1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十年二月二十二日(火曜日)午後一時十六分開議
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議事日程 第十六號 大正十年二月二十二日
午後一時開議
質問
一 市町村會の階級選擧制撤廢に關する質問(作間耕逸君外三名提出)
二 市町村の自治體をして煙草元賣捌事務を取扱はしむるの件に關する質問(高草美代藏君提出)
三 養蠶及製絲業者救濟に關する質問(早川龍介君提出)
四 支那共和國留學生に關する質問(清水留三郎君提出)
五 尼港撤兵及再出兵に關する質問(清水留三郎君提出)
六 養蠶業者救濟に關する質問(山邊常重君提出)
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第一 特許法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 實用新案法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 意匠法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 商標法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第九 辨理士法案(政府提出) 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十一 借地法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 借家法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 臺灣事業公債法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 樺太事業公債法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 大學特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 大正八年法律第十二號中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 決議案(朝鮮統治に關し調査委員會設置の件)(中野正剛君提出)
第十九 食糧政策及農家經濟の維持確立に關する建議案(天春文衞君外十九名提出) (委員長報告)
第二十 市町村教育費の整理に關する建議案(井上角五郎君外十三名提出)
第二十一 徴兵令事務施行細則改正に關する建議案(植原悦二郎君提出)
第二十二 産業組合法及重要物産同業組合法改正竝同組合振興に關する建議案(土井權大君提出)
第二十三 成年調査に關する建議案(奧村安太郎君外一名提出)
第二十四 石油政策に對する燃料調査會設立に關する建議案(高野毅君提出)
第二十五 特別市制促進に關する建議案(作間耕逸君外五名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=0
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001・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 今日ハ議長差支ガゴザイマスル
ノデ、私ガ代理ヲ致シマス、宜シクドウゾ-諸般ノ報告ヲ致
シマス
〔原田書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
特許法改正法律案
實用新案法改正法律案
意匠法改正法律案
商標法改正法律案
辨理士法案
(以上二月十九日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
所得稅法中改正法律案
提出者岩本平藏君磯田粂三郞君
福井甚三君八木逸郞君
玉置良直君津野田是重君
舞田壽三郞君北井波治目君
山口熊野君匹田銳吉君
借地法案ニ對スル修正案
提出者作間耕逸君武內作平君
野田文一郞君森山儀文治君
借家法案ニ對スル修正案
提出者作問耕逸君武內作平君
野田文一郞君森山儀文治君
明治三十四年法律第三十號中改正法律案
提出者齋藤鷲太郞君〓水市太郎君
山本〓三郞君舞田壽三郞君
加藤重三郞君吉原祐太郞君
波多野喜右衞門君
恩給法規ノ根本改正ニ關スル建議案
提出者高木正年君三浦得一郞君
齋藤宇一郎君
福山三次間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者永屋茂君河相三郞君
井上角五郞君望月圭介君
吉野縱貫鐵道建設ニ關スル建議案
提出者岩本平藏君天春文衞君
伊坂秀五郞君加藤久米四郞君
癩豫防關係法規改正ニ關スル建議案
提出者中馬興丸君三浦得一郞君
香川保忠君
山田川ニ河川法適用ニ關スル建議案
提出者原田藤次郞君宇野勇作君
阿部武智雄君北山一郞君
梅田潔君野村治三郞君
鴨綠江岸道路修築ニ關スル建議案
提出者高見之通君一宮房治郞君
波多野承五郞君山崎猛君
松山常次郞君牧山耕藏君
京都監獄移轉ニ關スル建議案
提出者竹上藤次郞君長田桃藏君
大島實太郞君風間八左衞門君
六大都市特別市制速施ニ關スル建議案
提出者奧村安太郎君森下龜太郞君
山本藤助君上田彌兵衞君
(以上二月十九日提出)
國幣大社大山祇神社昇格ニ關スル建議案
提出者深見寅之助君河上哲太君
成田榮信君渡邊修君
高山長幸君矢野丑乙君
國幣大社大山祇神社國寶殿建築ニ關スル建議
案
提出者深見寅之助君河上哲太君
成田榮信君渡邊修君
高山長幸君矢野丑乙君
(以上二月二十一日提出)
山田豐岡間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者長田桃藏君松山常次郞君
鎌田三郞兵衞君
(以上二月二十二日提出)
一昨二十一日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案左ノ
如シ
大正九年勅令第四百八十五號(承諾ヲ求ムル件)
一今二十二日提出者ヨリ撤回セラレタル議案左ノ如シ
癢兵優遇及軍人遺族扶助料改正ニ關スル建議案
提出者津野田是重君
外一名
一昨二十一日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ議
案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
船舶滿載吃水線法案(政府提出)
-議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
石炭礦業被害ニ關スル質問主意書
提出者古賀三千人君
(以上二月十九日提出)
一昨二十一日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員早川龍介君提出米價調節ニ關スル質問
ニ對スル答辯書
衆議院議員橫山勝太郞君外二名提出司法權ノ威
信ニ關スル質問ニ對スル答辯書
米價調節ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月三日
提出者早川龍介
賛成者磯貝浩
外二十九人
米價調節ニ關スル質問主意書
現今諸物價ノ情況ヲ察スルニ戰亂當時暴騰シタル諸物
價ハ未タ舊ニ復セス加之輓近耕地ニ對スル負擔增加シ
タル時ニ於テ米價急落スルヲ以テ農家ノ苦痛袖手スル
ニ忍ヒス今ヤ農家ノ精算期タル陰曆年末ニ迫リ其ノ窮
迫容易ナラス政府ハ相當ノ施設ヲ爲シ救濟スルノ意ア
リヤ否ヤ
右及質問候也
大正十年二月二十一日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員早川龍介君提出米價調節ニ關スル質問ニ
對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員早川龍介君提出米價調節ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
米穀ノ需要供給カ均衡ヲ失シ爲メニ米價ノ甚シキ騰落
ヲ惹起スルコトハ農家經濟ニモ亦至大ノ影響ヲ及ホスヘ
シ依テ政府ハ需給調節ノ目的ヲ以テ之ニ關スル法案ヲ
提出セムトス
右及答辯候也
大正十年二月二十一日
農商務大臣男爵山本達雄
司法權ノ威信ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月十二日
提出者横山勝太郞三木武吉
八並武治
賛成者箕浦勝人
外三十一人
司法權ノ威信ニ關スル質問主意書
近時神聖ナル司法權ノ獨立ニ關シ民人ノ大ニ疑感ヲ懷
クモノアリ司法行政ノ措置亦甚タ公明ヲ缺キ吾人ヲシ
テ深ク怪訝ニ堪ヘサラシムルモノ鮮少ナラス憶フニ國家
ノ正義民人ノ自由ハ一ニ公明嚴正ニシテ」獨立ナル司法
權ノ確立ニ依テ保障セラル而シテ司法行政ノ當否ハ直
ニ司法權ノ獨立ト威信ニ影響スルトコロ多シ頃者司法
界ノ現狀ハ本員等ヲシテ憲政ノ運用上邦家ノ爲ニ寔ニ
深憂ニ勝ヘサラシムルモノアリ司法當局ノ所見如何
右及質問候也
大正十年二月二十一日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員橫山勝太郞君外二名提出司法權ノ威信
ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員橫山勝太郞君外二名提出司法權ノ
威信ニ關スル質問ニ對スル答辯書
從來司法行政ノ措置ヲ以テ司法權ノ獨立ヲ害シ一般
ニ疑感ノ念ヲ懷カシメタルカ如キ事實ナク又司法權、獨
立ヲ干犯ヲセラレタルコトナシ
右及答辯候也
大正十年二月二十一日
司法大臣伯爵大木遠吉
一今二十二日政府ヨリ受領シタル各辯書左ノ如シ
衆議院議員〓水留三郎君提出支用共和國
留學生ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員〓水留三郎君提出尼港撤兵及
再出兵ニ關スル質問ニ對スル答辯書
支那共和國留學生ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月九日
提出者〓水留三郞
賛成者內藤濱治
外二十九人
支那共和國留學生ニ關スル質問主意書
米國ノ支那留學生歸朝後多ク親米論者トナリテ米支
國交上ニ裨益シ貢獻スルコト偉大ナルニ反シ日本ノ支
那留學生ハ歸朝後却テ排日論者トナリテ日支紛議ノ中
心トナル洵ニ遺憾ノ至ナリ若此ノ儘ニ放任セムカ日支
兩國ノ關係ハ益險惡トナリ兩國民ノ意思愈疎隔スルニ
至ラム之ニ對シテ政府ハ如何ナル方針ヲ採リ又採ラムトス
ルヤ本員ハ左ノ三點ヨリ之ヲ政府當局ニ質問セムト欲ス
ー支那留學生カ排日論者トナル第一ノ要素ハ日本
政府ノ對支方針常ニ動搖シテ一定ノ國策ヲ樹立セス
一貫セル方針ニ基カサルカ爲ナリト信ス支那ハ由來
事大主義ノ國ナリ屈從的ナル日本ノ外交ハ事大主
義ノ支那人ヲシテ日本ニ信賴スルヲ不安ナラシム不安
ハ終ニ排日トナル之レ半可通ノ留學生ヲシテ生活ノ
爲賣名ノ爲排日論者タラシムルニ至ル一理由タリ政
府ハ今後支那ニ對シテ如何ナル態度ヲ以テ進マムトス
ルヤ
二米國ヨリ歸朝セル支那學生ニ對シテ支那ニ在ル米
國官民ハ有ユル方法ヲ講シテ或ハ公使館内ニ「レター
ンド、スチユーデント、ソサイチー」ナル機關ヲ有シテ歸朝
支那人ト米國人トノ意思ヲ疎通シ且其ノ就職先ヲ
斡旋シ又ハ豫備〓育ヲ與フル西華學校、〓會、「ミッシ
ヨン、スクール」及醫院等ノ外尙學校等ヲ設ケテ絕ヘス
支那人ヲ〓育シテ彼等ヲ常ニ親米化セシム然ルニ日
本ノ官民ト歸朝留學生トノ間ニ何等連絡ノ機關ナク
就職幹旋ノ方法ナシ又豫備校其ノ他ノ設備ナク宗
〓、醫衛等ヲ以テ彼等親日派タラシムルノ機關モ甚タ
少シ斯ノ如クニシテ何ヲ以テカ歸朝留學生ヲシテ親
日論者タラシムルコトヲ得ムヤ之ニ對シ政府ハ如何ニ
考慮セラルルヤ
三日本内地到ル處ニ於テ支那留學生ニ對スル學校ノ
不親切下宿屋ノ暴利一般日本人ノ輕侮等不平不滿
ノ種ナラサルハナシ又中等以上ノ家庭ニ出入スルノ機
會少キ爲家庭的ノ溫カミヲ感セシムルコト難シ從テ日
本在學中既ニ日本ニ對スル惡感ヲ有スルニ依リ從テ
歸朝後排日論者トナルハ理ノ當然ナリ之ニ對シテ政
府ハ如何ナル方針ヲ採リ又今後採ラムトスルヤ
右及質問候也
大正十年二月二十二日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員〓水留三郎提出支那共和國留學生ニ關ス
ル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員〓水留三郞君提出支那共和國留學
生ニ關スル質問ニ對スル答辯書
-質問第一ニ關シ日本政府ノ對支方針ニ就テハ現政
府ハ恆ニ公正ノ態度ヲ守リ且日支親善及提携ノ實
現ヲ計ルヲ以テ對支政策ノ根幹トシ終始一貫渝ル所
ナク將來ニ於テモ之ヲ變更セムトスルノ意圖ナシ從テ
支那國民ニ於テ我誠意ノ存スル所ヲ諒解スルニ至ラ
ハ日本留學生出身者一ノミナラス一般支那國民ノ排
日風潮モ漸次衰滅ニ歸スヘキヲ疑ハス
二質問第二ニ列擧セラレタルカ如キ外國側ノ施設ハ從
來個人的努力ニ待ツモノ多キトコロ我方ニ於テモ此
種文化的施設ノ頗ル必要ナルハ夙ニ朝野一ノ識認セル
所ニシテ從來ト雖モ相當此ノ方面ニ努力シ』來リ例へ
ハ同仁病院ノ如キ南滿醫學堂ノ如キ東亞同文會ノ
支那學堂設置計畫ノ如キ其ノ重ナルモノナルカ勿論
政府ハ之ヲ以テ充分ナリト思惟スルニアラス今後我
官民ノ努力ヲ要スルモノ頗ル多キハ之ヲ認ムルニ躊躇
セサル所ニシテ政府ニ於テモ尙ホ此點ニ留意シ篤ト考
慮スルコトトスヘク要スルニ政府民間協力シテ隣善ノ
實ヲ擧クルコト最モ必要ト思考ス
三日本ニ於ケル支那留學生ノ待遇乃至生活狀態ニ付
テハ政府ニ於テモ夙ニ充分ノ考慮ヲ拂ヒ關係官廳ニ
於テ夫々改善ノ手段ヲ講シ居リ今後モ出來得ル限リ
之カ改善ヲ圖ルニ吝ナラサルハ勿論ナルモ一般社會ノ
方面ニ屬スルモノノ如キハ獨リ政府ノ努力ノミヲ以テ
シテハ完璧ヲ期シ難ク政府民間兩者ノ協力ヲ要スル
モノト信ス
右及答辯候也
大正十年二月二十二日
文部大臣中橋德五郞
外務大臣伯爵内田康哉
內務大臣床次竹二郞
尼港撤兵及再出兵ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月九日
提出者〓水留三郞
贊成者井上剛
外三十人
尾港撤兵及再出兵ニ關スル質問主意書
-本年解氷後再ヒ尼尼ニ出兵スルモノナリトセハ何
故ニ尼港ヨリ撤兵シタリシヤ
二薩哈嗹占領ハ尼港虐殺事件ノ報復トシテ露國ニ
鞏固ノ政府確立セラルル迄假ニ占領スヘキモノナリト
ハ政府ノ宣言セル處ナリ然ルニ虐殺事件ノ』發生地タ
ル尼港ヨリ撤兵シテ單ニ北樺太)ノミヲ占領セルハ如
何ナル理由ニ基キシモノナリヤ米國ニ於テ「日本ハ北
樺太ノ石油鑛ヲ獲得セムカ爲名ヲ尼港事件ニ藉リテ
以テ北樺太ヲ占領スルモノナリ」ト非難セリ政府ハ尼
港ヨリノ撤兵ヲ以テ日露將來ノ】交涉上一大不利益
ヲ來スノ恐ナシト考へサルヤ
三尼港附近ニハ漁區約五十箇所製魚場約百箇所ア
リ漁場ノ權利ハポートマウス條約ニ依リテ保證セラレ
タルモノニシテ今ヤ其ノ實權日本人ニ歸セムトスル場
合我カ軍隊旣ニ「尼港ヨリ撤兵セリ昨秋撤兵ノ結果
漁業家ハ全ク本年度ノ設備ヲ爲ス能ハス非常ニ困憊
セリ政府ハ是等困憊セル漁業家ニ對シテ如何ナル處
置ヲ採ラレシヤ
四尼港撤兵ノ理由トシテ陸軍當局ノ會テ新聞記者
ニ談セシ點ヲ聞クニ「尼港ニハ家屋少ク防寒設備ナク
飮料水惡シ」ト然シナカラ尼港ニ殘存セル家屋ハ僅ノ
修繕ヲ加ヘタルノミニテ優ニ一個大隊以上ノ兵ヲ駐
屯シ得ラレタルモノナリ而カモ防寒設備ハ亞港新築ノ
家屋ニ比シテ遙ニ優レリ飮料水亦亞港ノ如ク惡シカ
ラス然ルニ兵舍ヲ新築セサルヘカラサリシ亞港ニ移リ
テ多額ノ費用ヲ投シ以テ粗雜ノ家屋ヲ新築セル果シ
テ策ノ得タリシモノナルヤ政府ハ尼港ヨリ撤兵シタル
コトヲ以テ未タニ日本ノ利益ナリシト確信セラルルヤ
五北樺太ニ一個旅〓全部ヲ駐屯セシムルヨリハ其ノ
中ノ一二大隊ヲ割キテ尼港ニ駐メシコト寧ロ宜シカラ
サリシヤ亞港其ノ他北樺太各地ニ我カ軍除ヲ駐屯セ
シメタル今日尼港カ昨年ノ如クニ孤立無援ノ地ナリト
信スル能ハス況ムヤ間宮海峽ヲ通シテ冬期亞港尼港
間交通シ得ラルル今日ノ場合ナルニ於デオヤ然ルニ政
府ハ再ヒ尼港ニ事變実發セリト假定セル場合尙依然
トシテ北樺太ヨリノ直接救援カ不可能ナリト信セラル
ルヤ
右及質問候也
大正十年二月二十二日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郞殿
衆議院議員〓水留三郞君提出尼港撤兵及再出兵ニ
關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員〓水留三郞君提出尼港撤兵及再出
兵ニ關スル質問ニ對スル答辯書
-本年解米後ハ再ヒ我軍隊ヲ樺太對岸ニ進メテ尼
港其他薩哈嗹州內ニ於ケル若干要地ノ占領ヲ行フ
豫定ナリ尼港ニ於ケル越年ノ爲ニハ相當有力ノ部隊
ナルヲ必要トシ從テ夥多ノ軍需品ヲ輸送集積シ且
ツ所要ノ兵營建築ヲ實施スルハ勿論情況ノ異變ニ應
スル必須ノ處置トシテ冬季樺太島及樺太ヨリ尼港ニ
至ル陸路ノ交通施設ヲ整備シ救援ノ方法ヲ講セサル
ヘカラス此等ノ諸準備ヲ完了セムカ爲ニハ多クノ勞力
ト時間トヲ必要トスルヲ以テ漸進的ニ施設ノ步ヲ進
メ北樺太ニ其全力ヲ傾注スルヲ有利ナリト認メ昨秋
ハ一先尼港ノ駐屯部隊ヲ撤退セリ
二尼港ノ駐兵ニ關シテハ第一項ニ述ヘタルカ如クナル
ヲ以テ此一時的尼港ノ撤兵ニヨリ日露將來ノ交涉ニ
不利益ヲ來スモノトハ認メス
三尼港附近ニ在ル黑龍江ノ漁區及製魚區ハ他ノ地
方ト異リ日露漁業協約ニ於テ本邦人ノ參加ヲ認メ
居ラス本邦人ハ單ニ黑龍江ノ下流ニ於テ製魚區ヲ租
借シ露圈人ノ漁獲魚ヲ買入レ製造スルノ權利ト黑龍
江海灣ニ於テ漁撈ト製造ノ權利ヲ併有セルノミニシ
テ尼港虐殺事變突發ノ前年ニハ僅カ一二ノ本邦人
カ出漁セルニ過キサリシカ昨年尼港派遣隊カ同地方
ノ漁業ヲ管理スルコトトナリタル結果漁區ト製魚區ト
ノ競賣ヲ執行セル爲多數日本人ノ參加ヲ見タル次第
ニシテ右ハ單ニ一箇年ノ期限ヲ以テ競賣セシモノナル
カ故ニ本年度ノ設備ヲ爲ス能ハスシテ困憊セル漁業
者アルヘキ筈ナシ而シテ單ニ一箇年ノ期限(事實漁業
ヲ爲シ得ルハ結氷前ノ數月ニ止マル)ヲ以テ落札セシ
メタルハ我管理ノ性質ニ顧ミ當然ノ義ナリ
四尼港撤兵ノ理由ハ既ニ述ヘタル處ニシテ陸軍當局
ノ談ナルモノハ關知スル所ニアラス又北樺太ノ新築兵
營ハ決シテ粗雜ナルモノニアラス
五冬期亞港尼港間ノ交通ハ個人ナラハ可能ナリ然レ
トモ團隊ヲ以テシテハ決シテ然ラス
右及答辯候也
大正十年二月二十二日
外務大臣伯爵內田康哉
陸軍大臣男爵田中義
一昨二十一日內閣總理大臣ヨリ議長宛左ノ通發令ア
リタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
特許局事務官馬場類
特許局事務官中松眞卿
農商務省所管事務政府委員被仰付
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭
載ス〕
一去十九日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
水產會法案
松本孫右衞門君黑住成章君秋本喜七君
廣瀨鎭之君池田猪三次君山口熊野君
廣岡宇一郞君成田榮信君牧山耕藏君
向井倭雄君竹澤太一君井上剛一君
高木正年君磯貝浩君小池仁郞君
高草美代藏君高柳覺太郞君佐々木平次郞君
一去十九日刑事訴訟法中改正法律案委員北山一郞
君辭任ニ付其ノ補闕トシテ永屋茂君ヲ議長ニ於テ選
定セリ
一昨二十一日小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ關ス
ル建議案外一件委員風間八左衞門君辭任ニ付其ノ
補關トシテ土屋興君ヲ議長ニ於テ選定セリ
一昨二十一日常任委員補閱選擧ノ結果左ノ如シ
第一部
請願委員河上哲太君(龍野周一郞君補闕)
一昨二十一日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
水產會法案委員
池田猪三次君
委員長松本孫右衞門君理事高草美代藏君
佐々木平次郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=1
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002・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ開キマス御諮リ致
ス事ガアリマス、伊藤廣幾君ヨリ事故ニ付二月二十二日ヨ
リ十四日間請暇ノ申出ガアリマシタガ、許可スルニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=2
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003・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、許可ス
ルコトニ致シマス、尙ホ御諮リ致ス事ガアリマス、小田切磐
太郎君ヨリ大正九年勅令第五百三十四號承諾ヲ求ムル
件ニ關シマスル、委員會ヲ開キタイト云フ請求ガアリマス、許
可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=3
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004・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、許可致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=4
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005・小田切磐太郎
○小田切磐太郞君 委員諸君ハ第五委員室]ニ御集リヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=5
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006・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 尙ホ會議ニ入ルニ先ダチマシテ一
言致ス事ガアリマス、去ル十九日ノ本會議ニ於キマシテ、田
淵豊吉君ノ御演說ノ中ニ、其中ノ一節ニ對シマシテ、井坂
君ヨリ議長ニ御要求ニナッタ事ガアリマス、此點ニ關シマシ
テ議長ハ速記錄ニ就テ調査ヲ致シテ見マシタガ、其用語
ニ於テ稍穩當ヲ缺クノ嫌アルモノガアルヤウニ認メマス、議員
ノ演說用語ニ就キマシテハ、豫テ當議場ニ於テ奧議長ヨリ
屢〓諸君ニ希望ヲ述ベラレテ居ルコトデゴザイマスルガ、トウゾ
將來ハ田淵君ニ於カレテモ、其用語等ニ就テハ御注意アラ
ンコトヲ希望致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=6
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007・龍野周一郎
○龍野周一郞君 作業會計法、中改正法律案外一件ノ
委員會ヲ開キマス、御許可ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=7
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008・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 龍野君ノ御請求ニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=8
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009・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、許可致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=9
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010・龍野周一郎
○龍野周一郞君 委員諸君ハ第九委員室ヘ御參集ヲ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=10
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011・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 是ヨリ質問ノ日程ニ入リマス、
第一市町村會ノ階級選擧制撤廢ニ關スル質問、作間耕
逸君
一市町村會ノ階級選舉制撤廢ニ關スル
質問(作間耕逸君外三名提出)
市町村會ノ階級選擧制撒廢ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年一月二十九日
提出者作間耕逸賴母木桂吉
藤井啓一牧口義矩
贊成者森田茂
外二十九人
市町村會ノ階級選擧制撤廢ニ關スル質問主意書
政府ハ地方議會ノ階級選擧制ヲ撤〓〕スル目的ヲ以テ
本期議會ニ市制町村制改正案ヲ提出シ其ノ目的ヲ達
成セムトスル意嚮アリヤ
右及質問候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=11
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012・作間耕逸
○作間耕逸君 議長、此席カラ見エマセヌガ、內務大臣ハ
御出席ニナッテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=12
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013・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) ナッテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=13
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014・作間耕逸
○作間耕逸君 若シ御出席ニナッテ居リマセヌケレバ、內
務大臣又ハ總理大臣ノ御出席ヲ求メマス、併シ本員ハ質
問ヲ始メテ居リマスルガ、其間ニ成ベク早ク御呼下サル手
續ヲ議長ニ御願致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=14
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015・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 左樣御取計致シマス
〔作間耕逸君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=15
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016・作間耕逸
○作間耕逸君 地方議會ノ選擧階級制ノ撤廢、竝ニ公
民選擧權ノ擴張ヲ目的トスル市制町村制改正ノ提案ハ、
彼ノ陪審法案、竝ニ常平倉案ト共ニ、現內閣ガ今議會ニ
臨ムニ當リマシテ、先ヅ其初頭ニ提ゲテ立ツベカリシ筈ノ
所謂三大改策ト、政府自ラモ許セバ亦一般モ之ヲ認メ
テ居ッタ所デアリマス、然ルニ曷ゾ圖ラン陪審法案ハ樞密院
ニ於テ今ヤ審議停頓ノ形ト相成リ、殆ド絕望ノ域ニ陷ッテ
居ルノデアル、又常平倉案モ經濟財政調査會ニ於キマシテ
難產ヲ極メ、頗ル行惱ノ狀態ニ居リマス狀態ヲ見マシテハ、
少カラズ失望セシメラレマシタ者ハ、獨リ本員等ノミデハア
ルマイト有ジマス、(拍手)殊ニ地方制度ノ改正ニ就キマシテ
ハ、前々議會ハ普選ノ爲メニ不幸ニシテ解散ヲセラレマシタ
當時ニ於キマシテ、閣議既ニ其方針ヲ決定シ、內外ニ之ヲ
宣明セラレテ居ル、卽チ次ノ議會迄ニハ必ズ提案ヲ致ス云
フコトヲ聲明セラレ、而シテ當時ノ沸騰シタル國論普選熱
ヲ冷却スルノ用ニ供セラレテ居ル、又與黨タル政友會諸君
モ、雨來地方各所ニ於テ御演說ヲナサル際ニ、必ズ近キ將
來ニ於テ、此提案ヲ致スト云フコトヲ公ニ提唱セラレテ居リ
マシタニ拘ラズ、臨時議會トハ申シナガラ、前議會ニ於キマ
シテハ遂ニ提案ノコトナクシテ止ミ、又今期議會モ既ニ半バ
以上ヲ經過致シマシタ〓日、尙ホ未ダ提案ノ時期不明デア
ル、提案ノ時期ガ不明デアリマスルノミナラズ、提案ノ用意サ
ヘ成シルコトヲ未ダ耳ニ致シマセヌノハ、本員等ノ痛切ニ遺
憾ヲ感ズル所デアリマス、(拍手)斯クテ政府自ラ提案スルコ
トヲ爲サズ、而シテ他ノ野黨諸君カラ熱心ニ提案セラレマシ
タ所ノ分ハ、何ガ故ニヤ其進行ヲ阻止】セラレテ居ル形ニナッ
テ居ルノデアリマス、斯ノ如キ狀勢ヲ以テ致シマシテハ、果シ
テ何レノ時カ國民ノ熱誠ナル此要求ヲ容レテ戴ク時ガゴザ
リマセウカ、殊ニ怪ムベキハ最近ニ至リマシテハ、又〓形勢逆
轉シ、其主義方針サヘモ、ドウヤラ確定シテ居ラナイ容子ニ
見受ケラルヽノデアリマス、卽チ全國各市町村ヲ通ジテ、悉
ク選擧級別ヲ撤廢スルト云フ方針ヲ執ラルヽノデアルカ、或
ハ又東京市其他六大都市ニハ尙ホ二級制ヲ存置シテ、其
他ノ都市及町村ダケ級別ヲ全廢スルト云フ方針ヲ執ラル
ルノデアルカ、將又市及特別ノ町ダケハ二級制ヲ存置シテ、
其他ノ町村ノミ階級ヲ全廢スルト云フ方針ヲ執ラルヽノデ
アルカ、其主義サヘモ確立シテ居ナイヤウニ認メラレル狀勢
ニ在リマスノハ、洵ニ本員等ハ政府ガ嚮ニ聲明ヲ自ラ抹消
シ、多數國民ノ樂ミヲ以テ期待シテ居リマシタ所ニ裏切リ
ガ出タモノデアリマシテ、此一事ヲ以テ致シマシテモ、現内閣
ハ信ヲ天下ニ失フニ足ルト斷定ヲ致スノデアリマス、(拍手)
是ハ或ハ邪推カモ知レマセヌケレドモ、政府ノ遣方ヲ見マス
ト云フト、普選ノ輿論勃興シテ、其攻撃ヤ政府ニ集中致シ
マス時代ニ於キマシテハ、政府ハ自ラヲ防衛スルノ具ト致シ
マシテ、急遽此案ヲ提出スルガ如ク裝ヒ、輿論ノ外面運動
ガ一時靜マリカケルト云フト、復タ知ラザル眞似シテ此提案
ヲ急ガザルガ如キ態度ヲ執ラレマスノハ、洵ニ斯ル超政黨的ノ
重大法案ヲ政略ノ爲メニ犧牲ニ供シテ、顧ミラレナカッタト
申シマシテモ、ヨモヤ政府ニ於テモ辯明ノ辭ハ無カラウト心
得ルノデアリマス、(拍手、「ノウ〓〓」)尤モ昨今ニ相成リマシ
テ、與黨諸君ノ内部ニ中ミ此點ニ就テ議論ガ沸騰シ、紛糾
ヲ極メテ居ルガ如ク、隨分御盛ンニ採合ッテ居ラレルガ如ク
拜見ヲ致スノデアリマス、ドウヤラ政府ハ此案ヲ與黨ニ注文
サレテ餅ニ搗カレテ居ルヤウデアリマスガ、餘リ搗過ギラレ
テ居ルノデハアルマイカト考ヘル、(拍手)其餅モ正月匆々差
出シテ下サレバマダ結構仕合ニ存ジマスルケレドモ、二月モ
旣ニ半バヲ過ギテ、其間取ッテ置イテ仕舞込マレマシテハ、折
角ノ餅ニ微ガ生ヘル、罅ガ割レカヽリマシタガ爲メニ、折角
唯一確定ノ方針デ濟ム所ガ、五案ニモ六案ニモ說ガ割レテ
來タモノニ外ナラナイト私共ハ斷定ヲ致ス、併シ難有イ事ニ
ハ(「大道演說」「眞面目ニヤレ」ト呼フ者アリ)普選問題ノ起
リマシタ先般、彼ノ選擧權ノ資格ニ就キマシテ、獨立ノ生計
ト云フ問題ニ就キマシテ、本員等ノ屬シテ居リマス憲政會
ノ一部ニ議論ガ闘ハサレマシタ際ニ、與黨諸君ハ色ミノ眼
鏡ヲ以テ、色〓ノ御批判ヲ下サレタノデアリマスガ、ドウヤラ
其御批判ハ、今ヤ我黨ニハ無用ニ相成リマシテ、與黨諸君
ノ政友會ノ方ニ御入用ノ次第ト相成リマ「シタカラ、豫豫受
ケマシタル所ノ御批判ハ、其儘ソックリ玆ニ御返上中上ゲル
機會ヲ得マシタコトヲ諸君ニ對シテ感謝致ス次第デアリマ
ス、(拍手)併シ與黨諸君ノコトデゴザイマスカラ、何レ結局
ハ總裁一任トカ、又ハ幹部一任トカ、政府意ノ在ル所ニ柔
順ニ聽從セラルヽコトデアラウトハ察シテ居リマスガ、政府ガ
果シテ衷心カラ、此地方制度ノ改正ニ熱心ト誠意トサヘゴ
ザイマスレバ、本院ニ於ケル此案ノ通過ト云フモノハ、決シテ
困難ノ事デハナイト信ズルノデアリマス、此邊ニ於ケル內務
大臣、政府當局ノ御決心ハ如何デアルカ、]即チ公民選舉ノ
擴張ノ方ハ姑ク別ト致シマシテモ、選擧階級ノ全廢ヲ目的
ト致シマシテ、速ニ市制町村制ノ改正法律案ヲ本期議會ニ
御提出ニ相成リマスル御覺悟ガアリマスカ、面シテ其御覺
悟ヲ以テ、是非共本期議會ニ御提案ニ相成リマスルヤウ、
其目的ノ遂行ニ努力シテ下サル所ノ確信ガアリマスカ否
ヤ、若シ之レ有リト致シマシタナラバ、凡ソ御提案ニナリマス
所ノ御見込ノ時期ハ何時頃ニ相成リマセウカ、又未ダ其期
定マラズ、或ハ遲レルト云フコトデゴザイマスレバ、其事情ト
理由トヲ爰ニ承リタイ、又主義方針ニ關シマシテハ、果シテ
全國各市町村ヲ通ジテ、級別全廢ト云フ御方針ヲ以テ遂
行セラルヽノデアリマセウカ、本員等ノ考フル所デハ級別撤
廢ノ必要ハ、地方町村ヨリ寧口大都市ニ於テ、一層切實ニ
其必要ト理由ヲ認メルノデアリマス、マサカ此際ニ至リ、今
更トナッテ不徹底ナル一部階級ノ存置ト云フヤウナ主義方
針ヲ以テ、御提案ニハ相成ルマイトハ確信シテ居リマスケレ
ドモ、若シリウデナイ特別ノ制限條件ヲ以テ、尙ホ一部階級
ヲ存置スルト云フコトデアリマシタナラバ、ソレハ如何ナル理
由ト事情ニ基クノデゴザイマセウカ、政テ詳細ニトハ申シマ
セヌ、此點ニ對シマシテ、明確ノ御谷辯ヲ願ヒタイノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=16
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017・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 床次內務大臣
〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=17
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018・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 御答致シマスガ、地方制度
ニ就テ改正ヲ致シタイ考ヲ以テ、今手續中デアリマス、切
ノ御質問ハ、何レ提出ノ際ニ御答スルコトニ致シマス(拍手
起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=18
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019・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 次ハ質問第二、市町村ノ自治
體ヲシテ煙草元賣捌事務ヲ取扱ハシムルノ件ニ關スル質問、
高草美代藏君
二市町村自治體ヲシテ煙草元賣捌事務
ヲ取扱シムルノ件ニ關スル質問(高
草美代藏君提出)
市町村ノ自治體ヲシテ煙草元賣捌事務ヲ取
扱ハシムルノ件ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月九日
提出者高草美代藏
賛成者鈴木梅四郞
外二十九人
市町村ノ自治體ヲシテ煙草元賣捌事務ヲ取扱
ハシムルノ件ニ閣スル質問主意書
近時地方自治體ノ財政ハ一益困難ニ陷リツツアリ之カ救
濟ハ一日ヲ緩ウスヘカラス義務〓育費國庫負擔額ノ增加
ノ如キ或ハ之カ救濟ノ一方法タルヘシト雖未タ是ノミヲ
以テ足レリトセス政府ハ此ノ際煙草元賣捌事務ヲ市町
村ノ自治體ニ移シ以テ地方財政〓和ノ一助トナスノ意思
ナキカ若其ノ意思ナシトセハ之カ詳細ナル說明ヲ求ム
右及質問候也
〔高草美代藏君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=19
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020・高草美代藏
○高草美代藏君 私ハ市町村ノ自治體ヲシテ煙草元賣
捌ノ事務ヲ取扱ハシムルト云フ此件ニ對シテ、御尋ヲ致シ
タイト考ヘルノデアリマス、事ハ頗ル簡單〓デアリマス、而シテ
又煙草ノ賣捌ガ、非常ニ收益ノアルモノトモ實ハ考ヘテ居
リマセヌノデアリマス、調ベテ見マスト、此大正七年度ノ政
府ガ製造煙草ヲ賣下ゲラレマシタ其收益ガ、一億二千九百
万圓餘アルノデアリマス、更ニ大正八年度ハ一億七千二百
万圓餘アルノデアリマス、更ニ大正九年度ニナリマシテ、一
億八千四百万圓餘アルノデアリマス、而シテ御承知ノ大正
十年度ニ於キマシテハ、殆ド二億ノ豫算ガ出テ居ルコトハ、
各位ハ御承知デアラウト考ヘテ。居ルノデアリマス、假リニ之
ヲ一割ノ手數料デ下渡スト致シマシタ所デ、約二千万圓ノ
收益ガアルト云フコトニ計算ガナルノデアリマス、御承知ノ
通リ現在ノ元賣捌ト申シマスルモノハ、全國ニ於キマシテ、
四百四十一人ニ之ヲ請負ハシテ居ルト云フコトニナッテ居
リマスルカラ、此少人數カラ中シマスルト、餘程ノ利益ガアルモ
ノト考ヘマスガ、併シ私ガ今質問ヲ致サウト思ヒマスル、之ヲ
全國ノ市町村ニ一々事務ヲ取扱ハスト云フコトニナリマス
ルト、其數ガ割合多クナリマスルガ故ニ、其利益モ亦隨"テ少
額ノモノト思フノデアリマス、此少額ノモノヲ而モ質問ヲ致
シ、又御承知ノ通リ過日來全國三於キマスル所ノ、殆ド五
百人餘ノ町村長ノ方ガ東京ニ。御集リニナリマシテ、私ガ今
申上ゲマスル件ノ御協議ガ出來タト申スコトデアリマス、サ
ウ致シマスルト餘リ多額デモナイ少額ナ所ノ此元賣捌ノ事
務ヲ、何故斯ノ如ク希望セラレルノデアルカ、又私モ何故斯ノ
如キ質問ヲ致スノデアルカ、此事ヲ私極メテ「簡單ニ理由ヲ
申上ゲテ見タイト思フノデアリマス、御承知ノ通リ今ヤ中央
政府ニ於キマス所ノ財政ハ、卽チ十五億六千万圓デアリマ
ス、而シテ地方ニ於キマスル所ノ所謂市町村ノ地方費、是ハ
約八億以上ニ達シテ居ルノデアリマス、サウ致シマシテ中央
ニ於キマスル此財政狀態モ、地方ニ於キマスル所ノ此財政
狀態モ殆ド今ハ其稅源ニ涸渴ヲ來シ、財政狀態ハ頗ル難
儀ヲシテ居ルト云フコトガ、目下ノ狀態デアルノデアリマス、
殊ニ又御承知ノ通リ各市町村ニ於キマシテハ非常ナ苦ミ
ヲ致シ、財政狀態ノ上ニ於キマシテ、非常ナ難儀ヲ致シテ居
ルト云フコトモ是ハ御承知デアリマセウ、丁度中央政府ニ於
ケル十五億六千万圓ノ財政狀態ノ中、國防費ガ其大部分
ヲ占メルト云フ比例ト同時ニ、地方ニ於キマスル此九億幾
ラノ財政狀態ノ中デ、〓育費ガ其大部分ヲ占メルガ故ニ、
他ノヤラント欲スル仕事、セント欲スル勸業ニ對スル仕事モ
出來ズ、又土木ノ事業モ出來ズ、衞生ノ仕事モ殆ド〓育
費ガ其大部分ヲ占メルガ故ニ、仕事ガ今日出來ヌト云フ行
詰リニナッテ、甚ダ困難ヲ致シテ居ルト云フノガ、是ガ卽チ地
方ノ財政狀態デアルノデアリマス、私ハ過日新聞ノ名ハツイ
逸シマシタガ、或ハ某地方ノ小學校ノ生徒ノ事デアリマスガ
小學校ノ一人ノ生徒ガ、他ノ小學校ノ生徒ト同ジヤウニ辨
當ヲ每朝提ゲテ行クガ、併ナガラ正午ニ其辨當ヲ開イタコト
ガ無イト云フコトヲ、誰言フトナク生徒ガ間傳へ、之ヲ〓員ガ
聞傳ヘテ其生徒ヲ呼ンデ調ベテ見マシタ所ガ、雨親ガ、皆ナ
一同辨當ヲ持シテ行クノニ、オ前ガ辨當ヲ持ッテ行カヌト云フ
コトハ、甚ダ親トシテ濟マヌケレドモ、實ハ甚ダ家モ貧乏ヲシテ、
オ前ノ辨當ノ中へ飯ヲ入レテヤルト云フコトハ出來ヌノデア
ルカラ、兩親モ家デ晝飯ハ實ハ〓へヌノデアル、故ニ辨當ヲ
持タサヌト云ウテハ體栽ガ惡イカラ、箱ダケヲ提ゲテ行ケト
云フ譯デ、ソレデ實ハ辨當ヲ喰ハヌノデアルト其先生ニ答ヘ
タト云フ事實ガ、新聞ニ出テ居ッタノガアリマス、是ハ何タル
無慘ナ事デアリマセウ、一子ノ可愛イノハ誰レモドノ親モ同ジ
事デアリマスガ、其可愛イ子ニ辨當ノ中身ヲ入レズシテ、辨
當ノ空ダケ體裁ニ提サセテヤッタト云フコトハ、私ハ此新聞
ヲ見ルト同時ニ、洵ニ一掬ノ淚ヲ濺イダノデアリマス、是ハ其
人ノ不幸デハアリマス、其家ハ成程不幸デハアリマセウケレ
ドモ、併ナガラ是ハ政府ガ政治ノ仕方ガ惡イガ爲メニ、一ツ
ハ斯ウ云フ原因ヲ造ルノデハナイカト私ハ思フノデアリマス、
(拍手起ル)左樣ニマデ地方ハ窮迫ヲ致シテ居ルノデアリマ
ス、此中央ニ於ケル困難ヲ致シテ居ル所ノ財政ヲ、如何ニ之
ヲ開拓スルカ、之ヲ改善スルカト云フコトハ、是ハドウシテモ
此行政ノ整理ヲシ、財政ノ一大整理ヲシ、而シテ稅制ノ整
理ヲシナケレバ是ハイカナイノデアリマス、又地方ニ於キマシ
テモ、是ハ殆ト今日ノ地方ノ與論デアリマスル故ニ、ドウシ
テモ此地方ノ財政ノ大部分ヲ占メテ居リマスル所ノ、〓育
費ノ國庫負擔ヲ增額スルト云フヨリ外ハ是ハ唯〓ノ所デハ
致方ガ無イ、然ラザレバ營業稅ヲ移ストカ、或ハ其他地租ヲ
地方ニ移ストカ、免ニ角要スルニ]左樣ナ事ヲ以テセナケレ
バ、到底救濟ノ途ガ無イト思フノデアリマス、デ私ハ現内閣
ハ成立以來今日ニ至ルマデ、無論政黨政治デアル、又輿論
ニ聽ク政黨デアル、内閣デアルト口ニ唱ヘラレテ居ルノニヽ
然ルニ不思議ナ事ハ、此財政狀態ガ地方ニ於テモ非常ニ
窮迫シテ、斯ノ如ク難儀ヲシテ居ルカラ、是非共諸君ガ御
承知ノ通リニ、〓育費ノ國庫負擔ヲ增シテ吳レト云フコ
トハ、今日殆ド之ニ反對ヲスル者ハ無イノデアリマス、ソレ
ガ爲メニ過日ノ町村長-全國ニ於ケル町村長ノ連中
モ澤山ニ御殘リニナッテ、サウシテ政府ニ請願シ、サウシ
テ、我〓議員ニ請願シテ、每日努力致サレ、每日之ニ奔
走致サレテ居ル、然ルニモ拘ラズ政府ハ一向之ニ耳ヲ
假サヌノデアリマス、私共甚ダ與論ニ聽クト云フ今日ノ內閣
ガ、ドウシテ是程大キイ與論ニ耳ヲ假サヌノデアラウカト云
フコトヲ怪シム一人デアリマス、昔ハ路傍ニ牛ノ喘クノヲ見
テ、自分ノ政治ニ失敗ハ無イカト三度省ミタト云フ政治家ガ
アルノデアリマス、今日ノ政治家ト雖モ、今日ノ內閣ト雖モ、
必ズ斯ウナケレバナラヌノデアリマス、又御承知ノ通リ人民
ガ訴ヲスレバ、哺ヲ吐キ髻ヲ握ッテ出デテ之ニ歡接スルト昔
ハ言ウテ居リマス、今日ノ政治家ト雖モ、今日ノ內閣ト雖モ
斯クナケレバナラヌノデアリマス、然ルニ全國殆ド異口同音
ニ唱ヘル此大ナル與論ニ、一モ耳ヲ假サヌト云フコトハ私共
甚ダ遺憾ニ思フノデアリマス(拍手起ル)此故ニ斯ノ如キ窮
迫致シテ居リマスル此場合、ドウシテモ私ガ今申上ゲマスル
所ノ、〓育費ノ國庫負擔ヲ增スト云フコトガ第一ニ地方ヲ
救濟スル唯一ノ事デハアリマセウケレドモデス、併ナガラ今ノ
輿論ヲ聽カザル、此興論ヲ無視スル所ノ內閣ニ於テハ、之ヲ
直チニ實行スルト云フコトハ、ドウシテモ吾ヒ共如何ニ努力
致シマシテモ利カヌヤウニ思ハレマスガ故ニ、然ラバ少額ノ利
益ト雖モ、洵ニ零碎ナ費用ト雖モ、受ケル利益ガアレバドウ
シテモ之ヲ受ケテ、少額ト雖モ村費ノ一端トシ、町費ノ一端
ニ供シ、市費ノ一端ニ供シナケレバナラヌノデアリマス、此故
ニ私ハ先ヅ今與論デアル、全國ニ於ケル市町村ノ輿論デア
ル所ノ、此煙草ノ元賣捌ノ事ヲ市町村ニ取扱ハシムルト云
フコトヲ、ヤッテ戴キタイト思フノデアリマス、而シテ若シモ政府
ガ幸ニ少額ト雖モ利益ガアルカラ、ソレデハヤラウト云フ斯
ウ云フコトニナレバ結構デアリマスガ、若シ是ガ出來ヌト云
ヘバ、其出來ナイ所以ヲ面モ數字ヲ以テ、而モ明確ニ、而モ
國民ニ能ク理解ノ出來ルヤウニ明カナル』御說明ヲ願ヒタイ
ト思フノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=20
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021・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 唯〓ノ御質問ニ對シ】マシテ、政
府ハ書面ヲ以テ答辯スルト云フコトデアリマス、次ニ質問ノ
第三養蠶及製絲業者救済ニ關スル質問、早川龍介君提
出
三養蠶及製絲業者救濟ニ關スル質問
(早川龍介君提出)
養蠶及製絲業者救濟ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月九日
提出者早川龍介
賛成者磯貝浩
外三十人
養蠶及製絲業者救濟ニ關スル質問主意書
昨春來生絲價格ノ暴落ヲ來シタルヲ以テ之カ救濟トシ
テ帝國蠶絲會社ノ成立スルアルモ實質ニ於テ徹底セサ
ルノ憾アリ若之カ救濟實行ヲ遲延スルトキハ延テ養蠶業
者ノ苦痛トナリ帝國產業上ノ一大蹉跌ヲ醸サムトスルノ
恐アリ之ニ對スル政府ノ施設方針如何
右及質問候也
〔早川龍介君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=21
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022・早川龍介
○早川龍介君 私ハ二月三日米價ノ調節ニ關スル質問
書ヲ出シテ置キマシタ、然ルニ此議場ニ多「分ナ重要問題ガ
起リマシタ爲メニ、質問ノ機ヲ失ヒマシテ、而シテ政府ノ私
ノ質問ニ對シマスル所ノ答辯ガ既ニ出テ居リマス、ソレハ皆
樣ノ御手許へ廻クテ御承知ノ事ト存ジマスガ、是ハ少シク機
會ヲ失ヒマシタガ、今日此質問書ニ揭ゲテアリマスル養蠶製
絲業者ニ對シマスル事ヲ中シマシテ、最後ニ諸君ノ御許シ
ヲ得テ、唯〓ノ事ニ就キマシテ、『政府ノ答辯ニ就テ尙ホ少ミ
質問ヲ致シタイト存ジマスノデ、此段御〓了承ヲ願ヒタイ、
茲ニ申上ゲマスル質問ノ要旨ハ、製絲業者ノ救助デアリマ
ス、併シ此製絲業者ノ救助ハ、延テ農家ニ非常ナル影響ヲ
及ボスコトデアルト思ヒマス、ンコデ過日來製絲業者及帝
蠶會社ナルモノガ集リマシテ、三千万圓ノ救助金、卽チ救濟
ノ爲メニ金ヲ政府カラ貫ヒタイ、斯ウ云フ問題ガ起シテ居リマ
スガ、是ハ一般ニ簡單ニ聞キマスルト、甚ダ慾ノ深イ、大變ニ
都合ノ好イ話ノヤウデアリマスカラ、其質問ヲ致シマスル前ニ
於キマシテ、少シ此帝蠶會社ノ狀況ヲ御話致シテ質問ニ入
リタイト思ヒマス、御承知ノ通リニ昨年ノ四五月頃、卽チ春
醬シノ終リノ頃ニ非常ニ一般ノ繭ガ廉イ形勢ガアリマシタノ
デ、製絲會社卽チ製絲ノ中央會ト云フモノカラ、之ガ救濟
ヲ政府ニ迫ッタ譯デアリマス、其迫リマシタ結果ト致シマシテ、
政府ハ二千万圓ヲ二朱デ以テ貸與ヘヤウ、ソレノ反對ニ民
間デモ二千万圓ノ會社ヲ造ッテ、サウシテ之ガ救濟ノ方法ヲ
執ッタラ宜カラウト云フコトデアッタト云フコトヲ承ッテ居リマ
ス、然ルニ御承知ノ通リ、昨年ノ五六月頃ハ隨分一般ノ狀
況ガ不況ニ陷ッタ頃デアリマシタ爲メニ、詰リ其會社ヲ設立
スルト云フコトガ出來ナンダノデアリマス、併ナガラ此製絲家
ガ相寄ッテ救濟ヲ政府ニ迫リマシタ爲メニ、春蠶ノ終リニ於
キマシテ、其蠶ノ價ガ非常ニ廉カラウト存ジマシタモノガ、幾
分ノ景氣ヲ持チマシテ、七八圓若クハ十圓ニマデ進ンダ譯
デアリマス、然ルニ其後ニ於キマシテ、詰リ此政府ノ補助ト
會社ノ設立ガ出來マセヌ爲メニ、稍〓政府ノ補助救濟ト云フ
モノガ、十分ナル力ヲ得ヌヤウニナッテ參リマシタモノデアリマ
スカラ、ンコデ再ビ蠶ハ低落ヲ來シタノデアリマス、ンコデ夏
蠶ノ終リ秋蠶ノ始リ頃ニナリマシデハ、殆ド非常ナ低落ヲ
致シマシテ、三圓五十錢、四圓ト申スヤウナ價ニマデ低落ヲ
致シタノデアリマス、ソコデ再ビ此最初ニ起リマシタ製絲會
社ガ集リマシテ、政府ニ段々交涉ヲ致シマシタ結果、詰リ政
府/方デ五千万圓金ヲ貸サウ、金ハ貸スガ、併シ矢張民間ニ
於キマシテ、責任ヲ以テ相當ノ會社ヲ設立セヨト云フコトデ
アリマシタ爲メニ、民間デハ最初一千万圓ト云フ豫定デア
リマシタガ、一千万圓デハ五千万圓ヲ貸スノニ少シカガ鈍
イト云フノデ、遂ニ一千六百万圓ト云フ會社ヲ組織致シマ
シテ、サウシテ此會社ニ政府カラ金ヲ借入レマシテ、サウシテ
救濟ヲ致サウト云フコトニナッタノデアリマス、ソコデ少シ豫
定價格ノ事ニ就テ御話ヲ致サウト思ヒマスガ、此當時救濟
ヲ致シテ價格ヲ維持シヤウト申スノハ、横濱ニ出テ居リマス
所ノ生絲ノ合計ガ凡ソ十萬梱、是ハ一梱六貫目ト致シテ
居ル譯デアリマス、此大凡十萬梱、之ヲ普通ニ呼ビマス所カ
ラ申シマスレバ、十六貫ト云フモノヲ一俵ト致シマスレバ、五
万五千餘俵デアリマス、此十萬梱ト申スモノヽ中二萬梱ハ
有力者卽チ此帝蠶會社デモ設立致シマスレバ、重役トナル有
力ノ人ノ所有品デアル、又其中ノ三萬梱ハ輸出不合格デアリ
マシテ、所謂遣絲ト云フ方ニ廻ルベキモノデアリマスカラ、差引
五萬梱ト申スモノ、卽チ俵ニ直シマスレバ。二萬五六千俵デ
アリマス、是ダケヲ買入レシマスレバ、必然價格ヲ維持スルコ
トガ出來ルデアラウト云フ豫定ヲ立テタノデアリマス、ソコデ
愈こ會社ヲ設立致シマシテ、買入ノ手續ニ及バウト致シマシ
タ所デ、此金ヲ政府カラ直チニ借用スルコトデナクシデ、政
府ハ興業銀行ヲ中間ニ致シマシテ、帝蠶會社ノ借入ヲ興
業銀行カラ融通スルヤウニト云フコトデアリマス、之ニ就キ
マシテハ頗ル六ケシイ各種ノ、條件ガ附テ、所所株劵ノ書換
ハ政府ノ許可ヲ得ナケレパ書換ーヘルコトガ出來ヌ、又ハ生
絲ヲ賣却スル時分ニハ、農商務省ノ許可ヲ得ナケレバ賣ル
コトガ出來ヌ、又重役ノ就任等ニ於キマシテモ、一々承リマ
シテ許可ヲ得ナケレバ、重役ノ就任ガ出來ヌ、又利益配當
ノ制限ハ八朱ト云フ制限ニシテ置イテ、ソレヨリ以上ハ儲
カッテモ配當スルコトハ出來ヌ、又日々監督官ヲ一名乃
至二名現場ニ派遣致シマシテ、借入其他一切ノ事ヲ監督ス
ルト云フ、非常ニ六ケシイ檢束ノ條項ヲ此所ニ置イタノデア
リマス、而シテ興業銀行ハ御永知ノ通リニ株式組織ニナッテ
居リマスカラ、此銀行トシマシテハ損ノ行ック時分ニ、政府ガ
補償致シテ吳レマスレバ宜シウゴザイマスガ、サウ云フコトハ
別ニ政府ガ申サヌノデアリマスガ、此銀行カラ借入レマスコ
トヲ、政府ガ中間ニ立ッテ物ヲ言ッテ吳レマシタカラ、其利子
ハ五朱六厘是ハ當時ノ相場ト致シマスレバ少々廉イヤウデ
アリマス、併シ是ハ何レモ手形組織デ之ヲ借ルコトデアリマ
シテ、此銀行ハ生絲ヲ擔保ニ致シマシテ、七掛デ之ヲ貸スト
云フコトニナッタノデアリマス、ソコデ一方ハ救濟ノ爲メニ帝
蠶會社ヲ作リマシテ、絲ヲ買フト云フコトヲ決メタノデアリ
マスカラ、製絲家ノ方カラハ之ヲ買ヘト云フ、又會社モ價格
ノ維持ノ爲メニ遣クタノデアリマスカラ、買ヒタイノデアリマ
スガ、拂込ヲセナケレバ頭金ガ出來ヌ、興業銀行ハ七掛デ貸
サウト云フノデアリマスカラ、三百万圓ノ拂込ニ對シテ、七百
万圓借リテ來ルト云フコトニナッタノデアリマス、ソコデ其當
時カラ今日ニ至ル迄現在ノ所デ申シマスト、此會社ハ詰リ
半分拂込ンデ八百万圓拂込ンデ居リマスガ、御承知ノ通リ
金融ガ隨分難儀ナ時代ニナリマシテ、絲ヲ買フト云フコトニ
ナレバ直グ拂込ヲスルト云フノデ、殆ド每日々々其拂込ヲシ
ナケレバナラヌヤウナ窮境ニ陷ッタノデアリマス、ンコデ帝蠶
會社ナルモノハ眞中ニ入リマシテ、非常ナ窮境ニ陷シタノデ
アリマス、政府ガ五千万圓金ヲ貸ストカ、又一般ノ聲ノ上ニ
於キマシテハ、救助ト云フコトデ、大變樂ヲスルガ如キ感ガゴ
ザイマスガ、一方カラハ此條件ニ依リマシテ、『銀行ハ七掛デ
ナケレバ貸サヌト云フ、故ニ拂込ヲシテ行キマセヌケレバ、頭
金ガ出來マセヌカラ買フコトガ出來ヌト云フコトニナル、洵
ニ眞中ニ立ッテ窮地ニ陷ッタヤウナノデアリマス、是ハ政府ガ
帝蠶會社ヲ一抔引掛ケタヤウナ傾ニナル、サウ云フ惡意デ
ヤラレタコトデナイト思ヒマスガ、是ハ何カノ行違ヲ生ジタノ
デアリマセウガ、其邊モ當時ノ政府ノ御考ヲ一應承シテ置キ
タイト思フ一ツデアリマス、ソコデ借入金ニハ七掛デ頭金ヲ
入レナケレバナラヌ、頭金ヲ入レルニハ株金ヲ拂込マナケレ
バナラヌ、ソコデ五千万圓ノ金ヲ貸スト云フコトニナリマシタ
ガ、其貸シマスノハ手形法ニ依ッテ、利子ノ前拂デ拂シテ行カ
ナケレバナラヌト云フコトニナッタノデアリマス、非常ニ聲ハ救
助トシテ大變有難イヤウデアリマスガ、其事實ニ於キマシテ
餘程窮境ニ陷ッタノデアリマス、ンコデ最早到底拂込モ六ケ
シイ、此儘デ投ゲテシマヒマスレバ、是迄骨ヲ折ッタ事柄ガ一
切水泡ニ屬シマスカラ、ンコデ製絲會社ノ中央會ト申シマ
スモノト、帝蠶ト中シマス者ガ相密着致シマシテ、是デモ棄
テヽシマッテハ絲價ノ暴落ヲ來スヤウニナルカラ、其救濟ヲ
乞ヒタイ、ソコデ三千万圓ノ助成金ヲ政府カラ出シテ貰ヒ
タイト云フコトヲ申シタノデアリマス、此事モ一寸計算ヲ
幾分明瞭ニ申上ゲテ置キマス、此助成金ノ三千万圓ト
申シマスノハ、四万五千梱ト中シマスル横濱ノ在荷ト、三万
梱ノ地方ノ在荷ト十四万梱ト申シマスモノハ、二月十六日
ヨリ繰業ヲ開始致シマシタカラ、是カラ五月ノ末迄ニ出來マ
ス、合計ヲ凡ン二十一万梱ト見マシテ、之ヲ俵ニ直シマスト
十二万俵デアリマス、之ヲ買ヒマスレバ是デ絲價ガ維持サレ
ルダラウ、併シ一面反對カラ申シマスレバ、ソレヲ買ッテモ尙
ホ下ッテ行キハセヌカト一云フコトデアルカモ存ジマセヌガ、其
消化力ノ凡ソノ見込ト申シマスモノハ、二月カラ五月ニ至リ
マス、是迄賣レマシタ平均數カラ申シマシテモ、凡ン八万梱
位ハ歐米ニ向ッテ輸出スルデアラウ、又四万梱ハ輪出ノ不合
格ノ絲ガ出來ル、一万梱ハ尙ホ是カラ進ミマシテ帝蠶ノ拂
込ヲ爲シマシテ、サウシテ帝蠶ノ買入能力ガアリマセウト云
フコトデ、凡ソ十三万梱ト云フモノハ玆ニ差引キマシテ、御
承知ノ如ク八万五千梱ダケヲ買ヒマスノニ、七千三四百万
圓ノ金ヲ要スルノデアリマス、故ニ三千万圓ダケノ助成金ヲ
政府カラシテ貰ヒマスレバ、ソレデドウカ斯ウカ此始末ガ付
クデアラウト云フ所カラ、三千万圓ト云フ勘定ガ出タノデア
リマス、ソコデ此助成金ニ就キマシテハ政府ガ之ヲ御助ケニ
ナルカドウカト云ワコトヲ承リタカッタノデアリマスガ、既ニ二
月二十二日ノ新聞紙ヲ見マスルト、國庫ノ負擔デ以テ三千
万圓ヲ限度トシテ、帝蠶會社ニ助成金ヲ與ヘルト云フコト
ガ旣ニ閣議デ決シ、又事實ノ上ニ現ハレテ來ルヤウニゴザイ
マス、故ニ是ハ全ク事實ノ上ニ此事ヲ實行爲サルデアラウト
思ヒマスガ、之ヲ尙ホ確然タル御返答ガ承リタイト存ジマス、
ンコデ現在ノ所デハ製絲業者、ソレカラ帝國蠶絲會社ト申
シマスモノト聯合致シテ、此助成金ノ三千万圓ヲ政府カラ
助成致シテ貰ヒマシテ、絲價ノ下ッテ參リマセヌヤウニ之ヲ
或程度ニ於テ喰止メヤウ、卽チ一俵十五貫目ノ俵ヲ約ソ千
五百圓ト云フ豫算ヲ立テタノデアリマス、其千五百圓ト申
シマスル價格ハ、繭ヲ買入レマス代價ニ致シマスト、六圓三十
六錢ト云フモノデ蘭ヲ買入レマスレバ、其工費ヲ計算致シ
マシテ、丁度千五百圓程ニナルノデアリマス、ソコデ若シ助
成金ガナクテ今日ノ儘棄テヽ置キマシテ、亞米利加カラモ
購買力ガナケレバ、自然此絲價ハ非常ナ暴落ヲ致スノデア
リマス、若シ絲價ガ下ッテ參リマシテ千圓ニナリマスレバ、蠶
ハ三圓三十錢トナルノデアリマス、又上ニ騰リマシテ二千圓
トナリマスレバ、九圓五十錢トナルノデアリマス、是ハ帝國蠶
絲會社ト中央製絲ト申シマスルモノガ、相合シテ居リマスガ、
其一面ニハ間接ニ非常ニ農家ノ養蠶ニ大ナル影響ヲ及ポ
スコトデアリマス、ソレ故ニ若シ之ヲ極ク〓括シテ一言デ申
シマスレバ、當年ノ養蠶ハ政府ガ十圓デ買フ、斯ウ云フノデ
約六十万貫ノ繭ヲ六億圓政府ガ金ヲ出シテ皆ナ買ヒマシ
テ、サウシテ此製絲家ニ賃引ヲサセルト云フコトニナリマスレ
バ、洵ニ農家ニ取リマシテハ、非常ナ安心ヲ以テ蠶ノ掃立ヲ
シテ、サウシテ蠶業ニ從事スルコトガ出來ルノデアリマスガ、
是ハ餘リ現在ノ上ニ於テ一寸ヤレバ宜シイ事デアリマスガ、
出來得ザル事ト思ヒマス、然ル以上ハドウ致シマシテモ、是ハ
三千万圓ノ助成金ヲ與ヘテ、相當ノ價格ニ喰止メテ貰ヒマ
セヌデアリマシタナラバ、農家ハ-蠶業家ハ今年春蠶ノ出
來マシタ時分ニハ、非常ナ苦境ニ入ルノデアリマス、其苦境
ニ入リマシタ結果ハ、迚モ勘定ニ合ハヌト云フノデ、小口カ
ラ桑ヲ引拔クヤウナ結果ガ生ジテ來ル、サウナリマスレバ、既
ニ此事ハ皆ナ御承知ニナッテ居リマセウガ、大正八年度ノ外
國へ出テ參リマシタ輪出ノ總額ハ、生絲デ六億三千万圓、
又絹織物ニシマシタ物ヲ合計致シマスレバ、八億圓輸出シテ
居ルノデアリマス、又九年度デハ生絲デ四億、絹織物ニ致シ
マシテ輸出シタ物ガ一億五千万圓アルノデアリマス、故ニ合
計五億五千万圓デアリマス、此輸出物ガ全ク桑ヲ引拔イテ
シマウヤウニナリマスレバ、全ク二三年乃至四五年ノ間ハ、此
輸出物ガ日本カラ出ヌヤウニナッテ、卽チ金貨ヲ日本ニ流入
スルコトガ、サッパリイカヌト云フ結果ヲ生ズルノデアル、洵ニ
是ハ延テ養蠶家製絲家、續キマシテハ帝國蠶絲會社ト申
シマスモノト合セマシタ詰リ救濟デアルト思ヒマスガ、果シテ
政府ハ新聞紙上ニゴサイマス通リニ、三千万圓ノ助成金ヲ
與ヘマシテ此絲價ヲ維持シテ、サウシテ『此輪出ロmヲ故濟ス
ルコトヲセラレルコトガ確實デアルカドウカト云フコトヲ、御
返辭ガ承リタイト云フ考デアリマス、ンレカラ爰]ニ併セテ政
府ノ意見ヲ永ッテ置キマスノハ、此助成金ヲ出シマシタ時分
ニ出來マシタ繭ヲ、製絲家ガ非常ニ見倒シテ廉ク買フ、此製
絲家及帝蠶會社ヲ助ケルコトハ宜イケレドモ、農業者タル
養蠶業者ニハ、大ナル影響ガ無イト云フヤウナ感ジヲ持シテ
居ル人ガ中ニハ無イトハ云ハレマセヌ、若シ此助成金ノアリ
マス時分ニハ、千五百圓ト云フ絲價ヲ生絲ニ保タセル以上
ハ、ドウシテモ六圓三十六錢ヨリ康クハ買フナ、ソレヨリ廉
ク買フト云フコトハ、全ク其助成金ノ保護ニ對シテ相濟マ
ヌ譯ニナルカラト申シマス所ノ、是ハ命令ト申シマスカ、德義
上ノ事ニ於キマシテ、製絲家ガ救濟ヲ得マス上ニ就テハ、養
蠶家モ-延テ此養蠶者ニモ其德澤ヲ及ボサナケレバナラ
ヌ、唯夕自分ガ助成金ヲ得タカラ樂ニナッタカラト云ッテ買
フ方ハ叩倒シテ民間ノ養蠶家ノ方カラ廉ク買フト云フコトニ
ナリマシテハ、全ク此養蠶業者ノ非常ナル迷惑ニナルノデア
リマスカラ、是ハ何等カノ方法ニ依リマシテ、若シ之ヲ助成
金ヲ與ヘラレマス場合ニ於キマシテハ、相當蠶業者卽チ農
家ニ對シマシテモ、相當ノ患ノアリマスルヤウナ方法ヲ執ラ
レルヤウナコトガ、出來得ルカドウデアル、其邊ニ就キマシテ
ノ御注意ハ如何デアル、斯ウ云フ事ガ承ッテ置キタイノデア
リマス、ソレカラ此蠶絲業ト申シマス上ニ就キマシテハ、是
デ大要ヲ了ッタト思ヒマスノデアリマスカラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=22
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023・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 早川君-一寸申上ゲマスガ、
質問ノ答辯書ニ對スル意見ノ陳述ハ、質問ノ日程ヲ終ッタ
後ニ御話シスルコトニナッテ居リマス、尙ホ前會ノ質問日ニ
於テ、意見ノ陳述ヲ保留サレマシタノガ四五件アリマスカ
ラ、其後ニ於テ御許シ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=23
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024・早川龍介
○早川龍介君(續) ソレデハ唯〓議長カラノ御注意モゴザ
イマシタカラ、製絲ノ事ダケ中上ゲテ置キタイト思ヒマス、前
申上ゲマシタヤウニ、唯夕五千万圓ノ救助金ヲ政府ガ下ケ
タト云フコトハ、非常ニ恩恵デ難有イヤウデアリマスガ、其實
行方法ニ於キマシテハ、典業銀行ガンレノ貸主ニナッテ六朱
五厘ノ金ヲ貸ス、六朱五厘デサウシテ七掛卽チ一千万圓ノ
金ヲ借リマスルノニ、三百万圓ハ自分ノ懷カラ持ッテ出ナケ
レバナラヌ、斯ウ云ウノデ其利子モ先取リニナッテ居ル、實
非常ナ恩惠デアッテ、非常ナ救助ノヤウニ聲ダケアリマシテ、其
實ハ中間ニ挾マッタ帝國蠶絲會社ガ、非常ナ窮境ニ陷ッテ
居ルヤウナ形勢デアリマスカラ、斯樣ナ唯ダ聲ダケヲ揚ゲテ、
如何ニモ仁恵ヲ施シタル如キ裝ヲ爲シテ、事實ノ上ニ其局
ニ當ル人ハ實ニ迷惑ナルト云フコトハ、甚ダ感服セザル事デ
アリマス、故ニ今囘ノ助成金ナルモノモ、相當ナ實際ニ於テ
ソレダケノ救助ノ名前ト實ニ當嵌マルヤウニ、十分ナル政府
ハ御心配アランコトヲ希望スル、又其點ニ就キマシテハドウ
云フ點ニマデ其世話ヲシテ、ドウ云フ所マデ是ハ確定シテ、
屹度ソレノ救濟ヲ爲シ能フノデアラウト云フコトヲ、尙ホ十
分ニ御答辯ガアリマスレパ、非常ニ自分ハ之ヲ以テ喜フ次
第デアリマス、是ダケヲ御尋シタイト思ヒマス、尙ホ米價ノ事
ニ就キマシテハ、政府ノ答辯ニ就キマシテ尙ホ少シ承リタイ
所ガアリマスガ、唯〓議長ノ御注意ガアリマシタカラ、是ハ後
ニ復タ申上ゲルコトニ致シマス(拍手起ル)
〔參照〕
帝蠶買入能力
一帝蠶公稱資金
千六百万圓仝額拂込豫算
內
金二百八十万圓典業銀行ヨリ五千万圓
借入金ノ一箇年利子
金百万圓生絲買入口錢及之レニ伴フ雜費
差引金一千二百二十万圓生絲擔保ノ頭金
帝蠶買入平均直生絲一俵千五百七十圓ヲ擔保トシテ其七掛ヲ興
業銀行ヨリ借入ルトシテ一俵ノ借入金千〇九十九圓差引一俵ニ
對シテ四百七十一圓ノ頭金ヲ要ス
一千二百二十万圓ヲ全額頭金トシテ生絲十六貫目ノ二万六千三
百二十六俵餘ヲ買收スル能力アリ
買收生絲二万六千三百一一十六俵ヲ擔保トナシテ(但帝蠶買入平
均一俵千五百七十圓ノ七掛)
二千八百九十三万餘圓ヲ借リ得ルノ能力アルノミニテ興業銀
行借入旣約五千万圓ハ名而已ニシテ頭金ナキタメ二千百万餘
圓ハ借入レ不可能ニナル計算也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=24
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025・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 次ノ質問ノ第四及第五ニ對シ
マシテハ、致府ヨリ答辯書ガ參ッテ居リマスカラ、先例ニ依ッテ
質問ノ日程ヨリ除キマス、次ハ質問第六養蠶業者救濟ニ
關スル質問、山邊常重君
六養蠶業者救濟ニ關スル質問(山邊常
重君提出)
養蠶業者救濟ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月十日
提出者山邊常重
賛成者〓水留三郞
外二十九人
養蠶業者救濟ニ關スル質問主意書
大正九年度ニ於テ政府ハ養蠶業者ヲ救済スルノ趣意ヲ
以テ低利資金一千万圓ヲ支出シテ其ノ實ヲ擧ケラレム
トセシモ之カ借入ノ手續繁雜ヲ極メ爲ニ之ヲ借入レタル
養蠶業者甚タ少シト聞ク加フルニ昨年下半期頃ヨリ絲價
非常ニ暴落シ養蠶業者ノ損害甚大ナリ政府ハ大正十年
度ニ於テモ亦養蠶業者ヲ救済スルノ意思アリヤ否若幸
ニシテ之カ救濟ヲ爲ストスレハ其ノ程度如何
右及質問候也
〔山邊常重君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=25
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026・山邊常重
○山邊常重君 本員ハ全國二百萬戶ノ養蠶家ノ爲メニ、
養品業者救済ニ關スル質問書ヲ政府ニ提出シタノデアリ
マス、昨年ノ一月ハ生絲ノ市價ガ四千四百万圓以上ニ達
シマシタ、所ガ昨年ノ八月上句ニハ是ガ千百圓ニマデ下落
致シマシタ、殆ド四分ノ一ト云フ價格ニナッタノデアリマス、ソレ
ガ爲メニ二百万戶ノ養蠶家ノ被リマシク損害ハ實ニ非常ナ
モノデアリマス、昨年ノ統計ニ依リマスルト、一貫目ノ春繭
ノ總テノ生產費ハ八圓三十五錢ヅヽ掛シテ居リマス、ソレガ
昨年ハ此八圓三十五錢掛シタ原價ノ繭ヲ、平均六圓内外
デ賣放タナクチヤナラヌト云フヤウナ結果ニナッテ居リマス、ソ
レガ爲メニ各養蠶家ノ被リマシタ損害卜云フモノハ、中〓莫
大ノ額ニ上ッテ居リマス、此邊ニ政府モ御注意爲サレマシ
テ、昨年ノ五月低利資金一千万圓ヲ支出シテ、養蠶家ノ救
濟ニ充テラレマシタケレドモ、其借入ノ手續ガ非常ニ面倒デ
アル、ソレガ爲メニ折角政府ガ一千万圓ノ低利資金ヲ出シ
マシタケレドモ、之ヲ借入レタノハ僅ニ四百万圓、殘リ六百
万圓ハ誰デモ借人ガ無イト云フヤウナ結果ヲ來タシタノデ
アリマス、ソレガ爲メニ夏繭或ハ秋蘭ノ如キハ非常ナ暴落ヲ
致シマシテ、夏繭ハ殆ド二圓五十錢若クハ三圓五十錢位
ニ暴落シマシタ、幸ニシテ政府ノ援助ニ依リマシテ帝蠶會
社ナルモノガ出來マシテ、一方此生絲千五百万圓マデ買仕
切リ、ソレガ爲メニ稍、市價ハ恢復致シマシテ、昨年ノ秋繭
ノ一番終リノ頃ハ、一貫旦六七圓ヨリ八九圓マデニ騰
貴致シマシタ、併シ此帝蠶會社ノコトニ就キマシテハ、
先輩早川君ガ詳細ニ述ベラレマシタケレドモ、現在
デハ甚ダ悲シムベキ狀況ニ在ルト私ハ思フノデアリ
マス、何シロ一千六百万圓ノ會社ヲ拵ヘマシテ、八百万
圓拂込シデ、昨年ノ七月以降ニ於テ、此慘澹タル經濟
界ノ情勢ニ在ル時ニ八百万圓ノ金ヲ拂込ムコトハ、中ニ
容易ナ事デハナイダラウト思フ、是ハ私ハ帝蠶會社ノ株
主ニ對シテ深ク敬意ヲ拂フ一人デアリマス、政府ハ之ニ對
シテ五千万圓ヲ限度トシテ、年五朱六厘ノ利息ヲ以テ、帝
蠶會社ノ生絲買入資金ヲ貸出シテヤル、所ガ聞キマスルト、
マダ二千万圓シカ出シテヤラヌ、ソレガ爲メニ帝蠶會社ハ、
千六百万圓ノ半額八百万圓、政府カラ借リマシタ二千万
圓トヲ併セテ之ヲ頭金ニシテ、漸クニシテ二万梱ノ絲シカ買
フコトガ出來ナイノデアリマス、帝蠶會社ハ其初ニ於テ少ク
トモ五万梱ノ生絲ヲ買集メテ、サウシテ市價ノ維持ヲ圖ル
ト云フコトガ第一ノ目的デアリマシタ、本日ノ新聞ニモアリ
マス通リ、政府當局ガ更ニ帝蠶會社ニ對シテ、三千万圓ノ
助成金ヲ交付セラルヽト云フコトハ、私ハ國家ノ爲メニ、殊
二二百万戶ノ養蠶業者ノ爲メニ、當局ニ對シテ相當ノ敬
意ヲ拂フノデアリマス、此三千万圓貸出シマシタ生絲借入
資金ハ、間接ニハ養蠶家ノ矢張利益ニナルノテアリマス、詰
リ此三千万圓ト云フ助成金ハ、各製絲家ガ春繭ヲ買入レ
ル資金ニナルノデアリマスカラ、是ハ甚ダ製絲家及養蠶家ニ
取リマシテモ、非常ニ好都合ナ事デアリマス、デ私ハ今一步
進ンデ政府ガソレマデ帝蠶會社ヲ救助シ、此養蠶業ト云フ
コトニ重ヲ置カレルナラバ、今一步進ンデ、何故ニ二百万戶
ノ養蠶家ヲ直接ニ救濟スル策ヲ講ジナイノデアルカト云フノ
ガ、私ノ質問ノ大體ノ趣意デアリマス、私ノ希望ト致シマシ
テハ、大正十年度ニ於キマシテモ、此昨年ノ一千万圓ヨリ
多ク成ベクハ三千万圓、若クハ四千万圓ノ低利資金ヲ養
蠶業者救済資金トシテ支出ヲ願ヒタイ、其手續モ昨年ノヤ
ウニ非常ニ繁雑デアッタナラバ、借入レル人ガアリマセヌカラ、
是モ養巴音〓組合ト云フヤウナモノガ連帶責任ヲ負ッタナラバヽ
之ニ對シテ相當ナ信用ヲ拂ヒ、之ニ對シテ相當ナ資金ヲ貸
出シテヤルト云フ、成ベク簡易ナ手續ヲ執ッテ貰ヒタイト云
フノガ、本員ノ最モ希望スル所デアリマス、先程早川君モ申
サレマシタケレドモ、大正八年度ニ於テハ生絲ノ輸出額ハ六
億三千万圓、絹織物ハ一億六千万圓、合計八億近ク輸出
ヲシテ居リマス、然ルニ大正九年度ニ於テハ生絲ハ三億四
千万圓、絹織物ハ一億六千万圓デ、絹織物ハ殖エテ居リマ
スケレトモ、此生絲ハ減ッテ居リマス、生絲其モノヽ實質ハ減
リマセスガ、價ガ下ガッタ爲メニ、此輸出額ノ上ニ於テ約二
億圓以上ノ差額ヲ生ジタノデアリマス、是ハ國家ノ爲メニ甚
ダ夏フベキ事デアリマス、若シ此大正十年度ニ於キマシテモ、
矢張此繭一貫目ノ生產費ハ少クモ六圓八十錢、乃至七
圓掛ル計算ニナッテ居リマス、之ヲ又五圓乃至四圓五十錢
位デ賣ルコトニ致シマスレバ、殆ド此二百万戶ノ養蠶業者
ハ、之ガ爲メニ今後何年間モ此養蠶業ヲ恢復スルコトガ出
來ナイト云フヤウナ、甚ダ悲シムベキ狀態ニ陷ルモノデアルト
私ハ此點ヲ竊ニ心配スルノデアリマス、之ガ爲メニ國家トシ
テモ、此養蠶業者ニ對シテ出來得ルダケノ救濟ヲシテ貰ヒ
タイ、又出來得ルダケ助成ヲ願ヒタイ、サウシテ成ベク我國
ノ生絲ヲ外國へ輸出スルコトニスル、若シ此儘ニ放任シテ置
キマスト、近頃ハ支那ニ非常ニ生絲ガ出來ル、日本ノ千五
百圓スル生絲ハ、支那ハ少シ品質ガ惡ルイガ是ハ七百五十
圓デ買ヘル、殊ニ當今ハ銀塊ガ非常ニ暴落シテ居リマスカ
ラ、尙ホモウ少シ廉イ生絲ヲ支那カラ買入レルコトガ出來
ル、サウナリマスレバ日本ノ養業業トトフフモノハ將來非
常ナ打撃ヲ被ル、日本ノ重要輸出品タル生絲ガ、日本ノ國
カラ一梱モ出ナイヤウナ狀態ニ立至リハシナイカト云フノ
ガ、私ノ最モ心配ニ堪ヘナイ事デアリマス、デ此政府ハ大正
十年度ニ於キマシテモ、成ベク此養蠶業者ニ對シテ、低利
資金三千万圓ナリ四千万圓ナリヲ出シマシテ、養蠶業者ヲ
救濟シ、成ベク多クノ生絲ヲ造リマシテ、詰リ外國ト日本ト
ノ爲替勘定ニ於テ、何時モ日本ガ受取勘定ニナルヤウニシ
テ貰ヒタイ、又サウスベキガ當然デアルト私ハ考ヘルノデアリ
マス、要スルニ私ノ質問ノ趣意ハ、ドウカ大正十年度ニ於テ
モ、矢張政府ハ養蠶業者ヲ救濟スル意思ガアリマスルカド
ウカ、若シ御意思ガアリマスレバ其程度及此貸付ノ方法ニ
就テ具體的ノ說明ヲ願ヒタイト云フノガ、本員ノ質問ノ趣
意デアリマス、何卒政黨政派ニ關係ナク、本問題ニ就テハ
十二分ノ御賛成アランコトヲ、二百万養蠶業者ヲ代表シテ
諸君ニ御願スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=26
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027・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 此場合ニ質問ニ對スル答辯書
ニ關シマシテ、意見ノ陳述ヲ保留サレテアリマスル諸君ノ發
言ヲ許シマス、田中萬逸君
義勇奉公ノ精神衰退ニ關スル質問ノ答辯
ニ對スル田中萬逸君ノ意見
〔田中萬逸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=27
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028・田中萬逸
○田中萬逸君 本員ノ提出ニ係ル所ノ義勇奉公ノ精神
衰退ニ關スル質問書ニ對シマシテ、前週ノ火曜日ヲ以テ原
總理大臣ヨリノ御答辯ニ接シマシタ、然ルニ其答辯書タル
ヤ、甚ダ遺憾ナガラ本員質問ノ要旨ニ觸レザル、至シテ不深
切ナルモノデアッテ、何等本員ノ疑念ヲ解クニ足ラナイモノデ
アルノミナラズ、一層本員ノ疑念ヲ加へマシタガ故ニ、茲ニ
極ク簡單ニ此御答辯書ニ對シテ、意見ヲ陳述致シタイト存
ズル次第デアリマス、政テ本員ガ事新シク申上ゲル迄モナク
我ガ金〓無缺ノ帝國ヲ貫流致シマシテ、千古渝ラザル所ノ
國民的精神ノ源ト云フモノハ、此義勇奉公ノ精神デアッテ、
此精神ヲ土臺ト致シテ、而シテ我帝國三千年ノ歴史ヲ展
開致シテ居ルコトハ申スマデモナイ次第デアリマス、而シテ
此義勇奉公ノ精神ノ形トナッテ外ニ露ハルヽモノハ、卽チ忠
君デアリ卽チ愛國デアル、此忠君愛國ガ我國體ノ精華トシ
テ我國民性ノ根抵ヲ形造ルコト、是亦諜々ヲ俟タザル次第
デアリマス、然ルニ此日本獨特ノ大精神ガ、近來著シク我
國民ノ間ヨリ減退シ消耗致シタト云フコトハ、國家ニ取ッテ
實ニ憂フベク洵ニ寒心ニ堪ヘザル次第デアルニモ拘ラズ、本
員ノ質問ニ對スル御答辯ハ、冷々淡々顧ミテ他ヲ言フガ如
キ有樣デアルト云フコトハ、國家國民ノ爲メ甚ダ遺憾ニ堪
ヘザル次第デアリマス、本員ノ質問ノ要旨ハ誰ガ見テモ一
目瞭然デアラウト思フ、之ヲ二點ニ分ケ得ルコトガ出來ル
ト考ヘルノデアリマス、卽チ其第一點ハ我ガ帝國ノ建國以
來ノ傳統的精神トモ謂フベキ所ノ、此義勇奉公ノ精神
ガ衰退シタト云フコトニ關シテ、政府ハ其原因ニ就テ十分
〓究ナサレタヤ否ヤ、換言スレバ現內閣成立以來、急ニ際
立ッテ目ニ付イテ參リマシタ所ノ愛國心ノ缺乏、卽チ此義
勇奉公ノ精神ノ衰退ニ關シテ、政府ハ萬遺漏ナク其原因
ヲ究メテ、而シテ此大精神ノ振興ヲ策シ、國民性ノ動搖ヲ
防イデ、國家ノ隆昌ニ策スル所アッタヤ否ヤ、是ガ第一ノ要
點デアリマス、次ニ第二ノ要點ハ、近來急ニ衰ヘテ來タ所ノ
義勇奉公ノ精神、卽チ愛國心ヲ作興致シテ、之ヲ彌、倍
盛ニナラシメルト云フコトハ、國家國民ノ上ニ取シテ洵ニ重
要ナル事デアリマスルガ、政府ハ如何ナル方法ニ依ッテ、此精
神ノ旺盛ヲ圖ラントスル御積リデアルカ、其方策ト致シテハ、
既設ノ方法ヲ以テ事足レリトシテ居ラレルノデアルヤ否ヤ、
又ハ新タナル所ノ方法ヲ講ゼントセラルヽノデアルカ、ソレヲ
バ具體的ニ承リタイト云フノガ第二ノ要點デアリマス、然ル
ニ總理大臣ノ之ニ對スル所ノ答辯ハ洵ニ驚入ッタ、モノデア
ル、之ヲ朗讀致シマスレバ「國民ヲシテ義勇奉公ノ精神ニ敦
カラシメンカタメニハ政府ハ常ニ周到ノ注意ヲ怠ラス而シテ
本年初頭ニ際シ我國民ノ間ニ此精神ノ衰退シツヽアルヤ
ノ事實ニ言及シタルハ之ニ依リ國民ノ』反省ヲ促サントシタ
ルナリ」洵ニ驚入ッタ答辯デアッテ、俗ニ所謂木デ鼻ヲ括ッタ
挨拶トモ謂フベキヤウナ御答辯デアル、而モ此御答辯書ニ
ハ「義勇奉公ノ精神ヲ敦カラシムヘク周到ナル注意ヲ怠ラ
ス」トアリマスガ、偖テ政府從來ノ施設ヲ熟、拜見致シマス
ルノニ、何所ニ此精神ヲ敦カラシムベク周到ノ注意ヲ認メ
得ルコトガ出來マスルカ、又御答辯【書中ニハ、此精神ノ衰
退シツヽアルヤノ事實ニ言及シタノハ、國民ノ反省ヲ促サン
ガタメデアルトアリマスルガ、片々タル所ノ新年初頭ノ戒言
ニ依ッテー訓戒ノ言葉ニ依ッテ、何所ニ國民反省ノ實ヲ見
ルコトガ出來マスカ、本員ハ此點ニ對シテ、明晰ナル所ノ御
答辯ヲ希望致シタニモ拘ラズ、徒ラニ抽象的ノ言辭ヲ臚列
シテ、之ヲ胡麻化シ去ラントスルガ】如キハ、洵ニ遺憾ノ次第
デアルト申サナケレ「バナリマセヌ、而シテ更ニ御答辯書ヲ拜
見致シマスルノニ、我ガ國民ノ間ニ此精神ノ衰退シツヽアル
ヤノ事實云々トアッテ、何カ本員ガ原總理大臣ガ、我ガ國民
ノ間ニ此精神ガ衰退シタト云フ其事實ニ對シテ、此言葉尻
ヲ捕ヘテ言議スルカヲ恐ルヽガ如ク、ソレニ對スル原總理大
臣一流ノ細心ナル注意、是コン眞ノ周到ナル注意ガ、此短
キ答辯ノ間ニ認メルコトガ出來マスルガ、決シテ本員ハ或政
治家ノ常ニ爲サルガ如キ、左樣ナ揚足取リヲ爲サントスルノ
デハナイ、眞ニ國家國民ノ重大問題デアルガ故ニ、此精神ノ
旺盛ヲ圖ルベク、果シテ周到ノ注意ヲ爲サレタヤ否ヤヲ御
聽致シタ次第デアル、卽ヲ本員ハ原總理大臣ガ本年ノ初
頭ニ當ッテ、國民ニ此苦言ヲ呈スルノ已ムヲ得ザルコトヲ遺
憾トスト云フ前提ノ下ニ御述ニナリマシタ[所ノ其訓戒ノ言
葉、特ニ聲ヲ大ニシテ國民ノ反省ヲ促スト言ッテ、各新聞紙
上ニ御揭ニナリマシタ、其御言葉ニ對シマシテハ、本員等ハ
如何ニモ至言デアルト田心ッテ居リマス、如何ニモ尤デアルト
私ハ同感ノ意ヲ表スルニ吝ナルモノデハアリマセヌ、總テ何
事ニ依ラズ、機會ヲ見機會ヲ捉ヘルノニ敏㨗ナル所ノ原總
理大臣トシテ、此國民性ノ一大缺陷ヲ指摘セラレテ、而シ
テ國民ヲ戒飭セラレタコトハ、洵ニ見上ゲタコトデアルト感
心ヲ致シテ居リマス、併ナガラ原總理大臣ト致シテ斯ル苦
言ヲ國民ニ呈シテ、獨リ國民ノミヲ責ムルノハ餘リ得手勝
手ナル所ノ御所爲デハアルマイカ、政テ御伺致シタイ、總理
大臣ハ斯ル苦言ヲ國民ニ呈シテ、動搖セントスル所ノ我國
民性ノ振典ヲ圖ラントスル前ニ、自己ノ行ヒ來タ所ノ政治
上ノ迹ヲ仔細ニ顧ミラレタヤ否ヤ、言葉ヲ換へテ申シマシタ
ナラバ此國家ノ基礎ヲ動搖セシメルト云フガ如キ恐ルベキ所
ノ結果ニ對シテ、國民ノ注意ヲ促サレマシタガ此恐ルベキ結
果ヲ生ムニ至リシ所ノ原因、其原因ヲバ十分ニ〓究ヲシテ、深
ク省ミラレタヤ否ヤ、恐ラク左樣ナ事ハ無カッタデアラウト思
フ若シ總理大臣ニシテ、自己ノ行ヒ來ッタ所ノ政治上ノ迹ヲ省
ミテ、而シテ帝國ノ現在及將來]ニ想到セラレタナラバ、必ズ
ヤ愕然トシテ驚キ、ヨモヤ斯ル得手勝手ノ苦言ヲ國民ノ前
ニ開陳セラレナカッタデアラウト思フ、要スルニ義勇奉公ノ精
神ガ衰退スルニ至ッタ原因ハ、現內閣ノ失政ニ在ル、現内閣
ノ惡政ニ在ルト言フコトヲ躊躇致サナイノデアリマス、(拍手
起ル)卽チ杜撰放漫ナル所ノ財政計畫ヨリセル物價ノ
騰貴、此物價ノ騰貴ヨリセル國民生活ノ脅威、又ハ經驗ナ
キ所ノ西伯利政策、殊ニ西伯利出兵ノ失敗、對支對米外
交ノ失敗ヨリセル國威ノ失墜、或ハ又國民權利ノ仲張ヲ
妨害セル普通選擧ノ拒否、又ハ官權ノ濫用ヨリセル幾多ノ
官紀紊亂ノ事實、更ニ又責任政治ノ何物タルヤヲ知ラザル
ガ如キ閣僚ノ言動、斯ク算へ來ッタナラバ、十指モ尙ホ足ラ
ナイ有樣デアリマス、(「ヒヤ〓〓」拍手)『然リト雖トモ此精神
ノ缺乏ヲ來セシ所ノ最大原因ハ、現內閣ノ平凡極マル所ノ
政治ノ根本ニ在ルト、私ハ斷言スルニ躊躇致サナイノデアリ
マス、卽チ總理大臣原敬氏一流ノ平凡ナル政治、政友會
諸公ノ常ニ言ハレル所ノ平凡政治、其時代ニ阿諛迎合スル
所ノ俗惡極マル政友會內閣ノ平凡政治ガ、此憂フベキ所ノ
事態ヲ誘起致シタト云フコトハ、動カスペカラザル事亦貝デア
ルト斷言スルニ憚リマセヌ、(拍手起ル)政治ノ要道ハ民心ヲ
安カラシメ、國家ヲシテ彌ガ上ニモ隆昌ノ域ニ導クト同時ニ、
世界文明ノ上ニ貢獻スルニ在ルコトハ、言フマデモナキ事實
デアリマス、サレバ荷モ立憲國ノ政治家タル以上ハ、此目的
ノ達成ニ努メンケレバナラヌト同時ニ、常ニ時弊ヨリ時俗ヨ
リ、時ノ勢卽チ時勢ヨリ一般擢デタル高處ニ在ッテ民心ヲ指
導シ啓發シ、以テ健全ナル所ノ思想ノ發達ニ努メナケレバ
ナラヌト考ヘマスル、斷ジテ時俗ニ媚ビ、又ハ時弊ニ迎合スル
ガ如キ政治ヲ爲スコトヲ許サナイノデアリマス、勿論政治ハ
實際デアリマスケレドモ、又高遠ナル理想ナカルペカラズ、深
遠ナル主義定見ナカルベカラズ、此高遠ナル理想ヲバ實地
ニ運用シテ、始メテ立憲政治ノ實ヲ見ルコトガ出來ルノデア
リマス、然ルニ現內閣ノ政治ハ如何デアルカ、何等ノ高遠ナ
ル理想アルナク、深遠ナク主義定見アルナク、全ク其日暮シ
ノ政治デアリマス、謂ハバ行當リバッタリノ政治デアリマス、而
シテ時俗ニ媚ビ、時弊ニ迎合スル所ノ俗惡ナル政治デアリ
マス、ソレガ故ニ此時俗ニ抽ンデテ一般ノ高處ニ在ッテ、時
代思想ヲ導クト云フガ如キコトハ思モ寄ラナイ事デアッテ、
寧口時代ノ俗惡ナル所ノ湖流ニ掉シテ、此低級俗惡ナル所
ノ思想ヲ普及奬勵スルト云フガ如キ政治ノ遣方デアリマス、
ソレガ爲メ國家ノ綱紀ハ頽廢ヲ致シ、到ル處ニ官紀紊亂ノ
事實ヲ見ルニ至クタ次第デアル、今ヤ國民ノ多クハ非常ニ憤
リ、且又非常ニ疑ッテ居リマス、多數ノ國民ハ頻々トシテ起ル
官權ノ濫用ニ伴フ官紀紊亂ノ事實ヲ目撃致シテ、恰モ現
内閣ハ官權濫用、官紀紊亂ノ特權ヲ有セルガ如ク、恰モ現
內閣ノ官吏ハ、官權濫用、官紀紊亂ノ特權ヲ附與セラレタ
ルニハ非ズヤト云フ疑ヲ存シテ居リマス、斯ル事ハ國家ノ爲
メニ大不祥事デアリマス(「脫線々々」ト呼フ者アリ)隨テ世
道人心ニ及ボス影響ハ、洵ニ莫大ナルモノト考ヘマスル、又
一方ニ於テハ此失政此惡政ニ對スル所ノ國民不平ノ叫怨嗟
ノ聲ト云フモノハ囂々タルモノガアリマス、此怨嗟ノ聲不平ノ
叫ガ遂ニ現內閣ノ呪咀トナリ、反抗トナリ、此呪咀此反抗
ガ社會道德ノ缺陷ト相俟ッテ、愛國心ノ缺乏卽チ義勇奉
公ノ精神ノ衰退ヲ來シ、我國民性ニ一大龜裂ヲ生ズルト云
フガ如キ、眞ニ我國民トシテ、不名譽極マル結果ヲ生ムニ
至ッタノデアリマスル、然ルニ此當ノ本人トモ謂フベキ原總
理ノ口ヨリ此戒告ヲ聽クニ至ッテハ、吾〓國民ハ洵ニ異樣ノ
感ニ打タレザルヲ得ナイノデアリマス、忌憚ナク言ッタナラバ、
吾〓ガ原總理ノ口ヨリ此戒言ヲ聽クニ至ッタノハ、恰モ鬼ノ
念佛ヲ聽クガ如キ感ジヲ致シタノデアリマス、(拍手起ル)併
シ鬼ノ念佛ト雖モ、之ヲ唱ヘルハ唱ヘザルニ優ルコト萬々テ
アリマス、併ナガラ單ニ之ヲ唱ヘタノミデ此國民思想ヲ善導
セントスルガ如キコトハ、頗ル難イ哉ト謂ハネバナラヌ、乃チ
翻飜タル所ノ屠蘇機嫌ノ漂ヘル新年初頭ノ所謂開陳ニ
依ッテ、義勇奉公ノ精神ヲ旺盛ナラシメントスルガ如キコトハ、
恰モ閻魔ヲシテ說〓セシメテ、之ニ隨喜渇仰ノ淚ヲ流セ
ヨト云フノト同樣デアルト考ヘル次第デアリマス、原總理大
臣ニシテ眞ニ國家ノ前途ヲ憂ヒ、眞ニ此大精神ヲ旺盛ナラ
シムルベク熱望セラルヽナラバ、必ズヤ此戒告ト相俟シテ、徹
底的ノ施設ヲ爲サネバナラヌ筈デアリマス、然然ニ左樣ナ事
ヲ爲サラナイノミナラズ、從來ノ設備ハ、又從來ノ施設ハ〓
ネ姑息倫安デアッテ、何等徹底的ニ此國家ノ大患トモ謂フ
ベキ所ノ、義勇奉公ノ精神ヲ旺盛ナラシムルベキ設備ガ一
ツモ無イノミナラズ、此精神ヲ敦カラシムベク周到ノ注意ヲ
拂ヘルナドヽハ、以テノ外ノ御言葉デアルト謂ハネバナラヌ、
若シ政府ガ果シテ此精神ヲ旺盛ナラシムベク、周到ナル施
設ヲ爲サレタトシタナラバ、如何ナル施設ヲ爲サレタノデア
ルカ、具體的ニ御而ヲ願ヒタイト存ズル次第デアリマス、此際
序ニ附加ヘテ申シタイ事ハ、思想ニ關スル事デアリマスガ、時
問ノ都合上詳シク論ズルコトモ出來マセヌカラ、單ニ思想
ノ取締ニ就テ意見ヲ述ベタイト思ヒマス、此思想ノ善導義勇
奉公ノ發揚トハ、非常ニ密接ナル關係ヲ有シテ居ルニモ拘
ラズ、當局ノ思想ノ取締方ト云フモノハ洵ニ遺憾ナル事ガ
多イ、昨年ノ夏丁度臨時議會ノ濟ミマシタ後ニ於テ召集セ
ラレタル地方長官會議ニ於テ、床次內務大臣ハ、思想ハ決シ
テ權力ヲ以テ壓迫ノ出來ルモノデハナイ、思想ハ思想ヲ以
テ對立善導シナケレバナラヌ、卽チ思想ヲ導クニハ、思想ヲ
以テシナケレバナラヌト云フ訓示ヲ與ヘラレ』マシタ、當時私
共ハ流石ニ床次内務大臣ダケアッテ、隨分分ッタコトヲ仰シ
ヤルト感心致シテ居リマシタガ、扨其後ノ取締方針ヲ熟と
拜見致シマスノニ、此名訓示ヲ裏切ラレタル依然トシテ峻
嚴ナル檢閱主義、依爲トシテ峻烈ナル壓迫干涉主義ヲ執
ラレテ、思想ノ善導ドコロデハナイ彌〓倍〓之ヲ惡化セシムル
如キ傾向ヲ生スルニ至ラシメ、之ガ爲メニ思想ノ取締ガ、歩一
步危險ニ導クモノデアルト云フ感ヲ抱カシメルト云フコトノ、
遺憾ナ事デアリマス、或ハ床次內務大臣ハ、大臣御嗜好ノ
彼ノ浪花節ノ宣傳、又ハ民力涵養ノ講演、或ハ國粹會ノ
設立ヲ以テ、思想ノ對立策ノ實行デアルトシテ居ルカモ知
レマセヌガ、若シ斯ルモノヲ以テ思想對立策ト爲スニ至ッテ
ハ、滑稽モ亦甚シト謂ハネバナラヌ、卽チ我ガ國民思想ハ、狼
花節ノ如キモノヲ以テ善導セラルヽガ如キ、爾ク低級ナモノ
デハアリマセヌ、又民力涵養ノ講演、是ハ必ズシモ惡イトハ
申シマセヌガ、此講演ヲ利用致シテ、黨勢擴張ノ具ニ供セ
ラルヽニ至ッテハ、洵ニ不埓千萬ノ至デアルト謂ハネパナリマ
セヌ、(「馬鹿ヲ言フナ」ト呼フ者アリ)決シテ是ハ馬鹿ナ事デ
ハアリマセヌ、事實デアリマス、卽チ去ル十九日ノ議場ニ於
テ問題トナリマシタ、大隈內閣當時ニ於テ締結シタ所ノ彼
ノ二十一箇條、此問題ヲ以テ日支兩國關係惡化ノ最大
原因ナリトシテ、此講演會ヲ利用シテ、全國ニ於テ演說サ
セテ居リマス、現ニ北海道其他大阪府、又ハ他ノ府縣ニ於
テ此講演會ヲ開クコトハ、徒ラニ地方自治〓體ヲシテ政爭
ノ渦中ニ入ラシムルモノト看做シ、此講演會開催ヲ謝絕ヲ
致シタ實例ガアリマス、又國粹會ノ設立ノ如キ、一般思想ヲ
善導スルニ就テハ、決シテ惡イトハ申シマセヌ、併ナガラ之ヲ
以テ或ル厭フベキ主義者-社會主義者ト對立セシメン
トスルガ如キハ、却テ社會主義者ヲシテ、險惡ナル方面ニ趨
カシムルト云フ傾向ヲ生ゼシメツヽアリハシナイカ、現ニ最近
社會主義者ノ新年宴會ニ於ケル〓員ノ亂暴、又自由人聯
盟會ノ演說會場ニ於ケル會員ノ刄傷沙汰、近クハ大阪ニ
於ケル借家人ノ演說會ニ於ケル毆打沙汰、是等ノ事ノ如
キハ甚ダ憂フベキ狀態デアッテ、而モ警官ハ却テ其加害者ヲ
庇護シタルヤノ疑ガアル、ンレガ爲メニ此厭フベ主義者ノ怒
ヲ買ヒ、更ニ一層險惡ナル方面ニ趨カシムルト云フガ如キ
領向ヲ生ゼシメタト云フコトハ、明ニ床次内務大臣ノ專賣
ノ、思想ノ對立策ノ失敗ヲ示セルモノデアルト申シテ宜カラ
ウト思ヒマス、又一國元氣ノ中心トモ謂フベキ靑年指導ハ、
此指導方針ノ良否ト云フモノハ、義勇奉公ノ精神發揚ニ
密接ナル關係ヲ有スルコトハ言フマデモナキコトデアリマス
ガ、扨現在ノ有樣ハ如何デアリマスカ、其名ハ自主的指導
ト云フノデ、如何ニモ時代ニ順應スルガ如キ方針ヲ執ラレ
テ居リマスケレドモ、徒ラニ名ノミ麗ハシクシテ、實績ハ之ニ
件ハナイ傾ガアリハシナイカ、又靑年ノ生命トモ謂フベキ剛
健ナル氣風ガ、此指導方法ニ依シテ減殺セラルヽト云フガ如
キコトハアリハシナイカ、又文部內務兩當局ノ方針ガ往々
ニシテ合致ヲ缺キ、命令二途ニ出ル如キコトハアリハシナイ
カ、殊ニ遺憾ナル事ハ中橋文部大臣ガ此靑年指導ニ對シ
テ、全ク無理解デ御在デニナルト云フコトデアリマス、之ニ反
シテ床次内務大臣ハ相當理解モアリ、又相當ニ御世話モ
ナサルヤウデアリマスケレドモ、是ハ又政黨ニ利用サルヽガ如
キ疑ガアリマス、此疑ハ反對黨ノ吾〓ノ色眼鏡ヲ懸ケテノ
疑デハナイ、天下衆目ノ視ル所デアル、現ニ閣僚ノ間ニ於
テ-閣員ノ間ニ於テ、床次內務大臣ハ、靑年團ヲ利用シ
テ黨勢擴張ノ具ニ供セントスルガ如キ事柄ニ對シテ、大ニ
論爭ニナッタト云フコトヲ私ハ確聞致シテ居リマス、若シ此
事柄ガ私ノ杞憂ニ過ギナカッタナラバ、國家ノ爲メニ洵ニ幸
デアルト謂ハナケレバナリマセヌ、之ヲ要スルニ我ガ國民性
ノ基礎タル義勇奉公心ノ衰退シタト云フコトハ、我ガ帝國
ノ前途ニ取ッテ、洵ニ危險千萬ナ實ニ憂フベキ次第デアルノ
ミナラズ、光輝アル歴史ヲ有スル帝國ノ爲メ非常ニ危險千
萬ナル現狀デアルガ故ニ、國民ハ互ニ相戒メテ、其精神ノ旺
盛ニ努ムベキハ當然ノ義務デアルノミナラズ、政府ハ格段ノ
注意ヲ以テ、此精神ノ旺盛ニ、努メナケレバナラヌノハ、政府
當然ノ責務デアリマス、然ルニ何等ノ方法ヲ講ゼラレナイノ
ミカ、特ニ必要ナルベキ〓育方面ニ於テ何等ノ施設ノ無イ
ノミナラズ、中橋文部大臣ハ其食言的言動ニ依テ、却テ靑
年學生ヲシテ此弊害ヲ一層募ラシムルト云フ如キ結果ヲ
見ルニ至ッタコトハ、洵ニ痛歎ノ極ミデアリマス、政府ハ此義
勇奉公ノ精神ヲ旺盛ナラシムベキ、如何ナル施設ヲ行ハン
トスルノデアルカ、又殊ニ必要ナルベキ所ノ〓育方面ニ於テ
ハ、如何ナル施設ニ依ッテ此精神ノ振興ヲ圖ラントスルノデ
アルカ、此二點ニ對シテ答辯アランコトヲ要求致シマシテ、
此壇ヲ降ラントスルモノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=28
-
029・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 〓水留三郞君
福島縣若松市補闕選舉ニ於ケル干渉壓迫
ニ關スル件外一件質問ノ答辯ニ對スル〓
水留三郞君ノ意見
〔〓水留三郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=29
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030・清水留三郎
○〓水留三郞君 諸君、本員ハ昨年ノ八月十日ニ於テ
擧行サレマシタ、福島縣第二區若松市ノ補闕選擧ノ當時
ニ於ケル干涉壓迫ノ事實ト、本年一月十五日ニ擧行サレ
マシタル、秋田縣第三區山本郡ノ矢張補關選擧ニ於テ行
ハレタル干涉壓迫ノ事安員ニ就キマシテ、政府當局ニ對シテ
質問書ヲ提出シタノデゴザイマス、併シ其答辯ハ要領ヲ得
ナイ-要領ヲ得ナイガ爲メニ、私ハ遺憾ナガラ玆ニ其意見
ヲ陳述セザルヲ得ザルト云フコトヲ悲シムノデゴザイマス、近
頃ノ歐米選舉界ノ傾向ナルモノヲ視察致シマスルト、選擧
ニ於テ常ニ反對黨ガ多ク勝ッテ居ルト云フ風ナ傾向デアル、
昨年十一月二日ニ行ハレタル所ノ亞米利加ノ選擧ニ於テ
モ、又數次行ハレタル所ノ英吉利ノ補閣選擧ニ於テモ、何
時モ反對黨ガ勝ヲテ居ル、而シテ世界ニ於テ今日反對黨ガ
負ケル現象ヲ呈シテ居ルト云フノハ、僅ニ日本ト、西班牙トヽ
葡萄牙トアルノミデアル、(「成程」ト呼フ者アリ)何ノ爲メニ
日本ガ負ケルノデアルカ、政府ガ必ズ勝ツノデアルカト申上
グマスルト、ソレハ卽チ一ツニハ政治〓育ノ缺乏ニ因ルコト、
一ツニハ制限選擧ノ結果デアル、彼ノ政友會ノ諸君ハ、普
通選舉ニ對シテ反對シテ居ル-反對シテ居ル理由トシテ
ハ、政治〓育ガ〓乏シテ居ルト云フコトヲ論ジテ居ル、併ナ
ガラ今日ノ政治〓育ノ缺乏、此缺乏ヲ惹起サシメタノハ何
人ノ手デアルカ、是ハ今日迄ノ官僚閥族ノ政治ト、同時ニ
之ヲ援助シタ所ノ政友會、竝ニ今日ノ政友會ノ制度ガ非
常ニ與ッテ力アルノデアル、(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」ト呼フ者ア
リ)而シテ譬ヘテ見マスルト云フト、或ハ學校ニ於テ〓科書ノ
中ニ政治ノ問題ヲ論及スルコトヲ避ケタリ、或ハ議會ニ於
テ婦人ノ傍聽ヲ許スガ、普通ノ政談演說會ニ許サナカッタ
リ、乃至ハ此有ユル問題ニ於テ、今日政治〓育ト云フモノ
ヲ事實ニ於テ之ヲ避ケテ居ル、避ケテ居ルヤウナ工合デアッ
テ、ドウシテ此日本ノ選擧界ノ廓〓ガ出來マセウヤ、又今一
ツハ制限選擧ノ結果デアル、今日ノ有權者ハ非常ニ少ナイ、
日本六千萬ノ人口ノ中ニ於テ、權利アル者ガ僅カニ三百
萬人、二十人ニ一人ト云フ風ナ狀態デアル、英國ニ於ケル
第三囘ノ選擧法ノ改正ニ於テ、英國ニ於テハ今日有權者
タル者ハ、英國五千萬ノ人口ノ中デ男子千二百萬人、女
子六百萬人アル、三人ノ中一人ハ英國ニ於テ權利ガアル
ガ、日本ニ於テハ二十人ニ一人デアル、サウ云フ風ナ制限選
擧ノ結果デゴザイマスルカラ、到ル處ノ選擧ニ於テ行ハレテ
居ルト云フコトハ、是ハ所謂選擧ヲ商賣トシテ居ル一種ノ
選擧ブローカート云フ者ガ、所謂選擧ニ於テ跋扈シテ居ル
ノデアル、選擧ブローカーガ跋扈シテ居ルカラ、其ブローカー
ガ先ヅ候補者ト有權者トノ中間ニ立ッテ、サウシテ投票賣
買ノ幹旋ヲシテ金ヲ儲ケテ居ル、此選擧ブローカーノ多ルア
リマスル結果ト云フモノハドウデアルカ、政府黨ハ何時デモ
買收ニ樂デアッテ、反對黨ハ買收ニ非常ニ不利益ヲ感ズル
ノデアル、感ズルカラシテ政府黨ガ勝ツ、單ニソレノミノ問題
デハナイ、原内閣ニナリマシテ以來ト云ヲモノハ、今日選擧
ノ度毎ニ、單ニ普通ノ事實以外ニ於テ、極端ナル干涉壓追ヲ
加ヘテ居ルノデアル、到ル處ノ選擧ニ於テ干涉壓迫ヲ加ヘ
テ居ル、昨年ノ總選擧ノ當時ニ於ケル干涉壓迫ノ事實ニ就
キマシテハ、四十三議會ニ於テ三木君ガ詳シク申上ゲタル
ガ故ニ私ハ申上ゲマセヌ、併ナガラ此四十三議會ニ於テ
アレダケ論ゼラレタル所ノ干涉壓迫ノ事實ガアリ、而シテ社
會ニ於ケル大ナル非難ガアルニモ拘ラズ、依然トシテ政友會
ノ内閣ニ於テハ干涉壓迫ノ事實、卽チ前非ヲ後悔シテ善
心ニ立返ラウト云フ觀念ハ毛頭ナク、其後ニ於テ行ハレル補
闕選擧ニ於テ、常ニ露骨ニ、大膽ニ、此干涉壓迫ノ事實ヲ
行ッテ居ルノデアル、然ラバ如何ニシテ此干涉壓迫ノ事實ヲ
行シテ居ルカ、私ハ是ヨリ福岡縣竝ニ秋田縣ノ補關選擧ニ
於ケル干涉壓迫ノ事實ニ基イテ、論及致シタイト思フノ
デアリマス、(「論及スル必要ハナイ」質問ヲナサイ)ト呼フ
者アリ)先ヅ第一此福島縣ニ於テ、福島縣ノ內務部
長ノ佐藤信安氏ガ、補關選擧ニ於テ如何ニ干涉シタ
カト云フコトノ事實ヲ申上ゲタイ、第一ハ昨年ノ八月
八日ノ頃ヨリ致シマシテ、佐藤内務部長ハ若松市ノ
大和町旗亭松林ト云フ所ニ陣取リマシテ、先ヅ縣立
中學校長ヲ歷訪シテ、政友會ノ候補者デアル今日ノ代
議士デアル石川淳君ニ、投票セラレンコトヲ暗ニ强イタ
メデアル、(「嘘ダここ」ト呼フ者アリ)更ニ縣立各學校長ヲ經
マシテ、ンレ〓〓緣故者ニ運動ヲセシメタコトデアル、更ニ腹
心ノ元縣視學デゴザイマシテ、現ニ福島縣ノ河沼郡長ヲシ
テ居リマス永山芳之助ト云フ人ヲ若松市ノ旅館ニ呼寄セ
マシテ、元縣視學ヲシテ居ッタト云フ〓育者トシテノ關係ヨ
リ、此若松市ニ於ケル各小學校長ヲ歷訪セシメマシテ、サウ
シテ投票ヲ强要セシメタト云フ事實デアル、更ニ福島縣ノ
縣警察部ノ高等警察課ニ勤務ノ高等刑事デアッテ、而モ此
內務部長ノ腹心デアリマスル溝口ト云フ人ヲ內所ニ若松
市ニ呼寄セマシテ、政友派ノ選擧事務所デアリマシタル若
松市榮町伊勢屋ニ宿泊セシメマシテ、憲政派幹部ノ檢擧
ヲ策セシメタコトデアリマス、卽チ政友派ノ黨員ニ對シマシ
テ、憲政會ノ奴等ハドンナ事デモ引掛リサウナ事ガアッタラ、
告發シテヤルカラ、細大トナク報告シテ呉レト云フコトヲ告
ゲマシテ、憲政派ノ首領株ニ就テハ悉ク「スパイ」ヲ放ッテ、サ
ウシテ之ヲ威喝シタノデアリマス、溝口ト云フ人ハ政友會ノ
黨員ト共ニ泊ヲテ居ッタノミナラズ、殆ド每晩ノ如クニ若松
市ノ料理店ニ政友會ノ黨員ト飮食ヲシテ、盛ニ醜態ヲシタ
ト云フコトデアル、而モ此事ハ其當時ノ福島民友新聞ニ指
摘サレタ事實デゴザリマシテ、其結果內務部長ハ世間體ヲ
憚フテ、選擧期日前ニ此溝口ナル者ヲ本署ニ歸ラシタト云
フコトデアル、又八月ノ七八日ノ頃ニ於テ、宮田知事、佐藤
內務部長、石垣警察部長抔ガ、此東山溫泉向瀧棲ニ投宿
致シマシテ、『干涉方針ヲ謀議シタト云フコトデアル、更ニ川
村警保局長デアルトカ、乃至ハ瀧內務大臣祕書官杯モ參
リマシテ、北參議ニ加ッタト云フコトデアル、更ニ第二ニ申上
ゲタイノハ、若松市ノ米屋、質屋、竝ニ料理屋等ノ憲政派ト
目セラレタル所ノ家ヲ、一擧ニ臨時檢査ヲ行っタ事實デアル、
是ハ若松市ノ米穀商組合ノ有權者ト云フ者ハ百八名アリ
マシテ、此米穀商ノ組長ト云フノハ、憲政派ノ候補者デアリ
マスル高木〓次郞ト云フ人ノ實弟高木榮吾ト云フ人デゴ
ザイマシタ、此米穀組合百八人ノ中ニ於テ、此高木組長ノ
信望ガ頗ル厚イ爲メ、殆ド全部ハ一致シテ、サウシテ此高木
候補ヲ援ケテ居ッタノデゴザイマス、然ルニ僅ニ政友ト目セラ
レタ人ハ二人ノミデアル、八月ノ七日ニナリマシテ戰ガ白熱
化セントスルニ際シマシテ、若松警察署ハ突如ト致シマシ
テ度量衡竝ニ米質檢査ヲ開始スルト言ッテ、サウシテ一齊ニ
此若松市ニ於ケル所ノ米穀商ノ檢査ヲ斷行シタノデアル、
此米ノ檢査、卽チ米ノ中ニ混砂米ガアルヤ否ヤト云フコト
ヲ檢査スルノデアリマスカラ、『其場ニ於テ『其檢査ヲスレバ宜
イノデアリマスガ、ソレヲ悉ク少シヅヽ家へ持歸ッタ、一卽チ警
察署ヘソレヲ、持歸ッテ檢查ヲシタノデアリマス、其爲メニ持
歸ラレタ多クノ米屋非常ニ狼狽シタ、狼狽スルト同時ニ、唯
ダ政友派ノ運動者ニナッテ居ル二人ノ米屋ニ對シテハ、此檢
擧ヲ少シモシナカッタ、他ノ憲政派ト目セラレテ居ル者ノ檢
査ハ、幾分ノ米ヲ警察署ニ持歸ッテ、オ前達ニ調上ゲテ罰金
ヲ科スルト云フ脅シヲヤッテ恐喝ヲヤッタ、面シテ此二人ノ政
友派ノ者ニ對シテハ斷然シナカッタ、若シ此事ニ就キマシテ、
公平ニ米ノ檢査ヲ行フナラバ全部ニシナケレバナラヌ、單一
政友會ノ運動員ニナッテ居ル所ノ米屋ノミヲ拔イテ、其他ノ
者ヲスルト云フノハドウー云フコトデアルカ、之ヲ干涉ト言ハズ
シテ何デゴザイマセウカ、(拍手起ル)】更ニ斯ウ云フ選擧ノ場
合ニ於キマシテハ常ニ流言ガアル、流言ノ結果、若シ憲政派
ヲ脫シテ政友會ノ人ニ入レルナラバ、才前達ニ此罰金ガ科
セラレナイデアラウト云フヤウナ流言ガ盛ンニナッテ、而モ其
流言ヲ政友派ノ運動員ガ放シテ、暗ニ憲政派ノ米屋ヲ唆フ
テ、其結果憲政派ニ堅ク入レヤウト思ッタ者ガ、途中デグル
グル引繰リ返ッタ、更ニ八月九日ノ夜デゴザイマシタ、若松警
察署ハ憲政會ノ系統ト目スベキ所ノ料理店ニ對シマシテ、
一齊ニ臨檢ヲ行ッタノデアリマス、此若松ノ如キ所ニ於キマ
シテハ、此料理店ニ於テモ能ク政友派トカ憲政派トカ云ッ
テ、憲政派ノ飮ミニ行ク所、政友派ノ主ニ行ク所ガアル、此
憲政派ト目セラレテ居ル料理店ダケヲ、一齊ニ其前夜ニ於
キマシテ臨檢ヲ行ッタ、若シ行フ必要ガアルナラバ、全部行ハ
ナケレバナラヌノニ、『政友會關係ノ料理屋ニ於キマシテハ何
等臨檢ヲ行ハナイガ、憲政會關係ノ旅館及料理屋ニ行ッタ
ト云フコトハ、是ハ確ニ何カ潜ンデ居ナケレバナラヌ、更ニ質
屋、卽チ質屋ノ大部分ガ憲政派ト目セラレテ居ッタノデ、此
質屋ヲ驚カス爲メニ、此質屋ニ對シテ矢張檢査ヲ行ッタ、行
フナラバ平素行フ、選擧ノ間際ニナッテ、投票ノ前日トカ前
前日ニサウ云フ風ナ檢査ヲ行ナッタナラバ、是ハ言ハズシテ選
擧干涉ト認メナケレバナラヌノデアル、更ニ第三ニ論ジタイノ
ハ、憲政派ノ幹部ヲ檢擧シテ、罪ノ無キニ之ヲ留メ置イタ事
實デアル、八月ノ八日デゴザイマシタ、若松市南町ノ憲政派
ノ運動員デ有力者デアリマシタル所ノ、佐々木源吾、長谷川
正毅、佐藤久馬、坂井長治ト云フ四名ヲ突如トシテ警察
署ニ檢擧シタノデアル、勿論縣ハ政友派ノ關係ノ人ノ投書
ニ基イタト云フコトデアル、更ニ奇怪ナルハ此檢擧ト同時ニ、
寧口先ンジテ以テ「檢擧サレルカサレナイカト云フ時ニ於キマ
シテ、何時ノ間ニカ憲政派ノ重鎮デアル此四人ガ檢擧ヲサ
レタト云フコトノ號外ガ出タノデアル、檢擧サレテ三十分ナ
リ一時間ナリ經ヲテ、サウシテ檢擧サレタト云フコトノ號外ガ
出ルノデアッタナラバ不思議デナイガ、檢擧ト殆ド同時ニ、憲
政派ノ幹部某々ガ檢擧サレタト云フ號外ヲ御用新聞ガ發
行シタ、サウスルト檢擧ト號外ト云フモノニ就テハ、何等カ
連絡ガナケレバナラヌ、少クトモ此號外ヲ以テ、選擧界ノ攪
亂ヲ企ッタト云フコトガ事實デアル、又其當時憲政派ヨリハ
田村克己ト云フ人ト、後藤喜代之助ト云フ人ガ警察ニ出
頭致シマシテ、若松警察署長三宅善左衞門ト云フ人ヲ訪
問シテ、何故ニ檢擧シタト云フコトノ不平ヲ詰リ、信據セラ
レザル一片ノ投書ニ依ッテ憲政派ノ幹部ヲ檢擧スルノハ、餘
リニ偏頗デサウシテ惡辣デアルト云フコトヲ攻シシ、サウシ
テ署長カラ急ニ取調べテ歸ラセルト云フテ留置イテ、漸ク投
票ノ間ニ合フヤウニ歸シタト云フコトデアル、更ニ此佐々木
氏ガ此選舉、卽チ補關選擧ニハ何等ノ關係ガ無カッタト云
フコトガ後ニ於テ分ック、事ニ依ルト前田前代議士同時ニ違
犯ノ行爲ガアルト云フ疑デ檢擧シタノデアッテ、而モ其疑ガ
無カッタト云フコトデ、裁判所ニ於テ不起訴ニナッタ事實デ
分ルノデアル、同日憲政派ノ若松市上町方面ノ重鎮デ、同
方面ノ〓背ヲ一身ニ荷ウテ居リマス博勞町ノ酒造家山口
慶藏ト云フ人ヲ、矢張突如警察署ニ召喚致シマシテ、選擧
ガ激シイヤウダカラ、程度ヲ越サヌヤウニナドト署長ガ詰ラヌ
話ヲ仕向ケテ、檢擧同樣ニ多クノ時間ヲ警察ニ費サシメタ
ト云フコトデ、更ニ同町ノ有力者デアル井上重兵衞ト云フ
人モ同樣ノ災難ニ遭ッタ、斯ノ如ク政友會ニ關係スル人ハ
一人モ檢擧シナイデ、憲政派ノミノ人ヲ、而モ罪ナクシテ選
擧ノ肝要ナル時ニ、[此警察署ニ留置イタト云フコトハ何デ
アル、之ヲ干涉ト言ハズシテ何ノ干涉ガゴザイマセウヤ、(拍
手起ル)更ニ若松警察署ニ於テハ、管內全部ノ巡査ヲ召致
シマシタ外、管外ヨリ警察官ノ援助ヲ求ムル口實ノ下ニ、約
二百三十名ノ警察官ヲ集メマシテ、中數名ノ刑事竝ニ之
ニ附隨スル所ノ特務巡査ヲ除キマシテ、二百二十餘名ト云
フ警察官全部ヲ、此憲政派ノ運動員竝ニ幹部ニ一々尾行
セシメテ、サウシテ政友派ノ幹部竝ニ運動員ニ對シテハ、
人モ尾行セシメナカッタノデアル、卽チ一ニ於テハ運動ノ自
由ヲ妨害シ、一ニ於テ自由ニ運動ヲセシムル方法ヲ執ッタ、
是ハ干涉ト言ハズシテ何デアリマセウカ、一是等ハ單ニ外部ニ
現ハレタ所ノ二三ノ事實ニ過ギナイ-外部ニ現ハレタ二
三ノ事實ニ過ギナイノデアリマスガ、尙ホ詳シク申上ゲタラ
數限リガアルマイト思フ、以上申上ゲタノハ福島縣ノ例デア
ル、次ニ秋田縣ノ第三區ノ補關選舉ニ於ケル干涉壓迫ノ
事實ニ就テ、極ク簡單ニ之ヲ申上ゲタイ、秋田縣ノ此選擧
干涉ノ第一ノ問題ハ、秋田縣ノ山本郡ガ能代湊町外七箇
村ニ於ケル所ノ投票立會人ハ、全部政友會ヨリ選出シテ憲
政派ヨリノ要求ヲ悉ク拒否シタ所ノ理由デアル、昨年ノ總
選擧ノ時ニ於テ、投票立會人ノ偏頗卜云フ問題ヨリシテ不
正投票ヲ生ジマシテ、現ニ秋田縣ノ第二區ノ如キニ於キマ
シテハ、郡書記ガ投票用紙ヲ僞造シタト云フノデ、三箇月四
箇月ノ刑ニ處セラレタ、而モ其當時ノ池田龜一君ハ失格シ
テ、今日ハ村山君ガ當選シタノデアル、又宮城縣ニ於テモ同
一筆跡ノ投票ガ數百アッタト云フノデ、今栽判中デアル、又
山本郡ノ如キニ於テモ、此前ノ選擧ニ於テ、同郡二十六箇
町村ノ中十七八箇町村ト云フモノハ、投票立會人ヲ全部
政友派ヨリ選出シテ、憲政派ヨリハ一名モ出サナカッタノデ
アル、其爲メニ種々ノ風評ガアッタ、或ハ投票地內ニ於テ買
收ガ行ハレタトカ、或ハ無記名投票ナルニモ拘ラズ、側ニ附
イテ居ッテ、是〓書ケト命ジタトカ云フヤウナ風評ガ非常ニ盛
デアッタ、故ニ今囘ハサウ云フ風ナ物議ガ起ラヌヤウニ、前以
テ警戒シナケレバナラヌト云フノデ、憲憲會ニ於テハ總選擧
ノ前ニ内務大臣ヲ訪問シテ、投票立會人ハ公平ニシテ貰ヒ
タイト云フコトヲ要求シタノデアル、更ニ。秋田縣ニ於キマシ
テ、秋田縣知事ニ向ッテ、同ジク投票立會人ハ公平ニシテ貰
ヒタイト云フコトヲ要求シタ、然ルニ實際ニ於テハ之ヲ何等
行ハナイデ、而モ投票ニ於テ一番必要ナル此選擧ノ天目山
トモ謂フベキ大キナル町村ニ於テハ、其投票立會人ハ悉ク
之ヲ政友會デ獨占シタノデアル、今政友派ノミノ投票立會
人ヲ選定シタ所ノ町村ヲ讀上ゲマスト云フト、能代湊町、
濱口村、上岩川村、下岩川村、鹿渡村、鵜川村、澤目村、塙
川村、此一町七箇村デゴザイマス、能代湊町ニ付テハ、政友
會ノ人ニ於テハ憲政會ノ者モ入ッテ居ッタト云フコトヲ辯明
シ、又答辯書ノ中ニ於キマシテモ、憲政會ノ者モ入ッテ居ルト
云フコトヲ言ッテ來マシタガ、能代湊町ノ投票立會人ハ、
人殘ラズ政友會ノ公認候補者デアッタル所ノ、三浦權兵衞
君ノ推薦狀ニ麗々シク署名シテ居ル人ノミデアル、(「簡單」
ト呼フ者アリ)濱口村ニ於テハ初メ一名憲政派ヨリ採用ヲ
致シタガ、投票ノ形勢ガ非常ニ不利益トナッタノデ、是デハナ
ラヌト云フノデ、忽チ憲政派ヨリノ一名ノ立會人ヲ取消シ
テ、而モ之ニ代ユルニ政友派ヲ以テシタノデアル、鵜川村ニ
於キマシテハ、憲政派ノ要求ノ爲メニ一名增員シタルト云ロ
フコトハ非常ニ感心シタノデアリマシタガ、增員シタル所ノ一
名ハ、二十年來憲政系ニ投票シタコトノナイ人デアル、而モ
其人ハ目ニ一丁字ナキ無學文盲ノ人デアル、其他ノ五箇
村ハ全ク純然タル政友派ノ人ノミヲ以テ、投票立會人タラ
シメタノデアル、此投票立會人ト云フモノハ實ニ重大ナル問
題デアル、投票立會人ノ選定ヲ公平ニシナゲレバ、不正行
爲ノ行ハルヽコトハ當然デアル、政府ガ而モ要求ノアッタニ拘
ラズ、此不公平ヲ敢テシタト云フコトハ是ハ何デアリマスル
カ、更ニ次ニ申上ゲタイノハ三百數十名ノ巡査ヲ山本郡ニ
派遣シ、之ヲ主ニ政友派運動員ノ宅ニ宿泊セシメテ居ッタ
所ノ理由如何ノ問題デアル、先刻申上ゲタ通リ日本ノ選擧
ニ於テハ、殊ニ補缺選擧ニ於、テ多ク政府黨ノ勝ツト云フノ
ハ、各府縣ノ警察官ヲ大部分其選擧區ニ派出シテ、反對
黨ノ運動員ニ尾行セシメテ、買收ヲ警戒シ、政府黨ニ對シ
テハ多ク取締ラザル結果デアル、秋田縣ノ縣參事會ニ於テ
議決シタル選擧取締巡查派出ノ人員ハ、百七八十名ト承
知シテ居ルノデアリマスガ、警察ノ機密費其他ヲ利用シテ、
山本郡ニ派遣シタル警察官ハ三百數十名ニ達シタノデア
ル、一町村少クモ七八名、多キハ二十餘名ノ警察官ヲ派遣
シテ、憲政派ノ幹部及運動員ニ悉ク尾行セシメタノデアル、
而モ其警官ノ多クハ政友派ノ運動員ノ宅ニ宿泊セシメテ、
其運動ヲ援ケテ居シタト云フ事實ガ存シシテ居ルノデアル、
是ハ在ヘ參リマシテ、旅館ガ無イカラ之ヲ民家ニ宿泊セシ
ムルニ於テハ差支ハア』リマスマイガ、特ニ政友會ノ運動員、
而モ屆濟ノ運動員ノ所ニ宿泊セシムルト云フノハ如何ナル
理由デアリマスカ、宿泊スレバ自然ニ」人情ガ生ズル、人情ガ
生ズルト云フト、其本人ガ干涉スル意思ガ無クトモ、迫〓干
涉ト云フ風ガ事實ガ現ハレテ來ルノデアル、此警察官ノ行
動ニ憤激シテ普選運動ニ共鳴セル山本郡ノ靑年一千餘
名ト、秋田木材ノ職工其他數百名ノ者ハ献身的ニ奮起シ
テ、アベコベニ警察官ノ行動ヲ監督スルト云フ風ナ狀態ニ
陷ッタノデアル、斯ノ如ク警察官ヲシテ干涉ノ手助ヲ行ハシ
メタト云フコトハ、確ニ政府ハ大ナル責任アリト云フコトヲ
私共ハ信ジテ疑ハナイノデアル、更ニ尙ホ秋田縣知事ガ能
代湊町ニ出張シテ、政友派ノ幹部ト打合ハセ政友派ノ選
擧本部ニ宿泊シタル所ノ理由如何ト云フ問題デアル、知事
ハ一月二十二日能代湊町ニ出張シ、紫明館ニ宿泊シタノ
デアル、紫明館ハ料理屋デアリマスガ、一時廢業シテ政友派
ノ選擧本部タラシメタノデアル、實情調査ノ爲メニ知事ガ
參シテ紫明館ニ泊シテ居ッタノデアリマス、(「ソレハ嘘ダここ」ト
呼フ者アリ)而モ此事實ハ秋田魁新聞ニ麗々シク出テ居っ
タ事實デアル、嘘ダミニト言ハレル諸君ハ、其當時其干涉ヲ
手助ケシタ御人デナイトモ限ラヌノデアル、(拍手)其次ニ申
上ゲタイノハ秋田木材會社ノ重役ヲシテ、政友派ノ運動員
タラシムベク干涉シタル理由如何ノ問題デアル、此秋田木
材會社ハ、山本郡地方ニ於ケル一ノ大會社デアリマシテ、官
林特賣ノ保護ガアル、其保護ノアルニ乘ジテ、秋田縣出身
デアル所ノ田中農商務次官ハ、手紙ヲ以テ秋田製材會社
ノ重役ニ、政友派ノ候補者ヲ援ケルト云フ風ナ干涉ノ書面
ヲ出シタトノコトデアル、更ニ同會社ノ電氣部長タル所ノ高
原氏ガ、憲政會ノ候補者デアル島田君ト親交ノ深イノヲ妨
ゲル爲メニ、秦遞信次官ハ電報ヲ以テ同氏ヲ秋田市ニ呼寄
セテ援助ヲ依賴シ、聽カザレバ電氣部ニ對シテ檢査ヲ行フ
ト云フ風ニ、暗ニ威嚇シタトノ話デアル、更ニ同次官ハ能代
公園ノ紫明館ニ、秋田木材ノ常務取締タル所ノ菊地季吉
ト云フ人ヲ招イテ、榊田代議士ト共ニ高壓的ニ之ヲ勸誘
シ、同氏ヲシテ遂ニ政友派ノ推薦狀ニ署名スルノ已ムナキ
ニ至ラシメタノデアル、以上ハ表面現ハレタル所ノ秋田製材
會社ニ對スル高壓的ノ手段デアルガ、其他此會社ニ對シテ、
種々ナル事ガ行ハレタト云フコトデアル、其他細こシタル所ノ
干涉壓迫ノ事實ニ就テハ、擧ゲテ數フルコトガ出來ナイノデ
アル、而シテ以上申上ゲマシタル所ノ事實ニ於テモ、此單ニ
例ヲ示シタル所ノ事實ニ於テモ、如何ニ政府ガ秋田縣ニ於
テ、福島縣ニ於テ、補關選擧ノ當時大ナル干涉壓迫ヲシタ
カト云フコトハ、事實ニ於テ證明シテ居ルト私ハ思フ、之ヲ
干涉ト言ハズ、壓迫ト言ハズシテ何デゴザイマセウカト私ハ
信ジテ疑ハヌノデアル、而シテ今日政友會ハ二百八十餘名
ノ代議士ノ諸君ガアル、-代議士ノ諸君ガアルガ、併シ斯
ノ如キ諸君ハ、多ク政府ノ援助ニ依ッテ、權力金力ノ御蔭ニ
依シテ當選セラレタル人ガ、大部分デアリハシナイカト私ハ信ズ
ルノデアリマス、吾ミノ主張スルノハ民選議員デアルガ、今日
ノ政友會ノ議員諸君ハ、社會ニ於テ政友會ノ議員諸君ニ
對シテ、アレハ官選議員ナリト云フ風ナ社會ノ噂ノアルト云
フコトハ、常ニ選擧ニ於テ政府ノ干涉壓迫ノ事實ガ然ラシ
ムルモノデアルト云フコトヲ、信ジテ疑ハナイノデアリマス、
(「生意氣言フナ」ト呼フ者アリ)而シテ今日ニ於テ斯ノ如
ク到ル處ノ選擧ニ於テ干涉壓迫ヲスル、干涉壓迫ヲス
ル結果、民間ニ於ケル所ノ思想界ハ非常ニ混亂ヲ爲
シ、危險思想ガ到ル處ニ漲ラントスル所ノ傾向ヲ生ジタ、現
ニ有力ナル所ノ新聞ニ於テ、議會賴ムニ足ラズト云フ風ナ
意見ガチヨイ〓〓見エル、議會賴ムニ足ラズト云フ意見ガ、
有力ナル】新聞ニチヨイ〓〓見エテ居ル、卽チ此議會賴ムニ
足ラズト云フノハ一種ノ過激思想デアル、此過激思想ヲ傳
播セシメタト云フコトハ、到ル處ノ選擧ニ於テ今迄干涉壓
迫ガアッタ、干涉壓迫ノ結果漸ク當選セラレタ所ノ人とハ有
ユル所ノ横暴ヲ極メ、政治ヲ我物顏ニシテ政友會ノ黨利黨
益ヲ慮ッテ、國家ノ利益ヲ眼中ニ置カザル結果ナリト斷言シ
テ憚ラナイノデアリマス、故ニ私ハ玆ニ秋田縣竝ニ福島縣ノ
干涉壓迫ノ事實ヲ痛論シナケレバナラヌト云フコトヲ悲ン
デ、サウシテ此壇ヲ降ルモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=30
-
031・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 山道襄一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=31
-
032・三浦權兵衞
○三浦權兵衞君 議長々々-唯今ノ件ニ就テ一言シタ
イト思ヒマス
〔「議長三浦君ガ呼ンデ居リマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=32
-
033・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 三浦君、何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=33
-
034・三浦權兵衞
○三浦權兵衞君 唯〓ノ御論ニ就テ私ハ直接自分ノ一身
ニ關係ガゴザイマスカラ、一應辯明シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=34
-
035・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 山道君、一寸御待チ下サイ-
三浦權兵衞君
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
〔三浦權兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=35
-
036・三浦權兵衞
○三浦權兵衞君 諸君、私ハ秋田縣ノ二區ヨリ補闕選
擧-三區ヨリ補關ニ出テ參ッタ三浦權兵衞デゴザイマス、
(「謹聽」ト呼フ者アリ)唯今ノ御論ヲ伺ヒマスレバ、如何ニモ
私ハ官憲ノ援助ニ依シテ、出テ參ッタヤウニ縷々言ハレマシタ
ガ、甚ダ遺憾ニ堪ヘナイ(「決シテソンナコトハナイ」ト呼フ者
アリ)併シ事實ハサウデアリマセヌカラ一寸辯明シマス、(「安
心シテヤリ給へ」ト呼フ者アリ)元來秋田縣ノ山本郡ハ二
十三年以來非常ニ政黨ノ軋轢ノアッタ場所デ、餘程早イ時
カラ、政友會ハ殆ド六分以上七分ニナッテ居ル場所デアリマ
ス、(「其通リ」ト呼フ者アリ)ソレガ何故ニ是迄ハ憲政會ノ町
田君ニ多數ノ點ヲ比較的取ラレテ居ッタカト申シマスレバ、
(「大隈ノ亂暴ノ結果ダ」ト呼フ者アリ)第一私共ガ長ク擔
ギマシタ三浦盛德君ハ、御承知ノ通リ無一文ノ方デアリ、且
ツ自分ノ住マウ家モ持ッテ居ラヌト云フ人デ、何時モ選擧ノ
度每ニ吾ミガ持出シテ、多少ノ出費ハ自ラ支出シテ助ケタ
人デゴザイマス、一方ハ大金ノ御不自由ノナイ方デアリマス
カラ、其等ノ關係上、比較的町田君ハ多數ノ點ヲ得テ居ラ
レタノデアリマス、當リ前ノ人ナラバ、決シテ憲政會ノ方ミガ
アノ場所ニ立タレテモ、餘計ノ點數ヲ取レル場所デハアリマ
セヌ、(拍手起ル、「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)ノウ〓〓ト言フ御
方ハ何ヲ以テ言ハレルカ知リマセヌガ、私ハ標準トシテ山本
郡ニ二十六箇町村アリマスルガ、其中三箇村ハ組合役場
ニナッテ居リマシテ、詰リ二十三人町村長ガアリマス、其內
十五人ハ政友會デアリマス、(拍手)又郡會ハ三十二人デア
リマスガ、其内十八人ハ頑トシタ政友會デアリマス、(「ヒヤ
ヒヤ」)其町村長ガ二十三人ノ内十五人モアル以上ハ、町村
ニ地盤ガ無クテ、政友會ノ町村長ガ擧ッテ居ラレマセウカ、又
郡會ハ三十二人ノ内十八人ノ政友會ノ同志ガアッテ、ソレ
ガ地盤ガ無クテ擧ッテ居ラレマセウカ、此前ニ高橋君ト町田
君トノ選擧ノ際ニ、憲政會ノ(「干涉ノ說明ヲシ給へ」ト呼フ
者アリ)ンレヲ比較シテ言フノデス、ソコデソレガ詰リ地盤ト
云フモノガサウ云フ六分ニモ七分ニモ分ッテ居ルモノガ、何ノ
爲メニ警察ヤ其他ノ手ヲ借リナケレバ當選ガ出來ナイト云
フコトガアリマセウカ、(「要點ヲ述ヘ給ヘ」ト呼フ者アリ)要點
ヲ述ヘテ居ルノデアル、サウ云フヤウナ事ヲ以テ、地盤ガ分リ
切ッタ四分六分以上七分ニモナッテ居ル、ソレニ向ッテ官權ヲ
藉リナケレバ、當選ガ出來ナイモノヽ如ク言ハレ〓ルノハ、甚ダ
貴方ガタノ見解ガ違シテ居ルノデアリマス、(「ソレガ辯明ニナ
ルカ」ト呼フ者アリ)決シテサウ云フ警察ノ手ヲ藉リタ次第
デハ決シテナイノデアリマス、何モ別段ニサウ云フ官權ヲ藉
リナケレバ、出來ナイモノデハナイノデアリマス、決シテ私ハサウ
云フヤウナ、政府ノ干涉ヤ何カモ受ケテ出テ來タモノデハア
リマセヌ、(「ヒヤ〓〓」拍手)サウ云フ譯デアリマスカラ一應辯
明致シマス
在外朝鮮人ノ取締竝朝鮮統治ニ關スル質問
ノ答辯ニ對スル山道囊一君ノ意見
〔山道襄一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=36
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037・山道襄一
○山道襄一君 私ハ在外朝鮮人ノ取締竝ニ朝鮮統治ニ
關シマスル質問書ヲ提出致シマスルコト二回デアリマス、二
回共ニ甚ダ不深切ヲ極メマシタル誠意ナキ答辯書ヲ得タコト
ヲ、私ノ爲メデナク、國家ノ爲メニ甚ダ遺憾ニ感ズルノデアリ
マス、今日ハ餘程時間モ經過致シテ居リマシテ、皆サン方ハ
定メシ御迷惑ノコトヽ御察シ致シテ居リマスルケレドモ、此
朝鮮問題ハ今日ノ時局ニ取リマシテハ、極メテ重大ナル事
デアリ、且ツ帝國ノ爲メニハ非常ナル大問題デアルノデス、
故ニ願クバ暫クノ間時間ヲ御貸シ下サルコトヲ御願致シマ
ス、唯ダ私ハ一言申シテ置キマス、朝鮮統治ニ關シマスル私
ノ意見ノ陳述ハ、本日他ノ機會ニ於テ之ヲ申述ベル積リデ
アリマス故ニ、此席上ニ於キマシテハ、在外朝『鮮人ノ取締ニ
關シマスル事ニ就テ、意見ノ陳述ヲ御許シヲ願ヒタイノデア
リマス、私ハ本日此場合ニ於テ、公開ノ席ニ於テ申上ゲルコ
トヲ憚ルベキ重大ナル一ツノ事件ニ就キ、殊ニ在外朝鮮人
ノ取締ニ對シマシテ、本日ハ御互ニ此公開ノ席上デ言フコ
トノ出來ナイ所ノ、或重大ナル必要ニ迫ッテ居ルノデアリマ
ス然ルニ從來政府ノ致サレテ居リマスル、在外朝鮮人ノ
取締ニ對シマシテ、極メテ怠慢デアル『又甚ダ其遣方ガ姑息
デアル、而モ帝國ノ政府ノ內ニ於テスラ、各大臣ノ見ラルヽ
所ノ所見ヲ異ニシテ居ラレマスル爲メニ、甚シク朝鮮ノ內輪
ニマデ影響ヲ及ボシマシテ、今日ハ非常ナル一人心惡化ノ狀
態トナリ、危險ヲ訴フベキ狀態ニ陷ッテ居ルノデアリマス、昨
年ノ春ノ議會ニ於テ-解散セラレマシタ議會ニ於テ原總
理大臣ハ或ハ上海、或ハ滿洲、或ハ西伯利、一或ハ布哇或ハ
米國等ニ於キマスル所ノ朝鮮人ノ陰謀團體ハ、恰モ吹ケバ
飛フガ如キモノデアッテ、何等介意スルノ價値ナキモノデアル
カノ如キ御演說ガアリマシタ、然ルニ其半面ニ於テ陸軍大
臣、或ハ外務大臣、或ハ朝鮮總督ノ御演說、或ハ其等ノ役
所カラ出サレマシタ所ノ文書ニ依シテノ之ヲ見マスレバ、上海
ニ於ケル彼等ノ自稱假政府ノ如キ、『或ハ間島ニ於ケル、或
ハ西伯利ニ於ケル所ノ不逞鮮人等ノ陰謀團體ハ、朝鮮今
日ノ惡化ヲ招ク、最大原因デアルカノ如キ言明ヲ致サレテ
居ルノデアリマス、卽チ此政府ニ於テ在外鮮人ヲ見ラレマス
ルコトハ、內閣大臣諸公ノ間ニ於テ、既ニ意見ノ相違ガアル
ノデアリマス、之ガ爲メニ今日ノ朝鮮ノ狀態ヲ惹起シ、昨年
ノ間島問題、琿春事件等有ユル不祥事ヲ惹起シタト云フ
コトハ全ク內閣ノ在外鮮人ニ對スル方針ガ、一定シテ居ラ
ヌカラト言ッテ差支ナイノ「デアリマス、若シ在外鮮人ノ陰謀
團體ヲ檢シ來リマスレバ、其絕對價値カラ申シマスレバ、甚
ダ粗末ナモノデアルカモ知レヌ、併ナガラ斯樣ナモノハ、本來
其絕對價値ヲ見ルベキモノニ非ズシテ、此在外不逞鮮人ノ
團體ガ朝鮮人ノ目ニ映シテ、如何ナル價値ヲ生ズルモノデ
アルカト云フコトヲ御互ニ知ラナケレバナラヌノデアリマス、
之ヲ非常ニ輕視セラレマシタル結果ガ斯樣ナ不祥ノ事態ヲ
惹起シテ居ルコトハ玆ニ重ネテ申シマスガ、又更ニ政府ノ私
ノ質問ニ對スル答辯ニ就テ、甚ダ遺憾ニ堪ヘナイト申シマス
ルノハ、政府ハ斯ノ如キ事ヲ申シテ居ラルヽノデアリマス、滿洲
方面ナドニ於ケル、或ハ西伯利方面ニ於ケル不逞鮮人ノ取締
ニ就テ、何等怠慢モ無イ、過失モ無イト言ッテ居ラレマス、斯樣
ナ答辯書ヲ得テ居リマスケレドモ、併シ私共ヨリスレバ大ナル
過失大ナル怠慢ヲ認メザルヲ得ナイノデアリマス、私ハ御迷惑
デゴザイマセウケレドモ、玆ニ其事實ヲ陳述致サナケレバナラ
ヌ、昨年ノ琿春事件ノ如キ、或ハ間島事件ノ如キ、斯クノ如キ
事ハ既ニ一昨年ヨリ政府ニ於テハ、承知シテ居ラレナケレバ
ナラヌ事件デアリマス、一昨年ノ暮ニ朝鮮ノ李王家ノ一族
デアル李堈殿下ヲ拐キ出シテ、安東縣マデ連レ行キマシタル
事件ノ如キハ、既ニ一昨年八月二十三日ニ於テ、吉林ニ於
テ滿洲及西伯利ニ於ケル所ノ不逞鮮人ノ首領ガ集會ヲ致
シマシテ、或ハ間島ヨリ、或ハ柳河ヨリ、或ハ浦鹽ヨリ、(或ハ
「ニコリスク」ヨリ、或ハ「イマン」ヨリ、或ハ齊多ヨリ、各方面ノ
不逞鮮人ガ會議ヲ開キマシタ結果、李堈殿下ヲ奪取ッテ、
而シテ此人ノ脫出ヲ圖ッテ此人ヲ首領ニ推スト云フコトハ、
吾ミノ朝鮮獨立ノ目的ヲ達スル爲メニ、最モ必要ナ事デア
ルト云フ決議ノ一項ガアル、此事ハ陸軍大臣ハ確カ一昨年
九月、乃至十月ノ頃ニ此報告ヲ得テ居ラレル筈デアリマス、
而モ其決議ノ條項ハ澤山アリマス、露西亞ノ過激派ト提
携スル事、朝鮮ニ決死團ヲ送ル事モ其一ツデアル、此決議
ガ萬事ヲ語シテ居リマス、其決議ヲ實行スル爲メニ、吉林ヨ
リ鄭安立ナル者ガ京城ニ參ッタノデアリマス、一面ニ於テハ
上海ヨリハ全協ナル者ガ京城ニ參ッタノデアリマス、玆ニ李
堌殿下ヲ連レ出スト云フ事ニ就テ、鄭安立ト全協ト所謂
上海派ト吉林派ノ間ニ於ケル暗鬪ヲ試ミマシタ結果、遂ニ
上海派ノ全協ガ勝ヲ占メルコトニナッテ彼」ガ奪取ッタ、其爲
メニ奪取ラレタノヲ無念ニ思ッテ鄭安立ガ日本ノ警察ニ密
告シタ爲メニ漸ク事件ガ總督府ニ判ッタノデアリマス、此鄭安
立ニ對シ京城ノ北部警察ハ相當ナル金ヲ吳レテヤッテ、金
某ナル警部ガ密偵トシテ使ッテ居ッタ、然ルニ此鄭安立ガ斯
樣ナ大隱謀ヲ計畫シテ京城ニ入込ンデ居ル、ソレヲ能ク承
知シテ居リナガラ、故ラ此鄭安立ヲ、餘裕ガアルニ拘ラズ捕
縛スルコトヲシナカッタ、吉林ニ逃ガシタ斯ノ如クニシテ此大
犯罪人ヲ、私ヨリ申シマスレバ寧口之ヲ捕縛スルコトガ出來
ルニ拘ラズ、此者ヲ捕縛セズシテ逃シタト云フコトハ、當局ノ
重大ナル責任デナケレバナラヌト信ズルノデアリマス、單ニ此
鄭安立ヲ捕縛シナカッタト云フダケヲ以テ、吾こハ言フノデハ
アリマセヌ、彼ヲ捕縛シタシナイト云フコトガ、彼ヲシテ法網
ヨリ免レシメ、日本ノ官憲ノ手ヨリ逃レシメタト云フコトハ、
是ハ軈テ滿洲、或ハ西伯利、上海ニ居リマスル不逞鮮人達
ガ或ル方法ニ依ルナラバ、日本官憲與ミシ易シトシテ、彼等ハ
〓益ニ陰謀ノ鋒ヲ差向ケルノデアリマス、而モ琿春事件或ハ間
島事件ニ對シテ、私ハ玆ニ時間ガゴザイマセヌカラ極ク僅カ
ニ申上ゲマス-私ノカニ依ッテ調査シ得タ其調査ノ範圍
ニ於キマシテ、私ノ極ク微力デ調査シタ範圍ニ於キマシテモ
西伯利方面或ハ滿洲ニ於ケル不逞鮮人等ハ、昨年アタリ
非常ナル武器ヲ集メテ居ッタト云フコトハ、幾多ノ事實ガ私
ノ手ニ入ッテ居ルノデアリマス、況ヤ政府ノ手ヲ以テ致シマス
レバ、ドレ程ノ彼等ガ不穏ノ行爲ヲ執リツヽアル。ト云フコト
ハ、明瞭ニ分ノテ居ラナケレバナラヌ筈デアル、今其ノ一二ノ
實例ヲ申上ゲマスレバ、御承知ノ西伯利ニ於ケル所ノ、不逞
鮮人ノ巢窟トモ申シマシテ宜シイ、浦鹽ニ近イ所ノ新韓村、
其新韓村ニ居リマスル金河吉ナル者ガ、昨年二月ノ二十
日米國ノ軍隊ヨリ、九連發拳銃五百挺ト彈藥及爆彈五
百箇、其中二百挺ダケハ靑年ニ分シテヤッテ居ル、三月七日
ニハ露國式歩兵銃三百挺、露國兵ノ警護ニ依ッテ-過激
派ノ警護ニ依シテ新韓村ニ持込ンデ居ルノデアリマス、更ニ
又二月ニハ浦潮ノ「モルスカヤ」街二十番館ノ「ブリヤシス」カ
ラ左記ノ武器ヲ新韓村鮮人ガ購入シテ、自動車デ運ンデ
居ル、其左記ト云フノハ第一回「ブローニング」銃百二十挺
代價百五十万留、第二囘西班牙式連發銃三百五十挺代
價二百五十万留デアリマス、無線電信ノ購入モ其當時彼
等ガ交涉シテ居ッタノデアリマス、更ニ又第二ノ尼港事件ガ
起ルデアラウト言ノテ、昨年御同樣ガ非常ナル心配致シマシ
タ此蘇城デアリマス、蘇城ノ東方四里許リノ所ニ住居シテ
居リマシタ朴西利、韓昌傑等ガ露西亞人ヲ介シテ「チエック」
軍カラ小銃千五百梃ト爆彈トヲ購入シテ居リマス、又「シ〓
トワ」革命軍カラ、小銃百挺及彈藥ノ購入ヲ致シテ居リマ
ス、間島ノ二道溝ノ許在明ハ、三月上旬ニ新韓村ニテ露西
亞人ヲ介シテ、小銃五百挺、爆彈六千拳銃四百三十挺、
機關銃二門、又彈藥ナドヲ購入致シテ居リマス、更ニ又七
八月頃ニ浦鹽斯德附近ノ朝鮮人ハ、露西亞軍用速射砲
二門ノ購入ヲ致シテ居リマス、又束寧及其對岸ノ露西亞
領「ウサホー」ノ朝鮮人ハ、露西亞人ノ世話ニ依ッテ小銃九
十ニ彈藥一万五千ヲ購入シ、一一月六日ニ之ヲ西間島ニ輸
送中馬賊ニ掠奪セラ】レマシタ、是ハ私ノ極ク足ラナイ所ノ
調査デアッテ、私ノ手ニ入ッタダケデモ斯様ニ在外ノ不逞鮮
人ハ、昨年春カラ夏ニ掛ケテ用意ヲ致シテ居リマシタ、是等
ノ用意ハ政府ニハ尙ホ一層明瞭ニ分ッテ居ルベキ筈デア
リマス、彼ノ間島ナリ西伯利ニ居リマス朝鮮人、何ノ必
要ガアッテ斯樣ナ武器ヲ購入致シタノデアリマシヤ
ウカ、彼等ガ之ヲ使用致シマス所ノ目的ハ言ハズシテ
明白デアリマス、而モ政府ハ之ニ對シテ、如何ナル取締
方法ヲ講ゼラレテ居リマシタカ、之ニ對シテ如何ナル手段ヲ
講ジ如何ナル對策ヲサレテ居リマシタカ、私ノ質問ニ
對スル政府ノ御答辯ニ依リマスレバ、之ニ對シテハ
相當ナル手段ヲ執ッタ、殊ニ支那政府ニ向ッテ其取
締ヲ要求致シテ居ルトニロッテ居ラレルノデアリマス、張作霖
ニ此事ヲ一任シタト言ッテ安心ヲシテ居ラレルノデアリマス
ケレドモ、張作霖ニ信賴シ何ガ出來マスカ、東山省ニ二百万
モ朝鮮人ガ居ルデアリマセウ、何デ張作霖ガ其根據地ニ於
テ大勢力ヲ持ッテ居ル所ノ、二百万ノ朝鮮人ノ反感ヲ買フ
マデモ日本ノ要求ニ應ジマセウ、若シ彼ガ此ノ二百万ノ朝
鮮人ノ反感ヲ買ヒマスレバ、彼ハ斷ジテ現在ノ勢力ヲ維持
スルコトハ出來ナイ、ソレ故ニ張作霖自身ノ立場カラ申シマ
シテ、此者ガ我ガ政府ノ一言ノ依賴ニ依ッテ、二百万人カラ
ノ朝鮮人ヲ向フ廻ハスヤウナコトヲシマセウカ、取締ヲシナイ
ト云フコトハ明白デアル、然ルニ我ガ政府ハ之ニ對シテ、張
作霖ニ依賴シテ居ル爲メニ安心シテ居ルト云フノデアリマ
スカラ、是ガ卽チ大ナル失策ヲ來シタ本デアリマス、殊ニ間
島事件ノ起ル前昨年九月十二日、其頃非常ナル大部隊ノ
不逞鮮人、及過激、派及馬賊ノ一〓ガ押寄セテ來ルト云フ
コトガ分シテ居ッタニモ拘ラズ、政府ハ之ニ對シテ如何ナル態
度ヲ執ッタカト云フト、僅カ二十一名ノ警察官ト、十名ノ軍
人ヲ御役目ニ出シタダケデ、其他ハ是等大部隊ノ襲來ニ對
スル方策ヲ講ジテ居ラナイ、之ヲ講ジテ居ラナイ爲メニ遂ニ
間島事件ノ如キ、或ハ琿春事件ノ如キ大事變ヲ惹起シ、急
遽大軍ヲ出サナケレバナラヌト云フコトニナリ、之ガ爲メニ
支那政府トノ間ニ種々面倒ナル交涉問題ヲ惹起シ、更ニ其
餘沫トシテ議會ニ於テモ段々質問ニモナッテ居リマスル、水
町大佐ノ聲明ナルアノ大失態ヲ演ジタデハアリマセヌカ、水
町大佐ガ宣〓師ニ與ヘタ所ノ言明ニ依ルト、明カニ承認セ
ラレタ、如何ナル事ヲ承認シタカト云ヘバ、[良民ヲ殺シテ居
ルト云フコトヲ永認サレテ居ル、無辜ノ良民ガ住居ヲ致シテ
居ル建物ヲ燒イタト云フコトヲ承認セラレテ居ル、公ノ文書
ニハナッテ居リマセヌガ、尙ホ陸軍方面ニ於テ言ッテ居ル所ヲ
聞キマスレバ、水町大佐カ何故ニ良民ヲ殺シタカト云ヘバ、
兵營ヲ移サナケレバナラヌ、駐屯軍ノ兵舍ヲ移ス時ノ邪魔
ニナルカラ殺シタ、或ハ良民ガ入っテ居ッタカ知ラヌ、或ハ無
辜ノ民ノ家屋ヲ燒拂ッタト云フコトハ、不穩ノ文書ガアッタカ
ラ其家ヲ燒拂ッタト云フコトデアリマス、斯樣ナ事ヲ以テ果
シテ之ガ水町大佐個人ノ聲明ト致シマシテモ、此水町大佐
其人ハ政府ヨリ特派セラレタ人デアル、陸軍省〓リ特派セ
ラレタ人デアル、斯ノ如キ人ガ斯樣ナ聲明ヲ致シマスレバ、
之ヲ以テ個人ノ資格ヲ以テ聲明シタト云ッテ、其場ヲ遁レル
コトハ出來マセヌ、現ニ一月五日デゴザイマス、我當局者ハ
此事件ハ無事ニ外國ノ諒解テ得タト言ハレテ居リマスガ、
確カ一月八日ニハ英國大使ガ外務省ニ抗議ヲ申込ンデ居
リマス、更ニ十日或ハ十一日ニハ、陸軍大臣ト外務大臣ト
ハ、和蘭公使館ニ於ケル宴會ノ席上ニ於テ種々ナル打合ヲ
セラレ、而モ十二日ニハ陸軍大臣ノ代理トシテ、秦中佐ヲ
遣ハシテ外務省ニ交涉セシメタ、私ハ此事ニ就テ特ニ皆サ
ント共ニ國家ノ爲メニ聽イテ置カナケレバナラヌコトハ、ー
昨年ノ春朝鮮ノ大事件、所謂水原事件デアリマス、二十何
名ノ朝鮮人ヲ〓會堂ノ中ニ入レテ、火ヲ放チテ〓會堂ト共
ニ燒イテシマッタ、其當時亞米利加ノ政府カラモ此事件ニ
對シテ、若シ日本政府ガ此〓會堂ニ朝鮮人ヲ入レテ燒イ
夕、其責任者ヲ早ク處分致シサヘスレバ、是ハ公ノ問題ニハ
致サナイト言ッテ、日本政府ニ忠告シテ吳レタニモ拘ラズ、陸
軍省ト外務省トノ間ニ於テ、丁度今回ノ間島事件ノ如ク
意見ヲ異ニシテ逡巡致シマシタ結果、米國政府モ押ヘ切レ
ズ、此事件ノ〓末ガ世界中ニ宣傳セラレマシテ、取返シノ付
カナイコトニナリ、遂ニ憲兵隊長及其副官竝ニ守備隊及其
副官ヲ處分シタノミナラズ、世界中カラ日本ニ對スル誤解
ヲ招致シタト云フコトハ、詰リ陸軍省ト外務省トノ意見ガ
相違シ、政府內ニ意見ノ杆格ガアル爲メニ、折角事無キニ
終ルベキモノガ世界ニ公表セラレ、日本帝國ノ爲メニ非常
ナル不利益ヲ醸シタノデアル、殊ニ今囘ノ事件ノ如キハ、世
界ニ之ヲ明白ニ率直ニ公表シタナラバ、サウ大シタ問題ヲ惹
起サズニ濟ンダニ拘ラズ、陸軍省ト外務省トノ間ニ意見ヲ
異ニシテ空シク時日ヲ費シタ爲メニ、帝國ノ爲メニ不利益
ナル誤解ガ世界ニ傳ヘラレテ居ルノデアリマス、何故ニ斯様
ナ事件ニ對シテ有耶無耶ノ中ニ葬リ去ラントスルカト云フ
コトヲ、帝國ノ爲メニ惜ムノデアリマス、更ニ又私ガ質問致
シマシタ昨年ノ春ノ尼港事件ニ對シテモ誠意ナキ答辯ガフ
ル、彼ノ尼港ニ在住シテ居リマシタ五百名乃至千人ノ朝鮮
人ニ對シテ、政府ハ如何ナル取締ヲシテ居リマシタカ、ソレヲ
私ハ伺ヒタイノデアリマス、尼港事件ニ對シテ私ノ調査シタ
結果ハ、尼港ニ於テ日本ノ軍人及男ノ中ノ壯年者ヲ慘殺シ
タノハ、多クハ露西亞ノ共產黨員ノ爲メニサレダノデアリマ
スガ、小兒デアルトカ婦人ナドガ虐殺セラレマシタノハ、支那
人ト朝鮮人ノ手ニ依ッテサレタノデアリマス、此朝鮮人ハ既
ニ大正七年四月、支那人ト露西亞人ト一〓ニナッテ尼港ノ
市中ヲ練步イテ、資本家ニ對シテ示威運動ヲ致シタ、而モ
是等ハ表面ノ口實デ、此朝鮮人ハ尼港ニ於テ旣ニ大正七
年四月朝鮮獨立演說ヲ致シ、支那人露西亞人等之二加ツ
テ示威運動ヲシタト云フコトハ、諸君モ御存ジテアリマセウ、
而モ大正八年四月是等ノ不逞鮮人ハ露西亞ノ者ト一緒
ニナッテ、「オムスク」]政府ノ管轄ノ下ニ於テ露西亞ヲ衞ルベ
ク、自衞軍ヲ組織スルト稱シテ、斯樣ナル獨立運動ヲ致シ
タノデアリマス、朝鮮ガ白衞軍ナルモノヲ組織致シテ、六十名
之ニ加入致シ、白衞軍ノ組織ガ出來タノデアリマス、其時
彼等ハ日本軍ガ尼港ヲ占領致シマシタ時、過激派カラ沒
收致シテアリマスル武器ノ交付ヲ要求シテ來タノデアリ
ス、當時ノ守備除長デアリマシタル小林少佐-小林少佐
ハ斷乎トシテ、此銃器ノ引渡ヲ拒絕シタノデアリマス、然ル
ニ何時ノ間ニカ軍司令官ノ手ヲ經テ、-內閣ノ承認ヲ
經タカ、軍司令官ガ獨斷デヤラレタカ、ソコノ所ハ私ハ明言ス
ル材料ヲ有シマセヌガ、私ハ政府カラ命令ガ行ッタト承ッテ
居リマス、斯ノ如クニシテ小林少佐ガ拒絕シタニモ拘ラズ、
故ラニ百挺ノ武器ヲ、此白衞團ニ渡スコトノ命令ヲ致シテ
居ルノデアリマス、此武器ヲ以テ、白衞軍ノ朝鮮人ガ尼港ニ
居リマシタル所ノ日本人虐殺ノ一幕ヲ演シタノデアリマス、
然ルニ此事實ハ私ハ活キタル證人ヲ何時デモ出スコトガ出
來ルデアル、尼港ニ當時在住シテ居リマシタ者ハ、昨年一月
カラ五月二十四日マデニ皆ナ殺サレマシタガ、當時日本ニ
歸ッテ居ッテ現在生殘"テ居ル所ノ活キタル證人ハ、何時デモ
此武器ノ引渡ヲ致シタ事ニ就テノ證人トシテ出スコトニ躊
躇致シマセヌ、然ルニ政府ノ答辯書ヲ見マスレバ、本項ニ記
載スル所ノ事實ヲ認メズト云フ實ニ不深切ナル答辯、亂暴
ナル答辯デアリマス、何故ニ斯樣ナ答辯ヲシナケレバナラヌ
カ疑ハザルヲ·得ナイ、尼港事件ニ就キマシテハ今更繰返シテ
申シハ致シマセヌガ、何故ニ政府ハ此明々白々ナル所ノ斯樣
ナ事實ヲ認メナイト稱シテ、我〓ヲ瞞著シ去ランスルノデア
ルカ、斯ノ如キハ誠ニ政治ニ對シテ不深切ナ、一般國民ニ對
シテ甚ダシク誠意ナキ遣方デハゴザイマセヌカ、(拍手起ル)
次ニ此安束縣ニ居住致シテ居ッタル英國人「シヨウ」ナル者
ヲ、昨年ノ七月朝鮮總督府ガ捕縛ヲ致シタ事件デアリマス
ガ、此者ヲ捕縛致シタ其犯罪ハ何デアルカ、又其〓末ヲ明ニシ
テ貰ヒタイト云フ質問ヲ致シタ、然ルニ政府ハ之ニ何ト答ヘ
テ居ルカト云フニ、安東縣ニ居ル英國人「シヨウ」事件ハ目
下審理中ニテ、事實ノ眞相ヲ明言スルコトハ出來ナイト突
放シテ居ルノデアル、併ナガラ諸君、「シヨウ」事件ハ重大ナル
問題デアリマス、帝國政府ハ昨年ノ夏頃ニ於テ、奉天ニ於
ケル所ノ英國ノ總領事ニ對シテ、ロ此英國人「シヨウ」ノ引渡
ノ要求ニ就テ交涉ヲサレテ居ルデハアリマセヌカ、而モ此「シ
ヨウ」ナル者ガ何故ニ捕縛サレタノデアルカト云フコトハ、
昨年ノ暮カラ昨年ノ春ニ掛ケテ、議會ノ問題ニナッテ居リマ
シタ、彼ノ呂運亨一味ノ者ガ、所謂朝鮮ノ獨立ノ目的ヲ達
シマスル爲メ政治ノ變革ヲ企圖致シマシテ、安東縣ニ交通
部ナルモノヲ設置スルコトニ致シ、此呂運亨一味ノ者ガ相
寄リマシテ、安東縣ニ交通部ナルモノヲ設立スル計畫ヲ立
テ、其交通部ハ卽チ「シヨウ」ノ宅ノ怡隆洋行ノ中ニ其事務
所ヲ置カレテアッタカラデハナイカ、「シヨウ」ハ自己ガ所有シテ
居リマスル所ノ汽船ヲ以テ、上海安束縣ノ間ヲ往復スル不
逞鮮人ノ獨立運動ヲ援助致シテ居フタノデアル、之カ爲メニ
「シヨウ」ハ捕縛セラレタノデアリマス、而モ是ニ於テ私ノ甚ダ
疑ハザルヲ得ヌ事ハ、最近ノ報告ニ依リマスレバ-私ノ最
近ニ得タ報告ニ依リマスレバ、既ニ或ハ今日ハ出發致シテ
居ルカ知レマセヌガ、此英人「シヨウ」ハ京城ニ在リマスル住
所ヲ引拂ヒ、今當ニ審理中デアルカラ、答辯ヲ出來ヌト言ハ
レタ英人「シヨウ」ハ、英本國ニ向ッテー彼ノ妻ハ日本入デ
アリマスガ、其妻ヲ伴レテ英本國ニ向ッテ旅行スルト云フコ
トニナッテ居リマス、勿論旅行スルト云フノハホンノ名目デゴ
ザイマセウガ、英國ニ向ッテ立去ラントスル、或ハ旣ニ立去ッテ
居ルコトヽ考ヘマス、卽チ英國人デアレバ斯樣ナ事件ニ就テ
彼ガ本國ニ立去ル、保釋中ニ英國ニ旅行スルコトヲ許シナ
ガラ、是等ト同ジヤウナ犯罪者デアリマスル所ノ朝鮮人ヲ、
如何ニ取扱ッテ居ルノデアルカト云ヘバ、中〓嚴格デアル、此
安東縣ノ交通部ノ長ヲ致シテ居リマシタル洪成益ナル者ニ
對シテハ、旣ニ昨年一月二十三日ニ捕縛致シタノデアリマ
ス、此交通部ヲ造リマシタ趣意ノ文書ハ、私唯今私ノ机上
ニ置イテ居リマシテ、此處ニ持ッテ居リマセヌカラ讀上ゲル譯
ニハ參リマセヌガ、此交通部ノ設立ニ對シテ、所謂政治ノ變
革ヲ目的ト致シマシタル所ノ此陰謀ノ計畫ヲ立テルモノデ
アリマシテ、其張本人ハ上海ニ居リマスル呂運亨ヲ首メトシ
テ八名程ノ人間デアリマス、其立テタ所ノ人間ハ、洪成益以
下七名許リハ捕縛セラレテ、旣ニ牢屋ニ收監サレテ居リマ
ス、唯ダ一人英國人デアリマス所ノ「シヨウ」ノミハ既ニ保釋
セラレ、而モ英本國ニ向ッテ旅行スルコトヲ許サレテ居ルト
云フコトハ、其結果ガ如何ニ相成ルカト云ヘバ、日本ノ總督
ハ、日本ノ政府ハ一視同仁ノ政治ヲスルト稱シ、法ノ權威
ヲ維持スルト稱シナガラ、外國人ニ對シテハ頭ガ上ラナイ、外
國人ニ賴リサヘスレバ、如何ナル事ヲ爲シテモ差支ナイト云
フ觀念ヲ朝鮮人ニ與へルノデアリマス、而モ一視同仁ノ聲
明ハ殆ド無意義ナル事ニ相成シテ、一視同仁ト云フ事ガ果
シテ何ヲ意味サレルカ、唯ダ言葉ノ上ノ一視同仁デアッテ、事
實ニ於テハ決シテ日本ノ政府ハ一視同仁ノ政治ヲ致スノ
デハナイ、是ガ帝國ノ仁慈ナル陛下ノ大御心ニ依ッナ行フ
朝鮮統治ニ對スル根本ヲ、朝鮮人ヲシテ疑ハシムルニ至ル
ノデハゴザイマセヌカ、殊ニ此呂運亨ノ如キハ諸君モ御承知
ノ事デアルカラ、重ネテ玆ニ繰返シテハ致シマセヌガ、彼ハ上
海ニ於ケル所ノ救國冒險團ノ團長デアル、上海ニ於ケル不
逞鮮人ハ、所謂彼等ノ仲間ニ於テハ文治派ニ屬スルモノデ
アリマスガ、此文治派ニ屬スル上海ニ於ケル不逞鮮人ノ中
ニ立ッテ居ル此救國冒險團ナルモノハ、爆裂彈ノ製造ヲスル
コトヲ〓究シ、而シテ其爆裂彈ヲ行使致シテ、朝鮮獨立ノ目
的ヲ達シヤウトスルノガ此救國冒險圍ノ趣旨デアリマス、呂
運亨ハ此救國冒險團ノ團長デアリマス、彼ハ發頭人デアリ
マス、斯樣ナ事ヲ致シテ居ル所ノ呂運亨ハ東京ノ眞中ニ來
リ、政府ノ大官ノ招待ヲ受ケ、公然ト政府ノ力ニ依ッテ、政
府ノ手ニ依ッテ新聞社通信社ヲ集メ、堂々ト演說ヲ試ミ、而
モ禁苑ノ拜觀マデ差許サレタ、然ルニ一面ニ於テ洪盛益ナ
ル者ハ捕縛セラレ、其手先タル者モ捕縛セラレ、殊ニ大邱ニ
於テ起リマシタ事件ハ、靑年外交團、愛國婦人會等ノ靑年
男女ガ數十名一昨年ノ暮牢屋ノ中ニ打込マレ、面モ重大
ナル犯罪トシテ之ヲ取扱ハレテ居ルノデアリマスガ、張本人
ノ呂ハ何等ノ事モ無イトハ不思議デハナイカ、政府ノセラレ
ル所ハ、如何ニモ一視同仁デアル法ノ權威ヲ有ラシムルヤウ
ニ努メテ居ルヤウニ見エマスケレドモ、事實ニ於テハ斯
樣ナ事ヲシテ、前後撞著シ、人ニ依ァテ法ノ用井方ヲ二
三ニスルト云フヤウナコトヲ致シテ居ルガ爲メニ、其
爲メニ、益〓朝鮮人ヲシテ思想ノ惡化ヲ來サシメ、今日
如何トモスルコトノ出來ナイヤウナコトニナッテ居ル、而
モ昨年ノ二月議會ニ於ケル原總理大臣ノ御演說ヲ聽
キマスレバ、呂運亨ハ上海ニ歸ッタ後ト云フモノハ、非
常ノ善人トナリ、前ノ排日方針ヲ改メテ、或ル意味ニ
於テハ日本ニ向ッテ、非常ニ同情ヲ表スル如キ態度ヲ持
テ居ル、彼ハ他ニ不心得ノ者ガアレバ、之ヲ說諭致シ、不都
合ノ行爲ナキヤウニ說諭ヲ致シテ居ルト云フ御演說ヲ致サ
レテ居ル、然ルニ確カ三月七日ノ北支那日々新聞ハ、呂運
亨ノ歸クタ後ノ消息ニ就テ、安昌浩ノ談話ヲ掲載シテ居リマ
スガ、ソレハ總理大臣ノ言ッタコトヲ明カニ裏切ッテ居リマス、
ノミナラズ昨年九月ニ於テ呂運亨ハ、御承知ノ如ク上海ニ
於ケル不逞鮮人ヲ代表シマシテ、亞米利加議員團ガ上海ニ
來タ時ニ、亞米利加議員團ヲ訪問シ、上海ニ居リマスル所
ノ朝鮮人ノ婦人會ナルモノ造リマシタ大極旗、卽チ朝鮮ノ
國旗其旗ヲ議員團ニ贈ッテ、之ニ依シテ朝鮮ノ獨立ノ援助
ヲ賴ンデ居ルノデアル、而モ彼ハ昨年西伯利ノ「チタ」ヲ訪問
シ、露西亞ノ過激派ト交涉ヲ遂ゲテ居ル、更ニ昨年ノ暮カ
ラ本年ニ掛ケテ、廣東方面ニ出沒シ、本年ノ一月三日ノ廣
東ヨリ來タ電報、及一月六日、九日ノ兩度香港ヨリ來タ電
報ニ依レバ、六時間ニ亙ル所ノ慷慨悲憤ノ演說ヲ致シ、朝
鮮獨立ノ爲メニ非常ナル運動ヲ試ミテ居ルノデアリマス、斯
ノ如キ人間ヲ今日ニ至リマスルマデ、依然トシテ放任セラ
レ、殊ニ昨年ノ如キハ束京ニ參クテ非常ニ優待セラレ、而シ
テ其指揮ヲ受ケ、〓唆セラレ、煽動セラレマシタ一部ノ人間
ハ重キヲ刑罰ニ問ハレテ居ルト云フコトハ、是ハ果シテ朝鮮
統治ノ目的ヲ遠シ、在外不逞鮮人ヲ取締ル上ニ、權威アル
所ノ遣方デアリマスルヤ否ヤ、疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、
(拍手起ル)更ニ私ハ先刻申シマシタ如ク、他ノ機會ヲ得マ
スルガ故ニ多ク申上シマセヌケレドモ、爰ニ一言ダケ私ノ附
加ヘテ置キタイ事ハ、今日ノ現在ノ狀熊ニ於テ朝鮮ノ統治
ヲ完成致シマスノニハ、何ト致シテモ、朝鮮人ノ〓育ノ根本
方針ヲ定メナケレバナラヌノデアリマス、果シテ現內閣乃至
朝鮮總督府ハ、此朝鮮人ノ〓育ニ對シテ、確乎タル所ノ根
本方針ヲ持ッテ居ラレマスルカ否ヤ、之ヲ非常ニ疑ハザルヲ
得ヌノデアリマス、百ノ法令ヲ作リ、千ノ制度ヲ變更セラレマ
シテモ、此〓育ノ根本方針ガ定ラザル限リハ、斷ジテ統治ノ目
的ヲ達スルコトハ出來ナイノデアリマス、形式ニ囚ハレ、末葉
ノ事ノミノ計畫ニ依ッテ、例ヘバ學齡兒童ノ學齡ノ年限ヲ變
更致ストカ、或ハ三面、所謂三村ニ一校ヲ置ク方針デ校舎
ノ增設ヲスルトカ、或ハ地理歴史ナドヲ是迄ハ日本ノ讀方
ノ一ニハ加ヘテ居ッタモノヲ、今回ハ改メテ獨立ノ課目トス
ルトカ云フヤウナコトヲ致シタトテ、〓育ノ目的ハ達セラレナ
イ、斯ノ如キハ抑〓末デアリマス、朝鮮人ノ〓育ノ根本方針ヲ
如何ニスルカ、若シ朝鮮人ノ同化ノ方針ヲ以テ朝鮮人ヲ統
治スルナラバ、其朝鮮人ノ同化ニ對スル〓育方針ハ如何ス
ルノデアルカ、私ノ第二回ノ質問ニ對シテ政府フ御答辯ヲ
セラレル所ニ依レバ、朝鮮人ノ精神〓育ニ對シテハ、相當ノ
施設ヲシテ居ルト言ハレテ居リマスルガ、何ヲ以テ朝鮮人ノ
精神〓育ニ對スル施設ヲシテ居ラレルト言ハレマスカ、何モ
無イデハアリマセヌカ、重ネテ言フ、學校ヲ建增ヲスルトカ、學
齡ノ年限ヲ變更スルトカ云フヤウナコトハ、何モ精神〓育ノ
根本ニ關係ハ無イ、此一ツノ目的ヲ達スル確乎タル方針ガ
立ッテ居ラナケレバ、如何ヤウナ事ヲセラレマシテモ、朝鮮ノ
統治ハ完成スルコトハ出來ナイノデアリマス、而モ施政ノ方
針ニ就キマシテモ多大ナ疑ヲ有セザルヲ得ナイ、先刻申シマ
シタ如ク、一視同仁ヲ以テ標準トセラレテ居ルトアリマスガ、
決シテ今日ニ於テ一視同仁ノ方針ハ行ハレテ居ラヌ、是ハ後
ニ申シマスカラ、此所ニハ略スルコトニ致シマスルケレドモ、
甚ダ心外ニ堪ヘマセヌ事ハ、今日ノ朝鮮ノ統治ハ唯ダ聲ノ
ミデアル、聲ノ政治デアルト云フコトヲ私ハ甚ダ遺憾ニ思フ
ノデアリマス、政治ハ國民ノ幸福、國民ノ利益ヲ增進スル實
體デアラネバナラヌ、然ルニ今日ノ朝鮮統治ノ有樣ヲ見マス
レバ聲ノ政治デアル、聲ノミガ一視同仁デアル、差別撤廢デ
アル、而モ事實ニ於テハ何等ノ一視同仁、差別撤廢ヲ發揮
シテ居ラナイ、其施設ノ見ルベキモノガ無イノハ遺憾ニ思ヒ
マス、殊ニ驚クベキ事ハ、朝鮮ノ統治ヲ致スノニ、昨年ノ頃ヨ
リ何カ更ニ方針ヲ改メテ、文化政治ヲ施ク如キコトヲ度こ
御聲明ニナリマス、然ルニ此新總督ノ政治以來一昨年ノ九
月新政治ニ入ッテ以來、警備機關ヲ非常ニ增大セラレタ、是
迄ノ警備ニ對シテ、幾多非難ノアリマシタ憲兵政治ニ對シ
テ非難ガアリマシタガ、今日ニ於テハ寺內伯爵ノ總督ヲセラ
レマシタ當時ノ警備機關ニ對シテ、殆ド人員カラ云ヘバ倍
數以上ニ達シテ居リマス、警察官ダケデモ今日二万幾千、
國境方面ニ於テハ憲兵ガ居ル、而モ非常ニ軍隊ヲ增派シテ
居ルノミナラズ、今日又騎兵ノ一箇旅團ヲ北鮮方面ニ向ケ
ナケレバナラヌト云フコトニナッテ居ル、恐ラクハ西伯利ノ徹
兵ヲスルナラバ、其兵ノ大部分ハ、朝鮮國境ニ殘リハシナイ
カト云フコトヲ心配スルノデアリマス、實ニ一面ニ於テ文化
政治ヲ施クト聲明シ、文化政治ガ警察官ヲ二倍ニモ三倍ニ
モシナケレバ行ハレヌト云フヤウナコトデ、何ノ文化政治デア
リマスカ、斯ノ如キ滑稽ガ世界何レノ處」ニアリマスカ、(「簡
單」ト呼フ者アリ)私ハ意見ノ陳述ヲ許サレテ居リマス、私共
ハ之ニ對シテ非常ナ疑ヲ抱カザルヲ得ナイノデアル、最後ニ
私ハ統治ノ根本ニ就テ一ツノ大キナル疑念ガアリマス、ソレ
ハ朝鮮ノ統治、產業方針ニ對シテ、此內閣ハ如何ナル方針
ヲ持ッテ居ラレルカ疑ハザルヲ得ナイ、昨年ノ反議會ニ於テ
貴族院ニ於テ、唯一ツノ否決セラレマシタモノハ言フマデモ
ナク農事改良株式會社ノ費用デアリマス、之ヲ政府ハ今日
議會ニ出ス意思アルコトヲ、答辯書ニ於テ明白ニ言ッテ居ラ
ルヽ、而モ政府ハ之ヲ言ハルヽニ當ッテ、朝鮮人多數ノ希望
デアルカラ之ヲ出シタ、又將來提案スルト言ハルヽガ、驚入ッ
タル事デアル、私ハ寧ロ是ハ胡麻化シト謂ハナケレバナラヌ、
何故ナラバ六十幾名ノ發起人、是ハ何者ガ發起人ヲ定メタ
ノデアリマスカ、朝鮮各道ニ亙クテ、二人或ハ三人ノ發起人
ヲ定メラレタ、何デ定メラレタカト云フト、此定メ方ハ各道廳
ノ長官ガ人選ヲシテ、而モ此會社ノ内容ガ何物デアルカ知ラ
ズニ、發起人ハ記名調印シタノデアル、若シ「ノウ」ト言ハルヽ
ナラバ、私ハイツ何時デモ其人間ヲ擧ゲマス、其朝鮮人ソレ自
身ガ當時私ニ言ッテ居ル、判ヲ捺ササレタ朝鮮人ソレ自身ガ
言ッテ居ル、ドウ云フ會社デアルカ知ラヌガ、長官ガ判ヲ捺セト
言フコトデ捺シタト言フテ居ル、官ノ干涉ニ依ッテ、官ノ人選ニ
依ラテ、官ガ指定シテ作リ上ゲテ判ヲ捺サセタモノヲ以テ、民意
デアルト云フコトガ何レノ所ニアリマスカ、(拍手起ル)斯樣ナ民
意ト云フコトガ世界何レノ處ニ在リマスカ、斯樣ナ事ヲ申シ
マスカラ、政治ヲ行ッテ種々ナ間違ッタ事ガ出來ルノデアリマス、
更ニ此事ニ就テ後刻申述ベマスケレドモ、斯樣ナ事ヲ致サ
レテ置イテ、而モ他ノ朝鮮人ノ出願シタ會社ハ、無下ニ却
下セラレル、朝鮮ノ補助ノ要求ニ對シテハ無下ニ却下セラ
レ、特ニ日本人ノ或ル一部ノ者ガ土地ノ拂下ヲ受ケ、或ハ貸
下ヲ受ケル、權利ノ賣買ヲ目的トスルモノデアルニ拘ラズー
今日ニ於テ朝鮮ニハ幾多ノ事件ガ惹起サレテ居リマテ、其
惹起サレタ事件ハ、役人ガ拂下ヲ受ケル者ト結托シテ收賄
贈賄ガ行ハレテ、今ノ荒蕪地ノ拂下、賣下、貸下、ヲ致シテ、現
ニ裁判事件ナドモ惹起シテ居ル、斯樣ナ事ヲ致サレテ居ル、
朝鮮統治ニ對シテハ幾多ノ忌ムベキ事ガアリマシタガ、長谷
川總督ノ居ラレマシタ時迄ニハ、朝鮮ニ於ケル利權屋ナル
者ノ橫行ニ對シテハ、相當ニ防ギ得テ居ッタノデアリマス、然
ルニ所謂文化政治ガ布カレテ以來、朝鮮人ノ生活ノ安定
ヲ曾カシ、日本人ノ或ル一部ノ者ノ權利ヲ失ハシムルヤウナ
コトガ出來マシタ、奇怪ナ文化政治デアル、而モ此事ガ原因
シテ、朝鮮人ノ思想ノ惡化ト云フモノハ、單ニ政治上ノ目
的ニ非ズ、政治上ノ惡化ニ非ズ、所謂生活ノ根抵ヲ脅カサ
レルト云フコトカラ、朝鮮人ハ今日ニ於テ非常ニ獨立ノ事
ヲ叫ブヤウニナッタノデアリマス、所謂人心ノ變動惡化ト云
フコトハ是レデアリマス、要スルニ此人心ノ惡化、根本的ニ
喰入ッテ居ル所ノ弊害ヲ今日ニ於テ除去スルニ非ザレバ、朝
鮮ノ統治ハドレ程金ヲ出シ、吾とガ一視同仁、差別撤廢ヲ
唱へ、善政ヲ施クトカ叫ンダ所ガ駄目デアル、所謂朝鮮ハ紛
糾ノ巷ニ彷徨ヒ、遂ニ大事態ヲ惹起シハセヌカ、甚ダ心外ニ
思フノデアリマス、此事件ハ決シテ政黨政派ニ關係シタモノ
デハアリマセヌ、重大ナル-帝國ガ百年ノ大計ヲ定メ、帝
國ノ國防ノ基礎、帝國ノ東洋平和ヲ確立スル上ニ於テ重
大ナル關係デアリマスカラ、願クハ諸君モ共ニ此内閣ニ向ッテ
十分ナル聲明ト、眞面目ナ政治ヲ致スコトノ要求ヲ致サレ
ンコトヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=37
-
038・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 田中武雄君
〔田中武雄君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=38
-
039・田中武雄
○田中武雄君 本員ハ去一月八日浦湖ニ於キマシテ、我
十一師團ノ歩哨ガ、米國軍艦「オルバニー」號ノ機關長「ラ
ングトン」大佐ニ對シマシテ、自分ノ任務ヲ正當ニ執行シタ
ルニ、憲兵隊ハ之ヲ有罪ト認メマシテ、軍法會議ニ附シタト
云フ報道ニ對スル所ノ意見ヲ陳述スル者デゴザイマス、所ガ
今日ハ陸軍大臣ガ之ニ就テノ一切ノ經過ヲ、議會ノ開會
ト共ニ御報告ニ相成ルト云フコトヲ聞イテ居リマシタガ、ド
ウ云フ御都合カ、陸軍大臣ノ之ニ對スル御說明ガ無カッタ
ノデアリマス、私ハ更ニ意見ノ陳述ヲセザルヲ得ザルニ至ッタ
ノデゴザリマシタガ、唯〓參リマシタル報道ニ依リマシテ、私
ガ是マデ確信ヲシテ居リマシタ如ク、總テ私ノ得マシタ報告
調査材料ニ依フテ、何所マデモ此歩哨ハ無罪トナラナケレバ
ナラヌト云フコトヲ確信致シテ居ッタノデゴザイマスガ、此確
信ノ通リ、軍法會議ハ審議ノ結果此步哨ニ無罪ノ宣告ヲ
致シマシタ、(拍手起ル)此判決ニ依リマシテ、總テ私ガ考へ
テ居リマシタ所ノ正當トル解釋ハ、正當ニ解釋セラレタルコ
トヲ洵ニ滿足致シマシテ、私ハ意見ノ陳述ヲ止メマス(拍手
起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=39
-
040・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 早川龍介君
さら
米價調節ニ關スル質問ノ答辯ニ對スル早
川龍介君ノ意見
〔早川龍介君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=40
-
041・早川龍介
○早川龍介君 私ハ極メテ簡單ニ短クヤリマス、先刻一
寸此處デ申シテ置キマシタ通リ、私ノ質問ハ二月三日ニ出
シマシタ、其三日ニ出シマシタ質問ハ御手許ヘ廻ッテ居リマ
スガ、尙ホ念ノ爲メニ一應讀ンデ見マス、極ク半分許リ讀ミ
マス「米價ノ急落スルヲ以テ農家ノ苦痛袖手スルニ忍ヒス
今ヤ農家ノ精算期タル陰曆年末ニ迫リ其ノ窮迫容易ナラ
ス政府ハ相當ノ施設ヲ爲シ救濟スルノ意アリヤ否ヤ」是ガ
私ノ質問致シマシタ要旨デゴザイマス、「昨年來米價ノ激落
ニ就キマシテ、非常ニ各地方ノ農民ハ苦ンデ居リ色ミノ說
ガアリマスガ、免ニ角賣止ヲシテ、一切賣ラヌヤウニシロト云
フコトヲ同盟的ニ申合シタノモアリ、又種々ナル事ヲヤッテ、
其農業者ノ運動ガ、非常ニ或方面カラハ非難ヲ受ケタコト
モ澤山アリマスケレドモ、是ハ要スルノニ總テノ物價ガ未ダ
低落ヲ致シマセヌノニ、單リ米ガ激落ヲ致シテ、サウシテ生
產ニ掛リマス所ノ經費ガ非常ニ多イノデ、差引勘定ガ合ハ
ヌ、故ニ洵ニ差迫ッテ居ルカラ、ドウゾ之ヲ助ケテ貰ヒタイ、ド
ウカ米價ヲ需要者ノ方ノ事マデハ考及ポサズニ、米價ガ騰
リマシタナラバ、農家ハ非常ニ樂ヲスルノデアラウカラ、之ヲ
枚濟シテ吳レト云フコトヲ非常ニ各地方カラ迫ッテ參ッタ、
ンコデ此質問書ヲ出シマシタノハ二月三日デアリマシテ、マ
ダ陰曆カラシマスト暫ク四五日-五六日ノ間ガアッタノデ
アル、故ニ此差迫ッタ所ノ此ノ農民ヲドウ云フ風ニ助ケテ
御遺リニナルノカ、救濟ヲシテ御造リニナラナケレバナラヌコ
トデハナイカ、ソレニ就テドウ云フ御考ガアルカト云フコトヲ
聽イタノデアリマス、然ルニ私ノ此質問ニ關シマシテハ政府
ハ「米穀ノ需要供給ガ均衡ヲ失シ爲メニ米價ノ甚シキ騰落
ヲ惹起スルコトハ農家經濟ニモ亦至大ノ影響ヲ及ホスヘシ、
仍テ政府ハ需給調節ノ目的ヲ以テ之ニ關スル法案ヲ提出
セントス」ト云フノデアル、而シテ又玆ニ米穀法案ト申シマス
モノガ出テ參リマシタ、ンコデ農家ノ米穀ヲ調節スル、斯ウ
云フコトヲ詰リ政府ガヤラレルト云フノデアルガ、昨年來農
家ガ困窮ヲシ、私ノ主眼トシテ承リタイ政府ノ方法-至
急ニ救濟ノ方法ヲ講ジテ貰ヒタイト云フノハ、極ク差當ッタ
應急ノ手段デ何トカ始末ヲシテ貰ハネバ農業者ハ非常ニ
迷惑ヲスル之ヲ譬ヘテ申シマスレバ、非常ニ俄ニ腹痛ガシテ
來タ、之ヲドウカシテ差當リ瘉シテ貰ハネバナラヌト云フコト
ヲ農家ガ迫クテ來テ政府ノ救助ヲ求メル所以デアリマス、然
ルニ之ニ對スル御返事ハ、此調節ヲヤルカラト斯ウ云フノデ
アリマスカラ、是ハ詰リ腹ノ痛カッタ時期ハ濟シデシマッテ、サ
ウシテ是ハ當リ前ノ滋養的ノ方法ヲ執ラレルト云フコトデ
アリマス、全ク私ノ承リマシタ意味ト、此質問ニ對スル返事
トハ全ク相違シテ居ル譯デアリマス、ソレ故ニ今ハ陰曆ノ年
末期ト申スモノハ旣ニ過ギマシタケレドモ、併シ此急難ノ場
合ニ政府ハ救ヒ得ルコトガ出來ヌト云フコトハ、實際ノ上ニ
於テドウ云フ譯デアルカラ救ヘヌノデアルトカ、若クハソレ程
困窮デハナイモノヲ、無暗ニワイ〓〓言ッテ政府ニ迫ッテ來タ
ト政府ハ認メルカラ、之ヲ冷眼視シテ救ハナンダト云フノカ、
ソレヲ承リタイト云フ要旨ヲ申出シタノデアル、(拍手)然ル
ニ政府ハ之ニ對シテハ、腹ノ痛イノハ其時ガ濟ンデシマッタカ
ラ、詰リ滋養ノ成タケ健康ニナルヤウナ樂ヲヤルト云フヤウ
ナ意味ノ方面ニ轉ジタノデス、全ク是ハ非常ニ農民ガ困窮
シマシタ所ヲ救濟スルノ意思ナク、唯ダ其時ヲ過シテ傍觀シ
タニ過ギヌノデアル、故ニ最近米穀法案ト云フモノガ出マシ
テ、各方面デ非常ニンレニ對シテハ、何カ助カルデアラウト云
フノデ、百姓ハ非常ニ喜ンデ居ルヤウデアリマスガ、是ハ永久
的策デアリマシテ、今日舊ノ年末ハ過ギマシタガ、今尙ホ差
迫ッテ居ルノデアルカラ、之ヲ極ク最近ニ何トカシテ御救ニナ
ルトカ、或ハ其事ハ枚ハヌトカ、孰レニ致シマシテモ其確答ガ
承リタイト云フ考デアリマス、是ダケ政府ノ御返事ニ對シテ
再ビ御確答ヲ口上若クハ書面デ承リタイ、(拍手)ソレカラ
帝蠶ノ事ニ就キマシテ一寸數字ノ事ヲ書キマシタ物ガアリ
マスカラ、御許容ヲ得マシテ速記ノ私ノ演說ノ終リニ揭ゲタ
イト思ヒマスカラ、ドウゾ御許容ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=41
-
042・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 是ヨリ議事ニ入リマス、日程ノ
第一、第三、第五、第七、第九、此五案ハ互ニ關聯シテ居リ
マス議案デアリマスカラ、一括シテ議題ニ供シタイト思ヒマ
スガ、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=42
-
043・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ガナケレバ其通リニ取計
ヒマス、日程第一特許法改正法律案、日程第三實用新案
法改正法律案、日程第五意匠法改正法律案、日程第七
商標法改正法律案、日程第九辨理士法案、以上五件ヲ
一括シテ第一讀會ヲ開キマス、山本農商務大臣
第特許法改正法律案(政府提出)
第一讀會
特許法改正法律案
特許法
第一章總則
第一條新規ナル工業的發明ヲ爲シタル者ハ其ノ發明
ニ付特許ヲ受クルコトヲ得
第二條特許權者又ハ特許出願者ハ其ノ發明ノ改良
又ハ擴張ニ係ル新規ノ發明ニ付獨立ノ特許ニ代ヘ追
加ノ特許ヲ受クルコトヲ得
第三條左ニ揭クル發明ニ付テハ之ヲ特許セス
-飮食物又ハ嗜好物
二醫藥又ハ其ノ調舍法
三化學方法ニ依リ製造スヘキ物質
四秩序若ハ風俗ヲ紊リ又ハ衞生ヲ害スルノ虞アル
モノ
第四條本法ニ於テ發明ノ新規ト稱スルハ發明カ左ノ
各號ノ一ニ該當スルコトナキヲ謂フ
特許出願前帝國內ニ於テ公然知ラレ又ハ公然
用井ラレタルモノ
二特許出願前帝國內ニ頒布セラレタル刊行物ニ容
易ニ實施スルコトヲ得ヘキ程度ニ於テ記載セラレタ
ルモノ
第五條特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者カ試驗ノ爲其
ノ者ノ發明ヲ前條各號ノ一ニ該當スルニ至ラシメタル
場合ニ於テ其ノ日ヨリ六月以內ニ其ノ者カ特許ヲ出
願シタルトキハ其ノ者ノ發明ハ之ヲ新規ナルモノト看
做ス
特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者ノ意ニ反シテ其ノ者ノ
發明カ前條各號ノ一ニ該當スルニ至リタル場合ニ於
テ其ノ日ヨリ六月以内ニ其ノ者カ特許ヲ出願シタル
トキ亦前項ニ同シ
第六條,特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者カ政府ノ開設
シ、道府縣若ハ之ニ準スヘキモノノ開設シ若ハ政府ノ
認可ヲ得テ開設スル博覽會又ハ工業所有權保護同
盟條約國ノ版圖內ニ開設スル官設若ハ官許ノ萬國
博覽會ニ出品ノ爲其ノ考ノ發明ヲ第四條各號ノ一
ニ該當スルニ至ラシメタル場合ニ於テ其ノ開會ノ日ヨ
リ六月以内ニ其ノ者カ特許ヲ出願シタルトキハ其ノ
者ノ發明ハ之ヲ新規ナルモノト看做ス
前項ニ揭クル萬國博覽會ヲ除クノ外外國ノ版圖內ニ
開設スル官設又ハ官許ノ博覽會ニ出品スル發明ニ付
保護ヲ與フルノ必要アルトキハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條特許出願ハ一發明每ニ之ヲ爲スヘシ但シ二以
上ノ發明カ牽連シテ利用上一發明ヲ爲スモノト認メ
得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第八條同一發明ニ付テハ最先ノ出願者ニ限リ特許ス
但シ同日ノ各別ノ出願者アルトキハ出願者ノ協議ニ
依リ特許シ協議調ハサルトキハ共ニ特許セス
第九條二以上ノ發明ヲ包含スル特許出願ヲ二以上
ノ出願ト爲シタルトキハ各出願ハ最初出願ノ時ニ於テ
之ヲ爲シタルモノト看做ス
追加ノ特許出願ヲ獨立ノ特許出願ニ、獨立ノ特許出
願ヲ追加ノ特許出願ニ變更シタルトキ亦前項ニ同シ
第十條特許出願カ特許ヲ受クルノ權利ノ承繼人ニ非
サル者又ハ特許ヲ受クルノ權利ヲ冒認シタル者ノ爲シ
タルモノナルニ因リ特許ヲ受クルコト能ハサルニ至リタ
ル場合ニ於テ其ノ特許出願ノ後ニ爲シタル正當權利
者ノ出願ハ其ノ特許ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル
特許出願ノ時ニ於テ之ヲ爲シタルモノト看做ス但シ
特許ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル日ヨリ六十日ヲ、
出願公告アリタル場合ニ於テハ出願公告ノ日ヨリ六
十日ヲ經過シタル後ノ出願ニ係ルトキハ此ノ限ニ在ラ
ス
第十一條特許カ特許ヲ受クルノ權利ノ承繼人ニ非サ
ル者又ハ特許ヲ受クルノ權利ヲ冒認シタル者ノ受ケタ
ルモノナルニ因リ其ノ特許ヲ無效トスル審決確定シ又
ハ判決アリタル場合ニ於テ其ノ特許ノ出願ノ後ニ爲シ
タル正當權利者ノ出願ハ其ノ無效ト爲リタル特許ノ
出願ノ時ニ於テ之ヲ爲シタルモノト看做ス但シ其ノ特
許ノ出願公告ノ日ヨリ五年ヲ經過シタル後ノ出願又
ハ其ノ審決確定シ若ハ判決アリタル日後ノ出願ニ係
ルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十二條特許ヲ受クルノ權利ハ之ヲ移轉スルコトヲ
得但シ擔保ニ供スルコトヲ得ス
特許ヲ受クルノ權利カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共
有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ
讓渡スルコトヲ得ス
特許ヲ受クルノ權利ノ承繼ハ承繼人カ特許出願前ニ
在リテハ特許ヲ出願シ特許出願後ニ在リテハ出願人
名義ノ變更ヲ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ
對抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ出願又ハ屆出ニ係ル
トキハ關係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ第
三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第十三條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル法
定又ハ指定ノ期間ノ計算ハ左ノ規定ニ依ル
-期間ノ初日ハ之ヲ算入セス但シ其ノ期間カ午前
零時ヨリ始ルトキハ此ノ限ニ在ラス
二期間ヲ定ムルニ月又ハ年ヲ以テシタルトキハ曆ニ
從フ月又ハ年ノ始ヨリ期間ヲ起算セサルトキハ其ノ
期間ハ最後ノ月又ハ年ニ於テ其ノ起算日ニ應當ス
ル日ノ前日ヲ以テ滿了ス但シ最後ノ月ニ應當日ナ
キトキハ其ノ月ノ末日ヲ以テ滿了ス
特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ニ付テノ法定又
ハ指定ノ期間ノ末日カ日曜日又ハ一般ノ祝祭日ニ當
ルヘキトキハ其ノ日ノ翌日ヲ以テ其ノ期間ノ末日トス
第十四條被用者、法人ノ役員又ハ公務員ノ其ノ勤務
ニ關シ爲シタル發明ニ付テハ性質上使用者、法人又ハ
職務ヲ執行セシムル者ノ業務範圍ニ屬シ且其ノ發明
ヲ爲スニ至リタル行爲カ被用者法人ノ役員又ハ公務
員ノ任務ニ屬スル場合ノモノヲ除クノ外豫メ使用者、
法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ヲシテ特許ヲ受クルノ
權利又ハ特許權ヲ承繼セシムルコトヲ定メタル契約又
ハ勤務規程ノ條項ハ之ヲ無效トス
使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ハ被用者、法
人ノ役員又ハ公務員ノ其ノ勤務ニ關シ爲シタル發明
ニシテ性質上使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル
者ノ業務範圍ニ屬シ且其ノ發明ヲ爲スニ至リタル行
爲カ被用者、法人ノ役員又ハ公務員ノ任務ニ屬スル
場合ノモノニ付其ノ被用者、法人ノ役員若ハ公務員
カ特許ヲ受ケタルトキ又ハ其ノ者ノ特許ヲ受クルノ權
利ヲ承繼シタル者カ特許ヲ受ケタルトキハ其ノ發明ニ
付實施權ヲ有ス
被用者、法人ノ役員又ハ公務員ハ前項ノ發明ニ付テ
ノ特許ヲ受クルノ權利又ハ特許權ヲ豫メ定メタル契
約又ハ勤務規程ニ依リ使用者、法人又ハ職務ヲ執行
セシムル者ヲシテ承繼セシメタル場合ニ於テ相當ノ補
償金ヲ受クルノ權利ヲ有ス
使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ニ於テ既ニ支
拂ヒタル報酬アルトキハ栽判所ハ前項ノ補償金ヲ定
ムルニ付之ヲ斟酌スルコトヲ得
本條ニ於テ法人ノ役員ト稱スルハ法人ノ業務ヲ執行
スル役員ヲ謂ヒ公務員ト稱スルハ刑法第七條第一項
ノ公務員ヲ謂フ
第十五條特許出願ニ係ル發明カ軍事上祕密ヲ要シ
又ハ軍事上若ハ公益上必要ナルモノナルトキハ特許
ヲ與ヘス、特許ヲ受クルノ權利ヲ政府ニ於テ收用シ又
ハ制限ヲ附シテ特許ヲ與フルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ特許ヲ與ヘス、權利ヲ牧用シ又ハ制
限ヲ附シテ特許ヲ與フル場合ニ於テハ政府ハ相當ノ
補償金ヲ支給ス
收用及補償金支給ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條帝國內ニ住所ヲモ居所ヲモ有セサル者ハ命
令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外帝國內ニ住所又
ハ居所ヲ有スル代理人ニ依ルニ非サレハ特許ニ關ス
ル出願、請求其ノ他ノ手績ヲ爲シ又ハ特許權若ハ特
許ニ關スル權利ヲ主張スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ依リ出願若ハ請求又ハ主張ヲ爲ス代理
人ハ特ニ授ケラレタル權限ノ外本法又ハ本法ニ基キ
テ發スル命令ニ依ル手續竝民事訴訟、私訴及告訴ニ付
本人ヲ代表ス
特許權者又ハ特許權ニ關シ登錄シタル權利ヲ有スル
者ノ代理人ニシテ第一項ノ規定ニ依リ手續又ハ主張
ヲ爲スモノノ選任若ハ變更又ハ代理權若ハ其ノ變更
消滅ハ登錄ヲ受クルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對
抗スルコトヲ得ス
第十七條特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲
ス者ノ代理人ニシテ前條第三項ニ規定スル代理人ニ
非サルモノノ選任若ハ變更又ハ代理權若ハ其ノ變更
消滅ハ特許局ニ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ特許局
ニ對抗スルコトヲ得ス
第十八條特許ニ關スル代理人數人アルトキハ特許局
ニ對シテハ共同又ハ各別ニ本人ヲ代表ス
第十九條特許局長ニ於テ特許ニ關スル代理人ヲ適
當ナラスト認ムルトキハ其ノ改任ヲ命スルコトヲ得
特許局長ハ又審判長ニ於テ當事者、參加人若ハ特
許異議申立人又ハ其ノ代理人カ手續又ハ演述ヲ爲
スノ能力ナシト認ムルトキハ辨理士ヲ以テ代理セシム
ヘキコトヲ命スルコトヲ得
前二項ニ規定スル命令アリタル後第一項ノ代理人又
ハ前項ノ當事者、參加人、特許異議申立人若ハ代理
人ノ特許局ニ對シ爲シタル行爲ハ之ヲ無效ト爲スコ
トヲ得
第二十條特許局ニ對シ爲スヘキ事項ノ代理業ハ辨理
士ニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
第二十一條數人共同シテ特許ニ關スル出願、請求其
ノ他ノ手續ヲ爲ス者又ハ特許權ノ共有者ハ特許局ニ
對シ各人互ニ代表スルモノトス但シ特ニ代表者ヲ定
メ特許局ニ屆出テタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十七條ノ規定ハ前項但書ノ代表者ニ付之ヲ準用
ス
第二十二條特許權者帝國内ニ住所ヲモ居所ヲモ有
セサルトキハ第十六條第二項ノ代理人ノ住所又ハ居
所、其ノ代理人ナキモノニ在リテハ特許局ノ所在地ヲ
以テ民事訴訟法第十七條ノ財產所在地ト看做ス
第二十三條特許局長ハ外國又ハ遠隔若ハ交通不便
ノ地ニ在ル者ノ爲請求ニ依リ又ハ職權ヲ以テ特許局
ニ對シ手續ヲ爲スヘキ法定ノ期間ヲ延長スルコトヲ得
第二十四條出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲シタル者之ニ
關スル爾後ノ行爲ニ付指定ノ期間ヲ懈怠シタルトキ
又ハ登錄ヲ受クル際納付スヘキ特許料ノ納付ヲ怠リ
タルトキハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外特許
局長ハ其ノ出願請求其ノ他ノ手續ヲ無效ト爲スコト
ヲ得
前項ノ規定ニ依リ出願、請求其ノ他ノ手續ヲ無效ト
爲シタル場合ニ於テ其ノ期間ノ懈怠カ宥恕スヘキ障
礙ニ因ルモノト認ムルトキハ其ノ障礙ノ止ミタル日ヨ
リ十四日以内ニシテ其ノ期間滿了後一年以內ノ請
求ニ依リ特許局長ハ懈息ノ結果ヲ免レシムルコトヲ得
第二十五條天災其ノ他避クヘカラサル事變ニ因リ法
定ノ期間ヲ懈怠シタル場合ニ於テ其ノ障礙ノ止ミタル
日ヨリ十四日以內ニシテ其ノ期間滿了後一年以內
ノ請求ニ依リ特許局長又ハ審判長ハ懈怠ノ結果ヲ免
レシムルコトヲ得但シ第七十四條ニ規定スル特許異
議ノ申立期間ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十六條特許局ニ差出スヘキ書類其ノ他ノ物件ニ
付差出ノ效力ヲ生スヘキ時期ニ關シテハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第二十七條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依
リ特許權者又ハ特許ニ關スル權利ヲ有スル者ノ爲シ
タル又ハ其ノ者ニ對シ爲サレタル手續ノ效力ハ其ノ特
許權又ハ特許ニ關スル權利ノ承繼人ニ及フ
第二十八條特許局ニ事件ノ繋屬中ニ於テ特許權又
ハ特許ニ關スル權利ノ移轉アリタルトキハ特許局ハ承
繼人ニ對シ手續ヲ續行スルコトヲ得
第二十九條本法ニ規定スルモノノ外特許局ニ繫ル手
續ノ中斷中止及中斷中止シタル手續ノ續行ニ關シテ
ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十條特許ニ關シ證明、特許證ノ複本、書類ノ謄
本若ハ圖面ノ調製ヲ求メ又ハ書類ノ閲覧若ハ謄寫ヲ
爲サムトスル者ハ特許局長ニ之ヲ申請スルコトヲ得但
シ特許局長ニ於テ秘密ヲ要スト認ムルモノニ付テハ之
ヲ許可セス
第三十一條軍事上祕密ヲ要スル發明ニ付テハ本法
ニ規定スルモノノ外命令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコ
トヲ得
第三十二條外國人ニシテ帝國內ニ住所ヲモ營業所
ヲモ有セサルモノハ條約又ハ之ニ準スヘキモノニ規定ア
ル場合ヲ除クノ外特許權又ハ特許ニ關スル權利ヲ享
有スルコトヲ得ス
第三十三條特許ニ關シ條約又ハ之ニ準スヘキモノニ
別段ノ規定アルトキハ其ノ規定ニ從フ
第二章特許權
第三十四條特許權ハ登錄ニ依リ發生ス
第三十五條特許權者ハ物ノ特許發明ニ在リテハ其
ノ物ヲ製作、使用、販賣又ハ擴布スルノ權利ヲ專有シ
方法ノ特許發明ニ在リテハ其ノ方法ヲ使用シ及其ノ
方法ニ依リテ製作シタル物ヲ使用、販賣又ハ擴布スル
ノ權利ヲ專有ス
新規ナル同一ノ物ハ同一ノ方法ニ依リテ製作シタル
モノト推定ス
特許權カ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル實用新案權
ト牴觸スル場合又ハ特許發明カ其ノ出願ノ日前ノ出
願ニ係ル登錄實用新案ヲ利用スルモノナル場合ニ於テ
ハ特許權者ハ實用新案權者ノ實施許諾アルニ非サレ
ハ其ノ特許發明ヲ實施スルコトヲ得ス
第三十六條特許權ノ效力ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル
モノニ及ハス
-〓究又ハ試驗ノ爲ニスル特許發明ノ實施
二單ニ帝國內ヲ通過スルニ過キサル運輸具又ハ其
ノ装置
三特許出願ノ際ヨリ帝國內ニ在ル物又ハ第一號ノ
實施ニ依リ製作シタル物
第三十七條特許出願ノ際現ニ善意ニ帝國內ニ於テ
其ノ發明實施ノ事業ヲ爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者
ハ其ノ特許發明ニ付事業ノ目的タル發明範圍內ニ於
テ實施權ヲ有ス
第三十八條特許ノ無效審判請求ノ登錄前善意ニシ
テ左ノ各號ノ一ニ該當シ帝國内ニ於テ其ノ發明實施
ノ事業ヲ爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者ハ其ノ特許發
明ニ付事業ノ目的タル發明範圍內ニ於テ實施權ヲ有
ス
同一發明ニ對スル二以上ノ特許中其ノ一カ無
效ト爲リタル場合ニ於ケル登錄ヲ受ケタル原特許
權者
二特許ヲ無效トシ同一發明ニ付正當權利者ニ特
許ヲ與ヘタル場合ニ於ケル登錄ヲ受ケタル原特許
權者
三前二號ニ揭ケタル場合ニ於テ其ノ無效ト爲リタ
ル特許權ニ付實施權ヲ得テ其ノ登錄ヲ受ケタル者
但シ實施權力登錄ナキモ第五十二條第一項ノ效力
ヲ有スル場合ハ登錄アルヲ要セス
特許出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出願ニ係リ其ノ特許
權ト牴觸スル實用新案權ノ存續期間滿了シタル場合
ニ於テ其ノ實用新案權ニ付實施權ヲ得テ登錄ヲ受ケ
タル者ハ其ノ特許發明ニ付原實施權ノ範圍内ニ於テ
實施權ヲ有ス但シ原實施權力登錄ナキモ實用新案法
第十三條第一項ノ效力ヲ有スル場合ハ登錄アルヲ要
セス
特許權者ハ前二項ノ規定ニ依ル實施權者ヨリ相當ノ
補償金ヲ受クルノ權利ヲ有ス
第三十九條特許出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出願ニ
係リ其ノ特許權ト牴觸スル實用新案權ノ存續期間
滿了後ニ於ケル原實用新案權者ハ其ノ特許發明ニ
付原權利ノ範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
第四十條特許發明カ軍事上祕密ヲ要シ又ハ軍事
上若ハ公益上必要ナルモノナルトキハ特許權ヲ制限シ
若ハ政府ニ於テ收用シ、特許ヲ取消シ又ハ政府ニ於テ
特許發明ヲ實施スルコトヲ得
特許權ノ收用アリタルトキハ其ノ特許發明ニ關スル特
許權以外ノ權利消滅ス
第一項ノ規定ニ依ル制限、收用、取消又ハ實施ノ場
合ニ於テハ政府ハ相當ノ補償金ヲ特許權者又ハ實施
權者ニ支給ス
收用、實施及補償金支給ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ
定ム
第四十一條特許アリタル後ニ於テ引續キ三年以上正
當ノ理由ナクシテ其ノ發明カ帝國內ニ適當ニ實施セ
ラレサル場合ニ於テ公益上必要アルトキハ特許局長
ハ利害關係人ノ請求ニ依リ其ノ實施權ヲ許與シ若ハ
其ノ特許ヲ取消シ又ハ職權ヲ以テ其ノ特許ヲ取消ス
コトヲ得
特許權者又ハ請求人ハ前項ノ規定ニ依ル實施權許
與若ハ特許取消ノ處分又ハ前項ノ請求ノ却下ニ對シ
不服アルトキハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第一項ノ規定ニ依リ實施權ヲ許與スル場合ニ於テハ
特許局長ハ補償金ニ付テモ亦之カ決定ヲ爲スヘシ
第四十二條前條ノ規定ニ依リ實施權ヲ取得シタル者
適當ニ其ノ特許發明ヲ實施セサル場合ニ於テハ特許
局長ハ利害關係人ノ請求ニ依リ又ハ職權ヲ以テ其ノ
實施權ヲ取消スコトヲ得
實施權者又ハ請求人ハ前項ノ規定ニ依ル取消ノ處
分又ハ前項ノ請求ノ却下ニ對シ不服アルトキハ訴願
ヲ提起スルコトヲ得
第四十三條特許權ノ存續期間ハ出願公告アリタル
場合ニ在リテハ其ノ出願公告ノ日ヨリ、出願公告ナカ
リシ場合ニ在リテハ特許ノ日ヨリ十五年ヲ以テ終了
ス
第十條ノ規定ニ依リ正當權利者ニ特許ヲ與ヘタル場
合ニ於テ特許ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル特許出
願ニ付出願公告アリタルトキハ前項ノ十五年ノ期間
ハ其ノ出願公告ノ日ヨリ翌日ヨリ之ヲ起算ス
第十一條ノ規定ニ依リ正當權利者ニ特許ヲ與ヘタル
トキハ第一項ノ十五年ノ期間ハ無效ト爲リタル特許
ノ出願公告ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
追加ノ特許權カ獨立ノ特許權ト爲リタルトキハ其ノ
存續期間ハ原特許權ノ殘期間トス第五十三條第二
項ノ規定ニ依ル各別ノ特許權ノ存續期間ニ付亦同シ
特許權ノ存續期間ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ三年以
上十年以下之ヲ延長スルコトヲ得
第四十四條特許權ハ制限ヲ附シ又ハ附セスシテ之ヲ
移轉スルコトヲ得
特許權カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共
有者ノ同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ得ス
第四十五條特許權ノ移轉、抛棄ニ依ル消滅若ハ處分
ノ制限又ハ特許權ヲ目的トスル質權ノ設定、移轉、變
更、消滅若ハ處分ノ制限ハ其ノ登錄ヲ受クルニ非サレ
ハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第四十六條追加ノ特許權ハ原特許權ニ附隨ス
第四十七條特許權カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共
有者ハ契約ヲ以テ別段ノ定ヲ爲ササルトキハ他ノ共有
者ノ同意ヲ要セスシテ特許發明ヲ實施スルコトヲ得
第四十八條特許權者ハ特許發明ノ實施ヲ他人ニ許
諾スルコトヲ得
特許權カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共
有者ノ同意アルニ非サレハ特許發明ノ實施ヲ他人ニ
許諾スルコトヲ得ス
第四十九條特許權者ハ他人ノ特許發明又ハ登錄實
用新案ヲ實施スルニ非サレハ自己ノ特許發明ヲ實施
スルコト能ハサル場合ニ於テ其ノ他人カ正當ノ理由ナ
クシテ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ他人ノ實施許
諾ヲ得ルコト能ハサルトキハ審判ヲ請求スルコトヲ得
但シ他人ノ特許發明ノ實施ヲ要スル場合ニ於テハ其
ノ實施セラルヘキ發明ノ特許權發生ノ日ヨリ三年ヲ
經過セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ特許發明ヲ實施セラルル者其ノ實
施ヲ必要トスル相手方ノ特許發明ニ付實施ノ許諾ヲ
求メタル場合ニ於テ其ノ相手方カ正當ノ理由ナクシ
テ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ相手方ノ實施許諾
ヲ得ルコト能ハサルトキハ審判ヲ請求スルコトヲ得
第五十條第四十一條又ハ前條ノ規定ニ依ル實施
權者ハ特許權者又ハ實用新案權者ニ對シ相當ノ補
償金ヲ支拂フヘシ
前項ノ實施權者ハ補償金ノ支拂ヲ爲シ又ハ支拂ヲ爲
スコト能ハサル場合ニ於テハ供託ヲ爲スニ非サレハ其
ノ特許發明又ハ登錄實用新案ヲ實施スルコトヲ得ス
但シ第四十一條ノ決定、審決又ハ判決ノ確定前ト雖
決定、審決又ハ判決ニ依ル補償金ニ相當スル金額ヲ
供託シタルトキハ實施スルコトヲ得
第五十一條第四十九條ノ規定ニ依ル實施權ハ其ノ
特許權ニ附隨ス
特許發明ノ實施權ニシテ前項ノ實施權ニ非サルモノ
ハ其ノ實施ノ事業ト共ニスル場合又ハ特許權者ノ承
諾アル場合ニ於テハ之ヲ移轉スルコトヲ得
第五十二條特許發明ノ實施權ハ之ヲ登錄シタルトキ
ハ其ノ特許權ヲ爾後取得シタル者及其ノ特許權ヲ目
的トスル爾後設定ノ質權ヲ有スル者ニ對シテモ其ノ
效力ヲ生ス
第十四條第二項又ハ第三十七條乃至第三十九條
ノ規定ニ依ル實施權ハ其ノ登錄ナキ場合ト雖前項ノ
效力ヲ有ス
第四十九依ノ規定ニ依ル實施權ハ其ノ登錄前設定
ノ質權ヲ有スル者ニ對シテモ其ノ效力ヲ生ス
第四十五條ノ規定ハ實施權ノ移轉、變更、消滅若ハ
處分ノ制限又ハ實施權ヲ目的トスル質權ノ設定、移
轉、變更、消滅、若ハ處分ノ制限ニ付之ヲ準用ス
第五十三條特許權者ハ特許發明ノ明細書又ハ圖面
カ不完全ニ作製セラレタルコトヲ發見シタルトキハ左
ノ各號ノ一ニ揭クル事項ヲ目的トスル場合ニ限リ其
ノ明細書又ハ圖面ノ訂正ノ許可ノ審判ヲ請求スルコ
トヲ得
-特許請求範圍ノ減縮
二誤記ノ訂正
三不明瞭ナル記載ノ釋明
特許權者ハ錯誤ニ因リ二以上ノ發明ヲ一特許出願
ニ包含セシメタルコトヲ疏明シタル場合ニ限リ各發明
每ニ各別ノ特許權ト爲スノ許可ノ審判ヲ請求スルコト
ヲ得
第一項第一號ノ場合ニ於テハ其ノ殘部、前項ノ場合
ニ於テハ其ノ各發明カ特許出願ノ際獨立シテ新規ノ
發明ナルコトヲ要ス
第五十四條前條ノ場合ニ於テハ特許請求範圍ヲ實
質上擴張シ又ハ實質上變更スルコトヲ得ス
第五十五條特許權者ハ制限附移轉ノ特許權ヲ有ス
ル者、質權者又ハ第十四條第二項若ハ第四十八條
ノ規定ニ依ル實施權者ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ特許
權ヲ抛棄シ又ハ第五十三條ノ規定ニ依ル許可ノ審
判ノ請求ヲ爲スコトヲ得ス
第五十六條先取特權又ハ質權ハ本法ニ依リ受クへ
キ補償金其ノ他特許權ノ對價又ハ特許發明ノ實施
ニ對シテ受クヘキ金錢若ハ金錢以外ノ物ニ對シテモ之
ヲ行フコトヲ得但シ其ノ拂渡又ハ引渡前ニ差押ヲ爲
スヘシ
第五十七條特許カ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ審
判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
-特許カ第一條乃至第三條、第八條又ハ第三十
二條ノ規定ニ違反シテ與ヘラレタルトキ
二特許カ特許ヲ受クルノ權科ノ承繼人ニ非サル者
又ハ特許ヲ受クルノ權利ヲ冒認シタル者ニ對シテ
與ヘラレタルトキ
三特許發明ノ明細書又ハ圖面ニ其ノ實施ニ必要
ナル事項ヲ故意ニ記載セス又ハ其ノ實施ヲ不能若
ハ困難ナラシムル爲必要ナラサル事項ヲ故意ニ記
載シタルトキ
四特許カ第三十三條ニ規定スル條約又ハ之ニ準
スヘキモノニ違反シテ與ヘラレタル場合ニ於テ其ノ
違反カ第一號乃至前號ニ揭クルモノニ準スヘキモ
ノナルトキ
五特許カ第三十二條ノ規定ニ違反スルニ至リタル
トキ又ハ特許カ第三十三條ニ規定スル條約若ハ之
ニ準スヘキモノニ違反スルニ至リタル場合ニ於テ其
ノ違反カ第一號乃至第三號ニ掲クルモノニ準スヘ
キモノナルトキ
第五十三條ノ許可カ同修第三項又ハ第五十四條ノ
規定ニ違反シタルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘ
シ
特許又ハ第五十三條ノ許可ハ特許權消滅後ト雖前
二項ノ規定ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
第五十八條特許カ無效ト爲リタルトキハ特許權ハ初
ヨリ存在セサリシモノト看做ス但シ前條第一項第五
號ノ規定ニ依リ特許カ無效ト爲リタルトキハ特許權
ハ特許カ同號ニ該當スルニ至リタル時ヨリ存在セサリ
シモノト看做ス
第五十三條ノ許可カ無效ト爲リタルトキハ初ヨリ許
可ナカリシモノト看做ス
特許ノ取消又ハ第四十二條ノ規定ニ依ル實施權ノ
取消アリタルトキハ特許權又ハ實施權ハ爾後其ノ效
力ナキモノトス
第五十九條特許權ハ相續人ナキトキハ消滅ス
第六十條特許カ取消サレ若ハ無效ト爲リ又ハ特許
權カ消滅シタル場合ニ於テ追加ノ特許權アルトキハ
其ノ追加ノ特許權ハ獨立ノ特許權ト爲ル第六十九
條第二項ノ規定ニ依リ特許權カ消滅シタルトキハ同
條第一項ニ規定スル追納期間ノ滿了ノ時獨立ノ特
許權ト爲ル
前項ノ場合ニ於テ獨立ノ特許權ト爲リタルモノニ係
ル追加ノ特許權アルトキハ其ノ追加ノ特許權ハ獨立
ト爲リタル特許權ノ追加ノ特許權ト爲ル
前二項ノ場合ニ於テハ其ノ日ヨリ六十日以內ニ變更
ノ登錄ヲ申請スルニ非サレハ第一項ノ特許權又ハ前
項ノ追加ノ特許權ハ消滅ス
第三章登錄、特許證、公報及明細書、特許標記
竝特許料
第六十一條特許局ニ特許原簿ヲ備ヘ特許權及實施
權竝之ヲ目的トスル質權ノ設定、保存、移轉、變更、
消滅、處分ノ制限其ノ他法令ニ定ムル事項ヲ登錄ス
登錄ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十二條特許スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ
判決アリタルトキハ之ヲ特許原簿ニ登錄シ特許證ヲ
下付ス第五十三條ノ許可ノ審決確定シ又ハ判決ア
リタルトキ亦同シ
第六十三條特許局ハ特許公報及特許發明明細書
ヲ發行シ本法ニ規定スル事項其ノ他特許發明ニ關ス
ル必要ナル事項ヲ之ニ記載スヘシ但シ軍事上祕密ヲ
要スル特許發明ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第六十四條特許標記ハ特許ニ係ル物ニ之ヲ附スヘシ
物ノ性質ニ依リ其ノ物ニ附スルコト能ハサルトキハ其
ノ物ノ容器包装ノ類ニ之ヲ附スヘシ
特許權者ハ實施權者又ハ第三十六條第一號ノ實施
ヲ爲ス者ニ對シ特許標記ヲ附スヘキコトヲ請求スルコ
トヲ得
特許標記ヲ附セサリシ爲特許ニ係ル物ナルコトヲ知ラ
スシテ特許權ヲ侵害シタル者ニ對シテハ損害賠償ノ
請求ヲ爲スコトヲ得ス
前三項ノ規定ハ登錄ニ係ル物ノ要部ヲ分離シテ販賣
又ハ擴布スル場合ニ之ヲ準用ス
第六十五條特許權ノ登錄ヲ受クル者又ハ特許證主
ハ特許料トシテ第四十三條第一項ニ規定スル十五
年ノ各年ニ付每件左ノ金額ヲ納付スヘシ
一第一年乃至第三年每年十圓
二第四年及第五年每年十五圓
三第六年乃至第九年每年二十五圓
四第十年乃至第十二年每年三十五圓
五第十三年乃至第十五年每年五十圓
特許權存續期間延長ノ登錄ヲ受クル者又ハ其ノ特
許證主ハ特許料トシテ每件左ノ金額ヲ納付スヘシ
-第一年乃至第三年每年百圓
二第四年乃至第六年每年百五十圓
三第七年乃至第十年每年二百圓
追加ノ特許權ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル
時特許料トシテ毎件一時ニ三十圓ヲ納付スヘシ
特許權存續期間延長ノ場合ニ於テ追加ノ特許權ア
ルトキハ其ノ登錄ヲ受クル時特許料トシテ每件一時
ニ六十圓ヲ納付スヘシ
第五十三條第二項ノ規定ニ依ル各別ノ特許權ノ登
錄ヲ受クル者又ハ特許證主ハ各別ノ特許權ニ付原
特許權ノ當該年分ヨリノ特許料ヲ納付スヘシ但シ旣
納ノ特許料ノ金額ハ納付スヘキ特許料ノ金額中ニ之
ヲ充當ス
追加ノ特許權力獨立ノ特許權ト爲リタル場合又ハ第
十一條ノ規定ニ依リ正當權利者ニ特許ヲ與ヘタル場
合ニ於テハ特許權ノ登錄ヲ受クル者又ハ特許證主ハ
原特許權ノ當該年分ヨリノ特許料ヲ納付スヘシ
第六項ノ規定ハ國ニ屬スル特許權ニ付之ヲ適用セス
第六十六條前條第一項ノ規定ニ依ル第一年乃至第
三年ノ特許料ハ一時ニ之ヲ前納シ其ノ第四年以後
ノ特許料及前條第二項ノ規定ニ依ル特許料ハ前年
ニ之ヲ納付スヘシ但シ數年分ヲ前納スルコトヲ妨ケス
特許局長ハ前條第一項ノ規定ニ依ル第一年乃至第
三年ノ特許料又ハ前條第三項ノ規定ニ依ル特許料
ヲ納付スヘキ者カ其ノ特許發明ノ發明者又ハ其ノ相
續人ナル場合ニ於テ之ヲ納付スルノ資力ナシト認ムル
トキハ二年以內之カ納付ヲ猶豫シ又ハ之ヲ減免スル
コトヲ得
第六十七條利害關係人ハ特許料ヲ納付スヘキ者ニ
代リ納付スルコトヲ得
第六十八條既納ノ特許料ハ之ヲ還付セス
第六十九條特許證主ハ特許料ヲ納付スヘキ期限ヲ
經過シタル後ト雖六月間ヲ限リ特許料ヲ追納スルコ
トヲ得此ノ場合ニ於テハ第六十五條ニ規定スル特許
料ノ二倍ニ相當スル金額ヲ特許料トシテ納付スヘシ
前項ニ規定スル追納期間內ニ特許料ヲ追納セサルト
キハ特許料ヲ納付スヘキ期限經過ノ時ニ遡リ特許權
ハ消滅シタルモノト看做ス
第四章審査
第七十條特許ノ出願アリタルトキハ審査官ヲシテ
之ヲ審查セシム
第七十一條第九十一條ノ規定ハ審査官ノ審査ノ干
與ヨリノ除斤ニ付之ヲ準用ス
第七十二條審査官ハ出願ヲ拒絕スヘキモノト認メタ
ルトキハ出願人ニ對シ拒絕ノ理由ヲ示シ期間ヲ指定
シテ之ニ意見書提出ノ機會ヲ與フヘシ
第七十三條審査官ハ出願拒絕ノ理由ヲ發見セサル
トキハ出願公告ヲ爲スヘキモノト決定スヘシ
前項ノ規定ニ依ル決定アリタルトキハ特許局ハ出願
年月日發明者ノ氏名、出願人ノ氏名、名稱及住所竝
出願ノ要旨ヲ特許公報ニ揭載シテ出願公〓ヲ爲スヘ
シ
出願公告ノアリタルトキハ其ノ出願ニ係ル發明ニ付出
願公告ノ時ヨリ特許權ノ效力ヲ生シタルモノト看做
ス
特許局ハ出願公告ト同時ニ出願書類及其ノ附屬物
件ヲ特許局ニ於テ竝命令ノ定ムル所ニ依リ出願書類
及其ノ附屬物件ヲ其ノ他ノ場所ニ於テ公衆ノ閲覽ニ
供スヘシ
特許局ハ出願人ノ請求ニ依リ出願公告ノ決定アリタ
ル日ヨリ六月以内出願公告ヲ猶豫スルコトヲ得
軍事上祕密ヲ要スル發明ノ出願ニ付テハ出願公告ノ
決定ヲ爲サスシテ査定ヲ爲スヘシ
第七十四條出願公告アリタルトキハ何人ト雖出願公
告ノ日ヨリ二月以內ニ特許局ニ特許異議ノ申立ヲ
爲スコトヲ得
特許異議ノ申立ハ特許異議申立書ヲ提出シテ之ヲ
爲シ理由ヲ之ニ記載スヘシ
利害關係人ハ特許異議ノ決定アル迄其ノ特許異議
ニ參加スルコトヲ得
特許異議ノ參加ニ關シテハ審判ノ參加ニ關スル規定
ヲ準用ス
第七十五條特許異議ノ申立アリタルトキハ審査官ハ
特許異議申立書ノ副本ヲ出願人ニ送達シ期間ヲ指
定シテ之ニ答辯書提出ノ機會ヲ與フヘシ
審査官ハ前條第一項ニ規定スル特許異議申立期間
及前項ノ期間ノ經過後特許異議ノ決定ヲ爲シ同時
ニ其ノ出願ニ對シ特許スヘキヤ否ヲ査定スヘシ
特許異議ノ決定ニハ理由ヲ附スヘシ
特許異議ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得
ス
審査官ハ特許異議申立ノ結果必要アルトキハ特許
發明ノ明細書又ハ圖面ノ訂正ヲ命スルコトヲ得
第七十六條特許異議ニ關シ爲シタル證據調ノ費用ニ
付テハ〓判ニ關スル費用ノ規定ヲ準用ス
第七十七條特許異議ノ申立ナキトキハ審査官ハ査
定ヲ爲スヘシ
第七十八條出願公告後出願ノ抛棄、取下若ハ無效
處分アリタルトキ、拒絕ノ査定若ハ審決確定シ若ハ判
決アリタルトキ又ハ第五十八條第一項但書ノ場合
ヲ除クノ外特許カ無效ト爲リタルトキハ第七十三條
第三項ノ規定ニ依ル效カハ初ヨリ生セサリシモノト看
做ス
第七十九條第十條又ハ第十一條ニ規定スル正當權
利者ノ出願アリタルトキハ審査官ハ既ニ出願公告ヲ
爲シタルモノニ付テハ更ニ出願公告ヲ爲スコトナク査
定ヲ爲スヘシ
第八十條第百條及第百十八條第一項ノ規定ハ
審査ニ付之ヲ準用ス
第八十一條査定ニハ理由ヲ附スヘシ
第八十二條本法ニ規定スルモノノ外審査ニ關スル書
類ニシテ送達スヘキモノ及送達ニ關スル規定ハ命令ヲ
以テ之ヲ定ム
第八十三條民事又ハ刑事ノ訴訟ニ於テ必要アルトキ
ハ裁判所又ハ特許又ハ拒絕査定確定アル迄其ノ訴
訟手續ヲ中止スルコトヲ得
第五章審判、抗告審判及出訴
第八十四條審判ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅
令ニ規定スルモノノ外左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求
スルコトヲ得
-第五十七條ノ規定ニ依ル特許又ハ許可ノ無效
二特許權ノ範圍ノ確認
前項第一號ノ無效ノ審判ハ利害關係人及審查
官ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得但シ審査官ハ第八條
ノ規定ニ違反シ又ハ第五十七條第一項第二號ニ該
當ストノ理由ニ依ル無效ノ審判ヲ請求スルコトヲ得
ス
第一項第二號ノ確認ノ審判ハ利害關係人ニ限リ之
ヲ請求スルコトヲ得
第八十五條前條第一項第一號ノ無效ノ審判ハ特許
又ハ第五十三條ノ許可ノ登錄ノ日ヨリ五年ヲ經過シ
タルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
前項ニ規定スル期間ハ第五十七條第一項第五號ニ
該當ストノ理由ニ依ル無效ノ審判ノ請求ニ付テハ同
號ニ該當スルニ至リタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
第八十六條審判ノ請求ハ審判請求書ヲ提出シテ之
ヲ爲スヘシ
審判請求書ニハ一定ノ申立及理由ヲ記載スヘシ
第八十七條審判ノ請求カ判然許スヘカラサルモノ、
法令ニ定メタル方式ニ適セサルモノ又ハ期間ヲ經過シ
タルモノナルトキハ審判長ハ直ニ決定ヲ以テ之ヲ却下
ス
前項ノ決定ニハ理由ヲ附スヘシ
第一項ノ決定ニ不服アル者ハ即時抗告ヲ爲スコトヲ
得
前項ノ卽時抗告ニ付テハ民事訴訟法中卽時抗告ニ
關スル規定ヲ準用ス
第八十八條審判長ハ審判請求書ヲ受埋シタルトキハ
其ノ副本ヲ被請求人ニ送達シ期間ヲ指定シテ之ニ答
辯書提出ノ機會ヲ與へ其ノ答辯書ヲ受理シタルトキ
ハ其ノ副本ヲ相手方ニ送達スヘシ
審判ニ關シテハ當事者ノ提出シタル書類ニ對シ相手
方ヲシテ答辯書ヲ提出セシメ又ハ當事者ニ訊問書ヲ
發シテ之ニ對スル意見書ヲ提出セシムルコトヲ得
第八十九條審判ハ審判官三人ノ合議ニ依リ之ヲ行
フ
合議ハ過半數ニ依リ之ヲ決ス
審判長ハ審判官中ノ上席者ヲ以テ之ニ充ツ
審判長ハ其ノ審判事件ニ關スル事務ヲ掌理ス
第九十條審判官ハ各審判事件ニ付特許局長之ヲ
指定ス
審判官中審判ニ干與スルニ故障アル者アルトキハ其
ノ指定ヲ解キ更ニ他ノ審判官ヲ以テ之ヲ補充ス
第九十一條審判官ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合
ニ於テハ審判ノ干與ヨリ除斥セラル
-其ノ事件ニ付當事者、參加人又ハ特許異議申
立人ナルトキ
二前號ニ揭クル者又ハ其ノ配偶者ノ親族ナルトキ
三第一號ニ揭クル者ノ法定代理人、後見人監督
又ハ保佐人ナルトキ
四其ノ事件ニ付第一號ニ掲クル者ノ代理人ト爲リ
タルトキ
五其ノ事件ニ付證人又ハ鑑定人ト爲リタルトキ
六其ノ事件ニ付審査官又ハ審判官トシテ査定又
ハ審決ニ干與シタルトキ
七其ノ事件ニ付直接ノ利害關係ヲ有スルトキ
第九十二條審判官カ前條ノ規定ニ依リ審判ノ干與
ヨリ除斤セラルルトキ又ハ偏頗ノ審判ヲ爲スノ虞アル
トキハ當事者又ハ參加人ヨリ之ヲ忌避スルコトヲ得
第九十三條第九十一條ノ規定ニ依リ審判ノ干與ヨ
リ除斥セラルヘシトシテ爲ス審判官ノ忌避ノ申請ハ審
判ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス之ヲ爲スコトヲ得
偏頗ノ審判ヲ爲スノ虞アリトシテ爲ス審判官ノ忌避
ノ申請ハ當事者又ハ參加人カ其ノ覺知シタル忌避ノ
原因ヲ主張セスシテ申立ヲ爲シ又ハ相手方ノ申立ニ
對シ陳述ヲ爲シタル後ハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第九十四條忌避ノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ
爲スコトヲ得
忌避ノ原因ハ之ヲ疏明スヘシ忌避ヲ申請セラレタル
審判官ノ職務上ノ陳述ハ之ヲ其ノ疏明ノ用ニ充ツル
コトヲ得
當事者又ハ參加人カ申立又ハ陳遠ヲ爲シタル後偏
頗ノ審判ヲ爲スノ虞アリトシテ爲ス審判官ノ忌避ノ
申請ニハ其ノ申立又ハ陳述ノ後ニ忌避ノ原因發生シ
又ハ忌避ノ原因ヲ覺知シタルコトヲ疏明スヘシ
第九十五條忌避ノ申請アリタルトキハ忌避ヲ申請セ
ラレタル審判官以外ノ審判官ニシテ特許局長ノ指定
シタルモノノ審判ニ依リ其ノ許否ヲ決定ス
前項ノ規定ニ依ル決定ニハ理由ヲ附スヘシ
第一項ノ規定ニ依ル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツル
コトヲ得ス
第九十六條忌避ヲ申請セラレタル審判官ハ忌避申
請ノ許否ノ決定アル迄其ノ審判事件ニ關シ總テノ行
爲ヲ爲スコトヲ得ス但シ偏頗ノ審判ヲ爲スノ虞アリト
シテ爲サレタル忌避ノ申請ノ場合ニ於テ猶豫スヘカラ
サル行爲ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第九十七條第八十四條第一項第一號ノ無效ノ審判
ハ口頭審理ニ依ル但シ審判長ハ申立ニ依リ又ハ職權
ヲ以テ書面審理ニ依ルモノト爲スコトヲ得
前項ノ審判以外ノ審判ハ書面審理ニ依ル但シ審判
長ハ中立ニ依リ又ハ職權ヲ以テロ頭審理ニ依ルモノ
ト爲スコトヲ得
口頭審理ハ之ヲ公開ス但シ公益又ハ風俗ヲ害スルノ
虞アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九十八條利害關係人ハ審理ノ終結ニ至ル迄其ノ
審判ニ參加スルコトヲ得
第九十九條參加ノ申請ハ參加申請書ヲ提出シテ之
ヲ爲スヘシ
審判長ハ參加申請書ヲ受理シタルトキハ之ヲ當事者
及參加人ニ送達シ期間ヲ指定シテ之ニ異議申立ノ機
會ヲ與フヘシ
參加ノ申請アリタルトキハ審判ニ依リ其ノ許否ヲ決
定ス
第九十五條第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ規定ニ
依ル決定ニ付之ヲ準用ス
第百條審判ニ於テハ申立ニ依リ又ハ職權ヲ以テ證據
調ヲ爲スコトヲ得
前項ノ證據調ハ所要ノ事務ヲ取扱フヘキ地ノ區裁判
所其ノ他區裁判所ノ事務ヲ行フ官廳ニ之ヲ囑託スル
コトヲ得
民事訴訟法中證據調ニ關スル規定ハ前二項ノ規定
ニ依ル證據調ニ付之ヲ準用ス但シ特許局ニ於テ爲ス
證據調ニ關シテハ罰金ノ言渡ヲ爲シ又ハ勾引ヲ命ス
ルコトヲ得ス
第百一條當亭者又ハ參加人カ法定若ハ指定ノ期間
內ニ手續ヲ爲サス又ハ期日ニ出頭セサルトキト雖審
判長ハ審判ヲ進行スルコトヲ得
第百二條審判ノ請求ハ其ノ審理ノ終結ニ至ル迄之
ヲ取下クルコトヲ得但シ答辯書ノ提出アリタル後ニ於
テハ相手方ノ承諾ヲ要ス
第百三條審判ニ於テハ當事者又ハ參加人ノ申立テ
サル理由又ハ取下ケタル理由ニ付テモ之ヲ審理スルコ
トヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ理由ニ付當事者又ハ參
加人ニ期間ヲ指定シテ意見申立ノ機會ヲ與フヘシ
第百四條特許局ハ當事者ノ雙方又ハ一方ノ同一ナ
ル二以上ノ審判ニ付其ノ審理又ハ審決ノ併合ヲ爲ス
コトヲ得
特許局ハ前項ノ規定ニ依リ審理ノ併合ヲ爲シタル場
合ニ於テ更ニ審理又ハ審決ノ分離ヲ爲スコトヲ得
第百五條審判ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外審
決ヲ以テ之ヲ終了ス
前項ノ審決ニハ理由ヲ附スヘシ
事件カ審決ヲ爲スニ熟シタルトキハ審判長ハ審理ノ
終結ヲ當事者及參加人ニ通知スヘシ
審判長ハ必要アルトキハ前項ノ規定ニ依リ審理ノ終
結ヲ通知シタル後ト雖申立ニ依リ又ハ職權ヲ以テ審
理ノ再開ヲ爲スコトヲ得
審決ハ審理ノ終決ノ通知ヲ發シタル日ヨリ二十日以
內ニ之ヲ爲スヘシ
第百六條第四十九條ノ審判ニ於テハ補償金額ニ付
テモ亦之ヲ審決スヘシ
第百七條第八十二條ノ規定ハ審判ニ付之ヲ準用ス
第百八條第七十二條、第七十三條第一項第二項第
四項第六項及第七十四條乃至第七十七條ノ規定ハ
第五十三條ノ審判ニ付之ヲ準用ス
第九十八條、第九十九條及第百四條ノ規定ハ前項
ノ審判ニ付之ヲ適用セス
第百九條査定又ハ審判ノ審決ヲ受ケタル者不服アル
トキハ其ノ査定又ハ審はノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十
日以内ニ抗告審判ヲ請求スルコトヲ得但シ第百六條
ノ規定ニ依ル補償金額ノ審決ニ付テハ此ノ限ニ在ラ
ス
第百十條第八十六條乃至第百八條ノ規定ハ抗告
審判ニ付之ヲ準用ス但シ審判官ノ合議ハ三人又ハ五
人ヲ以テ之ヲ爲シ第九十二條乃至第九十四條及第
百一條ニ於テ當事者又ハ參加人トアルハ當事者、參
加人又ハ特許異議申立人トス
第百十一條抗告審判ニ於テハ審判請求ノ理由ヲ變
更シ又ハ新ナル事實若ハ證據方法ヲ提出スルコトヲ
得
第百十二條抗告審判ニ於テハ其ノ事件ニ付審決ヲ
爲スヘシ
第百十三條第七十二條ノ規定ハ拒絕ノ査定ニ對ス
ル抗告審判ニ於テ其ノ査定ノ理由ト異ル拒絕ノ理由
ヲ發見シタル場合ニ之ヲ準用ス
第七十三條乃至第七十九條ノ規定ハ拒絕ノ査定ニ
對スル抗告審判ノ請求ヲ理由アリトスル場合ニ之ヲ
準用ス但シ特許スヘキ出願ニシテ出願公告アリタルモ
ノニ付テハ更ニ出願公告ヲ爲スコトナク審決ヲ爲スヘ
シ
第百十四條拒絕ノ査定ニ對スル抗告審判ニ於テハ
前二條ノ規定ニ依ラス其ノ査定ヲ破毀シ更ニ審査ニ
付スヘシトノ審判ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル審決アリタル【場合ニ於テハ其ノ破
毀ノ基本ト爲シタル理由ハ其ノ事件ニ付テハ審査官
ヲ覊束ス
第百十五條抗告審判ノ審決ヲ受ケタル者不服アルト
キハ其ノ審決カ法令ニ違反シタルコトヲ理由トスル場
合ニ限リ審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六六日以內ニ
大審院ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル出訴及其ノ裁判ニ付テハ民事訴
訟ノ上告及其ノ裁判ニ關スル規定ヲ準用ス
大審院ノ判決ニ於テ審決破毀ノ基本ト爲シタル理由
ハ其ノ事件ニ付テハ特許局ヲ覊束ス
第百十六條第十五條、第四十條又ハ第五十條ニ規
定スル補償金額ノ通知又ハ決定若ハ審決ヲ受ケタル
者補償金額ニ付不服アルトキハ其ノ通知又ハ決定
若ハ審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ通常
栽判所ニ出訴スルコトヲ得
第百十七條特許若ハ第五十三條ノ許可ノ效力又ハ
特許權ノ範圍ニ關スル確定審決又ハ判決ノ登錄アリ
タルトキハ何人ト雖同一事實及同一證據ニ基キ同一
審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第百十八條審判又ハ抗告審判ニ於テ必要アルトキハ
民事又ハ刑事ノ訴訟手續ノ完結ニ至ル迄其ノ手續
ヲ中止スルコトヲ得
民事又ハ刑事ノ訴訟ニ於テ必要アルトキハ裁判所ハ
特許ニ關シ審決ノ確定又ハ判決アル迄其ノ訴訟手
續ヲ中止スルコトヲ得
第百十九條審判、抗告審判及出訴ニ關スル費用ノ負
擔ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外其ノ事件ノ審決
ヲ以テ之ヲ定ム
審判、抗告審判及出訴ニ關スル費用ノ額ハ請求ニ依
リ特許局長之ヲ決定ス
費用ノ負擔及額ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百二十條審判、抗告審判及出訴ニ關スル費用ノ額
ノ決定竝本法ニ規定スル補償金額ノ確定ノ決定及
審決ハ强制執行ニ關シテハ民事訴訟法第五百五十
九條第一號ノ規定ニ依ル債務名義ト看做ス但シ其
ノ執行力アル正本ハ特許局官吏之ヲ付與ス
第六章再審
第百二十一條左ニ揭クル審判若ハ抗告審判又ハ出
訴ニ付爲シタル確定審決又ハ判決ヲ以テ終結シタル
事件ハ取消ノ請求又ハ原狀囘復ノ請求ニ依リ之ヲ再
審スルコトヲ得
-特許若ハ第五十三條ノ許可ノ效力、特許權ノ
範圍又ハ實施權ノ取得ニ關スル審判
二前號ノ審判ノ審決ニ對スル抗告審判
三前號ノ抗告審判ノ審決ニ對スル出訴
民事訴訟法第四百六十八條ノ規定ハ取消ノ請求ニ
付、同法第四百六十九條及第四百七十條ノ規定ハ
原狀囘復ノ請求ニ付之ヲ準用ス
第百二十二條再審ハ當事者カ不服ノ理由ヲ知リタル
日ヨリ六十日以内ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得
審決ノ確定又ハ判決ノ前ニ當事者カ不服ノ理由ヲ
知リタルトキハ前項ニ規定スル期間ハ審決確定シ又ハ
判決アリタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
審判、抗告審判又ハ出訴ノ手續ニ於テ當事者カ法律
ノ規定ニ從ヒ代理セラレサリシコトヲ理由トシテ再審
ヲ請求スル場合ニ於テハ[第一項ニ規定スル期間ハ當
事者又ハ其ノ法律上代理人カ送達ニ依リ審決又ハ
判決アリタルコトヲ知リタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
審決確定シ又ハ判決アリタル日ヨリ三年ヲ經過シタル
トキハ再審ヲ請求スルコトヲ得ス
第百二十三條審判、抗告審判又ハ出訴ニ於テ爲ス再
審ノ請求及其ノ後ノ手續ニ付テハ本章ニ別段ノ規定
アル場合ヲ除クノ外各其ノ審級ノ手續ニ關スル規定
ヲ凖用ス
第百二十四條民事訴訟法第四百六十七條第二項、
第四百七十一條、第四百七十二條第一項第二項
及第四百七十五條乃至第四百八十二條ノ規定ハ
審判、抗告審判又ハ出訴ニ於テ爲ス再審ニ關シ之ヲ
準用ス
第百二十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テ特
許權ノ效力ハ審決確定シ又ハ判決アリタル後ニシテ
再審請求ノ登錄前善意ニ輸入若ハ移入シ又ハ帝國
內ニ於テ製作若ハ取得シタル物ニ及ハス
-無效ト爲リタル特許權カ再審ニ依リ回復シタル
トキ
二特許權ノ範圍ニ屬セストノ審判確定シ又ハ判決
アリタルモノニ付再審ニ依リ之ニ反スル審決確定シ
又ハ判決アリタルトキ
第百二十六條前條各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テ
審決確定シ又ハ判決アリタル後ニシテ再審請求ノ登
錄前善意ニ帝國内ニ於テ其ノ發明實施ノ事業ヲ爲シ
又ハ事業設備ヲ有スル者ハ其ノ特許發明ニ付事業ノ
目的タル發明範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
第五十二條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用
ス
第百二十七條實施權ノ取得ノ審決確定シ又ハ判決
アリタル後再審ニ依リ之ニ反スル審決確定シ又ハ判
決アリタル場合ニ於テ再審請求ノ登錄前善意ニシテ
帝國内ニ於テ其ノ發明實施ノ事業ヲ爲シ又ハ事業
設備ヲ有スル者ハ其ノ特許發明ニ付原實施權ノ範圍
內ニ於テ實施權ヲ有ス
第三十八條第三項及第五十二條第二項ノ規定ハ前
項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百二十八條第三者カ請求人及被請求人ノ共謀
ニ依リ其ノ第三者ノ權利又ハ「利益ヲ詐害スル目的ヲ
以テ審決又ハ判決ヲ爲サシメタルコトヲ、理由トスル不
服ノ申立ニ付テハ原狀囘復ノ請求ニ依ル再審ノ規定
ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ請求人及被請求人ヲ以テ共同
被請求人トス
第七章罰則
第百二十九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五年以
下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
-特許權ヲ侵害シタル者
二特許權ヲ侵害スヘキ物ヲ輸入又ハ移入シタル者
三特許アリタル場合ニ於テ第七十三條第三項ニ
規定スル權利ヲ特許前ニ侵害シタル者
四特許アリタル場合ニ於テ第七十三條第三項ニ規
定スル權利ヲ侵害スヘキ物ヲ特許前ニ輸入又ハ移
入シタル者
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
第百三十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以
下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
詐僞ノ行爲ヲ以テ特許ヲ受ケ又ハ審決若ハ判決
ヲ受ケタル者
二特許ニ係ラサル物又ハ其ノ物ノ容器包裝ノ類ニ
特許標記ヲ附シ又ハ特許標記ニ紛ハシキ表示ヲ爲
シタル者
三特許ニ係ラサル物ニシテ其ノ物又ハ其ノ物ノ容
器包装ノ類ニ特許標記ヲ附シ又ハ特許標記ニ紛ハ
シキ表示ヲ爲シタルモノヲ販賣又ハ擴布シタル者
四特許ニ係ラサル物又ハ特許ニ係ラサル方法ニ依
リ製作シタル物ヲ製作若ハ使用セシムル爲又ハ販
賣若ハ擴布スル爲廣告、看板、引札ノ類ニ其ノ物若
ハ方法カ特許ニ係ルコトヲ表示シ又ハ之ニ紛ハシキ
表示ヲ爲シタル者
五特許ニ係ラサル方法ヲ使用セシムル爲又ハ販賣
若ハ擴布スル爲廣告、看板、引札ノ類ニ其ノ方法カ
特許ニ係ルコトヲ表示シ又ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ
爲シタル者
第百三十一條第百二十九條第一項ニ掲クル行爲ヲ
組成シタル物又ハ其ノ行爲ヨリ生シタル物ニシテ刑法
第十九條ノ規定ニ依リ沒牧スルコトヲ得ヘキモノニ付
判決言渡前被害者ノ請求アリタルトキハ其ノ物ヲ沒
收シ之ヲ被害者ニ交付スルノ言渡ヲ爲スヘシ
被害者ハ前項ノ規定ニ依ル物ノ交付ヲ受ケタル場合
ニ於テハ其ノ物ノ價格ヲ超過スル損害ノ額ニ限リ賠
償ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第百三十二條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定
人又ハ通事特許局又ハ其ノ『託託ヲ受ケタル裁判所
若ハ官廳ニ對シ虚僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ三月以
上十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ『査定又ハ審決ニ至ラサ
ル前自白シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコト
ヲ得
第百三十三條特許局職員又ハ其ノ職ニ在リタル者
故ナク其ノ職務上知得タル特許出願中ノ發明又ハ
特許出願者ノ事業上ノ祕密ヲ漏泄シ又ハ竊用シタル
トキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第百三十四條特許局ヨリ證人、鑑定人又ハ通事トシ
テ呼出サレタル者正當ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又
ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ五十圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規
定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用ス
第百三十五條辨理士ニ非スシテ特許局ニ對シ特許
ニ關シ爲スヘキ事項ノ代理業ヲ營ミタル者ハ一年以
下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
第百三十六條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
第百三十七條舊法ニ依ル特許、特許權ノ改訂又ハ分
割ノ許可、處分及手續ハ本附則ニ別段ノ規定アル場
合ヲ除クノ外本法ニ依リ爲シタルモノト看做ス
舊法ニ依リ特許ニ關シ爲シタル出願、請求其ノ他ノ手
續ニ付亦前項ニ同シ
第百三十八條本法施行ノ際現ニ繫屬スル特許又ハ
特許權ノ改訂若ハ分割ノ許可ノ出願ノ處理ニ付テハ
仍舊法ニ依ル但シ其ノ出願ニ係ル發明カ本法ニ依ル
特許出願ニ係ル發明ニ牴觸スルトキハ其ノ發明者ハ
之ヲ先ニ發明ヲ爲シタル者ト看做ス
第百三十九條特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者カ試驗
ノ爲其ノ者ノ發明ヲ本法施行前第四條各號ノ一ニ
該當スルニ至ラシメタル場合ニ於テ其ノ日ヨリ二年以
內ニシテ本法施行ノ日ヨリ六月以內ニ其ノ者カ特許
ヲ出願シタルトキハ其ノ者ノ發明ハ之ヲ新規ナルモノ
ト見做ス
特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者ノ意ニ反シテ其ノ者ノ
發明カ本法施行前第四條各號ノ一ニ該當スルニ至
リタル場合ニ於テハ第五條第二項ノ規定ヲ適用セス
第百四十條舊法ニ依ル使用權ハ第四十八條又ハ
第四十九條ノ規定ニ依ル實施權ト看做ス
第百四十一條本法施行前發生シタル特許權ニ關シ
テハ舊法第二十九條第二號ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ
有シ第三十七條ノ規定ハ之ヲ適用セス
第百四十二條特許カ舊法施行中無效ト爲リタル場
合ニ付テハ舊法第三十五條乃至第三十七條ノ規定
及同法第三十六條ノ規定ニ依リ準用スル同法第三
十三條ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ第三十八ノ規定
ハ之ヲ適用セス
特許カ舊法施行前無效ト爲リタル場合ニ付テハ第三
十八條ノ規定ヲ適用セス
第百四十三條舊法施行前發生シタル實施權ニ關シ
テハ第五十一條第二項ノ規定ヲ適用セス仍從前ノ例
二枚ノ
第百四十四條舊法ニ依ル[特許權ノ存續期間ニ付テ
ハ仍舊法ニ依ル
本法施行前既ニ納メタル又ハ納付スヘキ期限ヲ經過
シタル特許料及追加特許料ニ付亦前項ニ同シ
第百四十五條特許料又ハ追加特許料ノ納付ヲ怠リ
タル場合ニ於テ本法施行ノ際未タ其ノ特許又ハ追加
特許ノ取消ナキモノニ付テハ本法施行ノ日ヨリ六月
間ヲ限リ特許料又ハ追加特許料ヲ追納スルコトヲ得
此ノ場合ニ於テハ舊法ニ依ル特許料又ハ追加特許
料ノ二倍ニ相當スル金額ヲ特許料又ハ追加特許料
トシテ納付スヘシ
前項ニ規定スル追納期間內ニ特許料又ハ追加特許
料ヲ追納セサルトキハ本法施行ノ時ニ遡リ特許權又
ハ追加特許權ハ消滅シタルモノト看做ス
第百四十六條舊法ニ依ル特許又ハ特許權ノ改訂
若ハ分割ノ許可ニ關シテハ本法施行後ニ特許又一ハ
許可アリタル場合ト雖舊法第四十九條ノ規定ハ仍其
ノ效力ヲ有シ同條ノ規定ノ適用ノ範圍內ニ於テ同
條ニ掲クル舊法ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ特許又ハ
許可カ同條第一項各號ノ一ニ該當スル場合ニ限リ
審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
第百四十七條前條ノ規定ニ依ル無效ノ審判ハ本法
施行前登錄セラレタル特許又ハ許可ニ關シテハ本法
施行ノ日ヨリ五年ヲ經過シタルトキハ之ヲ請求スルコ
トヲ得ス
第三實用新案法改正法律案(政府提出)
第一讀會
實用新案法改正法律案
實用新案法
第一條物品ニ關シ形狀、構造又ハ組合ハセニ係ル實用
アル新規ノ型ノ工業的考案ヲ爲シタル[者ハ其ノ物品
ノ型ニ付實用新案ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
第二條左ニ揭クル實用新案ニ付テハ之ヲ登錄セス
菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ形狀ヲ有スルモノ
二秩序若ハ風俗ヲ紊リ又ハ衞生ヲ害スルノ虞アル
モノ
第三條本法ニ於テ實用新案ノ新規ト稱スルハ實用新
案カ左ノ各號ノ一ニ該當スルコトナキヲ謂フ
-登錄出願前帝國內ニ於テ公然知ラレ若ハ公然
用ヰラレタルモノ又ハ之ニ類似スルモノ
二登錄出願前帝國内ニ頒布セラレタル刊行物ニ
容易ニ實施スルコトヲ得ヘキ程度ニ於テ記載セラレ
タルモノ又ハ之ニ類似スルモノ
第四條同一又ハ類似ノ實用新案ニ付テハ最先ノ出
願者ニ限リ登錄ス但シ同日ノ各別ノ出願者アルトキ
ハ出願者ノ協議ニ依リ登錄シ協議調ハサルトキハ共
ニ登錄セス
第五條特許出願者又ハ意匠登錄出願者カ其ノ特許
出願又ハ意匠登錄出願ヲ其ノ出願ニ係ル型ニ付テノ
實用新案登錄出願ニ變更シタルトキハ其ノ實用新案
登錄出願ハ特許出願又ハ意匠登錄出願ノ時ニ於テ
之ヲ爲シタルモノト看做ス但シ特許出願又ハ意匠登
錄出願ニ付特許又ハ登錄スヘカラストノ査定ヲ受ケ
タル場合ニ於テハ其ノ最初ノ査定ノ送達ヲ受ケタル日
ヨリ三十日ヲ經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第六條實用新案權ハ登錄ニ依リ發生ス
實用新案權者ハ其ノ登錄實用新案ニ係ル物口ヲ業
トシテ製作、使用、販賣又ハ擴布スルノ權利ヲ專有ス
實用新案權カ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル特許權
若ハ意匠權ト牴觸スル場合又ハ登錄實用新案カ其
ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル特許發明若ハ登錄意匠
ヲ利用スルモノナル場合ニ於テハ實用新案權者ハ特
許權者又ハ意匠權者ノ實施許諾アルニ非サレハ其ノ
登錄實用新案ヲ實施スルコトヲ得ス
第七條實用新案登錄出願ノ際現ニ善意ニ帝國内ニ
於テ其ノ實用新案實施ノ事業ヲ爲シ又ハ事業設備
ヲ有スル者ハ其ノ登錄實用新案ニ付事業ノ目的タル
實用新案範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
第八條登錄ノ無效審判請求ノ登錄前善意ニシテ左
ノ各號ノ一ニ該當シ帝國內ニ於テ其ノ實用新案實施
ノ事業ヲ爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者ハ其ノ登錄實
用新案ニ付事業ノ目的タル實用新案範圍內ニ於テ
實施權ヲ有ス
-同一又ハ類似ノ實用新案ニ對スル二以上ノ登
錄中其ノ一カ無效ト爲リタル場合ニ於ケル登錄ヲ
受ケタル原實用新案權者
二登錄ヲ無效トシ同一又ハ類似ノ實用新案ニ付
正當權利者ノ爲ニ登錄ヲ爲シタル場合ニ於ケル登
錄ヲ受ケタル原實用新案權者
三前二號ニ揭クル場合ニ於テ其ノ無效ト爲リタル
實用新案權ニ付實施權ヲ得テ其ノ登錄ヲ受ケタル
者但シ實施權カ登錄ナキモ第十三條第一項ノ效
力ヲ有スル場合ハ登錄アルヲ要セス
實用新案登錄出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出願ニ係
リ寳用新案權ト牴觸スル特許權又ハ意匠權ノ存續
期間滿了シタル場合ニ於テ其ノ特許權又ハ意匠權ニ
付實施權ヲ得テ登錄ヲ受ケタル者ハ其ノ登錄實用新
案ニ付原實施權ノ範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス但シ
原實施權カ登錄ナキモ特許法第五十二條第一項又
ハ意匠法第十五條第一項ノ效力ヲ有スル場合ニ登
錄アルヲ要セス
實用新案權者ハ前二項ノ規定ニ依ル實施權者ヨリ
相當ノ補償金ヲ受クルノ權利ヲ有ス
第九條實用新案登錄出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出
願ニ係リ其ノ實用新案權ト牴觸スル特許權又ハ意匠
權ノ存續期間滿了後ニ於ケル原特許權者又ハ原意
匠權者ハ其ノ登錄富用新案ニ付原權利ノ範〓內ニ
於テ實施權ヲ有ス
第十條實用新案權ノ存續期間ハ登錄ノ日ヨリ十年
ヲ以テ終了ス
第二十六條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第十一條
ノ規定ニ依リ正當權利者ノ爲ニ登錄ヲ爲シタルトキハ
前項ノ十年ノ期間ハ無效ト爲リタル登錄ノ爲サレタ
ル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
第十一條實用新案權者ハ他人ノ登錄實用新案又ハ
登錄意匠ヲ實施スルニ非サレハ自己ノ登錄實用新案
ヲ實施スルコト能ハサル場合ニ於テ其ノ他人カ正當ノ
理由ナクシテ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ他人ノ實
施許諾ヲ得ルコト能ハサルトキハ審判ヲ請求スルコト
ヲ得但シ其ノ實施セラルヘキ實用新案又ハ意匠ノ實
用新案權又ハ意匠權發生ノ日ヨリ二年ヲ經過セサル
トキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ登錄實用新案又ハ登錄意匠ヲ實
施セラルル者其ノ實施ヲ必要トスル相手方ノ登錄實
用新案ニ付實施ノ許諾ヲ求メタル場合ニ於テ其ノ相
手方カ正當ノ理由ナクシテ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ
其ノ相手方ノ實施許諾ヲ得ルコト能ハサルトキハ審判
ヲ請求スルコトヲ得
第十二條前條ノ規定ニ依ル實施權者ハ實用新案權
者又ハ意匠權者ニ對シ相當ノ補償金ヲ支拂フヘシ
前項ノ實施權者ハ補償金ノ支拂ヲ爲シ又ハ支拂ヲ
爲スコト能ハサル場合ニ於テハ供託ヲ爲スニ非サレハ
其ノ登錄實用新案又ハ登錄意匠ヲ實施スルコトヲ得
ス但シ審決又ハ判決ノ確定前ト雖審決又ハ判決ニ依
ル補償金ニ相當スル金額ヲ供託シタルトキハ實施スル
コトヲ得
第十三條登錄實用新案ノ實施權ハ之ヲ登錄シタルト
キハ其ノ實用新案權ヲ爾後取得シタル者及其ノ實用
新案權ヲ目的トスル爾後設定ノ質權ヲ有スル者ニ對
シテモ其ノ效力ヲ生ス
第七條乃至第九條又ハ第二十六條ノ規定ニ依リ準
用スル特許法第十四條第二項ノ規定ニ依ル員權權
ハ其ノ登錄ナキ場合ト雖前項ノ效力ヲ有ス
第十一條ノ規定ニ依ル實施權ハ其ノ登錄前設定ノ
質權ヲ有スル者ニ對シテモ其ノ效力ヲ生ス
特許法第四十五條ノ規定ハ實施權ノ移轉、變更、消
滅若ハ處分ノ制限又ハ實施權ヲ目的トスル質權ノ設
定、移轉、變更、消滅若ハ處分ノ制限ニ付之ヲ準用ス
第十四條實用新案權者ハ登錄實用新案ノ圖面又ハ
說明書カ不完全ニ作製セラレタルコトヲ發見シタルト
キハ左ノ各號ノ一ニ揭クル事項ヲ目的トスル場合ニ
限リ其ノ圖面又ハ說明書ノ訂正ノ許可ノ審判ヲ請求
スルコトヲ得
一登錄請求範圍ノ減縮
二誤記ノ訂正
三不明瞭ナル記載ノ釋明
前項第一號ノ場合ニ於テハ其ノ殘部カ登錄出願ノ際
獨立シテ新規ノ實用新案ナルコトヲ要ス
第十五條前條ノ場合ニ於テハ登錄請求範圍ヲ實質
上擴張シ又ハ實質上變更スルコトヲ得ス
第十六條登錄カ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ審判
ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
ー登錄カ第一條、第二條又ハ第四條ノ規定ニ違反
シテ爲サレタルトキ
二登錄カ第二十六條ノ規定ニ依リ準用スル特許
法第三十二條ノ規定ニ違反シテ爲サレタルトキ
三登錄カ登錄ヲ受クルノ權利ノ承繼人ニ非サル者
又ハ登錄ヲ受クルノ權利ヲ冒認シタル者ノ爲ニ爲
サレタルトキ
四登錄カ第二十六條ノ規定ニ依リ準用スル特許
法第三十三條ニ規定スル條約又ハ之ニ準スヘキモ
ノニ違反シテ爲サレタル場合ニ於テ其ノ違反カ第一
號乃至前號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルトキ
五登錄カ第二十六條ノ規定ニ依リ準用スル特許法
第三十二條ノ規定ニ違反スルニ至リタルトキ又ハ特
許法第三十三條ニ規定スル條約若ハ之ニ準スヘキ
モノニ違反スルニ至リタル場合ニ於テ其ノ違反カ第
一號乃至第三號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルト
キ
第十四條ノ許可カ同條第二項又ハ前條ノ規定ニ違
反シタルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
登錄又ハ第十四條ノ許可ハ實用新案權消滅後ト雖
二前項ノ規定ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
第十七條特許局ニ實用新案原簿ヲ備へ實用新案權
及實施權竝之ヲ目的トスル質權ノ設定、保存、移轉、
變更、消滅、處分ノ制限其ノ他法令ニ定ムル事項ヲ登
錄ス
登錄ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條登錄スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ判
決アリタルトキハ之ヲ實用新案原簿ニ登錄シ實用新
案登錄證ヲ下付ス第十四條ノ許可ノ審決確定シ又
ハ判決アリタルトキ亦同シ
第十九條特許局ハ實用新案公報ヲ發行シ登錄實用
新案ニ關スル必要ナル事項ヲ之ニ記載スへシ但シ軍
事上祕密ヲ要スル登錄實用新案ニ付テハ此ノ限ニ在
ラス
第二十條實用新案ノ登錄ヲ受クル者又ハ登錄證主
ハ登錄料トシテ每件左ノ金額ヲ納付スヘシ
-第一年乃至第三年每年七圓
二第四年乃至第六年每年十五圓
三第七年乃至第十年毎年二十五圓
第二十一條實用新案登錄ノ出願アリタルトキハ審査
官ヲシテ之ヲ審査セシム
第二十二條審判ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅
令ニ規定スルモノノ外左ニ掲クル事項ニ付之ヲ請求
スルコトヲ得
-第十六條ノ規定ニ依ル登錄又ハ許可ノ無效
二實用新案權ノ範圍ノ確認
前項第一號ノ無效ノ審判ハ利害關係人及審査官ニ
限リ之ヲ請求スルコトヲ得但シ審査官ハ第四條ノ規
定ニ違反シ又ハ第十六條第一項第三號ニ該當スト
ノ理由ニ依ル無效ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第一項第二號ノ確認ノ審判ハ利害關係人ニ限リ之
ヲ請求スルコトヲ得
第二十三條前條第一項第一號ノ無效ノ審判ハ實用
新案ノ登錄又ハ第十四條ノ許可ノ登錄ノ日ヨリ三
年ヲ經過シタルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
前項ニ規定スル期間ハ第十六條第一項第五號ニ該
當ストノ理由ニ依ル無效ノ審判ノ請求ニ付テハ同號
ニ該當スルニ至リタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
第二十四條第十一條ノ審判ニ於テハ補償金額ニ付
テモ亦之ヲ審判スヘシ
第二十五條査定又ハ審判ノ審決ヲ受ケタル者不服
アルトキハ其ノ査定又ハ審決ノ送達ヲ受ケタル曰ヨリ
六十日以內ニ抗告審判ヲ請求スルコトヲ得但シ前條
ノ規定ニ依ル補償金額ノ審決ニ付テハ此ノ限ニ在ラ
ス
第二十六條特許法第六條、第十條乃至第三十三條
第三十六條、第四十條、第四十四條、第四十五條、
第四十七條、第四十八條、第五十一條、第五十五
後第五十六條、第五十八條、第五十九條、第六十
四條、第六十五條第六項第七項、第六十六條乃至
第六十九條、第七十一條、第七十二條、第八十條乃
至第八十三條、第八十六條乃至第百五條、第百七
條、第百八條、第百十條乃至第百十二條、第百十三
條第一項及第百十四條乃至第百二十八條ノ規定ハ
實用新案ニ關シ之ヲ準用ス
第二十七條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下
ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
-他人ノ登錄實用新案ニ係ル物品ト同一ノ物品
ヲ業トシテ製作、使用、販賣又ハ擴布シタル者
二他人ノ登錄實用新案ニ係ル物品ト類似ノ物品
ヲ業トシテ製作、使用、販賣又ハ擴布シタル者
三他人ノ登錄實用新案ニ係ル物品ト同一又ハ類
似ノ物品ヲ業トシテ輸入又ハ移入シタル者
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
第二十八條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下
ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
-詐僞ノ行爲ヲ以テ實用新案ノ登錄ヲ受ケ又ハ
審決若ハ判決ヲ受ケタル者
二登錄實用新案ニ係ラサル物品又ハ其ノ物品ノ容
器包裝ノ類ニ實用新案登錄標記ヲ附シ又ハ實用
新案登錄標記ハ紛ハシキ表示ヲ爲シタル者
三登錄實用新案ニ係ラサル物品ニシテ其ノ物品又ハ
其ノ物品ノ容器包装ノ類ニ實用新案登錄標記ヲ附
シ又ハ實用新案登錄標記ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタ
ルモノヲ販賣又ハ擴布シタル者
四登錄實用新案ニ係ラサル物品ヲ製作若ハ使用
セシムル爲又ハ販賣若ハ擴布スル爲廣告、看板、引
札ノ類ニ其ノ物品カ登錄實用新案ニ係ルコトヲ表
示シ又ハ之ニ紛ハシキ表元ヲ爲シタル者
第二十九條第二十七條第一項ニ揭クル行爲ヲ組成
シタル物又ハ其ノ行爲ヨリ生シタル物ニシテ刑法第十
九條ノ規定ニ依リ沒收スルコトヲ得ヘキモノニ付判決
言渡前被害者ノ請求アリタルトキハ其ノ物ヲ沒收シ
之ヲ被害者ニ交付スルノ言渡ヲ爲スヘシ
被害者ハ前項ノ規定ニ依ル物ノ交付ヲ受ケタル場合
ニ於テハ其ノ物ノ價額ヲ超過スル損害ノ額ニ限リ賠
償ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第三十條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人
又ハ通事特許局又ハ其ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ
官廳ニ對シ虚僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ三月以上十
年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサ
ル前自白シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコト
ヲ得
第三十一條特許局職員又ハ其ノ職ニ在リタル者故
ナク其ノ職務上知得タル實用新案登錄出願中ノ考
案又ハ實用新案登錄出願者ノ事業上ノ祕密ヲ漏泄
シ又ハ竊用シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以
下ノ罰金ニ處ス
第三十二條特許局ヨリ證人、鑑定人又ハ通事トシテ
呼出サレタル者正當ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ
其ノ義務ヲ盡ササルトキハ五十圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規
定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用ス
第三十三條辨理士ニ非スシテ特許局ニ對シ實用新
案ニ關シ爲スヘキ事項ノ代理業ヲ營ミタル者ハ一年
以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
第三十四條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十五條舊法ニ依ル實用新案ノ登錄、處分及手續
ハ本附則ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外本法ニ依
リ爲シタルモノト看做ス
舊法ニ依リ實用新案ニ關シ爲シタル出願、請求其ノ
他ノ手續ニ付亦前項ニ同シ
第三十六條本法施行ノ際現ニ繫屬スル實用新案登
錄ノ出願ノ處理ニ付テハ仍舊法ニ依ル
第三十七條本法施行前發生シタル實用新案權ニ關
シテハ舊特許法第二十九條第二號ノ規定ハ仍其ノ
效力ヲ有シ同條ノ規定ヲ準用シ第七條ノ規定ハ之ヲ
適用セス
第三十八條實用新案ノ登錄カ舊法施行中無效ト爲
リタル場合ニ付テハ舊法第十條ノ規定及同條ノ規定
ニ基キ準用スル舊特許法ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ
第八條ノ規定ハ之ヲ適用セス
第三十九條舊法ニ依ル實用新案ノ登錄ニ關シテハ本
法施行後ニ登錄カ爲サレタル場合ト雖舊法第十一
條ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ同條ノ規定ノ適用ノ範
圍內ニ於テ同條ニ揭クル舊法ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ
有シ登錄カ同條ノ規定ニ該當スル場合ニ限リ審判ニ
依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
第四十條前條ノ規定ニ依ル無效ノ審判ハ本法施
行前爲サレタル實用新案ノ登錄ニ聞シテハ本法施行
ノ日ヨリ三年ヲ經過シタルトキハ之ヲ請求スルコトヲ
得ス
第五意匠法改正法律案(政府提出)
第一讀會
意匠法改正法律案
意匠法
第一條物品ニ關シ形狀、模樣若ハ色彩又ハ其ノ結合
ニ係ル新規ノ意匠ノ工業的考案ヲ爲シタル者ハ其ノ
物品ノ意匠ニ付意匠ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
第二條左ニ揭クル意匠ニ付テハ之ヲ登錄セス
-菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ形狀又ハ模樣
ヲ有スルモノ
二秩序又ハ風俗ヲ紊ルノ虞アルモノ
三世人ヲ欺瞞スルノ虞アルモノ
第三條本法ニ於テ意匠ノ新規ト稱スルハ意匠カ左ノ
各號ノ一ニ該當スルコトナキヲ謂フ
登錄出願前帝國內ニ於テ公然知ラレ若ハ公然
用井ラレタルモノ又ハ之ニ類似スルモノ
二登錄出願前帝國内ニ頒布セラレタル刊行物ニ
容易ニ實施スルコトヲ得ヘキ程度ニ於テ記載セラレ
タルモノ又ハ之ニ類似スルモノ
意匠ニシテ自己ノ登錄意匠ノミニ類似スルモノハ之ヲ
新規ナルモノト看做ス
第四條同一又ハ類似ノ意匠ニ付テハ最先ノ出願者
ニ限リ登錄ス但シ同日ノ各別ノ出願者アルトキハ出
願者ノ協議ニ依リ登錄シ協議調ハサルトキハ共ニ登
錄セス
第五條意匠登錄出願者ハ命令ノ定ムル類別內ニ於
テ其ノ意匠ヲ現スヘキ物品ヲ指定スヘシ
第六條意匠登錄出願者ハ登錄ノ日ヨリ三年以內其
ノ意匠ヲ祕密ニセムコトヲ請求スルコトヲ得
第七條實用新案登錄出願者カ其ノ實用新案登錄
出願ヲ其ノ出願ニ係ル意匠ニ付テノ意匠登錄出願ニ
變更シタルトキハ其ノ意匠登錄出願ハ實用新案登錄
出願ノ時ニ於テ之ヲ爲シタルモノト看做ス但シ實用
新案登錄出願ニ付登錄スヘカラストノ査定ヲ受ケタ
ル場合ニ於テハ其ノ最初ノ査定ノ送達ヲ受ケタル日
ヨリ三十日ヲ經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第八條意匠權ハ登錄ニ依リ發生ス
意匠權者ハ其ノ登錄意匠ニ係ル物品ヲ業トシテ製作
使用、販賣又ハ擴布スルノ權利ヲ專有ス
自己ノ登錄意匠ニ類似スル意匠權ハ最先ニ發生シタ
ル意匠權ト合體スルモノトス
意匠權カ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル實用新案權
若ハ商標權ト牴觸スル場合又ハ登錄意匠カ其ノ出願
ノ日前ノ出願ニ係ル登錄實用新案ヲ利用スルモノナ
ル場合ニ於テハ意匠權者ハ實用新案權者ノ實施許
諾又ハ商標權者ノ諾許アルニ非サレハ其ノ登錄意匠
ヲ實施スルコトヲ得ス
第九條意匠登錄出願ノ際現ニ善意ニ帝國内ニ於テ
其ノ意匠實施ノ事業ヲ爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者
ハ其ノ登錄意匠ニ付事業ノ目的タル意匠範圍內ニ於
テ實施權ヲ有ス
第十條登錄ノ無效審判請求ノ登錄前善意ニシテ左
ノ各號ノ一ニ該當シ帝國內ニ於テ其ノ意匠實施ノ事
業ヲ爲シ又ハ事業設備ヲ有スル者ハ其ノ登錄意匠ニ
付事業ノ目的タル意匠範圍內ニ於テ實施權ヲ有ス
同一又ハ類似ノ意匠ニ對スル二以上ノ登錄中
其ノ一カ無效ト爲リタル場合ニ於ケル登錄ヲ受ケ
タル原意匠權者
二登錄ヲ無效トシ同一又ハ類似ノ意匠ニ付正當
權利者ノ爲ニ登錄ヲ爲シタル場合ニ於ケル登錄ヲ
受ケタル原意匠權者
三前二號ニ揭クル場合ニ於テ其ノ無效ト爲リタル
意匠權ニ付實施權ヲ得テ其ノ登錄ヲ受ケタル者但
シ實施權力登錄ナキモ第十五條第一項ノ效力ヲ
有スル場合ハ登錄アルヲ要セス
意匠登錄出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出願ニ係リ其
ノ意匠權ト牴觸スル實用新案權ノ存續期間滿了シタル
場合ニ於テ其ノ實用新案權ニ付實施權ヲ得テ登錄ヲ
受ケタル者ハ其ノ登錄意匠ニ付原實施權ノ範圍内ニ
於テ實施權ヲ有ス但シ原實施權力登錄ナキモ實用新
案法第十三條第一項ノ效力ヲ有スル場合ハ登錄アル
ヲ要セス
意匠權者ハ前二項ノ規定ニ依ル實施權者ヨリ相當
ノ補償金ヲ受クルノ權利ヲ有ス
第十一條意匠登錄出願ノ日前又ハ之ト同日ノ出願
ニ係リ其ノ意匠權と牴觸スル實用新案權ノ存續期
間滿了後ニ於ケル原實用新案權者ハ其ノ登錄意匠
ニ付原權利ノ範圍内ニ於テ實施權ヲ有ス
第十二條意匠權ノ存續期間ハ登錄ノ日ヨリ十年ヲ
以テ終了ス
第二十五條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第十一條
ノ規定ニ依リ正當權利者ノ爲ニ登錄ヲ爲シタルトキ
ハ前項ノ十年ノ期間ハ無效ト爲リタル登錄ノ爲サレ
タル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
第十三條意匠權者ハ他人ノ登錄實用新案又ハ登錄
意匠ヲ實施スルニ非サレハ自己ノ登錄意匠ヲ實施ス
ルコト能ハサル場合ニ於テ其ノ他人カ正當ノ理由ナク
シテ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ他人ノ實施許諾
ヲ得ルコト能ハサルトキハ審判ヲ請求スルコトヲ得但
シ其ノ實施セラルヘキ實用新案又ハ意匠ノ實用新案
權又ハ意匠權發生ノ日ヨリ二年ヲ經過セサルトキハ
此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ登錄實用新案又ハ登錄意匠ヲ實
施セラルル者其ノ實施ヲ必要トスル相手方ノ登錄意
匠ニ付實施ノ許諾ヲ求メタル場合ニ於テ其ノ相手方
カ正當ノ理由ナクシテ實施ヲ許諾セサルトキ又ハ其ノ
相手方ノ實施許諾ヲ得ルコト能ハサルトキハ審判ヲ
請求スルコトヲ得
第十四條前條ノ規定ニ依ル實施權者ハ實用新案權
者又ハ意匠權者ニ對シ相當ノ補償金ヲ支拂フヘシ
前項ノ實施權者ハ補償金ノ支拂ヲ爲シ又ハ支拂ヲ
爲スコト能ハサル場合ニ於テハ供託ヲ爲スニ非サレハ
其ノ登錄實用新案又ハ登錄意匠ヲ實施スルコトヲ得
ス但シ審決又ハ判決ノ確定前ト雖審決又六判決ニ
依ル補償金ニ相當スル金額ヲ供託シタルトキハ實施
スルコトヲ得
第十五條登錄意匠ノ實施權ハ之ヲ登錄シタルトキハ
其ノ意匠權ヲ爾後取得シタル者及其ノ意匠權ヲ目的
トスル爾後設定ノ質權ヲ有スル者ニ對シテモ其ノ效
力ヲ生ス
第九條乃至第十一條又ハ第二十五條ノ規定ニ依リ
準用スル特許法第十四條第二項ノ規定ニ依ル實施
權ハ其ノ登錄ナキ場合ト雖前項ノ效力ヲ有ス
第十三條ノ規定ニ依ル〓〓權權ハ其ノ登錄前設定ノ
質權ヲ有スル者ニ對シテモ其ノ效力ヲ生ス
特許法第四十五條ノ規定ハ實施權ノ移轉、變更、消
滅若ハ處分ノ制限又ハ實施權ヲ目的トスル質權ノ設
定、移轉、變更、消滅若ハ處分ノ制限ニ付之ヲ準用ス
第十六條意匠權ハ第五條ノ規定ニ』依リ指定シタル
物品ニ依リ之ヲ分割シテ移轉スルコトヲ得
第十七條登錄カ左ノ各號ノ一」ニ該當スルトキハ審判
ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
登錄カ第一條、第二條又ハ第四條ノ規定ニ違
反シテ爲サレタルトキ
二登錄カ第二十五條ノ規定ニ依リ準用スル特許
法第三十二條ノ規定ニ違反シテ爲サレタルトキ
三登錄カ登錄ヲ受クルノ權利ノ承繼人ニ非サル者
又ハ登錄ヲ受クルノ權利ヲ冒認シタル者ノ爲ニ爲
サレタルトキ
四登錄カ第二十五條ノ規定ニ依リ準用スル特許
法第三十三條ニ規定スル條約又ハ之ニ準スヘキモ
ノニ違反シテ爲サレタル場合ニ於テ其ノ違反カ第
一號乃至前號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルトキ
五登錄カ第二十五條ノ規定ニ依リ準用スル特許
法第三十二條ノ規定ニ違反スルニ至リタルトキ又
ハ特許法第三十三條ニ規定スル條約若ハ之ニ準
スヘキモノニ違反スルニ至リタル場合ニ於テ其ノ違
反カ第一號乃至第三號ニ掲クルモノニ準スヘキモ
ノナルトキ
登錄ハ意匠權消滅後ト雖前項ノ規定ニ依リ之ヲ無
效ト爲スヘシ
第十八條特許局ニ意匠原簿ヲ備へ意匠權及實施權
竝之ヲ目的トスル質權ノ設定保存、移轉、變更、消滅、
處分ノ制限其ノ他法令ニ定ムル事項ヲ登錄ス
登錄ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條登錄スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ判
決アリタルトキハ之ヲ意匠原簿ニ登錄シ意匠登錄證
ヲ下付ス
第二十條意匠ノ登錄ヲ受クル者又ハ登錄證主ハ登
錄料トシテ每件左ノ金額ヲ納付スヘシ
第一年乃至第三年每年三圓
二第四年乃至第十年每年五圓
自己ノ登錄意匠ニ類似スル意匠ノ登錄ヲ受クル者ハ
其ノ登錄ヲ受クル時登錄料トシテ每件一時ニ三圓ヲ
納付スヘシ
第十六條ノ規定ニ依リ分割シテ移轉セラルル意匠權
ノ登錄ヲ受クル者又ハ登錄證主ハ其ノ意匠權ニ付原
意匠權ノ當該年分ヨリノ登錄料ヲ納付スヘシ
第二十一條意匠登錄ノ出願アリタルトキハ[査査官ヲ
シテ之ヲ審查セシム
第二十二條審判ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅
令ニ規定スルモノノ外左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求
スルコトヲ得ス
-第十七條ノ規定ニ依ル登錄ノ無效
二意匠權ノ範圍ノ確認
前項第一號ノ無效ノ審判ハ利害關係人及審査官ニ
限リ之ヲ請求スルコトヲ得但シ審査官ハ第四條ノ規
定ニ違反シ又ハ第十七條第一項第三號]ニ該當スト
ノ理由ニ依ル無效ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第一項第二號ノ確認ノ審判ハ利害關係人ニ限リ之
ヲ請求スルコトヲ得
第二十三條第十三條ノ審判ニ於テハ補償金額ニ付
テモ亦之ヲ審決スヘシ
第二十四條査定又ハ審判ノ審決ヲ受ケタル者不服
アルトキハ其ノ査定又ハ審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨ
リ六十日以内ニ抗告審判ヲ請求スルコトヲ得但シ前
條ノ規定ニ依ル補償金額ノ審決ニ付テハ此ノ限ニ在
ラス
第二十五條特許法第六條、第十條乃至第十四條
第十六條乃至第三十條、第三十二條、第三十三條、
第三十六條、第四十四條、第四十五條、第四十七條
第四十八條、第五十一條、第五十五條、第五十六條、
第五十八條第一項、第五十九條、第六十四條、第
六十五條第六項第七項、第六十六條第一項、第六
十七條乃至第六十九條、第七十一條、第七十二條、
第八十條乃至第八十三條、第八十六條乃至第百五
條、第百七條、第百十條乃至第百十二條、第百十三條
第一項及第百十四條乃至第百二十八條ノ規定ハ
意匠ニ關シ之ヲ準用ス
第二十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下
ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
他人ノ登錄意匠ニ係ル物品ト同一ノ物品ヲ業
トシテ製作、使用、販賣又ハ擴布シタル者
二他人ノ登錄意匠ニ係ル物品ト類似ノ物品ヲ業
トシテ製作、使用、販賣、又ハ擴布シタル者
三他人ノ登錄意匠ニ係ル物品ト同一又ハ類似ノ
物品ヲ業トシテ輸入又ハ移入シタル者
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
第二十七條左ノ各號]ノ一ニ該當スル者ハ一年以下
ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
詐僞ノ行爲ヲ以テ意匠ノ登錄ヲ受ケ又ハ審決
若ハ判決ヲ受ケタル者
二登錄意匠ニ係ラサル物品又ハ其ノ物品ノ容器
包装ノ類ニ意匠登錄標記ヲ附シ又ハ意匠標記ニ
紛ハシキ表示ヲ爲シタル者
三登錄意匠ニ係ラサル物品ニシテ其ノ物品又ハ其
ノ物品ノ包器包装ノ類ニ意匠登錄標記ヲ附シ又
ハ意匠登錄標記ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタルモノヲ
販賣又ハ擴布シタル者
四登錄意匠ニ係ラサル物品ヲ製作若ハ使用セシム
ル爲又ハ販賣若ハ擴布スル爲廣告、看板、引札ノ
類ニ其ノ物品カ登錄意匠ニ係ルコトヲ表示シ又ハ
之ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタル者
第二十八條第二十六條第一項ニ掲クル行爲ヲ組成
シタル物又ハ其ノ行爲ヨリ生シタル物ニシテ刑法第十
九條ノ規定ニ依リ沒收スルコトヲ得ヘキモノニ付判決
言渡前被害者ノ請求アリタルトキハ其ノ物ヲ沒收シ之
ヲ被害者ニ交付スルノ言渡ヲ爲スヘシ
被害者ハ前項ノ規定ニ依ル物ノ交付ヲ受ケタル場
合ニ於テハ其ノ物ノ價額ヲ超過スル損害ノ額ニ限リ
賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第二十九條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人
又ハ通事特許局又ハ其ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ
官廳ニ對シ虚僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ三月以上十
年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサ
ル前自白シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコト
ヲ得
第三十條特許局職員又ハ其ノ職ニ在リタル者故ナ
ク其ノ職務上知得タル意匠登錄出願中ノ考案又ハ意
匠登錄出願者ノ事業上ノ祕密ヲ漏泄シ又ハ竊用シ
タルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處
ス
第三十一條特許局ヨリ證人、鑑定人又ハ通事トシテ
呼出サレタル者正當ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又
ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ五十圓以下ノ過料ニ處
ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規
定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用ス
第三十二條辨理士ニ非スシテ特許局ニ對シ意匠ニ
關シ爲スヘキ事項ノ代理業ヲ營ミタル者ハ一年以下
ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
第三十三條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四條舊法ニ依ル意匠ノ登錄、處分及手續ハ本
附則ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外本法ニ依リ爲
シタルモノト看做ス
舊法ニ依リ意匠ニ關シ爲シタル出願請求其ノ他ノ手
續ニ付亦前項ニ同シ
第三十五條本法施行ノ際現ニ繫屬スル意匠登錄ノ
出願ノ處理ニ付テハ仍舊法ニ依ル
第三十六條本法施行前發生』シタル意匠權ニ關シテ
ハ舊特許法第二十九條]第二號ノ規定ハ仍其ノ效力
ヲ有シ同號ノ規定ヲ準用シ第九條ノ規定ハ之ヲ適用
セス
第三十七條意匠ノ登錄カ舊法施行中無效ト爲リタ
ル場合ニ付テハ舊法第十條ノ規定及同條ノ規定ニ
基キ準用スル舊特許法ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ第
十條ノ規定ハ之ヲ適用セス
第三十八條本法施行前旣ニ納メタル又ハ納付スヘキ
期限ノ經過シタル意匠料ニ付テハ仍舊法ニ依ル
第三十九條意匠料ノ納付ヲ怠リタル場合ニ於テ本
法施行ノ際未タ其ノ意匠登錄ノ取消ナキモノニ付テ
ハ本法施行ノ日ヨリ六月間ヲ限リ意匠料ヲ追納スル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ舊法ニ依ル〓意匠料ノ二倍
ニ相當スル金額ヲ意匠料トシテ納付スヘシ
前項ニ規定スル追納期間內ニ意匠料ヲ追納セサルト
キハ本法施行ノ時ニ遡リ意匠權ハ消滅シタルモノト
看做ス
第四十條舊法ニ依ル意匠ノ登錄ニ關シテハ本法施
行後ニ登錄九爲サレタル場合ト雖舊法第十二條ノ規
定ハ仍其ノ效力ヲ有シ同條ノ規定ノ適用ノ範圍內ニ
於テ同條ニ掲クル舊法ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ登
錄カ同條ノ規定ニ該當スル場合ニ限リ審判ニ依リ之
ヲ無效ト爲スヘシ
第七商標法改正法律案(政府提出)
第一讀會
商標法改正法律案
商標法
第一條自己ノ生產、製造、加工、選擇、證明、取扱又
ハ販賣ノ營業ニ係ル商ロ叩ナルコトヲ表彰スル爲商標
ヲ專用セムトスル者ハ商標ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
登錄ヲ受クルコトヲ得ヘキ商標ハ文字、圖形若ハ記號
又ハ其ノ結合ニシテ特別顯著ナルモ】ノナルコトヲ要ス
商標ハ之ニ施スヘキ色ヲ限定シテ登錄ヲ受クルコトヲ
得
第二條左ニ揭クル商標ニ付テハ之ヲ登錄セス
菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ圖形ヲ有スルモノ
二國旗、軍旗、勳章、褒章、記章又ハ外國ノ國旗ト
同一又ハ類似ノモノ
三白地ニ赤十字ノ記章又ハ赤十字若ハ「ジェネ
ヴァ」十字ノ稱號若ハ文字ト同一又ハ類似ノモノ
四秩序又ハ風俗ヲ紊ルノ虞アルモノ
五他人ノ肖像、氏名名稱又ハ商號ヲ有スルモノ但
シ其ノ他人ノ承諾ヲ得タルモノハ此ノ限ニ在ラス
六同一又ハ類似ノ商品ニ慣用スル標章ト同一又
ハ類似ノモノ
七政府ノ開設シ、道府縣若ハ之ニ準スヘキモノノ開
設シ若ハ政府ノ認可ヲ得テ開設スル博覽會又ハ外
國ニ於ケル官設若ハ官許ノ博覽會ノ賞牌、賞狀又
ハ褒狀ト同一又ハ類似ノ圖形ヲ有スルモノ但シ其
ノ賞牌、賞狀又ハ褒狀ヲ受領シタル者カ其ノ商標
ノ一部トシテ其ノ圖形ヲ使用セムトスルトキハ此ノ
限ニ在ラス
八取引者又ハ需要者ノ間ニ廣ク認識セラルル他人
ノ標章ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ商品
ニ使用スルモノ
九他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ
類似ノ商品ニ使用スルモノ
十登錄失效ノ日ヨリ一年ヲ經過セサル他人ノ商標
ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ商品ニ使用
スルモノ但シ其ノ他人ノ商標力登錄失效前一年以
上使用セサリシモノナル場合ニ於テハ此ノ限ニ在
ラス
十一商品ノ誤認又ハ混同ヲ生セシムルノ虞アルモ
商標ノ要部ト認メラルルノ虞アル部分カ分離シテハ前
條第二項ニ規定スル特別顯著ノ要件ヲ具備セサル爲
又ハ前項第六號ニ該當スル爲登錄ヲ受クルコトヲ得
サルモノナル場合ト雖出願人カ其ノ部分自體ニ付權
利ヲ要求セサル旨ヲ申出テタルトキハ其ノ商標ヲ登錄
ス
第三條同一商品ニ使用スヘキ自己ノ商標ニシテ相類
似スルモノ又ハ類似ノ商品ニ使用スヘキ自己ノ商標
ニシテ同一ノモノ若ハ相類似スルモノハ聯合ノ商標ト
シテ出願シタル場合ニ限リ之ヲ登錄ス
第四條同一又ハ類似ノ商品ニ使用スヘキ同一又ハ
類似ノ商標ニ付各別ノ登錄出願カ競合スルトキハ最
先ノ出願者ニ限リ登錄ス但シ同日ノ各別ノ出願者ア
ルトキハ出願者ノ協議ニ依リ登錄シ協議調ハサルトキ
ハ共ニ登錄セス
政府ノ開設シ、道府縣若ハ之ニ準スヘキモノノ開設シ
若ハ政府ノ認可ヲ得テ開設スル博覽會又】ハ工業所
有權保護同盟條約國ノ版圖內ニ開設スル官設若ハ
官許ノ萬國博覽會ニ出品シタル商品ニ使用シタル商
標ニ付其ノ開會ノ日ヨリ六月以内ニ其ノ商標ノ使用
者カ其ノ商標ノ登錄ヲ出願シタ』ルトキハ其ノ開會ノ
日ニ於テ出願シタルモノト看做ス
前項ノ規定ハ命令ヲ以テ前項ニ規定スル出品ニ付豫
メ屆出ツヘキコトヲ規定シタル場合ニ於テ其ノ屆出ヲ
怠リタル者ニ付之ヲ適用セス
第二項ニ掲クル萬國博覽會ヲ除クノ外外國ノ版圖
內ニ開設スル官設又ハ官許ノ博覽會ニ出品スル商品
ニ使用スル商標ニ付保設ヲ與フルノ必要アルトキハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條商標登錄出願者ノ命令ニ定ムル類別內ニ於
テ其ノ商標ヲ使用スへキ商品ヲ指定スヘシ
第六條商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利ハ其ノ營業
ト共ニスル場合ニ限リ之ヲ移轉スルコトヲ得
商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利カ共有ニ係ル場合
ニ於テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非サレ
ハ其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ得ス
商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利ノ承繼ハ承繼人カ
出願人名義ノ變更ヲ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ第
三者ニ對抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ屆出ニ係ル
トキハ關係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ第
三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第七條商標ハ登錄ニ依リ發生ス
商標權者ハ第五條ノ規定ニ依リ指定シタル商品ニ付
其ノ商標ヲ専用スルノ權利ヲ有ス商標權カ其ノ登錄
商標ノ使用ノ態樣ニ依リ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係
ル意匠權ト牴觸スル場合ニ於テハ商標權者ハ意匠權
者ノ實施許諾アルニ非サレハ其ノ態樣ニ於テ登錄商
標ヲ使用スルコトヲ得ス
第八條商標權ノ效力ハ普通ニ使用セラルル方法ヲ以
テ自己ノ氏名名稱若ハ商號又ハ其ノ商品ノ普通名
稱產地、品位、品質、效能、用途、製法、時期、數量、
形狀若ハ價格ヲ表示スルモノニ及ハス但シ商標登錄
後惡意ヲ以テ氏名名稱又ハ商號ヲ使用シタル場合ハ
此ノ限ニ在ラス
商標權ノ效力ハ第二條第二項ノ規定ニ依リ權利ヲ
要求セサル旨ヲ申出テタル部分自體ニ及ハス
第九條他人ノ登錄商標ノ登錄出願前ヨリ同一又ハ
類似ノ商品ニ付取引者又ハ需要者ノ間ニ廣ク認識
セラレタル同一又ハ類似ノ標章ヲ善意ニ使用スル者
ハ其ノ他人ノ商標ノ登錄ニ拘ラス其ノ使用ヲ繼續ス
ルコトヲ得營業又ハ業務ト共ニ其ノ標章ノ使用ヲ承
繼シタル者亦同シ
前項ノ場合ニ於テ商標權者ハ標章使用者ニ對シ商
品ノ混同ヲ防クニ適當ナル表示ヲ爲スヘキコトヲ請求
スルコトヲ得
第十條商標權ノ存續期間ハ登錄ノ日ヨリ二十年ヲ
以テ終了ス
第十一條前條ノ存續期間ハ更新登錄ノ出願ニ依リ
之ヲ更新スルコトヲ得但シ其ノ更新登錄ノ出願ニ係
ル商標カ第一條第二項第一號乃至第四號第六號
第七號又ハ第十一號ニ該當スル場合ニ於テハ此ノ限
ニ在ラス
第十二條商標權ハ其ノ營業ト共ニスル場合ニ限リ之
ヲ移轉スルコトヲ得
商標權ハ第五條ノ規定ニ依リ指定シタル商品ニ依リ
之ヲ分割シテ移轉スルコトヲ得
聯合ノ商標ノ商標權ハ分離シテ之ヲ移轉スルコトヲ
得ス
商標權カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共
有者ノ同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ
得ス
第十三條商標權ハ商標權者カ其ノ營業ヲ廢止シタ
ル場合ニ於テハ消滅ス
外國ノ登錄商標トシテ登錄ヲ受ケタル商標ノ商標權
ハ其ノ本國ニ於ケル商標權消滅」シタルル合合ニ於テハ
消滅ス
第十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ特許
局長ハ利害關係人ノ請求ニ依リ又ハ職權ヲ以テ商
標ノ登錄ヲ取消スルコトヲ得
商標權者正當ノ理由ナクシテ帝國內ニ於テ登
錄ノ日ヨリ一年間其ノ商標ヲ使用セサリシトキ又ハ
引續キ三年間其ノ商標ノ使用ヲ中止シタルトキ但
シ第五條ノ規定ニ依リ指定シタル商品中其ノ一ニ
使用シ又ハ聯合ノ商標中其ノ一ヲ使用〕シタルトキ
ハ此ノ限ニ在ラス
二商標權ノ移轉アリタル場合ニ於テ其ノ相續ニ依
ルモノヲ除クノ外移轉アリタル日ヨリ一年以內ニ商
標權移轉ノ登錄ヲ申請セサルトキ
外國ノ登錄商標トシテ登錄ヲ受ケタル商標ニ付テハ
前項第一號ノ規定ヲ適用セス
商標權者又ハ請求人ハ第一項ノ規定ニ依ル登錄取
消ノ處分又ハ第一項ノ請求ノ却下ニ對シ不服アルト
キハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第十五條商標者故意ニ其ノ登錄商標ニ商品ノ誤認
又ハ混同ヲ生セシムルノ虞アル附記又ハ變更ヲ爲シテ
之ヲ使用シタルトキハ審判ニ依リ商標ノ登錄ヲ取消
スヘシ
前項ノ規定ニ依リ商標ノ登錄ヲ取消サレタル者ハ取
消ノ審議確定シ又ハ判決アリタル日ヨリ五年間同一
又ハ類似ノ商品ニ付同一又ハ類似ノ商標ノ登錄ヲ受
クルコトヲ得ス
第十六條商標ノ登錄カ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキ
ハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
-登錄カ第一條乃至第四條又ハ前條第二項ノ規
定ニ違反シテ爲サレタルトキ
二登錄力第二十四條ノ規定ニ依リ準用スル特許
法第三十二條ノ規定ニ違反シテ爲サレタルトキ
三登錄カ商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利ノ承繼
人ニ非サル者ノ爲ニ爲サレタルトキ
四登錄カ第二十四條ノ規定ニ依リ準用スル特許
法第三十三條ニ規定スル條約又ハ之ニ準スヘキモ
ノニ違反シテ爲サレタル場合ニ於テ其ノ違反カ第
一號乃至前號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルトキ
五登錄ガ第二十四條ノ規定ニ依リ準用スル特許
法第三十二條ノ規定ニ違反スルニ至リタル上キ又
ハ特許法第三十三條ニ規定スル條約若ハ之ニ準
スヘキモノニ違反スルニ至リタル場合ニ於テ其ノ違
反カ第一號乃至第三號ニ揭クルモノナルトキ
商標權存續期間更新ノ登錄カ左ノ各號ノ一ニ該當
スルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
-登錄カ第十一條但書ノ規定ニ違反シテ爲サレタ
ルトキ
二登錄カ商標權者ニ非サル爲ニ爲サレタルトキ
商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ハ商標權消滅
後ト雖前二項ノ規定ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
第十七條特許局ニ商標原簿ヲ備ヘ商標權ノ設定、
移轉、變更、消滅其ノ他法令ニ定ムル事項ヲ登錄ス
登錄ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條登錄スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ判
決アリタルトキハ之ヲ商標原簿ニ登錄ス
第十九條特許局ハ商標公報ヲ發行シ本法ニ規定ス
ル事項其ノ他登錄商標ニ關スル必要ナル事項ヲ之ニ
記載スヘシ
第二十條商標ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル
時登錄料トシテ每件一時ニ三十圓ヲ納付スヘシ
商標權存續期間更新ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄
ヲ受クル時登錄料トシテ每件一時ニ五十圓ヲ納付ス
ヘシ
第二十一條商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄
出願アリタルトキハ審査官ヲシテ之ヲ審查セシム
第二十二條審判ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令
ニ規定スルモノノ外左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求スル
コトヲ得
-第十五條ノ規定ニ依ル商標ノ登錄ノ取消
二第十六條ノ規定ニ依ル商標又ハ商標權存續期
間更新ノ登錄ノ無效
三商標權ノ範圍ノ確認
前項第一號ノ取消ノ審判又ハ第二號ノ無效ノ審判
ハ利害關係人及審査官ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得
但シ審査官ハ第二條。第一項第五號第八號乃至第
十號、第三條若ハ第四條ノ規定ニ違反シ又ハ第十六
條第一項第三號若ハ第二項第二號ニ該當ストノ理
由ニ依ル無效ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第一項第三號ノ確認ノ審判ハ利害關係人ニ限リ之
ヲ請求スルコトヲ得
第二十三條前條第一項第二號ノ無效ノ審判ハ登錄
ノ日ヨリ五年ヲ經過シタルトキハ之ヲ請求スルコトヲ
得ス但シ第二條第一項第一號乃至第四號第六號
第七號第十一號、第十一條但書、第十五條第二項
又ハ第二十四條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三
十二條又ハ第三十三條ノ規定ニ違反ストノ理由ニ
依ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十四條特許法第十三條、第十六條乃至第三十
條、第三十二條、第三十三條、第四十五條、第五十
八條第一項第三項、第六十八條、第七十一條、第七
十二條、第七十三條第一項第二項第四項、第七十
四條乃至第七十七條第八十條乃至第八十三條、
第八十六條乃至第百五條、第百七條、第百九條乃
至第百十五條、第百十七條乃至第百二十四條及第
百二十八條ノ規定ハ商標ニ關シ之ヲ準用ス但シ第
七十三條第一項第二項第四項及第七十四條乃至
第七十七條ノ規定ハ商標權存續期間更新ノ登錄出
願ニ付之ヲ準用セス
第二十五條登錄無效ノ審決確定シ又ハ判決アリタ
ル後ニシテ再審請求ノ登錄前ヨリ同一又ハ類似ノ商
品ニ付取引者又ハ需要者ノ問ニ廣ク認識セラレタル
同一又ハ類似ノ登錄商標ヲ善意ニ使用スル者ハ其ノ
登錄商標カ再審ニ依リ登錄ヲ囘復シタル商標ニ牴觸
スル爲第二條第一項第九號ノ規定ニ違反ストノ理
由ニ依リ其ノ登錄ヲ無效トセラレタル場合ニ於テモ其
ノ商標ヲ使用ヲ繼續スルコトヲ得營業ト共ニ其ノ商
標ノ使用ヲ承繼シタル者亦同シ
第九條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十六條營利ヲ目的トセサル業務ニ係ル商品ノ標
章ヲ專用セムトスル者ハ標章ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
前項ノ標章ハ之ヲ商標ト看做シ本法中商標ニ關スル
規定ヲ之ニ適用ス
第二十七條同業者及密接ノ關係ヲ有スル營業者ノ
設立シタル法人ニシテ團體員ノ營業上ノ共同ノ利益
ヲ增進スルヲ目的トスルモノハ其ノ團體員ヲシテ其ノ
營業ニ係ル商品ニ標章ヲ專用セシムル爲其ノ標章ニ
付團體標章ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
團體標章ハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外之ヲ
商標ト看做シ本法中商標ニ關スル規定ヲ之ニ適用ス
第二十八條前條ノ規定ニ依リ〓體標章ノ登錄ヲ受
ケムトスル法人ハ其ノ定款ニ於テ其ノ團體標章ノ使
用ニ關スル事項ヲ定メ特許局長ノ認可ヲ受クヘシ其
ノ事項ヲ變更スル場合亦同シ
第二十九條團體標章權ノ侵害ニ因ル損害賠償請求
權ハ團體員ニ生シタル損害ヲモ包含ス
第三十條第二十七條ノ法人ノ合併又ハ分割ノ場
合ニ於テ一ノ法人カ他ノ法人ニ團體標章ノ登錄出願
ヨリ生シタル權利又ハ〓體標章權ヲ移轉セムトスルト
キハ特許局長ノ認可ヲ受クヘシ此ノ場合ニ於テハ第
二十八條ノ規定ヲ準用ス
第三十一條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ特
許局長ハ利害關係人ノ請求ニ依リ又ハ職權ヲ以テ
團體標章ノ登錄ヲ取消スコトヲ得
法人カ團體員ヲシテ第二十八條又ハ前條ノ規
定ニ依リ特許局長ノ認可ヲ受ケタル定款ノ規定ニ
違反シテ團體標章ヲ使用セシメ又ハ其ノ使用ヲ放
任シタルトキ
二法人カ團體員ニ非サル者ヲシテ〓體標章ヲ使用
セシメ又ハ團體員ニ非サル者ノ使用ヲ放任シタルトキ
第十四條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第一項ノ規定ニ依リ團體標章ノ登錄ヲ取消サレタル
法人ハ取消アリタル日ヨリ五年間同一又ハ類似ノ商
品ニ付同一又ハ類似ノ團體標章ノ登錄ヲ受クルコト
ヲ得ス此ノ場合ニ於テハ第十六條及第二十二條ノ
規定ヲ準用ス
第三十二條團體標章ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄
ヲ受クル時登錄料トシテ每件一時ニ百圓ヲ納付スヘ
シ
團體標章權存續期間更新ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ
登錄ヲ受クル時登錄料トシテ每件一時ニ百五十圓ヲ
納付スヘシ
第三十三條前六條ノ規定ハ公法人カ其ノ地域內ニ
於ケル營業者ヲシテ其ノ營業ニ係ル商品ニ專用セシ
ムル爲團體標章ノ登錄ヲ受ケムトスル場合ニ之ヲ準
用ス
第三十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五年以下
ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
他人ノ登錄商標ト同一若ハ類似ノ、商標ヲ同一
若ハ類似ノ商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ交
付シ、販賣シ若ハ交付、販賣ノ目的ヲ以テ所持スル
者
二他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ同一
若ハ類似ノ商品ニ使用セシムルノ目的ヲ以テ交付
シ若ハ販賣シ又ハ其ノ交付、販賣ノ目的ヲ以テ所持
スル者
三他人ノ登錄商標ヲ同一又ハ類似ノ商品ニ使用
スルノ目的又ハ使用セシムルノ目的ヲ以テ僞造又
ハ模造シタル者
四他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ使用
シタル同一又ハ類似ノ商品ヲ交付、販賣ノ目的ヲ
以テ輪入又ハ移入シタル者
五他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ同一
又ハ類似ノ商品ニ使用スルノ目的又ハ使用セシム
ルノ目的ヲ以テ輸八又ハ移入シタル者
六他人ノ登錄商標ヲ僞造若ハ模造スルノ目的又
ハ僞造若ハ模造セシムルノ目的ヲ以テ其ノ用具ヲ
製作、交付、販賣又ハ所持スル者
七同一又ハ類似ノ商品ニ關シ他人ノ登錄商標ト
同一又ハ類似ノモノヲ營業ニ用井ル廣告、看板、引
札、物價表ノ類又ハ取引書類ニ使用シタル者
第三十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ
懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
-詐僞ノ行爲ヲ以テ商標若ハ商標權存續期間更
新ノ登錄ヲ受ケ又ハ審決若ハ判決ヲ受ケタル者
二登錄ヲ受ケサル商標ニシテ商標登錄標記ヲ附シ
若ハ商標登錄標記ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタルモ
ノヲ商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付シ、販
賣シ若ハ交付、販賣ノ目的ヲ以テ所持スル者
三登錄ヲ受ケサル商標ニシテ商標登錄標記ヲ附シ
若ハ商標登錄標記ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタルモノ
ヲ營業ニ用ヰル廣告、看板、引札、物價表ノ類又ハ
取引書類ニ使用シタル者
第三十六條法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人
又ハ通事特許局又ハ其ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ
官廳ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ三月以上
十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサ
ル前自白シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコト
ヲ得
第三十七條特許局ヨリ證人、鑑定人又ハ通事トシテ
呼出サレタル者正當ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ
其ノ義務ヲ盡ササルトキハ五十圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規
定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用ス
第三十八條辨理士ニ非スシテ特許局ニ對シ商標ニ
關シ爲スヘキ事項ノ代理業ヲ營ミタル者ハ一年以下
ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
第三十九條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十條舊法ニ依ル商標又ハ商標權存續期間更
新ノ登錄、處分及手續ハ本附則ニ別段ノ規定アル場
合ヲ除クノ外本法ニ依リ爲シタルモノト看做ス
舊法ニ依リ商標ニ關シ爲シタル出願、請求其ノ他ノ
手續ニ付亦前項ニ同シ
第四十一條本法施行ノ際現ニ繫屬スル商標若ハ商
標權存續期間更新ノ登錄出願又ハ商標登錄ノ取消
ニ關スル事項ノ處理ニ付テハ仍舊法ニ依ル
第四十二條舊法ニ依ル商標又ハ商標權存續期間更
新ノ登錄ニ關シテハ本法施行後ニ登錄カ爲サレタル
場合ト雖舊法第十一條ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ
同條ノ規定ノ適用ノ範圍內ニ於テ同條ニ揭クル舊法
ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ登錄カ同條ノ規定ニ該當
スル場合ニ限リ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ此ノ
場合ニ於テ舊法附則第二項ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ
有シ同項ノ規定ノ適用ノ範圍內ニ於テ同項ニ揭クル
舊法ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有ス
第四十三條登錄カ舊法第一條又ハ第二條第五號ノ
規定ニ違反ストノ理由ニ依ル前條ノ無效ノ審判ハ本
法施行前爲サレタル商標又ハ商標權存續期間更新
ノ登錄ニ關シテハ本法施行ノ日ヨリ五年ヲ經過シタ
ルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
登錄カ舊法第二條第八號第九號、第三條又ハ第四
條第二項ノ規定ニ違反ストノ理由ニ依ル前條ノ無效
ノ審判ハ商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄カ商
標公報ニ掲載セラレタル日ヨリ三年ヲ經過シタルトキ
ハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第四十四條本法施行前舊法第二十三條ノ罪ヲ犯シ
タル者ハ本法施行後ト雖告訴アルニ非サレハ其ノ罪
ヲ論セス
第九辨理士法案(政府提出)第一讀會
辨理士法案
辨理士法
第一條辨理士ハ特許、實用新案、意匠又ハ商標ニ關
シ特許局ニ對シ爲スヘキ事項ノ代理ヲ爲スコトヲ業ト
スルモノトス
第二條左ノ條件ヲ具フル者ハ辨理士タル資格ヲ有ス
帝國臣民又ハ農商務大臣ノ定ムル所ニ依リ外
國ノ國籍ヲ有スル者ニシテ私法上ノ能力者タルコト
二帝國內ニ住所ヲ有スルコト
三辨理士試驗ニ合格シタルコト
辨理士試驗ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ前條第一項第
三號ニ規定スル條件ヲ西女セスシテ辨理士タル資格ヲ
有ス
-辯護士法ニ依リ辯護士タル資格ヲ有スル者
二高等試驗ノ行政科試驗若ハ司法科試驗又ハ判
事檢事登用試驗ニ合格シタル者
三特許局ニ於テ高等官ニ在職シテ二年以上審判
若ハ審査ノ事務ニ從事シタル者又ハ判任以上ノ官
ニ在職シテ五年以上審査ノ事務ニ從事シタル者
第四條左ニ揭クル者ハ辨理士タルコトヲ得ス
-禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者但シ六年未滿ノ
懲役又ハ禁錮ニ處セラレタル者ニシテ刑ノ執行ヲ
終リ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タル日ヨリ起算シ三
年ヲ經過シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
二前號ニ該當スル者ヲ除クノ外第二十一條、特許
法第百二十九條、第百三十條、第百三十三條若ハ
第百三十五條、實用新案法第二十七條、第二十
八條、第三十一條若ハ第三十三條、意匠法第二
十六條、第二十七條、第三十條若ハ第三十二條
又ハ商標法第三十四條、第三十五條若ハ第三十
八條ノ罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル者者シ刑ノ執行
ヲ終リ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タル日ヨリ起算シ
三年ヲ經過シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
三破產若ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ復權セサル者
又ハ身代限ノ處分ヲ受ケ債務ノ辨償ヲ終ヘサル者
四業務停止ノ期間中業務ヲ廢止シ未タ其ノ期間
ノ經過サセル者又ハ業務禁止ノ處分アリタル曰ヨ
リ起算シ三年ヲ經過セサル者
第五條特許局ニ辨理士登錄簿ヲ備へ辨理士ニ關ス
ル事項ニ登錄ス
辨理士タラムトスル者ハ辨理士登錄簿ニ登錄ヲ受ク
ルコトヲ要ス
辨理士ノ登錄ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條辨理士ノ登錄ヲ受ケムトスル者ハ登錄料トシ
テ二十圓ヲ納付スヘシ
第七條辨理士ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル事件ニ付
其ノ業務ヲ行フコトヲ得ス
相手方ノ代理人トシテ取扱ヒタル事件
二栽判所又ハ特許局ニ在職中取扱ヒタル事件
第八條辨理士ハ特許、實用新案、意匠又ハ商標ニ關
スル事項ニ付裁判所ニ於テ本人ト共ニ出頭シテ本人
ノ爲演述ヲ爲スコトヲ得其/演述ハ本人卽時ニ之ヲ
取消シ又ハ更正サセルトキニ限リ本人自ラ之ヲ爲シタ
ルモノト看做ス
前項ノ規定ニ依リ帝國臣民ニ非サル辨理士出頭シテ
演述ヲ爲サムトスルトキハ裁判所ノ許可ヲ受クヘシ
第九條辨理士ハ特許局所在地ニ辨理士會ヲ設立ス
ヘシ
辨理士會ハ支部ヲ設クルコトヲ得
第十條辨理士會ハ辨理士ノ風紀ヲ保持シ業務ノ發
達ヲ圖ルヲ以テ目的トス
第十一條辨理士會ハ法人トス
第十二條辨理士會ハ農商務大臣之ヲ監督ス
第十三條辨理士會ハ會則ヲ設ケ役員ニ關スル事項、
辨理士ノ風紀保持ニ關スル事項、謝金及手數料ニ關
スル事項其ノ他會務ノ處理ニ必要ナル事項ヲ規定ス
ヘシ
會則ハ特許局長ヲ經由シテ農商務大臣ノ認可ヲ受
クヘシ會則ノ變更ニ付亦同シ
第十四條辨理士會ノ設立ノ手續、機關ノ組織及監督
ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條辨理士會ニ加入シタル後ニ非サレハ其ノ業
務ヲ行フコトヲ得ス
第十六條辨理士本法又ハ辨理士會ノ會則ニ違反ス
ル行爲アルトキハ農商務大臣ハ辨理士懲戒委員會
ノ議決ニ依リ之ヲ懲戒スルコトヲ得
辨理士懲戒委員會ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ
定ム
第十七條辨理士ノ懲戒處分ハ左ノ四種トス
-譴責
三五百圓以下ノ過料
三一年以內業務ノ停止
四業務ノ禁止
第十八條辨理士會ハ辨理士ニ對シ懲戒ノ必要アリ
ト認メタルトキハ特許局長ヲ經由シテ農商務大臣ニ
申告スヘシ
第十九條農商務大臣ハ前條ノ規定ニ依ル辨理士會
ノ申告ニ依リ又ハ職權ヲ以テ「辨理士懲戒委員會ヲ
招集ス
第二十條過料ヲ完納セサルトキハ特許局長ノ命令ヲ
以テ之ヲ執行ス
非訟事件手續法第二百八條ノ規定ハ前項ノ規定ニ
依ル執行ニ付之ヲ準用ス
第二十一條辨理士又ハ辨理士タリシ者故ナク其ノ
業務上知得タル發明者、考案者、特許出願者又ハ登
錄出願者ノ發明、考案又ハ事業上ノ祕密ヲ漏泄シ又
ハ竊用シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下
ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
附則
第二十二條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十三條特許辨理士令及特許辨理士組合規則
ハ之ヲ廢止ス
第二十四條本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十
六號布告刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ六年以
上ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
第二十五條第四條第一號ニ該當スル者ヲ除クノ外
舊特許法第九十二條、第九十三條若ハ第九十七條、
舊實用新法第十二條、第二十三條若ハ第二十七條、
舊意匠法第二十四條、第二十五條若ハ第二十九條
又ハ舊商標法第二十三條、第二十四條若ハ第二十
八條ノ罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル者ハ辨理士タルコト
ヲ得ス但シ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得
タル日ヨリ起算シ三年ヲ經過シタル者ハ此ノ限ニ在
ラス
第二十六條本法施行ノ際現ニ特許辨理士タル資格
ヲ有スル者ハ辨理士タル資格ヲ有ス
第二十七條本法施行ノ際現ニ特許辨理士タル者ハ
辨理士ト看做ス
第二十八條特許辨理士登錄簿ハ辨理士登錄簿ト
看做ス
第二十九條第十五條ノ規定ハ本法施行ノ日ヨリ起
算シ六月間之ヲ適用セス
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=43
-
044・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 唯〓議題トナリマシタル
工業所有權ニ關シマスル現行法規ハ、明治四十二年ニ改
正ニ相成リマシテ、今日マデ其儘一ナナテテルノデアリマス、
然ルニ此間ニ於テ此農商工三業ニ關シマスル發達ハ、御承
知ノ通リ著シキモノニナッテ居リマス爲メニ、ソ」レニ關係ノ
アル此法案ノ改正ノ必要ガ起キテ參ッタノデアリマス、故ニ
一昨年デアリマシタカ、斯道ニ最モ學識經驗ヲ有セラレテ
居リマスル人〓ヲ集メマシテ、サウシテ特許局ノ主管ニ關
シマスル諸法律改正調査委員ヲ設ケラレマシタ、爾來今
日ニ至リマス約一箇年ニ亙リマシテ、十分ニ調查〓究ヲ遂
ゲラレマシテ、始メテ今日ニ至リマシテ此成案ガ出來マシタ
ノデゴザイマス、サウ云フモノデアリマシテ、其主ナルモノハ發
明ノ保護、又所有權ノ保護、審査又ハ私權公權ナドノ調
和ノ點ナドニ就テ主ニ力ヲ用ヰマシタ、サウシテ」此改正ヲ遂
ゲタ次第デアリマス、又特許ノ方ハサウデアリマスガ、ソレト
同時ニ實用新案、又意匠法、商標法ナドニ就キマシテモ矢
張改正ノ必要ガ起リマシテ、此所ニ出シタル譯デゴザイマス、
又新ニ辨理士法ヲ設定致シマシテ、サウシテ諸法律ト相
俟ッテ、工業所有權ノ完全ヲ圖ラント云フ趣意ニ依シテ、今
日提出致シマシタル次第デゴザイマス、此事ハ申上ケルマデ
モナク、產業ニ密接ノ關係ヲ有シテ居ルモノデアリマシテ、今
日戰後ノ經營ニ於キマシテ、其中ノ重要ナル一策トシテ提
出シタ次第デゴザイマス、[何卒御審議ノ上御協贊アランコ
トヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=44
-
045・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 質疑ノ通告ガアリマスカラ其發
言ヲ許サウト思ヒマス、〓瀨一郞君
〔〓瀨一郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=45
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046・清瀬一郎
○〓瀨一郞君 本案ニ對シテ質問ヲ致スベキ箇條ハ多々
アリマスガ、追テ委員會ニ於テ詳細ナル御說明ヲ得ルコトニ
致シマス、唯ダ大體ニ關スル事デ三箇條ノ御答辯ヲ求メマ
ス、第一ハ申スマデモナク特許法、商標法、是等ハ我國ノ產
業ヲ進步セシムル爲メニ設ケラレタモノデアル、特許ノ制度
ノ確立シタノハ既ニ明治十七年デアリマスガ、今日ニ至ル迄
帝國ノ特許官廳ハ、我國ノ產業ニ如何ナル貢献ヲ爲シタル
ヤト云フ點デアリマス、今日特許ニ關スル民間ノ輿論ハ甚
ダ悲觀的デアリマス、蓋シ政府ガ特許法ノ改正ヲ企テラレ
タノハ、此狀態ニ應ズル爲メデアラウト思ヒマスガ、我國ノ農
商務省ノヤル特許ノ行政ガ成績ヲ擧ゲナイノハ、特許法ガ
惡イノデアルカ、或ハ特許局ガ惡イノ』デアルカ、私自身ノ考
デハ、無論特許法ニモ改正スベキ點ハ多々アリマス、今回ノ
案ニモ洵ニ賛同スベキ點ガ多々アリマス、併ナガラ我國ノ特
許行政ニ於テ最モ悲シムベキハ特許局デアリマス、此大切ナ
ル官廳ヲ農商務省ノ一局トシテ、水產局ヤ鑛山局ト共通
ノ一局トシテ、局長ナドハ年中更迭サレル、御出世ヲナサル
ノハ結構デアルガ、吾〓特許ノ事務ヲ執ッテ居ル者ハ、文書
ノ宛名サヘモ五六日スレバ變ッテ來ル、ウッカリスルト舊ノ人
ヲ局長ト思シテ居ルヤウナコトガアル、御出世ハ結構デアル
ガ、斯ノ如キ大切ナル事ヲ一屬僚ノ局長ナドニ預ケテ置イ
テ、ドウシテ日本ノ發明ガ進步シマセウ、今日ノ實際カラ
申シマシテ、特許局ニ於ケル印紙及手數料ノ收入ハ、一年
平均六十万圓ニ上ッテ居ル、然ルニ特許局ノ經費ハ僅カ二
十万圓足ラズデアル、政府ハ發明ヲ保護スルト言ヒナガラヽ
實ハ發明ニ保護サレテ居ル、特許局ヲシテ金儲ノ役所トシテ
居ルヤウナモノデアル(「議論ハ討論ニ讓レ」ト呼フ者アリ)私ハ
今日ノ急務トシテハ、特許法ノ改正ヨリモ、特許局ノ大改革
ト云フコトガ必要、デアルマイカ、現ニ一部ニ於デハ、特許局
ノ官吏ハ賄賂ヲ取ルト云フ說サヘアルノデアル、現ニ又豫審
ニ於テモ繫屬シタ事モアルノデアル、特許局ノ扱フ所ノ事務
ハ一ツハ司法事務デアル、審判デアル、之ニ關係スル者ガ賄
賂ヲ取ルナドヽ云フコトハアル筈ガナイ、(「賄賂ヲ取ッテ宜イ
ト云フコトガ何處ニモナイ」「證據ヲ擧ゲロ」ト呼フ者アリ)確
定判決ガアル、此狀態ヲ改革スルノガ、第一デ法律ノ改正
モ宜イガ、法律ヨリモ特許局ニ向ッテ手ヲ下ス抱負ハ政府當
局ニ有ルヤ無シヤ、是ガ第一デアリマス、第二ハ簡單デアリ
マス、第二ハ特許法ノ改正ト同時ニ、不正競爭法ト云フモ
ノハ是ハ年來宿題デアリマス、政府ハ如何ナル點マデ是ハ
調査ヲ爲サレ、將來ニ於テ不正競爭ニ對スル法律ヲ出ス精
神ガアルカドウカト云フコトデアリマス、是ハ說明ヲ要シマセ
ヌ、第三ハ商標ニ關スル事デアリマスガ、殊ニ支那ノ商標デ
アリマス、支那ノ國ニ於テ商標法ヲ作ルト云フコトト、是ハ
我國トノ條約上ノ義務デアリマスカラ、外務當局ヨリシテ、
支那政府ニ商標法ヲ設定セシメル權利ガアルノデアリマス、
我國ノ將來ノ貿易ハ、支那ニ於ケルコトヲ第一トシナケレバ
ナラヌ、然ルニ今日支那ニ於テ確定ナル商標法ガ制定セラ
レザル結果、我國ノ輸出貿易ハ非常ニ不便ヲ感ジテ居ルノ
デアリマス、支那政府ヲ督勵シテ、確定ノ商標法ヲ作ラセナ
ケレバナラヌト云フコトハ、數年來ノ世間ノ與論デアルニ拘
ラズ、今日ニ至ル迄毫モ其成績ヲ擧ゲテ居ラヌノハドウ云フ
譯デアルカ、急速ニ政府ハ支那ヲシテ、商標法ヲ編纂セシム
ル精神アルヤ、否ヤ以上ノ三點ニ向ッテ責任アル御答辯ヲ
求メマス
〔政府委員田中隆三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=46
-
047・田中隆三
○政府委員(田中隆三君) 一寸御答致シマス、唯〓御尋
ノ第一點、詰リ特許局ノ事ニ就テ大分御不滿デアラレルヤ
ウナ風ニ、又局員ニ何カ不正ナ事デモアルカノ如キマデノ御
言葉ガアリマシタガ、特許局ガ十分ニ吾こノ思フ如ク活動
ノ出來ナイト云フ點ハ、〓瀨君ト私共同感デアリマス、併ナ
ガラ何事モ豫算其他ニ關係ノアルコトデアリマスカラ、其國
家一般財政ノ範圍內ニ於テ、出來ル限リ漸次ニ之ヲ擴張
シテ行キタイ、整理シテ行キタイト思ッテ努メツヽアリマス、今
日提案セラレマシタ此改正案ト共ニ、又特許局ニ於テモン
レ〓〓定員ヲ增加致シマシテ、大ニ其面目ヲ改メルコトニ努
メル積リデアリマス、何レ又此法案ノ御協賛ヲ得ルト共ニ、
追加豫算等ニ依シテ、諸君ノ御協賛ヲ得ナケレバナラヌコト
ニ到來スルト思ウテ居リマス、其節ニハドウゾ〓瀨君ハ眞先
ニナッテ、十分ノ御賛成アランコトヲ切望致シマス、ソレカラ
第二ノ不正競爭云々ノ事ハ、要スルニサウ云フ不正ナ事ヲ
スル者ノ取締ノ事デアリマセウガ、取締ヲ致シマスニシテモ、
其不正競爭ノ實際ヲ能ク取調ベルコトガ根柢ニナルノデア
リマスカラシテ、是モ及バズナガラ調査等ニ就キマシテカヲ盡
シテ居リマス積リデアリマス、ソレカラ第三ノ支那ノ商標
ノ事モ是モ當局ト致シマシテ、多年非常ニ心配ヲ致シテ居
リマス事デゴザイマスガ、是ハ實ハ獨リ日本ノ事ノミナラズ、
英吉利ニシテモ、亞米利加ニシテモ、佛蘭西、獨逸等ニシテ
モ日本ノ思フ通リニ致シマスレバ、其等ノ外國或ハ其他ノ
外國等カラシテ抗議ガ出マシタリ、色〓外國トノ關係ノ上
ニ於テ、一方ガ希望スル所ガ他ノ一方ガ希望セヌト云フコ
トガアリマシタリ、種々ノ事情ノ爲メニ今日マデマダ行惱ン
デ居ルノデアリマス、併ナガラ各國政府共ソレ〓〓段々困難
ナ問題ニ就テ、諒解ヲ得ルノ運ニナッテ參リマシテ、是ハ餘リ
遠カラザル將來ニ於テ、何トカ片ガ付クト思ヒマス、卽チ支
那ニ於テ商標ノ事ニ關スル完全ナ法律ガ出來マシテ、各國
共之ニ依ッテ權利ノ確保ヲ期スルコトガ出來ルダラウト思ヒ
マス、之ヲ以テ御答ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=47
-
048・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 他ニ質疑モ無イヤウデアリマス
カラ次ノ日程ニ移リマス、日程第二、第四、第六、第八、第
十、右五案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマ
ス
第二、第四、第六、第八、第十右議案ノ審査
ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=48
-
049・岩崎勲
○岩崎動君 日程第一乃至第九ニ至ル五案ヲ一括シ、委
員ノ數ハ特ニ十八名トシ、議長ニ於テ指名アランコトヲ望
ミマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=49
-
050・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ御發議ニ御異議アリ
マセヌス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=50
-
051・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマス、其通
リニ決シマス、-次ノ日程第十一、第十二ハ同一ノ委員ニ
付託シタ議案デアリマスカラ、一括シテ議題ニ致シタイト思
ヒマス、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=51
-
052・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナケレバ其通リニ取計ヒ
マス、日程第十一借地法案、日程第十二借家法案、右兩
案ヲ一括シテ其第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ
求メマス、鳩山一郎君
第十一借地法案(政府提出)
第一讀會ノ續(報告委員長
第十二借家法案(政府提出)
第一讀會ノ續(報告調整形態
報告書
一借地法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年二月十九日
借地法案委員長
鳩山life
衆議院議長奥繁三郎殿
報告書
一借家法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年二月十九日
借家法案委員長
鳩山1部
衆議院議長奥繁三郞殿
〔鳩山一郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=52
-
053・鳩山一郎
○鳩山一郞君 借地法案及借家法案ノ委員會ノ經過竝
ニ結果ヲ御報告致シマス、此二ツノ法案ハ吾人ノ日常生
活ニ最モ重要ニシテ密接ナル關係ヲ有シテ居リマスル法案
デアリマス、又現代ノ社會思想及法律感念ノ近世的傾向
デアル所ノ吾人ノ權利ハ、單ニ其人ノ利益ノミニ存スルモノ
デハナイト云フ、此傾向ニ順應シテ居ル所ノ立法事業ノ一
ツデアルト云フ點カラ致シマシテ、委員諸君ハ非常ノ熱心ト
興味トヲ以テ、此審査ニ從事致シタノデアリマス、質問應答
ニ委員會ヲ開クコトガ六囘、此間ニ大體論カラ條文ノ解釋
問題ニ至リマスマデ、詳細ニ論議致サレタノデアリマス、併ナ
ガラ此質問應答ノ經過ニ就キマシテハ、既ニ速記錄ガ諸君ノ
御手許ニ廻ッテ居ル筈デアリマスカラ、此經過ニ就キマシテハ唯
タ問題ノミヲ列擧スル位ニ止メタイト思フノデアリス、而モ
便宜上是ハ討論ノ經過ヲ申述ベタ後ニ述ベタイト思フノデ
アリマス、討論ニ入リマシテカラ、加藤重三郞君ヨリ借地、
借家等ノ爭議ニ關シテ、調停機關ヲ設置セラレタシト云フ
此希望條件ヲ附シテ、原案贊成ノ意見ガ提出致サレマシ
タ、希望條件ニ就キマシテ、政府ハ御希望ハ御尤デアル、近
キ將來ニ於テ斯ノ如キ爭議調停機開ヲ設置致ス爲メニ、
極力盡力スルト云フ言明ガアッタノデアリマス、作間耕逸君
カラ本日御手許ニ廻サレタ所ノ、修正案ノ內容ヲ同ジクス
ル所ノ修正意見ガ提出致サレマシタ、卽チ借地法案ノ第二
條へ、借家法案ト同ジヤウニ無登記對抗主義ヲ採リタイ、
此希望ニ就キマシテ、政府ハ建物ノ保存登記ヲスルコトハ
容易ナ事デアルカラ、借家法ニ認メタ所ノ、無登記對抗主
義ト同樣ナル主義ヲ借地法ニ認メル必要ハ無イ、民法ノ大
主義デアル所ノ、登記主義ヲ覆スダケノ理由ヲ認ナイト云
フ所ノ答辯ガアリマシタ、ソレカラ第十何條カノ新シイ條文
ヲ加ヘタイト云フ詰リ司法大臣ガ言明致サレタ所ノ爭議
調停機開ノ設置セラルヽマデ、過渡的規定トシテ、決定ヲ以
テ判決ニ代ヘタイト云フ此希望ニ對シマシテ、政府ハ對決
ニ代ユルニ決定ヲ以テスルコトガ適當デアルカドウカハ、今
俄ニ答ヘルコトハ出來ナイ、尙ホ爭議調停機開ハ、速ニ設
置シタイト云フ希望デアルカラト云フノデ、此條項ニ就キマ
シテモ反對セラレタノデアリマス、ソレカラ借家法案ノ第四
條ヲ削除スル、是ハ轉借人ニ通知スルコト困難デアルト云
フノガ提出者ノ理由デアリマス、併ナガラ政府ノ言フノニハ、
民法ノ六百十二條ニ依ッテ、賃貸人ハ同意ヲ與ヘナケレバ
轉借スルコトガ出來ナイノデアル、轉借人ノ何人デアルカト
云フノハ、多クノ場合賃貸人ガ知ラナクテハナラナイノデア
ル、而モ轉借人ニ對シテモ、賃借人ト同ジヤウニ寢耳ニ水デ
逐出スト云フコトハ酷デアルト云フノデ、此四條削除ニモ反
對セラレマシタ、ソレカラ修正案ノ第五條ニ二項ト三項ヲ加
ヘタイト云フ希望ニ對シテ、矢張政府ハ反對ヲセラレタ、第
二項ヲ特ニ加ヘル必要ハ無イ、第五條ニ依シテ明白デアル、ン
レカラ第三項ニ義務賃借人ノ解約ヲ申テ、サウシデ賃借人
ノ義務ノ不履行ノ場合ニ於テハ、造作買取ノ義務ヲ認メル
必要ガ無イト云フ、斯ウ云フ譯デ此規定ガ設ケラレタノデア
リマスケレドモ、賃貸人ニ造作ヲ時價ヲ以テ買取ラシムルノ
ハ、賃貸人ノ同意アル場合デアリマスカラシテ、別ニ賃貸人
ニ對シテ酷デアルト云フ規定デハナイ、而モ賃借人ニ對シ
テ造作ヲ持ノテ出ロトー云フコトハ、是ハ其者ニ對シテ酷デア
ルカラ、矢張此規定モ不必要ダト云フノデ反對セラレタノデ
アリマス、第九條ヲ加へルト云フノハ、借地法ト同樣ナ理由
ニ依ッテ、政府ハ反對セラレタルノデアリマス、南鼎三君カラ
シテ、借家法ニ對シテハ敷金ノ規定モ無イシ、又家賃ノ公
定モシテ居ラナイシ、尙ホ借家ニ就テモ、借地ト同ジヤウニ法
律ガ推定スル所ノ期間、卽チ二十年トカ云フ期間ヲ附シタ
方ガ適當デハナイカ、ンレニ就テノ規定ガ無イ、又解約申入ニ
就テノコトハ、是ハ不當デアルト云フヤウナ理由カラシテ、借
家法ニ反對セラレタノデアリマス、採決ニ入リマシテカラ、借
地ニ就キマシテハ、作間君ノ修正意見ハ少數デ以テ否決ニ
ナリ、加藤重三郎君竝ニ同ジ意見ヲ提出サレタ國民黨ノ
板野友造君ノ意見、之ヲ採決シマシタ所多數デ可決ニナリ
マシタ、借家法ニ就テ先ヅ南鼎三君ノ否決說ヲ採決致シマ
シタ所、南君一人デ否決ニナッテ、作間君ノ修正意見ニ就テ
綫イテ採決致シマシタ所、是亦少數デ否決ニナッタノデアリ
マス、少數意見ヲ提出シ得ル所ノ三分ノ一ノ數ニハ達シテ
居ラナカッタノデアリマス、質問應答ノ主ナル問題ヲ申上ゲ
マスト、借地法ニ就キマシテ、國有財產法トノ關係ガドウデ
アルカ、民法施行法人四十四條トノ關係ハドウデアルカ、或
ハ又建物保護法案トノ「關係]ハドウデアルカ、ソレカラ又作
間君ノ修正意見ノ主ナル理由デアル所ノ借地法ニ就キマ
シテモ、借家法下同樣ニ、無登記對抗主義ヲ採,テハドウデア
ルカ、ソレカラ又六十年若クハ三十年ノ期間ガ滿了致シマ
シタ場合ニ、無償デ以テ一土地明渡ヲ請求セシムルト云フコ
トハ、不當デハナイカト云フヤウナノガ大體ノ問題デアリマシ
テ、詳細ノ問題ニ至リマシテハ、第十條ノ規定カラシテ、十
年賃貸スル場合ニハドウ云フ事ヲシタナラバ宜イカ、又第二
條ノ「朽廢」ト云フ文字ハ、如何ニ解釋スベキカト云フヤウナ
質問ガアッタノデアリマス、尙ホ第五條】ニ就キマシテ「遲滯ナ
ク異議ヲ述ベザリシトキ」ト云フ文字ニ「就キマシテ、隨分議
論ガゴザイマシタ、借家法ニ就キマシテハ、此借家法ハ借家
人ノ保護ニ厚キ傾キガアル、故ニ都市ニ於ケル住宅問題ニ
惡影響ヲ及ボスコトハ無イカドウカ、ンレカラ2借地ト同樣ニ
法律ノ推定的期間ヲ設ケテハドウデアルカ、間貸ノ問題敷
金ノ問題、ソレカラ第五條ノ造作ノ意義、此造作ノ意義ニ
就キマシテハ、隨分多數ノ委員諸君カラ質問ガアッタノデア
リマス、尙ホ賃貸人ノ同意ガナクシテ、附加シタル造作ヲモ買
取ラシメテハドウデアルカト云フ意見ト、又之ニ反對シテ-
反對ニナルト思ヒマスガ、常ニ賃貸人ガ買取ラシムルト云フ
ノハ不當デアルト云フノデ、作間君ノ修正意見ノヤウナ意
見モ現ハレタノデアリマス、是等ノ問題ニ對シマシテ、政府ハ
吾ミノ了解シ得ル答辯ガアッタト思ッテ居リマス、要スルニ多
數ノ委員諸君ハ、政府ガ委員會ノ劈頭ニ於テ、大綱領トシ
テ說明セラレタ所ノ借地法ニ就テハ、短期ノ借地契約ヲ認
メナイ、地主ノ不當ナル要求ガアルト云フ虞ヲ防遏セントシ
タコト、第二ニハ地代ノ增減ノ請求ニ關シ、法律ガ標準ヲ
與ヘテ爭ヲ未然ニ防ガントシタルコト、借家法ニ就キマシテ
ハ、登記カ無クテモ第三者ニ對抗スルコトニシテ、不當ナル
家主ノ請求ヲ排除セントシタルコト、第二ニハ解約ノ申込
ノ期間ヲ定メマシテ、借家人ガ逐出サレル際ニ、他ニ住居ヲ
求ムル期間ヲ與ヘタト云フコト、第四ニ造作買取請求權ヲ
與ヘタト云フコト、サウシテ家主ノ不當ナル要求ヲ排除セン
トシタルコト、第五ニハ家賃ノ增減請求ニ就テ公定ノ標準
ヲ示シタト云フコト、此網領ハ現代ノ弊害、所謂時弊ヲ救
濟スルニ顯著ナル〓果ノアルト云フコトヲ是認致シマシテ、
大多數ヲ以テ兩案トモ委員會ニ於キマシテハ原案ニ賛成
致シマシタ次第デアリマス、本會ニ於キマシテモ、委員會ノ
決議ニ御賛同アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=53
-
054・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 此兩案ノ第二讀會ヲ開クニ御
異議アリマスカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=54
-
055・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ハ無イト認メマス、本案
ノ-兩案トモニ第二讀會ヲ開クコトニ決定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=55
-
056・岩崎勲
○岩崎勳君 日程第十一、及第十一一ニ掲ゲマシタル兩案
ヲ一括シテ、直チニ第一一讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=56
-
057・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=57
-
058・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ガナケレバ動議ノ如ク決
定致シマス、兩案トモ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案ノ全部ヲ
議題ニ致シマス、此兩案ニ對シマシテハ作間耕逸君外三名
ヨリ、成規ノ賛成ヲ得テ修正案ノ提出ガアリマス、爰ニ其趣
意ノ辯明ヲ許シマス-作間耕逸君
借地法案第二讀會
借家法案第二讀會
〔作間耕逸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=58
-
059・作間耕逸
○作間耕逸君 爰ニ上程致サレマシタ借地借家ノ兩法案
ニ對シマシテ、本員外三名カラ修正ノ動議ヲ提出致シマシ
タ、簡單ニ其理由ヲ說明致シマス、此兩法案ハ何レモ司法
當局ノ施設ニ成リマスル所ノ、社會政策的立法ノ一種デア
リマスガ、殊ニ借地法ハ今回初メテ新シキ試ミニナッタモノ
デゴザイマシテ、(「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)宜シウゴザ
イマス、十分簡單ニヤリマス、民法ニ於キマシテ相當ニ家主
ノ權利ヲ認メテ居ルカラ、ソレデ其家主ノ權利ト權衡ヲ得
セシムルヤウニ、特別ニ借家法ヲ制定シテ、借家人ノ權利ヲ
保護シヤウトセラレマシタ、卽チ兩法ヲ竝ビ施行致シマシテ、
以テ借家人、家主、此兩者ノ關係ヲ調和セラレント試ミラ
レマシタ所ノ、司法當局ノ御立案ノ苦心ニ對シマシテハ、本
員共モ大ニ諒トスル次第デアリマス、隨ヒマシテ相成ルベク
ハ滿場一致ノ通過ヲ希望スル意味ニ於キマシテ、修正ハ御
遠慮致サウカトモ心得マシタケレドモ、併ナガラ何分ニモ法
案ノ性質デゴザイマスルシ、長所モ固ヨリ多イノデゴザイマス
ガ、併ナガラソレニ對シマスル所ノ決點モ亦少ナクハナイ、其
缺點アルコトヲ知ッテ之ヲ補ハナイノモ、却テ兩法案ニ忠實
ナル所以ニ非ズト信ジマシテ、玆ニ兩法案ヲ通ジテ、將來本
法施行ノ爲メニ、却テ當事者間ノ紛擾ヲ滋ク致シマスルガ
如キ虞アル規定ハ之ヲ避ケマシテ、又兩者ノ關係ノ稍〓曖昧
ニナッテ居リマスル所ハ、其關係ヲ一層明確ニシ、且ツ公平
ニスルノ目的ヲ以テ、主要ナル點ニ於テ借地法ノ方ニ二箇
條許リ、借家法ノ方ニ三箇條許リ修正ヲ加ヘタ次第デアリ
マス、修正ノ條項ハ別ニ印刷シテ御手許ニ廻ッテ居リマスカ
ラ、一々ハ朗讀ハ致シマセヌ、先ヅ借地法中ニ新ニ第一條ノ
次ニ第二條ヲ加ヘマシタノハ、唯〓委員長カラモ一應ノ御
報告ガアリマシタ如ク、本員等ハ借地權ニ就キマシテハ、實
際上ノ觀念ト多年ノ慣習カラ、既ニ現在ニ於キマシテハ、無
登記對抗主義ヲ認メナケレバナラナイ所ノ時勢ニ達シタモ
ノト心得テ居ルノデアリマス、此故ニ此借地法ハ玆ニ新二立
法セラレルニ方リマシテ、本員等ハ此一大新主義ヲ閑却スル
譯ニハドウシテモ參リマセヌ、併ナガラ本員等ト雖、絕對無
條件ニ無登記主義ヲ主張スルモノデハナク、其登記手續
ニ代ユルニ占有事實ヲ以テ致シタイト云フ主義デアリマス
ル、卽チ借地權ニ基ク所ノ適法ノ占有、正權限ニ基ク所ノ
有效ナル占有ト云フ正當ノ事實サヘアリマスレバ、其事實
ヲ以テ登記ノ手續ニ代へテ、以テ自己物件ヲ取得致シタル
第三者ニ對シテモ、完全ニ其效力ヲ對抗シ得セシメタイト
云フ確信ト希望ヲ以チマシテ、此第二條ヲ追加致シタ次第
ニ外ナラナイノデアリマスル、第十五條ニ入リマス前ニ尙ホ
一寸申添エテ置キマスル點ハ、司法當局ハ建物保護法ニ於
テハ、單ニ建物ノ保存登記サヘアレバ、借地權ノ登記ハシテナ
クテモ、現在ニ於テ矢張第三者ニ對抗シ得ルヤウニ相成ッテ
居ルノデアルカラ、建物ノ保存登記サヘセシメレバソレデ宜
イノデアルカラ、其點デ矢張占有主義ヲ見合セテ貰ッテハ、如
何デアルカト云フヤウナ御意見モ出マシタケレドモ、鳩山委
員長ハ政府委員ト共ニ、建物ノ保存登記ヲ借地人ガ致シ
マスルコトガ、極ク容易ニ出來ルヤウナ御意見デゴザイマシ
タケレドモ、實際ニ於キマシテハ、借地人ガ自己ノ所有ニ係
リマスル建物ノ保存登記ヲ致サウト思ヒマスルニハ、地主
又ハ其代理デアリマスル所ノ、差配人ノ承諾ヲ一々經ナ
ケレバナラヌコトデアリマシテ、地主又ハ差配人ハ其間ニ乘
ジマシテ、色ニノ註文ヲ致スヤウナ不都合ナ場合モ少ナカラ
ヌノデアリマスルカラ、此建物ノ保存登記ヲ致スト云フコト
ハ、政府委員又ハ委員長御報告ノ如ク、容易ニ出來ナイコ
トハ實際上洵ニ明カナル事例デアルノデアリマス、隨ヒマシ
テ私共ハ建物ノ保存登記ヲ致シテ、而シテ對抗セシムルコ
トガ出來ルト云フコトデハマダ滿足ヲ致シマセヌカラ、此場
合ニ於キマシテ、斷然占有對抗主義ヲ主張シタ所以デアリ
マス、尙ホ折角此借地法ガ出來上リマスルニ拘ラズ、將來矢
張此建物保護法モ此儘存續セシメテ置イテ、此借地權ノ關
係ニ就キマシテ、民法アリ、建物保護法アリ、其他ニ尙ホ借
地法ナル三種三樣ノ特別法ガ兩々竝ビ施行セラレマスルト
云フコトハ、實際ニ於キマシテ、甚ダ面白クナイ法律ノ作用
ヲ惹起スルコトガアラウト懸念致シマシテ、此意味カラモ斷
然建物保護法ノ廢止ヲ、此借地法ノ施行ト共ニ希望致ス
次第デアリマス、末條ヲ借地法ニ新ニ加ヘマシタノハ、借地
關係ノ中最モ多ク起リマスル實際問題ハ、地代又ハ借賃ノ
値上値下ノ請求ト、竝ニ地主ガ賃貸ヲ拒ンダ場合ニ、借地
權者カラ買取ラシムル建物ノ時價ニ就キマシテ爭ノ起ルコ
トデアリマス、此場合ニ一々現行ノ民事訴訟手續ニ依リマ
シテハ、多クノ日子ト多クノ費用ヲ要シマシテ、殊ニ借地
人カラ地代ノ値下ヲ要求致シマスルヤウナ場合ニハ、最モ
其不便不都合ヲ感ズルノデアリマス、而シテ多クノ年限ガ掛
リマスルガ爲メニ、第一次ノ値上又ハ値下ノ問題ガ、漸ク判
決ノ確定ニ依ッテ解決ヲシタト云フ場合ニ、直チニ第二次ノ
問題ガ旣ニ差蒐ッテ起ルト云フヤウナコトモ少クナイノデゴ
ザイマスカラ、斯ウ云フ場合ヲ想像致シマスルト、少シク極端
ナ申分カモ知レマセヌケレドモ、年ガ年中繼續シテ地代ノ値&
上値下ノ爭ヲシテ居ラナケレバ、雙方共ニ滿足ガ出來ナイ
ヤウナ關係ヲモ惹起スル虞レガアルノデアリマス、隨ヲテ又假
令借地法ガ完全ニ成案トナリマシテ、之ヲ施行致サレ
マシテモ、此法律ダケデハ單借地關係ノ胴體ダケハ出
來上リマシタケレドモ、其手足卽チ實際ニ借地法ヲ行
使シ借地人ト地主トノ間ニ實際ニ扱ヒマスル活用
スル法規ト云フモノガ、同時ニ改正セラレマセヌデハ、到
底此借地法ハ實地ニ於テ、完全ニ其目的ヲ達スルコトガ出
來ナイノデアリマス、卽チ其紛擾關係ヲ迅速且ツ簡易ニ解
決セシメ得ル目的ヲ以テ、特ニ末條ノ第十五條ヲ追加致シ
マシテ、借地權ノ存續期間、建物ノ時價、又ハ地代若クハ
借賃ノ高ニ對シ爭ノアリマスルトキハ、地主ナリ若クハ借地
人ナリ雙方ノ申請ニ依フテ、其土地ヲ管轄スル區裁判所デ、
單獨判事ニ於テ此決定ヲ爲サシメタイト云フ希望デアリマ
ス、斯ウ致シマスレバ費用モ甚ダ少〓デ濟ミマスルシ、又解
決ノ日子モ非常ニ短クテ濟ムコトニ相成ルノデアリマス、
而シテ是等ノ爭ハ、存續期間ト云ヒ、若クハ地代又ハ借
賃ノ額ト云ヒ、或ハ建物ノ時價ト云ヒ、何レモ事ガ數額ノ
ミニ係ル問題デゴザイマシテ、裁判所ニ於キマシテハ、自分
ノ意見デ定メマスルヨリモ、多クハ實際ニ於テ鑑定人ヲ雇
ウテ、ソレニ鑑定ヲ命ジテ、其結果ヲ斟酌シテ、判斷ヲスル
ニ過ギナイノデアリマスカラ、區裁判所ノ單獨判事ニ之ヲ一
任致シテ置キマシテモ、左シタル懸念ハ無イト吾〓共ハ安心
ヲ致シテ居ルノデアリマス、ソレデアリマスルカラ、延滯地代ノ
請求、又ハ土地ノ明渡、斯樣ナ根本的問題ヲ解決シマスル
際ニハ、矢張現在ノ民事訴訟手續ニ依シテ之ヲ爲サシメテ、
以テ郞重ヲ期シタイト云フ主義デアリマス、尤モ司法大臣
ハ、借地人ト地主、小作人ト地主、或ハ借家人ト家主、是等
ノ間ノ紛擾ヲ、總テ迅速簡易ニ解決セシムル目的ヲ以テ、
特別ノ紛擾調停機關ト云フモノヲ設置シテ、之ヲ實現セシ
メタイト云フ希望ヲ持ッテ居ラレタ、其意見ハ委員會ニ於テ
モ聲明ナサレタノデゴザイマスケレドモ、國民黨ノ板野委員
カラ特ニ司法大臣ニ對シテ、其特設機關ト云フモノハ、切メ
テ來年ノ議會ニハ御提案ガ出來ナイノデゴザイマスルカト云
フコトヲ質問致サレマシタ際ニ、司法大臣ハ、ドウモ來年ト
云フ日限ヲ切ッテ爰ニ御答スル譯ニハ參ラヌト云フ御辯明
デゴザイマシク、本員等モ特設機關ノ設置ト云フコトハ、
滿腔ノ希望ヲ以テ衷心カラ歡迎シ、之ニ賛成ヲ表スルモノデ
ゴザイマスケレドモ、ソレガ何時ノ事ニ相成リマスルヤラ、マ
ダ將來ノ事デ、期間ヲモ今日ヨリ大凡ノ見込ヲ付ケテ置ク
コトガ出來ナイト云フヤウナ有樣デハ、迚モ其特設機關ノ設
置マデ相待ッテ居ル譯ニハ【參リマセヌノデ、御承知ノ通リ世
間ニハ、モウ此借地法借家法ガ施行ニ相成ルデアラウト云
フ所カラ、現在ニ於キマシテ、疾ク旣ニ借地借家ノ問題ガ多
ク生ジテ參ッテ居ルノデアリマスル、卽チ法律案ガ出マシテ、
未ダ其通過施行ガドウナルカ判リマセヌ此場合ニ於テスラ、
横暴ナル一部ノ家主、一部ノ地主、又ハ一部ノ借地借家人
ハ法律ノ出來ナイ前ニ色〓ノ事ヲ仕組マウト云フヤウナ淺
墓ナ考ヲ以テ、雙方トモニ盛ニ活動ヲ致シテ居ル者ガアリマ
スルカラ、此法律案ガ通過致シマシテモ、唯今ノヤウナ紛擾
解決ノ機關ガ容易ニ出來ナイト云フコトデアクタナラバ、私
共ハ此法律案ノ通過ト云フコトハ、却テ地主借地人、或ハ
家主借家人ノ問ニ、悲ムベキ影響ヲ及ボシハシナイカト云フ
コトヲ虞レテ居ルモノデゴザイマスルカラ、民事訴訟法ノ手
續規定ノ一部ヲ、此實體法ノ規定ニ持ッテ來テ加ヘマシタ
ト云フコトハ、法規ノ體栽カラ申シマスレバ、固ヨリ餘リ好マ
シキ事デハゴザイマセヌケレドモ、現在實際問題ガ多ク焦眉
ノ急ニ迫ッテ居ル次第デゴザイマ『スルカラ、此際ニ於テ法規
ノ性質等ニ顧ミテ、躊躇致シテ居ル譯ニハ參リマセヌノデ、
爰ニ過渡的規定トシテ其特設機關ガ設置セラルヽマデ、若
クハ將來何レ民事訴訟法ガ改正ニ相成ルデアラウ、其場合
ニ於テ民事訟訴法ニハ、定メテ簡易特別ナル訴訟手續モ
認メラルヽコトニ相成ラウト思ヒマケレドモ、ソレマデノ間假
リニ過渡的規定トシテ、此末條ヲ特ニ加ヘテ以テ手續ヲ定
メタ次第デアリマス、借家法ニ就キマシテハ第四條ヲ創除
致シマシタ、第四條ハ御承知ノ通リ轉貸借アル場合ニ、家
主ガ貸借人ノ外ニ轉借人ニ對シテモ、解約ノ申込ヲ發シナ
ケレバナラヌ、其轉借人ノ方ニハ解約ヲ以テ對抗スルコトガ
出來ナイ、解約ノ效力ナシト云フ規定ニ相成ッチ居リマスル
ガ、實際ニ於キマシテ、家主ガ轉借人ヲ知ッテ居ルト云フコト
ハ洵ニ少イノデアリマシテ、政府委員ハ轉貸借ヲ致ス際ニ
ハ、貸借人ガ家主ノ所ヘ參ッテ、家主ノ承諾ヲ得ナケレバ有
效ナ轉貸借ヲ締結スル譯ニ參ラヌヤウニ、現行民法ノ
上ノ規定ニ相成ッテ居ルカラ、家主ガ轉借人ヲ一々
知ッテ居ル筈デアルト申サレマスケレドモ、(「簡單々々」ト呼
フ者アリ)實際ニ於テハ家主ガ轉貸借ヲ承諾スルト云フノ
ハ、貸借人ガ其建物ヲ借受ケル際ニ、活版刷ノ借家證書、
若クハ公正證書ノ借家證文ニ、單ニ轉貸借ヲ許ストカ、若
クハ轉貸借ヲ禁セシシカ、事前ニ包括的ノ承諾ヲ與ヘテ居
ルコトガ多イノデアリマシテ、政府委員ノ說明ノ如ク、賃借
人ガ轉貸ヲシヤウト云フ場合ニ、一々家主ノ所へ罷出マシ
テ、此度何某ニ轉貸ヲ致シマス、此度ハ何某ニ轉貸ヲ致シ
タコトヲ斷ルト云フコトハ無イノデアリマスルカラ、私ハ實際
ニ於テ家主ガ轉借人ノ何人デアルカト云フコトヲ正確ニ知
ルコトガ出來ナイ、又其轉借人ガ何時ノ間ニカ、家主ノ知ラ
ヌ間ニ變更シテ居ルト一云フヤウナ場合モ少クナイノデゴザイ
マスカラ、此場合ニ家主ガ一々轉借人ニ對シテモ、解約ノ申
込ヲシナケレバナラヌト云フコトデアリマスレバ、家主ノ爲メ
ニハ非常ニ不便トナリ、又賃借人轉借人ノ爲メニモ、決シテ
便利ニハ相成ラヌノデアリマス、假リニ家主ガ時ヲ異ニシテ、
或ハ前後シテ、賃借人ト轉借人トニ解約ノ申込ヲ發シタヤ
ウナ場合ガアリマシタトシマスレバ、一部ノ轉借人若クハ二
階借ノヤウナ場合ニハ、轉借人タル二階ヲ借リテ居ル者ノ
下ノ賃借人ガ既ニ解約ノ爲メニ明渡ヲシテモ、マダ上ニ殘ッ
テ居ルコトガ出來ルト云フヤウナ關係モ生ジマシテ、其兩者
ニ對スル家主トノ法律關係、權利義務ノ關係ハ極メテ混雜
シテ參リマスカラ、有ッテ益無キ、害多クシテ益少キ第四條
ハ斷乎トシテ削除致シマシタ、此點ニ關シマシテハ現行ノ
民法ノ轉貸借ニ關スル規定ヲ其儘適用スルヲ相當ト認メ
タ次第デアリマス、ソレカラモウ二箇條アリマスガ、第五條ニ
第二項第三項ヲ新ニ加ヘマシタ、此第二項ハ營業ノ爲メニ
使用セル建物ニ就テハ、其營業ニ必要ナル設備モ之ヲ造作
トシテ、解約ノ際借家人カラ家主ニ買取ラシメタイト云フ
希望デアリマス、第一項ニ造作ハ單ニ畳、建具、其他ノ造作
トアリマシテ、恰モ普通住宅ニ取付ケテアル造作ノミヲ指ス
モノヽヤウニ解釋ガ出來ルノデアリマス、而シテ此點ニ就テ
政府委員ニ特ニ御尋ヲ致シマシタラ、イヤソレハ營業用ノ設
備モ含ム意味デアルト云フ御答ヲサレマシタケレドモ、此第
五條ノ第一項ヲ見マシテハ、ドウシテモ營業用ノ物件ヲモ
造作ノ中ニ含ム規定デアル、含ム趣旨デアルト一云フコトノ解
釋ハ出來マセヌ、且ツ此法律ノ施行區域タル各都市ニ於テ
ハ、ドチラカト中セバ、營業用建物ノ方ガ數ガ多ク、其方ガ重
要ナル部分ヲ占メテ居ルノデアリマスカラ、萬一此法律施
行ヲ、其施行地裁判所ニ於テ吾ミト同樣ノ解釋ヲスルヤウ
ナ場合ガアリマシタナラバ、由ミシキ大事デアリマスカラ、ソレ
等ノ爲メニ解釋ヲ一定セシムル必要アリト信ジマシテ、特
念ノ爲メ營業物件ハ造作ト看做スト云フ明文ヲ此間ニ挿
ンダノデアリマス、而シテ第三項ノ解約ノ場合ニ、賃借人ガ
家主ヲシテ造作ヲ買取ラシメ得ル規定ハ、是ハ賃貸人又ハ
賃借入ノ何レカラカ解約ヲ中出夕場合ニモ、買取ラセルコ
トガ出來ルヤウニ相成ッテ居リマス、賃借人ガ解約ヲ申込ミ、
又ハ家賃ノ延滯等重要ナル義務ノ不履行ヲ致シ、賃借人
自ラ自己ノ都合ニ依ッテ其家ヲ明渡サナケレバナラヌ、或ハ
不義理ヲシテモ明渡サナケレバナラヌト云フヤウナ場合ニマ
デ、賃借人カラ其造作ヲ强テ家主ニ賣付ケ得ルト云フコト
デハ、家主ノ負擔ハソレガ爲メニ非常ニ增大セラレ、而シテ
此增大ノ負擔ト云フモノハ決シテ相當ノモノデナイト信ジ
マシテ、玆ニ特ニ家主ヲシテ賃借人ガ造作ヲ買取ラシメ得
ル場合ニハ、賃借人ノ解約申込、又ハ義務不履行ニ因ル賃
貸借終了ノ場合ニハ買取ラセ得ナイ、卽チ家主ガ自己ノ都
合ニ依シテ解約ヲ申込ンダ場合カ、又ハ期間ノ經過等ニ依ッ
テ自然ニ解約ニナル場合ニ、初メテ家主ヲシテ造作ヲ買取
ラシムル趣旨ニ改メタイト存シマシテ、此規定ヲ加ヘタノデ
アリマス、第八條ニ末條ヲ加ヘマシタ趣旨ハ、借地法ニ末條
ヲ加ヘタト同一ノ返旨デアリマスカラ、玆ニハ其說明ハ略シ
マス、尙ホ希望事項ト致シマシテ、施行地區ハ大都市及其
接續町村ハ勿論、全國各都市ニ亙リテ、相成ベクハ其廣汎
ナルコトヲ希望シマス、且ツ其施行時期ニ就テモ別ニ勅令
ヲ以テ定ムト云フコトニ相成ッテハ居リマスケレドモ、成ベク
速ニ其實現ヲ希望スル意味ニ於テ、本員等ハ特ニ此希望ノ
趣旨ヲ明ニ條件トシテ附加ヘテ置イタノデアリマス、本案ノ
修正事項ノ如キハ全ク政黨政派ノ關係ヲ離レマシテ、一般
國民ノ上ニ共通スル利害ノ問題デアリマスカラ、諸君ニ於
キマシテモ、能ク兩者間ノ權利ノ權衡ヲ御考ニナリマシテ
虚心坦懷ニ本員等ノ提出致シマシタ修正案ニ御賛成アラ
ンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=59
-
060・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 是ヨリ討論ニ入リマス、發言ノ
通告ガアリマス-塚原嘉藤君
〔塚原嘉藤君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=60
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061・塚原嘉藤
○塚原嘉藤君 私ハ作間君ノ修正案ニ反對デ原案ニ贊成
スル者デアリマス、ソレデ[此借地法カラ申上ゲマスガ、借地
法ノ第二條ニ無登記主義ヲ執ル上ニ、占有ヲ始メタナラバ
登記ヲシナイデモ第三者ニ對抗シ得ルト云フノデアリマスガ
私カラ見ルト非常ニ是ハ惡修正ニナルト思ヒマス、ソレハ先
程モ御話ガアリマシタガ、例ノ四十二年ニ發布サレタル建
物保護法ガアリマスカラ、要スルニ建物保護法ハ地所ヲ借
リタ時ニ其地所ノ登記ト云フモノハ、貸シタ地主ノ承諾ヲ
得ナケレバ借リタ者ダケデ登記ヲ受ケルコトハ出來ナイ、併
ナガラ其際ニ建物ヲ建テタトキ、其建物ニ就テ登記ヲ受ケ
レバ、地所ヲ借リタコトニ就テ登記ヲ受ケタト、同樣ニ對抗
スルコトガ出來ルノデアルト云フノガ、其建物保護法ノ第一
條中ニ在リマス、其意味ハ家ノ登記サヘスレバ、地主ガ承諾
ヲ得ズトモ、賃貸借ニ就テ登記セズトモ、建テタ家ノ登記デ、
既ニ誰ニモ對抗スルコトガ出來ルノデアル、是ハ日本ノ民法
ニ於ケル原則トシテ、其登記ノ主義ヲ採ッタ以上ハ致方ガナ
イノデアリマス、家ヲ建テク以上ハ登記ヲスル、其副產物ト
シテ賃貸借ハ借リタコトニ就テ登記ヲセズトモ、對抗スルコ
トガ出來ルト云フ規定ニナッテ居ルノデアリマス、恰モ是ハ法
律ガ保護シタ所ノ一ノ利益、權利ノ發生デアリマス、家ノ登
記サヘスレバ賃貸借ノ地所ヲ借リタ登記ハセズトモ、地所ヲ
借リタ登記ヲシタコトヽ同ジ結果ニナルノデアリマス、要スル
ニ是ハ法律ニ依シテ保護シタ一ノ利益權利ニナルノデアリマ
ス、サウシテ其權利ガアリマス以上ハ、其權利ハ御互ニ主張
モシナケレバナラヌ、保護モシナケレバナラヌ、切拾御免ノ時
代カラ五十年モ六十年モ經ッタ今日、法律ニ依ッテ自己ニ
與ヘラレタル權利ヲ抛棄シテ顯ミナイト云フコトハ、私ハ甚
ダ時勢ニ逆行スルモノデアッテ、其家ノ登記ヲ受ケルコトガ
面倒デアル、是ガ簡便デナイト云フ御話デアリマシタガ、要ス
ルニ家ノ登記ハ地所ノ賃貸借ノ登記ト同樣デアリマセヌカ
ラ、地主ノ承諾ハ要ラヌノデアリマス、家ヲ建テタ人ガ證明
書ヲ持シテ行ケバ或ハ家屋稅ヲ出シテ居ル者デアレバ、區役
所ニ其證明書ヲ持ッテ行ケバ、ソレデ登記ガ出來ルノデアリ
マスカラ、非常ニ簡便デアリマス、要スルニ斯ノ如クニシテ簡
單ニ其建物ノ登記ガ出來レバ其結果トシテ借地權モ保護
サレルノデアリマスルカラシテソレハ御互ニヤラナケレバナラ
ナイ、又法治國ノ人間トシテ民法ニ規定ガアル以上ハ、其位
ノ事ハシテモ差支ナイ、サウスレバ今ノ此無登記主義ト云
フコトハ要ラナクナッテ、借地權ハ當然保護サレルコトニナル
ノデアリマスカラシテ、寧ロ自分ガ與ヘラレタ權利ヲ抛棄シ
テ顧ミナイト云フコトハ御互ニ止メ合ッテ、家迄建テタナラバ、
ソレニ就テ登記ヲ受ケル位ナ事ヲシテ、サウシテ此借地權ヲ第
三者ニ對抗セシムルヤウニスルノガ吾人ノ常デアッテ、ソウシテ
又サウシナケレバナラナイコトデアルト思フノデアリマス、ンレ
サヘシテ戴ケバ、此今ノ第二條ハ附加ヘル必要ガナイノデア
リマス、ソレカラ今ノ此十五條へ持ッテ行キマシテ、借地權ノ
存續期間、建物ノ時價及地代又ハ借地ノ額ニ關シ爭ヒア
ルトキハ、區裁判所へ申請シテ、決定シテヤッテ貰ハウト云フ
コトヲ附加ヘテアリマスケレドモ、是ハ當局ノ御言明ガ先程
委員長ノ報告サレタ通リデアリマスカラシテ、私ハソレヲ待
ツコト第一ニ欲シマスガ、第二トシマシテハ之ヲ假ニヤルト致シ
マシテモ、此書カレタ所ノ條文デモ一寸意味ヲ爲サナイノデ
アリマス、先程ノ提案ノ說明ニ依リマスルト云フト、恰モ是
ハ區栽判所ノ専屬管轄ニスルト云フヤウナ御意味ニ聞エタ
ノデアリマスガ、サウ云フ專屬ヲスルト云フコトガ玆ニ書イテ
アリマセヌ、サウシテ借地權ノ存續期間ノ問題ハ是ハ現行
法トシテハ區裁判所デヤルコトニナッテ居リマス、建物ノ時
價トカ地代ト云フ事ノ問題ハ、是ハ其額ノ多イ少イニ依ッテ
或ハ地方裁判所ニ行キ區裁判所ニ行クヤウニナッテ居リマ
スカラシテ、是ハ要スルニ吾ミカラシテ見マスルト、區裁判所ニ
申請ヲシテ決定ヲシテ貰フト云フコトハ、一ツノ權利トシテ
ヤリ得ルコトニナルシ、又地方裁判所區裁判所へ訴訟トシ
テヤルコトモ出來ル、ドレデモ當事者ノ選擇ニ依ノテヤリ得ル
ヤウニモ讀メ得ルノデアリ「マス、或ハ區裁判所デ申請ニ依ツ
テ決定スルト云フコトガ專屬管轄ノヤウニモ讀メルノデアリ
マシテ、此條支自體ニ疑義ヲ挾ム餘地ガ非常ニアリマスカ
ラシテ斯ウ云フ不明ナルモノヲ(「君ガ分ラナイノダ」ト呼フ
者アリ)或ハサウカモ知レマセヌガ、斯ウ云フ不明ナルモノヲ
加ヘマスルヨリモ、寧口當局ノ言明ヲ待ツコトヲ至當ト思フ
ノデアリマス、故ニ是ニモ反對ヲ致シマス、ソレカラ借家法デ
アリマスガ、此第四條ノ賃貸借ヲシタ場合ニハ又貸ヲシテ
居ルトキニ賃借人ニ對シテ一年前ニ通知ヲスルト同時ニ、
又借人ニ對シテモ通知ヲシナケレバイカヌト云フ條文ヲ除
クト云フ案デアリマスルケレドモ、是モ一寸私ニハ了解シ難
イノデアリマス、要スルニ是デ轉借トシテアリマスルモノハ、是
ハ民法ノ六百十二條ノ法律上正當ノ賃借人ヲ意味スルノ
デアリマシテ、賃借人ガ正當ナル所ノ賃借人デアリマスルナ
ラバ、又矢張轉借人ト云フ者モ正當ナル轉借人ニシテ、同
等ニ取扱ヒマセヌケレバ、公平ノ觀念ニ悖ルノデアリマスカ
ラシテ、三條ガアレバ四條ハ當然ナケレバナラナイ、承諾ヲ得
ズシテ外ニ貸シタ者、卽チ法律上ノ轉借人ト看做スト見ラ
レナイト云フコトニ對シテハ、此所デハ問題ニナラヌノデアリ
マス、ソレカラ五條ノ一項二項トシテ營業ノ爲メニ使用スル
建物ニ就テ、營業ニ必要ナル設備ハ之ヲ造作トス、是ハ造
作問題ノ詰リ何カ商賣ヲスル場合ニ、其商賣ノ爲メニ使ツ
タ建物、使用シタ所ノ設備ト云フモノハ、之ヲ造作トスルト
云フノデアリマスガ、要スルニ此第五條ノ初メニ賃貸人ノ同
意ヲ得テ居ルト云フコトニナッテ居リマスカラシテ、賃貸人ノ
同意ガアリマスル以上ハ、是ハ問題ニナラナイノデ、假ニ此五
條ノ一項ノ通リ造作ト看做スコトガ出來タニシマシテモ、賃貸
人ノ同意ヲ得テナケレバ問題ニナラナイノデアリマスカラシ
テ、寧口是ハ特約トシテ協定シテ同意ヲ得テヤラレヽバ、此
條文ヲ特ニ設ケルノ必要ハナイト思フノデアリマス、ソレカラ
五條ノ二項ニ賃借人ノ方カラ解約ノ申込ヲシタリ、義務ノ
不履行ニ依シテ契約ガ解除ニナッタ場合ニハ、此造作ニ就テ時
價ヲ以テ買取ル所ノ請求權ヲナクシテシマフト云フノデアリ
マスガ、是ハ甚ダ殘酷ナ條文デアリマシテ、人間デアリマスカ
ラシテ都會ニ依ッテ移轉モシナケレバナラナイノデアリマス、
又義務ノ不履行ト云フノハ借賃ヲ拂ハナイ場合デアリマセ
ウケレドモ、是モ自分ノ住居シテ居ル所ノ其家ノ借賃ヲ拂
ハナイト云フコトハ、能ク〓〓ノ場合デアルト思ハナケレバナ
ラナイノデアリマスサウシマスト云フト、何等過失ガナクシテサ
ウシテ此普通法律ニ定メテアル所ノ權利ト云フモノガ、剝
奪サレルト云フヤウナ、ソンナ其何ト言ヒマスカ懲罰的ノ條
文ヲ是ニ設ケル必要ガアリマセヌ、是モ矢張平等デ結構ト
思フノデアリマス、ソレカラ第九條ノ訴訟ノ管ノノデデアリ
マスガ、是ハ今ノ借地權ニ同樣デ、反對致シマス、斯ウ云フ
次第デゴザイマスカラシテ、之ニハ反對スルノデアリマス(拍
手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=61
-
062・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 他ニ御發言モナイヤウデアリマ
スカラ討論ハ終結セラレマシタ、採決ヲ致サウト思ヒマスルヽ
此兩案ハ各別ニ採決ヲ致シマス、先ヅ借地法案ニ對シテ作
間耕逸君ノ修正ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ乞ヒマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=62
-
063・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 少數デアリマス、修正案ハ否決
サレマシター次ニ委員長ノ報告ニ就テ採決ヲ致シマス、委
員長報告ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=63
-
064・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 多數デアリマス、委員長報告通
リ決定致シマシタ(拍手起ル)次ニハ借家法案ニ就テ採決
ヲ致シマス、本案ニ對シテ作間君ノ修正ガゴザイマスルガ此
修正ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=64
-
065・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 少數デアリマス、修正案ハ否決
ニナリマシター次ニ委員長ノ報告ニ就テ採決ヲ致シマ
ス、委員長報告ニ賛成ノ諸君ハ起立
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=65
-
066・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 多數デアリマス、本案ハ委員長
報告ノ通リ決定セラレマシタ、是ニテ兩案トモ第二讀會ハ
終リマシタガ、兩案ノ第三詰會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=66
-
067・岩崎勲
○岩崎勳君 日程第十一及第十二ニ揭ゲラレマシタル兩
案ヲ一括シテ、直チニ其第三讀會ヲ開キ第二讀會議決ノ
通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=67
-
068・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=68
-
069・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 然ラバ其動議ノ如ク決定致シ
マシタ、直チニ其第三讀會ヲ開キマス
借地法案第三讀會
借家法案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=69
-
070・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 雨案共全部ヲ議題ト致シマス
ガ、第二讀會ノ決定ノ通リ可決確定スルコトニ御異議ハア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=70
-
071・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ガナケレバ雨案共可決
確定セラレマシタ-次ニ日程ノ第十三、第十四、第十五
此三案ハ同一ノ委員ニ付託サレタ議案デアリマスルカラ、
一括シテ議題ト致シマスコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=71
-
072・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナケレバ其通リニ致シマ
ス、日程第十三朝鮮事業公債法中改正法律案、第十四
臺灣事業公債法中改正法律案、第十五樺太事業公債法
中改正法律案、此三案ヲ一括致シマシテ第一讀會ノ續キヲ
開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長高山長幸君
第十三朝鮮事業公債法中改正法律案
(政府提出)第一讀會ノ續(報告(Marketing
第十四臺灣事業公債法中改正法律案
(政府提出)第一讀會ノ續報告書記者に
第十五樺太事業公債法中改正法律案
(政府提出)第一讀會ノ續(委員長)
報報
報告書
一朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年二月十九日
朝鮮事業公債法中改正法律案委員長
高山長幸
衆議院議長奥繁三郞殿
報告書
一臺灣事業公債法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年二月十九日
臺灣事業公債法中改正法律案委員長
高山長幸
衆議院議長奥繁三郎殿
報告書
一樺太事業公債法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年二月十九日
樺太事業公債法中改正法律案委員長
高山長幸
衆議院議長奧繁三郞殿
〔高山長幸君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=72
-
073・高山長幸
○高山長幸君 簡單ニ御報告ヲ致シマス、此法案ハ三案
共何レモ案其物ハ極メテ簡單デアリマシテ、僅カニ數語ノ
文字ヲ改メルニ過ギナイノデアリマス、併ナガラ其內容ハ相
當大ナル事業ノ計畫ニ關スルコトデアリマス、卽チ朝鮮ニ於
テハ煙草專賣ノ開始ニ對スル費用、竝ニ鐵道ノ建設改良
ノ費用、其他ヲ合セマシテ總額二千四百餘万圓デアリマ
ス、又臺灣ニ於キマシテハ東海岸ニ鐵道ヲ敷設スル費用、竝
ニ既設鐵道改良費用ヲ合セテ、其金額ハ九百餘万圓デア
リマス、第三ニ樺太ニ於キマシテハ、眞岡港ノ修築費用ト既
設鐵道ノ改良費用ヲ合セテ七百餘万圓デアリマス、委員會
ハ數回之ヲ開キマシタ、當局者ノ說明竝ニ各委員ヨリノ質
問ニ對スル答辯ヲ得テ、其事業計畫ハ必要ナモノト認メ、隨
テ此支出モ必要ナモノト認メマシテ、全會一致ヲ以テ之ヲ
可決シタ次第デアリマス、此段御報告ヲ致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=73
-
074・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 右三案ノ第二讀會ヲ開クニ御
異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=74
-
075・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、三案共
第二讀會ヲ開クコトニ決定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=75
-
076・岩崎勲
○岩崎勳君 日程第十三乃至第十五ニ揭ゲタル三案ハ、
之ヲ一括シ直チニ第一一讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ
委員長報告通リ可決確定アラムコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=76
-
077・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ハゴザイ
マセンカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=77
-
078・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ガナイト認メマスカラ、直
チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
朝鮮事業公債法中改正法律案
第二讀會(確定議)
臺灣事業公債法中改正法律案
第二讀會(確定議)
樺太事業公債法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=78
-
079・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 別ニ御發議モナイヤウデアリマ
スカラ、三案共ニ第三請會ヲ省略シテ、委員長報告通リ可
決確定ト認メマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=79
-
080・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 次ハ日程第十六、第十七、此兩
案モ亦同一ノ委員ニ付託サレタ議案デアリマスカラ、一括
シテ議題トナスニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=80
-
081・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、日程第
十六大學特別會計法案、日程第十七大正八年法律第十
二號中改正法律案、右兩案ヲ一括致シマシテ第一讀會ノ
續ヲ開キマス、委員長報告-長峰與一君
第十六大學特別會計法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長)
報告
第十七大正八年法律第十二號中改正法
律案(政府提出)
第一讀會ノ續ヘ委員長し
報告
報告書
一大學特別會計法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年二月十九日
大學特別會計法案委員長
長峰與
衆議院議長奧繁三郞殿
報告書
一大正八年法律第十二號中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年二月十九日
大正八年法律第十二號中改正法律案委員長
長峰與
衆議院議長奧繁三郞殿
〔長峰與一君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=81
-
082・長峰與一
○長峰與一君 此兩法案ハ時代ノ要求ニ伴ヒマシテ、最
高學府ノ〓育振作擴張ニ關スル法案デアリマシテ、今回ノ
改正ハ最モ時宜ニ適シタルモノトシテ、滿場一致原案ノ通
リ可決確定致シタノデアリマス、以上報告ヲ致シマス(拍手
起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=82
-
083・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 兩案共第二讀會ヲ開クニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=83
-
084・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 兩案共第二讀會ヲ開クコトニ
決定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=84
-
085・岩崎勲
○岩崎勳君 日程第十六及第十七ニ掲ゲタル兩案ヲ一
括シテ直チニ其第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委
員長、報告通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=85
-
086・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=86
-
087・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ガナイト認メマス、直チニ
第二讀會ヲ開キ議案全部ヲ議題ト致シマス
大學特別會計法案第二讀會(確定議)
大正八年法律第十二號中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=87
-
088・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 別ニ御發議ガゴザイマセヌカラ、
第三讀會ヲ省略致シマシテ委員長報告ノ通リ可決確定セ
ラレマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=88
-
089・岩崎勲
○岩崎動君 議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致
シマス、卽チ政府提出朝鮮醫院及濟生院特別會計法中
改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メ、
且ツ其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=89
-
090・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=90
-
091・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、日程ハ
變更セラレマシタ、朝鮮醫院及済生院特別會計法中改正
法律案ヲ議題ト致シマス、其第一讀會ノ續ヲ開キマス-
委員長八木逸郞君
朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正法律
案(政府提出)第一讀會ノ續報告(委員長)(確定議)
報告書
一朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正法律案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年二月二十二日
朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正法律案
委員長八木逸郞
衆議院議長奥繁三郞殿
〔八木逸郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=91
-
092・八木逸郎
○八木逸郞君 朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正
法律案ノ委員會ノ結果ヲ御報告致シマス、出席委員全體
ハ異議ナク可決ヲ致シマシタ、質問ハアリマシタケレドモ此
報告ハ避ケマス、唯ダ希望ハ施療ノ-朝鮮人ヲ施療スル
コトヲ成ベク多クシテ貰ヒタイト云フコトノ希望ニ依シテ、滿
場此案ヲ可決致シマシタ、此段御報告致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=92
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093・岩崎勲
○岩崎動君 本案ハ讀會ノ順序ヲ省略シテ、委員長報告
通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=93
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094・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=94
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095・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ガナイヤウデアリマスカラ
讀會ノ順序ヲ省略シテ委員長ノ報告通リ可決確定サレマ
シタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=95
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096・岩崎勲
○岩崎勳君 殘餘ノ日程ニ對シテ延期ノ動議ヲ提出致
シマス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=96
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097・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=97
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098・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ガナイト認メマス、次ノ
日程ハ追テ公報ヲ以テ御報告致シマス、本日ハ是デ散會
致シマス
午後四時四十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X01719210222&spkNum=98
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