1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十年一月二十六日(水曜日)午後一時十三分開議
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議事日程 第五號 大正十年一月二十六日
午後一時開議
一 國務大臣の演説に對する質疑 (前會の續)
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第一 無盡業法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 函館控訴院の移轉に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 大正二年法律第九號中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 船舶滿載吃水線法案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=0
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001・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸君、諸般ノ報告ヲ致シマス
〔原田書記官朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
市制中改正法律案
提出者大道寺慶男君
町村制中改正法律案
提出者大道寺慶男君
民事訴訟費用法中改正法律案
提出者大道寺慶男君
(以上一月二十五日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭
載ス〕
一昨二十五日衆議院規則第十五條但書ニ依リ議長ニ
於テ議席ヲ左ノ如ク變更セリ
六三平田民之助君一三三植竹龍三郞君
一昨二十五日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
少年法案外一件
戶水寛人君岩本平藏君石川玄三君
野副重一君黑住成章君永屋茂君
吉良元夫君井坂豐光君矢野丑乙君
石川善盛君龍野周一郞君樋口秀雄君
横山金太郞君藤井啓一君荒川五郞君
佐竹庄七君鮎川盛貞君松下禎二君
國有財產法案
〓水市太郎君澤來太郞君宮古啓三郞君
柳原九兵衞君日野辰次君長谷場敦君
竹上藤次郞君深見寅之助君野口忠太郞君
佐野正雄君伊藤廣幾君〓崟太郞君
高木正年君降旗元太郞君加藤定吉君
本田恆之君中川幸太郞君上畠益三郞君
一今二十六日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
國有財產法案委員
宮古啓三郞君
委員長〓水市太郞君理事竹上藤次郞君
[上畠益三郞君
少年法案外一件委員
一岩本平藏君
委員長戶水寛人君理事樋口秀雄君
鮎川盛貞君
一今二十六日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如シ
第四部
決算委員大道寺慶男君(山口熊野君補闕)
第九部
請願委員淺川浩君(平出喜三郞君補闕)
一今二十六日少年法案外一件委員鮎川盛貞君辭任
ニ付其ノ補闕トシテ〓瀨一郞君ヲ議長ニ於テ選定セ
リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=1
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002・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 會議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=2
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003・武藤金吉
○武藤金吉君 本會ノ御許可ヲ願ヒマシテ、豫算委員會
ヲ聞キタウゴザイマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=3
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004・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 武藤豫算委員長ノ請求ニ御異議
ガナイト認メマス、仍テ請求通リニ許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=4
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005・武藤金吉
○武藤金吉君 豫算委員ノ諸君ハ是ヨリ御參集ヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=5
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006・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諮問事項ガアリマス、第八部選出
請願委員納富陳平君常任委員辭任ノ申出ガアリマス、許
可致シマスルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=6
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007・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ハ無イト認メマス、仍テ許
可致シマス、第八部ノ諸君ハ速ニ補關選擧ヲ行ウテ屆出ア
ルコトヲ望ミマス-國務大臣ニ對シマスル質疑者ハ尙ホ多
數アリマスルカラ、日程ヲ繰上ゲマシテ審議ニ付シマス、然ル
後ニ質疑ニ入ルコトニ致シタイト思ヒマス、御異議ガアリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=7
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008・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ハ無イト認メマス、仍テ其
通リ計ヒマス-日程第一無盡業法中改正法律案ノ第
一讀會ヲ開キマス-神野政府委員
第無盡業法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
無盡業法中改正法律案
無盡業法中左ノ通改正ス
第九條中「前號ノ有價證劵」ヲ「前號ノ有價證劵又ハ不
動產」ニ、「既ニ拂込ミタル掛金額」ヲ「契約給付金額」ニ
改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項第三號ノ規定ニ依ル貸付金總額ハ拂込濟資本
金及諸準備金ノ總額ヲ超ユルコトヲ得ス
〔政府委員神野勝之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=8
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009・神野勝之助
○政府委員(神野勝之助君) 無盡業者ノ營業上ノ資金
ノ運用ニ關シマスル現行法ノ制限ニ依リマスルト、一般加入
者ニ取リマシテ金融上ノ不便ガゴザイマスルシ、又無盡業者
カラ申シマシテモ、經營上ノ困難ガアルノデアリマスカラ、玆
ニ改正ヲ加ヘマシテ、無盡ノ發達ニ資シテ、其機能ヲ十分
發揮サセタイト云フ趣旨ヲ以テ本改正案ヲ提出致シタル
次第デアリマス、御審議ノ上御協賛ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=9
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010・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第二、右議案ノ審査ヲ付託ス
ヘキ委員ノ選舉ヲ議題ニ供シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=10
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011・岩崎勲
○岩崎動君 委員數ヲ九名トシ、議長ニ於テ指名アラン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=11
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012・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=12
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013・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ動議
ノ如ク決シマス-日程第三、第五ノ議案ハ關聯セル議案デ
アリマスカラ一括シテ議題ニ供シマス、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=13
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014・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ハナイト認メマス、仍テ一括
シテ議題ニ供シマス、第三函館控訴院ノ移轉ニ關スル法律
案、第五大正二年法律第九號中改正法律案、之ヲ一括シ
テ第一讀會ヲ開キマス-司法大臣
第三函館控訴院ノ移轉ニ關スル法律案
(政府提出)第一讀會
函館控訴院ノ移轉ニ關スル法律案
函館控訴院ハ之ヲ北海道札幌區ニ移シ札幌控訴院ト稱
ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五大正二年法律第九號中改正法律案
(政府提出)第一讀會
大正二年法律第九號中改正法律案
大正二年法律第九號中左ノ通改正ス
別表裁判所管轄區域表中控訴院ノ欄中「函館」ヲ「札
幌」ニ改メ函館地方裁判所ノ部ヲ創リれ幌地方裁判所
ノ部ノ次ニ左ノ如ク加フ
北海道ノ內
函館函館區龜田郡上磯郡茅部郡山越郡
松前郡
函館北海道ノ內
江差檜山郡爾志郡久遠郡太櫓郡濕棚郡
臭尻郡
壽都北海道ノ内
壽都郡磯谷郡歌棄郡島牧郡
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣伯爵大木遠吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=14
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015・大木遠吉
○國務大臣(伯爵大木遠吉君) 唯今日程ニ上リマシタ
所ノ兩案一括シテ、其提案ノ趣旨ヲ御說明致シマス、明
治十四五年ノ交ニ方リマシテ、始メテ控訴院ヲ函館ニ設ケ
タノデアリマス、其當時ニ於キマシテハ、交通ノ機關ハ一ニ
海路ニ依ッタノデアリマシテ、鐵道ノ見ルベキモノハ無カッタノ
デアリマス、又北海道内ノ生產ハ〓ネ海產物ニ止マリマシ
テ、現下ノ如キ農產、森產、其他陸產物ハ甚ダ僅少デアッタ
ノデアリマス、仍テ函館ヲ經濟竝ニ交通ノ中樞トナシマシタ
ガ爲メニ、又全道ニ於キマシテモ、人口ノ過半ハ殆ド函館ニ
在ッタノデアリマス、又北海道ニ於キマスル所ノ裁判事件ノ
數ノ如キモ、洵ニ僅少ナモノデアッタノデアリマス、仍テ靑森
縣管內ヲモ之ニ合シタノデアリマス、而シテ函館ノ控訴院ヲ
設ケタノデアリマス、其後星霜ヲ經ルコト玆ニ四十年、產業
ノ狀態竝ニ交通系統ノ變更、又人口ノ增加、經濟中樞ノ移
動等、諸般ノ事ガ十四五年頃函館ニ控訴院ヲ設ケマシタ
ル當時ニ比較シマスルト、洵ニ大ナル差ヲ生ジタノデアリマ
ス、既ニ面目ガ改メラレマシタノミナラズ、行政殊ニ警察等
ノ關係ニ於テモ、司法事務ノ中樞タル所ノ校訴院ヲ、札幌
區ニ設クルコトガ適當ナリト認メテ居ルノデアリマス、卽チ
函館控訴院ヲ札幌區ニ移轉スルノ必要ガ是ニ於テカ生ジ
タノデアル、是ガ本案ヲ提出スル趣旨デアリマス、次ニ大正
二年法律第九號ノ改正案ハ、是ハ函館ノ控訴院ヲ札幌ニ
移轉スルガ爲メニ從シテ生ズル結果デアリマシテ、其管區ノ
別表ノ改正ヲ加ヘタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上御協
賛アランコトヲ望ミマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=15
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016・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 次ニ兩案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選舉ヲ議題ニ致ンマス
第四、第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ
委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=16
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017・岩崎勲
○岩崎勳君 日程第三及第五ノ雨案ヲ一括シテ委員ノ
數ヲ九名トシ、議長ニ於テ指名アランコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=17
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018・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=18
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019・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ
如ク決シマス、日程第七、船舶滿載屹水線法案ノ第一讀
會ヲ開キマス-遞信大臣
第七船舶滿載吃水線法案(政府提出)
第一讀會
船舶滿載吃水線法案
船舶滿載屹水線法
第一條日本船舶ハ左ニ揭クルモノヲ除クノ外本法ニ
依リ滿載吃水線ノ指定ヲ受ケ之ヲ標示スヘシ
-船舶檢査法第一條各號ニ揭クル船舶
二沿海航路又ハ平水航路ヲ航路定限トスル船舶
三總噸數百噸未滿ニシテ近海航路ヲ航路定限ト
スル帆船
四漁獵、曳船、海難救助、浚渫又ハ測量ニノミ從事
スル船舶其ノ他主務大臣ニ於テ特ニ滿載吃水
線ヲ標示スル必要ナシト認メタル船舶
第二條滿載ノ吃水線ノ指定ハ主務大臣ノ特ニ定ムル
場合ヲ除クノ外船舶ヲ滿載吃水線ノ標示ヲ要スル船
舶トシテ初メテ航行ノ用ニ供スルトキ之ヲ受クヘシ
本法施行地ニ於テ製造スル船舶ハ製造中ト雖滿載
吃水線ノ指定ヲ受クルコトヲ得
第三條滿載吃水線ハ主務大臣ノ特ニ定ムル場合ヲ
除クノ外船舶ノ所在地ヲ管轄スル管海官廳之ヲ指
定ス
第四條滿載吃水線ノ指定ヲ受ケ之ヲ標示シタル船舶
ニハ船舶滿載吃水線證書ヲ交付ス
第五條本法ニ依リ滿載吃水線ヲ標示シタル船舶ハ主
務大臣ノ特ニ定ムル場合ヲ除クノ外之ヲ超ユル吃水
ヲ以テ航行スルコトヲ得ス
第六條滿載吃水線ノ標示ハ捕獲ヲ避ケムトスル場合
其ノ他正當ノ事由アル場合ヲ除クノ外之ヲ隱蔽、變
更又ハ抹消スルコトヲ得ス
第七條檢査官吏ハ本法ニ違反スル行爲アリト認メタ
ルトキハ何時ニテモ船舶ニ臨視シ又ハ其ノ航行ノ停
止ヲ命スルコトヲ得
第八條滿載吃水線ノ指定、標而及指定手數料ニ關
シ必要ナル規程ハ主務大臣之ヲ定ム
第九條主務大臣ノ認定シタル船級協會ニ於テ本法
及本法ニ基ク規程ニ準據シ滿載吃水線ヲ指定シ船
舶滿載吃水線證書ヲ發給シタルトキハ其ノ證書及之
ニ相當スル満載吃水線ノ標示ハ之ヲ本法ニ依リタル
モノト看做ス
第十條本法ハ本法施行地内ノ港ニ出入スル日本船
舶ニ非サル船舶ニ之ヲ準用ス
第十一條主務大臣ニ於テ前條ノ船舶ノ所屬地ノ滿
載吃水線ニ關スル法令ヲ相當ト認メタルトキくじょ
依リテ受ケタル船舶滿載吃水線證書及之ニ相當スル
滿載吃水線ノ標示ハ之ヲ本法ニ依リタルモノト看做
ス
前項ノ規定ハ本法ニ依リ發給シタル船舶滿載吃水
線證書及之ニ相當スル滿載吃水線ノ標示效力ヲ認
メサル外國ニ屬スル船舶ニハ之ヲ適用セス
第十二條主務大臣ノ特ニ定ムル場合ヲ除クノ外船
舶滿載吃水線證書ヲ受ケサル船舶ヲ航行ノ用ニ供シ
又ハ滿載吃水線ヲ超ユル吃水ヲ以テ航行シ若ハ航行
セムトシタルトキハ船長又ハ之ニ代リテ其ノ職務ヲ行
フ者ヲ百圓以上二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第六條ノ規定ニ違反シ滿載吃水線ノ標示ヲ隱蔽、變
更又ハ抹消シタル者ノ罰亦前項ニ同シ
第十三條詐僞其ノ他不正ノ行爲ヲ以テ船舶滿載吃
水線證書ヲ受ケタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓
以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ規定ハ帝國外ニ於テ前項ノ罪ヲ犯シタル者ニ
亦之ヲ適用ス
第十四條檢査官吏ノ臨視ヲ拒ミ若ハ妨ケ又ハ航行
停止ノ命ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
第十五條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條本法施行ノ際主務大臣ノ認定シタル船級
協會ノ船舶滿載吃水線證書ヲ受ケ之ニ相當スル滿
載吃水線ノ標示ヲ有スル日本船舶ハ本法ニ依ル船
舶滿載吃水線證書及之ニ相當スル滿載吃水線ノ標
示ヲ有スルモノト看做ス
前項ノ規定ハ本法施行ノ際現ニ本法施行地內ノ港
ニ在ル日本船舶ニ非サル船舶ニ付其ノ港ニ在ル間之
ヲ準用ス
第十七條前條第一項ノ規定ニ該當セサル日本船舶
ニハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ滿載吃水線ノ指定ヲ
受クル迄本法ヲ適用セス
〔國務大臣野田卯太郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=19
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020・野田卯太郎
○國務大臣(野田卯太郞君) 本案ハ船舶ノ過載ヲ豫防
シマシテ、海難ノ所謂安全ヲ期スル案デゴザイマス、且ツ造
船所ニ於テ此案ヲ施行スレバ、方針ガ確定スルト云フコト
モ之ニ加ヘテアリマスカラ、ドウゾ御審議ノ上御贊成アラン
コトヲ希望シマス、本案ハ大正六年度ニ於テ調査費ヲ要求
シマシテ以來、專門家ニ於テ委員ヲ組織シマシテ今日マデ
調査シタ結果、調査完了ノ上ニ提出シタ譯デゴザイマス、委
員會ニ於キマシテハ、委細政府委員ヨリ又辯明致シマスカ
ラ、ドウゾ滿場ノ御賛成ヲ願ヒマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=20
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021・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 正木照藏君
〔正木照藏君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=21
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022・正木照藏
○正木照藏君 海運ト造船トノ上ニ大ナル影響ヲ持チマ
ス所ノ重要ナル法案デゴザイマスカラ、大體ニ就テ二三點
御伺致シ置キタイ事ガゴザイマス、此滿載吃水線ノ指定ガ
必要ナコトハ、申スマデモナイ事デゴザイマスガ、此度卽チ此
法案ヲ御出シニナッタ動機ハ何レニ在ルカ是マデ無カッタコ
トハ無論缺點デゴザイマスケレドモ、長ラクノ間抛ッテ置イタ
モノヲ、此度御出シニナッタコトハドウ云フ動機カラ來タノデ
アルカ、或ハ御說明ニ依リマスト、海運界ノ現狀ニ鑑ミ、船
舶ノ過載ニ依ル海難云々ト云フコトガゴザイマスガ、或ハ近
來ニ至ッテ此爲メニ海難ガ殖エタト云フヤウナ、著シイ現象
ガアルノデゴザイマスカ、ドウデゴザイマスカ、之ヲ第一ニ承
リ置キタイ、ソレカラ次ニ此滿載吃水線ヲ指定スルニ就キマ
シテハ、ドウ云フヤウナ順序ニ依ルノデアルカ、此法案ノ中ニ
ハ管海官廳ガ之ヲ指定スルコトダケ書イテ、ドウ云フ標準
依ッテ指定スルト云フコトガ無イヤウデゴザイマスガ、是ハド
ウ云フノデゴザイマスカ、ソレカラ此法案ノ最モ必要ナル所
ノ、外國ニ於テ日本デ附ケマシタ所ノ其吃水線ヲ、認メラル
ルカ如何ト云フコトガ一番必要デアル、之ニ就テハ此法案
ノ趣旨ハ卽チ雙務主義ヲ執ッテ居ル、日本ノ指定線ヲ認メ
ル國ノ船ハ、日本ニ於テモ認メル、併シ日本ノ指定線ヲ認メ
ヌ所ノ國ノ船ハ、日本ニ於テモ認メヌ、斯フ云フ主義ヲ執ツ
テ居ル、是ハ尤ナル事デゴザイマスケレドモ、實際ニ於テハ中
中六ケシイ話デ、若シ日本ノ船ガ認メラレヌ時分ニ、日本ニ
於テモ餘所ノ船ニ對シテ一々之ヲ附ケルコトハ、容易ナラヌ
事デゴザイマスガ、之ニ就テハ豫テ外國、殖ニ英吉利トカ亞
米利加トカ云フヤウナ國トノ間ニ、何カ御諒解ノ途ガ著イ
テ居ルノデアルカドウデアルカ、此法案ノ殆ド死活ニ關スル
最モ必要ナル問題ト考ヘマスカラ、玆ニ十分確カナル所ヲ
承リ置キタイ、ソレカラ次ニハ此法案トハ隨分深イ關係ヲ
有シテ居リマスカラ、政府ガ造船ヲ獎勵シ保護スル所ノ御
方針ハ何レニ在ルカ、殊ニ此優秀船ヲ保護サレルト云フコ
トニ就テハ、今後ドウ云フヤウナ方針ヲ御執リニナル御考デ
アルカ承リ置キタイ、優秀船ト申シマスレバ、申スマデモナク
船體モ大キク、又速力モ强イ所ノ主ニ客船デ、之ヲ拵ヘマス
ノニハ隨分金ガ掛リマス、又維持ヲ致シマスノニモ中こ六ケ
シイモノデアル、ケレドモ其代リニハ幾多有事ノ時ニハ、最モ
役ニ立ツモノデナケレバナラヌ所ノ必要ナ船デアル、例ヘバ先
般ノ戰爭ノ時ニ於キマシテモ、英吉利ノ或ハ「キユーナード」、
或ハ「ホワイトスター」等ノ優秀船ガ大ナル働ヲ爲シタコトハ
誰モ能ク知ッテ居ル事デアル、最モ必要ナルモノデゴザイマス、
ソコデ各國ニ於キマシテハ、隨分是マデ色ミノ獎勵法ヲ執ツ
テ來テ居ル、或ハ低利資金ヲ貸ストカ、或ハ平生ノ維持スル
金ヲ貸ストカ、又ハ郵便航送ニ方リマシテモ等級ヲ付ケマシ
テ、良イ所ノ船ニハ餘計金ヲ遣ルト云フヤウナコトヲヤリ來ツ
テ居ル、日本ニ於テモ前ノ造船奬勵法ガ活キテ居ッタ時分
ニ此事ガ書イテアル、又遠洋航海補助法中ニモ現ニ此規
定ガアル、或ハ進ンデハ政府ノ註文ニ依ッテ拵ヘタ船ニナレ
バ、他ノ船ヨリハ二割五分餘計補助金ヲ遣ルト云フコトニ
マデナッテ居〓タノデゴザリマス、所ガ此造船奬勵法ハ既ニ消
滅致シマシテ、代ッタモノハ出來マセヌ、色〓臨時財政經濟
調査會等ニ於テ御調ニナッテ居ルヤウニ承リマスガ、併シ要
點ハ製鐵業トノ關係ニ致シマシテ、其材料ニ對シテ或ハ關
稅ヲ免除スルトカ、ドウトカ云フコトニ止ヲテ居リマシテ、此
優秀船或ハ又其他軍事上ニ特別必要ナル船ノコトニ就テ
ハ、餘リ議論ガ及ンデ居ラヌ、是ハ先年軍需工業動員法案
ヲ議スル委員會ニ於キマシテ、私ガ其事ヲ政府委員ニ質
問シタ所ガ、ソレハ追ッテ造船奬勵法ヲ改正致シテ其缺點ハ
補フ、斯ウ云フ其時ノ遞信大臣田男爵ヨリ御答ガアッタノ
デゴザイマスガ、其以來一向其事ニ就テ御話ヲ承ッテ居ラヌ、
又殊ニ此度政府ニ於キマシテモ、歐羅巴航路、亞米利加ノ
方ニ參リマス「シヤトル」航路、又濠洲航路等ノ遠洋航路補
助方針ヲ改メラレテ、單ニ郵便航送ノ目的ノミニ止メラレ
ルト云フ案ハ、既ニ豫算案ニ提出ニナッテ居リマス、サウナリ
マスト實際ハ遠洋航路補助法ニ於テ、牽束シテ居リマシタ
所ノ優秀船ニ對スル制限ガ、自ラ解ケテ參リマス、ドウモ其
邊カラ考ヘテ見マシテモ、何トナク優秀船ノ保護ト云フコト
ニ就テハ、少シ閑却サレテ居ルヤウナ感ジガ致シマス、日本ノ
國ニ於キマシテハ、御承知ノ通リ戰争ノ爲メニ非常ニ海運
業ガ發達シ、造船業モ發達シマシテ、今日デハ三百万噸以
上ノ船ヲ持ッテ居ル、世界ノ順序カラ申シマシテモ、英吉利、
亞米利加、其次ニ佛蘭西ガ行クカ、日本ガ行クカト云フヤ
ウナ地位ニナッテ居リマス、併ナガラ其出來マシタ所ノ船ハ、
殆ド皆ナ貨物船、優秀船ハ一艘モゴザイマセヌ、寧口優秀
船ハ戰爭ノ時分ニ擊沈メラレマシタ所ノ八坂丸、常陸丸ノ
ヤウナ船デ、失ウタ其代リモ出來テ居ラヌト云フ形デ、甚ダ
不十分デアル、他ノ國ニ比較シテ見マスレバ、英吉利ノ如キ
ハ十五節以上ノ船ガ參百七十般モゴザイマス、米國ニハ百
三十艘、佛蘭西ト雖モ尙ホ四十四艘、伊太利ハ三十艘許
リ、日本ハ僅カ二十二艘ホカゴザイマセヌ、殊ニ英吉利ノ如
キハ二十節以上ノ船ガ隨分澤山アッテ、中ニハ二十五節ノ
船モアル、米國ニハ二十四節ノ船ガアル、其他佛蘭西伊太
利ニモ二十節以上ノ船ガ澤山アル、日本ニハ悲シイ哉一番
ノ高速力デ十九節ノ船ガタッタ一艘アル、其他ハ十七節以
下、甚ダ不十分デアル、是デハドウモ第一太平洋アタリニ於
ケル所ノ船舶事業ニ適應スルニ不十分デアルノミナラズ、旣
ニ海軍ノ方ニ於キマシテモ、八八艦隊ノ完成ヲ決定シテ居
ル今日、其補助船ト致シマシテモ甚ダ不十分ノ感ジガ致シ
マス、仍ッテ之ニ就キマシテハ、政府ニ於テドウ云フ御考ヲ
持シテ御在テセウカ、第一遞信大臣ノ御答辯ヲ承リ、併セテ
海軍大臣ノ實ハ御說明ヲ私ハ希望スル者デアリマス、ガ併
シ御在デニナリマセヌカラ、委員會ニ讓ッテモ宜シウゴザイマ
ス、ドウゾ之ニ就キマシテ政府大體ノ御方針ノ有ル所ヲ承リ
タイ、他ノ事ハ委員會ニ於キマシテ、又委シウ御尋致シマ
ス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=22
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023・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 野田遞信大臣
〔國務大臣野田卯太郎君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=23
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024・野田卯太郎
○國務大臣(野田卯太郞君) 正木君ニ御答ヲシマス、此
第一ノ御質問ハ第三條ノ事デアリマセウネ、正木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=24
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025・正木照藏
○正木照藏君 第一ノ質問ハ動機如何、今年御出シニ
ナッタ所ノ動機ハ何レニ在リヤ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=25
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026・野田卯太郎
○國務大臣(野田卯太郞君)(續) ソレハ曩ニ申上ゲテ置
キマシタガ、是ハ明治六年カラ調査ニ掛ッテ居ル問題デアリ
マス、或ハ大隈内閣ノ時代デアッタカモ知レヌ、サウ御承知下
ザイ(「大正六年ダラウ」ト呼フ者アリ)大正大正デス(笑聲
起ル)ソレカラ此方法ハ今マデ船舶ノ檢査ヲシテ居ル所デ此
事ヲ行フ、其箇所ハ詳シイ事ナラバ書イテアリマス、第三ハ
優秀船デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=26
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027・正木照藏
○正木照藏君 イヤマダアリマス、外國トノ諒解如何発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=27
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028・野田卯太郎
○國務大臣、野田卯太郞君)(續) 是ハ諒解ハ故ラニ得
テ居リマセヌ、此委員ノ調査ノ中ニハ、向フト不都合ノナ
イヤウニ調ベテ居ルト云フ報告ヲ得テ居リマス、委細ハ委
員會デ詳シク申上ゲマセウ、ソレカラ優秀船、是ハ政府デ何
等決定シテ居リマセヌ、遞信大臣トシテハ考へテ居リマス、
或時期ニ於テハ、優秀船ニハ何カノ方法ヲ執ラネバナラヌ
ト云フコトハ考ヘテ居リマス、政府全體トシテ軍事上ノ爲
メニ云々ト云フガ如キハ、何等決定シテ居リマセヌ(拍手起
ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=28
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029・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第八、右議案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ヲ議題ニ致シマス
第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=29
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030・岩崎勲
○岩崎勳君 委員ノ數ハ特ニ十八名トシ、議長ニ於テ指
名セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=30
-
031・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=31
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032・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍ッテ動
議ノ如ク決シマス、是ヨリ國務大臣ノ演說ニ對スル質疑ニ
移リマス橋本喜造君
一國務大臣ノ演說ニ對スル質疑
(前曾ノ續)
〔橋本喜造君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=32
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033・橋本喜造
○橋本喜造君 諸君、財政經濟ノ問題ニ關シマシテハ、
既ニ去ル二十二日濱口雄幸君ニ依シテ、既ニ大體盡サレ
テ居リマスケレドモ、大藏大臣ハ尙ホ之ニ對シテ具體的ノ
質問ヲ希望セラレタノデアリマス、故ニ本員代フテ具體的ノ
質問ヲシヤウト思フノデアリマス、其第一ノ質問ハ米穀卽
チ米、第二ニハ蠶絲卽チ生絲、第三ハ滯貨ノ一掃、卽チ滯〃
テ居ル所ノ貨物ノ跡始末、此三點ニ對シテ質問ヲ致シマス、
併ナガラ此問題ハ、何レモ本期議會ニ於ケル問題中ノ最モ
重大ナル問題デアッテ、而モ我國經濟界ノ中樞デアリマス
ガ爲メニ、本員ハ之ヲ一黨一派ノ所謂黨派根性ヲ以テ解
決スルコトヲ避ケマシテ、自己ノ最モ公平ナル立場ニ於テ、
質問ヲ發スルコトニ致シテ居リマス、幸ニ當局ニ於キマシテ
モ、私同樣全ク黨派根性ヲ取去リマシテ、最モ公平ナル答
辯ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス、現下ノ大問題トシテ
所謂農會ガ不賣同盟ヲ致シテ居リマス、之ニ對シテ一般經
濟界ハ、大正九年度ノ米ノ實收額ヲ六千三百万石ト認
メ、尙ホ之ニ朝鮮其他外米ヲ併セマシテ、七千二百万石ト
計上致シテ居リマス、然ルニ國調ノ結果ニ依リマスル內地
人ノ人口ハ五千七百万人デアル、假ニ一人一年ノ消費額
ヲ一石一斗ト致シマシテモ、尙且ツ一千万石ノ剩餘米ヲ
來スノデアリマス、之ニ對シテ一般經濟界ハ剩ル物安シト
云フ原則ニ從ヒマシテ、自然調節ニ委スノ外ナシト云フコト
ヲ絕叫致シテ居リマス、然ルニ帝國農會ハ突如トシテ起チ、
投賣防止ノ名ノ下ニ所謂不賣同盟、一石三十五圓以下デ
ハ賣ッテハイケナイト云フコトデ、不賣同盟ヲ致シテ、之ヲ各
府縣農會ニ傳へ、府縣農會ハ又之ヲ郡村ニ傳ヘテ居リマ
ス、而シテ不賣同盟ヲ勵行セシムベク働キツヽアルノデアリ
マス、而シテ又新聞紙ハ此間ニ於ケル農村ノ金融ハ、勸業
銀行或ハ農工銀行ニ於テ之ヲ爲スト云フコトヲ宣傳致シ
ツヽアルノデアリマス、然ルニ諸君、之ニ對シテ政府當局ハ
何等ノ聲援ヲ與ヘザルノミナラズ、故ラニ冷淡ヲ裝ッテ居ル
ヤウナ態度ガ現レテ居ルノデアリマス、然レドモ一般國民、
否ナ少クトモ農民ダケハ、政府ハ之ニ對シテ非常ナル後援
ヲ與ヘテ居ルカノ如ク思ッテ居リマス、又本員ニ於キマシテ
モ、此農會ノ不賣同盟ガ果シテ效ヲ奏シマシテ、現實二三十
五圓ト云フ價格ヲ保ツコトガ出來マシタナレバ、本員ハ衷
心ヨリ農民ニ對シテ、其幸福ヲ欣ビ、又農會ニ對シテモ、謹
ンデ敬意ヲ表スル者デアリマス、然レドモ諸君、米ナルモノ
ハ國民ノ生活ノ基礎デアッテ、不自然ナル調節ヲ以テ其價格
ヲ左右シ得ベキモノデハナイノデアリマス、左樣ナ輕〓シイ物デハ
ナイノデアリマス、況ヤ一農會ガ不徹底ナル、而モ薄弱ナル宣
傳ヲ致シマシテモ、到底其目的ヲ達スルコトハ出來ザルノミナラ
ズ、却テ反動安ヲ來シテ非常ナル迷惑ヲ農民ニ掛ケハセヌカト
本員ハ考ヘルノデアリマス、私ガ農會ニ對シテ不徹底ダトカ、或
ハ薄弱ダトカ申上ゲルノハ、決シテ惡ク言フ譯デハアリマセヌ
ガ、帝國農會ノ後ニハ政府ノ後援ハ無イ、是ガ薄弱デアル、
又農會ハ積立金モ何モ持タナイ、是デ薄弱デアルト云フコ
トヲ申上ゲル次第デアリマス、既ニ反動安ヲ來シテ、農民ニ
迷惑ヲ掛ケルト云フコトハ、火ヲ睹ルヨリモ明カデアリマス、
ソレニ帝國農會ハ純朴ナル農民ニ對シテ、如何ニモ米價ノ
釣上ゲハ容易ク出來ルヤウナ宣傳ヲ致シテ居リマス、サウシ
テ農民ニ一時的ノ糠喜ビヲ與ヘテ居ル、私ハ之ヲ冷靜ニ看
過シテ居ル所ノ政府及農會ハ、實ニ農民ニ對シテ不誠意、
不深切ノ極ミデアルト私ハ信ズルノデアリマス(拍手起ル)
不幸ニシテ後日反動安ヲ來シテ、非常ニ米價ガ暴落致シマ
シタナラバ、政府及農會ハ農民ニ向ッテ如何ナル申譯ヲスル
デアリマセウカ、(「ノウー〓」ト呼フ者アリ)又農民ニ對シテ如
何ナル慰安ヲ與ヘルカ、又政府ハ本期議會ニ於テ、常平倉
案ヲ提出スルデアラウト本員ハ思フ、假令常平倉案ガ出マ
シテモ、衆議院ハ多數ヲ以テ通過スル、併ナガラ貴族院ニ於
テハ如何ナル暗礁ニ乘上ゲルカモ知レヌ、縱シ假令通過致
スト致シマシテモ、尚ホ通過ノ結果直チニ著手致スト致シマ
シテモ、其實行期ハ大正十一年度デアラウト思フノデアリマ
ス、然ルニ農民ガ今日困難ヲ感ジテ居ル所ノ米穀ハ、大正
九年度卽チ昨年出來マシタ所ノ米ニ於テ、痛痒ヲ感ジテ居
ルノデアリマス、ソレ故ニ私ハ政府及農會ガ、眞實ニ農民ノ
苦痛ヲ念〓テ精神的ニ米價ノ釣上ヲ爲サント欲スルナラバ、
玆ニ政府ノ偉大ナル壓力ヲ用井ルト同時ニ、少クトモ一定
ノ期間農民ニ對シテ、納稅ヲ延期スルノ必要ガアルト思フ
(拍手起ル)尙又肥料代其他農民ノ拂方ニ對シマシテハ、
少クトモ延期ヲシテヤラナケレバ、到底其目的ヲ達スルコト
ハ出來ヌノデアリマス、假令勸銀農銀ガ融通ヲ致スト致シ
マシテモ、僅ニ五俵十俵ト小賣ニスル所ノ米ニ對シテ、如何
ニシテ優遇ノ途ガ出來マスカ、其手續サヘ出來ナイデハアリ
マセヌカ、其方法ヲ講ゼズシテ、結果ヲ得ントスルコトハ實
ニ六ケシイ事デアリマス、何レニ致シマシテモ此問題ハ國家
ノ重大問題デアル、國民經濟ノ中樞問題デアル、又一方ニ
於テハ、物價政策ノ根本問題デアルガ故ニ、本員ハ之ヲ六
箇條ニ分チテ當局大臣ノ公平ナル御答辯ヲ求ムルノデアリ
マス、其一、政府ハ各種事業ニ對シ救濟ヲ爲シタルニ拘ラズ、
食糧ノ根本問題タル米ニ對シ速ニ救濟ヲナサヾル理由如
何、其二、政府ハ帝國農會ノ不賣同盟ニ對シテ、徹底的ノ
援助ヲ與ヘラルヽヤ、又從來ノ通リ放任主義ヲ執ラルヽヤ
如何、其三、政府ハ農會ノ協定ニ依ル一石三十五圓ノ價
格ヲ適當ト認メラルヽヤ如何、其四、政府ハ不賣同盟ノ結
果、所期ノ通リ價格ノ釣上ヲナシ得タル場合ハ、生產費ノ
昂上ニ依リ、政府ガ常ニ獎勵セラルヽ良貨廉賣主義ノ輸出
貿易ニ支障ヲ來スナキヤ如何、其五、政府ハ前項ノ場合
ニ於ケル消費者ノ反抗ヲ如何ニ處理セントセラルヽヤ、此
五項ニ分シテ質問ヲ致シマス、實ハ六項ノ積リデアッタガ、一
項ハ減ジマス、農商務大臣ニ於テ御判リニナッテ居レバ、宜
シイガ御判リニナラナケレバ、此質問ノ趣意ヲ差上ゲテモ宜
シウゴザイマス、次ハ蠶絲ニ就テ、一昨日農商務大臣ヨリ縷
縷帝蠶絲會社ノ御話ガアリマシタガ、大分違ッテ居リマスガ
爲メニ私ハ之ニ對シテ尙ホ判ルダケ御尋ヲシテ見タイト思
ヒマス、政府ノ後援ノ下ニ設立セラレマシタル帝蠶會社ハ
生絲ニ對シテ千五百圓ト云フ最低價額ヲ定メマシテ、尙又
價格ノ釣上ヲナサント欲シテ、全國ニ亙リ製絲會社ニ約三
箇月間ノ繰業休止ヲ命ジタノデアリマス、然レドモ、計畫ハ
事實ト非常ナル懸隔ヲ生ジマシテ、悉ク失敗ニ終ッタノデア
リマス、價格ノ釣上ヲ爲シ得ザルノミナラズ、最低價格ヲ保ツ
コトサヘモ、非常ニ困難ニナッテ居リマス、爲メニ各自其協定
ヲ無視致シマシテ、製絲家ハ繰業ヲ繼續シ、又商人側ニ於
キマシテハ、最低價格以下デ賣買ヲ始メタノデアリマス、斯
樣ナ有樣デ横濱ノ定期取引所ハ全ク休止ノ姿デアリマス、
日々空廻リヲ致シテ居リマス、又一方ニ解合ノ交涉モアル
ノデアリマス、斯ノ如キ有様デアッテ、實ニ混亂ノ狀態デアル
而シテ目下滯積貨物トシテアリマス物ハ、亞米利加ニ於テ
約四万梱、是ハ一昨日農商務大臣ハ三万二三千梱ト言
ハシテ居ル、又横濱ニ於キマシテ約七万梱、ソレニ帝蠶ノ買
込ンデ居ル所ノ生絲ハ約二万梱、全國ノ製絲家ノ手許ニ
在ルモノ、及未ダ絲ニナッテナイ所ノ繭、是ハ約十五万梱ト
思ッテ居リマス、其外ニ地遣絲ハ五万梱、之ヲ總計致シマス
レバ三十万梱以上ニナルノデアリマス、然ルニ近來亞米利
加ノ財界ハ大分立直リ、殊ニ機業界ハ非常ナ立直リヲ致
シマシタト云フ報道ガ傳ハリマシテ、我ガ製絲界モ餘程活
氣ヲ帶ビテ來テ居ルヤウナ有樣デアリマス、併ナガラ是ハ平
地ノ波瀾デアッテ、極ク小サイ所ノ波瀾デアル、決シテ之ガ眞
實直シタト云フヤウナ譯デモ何デモアリマセズシテ、必ズ近キ
將來ニ於テ、此反動安ノ來ルコトハ明カデアリマス又昨年
帝蠶會社ガ設立致シマシテ以來、支那ノ製絲ガ銀塊安ニ
連レマシテ、續々亞米利加ニ輸出サレテ居リマス、又支那人
ハ米國人ヲ〓師ト致シマシテ、製絲ノ改良ニ努メ、尙又桑
田ヲ開拓致シマシテ、極力我ガ日本蠶業ニ對抗セントシツ
ツアル所ノ狀態ガ現レテ居リマス、旣ニ改良セラレタル所ノ
上海絲ノ如キハ、亞米利加ニ於キマシテモ日本ノ信州ノ一
番ノ絲ニ對シマシテ、五十圓百圓ノ上値ヲ保ッテ居ルヤウ
ナ次第デアリマス、私ハ是ニ於テ思ヒマス、農商務大臣ニ於
キマシテモ、支那ノ蠶絲ト云フコトニ就テ、餘リ頭ニ重ク
用ヰテ居ラレナイヤウニ思フ、又横濱ノ輸出商ニ於キマシテ
モ支那ノ蠶絲ト云フコトハ、餘程冷淡ニ思っテ居ルヤウ
ニ見エマス、是ハ横濱ノ商人ハ、傳統的ニ極ク溫イ頭ヲ持ッ
テ居ッテ、而モ見解ガ餘程狹キニ失スルヤウナ感ジガ私
ニハ致シマスノデアリマス、現ニ廣東ヤ或ハ上海ノ絲
ガ、日本ノ絲ヨリモ紐育ノ「マーケット」ニ於テ高イト云フコト
ハ、取リモ直サズ品質ガ良イノデアル、一般ニ支那ノ絲ハ品
質ガ惡イ、到底日本ノ絲ノ競爭ニナルベキモノデハナイ、ノミ
ナラズ五十年、三十年來、何等變ッタコトハナイデハナイカト
云フコトモ、公然ト横濱ニ於ケル貿易商ノ、而モ有力ナル人
ガ言ッテ居ルヤウデアリマス、此上海ノ絲、或ハ廣東ノ絲、是
等ノ絲ハ決シテ日本ノ繭ヲ持ッテ行ッテ製造シタノデゴザイ
マセヌ、矢張支那ノ繭ヲ以テヤッタノデアル、支那ノ繭ナルモ
ノハ日本ノ物ヨリ品質ハ强ク、之ヲ本當ニ製絲スルコトガ
出來マシタナラバ、確ニ日本ノ絲ヨリモ優良デアルト云フコ
トハ、世界一般ニ於テ認メテ居ル所デアリマス、ソレニ我ガ
農商務省ニ於テモ何等念頭ニ置イテナイヤウニ思フ斯ノ
如キ有樣デアッテ、日本ノ蠶絲界ハ非常ナ極度ノ不況ニ陷ッ
テ居リマス、故ニ速ニ之レガ對應策ヲ講ズルコトガ出來ナ
カッタナラバ、我ガ蠶業界ハ遠カラズシテ根本ヨリ絕滅サルヽ
時期ガ來ハセヌカト、本員ハ心配スルノデアリマス拍手起
ル)又帝嚮會社ノ內容ヲ調ベテ見マスレバ、資本家ハ僅ニ
千六百万圓、拂込ハ六百万圓、ソレニ昨日マデニ更ニ二百
万園ヲ拂込ムヤウナ順序ニナッテ居リマスルガ、此拂込ハ恐
ラク半數ト雖モ出來タラ宜イヤウニ、本員ハ想像致シマス、
サウシテ帝蠶會社ガ此資本ヲ以テ買込ミマシタル絲ハ、三
回ニシテ約二万梱、既ニ一一万捆ニ對シマシテモ千五六百万
圓ノ不足ヲ生ジテ居リマスルガ、之ニ對シテ如何ナル融通ヲ
致シテ居ルカト云フコトヲ調ベマスレバ、最初與銀ニ於テ五
千万圓ノ融通ヲスルト云フ話ガアッタガ、是ハ更ニ興銀ハ
出シテ居ラヌノデアリマス、勸業銀行ニ於キマシテ之ガ融通
ヲ爲シテ居ル、而モ買入價格ノ七割ダケヲ融通シテ居ルノデ
アリマス、併ナガラ政府ノ交涉ニ依リマシテ、更ニ一割ヲ殖シ
テ、近來ハ八割ノ融通ヲナシテ居ルト云フ話デアル、山本農
商務大臣ハ、金利年五分ト云フ御話ヲ一昨日致シマシタ
ガ、是ガ既ニ間違シテ居ル、五朱六厘ノ割デ勸銀ガ立替ヘテ
居ルヤウナ次第デアリマス、而モ此荷物ニ對シテ貸金ヲスル
ニ當ッテ、重役ノ個人保證マデ取ッテ居ルデハアリマセヌカ、
私ハ此點ニ於テ農商務大臣ニ御尋ヲシタイト思フ、苟モ政
府ノ後援ノ下ニ立テラレテ居ル所ノ帝蠶會社ガ、而モ自己
ノ相當ナル營業ヲ爲スニ當ッテ、個人ノ保證マデシナケレバ、
政府ガ所謂特殊銀行ガ金ヲ貨サナイ、是ハ一體何ト云フ
事デアリマセウカ、苟モ全國ニ亙ッテ多數ノ株主ヲ有シテ居
ル所ノ株式會社、而モ有限責任ノ會社デアッテ、相當ナル會
社ノ營業ヲ營ムニ當ッテ、重役ガ個人ノ保證ヲスルト云フコ
トハ、未ダ會テ私共ハ聞イタコトハ無イノデアリマス、是ガ個
人ノ營業デアッテ、而モ形式的ニ株式會社ニ爲シタルモノデ
アレバ、社長或ハ其他ノ重役ガ個人ノ保證ヲシテ何等差支
ナイ、ンレニ何ゾヤ多數ノ株主-全國ニ擴ッテ居ル株主、
此株主ヲ有ッテ居ル會社ニ對シデ、而モ政府ハ後援ヲシテア
ルノデテリマス、ソレニ對シテ個人ノ保證ヲ取ルト云フコトハ
全ク此會社ヲ潰サントスルヤウナコトニナリハセヌカト、私
思フノデアリマス、又近來斯ウ云フヤウナ有樣デ、帝蠶會社
ハ株金ヲ取ラウト思ッテ株主ニ迫レバ、絲ヲ高ク買ッテ下サレ
バ御拂ヲシマスガ、サモナイ限リハ私共拂フコト出來ヌト云
フ鹽梅デ、誰獨リ應ズル者ガ無イ、是ハ山本農相ハ知ッテ居
ル筈デアル、故ニ寧ロ此際絹絲「シンジケート」ノ如ク潔ク解
散シテ、後難ヲ免レタ方ガ增シデアルト云フヤウナコトヲ、殆
ド全部ノ重役ガ言傳へルノデアリマス、私ハ昨年ノ秋デゴザ
イマシタガ、蠶絲ニ關シマシテ支那ニ參リマシテ、其歸途ナル
所ノ亞米利加人、是ニハ貴衆兩院ノ議員モ附イテ居ッタノ
デアリマス、其人達ト神戶ニ於テ會見ヲ致シマシタガ、其時
ニ斯ウ云フ御話ガアッタ、日本ノ帝蠶會社ハ洵ニ結構デアル
ガ、是ニハ政府ガ干涉シテ居ル、サスレバ此會社ハ見込ハナ
イ、直チニ倒レル、到底蠶絲ノ値段ヲ引上ゲルコトハ六ケシ
イ、實ニオカシイコトヲ言シタ、吾ミハ政府ガ關係ヲシテ居レ
バ、其會社ハ丈夫デアル、且ツ値段ノ引上モ出來ルト云フコ
トヲ信ジテ居ッタノデアリマス、然ルニ亞米利加人ハ、政府ガ
關係シテ居ルカラ倒レル、到底絲價ノ維持ハ出來ナイ、斯ウ
云フコトヲ言ッテ居ル、是ハドウ云フ事デアルカト申シマスレ
バ、日本政府ノ救助ナルモノハ、殆ド徹底シテ居ルモノガ無
イノデアリマス、第一ニ瀨踏ヲシテ見テ、善ケレバ、自己ノ救
濟ノ結果トシテ自慢的ニ之ヲ繼續シ、若シ惡イトナレバ、直
チニ取上ゲマシテ、其會社ヲ破滅セシムルヤウナコトヲシマス
(拍手起ル)現在昨年以來救濟ヲ受ケテ居ル所ノ事業ハ、
其種類ノモノガ澤山アルノデアリマス、其結果ト致シマシテ
帝蠶會社ハ、恰モ蠶ノ如ク自ラ繭ヲ作ッテ、其繭ノ中デ死
ンデシマフノデアルト云フコトヲ言ハレテ居ル、是ハ皮肉デア
ルガ、實ニ穿ッタ話デアルト私ハ思フノデアリマス、序ニ日本
ノ救済ガ甚ダ不徹底ナルガ爲メニ、一例ヲ爰ニ擧ゲテ申上
ゲマスガ、昨年ト一昨年ノ差、卽チ米國ニ於キマシテ棉花ノ
非常ナル下落ガアッタノデアリマス、其差金ガ四十億弗、之
ヲ邦貨ニ直シマスト云フト、八十億圓ニナルノデアリマス、ソ
コデ綿絲ノ組合ハ到底是デハ遣リ切レナイト云フ考ヲ以チ
マシテ、亞米利加ノ大藏大臣ニ是ガ救濟ヲ賴ンデ居リマス、
所ガ其大藏大臣曰ク、免ニ角餘ル物ハ安クナルト云フコト
ハ、是ハ仕方ノナイ事デアル、又棉花ハ一年草デアル、今年
餘リアレバ復タ明年モ餘リハセヌカト思フ、何故ナレバ綿絲
ヲ使フト云フ所ノ國ハ、總テ非常ナル不景氣デアッテ、此棉
花ヲ買フコトガ出來ナイ、又棉花ガ賣レナケレバ値段ガ騰
ラナイ、値段ガ騰ラナイ物ニ對シテ政府ガ救濟スルト云フコ
トハ、絕對的ニ出來ナイ、ソレハ銀行家ノ爲スヤウナ仕事デ
アル、ソレデ貴方ガタガ金ガ要ルナラバ、銀行ニ行シテ相談ナ
サイ、政府ハ斯樣ナ仕事ニ「タッチ」]シナイト云フコトヲ斷然
言ハレテ居ル、之ニ對シマシテ大阪ノ每日新聞ハ、何處カラ
聞込ンダ話デアルカ、紐育通信ト致シマシテ、其大藏大臣ノ
言葉ヲ揭載致シテ、亞米利加ノ大藏大臣ノ爪ノ垢ヲ煎ジ
テ、日本ノ大藏大臣ト農商務大臣ニ飮マシテ遣リタイト諷
刺ヲシタ、實ニ日本政府ハ救濟ガ好キデアッテ、而モ徹底的
ニ救濟スルト云フコトハ嫌デアル、何モ彼モ救濟シ掛ケテ
見チヤ廢メ、又最後迄救濟スルト云フ考ハ無イラシイ、此
蠶絲ニ對シマシテモ、本當ノ誠意ガアルナラバ假令政府
ガ此事業ヲ引受ケテデモ、救濟ヲシナケレバナラヌノデア
ル、然ルニ個人保證迄シヤウト云フコトハ、何ト云フ事デア
ル、農商務大臣ハ御知リデアラウガ、朝鮮銀行ノ如キハ一
個人ノ仕事ヲ助ケテ居リナガラ、ソレヲ更ニ自分ガ引受ケテ
炭礦ヲ銀行ガ自ラ經營シテ居ル、是ハ現ニ私ノ國ニ於テ在
ルノデアル、其炭礦ヲ稱シテ朝鮮銀行炭礦ト言ハズシテ朝
鮮炭鑛ト(綽名ヲ付ケタ、又特殊銀行ナル臺灣銀行ノ中ニ
モ船舶ヲ扱ッテ居シテ臺灣銀行船舶部ト云フガアルト云フ
話ヲ、誰カガ言ッテ居ック、事實カドウカ判ラヌ、又甚ダシキハ
神戶「マーケット」ニ於キマシテ、東京ニハ原「シップブローカー」原
シップブローカー」私ハマダサウ云フモノガ有ルカ無イカ知ラ
ナイ、マダ恐ラク開業ヲシテ居ルマイ、船ノ賣買ヲスルナラバ、
其處へ持ッテ行クタ方ガ一番早イト云フ話ヲ私ハ聞イテ居ル、
併シ私ハ是ハ決シテ信ジマセヌ、何レニ致シマシテモ此蠶絲
ニ對シテハ政府ハ極力之ヲ救濟スル義務ガアル、又一般國
民ト此蠶絲ナルモノハ、全國ニ亙ッテ汎ク國民全體ニ依ッテ
取扱ハレテ居ルモノデアリマスレバ、必ズ徹底的ノ救助ヲ爲
シ得ルモノト思ッテ居ルノデアリマス、然ルニ政府ハ全ク對岸
ノ火災視シテ居ルヤウニ、私ハ失禮ナガラ見ルノデアリマス、
又何等ノ救濟方法、何等ノ計畫ヲモ爲シテ居ラヌ、興業銀
行ノ五千万圓ノ貸金ハ何時爲サルカ、又此貸金ガ出來得
ルト雖モ、救濟ガ果シテ出來ルモノデアルカ、本員之ニ對シ
テ箇條ヲ分ッテ質問致シマス、之ニ對シテハ明確ナル答辯ヲ
望ミマス、是ハ山本農商務大臣ニ御願シタイ、其一、政府ハ
今日ノ帝蠶會社ヲ以テ蠶絲界ヲ根本的救濟シ能フモノト
思フヤ如何、其二、本年ノ端境期ニ於ケル殘存絲約二十万
梱ヲ如何ニ處分セラレントスルカ、第二問ハ唯今三十万梱
ノ停滯品ガアル、之ニ對シテ假ニ米國ガ一箇月二万梱ノ消
化ヲスルト致シマシテ、向フ五箇月間、是デ十万梱減リマシ
タ、ソレデ二十万梱新規ノ繭ガ出來ル爲メニ消費スル絲ヲ
差引イテ、殘リ二十万梱ヲ如何ニ處分セラルヽカ、其三ハ本
年度ノ蠶業ニ對シ、政府ハ一定ノ政策ヲ有スルヤ如何、
最早新蘭モ五月ニナッタナラバ早イモノハ出來マスガ、ソレニ
對シテドウスルカ、第四ハ今日ノ絲價ハ高キニ失シ、機業家
ハ極度ノ悲境ニ陷レリ、之ニ對シテ如何ナル政策ヲ政府ハ
有スルヤ、機業家ハ絲ノ高イ爲メニ甚ダ困。テ居ル、拵ヘタ
物ハ佛蘭西ニモ亞米利加ニモ、其他ノ歐羅巴ヘ行キマセヌ、
絲價ヲ下ゲネバイカヌト云フコトヲ言ウテ居ル、之ヲ政府ハ
如何ニナサルカ、其五帝蠶會社設立當時銀塊ハ六十片ナ
リシニ、今日ハ四十片ニ低落セリ、支那絲トノ對抗上絲價
引下ノ必要ナキヤ、第六政府ハ國策ヲ定メ、蠶業ノ根本政
策トシテ徹底的救濟ヲ爲スノ決心ナキヤ、此六箇條ニ對シ
テ御答ヲ順ヒマス、次ハ滯貨ノ一掃、大藏大臣ハマダ見エテ
居リマセヌカ、次官ハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=33
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034・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 次官ハ出席シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=34
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035・橋本喜造
○橋本喜造君(續) ソレデハ次官ニ於テ能ク聽イテ戴キ
マセウ、輸出貿易ノ眼目タル支那印度ハ、御承知ノ通リ世
界的不況ノ大勢ニ襲ハレマシテ、物價ハ非常ニ下落致シテ
居リマス、又銀塊モ暴落致シマシテ、貨幣ノ眞價ヲ失シテ居
ル、所謂二重ノ損失ニ依ッテ經濟界ハ極度ノ不況ヲ呈シ、
隨テ購買力ハ益〓減ズルヤウナ次第デアリマス、亞米利加モ
亦戰後ノ反動ニ依リマシテ殆ド我國ノ經濟界ト同ジク混
亂狀態デアル、購買力ハ殆ド無イノデアリマス、歐洲ニ至リ
マシテハ戰後ノ疲弊、實ニ目モ當テラレナイヤウナ有樣デアリ
マス、物資ハ缺乏シテ居リマシテモ、之ヲ購フノ資力ハ無イ
ノデアリマス、故ニ我國ノ滯貨ヲ輸出セント思ヒマスレバ、勢
ヒ長期ノ貸付ヲシナケレバナラヌ、又內ニ顯ミテ日本現下ノ
狀態ヲ見マスレバ、昨年反以來工業會社ノ約三分ハ閉鎖
致シテ居リマス殘ル七分ハ殆ド操業休止或ハ操業短縮ニ
依リマシテ、僅ニ露命ヲ繫イデ居ルヤウナ有樣デアリマス、又
一方ニ於テハ財界ノ巨頭、一流二流ノ實業家ハ殆ド破產
ヲシ、又ハ破產ニ瀕シツヽアルノデアリマス、二流三流ノ銀
行家及不謹愼ナル特殊銀行ノ如キモ、囘收甚ダ困難デアツ
テ、動モスレバ內部ヨリ窮狀ヲ暴露セントスルヤウナ狀態ニ
ナッテ居ル、然ルニモ拘ラズ日本銀行トカ第一流銀行ニ於テ
ハ預金ガダブツイテ居ル、而モ此ダブツイテ居ル預金ハ、日ニ
日ニ增シツヽアルノデアリマス、此預金ト云フコトニ就キマシ
テハ、特ニ申上ゲテ置キマスガ、此ダブツイテ居ル預金ト云フ
モノハ、本當ニ働イテ儲ケタ利益ノ金デナクテ、不生產的ノ
殆ド不景氣ノ結果、資金ヲ使フニ途ナクシテ、餘儀ナクサレ
テ、不信用ナル銀行カラ信用アル銀行ニ移サレタ預金デア
リマス、大藏省ノ公債ノ借換ニ對シテハ、多少便利ニナルカ
モ知レヌ、併シナガラ不生產的ノ預金ナルコトハ特ニ御注意
ヲ願ヒタイ、又斯ウ云フヤウナ奇妙ナ現象ヲ現シテ居ルノミ
ナラズ其半面ニハ失職者ヲ出スコトハ實ニ甚シイ、農村ニ
於キマシテモ、嚮ニ中上ク如ク、蠶絲ハ三分ノ一ノ價格、米
ハ二分ノ一、其他ノ物ハ總テ米ニ准ジテ相當下落シテ居リ
マス、併ナガラ一旦膨脹シタル經濟ハ、急ニ之ヲ縮メルコトガ出
來ヌノデアル、サウ云フ有樣デ愈〓農村經濟ニ惡化ヲ來シテ、
內地ノ購買力ハ殆ト無クナッタト同時ニ、十年度ヨリ十一
年度ニ至リテハ、殆トヒドイ不景氣ヲ來スデアラウト私ハ思
フノデアリマス、然ルニ滯貨ハドウ云フ風デアルカト申シマス
レバ、是ハ去ル二十二日ノ本會議ニ於テ、濱口雄幸君ニ於
テ十億万ト云フ發表ガアッタ、又政府モ之ニ同意ヲシデ居ルヽ
併シ此十億圓ト云フ計數ハ何ニ依シテ見ラレタカ、是ハ唯ダ
營業倉庫ノ倉庫劵ノ額ヲ計上シタ位ノモノデアラウ、實際
ハサウ云フモノデハナイ、少クトモ十三億以上ニ上ッテ居ルノ
デアル輸入貨物トシテ輸入セラレタル肥料、機械類、或
鐵器、羊毛、斯ノ如キ物ノ註文者自身ニ於テ引取リ、或ハ銀
行ノ擔保トナッテ營業倉庫ニ入ッテ居ル物モアレバ、個人倉
庫ニ入ッテ居ル、物モ大分多イ、又輪出向トシテ、及內地向ト
シテ個人或ハ會社、營業倉庫ニ堆積セラレテ居ルモノハ、少
クモ十億圓以上デアルノデアリマス、之ヲ總計致シマスレバ
確ニ十三億以上ノ滯貨ガアルト云フコトヲ、此處デ私ハ確
ニ固ク言フコトガ出來ルト思ヒマス、何レニシテモ此十三億
ノ滯貨ガ其儘滯ッテ居リマシタナラバ、我日本帝國ハ今カラ
四箇年間ハ總テノ工業ヲ休マナケレバナラヌ、製造工業ハ
殆ド四箇年間休マナケレバ、滯貨ノ消費ガ出來ヌノデアリ
マス、ソレデ加何ナル手段ヲ以テシテモ、此滯貨ナルモノヲ循
環的ニ一掃シナケレバナラヌ、サウシナケレバ今申上ルヤウ
ニ四箇年間製造會社ハ休止ヲシテ、新規ニ要スル資金ハ
更ニ必要ハ起ラヌノデアル、サウ云フコトニナッテ來ル
ト、我ガ經濟界ハ萬事休スト云フヤウナ歎聲ヲ發スルコトニ
ナリマセウ、之ニ對シマシテ政府ハ如何ナル政策ヲ有セラル
ルカ、其政策ヲ拜聽致シタイノデアリマス、故ニ私ハ此滯貨
ニ對シマシテ、四箇條ニ分ッテ、大藏大臣ノ責任アル答辯ヲ
求メルノデアリマス、質問ノ第一「物價ノ下落ハ世界的大勢
ナリ廉ケレバ廉キニ從テ賣却スベシ、然ラズンバ滯貨ハ一掃
シ難シ此際姑息ナル膏藥細工ハ絕對不可ナリ寧ロ切開シ
テ根本ヨリ病毒ヲ除去スルノ必要アリト思フ、政府ハ此覺
悟ヲ有スルヤ如何」其一一「若シ成行ニ委セテ滯貨ヲ硬
ルノ方法ヲ執ルトセバ當業者ハ多大ノ損失ヲ招キ隨テ金
融業者ハ資金ノ固定ヲ來シ或ハ破產スルコトアルニ至ルベ
シ此場合ニ於テ政府ハ如何ナル處置ヲ執ラレントスルカ」
其三「若シ反對ニ金融業者ノ破產ヲ恐レ又ハ當業者ノ損
失ニ顯ミテ逡巡躊〓〓躇滯貨ヲ一掃スル能ハザレバ、金利ハ掛
リ倉敷ハ嵩ミ品質ハ變化シ甚ダシキハ廢物トナルコトアル
ヘク損失ハ益〓多カルベシ此場合ニ於テハ政府ハ如何ナル處
置ヲ執ラントスルカ」其四「購買力乏シキ外國ニ長期貸付ノ
方法ヲ以テ物資ヲ輸出セントセハ勢ヒ政府ノ保障ノ下ニ
立テル金融會社又ハ政府直接ノ保障ナカルヘカラス政府
ハ此覺悟ヲ有セラルヽヤ如何」此四箇條ニ亙ッテ御答ヲ願
ヒタイ、本員ノ質問ハ之ヲ以テ終リト致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=35
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036・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 山本農商務大臣
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=36
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037・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 唯〓ノ御質問ノ此米ノ
方ニ就テ御答ヲ致シマスガ米ノ下落ニ就キマシテ、全國ノ農
業界ニ於テ、三十五圓ニ於テ不賣同盟ヲシタ、而シテ政府
ニ於テハ、斯ノ如キ事ヲシタ者ニ就テ如何ニシテ居ルカ、何
カ此會ニ於テ決シタル事ニ就テ、政府ガ同意シテ居ルカ、或
ハ奬勵シテ居ルカ、何カノ如ク、農會ト政府ト混合シテ御
話ヲシタヤウニ思フノデアリマス、是ハ全ク政府トハ違ッテ居
ルノデアリマス、唯ダ農會ニ於テ全國ノ有志ガ集リマシテ、
米ガ三十五圓以下デハ如何ニモ農家ガ困難ヲシテ困ル、故
ニ互ニ申合セテ、サウシテ之ヲ賣ラヌヤウニシヤウデハナイカ、
非賣同盟ヲシヤウデハナイカト云フコトヲ唯ダ約束ヲシマシ
テ、サウシテンコデ決議ヲシタト云フダケデアリマス、併ナガラ
何カ農會ト云ヘバ、全國ノ農業者ガ總テ斯ノ如ク爲シタ如
ク御考ニナッテ居リマスガ、唯ダ此米ニ就テ利害ヲ持ッテ居ル
會、人ダケガ一部ダケ寄ッテ申合セタト云フダケニ止シテ居リ
マシテ、此事ニ就テハ未ダ實行スルト云フコトニ至ッテ居ラ
ヌヤウニ思フノデアリマス、又斯ノ如キ事ガ實際ニ行ヒ得ル
ヤト云フ位ノコトニ就キマシテハ、皆サンノ御判斷ニ依ッテ餘
リ疑ノ無イコトデアラウト思ヒマス、ンコデアリマスカラシテ、
政府ニ於テハ此事ニ就テハ、何等ノ關係ヲ持ッテ居リマセヌ、
唯ダ此農會ノ副會長ナル人ガ私ニ面會ヲ求メマシテ、吾こ
ハ斯ウ云フ決議ヲシタ故ニ、承知シテ居シテ吳レト云フダケ
ノ事デアリマス、ソレハ新聞デ永知致シマシタヨリ、數日後ニ
聽イタ位ノコトデアリマス、又此事ニ就テハ如何ナル事ヲシ
テ居ルカト云フコトモ、詳シク存ジナイ位ノコトデアリマス、ソ
コデ政府ニ於キマシテハ、之ヲ農會ノ有志ガシタ故ニ、之ヲ
止メナケレバナラヌト云フコトニモ考ヘテ居リマセヌ、ソレカラ
ソコデアリマスル故ニ、第一ノ米ノ枚濟ヲスルカ、シナイカト云フ
第一ノ事ニ就キマシテハ、米ニ於テ今日救濟ヲスルトカ、救
濟ヲシナイトカ云フコトニ就テハ、政府ハマダ何等ノ一定ノ
考ヲ持ンテ居リマセヌ、元ト政府ガ-今日ノ現政府ガ食糧
ニ對シ殊ニ米ニ對シマシテ、是マデ爲シタ事ハ此一兩年ノ
米ガ五十圓、六十圓ト云フ如キ非常ナル生活ヲ脅ス如キ高
クナッテ居ル、而シテ之ヲ廉クスル途ニ就テ色〓論議ガアリマ
シタガ、今ノ政府ニ於キマシテハ、米ノ値ヲ廉クスル目的ニ
於テ、ドウ斯ウト云フコトハセナカッタ唯ダ米ガ不足シテ、非常
ニ高イ、サウシテアル故ニドウカシテ、米ノ充実只ヲ固リタイ米
ノ高イ廉イト云フコトハ第二ニシテ若シ米ガ無クシテ食糧
ガ不足スルコトガアレバ一大事デアル、故ニ外國ヨリ如何ナ
ル高イ米デモ買ッテ、サウシテ內ノ充實ヲ圖ラナケレバナラヌ
故ニ、斯ノ如キ事ヲスルノデアルト云フコトハ初メ大正七年
ニ於テ內閣ガ出來マシタ時ニ、劈頭ニ執リマシタル方針デア
リマス、而シテ今日ニ至ル迄デ尙ホ其方針ヲ持ッテ居ルデアリ
マス、随ヒマシテ今日米ガ或ハ廉クナッテ農家ガ困ル故ニ-
斯ノ如ク廉イ故ニ、此米ノ値ヲ高クシナケレバナラヌ、維持シ
ナケレバナラヌ、斯ウ云フ事カラ今ノ御議論ガ起シタヤウデア
リマスガ、政府ニ於キマシテ、此米ガ廉イ故ニ、ドウカ米ガ廉
イノヲ防イデ高クシナケレバナラヌト云フコトニ就キマシテハ、
矢張此高イ時ト同時ニ、其方ハ今日ニ於テ之ヲスルト云フ
ト云フコトハ、決シテ居ラナイ事デアリマス、唯ダ米ガ廉イ、米
ガ廉イノハ何デアルカト云ヘバ、昨年米ガ曲工作デアッテ六千
二百五十万石ト云フ高ニ上リ一昨年ニ於テモ尙ホ御承知
ノ六千万石有餘ノモノガ出來テ今日ハ剩餘ガアル、剩餘ガ
アルト云ヘバ、又明年明後年ニ至ッテ如何ナル凶作ガ起ッテ、
高クナルト云フヤウナ事ガ起ルカモ知レヌ、何トカ剰餘ノアル
時ニ於テソレヲ蓄ヘテ置イテ、不足ノアル時ニ於テ、ソレヲ供
給スルヤウナ途ヲ何トカ圖リタイモノデアルト云フコトハ常ニ
考へ、又其方ノ宜シキ方法ヲ見出サンコトニ努メテ居ルノデ
アリマス、隨ヒマシテ其米ノ剩ルモノヲ買フト云フ結果ニシ
テ、米ガ騰ルト云フコトナラバ、是ハ或ル程度迄ハ洵ニ結構
ナ事デアリマスガ米ガ廉イ爲メニドウカシテ、其價ヲ高クシテ
ドウシヤウト云フコトヽハ、大變ナンコニ違ガ起ルノデアリマ
ス、(「政友會ノ代議士ハサウ言シテ居ルヂヤナイカ」「ソレハ嘘
ダ」ト呼ヒ其他發言スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=37
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038・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜ニ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=38
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039・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君)(續) 政府ハサウ云フ考
ヲ有ッテ居リマセヌノデアリマス、(「大臣ハ嘘ヲ吐クモノヂヤ
ナイ」「ドウデモ宜シイハッキリ言ッテ下サイ」「議長ドウスレ」ト
呼ヒ其他發言スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=39
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040・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 中野君、靜ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=40
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041・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君)(續) 是ガイカヌト云フナ
ラバ、後ニ於テイカナイ理由ヲ十分ニ御述ナサイ、十分ニ御
答致シマス、併ナガラ說明ノ間ニ於テハ、能ク御聽キ下サル
ガ當然デアリマス-ソレカラ第二ニ今迄ハ放任主義デアッ
タガ、是カラ後ニハ放任主義ヲ棄テヽ、何カ之ニ政府デ干涉
スルカドウカト云フ如キ御問デアリマス、之ニ就テハ今申ス
通リノ事デアリマスル故ニ、第二ノ放任主義ヲ棄テルカ棄テ
ナイカト云フヤウナ事ニ就テモ、自ラ解ケル問題デアリマス、
ソレカラ第三ニハ三十五圓ノ價ハ適當ト思フヤ否ヤ、是〆、
銘々ニ依ッテ三十五圓ガ適當ト思フカ、或ハ政府ハドウカト
申シマスレバ、政府ハ今中ス如ク、價格ヲ協定シテドウシヤ
ウカト云フコトデハナイノデアリマス、此三十五圓ガ適當デ
アルヤ適當デナイカト云フコトヲ、此處デ御答中ス必要ハ無
イノデアリマス、唯ダ此價ナルモノハ、餘リ政府ガ斯ウ云フ事
ニ干涉致シマスト云フト、ソレガ爲メニ色ミナ弊ガ起シテ參リ
マス、只〓質問ノ間ニ就テモ、亞米利加ノ大藏大臣ガ云々
ト云フ御話デアリマシタガ、此事ニ就キマシテ價ヲ餘リサウ
云フ事ヲシマスト云フト、ソレガ爲メニ害ガ起キマスガ、故ニ、
今中ス通リ申シタ譯デアリマス、第四不賣同盟(「サッバリ判
ラヌ」「生絲ハドウスル」「農民ヲ救濟スルカシナイカ」ト呼ヒ
其他發言スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=41
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042・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 中野君、發言ヲ禁止シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=42
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043・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君)(續) 不賣同盟ガ適當デ
アルカドウカ、或ハソレヲ若シ適當トスルナラバ第五ニ消費
者ニ就テハ、一體如何ナル事ヲ考へルカト云フヤウナコトハ、
是ハ根本ノ御質問ガ、私ノ答ト違ノテ居ルノデアリマスカラ、
斯ウ云フ問題ガ出テ參リマシタケレドモ、元ト政府ニ於テ三
十五圓ガ適當トカ不適當トカ、或ハ價ヲ維持スルトカセナイ
トカ云フヤウナコトハ、今日シテ居ラヌノデアリマス、故ニ自ラ
第四モ第五モ問題ハシレデ無クナッテシマウ、斯ウ云フコトニ
ナル、ソレカラ蠶絲ニ就テ何カエライ誤ンテ居ル如キ御話ガ
アッタ、是モ御質問ノ根本ガ間違ッテ居ル、一昨日此演壇ニ
於テ、私ハ蠶絲ノ事ニ就テノ大體ノ成行ヲ御話ヲシテ居リ
マス、其第一トシテ蠶絲業者ハ國家ニ救濟ヲ求メタ、救濟
ヲ求メタガ、是ハ國家ガ救濟ヲスルト云フコトニナレバ、損得
ト云フモノヲ國家ガ持タナケレバナラヌ蠶絲ヲ買ウテ、其買
ウタ物ガ廉クナッタ時ニハ、ドウスルカト云ヘバ國家ガヤルモ
ノナラバ、國家ガ此損ヲ持タナケレハナラヌ、損ハ持タナケレ
バナラヌト云フコトニナリマスト、唯ダ政府ガ自身ニ責任支
出ヲシナケレバナラヌ、容易ナ事デハナイ、是ハ此議會ノ立
法府ヲ尊重シテ、其立法府ノ協賛ヲ得ナケレバ、容易ニ國
庫ノ金ト云フモノハ動カスコトハ出來ナイモノデアル、然ルノ
ニ之ヲヤルト云フコトニナルト、國庫ノ負擔トナルベキ契約
ヲ結ハナケレバナラヌコトニナル、ソレハ重大ナ事デアルカラ
出來ナイ、ンコデ政府ノ權限トシテ爲シ得ルコトハ、此所デ
政府ニ於テハ運轉スベキ預金ノ金ガアル故ニ、此物ニ就テ、
低利資金デ以テ融通ヲシマセウ、併シ低利資金ヲ融通シテ
損ヲシタ時ニハドウスルカト云フト、損ナルモノハ國庫ガ持ツ
ニ非ズシテ、生絲貿易商、製絲家、養蠶家ノ、重立ツ救濟ヲ
求メタ人ノ力ニ依シテ、負擔シナケレバナラヌト云フ程度ヨリ
今日ハ出來ヌノデアリマス、他日議會デモ始マリマシテ、而
シテ諸君ノ協賛ヲ得ルヤウナ事ガアレバ免モ角、今日ハソレ
ハ出來マセヌ、ソレ故ニ其程度ニ於テ會社ヲ立テヽヤルト云
フナラバ、五千万圓ノ金ヲ用立テマセウ、而シテ其物ハ政府
ニ於テハ、年五朱ノ金デアリマセウ、斯ウ云フコトヲ約束ヲ
致シマシタ、サウシテ其會社ハ千六百万圓ノ資本ヲ以テ四
分ノ一ノ拂込ヲシタ、始メテ昨年十一月ニ設立サレタノデ
アリマス、而シテ其會社ハ政府トノ約束ハ今中ス約束デア
リマシテ、金ヲ貸スト云フノハ、興業銀行若クハ勸業銀行ノ
手ヲ經テ貸シマセウト云フコトデ、政府ガ直接ニ其會社ニ
金ヲ貸スト云フコトハ、御承知ノ通リニ出來ナイノデアリマ
ヌ、必ズ其間ニ於テ、中央銀行ガ這入リ、特殊ノ銀行ガ這
入ルト云フコトハ、是マデ總テノ貸借ニ於テ行ハレテ居ルノ
デアリマス、然ルニ其仲ニ立ツ興業銀行、勸業銀行、此兩銀
行ニ於テハ自身ガ此責任ヲ持ツ、持ッテ居ル以上ハ、自身ハ
無手數料デ遣ルコトハ出來ナイ、自身モソレー〓手數ヲ取
ル、危險モ生ンデ來ル、若シ之ヲ貸シテ置イテ、其生絲ニ於
テ損ヲシタ時ハ、何人ガ損ヲスルカト云ヘバ、其帝蠶會社ガ
第一ニ損ヲスル、併シソレガ尙ホ損ヲ償ヒ切ラズニ、餘ッタラ
ドウスルカト云ヘバ、今度ハ第二ニハ貸シテ興業銀行ナリ、
勸行銀行ナルモノガ損ヲ負擔シナケレバナラヌ、ソコデアリマ
スル故ニ、之ヲ五朱デ政府ハ貸シマス、其貸シマスノハ勸業
銀行、興業銀行ノ債券ヲ以テ、政府ハ貸スノデアリマス、ソ
レニハ五朱取ル、所デ其債劵ヲ發シテ五朱ニ買ッタ其金ヲ、
今度興業銀行ナリ勸業銀行ナリガ、帝蠶會社ニ又貸スノ
デアル、ソコデ其間ニ於テ六厘ノ手數ガ要ル、六厘ノ手數ガ
要ルノデ、五朱六厘ト云フモノデ、實際借入レルト云フコト
ニ相成ッテ居ルノデアリマス、ンコデ又之ヲ三割引デ七掛デ
アル、七掛デアルト云フコトニナッテ來テ、此重役ガ保證ヲス
ル、斯ノ如キ事ヲ國家ガ何故ニサセルカト云フコトデアリマ
スガ、是以テ國家ガ何ヲサセルノデモ何デモナイ、唯ダ帝蠶ト
云フ一ツノ此生絲會社ト、サウシテ興業銀行トノ間ノ約束
ガアリマシテ、其興業銀行ノ方ニ於テ、ドウゾ七掛デ同ジモ
ノハ-千圓ノモノハ七百圓デ貸シマセウ、サモナケレバ興
業銀行ガ若シ損ヲスルコトガアルト、頗ル株主ニ對シテ迷惑
デアル、ダカラシテ千圓ノモノハ七百圓デ貸シマセウ、併シ帝蠶
ニ於テ七掛デ以テヤルト云フト、甚ダ此間ノ差金ヲ拂フノニ
困ルカラシテ、ドウゾ八掛ニシテ吳レ、跡ノ一ト云フモノニ就
テハ、金デナシニ役人ガ保證スルカラ、ソレヲ信ジテドウゾ貸
シテ吳レ、斯ウ云フコトニナッテ、唯ダ帝蠶ト興業銀行トノ間
ニ起ッタ約束デアリマス、政府ガサシタ事デモナケレバ何デモ
ナイ(「政府ハ與リ知ラヌト言フノカ」ト呼フ者アリ)斯ウ云フ
コトデ斯ウ相成ッタノデアリマス、ソレカラソレニ就テ第一、第
二、第三第四、第五、第六ト云フコトノ問題デアリマスガ、元
ハ今申ス如ク政府ハ斯クシヤウトシテ命令シタ譯デアリマセ
ズ、如何ニモ融通ガ利カズニ困ルカラシテ、蠶絲業ヲ起スカ
ラ、政府ハ是ダケノ保證ヲシテ吳レト云フ約束ニ於テヤッタ
ノデアル、之ヲ損ヲシテ以テ、政府ガ之ヲ救濟シテ損ヲ負擔
スルト云フ約束デハナイノデアル、又サウ云フコトハ、容易ニ
諸君ノ御協賛ヲ得ズシテ、爲スベカラザル事ヂヤト思フノデ
アリマス、ソレデアル故ニ今申ス通リノ有樣デアル、若シ損ヲ
シテ見タ所ガ、今日ノ所デハ政府ハ何等ノ損ヲ負擔シナケ
レバナラヌト云フコトハ無イノデアル、ンコデ又第二ニ於テハ
二十万梱、マダ此操業中止ヲシテ生ジテ來ルノガ-横濱ニ
七万梱アル、尙ホ地方カラノ十五万梱ト合セテ二十何万ト
云フモノガアルカラシテ、是ハ如何ニスルカト云フ御質問デ
アリマスガ、是ハ今ノ通リ政府ガ何モ直接ニ自分ガ責任ヲ
以テ、此絲ヲドウスル斯ウスルト云フコトヲシテ居ルノデハナ
イノデ、唯ダ其道ニ玄人ナル生絲貿易商、製絲家總テガ
寄ッテ、吾こハ之ヲ斯クし〓スル故ニ、政府ハ其融通ヲシ
テ吳レ、而シテ操業短縮ト云フヤウナ事ガアッテ、之ヲ破ルヤ
ウナコトガアルト、甚ダ困ル故ニ、政府ニ於テモ十分ナル其
方ノ監督ヲシテ貰ヒタイ、約束ガアルカラ其約束ヲ履行スル
ニ於テハ、行政官ノ力ヲ藉ルコトガ多々アル故ニ、ドウゾソレヲ
貸シテ吳レト云フコトニ於テ承諾シテ、ソレ〓〓此約束ヲ厲
行ノ出來ルヤウニ盡力シテ居ル譯デアリマス、隨ヒマシテ二
十万梱ガ如何ニナルカ、ドウナルカト云フコトニ就テモ、今申
ス通リニ此國家ガソレニ就テドウスルト云フコトハ、今日考
ヘテ居リマセヌ、ソレカラ本年度ノ豫算ニ對シ如何ニスルカ、
是ハ追〓春ニナッテ春蠶ガ始ッテ參リマセウガ、政府ハ唯〓ノ
所デアリマスト、大正九年度ニ於ケル春夏秋ノ繭ニ就テ廉
クッテ甚ダ困ル故ニ、其製絲ヲ或ル程度迄維持シタイト云フ
コトカラシテ起ッタコトデアリマシテ、是ハ大正九年度限リノ
事ニ今日ハナッテ居リマス、十年度ノ絲ニ就テ如何ニスルカ
ト云フコトニ就テハ、何等ノ爰ニ斯クスルト云フコトヲ持ッテ
居ル譯デハアリマセヌ、支那ニ於テドウモ色ニ爲替ガ變動ガ
アッテ、六十片ガ四十片ニナリ、ソレデ色〓ニシテ、隨ッテ支那
ノ絲ガ亞米利加ニ大變盛ニナッテ來ル、是ハ如何ニスルカト
云フコトデアル、此支那ノ絲ノ品質ガ良イ、又段々發達シツ
ツアル、實ニ日本ノ絲ニ大シタ强敵デアル、是ハ中ニ看過ス
ベカラザル事デアルト云フコトハ、久シイ間製絲家ノ心配ス
ル所デ、又始終論議ニ上。テ居ル事デアリマシテ、度〓支那
ノ製絲ノ樣子、色ミナモノヲ調べニ行キ、又其間ニハ態、此
杭州或ハ又蘇州アタリニ就キマシテモ、コチラカラ人ヲ出シテ
調ベツヽアルト云フ位マデ、追〓心配シテ參ッテ居ル、決シテ
横濱ノ商人ヤ製絲家ガ支那ノ事ニ暗クッテ、ドウ斯ウト云フコ
トハ私ハ信ジマセヌ、中〓心配シテ度〓調ニ行っテ居ルノデア
リマス、又今日ノ此絲ニ就キマシテモ、日本ガ生產費ヲ償フ
爲メニ、千五百圓ナラ千五百圓ト云フモノヲ維持シタイ、此
所デ維持スレバ支那ノ絲ハドウナルカト云フ位ノ事ハ、當局
者ニ就テ十分ニ考ヘテ居ルコトヽ信ジマス、私ノ調ベル所ニ
依リマスト、此日本ノ千五百圓デ以テ維持シテ居ル、維持シ
テ居ッテ支那ガ絲ガ大變賣レルカト云フト、支那ニ於テモ、
廣東ニ於テ今日六七千梱、ソレカラ上海ニ於テモ其前後
アッテ、何時モ今時分ハ三千カ四千位ノ停滯デアルモノガ、
今日ハ七八千ノ停滯ヲシテ居ッテ、彼レニ於テモ頗ル困ッテ
居ル、又紐育ニ於テ、向フノ物ノ凡ソ千百圓、二百圓ノ價ニ
在ルガ、ソレデモ捗々シク支那ノ絲ガ賣レテ居ラズシテ、矢張
日本ト同ジヤウニ絲商ハ困難ヲシテ居ル、殊ニ是マデノ所デ
ハ、支那ノ絲ト日本ノ絲トハ使フ所ノ場所ニ依ッテ、違フテ居
ル故ニ、日本ガ今日斯ウ云フコトデアッテモ、ソレガ爲メニ支
那ノ絲ガ大變賣レテ、日本ノ絲ガ賣レ殘サレテ來ルト云フ
ヤウナコトハ、今日ノ所デハ無イヤウデアル、之ニ就テハ三井
物產ノ如ク廣クヤッテ居ル所デ、色と調ベタ者ノ報告ニ依リ
マシテモ、サウ云フヤウナ事デアリマス、前段之ヲヤッタ爲メ
ニ、支那ガ機先ヲ制シテ、大變ニ日本絲ノ販路ヲ取ッテシマ
フト云フコトハ無イ、今日此價格ヲ定メテ維持スルト云フ
上ニハ、サウ云フ事ハ無イヤウデアリマス、多少ノ事ハアルカ
知レマセヌガ、先ヅ大體ニ於テ無イヤウデアリマス、要スルノニ
米ト申シ、又絲ト申シマシテ、政府ガ之ヲ救濟スル-救濟
ト云ウテ何カ政府ガ救濟スルト云ヘバ、政府ガ國庫ノ金ヲ
摑ミ出シテ、サウシテ損得ヲ持ツ如ク御考ニナルヤウニ、私ニハ
響キマスケレドモ、是マデ砂糖ト云ヒ、綿絲ト云ヒ、其他ノ物
ガ幾ラカアリマシタガ、皆ナ金融ガ梗塞シテ融通ガ付カヌ故
ニ、成ベク融通ヲシテ吳レト云フノニ向ッテ、是マデ色〓救濟
致シマシタノデアリマスガ、今日マデノ所ニ於テ、政府ガ自ラ
自身ノ懷ロヲ切ッテ、損得ヲ自ラ持ッテ之ヲ救濟シタト云フ
ヤウナコトハ無イ、之ヲ御質問ノ方ハ不徹底ナリト斯ウ仰シ
ヤル、不徹底デアルカラ徹底シテ、大ニ米ノ價格ヲ維持シロ、
或ハ絲價ヲ維持シロト云フコトデ、國庫ノ金ヲ掴ミ出シテサ
ウシテヤルト云フコトニナリマスレバ、ソレハ隨分徹底ノ事モ
起ルデアリマセウ、アリマセウガ、斯ノ如キ事ヲスルハ是ハ能
ク能ク必要ヲ見出シテ、而シテ其上デ諸君ニ御諮リヲ致シ、
御協賛ヲ得テ然ル後ノ事デアリマス、今日ハ唯ダ融通ガ付
カヌ故ニ融通ヲ付ケテヤル、丁度先刻御話ノ如ク、金融ノコ
トナラ銀行ニ行ケト、斯ウ亞米利加ノ大藏大臣ガ申シタト
云フコトデアリマスガ、卽チソレナノデス、ソレデアルガ-ソ
レデ濟ムコトナラバ宜イガ、今ノ融通ハ我等ノ力デハ付カヌ
故ニ、ドウカ政府ガ之ヲ關係銀行當局者ニ話シテ付クヤウ
ニシテ吳レ、又銀行デ融通ガ付カヌ故ニ、政府ノ爲シ得ル融
通預金モアルダラウ、ソレヲ融通シテ吳レト言フ、故ニ此物
ニ就テハ、損ヲシナイ限リニ於テヤルト云フコトニ相成ッタノ
デアリマス、隨ヒマシテ、此救濟ナラ救濟ト云フ目的ヲ達ス
ル上ニ就テハ、遺憾ソ事ハアリマシタ、アリマシタガ、今申ス
通リ損得ヲ持タナイノデアリマス、ソレデ確實ナル道ニ於テ
ヤルカラ、ソコデ目的ヲ達スル上ニ就テハ遺憾ノ事ガ往々起
ル、是ハ已ムヲ得ナイ事ト私ハ思ヒマス、併シ此後ニ於テ尙
ホ政府ガ國家ノ爲メニ斯クシナケレバナラヌ、斯ウ云フモノ
ニ就テハ、政府ハ損ヲシテモスルノガ當然デアルト云フヤウナ
コトガ起キマスレバ、ンレニ依ッテ又諸君ノ御協賛ヲ仰クコト
ニ相成ル次第デアリマスガ、今日ハサウナッテ居リマセス(拍
手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=43
-
044・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 橋本喜造君ノ質疑中大藏大臣ニ
關スル部分ハ、唯〓出席ニナッテ居リマスカラ、後ノ機會ニ
於テ答辯サレマセウ、安藤正純君
〔橋本喜造君「次官デモ宜シイ」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=44
-
045・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 次官ニ於テハ答辯サレヌサウデス
〔橋本喜造君發言ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=45
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046・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 一寸橋本君ハ、今ノ農商務大臣
ノ答辯ニ就テミスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=46
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047・橋本喜造
○橋本喜造君 サウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=47
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048・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) ンレデハ安藤君暫ク···
〔橋本喜造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=48
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049・橋本喜造
○橋本喜造君 唯〓農商務大臣カラ縷々御話ガゴザイマ
シタガ、殆ド私ニハ要領ヲ捉フルコトガ出來ナカッタノデアリ
マス、之ヲ甚ダ遺憾ト致シマス、併シナガラ、私ハ豫算委員ニ
ナッテ居リマスカラ、豫算委員會ニ於キマシテ、一問一答デ
詳シク御尋ヲスル積リデアリマス、經濟問題ニ對シマシテ爭
フコトハ、本員甚タ不快ト思ヒマス、之ヲ以テ質問ノ終リト
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=49
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050・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 安藤君
〔安藤正純君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=50
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051・安藤正純
○安藤正純君 本員ハ政府ノ施政ノ根本方針ニ關スル
事ニ就キマシテ、一二ノ質問ヲ試ミタイト思ヒマス、併ナカラ
旣ニ質問ガ重ナリマシテ色〓ノ質問ガ出マシタカラ、私ハ成
ベク重複ヲ避ケマシテ唯今マデニ餘リ他ノ諸君ノ質問ニ出
ナイ事ニ就テ疑ヲ質シタイト思フノデアリマス、私ノ質問致
シタイト思フ第一ノ事項ハ、思想問題ニ關スル事デゴザイマ
ス、唯〓總理大臣ハ豫算會議ニ御出席デ、此方ニ御出席
ガアリマセヌガ、內務太臣、文部大臣ガ居ラレマスカラ、御聽
ヲ願ッテ兩大臣ノ御答辯ヲ願ヒ、且ツ總理大臣カラハ後ト
カラ御答辯ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、原總理大臣ハ常
ニ國民思想ノ動搖ニ就キマシテ、屢〓之ヲ憂ヘラレル所ノ宣
言或ハ發表ガゴザイマス、殊ニ最近本年一月ノ各種新聞紙
ヲ通シマシテ發表セラレマシタル總理大臣ノ主張ニ明治ノ
國民ハ、マダ新文明ノ完成ガ出來ナカッタ、大正ノ國民コン新
日本ノ建設ニ當ルベキ所ノ役割ニ廻ッテ居ルノデアル、而シ
テ明治時代ニ於テハ、彼ノ長ヲ採ッテ我ガ短ヲ補フト言ウタ
モノデアルガ、今日大正ノ時代ニ於テハ、彼ノ長ト我ガ長ト
ヲ溶解融合シテ、玆ニ新文明ノ建設ヲシナケレバナラヌ、斯
ウ云フコトヲ新聞デ御發表ニナッテ居ラレマス、而シテ又舊臘
-舊臘デゴザイマセヌ、去ル二十一日政友會大會ノ時ノ御
演說ニ於キマシテモ、憲法實施後既ニ三十年、世界革新ノ
機運ニ際會シタカラシテ、今コソ舊套ヲ脫スベキ所ノ時機デ
アルト、斯ク總理大臣ハ政友會總裁トシテ演說ヲサレテ居
ラレマス、是ハ抑〓是ガ施政ノ根本方針デゴザイマシテ、本員
モ此ノ點ニ於テハ同ジ感ヲ持ッ者デゴザイマスガ、唯ダ憾ムラ
クハ斯ク御考ニナッテ居ル所口ノ總理大臣、竝ニ現内閣ノ
方針遣方ガ本員及多クノ多數ノ國民ガ考ヘテ居リマスル
所ノ方法遣方トハ、其ノ間ニ尠カラザル懸隔相違ガアルノ
デゴザイマス、私ハ實例ヲ擧ゲテ此點ニ就キマシテ、一二ノ質
問ヲ試ミタイト思フノデアル、抑〓國家及社會卜云フモノハ、
種々雜多ナ思想ヲ包容シテコソ、初メテ玆ニ進展ノ過程ガ
ゴザイマシテ、不斷ノ進步ガアルノデアリマス、多クノ思想ガ
アルカラコソ、玆ニ內容ノ豐富卜云フモノニナルノデアル、又
思想ト云フモノハ、決シテ此社會ト沒交涉デ存在スルモノ
デハゴザイマセヌ、卽チ思想ト社會トハ、茲ニ不可分的ノ關
係ヲ有ッテ居ルモノデアル、卽チ思想ハ社會ノ反映デゴザイ
マス、デアリマスカラ、殊ニ政治ニ當ル者ハ此ノ理窟ヲ知ッテ、
如何ナル思想ニモ眞理ノ一面ガアルト云フコトヲ承認セラ
レテ、而シテ是ニ依ッテ、現代ノ社會ニ如何ナル缺陷ガアルカ
ト云フコトヲ知ッテ、而シテ其點ニ向ッテ改善ヲ加ヘルノガ、
政治家タル者ノ爲スベキ事デアラウト思フノデアリマス、若シ
思想ニ國境ガアレバ自ラ別デアリマスガ、國境ト云フモノ
ガ無イ限リハ、唯ダ之ヲ頭カラ抑壓スルト云フコトハ、其事ガ
惡イカト云ヒマスヨリハ、寧口是ハ出來得ベカラザル不自然
ノ事デナイカト思フノデアリマス、而シテ思想ニ國境ガ無イ
ト致シマスト、玆ニ外來ノ思想ト云フモノガ入ッテ來ルノデアル
所ガ政府ハ此外來ノ思想ト云フモノヲ、ドウモ危險視スルノ
傾向ガアルノデアリマス、併シ外來思想ト云フモノハ、必シモ
有害有毒ナモノデハナカラウト思フ、又我ガ日本ノ民族ハ能
ク此外來思想ヲ消化シ、同化シテ行ク所ノ民族デゴザイマ
ス、今日迄入ッテ參リマシタ漢學ノ文明-是ハ支那ノ文明
デアル、佛〓ノ文明-是ハ印度ノ文明デアル、而シテ此漢
學佛〓ノ二ツガ日本ノ國民精神ト溶解融合シテ、離ルベカ
ラザル關係ヲ有ッタト云フコトハ、卽チ外來思想ガ必シモ有
害有毒ノモノデハナイト云フコトヲ證明スルコトガ出來ルト
思フノデゴザイマス、然ルニ政府ニ於キマシテハ、此外來思想
ヲ壓迫センガ爲メニ總テ之ヲ危險視致シテ居リマスコトハ
現ニ或ル一派ノ會合ノ如キ、演說ノ如キ、集會ノ如キ、之ヲ
壓抑スル所ノ方針ヲ執ッテ居ルノデアリマス、卽チ警察ハ斯
ウ云フ一派ノ會合、集會、演說ニ向ヒマシテ、其演說集會ノ
中止解散ト云フコトヲ豫定ノ筋書トシテ、之ニ臨監シテ居
ルノデアリマス、デアリマスルカラ未ダ一言モ發セザルニ既ニ
中止解散ト云フコトヲ屢、ヤッテ居ルノデアル、勿論警察ニ中
止解散ノ權利ハゴザイマスガ、治安警察法ハ安寧秩序ヲ紊
スト云フコトニ於テ、限定ヲサレテ居リマス、未ダ一言モ發セ
ザルニ、其人ノ言論ガ治安ヲ紊亂スルカシナイカト云フコト
ハ、何ヲ以テ之ヲ判斷スルノデゴザイマセウカ、恐ラク今日ノ
政府ノ及警察ノ遣方ト云フモノハ、言論ニ對シテ判斷ヲシテ
居ルノデハナクシテ、人格ニ對シテ取締ヲシテ居ルノデハナカ
ラウカト思フ、若シ人格ニ就テ取締ヲスルナラバ、サウ云フ人
人ノ會合、演說ヲ催ス人々ヨリハ、之ヲ取締リツヽアル所ノ
警察官ガ、自ラ取締ラレザルヲ得ナイト私ハ考ヘルノデアル、
集會ノ事ハ長クナリマスカラ、此位デ御察シヲ願ッテ、御答
辯ヲ願フトシテ、進ンデ新聞紙ノ事ニ就テ一言致シタイ、今
日ノ新聞ノ取締ガデス、安寧秩序ヲ紊スモノトシテ取締ラレ
ルコトガ非常ニ一年々々嚴酷ニナッテ來タノデアル、所ガ此
安寧秩序ト申シマスモノガ、如何チルモノカ列擧シテゴザイ
マセヌノデス、デアリマスカラ行政官ノ手心ニ依ッテ、安寧秩
序ヲ紊スト云フコトガ定メラレル譯デアル、卽チ行政官ニ思
想ノ了解ガ有レバ宜シイ、了解ガ無イトスルト、是ハ甚ダ危
險ナモノデゴザイマス、玆ニ私ハ統計ヲ以テ之ヲ說明致シタ
イト思ヒマス、卽チ昨年大正九年ノ一月ノ一日カラ十一月
ノ三十日マデ、十二月ハマダ統計ガ出來テ居リマセヌ、卽チ
此十一箇月中ニ於キマシテ、新聞紙ノ行政處分ヲ受ケタモ
ノハ三百十五件ニ及ビマス、三百十五件ノ中デ、安寧秩序
ヲ紊ス條項ニ該當スルモノトシテ、處分ヲ受ケタモノガ三百
二件アルノデアル、其他ノモノハ風俗壞亂ガ十二件、發行
禁止ガ一件デゴザイマシテ、三百十五件ノ行政處分ノ中三
百二件ノ最大多數ガ安寧秩序ヲ紊ルモノトシテ、行政處
分ヲ受ケテ居ルノデアリマス、更ニ行政處分ハ受ケマセヌ
ガ、行政官廳ヨリ注意ヲ受ケマシタコトガ、昨年ノ十一月中
ニ於テ七百八件ニ及フノデアル、七百八件ノ中、安寧秩序
ノ條項ニ該當スルモノトシテ、注意ヲ受ケタノガ四百十件ニ
上ッテ居リマス、是亦多數ガ安寧秩序ニ依ッテ取締ラレテ居
ルト云フコトガ判ルノデアリマス、而シテ之ヲ唯今讀上ゲマ
シタ大正九年ノ統計ヲ、一昨年卽チ大正八年ノ十二箇月
ニ比較ヲ致シマスルト、一新間紙デ行政處分ヲ受ケタモノガ
百十二件殖エテ居リマス、又行政處分デハナイケレドモ、行
政官廳ノ注意ヲ受ケタモノガ九十九件殖エテ居リマス、司
法處分ヲ受ケタモノニ至ッテハ、三十四件殖エテ居ルト云フ
次第デゴザイマス、序ニ出版物ノ事ヲ一言致シテ置キタイガ
出版物ハマダ昨年ノ統計ガアリマセヌ、大正八年中ニ於キ
マシテ、行政處分ニ依シテ出版物ガ差押ヘラレタモノガ六
百四十九件、其中安寧秩序ヲ紊スモノトシテヤラレタモ
ノガ九十八件デゴザイマス、行政官應ヨリ注意セラレタル所
ノ雜誌ノ記事ガ百二十三件ニ及ブノデアル、之ヲ前年
卽チ大正七年ニ比較ヲシテ見マスト、出版物デ行政
處分ヲ受ケタモノガ百四十八件殖エテ居ル、司法處
分ヲ受ケタモメガ十八件殖エテ居ルノデゴザイマス、
是ハ唯ダ統計ノ一端ヲ述ベタノデゴザイマスガ、一年
每ニ言論ノ自由ガ尊重サレテ、取締數ガ少ナクナルト
云フナラバ自然ノ順序デアリマスガ、年ヲ重ネ一年每
ニ行政處分ヲ受ケル所ノ數ガ殖エテ行クト一云フコトハ、
政府ガ近來言論自由ノ原則ノ精神ニ悖リマシテ、動モスレ
バ必要以上ニ、之ヲ壓迫セントスル傾向ニ依ルデハナイカト
思フノデアル(拍手)併シ本員ハ斯ク言ヒマシテモ、言論ノ絕
對自由ヲ主張スルノデハ無論アリマセヌ、言論ノ無制限ノ
自由ト云フモノハ、非常ニ社會ノ平安ヲ害シマスカラ、ソレ
ハ憲法第二十九條デ保障サレテ居リマス所ノ法律ノ範圍
內ニ於キマシテ、此自由ヲ得タイト云フコトヲ思フ次第デゴ
ザイマス、デ私ハ之ヲ顧ミテ考ヘテ見マスルト、總理大臣ハ
新日本ノ建設ハ大正國民ノ義務デアル、役割デアルト言ハ
レテ居ル、彼ノ長ト我ガ長トヲ溶解融合シテ茲ニ大正獨特
ノ文明ヲ建設スルノガ、大正國民ノ務デアルト、屢〓囘ヲ重
ネテ言ハレテ居ルノデアル、シテ見ルト現在ノ內.閣ノ方針ト
云フモノハ、此總理大臣ノ思想的ニ考ヘラレル所ニ依ッテヽ
行ハレテ居ルモノデアラウト思フ、果シテ斯ノ如キ壓迫政策
ヲ執リマシテサウシテ、彼レノ思想ノ長所ト我ガ思想ノ長所
トヲ結付ケルトカ、融然和合セシムルトカ云フ、總理大臣ノ
御理想ヲ行フコトガ出來ルカドウカト云フコトニ、私ハ疑ヲ
持ッテ居ルノデアリマス(拍手)又斯ノ如ク致シマシテハ、決シ
テ原總理大臣ガ謂フ所ノ新日本ノ建設ト云フコトハ、私ハ
出來ナカラウカト思フ、併ナガラ總理大臣ハサウ云フコトヲ
言ッテ居ルノデアリマスカラ、此點ニ就テ吾ヒノ判ラナイ所、
疑惑ニ感ズル所ヲ判ルヤウニ、一ツ御說明ヲ願ヒタイト云フ
ノデアリマス、私ハ此機會ニ於テ容ヲ正シテ茲ニ總理大臣、
內務大臣ニ中上ゲテ置キタイ事ガアル、總理大臣ヲ中心ト
スル所ノ現內閣ハ、民衆ニ臨ミマシテ國民ノ思想ガ如何ニ
危險ニナッテ行クカト云フコトヲ、非常ニ御心配ナサル、是ハ
私モ同感デアル、國民思想ノ混亂迷倒スルコトヲ心配スル
ト云フコトハ同感デアリマス、併ナガラ退イテ大臣諸公ニ考
ヘテ戴キタイ、大臣諸公ガ、上トシテ見テ居ル所ノ邊ヲ試ニ
御覽ニナ,テ貰ヒタイト云フコトデアル、私ハ驚クベキ戰慄ス
ベキ所ノ危險思想ガ、下ヲ見テ取締ッテ居ル所ノ民衆ヨリハ
彼等ガ上トシテ眺メテ居ル所ノ邊ニ、此危險思想ガ漂ウテ
居ヤシナイカト云フコトデアル(拍手)吾〓ガ尊敬ノ中心トス
ル所ノ邊ニ、最近斯ル危險思想ガ事實移リツヽ行クノデハ
ナイカト云フコトヲ心配スルノデアリマス、若シ斯ノ如キ事ガ
事實具體化シテ參リマシタナラバ、我思想ノ根源、我道德ノ
淵源ト云フモノハ、果シテ如何ニ保ツコトガ出來ルノデアリ
マセウカ、解放的ニ-囚レナイ所ノ民衆ノ思想ノ宣傳ト云
フモノハ、中ニハ危險ナモノモアリマセウ、アルガ取締ニハ便
利デアル、表ニ現レナイ、極ク秘密ニ進ム所ノ此陰欝ナル官
僚的ノ思想ガ、何所迄喰入ッテ行クカト云フコトニ對シテハ
私ハ民論ヲ壓迫シテ此取締ヲ嚴重ニスルヨリモ、モット前ニ
之ヲヤラナケレバナラヌト云フコトヲ深ク考ヘルノデアル(拍
手起ル)是ハ決シテ私一人デアリマセヌ、六千万ノ國民至
誠ノ迸ル所デ、現在事〓貝二或ハ移ッテ來ハシナイカト云フコ
トヲ憂フル點ニ於テ、一言此事ヲ此壇上ニ於テ披瀝シテ、而
シテ總理大臣內務大臣ノ諸公ハ、無論此點ヲ御承知ニ違
ヒナイノデス、事實ヲ私ハ此處デ言フコトハ出來マセヌ、大
臣諸公ハ能ク之ヲ御承知デアルカ、唯ダ民衆サヘ壓迫シテ
取締ッテ居レバ、上ノ方ニ進ンデ行ク危險思想ニハ、御構ナ
クテモ構ハナイカ、斯ウ云フコトニ就テ、私ハ一言ヲ附加シテ
此點ニ就テノ御意見ヲ得タイト思フ次第デゴザイマス、更ニ
進ンデ首相ハ施政方針ノ演說ニ、本院ニ於キマシテ、國民
一致ノ努力ニ俟タナケレバナラスト云フコトヲ言ロッテ居ル所
ガ國民一致ノ努力ト申シマスコトハ、上下一致デハ、卽チ彼
等ガ見テ上トスル所ト、下トスル所ノ邊ニ、此思想ニ諒解ガ
ナクテハナラナイ、片方ノミニ危險思想ヲ許シ、表ノ柔カナ
危險思想ヲ許シ、而シテ表ノ荒ッポイ危險思想ノミヲ取締ッ
テ行シテ、其所ニ果シテ上下ノ意思ノ疏通ガアルカ、卽チ國
民一致ノ努力ト云フモノハ、斯ノ如クシテ出テ來ルカト云
フコトヲ私ハ疑フノデアリマス、之ニ就テ其國民一致ノ努力
ト云フコトヲヤッテ參リマスニハ、生活ノ安定ト云フコトガ必
要デアラウト思フ、此生活ノ安定ニ就キマシテ、現政府ハ如
何ナル方法ヲ講ジテ居ラレマスカ、大藏大臣ハ此問此壇上
ニ於キマシテ、國民思想ノ善導、社會政策的施設ニ關シテ
モ、ソレ〓〓相當ノ計畫ヲ定メマシタト云フコトヲ述ベラレテ
居リマスガ、願ハクハ國民思想ノ善導ト云フコトハドウ云フ
事デアルカ、社會政策的施設ト云フコトハドウ云フ事ヲ御
指シニナルノカ、之ヲ聞クコトガ出來レバ幸福デアルトスル
者デゴザイマス、ソレガ第一ノ問題、第二ニ私ハ勞働立法ニ
對スル政府ノ方針ヲ伺ッテ置キタイノデアル、大正七年カラ
八年ニ亙リマシテ、勞働問題ガ勃發シタ時ニ、政府ハ急イデ
勞働法規ノ準備ニ掛リマシタ、然ルニ昨年四月以後財界
ガ不況ニ陷リマシテ、其結果勞働問題ト云フモノガ大分下
火ニナリマシタ、サウスルト政府ハ遽然トシテ勞働問題ノ調
査ヲ殆ド中止シタヤウナ形ニナッテ居リマスル(拍手スル者ア
リ)勞働組合法及勞働爭議法ト云フモノガ、本年ノ議會
ニ提出サレルト初メハ言ハレテ居リマシタガ、果シテ御調査
ガ御進ミニナッテ本年ノ此議會ニ勞働組合法及勞働爭議
法ヲ御提出ニナルデアルカ、ナラナイノデアルカ、之ヲ一ツ承
リタイト思フノデアリマス、政府ハ此勞働組合ト一云フモノヲ
頭カラ危險視致シテ居リマス、デアリマスカラ勞働問題ガ少
シ穩ニナルト、一時デモト云フノデ先キノ方ニ斯ウ延バシテ
居ル所ノ今日狀態デアル、併ナガラソレガ一時的ノ現象デ
アリマシテ、今日ノ勞働問題ノ下火ニナッテ居ルモノハ、決シ
テ永久的ノ解決デハアリマセヌ、泥棒ヲ見テ繩ヲ撚レバ、立
派ナ繩ハ撚レナイノデアル、今日ノヤウナ勞働問題ノ下火ニ
ナッテ居ル所ノ此平時ニ際シテ、卽チ勞働法規ニ對スル立
派ナ繩ヲ撚ルコトガ、最モ必要デハナイカト考へル次第デア
リマス、最近内務省ノ當局者ノ演說ヲ伺ッテ見マスルト、勞
働組合ト云フモノガ出來テモ、ソレダケデ勞働問題ノ解決
ハ出來ナイト云フコトヲ言ハレテ居ル、勿論ンレダケデハ出
來マセヌ併シ勞働組合ト云フモノハ勞働者ノ自己ヲ擁護
スル所ノ基本的單位デゴザイマス、ソレガナケレバ政府ガ唱
ヘル勞資協調ト云ヒマシテモ、或ハ仲裁機關ノ設立ト云フ
ヤウナコトヲ言ッテモ、基本的單位タル勞働組合ガナケレバ、
是等ノ事ハ全ク無意義ニナッテシマウデアラウト考ヘルノデ
アル、更ニ一昨年ノ十一月華盛頓ニ於キマスル、第一囘國
際勞働會議ニ於キマシテ、其十一月二十五日本會議ニ於
テ、日本政府ハ斯ウ云フコトヲ言ッテ居リマス、-日本政
府委員ハ、日本政府ハ近日中ニ勞働組合法ヲ制定シ、勞
働問題ノ解決ニ資スルデアラウト云フコトヲ明言セラレテ
居リマスシテ見レバ、此國際會議ニ對シテモ、勞働組合法ト
云フモノハ、早ク拵ヘナケレバナラヌト思フノデアル、若シ斯
ク申上グルト、内閣諸公ハ是ハ產業調査會ニ付議シテアル
勞働組合ヲ如何ニ拵ヘルカ、勞働爭議法ヲ如何ニ編成ス
ルカト云フコトハ、昨年以來產業調査會ニ付議シテアルト
御答ニナルデアリマセウ、併ナガラ產業調査會ニ付議シテア
ルノハ事實デアリマスガ、其付議サレタ產業調查會ハ昨年
ノ反以來未ダ曾テ一囘モ開カナイノデアリマス、而シテ其產
業調査會ノ會長ハ原總理大臣デアル、シテ見ルト總理大臣
ハ、勞働法ノ立法ト云フモノハ、勞働問題ガ下火ニナッタカ
ラ、今日不用デアルト云フ所ノ御考デアルノカドウカ、之ニ就
テ承リタイト思フノデアリマス、更ニ此機會ニ伺ッテ置キマス
ノハ、產業調査會ニ付議サレタ所ノ農商務案ト內務省トノ
案デアリマス、之ヲ比較シテ見マスルト、內務省ノ案ガ自由
寛大ノ精神ニ富ミマシテ、之ト保護條項ガ大ニ反對シテ、
農商務省ノ案ト云フモノハ、非常ナ煩瓚ナ干涉ヲ試ミルヤ
ウナ規則ニ編立テラレテ居ルノデアル、若シ農商務ノ案ノヤ
ウニナレバ、勞働組合ノ發達デナクシテ、寧口是ハ抑壓
デアル、サウスル位ナラバ、寧ロ治安警察法第十七條
ノ撤廢ノ方ガ、宜クハナイカト考ヘル次第デアリマス、而シテ
政府ハ此內務省案卜農商務案ト、ドッチニ近ツイテ居ルカト
云フト、嚴格ナ規定ノ法ニ束縛セラルヽ、農商務省案ノ方ニ
傾イテ居ルト云フコトヲ聞イテ居ルノデアル、是ハ勞働間題
ニ對スル所ノ、餘程ノ重大問題デゴザイマスカラ、此機會ニ
當ッテ、孰レニ政府ガ依ラントスルカト云フコトヲ伺ッテ置キ
タイノデアリマス、最後ニ私ハ政府ノ〓育ニ對スル方針ヲ一
二承ッテ置キタイ、併シ此事ハ既ニ下岡君カラ學校昇格ノ
コトニ就テハ、御質問ガゴザイマシタカラ、其點ハ私ハ略シマ
シテ、唯ダ政府ノ方針ト云フコトダケヲ伺ッテ置キタイ、現内
閣ノ初メノ案ハ、六年計畫ノ高等〓育機關ノ擴張ト云フ
案デアッテ、現在是ガ實行サレツヽアルノデアル、而シテ今日
今現ニヤラントスルノハ第二計畫デアッテ、大學ノ增設デゴ
ザイマス、デ果シテドッチガ政府ノ本當ノ考デアルカト云フコト
ヲ伺ッテ置キタイ、、若シ實業學校-各種ノ實業高等學校
ト云フモノガ、俺ノ學校ハ既ニ創立以來何十年ニナッタカラ
ト云フヤウナ理窟ヲ以テ、大學昇格ノ希望ヲ達スルトスルナ
ラバ、總テノ實業高等學校ト云フモノハ、性質ハ違ヒマスガ、
學科ノ程度ハ大抵同ジデゴザイマスカラ、一ツノ學校ニ昇
格ヲ許セバ、遂ニ他ノ學校ニ昇格ヲ許サナイト云フコトハ出
來ナクナルノデアル、之ヲ段々進メテ見マスレバ、専門學校ハ
遂ニ皆ナ大學ニナッテシマッテ、何年カノ後ニハ、専門學校ノ
消滅ト云フコトニナリハシナイカト云フコトデアリマス、此點
ニ就テハ旣ニ下岡君ヨリ質問ガアリマシタカラ、唯ダ私ハ今日
ノ〓育ノ方針ハ、大學ト云フコトハデス、旣ニ先年決マシタ
五ツノ醫學專門學校及東京高等商業學校ヲ昇格セサルト
云フダケニ止ッテ、他ハンレ〓〓特殊ノ學校ニシテ置クト云フ
ノガ、政府ノ方針ナンデアルカ、ソレトモ文部大臣ガ行ハント
シツヽアル所ノ、此大學昇格運動ニ依ッテ許シツヽアル所ノ
此大學ヲ、ドシ〓〓昇格サセテ行クト云フノガ政府ノ方針デ
アルカ、此點ニ就テ一應承ッテ置キタイト思フノデゴザイマ
ス、ソレデ其他ノ事ハ略シマシテ、私ハ最後ニ高等〓育ハ必
要デアルケレドモ、今日最モ必要ナノハ、此義務〓育ノ方デ
ハナイカト思フノデアリマス、我國デハ英國ノヤウニ補習〓
育ハ義務〓育ニナッテ居リマセヌカラ、義務〓育ノ年限延
長デス、二箇年ノ年限ヲ延長シテ八箇年ニスルト云フコト
ハ、今日ノ時代ニ順應致シマシタ事トシテ、最モ必要ナ事デ
アラウト考ヘル次第デアル、政府ハ果シテ近イ中ニ義務〓
育ヲ八箇年ニスルノ御意嚮ガアルヤ、否ヤト云フコトヲ伺ヒ
タイノデアル、モウ一ツハ義務〓育費ノ國庫補助デアリマス、
是ハ今日デハ義務〓育費ト云フモノハ、町村費中町村ノ
方ニ於キマシテハ、全體ノ費用ノ四割三分三厘ト云フ多額
ヲ占メテ居リマス、先年義務〓育費ニ對シテ、一千万圓ノ國
庫補助ト云フコトガ決マリマシタ時ニハ、當時義務〓育費
ト云フモノハ全體デ四千万圓デアッタ、然ルニ今日ハ物價ガ
騰貴シタリ、或ハ〓員給ガ上ッタリ致シマシタ結果トシテ、今
日ハ一億數千万圓ニ全國ノ義務〓育費ガ上ッテ居リマス、
一億數千万圓ニ對シ、國庫補助ト云フモノガ僅二一千万
圓デハ、非常ニ少ナ過ギルノミナラズ之ガ、爲メニ地方ノ僻
村中ナドニ於キマシテハ、全村費ノ七割モ此〓育費ニ使ッテ
居ルコトガアルト云フ所ノ有樣デアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者ア
リ)而シテ餘計ニ掛ルノハマダ宜イケレドモ、ンレガ爲メニ俸
給ノ不拂ヲシテ居ル所ガアルデアリマス、現ニ私ガ知ッテ居リ
マスルダケデモ、山梨縣ノ一部、東京府下ノ或ル一部ニ於テ
モ、〓員ノ俸給ガ拂ヘナイト云フ所ノ例ヲ確ニ見タト思ッ
テ居ル次第デゴザイマス、斯ノ如クシテ措キマシテハ、市町村
ヲ荒廢シ、地方自治團體ノ機能ヲ弛メルコトニナルノデアリ
マスカラ、此點ニ於キマシテモデス、更ニ又〓育上ノ本義ト
云フ理由カラ行キマシテモ、義務〓育費ノ國庫補助額ヲ
モット殖サナケレバナラヌト思フノデアルガ、政府ハ此點ニ就
テ如何ナル意見ヲ有ッテ居ルノデアルカ、之ヲ要スルニ高等
〓育ト云フモノヽ施設モ肝腎デアリマス、併シ是ハ一部ノ
階級シカ受ケラレナイ所ノ〓育デアル、義務〓育ハ貧富貴
賤總テ行フ所ノ〓育デアリマスカラシテ、此義務〓育ニ力
ヲ注ガレルト云フコトガ最モ必要デアラウ、高等〓育ハ決シ
テ輕ンジロト云フノデハナイケレドモ、學校ニ無理强ヲサレマ
シテ、サウシテ無理ナ約束ヲシテ、自繩自縛ニ陷ッテ困ッテ居
ルト云フヤウナコトヲスルヨリモ、先ヅ眼前ノ全國ニ普及ス
ル所ノ、此國民ノ爲メニ設ケラレル所ノ義務〓育ニ對シテ、
モウ少シ愼重ナ考慮ヲ拂ハナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス(拍手起ル)要スルニ此二點-義務〓育ノ年限延長ニ
對スル政府ノ意嚮如何、及義務〓育ニ對スル國庫補助
額ノ增加、之ニ對シテ政府ノ意嚮如何、此二點ニ就テ伺ヒ
タイト思フノデアリマス、デ私ノ伺ヒタイト思フ事ハ、只今述
ベマシタヤウニ思想ニ對スル所ノ問題、〓育ニ對スル所ノ問
題、及勞働立法ニ對スル所ノ問題デアリマス、希クバ內務
大臣、文部大臣カラ此御說明ヲ承リタイ、總理大臣ハ御出
席デゴザイマセヌカラ、後カラ御答辯アランコトヲ冀フ次第
デゴザイマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=51
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052・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 床次内務大臣
〔國務大臣床次竹二郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=52
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053・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 御答ヲ致シマスガ、思想問
題ニ就テハ、大體安藤君ノ御考ト餘リ違ハナイヤウニ思ヒ
マス、ト云フコトヲ御答シテ宜シカラウト思フノデス、御說ノ
如ク決シテ思想ハ、權力ノミヲ以テ壓迫シ得ルモノトハ考へ
マセヌ、殊ニ昨今此交通ノ極メテ開ケタ世ノ中ニ於テ、外來
ノ思想ガ勝手ニ輸入致スト云フコトハ、是ハ當然ノ事デアリ
マス、固ヨリ防ギ切レルモノデモナシ、又自由ニ這入ッテ來ル
ノガ宜シイノデアリマス、要スルニ國民ノ思想ガ健全デアッテ、
如何ナル思想ガ入ッテ參ッテモ、ソレニ公正ナル批判ヲ加
ヘテ取ルベキハ取リ、捨ツベキハ捨ツルト、斯ウ云フコトデ然
ルベキモノト思フノデス、ソレ故ニ出來得ルダケ思想上ノ問
題ニ就テハ、自由ニ致シタイト云フ考ヲ持ッテ居リマス、固ヨ
リ學術的〓究的ノ說ヲ述ベル事等ニ於テハ、左樣ニ致シテ
置キマス、併ナガラ實際ノ問題ト致シマシテハ、總テノ思想
ガ如何ニ論議セラレテモ、全ク自由ニ放任致シテ居ッテ宜シ
イカト云フノニ、其點ニ就テハ左樣ニ考ヘマセヌ、此所ハ或
ハ安藤君ト意見ヲ異ニスルカモ知レマセヌガ、私ハ其時々ノ
國情、社會ノ狀態ニ依ッテ、差措クベカラズト云フモノニ就テ
ハ、相當ナル取締ヲ致スト云フコトハ當リ前ノ事ダト思ウテ
居リマス或ハ御質問ノ中ニ、或ル種類ノ人〓ノ會合ヲ初カ
ラ差止メタト云フ御話モアリマシタ、成程サウ云フコトモアフ
タヤウニ思ヒマス、初カラ或ル主義ノ其會合ヲ以テ宣傳ナ
リト認メテ、而シテ其事ガ現在ノ社會狀態ニ於テ不可ナリ
ト思フ時分ニハ、遠慮ナク差止メル積リデ居リマス、サウ云
フ所ハ事ニ依ルト安藤君ト御說ヲ異ニ致シマセウ、是ハ洵ニ
已ムヲ得ナイ事柄ト考ヘマス、細カク申スト甚ダ長クナリマ
スガ、左樣ナ次第デアリマスカラ、決シテ何等ノ區別ナク、思
想ヲ取締ルノニ濫リニ壓迫ヲ加ヘルト云フコトハ致サヌ、大
體ニ於テ極メテ自由ナル態度ヲ以テ臨ミタイ、併ナガラ或
種ノモノニ就テハ國情-社會ノ現狀ニ應ジテ已ムヲ得ナ
イ手段ヲ執ル、新聞ノ行政處分ノ件數ガ甚ダ多カッタ、ソレ
ガ爲メニ現內閣ノ執ル方針ハ、極メテ壓制的デハナイカト
云フ御話ガアリマシタガ、大體ノ考ハ今申ス通リデアリマス、
處分ノ件數ニ至リテハ、其時々ノ事情ニ依ッテ、自ラ多少ノ
相違ノアルコトデアリマシテ、件數ガ多イカラ主義ガ變ッタノ
變ラヌト云フコトハ、一〓ニ論ズル譯ニハ行キマセヌ、同ジ事
件デモ-一ノ事柄デモ、ンレガ多クノ件數トナッテ現レルコ
トガアリマスカラ、能ク中ヲ吟味致サヌト、一〓ニ申ス譯ニ
ハ行キマセヌ、ソレ故ニ現在ノ實際問題ト致シテハ、取締ル
ベキ思想ニ就テハ、殊ニ現時ノ狀態ニ於テ其必要アリト感
ズルノデ、警察取締ノ機能ヲ尙ホ少シ擴張セン爲メニ、本年
度ノ豫算ニ於テハ幾分ノ經費ヲ要求シテアリマス、是ハ何
レ豫算ノ時ニ說明ヲ申上ゲルコトニ致シマセウ、御話ノ如ク
思想ノ善導ト中スカ、若クハ生活ノ問題ト申ス事ニ就テハ、
是モ大體御同感デアリマス、卽チ國民ノ思想ヲ惡化セシム
ベキ轉化ノ動機トナルモノハ、出來得ルダケ注意ヲ致シテ豫
防スベキモノト考ヘル、卽チ換言スレバ御話ノ社會政策的
施設ニハ、注意シナケレバナラヌト思フノデアリマス、一體社
會政策的施設ト中スト中ミ複雜デアデテ單單ニ御答モ出
來マセヌガ、是ハ國、地方〓體、竝ニ公私ノ施設ノ力ニ依ラ
ナケレバナラヌモノト思フノデ、今日迄慈惠救済ニ關シタ民
間ノ團體施設ニ就テハ、ンレ〓〓指導獎勵致シテ來タコト
ハ、御承知ノ通リデアリマスガ、近來ノ狀況二加ミテ、是ハ内
務省所管ニ就テ主トシテ申上ゲルコトデスガ、卽チ御協賛
ヲ得テ新ニ社會局ヲ設ケ、又救濟事業ニ就テ調査委員ヲ
設置シテ、目下此委員會ノ諮問ニ付議シテアリマスコトハ、
既ニ新聞ニ出テ居ル通リデアリマスガ、免ニ角特別ニ取扱
フ所ノ局ヲ設ケ、時代相應ノ考慮ヲ運ラスト云フコトハ最
モ必要デアルト思フ、尤モ〓日迄ニ於テモ、或ハ住宅ノ問題
ト云ヒ、若クハ市場ノ問題ト云ヒ、若クハ物價騰貴ニ伴レ
テ、地方官吏ノ增俸ニ伴ヲテ、地方吏員ノ增俸計畫ヲ致シ
タコトハ御承知ノ通リデアリマス、又職業紹介所ノ施〓二
就テモ、注意ヲ拂シテ居ルト云フコトモ御承知デアリマス、是
等ハ若ウ要シマスルナラバ、豫算會議ノ際ニ詳シク申スコト
ニ致シマセウ、或ハ其他警察官ノ共済組合ノ制度ヲ作リ、
若クハ會テ私ガ携ハッテ居シタ鐵道ノ方面ニ於テモ、救濟組
合ノ制度ヲ完備シ、併セテ年金制度ヲ設ケ、住宅ノ完備ヲ
期シ、或ハ娛樂慰安ノ施設ヲ致ス等、少カラズ盡力シテ居
ル積リデアリマスガ、要スルニ思想ノ惡化ヲスル、其轉化ノ
動機トナル事ニ就テハ、豫メ注意致シテ、相當ノ施設ヲ致ス
コトハ勿論デアリマス、一々申上ゲルコトハ略シテ、大體御
考ト同ジ考ヲ以テ進ミツヽアルト斯ウ申シテ置キマセウ、其
他思想問題ニ就テ、我ガ國民ノ思想ハ、色ミナル外來ノ思
想ガ如何ニ輸入シテ參ラウトモ、其根本ニ於テ動搖スベシ
トハ毛頭考ヲ有シテ居リマセヌ、併ナガラ注意ハ致サナケレバ
ナラヌ、ソレ故ニ取締ルベキハ取締リ、又惡化ノ動機トナル
ベキモノハ豫防シナケレバナラヌ、ソレト共ニ政府者トシテ
モ、穏健ナル思想ノ皷吹ニ努ムルト云フコトハ最モ必要ナリ
ト考ヘテ、卽チ大正八年一月カランレ〓〓特殊ノ機關ヲ置
イテ今日迄盡力致シテ居ル、幸ニ各地方ニ於テモソレ〓〓
ノ人ヲ置キ、又大ナル都市ニ於テハ、【社會事業ヲ特別ニ取
扱フ所ノ機關ヲ置キ、今日進ムコトニナリマシタノハ、甚タ喜
バシイ事ト思ヒマス、吾ミガ全國ニ向ッテ宣傳シテ居ルノハ、
民力涵養ノ名ノ下ニヤッテ居リマス、或ハ立憲思想、自治思
想、國家思想ヲ養成シ、若クハ勤勉努力ノ風ヲ養成スル
等、既ニ全國ニ亙ッテ一万八千回ノ回數ヲ重ネテ、其聽講
ニ來夕者ハ約五百万ト云フ人數デアリマス(「效能無シ」ト
呼フ者アリ)免ニ角左樣ナ事ニ於テ效力有ルト無イトハ批
評者ノ御勝手デアリマスガ、當局者トシテハ、少シデモ盡ス
ベキ事ハ遠慮ナク盡ス積リデアリマス、尙ホ勞働立法ノ事ニ
就テ御導デアリマシタガ、是ハ最モ大事ナ事デアリマス、時ノ
如何ニ依ッテ取扱フベキモノト考ヘマセヌガ、併シ斯ウ云フコ
トハアルノデス、今日我國ニ於テハ組合ハ全ク白由デアリマ
ス、私カラ見ルト實ニ我國ノ勞働組合ニ就テハ、自由ナ今
日位置ニ居ルノデ、如何ナル組合デモ出來ルノデアリマス
ガ、佶之ヲ立法致スト云フノニ就キマシテハ、自ラ如何ナル
組合ヲ造ラナケレバナラヌカ、如何ナル形ヲ執ラナケレバナラ
ヌカト云フコトニナッテ來マス、ソレニハ御尋ノ如ク、目下生
產調査會ニ付議サレテ居ルノデス、而シテ其中ニ成程農商
務省案、內務省案ト云フモノガアリマスガ、卽チ大切ナルダ
ケ、ソレダケ鄭重ナル審議ヲ要スル次第デアリマス、大體ンレ
デ御答ハ盡シタ積リデアリマスガ、尙ホ詳クバ更ニ御尋ガア
レバ、中上ゲルコトニ致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=53
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054・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 中橋文部大臣
〔國務大臣中橋德五郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=54
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055・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 中野寅吉君、先刻發言ヲ禁止シ
マシタ、ンレハ前ノ農商務大臣ノ答辯中ノ事デアリマス、併
シ規則ニ基イテ發言サレル時ハ、議長ノ許可ヲ求メラルルヤ
ウニ申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=55
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056・中野寅吉
○中野寅吉君 今日ハ一日發言ガ出來ヌト思ッテ落膽シ
テ居ック、難有ウゴザイマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=56
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057・中橋徳五郎
○國務大臣、中橋德五郞君) 安藤君ノ御質問ニ御各
致シマス、此思想善導ノ事ニブ、政府ガ施設ヲシテ居ル
事モ御尋ノヤウデアリマシクガ、是ハ主トシテ首相ニ御尋ノ
コトヽ考ヘマス、又一部ハ今内務大臣ヨリシテ御答ニナリマ
シタ、之ニ就テハ文部省ニ於キマシテモ、從來ヨリ施設ヲヤン
テ居リマスシ、又今後モヤリツヽアル、斯ウ云フコトデアリマ
ス、本省デモ各大學、専門學校、中等學校、及此小學校等
ノ〓職員ノ多數ヲ持ノテ居ルコトデアリマスルカラ、全國ニ
亙クテ相當ナル機關ヲ有ッテ居ル次第デアリマス、其等ノ施
設ニ就キマシテ中上ゲマスレバ、少シ長クナリマスデアリマス
ガ、恐ラク私ニ御導ノ箇條ハ、此學校ノ事、年限延長ノ事、
國庫補助ノ事ガ主デアッタラウト思ヒマスカラ、其方ノ御返
事ヲ今日申上ケマス、田心想善導ニ關スル文部省ノ施設ニ
就テハ、他日又御必要ノ時ニ機會ヲ見テ、委員會ナリ本會
ナリデ申上ケルコトニシタイト思ヒマス、此學校ノ所謂今日
申シテ居リマスル昇格、ロ升格ハ前ノ六年ノ高等〓育機關
擴張ノ主義ト、主義ガ違ッテ居ルカドウカ、斯ウ云フ御尋ト
考ヘマスガ、是ハ主義ガ變フテ居リマセヌ、今調査ヲ進メテ居
リマス、又本省ニ於キマシテハ、昇格トハ申シテ居ナイデアリ
マス、組織ヲ變更スル必要ヲ見ル時ニハ、變更スルト云フコ
トニ考ヘテ居ル次第デアリマス、併シ是ハマダ確定ニナル案
ヲ提出シテ居ナイコトデアリマスカラ、ドウゾ他日案ヲ提出
致シマシタ時ニ、十分ナル御審議ヲ願ヒタイ、私モ亦十分ナ
ル御說明ヲ申上ゲタイト思ヒマス、ソレカラ義務〓育年限
延長卽チ〓日我國ニ於テハ、六年ノ義務〓育制度ヲ施イ
テ居ル譯デアリマスガ、之ヲ八年ニスル考ヲ持シテ居ルカド
ウカ、斯ウ云フ御尋ト考ヘマス、是ハ文部當局ト致シマシテ
ハ、是非八年ニスル考ヲ持ッテ居リマス、是ハ既ニ此議會ニ於
テモ先年中上ケタト思ウテ居リマス、委員會デモ御話申上
ケタト思ウテ居リマス、併シ如何ニシテ何時カラ實施スルカ
ト云フコトハ、ドウシテモ是ハ時機ヲ見テ、周圍ノ狀況ヲ見
マセヌト、實行スル爲メニ非常ニ困難ヲ感ズルト思ヒマス、
誰ガ感ズルカト云フト政府ガ感ズルダケデアリマセヌ、地方
ガ感ズルデアラウト思フ次第デアリマス、況ヤ一昨年マデノ
如キ財界ノ好況、及各府縣ノ富力ガ段々ニ增加致シテ、力
ノ付キツヽアル時代ニ於キマシテハ、是等モ實行ハ餘程仕
易カッタ、6繼續致シマシタナラバ-所ガ昨年三月ヨリ致シ
マシテ、不況ニナッタ所ニ持ッテ行ッテヤラウト云フ時ハ、ドウ
シテモ政府カラ金ヲ持ッテ行クヨリ仕方ガアリマセヌ、サウニ云
フコトデアリマスカラ考ヘテ居リマス、當局ハンレ故ニ大體ノ
調査ヲシタ案ハ持シテ居リマス、金額モ確力昨年ノドノ委員
會デアリマシタカ、大數ダケハ申上ケタト思ヒマス、今日ハ時
節ガ變リマシタカラ、多少ノ增減ハ物價ニ依リマシテ出來マ
スガ、相當ナ金ガ要リマス、中ミ僅カナ金デ出來マセヌ、地方
ノ負擔ヲ增スカ、國庫ノ相當ノ支出ヲスルカシナケレバ會
行ガ出來マセヌカラ、此財界緊縮ノ場合ニ於テ、手ヲ著ケル
コトハ無理ダラウト思フ次第デ延ハシテ居リマス、況ヤ一面
ニ最後ニ御尋ニナック國庫補助ノ問題ガ今日八釜シイ、先
年ヨリ八釜シカッタノデアリマスカラ-先年ハソレ程八釜
シクナカッタ、昨年ヨリ八釜シクナッタコトハ尤ナ話デ、當局モ
是ニハ非常ニ苦心ヲ、致シテ居ル次第デ『アリマス、就中今日
ノ此〓育費ノ膨脹ヲ致シタルノハ、物價騰貴-〓員ノ給料
ガ增シタト言ヒマスケレドモ、〓員ノ給料ダケデアリマセヌ、總
テガ增シテ居ッテ、又〓育費ダケガ增シタノデハアリマセヌ、御
承知ノ通リ先程御計數ヲ御話ノヤウデアリマシタガ、大正
十年度-九年度ノ何ハザット市町村ノ所デ-全體ニ括
ンデ申シマスト、町村ノ所デ言ヒマスト、百分ノ四十四位ニ
ナリマス、是迄ハ大抵百分ノ四十デアッタ、四ダケ殖エマシタ、
併シ大數ニ於テハ外ノ經費モ矢張同率ニ斯ウ進ンデ來タ
譯デアリマスカラ、九年度ノ豫算ハ殆ド八億、總テノ物ヲ合
セテ-町村ダケデモ殆ド五億近クナルヤウナ狀況デアリマ
スカラ、非常ニ私ハ痛心致シテ居ル次第デアリマス、此問題
カラ先ニ解決シマセヌト、其先ノ義務〓育延長ト云フ問題
ハ、來ナイダラウト思フ次第デアリマス、幸ニ增稅デモ致スカ、
財源デモ見付ケテヤル手段ガ出來レバ結構デアリマス、最
後ノ此國庫補助問題ノ政府ノ考ヲ申シマスレバ、色ニナ案
ヲ拵ヘテゴザイマス、然ルニ今日先年寺內內閣ノ時ニ可決
ニナリマシタル國庫補助法、此國庫補助法ノ實施ノ成績ヲ
二三年見マスルト、ドウモ是ガ地方ニ對シテ、平均ニ行ヲテ
居ナイノデアリマス、旨ク平均ヲ取レテ地方財政ノ救濟ガ
出來テ居ルカト云フト、餘程不公平ニナッテ居ルヤウニ實績
上認メルノデ、是モ是ナリデ宜イカドウカ、餘程考ヘモノデア
リマス、或ハ一千万圓ノ金デモヤリヤウニ依リマスレバ、マダ
マダモット有效ニ效力ヲ現スコトガ出來ルカ知レマセヌ、斯ウ
云フ〓究ヲ致シテ見タイト思ヒマス、又今日ハ救濟ヲ致シ
マスルト云フコトガ、論ノ主眼デアルヤウニ見受ケマスガ、
面ニハ又〓育家等ニ於テハ、〓員ノ給料ヲ國庫カラ成ベク
拂フヤウニシタイ、斯ウ云フ論ハ以前ヨリシテアルコトデアル、
是モ考ヘナケレバナリマセヌ、先年〓育會議ナドデ決議モシ
デ、成ベク一部ヲ出シテ貫ヒタイト云フヤウナ決議モアッタコ
トデアリマスカラ、當局モ其考ヲ今デモ持ッテ居リマスケレド
モ、今日ハ目先ソレヨリモ、免モ角モ町村ノ貧弱ナモノニ向ツ
テ財政ヲ救濟スルト云フコトハ、一番急務デアルト思フノミ
ナラズ、是ガ膨レマシタノハ、先程申シマス通リニ全體ノ物
價騰貴、及地方ノ財力增加ノ爲メニ、總テノモノガ膨レタノ
ニ相違アリマセヌガ、其中デモ此〓員ノ給料ガ、比較的ニ一
番餘計增加シタト云フコトデアル、是ハ又之ヲ遣リマセナ
カッタナラバ、安藤君ノ御心配ノ思想ノ問題ニ、非常ナ關係
ガアッタラウト思フ、大正六年ニハ小學校〓員ノ給料ハ平
均二十圓デアル、是ガ七年ニ千万圓ヲ御出シニナッタノデ二
十四圓何十錢、人間ノ數ハ十五万幾ラ、丁度其當時ヲ考
ヘレバ、ドウシテモ之ヲ早ク倍以上ニシナイト云フト、非常ニ
思想界ニ關係スル、此十五六万ノ小學校〓員、二万餘ノ
中等〓員、竝ニ數千ノ高等〓育機關ニ從事シテ居ル〓授
等ノ如キ者ガ、自分ノ懷ガ淋シクテハ、安心シテ以テ〓育ヲ
スルコトハ出來ナイダラウト云フコトデ、私共ハ就職當時直
チニ之ヲ一番心配ヲシタノデアル、サウシテ到頭皆ナ倍ニシ
テシマッタ小學校〓員ハ十六万人、一億四百万位ニナッテ
居リマスガ、五十圓以上ニ平均ナッテ居ル-倍以上、大正
六年ニ較ベレバ二倍半、中等〓員ハ百圓以上、其他專門
學校ノ〓授、大學ノ〓授等ト云フ者ハ、他ノ官吏ヨリモ二
割モ增額シテ居ル、ソレデ以前ニ較ベルト相當ノ給料ニ-
マダ滿足ハ致シマセヌケレドモナッテ來テ居ル、是ガ根本デア
ル、ンコデサウ致シマスト云フト、此〓育費ガ斯ノ如ク殖エ、
又地方ノ經費ガ殆ド八億ニモ達スルト云フノハ、地方ノ人
モ氣ヲ許シテ居ッタニ相違ナイ、自分ノ各町村各府縣ノ富
力ト云フモノガ、三倍乃至五倍位ニ增加シテ居ルヤウニ、各
地方ニ行シテ各地方ノ枕計ヲ見ルト見エル、中デマダ增シテ
居ル所ガアル、然ルニ去年カラ惡クナリマシタカラ、ソコデ今
度ハ應ヘテ來タ、應ヘテ來タトキニハ、ドウシテモ財政ヲ緊縮
スルト云フコトガ當然ノ事デアル、今日高等〓育費ナドデモ
一億万圓ニ上ッテ居ル、之ヲ一割減ジテモ一千万圓出ル、
サウ云フヤウナ譯デアルカラ、千五百万ヤ千万圓ハ、制度ノ
立方、經費ノ節約ノ仕方ニ依リマシテハ、餘リ六ケシクナイ
カモ知レヌ、是モ是非一ツ調査ヲ致シタイト思ッテ居ル次
第デアル、而シテ節約シテモドウシテモ堪ヘナイモノハ、國庫
カラ何カ工夫シテ金ヲ持ッテ行ク、又未ダ實行シテ居リマス
一千万圓ノ國庫補助ノ法律モ、或ハ改正ヲシタ方ガ宜イカ
モ知レヌト云フヤウナ考ヲ持ッテ居リマスノデ、相當ナル機關
ヲ拵ヘテ調査ヲスルコトニ致シタイト、今日思ウテ居ル次第
デアリマス、是デ大體御分リダラウト思ヒマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=57
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058・安藤正純
○安藤正純君 一寸此處デモウ一回文部大臣ニ質問シマ
スガ、昇格-今度ノ計畫ニナッタ事ト前ノ六年計畫ノ案ト
ハ、少シモ主義ガ違ハナイト云フ唯今ノ御答デアリマシタガ、
是ハ前ノ臨時〓育會議ニ於キマシテ、各種ノ實業學校トカ、
師範學校トカ云フモノハ昇格ヲシナイデ、斯ウ云フ専門ノ
學校トシテ存續スルノ必要ヲ認メル、寧ロ専門學校ガ大學
ニナルト云フコトハ、此弊ガアルト云フコトヲ〓育會議デ決
議ヲシテ、此原則ニ依ッテ行ハレテ居ルコトデアラウト思フ、
サウ致シマスト、今度ノ各種ノ高等工業デアルトカ、高等商業
デアルトカ、或ハ高等師範デアル、ンレヲ詰リ私ハ昇格ト云
フノデスガ、名ハ違ヒマスガ實ハ同ジデアリマスカラ、昇格サセ
ルト云フコトハ、矢張是、主義ノ變化デアラウト考ヘル、大
臣ハサウデナイト仰シヤルガ、其點ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=58
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059・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) ソレデハ簡單ニ此處デ申上
グマス、能ク此尋カアリ、又新聞紙上ニモ能ク出テ居リマス
ヤウニ、臨時〓育會議ノ決議ニ反スルトカ反セヌトカ、當局
ノ考ハ別ニ反シタ方法ハ用キル積リデアリマセヌ、併シ是ハ
今日案ヲマダ提出シテ居リマセヌカラ、此所デ假設ナモノヲ
出シテ、新聞紙ニ出シテ居ルモノヲ出シテ御答ヲスルト云フ
ヨリハ、ドウカ先キニ願ヒタイト思フ、ノミナラズ今昇格ト云
フ御話ガアリマシタガ、是ハ若シ昇格ナラ昇格デモ何デモ私
ハ宜シイ、名前ハ何デモ宜シイ、是ハ數校位アリマセウ、〓併シ
今囘ノ案ノ全體ハサウ云フ小サナモノヂヤナイ、マダ〓〓色〓
ノ學校制度ノ改正ヲシナケレバナラヌヤウナ考デアリマシテ、
今ニ確定シタル成案ヲ得ナイヤウナ事デアリマスガ、ドウカ
是ハ案ガ出マシテカラ御相談ヲ-御說明ヲ申上ゲマス、斯
ウ云フコトニ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=59
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060・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 鈴木富士彌君
〔鈴木富士彌君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=60
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061・鈴木富士彌
○鈴木富士彌君 國務大臣ニ對シテ四點許リ御伺致シ
タイ事ガゴザイマス、第一ハ陪審制度ニ關シテ、第二ハ人口
政策ニ關シテ、第三ハ失業問題ニ關シテ、第四ハ司法權ノ
運用ニ關シテ聊カ疑ヲ質シテ、一面ニハ私自ラノ蒙ヲ啓ク
ト同時ニ、又一面ニハ政府ノ御反省ヲ促ス資料ニ供シタイ
ト思ヒマス、成ベク手短ニ要領ヲ申上ゲマス、內務司法兩大
臣ハ、ドウカ終ルマデ御居殘ヲ願ヒタイト思ヒマス、先ヅ第一
ニ陪審制度ニ關シマシテ、原總理大臣ト司法大臣トニ御尋
ヲ致シタイト思ヒマス、原內閣ハ豫テ標榜致シテ居リマシタ
所ノ四大政綱ノ外ニ、最近更ニ二大政綱ヲ加ヘマシテ、大
ニ陣容ヲ整ヘテ、信ヲ天下ニ繫ガレント致サレテ居ルヤウデア
リマスガ、此六大政綱ノ中、私專門ノ立場カラ特ニ注目ヲ
怠ラナイモノハ、陪審制度ノ問題デアリマス、今更改メテ申
ス迄モナク、陪審制度ハ、在野法曹ノ豫テ熱望シテ居タ所
デアリマス、無論在野法曹ノ全部ト云フ譯デハアリマセヌケ
レドモ、其大部分ヲ擧ゲテ、今ノ司法制度ノ缺陷ヲ補フニハ、
陪審制度ヲ採用スルノガ最モ有力ナル方法ノ一デアルト云
フコトニ、意見ガ一致シテ居タノデアリマス、幸ニ原總理大
臣ハ、內閣組織以來此點ニ力ヲ注ガレマシテ、大正八年ニ臨
時法制審議會ヲ設ケラレ、此審議會ニ陪審制度ノ可否ヲ
諮問セラレマシタ、法制審議會ニ於キマシテハ、愼重審議ノ
結果陪審制度採用スベシト云フコトニ一決致シマシテ、同
時ニ綱領三十八箇條ト云フモノヲ議定致シマシテ、此綱領
ニ基イテ起草セラレタル陪審法案ガ、唯〓ノ樞密院ニ於テ
審査審議中デゴザイマス、近ク議院ニ提案ノ運ビニ至ルコ
トヽ信ジマス、其議案ノ內容ニ對スル賛否ノ論ニ至リマシテ
ハ、他日御提案ヲ待ッテ別ニ大ニ論ズル機會ガアラウト存ジ
マス、免モ角此陪審制度問題ニ對シテ、原總理大臣ガ一昨
年以來注ガレタ所ノ御努力ト御熱心トハ、私共ノ深ク多ト
スル次第デゴザイマス、併ナガラ此法案ニ關シテハ、本員ハ甚
ダ了解ニ苦シム點ガ尙ホ二三存スルコトヲ、甚ダ遺憾ト思フ
ノデアリマス、ソレハ何デアルカト申シマスト、先ヅ第一ニ陪審
制度ハ憲法違反ナリト云フ議論ニ對スル解決ガ、未ダ徹底
的ニ爲サレテ居ナイコト、是レ其一デアリマス、司法制度ノ
根本的改革トモ謂フベキ、此陪審制度ノ法案ヲ急遽起草
シ遽シク審議シテ、尙ホ未熟ト思ハルヽヤウナ法案ヲ、强テ
此議會ニ提出セラレント焦ッテ居ラレルコト、是レ其二デアリ
マス、陪審制度ガ憲法違反ナリト云フ議論ハ、可ナリ久シイ
以前カラ法曹社會ニ唱ヘラレテ居タ議論デゴザイマス、陪審
制度論者ノ急先鋒トモ申スベキ江木衷博士ハ、此陪審違憲
論ヲ愚論デアルト罵ッテ居リマス、或ハ愚論デアルカモ知レマ
セヌ、又原總理大臣モ之ヲ愚論ト思惟サルヽ、有カナル一人
デアラウト思フノデアリマス、然ルニ臨時法制審議會ノ委員
中ニ、此所謂愚論ヲ懷カレテ居ル人ガ數人存在スルト云フ
コトハ、爭フベカラザル事實デアル、又樞密顧問官中ニモ、矢
張此所謂愚論ニ左祖スル者ノ存在スルト云フコトモ、天下
ニ隱レモナイ事實デアル、目下司法部ニ職ヲ奉ジテ居リマス
判事檢事、特ニ司法省ノ大官連中モ、表面ハ免ニ角、心ノ
底デハ矢張此所謂愚論ノ左祖者デアルト云フコトハ、私容
易ニ立證シ得ラレルノデアリマス、果シテサウデアリマスナラ
バ、此陪審論タルヤ、一〓ニ之ヲ愚論トシテ排斥シ去ルベキ
モノデハナカラウカト私ハ思フノデアリマス、陪審制度ガ憲法
第二十四條ニ違反セリト云フ議論ハ、今度採用サレタ綱領
ヲ見マスルト、何等差支ノナイコトニナッテ居リマス、此點ハ
別ニ違憲論ヲ鬪ハス所ノ餘地ハナイノデアリマスガ、憲法第
五十七條ニ違反セリト云フ議論ニ至ッテハ、何等徹底的ニ
解決ガ與ヘラレテ居ナイノデアリマス、卽チ憲法第五十七
條ニ「司法權ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判所之ヲ行フ」
トナッテ居リマス、而シテ裁判所ハ裁判官ヲ以テ構成スペキ
モノデアリマスカラ、裁判官ニ非ザル陪審員ヲ以テ裁判ヲス
ルト云フコトハ、取リモ直サズ憲法違反デアルト云フ、是ガ陪
審違憲論ノ骨子デゴザイマス、此議論ニ對シテハ、中ニ有力
ナル所ノ辯駁ガアリマス、卽チ裁判トハ法律ノ適用宣言ヲ指
スモノデアッテ、事實ノ認定ヲ包含シナイノデアルカラ、事實ノ
認定ヲ陪審員ニサセテモ、決シテ憲法違反デナイ、是ガ辯明
ノ第一デアリマス、又假令事實ノ認定ハ尙ホ裁判デアルト
シテモ、綱領ガ第一項ニ記載シテアリマス如ク、今回採用セ
ントスル陪審制度ハ、裁判所ガ陪審員ノ表決ニ對シテ、事
實ノ判斷ヲ爲スノデアルカラ、裁判官自身ガ事實ノ認定ヲ
爲スノデアルガ故ニ、矢張是ハ憲法達反デナイト云フ辯明デ
アリマス、又陪審員ニ若シ官吏ノ資格ヲ與ヘテ之ヲ裁判官
トシタナラバ、矢張憲法違反論ガ消滅スルデハナイカ、是モ
辯明ノ一デアリマス、皆ナ有力ナル所ノ辯明デアリマスケレ
ドモ、併ナガラ今日ノ法律學ニ於テ、裁判トハ事實ノ認定ト
法律ノ適用ト、此兩者ヲ包含スルモノナルコトハ、是ハ動カス
ベカラザル定論デアルバカリデナク、陪審制度綱領ノ第一項
ニモ書イテアリマス如ク、事實ノ認定ヲ陪審員ノ表決ヲ付ス
ルノデハアルケレドモ、其表決ニ反シテ事實ノ認定ヲ裁判所
ヲハスルコトハ、出來ヌコトニナッテ居リマスカラ、假令其表決
不當ト認メタ時分ニ、何十囘何百回改メテ之ヲ他ノ陪
審員ノ表決ニ付シテモ、無限ニ之ヲ引延スコトハ出來マセヌ
カラ、結局ハ矢張陪審員ノ表決ニ拘束サレル結果ヲ生ズル、
若シ拘束サレナイト云ヲコトデアレバ、陪審制度ナルモノハ
一ノ諮問機關ニナッテ、所謂陪審制度ノ根本義ト云フモノハ、
根抵カラ破壞サレルコトニナルノデアリマス、ノミナラズ陪審員
ニ官吏ノ資格ヲ與ヘタラ宜イデハナイカト云フ議論ハ、是
此陪審制度ノ趣意ヲマルデ無視シテ居マ所ノ話デアリマシテ、
私ハ敢テ是等陪審違憲論ニ傾イテ居ル者デハアリマセヌケレド
モ、是等ノ議論ハ中〓相當ニ根據ノアル法律論デアリマス
カラ、一〓ニ之ヲ愚論トシテ排斥シ去ルベキモノデハナイカ
ノヤウニ、私ハ思フノデアリマス、私モ一時ハ違憲論一笑ニ
付シテ可ナリト云フヤウナ意見ヲ有ノテ居タ時代モアリマシ
タガ、親シク其趣旨ヲ聽クニ及ビマシテ、決シテ左樣ナ筋合
ノモノデナイト云フコトヲ覺ッタ次第デゴザイマス、是ニ於テ
カ問題ガ起ッテ來ル、果シテ左樣ナモノデアリマスルナラバ、陪
審制度ヲ採用スル前ニ、陪審違憲論ヲ根柢ヨリ消滅セシメ
ル手續ヲ執ルノガ政府者トシテ、先ヅ爲スベキ順序デハナイ
カト思フノデアリマス、卽チ是ニ於テ憲法改正ノ議ト云フモ
ノガ起ッテ來ルノデアリマス、御承知ノ如ク今日歐羅巴ニ於
キマシテ、陪審制度ヲ採用シテ居リマセヌ所ノ國ハ、僅ニ和
蘭、羅馬尼亞二三ノ小國ニ過ギヌノデアリマス、歐米諸國
文明國ト名ノ付ク國ハ、大抵陪審制度ヲ採用シテ居リマス
ルガ、其國モ陪審制度ハ悉ク憲法ニ規定ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、北米合衆國憲法ノ第三條、白耳義憲法ノ第九十
八條、舊普魯西憲法ノ第九十三條、舊墺地利憲法ノ第十
一條ノ如キハ、卽チ是デアリマシテ、唯ダ特殊ノ沿革ヲ有ス
ル英國ノミガ、少シク趣ヲ異ニスルニ過ギナイノデアリマス、
國家ノ大本ヲ定メル大問題デアリマスカラ、皆ナ憲法ニ規
定ヲ致シテ居ルノデアリマス、デアリマスカラ假令日本ニ於
キマシテハ、陪審制度ハ違憲ニ非ズトシテモ、是ハ矢張憲法
ヲ改正致シマシテ、此大本ヲ憲法ニ定メルコトガ、至當ノ順
序デアルト思ヒマズルガ、殊ニ憲法違反論ヲ一〓ニ愚論ト
罵ッテモ、相當根據ノアルモノデアリマスルナラバ、此點ニ於
テ政府ハ考慮ヲ費スガ、至當ノ順序デアラウカト信ズルノデ
アリマス、何故ニ政府ハ憲法改正ノ手續ヲ執ラレルコトヲ
爲サナイノデアリマスカ、成程憲法ハ千古不磨ノ大典デア
リマスルカラ、容易ニ改正スベキモノデナイト云フ御考ガアル
ノデアラウト思ヒマス、是ハ頗ル傾聽スベキ議論デアリマス
ケレドモ、帝國憲法ニハ將來ノ改正ヲ豫想シテ、第七十三
條ノ規定ヲ設ケテアリマス、今日ニ於キマシテ此點ヲ改正ス
ルト云フコトハ、容易ニ出來ルコトデアラウト思ヒマス、三分
ノ二ノ多數ヲ以テ之ガ改正ヲ圖ルト云フコトハ、政友會ノ
大多數、〓究會ノ大多數ヲ與黨ニ有シテ居ラレル所ノ現政
府トシテハ、或ハ容易ク爲シ得ルコトデハナイカト思ヒマス、
然ルニ此點ニ於キマシテ、此手續ヲ省略サレタト云フコト
ハ、私甚ダ遺憾ニ考ヘル所デアリマス、何故ニ此正當ノ手續
ヲ御執リニナラナカッタノデアルカ、此點ニ關シテ政府ノ御意
見ノ在ル所ヲ承ルコトガ出來マシタナラバ、甚ダ幸福トスル
次第デアリマス、第二ニ私ガ諒解ニ苦ムト思ヒマスル事ハ、
餘リニ遽シク此制度ヲ施カウトスル點デゴザイマス、卽チ御
承知デモゴザイマモウガ、陪審制度綱領三十八箇條ガ定メ
ラレマシタノガ、本年ノ六月ノ頃デアッタト記憶シテ居リマ
ス、準備委員ガ起草ニ著手ヲ致シマシタノガ八月デアリマ
ス、草案ノ出來マシタノガ十一月デアッテ、十二月ニ之ヲ樞
密院ニ回附ヲ致シマシテ、樞密院ニ於キマシテハ、此一月上
句カラ精査委員會ヲ開イテ居ルト云フヤウナ譯デアリマス、
極メテ短時日ノ間ニ急イデ起草ヲシ、急イデ審議ヲナシツヽ
アルト云ヲコトハ、爭フ可ラザル事實デアリマス、元來陪審
制度ハ、刑事訴訟法ノ一部分ニ規定スベキ事柄デアルト私
ハ確信シテ居リマス、日本ノ刑事訴訟法ハ、明治二十三年
ニ始メテ制定セラレマシテ、旣ニ久シク年ヲ閲シテ居リマス
ガ、極メテ不備不完全デアリマシテ、今日各所ニ起リマス所
ノ人權蹂躪ノ事實ハ、官憲ガ人權蹂躪ノ行爲ヲ爲ス其主
タル原因ハ、刑事訴訟法ノ不備ニ在ルト言ハレテモ、誣言デ
ナイト思フ程ノ惡法デアルノデアリマス、ソレ故ニ是ガ改正
ノ議ハ屢〓政府ノ間ニ唱ヘラレテ、改正ヲ企テラレタ所デア
リマス、現行刑事訴訟法ハ二囘改正ヲセラレテ居リマスガ、
明治三十四年ニ法典調査會ニ於キマシテモ、改正草案ト
云フモノガ出來マシテ、其後法律取調委員會ニ於キマシラ、
起草委員ヲ擧ゲテ、其草案ハ旣ニ成リマシテ、在野法曹ノ諮
問答申モ終リマシテ居ルニモ拘ラズ、未ダ提案ノ運ビニ至ッ
テ居リマセヌ、法典調査會ニ於テ草案ヲ作ッテカラ既ニ二十
年許リニナリマス、法律取調委員ガ草案ヲ作ッテカラ十年ニ
ナッテ居ル、斯ノ如キ惡法ヲ斯ク長ク悠々緩々ト打造ッテ置
イテ、而モ人權蹂躪ノ聲ガ到ル處ニ擧ッテ居ルノニ、陪審制
度-司法制度ノ根本ヲ改革スル程ノ大問題、大重要ナ
ル所ノ法案ヲ遠シク拵ヘテ、遽シク此衆議院ノ議ニ掛ケヤ
ウトスルト云フコトハ、少シク釣合ノ取レナイ話デアル、或ル
新聞ハ陪審法ハ現内閣ガ人氣取政策ノ一ツトシテ、案出
シタルモノデアルナドヽ云フコトヲ申シテ居リマス、是ハ甚ダ
失禮ナ申分ノヤウデアリマスガ、免モ角モサウ云フ噂ガアル、
陪審制度ノ如キハ國家百年ノ大計デアリマス、此大計ヲ
人氣取政策ニ利用セラレルト云フコトハ、國民ノ甚ダ迷惑
ニ感ズル所デアリマス(拍手起ル「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)今
少シク慎重ニ此問題ヲ議セラレル方ガ、穩當ナル處置デハ
ナイノデアラウカ、若シドウシテモ陪審制度ヲ確立スルト云フ
ノデアレバ、唯〓既ニ草案ノ成ッテ居ル刑事訴訟法ノ一部
ニ規定シテ、本議會ニ提出セズシテ、次ノ議會ニ完全ナル刑
事訴訟法トシテ提出ニナルガ、至當ノ處置デアラウカト考へ
テ居リマス、此點ニ就テ司法大臣ハ如何ナル御見解ヲ持タ
レテ居ラレマスカ、御伺致シタイト思フノデアリマス、第二ハ
人口政策ニ就テ、床次內務大臣ノ御答ヲ得タイト思ヒマ
ス、昨年十月一日ニ施行セラレタ國勢調査ノ結果ヲ見マス
ルト、日本內地ノ人口ハ五千五百九十六万餘ニナッテ居リ
やっ、一方哩ニ付テ二千二百三十九人ト云フ密度ニナッテ
居ルノデアリマス、世界中最モ人口ノ稠密ナル國ノ一ツトシ
テ數ヘラレテモ宜シイノデアリマス、卽チ日本ヨリ密度ノ高
イ國ハ、僅ニ白耳義ト、英本國ト、和蘭ノ三國アルノミデア
リマス、然ルニ是等ノ三國ハ、商業工業ヲ以テ立國ノ基本
ト爲スモノデアリマスカラ、人口ノ密度ノ高イト云フコトハ、
或ハ左程憂フベキ現象デハナイカモ知レマセヌガ、日本ハ元
來農業國デアッテ且ツ國民ノ主要食糧タル米ハ、國際的商
品デアリマセヌカラ、尙ホ多クノ耕作費ヲ必要トスルノデア
リマス、隨ッテ食糧政策ノ立場カラ、是以上人口ノ殖エルト
云フ事ハ日本トシテハ、決シテ幸福ヲ增進スル所以デナイト
確信ヲ致スノデアリマス、加フルニ日本ノ人口增殖率ト云
フモノハ、列强中ニ於キマシテ「ニユージーランド」、加奈陀等
ノ新開地ヲ除キマシテ、獨逸ト共ニ世界ニ冠タルモノデア
リマス、英國ノ約二倍、佛蘭西ノ約六七倍ニ當四ッテ居リマス、
最近ノ統計ヲ見マスト、近年稍〓下リ坂ニハナッテ居リマスケ
レドモ、併ナガラ年々六十万、七十万ノ人口ガ增加致シテ
居ルノデアリマスガ、此增加スル人口ヲ如何ナル方面ニ送ク
テ、國内ノ食糧問題、生活難ヲ調節スベキカハ云フコト、中
中是ハ容易ナラヌ大問題デアルト信ズルノデアリマス、北
米合衆國ニ送ラント致シマシテモ、御承知ノ如ク排日問題
ガ八釜シイノデアリマス、英領加奈陀然リ、南洋、濠洲然リ、
支那亦然リ、滿蒙、西伯利ニ於テハ、利權政策ヲ帝國政府
ガ執ッテ居ルガ爲メニ、寧ロ是ハ資本家ノ行クベキ處デアッテ
人口ノ大部分ヲ占ムル中以下ノ者、所謂「プロレタリアー」
ニ屬スル者ハ、行ッテモ職ガ無イト云フ有樣デアリマス、是ニ
於テカ吾人ハ今眞面目ニ人口政策ヲ考慮シナケレバナラヌ
立場ニ立ゥテ居ルコトヲ、私共ハ感ズルノデアリマス、最近ニ
於キマシテ南洋-濠洲「シドニー」ノ或ル有力ナル新聞ガ、
駐英大使林權助男ノ軍備制限問題ニ就テ、日本ハ何時ニ
テモ是等ノ交涉ニ應ズル準備ヲ致シテ居ルト云フ聲明ヲサ
レタニ就キマシテ、一ツノ社說ヲ揭ゲテ居リマス、其一節ニ
「日本ノ人口政策ニ論及シタル點ガアルノデアリマス、卽チ
日本ガ若シ國際間ニ其友誼ヲ繋ガント欲スルナラバッ先ヅ
人口增殖ト云フ大問題ニ關シテ、外列强トノ關係ニ應ジタ
ル政策ヲ樹立シナケレバナラヌ、若シ人口ノ過剩ト經濟的
壓迫ノ爲メニ、戰爭ヲ餘儀ナクスルノ虞レアルノ故ヲ以テ軍
備撤廢ガ不可能デアリトスルナラバ、出產率ノ高イ國ハ、常
ニ平和ニ戀々タル出產率ノ低イ國ニ對シテ、不斷ノ脅威ト
ナルヲ免レヌト云フコトヲ申シテ居リマス、是ハ我帝國政府
ニ取ッテ頂門ノ一針ト考ヘマス、是ニ於キマシテ日本ハ今後
外ニ向ッテ侵略主義ヲ執ルカ、內ニ在ッテ產兒ノ制限ヲ斷行
スルカ(笑聲起ル)西ニ往カンカ、束ニ往カンカ、爰ニ十字街
頭ニ立ッテ居ルヤウナ感ヲ私ハ致スノデアリマス、是ニ於キマ
シテ最近學者間ニ新「マルサス」主義ナルモノヲ提唱スル者
ガ生ジタノデアリマス、新「マルサス」主義トハ、御承知ノ如ク
「バースコンツロール」生產制限ト申シマスカ、受胎制限ト
申シマスカ、免モ角產兒ノ制限ヲ目的トシテ居ル所ノ主義
デゴザイマス、其手段ハ卽チ受胎ノ回避デアリマス、日本ニ
於テ此主義ヲ提唱スル必要ハ、單リ人口政策ノ上ニバカリ
存スルノデハアリマセヌ、優生學卽チ「ユーゼニックス」ノ上カ
ラ見マシテモ、國民經濟ノ方面カラ論ジテモ、犯罪豫防ノ方
面カラ論ジマシテモ、將又衞生問題ノ方面カラ見マシテモ、
之ヲ肯定スルニ十分ノ理由ガ存スルカノヤウニ、私ハ感ズル
ノデアリマス、和蘭ニ於キマシテハ、既ニ千八百六十五年以
來政府ハ公然此「バースコンツロール」ト云フコトヲ承認シマ
シテ、產兒制限相談所ト一云フモノヲ國内ニ五十餘箇所設
ケテ居リマス、人口ノ尙ホ稀薄ナル北米合衆國ニ於テスラ、
「マアガレットサンカー」夫人ハ此產兒制限ノ運動ヲ始メマシ
テ、國法ハ之ヲ嚴禁シテ居ルニモ拘ラズ、旣ニ一般ノ承認ヲ
經テ、今日デハ政府モ稍、默認ノ形ニナッテ居リマス、日本ニ
較ベマスレバ、人口ノ密度ノ遙ニ低イ亞米利加ニ於テスラ、
斯樣ナ狀態ニナッテ居ルノデアリマス、識者ガ近來新「マルサ
ス」主義ニ注意ヲ拂フニ至ッタト云フコトハ寔ニ偶然ノ事デ
ナイト私ハ思フノデアリマス、今ヤ日本人排斥熱ハ世界到
ル處ニ彌漫致シテ居リマス、而シテ日本ノ人口ノ捌ケ場所
ト云フモノハ、殆ド無クナッテシマッタト云フヤウナ狀態ニナッ
テ居ルニモ拘ラズ、外務大臣ハ無爲無策ニシテ、是等ノ點ニ
就テ何等ノ對策ヲ施サナイ、日米問題ガ起リマシテ是ガ責
任ヲ責ムレバ、亞米利加ニハ亞米利加ノ都合ガアル、日本
ノ思フヤウニハ往カヌト云フヤウナ、恰モ亞米利加ノ外務大
臣デモアルヤウナコトノ返事ヲ致シテ居リマス(拍手起ル)斯
ウ云フ外務大臣ノ居ル日本ニ於キマシテハ、內ニ於テ床次
サンヲ煩ハシテ、今度ハ人口政策ヲ考ヘナケレバナラヌ立場
ニナルノデアリマス(拍手笑聲起ル)此點ニ就キマシテ篤ト
政府ノ意思ノ存スル所ヲ聽カナケレバナラヌト思ヒマスルノ
ハ、此新「マルサス」主義ニ關シマシテハ、旣ニ理論ノ宣傳ノ
時代ヲ過ギテ、實行ノ宣傳ノ時代ニ入リカケテ居ルヤウニ
私ハ思フガ、政府トシテハ之ヲ禁止スル積リデアルカ、是ハ
重大ナル問題デアリマスルカラ、此壇上ニ於テ內務大臣ノ
御言明ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、第三ハ失業問題ニ
就テ矢張內務大臣ニ御尋ヲ致シタイト思ヒマス、去ル二十
二日ノ本會議ニ於キマシテ、高橋大藏大臣ハデス、濱口雄
幸氏ノ質問ニ答ヘラレテ、新聞紙ニハ如何ニモ澤山失業者
ガ出來テ、餘程困ッテ居ルヤウニ書イテ居ルガ、自分ハ左様
ニハ思ハナイ、歐米諸國ガ失業者ガ多クデ困ッテ居ルノハ事
實デアルガ、日本ニ於テハ實際失業デ困ッテ、働クニモ職ガ
無イ、幾ラ働イテモ賃銀ガ取レナイト云フ狀態ニハナッテ居
ナイ、ト斯樣ニ放言サレタノデアリマス、然ルニ內務省ノ調
査シマシタ所ニ依リマスルト云フト、昨年十一月一簡月ニ
解雇サレタ職工ノ數ハ、工場法ヲ適用サレタル工場ノ職工
ノミヲ計算致シマシテモ、二十一万五千ト云フ數ガ出テ居
リマス、是ハ內務大臣カラ頂戴シタ此書類ノ中ニ載ッテ居ル
ノデアリマス、此中再ビ雇入レラレタル者ガ八万七千ニ過ギ
ナイノデアリマスカラ、差引十二万八千ト云フモノハ失業ニ
ナッテ居ル筋合デゴザイマスノミナラズ、中央職業紹介所ノ
調査ニ依リマスト、本年ニ入リマシテ一月一日カラ二十日
マデノ間ニ於テ、東京竝ニ東京附近ノ工場ニシテ、閉鎖サレ
タルモノ五十箇所以上アリマス、日本全部ノ職工ノ數ハ正
確ナル統計ハアリマセヌ、或ハ百万ト云ヒ、或ハ百五十万ト
云ヒ、或ハ二百万ト申シマス、百五十万ト致シマスレバ、其
幾割カ今日職ヲ失ッテ困ッテ居ルノデアリマス、唯今十一月
ノ統計十二万八千ガ失業者デアルト中シマシタガ、此他
ニ工場法ヲ適用シナイモノハ、其他所謂歸農-解雇
セラレテ皆ナ〓里ニ歸ッテ居リマス者ヲ、歸農ト云フ名
ノ下ニ、恰モ職ニ就イ夕者ノ如クニ書イテアリマスケレド
モ、一度都會ニ於テ生活ノ味ヲ覺エマシタ者ハ田含ニ歸
リマシテ、再ビ農業ヲスル者ハ極メテ少イノデアル、父兄ノ
許ニ厄介ニナッテ居リマシテ、何等爲スナク、何カ好イ仕事
ガアッタラバ、再ビヤラウト云フ考ヲ持ッテ居ルニ過ギマセ
ヌノデ、是等ノ人ヲ加ヘマシタナラバ、二十万以上ノ數ヲ
算フルノデアリマス、百五十万ノ中ノ二十万デアレバ、僅
ニ一割何步ニシカ當ラヌカモ知レマセヌガ、工場法ヲ適用セ
ラレテ居ル工場ノ職工ハ、約五十万ト云フ統計ガ出テ居リ
マスカラ、之ニ比較致シマスナラバ、約四割ニ近イ所ノ失
業者ガアルト謂ハナケレバナラヌノデアリマス、然ルニ大藏大
臣ハ失業者ハ無イト云フヤウナコトヲ申サレテ居リマスルガ、
若シ此統計ヲ信ジナイノデアリマスルナラバ、大藏大臣ハ
ハ-居リマセヌガ、若シ兩國橋ヲ渡リマシテ、深川富川町ニ
行ッテ其狀態ヲ視察致シマシタナラバ、職ヲ失ウテ顏色憔悴
トシテ居ル所ノ失業者ガ、累々然トシテ喪家ノ狗ノ如クニ、
現内閣ノ失政ヲ呪ウテ居ルト云フコトニ、直チニ氣ガ付クデ
アリマセウ(拍手起ル)私共ハ是等ノ失業者ノ問題ヲ、政治
上極メテ重要ナ一現象トシテ觀察ヲ致シテ居ルノデアリマ
ス、近頃思想問題ヲ論ズル者ガ多ウゴザイマス、又原總理
大臣モ政友會ノ大會ニ於カレマシテ、思想問題ニ言及ヲセ
ラレマシタガ、如何ニモ輕ク思想問題ヲ御取扱ニキッテ、其
原因ヲ外來思想ノ雷同デアルトカ、或ハ煽動家ノ言辭ニ眩
感セラレテ居ル者トカ中シテ居リマス、成程此二ツモ原因タ
ルニハ相違アリマセヌケレドモ、是ハ寧口形式的ノ原因デアツ
テ、實質的ノ原因ガ尙ホ今少シ深刻ナ所ニ存在シテ居ルト
云フコトハ、既ニ識者ノ皆ナ申シテ居ル所デアリマスカラ、私
ガ繰返シテ申スマデモアリマセヌガ、所謂物價ノ騰貴ニ伴フ
生活難、是レ其一デアラウ、失業者ニ對スル救濟ノ設備ノ
不完全ナル串モ、是レ其一デアリマス、特ニ失業者自身ハ、
生活ノ脅威ヲ目ノアタリ經驗致シテ居リマス、人生ノ苦痛
ヲ最モ切實ニ味ッテ居ルモノデアリマスカラ、失業久シキニ
亙レバ、自然資本家ヲ呪ヒ、社會組織ヲ呪ヒ、終ニハ社會上
ノ改革ヲ欲スルノ念ヲ生ズルニ至ルノハ、理ノ睹易キ所デア
リマス(拍手起ル)露國ノ革命ヲ成就シタル者ハ何人デアリ
マスカ、我ニパンヲ與ヘヨト云フ失業者ノ群ガ、此露國ヲ革
命シタト云ッテモ差支ナイノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者
アリ、拍手起ル)故ニ何レノ國ニ於キマシテモ、失業者ノ救
濟ト云フコトハ、非常ニ力ヲ注イデ〓究ヲ致シテ居リマスガ、
其之レ無キハ我日本アルノミト申シテモ、差支アルマイト思
フノデアリマス、大正八年ノ秋ニ米國華盛頓ニ於テ開催セ
ラレマシタ所ノ、第一回國際勞働會議ニ於キマシテハ、失業
者ノ問題ハ最モ重要ナル事項ノ一トシテ論議ヲセラレテ居
リマス、職業紹介、失業保險、公ノ事業ノ分配、是等ノ項目
ニ亙ッテ皆ナ決議ヲセラレテ居ルノデアリマス、唯ダ其中職
業紹介ニ就キマシテハ、床次內務大臣ノ御心配ニ依リマシ
テ、其綱領ガ出來、法案モ略〓出來マシテ、唯〓社會事業調
査會ノ諮問ニ付セラレテ居リマス、此點ハ洵ニ私共感謝ニ
堪ヘナイ所デアリマスルガ、モウ一ツ重大ナル失業保險ハ如
何ナサレタノデアリマスカ、失業保險ニ就キマシテハ、此國際
勞働會議ノ勸告案第二條ニ於テ、各國ハ速ニ有效ナル失業
保險ノ制度ヲ確立スベシト云フ決議ヲ致シテ居リマス、此
失業保險ニ就キマシテハ如何ナル事ヲナサレテ居ルノデアル
カ、又勞働組合ノ事ニ就キマシテハ、先程安藤君カラモ御質
問ガアリマシテ、床次內務大臣ノ御答辯ガアリマシタ、是ハ
私各種ノ勞働問題ノ解決ノ基礎ニナルモノデアリマスカラ、
何ヲ措テモ是ハヤラナケレバナラヌモノデアルト信ジテ居リマ
スルガ、之ヲモ內務省案デアルトカ、農商務省案デアルトカ、
色〓ナコトヲ言ッテ喧嘩ヲ致シテ居ル譯デハアリマスマイガ、
何ダカ互ニ衝突致シタヤウナ形デ、此議會ニ尙ホ提出スル
ノ運ビニ至ラナイ、私ハ第四十二議會ニ於テ提出セラル
ルコトデアラウト、確信致シテ居リマシタガ、遂ニ其事無シ、
第四十三議會モ然リ、而シテ又此四十四議會ニモ提
出セラレヌト云フニ至ッテハ、其怠慢實ニ驚クノ外ハナイ
ト思フノデアリマス(拍手起ル)原內閣ハ成立以來、世ノ中
ノ人カラ資本家階級ヲ保護スルニ汲々タリト云フヤウナ批
評ヲサレテ居リマス、斯ク申セバ氣持ヲ惡クナサル御方モ
アルカモ知レマセヌ、此資本家擁護ノ態度ト云フモノハ、近
來益〓露骨ニナッテ來タカノ觀ガアルノデアリマス、而シ
テ中流階級、下層階級ハマルデ眼中ニ無イト云フヤウナ
態度ヲ、私共ハ看取スルノデアリマス(「ノウ〓〓」「ヒ
ヤヒヤ」ト呼フ者アリ、拍手起ル)中流階級、下層階級ガ生
活難ノ爲メニ-失業ノ爲メニ、知ラズ識ラズ思想ガ惡化シ
ツツアル所ノ事情ト云フモノハ、深ク吾ミハ注目ヲシナケレバ
ナラヌ、或ハ外來思想ノ宣傳デアルトカ「デマゴーグ」ノ宣傳デ
アルトカ、サウ云フ淺薄ナコトデ、國民ノ思想ガサウ危險ニ
赴クモノデハアリマセヌ、然ルニ斯ウ云フコトヲ知ラザル眞似
シテ、恰モ資本家サヘ擁護スレバ、宜シイカノヤウニ見ユル態
度ヲ執ラレテ居ルト云フコトハ、恰モ斷崖絕壁ノ綠ニ立ッテ、
太平樂ヲ竝ベテ居ルト同ジ事デアルト思フノデアリマス(拍
手起ル)政府ハ何故ニ此失業問題ヲ斯ク閑却スルノデアル
カ、今ヤ原內閣ハ、內ニ二枚舌ヲ使ウテ平然タル所ノ文部
大臣ガアリマス(拍手起ル)責任ヲ知ラズ、武士道ヲ解セザ
ル所ノ陸軍大臣ガアリマス(拍手起ル)而シテ中流以下ノ經
濟狀態ニ盲目ナル所ノ大藏大臣モアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼
フ者アリ、拍手起ル)唯〓ノ失業者ノ群ハ、果シテ是等閣僚
諸公ノ此態度ヲ、此儘ニ許シテ行クデアリマセウカ、現內閣
ガ若シ誠意國政ニ當ルノ熱心ガアリマスルナラバ、何ハ措
テモ、此失業者救濟ト云フ問題ニ、全力ヲ傾注シナケレバナ
ラヌト信ズルノデアリマス(拍手起ル)政府ハ果シテ如何ナル
方針アリヤ、如何ナル計畫アリヤ、此點ニ就キマシテ、床次
內務大臣ヨリ御返答ヲ承リタイト思ヒマス、第四ニ司法權
ノ運用ニ關シテ、大木司法大臣ニ御尋ヲ致シタイト思ヒマ
ス、私ノ見ル所デハ、近頃司法權ノ運用甚ダ嚴正ヲ缺イテ、
人ヲシテ其威信ヲ疑ハシムルモノガ多イノデアリマス、其例
ヲ中シマスルナラバ、宮城縣第三區ノ選舉ニ於キマシテ、候
補者某氏ノ投票ニ數百票同一筆跡ノモノガアッタト云フ事
實ガアリマス、詰リ是ハ投票ノ僞造デアリマス、凡ソ立憲政
治ノ國ニ於キマシテ、投票ヲ僞造スルト云フコトハ、一〓〓〓〓
假借スベカラザル大罪デアルト信ジマス、然ルニ仙臺地方裁
判所ノ檢事局ハ、此事實ヲ閑却シテ、此犯罪ガ既ニ時效ニ
係ッテ、今日如何トモスベカラザル狀態ニ陷ッテ居ルノデアリ
マス、本件ノ選擧訴訟ガ提起サレマシタノハ昨年ノ六月デ
アリマシタ、選擧違反ノ行爲ガ時效ニ係リマスルノガ十一
月ニナッテ居リマス、六月カラ十一月マデノ間半年アリマス、
其間仙臺地方裁判所ノ檢事局ハ何ヲ致シテ居ッタノデアリ
マスカ、今日既ニ時效ニ係ッテ、如何トモスベカラザル狀態ニ
陷レクト云フコトヲ知ラズニ、氣ガ付カナカッタト云フコトヲ
辯解ナサルカモ知レマセヌガ、左樣ナ辯解ハ通リマセス、訴
訟ハ同ジ裁判所、同ジ構內ノ裁判所ニ於テ進行致シテ居
ルノデアリマス、早ク之ヲ知ッテ手ヲ著ケマスルナラバ、時效ニ
係ル前ニ之ヲ檢擧スルコトガ出來タニモ拘ラズ、之ヲ其儘ニ
放任シテ、今日如何トモスベカラザル狀態ニ陷レタト云フノ
ハ、洵ニ司法權ノ嚴正ヲ傷クルモノデアルトシテ、私ハ慨歎
ニ堪ヘナイ次第デアリマス(拍手起ル)ソレカラ第二ニハ極ク輕
微ナ事案デアリマスケレドモ、目下新潟地方裁判所長岡支
部ニ於テ進行致シテ居リマスル所ノ、某氏ニ係ル名譽毀損
事件デアリマス、此事件ノ告訴人ハ現內閣ノ某大官デアリ
マス、被告人ハ某衆議院議員外數名デアリマス、某大官收
賄ヲ爲シタリト云フ事實ヲ新聞ニ記載シタルノ故ヲ以テ、
某大官ガ告訴ヲシタノデアリマス、此事件ノ證人トシテ喚
問セラレタ者ガ又其某大官デアリマス、其某大官ヲ裁判所
ガ取調ベルニ當リマシテ、刑事訴訟法ニ規定セル成規ノ場
所ニ於テ之ヲ爲サズ、或ハ司法大臣官舎ニ呼ンデ之ヲ訊問
シ、或ハ裁判所ノ應接間ニ招ジテ茶ヲ出シ、椅子ヲ與ヘ、鞠
躬如トシテ之ヲ訊問ヲシタヤウナ事實デ、恰モ遠來ノ客ヲ
歡待スルカノ如キ態度ガアッタノデアリマス、是等ノ官憲ガ一
般ノ人民ニ對スル時ハ傲慢不遜、恰モ暴君ノ如キ態度デア
ル、大官ニ對スレバ斯ノ如ク戰々兢々タル態度ニ變ズルノデ
アル、司法權ノ威信ヲ傷クルコト最モ大ナル事實トシテ、私
ハ之ヲ玆ニ擧グルノデアリマス、次ニ私ノ最モ了解ニ苦シム
コトハ、東京市ノ疑獄事件ニ關スル事デアリマス、昨年十一
月以來天下ノ耳目ヲ聳動致シマシタ所ノ東京市疑獄事
件ハ、明治神官參宮道路ノ不正事件ニ其端ヲ發シマシテ、
砂利問題、瓦斯値上問題ニ及ビ、下水問題、土地貸下拂
下問題ニ至シテ居リマス、東京市ナル一ツノ自治團體ハ、世
間ヨリ伏魔殿デモアルガ如キ感ジヲ以テ迎ヘラレテ居
ルノデアリマス、尤モ直接之ガ檢擧ノ任ニ當リマシタ所ノ
太田黑檢事正ノ勞ハ、私頗ル多トスル次第デアリマス、
是ハ感謝ヲシナケレバナラヌノデアリマスガ、此疑獄事件ニ
關聯致シマシテ、十一月二十六日カニ起訴收監セラレタ所
ノ本田親〓ナル者ガアリマス、彼ハ東京道路株式會社ノ取
締役デアルト云フコトデゴザイマス、彼ノ日記ガ收監ト同時
ニ司法官憲ノ押收スル所トナリマシタ、其日記ニ大正九年
八月某日ノ下ニ、自己ノ飼育中ノ馬ヲ、或ル現內閣ノ大官
ニ贈ッタト云フコトガ書イテアルサウデアリマス(拍手)此點ハ
明カナル御辯明ヲ願ヲタ方ガ雙方ノ爲メニ宜シイカト心得マ
スカラ、遠慮ヲセズニ之ヲ申上ゲマス、愛馬ヲ貰ッタノハ、大木
司法大臣ダト云フコトガ傳ハッテ居ルノデアリマス(拍手)若
シ是ガ事實デアルト致シマスレバ實ニ容易ナラヌ事デアリ
マス、勿論本田親清ガ法相ニ何事ガ請託シタト云フ事實モ
聞キマセヌ、大木法相ガ請托ヲ受ケタト云フ事實モ聞キマ
セヌ、大木法相ハ旣ニ人モ知ル如ク、性質落磊ナル所ノ、物ニ
凝滯セザル所ノ快男子デアリマス、是ハ私モ承認致シマス、馬
ヲ貫ッタカラト云ッテ、格別ノ事ハナイ譯デアリマセウケレドモ、
馬ヲ貰ッタ人ガ、檢事ヲ指揮監督スル所ノ司法大臣デアッテ
馬ヲ贈ッタ所ノ人ハ、其檢事ニ檢擧セラレタ被告人デアルト
云フニ至ッテハ(拍手起ル)私ハ此事實ハ將來此東京市疑獄
事件ノ發展ニ、一ツノ黑イ影ヲ投ゲルモノデハナイカト云フ
コトヲ心配スル者デアリマス、疑獄事件ハ今日殆下贈賄者
側ノ目星イ者ヲ悉ク擧ゲ得タニモ拘ラズ、賄賂ヲ貰シタト云
フ方ノ側ノ人ハ極ク僅カデアリマス、マダ擧ゲラレテ居ナイカ
ノヤウニ見エマス、卽チ檢擧ノ手先ガ何トナク鈍ッテ澁滯シ
行惱ノ態デアルカノ如クニ新聞ニモ書イテゴザイマスガ、私モ
亦斯ク思フノデアリマス(「事實デアル」ト呼フ者アリ」)殊ニ其
檢擧セラレタル元兒某君ノ如キハ、其收監セラレザル前ニ當
リマシテハ、警視廳ノ書部ヲ手先ニシテ、司法官憲ノ調ベタ
モノヲ筒拔ケニ間イテ證據湮滅ノ資料ニ供シ、一度收監セ
ラレタル後ハ、看守何某ヲ買收シテ、内外交通ヲシテ證據湮
滅ヲ圖ッテ居ルヤウナコトガ新聞ニ載ッテ居リマス、其看守ハ
旣ニ收監セラレテ居ルコトモ事實デアリマス、是レ實ニ司法
權ノ威信ヲ傷クル大ナルモノデアリマシテ、人ヲシテ司法權
果シテ健全ナリヤヲ疑ハシムル點デアラウト信ズルノデアリ
マス、大木法相ハ曾テ司法官ヲ化石ト罵ッタコトガアリマス、
罵ラレタ司法官ハ、法相ノ談話ヲ記載シタル束京日々新聞
記者何某ナルモノヲ取調ベマシテ、新聞紙法第四十一條ニ
依シテ起訴スルバカリニナッタ時ニ、之ヲ差止メタ者ガアリマス、
上官ノ權威ヲ以テ此起訴ヲ差止メタ者ハ、卽チ大木司法
大臣デアッタノデアリマス、若シ此差止ガ無カッタナラバ、此東
京日々新聞記者ノ某ハ當然起訴セラレ、而シテ自ラ累ガ大
木法相ニ及ンダコトデアラウト思フノデアリマス、當時司法
官ハ、マダ其當時ニ出來上ッテ居リマセヌ、東京區裁判所ノ
家、建築中ノ東京區裁判所ノ大廣間ニ度ミ集合シテ、此問
題ヲ議シタノデアリマシタガ、當時淚ヲ呑ンデ長官ノ命令ニ
服從ヲシテ、此起訴ヲ思止ッタト云フコトデアリマス、今ヤ
其司法官ハ、今囘ノ東京市疑獄事件ニ於テ、果シテ自分等
ガ化石シテ居ルヤ否ヤヲ試驗スベキ絕好ノ機會ニ到達シタ
ト、私ハ信ズルノデアリマス、(拍手起ル)大木司法大臣ハ此
問題ニ就キマシテハ、如何ニ處置セラレントスルノデアリマス
カ、自ラ疚シイ所ハ無イデアリマセウ、無イニシマシテモ、世
人ハ尙ホ疑惑ノ眼ヲ以テ見テ居リマス、司法官-司法權
ノ鞭ハ人ヲ打ツバカリガ能デナイ、今ヤ此鞭ヲ以テ司法大臣
自ラノ肩ヲ打ツベキノ時ガ來タノデアル、(拍手起ル)大木伯
ノ先考喬任卿ハ佐賀ノ藩士デアリマス、葉隠集ノ武士道ニ
依ッテ養成セラレタ所ノ才人デアリマス、葉隠ノ武士道ハ何
ヲ〓ヘテ居リマスカ、常ニ死ト云フコトヲ〓へテ居リマス、一
ツ二ツノ場合ニ於テハ、死ヲ覺悟スベシト〓ヘテ居リマス、若
シ圖ニ外シテ死ンダナラバ、犬死氣狂ト罵ラレテモ、腰拔ト言ハ
レルヨリモ增シダト云フコトヲ〓ヘテ居リマス、(拍手起ル)法
相今ヤ此葉隠ノ武士道一依ッテ、身ヲ處スル時ガ來タノデハ
ナイカト私ハ思フノデアリマス、(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ、拍
手起ル)番任卿ハ明治七年佐賀ノ亂ニ際シマシテ、身司法
卿ノ重職ニ居リナガラ、親友タル江藤新平ガ刑ニ處セラレ
ル時分ニ、之ヲ傍觀シテ居タ所ノ人デアリマス、ソレバカリデ
ハナイ、刑ニ處セラレタ後、其維新ノ功臣ノ首ガ三尺高イ本
ノ空ニ掛ケラレタノヲモ傍觀シ、之ヲ寫眞ニ撮ッテ賣ルト云フ
ヤウナ慘酷ナ行爲ヲシタコトヲモ傍親シタル所ノ人デアリマ
ス、江藤新平若シ靈アラバ;、必ズ地下ニ於テ大木先考ヲ恨ン
デ居ルデアラウト思フノデアル(拍手起ル「馬鹿ナコトヲ言フ
ナ」ト呼フ者アリ)モウ濟ミマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=61
-
062・奧繁三郎
○議長(臭繁三郞君) 靜ニ御聽キナサイ-鈴木君一寸
故人デハアリマスガ、議院法ニ他人ノ身上ニ渉ルコトヲ愼メ
トアリマスカラ、注意シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=62
-
063・鈴木富士彌
○鈴木富士彌君(續) モウ濟ミマシタ、(「懲罰々々」ト呼フ
者アリ)忍ブベカラザルコトヲ忍ブト云フコトハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=63
-
064・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 静ニ
〔「取消スベシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=64
-
065・鈴木富士彌
○鈴木富士彌君(續) 此點ニ於キマシテ如何ナル態度ヲ
執ラレルノデアルカ、敢テ司法大臣ノ御答辯ヲ要求スル次第
デアリマス、私ノ質疑ハ以上四點ニ(「取消セ取消セ」ト呼フ
者アリ)上シテ居リマス(拍手起ル)
〔「取消セ取消セ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=65
-
066・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜〓ニ-静ニナサイ-鈴木富
士彌君ニ一言シマス、先刻ノ演說中ニ二枚舌ヲ使ウテ平
然タル文部大臣アリト云フ言葉ハ(「然リし〓」ト呼フ者ア
リ)議院法ノ無禮ノ言ト云フコトニ觸レル嫌ガアルト思ヒマ
ス、ソレハ議長ニ於テ速記ヲ見夕上、取消ヲ命ズルカモ知レ
マセヌガ、鈴木君自身ニ於テモ御考アルコトヽ田心ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=66
-
067・鈴木富士彌
○鈴木富士彌君 唯〓御言葉ガアリマシタガ、昨日下岡
忠治君ノ御演說中ニ、嘘吐文相ト云フ言葉ガゴザイマシタ
ガ、是ハ差支ナイト云フ御意見デアリマスカ、如何デゴザイマ
スカ
〔「如何デゴザル」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=67
-
068・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸君、徹底スルヤウニ御聽下サイ、
下岡君ノハ四十三-昨年ヨリ世ニ噂モアルト云フ言葉ニ
ナッテ居リマス、速記ヲ調ベマシタ、今貴方ノハ白己ノ意思ヲ
以テ斷定ナスッタヤウニ認メマシタカラ注意ヲシマス、私ハ速
記ヲ見タ上取消ヲ命令スルカ判リマセヌ、唯〓ハ注意ヲ喚
起シテ置キマス(「議長公平」ト呼フ者アリ)
〔國務大臣床次竹二郞君登壇、拍手起ル〕
〔「文部大臣ノ舌ヲ御調ベナサイ一枚カ二枚カ」ト呼
フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=68
-
069・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 御答致シマスガ、人口ノ問
題ハ是ハ洵ニ重大ナ問題デ、何人モ考慮シナケレバナラヌコ
トデアリマシテ、是レノ解決ハ固ヨリ一ニシテハ足リマスマイ、
或ハ工業ノ發展ヲ圖リ、或ハ食糧問題ニ注意ヲスル、若ク
ハ又日本ノ如キ海國ニ於テハ水產業ニ注意ヲスル、又海外
出稼ノ途ノ講ズルトカ、中〓決シテ一樣ノ問題デハナイ、洵
ニ重大ナ問題デアリマス、是ハ御同感デアリマスガ、ソンナラ
バト申シテ、今此出產ニ制限ヲ加ヘルカト云フコトハ、是亦
餘程考慮スベキ事デアリマセウ、學說トシテハ近來色ミアリ
マセウガ、私ハ今ノ日本ノ現狀ニ於テハ、其學說ニハ同意ヲ
致サヌ積リデアリマス、人口ノ制限ヲ加ヘルト云フニトハ
方カラ申セバ國民ノ士氣ニハ隨分關係スルダラウ、免ニ角
現在ノ狀況ニ於テハ、直チニ其說ニハ同意ハ致シマセヌカラ、
随テ私トシテハ其論說ヲ〓究スルコトニ於テハ、一向關スル
所デアリマセヌケレドモ、其方法手段ヲ說キ、實行ヲ進メル
段ニ至ッテハ、取締ヲ致ス積リデアリマス(拍手起ル)次ニ失
業ノ問題ニ就テ御話ガゴザイマシタガ、大體私ノ考ヲ申セバ
此職業ノ紹介ニ就テハ、是ハ前々ノ議會カラモ中シテ居リ
マスガ、今日ノ我國ノ實際ニ於テハ、ソレ〓〓地方公共團體
ヲシテ其施設ヲ爲サシメテ、丁度然ルベシト考テ居マス、或
ハ英吉利等ニ於テモ、是等ノ施設ヲ總テ國デ造ンテ居リマス
ケレドモ、マダ勞働者ノ數カラ中シテモ、口本ハ斯ノ如キ狀
態デハナイト斷定シテ居ルノデス、地方ノ公共圍體ヲシテ其
等ノ施設ヲセシメ、而シテ之ヲ中央ニ經メル所ノモノガ、一ツ
國デ或ハ要リマセウ、ソレモ差向ハ協調會ナル一ツノ團體ガ
アッテ、是カラ其仕事ニ手ヲ著ケ始メタ所デアリマスカラ、或
ハ當分ハソレデ宜クハアルマイカト思ウテ「居ル所デス、就職ヲ
依賴スベキ職業紹介所ノ設置ヲ促シテ、今日ハ全國ニ於テ
百二十-確ナル數ハ覺エマセヌガ、其位ノ數ハ出來タノデ
アリマス、尙ホ先刻御話ノ通リ、職業紹介所法案ヲ提出ス
ル段ニナリマスレバ、ソレ〓〓其施設ニ就テハ補助ヲ與ヘ
テ、尙ホ此上ニモ奬勵スル積リデアリマス、我國ノ目下トシ
テハソレデ宜シイ積リデアリマス、而シテ失業者ガ出タトキニ
如何ニシテ之ヲ救濟スルカト云フ問題ハ、各國共ニ皆ナ考
慮ヲ致シテ居ル問題デアリマスガ、併シ多クハデス、公共的
工事ヲ起シテ其所デ收容スルノガ多イヤウデス、ンレデ若シ
我國ニ於テモ甚シクサウ云フ狀態ニナレバ、固ヨリ政府ヲ始
メ、公共團體ノ此工事ニ造繰ヲシテ、是ニ收容致シタラ宜
カラウト思ウテ居ル、ソレカラ又尙ホ一方ニ於テハ、使用者
ガ被使用者ヲ解ク場合ニ於テハ。相當ナ温キ考ヲ以テ措置
スルガ宜シカラウト考ヘル、是等ニ就テハ既ニ昨年ソレ〓〓
地方長官ヲ通シテ、其行ハレムコトヲ希望致シテ居ル次第
デアリマス、然ルニ今日マデ私ノ見ル所ヲ以テスレバ、幸ニ我
國ノ失業問題ナルモノハ甚シク窮迫ナル狀態ニ居リマセヌヽ
先刻十二万ト云フヤウナ數字ヲ御讀上デアリマシタガ、私
ハ必シモ彼ノ統計ヲ以テ直ニ飯ノ食へナイ人トハ看テ居リ
マセヌ、段々不景氣ニナッテカラ、ソレ〓〓解雇セラレタ人こモ
アリマスケレドモ、其人〓ノ行先ハ、或ハ〓里ニ歸ッテソレン
レ職ヲ求メル、若クハ他ノ所ニ轉職シテ居ルト云フ今日ノ
有樣デアリマス、是ハ一方カラ申セハ、我國ノ工業ガ未ダ歐
羅巴ニ比較シテ進ンデ居ラヌト云フ點ニモ或ハナルカモ知
レナイガ、一方カラ申セバ世襲的ノ何ト云フカ、専門的ノ勞
働者ガ未ダ數ガ少ナイノデアリマス、ソレデ甚シク歐羅巴ノ
如キ有樣ニハナラヌ、數日前ノ新聞デ見ルト一云フト、英吉利
ノ失業者ノ數ハ八九十万アルヤウデス、日本ノ勞働者ノ職
工ノ數ガ百五六十万-二百万以内デアリマス、非常ナ相
違デス、如何ニ相違ガアッテモダ、今日飯ノ食へヌト云フ人ガ
アレバ、相當ノ世話ヲスルコトガ當前デアリマス、併ナガラ昨
今職業紹介所ノ手ニ依クテ調ベテ見テ居ル所デハ、甚シ
ク窮迫ノ狀態ニナッテ居リマセヌ、是ハ幸ニ私共ハ心
ヲ安ンジテ居ル所デアリマス、併シ昨今ニモ段々工場
ヲ閉ヂタリスルモノナドガアリマスカラ、此先キ如何ナル狀態
ニナルカソレハ知リマセスガ、左樣ナ時ニナレバ前申ス通リ、
大凡各國デ行ハレテアル救濟ノ方法ガ大〓殘ッテ居ル、ソレ
ニ依シテ銳意致スヨリ外アルマイト思ウテハ居リマスケレド
モ、今日ノ所デハ幸ニ甚シイ狀態ニナ。テ居ラナイ、社會政
策的ノ施設ニ就テハ、先程安藤君ノ御質問モアリマシタ
是ハ此處デ一々申スノハ面倒デアリマスカラ、何レ更ニ御質
問デモアリマスレバ、詳シク豫算會議ノ時ニデモ申上ゲタ方
ガ私ハ宜シカラウト思フ、何等政府施設スル所ナイト云フコ
トハ、是ハ如何ナルモノデアリマスカ、私トシテハ甚ダンレハ
其儘御請スルコトハ出來マセヌ、勞働者保險法案是ハ私ノ
所管デハアリマセヌガ、何レ農商務大臣カラ詳シク申上ゲマ
セウケレドモ、併シ既ニ昨年ノ議會デアリマシタカ、御協賛ヲ
得テンレ〓〓勞働保險ノ事ハ調査スルコトニナッテ居ル、是
ハモウ多年ノ問題デアリマシテ、規則ヲ作ルコトハ外國ノ例
ヲ以テ來レバ恐ラク譯ハアリマスマイ、併ナガラ能ク日本ノ
事情ニ嵌メテ之ヲ制定スルト云フノニハ、餘程注意ヲ要ス
ル事デアリマス、決シテ是コソハサウ漫ニ急グ必要ナク、能ク調
査シテ制定シタ方ガ然ルベキコトヽ私ハ考ヘテ居ル、尙ホ勞
働組合ノ事ニ就テ重ネテ御質問デアリマシタガ、是ハ第一
御考ヲ願ッテ置クコトハ、我國ニ於テハ極メテ自由デアル、
例ヘバ同種職業ヲ基礎トシタ組合ヲ造ラウトモ、又苟モ勞
働者デアルナラバ、寄ッテ組合ヲ造ラウトモ、今日現在種々
雜多ノモノガ幾ツモ出來テ居ルノデス、要ハ是等ノ組合ヲ
如何ナル形ヲ以テ立法スルカト云フコトガ問題デアリマセ
ウ、其點ニナレバ同種職業ヲ基礎トスルカ、或ハソレデナクテ
モ宜シイカト云フコトハ、是ハ所謂百年ノ計デ、餘程十分ニ
審議シテ宜イ事デス、是ガ今日出來ナケレバ、勞働ニ關スル
問題ハ、マルデ根本的解決ガ著カナイカノ如ク御考ニナルコ
トハ、少々行過ギノコトデアルト私ハ考ヘル、現ニ歐羅巴ニ
於テハ古クカラ勞働組合ガ出來テ居リマセウ、出來テ居ッテ
モ此勞働問題ノ解決ハ決シテ著イテモ居ラヌ、我國ハ此問
題ニ就テハ世界中デモ今日ハ最モ安定シタ狀況ニ在ルト
私ハ考ヘマス(拍手起ル)若シ勞働組合ヲ以テ勞働問題ノ
解決ガ直ニ出來ルト云フノナラ、歐羅巴ハ餘程日本ヨリモ
良イ狀態デアルト謂ハナケレバナラヌ(拍手起ル)左樣ナモノ
デハアリマセヌ、是ハ實際ノ事デス(「無能ダ」ト呼フ者アリ)
決シテ理窟デ行ク問題デハナイ、況ヤ今日ハ此勞資ノ關
係、其安定ヲ得ルニハ、獨リ勞働組合ノミデハイカヌ、協調
主義ヲ以テ進マナケレバナラヌト云フ議論ガ、御承知ノ如ク
段々蔓。テ來居ル、是等ニ就テモ相當ナ考ヲスベキデアッテ、
紹介ノミヲ以テ論ズベキモノデハナイト私ハ考へテ居ル、ソレ
カラ隨テ現内閣ハ單ニ資本家ノミヲ擁護シテ、資本ナラザ
ル人ニニ對シテハ、極メテ同情心ガ無イガ如クニ御論ジデ
アッテ、而モ其論據ハ失業問題ヲ提ヘテ、勞働組合法ヲ制
定セザルト云フコトノミニ重キヲ置イテ御論ジデアル(鉛木
富士彌君「ソレハ例デス」ト呼フ)或ハ多數ノ人ノ中ニハサ
ウ云フ御論ヲナサッタナラバ、喜ブ人ガアルカモ知レマセヌガ、
併シソレハ議論ノ上ダケデセウ、實際ニ於テ決シテ貴方ノ御
論ジノ如キ狀態デハナイノデス(拍手起ル)私共ハ斯ウ云フ
ヤウナ問題ハ、能ク現在ノ狀況ニ立脚シ愆テ、マラザルコト
ニシテ進ムガ最モ宜シカラウト思ウテ居ルノデアリマス(拍手
起ル)
〔「解ラヌノダ、無能」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=69
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070・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 大木司法大臣
〔國務大臣伯爵大木遠吉君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=70
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071・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=71
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072・大木遠吉
○國務大臣(伯爵大木遠吉君) 鈴木富士彌君ノ御質
問ニ御答ヲシマス、第一ニ陪審法ニ就テノ御質問デアッタノ
デアル、陪審法案ハ目下樞密院ニ於テ審議中デアリマス、
未ダ其綱領モ發表セズ、其起案モ發案セズ、此時ニ當リマ
シテ、陪審法ノ事ニ就テハ如何ニ御尋ガアッテモ私ハ御答ヲ
致シマセヌ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)甚ダ物足リナイト云フ
御感想ガアルカモ知レマセヌガ、是ハ陪審法ヲ進行スル上ニ於
テ、斯樣ナ御尋ニ御答セザルコトガ目的ヲ達成スル途ト信
ジマスカラ、私ハ決シテ申サヌノデアル、ソレカラ司法權ノ運
用ニ就テ段々御質疑ガアッテ、宮城縣ノ何區デアリマシタカ、
司法權ノ運用上、甚ダ其信賴ヲ拂フ能ハザル行爲ガ有ルト
云フ御質疑デアル、決シテ左樣ナコトハ無イノデアル(「有
ル〓〓」ト呼フ者アリ)有ルト云フノハ貴方ノ御意見デアル
吾輩ハ無イト信ズルノデアル、司法大臣ノ官邸ニ於テ茶菓
ヲ呈シテ以テ、權威アル某大官ヲ優遇シタナドトハ、何ヲ指
シテ左樣ナコトヲ言フノデアルカ、全ク無イ事デアル、君ハ官
邸ニ居ラヌカラ知ラヌノデアル、官邸ニ住シテ居ル者ハ斯ク
申ス拙者デアル、拙者ガ知ラザルコトヲ君ガ知ル筈ガナイ
(拍手)最後ニ鈴木君ニ吾輩ハ感謝ヲ致ス、東京市疑獄事
件ニ就テ、本田某ト申ス土方ノ親分ハ私ハ毫モ知ラヌ、六千
万同胞中本田某ノ存在ヲ知ラナイノデアル、世界中ニ斯ノ
如キ人物アルコトヲ知ラナイノデアル、隨テ馬ヲ貰ッタ-飛
ンデモナイ話デアル、馬ヲ貰ッテドウスル、馬ヲ貰ヘバ飼料モ
要ル、馬小屋モ要ル、馬ナドヲ貰ッテ堪ルモノデナイ、私ハ斯
樣ナ事ハ今ノ地位ニ居ラウガ居ルマイガ、常ニ考ヘテ居
ルノデアル、祭時、賀節、吉凶相慶弔スル場合ニ於テノミ慣
例トシテ、祭時賀節ノ贈答ハ是ハ據口ナイ事デアル、馬ヲ遣
ルノ牛ヲ遣ルノ、斯樣ナ大キナモノハ如何ニ親近ノ間デモ、
受クベキモノデハナイ、私ハ何力大變鈴木君ニ譽メラレタ、
磊落豪放トカ何トカ言ハレタガ、磊落デアッテモナクテモ、馬
ダノ牛ダノヲ貰ッテ相當デアルヤ否ヤハ、一目瞭然デアル、本
田何トカ云フ土方ノ親方カラ私ガ馬ヲ貰クタ、何事ヲ言フ、
私ハ是ハ新間ニ書イテアッタノヲ見タ、何トカ云フ新聞カノ
記事ニ在ッタ、齊東野人ノ言取ルニ足ラズ(此時發言スル者
アリ「退場ヲ命ゼヨ」ト呼フ者アリ)靜ニ靜ニ-齊束野人ノ
言ハ聽クニ足ラズ、一笑ニ附シテ可ナリト言ウタ人モアッタ、
或ハ齊東野人ノ言取ルニ足ラザルカモ知レヌガ、吾輩ノ本
領トシテ斯樣ナ事ハ不問ニ附セラレヌ、故ニ是ハ公然ト取
消ヲ申込ンダノデアル、併シ普通ノ取消位デハ不滿足デア
ル、古人モ一念此ニ到ル每ニ腸九廻スト言ウテ居ル、吾輩
ハ實ニ痛ニ障ック心外千萬デアッタ、是レ以上何カ取消ス途
ガアックナラパーー何カ取ルベキ手段ガアルカト考慮シツヽ
アッタ、然ルニ帝國議會ノ議場ニ於テ端ナタモ此問題ガ起リ
是ニ於テ諸君選良ノ面前ニ於テ事ノ眞相ヲ愬ヘテ以テ、根
本的ニ溜飲ヲ下ゲル機會ヲ得タルコトヲ鈴木君ニ感謝スル
ノデアル、吾輩ハ鈴木君ガ考ヘルヤウナ、ソンナ粗末ナ人物
デナイト云フコトヲ爰ニ申シテ置ク、要スルニ鈴木君ノ私ニ
對スル質疑-難詰的質疑ハ、若シ果シテ眞ナラバト云フ
前提ノ下ニ御發シニナッタ、所ガ憚リナガラ若シ果シテ眞デ
ナカッタノデアル、總テ消エテシマッタ馬ヲ吾輩ガ貰ッター
何ヲ言フ、其根本ガ消エテ居ルノダカラ、鈴木君ハ大木トシ
テ斯樣ナコトハ無イ筈デアルト云フ御疑念ヨリ發シテ、今日
ノ御質疑ニナッタモノト思フ、所ガ若シ果シテ眞ナラバト言フ
ガ、決シテ眞デナイ、何等夢ニモ知ラヌ事デアリマス、能ク事
實ノ誤アルトカ何トカ言フガ、誤リドコロデハナイテンデ數カ
ラ棒ノ話デアル、全ク痴人ノ夢デアル鈴木君ハ此點ニ於テ、
私ハ護劣不才、外ニ取ルベキ所無シト雖モ、人格ノ一點ニ
於テハ決ンテ他ニ劣ラヌ積リデアル、ドウゾ御安心アルヤウ
ニ、憲政會ノ有數ナル人物タル鈴木君ハ、能ク其點ハ御諒
知アランコトヲ希フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=72
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073・奧繁三郎
○議長 奧繁三郞君)岩崎動君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=73
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074・岩崎勲
○岩崎勳君 國務大臣ノ演說ニ對スル質疑ハ本日ハ此
程度ニ止メ、更ニ明二十七日定刻ヨリ開會ノ本會議ニ繼:
續セラレンコトヲ望ミマヌ
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=74
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075・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=75
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076・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 仍テ動議ノ如ク決シマシタ、明日
ノ日程ハ公報ヲ以テ御報告致シマス、本日ハ是テ散會
午後五時二十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X00619210126&spkNum=76
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