1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
大正十年三月四日午前十時五十二分開議
出席委員左の如し
山本悌二郎君 八田宗吉君 長田桃藏君
中山佐市君 東武君 天春文衞君
池田猪三次君 木下甚三郎君 山口嘉藏君
成田榮信君 藏内次郎作君 萩亮君
長峰與一君 齋藤宇一郎君 内藤濱治君
石井研二君 荒川五郎君 古賀三千人君
土井權大君 前川虎造君 上田彌兵衞君
小菅劍之助君
出席國務大臣左の如し
農商務大臣 男爵 山本達雄君
出席政府委員左の如し
大藏省理財局長 小野義一君
大藏省參事官 三土忠造君
農商務次官 田中隆三君
農商務省農務局長 岡本英太郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
米穀法案
米穀需給調節特別會計法案
罹災救助基金法中改正法律案発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/0
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001・山本悌二郎
○委員長(山本悌二郞君) 是ヨリ開會致シマス最
早質問ハ前囘ニ於テ打切ッテ居リマスカラ、是ヨリ討
論ニ入リマス三案ヲ一括シテ審議ニ付シマスルガ
故ニ、若シ修正ノ御意見デモアリマシタナラバ此
三案全部ニ就テドレナリトモ御陳述アルヤウニ致シ
タイ、ソレデハ通〓ガアリマスカラ、通告順ニ依ッテ
發言ヲ許シマス前川虎造君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/1
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002・前川虎造
○前川虎造君 私ハ本案ヲ贊成スル者デアリマ
ス、併ナガラ爰ニ一言附加へテ賛成ヲ致シタイト思
フ、其理由ハ本案ノ形ノ上ニ現ハレテ居ル所ヲ見マ
スルト、三案共唯ダ米穀ノ需給ヲ調節スルト云フコ
トニ必要ナル大體ノモノヲ御規定ニナッタダケデア
ル、サウシテ跡ニ殘ッテ居ルモノガ何デアルカト云フ
ト、運用上ニ關スルコトハ悉ク皆隱レタコトニナッテ
居ル併ナガラ需給調節委員ノ如キドウ云フモノガ
出來ルノカ、又此需給委員ガ如何ナル權能ヲ持ッテ居
ルモノカ一向分ラヌ、併シ段々ノ質問ニ依ッテ要領ヲ
聽キマシタ所ニ依リマスト云フト汎ク國民ノ中カ
ラ經驗ノアル人、及貴衆兩院ノ議員迄モ混ゼテ、政府
ハ愼重ニ此機關ヲ設置スルサウシテ之ヲ諮問機關
トシテ諮問ヲシテ、サウシテ農商務大臣ガ之ヲ決行
スルト云フコトニナッテ居ルト云フコトデアリマス
ソコデ諮間機關デアリマスルガ故ニ、或ル場合ニハ
必ズ此答申ヲ實行シナケレバナラヌト云フ譯デナイ
カラ農商務大臣ノ權能ニ依ッテ諮問ハスルガ、ドウ
デモナルト云フコトニナッテ居リマス、サウ云フ譯デ
アリマスカラ、ドウシテモ此本案ヲ吾〓ノ意思ノ如
ク修正スルト致シマスレバ恐ラク困難ナ事情ガ生
ジマス故ニ、大藏大臣及農商務大臣ガ初メテノ試ミ
デアル故ニ、十分ノ注意ヲ以テ遣ルト云フ御說明モ
アリマス、併シナガラ是ハ農商務大臣ト大藏大臣ト
ノ間ニハ多少意思ノ阻隔ヲ來シテ居ル點モ吾〓ガ
質問應答ノ間ニ見出スノデアリマス、ソレデ私共ノ
此案ヲ贊成スル理由ハ、動モスルト此米ナルモノハ
日本ノ特殊ノ生產品デアッテ、外國ヘ行カナイ性質ヲ
持ッテ居ルガ一面ニ外國カラシテ此米ガ入ッテ來ル
ト云フ關係ヲ持ッテ居ルノデアリマス、大〓ハ此小賣
商人ハ日本ノ米ニ向ッテ外米ヲ加ヘテ居ル、其高ハー
斗ニ付テ三升位入レルト云フコトハ殆ド公然ノ祕
密ニナッテ居ル然ラバ日本ノ米ヲ食フトキニハ-
-全ク食フ方ニハ必ズ百万石食フ中ニハ三十石ト云
フ外米ヲ混ゼテ食フコトニナッテ居リマス、故ニ何等
カノ方法ニ依ッテ之ヲ調節シテ行キマセヌ以上ハ、此
米ノ剩ッタ上ニ、外米ノ輸入ノ爲メニ餘計剩ルト云フ
ヤウナ、此形式ガ生ジテ來ルト云フ一ツノ缺點ガア
ルノデアリマス、ソレカラ此法案ハ唯ダ大地主ヲ救
護スルト云フ弊ニ陷リ易イ、小農小作人ニハ何等ノ
恩惠ヲ與ヘル事モ出來ナイト云フコトニナリ易イ、
ソレデ是等ノ點ヲ非常ニ御考慮ニナッテ、サウシテ總
テ之ニ伴フ弊害ト云フモノヲ十分ニ除クト云フコト
ニ御注意下サラヌ以上ハ、偶〓此法案ガ出來タ爲メ
ニ、却テ他日吾〓ガ苦シマナケレバナラヌト云フヤ
ウナ結果ニナリハシナイカト云フコトヲ深ク憂フル
ノデアリマス、卽チ是ハ唯ダ條文ノ改正ヨリハ寧口
此運用ト云フコトニ非常ニ大切ナル問題ガ此案ニ生
ジテ來ルノデアリマス、ソレデ旣往ノ經驗ニ依リマ
シテモ、法案ハ立派ナ法案、政府ノ意思ハ立派ナ意
思デアッテモ運用宜シキヲ得ザル爲メニ、此米ニ於
テハ屢~失敗シタ經驗ヲ持ッテ居リマスカラ、此度ハ
ドウカ斯樣ナ事ニナラヌヤウニ、此法案ノ目的、卽チ
需給調節ノ目的ト云フモノヲ達セラルヤウニ十分
ニ御努力ヲ願フヨリ仕方ガナイ、全體カラ言ヒマス
レバ私共ハ是ハ失敗ニ終リハシマイカト云フ甚ダ
不安ヲ持ッテ居ルノデアリマスカラ、此不安ヲ除キ得
ルヤウニ御努力ヲ願ヒタイト云フコトヲ、十分爰デ
宣明ヲ致シテサウシテ私共ハ此法案ニ同意ヲ致ス
者デアリマス、是ダケ申上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/2
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003・山本悌二郎
○委員長(山本悌二郞君) 小菅劍之助君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/3
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004・小菅劍之助
○小菅劍之助君 私ハ今囘政府ガ御提案ニナリマシ
タ此法案ニハ遺憾ナガラ反對スル一人デアリマス
〓糧政策ハ社會問題ニ屬スル大切ナル問題デアリマ
スカラ、是ガ施設方法ニ至リマシテハ、愼重ナル考慮
ヲ拂ハレテ、國家百年ノ大計ヲ樹ツルト云フ事ガ最
モ必要ナ事ト存ジマス、然ルニ此法案ハ杜撰ニシテ
且ツ缺點ガ多イヤウニ見受ケルノデアリマス第
二億圓デ調節ガ出來ルト農商務大臣ハ言ハレマスガ
若シ是ガ豐作ガ二三年續クトカ、又反對ニ不作ガ二
三年モ續クトスルト、二億圓ト云フ金ヲ以テ之ヲ調節
スル事ハ甚ダ至難デアラウト思フノデアリマス、忽
チ運用上ニ至大ノ影響ヲ來スデアラウト私ハ考ヘル
ノデアリマス、次ニ見遁スベカラザル弊害ガアルノ
デアリマス、政府ハ此多大ナル米ヲ御買上ナサルニ
ハ相當ノ時日ガ掛ルノデアリマス、然ルニ投機師ハ
全國ノ米穀取引所ヲ利用致シマシテ、定期米ヲ買フ
コトニナリマスカラ、洵ニ敏速ニ買付ケルコトガ出
來ルノデアリマス、又轉賣、買戾等ニ至ッテモ敏速ニ
巧妙ニ行フコトガ出來ルノデアリマス故ニ其度每
ニ投機師ガ暴利ヲ得ルト共ニ我國ノ經濟界ハ攪亂
サルヽ虞ガアルノデアリマス尙ホ又大ニ考慮ヲ拂
ハネバナラヌ事項ガ一ツアルノデアリマス、目下我
中產階級以下ノ細民ハ非常ニ困難シテ居ルノデアリ
マス、勞働賃銀ハ益〓安クナリ收入ハ益〓減ズル許
リデアリマス、ソレニ我國ノ需要物品ハ只今半額
以下ニモ低落シテ居ル物ガ澤山アリマスルガ彼等
ノ最モ生活ニ必要ナル所ノ物品ハ未ダ左程低落シテ
居リマセヌ、然ルニ米ガ安イノハ彼等ガ唯一ノ救濟
物トシテ居ルノデアリマス、唯一ノ救濟物タル米ヲ
政府ガ御買上ニナッテ、價格ヲ高ク爲サルト云フコト
ニナリマスト細民ハ困難ノ上ニ尙ホ困難ヲ加ヘ忽
チ生活ヲ脅スト云フコトニナルノデアリマス此點
ニ就テモ政府ニ於カセラレテ深ク御考慮ヲ拂ハネバ
ナラヌ事デアラウト思フノデアリマス、尙ホ延テハ
我國ノ產業貿易ヲ阻害シ、永遠ニ惡影響ヲ貽ス虞ガ
アルト考ヘルノデアリマス、要スルニ此法案ニ依ッテ
受ケル所ノ利益ハ極メテ僅少デアル、又此法案ニ依ッ
テ國民ノ蒙ル所ノ弊害ハ極メテ廣大デアルト考ヘル
ノデアリマス、私ハ此點ニ就キマシテ深ク考慮ヲ拂
ヒ遺憾ナガラ本案ニ反對スル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/4
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005・齋藤宇一郎
○齋藤宇一郞君 私共ハ聊カ修正ヲ加ヘタイト思フ
ノデアリマス本案ハ大體ニ於テ固ヨリ贊成スル者
デアリマスガ、此案ハ大切ナル案ニシテ、生產者モ消
費者モ此法案ノ力ニ依ッテ相當ナル安定ヲ得ナケレ
バ我國ノ食糧政策ノ實行モ困難デアリ隨テ生活ノ
安定ヲ得ル事ハ期シテ望ムベカラザル事デアリマス
カラ、私ハ出來得ルダケ完全ニ致シタイト云フ意味
ニ於テ修正ヲ加ヘルノデアリマス、修正ノ箇所ハ第
一條ノ中ニ、原案ハ第一條「政府ハ米穀ノ需給ヲ調節
スル爲必要アリト認ムルトキ」ト斯樣ニアリマスガ
其需給ノ下ニ「及ヒ價格」ト云フ四字ヲ入レルノデ
アリマス、卽チ「政府ハ米穀ノ需給及ヒ價格ヲ調節ス
ル爲必要アリト認ムルトキ」ト斯樣ニ修正ヲ致スノ
デアリマス、第二條ニ於テ亦同ク需給ノ下ニ「及ヒ價
格」ノ四字ヲ挿入スルノデアリマス、而シテ第三條ノ
次ニ第四條トシテ一箇條ヲ加ヘルノデアリマス、卽
チ第四條「第二條第三條ノ場合ニ於テハ米穀需給調
節委員會ノ諮詢ヲ經ル事ヲ要ス米穀需給調節委員會
ノ組織ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」斯樣ニ修正ヲ致スノ
デアリマス、尙ホ原案ノ第四條ヲ順次繰下ゲテ第五
條ニナリマスガ、其中ニモ矢張「米穀需給」ノ下ニ「及
ヒ價格」ノ四字ヲ挿入スルノデアリマス、斯ノ如ク修
正致シマスル理由ハ先日來細カニ質問應答ヲ致シ
マシタ結果、政府ノ說明ニ依レバ啻ニ量ノ問題ノミ
ナラズ、價格ノ調節モ考慮シテヤルト云フコトハ明
カニナルノデアリマス又實際本案ヲ運用スル上ニ
於テ、矢張兩方ヲ考慮シナケレバ前ニ述ベル生產
者及消費者ノ安定ヲ得ルコトハ六ケシイノデアリマ
ス、詰リ私共ノ考ヘル通リニ、此需給調節委員會ト云
フモノヲ必ズ設ケテ、而シテ其働キニ依ッテ本法ノ運
用ヲ全カラシムルコトニナラナケレバ-其委員會
ガ此問題ヲ攻究スル上ニ於テ、唯ダ法ノ上ニ於テ量
ノ問題ノミ考ヘルト云フコトニナレバ甚ダ其働キ
ガ狹隘ニシテ、所謂調節ヲ全フスルコトガ不便不完
全デアルト考ヘルノデアリマスカラ、第一條ノ中ニ
兩方意味シテ、何レヨリ考ヘテモ、何レノ方面ヨリ見
テモ最モ完全圓滿ニ行ハレルヤウニ明ニシテ置ク
コトガ必要デアルト考ヘマシテ「及ヒ價格」ノ四字ヲ
挿入致シタノデアリマス、ソレカラ第四條ヲ加ヘテ
此調節委員會ノ設置ヲ法ノ上ニ規定致シマシタノ
ハ數日來ノ政府ノ說明ヲ承リマスレバ此法ノ運
用ハ一ニ調節委員會ノ働キニ俣タナケレバナラヌト
云フコトニナルノデアリマス、ソレ程大切ナモノデ
アルナラバ、是非法ノ上ニ於テ必ズ之ヲ設ケルコト
ニ規定シテ置カナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、最近政府委員ノ說明ヲ聽キマスルト、法ノ上ニ無
イノデアルカラ時ノ政府ノ考ニ依ッテハ置カナクッテ
モ宜シイト但シ現政府ハ置ク積リデアルト云フヤ
ウナ程度ノ說明デハ甚ダ不徹底デアル不確實デ
アルノデアリマス、故ニ此委員會ヲ置クト云フ事ダ
ケハ、法律ノ上ニ於テ確實ニ規定シテ置クコトヲ必
要ト認メマシテ、此第四條ヲ設ケルノデアリマス、此
委員會ハ、前ニモ此委員會ノ中ノ誰方カラカ御話ガ
アリマシタ通リ、却テ弊害ガ多クシテ、餘程此委員
會ト云フモノハ困ルダラウ、故ニ寧ロ政府ニ全責任
ヲ負ハシテ置ク方ガ宜イト云フ御意見モ現ハレタヤ
ウデアリマスガ私ノ考デハ矢張斯ノ如ク國家万民
ノ利害得失ニ關スルモノハ廣ク意見ヲ求メ、多クノ
知識ヲ集メテ、十分ニ〓究シタ上デ決定スル事ガ最
モ妥當ナル方法ト考へマスノデ、是非此委員會ヲ設
ケテ、而シテ其人選ノ如キハ公明正大、最適當ナ人
ヲ舉ゲテ、其決議ノ如キハドノ方面カラ觀察シテモ
一點ノ非難ガナイヤウニ力メルト云フコトハ固ヨリ
デアリマシテ、吾〓ハ此委員會ヲ最モ重ク考ヘテ法
律ノ上ニ規定スルノデアリマス米穀法案ノ方ノ修
正ハソレダケデアリマシテ、罹災救助基金法中ノ改
正案ニ對シテ、修正ノ箇條ガアリマスカラ、ソレヲ
申上ゲマス罹災救助基金ノ改正ノ政府提案ヲ見マ
スルト、「第十七條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ」トシテ
米ヲ買入ルルト云フ第五號ヲ加ヘラレタノデアリマ
ス、熟〓此五號ノ運用ニ就テ考ヘマスルト、中〓各縣
各別ニヤルト云フコトハ困難デアルト思フノデアリ
マス、隨テ是ガ爲メニドレダケノ效果ヲ持來スカト
云フコトハ甚ダ疑問デアリマス併ナガラ是等ノ目
的ヲ、卽チ米穀ノー需給調節及價格ノ調節等ニ有ユル
手段ヲ以テ力ヲ盡スト云フコトハ今日ノ我國ノ國
情トシテ必要デアリマスカラ、之ニ敢テ反對ハ致シ
マセヌ唯ダ更ニ今日ハ主トシテ農村等ノ金融ニ就
テハ益〓圓滑ヲ缺キマシテ或ハ資金ノ缺乏ヲ訴ヘ
マシテ、非常ニ困ルノデアッテ是等ノ事ガ積リ積ッテ
屢〓斯ウ云フコトヲ繰返スノデアリマス、故ニ私共
ハ農村ノ發達ノ爲メニ國法ヲ以テ奬勵シテ居ル所
ノ產業組合及農業倉庫ト云フヤウナモノヲ將來ニ
於テ大ニ力ヲ加ヘテ其進步向上ニ努メナケレバナ
ラヌト考ヘマス故ニ斯ウ云フ罹災救助基金ノヤウ
ナモノガ各縣ニアル以上ハ其餘力ヲ以テ出來得ル
ダケ斯ウ云フ所ニ低利ノ資金ヲ供給シテ、以テ是等
必要ナル機關ノ發達ヲ助ケルト云フコトハ永遠ノ
策トシテ最モ大切ナル事ト思ヒマスカラ、第十七條
ノ第一號中ニ其意味ヲ挿入シテ、以テ只今述べマシ
タ目的ヲ出來得ルダケ達シタイト思フノデアリマ
ス卽チ第十七條第十一號ガ斯樣ニナルーノデアリマ
ス、「國債證劵、地方債證劵、勸業債劵、日本興業銀行
債劵、北海道拓殖銀行債劵、農工債劵ノ應募買入又
ハ府縣其ノ他ノ公共團體」ノ下ニ「及產業組合農業倉
庫」ト云フ字ヲ入レルノデアリマス、此處ニ入ルノデ
アリマス、「農業倉庫ヘ利付ニテ貸出スコト但シ地方
債證劵及債劵ノ應募額買入額竝府縣其他ノ公共團
體」其次ニ「及產業組合農業倉庫」ト云フ字ヲ入レマ
シテ、「ヘノ貸出額ハ合シテ罹災救助基金年度初ノ現
在高ヨリ第三條ノ制限額ノ三分ノ二ヲ控除シタル金
額ヲ超ユルコトヲ得ス」斯ウ云フコトニ直リマスド
ウカ御贊成ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/5
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006・山本悌二郎
○委員長(山本悌二郞君) 齋藤君ニ一寸御伺シテ置
キマスガ、サウスルト政府ノ原案ハ其儘デ、更ニ是ダ
ケノ文字ヲ第十七條ノ第一號ノ中ニ挿入スルト云フ
意味デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/6
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007・齋藤宇一郎
○齋藤宇一郞君 サウデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/7
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008・土井權大
○土井權大君 私ハ此案ニ贊成ヲスル者デアリマ
ス其理由ト致シマシテハ第一ハ食糧政策ノ上カ
ラ、第二ハ社會政策ノ上カラ賛成ヲスル次第デアリ
マス御承知ノ通リ國民生活トシテ〓糧政策ヲ確立
セシメテ置クト云フコトハ緊要ナル問題デアリマ
ス、從來〓糧政策トシテ我ガ日本ニ根本的ノ政策ガ
無カッタノヲ遺憾トシテ居リマシタ折柄、斯ノ如キ案
ガ出タト云フコトハ確ニ此食糧政策解決ノ第一步
デアルト考ヘル次第デアリマス、第二ト致シマシテ
ハ御承知ノ通リ米ガ高クナリ或ハ廉クナリ致シマ
シテ、或ハ農民ガ苦ミ或ハ消費者ガ苦ムト云フ如キ
事ガアリマシテ常ニ生活ヲ脅威サレタト云フノガ
是迄ノ事實デアリマス、然ルニ斯ウ云フ案ガ出マシ
タナラバ、其等ノ脅威ヲ緩和スルコトガ出來、所謂社
會政策ノ實行ノ一ナリト信ズル次第デアリマス所
ガ色〓ト御議論ガアリマシテ、或ハ消費者細民其等
ノ人ニハ非常ニ不便デアル、斯ウ云フ御議論ガアリ
マスガ、私ハサウデナイ、却テ此方ガ細民或ハ消費者
ニ便利デアル、騰ッタリ下ッタリスルノガ第一消費者
ガ困ル、ソレカラ米穀法ヲ能ク翫味シテ見マスルト、
常平倉ト云フヨリ寧ロ昔ノ社倉、義倉ト云フヤウナ
意味ニナッテ居リハシナイカ、卽チ米ノ澤山穫レタ時
ニハ貯蓄シテ置イテ飢饉年ニ出シテ來ル必ズシモ
値段ノ平均ト云フヨリハ寧ロ飢僅年ニ備ヘル備荒
貯蓄トマデハ行カヌデセウケレドモ、稍々之ニ近イ
所謂社倉、義倉ノ性質ヲ帶ビテ、極メテ消費者ニモ
便利デアル、斯ウ確信スルノデアリマス、消費者ニハ
不便デナイノミナラズ、消費者ナドニ生活上ノ利便
ヲ與ヘヤウト致シマスナラバ決シテ斯ウ云フ米穀
法ナドヲイラッタリセズトモ、更ニ產業組合デアルト
カ所ハ同業組合ノ改正ト云フヤウナ、色〓制度ノ改
正、現在組織ノ改善ト云フコトガアルダラウ、米ナラ
米ガ高イ或ハ薪炭ガ高イ、酒ガ高イト云フコトハ
同業組合ガアリマシテ-御承知ノ通リ小賣同業組
合ガアッテ、其處デ價格ヲ一定定テ、是以下ニ賣ッタナ
ラバ除名シテシマッテ、將來出來ナイヤウナ事ニシテ
居ル東京ニモアリマス、神戶ニモアリマス、其等ノ
改正ヲミタナラバ、消費者ハ廉イ所ノ米ヲ或ハ酒
ヲ、或ハ薪炭ヲ常ニ買フコトガ出來ルダラウ、又更ニ
產業組合ノ運用又改正ナドヲ致シマシタナラバ消
費者ハ極メテ便利ニナリ、生活ノ安定ヲ得ラレル事
デアラウト思フ、ソレガ私ハ根本デアルト斯ウ考ヘ
テ居ル、ソレカラ第二トシテ出テ居リマスノハ、價格
主義ト數量主義ノコトヲ齋藤君ガ言ハレマシタガ、
是ハ價格モ數量モ盾ノ兩面ノ如キモノデアラウト思
フ數量ガ少ナクナッタナラバ價格ガ上ガル數量ガ
多カッタナラバ價格ガ下ガル、是ハ私ガ申サズトモ御
承知ノ通リデアル故ニ必ズシモ價格ト云フ文字ヲ
入レズトモ原案ノ通リ經濟上ノ言葉ノ需給調節ト
云フ言葉デ足リテ居ルト思フ丁度一匹ノ鰈ガ一面
ハ白ク一面ハ黑イ其白黑ヲ論ズルヤウナ譯デハナ
イカト考ヘルノデアリマシテ、詰リ蛇ニ足ヲ附ケル
ヤウナ事ニナリハセヌカト思フソレ故ニ私ハ原案
ヲ維持スルト云フ說ヲ主張スルモノデアリマスソ
レカラ其次ニ需給調節委員ト云フモノヲ法律ノ中ニ
書イテ置イタナラバドウデアルカ、、斯ウ云フ御意見
デアリマスガ、、私ハ書カヌ方ガ宜イト思フ、何故デ
アルカト云フト、是ハ初メテノ試ミデアルカラ、需給
調節委員ト云フモノハ弊害ニナルカモ知レヌ、愈〓
運用ナリ實施致シマス上ニ於テハ非常ニ便利ナモノ
デアルカモ知レヌ、ソレハ將來ノ問題デアリマスカ
ラ分リマセヌ、故ニ取敢ズ法律ニ書カズシテ需給調
節委員ト云フモノヲ廢メテシマッテ、大臣一個ノ權利
デ需給調節ヲ圖ル斯ウ云フ事ニシタナラバドウデ
アラウ、斯ウ云フ意見デ私ハ原案維持ニ賛成スル者
デアリマス、又主張スル者デアリマス、ソレカラ第四
デアリマスガ、罹災救助基金ヲ公共團體及產業組合
ニ運用セシメタナラバドウデアルカト云フ御主張デ
アリマス卽チ運用セシムベシト云フ御主張デアリ
マスルガ、元來今日ノ信用組合ト云フモノハ日本ニ
隨分澤山アリマス一万三千デシタカアリマスルガ、
其中ニハ非常ニ良イ產業組合ト惡イ產業組合、斯ウ
二ツニ分レテ居リマス、良イ所ノ產業組合、良イ所ノ
信用組合ハ實實金金剰剰テテッテ居ル郵便局ヘ持ッ
テ行クトカ或ハ貯蓄銀行ヘ持ッテ行クトカ云フヤウ
ナ事ヲシテ、而シテ其信用組合ヲ信ジテ百姓ハ金ヲ
預ケテ行ク、ソレガ爲メニ同業組合デモ良イ組合ナ
ラ金ガ剩ッテ困ッテ居ル斯ウ云フ事情デアリマス、而
已ナラズ其所ヘ低利資金ヤ何カヲ良イ組合デアッタ
ナラバ貸シテ行ク、現ニ吾〓ガヤッテ居ル信用組合ハ
低利資金ヲ押付ケラレテ借受ヲシタト云フ事實ガア
ルオ前ノ組合ハ良イカラドウゾ預ッテ吳レ、低利資
金ヲ借リテ吳レト斯ウ言フ、所ガ惡イ組合ニナルト
中〓整理ガ付イテ居ラヌ、金ヲ貸シタ所ガ貸倒レニ
ナッテシマフ斯ウ云フヤウナ狀態デアリマスサウ
云フ組合ニ限ッテ金ガ無イソレハドウ云フ譯カト云
フト卽チ信用組合ニ對スル所ノ監督ト云フコトガ
行屆イテ居ラヌ、政府ナリ或ハ府縣ナリノ手ガ足リ
マセヌカラデアリマセウ、ソレ故ニ此組合ハ信用ガ
アルカ此組合ハ不信用デアルカト云フコトノ興信
的行爲ガ出來ナイ、興信的行爲ガ出來ナイ爲メニ惡
イ所ノ組合ノ發達スル時期ガナイ惡イノデモ其事
情ヲ調査シ監督ヲシ、而シテ信用調査ト云フコトヲ
シタナラバ自然ト良クナッテ來ル導ケバ良イ所ノ
組合ニナル、又組合員モ監督ガ嚴重デアル故ニ組合
ハ立派ニヤルダラウ、斯ウ云フヤウナ信念ヲ組合員
ガ持チマシテ、自然ト組合ヲ信ズルニ至ル、信ズルニ
至ッタナラバ、良イ所ノ產業組合、良イ所ノ信用組合
ニナル、斯ウ云フヤウナ狀態ニナル故ニ此事ニ就
キマシテハ反對ヲスル譯デハナイ、併ナガラ一時此
主張ヲシテ置イタラドウデアルカ、公共〓體及產業
組合ニ運用セシムルト云フコトハ言葉ヲ換ヘテ云
ヘバ時期尙早デアル卽チ罹災救助基金ヲ公共〓體
及產業組合ニ運用セシムルト云フコトハ時期ガ早
イ、ソレ故ニ此信用組合ト云フモノヲ先ヅ整理シテ、
例ヘバ中央會ナラ中央會ヲシテ監督權ヲ持タスト
カ云フコトニ致シ段々信用ノ途モ付キ、又興信ノ途
ガ付イタ後ニ、齋藤君ノ御意見ノヤウニ改正シテ
モ、敢テ遲カラズ、斯ウ私ハ考ヘル次第デアリマス、
卽チ時期尙早ト云フ理由ヲ以テ反對スルト同時ニ
原案維持ヲ主張スル次第デアリマス、私ノ贊成スル
理由ハ以上ノ通リデアリマス、要スル所社會政策ノ
上カラ、〓糧政策ノ上カラ、本案ハ確カニ進步シタ案
デアルト斯ウ考ヘタ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/8
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009・荒川五郎
○荒川五郞君 私ハ齋藤君ノ修正意見ニ贊成致スノ
デアリマス、國民生活ノ大本タル米穀ガ價格ガ非常
ナ亂高下ガアリマシテ時ニハ消費者ヲ脅威シテ米
暴動ガ全國ニ起リ、又其時ヲ格別隔テナイ時ニ價格
ガ非常ナ暴落ヲ致シテ生產者ヲ脅威スル、此大切ナ
食糧品ガ常ニ生產者ヲ脅威シ、消費者ヲ脅威シ、常ニ
順次交換シテ國民全般ニ大不安ヲ與ヘルト云フコト
ハ我ガ立國ノ上ヨリ見テ、爲政者ノ多大ノ注意ヲ拂
ハナケレバナラヌ至重至大ノ問題ト心得マス、其米
穀ヲ調節スル爲メニ、政府ガ此米穀法ヲ提出セラレ
タト云フコトハ私共ノ大ニ賛意ヲ表スル所デアリ
マス、冀クハ之ニ依テ生產者消費者共凡ソノ安心ノ
根據ヲ持ッテ、吾ガ正業ニ努力シテ國運ノ發展ヲ期ス
ルヤウニナリタイト云フコトハ、切ニ希望致スノデ
アリマス、然ルニ本案ノ趣意ヲ說明セラル政府ノ
答辯ヲ承レバ、需要供給ヲ調節スルノデアルト云フ
一方ニハ、買上ノ場合ニ於テモ其數量ヲ豫メ公示ス
ルコトガ出來ナイノハ卽チ買上ゲル場合ニ相當ノ
價格ニ達シタナラバ買上ヲ止メナケレバナラヌカラ
ト、斯樣ナル說明ハ重要ナル說明ト心得ル、然ラバ其
意味ハ數量ノ調節ニ非ズシテ價格ノ調節ト謂ハナケ
レバナラヌ、若シ數量ノ過不足ヲ第一ノ根據ニ置ケ
バ、其價格ニ拘ラズニ必要ノ數量ハ買上ゲナケレバ
ナラヌ、然ルニ買上ノ際ニ當リ其價格ニ及ンダナラ
バ買上ヲ中止スル、斯ウ云フ政府ノ說明モアリマシ
テ、單ニ數量ヲ調節スルニ非ズシテ、價格ニモ平準ヲ
保チタイト云フコトハ、政府ノ原案ノ趣意ニ於テモ
確ニ重要ナル部分デアルト認メテ居リマス隨テ私
共ハ政府案ニ反對スル意味デハアリマセヌ、其大切
ナル精神ヲ此法案ニ書入レテ置クト云フコトハ此
法案ノ運用ノ上ニモ、亦國民全般ガ此法案ニ賴ル上
カラモ大切ナ事ト心得マス、隨テ價格ト云フ文字ヲ
入レルト云フコトハ、最モ大切ナ事ト心得マス、凡ソ
需要供給ノ關係ハソレニ依テ價格ノ高低ヲ致スト
云フコトハ經濟普通ノ原則デアリマス、隨テ只今
土井君ノ如キ鰈ノ兩面デアル、盾ノ兩面デアルト云
フ趣意ヲ以テ、此私共ガ重要ナル箇條デアルト心得
ル價格ハ入レル必要ガナイト云フ御駁論デアリマス
ケレドモ、私共考ヘルノニ、勿論需要供給ガ物價高低
ノ普通ノ原則デアリマスケレドモ米ナルモノハ需
要供給ノ一般原則ノミニ依テ是ガ高低シナイノデア
ル、縱令僅カ百石剰ッテモ剩ッタノハ剩ッタノデアル、
ソレダケハ其年ハ要ラナイノデアル若シ翌年ニ又
剩レバ矢張ソレダケ剰ルノデアル、普通ノ商品ハ其
需要供給ノ多寡關係ガ物價ニ波ヲ起シマスケレド
モ、米穀ナルモノハ剰レバ剩ッタ物ハ卽チソレダケ
剰ルノデアリマス、是ガ世間ニ今日謂ハレル我ガ米
穀ナルモノハ國際的商品ニ非ズシテ、我ガ日本特有
ノ孤立的經濟物件デアルト云フヤウナ事モ、大ナル
根據ヲ持ツノデアリマス、隨テ普通ノ原則ニ依ラナ
イデ行ク場合ガ多イ、他ノ商品トハ大ニ趣ヲ異ニ致
シテ居リマス、又取引所、其他普通商人、其他ノ投機
的行爲ニ依テ、只今ノヤウニ剩レバ剩ッテ丸デ其時ニ
ハ用ヲ爲サナイ一時ノ時間ガアリマスカラ、其等ノ
爲メニ需要供給ノ原則ヲ破壞スル場合ガ多イノデア
リマスカラ、數量ノミヲ本トスル如キ規定ヲ設クル
ト云フ事ハ、法案ノ運用ノ上ニモ、殊ニ生產者ノミナ
ラズ消費者ヲモ安定セシムル樣、全般國民ノ食糧政
策ノ基礎ヲ立テ樣ト云フニハ必ズ此價格ナルモノ
ガ大ナル基礎ヲ爲スト心得マス希クハ此法案ガ公
正ニ適當ニ運用セラレマシテ、生產者モ安ンジテ吾
ガ事業ニ努力シ得ラレ、消費者モ亦意外ナル暴騰、米
不足ヲ見テ國民一日モ安ンズル事能ハズシテ、米暴
動等ノ起ル事ノナイ樣ニ、切ニ希望スル精神ヨリ致
シマシテ、價格ト云フ事ヲ此米穀ノ調節ヲ運用スル
人ノ目標トシテ、第一ニ置クベキ事ヲ法案ニ規定ス
ルノハ最モ大事ト心得マシテ、私共ハ價格ト云フ事
ヲ本案ニ入レルコトヲ熱心ニ主張致ス者デアリマ
ス、是ハ政府ノ意思ニモ反對スルニ非ズシテ、政府ノ
答辯ニモ其趣意ハ含マレテ居ルヤウニ心得ルノデア
リマス、隨テ此運用ニ重大ナル意義ヲ持ツベキ其精
神ヲ明ニスルト云フ事ハ法律ヲ成ベク完全ニ致ス
ト云フ上ニ於テ最モ必要ト心得ルノデアリマス、ソ
レニ依リマシテ只今ノ本法案中米穀ノ需給ヲ調節ス
ルト云フ各箇條ノ文句ニ、「及ヒ價格」ト云フコトヲ
入レヨト云フコトヲ主張致ス者デアリマス、ソレカ
ラ第二ニ米穀ノ需給、價格ヲ調節スル此法律ヲ運用
スルト云フコトハ、非常ニ重大デアリマシテ、此法案
ハ僅カ五條ニ止ル簡單ナ案デアリマスケレドモ之
ヲ運用スルト云フコトハ六千万國民ノ總テノ頭上ニ
懸ル重大事件デアリマスカラ、此運用ノ局ニ當ルト
云フコトニ就テハ、非常ニ愼重ノ注意ヲ要スルノデ
アリマス、隨テ之ヲ相當ナル機關ヲ設ケテソレニ諮
詢シテ、衆智ヲ集メ公平ヲ圖ルト云フコトハ非常ニ
大キナ事ト心得マス、本案ノ運用ハ其需給調節委員
會ナルモノゝ活動ニ待タナケレバナラヌ、隨テ本案
ト致シテハ其委員會ナル者ガ寧ロ骨子トナルベキモ
ノト心得ル運用ノ妙ハ人ニ存スル、其運用ハ全部ヲ
擧ゲテ賴ル所ハ委員會デ、其委員會ナルモノニ掛ケ
ルト云フコトガ本案重要ノ骨子トスレバ、其事ヲ法
律ニ揭グテ置クト云フコトハ、本案ガ大切デアルト
同ジヤウニ大切ナ事ト心得ルノデアリマス、是ハ他
ニモ澤山例ガアリマス、軍需品ニ關シテハ軍需品評
議會、其他多クノ場合ニ斯樣ナ委員會ヲ設クル場合
ニハ總テノ前例ハ其組織ノ法案ニ揭ゲテ居ルノデ
アリマス、殊ニ一層此米穀法ヲ運用スルニ重要ナル
機關ガ、如何ナル事ヲスルヤト云フコトノ根據ヲ本
案ニ揭ゲテ置カヌト云フコトハ本案ノ一ノ缺點デ
アルト心得ルノデアリマス、現政府ハ必ズ是ヲ置ク
ト云フ辯明デアリマス、必ズ置クト辯明セラルゝ事
ソレガ本案ノ重要案件デアルト心得マス、又私共モ
政府ノ其意思ニ賛成致スノデ、其意味ニ於テ他ノ重
要ナル法案ノ例ニモ依リテ、是レ〓〓ノ事ハ其委員
會ニ諮詢致ス、其委員會ノ組織ハ如何ニスルト云フ
コトハ此本案ノ精神ニ反スルコトデナイノミナラ
ズ寧ロ政府ノ意思ニモ合致シ、法案ノ精神ニモ合致
シ、其運用ノ上ニ於テ國民ノ向フ所ヲ明ニセシメ、現
政府ハ必ズヤルト言ヒナガラ法律ニモ何ニモナイ
唯ダ委員會ニ於テ、議會ニ於テノ說明ヲ聞クノミ、其
事ガ更ニ見エナイト云フコトハ甚ダ重要ナル法律
ニ於テ宜シクナイコトゝ心得マス此故ニ是非此一
箇條ヲ加ヘラレンコトヲ希望致シテ、此修正案ニ贊
成致スノデアリマス、第三ニ罹災救助基金法中ニ於
テ、產業組合、農業倉庫ニ此罹災救助基金ヲ融通スル
ト云フコトヲ加ヘタイ、是ハ全國一般地方民、殊ニ農
民ノ最モ希望スル所デアリマス今日米穀ノ生產者
タル地方農民ニ、成ベク農業ノ上ニ、其事業ノ進步
發展ヲ圖ラシムルト云フコトハソレガ相當ノ途
ヲ開キタイト云フコトハ啻ニ農業ヲ保護スルニ
非ズシテ、國民全般ノ生活安全ヲ期スル爲デアリ
マスカラ、出來得ルダケサウ云フ途ヲ開クト云フ
コトハ最モ希望スル所デアリマス從來我ガ帝國
議會ニ其請願ナリ建議ナリ、屢〓現レテ居ル問題
デアリマス、況ヤ米穀法ナル大法律ヲ出シテ此米
穀ノ調節ヲ計ラントスルニ當リテハ斯ノ如キ地方
ノ米穀ノ調節ニモ重大ナル關係アル產業組合、農業
倉庫等ニ便利ヲ與ヘルト云フコトハ卽チ米穀法ナ
ル大法律ヲ運用シ、其法律ノ精神ヲ國民ニ貫徹スル
上ニ於テモ重大ナル事例デアルト心得マス隨テ政
府ガ罹災救助基金ヲ米ノ買入レニ融通スルコトヲ得
ルト云フ精神ヲ擴充致シ、更ニ農業倉庫、產業組合ニ
モ融通スルト云フコトノ途ヲ開クノハ、百尺竿頭一
步ヲ進メテ此法案ヲ完全ニ致ス所以ト心得マス、土
井君ハ產業組合通ト心得テ居リマシタガ、意外ニモ
此修正案ニ反對セラレタノハ、吾〓一驚ヲ喫セザル
ヲ得ヌノデアリマス、產業組合ナルモノハ決シテ金
ヲ貯メル所デハナイノデス、唯ダ金ヲ貯メサヘスレ
バ產業組合ノ目的ヲ達スルノデハナイ、產業組合ハ
貯蓄モ致シマセウガ、之ヲ利用シナケレバナラヌ地
方ノ細民カラ金ヲ集メテソレヲ銀行ニ預金スルト云
フ如キハ、最モ產業組合ノ精神ニ反スル者ト心得ル、
冀クハ地方ノ小資ヲ集メテ之ヲ地方ノ農業ニ利用ス
ルノデ、或ハ良イ產業組合ガ金ガ剰ッテ困ルト云フヤ
ウナコトガアリトシテ、ソレナラバ其地方ハ潤澤デ
アルカト云フト、決シテサウデハナイ、到ル所低利資
金ノ運用ヲ希望シテ居ルデハアリマセンカ、土井君
モ政府ニ迫ッテ居ル一人デハアリマセヌカ、產業ノ組
合ガ金ヲ持テ餘スト云フヤウナコトハ、產業組合ノ
最モ下手ナモノデアル、之ヲ運用シ活用シテ初メテ
產業組合ノ精神ガ達セラルヽモノト思フ、產業組合
ガ金ヲ擁シテ困ルコトノナイヤウニ地方ニ活用シ
テサウシテ地方ガ高利ノ金デ苦シンデ居ル、ソレガ
爲メニ今日ハ益〓自作農ガ減ジ、地方ノ農村ガ衰へ
ツヽアル、其狀態ヲ救濟致シタイト云フコトガ五十,
ガ常ニ低利資金ヲ要望致シ、地方農民ノ擁護ヲ渴望
スル所以デアリマス殊ニ產業ニハ良イノト惡イノ
ガアル、-良イノト惡イノトガアルト云フコトハ
事實ノ問題デアル、之ヲ監督シ指導シテ惡イモノ
ノナイヤウニシナケレバナリマセヌ、實際ニ於テ產
業組合ヲ旨ク運用ガ出來ヌモノガアルト云フコト
ハ、其產業組合ニ金ヲ融通スルト云フ問題トハ全ク
別問題デ、根柢ヲ異ニシテ居ル問題デアル、惡イモノ
ハ改良スベシ、ソレニ對シテ資力ヲ與ヘヨ、活力ヲ與
ヘヨト云フ問題ト、產業組合ノ實質ノ善惡可否ノ同
題ヲ混同シテ論ゼラレザラヌコトヲ希望致スノデア
リマス、若シ產業組合ニ紊亂シタモノガアルトカ宜
シクナイモノガアルト云フコトニナリマシテハ是
ハ實ニ由々敷大事デアリマス、サウ云フコトハ須ク
政府當局其他ニ於テ十分ノ監督指導ヲ希望シナケレ
バナリマセヌト同時ニ、他方ニ於テ低利資金其他ノ
金融ヲ零細ナル農業家ニ活用セラルル途ヲ開クト云
フコトハ、吾ーノ平素カラ最モ希望シテ居ル所デア
リマスカラ、其等ノ理由ニ依リマシテ、不良產業組合
ノ改善ノ問題ト資金ノ問題ヲ混同セラレテ、吾〓
精神ヲ誤解セラレル事ノナイヤウニ希望シマス政
府案ノ趣意ニ依テハ、又國民ノ全般ノ要望カラ申シ
マシテ、是ハ大切ナ修正ト心得マスカラ、私ノ熱心ニ
此案ニ賛成スルト同時ニ、土井君始メ滿場ノ諸君ノ
切ニ地方ノ農民ノ爲メニ、此修正案ニ多大ノ注意ヲ
加ヘラレンコトヲ、サウシテ御贊成アランコトヲ希
望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/9
-
010・上田彌兵衞
○上田彌兵衞君 本案ハ從來ノ米政策ガ一時的所謂
應急策デアリマシタノガ、又價格ノ調節主義デアリ
マシタノガ常設的ニ恒久的ノ施設トナリマシテ、而
モ需給調節主義デアリマスカラ、我國ノ食糧政策ノ
解決ニ一步ヲ進メタモノト認メマシテ、本案ニ賛成
ノ意ヲ表スル者デアリマス、此需給調節ト價格調節
ニ就テ、只今荒川君ノ御說モ拜聽シタノデアリマス
ガ需給調節ハ此字句ノ解釋ヨリ致シマシテハ、固ヨ
リ經濟上ノ原則カラ致シマシテ、需給ヲ調節スルト
云フコトハ隨テ價格ヲ調節スルト云フコトニ十分
ナル意義ヲ含ンデ居ルモノト認メルノデアリマス
然ラバ需給ト價格ト云フ事ヲ、此二ツ爰ニ規定ヲ入
レル方ガ宜クハナイカト云フ御議論モアリマスガ
價格ト云フコトヲ爰ニ置キマスト云フコトハ所謂
人心ニ刺戟ヲ與ヘル事ガ多クナリマス、却テ價格ノ
動亂ヲ來スト云フ虞ガアルノデアリマス、固ヨリ我
國ノ食糧問題ニハ數量ノ問題、價格ノ問題ガ相錯綜
シテ、二ツノ現象ヲ現ハスノデアリマスガ、其原因
ハ矢張需給ノ關係デナケレバナラスノデアリマス、
而シテ價格ト云フ事ニナリマスト、非常ニ社會ノ人
心ニ注意ヲ與ヘル、又投機的思惑ニ大ナル刺戟ヲ與
ヘルコトニナリマスカラ、若シ價格ト云フコトニ重
キヲ置クト云フ事ニナリマスルト云フト、只今小菅
君ノ言ハレタ如ク、投機者流ノ利用物トナリマシテ
却テ其目的ヲ達スル事ガ出來ナイ事ニ陷ルノデアリ
マス、是ハ爰ニ諄〓シク申述ベルマデモナク歷代內
閣ガ米價政策ニ失敗シタ歷史ヲ見マスルト必ズ價
格ト云フモノヲ調節ノ重キニ置キマシタガ爲メニ、
遂ニ投機者流ノ利用ニ負ケマシテ、遂ニ其目的ガ失
敗ニ歸シタト云フコトハ、歷然トシテ現ハレテ居ル
ノデアリマス、啻ニ明治歷代ノ政府ヲ誤レルノミナ
ラズ、德川幕府時代ノ米政策ニ於キマシテモ、價格調
節主義ニ重キヲ置キマシタ政策ハ總テ失敗ニ歸
シテ居ルノデアリマス、サウ云フ次第デアリマスカ
ラ、私ハ價格調節主義ガ需給調節主義ニ變リマシタ
故ヲ以チマシテ、本案ガ我國ノ〓糧政策ノ解決ニ一
步ヲ進メタモノト信ズルノデアリマス、併ナガラ本
案ヲ以チマシテ我國ノ食糧政策ガ完全ニ確立スルモ
ノトハ信ジナイノデアリマスソレ故ニ今一步ヲ進
メテ一定ノ價格ヲ維持スルト云フコトヲ希望スル
ノデアリマスケレドモ、是非トモ米ナルモノヲ商品
ノ範圍カラ斥ケナケレバナラヌ、商品タル以上ハ多
少ノ價格ノ變動ノアルコトハ總テ物價ト相伴ヒマ
シテ經濟上ノ原則トシテ到底免レルコトガ出來ナ
イノデアリマス、ソレ故ニ一定ノ價格ヲ維持スルト
云フコトニナリマスレバ是ハ官營ノ外ハナイ併ナ
ガラ我國ノ現時ノ財政狀態、經濟狀態カラ考ヘマシ
テ、今直グニ一足飛ニ官營ニ致スト云フコトハ是亦
多クノ論議〓究ヲ要スベキモノト信ズルノデアリマ
ス、而シテ斯ノ如キ論議〓究ニ相當ノ時間ヲ要スル
間、之ヲ打捨テヽ置イテ宜イカト申シマスルト云フ
ト.我國ノ現時ノ米ノ生產狀態カラ考ヘマスルト常
ニ供給不足勝ニナリマス、將來米價ノ暴騰ノ爲メニ
國民生活ニ不安ヲ感ズルコトガ屢〓アラウト思フノ
デアリマス、其都度ニ一時的ノ應急策ニ依リマシテ
人爲ヲ以テ大勢ニ逆ウト云フガ如キコトノ施設ヲ致
シマスナラバ、啻ニ米價ノ動搖ヲ來シマスノミナラ
ズ、經濟界ニ對シマシテモ大ナル動搖ヲ起サシムル
虞ガアルノデアリマス、ソレ故ニ此處ニ常設的ニ此
規定ヲ設ケマシテ國民生活ノ安定ヲ得セシムルト
云フコトハ政策上又理論上カラ見マシテモ適當ナ
リト信ズルノデアリマス、唯ダ本案ハ其理論ヨリモ
運用ガ非常ニ大事デアリマス此運用ノ如何ニ依リマ
シテ國家ノ休戚ニモ關スル次第デアリマスカラ、政
府ハ十分ニ運用ニ意ヲ用ヰラルヽコトヲ望ミマス
國民モ亦之ニ對シテハ深甚ノ注意ヲ拂ハネバナラヌ
ト信ズルノデアリマス、ソレ故ニ私ハ玆ニ二三ノ希
望ヲ申述ベテ置キマシテ、政府ノ御注意ヲ喚起シタ
イト思フノデアリマス、ソレハ第一政府ハ速ニ收穫
豫想調査方法ノ統一ヲ期スルコト第二米價高低判
斷ノ基準ヲ豫メ決定シ置クコト第三、外米管理ノ適
否ニ對シ更ニ相當ノ考慮〓究ヲセラレタキコト、第
一ノ收穫豫想ノ調査方法ヲ一定スルコトハ需給調
節策ノ運用ニ對シテ根本ノ必要條件デアルト信ジマ
ス、又米價ガ高過ギルトカ、廉過ギルトカ云フコト
ヲ其都度ニ論議ヲシテ居リマスルト遂ニ實行ノ時
機ヲ失フ虞ガアリマスカラ、之ニ對シテ經濟上ノ關
係、勞銀ノ關係、生產費ノ關係ニ依テ、相當ノ指數ヲ
割出シテ置キマジテ、其指數ニ依テ米價ト諸物價ト
ノ釣合ガ適當デアルカ、又指數ガ非常ニ殖エタ場合
ニハ是ハ如何ナル原因デアルカ、又之ニ達スレバ高
過ギルノデアル、又下ガレバ廉過ギルノデアル、高過
ギル廉過ギルト云フコトヲ判斷スル所ノ基準ヲ茲ニ
定メテ置キマセヌト如何ニ調節委員ガ經驗アリ學
力アリト雖モ、其都度之ヲ論議スルコトハ困難ト思
ヒマスカラ、豫メ之ニ對スル判斷ノ基準ヲ規定シ置
カルル事ヲ希望スルノデアリマス、而シテ又外米管
理ハ此需給調節主義ヲ完成スル上ニ、外米ヲ之ニ關
聯致シマシテ其需給ノ緩急ヲ期スルト云フ事ハ本
問題ヲ解決スル上ニ於テ重大ナル關係ヲ持ツモノト
思フノデアリマス、併ナガラ先般大臣ノ御答辯ニ依
リマシテ、目下之ヲ管理スルノ御意思ガナイト云フ
コトデアリマスカラ、强テ私ハ之ヲ固執シナイノデ
アリマスガ、更ニ政府ハ此問題ニ對シテ十分ニ〓究
ヲ爲サレンコトヲ希望スルノデアリマス、此三ツノ
希望ヲ附シマシテ本案ニ賛成致ス次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/10
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011・山本悌二郎
○委員長(山本悌二郞君) 東武君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/11
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012・東武
○東武君 私ハ原案ヲ贊成スル者デアリマス、各派
トモ大體ニ於テ悉ク本案ニ賛成ノ意思ヲ持ッテ居ル
モノト思ッテ居リマス、唯小菅君ガ反對ノ意見ヲ申述
ベラレタノミデ、其他ハ反對ノ論旨ヲ聽カナイノデ
アリマス、憲政會ノ齋藤君ヨリ二三修正ガアリマシ
タガ、此修正ト雖モ本案ヲ運用スル上ニ於テ最モ完
全ヲ期スル希望ヨリ出ヅルモノデ、絕對ニ反對ノ意
思ハナイノデアリマス、要スルニ本案ハ我國ノ食糧
政策ヲ安定スベキ大法案デアリマシテ當內閣ガ非
常ナ英斷ヲ以テ之ヲ提出セラレタモノト信ズルノデ
アリマス、我國ノ〓糧問題、卽チ米價問題ハ最近起ツ
タモノデナクシテ、遠イ幕府時代カラ米價問題ニハ
非常ニ國民ハ種々苦楚ヲ甞メテ居ル幕府時代ニ於
テモ、寶曆十年ニ於テ幕府ハ米ガ非常ニ下落シタ場
合ニ於テ、米ノ買上ヲ大ニヤッタコトガアル、當時大
阪ノ鴻池初メ二百有餘ノ御用商人ニ命ジテ、莫大ノ
金ヲ貸シテ米ノ買上ヲ致シタ、併シ此政策モ行ハレ
ズシテ、淀川ニ米ノ堤防ヲ築キ、天保山沖ニ米ヲ船デ
運ンデ海ニ投ジタト云スヤウナ事件モアリマス、又
天明二年、三年、四年ニ亙ッテ、米價暴騰ニ會シ奸商ヲ
捕縛シタヤウナ事モアリマス、江戶、京都、大阪、伏見
ニ燒打事件ガ屢〓起ッタ事實モアリマス、又天保年間
ニ至ッテハ、米價暴騰ニ對シテ細民ガ困難スルト云フ
ノデ、大鹽平八郞ガ亂ヲ起シタ事モアリマス幕府時
代ニモ此政策ニハ頗ル惱ンダモノデアリマス、又明
治年代ニナッテ以來モ、近年大隈內閣時分ニ米價暴落
ヲ沮止シタ事實ガアリマスソレカラ寺內內閣ニ至ツ
テ暴利取締令、外米管理令其他外米輸入令ガ出テ、米
價ノ需給調節ヲ試ミタ例モアリマス、又最近ニ至リ
マシテ原內閣ニナッテ以來モ、米價調節ト云フ議論ハ
過去二、三年ヲ通ジテ上下兩院ノ大問題トナッテ居ツ
タノデアリマス、而シテ此問題ニ就テ我國民ハ如何
シテ食糧問題ノ大體ノ方針ヲ決定スルカト云フ事ニ
就テ、朝野ノ識者ハ等シク此問題ニハ幾多ノ〓究苦
心ヲ拂ッテ居ッタノデアリマス、又只今提出セラレ
アル所ノ米穀法案ノ如キモ、原內閣ガ之ヲ提案シタ
ト云フコトハ、吾〓非常ニ喜ンデ居リマスケレドモ
其原因ヲ繹ネルト、遠ク大隈內閣時代カラ此制度ヲ
行フベキヤ否ヤハ當局ノ間ニ〓究サレタ事實ガア
ル寺內內閣ニ於テモ幾度モ立案サレタノデアルケ
レドモ不幸ニシテ未ダ成案トナル迄ニ至ラナカッタ
現政府ニ至ッテ初メテ此大問題ヲ解決スルニ至ッタノ
デアリマス、之ニ就テモ種々ノ手段方法ヲ講ジテ居
ル、數箇月前ヨリシテ財政經濟調査會ヲ設ケラレテ、
有ユル衆知ヲ網羅シテ、〓鑽ニ〓鑽ヲ重ネテ、初メテ
財政經濟調査會ノ方針ニ依テ此案ガ制定サレタト云
フ歷史ニナッテ居ルノデアリマス、私共ハ此案ハ實ニ
國家百年ノ大計ヲ確立スルモノトシテ、非常ニ悅ン
デ居ルト同時ニ、又本案ハ當委員會ノ傾向ニ依テ見
マシテモ殆ド政黨政派ヲ超越シテ居ル案ト信ジ
テ居リマス、又此案ハ世間ニハ生產者ヲ保護スルモ
ノデアル、消費者ニ對シテハ甚ダ恩惠ノ少イモノデ
アルト云フ事ヲ論ジテ居リマスガ、是ハ洵ニ謬レル
議論デアル、本案ハ已ニ其骨子ガ生產者側ト消費者
側ト兩樣ニ立ッテ調節シヤウト云フノガ、主タル目的
ニナッテ居ルノデアリマシテ、卽チ需給ヲ調節スルト
云フコトガ目的デアルト同時ニ、價格ト云フノハ卽
チ主體デナクシテ從體ノ效果ニナッテ居ルノデアル
生產者ノ側カラ言ヘバ、今一步進ンデ價格ノ平準ヲ
期スルト云フ憲政會ノ案ニ賛成スルコトヲ希望スル
デアリマセウ、吾〓モ生產者側ノ一人トシテハ齋藤
君、荒川君ノ御議論ニ滿腔ノ敬意ヲ表シテ贊成致シ
タイノデアリマスケレドモ、價格ノ平準ヲ期スルト
云フコトハ、此案デハ寧ロ從體ニナッテ居ッテ量ヲ調
節スルト云フコトガ主體ニナッテ居ルデ價格ノコト
ハ本案ノ結果ニナッテ來ルノデアリマスカラ、ソレガ
全ク影響ガナイトハ申シマセヌケレドモ量ヲ調節
スル結果トシテ自ラ價格ノ調節ガ出來ルノデアル
若シ一步進ンデ價格ノ調節ヲスルト云フコトニナレ
バ、是ハ寧ロ公定相場ヲ定メルカ、若クハ國營ニスル
カニシナケレバ價格ノ平準ヲ期スルコトハ出來ナ
イト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、此意味ニ於テ此
生產者側ヲ保護スルト云フコトガ主タル目的デハナ
イ、消費者生產者相聯關シテ食糧問題ノ解決ヲスル
ト云フコトノ趣意ニ依ッテ作製サレタ案ト信ジマス
ルガ故ニ、此意味ニ於テ私ハ本案ニ贊成ノ意ヲ表ス
ル者デアルト同時ニ、世間ガ消費者側ニ何等惠恩ガ
ナイト云フコトヲ言フノハ非常ニ誤ッタ議論ト思フ
ノデアリマス、ソレカラ調節委員云々ノコトハ此法
令ニ規定ガナイト云フコトデアリマスガ、是モ御尤
ノ御議論ト私ハ考ヘテ居リマスガ、審カニ本案ノ內
容ヲ審査致シテ見マスルト、先ハ先日調査機關ナル
モノハ實行機關カ運用機關カト云フコトヲ當局者ニ
質問致シマシタ所、當局者ハ是ハ諮問機關デアル責
任者ハ農商務大臣ガ全責任ヲ負フノデアルト云フ御
答辯デアリマシタ、財政經濟調査會ノ特別機關ナル
需給調節機關ナルモノハ、是ハ實行機關ニナッテ居ル
財政經濟調査會ハ米麥ノ買入及賣却、其他米麥ノ需
給調節ニ關スル一切ノ事項ヲ掌ラシムルト云フ方針
ニナッテ居リマス、ソレカラ農業者、倉庫業者、取引業
者等ニ對シ米麥ノ收穫高及在高ノ申告ヲ命ジ且ツ
必要ニ應ジ臨檢スルノ權能ヲ特別機關ニ附與スルモ
ノトストナッテ居リマス、是レナラバ實行機關デ、此
調節委員會ハ一種ノ〓糧政策ヲ掌ル所ノ委員會ニ
ナッテ來ルノデアリマスガ、本案ニ依ルモノハ政府委
員ノ聲明スル所ニ依リマスレバ是ハ一種ノ諮問機
關デアルト云フ事デアル、ソレヲ明ニ言明シテ居ル
以上ハ責任ハ當然農商務大臣ニ歸スルノデアル又
一方ニ事務ヲ掌ル權能ガナイノデアルカラ、斯ウ云
フ委員會ハ本案ノ中ニ制定スル必要ハナイト思フ
此意味ニ於テ調節機關ナルモノヲ此案ニ加ヘルコト
ハ全ク無用デアルト考ヘテ居リマス、其他小菅君ノ
絕對反對ニ對シテハ小菅君ハ此案ハ極メテ杜撰デ
アルト云フコトデアリマス、成程此案ハ杜撰デアル
カモ知レマセヌガ、政府モ屢〓言ハレル如ク是ハ初
メテノ試デアル、而シテ現在ノ有樣ニ於テ食糧ノ安
定ヲ期スル事ガ必要デアルト認メタナラバ、爲政者
ガ之ヲ其儘ニ放任スルノ不可ナルコトハ明デアル、
隨テ此案ハ官民協力シテヤラナケレバナラヌモノト
考ヘテ居リマス、ソレカラ此案ノ實行ニ就テ、一一億圓
デハ到底調節ノ目的ヲ達スルコトハ出來マイ是モ
一應御尤モデアリマスガ、是モ屢〓政府モ聲明スル
如ク、必要ノアッタ場合ニハ或ハ追加豫算ノ形式ヲ以
テ更ニ金額ヲ增加スル場合ガアルカモ知レナイト答
辯シテ居リマスカラ、ソレモ餘リ多クノ心配ヲスル
必要ハナイト考ヘテ居リマス、尙小菅君ノ絕對反對
ノ意見ト致シマシテ、物價ハ際限ナク下落シナイ殊
ニ食糧ガ下落シナイノハ生產費ガ增加スルコトニナ
ルノデアルカラ、却テ國ノ貿易上ニモ宜シクナイ、又
失業者或ハ勞働者等ノコトモ考ヘナケレバナラヌト
云フ御議論ガアリマシタガ、本案ハ政府ノ言明スル
所ニ依ッテモ、吾〓ガ本案ヲ審査スル上ニ於テモ、生
產者ヲ保護スルト云フ立場ニ於テ起案サレタ一種ノ
法案デアルト云フコトハ前段申上ゲタ如キ理由デ
アリマスカラ、此案ハ寧ロ失業者或ハ勞働者ニ取ッテ
モ極メテ大ナル福音デアラウト考テ居ルノデアリマ
ス、此意味ニ於テ私ハ小菅君ノ絕對反對ニ對シテ更
ニ御再考ヲ願ヒタイ、小菅君モ尙ホ御〓究ニナッテ吾
吾ト同一ノ意見ニ依ッテ、此案ヲ政黨政派ヲ超越シタ
モノトシテ滿場一致原案ニ賛成アランコトヲ希望
致シマス、私ハ此意味ニ於テ原案ニ贊成致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/12
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013・齋藤宇一郎
○齋藤宇一郞君 價格ノコトヲ入レマシタコトニ就
テ誤解サレテ居ルヤウデアリマス、吾〓ガ價格ト云
フ字ヲ入レタノハ、價格本位ニ改メルト云フヤウニ
御取リニナッテ御辯明ニナリマシタガサウデハアリ
マセヌ、是ハ先刻モ申ス通リ兩本位ニシタイト云フ
ノデアリマス、而シテ價格ト云フコトニ重キヲ置キ
マシタノハ、消費者ヲ脅威スルコトニナリハセヌカ、
斯樣ニ仰シヤッタノデスガ、若シ兩本位一本槍デ進ン
デ行ッタ場合ニハ玆ニ三百万石剰ルトシテソレヲ
買出シタ以上ハ價格ノ如何ニ拘ラズ買進マナケレバ
ナラヌサウスルト四十圓ニナラウガ五十圓ニナラ
ウガ買ハナケレバナラヌト云フ、理論的窮地ニ陷ル
ノデアリマス故ニサウ云フ時ニハ或ル價格ノ程度
ニ止メテ置カナケレバ、消費者ノ生活上ノ安定ヲ得
ナイノデアルカラ、ソレマデ政府モ其處ニ考慮シテ、
或ル程度ニ行ッタナラバ止メナケレバナラヌカラ、第
三條ニ於テ價格及期間ハ固持スルケレドモ、量ハ固
持シナイト云フコトヲ言明シテ居リマス、故ニ卽チ
此案ノ趣旨ヲ徹底セシムル爲メニ、此第一條ハ是非
兩本位ニ改メナケレバナラヌ、卽チ價格ト云フモノ
ハ生產者ノ問題ノミナラズ、消費者ノ安定ヲ期スル
事ニナルノデアリマスカラ、只今ノ御話ハ私共ノ修
正案ノ意思ヲ誤解セラレタノカ、或ハ徹底シナカツ
タカ、甚ダ吾ヽハ迷惑ニ感ジマスカラ、一言辯明シテ
置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/13
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014・前川虎造
○前川虎造君 私共ハ先程申上ゲマシタ趣旨ニ依ツ
テ、此本案ニ贊成ハ致シマスガ、此本案ノ運用ニ就テ
ハ幾分疑義ヲ有ッテ居リマスカラ、其疑義ニ對スルダ
ケノ警告ヲ政府ニ致シテ置ク積リデアリマス、其警
告ハ本會ニ於キマシテ具體的ニ爲ス考デゴザイマ
ス、是ダケ一寸申述ベテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/14
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015・小菅劍之助
○小菅劍之助君 只今東君ヨリ私ノ反對論ニ對シ
テ、此議論ガ政黨政派ヲ超越シタ國家問題デアルカ
ラ、賛成ヲシロト云フノ御言葉ガアリマシタガ
リ東君ノ御言葉ヲ俟タズシテ分リ切ッテ居ル事デア
リマス、私ハ政黨政派ニハ固ヨリ超越シテ居ル一人
デアルノデアリマス、又農家ニモ何ノ恩怨モナイノ
デアリマス、唯ダ國家ノ上カラ考ヘテ有害ナリト認
メルガ故ニ反對スルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/15
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016・八田宗吉
○八田宗吉君 討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/16
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017・山本悌二郎
○委員長(山本悌二郞君) 討論終結ノ動議ガ出マシ
タ、御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/17
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018・山本悌二郎
○委員長(山本悌二郞君) ソレデハ討論ハ終結致シ
マシタ、此際何カ政府ノ方デ御述ベニナルコトデモ
ゴザイマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/18
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019・小野義一
○小野政府委員 先刻齋藤君ヨリノ修正案ノ中デ、
罹災救助基金法ニ改正ヲ加ヘテ、其基金ノ餘裕金ノ
運用ノ一トシテ產業組合、農業倉庫等ニ貸付ケルノ
途ヲ開キタイト云フ御意見ガアッタヤウデアリマス
ガ、ソレニ對シテ土井君ハ時期尙早ナリト云フ意見
デ反對サレタヤウデアリマス、併シ政府ト致シマシ
テ、只今ノ組織ニ依リマスルト此運用ノ資金ハ現在
ノ法ノ示シマスル通リ頗ル限定サレテ狭クナッテ居
ルノデアリマス、ト申シマスルノハ罹災救助基金ナ
ルモノハ其基金ノ性質ニ鑑ミマシテ、何時ナリ共非
常ナ災害ノ起ッタ場合ニ支出ニ差支ナイヤウニシテ
置カナケレバナラヌ、ソレデアリマスカラ餘裕金ガ
アリマシテモ、之ヲ運用スルト云フコトハ最モ確實
デアリ、且ツ何時ニテモ現金ニ代ル事ノ出來ル方法
デナケレバナラヌ、斯ウ云フ救助基金ノ法ハ頗ル運
用ニ就テ狹キニ解釋ヲ執ッテ居リマス、ソレデアリマ
スカラ此基金法ノ性質カラ見マシテモ、產業組合、農
業倉庫等ニマデ運用ヲ擴メマスコトハ、餘程考慮ヲ
要スベキ問題デアラウト思フノデアリマス、加之實
際カラ申シマシテモ、大正九年度初メノ基金ノ現在
高ハ六千万圓許リアリマスガ、何レモ此法ニ許シテ
居リマス運用ノ途ニ運用サレテ居ルノデアリマス
隨ヒマシテ今般米穀ノ買入ト云フコトニ之ヲ使用致
シマスト、尙更餘裕金ハ少ナクナルノデアリマス、折
角產業組合或ハ農業倉庫等ニ運用スル途ヲ開キマシ
テモ、是ハ唯ダ形式ノミデアッテ實際ハ左程運用スル
コトハ出來ナイノデアリマス、或ハ羊頭ヲ揭ゲテ狗
肉ヲ沽ルト云フ位ニシカナルノデハナイカト政府ハ
信ズルノデアリマス、デ基金法ノ性質カラ考ヘテ、又
實際ノ基金ノ狀態カラ見マシテ、餘程考慮ヲ要スル
問題デアリマシテ、豈啻ニ時期尙早ノミニ止ラナイ
ト考ヘテ居ルノデアリマス一應政府ノ見解ヲ申上
ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/19
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020・山本悌二郎
○委員長(山本悌二郞君) ソレデハ採決ニ移リマ
ス、齋藤宇一郎君カラ修正意見ガアリマシテ、是ニハ
賛成モアリマス、此修正案ヨリ先ニ採決致シマス、齋
藤君ノ修正案ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ望ミマス
〔賛成者起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/20
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021・山本悌二郎
○委員長(山本悌二郞君) 少數、修正案ハ否決サレ
マシタ、次ニ原案ニ、賛成ノ諸君ノ起立ヲ望ミマス
〔賛成者起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/21
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022・山本悌二郎
○委員長(山本悌二郞君) 大多數デゴザイマス、原
案ハ可決サレマシタ、ソレデハ是デ本委員會ハ終了
致シマシタ
午後零時二十七分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004413120X00419210304/22
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