニ五百餘萬圓ノ莫大ナル增收ヲ
見込ンダノハ其眞意ヲ解スルニ苦シムノデアリマス、大藏大臣ハ株式ノ拂込
ニシテ課稅物件ノ增加シタモノガアルト云フコトヲ言ハレマスガ、是ハ一方
ニ拂込ガアリマスルト同時ニ、又他方ニハ整理ノ爲ニ資本ノ減額又ハ廢業ス
ル者モ少カラヌノデアリマス、或者ハ窮迫ノ餘リ假裝的ノ拂込ヲ爲スモノモ
アリマセウシ、殊ニ物品販賣業、問屋業、請負業、製造業等ノ課稅標準ガ著
シク激減スルト云フコトハ、是ハ爭フベカラザル所ノ事實デアリマス、果シ
テ然ラバ豫定ノ收入ノ上ニ於テ少カラザル違算ヲ生ズルコトハ殆ド疑フ餘地
ハナイノデアリマス、政府ハ營業稅ニ付テハ當年ノ好況ヲ考慮シテ、相當ノ
割引ヲ爲シタト云フコトヲ言ハレテ居リマスガ、大正八年度ノ現計以上ニ四
百三十餘萬圓ノ增收ヲ見込マレタル如キ杜撰ナル編成ニ對シテ、私ハ是ハ
信ヲ置クニ足ルノ價値ナシト思ヒマス、今ヤ營業稅ノ調査期ニ際シマシテ、
各地ニ於キマシテ、苦情怨嗟ノ聲ガ少ナクナイノハ、未ダ當局ノ耳朶ニハ達シ
ナイノデアリマセウカ、況ヤ九年度ノ本稅ノ收入ノ步合ハ著シク不成績ヲ示
シテ居ルノデアリマス、十年度ノ收入ガ一層惡化スルト云フコトハ、是ハ疑
ヲ容レナイノデアリマス、第三ニハ酒稅デアリマス、政府ハ三箇年ノ平均造
石高ガ昨年同樣一割ヲ減ジテ約四百三十萬石トシテ居ルト云フコトデアリマ
スルガ、增稅ノ翌年ハ造石高ガ激減スルト云フコトヲ是ハ度外視シテ居ラレ
ルヤウデアリマスル、全體酒類ノ消費量ナルモノハ、世間ノ景氣ニ隨伴シテ消
長スルモノデアリマス、政府ハ十年度ノ〓酒ノ消費量ヲ四百三十萬石ト見込
ンデ居ラレマスガ、是ハ九年度ノ實行豫算ニ比シマシテモ少カラザル增加デ
アリマス、全體酒ノ消費ニ付マシテハ、〓シテ農家其他下層階級ニ重キヲ置
カナケレバナラヌト思ヒマスガ、今ヤ農業ノ收益、勞働階級ノ收入ハ漸次低
減イタシマシテ、失職者ガ日ニ增加スルト云フガ如キ、此狀況ノ下ニ於キマ
シテ、如何ニシテ酒類ノ多分ニ賣レルト云フコトヲ想像スルコトガ出來マセ
ウカ、此ノ前途ヲ達觀イタシマシタ所ノ全國ノ酒造業者ハ、例年ニ比シマシ
テ三四割方其仕込ヲ控ヘタト云フコトヲ聞イテ居リマス、米ノ下落イタシマ
シタノモ、酒造米ノ不捌ケガ一ノ原因デアルト云フコトニ私ハ承ハッテ居ルノ
デアリマス、然ニ政府當局ノ見込ガ今日此現實ノ大勢ニ反シマシテ樂觀スル
ト云フコトハ、是ハ私ハ無謀ノ極ミデアルト思ヒマス、又政府ハ麥酒其他ニ於
キマシテモ約百萬圓ノ增收ヲ見込ンデ居リマスル、今日ノ麥酒其他燒酎ノ販
賣高ノ激減シタルコトハ、一般ニ承知イタシテ居リマシタ、政府ノミ之ヲ知ラ
ヌト云フコトハ實ニ是ハ驚ノ外ハナイノデアリマス、從ッテ本年度ノ酒稅ノ收
入ノ激減スルト云フコトハ是亦疑フノ餘地ハナイト思ヒマス第四ハ關稅
デアリマス、十年度ノ關稅ノ收入ノ豫算、約七千萬圓デアリマス、是ハ前年
度ノ實行豫算ニ比ベマスレバ三百五十餘萬圓ノ增收ヲ見込ンデアリマス、然
ニ本年二月末ニ於ケル輸人貿易ノ累計二億二千百七十萬圓ヲ、昨年ノ同期末
ニ於ケル四億七千五百四十萬圓ト比較イタシマスレバ、實ニ其減額ノ步合ハ
五割三分五厘ト云フコトニナリマス、大藏大臣ノ御觀測ニ依リマシテモ、本
年ノ輸入貿易ガ約八億萬圓ノ減少ヲ來スト云フ御想像デアリマス、前述ノ如
ク其關稅收入ガ前年ニ比ベマシテ著シク減ズルト云フコトハ當然デアリマ
ス、假ニ大藏大臣ノ御豫想ヲ基礎ト致シマシテ、尙ホ其三分ノ一內外ノ減少
ヲ免レヌヤウニ思ヒマスノデアリマス、然ニモ拘ラズ、却ッテ三百五十萬圓
ノ增加ヲ見込マレルト云フコトハ、實ニ是ハ評シヤウガナイト思フノデアリ
P·3·大藏大臣ノ關稅ノ增稅ハ免稅品ノ復活ニ俟タレルヤウデアリマスガ、
例ヘバ米ヤ麥、綿糸、綿布類ノ免稅ヲ撤廢サレマシテモ、今日是等ノ品物ハ
內地ニ於テ溢レテ居ル、停滯シテ其捌キ方ニ困厄シテ居リマス折柄デ、此等
商品ニ依テ關稅ノ增收ヲ期待スルハ、是ハ畢竟一場ノ夢物語ヲ見ルニ過ギマ
セヌノデアリマス、第五ハ印紙收入デアリマス本年度ノ印紙收入ハ九千餘
萬圓デアリマシテ、是ハ戰爭前ノ大正三年頃ノ實收額二千八百萬圓ニ比較ス
レバ、正ニ六千五百萬圓、卽チ三倍强ノ增加デアリマス、之ヲ前年度ノ實行
豫算ト對比イタシマシテモ、尙ホ二千四百萬圓ノ增收ヲ見込ンデ居リマス、
實ニ是ハ驚クベキ樂觀的見込ト云ハナケレバナリマセヌ、元來印紙ノ收入ナ
ルモノハ、最モ直接ニ且ツ銳敏ニ經濟界ノ影響ヲ受ケルモノノ一ツデアリマ
ス、世界的景氣ノ惡化日ニ日ニ甚シキ此混亂ノ時機ニ於キマシテ、斯ノ如ク
巨額ノ收入ヲ望ムト云フモノハ、尙ホ地下ノ寶ヲ算スルヤウナモノデアルト
思ヒマス、印紙收入ノ主タルモノハ登錄稅デアリマス、一時沸騰點ニ迄上ボリ
マシタ、投機熱モ今ヤ冷却イタシテ氷點以下ニ下ッテ居リマス、不動產船舶等
ノ賣買ノ如キ著シク激減シテ居リマスル、增資又ハ新設會社等モ既ニ影ヲ潜
メテ居ル今日ニ於キマシテ、何ヲ目標トシテ此巨大ナル富ノ收入ヲ期待セム
トスルノデアリマセウカ、實ニ是ハ思ハザルノ甚シキモノト言ハナケレバナ
リマセヌ、第六ハ製鐵所ノ益金デアリマス、製鐵所ノ益金ハ三百五十萬圓ト
云フモノヲ計上サレテ居リマスガ、本年度ニ於ケル所ノ製鐵所ノ鋼材ノ製造
高ハ四十七萬噸デアリマス、政府者ハ一噸二百八圓ニ見積ッテ居ラレマスル
ガ、今日ノ時價ハ幾ラデアルカト云フコトヲ尋ネマシタ所ガ、今日ノ時價ハ
百五十圓ト云フコトデアルト云フコトヲ言ハレテ居リマス、サウスルト此間
一噸ニ於キマシテ五十八圓ノ差ガアリマス、此鋼材ノ四十七萬噸ノ內、假
二十七萬噸ハ政府ノ御用品ト致シマシテモ、是ハ是非ニ高イ相場ハソレノ二
百八圓デ契約ガ出來ルト致シマシテモ、其殘リノ二十萬噸ハ、是ハ民間ニ拂
下ゲナケレバナラヌガ、民間ニ拂下ゲマシタ日ニハ何人モ之ヲ買フモノハナ
イノデアリマス、假ニ二十萬噸ニ致シマシテモ五十八圓ノ差ガアレバ、千
百六十萬圓ト云フ差ガ玆ニ生ズルノデアリマス、況ヤ此製品ハ日〓ニ停滯イ
タシマシテ、製鐵所ハ借入金ヲ六千萬圓ト致シマシテ、尙ホ是ハ不足ヲ生ジ
テ本年度ニ於キマシテ約千萬圓ノ借入ノ計晝ヲ致シテ居ル所デアリマス、況
ヤ米國ニ於キマシテ近來銑鐵ハ五十圓、鋼材ハ百圓ト云フコトヲ標榜シテ居
リマスル、斯ノ如キ鐵ノ前途ヨリ見マシタナラバ、本年度ニ於テハ製鐵所ハ
少カラザル所ノ損失ヲ招クデアラウト私ハ思フノデアリマス、專賣局ノ益金
ノヤウナモノモ亦此不景氣ノ折柄ニ於キマシテハ恰モ鐵道會計ノ二ノ舞ヲ
踏ミヤセヌカト私ハ考ヘルノデアリマス、第七ハ公債ノ募集デアリマス、本
年度ニ於ケル公債ノ募集豫定額ハ二億八千二百萬圓デアリマス、之ニ前年度
及ビ前々年度末募集額一億八千百萬圓ヲ加ヘマスル時ハ、總額ハ四億六千三
百萬圓ニ上ボルノデアリマス、此以外ニ償還期限ニ達シマスルモノハ二億二
千萬圓アリマス、中一億五千萬圓ハ是ハ必ズ償還ヲ要スルモノデアリマス、
是等ノモノヲ合セマスト、約六億一千三百萬圓デアル、中〓此巨額ノ公債ヲ
既發ノ公債ニ何等ノ影響ヲ與ヘズ、金融界ヲ攪亂スルコトナク、民間事業資
金ヲ壓迫スルコトナク、而シテ又物價騰貴ヲ誘發スルコトナクシテ、容易ニ
募集ヲ全ウシ得ルヤ否ヤハ非常ニ疑問ノコトト私ハ思ヒマス、大藏大臣ハ昨
年ノ募債計畫ハ順調ニ進行シテ目的ヲ達シタト言ハレテ居リマスガ、八年度、
九年度ノ募集ハ主トシテ是ハ借替デアリマス、新規ノ募集額ト云フモノハ總
額ノ半ニモ達シテ居リマセヌ、甚シキニ至リマシテハ、英國政府ノ償還債ヲ取
ッテ以テ內債ニ振替へ、一時ヲ凌ギタルモノスラアルノデアリマス、而シテ九
年中ニ於ケル新規ノ募債ハ二億四千萬圓デアリマシテ、而シテ銀行定期預金
ヨリモ高キ日步二錢、卽チ年利七分三厘ヲ以テ辛ウジテ目的ヲ達シタモノモ
アリマス、然ニ九年度ヨリ凡ソ二倍ノ公債ガ、果シテ十年度ニ於キマシテ順
調ニ募集ヲ全ウスルコトガ出來マセウカ、大藏大臣ハ昨年來公債利用範圍ヲ
非常ニ擴張セラレムガ爲ニ色〓ノ手段ヲ講ゼラレテ居リマスルモノハ、自ラ
其募集難ヲ感ジテ豫メ之ニ備ヘタルニアラザルカ、世間一部ノ人〓ハ不景氣
ニナリマスレバ公債ノ募集ハ容易ナリト云フコトヲ言フ人モアリマスガ、大
藏大臣モ之ニ共鳴セラレテ居ルヤウデアリマス、併ナガラ是ハ全ク以テ程度
ノ問題ニ過ギナイノデアリマス、大凡ソ資本家ノ投資ニ對スル心理狀態ト云
フモノハ如何ト言ヘバ、公債ノ如キ彈力ニ乏シク、而シテ興味ノ薄キモノハ餘
リ好ム所デアリマセヌ、現今ノ金融界ハ非常ニ緩漫ヲ極メテ居リマス、資金ハ
市場ニ溢ル銀行家ハ多クノ遊資ヲ抱擁シテ居リマス而シテ専ラ有利ナル放資
ヲ物色中ノ折柄デアルニ拘ラズ、先月二十二日七千萬圓ノ募集ヲ發表イタシ
マシタノデアリマス、稍擡頭ノ機運ヲ辿リツヽアリシ株式市場ハ、之ガ爲ニ
〓騰ノ勢ヲ一層阻止サレタヤウナ傾向ガアルノデアリマス、又近時金融緩漫
ニ乘ジマシテ、頻々トシテ發表サレル社債ヲ御覽ナサイ、銀行利子ヨリ遙ニ高
利ナルニ拘ラズ應募ノ成績甚ダ不良ナルハ、如何ニ投資家ノ心理狀態ヲ窺フ
ニ足ラヌカト思ヒマス、大藏大臣ハ年々我ガ國民ニハ二十億ノ貯蓄ガアルカ
ラ、二十三億ノ募債ハ容易ナリト言ハレマスケレドモ、世界的此大不況ノ慘澹
タル財界ノ下ニ於キマシテ、二十億ハサテ措キ十億ノ貯蓄ハ、到底私ハ本年度
ニ於キマシテハ絕望デアラウト思ヒマス、金融緩漫ノ今日ニ於キマシテハ年
々七千萬圓ノ募債ハ縱令聊ニセヨ、市場取引ノ上ニ影響ヲ與ヘマシタトセバ、
今後募債ノ益〓困難ナルコトハ想像ニ難カラヌノデアリマス、假ニ資金ガ益〓
市場ニ横溢イタシマスル場合ニ於キマシテモ、此遊金ヲ奇貨トシテ公債ニ引
上ゲルハ考慮ヲ要スルモノト思ヒマス、先ヅ以テ宜シク是等ノ遊資ヲ利導シ、
事業資金ニ向ハシメ、景氣ノ囘復ニ備フルヲ以テ急務ト致スノデアリマス、況
ヤ今後金融界ト雖政府者ノ樂觀スルガ如キ現象ヲ呈スルヤ否ヤハ疑問デアリ
マス、吾人ハ何レノ方面ヨリ觀察イタシマシテモ、本年ノ募集ハ決シテ容易デ
ナイト云フコトヲ信ズルノデアリマス、第八ニハ剩餘金デアリマス、本年度ノ
一般會計ニ繰込ミマシタル剩餘金ハ一億九千三百萬圓デアリマシテ、殆ド是
ハ日露戰役前ノ總豫算ニ等シイノデゴザイマス、將來ノ財政ヲ考慮セズ、濫リ
ニ剩餘金ヲ費消スルノ不可ナルコトハ前囘本員ノ詳述イタシテ置キマシタ、
更ニ尙ホ繰返ス必要ハ認メマセヌ、一時的不確定ノ剩餘金ヲ以チマシテ、
般會計ニ繰入レ、之ヲ經常費ニ充當スルト云フコトハ實ニ危險ナル財政策
デアル、十年度ニ於キマシテハ剩餘金ヲ見ルコトハサテ措キマシテ、恐ラク歲
入ノ上ニ於キマシテ、多大ノ缺陷ヲ生ズルコトハ疑ノ餘地ガナイノデアリマ
ス、然ラバ窮迫ノ餘リ後年度ニ備ヘテ置イタ九千餘萬圓ノ剰餘金モ、或ハ年內
ニ於テ費消スルコトガアリハセヌカト私ハ恐レルノデアリマス、九年度ニ一
億七千四百萬圓、十年度ニ約二億ヲ繰入レテ、宜シク辻褄ヲ合セラレタル財政
計畫ハ、十年度以後剩餘金ガ皆無ニ至リマシタナラバ、茲ニ破綻ヲ生ズルハ疑
ヒヲ容レナイノデアリマス、實ニ財政上危殆ニ瀕セル重大時機デアルト信ズ
ルノデアリマス、大藏大臣ハ豫算ノ編成ニハ一定ノ方式アリ、標準アリト云フ
コトヲ仰セニナリマスガ、是ハ定メシ前數箇年ノ實蹟ヲ基準ト致シマシテ、之
ニ或ハ五分ヲ增シ、或ハ一割ヲ減ズルト云フヤウナ精算方法ヲ指スモノト思
ハレマスガ、成程之ヲ日本バカリデナク、外國デモ此例ヲ採用スル國モアルノ
デアリマス、決シテ是ハ豫算編成上惡イコトハナイト私ハ信ジマスルガ、併ナ
ガラ單ニ一定ノ形式ニ拘泥シ、又ハ標準ニ囚ハレテ編成スル豫算デアリマス
レバ、別段ニ大財政家タル高橋子爵ヲ要シナイノデアリマス、刀筆ノ吏デモ十
分デアラウト思ヒマス、彼ノ戰時中ニ於キマス電信電話等ノ事務ノ澁滯ヲ來タ
シ、能率著シク低減シテ國民ニ多大ノ迷惑ヲ及ボシタルモ、徒ニ前年ノ形式ニ
對シマシテ豫算ヲ切詰メタ結果デアルノデアリマス、卽チ此形式ヲ趁ウタル
所ノ結果ハ徒ニ國民ニ少カラザル所ノ迷惑ヲ及ボシタノデアリマス、然ニ大
正十年度ノ豫算モ亦等シク主トシテ此形式ニ準據セルガ如キ觀アルハ吾人ノ
大ニ遺憾トスル所デアリマス、租稅收入ニ於キマシテモ前來述べマシタヤウ
ニ大正六年、七年、八年ノ未曾有ナル好況ノ絕頂時代ヤ、其惰力ノ未ダ衰ヘザ
ル所ノ九年度ノ實績ヲ以テ、先ヅ最初ニ反動ノ大影響ヲ受ケナケレバナラヌ
所ノ運命ノ下ニアル、其大正十年度ヲ律スルト云フコトハ大ナル錯誤デアル、
縱シ既往ノ慣例ニ準據スルニ致シマシテモ、前年ト明年トハ大ニ其算定ノ趣
ヲ異ニシテ、大々的割引ヲ爲サナケレバナリマセヌノニ、反對ニ各種租稅收入
ノ上ニ尠カラザル割增ヲ行ヒタルガ如キハ、眞ニ沙汰ノ限リデアリマス、政
府當局ハ大正七年八年ニハ其大ナル剩餘金ヲ生ジタデハナイカ、九年度ノ實
績モ亦豫算ヲ超過シテ居ル實況デアル、十年度モ左程悲觀スルニ及バナイト
云フコトヲ仰セニナルカモ知レマセヌガ、彼ト是トハ非常ニ譯ガ違フノデア
リマス、七年八年ハ何人モ最早景氣ハ下リ坂デアル、落潮期ト考ヘタモノガ、
恰モ外海ニ於ケル低氣壓ノ爲メ却ッテ逆潮ガ漲ッタト云フヤウナ次第デアリマ
ス、事全ク意表ノ外ニ出タノデアリマス、故ニ七年八年ノ財界ノ狀況ト云フ
モノハ、政府國民共ニ其觀測ヲ誤ッタノデアリマス、九年ハ又其餘波デアリマ
ス、然ニ今日ハ全ク其趣ヲ異ニシテ居リマス、內ハ昨春以來財界急變シ、益〓
暗雲ハ濃厚トナリ、外ハ歐米諸國ノ財界ノ動搖ヨリ、東洋各地ノ不況ノ現狀ニ
鑑ミマスレバ毫モ前途樂觀ノ途ヲ見出スコトガ出來ナイノデアリマス、況
ヤ不況影響ヲ覿面ニ受ケテ鐵道豫算等ニ大ナル缺陷ヲ生ジ、運賃ヲ引上ゲタ
デハアリマセヌカ、政府當局ハ動モスルト財界ハ安定スベシ、恢復スベシト唱
ヘマスガ、事實ハ當局者ノ言ヲ裏切リマシテ、日ニ月ニ益〓險惡ニ趣キツヽア
ルノデアリマス、此財界ノ落潮ノ時ニ際シマシテ、絕頂時代ト同一ノ收入ヲ强
ヒテ擧ゲムト致シマシタナラバ、其ノ實行難ニ陷ルコトハ火ヲ見ルヨリモ明
カデアリマス、財界ノ前途如上ノヤウデアリマス、租稅收入不確實デアリ、公
債ノ募集亦容易ナラヌト致シマスレバ、十年度ノ歲計ヲ如何ニ案排スベキヤ
ノ問題ガ起ラナケレバナラヌデアラウト私ハ思ヒマス、十年度ニ於テハ有ユ
ル遣繰ト彌縫ヲ以テ辛ジテ一時ヲ糊塗スルコトガ出來マセウ、併ナガラ其餘
殃ハ十一年度以後ノ歲計ノ上ニ激甚ナル影響ヲ及ボシテ、玆ニ財政上ノ危機
ヲ將來セムコトハ殆ド疑フ餘地ハナイト思ヒマス、今ヤ財政上危急存亡ノ重
大時期、前途ニ迫ラムトシテ居ル今日ハ是レ大改革ヲ施スノ秋デアリマス、
未ダ雨フラザルニ牖戶ヲ綱繆スルノ時デアリマス、今ヤ我ガ國民ハ主トシテ
我ガ上院ヘ深キ期待ヲ屬シテ居リマス、吾人ガ忌憚ナキ所見ヲ述べマシテ、以
テ政府者ニ大々的警告ヲ與ヘ其反省ヲ促スニアラズンバ、或ハ恐ル國民ヲ失
望ノ地ニ陷レルノ極度ハ遂ニ我ガ議會政治ヲ疑フニ至ラム、既ニ議會ニ信ヲ
置カズトシテ其次ニ來ルモノハ何デゴザイマセウ、私ハ思ウテ玆ニ至レバ實
ニ寒心戰慄ノ至リニ堪へナイノデアリマス、曩ニ衆議院ノ同憂同感ノ士ガ此
豫算ヲ以テ朽木ノ如ク將タ糞土ノ牆ノ如ク、殆ド手ヲ付クルコトガ出來ナイ、
政府ニ返付スト試ミタルヲ以テ私ハ頗ル不穩當ノ擧措ナリト信ジタ譯デアリ
や、〓然ニ今ニシテ之ヲ思ヒマスレバ又無理カラザル點ノアルコトヲ曉ルノ
デアリマス、吾人ハ我ガ財政ノ一大覺悟ヲ以テ根本的ニ大改革ヲ施スベキモ
ノデアルト云フコトヲ主張スルノデアリマス、之ト同時ニ此ノ實行難タル所
ノ十年度ノ豫算ニ贊同イタシテ、政府ト共ニ其責任ヲ分擔スルト云フコトハ
吾人ノ好マザル所デアリマス、卽チ吾人ノ意見ヲ表明イタシテ本豫算ニ贊成
スルコトノ出來ザル理由ヲ明カニ致シ、尙ホ終リニ臨ミマシラ斯ノ如ク主張
シ、斯ノ如キコトヲ述べムト云ヒマシテ、願クバ或動機ニ依リマシテ我ガ財界
ガ世界的不況ノ圈外ニ超然トシテ復活改善セラレ、私等ノ心配ガ全ク𣏌憂ニ
屬シテ、政府ノ豫期セル所ノ收入ガ順調ニ好成績ヲ擧ゲラレムコトヲ、我ガ財
政前途ノ爲ニ衷心ヨリ致シテ希望スルモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=54
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055・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 仲小路廉君
〔仲小路廉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=55
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056・仲小路廉
○仲小路廉君 私ハ今朝御報告ニナリマシタ豫算委員長ノ報告ニ贊成ヲ致ス
一人デアリマス、卽チ大正十年度ノ豫算ニ對シテ賛成ノ意見ヲ申述べタイト
思フノデアリマス、私共ハ本豫算ニ贊成ノ意ヲ表スル者デハゴイマスルガ、
併ナガラ此ノ豫算案ニ對シマシテ心ヨリ進ンデ之ニ協賛イタスコトガ出來ル
カドウカ、此點ニ付マシテハ唯〓橋本君ヨリ仰セニナリマシタ如クニ、實
大正十年度ノ豫算ハ稀ニ見ル厖大ノ豫算、其費額ハ實ニ巨額ニ亙ッテ居ルノデ
アリマス而シテ其收入ノ見積リ其他ノ點ニ於キマシテ決シテ之ニ對シテ樂
觀ヲ許サヌノデアリマス、我ガ財政ノ前途及ビ其ノ一般經濟社會ニ及ボシマ
ス影響ハ誠ニ憂慮イタスベキモノガ多々アルノデゴザイマス、故ニ我〓ハ
本豫算ニ協賛ヲ致スニ付マシテハ、實ハ種々ニ考慮ヲ致シ、又躊躇ヲ致シタ
ノデアリマス、併ナガラ顧ミテ本豫算ヲ見マスルニ、其中ニハ我ガ國家ニ取。ツ
テ重要ナル國防ノ關係、殊ニ國民生活一般國家ノ存立ノ上ニ於テ必要ナル、
所謂物價騰貴ノ爲ニ避ケ難イ費額モ包容イタシテ居ルノデアリマス是等ノ
點ヨリ考ヘマスレバ誠ニ遺憾ノコトデハゴザイマスケレドモ、國家ノ進運上
必要ナル豫算ハ之ヲ存立ゼシメナケレバナラヌト存ズルノデアリマス、去ナ
ガラ唯今申シマスル如クニ此豫算ニ對シテ絕對無條件、心ヨリ進ンデ協贊ガ
出來ルカト申シマスレバ、ソレハ甚ダ我〓ニハ苦シムノデアリマス、是ニ於
テ本豫算ヲ協賛イタシマスルニ付テ、我〓ハ玆ニ附帶ノ決議ヲ致シタイノデ
アリマス、其決議ノ趣意ハ今朝委員長ヨリ極メテ詳細ニ而モ豫算委員會ニ於
ケル討議ノ狀況ヨリ提出ニ至ルマデノ徑路ニ付マシテ議場ノ光景マデモ手ニ
取ル如クニ御說明ニナッタノデゴザイマス、唯私ハ此際其趣旨ヲ明カニ致シテ
置キマシテ、深ク政府ノ考慮ヲ仰グコトハ當然ノコトト存ジマス、誠ニ申迄
モナイコトデアリマスガ、立憲政治ノ上ニ於テハ、理義ヲ基トシテ總テノ事
柄ハ公明正大ヲ必要トスル、之ト同時ニ國家ノ議政機關、行政ノ機關トハ各〓
其職責ヲ明カニ致シテ、決シテ之ガ濫用ニ亙ルコトガアッテハ相成ラヌコトト
存ジマス、ソレト同時ニ各官吏ヲ始メトシテ總テ公職ニ從事イタシテ居ル者、
政務ヲ掌ル者、事務ノ衝ニ當ッテ居リマスモノハ各〓其分域ヲ明カニシテ、玆
ニ些ノ紛更ヲ來シテ相成ルベキモノデナイ、殊ニ必要ナルハ市町村ヲ始メト
シテ各自治團體ニ對シマシテハ、各〓其自治ノ機能ヲ發揮セシメテ、他ヨリ或
ル威力勢力ノ下ニ之ヲ紛更セシムルコトガアッテハナラヌト存ジマス、斯ノ如
クニ國家ノ各種ノ機關ハ各〓完全ニ其職責ヲ發揮イタシテ、玆ニ國家ノ綱紀ハ
始メテ其完キヲ得ル譯デアラウト存ジマス、然ニ近來ニ至リマシテ實ニ國家
ノ綱紀ハ漸ク廢頽ニ傾カムトスル狀況ヲ見ルノデ、一度國家ノ綱紀紊レルニ
至レバ良民ハ實ニ塗炭ニ苦シムノデアリマス、又其間ニ各種ノ弊害皆其間ニ
胚胎イタシ、漸次助長スル結果ハ國家ニ取ッテ少カラヌ大害ヲ貽スノデアリマ
ス、近來ノ情勢ハ誠ニ悲シムベキコトデアリマスガ、上下各〓利ヲ征シ私ヲ圖
リ〓廉剛毅ノ氣風ハ漸次衰へ、義勇奉公ノ氣節將ニ萎靡セムト致シ、一 〓
ニ國防ノ大切ヲ見テ我〓ハ之ヲ協賛イタスニ拘ラズ、萬々一ニモ一般ノ人心
義勇奉公ノ氣節ヲ缺クニ至リマスレバ、此大切ナ國防モ殆ド其用ヲナサナク
ナル、況ヤ獨リ國防ノミナラズ、國家ノ產業各種ノ事業ノ發達ニ付マシテモ、
其堅實ナル發達ヲ期セムトスルニ於キマシテハ、何處マデモ一般ノ人心ハ堅
實ニシテ剛毅ノ思想ガナクテハナラヌト存ジマス、是等ノ氣風漸ク地ヲ掃ハ
ムトスルニ至リ、又是等ノ氣節萎靡スルコトニナリマシテハ實ニ國家ニ取リ
テ大患之ニ過グルモノハナイト信ズルノデアリマス、實ニ一般ノ情勢ニ於テ
是ホド深憂イタスベキコトハナイト存ジマス、近來東京市ヲ始メ各地方ニ於
キマシテ不祥事件ハ續出イタシ、殊ニ最モ憂フベキハ南滿洲地方ニ於ケル事
柄デアリマス、併ナガラ我〓ハ此際事實ヲ指摘イタス要ハナイト存ジマス、
既ニ事ハ司法處分ニモ繫屬ヲ致シテ居ル以上ハ其事柄ハ自ラ司法權ノ發動ニ
依リテ是非善惡ハ明瞭ニナルコトト存ジマス、是ハ總理大臣ニ於カレテモ、
公明正大ノ處置ヲ執ルト明言ヲ致サレタ、又司法大臣ハ何處マデモ、勇往邁
進ヲシテ必ズ是非善惡ヲ明瞭ニシテ司法權ノ光輝ヲ發揮スルハ此時デアルト
明言サレタノデアリマス、私ハ是等ノ言ヲ深ク信ジマスル、此上ハ何卒此時
弊ヲ矯正セラレマシテ各種ノ政務ニ當リマシテハ十分ナル釐革ヲ遂ゲラレ
テ、總テノコトハ公明正大ヲ主トシ、人心ヲシテ倦怠ナカラシムルコトヲ期
セラレマスコトガ、唯今ノ狀況ニ於キマシテ最モ大切ト存ジマス、政府ニ於
カレマシテモ我〓ノ此決議ノ趣旨ニハ嚴正ナル意義ノ包含イタシテ居リマス
コトヲ十分御考慮ニナリマシテ、希クハ適切ノ途ニ依テ此時弊ヲ匡救セラレ
ムコトヲ希望イタスノデアリマス、何卒滿場諸君ノ御贊成ヲ得マシテ本案ノ
成立セムコトヲ希望イタシマス、玆ニ本案ニ對シテ贊成ノ意ヲ表シテ諸君ノ
御賛成ヲ希望イタシマス
〔山脇玄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=56
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057・山脇玄
○山脇玄君 段々委員長ノ御說明、意見、論者ノ御說ヲ聽キマスルト云フト、
私ニハ皆反對ト聽エルノデアリマス、私モ此豫算ニ付マシテ一二希望ヲ述べ
テ見タイト思フノデアリマス、大正十年度ノ歲出總豫算額ハ十五億六千二百
餘萬圓、其內軍事費ハ七億六千餘萬圓、總歲出ノ殆ド五割ニ當ッテ居リマス
我國程過大ノ軍事費ヲ要スル國ハ文明諸國ニハ一モ見當ラヌノデアリマス
如何ニ過大ノ豼貅艨艟ガアリマシタトテ、之ヲ出動運用スル財力ニ缺ケテ居
リマシタナラバ、所謂寳ノ持腐レデ、生命ノ無イ人形ト同樣デアリマスル、
成程十年度財政方針ニ於テ說明シテアリマスルヤウニ、交通機關ノ擴張、河
川港灣ノ修築等モ財力ノ發展上必要デハアルニ相違アリマセヌ、ケレドモ是
ヨリヨリ緊要ナルモノハ生產上海外貿易ノ開拓發展デハアリマスマイカ、何
人モ恐ラクハ是ニハ御異議ガ無イト信ジマスル、生產業ノ發展ヲ計リマスル
ニハ學術、資本、勞働、此三者ノ〓結ヲ以テ第一要件ト致シマスル、然ニ我
ガ國民ニ於キマシテハ是等三者ノ團結ドコロカ、資本ト勞働トノ聯絡サヘ取
レテ居マセヌ、資本モ亦ナカナカ各國ト競爭シ得ルダケノ大財團トナッテ居マ
セヌ、勞働者ノ境遇ハ向上發展ドコロカ安定ノ位置ニモ達シテ居リマセヌ、
勞働者ノ境遇ノ改善ニ付マシテハ、我國ノ如キハ文明各國ノヤウニ官憲ノ壓
制時代、個人主義時代、社會政策時代ト云フ順序ヲ經テ居リマセヌ、急轉直
下シテ、壓制時代カラ社會政策時代ニ移リツヽアリマスル現狀デアリマス、
果シテサウデアリマスレバ、政府ハ何ヲ措イテモ彼等ノ向上發展ヲ促スト共
ニ、速ニ强制的勞働保險ヲ設ケテ、彼等ノ境遇ノ安定ヲ計ッテヤラネバナリマ
スマイ、第四十二議會デアッタト思ヒマスルガ、總理大臣ハ華盛頓國際勞働會
議ニ派遣シタ委員ノ報〓ヲ參酌シテ勞働保險ヲ創定スル積リデアルト言明サ
レテ居リマス、然ニ今日ニ至リマスマデ何等音沙汰ナイノハ、ドウ云フ譯デ
アリマセウ、政府ハ勞働問題ノ眞意ヲ徹底的ニ理解サレテ居ナイデハナカラ
ウカト疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、保險ニ續イテ今日無クテハナラナイ
ノハ勞働組合法デアリマスル、其目的ハ保險ト同樣デアリマスルガ、是ハ自
助的、自立的ニ彼等ノ境遇ヲ安定シ、資本トノ聯絡ヲ取ル屈强ナ方法デアリ
マセウ、然ニ資本家ニ於キマシテハ是ガ却ッテ彼等ノ勢力ヲ增長シ、益〓反抗
ノ度ヲ高メル手段デアルト見テ、成ベク之ヲ排斥セムトスル如キハ大ナル誤
解デアリマスル、論ヨリ證據英國ナドノ大同盟罷業ガ革命ニ變轉セズニ鎭靜
スル狀況ニ見マシテモ明カデアリマスル、政府ハ資本家ノ反對ニ頓著ナク、
速ニ組合法ヲ制定シテ、彼等ノ自助的自主的精神ヲ涵養スルコトニ努メルノ
ガ賢キヤリ方デハアリマスマイカ、海外貿易ニ付マシテモ施政方針ニ言明サ
レテアリマスヤウニ當業者ノ一致協力ハ固ヨリ緊要デアリマスル、聞ク所ニ
依リマスルト、英米ナドデハ、歐洲大陸ニ於ケル購買復活問題ニ多大ノ注意
ヲ拂フニ至リマシタ、英國ハ政府ト當業者トノ間ニ輸出信用保險ノ計畫ガア
ルト申シマスル、其大體ノ方法ハ貸賣ヲ行ヒマシテ、其貸倒レトナッタ場合ニ
ハ其損失ノ二割ハ輸出商人ノ負擔ニナリマスルシ、八割ハ政府、保險會社ガ
連帶補償ヲナスト申シマスル、國際聯盟理事會ハ同一目的ノ下ニ金證劵ト云
フモノヲ發行スルト云フコトデゴザイマス、米國輸出金融會社ハ矢張同一
目的ヲ以チマシテ盛ニ財界恢復策ヲ講ジテ居ルヤウデアリマスル、然ニ我ガ
政府ハ當業者ノ協力團結ヲ力說スルバカリデ、自ラ進ンデ積極的政策ヲ立テ
ヤウトシマセヌノハ、ドウ云フモノデアリマセウカ、我國ノ當業者ハ對外通
商ノ訓練ニ乏シク、個々分立ノヤリ方デアリマス、精製品、粗製品、商品ノ
不統一ハ申スニ及ビマセヌ、需要地ノ〓究ガ甚ダ不足シテ居リマス、其二三
ノ例ヲ擧ゲテ見マスルト、露國行ノ「トランク」ノ取手ガ小サクシテ、露人ノ
手ヲ入レルコトガ出來ヌ、ソレ故ニ賣行皆無デアルト云フデハアリマセヌカ、
日本ノ漆器ハ空氣乾燥セル米國デハ木地ニ却ッテ狂ヒヲ生ジテ、剝ゲテ落チテ
シマフト云フデハアリマセヌカ、名古屋製ノ「ヴアイオリン」ハ印度洋ヲ通ル
ト「ワニス」ガ溶ケテ損失ヲ生ズルト申スデハアリマセヌカ、斯ル自己的共倒
レ的ナヤリ方デハ今後各國トノ競爭ニ堪ヘ得ルデアリマセウカ、甚ダ覺束ナ
イ、斯ル狀況デアルトシマシタナラバ、之ヲ此儘ニ捨テ置ク譯ニハ行キマス
マイドウシテモ根本的ニ改善策ヲ講ゼネバナリマスマイ、ツレナラドウス
レバ宜イカト云フニ、一言デ之ヲ蔽ヒマスレバ、政府ト當業者ノ精神改良策
ニ歸著スルト思フ、政府ト當業者ノ精神改良策ニ外ナラナイト思ヒマス、政
府ハ從來ノ如ク權力的支配ヲ以テ足レリトセズ、官業民業ノ差別ヲ撤廢シ、
積極的ニ當業者ニ對シテ事業發展ノ協力經營ニ任ジ、當業者ハ私利私慾ヲ專
ラニセズ、公利公益ヲ計ルヤウ心掛ケネバナリマスマイ、兩者ガ、政府ト當
業者ガ此精神ニ立脚シテ一致協力事ニ當リマシタナラバ、今日ノ難關ヲ切拔
ケ得ルバカリデナク、將來ニ向ッテ海外貿易ニ付テノ國策ヲ樹立スルコトニナ
ルト信ジテ疑ハヌノデアリマス、生產原料ノ輸入ハ今後暫ク歐洲米國ナドニ
求メルコトハ困難デアリマセウカラ、隣國支那ニ付テ求メネバナラナイト思
ヒマス、ソコデ政府ハ進ンデ支那ニ向ッテ原料購入ノ便ヲ計ラネバナリマスマ
1、政府ハ東洋方面ハ固ヨリ露國、巴爾幹諸島、北歐等ニ向ッテ新販路ノ開拓
ニ盡力ヲ致サネバナリマスマイ、新聞ノ報ズル所ニ依リマスト云フト、流石
ハ商業ニ銳敏ナル英國デアル、旣ニ露國ト通商ヲ開始スル運ビトナリマシタ
サウデス、伊國、米國、白國、支那等モ著々其步ヲ進メテ居ルヤウデアリマ
スル、我國モ遲蒔ナガラ今ニ於テ其對策ヲ確立シ、其所望ニ向ッテ邁進セズニ
ハ居ラレマスマイ、若シサウセナンダナラバ徒ニ列國ノ後塵ヲ拜スルニ止
マリ、後日臍ヲ嚙ムニ至ルヤウニハナリマスマイカ、政府ハ各國ノ需要供給
ヲ絕エズ取調ベテ其詳細ヲ當業者ニ周知セシメネバナリマスマイ、茲ニ於テ
或ハ政府ハ申サレルカ知レマセヌ、既ニ海外ニ領事モ居ル、今又商務官ヲ設
ケルデハナイカ、成程サウデアリマセウ、ケレドモ聞ク所ニ依リマスト、領
事ノ是マデノ報告ハ、新聞雜誌ナドノ拔書デアッテ、實地ノ調査ガ甚ダ不完全
デアル所カラ、左迄役ニ立タナイトノコトデアリマス、商務官ニ致シマシテ
モ同樣、十數年前ニ一度新設ヲシテ失敗シタ例モアリマスルカラ、一向ドウ
モ當ニハナラヌト思ヒマス、詰リ經費ノ不足、精神ノ入レ所ガ、間違ッテ居ル
カラデアリマスノデ、原料ト販路トハ生產ノ礎デアリマス、柱石デアリマス、
是ガ無ケレバ延イテ產業全體ガ成立チマセヌ、產業ガ成立チガ出來マセナン
ダナラバ日本ハ破滅スルヨリ外ハアリマセヌ、此三箇條ガ差當リ政府ノ協力
經營スベキ主要ナル任務、職責デアルト言ッテ宜シイト思ヒマス、然ニ十年度
豫算中ニ是等積極的設備ガ現然ト現ハレテ居ラヌヤウデアリマス、想フニ是
レ全ク餘リニ過大ノ財力ヲ軍事費ニ計上セネバナラヌ結果デアルト斷ゼザル
ヲ得マセヌ、宜シク政府ハ斯ル世界無比ノ偏重偏輕ノアル財政ヲ整理サレテ、
外ハ列國ノ疑惑ヲ解キ、內ハ財力ノ充實ヲ計ラレテハドウデアリマセウカ、
前論者ハ豫算ノ方針ニ反對ハサレナガラ最後ニ御贊成ニナリマシタガ、私ハ
ドウモ結論ハ前論者トハ違ヒマシテ、斯ル不完全ナ豫算ニハドウモ贊成スル
意思ハ出マセヌカラ、矢張橋本君ニ御同意ヲ申ス譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=57
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058・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ發言ノ通告者ハ終リマシタ······別ニ發言モ
無イト認メマスカラ豫算案ニ就テ採決ヲ致サウト存ジマス、御異存ガナケレ
バ先刻豫算委員長ノ報告セラレマシタ日程第三、第四、第五、豫算案全部ヲ
一括シテ問題ト致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=58
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059・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 全部原案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=59
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060・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=60
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061・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第六、第七、第八ハ一括シテ委員長ノ報〓ヲ
煩ハシテ、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=61
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062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=62
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063・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第六、大正九年度歲入歲出總豫算追加案第二
號第七、大正九年度各特別會計歲入歳出豫算追加案、特第一號、第八、豫
算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件、追第一號、會議、委員長
報〓、豫算委員長前田子爵
一大正九年度歲入歳出總豫算追加案(第二號)
一大正九年度各特別會計歲入歲出豫算追加案(特第一號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第一號)
右衆議院ヨリ送付シタル各案ヲ審査シ總テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモ
ノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十年三月二十二日
豫算委員長子爵前田利定
貴族院議長公爵徳川家達殿
〔子爵前田利定君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=63
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064・前田利定
○子爵前田利定君 只今日程ニ上ボッテ居リマスル大正九年度歲入歲出總豫
算追加外二案ニ付マシテハ豫算委員會ニ於キマシテハ、是亦衆議院議決案
ノ通リニ可決相成リマシタ、本案ノ內容竝ニ數字ニ付マシテハ先般此演壇
ニ於キマシテ大藏大臣ヨリ詳細ノ御演述ニナリマシタコトデアリマスルカ
ラ、會期切迫ノ折柄之ヲ省略イタシマス、之ヲ要シマスルノニ此豫算諸案ニ
載ッテ居リマス事柄ハ、物價騰貴ニ餘儀ナクサレマシタ所ノ人件費、物件費、
需要增加ノ爲ノ增加經費デアルノデアリマス、豫算委員會ハ去ル三月二十日
竝ニ昨二十二日ニ兩度委員會ヲ開キマシテ、是ハ分科ニ移シマセヌデ、總會
ニ於テ審議ヲ致シタノデアリマス、此三案ニ付マシテハ何等ノ委員中ヨリ御
質問ノ事項ガゴザイマセヌデ、全部前述ノ通リ可決ニ相成リマシタ、尙ホ此
際申添ヘテ置キマスコトハ、追第二號豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件、是ハ未ダ質問繼續中デアリマシテ、一括シテ御付託ニナッタノ
デアリマスルガ、是ダケハ今日此ニ御報告スルコトガ出來ナイノハ甚ダ遺憾
ニ存ズル次第デアリマス、併ナガラ不日本案ニ付マシテモ御報告スル時機ガ
アラウト存ジマス、此段申添ヘテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御發言モナイト認メマスカラ採決ヲ致シマ
ス、唯〓前田豫算委員長ノ報告セラレマシタ日程第六、第七、第八、豫算案
三案トモ一括シテ問題トシ、全部ニ付テ採決ヲ致シマス、御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、全部同意ノ諸君ノ起立ヲ
請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=66
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067・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第九、關稅定率法中改正法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會
〔左ノ通牒文ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ倣フ〕
關稅定率法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年三月二十二日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
關稅定率法中改正法律案
關稅定率法中左ノ通改正ス
第二條從價稅品ハ輸入ノ際ニ於ケル到着價格ニ依リテ課稅ス
第九條輸入原料品ニシテ命令ヲ以テ指定シタル輸出品ノ製造ニ使用スル
モノニハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ輸入稅ノ全部又ハ一部ノ免除又ハ拂
戾ヲ爲スコトヲ得
輸入原料品ニシテ亞鉛華、厚〇、二五ミリメートルヲ超エサル亞鉛薄板又
ハ命令ヲ以テ指定シタル肥料ノ製造ニ使用スルモノニハ命令ノ定ムル所
ニ依リ其ノ輸入稅ノ全部又ハ一部ノ免除又ハ拂戾ヲ爲スコトヲ得
前二項ノ規定ニ依リ輸入稅ノ免除ヲ爲ス場合ニ於テハ輸入ノ際稅金ニ相
當スル擔保ヲ提供セシムルコトヲ得
詐欺其ノ他不正ノ行爲ヲ以テ第一項又ハ第二項ノ拂戾ヲ受ケ又ハ受ケム
トシタル者ハ關稅法第七十五條ノ例ニ依リ處分ス
第十條船舶ノ建造又ハ修繕ニ使用スル鐵鋼材、艤裝品、艤裝品部分品、
機關又ハ機關部分品ニシテ命令ヲ以テ指定シタルモノニハ命令ノ定ムル
所ニ依リ其ノ輸入稅ヲ免除スルコトヲ得
別表輸入稅表中左ノ如ク改ム
第二十九號ノ二中「及木藍」ヲ「、木藍及甜菜」ニ改ム
第百十號中「四、五〇」ヲ「一二、〇〇」ニ改ム
第百十一號中「一、七〇」ヲ「五、〇〇」ニ改ム
第百十四號中「三、四五」ヲ「一二、〇〇」ニ改ム
第百六十三號中「〇、七〇」ヲ「一、五〇」ニ改ム
第百六十五號ヲ左ノ如ク改ム
一六五曹達灰及天然曹達同〇、三五
第百六十七號中「四、六〇」ヲ「一五、六〇」ニ改ム
第百七十二號ノ次ニ左ノ如ク加フ
一七二ノ二安息香酸曹達同三割五分
第二百十一號中「鹽酸コカイン及」ヲ削ル
第二百十一號ノ二ノ次ニ左ノ如ク加フ
二一一ノ三鹽酸コカイン同三割五分
第二百五十九號ノ次ニ左ノ如ク加フ
二五九ノ二石炭タール、瀝靑又ハ土瀝靑ノ製品
ニシテ道路修築用ノモノ無稅
第四百十八號中「(白金粉ヲ有スルモノヲ含ム)」ヲ削ル
第四百六十二號第一項ヲ左ノ如ク改ム
一塊及錠(シートバー及テインバ
ーヲ含ム)
甲銑鐵每百斤〇、一〇
乙スピーゲルアイゼン、フェロマ
ンガニース其ノ他ノ不可鍛性
鐵合金從價-割
丙其ノ他同一割二分
同號第二項中「每百斤」ヲ「同」ニ、「〇、六〇」ヲ「一割五分」ニ、第三項中「〇、
九〇」ヲ「一割五分」ニ改ム
同號第四項ヲ左ノ如ク改ム
四板
甲金屬ヲ鍍セサルモノ
甲ノ一有紋ノモノ一割五分
同同
甲ノ二波形ノモノ一割五分
甲ノ三其ノ他
イ厚〇、七ミリメートルヲ
超エサルモノ同一割五分
ロ其ノ他同一割五分
乙卑金屬ヲ鍍シタルモノ
乙ノ一錫鍍シタルモノ(葉鐵
及葉鋼)
イ尋常ノモノ同一割五分
ロ晶鍍、有紋其ノ他ノモノ同一割五分
乙ノ二電鍍シタルモノ(波形
ト否トヲ別タス)一割五分
同同
乙ノ三其ノ他二割
同號第五項ヲ左ノ如ク改ム
五線
甲金屬ヲ鍍セサルモノ同一割五分
乙卑金屬ヲ鍍シタルモノ
乙ノ一電鍍シタルモノ一割五分
同同
乙ノ二錫鍍シタルモノ二割
乙ノ三其ノ他同二割
同號第六項中「每百斤」ヲ「同」ニ、「一、八五」ヲ「一割五分」ニ、第七項中「一、
五〇」ヲ「一割五分」ニ改ム
同號第八項ヲ左ノ如ク改ム
八帶(箍鐵)同一割五分
同號第九項中「每百斤」ヲ「同」ニ、「四、一〇」ヲ「一割五分」ニ、「從價」ヲ「同」
ニ、第十項中「毎百斤」ヲ「同」ニ、「六、〇○」ヲ「二割」ニ、第十一項中「二、二
○」ヲ「二割」ニ改ム
同號第十二項ヲ左ノ如ク改ム
十二筒及管(別號ニ揭ケサルモノ)
甲金屬ヲ鍍セサルモノ
甲ノ一エルボー及ジョイント
イ不可鍛性ノモノ每百斤二、四〇
ロ其ノ他從價一割五分
甲ノ二其ノ他
イ鑄タルモノ每百斤一、〇〇
ロ其ノ他從價一割五分
乙卑金屬ヲ鍍シタルモノ同二割
第四百六十七號中「〇、七○」ヲ「三、〇〇」ニ、「二、九五」ヲ「三、三〇」ニ改ム」
第四百七十七號中「一、二五」ヲ「一、九〇」ニ、「二、五五」ヲ「三、二〇」ニ、「四、
五五」ヲ「五、六〇」ニ、「一一、〇〇」ヲ「二、八〇」ニ、「一、四〇」ヲ「二、二〇」ニ、
「一、四五」ヲ「二、二〇」ニ改ム
第四百七十九號中「一三、五〇」ヲ「一四、四〇」ニ、「三、七〇」ヲ「四、七〇」ニ
改ム
第四百八十二號第一項中「毎百斤」ヲ「同」ニ、「○、八〇」ヲ「一割五分」ニ、第
二項中「一、八〇」ヲ「二割」ニ、第三項中「同」ヲ「每百斤」ニ、「二、五五」ヲ「三、
五〇」ニ、第四項中「同」ヲ「從價」ニ、「一、一〇」ヲ「一割五分」ニ、第五項中「從
價」ヲ「同」ニ改ム
第四百八十三號第一項中「毎百斤」ヲ「同」ニ、「一、八五」ヲ「一割五分」ニ、第
二項甲中「同」ヲ「每百斤」ニ、「四、三五」ヲ「五、三○」ニ改ム
第四百八十四號中「一、九○」ヲ「二、八〇」ニ改ム
第四百八十五號中「一、九五」ヲ「二、九〇」ニ改ム
第四百八十八號中「同」ヲ「從價」ニ、「一、九五」ヲ「一割五分」ニ改ム
第四百八十九號第一項中「從價」ヲ「同」ニ、第二項中「ギーアリングチエー
ン」ノ下ニ「自轉車用ノモノヲ含ム)」ヲ加ヘ「二、〇○」ヲ「三、八〇」ニ改ム
第四百九十三號中「六、四○」ヲ「七、六〇」ニ改ム
第四百九十四號中「一一、一一〇」ヲ「一二、四〇」ニ改ム
第四百九十六號第一項中「毎百斤」ヲ「從價」ニ、「一一、五五」ヲ「二割」ニ、第二
項中「四、〇〇」ヲ「二割」ニ、第三項中「同」ヲ「每百斤」ニ、「一二、六〇」ヲ「一
三、七〇」ニ第四項中「一五、九〇」ヲ「一七、〇〇」ニ、第五項中「二二、一〇」
ヲ「二三、三〇」ニ、第六項中「五、一五」ヲ「五、六〇」ニ、第七項中「二七、九〇」
ヲ「三三、八〇」ニ、「一三、〇〇」ヲ「一八、九〇」ニ、「九、七〇」ヲ「一五、六〇」
ニ、「八、五〇」ヲ「一四、四〇」ニ、第八項中「一二、五〇」ヲ「一四、一〇」ニ、第
九項中「二〇、一〇」ヲ「一三、三〇」ニ、「第十項中「四、一〇」ヲ「五、〇〇」ニ、
「二、一〇」ヲ「三、六〇」ニ改ム
第四百九十八號中「七、八○」ヲ「八、二〇」ニ改ム
第四百九十九號中「四、六五」ヲ「五、〇〇」ニ改ム
第五百五號中「五〇、五〇」ヲ「五四、二〇」ニ改ム
第五百六號中「〇、一〇」ヲ「〇、一六」ニ改ム
第五百十六號中「八、八五」ヲ「九、七〇」ニ改ム
第五百二十四號中「一二、七〇」ヲ「一三、六〇」ニ「一二、〇〇」ヲ「一三、〇〇」
ニ、「七、五〇」ヲ「八、五〇」ニ、「五、〇〇」ヲ「六、〇○」ニ改ム
第五百三十號中「一二、六○」ヲ「一六、七〇」ニ改ム
第五百六十二號中「二、四○」ヲ「三、三〇」ニ、「一、五○」ヲ「二、四〇」ニ、「三、
〇〇」ヲ「五、〇〇」ニ改ム
第五百六十五號中「一六、○○」ヲ「一六、六〇」ニ改ム
第五百六十六號中「原動力機」ノ下ニ「及鏈」ヲ加ヘ、「鍵、」ヲ削リ「一八、
○」ヲ「二一、〇〇」ニ、「三一、四〇」ヲ「三二、九〇」ニ、「九七、一〇」ヲ「九九、
五〇」ニ改ム
第五百六十九號中「三、七○」ヲ「五、〇〇」ニ改ム
第五百七十號第二項ヲ左ノ如ク改ム
二コルゲーテッドボイラーファーネ
スチューブ同二、四五
同號第三項ヲ左ノ如ク改ム
三フランジドボイラープレート同四、一〇
同號ニ左ノ如ク加フ
四芽心從價二割五分
第五百七十三號中「七、六○」ヲ「九、〇〇」ニ、「九、二〇」ヲ「一〇、六〇」ニ改
ム
第五百七十四號中「、ポータブルスチームエンジン「及スチームロードロー
ラー」ヲ「及ポータブルスチームエンジン」ニ、「五、二〇」ヲ「六、六〇」ニ改メ
同號ノ次ニ左ノ如ク加フ
五七四ノ二スヂームロードローラー同五、九〇
第五百八十三號中「四、一一〇」ヲ「五、〇〇」ニ、「三、九〇」ヲ「四、七〇」ニ改ム
第五百八十五號中「五、〇○」ヲ「五、九〇」ニ改ム
第五百九十八號中「二、四○」ヲ「二、九〇」ニ改ム
第六百五號中「二八、四〇」ヲ「三六、〇〇」ニ、「一二、五〇」ヲ「一六、〇〇」ニ
改ム
第六百十二號第一項丙中「每立方メートル」ヲ削リ「四、二〇」ヲ「無稅」ニ改
ム
第六百十九號ノ次ニ左ノ如ク加フ
六一九ノ二白金又ハ白金鹽類ヲ含ム媒觸劑-無稅
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣子爵高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=68
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069・高橋是清
○國務大臣(子爵高橋是〓君) 關稅定率法中改正法律案提出ノ理由ヲ簡單ニ
說明ヲ致シマス、本案ノ第一ノ骨子ト致シテ居リマスコトハ、製鐵竝ニ造船
事業ノ發逹ヲ圖ル點デゴザリマシテ、之ニ付マシテハ政府ハ豫ネテ臨時財政
經濟調査會ニ諮問ヲ致シテ居リマシタガ、最近ニ於テ其答申ヲ得マシタノデ、
ソレ等ヲ斟酌イタシマシテ、鐵ハ銑鐵ヲ除クノ外ハ大體ニ於テ從價一割五分
程度ノ課稅ヲ致スコトト致シ、之ニ伴ヒマシテ鐵ノ製品及ビ機械類等ノ稅率
ノ權衡上幾分ノ引上ゲヲ行ヒマシタ、又造船事業ノ奬勵ニ付マシテハ、嘗テ
ハ造船奬勵法ノ如キ制度ニ依テ奬勵ヲ致シテ居ッタノデアリマスルガ、此度ハ
之ニ加フルニ造船材料ノ輸入稅ヲ免除スルコトト致シタル次第デアリマス、
次ニ曹達、亞鉛、其他三種ノ品物ニ付マシテ稅率ノ改正ヲ加ヘテ內地產業ノ
維持奬勵ヲ圖ルコトト致シマシタガ、其結果之ト關係ノアリマスル他ノ事業
ニ好マシカラザル影響ヲ及ボスコトガアリマスカラシテ、其點ニ付テハ特ニ
考慮ヲ拂ヒマシテ、例ヘバ亞鉛ノ如キ一般ニハ輸入稅ヲ引上ゲマシタガ內
地ニ於テ亞鉛華及ビ亞鉛ノ薄板ヲ製造スル場合ノ原料ト致シテ輸入セラルル
モノニ付マシテハ、殊ニ輸入稅ヲ免除又ハ拂戾シヲ爲スコトト致シマシタ、尙
ホ之ニ附隨イタシマシテ現在行ハレテ居リマスル戾稅ノ制度デアリマスル
ガ是ハ手續上成ベク免稅ノ制度ニ改メル方ガ官民共ニ利便デアルト認メマ
シタノデ此點ニ付テ改正ヲ加ヘマシタ、又從價稅品ハ從來輸入港ニ到着イ
タシタル時ノ價格ヲ標準トスルコトニナッテ居リマシタガ、貨物ガ輸入港ニ到
着イタシマシタル後ニ實際輸入セラルルニ至ル迄ニハ隨分月日ヲ要スルコト
ガアリマス、其間ニ相場ガ著シク變動スル場合等モアリマシテ、ソレ故ニ成
ベク其貨物ガ實際ニ輸入セラルヽ時ノ實況ニ依ルヲ適當ト認メマシテ、輸入
手續ヲ爲スニ至リタル時期ヲ標準トシテ、其際ニ於ケル貨物ノ到着價格ニ依
ルコトト改正ヲ致シタノデアリマス、尙ホ委細ハ委員會ニ於テ詳細ニ說明ヲ
致スコトト致シマスガ、何卒速ニ御審議ノ上協贊アラムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=69
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070・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 通〓ニ依リマシテ、東〓男爵ニ質疑ヲ許シマス
〔男爵東〓安君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=70
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071・東郷安
○男爵東〓安君 唯今議案ニ上リマシタ關稅定率法ハ當議會ニ於キマシテ提
出セラレタル數多キ諸案ノ中デ、產業上最モ重大ナル關係ヲ有スルモノノ一
ツデアルト認メマス、從ッテ私ハ此機會ニ於キマシテ產業政策上是非共當局ノ
態度方針ニ付テ承ハッテ置カナケレバナラヌ重要ナ點二項ヲ擧ゲテ當局ニ質
問イタシタイト思フノデアリマス、第一ノ點ハ本案中ニ揭ゲテアリマス所ノ
曹達工業ニ對スル保護ノ點デアリマス、曹達工業ガ化學工業ニ於キマスル位
地ノ、如何ニ重要デアルカ重大デナイカト云フコトハ今更此ニ申上ゲル迄
モナイ次第デアルト思ヒマス、此「アルカリ」工業ハ、然ラバ果シテ何ヲ基礎
トスルカ、何ガ根本ノ原料デアルカト申シマスレバ、諸君御承知ノ通リ鹽ガ
其原料デアリマス、「アルカリ」工業ノ興廢ハ原料タル所ノ鹽ノ供給ノ便否、
價ノ高下ニ依テ決スルノデアリマス、然ラバ我國ニ於ケル工業鹽ノ供給ノ狀
態ハ如何デアルカ、今日是等ノ原料トシテ用ヒラレル所ノ靑島鹽ハ百斤八十
九錢ト云フ驚クベキ値段デアルノデアリマス、最近之ガ輸入ノ一便法トシマ
シテ直接輸入ノ方法ガ講ゼラレ、約七十四錢位デ輸入シ得ル程度ニハナリマ
シタケレドモ、是ハ今尙ホ非常ニ高價ナモノデアリマス、從ッテ我國ニ於ケル
所ノ「アルカリ」工業ガ此點ニ付テ年來非常ナ困難ヲ來シ、經濟上不利益ナ地
位ニ立チ、世界ノ曹達市場ニ對シテ十分ナル所ノ競爭力ヲ有シナカッタト云フ
コトガ是ハ戰時中最モ顯著ニ現ハレタ事實デアリマススカラ、諸君ニ於テモ
定メシ御見聞ノコトデアラウト思フノデアリマス、今囘政府ハ戰後ノ經營ノ
一箇條トシマシテ、此曹達工業、殊ニ戰時中勃興シマシタ所ノ「アルカリ」工
業ヲ保護スル爲ニ曹達ニ對スル關稅ヲ上ゲマシタノデアリマス、卽チ關稅ノ
障壁ヲ幾分高クシテ、內地ノ曹達工業ヲ保護スルト云フ政策ヲ執ラレタノデ
アリマス、是ハ一應御尤ナ考デアリマスルガ、併ナガラ先刻申上ゲマシ
タ通リ曹達工業ノ根本ハ工業鹽ノ供給ノ潤澤デアルト、價格ノ低廉デアルト
云ブコトニ屬スルノデアリマスカラ、私ハ此點ヲ根本カラ改正シナケレバ、
假令少シク關稅ヲ上ゲタリシタ所デソレガ餘リ有效ナル保護方法ニハナラ
ヌ、斯ウ思ハレルノデアリマス、又世界ニ於ケル曹達市場ノ狀況ヲ見マスナラ
バ彼ノ英國ニ於ケル「フラナモンド」ノ如キ、亞米利加ノ有力ナル曹達會社ノ
如キ、モウ日本ノ國境ヲ一步出マスレバ犇々ト有力ナル商品ガ來テ居ルノデ
アリマス、否動モスレバ戰時中スラ、我〓ノ關稅ノ障壁ヲ飛ビ越シテ來タノ
デアリマス、デアリマスカラ唯今少シバカリノ關稅ヲ上ゲタ所デ此激甚ナル
所ノ競爭ニ果シテ對應シ得ルヤ否ヤト云フコトハ深ク疑問トシナケレバナラ
ヌノデアリマス、何故ニ政府ハ此根本ニ蟠ル所ノ問題、卽チ工業鹽ヲ安ク供
給スルト云フ所ノ方法ヲ執ラレナカッタノデアルカ、是ガ私ガ質問スル第一點
デアリマス、恐ラク政府ハ御答ニナルデアリマセウ、鹽ノ根本政策ニ付テ
ハ我ガ內地ノ所謂十州鹽田ニ於ケル生產品ハ勿論ノコト各植民地、靑島、關東
州等ノ產出スル所ノ鹽ノ產額、其他ヲ合シテ鹽ニ關スル根本政策ヲ目下臨時
經濟調査會ノ議ニ付シテ居ル、從ッテ此結果ヲ見ナケレバ未ダ根本ノ政策ヲ定
メルコトガ出來ナイ、斯ウ御答辯ニナルダラウト思フ、私モ其點ニ付テハ了
承イタシマス、併ナガラアノ委員會ガ如何ナル今日マデ審議ノ事實ヲ盡シテ
居ッタノデアルカ、鐵其他ノ委員會ハ割合ニ委員諸君ガ勉强シテ今日マデ種種
ナ結果ヲ發表サレテ居リマスルガ、鹽ニ付テハ遺憾ナガラ私ハソレ等ノ委員諸
君ノ努力ガ甚ダ足ラナイノデハナイカト云フコトヲ疑フノデアリマス、從ッテ
財政經濟調査會ノ其委員會ノ「サボル」コトニ依テ我〓ガ今日此關稅ヲ高クス
ルト云フコトノ協議ヲ政府カラ受ケナケレバナラヌ立場ニナッツタトスル
ナラバ、財政經濟調査會ト云フノハ我〓ニ曹達ノ負擔ヲサセル、斯ウ云フ風
ナコトニナルノデアリマシテ、私ハ此點カラ見マシテモ同委員會ノ甚ダ不成
績デアルト云フコトニ付テ深ク遺憾トスルノデアリマス、兎ニ角此點ニ付マ
シテハ私ハ何故ニモット急速ニ鹽ニ對スル根本政策ヲ定メテ而シテ曹達ト云
フモノガ關稅ヲ上ゲズトモ內地ノ供給ニ對シテ十分ナル生產額ヲ有スルノミ
ナラズ、更ニ進ンデ海外ニ出シ得ルヤウナ計畫ヲナサラナカッタノデアルカ、
此點ヲ伺フノデアリマス、第二點ハ鐵ニ關スル件デアリマス、鐵ノ使用料ガ
文明國ニ於ケル所ノ「バロメーター」デアルト云フコトハ是ハ昔カラ申シテ居
ル所デアル、又鐵ニ關スル問題ガ如何ニ我〓ノ經濟生活其他國防上種々ナ點
ニ於テ重大ナル關係ヲ有ッテ居ルカト云フコトモ是亦申上ゲルマデモナイコ
トデアリマス、從ッテ鐵ノ問題ト云フモノハ非常ナ大キナ問題デアル、此大キ
ナ問題ヲ會期切迫ノ今日ニ於テタッタ餘ス所二三日ノ此議會ニ提出セラレル
コトハ甚ダ遺憾千萬ダト思フ、實ニ途轍モナイ話ダト信ズルノデアリマス、
斯ノ如キ重要ナル案ヲ何故ニモット早ク御出シニナラナカッタノデアルカ、又
國民モ左樣デアル、斯ノ如キ重大ナルモノニ對シテ何故モット論議シテ囂々ノ
說ヲ立テナイノデアルカ、單ニ一法案ヲ貴衆兩院ノ手ニノミ委シテ彼等ガ全
ク沒交渉デアルト云フコトハ、何等之ヲ目星シキ論議ヲ我〓ノ目ニ致サナカッ
タト云フコトハ如何ニモ是等ガ實際生活ニ沒交涉デアル、無頓著デアルト云
フコトヲ私ハ深ク遺憾トスルノデアリマス、ソレハサテ置キ今囘提出サレマ
シタ鐵ニ關スル關稅ハ先般臨時經濟調査會ノ特別委員ノ審議セラレタ答申ニ
基イテ政府ヨリ御提案ニナッタモノト存ジマスルガ、是ハ要スルニ鐵ニ關スル
全政策ノ一片鱗ニ過ギナイノデアリマス、從ッテ鐵ニ關スル此關稅ノ問題ヲ審
議シ、〓究シ、論及スル爲ニハ今日政府ハ如何ナル方針ヲ鐵ニ對シテ御持チ
ニナルノデアルカ、鐵政策ト云フモノハ如何ニ御考ニナッテ居ルデアルカ、是
ハ我國ニ於テハ最モ大キナ重大問題デアル、卽チ事項ヲ擧ゲテ申シマスルナ
ラバ、我國ニ於ケル所ノ鐵ノ原料ヲ如何ニシテ得ル積リデアルカ、燃料、卽
チ製鐵ニ要スル所ノ燃料ハ如何ニシテ之ヲ使用スルノデアルカ、又現存シテ
居ル所ノ製鐵事業、卽チ官營民營此兩者ヲ通ジテ製鐵業ヲ如何ニ按排シ、連
繫シ、而シテ助長セシムル積リデアルカト云フヤウナ、種々ナ問題ガアルノ
デアリマス、是等ノ問題ヲ全般ニ付テ伺ハナケレバ此鐵ニ關スル關稅ト云フ
モノヲ十分論議シ表裏共ニ了解スルコトハ不可能デアラウト思フ、從ッテ此ノ
會期切迫ノ際ニ拘ラズ私ハ諸君ノ〓聽ヲ煩ハシマシテ、此二點ニ付テ政府當
局ヨリ御所見ノアル所ヲ承リタイト思フノデアリマス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=71
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072・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 產業政策ノコトデアリマスカラシテ私ヨリ御
答ヲ致シマス、此「アルカリー」ノ此度稅ヲ增シマスニ付テ其一番ノ本トナル
ベキ鹽、之ニ付テハ如何ニモ今度高イガ、之ヲ捨テテ置イテハ甚ダ效力ガ乏
シイモノデアルガ、之ニ付テハ如何ニスルカト云フ御質問デ、御尤デアリ
マシテ、丁度御察シノ如ク臨時經濟調査會ニ於キマシテ其會ニ此コトニ付マ
シテ諮問ヲ致シテ居ルノデアリマス併ナガラ鹽ノコトニ付マシテハ非常ナ
ル錯雜ナル關係ヲ有ッテ居リマシテ、唯一〓ニ關東州ナラ關東州ノ鹽ガ安イカ
ラシテ、ソレノミニ依ルト云フ譯ニモ參リマセズ、此鹽ノ製作ニ付テ根本的
ニ又改良ヲ致サナケレバ此鹽ニ付テ安クスルト云フコトハ餘程困難ナコトデ
アリマス、ソレデ經濟調査會ニ於キマシテモ、問題トナッテ居リマスガ、ドウ
モ事柄ガ餘程錯雜ヲシテ、且ツ重大ナルコトデアリマスカラ、未ダ成案ヲ見
ルニ至ラズ、今日デハソレゾレ此鹽ノ產地ニ參ヲテ尙ホ一層實際ノコトヲ調
ベ、然ル後ニ決スルト云フコトニナッテ居リマス、未ダニ此コトニ付テハ御諮
リヲ申ス所迄參ッテ居リマセヌ、併シソレノ決スルノヲ待ッテ此「アルカリー」
稅ヲ、然ル後ニスルト云フヨリモ、寧ロ出來ルダケノモノカラ先ニ決メタガ
宜カラウト云フ積リデ、此ノ關稅法案ヲ出シタル次第デアリマス、併シ必ズ
一方ニ付テモ確定的意見ヲ作ラナケレバナラヌコトト考ヘテ居リマス、ソレ
カラ鐵ノコトデアリマスガ、是ハ如何ニモ產業上、國防上、總テニ付テ必要
ナルモノデアリマス、故ニ、何トカシテ矢張內地ニ於テソレゾレ供給ヲ遂
ゲルト云フコトノ目的ヲ以チマシテ、ソレゾレ施設ヲシナケレバナラヌコト
ト存ジテ居リマス、丁度戰爭前ニ於キマシテ、誠ニ鐵ノ業ハ微々タルモノデ
アリマシタガ、大戰爭ノ結果ヲ受ケマシテ、一方ハ需要ノ上ニ付テ一方ハヒ
ドク必要ヲ感ジタ上ニ付マシテ、イロイロ政府ニ於テモ保護ヲ與ヘマシテ、
既ニ其銑鐵、鋼材ニ於キマシテ、餘程進ミマシタシ、大正七年ニハ鋼鐵ニ於
テ五十四萬噸、銑鐵ニ於テ六十萬噸ト云フモノヲ、內地及ビ朝鮮ニ於テ得ラ
レル所迄進ンデ參リマシテ、戰前ノ約二倍以上モ進ンダルヤウナル狀態デア
リマス、併シ平和克復ニ相成リマシテ、非常ナル鐵ニ打擊ヲ受ケマシテ、今
日デハ折角成立チマシタ製鐵業者ニ於テモ、ヒドク困難ヲ感ジテ居ルト云フ
ヤウナ次第デアリマス、ソコデイロイロ調査イタシマシタル所ニ依リマスル
ト先ヅ內地、朝鮮、關東州ナドニ於キマシテ、五十「パーセント」以上ノ鐵
ノ原料ガ埋藏セラレタ調ベノ付イタモノガ一億二千萬噸程アルノデアリマ
スソレカラ又三十五「パーセント」以上ノモノハ內地及ビ、此砂鐵ナドヲ加
ヘテ見マスルト約三億近クモアルト云フノデアリマシテ、相當ノ日本ニ於テ
獨立ヲシ得ルダケノ材料ハアリ得ルノデアリマス、併ナガラ今申上ゲマスル
如ク、貧鑛ガ多イノデアリマス、ソコデアリマスル故ニ、ドウモ此支那、若
クハ南洋方面ニ參リマシテ、矢張原料ヲ取ッテ來テ、サウシテ製鐵ノ業ヲシ
ナケレバナラヌコトニナッテ居リマス、此製鐵ノ事業ニ付マシテモ、今日ノ計
畫ヲソレゾレシマシタモノカラ近クノモノヲ考ヘテ見マスルト云フト、大正
十二年、十三年、此十三年ノ頃ニナリマスト、今ノ設計ニ付テ段々進ンデ參
リマスレバ、鋼鐵ニ於テ百四十萬噸、銑鐵ニ於キマシテ百三十萬噸、此位ハ
製鐵シ得ル能力ガアルコトニナッテ居リマス、左樣イタシマスレバ、先ヅ日本
ニ於テ需要ヲ致シマスル其數量ノ綱材ニ於テハ、約八割、銑鐵ニ於テ約七割
位ノコトハ內地ノ力ニ依テ出來ヤウト云フ見込デアリマス、サウ云フヤウナ
コトデアリマスカラシテ、ドウシテモ此鐵ノ仕事ナルモノハ生產上ニ國防上
カラ成立ノ途ヲ計ラナケレバナリマセヌガ、先ヅ差當リトシテハ、此從價稅
一割五步ト云フ關稅ヲ掛ケテ、一方デハ又內ノ事業ヲ奬勵スルト云フコトニ
ナリ、一方デハ又造船事業ナドニ使ヒマスル鐵ノ奬勵金ヲ與ヘルト云フ如キ
途ニ依テ、內ノ鐵ヲ奬勵シタナラバ、相當ナル年數ノ間ニハ獨立ガ出來ルデ
アラウト云フ見込デ進ミツヽアル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=72
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073・内田嘉吉
○內田嘉吉君 唯今議題ニナッテ居リマスル關稅定率法中改正法律案ニ於キ
マシテハ、先程大藏大臣ヨリ說明モアリマシタ通リ、造船ニ對スル關稅ノ免
除ヲ御定メニナルト云フコトデアリマス、單純ニ關稅ノ免除ト云フコトノミ
ナラズ、此點ニ付マシテハ、造船ノ奬勵ニモ大ニ關係ノアルコトデアラウト
存ジマス、從前造船奬勵法ガ制定ニナリマシタ際ニハ、關稅ヲ免除スルカ、
特ニ奬勵金ヲ給付スルカト云フコトニ付テハ、深ク〓究ヲ致サレタノデゴザ
イマシテ、結局造船奬勵金ヲ交付スル方ガ效果ガ多イ、斯ウ云フコトデ奬勵
金交付ノコトニ相成ッタヤウニ記憶イタシテ居リマス、造船奬勵法ハ戰爭中船
舶ノ製造ガ非常ニ增加イタシマシテ、暫時休止スル意味ヲ以チマシテ、法律
ヲ以テ是ガ施行ヲ停止イタシタノデゴザイマスルガ、政府ノ今日ノ御計畫デ
ハ造船奬勵法ハ御實行ニナラヌト云フ御考デアリマスカ、果シテ然ラバ其理
由ハ如何デアリマスカ、今囘ノ關稅定率法ノ改正ニ依テ造船材料ノ關稅ヲ免
除スルコトニ依リマシテ、造船奬勵ノ目的ヲ果シテ達シ得ルト云フ御考デア
リマスカ、又聞ク所ニ依リマスレバ、別ニ優良船ノ造船ニ付マシテハ相當ノ
保護デモ加ヘラレルヤウナ意見モアルヤウデアリマス、果シテソレニ對シマ
シテ政府ハドウ云フ御考ヲ持ッテ居ルノデゴザイマセウカ、單純ニ關稅法ノ改
正ニ止マラズ、日本ノ造船事業ニ付マシテハ、非常ニ重大ナ影響ヲ有ツ事業
デアリマスルカラ、此點ニ付マシテハ遞信大臣ヨリ篤ト此議場ニ御說明アラ
ムコトヲ希望イタシマス
〔國務大臣野田卯太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=73
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074・野田卯太郎
○國務大臣(野田卯太郞君) 內田君ニ御答シマス、造船奬勵ヲスルカセヌカ
ト云フ第一ノ御尋デゴザイマスガ、是ハ御承知ノ通リ戰爭中ニ既ニ停止ニ
ナッテ居リマシタ、ソレガ續イテ法律ハ消滅シタ次第ニナッテ居ッタ、其續キデ
更ニ今日財政上カラ考ヘマシテ、造船ノ奬勵ハシナイ積リデゴザイマスガ、
此鐵ノ輸入稅ヲ免除シテ造船ノ奬勵ヲシタイト斯ウ云フ考ヲ持ッテ居リマス、
優良船ノコトニナリマシテハ、是ハ特別ノ問題デアリマス、其優良船ノ必要
ヲ感ズル時ハ或ハ何カノ形ヲ以テ當局ハ其事モ致サウト思ッテ居リマスガ、何
等今日優良船ヲ奬勵シテ造ラウト云フ考ヲ持ッテ居リマセヌ、其必要ヲ感ジタ
時ノ問題トシテ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=74
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075・内田嘉吉
○內田嘉吉君 尙ホ簡單ニモウ一言御尋致シマス、唯今私ハ此造船ニ對ス
ル關稅ノ免除ニ依テ造船奬勵ノ效果ヲ奏スルヤ否ヤト云フコトヲ御尋致シ
マシタガ、ソレニ對シテハ御答ガゴザイマセヌ、何故ニ造船ノ材料ニ對シテ
關稅ヲ免除スルカ、卽チ日本ノ造船事業ノ效果ヲ奏シタイ、造船ノ奬勵ヲシ
タイト云フニ外ナラヌノデアラウト思フノデゴザイマス、此ノ關稅免除ニ依
リマシテ、ドノ位ナ船舶ノ製造ヲサルル御見込デアリマスカ、ソレヲ御答ヲ
願ヒタウゴザイマス
〔國務大臣野田卯太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=75
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076・野田卯太郎
○國務大臣(野田卯太郞君) 念ノ爲ニ確メテ置キマスガ、ドレ程ノ造船ヲ造
ルト云ウテ目下ドレ程ノ造船ヲ造ラネバナラヌト云フコトハ思ッラ居リマセ
ヌガドウ云フ意味デセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=76
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077・内田嘉吉
○內田嘉吉君 唯今申上ゲマシタヤウニ、造船材料ノ免除ニ依テ政府ハ我國
ニ於テドレ程ノ船舶ヲ造リタイト云フ御考デアリマスカ、ソレヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=77
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078・野田卯太郎
○國務大臣(野田卯太郞君) 御答シマス、今日ハ考ヘテ居リマセヌ、今日三
百萬噸ハアリマセヌガ、二百六十四五萬噸ゴザイマス、此船舶ガドナタカノ
演說ニモアリマシタ如ク、繫船センナラヌト云フヤウナ場合ニナッテ居ル、又
船舶ヲ賣ラムトシテモ、日本ガ一番高イデセウ、外國ガ安イデス、ソレデ內
田君ハ今カラ日本ノ船舶ハ五百萬噸ニナスカ、四百萬噸マデ進メルカ、或
ハ三百五十萬噸位要ル積リカト云フ御尋ヂヤラウト思フ、私ガ推測スルノ
ニ······政府ハデス、八八艦隊トカ何トカ云フヤウニ造船ヲ何百萬噸マデ爲サ
ナケレバナラヌトカ何トカ云フコトハ、今日ノ所考ヘテ居リマセヌ、目下船
舶ヲ如何ニシテ使用セシムルカト云フコトニ心配シテ居ル位デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=78
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079・内田嘉吉
○內田嘉吉君 御說明ガ少々要領ヲ得マセヌノデ、重ネテ尙ホ御尋致シマ
ス、唯今ハ日本ノ船舶ハ三百何萬噸アッテ、ソレヲ繋船ヲサセナケレバナラヌ
ヤウナ次第デアルカラ、此改正ニ依テドレダケノ船ヲ造ルカト云フヤウナコ
トハ考ヘテ居ラナイト云フ御話デゴザイマシタガ、サウ致シマスレバ、或ハ
造船奬勵ヲ實行シテ關稅ノ免除ヲ致シマシテ、船ヲ唯〓造ラセル必要ガナイ
ノデアル、從ッテ此改正法中ニ其關稅免除ノ規定ヲ御設ケニナル必要ハナイ、
寧ロ是ハモウ暫ク御〓究ニナッテ、サウシテ果シテ前ノ法律ノヤウニ造船奬勵
法ヲ以テ造船ヲ奬勵スル方ガ宜イカ、又唯今ノ提案ノヤウニ關稅免除ノコト
ヲ取計フガ宜イカ、ソレヲ御〓究ニナル方ガ宜シクハナイノデアリマスカ、
何故ニ今日必要デナイノニ此ノ造船材料ノ免除ヲ御提案ニナリマスカ、此理
由ガ分ラナイノデアリマス、ソレヲ御說明ヲ願ヒタウゴザイマス
〔國務大臣野田卯太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=79
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080・野田卯太郎
○國務大臣(野田卯太郞君) 今日其船ヲ造ルニ政府ガ計畫ガナケレバ補助ハ
無用デアル、造船材料ノ關稅免除ハ無用デアル、一隻造ッテモ稅ノ掛ルノト掛
ラヌノトハ奬勵ニナルコトハ申上ゲル迄モナイ話デ、今政府ガ何百萬噸マデ
之ヲ造ルト云フ豫想ガナイカラ、稅ハ免除スルコトハ要ラヌヂヤナイカト云
フコトハ、一向私ハ分ラヌノデス、海軍ノヤウニ豫算デモ取ッテ船ヲ造ルト云
フナラバ、政府ニサウ云フ責任ガアルトカ何トカ言ハルルケレドモ、御承知
ノ通リ此造船ト云フモノハ民間ノ事業デス、鐵ノ奬勵ヲスルナラバ鐵ハドレ
ダケ造ルカ、又或ル品物ノ免稅ヲ定ムル時ニハ何程之ヲ入ルルカト云フヤウ
ナ計畫ガナケレバ此關稅ヲ決メルコトガナラヌト云フ理窟ハ私ハ少シモナイ
ト思フ、內田君ノ御尋ハ分ラヌト却ッテ思ウテ居ルノデス、是ダケ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=80
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081・内田嘉吉
○內田嘉吉君 甚ダ恐縮デゴザイマスガ、私ニハ少シモ分リマセヌ、恐ラク
ハ滿場ノ諸君ニモ御理解相成ラヌト思フ、何トナレバ先程遞信大臣ハ唯今ノ
海運界ハ船ヲ繫イデ居ル位デアルカラ造船ヲスル必要ガナイノデアリマス、
ドノ位船ヲ造ルカト云フコトハ考ヘナイト云フ仰セガアッタノデアリマス、果
シテ左樣デアリマスルナラバ何モ今急イデ此ノ會期切迫ノ際ニ關稅定率法中
改正法律案ヲ出シテ、サウシテ造船ノ材料ニ對スル關稅免除ヲ御計ヒニナル
必要ガナイデハナイカ、斯ウ云フ御尋ヲシタノデアリマス、併ナガラ幾ラ御
尋ヲシマシテモ、顧ミテ他ヲ言フト云フ御答デアリマシテハ、要領ヲ結局得
マセヌノデアリマスカラ、是デ切ッテ置キマス
〔國務大臣野田卯太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=81
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082・野田卯太郎
○國務大臣(野田卯太郞君) 尙ホ一言申上グテ置キマス、私ノ言葉ガ惡カッタ
カモ知レヌ、抑〓此問題ハドレダケ船ヲ造ルカト、斯ウ云フ御尋デアッタカ
ラ、考ヘテ居リマセヌ、ト云フモノハ、今日ハ此船ガ働キガ出來ズシテ苦心
ヲセネバナラヌヤウナ場合デアルカラ、考ヘテ居リマセヌ、又是ガ有事ノ日
ト云フ時ハデス、サウ云フ場合モアラウト思ッテ居リマスルケレドモ、今日ハ
考ヘテ居リマセヌ、唯ソレダケヲ取ッテ免稅ハ要セヌヂヤナイカト仰シヤルノ
ハ少々酷イヂヤラウト思ヒマス、內田君ニシテ、今日船ヲ何程造ラナケレバ
ナラヌト云フ御尋ニナルノハ、私ハ酷イト思フ、今日ハ考ヘテ居リマセヌ、
二百六十萬噸ノ船ガ繋ガナケレバナラヌヤウナ時代デアリマス、賣ラムトス
レバ他ガ安ウゴザイマスカラ、斯ウ云フ意味デ御話ヲシタノデアリマス、今
船ヲ造ル必要ガナイカラ免稅シテ置クコトハ要セヌヂヤナイカト云フ御話
ハ、私ハ酷イト思フカラ、サウ云フコトヲ申上ゲタノデアリマスカラ、ドウ
ゾ惡シカラズ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=82
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083・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 本員ハ此法案ハ此議會中デ唯一ノ積極的法案デアラウト
思ヒマス、戰後ノ今日最モ必要ト思ヒマス、是非成立ヲ希望スルノデゴザイ
マスガ、如何ニモ會期ガ切迫ヲ致シ、而シテ此法案ニ付マシテハ專門的知識
ヲ要スルノデアリマシテ、餘程質問ニモ時間ヲ要スルコトト考ヘマス、政府
ニ於テハ會期ヲ多少延長ナサルト云フ御考ガアリマセウカ、チヨット伺ッテ置
キマス
〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=83
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084・原敬
○國務大臣(原敬君) 唯今阪谷君ヨリ會期ヲ延長スルカ、シナイカト云フ御
尋デアリマスガ、會期ハ固ヨリ必要ノ場合ニ於テハ延長ヲ致サナケレバナ
ラヌコトハ當然デアリマスガ、併シ今日尙ホ相當ノ審査ヲ仰グノニ······法案
ニ依テハ固ヨリ違ヒマスケレドモ、時モアリマセウト考ヘマス、愈、御審査ガ
終ラズシテ尙ホ幾日カ之ヲ延長スレバ、審査ハ結了スルト云フ場合デアリマ
スレバ、是ハ延長スルヨリ外仕方ガアリマセヌ、併シ左樣ナル場合ニ到著イ
タサヌ限リハ、成ベク延長シナイデ會期ヲ終リタイト考ヘルノデアリマス、
又此關稅法ニ付テモ、成程段々會期モ切迫イタシタ場合ニ提出シタノハ遺憾
ノ次第デアリマスケレドモ、隨分此鐵道竝ニ造船ノコトニ付テハ、財政經濟
調査會ニ於テモ、相當ニ時ヲ費シテ調ベタノデアリマシテ、其結果ニ依テ此
法案ヲ產ミ出スノニ又多少ノ時ヲ要シテ自然遲レタノデアリマス、併シ委員
會トナリマスレバ、或ハ御必要ガアレバ、財政經濟調査會ニ於テ餘程精シク
調べマシタカラ、是等ノ材料ヲ提出スルコトモ出來マセウ、兎モ角モ重大ナ
ル問題デアリマシテ、相當ノ知識經驗ノアル方〓ガ御調査ニナリマシタナラ
バ、サウ長時日ヲ要セズシテ、何レカニ御決定ガ出來ルモノデアルマイカト
思フノデアリマス、會期ヲ延長スル、シナイニ付テ、御答ヲ致ス旁〓此コトヲ
申シテ置ク次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=84
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085・淺田徳則
○淺田德則君 此ノ關稅定率法中改正案ノ特別委員ノ數ハ十五名トシ、其氏
名ハ議長ニ於テ指名セラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=85
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086・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=86
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087・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 淺田君ノ本案ノ特別委員ノ數ヲ十五名トシ、其委
員ノ選定ハ議長ニ一任スルト云フ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官
ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
關稅定率法中改正法律案特別委員
伯爵柳澤保惠君服部一三君子爵前田利定君
男爵村上敬次郞君黑岡帶刀君荒井賢太郞君
男爵小早川四郞君男爵船越光之丞君男爵赤松範一君
男爵〓誠之助君加藤恆忠君菅原通敬君
石橋謹二君佐藤傳兵衞君成〓信愛君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=88
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089・徳川家達
○議長 公爵德川家達君)日程第十、製鐵業奬勵法中改正法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會
製鐵業奬勵法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十年三月二十二日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
製鐵業奬勵法中改正法律案
製鐵業奬勵法中左ノ通改正ス
第四條中「低燐銑鐵製造事業」ノ下ニ「及電氣製鐵事業」ヲ加フ
第七條ノ二帝國內ニ於テ製造シタル鋼材カ船舶ノ建造又ハ修繕ニ使用セ
ラレタルトキハ政府ハ其ノ鋼材ノ製造者ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ奬
勵金ヲ交付スルコトヲ得
第七條ノ三詐欺ノ行爲ヲ以テ前條ノ奬勵金ノ交付ヲ受ケタル者ニ對シテ
ハ其ノ金額ヲ償還セシム
前項ノ規定ニ依ル償還金ハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ
得但シ先取特權ノ順位ハ國稅ニ次クモノトス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際電氣製鐵事業ヲ營ム者ニ付テハ第九條乃至第十一條ノ規定ヲ
準用ス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=89
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090・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 此改正案ノ要點ハ電氣製鐵事業ニ對シマスル
免稅範圍ノ擴張ト、竝ニ內地產ノ造船用鋼材ニ對スル奬勵金ヲ支給スルト云
フ、此二點デアリマス、第一ノ電氣製鐵事業ハ我國ニ於キマシテハ最近ノ發
達ニ係ッテ居リマシテ、比較的小規模ノモノヲ以テ事業ノ經營ヲ爲スコトガ出
來ルノミナラズ、我國ニ於キマシテハ豐富ナル水力電氣ヲ使用シテ、石炭ノ節
約ヲ圖リ得ルモノデアリマスルカラシテ、特ニ奬勵ノ値ガアルト認メマシタ
ノデアリマス、故ニ財政調査會ノ決議モ酌量イタシマシテ、是マデ免稅シテ
居リマスル低燐銑鐵ト同樣、年產額二千五百噸以上ノ設備ヲ爲ス其會社ニ對
シマシテハ、免稅ヲ行ハムトスルノデアリマス、第二ハ造船用ノ鋼材ニ付マ
シテハ、關稅定率法ノ改正ニ依リマシテ、其造船ニ用ヒマス鋼材ノ輸入稅ヲ
免除スルコトニ相成リマシタ、ソレデ是ト權衡ヲ得セシムル爲ニ、內地デ製
造イタシマスル鐵材ヲ造船ニ使用イタシマスル時ニ對シマシテハ、其使用シ
タ者ニ對シマシテ奬勵金ヲ與ヘムトスルノデアリマス、ソレハ丁度外國カラ
參リマスル鋼材ニ付テ免稅ヲ致シマスルカラシテ、丁度其免稅ニ相應シタル
モノヲ、內地ノ鋼鐵ヲ用フレバ奬勵金ヲ與ヘヤウト云フ精神デゴザイマス、此
二ツガ要點ニナッテ居リマス、ドウカ御贊成アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=90
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091・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御質疑モ、御發言モナイト認メマスカラ、特
別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
製鐵業奬勵法中改正法律案持別委員
伯爵堀田正恒君子爵西大路吉光君淺田德則君
男爵斯波忠三郞君男爵藤堂高成君男爵島津健之助君
今井五介君近岡理三郞君秋山源兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=91
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092・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十一、第十二、第十三ハ同一委員ニ付託セ
ラレマシタカラ委員長ノ報告ハ三案束ネテ煩ハシタイト考ヘマス、御異存ゴ
ザイマセヌカ
[「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=92
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093・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=93
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094・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十一、會計法改正法律案、第十二、明治三
十九年法律第三十四號中改正法律案、第十三、臨時國庫證劵法中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報〓、林伯爵
會計法改正法律案
右別册ノ通修正セリ依テ及報告候也
大正十年三月二十二日
右特別委員長
伯爵林博太郞
貴族院議長公爵德川家達殿
特別委員ノ修正ニ係ル部分ノミヲ印刷ス
小字ハ修正文、ハ同削除ノ符號ナリ
第十條豫備金ヲ以テ支辨シタルモノハ其ノ第一像備金支出ニ係ルモノハ
議
年度經過後其ノ第二豫備金支出ニ係ルモノハ次ノ常會ニ於テ帝國議會ニ
提出シ其ノ承諾ヲ求ムルコトヲ要ス
第三十一條政府ニ於テ賣買貸借請負其ノ他ノ契約ヲ爲サムトスルトキハ
勅令ヲ以テ定メタル場合ヲ除クノ外總テ公〓シテ競爭ニ付スヘシ
國務大臣前項ノ方法ニ依リ契約ヲ爲スヲ不利ト認ムル場合ニ於テハ指名
競爭ニ付シ又ハ隨意契約ニ依ルコトヲ得但シ不動產賣拂ニ付テハ此ノ限
ニ任ラス
會計法改正法律案特別委員會ノ報告ニ對スル少數者意見
右貴族院規則第五十條及第四十二條ニ依リ提出候也
大正十年三月二十二日
伯爵林博太郞
子爵八條隆正
早川千吉郞
鎌田勝太郞
貴族院議長公爵德川家達殿
會計法改正法律案特別委員會ノ報告ニ對スル少數者意見
本案ハ原案ノ通可決スヘキモノナリトス
明治三十九年法律第三十四號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十年三月二十二日
右特別委員長
伯爵林博太郞
貴族院議長公爵德川家達殿
臨時國庫證劵法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十年三月二十二日
右特別委員長
伯爵林博太郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=94
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095・林博太郎
○伯爵林博太郞君 唯今日程ニ上リマシタ會計法改正法律案外二件ノ委員會
ノ經過ヲ御報告イタシマス、一、會計法改正法律案、此改正ノ主ナル點ヲ簡
單ニ申上ゲマス、一、從來政府ノ金ヲ金庫制度ニ依リマシテ日本銀行ニ保管シ
テアリマシタ、之ヲ政府ノ財政ト一般ノ金融トノ關係ニ鑑ミマシテ今囘預金
制度ニ改メルト云フコトニ相成リマシタ、卽チ此改正法ノ第五條デアリマス、
第二ハ、第二豫備金支出ニ關スル事後承諾ト云フコトノ提出時期ヲ繰上ゲタ
點デアリマス、第一豫備金ノ支出ハ是ハ總テ豫算項目ニ揭グテアルモノデアッ
テ、其不足ニ對シマシテ補充スルト云フモノデアリマスルカラ、從前ノ通リ
ニ此ノ年度經過後ノ帝國議會ニ提出スルト云フコトニ致シマシタ、此ニ第二
豫備金ト云フコトヲ案出シテ、第二豫備金ノ支出ノ性質ハ是ハ第一豫備金ト
ハ全然異ッテ居ル、全ク豫算外ノモノニナッテ居ル、此故ニ成ベク年度ノ經過
ヲ待タナイデ最近ノ常會、卽チ臨時議會デナイ帝國議會ニ提出シテ承諾ヲ求
メルト云フコトニナッタノガ第二ノ改正ノ點デアリマス
〔副議長候爵黑田長成君議長席ニ著ク〕
卽チ第十條デアリマス、三、決算提出時期ノ短縮、從來ハ翌々年ニナラナケ
レバ決算ガ出ナクテ我〓議員トシテモ隨分之ニ付テハ色〓困難ヲ感ジタノデ
アリマスルガ、今囘ハ會計檢査院ノ制度ヲ改正シマシテ翌年ノ議會ニ提出ス
ルト云フ敏捷ナ方法ヲ執ルコトニ改正シタ點デアリマス、四、隨意契約ト云
フコトヲ加ヘタ點デアル、從來ハ競爭入札ト云フコトノミデ以テヤッテ居ッタ
ノデアリマスルガ、此ノ競爭入札ト云フ點ニ付テハ隨分弊害ガ多イノデアリ
マスルカラシテ、少シク之ニ融通ノ途ヲ講ジタラ宜カラウ、却ッテ競爭入札ノ
規定ニ依ル爲ニ、時ニハ國家ノ損失ヲ自然招クト云フコトデアル、此故ニ
原則ハ競爭入札デアルケレドモ、此弊害ヲ防グ爲ニ各省大臣ハ之ヲ不利ト
認メタ際ニハ、指名競爭若クハ隨意契約ニ依ルコトガ出來ルト云フヤウニ直
シタノデアリマス、卽チ三十一條デアリマス、五、時效ニ關シマシテハ從來
ノ地位ヲ變更シマシテ、其ノ甚ダ不備ナル點ヲ補充シタノデアリマス、成ベ
ク民法ノ規定ニ依ルト云フコトニ改メタ點デアリマス、六、日本銀行ハ此ノ
國庫金出納、國債事務、政府ノ有價證劵取扱ニ關シテ總テ會計檢査院ノ檢査
ヲ受ケルト云フ規定ヲ設ケタノデアリマス、デ此預金制度採用ノ結果ト致シ
マシテ日本銀行ノ賠償責任ト云フモノガ從來ト違ッテ民事上ノ關係ニ變ッタノ
デアリマス、會計檢査院ハ日本銀行ノ檢査ヲ致シマスケレドモ、若シモ問題
ガ起リ事ガ起ッタ際ニハ是ハ雙方民法關係ノ決定ニ待ツコトニ相成ッタ次第デ
アリマス、七ハ第十一條ノコトデアリマス、十一條ニ「政府ハ豫算ニ定ムルモ
ノ及特ニ帝國議會ノ協賛ヲ經タルモノヲ除クノ外災害事變其ノ他避クベカラ
ザル事由アル場合ニ於テハ翌年度ニ亙ル契約ヲ締結スルコトヲ得」ト云フコ
トガ這入ッテ居リマス
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
卽チ約五百萬圓以内ノ金ノコトデアリマスルガ、從來ハ例ヘバ三月ノ末ニ遞信
省ガ燒ケルト云フヤウナコトガアレバ、ソレハ追加豫算デ出スト云フコトニ
ナッテ居リマシタ、之ヲ恰モ今囘十一條デ第三豫備金ト云フヤウナ風ノ款ノア
ル所ノ規定ガ出來マシテ、先ヅ裁量ニ依テ五百萬圓以內ノ金ヲ出スコトガ出
來ルト云フ融通ノ利イタ箇條ガ加ッタ次第デアリマス、大體此改正ノ骨子ト云
フモノハ其邊ノモノデアルト考ヘマス、精シイコトハ此速記錄ヲ御覽ヲ願ヒ
やす、質問應答ハ隨分是ハ囘數ヲ重ネテ致シタノデアリマスルガ、是モ省略
ヲ致シテ置キマス、デ討論ニ這入リマシテ一委員カラシテ此三十一條ノ第二
項ニ付マシテ總理大臣ニ質疑ヲ致シタノデアリマス、「國務大臣前項ノ方法ニ
依リ契約ヲ爲スヲ不利ト認ムル場合ニ於テハ指名競爭ニ付シ又ハ隨意契約ニ
依ルコトヲ得但シ不動產賣拂ニ付テハ此ノ限ニ在ラス」先ホド申上ゲマシタ
自由ノ此競爭ニ依ラナイデ、其他ノ指名競爭竝ニ隨意契約ニ依ルコトガ出來
ルト云フコトハ、隨分是ハ自由裁量ニ依ルコトデアッテ濫用ノ源ニナリハシナ
イカ、國務大臣其人ニモ依リマスルケレドモ、此規定アルガ爲ニ却ッテ濫用ヲ
來ス虞ハナイカト云フコトヲ確メタノデアリマス、總理大臣ハ之ニ對シマシ
テ二ツ要領ヲ答ヘラレタノデアリマス、一、內閣ガ相談ヲ致シテ一定ノ標準ト
ナル之ガ內規ヲ作リマシテ、之ニ依テ各國務大臣ガソレヲ標準トシテ取計フ
ト云フコトニスルコト、二、若シ此內規ニ依ルコトガ不利デアルト云フ際ガ
アレバ是ハ他ニモ例ガアルガ當該大臣ト大藏大臣トガ能ク相談ヲシテ之ニ對
シテ定メルト云フ內規ヲ作ル、卽チ一ハ一般ノ內規、二ハ特殊ノ內規、之ニ依
リマシテ濫用ノ起ラヌヤウ、餘リ自由裁量ニ陷ラナイヤウニ統一ヲ圖ル方法
ヲ講ズルノデアルト云フコトヲ確メ得タノデアリマス、討論ノ際ニモ相當ニ
意見ハ出タノデアリマスルガ、是ハ省略ヲ致シマス、是レニ修正ノ動議ガ出タ
ノデアリマス、其ノ修正ノ動議ハ大體二ツノ點ニ歸著スルノデアリマス、ソレ
ハ第十條ニアリマスル所ノ「豫備金ヲ以テ支辨シタルモノハ其ノ第一豫備金
支出ニ係ルモノハ年度經過後其ノ第二豫備金支出ニ係ルモノハ次ノ常會ニ於
テ帝國議會ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルコトヲ要ス」ト斯クアリマス文字ノ中
デ「豫備金ヲ以テ支辨シタルモノハ」ト云フ所ノ下ノ「其ノ第一豫備金」云々カ
ラ丁度「豫備金支出ニ係ルモノハ」迄ヲ削リマシテ、サウシテ行カウト云フノ
ガ修正ノ一ツノ要點、モウ一ツハ此十條ノ中ノ「次ノ常會ニ於テ」トアルヲ「次
ノ議會ニ於テ」ト修正ヲスルノデアリマス、ソレカラ次ニ三十一條ノ第二項ヲ
削ラウト云フノデアリマス、三十一條ノ第二項ト云フノハ「國務大臣前項ノ方
法ニ依リ契約ヲ爲スヲ不利ト認ムル場合ニ於テハ指名競爭ニ付シ又ハ隨音契
約ニ依ルコトヲ得但シ不動產賣拂ニ付ラハ此ノ限ニ在ラス」先ホド申上ゲマ
シタ、是ハ自由裁量ノ弊ガアルカラ之ヲ除カウト云フ二ツノ點ニ付テノ修正
ガ動議サレタノデアリマス、其理由ヲ簡單ニ述ベテ見マスレバ、此憲法竝ニ
會計法制定ノ當時ノ動機ニ鑑ミマシテ、支出ヲスル議會ノ協贊權ヲ重ンジ
テ支出スルト云フコトニ付テ、取敢ヘズ協賛ヲ求メルト云フノガ其精神デア
ル、事後承諾ヲ求メルト云フコトノ原理ハ至極此ノ改正案ノ精神トシテハ結
構デアルガ、第一第二豫備金ヲ區別シテ斯ノ如クヤッタト云フコトハ、却ジテ
徹底シナイカラシテ之ヲ二ツニ分ッタ方ガ宜イト云フ理由ニ依テ、此修正案
ガ提出サレタノデアリマス、其動議ガ提出サレタノデアリマス、之ニ付テハ贊
成モアリマシタシ、又反對意見モ述ベラレタノデアリマスガ、是ハ後ニ演說
モアルコトデアリマスカラ、私ハ却ッテ省略シテ置イタ方ガ宜カラウト思ヒマ
ス、採決イタシマシテ、其結果ハ四ニ付二ノ多數ニ依リマシテ、修正案ガ可
決ニ相成リマシタ次第デアリマス、此案ニ付マシテハ希望ガ出テ居リマス、
第十一條卽チ政府豫算ニ定ムルモノ及ビ特ニ帝國議會ノ協賛ヲ經タルモノヲ
除クノ外、災害事變其他避クベカラザル事由アル場合ニ於テハ翌年度ニ於テ
契約ヲ締結スルコトヲ得、是ハ隨分國務大臣ノ遣リ方ニ依テハ不都合ナ弊ヲ
生ジ易イノデアル、動モスレバ憲法ニ違反シ議會ノ協賛權ヲ侵スヤウナコト
ガアリ得ルノデアルカラシテ、本條ノ適用ニ付テハ、十分考慮注意シテ然ル
ベシト云フコトガ一ツデアリマス、ソレカラ、會計法ノ改正ノ結果トシテ日
本銀行ノ負擔ガ非常ニ輕クナル譯デアル、此故ニ日本銀行ハ義務トシテ其餘
力ノ綽々タル所ヲ以テ、一般經濟界ノ爲ニ、大ニ努力シテ貰ヒタイト云フ希
望ガ出マシテ、是ハ特別委員會ノ一致ノ決議ヲ以テ希望ガ成立ッタ次第デアリ
やじ、以上ガ此會計法ニ付マシテノ報告デゴザイマス、次ハ明治三十九年法
律第四號中改正法律案、此委員會ノ經過ヲ御報告イタシマス、是ハ會計法ノ
改正ニ伴ヒマシテ、大藏省證劵條例ヲ廢止スルト云フコトニ相成ッタノデアリ
マス元來三十九年法律第三十四號ト云フモノハ國債ニ關スル法律デアルノ
デアリマス、其要領ヲ簡單ニ申シマスレバ、-第二條ニ於キマシテ、國債
ニ對シテハ無記名利札附證劵ヲ發行ストアルノデアリマス、從來デモ割引債
劵トカ、或ハ無利子債券ト云フモノガ發行サレテ居ルノデアル、併シ第二條
ノ爲ニ恰モ割引債劵、無利子債劵ト云フモノハ、國債デハナイヤウナ感ガアッ
タノデアリマス、此際改正ヲ致シマシテ、之ヲ包含シテ、序ニ此利札附ト云
フモノヲ取除キ、割引債劵モ無利子債劵モ包含スルヤウニ、廣ク規定ヲ定メ
タト云フコトガ改正案ノ第一、二ハ國債ノ登錄、卽チ登錄償却ニ付マシテ、
一率ニ一箇月間停止トナッテ居リマスノヲ事務ノ敏捷如何ニ依テ二日デモ
週間デモ一箇月以內ト云フコトニ改メタノデアリマス、三割引ノ方法デ發行
シタ國債ノ消滅事項ハ五年ト致シタノデアリマス、併シ是ハ普通ハ一年以內
ニヤッテ居ルノデアリマス、四、大藏省證劵條例ヲ廢止スル、先程申シマシタ通
リ、廢止ト云フコトニ相成ッタト云フコトハ、法律第三十四號中ノ改正ノ最モ
主ナル要領デアリマス、是ハ討論採決ノ結果全會一致ヲ以テ原案通リ可決ニ
相成リマシタ、次ハ臨時國庫證劵法中改正法律案、此委員會ノ經過ヲ終リニ
御報告イタシマス、是ハ御手許ニアリマス法律案ノ中ニアル通リ、第三條ガ
除カレタト云フ簡單ナ案デアリマス、第三條ト云フモノハドウ云フモノデア
リマスカト云フト、臨時國庫證劵割引ノ方法ヲ以テ之ヲ發行スルコトヲ得ト
アル、然ニ是ハ唯〓ノ三十九年ノ法律第三十四號ノ法律ノ中ニ此方ノ規定ガ
出來マシタカラ、茲デ無用ナモノニナリマシタ、故ニ之ヲ除イタ、其他二項
トシテ「前項ノ臨時國庫證劵ニ關シマシテハ、大藏省證券條例第七號第四條、
第二號第五條以下ノ規定ヲ準用ス」トアルノデアリマスガ、此臨時國庫證劵
ニ關シテ、先程申シタ通リ大藏省證劵條例ト云フモノガ御廢止ニナリマシタ、
一項モ二項モ無用ノ長物ニナリマシタ、依テ是ハ討論採決ノ結果全會一致ヲ
以テ可決ニ相成ッタ次第デアリマス、此段簡單ニ委員會ノ經過ヲ御報告イタシ
マス
〔江木翼君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=95
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096・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 江木君ハ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=96
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097・江木翼
○江木翼君 唯今委員長ノ報〓ニ關聯イタシテ、委員長ニ質問ヲ致シタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=97
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098・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=98
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099・江木翼
○江木翼君 唯今會計法改正法律案ノ結果ニ付テ御報告ノ際ニ、四對二ト云
フ多數ヲ以テ修正案ガ可決シタ、斯ウ云フ報告デゴザイマシタガ、今朝程書
記官ヨリ朗讀サレマシタ如ク、會計法改正法律案ト委員會ニ於ケル所ノ少數
意見ト云フモノガ報〓ニナッテ居ルノデアリマス、此報告ニ依テ見マスト、委
員長初メ四人ノ署名ガシテアルノデアリマス、唯今ノ御報告ト多少異ッテ居ル
ヤウニ感ジマスルノデゴザイマスガ、我〓ノ手許ニ現ニ參ッテ居ルヤウニ思フ
ノデアリマスガ、其點ハ如何ナモノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=99
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100・林博太郎
○伯爵林博太郞君 ソレハ一委員ガ少シ遲レテ御出ニナッタ次第デアリマシ
テ、修正案採決ノ際ハ四對二デアッタノデアリマス、少數意見ニ付テノ、四名
ノ中ノ一名ハ是ハ入レナイノデアリマスカラ、是ハ取消シテ然ルベキモノト
考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=100
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101・江木翼
○江木翼君 將來ノ先例ニナルコトデアルト思ヒマスガ故ニ、能ク確メテ
置キタイト思ヒマスガ、議員、各員ニ配付サレテアル所ノ、此報〓ノ中ニア
リマス、一員ノ名ハ間違ッタコトト承知シテ宜シイノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=101
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102・林博太郎
○伯爵林博太郞君 左樣デアリマス、一人ノ名前ハ間違ッテ居ッタノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=102
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103・江木翼
○江木翼君 更ニ伺ヒマスルガ、是コソ將來ノ先例ニナルコトト思フノデア
リマスガ委員長ハ可否同數ノ場合ニ此意見ヲ發表スルト云フコトガ、貴族
院規則ニアル、然ニ委員長トシテ、可否同數ノ際ニ發表セラレタ所ノ、所謂表
決權、又委員長ガ委員ノ一人トシテ、意見ヲ發表セラルヽ所ノ所謂投票、此
二ツガ委員長ニハアルト云フコトデ、委員長ト云フモノノ名ガ此ニ書イテア
ルノデアリマセウカ、此點ハ規則ノ解釋ト致シマシテ、將來ノ先例ニモナルコ
トト思ヒマス故ニ一應此點ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=103
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104・林博太郎
○伯爵林博太郞君 唯今ノ江木君ノ御質問ハ委員長トシテ御答ヘスルヨリハ
議長ヨリ御答ヘスル方ガ然ルベキモノト考ヘマス、仍テ議長ヨリ何レ御答ガ
アルコトト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=104
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105・徳川家達
○議長 公爵徳川家達君)江木翼君ノ唯今林特別委員長へノ御質問ハ、寧ロ
議長カラ御答ヘシタガ適當デハナイカト考ヘマス、議長トシテ一向差支ナイ
ト認メタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=105
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106・江木翼
○江木翼君 果シテ然ラバ委員長ガ委員トシテ事實表決ヲ認メタカ否ヤ、若
シ委員會ニ於テ表決ヲ認メナカッタ方ガ少數權者ノ中ニ其名ヲ列セラルルト
云フコトデアリマスト、事實ヲ僞ルト云フ結果ニナルト思フノデアリマス、
唯今特別委員長ノ御報告ニ依リマスレバ、四對二ノ多數ヲ以テ修正案ガ可決
シタ、斯ウ云フコトダケデ委員長ガ果シテ表決ノ數ニ加ハラレタルヤ否ヤト
云フコトハ明確デアリマセヌガ、其ノ御報告ニ依リマスレバ確ニ加ハッテ居ラ
レヌヤウニ拜聽イタシタノデアリマス、若シ左樣デアルト致シマスレバ委員
長ハ投票權ヲ行使シナカッタト云ヘバ、殘ル所ハ二人ダケデアル、二人ダケノ
意見デアリマシ·タナラバ、出席者ノ三分ノ一ニナッテ居ラヌ、斯ウ云フ結果ト
致シマシテ少數意見トシテ成立シナイ結果ニナルト思フノデアリマス、此點
ハ事實ニ關スルコトデアリマスルガ故ニ、委員長カラ其事實ヲ御述ベニナル
コトガ然ルベキコトデアラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=106
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107・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 江木君ニ申シマス、今ノハ議長へノ御質問デハナ
クシテ、特別委員長へノ御質問ニ途中デ變ッタヤウニ考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=107
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108・江木翼
○江木翼君 左樣デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=108
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109・林博太郎
○伯爵林博太郞君 唯今江木君ヨリ申サレマシタ通リ四ニ對スル二デアリマ
スカ、委員長ハ其ノ表決ニハ加ッテ居ラナイノデアリマス、其他ノ點ニ付マシ
テ一名ノ委員ガ加ハッタト云フコトハ少シ違法デアルカモ知レマセヌガ、其他
ノ條項ニ付テハ差支ナイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=109
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110・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 江木君ニ申シマスガ···
〔江木翼君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=110
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111・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) チヨット御待チヲ願ヒマス、貴族院規則ノ第四十
二條ニ「常任委員會ニ於テ少數ヲ以テ廢棄セラレタル意見ヲ議院ニ提出セ
ムト欲スル者、出席委員三分ノ一ニ及フ時ハ委員會ノ報〓ト倶ニ其ノ意見ヲ
提出スルコトヲ得」此明文ノアルコトハ江木君ニ於テ勿論御承知デアラウト
思フ、委員長ハ矢張出席委員ト看做シ得ルト云フ解釋ヲ執ッテ居ルノデアリ
PX
〔江木翼君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=111
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112・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) ソレデ是ハ先例ハナイコトデアリマスガ、先例ト
モナルコトデアリマスカラ、唯今議長ノ解釋通リデ滿場多數ノ諸君ガ御異存
アルヤ否ヤヲ採決シテ置カウト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=112
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113・江木翼
○江木翼君 モウ一ツ其事實ノ點ニ付テ私ハ申上ゲタイト思フノデアリマ
ス、唯今林伯ノ御說明ニ依リマスルト、四對二ノ多數ヲ以テ修正案ガ決シタ
ト云フコトデアリマス、而シテ委員長ハ投票權ヲ行ハナカッタ、卽チ六人ト委
員長ヲ加ヘマシテ七人デアリマス、七人ノ三分ノ一ト申シマスレバ三人ノ人
ガ居ラナケレバ少數意見ニナラヌノデ、二人デハ少數意見ニハナラヌノデア
リマス、從ヒマシテ此四十二條ヲ準用イタシマシタル所ノ貴族院規則第五十
條ニ私ハ此報〓ハ違反シテ居ルモノト私ハ思フノデアリマス、此點ニ付テ若
シ委員長ニ於テ御辯明ガアリマスナラバ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=113
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114・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 今ノハ委員長へノ質問ト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=114
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115・江木翼
○江木翼君 委員長ヨリ御辯明ガアッテ然ルベキコトト思ヒマス、私ハ議長ガ
此問題ヲ決ニ御採リナサルベキ理由ガナイト思ヒマス、其點ヲ御聞キシタイ、
事實ガ七人ノ出席ノ中二人シカ賛成者ガナイノデアリマスカラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=115
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116・林博太郎
○伯爵林博太郞君 私ハ委員會ノ經過ニ付テノ事實ニ付テハ御答ヘモシ、御
報〓モ致シマスガ、唯今ノ御質問ノ議論ニ付マシテハ唯〓御答ヲ致シマセヌ
〔江木翼君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=116
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117・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) チヨット御待チヲ願ヒマス、今其先例ガアルヤウニ
考ヘマスカラ今其先例ヲ調ベテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=117
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118・江木翼
○江木翼君 是ハ此少數息見ノ報〓ガ出テ居リマスルノガ元ニナッテ居ルト
思ヒマスガ、私ノ質問ノ元ニナッテ居ルノデアリマスガ、可ナリ此事實ヲ本
ニシテ之ヲ決セラレルト云フコトニナリマスルト、重要ノ事デアルト思ヒマ
スガ、此案ノ議事ハ他日ニ廻サレルト云フコトハ出來ナイノデアリマセウカ、
此點ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=118
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119・藤田四郎
○藤田四郞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=119
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120・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 今ノハ動議デハゴザイマセヌ、唯今ノ江木君ノハ
他日ニ延バシ得ルヤ否ヤ議長ヘ御尋ト考ヘマシテ、早速藤田四郞君ノ賛成ガ
ゴザイマシタガ、今ノハ藤田君ノ誤解ト考ヘマス、他日ヨリハ暫時日程ノ變
更ヲ致シタラドウデゴザイマセウ、其中ニ先例ヲ調ベサセマスカラ···
[「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=120
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121・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) ソレガ一番便利デハナイカト考ヘマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=121
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122・徳川家達
○議長(公爵徳川家產君) 御異議ナケレバ日程第十一、十二、十三ハ暫時保
留イタシマス、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=122
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123・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=123
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124・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十四、國有財產法案、政府提出、衆議院送
付第一讀會ノ續、委員長報〓高橋琢也君
國有財產法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
大正十年三月二十二日
右特別委員副委員長
高橋琢也
貴族院議長公爵德川家達殿
〔高橋琢也君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=124
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125・高橋琢也
○高橋琢也君 國有財產法案ノ特別委員會ノ結果ヲ御報〓イタシマス、此委
員會ハ前後四囘開會イタシマシテ、御承知モゴザイマスル通リ此法案ハ各省
ノ關係ノミナラズ植民地、北海道、樺太、朝鮮、臺灣ニ迄關係ヲ及ボシテ居
リマスル、誠ニ廣イ法案デアリマスル故ニ、是ニ關係ヲ致シマシテ已ニ政府
カラ參照トシテ諸君ノ御手許ニ參ッテ居リマスル法律命令其他ノ條規、地種名
稱區別其他ガ二十七モアルト云フ位ノモノデアリマシテ、是等ニ皆改廢ガ及
ンデ居リマス、故ニ此規則ヤ法律ニ關係イタシマシタダケデモ容易デゴザイ
マセヌノデ、各省ノ中カラ其主ナル關係ノ省、卽チ大藏省、內務省、文部
省、農商務省、此四省ノ政府委員ノ出席ヲ求メマシテ、各委員ヨリ精シイ御
質問ガゴザイマシタ、政府委員モ丁寧ニ一々答辯ヲセラレマシタ、是等ヲ申
上ゲマスルト非常ニ時間ガ掛リマスカラ、精シク申上ゲマセヌガ、其中デ一
番重要ナ問題デゴザリマシタノハ、之ヲ凡テ國有財產ナルモノヲ其管理ヲ統
一スルト云フノガ此法ノ精神ノヤウデゴザイマスシ、又是マデ關係ヲシテ居
リマシタ今申上ゲル二十七箇ノ法規ガ改廢セラレマスル、之ヲ統一スル、斯
ウ云フ此二ツノ事柄ガ此法ノ精神ト見エマス、ソレ故ニ御質問ノ中ニモ、殊
ニ森林原野、是等ニ付マシテハ大分ヤカマシイ御質問ガゴザリマシタ、殊ニ
大藏大臣ガ總體ニ管理ヲセラレテ、サウシテ其官有地若クハ所謂國有地デゴ
ザイマスル、ガ、ソレカラ國有森林原野、ソレ〓〓主管ガ違ヒマスル爲ニ、或
ハ大藏大臣ガ之ヲ一般ニ管理セラルヽト云フコトニナリマスルト、遂ニ他ノ
各省ノ方ハ委任管理ト云フヤウナコトニナリハセヌノデアラウカ、又大藏大
臣ガ凡テノ國有財產ヲ管理セラルヽト斯ウ云フコトニナルト、ドッチモ各省ノ
主管ト此責任ガドチラニ在ルモノデアルヤラ、斯ウ云フ疑モ生ジマシタヤウ
デアリマシタ、是等ニ付テモ隨分ヤカマシイ御質問ガゴザイマシタ、ソレカ
ラ今一ツニハ御承知ノ如ク國有森林原野ハ非常ニ大キナモノデゴザイマス
ル、其經營ハ財政ノ主管タル大藏省デ若シ之ヲ管理セラルヽト斯ウ云フヤウ
ナ意味ガゴザイマスルト、矢張收利ノ方ニ傾キハシナイカ、サウスレバ森
林經濟ノ運用ノ上ニ影響ヲ受ケハシマイカ、斯ウ云フ點ニ付テモ御質問ガア
リマシタ、是等ニ向ッテ政府委員ハ丁寧深切ニ一々答辯ヲセラレマシタ、其答
辯說明ニ依リマシテ委員ハ皆疑點ヲ氷解セラレタヤウデアリマス、唯茲ニ一
ツ問題トナリマシタノハ、本法案ノ第五條ノ三項ニ「神社、寺院又ハ佛堂ノ合
併シタル場合ニ於テ之ニ因リ其供用ヲ止メタル國有財產ヲ其ノ合併シタル神
社寺院又ハ佛堂ニ讓與スルトキ」是ガヤカマシイ問題ニナリマシテ、是マデ
勅令デ是ハ實際ヤッテ居ラレル、今囘玆ニ法律ガ規定セラレタノデゴザイマシ
テ、此法律ガ出ル以上ハ凡テ政府ハ大ニ之ヲ奬勵シハシマイカ、從來是ニハ
非常ナル弊害ガアリト聞イテ居ルガ、ソレハ如何、斯ウ云フ點デゴザイマシ
タ、若シサウ云フコトニナルト、從來非常ニ弊害ノアッタモノデアル、之ニ向ツ
テハ政府ハドウ云フ意見デアルカト云フコトデゴザイマシタ、政府委員ハ丁
寧ニ之ニ向ッテ答辯セラレマシタ、事ノ要旨ハ、政府ニ於テモ其弊害ノアッタ
コトハ認メテ居ル、故ニ大正七年地方官會議ニ於テ內務大臣カラ大ニ此合併
ノコトニ付テハ注意ヲスルヤウニ、是マデ種々ノ弊害モアルカラシテ、其弊害
ニ亙ラヌヤウニト云フ厚イ注意條項ヲ達シテゴザイマスル、ソレヲ讀上ゲマ
スルト、長文デアリマスカラ、時間ヲ費ヤシマスカラ申上ゲマセヌ、又丁度大
正九年マデ、明治三十一年カラ十五年間ニ亙リマシテ、神社ノ合併セラレマ
シタノガ七萬四千九百三十七ゴザイマス、佛堂寺院ト云フ方ハ、大正四年ヨ
リ大正九年マデノ間ニ於テ三百四十四件シカゴザイマセヌ、至ッテ少ナウゴザ
イマス、神社ノ方ハ非常ニ多ウゴザイマス、然ニ初ハ年々一萬カラ一萬五千
ト云フヤウナ數デゴザイマシタガ、昨今ハ四五千ト云フ數ニ減ジマシタ、ノ
ミナラズ政府委員ノ申サレルニハ、今後ハ固ヨリ斯ウ云フ注意ヲスル位デア
ルカラ決シテ奬勵スルト云フヤウナ意味ヲ有ッテ居ラナイ、斯ウ云フコトデゴ
ザイマシタ、デ委員ノ一人ハソレナラバドウカ政府ニ於テ内務大臣ト文部大
臣ト此ノ本議場ニ於テ之ヲ奬勵シナイト云フコトヲ言明シテ貰ヒタイ、斯ウ
云フ希望ガ出マシタ、此希望ニ對シマシテハ委員會ハ全會一致ヲ以チマシテ
此希望ヲ可決イタシマシタ、就キマシテハ此法案ハ此希望ノ外ハ總テ原案ノ
通リ、尤其原案ト申シマスル中ニ、政府ノ原案ニ對シマシテ本法案ノ第十
三條ニ於テ境界調査ノコトデゴザイマスガ、隣接地ノ所有者ト云フ下ヘ「其
ノ他」ト云フ三字ガ這入リマス、ソレカラ境界査定ニ對シ不服アルトキハ、「ト
キハ」ハ不服アル「者ハ」トナリマスル、其下ニ「其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ六
十日內ニ」ト云フ、斯ウ云フコトヲ行政裁判所へ出訴スルコトガ出來ル、見たく
他ノ方ニ既ニ規定ガアルニ依テ是ダケハ削ッタラ宜カラウ、斯ウ云フノガ衆議
院ノ問題ニナリマシテ、衆議院デ修正ニナリマシタ、此衆議院ノ修正通リ委
員會ハ全會一致デ可決ニナリマシテゴザイマス、其他ハ時間モゴザイマセヌ
カラ、餘リ長クシテ質問ノコトヲ申上ゲル必要ハナカラウト存ジマスノデ、此
段報告ニ及ビマス
〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=125
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126・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 此際ニ唯今委員長ヨリノ報〓ニ從ヒマシテ當局
ヨリ言明ヲ致シテ置キマス、國有財產法第五條第三號ノ規定ハ現行ノ明治三
十九年勅令第二百二十號ノ規定ヲ踏襲シタモノデアリマス、之ニ依テ寺院又
ハ佛堂ノ合併ニ關係シマシテ、從來ノ方針ヲ變更シ濫リニ寺院佛堂ノ合併ヲ
奬勵スルコトハ致シマセヌ、是ダケハ言明イタシテ置キマス
〔政府委員小橋一太君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=126
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127・小橋一太
○政府委員(小橋一太君) 大臣ガ出マシテ言明イタシマス都合デアリマシタ
ガ、差支ガアリマスルノデ、私ガ代ッテ申上ゲマス、合併ヤ土地ノ讓渡ニ付マ
シテハ、神社ノ合併ノ場合ニ於キマシテモ、唯〓文部大臣ヨリ言明イタシマ
シタト全ク同樣ノ趣旨デゴザイマシテ、神社ノ合併ニ付マシテハ、輕々ニ致
スベキモノデアリマセヌカラシテ、從來モ其合併ハ容易ニ致サセナイコトニ
注意ヲ拂ッテ居ッタノデゴザイマス、此度從來ノ勅令ニ規定アッタノヲ法律ニ
移ッタカラト申シマシテ、其ノ合併ヤ土地ノ處分ニ依テ合併ヲ奬勵スルコトハ
少シモ致シマセヌ積リデアリマス、左樣御承知ヲ願ヒタウゴザイマス
〔男爵千秋季隆君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=127
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128・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 千秋男爵ハドウ云フコトデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=128
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129・千秋季隆
○男爵千秋季隆君 私ハ此際內務次官ヨリ內務大臣ノ代リトシテ御辯明ニナ
リマシタケレドモ、併ナガラ内務省ノ代表トシテ文部大臣ガ言明サレルコト
ト同一デアルト云フコトデアリマスレバ宜シウゴザイマスガ、私ガ實ハ此委
員曾ニ於キマシテ神社合併ト云フコトニ付テ、從來十數年以來今日ニ至ルマ
デ其數ハ餘程何萬ト云フ數ガ合併サレテ居ルノデアリマス、ソレニ付テ色〓
世間ニ於キマシテ疑惑ヲ招キ、或ハ延喜式ノ中ニ現ハレタル有名ナ處ノ神社
ヲ僅カ一村一〓ノ神社ニ合併シタト云フヤウナ、恰モ銀行ヲ合併スルガ如ク、
或ハ其他ノ物質的ノ物ヲ合併スルガ如キコトガ今日總理大臣トシテ御臨ミ
ニナッテ居ル原內務大臣ノ場合等ニハ隨分多カッタノデアリマス、サウ云フ次
第デアリマシテ、寧ロ此佛堂ノ方、或ハ寺院ノ方ト云フコトノ僅ナ數ノ合
併ノコトニ付テ、文部大臣ガ御言明ニナリマスヨリモ、其内務省ノ方ガ神社
ノ合併ト云フコトハ誠ニ弊害ガ多カッタノデアリマス、斯樣ナ次第デゴザイマ
スルカラ、內務次官ノ御言明ト國務大臣トシテノ御言明ト同ジコトデアルト
云フコトニナリマスレバ宜シウゴザイマスルガ、左モゴザイマセヌケレバ、
內務大臣ガ此點ヲ明カニ御辯明ニナルマデ此案ノ御審議ハ御延バシヲ願ヒタ
イト思フノデアリマス、是ハ私一己ノ意見デゴザイマセズシテ、委員會ノ全
體ノ意見デアルノデアリマス、併ナガラ總理大臣ガ此處ニ御出席ニナッテ居リ
マスカラ、唯今內務次官ガ此處デ言明サレマスルガ、卽チ國務大臣ガ言明サ
レタモノダト云フコトヲ仰シヤッテ戴キマスレバ、ソレデ私ハ滿足スル次第デ
アリマス、ソレダケノコトヲ申述ベタイト思ヒマシタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=129
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130・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 千秋男爵ニ確メマスガ、小橋內務次官ノ說明ガ國
務大臣ノ言明ト同ジコトデアルト云フコトデアレバ宜シイガ、左モ無ケレバ
內務大臣ノ出席スルマデ日程第十四ノ法案ノ議事ハ延バシタイト云フ動議ト
看做シテ宜シイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=130
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131・男爵千秋季隆君
○男爵千秋季隆君 左樣デゴザイマス
〔國務大臣原敬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=131
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132・國務大臣(原敬君)
○國務大臣(原敬君) ソレハ唯今ノ御質問デアリマスガ、內務次官ノ答辯ハ
國務大臣ノ答辯ト看做スヤ否ヤト云フコトデアリマスルガ、是ハ內務大臣ガ
差支ヘル爲ニ、代ッテ內務大臣ノ申シマスル意味ヲ內務次官ヨリ申シタノデア
リマスカラ、國務大臣ノ言明ト同樣ニ看做サレテ差支ナイノデアリマス、併
シ尙ホソレ等ニ付テ御疑念ガアレバ、私ヨリ申シテ置キマスルガ、內務文部
兩省ニ關係イタシテ居ルコトデアリマスカラ、代ル代ル辯明スル次第デアリ
マセウケレドモ、元ト神社合併ト云フコトハ無格社ノ、資格ノ無キ神社ガ方
方ニ散在イタシマシテ、却ッテ敬神ノ意志ニ背クト云フガ爲ニ合併ヲ許シタノ
デアリマス、無論合併ハ任意ニ合併スル場合ヲ許シタノデアリマス、然ル處
色〓ノ弊害ヲ生ジ殊更ニ合併ヲ致シタト云フヤウナコトモ度〓承ハッタノデ
アリマス、是ハ最初ノ合併ヲ許スベキ規定ヲ設ケタ趣意ニ反スルノデアリマ
ス、故ニ今後ニ於キマシテ斯樣ナコトヲ奬勵ハ致サヌ、併ナガラ法律ノ規定
ニ依テ何等ノ弊害ナク、任意ニ合併スルモノハ許シテ宜シイノデアリマセウ
ガ、殊更ニ之ヲ奬勵シテ、弊害ヲ生ジナイヤウニ致スト云フコトハ文部內務
ノ言明ノミナラズ、政府ニ於テ最初ヨリ左樣ナ趣意デ規定シタノデアリマス
ルガ、其規定ガ卽チ勅令ガ法律ニ變ハルノデアリマス、左樣ナ趣意ト御了解
下スッテ宜シイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=132
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133・男爵千秋季隆君
○男爵千秋季隆君 唯〓ノ總理大臣ノ御言明、竝ニ內務次官ガ內務大臣ノ代
リニ言明サレタコト竝ニ文部大臣ノ言明サレタコトニ依リマシテ、私ノ疑
問ハ氷解イタシマシタカラ、私トシテハ是デ尙ホ申上ゲマスコトハアリマセ
ヌ、滿足イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=133
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134・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 他ニ御發言モナイト存ジマスカラ、本案ニ付テ採
決ヲ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=134
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135・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=135
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136・子爵西大路吉光君
○子爵西大路吉光君 直ニ第二讀曾ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=136
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137・伯爵松平賴壽君
○伯爵松平賴壽君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=137
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138・伯爵奧平昌恭君
○伯爵奧平昌恭君 贊成
つ議長(公爵德川家達君)直ニ本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=138
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139・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、本案全部ヲ問題ニ供シマ
ス、全部原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=139
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140・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=140
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141・子爵西大路吉光君
○子爵西大路吉光君 直ニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=141
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142・伯爵奧平昌恭君
○伯爵奧平昌恭君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=142
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143・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=143
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144・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、第二讀會ノ決議通リデ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=144
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145・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、爰ニ諸君ニ御諮リヲ致シ
タイコトハ、日程第十五ハ會計法改正法律案ニ關聯シテ居ルト考ヘマスカラ、
日程第十一、十二、十三ノ法案ノ會議ガ終リマシタ後デ致シタイト考ヘマス、
御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=145
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146・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、次ハ日程第十六、第十七
兩案ハ同一委員ニ付託セラレマシタカラ、特別委員長ノ報〓ハ兩案ヲ束ネテ
煩ハシタイト考ヘマス、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=146
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147・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=147
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148・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 先刻議長カラ申スベキノヲ落シテ居リマシタガ、
此際會議時間ノ延長ヲ宣告イタシマス、佐佐木候爵ノ登壇ヲ望ミマス
貯蓄銀行法案
右別册ノ通修正セリ依テ及報告候也
大正十年三月二十二日
右特別委員長
侯爵佐佐木行忠
貴族院議長公爵徳川家達殿
特別委員ノ修正ニ係ル部分ノミヲ印刷ス
小字ハ修正文-ハ同削除ノ符號ナリ
第九條貯蓄銀行ハ第一條第一項及第五條第一號第五號ノ規定ニ依リ受入
レタル金額ノ三分ノ一以上ノ金額ニ相當スル國債ヲ供託スヘシ但シ供託
五
金額中受入金額ノ四分ノ一ヲ超ユル額ニ付テハ第十一條第一項第一號ノ
有價證劵ヲ以テ國債ニ代フルコトヲ得
前項ノ受入金額ハ每半年末日現在ニ依リ之ヲ定ム
銀行條例中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十年三月二十二日
右特別委員長
候爵佐佐木行忠
貴族院議長公爵德川家達殿
〔候爵佐佐木行忠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=148
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149・佐佐木行忠
○侯爵佐佐木行忠君 貯蓄銀行法案外一件特別委員會ノ經過、結果ヲ御報〓
申上ゲマス、先ヅ結果ヲ申上ゲマスレバ貯蓄銀行法案ハ第九條中四分ノ一ヲ
五分ノ一ト修正シ、他ハ原案通リ可決イタシマシタ、銀行條例中改正法律案
ハ可決イタシマシタ、次ニ經過ノ大體ヲ申上ゲマス、委員會ハ三囘開イタノ
デアリマス、政府委員ノ說明ヲ求メ、次デ逐條質問等ヲ致シタノデアリマス、
其中二三ヲ申上ゲマスレバ、貯蓄銀行ハ將來ニ於テ國營トスル希望ハナイカ、
或ハ市營トスル、自治團體デ營ムコトトスル希望ハナイカト云フヤウナコト、
又唯今申上ゲタ質問ニハ理想カラ云ヘバ國營モ宜イノデアルガ、現在ノ所デ
ハ會社デヤッテ居ルノデアルカラ、之ヲ今一層確實ナモノトスル、斯ウ云フヤ
ウナ答辯デアリマシタ、ソレカラ市町村ガ之ヲ營ムニ付テハ、未グ考ヘテ居
ラヌ、是ハ市町村ノ財政ガ未ダ確實デナイヤウデアルカラ、其時機デナイト
云フヤウナ答辯デアリマシタ、ソレカラ其他數個ノ質問ガアッタノデアリマス
ガ、ソレハ省略イタシテ、逐條ニ這入リマシテハ、今囘ノ改正案ニ依レバ、
一囘ノ預金金額ハ十圓未滿トシタノデアリマシテ、現行法ニ依リマスト、是
ハ五圓未滿デアリマス、之ヲ二十圓トスル、或ハモット高クスルト云フヤウナ
考ハナイカト云フヤウナコトデアリマシタガ、是ハ十圓ガ相當デアルト云フ
答辯デアリマス、ソレカラ供託ニ付テ改正案ニ依レバ國債ト云フヤウナコト
ニナッテ居ルガ、之ニ地方債ヲ加ヘテハドウカト云フ質問ニ付マシテハ是
ハ地方債ハ其ノ處分ガ國債ニ比シテ困難デアル、供託ノ目的ニハ不適當デア
ルト云フヤウナ答辯デアリマス、ソレカラ此營業稅ヲ半分ニ減ズルト云フ案
デアルガ、是ハ公益主義ヲ標榜スル改正案ニ於テハ不徹底デハナイカト云フ
ヤウナ質問ガアリマシタガ、貯蓄銀行ハ矢張株式會社ガスルノデアルカラ、幾
分カハ營利ガ含マレテ居ル、依テ幾分ノ營業稅ヲ取ルト云フヤウナ答辯デア
リマス、大體ノ質問ハ左樣ナコトデアリマスガ、次デ討論ニ這入リマシテ、修
正意見ガ出タノデアリマス、修正條項ハ五ツホド出タノデアリマス、ソレヲ申
上ゲマスレバ一ツハ此經過ヲ申上ゲタ際ニ申上ゲタ四分ノ一ヲ五分ノ一ニシ
タ修正案ト、二ハ第九條ニ第三項ヲ加ヘテ「第一條第一項第三號、第四號受入
金額ノ中、第十一條第一項第四號、第五號、五號ノ貸附ヲ爲シタル金額ハ供託
ニ付テハ預金額ヨリ之ヲ控除スルコトヲ得」ト云フコトヲ加ヘルト云フ修正
デアリマス、ソレカラ三ハ第十一條ニ八號ヲ加へ「米劵及倉庫證劵」ト云フモ
ノヲ加ヘルト云フ修正案デ、ソレカラ四番目ニハ第二十二條中ニ「營業稅額
ノ二分ノ一ヲ免除ス」ト云フノヲ「營業稅及貯金通帳ノ印紙稅ヲ免除ス」斯ウ
云フ修正ヲシタイト云フ意見デアリマス、ソレカラモウ一ツハ第二十二條ノ
次ニ第五條第一項······間違ヒマシタ、第五條ノ第一號ノ定期預金ノ利子ニ對
シテハ第三種所得稅ヲ免除スト、斯ウ云フノヲ加ヘタイト云フ修正案デアリ
ぎじろソレデ其修正ノ意見ト致シマシテハ、第一ニ申上ゲタノハ卽チ第九條
中ニアル四分ノ一ヲ五分ノ一ト改メルト云フ修正意見ハ、大體ニ於テ本案ハ
贊成デアル、併ナガラ餘リ貯蓄銀行ノ監督ヲ嚴重ニスルガ爲ニ銀行ノ存立ガ
危クナッテハ困ル、依テソレヲ緩和スル爲ニ修正ヲ加ヘルノデアル、斯ウ云フ
意見デアリマス、ソレカラ二番目ノ修正意見ハ、ソレハ皆玆ニ擧ゲタ條項ハ
既ニ預金ヲ擔保トシテ居ルカラ、二重ノ供託ヲスル必要ガナイノデ、斯ウ云
フ修正ヲ加ヘルト云フ意見デアリマス、ソレカラ三番目ニハ貯蓄銀行ノ預金
運用ノ範圍ヲ擴メル爲ニ米劵及ビ倉庫證劵ト云フモノヲ加ヘルト云フ意見デ
アリマス、ソレカラ四番目ノ營業稅ヲ免除スト云フコトハ、唯今ニ於テモ產業
組合等ニ於テハ旣ニ營業稅竝ニ所得稅ヲ免除シテ居リマスガ、公益ヲ主義ト
スル貯蓄銀行ニ於テモ同樣ニ取扱ッテモ宜カラウ、從ッテ營業稅ヲ免除シ、竝ニ
貯金通帳ノ印紙稅ヲ免除スト云フノガ相當デアラウト云フ意見デアリマス、
ソレカラ五番ノ意見ハ第三種所得稅ヲ免除スルノハ貯蓄預金ハ旣ニ所得稅ヲ
免除サレテ居ルノデアルカラ、ソレト同ジ意味ニ依テ定期預金ノ所得稅ヲ免
除シタ方ガ穩當デアラウト云フ、斯ウ云フ意見デアリマス、右修正意見ニ付テ
ハ唯一ツ始メニ申上ゲタ修正案ガ成立ッタノミデアリマス、唯申上ゲテ置キマ
スコトハ、此四番目ニ申上ゲマシタ「營業稅及ヒ貯金通帳ノ印紙稅ヲ免除ス」
ト云フ修正案ハ委員會ニ於テハ賛成反對同數デアリマシダ、委員長ハ修正案
ニ反對デアリマシタ爲ニ成立シマセヌ、右ノ如キ次第ヲ以チマシテ貯蓄銀行
法案ハ修正可決イタシマシタ、右御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=149
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150・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯今佐佐木特別委員長ハ諸君ノ御同意ヲ得ラレマ
シテ、案ヲ束ネテ報告セラマレシタガ日程第十六、貯蓄銀行法案ニハ委員會
ニ於テ修正ガゴザイマスカラ、問題ト致シ採決イタスニハ、先ヅ以テ第十六
ノ貯蓄銀行法案ノミト御承知ヲ願ヒマス、本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異
存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=150
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151・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=151
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152・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=152
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153・松平頼壽
○伯爵松平賴壽君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=153
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154・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=154
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155・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=155
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156・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案第九條ニ委員會ニ於ケル修正ガゴザイマスカ
ラ、最初ヨリ第九條ヲ除キマシテ、終リマデヲ先ヅ以テ問題ニ供シマス、唯
今問題ニ供シマシタル箇條ニ付テハ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=156
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157・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、次ハ委員會ニ於テ修正セ
ラレマシタ第九條ヲ問題ニ供シマス、第九條ノ修正ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=157
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158・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=158
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159・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=159
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160・松平頼壽
○伯爵松平賴壽君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=160
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161・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=161
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162・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、第二讀會ノ決議通リデ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=162
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163・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=163
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164・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ハ日程第十七、銀行條例中改正法律案ヲ問題ニ
供シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=164
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165・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=165
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166・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=166
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167・八條隆正
○子爵八條隆正君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=167
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168・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセメ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=168
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169・仲小路廉君
○仲小路廉君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=169
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170・子爵稻垣太祥君
○子爵稻垣太祥君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=170
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171・男爵阪谷芳郞君
○男爵阪谷芳郞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=171
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172・男爵阪井重季君
○男爵阪井重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=172
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173・議長
○議長 公爵德川家達君)松浦伯爵ノ本案ノ讀會ヲ省略スルト云フ動議ニ同
意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=173
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174・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 三分ノ二以上ト認メマス、原案ニ御異存ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=174
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175・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=175
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176・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 先刻議事日程ノ變更ヲ願ヒマシタガ、此祭日程第
十一、第十二、十三ノ議事ニ移リマス、唯今江木翼君カラ少數意見ニ於テ委
員長ガ採決ニ加ハラザルニ拘ラズ、又意見ヲ發表セザルニ拘ラズ、署名セラレ
タノハ規則違反デアルト云フ御意見ガゴザイマシテ、先例ノ有無ヲ取調ベマ
シタガ、第十三囘議會ニ、日本動產銀行法中改正法律案ノ特別委員會ノ報告
ニ對スル少數者意見ニハ特別委員長久我候爵ガ採決ニモ加ハラズ、意見モ
述ベラレマセヌデモ、少數意見ニ署名セラレテ居リマスカラ、是ガ適例ト考
ヘマス、ソレデ議長ニ於テハ、唯今申述ベマシタノガ先例ガゴザイマスカラ、
差支ナイト考ヘマスガ、是ハ先例ニ相成ルコトデゴザイマスカラ、江木君ニ
於テハ反對ノ意ヲ表セラレルト想像イタシマス、本院規則第九十七條「凡ソ
議院規則ノ疑義ハ議長之ヲ決ス但シ議長ハ議院ニ諮ヒ之ヲ決スルコトヲ得」
此明文ニ依リマシテ議場ノ諸君ノ御意見ヲ伺ハウト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=176
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177・江木翼君
○江木翼君 唯今ノ御示シニニナリマシタ先例ニ付マシテ、事實ヲ確メテ置
キタイト思ヒマス、玆ニ起リマシタ會計法改正法律案ニ付マシテノ場合ハ、出
席委員七人デアリマス、サウシテ四對二デ決マッタノデアリマス、サウシテ委
員長ハ可否ノ數ニ加ハラレヌ、意見ヲ發表シナカッタ、其委員長ノ意見ト云フ
モノガ吐カレナケレバ委員長ノ頭ノ中ニ如何ナル意見ヲ有ッテ居ッタカト云フ
コトハ明確ニ分ラナイノデアリマス、其委員長ガ數ニ加ハラナケレバ少數意
見ト云フモノハ構成シナイノデアリマス、所ガ其先例ニナルモノハ委員長ガ
意見ヲ發表シヤウガシマイガ、其他ノ委員ノ數ニ依テ少數意見ヲ構成シ得ベ
キ場合デハナイカト私ハ想像イタシマスガ、左樣デアルトシマシタナラバ、
ソレハ此場合ノ先例ニハナラヌト思フノデアリマス、如何デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=177
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178・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 議長ノ考デハサウ云フコトデアルカモ存ジマセヌ
ガ、既ニ、十三囘議會ニ於テ委員長タル久我候爵ガ署名サレテ居リマシテ、
何等異議ガナカッタノデアリマスカラ、異議ノナイ先例ト認メテ宜シカラウト
考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=178
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179・江木翼君
○江木翼君 其場台ニ少數意見者ト云フモノガ委員長ヲ除イテ何人ニナッテ
居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=179
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180・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 委員長ヲ除キマシテ三名、委員長ガ加ハラヌデモ
提出ガ出來タノデアリマス、併シ今議長ガ申上ゲマシタ如ク、此際何等委員
長ノ署名シタト云フコトニ付テ異議ハ出テ居リマセヌ、ソレデアルカラ、十
三囘議會ニハ滿場ノ諸君ガ適當ニ御認メニナッタト議長ハ認メテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=180
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181・江木翼君
○江木翼君 ソレトハ少シ場合ガ違フト思フノデアリマス、兎ニ角少數者ノ
定足數ト云フモノハ充シテ居ル、唯不用ナ一名ノ名ガ加ッテ居ル、少數意見ヲ
提出シ得ルト云フコトハ規則ニ違ッテ居ラヌノデアリマス、委員長ノ名ガ加
ハッタカ加ハラヌカト云フコトハ、ソレハ他ノ規則ニ違反シテ居ルカドウカト
云フ問題ガ起ルノデアリマスガ、此場合ハ委員長ノ名ガ加ハルト云フコトニ
於テ、初メテ少數意見者ノ論ガ成立スルノデアリマス、其少數者ナルモノハ
若シ委員長ヲ除ケバ少數者ノ定足數ニ足ラヌノデアリマス、餘程場合ガ違フ
ト思ヒマスガ故ニ、此際私ハ是非十分ナ論議ヲ盡サルヽ方ガ必要デアラウト
思フノデゴザイマス
〔男爵池田長康君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=181
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182・議長(公爵徳川家達君)
○議長(公爵徳川家達君) 池田男爵ハドウ云フコトデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=182
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183・男爵池田長康君
○男爵池田長康君 唯〓江木君カラ御話ガゴザイマシタガ、私ハチヨット江木
君ノ御說ニ疑ヒガアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=183
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184・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 池田男爵ハ江木君ノ述べラレタコトニ付テ質疑ヲ
ナサルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=184
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185・男爵池田長康君
○男爵池田長康君 左樣デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=185
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186・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=186
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187・男爵池田長康君
○男爵池田長康君 貴族院規則ヲ見マスルト、第四十二條ヲ見マスト「出席
委員三分ノ一ニ及フ」トアリマスケレドモ、出席委員ノ中ニ委員長ハ加ヘナ
ケレバナラヌト云フ御考デアリマセウカ、玆ニ第十五條ニゴザイマス「委員
會ノ議事ハ出席員ノ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ委員長ノ決スル所
ニ依ル」トアリマシテ、此ノ出席員ノ中ニハ委員長ハ加ハッテ居ラヌ、之ト之
トヲ對照イタシテ見マスト貴族院規則ニ書イテゴザイマス出席議員ト云フ場
合ニハ委員長ヲ加ヘナイ場合ガアリハシナイカ、斯ウ云フ疑ヒガ其所ニア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=187
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188・江木翼君
○江木翼君 唯今池田男爵ノ御質問ハ私ハ疑ヲ容レヌコトダラウト思ヒマ
ス、出席員ト言ヘバ議長ヨリ選バレマシタル所ノ委員全體ヲ指スモノデアル
ト云フコトハ極メテ明白ナルコトデアルト思フノデアリマス、今日迄ノ先例
ガソレ等ニ付テハ何等ノ違ヒガ起ッテ居ラヌト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=188
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189・男爵池田長康君
○男爵池田長康君 然ラバ第十五條ヲドウ云フ風ニ御解シニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=189
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190・江木翼君
○江木翼君 第十五條ノ規定ハ普通、憲法ナリ其他ノ規定ニアリマスト同樣、
全部ノ出席議員ノ過半數ヲ以テ決メル、是ハ總テノ議事規則ニヨリマス所ノ
例デアリマシテ、矢張委員長ガ加ハルノデアリマス、今日特別委員會、九人
若クハ十五人ノ委員會ガ斯ル場合ニ數ヲ計算スル時ニハ必ズ委員長マデ加ヘ
テ決メル、定足數ヲ決メ、過半數モ決メルト斯ウ云フコトニナッテ居ルト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=190
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191・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 議長ハ前ニ申上ゲマシタ通リ、貴族院規則第九十
七條ヲ適用スベキコトト存ジマスカラ、採決ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=191
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192・江木翼君
○江木翼君 如何デゴザイマセウカ、論議ヲ多少交換サレマシタ方ガ宜シイ
デハナイカト思ヒマスガ、若シ此際許サレルナラバモウ少シ私ノ考ダケヲ述
ベテ置キタイト思ヒマスガ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=192
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193・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 無論十分ニ論議ヲ盡サレムコトヲ望ミマスガ、他
ニ御發言ガナイヤウニ認メマスカラ採決ヲ致サウト申シマシタ、江木君ニ於
テ御說ヲ御述ベニナリタケレバ、喜ンデ拜聽イタシマス
〔江木翼君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=193
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194・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御登壇ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=194
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195・江木翼君
○江木翼君 極メテ簡單デゴザイマスカラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=195
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196・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御登壇ヲ願ヒマスト議長ハ申上ゲマシタ
〔江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=196
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197・江木翼君
○江木翼君 此委員會ノ狀況ハ、先程委員長御報告ノ如ク七名ノ委員ノ出席
ニナッテ居ルノデアリマス、而シテ修正案ハ四對二ト云フ割合ヲ以テ可決ニ
ナッテ居ルノデアリマス、委員長ハ可否ノ數ニ加ッテ居ッタノデアリマス、是ガ
詰リ事實ノ全部デアリマス、ソコデ之ニ對スル法律問題ト云フモノハ私ハ二
ツアラウト思フノデアリマス、第一ニ可否ノ意見ヲ發表シナイ所ノ、委員會
ニ於テモ可否ノ意見ヲ發表シナイ人ガアリ得ルノデアリマス、其可否ノ意見
ヲ發表シナイ所ノ人ヲ可否ノ數ノ中ヘ入レ得ルヤ否ヤ、頭ノ中ニ自分ハ此修
正案ニ反對デアルトカ賛成デアルトカ云フコトヲ畫イテ居ルダケノ、唯心裡
ニ存スル所ノ意見ヲバ恰モ可否ノ數ニ加ッタルモノトシテ之ヲ數ヘ得ルヤ否
ヤト云フコトガ一ツノ問題デアリマス、ソレカラ第二ノ問題ハ、抑〓委員長ナ
ルモノガ可否ノ場合ニ於テ表決スル權利ガアルト云フコトガ議事規則ノ示ス
所デアリマスガ、此ノ表決權ノ外ニ委員長トシテノ投票權ト云フモノヲ有ス
ルヤ否ヤ、是ガ問題デアリマスガ、第二ノ問題ハ私ハ此際論及スル必要ハナ
イト思フ、第一ノ問題デアル所ノ丸キリ可否ノ意見ヲ發表シナイ、全然可ト
モ、否トモ言ハナカッタ所ノ人ヲバ、是ハ反對デアル是ハ贊成デアルト云ウテ、
或ハ多數ナリ少數者ナリノ方ヘ加ヘ得ルカ、是ガ出來マシタ時ニハ、私ハ議
事規則ト云フモノハ根柢ヨリ壞ハレルト思フノデアリマス、委員ノ中ニ可否
ノ數ニ加ハラヌ人ガ、或ハ二人アルカ、三人アルカ分リマスマイ、殊ニ多クノ
場合ニ於テ、委員長ハ可否ノ數ニ加ハラヌノデアリマス、ソレガ恰モ加ッテ居
ルモノノ如ク、而カモ、如何ナル場合ニ於テモ可否ノ意見ヲ發表シナカッタモ
ノヲ議事ガ濟ンダ後ニ自分ハ少數者ノ意見ニ贊成シテ居ルト云フノデ、之ヲ
議長ニ報告セラレルト云フ如キ先例ガ出來マシタ時ニハ、恐ラク私ハ此議事
ノ順序ト云フモノヲ根柢ヨリ壞スト云フコトニナリハシナイカト思フ、斯樣
ナ前提ノ下ニ此ノ事案ヲ判斷ヲ致シマスレバ、委員長タル林伯爵ハ可否ノ數
ニ加ハルベキモノデナイ、從ッテ八條子爵ト、早川千吉郞君トガ少數者トシ
テ意見ヲ發表セラレタ、卽チ二人ガ意見ヲ發表セラレタガ故ニ、此場合ニ於
テ少數者意見ナルモノハナイ、先程委員長ガ訂正セラレマシタルガ如ク、鎌
田靜太郞君ハ少數者意見ノ方へ加ハラレタト云フコトハ事實ニ於テ相違シテ
居ルト云フコトデアリマスカラ、二人ダケト云フコトニナル、斯樣ナリマス
ト、私ハ此報告ヲ是認スルト云フコトハイカナイモノデアリマス故ニ、此意
見ヲ玆ニ發表イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=197
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198・上山滿之進君
○上山滿之進君 チヨット伺ヒマスデスガ、少數意見ノ提出者四名ノ中デ鎌田
君ノハ削除ニナリマシタノデゴザイマスカ、如何デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=198
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199・議長
○議長 公爵德川家達君)此コトハ後デ申上ゲヤウト存ジテ居リマシタ、少
數者意見提出者ノ記名中、當日出席ノ間ニ合ハザリシ委員ノ氏名ハ提出者ニ
於テ之ヲ取消ス以上ハ差支ナイト存ジマシテ取消サレタモノト認メテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=199
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200・上山滿之進君
○上山滿之進君 取消サレテ居ルノデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=200
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201・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) サウ認メテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=201
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202・上山滿之進君
○上山滿之進君 私ハチヨット動議ヲ提出イタシマス、此問題ヲ御決定ニナル
ノハ、議長ノ御權限、其權限ニ依テ今議院ノ意見ヲ御問ヒニナッテ居リマスb
殊ニ御鄭重ナル御扱ヒト思フ、ソレニ對シテ彼是申上ゲマスノハ如何ト思ヒ
マスケレドモ、實ハ重大ナル先例ニナルコトト思フ、御取出シニナリマシタ
先例ト、唯今ノ場合ヲ比較イタシマスト、何ヤラ玆ニ違ッテ居ル點モアルヤウ
ニモ考ヘラレル、誠ニ咄嗟ノ間ニ意見ヲ定メロト仰セニナリマスト甚ダ困ル
ノデアリマスガ、ドウカ此問題ハ我〓議員ヲシテ一夜考ヘルダケノ猶豫ヲ御
與ヘ下サルコトヲ希望イタシマス、此動議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=202
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203・阪本釤之助君
○阪本釤之助君 上山君ノ動議ニ贊成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=203
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204・男爵阪谷芳郞君
○男爵阪谷芳郞君 本員モ此問題ガ惡例ニナルト云フコトヲ甚ダ恐レルノ
デ、議長ノ御示シニナリマシタ前例ト、唯今ノトハ少シ違ヒマス、本員ハ此
少數意見ノ出マシタコトハ少シモ異存ハナイノデス、又或ハ少數意見ノ御說
ヲ聞イテソレニ贊成スルカモ分リマセヌ、ソレニハ何等異議ハナイ、併シ議
院ノ慣例ニ惡例ヲ作ルト云フコトハ甚ダ面白クナイ、併ナガラ玆デ咄嗟ノ間
ニ考ヘロト仰ッシヤイマスコトハ、今上山君ノ言ハレタ通リ困ルノデ、ナラ
ウコトナラ暫ク休憩セラレテ各派、能ク協議シテ見タイト考ヘマス、ドウカ
休憩ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=204
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205・伯爵林博太郞君
○伯爵林博太郞君 此問題ハ會期切迫ノ際ニ咄嗟ニ決メルト云フコトモ如何
デスカト思ヒマス、且ツ大分問題ガ紛糾シテ來タ次第デアリマスノデ、私
此際寧ロ少數意見書ヲ撤囘スルノガ結構デアルト考ヘマスカラ、自分ハ左樣
ニ致シタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=205
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206・子爵八條隆正君
○子爵八條隆正君 私モ少數意見者ノ一人デアリマスルガ、林伯爵ノ御意見
ニ同感ヲ持チマスルカラ撤囘ヲスルト云フコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=206
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207・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 諸君ニ御諮リヲ致シタイト考ヘマス、ソレハ貴族
院規則ノ疑義ニ屬シマスノデ、議場ニ御諮リヲ致シテ決定イタシタイト存ジ
テ、將ニ採決ヲ致サムトスル際ニ、江木君ガ意見ヲ述ベラレタイト云フコトデ
ゴザイマシタカラ、御許シヲ致シマシタ、其後上山君ヨリ、是ハ重大ノ問題デ
アルカラ考ヘル爲ニ本日採決ハ見合ハシタラ宜カラウ、ソレニ阪本君ノ贊成
デゴザイマシタカラ決ヲ採ルベキ場合デゴザイマシタガ、其時ニ林伯爵、八
條子爵ヨリ少數者意見ヲ撤囘セラレルト云フコトデアリマス、少數者意見ヲ
撤囘セラレマシタ以上ニハ、上山君ノ動議ハ必要ガナイカト考ヘマス、上山
君ニ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=207
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208・上山滿之進君
○上山滿之進君 少數意見ノ提出者ガ初メ四人デアッテ、一人ハ消エタト云
フ、三人ガ誰人ト誰人デアリマスカ、其三人ノ中ノ誰人ガ御取消シニナッタノ
デアリマスカ、ソレヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=208
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209・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 林伯爵ト八條子爵ガ取消サレマシテ、撤囘セラレ
マシタ以上ハ、自然ニ少數意見ト云フモノハ消滅セラレタモノト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=209
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210・上山滿之進君
○上山滿之進君 今一人御アリナサル筈デゴザイマシタガ、其方ハ取消サナ
イデモ宜イノデアリマスカ、初メ四人ノ名前デゴザイマシタケレドモ二人取
消シタカラ一人ノ人ハ此場合ニ多數決デ自分ノ意思ニ反シテモ取消スト云フ
コトニナルノデアリマスガ、其所ガ分リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=210
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211・議長
○議長 公爵德川家達君)他ノ御一人ガ少数者意見ヲ御出シニナリタイト云
フ御希望ガアッテモ、ソレコソ規則ニ反スルノデゴザイマスカラモウ別ニ必要
ハナイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=211
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212・上山滿之進君
○上山滿之進君 大變コムヅカシイコトヲ申スヤウデ恐入リマスケレドモ、
サウ云フ意味デハナイ、斯ウ云フコトハ先例ニナリマシテ、甚ダ面白クナイ、
本來申シマスト、初メ少數意見書ヲ提出サルル時モ少シ御考究ニナッタナラ
バ私共ハコンナ色〓ナ混雜ヲ承ラナカッタノデアラウト思フ、併シ混雜シタ以
上ハ其ノ結末ヲ明カニシテ置カナイト、イカナイト思フ、ソレデ私ハ申上ゲ
ルノデアリマスガ、四人御提出ニナッタニ拘ラズ、口頭デ其中ノ數人ガ撤囘ス
ルサウスルトソレハ全部ガ撤囘サレタモノト見テ宜シイノデゴザイマセウ
カ、私分リマセヌカラ伺ッタノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=212
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213・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 提出前ニモ〓究シタラ宜カラウト云フ問題ハ、別
問題ト考ヘマス、其レハ署名者中ノ林伯爵、八條子爵ガ撤囘セラレタ以上ハ、
早川千吉郞君ガ如何ニ提出セラレタイト思ハレテモ、規則ガ許サナイノデア
リマスカラ、一向差支ナイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=213
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214・早川千吉郞君
○早川千吉郞君 大分揉メマシタヤウデアリマスカラ、私モ撤囘イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=214
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215・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 是レデ署名者ガ殘ラズ撤囘セラレタノデアリマ
ス、上山君ハ御滿足デアラウト考ヘマス、然ル以上ハ上山君ノ御動議ハ自然
採決イタサヌデモ宜シイカト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=215
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216・上山滿之進君
○上山滿之進君 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=216
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217・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 賛成者ノ阪本君モ無論御異存ハアルマイト考ヘマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=217
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218・阪本釤之助君
○阪本釤之助君 誠ニ結構ナコトト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=218
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219・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 是カラ少數意見者ノ御說ノ御發言ヲ御許シ致ス積
リデゴザイマシタガ少數者ノ提出ニ相成リマシタ意見ガ撤囘ニ相成リマシ
タカラ、此際本案ニ付テ採決イタサウト考ヘマスガ、唯今委員長ノ報告セラ
レマシタノハ、日程第十一、十二、十三、三案トモ一括セラレマシタガ、日
程第十一ノ法案ニ付テハ通〓モゴザイマスカラ、此際ハ日程第十一ノ法案ノ
ミヲ問題ニ供シテ宜カラウカト考ヘマス、念ノ爲メ諸君ニ伺ヒマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=219
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220・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、本案ノ第二讀會ヲ開クコ
トニ御異存ゴサイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=220
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221・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=221
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222・子爵西大路吉光君
○子爵西大路吉光君 直ニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=222
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223・伯爵松平賴壽君
○伯爵松平賴壽君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=223
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224・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=224
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225・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、特別委員會デハ第十條及
ヒ第三十一條ニ修正ガゴザイマスカラ、此二箇條ヲ除キマシテ、會計法ト申
ス所カラ終リ迄全部ヲ先ヅ問題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=225
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226・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、次ニ問題ニ供シマスノハ、
第十條及ビ第三十一條デゴザイマス、規則ニ依リマシテ反對者ノ方カラ發言
ヲ許スベキモノト考ヘマス、故ニ八條子爵ノ發言ヲ許シマス
〔子爵八條隆正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=226
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227・子爵八條隆正君
○子爵八條隆正君 會計法改正案ニ付マシテハ委員會ニ於キマシテ先刻特
別委員長ヨリ御報告ニナリマシタル通リ、唯〓問題ニ供セラレマシタル第十
條第二十一條ニ對シテ修正ヲ加ヘラレマシタノデアリマス、本員ハ委員會ニ
於キマシテ原案贊成ノ意見ヲ申述ベマシタノデアリマス、先刻少數意見トシ
テ提出イタシマシタル所。非常ナル問題ヲ起シマシテ、甚ダ恐縮デアリマス
ルガ、既ニ少數意見ハ取消シマシタ以上ハ、此際反對意見トシテ私ノ所信ヲ
披瀝イタシマス、委員會ニ於テハ少數デ敗レマシタガ、本議場ニ於キマシテ
多數諸君ノ御同感ヲ得マシテ、何卒イタシテ本案ノ原案通リ可決サレムコト
ヲ希望イタスノデゴザイマス、時間モ過ギマシテ甚ダ恐縮デアリマスルガ、
出來得ル限リ簡單ニ意見ハ申述ベタイト思ヒマスルガ、多少時間ヲ要シマス
ルコトデアリマスカラ、何卒暫クノ御辛抱ヲ願ヒマス、修正ヲ加ヘラレマシ
タル第一點ハ該案ノ第十條ニ關スルコトデアリマス、卽チ豫備金支出ノ事後
承諾ヲ帝國議會ニ求ムル爲ニ提出スル時期ニ關シマシテ、現行法ニ於キマシ
テハ年度經過後ノ帝國議會ト云フコトニナッテ居リマスルガ、今囘ノ改正案ニ
於キマシテハ、其豫備金ノ第一豫備金ト第二豫備金タルトニ因ヲテ其提出ノ時
期ヲ區別イタシマシテ、第一豫備金ハ現行法通リ年度經過後ノ帝國議會ニ提
出スル、常會ニ提出スル、ソレカラ第二豫備金ニ付マシテハ、次ノ常會ニ於テ
帝國議會ニ提出スル、斯樣ニナッテ居ルノデアリマス、之ヲ修正セラレマシタ
ノハ、第一豫備金第二豫備金ヲ區別スルコトナク、等シク次ノ帝國議會、而
シテ其帝國議會ハ必ズシモ常會タルコトナク、或ハ衆議院解散後ノ特別議會
デモ宜シ、又如何ナル場合ニ於ケル臨時議會デモ宜イ、兎ニ角次ノ帝國議會
ニ提出スルト云フコトニ修正セラレマシタノデアリマス、此修正ニ付テ、御
意見ヲ伺ヒマスルト結局今囘ノ改正ト云フモノハ決シテ改惡ハナイ、現在
ニ於キマシテ豫備金支出ガ年度經過後ノ議會ニ提出スルト云フコトニナッテ
居ルガ、是ハ甚ダ緩漫デアル、旣ニ支出シタル以上ハ、其責任ヲ明カニス
ル爲ニ、成ベク早キ次ノ議會ニ於テ提出スルガ適當デアル、其點ニ於テ第二
豫備金ノ支出ニ付テハ次ノ常會ニ帝國議會ニ提出スル、必ズシモ年度經過後
ヲ待タナイト云フコトニシタト云フコトハ是ハ確ニ一ノ進步デアルト云フコ
トハ認メル、併ナガラ既ニ第二豫備金ニ付テ斯ク改正シタ以上ハ、一步ヲ進
メテ第一豫備金ヲモ何故同時ニ速ニ提出シナイノデアルカ、第一豫備金、第
二豫備金ト云フモノハ區別ハアルケレドモ、物ノ性質上ニ於テハ其間何等區
別ハナイノデアル、ト云フ御說デアリマシタ、卽チ第一豫備金ハ豫算ノ科目
ニアルモノニ付テ不足ガ生ジタル場合ニ於テ其不足タル當初豫期シナイモ
ノ豫期セザル必要ヲ生ジテ支出シタモノデアル、第二豫備金ハ豫算ノ科目
ニハ計上ハアリマセヌデス.併ナガラ臨時ノ場合ニ於テ豫期セザル必要ヲ生
ジテ支出シタモノデアル、卽チ一ハ豫算ノ科目ニアル、一ハ豫算ノ科目ニハ
認メルコトハ出來ヌモノデアルガ、併ナガラ等シク豫期シナイ所ノ必要ニ依
テ支出シタト云フコトハ其間大差ガナイノデアル、既ニ其間ニ於テ大差ガナ
ケレバ共ニ等シク同ジ次ノ議會ニ出スノガ至當デハナイカ、旣ニ第二豫備金
ニ付テ一ノ進步ヲサシタ以上ハ、第一豫備金ヲモ之ト共ニ改正スルノガ宜イ、
斯樣ナ御說ニ拜聽イタシタノデアリマス、一應御尤ナヤウニ伺フノデアリマ
スガ、併ナガラ等シク豫備金ト言ヒナガラソコニ第一豫備金ト第二豫備金ト
ノ區別ヲ致シタノデアリマスルカラ、其間ニハ全然相等シイト云フコトハ是
ハ認メルコトガ出來ナイ、其間ニ於テ大差ハナイト云フトヲ言ハレマシタ
ヤウニ、大差ハナイガ尙ホ其間ニ多少ノ區別ハアルト云フコトハ認メヌケレ
バナルマイト思フノデアリマス、卽チ第一豫備金ハ豫算ニアル科目ヲ計上シ
テアル、而シテ其豫算實行ニ當ッテ豫期シナイ所ノ必要ヲ生ジ、其豫算ノ科目
ニ認メタル所ノ定額ニ對シテ不足ヲ生ジタル場合ニ於テ支出スルト云フダケ
ノモノデアリマスルカラ、其支出タルヤ豫算ニ對シテ從屬的ノ關係ヲ有ツモ
ノデアル、卽チ議會ハ豫算ヲ協賛スル時ニ於テ既ニ其種類ノ支出ト云フモノ
ハアルト云フコトヲ認メテ居ルノデアル、其事柄ニ對シテハ既ニ協贊ヲ與ヘ
テ居ルノデアル、唯其場合ニ於テ不足ヲ生ジ、議會ノ認メタル事柄デハ金額ニ
於テ不足ヲ生ジタ、依テ之ヲ補充スル、其不足ヲ補フト云フノガ第一豫備金
デアル、第二豫備金ニ於キマシテハ全然議會ガ豫算ヲ協賛スル時ニ於テハ豫
期シナカッタ所ノ事柄デアル、卽チ豫算ノ協賛ニ於テハ全然認メテ居ナカッタ
所ノ事柄ニ付テ其後支出ヲ要スル必要ヲ生ジテ支出シタモノデアル、卽チ其
性質ハ畧〓剩餘金ノ性質ト稍〓似テ居ルノデアル、剩餘金支出ハ所謂剩餘金支
出デアリマスカラシテ豫備費ト云フモノデハナイ、國庫ノ剩餘金ヲ支出スル
ノデアル、併ナガラ第二豫備金ノ支出ハ第二豫備金カラ支出スルノデアル、其
點ニ於キマシテ剰餘金支出トハ異ッテ居リマスルガ、併シ豫算ノ協賛ノ時ニ
當ッテ豫期シナカッタモノデアルト云フ點ニ於キマシテハ略〓似寄ッタモノデアミ
ル、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、卽チ豫算ニ對シテハ第二豫備金ノ支出ト云
フモノハ獨立的ノ關係ヲ有ッテ居ルト云フ譯デアラウト思フノデアリマス、卽
チ斯ノ如ク第一豫備金ト第二豫備金トノ間ニ於キマシテハ多少ノ差異ガアル
ノデアル、卽チ性質上ノ差異ガアル、卽チ性質上異ッテ居ルノデアルト云フコ
トハ認メ得ラレルデアラウト思フノデアリマス、其性質上ノ差異カラ致シマ
シテ之ヲ取扱フ······豫備金支出ノ手續ヲ取扱フニ付マシテモ亦其間ニ區別ガ
アルノデアリマス、卽チ第一豫備金ヲ支出シマスニ付テハ前年度年度ノ初メ
ニ於テ勅令ヲ以テ第一豫備金ヲ以テ支出シ得ベキ科目ハ何〓デアルト云フコ
トヲ規定イタスノデアリマス、略〓其科目ハ年々略〓同ジ科目ヲ規定イタシテ
居ルノデアリマスルガ、卽チ是ハ所謂補充科目デアリマシテ、例ヲ擧ゲテ見
マスレバ退官賜金及死亡賜金デアルトカ、或ハ官吏ノ療治料デアルトカ、死
傷手當、賠償及訴訟費、地所家屋ノ公課、外務本省在外公館及ビ關東都督府
ノ電信料、或ハ常設仲裁裁判所ノ費用分擔金ト云フヤウナモノデアリマシテ、
補充科目ヲ認メルトハ言ヒナガラ、如何ナル科目ニ付テヽモ豫備金ヲ······第
一豫備金ヲ······第一豫備金ヲ以テ支出シテモ宜イト云フ譯ノモノデハナイノ
デアリマス、即チ之ヲ支出スルノニハ已ムヲ得ザル事由ニ依テ支出ノ必要ヲ
生ズルモノデアルト云フ如キモノヲ年度ノ初メニ於テ勅令ヲ以テ規定シテ居
ル、其他ノ豫算ノ科目ニ付テハ支出スルコトハ得ナイト云フコトニナッテ居ル
ノデアリマス而シテ之ヲ支出スルニ當リマシテハ各省大臣ガ大藏大臣ノ承
認ヲ經テ支出スル、單ニ大藏大臣ノ承認ヲ經ルニ止マルノデアリマス、然
第二豫備金ノ支出ニ至リマスルト云フト、ソレハ手續ガ異ッテ居ル、卽チ豫算
ニ全然科目ノナイ事柄ニ對シテ支出ヲ致スノデアリマスルカラシテ、是ハ其
手續ヲ重クシテ一々勅裁ヲ經テ支出ヲ致ス、斯樣ニナッテ居ルノデアリマシ
テ、取扱上ニ於キマシテモ第一豫備金ト第二豫備金トノ間ニ於テハ區別ヲ致
シテ居ルノデアリマス、而シテ更ニ飜ッテ考ヘテ見マスルト、之ヲ議會ノ承諾
ヲ求メル爲ニ支出スルノニ成ベク速ナル時期ニ於テ議會ノ承諾ヲ求メヌケレ
バナラヌ、ト云フコトニナリマスト云フト、第一豫備金ノ如キハ日〓ト云
フト少シ語弊ガアルカモ知レマセメガ、度〓支出ヲセヌケレバナラヌ、官吏
ノ死亡賜金、或ハ退官賜金ト云フモノニ於キマシテハ、若シ豫算ニ不足ガア
レバ官吏ノ死亡費、退官スル每ニ豫備費ヲ以テ補充シ行カヌクレバナラヌ、
卽チ日〓其支出ハ之ヲ致シテ行カヌケレバナラヌ、斯ウ云フ事柄ニナルノデ
アリマスルガ、又第二豫備金ノ方ニナリマスト云フト左樣ナモノデハナクシ
テ、其事柄ガ起リマシタ時ニ出シテ行クト云フ譯ニナッテ行クノデアリマス、
從ッテ若シ議論ノ決定ヲ求メマスナラバ第一豫備金ヲ速ニ近キ議會ニ提出ス
ルト云フコトニナリマスレバ、例ヘバ議會開會中ノ如キハ時〓其支出ヲ議會
ニ提出シテ之ヲ求メヌケレバナラヌ、承諾ヲ求メヌケレバナラヌト云フヤウ
ナル煩雜ナル事柄ニナッテ來ルノデアリマス、若シモ斯程マデニ議論ノ徹底ヲ
求メマセヌデモ、其ノ計算書ヲ作リマスルニハ、凡ソ纒メテ之ヲ作ラナケレ
バナラヌ、例ヘバ第一豫備金ヲ支出イタシマシタナラバ其次ノ議會マデノ所
デ以テ一段落ト致シ、ソレマデノ所ノ支出ノ計算書ヲ作ル、而シテ其議會ニ提
出スル、其議會ノ開會ニナリマシタ以後ノ分ハ、又更ニ計算書ヲ作ッテ、其次ノ
議會ニ提出スルト云フヤウナ事柄ニセヌケレバナラヌ、從ッテ之ヲ具體的ニ申
スナラバ、四月一日會計年度ガ始マリマシテカラ、其冬ノノ會會ガ開會ニナリ
マスルマデノ分ハ始メテ計算書ヲ作ッテ其議會ニ提出スル、而シテ十二月ノ二
十五六日カラシテ三月三十一日マデニ至リマスルマデノ分ニ付テハ、又之ヲ
翌年度ノ議會ニ提出セナケレバナラヌ、斯樣ニ一年度ノ計算書ヲ二度ニ分ッテ
二ツノ議會ニ提出セヌケレバナラヌト云フ煩雜ナル事柄ガ起ッテ來ルノデア
リマス、第二豫備金ノ方ハ豫算ノ科目ニナイ事柄ニ付テ臨時ニ支出スルモノ
デアリマスカラ、四月一日會計年度ガ始マリマシテカラ、議會召集マデノ分
ハ、一纒メニシテ其議會ニ提出スル、而シテ凡ソ第二豫備金ノ支出ト云フモノ
ハソレデ以テ畧〓終ル、議會開會ニナッテ居リマスレバ、議會開會中ニ於テ必要
ヲ生ジタル時ハ、追加豫算ヲ以テ其議會ニ提出スレバ宜イ、追加豫算ヲ以テ
議會ノ協賛ヲ經レバ宜イ、左樣ナ關係ニナッテ居リマスルカラ、實際ノ取扱上
ノ煩雜ト云フ點ガ餘程變ッテ來ルノデアリマスルカラシテ、第一豫備金第二豫
備金ハ右樣ノ如ク其性質上ニ於テモ區別ガアリ、取扱上ニ於テモ差異ガアリ、
實際之ヲ承諾ヲ求ムルト云フ上ニ於キマシテ煩雜デアリヤ否ヤト云フコトノ
區別ガソコニアルノデアリマスカラ、之ヲ同樣ニ取扱フト云フコトハ甚ダ面
白クモナク、又理論上モ右樣ナモノデナク、實際上モ甚ダ困難デアルト云フ
結果ニナルノデアラウト思フノデアリマス、或ハ言ハルヽデアリマセウ、現ニ
委員會等ニ於テモ御意見ガアッタヤウデアリマスガ、今囘ノ會計法ノ改正ニ於
キマシテハ先程委員長ヨリモ御報告ニナリマシタ通リ、決算ノ提出時期ヲ一
年繰上ゲタ、卽チ現在ニ於キマシテハ二年越シニナッテ決算ヲ提出シタモノ
ヲ、一年繰上ゲテ議會ニ提出スルト云フコトニナッタノデアリマス、其私果第
一豫備金ノ事後承諾ヲ求ムルモノヲ年度經過後ノ議會ト云フコトニ致シマス
ト、決算ノ提出ト同時ニナル、是ハ甚ダ面白クナイデハナイカト云フ御意見
モアリマス、併ナガラ決算ノ提出ト云フモノト、豫備金支出ノ事後承諾ト云
フモノトハ、其性質ガ異ッタモノデアリマスカラ、時ハ必シモ同一議會ニ同時
ニ提出スルト云フコトニナッテモ、少シモ差支ヘナイト云フ理窟ニナラウト存
ジマス、次ニ修正ハ常會ニ於テ帝國議會ニ提出スル、卽チ事後承諾ヲ求ムル
爲ニ提出スル所ノ議會ハ常會デアルト云フコトニ改正案ハナッテ居ルノデア
リマスルガ、修正ハ此點ニ對シテ、其常會タルヲ要セナイ、臨時議會デモ宜
イデハナイカ、特別議會デモ宜イデハナイカト云フ御說デアリマスガ、併ナ
ガラ斯樣ニナリマスト云フト、餘リニ窮屈ニナルノデアリマス、衆議院解散
後ノ特別議會デアリマシタナラバ、前例ニ依リマスト相當長期ノ議會デアリ
マスルカラ、敢テ差支ハナイカモ知レヌノデアリマスルガ、臨時議會ト云フ
コトニナレバ、隨分短期ノ議會モアルノデアリマス、或ハ戰爭事變等ノ爲ニ
召集セラレル議會ハ、一兩日ニシテ終ル場合モアリマセウ、又御大禮トカ或
ハ御大葬トカ云フヤウナル議會ニ於キマシテハ一日デ終ルヤウナ議會モアル
デアラウト思フノデアリマス、左樣ナ場合ニ於キマシテ、豫備金ノ事後承諾
ト云フガ如キモノヲ提出イタスト云フコトハ果シテ事實上如何ナモノデアリ
マセウカ、餘程是ハ政府ニ於テモ、又議員ガ之ニ承諾ヲ與フベキヤ否ヤヲ審
査スル上ニ於キマシテモ、隨分困難ナル事柄デアラウト思フノデゴザイマス、
況ヤ第一豫備金ヲモ第二豫備金支出ト同樣ニ次ノ議會ト云フコトニ致シマ
スト云フコトハ前述イタシタ如キ事柄モアルノデアリマスカラ、一層承服シ
難イ御議論デアルト思フノデゴザイマス、斯樣ナ理由ニ依リマシテ、第十條
ノ御修正ニハ本員ハ反對イタシマシタノデアリマス、次ニ第三十一條第二項
ノ削除デアリマスルガ是ハ所謂政府ノ契約ニ關スル事柄デアリマシテ、御
修正ノ御意見中デモ重キヲ置カレル所デアラウト思フノデアリマス、現行法
ノ下ニ於キマシテハ、政府ノ工事請負、物品ノ賣買、貸借等ハ總テ公入札ニ
依ル、而シテ其例外トシテ或ハ指名競爭入札、或ハ隨意契約ニ依ルベキ場合
ニ付テハ、法律又ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ムルト云フコトニ現行會計法第八條ニ
ハ規定イタシテ居ルノデアリマス、之ヲ今囘ノ改正法案ニ於キマシテハ、原
則ト致シマシテハ公入札ニ依ル、一般ノ競爭入札ニ依ルト云フコトハ、現行
法ト異ナル所ハナイノデアリマス、併ナガラ此ノ公入札ニ依ルト云フコトガ、
國家ニ不利ト認ムル場合ニ於テハ、國務大臣ハ自己ノ責任ヲ以テ、隨意契約
ニ依テモ宜イト云フ改正ヲ企テマシタノデアリマス、併ナガラ修正案ニ於キ
マシテハ、國務大臣ニ斯ル廣汎ナル權限ヲ付與スルト云フコトハ面白クナイ、
寧ロ現行法ノ通リニ致シテ嚴重ニ取締ルノガ宜シイ、斯樣ナ意見ヲ以テ第二
項ノ國務大臣ガ國家ノ上カラ考ヘテ不利ト認ムル場合ニ於テハ隨意契約ニ依
ルコトヲ得ルト云フ第二項ヲ削除イタシタノデアリマス、元來競爭入札ナル
モノハ一般ノ入札希望者ヲシテ契約締結ニ關スル條件ヲ提出イタサセマシ
テ、而シテ國ガ最モ利益ナリト認ムル所ノ條件ヲ提出イタシマシタル者ヲ以
テ落札者ト致スト云フ譯ノモノデアリマシテ、誠ニ公平ナル、卽チ公平ノ趣意
カラ申セバ最モ宜イヤウデアリマス、從ッテ總テノ一般ノ入札希望者ガ入札ヲ
致スノデアリマスカラシテ、最モ國家ノ爲ニ利益アル條件ヲ提出シタル者ヲ
以テ相手方トシテ契約スルコトガ出來ルノデアリマスカラ、〓シテ多クノ場
合ニ於キマシテハ國家ニ對シテ有利ナルモノデアルト云フコトニナルノデア
リマス、併ナガラ是ハ競爭入札ニ對スル理想デアリマス、理想ガ何時モ必ズ理
想通リニ行ハレルモノデアリマシタナラバ、最モ結構ナコトデアルノデアリ
マスガ、併ナガラ事實ハ之ヲ裏切リマシテ往々ニシテ、豫期シナカッタ所ノ不
利益ナル結果ヲ齎ラスコトガアルノデアリマス、而モ其弊害タルヤ少カラヌ
ノデアリマス、能ク例ヲ引クノデアリマスガ競爭入札者ノ間ニ於ケル談合ナ
ルモノデアリマス、卽チ談合ト云ヘバ、入札希望者ガ御互ノ間ニ密カニ協議ヲ
致シマシテ、落札者ヲ決メル、サウシテ其落札者ヲシテ一定ノ金額ヲ提供イタ
サセマシテ、ソレヲ入札者間ニ於テ分配スルト云フヤウナル事柄ガ能ク時〓
ニ行ハレルノデアリマス、其事柄ハ屢〓行ハレルノデアリマシテ、別ニ不思議
ナコトデハナイノデアリマスガ、一二ノ例ヲ擧ゲテ見マスレバ、嘗テ大正五
年ノ頃ニ朝鮮總督府ニ於テ京釜線ノ鐵道ノ一部ヲ是ハ競爭入札デハナク、指
名競爭入札デハアリマシタガ入札ニ付シタ所ガ、其一囘ニ於テハ所謂談合ノ
結果落札人ヨリ提供イタサセマシタ金額ガ十萬何千圓ト云フヤウナコトガア
ル、又同ジ年ノ四月頃ニ落札ニ付シマシタ時ニハ十二萬何千圓ト云フ巨額ノ
金ヲ提出イタサセマシテ、之ヲ入札者間ニ於テ分配ヲ致シタ、其爲ニ刑事問
題ヲ起シマシテ、ソレソレ處罰ヲサレタト云フヤウナ例モアルノデアリマス、
又大正矢張五六年ノ頃デアリマスルガ、斯ノ如キコトガ臺灣等ニ於テモ行
ハレタト云フ例モアル、斯樣ナ譯デアリマシテ、最モ理想的デアルベキ筈ノ競
爭入札ナルモノハ往々ニシテ國家ノ不利益ヲ齎ラスト云フコトハ屢〓アルノ
デアリマス、競爭入札ノ本來カラ申シマスレバ、廣ク入札者ヲ求メルト云フコ
トガ理想デアルノデアリマスガ、事實ニ於テハサウデハナイノデアリマシテ、
或官廳ガ契約ヲシヤウト云フ場合ニハ大抵其官廳ニ常ニ出入イタシテ居ル所
ノ者ガ入札ヲスルト云フヤウナコトデアリマシテ、必ズシモ廣ク一般ノ人ガ
入札ヲスルノデハナイ、比較的狹イ範圍ニ於テ入札ガ行ハレルノデアリマス、
而シテ彼等モ眞ニ其契約ヲ請負ハムトスルノデハナイノデアリマシテ、先程
申上ゲマシタル如クニ談合ニ依ル不正ノ分配金ヲ得ヤウト云フ目的ノ爲ニ其
入札ニ加入スル者モ少カラヌノデアリマス、又一旦落札ヲ致シマシテモ必ズ
シモ自分ガシマヒマデ其契約ヲ履行スルト云フ意思ガナイ、初メカラ其意思
ガナクシテ落札ヲ致シ、而シテ其下請負人ガ······下請負ヲサセ、其間ノ差益
ヲ儲ケルト云フヤウナコトモアルノデアリマス、其弊害モ隨分甚ダシイモノ
デアリマスカラシテ、眞面目ニ競爭入札ニ加ハルト云フ人ハ少ナイ、少ナイト
云フト語弊ガアリマスガ、眞ニ其談合ニ加ハラズシテ入札ヲシヤウト云フ者
ガアレバ、其談合ニ與スル者ハ皆ガ寄ッテ掛カッテ之ヲ排斥スル、脅迫ヲ加ヘ
ルト云フヤウナ譯デアリマスカラシテ、眞面目ナ人ハ全ク競爭入札ニ加ハル
コトヲ好マナイト云フ結果ヲ齎ラスノデアリマス、官吏ノ方デモ契約ヲ致ス
役人ノ方デモ既ニ競爭入札ニサヘ致シタナラバ自己ノ責任ハ濟ムノデアル、
申譯ハ濟ムノデアル、ソレガ果シテ國家ノ爲ニ善イ結果ガ出來ナクテモ敢テ
關スル所ハナイノデアリマス、檢査院カラモ咎メラレルヤウナコトハナイト
云フヤウナ考カラシテ自己ノ責任ト云フモノヲ疎カニスル、國家ノ爲ニ計ッテ
忠ナラムトスル念慮ガ乏シクナル、薄カラシムルト云フ結果ガ來ルノデアリ
マーサ、要スルニ競爭入札ナルモノハ理想トシテハ誠ニ結構ナルモノデアリマ
スガ、必シモ其通リ理想通リ行ハレルモノデナイ、然ラバ之ニ對シテハ何等カ
ノ救濟方法ガナクテハナラヌ、卽チ救濟方法ト云フモノハ僅ニ競爭入札ニ依
ルト云フコトガ不利益デアルト認メル場合ニ於テハ纔ニ確實ナル相手方ヲ選
きと
ンデ、其者ノ間ニ於テ入札ヲサセル、卽チ指名競爭ニ依ルカ、或ハ確實ナリ
ト信ズル所ノ特定ノ相手方ヲ選ンデ、之ト契約ヲスル、卽チ隨意契約ニ依ル
ト云フヨリ外ニ途ハナイ、斯樣ナ趣旨ヲ以チマシテ改正案ニ於テハ其一般競
爭入札ニ依ル弊害ヲ緩和セムガ爲メ方法トシテ、國務大臣ニ隨意契約ヲ締結
スルノ權限ヲ與ヘヤウト云フノデアリマス、然ニ修正案ヲ御主張ニナル方ハ
此政府ノ改正案ヲ御採用ニナラヌ、國務大臣ノ責任ニ於テ隨意契約ニ依ルト
云フコトハ弊害ヲ生ズル因デアルカラ、是ハ認ムルコトハ出來ナイト云フ御
考カラシテ、第二項ヲ削除セラレタノデアリマス、併ナガラ委員會ニ於キマ
スル討論或ハ御質問中ニ於ケル御意見等ニ依テ察シマスルト、此修正案ヲ稱
ヘラレル御方モ必シモ此改正ニ對シテハ御反對デハナカッタヤウニ思ハレタ
ノデアリマス、卽チ委員中ノ一人最モ御經驗ノアル若槻君ハ自分モ嘗テハ此
競爭入札ナルモノノ弊ト云フモノノ甚ダシイコトヲ認メタノデアル、從ッテ或
時代ニ於テハ此今囘ノ改正ノ如ク何カ競爭入札ノ弊ヲ去ル方法ヲ講ゼナケレ
バナラヌト云フコトヲ認メタノデアル、併ナガラ今日ノ場合ハ宜シクナイ、
今日ノ場合ニ於テ斯クノ如キ改正ヲ企テルト云フコトハ其時機ヲ得タモノデ
ナイ、今日ハ誠ニ世間ニ於テ種々如何ハシキ事件ガ頻發スル際デアル、デア
ルカラシテ以前ヨリモ今日ノ方ガ社會ノ風紀ガ宜シイト云フ譯ナラバ、此改
正モ宜カラウ、併ナガラ以前ト今日トヲ較ベルト、甚ダ遺憾ナルコトデハア
ルガ、ドウモ一般ニ官紀モ弛廢シテ居ル有樣デアル、斯ル場合ニ於テ隨意契
約ノ範圍ヲ擴ゲルト云フコトハ往々ニシテ弊害ヲ生ジ易イモノデアルカラシ
テ、今日ノ場合ニ於テハ之ヲ反對セザルヲ得ナイ、斯樣ニ御主張ニナッタノデ
アリマス、自然其結果トシテ現行法ニ依ルト云フノガ宜シイ、現行法ニ依ル
コトニナレバ隨意契約ニ依ル場合ハ一々勅令ヲ以テ規定スルノデアル、國務
大臣ノ任意ニ隨意契約ヲスルコトハ出來ナイノデアル、勅令デスルコトデア
ルカラ各國務大臣ハ若シ一般競爭入札ニ依ルコトガ出來ナイ、隨意契約ニ依
ルノ必要ガアルト認メタ場合ニ於テハ事情ヲ具シテ大藏大臣ニ相談ヲスル、
大藏大臣ハ之ヲ審査シテ隨意契約ニ依ルノ已ムヲ得ナイト認メタ場合ニ於テ
ハ勅合ヲ發布セラルル手續ヲ執ルノデアル、卽チ國務大臣一人ガ其場合ニ於
テ是非ヲ判斷スルノデハナク、種々ノ機關ヲ經テ愼重ニ審議セラルヽノデア
ルカラ、幾ツモノ機關ヲ通シテ行クノデアルカラシテ、其弊ヲ生ズルコトハ少
ナイ、デアルカラシテ現行法ノ通リニ致シテ嚴重ニ取締ッタ方ガ宜シイ、斯ウ
云フ御意見デアッタト思ヒマス、洵ニ右ノ御意見ノ如ク今日ノ社會ノ狀況ヲ見
マスルト洵ニ遺憾千萬ナコトデアリマス、近年ノ有樣ヲ見マシテモ或ハ先ホ
ド豫算委員長ノ御報告中ニ御演說ニナリマシタ如ク、稅務官吏ノ不正事件、
官金費消ト云フヤウナコトモアリ、或ハ稅關吏ノ不正行爲、之ヲ又東京市ニ
於テ見マシテモ砂利喰ヒ事件トカ、洵ニ如何ハシイ事件ガ頻發シ、又最近
ニ兩院ノ問題トナリ紛糾ヲ來シタ所ノ滿鐵ノ問題、阿片ノ問題、滿鐵ノ問題
ハ果シテ如何ナル事情デアッタカト云フコトハ私ハ存ジマセヌガ、兎ニ角ニ世
ニ疑惑ヲ起サシタト云フコトハ事實デアリマス、斯ノ如ク社會ノ風紀ノ弛廢
ト云フモノハ我〓ハ誠ニ之ヲ遺憾トスルノデアリマス實ニ是ガ肅正ハ御互
ニ努メヌケレバナラヌト云フ感ジハ全ク御同感デアルノデアリマス、併ナガ
ラ是ハ私ハ一時的ノ現象デハナイカ、常ニ斯ノ如キ不正事件ガ續々出ルト云
フ譯ノモノデハナイ、s今日偶、斯ノ如キ事件ガ輻湊イタシタノデアル、若シモ
今日ノ如キ狀況ガ續キマシタナラバ、方サニ國家ハ滅亡スルヨリ外イタシ方
ガナイノデアリマス、我〓ハ政府ト言ハズ議員ト言ハズ國民ト言ハズ協同一
致シ斯ノ如キ不祥事ヲ匡正シナケレバナラヌ、此肅正ヲシナケレバナラヌト
云フ考ヲ有ツノデアリマス、併ナガラ思フニ斯ノ如キコトハ一ツノ流行病ノ
如キモノデアラウト思フノデアリマス、皆ガ寄ッテタカッテ之ヲ防止イタシマ
シタナラバ、豫防イタシマシタナラバ遂ニ猖獗ヲ極メタ所ノ流行病モ或ル時
機ニハ終熄スルニ至ルモノデアラウト思フノデアリマス、又左樣ニ致サセ
ナケレバナラヌノデアリマス、併ナガラ會計法ハ永久ノ法律デアリマス、會
計法制定以來三十年程ニモナリマス、其間隨分久シキ問ノ經驗ニ依リマシテ
競爭入札ノ如キ弊害モ當局者ハ感ジテ居ッタノデアリマスルガ、扨之ヲ改正セ
ムト致シマスレバ憲法附屬ノ法律トモ謂フベキ重大ナル法律デアリマスルカ
ラシテ、容易ニ此一點ノ爲ニ改正ヲ企テルト云フコトガ出來ナカッタ、遂
今日ニ至ッテ預金制度ノ採用デアルトカ、是ガ其眼目デモアリマセウガ、ソレ
ニ連レテ種々ノ點ニ改正ヲ加ヘラレル、其序ニ漸クニシテ此契約ニ關スル
點ヲモ改正ヲ加ヘルト云フコトニナッタノデアリマス、若シ今日改正ヲ加ヘナ
ケレバ又今迄ノ經驗ノ如ク或ハ長キ間現行法通リ契約方法ニ依ルト云フヤウ
ナコトニナルカモ知レヌト思フノデアリマス、ノミナラズ修正論者ハ現行法
ノ規定ヲ以テ最モ能ク競爭入札ノ弊害ヲ防ギ得ルモノデアル、又隨意契約ニ
依テ亂雜ニナルト云フコトヲ防ギ得ルモノデアル、卽チ今囘ノ改正案ノ契約
ニ關スル點ヲ削除シテ現行法通リニサヘヤレバ最モ理想的ニ又差支ナク行ハ
レルモノデアルト云フヤウナ御考デアルカモ知レヌト思フノデアリマスガ、
決シテ現行法ト雖完全ナルモノデハナイ、我〓ハ現行法通リニ行ケバ完全
デアルト云フコトハ決シテ言ヒ得ナイノダラウト思フノデアリマス、卽チ現
行法ノ制度ニ依リマスルト云フト一々隨意製約ニ依ル場合ハ勅令ヲ以テ定ム
ルト云フコトニナッテ居ルノデアリマスガ、其勅令ハ既ニ百十內外ノ多數ニ
上ッテ居ルノデアリマス、勅令ノ數ハ百有餘ニ達シテ居ルノデアリマス、而シ
テ其百有餘ノ勅令ハ色〓隨意契約ニ依ル場合ノ廣イ狹イノ區別ハアリマス
ガ、兎ニ角勅令デアリマスルカラシテ、一々個々ノ契約ト云フモノヲ勅令ニ
依テ定メタモノデハナイ、或ル場合ヲ假想イタシマシテ斯ク斯クノ場合ニ於
テハ隨意契約ニ依ルコトヲ得ト云フ規定ニナッテ居ルノデアリマシテ、其間ニ
是ガ國家ノ爲ニ不利ナ結果ヲ來スト云フ場合ニ限ッテ云フヤウナ條件ハナ
イ、斯ク斯クノ場合ニ於テハ隨意契約ニ依ルコトヲ得ト云フコトニナッテ居ル
ノデアリマスカラシテ、其場合ニ該當スルトキニ於テハ必シモ利不利ノ判斷
ヲ致サズシテ、總テ隨意契約ニ依ルト云フ實際ノ有樣デアルノデアリマス、
而モ其隨意契約ニ依リ得ルト云フコトヲ規定シタ所ノ勅令ハ、其一二ノモノ
ハ隨分狹イモノモアリマスルガ、比較的廣ク規定イタサレテ居ルノデアリマ
ス、例ヘバ朝鮮總督府デアルトカ、或ハ臺灣總督府デアルトカ、樺太デアル
トカ、或ハ鐵道會計等ニ於テハ非常ニ廣キ範圍ニ於テ隨意契約ヲ許シテ居ル
ノデアリマス、例ヘバ鐵道會計ニ於キマシテハ簡單デアリマスルカラシテ朗
讀ヲ致シテ見マスルガ、鐵道會計規則ニ依リマスレバ、其第三十一條ニ於テ
「左ニ揭クル場合ニ於テハ所管大臣ノ定ムル所ニ從ヒ隨意契約ニ依ルコトヲ
得。一、土工、橋梁、隧道、軌道、停車場、倉庫、機械工場、船舶及旅館ニ關
スル工事ヲ請負ニ付スルトキ、二、鐵道事業用ノ諸材料、車輛、船舶、器具、
機械、機械運轉用品、被服及船舶、旅館ノ營業用ノ物品ヲ賣買スルトキ、
三、車輛、船舶、器具、機械、旅館及旅館ニ附帶スル物件ヲ貸借スルトキ」
斯樣ナヤウニ規定イタシマシテ、鐵道會計ニ於キマシテ、殆ド總テノモノガ
隨意契約ニ依リ得ルト云フヤウナ規定ニナッテ居ル、又朝鮮、又ハ臺灣ニ於ケ
ル政府ノ工事及物件ノ買入借入ニ關スル件ト云フ勅令ヲ見マスト、朝鮮又ハ
臺灣ニ於ケル政府ノ工事及、千五百圓ヲ超エザル物件ノ買入借入ハ競爭ニ付
セザル隨意契約ニ依ルコト、卽チ政府ノ工事ハ悉ク隨意契約ニ依テ宜シイト
云フコトニナッテ居ル、樺太ニ於テモ殆ド之ト同樣ナル規定ガアル、斯樣ナ譯
デアリマシテ必ズシモ勅令ニサヘ依レバ、嚴重ニ取締得ルト云フノデハナ
イノデアリマス、況ヤ勅令ニハ、多クノ場合、殆ド總テデアリマセウガ、
不利デアルヤ否ヤト云フ條件ハナイノデアル、斯ノ如キ場合ニ於テハ、隨意
契約ニ依リ得、斯樣ニ規定イタシテ居ルノデアリマス、殆ド此勅令ノアル場
合ニ於テハ、其ノ隨意契約ニ依リ得ル範圍ト云フモノガ、極メテ廣汎ナルモ
ノデアルト云フコトガ言ヘルノデアリマス、デアリマスルカラシテ、現行法
ニ於キマシテハ、勅令ノアル場合ニハ、斯ノ如キ廣イ範圍ノ隨意契約ガ認メ
ラレテ居ル、勅令ノナイ場合ニ於テハ、全然隨意契約ガ出來ナイノデアリマ
スカラシテ、一般競爭ノ入札ニ依ラナケレバナラヌ、一般競爭入札ノ弊ニ堪
ヘナイ、非常ニ苦シイ思ヲ致シテ居ル、卽チ其間ニ於テ、寬嚴宜シキヲ得ナ
イト云フ結果ニナルダラウト思フノデアリマス、卽チ現行法ニ依リマシタト
テモ、決シテ安心デアルト言フコトハ出來ナイ、ソコニ非常ナ大キナ拔穴ガ出
來テ居ルト云フコトヲ感ズルノデアリマス、而シテ今囘改正案ガ通過イタシ
マシテ發布ニナリマシタナラバ、政府委員ノ說明ニ依リマスト、斯ノ如キ多
數ノ勅令ハ大部分之ヲ廢止シテ仕舞フト云フコトデアルノデアリマス、而シ
テ是ニ依テ勅令ノ整理ヲスルト云フノデアリマス、デアリマスカラシテ、寧
ロ改正案ニ於キマシテハ唯今勅令ニ依テ、廣ク許サレテ居ル隨意契約ハ著
シク之ヲ狭バメラレテ、其適用ノ範圍ハ、僅ニ國務大臣ガ一般競爭入札ニ依
ルコトヲ不利ト認ムル場合ト云フコトニ限ラレルト云フ譯ニナルノデアリマ
ス、ソレデアリマスルカラシテ、改正案ニ依タカラ甚ダ不安心デアルト云フコ
トハ言ヒ得ナイデアラウト思フノデアリマスノミナラズ、今度ノ改正案ニ依
リマスレバ、國務大臣ニ非常ニ廣イ範圍ノ隨意契約ヲ認メテ居ルノデアリマ
スルガ、之ニ對シテハ相當取締ノ方法ガ付テ居ルノデアリマス、卽チ先ツ以
テ其競爭ハ唯〓ノ現行法ノ隨意契約ノ如クニ無條件ニ之ヲ許シテ居ルモノデ
ハナイ、卽チ公入札ガ不利益トスル場合ト云フ條件ガ付テ居ルノデアリマス、
而シテ其條件ナルモノハ、不利デアルヤ否ヤト云フコトハ、各個ノ契約ニ付
テ見マスレバ、何人ト雖常識デ以テ判斷シ得ルノデアル、國務大臣ガ契約
ヲ致シ、ソレヲ不利デアルト見タナラバ、其責任ヲ問フノ途ハアルノデアリ
や、 、ノミナラズ此ノ國務大臣ガ隨意契約ヲナシタル場合ニ於テハ一々其ノ
都度會計檢査院ニ對シテ其ノ隨意契約ニ依ラネバナラヌト云フ事由ヲ詳カニ
申シテ、檢査院ニ通知スルト云フコトニナッテ居ル、卽チ此通知ヲ受ケタル會
計檢査院ハ其ノ隨意契約ノ果シテ當ヲ得タルモノデアルヤ否ヤヲ、監視ノ機
會ガ與ヘラレテ居ルノデアリマス、此點ニ付マシテハ、本案ヲ起草セラレル
時ニ、非公式デハアッタサウデアリマスガ、會計檢査院ノ職員モ矢張此起草
ニ參加シテ、是デ差支ガナイト云フコトニ認メテ居ッタモノデアルサウデアリ
マスカラシテ、此點ニ付テハ相當ニ監督ノ途ハ付カウト思ウテ居リマス、ノ
ミナラズ今囘ノ會計檢査院法ヲ改正セラレ、其組織ヲ變更シ定員ヲ增加シテ、
一層會計檢査ノ效ヲ擧ゲヤウト云フコトヲ企テラレテ居ルノデアリマス、卽
チ此ノ檢査院ノ職員ノ增加ト云フモノハ單ニ此契約ニ關スル監督ノ爲メノミ
デハアリマセヌ、固ヨリ決算ノ提出ノ時期ヲ早メルト云フヤウナコトモ亦
且ノ宗良增加ノ、理由デアリマハ、又其他ノ點(付ラス定員培加ノツ
テ居ルノデアリマスガ、此點モ亦增員ノ一理由デアルノデアリマス、デアリマ
スカラシテ檢査院ノ檢査ノ周到ト云フコトハ、相當ニ實效ヲ擧ゲ得ルモノデ
アラウト思ハレルノデアリマス、今囘會計法ノ改正ニ依リマシラ決算ノ提出
ノ時期ヲ早メラレルノデアリマス、從來ヨリモ一年決算ノ提出期ガ早クナッタ
ノデアリマス、デアリマスカラシテ此契約ノ結果ト云フモノモ、一年早ク議會
ニ提出セラレマシテ、議會ガ之ヲ審査スルノ機會ヲ得ル譯デアリマス、卽チ
餘リ契約ト遠カラザル時期ニ於テ審査ノ機會ヲ得ルト云フコトニモナルノデ
アリマス、以上ノ如ク此ノ隨意契約ニ對シマシテハ、事後ノ監督ナルモノハ
周到ニ盡ス途ガアラウト思フノデアリマスガ、事前ニ於キマシテモ不取締ニ
流ルヽコトヲ取締ル途ガアルノデアリマス、卽チ先刻委員長ヨリ報告ニナリ
マシタル通リ、委員會ニ於キマシテ、今囘ノ改正ノ結果隨意契約ノ範圍ガ廣
クナッタガ、之ニ付テ其ノ監督方法ハ如何ニナサレルカ、又各省ノ間ニ於キマ
シテ、或ハ不利ナル條件ヲ嚴ニ解釋シ、或ハ寬ニ解釋スル、其間ニ寬嚴ノ差
ヲ生ズル、不統一ニ付テハ何カ御取締ノ方法ガアルカト云フコトヲ、智
リ總理大臣ニ質問ヲ致シマシタ所ガ、總理大臣ハ其點ニ付テハ閣議決定ヲ以
テ內規ヲ定メテ斯〓ノ場合ニ依テハ、隨意契約ニ依テモ宜イト云フコトヲ定
メル、而シテ又左樣ナコトヲ一般的ノ標準ヲ定メルコトノ出來ナイ場合ニ對
シテハ随意契約ヲ必要トスル時期ニ於テ、一々各省大臣ヨリ大藏大臣ニ相
談ヲスル、其承認ヲ求メルコトニシテ、各省ノ間ニ於テ統一ヲ破ルコトノナ
イヤウニスル、又監督ヲモ嚴重ニシテ濫リニナラヌヤウニ、防グ方法ヲ講ズ
ル積リデアル、斯樣ニ言明イタサレタノデアリマス、以上ノ理由ニ依リマシ
テ、私ハ現行法ヲ見マスルト云フト、一方ニ於テハ競爭入札ヲ墨守スル結果
非常ニ其弊ニ堪ヘナイ、又他方ニ於テハ百有餘ノ勅令ノアリマスガ爲ニ、非
常ニ其間ニ於テ煩雜ニナル、又不取締ニナリ易イト云フヤウナル缺點ガアル
ノデアリマスルシ、又修正論者ノ御意見ノ如ク、時弊ニ付テノ御心配ハ現行
法ノ下ニ於テモ亦少カラヌノデアリマス、今日ノ弊害ヲ御心配ニナルナラバ
現行法ノ下ニ於テモ不安心デアルト言ハネバナラヌ、現行法ニ依レバ安心デ
アルト云フコトハ決シテ言ヒ得ナイノデアリマス、卽チ如何ナル制度ヲ採リ
マシテモ、其間ニ於テハ弊害ハアリ得ルノデアリマス、而シテ改正案ハ現行法
ノ下ニ於ケル多年ノ宿弊ヲ改メ、其ノ宿弊ヲ除カムトセラレルノデアリマシ
テ、又將來ニ對シテノ取締ハ唯今申ス通リ嚴重ニナッテ居ルノデアリマス、或
ハ斯ノ如キ廣キ隨意契約ヲ許スト云フコトハ外國ノ立法例ヲ見テモ餘リナイ
コトデル、日本ノミガ之ヲ寬ニ取扱フト云フコトハ如何ナモノデアルカト云
フヤウナ御意見デアルカモ知レヌト思フノデアリマスガ、外國ノ立法例ニヨ
リマシテモ全然ナイコトモナイヤウデアリマス、一二ノ例ハナキニシモアラ
ズト考ヘマスルシ、又外國ノ立法例ノ有ル無イニ依テ我國ノ立法ヲ如何ニス
ルカト云フコトヲ決スベキモノデモナイ、卽チ國ニヨリ其事情ヲ異ニシテ居
ルト思フノデアリマス、泥棒ノ多イ所デハ戶締ヲ嚴重ニシナケレバナラヌ、
又質朴ナル田舍ニ於テハ必ズシモ戶締ヲシナクテモ安ンジテ眠ルコトガ出
來ル、又泥棒ノ多イ所デアッテモ警察ノ設備ガ完備シテ居ルナラバ必ズシモ
戶締ヲセヌデモ泥棒ガ這入ルト限ッタモノデハナイ、卽チ各〓國情ニ依テ違フ
ノデアリマスカラ、外國ノ立法例ノ有無ニ依テ我國ノ立法ヲ如何ニスルカ
ト云フコトヲ決スベキ問題デハナイト思フノデアリマス、大體右樣ノ趣意ニ
依リマシテ、私ハ寧ロ修正案ヨリモ政府ノ原案ヲ以テ可ナリト致シマスルノ
デアリマスルカラシテ、委員會ニ於キマシテモ原案贊成ノ意見ヲ申述べタノ
デアリマス、玆ニ私ハ原案贊成ノ意見ヲ申述べマシテ、諸君ノ御〓聽ヲ煩ハ
シタ次第デアリマスルガ、何卒多數諸君ノ御贊成ヲ得テ本案ハ本議場ニ於テ
モ政府原案通リ可決セラレムコトヲ偏ニ希望イタス次第デアリマス
〔若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=227
-
228・若槻禮次郞君
○若槻禮次郞君 私ハ委員會ノ修正案ニ贊成スルモノデアリマス、本日ハ總
豫算ノ會議、追加豫算ノ會議竝ニ重要ナル法案ノ討議ガ是迄アリマシテ、諸
君ハ大分御疲レニナッテ居ラセラレルヤウデアリマス、斯樣ナ時ニ此ノ法律
案ヲ討議セラレルト云フコトハ私ハ誠ニ之ヲ遺憾トスルモノデアリマス、會
計法ハ御承知ノ通リ憲法附屬ノ法律デアリマス、誠ニ重要ナル法律デアリマ
ス、此重要ナル法律ノ全部改正ヲ行ハレル場合ニ疲レタト申シテハ相濟ミマ
セヌガ、御互ニ外ノ議案ニ依テ餘程頭ヲ惱マシメタ其後デ、玆デ討議スルト云
フコトハ、私ハ誠ニ之ヲ遺憾トスルモノデアリマス、併ナガラ今ヤ是ガ最後ノ
決定ヲセラレ掛ケテ居ルノデアリマスカラ、ドウシテモ一通リ私ガ委員會ノ
修正案ニ贊成スル所以ノコトヲ申上ゲテ、是非御贊成ヲ願フト同時ニ御判斷
ヲ仰ガナケレバナラヌト思フノデアリマス、委員長ノ御報告ニナリマシタ通
リ今囘ノ會計法ノ改正ノ眼目タルモノハ金庫制度ヲ改メテ預金制度ニスルト
云フ事柄デアリマス、此事柄ハ私共豫テヨリサウアリタイト思ッテ居ッタコト
デアリマス、又私ノミナラズ世間ニモ大變希望シテ居ッタコトデ、衆議院ナド
デハ屢〓建議ノアッタ問題デアリマス、此問題ガ今日其議ヲ容レラレテ茲ニ改
正案トナッテ出マシタト云フ事柄ハ、私ノ誠ニ喜ブ所デアリマシテ、茲ニ至リ
マシタ事柄ニ付マシテハ、高橋大藏大臣ノ努力ヲ大ニ多トスルモノデアリマ
ス、ノミナラズ其他ノ改正條項モ此度ノ改正案ハ大體ハ誠ニ結構デアリマス、
其事柄ハ委員長ガ先程述ベラレタ通リデアリマス、ソレデアリマスカラ、私
共ハ此ノ會計法ノ改正法律案ハ成ベク速ニ通過シテ、折角善良テル改正ヲ企
テラレタコトデアリマスカラ、是ニ一日モ速ニ實行力ヲ有タシメタイト希望
スルノデアリマスガ、唯今問題ニナッテ居リマスル二箇條ナルモノハ、是ハ全
體カラ申シマスレバ、ドッチカト云ヒマスルト重要ナル程度ガ左程大キイモ
ノデハナイノデアリマス、併シ折角立派ナル會計法ノ改正ヲナサレルモノナ
ラバ、一步ヲ進メテ委員會ノ修正案ノ如キコトニナリマシタナラバ、一段良
クナルノデアリマス、折角出來ルモノデアルナラバ、委員會デモ斯ノ如キ案ガ
出來テ居リマスカラ、此儘デ委員會ノ修正ヲ御認メニナレバ如何ニモ立派ナ
會計法ガ出來ルノデアリマスカラ、此意味ニ於テ御疲レニナッテ居リマセウケ
レドモ、ドウシテモ一通リ御聽キニ入レナケレバナラヌ、又初メノ點ノ、卽チ
十條ノ改正修正案ハ、豫備金ヲ支出シタ場合ニ、何時議會ノ承諾ヲ受ケルカト
云フコトデアリマス、誠ニ簡單ナコトデアリマス、憲法ニ於テハ豫算ノ款項ニ
不足ガアッタ場合、竝ニ豫算以外ニ於テ支出ヲ要スル場合ニハ豫備費ヲ拵ヘヨ
ト云フコトガ言ッテアリマス、第一豫備金第二豫備金ト云フ名稱ハ、是ハ會計
法ガ之ヲ與ヘテ居ルノデアル、憲法ハ別ニ豫備金ニ付テ第一豫備金トモ第二
豫備金トモ言ッテハ居ナイノデアリマス、唯豫算ノ項目以外ニ不足ガアッテ支
出ヲスル場合、竝ニ豫算ニナイモノヲ、必要ガアッテ支出スル場合、兩方共ノ
爲ニ豫備金ヲ設ケロ、而シテ豫備金ヲ支出シタナラバ事後承諾ヲ議會ニ向ッテ
求メヨト言ッテ居リマス、憲法ガ此二ツノモノヲ取扱フコトハ兩者ニ於テ何等
異ナル所ハアリマセヌ、唯今八條君ハ第一豫備金ト第二豫備金ハ性質ガ大ニ
違フト言ハレル、人シタ違ヒハナイノデアリマス、唯偶然豫算ノ上ニ項目ガ
アッテ、其不足ノ分ト、豫算ニ項目ガナイ其場合出スト云フ違ヒダケデアル、
例ヘバ玆ニ傳染病豫防費ト云フモノガ十萬圓アル、非常ニ「ペスト」ガ流行ッ
テ來タカラ百萬圓ヲ要スルト云フノデ、百萬圓ヲ第一豫備金カラ出シタト云
フノモ、豫算ニハ傳染病豫防費ト云フモノガナカッタ、然ニ突然「ペスト」
ガ發生シテ來タカラ第二豫備金カラ百萬圓ヲ支出シタト云フノモ、何モ大シ
タ違ヒハナイノデアリマス、議會ガ協賛シナイモノヲ政府限リデ支出シタノ
デアル、ソレニ付テハ後カラ承諾ヲ求メロ、斯ウ云フコトデアリマスカラ、
第一豫備金ト第二豫備金トハ大變性質ガ違ッテ居ッテ、一ニハ悠ックリ求メテ宜
イケレドモ、一ツハサウデナイト云フ程區別ノアルモノデハナイノデアリマ
ス、而シテ議會ノ協賛ヲ經タモノヲ出スノデアリマスカラ、而シテ憲法ハ成
ベク早クサウ云フ場合ニハ議會ニ後カラ承諾ヲ受ケロ、斯ウ云ウテ居ル
此憲法ノ精神ヲ汲ンデ見マスレバ、議會ノ知ラヌ費用ヲ出シタ以上ハ成ベ
ク早ク議會ニ出シテ、斯ウ云フ費用ヲ出シマシタガドウゾ承諾シテ下サイト
云フヤウニセイト云フノガ、是ガ憲法ノ趣意デアリマス、是ハ其意味ニ於テ
第一豫備金モ第二豫備金モ異ル所ハナイノデアリマス、改正ガナケレバ兎ニ
角今迄ノヤウニ豫備金ヲ出シ置イテカラ、二年モ經ッテカラ、初メテ承諾ヲ求
メルト云フヤウナ實ニ憲法ノ精神ヲ失ッタヤウナヤリ方ヲシテ居ルナラバ、ソ
レハ別問題デアリマス、既ニ法律ヲ改正シテ、ソレデハイケヌカラ成ベク議
會ノ承諾ヲ早ク求メヨト云フ精神カラナサレタ以上ハ、ソレナラバ第一豫備
金ト第二豫備金ト區別ヲセラルル必要ハ一モナイノデアリマス何レモ成ベク
早ク求メラルルガ宜シイ、而シテ議會ノ承諾ハ斯ウ云フ費用ノ爲ニ斯ウ云フ
金ヲ出シタト云フコトノ承諾ヲ求メルノデアル、出シ方、金ノ使ヒ方ガ法律
ニ違反シテ居ナカッタカドウカト云フヤウナ其計算ヲ調ベルノハ、ソレハ決算
ノ時ニ至ッテ調ベルノデアッテ、議會ノ承諾ヲ受ケルノハ其決算ノ承諾ヲ受ケ
ルノデハナイ、斯ウ云フモノヲ出サウト云フコトヲ決定シタト云フ事柄ニ付
テ、議會ノ承諾ヲ受ケルト云フコトデアリマスカラ、是ニ至ッテハ第一豫備金
ト第二豫備金ハ一向異ナルコトハナイノデアル、唯今八條サンノ議論ニ依リ
マスト云フト、計算書ヲ作ルノガ面倒ダナント言ハレルガ、計算書ヲ作ルノ
デハナイノデアル、計算書ヲ作ルノハ其決算ニ付テ議會ノ承認ヲ求メル時ニ
計算書ヲ作レバ宜イ、豫備金事後承諾ニ計算書ハ何ンニモ要ラヌノデアル、
事項事項デ事柄ヲ書イテ、幾ラ〓〓出サウト云フコトヲ政府デ決メタ、唯ソ
レダケ書イテ、斯ウヤリマスカラ承諾ヲシテ吳レト云フノデアリマスカラ、
第一豫備金デアラウガ第二豫備金デアラウガ、寔ニ簡單デアリマス、是ガ億
劫ナモノノヤウニ考ヘテ、第一豫備金ハ非常ナ億劫ナモノダ、第二豫備金ハ
左程デナイカラ、一ツハ早ク出スケレドモ、一ツハ遲ク出スト云フヤウナ御論
旨デアッタヤウデアリマスケレドモ、決シテサウ云フモノヂヤアリマセヌ、計
算書ヲ作ルト云フコトハ必ズ今日實際實行シテ居ラレルヤウナモノデアリマ
スト是ハ中〓面倒デアリマス、容易ニ出來惡イト云フコトニナル、ソレハ既
ニ第二豫備金ニ付テハ、此度ノ改正案デ改メテ居ラルヽ事項ニ付テ承諾ヲ求
メル方針ガ揭ゲテ居ラルル、其處マデ政府ガ氣ガ付イタナラバ、第一豫備金ニ
付テモ、矢張同樣ニナサレバ寔ニ簡單ニ出來ルコトデアル、私共ハ殊ニ政府
ニ難キヲ求メル爲ニ之ヲ言フノデハアリマセヌ、何デモナク、一擧手一投足
デ出來ル事柄デ、何ヲ好ンデ一ツノ分ヲ遲ク出シ、一ツノ方ヲ早ク出スト云
フコトヲナサレルカ、元來議院ガ項目ニ付テ協贊シテ居ナイモノデアルカ
ラ、議會ニ早ク出シテ承諾ヲ求メルト云フノデアリマス、議會ノ協賛權ヲ重
ンズルト云フ精神デ憲法モ出來テ居レバ、此度ノ改正モ出來テ居ルノデアリ
マン·〓折角ソレダケノ議會ノ協賛權ヲ重ンズルト言ハレルナラバ、第一豫備
金、第二豫備金共ニ議會ノ協贊權ヲ重ンジテ、成ベク速ニ議會ノ承諾ヲ求メ
ル、是ガ當然デアリマス、ソレ故ニ私ハ政府ノ會計法中改正案ニ付テ反對ドコ
ロデナイ、前申シマスル通リ高橋大藏大臣ニ、彰德表ヲ上ッテ居ルノデアリ
マス、ソレ位ニ今度ノ改正案ハ善キ改正案ダト思ッテ居ル、其ノ改正案ガ今
一步進メテ、私ガ申スヤウナ卽チ委員會ノ修正案ノヤウニナサルレバ、一層會
計法ガ良クナルカラ、サウナスッタラ宜カラウト云フノデアリマス、ソレカラ
次ノ議會ト云フヤウナコトヲ言ッテアル、ソレヲ常會ト云フコトニナッテ居ル
ノハ、次ノ議會トナレバ、ソレデハ短イ議會ナドノ時ニ困ル、斯ウ云フコト
ヲ言ハレルノデアリマス、所ガ臨時議會ノ開ケマシタコトハ恰モ日〓戰爭ノ
時ノ廣島ノ臨時議會トカ、寔ニ畏入ッタコトデアリマスケレドモ、御大葬費ヲ
議シタ時ノ臨時議會トカ、斯ウ云フヤウナ事柄ハ、何十年ニ一遍、何百年ニ
一遍到來スルコトデアリマス、サウ云フ時ノ事ヲ考ヘテ議會ノ協賛權ヲ重ン
ズルト云フ精神ヲ輕ンズルト云フコトハ、私ハ何ト云フコトデアル、現ニ昨
年七月茲デ臨時議會ガ開ケテ居ルノデアリマス、ソレ迄ニ豫備金ノ支出ガ大
變アッタ、其時ノ豫備金ノ支出ハ出サルレバ出サレタ儘デ、寔ニ新シイ記憶ガ
アリ、又政府ノヤリ方ガ善イカ惡イカト云フコトヲ判斷スルノニ大變宜イ、
活キタ仕事ガ出來ル、此時ニ於テ出サンデ置イテ、此常會、今日ノ議會ニ至ッ
テ出サレルト、餘程熱ガ冷メタ時ニ出テ來ル、私ハ之ヲ論ジマスノハ豫備金
ノコトヲ言ッテ居リマスケレドモ、剩餘金支出ト云フコトガ同樣ニナルノデア
リマス、曾テ先達此議場ニ於テ、大藏大臣ニ向ッテ私ハ質問ヲ致シマシタ、
剩餘金支出ニ付テハドウナサレルカト云フコトヲ申シタノデアリマス、剩餘
金支出ト云フコトハ、是ハ憲法モ會計法モ認メテ居ナイモノデアリマス、認
メテ居ナイモノダカラ、法規ノ上ニ斯ウスルト云フ規定ノシヤウガアリマセ
ヌ、ソレナラバ是カラ後ニ政府ハ責任支出ト云フコトハ絕對ニシナイカト云
フト、ソレハイケマイ、國家一日存在シテ居ル以上ハ豫算ニ於テ豫見シナイ
ヤウナ大事件ガ起ッテ、一日モ措クコトガ出來ヌト云フコトダッタラ、政治家ガ
責任ヲ帶ビテ剩餘金ノ支出ヲスルト云フコトハ從前モ例ガアッタノデアリマ
スカラ、今後モ必ズ此例ヲ追ハルルコトト思フ、其例ヲ追ハレタナラバ、成
ベク早ク議會ノ承諾ヲ求メルト云フノガ當然デアル、豫備金デスラモ速ニ承
諾ヲ求メルト云フノデアルカラ、憲法モ認メズ、會計法モ認メナイ責任支出
ニ付テハ、成ベク速ニ承諾ヲ求メルノガ當然デアリマス、ソレガ昨年ノヤウ
ナ七月ニ臨時議會ガ開イテ居ッテモ承諾ヲ求メズ、今日此議場ニ於テ問題ニ
ナッテ居ル外米買入レニ付テハ、隨分委員會デ議論ガ起ッテ居ルト云フ話ヲ私
ハ傳聞シテ居ルノデアリマス、是ハ大ニ議論ノアルベキコトデアリマス、外
米ヲ政府ガ買入レテ米價ヲ調節スルト言ハレルケレドモ、是ハ遺憾ナガラ調
節ノ目的ハ達セラレナカッタト言ハナケレバナラヌ、而シテ今日ハ外米ガ澤山
餘ッテ、米穀法案ノ委員會ナドデハ剰ッタ外米モ今日ハ〓糧ニ堪ヘヌヤウニナツ
テ居ルト云フ話デアリマス五十萬圓バカリ······斯ウ云フ狀態ヲ側ラヘ置イ
テ、サウシテ國庫ニ對シテ五六十萬圓ノ損ヲサシテ居ルト云フ事柄デアリマ
ス、サウ云フヤウナ責任支出ヲシテ居ルノガ、モウ七月ノ臨時議會ノ時ニアッ
タモノデアリマス、其時ニ承諾ヲ受ケラレヽバ、寔ニ活キテ居ル問題ヲ捉マ
ヘテ、政府ニ向ッテ十分糺スコトガ出來タ、ソレヲ其時ニ出サンデ今日出テ居
ル、今日デサヘ委員會デハ非常ナ議論ガアッテ、是ハ承認スベキモノカ、承認
スベカラザルモノカト云フ非常ナ意見ガアルト云フコトデアリマス、其ノ位
ノ問題デアリマス、此處デ一ツ何處へ出スカト云フコトヲ決メルト云フト
ソレガ例ニナッテ剩餘金支出モヤハリ其通ニナルノデアリマス、ソレデアリ
マスカラ豫備金支出ニ付テモ、成ベク速ニ議會ニ出シテ事後承諾ヲ求メルノ
ガ當然デアル、ソレガ爲ニハ會計法ニ規定スベキ第二豫備金、第一豫備金ニ
付テモ、次ノ議會ト云フコトハ其次ノ常會マデ待タナイヤウニスルノガ當
然デアルト云フノガ委員會ノ修正案デアルノデアリマス、サウスルト云フト、
臨時議會ノ短イ時ニ困ルト斯ウ仰ッシヤル、廣島ノ臨時議會ノ如キ一時間カ二
時間デ終ッタ時ガアル、サウ云フ時ニ事後承諾ヲ求メルト云フノハ無理ダト云
フコトデアリマス、此法律ハ事後ノ承諾ヲスベシト云フ法律ヂヤナイノデ
アリマス、承諾ヲ求ムベシト云フノデアリマスカラ、政府ガ案ヲ出シサヘス
レバ、ソレデ政府ノ側ハ宜イノデアリマス、議會モ案ガ出タラバ成ベク議ヲ
盡シテ審議シテ、承諾スベシトカ、或ハ承諾ヲ與ヘヌト云フコトヲ決定スル
ノガ宜シイノデアリマス、併シ時日ガナクテ審査ノ時間ガナケレバソレハ
審査未了ニナリマス、審査未了ニナレバ次ノ議會ニ同ジ案ヲ出シテ、ドウシ
テモ一遍承諾ヲ求メナケレバナラヌ、ダカラ短イ臨時議會ニハ唯出シサヘス
レバ宜シイ、審議ガ出來ナカッタラ次ノ議會ニヤレバ宜イ、長イ臨時議會ナラ
バ其處デ大ニ審査ヲシテ、承諾ヲ與ヘルカ與ヘナイカト云フコトヲ決定スレ
バ宜シイ、何モ議會ガ短イカラト云ウテ、ソレモ其短イ議會、何モ百年ニ
一遍カ五十年ニ一遍到來スルコトヲ想像シテ、議會ノ協賛權ヲ重ンズルト云
フ此ノ委員會ノ修正案ニ反對ヲセラルヽト云フ事柄ハ、私ハドウ云フコトデ
アリマセウカ、貴族院衆議院、各〓豫算協賛權ヲ有ッテ居ルノデアリマス、其
ノ協賛權ヲ十分行ッテ居ナイ者ガアッテ、政府限リヤッテ居ルヤウナコトヲ、是
ニ事後承諾ヲ求メル、ソレハ憲法ガサウセヨト言ッテ命ジテ居ル憲法ノ精神
ニ據フテ、委員會ハ此度成ベク短イ期限ニ於テ議會ノ承諾ヲ求メルヤウニセヨ
ト云フ修正案ヲ作ラレタト云フ事柄ハ、私ハ實ニ當ヲ得タ修正案デアル、高
橋大藏大臣ノ努力ニ依テ成ッタ此立派ナル會計法改正案ハ更ニ錦上花ヲ添へ
ルモノデアルト私ハ思ッテ居ルノデアリマスガ、若シ原案ニ戾ルヤウナコトガ
アッタナラバ折角議會ノ協賛權ヲ重ンズル精神ニ依テ出來タモノガ潰レルコ
トニナリマスカラ、是ハ餘ホド能ク御熟慮ニナッテ御判斷ニナリタイト思フノ
デアリマス、ソレカラ第二點、三十一條ノ改正、卽チ政府ガ物品ヲ購入シタリ
又事ヲサセタリスル場合ニ約束ノ仕方ノコトデアリマス、現行法ニ依リマス
ト政府デ斯樣ナ契約ハ總テ公入札ニ依ラナケレバナラヌト云フ原則ガ出來テ
居リマス、其原則ニ對シテ公入札ニ依ランデ隨意契約ヲ結ブガ宜イト思フ事
柄ハ勅令ヲ以テ之ヲ定メヨ、勅令デ決メタコトダケハ隨意契約デヤッテ宜イト
云フノガ現行法デアリマス、固ヨリ會計法ノ中ニ隨意契約デヤッテ宜イト云フ
箇條ガ數箇擧ゲテアリマスケレドモ、ソレハ勅令ヲ以テ隨意契約ガ出來ルヤ
ウニナッテ居リマスカラ、法律ニ特ニ書ク必要ハアリマセメカラ此三十一條ノ
第一項ハ卽チ現行法ノ通リデアルト斯ウ申上ゲテ宜イ、原則ハ競爭入札ニ依
ルベシ、併シ場合ニ依テハ勅令ヲ出シテ隨意契約ニシテ宜イト云フノガ是ガ
現行法ノ改正法デアリマス、又今囘ノ改正案第一項デハサウナッテ居リマス、
卽チ第二項ニ至ッテ國務大臣ハ公入札デヤルコトヲ不利ト認メタナラバ隨
意契約ニ依テ宜イトナッテ居ル原則ヲ定メテ其原則ノ不便ナ場合ハ勅令デ例
外ヲ爲スコトガ出來ルト云フ所マデ便利ナ途ヲ開イテアル、ソレニマダ滿足
セズ第二項ニ不利ト認メタナラバ隨意契約デヤッテ宜イト云フ條項ヲ置キマ
スト、第一項ハマルデ崩シテ仕舞フノデアル、原則ハマルデ無クナッテ仕舞フ、
國務大臣ハ苟モ公入札ヲ不利ト認メタラ何時デモ隨意契約ニ依ルコトガ出來
ル、不利ト認メルト書イテアルカラ是ハ非常ナ支障ガアッテ不利ト認メナケレ
バ斯ウハセヌト仰ッシヤルガ、不利ト認メテヤッタナラバ、後トデドウモアナタ
ハ隨意奬約ヲナサッタガト云フト何時デモ隨意契約ハ不利ト認メタカラ斯ウ
ヤッタト何時デモ言ヒ逃レルノデアル、會計法ハ何ノ爲ニ作ルノデアルカモ
ノガ亂雜ニナラヌ爲ニチヤント締ガ出來ル爲ニ作ルモノデ、其必要ガナケ
レバ會計法ナドハ要リマセヌ、正直ナ者ガ金ヲ拂フニ受取ヲ取ランデ拂ッテモ
宜イガ、ソレデハ亂雜ニナルカラ金ヲ拂ッタ時ニハ請取ヲ取ル、ソレデ國ニモ
會計法ノ必要ガアル、其會計法ヲ設ケテ置キナガラ、裏カラ全部踏倒シテ差
支ナイト云フ條文ヲ設ケテ、是デ大變結構ナ改正ダト云フコトハ私共ハ何所
カラ出ルカ分ラヌノデアル、固ヨリ今日ハ公入札ニ於テモ入札者ガ團結シテ
價ヲ高クスルト云フコトハ唯今八條子爵ガ述ベラレタヤウナコトガアリマ
とさぎ
ス、又入札スル日ニナレバ直グ契約ガ出來ンデ一週間モ十日モ延ビルト云フ
コトデ役所ハ不便ヲ感ズルコトガアリマス、不便ノナイヤウニスルナラ取締
規則ガ無イ方ガ宜イケレドモ取締規則ガナカッタラドウナリマスカ、非常ニ亂
雜ニナリ會計紊亂ニナル、又會計紊亂ヲ避ケムトスレバ幾ラカ不便ハ忍バナ
ケレバナラヌ、ソレガ現行法デアルノデアリス、唯今外國ノ例ヲ引カレタノ
デアリマスガ、英吉利デモ佛蘭西デモ白耳義デモ、凡ソ進步シタ國ノ會計法
ハ何處ニ於テモ國務大臣ガ認メマシタナラバ隨意契約デヤッテ宜イナドト云
フ契約ハアリマセヌノデアリマス、私ハ世界ノ何處ニモナイト言ヒタイ先進
國ハ······併ナガラ政府ガ參考書トシテ見セテ吳レタノハ戰前ノ獨逸ニ於テハ
斯樣ナコトガアッタト云ッテ見セテ居ル、併シ私ハ法文ノ全部ヲ讀ンデ居リマ
セヌカラ模樣ハ能ク分リマセヌガ、今日提出セラレタヤウナ國務大臣ガ公入
札ヲ不利ト認メタラ隨意契約デヤッテ宜イト云フヤウナ、ソンナ取締ノナイヤ
ウナコトハ獨逸アタリノ法ニモナイト思ヒマス、會計ガ紊亂シテモドウナッテ
モ宜イト云ヘバ是ハ別問題デアル、會計法ハ取締ヲ付ケル爲ニ之ヲ設ケルモ
ノデアルカラ、幾ラカノ不便ヲ忍バナケレバナラヌ、幾ラカ物ハ高クナル、
幾ラカ期日モ遲レルカラ誠ニ不便ダト斯ウ仰ヲシヤル、ソレハ此ノ隨意契約、
自由ト云フコトニナルバソレハ除カレマス、除カレマスガ隨意契約ト云フ
コトハ自山ト云フコトニシテ、情實ニ依テ契約ト云フモノガ行ハレルヤウニ
ナル、物品ノ買入レ工事ノ請負モ情實ノ運動ガ行ハレマスト實際ニ於テ其間
ニ不正ノコトハ縱シ無イト云フコトニ致シマシテモ情實ニ依テ是レガ行ハレ
ルヤウニナリマシタナラバソレハ大變ナコトニナリマス、ソレハ私ハ長イ間
サウ云フコトヲヤッテ居ッタカラ如何ニ其人ニ私ノ心ガナクテモ其間ニハ色〓
ナ醜怪ナコトガ起ルノデアリマス、價ハ幾ラ安クテモ出來ルカモ知レマセヌ、
公入札ハ隨意契約ヨリ幾ラカ價ガ宜イカモ知レマセヌ、幾ラカ政府ガ安イ物
ヲ買フ方ガ宜イカ、會計ヲ紊リ、會計ヲ紊ル所ノ話デナク、官紀ガ紊亂ス
ルト云フ所謂綱紀ガ弛ムト云フコトヲ認メル方ハマダ宜シイガ、綱紀ガ弛
ムト云フコトハ國家ノ基礎ニ動搖ヲ與ヘルモノデアリマス、此ノ國家ノ基礎
ニ動搖ヲ與ヘルコトガナイヤウニト云フ爲ニハ幾分カ物ガ高クナッタ所ガ幾
分カ手數ガ掛ッタ所ガソレ位ナコトヲ顧慮シテ居ルコトハ到底出來ナイコト
デアル、ソレモ公入札ハ是ハ常ニ物ガ高イ、公入札ノモノハ非常ニ不便ト云
フケレドモ、是ハ百ノ中デ十トカ或ハ五ツトカハアラウガ公入札ノ方ガ公平
デ、公入札ノ方ガ總テ物ガ安イ、偶ニハ百ノ中ニ五ツヤ十ノ不便ナコトガアッ
テモ百分ノ九十ガ宜ケレバ寧ロ之ニ據ラナケレバナラヌ、況ヤ殊ニ勅令ヲ以
テ除外例ヲ設ケルコトヲ既ニ許シテアルノデアリマス、ソコ迄行ッテ居ル、其
以上ニ國務大臣ニ自由ノ手腕ヲ與ヘル必要ガ何所ニアリマスカ、何所ノ國ニ
モ左樣ナ亂雜ナ會計法ヲ拵ヘテ居ル所ハナイノデアリマス唯今八條君ハ若槻
ナゾハ嘗テ斯ウ云フコトヲ考ヘタコトガアッタ、今日モ其意見ヲ有ッテ居ルカ
ト云フコトヲ仰セニナッタ、ソレハ私ハ委員會デモサウ申シタ、ソレハ公入札
ハ唯今モ申上ゲル通リ團結シテズット價ヲ高クスル弊ガアルノデアリマス、ソ
レデアリマスカラサウ云フコトハ何トカ除キタイ、ソレヲ除カムトスルニハ
何カ方法ガアルナラバ一ツ講ジタイモノダガ、幾ラカ其ノ隨意契約ノヤウナ
モノヲ認メルコトニ依テ其弊ヲ除クコトガ出來ルナラサウアリタイト云フコ
トヲ考ヘタコトガアリマシタ、併ナガラ唯今八條サンカラ述ベラレマシタ通
リ今日ハ豫算會議ニ於テ我〓ハ一ノ附帶希望ヲ述ベテ居ルノデアリマス、今
日ハ綱紀ガ大變ニ弛ンデ何トカシテ此ノ時弊ヲ矯正シナケレバナラヌ、時弊
ガ現ニアルト云フコトヲ認メタノデアリマス、綱紀ノ紊亂シテ居ルコトヲ認
メタノデアリマス、委員達ナゾト國家ノ深憂デアルト言ッテマデ我〓ハ〓嘆シ
タノデアリマス、サウ云フヤウナ所ヘ情實自由次第ト云フ規定ヲ設ケテ國務
大臣ハ何デモ宜イ、自由ニナサイト云フ規定ヲ持ッテ行クト云フコトハ私ハ是
ハ矛盾ダト思フノデアリマス、今日ハサウ云フコトハ出來ヌノデアリマス、今
日ヤッタラバ色〓ナ弊害ガ起ッテ來ルノミナラズ、會計法ヲ國ガ決メマスト府
縣ハ之ニ基イテ命令ヲ作ルノデアリマス、又市町村ハ之ニ基イテ市町村條例
ヲ作ルノデアル、國ノ會計法ガ變ハルト府縣モ市町村モ皆其會計ノ規定ガ變ツ
テ行クノデアリマス、國務大臣ニ自由ニヤッテ宜イト云フ規定ガ出來マスト
今度ハ府縣知事ニ自由ニ隨意契約ヲシテ宜イト云フ規定ガ出來ルノデアリマ
ス、今度ハ市町村長ニ自由ニ隨意契約ヲシテ宜イト云フ規定ガ出來ルノデア
リマス、斯ウナッタ時ニ實際ニ起ルベキ弊害ヲ御考ヘニナッテハ如何デアリマ
セウ、私共ハ今日ノ時代ニ決シテ斯ウ云フヤウナ自由ナコトヲ爲スベキ時代
デナイ、會計ト云フモノハ物ノ締リヲスル爲ノ會計法デアル、ソレデハ窮屈一
偏デ何モヤリヤウガナイト云フナラバ、實際イケヌ時ニハ勅令ヲ出シテ隨意
契約ヲスルコトガ出來ルト云フ途ガ布カレテ居ルノデアル、其上ニ今日ノ如
ク綱紀ガ弛ンダ、サウ云フ時ニ斯樣ナ情實ノ行ハルヽヤウナ法規ヲ作ルト云
フコトハ、是ハ誠ニ私ハ之ヲ一度許シタラバ、ドンナ弊害ガ之ニ付テ起ルカ
心配ニ堪ヘナイ次第デアリマス、ソレ故ニ委員會ガ此折角立派ナル會計法ヲ
改正ノ上、議會ノ協賛權ヲ重ンズルガ爲ニ豫備金ノ事後承諾ハ成ベク早ク議
會ニ出サシメルト云フヤウナ修正ヲ加ヘ、會計ノ紊亂ヲ防グ、殊ニ今日ノ如
ク綱紀ノ弛ンダ所へ持ッテ來テ斯樣ナコトヲシテ弊害ヲ助長スルヤウナコト
ガアッテハナラヌト云フコトヲ考慮シテ、玆ニ契約ノ場合ノ取締ヲ相當嚴重
ニスルト云フ修正ヲ致シマシタ以上ハ、委員會ノ修正ハ私ハ極メテ妥當ナル、
今日ノ時勢ニ於テハ最モ適シタモノデアルト考ヘテ居ルノデアリマス、私
此意味ニ於テ委員會ノ修正ヲ以テ完璧デアルト考ヘテ居リマスル、故ニ諸君
ニ向ッテ此場合是非委員長報告通リニ御賛成アラムコトヲ切ニ祈ル次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=228
-
229・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 他ニ發言モ無イト認メマスカラ、討論ハ終局シタ
モノト認メマス、委員會ノ修正ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=229
-
230・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 少數ト認メマス、原案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒ
マス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=230
-
231・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=231
-
232・子爵西大路吉光君
○子爵西大路吉光君 直ニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=232
-
233・大山綱昌君
○大山綱昌君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=233
-
234・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=234
-
235・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=235
-
236・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=236
-
237・議長、公爵德川家達君)
○議長、公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=237
-
238・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 諸君ニ於テ御異議ナケレバ第十二、第十三ノ法案
ヲ一括シテ問題ト致シマス、兩案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=238
-
239・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=239
-
240・子爵西大路吉光君
○子爵西大路吉光君 直ニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=240
-
241・大山綱昌君
○大山綱昌君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=241
-
242・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセス
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=242
-
243・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、兩案全部ヲ問題ニ供シマ
ス、全部原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=243
-
244・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=244
-
245・子爵西大路吉光君
○子爵西大路吉光君 直ニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=245
-
246・大山綱昌君
○大山綱昌君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=246
-
247・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 直ニ兩案ノ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ}発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=247
-
248・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、兩案第二讀會ノ決議通リ
デ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=248
-
249・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、玆ニ諸君ニ御諮リヲ致シ
マスガ、大分時間モ經チマシタカラ、殘リノ法案ノ議事ハ他日ニ讓リタイト
考ヘマス、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=249
-
250・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、明後日ノ議事日程ハ決定
次第本院彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會
午後六時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=250
-
251・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、全部ヲ問題ニ供シマス、
全部原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=251
-
252・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=252
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253・子爵西大路吉光君
○子爵西大路吉光君 直ニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=253
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254・子爵八條隆正君
○子爵八條隆正君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=254
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255・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=255
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256・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、第二讀會ノ決議通リデ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=256
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257・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=257
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258・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 日程第十八、水道條例中改正法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告
水道條例中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十年三月二十二日
右特別委員長
伯爵松浦厚
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵松浦厚君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=258
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259・伯爵松浦厚君
○伯爵松浦厚君 水道條例中改正法律案ノ委員會ノ御報告ヲ申上ゲマス、此
條例ハ極メテ簡單ナル條項ノ改正デゴザイマシテ、一囘委員會ヲ開キマシテ、
卽坐ニ此案ヲ決シマシタノデアリマス詰リ今マデノ條例ハ發布以來三十有
二年ニナリマシテ、段々時勢ノ進運竝ニ水道敷設ノ進步發達ヲ來タシマシタ
ニ付マシテ、今日マデ此條例ノ施行後ニ付テ實硝ヲ擧ゲルコトガ顯著デゴザ
イマス、併シ今日マデ之ヲ一切内務大臣ノ管轄範圍ニ限ッテゴザイマシタケレ
ドモ、是カラ先ハ臨時ニ地方長官ニ於テ致サセル、委任スルコトニナッタノ
ガ、卽チ此改正ノ精神デゴザイマス、此內ニ條例中ノ改正ノ箇條ハ、或ハ官
廳トカ或ハ北海道ノコトヲ區制ニ改メルトカ云フヤウナ文句ノ改正ガ重デ
アリマシテ、其內ニ一箇條、第十一條ノ改正ガ先ヅ最モ重要ナル點ト考ヘマ
れんるソレハ如何ト申シマスレバ、唯今ノ所デハ重ニ水道本支管ノ布設ヲ致
スニ付マシテハ、總テ町村ノ所定シタル所ニ依リマシテ、家主ガ之ヲ實費ヲ
拂ッテ居ルト云フコトニナッテ居リマスガ、是カラ先キハ場合ニ依テ町村ノ財
政ノ狀態ノ都合ニ依テ町村デ之ヲ支拂フト云フヤウナ箇條モゴザイマス、其
他總テ簡單ナル條項デゴザイマスカラ、別段會期切迫ノ際デアリマシテ、速
記者モ居ラヌト云フコトデ速記ナシニ政府委員ノ說明ヲ聽キマシテ、卽坐ニ
是ハ滿場一致可決イタシマシタ次第デアリマス、付マシテハ、讀會ヲ省略シ
テドウゾ此案ハ御通過ニナラムコトヲ御願イタシマス
〔「讀會省略ニ賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=259
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260・子爵靑木信光君
○子爵靑木信光君 讀會省略ニ贊成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=260
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261・阪本釤之助君
○阪本釤之助君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=261
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262・男爵佐竹義準君
○男爵佐竹義準君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=262
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263・子爵前田利定君
○子爵前田利定君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=263
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264・子爵伊集院兼知君
○子爵伊集院兼知君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=264
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265・子爵西大路吉光君
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=265
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266・子爵黑田〓輝君
○子爵黑田〓輝君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=266
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267・伯爵萬里小路通房君
○伯爵萬里小路通房君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=267
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268・子爵藪篤磨君
○子爵藪篤磨君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=268
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269・子爵吉田〓風君
○子爵吉田〓風君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=269
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270・伯爵柳澤保惠君
○伯爵柳澤保惠君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=270
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271・子爵八條隆正君
○子爵八條隆正君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=271
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272・子爵池田政時君
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=272
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273・子爵堤雄長君
○子爵堤雄長君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=273
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274・伯爵松平賴壽君
○伯爵松平賴壽君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=274
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275・子爵立花種忠君
○子爵立花種忠君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=275
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276・子爵京極高義君
○子爵京極高義君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=276
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277・高橋琢也君
○高橋琢也君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004403242X02419210323&spkNum=277
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