1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十年三月八日(火曜日)午後一時十七分開議
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議事日程 第二十二號 大正十年三月八日
午後一時開議
質問
一 閔元植の客死に關する質問(横山勝太郎君外一名提出)
二 思想問題に關する再質問(小橋藻三衞君提出)
三 石炭礦業被害に關する質問(古賀三千人君提出)
四 關税定率法中改正に關する質問(鈴木錠藏君外二名提出)
五 國民思想善導に關する質問(田中善立君提出)
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第一 市制中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 町村制中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第四 大正九年法律第十號中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 憲兵補の恩給に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 國有土地森林原野下戻に關する法律案(戸狩權之助君外八十六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 決議案(齋藤總督の朝鮮統治に關する件)(三木武吉君提出)
第九 刑事訴訟法中改正法律案(祷苗代君提出) 第一讀會
第十 刑法中改正法律案(祷苗代君提出) 第一讀會
第十一 刑法中改正法律案(宮古啓三郎君外七名提出) 第一讀會
第十二 未成年者飮酒禁止法案(根本正君外五名提出) 第一讀會
第十三 非役壯丁税法案(荒川五郎君外六名提出) 第一讀會
第十四 辯護士法改正法律案(鵜澤總明君外九名提出) 第一讀會
第十五 所得税法中改正法律案(岩本平藏君外九名提出) 第一讀會
第十六 明治三十四年法律第三十號中改正法律案(齋藤鷲太郎君外六名提出) 第一讀會
第十七 地方學事通則中改正法律案(竹上藤次郎君提出) 第一讀會
第十八 沒祿者給與法案(熊谷直太君外八名提出) 第一讀會
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001・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔原田書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
職業紹介法案
軌道法案
水道條例中改正法律案
供託法中改正法律案
(以上三月七日提出)
一去五日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ議案ヲ可
決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
臺灣ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律案(政府提出)
朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正法律案(政
府提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
航空業保護奬勵ニ關スル建議案
提出者津野田是重君前田米藏君
刑事略式手續法廢止法律案
提出者永屋茂君島田俊雄君
野副重一君佐野正雄君
横山勝太郞君
平和記念東京博覽會費國庫補助ニ關スル建議案
提出者前田米藏君山崎猛君
西川嘉門君中島守利君
內山安兵衞君竹澤太一君
秋本喜七君長谷場敦君
鈴木錠藏君土屋典君
鳩山一郞君中山佐市君
宮崎三之助君森格君
鈴木隆君
八王子高崎間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者長谷川宗治君粕谷義三君
龍野周一郞君秦豊助君
指田義雄君高田良策君
山崎猛君齋藤壽雄君
今井今助君今泉嘉一郞君
武藤金吉君
東京大阪間高速度交通機關ノ設備ニ關スル建議案
提出者久下豊忠君
(以上三月五日提出)
三千千曳間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者野村治三郞君北山一郞君
阿部武智雄君久慈貫一君
宇野勇作君鈴木巖君
原田藤次郞君梅田潔君
(以上三月七日提出)
貯蓄銀行法案ニ對スル修正案
提出者納富陳平君上田彌兵衞君
守屋松之助君
五條新宮間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者玉置良直君山口熊野君
八木逸郞君磯田粂三郞君
東武君松實喜代太君
(以上三月八日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
特別市制制定ニ關スル質問主意書
提出者森下亀太郎君山本藤助君
霞ケ浦沿岸江戶崎入干拓ニ關スル質問主意書
提出者田中萬逸君
滿洲ニ於ケル施政方針ニ關スル質問主意書
提出者吉野小一郞君
(以上三月五日提出)
東京市及其ノ附近ニ於ケル鮑風及海嘯ニ依ル水害
防備ニ關スル質問主意書
提出者太田信次郞君高木正年君
鹿町炭礦買收ニ關スル質問主意書
提出者田中善立君
(以上三月七日提出)
一今八日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員木檜三四郞君提出府縣行政監督ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員早川龍介君提出養蠶及製絲業者救濟
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員山邊常重君提出養蠶業者救濟ニ關スル
質問ニ對スル答辯書
衆議院議員橫山勝太郞君外一名提出関元植ノ客
死ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員小橋藻三衛君提出思想問題ニ關スル再
質問ニ對スル答辯書
衆議院議員古賀三千人君提出石炭礦業被害ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員田中善立君提出國民思想善導ニ關スル
質問ニ對スル答辯書
衆議院議員小池仁郞君外二名提出大木司法大臣
ノ言議ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員横山勝太郞君提出司法權ノ威信ニ關ス
ル再質問ニ對スル答辯書
〔府縣行政監督ニ關スル質問主意書ハ大正十年
二月十六日速記錄第十四號二七二頁掲載〕
大正十年三月八日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員木檜三四郎君提出府縣行政監督ニ關スル
質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員木檜三四郞君提出府縣行政監督ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
一選擧執行竝取締ハ最モ公平ニ行ハレタリト信ス質問
ノ如ク干涉ノ壓迫ヲナシ或ハ投票ヲ僞造シ或ハ又故
意ニ不正ノ手段ヲ弄シテ當選人ヲ決定シタル事實ナ
シ
二黨勢擴張ノ爲メ町村自治ヲ攪亂破壞セシコトナシ質
問ノ群馬縣吾妻郡高山伊參兩村長ハ職務ヲ怠ル等
村民非難ノ啓高カラムトスルニ及ヒ退職シタルモノニ
シテ政黨入會ヲ强制シテ辭職ノ已ムナキニ至ラシメタ
ルモノニアラス
三官紀ノ振肅ニ關シテハ機會アル每ニ之ヲ促シ適當ナ
ル監督ヲ行ヒ居レリ質問ノ群馬縣土木課長ハ偶縣會
議員選擧當時風水害被害狀況視察ノ爲メ出張シタ
ルコトアルモ選舉ニ干涉セシメタル事實ナキハ第四十
三議會ニ於ケル質問ニ對シ答辯セシ通ニシテ又同縣
下安中警察署長ガ公金ノ取扱ヲ爲スニ當リ會計法
上ノ手續ヲ誤リタルコトアリシモ之ヲ橫領費消シタル
事實ナキハ勿論縣道ヲ廢止セシ沿線ニ特ニ道路工夫
ヲ配置シタル事實ナシ
四道路問題〓育問題等ヲ利用シテ政黨擴張ノ具ニ供
シタルコトナシ
府縣道ノ認可ハ常ニ路線ノ位置其他關係地方開發
ノ要否等愼重調査ヲ爲シ居レリ從テ質問ノ如ク群馬
縣下ニ於テ關係地方ノ政黨異動ニ依リ不正ニ道路
法ヲ運用シ或ハ故意ニ縣道編入ノ遲延ヲ計リタル事
實アルベキ筈ナシ又吾妻郡立實科高等女學校〓員
ノ退職ハ全ク本人ノ意思ニ基クモノニシテ桐生中學
校縣立引直ノ件ハ手續遲延ノ爲メ大正九年中ニ實
現スルコト能ハサリシモ本年既ニ其ノ實現ヲ見其ノ間
何等政黨擴張ニ利用シタルカ如キ事實ナシ
五桐生織物組合役員ニ就テハ其ノ選擧ニ關シ不正ノ行
爲アリ目下前橋地方裁判所ニ於テ審理中ナルノミナ
ラス役員ノ進退ニ關シテ紛糾中ニ在リ爲メニ未タ認可
ノ運ヒニ至ラサルモ之ヲ黨派ノ犧牲ニ供セル事實ナシ
右及答辯候也
大正十年三月八日
內務大臣床次竹二郞
〔養蠶及製絲業者救済ニ關スル質問主意書ハ
大正十年二月二十三日速記錄第十七號三五
八頁揭載〕
大正十年三月八日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員早川龍介君提出養蠶及製絲業者救濟ニ
關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員早川龍介君提出養蠶及製絲業者救
濟ニ關スル質問ニ對スル答辯書
帝國蠶絲株式會社ハ銳意業務ノ遂行ニ努力シツヽアル
モ內外ノ市況問安定セス其ノ目的ヲ達成スルニ於テ遺
憾アルヲ認メ更ニ同會社ノ事業ヲ助成スル爲近ク適當
ノ方法ヲ採ラムトス
右及答辯候也
大正十年三月八日
農商務大臣男爵山本達雄
〔養蠶業者救濟ニ關スル質問主意書ハ大正十年
二月二十三日速記錄第十七號三六〇頁掲載〕
大正千年三月八日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員山邊常重君提出養蠶業者救濟ニ關スル質
問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員山邊常重君提出養蠶業者救濟ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
曩ニ養蠶業者救濟ノ目的ヲ以テ日本銀行ヨリ融通セシ
メタル資金ハ殆ト其ノ大部分ノ貸付ヲ了シ相當ノ效果
ヲ收メタルモノト認ム尙ホ帝國蠶絲株式會社ノ事業ヲ
助成スルノ結果ハ延テ養蠶業者ニモ其ノ效果ヲ及ス可
キヲ以テ蠶絲業者ニ對シ新ニ特別ノ救濟方法ヲ講スル
ノ必要ヲ認メス
右及答辯候也
大正十年三月八日
農商務大臣男爵山本達雄
閔元植ノ客死ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月十八日
提出者横山勝太郞森田茂
賛成者大津淳一郞
外三十一人
関元植ノ客死ニ關スル質問主意書
一國民協會長、時事新間社長関元植君ハ參政權獲
得運動ノ爲去二月九日帝都ニ著シ東京ステイシヨンホ
テルニ滯在シ去十五日衆議院議員選擧法ヲ朝鮮ニ施
行セラレムコトヲ望ムノ〓調願書ヲ提出シ專ラ其ノ目的ノ
貫徹ニ奔走努力シツツアリシカ去二月十六日刺客ノ
襲フトコロトナリ同ホテルニ於テ腹部ニ傷害ヲ受ケ卽
死セリト云フ事實ノ眞相如何
二閔元植君ハ穩健ナル親日主義ノ紳士ニシテ所謂頑
迷ナル不逞鮮人カ同君等ノ身邊ニ危害ヲ加ヘムトス
ルノ虞アルコトハ我カ當局官憲ノ知悉セルトコロナリ
同君等ノ身體生命ニ對シ如何ナル注意ト保護トヲ爲
セシ乎
三這囘ノ不祥事ニ關シ内務大臣、警視總監、麹町警
察署長ソ責任如何
四政府カ事實ノ眞相ヲ發表セス急遽歸鮮ノ途ニ就ケ
リ若ハ急死セリト云フカ如キ虚僞ノ事實ヲ公表スル理
由如何
五本員等ハ過激ナル不逞鮮人ニ對シ嚴重ナル取締ヲ
爲スノ必要アルト同時ニ日韓合併ノ趣旨ヲ諒解シ日
鮮共存ノ目的ノ爲ニ努力スル親日主義ノ人士ニ對シ
テハ周到ナル保護ヲ與フルノ必要アリト思料ス現政府
ノ所見如何
右及質問候也
大正十年三月八日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郞殿
衆議院議員横山勝太郞君外一名提出閔元植ノ客死ニ
關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員橫山勝太郞君外一名提出閔元植ノ
客死ニ關スル質問ニ對スル答辯書
國民協會長関元植ハ朝鮮人參政權獲得運動ヲ爲スカ
爲本年二月九日入京シ東京ステーシヨンホテルニ滯泊
中同月十六日午前九時三十分頃、同ホテル第十四號
室ニ於テ凶漢ノ爲ニ短刀ニテ下腹部ヲ刺サレ卽死シタル
ハ事實ナリ當局ニ於テハ極力犯人ノ捜査ニ努メ同月二
十四日其ノ嫌疑者ヲ逮捕シ目下取調中ナリ
本人ノ渡米ニ際シテハ沿道官憲ハ勿論警視廳ニ命シテ
身邊ノ保護ニ充分注意セシメ入京後ハ保護ノ爲メ警視
廳ヨリ私服警察官ヲ附シ置キタルモノナリ
本伴ニ關シ政府ハ虚僞ノ事實ヲ公表シタルコトナシ
過激ナル不逞鮮人ニ對シ嚴重ナル取締ヲ爲スト同時ニ
日韓併合ノ趣旨ヲ諒解シ日鮮共存ノ目的ノ爲ニ努力
スル親日主義ノ人士ニ對シテハ周到ナル保護ヲ與フルノ
必要アリト思料スル點ニ關シテハ政府モ亦同感ナリ
右及答辯候也
大正十年三月八日
內務大臣床次竹二郞
思想問題ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月十九日
提出者小橋藻三衞
贊成者鈴木梅四郞
外三十人
思想問題ニ關スル再質問主意書
思想問題ニ關スル總理大臣ノ答辯書ハ該問題ノ皮相ニ
馳セテ其ノ心核ニ觸レサルモノナリトノ疑ヲ起サヽルヲ得
サルヲ以テ更ニ精細ナル答辯ヲ求ム
右及再質問候也
大正十年三月八日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員小橋藻三衞君提出思想問題ニ關スル再質
問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員小橋藻三衞君提出思想問題ニ關スル
再質問ニ對スル答辯書
更ニ再ヒ答辯スルノ要ナシト認ム
右及答辯候也
大正十年三月八日
內閣總理大臣原敬
石炭礦業被害ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月十九日
提出者古賀三千人
贊成者藤井啓
外三十一人
石炭礦業被害ニ關スル質問主意書
從來石炭礦業ニ因ル農耕地ノ被害ハ漸次其ノ被害ヲ
增加シ殊ニ往年炭價未曾有ノ好況ニ伴ヒ採掘盛ニ行ハ
レタル爲頓ニ其ノ被害甚大ナルニ至レリ
是ハ獨リ耕作地ノミナラス住定地ノ傾斜陷落等亦夥シ
ク精神上及物質上ノ被害ハ直接間接ニ農村ノ困憊衰
頽ヲ招致スルニ至レリ政府ハ之ニ對對枚濟ノ方法ヲ如
何ニセムトスルヤ
右及質問候也
大正十年三月八日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員古賀三千人君提出石炭礦業被害ニ關スル
質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員古賀三千人君提出石炭礦業被害ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
石炭鑛業ニ因ル土地ノ陷落ニ付テハ鑛業人ハ被害土地
ヲ買收シ又ハ復舊ニ要スル費用ヲ辨償シ若クハ收益ノ
減少ニ對シ補償等ヲ爲スヲ常トシ當事者間ニハ〓シテ
圓滿ナル解決ヲ見ルノ狀況ニ在リ然レトモ一般產業ト
鑛業トノ關係ニ付テハ大ニ考究ヲ要スルモノアルヲ以テ
農商務省ニ於テハ現ニ鑛害調査委員ヲ設ケ且ツ來年豫
算ニ於テモ之カ費用ヲ計上シ以テ十分ノ調査ヲ遂ケ適
當ノ措置ヲ採ラントス
右及答辯候也
大正十年三月八日
農商務大臣男爵山本達雄
國民思想善導ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月二十四日
提出者田中善立
賛成者箕浦勝人
外二十九人
國民思想善導ニ關スル質問主意書
現内閣成立以來既ニ二年有半此ノ間原總理大臣床次
內務大臣等ハ常ニ國民思想善導ニ關シ多大ノ考慮ヲ
運ラサルヽニ拘ラス事實ハ全ク之ヲ裏切リテ今ヤ國民思
想ハ日一日倍々險惡トナレリ畢竟是レ適切ナル國民思
想善導法ノ行ハレサル爲ナリト思惟ス政府ノ所見如何
右及質問候也
大正十年三月八日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員田中善立君提出國民思想善導ニ關スル質
問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員田中善立君提出國民思想善導ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
國民思想ノ推移ニ關シテハ政府ハ常ニ周到ノ注意ヲ怠
ラス各般ノ施設ヲ整備シ穏健ナル思想ヲ涵養スル等思
想善導上適切ナル處置ヲ執リツヽアリ今後尙一層ノ努
力ヲ致サムトス
右及答辯候也
大正十年三月八日
內務大臣床次竹二郞
大木司法大臣ノ言議ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月二十五日
提出者小池仁郞平出喜三郞
淺川浩
贊成者井上剛
外三十人
大木司法大臣ノ言議ニ關スル質問主意書
大木司法大臣ハ本年一月二十八日午後一時十五分
開議ノ函館控訴院ノ移轉ニ關スル法律案外一件ノ委
員會ニ於テ委員黑金泰義君ノ質問ニ對スル答辯中事
實ニ相違セル說明アリ則チ函館控訴院ノ建物ハ事件ノ增
加ニ伴ヒ建物ノ狹隘ヲ感スルモ敷地甚タ狭隘ニシテ擴張
スルコト不可能ナリト斷言セラレタルハ事實ヲ誣フルモ甚シ
函館控訴院ノ敷地ハ六千七百十二坪餘ヲ有シ其ノ內
建物建設用及其ノ他ノ使用地一千七百八十四坪餘ヲ
控除スルモ四千九百二十七坪餘ノ空地ヲ存セリ若建物
ノ擴張ヲ要スルトセハ綽々タル餘裕アルニモ拘ラス事實
相違ノ說明ヲ爲シ單ニ法案ノ通過ヲ圖ルニ急ナリシハ國
務大臣ノ言議トシテ輕々看過スル能ハサル所ナリ依テ明
確ナル答辯ヲ望ム
右及質問候也
大正十年三月八日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郞殿
衆議院議員小池仁郞君外二名提出大木司法大臣ノ
言議ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員小池仁郞君外二名提出大木司法大
臣ノ言議ニ關スル質問ニ對スル答辯書
函館控訴院ノ敷地ハ六千七百餘坪ヲ占ムルモ現在建
物ニ使用ノ外ハ〓ネ崖地ニシテ擴張ノ餘地ナク曾テ崖
下ニ建築物ヲ建設セシニ雪崩ノ爲メニ忽チ破壞セシコト
等アリ危險甚シク事實上擴張ノ餘地乏シキモノト認ム
政府ハ法案ノ通過ヲ圖ルカ爲事實ヲ誣フルモノニアラス
右及答辯候也
大正十年三月八日
司法大臣伯爵大木遠吉
司法權ノ威信ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年三月一日
提出者横出勝太郞
贊成者箕浦勝人
外三十一人
司法權ノ威信ニ關スル再質問主意書
本員等ハ去二月十二日司法權ノ威信ニ關スル質問主
意書ヲ提出シタルニ政府ハ何等斯ル事實ナシト答辯セ
リ今其ノ一例ヲ擧クレハ前大分警察署長警視小野忠
藏ハ前大分警察部長山口織之進ノ名譽ヲ毀損スヘキ
記事ヲ新聞紙ニ揭載頒布セムコトヲ中山鷹城ニ依賴シ
醜惡ノ事實及寫眞等ヲモ提供シタル件ニ關シ後日大分
地方裁判所檢事局ハ中山鷹城等ニ對シ名譽毀損罪ノ
起訴ヲ爲シタルニ拘ラス司法大臣ハ某政黨ノ請託ニ基
キテ右小野忠藏ニ對シテハ起訴ヲ爲スヘカラスト!命令
ヲ下シタリト謂フカ如キ事例アリ之レ司法權ノ威信ヲ失
墜スルノ甚シキモノナリト信ス其ノ他司法權ノ威信ニ關
スル事例尠カラス政府ノ所見如何
右及再質問候也
大正十年三月八日
內閣總理大臣原敬
衆議院議長奥繁三郞殿
衆議院議員橫山勝太郞君提出司法權ノ威信ニ關スル
質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員橫山勝太郞君提出司法權ノ威信ニ關
スル再質問ニ對スル答辯書
本質問書例元ノ事件ニ就テハ當時ノ大分警察署長警
視小野忠藏カ中山鷲城等名譽毀損被告事件ノ共犯タ
ルノ嫌疑アリトシテ當該檢事正ヨリ其ノ處分方請訓有
之取調ヘタルニ同人ハ旣ニ其ノ職ヲ退キ改悛ノ情著シ
ク處罰ノ必要ナキモノト認メタルニ因リ起訴猶豫處分ニ
附スヘキ旨訓令ヲ發シタルモノニシテ決シテ某政黨ノ請
託ニ基キテ斯ル措置ヲ採リタルモノニアラス其他司法權
ノ威信ヲ害シタル事實更ニ無之
右及答辯候也
大正十年三月八日
司法大臣伯爵大木遠吉
一昨七日内閣總理大臣ヨリ議長宛左通通令アリタ
ル旨ノ通牒ヲ受領セリ
文部省宗〓局長粟屋謙
維新史料編纂事務局長柴田駒三郞
文部省所管事務政府委員被仰付
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載
ス〕
一去五日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
陸軍軍法會議法案外十一件
鵜澤總明君鳩山一郞君八田宗吉君
北山一郞君西村正則君〓水市太郞君
山口義一君佐野正雄君三善〓之君
宜保成晴君古林與六君荒川五郞君
三浦得一郞君八並武治君橫山金太郞君
中馬興丸君渡邊昭君上畠益三郞君
一昨七日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
陸軍軍法會議法案外十一件委員
鳩山
委員長鵜澤總明君理事(電話)通過運動公園
(渡邊
一昨七日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第一部
決算委員古林與六君(津崎尙武君補關)
第六部
決算委員〓室太郞君(川原茂輔君補闕)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=1
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002・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 會議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=2
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003・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君 議長-議事ノ進行ニ就テ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=3
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004・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 發言ヲ許シマス
〔佐々木安五郎君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=4
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005・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君 議事ノ進行ニ就テ一言申上ケマス、
過日中野正剛君ガ提出ノ朝鮮統治ニ關スル調査會設置
ノ決議案ノ演說中ニ、朝鮮人ノ関元植ガ何者カニ刺サレ
タト云フ事項ヲ申シタ、其事ガ不穩ナリト云フ廉ヲ以テ、議
長ハ之ヲ院議ニ問ウテ議事錄ニ揭載スルコトヲ見合セルト
云フコトニシマシタ、此事ニ就テハ私共大ニ疑問ガアルノデ
ス、議長ニ果シテ是ダケノ權能ガ有ルノデアルカ「ヒヤ〓〓」
若シ會議ニ於テ堂々ト述ベタル言論ガデス、議長ノ考ヲ以
テ之ヲ院議ニ問ヒ、而シテ之ヲ議事錄ニ載セルコトヲ見合
セルコトガ出來ルト云フコトデアルナラバ、或一黨一派ニ囚
ハレタル議長ガ居ッテ、其議長ガ自己ノ忠勤ヲ勵ムベキ黨派
ニ不利益ナル問題ハ、多數ノ與黨ノ力ヲ以テ葬去ラウト思
ヘバ譯ノナイ事デアル、一度議事錄ニ於テ抹殺サレタルモノ
ハ官報ニ載ルコトハ無イ、官報ニ載ラナケレバ公式ニ於テ世
間ニ發表ハサレナイ、同式ニ於テ世間ニ發表サレナイモノヲ、
社會ノ報道ニ機敏ナル新聞記者ガ之ヲ社會ニ報道セント
スルト、内務省ハ又行政處分ヲ以テ之ヲ禁止スル、勝手ナ
事ガ出來ル、斯ノ如クナレバデス、此立憲政體ノ眞髓ヲ發揮ス
ベキ議場ニ於テ行ハレタル議論ガ、闇カラ闇ニ葬去ラレルト云
フ危險ガ伴フノデアル、(拍手起ル)私ハ議長ニハ斯ノ如キ過
大ナル權利ハ、何ヲ調ペテ見テモ與ヘラレテナイト思フ、況ヤ
此間ノ閔元植ノ問題ノ如キハデス、関元植ノ出身地デアル
朝鮮ノ新聞、及ビ其影響ヲ最モ近ク受クベキ滿洲ノ新聞ニ
ハ麗々シク載セテ居ル、麗々シク載セテ居ルノミナラズ、其新
聞ガ東京ニ於テモ万遍トナク配ラレテ居ル、配ラレテ居ルノ
ニ、此万人周知ノ事實ヲ、議場ニ於テ言ウタ事柄ヲ議事錄
ニ載セサセナイト云フコトデス、古ノ諺デ耳ヲ掩ウテ鈴ヲ盜ム
ト云フ言葉ガ、ソレガ古臭イト云フナラバデス、(「院議ダヨ」ト
呼フ者アリ)眼ヲ閉チテ交番所ノ前ヲ通ル泥棒ガアルト同ジ
事デアラウト思フ、吾〓ハ斯ノ如キ不條理ナ事ヲシテ、折角ノ
立憲政體ノ眞髓ト云フモノヲ傷ケタクナイト思フ、(「ノウ
ノウ」)併ナガラ或ル院議盲從論者ガ居シテ、多數デアレバ何
デモ-規則デモ憲法デモ院議デ破レルト云フヤウナ、憲法
ノ何物タルヲ知ラナイ、代議政體ノ何物タルヲ知ラナイ、唯
ダ多數萬能論ト云フ人間ガ居ッテ院議デスヨト言フ、滑稽ノ
極デハナイカ、院議ガ何デアル、幾ラ院議デアッテモ、院議ヲ
以テ憲法ヲ破ルコトハ出來ナイ、院議ヲ以テ議院法ヲ破ル
コトハ出來ナイ、院議ヲ以テ議院規則ヲ破ルコトハ出來ナ
イ、院議ト云フモノハ憲法ノ下ノ院議デアル、議院法ノ下ノ
院議デアル、議院規則ノ下ノ院議デアル、斯ノ如ク總テノモ
ノヽ下ニアル院議ガ、ンレ以上ニ超越シテ、總テノモノヲ拘束
スルコトハ出來ナイ、ソレガ解ラズニ唯ダ院議デアリサヘスレ
バ、何事モ葬去ラレルト云フ間違ッタ意見ヲ持ッテ居ル人間
ガ居ルカラ、斯ノ如キ暴論ガ斷行サレテ平氣デ居ル、ソレハン
レトシテ、ソレハ過去ノ事實トシテ葬ッテモ宜シイガ、調ベテ
見ルト院議ニ於テ抹殺サルベキ所ノモノハ、中野正剛君ノ
議論切リデ、安藤君ノ議論モ、吾輩ノ言ウタ議論モ、議長
自ラガ関元植ハ刺サレタリト言ハレタ議論モ、院議ニ於テ取
消スコトヲ承認シタコトハ無、然ルニ調ベテ見ルト云フト、速
記錄ニハ驚クベシ悉ク棒ガ引張ッテアル、ドノ條ニモ皆ナ棒
ガ引張ッテアル、棒ヲ無茶苦茶ニ引張ルカラ亂暴ト云フノカ
モ知レナイ、(笑聲起ル)マルデ譯ガ分ラヌ、亂暴極マル事ヲ
ヤッテ居ル、斯ノ如キ亂暴ナ事ヲシテ、是デ一體宜イト云フ譯
デアルカドウデアルカ、今日私ハ今更メテ言ヒマス、関元植ナ
ル者ハ、確ニ梁槿煥ト云フ者カラ刺サレタノデアル、斯樣ニ
言フ、私ノ言フノヲ今度ハ議長ハ此席ニ於テ院議ニ問ウテ、
私ノ言葉ヲ此議事錄カラ取除ケルコトガ出來ルカドウカ、取
除ケルコトガ出來ルナラバ除ケテ御覽ナサイ、取除ケルナラ
パ何ヲ原因トシテ取除ケル、內務省ニ於テ禁令ヲ解イタラ、
ソレデ止メルト言フカ知ラナイガ、然ラバ內務省ノ下ニ帝國
議會ガ隸屬シテ居ルモノデアルカドウカ、帝國議會ト云フモ
ノハ、内務省ヲ監督スベキモノデアル、内務大臣ヲ監督スベ
キモノデアル、内務大臣ガ許サウガ許スマイガ、ソンナ事ヲ頓
著スベキモノデナイ、内務大臣ガ何ト言ハウガ、帝國議會ハ
獨立ノ體面、獨立ノ意思、獨立ノ方針ヲ以テ進ムベキモノデ
アッテ、内務省ガ禁令ヲ解イタカラ今度ハ差止メヌデモ宜イ、
禁令ヲ解カヌカラ今度ハ止メテヤル、斯ンナ下ラナイ事ガア
ルベキモノデナイ、議長ハ此點ニ就テ如何ナル意見ヲ持ッテ
居ルカ、內務省ヲ自分ノ御主人ト崇メルカ、但シハ帝國議
會ハ內務省ヲ監督スベキモノデアッテ、內務省ニ隸屬スベキ
モノデハナイト云フ、本當ニ憲法政治ノ精神ヲ御了解ニナル
ヤ否ヤ、私ハモウ一遍重ネテ言ウテ置キマス、関元植ハ梁槿
煥ノ爲メニ刺サレタル者デアル(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=5
-
006・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 佐々木君ノ今述ベラレタル事ハ、多
ク意見ニ涉ッテ居ルヤウデアリマス、但シ帝國議會ハ內務省
ニ隸屬云々ナドノ事ハ洵ニ感心シナイ議論デ、議長首メ本
院ハ左樣ナ考ヲ持ッテ居リマセヌ、其當時議長ヨリ宣言致シ
マシタ言葉ト云ヒ、又院議デ決セラレマシタ精神ハ獨立シテ
決セラレタノデ、内務省ノ管內ニ隸屬シタ譯デナイコトハ、其
當時ノ議事ニ於テ明白デアリマス、佐々木君ガ今御演說中
ニ、其當日ニ自身ガ述ベタ言葉マデ抹殺サレテ居ル、是ハド
ウ云フ譯デアルカト云フノガ初メテ一ノ質問ラシイ、之ニ就
テハ十日以前ノ事デ、官報ノ號外ナドモ議長ハ只今諳ンジテ
居リマセヌカラ、其一點ダケハ調べマシ夕上ニ御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=6
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007・佐々木安五郎
○佐々木安五郎君 一寸モウ一遍質問致シマス、何カ十
日許リ前ニ貴方ガ仰シヤッタト云フノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=7
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008・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) イエ十日程以前ノ事デアリマスカ
ラ、其當時ノ官報ヲ調ベタ上御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=8
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009・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君 ソレハ書記官長ガ言ウタサウデスガ、
書記官長ガ獨斷デ斯ノ如キ事ヲヤルベキモノデナイ、無論
議長ノ命令ト私ハ速斷シマスガ、若シ書記官長ガシタナラ
バ書記官長ハ承知ナラヌト思フ、ンレハ當前議長ガ紳士ト
シテヤラレルナラバ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=9
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010・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 發言ヲ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=10
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011・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君(續) ··事後承諾ヲ求メルノガ當前
ダ、今迄默ッテ居ルノハ怪シカラヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=11
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012・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 發言ヲ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=12
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013・佐々木安五郎
○佐々木安五郞君 止メルナラ止メテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=13
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014・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 質問ノ第一、第二、第三、第五ハ政
府ヨリ答辯ガアリマシタ、若シ質問サレタ方ニ於テ意見ガア
リマスナラバ、後程之ヲ許スコトニ致シマス、質問ノ第四關
稅定率法中改正ニ關スル質問、鈴木錠藏君
四關稅定率法中改正ニ關スル質問(鈴
木錠藏君外二名提出)
關稅定率法中改正ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年二月二十三日
提出者鈴木錠藏八田宗吉
北井波治目
贊成者森恪
外三十一人
關稅定率法中改正ニ關スル質問主意書
政府ハ第四十三議會ニ於テ次回ニ曹達、加里、亞鉛、鐵
ニ關シ關稅定率法中改正ノコトヲ誓言セラレタリ然ルニ
今日ニ至ルモ提出ノ運ニ至ラス其ノ理由如何
右及質問候也
〔鈴木錠藏君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=14
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015・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 私ハ此質問ヲ提出シナカラモ、實ハ不必
要トシテ、撤囘スルヤウナ機會ヲ待ッテ居リマシタノデスガ、
然ルニ今日遂ニ此質問演說ヲシナケレバナラヌコトニ至リ
マシタノハ、甚ダ遺憾トスル所デゴザイマス、併ナガラ是ハ彈
効トカ詰問トカ云フモノデナクシテ、卽チ政府ニ對スル所ノ
催促狀デアリマスカラ、其意味ヲ以テ御聽アランコトヲ希望
致シマス、戰時勃興致シマシタ我ガ重要產業ニ對シマシテ、
關稅政策ヲ以テ保護スル必要ノアルコトハ政府モ認メラレ
マシテ、曩ニハ染料工業藥品ニ對スル關稅改正ノ擧ガアリ
マシテ、又第四十三議會ニ於キマシテハ、次回卽チ本會ニ
曹達、加里、亞鉛、鐵、此四ツノ產業ニ對シテ、關稅率ノ改
正ヲ提出スベシト云フ所ノ議會ノ希望ヲ、政府モ容レラレ
マシタノデアリマス、卽チ是等ノ產業ハ所謂基礎工業デアリ
マシテ、我ガ工業中ノ最モ重要ナル物デゴザイマス、然ルニ
會期モ半ヲ過ギマシテ、幾何モ無イ今日マダ御出シニナッテ
居ラナイト云フコトハ、ドウ云フ意味デゴザイマセウカ、承レ
バ農商務省ニ於テハ既ニ御調査濟デアッテ、大藏省ニ回付
サレタト云フコトデアル、去ル五日ノ豫算總會ニ於キマシテ、
北井波治目君ノ質問ニ對シマシテ、神野大藏次官ハ斯ウ
答ヘラレマシタ、政府ハ旣ニ成案ヲ得テアルケレドモ、未ダ此
議會ニ提出スル所ノ運ニ至シテ居ラヌト云フコトデゴザイマ
スガ、何故ニ斯ノ如ク御躊躇ニナッテ居ルカト云フコトヲ、私
ハ伺ッテ見タイト思ヒマス、或ハ申シマスノニ、今日ニ於テ關
稅ヲ以テ保護スルト雖モ、旣ニ衰滅廢頽ニ垂ントスル所ノ
我ガ產業ハ、到底關稅ノ改正ニ依ノテ保護サレルモノデハナ
イ、斯ウ云フコトヲ申ス者モゴザイマスケレドモ、是ハ齊東野
人ノ語デアラウト私ハ考ヘルノデゴザイマス、若シ果シテ斯ル
所ノ事實ガアルト致シマスナラバ、是ハ我ガ産業ニ對シテ、甚
ダ無情ナル政策ト謂ハナケレバナラヌノデアリマス、卽チ瀕
死ノ病人向ッテ、ドウモ病人デアルノデアルカラ、最早良醫良
藥ヲ投ズル必要ハ無イト云フヤウナ事ト同ジク、甚タ無情ナ
ル所ノ政策ト存ジマシテ、是ハ決シテ事實デナイト云フコト
ヲ私ハ信ズル次第デゴザイマス、御承知ノ通リ政府ハ戰爭
中ニ於キマシテ、盛ニ物產業ノ自給自足ト云フコトヲ御唱
道ニナリマシテ、今日之ヲ顧ミラレナイト云フヤウナ有樣ガ
アリマスノハ、現內閣ノ主張セラレル所ノ產業奬勵ト云フコ
トニ、矛盾スルヤウナ嫌ガアリマスノデ、是ハ決シテ政府ノ御
眞意デナイト私ハ信ジマス、今ヤ是等ノ產業ハ、關稅政策ニ
依ッテ保護サルヽト云フコトヲ待ッテ居リマスコト、所謂大早
ノ雲霓ヲ望ムガ如ク、轍鯛ノ水ヲ求メルニモ似テ居ルヤウナ
急務デゴザイマス、由來歴代ノ內閣ハ、關稅政策ニ就キマ
シテハ常ニ退嬰消極ヲ事ト致シマシテ、其言前ト致シマシテ、
或ハ自由貿易主義ト言ヒ、或ハ「マンチェスター」主義ト云
フヤウナ美名ニ隠レテ居リマスケレドモ、能ク之ヲ穿鑿致シ
テ見マスト云フト、我カ屈辱外交ノ因襲ノ久シキ結果、斯
ノ如キ狀態ヲ來シタモノト私ハ信ズルノデゴザイマス、彼ノ
英米兩國ノ如ギハ、關稅政策ニ最モ重キヲ置キマシテ、常ニ
政策ノ中樞ト致シマシテ、政黨ノ消長ノ關係モ卽チ此ニア
ルト云フ位ニ、最モ國民ガ熱中スル次第デゴザイマス、亞米
利加ノ新大統領「ハーヂング」ノ策モ、第一ハ海運政策、第
二ハ海軍政策、第三ハ關稅政策、此三大政策中ノ一大政
策ハ、卽チ關稅政策デアルノデアリマス、現内閣ノ如ク積極
政策ヲ主張スル政府ニ在リマシテハ、是非共舊來ノ陋習ヲ
破リマシテ、勇往邁進致シマシテ、世界的產業政策ヲ執ラ
レンコトヲ希望シテ已マヌ次第デアリマス、政府ガ今日ニ於
テ尙ホ漫然ト看過サレルナラバ、其時機ヲ逸シマシテ、所謂
十日ノ菊六日ノ菖蒲ノ嘆ガ起リマシテ、最早ソレガ爲メニ、
產業ノ復興ト云フコトハ出來ナイヤウナ毀ヲ被リハシナイカ
ト云フノヲ虞レルノデゴザイマス、諸君、戰後輸入超過ハ段々
ト增加致シマシテ、本年ニ至リマシテハ、既ニ七千万圓ノ
多キニ上ッテ居リマス、此分ニ致シマシタナラバ、本年末ニ於
ケル所ノ輸入超過ノメ高ハ、中〓大ナルモノデアラウト云フ
コトヲ考ヘル〓デゴザイマス、今日ハ我カ正貨ハ空前ノ多キ
ニ達シマシテ、二十一億圓ノ多キニ上ッテ居リマスケレドモ、
若シ此儘ニ進ミマシタナラバ、段々ト正貨ハ減少致シマシテ
所謂雲煙霧消、浦島ノ玉手函トナッテ殆ド跡方ガ無クナルヤ
ウナ時ガアリハシナイカト云フコトヲ私ハ虞レルノデアリマス、
全ク是ハ輸入超過ノ爲メデゴザイマシテ、曩ニ大藏大臣モ、
將來ノ我カ經濟政策ハ產業ヲ獎勵シテ、輸出ノ途ヲ進步
セシムルニ在リト云フコトヲ仰セラレテアリマスガ、此點ニ就テ
ハ是非政府ニ於テモ御考アランコトヲ希望スルノデアリマ
ス、伺フ所ニ依リマスト云フト、マダ是等ノ產業ニ就キマシテ
十分御調査ガ屆カヌト云フコトヲ伺ッテ居リマスガ、然ラバ
會期切迫ノ今日デゴザイマスカラシテ、既ニ御調査濟ニナッ
タ分カラ御出シニナッテ此議會ヲ通過サレタナラバ、至極產
業界ニ於テノ幸福デゴザイマスケレドモ、此儘荏苒トシテ日
ヲ送ラレマスルト、御志ハソコニ在ルカ知レマセヌケレドモ、
終ニハ之ガ爲メニ產業界ニ對シテ一大不幸ヲ惹起スルコト
ニナルカラ此點ヲ申述ヘマシテ、政府ノ御卽答ヲ希フ次第
デコザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=15
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016・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 質問ノ第二ノ思想問題ニ關スル
再質問ニ就テ、意見ノ陳述ガアリマス-小橋君
思想問題ニ關スル再質問ノ答辯ニ對スル
小橋藻三衞君ノ意見発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=16
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017・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=17
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018・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 橫山君、何デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=18
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019・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 関元植ノ客死ニ關スル質問ニ就テ答
辯書ガ出マシタカラ、先刻本員ヨリ意見ノ陳述ノ許可ヲ申
込ンデ居リマス、ソレハドウ云フ工合デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=19
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020・奧繁三郎
○議長(臭繁三郞君) 順序ニ依ッテ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=20
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021・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 順序ハ本員ノ方ガ先キデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=21
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022・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 申込ノ通告順序ニ依ッテ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=22
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023・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 ソレハドウ云フ譯デスカ、日程ノ順序ニ
依ッテ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=23
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024・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) サウ云フ例デアリマス-小橋君
〔小橋藻三衛君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=24
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025・小橋藻三衞
○小橋藻三衞君 豫算總會ノ席上ニ於キマシテ、總理大
臣ハ思想問題ニ關シマシテ說明ヲ致サレマシタガ、吾ミハ甚
ダ理解スルニ苦シム點ガ多イノデアリマス、處デ質問書ヲ提
出シテ置キマシタラ、曩ニ答辯書ガアリマシタケレドモ、ソレ
モ、甚ダ感ヲ增スノミデ、私共ノ質問セント欲スル事項ニハ
觸レナカッタノデアリマス、再ビ再質問ヲ致シテ置キマシタラ
再ビ答辯スルノ要ナシト云フ只今各辯ニ接シタノデアリマ
ス、吾〓ノ疑ノ點ハ益〓之ガ爲メニ深クナルノデアリマスガ、元
來此思想問題ハ、勞働問題、社會問題ト、最モ密接ナル關
係ヲ有ツモノデアリマシテ、極メテ重大ナル問題デアルガ故
ニ、吾とハ之ヲ大ニ質サナケレバナラナイノデアリマス、然ルニ
總理大臣ハ此思想問題ノ發スルト云フコトハ種々ナル事柄
ガアルガ、第一ニ生活ノ不安、又ハ不平ト云フヤウナ事ガ主
ナルモノデ發生スルノデアル、斯樣ナ事ヲ說明ヲ致サレテ居
ルノデアリマス、サウシテ政府ガ此思想問題ヲ取扱ハレル有
様、又危險思想ヲ防止セントサレル狀態等ヲ見ルト云フ
ト、益〓吾〓ハ此疑ヲ深クスルノデアリマス、乃チ政府ハ此對
外的ノ危險思想ヲ防止スルト云フコトニ就テハ、或ハ軍隊
ノ力ニ依リ、或ハ警察ノ力ニ依リ、或ハ此思想問題ニ關ス
ル書物ノ取締ト云フガ如キモノニ、非常ニ重キヲ置カレテ居
ルノデアリマス、又内ニ於テハ思想ノ善導ヲスルト云フノデ、
學者ノ講演ヲ致サレ、或ハ又浪花節等ノ呻リ聲ニ托セラレ
テ居ル、又社會問題ト稱シテ、各種ノ施設ヲ致サレテハ居ル
ノデアリマス、併ナガラ吾〓ハ到底此軍隊ノ力、「サーベル」ノ
力、檢閱ノ力ニ依シテ、危險思想ヲ防グト云フコトハ困難ナ
ルモノデアルト考ヘテ居ルノデアリマス、又内ニ對シテ現政府
ノ執ラレル此危險思想防過、若クハ社會政策ト云フガ如キ
モノハ、極メテ皮相ノ施設ニ過ギナイノデアッテ、其核心ニ觸
レタル根本ノ問題ニハ、觸レテ居ラナイト云フコトヲ吾ニハ
疑フノデアリマス、卽チ小乘的デアッテ、大乘的ノ施設ニハナッ
テ居ラナイノデアル、元來此社會主義ノ思想ト云ヒ、或ハ共
產主義ノ思想ト云フガ如キモノガ、何故ニ起ッタカト云フコ
トヲ考ヘテ見ルト云フト、我國ガ之ニ對シテ、如何ナル施設
ヲシナケレバナラヌカト云フコトハ頗ル明瞭ニナルト信ズルノ
デアリマス、卽チ獨逸或ハ露西亞ニ於テ、所謂此經濟革命
ノ思想ガ起リ、生產機關ヲ社會化スルト云フガ如キ思想ガ
起リ、或ハ共產主義ノ思想ガ起ッタト云フコトハ、如何ナル事
ニ依ッテ起ッタノデアルカト云フト、卽チ資本家ト云フモノガ
利益ヲ〓斷スル、サウシテ無資產階級勞働者ト云フ者ハ、
富ノ分配ニ與カルコトガ出來ナイ、サウシテ衣食住ノ根本
デアル所ノ原料、之ヲ又製造シ之ヲ運搬シ、之ヲ供給スルト
云フ仕事ハ、卽チ勞働者無資產階級ガヤッテ居ルニモ拘ラ
ズ、獨リ資產階級ガ其利益ヲ壟斷シテ、此無資產階級-
所謂勞働者ト云フ階級ヲ機械視スル、之ヲ人間視ナイト云
フコトハ怪シカラヌト云フ自覺ノ上カラ、彼等ガ斯樣ナ思想
ヲ起シタト云フコトガ最モ注意スベキ點デアルト思フノデア
リマス、サウシテ又彼等ノ社會上ノ位置ト云フモノガ、所謂
資本家階級ト云フモノニ、名譽ノ位置ヲ與ヘ、各種ノ特權
ヲ與ヘテ、無資產階級ニハ何等ノモノヲ與ヘナイ、又政治上
ニ於テモ、貴族、富豪、資產階級ト云フ者ガ其政權ヲ壟斷
ヲ致シテ、無資產階級、勞働者ト云フ者ハ、此政治上ニ參
加スルト云フ卽チ參政權ト云フモノヲ得ナイ、是ニ於テ彼等
ハ富ノ分配ノ上ニ於テ、社會問題ノ上ニ於テ、參政權ノ上
ニ於テ、非常ナル彼等ガ自覺ヲ致シテ、彼等ガ醒メテ來テ、
遂ニ此產業革命ト云フ思想ガ起リ、サウシテ此生產機關ノ
社會化ヲ唱ヘ、或ハ其極端ニ至ッテハ、共產主義ト云フモノ
ヲ唱ヘルト云フ形ニナッタノデアリマス、ソレガ最モ世界戰亂
ノ眞唯中ニ當シテハ、殊ニ痛烈ナル刺激ノ爲メニ、遂ニ彼等
ハ現代ノ組織ヲ破壞シテ、露國ノ如ク獨逸ノ如ク、國家ヲ
崩壊シタト云フ危險ニ迫ッタノデアリマス、乃チ此獨露ニ於
テハ、非常ナ壓迫ヲ致シタ結果、此結果ヲ來シタノデアリマ
ス、然ルニ英吉利ノ如キ、佛蘭西ノ如キ、亞米利加ノ如キハ
是等ハ思想ヲ壓迫セズシテ之ヲ緩和スル、之ニ對シテ如何
ニモ安全瓣ヲ設ケテ、徹底的ニ調和スルト云フ政策ヲ執ッタ
爲メニ、英佛米ノ如キハ何等ノ危險ヲ感ジテ居ラヌノデアリ
マス、然ルニ我國ガ、今日現內閣ガ執ラレテ居ル現狀ニ於テ
考ヘテ見マスト云フト、英米ノ如キ、徹底的ニ調和スルト云
フ事ヨリハ寧口獨露ガヤッタ如キ、壓迫スルト云フ政策ヲ始
終執ッテ居ラルヽト云フコトハ····(「ノウ〓〓」)「ノウ」ニハ非
ス、吾ミハ甚ダ之ヲ危險ナリト信ズルノデアリマス、此遣方ハ
吾ミハ甚ダ危險ナリト信ズルノデアリマス、(拍手起ル)現ニ
最近英國ニ於テ石炭勞働者ガ同盟罷業ヲ致シテ、若シ之
ニ船舶勞働者ト鐵道勞働者ガ參加シテ三角同盟ヲ起セバ
英國ハ玆ニ產業革命ヲ起シ、遂ニ政治革命モ起ラントスル
危險ニ瀕シタノデアル、併ナガラ彼等ハ「アングロサクソン」ノ
堅實ナル思想ヲ以テ、遂ニ此要求ヲ調和シテ、幸ニ事無キ
ヲ得タノデアル、英國ノ政治家ガ思想問題、社會問題、勞働
問題ト云フコトヲ重要視シテ、一國ノ運命ヲ調和ニ有利ニ
導クト云フコトニ努力シテ居ルト云フ]コトハ、是デモ別ルノ
デアリマス、然ルニ我國ハ徒ラニ其壓迫スルコトハ執ラルル
ガ、之ヲ調和スル卽チ緩和シテ之ニ安全瓣ヲ與ヘルト云フ
政策ハ、執ラレテ居ラヌノデアル、現ニ勞働者ニ對シテモ、或
ハ治安警察法ノ改正ヲ致シ、或ハ又勞働法ノ完全ナルモ
ノヲ制定シテ、彼等ノ賃銀ト富ノ分配トノ惠ニ與ラシムル
トカ、或ハ勞働組合法ヲ設ケテ、彼等ニ其組合ト云フモノヽ
力ヲ附與スルガ如キ事ヲスルトカ、或ハ勞働貯蓄法ヲ拵ヘ
ルトカ、若クハ勞働保險法ヲ制定スルトカ、或ハ庶民銀行ヲ
造ルトカ、救貧院ヲ造ルトカ、養老院ヲ造ルト云フ如キ、何
所マデモ徹底的ニ富ノ分配ト彼等ノ生活ノ安定トヲ圖ッテ
サウシテ其人格ヲ認、メテ行クト云フ事ヲヤラナケレバナラヌ
ト考ヘルノデアル、然ルニ是等ノ徹底シタル社會的施設、勞
働問題ノ解決ニハ、未ダ現內閣ハ手ヲ著ケテ居ラレナイソ
デアル、又一面彼等ノ自覺ハ、所謂生活ノ安定ノ上ニ政治
上ニ、參加スルト云フ參政權ヲ確ニ要求致シテ居ルノデア
ル、然ルニ現内閣ハ之ニ參政權ヲ與ヘラレナイ、卽チ普通選
擧ト云フコトニ絕對ニ反對致サレテ居ル、而シテ總理大臣
ハ、所謂普通選擧ト云フ事ヲヤルノハ、社會ノ組織ヲ脅威
スルトカ國家ノ基礎ヲ危クスルトカ、階級ヲ撤廢スル思想デ
アルガ故ニト贊成ガ出來ナイト云フコトヲ公々然トシテ御演
說ニナリ與黨諸君ハ拍手喝采シテ、之ヲ歡迎サレテ居ルト
云フ有様デアル、所ガ吾ミハ不幸ニシテ、總理大臣ヲ首メ現
內閣ノ諸公ハ、攝政關白ノ御子孫トハ承ッテ居ラナイ、又攝
家攝篠ノ御家柄トモ承知致サナイ、何レモ立志傳中ノ人と
デアッテ、微々タル民間ヨリ起ラレ、或ハ微祿ナル士族ヨリ
起ッテ、廟堂ノ高キニ坐シテ位人臣ヲ極メラレテ居ル、其事
自體ガ卽チ階級ノ撤廢デハアリマセヌカ、是ガ社會ノ組織
ヲ脅威スルトカ國家ノ基礎ヲ危クスルト言フナラバ、現內閣
ノ諸公ハ、一日モ其位置ニ居ルコトハ出來ナイノデアル、
然ルニ御自分ガ階級ノ撤廢ニ依ッテ現在ノ位置ニ居
ルト云フコトヲ棚ニ上ゲデ置イテ、僅カ三圓階級ヲ
打破スルト云フコトガ危險デアルト云フ思想ハ、何處カラ出
發スルノデアリマスカ、斯樣ナ事ヲ憶面モナク總理大臣ガ此
議政壇上ニ述ベラレテ、サウシテ過半數ノ諸君ガ之ニ歡呼
喝采ヲ送ルト云フコトハ、我ガ六千万ノ國民ハ之ヲ如何ニ
考ヘルデアラウカ、世界ノ各國ハ之ヲ理解スルノデアル、日
本ノ政治家ハ如何ニモ時代ノ潮流ニ觸レザルモノデアル、
(「分ラヌ事ヲ言フナ」ト呼フ者アリ)分ラヌ事ニ非ズ洵ニ怪
シカラヌ思想デアルト云フコトニ、世界ノ列國ハ驚クノデア
ル、卽チ米國ニ於テ日本人ニ歸化權ヲ與ヘヌト云フコトハ、
ドウ云フ事デアル、歸化權ヲ與ヘレバ選擧權ヲ與ヘルノデア
ル、日本ノ總理大臣ハ、議場ニ於テ國民ニ選擧權ヲ與ヘズ
ト言ヒ、所謂普通選擧ニ同意ヲシナイ、國內ニ於テ選擧權
ヲ與ヘザル者ガ、米國ニ於テ選擧權ヲ與ヘルト云フ必要ハ
無イト云フコトヲ、米國ノ政治家ハ考ヘルニ相違ナイ、卽日
本人ニ對シテ排日運動ノ强キ材料ヲ提供セラルヽモノハ、
總理大臣デアルト謂ハナケレバナラヌノデアル(「牽强附會
ダ」ト呼フ者アリ)牽强附會ニ非ズ、而シテ又昨年ノ總選擧
ハ如何ナ狀態デアッタカト云フト、選擧ノ前ニ於テ府縣知事
ヲ集メ-地方官ヲ集メ、警察部長ヲ集メテ、選擧ニ關スル
取締ノ訓示ハ頗ル周到ニ致サレテ居ル、又全國ノ津々浦々
ニ向ッテ、選擧ニ關スル宣傳ピラト云フモノヲ御配リニナッテ、
如何ニモ公平ニ、如何ニモ愼重ニ、此選擧法ヲ實行スルト
云フ形ヲ御示ニナッテ居ル、而シテ事實ハドウデアルカト云フ
ト、第一囘以來ノ總選擧ニ未ダ曾テ有ザル官權ノ利用ヲ
致サレタノデアル、ソレカラ又選擧費ヲ濫費スルト云フコト
モ政府與黨ホド選擧費ノ濫費ヲ致シタ例ハ無イノデアル、
(拍手)而シテ總理大臣ハ此壇上ニ於テ、左樣ナル事實ナシ
ト明言サレテ居ル、口ノ上ニ於テハ明言ヲ致サレテモ、總理
大臣ノ良心ニ省ミテ、果シテ疚シキ所ハ無イノデアルカ、所
謂議場ノ瞬間ニ勝ッテモ、天下ノ公論ニハ敗レテ居ルノデア
ル、是ガ思想ノ惡化ニ、非常ナル有力ナル材料ナリト吾ヒハ
信スルノデアル、唯ダ議場ニ於テ勝チサヘスレバ宜イ、相撲ノ
如キ力ヲ以テ勝負ヲスル者デモ、四十八手ト云フ手ガ定ッテ
居ル總理大臣ハ逆手ヲ以テモ、勝チサヘスレバ宜イト御考ニ
ナッテ居ルノデアルカ、斯樣ナ事ヲ致サレルノハ、幾ラ浪花節
ヲ御使ニナッテモ、學者ノ講演ヲオヤリニナッテモ、政府ノ爲サ
ル事實ガ思想ノ惡化ヲ來シテ居ルノデアル、斯樣ナル事ヲ
致シテ、思想ノ善導ト云フ實ガ何所ニ在ルカ、甚ダ疑ハザル
ヲ得ナイノデアル、又總理大臣ノ爲ザル事ハ、成程與黨ノ諸
君ハ多數デアル、議會ノ決議ハ多數ニ依ッテ決セラルヽノデ
アルト云ヘバ、如何ニモ形ハ多數決デアルガ、其實ハドウデア
ルカト云フト、卽チ最高幹部ガ總理大臣ノ意思ヲ承ケテ、サ
ウシテ黨議ト稱シテ之ヲ押付ケルノデアルカラ、謂ハバ總理
大臣一人ノ專制ト云フ形ニナッテ居ルノデアル、卽チ今日ノ
政友會ノ有樣ト云フモノハ、一人ノ絕對ノ專制政治ヲ實
現シテ居ルノデアル、總理大臣ノ意思ノ如クナラザルモノハ、
雙六ノ賽ノ目ト、隅田川ノ水ノ流ト、民衆ノ心理狀態ニ外
ナラヌノデアル、斯樣ナ事ヲ致シテ、是デ思想ノ善導、危險
思想ヲ防止スルト云フ總理大臣自ラガ、危險思想ノ種蒔
ヲ致サレテ居ルノデアル、又立憲政治ト云フモノハ卽チ責任
政治デアル、責任ヲ知ラナケレバ立憲政治ノ實ハ擧ラヌノデ
アル、然ルニ現內閣諸公ハ如何ナル事ヲ致サレテ居ルカ、卽
チ、尼港事件ノ如キ大失態ヲ來シテモ、責任無シト言ハルル
又文部大臣ガ明カニ二枚舌ヲ使ッテモ、責任無シト言ハルル
而シテ國民ハ最早斯樣ナル內閣ノ下ニ多數ガ之ヲ援助セ
ラルルト云フコトニハ、殆ド愛想ヲ盡カシテ、而シテ切メテ貴
族院ノ活動ニ依ッテ、斯様ナル責任問題ヲ糺シタイト云フコ
トニ、多大ノ期待ヲ持ッテ居ルノデアル、然ルニ現內閣ノ魔ノ
手ハ卽チ貴族院ニ伸ビテ、腰ノ弱キ殿原ヲシテ、段々軟化ヲセ
シメラレテ遂ニ上院ニ於テモ此問題ハ、殆ド(「悔シカラウ」ト
呼フ者アリ)悲觀スベキ形勢ヲ馴致致シテ居ルノデアル、斯
ノ如ク責任ト云フモノヲ無視セラレテ居ルノデアル(「ソレガ
質問カ」ト呼フ者アリ)然ルニ一方ニハ斯樣ノ大官ガ責任ヲ
顧ミラレズシテ、思想惡化ノ源泉トモナラレテ居ル一方ニ如
何デアルカト云フト、微々タル鐵道ノ踏切番ノ如キ、〓育ノ
無イ極メテ低キ生活ヲ致シテ居ル者ガ人ヲ救フガ爲メニ鐵
道線路ニ危險ヲ冒シテ飛込ンデ、己レノ一命ヲ落シテマデ
モ人ヲ救助シテ居ルト云フ、卽チ自己ノ責任ヲ重ンズル人ガ
爰ニアルノデアル、又最近ノ出來事ハ、巡査ガ己レノ護送シ
テ居ル犯人ガ、鐵道自殺ヲ遂ゲントスルコトヲ見テ驚イテ、
飛込ンデ之ヲ救ハントシテ、自ラ轢死ヲ遂ケタト云フガ如キ
事モ最近ニハアル、閻臣諸公ハ是ガ會葬迄モサレタト云フ
コトデアル(「駄法螺ダ」ト呼フ者アリ)駄法螺ニ非ズ事實ナ
リ、斯樣ナル事柄ニ對シテ同情ヲ致サレ、尊重ヲ致サレテ、
會葬マデセラレルト云フノデアルガ、然ルニ内閣諸公ハ責任
ヲ無祝サレテ居ル、多數デサヘアレバ宜イト云フノデ責任ヲ
無視サレテ居ル、微々タル巡査ノ如キ職ニ居ル人、又微々タ
ル踏切番ヲシテ居ル程ノ人ニシテ、斯樣ナル立派ナル責任ヲ
理解シテ居ルノニ、高等〓育ヲ受ケテ閣臣ノ卽チ高位高官
ニ居ル者ガ、責任ヲ理解セナイト云フガ如キ狀態デアッテハ、
我國ノ思想ノ惡化ヲ防ガントシテモ、到底防ギ切ルコトハ出
來ナイト信ズルノデアリマス(拍手起ル)ソコデ吾〓ガ疑フノ
ハ、此思想ノ惡化ト云フコトニ對シテ、外來ノ思想ヲ防グト
云フコトニ專心御努力ニナッテ居ルガ、内ニ於テ危險思想ノ
發生ヲ防グベキ重大ナル事ニ對シテハ、現内閣ハ何等注意
ヲ拂ハレザルノミナラズ、自ラ此危險思想ヲ發生スベキ種蒔
ヲサレテ居ルト云フコトヲ、自覺サレナイノデアルカドウデアル
カ、洵ニ吾ミハ此現狀ヲ見テ憤〓ヲ禁ゼザル者デアリマス、
現內閣諸公ハ、一時議場ニ勝ツト云フコトハ愉快デハアルカ
知レヌガ、卽チ世道人心ニ極メテ惡影響ヲ與へ、我國ノ危
險思想ヲ誘起スト云フ、重大ノ責任アリト云フコトヲ自覺
サレナイノデアリマスルカ、(拍手起ル)吾〓ハ此點ヲ御尋致
シタイノデアル、總理大臣ハ宜シク東心ニ省ミテ、疚シキ所
ノナキ答辯アランコトヲ切望致スノデアリマス(拍手起ル)
〔「答辯ノ必要ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=25
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026・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 古賀三千人君
石炭礦業被害ニ關スル質問ノ答辯ニ對ス
ル古賀三千人君ノ意見
〔古賀三千人君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=26
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027・古賀三千人
○古賀三千人君 本員ハ石炭礦業被害ニ依ル之ガ救濟
ニ關シ、政府ニ質問書ヲ提出致シマシタル所、本日書面ヲ
以テ答辯ヲ得マシタノデアリマス、遺憾ナガラ此答辯ニ滿足
ヲスルコトガ出來マセヌノデ、更ニ意見ノ陳述ヲ致スノ已ム
ナキニ至ッタノデアリマス、我國礦業就中石炭礦業ノ進歩發
達殊ニ著シク、又一面商工業ノ發達ニ件ヒ石炭ノ需要著
シク增加ヲ來シ、往年來炭價未曾有ノ好況ニ伴レマシテ、盛
ニ採掘ガ行ハレ、頓ニ農耕地ノ被害ヲ甚大ナラシメタノデア
リマス、是ハ獨リ農耕地ノミナラズ、住宅地ノ傾斜陷落等又
夥シク、精神上物質上直接ニ間接ニ被害多ク、農村ノ困憊
衰頽ヲ來スニ至ッタノデアリマス、玆ニ其一部ノ事ヲ申述ベ
マスレバ、福岡縣ニ於テ大正八年ノ三月ノ五日付ヲ以テ關
係町村農會ヨリ、更ニ又大正九年ノ三月二十一日ニ、縣
ノ農會長郡ノ農會長ヨリ被害狀況ヲ具シテ、政府ニ之ガ救
濟ヲ請願ヲ致シタノデアリマス、然ルニ未ダ其儘ニ成リ至ッテ
居ルノデアリマス、斯ノ如キ重大ナル問題ヲ此儘ニ抛置セン
カ、醇朴ナル農村ノ美風ヲ破壞シ、思想ノ惡化ヲ來シ、終ニ
ハ被害者ハ自暴自棄ニ流レテ、礦業家ト農民トハ紛擾ヲ醸
シ、延テハ石炭礦業ノ發達ヲ阻害スルノ結果ニ至ルト思フノ
デアリマス、而シテ之ガ缺陷ヲ根本的ニ補ハントスルニハ、現
行礦業法ノ改正ヲ必要ナリト信ズルノデアリマス、抑〓我國
ノ現行礦業法ハ、當時礦業極メテ幼稚ナル時代ニ於テ、礦
業奬勵的ノ意味ニ於テ、鑛業者ノミヲ保護スル、頗ル有利
ノ制度ニナッテ居ルノデアリマス、故ニ斯ノ如キ被害者ニ對
シテハ、十分考慮セラレナイ結果ガ、斯ノ如キ慘澹タル被害
ヲ受ケテ居ルニモ拘ラズ、確實ニ之ヲ要求スルノ途ガ無イノ
デアリマス、又一面ニ於テ、食糧自給上耕地ノ益〓必要ナルヲ
見、又政府ハ開墾助成法案ヲ定メ奬勵致シテ居ルニモ拘
ラズ、確實ナル耕地ヲ陷落荒廢セシメントスルハ、國家經濟
ノ上ニ就テモ、甚ダ大ナル不利益ト思フノデアリマスル、故ニ
私ハ之ガ鑛業法ノ改正ヲ行ヒ、被害者ニ對シテ確實ニ是等
ノ損害賠償ノ途ヲ開クト云フコトハ、最モ必要ナル事デアル
ト思フノデアリマス、尙又斯ノ如キ問題ヲ此儘ニ致シマスレ
バ、前段中上ゲマシタル如ク、農村ノ思想ハ益、惡化ヲ來タス
コトハ當然デアリマス、故ニ斯ノ如キ問題ニ就テハ政府ハ一
日モ速ニ是ノ確定的制度ヲ設ケルコトハ、農民ノ惡化ヲ中
和シ、又所謂社會政策ノ上ニ就テモ、必要ナリト私ハ確ク
信ジテ疑ハヌノデアリマス、(「簡單々々」「分リマシタ」ト呼フ
者アリ)又政府ハ今日得タル答辯書ニ依リマスレハ、礦業家
ト被害者ノ間ニ於テハ、其都度圓滿ナル解決ガ著キツヽア
ルト云フコトデアリマスルガ、事實ハソレニ全ク反シテ居ルノ
デアリマス、故ニ速ニ是等ノ點ニ就テ十分ナル考慮ヲ費サ
レ、速ニ之ガ解決ヲセラレンコトヲ私ハ望ムノデアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=27
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028・奧繁三郎
○議長(臭繁三郞君) 横山勝太郞君
閔元植ノ客死ニ關スル質問ノ答辯ニ對ス
ル橫山勝太郞君ノ意見
〔橫山勝太郎君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=28
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029・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 朝鮮人関元植ノ暗殺問題ニ關シテ、去
ヌル十八日本員外一名ヨリ質問書ヲ出シテ置キマシタ、本
日其答辯ヲ得マシタ、其質問書ノ第一ニ就テハ、政府ヨリ
簡單デハアリマスルガ相當ナル說明ガゴザイマシタカラ、本員
ハ此點ニ就テハ何事モ申上ゲマセヌ、唯ダ此事項ニ關シテモ內
務大臣ノ反省ヲ促シテ置カナケレバナラヌ事ハ、近時政府
ハ頻リニ言論ノ自由ニ對シテ抑壓ヲ加へ、又一面ニハ警察
權ヲ濫用致シテ言論ノ制限ヲ加フルト云フ、一大事弊ヲ現
出シテ居ルト考ヘマス、院外ニ於テ既ニ左樣ナ事デアリマス
ルガ、此院內ニ於テモ、本貝等ハ此點ヲ甚ダ遺憾ニ思フノデ
アリマス、過日來議員ヨリ提出セラレタル質問書ニ對シテ、
免角政府ハ其日若クハ其前日ニ答辯書ヲ出シテ、サウシテ
此壇上ニ於ケル議員ノ發言ヲ遮ッテ居ルト云フ事柄ハ、事實
ノ證明スル所デアリマス、本日ノ如キモ、單ニ政友會ノ鈴木
君ニ對シテノミ發言ヲ許シテ、他ノ黨派ノ議員ノ質問ニ對
シテハ、一切答辯書ヲ以テ之ヲ抑壓セントスル如キハ、如何
ニモ政府ハ不公平千萬デアルト私ハ考ヘル、(「ヒヤ〓〓」、拍
手起ル)殊ニ本日鈴木君ノ如キハ、此壇上ニ立ッテ此質問
ノ演說ヲスルコトハ遺憾デアルトマデ言ッテ居ル、シタクナイ
方ノ側ノ演說ハ許シテ、(笑聲起ル)發言ヲ希望スル所ノ質
問ニ對シテハ之ヲ遮ルト云フ事柄ハ、如何ニモ政府ガ相呼
應シテ、不公平ナル事ヲスルモノデアルト私ハ斷言セザルヲ
得ナイノデアリマス、斯ウ云フ事柄ハ、ドウカ少シク御注意ヲ
願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ質問書ノ第二ニ就キマシテ政
府ノ答辯スル所ニ依レバ、本人ハ渡來ニ對シテハ、沿道ノ官
憲ハ勿論、警視廳ニ命ジテ、身邊ノ保護ヲ注意セシメタ、入
京後ハ保護ノ爲メニ、警視廳ヨリ私服警察官ヲ附シ置イタ
斯樣ナ周到ナル注意ヲ致シタト云フ答辯デアリマスガ、是ハ
少シク事實ニ反スルヤウニ私ハ考ヘル、此答辯ハ事實ニ反シ
マスガ、此関氏ヤ日本ノ內地ニ來ッテ東京ニ著スル迄ノ問ノ
事柄ハ、姑ク政府ノ答辯ニ不滿足ナガラ同意ヲ致シテ置キ
マスルガ、入京以來私服巡查ヲ附ケテ、而シテ鄭重ナル保護
ヲ致シタト云フ點ハ、是ハ何カノ御間違デハアリマスマイカ、
當日ノ模樣ハ內務大臣モ詳細御承知デアリマセウガ、時間
ハ明瞭ニハ判ッテ居リマセヌガ、要スルニ午前ノ九時前後デ
アルラシイ、此午前ノ九時頃ニ不逞鮮人ノ一人ガ、ドウ云フ
方法ヲ以テ此関君ノ泊ッテ居ル客舍ニ入リマシタカ、其事柄
ニ就テモ多少ノ知識ハ持ッテ居リマスガ、本日ハ之ヲ明言シ
マセヌ、御承知ノ通リニ彼ノ「ステーシヨンホテル」ハ玄關口
ノ方カラ參リマスレバ受付ガアッテ、相當ナル監視ガ出來ル
ノデアリマスケレドモ、食堂ノ方ノ昇降口カラ行ケバ、何人ト
雖モ客室ノ前ヲ自由ニ往來スルコトガ出來ルノデアル、此場
合ニ當ッテ政府ガ本日答辯ヲセラルヽ如ク、眞ニ私服巡查
ヲ附シテ鄭重ニ警護致シテ居ッタトムフコトデアルナラバ、彼
ノ縞ノ著物ヲ著タ怪シキ犯人ハ、之ヲ捕フルコトハ容易デア
ル、然ルニ彼ノ客室ニ入ッテ、行ヲテ、白晝一刀ノ下ニ関君ヲ
暗殺シタニモ拘ラズ、其暗殺ヲセラレタ當時ハ、私服ノ警察
官ハ一人モ之ヲ覺知スル者ガ無カッタ、暗殺ヲシテ廊下ヲ
走ッテ出ヅル際ニ何人ニカ誰何セラレテ、何カニ躓イテ倒レ
タ、ソコデ初メテ其廓下ヲ往來シテ居ッタ者ガ、何カ怪シキ者
デアルト思シテ居ル際ニ、既ニ犯人ハ二階ニ降リテ、二階ノ窓
カラ飛ンデ降リタノデアル、而モ其窓カラ飛ンデ降リル際ニ
ハ、制服巡査ハ之ヲ見テ居ッタノデアル、而シテ此犯人ハドウ
云フ方法ニ依シテ逃ゲタカ、遂ニ踪跡ヲ〓シタト云フ事實デ
アル、政府ノ答辯書ノ中ニ記載セラレテ居ル如ク、警視總監
ニ命令ヲシテ身邊ノ保護ヲ注意セシメ、尙ホ私服警察官ヲ
附シテ置イテ注意ヲシタト云フコトガ事實デアリマスナラバ、
斯樣ナ事ハ斷ジテ起リ得ナイ事デアル、惟フニ政府ハ警視
總監ニ命令ヲサレタト言フガ、果シテ警視廳ハ斯ノ如キ命
令ヲ受ケテ居ルカドウカト云フコトモ問題デアル、又警視總
監ニ命令シタコトガ事實ナリトスルモ、警視廳ノ幾多ノ高等
官竝ニ下級ノ警察官ハ、此命令ヲ誠實ニ遵奉シタカドウカ、
是モ問題デアル、否ナ現ニ顯レテ居ル今日ノ事實ニ依リマ
スレバ、警視總監モ其部下ノ警察官モ、一人トシテ內務大
臣ノ命令ヲ遵奉致シテ居クタ者ハ無イト云フコトガ事實デ
アル、斯樣ナコトガアルニモ拘ラズ、單ニ警視總監ニ命令ヲ
致シテ周到ナル注意ヲ致シタト云フ事柄デ、此責任ヲ免ル
ル譯ニハ行カヌト私ハ考ヘル、殊ニ閔君ノ身邊ニ就テハ、政
府ハ單ニ答辯書ニ揭ゲタル位ノ注意ダケデハイカヌト思フ、
今一層ノ注意ガ必要デアル、其故如何ト申シマスレバ、政府
ハ御承知デアリマセウガ、関元植君ハ餘程以前カラ親日主
義ノ思想ヲ持ッテ居リマシテ、而シテ筆ニ口ニ所謂親日本主
義ヲ唱ヘテ、日韓併合ノ趣旨ヲ遵奉シテ、常ニ親日派ノ爲
メニ非常ナ努力ヲシテ居シタ人デアル、此故ニ同君ガ昨年ノ
一月東京ニ參リマシタ時分ニモ、堂々タル文書ヲ刊行致シ
テ、其思想ノ在ル所、又鮮人ノ要求スル所ヲ我國ノ朝野ノ
人ニ告ゲ又之ヲ要求致シテ居ルノデアリマス、是ニ由テ見マ
スレバ、関元植ハ歲纔ニ八歳ニシテ一家離散ノ厄ニ遭ヒ、
紳商ニ伴ハレテ〓國ノ小都保定府ニ赴キ居リ、居ルコト二
年餘、十一歳ニシテ朝鮮ニ歸リタレドモ、頻リニ政府ノ壓迫
ヲ蒙リ、身命ノ安全ヲ保ツコト能ハザル有樣ナリシガ、其後
歲二十ノ時ニ伊藤公ノ推薦ニ依リテ、內務衞生課長ヲ拜
命シテ爾來日本政府ノ爲メニ、又日本人ノ爲メニ非常ナ努
力ヲ爲シ來ッタト云フコトハ、関君ガ自カラ發表シテ居ル文書
ニ依ッテモ明瞭デアル、而シテ今日ノ朝鮮ニ於ケル狀態カラ
申シマスレバ、親日派ノ人ハ、官吏ト云ハズ人民ト云ハズ、非
常ナル迫害ヲ受ケテ居ルノデアル、斯ノ如キ思想ヲ持チ斯ノ
如キ迫害ヲ受ケテ居ル人間ガ、之ガ參政權獲得ノ爲メニ日
本ニヤッテ參ッタノデアリマスカラ、政府ハ此人ノ身邊ノ保護
ニ關シテハ、一段ノ注意ヲ要スルコトハ是ハ無論デアル、卽
チ參政權ノ獲得ハ日韓合併ノ前提トシテ、日韓同化ノ理
想ノ下ニ參政權ノ要求ヲスルノデアリマスカラ、今日ノ所謂
不逞鮮人ノ側カラ見レパ、確ニ敵トシテ〓フベキ人間トナッ
テ居ルノデアル、此歷史ヲ考ヘテ見マシタナラバ、同君ガ今
日參政權獲得運動ノ爲メニ日本ニヤッテ來ルト云フコトデ
アリマシタナラバ、如何ナル迫害ヲ被ルカ、如何ナル危險ニ
遭遇スルカト云フコトハ、吾と民間ノ者ト雖モ、之ヲ想像
スルニ難カラナイ、ソレデ政府ハ單ニ警視總監ニ命令
シタ、私服巡査ヲ附ケテ置イタ、此一事ニ依ッテ関元植
君ノ身邊ノ保護ガ出來ルト考ヘタナラバ、是ハ非常ナル
過失ト私ハ考ヘル、私ハ同君ノ生立、同君ノ持ッテ居ル思
想、同君ノ有シテ居ル理想、總テ日本人カラ見タナラバ、是
ハ大切ニ保護ヲシテヤラナケレバナラヌ人間デアル、然ルニ斯
ノ如キ冷淡ナル保護ノ下ニ置イタノデアリマスカラ、遂ニ同
君ハ暗殺ヲ被ルニ致タタデアル、政府ハ單ニ私服巡查ヲ附
ケテ置イタト云フコトニ依シテ、此責任ヲ免レルコトハ出來ヌ
ト私ハ考ヘル、此事項ニ就テ、今一般ノ說明ヲ內務大臣カ
ラ聽カントスル者デアリマス、第三ノ問題、卽チ此不祥事件
ニ對シテ、內務大臣竝ニ警視總監日比谷署長ノ責任ヲ問
ウテ置キマシタ、之ニ對シテ政府ハ何等答ヘル所ガ無イ、吾こ
ノ聽カントスル所ハ、政府ハ如何ニ新聞記事ノ差止ヲヤッ
テモ、関元植君ガ暗殺サレタト云フ事實ハ明瞭デアルガ、白
晝公然帝都ノ中央ニ於テ斯ノ如キ不祥事件ヲ出シタルコ
トニ就テ、政府ハ如何ナル責任ヲ感ジテ居ルカト云フコトガ
私ノ問ハントスル、主タル要點デアル、此點ニ於テ政府ハ無
責任ニモ、一言半句モ答ヘルコトノ無イノハ如何ナル理由
デアルカ、関君ノ思想其他身邊ノ事情ニ就テハ先刻モ一言
致シマシタガ、內務大臣モ御承知ノ通リ、此関元植君ニ對
シテハ、上海ニ居ル所ノ例ノ不逞鮮人ノ巢窟デアル所ノ朝
鮮獨立假政府ニ於テハ、旣ニ死刑ノ宣告ヲシテ、吾ミノ聞
ク所ヲ以テシテモ、數回死刑ノ宣告ノ通知ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、政府ハ無論御承知デアラウト思ヒマス、無論上
海ニ在ル假政府ノ不逞鮮人ナル者ガ、五人ヤ十人寄ッテ獨
立ヲ圖ッタ所デ、到底其獨立ハ不可能デアラウ、況ヤ死刑ノ
宣告ナルモノモ、兒〓ニ類シテ居ルモノデアルト言ハレルカ
知ラヌケレドモ、免ニ角相當ノ組織ヲ以テ、外國ノ版圖內ニ
公然巢窟ヲ構ヘテ、日本帝國ニ對シテ不軌ヲ圖ッテ居ル鮮
人ガ、親日派ノ関君ニ對シテ死刑ノ宣告ヲシテ居ル、而モ其
事柄ヲ發表致シテ居ル此人ガ、日本ニ來クテ往來ヲスルニ
方ッテハ、非常ニ注意ヲスルガ至當デアルニモ拘ラズ、其注意
ヲセザル結果今回ノ不祥事ヲ現出シテ、而シテ議員ヨリ公
然其責任如何ト質問シタルニ拘ラズ、其責任問題ニ關シテ
ハ、一言半句モ答辯ヲシナイト云フ事柄ハ、甚ダ私ハ無責任
デアルト考ヘマス、此関君ガ東京「ステーシヨンホテル」ノ三階
ノ客室ニ於テ殺サレタト云フ事ハ、他ニ重大ナル意義ヲ有ツ
ト私ハ考ヘマス、單ニ朝鮮人ガ帝都ニ於テ暗殺セラレタリト
云フ事件デハナイト考へマス、抑〓東京驛ハ如何ナル所デア
ルカト申シマスレバ、申スマデモナク宮城ヲ距ルコト僅カ數町
ノ所ニ在ル、而シテ東京驛ハ或意味ニ於テ世界ノ公道デア
ル、世界ノ人ノ往來スル所デアル、世界ノ人ガ宿泊シテ居ル
處デアル、最モ平和ニナクテハナラヌ、最モ安全デナクテハナ
ラヌ地域デアルト云フコトハ申スマデモナク、此地域ニ於テ
床次內務大臣ガ警視總監ニ命令ヲシ、私服巡查ヲ附ケル
ト云フ程ニマデ保護ヲシタト云フニ拘ラズ、白晝公然暗殺
ガ行ハレテ居ッテ、其犯人ヲ其當時直チニ捕縛スルコトガ出
來ヌト云フニ至ッテハ、我日本警察ノ威力ト云フモノハ、全然
零デアルト私ハ考ヘル、(拍手起ル)纔ニ數日ノ後ニ捕ヘタケ
レドモ、長崎方面ニ逃亡スルノヲ悠々眺メテ居,テ、而シテ纔
ニ之ヲ捕縛スルコトヲ得タト云フコトニ至ッテハ、我ガ警察ノ
無力無能驚クニ堪ヘタリデアルト私ハ考ヘル、殊ニ私ハ今回
ノ事件ニ就キマシテ記憶ヲ喚起致シマスガ、(「簡單」ト呼フ
者アリ)前年此三菱ケ原ニ於テ一ノ若キ婦人ガ殺サレタコ
トガアリマス(「簡單々々」ト呼フ者アリ)是モ殆ト十年ノ日月
ヲ經過シテ漸ク犯人ヲ捕ヘタ、又先年此立法府デアル-
此神聖ナル立法府デアル衆議院ノ門前ニ爆彈ヲ投ジタ犯
人ガアッタガ、此犯人モ今日之ヲ捕ヘルコトガ出來ナイ、(拍
手起ル、「ドウダ日比谷署長ニナッテハ」ト呼フ者アリ)斯ノ如
クニシテ此麹町區內ニ於ケル重要ナル地域ニ於テ、私ハ殆
ド無警察ノ狀態ニ在ルコトヲ斷言シテ憚カラヌノデアル、(拍
手)之ニ反シテ先年政友會ノ古キ建築物ニ放火セシ者ガア
リシ際ニ於テ、其犯人ハ直チニ捕ヘラレテ居ル、(笑聲起ル)
政友會ノ諸君ハ御笑ニナッテ居ル方モアルヤウデアルガ、抑〓
此神聖ナル立法府ノ建築物ガ重要デアルカ、政友會ノ本
部ガ重要デアルカ、(笑聲起ル「脫線々々」ト呼フ者アリ)政友
會本部ノ放火犯ハ直チニ之ヲ捕ヘルコトガ出來ルガ、立法
府ノ門前ニ爆彈ヲ投ジタル重大犯人ハ、今日未ダ一人モ之
ヲ檢擧スルコトガ出來ヌ、其無責任無能ナル內務大臣ガ、
能クモ晏然トシテ此所ニ坐ッテ居ルト私ハ考へル、(拍手起
ル、「亂暴ナ事ヲ言フト値打ヲ下ゲルゾ」ト呼フ者アリ)此責
任問題ニ就テハ、政友會ノ諸君ガ騒ゲバ騒グホド、アナタ方
ガ苦シイト云フコトガ分ル、(拍手笑聲起ル)立法府ノ門前
ニ爆彈ヲ投ジタ犯人ヲ逮捕スルコトガ出來ナイ責任ヲ問ウ
テ、ソレガ何ガ可笑シイノデスカ、私ハ少クトモ此立法府ノ門
前ニ投ジタル爆彈ノ犯人ガ未ダ捕ヘラレザルノ一事、內務
大臣ハ重大ナル責任ヲ感ジテ居ラナケレバナラヌト考ヘル
ガ、本件ノ関君ノ暗殺事件ニ關聯シテ、是ダクノ注意ト是
ダケノ保護トヲ以シテ足レリト云フコトデ、內務大臣ガ依然此
答辯ヲ維持スルノ意思アルヤ否ヤ、私ハ甚ダ之ヲ疑フノデア
リマス、第四ノ問題ニ就テハ、政府ハ虚僞事實ヲ公表シタコ
トハ無イト云フ答辯ヲ致サレテ居リマスカラ、水掛論ハ致
シマセヌ、無イナラバ無イデソレデ宜シウゴザイマスガ、然レ
ドモ此第四ノ事項ニ就テモ、內務大臣ニ御注意ヲ願ハナケ
レバナラヌ事柄ハ、政府ガ近時濫リニ差止命令ヲ新聞社若
クハ雜誌社ニ傳達スルノ結果、政府自ラノ虚僞ノ事實ヲ天
下ニ公表スルコトヲ勤メル譯デハアリマスマイガ、公ノ報道
機關タル責任ヲ有ッテ居ル新聞記者竝ニ雜誌記者ハ、ドノ
ヤウニカシテ帝都ノ眞中ニ起ッタル重大ナル事件ヲ、天下ニ
報道シナケレバナラヌト云フ責任ガアル、此際ニ方ッテ政府
ノ差止命令アルガ爲メニ、不知不識ノ間ニ間違。タ事實ヲ
報道スル結果ニ陷ル、或ハ時ニ「某重大事件」ト云フ文字ヲ
用ヰ、或ハ時ニ「〇〇事件」ト稱シテ、譯ノ判ラヌ記事ヲ書イ
テ報道スルコトニナルト思フ、是ガ爲メニ政府自ラハ虚僞ノ
事實ヲ報道スル譯デハアリマスマイケレドモ、其新聞雜誌ナ
ル公ノ報道機關ヲ經營シテ居ル新聞記者雜誌記者ハ、之
ガ爲メニ覺エズ知ラズ國民ノ前ニ誤レル事實ヲ報道スルノ
結果ヲ生ズルト云フ事柄ハ、實ニ此報道機關ノ爲メニ遺
憾至極ニ堪ヘナイノデアリマス、其結果ハ〇〇事件ナルモ
ノヲ讀ミ、若クハ某重大事件ナル記事ヲ讀ム所ノ國民ト云
フモノハ、不知不識ノ間ニ不安ノ念ニ驅ラレルト云フコト
ハ、是ハ已ムヲ得ヌ事柄デアル、(拍手起ル)政府ハ最モ
公明正大ヲ尙ブベキ立憲治下ニ於テ、報道機關ヲ抑壓シ
テ、誤レル事實ヲ報道スルノ結果ヲ生ゼシムルト云フ事柄ハ
此憲政治下ニ於テ容スペカラザル政治的ノ罪惡デアルト私
ハ考ヘル、(拍手起ル)少クトモ政黨内閣ヲ標榜シテ居ル現
內閣ノ、容スベカラザル罪惡デアル、ト私ハ斷定シテ憚ラヌノ
デアル、此意味ニ於テ所謂差止事件ナルモノニ就テハ、政府
ハ深甚ナル注意ヲ拂ハレル必要ガアルト考ヘル、然ルニ今日
ニ於テハ、無責任千萬ニモ連日新聞社ニ對シテ記事差止
ヲ命令致シテ居ル、(「簡單」ト呼フ者アリ)大正九年ニ於テ
幾許ノ差止命令ヲ發シタカト云フ事柄ヲ、或筋ニ就テ調査
シテ見マスト、實ニ百數十件ニ及ンデ居ル、百二三十件
ニ及ンデ居ル、而シテ大正八年度ヨリノ引殘リガ、マダ二十
件許リモアルト云フ話デアル、此數字ガ若シ誤ッテ居ラナカッ
タナラバ、政府ハ隔日ニ一遍位井差止命令ヲ發シテ居ル、此
故ニ命令ヲ發シナイ日モアリマセウカラシテ、發スル日ニハ三
ツモ四ツモ差止命令ヲ出シテ居ルト云フ有樣デアル、新聞雜
誌記者ハ、此連日ノ天降,テ來ル所ノ差止命令ノ範圍ヲ切
拔ケテ、今日新聞雜誌ヲ經營シテ居ルト云フ有樣デアル、是
ハ確ニ言論ノ抑壓デアルト私ハ考ヘマス、如何ニ差止命令
ノ權利ガ内務大臣ニ保留シテアルカラト申シマシテモ、連日
頻リニ差止命令ヲ發スルト云フヤウナ事柄ハ、法治國ニ於
テ、立憲國ニ於テ容スベカラザル事デアルト私ハ考ヘル、此點
ハ昨日ノ豫算委員會ニ於キマシテモ、川村警保局長ヨリ多
少ノ陳辯ガアッタヤウデアリマスガ、幸ニ此處ニ內務大臣ガ
御在ニナルヤウデアリマスカラシテ、直接ニ内務大臣カラ承
リタイ、最後ニ一言致シテ置キタイ事柄ハ、是ハ本件卽チ閔
君ノ事件ノミニ關シテ聽ク事柄デハアリマセヌクレドモガ、一
般的ニ永ッテ置キ、又意見ヲ述べテ置キタイト思ヒマスル點
ハ、此差止命令ヲ以テ東京大阪等ノ新聞紙ニ對シテ、頻リ
ニ壓迫ヲ加ヘラレルケレドモガ、朝鮮ノ新聞ニ對スル問題ハ
他ノ議員カラ發言ガアリマシタカラシテ今日ハ止メマスガ、
私ノ手許ニ只今奈良新聞ト稱スルモノガアリマス、二月十
七日附ノ奈良新聞ニ、悉ク此閔元植暗殺事件ト云フモノヲ
明瞭ニ記載致シテ居ル、是ハ差止命令ガ行カヌカラデアリ
マス、政府ハ如何ナル方針デ差止命令ヲ發スルカ知リマセ
ヌケレドモガ、唯ダ束京、大阪、京都ト云フヤウナ大都市ノ新
間紙ノミ差止命令ヲ出シテ、サウシテ此奈良ニ於テ發行セ
ラレル新聞紙等ニ對シテ差止命令ヲ發セヌト云フヤウナ事
柄ハ、是ハ方針ガ何所ニアルカト云フコトヲ疑ハザルヲ得ナ
ガ、同ジク是レ新聞紙ニシテ、同ジク是レ言海ノ報道機關ニ
シテ、一ハ制限ヲ受ケ、一ハ制限ヲ受ケナイト云フヤウナ、不
公平千萬ナル差止命令ヲ發スルト云フヤウナ事ハ、是亦內
務大臣ハ、報道機關ニ對シテ責任ヲ負ハネバナラヌト考ヘル、
殊ニ今回ノ関元植君ノ暗殺問題ニ就テ政府ノ執レル方針
ニ就テハ、後ニ復タ機會ヲ以テ私ハ聽カントス場合モゴザイマ
スケレドモガ、本日此處ニ御出席ニナッテ居ル內務大臣ニ一
言中シテ置キタイト思フ事柄ハ、閔元植君ノ暗殺ハ、一朝
鮮人ノ暗殺デアリマスケレドモガ、私ハ此閔元植君ニ對シテ
多大ノ同情ヲ持ッテ居ル者デアル、此忠實ニ日本政府ノ諒
解ヲ得テ、日鮮同化ノ運動ニ從事シテ居ル所ノ親日派此
重大ナル意味ヲ持っテ居ル朝鮮人ガ、而モ日本ノ帝都ニ
來ッテ暗殺セラルヽト云フ事柄ハ、朝鮮內地ニ居リマス所ノ
是ト主義ヲ同ジクスル、幾十百万人ノ親日派ヲ脅威スル結
果ヲ生ズルト考ヘマス、此幾多ノ親日派ガ脅威セラレル結
果ハ、卽チ一大不安ヲ感ズルノデアル、一大不安ヲ感ズル結
果ハ、爰ニ一大不平ヲ感ズルノデアル、不平ヲ感ズル其後ハ
全ク民心離叛シテ、我ガ大日本帝國ニ對シテ不軌ヲ企ツル
所ノ鮮人ト、同一ノ行動ヲ執ルニ至ルノ虞ガアルト私ハ考
ヘマス、此意味ニ於テ今囘ノ事柄ハ、全ク私ハ內務大臣ノ
職責ニ關スル重大ナル事柄デアルト考ヘル、此故ニ本日茲
ニ御提出ニナッタヤウナ無責任ナル答辯ニ非ズシテ、直接ニ
內務大臣ヨリ此壇上ニ立ッテ責任アル答辯ヲ聽カントスル
モノデアリマス、是ハ單ニ日本人ノ聽カントスル所デハナク、
吾とハ幾多ノ親日派ノ鮮人ニ代シテ此質問ヲ爰ニ言明スル
次第デアリマス、ドウカ內務大臣ハ丁寧親切ニデス、單ニ日
本人ノ感ヲ解クト云フニ止ラズシテ、幾多ノ朝鮮人ニ對シ
テ不安ヲ與ヘテハナラナイト云フ觀念ノ下ニ立ッテ、御答辯
ヲ願イタイト思ヒマス、之ヲ以テ私ノ意見ノ陳述ト致シマス
(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=29
-
030・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 田中善立君
國民思想善導ニ關スル質問ノ答辯ニ對ス
ル田中善立君ノ意見
〔田中善立君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=30
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031・田中善立
○田中善立君 本員ハ國民思想ノ善導ニ關スル質問ヲ致
シタノデアリマス、本日政府ノ御答辯ニ依リマスレバ、斯ウ云
フ至ッテ簡單ナル答辯デアリマス「國民思想ノ推移ニ關シテ
ハ政府ハ常ニ周到ノ注意ヲ怠ラズ各般ノ敷設ヲ整備シ穩
健ナル思想ヲ涵養スル等思想善導上適切ナル處置ヲ執リ
ツヽアリ今後尙一層ノ努力ヲ致サントス」至ッテ簡單デアリ
マシテ、更ニ其要ヲ得ナイノデアリマスカラ、之ニ關シテ私ノ
意見ヲ陳述スル次第デアリマス、既ニ先刻小橋君ヨリモ同
樣ノ御意見ノ陳述ガアリマシタカラ、私ハ極メテ簡單ニ愚
見ノ在ル所ヲ申述ベル積リデアリマス、現內閣成立以來既
ニ二年有半、此間賢明ナル原總理大臣、床次內務大臣ハ
常ニ國民思想ノ善導ヲ叫ハレ、之ニ關スル色〓爰ニアリマ
ス如ク施設ヲ爲サレテ居ルヤウデアリマスガ、事實ハ全ク之
ニ反シマシテ、日一日國民ノ思想ノ險惡ニ向ヒ、善惡邪正
ノ感覺ニ就テハ、恰モ不死身ノ如キ觀アル原首相ニ於キマ
シテモ、本年年頭ノ辭ニ於テ義勇奉公ノ念衰ヘタリト御痛
嘆ニナッテ居ル位デゴザイマスル、我ガ國民ノ義勇奉公ノ念
ハ、一朝一夕ニ養ハレタモノデハナク、三千年間鍛ヘ養ハレ
タル此義勇奉公ノ念ガ、斯ク迄ニ衰ヘタト云フコトニ就キマ
シテハ、然ルベキ原因ナカルベカラズデアリマス蓋シ是ハ幾多
ノ原因ガアリマセウガ、就中最モ重且ツ大ナル原因ハ、正シ
カルベキ政治ガ邪ニ行ハレ、國民動モスレバ仁義ノ大道ヲ
去ッテ利慾ノ橫道ニ走ルド云フ、是ガ卽チ此ニ至ラシメタモ
ノデアラウト思フノデアリマス、(拍手)先日小橋君モ言ハレ
タ如ク、政治ハ道德デアル、政治ト道德トハ離ルベカラザル
モノデゴザイマス、此故ニ苟モ大政輔弼ノ任ニ當ル者ハ、至
誠此事ニ從事スルハ申スマデモナイノデアリマス、苟モ政治
家ニシテ仁義ヲ沒却致シマスルナラバ、如何ニ智能アリト雖
モ、如何ニ經綸抱負アリト雖モ民心ハ之ニ依シテ善導サルベ
キモノデハアリマセヌ、我國文明ノ母ニシテ、帝國中興ノ偉
人タル聖德太子ハ、十七憲法ノ第九箇條ニ「信ハ是レ義ノ
本事每ニ信アルヘシ善惡成敗ハ要ラス信ニ在リ群臣共ニ
信アレハ何事カ成ラサラン群臣信ナクンハ萬事悉ク敗ルト」
仰セラレテ居ルノデアリマス、實ニ千古不磨ノ至言デアリマ
ス、然ルニ現内閣諸公ノ爲サレ方ヲ見テ居マスルノニ、財政
經濟、或ハ國民ノ生活問題、〓育ノ振興ニ關スル事柄一切
ノ施設ニ就テ、唯ダ欺瞞以テ目前ヲ糊塗シ、更ニ至誠以テ
之ニ當ルト云フコトハ、二年有半吾ミハドウシテモ認ムルコト
ガ出來ヌノデアリマス、(拍手、「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)斯ノ
如クニシテドウシテ國民ノ思想ガ善導出來マスルカ、而シテ
現內閣及政友會諸君ハ、一モ二モ三モ悉ク、堂利黨是ヲ先
キニシテ事ヲセラレテ居ルノデアル、(「ノウ〓〓」拍手)斯ノ如
クンバ國民ハ自ラ仁義ヲ去ッテ利ニ走ルト云フノハ、是ハ當
然ノ事デアル、(「君等ダケダラウ」ト呼フ者アリ)此故ニ孟
子モ言ウテ居リマス、「上下交、利ヲ征ッテ國危シ」上下利ニ
走ルヤウニナリマシタナラバ其國ハ必ズ危イノデアル、一切ノ
國家ノ病ト云フモノハ之ニ發スルノデアリマス、(「中學生徒
ノ演說ノ如シ」「默レ」ト呼フ者アリ)現內閣及政友會有ル
以上ハ言ハザルヲ得ヌノデアル(「憲政會ハドウダ」ト呼フ者
アリ)斯ノ如ク信義ヲ顧ミズ、仁義ヲ棄テヽ、唯ダ黨利黨是
心私慾ニ走ル如クンバ、決シテ如何ナル施設ヲ爲シタ所ガ、
此國民ノ思想ハ善導サルベキモノデハアリマセヌ、(拍手スル
モノアリ)益〓國民ノ思想ハ惡化スルノミデアル、是ハ實ニ國
家ノ眞ニ重要ナル問題デアリマス、斯ノ如クンバ如何ニ國富
ミ且ツ榮ユルト雖モ遂ニ國家ハ內ヨリ衰頽破壞サルヽニ至ル
ノデアリマス、此點ニ就テ掌ニ周到ノ注意ヲ拂テ居ラレル
ト云フ現內閣諸公ハ、何ト御考ニナッテ居ルノデアリマスカ、
又國民ノ思想ニ影響スル大ナル事柄トシテハ、國家ノ此賞
罰ト云フモノハ、嚴〓ニナクテハナラヌノデアリマス、國家ノ
賞罰若シ誤〓テ居リマシタナラバ、國民ノ思想ハ之ニ依ッテ段
段惡化サレルモノデアリマス、(「資格ガ無イ」ト呼フ者アリ)現
內閣諸公及政友會ノ諸君ハ、先年大隈內閣ガ大正三四
年ノ事功ニ依シテ論功行賞ヲ行ヒマシタトキニ、此院ノ內外
ニ於キマシテ、盛ンニ濫賞呼リヲサレマシタ、當時ノ論功行
賞ハ御承知ノ如ク、獨逸ノ東亞ニ於ケル唯一ノ根據地タル
膠州灣ヲ直チニ覆シ、海ニ於テハ其艦隊ノ跋扈ヲ抑ヘル此
甚大ナル功延テ十年懸案デアリマシタ滿蒙ニ於ケル所ノ我
ガ權利ヲ、條約上日支協約ニ依シテ十分ニ獲得スルコトニ
ナッタ、此功ニ依ッテ論功行賞ガ行ハレタノデアリマス、是ハ當
然ナ事デアリマス、然ルニ之ヲ極力濫賞呼リヲサレタ現内
閣ガ-現內閣諸公ヤ如何ナル事ヲシテ居ラレマスルカ、巴
里講和會議ガ空前ノ大失態デ、アッタト云フコトハ、今更多言
ヲ要セヌノデアル、(「ノウ〓〓」)天下認メテ歴史上未曾有ノ
大失態ナリトシテ居ルニモ拘ラズ、其論功行賞ヲ今日行レ
ルト云フノハ何事デアルカ、(「出鱈目」ト呼フ者アリ)何ガ出
鱈目デアル、斯ノ如クンバ帝國ノ賞罰ノ標準ハ、何レニ在リ
ヤト謂ハザルヲ得ナイノデアリマス、(「亂暴々々」ト呼フ者ア
リ)斯ウ云フヤウナル事ハ、是亦國民ノ思想ニ非常ニ惡影響
ヲ及ボス事デアリマスルガ、是等ニ就テハドウ云フ御考ヲ持ン
テ居ラルヽノデアルカ、要スルノニ原總理大臣首メ床次內務
大臣ガ種々ナル適切ナル處置ヲ執ッテ居ルト言ハレマスケレ
ドモ、之ヲ以テ見マスレバ、斯ノ如キ正反對ノ行動ヲ執ッテ居
ラルヽヤウデアリマズ、小橋君モ言ハレテ居ルガ、國民ノ思想
こヲ益〓險惡ナラシムル事ノミヲシテ居ラルヽヤウニ思ハレマス
カラ、ドウゾ此疑惑ヲ···
〔此時發言スル者多ク、議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=31
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032・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=32
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033・田中善立
○田中善立君(續) 斯ル簡單ナル答辯ニ依ラズシテ、此所
ニ於テ詳細ニ(「簡單明瞭」ト呼フ者アリ)御各辯アランコト
ヲ求メタイノデアリマス、是ハ一黨一派ノ問題デアリマセヌ、
實ニ今日ハ重大ナル問題デアリマスカラ、願クハ床次內務
大臣ハ原總理大臣ニ代ッテ、爰ニ詳細ナル之ニ對スル御答
辯ヲ煩シタイノデアリマス
〔拍手起ル、「無用々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=33
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034・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程ニ入リマス、日程第一第二ハ
同種ノ議案デアリマスカラ、一括シテ議題ト致シマス、日程
第一、市制中改正法律案、日程第二、町村制中改正法律
案ヲ一括シテ議題トシ、其第一讀會ヲ開キマス-床次內
務大臣
第市制中改正法律案(政府提出)
第一讀會
市制中改正法律案
市制中左ノ通改正ス
第九條市住民ニシテ左ノ要件ヲ具備スル者ハ市公民
トス但シ貧困ノ爲公費ノ救助ヲ受ケタル後二年ヲ經
サル者、禁治產者、準禁治產者及六年ノ懲役又ハ禁
錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ハ此ノ限ニ在ラス
-帝國臣民タル男子ニシテ年齡二十五年以上ノ
者
二獨立ノ生計ヲ營ム者
三二年以來其ノ市住民タル者
四二年以來其ノ市ノ直接市稅ヲ納ムル者
市ハ前項二年ノ制限ヲ特免スルコトヲ得
家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ニ付テハ其ノ財
產ニ付被相續人ノ爲シタル納稅ヲ以テ其者ノ爲シタ
ル納稅ト看做ス
市公民ノ要件中其ノ年限ニ關スルモノハ市町村ノ廢
置分合又ハ境界變更ノ爲中斷セラルヽコトナシ
第十三條第二項及第三項ヲ左ノ如ク改ム
議員ノ定數左ノ如シ
-人口五萬未滿ノ市三十人
二人口五萬以上十五萬未滿ノ市三十六人
三人口十五萬以上二十萬未滿ノ市四十人
四人口二十萬以上三十萬未滿ノ市四十四人
五人口三十萬以上ノ市四十八人
人口三十萬ヲ超ユル市ニ於テハ、人口十萬人口五十
万ヲ超ユル市ニ於テハ人口二十萬ヲ加フル每ニ議員
四人ヲ增加ス
第十四條第二項乃至第五項ヲ削ル
第十五條選擧人ハ分チテ二級トス
選擧人中選擧人ノ總數ヲ以テ選舉人ノ納ムル直接市
稅總額ヲ除シ其ノ平均額以上ヲ納ムル者ヲ一級トシ
其ノ他ノ選擧人ヲ二級トス但シ一級選舉人ノ數議員
定數ノ二分ノ一ヨリ少キトキハ納稅額最多キ者議員
定數ノ二分ノ一ト同數ヲ以テ一級トス兩級ノ間ニ同
額ノ納稅者二人以上アルトキハ其ノ市內ニ住所ヲ有
スル年數ノ多キ者ヲ以テ上級ニ入ル住所ヲ有スル年
數同シキトキハ年長者ヲ以テシ年齡ニ依リ難キトキハ
市長抽籤シテ之ヲ定ムヘシ
選擧人ハ每級各別ニ議員定數ノ二分ノ一ヲ選舉ス
但シ選擧區アル場合ニ於テ議員ノ數二分シ難キトキ
ハ其ノ配當方法ハ第十六條ノ市條例中ニ之ヲ規定ス
ヘシ
被選擧人ハ各級ニ通シテ選擧セラルヽコトヲ得
第二項ノ直接市稅ノ納額ハ選擧人名簿調製期日ノ
屬スル會計年度ノ前年度ノ賦課額ニ依ルヘシ
第十六條中「二級又ハ三級」ヲ「二級」ニ、同條第四項ヲ
左ノ如ク改メ同條中「二級選舉人ニ付亦同シ」ヲ削ル
選擧人ハ住所ニ依リ所屬ノ選擧區ヲ定ム第七十六
條又ハ第七十九條第二項ノ規定ニ依リ市公民タル
者ニシテ市內ニ住所ヲ有セサル者ニ付テハ市長ハ本人
ノ申出ニ依リ其ノ申出ナキトキハ職權ニ依リ其ノ選擧
區ヲ定ムヘシ
第十七條中「二級又ハ三級」ヲ「二級」ニ改ム
第十八條第三項乃至第五項ヲ左ノ如ク改ム
市ニ對シ請負ヲ爲ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ同
一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社員、役員及支配人
ハ被選擧權ヲ有セス
前項ノ役員トハ取締役、監査役及之ニ準スヘキ者竝
〓算人ヲ謂フ
父子兄弟タル緣故アル者ハ同時ニ市會議員ノ職ニ在
ルコトヲ得ス其ノ同時ニ選擧セラレタルトキハ同級ニ
在リテハ得票ノ數ニ依リ其ノ多キ者一人ヲ當選者ト
シ同數ナルトキ又ハ等級若ハ選擧區ヲ異ニシテ選擧
セラレタルトキハ年長者ヲ當選者トシ年齡同シキトキハ
市長抽籤シテ當選者ヲ定ム其ノ時ヲ異ニシテ選擧セ
ラレタルトキハ後ニ選擧セラレタル者議員タルコトヲ得
ス
議員ト爲リタル後前項ノ緣故ヲ生シタル場合ニ於テ
ハ年少者其ノ職ヲ失フ年齡同シキトキハ市長抽籤シテ
失職者ヲ定ム
第二十條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
議員闕員ト爲リタルトキ其ノ議員カ第三十條第二項
ノ規定ノ適用ニ依リ當選者ト爲リタル者ナル場合又
ハ本條本項若ハ第三十三條ノ規定ニ依ル第三十條
第二項ノ規定ノ準用ニ依リ當選者ト爲リタル者ナル
場合ニ於テハ市長ハ直ニ第三十條第二項ノ規定ノ適
用又ハ準用ヲ受ケタル他ノ得票者ニ就キ當選者ヲ定
ムヘシ此ノ場合ニ於テハ第三十條第二項ノ規定ヲ準
用ス
第二十一條第十三項ヲ左ノ如ク改ム
前項但書ノ選擧人ハ等級ノ標準タル直接市稅ニ依
リ其ノ者ノ納額ニシテ名簿ニ登錄セラレタル一級選擧
人中ノ最少額ヨリ多キトキハ一級ニ於テ其ノ他ハ二
級ニ於テ選擧ヲ行フヘシ
第二十二條中「三級ノ選舉ヲ行ヒ次ニ」ヲ削ル
第二十六條第三十三條若ハ第三十七條ノ選舉、增
員選舉又ハ補閱選舉ヲ同時ニ行フ場合ニ於テハ一ノ
選擧ヲ以テ合併シテ之ヲ行フ
第二十七條削除
第二十八條第一項ニ左ノ一號ヲ加へ同條中「第一號及
第六號」ヲ「第一號第六號及第七號」ニ改ム
七被選擧人ノ氏名ヲ自書セサルモノ
第三十三條當選者當選ヲ辭シタルトキ、數級若ハ數
選擧區ニ於テ當選シタル場合ニ於テ前條第三項ノ規
定ニ依リ一ノ級若ハ選擧區ノ當選ニ應シ若ハ抽籤ニ
依リ一ノ級若ハ選擧區ノ當選者ト定マリタル爲他ノ
級若ハ選擧區ニ於テ當選者タラサルニ至リタルトキ、
死亡者ナルトキ又ハ選擧ニ關スル犯罪ニ依リ刑ニ處
セラレ其ノ當選無效ト爲リタルトキハ更ニ選擧ヲ行フ
ヘシ但シ其ノ當選者第三十條第二項ノ規定ノ適用
又ハ準用ニ依リ當選者ト爲リタル者ナル場合ニ於テ
ハ第二十條第二項ノ例ニ依ル
當選者選舉ニ關スル犯罪ニ依リ刑ニ處セラレ其ノ當
選無效ト爲リタルトキ其ノ前ニ其ノ者ニ關スル補關選
擧若ハ前項ノ選擧ノ告示ヲ爲シタル場合又ハ更ニ選
擧ヲ行フコトナクシテ田選者ヲ定メタル場合ニ於テハ
前項ノ規定ヲ適用セス
第三十六條第七項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
第二十條、第三十三條又ハ第三十七條第三項ノ選
擧ハ之ニ關係アル選擧又ハ當選ニ關スル異議申立期
間、異議ノ決定若ハ訴願ノ裁決確定セサル間又ハ訴
訟ノ繁屬スル間之ヲ行フコトヲ得ス
第三十八條第一項及第二項ヲ左ノ如ク改メ同條中「第
三十六條第八項」ヲ「第三十六條第九項」ニ改ム
市會議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失
フ其ノ被選擧權ノ有無ハ市會議員カ左ノ各號ノ一ニ
該當スルニ因リ被選擧權ヲ有セサル場合ヲ除クノ外
市會之ヲ決定ス
-禁治產者又ハ準禁治產者ト爲リタルトキ
二家資分散又ハ破產ノ宣告ヲ受ケ其ノ宣告確定
シタルトキ
三禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタルトキ
四選擧ニ關スル犯罪ニ依リ罰金ノ刑ニ處セラレタ
ルトキ
市長ハ市會議員中被選擧權ヲ有セサル者アリト認ム
ルトキハ之ヲ市會ノ決定ニ付スヘシ市會ハ其ノ送付ヲ
受ケタル日ヨリ十四日以内ニ之ヲ決定スヘシ
第四十條第二項ヲ削ル
第五十七條ニ左ノ二項ヲ加フ
議員定數ノ半數以上ヨリ請求アルトキハ議長ハ其ノ日
ノ會議ヲ開クコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ議長仍會議
ヲ開カサルトキハ第四十九條ノ例ニ依ル
前項議員ノ請求ニ依リ會議ヲ開キタルトキ又ハ議員
中異議アルトキハ議長ハ會議ノ議決ニ依ルニ非サレハ
其ノ日ノ會議ヲ閉チ又ハ中止スルコトヲ得ス
第七十七條中「其ノ市ニ對シ請負ヲ爲スコトヲ得ス」ヲ
「其ノ市ニ對シ請負ヲ爲シ及同一ノ行爲ヲ爲ス者ノ支配
人又ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社員
タルコトヲ得ズ」ニ、「第十八條第五項」ヲ「第十八條第六
項」ニ改ム
第七十八條中「重役」ヲ「取締役監査役若ハ之ニ準スヘ
キ者、〓算人」ニ改ム
第八十八條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ニ依リ市參事會ノ審査ニ付シタル場合ニ
於テ市參事會意見ヲ述ヘサルトキハ市長ハ其ノ意見
ヲ俟タスシテ議案ヲ市會ニ提出スルコトヲ得
第百二十一條中「所得稅法第五條」ヲ「所得稅法第十
八條」ニ改ム
第百三十六條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
特別會計ニハ豫備費ヲ設ケサルコトヲ得
第百七十七條本法中府縣、府縣制、府縣知事、府縣
參事官、府縣名譽職參事會員、府縣高等官、所屬府
縣ノ官吏若ハ有給吏員、府縣稅又ハ直接府縣稅ニ關
スル規定ハ北海道ニ付テハ各地方費、道會法、道廳
長官、道參事官、道名譽職參事會員、道廳高等官、道
廳ノ官吏若ハ地方費ノ有給吏員、北海道地方稅又ハ
直接北海道地方稅ニ、町村又ハ町村會ニ關スル規定
ハ北海道ニ付テハ各町村又ハ町村會ニ該當スルモノ
ニ關シ之ヲ適用ス
附則
本法中公民權及選擧ニ關スル規定ハ次ノ總選擧ヨリ之
ヲ施行シ其ノ他ノ規定ノ施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ
定ム
北海道又ハ沖繩縣ノ區ヲ廢シテ市ヲ置カムトスルトキハ
第三條ノ例ニ依ル
第二町村制中改正法律案(政府提出)
第一讀會
町村制中改正法律案
町村制中左ノ通改正ス
第七條町村住民ニシテ左ノ要件ヲ具備スル者ハ町村
公民トス但シ貧困ノ爲公費ノ救助ヲ受ケタル後二年
ヲ經サル者、禁治產者、準禁治產者及六年ノ懲役又
ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ハ此ノ限ニ非ラス
-帝國臣民タル男子ニシテ年齡二十五年以上ノ
者
二獨立ノ生計ヲ營ム者
三二年以來其ノ町村住民タル者
四二年以來其ノ町村ノ直接町村稅ヲ納ムル者
町村ハ前項二年ノ制限ヲ特免スルコトヲ得
家督相續ニヨリ財產ヲ取得シタル者ニ付テハ其ノ財
產ニ付被相續人ノ爲シタル納稅ヲ以テ其ノ者ノ爲シ
タル納稅ト看做ス
町村公民ノ要件中其ノ年限ニ關スルモノハ市町村ノ
廢置分合又ハ境界變更ノ爲中斷セラルヽコトナシ
直接町村稅ヲ賦課セサル町村ニ於テハ町村公民ノ要
件中納稅ニ關スル規定ヲ適用セス
第十二條第二項乃至第五項ヲ削ル
第十三條町村ハ町村條例ヲ以テ選擧人ヲ分チテ二
級ト爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ市制ノ例ニ依ル
第十四條中「二級選擧ノ爲ノミニ付又同シ」ヲ削ル
第十五條第三項乃至第五項ヲ左ノ如ク改ム
町村ニ對シ請負ヲ爲ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ
同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社員、役員及支配
人ハ被選擧權ヲ有セス
前項ノ役員トハ取締役、監査役及之ニ準スヘキ者竝
〓算人ヲ謂フ
父子兄弟タル緣故アル者ハ同時ニ町村會議員ノ職ニ
在ルコトヲ得ス其ノ同時ニ選擧セラレタルトキハ得票
ノ數ニ依リ其ノ多キ者一人ヲ當選者トシ同數ナルト
キハ年長者ヲ當選者トシ年齡同シキトキハ町村長抽
籤シテ當選者ヲ定ム其ノ時ヲ異ニシテ選擧セラレタル
トキハ後ニ選擧セラレタル者議員ダルコトヲ得ス
議員ト爲リタル後前項ノ緣故ヲ生シタル場合ニ於テハ
年少者其ノ職ヲ失フ年齡同シキトキハ町村長抽籤シ
テ失職者ヲ定ム
第十六條中「總選擧ノ第一日」ヲ「總選擧ノ日三改メ
「每級各別ニ」及「解任ヲ要スル等級ニ」ヲ削ル
第十七條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加ヘ同條第三項ヲ
削ル
議員闕員ト爲リタルトキ其ノ議員カ第二十七條第
二項ノ規定ノ通用ニ依リ當選者ト爲リタル者ナル場合
又ハ本條本項若ハ第三十條ノ規定ニ依ル第二十七
條第二項ノ規定ノ準用ニ依リ當選者ト爲リタル者ナ
ル場合ニ於テハ町村長ハ直ニ第二十七條第二項ノ規
定ノ適用又ハ準用ヲ受ケタル他ノ得票者ニ就キ當選
者ヲ定ムヘシ此ノ場合ニ於テハ第二十七條第二項ノ
規定ヲ準用ス
第十八條第十二項ヲ削ル
第十九條中「各級ヨリ」及「等級及」ヲ削リ同條第二項
及第三項ヲ左ノ如ク改ム
選擧分會ノ選擧ハ本會ト同日時ニ之ヲ行フヘシ
天災事變等ニ依リ選舉ヲ行フコト能ハサルニ至リタル
トキハ町村長ハ其ノ選擧ヲ終ラサル選擧會又ハ選擧
分會ノミニ關シ更ニ選舉會場及投票ノ日時ヲ告示シ
選擧ヲ行フヘシ
第二十二條第五項但書ヲ削ル
第二十三條第三十條若ハ第三十四條ノ選擧、增員
選擧又ハ補闘選擧ヲ同時ニ行フ場合ニ於テハ一ノ選
擧ヲ以テ合併シテ之ヲ行フ
第二十四條削除
第二十五條第一項ニ左ノ一號ヲ加へ同條第二項ヲ削
ル
七被選擧人ノ氏名ヲ自書セサルモノ
第二十七條中「各級ニ於テ」及「各級ノ」ヲ削ル
第二十九條第三項ヲ削リ同條中「第三項ノ場合ニ於テ
何レノ當選ニ應スヘキカヲ申立テサルトキハ總テ之ヲ辭
シタルモノト看做ス」ヲ削ル
第三十條當選者當選ヲ辭シタルトキ、死亡者ナルトキ
又ハ選擧ニ關スル犯罪ニ依リ刑ニ處セラレ其ノ當選
無效ト爲リタルトキハ更ニ選擧ヲ行フヘシ但シ其ノ當
選者第二十七條第二項ノ規定ノ適用又ハ準用ニ依
リ當選者ト爲リタル者ナル場合ニ於テハ第十七條第
二項ノ例ニ依ル
當選者選擧ニ關スル犯罪ニ依リ刑ニ處セラレ其ノ當
選無效ト爲リタルトキ其ノ前ニ其ノ者ニ關スル補闕選
擧若ハ前項ノ選舉ノ告示ヲ爲シタル場合又ハ更ニ選
擧ヲ行フコトナクシテ當選者ヲ定メタル場合ニ於テハ
前項ノ規定ヲ適用セス
第三十一條第二項ヲ左ノ如ク改ム
第二十九條第二項ノ期間ヲ經過シタルトキ又ハ同條
第四項ノ申立アリタルトキハ町村長ハ直ニ當選者ノ
住所氏名ヲ告示シ併セテ之ヲ郡長ニ報告スヘシ
第三十三條第七項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
第十七條、第三十條又ハ第三十四條第三項ノ選擧
ハ之ニ關係アル選擧又ハ當選ニ關スル異議中立期
間、異議ノ決定若ハ訴願ノ裁決確定セサル間又ハ訴
訟ノ繫屬スル間之ヲ行フコトヲ得ス
第三十五條第一項及第二項ヲ左ノ如ク改メ同條中「第
三十三條第八項」ヲ「第三十三條第九項」ニ改ム
町村會議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ
失フ其ノ被選擧權ノ有無ハ町村會議員カ左ノ各號
ノ一ニ該當スルニ因リ被選擧權ヲ有セサル場合ヲ除
クノ外町村會之ヲ決定ス
禁治產者又ハ準禁治產者ト爲リタルトキ
二家資分散又ハ破產ノ宣告ヲ受ケ其ノ宣告確定
シタルトキ
三禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタルトキ
四選擧ニ關スル犯罪ニ依リ罰金ノ刑ニ處セラレタル
トキ
町村長ハ町村會議員中被選擧權ヲ有セサル者アリト
認ムルトキハ之ヲ町村會ノ決定ニ付スヘシ
町村會ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ十四日以內二之
ヲ決定スヘシ
第三十七條第二項ヲ削ル
第五十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
連名投票ノ法ヲ用ウル場合ニ於テ其ノ投票ニシテ第
二十五條第一號、第六號及第七號ニ該當スルモノ竝
其ノ記載ノ人員選擧スヘキ定數ニ過キタルモノハ之ヲ
無效トシ同條第二號、第四號及第五號ニ該當スルモ
ノハ其ノ部分ノミヲ無效トス
第五十三條ニ左ノ二項ヲ加フ
議員定數ノ半數以上ヨリ請求アルトキハ議長ハ其ノ
日ノ會議ヲ開クコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ議長仍會議
ヲ開カサルトキハ第四十五條ノ例ニ依ル
前項議員ノ請求ニ依リ會議ヲ開キタルトキ又ハ議員
中異議アルトキハ議長ハ會議ノ議決ニ依ルニ非サレハ
其ノ日ノ會議ヲ閉チ又ハ中止スルコトヲ得ス
第六十五條中「重役及」ヲ「取締役監査役若ハ之ニ準ス
ヘキ者、〓算人若ハ」ニ、「第十五條第五項」ヲ「第十五條
第六項」ニ改ム
第六十六條中「重役」ヲ「取締役監査役若ハ之ニ準スヘ
キ者、〓算人」ニ改ム
第百一條中「所得稅法第五條」ヲ「所得稅法第十八條」
三六人
第百十六條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
特別會計ニハ豫備費ヲ設ケサルコトヲ得
第百五十三條ノ二島司ヲ置ク地ニ於テハ本法中郡
長ニ關スル規定ハ島司ニ、郡ノ官吏ニ關スル規定ハ島
廳ノ官吏ニ、郡ニ關スル規定ハ島廳管轄區域ニ關シ
之ヲ適用ス
第百五十七條中「沖繩縣」ヲ削ル
附則
本法中公民權及選舉ニ關スル規定ハ次ノ總選擧ヨリ之ヲ
施行シ其ノ他ノ規定ノ施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=34
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035・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 時勢ノ進運ニ伴ヒマシテ
自治ノ發達ヲ促進センガ爲ニ地方制度ノ改正ヲ必要ト認
メマシテ、先ヅ地方制度ノ基礎タル市制町村制中ノ、改正
法律案ヲ提出致シマシタノデゴザイマス、茲ニ改正ヲ要スル
主眼ノ點ニ就テ大略說明ヲ申上ゲマス、主眼ノ點ハ四點ゴ
ザイマシテ、第一ハ公民權ノ擴張デゴザイマス、第二ハ等級
選擧制ノ改正デゴザイマス、第三ハ選擧ニ關スル規定ノ改
正、第四ハ市制町村制施行區域ノ擴張、此四ツノ點ニ就
テ大略說明ヲ申上ゲマスルガ、自治ノ發達ヲ期シマスルニハ
自治體住民ノ成ルベク多數ヲシテ、其行政ニ參與セシムル
ト云フコトガ最モ必要ナリト云フコトハ、爰ニ中上ゲルマデ
モゴザイマセヌ、然ルニ現在ノ公民權ハ、市制町村制制定以來
三十有餘年ヲ經過致シマシテ、今日國民一般ノ智能著シ
ク向上致シタニモ拘ラズ、其間未ダ一囘モ擴張セラレタコト
ハゴザイマセヌ、市制町村制ガ施行ノ當初ニ於テハ、公民ノ
數ハ人口千人ニ對シテ百三人ノ割合デゴザイマシタ、今日
ニ於キマシテハ是ガ千人ニ對シテ八十六人ト相成ッテ居リ
マス、斯樣ナル有樣デゴザイマスノデ、今日公民權ノ制度ヲ
擴張致シマスルト云フコトハ、我國今日ノ文化ノ進歩ニ伴ヒ
マシテ當然ノ事デアルト考ヘマス、唯ダ如何ナル程度マデ公
民權ノ擴張ヲ致スカト云フコトニ就テ、爰ニ愼重ナル考慮
ヲ要スベキモノト思フノデス、是ニ於テ市町村公民權ノ附與
ハ、今日ノ狀態ニ於キマシテハ市町村ノ負擔ヲ分任スルト
云フコトヲ本ト致シマシテ、卽チ直接市町村稅ヲ苟モ分擔
スル人ニハ選擧權ヲ與へ、其市町村費ノ負擔ヲ分任セザル
人ハ、其資格無イモノトスルト云フコトニ致シマスルノガ、丁
度適當デアラウカト考ヘタノデアリマス、ソレニ依ッテ計算ヲ
致シマスルト、現行法ニ於テ公民數ハ五百有餘万デゴザイ
マス、此只今申シマシタル方法ニ依テ擴張セラレマスト、五
百万ガ七百五十二万餘ト相成リマス、卽チ新タニ增加セラ
レタル所ノ數ハ二百五十二万餘デゴザイマス、此割合ハ恰
モ五割ノ增加ニ相當致シマス、而シテ之ヲ市ト町村トニ區
別致シテ見マスルト云フト、市區ノ現在公民數ハ三十三万
七千デゴザイマシテ、是ガ百三万七千ト云フ大數ニ相成リ
マス、其增加步合ハ二十割七分ニ當リマス、町村ニ於テハ
今日四百六十六万五千ガ六百四十八万六千ト相成リマ
シテ、其增加步合ハ三割九分デゴザイマス、今日迄ハ直接
町村稅ニ加フルニ、國稅ノ納稅ヲ以テ要件ト致シテアリマ
シタガ、是ハ削除スルコトニモ致シマシタ、次ニ公民權ヲ斯ノ
如ク擴張致シマスルニ就テハ、自ラ今日ノ等級選擧制ニ考
ヲ及ボサザルヲ得ヌ次第デアリマス、今日ノ實際ヲ申上ゲマ
スルト、町村ニ於テハ御承知ノ如ク二級制ニナッテ居リマス
ルガ、一級有權者ノ一人ハ丁度二級有權者ノ六人ニ相當
リマス、是ガ市ニ於テハ市ノ一級選擧者一人ハ、三級選擧
權者ノ五十人ニ相當リマス、其最モ懸隔ノ甚シイ所ハ、
級選擧權者一人ニシテ、三級選擧權者千有餘人ニ當ル所
モゴザイマス、今日前中上ゲマスル如ク、玆ニ公民權ノ擴張
ヲ圖ルト致シマシテ、等級選擧制ヲ其儘差措クコトニ致シ
マスレバ、斯ル懸隔ハ此上一層甚シク相成ル次第デゴザイ
マス、而シテ今日ノ此等級選擧制度ハ、是ハ實際カラ申シ
マスルニ、今申上ゲルヤウナ隨分不權衡ナル懸隔モ其間ニ
アルノデゴザイマスルガ、加フルニ實施サレテ居ル所ノ狀況カ
ラ申セバ、必ズシモ等級別觀念ヲ以テ、今日選擧ガ行レテ
居ルトモ考ヘマセヌ、乃チ實際上ニ於テ此等級制ノ必要ガ
大體ニ於テアルトハ考へラレヌノデアリマス、ソレ故ニ大體ニ
於テハ、此等級別選擧ハ廢止シテ可ナリト考フル次第デア
リマス、サリナガラ又一面考ヘマスレバ、今日ノ此等級選擧
制度ハ、免モ角市町村制施行以來三十年間、我國ノ今日
迄ノ自治制度トシテ行レ來ッタ所ノ制度デアリマス、ソレ故
ニ此選擧制度ヲ一朝ニシテ根本的ニ改革ヲ致スト云
フコトニ就テハ、其間餘程ノ考慮ヲ要スベキハ勿論デ
アラウト考ヘルノデス、ンレ故ニ此際ニ當リマシテハ、
成ベク漸進的ノ方針ヲ以テ進ミマスルト一云フコトガ、
自治制ノ圓滿ナル發達ヲ遂グル上ニ於テ、過ナキ遣方デ
アラウト考ヘタ次第デアリマス、仍テ町村ニ於テハ二級制夕
リシ所ノモノヲ、[原則ト致シテハ等級制ヲ廢止スルコトニ致
シマシタ、但シ除外例ヲ設ケマシタガ、原則ト致シテハ廢止ス
ルコトニ致シマシタ、而シテ市ニ於テハ御承知ノ如ク、是マデ
三級制度デアリマシタノヲ、一步進メテ二級制度ト致シマシ
タ、尙ホ三級制ヲ改メテ一一級制ト致シタ外ニ、玆ニ注意スベ
キ二ツノ改正ヲ致シマシタ、ソレハ御承知ノ通リ、今日マデノ
級別ハ如何ナル方法デアッタカト申シマスレバ、總テノ稅ヲ三
分致シテ、其三分ノ一ツヽヲ以テ、各、一級二級若クハ三級
ト致シタノデアリマス、其結果ハ先程モ申上ゲル如ク、全國
ノ市ニ亙ッテ、一級選擧權者ノ一人ト三級選擧權者トハ、
ト五十ノ割合ニナッテ居ル、甚シキ所ハ一ニ對シテ、千餘名
ニモ相當スル所ガアルノデス、ンコデ此點ニ就テハ考慮ヲ加
フベシト考ヘテ、此度ハ級別ヲ致スニ先ヅ總テノ選擧權者
ノ稅額ヲ調ベテ、而シデ其平均點ヲ見出シマシテ、平均以上
ノ納稅ヲ爲ス者ヲ一級トシ、其他ノ者ヲ二級トスル方法ヲ
採用致シタノデアリマス、尙ホ其上ニ御承知ノ通リ現行法
ニ於テハ、公民ニ非サル市町村ノ多額納稅者ニ選擧權ヲ
附與致シテ居リマシタ、其結果トシテハ、住所ノ如何ヲ問ハ
ズ、二十五年以下ノ者、女子禁治產者、準禁治產者、法人
等、何レモ選擧權ヲ認メテ居リマス、此特殊ノ制度ハ、今日
以後存置ノ必要モ理由モ共ニ無イト考ヘマシテ、其特權ハ
今後ハ削除スルコトニ致シマシタ、此二ツノ點ハ同ジク二級
制ニ致シマシテモ、御注意ヲ願フベキ點デアリマス、斯ノ如ク
級別ノ方法ヲ改メ、又一方ニ於テ、多額納稅者ノ選擧權ヲ
認メザルコトニ致シタ結果、如何ナル事ニ相成ルカト申セバ、
全國ヲ通ジテ一級權者ト二級權者トノ懸隔ハ、恰モ一ト三
トニ相當スルコトニ相成リマス、現在町村ニ於テ一級ト二
級トノ間ハ一ト六トニナッテ居リマス、此改正法ニ依ル結果
トシテ、市ニ於テノ一級ト二級トハ一ト三トノ割合ニナリマ
ス、仍テ以テ一級二級間ノ權利ノ不權衡ナルモノガ、非常ニ
緩和サレルコトニ相成リマス、斯ノ如ク致シマシテ、一方ニハ
撤廢ノ考ヲ以テ進ミ、一方ニハ今日ノ實情ニ鑑ミテ、前途
誤リナキ途ヲ執ッテ進ミタイト云フ考ヨリ、斯ノ如ク立案致
シマシタ、第三ハ選擧ニ關スル規定デアリマス、是ハ一昨年
衆議院議員選擧法ガ改正サレマシタカラ、之ニ倣ヒマシテ
選擧ノ規定ヲ過當ニ改正致シマシタ、第四ノ點ハ町村制施
行區域ノ擴張デアリマス、大正七年三月本院ニ於テ、沖繩
縣下ノ町村ニ町村制ヲ施行セラレタイト云フ建議ガ可決ニ
ナッテ居リマス、政府ニ於テモ十分調査致シマシタ結果、其
然ルベキヲ考ヘマシテ、茲ニ沖繩縣下ニ市町村制ヲ施行ス
ルコトニ致シマシタ、又北海道ニ於ケル所ノ町村ハ、未タ町村
制ヲ施行スル時期到達致シマセヌガ、其區ニ於テハ市制ヲ
施行致シマシテモ、何等內地ノ市ト異ナル所ヲ認メマセヌ、
仍テ此度北海道ニ市制ヲ施行スルコトニ致シマシタ、大要
以上ノ通リデゴザイマシテ、今日ノ我國ノ文化ノ程度ニ於
テ、自治ノ發達ヲ促進シ、其圓滿ナル運用ヲ期スルニ於テ、
極メテ喫緊ナル事柄ト考ヘマスノデ、何卒御協賛ヲ願ヒタ
ク思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=35
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036・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 本案ニ對シテハ多數ノ方ヨリ質疑
ノ通知ガアリマス、順序ニ依ッテ之ヲ許シマス-砂田重政
君
〔砂田重政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=36
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037・砂田重政
○砂田重政君 本員ハ只今提案致サレマシタ町村制ノ改
正案ニ對シテ、內務大臣ニ質疑ヲ試ミタイト思フノデアリマ
ス、本法案ガ出サレマシテ、吾〓ガ多年主張致シテ居リマス
ル自治制ノ改正案ノ考ト、此議題ニ供セラレマシタル政府提
出案トヲ比較致シマスト、幾多ノ意見ノ相違點ガアルノデア
リマス、殊ニ只今內務大臣ヨリ提案理由ノ說明ヲ承リマス
ト、其根柢ニ疑ヲ置カナケレバナラヌ、幾多ノ問題ガ生ジ
テ來ルノデアリマス、故ニ只今ヨリ順序ヲ迫ウテ、内務當局
ニ其提案ノ根本ノ趣旨ヲ承リタイト思ヒマス、第一ニ質問
致シマス點ハ、市ト町村トノ間ノ階級制度ニ就キ、各別個ノ
主義ヲ執リタル理由ハ何レニ在ルカト云フコトヲ伺ヒタイノ
デアリマス、卽チ現行法ハ市ハ三級ノ制度ニ依リ、町村ハ二
級ノ制度ニ依ラレテ、何レモ階級制度ト云フ根本ノ主義ニ
於テハ變リハ無カッタノデアリマス、然ルニ今回ノ改正案ニ依
リマスト、町村ニ於テハ根本主義トシテ階級ヲ撤廢スルト云
フ主義ヲ主張セラレ、市制ノ改正案ニ於テハ、依然トシテ階
級ヲ其儘存置スルト云フ主義ニナッテ居ルノデアリマス、果シ
テ然ラバ此自治制デアル市町村ニ於テ、市ニ於テハ特ニ階
級ヲ設ケ、町村ニ於テハ階級ヲ撤廢スルト云フ、此主義ヲ異
ニシタル理由ハ何レニ在ルカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリ
マス、或者ハ是ハ町付ニ於テハ貧富ノ懸隔ガ甚シクナイカ
ラ、之ヲ撤廢シテモ差支ナイ、市ニ於テ-都市ニ於テハ貧
富ノ懸隔ノ甚シキモノガアルガ故ニ、特ニ之ヲ存置スルノデ
アルト云フ議論デアルカモ知レマセヌガ、然ラバ政府ガ若シ
其意味ニ於テ、此市ニノミ階級制度ヲ置カルヽト云フ趣旨
ナリト致シマスルナラバ、特ニ此貧富ノ懸隔ノ甚シキ人〓ニ
限ッテ或階級ヲ設ケズシテ、今囘ノ提案ノ如クニ、其階級ノ
差別ハ總テノ租稅ヲ總ヲノ選擧人ニ依シテ割當テタ平均額
ニ依ッテ、階級ヲ設ケラレタ理由ノ根柢ヲ說明スルコトガ出
來ナクナルノデアリマス、只今內務大臣ノ說明ヲ承リマスル
ト、特ニ斯ノ如キ階級ヲ設ケル必要ハ認メナイノデアル、併
ナガラ三十餘年ノ間繼續シテ實行サレタル此市町村制ノ
改正ニ當ノテ、急激ニ總テノ階級ヲ撤廢スルト云フコトハ甚
ダ穏カデナイガ故ニ、特ニ漸進主義ノ下ニ都市ニ於テハ二
級制ヲ認メ町村ニ於テモ亦其町村條例ノ定ムル所ニ依ッテ
ハ階級制度ヲ認メルト云フ趣旨ノ御說明デアッタノデアリマ
ス、私ハ此說明ヲ承ルト同時ニ、殊ニ奇異ノ感ニ打タル冫
デアル、漸進主義ト云フ言葉ガ信實ナレバ、都市ニ於テ從來
ノ三級制度ニナッテ居ル其一階級ヲ撤廢サレテ、他ノ階級
ヲ其儘存置サルヽト云フコトニナレバ、是ハ漸進主義ト云フ
コトヲ言ヒ得ラレルデアリマセウ、卽チ都市ニ於ケル一級ヲ
撤廢シ、若クハ二級ヲ撤廢シテ、從來ノ儘ニ他ノ階級ヲ置
カルヽト云フコトナレバ、漸進主義ト云フコトガ言ヘマス、併
ナガラ今囘ノ改正案ニ依レバ、此從來取リ來リタル租稅ヲ
三分シテ定メラレタル三級ノ制度ハ、全部之ヲ撤廢シテシ
マッテ、玆ニ更メテ納稅額ノ總額ヲ選舉人ノ總員ヲ以テ割
テ、其平均額ヲ以テ新タナル階級ヲ玆ニ設定サレルノデアリ
マス、果シテ然ラバ、是ハ從來ノ階級制度ニ對スル漸進主義
ニ非ズシテ、從來ノ階級ヲ打破ッテ新タナル階級ヲ造ルト云
フコトハ、ドウシテモ是ハ免ルヽコトハ出來ナイノデアリマス、
(拍手起ル)此例ヲ申シマスレバ、恰モ今日ノ時勢ニ於テ階
級ノ必要ノナイト云フコトヲ、內務大臣ハ此席上ニ於テ言
明サレナガラ、斯ノ如キ新タナル階級ヲ造ラルヽト云フコト
ハ、其根據ハ何レニ在ルノデアルカ、之ヲ第一ニ吾ヒハ伺ハナ
ケレバナラヌノデアリマス、第二ニハ此市町村制ノ改正案ニ
依リマスル階級制度ノ根據ハ、何レニ在ルカト云フコトガ伺
ヒタイ、日本ノ市町村制ニ特ニ階級制度ヲ設ケルト云フ事
ニ就キマシテハ、此市町村制ヲ制定サルヽ以前ヨリ。特別ナ
ル慣行、特別ナル事情ガアッテ出來上ッタモノデハナイノデア
リマス、市町村制實施ノ當時ニ於テ-此市町村制ヲ實施
サレル當時ニ於テ、丁度是ハ獨逸ニ於ケル立法例、殊ニ「プ
ロイス」ニ於ケル立法例ノ系統ヲ其儘飜譯サレ、此趣旨ニ
依ッテ今日ノ市町村制ガ出來上ッタノデアリマス、卽チ此市
町村制ヲ第一ニ提案サレタル當時ニ於テ、此階級制度ヲ設
ケタル理由ハ孰レニ在ルカト云ヘバ、第一ニハ無產階級ノ橫
暴ヲ防止スル意味ト云フコトガ一ツ、更ニ其市町村ニ於ケ
ル富豪階級、卽チ非常ナル資產階級ニ對シテハ、特別ノ扱
ヲ爲スト云フコトガ當然ナリト云フ觀念ヨリ、此階級制度ハ
設ケラレタノデアリマス、然ルニ時勢ノ進運ハ只今內務大臣
ノ述ベラレマシタ如ク、今日斯樣ナ階級制度ヲ設ケ、無產
階級ト有產階級ノ間ニ特別ノ取扱ヲスル必要ノ無イト云
フコトハ、内務大臣ノ言ハルヽ通リデアリマス、果シテ然ラバ
今囘定メラレタル此選擧人ノ總數ヲ以テ、選擧人ノ納ムm
直接市稅總額ヲ除シ、其平均額以上ヲ納ムル者ヲ一級ト
做シ、其他ノ選擧人ヲ二級トスルト云フ、此根據ハ何ガ故ニ
斯樣ナ階級ヲ設ケル理由ヲ成シタノデアルカ、其階級ヲ設
ケタル根據ヲ伺ヒタイノデアリマス、殊ニ此機會ニ於テ吾と
ノ最モ怪訝ニ堪ヘナイノハ、内務大臣ハ、漸進主義ヲ以テ
階級制度ノ撤廢ヲシタイノデアルケレドモ、殘シテ置イタト
云フ御議論デアリマシタ町村ニ於テハ絕對的ニ非ズシテ、自
由ニ其町村ノ條例ヲ定メテ階級ヲ存シ、或ハ之ヲ撤廢スル
コトノ自由ヲ與ヘラレ、都市ニ於テハ絕對ニ此階級ヲ墨守サ
レルト云フコトハ、市町村ノ住民ニ自由ヲ與ヘラレル一面ニ於
テ、都市ノ住民ニ對シテハ、特別ノ斯樣ナル虐ゲタル法律ヲ
設ケルト云フ理由ヲ、吾ニハ解スルコトガ出來ナイノデアリ
マス、(拍手起ル)殊ニ町村制ノ上ニ於キマシテモ、少クトモ
自治ト云フ事ハ國民共存ノ上ニ於ケル第一義デアリマスヽ
國民共存ノ上ニ於テ、自治體市町村ト云フモノヲ除イテ、
更ニ國家ヲ論ズルコトハ出來ナイノデアリマス、此町村ハ一
ツノ府縣ニ於テ、或村ニ於テハ階級ヲ撤廢シテ總テノ住民
全體自由平等ノ權利ヲ與ヘラレ、或町村ニ於テハ特ニ階級
ヲ設ケテ、特別ノ扱ヒヲ受ケルト云フガ如キ事ヲ實行致シマ
スル曉ニ於テ、一ツノ府縣內ニ於テ幾多ノ不平ヲ生ジ、幾多
ノ不安ヲ生ズルト云フコトヲ、今日ヨリ覺悟シナケレバナラ
ヌノデアリマス、殊ニ此改正案ニ依リマスルト、町村條例ハ一
旦總テノ階級ヲ打破シテ、無階級ノ狀態ニ於テ選擧シタル村
會議員町會議員ニ依ッテ、此町村條例ヲ作ラルヽナレバ格
別、此規定ニ依リマスルト、本案ヲ施行スル當時ニ、現在
ノ二級制度ニ依ッテ選出セラレタル町村會議員ニ於テ、此
町村條例ヲ設クルト云フニ至リマシテハ、其地方ノ町村民
全體ノ意思ヲ尊重シタルモノト云フコトハ、言ヒ得ナイノデ
アリマス、斯ノ如キ同一府縣內ニ於テ、或村ニ於テハ階級ヲ
造リ或村ニ於テハ階級ヲ撤廢スルト云フガ如キハ、總テノ人
心ノ上ニ、一大不安ノ念ヲ與ヘルモノト吾とハ信ズルノデア
リマス、此點ニ對スル内務大臣ハ、如何ナル意見ヲ有ッテ居
ラルヽカヲ伺ヒタイノデアリマス、其次ニハ選擧權ノ擴張ニ
關シ、直接町村稅ヲ納ムル者ト云フコトニ根據ヲ置カレタ
ル理由ハ如何、只今ノ内務大臣ノ演說ニ依リマスルト、此
選擧權ノ擴張ヲ行フト云フコトハ、時勢ノ進運ニ伴ウテ當
然ノ事デアル、而シテ之ヲ如何ナル範圍ニ擴張スルカト云フ
コトガ問題ニナッタ曉ニ於テ、其市町村ニ於ケル負擔ヲ分任
スル者ニ選擧權ヲ與ヘル、卽チ市町村稅ヲ納ムル者ニ選擧
權ヲ與へ、此市町村稅ノ分擔ヲ爲サヾル者、卽チ分任セザ
ル者ニハ選擧權ヲ與ヘナイト云フ方針デ、此法律ヲ作ッタノ
デアルト云フ御說明デアリマシタ、果シテ然ラバ此法律ニ依
ル、直接市町村稅ト云フコトニ限ラレタル理由ハ何レニ在
ルカ、之ヲ伺ハナケレバナラヌノデアリマス、市町村ノ負擔ヲ
分任スル者全體ト云フ上ニハ、直接村稅ニ非ザル幾多ノ稅
金ヲ負擔スル者ガアルノデアリマス、例ヘバ今日市町村稅ト
稱スル市町村、特ニ大藏大臣ニ於テ指定シタル直接府縣
稅ニ對スル附加稅、國稅ニ對スル附加稅、竝ニ市町村ニ對
シテノ指定サレタル或ル特別ノ稅金ニ限ルノデアリマス、市
町村ノ負擔ハ是ダケニ限ルモノデハナイ、水道ノ手數料ノ如
キ、使用料ノ如キ、其他幾多ノ負擔ヲ負フベキモノガアルノ
デアリマス、之ヲ特ニ直接市町村稅ニ限ラレタル理由ガ吾
吾ニハ分ラナイ、殊ニ此直接市町村稅ニ限ラレタル結果ハ、
町村ノ住民ニ對シテ極メテ厚クシテ、都市ニ於ケル住民ニ
對シテ、非常ナル不公平ナル結果ヲ招來スルノデアリマス、卽
チ町村ニ於テハ何レノ町村ニ於テモ殆ド戶數割ト云フモノ
ニ依ッテ、各戶ガ各、稅金ヲ納メテ居ルノデアリマス、併ナガ
ラ都市ニ於テハ、戶數割ト云フモノヲ賦課スル所ハ極メテ
少ナイ、多クノ都市ニ於テハ、殆ド家屋稅ノ制度ニ依リマス
爲メニ、戶數割ノ負擔ヲ負フト云フ者ハ無イ、是ニ於テ若シ
此法律ヲ實施サレタル曉ニ於テハ、町村ニ住スル者ハ殆ド
大部分選擧權ヲ與ヘラレ、都市ニ住スル者ハ例へバ役人デ
アル-下級ノ役人デアル、勞働者デアル、或ハ會社ニ勤メ
ル人とニ於テ、所得稅ヲ納付セザル限リハ、殆ド其都市ニ於
ケル負擔ヲ負ハナイノデアリマス、併ナガラ此負ハナイ人〓ハ
直接ニ都市ニ對シテ負擔ヲ負ヒマセヌケレドモ、一面ニ於テ
ハ家屋稅ノ轉課ニ依ッテ、大部分此人〓ガ都市ニ於ケル負
擔ヲ負ウテ居ルノデアリマス、然ルニ斯樣ニ町村ト都市トノ
間ニハ、幾多ノ不均衡不公平ヲ生ズルニ拘ラズ、直接市稅
ト云フモノニ限ラレタル理由ハ、吾〓ニ發見スルコトガ出來
ナイ、殊ニ假リニ此ニ一人ノ役人ガアル、其役人ハ町村ニ住
居スレバ必ズ選舉權ヲ與ヘラレル、然ルニ此人ガ都市ニ住
スル爲メニ、何等ノ選擧權ヲ與ヘラレナイト云フ結果ノ生ズ
ルコトハ明瞭ノ事實テアリマス、斯ノ如キ不均衡ナル租稅ヲ
土臺ニ置イテ、之ニ對シテ選擧權ノ有無ガ決スルコトヲ定
メラレタト云フコトハ、吾とハ如何ニシテモ解スルコトノ出來
ナイ點デアリマス、殊ニ甚シイノハ此市町村稅ト云フモノヽ
中ニハ、各府縣ニ於テ自由ニ定メルコトノ出來ルモノガアル
ノデアリマス、例ヘバ舊クヨリ土地建物ニ對シテ移轉稅ヲ徴
收致シテ居リマスル府縣-明治三十六年以前ヨリ土地
建物ノ移轉稅ヲ徵收致シテ居リマスル府縣、或ハ鑛業稅ヲ
徵收致シテ居リマスル府縣ハ、之ヲ直接縣稅トシ、之ニ對ス
ル附加稅ハ、直接市町村稅トシテ、卽チ選擧權ヲ與ヘル唯
一ノ資料ニナルノデアリマス、然ルニ明治三十六年以後
ニ於テ此鑛業稅ノ如キ、或ハ土地建物ノ移轉稅ノ如キモノ
ヲ制定シタ揚所ニ於テハ、是ハ直接府縣稅ニナッテ居ラヌノ
デアリマス、サウスルト同ジ一ツノ土地建物ノ移轉ニ關シテ
租稅ヲ納ムル者ニシテ、同ジ鑛業稅ヲ納ムル者ニシテ、或
ル府縣ニ於テハ選擧權ヲ與ヘル要件トナリ、或府縣ニ於テ
ハ之ヲ納付シテモ選擧權ヲ與ヘル要件ニ入ラヌト云フ不公
平ヲ生ズルノデアリマス、斯ノ如ク此法律ニ依ッテ直接市稅
ト云フ言葉ヲ用ヰラレタト云フコトハ、幾多ノ不公平ヲ生
ジ幾多ノ不都合ヲ生ズルト同時ニ、都會ニ住居スル人ニニ
對シテ特別ニ虐ゲル法律ヲ茲ニ制定サレタモノト謂ハナケ
レバナラヌノデアリマス、斯ノ知キ不徹底ナル提案ヲサレタル
根據ハ何レニ在ルト云フコトヲ、吾ミハ伺ハナケレバナラヌ、
最後ニ伺ヒタイノハ、市町村制ノ改正ノ中ニ、神職、僧侶、
其他諸宗ノ〓師、小學校〓員ニ被選擧權ヲ與ヘナイト云
フ從來ノ規定ニ對シテ、何等ノ改正ヲ加ヘズシテ、從前ノ儘
ニ之ヲ存置セラレテ居ル理由ハ、何レニ在ルカト云フコトヲ
伺ヒタイノデアリマス、吾ミノ此質問ヲ致シマスル所以ハ、内務
大臣ヨリシテ此間治安警察法ノ改正案ニ就キマシテ、此
演壇ニ於キマシテ、政友會ノ某氏カラ述ベラレ夕如キ愚論
ヲ、承リタイト思フノデハナイノデアリマス、内務大臣ハ今日
マデ屢〓宗〓家ヲ集メラレ、〓育家ノ會合ノ席上ニ於テ、國
民思想ノ善導ト云フモノハ、〓育家宗〓家ノ力ト相竣ッテ
ヤラナケレバナラヌト云フコトヲ、屢〓唱ヘラレテ居ルノデアリ
マス、殊ニ各地方講演ヲセラレ、何十囘何百回ノ講演ヲシ
テ、其聽衆ハ何万人何百万人ニ達シタト云フコトヲ、屢、此
席上ニ於テ述ベラレテ居リマスルガ、現在ノ政治ト云フモノ
ノ上ニ於テ、宗〓、哲學、〓育ト云ノモノト分離シテ、政治ノ
行ハレル筈ガ無イノデアリマス、此明カナル事實ヲ內務大臣
自ラ承認サレテ居リナガラ、殊ニ自治體ノ政治ニ干與セン
トスル神職、僧侶、其他諸宗ノ〓師、及小學校〓員ニ對シテ、
尙ホ今日之ニ參加スルノ權利ヲ剝奪サレルト云フコトノ根
據ハ、何レニ在ルカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、吾こ
ハ內務大臣ガ宗〓家、〓育家ト云フモノハ、自分ガ政治ヲ
行フ時ニ於テ之ヲ手先ニ使ヒ、之ヲ利用スルコトノ外ニ、彼
等ニ對シテ一言ノ喙ヲ容レルコトヲ許サナイト云フ理由ガ
アレバ、之ヲ承リタイト思フノデアリマス、要スルニ本案ノ提
案サレマシタ理由ハ、只今内務大臣ヨリ演說ノアッタ通リデ
アリマセウガ、吾〓ノ信ズル所ニ於キマシテハ、内務大臣自身
ト雖モ、此案ヲ以テ最モ良イ案デアル、現在ノ自治制ニ適應
シタル、完全無缺ノ案ナリト信ジテ居ラレヌト私ハ思フノデ
アリマス、(「ヒヤ〓〓」、拍手)故ニ眞實如何ナル理由ニ依ッテ、
斯ノ如キ不徹底ナル案ヲ提案シタカト云フコトヲ、率直ニ此
席ニ於テ承リタイト思フノデアリ、(拍手)例ヘバ玆ニ政府ヲ
擁護スル爲メニ、不自然ニ膨脹シタル大政黨アリト假定シ
テ、(「ヒヤ〓〓」「生意氣ヲ言フナ」ト呼フ者アリ)其一部分ニ
於テハ吾〓ト志ヲ同ジクシ、吾ミト同樣ノ觀念ヲ以テ、自治
體ノ大改革ヲ行ハナケレバナラヌト云フコトヲ唱ヘラレル、幾
多ノ吾ミノ同志ガアルノデアル、(拍手)然ルニ頑冥不靈ニシ
テ誨フベカラザル頑固ナル守舊黨ガアッテ、同ジ黨派ノ內部
ニ於テ此主張ヲ打破ラント試ミ、若シモ內務大臣ニシテ其
理想ノ提案ヲ爲スナラバ、吾とハ此政黨ヲ脫スルナドヽ云フ
脅迫ヲ行ヒ、(笑聲起ル)遂ニ已ムヲ得ズ斯ノ如キ不徹底ナ
ル案ヲ提案シタモノデアルナラバ、其內容ヲ此演壇ニ於テ暴
露セラレ、國民ノ前ニ憫ヲ乞ハレルト云フコトハ、內相トシテ
當然ノ事デアラウト信ズルノデアリマス、(拍手起ル)私ハ以
上ノ各點ニ對シテ、内務大臣ノ最モ明瞭ナル御答ヲ得タイ
ト思フノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=37
-
038・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 床次內務大臣
〔國務大臣床次竹二郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=38
-
039・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹一一郞君) 御答致シマスガ、市ト町村
トノ別、卽チ市ハ二級トシ、町村ハ等級ヲ撤廢シタ、ソレカ
ラ尙ホ市ニ於テ等級ノ分ケ方ガ今日ト異ッタノハドウ云フ
譯カ、是ハ先程私ガ說明ヲ致シタ所デ明カデアリマスカラ、
尙ホ一應私ノ說明ヲ速記錄ニ就テ御調ノ上、御聽下サルコ
トヲ希望シマス、私ハ其點ニ就テハ明瞭ニ說明シテアル積リ
デアリマス、ソレカラ町村條例ヲ以テ除外例ヲ致セバ、甚ダ
不安ノ念ニ驅ラレハセヌカト云フ御尋デアリマシタガ、是ハ
私ハ左樣ニ考ヘマセヌ、ソレカラ市町村稅ヲ分任スル者ニ、
選擧權ヲ與ヘルコトニシタノハ如何ナル理由デアルカ、是ハ
市町村ノ如キハ、其仕事ハ申上ゲルマデモナク、多ク財政ニ
關係シタ事デアリマス、ンレ故ニ自然自治ノ責任觀念ト致
シマシテハ、矢張此市町村費ヲ分任スル者ニ選舉權ヲ與ヘ
ルト云フコトノ方ガ、適當デアラウト云フ考ヨリ、左樣ニ致シ
夕次第デアリマス、尤モ今日ト雖モ市町村稅ヲ納メ、尙ホ其
上ニ國稅ヲ納ムル者トナッテ居ル、其國稅ヲ削除シタ次第デ
アルノデス、根本ニ於テハ唯ダ程度ヲ進メタダケノ事デ變リ
ハゴザイマセヌ、ソレカラ此直接市町村稅ガ所ニ依ッテ異ッ
テ、不公平デアリハセヌカト云フコトデアリマシタガ、是ハ全
國ニ亙ッテ其直接市町村稅ト認ムベキモノハ、一率ニ法規
ヲ以テ定メル譯デアリマスカラ、甚シイ不都合ハ無イト考ヘ
マス、ソレカラ市ト町村トノ有權者ノ數ガ甚ダ不權衡デハナ
イカト云フ御話、是ハ其通リデアリマス、現在ガ旣ニ甚ダ不
均衡デアリマス、併ナガラ此度ノ改正ニ依リマスレバ、先程
モ申シマシタ如ク、町村ニ於テハ三割幾ラノ增加ニナリマス
ガ、市ニ於テハ二十倍以上ノ增員ニナリマスカラ、此邊ハ現
在ヨリモ、其不均衡ナルコトハ和ラゲラレル譯デアリマス、ソ
レカラ神職其他ノ人ミニ被選權ヲ與フルコトハ、詮議ヲシナ
カッタカト云フコトデアリマシタ、是ハ獨リ市町村制ノミナラ
ズ、府縣會竝ニ衆議院ニモ共通シタ問題デアリマスカラ、此
度ノ市町村制改正案ニ於テハ、手ヲ觸レナイコトニ致シタノ
デアリマス、何レ他日ノ詮議ニ致ス積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=39
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040・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 三木武吉君
〔三木武吉君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=40
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041・三木武吉
○三木武吉君 私ガ此市制町村制改正法律案ニ就テ、
政府ニ御尋ヲ致シタイト思ッテ居ッタ事柄ノ大體ハ、旣ニ砂
田君ヨリ御尋ニナリ、ンレニ對シテ御答ガアッタヤウデゴザイ
マスルカラ、努メテソレト重複ヲ避ケマシテ、尙ホ腑ニ落チザ
ル所ヲ御質シ致シタイト思ヒマス、先ヅ第一ニ御尋ヲ致スノ
ハ此兩法案ノ骨子デアル、選擧權ノ擴張ニ就テ、政府案ハ
尙ホ納稅主義ヲ固執スル其根據如何ト云フコトデアリマス、
此點ニ就テ砂田君ガ御尋ニハナリマシタケレドモ、砂田君ノ
御尋ハ、地方稅主義ヲ採用スルノ結果、或町村ト或町村ト
ノ間ニ不權衡ヲ來ス、町村ト市トノ間ニ不權衡ヲ來ス、又
直接地方稅主義ヲ採用スル結果、間接分任ノ負擔者ニ選
擧權ヲ與ヘザルノ、不權衡ナル結果ヲ生ズルト云フコトニ就
テ御質問デアリマシタ、私ノ御尋致スノハ、何ガ故ニ納稅資
格ヲ選擧權者ノ要件ト致スノデアルカ、此事デゴザイマス、此
問題ニ就キマシテハ、私ハ今更メテ申スマデモゴザイマセヌ
ガ、選擧權ハ人ニ與ヘルノデアルカ、金ニ與ヘルノデアルカ
ト云フ此問題ヲ決定スルコトニ依ッテ、解決ガ付ケラレルト
信ズルノデアリマス、政府ハ選擧權ノ附與ヲ、財產、金ニ重
キヲ置カレルノデアルカ、人ニ重キヲ置カレルノデアルカ、若シ
人ニ重キヲ置カレ、人ノ能力ニ應ジテ參政權ヲー-自治發
言ノ權利ヲ與フルト云フナラバ、何ガ故ニ其能力ヲ標準トス
ルコトニ重キヲ置カナイカ、是ガ私ノ第一ノ御尋デゴザイマ
ス、此點ニ就テ初メ內務大臣ガ御說明ニナル所ヲ伺ヒマス
ルト、唯ダ單ニ選擧權者ノ數ガ、現在ヨリハ改正スレバ何倍
位ニナル、或ハ市町村制施行ノ時ト今日トヲ較ベレバ、是位
ノ差ニナルト言ウテ、主トシテ重キヲ擧選權擴張ノ結果得ル
所ノ人ノ數ニ置カレテ居ルヤウデアリマス、固ヨリ選擧權ノ
擴張ヲ爲シ、多クノ選擧人ヲ作ルト云フコトガ必要デアル以
上ハ、人其數ニ重キヲ置クコトハ申スマデモナイノデゴザイマ
スルガ、唯ダ數ヲ多クシタカラト云ッテ、選擧權ヲ擴張ノ目的ヲ
達セラレルモノデハアリマセヌ、又其擴張セラレタル人其人ガ、
選擧權行使ノ能力者トシテ、適當ナル者デアルカ否カ、言換
ヘテ見レバ、適當ナル者ニ選擧權ヲ與ヘルト云フコトニ法律
ガシテ居ルカ居ラヌカト云フコトガ、今日吾〓ノ〓究スベキ問
題デアルノデゴザイマス、私ハ此選擧權附與ノ根據ニ就テ、樣ニ
ナル議論ノアルコトヲ承知致シテ居ル、只今政府ノ御說明
ニ依ルト、今回ノ改正案ニ地方稅ニ制限ヲシタト云フコト
ハ、從前ノ法律ノ國稅ニ合ハスニ地方稅ヲ以テシテ居ッタ、
其國稅ヲ除イタモノデアル、敢テ地方稅ニシタ所ノ格別ノ
理由ハ無イト云フ風ニ私ハ伺ッタノデアリマス、若シサウナル
ト御尋シナケレバナラヌ、從前ノ選擧法ニ-現行ノ選擧法
ニ國稅主義ヲ採用シテ居ルト云フコトハ、其根據ヲ何レニ
置イテ居ルノデアルカト云フコトデアリマス、此點ニ就キマシ
テ、只今內務大臣ガ特別ノ御辯明ハ無イヤウデゴザイマスガ、
曾テ衆議院議員選擧法ノ改正ガ討議セラレタ際ニ於ケル、
內務大臣ノ此問題ノ御說明ヲ私ノ記憶ヨリ喚起シマスレ
バ、選擧權ノ制限ニ、財產上納稅上ノ資格ヲ以テシタト云
フコトハ、所謂恆產ナキ者恆心ナシト云フ點ヨリ之ガ認メラ
レルノデアル、斯ウ云ムココトノ御言明ヲ爲サレタコトハ、床次
內務大臣ガ御記憶デアラウ、若シ恆產主義ヲ選擧權附與
ノ基礎ト致シ、其恆產主義ノ或ル制限ヲ此改正案デ緩和シ
タト云フノナレバ、爰ニ私ハ御尋シナケレバナラヌ、地方稅ヲ
納メテ居ル者ハ、內務大臣ノ所謂恆產アル者デアッテ、而シテ
恆心アル者ト云フコトガ出來ルカ、御承知ノ通地方稅市町
村ノ直接市稅ノ中ニハ、様ミナル稅金ガアル、床次內務大臣
ノ御好キナ浪花節語ノ稅金モ此中ニアル、(拍手起ル)役者ノ
稅金モアル、車ノ稅金モアル、浪花節ヲ語ッテ稅金ヲ納メル、
役者ガ踊フテ稅金ノ納メル、人力一挺持ッテ居ル、荷車一挺
持ノテ居ルカラ稅金ヲ納メル、此稅金ヲ納メルカラ免ニ角內
務大臣ハ、斯ウ云フ者ガ恆產ガアルカラ、恆心ガアルト云フ
議論ヲ立テラレルノデアルカ、ヨモヤ私ハ斯ウ云フ議論ハ立
テラレルモノデナイト思ヒマスガ、果シテ恆產恆心ト云フモノ
ガ、此納稅資格ヲ固執スル今日ノ此立法ノ根據ヲ成シテ居
ルカドウカ、尙ホ疑ヲ持ツノハ、內務大臣ガ一方ニ於テ恆產
圓心主義ヲ執ッテ居ラルヽカノヤウデアルガ、更ニ只今ノ御
說明ノ中ニハ、市町村ノ事務ハ多イ財政ニ關スル事デアル、
財政ニ關スル事ハ、稅金ヲ納メテ居ル者ニ其審議ヲ許スノ
ガ當前デアルト云フヤウナコトヲ言ハレテ居ル、私ガ申上ゲ
ルマデモゴザイマセヌ、内務大臣ハ自治監督ノ任ニ當ラレテ
居ルノデアルカラ、最モ能ク今日ノ自治團體ノ事務ト云フ
モノヲ御承知デゴザイマセウ、自治團體ノ事務中ノ大ナルモ
ノハ、固ヨリ財政デゴザイマカウ、併ナガラ財政ガ其總テヾハ
アリマセヌ、又假リニ財政ト云フコトニ致シマシテモ、市稅ニ
闇スル-市稅ニ依ッテ料理セラルヽ所ノ經濟關係ノミガ、
市町村ノ財政デハアリマセヌ、一例ヲ申シマセウカ、東京市ノ
狀態ハドウデゴザイマス、電車ノ事業ハ何人ガ之ヲ行ッテ居
リマス、電燈ノ事業ハ何人ガ之ヲ行ッテ居リマス、電燈料瓦
斯ノ料金ハ、何人ノ力ニ依シテ最後ノ決定ガセラルヽノデア
リマスカ、水道ハ何人ノ經營ニ基クカ、水道ノ料金ハ何人カ
ラ徴牧セラルヽノデアルカ、此料金ハ何人ガ決定スルノデア
ルカ東京市ノミデハアリマセヌ、全國到ル處ノ町村ニ於テ經
營ヲ致シテ居ル其營造物デアル小學校ハ、何人ガ之ヲ利用
スルノデアルカ、何人ガ大ナル利害關係ヲ持シテ居ルノデアル
カ、町村ノ道路ハ何人ガ此上ヲ步行スルノデアリマスカ、直
接市稅ヲ納メテ居ル者ノミガ、其財政ニ關係ヲ持ツ-是
ハ驚クベキ愚論デアリマス、又町村ノ直接市稅ヲ納メテ居ル
者ガ、其市町村ニ特殊ノ利害關係ヲ持シテ居ルト云フ御考
ヲ持ツナラバ、ソレハ時代遲レノ夢想デアリマス、今日ノ町
村住民ハ稅ヲ納メルト納メザルトニ拘ラズ、恰モ吾〓ガ國家
ノ一員トシテ、國家ノ總テノ責任ヲ帶ビテ居ルガ如クニ、市
町村其モノニ對シテ、全部ノ責任ヲ帶ビテ居ルノデアリマス、
(拍手起ル)又市町村ニ對シテ住民ガ全部ノ貴任ヲ帶ビ、其
市町村ガ我物ナリトノ觀念ヲ持タズンバ、到底自治ノ完全
ナル發達ヲ爲スコトハ出來マセヌ、內務大臣ヲ首メ其他ノ
方ミガ、各地方ノ市町村ノ住民ニドウ云フ事ヲ御〓へニナッ
テ居ルカ、其市町村ハ汝ノ市町村タルコトヲ記憶セヨ、其市
町村ハ汝ノ市町村タルコトヲ忘レルナ、汝ガ汝ノ物ヲ愛スル
ガ如クニ、其市町村ニ對シテ市町村ノ發達ヲ圖ラナケレバ
ナラヌト云フコト、内務大臣首メ政府ノ方ミガ、常ニ地方民
ニ御訓令ニナッテ居ル事デアルニ拘ラズ、御都合ノ好イトキ
ニハオ前ノ物ダト言ヒナガラ、自身都合ノ惡イトキニ法律デ
是ヨリ一步進ムベカラズト、一般住民ニ此權利ノ行使ヲ妨
グルト云フコトハ、餘リニ得手勝手デ、又理論ニ惇リ國民住
民ヲ無視スルノ甚シキモノデアルト謂ハナケレパナラヌノデア
リマス、(拍手起ル)故ニ利害關係ト云フコトヲ基礎ニ致シ
マシテモ、或ハ市町村ノ事務ガ財政ニ關係スルト云フ點カ
ラ論ジマシテモ、又内務大臣ノ御好キナ恆產恆心主義ト云
フモノヲ根據ト致シマシテモ、到底此納稅ヲ制限トスル立法
ガ時代錯誤ノ惡法デアルト云フコトニ就テハ、一言半句ノ御
辯明モ出來ナイモノデアルト思ヒマスガ、内務大臣ノ御考ハ
果シテ如何デアリマスカ、特ニ私ガ非常ニ·心配ヲ致スノハ、砂
田君モ申サレタヤウデアリマスガ、此地方稅主義ヲ採用セラ
ルヽ結果ト致シマシテ、無產知識階級ノ人竝ニ勞働者、特
ニ都市ニ居住スル、無產知識階級ト勞働者ノ人〓ガ、選權
ノ獲得ヲスルコトガ出來ナイト云フ事ニ就テ、非常ナル憂慮
ノ念ヲ持ツノデアリマス、今日我國ノ現在情勢ヲ見マスルト
云フト、有ユル方面ニ選舉權ノ要求團體的生活ニ就テノ
機會均等權ノ要求ト云フモノガ、盛ニナッテ居リマフケレド
モ、取分ケ所謂無產知識階級ト勞働階級ノ要求ガ一番盛
ナノデアリマス、又是等ノ人〓ノ要求ガ最モ恐ルベキ要求デ
アリマス而シテ最モ又强キ要求デアリマス、此恐ルベキ强キ
又與フベキ必要ノ存スル人ミニ對シテ、此改正法案ニ依リ
マスルト、何等ノ權利ヲモ與ヘルコトノ出來ナイヤウニナッテ
居ル、特ニ市部ニ於テ其現象ヲ現ハスト云フコトハ、苟モ天
下ノ大勢ニ眼ヲ注グ政治家ノ爲ベキ事デハナイト私ハ信ジ
マスルガ、政府ノ御考ハドウデゴザイマスルカ、第二ニ御尋シ
タイコトハ、市ニ二級ト云フ階級ノ制度ヲ認メ町村ニ全然
無階級ノ制度ヲ採用スル事デアリマス、此事ニ就テ砂田君
ガ旣ニ質問ヲセラレテ居リマスガ、私ハ斯ウ云フ點カラ御尋
シテ見タイ、人ハ己レヲ愛スルガ故ニ平等ヲ望ミマス、自由
ヲ望ミマス、其望ム所ノ平等ト自由ト云フモノガ、團體生活
ノ上ニ於テハ發言權ノ要求トナルノデアリマス、併シ文化ノ
程度ガ進マズ、文明ノ機ニ達セザル間ニ於テハ、此平等ノ要
求ガ言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、團體的生活上ノ機會均等
ノ要求ト云フモノハ、或程度マデハ犀迫スルコトガ出來マセヌケ
レドモ、文明ノ機ガ進ムニ從ッテ、其壓迫ハ到底最後マデ續
ケルコトハ出來マセヌ、文化ノ進ム地方、文化ノ進ンデ居ル
國ニ於テ、段々段々選擧權ヲ擴張スルノハ政府御承知ノ通
リデアル、政府亦此提案ノ理由ニ依リマスルト、此點ハ確ニ
御認ニナッテ居ル、時勢ノ進運ニ伴ヒ選擧權ヲ擴張スト云
フコトヲ言ハレテ居ル、故ニ文明ノ程度ノ發達シタル割合ニ
應ジテ、選擧ヲ平等ニスル、公民權ノ擴張ト云フコトハ、言
ヒ換ヘテ見レバ、選擧權ノ平等デアリマス、平等ニスルト云
フコトヲ御認ニナッテ居ル、選舉權ノ平等ト云フコトハ、只ダ
單ニ多クノ人ニ選擧權ヲ與ヘルト云フコトダケデハナイ、選
擧權ノ範圍ヲ擴ゲルト同時ニ、其分量ヲモ同ジクスルト云フ
コトヲ意味シナケレバナラヌ、政府ノ公民權ノ擴張ニ就テ、
現在ヨリ一步ヲ進メテ、國稅主義ヲ廢シタト云フ事、ソコニ
此時勢ノ進運ニ伴ウテト云フ理由ノ一端ガ現レテ居リマス
ガ、既ニ擴張、旣ニ平等ノ要求ニ對シテ其要求ヲ容レルト
云フナラバ何ガ故ニ量ノ上ニ於ケル平等ヲ御認ニナラヌカ、
私ガ政府ノ此案ヲ見マスルト實ニ怪訝ニ堪ヘナイ事ガアル
繰返シテ中スマデモアリマヤヌガ、文明ノ進步ノ割合ニ應ジ
テ、選擧權ヲ平等ニノミナケレバナラヌ、其範圍ト量ノ上ニ
於テ、平等ニシナケレバナラヌト云フコトヲ御認ニナルニ拘
ラズ、文明ノ程度ノ進ンダル市ニ於テハ、分量ニ於テ態ト不
平等ニシテ置ク、文明ノ程度ノ進マザル町村ニ於テハ、其分
ニ何等ノ差等ヲ付ケナイト云フノハ、ドウ云フ譯デアル冠
履轉倒ト云フコトヲ能ク申シマスルガ、是レ位逆マナ遺方ヲ
シテ居ル法律ト云フモノハ、恐クハ世界ニアリマスマイ、私
床次サンノヤウナ學者デナイカラ知ラヌガ、有レバソレハヨク
ヨク間違ック國デアラウト思ヒマス、(拍手起ル)或ハ政友會ノ
方ミハ申サレルカモ分ラヌ、成程文明ノ氣ノ進ムニ從シテ、選
擧權ノ平等-量及範圍ノ平等ト云フモノハ必要デアル、
オ前ハ市ノ方ガ開ケテ居ッテ、郡ノ方ガ開ケテ居ラナイト言
フガ、政友會ヤ政府ノ眼ヲ以テ見レバ、郡ノ方ガ開ケテ居ツ
テ、市ノ方ガ開ケテ居ラナイト云フ御考ガアルカモ分ラヌ、(拍
手)ソレナラバ一ツノ理窟デゴザイマス、見方ニ依ルノデゴザ
イマセウ、郡ノ方ガ開ケテ居ッテ、市ガ開ケナイト云フ觀察モ
一ツノ觀察デアリマス、デ其觀察ガ正シケレバ、此市ニ二級
制度ヲ認メ、郡ヲ無階級ニシタ、町村ヲ無階級ニシタト云フ
コトガ至當デアリマス、果シテ諸君竝ニ政府ノ人ハ、郡町村
ハ市ヨリモ文化ノ程度ガ進ンデ居ルト云フコトガ言ヘマセウ
カ、取分ケ選擧權若クハ政治十云フコトニ就テ、進ンデ居ル
ト云フコトガ言ハレマセウカ、見受ケル所政友會ハ郡部選出
ノ議員ガ多イカラ、若シ眞ニ諸君ガソレヲ信ズルナラバ「ノウ
ノウ」ト計ハルベキ筈デアルガ、一言半句モ「ノウ〓〓」ノ聲ガ
出ナイト云フコトハ、郡ノ人ガ市ノ人ヨリモ、開ケテ居ラナイ
ト云フコトヲ御認ニナッタノデアラウト思フ、(拍手起ル、「ノウ
ノウ」「眠中ニ置カナイノダ」「討論ヂヤナイ」「コンマ以下ダ」ト
呼フ者アリ)多數ノ中ニハ「ノウ〓〓」ト言フ人モアッタヤウデ
ゴザイマス(「要ラヌコトヲ言フナ」ト呼フ者アリ)アッタヤウデ
ゴザイマスカラ、私ハ其人こノ爲メニモ、亦サウ云フ「ノウ〓〓」
ト言フヤウナ人ニニ、內務大臣ガ動カサレタノデハナカラウカ
ト思ハレマスカラ、此點ニ就テハ一言致シテ置カナケレバナ
ラヌ、(拍手)私ハ諸君ニ對シテ活キタ證據ヲ出サウト思ヒマ
ス、何ヲカ活キタ證據ト言フカ、昨年五月ノ總選擧、此總選
擧ハ普通選擧ヲ實行スルコトノ可否ヲ國民ニ問ハレタト云
フコトハ、諸君御承知ノ通リデアル、國民ニ其可否ヲ問ハレ
タ、國民ハ之ニ對シテ如何ナル答ヲ爲シタカ、私共ハ固ヨリ此
選擧ガ、公平誠實ニ行ハレタモノデアルトハ信ジマセヌ、其選
擧ニ於テハ有ニル罪惡ガ行ハレテ居ル、(「莫迦言フナ」ト呼フ
者アリ)干涉、壓迫、詐僞、脅迫、賄賂、請託、有ユル罪惡ノ
上ニ築上ゲマシタル選舉デハアリマシタケレドモ、假リニ原總
理大臣ヤ、政友會ノ人ガ言フガ如キ其口吻ヲ眞似ヲ申シマ
スレバ、國民ノ公平ナル-形式上公平ナル審判ヲ仰イダモ
ノト云フコトガ出來ル、(「其通リ」ト呼フ者アリ)其國民ノ公
平ナル審判ヲ仰イダト言フ其選擧ノ結果ハドウデアッタカ、四
百六十四名ノ代議士中、其六割以上ハ普通選擧ニ反對ス
ル人デアリマシタ、其四割弱ハ普通選擧ニ贊成ヲスル人デ
アリマシタ、故ニ此點ヨリスルナラバ、未ダ我國民ハ覺醒ヲシ
テ居ラナイ、選擧權ノ要求ト、其必要ハ感ジテ居ラナイト云
フコトヲ言ヘルノデアルガ、諸君、茲ニ諸君ガ大ナル注意ヲ拂
ハナケレバナラヌノハ、四百六十四名中、市部選出ノ議員
百五名ノ狀態ハ如何デアルカト云フノデアリマス、此市制ノ
支配ヲ受ケル所ノ選擧區ノ狀態ハドウデアッタカト云フノデ
アリマス、議員全體カラ言ヘバ、頑冥不靈度シ難キ者ガ六
割以上アルニ拘ラズ、市部ノ側ニ於テハ、百五名ノ議員中、
七割マデハ普通選擧贊成ノ人デアッテ、殘ルハ僅ニ三割ト云
フ事實ハ諸君ドウ御覽ニナルカ、若シ選擧權ノ要求ヲ爲ス
者ガ馬鹿デアル、選擧權擴張ヲ願フ者ガ野蠻ノ人デアルト
云フナラバ知ラズ、諸君ノ認メラレル通リ、選擧權ノ要求ヲ
爲ス者ハ文化ノ進ミシ文明人デアルト云フナラバ、普通選
擧論者ヲ多ク選出シタル市部ノ人ハ、是レ文明ノ進メル文
明人デアルコトヲ認メナケレバナリマセヌゾ、取分ケ私ノ選出
區デアル東京市ノ狀態ハドウデスカ、諸君、此態ハドウデス
カ、諸君、十五名ノ定員中、政友會ノ候補者、卽チ普通選
擧反對ノ候補者ハ十四名ト云フ多數ヲ算シナガラ選擧ノ
結果ハ如何デアッタカ、死屍累々殘ルハ僅カニ三人デアリマシ
タ、(拍手起ル)而モ其三人ノ御方ノ中ニハ、諸君ノ條友ト
シテ名譽アル高橋義信君ガ政友會ノ人デアルト云フニ至ッ
テ、私ハ東京市ノ爲メ、日本國民ノ爲メニ、洵ニ慨ハシイト思
フノデスガ、政友會ノ人ハドウ思ヒマスカ、斯ノ如ク全國ノ
都市ニ於ケル住民ハ既ニ文化ノ程度ガ進ミ、個性ノ自覺、
責任ノ自覺、選擧權ノ性質、政治ト云フモノヽ理解ガ十
分ニ出來テ居ル、故ニ飽マデモ平等ナル要求、生活上ノ機
會ノ均等ノ要求ヲ爲シ居ルニ拘ラズ、是等市部ノ人ニハ飽
マデモ不平等ナルモノヲ與ヘテ置イテ、野蠻矇味トハ申シ
マセヌガ、餘リ文化ノ程度ノ進マザル者ニ黃金ヲ與ヘル
ガ如キ事ヲスルノハ、多少政府ニ於テモ御考へナサラナケレ
バナラヌ、固ヨリ私ハ郡村ノ人ニ對シテ、平等ナル選擧權ヲ
御與ヘナサイト申シマスガ、併シソレヨリモ急ヲ要スルモノハ
市部ノ住民デハナカラウカ、此點ニ就テ政府ノ御所見ハ如
何デアルカト云フコトノ御尋ヲ致スノデアリマス、其他市ニ於
ケル選擧權擴張ノ範圍ト、町村ニ於ケル選擧權擴張ノ範
圍トノ差異、宗〓家竝ニ小學〓員ニ、被選擧權ヲ與ヘナ
ケレバナラヌト信ズルト云フヤウナ事柄ニ就キマシテハ、總テ
砂田君ト御同感デアル、又砂田君ニ對スル政府ノ答辯ガ餘
リ要ヲ得テ居ラナイカラ、更ニソレニ對シテ明確ナル御答ヲ
求メタイト思ヒマス、要スルニ私ノ御尋致ス事ハ、一言ニシテ
言ヘバ、何ガ故ニ苟モ住民デアルカラニハ、總テノ人ニ平等
ノ選擧權ヲ與ヘナイ、無能力ニ應ジテ、何故ニ苟モ自治〓體
ノ住民デアルナラバ、市ト町村トノ住民トノ間ニ階級的差
別ヲ立テルノデアルカ、之ヲ御尋ヲ致シタイノデアリマス、私
ノ御尋ヲ致ス事ニ就テハ、內務大臣ハ必ズ全然私ハ同感デ
アルト云フ御答ヲスベキ筈デアルト信ジテ居リマス、第四十
二議會ノ當時、傳へ聞ク所ニ依リマスト內務省デハ吾とト
感ヲ一ニシテ、市制町村制ノ改正法律案中、階級撤廢ノ制
度ノ下ニ、我ガ衆議院ニ提案ヲセンガ爲メニ〓御栽可マデ仰
イダト云フコトデアル、又今此提案ヲ爲ス前ニ於テ、床次君
ヲ圍繞セル內務省ノ屬僚ノ方ミハ、全然吾とト其見解ヲ同ジ
クシテ、階級撤廢ノ案ヲ造ラレタト云フコトヲ承知致シテ居
ルノデアリマス、既ニ主義ノ上ニ於テ而シテ又其必要ノ上ニ
於テ、吾ミト全然見解ヲ同ジクセル其內務大臣ガ、驚クベシ
愈〓議會ニ提出スルトナレバ、斯ノ如キ不徹底ナル、斯クノ如
キ冠履轉倒ノ案ヲ以テ、吾〓ノ前ニ提出ヲセラレタ、此裏面
ニ於テハ、或ハ黨略ガアルデアリマセウ、或ハ脅迫ガアルデア
リマセウ、併シ其黨略脅迫ハ、政友會ト云フ一ノ黨派ノ利益
ノ爲メノ事柄デアッテ、斷ジテソレハ國家ノ爲メノ利益デアリ
マセヌ、國家ノ爲メノ事柄デハアリマセヌ、内務大臣ガ若シ政
友會ノ內務大臣デアルナラバ、如何ナル事ヲ爲サレテモ私ハ苦
情ヲ中サナイ、併シ内務大臣ハ天下ノ内務大臣デアル、國家
ノ內務大臣デアル、大日本國民ノ內務大臣デアルト云フナラ
バ、如何ニ政友會ノ人〓ガ足許ニ迫ルト雖モ、公器ハ拾テルコ
トハ出來ナイノデアリマス、良心ハ拾テルコトハ出來ナイノデア
リマス、何ガ故ニ貴方ハ貴方ノ信ズル所ニ依ッテ、御提案ニナラ
ヌノデアルト聽ケバ、床次內務大臣ハ、曾テ薩南ノ麒麟兒ト
言ハレタ方デアル、私ハ其心事ノ公明正大ナルコトニ對シテハ、
常ニ十二分ノ敬意ヲ拂ッテ居ル、此處ニ多クノ議員ガ居ラレ
ルケレドモ、殊ニ政友會ニ於テ床次君以上ノ見識ヲ持チ、床
次君以上ノ信念ヲ持チ、床次君以上ノ人格ヲ持タレテ居
ル人ハ、恐ラクハ他ニ一人モ無カラウト信ジテ居ルノデアリ
マス、其床次君ガ何事デゴザイマセウカ、能ク世間デハ居ハ
志ヲ遷スト申シマスガ、床次君政友會ニ居ルガ爲メニ、斯ノ
如キサモシイ卑シイ御心ニナラレタノデアルカ、私ハ同君ノ
爲メニ惜マナケレバナラヌ、私ハ床次サンニ、之ニ對スル御答
ヲ求メル場合ニ一言致シテ置ク、貴方ハ良心ノ本然ノ性質
ニ御復リナサイ、貴方ノ良心ノ所信ニ向ッテ斷定ヲ爲サイ、
若シ貴方ノ本然ノ性質ノ復リ、貴方ノ所信ヲ斷行スルト云
フ勇氣ガアルナラバ、斯ノ如キ案ハ一蹴シテ、國民黨ヤ吾こ
ノ方カラ提案シタル案ニ御賛成ニナルベキ筈デゴザイマス、
私ハ此壇ヲ降ルニ際シテ尙ホ一言申シテ置キマス、床大君
ガ私ノ此問ニ對シテ御答ヲ巧ミニ爲サレバ爲サル程、貴方
ノ良心ハ痳痺ヲシテ居ルノダト云フコトヲ證明スルノデアル
貴方ガ私ノ問ニ對シテノ答ガ拙ケレバ-下手デアルナ
ラバ、尙ホ床次竹二郞君ノ腦中良心ノ閃キガアルト云フ
コトヲ、世ノ人ガ認メルノデアリマス、政友會ノ總裁デ現内
閣ノ總理大臣ノ原君、其處ニ居ラレル望月君ノ如キハ、近
來罕ニ觀ル賢明ナル我黨ノ總裁ト言ハレタ原君、其方ガ實
ハ是ハ御作リニナッタ案デアラウト思フ、其人ニ委スト云フコ
トノ決議ヲ爲サレ、漸クニシテ政友會ノ中ニ居ラレル吾ニノ
同志、時勢ヲ知ル文化ノ程度ニ十分ニ浴サレタル方ミノ、議
論ヲモ壓迫シテ、斯ウ云フモノヲ作ラレタ其原君ノ意ヲ承ケ
テ、床次君ガ此案ヲ御提出ニナッタ、其心ノ程ハ御察シ致シ
マスルルガ、正義ニハ貴方ハ打勝ツコトハ出來マセヌ、ドウシ
テモ床次君ガ自分ノ眞個ノ所信ヲ述べナイ以上ハ、斷ジテ
此案ガ衆議院ヲ通過致サナイト云フコトノ御確信ヲ以テ、
之ニ對シテ明確ナル御答ヲ願ヒタイト思ヒマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=41
-
042・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 床次內務大臣
〔國務大臣床次竹二郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=42
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043・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 御答致シマスガ、第一ノ御問
ハ要スルニ御議論ト承リマシタ、御議論ノ如クデアレバ、總テ
ノ要件ヲ撤廢シテ、或ハ獨立ノ生計ナドヽ云フコトモ要ラヌ
カモ知レヌ、(拍手起ル)公民權ノ擴張ヲ致シタ方ガ宜カラ
ウト思ヒマス、併ナガラ口今ノ狀況ニ於テ、圓滿ナル町村自
治ノ發達ヲ圖ラウト致シマスルニハ、私ハ立案ノ如クスルコ
トヲ以テ適當ナリト考へタノデス、尙ホ第二點ハ町村ト市ト
公民權ノ普及ガ不均一デアル、是ハ先程砂田君ヨリノ御問
ニ對シテ御答シタ通リデアリマス、重ネテ申上ゲマセヌ、尙ホ
第三ニ就テ色〓御論モアリマシタガ、要スルニ政府トシテ提
出シタ所ノ意見ハ此法律改正案ニ明デアッテ、ソレヨリ外ニ
アリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=43
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044・三木武吉
○三木武吉君 一寸尙ホ御尋ヲ致シマス、其前ニ一言辯
明ヲ致シテ置カナケレバナリマセヌ、私ハ選擧權附與ノ條件
トシテ納稅資格ノ如キモノヲ踏襲スルノ理由如何ト云フコ
トヲ御尋シマシタ所ガ、床次君ノ御答ハ最前ノヤウナコトヲ
言フナラバ、獨立ノ生計モ要ラナイデハナイカト言フ、(「其通
リ」ト呼フ者アリ)私ハ私ノ質問ヲ致ス前ニ、今ノ納稅資格
ヲ撤廢シテ-納稅資格ヲ撤廢シテ、他ニ其能力ノ基準ト
スル方法ノミニ依レバ、宜イデハナイカト云フコトヲ申上ゲ
タ、能力ヲ基準トスルト云フノハ何デアルカ、其人ノ知識ノ程
度竝ニ行爲ニ就テノ自由ノ能力ト云フ事デアル、知識ノ程
度ハ年齡ヲ以テ標準ト爲スベシ、行爲自由ノ能力ハ獨立ノ
生計ヲ以テ標準ト爲スベシト云フコトハ、說明申上ゲヌデモ
床次サン位ノ方ニナレバ、御知リノ事デアッタト思フガ、御存
ジナイトナラバ更メテ御說明ヲ申上ゲテ置キマス(「無用々々」
ト呼フ者アリ)私ノ御尋シタノハ、納稅資格ヲ踏襲スル理
由ハ何レニ在ルカ、政府ハ此程度ガ穏當デアルト言フガ、私
共ハ穏當デアルカドウカヲ聽イテ居ルノデハナイ、納稅資格
ヲ踏襲スル理由ガ何所ニ在ルカ、政府ガ穩當ト云フハ、恐ラ
ク全體ノ上ニ於テ五割ノ擴張デアル、五割ノ擴張位ガ穩
當デ、一時ニ是ガ十割二十割ニナルト云フノハ、所謂急激
ナル變化デアルカラソレハイケナイ、五割ガ穏當デアルト言ハ
レルノデアラウト思ヒマスルガ、果シテ然ラバ其五割ノ擴張
ニ就テ、特ニ此地方稅主義ヲ執ッタ理由ハ如何デアルカ、五
割擴張スルニハ、知識ノ程度ヲ以テ五割ノ擴張モ出來マス
ゾ、或ハ生活狀態ヲ標準トシテ五割ノ擴張モ出來マス、如
何方法ニ據ッテモナル出來ルニ拘ラズ、法ニ不公平ナル地
方稅主義ヲ基準トシテ、五割ヲ擴張セラルヽ其根據如何
ト云フ事ノ尋デゴザイマスルガ、私ノ御尋ニ對シテハ、未ダ完
全ナル御答ガナイト思ヒマスルガ、是以上ノ御答ガ出來ル
モノナラバシテ戴キタイ、出來ナイモノナラバ、默シテ御答ニナ
ラナイデモ敢テ差支ハアリマセヌ
〔「無用々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=44
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045・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 床次國務大臣
〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=45
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046・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 只今御答致シタ通リ、色こ
ナ能力ヲ考ヘルト云フ御議論ハ御尤ニ承ッテ居リマス、ソレ
ハ一種ノ御議論トシテ、併ナガラ私ハ現在ノ狀況ニ於テハ、
市町村稅ノ負擔ヲ分任スル者ヲ以テ、選擧權者トスルコト
ガ適當ナリト考ヘテ、(「理由ハドウダ」ト呼フ者アリ、拍手起
ル)而シテ其結果トシテハ五割ノ增加ニナッタト申ス、五割ノ
增加ヲ見テサウ決メタノデハナイ、決メテ而シテ其結果ハ五
割ノ增加デアッタ、斯ウ云フノデス、而シテ理由ハソレヲ以テ
適當ナリト認メタ、是ヨリ明瞭ナル理由ハアリマセヌ
〔「明瞭々々」ト呼フ者アリ、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=46
-
047・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 質疑ノ通告順ニ依シテ氏名ヲ呼ビ
マス、尙ホ九名ノ通告ガゴザイマス、各、質疑ニ就テ要領ヲ
述ベラレル點ニ就テハ、決シテ議長ハ制限ハシマセスガ、成ベ
ク先キニ問答ノアッタ箇條ハ避ケテ戴クコトヲ希望致シマス、
淺賀長兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=47
-
048・淺賀長兵衞
○淺賀長兵衞君 議長、私ノハ一點ノ質問ニ止リマスカラ、
此席カラ質問ヲ試ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=48
-
049・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 皆サンニ徹底スル爲メニ登壇ヲ望
ミマス
〔淺賀長兵衞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=49
-
050・淺賀長兵衞
○淺賀長兵衞君 本員ハ此市町村制改正案ニ就キマシ
テハ、實ハ質問ノ箇條ト致シマシテハ三點アッタノデアリマス、
卽チ其第一點ハ只今國民黨ノ砂田君、竝ニ我黨ノ三木君
ヨリ既ニ質問濟トナッテ居ル所ノ階級撤廢、竝ニ納稅資格
撤廢ニ關シテヾアリマシタガ、此點ニ就キマシテハ、既ニ質問
濟トナッテ居リマスカラ省略致シマス、ソレカラ今一點ハ神官
神職、僧侶、竝ニ小學校〓員ニ對スル被選擧權附與ノ事
デアリマス、之ニ就テモ旣ニ先程砂田重政君ヨリ質問ヲセ
ラレ、政府ヨリ之ニ對スル答辯ガアリマシタルヲ以テ、只今議
長ノ御注意アル故ヲ以テ玆ニ省略致シマス、殘ル所ノ一ツ
ノ質問ノ點ハ、市町村長ハ何ガ故ニ其市町村ノ住民ノ公
選ニ待ツベキ制度ヲ、此際採ラナカッタカト云フ點デアリマス
私ハ持論ト致シマシテハ、府縣知事竝ニ郡長ハ勿論、市町
村長ニ至ルマデ、ソレ〓〓其住民ノ公選ニ待ツガ、最モ此改造
ヲ要求スル現下ノ時運ニ適當ナリト思フノデアリマス、(拍手
起ル)府縣知事竝ニ郡長ノ公選論ハ姑ク之ヲ措キ、市町村
長ノ公選ニ就テ、聊カ卑見ヲ述ベテ見タイト思フノデス(「質
問ハ許スガ意見ハ許サヌ」ト呼フ者アリ)卽チ市町村長ヲ其
市町村ニ於ケル所ノ、公選トスベキ制度ヲ必要トスル所以
〓
〔「意見ハ許サヌ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=50
-
051・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸君、靜ニ-淺賀君、アナタハ今
意見ヲ述ベテ見タイト言ハレマシタガ、質問ノ要領ヲ述ベル
ノデスカ-質問ナラバ質問ノ要領ニ變ヘテ戴キマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=51
-
052・淺賀長兵衞
○淺賀長兵衞君(續) ンレデハ質問ノ要領ニ變化致シマ
ス、偖此現行市町村制ニ依リマスルト、市町村長ハ市町村
會ノ選擧ニ依ッテ之ヲ選出スルコトニナッテ居リマスルガ、私
ハ之ヲ非常ニ弊害ノ由ッテ來ル根本ナリト思フノデアリマス、
殊ニ東京市長ノ先頃ノ選擧ニ於テ、遺憾ナク此點ヲ暴露シ
テ居ルデハアリマセヌカ、(拍手起ル)卽チ後藤市長ガ市長ニ
就任サルヽニ方リマシテハ、市會ノ選擧デナクシテ、市會議
員以外ノ者ノ努力ニ依ッテ、始メテ市長ニナッタル結果ヲ吾、
ノ前ニ展開シタデハアリマセヌカ、卽チ市會ニ於テ後藤市長
ヲ市長ノ候補者トシテ推薦致シマシタ、然ルニ··
〔「誤解シテハイカヌ」ト呼ヒ其他發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=52
-
053・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 靜肅ニ··
〔「靜〓ニ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=53
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054・淺賀長兵衞
○淺賀長兵衞君(續) 然ルニ此點ニ就キマシテハ、後藤市
長ハ泰然トシテ之ニ應ゼズ、卽チ市會ニ於キマシテハソレゾ
レ交涉委員ガ出來マシテ、百方力ヲ盡シテ交涉シタルニモ
拘ラズ之ヲ拒絕シ、遂ニ實業界ノ泰斗タル澁澤子爵、此處
ニ御在デノ床次內務大臣、竝ニ原總理大臣ノ手ヲ經テ、漸
ウニシテ後藤市長ハ其就任ヲ見ルニ至ッタノデアリマス、是
レ卽チ市會議員ガ市會ニ於テ選擧シタルノデナクシテ、偶〓以
テ市會議員以外ノ者ガ選舉シタト云フ實ハ結果ニ到著シ
タノデアル、(拍手起ル)斯ル點ハ現行ノ市町村長ノ選擧其
宜シキヲ得ザル、大缺陷ト思フノデアリマス、(拍手)此意味
ニ於キマシテ、私ハ市町村長ノ如キ其自治ノ代表機關ハ、
宜シク其住民ノ公選ニ依ッテ之ヲ選出スルガ、最モ必要ナリ
ト云フコトヲ感ズルノデゴザイマス、此意味ニ於テ私ハ、今回
ノ如キ市町村制ノ大改正ヲ爲スニ方ッテハ、理事者ハ-否
ナ政府當局ハ何ガ故ニ此點ニ就キマシテ、御考慮ヲ拂ハザ
リシヤ否ヤト云フコトヲ質問致ス次第デアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=54
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055・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 床次內務大臣
〔國務大臣床次竹二郞君登檀、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=55
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056・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 御答致シマスガ、確ニ一ツ
ノ御意見デアリマシテ、是ハ將來ノ問題ト致シタイト思ヒマ
ス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=56
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057・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 〓水留三郞君
〔〓水留三郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=57
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058・清水留三郎
○〓水留三郞君 諸君、只今議題ニナッテ居リマスル市町
村制ノ改正案ニ就キマシテ、既ニ三木君、及砂田君等ヨリ、
詳シク論ジラレテ居リマスカラ、私ハ極ク簡單ニ要點ノミヲ
二三質問致シタイト思フノデアリマス、先ヅ第一ハ此案ヲ通
讀致シマスルト、從來直接市町村稅二圓ト云フノガ、市町
村稅ヲ納ムルト云フ點ニナッテ居ル、此點ハ前ノ法律ヨリハ
確ニ進歩シテ居ルト云フコトハ私共認メマス、其進歩ガアル
ナラバ、百尺竿頭一步ヲ進メテ、何故納稅上ノ撤廢ヲ期サ
ナイノデアルカ、此問題ニ就テハ既ニ論ジラレテアリマスカラ
私ハ玆ニ申サレマセヌ、口ハダ間接稅ト云フコトヲ無視シテ居
ル、少クトモ市町村ノ間接稅、今日ハ市町村ニ於テモ、直接
市町村稅ヨリハ相當間接稅ヲ盛ニ取ッテ居ル、之ヲ無視ス
ルト云フコトハ非常ナ誤リデアラウト云フコトヲ信ジマス、之
ニ就テ何故納稅上撤廢ヲ期シナイカト云フコトガ、第一ノ
質問ノ要旨デゴザイマス、第二ハ此階級選擧ノ撤廢ヲセザ
ルカト云フコトデゴザイマスガ、是ハ旣ニ詳シク論ジラレテ居
リマスカラ是ハ論ジマセヌ、只タ若シモ階級制度ガ必要デア
ル、卽チ市ニ於テ二級選擧ノ制度ニシテ居ルナラバ、之ヲ二
級ヲ何故撤廢シナイカ、若シモ撤廢スルコトガ出來ナイ、卽
チ先程內務大臣ノ說明セラレタ通リ、卽チ此稅金ヲ納メル
者ヲ平均シテ、其平均以上ノ者ヲ一級トシ、平均以下ノ者
ヲ二級トスル、卽チ一ニ對スル三ノ割合デアルト一云フ御話デ
アッタ、是ハ今日ノ制度ヨリハ進步デアル、進步デアルガ、尙
ホ進ンデ若シモ此制度ガ必要デアルト云フナラバ、總テノ人
員ヲ二ツニ分ケテ、一ヲ一級トシ、一ヲ二級トシナイノデアル
カ、卽チ一ト三ノ割合デアルノヲ、何故一ト一ノ割合ニシナイ
カ、ソレマデシナイト云フノハドウ云フ考デアルカ、之ニ就テ第
二ノ疑ヲ持ッテ居ルノデアリマス、第三ハ市ノ有權者ヲシテ
比較的增加シナイデ、町村ノミニ增加セシメタル理由如何、
是亦論ジラレテ居リマスカラ私ハ中上ゲマセヌ、其次ニハ吾
吾ガ疑ヲ挿ムノハ、若シ此法律ヲ實施サレタ場合ニ於テ、全
部ノ市町村トハ申シマセヌガ、或ル特殊ノ市町村ニ於テハ、
多數者ガ少數者ヲ壓迫スルノ傾向ハ無イカ、之ヲ私ハ特ニ
質問致シタイト思フ、卽チ或村或町ヘ參リマスト云フト、町
村稅ノ約七割乃至八割ヲ、一二ノ富豪ニ於テ負擔シテ居
ル例ガ幾ラモアル、此場合ニ於テ若シ此町村ノ階級ヲ撤廢
シテ、サウシテ此金持卽チ町村費ノ七割八割ヲ負擔シテ居
ル所ノ村ニ於テ、尙ホ一級二級ノ選擧ヲ廢スルト云フト、其
爲メニ多クノ者ガ寄ッテ蝟ッテ、少數者ヲ壓迫スル傾向ヲ生
ズル、之ニ對シテドウ云フ風ナ取締ヲ設クル考デアルカ、卽チ
少數者ヲ壓迫シテ居ル現在ノ制度ニ就テハ、吾ニハ之ニ反
對シナケレバナラヌノデアルガ、又多數者ガ少數者ヲ壓迫ス
ル時ニ於テハ、之ニ對スル相當ノ取締ノ必要ガアル、此取締
ニ就テドウ云フ風ナ御考ガアルヤ、之ヲ私ハ內務大臣ニ御
伺致シタイト思ヒマス、次ニ御伺致シタイノハ、此市町村制
ノ改正案ナルモノヲ、政府ガ果シテ實行スルノ意思アリヤ否
ヤト云フ點デアル、何故カト云フト、若シモ眞ニ之ヲ實行ス
ル意思ガアルナラバ、之ヲ疾ウニ提出シナケレバナラヌノニ、
遲蒔ノ今日ニ之ヲ漸ク出ス、而モ今日ニ出シタナラバ、私共
ハ信ズル、恐ラクハ貴族院ニ於テ握潰シニ遭ヒハシナイカ、之
ニ對シテ政府ハ、必ズ是ハ貴族院ヲ通過スルデアラウト云フ
確信ヲ持フテ居ルヤ否ヤ、卽チ之ヲ今年ヨリ實行スルト云フ
風ノ考ガアリヤ否ヤト云フコトニ就テ、御伺致シタイ、尙ホ若
シ是ガ幸ニシテ衆議院竝貴族院ヲ通過シタ場合ニ於テ、此
四月、五月、六月アタリニ於テ幾多ノ選擧ガアル、此選擧ニ
之ヲ利用致シタイト云フノガ、提案者ノ御意思デアラウト思
ヒマス、併ナガラ是ガ果シテ法律トナリマシテモ、少クトモ一
箇月位ト云フモノハ、種々ナル關係、卽チ名簿ノ調製其他ニ
於テ暇取ル、サウスルト是ガ果シテ此四月五月ノ選擧ニ間
ニ合フヤ、否ヤ間ニ合ハナケレバ、之ヲ間ニ合セル爲メニ勅
令ナリ何ナリヲ發布シテ、サウシテ四月五月ノ選擧ヲ延期
スルト云フ風ナ御考ガ政府當局者ニアルヤ否ヤ、卽チ一日
モ早ク之ヲ實行スルト云フ御考アリヤ否ヤ、以上申上ゲマス
ル五ツノ點ニ就キマシテ、私ノ質問ヲ極ク簡單デハアリマシ
タガ、之ニ就テ明快ナル所ノ內務大臣ノ御答辯ヲ希望スル
ノデアリマス(拍手起ル)
〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=58
-
059・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 御答シマス、納稅資格ヲナ
ゼ存ジタカト云フコトニ就テハハ既ニ御答致シマシタ、第二
ノ市ヲ二級制ニシタ以上、寧ロ進ンデ有權者ヲ半數宛ニ折
半セザルノハドウ云云譯カト云フ、左樣ナ級別ヲ致シタナラ
バ、恐ラク意味ガ無カラウト思ヒマス-無イコトニナラウト
思ヒマス、其次ハ級別ヲ撤廢シタナラバ、少數者ヲ多數壓
迫スルコトナキヤト云フノデアリマス、私ハ日本ノ國情トシテ
ハ、左樣ナ事ハアルマイト思ヒマス、併ナガラ尙ホ戶數割等
ノ納稅ニ就テハ、規定ヲ改メテ見ヤウト考ヘテ居リマス、ソレ
カラ其次ニ實行ノ意思アルヤ否ヤ、勿論ノ事デアリマス、蓋
シ本院ニ於テモ御協賛下サルコトヽ信ジテ居リマスガ、然ル
以上ハ必ズ貴族院ニ於テモ、此衆議院ノ議決ヲ尊重セラル
ルデアラウト信ジマス、(拍手)次ニ此法ハ次ノ總選擧ヨリ施
行スルコトニナッテ居リマスガ、出來ルダケ急グ積リデアリマス
ケレドモ、併シ差迫ッタ次ノ總選擧ヲ、以テ規定ヲ以テ新法
ニ依ラナケレバナラヌト、左樣マデ差迫シタモノトハ考ヘマセ
ヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=59
-
060・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 荒川五郞君
〔荒川五郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=60
-
061・荒川五郎
○荒川五郞君 段々御質問ガアリマシテ、本案ノ最モ大事
ナ要點ニ就テハ、既ニ質問應答ヲ重ネラレマシタカラ是ハ省
キマスガ、尙ホ其他ニ於テ地方制度ノ大體ニ關シ、重大ナル
點ガ一二アルト認メマスルカラ、其點ニ就テ伺ヒマス、原總
理大臣竝ニ床次内務大臣ハ、兎角妥協苟合ト云フコトニ
力ヲ入レテ、常ニ國家ノ重大ナル法律等ヲ、一部分ノ黨派
黨情ノ爲メ妥協的ニ作成成案セラレテ、議會ニ出サレルト
云フュトハ、此市制町村制ニ止ラズシテ、是マデモ段々其例
ガアルノデアリマス、國家ノ基礎ヲ成ス地方制度、殊ニ市町
村ノ大切ナル自治ヲ斯ル情實黨情ノ上ニ打立テラレルト云
フコトハ、國家ノ進運ノ爲メニ、帝國ノ將來ノ爲メニ甚ダ遺
憾ト致ス所デアリマス、其一例ハ曩ニ府縣制ノ改正ヲ、原君
ガ內務大臣、床次君ガ內務次官ヲ爲サレタ當時ニ提出セ
ラレマシテ、種々ノ改正ヲセラレマシタガ、其中ノ要點ノ所ハ、
府縣參事會員ノ任期四箇年ヲ一箇年ニ改メラレタコトデ
アリマス、是ハ必ズシモ全ク政友會諸君ノ皆サンノ御事情ニ
依シテ、黨情ニ制セラレタトハ申シマセヌケレドモ、(「質問ノ要
點ダケヲ願ヒマス」ト呼フ者アリ)其參事會員ノ選擧ニ種々
ノ煩雜ヲ來シテ、黨派ノ駈引上御困リニナルト云フコトカラ、
之ヲ年々ニ選擧スルコトニ改メタ、是ハ四年任期ノモノヲ一
年宛四度ニ擴ゲテ、黨員ニ利スルト云フ一ツノ情實ヨリシ
テ、此任期四年ヲ一年ニ改メマシタノデアリマス、然ルニ其
實施ノ結果ハ如何、全國各地方トモ、其選擧ノ爲メニ大切
ナ縣會期間ノ大部分ヲソレニ消費スルコトニナッテ、地方ニ
多大ノ迷惑ヲ見テ居リマスカラ、遂ニ地方官ノ問題トナリ、
更ニ政府ニ於テモ審議セラレテ、此四年ノ任期ヲ一年ニ改
メタモノヲ、更ニ逆戾リヲシテ、四年ニ復舊セナケレバナラヌ
ト云フコトナリ、政府ノ既ニ成案ニナッテ居ルト承ッテ居リマ
ス、(「ノウ〓〓」)政府ハ近々ニ此府縣制改正案ヲ當議會ニ
提出セラレルト云フコトハ、新聞上デモ承ッテ居リマス、其箇
條ノ中ニハ必ズ之ガアルト思フノデアリマス、一時ノ情實黨
弊ニ依シテ改メラレタ、斯ル不理窟ナル、不徹底ナル、不條理
ナ鵺的法制ハ、到底永續スベキモノデハアリマセヌ、隨テ近
ク改正ガ出ヤウト云フコトハ、過ッタト雖モ玆ニソレヲ改メラ
レヽバ、床次內務大臣ノ其虚心坦懷ノ雅懷ニ向ッテ、吾〓ハ
敬意ヲ表スルノデアリマスガ、今ヤ更ニ其府縣制改正案ニ
モ一步ヲ進メタル、鳩的不徹底ナル此市町村改案ヲ玆ニ出
サレマシタガ、此案モ亦府縣制改正ト同ジク、數年後ニハ必
ズ又之ヲ改メテ、此過ヲ議場ニ表セラルヽモノト思フノデア
リマス、ソレハ他日ニ讓リマシテ、府縣制改正案ハ、市町村
ノ改正案ト密接ナ關係ノアル大切ナ事ト思七マスガ、政府
ハ此議會ニ其改正案ヲ出サレマスヤ、出サレマスナラバ、ソレ
ト相關聯シテ此案ノ大不徹底ト云フコトハ、悟リ得ラレル
コトヽ思フノデアリマス、府縣制改正案ヲ提出セラレルヤ否
ヤ、是ガ第一點ノ御尋デアリマス、(「簡單々々」ト呼フ者アリ)
少シ御待チナサイ、サウ急グモノデハアリマセヌ、國家ノ根柢
ニ關ハル地方自治ノ重大問題デアリマス、(「ヤリ給へ」ト呼
フ者アリ)此重大問題ヲ僅カノ時間ヲ待ツコトガ出來マセ
ヌカ、(「委員會デ悠クリヤリ給へ」「悠クリヤリ給ヘ」ト呼フ者
アリ)、第二ニ原君ハ西園寺內閣ノ當時ニ、郡制ノ廢止案
ヲ提出サレマシタ、是ハ原君ノ爾來ノ信念トシ斷行ヲ期シ
テ居ラルヽト承ッテ居リマス、昨年以來郡制廢止案ハ、必ズ出
スコトニ內閣ノ閣議ニモ決定シテ居ルト承ッテ居リマス、此郡
制ノ存廢ハ、市町村ノ改善、自治ノ進步ニ伴レテ重大ト心得
マス、(「左樣デゴザイマスカ」ト呼フ者アリ)併シ郡制發布セ
ラレテ二十餘年、其郡制ノ施行上ニ色こナル施設進步ヲ見
テ居リマス、先年郡制廢止案ヲ提出セラレタ時トハ、今日ハ
大ニ事情ヲ異ニシテ居ルト思ヒマスガ、政府ハ尙ホ郡制ヲ廢
止スル積リデアリマスカ、此議會ニ其提案ヲサレルデアリマス
カ、郡制廢止案ヲ出サレルトスルモ、郡役所ハ其儘ニ置クト
云フノデアリマスガ、然ラバ費用ノ上ニハ却テ增加ヲ來スト
思フノデアリマス、此點ニ就テ地方制度改善ノ上ニ重大ナ
ル關係ガアリマスカラ、之ヲ第二點ニ御尋致シマス、モウ一
ツ(「早クここ」「悠クリヤリ給へ」ト呼フ者アリ)、私ハ成ベク簡
單ニ申シマス、悠クリモ致シマセヌケレドモ、大事ナ所ダケ
ハ靜カニ御聽取リヲ願ヒマス、(「簡略ニシ給へ」「大事ナ所ハ
チットモ無イ」ト呼フ者アリ)第三ニ市町村ノ制度ハ爾來幾
多ノ改正ヲ經マシタガ、制度其モノヲ幾度改正致シテモ、之
ヲ運用スルニハ人ニ在ルノデアリマス、隨テ市町村ノ改善ト
共ニ、市町村長以下吏員ノ待遇ト云フコトハ、市町村ノ改
正ト共ニ重大ナル事項ト心得マス、仍テ先年私共ハ市町村
長以下市町村吏員ノ待遇改善ニ關スル建議案ヲ提出致シ
マシタ其際ニ政府ハ、市町村長以下市町村吏員ノ改善ニ
ハ力ヲ效ストカ、或ハ位階動等其他ノ事ニモ、計畫ガアルト
ノコトデアリマシタ、私共ハ市町村長以下ノ待遇改善ノ、必
ズシモ位階勳等ニ限ルトハ思ヒマセヌ、一體市町村長ノ如
キハ····無階級ノ者デアリマス、無階級ノ者デアリマス、併シ
今日ハ此帝國議會ノ議員ノ如キモ階級ノ者デハナイ、役人
ノ如ク五等ヨリ四等、四等ヨリ三等ト云フヤウニ階級的ノ
者デハナイカラ、其階級的ノ者デナイ者ニ、階級的ノ基礎ヲ
以テ作成シタ所ノ位階動等ヲ以テ充行フト云フコトハ、聊カ
妙ニ·モ感ズル、況ヤ今日ハ議員ニシテモ、或ハ市町村長助役
ニシテモ、勳等ダケニナッテ居リマス、動ガ有ッテ位ガ無イ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=61
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062・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 法律ニ關係ノアル質問ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=62
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063・荒川五郎
○荒川五郞君(續) 勳等ガ有ッテ位階ガ無イト云フコトハ
笠ガ有ッテ下駄ガ無イ、雨降リニ笠ガ有ッテ下駄ガ無イヤウ
ナモノト思フノデアリマスガ、此市町村長以下ノ吏員ノ待遇
ヲ改善セラレナイノデアリマスカ、折角政府ガ智惠ヲ絞ッテ
制度ノ改善ヲ希望セラルヾモ、之ヲ運用スル其人ノ上ニハ、
何等考慮ヲ拂ハレナイノデアリマスカ、此市町村吏員優遇
ニ關スル事ヲ第三ニ御尋致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=63
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064・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 床次内務大臣
〔國務大臣床次竹二郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=64
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065・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹一一郞君) 御答致シマスガ、第一此制
度ノ云々ト云フコトデアリマシタガ、曩ニ漸ヲ以テ進ムト云
フコトヲ說明致シテ置キマシタ、ソレデ御承知ヲ願ヒタイ、ン
レカラ府縣制ナリ、郡制等ノ事ニ就キマシテハ、何レ不日提
案ヲスル考デアリマスルカラ、其時ニ委細ノ事ハ申上ゲタノ
デス、ソレカラ町村長ノ待遇ニ就キマシテハ、是ハ御同感ア
アリマスルガ、就職以來多少努メタ所モアリマス、今後ト雖
モ出來ルダケノ事ハ致シタイ積リデ居リマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=65
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066・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 森下龜太郞君
〔森下龜太郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=66
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067・森下亀太郎
○森下龜太郞君 旣ニ多數ノ先輩諸君ノ(「要點ダケ簡
單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)御意見ノアッタ後デアリマスカ
ラ、私ハ極メテ簡單ニ先輩諸君ノ言明ニ觸レザル點ニ就テ
私ノ疑ノアル點ヲ二三質シタイト思フノデアリマス、全體本
案ハ世ノ普通選擧論者-普通選擧論者ヲ首メト致シマ
シテ、國民ノ多數ガ、政友會ガ普選ニ對スル罪亡ボシノ一ノ
案ナリトシテ、多大ノ期待ヲ以テ迎ヘタル所ノ案件ノ一デア
ルノデアリマス、所ガ私共其法案ヲ手ニスルニ當リマシテ、洵
ニ此期待ヲ裏切リマシタ所ノモノハ、其數ハ少クナイノデア
リマス、就中第一ニ砂田君ガ御尋ニナリマシタ點、卽チ市ニ
於テ二重制ノ存置、町村ニ於テ例外トシテ二級制ヲ認メタ
ル點、是ガ吾〓ノ常識的〓究カラ申シマスルト、嘗テ原總裁
ガ此席ニ於カレマシテ、普通選擧ニ對シテ漸進主義ヲ採ル
ト云フ御說明ノ當時ニ於キマシテ、須ラク權利ノ附與ハ國
民ノ憲政ニ對スル自覺ニ其標準ヲ取ラネバナラヌト云フコト
ノ御說明ノアリマシタト同樣ニ此市町村民ノ憲政ニ關スル
自覺ノ如何ニ依リマシテ、權利ノ附與、若クハ其附與セザル
コトヲ決定シナケレバナラヌノデアリマス、ンコデ私共ガ世ノ
中ノ實相ニ就テ見マスレバ、全國ノ都市ハ之ヲ町村ニ比較
致シマシテ、其文化ノ程度ハ町村ガ進ミツヽアルカ、都市ガ
進ミツヽアルカ、其進步ノ程度ヲ測定致シマスルナラバ、今日
選擧權ノ附與ニ對シマシテ、何レヲ無制限ニ附與スベキデ
アルカ、何レヲ或制限ノ下ニ附與スベキカト云フコトニ就キ
マシテ考案ヲ運ラシマスルナラバ、或ハ今日政府ガ御提出
ニナリマシタ所ノ法案其モノハ、アレハ吾〓ノ理想ヲ裏切ッテ
居ル、全ク冠履轉倒ノ法律デハアルマイカト考へルノデアリマ
ス、政府ハ或ハ數學的ニ、今日都市ハ三級別ヲ持ッテ居ルノ
デアルカラ、漸進的ノ觀念ヲ以テスルナラバ二級別ニスル
ナラバ或程度ノ進歩デアル、町村ハ現在二級別ナルガ故ニ
之ヲ單級制トシテ而シテ例外トシテ二級制ヲ認メルト云フコ
トナラバ、是モ亦或ル程度ノ進歩デアル、斯ウ云フ御說明ニ
ナッタノデアリマス、又先程內務大臣ノ御說明モ、斯ル意味
ヲ以テ御說明ニナッタノデアリマス、併ナガラ諸君、國民ノ憲
政上ニ於ケル自覺ノ度ナルモノハ、斯ノ如キ數學的ノ比較
ヲ以テ論定スルコトガ穏當デアリマセウカ、私ハ斯ノ如キ論
定ハ、抑立法ノ根本的觀念ニ甚シイ誤ヲ來スモノデアルト
信ズルノデアリマス、カルガ故ニ私ハ第一ノ御尋ト致シマシ
テハ、寧口憲政上ニ於ケル國民ノ自覺ト云フコトヲ前提ト
致シテ、選擧權ノ附與若クハ附與セザルコトヲ區別スベキコ
トヲ穩當トスルナラバ、寧ロ市ヲ無級別トシテ、町村ヲ或程
度ニ於ケル級別ヲ與へルト云フコトガ穏當デハアルマイカ、
然ルニ政府ガ之ヲ逆ニ町村ニ於テ之ヲ單級制ヲ原則トシ、
都市ニ於テハ之ヲ二級別ニシタト云フ所ノ趣旨ハ、先程私
ガ非難致シマシタ數學的ノ見地ヨリ、斯ル立法ヲ爲サレタ
ノデアルカト云フコトヲ押シテ御尋ヲシタイト思フノデアリマ
ス、第二ノ御尋ハ此附則ノ適用ニ就テ御尋ヲシタイト思フ
ノデアリマス、此法案ノ附則ヲ見マスト、附則ニ公民權竝ニ
選擧權ニ關スル規定ハ、次ノ總選擧ヨリ之ヲ施行スルトア
ル、次ノ總選擧ヨリ之ヲ施行スルトアリマスル以上ニ於キマ
シテハ、今回ノ會期ガ本月二十五日ニ終リマシテ、其間ニ是
ガ兩院ヲ通過スルト致シマスナラパ、而シテ是ガ裁可ヲ得マ
スルト、直チニ次ノ總選擧ヨリ-若シ是ガ本日中ニ其裁
可ヲ得ルト云フコトガ出來マスルナラパ、四月一日ヨリ實行
サルベキ所ノ總選舉ヨリ之ヲ行フト云フコトニナラネバナラ
ヌノデアリマス、是ハ此法案ノ上カラ言ヒ得ルコトデアリマス
ケレドモ、之ヲ實際ニ行フ日ニナリマスト、他】ノ法律ノ條文
ニ撞著致シマシテ、之ヲ四月一日以後ノ選擧ニ之ヲ實行ス
ルコトガ出來ナイト云フ事實ハ、如何ニ之ヲ救濟ヲ爲サル御
考デアルカ、先程淺賀君ノ質問ニ對シマシテ、内務大臣ハ或
程度ノソレニ對スル說明ヲ與ヘラレマシタケレドモ、私ハ其
御說明デハマダ滿足スルコトガ出來ヌノデアリマス、御承知
ノ通リ現在ノ選舉法ニ於キマシテハ、選擧ヨリ數十日以前
ニ於キマシテ、選擧人名簿ノ閲覽ト云フコトヲ一般公衆ニ
爲サシメネバナラヌノデアリマス、而シテ選擧ヨリ六十日以
前ノ現在ニ依リマシテ、選擧人名簿ノ作製ト云フコトニシ
ナケレバナラヌノデアリマス、サウ致シマスルト、ドウシテモ四
月一日ヨリ本法ヲ施行セント致シマシテモ、次ノ總選擧ガ、
四月一日以後五月六月エ亙リマシテ續々發生スルト致シ
マスト、ソレニ適用セント致シマシテモ、第一選擧人名簿ノ作
製、選擧人名簿ノ閲覽ヲ爲サシムル期間ノ猶豫ガ、存在シ
ナケレバナラヌト云フコトニナル、其間ニ於ケル過渡時代ニ
於ケル立法ヲ如何ニ致シマスカ、政府ハ現在差迫ッテ居ル所
ノ選擧ニ之ヲ適用スル程、本案ガ急速ナルコトノ必要ヲ認
メテ居ラヌト云フ如キ意味ノ先程御說明ガアリマシタガ、併
ナガラ其以前ニ內務大臣ガ此席ニ於キマシテ御述ニナリマ
シタ所ヲ承リマスト、現行市町村制ハ實ニ三十年前ノ昔ノ
古法ニ屬シテ、今日ノ進步セル文化ノ限度ニハ適應シナイ
所ノ古イ法律デアル、カルガ故ニ政府ハ一日モ斯ノ如キ古
イ法律ヲ存置スルト云フコトハ忍ブコトガ出來ナイ、爰ニ始
メテ此改正ヲ企タノデアルト云フ御御明デアッタノデアリマ
ス、私ハ其說明ヲ承ルト、斯ノ如キ古イ法律ハ旣ニ古イ法律
デ、此現在ノ時代ニ適應セヌ所ノ法律デアルト云フコトヲ、
政府ハ既ニ御認ニナッテ居ル以上ニ於キマシテハ、而シテソ
レニ代ルベキ理想的ノ法律ガ爰ニ通過シタト致シマスルノ
ナラバ、其翌日カラデモ、其法律ヲ適用スルト云アノガ、政府
ノ意思ヂアルト云フコトヲ言ハレネバナラヌト私ハ考ヘルノ
デアルガ、(拍手起ル)床次內務大臣ハ、全クソレニ反對ナル
言明ヲ爲サレタト云フコトハ、吾輩何カ御間違デ、斯ノ如ク
御答ニナッタノデハアルマイカト云フコトヲ心配スルノデア
リマス、(「旨イゾ」ト呼フ者アリ)之ガ故ニ私ハ斯ノ如キ睹易
キ事柄ヲ床、次內務大臣ガ御誤リニナルトモ思ヒマセヌケレ
ドモ、之ガ若シ萬一御間違ニナッテ居ルモノトスルナラバ、實
ニ此過渡時代ニ處スル立法、現在ノ法律ハ是ハ現代ニハ適
應シナイ所ノモノデアルカラ、新法ガ幸ニ]兩院ヲ通過シタナ
ラバ、直チニ之ヲ施行スルダケノ適當ナル所ノ方法ヲ執ルノ
デアル、其方法ヲ執ルノデアルト云フコトノ御言明ヲ得タイ
ノデアリマス、而シテ私ハソレヲ若シ言明ヲ得ルコトガ出來
ヌト致シマスルナラバ、私ノ此意見ハ洵ニ時代ニ適切ナル、
又現在ニ差迫ッタ所ノ問題ナルガ故ニ、必ズ委員會ニ於テ
ハ、此問題ヲ滿場ノ諸君ノ賛成ヲ得マシテ、修正デモセネバ
ナラヌト考ヘル、カルガ故ニ或ハ一箇月若クハ二箇月之ヲ實
施シ得ルダケノ期間ヲ存置スルコトニシテ、卽チ施行法ニ依
リマシテ、或ハ附則ニ第二條ヲ設ケテ、現在ノ市町村會ノ議
員ノ職ニ在ル者ハ、一一一箇月間之ヲ實施スルニ適當ナル期
間ノ間任期ヲ延長シ、而シテ其間ニ此新法ヲ實施スル所ノ
準備ヲスルト云フ位ノ、吾ミハ方法ニ出デタイト思ウガ、政
府ハ果シテ如何ナル御考ガアルカドウカ、是ハ極メテ大切ナ
ル事ト考ヘマスルガ故ニ、更メテ重ネテ御〓ヲスル次第デア
リマス、此以上ノ事ヲ申シマスト又蛇足ニ屬シマシテ、諸君
ノ御倦怠ヲ招クコトニナリマスカラ、先ヅ是ダケノ事ヲ申上
ゲテ此席ヲ降ルコトニ致シマス
〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=67
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068・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 今ノ御尋ニ御答シマスガ、
市ト町村ト級別ヲ撤廢スル事ニ就キマシテハ、前ニ本案說明
ノ際ニ町村ノ級別ノ狀況、竝ニ市ニ於ケル狀況ヲ述ベテ、而
シテ町村ハ之ヲ廢止シ、市ハ之ヲ二級トスルト云フコトノ說
明ヲ致シタノデアリマスカラ、ソレニ依シテ御承知ヲ願ッテ置
キマス、第二點ノ次ノ總選擧ノ事ニ就キマシテハ、先程淺賀
君デアリマシタカニ對シテ御答ヲ致シタ通リデアリマス、此
以上ハ大分說明モ複雜ニナリマセウカラ、委員會ニ於テ詳
シク申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=68
-
069・岩崎勲
○岩崎勳君 此兩案ハ言フ迄モナク委員會ニ於テ審議セ
ラルベキモノデアリマスカラ、本會議ニ於ケル質疑ハ、此程度
ニ於テ終了スベシトノ動議ヲ提出シマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=69
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070・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ、リ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=70
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071・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ本案
ニ對スル質疑ハ此程度ニ於テ止メマス-右兩案ノ審査ヲ
付託スキペ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第三右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=71
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072・岩崎勲
○岩崎勳君 兩案ヲ一括シ、濱田國松君外二名提出、府
縣制中改正法律案外八件ノ委員ニ併セテ付託サレンコト
ヲ希望シマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=72
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073・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=73
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074・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 御異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ
如ク決シマシタ-日程第四第五ハ便宜一括議題ト致シ
マス、日程第四、大正九年法律第十號中改正法律案日
程第五、憲兵補ノ恩給ニ關スル法律案ヲ一括シテ議題ト
致シマス、其第一讀會ヲ開キマス、馬場政府委員
第四大正九年法律第十號中改正法律案
(政府提出)第一讀會
大正九年法律第十號中改正法律案
大正九年法律第十號中左ノ通改正ス
第五條ノ二本法ニ依リ退隱料ノ增額ヲ受クル者公務
ニ就キ又ハ在外指定學校ノ職員ト爲リ退隱料ノ支給
ヲ停止セラルル場合ニ於テハ其ノ增額ノ基礎ト爲リタ
ル俸給額ヲ以テ退職當時ノ俸給額トス
附則
本法ハ大正九年七月一日以後ノ分ヨリ之ヲ適用ス
第五憲兵補ノ恩給ニ關スル法律案(政
府提出)第一讀會
憲兵補ノ恩給ニ關スル法律案
第一條憲兵補及其ノ遺族ニ關シテハ恩給ヲ給ス
第二條前條ノ恩給ニ關シテハ憲兵補ヲ陸軍軍人ト看
做シ其ノ該當スヘキ軍人ノ等級ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
メ軍人恩給法ニ依ル
第三條憲兵補助員ノ明治四十三年九月十二日ヨリ
大正八年八月十九日迄ノ勤務日數ハ憲兵補ノ勤務
年數ニ之ヲ通算ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法ハ大正八年八月二十日以後本法施行前ニ於テ軍
人恩給法第五條又ハ第九條ニ規定スル所ニ該當シタル
憲兵補又ハ其ノ憲兵補ノ遺族ニシテ本法施行ノ際現ニ
生存スルモノニ付及憲兵補ニシテ同法第二十七條第一
號又ハ第二號ニ規定スル所ニ該當シタルモノノ遺族ニシ
テ本法施行ノ際現ニ生存スルモノニ付テモ亦之ヲ適用シ
其ノ本法施行ノ際恩給ヲ受クル資格アル者ニ付テハ本
法施行ノ日ヨリ恩給ヲ給ス
前項ニ規定スル本法施行ノ際恩給ヲ受クル資格アル者
ハ本法施行ノ日ヨリ起算シ七年以內ニ恩給ヲ請求セサ
ルトキハ其ノ資格ヲ失フ
〔馬場政府委員登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=74
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075・馬場えい一
○馬場政府委員 大正九年法律第十號中改正ノ趣旨
ヲ說明致シマス、現行法ニ依リマスト、學校職員及巡査、看
守等ガ退隱料ヲ受ケテ居リマシテ、更ニ公職ニ就キマスト云
フト、退隱料ノ全部又ハ一部ガ停止セラルヽノデアリマス、
然ルニ昨年大正九年法律第十號ニ依リマシテ、退隱料ガ
一般ニ增加セラレタノデアリマス、而シテ其增加ハ昨年八月
ニ增俸ヲ致シマシタ前後ノ區別ナク、卽チ差別ナク增加ヲ
セラレテ居ルノデアリマス、然ルニ今此退隱料ノ支給ヲ停止
セラレテ居ル者ガ、現行法通リニ致シマスト云フト、折角ノ
增加退隱料ノ支給ヲ受ケナイコトニナルノデアリマス、故ニ
爰ニ本案ヲ提出致シマシテ、卽チ此退職當時ノ俸給ト云フ
モノニ就キマシテ特別ノ規定ヲ設ケマシテ、以テ此增加退
隱料ノ恩典ニ浴セシムルコトヽ、且ツハ增俸ノ後ニ退職シテ
更ニ公務ニ就イタ者ノ退隱料ヲ受クル者トノ間ニ、不權衡
ナカラシムルノガ本案ノ趣意デアリマス、何卒御審議ノ上、
御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=75
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076・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 山梨政府委員
〔山梨政府委員登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=76
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077・山梨半造
○山梨政府委員 憲兵補ノ恩給ニ關スル法律案ノ說明
ヲ申ゲ上マス、朝鮮ノ國境ヲ警備セシムル爲メニ、朝鮮ノ憲
兵隊ニハ、朝鮮人ヨリ採用致シマスル憲兵補ヲ補足シテ居
ルノデアリマス、勿論此憲兵補ハ純然タル軍人デハアリマセ
ヌ、併ナガラ其軍務ノ狀態ハ憲兵ト同樣デアルノデアリマス、
且ツ憲兵ノ下士、上等兵、及陸軍一二等卒ノ待遇ヲ受ケ
テ居ル者デアリマス、本案ハ是等憲兵補ニ對シマシテ、軍人
恩給法ノ規定ニ依ル恩給ヲ支給シヤウト云フノデアリマス、
ドウカ御審議ノ上御協贊ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=77
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078・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 右兩案ノ審查ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ヲ議題ト致シマス
第六右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=78
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079・岩崎勲
○岩崎動君 兩案ヲ一括シテ、委員ノ數ヲ九名トシ、議長
ニ於テ指名アランコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=79
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080・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=80
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081・岩崎勲
○岩崎動君 議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致
シマス、卽チ茲ニ政府提出職業紹介法案、政府提出軌道
法案、政府提出水道條例中改正法律案、及政府提出供
託法中改正法律案ヲ各別ニ議題ト爲シ、其第一讀會ヲ開
キ、政府ノ說明ヲ求メテ之ヲ審議シ、引續キ各之ガ審査ヲ
付託スベキ委員ノ選舉ヲ行ヒ、次ニ第一號大正九年度歳
入歳出總豫算追加案、特第一號大正九年度各特別會計
歲入歳出豫算追加案、追第一豫算外國庫ノ負擔トナルベ
キ契約ヲ爲スヲ要スル件、及追第二號豫算外國庫ノ負
擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件ヲ一括議題トシテ豫
算委員長ノ報告ヲ求メ、次ニ政府提出貯蓄銀行法案、及
政府提出銀行條例中改正法律案ヲ一括議題トシテ、其第
一讀會ノ續キヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メ、各其審議ヲ進
メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=81
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082・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ日程變更ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「賛成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=82
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083・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、依テ日程ハ
變更サレマシタ、職職紹介法案ノ第一讀會ヲ開キマス、內
務大臣
職業紹介法案(政府提出)第一讀會
職業紹介法案
職業紹介法
第一條市町村長ハ命令ノ定ムル所ニ依リ職業紹介
ニ關スル事務ヲ掌ル
第二條市町村ハ職業紹介所ヲ設置スルコトヲ得
第三條內務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ市町村ヲ
指定シ職業紹介所ノ設置ヲ命スルコトヲ得
第四條市町村職業紹介所ヲ設置スルトキハ市町村
長之ヲ管理ス
第五條市町村ニ非サル者職業紹介所ヲ設置セムトス
ルトキハ行政官廳ノ許可ヲ受クヘシ
第六條本法ニ依ル職業紹介所ノ職業紹介ハ之ヲ無
料トシ何等ノ名義ヲ以テスルニ拘ラス報償トシテ手數
料其ノ他ノ財物ヲ受クルコトヲ得ス
第七條職業紹介所ノ事業ノ聯絡統一ヲ圖ル爲中央
及地方ニ職業紹介事務局ヲ設ク內務大臣之ヲ監督
ス
職業紹介事務局ノ管轄區域、組織及職務權限ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條職業紹介所ノ事業ノ經營ニ關シ職業紹介委
員會ヲ置ク內務大臣之ヲ監督ス
職業紹介委員會ノ組織及職務權限ハ勅令ヲ以テ之
ヲ定ム
第九條市町村ノ設置スル職業紹介所ニ關スル經費
ハ市町村ノ負擔トス
第十條國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ職業紹介所ニ
關スル經費ノ支出ヲ爲ス市町村ニ對シ其ノ支出額
ノ二分ノ一以內ヲ補助ス
第十一條職業紹介所ノ設備及管理竝職業紹介所
ノ事業ノ聯絡統一ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第十二條職業紹介事業ハ內務大臣及職業紹介事
務局ノ長之ヲ監督ス
第十三條監督官廳ハ職業紹介事業ノ監督上必要ナ
ル場合ニ於テハ業務ニ關スル諸般ノ報告ヲ爲サシメ、
書類帳簿ヲ徴シ及實地ニ就キ業務又ハ會計ヲ檢閱
スルコトヲ得
第十四條有料又ハ營利ヲ目的トスル職業紹介事業
ニ關シテハ別ニ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條本法中市町村又ハ市町村長トアルハ市制
町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ之ニ準スヘキモノト
ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム但シ第七條及
第十二條ノ規定ハ勅令ヲ以テ他ノ規定ヨリ後ニ之ヲ
施行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ第七條及第十二條ノ規定ヲ他ノ規
定ヨリ後ニ施行スル場合ニ於テハ其ノ施行ニ至ル迄ノ
間職業紹介事業ノ監督ハ內務大臣、地方長官及郡長
之ヲ行フ
本法施行ノ際現ニ存スル職業紹介所ニシテ市町村ノ經營
係ルモノハ本法ニ依リ設置シタルモノト看做ス其ノ市町
村ニ非サル者ノ經營ニ係ル無料ノ職業紹介所ニ付テハ
勅令ニ定ムル期間內ニ行政官廳ノ許可ヲ受クヘシ
〔國務大臣床次竹二郞君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=83
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084・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 大體ノ說明ヲ申上ゲマス、
公益的職業紹介ノ事業ハ、時代ノ要求ニ應ジ漸次發達シテ
參リマシタガ、其效果ヲ擧グルニハ、公共團體ノ如キ有力
ナル團體ヲシテ之ヲ經營セシメ、成ベク廣キ地域ニ於テ能
ク聯絡統一ヲ保チ、施設經營ヲシテ行クコトガ必要ト考へ
マス、殊ニ失業者ニ對スル保護ノ施設トシテ、益其必要
ヲ感ズルノデアリマシテ、此法案ハ市町村ヲシテ無料ノ紹
介所ヲ經營セシメ、之ガ聯絡ヲ圓滑ナラシムルヲ骨子トシ
テ居リマス、此趣意ハ第一回國際勞働總會ニ於テ採擇セ
ラレタ、失業ニ關スル條約案趣旨トモ合致スル次第デア
リマシテ、彼此時勢ノ要求ニ應ズルモノト考ヘマス、孰レ詳
細ハ委員會ニ於テ申上ゲルコトニ致シマスガ御審議ヲ願ヒ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=84
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085・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 南鼎三君ハ自席ニ居ラレマセヌ
ナーソレデハ質疑ハ取消サレタモノト看做シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=85
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086・南鼎三
○南鼎三君 殘ッテ居リマス
〔「委員會々々々」ト呼フ者アリ〕
〔南鼎三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=86
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087・南鼎三
○南鼎三君 議場ガ倦怠サレテ居リマスノデ、成ベク簡單
ニ申上ゲルコトニ致シマス、(「長クヤレ」ト呼フ者アリ)勞働立
法ノコトニ就キマシテハ、本員ハ若シ肉體ガ續クナラバ、數
時間モ饒舌リタイト思ヒマスガ、却テソレデハ諸君ニ失禮デ
アリマスカラ、意見ハ總テ拔キニ致ジマシテ、只タ要點ノミヲ
御尋致シタイノデアリアス、(「早クヤラヌカ」「止メタラバ宜イ
ヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)サウ言ヒマスト長クヤリマス、本案
ノ内輪ニハ同盟罷業ノ際ニ於ケル爭議地方ニ對シテ、職業
紹介所ノ態度ガ明記サレテナイ、之ヲ御尋シタイ(「能ク判
リマセヌ」「此方ラヘ向イテ願ヒマス」ト呼フ者アリ)ンレハ此
職業紹介所ハ、只今内務大臣ノ御說明ニ依リマスルト、勞
働會議ノ趣意ト合致スルト、云フコトヲ申サレテ居リマスル
ガ、是ハ旣ニ非常ニ此我ガ議會ヲ、其提出ノ理由ニ於テ欺
イテ居ルノデアリマス、是ハ內務大臣ガ本案ヲ提出スルニ就
テハ、御自身ノ竟思カラ出タモノデハナイ、普通選擧ガマダ
早イト言ハレルヤウナ政府者デアリマスガ故ニ、斯ノ如キ職
業紹介所法、卽チ是ハ勞働取引所デアル、サウ云フヤウナ問
題ヲ出サレル氣遣ハナイ、ソレハ千九百十九年ノ一月二十
五日ノ委員會ノ報告、卽チ第二囘ノ職業紹介ト云フコト
ノ條約案ニ決定サレテ居ル、之ヲ朗讀致シマスレバ「本條約
批准又ハ加盟ノ國ハ其ノ聯絡諸國間ニ何レモ中央官憲管
理ノ下ニ公ノ無料職業紹介所ヲ設置スヘキモノトス既ニ
公私幾多ノ職業紹介所アリテ失業者ノ爲救濟ノ途ヲ講シ
ツツアル國ニ在リテハ此等紹介ノ個々若ハ總體ニ亙リ全國
統一的計畫ノ下ニ能ク協調セラルヽヤウ手段ヲ講スヘキモ
ノトヲ」斯ウ云ウ工合ニ明記サレテアリマス、次ニ其第一條
ニ、我國ノ失業狀態ヲ、三箇月間ニ國際勞働局ニ之ヲ通
知スルト云フ規定デアリマスル、第二條ニハ是ハ確定的ニ
ナッテ居ル「本條約ヲ批准スル各國ハ中央官廳ノ管理ノ下
ニ在ル公設ノ無料職業紹介所ノ制度ヲ設クヘシ此等紹介
所ノ運用ニ關スル事項ニ付意見ヲ提出セシムル爲委員ヲ
任命スヘシ」是ハ本案ノ此度提出ナリマシタ第八條ニ明記
サレテアリマス、「委員中ニハ使用者及勞働者ノ各代表者
ヲ加フヘきモノトス」ト云フコトガアリマス、是ハ千九百十一
年華盛頓ニ於テ開カレタル、第一回ノ勞働會議ニ於テ決
定サレマシタル母法ト謂フベキモノデアル、本日御出シニナ
リマシタ所ノ職業紹介所法ハ、申スマデモナク之ニ依ッテ出
來タル私法デアリマス、(「早ク質問ニ入リ給へ」「簡單」「委
員會デ願ヒマス詳細ハ」ト呼フ者アリ)所デ各國ノ勞働取引
所或ハ職業紹介所法ナルモノハ、全部同盟罷業ノ際ニ於
ケル所ノ、勞働會議地方ニ對スル職業者ノ態度ヲ明記シテ
アリマスルガ、是ニハ職業紹介所ハ公平無私デアラネバナリ
マセヌ、或地方ニ-或工場ニ同盟罷業カ起タ夕所デ、資
本家ガ此同盟罷業者ノ要求ニ對シテ應ゼナイ場合ニ於テ
ハ、資本家ハ直チニ之ヲ拒絕スルト同時ニ、職業紹介所ヨ
リ其所要ノ人員ヲ要求スルコトハ、出來ナイト云フ規定ガ
アルノデアリマス、又或ハ其同盟罷業ニ依ッテ失業シタル者
ガ職業紹介所ニ赴イテ、又職業ヲ得ルト云フコトハ出來
ナイト云フ工合ニ規定シテアルノデアリマス、是ハ殆ド職業
紹介所ハ公平無私ナモノデアルト云フコトヲ立證スル大眼
目デアリマス、然ルニ本案ニハ何等規定シテナイト云フコト
是ハドウ云フ工合デアルカト云フコトヲ御尋シタイノデアリ
さく、又勞働會議ニ於キマシテハ、第三條ニハ何等保險ノ
事、同時ニ條約支ハ勸告文トシテハ第三ニ明記サレ、且ツ
此條約ヲ締結シテ居ルノデアリマスルガ、此法案ノ中ニハ、
失業保護ノコトハ何等規定シテ居ナイ、又或ハ別ニ直チニ
御出シニナル御積リデアルカ、是等ノ法案ハ本年ノ七月一
日迄ニ立案確定致シマシテ、國際勞働局ニ通告スペキ責
任ヲ持ッテ居ルノデアリマスガ、其失業保險ニ關スル事項ノ
ナキトキ、竝ニ之ヲ來ルベキ近キ日ニ於テ、御提出ニナルヤ
否ヤト云フコトヲ御尋シタイノデアリマス、此二ツノ條項デ
アリマス(拍手起ル)
〔國務大臣床次竹二郞登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=87
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088・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 南君ニ御答致シマスガ、同
盟罷工ト職業紹介所トハ、今日ニ於テハ關係ヲ取ァテ居
リマセヌ、ソレ故ニ明記致シマセヌ、失業保險ノ事モ左様デ
アリマス、是ハ他日ノ問題ト致シテアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=88
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089・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=89
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090・岩崎勲
○岩崎動君 委員ノ數ヲ九名トシ、議長ニ於テ指名アラ
レコトヲ望ミマス
〔「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=90
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091・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=91
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092・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 仍テ動議ノ如ク洪シマシタ、軌道
法案ノ第一讀會ヲ開キマス、内務大臣
軌道法案(政府提出)第一讀會
軌道法案
軌道法
第一條本案ハ一般交通ノ用ニ供スル爲敷設スル軌
道ニ之ヲ適用ス
一般交通ノ用ニ供セサル軌道ニ關スル規定ハ命合ヲ
以テ之ヲ定ム
第二條軌道ハ特別ノ事由アル場合ヲ除クノ外之ヲ道
路ニ敷設スヘシ
第三條軌道ヲ敷設シテ運輸事業ヲ經營セムトスル者
ハ主務大臣ノ特許ヲ受クヘシ
第四條前條ノ規定ニ依リ特許ヲ受ケタル軌道經營
者ハ軌道敷設ニ要スル道路ノ占用ニ付道路管理者
ノ許可又ハ承認ヲ受ケタルモノト看做ス此ノ場合ニ
於ケル道路ノ占用料ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第五條軌道經營者ハ主務大臣ノ指定メル期間內ニ
工事施行ノ認可ヲ申請スベシ
天災事變其ノ他巳ムコトヲ得サル事由ニ因リ前項ノ
期間內ニ工事施行ノ認可ヲ申請スルコト能ハサル場
合ニ於テハ其ノ期間ノ伸長ヲ申請スルコトヲ得
第六條軌道經營者工事施行ノ認可ヲ受ケタルトキ
ハ道路ニ關スル工事ニ付道路管理者ノ許可又ハ承
認ヲ受ケタルモノト看做ス河川法、砂防法及之ニ基
キテ命令ニ依ル許可又ハ認可ニ付亦同シ
第七條軌道經營者工事施行ノ認可ヲ受ケタルトキ
ハ主務大臣ノ指定スル期間内ニ工事ニ著手シ之ヲ竣
功セシムヘシ
第五條第二項ノ規定ハ前項ノ期間ニ付之ヲ準用ス
第八條地方長官必要アリト認ムルトキハ道路管理者
ヲシテ道路ニ敷設スル軌道工事及之カ爲必要ヲ生シ
タル道路ニ關スル工事ノ全部又ハ一部ヲ執行セシム
ルコトヨ得
前項ノ規定ニ依ル工事ニ要スル費用ノ負擔ニ付道
路管理者及軌道經營者ノ協議調ハサルトキハ申請ニ
因リ主務大臣之ヲ裁定ス
第九條道路管理者道路ノ新設又ハ改築ノ爲必要ア
リト認ムルトキハ軌道經營者ノ新設シタル軌道敷地
ヲ無償ニテ道路敷地ト爲スコトヲ得
第十條軌道經營者ハ地方長官ノ認可ヲ受クルニ非
サレハ運輸ヲ開始スルコトヲ得ス
第十一條軌道經營者ハ旅客及荷物ノ運賃其ノ他運
輸ニ關スル料金竝運轉時刻ヲ定メ主務大臣ノ認可
ヲ受クヘシ
主務大臣ハ公益上必要アリト認ムルトキハ運賃、料
金又ハ運轉時刻ノ變更ヲ命スルコトヲ得
第十二條軌道經營者ハ軌條間ノ全部及其ノ左右各
二尺ヲ限リ道路ノ維持及修繕ヲ爲スヘシ
地方長官必要アリト認ムルトキハ道路管理者ヲシテ
前項ノ維持及修繕ヲ爲サシムルコトヲ得此ノ場合ニ
於ケル費用ノ負擔ニ付テハ第八條第二項ノ規定ヲ準
用ス
第九條ノ規定ニ依リ道路敷地ト爲シタルモノニ付テ
ハ第一項ノ維持及修繕ハ道路管理者之ヲ爲スヘシ
第十三條主務大臣又ハ地方長官ハ監督上必要アリ
ト認ムルトキハ軌道經營者ヲシテ帳簿、書類及圖面ヲ
提出セシメ又ハ監査員ヲ派遣シテ軌道ノ設備、事業ノ
狀況竝會計及財產ノ〓貝況ヲ監査セシムルコトヲ得
第十四條軌道ノ建設、運輸、運轉、係員及會計ニ關
スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條軌道經營者ハ主務大臣ノ許可ヲ受ケタル
場合ニ限リ特許ニ因リテ生スル權利義務ヲ他人ニ讓
渡スルコトヲ得
第十六條軌道經營者ハ主務大臣ノ許可ヲ受ケタル
場合ニ限リ軌道ノ譲渡又ハ事業若ハ運轉ノ管理ノ
委託若ハ受託ヲ爲スコトヲ得
前項ノ管理ノ委託ヲ受ケタル者ハ其ノ管理ニ付主務
大臣ニ對シ委託ヲ爲シタル者ト共ニ其ノ責ニ任ス
第十七條軌道經營者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務
大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ軌道ノ附屬物件ノ讓
渡又ハ貸渡ヲ爲スコトヲ得ス
第十八條國又ハ公共團體ニ於テ公益上ノ必要ニ因
リ軌道ノ全部又ハ一部及其ノ附屬物件ヲ買收セムト
スルトキハ軌道經營者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
公共團體ニ於テ前項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲サムトス
ルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
公共〓體ニ於テ第一項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲シタル
トキハ特許ニ因リテ生スル權利義務ヲ承繼ス
第十九條地方鐵道法第三十一條乃至第三十五條
ノ規定ハ國ニ於テ前條第一項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲
ス場合ニ之ヲ準用ス
公共〓體カ前條第一項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲ス場
合ニ於テハ買收價額ハ協定ニ依ル協議調ハサルトキ
ハ申請ニ因リ前項ノ規定ニ準シ算出シタル金額ヲ標
準トシテ主務大臣之ヲ裁定ス
第二十條公共團體カ第十八條第一項ノ規定ニ依ル
買收ヲ爲ス場合ニ於テ公益上ノ必要ニ因リ兼業ニ屬
スル資産及軌道經營ニ必要ナル貯藏物品ヲ買收セ
ムトスルトキハ軌道經營者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
公共團體カ第十八條第一項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲
ス場合ニ於テハ軌道經營者ハ兼業ニ屬スル資產及軌
道經營ニ必要ナル貯藏物品ノ買收ヲ求ムルゴトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ買收價額ニ付協議調ハサルトキ
ハ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス
第二十一條軌道會社ノ株金ノ第一囘拂込金額ハ株
金ノ十分ノ一迄下ルコトヲ得
軌道會社ハ株金全額拂込前ト雖主務大臣ノ認可ヲ
受ケ線路ノ延長又ハ改良ノ費用ニ充ツル爲其ノ資本
ヲ增加スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ地方鐵道會社ニ非サル會社カ兼業
トシテ軌道ヲ敷設スル場合ニハ之ヲ適用セス
第二十二條軌道會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ
非サレハ合併ヲ爲スコトヲ得ス
第二十三條左ノ場合ニ於テハ特許ハ其ノ效力ヲ失フ
一工事施行ノ認可申請期間内ニ認可ヲ申請セサ
ルトキ
二工事施行ノ認可ヲ受ケサルトキ
三事業廢止ノ認可ヲ受ケタルトキ
四特許ヲ受ケタル者會社ノ發起人ナルトキハ工事
施行ノ認可申請期間内ニ會社設立ノ登記ヲ爲
ササルトキ
第二十四條軌道經營者軌道ニ關スル工作物ノ使用
ヲ廢止シタルトキハ地方長官ノ指示スル所ニ從ヒ道
路ヲ原狀ニ囘復スヘシ
地方長官必要アリト認ムルトキハ軌道經營者ノ負擔
ニ於テ道路管理者ヲシテ前項ノ規定ニ依ル工事ヲ爲
サシムルコトヲ得
第二十五條本法ニ規定スル主務大臣ノ職權ノ一部
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ地方長官ニ委任スルコ
トヲ得
第二十六條地方鐵道法第七條第二項第三項、第八
條第一項、第十條第二項、第十一條、第十五條、第
十七條、第十九條第二項、第二十三條第二項第三
項、第二十五條、第二十七條、第三十條第二項及第
三十六條ノ規定ハ軌道ニ之ヲ準用ス但シ地方鐵道
法第七條第三項及第八條第一項中鐵道抵當法ト
アルハ明治四十二年法律第二十八號トス
第二十七條軌道經營者カ法令若ハ法令ニ基キテ爲
ス命令又ハ特許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ違反
シ其ノ他公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ主務大
臣ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
-取締役其ノ他ノ役員ヲ解任スルコト
二他人ヲシテ軌道經營者ノ計算ニ於テ必要ナル施
設又ハ事業ノ管理ヲ爲サシムルコト
三特許ノ全部又ハ一部ヲ取消スコト
前項ノ規定ニ依リテ解任セラレタル取締役其ノ他ノ
役員ハ再任セラルルコトヲ得ス
第一項第二號ノ規定ニ依リ事業ノ管理ヲ爲ス者ハ
其ノ管理ニ付主務大臣ニ對シ當該軌道經營者ト共
ニ其ノ貴ニ任ス
第二十八條特許ヲ受ケスシテ軌道ヲ敷設シ又ハ認
可ヲ受ケスシテ運輸ヲ開始シタル者ハ百圓以上二千
圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十九條左ノ場合ニ於テハ軌道經營者又ハ其ノ
役員若ハ使用人ヲ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
-前條ノ場合ヲ除クノ外本法ニ依リ許可又ハ認
可ヲ受クヘキ事項ヲ許可又ハ認可ヲ受ケスシテ
爲シタルトキ
二法令ニ基キテ爲シタル命令又ハ特許、許可若ハ
認可ニ附シタル條件ニ基キテ爲シダル命令ニ違
反シタルトキ
三監査員ノ職務ノ執行ヲ妨ケタルトキ
四法令又ハ法令ニ基キテ爲ス命令ニ依リテ爲スヘ
キ屆出、報告其ノ他ノ書類圖面ノ提出若ハ
調製ヲ怠リ又ハ虚僞ノ屆出、報告若ハ記載ヲ爲
シタルトキ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規
定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第三十條前二條ノ規定ハ公共團體カ軌道ヲ經營
スル場合ニ之ヲ適用セス
第三十一條本法ハ一般交通ノ用ニ供スル軌道ニ準
スヘキモノニ之ヲ準用ス
前項ノ軌道ニ準スヘキモノハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十二條國ニ於テ軌道ヲ敷設シテ運輸事業ヲ經
營セムトスルトキハ當該官廳ハ主務大臣ニ協議ヲ爲
スヘシ其ノ工事施行ニ付亦同シ
國ニ於テ經營スル軌道ニ付テハ第二條、第十二條第
一項、第十四條及第二十四條第一項ノ規定ヲ除ク
ノ外本法ヲ適用セス但シ第十四條中軌道ノ係員及
會計ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第一項ノ規定ニ依リ主務大臣ニ協議ヲ了シタルトキ
ハ第四條及第六條ノ規定ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
軌道條例ハ之ヲ廢止ス
舊法ニ依リテ爲シタル特許、認可、處分、手續其ノ他ノ
行爲ハ本法中之ニ相當スル規定アル場合ニ於テハ本
法ニ依リテ之ヲ爲シタルモノト看做ス但シ其ノ特許、認
可其ノ他ノ處分ニ附シタル條件ニシテ本法ニ〓觸スルモ
ノハ其ノ效力ヲ失フ
他ノ法令中軌道條例トアルハ軌道法トス
〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=92
-
093・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 現行軌道條例ハ明治二
十三年ノ制定デアリマシテ、法案僅ニ五箇條デゴザイマス、
隨テ特許ニ關スル權利義務ノ如キ、處分ニ付シタル命今ニ
依ルノ外ナク、軌道經營者ノ不利不便少ナカラザルノミナ
ラズ、命令違反ニ對スル制裁ヲ缺キ、軌道監督上甚ダ、遺
憾ノ點ガアリマス、仍フテ今回軌道ニ關スル規定ヲ精々統
一致シマシテ、斯業ノ經營ヲ容易ナラシムルト同時ニ、監督
上必要ナル規定ヲ設ケテ、以テ時運ノ進展ニ備ヘントスル次
第デアリマス、宜シク御審議ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=93
-
094・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 右議案ノ審查ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ヲ議題ニ供シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=94
-
095・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ政府提出地方鐵道法改正法律
案外一件ノ委員ニ、併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=95
-
096・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍ッテ動議ノ如ク決シマシタ-水道條例中改正
法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、床次內務大臣
水道條例中改正法律案(政府提出)第一讀會
水道條例中改正法律案
水道條例中左ノ通改正ス
第三條中「水道ヲ布設セントスルトキハ」ノ下ニ「命令ノ
定ムル所ニ依リ」ヲ加へ「分析表」ヲ「試驗表」ニ改ム
第七條中「官廳」ヲ「行政廳」ニ改ム
第八條中「地方衞生會ノ議定ヲ經」ヲ削ル
第十一條ニ左ノ但書ヲ加フ
但市町村ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ設置シ其費
用ヲ負擔スルコトヲ得
第二十一條ノ二内務大臣ノ職權ノ一部ハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ地方長官ニ之ヲ委任スルコトヲ得
第二十二條中「北海道及沖繩縣」ヲ「北海道區制又ハ
沖繩縣區制ニ依ル區」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣床次竹二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=96
-
097・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 現行ノ水道條例ニ於キマ
シテハ、水道ノ敷設ニ關スル許可認可ノ權限ハ、總テ内務
大臣ニ屬シテ居リマスルガ爲メニ、規模ノ小ナル水道又ハ
輕微ナル工事ニ在リマシテモ、悉ク本省ノ認可ヲ受ケルコ
トニナッテ居リマス、水道ノ普及及事務簡㨗上遺憾ノ點ガ
アリマスノデ、衞生上適當ト認メル範圍ニ於テ、内務大臣
ノ權限ノ一部ヲ地方長官ニ委任シ、其他法律施行ノ實績
ニ徵シ、及他ノ關係法規ノ改廢ニ伴ヒ、必要ナル改正ヲ致
サウトスル趣意デゴザイマス、宜シク御協賛ヲ願ヒマス(拍
手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=97
-
098・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 右案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=98
-
099・岩崎勲
○岩崎勳君 委員ノ數ヲ九名トシ議長ニ於テ指名セラレ
シコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=99
-
100・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、供託法中改正法律案
ノ第一讀會ヲ開キマス-大木司法大臣
供託法中改正法律案(政府提出)第一讀會
供託法中改正法律案
供託法中左ノ通改正ス
第一條中「金庫」ヲ「供託局」ニ改ム
第一條ノ二前條ノ規定ニ依ル供託ニ關スル事務ノ監
督ニ付テハ司法行政ノ監督ニ關スル規定ヲ準用ス
第一條ノ三利害關係人ハ供託官吏ノ處分ニ對シ供
託局ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ抗告ヲ爲スコ
トヲ得
第一條ノ四抗告ヲ受ケタル裁判所ハ抗告ニ關スル書
類ヲ供託官吏ニ送付シテ其意見ヲ求ムルコトヲ要ス
第一條ノ五供託官吏ハ抗告ヲ理由アリト認ムルトキ
ハ處分ヲ變更シテ其旨ヲ裁判所及ヒ抗〓人ニ通知
スルコトヲ要ス
抗告ヲ理由ナシト認ムルトキハ意見ヲ附シ書類ノ送
付ヲ受ケタル日ヨリ五日內ニ之ヲ栽判所ニ返還スル
コトヲ要ス
第一條ノ六裁判所ハ抗告ヲ理由ナシトスルトキハ之
ヲ却下シ理由アリトスルトキハ供託官吏ニ相當ノ處
分シ命スルコトヲ要ス
抗告ヲ却下シ又ハ處分ヲ命スル裁判ハ理由ヲ附シタ
ル決定ヲ以テ之ヲ爲シ供託官吏及ヒ抗告人ニ送達ス
ルコトヲ要ス
第一條ノ七前條ノ規定ニ依リ抗告ヲ却下スル決定ニ
對シテハ法律違背ヲ理由トスルトキニ限リ非訟事件
手續法ノ規定ニ從ヒテ抗告ヲ爲スコトヲ得
前項ノ抗告ニ付爲シタル裁判ニ對シテハ不服ヲ申立
ツルコトヲ得ス
第二條中「金庫」ヲ「供託局」ニ、「大藏大臣」ヲ「司法大
臣」ニ改ム
第三條供託金ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ利息ヲ付ス
.ルコトヲ要ス
第四條中「金庫」ヲ「供託局」ニ改ム
第五條及第六條中「倉庫營業者」ノ下ニ「又ハ銀行」ヲ
加フ
第七條中「倉庫營業者」ノ下ニ「又ハ銀行」ヲ加へ「供託
物」ヲ「第五條第一項ノ規定ニ依ル供託物」ニ改ム
第八條第一項ヲ左ノ如ク改ム
供託物ノ還付ヲ請求スル者ハ司法大臣ノ定ムル所ニ
依リ其權利ヲ證明スルコトヲ要ス
第十條中「供託所ニ其給付ヲ爲シ又ハ供託者ノ書面若
クハ裁判ニ依リ」ヲ「供託者ノ書面又ハ裁判、公正證書
其他ノ公正ノ書面ニ依リ」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前爲シタル供託ニ關シ必要ナル規定ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
供託局所在地外ニ於テハ司法大臣ハ當分ノ內其ノ適
當ト認ムル銀行ヲシテ第一條ノ規定ニ依ル供託事務ヲ
取扱ハシムルコトヲ得
〔國務大臣伯爵大木遠吉君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=100
-
101・大木遠吉
○國務大臣(伯爵大木遠吉君) 供託法案中改正法律
案ノ提案ノ趣旨ヲ說明申上ゲマス、會計法ノ改正ニ依リ
マシテ、金庫ノ制度ヲ廢止スベキヲ以テ、從來金庫ニ於テ
管掌シマシタル所ノ供託事務ヲ取扱ハシムル爲メニ、供託
局ヲ設クルノ必要ヲ生ジタノデアリマス、且ツ其事務ノ監
督ヲ嚴ニスルト同時ニ、供託局ノ處分ニ關スル抗告ノ途ヲ
開クノ必要ヲ認メマシタルガ故ニ、本案ヲ提出シタ次第デ
アリマス、何卒御審議ノ上御協賛アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=101
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102・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧ヲ議題ニ供シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=102
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103・岩崎勲
○岩崎動君 委員ノ數ハ九名トシ、議長ニ於テ指名アラ
ンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「贊成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=103
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104・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次ハ大正九年度歲入
歲出總豫算追加案、大正九年度各特別會計歲入歳出豫
算追加案、追第一號豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ
爲スヲ要スル件、追第二號豫算外國庫負擔トナルヘキ契
約ヲ爲スヲ要スル件ヲ一括シテ議題ニ供シマス、委員長ノ
報告ヲ求メマス、委員長武藤金吉君
(第二號)大正九年度歲入歲出總豫算追
加案(委員長報告)
(特第一號)大正九年度各特別會計歲入歲
出豫算追加案(委員長報告)
(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ
契約ヲ爲スヲ要スル件(委員長報告)
(追第二號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ
契約ヲ爲スヲ要スル件(委員長報〓)
報告書
一(第二號)大正九年度歲入歳出總豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年三月八日
豫算委員長武藤金吉
衆議院議長奧繁三郞殿
報告書
一(特第一號)大正九年度各特別會計歲入歳出豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年三月八日
豫算委員長武藤金吉
衆議院議長奥繁三郎殿
報告書
一(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲
スヲ要スル件
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報〓
候也
大正十年三月八日
豫算委員長武藤金吉
衆議院議長奧繁三郞殿
報告書
一(追第二號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年三月八日
豫算委員長武藤金吉
衆議院議長奥繁三郞殿
〔武藤金吉君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=104
-
105・武藤金吉
○武藤金吉君 只今議題ニ供セラレマシタ、第二號大正
九年度歲入歲出總豫算追加案外三案ノ委員會ニ於ケル
審査ノ經過、及成績ヲ御報告ヲ申シマス、委員會ハ三月
五日ヨリ本日マデ三日間ニ亙リマシテ質問應答ヲ重ネマ
シテ、可決ヲ致シマシタ、第二號大正九年度歲入歳出
各、五千八百三十八万六千三百二十六圓デアリマシテ、
是ガ歲入ハ靑島事業ノ收入增加カラ求メマスモノガ九
万圓デアリマス、戰時利得稅ノ增加カラ求メマスモノ
ガ、二千百六十三万六百九十九圓デアリマス、前年度繰
入金ノ增加ガ、三千六百六十五万九千三百三十六圓
ニナッテ居リマス、又歳出ノ部分ハ各省ニ涉リマシテ主
ナルモノハ、物價騰貴ニ關スル增加デアリマス、其中ノ
主要ナルモノハ陸軍ニ於キマシテハ軍事費ノ增加、海
軍ニ於キマシテハ裝鑑費及職工給ノ增加デアリマス、大
正九年度各特別會計歲入歳出豫算案ハ大藏省ノ所
管ニ於キマシテ、印刷局ガ三十六万三千六百六十九
圓、朝鮮總督府ニ於キマシテ八十五万二千八百十二圓、
朝鮮醫院及濟生院ガ三十一万三千二百五十五圓、臺灣
總督府ニ於キマシテ四十八万二千六百三十八圓、關東廳
十七万八千五百圓、賠償金七万七百四十七圓、文部省
所管ニ於キマシテ帝國大學ガ七万二千圓、京都大學ガ三
万八千圓、東大北學ガ五万四千圓、九州大學ガ五万圓、
鐵道省ノ所管ニ於キマシテ帝國鐵道ガ八百四十万圓デア
リマス、是ガ兩案ノ要求セラレマシタ金額デアリマシテ、之ニ
對シマシテ質問應答ノ中、極メテ大切ノ部分ヲ一二御紹
介ヲ申上ゲテ置キマシス、此海軍省フ追加豫算ノ編成ニ
就キマシテ、物價ノ騰貴ハ昨年七月臨時議會ノ際ニ見積。ッ
タモノガ七割デ、而シテ今回十割ノ增加ヲ見込ンデ居ル、僅
ノ間ニ三割騰貴シタト云フコトハ、如何ナル理由デアルカト
云フ質問ニ對シマシテ、政府ハ斯樣ニ說明サレテ居リマス、
此製艦材料ノ中デ、鋼材ノ騰貴ト職工給ノ增加ガ主ナルモ
ノデアルガ、昨年七月ノ特別議會ニ於ケル要求ヲシタトキ
ハ昨年ノ四月ニ豫算ヲ編成致シタモノデアッテ、サウシテ、此
度ノ追加案ヲ編成シタノハ、本年ノ一月デアルカラ、僅カ三
箇月ノ間ニサウ物價ガ騰貴シタノデハナイ、殊ニ此製艦材
料ノ鋼材ニ就テハ數百種ニナッテ居リマシテ、其時分下落ヲ
見込ンデヤッタノデアルカラ、此物價騰貴ノ追加要求ヲスル
ノ已ムナキニ至ックト云フコトヲ答ヘラレテ居リマス、尙ホ豫
算ノ編成ハ現在ノ物價ヲ以テ何故ニ基礎トシテナイカ、又
日本銀行ノ指數調、卽チ此物價ノ調ニ依ッテ見ルト、物價
ノ騰貴ハ昨年ハ總テ二十一割ニナッテ居ルノデ、之ヲ七割ト見
積タノハドウ云フ譯デアルカ、之ニ對シマシテ政府ハ海軍ノ
製艦材料ニ就テハ、只今申上ゲマシタ通リツコトヲ答ヘラレ
マシタ、殊ニ海軍ノ製艦材料ノ鋼材ノ騰貴ハ、市中ノ普通
ノ物價ノ騰貴トハ其種類ヲ異ニシテ居ッテ決シテ一般ノ物
價騰貴ト準ズルモノデナイト云フコトヲ答ヘラレマシタ、殊ニ
七割ノ見積ハ當時下落ヲ見越シタモノデアッテ、此度三割ヲ
增シテ要求シタト云フコトガ其眞相デアル、又日本銀行ノ
指數調ト云フモノハ參考ニハナルケレドモ、之ヲ以テ其通リ
行フコトハ出來ナイト云フ答辯デアリマシタ、次ハ追第一號
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ニ關スル件、是ハ此大正
九年度ノ追加豫算ニ相關聯ヲ致シテ居リマスルモノデアリ
マシテ、内容ハ山形縣ニ對シ、土木費ノ借入金ノ利子ノ補
給トシテ、大正九年年度カラ大正三十七年度迄四十六万
九百九十二圓ヲ補給スルト云フ案デアリマシテ、大正九年
度ノ追加ニハ三万四千二百七十二圓ニナッテ居ルノデアリ
マス、次ハ追第二號豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ニ關
スル件、是ハ蠶絲業ノ救濟案デアリマス、此案ハ蠶絲業ノ
救濟ヲスル爲メニ帝國蠶絲會社ニ對シマシテ、救濟貸付金
補償ヲ致スト云フ案デアリマシテ、大正十年ノ五月三十一
日以前ニ於テ出來マスル輸出向キノ生絲ニ對シマシテ、是
ダケノ貸付ヲ爲シ、又帝蠶會社ガ其株金ノ一千六百
万圓ヲ全部損失ヲシテシマッタトキニハ、此三千万圓ヲ
補償スルト云フ案デアリマス、之ニ對シマシテ質問ノ要點
ハ、澤山ノ質問ノアリマス中デ其主ナルモノ二三申上
ゲマスレバ、此方法ハ養蠶家ヲ救濟スルコトガ出來ナイデ
ハナイカ、製絲家輸出業者ヲ救濟スルコトハ出來ヤウカ、全
國二百万ノ養蠶家ヲ救濟スルコトハ出來ナイデハナイカト
云フ質問ガアリマシタガ、之ニ對シテ政府ノ絲價ヲ維持ス
ルト云フコトヲ目的ニシテ、大正九年度ノ絲ヲ現在アリマ
スモノ、又是カラ繭ヲ絲ニ挽キマスモノヲ、十万梱以内ヲ買
入レルカヲ與ヘルモノデアリマシテ、此方法デ參リマスレバ、
現在アリマスル横濱ノ在荷、及地方ニ在ル生絲、又是カラ
春挽ノ繭ニ對シマシテ、海外ノ輸出ヲ見込ミ、又內地ノ地
遣ニ用ヰマス物ヲ見込ミマシテ、殘リマスモノガ十万梱以内
ト認メル、之ニ對シテハ是ダケノ貸付及補償ノ方法ヲ執リ
マシタナレバ、絲價ヲ維持スルコトガ出來ルノデアルカラシテ、
隨テ絲價ガ維持ガ出來マスレバ、全國二百万ノ養蠶家
ハ此絲ノ價デ繭ヲ得ルコトガ出來ルノデアル、養蠶家ニ此
救濟ガ出來ナイト云コトハナイト云フ答デアリマス、次ハ消
費者側ニ對シテ此方法ヲ講ズルニ、何ガ故ニ此使フ方ノ側
ヲ顧ミナイカト云フ質問ガアリマシタ、之ニ對シマシテ政府
ハ-消費者側ト申シマスレバ、內地ノ消費者外國ノ消費
者モアルノデアリマスルガ、亞米利加ニ於キマシテハ、絲ノ價
ヲ相當ニ維持ヲシテ貰ヒタイト云フコトハ、亞米利加ノ機
業家ノ一般ノ要望デアル、又内地ノ機業家、卽チ織物製造
業者ニ於キマシテモ、昨年ノ帝國蠶絲會社ガ出來マシタ當
時ハ、全國ノ織物業ハ木綿ト毛ト絹織トヲ問ハズ、殆ド梭
ノ音ハ無ク、煙突ハ煙ガ立タナカッタノデアリマスガ、昨年ノ
九月以來今日ニ至ル迄內地ノ機業ハ一變ヲ致シマシテ、
盛況デハアリマセヌガ、稍、囘復ノ〓ヲ今日認メテ居ルノデア
リマシテ、決シテ消費者側ノ織物業者ト雖モ顧ミナイノデ
ハナイ、斯ウ云フ答辯デアリマス、ソレカラ又千五百圓ノ値
極メニ就キマシテ、是ハ高過ギルデハナイカ、此千五百圓ノ
値段ハ成行ニ委シテ置イタナレバ、總テヲ壓迫シナイデ宜イ
デハナイカト云フ質問ガ出マシタガ、此千五百圓ヲ決メルト
云フコトニ就キマシテハ、昨年ノ養蠶ノ生產費及絲ノ生產
費等ヲ考慮致シマシタ結果、全國ノ蠶絲業ノ大會、又ハ其
機關ニナッテ居リマスル全國ノそれる縣縣業同業組合ノ總會等
ノ決議ニ依ッテ、此標準ガ出來タモノデアリマシテ、當時ハ
此議論ガアリマシタガ、信州上一番ヲ千五百圓ト値極メヲ
シタノハ相當デアルト云フ各辯デアリマシタ、次ハ大正十年
度ノ養蠶及製絲ニ是ガ及バナイノハドウデアルカ、此案ハ五
月三十一日迄ノ九年度ノ古イモノヲ買入レル方法デアリ
マシテ、十年度ノ養蠶製絲ニハ關係ハ有チマセヌガ、此案ガ
實行サレマスルト、隨テ絲價ガ保タレマスルカラシテ、養蠶
家モ、出來タ繭ハ千五百圓ト云フ標準デアリマスレバ、六圓
五錢乃至七圓ニ七十掛ケト致シマスレバ、買ハレマスル價
ガ出マスルカラ、此價デアリマシタナラバ養蠶家ガ息ガ吐ク、
又帝國蠶絲會社ガ是ダケノ力ヲ以テ買ッテ居リマシタナラ
バ、之ニ對シマシテ古イ絲ヲ以テ市場ヲ壓迫シ、金融界ノ梗
塞ヲ妨ゲナイカラ、此蠶絲會社ニ就テハ行ク見込デアルト
云フ答辯デアリマシタ、之ヲ要スルニ此四案ニ就キマシテノ
主ナル質問ハ、海軍陸軍ノ追加ノ增加ト、此蠶絲救濟ノ案
ニ就キマシテ、質問應答ガ澤山アッタノデアリマスルガ、大要
右ノ次第デアリマス、サウシテ本日討議ニ移リマシタ、國民
黨ノ大口喜六君、憲政會ノ早速整爾君ヨリハ、此案ニハ賛
成デアルガ、追加豫算案ニ對シマシテハ、豫算編成ニ關シ、
又物價ノ見積追加要求等ニ對シマシテハ賛成デハアルガ、
警告ヲセナケレバナラナイ、又蠶絲救濟ノ方法ニ就キマシテ
モ賛成デアルガ、警告ヲセナケレバナラナイ、其警告ノ說明、
ハ本會議ニ於テ之ヲ述べルト云フコトデワリマシテ、採決ノ
結果、滿場一致ヲ以テ可決ヲ致シマシタ、此段御報ルワニ及
ビマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=105
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106・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 時間ハ定刻ニ迫リマシタケレドモ
延長致シマス-延長ニ對シテ異議ハアリマセヌカ-湯
淺凡不君
〔湯淺凡平君登壇拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=106
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107・湯淺凡平
○湯淺凡平君 本員ハ極メテ簡單ニ製絲業救濟ニ關シ
テ二三ノ質議ヲ致シマス、而シテ此答辯ハ政府ヨリ與ヘラ
レテ貰ヒタイノデアリマス、蠶絲業ハ枚濟セザルペカラザルモ
ノデアリマス、併シ政府ノ是迄執ラレマシタル所ノ救濟方
法ハ、若シ救濟方法ト言ヒ得ルナラバ、單ニ製絲業者ノミニ
施サレテ、所謂養蠶家ニハ其救濟ガ及ンデ居ラヌノデハナイ
カト思フノデアリマス、昨年養蠶家ニ向ッテ低利資金ノ供
給ノ方法ヲ講ゼラレタ、併ナガラ其時期ヲ失シテ居ルコ
十、竝ニ其借入ヲ爲スコトノ手續ノ非常ノ煩雜デアルガ爲
メニ、其目的ハ達セラレテ居ラヌノデアリマス、次ニ起リマシ
タノハ帝蠶會社デアリマス、帝蠶會社ナルモノハ、其會社ガ
活動ヲ爲シマスル時ニ於テハ、既ニ養蠶家ハ其生產シマシ
タル所ノ繭ノ量ヲ、全部賣盡シテ居タノデマリマスカラ、帝
蠶會社ノ爲メニ、養蠶家ハ殆ド何等ノ利益ヲ得テ居ラヌノ
デアリマス、而シテ帝蠶會社ノ失敗致シタル所ノ事實ハ、今
日最早蔽フコトノ出來ナイノデアリマス、而シテ此失敗ヲ
償フガ爲メニ、今囘更ニ豫算外國庫ノ負擔ニ屬スル契約ヲ
締結サレマスルガ爲メニ、三千万圓ノ金ヲ融通サレルト云
フコトデアリマス、是モ大正九年度ノ繭ニ對シテ、此九年度
ノ旣ニ養蠶家ノ手ヲ離レタル所ノ蘭ヲ、絲ニ製造スルガ爲メニ
用ヰラルヽ所ノ金デアリマスルカラ、養蠶家ニ對シテハ、何
等ノ利益ヲ與ヘルモノデナイ、但シ先刻委員長ヨリ御報告
ノアリマシタル通リ、此大正九年度ノ絲ヲ相當ニ買入レルナ
ラバ、之ニ依ッテ十年度ノ蘭ト云フモノモ、間接ニ枚濟サレ
ルモノデアルト云フ御議論ヲ承リマシタガ、多少ノ效果
ハアルデアリマセウ、併ナガラ大正九年度ノ蘭ニ限ッテ
之ヲ融通サレルモノデアルナラバ、養蠶家ハ此デ非常ナ覺
悟ヲシナレバナラヌ、又製絲家モ非常ナ覺悟ヲシナケレバナ
リマセヌ、若シモ之ガ大正九年度ニ於テ救濟ノ目的ヲ達セ
ラレナイデ、十年度モ尙且ツ救濟サレルト云フコトデアルナ
ラバ、進ムデ十年度ノ繭ノ買入ヲ爲スデアリマセウ、併ナガ
ラ今マデノ經歷、又今後ノ內外ノ經濟事情カラ考ヘテ見
マスルト云フト、急ニ大正十年度ニ絲ガ高ク賣レルトハ思
ハレヌノデアリマス、故ニ此製絲家タル者ハ、十年度ノ製絲
ヲ爲スニ當ッテハ、新ラシキ蘭ノ買入ニハ餘程愼重ノ考慮ヲ
要スルノデアル、果シテ一千五百圓ノ價格ガ維持サレルモ
ノデアルナラバ、或ハ一貫目六圓五十錢ノ蘭ヲ買入レタル
コトガ出來マセウ、併ナガラ若シ此價ガ帝蠶會社ヲ保護ス
ルガ爲メニ維持サレタルモノデアル、而シテ十年度ノ絲ニハ
此保護ガ無ナイト云フコトニナリマシタナラバ、製絲家ハ左
樣ナル無謀ナル千五百圓ノ價ガ、必ズ持續スルモノデアル
ト云フ大膽ナル計算ヲ以テ、蘭ノ買入ヲ爲スコトガ出來マ
セヌ、餘程新シキ十年度ノ蘭ハ廉イ値段デ之ヲ買フニ非ラ
ザレバ製絲業者ハ非常ナ破綻ニ陷ラナケレバナラヌ、新シ
イ繭ハ非常ナ下落ヲ爲スモノデアル、繭ノ下落ハ養蠶家ヲ
非常ナ窮地ニ陷レルト云フコトニナルノデアリマズカラ、
此九年度ノ絲ヲ買フト云フコトハ、決シテ十年度ノ繭、
卽チ養蠶家ニ對シテ救濟ノ實ヲ擧ゲルモノデナイト云フ
コトハ、私ハ斷言ヲ致シテ憚ラヌモノデアリマス、斯樣ナ
次第デアリマスレバ、政府ハ此十年度ニ於ケル所ノ養蠶
家ノ窮狀ヲ救フコトニ就テハ、如何ナル方法ヲ御執リニ
ナル御考デアルカ、之ヲ承リタイ、第二ハ政府ハ製絲業ノ
救濟ト云フコトニ對シテ、非常ナル努力ヲ御拂ニナッテ居ル
ヤウナ御言明ヲ屢〓承ッテ居ルガ、本員ノ見ル所デハ、唯タ
僅ニ帝蠶會社ニ對シテ低利資金ト申シマシテモ、而モ五朱
六厘ニ當ル所ノ其金ヲ、興業銀行ヨリ今日マデ僅ニ二千
八百万圓ノ融通ヲセシメタト云フ事ヨリ外ニハ、別ニ見ルベ
キ所ノ御施設ガ無イノデアル、世人ハ政府ノ蠶絲業救濟ト
云フコトニ對シテハ、多大ノ希望ヲ持ッテ居ッタノデアリマ
ス、然ルニ僅ニ帝蠶會社ハ五千万ノ低利資金ヲ融通サレル
ト云フコトデ非常ナ失望ヲシタ、併ヂガラ此失望ハマダ宜シ
イ、五千万圓ダケデモ實際ニ融通ガ出來マシタナラバ、今日
ヨリモヨリ以上救濟サレタノデアリマセウ、然ルニ政府ガ帝
蠶會社ニ對シテ、非常ナ重大ナル所ノ義務ヲ負ハシメテ居
ル、是ハ先日早川龍介君ヨリ此壇上デ御述ベニナリマシタ
カラ、私ハ重ネテ中シマセヌ、政府ハ帝蠶會社ノ事業ヲ監督
スルガ爲メニハ、態〓二人ノ官吏ヲ出張セシメテ其監督ヲ
爲シ、随分煩瑣ナル所ノ干涉ヲ爲シテ居ラルゝニ拘ラズ、實
際ニ今日マデ帝蠶會社ガ利益ヲ受ケタコトハ、八百万圓ノ
拂込ヲ爲シ、此拂込ンダル所ノ金ヲ頭金トシテ、尙ホ其ノ上
ニ買入レマシタル所ノ蠶絲ヲ擔保ニ入レ、興業銀行カラ七
掛ノ金ヲ借リタ、而カモ此七掛デハ不足デアリマスカラ、八
掛トシテ卽チ一分丈ケノ金ノ融通ヲ受ケルガ爲メニ、帝蠶
會社ノ重役個人ガ個人保證ヲ爲シテ此金ヲ持ッテ居ル、而
シテ之ガ爲メニ僅ニ豫定ノ五万梱ノ中三万梱ダケヲ買入
レタノデ、今日ハ全ク停頓ノ姿ニ陷ッテ居ルノデアリマス、故ニ
政府ガ救済ヲスルト云フ其觸出シハ頗ル壯大ナモノデ
アリマシタケシドモ、其事實ニ於テ救濟ヲサレタル眞相ハ
斯ノ如キモノガアル故ニ、此帝蠶會社ナルモノハ、今日ニ
於テハ殆ト全國ノ蠶絲業救濟ト云フコトニ向ッテハ、何程
ノ貢獻ヲ爲シタモノデハナイ、或ハ政府ハ千五百圓ノ價格
ヲ維持シテ居ルカラ、之ヲ帝蠶會社ノ功績ナリト稱ヘラレ
テ「居リマスケレドモ、實際二千五百圓ノ價格ガ維持サレテ
居ルトデアリマセヌ、此價格ヲ造ルガ爲メニ、全國ニ於ケル
製絲業、此製絲業ト云フモノヲ二箇月ノ間休業セシメテ、
今日社會政策ヲ行ハネバナラヌト云フ場合ニ於テ、無數ノ
失業者ヲ生ゼシメテ、而シテ纔ニ其生產ヲ制限シ、〓モ之
ガ爲メニ千五百圓ト云フ價格ハ、僅ニ外國ニ賣行キマスル
所ノ一部分ノ生絲ニ過ギナイ、生絲全體カラ中シマスレ
バ、僅カナモノデアル、ソレダケノモノガ表面上千五百圓ノ價
格ヲ維持シテ居リマスケレドモ、實際ハドウデアルカ、今日
迄モ千五百圓トハ表面ノミデ、事實ニ於キマシテハ內實ニ
於テ、ンレ以下ノ價格デ賣買ヲサシテ居ルノデアリマス、之
ヲ稱シテ闇商ト稱ヘラレル、今日闇商ハ公々然ト行ハレマ
シテ、千三百圓若クハ千四百圓デ以テ商ハレテ居ル、是ハ
已ムヲ得ナイ、今日ノ蠶絲業救済ト云フモノガ、不徹底デ
アルガ爲メニ、唯ダ一ノ帝蠶會社ノミヲ賴リニスルコトガ
出來マセヌカラ、已ムヲ得ズ此闇商ヲシテ、是等ノ資金ノ
融通ヲ求メナケレバナラヌト云フコトニナッテ居ルノデアル、
故ニドノ點カラ申シマシテモ、此帝蠶會社-云フモノハ成
功ナリトハ申サレマセヌ、又成功シナイ筈ナシデアル、之レ
政府ハ五千万圓ノ金ヲ融通セシムルト聲言シナガラ、其事
實ニ於テハ、前述ベタル如キ僅ニ二千八百万圓ノ金ヲ、ソ
レモ重役ノ個人ノ保證マデ致シテ、今日得テ居ルト云フヤ
ウナ有樣デアリマス、ダカラ此會社ガ到底十分ノ働ヲ爲ス
コトガ出來ナイト云フノハ當然デアリマス、然ルニ之ヲ以テ
帝蠶會社ハ成功ヲシタナドト仰セラレルコトハ、甚ダ其當
ヲ得ナイ事デハナイカト思ヒマス、(「成功シテ居リマス」「ソ
レハ議論ダ」ト呼フ者アリ)併ナガラ免ニモ角ニモ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=107
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108・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 湯淺君質問ニ御入リ下サルコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=108
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109・湯淺凡平
○湯淺凡平君(續) 質問デス-故ニ免ニモ角ニモ今日
迄政府ハ餘リ多キヲ救濟ニ盡シテ居ラヌノデアルカラ、效
果ノ擧ラナイノハ仕方ガアリマセヌガ、併ナガラ責任ハ政府
ガ有タナケレバナラヌ、帝蠶會社ノ失敗致シマシタル責任
ハ、帝蠶會社ヲ監督ズルガ爲メニハ、種々ノ條件ヲ之ニ課
シ、面シテ監督官迄モ派遣シテ居ラレル以上ハ責任ダケハ
ドウシテモ政府ガ有タナケレバナラヌ(「失敗シテ居リマセヌ」
ト呼フ者アリ)今日此失敗シテ居ルト云フ事實ハ、既ニ五
千万圓ノ低利資金デモ十分ニ供給スルコトガ出來ヌ更ニ
又今日三千万圓ノ此金ヲ融通シナケレバ、帝蠶會社ガ
成立タナイト云フコトハ明カナ失敗デアリマス、(「ヒヤ〓〓
大失敗ダ」ト呼フ者アリ)然ラバ此失敗シタル所ノ責任
ハ兔ニ角政府ニ於テ此責任ヲ御感ジニナッテ、責任ニ
對スル所ノ相當ノ措置ヲ爲サッテカラ、而シテ後ニ新シイ
ノ所此三千万圓融通ノ金ヲ御講ジニナラナケレバナラヌ
筈ノモノデアル、故ニ一ツノ帝蠶會社ニ對シテモ、政府ハ責
任ヲ負ハレナケレバナラヌモノト私ハ考ヘマスルガ、政府
ハ此責任ヲ御感ジニナラナイカドウカ、而シテ又此帝蠶會
社ナルモノハ決シテ一般ノ蠶絲業ノ救濟トハナッテ居ラ
ヌ(「ナッテ居リマス」「ナッテ居ラヌ」ト呼フ者アリ)唯夕製絲
業ノミヲ救濟シテ居ルノブ、養蠶家其者ハ、餘リ恩惠ヲ受
ケテ居ラヌト云フコトヲ御認ニナッテ居リマセヌカ、次ニ
私ノ御尋シタイノハ三千万圓ノ金ヲ以テ、大正九年度ノ
蠶絲ノ救濟ヲ爲サッテモ、十年度以降ハ如何ナサルノデ
アルカ、政府ハ果シテ十年度以降ニナリマシタナラバ、必ズ
千五百万圓以上ノ價格ヲ維持スルモノト御認ニナッテ居ルノ
デアリマスカ、又是迄ノ救濟ノ方法ハ前申上ゲタル通リ、時
期ヲ失シテ居ルノデアリマス、故ニ假リニ此三千万圓ノ金
ヲ御支出ニナルト致シテモ-之ヲ補償サレルトシテモ、果シ
テ養蠶家、卽チモウ二三箇月後ニハ、新シイ繭ガ出テ來ル
ノデアリマス、二三箇月ノ中ニ出テ來ル所ノ此新シイ繭ニ
對シテモ、政府ハ此三千万圓支出ニ依ッテ、養蠶家ニマデ
救濟ノ效果ヲ及ボスノ成算ヲ存シテ居ラレルヤ否ヤ、要スル
ニ私ノ御尋スル所ハ、今日此窮境ニ陷ッテ居リマス所ノ蠶
絲業ハ、枚濟ヲ致サナケレバナリマセヌ、是迄ノ政府ノ爲サ
レ方ハ失敗デアラウト成功デアラウト、此ニ至シタ以上ハ之
ヲ傍觀スルコトハ出來マセヌカラ、救濟ヲシナケレバナリマセ
又、救濟シナケレバナラヌガ、併シ仕方ガナイカラ救濟ヲスル
ト云シテ、其此ニ至ラシメ夕所ノ責任ハ、政府ニ於テ當然御
執リニナラナケレバナラヌコトヽ思フ、而シテ又之ヲ唯タヤッ
タダケデハイカヌ、將來ニ於テ效果ノアル方法デナケレバナ
ラヌト思ヒマス、故ニ此點ニ就テ政府ノ將來ニ對スル將來
ト申シテモ遠イ將來デハアリマセヌ、此二三箇月後ニ起ル
新シイ繭、新シイ絲ニ對シテハ、果シテ如何ナル見解ヲ持ツ
テ居ラレルカト云フコトヲ御說明ヲ願ヒタイノデアリマス(拍
手起ル)
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=109
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110・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 途中カラ參リマシテ、前ノ
事ハ承知致シマセヌガ、大體ニ就テ御答ヲ致シマス、此帝蠶
會社ニ對シマシテ、政府ガ五千万圓ノ低利資金ヲ貸シスマ
ルコトニ就テ、餘リ帝蠶ノ方ガ十分ナル恩澤ヲ受ケズシテ非
常ナル拘束ヲ受ケテ義務ヲ負ウテ居ル、而シテソレニ就テハ
效果ガ無イデハナイカト云フコトノヤウニ承知致シマシタガ、
而シテ帝蠶ニ就テハ、實ニ氣ノ毒ナル事デアル、是ハ最初ヨ
リ政府ニ於キマシテハ、其當局者ノ請求ヲ必要ナリト致シ
マシテ、サウシテ此五千万圓ノ低利資金ヲ貸付ケルト云フ
コトニシタノデアリマス、併シナガラ政府ハ之ニ就テ、損得ト
云フモノヲ負擔スルコトハ出來ナイ、唯ダ低利資金ヲ貸與
ヘルノデアルカラシテ、十分確實ナル低當ヲ取ッテ、サウシテ之
ヲ與ヘナケレバナラヌ、ソレニ就テハ會社ヲ組織シテ、サウシ
テ會社ガ當然責任ヲ持ッカ持ッナラバ斯ウ云フ約東ニ於テ金
ヲ貸與ヘルト云フコトノ相談ニナリマシテ、千六百万圓ノ會
社ヲ組織サレマシテ、サウシテ正當ナル拂込ヲシテ、ソレニ對
シテ、五千万圓ヲ限ッテ貸與ヘルコトニシタノデアリマス、併
ナガラ元ドサウ云フ低利資金ヲ調達スル損得ハ彼等ニ依ツ
テ負擔スル、政府ハ此損ハ負擔シナイト云フコトデアリマス
ル故ニ、ドウシテモ資本ヲ以テ此仕事ニ掛ル、又其間ニ就テ
之ヲ負擔スベキ特殊ノ銀行ガナケレバナリマセヌカラシテ、此
間ニ勸業興業ト此二ツノ特殊銀行ヲ中ニ立テマシテ、サウ
シテ約束ヲサセマシタノデアリマシタ、政府ハ此ニ至リマスト
云フト、唯ダ其五千万圓ヲ其約束ニ依ッテ貸與ヘルト云フ
コトダケデアッタ、サウシテ此中ニ入ッテ居ル銀行ナルモノハ、
自身ニ損ヲスル譯ニ參リマセヌカラ、其絲ニ對シテ七掛又ハ
八掛ト云フ價ヲ以テ貸付ヲシタノデアリマス、然ルニ此會社
ガ千六百万圓デ立チマシタガ、經濟社會ノ不景氣ニ依リマ
シテ、十分ノ拂込ヲスルト云フコトハ頗ル困難デアル、昨年
ノ十一月カラ、此一月二月ノ數箇月ノ間ニ半額ノ拂込ヲ
爲シタノデアリマス、隨分時勢ニ考ヘテ見マスルト云フト、容
易ナラヌ責任ヲ以テ拂込ヲ爲シタノデアル、併シ此後ニ致ジ
テ尙ホ半額ノ剩餘ガアルガ、是ハ拂込ト云フコトハ餘程困
難ニ感ズルノデアリマス、ソコデアリマスル故ニ、此五千万圓
ノ約束ヲシテ居ッテモ、之ヲ引出スコトガ出來ナイ、サウ云フ
ヤウナ狀態デアリマスカラシテ、此五千万圓ハ尙ホ半分以上
マダ約束ノモノヲ受取リ得ナイ狀態デアルノデス、是ガ今日
ノ狀態デアリマスガ、扨其會社ガ成功シタカ不成功ニ終シタ
カ、責任ガ如何カト云フコトデアリマスガ、初メヨリ今ノ約來
ヲシテ置キマシテ、必ズ其價ヲ千五百圓ニシナケレバナラヌ
之ヲ政府ヨリ命ジテ此價ヲ定メマシタカト云フト、彼等ニ於
テ千五百圓ハ適當ナルモノデアッテ、是デ其生產費ヲ償フノ
ニハドウシテモ是ダケナイト困ルト云フ最下點ノ價ヲ以ツテ
迄ハ買入レルト云フコトニ致シマシタ、サウシテ政府ハソレニ
同意致シテ今日迄行キマシタガ、此會社ノ起ル前ニハ、價ハ
千二百圓、三百圓ノ間ヲ上下シテ居ッタモノデアリマスガ、會
社ノ成立ツニ付キマシテ、其價ガ千五百圓以上千六百
圓內ト云フ價ニナッタノデアル、而シテ其後今日迄ソレ〓〓實
行シテ參ッテ居リマスガ、千五百圓ト云フ下ニ於テ賣買ガアル、
是ハ恐ラクハ信州上一番デ外國ニ送ルベキ品物ニ非ラズシ
テ、内地ニ使フ地遣ノ價デアラウト信ジマス、ナセナレバ此千
五百圓デアリマシタナラバ、成ベク此會社ガ買入レルト云フ
コトニナッテ居ル、而シテ定期市場ニ於キマシテモ千五百圓
以上維持シテ居リマス-居ルノデアッテ今日マダ其以上投
賣ヲシテ、非常ナル相場ヲ崩シタト云フコトハ未ダ聞カナイ
ノデアル、先ヅ今日迄ンレダケ維持シテ居リマスカラシテ、決
シテ是迄ニ失敗ハ致シテ居ラヌト云フコトヲ申シテ居ルノデ
アリマス(「ノウ〓〓大失敗」ト呼フ者アリ)而シテ是カラ後ハ
如何ニスルカ、是ハ此議場ニ於テ最初ニ質問ヲ受ケマシタ
トキニ、今日迄ノ價格ヲ維持シテ居リマスガ、併シ今日ハ製
絲家ハ生產ヲ中止ヲシテ、サウシテ此維持ヲ圖ヲテ居ルノデ
アリマス、二月十五日後ニ於テハ、各市場ニ於テノ製絲ヲ始
メマスカラ、サウシマスルト云フト是カラマダ絲ハ此後ニ於テ
出テ來ルノデアル、此後ヲ維持スルト云フコトハ、是ハ餘程
考慮ヲシナケレバナラヌモノデアリマス、斯ウ云フコトヲ最初
カラ申シテ居ッタ次第デアリマス、先ヅ政府トシテハ自身ノ低
利資金ノ程度ニ於テ貸シテ、ソレデ實業者ガ行ケルコトニナ
レバ幸デアル、若シ行ケナイナラバ如何ニスルカト云フコトニ
ナリマシテ、行カヌナラバ是ハ政府ハ捨テヽ置クカト云フト、
此價格ヲ維持スル上ニ於テ、尙ホヨリ多クノ力ヲ國家ガ用
キテ、サウシテ此價ヲ維持スル、サウシテ彼等ノ目的ヲ遂ゲル
コトニ就テ政府ハ相當ナルカヲ用キテ行クノガ適當デアル、
其力ガ何デアルカト言へバ、之ニ由ッテ生ジマシタ其損ノ補
償ヲ爲ス、斯ウ云フコトガ一番利キ目アリ、又力ガアリマス、
故ニ政府ハ最初ノ目的ヲ遂行スル上ニ於テハ、今後其損ノ
補償ヲ或ル程度ニ於テヤリ、サウシテ彼等ノ目的ヲ達セシム
ルコトノ方法トシテ、此三千万圓ヲ限リマシテ、御協賛ヲ得
タル次第デアリマス、此事ガ成就スルカシナイカト云フコト
ハ、何人ガ考ヘマシタ所デ、大正九年度ニ於テノ絲ガ、ソレガ
昨年八月九月デマダ一部ホカ取レナイ、是カラ後ニ繭-
製絲ト云フモノニナッテ市場ニ現レテ參ルノデアリマスカラ、
是デ以テ先キノマダ長イ間ノアルモノヲ、是デ必ズ成效スル
ト信ジタ人ハ、ソレハ恐ラクナイダラウト思ヒマス、其間ニハ
如何ニナルカト云フコトハ、是ハ長イ月日ノ間ニ定マル事デ
スカラ、其場合ニ依ッテハ又別ニ維持ノ途ヲ取ラナケレバナ
ラヌ、卽チ彼等ガ千六百万圓デヤッテ見タガ、力ガ竭キタ故
ニ、政府ニドウカシテ都合シテ吳レト云フコトガ來夕譯デス
カラ、政府ハソレデヤッテ來タノデアリマス、是カラ後ニ於テ如
何ニナルカト云フコトニ於テ、初メテ是ガ失敗スルカ成效ス
ルカト云フコトガ、今後ニ定マルノデアリマス、今日マデハ何
モ之ニ付テ失敗ト云フコトハ見出シ得マセヌ、而シテ此三千
万圓ヲ今日貸スト云フコトニシテ置クト、大正十年度ニ於
ケル繭ガ又近ヅイテ來ル、是ハ如何ニスルカト云フコトデア
リマス、是ハ豫算總會ニ於テモ度と述べマシタ如ク、今日三
千万圓デ補償スルト云フコトハ、大正九年度ニ於ケル製絲
ニ限ッテ居ルノデアリマス、-此五月末マデニ製絲ニナリマ
シタモノニ限ルノデアリマス、其後ノモノニ就テハ、卽チ十年
度ノ養蠶製絲ニ就テハ政府ガ此所マデ世話ヲシテ參リマス
ト、言ハヾ際限ノナイコトニナリマス、サウシテ九年度ニ於テ
ハ、是マデ四千圓以上ノモノガ千二三百圓ニナルト云フ經
濟狀態ニ於テ、非常ナル激變ヲ起シテ來マシタガ、サウ云フ
トキニ於テハ臨時ノ仕事トシテ政府デスルノガ相當デアル、
大正十年度ニナリマスト、絲ガ今〓ラシテ幾ラ殘ッテ居ル、サ
ウスレバ此養蠶ハ此位ノ程度ニ於テ制限ヲ付ケヤウトカ、ド
ウ斯ウト云フコトニ就テハ、十分ニ考慮シテサウシテ新タニ
爲ストキデアリマスカラシテ、是ハ養蠶家ガ能ク今日ノ狀況
ヲ見テ、徐口ニ繭ノ買入方ヲ殖ストカ減ラストカ云フコトヲ、
能ク考ヘテヤルノガ必要デアリマス、之ニ就テハ相當ニ當局
者モ注意ヲ致ス積リデアリマスガ、此程度デ此案ヲ定メテ
置キマシタナラバ、ソレニ依ッテ是カラ絲ノ出ルト云フコトニ
就テハ、相當ナル考ヲ以テ爲シ得ルコトヽ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=110
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111・早川龍介
○早川龍介君 私ハ極ク簡單デアリマスカラ、此席カラ申
上ゲマス、只今ノ農商務大臣ノ御辯明デ能ク判リマシタカ
ラ、前途ノ事ハ伺ヒマセヌガ、旣往ニ於テハ非常ニ大ナル五
千万圓ヲ貸スト云フ-救済ト云フ聲ト同時ニ、其實體ノ
上ニ於テハ、帝蠶ガ唯ダ窮地ニ陷ッタト云フダケデ、放済ト云
フコトハ唯ダ大キイ聲ヲ擧ゲテ救濟ト言ハレタダケデ、唯ダ
利子ハ五朱六厘デアル、當リ前ノ利子ナラバ、六朱カ六朱
五厘ノモノガ、一朱カ一朱半安ク借リラレタト云フコトニ止
マル話デ、非常ニ救濟ノ恩澤ガアルカノ如ク言ハレテモ、其
實ハサウデナカッタト云フコトニ、既往ノコトガナルノデアリマ
スガ、其通リデアルカト云フコトヲ一口承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=111
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112・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 山本農商務大臣
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=112
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113・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 是ハ最初ヨリ政府ハ世
ノ中ニ公言致シマシタル通リニ行ッテ來ツヽアルノデアリマ
ス、決シテソレガ爲メニ、政府ハ斯ウシヤウト思ッタコトヲシナ
カッタ、約束シタコトヲ約束通リニ行ハナカッタト云フコトハ
何ニモナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=113
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114・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 討論ニ入リマス津原武君
〔津原武君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=114
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115・津原武
○津原武君 諸君私ハ吾とノ同志ヲ代表致シマシテ、只
今上程セラレタル各案ニ就テ、其所見及ビ態度ヲ聲明スル
必要アリト感ジテ居ル次第デアリマス、大正九年度歲入歳
出總豫算追加、此金高ハ實ニ五千八百三十八万餘圓デ
ゴザイマスルガ、而モ其八割四分八厘ト云フ金高、卽チ四
千九百餘万圓ト云フモノハ、全ク陸海軍關係ノ費用デアリ
マス、卽チ大正九年度ノ豫算ハ故意デアルカ、或ハ偶然デア
ルカ、軍事關係ノ費用ニ就テハ、甚シク杜撰デアッタト云フコ
トガ、卽チ此追加豫算ニ依シテ證明セラレタ譯デアリマス(「ヒ
ヤヒヤ」ト呼フ者アリ)此事實ヨリ致シマシテ、將來ヲ類推致
シマスルナラバ、吾こハ大正十年度ノ豫算ニ於テ、若クハ其
以降ノ豫算ニ於テ、陸海軍ニ關スル所ノ經費ガ如何ニ我ガ
財政ヲ壓迫スルモノデアルカト云フ事實ヲ玆ニ覺悟致シテ
置カナケレバナラヌ次第デアリマス、物價騰貴ノ責任、卽チ
此豫算ナルモノハ前ニ委員長ガ報告セラレタル如ク、全ク物
價騰貴ニ關スル所ノ豫算デアリマス、此物價騰貴ニ關スル
責任ニ就テハ、吾〓ノ同志ハ幾度カ此壇上ニ於テ其意見ヲ
聲明致シテ、政府ト嬖、應酬致シテ居ルガ故ニ、今玆ニ之
ヲ論ズル必要ナシト考へマス、併ナガラ私ガ玆ニ指摘致シテ
置キタイ事柄ハ、此豫算中五千八百餘万圓ノ追加豫算ナ
ルモノノ數字ハ、其三千七百餘万圓ト云フモノハ、實ニ軍艦
製造費ニ關スル所ノ經費デアリマス、昨年ノ臨時議會ニ於キ
マシテ、此軍艦製造費ハ既ニ七割ノ物價騰貴ヲ見越シテ
吾とハ協賛ヲ致シタノデアル、而モ半年經ツカ經タザル今日
ニ當ッテ、更ニ其三割ノ追加要求ヲ餘儀ナクセラルルニ至リ
タル所ノ政府ノ責任如何、是レ私ガ主トシテ玆ニ指摘シテ
置キタイ事柄デアリマス、之ニ對スル政府ノ辯解ハ、先程委
員長ニ依ッテ紹介セラレタル如ク、昨年ノ軍艦製造ニ關スル所
ノ豫算ハ、其編成ノ時卽チ昨年ノ四月ノ物價ヲ基準ト致シ
テ計算シタモノデアル、而シテ更ニ三割ノ追加要求ヲ爲スノ
已ムヲ得ザニル至リタル事實ヲ發見致シタノハ、昨年ノ十月
デアルト云フコトヲ聲明セラレタ、而シテ吾ミノ考フル所ニ
依レバ、昨年ノ物價ガ當時如何ナル趨勢ニアリタルヤ否ヤ、
最近ニ官報ノ附錄トシテ日本銀行ヨリ吾ミノ手ニ與ヘタル
所ノ物價指數表、此物價指數表ニ依リマスレバ、昨年四月
ノ物價指數ハ三百九十七デアッタ、其後ニ漸落ノ步調ヲ步
ミマシテ、同年ノ十月ニ在ッテハ實ニ二百九十八、卽チ九十
九ト云フ指數ガ下落致シテ居ルノデアリマス、斯ノ如ク一般
ノ物價ハ漸次低落ノ步調ヲ步ンブ、實ニ此六箇月間ニ於
テ九十九ト云フ所ノ指數ヲ減ジテ居リマスルニ拘ラズ、軍
艦ノ製造ノ費用ニ限ッテ、獨リ三割ノ騰貴ヲ見テ居ルト云フノ
デアリマス、之ニ對スル大藏大臣ノ說明ハ、日本銀行ノ物價
指數表ナルモノハ、參考トシテ之ヲ見ルコトハ出來ルケレド
モ、必シモ之ヲ信ズルコトヲ得ヌト云フ所ノ御答辯デアッタ、
果シテ然ラバ吾ミハ此日本銀行ノ物價指數表ニ對シテ絕大
ノ信任ヲ拂フコトガ出來ナイノデアルカ、私ハ此點ニ關スル
大藏大臣ノ御答辯ハ、其當ヲ得ザルモノト信ズルノデアリマ
ス、抑〓政府者ノ常ト致シマシテ、初メニハ故意ニ極メテ低キ
數字ヲ提出致シテ、其事業ノ協賛ヲ求メ、議會ト國民トガ
僅カナル金高ト思ウテ之ニ協賛ヲ致ス、卽チ議會ト國民ト
ガ殆ド拔差ノ出來ナイ所ノ窮地ニ陷リタルトキニ當シテ、更
ニ追加豫算ヲ提出致シテ、其協賛ヲ餘儀ナカラシムル【所ノ
一種ノ奸請ナル手段ハ、獨リ現内閣ト言ハズ、過去ノ政府
者ニ於テ吾〓ガ屢〓見タル所ノ事實デアリマス、併ナガラ斯
ノ如キ奸譎ナル手段ハ、一實ニ豫算ノ信用ニ重大ナル關係ヲ
持ツモノデゴザイマスガ故ニ、吾〓ハ極力之ヲ排斥セザルベカ
ラザルト同時ニ、若シ本件ノ豫算ニ就デモ亦斯ノ如キ事實
ガゴザイマスナラバ、吾とハ更ニ皷ヲ鳴ラシテ之ヲ責メナケレ
バナラヌノデアル、而シテ物價騰貴ノコトニ就キマシテハ、政
府ハ斯ノ如キ答辯ヲ與ヘタノデアル、若シモ軍艦ノ製造ガ請
負ト云フ形式ニ依ッテ居ルモノナラバ、斯ノ如キ追加豫算ヲ
提出スルコトノ結果ニハ陷ラナイノデアル、獨リ奈何セン軍
艦ノ製造ハ、一種ノ官業ナルガ故ニ、而シテ其軍艦ノ主タル
材料デアル所ノ鋼材ハ、多種多樣、異形ノモノガ多イカラシ
テ、必シモ一般物價ト同一ノ步調ヲ辿ルモノデナイ、隨テ四
月ノ豫算編成期ニ於テ、其當時ノ物價ヲ-其當時ノ價
格ヲ標準ト致シテ豫算ヲ組ンダケレドモ、ソレガ十月ニ至〃
テ意外ノ騰貴ヲ見ルト云フコトハ、蓋シ餘儀ナキモノデアル
ト云ウタノデアリマス、併ナガラ諸君軍艦ノ製造ニ限リマシ
テ、六箇月ノ後ヲ見越スコトノ出來ナイ政府ガ、如何ニシテ
一年二年三年ノ後ヲ見越スコトガ出來マスカ、而モ吾とハ
昨年ノ臨時議會ニ於キマシテ、政府ノ國防充貝計畫ヲ是
認致シ、十億何千万圓ト云フ所ノ所謂八八艦隊ノ計畫ニ
向ッテ協賛ヲ致シタノデアリマス、當時經濟界ノ現況ハ皆樣
御存知ノ通リ、商工業者ハ相踵イデ破產ヲ致シ、失業者續
出ノ時ニ當リマシテ、而モ彼等ノ苦痛ヲモ忍バセテ吾ヒハ增
稅ノ計畫ニ向ッテマデ協賛ヲ致シタノデアリマス、然ルニ六箇
月ノ後スラ見越スコトノ出來ナイ政府、此政府ノ作リタル
所ノ豫算ニ向ッテ、吾〓ハ協賛ヲ致シタモノデアルト致シマス
ナラバ、吾〓ハ先ヅ(「不明ナリ」ト呼フ者アリ)國民ニ對シテ
其不明ヲ謝シマスト同時ニ、其不明ヲ謝シマス以前ニ於テ、
宜シク政府ノ責任ヲ問フコトガ至當デアルト考ヘルノデアリ
マス(拍手)諸君、此豫算ハ僅ニ五千八百万圓ノ豫算デア
ル、而シテ軍艦製造ニ關スル所ノ經費ハ三千七百餘万圓
デアリマス、併ナガラ諸君霜ヲ履ンデ堅氷ノ至ルト云フコト
ヲ知ルナラバ、大正十年度ノ豫算ニ就テハ更ニ大ナル追加
ヲシナケレバナラヌト云フコトヲ覺悟シナケレバナラヌ、而シ
テ大正十一年度以後ニ於キマシテハ、更ニ大ナル數字ヲ吾
吾呑込マザルヲ得ザル餘儀ナキ立場ニアルト云フコトヲ覺
悟致サナケレバナラヌノデアリマス、今ヤ繰越金ハ大ニ減少
ヲ致シ、將來ニ於ケル所ノ公債ノ募集モ甚ダ不安デアル、或
ハ事業ヲ繰延ベナケレバナルマイ、或ハ增稅スラ致サナケレ
バナルマイカト云フ心配ヲシツヽアル場合ニ於キマシテ、私ハ
此案ハ僅カデゴザイマスケレドモ、將來ヲ推想致シマシテ、甚
シク恐ルヽ所ガアリマス、此意味ニ於キマシテ私ハ此案ニ協
贊ヲ致シマスルト同時ニ、政府ニ向ッテ一ツノ警告ヲ提出シ
テ置キタイト思フノデアリマス、要スルニ政府ハ此豫算ノ執
行ニ就キマシテ、深ク其責任ノ重大ナルコトニ顯ミテ、最善
ノ努力ヲ拂ハレンコトヲ希望致シマスル譯デアリマス、尙ホ
將來ノ豫算編成ニ就キマシテハ、斯ノ如キ事實ノ再ビ發生
致シ、繰返サヾルコトヲ希望致スト云フ意味ノ警告デアリマ
ス(「賛成」「反對」又「簡單」ト呼フ者アリ)次ニ蠶絲救濟ニ
關スル案件ニ就キマシテ其意見ヲ聲明致シマス、元來此案
ハ過日本院ヲ通過致シマシタ米穀法案ト其重要ノ程度ヲ
稍〓等シク致シテ居リマスル所ノ姊妹案デアリマス、勿論一
面ニ於キマシテハ、輸出貿易ノ太宗デアル所ノ生絲貿易ノ
消長ニモ關係致シマスレバ、一面ニ於テハ二百万ノ養蠶家
ノ運命ニモ重大ナ關係ヲ持ッテ居リマスル故ニ、私共ハ極メ
テ愼重ナル態度ヲ以テ本案ヲ待遇致シテ居リマスル次第デ
アリマス、而モ吾ミノ〓究致シマシタル結果ニ依レバ、本案ハ
帝蠶會社ヲ保護セントスルトシテハ、徹底致シテ居ラヌ、又養
蠶家ヲ救濟スルト致シテハ、甚シク效驗ノ薄キコトヲ虞ルヽ
ノデアリマス、私ハ此點ニ就テ四箇ノ事實ヲ掲ゲ、結局二箇
ノ警告ヲ政府ニ提出致シマシテ、本案ニ賛成スルノ所意思ヲ
表明致シマス、第一ニ指摘致シマスル事項ハ、本案ニ依ル蠶
絲ノ救濟ハ、九年度生產ノ生絲ト、十年度生產ノ生絲トノ
間ニ差別待遇ヲ致スノデアリマス、其差別待遇ヲ致シマスル
所ノ結果、本案ニ依ル所ノ救濟ガ、主トシテ製絲家及生絲
商人ニ偏重デアッテ、養蠶家ニ偏輕デハナイカト云フ一點デ
アル、諸君ハ豫算委員會ニ於テノ質問應答、竝ニ只今此壇
上ニ於テ農商務大臣ガ聲明セラレタルコトニ依ッテ御存知
ノ通リ、此本案ニ依ル所ノ蠶絲業救濟ナルモノハ、全ク大
正九年度產ノ製絲ニ限ルノデアッテ、大正十年度ノ繭及絲
ト云フコトニ就テハ、何等ノ考慮ヲ拂ハレテ居ラナイト云フ
一點デアリマス、勿勿政府ハ考慮ヲ拂ハナイトハ言ハヌ、何
等ノ手段ヲ執ラヌト云フノデアル、蓋シ相場ノ安定、維持、
賣行ノ增進、是ハ繭ノ相場ニ重大ナル關係ヲ持ツコトハ、今
更申シマスマデモナイノミナラズ、又九年度產ノ生絲ヲ免モ
角モ十万捆ヲ買入レルト云フコトニナリマスナラバ、ソレニ
依シテ得タ所ノ資金ガ製絲業者ノ手ニ廻リ、製絲業者ヨリ
ソレガ養蠶家ニ廻ルト云フ事實ハ、是ハ否定シナイノデアル、
併ナガラ是ハ直接ニ帝蠶會社ヲ保護致シ、仍テ以テ間接ニ
養蠶業者ヲ保護セントスル所ノ方法デアッテ、吾こガ蠶絲業
ヲ救濟スルニ當リテハ、先ヅ二百万ノ養蠶業者ヲ主義ニ置
カナケレバナラヌト云フ所ノ主張トハ多少ノ距離ノアルト云
フコトヲ認ムルノデアル、言フマデモナク製絲業者ト養蠶業
者トハ、唇齒輔車ノ關係ノアルコトハ勿論デアル、勿論デハ
ゴザイマスケレドモ、一面ニ於テ賣人ト買人トノ關係デアル、
必シモ利害ガ常ニ一致シタリトハ認ムルコトガ出來ナイノデ
アリマス、隨ヒマシテ此本案ノ救濟ガ、果シテ製絲家ニ於キマ
シテ、無條件ニ養蠶家ニ其保護ノ實益ヲ割譲スルカ否ヤト
云フコトニ就テ、多少ノ疑ガアリマス、此點ニ就キマシテハ過去
ノ帝蠶會社ニ對スル養蠶業者ノ怨嗟ノ聲、養蠶業者ガ如何
ニ帝蠶會社ヲ呪ヒツヽアリシヤト云フ過去ノ事實ヲ玆ニ語
ルコトハ、餘リニ事古リタリト思ヒマスカラ申上ゲマセヌ、卽
るこ
チ製絲業者ト養蠶業者トハ唇齒輔車ノ關係ニ亙ッテ居ル
ケレドモ、必ズ利害ガ一致シナイノデアルト致シマスナラパ、
私ハ本案ノ救濟ガ養蠶業者ニ及ブト云フコトニ就キマシテ
ハ、多少ノ疑惧ヲ持タザルヲ得ザル次第デアリマス、此點ニ
就キマシテ去月二十二日ニ、此壇上ニ於テ我同志ノ早川
君竝ニ山邊君アタリヨリシテ、其意見ヲ詳密ニ陳述サレテ
居リマスカラ、茲ニ私ハ繰返スコトヲ避ケマス、要スルニ吾こ
ノ希望ヲ露骨ニ中シマスルナラバ、絲價千五百圓ト云フモノ
ヲ維持スルナラバ、繭ノ相場ハ六圓三十七錢五厘ニ買ヒ得
ルノデアル、ソレハ製絲ノ費用ヲ四百圓ト見テヾアル、私ハ此
四百圓ト云フモノニ就テ多少ノ疑ヲ持ツ、或ハ今日ノ物價
ヨリスルナラバ、今少シ此製絲費用ハ安クテモ宜イト思フ
ガ、免ニ角製絲費用ヲ四百圓ト見、サウシテ絲ノ相場ヲ千
五百圓ト見マスルトキニ於キマシテハ、蘭ハ必ズ六圓三十七
錢五厘デ買ハナケレバナラヌ筈デアルガ故ニ、若シ政府ガ本
案ニ依シテ養蠶業者ヲ眞ニ救濟セント欲スルナラバ、此點ニ
就テ相當ノ考慮ヲ拂ハレテ、帝蠶會社ニ向ッテ或一種ノ條
件ト云フコトハ出來ナイニシテモ、一ノ諒解ヲ得ルト云フコ
トノ手段ヲ執ラルヽガ相當ナリト信ジテ居ル次第デアリマ
ス、又政府ハ委員會ニ於キマシテ、斯ノ如キコトヲ言ハレタノ
デアリマス、是ハ委員長ノ報告ニハナカッタガ、政府ハ養蠶業
者ニ對シテ大正十年度ノ計畫ニ就テ、其自制心ヲ喚起スベ
キ所ノ何等カノ手段ヲ取ル積リデアルト云フコトヲ明言セ
ラレタノデアリマス、惟フニ其意思ハ掃立ヲ制限スルノデア
ル、或ハ生產費ヲ節約スルコトニ就テ、養蠶業者ノ自制ヲ喚
起スルコトデアラウト考ヘテ居ルノデアリマス、併シ私共ノ見
ル所ニ依リマスレバ、供給ヲ制限スルト云フコトハ、價格ヲ
維持スル上ニ於テ固ヨリ必要ノ手段ニハ相違ナイケレドモ、
之ヲ農村ノ實狀ニ就テ見マスルト、養蠶家ノ設備ト云フモ
ノハ、既ニ定マッテ居リマスカラ、急激ニ之ヲ制限スルト云フ
コトハ甚ダ困難ナル事情ガアリマスト同時ニ、又極度ニ之ヲ
制限致シマスルトキニ於キマシテハ、勢ヒ桑園ヲ荒廢ニ陷ラ
シメルト云フ所ノ危險ガアル、又生產費ヲ節約スルト云フコ
トハ、是ハ農村ノ自覺ニ依ッテ當然目的ヲ達スルコトガ出來
マスケレドモ、直ニ此目的ヲ徹底的ニ達セントスルニ當リテ
ハ、先ヅ一般ノ物價ヲ下落セシムル手段ヲ講ズルコトガ當前
デコザイマス、併シ是ハ中〓容易ナラザル問題ト思フ、政府
ガ誠意ヲ以テ養蠶家ノ自制ニ訴ヘルト云フコトハ固ヨリ必
要ト思ヒマスケレドモ、此手段ニ依シテ供給ヲ制限致シ、政
府ノ所期ノ目的ヲ達セシムルト云フコトハ、甚シキ困難寧ロ
不可能デハナイカト思フ位デアリマス、是ガ第一ノ本案ニ對
スル受惧ノ點デアル、第二ノ點ハ、此案ハ帝蠶會社ヲ保護ス
ルト致シテハ、甚シク徹底ガ缺ケテ居リハセヌカト考ヘルノデ
アル、帝蠶會社ガ本案ノ救濟ヲ受ケル、假ニ之ヲ恩惠ト致シ
マセウ、本案ノ恩惠ニ浴スルニ就キマシテハ、其要件ト致シマ
シテハ、第一ニ大正九年度ノ絲十万梱-現在已ニ三万
梱買付ケテ居ルト云フコトデゴザイマスカラ、更ニ七万梱デ
アリマスガ、結局帝蠶會社ハ[十万相ノ絲ヲ買付ケナケレバ、
此恩惠ニ浴スルコトハ出來ナイノデアル、又更ニ此三千万
圓ト云フ金ヲ政府カラ貰ハウト思フナラバ、先ヅ自分等ガ
拂込ンデ居リマス千六百万圓ノ株金ヲ全損致シマシテ、卽
チ事實上破產ノ狀態ニ陷リタルトキニ於テ、初メテ此三千
万圓千云フ政府ノ補償ヲ受ケルコトガ出來ルノデアル、故ニ
帝蠶會社ト致シマシテハ十万梱ヲ買付ケント欲スルナラバ、
千六百万圓ト云フ自分等ガ出資シタル金ヲ全損スル危險
ヲ冒サナケレバナラナイ、然ラバ全損ヲ免レヤウト致ス、卽チ
自分等ノ株金全部ヲ失ハナイトスルナラバ、此案ノ恩惠ニ
浴スルコトハ出來ナイノデアル、然ラズ則チ帝蠶會社ト致シ
マシテハ、斯ノ如キ案ガ出マシテ斯ノ如キ恩恵ラシキ案ガ出
マシタ所デ、此恩惠ニ浴スベキヤ浴スベカラザルヤ、所謂痛シ
痒シト云フ立場ニ在ルモノデハナカラウカ、勿論帝蠶會社ニ
出資者タル諸氏ハ、極度ノ國家的見地ニ立ッテ、其犧牲心
ヲ發揮致シテ、自己ノ利害ヲ無視致シテ、十万梱ノ絲ヲ買
付ケラレルモノデアルト云フコトニ就テハ、吾〓ハ深ク之ヲ信
用致スノデアリマス、併ナガラ其十万相ノ絲ヲ買付ケタル結
果ハ、本案ニ依ル所ノ恩惠ニ浴セントスルニ當ッテ、先ヅ其金
ヲ全部損シテシマハナケレバナラヌト云フノデアル、生絲ノ相
場ノ前途ト云フモノガ旨ク參リマスルナラバ、洵ニ結構デア
ルガ、若シ悲觀ノ狀態ニデモ陷リマシタナラバ、帝蠶會社諸
君ノ犠牲ノ大ナルト共ニ、政府ガ斯ノ如キ案ニ依リテ帝蠶
會社ヲ或意味ニ於テ挑發シタリト云フ所ノ責任モ之ヲ辭ス
ルコトハ出來ナイモノデハアルマイカ、私ハ帝蠶會社ヲ助成
スルト云フ意思ガゴザイマスルナラバ、今一層徹底的ニ他ノ
方法ニ依ルベカリシモノデアルト云フコトヲ、是ハ私一個ト
致シマシテ考ヘテ居ル次第デアル、第三ニ十万梱ノ滯貨ヲ
造ルト云フコトハ、新絲-大正十年度產ノ卽チ新絲ノ相
場ニ對シテ一ツノ脅威壓迫ヲ加ヘルモノデハナイカト云フ點
デアル、昨年以來日本銀行總裁ガ各地ニ於テ爲シタル所ノ
演說ヲ讀ミ、又過日當院ニ於テ大藏大臣ガ斷片的ニ爲シ
タル所ノ演說ニ依リマシテモ、頻リニ輸出ノ奬勵ヲ致シ、滯
貨ヲ一掃シ、若クハ其滯貨ヲ減少スルト云フコトガ今日ノ
經濟上ノ急務デアルト云フコトヲ公表セラレテ居ル、然ルニ
此計畫ニ依リマスレバー-本案ノ計畫ニ依リマスレバ、政府
保證ノ下ニ生絲十万梱ト云フ所ノ滯貨ヲ造ル案デアリマ
ス、而モ此十万相ノ滯貨生絲ハ、先ヅ帝蠶會社ノ資本ノ千
六百万圓ト、第二ニ本案ニ依ル所ノ三千万圓ト二重ノ保
護ヲ受クル所ノ滯貨デアリマス、極端ニ申シマスルナラバ、此
十万個ノ生絲ナルモノハ、所謂二束三文ニ賣飛バシテモ厭
ハナイト云フ所ノ一種ノ絲貨デアルトマデニ言ヒ得ル所ノ滯
貨デアリマス、而シテ政府ノ言フ所ニ依リマスレバ、此滯貨
ハ二箇年ニ於テハ必ズ之ヲ處分シナケレバナラヌモノデアル、
隨テ此滯貨ハ二箇年ト云フモノハ生絲市場ニ君臨シテ居
ルノデアリマス、其二箇年後ニ於テハ如何ニ相場ガ下落致
シマシテモ、賣放タルベキ所ノ運命ニ居ルモノデアル、果シテ
然ラバ此二重ノ特殊待遇ヲ受クル所ノ生絲ハ、如何ニシテ
新絲相場ヲ脅威壓迫セズシテ措クベキヤ、否ヤ、私ハ深ク此
點ニ就テ將來ノ新絲ノ增加ニ就テ憂慮致シテ居ル者デア
リマス、而モ此憂慮ハ實ニ本案ニ原因スルモノデアルト云フ
コトヲ考ヘ來リマシテ、甚シク憂ヘテ居ル次第デアリマス、第
四ノ點、是ガ最後デアル、此案バ絹業者ノ利害ヲ閑却シタ
モノデハアルマイカ(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)此點デアリマス、
ス、人爲ニ依ッテ卽チ本案ニ依シテ生絲ノ價格ヲ維特スルト
云フノデアル、或意味ニ於テ不自然ニ生絲ノ價格ヲ維持セ
ントスルノデアル、然ラバ之ニ依リテ製造シタル所ノ絹織物
モ、亦同一ノ比例ヲ以テ其價格ヲ維持セザルベガラザル運
命ニ在ルノデアリマス、然ルニ織物ニ就キマシテハ一ツノ代
用品ガアル-多クノ代用品ガアリマス、御存知通リ人造
絹絲ト云ヒ、或ハ羊毛ト云ヒ、或ハ近頃綿絲ハ非常ニ慘落
ヲ致シテ居ル、又支那ノ絹紬ハ銀塊安ト共ニ甚シク日本ノ
織物市場ヲ壓迫致シテ居リマス(「寧ロ反對スルノ捷徑ナル
ニ如カス」「靜カニシロ」ト呼フ者アリ)隨ヒマシテ今絹織業者
ノ立場ハ、所謂內外ノ市場ニ於キマシテ、挾擊ヲ受ケテ居ル
ト云フ現況デアルト云フコトハ、多少絹業ノ事ニ關係ヲ御
持チニナッテ居ル諸君ハ、必ズ御存ジノ事デアラウト思フノデ
アリマス、然ラバ不自然ナル若クハ人爲的ニ造ラレタル所ノ
相當ニ依ッテ織出シタル所ノ織物ハ、ドウシテモ此挾擊ニ對
シテ自己ノ領域ヲ保護セントスルナラバ、之ヲ不自然ナル低
價ニ賣下ゲナケレバナラヌト云フ關係ニナッテ居ルノデアリマス、
卽チ輸出織物ノ絹業ト云フモノニ就テ深ク皆樣ガ御考ニナ
リマシタナラバ、此狀況ヲ見出スコトガ出來ルダラウト思フノ
デアリマス(「反對ナラ反對ト言へ」「好イ加減ニシロ」「讀ンダ
方ガ早イ」ト呼フ者アリ)政府ノ考慮ヲ請ウテ居ルノデアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=115
-
116・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=116
-
117・津原武
○津原武君(續) ンレカラ皆樣ガ御存ジデアラウト思ヒマ
スガ、近頃米國ノ關稅ノ引上問題ガ起ッテ居リマス、絹織物
ニ對スル所ノ米國ノ關稅引上問題ガ起ッテ居ル、是ハ斯ウ
云フ事モ一ツノ原因デアルト思フノデアリマス、輸出絲ト地
遣絲ノ間ニ於テ先程何方カラカ指摘サレタヤウデアッタガ、
相當値開キガアリマス、卽チ輸出絲ニ對シテ特殊ノ待遇ヲ
致シテ居リマスルガ爲メニ、其報復手段ト致シテ輸出絹織
物ニ向ッテ關稅ノ增率ヲ圖リツヽアルモノデアルト云フコト
ノ疑ガアルノデアリマス、此點ニ就テハ政府。ニ於テモ相當ナ
手段、若クハ考慮ヲ執ラレツヽアルコトヽ考ヘマスルガ、本案
ガ通過致シテ不自然ナル絲ノ相場ヲ維持スルモノデアルト
云フガ如キ事ニ相成リマスルト云フト、此關稅ノ增率問題
ト云フ事ニ就テ、相當ニ有力ナル刺戟ヲ與ヘルト云フ關係
ニ立至ルベキコトヲ虞レルノデアル、此四點ガ私共ガ本案ニ
對シテ甚シク憂慮ヲ致シテ居リマスル點デアル、併ナガラ
(「反對シテ見ロ」ト呼フ者アリ)事ハ-事ハ「免ニ角多クノ
養蠶業者ニモ間接ナガラモ效益アル事ト信ズルガ故ニ、本
案ニ就テハ全然賛成ヲ致スノデアル(笑聲起リ「結局贊成」
「簡單」「反對シロ」ト呼フ者アリ)心配ヲ-冷靜ニ-冷靜
ニ私共ハ考ヘテ居ルノデアル、私共ハ今申シタヤウナ四ツノ
心配ヲ致シテ居ルノデアル、四ツノ心配ヲ致シテ居リマスガ
故ニ、本案ニ就テ政府ニ對シテ、二ツノ警告ヲ發シテ、其考
慮ヲ請フノデアリマス、其第一ノ警告ハ、本案ノ救濟ハ製絲
業者及絲商人ニ偏重シ、養蠶家ニ偏輕ナルモノト認ム、政
府ハ宜シク二百万養蠶家ニ對シテ本案ノ救濟ヲ徹底的ニ
均霑セシムベク、最善ノ努力ヲ爲サンコトヲ望ムト云フノデ
アル(「判ヲテ居ルヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)ソレカラ(「ヒヤ
ヒヤ」ト呼フ者アリ)第二ハ本案ハ絹業者ノ利益ヲ閑却スル
所ノ嫌ガアル、更ニ輸出絹織物ニ關シテハ、米國ノ關稅增
率問題ニ關シテ相當ノ手段ヲ執ラレンコトヲ望ムト云フノ
デス、私ハ本案ニ對シマシテハ(「モウ判ッタ」ト呼フ者アリ)前
ニ申シタル如ク四ツノ心配ヲ持ッテ居ル、此四ツノ心配ヲ持ツ
テ居リマスガ故ニ、卽チ只今申シタル所ノ二ツノ警告ヲ發
シ、政府ニ對シテ相當ナル手段、及考慮ヲ執ラレンコトヲ望
ミマス次第デアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=117
-
118・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 植原悅二郞君
〔植原悅二郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=118
-
119・植原悦二郎
○植原悅二郞君 私ハ玆ニ議題ニナッテ居リマスル大正九
年度總豫算追加豫算案ニ就キマシテ、贊成ノ意ヲ表スルモ
ノデアリマス、併ナガラ之ニ贊成スルコトハ萬已ムヲ得ズシテ
賛成スルノデアリマシテ(「デハ反對シ給へ」ト呼フ者アリ)決
シテ之ヲ以テ滿足シテ贊意ヲ表スルモノデアリマセヌ(「ソン
ナ馬鹿ナ奴ガアルカ」「默レ」ト呼フ者アリ)其理由ハ若シ眞
ニ政友會諸君ガ-追加豫算案ト致シマシテモ五千八百
万ノ巨額ニ上ッテ居ルモノデアリマス故ニ、是等ノ問題ニ就
キマシテハ縱令政府與黨デアラウトモ、國家國民ノ爲メニ愼
重ナル態度ヲ以テ御取扱アランコトヲ希望シテ已マナイノ
デアリマス(拍手起リ「愼重ノ態度ヲ執ッテ居ル」ト呼フ者ア
リ)此追加豫算ノ細密ニ亙ッテ批評致シマスレバ、幾多ノ批
評スベキ點ガアル、併ナガラ細目ニ亙ッテ批評スルコトヲ姑ク
避ケマシテ、其主ナルモノニ就テ何故ニ私共ガ萬己ムヲ得ズシ
テ之ニ賛成スルカト云フ理由ヲ申上ゲマス、(「選擧區デヤリ給
ヘ」ト呼フ者アリ)五千八百万ノ追加豫算ノ內三千七百万
ハ海軍ノ主トシテ製艦費ノ追加デアリマス(「判ッテ居ルヨ」
ト呼フ者アリ)私ガ申上ゲル迄モナク、海軍ノ製艦費ハ昨年
ノ特別議會ノ七月ノ際ニ定メタモノデアリマス、御承知ノ
如ク七月ハ物價騰貴ノ立場カラ行キマシテモ、殆ド絕頂ニ
達シテ居ッタト云フヨリハ、寧口下リ坂ニ掛ッテ居ッタ時デアリ
マス、其時ニ出マシタ追加豫算案ニ對シテ、三千七百万圓ノ
物價騰貴ニ對スル所ノ追加豫算ヲ請求シテ居ルノデアリマ
ス、之ニ就キマシテ吾ミノ同僚ガ政府當局者ニ對シテ質問
ヲ試ミマシタ、昨年ノ特別議會ニ於テ、海軍ノ製艦費ニ對
スル所ノ豫算ヲ審議スルニ當ッテ、吾〓ハ政府當局者ヨリ斯
ノ如ク言ハレテ居ル、是ハ國防上重大ナル事デアル、而シテ
之ヲ遂行スルガ爲メニハ、所得稅ノ增稅モシナケレバナラヌ、
酒稅モ增稅シナケレバナラヌ、國民ニ多額ノ增稅ヲ要求シ
タノデアリマス、吾とハ已ムヲ得ズ國家ノ爲メニ是モ忍ンデ
之ニ贊成シタノデアリマスケレドモ、昨年ノ七月カラ今年ノ
三月、僅カ五六箇月ノ間ニ、海軍ノミニシテ三千七百万圓
ノ追加豫算ト云フモノハ容易ナラザルモノデアル、何故ニ海
軍ニ於テハ斯ノ如キ豫算違ヒガ出來タノデアルカ、昨年ノ特
別議會ニ於テ、海軍ノ製艦費ハ物價ニ對スル所ノ七割ノ騰
貴ヲ見越シテ原案ヲ立テヽ居ルノデアル、然ルニ其七割ニ尙
ホ或ルモノニ於テハ三割、鋼材ノ如キニ於テハ七割二分五
厘、普通ノモノニ於キマシテハ十割、鋼ニ對シマシアハ十四割
二分五厘ト云フガ如キ增額ヲ餘儀ナクサレルト云フコトハ、
如何ナル理由デアルカト云フコトヲ、我ガ同僚大口君ヨリ
海軍當局ニ尋ネタノデアリマス、之ニ對シテ海軍當局ハ斯
ノ如ク答ヘテ居ル、誠ニ御尤ナ質問デアリマス、併ナガラ海軍
ニ於キマシテ特別議會ニ提出シタ豫算案ヲ編成シタノハ昨
年ノ四月デアリマス、昨年ノ四月ニ於テ豫算ヲ編成致シマ
シテ、大藏省ニ迴シテ四月ニ定メタモノガ漸ク七月ニ決定
ヲ見タ譯デアルカラシテ、其間ニ於テ多少ノ見積違ヒノアル
ト云フコトハ已ムヲ得ナイコトデアル、併ナガラ海軍當局ニ
於テモ之ヲ海軍大臣ハ立派ニ御認ニナッテ居リマス、寔ニ斯
ノ如キ追加豫算ヲ國民ノ前ニ出シテ協賛ヲ仰グト云フコト
ハ、海軍自ラモ遺憾千萬ト考ヘテ居リマス、併ナガラ今日ノ
狀態ニ於テハ如何トモ致方ガナイ、殊ニ物價ノ如キモノニ對
シテハ是ハ大口君モ同情シテ、海軍大臣ハ經濟ノ事ニハ餘
リ明ルクアルマイ故ニ、斯ノ如キ見積リヲ爲スッタノデアラウ
カラ、ソレニ對スル大藏大臣ノ所見ハ如何デアル、斯ウ云
フコトヲ大藏大臣ニ質問シタノデアリマス、之ニ就テ大藏
大臣ハ斯ノ如ク御答ニナッテ居リマス、寔ニ大口君ノ御質
問ハ御尤千萬デアル、併ナガラ今日ノ豫算ノ編成上デハ
斯ウ云フヤウナ破目ニ陷ルノハ已ムヲ得マセヌ、寔ニ遺憾
千萬ナコトデアルケレドモ、今日ノ大體ノ豫算計畫ノ上ニ於
テハ、斯ノ如キ狀態ニ陷ルノデアル(「其通リデアリマス」ト呼フ
者アリ)ノミナラズ大藏大臣ハ外國ノ如クニ軍艦ヲ民間ニ請
負ハシテ造ラセルト云フコトニナレバ、斯ウ云フ違算ハ出ナイ
ノデアル、然ルニ今日ニ於テ海軍ノ製艦ニ對シテハ、政府ノ專
賣ト云フヤウナ狀態ニ居ルガ故ニ斯ウ云フヤウナ已ムヲ得ナ
イ羽目ニ陷ルノデアル、斯ウ云フコトデアリマシタ、斯ウ政府當
局自ラ御說明ニナッテ居ルノデアリマス、シテ見ルト云フト私
共ハ此場合ニ於テ一言無カルベカラズデアル、敢テ私共ハ長
イ時間ヲ皆樣方ニ煩ハス次第デハアリマセヌケレドモ、此事實
ヲ國家國民ニ明カニ致サナケレバナラヌノデアリマス、斯ノ如キ
狀態ニ立致リマスコトニ就キマシテハ、第一ニ今日ノ日本ノ財
政計畫其者ガ、根本カラ誤ッタ上ニ樹テラレテ居ルト云フコト
デアリマス、斯ウ云フコトデアリマスナラバ、政府當局自ラ其非
ヲ悟ッテ居リナガラ、マダ今年度ニ出マシタ所ノ豫算ニ對シテ
モ、其基礎ガ革マッテ居ラナイノデアリマス、故ニ私共ハ大正十
年度ニ對スル所ノ豫算、是ハ編成換ノ請求ヲ政府ニ求メテア
ルノデアリマスカラシテ、之ニ對シテ私共ハ彼此申ス譯デハア
リマセヌケレドモ、國民ノ前ニ是ダケノ事ハ明瞭ニシテ置カナ
ケレバナラナイ、昨年七月定メタ所ノ豫算デサヘモ、僅カ五
六箇月ノ間ニ、海軍ノ製艦費ニ於テ七割ノ物價騰貴ヲ見
越シテ基本トシタ所ノ豫算ニ、尙ホ三割、品物ニ依ッテハ七
割二分五厘ノ增額ヲ追加豫算トシテ提出シナケレバナラナ
イト云フヤウナ、今日ノ日本ノ豫算ヲ以テ、國民ハ安ジテ租
稅ヲ負擔スルコトハ容易デナイトトフフトデアリマス、而已
ナラズ今年度ノ只今貴族院デ審議中ノ豫算ニ對シテモ、是
等ノ立場カラ私共考へマスレバ、頗ル不安ヲ感ズルノデアリ
マス、政府ノ爲ス所ノ豫算ハ、全ク今日ニ於テハ、政府當局
ガ惡イデアリマスマイガ、豫算編成ノ基礎其者ノ誤レルガ故
ニ、其場凌ギノ一時遁レノ豫算ヲ國民ノ前ニ提出シテ、其
協賛ヲ求メルト云フ如キ不安狀態ニ在ルノデアリマス、併ナガ
ラ大正九年度ノ追加豫算ハ、旣ニ政府トシテハ買フベキ物ハ
買ウテ居ルノデアリマス、此三月ヲ以テ支拂ヲ致サナケレバ
ナラナイモノモ澤山アルノデアリマス、是ハ政府當局說明ノ
如クデアリマス、將來ノ事ナラバ私共反對致シマス、併ナガ
ラ過去ニ於テ起ッタ事ヲ、國家ノ重大ナル事ニ對シテ私共ハ
誤リデアルカラト言ッテモ、[政府ノ機關ヲ止メ或ハ軍艦ノ製
造ヲ遲延セシムルガ如キコトハ、國家ヲ憂フル者ノ敢テ爲シ
能ハザル所デアリマス、此意味ニ於キマシテ私共ハ已ムヲ
得ズシテ此追加豫算ニ對シテハ賛成ヲ致シマスケレドモ、政
府ト致シマシテハ將來斯ノ如キ事ヲ先ヅ第一ニ繰返サナイ
ヤウニ、今年度ノ豫算ヲ編成換シテハ如何デス、而已ナラズ、
將來ニ於テ根本的ニ豫算ノ編成ヲ御變更ニナル御計畫ヲ
御樹テニナッテ、國民ノ前ニ提出スル所ノ豫算ニ對シテハ、國
民ガ安ジテ之ニ信賴出來ル所ノ計畫ヲ、責任アル政府トシ
テハ採ラナケレバナラナイト云フコトヲ、政府ニ警告致ス者
デアリマス、(「モウ宜イ」ト呼フ者アリ)次ニ豫算外國庫ノ負
擔トナルベキ所ノ案ニ就キマシテモ、私共ハ已ムヲ得ス賛成
致シマス、併ナガラ之ニ就キマシテモ政府ニ對シテ十分ナル
警告ヲ與ヘテ置ク必要ガアルノデアリマス、委員長モ、政府
當局モ、帝國蠶絲株式會社ハ今日迄成功セルモノデアル、
失敗致シタモノデナイ、斯ウ云フコトヲ豫算會議ニ於キマシ
テモ、只今此席ニ於テモ申サレマシタケレドモ、若シ失敗デ
ナイモノナラバ、何故政府ハ三千万圓ヲ補償スル必要ガア
ルノダ、此經過ニ就テハ簡單ニ諸君ニ申上ゲテ直ク必要ガ
アルノデアリマス、私ガ申ス迄モナク、諸君御分リデアルナラ
バ-蠶絲業ハ日本ノ國民ニ對シテ最モ重大ナル事業デア
リマス、諸君ガ御分リニナリマシテモ此場合ニ此席カラ天
下ノ國民ニ此事ヲ明瞭ニ知ラシテ置ク必要ガアルノデアリ
マス、ソレヲ妨ゲルト云フガ如キ者ハ、國家國民ヲ念ハザル、
日本ノ重大ナル所ノ蠶絲業ニ對シテ、多大ノ注意ヲ拂ハザ
ル者デアルト謂ハナケレバナリマセヌ、(「國ヲ思フハ君獨リ」
「外國ノ博士ハ偉イ」ト呼フ者アリ)諸君、御承知ノ如ク帝
蠶ノ成立スル由來ニ就テハ、此席上ニ於テ屢〓說明モサレ、
議論モサレタコトデアリマスカラ、御承知デモゴザイマセウ、
併ナガラ帝蠶ヲ組織スル場合ニ於キマシテ、帝蠶ガ一千六
百万圓ノ資本ヲ以テ作リ、政府カラ五千万圓ノ低利資金
ノ融通ヲ得テ、其當時生絲ノ市場ハ普通ニ於キマシテ千二
百園或ハ三百圓ヲ往來致シテ居ッタノデアリマス、ソレヲ人
爲的ニ千五百圓ヲ維持シナケレバナラナイ、之ヲ維持スルコ
トガ日本ノ製絲家、絹業者、養蠶家、蠶絲業家ノ爲メニ利
益ニナルモノデアルノミナラズ、帝蠶ト致シマシテハ、政府カラ
五千万圓低利資金ノ融通サヘ出來レバ、千五百圓ト云フ
所ノ市場ヲ人爲的ニ維持出來ルモノデアルト一云フコトヲ天
下ニ聲明シタコトハ、諸君御承知デアリマセウ、(「政府デハ
ナイ」ト呼フ者アリ)政府デハ勿論アリマセヌ、政府ハ其言フ
コトヲ信ジテ五千万圓ノ低利資金ヲ出スト云フコトヲ承知
シタト、農商務大臣自ラ言明シテ居ラレルノデハナイデスカ
シテ見レバ農商務大臣モ同ジキ見解ヲ以テ此事ノ計畫ニ
出立シタト考ヘナケレバナラヌノデアリマス、而シテ諸君、今
日私ハ帝蠶ガ成功シタカ失敗シタカト云フコトノ議論ヲ申
スモノデハアリマセヌ、事實ヲ諸君ノ面前ニ提供シテ、諸君
ノ判斷ヲ願ヒマス、昨年ノ九月末卽チ十月頃ニ於キマシテ、
政府カラ五千万圓ノ資金ノ融通サヘ出來レバ、千五百圓
ノ絲價ハ明ニ維持出來ルモノト主張シタニモ拘ラズ、今日
ソレヲ維持シテ居ルコトガ出來ルカト申シマスレバ、殆ド外
國ノ輸出ハ止マッテシマッタノミナラズ、諸君、此五月三十一
日迄ニ春挽ノ蘭ガ全部調ヘバ、二十一万箇以上ノ滯貨ヲ
横濱ニ於テ見ナケレバナラナイ狀態デアリマセウ、若シ政府
ノ主張スルガ如クニ帝蠶會社ガ成功ノモノデアリマスナラ
バ、今日政府ニ向ッテ三千万圓ノ損失補償ヲ願出ル必要ハ
無イノデアリマス、又政府トシテ之ヲ致ス必要ハ無イノデア
ルケレドモ、之ヲシナケレバナラナイ、受ケナケレバナラナイト
云フコトハ、如何ニ言ヲ左右ニ致シマシテモ、今日迄帝蠶ノ
失敗ニ終レリト云フコトハ蔽フベカラザル事實デアリマス、此
事實ニ依リマシテ、此場合私共ガ考ヘルコトハ斯ウ云フ事デ
アリマス、此五月三十一日迄ニ全部ノ製絲家ガ春挽ヲ終リ
マシテ、其春醬西ノ繭ガ橫濱ノ市場ニ出マスル場合ニ於テハ、横
濱ニ於テ多額ノ滯貨ヲ見ルト云フコトデアリマス、此場合ニ
ドウナルカト政府ニ問ヒマスレバ、斯ウ云フコトニナルト思フ、
六七万梱ハ此三箇月ノ間ニ亞米利加へ輸出サレ得ル
ト思フ、跡三万梱ハ內地ニ於テ消費サレ得ルト思フ、跡
十万梱ノ問題デアル、然ルニ帝蠶會社ハ今日三万梱
ヲ持ッテ居ル、之ニ跡七万梱ヲ買足シテ、之ヲ所有シテ居ル、
サウスレバ將來ニ於テ生絲市場ヲ安定セシムルコトガ出來
ルト申サレマシタケレドモ、私共ハ此點ニ於テハ甚シキ見解
ヲ異ニシテ居ルモノデアリマス、啻ニ見解ヲ異ニシテ居ルノ
ミナラズ、政府ノ既ニ帝蠶ガ成功スルモノナリ、千五百圓ノ
絲價ヲ維持出來ルモノナリト思フト、此見込ニ於テ政府ハ
旣ニ誤ッテ居リマス(「誤"マテ居ラナイヨ」ト呼フ者アリ)故ニ
今日ハ政府ノ見込モ亦私ハ甚ダ誤レルモノデアルト云フコ
トヲ此壇上カラ明言シテ憚カラザル者デアリマス(「何故反
對ヲシナイノダ」ト呼フ者アリ)何故ナラバ二十二三万
相-此三箇月ノ間ニ七万梱ガ外國へ輸出サレルト云フガ
如キコトハ、昨年帝蠶成立以來カラ今日迄ニ至ル所ノ五
箇月間ノ經過ヲ見テモ明カナル事實デアリマスノミナラズ、
米國ノ經濟界ノ事情ヲ見マシテ、米國ノ財界ノ狀態ガ此
二三箇月ノ間ニ恢復セラレルナドトハ思ハレマセヌ、若シ諸君
ガ米國ノ財界ノ事ヲ御承知デアルナラバ、米國ニハ棉花ト
棉絲サヘ滯積シテ居リマス、南部諸州ノ棉花地ニ於テモ
昨年ノ棉花ヲ餘程今日持堪ヘテ居ル所ノ狀態デアリマス、ノ
ミナラズ此度就任シタ所ノ大統領「ハーデイング」ハ何ト言ツ
テ居リマス、吾ミハ米國ノ國民ノ生活ヲ安定ニセシムル爲メ
ニ、出來ルダケ物價ヲ戰前ノ狀態迄引下ゲル方法ヲ講ジ
得ラレレモノナラバ、講ゼナケレハナラナイト聲言致シテ居
リマス、此場合ニ於キマシテ、米國ニ於キマシテ七万梱ノ生
絲ガ、而モ日本ガ政府デ補助シタ、其補助ニ依ツテ維持シ
テ居ル千五百圓ニ依ツテ外國へ輸出サレルト云フガ如キコ
トハ.迚モ想像ノ出來ナイ事デアリマス、如何ナル立場カラ
考ヘテモ、此二三箇月ノ間ニ千五百圓以上ノ價格ヲ以テ、
米國ニ日本ノ生絲ガ輸出サレルナドトハ思ヒモ寄ラザルコト
(「此間六万相出テ居リマス」「判ラナイノダ」ト呼フ者アリ)
ノミナラズ諸君、若シ私ノ豫想ノ如クニ、此六七万梱ガ米
國ニ輸出サレルコトナク、帝蠶會社ニ於テ政府ノ豫期スル
ガ如ク、又要求スルガ如クニ十万梱ノ生絲ヲ持シタト致シマ
シテモ、此十万梱ノ生絲ハ、豫メ政府カラ出シマシダ三千
万圓ノト帝蠶會社ノ一千六百万圓ノ損失ヲ覺悟シテ居
ル所ノ生絲デアリマスヨ、言ヒ換ヘレバ玆ニ十万梱ノ生絲
ガアル、此生絲ハ政府ノ言明ニ依リマシテ二年ノ間ニ-
二年ノ間ニ四千六百万圓ヲ損シテ賣シテモ宜シイト云フ札
ヲ附ケテ居ル所ノ生絲デス、若シ諸君ガ經濟ノ原則ヲ知ッテ
居ルトスルナラバ(笑聲起リ、議場騒然)此十万梱ノ生絲ガ、
如何ナル諸君ガ言論ヲ以チマシテモ、將來ニ於ケル生絲市
場ヲ不安ナラシメ、日本ノ蠶絲業界ヲ脅威シナイモノダト
云フコトハ、如何ナル立場カラ行ッテモ言明出來ナイコトデ
アルト私ハ信ジテ居リマス(「方面違ヒノ議論ハ止セ」)「止
メトロ」ト呼フ者アリ)併ナガラ私ヲシテ簡單ニ言ハシムレバ、
私共帝蠶會社其モノハ豫メ(「堂々ト反對ハ出來ナイノカ」
ト呼フ者アリ)帝蠶ハ私共初マリニ經濟ノ原則ニ悖ッテ出
發シテ居ルモノト信ジテ居リマス、併ナガラ政府ハ旣ニ五千
万圓ノ低利資金ヲ融通シテ、今日迄ソレヲ擁護シ、而カモ
ソレニ對シテ三万梱ノ買入ヲナサシメテ居ルノデアリマス、
而シテ此三千万圓··
〔「議場騒然」〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=119
-
120・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 植原君ニ御注意シマス、貴方ハ警
告デアリマセウ、今ノデハ反對ノ議論デアルヤウニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=120
-
121・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) イヤ違ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=121
-
122・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 警告デアレバ、其理由ヲ御述べナ
サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=122
-
123・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) 警告ヲ述ベルニシテモ、將來ノ見
込ヲ言ハナケレバナリマセヌ(「生意氣ナ事ヲ言フナ」「反對ヲ
シロ」ヤルベシ〓〓ト呼フ者アリ「議場騒然」)反對シナイ理
由モ、警告ヲ與ヘル理由モ言ヒマス、-諸君靜ニ御聽キナサイ
(〔何ヲ生意氣ノ事ヲ言フナ」「反對ナラ何故堂々ト反對ヲセ
ヌノダ」ト呼フ者アリ)若シ諸君ガ言ヲ左右ニシテ聽カナケ
レバ、一時間デモ二時間デモ、諸君ニ徹底スルマデヤリマス
ゾ(「ヤルナラ勝手ニヤレ」「生意氣ナ事ヲ言フナ」「ヤルナラヤッ
テ見ロ」「諸君カ言ヲ左右シテトハ何ヲ言フノダ」「無禮ナ事
ヲ言フナ」ト呼フ者アリ議場騒然)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=123
-
124・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=124
-
125・植原悦二郎
○植原悅二郎君(續) 諸君、諸君靜肅ニナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=125
-
126・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 注意シマス、議場ノ諸君モ靜〓ニ
願ヒマスケレドモ、演說サレル人モ、自分ガ一人物ヲ知ッテ
滿場ノ人ガ知ラヌガ如キ言葉ハ、御愼ミナサイ(拍手起リ
「無禮ナ奴ダト」呼フ者アリ、議場騒然)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=126
-
127・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) 私ハサウ云フ言葉ハ申シマセヌヽ
若シサウ言ッタト云フコトナラ、速記錄ヲ御覽ヲ願ヒマス、
私ノ言葉ニ不都合ガアルト云フナラ、速記錄ヲ調ベタ後ニ
ナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=127
-
128・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 速記錄ヲ見ナイデモ、私ノ耳ニサ
ウ聞エタカラ御注意ヲ致スノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=128
-
129・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) 私ハサウ云フ無禮ナ事ハ申シマセ
ヌ(「無禮ナ事ヲ云フナ」「降リロ」ト呼フ者アリ、議場騒然)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=129
-
130・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸君、靜カニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=130
-
131・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) 靜カニナッテ徹底スル迄ハヤリマセ
ヌ(「無禮ナ事ヲ云フナ」「生意氣ヲ云フナ」ト呼ア者アリ、議
場騒然)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=131
-
132・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜肅ニ····(「確カリヤリ給へ」「ヤ
ルベシ〓〓」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=132
-
133・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續)私ハ靜カニナルマデヤリマセヌ(「ヤラナ ケレバ勝手ニシロ」「演壇カラ降リ給へ」「生意氣ナ事バカリ
言ッテ居ル小僧ノ癖ニ」「一人デエラサウナコトヲ言フナ」「ヤ
ルナラ早クヤレ」ト呼フ者アリ、議場騒然)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=133
-
134・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 靜肅ニナサイ〔「發言ヲシナイナラ
下リ給へ」「降壇シロ、降壇々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=134
-
135・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) 御承知ノ如ク其十万梱ト云フ所
ノ生絲ガ申ス迄モナク、只今申上ゲタ通リ政府カラ三千万
圓ノ損失ヲ保證シテ居リマス、ヌ此保證ハ帝蠶會社ガ千
六百万圓ト云フ、現在ニ於テハ八百万圓拂込ンデアル、其
アトノ八百万圓ト云フ金ヲ拂込マナケレバ、其損害ヲ塡補
シナイコトニナッテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ(「一ツ事パカリ
言ツテ居ル(「度スベカラザル奴ダ」ト呼フ者アリ)此四千六
百万圓ト云フ所ノ損失ハ、常ニ此十万梱ノ生絲ニ附添ヲテ
居ルト云フコトヲ御承知シナケレバナリマセヌ、ノミナラス、政
府ニ於キマシテハ此生絲ヲ二箇年間ニ處分セシムルモノデ
アルト云フコトヲ言明サレテ居リマス、十万梱ト云フ生絲ガ
二箇年ノ間ニ、四千六百万圓損ヲシテ迄モ、之ヲ市場ニ投
出サナケレバナラヌト云フモノヲ存在セシメテハ、ンレデ生絲
市場ヲ脅威シナイト云フコトハ、如何ナル立場カラ見マシテ
モ、私共ハソレヲ信ズルコトハ出來マセヌ(「然ラバ反對シナ
イカ」ト呼フ者アリ)而シテ諸君、政府當局ノ說明ニ依リマス
レバ、(「反對論ヂヤナイカ」「何ダカ分ラヌヂヤナイカ」ト呼フ
者アリ)之ヲ以テ本年度ノ六月以降ニ出ル所ノ生絲ニ對シ
テハ、成行ニ委セルト云フテ居リマス、是マデ帝蠶會社ハ千
五百圓ノ値ヲ維持スルガ爲メニ、操業短縮ヲシテ居リマス
ケレドモ、五月三十一日迄ニ出來ル所ノ生絲ニ對シテハ、
政府デ損失ヲ保證シテ、千五百圓ノ値段デ以テ買入レル
ト云フ場合ニ於キマシテ、今迄操業短縮ヲシテ居ッタコトハ
何ノ意味ヲ爲スノデアリマス、今迄有シテ居夕所ノ、今堆
積シタル所ノ繭ハ、悉ク五月三十一日迄ニ生絲トサレテ、サ
ウシテ是ガ市場ニ投出サレルト云フコトハ疑ナイ事デアリマ
ス、(「生絲界ノ事情ガ分ラヌカ」ト呼フ者アリ)斯樣ニ考ヘマ
スルト、私共ハ此政府ノ三千万圓ノ損失補填ト云フコトヲ
極ク簡短ニ申シマスレバ、是迄帝蠶會社ガ五千万圓へ低利
資金ヲ融通シテ貰フ積リデアッタケレドモ、勸業銀行興業銀
行ガ商取引ノ上カラ品物ヲ持シテ行ッテ、七掛ニシカ貸與へ
ラレナンダガ故ニ、帝蠶會社ハ其成立當時ト全ク見込ヲ違
ヘテ、五千万圓ヲ借入レベキモノガ、今日ニ至ッテマダ二千
數百万圓ヲ借入レタニ過ギナイ、斯ウ云フ場合デアリマスカ
ラシテ、政府カラ此三千万圓ノ損失ヲ補塡シテ貰ヒマスル
ト云フト、アト帝蠶會社ニ於テハ一千五六百万圓、卽チ五
千万圓ノ程度ニ至ル迄低利資金ノ融通ヲ仰グコトガ出來
ルノデアリマス、此點ニ於テ帝蠶會社ガ現在陷ノテ居ル所ノ
窮境ヲ脫シ得ルコトガ出來ル、玆ニ此案ノ根本ノ成立シタ
ル所以ハ、何ト言ッテモ經濟ノ原則ニ悖ルモノノト認メナケレバ
ナラヌト思ヒマス、而シテ是ガ非常ニ帝蠶會社ニ對シテ有
利デアルカト申シマスレバ御承知ノ如ク此三千万圓、八千
六百万圓ノ帝蠶ノ總テノ資本金ヲ投出シテー-言葉ヲ換
ヘテ言ヘバ政府當局モ之ヲ認メテ居リマス、帝蠶會社ガ破
綻ニ瀕スル場合デナケレバ此三千万圓ハ效力ヲ有サナイ譯
デアリマス、(「ソレデ宜イデハナイカ」ト呼フ者アリ)斯ウ云フ
モノデアリマスナラハ、帝蠶會社ガ破產ノ場合ニ政府カラ三
千万圓ヲ補助サレルト云フモノデアレバ、帝蠶其ノモノニ對
シテモ非常ナル有力ナ補助トナルモノデアルト私ハ信ジマセ
ヌ、併ナガラ今日ノ場合ニ若シ政府ガ此補助ヲ致サナケレ
バ、帝蠶ガ成功デアルト申シマシテモ、政府當局者自ラ之ヲ
言フテ居リマス、帝蠶會社ヲ若シ此ノ場合ニ三千万圓デ補
助シナケレバ、啻ニ帝蠶會社ハ破綻ノ域ニ瀕スルノミナラ
ズ、日本全國ニ於テ何百ト云フ所ノ製絲家ヲ破綻セシムル
ト云フガ如キ狀態ニ陷ルカラ、已ムヲ得ズ政府トシテモ之ヲ
致スノデアルト斯ウ申サレマス、(「經濟ノ原則バカリデハ分
ラナイヨ」ト呼フ者アリ、其他發言一時ニ起ル)洵ニ此點ニ於
テハ御尤千萬デアル、問題ハ斯ウ云フ事デス、今日帝蠶
會社ヲ潰シテシマッテ、サウシテ日本ノ製絲家ヲ非常ニ窮
地ニ陷レルコトガ、日本ノ蠶絲界ニ對シテ今日ノ場合ト
シテ有利ナル事デアルカ、若クハ此場合既ニ帝蠶會社
ト云フモノハ、或ル意味カラ云ヘバ阿片中毒ニ罹ッテ居
ル阿片癮者ノ如キモノデアルト云フテ、之ニ阿片ヲ止ムレ
バ卽死セシメナケレバイケナイ、此慘酷ヲスルヨリハ、洵ニ良
策デハナイケレドモ、已ムヲ得ズシテ政府ハ國庫カラ三千万
圓ノ支出ヲ爲シテ、此救濟ヲ圖ラナケレバナラナイト、實ニ
不健全ナル政策デアルケレドモ、事情旣ニ申述ベタルガ如
キ今日ノ場合、帝蠶會社ニ破碇ヲ生ゼシメ、日本ノ蠶絲
界ヲ一時ニ急激ニ混亂紛糾セシムルト云フコトニ就テハ、
私共頗ル憂慮ニ堪ヘザル者デアリマス、此點ニ於テ私共ハ
已ムヲ得ズ此案ニ贊成ノ意ヲ表スルノデアリマス、而シテ
(「モウ宜イ〓〓」ト呼フ者アリ)而シテ啻ニ之ニ賛成ノ意ヲ
表スルノミナラズ、政府ニ對シテ此場合ニ警告スベキ理由
ハ、前條申上ゲタ如ク、政府ガ帝蠶會社ニ五千万圓ヲ支出
シテ、千五百圓ト云フ絲價ヲ維持スルト云フ見込ヲ立テ
タ、見込ハ全部裏切ラレタモノデアルガ故ニ、今日ニ於テ政
府ガ此三千万圓ヲ保證シサヘスレバ、大正十年度ノ養蠶
家ガ成行ニ委セテ置イテ差支ナイト思ハレル所ノ政府ノ此
見解モ誤レルモノト私共バ考ヘルノデアリマス、(「ソレナラ
反對セヨ」ト呼フ者アリ)故ニ政府トシテハ此三千万圓ヲ
補給スルニ於キマシテハ、先ヅ第一ニー(發言一時ニ起ル)
先ヅ第一ニ帝蠶會社ニ對シテ-(發言一時ニ起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=135
-
136・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜〓ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=136
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137・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) 十万梱ノ生絲ヲ三箇月ノ間ニ買
收セシメテ、而モ之ヲ二箇年ノ間ニ市場ニ出ス場合ニ於テハ、
非常ナル警戒ヲ要スルノデアリマス、政府トシテハ二箇年ニ
於テ帝蠶ノ收支決算ヲセシメルト申シテ居リマスケンドモ、
十万梱ノ生絲ヲ二箇年以內ニ市場ニ投ゲ出スト云フコト
ハ、日本ノ養蠶界ニ於テ、二箇年ノ問不安ナルロ物物ヲ抱ヘ
テ居ルガ如キ狀態デアルガ故ニ、(發言一時ニ起ル)之ニ就
キマシテ、政府ハ此十万梱ヲ帝蠶會社ニ處分セシメルニ就
テハ-(「結論ヲ言ヘ」「同ジ事ヲ何過言フノダ」「速記者ニ
同情セヨ」ト呼フ者アリ、其他發言一時ニ起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=137
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138・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=138
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139・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) 同ジ事デアリマセヌ、(「同ジ事ダ」
ト呼フ者アリ)靜ニナサレバ結論ニ早クナリマス(「生意氣バ
カリ言フナ」「恥ヲ知レ」「簡單ニヤリ給へ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=139
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140・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜甫ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=140
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141・植原悦二郎
○植原悅二郞君(續) 故ニ私共ハ此十万梱ヲ帝蠶會社
ニ處分セシメルニ就キマシテハ、政府ガ力メテ蠶絲業界ノ
將來ヲ脅威セシメザルヤウニ、十分ナル所ノ警戒ヲ以テセザ
レバ、此三千万圓ノ補助ニ依ッテ起ル所ノ日本ノ過去數年
間ノ蠶絲界ノ不安ナル所ノ狀態ニ對シテ、全貴任ヲ負ハナ
ケレバナラナイト云フコトヲ警告シテ、此壇ヲ降ルモノデアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=141
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142・奧繁三郎
○議長(奥繁三郎君) 櫻內幸雄君
〔櫻內幸雄君登壇、拍手スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=142
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143・櫻内幸雄
○櫻內幸雄君 只今上程サレマシタル各般ノ議案ニ就キ
マシテ、私ハ賛成スルモノテアリマス、而シテ本案ニ對シテ
ハ平素常ニ多ク反對、若クハ修正セラル所ノ憲政會ノ諸
君、竝ニ國民黨ノ諸君ニ於テモ、(「何ンダ」ト呼フ者アリ)
之ヲ賛成セラレテ居ル以上ハ、本員ニ於テ之ヲ詳シク賛成
意見ヲ述ベル必要ハ無イノデアリマス、併ナガラ只今諸君
ノ此演壇ニ於テ贊成意見ヲ述ベラレタ所ヲ見マスルト、殆
ド是ハ反對演說デアル、是ニ於テカ本員ハ一言ナカルベカ
ラズデアリマス、併ナガラ私ハ極メテ簡單ニ要領ノミヲ申上
ゲマス、殊ニ植原君ノ如キ、私ハ學者デハアリマセヌ、又津
原君ノ如キ此問題ニ對シテ、左程ノ玄人デモアリマセヌカ
ラ、要點ノミヲ申上ゲテ、諸君ノ警告、竝ニ諸君ノ注意事
項ガ、果シテ此問題ニ對シテ正鵠ヲ得テ居ルヤ否ヤト云フ
コトニ就テ、中上ゲタイト思フノデアリマス、第一追加豫算
ニ就キマシテ最モ力ヲ入レテ論ゼラルヽ所ノ方こノ意見ハ、
昨年臨時議會ニ提出セラレタル所ノ大正九年度ノ製艦
費、卽チ今回提出セラレタル所ノ追加豫算五千八百三十
八万圓中、三千七万圓程ノ問題デアリマスルガ、何故ニ昨
年ノ七月ニ於テ七割デアッタモノガ、只今十割ノ要求ヲシ
ナケレバナラヌカ、是ハ政府ガ豫算編成ニ就テ注意ヲ怠タッ
タノデアルカ、若クハ豫算ノ編成ニ於テ故意ニ斯ノ如キ
提案ヲシタモノデハナイカト云フコトノ議論ガ、最モ力アル
論據ノヤウニ思ハルヽノデアリマス、諸君、昨年臨時議會
ニ於ケル豫算ノ編成ハ、昨年ノ四月頃デアッタト思フノデ
アリマス、卽チ此當時ニ追加豫算トシテ、臨時議會ニ提出
セラルヽ所ノ案ニ對スル豫算ヲ編成スル時ノ物價ハ、戰前
ノ豫算ニ對スル七割程度ノモノデハナカッタノデアリマス、
豫算總會ニ於テ海軍大臣ノ說明スル所ニ依レバ、海軍省
ガ此編成ヲスルノニ就テ參考トシテ集メタル所ノモノ、是
等ハ七割デハナカッタ、モット多カッタノデアル、併ナガラ當時
物價ハ正ニ下落セントスル所ノ狀況デアッタガ故ニ、其下
落ヲ多少見、卽チ經濟界ノ大勢ヲ參酌シテ豫算ヲ編成シ
タノデアル、斯ウ云フコトヲ明確ニ言ハレタノデアル、然ルニ
其後勞働賃銀ハ御承知ノ如ク思フ通リニ下ラナカッタ又
鋼材ノ如キモ比較的下ラナカッタ(「政府ノ不明ナリ」ト呼フ
者アリ)斯ノ如キ事ノ結果トシテ、此度ノ追加豫算案ガ出
タノデアリ、マス(「ヒヤ〓〓」)諸君、只今政府ノ不明ナリト
云フコトヲ言ハレタ方ガアリマスガ、(「其通リ」ト呼フ者ア
リ)若シ其時ニ豫算委員總會ニ於ケル憲政會ノ濱口君ノ
意見ノ如ク、當時ノ物價ヲ基礎トシテ豫算ヲ編成シタナラ
バ、成程今日ハ餘剩ガ出テ居ルノデアリマセウ、併トガラ其
當時ハ戰前ニ比シテ十割十五割、甚シキニ至ッテハ二十割
ノ物價ノ騰貴ヲ市シテ居ッタト云フコトハ、諸君ガ夙ニ御
承知デアラウト思フ、併ナガラ其騰貴ヲシタル所ノ基礎ヲ
以テ、豫算ヲ編成シタナラバ、一面歲入ノ上ニ於テ、或、
增稅ヲシナケレバナラナカッタカモ知レナイノデアル、故ニ政
府トシテハ此前途ヲ見越シ、又經濟界ノ狀勢ニ顯ミテ、而
シテ前途此位下ルデアラウ、此位ノ豫算ヲ組ンデ居ッタナラ
パ宜カラウト云フノデ、此豫算ヲ組ンダモノト思フノデアリ
マス、又不明デアルト云フコトヲ言ハレマスケレドモ、政府ト
シテハ多少辛イ豫算ヲ組ンデ置クノガ必要デアル、諸君ガ
一家ノ經濟、若クハ關係セラルヽ所ノ會社ノ經濟ヲ組マ
ルヽニ方ッテ、餘裕アル所ノ豫算ヲ組ンダナラバ、其豫算タ
ルヤ必ズ豫算以上ニナルノデアル、政府ハ此點ニ於テ十分
ニ注意シテ、出來ルダケ詰メテ豫算ヲ組ンデ居ラルヽデアリ
マス、現ニ諸君ノ手許ニ迴ッテ居ル所ノ今囘ノ豫算追加
案其計算ノ基礎トナッテ居ル所ノ數字ヲ見マスルト、海軍
省ガ吾ミノ手許ニ出シタ所ノ表ニ依ルト、十一割三分ニナッ
テ居ルノデアリマス、此十一割三分ノモノヲ十割ノ追加豫
算案ヲ出シタト云フコトハ、卽チ昨年ノ追加豫算提出ノ
調ヲシタ十一月以後、尙ホ物價ノ下ルト云フコトヲ見越ス
ト同樣ニ、出來ルダケ節約ヲシテ、十割ニ上ゲルト云フコト
ノ方針ヲ執ッタノデアリマス、私ハ豫算ノ編成ニ就テハ、成
ルベク豫算ニ間違ノナイヤウニ作ルコトハ勿論必要デアリ
マスケレドモ、昨年ノ如キ、一昨年ノ如キ、非常ナル物價ノ
大變動ノアル時代ニ於テハ、政府トシテ斯ノ如キ僅二三千
七百万圓ノ如キ數字デ済ンダト云フコトハ、大出來デアル
ト私ハ考ヘルノデアリマス、故ニ此豫算ニ就テハ是以上申
上ゲル必要ハ無カラウト思フ、次ニ帝蠶ノ問題デアリマス
ガ、(「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)勿論私ハ簡單ニ申上
ゲル積リデ居リマス、併ナガラ反對セラレタ所ノ諸君ニ向ッテ、
其反對ノ事項ニ對シテハ、一應簡單ニ反駁シタイノデアリ
マス、第一番ニ····(「反對デハナイ」ト呼フ者アリ)勿論反
對デハナカッタデセウ、併ナガラ意見ハ反對意見ニ聞エルノ
デアリマス、(「止セ」「緩クリヤレ」ト呼フ者アリ)卽ヲ此蠶絲
業救濟貸付金ノ補助ガ、果シテ養蠶家ニマデ及ブヤ否ヤ、
是ハ蠶絲業者竝ニ貿易業者ニ偏スルモノデハナイカト云フ
所ノ一ツノ點デアリマス、是ハ諸君ガ一寸御考ニナレバ能
ク判ルコトデアルト思フ、若シ生絲業者ガ潰レ、貿易業
者ガ潰レタナラバ、ドウ云フ結果ニナルデアリマセウ、延テハ
養蠶業者ニ大ナル打擊ヲ與ヘルコトハ申スマデモナイ、又之
ニ對スル銀行家、或ハ家庭的ニ養蠶ヲヤテテルルノ農家
ニ對シテ、非常ナル影響ヲ與ヘルノデアリマス、詰リ生絲業
者ト申ス者ハ、今爰ニ此問題ガ解決シテ生絲ガ買ハレルナ
ラバ、其收入シタル所ノ代金ハ何ニ使フカト申シマスルト
云フト、先祖代々營業シテ居ル所ノ生絲業ヲ更ニ繼續シ
テ行クノデアリマス、生絲ガ賣レタラ、ソレニ依ッテ自分ノ生
絲業ヲ止メテシマウト云フ者ハ一人モ無イノデアリマス、旣
ニ生絲業者ガ此救濟ニ依ッテ資金ヲ得ルニ至リマスレバ、
大正十年度ニ於ケル繭ノ買入ヲスルト云フコトハ、當然ノ
結果デアリマス、繭ノ買入ヲスルナラバ、事業全體ニ好影
響フ與ヘルコトハ、當然ノ結果デアリマス、(「ヒヤ〓〓」)
是以上申ス必要ハ無イノデアリマス、次ニ帝蠶ヲ救濟スル
ニ徹底的デハナイト云フ意見デアリマス、併ナガラ本案ハ
帝國蠶絲會社ヲ救濟スル意味デナイノデアリマス、卽チ帝
國蠶絲會社、竝ニ養蠶業者ヲ救濟スル意味ニ依シテ、本
案ヲ提出セラレタノデアリマス、帝蠶保護ヲシナイト云フ證
據ハ、先刻植原君津原君ノ言ハルヽ、若シ三千万圓ヲ
帝蠶ガ捕償セラルヽニハ、帝蠶ガ自分ノ資金全部ヲ提供シ
タ後デナケレバ救濟セラレヌノデアリマス、要スルニ此問題
ハ、此蠶絲業者ヲ株主トシテ居ル所ノ帝國蠶絲會社ト、
政府ト協力シテ此事業ノ救濟スルト云フノニ外ナラヌノデ
アル、次ニ政府ガ(「簡單々々」ト呼フ者アリ)帝蠶會社ガ買
收シタル所ノ十万梱-買收スベキ所ノ十万梱ノ荷物ガ、
二箇年以內ニ於テ、賣捌ク爲メニ非常ナル脅威ヲ與ヘヤ
シナイカ、卽チ製絲業者ニ向ッテ大ナル脅威ヲ與ヘテ、是ガ
爲メニ非常ナル影響ヲ與ヘヤシナイカト云フ點デアリマスル
ガ、是ハ苟モ帝國蠶絲會社ガ營利會社デアル以上、誰ガ政
府ノ三千万圓ヲ損ヲサセル爲メニ、自分ノ千六百万圓ノ
資金ヲ損サセルノガアリマセウカ、(拍手起ル)卽チ自己ガ全
部ノ財產ヲ提供シタル後ニ非ザレバ、政府ノ救濟ヲ受ケル
コトハ出來ヌノデアリマス、是ニ至レバ此當業者、卽チ横濱
貿易商、竝ニ製絲業者ニ依ッテ組織セラレタル帝國蠶絲會
社ノ重役ト云フモノハ、極力其時機ヲ見計ヒ、又此絲價ヲ
下ゲナイ程度ニ於テ處理スルト云フコトハ、論ヲ俟タナイ所
デアルト思フノデアリマス、(拍手起ル)其他絹業界ニ影響
ヲ與ヘル云々等ノ問題ガアリマシタケレドモ、是ハ殆ド私ハ
論ズルニ足ラヌト思フノデアリマス、終リニ帝蠶會社ノ設立
ガ蠶絲業救濟ニ對シテ效果ガ有ッタカ無カッタカト云フコト
ニ就テ大分議論ガアリマス、併ナガラ私共ノ見ル所ニ依リ
マスルト、昨年九月帝蠶會社ガ出來マシテカラ以來、將ニ
破綻セントシ、將ニ恐慌ヲ來サントシテ居ッタ所ノ製絲業
者竝ニ貿易業者ニ對シテ、非常ナル是ガ〓凉劑デアッタト
云フコトハ、殆ト同業ニ關係ノアル諸君ノ皆ナ認ムル所デ
アリマス(拍手起ル、「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)現ニ今日迄千
五百圓ト云フ絲價ハ維持シテ居ルノデアル、卽チ今囘提出
セラレタル案ハ、今後尚之ヲ繼續シテ維持センガ爲ニ提出
セラレタル所ノ案デアルノデアリマス、要スルニ此案ト云フモ
ノハ、單ニ帝蠶會社ノ爲メデハナイ、卽チ製絲業者、竝ニ貿
易業者、養蠶者、延テハ農家經濟ニ向ッテ十分ナル融通ヲ
與ヘタイ、卽チ救濟ヲシタイト云フノガ本案ノ目的デアルノ
デアル、斯ノ如キ案デアル以上ハ、諸君ガ何等ノ警告告用用
ズ、何等ノ注文ヲ爲サズシテ、賛成セラレルノガ由然ト思フ、
(拍手起ル)若シ諸君ニ於テ先刻述ベラレタル如ク、堂々タ
ル御意見ガアルナラバ、何故ニ反對サレナイノデアルカ、私ハ
諸君ガ斯ノ如キ警告ヲ附スルナラバ、諸君ハ宜シク之ニ對
シテ修正、若クハ反對セラルヽノガ當然ダラウト思フ、私ハ
是レ以上申ス必要ハ無イノデ、卽チ本案ニ賛成ノ意思ヲ
爰ニ表明シタ次第デアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=143
-
144・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 討論ハ盡キタリト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=144
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145・岩崎勲
○岩崎勳君 此四案ヲ一括シテ、豫算委員長報告通リ
可決確定セラレンコトヲ望ヽマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=145
-
146・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 討論ハ盡キタリト見マスカラ、採決
致シマス、本案ニ就イテハ色ニノ意見ハ出マシタケレドモ、
結局ハ皆ナ賛成デゴザイマシタガ、念ノ爲メニ起立ニ依ッテ
之ヲ決シマス、此四案委員長報告ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ
求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=146
-
147・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 滿場一致トシテ可決セラレマシタ
(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=147
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148・岩崎勲
○岩崎動君 日程ノ審議ハ本日ハ此程度ニ止メテ、殘餘
ノ日程ハ之ヲ延期シ、明九日定刻ヨリ特ニ本會議ヲ開キ、
他ノ日程ト共ニ之ヲ審議セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=148
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149・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=149
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150・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 然ラバ明日ハ本會ノ無イ日デゴサ
イマスケレドモ、本會ヲ開キマス、日程ハ公報ヲ以テ御知ラ
セ致シマス、本日ハ是ニテ散會
午後七時五十五分散會
衆議院議事速記錄第二十二號正誤
頁段行誤正
五〇七上三七適當敵黨
80c上三七置位位地
80c上三七トハ云ヒ衍発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02319210308&spkNum=150
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