1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十年二月十五日(火曜日)午後一時十五分開議
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議事日程 第十三號 大正十年二月十五日
午後一時開議
質問
一 義勇奉公の精神衰退に關する質問(田中萬逸君提出)
二 滿洲に於ける土地商租に關する質問(古賀三千人君提出)
三 府縣行政監督に關する質問(木檜三四郎君提出)
四 都市政策に關する質問(板野友造君提出)
五 福島縣若松市補闕選擧に於ける干渉壓迫に關する質問(清水留三郎君提出)
六 秋田縣第三區補闕選擧に於ける干渉壓迫に關する質問(清水留三郎君提出)
七 市町村會の階級選擧制撤廢に關する質問(作間耕逸君外三名提出)
八 石油政策に關する質問(押川方義君提出)
九 在外朝鮮人取締竝朝鮮統治に關する再質問(山道襄一君提出)
十 浦鹽に於て我か歩哨の米國將校に對し任務執行に關する質問(田中武雄君提出)
十一 思想問題に關する質問(小橋藻三衞君提出)
十二 帝國軍隊か鮮人を虐殺し學校及教會に放火せりとの事件に關する再質問(清瀬一郎君提出)
十三 思想問題に關する質問(清瀬一郎君提出)
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第一 朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 軍用自動車補助法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 一年現役小學校教員俸給費國庫負擔法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 臺灣に施行すへき法令に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 明治三十二年法律第四十號中改正法律案(上畠益三郎君提出) 第一讀會
第八 土地收用法中改正法律案(上畠益三郎君提出) 第一讀會
第九 決議案(朝鮮統治に關し調査委員會設置の件)(中野正剛君提出)
第十 徴兵令事務施行細則改正に關する建議案(植原悦二郎君提出)
第十一 産業組合法及重要物産同業組合法改正竝同組合振興に關する建議案(土井權大君提出)
第十二 成年調査に關する建議案(奧村安太郎君外一名提出)
第十三 石油政策に對する燃料調査會設立に關する建議案(高野毅君提出)
第十四 特別市制促進に關する建議案(作間耕逸君外五名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=0
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001・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸設ノ報告ヲ致シマス
〔原田書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
朝鮮醫院及済生院特別會計法中改正法律案
軍用自動車補助法中改正法律案
(以上二月十四日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
酒造稅法中改正法律案
提出者中村〓造君原田佐之治君
吉良元夫君武田德三郞君
高橋金治郞君
刑事訴訟法中改正法律案
提出者禱苗代君
刑法中改正法律案
提出者禱苗代君
刑法中改正法律案
提出者宮古啓三郞君野副重一君
永屋茂君中島鵬六君
禱苗代君北井波治目君
〓水市太郞君中西六三郞君
櫻井松坂間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者津野田是重君天春文衞君
宮田光雄君大道寺慶男君
荻田悅造君八木逸郞君
磯田久米三郞君玉置良直君
岩本平藏君伊坂秀五郎君
勢江鐵道速成ニ關スル建議案
提出者天春文衞君加藤久米四郞君
大道寺慶男君伊坂秀五郞君
西村伊亮君小菅劍之助君
中村喜平君川村數郞君
西條松山間鐵道豫定線一部變更ニ關スル建議案
提出者成田榮信君矢野丑乙君
高山長幸君深見寅之助君
渡邊修君河上哲太君
溫泉政策ニ關スル建議案
提出者成田榮信君木下謙次郞君
港灣行政ニ關スル建議案
提出者三善〓之君福井三郞君
坪田十郞君原田佐之治君
本下甚三郞君
鹿兒島縣各離島航海補助增額ニ關スル建議案
提出者禱苗代君萩亮君
日能辰次君岩切重雄君
久木田叶君樋渡治右衞門君
海江田準一郞君岩崎宗茂助君
(以上二月十二日提出)
未成年者飮酒禁止法案
提出者根本正君高見之通君
鈴木錠藏君齋藤壽雄君
松山常次郞君山崎猛君
陸上運輸機關及電氣企業者ノ損害賠償責任ニ關ス
ル法律案
提出者上畠益三郞君
三原吳間鐵道敷設速成ニ關スル建議案
提出者井上角五郎君望月圭介君
河相三郞君永屋茂君
決議案(阿片取扱ニ關スル件)
提出者小橋藻三衞君大口喜六君
鮎川盛貞君
臺灣ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律案ニ對スル修正
案
提出者〓瀨一郎君
臺灣ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律案ニ對スル修正
案
提出者本田恆之君高木正年君
古賀三千人君永井柳太郞君
(以上二月十五日提出)
一今十五日提出者ヨリ撤回セラレタル議案左ノ如シ
酒造稅法中改正法律案
提出者中村〓造君原田佐之治君
吉良元夫君武田德三郞君
高橋金治郞君
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
司法權ノ威信ニ關スル質問主意書
提出者橫山勝太郞君三木武吉君
八並武治君
(以上二月十二日提出)
南滿洲鐵道株式會社ニ關スル質問主意書
提出者早速整爾君橋本喜造君
賴母木桂吉君小泉又次郞君
綾部惣兵衞君
(以上二月十四日提出)
一昨十四日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員土井權大君提出小農救濟ニ關スル質問
ニ對スル答辯書
衆議院議員正木照藏君提出薩哈嗹洲占領ニ關スル
政府ノ眞意質問ニ對スル答辯書
〔小農救濟ニ關スル質問主意書ハ大正十年二月一日
速記錄第九號一四九頁揭載〕
大正十年二月十四日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員土井權大君提出小農救濟ニ關スル質問ニ
對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員土井權大君提出小農枚濟ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
政府ハ農產物生產費減少ノ爲ニハ栽培技術ノ發達改
良農具使用ノ普及肥料其ノ他ノ低價供給等ヲ期スル
爲各般ノ施設獎勵ヲ爲シ農家ノ生活費ヲ輕減シ生計
上ノ緩和ヲ圖ル爲ニハ產業組合等ヲ督勵シテ之ニ當ラ
シムルト共ニ民力ノ涵養生活ノ改善ヲ獎メツヽアリ尙將
來一層是等ノ施設奬勵ニ力ヲ致スヘク食糧ノ充實安
定ニ關シテハ〓糧局ヲ新設スルト共ニ臨時財政經濟調
査會ノ答申シタル所ヲ參酌シ適當ナル施設ヲ爲サムトス
次ニ小作農ノ保護自作ノ維持創設ニ關スル事項ハ目下
小作制度調査委員會ニ附議シ調査中ニシテ農家經濟
調査ハ農會ニ補助シテ之ヲ行ハシメツヽアリ農村ノ金融
機關ニ付テハ一層產業組合ノ普及發達ヲ圖ルト共ニ聯
合會ノ活動ヲ促ス樣獎勵ヲ加エ其ノ目的ヲ達セシメム
トス
右及答辯候也
大正十年二月十四日
農商務大臣男爵山本達雄
內務大臣床次竹二郞
薩哈嗹洲占領ニ關スル政府ノ眞意質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月一日
提出者正木照藏
賛成者田中武雄
外二十九人
薩哈嗹洲占領ニ關スル政府ノ眞意質問主意書
「ニコラエウスク」港虐殺事件ニ對シ帝國政府カ薩哈嗹
洲ノ一部ヲ占領シタル主意ハ昨年七月三日ノ宣言ニ依
リ明ナリ然ルニ其ノ宣言署名者人一人タル大木司法大臣
ハ同年十月八日西下ノ途次神戶姫路問ノ汽車中ニ於
テ神戶又新日報記者ニ對シ左ノ談話ヲ爲シ同新間ニ依
テ之ヲ世ニ公ニセラレタリ是レ果シテ帝國政府薩哈嗹
洲一部占領ノ眞意ナルヤ若眞意ニ非ストセハ大木司法
大臣ハ何ヲ以テ此ノ如キ談話ヲ爲セシヤ政府ハ之ヲ以
テ帝國外交ノ上ニ。大ナル支障ヲ來タスコトナシト認メラ
ルルヤ
マタ、田中陸相カ辭職ナトスル理由モ必要モ全然起,
テキナイテハナイカ田中陸相カ辭職スルノシナイノ臣責
ヲ盡スノ盡サナイノト反對派ノモノハ攻撃スルカ田中
陸相ハ立派ニ臣責ヲ盡シテキル、其執ツテ來タ處置ハ
決シテ失敗テハナイ、自分ハ過般樺太視察ニ行ツテ來タ
カ其旅行ノ結果益、田中陸相ノ執ツタ處置ノ國家ニ功
勞サエアレ、決シテ國辱ヤ失敗ヲ招イタモノテナイノヲ
言明シ得ル念ヲ强ウシタ、ソレハ世間ノ云フ如ク尼港
殉難七百ノ亡靈ニ對シテハ其犠牲トシテ同情スヘク
其事實タルヤ悲慘テアル、悲慘テアリ同情スヘキ物タ
カ其七百ノ犧牲カ國家ニ齋ス國家ヘノ功績收利ハ實
ニ偉大ナモノテ彼ノ旅順ノ役ニ數萬ノ兵ヲ犧牲トシテ
ヨリモ、又日露戰役全部ノ大犧牲ニ比シテモ國家將
來ニ齎ス效果ノ決シテ劣ルモノテナイノヲ斷言スル、三
百餘名ノ住民ノ慘禍ト三百名ノ軍人ノ戰死トニ依ツ
テ國家カ將來ニ得ル利益ハ莫大ナモノタ、樺太南半ヲ
得タ日露ノ役ニ比シ今度ノ尼港ノ事件カ如何ナルモ
ノヲ日本ニ獲得シ能フカ其結果ニ見テ然ル後兎角是
非ノ批判ヲスヘキカ妥當テ其事件ノ後日ノ成行ヲ監
督監視スルノ要ハアルカ徒ニ非難攻撃ヲ事トスルハ甚
夕其當ヲ得タモノト云ヘナイ一體樺太北半分ハ南半
分ヨリ土地モ豐カニ諸事整フテキル上ニ元來カ樺太
全島日本ノ有テアツタノヲ忘レテハナラナイ
右及質問候也
大正十年二月十四日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員正木照藏君提出薩哈嗹洲占領ニ關スル政
府ノ眞意質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員正木照藏君提出薩哈嗹洲占領ニ關ス
ル政府ノ眞意質問ニ對スル答辯書
質問書掲記ノ如キ談話ヲ爲シタルコトナシ
右及答辯候也
大正十年二月十四日
司法大臣伯爵大木遠吉
一今十五日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員田中萬逸君提出義勇奉公ノ精神衰退
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員小橋藻三衞君提出山東牛檢疫制度ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員古賀三千人君提出滿洲ニ於ケル土地商
租ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員〓水留三郞君提出福島縣若松市補闕
選擧ニ於ケル干涉壓迫ニ關スル質問ニ對スル答辯
書
衆議院議員〓水留三郞君提出秋田縣第三區補
閣選擧ニ於ケル干涉壓迫ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
衆議院議員山道襄一君提出在外朝鮮人取締竝朝
鮮統治ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
衆議院議員田中武雄君提出浦鹽ニ於テ我カ步哨ノ
米國將校ニ對シ任務執行ニ關スル質問ニ對スル答辯
書
衆議院議員小橋藻三衞君提出思想問題ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
衆議院議員〓瀨一郞君提出帝國軍隊カ鮮人ヲ虐
殺シ學校及〓會ニ放火セリトノ事件ニ關スル再質問
ニ對スル答辯書
衆議院議員〓瀨一郞君提出思想問題ニ關スル質問
ニ對スル答辯書
義勇奉公ノ精神衰退ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年一月二十五日
提出者田中萬逸
賛成者早速整爾
外二十九人
義勇奉公ノ精神衰退ニ關スル質問主意書
内閣總理大臣原敬氏ハ大正十年ノ新年ヲ迎フルニ當リ
義勇奉公ノ精神力我カ國民ヨリ著シク衰退セル事實ヲ
指摘シテ大ニ戒飭スル所アリタリ由來我カ國民ハ義勇
奉公ノ精神ニ富ミ忠君愛國ハ我カ國體ノ精華ニシテ復
タ國民性ノ眞髓タリ然ルニ此ノ國體ノ精華タル義勇奉
公ノ精神ニシテ近時頓ニ衰退減耗セルハ我カ國民性二一
大缺陷ヲ呈セル反映トモ謂フヘク洵ニ國家將來ノ爲寒心
ニ堪ヘサルナリサレハ原首相ハ邦家ノ前途ヨ憂慮スルノ
餘斯ク年頭ノ始言トシテ我カ國礎ヲ動搖セシムヘキ一大
弊根ヲ指摘シ國民ノ自省ト發奮ヲ促スニ當リテハ必ス
ヤ一面ニ於テ此ノ精神ヲ作興スヘキ適切ナル方策ヲ講
セサルヘカラス唯徒ニ片々タル所感ヲ陳ヘテ此ノ大精神
ノ振興ヲ期スヘキニ非サルナリ原首相ハ何カ故ニ天下國
民ニ向テ此ノ戒告ヲ爲スニ先チテ切實適良ノ方策ヲ實
行シ以テ此ノ大精神ヲ旺盛ナラシメ國民思想ノ健全ナ
ル發達ヲ期スルニ努メサリシヤ敢テ問ハム原首相ハ單ニ
一片ノ戒告ヲ以テ其ノ目的ヲ達成セリト思惟セルカ將
又此ノ戒告ト相俟テ既往ノ施設ノミヲ以テ足レリト爲ス
カ更ニ適切ナル方策ヲ講シテ此ノ大精神ノ振興ニ勗メ
ムトスルカ明快懇切ナル答辯ヲ求ム
右及質問候也
大正十年二月十五日
内閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員田中萬逸君提出義勇奉公ノ精神衰退ニ關
スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員田中萬逸君提出義勇奉公ノ精神衰
退ニ關スル質問ニ對スル答辯書
國民ヲシテ義勇奉公ノ精神ニ敦カラシメムカ爲ニハ政府
ハ常ニ周到ノ注意ヲ怠ラス而シテ本年初頭ニ際シ我國
民ノ間ニ此精神ノ衰退シツツアルヤノ事實ニ言及シタル
ハ之ニ依リ國民ノ反省ヲ促サムトシタルナリ
右及答辯候也
大正十年二月十五日
內閣總理大臣原敬
山東牛檢疫制度ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年一月二十五日
提出者小橋藻三衞
賛成者鈴木梅四郞
外二十九人
山東牛檢疫制度ニ關スル質問主意書
大正九年七月九月ノ二囘橫濱市ニ大正九年十二月
本年一月大阪市ニ牛疫發生シタルハ其ノ病毒カ山東牛
檢疫所ヨリ洩レタルモノト認ム是レ我カ國畜產界ノ脅
威ニシテ之カ根本救濟ハ一刻ノ遲疑ヲ容サス政府ハ檢
疫制度ノ〓陷ニ對シ速ニ之カ改廢ノ意志ナキヤ
右及質問候也
大正十年二月十五日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員小橋藻三衞君提出山東牛檢疫制度ニ關ス
ル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員小橋藻三衞君提出山東牛檢疫制度
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
山東牛ニ付テハ政府ハ夙ニ病毒浸入ノ虞アルヲ認メ生
牛輸入ニ制限ヲ加へ檢疫後直ニ指定屠場ニ於テ屠殺
スル食用牛ニ限リ之カ輪入ヲ許シ檢疫ニ付テハ其ノ萬
全ヲ期スル爲檢疫所ノ新設擴張ヲ行ヒ其ノ設備ヲ整ヘ
又檢疫所ニ隣接シテ屠場ヲ設ケシメ山東牛ハ專ラ此屠
場ニ於テ屠殺セシムルコトトシ且近クハ積出ニ先チ輸出
地ニ於ケル帝國官憲ノ監督ノ下ニ免疫血〓ノ注射ヲナ
シタルモノニ非レハ之ヲ輸入スルコトヲ得サルコトトシタ
リ尙彼地帝國官憲トモ協議ノ上一層徹底的檢疫施設
ヲ爲ス考ナリ
右反答辯候也
大正十年二月十五日
農商務大臣男爵山本達雄
滿洲ニ於ケル土地商租ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年一月二十五日
提出者古賀三千人
賛成者井上剛一
外二十九人
滿洲ニ於ケル土地商租ニ關スル質問主意書
大正九年七月二十日本院ニ於テ滿洲ニ於ケル土地商
租權行使ニ關シ政府ノ執レル處置及成行如何ニ關スル
本員ノ質問ニ對シ政府ハ同年七月二十五日書面ヲ以
テ之カ答辯ヲ爲セリ
之ニ依レハ我カ政府モ支那側カ日支條約ノ趣旨ヲ沒却
スルカ如キ態度仍改マラサルヲ認容セリ其ノ後政府ハ之
ニ對シ如何ナル處置ヲ採リシカ又其ノ結果如何仍政府
ハ支那側ノ態度如何ニ拘ラス本邦人ノ商租契約ハ漸次
相當ノ增加ヲ示シツツアリト云ヘリ果シテ然ラハ此等ノ商
租契約ハ如何ナル形式ニ依リ又其ノ效果ハ完全ニ目的
ヲ達シ居ルト認ムルヤ如何
右及質問候也
大正十年二月十五日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員古賀三千人君提出南滿洲ニ於ケル土地商
租ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員古賀三千人君提出滿洲ニ於ケル土地
商租ニ關スル質問ニ對スル答辯書
商租ニ關スル條約規定ヲ十分ニ活用セムコトハ政府ノ
常ニ希望スル所ニシテ之カ爲其ノ後商租規則對案ノ再
調査ヲモ爲シ居レル次第ナルカ支那ノ政情目下尙ホ我
希望實現ニ便ナラス政府ハ可成速ニ我目的ヲ達スル樣
努力シツヽアリ
商租規則ノ制定ナキニ拘ラス現ニ商租行ハレ居ルカ右ニ
關スル契約ノ形式ニ付テハ條約ニ別段ノ規定ナキヲ以テ
當事者ハ便宜各種ノ形式ニ據リ居レリ商租地中現ニ利
用ニ著手サレタルモノニ在リテハ〓ネ相當ノ效果ヲ擧ケ
居レルカ如シ
右及答辯候也
大正十年二月十五日
外務大臣伯爵內田康哉
福島縣若松市補闕選擧ニ於ケル干渉壓迫ニ關ス
ル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年一月二十八日
提出者〓水留三郞
賛成者定行八郞
外三十人
福島縣若松市補閣選擧ニ於ケル干涉壓迫ニ開ス
ル質問主意書
一内務省警保局長、内務大臣祕書官及福島縣警察部
長等ヲ若松市ニ出張セシメテ補開選擧ニ於ケル干涉
ヲ督勵セシメタル理由如何
一選擧期日前一齊ニ若松市ノ米屋及質屋ノ臨時檢査
ヲ實行シタル理由如何
一選擧當日ノ前夜憲政派ノ幹部十一名ヲ警察署ニ召
喚シテ一夜之ヲ留メ置キシ理由如何
右及質問候也
大正十年二月十五日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員〓水留三郞君提出福島縣若松市補闕選
擧ニ於ケル干涉壓迫ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
(別紙)
衆議院議員〓水留三郞君提出福島縣若松市補
關選擧ニ於ケル干涉壓迫ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
一客年八月警保局長ノ若松市出張ハ行啓地御警衞
計畫實査ノ爲メニシテ選擧ニ關シテニアラス又福島
縣警察部長ノ出張ハ御警衞計畫及選擧取締監督ノ
爲メニシテ瀧代議士ハ石川氏ノ應援ニ赴キタルモ祕
書官トシテノ資格ニアラス是等ニ對シ干涉ヲ督勵セシ
メタル事實ナシ
一米屋及質屋ノ臨檢査察ハ警察取締上常時執行シ居
ルモノニシテ選擧ト何等ノ關係ナシ
一選擧前日違犯事實取調ノ爲メ關係者五名ニ對シ所
轄警察署ニ出頭ヲ求メタル事實アルモ質問ノ如ク憲
政派ノ幹部多數ヲ召喚留置シタル事實ナシ
右及答辯候也
大正十年二月十五日
內務大臣床次竹二郎
秋田縣第三區補關選擧ニ於ケル干涉壓迫ニ開ス
ル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年一月二十八日
提出者〓水留三郞
贊成者定行八郞
外三十人
秋田縣第三區補開選擧ニ於ケル干涉壓迫ニ關ス
ル質問主意書
一秋田縣山本郡能代湊町外七箇村ニ於ケル投票立會
人ヲシテ全部政友派ヨリ選出シ憲政派ヨリノ要求ヲ
拒否シタル理由如何
一三百數十名ノ巡査ヲ特ニ山本郡ニ派出シ之ヲ政友
派運動員ノ宅ニ宿泊セシメタル理由如何
一能代湊町煙草元賣捌人ヲシテ强制的ニ政友派ノ推
薦者タラシメシ理由如何
一秋田木材會社ノ重役ヲシテ政友派ノ運動員タラシム
ヘク干涉シタル理由及田中農商務次官ヨリ書面ヲ以
テ之ニ勸誘ヲ爲シタル理由如何
一秋田縣知事カ能代湊町ニ出張シテ政友派ノ選舉本
部ニ宿泊シ政友派ノ幹部ト打合セヲ爲シタル理由如
何
右及質問候也
大正十年二月十五日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郞殿
衆議院議員〓水留三郞君提出秋田縣第三區補闕選
擧ニ於ケル干涉壓迫ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
(別紙)
衆議院議員〓水留三郞君提出秋田縣第三區補
關選舉ニ於ケル干涉壓迫ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
一投票立會人ノ選任ニ關シテハ豫メ通牒ヲ發シ不公平
ノ處置ナカラシメタリ勿論町村ニ依リテハ兩派ヨリ
適當ニ之カ選任ヲナシ得サリシ事情ノ爲メ同一政
派ニ屬スル者ノミヲ以テシタル個所アリト雖必スシモ
政友派ノミニハ限ラス憲政派ノ者ノミ選任セシ個所
モアリタリ又能代港町ノ如キハ之ヲ兩派ヨリ選任シタ
ル次第ニシテ質問ノ如ク多數ノ町村ニ亙リ政友派ニ
屬スル者ノミヲ選任シタル事實ナシ
一山本郡ハ客年五月ノ總選擧ニ際シ競爭激烈ヲ極メ
多數ノ違犯者ヲ出シタルノ事例ニ鑑ミ周到ナル取締
ヲ爲シ斯ノ如キ違犯行爲ナカラシメムカ爲特ニ百二
名ノ巡査ヲ應援トシテ派遣シタルモ之ヲ政友派運動
員ノ宅ニ宿泊セシメタル事實ナシ
一能代港町煙草元賣捌人ヲ强制シテ政友派候補者ノ
推薦者タラシメタル事實ナシ
一秋田木材會社ノ重役ヲシテ政友派ノ運動員タラシム
ヘク干涉シタル事實ナシ又田中農商務次官ヨリ書面
ヲ以テ之ニ勸誘ヲ爲シタル事實ナシ
一秋田縣知事ハ選擧取締狀況視察ノ爲山本郡内ニ出
張シタルモ質問ノ如キ事實ナシ
右及答辯候也
大正十年二月十五日
內務大臣床次竹二郞
農商務大臣男爵山本達雄
在外朝鮮人ノ取締竝朝鮮統治ニ關スル再質問主
意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月一日
提出者山道寒
贊成者下岡忠治
外四十二名
在外朝鮮人ノ取締竝朝鮮統治ニ關スル再質問主
意書
一在外鮮人取締ニ關スル政府ノ態度怠慢ヲ極メ國家
ノ爲ニ遺憾ニ耐ヘサル事實多シ其ノ責任ヲ如何ニセ
ムトスルカ
二在鮮外國人ノ行動ニシテ朝鮮統治ニ惡影響ヲ及ホス
事實多シ政府ハ之ニ對シ如何ナル處置ヲ採リ又ハ採
ラムトスルカ
三在鮮人ノ〓育徹底ヲ缺キ統治ノ根本ヲ誤ラムトスル
ハ遺憾ニ耐ヘス政府ハ智育ノミナラス精神〓育ニ對
シ如何ナル方法ヲ採ラムトスルカ
四現在ノ朝鮮統治方策ハ一視同仁ノ大精神ニ副ハサ
ルモノト思惟セラシル事實多シ之ヲ根本的ニ改革スル
ノ意志ナキカ
五政府ハ朝鮮ノ民心ハ平穏ナリト云フニ拘ラス年々警
務機關ヲ擴張スルノ必要アルハ矛盾ノ甚シキモノニ非
スヤ
六朝鮮ニ於ケル產業上ノ施設ハ日鮮人ノ生存及企業
ニ對シ脅威ヲ與フルコト甚シキモノアリ爲ニ人心惡化セ
リト思惟サルヽ事實アリ政府ノ所見奈何
右及再質問候也
大正十年二月十五日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員山道襄一君提出在外朝鮮人ノ取締竝朝
鮮統治ニ關スル再質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員山道襄一君提出在外朝鮮人ノ取締
竝朝鮮統治ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
一在外鮮人ニ對シテハ常ニ周到ノ注意ヲ拂ヒ外交上相
當ノ措置ヲ講シツヽアリテ何等怠慢アルコトナシ
二在鮮外國人ニ對シテハ朝鮮統治ノ方針ヲ了解セシム
ルニ努メツヽアリ而シテ其ノ行動ニシテ朝鮮統治ニ惡
影響ヲ及ホス場合ニ於テハ適當ノ處分ヲ行ヒ毫モ假
借スル所ナシ
三朝鮮人ノ精神〓育ニ關シテハ併合ノ本旨ヲ貫徹スヘ
ク民度事情ニ應シ適切ナル處置ヲ執リツヽアリ
四現在ノ朝鮮統治方策ニ於テ一視同仁ノ大精神ニ副
ハサルカ如キ事實ヲ認メス殊二一昨年官制改正以來
新ニ施設シタル事項ハ凡テ斯ノ方針ニ出テタルモノナ
リ
五騒擾以來安定ヲ缺キタル朝鮮ノ民心ハ漸次平穏ニ歸
シツヽアリト雖今尙ホ其警察力ハ朝鮮ノ面積人口ニ
比例シ且將來ノ發展ニ伴フ事件ノ增加ニ應シ之ヲ
充實スルノ必要アルハ當然ニシテ其ノ間何等ノ矛盾
ナシ
六產業上ノ施設ニ關シテ人心ノ惡化セル事實ヲ認メス
右及答辯候也
大正十年二月十五日
內閣總理大臣原敬
浦鹽ニ於テ我カ歩哨ノ米國將校ニ對シ任務執行
ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月二日
提出者田中武雄
贊成者小山松壽
外三十人
浦鹽ニ於テ我カ歩哨ノ米國將校ニ對シ任務執行ニ
關スル質問主意書
去一月八日拂曉浦鹽ニ於テ我カ軍步哨カ米國海軍大
尉「ラングトン」氏ニ對シ正當ニ任務ヲ遂行シタリト云フ
事件ニ付我カ軍憲兵隊ハ右步哨ヲ有罪トシテ軍法會
議ニ送レリト云フ果シテ事實ナリヤ否ヤ若事實ナリトセ
ハ國民思想及軍隊ノ士氣ニ及ホス影響甚大ナルモノア
リト思惟ス依テ右事件ノ經過竝之ニ對スル政府ノ所見
ヲ求ム
右及質問候也
大正十年二月十五日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員田中武雄君提出浦鹽ニ於テ我カ步哨ノ米
國將校ニ對シ任務執行ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
(別紙)
衆議院議員田中武雄君提出浦鹽ニ於テ我カ歩哨
ノ米國將校ニ對シ任務執行ニ關スル質問ニ對スル
答辯書
去ル一月八日拂曉浦潮ニ於テ我軍ノ步哨カ米國ノ「ラ
ングトン」大尉ニ對シ爲シタル行動ヲ軍法會議ノ審理ニ
付シタルハ其ノ行動ヲ任務遂行上過失アルモノト認メ
タルカ爲陸軍治罪法ノ規定ニ依リタルモノニシテ目下尙
調査審議中ナリ
右及答辯候也
大正十年二月十五日
陸軍大臣男爵田中義
思想問題ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月三日
提出者小橋藻三衞
賛成者鈴木梅四郞
外二十九人
思想問題ニ關スル質問主意書
豫算總會ニ於ケル總理大臣ノ思想問題ニ對スル說明ハ
茫漠トシテ主旨ヲ捕捉スルニ苦シム其ノ眞意果シテ如何
右及質問候也
大正十年二月十五日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員小橋藻三衞君提出思想問題ニ關スル質問
ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員小橋藻三衞君提出思想問題ニ關スル
質問ニ對スル答辯書
本年一月二十六日豫算委員會ニ於テ衆議院議員鈴
木梅四郞君ヨリノ質問ニ對シ思想問題ニ關シテ答辯シ
タル所ハ豫算委員會議錄ニ明ニシテ更ニ說明ヲ加フル
ノ要ナシト認ム
右及答辯候也
大正十年二月十五日
内閣總理大臣原敬
帝國軍隊カ鮮人ヲ虐殺シ學校及〓會ニ放火セリ
トノ事件ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月三日
提出者〓瀨郎
賛成者鈴木梅四郞
外二十九人
帝國軍隊カ鮮人ヲ虐殺シ學校及〓會ニ放火セリ
トノ事件ニ關スル再質問主意書
一日本軍隊カ無辜ノ鮮人ヲ殺戮セリトノ世評ヲ生シタ
ル原因如何
二政府ハ獨立思想ヲ有スル鮮人ハ何等ノ外形的行爲
ヲ爲サヽルモ斯ル思想ヲ有スルノ事ヲ以テ之ヲ殺戮ス
ル方針ナリヤ
三〓會學校等ヲ燒却スルヲ要シタル軍事上ノ必要如何
右及再質問候也
大正十年二月十五日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員〓瀨一郞君提出帝國軍隊カ鮮人ヲ虐殺シ
學校及〓會ニ放火セリトノ事件ニ關スル再質問ニ對シ
別紙各辯書差進候
(別紙)
衆議院議員〓瀨一郞君提出帝國軍隊カ鮮人ヲ
虐殺シ學校及〓會ニ放火セリトノ事件ニ關スル再
質問ニ對スル答辯書
一日本軍隊カ無辜ノ鮮人ヲ殺戮セリトノ世評ヲ生シタ
ル原因ハ從來多數ノ不逞者ト親交深カラサリシ二、三
ノ者カ我軍隊掃蕩當時ノ現狀ヲ實見セス單ニ掃蕩後
ニ於ケル戰場ヲ巡視シ戰死者中ニ自己ノ知己アルヲ
發見シ之ニ多大ノ同情ヲ表シ且匪徒一味ノ鮮人ノ
哀訴ヲノミ耳ニシ爲ニ我軍ノ行動ニ關シ著シク誤リタ
ル推測ヲ爲シ我軍カ慘虐至ラサルナキ手段ヲ敢テシタ
ルカ如ク各地ニ傳ヘタルト又一ツハ匪徒カ我軍ノ中
傷宣傳ニ努メタルトニアリ
二政府ハ獨立思想ヲ有スル鮮人ハ何等外形的行爲ヲ
爲ササルモ斯カル思想ヲ有スルノ故ヲ以テ之ヲ殺戮ス
ル方針ニアラス
三我軍カ燒却シタル〓會學校等ハ匪徒ノ武力行動上
ノ根據地トシテ其ノ證跡明瞭ナルモノニシテ之ヲ其ノ
儘存置スルトキハ再ヒ彼等ノ集合場トナリ之ヲ根據
トシテ我軍ヲ會威シ或ハ之ニ據ツテ我軍ニ抵抗スル
等ノ虞レアリテ之ヲ排除スルノ必要アリシニ依ル
右及答辯候也
大正十年二月十五日
陸軍大臣男爵田中義
思想問題ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月五日
提出者〓瀨師
贊成者鈴木梅四郞
外二十九人
思想問題ニ關スル質問主意書
一政府ハ現代思想中如何ナルモノヲ以テ危險思想ナリ
トナシ其ノ傳播ヲ防壓セムトスルヤ其ノ思想ノ系統竝
其ノ危險ナル所以ヲ叮寧ニ開元セラレタシ
二現代思想中危險ナルモノアリトスレハ其ノ眞理ニ反ス
ルコトヲ指摘シ其ノ誤ヲ正ササレハ之カ傳播ヲ防壓ス
ルコトハ不能ナリ所謂危險思想ノ誤謬ノ點ヲ明元セ
ラレタシ
右及質問候也
大正十年二月十五日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郎殿
衆議院議員〓瀨一郎君提出思想問題ニ關スル質問ニ
對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員〓瀨一郞君提出思想問題ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
思想ハ之ヲ自由ニシ濫ニ抑壓セサルヲ以テ方針トスト雖
モ其ノ我カ國體ニ反シ國家又ハ社會ノ根本組織ヲ破壞
セントスルカ如キモノハ法ニ據リ嚴ニ之カ宣傳ヲ禁止ス
ヘシ
右及答辯候也
大正十年二月十五日
內務大臣床次竹二郞
一去十二日內閣總理大臣ヨリ議長宛左ノ通發令アリ
タル旨ノ通牒ヲ受領セリ
朝鮮總督府內務局長大塚常三郞
政府委員被仰付
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲茲ニ揭載
ス〕
一昨十四日獨逸國等トノ平和條約賠償條項ニ基キ受
領シタル賠償物件ノ輸入稅免除ニ關スル法律案委員
秋席太郞君辭任ニ付其ノ補關トシテ佐竹庄七君ヲ
議長ニ於テ選定セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=1
-
002・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 會議ヲ開キマス、一寸御諮リヲ致
シマス、皇太子殿下海外御巡遊ノ儀發表サレマシタ、就テ
ハ議長ハ本院ヲ代表シテ東宮御所ニ參殿シ、一路御平安
ヲ祈リ奉ル旨ヲ言上致シタイト存ジマス、尙ホ三月三日御
出發ノ際ハ、本院ヲ代表致シマシテ、御奉送中上ゲタイト
思ヒマス、御同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=2
-
003・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 全員一致ヲ以テ可決セラレマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=3
-
004・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 就テハ右ノ通リ取扱ヒマス、尙ホ
諮問致シマス、議員松島肇君病氣ニ付、本月十二日ヨリ
二十一日間請暇ノ申出ガアリマス、許可致シマスニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=4
-
005・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ガゴザイマセヌカラ、許可致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=5
-
006・武藤金吉
○武藤金吉君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=6
-
007・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=7
-
008・武藤金吉
○武藤金吉君 訂正ヲ求メル點ガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=8
-
009・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 何ノ訂正デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=9
-
010・武藤金吉
○武藤金吉君 去ル十二日本會議豫算委員會ノ報告
中ニ、私ガ委員長トシテ報告ヲ致シマシタ數字ニ就キマシテ
誤ガアリマスカラ、直シテ戴キタイ、其直シテ戴ク所ハ、大正
十年度ノ收入ハ七億五千万圓デアッテ、其增加額七千三
百万圓ト報告ヲ致シテ置キマシタニ、十三日ノ官報號外ノ
速記錄二百四十一頁ノ上段十九行目ニ於テ、一一百万圓ト
ナッテ居リマス、百万圓私ノ報告ト違ッテ居リマス、卽チ「二
ヲ「三」ニ大切ナ數字デアリマスカラ、直シテ戴キタイノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=10
-
011・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 三百万圓ト報告サレタ」ルコトハ確
デゴザイマスカラ、訂正致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=11
-
012・田中萬逸
○田中萬逸君 本員ノ提出致シマシタル義勇奉公ノ精神
衰退ニ關スル質問書ニ對シマシテ、唯今御答辯ガアリマシ
タ、御答辯書ヲ先刻拜見致シマシタニ、半バ私ノ意ニ滿タナ
イ點ガアリマスガ故ニ、此答辯ニ對シテ意見ヲ陳述シタイト
思ヒマス、相當ノ機會ニ於テ發言ヲ與ヘラレンコトヲ希望
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=12
-
013・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御注意マデニ一言致シマス、本日
ハ公報ニ揭ケテアリマスル質問ノ中、第一、第二、第五、第
六、第十、第十一、第十二、第十三ハ、何レモ政府ヨリ答辯
ガアリマシタ故ニ、議事日程ヨリ省キマス、尙ホ第九モ唯〓
答辯ガ參リマシタ、之ニ對シテ質問書ヲ提出セラレマシタ諸
君ニ於テ意見ヲ述ブルノ請求アルトキハ、質問終了ノ時ニ
於テ之ヲ許ス考デゴザイマス、田中君左樣御承知ヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=13
-
014・田中萬逸
○田中萬逸君 今日ノ質問者ノ一番終リデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=14
-
015・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 質問終ッテ日程ニ入ル際ニ許シマ
ス、質問ノ第一、第二ハ右ノ通リデゴザイマス、續イテ第三
府縣行政監督ニ關スル質問、木檜三四郞君
三府縣行政監督ニ關スル質問(木檜三
四郞君提出)
府縣行政監督ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年一月二十六日
提出者木檜三四郞
賛成者橫山金太郞
外二十九人
府縣行政監督ニ關スル質問主意書
立憲政治ハ責任政治ナリ若夫レ職ニ在ルモノ忠實其ノ
職ニ盡ササルモノアラム乎亂楷玆ニ端ヲ發シ其ノ影響恐
ルヘキモノアリ
如今內務大臣監督ノ下ニ在ル府縣知事ノ爲ス所ヲ見ル
ニ彼等ノ眼中政友會ノ黨利黨益ヲ計ルノ外一片愛國ノ
至誠ナシ從テ國家ノ基礎タル町村自治ヲ破壞シテ黨爭
ノ巷トナシテ顧ミス況ヤ府縣行政ヲ黨勢擴張ノ具ニ供
シ以テ縣民一般ノ福利ヲ蹂躪シテ恬然タルニ於テヲヤ
其ノ甚シキハ公金ヲ横領セル警察署長ヲシテ榮轉セシム
ルカ如キ官紀ノ頽廢其ノ極ニ達ス而モ局ニ膺ルモノ官
威ヲ弄シテ恥ヲ知ラス面シテ黨勢擴張ノ爲ニハ縣費ノ不
法支出ヲ敢テシテ顧ミルナシ或ハ〓育問題ヲ利用シテ黨
勢擴張ニ努力シ或ハ織物組合ヲ脅威シテ黨派ノ犧牲ニ
供シテ顧ミス又道路法實施ヲ利用シテ政黨擴張ノ具ト
シ以テ縣ノ交通路ヲ紊亂シ民心ヲシテ不安ノ境ニ立タ
シムルニ到ル
玆ニ於テカ民衆ハ行政官廳ヲ怨ミ民心益惡化シ來ルヲ
見ル爲政ノ局ニ在ルモノ最留意ヲ要ス
然ルニ內務大臣ハ偏頗不公平ナル府縣知事ノ行爲ヲ是
認セルモノノ如シ此ノ如クシテ輔弼ノ責ヲ完ウシタリトナ
ス乎明確ナル答辯ヲ求ム
右及質問候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=15
-
016・木檜三四郎
○本檜三四郞君 大臣ノ出席ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=16
-
017・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 差支アルヤウデス
〔木檜三四郞君登壇拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=17
-
018・木檜三四郎
○木檜三四郞君 大臣ガ御差支アレバ次官ニ御通知ヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=18
-
019・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 今通知致シマス-大臣モ次官モ
見エマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=19
-
020・木檜三四郎
○木檜三四郞君 内務大臣竝ニ內務次官ノ御出席ヲ願
ヒマシタガ見エヌヤウデスカラ、傍聽筆記ニ於テ答辯ヲシテ
戴クヤウニ特ニ此事ヲ願ッテ置キマシテ、質問ノ趣意ヲ申上
ゲマス、私ガ此府縣行政監督ニ關スル質問主意書ヲ提出
致シマシタノハ、是ハ一黨一派ノ問題關係デ出シタノデハナ
イノデアリマス、卽チ行政官廳ヲシテ、信用アリ權威アラシメ
タイト云フ意味カラ、此質問書ヲ出シタノデアリマス、卽チ
國家ノ行政官ナルモノガ一タビ信用ガ失墜シ、權威ガ地ニ
墜ツルヤウニナリマスト、國ノ行政ト云フモノガ洵ニ憂フベキ
結果ニナリマス、其關係デ此行政官廳ト云フモノニ敬意ヲ
拂ヒ、國民ヲシテ安定ノ念ヲ益、增サシムルト云フ意味ニ於
キマシテ、此質問書ヲ出シタノデアリマス、總理大臣モ此行
政官ヲシテ信用アリ權威アラシムルト云フコトニ就テハ、御
同感ト見エマシテ、先頃貴族院ニ於テ仲小路君ガ總理大
〓ニ質問セラレタ其中ニ、總理大臣ハ行政官ヲシテ政黨擴
張ノ爲メニ、鐵道若クハ港灣、若クハ道路ト云フヤウナモノ
ヲ利用致シマシテ、其擴張ノ爲メニ盛ニ宣傳ヲ行政官ニサ
セヤセヌカ、若クハ其結果町村自治マデ破壞サセヤセヌカト
云フ貴族院ノ仲小路ノ御質問ガアリマシク、所ガ斯ウ云フ
事ハ毛頭無イ、若シ行政官ニ左樣ナ事ガアルトスレバ、相當
ナル處分ヲ致スト斯樣ナル御答辯ニナッテ居リマス、惟フニ
此點ハ私共ト總理大臣ト同ジ意見ヲ持ッテ居ルノデアル、然
ルニ同ジ意見ハ持ッテ居ルガ、事實ハ總理大臣ノ御答辯ヲ
裏切ッテ居ル、ソレ故ニ此點ヲ特ニ御同樣國ヲ憂フル點カラ
正シキ御答辯ヲ顯セタイ、此意味カラ此答辯ヲ促ス氣デ出
タノデアリマス、一體私ガ考ヘテ。居リマスノハ、此原總理大
臣ノ爲ス事ハ、政黨擴張ト云フ事ハ、朝ニ立テバ必ズ傳統
的デアルヤウニ思ハレテ居ル、(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)何
故ニ左樣ニ申スカト云フト、前ニ内閣ニ立タレテ內務ノ位
地ニ原君ガ居ラレタ時ニモ、矢張政黨擴張ノ上ニ於テハ官
憲ヲ利用致シマシテ、盛ニ知事若クハ以下ノ屬僚其他ヲ利
用シマシテ、政黨ノ擴張ヲシタ事實ガアル、是等ヲ見マスト
政友會ト云フモノハ、傳統的ニ官憲ヲ濫用致シマシテ、政
黨ノ擴張ヲスルモノデアル、(拍手起ル、「ノウ〓〓」ト呼フ者
アリ)私ハ澤山ノ議論ハ申サナイ、事實ハ一ツノ雄辯デアリ
マスカラ、事實ヲ一ツ申上ゲテ諸君ノ判斷ヲ願ヒ、官憲ノ意
見モ伺ウト思フ、デ今ノ原總理大臣ガ、內務大臣ノ時代ニモ
能ク斯ウ云フ事ヲ致シテ居ル、手短ナ一例ヲ擧ゲマスト、大
正二年ニ、内務大臣デアッタ時ニ群馬縣ニ大芝惣吉ナル者
ヲ知事トシテ寄越シマシテ、此時ニハ政友會ナルモノハ至ッ
テ微力デアリマシタ、其際何ヲ致シタカト云フト、大芝知事
ト共謀ヲ致シマシテ、學校整理案ナルモノヲ出シテ、有力ナ
ル非政友系ニ屬スル方面ノ中學校ヲ廢スト云フヤウナ案ヲ
拵ヘ出シテ、而シテ此案ノ存廢ニ依シテ非政友系ノ縣會議
員ヲ威カシ、ソレガ爲メニ學校ノ廢校ト云フコトハ恐ルベキ事
デアルト云フノデ、已ムヲ得ズ私共同士デアッタ縣會議員數
名ガ-時ノ內務大臣原敬君ノ下ニ、知事ガ注意ヲシテ學
校整理案ナルモノハ出スコトヲ止メルカラ、オ前達政友會ニ
入レト云フコトデ、其當時參事會員三名ト云フモノガ政友
會ニ入ッタ、是等ハ事實ガ證明シテ居ル、當時私共ト一〓ニ
居ッタ者ハ學校ガ潰サレル、〓育問題ガ郡ニ於テ蹂躪サレルカ
ラ、已ムヲ得ナイカラ入ルト云フコトデ、當時私共ト同ジ仲間
ニ居ッタ參事會員デアル入澤園吉、若クハ今井今助、若クハ
岡田又ハ、斯ウ云フ三人ノ人達ガ政友會ニ入ッテ、是等ノ學
校問題ト云フコトデ脅威サレテ、已ムヲ得ズ郡ノ利益ノ爲メ
ニ自己ノ政治上ノ節義ヲ變ヘテ、犠牲的ニナッテサウシテ政
友會ニナッタ事實ガアル、(拍手)是ハ原サンガ內務大臣ノ時
デアリマシタ一ツノ實例デアリマス、斯ウ云フ風ニ傳統的デ
アル、今ノ内務大臣床次君ハドウカト云フ、相當ニ智識モ
アリ、學問モ御有リナサル人デアル、隨分公平振リニ、或ハ
民力涵養ノ宣傳トカ云フモノヲ致シマシテ、一万八千回宣
傳ヲシテ、聽衆ガ五百万人アッタトカ云フコトヲ議會ニ御報
告ナサレマシタガ、而モ其宣傳振リハ洵ニ公平ノヤウデアリ
マスケレドモ、事實ハ矢張原敬ガ內務大臣デアッタ時ニ政黨
擴張ヲスルト同樣ノ方針ガ、所謂政黨擴張ノ爲メニハ、種々
ノ官憲ヲ各方面ニ利用致シマシテヤッタ事實ガアル、(拍
手)床次君ハ原敬君程政黨ト云フモノニ長キ歷史ヲ持ッテ
居ラヌ人ダケニ、此點ニ於テハ眞面目ニ答辯シテ下サルカキ
思ヒマスカラ、事實ヲ擧ゲテ、原敬君ノ内務大臣デアッタ當
時ノ其型ヲ履ンデ居ルヤ否ヤト云フコトヲ確メテ、原總理
大臣ガ貴族院ニ於テ、政黨擴張ト云フヤウナコトハ決シテ
致シテ居ラナイ、若シ致シタトシタナラバ、其官吏ハ相當ナ
處置ヲスルト云フコトマデ明言シテアルガ、此事ヲ事實ヤッテ
居ルカドウカト云フコトヲ、縣民ニ代ッテ確メテ見タイト私ハ
思フ、先ヅ第一ニ伺ヒタイノハ、內務大臣ノ監督ノ下ニアッ
タ宮城縣ノ投票ノ僞造問題ハ、天下ノ人心ヲシテ實ニ驚カ
シタ、ソレハ何デアルカトー云フト、僞造ノ投票ガ六百十五、而
モ同一ノ筆跡デアルト云フコトハ、裁判所ノ調ニ依ッテモ明
カデアル、此事ハ內務大臣監督ノ下ニアル知事ガ、何人ヲシ
テ之ヲ爲サシメテ此ニ至ラシメタノデアルカ、此關係ニ就テ
ノ處分ハ如何ナサレタノデアルカ、此點ハ行政監督ノ上ニ而
モ選擧權行使ノ上ニ重大ナル影響ヲ及ボスモノデアルト私
ハ思シテ居リマス、此點ニ就テ一ツ伺ッテ見タイ卜思ヒマス、
是ハ明ニ行政監督ニ於テ重要問題デアルト思ッテ居リマス、
今一ツハ北海道八區ノ選擧ニ於テ、淺川浩君ガ當然當選
シテアルベキ筈ナルニ、行政官憲ノ選手ニ於テ、多數ノ投票
ヲ無效投票ナリト判決ヲ致シマシテ、當選スベキ淺川浩君
ヲ當選サセナイデ、大久保虎吉君ヲ當選サセテ、所謂當選
資格無キ者ヲ此議場ニ送リ、サウシテ臨時議會ニ於テハ、其
大久保君ガ職務ノ幾分ヲ果シタト云フヤウナ、甚ダ不條理
ナ狀態ニナッテ居リマス、是ガ大審院ノ正シキ判決ニ依リマ
シテ、淺川浩君ガ當選者トシテ玆ニ現ハレテ、正シカラザル大
久保君ガ當選者デナイト云フコトノ判決ヲ得テ、大久保君
退キ、淺川君ガ此議場ニ現ハレタコトニナッタノデアルガ、是ハ
何カト云ヘバ、是亦內務大臣監督ノ下ニ在ル北海道ノ行
政官憲ガ、正シカラザル行ヲ爲シマシテ、ソウシテ當選者デ
アル所ノ淺川君ヲシテ、當田選者タラシメナイト云フ此事實
ハ、大審院ノ判決ニ於テ明白デアリマス、此點ニ向ッテ内務
大臣ハ、如何ナル處置ヲシタカト云フコトヲ伺ヒタイ、秋田
縣第二區ニ於テ今一ツ伺ヒタイ、秋田縣ニ於テモ村井喜
一郞君ガ當選者デアルノニ、池田龜治君ヲ當選者トシテ、
是亦行政官憲ノ惡シキ干渉ノ手ニ於テ、池田龜治君ヲ當
選者トシテ先頃迄臨時議會ヨリ引續イテ議會ニ列席サレ
タ、當選者ナラザル人ヲ此議會ニ送ッテ置イテ、而シテ其結
果ハドウデアルカト云ヘバ、投票ヲ官憲、ノ手ニ於テ僞造ヲ致
シタ、其結果ハ郡書記二名ガ刑事披告人トシテ獄ニ投ゼラ
レタ、是ハ誰人ガ責仕者デアルカ、或ハ知事ガ責任者デアルカ、
郡長ガ貴任者デアルカ、モット有力ナ責任者ガアルニ違ヒナ
イガ、犧牲者トシテ郡書記二名ガナッタト云フ憫ムベキ狀態
ニナッテ居ル、是亦府縣行政ヲ監督スル所ノ內務大臣ガ、斯
ル正シカラザル不都合ナル行ヲ爲シタコトヲ恬トシテ顯ミナ
イデ何等ノ處分ヲシタト云フコトヲ未ダ私共聞イテ居ラナ
イ、總理大臣ノ御言葉ニアルヤウニ、相當ナ處分ヲスルト云
フナラバ、之ニ向ッテ處分ヲシナケレバナラヌ、何等之ニ向ッテ
モシテナイノデアル、此點ニ就テモ內務大臣ニ私ハ伺ヒタイ
ト思フ、是等ハ皆ナ與黨ヲ選出セシガ爲メニ選擧干涉ヲシ
夕事實デアル、(「ノウー〓」ト呼フ者アリ)是ハ矢張天下ノ人
心ノ感ヲ解ク爲メニ、明白ナル答辯ヲシテ貰きタイト思フ、
(「政友會顏色ナシ」「ソンナコトヲ言フ資一格ガアルカ」ト呼フ
者アリ)更ニ伺ヒマスノハ、仲小路君ニ答ヘタ町村自治ヲ破
壞致サナイ、斯ウ云フコトデアル、黨〓擴張ノ爲メニ町村自
治ヲ破壞シナイト云フコトデアルガ、事實ハ行政官憲ガ惡シ
キ壓迫ヲ致シマシテ、町村自治ヲ破壞シタ事實ハ幾ラモア
ル、此事實ハ澤山アリマスガ、之ヲ擧ゲマスト云フト時間フ
徒費致シマスカラ、一二ノ實例ヲ擧ゲテ之ニ向シテノ答辯ヲ
願ヒタイト思フ、卽チ知事若クハ郡衙ノ行政官ガ下ラナイ
所ノ干涉ヲ致シマス爲メニ、町村長ガ其職ニ居ルコトヲ屑
シトシナイデ、職ヲ罷メニシテシマッタ、ソレガ爲メニ町村自
治ガ紊亂ノ形ニナッテ來タト云フ事實ハ幾ラモアル、一例ヲ
擧グルナラバ、群馬縣ニ於テハ吾妻郡高山村ノ如キハ、其
方面ニ道路ヲ拵ヘテヤル、縣道ヲ拵ヘテヤル、ソレニ拵ヘテヤ
ルノニハ、政友會ニ入レバ拵ヘテヤルト云フノデ、盛ニ勸誘ヲ
シタノデアル、所ガ政黨ニ入ラナケレバ道ガ出來ナイト云フ
ノハ、甚ダ意義ヲ爲サヌト云フノデ入ラナイ、ソレガ爲メニ大
正八年ヨリ九年ト云フ風ニ連續的ニ此方面ニ、政友會ノ
黨派ノ擴張ト云フ意味カラ盛ニ勸誘ヲ致シマシタガ入ラヌ、
結局人民ノ低イ方面ニ於テ盛ニ勸誘ヲ致マシタ結果、町
村長ニ願シテ、村長樣ガ御入リニナラバ皆入ルト云フヤウナ
形ナノデ、村長ハ自分ハ相當ノ年齡ニ達シテ居ルガ故ニ、晩
年ヲ縣道編入ノ爲メニ、政治上ニ自己ノ〓節ヲ變ジテマデ
モ道ヲ拵ヘテ貰フト云フコトハ甚ダ屑シトシナイ、斯ウ云フ
ヤウナ所カラ、自己ガ村長デ居レバ政友會ニ入會シロト云
フコトヲ盛ニ脅威サレルガ、之ヲ辭職ジテシマヘバ何等用ノ
無イ話ダト云フ所カラ、高山村ノ村長ノ奈良五郞作ト云フ
人ハ、昨年ノ九月ニ罷メニシテシマッタ、ソレガ爲メニ外ノ方
面ノ人達ガ政友會ニ入リマシテ、村長ガ更リマシテ、サウシ
テ免モ角モ其沿道ノ道ヲ縣道ニ入レル所ノ諮問案ヲ出シ
マシテ決議シテ、今ヤ內務省ノ認可ヲ申請手續ニナッテ居リ
マス、是ハ町村役場ノ主腦者タル所ノ村長ガ政友會ニ入
會ヲ條件トシテ、道路ヲ拵ヘテヤルト云フ所ノ脅威カラ村
長ガ辭職マデシテ、自分ガ其晩年ノ一身ノ〓節ヲ汚スコト
ガ厭ダト云フノデ罷メニシタ、サウ云フ變化モアル、之ニ就テ
ハ矢張仲小路君ノ問ウタ町村自治ト云フモノヲ破壞スル
形ニナリハシナイカ、斯ノ如クニシテ迄モヤッテ居ル、更ニ又
同ジ群馬縣ノ吾妻郡ノ伊參村ノ村長モサウデアル、伊參村
ハ模範村デアル、此模範村ガ或ハ水田ノ問題下カ、總テノ水
利權ノコトヲ縣廳ニ願フニ就テモ、政友會ニ入會ヲ脅威サ
レテ、入會スレバ此問題ガ早ク許可ニナルト云フコトヲ脅威
サレマスル爲メニ、自分ガ其村長ノ職ニ居ル爲メニ斯ウ云フ
ヤウナコトヲ曾威サレルカラ、職ヲ罷メニスレバ宜シイト云フ
ノデ、卽チ當時ノ村長デアル綿貫宇十郞ト云フノハ模範村
長トシテ、此人ガ村長ニナリマシテカラ村治ガ能ク擧ッタ、非
常ナ功績ノアル人デアルガ、餘リニ政友會ニ入會セヨト云フ
コトデ脅成サレル爲メニ其煩ニ堪ヘズ、自ラ職ヲ擲ッテ辭職
シタト云フ斯ウ云フヤウニナッテ居リマス、是等ハ矢張仲小
路君ガ總理大臣ニ質問ニナッタ、政黨擴張ノ爲メニ町村自
治ヲ破壞シハシナイカト云フ、之ニ能ク當ッテ居ル、此綿貫村
長ガ罷メマシタ爲メニ、模範村ヲ築上ゲタマデ自治ノ爲メニ
ハ盡カシタ人デアリマスガ、其人ガ罷メマシタ爲メニ、相當ナ
村ノ自治ノ上ニ缺陷ヲ來シタト云フコトハ隱レナキ事實デ
アル、是等モ內務大臣ハ如何ナル觀察ヲ持シテ居ルカ、政黨
擴張ノ爲メニハ、所謂行政官憲ヲ利用シテ斯様ナ事ニマデ
致シテ居ル、殊ニ町村自治ト云ヘバ一番國ノ基礎デアリマ
スカラ、小ナルガ如クシテ最モ大ナル事柄デアル、此點ニ向ツ
テハ相當ノ注意ヲ拂フベキコトデアルト私ハ思フ、ソレ故ニ
特ニ此點ニ就テ質問ヲ致シタノデアリマス、次ニハ、府縣行
政ヲ黨勢擴張ノ爲メニ供シ、以テ國民一般ノ福利ヲ蹂躪シ
デ恬然タリ、此事實ヲ伺ハウト思フ、縣會議員ノ-一昨
年デアリマシタカ、卽チ大正八年ノ九月縣會議員ノ選擧ニ
對シマシテハ、各府縣共隨分縣廳ノ官憲ガ正シカラザル干
涉ヲ致シマシテ、自己ノ黨與ヲ縣會ニ殖ス爲メニ努力シタ
モノデアル、是ハ事實ヲ擧ゲマスレバ各府縣共隨分澤山ア
リマス、是亦澤山擧ゲマシテモ、却テ其煩ニ堪ヘマゼヌカラ
一二ノ實例ヲ擧ゲテ内務大臣ノ答辯ヲ願ヒタイト思フ、卽
チ大正八年ノ九月ノ縣會議員選擧ニ於テ、群馬縣ニ於テ
ハ大芝知事ガ居ラレテ、土木課長ヲ利用シテ、盛ニ自己ノ
黨派ノ者、卽チ政友會ノ者ヲ選出セシムルガ爲メニ努力ヲ
致シタ、此土木課長ハ安永倶作ト申シテ、當時九月二十
五日ノ選擧ノ當日デアリマシタ、此選擧ノ日ニ、際シマシテ
彼ハ吾妻郡ニ出張シテ、サウシテ九月十七日ヨリ二十一日
ノ間出張シテ居リマシテ、其時ニ北村技手ヲ從ヘ、竝ニ其
方面ニ土木ノ管區所ガアリマス、其土木管區所ノ武藤ト云
フ主幹ヲ從ヘテ、高山村、名久田村トカ、中ノ條、或ハ坂上
デアルトカ、岩島村、長野原、斯ウ云フヤウナ町村ニ沙汰ヲ
シテヤリマシタ、電話デ道路ノ視察ニ出張シタノデアルカラ、
其村ノ主ナル者ヲ召集シテ役場ニ置ケト云フコトデ傳逹ヲ
シテ置キマシテ、其役場へ參リマシテ、自ラハドウ云フ風ニシ
タカト云ヘバ、部下ノ土木技手ヲ連レテ參リマシタ上ニ、自
分ノ與黨タル卽チ政友會ノ候補者タル-小池、田村ト云
フ兩名ノ政友會ノ候補者ニ立ッテ居ル、此雨名ノ者ヲ一〓
ニ連レテ、サウシテ參リマシテ、一方小池ト云フ者ガ取リマス
區域ニハ、小池ト云フ者ヲ連レテ參リマスシ、田村ト云フ者
ガ得票トスベキ區域ニハ、田村ト云フ者ヲ連レテ行ク、兩方
ノ取ルベキ場所ニハ兩人ヲ連レテ参リマシテ、役場ヘ行ッテ
打合セタ、サウシテ道路法ガ實施ニナリマシタカラ、卽チ九年
ノ四月ヨリ道路法ガ實施ニナル、此實施ハ知事ノ意見一ツ
ニ依ルノデアルカラ、知事ノ意見ニ副ウタ縣會議員ヲ出サネ
バナラヌト云フ勸誘ヲシタ、サウシテ盛ニ自分ノ與黨ヲ出ス
爲メニハ盡力ヲ致シタノデアリマス、殊ニ長野原ノ町役場ナ
ドヘ參リマシタ時ニハ、小池、田村ト云フ兩縣會議員候補
者ヲ連レテ行ッテ、サウシテ其所ニ於テ話ヲ致シタ、其時ニ其
附近ノ村落ノ村長ナリ有力者ニ出張スルヤウニ沙汰ヲシテ
置キマシタノデ、其長野原ノ役場ヘ附近ノ町村トシテ來ルノ
ハ、草津、六合、嬬戀ト云フ村落ノ村長、竝ニ有力家ガ來ル
ヤウニ沙汰ヲシテ置キマシタ、所ガ嬌戀ノ役場カラハ誰人モ
來ナカッタ、其時ニ安永土木課長ガ訓示ヲシ、其傍ニ縣會
議員ノ候補者兩名ガ行ッテ居ルヤウナ譯デ、其一名タル小
池ト云フ者ガ言フノニ、嬬戀村カラハ誰モ役場カラ、人モ何
モ來テ居ラヌ、惟フニ道路ハ要ラナイノダラウ、要ラナイノナ
ラ廢シテヤルト云フ位ニ放言ヲシタ、此一事ヲ以テモダ、所
調縣ノ行政官吏ト候補者ガ結托ヲシテ、投票ヲ自黨ノ者ニ
得ントスルニ努力シタト云フコトハ、明カデアルト私ハ思フ、
是等ニ對シマシテハ、行政官ガ權力ヲ濫用シテ、自分ノ黨
與ノ者ニ投票ヲ取ラウトシタト云フコトガ能ク判ッテ居ルト
思フ、是等ニ就キマシテハ、如何ナル處置ヲ床次內務大臣ハ
執ラレテ居ルカ、此點ニ就テ特ニ伺ヒタイト思フ、更ニ又此
出張シタ時ニ、附加ヘテ水利權ノ請願ヲシテ居リマヌ、水利
權ノ小サナモノニナリマスト、縣廳限リデアリマスカラ、是亦
大田村デアルトカ、或ハ高山トカ云フヤウナ、村落ノ出願シ
テ居ル區域ノ村長、若クハ有志者ヲ喚ピマシテ、同ジク此水
利權ノ認可ヲ早ク得タイト思フニハ、知事ノ意ニ副ウタ郡
會ノ候補ヲ選出スルコトニ努力スルコトガ宜イト云フヤウナ
コトヲ明言シテ居ル、卽チ當然行政官ノ盡スベキ任務デアル
ノニ、其權利ヲ濫用致シマシテ、其認可權ノ濫用ヲ以テ、サウ
シテ自己ノ黨派ニ投票ヲ得ントシタ、此事實デス、是等ノ如
キハ皆ナ土地ノ者ガ、餘リニ濫用モ甚シイト云フノデ憤〓シ
テ居ルノデアル、是等ハ正シキ事實デアリマスカラ、特ニ此事
ニ就テ明カナ答辯ヲ煩シタイト思フノデアリマス、更ニ此郡
馬縣ニ於テ最モ甚シイノハ、極端ニ大芝知事ガ政友會關
係デアリマスカラ、政友會ト云フモノニ努力ヲ致シテ居レバ、
少シ位曲ッタ事デモ、便宜ヲ與ヘテヤルヤウナ事實ガ澤山ニ
アル、随テ總テノ方面ニ官權ヲ濫用シテ居ル、其濫用ノ事
實デス、與黨側ノ人ニ恩惠ヲ與ヘルコトヲ、明白ニ多數人一
知レルヤウニヤッテ居ル、斯ノ如クシテ政友會ニ人レバ、適切
ナル利益アルモノナリト云フコトヲ、民衆ニ知ラシメルヤウニ
ヤッテ居ルノデアリマス、ソレデスカラ極ク小サナ實例デアリマ
スガ、群馬縣ニ於テハ今マデノ例ニ於テモ、郡長ナドノ死ニマシ
タ時ニハ、知事ガ會葬スルト云フヤウナコトモ無ク、部下ノ理
事官位ヰヲ會葬サセルコトニナッテ、知事ガ立會っタト云フヤ
ウナコトハ無イ位デアッタ、然ルニ御用新聞ノ一記者ガ死ン
ダト云フヤウナ事ガアレバ-昨年ノ十二月デアリマスガ、其
等ニ對シマシテハ、知事竝ニ警察部長內務長ト云フヤウ
ナ者ガ殆ド-日曜日デナイ職務ヲ縣廳ニ出テ執ルベキ日
デアルニ拘ラズ、職務ヲ棄テヽサウ云フ方面ニ會葬スル位ニ
マデ、小サナ事ニ注意シテ居ル、所謂國ノ行政官吏ガ當然職
務ニ從事スベキ其時間ヲ棄テヽサウシテ斯ウ云フ事ニマデ
努力ヲシテ居ル、是モ小サナ事デアルガ、矢張民衆ノ上ニ國家
ノ行政官吏ガ、甚ダ穩ナラザル行ヲ私的ニヤッテ居ルト云フ
コトガ民衆ニ適切ニ利クノデアリマス、是等ノ點ハ矢張行政
官憲ト云フモノガ、官紀維持ニ於テ基ダ頽廢シテ居ル事實
ヲ證明シテ居ルノデアル、是等ニ就テハ民力涵養ヲ宣傳スル
內務大臣トシテハ、由々シキ大事デアリマス、自分自ラハ人
民ニ向ッテ、奉公ノ心ヲ養フベシト云フヤウナ事ヲ盛ニ唱ヘマ
シテ、自ラ國家ノ官吏トシテ爲ス所ノ事ハ、殆ド私的行動ヲ
爲シテ恬トシテ顧ミナイ、サウシテ國民ガ粒々ノ汗ヲ絞ッテ出
シタ其租稅ニ依シテ衣食スル官吏ガ、斯ノ如キ行ヲシタトス
ルナラバ、民衆ノ觀念ト云フモノ所謂行政官ニ對シテ甚シク
惡化シテ參リマスノハ是ハ當然ノ事デアリマス、是等ハ床次
內務大臣トシテハ、特ニ考慮ヲ要スペキ事デアラウト思フ
(〔簡單」ト呼フ者アリ)ソレカラ之ニ書イテアリマスガ其甚シ
イノハ-官紀ノ頽廢甚シキ實例ハ、公金ヲ橫領シタト云
フ事實ガ盛ニ新聞ニ唱ヘラレタ其警察署長ヲシテ、恬然職
務ニ居ラシムルト云フコトデアル、是等ノ事モ諸君ノ眼カラ
見タナラバ小サイカモ知レマセヌガ、苟モ國政ヲ論議スル上
ニ於テハ最モ注意スベキ事デス、是ハ何デアルカト云フト、矢
張選擧干涉ノ上ニ好ク働イタ警察ノ署長デアルカラ、大目
ヲ使ヒマシテ馘首スルコトモシナイデ、榮轉ヲサセテ使用シテ
居ルト云フ事實、是ハドウ云フ事デアルカト云ヘバ、大正八
年ノ十二月ノ二十二日デアリマシタカ、群馬縣ニ起ッタ事
實デ、群馬縣ノ碓井郡ノ安中警察ニ起ック事實デアリマス、
不用品拂下ヲ致シマシテ、其拂下ヲシタ半額ト云フモノハ、
警察ノ署長ガ懷中ニシテシマッタ、之ガ爲ニ部下ノ巡査三
名ガ申報ヲ致シマシタ、所ガ申報シタ其巡査ハ譴貴ヲ受ケ、
サウシテ直チニ轉署ヲサセラレタト云フ、サウ云フ譯デアリマ
ス、所ガ其安中ノ署長タル野木村ナル者ハ轉署モサレナイ
デ其儘其處ニ居ッテ、暫ク經クテカラ會計法違反トシテ、若
干ノ罰金ヲ科セラレタノミデ、其後時ヲ經テ沼田ノ警察署
長ニ榮轉ヲシタト云フ事實デアル、是等ハ此問題ガ翌年ノ
二月ニ發覺致シマシテ、二月ノ報知新聞セラ、地方ノ新聞
ニ横領署長トシテ有名ナルモノデアッタ、而モ是等ノ問題ガ
人民ノ惡事ヲ(「簡單」ト呼フ者アリ)時ニハ摘發シ、時ニハ
惡事ヲ未然ニ防グ警察官憲ガ斯樣ナ事ヲ行フテ、之ヲシテ
當然糺スベキ事ヲ糺サヌデ、サウシテ却テ榮職ニ居ラシメル
ト云フヤウナコトハ、國ノ行政ノ權威ノ上ニ、恐ルベキ結果
ヲ招クデハナイカト私ハ斯樣ニ思フ、(拍手)之ヲシモ與黨ニ
便宜ナル働ヲシタカラ其儘使ッテ置クト云フコトナラバ、國家
ノ行政機關ト云フモノハ、實ニ將來恐ルペキモノデアルト私ハ
思フ、更ニ驚クベキモノハ、群馬縣ニ於テハ縣費ノ不法支出
ヲ恬然ヤッテ居ル、民力ノ涵養ヲ宣傳シ、殊ニ官紀ノ振肅ヲ
時と唱ヘテ居ラルヽ內務大臣ノ下ニ、縣費ノ不法支出ヲ敢
テシテ、是亦內務大臣ガ更ニ之ヲ願ミナイト一云フニ至ッテハ
驚カザルヲ得ナイ、是モ理窟ヲ言フヨリハ、事實ヲ申上ゲテ
サウシテ內務大臣ノ答辯ヲ得タイト思フ、ソレハ昨年ノ四月
縣道廢止ニナリマシテ、所謂縣費支辨ト云フ從來縣道デ
アッタ所ノ其廢道ニナッテ、今日ハ一種ノ里道ニナッテ居ル、其
里道ニナッタ場所ヲ、平氣デ縣知事ガ此方面ニ向ッテ縣費ヲ
支出シテ居ル事實ガアル、何故ニ是ハ出シテ居ルカト云フト
此方面ノ縣道ハ廢止シタガ、一箇年縣道ヲ廢止シテ其沿
道ノ者ニ直接ニ苦痛ヲ「與ヘテ、其間其苦痛ニ對シマシテ、
政友會ニ八レ、政友會ニ入ッタナラ、其苦痛ヲ免レルト云フ
適切ナル事實ヲ人民ニ知ラシメテ、サウシテ與黨ノ效能ヲ
發揮スルト云フ爲メニ斯樣ナ策ヲ執ッタ、ンレガ爲メニ卽チ
一箇年縣道ヲ廢止シテ、縣費支辨ヲ中止シテ、置キマシテ
異道路ヘハ唯ダ隱レテ此方面ニ縣費ノ支出ヲシタト云フ斯
ウ云フ事實デアル、ソレハ場所ハ何所デアリマスカト云フト、
所謂以前縣道ノ名ニ於テハ十石峠ト申シマス、是ハ昨年ノ
大正九年ノ四月ヨリ縣道ヲ廢シテシマッタ、卽チ縣費支辨
道デナイ場所ニ道路工夫ヲ此處ニ配置シテ置キマシテ、サ
ウシテ道路ノ修理ヲサシテ置キマシタ、今日唯今モシテ居リ
マス、是ハ縣道デモ何デモナイ、更ニ又豐岡、中野道ト云フモ
ノガアル、是モ亦其中デ豐岡、里見間、此間ヲ廢道ニシテシ
マヒ、昨年ノ四月ヨリ廢止シテ、現在廢道デ縣道デモ何デモ
ナイ、其場所ニ矢張縣費支辨トシテ、道路工夫ヲ配置シマ
シテ修理修繕ヲサセテ居ル、是ハ縣費支辨ニスベキ場所デ
ナイ所ニ縣費ヲ支辨ヲシテ居ル、此半面ヲ見レバドウダト云
ハ、是ハ將來人民ヲ遊說致シマシテ、政友會ニ八ッタナラ
バ縣道ニ入レテヤルト云フ一ツノ謎デアッタ、其爲メニ果タセ
ル哉昨年ノ十一月、十二月ニ開カレタ群馬ノ縣會ニ於テ、
此兩方ノ場所ハ沿道ノ者ガ政友會ニ入ッタ爲メニ、縣道ニ
編入ノ諮問案ヲ出シマシテ決議ニナッタ、今マダ是モ內務省
ニ認可申請ヲシテアル、併ナガラ現在ハ昨年ノ四月ヨリ今
日ニ至ルマデ、マダ縣道デアリマセヌ、此縣道デナイ所ニ縣費
支辨ノ道路工夫ヲ配置シテ、修繕修理ヲ爲サシヌテ居ルト
云フコトハ、是ハ不法支出デー支出スベカラザル所ニ縣費
ヲ支出スルト云フコトハ不法支出デ、此不法支出ヲ爲サシ
メテ、内務大臣ハ如何ナル監督ヲ此點ニ於テ爲スッテ居リマ
スカ、此點ニ於テ私ハ伺ヒタイト思フ、其次ニハ〓育問題ヲ
利用致シマシテ、盛ニ黨勢擴張ヲシテ居ル、事實是ハ各府
縣ニ澤山アリマスガ、事例ヲ澤山擧ゲマスレバ時間ガ經チマ
スカラ、唯ダ一箇所ダケ申上ゲヤウト思フ、是ハ群馬縣ノ機
業地デアル有名ナル桐生デアリマス、桐生ニ町立中學校ガ
アリマス、其桐生ノ町立中學校ハ大正八年ニ於テ群馬縣
ノ縣會ガ、縣立ニ引直シテ貰ヒタイト云フコトヲ決議シテ居
ル、然ルニ此所ヨリ出テ居ル縣會議員ハ非政友デアリマス、
ソレガ爲メニ大正八年ノ縣會ニ於テ、九年度ニ縣立ニ引直
シテ貰ヒタイト斯樣ナル決議ヲ致シテ、更ニ此引直スニ就テ
ノ手續ハ、縣參事會ニ委任スルマデノ決議ヲシテ居ルニモ
拘ハラズ、大正九年度ニ縣立ニ編入ヲシナカッタ、所ガ昨年
ノ縣會ニ於テモ此實ガ見ヘナカッタノデアリマス、然ルニ此町
立ノ中學校ヲ縣立ニ引直スニ就テハ、某土地ノ縣會議員
ガ政友會ニ入リ、其土地ノ有力ナル人ガ政友會ニ入ルナラ
バ、縣立ニシテヤルト斯ウ云フコトデアル、同時ニ足利バ-
所謂桐生足利ハ兩々相竝ンデ居ル場所デアリマスカラ、足
利ガ市制ニナリマシタニ就テ、桐生モ今度市制ニナラネバ
ナラヌト云フノデ、是亦此點ニ大芝知事ガ附入リマシテ、
桐生ニ市制ヲ實行スル上ニ就テモ努力シテヤル、其期間
ノ如キハ二月十日マデニハ認可ヲ取ッテ、二月ノ十一日ニ
ハ市制實行ノ祝宴會ガ開カレルヤウニ努力シテ、ヤルト云
フマデ約束シテ、サウシテ此方面ノ有力家ヲ政友會ニ入レ
ルコトニ、努力ヲ致シタノデアリマス、其事柄ハ昨年ノ縣
會カラヤッテ居リマシテ、昨年ノ縣會中十二月ノ十日ノ日ニ
ハ、從來桐生ニ於テハ縣會議員一同ヲ招ク招待會ガ何時モ
アルノデアリマスガ、此年ニ限ッテ慣例ヲ破シテ政友會與黨ノ
人ダケヲ招イデ、サウシテ此時ニ桐生ノ町立中學校ヲ縣立
ニ昇格シテヤル、市制ヲ來年ノ二月十一日カラ實施サセ
テヤルト云フコトノ條件デ、サウシテ招待會ヲ催シタノ
デアリママス、而モ知事ガ此時演說シテ曰ク、此御馳
走ヲ戴イタ以上ハ喰逃ハ致サヌト言ハレテ居ル、(「ソン
ナコトガアルモノカ」ト呼フ者アリ)是ハ新聞ニモ記載
サレテ明白ナ事實デアル、知事トモアラウ者ガ、御馳走
ヲ戴イテ喰逃ハ致サヌト演說シテ居ル、卽チ喰逃ハシナ
イデ、其報酬トシテオ前達政友會ニ入シタラ、桐生ノ町立
中學ヲ縣立ニ引直シ、更ニ市制ヲ二月十一日ニ實施スル
ヤウニ手續ヲシテヤルト、斯ウ云フコトデアル、是等ハ明カナ
ル事實ニシテ、當時有力チル此土地ノ森宗作トカ、書上ト
カ云フヤウナ人達ガ入リマシテ、更ニ其翌年ノ卽チ本年ノ
一月ヲ以テ、私共ハ同ジ少調ヲ執ッテ居ッタ前原良太郞ト
云フ縣會議員、卽チ縣參事會員ガ政友會ニ入會サレタノ
デアリマス、是ハ明ニ申シテ居ル、自分ハ其晩節ヲ汚スコ
トハ嫌ダ、ケレドモ土地ニ市制ヲ實施スルコト、町立ヲ縣立
ニ引直シテ吳レルト云フ、此事ガ官憲ノ手デ一日モ早ク出
來ルト云フコトデ、ソレガ縣會議員デアル我レ一個人ガ入黨
スレバ宜シイト云フコトデアレバ、桐生市ノ爲メニ淚ヲ呑ン
デ犠牲ニナルト、斯ウ云フコトデ知事ト默契ガ濟ンデ入黨ヲ
致シタノデアリマス、(「意思ガ薄弱ダ」ト呼フ者アリ)是ハ薄
弱ニ非ズシテ、其土地ノ利益ヲ圖ル爲メニ、其前原良太郞
ナル者ハ、已ムヲ得ズ四圍ノ狀勢ガ斯ウシナケレバ、土地ノ
爲メニ不利益ダカラヤッタノデ、サウ爲サシメタ者ハ誰ダト云
ヘバ、官權ヲ濫用シタ所ノ知事ガ斯樣ナルマデニ致シタノデ
アル、卽チ民力ノ涵養ヲ宣傳スル其手先ニ働イテ居ル知事
ノ如キモノガ、斯樣ナル官權ノ濫用ヲ致シマシテ、而シテ黨
勢ノ擴張ヲ致スト云フコトハ、行政官トシテアルベカラザル
事ト私ハ思フ、政務官ナラバ格別デス、行政官ハ一種ノ事
務官デアリマスカラ、ソレガ政黨ヲ云爲シテ政黨擴張ノ爲メ
ニ努力スルト云フコトハ、爲スベカラザル事デアル、而モ斯樣
ナル事ヲシテ居ル、更ニ又慊ラナクテ、是ダケデハマダ政友會
ト云フモノガ實權ヲ-機業地タル有力ナル桐生ノ實權ヲ
握ルコトガ出來ナイ爲メニ、所謂桐生織物組合ニマデ干涉
シテ居ル、是等ハ東京ノ新聞ニ出テ居ルカラ御知リデアリ
マセウ、卽チ織物組合ガ昨年十二月ノ二日ニ組合員ノ選
擧ヲ致シテ、選出ノ役員ノ認可申請ヲシテ居ルニモ拘ラズ、
何等ノ理由ナシニ今日ニ至ルマデ認可ヲシナイ、何故シナイ
カト云フト、半面ニ選擧ノ違反ガアリハシナイカト云フヤウ
ナコトデ、地方裁判所ノ檢事ヲ呼ンデ探シテ見テ、人心ヲシ
テ不安ナラシメテ見タリ抔云フヤウナ事ヲシテ、サウシテ此
桐生ノ織物組合ノ實權ヲ取ラウトシタ、ソレガ爲メニ桐生ハ
由來政黨政派ニハ關係シナイ場所デ、實業家ノ場所デスカ
ラ-其爲メニドウシテモ已ムヲ得ナイノデ、四五ノ人ガ政
友會ニ入會シタノデアル、更ニ織物組合ハ其選擧ヲ今日ニ
至ルマデ認可シナイデ、唯タ縣廳ニ騷ガサレテ居ルダケデ、餘
リ其煩ニ堪ヘヌト云フ所カラ、其役員達ハ餘リニ行政官ニ
ウルサク尾ケ狙ハレルコトヲ忌ンデ、當選サレタ者ガ、認可ノ
ナイ前ニツイ此頃皆ナ辭職ヲ申出タト云フヤウナ狀態ニナッ
テ居ル、是ハ何デアルカト云ヘバ、土地ノ產業ヲ蹂躪致シマ
シテモ、唯ダ政黨ヲ擴張スル爲メニハ、是程ニ露骨ニ働イテ
居ル、是ハ唯タ其一班ニ過ギヌノデス、斯樣ナル事ハ洵ニ何
デモナイヤウデアリマスガ、國家ノ基礎デアル自治區、竝ニ織
物組合ト云フモノガ何等補助モ受ケナイデ、縣若クバ農商
務省ト云フ邊リカラ獨立ニ働イテ居ル機業地ニマデ、斯ウ
云フ風ナ政黨的ノ脅威ヲ與ヘルト云フコトハ、甚ダ宜シクナ
イト思フ、殊ニ甚シイノハ、學校ノ〓職員マデモ政友會ノ爲
メニ努力シナケレバ、其人間ヲ免職サセルト云フノデ、是等ハ
實例ヲ擧ゲルナラバ枚擧ニ遑アラズデアリマス、最モ近イ例
ヲ擧ゲルナラバ、殆ド吾妻郡ニ高等實科女學校ト云フモノ
ガ群馬縣ニアリマス、此實科女學校ニ田島正也ト云フ〓師
ヲ雇ッテアル、此〓師ハ(「ソンナコトハ群馬縣會デヤリ給へ」ト
呼フ者アリ)昨年ノ九月任命ヲ致シタ、昨年ノ九月任命ヲ
致シタ者ヲ、此一月二十七日ニ罷メサセテシマッタ、是ハ何
故罷メサシタカ、此人ハ桐生出身ノ人デアッテ、五月ノ選擧
ノ時ニ、飯塚春太郞君ノ爲メニ奔走努力ヲシタト云フコト
ガ、知事ノ甚ダ御氣ニ召サナイト云フノデ、任命ハシテ置イタ
ガ其事ガ能ク分ッタノデ、當初世話ヲシタ者ガ洵ニ知事ニ對
シテ困ルカラ、是非罷メテ貰ヒタイト云フコトヲ田島正也ト
云フ者ニ賴ンデ、任命シタ其〓師ニ向シテ、〓師ニ任命サレ
ル前ニ、所謂選擧運動ヲシタト云フ其爲メニ、辭職ヲシテ貰
ハナケレバ困ルカラト云フコトデ辭職ヲ强要シタ、ンレガ爲
メニ田島ト云フ者ハ、別ニ衣食ニ窮シテ居ル譯デモナイカラ、
自ラ辭職書ヲ出シタ、斯ウ云フ事實デアル、是ハ何デアルカ
ト云フト、九月ニ任命シタ、選擧ハ五月デスカラ、土地ノ者
デアルカラ、其人ガ衆議院議員ノ候補ニナレバ、之ニ働クト
云フコトハ銘々ノ自由意思デアリマスカラ、之ニ向ッテ何等
干涉スル必要ハナイ、此者ガ月ヲ經テ九月ニ任命サレタ其
者ガ、非政友ノ飯塚春太郞ノ爲メニ働イタト云フノデ、此者
ヲ罷メサセナケレバナラヌト云フノハ何事デアル、斯フ云フ〓
育ノ事ニマデ手ヲ著ケテ、ソレモ〓師ニ任官ヲ致シマシテカ
ラ政黨政派ニ關係ヲシタト云フノナラバ、宜シクアリマスケ
レドモ、民間ニ居ラレタ時ニ、自己ノ自由意思デ政治ニ働イ
タト云フコトハ、是ハ立憲政治ニ於テ私ハ嘉スベキコトデア
ルト思フ、併ナガラ左樣ナ事ヲ致シテ居リマスカラ、〓育界ニ
於テスラモ、〓員ガ矢張政黨ト云フ問題ノ爲メニ脅威セラ
ルヽ爲メニ、善良ナル〓師ガ自己ノ椅子ニ對シテハ、不安ノ
念ヲ懷イテ居ルト云フコトデアル、皆サンモ御承知ノ通リヽ
〓育ハ百年ノ事業デアルカラ、之ニ携フテ居ル〓師ニ對
シテハ、相當ノ敬意ヲ拂フノガ當然デアリマス、或ハ小
問題ト思召ス人ガアッタヤウデスガ、此問題ハ國家ノ基礎
ヲ成スベキ重大問題デアリマスカラ、私ハ此事實ヲモ
擧ゲテ、內務大臣ニ伺ッテ置キタイト思フノデアル、更ニ
又之ニ書イテアリマス、大正九年ノ四月ニ於テ道路法
ヲ實施致シマシタ、此道路法ノ實施六、內務省ノ官吏ナ
ドガ盛ニ道路法實施ノ爲メニ、國家ノ交通機關ガ完全
ニナル途ヲ開カレタノハ慶ブベキ、事デアルト云フノデ、道路
課長ノ如キモ、其意見ヲ新聞紙ニマデ書イタ位デアル、然ル
ニ此道路法實施ガ、各府縣ノ知事ヲシテ、黨勢擴張ノ具ニ
供セシメタト云フコトハ、甚ダ遺憾千萬デアリマス、是等ニ
就テハ殊ニ群馬縣ニ於テハ、大芝知事ノ如キハ露骨ニ此道
路法ヲ正シキ意義ニ於テ運用致シマセヌデ、唯ダ政黨擴張
ノ具ニノミ運用ヲ致シタ、洵ニ情ナイ狀態ニナッテ居ル、之ガ
爲メニハ群馬縣ノ道路行政ナルモノハ、道路法實施ノ爲メ
ニ殆ド紊亂シテシマッタ、卽チ憲政會若クハ憲政會ナラザル
モ、政友會ニ入會シテ居ラヌ方面ノ道路ト云フモノハ、皆ナ
廢道ニシテシマッタ、從來相當ノ歷史ガアリ、且ツ現在縣道ト
シテモ、他ノ道路ニ較ベテ更ニ劣ラヌ所ノ要素ヲ持ッテ居ル
ニ拘ラズ、意政會關係ノ人達ノ居ル方面ハ皆ナ慶道ニ致シ
タト云フ、廢道ニ致シテ、卽チ昨年ノ四月ヨリ廢道ニ致シタ
結果ハドウデアルカト云へバ、廢道ニ致シテ置イテ其間ニ行
政官吏ヲ使ヒマシテ、政友會ニ入レバ縣道ニ入レテヤルト
云フ、斯ウ云フコトデ脅威ヲ致シタ、中ニハ已ムヲ得ズ人民
ガ政友會ニ入リマシテ、四月廢道ニナッタ場所ガ、政友會ニ
入會シタ爲メニ復活シタ場所モアル、是モ亦一例ヲ舉ゲル
ナラバ、昨年四月政友會ナラザル、卽チ憲政會關係方面ノ
道路ガ廢道ニナッタ場所ガ五箇所アル、卽チ三國後閑道、十
石峠道、澁川原町道豊、圖中野道、草津澤渡道、斯ウ云ム
方面ノ一部廢止ニナッタ所モアリ、全部廢ササレタ所モアル、
是等モ皆憲政會ニ關係ノ場所デアリマス、此五線路ノ中
デ、政友會ニ入ッタ爲ニ昨年ノ暮ニ免モ角モ縣道ニ入ルト
云フ諮問案ニ知事ガ編入ヲ致シテ、昨年ノ縣會ニ掛ケタ場
所ガ二線アル、卽チ三國峠、豊岡中野線ハ、沿道ノ者ガ政
友會ニ入ッタ結果トシテ、昨年四月ヨリ現在廢道ニナッタモ
ノモ、一箇年間廢道ノ苦痛ヲ人民ニ與ヘタ、其苦痛ノ結果
今日ハドウカ斯ウカ政友會ニ已ムヲ得ズ入ラウト云フノデ、
人民ガ入ッタ結果、是ガ縣道編入ノ諮問案ガ可決ニナックヽ
是ガ今內務省ニ認可申請ニナッテ居リマス、是等ハ道路法
ヲ適當ニ運用致シマセヌデ、黨勢擴張ノ爲メニ知事ガ惡シ
ク運用致シタ、正シキ證據デアルノデアリマス、是等ハ亦內務
省ニ土木局ナルモノガアリ、又道路課長ナルモノガアッテ、相
當ノ頭ノ人ガ之ニ向ッテノ認可權ヲ運用シテ居ルモノト私
ハ思ヲテ居ル、然ルニ内務省ハ知事ガ亂暴ナル縣道諮問案
ヲ決議サシテ、其認可ヲ申請シテ來レバ、之ニ向ッテ所謂認
可權ヲ正シク運用ヲ致サナイデ唯ダミと黨勢擴張ノ意味
ニ縣道ガ擴張ニナレバ、ソレヲ其儘内務省、卽チ内務大臣
監督ノ下ニ在ル土木課長道路課長ハ、之ヲマンマト認可ヲ
致シテ居ルト云フコトハ如何ナル意義デアルカ、此點ヲ特ニ
道路法實施ノ本旨ニ副ハナイ所ノ意義ヲ、内務大臣ニ承ッ
テ見タイト思フ、(「モウ止セここ」ト呼フ者アリ)要スルニ私ガ
斯ウ云フコトヲ申上ゲマスノハ嚮ニ申上ゲマシタヤウニ、唯
ダ自己一個ノ問題デハナイ、國ノ行政官ガ政友會ノ行政
官デアルカ、國家ノ行政官デアルカト云フコトヲ人民ガ此頃
疑ッテ來タ、(拍手起ル)此點ハ恐ルベキ結果ニナルノデア
リマス、至ッテ小問題ノヤウデアリマスケレドモ、是ガ民心
ヲ惡化セシムルコトハ偉大ナルモノデアル、現在私ノ知ッ
テ居ル範圍ニ於テ當然縣道ニ入ルベキモノガ、知事
ガ政黨的色彩ノ爲メニ、縣道ト云フモノニ落第ヲシテ
廢道ヲ苦痛ニ遭シテ居ル、而モ其土地ノ人民ハ皆ナ同ジク
縣費ヲ負擔シテ居ル、ンレデアルカラ理解アル所ノ人民ハ近
來盛ニ憤慨致シテ居リマシテ、同ジク縣費ヲ負擔シテ居リ
ナガラ、甲ハ縣費ノ惠澤ニ浴シ、乙ハ縣費ノ惠澤ニ浴サナイ
ト云フコトハ、大正ノ御代ニアリ得ベカラザル事デアル斯樣
ナル事ガアルナラバ、万已ムヲ得ヌカラ、所謂大正十年四月
ヨリハ結束シテ、全村擧ッテ縣稅ヲ納メルト云フコトハ止メ
ニシヤウト憤慨シテ居ル町村ガ、幾ラモアルノデアル、內務大
臣ハ盛ニ思想問題ヤ何カニ就テ御心配ニナッテ居ル、外來ノ
思想ガドウデアル、社會主義ガドウデアルト言ッテ御心配ニ
ナッテ居ルガ、私ハ斯樣ナ問題ハ左迄心配ハシナイ、サウ云フ
コトヲ云々スル人ハ、相當ニ能力アルノデアルカラ、日本ノ國
情ニ稽ヘテ左迄心配ハナイト思フガ、直接人民ヨリ租稅ヲ
取ッテ、其租稅ヲ取ッタ行政官ノ行ガ、甲ニハ厚クシテ乙ニハ
冷淡、而モ冷酷ナル取扱ヲ與ヘテ居ルト云フコトニナリマス
ト、租稅負擔ノ意義ヨリ考ヘテ、今申スヤウニ一部ノ町村ガ
縣費ヲ負擔スルコトハ、甚ダ馬鹿氣テ居ルト言ッテ、縣費不
納ヲ四月ヨリ致サウトマデ有力家ガ協議シテ居ルニ至ッテハ、
是程民心ノ惡化ハ無イト思フ、(拍手起ル)內務大臣ノ言
フ〓想問題ト、所謂外カラ來ル過激派思想、社會主義ニ
非ズシテ、内務大臣ノ監督ノ下ニ在ル行政官ガ、偏頗ナル
處置、所謂政黨的色彩ヲ以テ、偏頗不公平ナル行政事務
ヲ事實ノ上ニ於テ行フガ爲メニ、國民ニ惡シキ所ノ觀念ヲ與
ヘ、之ガ爲メニハ稅租ハ國民ノ義務デアルト云フ此大切ナ
ル義務ヲデス、斷然止メニ致シテ、縣費ハ納稅致サナイト云
フヤウナコトヲ、有力ナル町村ノ人ガ申出ルニ至ック、(拍手
起ル)斯ウ云フ思想ガ一番恐ルベキモノデアルト私ハ思フ
(拍手起ル)此點ハ所謂一黨一派ノ問題デアリマセヌ故ニ、
政友會ガ民間ニ下リマシテ野黨トナリマシテモ、憲政會ガ
政權ヲ握ッテ朝黨トナリマシテモ、免モ角モ町村自治ト云フ
モノハ最モ重キヲ置カナケレバナラヌ、更ニ進シデ府縣行政
ト云フモノヲ、唯ダ政務官ノ手足ニノミ使ッテ、政黨擴張ノ
道具ニ行政官ヲ使フヤウニナリマスレバ、モウ世ハ末トナリ
マシテ、唯ダここ民心ヲ惡化シテ、國ノ行政ト云フモノヽ權
威ハ無クナルト私ハ思フ、(拍手起ル)如何ニ議會ニ絕對多
數ヲ持チマシテモ、一步門ヲ出タナラバ、所謂此黨利黨慾ヲ
以テ行政權ヲ濫用スルコトニナリマスナラバ、絕對多數ノ政
友會諸君ノ立場モ無クナルト私ハ思フ、(拍手起ル)是ハ御
互冷靜ニ考テ戴イテ、行政官廳ト云フモノヲ、御互ガ相當
ナ信用アリ權威アルモノタラシメナケレバナラヌ、唯ダ黨勢
擴張ノ爲メニ行政官廳ヲ利用スルト云フガ如キ淺猿シキ
心掛ハ、止メニシテ戴キタイト私ハ思フ、ソレ故ニ私ガ內務
大臣ニ特ニ伺ヒタイノハ、內閣大臣中世間ヨリ認メラレテ
幾分カ智識アリ、相當見識アリト云ハルヽ内務大臣ガ部下
ノ行政官憲ヲ政黨ノ方面ニ使ッテ、偏頗不公平ナル所ノ行
爲ヲ致サシメルト云フコトハ、實ニ國家將來ノ爲メニ恐ルベ
キ事ダト私ハ思フ、(拍手起ル)旣ニ民力涵養ヲ宣傳シテ居
ラレル床次内務大臣ハ、特ニ此點ニ就テ一般ノ御考慮ヲ要
セラレマシテ、私ガ伺ヒマシタ問題ハ僅カナル問題デアルガ、
是ハ事實デアル、所謂事實ハ雄辯デス、此點ニ向,テ明白ナ
ル答辯ヲシテ戴キタイト思フデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=20
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021・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 板野友造君
四都市政策ニ關スル質問(板野友造君
提出)
都市政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年一月二十二日
提出者板野友造
贊成者鈴木梅四郞
外二十九人
都市政策ニ關スル質問主意書
都市カ電氣瓦斯ノ如キ公共的事業ヲ營ム會社トノ間ニ
事業ノ買收報償金ノ納付等ニ關シ報償契約ヲ締結セ
ルモノ多シ之ニ對スル政府ノ所見如何
右及質問候也
〔板野友造君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=21
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022・板野友造
○板野友造君 私ハ先般都市政策ニ關スル質問主意書
ヲ提出ヲ致シテ置キマシタ、其質問ノ趣旨ヲ極メテ簡單ニ
此所デ申述ベテ置キタイト存ジマス、質問ノ要旨モ簡單デ
アリマス、「都市政策ニ關スル」ト云フ文字ハ色〓ナ事ガ包含
致シマスルガ、私ガ本日此所デ承ラント欲スル所謂都市政
策ナルモノハ、極メテ範圍ガ狹イ、先ヅ其質問ノ第一トシテ
承リタイト存ジマスルノハ、都市-先ヅ私ハ之ヲ市街地ト
云フ意味デ此文字ヲ使ッテ居リマスガ、此都市ニ於テ、卽チ
市街地ニ於テ電氣ニ關スル事業-電氣事業、卽チ電鐵
ノ事業デアルトカ、或ハ電燈事業デアルトカ云フヤウナ電氣
ニ關スル事業、又ハ瓦斯ニ關スル事業、是等ノモノハ現在ニ
於テハ、多クハ會社ガ之ヲ經營致シテ居リマス、其大部分ハ
商事會社ガ之ヲ經營致シテ居ルノデアリマスルガ、斯ノ如キ
事業ハ、都市自身ヲシテ經營セシムルト云フコトガ、最モ適
當デアルト私共ハ思ッテ居ルノデアリマスルガ、此點ニ對スル
政府ノ御所見ハ如何デアルカト云フコトヲ、先ヅ第一ニ伺ハ
ント欲スルモノデアリマス、其譯ヲ私此所デ簡單ニ申述ベテ
置キタイト存ジマス、是等ノ電氣事業若クハ瓦斯事業ハ、
之ヲ都市ノ直營トスル方ガ-都市ノ公營トスル方ガ適當
ト信ジテ、政府ノ意見ヲ聽ク所以ヲ簡單ニ述ベテ置キタイ
ト思ヒマス、第一ハ私共ノ信ズル所ニ依リマスルト、是等電
氣事業若クハ瓦斯事業ト申ス如キモノハ、其事業ノ性質
上カラシテ、各自ガ勝手ニ此事業ヲ經營シテ競爭ヲスルト
云フコトハ、出來ナイ性質ノモノデアルノデアル、事業ノ性質
ガ各自ノ自由競爭ヲ許サナイ、ゾレデアリマスルカラ、何レノ
都市ヲ見マシテモ、瓦斯事業ヲ經營シテ居ルトカ、或ハ電氣
事業ヲ經營シテ居ル者ハ一若クハ二デアッテ、多數ノ者ガ相
互ニ競爭ヲシテ居ルト云フヤウナ事實ハ斷ジテアリマセヌ、
是ハ性質ガ許サナイカラデアル、所謂獨占的事業デアルノデ
アリマスルガ、其性質ガ獨占的デアリマスルノミナラズ、其事
業ノ對手方トナリ、其事業家トナリマスル者モ亦其住民ノ
殆ド全部デアル、少クトモ住民ノ大多數デアリマスカラシテ、
其事業ノ遣方、卽チ事業ノ施設經營ノ巧拙如何、若クハ適
否如何ハ、直チニ其都市ノ住民ニ重大ナル關係ヲ及ボス結
果ヲ來スノデアリマス、此點カラ見マズレバ、是等ノ事業ハ公
益的事業、若クハ公共的事業デアルト申サナケレバナラヌノ
デアリマス、ンコデス、斯ノ如ク公共的公益的性質ヲ有スルノ
デアリマスルガ故ニ、是等ノ事業ハ現今ニ於テハ、實際ハ私
人若クハ會社ガ經營ニ致シテ居リマスルガ、斯ノ如ク唯ダ
自己ノ營利ノ爲メニノミヤッテ居ル所ノ、會社ナドノ經營ニ
一任スベキモノデハナイ、宜シク是ハ都市自ラヲシテ經營セ
シムベキモノデアルト斯樣ニ信ズル、是ハ事業ノ性質カラシ
テ、私共斯樣ニ信ズルノデアリマス、ソレカラモウ一ツ之ヲ都
市ノ公營トスル方ガ適當デアルト存ジマスルノハ、此電氣ナ
リ瓦斯ナリノ事業ニ依ッテ生ズル收益ト、都市ノ財源トノ關
係デアル、言ヒ換ヘテ申シマスルナラバ是等ノ事業ニ依シテ
得タ收益ヲ以テ、都市ノ事業計畫ノ財源タラシメヤウト云
フ見地カラ見テ、是等ノ事業ヲ都市ニ經營サセタイト斯ウ
思フ、現在ノ都市ノ有樣ハ此所デ委シク說クコトハ致シマセ
ヌ、多少間接ニモナリマスルシ、又此所デ說カナケレバ、御解
リニナラヌヤウナ問題デモアリマセヌカラ、此所デ委シク說ク
コトハ致シマセヌ、致シマセヌケレドモ、現在此時勢ノ進運ニ
伴ッテデス、都會ニ於テモ或ハ地方ニ於テモ、時代ノ要求ニ
應ジテ諸般ノ設備ヲ爲サチケレバナラヌ、其仕事ハ益々多
端デアル、之ニ處スルノ事務ハ愈〓繁劇ヲ加へ來ッテ居ルコト
ハ、申スマデモアリマセヌ、殊ニ都市ハ田舍ニ較ベテ見マスレ
バ、一層緊急ノ事業ガ多イト云フコトヲ、亦更メテ申スマデ
モナイノデアリマス、所ガ是等全國ノ都市ニ於テ、焦眉ノ急、
若クハ緊急ノ仕事トシテシナケレバナラヌ事ハ澤山アルニ拘
ラズ、實際此仕事ヲ片附ケテ、サウシテ要求ニ應ズルダケノ
仕事ヲシテ居ル都市ハ何所ニ在ルカト云フト、私共ハ遺憾
ナガラ之ヲ見出スコトガ出來ナイノデアリマス、是ハ一々各
都市ニ就テ申ス必要モ無イト考ヘマスガ、先ヅ都市中ノ大
都市デアル東京市ハ如何デアルカ、京都市ハ如何デアルカ、
又大阪市ハ如何デアルガ、其現狀ハ果シテ要求ニ應ズルダ
ケノ、施設經營ヲ致シテ居ルノデアルカドウカト申シマスレ
パ、私共ハ何レヲ見マシテモ、十分爲スベキ仕事ガアッテモ、
未ダ是ガ整理サレテ居ラヌ、是ガ設備ガ出來テ居ラヌト申
シテ少シモ差支ハナイト存ジマス、大都市タルノ面目、大都市
タルノ要求ニ相當スルダケノ施設經營ヲドノ大都市ガ致シ
テ居リマス、ドノ小都市ガ致シテ居リマス、手取早ク之ヲ申
シマスナラバ是等都市ニ於ケル〓育ノ有樣ハ如何デアリマ
ス、又交通ノ有樣ハ如何相成ッテ居リマス、衞生ノ施設ハド
ウデアル、社會的ノ事業、是等ノモノハ今日如何ナル狀態デ
アルカト見マスレバ、誠ニ心細イ次第デアリマシテ、漸ク其〓
ニ就イテ居ルモノモアル、又ハ業半バニ在ルモノガアッテモ、何
レモ是等ノ點ニ就テ、遺憾ナク設備ヲ致シテ居ルモノハ無イ
ノデアリマス、私ハ斯樣ニ申シマスルガ、京都ナリ東京ナリノ
事ヲツイ申シマシタカラ、一言ダケ其事實ヲ爰ニ舉ゲテ置キ
マス、先ヅ此小學〓育ノ事ニ就テ申シマスレバ、市町村ハ御
承知ノ通リ、小學校ノ義務〓育ヲ負擔致シテ居リマスガ、此
負擔ヲ果スダケノ經費ガ十分デナイガ故ニ、今日尙ホ授業
料ヲ徴收シテ居ルト云フノガ現在ノ有樣デアル、理窟カラハ
授業料ヲ取ルト云フコトハ、之ヲ說明スルコトガ出來ナイト
思→テ居ル、元來是ハ經費ノ都合上已ムヲ得ザルガ故ニ、之
ヲ取シテ居ルモノト見ルノ外ハチイト思ヒマス、又各都市ニ
就テ見マスノニ、殊ニ大都市ニ就テ之ヲ見ルニ、學校ノ〓室ガ
足ラナイ、〓室ヲ建增スダケノ經費ガ無イ、〓室ガ不足ヲシ、
〓員ガ足ラナイト云フガ爲メニ、所謂二部〓授ナルモノヲ行
テ居ルクデアル、卽チ午前ト午後トニ分ケテ、或ル生徒ハ午
前ニ〓育ヲ受ケ、或ル生徒ハ午後ニ〓育ヲ受ケルト云フヤ
ウニ二部〓授ヲヤッテ、サウシテオ茶ヲ濁シテ居ルト云フ如キ
コトモ、經費ノ不足カラ來ルモノデアリマスガ、誠ニ慘メナ次
第デアルト申スノ外ハナイト考ヘマス、唯今交通ノ事ヲ申シ
マシタカラ、是モ一ツダケ私ハ爰ニ申シテ置キマスガ、日本ノ
大都市ニシテ第一位ニ居ル東京ノ道路ハ如何デアリマス、
日本ノ東京ト云フ此大都市ノ道路ハ如何デアリマスカ、是
モ私ガ爰ニ申スマデモナク、皆樣ノ御承知ニ相成ッテ居ル次
第デアッテ、天氣ノ日ニハ殆ド埃デ目ヲ覆フト云フ有樣デ、-
朝雨降トナルト、所謂泥濘脚ヲ沒スルト云フ風デ、迚モ道ト
シテノ完全ナ效用ノ爲シテ居ラヌノデアリマス、二三年前デ
アッタト思ヒマスガ、或ル外國人ガ東京ノ道ヲ見テ、サウシテ
コンナニ泥ガ澤山アル、道路ガコンナニ深イナラバ、何カオカ
シナ物ヲ穿イテ步イテ居ルヤウデアルガ、寧口舟ヲ出シテ、舟
デ往來シタ方ガ便利デアラウト云フ話ヲシタコトガアッタヤウ
ニ記憶致シマス、隨分皮肉ト申シマスルカ、辛辣ト申シマス
ルカ、誠ニ遺憾ニ堪ヘナイ酷評デアリマスケレドモ、此酷評ガ
事實ニ適合シテ居ルノデ、如何トモスルコトガ出來ナイノデ
アル、我ガ首都タル東京ニ於ケル道路ガ既ニ斯ノ如キモノデ
アリマスカラ、都市ノ仕事ハ誠ニ御粗末デアリ、爲スベキモノ
モ一切爲サレテ居ラヌト云フコトハ、此一事ニ依ッテ見テモ
明カデアルト考ヘマス、斯様ニ都市ノ缺陷ヲ數ヘ擧ゲルコト
ハ、私ノ此質問ヲスル所以ノ趣旨デアリマセヌカラ、是以上
ハ省キマスガ、何故ニソレナラバ各都市ガ斯ノ如ク御粗末
千万デアリ、斯ノ如ク不體裁ナルコトヲ以テ我慢シテ居ルノ
デアルカ、是ダケハ此所デ一言シテ置キタイト考ヘマス、各都
市ハ決シテ現狀ニ甘ンジテ居ルノデハアリマセヌ、怠ケテ以
テ爲スベキ事ヲシナイノデハアリマセヌ、ソレデハ何故ニ現狀
ノ儘デアルカト申シマスレバ、是ハ爲サヾルニ非ズ爲セナイノ
デアル、簡單ニ申シマスレバ、金ガ無イカラ如何トモスルコト
ガ出來チイノデアル、經濟ガ許サナイカラ、泥ノ海デアルコト
ヲ認メチガラモ、之ヲ如何トモスルコトガ出來ナイト云フノデ
アル、斯樣ニ申シマスレパ、左樣ニ困ルナラバ、各都市ハ宜シ
ク法律ノ許ス所ニ依ッテ稅金ヲ取立テテ、ドン〓〓爲スベキ
仕事ヲシタラ宜イデハナイカ、ト云フ人ガアルカモ知レマセヌ
ガ、是ハ現在ノ都市ノ有様ニ於テハ、今日以上稅金ヲ取ル
コトハ出來ナイノデアル、事實ニ於テ法律ノ許ス極度マデ、
負擔力ノ所謂絕項マデ既ニ徴收シテ居ルノデアリマスガ故
ニ今日以上稅金ヲ取ルト云フコトハ事實許サレナイ、ソレデ
アリマスカラ市制ニモ認メテ居リマス如ク、市稅以外ノ收入
ヲ以テ、市ノ費用ニ充テルト云フ方針ヲ執ルノ外ハ無イ、斯
樣チ點カラ見マスト、電氣ニ關スル事業若クハ瓦斯ニ關ス
ル事業ニ依シテ生ズル牧益ノ如キハ都市ノ財源ト致シマシ
テハ、洵ニ好個ナモノデアルト云フコトヲ私共ハ認メルノデア
リマス、斯樣ナ譯デ財源ト云フ方面カラ見テモ、是等ノモノ
ヲ市營タラシメルコトガ適當デアリハシナイカト思フ、先ヅ大
體ニ於テ是等ノ事業ヲ市營トスルト云フ根本ノ御考ガ有
ルカ無イカ、此事ヲ御伺ヲ致シタイ、ソレカラ質問ノ第一一ハ
唯〓申シマシタ電氣若クハ瓦斯等ノ事業ハ、其性質ガ公共
的デアル、公益的ノモノデアル、又一面ニ於テ其收益ガ立派
ナル都市ノ一大財源デアルト云フノ關係カラシテ、都市ヲシ
テ是等ノ事業ヲ直接ニ經營セシメルコトガ適當デアルト云
フコトガ言ヒ得ラレルナラバ、更ニ進ンデ之ヲ現在ハ-例
ヘバ十年後若クハ十五年後ニハ、其事業ヲ市ノ方へ買上ゲ
ル、今ハ會社ガ經濟ヲシテ居ルケレドモ、一定ノ年限ノ後ニ
ハ之ヲ市ニ買上ゲルト云フコトヲ定メ、サウシテ其年限ノ來
ル迄ノ問ハ、年々一定ノ報償金ナルモノヲ拂ハス、會社ヲシ
テ報償金ヲ都市ニ拂ハス、何々會社ヲシテ報償金ヲ東京市
ニ拂ハスト云フヤウナ風ニ、買收期限ノ到達スル迄ノ間ハ、
報償金ヲ都市ニ拂ハスト云フコトニスル、現在今之ヲヤッテ
居リマス、大低ナ都市、是ハ大都市デナクトモ、市ト名前ノ
付カヌ町若クハ村ニ於テモ、是等ノ事業ヲ經營スル者カラシ
テ、所謂報償金ヲ取シテ居ル、所謂報償契約ヲ拵ヘテ居リマ
スガ、此樣ナ内容ヲ持ッテ居ル報償契約ナルモノガ、殆ド全
國ノ都市ニ於テ締結サレ、且ツ是ガ遵奉サレテ居ルノデア
リマスルガ、之ニ對シテハ私ハ十分此契約ヲ尊重シ、且ツ之
ヲ奬勵保護スベキモノデアルト確信ヲ致シテ居リマスル、此
點ニ就テ政府ノ御所見ハ如何デアルカ、甚ダ疑ハシキモノガ
アルガ故ニ、此點ハ特ニ政府ノ御方針ヲ承リタイト存ズルノ
デアリマス、理論ト致シマシテハ、ドウシテモ唯今申上ゲマシタ
ル內容ヲ含ム報償契約ナルモノハ之ヲ尊重シ、且ツ之ヲ奬
勵保設スベキモノデアルト云フコトハ、理論上ハ私殆ド多言
ヲ要セザルモノガアルト信ズルノミナラズ、此報償契約ヲ尊
重シ、且ツ奬勵スベキモノデアルト云フコトハ、本員一個ノ解
釋ニ非ズシテ、長ク此政府ノ執リ來レル方針デアリ、解釋デ
アルト云フコトヲ爰ニ一言致シテ置キタイト存ジマス、ソレ
ハ第二十七議會ニ於テ此報償契約ノ事ガ問題ニナリマシ
タ、明治四十四年三月七日ニ、當時ノ內務大臣平田男爵カ
ラシテ都市ノ公營、卽チ瓦斯、電氣ニ關スル事業、是等ノモ
ノハ都市ヲシテ公營セシメルコトガ適當デアルト云フコトヲ、
議會ニ答ヘラレク事實ガアルノデアリマヌ、官報號外ニ依ツ
テ示サレテ居ル所ヲ、極ク簡單デアリマスルカラシテ私爰ニ
朗讀シタイト思ヒマス、此二十七議會ニ於テ内務大臣ガ當
議會ニ答辯シタル所ニ依レバ「市内ニ於ケル電氣鐵道、電
燈、瓦斯供給等ノ事業ハ都市ノ經營ニ依ラシムルハ最モ適
當ナリトスルモ都市ノ現況ハ未ダ全然是ガ經營ニ當ルノ域
ニ達セザルモノモアリ、仍テ政府ハ當該都市ノ財政ト一般
ノ公益ニ鑑ミ都市ノ公營ヲ利益ナリト認ムル場合ニハ努メ
テ其經營ニ付キ指導奬勵ヲ與へ若シ私人ノ經營ニ待ツノ
已ムナキ場合ニハ特許命令ヲ附シ又ハ市ト營業者トノ協
約ニ依リ都市ノ利益ヲ保護シ併セテ地方事業ノ開發ヲ期
スルニ付キ常ニ注意ト考慮ヲ怠ラズ之ヲ要スルニ這般事業
ノ發展ハ勢ヒ都市ノミノ經營ニ待ツコト能ハザルノ現況ナ
ルヲ以テ私人ノ經營ニ委スルモノアリト雖モ事業ノ發展ヲ
妨ゲザル限リ都市ノ公益ヲ保護セムコトヲ期ス、尙ホ將來ハ
一層愼重ニ調查ヲ遂ゲ以テ右ノ目的ヲ達セシムルコトヲ努
ムベシ右及谷辯候也明治四十四年三月七日內務大臣
法學博士男爵平田東助」此答辯ニ依シテ當時ノ內務大臣
ガ、都市ノ實力ガ之ヲ許サナケレバ仕方ガナイケレドモ、然ラ
ザル限リハ、都市ヲシテ之ヲ直營セシムルコトガ最モ適當デ
アルト云フ意味ヲ、當議會ニ於テ言明サレテ居ルノデアリマ
ス、加之此舊イモノハ之ヲ姑ク措キマシテモ、最モ新シイ事
實モアル、是モ極ク簡單デアリマスカラ、私爰ニ讀上ゲテ之
ヲ明ニ致シテ置キマス、是ハ憲政會ノ代議士小山松壽君ノ
問ニ答ヘラレタモノデアリマス、卽チ第四十一議會ニ於テ、
都市計畫法案審査ノ委員會ニ於テ、大正八年三月十二
日、此委員會ニ於テ小山代議士ト床次內務大臣トノ間ノ
問答ヲサレタモノガ、委員會ノ速記ニ掲載サレテ居リマス、
是モ極メテ簡單デアリマスカラ一寸讀ンデ置キマス、「小山
松壽君唯今申上ザマシタ關係カラ」-是ハ小山君ノ問デ
ス-「都市ノ市民ヲ得意トシテ居リマスル會社、卽チ電燈
電鐵瓦斯ト云フ獨占會社ト其市トノ間ニ報償契約ヲ締結
シテ居ル者ガアルノデアリマス大阪ニ於テ問題トナリ續イテ
名古屋ニ於テ問題トナリ續イテ東京ニ於テ問題トナリ其
他都市到ル處ニ獨占會社ト報償契約ノ關係ヲ持シテ居ル
此獨占會社トノ間ニアル所ノ報償契約ハ一法人ノ契約デ
アリマスルガ、此所ハ主務大臣ノ御見解トシテ之ヲ御認メ
ニナルヤ否ヤ此事ハ將來ノ都市計畫ヲ致シマスル上ニ於テ
ンレ〓〓關係ヲ有ツコトニナッテ參リマスカラ大體ノ御方針ヲ
承ッテ置キタイト思ヒマス」此間デス、-小山代議士ノ問ニ
對シテ、國務大臣床次竹二郞君ハ斯ウ答ヘテ居ル、「ンレカ
ラ報償契約ト云フモノハ大體ドウ考ヘルカト云フ御話デア
リマスルガ、是ハ今日モ各地デ行ハレテ居ルヤウデアリマスガ
大體ハ今日迄ノ慣例ニ依ルコトガ宜イト思ッテ居リマス」
斯ウナッテ居ル、(「簡單」ト呼フ者アリ)從來ノ慣例ヲ尊重ス
ルト云フコトニナッテ居ル、尙ホ其終ノ方ニ、道路法二十八
條等ニ關係ヲ有ツカト云フコトヲ附加ヘテ、道路法實施ノ
後ニ於ケル報償契約ニ就ア、尙ホ慣例ヲ尊重スルモノデア
ルト云フコトガ附言ヲサレテ居ルノデアリマス、今簡單ト云
フ誰方カノ御聲ガアリマシタガ、極メテ簡單デアリマス、モウ
暫クデアリマスガ、私ハ此報償契約ニ對シテ政府ノ行動ニ
矛盾アルガ故ニ、今日之ヲ明ニ致シテ置キタイト思フ豈ニ辯
ヲ好マンヤデ、演說ヲスルガ爲メニ質問演說ヲスルノデハア
リマセヌ、今暫ク二三分ノ間ノ御静聽ヲ煩ハシタイト思フ、
斯ノ如クニ報償契約ニ對シテ、政府ハ從來ノ慣例ヲ尊重ス
ルト云フコトヲ、一昨年ノ議會ニ於テ言明ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、所ガ驚クベキハ二十七議會ニ於テ、是等ノ事業ノ
直營ヲ理想デアルト答ヘタル內務大臣アリ、四十一議會ニ
於テ、報償契約ハ從來ノ慣例ヲ尊重スルト云フコトヲ、現内
務大臣カラ答ヘラレテ居ルニ拘ラズ、昨年九月ニ至ッテ遞信
省ト內務省ノ雨省ガ、大阪市ト大阪電燈株式會社、此二
者ノ間ニ丁度報償契約ニ基因シテ、報償契約ノ解釋ニ關係ヲ
シテ、大阪市ト電燈會社トノ間ニ複雜ナル交涉ヲオッ始メテ
居ッタ最中遞信省及內務省ノ方カラシテ此報償契約ハ不
都合ナモノデアル、然ルベカラザルモノデアルト云フ意見ヲ以
テ、遞信省ノ方カラハ、斯樣ナ契約ハ速ニ改正ヲスルヤウニ
ト云フ意見マデクッ附ケテ、其點ニ就テ通牒ヲ發スルニ至ッタ
ノデテリマス、洵ニ晴天ノ露靂デアル、卽チ近ク大正八年ノ
三月四十一議會ニ於テ、現內務大臣ガ報償契約ヲ尊重ス
ルコトヲ言明シテ居ルノニ、漸ク一年經ツカ經タナイ大正九
年ニ至ッテ、突然トシテ是ガ不都合ナモノデアリ、然ルベカラザ
ルモノデアルト云フコトノ御取扱ヲ受クルニ至リマシテハ、此
契約ニ關係ヲ致シテ居ル者ハ孰レニ從ッテ宜イカ、殆ド適從
スル所ヲ知ラズト云フコトニナルノデアリマス、(拍手スル者
アリ)此事ハ私此所デ特ニ御伺ヲ致シマスノハ、事ノ起リハ
大阪ニ起シタノデアリマスルケレドモ、今日ノ日本ト致シマシ
テ、殆ト瓦斯ナリ電氣ナリノ事業ニ就テ、報償契約ノ無イ
都市ハ無イト云フテモ宜イ程ニ澤山關係ヲ持ッテ居ル、大低
ナ都市ハ此報償契約ト關係ヲ持ッテ居ルノデアリマスカラ、
之ニ對スル政府ノ方針、政府ノ解釋ナルモノハ、是等關係
者ニ取ッテハ洵ニ重大ナ關係ヲ持ツノデアリマス、斯儀ナ譯
デアリマスカラ、願クハ遞信大臣及內務大臣ヨリシテ、此點
ニ對シテ、懇切ニシテ且ツ明快ナル御答辯ヲ賜ラントコトヲ
望ミマス、(拍手)最後ニ私御尋ヲ致シタイト存ジマスルノ
ハ、他ノ點デハアリマセヌ、最初大正九年ノ九月二十八日
ニ遞信省ノ方カラ内務省ヘ照會ヲシタ書面ニハ、電氣事業
ノ基礎ヲ鞏固ニスルガ爲メニ云々ト云フノデ、遞信省ノ電
氣事業ニ關スル方針ヲ開始サレタ書面ラシイ、サウモ讀メ
ル、ソレデアリマスカラ、此遞信省ノ電氣事業ニ關スル方針
ナルモノト、若シ報償契約ガ牴觸スルト云フナラバ所謂報
償契約ハ不都合デアル、是ハ遞信省ノ電氣事業ニ關スル
方針ト、牴觸スルト云フヤウナ御意見デアルナラバ、此遞信
省ノ意見ナルモノハ、宜シク全國ニ周知セムル必要ガアル、
少クモ報償契約ヲ締結セル都市ニハ、之ヲ知ラシムルノ必
要ガアルコトハ當然デアルノデアル、所ガ私共ノ知ル所デハ、
報償契約ガ不都合デアルトカ、改正ヲシロトカ云フヤウナ命
令ラシイ書面ハ、當時電燈會社ト喧嘩ヲシテ居ル、大阪市
ダケヘ來タヤウニ承知ヲ致シテ居ル、遞信省ノ大方針ヲ大阪
市ダケニ知ラス必要ハ無イカラ、私ノ知ル所ガ誤リテ、普ク
天下ニ此方針ハ內務省ト遞信省トデ出サレタモノデアルト
思ヒマスルガ、不幸ニシテ此大阪ダケヘ此事ガ元サレタモノ
デアルト致シマスルナラバ、何ガ故ニ當時大阪ノミニ此通牒
ヲ發セラレタノデアルカ、遞信省ノ電氣事業ニ對スル方針
ハ、大阪市ノミニ知ラスレバ十分ナリトセラレル所以ノ理由
ノ、說明ヲ願ヒタイト思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=22
-
023・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 質問ノ第七ハ提出者ヨリ延期ノ
申出ガアリマシタカラ是ハ省キマス、第八石油政策ニ關スル
質問-押川方義君
八石油政策ニ關スル質問(押川方義君
提出)
石油政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月一日
提出者押川方義
贊成者松本君平
外三十二人
石油政策ニ關スル質問主意書
石油ノ用途ハ近來益擴大ヲ告ケ其ノ供給ノ難易如何ハ
直接國家ノ存亡安危ニ重大ナル關係ヲ有スルニ至レリ
然ルニ我カ國ニ於ケル石油ノ產出高ハ需要額ニ比較シ
テ頗ル僅少ナルカ爲帝國ハ常ニ其ノ不足ヲ輸入ニ俟ツ
ノ有樣ナリ政府ハ速ニ石油ニ對スル根本政策ヲ樹立シ
以テ之カ供給ノ獨立ヲ確保セサルヘカラス果シテ政府ハ
如何ナル方法ニ依リ供給ノ獨立ヲ圖ラムトスルヤ
右及質問候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=23
-
024・押川方義
○押川方義君 總理大臣ト大藏大臣ト海軍大臣ノ御出
席ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=24
-
025・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 海軍大臣ハ出席ニナッテ居リマス
ガ、總理大臣ト大藏大臣ハ今支ヘマス
〔押川方義君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=25
-
026・押川方義
○押川方義君 石油政策方針ノ確立ニ就キマシテ、其有
無ヲ伺ヒタイノデアリマス、今日ノ形勢ニ於キマシテハ、石油
ハ國家ノ重要物品ノ一デアリマス、國ノ盛衰興亡ニモ關ハ
リマスルシ、殖產興業ノ盛衰消長ニモ關係ヲ致シマスルシ、
必ズ此事ニ就キマシテハ、當局大臣タル者ハ適當ナル經綸
ヲ具ヘラレマシテ、確定シタル方針ヲ持ッテ居ラレマスル筈ト
吾輩ハ考ヘルノデアリマス、然ルニ不幸ニシテ私共ノ調査致
シマシタル所ニ依リマスレバ、一悉ク無策無方針ノヤウニ見受
ケラレマスル故ニ、甚ダ之ヲ憂ノ一ツト考ヘテ居ルノデゴザイ
マス、石油ノ用途ハ艦船、潜水艇、飛行機、自動車、(「及ラン
プ」ト呼フ者アリ)是等ハ申スマデモナク、或ハ「アルミニユー
ム」ノ製造ニモ、護謨ノ製造ニモ、或ハ砲彈裝置ノ爲メニモ、
種々ナル方面ニ必要ノアリマスルコトハ申スマデモナイコト
デアリマスルガ、今日唯〓伺ヒタイノハ、軍艦ノ燃料用トシ
テノ石油ニ就キマシテ、果シテ國家ハ此政策ガ間違ナク立
テラレテ居ルカドウダカト云フコトガ、懸念ニ堪ヘマセヌ故ニ
伺フノデアリマス、元來造船計畫ノ確定セラレマシタトキニ
ハ、出帥準備トシテ必要ナル經綸ハ、共ニ立テラルベキ筈ノ
モノデアリマス、故ニ製艦費ノ要求ノアリマシタルトキニハ、
軍艦ノ生命トナルベキ所ノ石油政策ト共ニ、議會ニ諮ラル
ベキ筈ノモノデアルト吾輩ハ心得テ居ルノデアリマス、然ルニ
製艦ヲ專ラ急ニ致シマスルコトニ傾キ過ギマシテ、最モ大切
ナル所ノ石油政策ハ、此所ヤ彼所ニ少額ノ費用ヲ海軍省
カラ要求シタルノミデアリマス、今日海軍省ガ石油ニ就テ施
設シテ居ナサル所ノ方策ハ、臺灣ニ於ケル油田ノ試掘ト、燃
料代用ニ於ケル〓究ト、其次ハ內地產及外國產ノ石油ヲ
購入致サレマシテ、之ヲ蓄藏ナサルト云フ方針ノ外ニ見出
スコトハ出來マセヌ、然ルニ內地產ノ石油ニ至リマシテハ、最
モ軍艦用十ドニハ用井ルコトノ出來ナイ程少量ナルモノデアリ
マス、然レバ外國ノ石油ヲ御買入ニナリマシテ、之ヲ蓄藏ナ
サレルヨリ外ニハ方策ハアリマスマイ、併ナガラ其事タルヤ極
メテ不便ナル方法デアッテ、又不安定極マリノナイコトデアリ
マス、此不便ト不安定ナル所ノモノヨリモ外ニ方法ナシト致
シマスレバ、ソレニ依ルモ亦可ナリデアリマスガ、若シ外ニ方
法アリト致シマスレバ、之ヲ等閑ニ附シテ居ラレマスルコト
ハ、職務上怠慢ノ責アリト吾ニハ心得ルノデアリマス、今試
ニ日本ニアリマスル所ノ石油ノ產出高ト、外國ニアリマスル
所ノ石油ノ產出高トヲ、最近ノ統計表ニ依ッテ見マスルナラ
バ.諸君ト共ニ必ズ是ハ由々シキ大事ヂヤト御考ナサルコト
ガアラウト思フノデアリマス、最近ノ統計表ニ依リマスルト、
合衆國ニ於キマシテハ、三億五千六百九十二万七千七百
十六「バーレル」ヲ一年ニ產出致シマス、墨西哥ニ於キマシテ
ハ、六千三百八十二万八千三百二十七「バーレル」ヲ產出
致シマス、露國ニ於キマシテハ、四千四十五万六千百八十
二「バーレル」ヲ出シマス、蘭領印度、英領「ボルネオ」ヲ含ミマシ
テ產出致シマス高ハ、千三百八十二万四千九百三十六「バー
レル」デアリマス、「ルーマニヤ」ハ八百七十三万二百三十
二「パーレル」、印度ハ八百四十五万三千八百「バーレル」、波
斯ハ八百三十万「バーレル」、「ガリシヤ」ハ五百五十九万一
千六百二十「バーレル」、然ニ日本ハ僅ニ二百四十四万九
千六十九「バーレル」デアリマス、其他祕露ニモアレバ、「トクニ
ダット」ニモアリ、埃及、「アルゼンチン」獨逸、加奈陀、伊太利
等、各所ニアリマスルガ、之ヲ省略致シマス、此產額ト日本ノ
產額トヲ百分率ニ對照致シマスレバ、合衆國ハ世界全國ノ
石油ノ六割五分一厘五毛ニ當リマス、墨國ハ一割二分四
厘デアリマシテ、露國ハ七分八厘六毛デアリマス、蘭領印度
ハ二分五厘八毛、「ルーマニヤ」ハ一分七厘、波斯ハ一分四
厘、「ガリシヤ」ハ一分五毛、日本ハ僅ニ四厘八毛デアリマス、
日本ハ僅ニ世界各國ノ石油ノ百分率ノ四厘八毛デアリマ
ス、而テ合衆國ガ一昨年產出致シマシタル所ノ高ハ、三億
五千六百二万七千「パーレル」ニシテ、同年ニ貯藏致シテ居
リマスル高ガ一億三千一一百八十万「バーレル」デアリマス、是
等ト對照致シマシテ日本ガ貯藏致シテ居リマスル所ノ石油
ノ數量ハ、果シテ何程デアリマスルカ、是ガ海軍大臣ニ明白
ニ永リタイ所ノ點デアリマス、若シ我國ガ國防上ニ於テ、石
油ノ自給自足ノ大策ヲ立ツルコトガ無カッタナラバ、國民カラ
租稅マデ徵收致シテ拵ヘマシタル今日ノ軍艦ハ、殆ド無用
ナル所ノ途ニ入ッテシマイハシナイカト虞レルノデアリマス、艦
船ガ石油ヲ要シマスル、其數量ノ夥シキコトハ、實ニ我等ヲ
驚嘆セシムルノデアリマス、試ニ近頃竣成致シマスル所ノ長
門戰艦ニ就テ之ヲ見マシテモ、我輩ノ調ブル所ニ依リマスル
ト、彼ノ戰艦ハ二十四ノ「ポイラー」ヲ持ッテ居リマス、其二十
四ノ「ポイラー」ノ中ノ二若クハ四ガ、石炭ヲ燃料トシテ用井
ルコトガ出來ルモノニシテ、跡ニ二十若クハ二十一一ノ「ポイラ
ー」ハ、必ズ重油專燒艦デアリマス、而シテ是ガ平時ニ於テ一
日ニ要スル數字ハ卽チ百噸デアリマス、戰時ニ於キマシテハ、
之ニ十五六倍シナケレバナラヌモノデアルト云フコトガ、專
門學者ノ明示スル所デアリマス、然レバ此戰艦ニ就テノミ申
シマシテモ、有時ノ秋二ハ一日ニ一千五六百噸ヲ要スル譯
デアリマスルガ、之ヲ一年ニ累計致シマスナラバ、其數量實ニ
夥シキモノデアリマセヌカ、加之今日ニ於キマシテ此數年ノ
將來ヲ考ヘマスレバ、必ズ年々歲々增シ來ル所ノ新戰艦ハ、
重油ヲ燃料トシテ用キル構造デアルト云フコトハ、言フマデ
モナク分リ切ンタ事デアリマス、加之今日ニ於キマシテモ驅
逐艦ハ皆ナ悉ク石油專燃艦デアリマス、而シテ數年ノ後ニ
必ズ完成致シマスル所ノ八八艦隊ガ出來上リマシタ時
ニハ、専門學者ノ明言スル所ニ依リマスレバ、必ズ三百万
噸ノ石油ヲ、一年ノ燃料トシテ〓藏シテ置ナケレバナラナ
イト斯ウ申シマス、是ハ恐ラク誤ノナキ所ノ事ト考ヘルガ、
若シ果シテ左樣デアリマスルナラバ、假リニ石油ガ一噸五十
圓ト見マシテモ、三百万噸ノ石油ノ代價一億五千万圓デ
アリマス、而シテ之ヲ外國ヨリ輸入致シマスルコトニ於キマ
シテハ、相當ナル所ノ所謂運送船ガ要リマス、幸ニ南洋ヨリノ
ミ此石油ヲ買入レルモノト致シマシテモ、十回數ノ航海ガ
出來ルモノト見マシテモ、之ガ爲メニ要スル所ノ所謂「タンク
ポート」ナルモノハ一万級ノ船ニシテ少クモ三十艘ヲ要スル
ノデアリマス、若シ一噸ノ造船費ガ三百圓要ルト致シマシテ
モ、此三十艘ノ造船費用ハ、少クモ千万圓デハアリマセヌカ、
其外此三百万噸ノ貯藏ヲ致シマスル所ノ「タンク」ナルモノ
ハ、假リニ一ツノ「タンク」ニ六千噸ノ油ヲ貯藏スルト致シマシ
テモ、三百万噸ノ油ヲ貯藏致シマスル爲メニハ、五百ノ「タン
ク」ヲ要スルノデアリマス、其五百ノ「タンク」ト申シマスルモノ
ヲ、假リニ一「タンク」ノ價十万圓ト見マシテモ、之ガ爲メニハ
五千万圓ヲ要スルノデアリマス、之ヲ合計致シマスルナラバ
卽チ二億九千万圓デアリマス、併ナガラ是ハ唯ダ單ニ一年
ノ貯油ノコトヲ申スノデアリマス、若シ是ガ少クモ二年ノ間
ノ準備ヲシナケレバナラヌト致シマスレバ、之ニ倍額ヲ要スル
譯デ言ハズトモ分ッテ居ル、ンレノミナラズ此油ヲ、必ズシモ
南洋ヨリンレダケノ多量ヲ買入レルト云フ保證ハ出來ナイ、
或ハ北米合衆國ニ行クカ、或ハ墨西哥ニ依シテ買入レルカ
ト斯ウナリマスレバ墨西哥ヨリ假リニ買入レルト致シマス
ナラバ、油ノ價ハ廉クテモ、一年ニ十囘ノ航海ヲ得ルモノガ、
墨西哥ト日本トノ間デハ一年ニ二囘シカ出來ナイノデア
リマス、然レバ三十艘ノ船デ足ルト申シマスルモノハ、ソレニ
五倍致シマシタル、百五十艘ノ船ヲ要スル譯デハアリマセヌ
カ、加之ニ對シマシテハ土地ノ買入費用モ要リマスル、或
ハ之ヲ運搬致シマスル、費用モ要リマスル、又或ハ港灣ヲ改
築シタリ、增築シタリ、或ハ築造シタリスル費用モ要リマス、
是等ノモノハ唯ダ一年ニ四百万圓要ルゾトカ、繼續費デ之
ヲ三年ノ間出シテ吳レトカ云フヤウナ事柄デ、一體石油政
策ガ立ッテ居ルモノト御思ナサルナラバ、是ハ我輩等ノ知ル
所ニ依リテハ、非常ナル過デハナイカト斯ウ考へルノデアリマ
ス、故ニ私ハ此事ニ就テ、非常ニ不廉デアッテ不安定ノ策ダ
ト斯ウ申シタノデアリマス、而シテ私ガ三四年以前ニ承リマ
シタ所ニ依リマスルト、海軍省ガ其當時所有致シテ居リマシ
タ所ノ「タンク」ハ僅カニ二十內外、其時貯油ヲ致シテ居リ
マシタ所ノ數量ハ僅ニ十万噸內外、其時「タンク」ボート」ヲ
持ッテ居リマシタ其數ハ僅々一二般、今日ハ固ヨリソレカラ
後、或ハ「タンク」ノ數モ五六十艘ニ增加致シマシタカラ、「タ
ンクポート」モ六七十艘ハ建造セラレマシタラウ、或ハ「タンク」
數ガ殖エテ、貯油モ必ズ一一三十万噸ハアルカモ知レヌ、併
シ一方ニハ八八艦隊ノ成功ヲ日モ亦足ラズ待チツヽアル、
此時ニ臨ミ石油貯藏ヲ致シマスルコトノ難キコトハ、艦隊ヲ
造リマスルコトノ難キト同ジ位ノ日數ヲ要シ、費用ヲ要スル
モノデアルカノヤウニ·心得マスルガ、是ハ如何ナサル御積リデア
ルカヲ承リタイノデアリマス、私カ不康ダト申シマシタノハ、唯
今申シタル所ノ數字デ能ク御判リニナル筈デス、不安定ダト
中シマシタル事ハ、先ヅ以テ世界ニ石油ヲ制シテ居リマスル國ハ
英卜米トデアリマスルカラ、其英米ノ石油政策ヲ明ニスルニ
非ザレバ、日本ハ石油方策ヲ立テルコトガ出來ナイト我輩ハ
心得ル、而シテ先ヅ以テ英國ガ世界ニ對スル石油政策ヲ、
昨今如何ナル方針ニ依ッテ立テヽ居ルカト之ヲ精查探究致
シマスレバ、英國ハ此大戰ノ後、石油ノ管理統一ノ爲メニ極
メテ大切ナル事ヲ感得致シマシテ、特別ニ石油大臣ト申シ
マスル者ヲ設ケラレマシテ、石油ニハ固ヨリ近イ關係ノアル
海軍省ニ總轄ノ權利ヲ與ヘマシテ、内外ノ油田ヲ開發致シ
マスルコトニ最モ力ヲ盡シ、國外ノ油田ニ就キマシテハ、權
利ノ獲得ニ非常ノ熱心ヲ用井テ居ルノデアリマス、而シテ英
國ノ海軍大臣ガ昨年三月石油業者協會ニ於キマシテ、石
油ニ關スル所ノ演說ヲ爲シタコトガアリマス、是ハ斯ノ如ク申
シテアル「吾人ハ今ヤ莫大ノ好機會ヲ捉ヘントシテ旣ニ其入
口ニ來レリ英國民ハ進ンデ其堂ニ入ラザルベカラズ然ラズン
バ他國民ガ之ヲ占ムベシ蓋シ將來國民ノ成功ハ一ニ繫ッテ
此堂ニ入ルカ否カニ依リ決セラルレバナリ若シ吾人ガ世界
ニ於ケル石油ノ供給ヲ確保セバ吾人ハ爲サントスル所成ラ
ザルハ無カルベシ」斯ウ演說ヲシテ居ルノデス、是ハ雄大デハアリ
マセヌカ、我國民ガ考ヘマスレバ、是ハ實ニ悲愴デハアリマセヌ
カ、是等ノ事ヲ過眼視シテ居リマシテ、石油政策ヲ立テルト
申シマスルヤウナ事ハ、決シテ出來ナイ筈デアリマス、英國ノ
一體對世界石油政策ハ、當局ガ前ニ申シマシタル通リノ精
神ニ基キマシテ、斯ノ如キ數箇條ノ確乎タル法規ガ決メラ
レテ居ル、是ハ第一ニ植民地其他外國ニ於ケル油田ノ獲
得、第二ハ石油供給ヲ受ク居ル優先權ヲ英國海軍省ニ保
留スル事、第四ハ石油業ニ投下スル資本ハ純英國資本タ
ル事、但シ外資ノ投入ヲ餘儀ナクスル場合ハ、重役ノ絕對
過半數ハ英國人タルベキ事、此四大政策ヲ立テマシテ、乃
ヲ起ル所ノ事柄ハ、排外油田爭奪ト云フコトガ申スマデモ
ナク起ッテ來タコトデアリマス、ンコデ其事ハ爰ニ明ニアルノ
ハ、第一ニ英國領土內ニ於ケル石油事業ハ外國人ノ經營
ヲ禁止スル事、第二ハ英國政府ハ石油會社ノ所有及支配
ニ關シ直接ノ負擔ヲ有ス、第三ハ英國民ハ外國人ニ石油
會社ノ株劵ノ讓渡ヲ禁止スル事、第四ハ英國ノ石油會社
ハ外國資本家ニ其事業ヲ繼承スルコトヲ禁止スル事、此四
箇條ノモノヲ石油政策トシテ確カリ立テラレマシテ、國民ニ
能ク其意ヲ諒承セシメタノデアリマス、此方策ニ基キマシテ、
御承知ノ英國ノ石油ノ大會社、卽チ「ローヤルタッチセル」、或
ハ英波石油會社、是等ノモノヲ指導シ激勵シ、補助シ、誘
發致シマシテ、内外ノ石油ニ向ノ十十ナナルカヲ盡サセマシ
タルコトハ、諸君ノ御承知ノ事デアリマス、ソレニ表面カラ申
シマスルト英國ノ石油事業ハ半官半民デアリマスルケレド
モ、其實質ヲ窺ヒマスルナラバ、英國ノ石油會社ハ國營デア
リマス、全ク國家ガ全力ヲ注イデ、卽チ天下ヲ石油政策ニ
依ッテ相治メントスル所ノ方策ヲ立テヽ國家ガ力ノアラン
限リヲ盡シテヤリツヽアルト云フコトハ、外國ノ事情ニ少シ
ニテモ眼ヲ注イダル人ノ知ラナイコトハナイ筈デアリマス、(拍
手起ル)彼ノ歐羅巴ノ大戰ニ依リマシテ、獨逸ノ軍國主義
ハ、其國ノ廢滅ニ依リテ其影ヲ潜ムノ姿トナッテ居リマスル
ケレドモ、其代リニ將ニ擡頭シテ、天下ニ平和的軍國主義ヲ
擴張セント致シテ居リマスルモノハ、卽チ此石油政策デアリ
マス、固ヨリ國際聯盟ニ於キマシテ、兵備縮小ノ議論、又ソ
レト同時ニ經濟聯繫ノ方策ヲ立テヽ、世界平和ノ楔子ヲ
造ラントスル手段方法ハ幾ラモ攻究セラレテ居リマスル、尾
崎君ガ過日此所ニ於テ論議セラレタルモノモ、亦其一部デ
アリマス、我輩何カ之ニ向ッテ絕對ニ反對ヲスベキ理由ハ無
イ、世界ニ於テ平和ヲ齎シ來ル所ノ其實現ヲ見ルコトガ出
來レバ、天下億兆ノ者誰カ之ヲ喜バザル者アランヤデアリマ
ス、併ナガラ今日ノ世界各國ハ、如何ナルモノヲ主能トシテ
居ルカト云ハミ卽チ其國ノ繁榮、其國ノ隆達、其國ノ大勢
力ヲ以テ世界ニ臨マントシテ居ルノデアリマス、是ハ昔ニ於
キマシテモ諸君ノ御承知ノ如ク、鐵ト石炭ノ事ニ就キマシテ
ハ、國ノ繁榮ノ爲メニ是ガ奪略ヲ試ミ、屢〓國際間ノ爭議ヲ
孕マシタルコトガアルノハ明ナ事デアリマス然レバ是カラ石
油問題ニ就キマシテハ、決シテ我國民タル者ガ、空々等閑ニ
付シ去ルベキ所ノモノデハナイ、決シテ平和トカ軍備縮小ト
カ申スヤウナ美名ノ下ニ眩惑セラレテ、各國ガ內部ニ於テ
爲シツヽアル所ノ事ヲ愚眼視スルヤウナコトデハ、國策ヲ誤
ルト我輩ハ信ズルノデアリマス、(「煎ジ詰メテ願ヒマス」ト呼
フ者アリ)是ガ煎ジ詰メタ限リデアリマス、モット煎ジ詰メレバ
言ヒ切ルコトガ出來ズ、聽イテ意味ヲ覺ルコトガ出來ナイヤ
ウニナル、(拍手)ソレデ次ニ亞米利加ノ事ヲ申シマスルト、
此英國ノ世界政策ニ就キマシテ非常ニ驚嘆ヲ致シ、憂慮ヲ
致シマシテ、之ガ對策ト致シマシテハ朝野ノ名士ガ集リマ
シテ、屢〓之ニ就テ〓究ヲ致シマシタルコトハ諸君ノ御承知ノ
通リデアリマス、ンコデ石油當業者ヲ集メマシテ、其意見ヲ徵
シマシタコトガアリマシタガ、其節「スタンダード石油會社長
ハ何ト言ウタカト、云フト結局ハ外國ニアル油田ヲ爭奪スル
政策ヲ執ルニ如クハナシト斯ウ斷言シテ居ル、ソレデ此石油
問題ハ議會ノ問題中ニモ隨分大切ナ一問題トナッテ、屢〓
議論セラレタモノデアリマス、ソレデ亞米利加ノ石油政策
ハ斯樣ニ言ウテ居リマス、第一政府モ直接石油會社ニ
參加シ、之ヲ指導スルコト、是ハ自由貿易ヲ最モ主眼トス
ル亞米利加ガ、斯ノ如キ事ヲ議會ニ於テ大臣ノ口ヨリ明
言致シマスルコトヲ御考ニナレバ、亞米利加人ガ如何ニ
石油政策ニ熱心デアルカヾ御判リニナルノデアル、其次ハ
世界ニ於ケル未開地油田ノ探礦ヲ行ヒ、有望油田ノ獲得ニ
努メルコト、第三ガ外國管理ノ油田地ニ對シテモ機會均等
主義ヲ主張スルコト、第四ニハ墨西哥ニ對シテ一層積極的
開發政策ヲ行フコト、斯ウアルノデゴザイマス、是ガ英米ノ世
界ニ對スル石油政策ハ、略〓其意義ヲ了解スルコトガ出來ル
ト思ヒマス、而シテ我ガ大日本帝國ハ、今日世界ニ於テ最
大海軍國ノ一ト云ハレテ居ル、一ニハ亞米利加ガアリ、一一一
ハ英國アリ、一ニハ日本アリトシテ、各國ノ畏敬ヲ受ケテ居
ル所デアリマス、然ルニ唯ダ艦數量ニ於テ劣テ居ルバカリデ
ハナク、其船艦ヲ動スベキ艦ノ生命トモ謂フベキ石油ノ政
策ニ就キマシテハ、前ニ申上ゲマシタ通リノ情ケナイ狀態ニ
居ルノデアリマス、是ハ當局大臣ガ必ズ自給自足ノ方策ヲ
希望シテ居ラレマスルト思ヒマスルケレドモ、之ヲ施スノ途ヲ
得ズニ居ラルヽコトデアルマイカト思フノデアリマス、併ナガ
ラ今日ノ狀態ニ於テ、日本ハ〓玆ニ一定ノ地域ガアリマシ
テ、石油ノ自給自足ノ大策ヲ立テント致シマスルナラバ或ハ
其域ニ達スルコトノ出來ル事情ガアルノデゴザイマス、其土
地ハ知ル人ハ必ズ知ッテ居ル、外國ノ土地デハアルガ、日本
ガヤラウト思ヘバヤルコトノ出來ル、内外合辦ノ途モ立マテ居
レバ、日本ノ政府ガ隨分權力ヲ振ヘバ振フコトノ出來ル狀
態ニ居ル所デアリマス、而シテ此地方ニ於テハ內外ノ專門家
ガ取調ヲ致シマシテ、必ズ此油田ハ將來大油田ニナルノデ
アラウト云フ見込ヲ立テヽ居ル場所デアリマス、而シテ前ニ
言フ通リニ外國ノ油ヲ買入レマスレバ、夥シキ費用ヲ要シ、
時日ヲ要シ、且又英米ノ石油政策ヲ見レバ、恐ラクハ一年
ノ後ニハ禁遏セラレ、如何ニ臍ヲ噬ンデモ、日本ハ一滴ノ油
ヲモ外國カラ買フコトノ出來ヌヤウニナルカモ知レナイ狀況
デアリマス、故ニ此際政府タルモノハ金ヲ吝マズシテ、此鑿
井事業ニ著手シナケレバナラヌモノト我輩ハ思フノデアリマ
ス、專門家ノ言フ所ニ依リマスレバ、固ヨリ地下ニ包藏シテ
居ルモノデアル故ニ、有ルヤ無イヤノ判ラヌト云フコトハ、單
リ日本ニ於テノミナラズ、世界各國ノ最大學者タル技師ガ
其所ヲ試鑿シテ見ルマデハ石油ノ實ニ現存シテ居ルヤ否
ヤヲ豫言スル者ハ一人モ無イノデアリマス、ソレ故ニ今日ハ
多少冒險デアルト雖モ唯ダ營利ヲ旨トシテ居ル商事會社
ナドニ任セテ置イテ、其成敗ヲ指ヲ啣ヘテ見テ居ルト云フヤ
ウナ因循姑息ナ政策ヲ執ルコトナク、僅ニ五六百万圓ノ金
ヲ投スレバ、其地方ニ於テ大油田ガ出來ルヤ否ヤト云フコ
トガ明ニ判ルノデアリマス、若シ是ガ否ヤト判リマシタナラバ、
又政府タルモノハ宜シク他ニ方法ヲ設ケマシテ、矢張自結
自足ノ案ヲ立テナケレバナラヌ、幸ニシマシテ年々五六万モ
要ル所ノ金ヲ要スル此石油事業ニ就キマシテ、僅々五六百
万圓ノ金ヲ今投シマシテ、幸ニ大油田ヲ生ズルコトガアリマ
シタナラバ、日本永久ノ幸福デアリマシテ、此八八艦隊ノ目
的モ寔ニ大成スル所以デアルト思ヒマスルガ、當局大臣ハ果
シテ矢張今日ノヤウニ、因循姑息ノ政策ヲ御持續ナサルカ、
今ハ斷ジデ此事ニ就テ新方策ヲ立テラレマシテ、斷々乎ト
シテ石油ノ國策ヲ確立ナサレマスカト申スコトヲ伺ヒタイノ
デアリマス(拍手起ル)
〔國務大臣男爵加藤友三郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=26
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027・加藤友三郎
○國務大臣(男爵加藤友三郞君) 唯〓押川君ヨリ石油
政策ニ就キマシテ、縷と御話ヲ拜聽致シマシタ、英米ノ例ヲ
引キ、其他彎々ナ例ヲ引證ヲシテ、要スルニ石油策ナルモノ
ガ有ルカ無キカ、自分ノ考デハ有ルト云フコトガ、最後ノ御
話デアッタヤウニ拜聽致シタノデアリマス、石油政策ト申シマ
スレバ單ニ海軍トシテノ軍事上ノミノ見地ヨリ申スベキモ
ノデハナイト考ヘマスルケレドモ、御質問ノ趣旨ハ主トシテ
海軍ヲ目標トシテノ御話デアリマスルカラ、私ヨリ爰ニ大體
考ヘテ居ル事ヲ申上ゲタイト存ジマス、申上ゲル事ハ先日
奧村君ニ御答ヲシタト、同樣ノ結果ニ陷ルコトヲ御含置ヲ
願ヒタイノデアリマス、石油ニ就キマシテハ、押川君ノ御說
明ニ依シテ我國ガ貧弱ナル事、其必要ナル事等ハ、私ガ爰ニ
申上ゲル必要ハナカラウト思フ、總テ押川君ガ御說明ニナッ
タノデアリマス、至極其通リニ考ヘテ居ル、而シテ此石油ノ
貧弱ナル我國ニ於キマシテ、海軍ガ如何ナル方法ヲ執ッテ居
ルカト云フ事ニ就キマシテハ、先日奥村君ニ御答ヲ致シマシ
タル通リ、現在ニ於キマシテハ內外ノ石油ヲ購入致シマシテ、
之ヲ貯藏スルノ方針ヲ執ッテ居ルノデアリマス、其貯藏ノ數
量如何ト云フ御質問デアリマスルガ、何レノ國モ石油ヲ貯
藏シテ居ル數ヲ公表スル國ハ無イノデ、此故ニ申上ゲ兼ネルノ
デス、又軍艦ガ非常ニ石油ヲ使フト云フ御話モアリマシタ
ガ、少シク數量ガ多過ギルヤウナ感ジガシタノデ、押川君ノ御
計算ハ或一日二十四時間、ソレヲ積算シテ三百六十五日
船ガ步キ通シニ步イテ居ルガ如キ、御計算デハナイカト想像サ
レタノデアリマス、左樣ナ事ハ事實ニ於テハ無イ、又軍艦ガ
新造ヲサレマシテ、年々石油ノ所要數量ヲ增加致シマスル
ガ、其增加スルノニ應ジテ、其要スルダケノ額ヲ貯藏致スコ
トハ現在ニ於テ計畫ヲ持ッテ居ルノデアリマス、故ニ此點ニ
就キマシテハメ御安心ヲ願ヒタイ、唯ダ國トシテ如何ナル根
本政策ヲ持ッテ居ルカト云フ御質問ニ對シマシテハ、本日ハ問
題其モノガ押川君ノ御述ニナルガ如ク、重要デアルダケソレ
ダケ調査〓究ニ時日ヲ要スルノデアリマス、今日ハ卽チ調査
〓究中ニ屬シテ居ルト御答スル外ハ無イノデアリマス、併ナ
ガラ或程度迄ノ腹案ハ持ッテ居リマス、唯ダ之ヲ爰ニ公表
致スノ時機ニ達シマセヌコトハ甚ダ遺憾ニ存ジマス、押川君
ハ非常ニ有益ナル油田ガアル、之ニ年ニ五六百万圓ノ金ヲ
掛ケレバ、立派ニ自給自足ガ出來ルト云フ御話デアリマス、
果シテ左樣デアリマスレバ、洵ニ國家ノ爲メ御同慶ニ堪ヘナ
イ次第デアリマス、尙ホ其點ニ就キマシテハ、或機會ニ於キ
マシテ能ク押川君ノ御意見モ伺ヒ、吾ミモ十分〓究ヲ致シ
マシテ、目的ヲ達スルコトニ進ミタイト考ヘマス、ソレダケヲ
御答致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=27
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028・押川方義
○押川方義君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=28
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029・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=29
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030・押川方義
○押川方義君 唯〓海軍大臣カラ懇切ナル答辯ヲ拜聽
致シマシテ、現今ノ有樣ニ就テ、何等缺點ハ無イト仰セラレ
マシタコトガ、果シテ左樣デアリマスナラバ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=30
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031・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 再質問デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=31
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032・押川方義
○押川方義君 私ノ申シテ居ル事ヲ御聽取ニナリマセヌ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=32
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033・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=33
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034・押川方義
○押川方義君 海軍大臣ノ言ウタ事、其御答辯ニ對シテ
挨拶ヲシテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=34
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035・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 再質問デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=35
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036・押川方義
○押川方義君 再質問デハナクシテ、私ハ滿足スルヤ否ヤ
ヲ申上ゲルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=36
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037・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) ソレハ許シマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=37
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038・岩崎勲
○岩崎勳君 日程審議ノ都合ニ依リ、政府ノ答辯ニ對ス
ル意見ハ、全部二十二日ノ質問日ニ延期セラレンコトヲ望
ミマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=38
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039・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」「異議ナシ]ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=39
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040・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ガゴザイマセヌカラ動議ノ
如ク決シマス、再質問ノ通告ノ諸君ガ四五アリマスガ、動議
ノ如ク扱ヒマスカラ御承知置ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=40
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041・田川大吉郎
○田川大吉郞君 議事ノ進行ニ就テ發言ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=41
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042・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御發議ナサイ
〔田川大吉郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=42
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043・田川大吉郎
○田川大吉郞君 去ル三日ノ本議場ニ起リマシタ其經過
其際私共ヨリ提出致シマシタル一事再議ノ件ニ關係シ
テ、議長ニ質問致シタイノデアリマス、去ル三日ノ議場ニ於
キマシテ國民黨ヨリ普選案ヲ提出セラレ、討議ノ結果、衆
議院ノ意思ガ、普選ヲ以テ尙ホ早シトスルニ在ルコトハ明
白ニ表示セラレタノデアリマス、此議事ハ總テ適法ニ進行ジ
テ、其間一點ノ遺漏ハ無カッタト信ズルノデアリマス、繰返シ
マスレバ、國民黨ニ依シテ提案セラレタル普選案ノ議事ニ依ツ
テ、今日ノ場合、普選ヲ以テ尙ホ早シト云フ衆議院ノ意思
ハ明白ニ表示セラレタ、此點ニ於テハ一點ノ遺漏無カッタト
私ハ信ズルノデアリマスガ、議長ハ如何ニ御考ニナッテ居ラレ
ルカ、是ガ第一點ノ質問ニナルノデアリマス、若シ私ノ考ヘマ
スヤウニ、國民黨ノ普選案ノ議事ハ適法ニ進行致シタトシ
マスレバ、衆議院ハ旣ニ普選案ヲ以テ尙ホ早シト明白ニ意
思ヲ表示致シテ居ルノデアリマスカラ、此議事決定ノ後ニ於
テ、今期議會ハ、單リ衆議院ノミナラズ、貴族院ト雖モ普選
案ヲ上程スルコトハ出來ナイ理ト私ハ信ズルノデアリマス、然
ルニ議長ハ當日ノ議場ニ於テ、更ニ憲政會ノ普選案ヲ上
程セシメテ、其提出理由ノ說明ヲ聽キマシタル後ニ、憲法違
反ノ動議起リマシタニ拘ラズ、尙ホ其討論ヲ續行セシメラレ
タルノハ、如何ナル理由ニ基キタルヤト云フノガ私ノ第二ノ
質問デアリマス、念ノ爲メニ申上ゲテ置キマスト、此際憲政
會ノ普選案ノ提案ノ理由ハ、關和知君ニ依ッテ說明セラレ
タ、其關和知君ハ「唯〓上程セラレマシタル所ノ、吾ガ憲
政會同志ノ提出ニ依リマスル衆議院議員選擧法中ノ改正
法律案ハ、先刻國民黨ノ關直彥君ニ依シテ提案セラレ且ツ
說明セラレタル所ノ案ト、根本ニ於テ其主張ヲ一ニスル所ノ
世ニ所謂普通選擧ノ案デアリマス」斯樣ニ說明ニナッテ居ル、
憲政會ノ說明者自身ガ、其案ハ國民黨ノ案ト根本ニ於テ
其主張ヲ一ニスル所ノ、世ニ所謂普通選擧ノ案デアリマス
ト說明ニナッテ居リマス、私ハ此場合ニ動議ヲ起シマシタノ
デ、斯樣ナリマスレバ旣ニ國民黨案ニ依ッテ衆議院ノ意思
ハ明白ニ表示セラレタル後ニ、再ビ普選案ニ對スル衆議院
ノ意思ヲ討論スベキ機會ヲ作ッタコトニナルノデアリスマカラ、
私ハ一事再議セズト云フ根本ノ原則ガ爰ニ承認セラレ、了
解セラレテ居ル以上ハ、斯ノ如キ議事ハ繼續スベキモノデナ
イト信ジタノデアリマスガ、左樣ニ主張シタニ拘ラズ、議
長ガ其尙ホ其討論ヲ續行セラレタノハ、如何ナル理由
ニ基イタ譯デアッタノカト御尋ヲシタイノデアリマス、第
三ニ憲政會ノ普選案ノ内容ガ、國民黨ノ普選案ノ內
容ト一致セザル所ノアリマスコトハ勿論デアリマス、私
モ能ク之ヲ了解致シテ居リマス、當日ノ議事ノ經過カ
ラ考ヘマスト、議長ハ多分其一致セザル部分ノミニ就
テ採決セント欲セラレタノデアリマセウ、斯ノ如キ採決
法ニ依ッテ、或ハ一事不再議ノ原則ニ悖ラザルコトヲ
得ルト御考ニナッタノデアリマセウ、併ナガラ衆議院ハ當日ノ
議事ノ終リニ於テ、議長ノ執ラントセラレタ斯ノ如キ採決
法ヲ否認シ去リマシタ、一致セザル部分ノミニ就テ採決セン
トサレタ議長ノ採決法ヲ衆議院ハ否認シ去リマシタ、議長
ハ其採決法ノ否認シ去ラレタル、今日ニ於テモ尙ホ當日ノ
議事ハ一事不再議ノ原則ニ悖ル所ナカリシト御考ニナルカ
否ヤ議事ノ終リニ於ケル議長ノ執ラントセラレタ採決法ハ
既ニ議場ニ於テ否決セラレタノデアリマス、一致セザル部分
ニ就テノミ採決セラレントシタ其方法ハ、議場ニ於テ否決セ
ラレタノデアリマス、否決セラレタ後ノ今日ニ於テモ、當日ノ
議事ハ一事再議ノ嫌ナカリシト御考ヘニナッテ居ラルヽカ、
之ヲ第三ノ點トシテ御尋シタイノデアリマス、第四ニ移リマ
スガ、若シ各案ノ趣旨ト目的トハ同一デアルニ拘ラズ、其內
容ノ幾許部分ガ相同ジカラザル所ノアル爲メニ、之ヲ獨立
ノ案トシテ、討論ニ次グニ討論ヲ以テスルト云フコトヲ、前
日ノヤウニ御許シニナルト致シマスナラバ、私ハ或ハ虞レルノ
デアリマス、今後ノ議場ニ於キマシテハ、些細ノ字句條項ノ
改正ヲ口實ト致シマシテ、幾度モ幾度モ本議場ニ普選案ノ
議事ガ現ハレルヤウニナリハシナイカト云フコトヲ虞ルヽノデ
アリマス、若シ斯樣ニ相成リマシテハ憲法第三十九條ノ目
的精神ハ、殆ド水泡ニ歸スルト思フノデアリマスガ、議長ハ
斯クシテモ尙議場ノ神聖ト議事ノ正當ナル進行ヲ保ツニ
差支ナシト御信ジニナッテ居ラレルノカ、是ガ第四ノ私ノ質
問デアリマス、私ハ爰ニ念ノ爲メ私ガ此問ヲ起ス所以ノ趣意ヲ
明ニスル便宜トシテ一ツ二ツノ事ヲ申添ヘテ置キタイノデア
リマス、其一ツハ三日ニ憲政會ノ案ガ議ニ上リマリシテ、關
君ノ說明ノ進行中ニ、私ハ書記官長ニ向ッテ意見ヲ質シタノ
デアリマス、其時ニ書記官長ハ、内容ノ一致セザル部分ノミ
ニ就テ採決スルカラ、-事再議ノ虞ハ無イト云フコトヲ御
答ニナリマシタ、勿論是ハ書記官長ノ御答デアッテ、議長ノ
御答デハナカッタ、私ハ此說明ヲ聽イテ甚ダ不安ニ感ジタノ
デアリマス、斯樣ナ立場ニ居ッテ、一事再議カ否ヤト云フコト
ヲ御考ニナッテ居ルトシマスレバ、議事ノ終リニ於テ三木君
ノ如キ動議ガ出テ、此採決法ノ妨ゲラレルコトハ大抵豫想
ガ著クノダ、議場ノ大體ノ空氣竝ニ從來ノ慣例ヲ心得テ居
ル者ニ取ッテハ、三木君ノ如キ意見ガ起キテ、議長ノ採決法
ヲ妨ゲラレルコトハ豫メ想像スルコトガ出來ルノダ、隨テ私ハ
此事ガ一事再議ノ憲法違反ノ嫌ニナリハシマイカト云フコ
トヲ虞レタノデアリマス、書記官長ガ當時私ニ答ヘラレタ通
リニ議長ハ採決セントセラレタ、ソレデ其採決法ガ私ノ豫想
シタ通リニ妨ゲラレタ、是ガ當日ニ於ケル一ツノ事デアル、其
後私ハ更ニ書記官長ニ向ッテ-議長ノ採決法ガ容レラレ
ザル結果トシテ、私ハ書記官長ニ如何ニ御考ニナッテ居ラレ
ルカト問ヒマシタラバ當日ノ議事ハ確ニ其一部ハ一事再議
デアッタト御答ニナッタ、是ハ御答ヲ待ツマデモナク、サウデアッ
タト認ムルヨリ外仕方ガナイ、ソコデ問題ハ、一事再議ヲ可
トスルカ不可トスルカト云フコトハ、部分ノ問題デアルカ、根
本ノ問題デアルカト云フコトニナル、私ハ一事再議ト云フコ
トハ、案ノ趣旨、案ノ目的、其討論ノ思想ノ主ナル流レニ關
シテ申スノデアッテ、字句條項ノ末ノ事ヲ云々スルモノデハナ
イト信ジテ居ルノデアリマス、サウシテ其根本ノ趣旨ニ於テ、
根本ノ目的ニ於テ、憲政會ノ案ハ國民黨ノ案ト殆ド全ク
同一デアリマシタ故ニ、其ノ憂ヒタル所ノ憲法違反ノ虞ガ
其處ニ橫ッテ居タト信ズルノデアリマス、立場ヲ變ヘテ斯樣
ニ御考へ下サレバ能ク分ルノデハナイカト私ハ思フ、國民黨
ノ提案ニ對シテハ、原總理大臣ヨリシテ反對ノ意思ガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=43
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044・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 議長ニ質問ナラ、其質問ノ要旨ヲ
述べナサイ、講釋シテ貰ハナクテモ答辯致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=44
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045・田川大吉郎
○田川大吉郞君(續) 少シ御待チ下サイ、原總理大臣ハ
國民黨ノ案ニ御答ニナリマシタガ、憲政會案ニハ御答ニナ
ラナカッタ、若シ御答ニナッタラバドウデアッタラウ、其御答ノ要
領ハ、國民黨ノ案ニ御答ニナッタコトヽハ全ク同ジカッタデアラ
ウト思フ、隨テ當日ノ議事ハ、ドウシテモ一事再議ニナラザ
ルヲ得ナカッタ經過ニアッタト信ズルノデアリマス、ソレニ對シ
テ議長ハドウ御考ニナッテ居ルカヲ伺ヒタイ、モウ一ツ私ハ簡
單ニ申シテ此質問ヲ終リマスガ、當日私共ハ憲法違反ノ虞
アリト云フ動議ヲ起シマシタ時ニ、議長ハ議長ノ御解釋ヲ
以テ、單獨ニサウデナイト御決定ニナリマシタガ、斯ノ如キ場
合ニ於テハ議場ニ問ウテ御決定ニナルベキモノデハナカッタ
ラウト思フノデアリマス、是モ私ノ誤解デアリマスヤ否ヤ、私
ハ將來ニ大切ナル先例ヲ貽スモノト信ジマス故ニ、遲レナガ
ラ此場合ニ於テ、議長ガ將來ノ爲メニ適當ノ解釋ノ門ヲ開
クベク深切ニ御答下サレンコトヲ希望スルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=45
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046・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 唯〓御尋ノ事デスガ色〓小サキ事
モ大體ノ事モ分レテ居リマシタガ、悉ク記憶シテ居ラヌカモ
分リマセヌ、憲法違反デアルト云フコトヲ言ウタ時分ニ、議
長ハサウデナイト答ヘラレタガ、何故院議ニ問ハナイカト云
フ御尋ニハ議長ハ、議事ヲ整理スル上ニ於テ、異議ガナケレ
バ其儘進行スレバ宜シイノデ、誰方カラ異見ガ出マシタリ、
異議ガアリマスレバ一々院議ニ問ヒマスケレドモ、左モナイ
限リハ議長ノ計ラヒデヤルベキモノト考ヘマス、又憲政會ノ
關和知君ノ演說ノ趣意ガドウアラウトモ、斯ウアラウトモ、或
ハ其モノヽ內容ガ違ッテ居ルナラバ、說明者或ハ演說者ノ趣
意ニ依ッテ判斷スルニ非ズシテ、案ニ就テ判斷ヲ議長ハシテ
居リマス、又原總理大臣ガ憲政會案ニ對シテ答辯サレナカッ
タ、其譯ハ何故カト云フ御尋是ハ議長ハ答辯ヲスル理由が
無イ、書記官長ト貴方トノ質問若クハ翌日ノ話モ、議長ハ
答辯スル責任ナシ、大體ニ於テ普選案、普選案ト言ハレル、
世間普通皆言フコトデアリマスケレドモ、選擧法改正案
要スルニ改正案ノ內容ハ、選擧權ヲ擴張スルト云フ內容ニ
大體ハナッテ居リマスケレドモ、其程度方法ニ於テ大ナル差
ガアルコトハ、田川君モ御承知デアリマセウ、一例ヲ引キマス
レバ、國民黨案ハ滿二十歲以上、總テノ學生ニモ誰ニモ選
擧權ヲ與ヘル、憲政會案ハ滿二十五歲デアル、而モ獨立ノ
生計ト云フ制限モアル、而モ憲政會案ハ選擧區制ノ改正ガ
アル、中選擧區ニ改正スル、國民黨ニ案ハソレガ無イ、或ハ候
補者ノ戶別訪問トカ或ハ演說場トカ、些細ナ點ニ於テ種々
ナル相違ガアリマスケレドモ、是ハ小ナル點ニシマシテモ、大
體ハ獨立生計トカ、年齡トカ、若クハ區制ノ改正トカ、此選
擧法ニ就テハ、極ク重要ナル點ニ就テ、三點四點モ異レル
主張ヲサレテ居リマス、是ハ假令演說者ノ說明ガ御同樣デ
アルト言ハレマシタ所ガ、議長ハ此實質內容ニ於ケル選擧
法改正案ニ就テ採決ヲスルガ當然デアルノデアリマス、サウ
ナレバ之ヲ以テ憲法第三十九條ノ精神ニハ決シテ背イテ居
リマセヌ、採決ノ時ニ、議長ハ初メ宣言シテ何故變ヘタカト
言フガ、議長ハ彼ノ時分御諮リヲシタ、岩崎君ヤ三木君等
ガ、第二讀會ヲ開クヤ否ヤ、大體ニ就テヤルノデアルカラシテ、
今議長ガ先ニ言ハレタ所ハ、逐條審議ノヤウデアルカラ、大
體二讀會ヲ開クヤ否ヤニ就テ諮ッテ貰フガ當然デアルト云フ
言葉ガ出マシテ、議長ハソレヲ當然ナリトシテ其通リ計ラッタ
ソコデ又モウ一ツ、字句ノ修正等ヲシテ、再ビ同一ノ案ヲ出
シタ時ハ、議長ハドウスルカト云フ事、サウ云フ惡〓ヲスル人
ガアレバ、議長ハ抑ヘマス、是デ以テ將來ノ惡例ニモナラズ、
三日ノ事ハ徹頭徹尾議長ハ正シキ事ヲヤッタモノト確信シ
テ居リマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=46
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047・樋口秀雄
○樋口秀雄君 議長議事進行ニ就テ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=47
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048・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 樋口君何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=48
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049・樋口秀雄
○樋口秀雄君 議事ノ進行ニ就テ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=49
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050・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 何デスカ、發議ナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=50
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051・樋口秀雄
○樋口秀雄君 發議シテ宜シウゴザイマスカ-唯今田
川君ヨリ議長ニ對スル御尋ハ、頗ル重大ナ事デアリマスガ、
議長ノ之ニ對スル御答辯ハ、恐ラク田川君ノ質問ノ趣旨ニ
副ウテ居ルマイト思ヒマスルシ、(「ノウ〓〓」「無用々々」ト呼
フ者アリ)尙ホ此事ニ就キテ····(議場騒然)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=51
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052・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜カニ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=52
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053・樋口秀雄
○樋口秀雄君 重大問題デアル「提出」ト、云フ文字ノ意
味ヲ明カニシテ置カナケレバ、將來何等カノ重要案ノ出マシ
タ時ニ、必ズヤ判ラナイト云フコトガ出ルト思フ(「無用々々」
ト呼フ者アリ)卽チ私ノ伺ヒタイノハ、議長ノ御答辯中ニ、提
出ト云フ言葉ノ意義ヲ明確ニ仰シヤッテ居ナイ、卽チ提出ト
云フ言葉ヲ英吉利ニ於ケルガ如ク、議院ノ事務局ガ受付
ケタ時、之ヲ正式ト看做サレル御積リデアルカ、若ハ「プロイ
セン」ノ如ク、之レガ議場ニ上程サレタ時ト御覽ニナルカ、但
シハ兩院制度ニ於テハ、一院デ決議ニナリマシタモノヲ、他
ノ一院ニ移ス時ヲ提出ト見ルカ、此三ツノ解釋ガアリ得ル
ノデアリマス、サウシテ此憲法第三十九條ニ規定致シテアリ
マス所ハ、是ハ文字ヲ見マシテモ「兩議院ノ一ニ於テ否決シ
タル法律案ハ同會期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス」ト
アリマシテ、議員「メンバース」ト云フ形式デナクシテ、「ハウス」
ニナッテ居リマス、然ラバ此第三ニ解釋スルノガ當然デアルト
思ヒマス、隨テ田川君ノ御質問ノ如キハ何等無意義ノモノ
ト思シテ反對ヲ表示シタノデアリマスガ、議長ハ其「提出」ト
云フ意味ヲ如何樣ニ御解釋ニナルカ、事重大デアリマスカラ
再ビ御尋致シマス(「答辯無用」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=53
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054・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 學校デアリマセヌカラ、法律ノ講釋
ハ致シマセヌ
〔「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=54
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055・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第一朝鮮醫院及濟生院特
別會計法中改正法律案ノ一讀會ヲ開キマス
第朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改
正法律案(政府提出)第一讀會
朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正法律案
朝鮮醫院及濟生院特別會計法中左ノ通改正ス
第二條中「九十二萬圓」ヲ「百十四萬圓」ニ改ム
〔政府委員水野鍊太郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=55
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056・水野錬太郎
○政府委員(水野鍊太郞君) 本案ノ提出ノ理由ヲ簡單
ニ說明致シマス、又朝鮮ニ於キマシテハ、旣定計畫ニ掛リマス
慈惠醫院十三箇所ノ中、三箇所ヲ明年度ヨリ開始スル豫
定デアリマス、又朝鮮ノ實況ニ於キマシテ、今日看護婦助產婦
等ノ必要ヲ認メテ居リマスルガ、之ガ養成ヲ致スト云フコト
ガ極メテ必要デアリマス、之ニ對シマスル費用モ要ルノデア
リマス、又次ニ濟生院ニ於キマシテ孤兒ヲ〓容シテ居リマス
ルガ、來年度ニ於テ此收容人員ヲ增シマスルノト、收容ノ期
間ヲ延長致シマスル必要ガアリマスルノデ、是ニモ亦相當ノ費
用ヲ要スルノデアリマス、是等ノ費用ヲ支出致シマスルガ爲
メニハ、醫院ノ收入ヲ以テスル更ニ、更ニ政府ノ支出金ヲ增
ノ必要ガアルノデアリマス、而シテ此朝鮮醫院及濟生院特
別會計法ニ於キマシテハ、法定ノ金額ガ九十二万圓トナッ
テ居ルノデアリマス、之ヲ增額スル必要ガアリマスノデ、九十
二万圓ニ對シマシテ、二十二万圓ヲ增加セネバナラナイ、卽
チ此點ニ於キマシテ、此法律ヲ改正スル必要ヲ認メマシタガ
故ニ、九十二万圓ヲ百十四万圓ニスルト云フ法案ガ此法
案ノ趣旨デアルノデアリマス、極メテ簡單ノ案デアリマスル
カラ、ドウゾ御協賛アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=56
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057・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第二、右議案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=57
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058・岩崎勲
○岩崎動君 委員ノ數ヲ九名トシ、議長ニ於テ指名アラ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=58
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059・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=59
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060・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 異議ナシト認メマス、仍ッテ動議ノ
如ク決シマシタ、日程第三、軍用自動車補助法中改正法律
案ノ第一讀會ヲ開キマス
第三軍用自動車補助法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
軍用自動車補助法中改正法律案
軍用自動車補助法中左ノ通改正ス
第二條第一項ヲ左ノ如ク改ム
補助金ヲ受グルコトヲ得ヘキ製造者又ハ所有者ハ內
地、朝鮮、臺灣、樺太、關東州又ハ南滿洲鐵道附屬地
ニ存在スル自動車製造所又ハ自動車ヲ有スル帝國
臣民ハ帝國法令ニ依リ設立シタル法人ニ限ル但シ社
團法人ハ株式會社ニ在リテハ其ノ資本ノ半額以上
及議決權ノ過半數カ帝國臣民ニ屬スルモノ其ノ他ノ
社團法人ニ在リテハ其ノ總社員カ帝國臣民ナルモノ
ナルコトヲ要ス
第三條中「一英噸」ヲ「四分ノ三佛噸」ニ改ム
第四條中「二千圓」ヲ「三千圓」ニ改ム
第六條中「三百圓」ヲ「六百圓」ニ改ム
第十條中「之ヲ輸出シ」ヲ「主務大臣ノ許可ヲ受ケタル
場合ヲ除クノ外之ヲ第二條第一項ニ揭クル地域ノ外ニ
輸出シ」ニ改ム
附則
本法ハ大正十年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員山梨半造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=60
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061・山梨半造
○政府委員(山梨半造君) 本案提出ノ理由フ申上ゲマ
ス、軍用自動車補助法ノ實施後ノ狀況ニ鑑ミマシテ、此補
助金ヲ受クルコトヲ得ベキモノヽ範圍ヲ擴張致シマスルト、又
物價騰貴ニ伴ヒマシテ、補助金額ヲ增加スル等ノ必要ガ生
ジマシタ爲メニ、同法中ニ改正ヲ加ヘタ次第デアリマス、ドウ
カ御審議ノ上御協賛ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=61
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062・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第四、右議案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第四右識案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=62
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063・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ三善〓之君外五名提出ノ、航空事
業ノ擴張及其行政機關ノ統一ニ關スル建議案ノ委員ニ、
併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=63
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064・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=64
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065・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ
如ク決シマシタ、日程第五、一年現役小學校〓員俸給費
國費負擔法案ノ第」讀會ノ續ヲ開キマス-委員長原田
十衞君-理事ノ鈴木錠藏君
第五一年現役小學校〓員俸給費國庫負
擔法案第一讀會ノ續
報告書
-一年現役小學校〓員体給費國庫負擔法案(政府提
山
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年二月十四日
一年現役小學校〓員俸給費國庫負擔法案委員長
原田十衛
衆議院議長奧繁三郞殿
〔鈴木錠藏君登壇拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=65
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066・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 唯〓議題ト相成リマシタ一年現役小學
校〓員俸給費國庫負擔法案ハ、國民黨ノ砂田重政君外
二名御提出ノ小學校〓員國庫負擔額增加ニ關スル建議
案、同一ノ建議案ガ憲政會ノ高田転平君外五名ノ方々カ
ラ出テ居リマスノデ、更ニ守屋松之助君外二名御提出ノ市
町村義務〓育費國庫負擔中改正法律案、此特別委員ニ
合セテ御付託ニナリマシテ、此三案ハ事頗ル重大デゴザイマ
シテ、唯〓マダ審議未了デゴザイマスガ、此一年現役小學
校〓員俸給費國庫負擔法ハ豫算ニ關係モアリマスシ殊ニ此
點ニ就テハ一同御賛成ノ案デアリマスカラシテ、他ノ三建
議案ト分離致シマシテ審查終了致シマシタ、其經過及結
果ヲ御報告申上ゲマス、此案ハ大正七年徵兵令ノ改正ノ
結果ト致シマシテ、本年度カラ小學校正〓員ノ現役兵ト
致シマシテ入營スル者ニ對シマスル、体給ノ國庫ノ負擔ヲ此
所デ決メタノデゴザイマシテ、詰リ現体給金八割ヲ支給シヤウ
ト云フガ此案ノ趣意デゴザイマス、此事ニ就キマシテハドウ
云フ爲メニ八割支給スルカト云ヒマスレバ、政府委員ノ答ハ
結リ此入營兵ハ衣食共ニ官給デアルカラシテ幾分カ生活
上ニ於テモ省略ガ出來テ居ルダラウカラ、二割ヲ減シテ八
割ト云フコトニナッタノダサウデアリマス、而シテドノ位ノ數ニ
ナルカト云ヒマスト、現役ノ〓員ガ約一千人、是ハ卒業生
ガ年々一千三百九十九人位アルサウデゴザイマシテ、其中
ノ七割ガ合格シテ入營致シマスカラ丁度千人ニナル、而
シテ俸給ガ一人ノ平均ガ六百二十二圓デアリマシテ、此八
割ヲ支給致シマスト、一人ニ付テ四百九十八圓ニナリマス、
故ニ一千人ニ四百九十八圓ヲ乘ジマシテ、四十九万八千
圓ト云フ爰ニ數字ガ現レタノデゴザイマス、是ハ至極事宜ニ
適シタ所ノ法律デゴイマシテ、滿場一致ヲ以テ可決致シマ
シタカラ、此段御報告致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=66
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067・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
諮リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=67
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068・岩崎勲
○岩崎動君 第二讀會ヲ開クニ異議ナシ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=68
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069・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第一一讀會ヲ開クニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=69
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070・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ第二讀
會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=70
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071・岩崎勲
○岩崎勳君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
省略シテ、委員長報告ノ通リ可決確定セラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=71
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072・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=72
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073・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 御異議ガ無ケレバノ直チニ第二讀
會ヲ開キマス
一年現役小學校〓員俸給費國庫負擔法案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=73
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074・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ガ無イト認メマス、仍テ委
員長報告通リ可決確定シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=74
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075・岩崎勲
○岩崎動君 函餘ノ日程ニ對シテ延期ノ動議ヲ提出致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=75
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076・奧繁三郎
○議長(奥索三郞君) 御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=76
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077・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ハ無イト認メマス、是デ日
程ハ延期サレマシタ-報告ガゴザイマス、政府ヨリ追加豫
算案が出マシタ
〔原田畫記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第一號)大正九年度歲入歲出總豫算追加案
(第一號)大正十年度歲入歲出總豫算追加案
(以上二月十五日提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=77
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078・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 是ハ直チニ豫算委員會ニ付シマ
ス、本日ハ是ニテ散會
午後四時二十一分散會
衆議院議事速記錄第十二號正誤
頁段行誤正
二二六中三方〓方費全
二二六中三〇十六十七
二二六中一 五形而形式
二二六下三二信存
衆議院議事速記錄第十三號正誤
頁段行誤正
二三九上二七「早速整爾君ヲ加フ」
二四一上ー九七千二百万圓七千三百万圓
二五〇上下四一片務偈武
二五一二片務偏武発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01419210215&spkNum=78
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