第44回帝国議会　衆議院　本会議　第24号　大正10年3月9日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  大正十年三月九日（水曜日）午後一時十八分開議
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  　議事日程　第二十三號　大正十年三月九日
  　　　午後一時開議
  　第一　貯蓄銀行法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二　銀行條例中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三　公有水面埋立法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第四　國有土地森林原野下戻に關する法律案（戸狩權之助君外八十六名提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第五　決議案（齋藤總督の朝鮮統治に關する件）（三木武吉君提出）　　　　第一讀會
  　第六　刑事訴訟法中改正法律案（祷苗代君提出）　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第七　刑法中改正法律案（祷苗代君提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第八　刑法中改正法律案（宮古啓三郎君外七名提出）　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第九　未成年者飮酒禁止法案（根本正君外五名提出）　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十　非役壯丁税法案（荒川五郎君外六名提出）　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十一　辯護士法改正法律案（鵜澤總明君外九名提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十二　所得税法中改正法律案（岩本平藏君外九名提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　第十三　明治三十四年法律第三十號中改正法律案（齋藤鷲太郎君外六名提出）　第一讀會
  　第十四　地方學事通則中改正法律案（竹上藤次郎君提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　第十五　沒祿者給與法案（熊谷直太君外八名提出）　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十六　營業税法中改正法律案（荒川五郎君提出）　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十七　民法中改正法律案（奧村安太郎君提出）　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十八　地租條例中改正法律案（下田勘次君外二名提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　第十九　佐賀監獄移轉に關する建議案（川原茂輔君外三名提出）　　　　　　（委員長報告）
  　第二十　川内川改修に關する建議案（萩亮君外五名提出）　　　　　　　　　（委員長報告）
  　第二十一　航空事業の擴張及其の行政機關の統一に關する建議案（三善清之君外五名提出）　（委員長報告）
  　第二十二　徴兵令事務施行細則改正に關する建議案（植原悦二郎君提出）
  　第二十三　産業組合法及重要物産同業組合法改正竝同組合振興に關する建議案（土井權大君提出）
  　第二十四　成年調査に關する建議案（奧村安太郎君外一名提出）
  　第二十五　石油政策に對する燃料調査會設立に關する建議案（高野毅君提出）
  　第二十六　特別市制促進に關する建議案（作間耕逸君外五名提出）
  　第二十七　多摩川改修費及水源涵養費國庫支辨に關する建議案（秋本喜七君外二名提出）
  　第二十八　多摩川改修費及水源涵養費國庫支辨に關する建議案（高木正年君外六名提出）
  　第二十九　免囚差別待遇撤廢に關する建議案（鮎川盛貞君提出）
  　第三十　救世軍補助に關する建議案（横山勝太郎君提出）
  　第三十一　科學知識普及に關する建議案（鈴木錠藏君提出）
  　第三十二　遠美鐵道速成に關する建議案（松浦五兵衞君外五名提出）
  　第三十三　大垣、大野、金澤間鐵道速成に關する建議案（西村正則君外八名提出）
  　第三十四　熱海線完成に關する建議案（森恪君提出）
  　第三十五　米穀專賣法制定に關する建議案（小菅劍之助君外三名提出）
  　第三十六　商務省及工務省設置に關する建議案（奧村安太郎君外一名提出）
  　第三十七　癲狂院増設に關する建議案（中馬興丸君外三名提出）
  　第三十八　傳染病豫防法改正に關する建議案（松下禎二君外三名提出）
  　第三十九　中央線淺川驛鹽山驛間電力速成に關する建議案（三枝彦太郎君提出）
  　第四十　賣藥營業税廢止に關する建議案（高見之通君外二名提出）
  　第四十一　大阪和歌山間鐵道敷設に關する建議案（山口義一君外四名提出）
  　第四十二　國分岩川間鐵道敷設に關する建議案（日野辰次君外一名提出）
  　第四十三　櫻井松坂間鐵道速成に關する建議案（津野田是重君外九名提出）
  　第四十四　勢江鐵道速成に關する建議案（天春文衞君外七名提出）
  　第四十五　西條松山間鐵道豫定線一部變更に關する建議案（成田榮信君外五名提出）
  　第四十六　温泉政策に關する建議案（成田榮信君外一名提出）
  　第四十七　港灣行政に關する建議案（三善清之君外四名提出）
  　第四十八　鹿兒島縣各離島航海補助増額に關する建議案（祷苗代君外七名提出）
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• 001・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　諸般ノ報告ヲ致シマス
  〔原田書記官朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  (特第一號)大正十年度各特別會計歲入歲出豫算
  追加案
  (以上三月八日提出)
  產業組合法中改正法律案
  住宅組合法案
  朝鮮私設鐵道補助法案
  樺太地方鐵道補助法案
  明治四十一年法律第三十五號中改正法律案
  (以上三月九日提出)
  議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  貯蓄銀行法案ニ對スル修正案
  提出者紫安新九郞君武內作平君
  手島鍬司君金田平兵衞君
  松井銑夫君
  刑法中改正法律案
  提出者中西六三郞君廣岡宇一郞君
  前田米藏君岩崎勳君
  熊谷直太君島田俊雄君
  刑事訴訟法中改正法律案
  提出者中西六三郞君廣岡宇一郞君
  前田米藏君岩崎動君
  熊谷直太君島田俊雄君
  民事訴訟法中改正法律案
  提出者中西六三郞君廣岡宇一郞君
  前田米藏君岩崎勳君
  熊谷直太君島田俊雄君
  埼玉縣下郡界變更ニ關スル法律案
  提出者粕谷義三君秦豊助君
  長谷川宗治君山崎猛君
  高田良平君指田義雄君
  綾部惣兵衞君神谷彌平君
  土器川外四川改修ニ關スル建議案
  提出者大林森次郞君三善〓之君
  田中定吉君蓮井藤吉君
  松田三德君
  勞働組合法ノ制定竝勞働局設置ニ關スル建議案
  提出者近藤達兒君
  酒造稅法中改正ニ關スル建議案
  提出者早川龍介君山邑太三郞君
  吳三原間鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者佐々木千秀君金田平兵衞君
  剩餘金竝益金ノ繰入ニ關スル建議案
  提出者田川大吉郞君
  靑森築港國營ニ關スル建議案
  提出者北山一郞君菅原傳君
  中西六三郞君阿部武智雄君
  松本孫右衞門君東武君
  野村治三郞君鈴木巖君
  黒住成章君宇野勇作君
  熊谷直太君栗林五朔君
  原田藤次郞君榊田〓兵衞君
  梅田潔君
  信樂(貴生川加茂間)輕便鐵道敷設ニ關スル建議案
  提出者安原仁兵衞君長田桃藏君
  (以上三月八日提出)
  境港修築速成ニ關スル建議案
  提出者〓瀨規矩雄君山口嘉藏君
  島田俊雄君佐野正雄君
  若林德懋君櫻內幸雄君
  平田民之助君
  (以上三月九日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
  第十二師團兵器部下關倉庫移轉ニ關スル質問主意
  書
  提出者藤井啓一君
  養蠶業者救濟ニ關スル再質問主意書
  提出者山邊常重君
  (以上三月八日提出)
  軍紀振〓ニ關スル質問主意書
  提出者田中武雄君
  (以上三月九日提出)
  一昨八日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ議案ヲ可
  決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
  作業會計法中改正法律案(政府提出)
  海軍燃料廠ノ石炭、煉炭又ハ燃料油ノ買入ニ關スル
  法律案(政府提出)
  獨逸國等トノ平和條約賠償條項ニ基キ受領シタル賠
  償物件ノ輸入稅免除ニ關スル法律案(政府提出)
  一昨八日政府ヨリ受領シタル報告左ノ如シ
  大正七年四月一日ヨリ大正八年三月三十一日ニ至
  ル各省所管官有財產增減異動報告
  大正八年四月一日ヨリ大正九年三月三十一日ニ至
  ル各省所轄官有財產增減異動報告
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載
  ス〕
  一昨八日衆議院規則第十五條但書ニ依リ議長ニ於テ
  議席ヲ左ノ如ク變更セリ
  三三福地錢吉君三九大口喜六君
  一昨八日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
  大正九年法律第十號中改正法律案外一件
  山本条太郞君市村貞造君鈴木巖君
  伊藤虎助君木村作次郞君石川三郞君
  鈴木周三郞君龍口了信君木村權右衞門君
  職業紹介法案
  安原仁兵衞君土屋興君川口誠三郞君
  野村治三郞君國重政亮君上塚司君
  清水留三郞君太田信治郞君南鼎三君
  水道條例中改正法律案
  麓純義君長谷場敦君鐸木三郞兵衞君
  柳原九兵衞君山田永俊君大林森次郞君
  作間耕逸君磯貝浩君納富陳平君
  供託法中改正法律案
  西村正則君穴水要七君岩崎幸治郞君
  大石大君久木田叶君横山勝太郞君
  野呂丈太郞君木檜三四郞君高草美代藏君
  一昨八日小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ關スル建
  議案外一件委員松下禎二君辭任ニ付其ノ補關トシ
  テ守屋松之助君ヲ、府縣制中改正法律案外八件委
  員川原茂輔君淺野順平君辭任ニ付其ノ補闕トシテ
  高山長幸君小池仁郞君ヲ、貯蓄銀行法案外一件委
  員上田彌兵衞君武內作平君辭任ニ付其ノ補闕トシ
  テ荻田悅造君鵜澤字八君ヲ執レモ議長ニ於テ選定
  セリ
  今九日貯蓄銀行法案外一件委員紫安新九郞君辭
  任ニ付其補開トシテ下田勘次君ヲ議長ニ於テ選定セ
  リ
  一今九日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
  職業紹介法案委員
  委員長安原仁兵衞君理事土屋興君
  水道條例中改正法律案委員
  委員長麓純義君理事山田永俊君
  大正九年法律第十號中改正法律案外一件委員
  委員長山本条太郞君理事石川三郞君
  一今九日委員長及理事補關選擧ノ結果左ノ如シ
  貯蓄銀行法案外一件委員
  理事荻田悅造君(理事上田彌兵衞君補闕)
  理事鵜澤宇八君(理事武內作平君補闕)
  府縣制中改正法律案外八件委員
  委員長田邊熊一君(委員長川原茂輔君補闕)
  理事植原悅二郞君(理事板野友藏君補闕)

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• 002・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　會議ヲ開キマス諮問致シマス、事ガ
  アリマス、議員山本厚三君事故ニ由リ三月十日ヨリ十日
  間、議員尾崎行雄君事故ニ由リ三月九日ヨリ十日間、議
  員木下十四三君事故ニ由リ三月九日ヨリ十四日間、議
  員石川三郎君事故ニ由リ三月九日ヨリ十四日間、議員
  南里琢一君事故ニ由リ三月九日ヨリ十四日間、孰レモ請
  暇ノ申出ガアリマシタ、之ヲ許可スルニ御異議ハアリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 003・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ゴザイマセヌカラ許可致シ
  マス-日程第一第二ハ同一委員ニ付託シタル議案ナルニ
  依リ、一括議題ト致シマス、第一貯蓄銀行法案、第二銀行
  條例中改正法律案ヲ一括シテ、其第一讀會ノ續ヲ開キ
  ス、委員長波多野承五郞君
  第貯蓄銀行法案(政府提出)
  第一讀會ノ續((電話番号)
  / 田舎
  報告書
  一貯蓄銀行法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十年三月八日
  貯蓄銀行法案委員長
  波多野承五郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  第二銀行條例中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續/報告(REIN REIGH
  報告書
  一銀行條例中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十年三月八日
  銀行條例中改正法律案委員長
  波多野承五郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  〔波多野承五郞君登壇、拍手起ル〕

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• 004・波多野承五郎

  ○波多野承五郞君　貯蓄銀行法ト銀行條例中改正、此
  二案ニ就テ委員會ノ經過ト結果ヲ御報告致シマス、第一ノ
  貯蓄銀行法ニ就テハ、討議ノ際上田彌兵衞君カラ修正ノ
  案ガ出マシタ、同時ニ武內作平君カラモ修正案ガ出マシタ、
  其武內君ノ修正ト上田君ノ修正ト、共通シテ居ル點ガ三
  箇條ゴザイマシタガ、武內君ノハ上田君ノト別ナ修正ハ一
  ツモアリマセヌデシタカラ、此經過ヲ報告致シマスノニ、上田
  君ノ修正案ヲ御報告申上ゲマスレバ、其際ニ同時ニ武內
  君ノ修正ノ事ヲ申上ゲルコトガ出來ルヤウニナルノデアリマ
  ス、其修正ノ第一ハ第一條第一項第二號中「十圓未滿」ト
  アルノヲ「二十圓未滿」ニシタイト云フ說デゴザイマス、是ハ
  貯蓄銀行トシテハ二十圓未滿ト云フコトニナッテ居ラヌト、
  營業上不利益デアル、二十圓未滿ノ金ヲモ普通銀行ガ預
  リ得ルヤウナコトデハ、貯蓄銀行ハ宜クナイ、斯ウ云フ大體
  御說ノヤウデゴザイマス、之ヲ否トスル方ノ說ハ、元來ガ五
  圓ト云フコトニナッタノヲ、政府案デハ之ヲ十圓ニ改メタノデ
  アルカラ、此案ガ丁度宜シイ、都會ノ地ニ於テハ或ハ二十圓
  ト云フコトヲ決メラレテモ、普通銀行ガ困ラナイ銀行モアル
  カモ知レヌガ、地方ニ於テハ普通銀行ガ二十圓未滿ノ金ヲ
  預ルコトガ出來ヌト云フコトデハ、普通銀行ノ利益ヲ侵害サ
  レルコトガ甚シイ、斯ウ云フヤウナ反對ノ議論デゴザイマシタ、
  其次ニハ第三條ヲ削除スル、政府案ノ第三條ト云フノハ、
  貯蓄銀行ノ資本金ハ五十万圓以上ト云フコトニナッテ居ル、
  之ヲ削除シタイ、要スルニ資本金ノ制限ヲ廢メニシヤウト云
  フ御說デゴサイマシタ、之ニ對スル反對ハ、抑〓貯蓄銀行法
  ノ改正ノ要旨ハ、貯蓄銀行ヲ保護シタイト云フ方ノ趣意デ
  ハナクシテ、貯蓄者其者ヲ保護シタイト云フコトデアル、仍テ
  五十万圓以上ト云フ位ナ銀行デナケレバナラヌ、更ニ之ニ
  對シテハ貯蓄銀行ハ無限責任デアルカラ、資本金ガ五十万
  圓以上デナイカラト云ッテモ、個人ノ責任ガ無限ダカラ大丈
  夫デアラウ、斯ウ云フ說ニ對シテハ、重役ハ設立ノ初メカラ
  必ズ代ラヌモノデハナイノデアリマスカラ、資本金ニ於テ五
  十万圓以下ト云フコトガナケレパナラヌ、斯ウ云フ說ノヤウ
  デゴザイマシタ、其次ハ貯蓄銀行ヲシテ小切手ヲ發行サセタ
  イ、但シ預ッテ居ル金ノ範圍內ニ於テ、小切手ヲ振出スコト
  ヲ許シタイ、而シテ是ハ預ッテ居ル金ノ範圍內ニ於テ小切手
  ヲ發行スルト云フコトハ、何等弊害ガ無イデハナイカ、且ツ
  甚タ便利デハナイカ、斯ウ云フ御說ノヤウデゴザイマシタ、之
  ニ反對スル說ハ、小切手ヲ發行スルト云フコトハ、元來普通
  銀行商業銀行ノ當ニ爲スベキ事デ、貯蓄銀行ノ範圍ニ屬
  スルモノデハナイト思フ、殊ニ貯蓄ト云フモノハ、零碎ナ金ヲ
  段々積上ゲテ行クコン貯蓄デアルノニ、之ヲ便利ニ振出シテ
  拂出スト云フコトハ、貯蓄銀行ノ趣旨ニ合ハヌト云フコトガ、
  之ニ反對スル議論ノヤウデゴザイマシタ、此箇條ハ前申シマ
  シタ武田君ノ御提出ノ修正ト一致シテ居ルノデゴザイマス、
  其次ハ第九條ノ但書デ供託金ノ問題デゴザイマス、供託金
  ハ預リ金ノ四分ノ一マデヲ國庫債劵ニシナケレバナラヌ、而
  シテ預リ金ノ三分ノ一マデヲ供託シナケレバナラヌト云フコ
  トニ政府案ハナッテ居ル、ソレヲ供託金ノ半分ダケ-供託
  金卜云フノハ預リ金ノ三分ノ一デゴザイマスカラ、其半分ト
  云フノハ、卽チ六分ノ一ダケヲ國債證劵ニシタイ、斯ウ云フ
  御說デゴザイマシタ、之ニ對スル反對ハ、抑、と供託金ト云フモ
  ノハ、安全ニシテモ何時モ速ニ金ニ換ヘラレ得ルモノニシタイ
  ノデアリマスガ故ニ、全部ヲ國債證劵ニシタイト思フノデアル
  ノニ、之ヲ半分卽チ三分ノ〇、五ニシタイト云フ說ハ此案ヲ
  骨拔ニスルコトデアルカラ、到底之ニ同意スルコトハ出來ヌト
  云フコトデアリマス、此案モ矢張武内君ノ法案ト共通シテ
  居ル案デゴザイマシタ、其次ハ供託金ト云フモノハ、預リ金
  ニ對スルノ三分ノ一デゴザイマスルガ、今後ノ改正案ニ依リ
  マスルト、預ッタ金ヲ擔保トシテ金ヲ貸スト云フコトガ、此條
  例ノ中デ許サレテ居ル、一方デハ金ヲ預ッテ居リ、一方デハ
  金ヲ貸シテ居ル、サウスルト預リ金ニ於テハ預リノ科目ニ入
  テ居ルカラ、其三分ノ一ヲ供託スルノデアリマスケレドモ、
  何ゾ知ラン其預リ金ノ中カラ預リ金ヲ擔保トシテ金ヲ貸シ
  テ居ル以上ハ、互ニ相殺シテ、預ッテ居ラヌノト同ジ事ニナル
  ノデアル、然ルニ其貸金ヲ差引カナイデ預リ金ダケヲ合計シ
  テ、其三分ノ一ヲ供託セシメヤウト云フノハ、一一重供託ヲス
  ル意味ニナリハセヌカ、斯ウ云フ御說デゴザイマシタ、此御說
  ニ對シマシテハ、元來貸金ト預リ金ト云フモノハ別ナ性質ノ
  モノデアルカラ、内部ニ於テ差別ガシテアルカラト云シテモ、預
  リ金ハ預リ金デアルカラ供託ヲシナケレバナラヌト云フコト
  ト、モウ一ツハ預金ヲバ其預リ金ヲ擔保トシテ金ヲ貸シタト
  ハ云フケレドモ、其中ノドレガ本當ノ貸金デ、預リ金ヲ擔保
  トシタル貸金ハ、ドレ程デアルト云フ區別ヲ付ケルコトハ甚
  ダ困難デアル、ドウ云フ方法デ檢査シテ、ドウ云フ方法デ貯
  蓄銀行ヲシテ證明セシムルカ、其區別ヲサセルコトハ困難デ
  アルト云フコトガ、第三ノ理由ノヤウニ思ヒマシタ、第三ノ理
  由ハ貸金ト云ッテモ、預リ金ヲ擔保トシテ金ヲ貸スノデアル
  ケレドモ、三箇月デ返スカ、一箇月デ返スカ、一箇年デ返ス
  カ、期限ニ就テハ甚ダ不同ノモノデアル、預リ金ハ長ク續ク
  モノデアル、然ラバドウ云フ方法デ之ヲ差引シテ宜イカト云
  フコトハ甚ダ困難デアル、斯ウ云フヤウナ反對論ガゴザイマ
  シタ、此箇條モ武內君ノ御修正ト共通シテ居ル點デゴザイ
  マス、其次ハ第十三條第一項ノ中ニ、個人ニ對スル貸付金
  ハ、貯蓄銀行ノ資本金ノ拂込額ト積立金トノ合計ノ、十分
  ノ一デナケレバナラヌト云フ法律案、ソレヲ十分ノ一デハ小
  サイカラ、十分ノ三ニシナイカ、斯ウ云フ修正デアリマス、是
  ハ元來個人ニ金ヲ貸スト云フコトハ、自分ノ資本ノ拂込ト
  積立金トヲ貸スノデアルカラ、ソレノ十分ノ三ト云フコトニ
  ナルト、譬ヘテ言ヘバ三人ニシカ貸セヌト云フコトニナルノデ
  アル、矢張十分ノ一ニシテ、十人位ニ貸スコトガ出來ルノガ
  適當デアラウト云フ御說ノヤウデゴザイマシタ、此事ニ就テ
  ハ始終委員會ニ於テモ問題ガ蟠ッテ居リマシタガ、政府當局
  ノ考デハ、貯蓄預金ト云フヤウナモノハ、貸金ナドニ向ケルベ
  キ性質ノモノデハナイ、全部國債證劵若クハ大藏省ノ認可
  スル所ノ確實ナル債劵ニ投資ヲシテ置イテ、イツ何時拂戾
  ガ來テモ、差支ナク拂へルヤウニシテ置クベキ性質ノモノデア
  ル、不動產ヤ其他ノ物ヲ以テ金ヲ貸スト云フコトハ、自分ノ
  資本金ノ拂込額及積立金ヲ以テスベキモノデアルト云フ大
  體ノ主義ガアッテ、ソレカラ割出シテ十分ノ一ト云フモノガ
  出來タモノヽヤウニ思フノデアリマス、卽チソレ故ニ十分ノ
  三ト云フコトニ直シマスノハ不當デアルト云フ考モ、ソレカラ
  出ルモノヽヤウデゴザイマス、其次ハ二十二條ノ中ニ營業稅
  ヲ半分免除シヤウト云フ政府案ガゴザイマスガ、其次ヘ所
  得稅ヲ免除スルコトヲモ加ヘテ貰ヒタイ、斯ウ云フ說デゴザ
  イマス、此所得稅デ免除シタイト云フ說ニ對シテハ、營業稅
  ハ所得ノ有無ニ必ズシモ拘ラズニ、營業稅ト云フモノハ拂フ
  ノデアル、ケレドモ所得ト云フ以上ハ、旣ニ所得ガアッテ所得
  稅ヲ課スルノデアルカラ、營業稅ヲ免除スル精神ト、所得ニ
  關スル稅ヲ免除スルコトヽハ違フ、是ハ免除スルニハ及ブマ
  イ、其次ニハ貯蓄銀行ガ發行スル通帳ノ印紙稅ヲ廢メテ貰
  ヒタイ、此廢メテ貰フト云フコトニ就テノ反對論ハ、目下政
  府ニハ財政調査委員會ト云フモノガアッテ、是等ノ課目ヲ
  總テ審議シテ居ル、其審議ノ結果免除スベキモノハ免除シ、
  免除スベカラザルモノハ免除セズ、斯ウ云フコトモ折角審議
  中デアルカラ、其審議ノ結果ヲ以テ、免除スベキモノハ免除
  スルガ宜カラウ、其審議ヲ待タズシテ玆ニ免除スルト云フコ
  トハ宜シクナイ、斯ウ云フ御說デアリマス、是ガ大體ノ經過
  デゴザイマスガ、爰ニ特ニ申上ゲナケレバナリマセヌノハ、此
  案ヲ議スル初カラシテ、此案ノ施行期日ニ就テ多勢ノ人ガ
  皆ナ懸念ヲ致シテ居リマシタ、殊ニ普通銀行ニシテ貯蓄銀
  行ヲ兼營シテ居ル銀行ガ、此法ノ施行ノ當日カラ、新タニ
  貯蓄預金ヲ預ルコトガ出來ナイカラ止メナクテハナラヌ、隨
  テ別ニ貯蓄銀行ヲ起シテ、其貯蓄預金ヲ振替へナケレバナ
  ラヌト云フコトガアルノニ、施行期限ガ短クテハ、ンレヲ移リ
  變ラセル時間ガ無イ、デアルカラ施行期限ハドウスルノデア
  ルカト云フ議論ガ、初カラ委員中ニアッタノデアリマス、ソレ
  故ニ高見之通君ガ特ニ政府ニ對シ、此施行期限ニ關スル
  質問ヲ致シタノデゴザイマス、政府ハ其質問ニ對シテ大正
  十一年一月一日カラ之ヲ施行スル、卽チ今日ヨリ九箇月ノ
  餘裕ヲ置イテ、大正十一年一月一日カラ施行スルト云フコ
  トヲ確實ニ政府ハ言明致サレマシテゴザイマス、此言明ニ對
  シテ高見君ハ特ニ滿足ノ意ヲ表セラレ、竝ニ倉石君モ此言
  明ニ對シテ滿足ノ意ヲ表セラレテ、本案ニ賛成スルト云フコ
  トヲ言ハレマシテゴザイマス、斯ノ如キ經過デ之ヲ採決致シ
  マシタガ、武內君ト上田君ノ共通ノ案、卽チ前申ス三箇條
  ニ就テ第一ニ採決致シマシタラバ、是ハ少數デ消滅致シマ
  シタ、其次ニ武內君ト共通シナイ上田君ノ案ヲ採決致シマ
  シタガ、同ジク少數デ消滅致シマシタ、續イテ政府案ヲ採決
  致シマシタラバ多數デゴザイマシタ、斯ノ如ク貯蓄銀行法ハ
  定マリマシタガ、第二ノ銀行條例中ノ改正案之ニ就テハ別
  ニ修正案モ何モ出マセヌノデ、採決致シマシタラバ、全會一
  致ヲ以テ可決スルコトニ相成リマシテゴザイマス、是ガ御報
  告デゴザイマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=4

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• 005・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　一讀會ノ場合別段討論ノ通告ハ
  アリマセヌ、採決致シマス、此兩案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤ
  ヲ御諮リ致シマス
  〔「二讀會ヲ開クニ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=5

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• 006・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=6

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• 007・岩崎勲

  ○岩崎勳君　日程第一及第二ニ揭ゲタル兩案ヲ一括シ
  テ、直チニ其第二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕

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• 008・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ直チニ其第二讀會ヲ開キマス
  貯蓄銀行法案第二讀會
  銀行條例中改正法律案第二讀會

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• 009・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　納富陳平君外二名、及紫安新九
  郞君外四名ヨリ、貯蓄銀行法案ニ對シテ修正案ガ提出サ
  レテ居リマス、仍テ其趣旨ノ辯明ヲ許シマス--納富陳平
  君
  〔納富陳平君登壇、拍手起ル〕

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• 010・納富陳平

  ○納富陳平君　私ハ政府ガ提案ナサレマシタ所ノ貯蓄銀
  行法ニ對シテ數箇所ニ涉ッテ、修正ノ意見ヲ述ベントスルモ
  ノデアリマス、只今波多野委員長ヨリ詳細ニ涉ッテ說明ガア
  リマシタカラ、玆ニ私ハ極ク簡單ニ申上ゲテ御判斷ヲ願ヒタ
  イト思ヒマス、政府ガ〓囘貯蓄銀行法ヲ提出ナサレマシテ
  預金者ニ對シテ十分ナル保障ヲスルト云フ御意思ハ、20元
  提出ノ理由ニ於テ書カレマシタ通リ明白デアリマス、此主義ノ
  下ニ政府ガ非常ナル努力ヲ費シテ作成サレマシタ所ノ此
  法案ニ對シテ、私ハ最モ敬意ヲ表スル一人デアリマス、漫リ
  ニ之ヲ非難シ、或ハ非議セント欲スル者デアリマセヌガ、詳細
  ニ逐條ニ涉ッテ考ヘマスルト、預金者ノ保護ニ關係ノナイ點
  ニ於テ、少クトモ銀行業者ノ立場カラ看テ見マシテ、何程カ
  苛酷ニ過ギハシマイカト思フ點ガ四五アリマスカラ、私ハ爰
  ニ其點ヲ述ベマシテ、御判斷ヲ願ヒタイト存ズル次第デアリ
  マス、若シモ政府ガ此原案ノ儘ニ於テ之ヲ施行致シマスナ
  ラバ、現在良好ニ發達シテ居リマス所ノモノ、及將來ニ於テ
  貯蓄銀行ナルモノヲ設ケマシテ、益〓貯蓄奬勵ノ權威ノアル
  所ノ一機關トシテ働カント欲スル所ノ者ハ玆ニ何程カ不便
  ヲ感ジ、或ハ躊躇スルヤウナ虞ガ無イカト私ハ考ヘマス、私ガ
  仄ニ聞キマス所ニ於テハ、目下銀行經營者ノ不注意、或ハ
  故意不謹愼ノ結果、非常ナ蹉跌ヲ來シマシテ、預金者ニ多
  大ノ迷惑ノ掛ケテ居ル所ノモノガ四五アルヤウニ思ヒマスガ
  政府ガ今回ノ提案ノ理由モ、亦專ラ此ニ基イテ居ルト私ハ
  信ジマス、私ハ敢テ此點カラ看テ見マシテモ、此政府ノ御意
  思ノ在ル所ニ對シテ漫リニ反對ハ致シマセヌガ、若シモ斯樣
  ナル事ノミニ依ッテ、少クトモ銀行ノ經營ガ困難デアルカ否ヤ
  ヲ御考ニナラヌヤウナコトガゴザイマシタナラバ、少クトモ貯
  蓄銀行ト云フモノヽ完全ヲ期スルコトガ出來マセズシテ、却
  テ政府ガ貯蓄ヲ奬勵スルト云フ御趣意ヲ裏切ルト云フ結
  果ヲ來サヌカト私ハ信ズル結果、爰ニ修正ノ意見ヲ陳述ス
  ル次第デゴザイマス、第一條第一項第二號中、「十圓未滿」
  トアリマスモノヲ、「二十圓ト改メタイト思ヒマス、此現在ノ
  貯蓄銀行條例ハ、明治一一十二三年頃カラ大正四年マデニ
  二、三囘ノ修正ヲ經マシタヤウナモノデゴザイマシテ、其當時
  ト今日ノ金融ノ事情カラ看テ見マスルナラバ、又自ラソコニ
  多大ナル所ノ變化ガアルコトハ、諸君モ御同感ト私ハ信ジマ
  ス、故ニ此點ニ就テ政府ハ又御考慮ヲナサイマシテ、五圓ト
  云フノヲ十圓ニ御改メニナッタト私ハ聞イテ居リマスガ、進ン
  デ此際二十圓ニ私ハ修正致シタイ、或ハ二十圓ニ致シマシ
  タナラバ、普通銀行ト何程カノ關係ヲ以テ、ンコニ不都合ヲ
  來スト云フ議論モアリマセウガ、普通銀行ニ於テ預リマス所
  ノ金、卽チ相對手方ハ主ニ資本階級ニ屬スルモノデアリ
  マシテ、少クトモ其預金ハ資本化スベキ所ノ性質デゴザイ
  やく、故ニ二十圓云々ノ制限ヲ致シマシテモ、決シテソコニ
  普通銀行ニ打撃ヲ被ラスルト云フ結果ハ無イノミナラズ、却
  テ同條ノ第二項中十圓未滿ヲ二十圓ト改ムト云フコトニ
  修正ヲ致シタイ結果、或ハ普通銀行モ此點ニ於テ多大ナル
  所ノ便利ヲ逆ニ受ケハシマイカト私ハ信ズル結果、爰ニ此
  條文ノ修正ヲ提出致シマス、第三條全部ヲ私ハ削除致シマ
  ス、政府ガ此第三條ヲ改メテ設ケラレマシテ、爰ニ限定的ニ
  規定サレマシタ所ノ御趣意ハ、卽チ資本ナルモノハ貯蓄銀
  行ニ於テ信用ヲ維持スルニ、最モ大ナルモノデアルト云フ御
  判斷デアルコトハ明カデアリマス、勿論私ハ之ニ對シテ反對
  ノ意見ヲ持チマセヌ、併シ從來良好ニ發達致シテ居リマスル
  所ノ銀行デアッテッ僅ニ資本金三万圓或ハ五万圓ト云フ銀
  行ガ全國ニ數百行アリマスルガ、色ミノ時局ノ變動ニ際シ、
  少シモ銀行其者ガ經營ニ於テ誤リヲ致シマセズ、隨テ預金
  者ニ少シモ迷惑ヲ懸ケナカッタ所ノモノハ多大ノ數ニ於テアリ
  マス、然ラバ是ガ卽チ資本金ナルモノハ、銀行ノ信用ヲ維持
  スル上ニ於テ多大ナル力ガアルノデアルガ、又其所ト及場所
  ニ於テ自ラ定メラレタ所ノモノデアッテ、而モ資本金ノ大小ナ
  ルモノハ、貯蓄銀行ノ信用ノ維持ニ就テ、第一番ノ力アルモ
  ノトハ私ハ信ジナイ次第デアリマス、卽チ是ガ現在小資本デ
  アッテ完全ニ營業シテ居リマス證據カラ、小資本ト云フモノ
  ハ決シテ第一要件ニ置クベキモノデナイト云フコトヲ私ハ爰
  ニ斷言ヲ致シマス、又原案ヲ看テ見マスルト、第二十五條ニ
  於テ資本金ニ關スル金ハ、五箇年間ダケ其儘デ置イテモ宜
  シイト云フ規定ガゴザイマス、然ラバ政府ハ資本金ナルモノ
  ハ今直チニ變へヌデモ、卽チ資本金ナルモノガ今直チニ大ニ
  シナクテモ、決シテ銀行ノ信用ヲ害スルモノデナイト云フコト
  ヲ、一方ニ於テ私ハ宣明ナサッタモノト斷言スル次第デゴザ
  イマス、故ニ資本金ナルモノハ從來ノ儘ニシテ置キマシテ、從
  來銀行ガ經營シテ居ル所ノモノハ、自發的ニ增資ヲスル時
  期ヲ與へ、又今後免許ノ申請ヲ申出マシタトキニハ、其時ニ
  政府ガ能ク事情ヲ判斷ナスッテ御決メニナッテ、毛頭私ハ差
  支ナイモノト思ヒマス、斯樣ナ次第デアリマスカラ、私ハ此資
  本金ニ對スル所ノ制限的規程ハ削除シタイト思ヒマス、第
  八條ヲ改メマシテ「貯蓄銀行ハ第一項第一號第二號ノ預
  金額ノ範圍內ニ於テハ小切手ニ依ル支拂ヲ爲ス取引ヲ爲
  スコトヲ得」ト修正ヲ致シマス、此貯蓄銀行ニ於テ小切手ノ
  取引ヲスルト云フコトハ、絕對禁止ノ命令法律ヲ私ハ到ル處
  ニ見マセヌ、故ニ唯タ一ニ爰ニ判斷スベキ所ノ基本トシテハ
  得意先ガ便利デアルカ否ヤニ依リ判斷スルヨリ外致方ナイ
  ト思ヒマス、現在小切手取引ヲ致シテ居リマスノハ、專ラ得
  意先ノ要求ニ依ッテ致スモノデアッテ、決シテ銀行ガ强制シヽ
  若クハ要求スル所ノ取引方法デハアリマセヌ、故ニ預金ノ
  範圍內ニ於テ此小切手取引方法ヲ許スト云フコトハ、預
  金者ノ保護ヲ劃一ニスル上ニ於テ、何等少シモノ弊害ガ無
  イト私ハ論結致シマス、或ハ貯蓄銀行ハ引出スト云フ性質
  ヨリモ專ラ蓄積スルト云フノガ主義デアルカラ、小切手デ引
  出スト云フ方法ハ宜シクナイト言ハルヽ人モアリマセウケレ
  ドモ、是ハ勿論得意先ガ引出シマスマイト引出サウト、是ハ
  自由ノ意思デアリマシテ、漫リニ其邊ヲ忖度致シマシテ、直
  チニ小切手制度ハ宜クナイト判斷スル所ノ少シモ材料ニハ
  ナリマセヌ(「簡單」ト呼フ者アリ)簡單ニ致シマス、(「大ニヤ
  リ給へ」「大ニヤレ」ト呼フ者アリ)第九條ノ「但供託金中受
  入金額ノ四分ノ一ヲ超ユル額ニ付テハ」云々ーアリマス點ヲ
  「但シ供託金ノ二分ノ一マデハ第十一條第一項第一號」云
  々ト私ハ改正ヲ致シマス、政府ガ今回此原案ヲ提出サレマシ
  タ所ノ御報告ハ、最モ此點ニ於テカヲ籠メラレタル所ノモノ
  デアリマシテ、私ハ漫リニ此供託制度ニ於テ反對ヲ致シマセ
  ヌガ、或ハ斯樣ニ峻酷ナル所ノ制限ヲ設ケラレマシタナラバ、
  營利會社トシテノ貯蓄銀行ガ、利益ヲ擧ゲル點ニ於テ如何
  ニナルカト云フコトヲ私ハ虞レマス、隨テ貯蓄銀行ノ將來ニ
  於ケル所ノ發達等ニ、非常ナル影響ヲ來スト考ヘマスル結
  果、之ヲ供託金ノ二分ノ一ト私ハ修正ヲ致シタイト思ヒマ
  スノミナラズ政府ガ原案ニ於テ許シテアリマス所ノ、有價
  證劵ヲ以テ之ヲ供託スルノデアリマス、ノミナラズ價格ノ變
  動ハ色こアリマスカラ、此際ニ於テ自由ニ調節スルト云フ必
  要モアルト私ハ認メマス結果、卽チ有價證券ノ二分ノ一マ
  デハ、卽チ廣クシテ貰ヒタイト云フ私ハ希望デアリマス、同條
  ノ第二項ニ「第一條第一項第三號第四號ノ受入金額中
  第十一條第一項第四號第五號ノ貸付ヲ爲シタル金額ハ供
  託金ニ付テハ預金額ヨリ之ヲ控除スルコトヲ得」ト云フ一
  項ヲ加ヘマス、是ハ金ヲ預ケタ人ガ金ヲ借リル、卽チ是ガ預
  金者ニ對スル所ノ保障デゴザイマス、然ラバ爰ニ重複シテ政
  府ガ預金者ニ安心ヲ與ヘル爲メニ、更メテ供託金ヲ强制ス
  ルト云フコトハ私ハ無用ノ事ト思ヒマス、故ニ此點ダケハ私
  ハ追加ヲ致シタイ、或ハ此條文ヲ許シタナラバ、漫リニ預金
  者ト結托ヲシテ供託金ノ制限ヲ免レルヤウナ事、卽チサウ云
  フ惡イ事ヲスル者ガアラウト云フ議論ガアルカモ知レマセヌ
  ガ、斯ル權威ノ無イ仕事ヲスル銀行デアルナラバ、旣ニ貯蓄
  銀行トシテ存在スベカラザルモノデアッテ、又權威ノ無イ銀行
  デアリマス、隨テ又斯ル事ヲスベキモノトハ私ハ信ジマセヌヽ
  故ニ此條文ヲ置キマシテモ、決シテ何等ノ弊害ハ無イト私ハ
  ハ信ジマス、第十三條ノ第一項中ノ「十分ノ一」ヲ「十分ノ三
  ニ改メマス、凡ソ銀行ノ金ヲ貸スト云フコトハ、其當時ノ金
  融ノ事情、及銀行ノ金銀ノ在高、又借入者ノ人格ニ依ッテ
  決定スベキモノデアリマス、故ニ此點ニ於テ政府ガ十分力ヲ
  用ヰラレテ、爰ニ十分ノ一ノ制限ヲ置カレタト云フコトハ敢
  テ反對ハ致シマセヌガ、假リニ例ヘバ十万圓ノ資本金デ百
  万圓二百圓ノ預金ヲ持ッテ居ル所ノ銀行デアリマシテ、此制
  限ガ實行セラルヽ段ニハ、卽チ十万圓ノ十分ノ一、僅ニ一万
  圓ト云フモノダケ外同一人ニ貸セヌト云フコト。ニナリマス、
  而モ其預金額ニ於テハ百万圓二百万圓ト云フ總額ニ上ル、
  百万圓ノ「パランス」ヲ持ッテ居ル二百万圓ノ「バランス」ヲ持ッ
  テ居ル者ガ、僅ニ信用アル所ノ一人ニ對シテ一万圓外貸セ
  ヌト云フコトハ、私ハ不徹底至極ト存ジマス、故ニ政府ハ貸
  金ト云フモノハ、或ハ資本金ヲ目安トシテ貸スモノデアルト
  思召カモ知レマセヌガ、私ハ貸金ナルモノハ「バランス」卽チ
  預金ト資本金トヲ目安トシテ貸スペキモノー云フ趣意カラ
  シテ、「十分ノ三」ニ改メル次第デアリマス、第二十二條中「營
  業稅」ノ次三及所得稅」ト云フ四字ヲ加ヘマス、貯蓄銀行ハ
  申スマデモナク零碎ナル所ノ預金ヲ吸取致シマシテ、以テ貯
  蓄奬勵ノ機關トシテ任ズルモノデアリマス、故ニ之ヲ能ク保
  護シ、以テ奬勵スルト云フコトガ、卽チ政府ノ貯蓄ニ對スル
  所ノ、重大ナル權威アル所ノ事業ノ一ト私ハ考ヘマス、此點
  ニ於テ政府ハ能ク考ヘラレマシテ、遂ニ營業稅ノ二分ノ一ヲ
  免ズト云フコトマデナサレマシタガ、私ハ今一步進ンデ、所得
  稅ノ二分ノ一モ輕減シテ貰ヒタイ、斯ク致シマスルト、銀行
  經營者ガ利益ヲ擧ゲルト云フ事ノミニ汲々トシテ、自然不誠
  實ナル營業ヲ爲スト云フコトガ無イノミナラズ、又政府モ自
  ラ恐ラク貯蓄銀行ニ於テ此法律ヲ施行シタナラバ、利益ガ
  少クナラウト云フ御判斷ノ下ニナサッテ居ル此輕減法デゴ
  ザイマスルナラバ、卽チ利益トシテ所得稅ヲ課セラルヽ所ノ
  金額ハ僅カナモノデゴザイマス、故ニ之ニ對シテ所得稅ヲ免
  除シテモ、卽チ二分ノ一ヲ輕減致シマシテモ、國家ノ財政ニ
  ハ殆ド寸毫ノ關係モ無イト私ハ信ジマス、故ニ此所得稅ト
  云フモノモ加ヘテ、二分ノ一ヲ輕減シテ貰ヒタイト云フ私ノ
  希望デゴザイマス、次ニ同條ノ次ニ「貯蓄銀行ノ發行スル預
  金通帳ニ對シテハ印紙ノ貼用ヲ要セス」此條項ヲ加ヘタイ
  ト思ヒマス、是モ略〓前ニ申上ゲマシタ通リ、卽チ何程カ營
  業上ノ利益ガ薄クナル、故ニ此點ヲ緩和サレテモ、決シテ預
  金者ニ對スル所ノ保護ノ上ニ、何等關係ガ無イト云フ立場
  カラ、是ハ是非斯ウシテ貫ヒタイト云フ私ノ主張デゴザイマ
  スノミナラズ、僅ニ十錢二十錢ト云フ預金ノ通帳ニ對シテ
  マデモ三錢ナルモノハ、卽チ多大ナル重稅デアルト云フ私ノ
  見地カラ、爰ニ之ヲ加へマシタ、以上述ベマシタ通リガ、私ガ
  爰ニ修正ヲ提出致シマシタ意見ノ大體デゴザイマス、ドウ
  カ、

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=10

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• 011・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　紫安新九郞君
  〔紫安新九郞君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=11

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• 012・紫安新九郎

  ○紫安新九郞君　諸君、本員モ貯蓄銀行法案ニ對シテ
  修正ノ意見ヲ述ベントスルモノデアリマス、乃チ第八條ヲ左
  ノ如ク改ム「貯蓄銀行ハ第一條第一項第一號第二號ノ預
  金額ノ範圍內ニ於テ小切手ニ依リ支拂ヲ爲ス取引ヲ爲ス
  コトヲ得」第九條ノ但書中ニ「供託金四分ノ一」トアルノヲ
  「二分ノ一マデ」ニ改ム、更ニ同條第二號ノ次ニ左ノ一項ヲ
  加フ「第一條第一項第三號第四號ノ受入金額中第十一
  條第一項第四號第五號ノ貸付ヲ爲シタル金額ハ供託金
  ニ付テハ預金額ヨリ之ヲ控除スルコトヲ得」是ガ私ノ修正
  セントスル箇條デアリマス、此貯蓄銀行法案ハ大體ニ於キ
  マシテハ、私共ハ最モ宜シキヲ得タルモノデアルト賛成スルニ
  吝ナラヌモノデアリマス、併ナガラ今私ガ申上ゲタル修正ヲ
  加フルモ亦其宜シキヲ得タルモノデアルト云フノ考カラ致シ
  マシテ、此修正案ヲ提出シタル次第デゴザイマス、何卒御賛
  成アランコトヲ望ミマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=12

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• 013・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　海江田準一郞君
  〔海江田準一郎君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=13

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• 014・海江田準一郎

  ○海江田準一郞君　私ハ此貯蓄銀行法案ニ對シマシテ
  賛成スル者デゴザイマス、而シテ只今納富陳平君及紫安新
  九郎君ノ修正案ニ對シテハ、遺憾ナガラ同意シ難イノデア
  リマス、此銀行貯蓄案ガ出マシタ當時、當事者及世間ニ於
  キマシテハ、多少ノ非難ガアッタノデゴザイマス、(「銀行貯蓄
  デハナイ貯蓄銀行ダ」ト呼フ者アリ)宜シイ-ソレハドウ云
  フ非難カト申シマスルト、今囘ノ改正案ハ峻嚴其度ニ過ギ
  テ居ル、仍ッテ營業ハ立行カナイト云フヤウナ非難デアルノ
  デゴザイマス、併シ此貯蓄銀行ト云フモノヽ本質ヲ能ク考ヘ
  テ見マスルト、貯蓄銀行ナルモノハ、公共的且ツ慈善的ノ性
  質ヲ帶ビマシテ、一面ニハ國民ノ貯蓄心ヲ獎勵スルモノダラ
  ウト思フノデゴザイマス、且又此貯蓄銀行ナルモノハ、世ノ所
  謂富豪或ハ特殊ノ人士ガ、社會奉仕ノ信念ノ下ニ、社會
  政策トシテ多數階級ノ生活ノ安全ヲ保持スルト云フヤウナ
  コトモ、私ハ目的ノ一ツデハナイカト思フノデゴザイマス、左
  スレバ此貯蓄銀行ナルモノニ嚴格ナル制限ヲ加ヘルト云フ
  コトハ、最モ其策ヲ得タルモノト私ハ信ズルノデゴザイマス、
  先程申上ゲマシタル非難ハ、只今マデ行ッテ來マシタ所調現
  行法、之ニ慣レ來ッタ者トシテハ、或ハ非難ノ聲ヲ揚ゲルノモ
  御尤カトモ存ジマス、併ナガラ此貯蓄銀行ノ本質ヨリ之ヲ
  考ヘテ見マスルト、强チ私ハ峻嚴ナル、且ツ苛酷ナル制限デ
  ハナイト思フノデゴザイマス、殊ニ此貯蓄銀行ナルモノハ、多
  數階級ガ粒々辛苦ノ上貯メタ金ヲ預ケル所デゴザイマスガ
  故ニ、貯蓄銀行ノ經營如何ト云フコトハ、延テ此下級所謂
  細民ノ生活ニ不安ヲ與ヘ、延テハ思想界ニ影響スルモノダ
  ラウト思フノデゴザイマス、御承知ノ通リ數年前-デハナ
  イ先年來經濟界ノ好景氣ニ伴レマシテ、色〓此銀行ガ放
  漫ナル貸出ヲシタノデゴザイマス、昨年ノ不況ニ遭遇致シマ
  スルヤ、多數ノ銀行ガ破綻シ、或ハ取付ニ遭ヒ、其中貯蓄銀
  行ニ於テモ、支拂停止ヲシタノモアルノデゴザイマス、其結果
  ハ預金者ニ悲慘ナル影響ヲ與ヘ、一家ノ離散トナリ、或ハ
  狂人モ出來、或ハ自殺ヲシタ實例モアルノデゴザイマス、斯
  ル事ヨリ考ヘマスルト、此貯蓄銀行ナルモノハ社會政策ノ
  上ニ於キマシテモ、私ハ今日ノ如キ改正案ノ嚴格ナル制限
  ヲ加ヘルコトヲ、至當ナリト信ズルノデゴザイマス、先程納富
  陳平君ノ修正ノ御演說ヲ拜聽シテ居リマシタガ、私ハマダ
  年ヲ取ッテ居ナイノデゴザイマスケレドモ、ドウモ其御說明ガ
  徹底的ニ私ニ了解出來ナカッタノデアリマス、(「何ヲ言ッテ居
  ルノダ」ト呼フ者アリ)併ナガラ大體ニ於キマシテハ、先程委
  員長ノ御述ニナリマシタ反對論、所謂此修正案ナルモノハ、
  私共委員會ニ於キマシテ、上田案ト申シテ居ルノデゴザイマ
  スガ、此上田案其物デアッタノデアリマス、仍テ其修正ニ同
  意シ難イ所ノ反駁ハ、先程ノ委員長ノ御述ニナリマシタル
  所ノ反對論ト御承知ヲ願ヒタウゴザイマス、紫安サンノハ極
  ク簡單デゴザイマシタガ、矢張此中ニ包含セラレ得ルモノト
  御承知下サイマシテ原案ニ御賛成、而シテ此修正案ニ不
  賛成シ下サランコトヲ希望致シマス(拍手起ル、「ドウシタイ」
  ト呼フ者アリ)少シ私ガ-ヤリ直シマスガ、原案賛成ニ御
  願シタウゴザイマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=14

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• 015・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　採決致シマス、納富君ノ修正案中
  ニハ紫安君ノ修正案ト同一ノ點ガアリマスカラ、先ヅ其共
  通ノ點ヲ採決シマス、次デ共通ノ點ヲ除キマシタ部分ノ、納
  富君ノ修正ニ就テ採決致シマス、共通ノ點ハ卽チ第八條
  第九條中ノ但書、及同條ニ一項ヲ加フルト云フ點デアリマ
  ス、右ハ同一ノ點デアリマスカラ同時ニ採決シマス、只今宣
  言致シマシタル點、此修正ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=15

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• 016・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　少數
  〔「多數」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=16

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• 017・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郎君)　少數-仍テ修正案ハ否決サレマ
  シタ、次ニ同一ノ點ヲ除キマシタ、今否決ノ點ヲ除キマシタ
  其以外ノ納富君ノ案ニ就テ採決致シマス、其修正ニ贊成ノ
  諸君ハ起立ヲ求メマス
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=17

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• 018・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　起立少數、仍テ此點モ否決サレマ
  シタ-委員長ノ報告、卽チ原案ニ就テ採決ヲシマス、委員
  長ノ報告ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=18

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• 019・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナシト認メマス、仍テ委員
  長報告通リ決シマシタ、(拍手起ル)是ニテ第二讀會ハ終リ
  マシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=19

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• 020・岩崎勲

  ○岩崎動君　直チニ兩案ノ第三讀會ヲ開キ、第二讀會議
  決ノ通リ可決確定アランコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=20

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• 021・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=21

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• 022・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ガ無イト認メマス、仍テ直
  チニ兩案ノ第三讀會ヲ開キマス
  貯蓄銀行法案第三讀會
  銀行條例中改正法律案第三讀會
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=22

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• 023・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ガナケレバ、第二讀會議決
  ノ通リ可決確定致シマシタ-小橋君、議事ノ進行ニ就テ
  發言ヲ求メラレマシタガ、此際デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=23

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• 024・小橋藻三衞

  ○小橋藻三衞君　此際:

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=24

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• 025・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　小橋君
  〔小橋藻三衛君登壇、拍手起ル〕
  〔「オ父サン簡單ニ議事ノ進行ダケ」「何時モノ通リ餘
  リ長クカヽルナ」「ヤレ〓〓ヤリ給ヘ」「八釜シイト四
  時間ヤルゾ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=25

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• 026・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=26

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• 027・小橋藻三衞

  ○小橋藻三衛君　議長ハ議場ヲ整理スルガ爲メニ、或程
  度ノ特權ヲ有ッテ居ルト云フコトハ、議院法ノ認ムル所デア
  リマス吾〓議員ハ此議長ノ特權ニ對シテハ敬意ヲ拂ッテ、之
  ニ服從スベキハ勿論デアリマス、併ナガラ若シ議長ガ此特權ヲ
  超過シテ、或侮辱ヲ議員ニ加ヘ、議員ノ言論ノ自由ヲ壓迫
  スルト云フコトガアッタナラバ吾ミハ決シテ之ニ服從スルコト
  ハ出來ナイノデアリマス、(「ヒヤ〓〓」拍手起ル)近來奧議長
  ガ出來得ル限リノ公平ナル態度ヲ執ラントセラルヽ努力ニ
  對シテハ、吾ミハ之ヲ認メル、吾ニハ之ニ對シテ多大ノ敬意
  ヲ拂ッテ居ルノデアリマス、然ルニ遺憾ナル事ニハ、昨日ノ追
  加豫算討議中、植原悅二郞君ノ演說ニ對シテ、甚ダ議長ハ
  不都合ナル壓迫ヲ加へラレタノデアリマス、(「ノウ〓〓」ト呼
  フ者アリ)ノウ〓〓ニ非ス、議場ノ神聖ノ爲メニ本員ハ發言
  ヲ致シテ居ルノデアリマス、黨派ノ問題デハナイ、御鎭マリナ
  サイ、(「何ヲ言フ」「ソンナ事ハ分ッテ居ル」「默ッテ聽ケ下呼フ
  者アリ)速記錄ヲ取調べテ見ルト云フト、斯樣ナ言葉ヲ發セ
  ラレテ居ルノデアリマス、議長議場ノ諸君モ靜〓ニ願ヒマ
  ス、ケレドモ演說サレル人モ、自分ガ一人物ヲ知ッテ、滿場ノ
  人ガ知ラヌガ如キ言葉ハ御愼ミナサイ」··
  〔「其通リ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=27

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• 028・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=28

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• 029・小橋藻三衞

  ○小橋藻三衞君(續)　植原君「私ハサウ云フ言葉ハ申シマ
  セヌ、若シサウ言ッタト云フコトナラ、速記錄ヲ御覽ヲ願ヒマ
  ス、私ノ言葉ニ不都合アリト云フナラ、速記錄ヲ調ヘテ後ニ
  ナサイ、議長「速記錄ヲ見ナクテモ私ノ耳ニサウ聞エタカラ
  御注意ヲ致スノデアリマス」(「其通リ」ト呼フ者アリ)斯樣ナ
  事ガ記サレテアルノデアリマス、(「何カ間違ッテ居ル」「其通リ」
  ト呼フ者アリ)元來此議場ニ於テ、政府ノ經綸ニ對シ、政府
  豫算ニ對シテ熱心ニ討議スルト云フ場合ニ於テ、或ハ經綸
  ナシトカ、或ハ無能デアルトカト云フガ如キ言葉ハ屬ニ繰返
  サレ、又當局ノ大臣モ、或時ニハ知ラナケレバ〓ヘテ上ゲルト
  云フガ如キ言葉ヲ使ハレタリ、或ハ賣言葉ニ買言葉デアル
  ト云フヤウナ言葉ヲ發セラレタト云フコトハ、從來屢〓アルノ
  デアル、併ナガラ何レモ熱心ニ國事ヲ議スルノ餘リ、覺エズ知
  ラズ卽チ言論ノ迸リカラ、斯樣ナコトガ出來致スノデアル、斯
  樣ナ言葉ニ對シテ、未タ曾テ議長ハ之ニ警告シ、壓迫セラレ
  タト云フ事柄ハ無イノデアリマス、昨日植原君ノ演說ハ是
  等ノ事ニ較ベルト、甚ダ輕微ナルモノデアル、然ルニ議長ハ斯
  樣ナ自分一人デ物ヲ知ッテ、滿場ノ人ガ知ラヌガ如キコトヲ
  論ズルナト云フコトマデ言ハレルト云フコトハ議長ニ許サレ
  タル議場整理ノ特權ヲ超過シタル一種ノ壓迫デアリマス、
  (拍手起ル、「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)決シテ此問題ハ黨派ノ
  問題デハナイ、御靜マリナサイ、議員ノ名譽ニ關シ、言論ノ自
  由ニ關スル言葉デアルガ故ニ、將來斯ノ如キ事ハ、屹度御謹
  愼アッテ然ルベシト云フ警告ヲ與ヘルノデアリマス、私ハ奧
  議長ノ紳士ナルコトヲ信ズルガ故ニ、紳士ハ過ヲ改ムルニ決
  シテ吝ナルモノデハナイ、奧議長ハ蓋シ本員ノ警告ニ對シテ、
  速ニ服從サルヽモノト信ズル、(「大間違」ト呼フ者アリ)故ニ
  本員ノ警告ハ此ニ止メル、若シ此警告ニ服從サレナイト言
  フナラバ、更ニ幾許カノ時間ヲ借用シテ、本員ハ大ニ警告セ
  ントスルモノデアル、(拍手起リ發言スル者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=29

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• 030・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御答致シマス、小橋君ノ折角ノ御
  注意御深切ノ御注意デゴザイマスルガ、昨日ノ如キ場合デ
  アルナラバ、其人ニ注意ハ相變ラズ議長ハ加ヘマス、其理由
  ヲ御答致シマス、昨日植原君ノ御演說中ニ「諸君御分リデ
  アルナラバ、蠶絲業ハ日本ノ國民ニ於テ最モ重大ナル事業
  デアリマス、(「其通リ」ト呼フ者アリ)蠶絲業ガ重大ナル事業
  ト云フコトヲ諸君ガ御分リニナリマスカ」ト云フヤウナ意味ノ
  言葉デアリマス、ソレカラ續イテ「諸君ガ御分リニナリマシテ
  モ、此場合私ハ其事ヲ····蠶絲業ガ日本ノ重大ナル事業デ
  アリマス、之ガ御分リニナリマセヌカ、御分リニナリマシテモ
  私ハ言ヒマス」ト云フ言葉デアリマス、故ニ議場ガ騒然トシマ
  シタ、其時分ニ私ハ注意ヲ加ヘント欲シマシタガ、偶〓其一
  言ダケデシタカラ注意ヲ加ヘナイデ經過シマシタ、サウシタラ
  續イテ暫クシテ、「諸君ガ經濟ノ原則ヲ御承知ナラバ」ト云
  フ言葉ガ出マシテ、又議場ハ騒然トシマシタ、是ニ於テ議場
  整理上騒然トサレタル諸君ニモ警告ヲ與へ、演說サレル方モ、
  ソレシキノ事ガ皆サンニ分ラナイカト云フ御言葉ヲ御使ニナ
  ルカラ、騒然トシマスカラ御注意アリタイト云フコトヲ申シマ
  シタ、是ハ當然ノ注意ト信ジマス、(拍手起ル、「當然」「ノウノ
  ウ」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=30

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• 031・小橋藻三衞

  ○小橋藻三衞君　議長-議長
  〔「無用々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=31

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• 032・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=32

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• 033・小橋藻三衞

  ○小橋藻三衞君　議事ノ進行ニ就テ-許シマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=33

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• 034・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　マダ許シテ居リマセヌ-議事ノ進
  行ニ就テヾスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=34

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• 035・小橋藻三衞

  ○小橋藻三衞君　只今申シタ通リ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=35

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• 036・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　申シタ通リ-議事ノ進行デスカ
  〔「議事ノ妨ゲダ」「止セミミ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=36

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• 037・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニナサイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=37

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• 038・小橋藻三衞

  ○小橋藻三衞君　議事ノ進行ニ就テヾアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=38

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• 039・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　許シマス
  〔小橋藻三衞君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=39

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• 040・小橋藻三衞

  ○小橋藻三衞君　私ハ只今ノ議長ノ御答辯ヲ承ッテ意外
  ニ感ズルノデアリマス、吾ヒハ議事ノ進行ノ爲メニ、更二一
  言ヲ費サヾルヲ得ナイ
  〔「妨害ダ妨害ダ」「無用々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=40

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• 041・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=41

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• 042・小橋藻三衞

  ○小橋藻三衞君(續)　議長ハ只今左樣ナ場合ニ於テハ、
  今後モ警告ヲ發スルト云フ御言葉デアリマス、是ハ甚ダ怪
  シカラヌ事デアル、(「何デ」ト呼フ者アリ)植原君ノ申シタ事
  ハ決シテ自分一人ガ物ヲ知ッテ、滿場ノ人ガ知ラナイト言ツ
  タノデハナイ、當時ノ議場ノ光景ハ諸君ノ御承知ノ通リ、植
  原君ガ帝蠶會社ノ事ニ就テ、大ニ將來ヲ注意シナケレバナ
  ラヌト云フ點ニ對シテ、告ノ演說ヲ致シテ居ッタノデアル、
  所ガ議長ハ之ニ對シテ、憲政會ト同一ノヤウナ意味ノ事デ
  ハナイカト云フコトモ言ハレタノデアル、又政友會ノ諸君ハ
  頻リニ植原君ノ演說ニ對シテ妨害ヲサレタノデアリマス、極
  端ナル妨害、極端ナル壓迫ヲ加ヘラレタノデスル、ソコデ之ニ
  應酬スルガ爲メニ、植原君ノ論旨モ一層强クナッタト云フコ
  トハ、當時ノ光景ガ自ラ之ヲ然ラシメタノデアル、然ラバ則チ
  植原君ノ斯ル演說ヲシタト云フコトニ對シテハ、與黨諸君
  モ亦其責任ガアルノデアル、(拍手起ル「ノウ〓〓」)然ルニ議
  長ハ斯ノ加ク議員ノ言論ヲ批評ヲ致サレテ、サウシテ之ヲ
  壓迫サレルト云フコトハ一種ノ侮辱デアリマス、(拍手起ルヽ
  「牽强附會ダ」ト呼フ者アリ)吾〓ハ何所マデモ奧議長ガ冷
  靜ニ考慮致サレテ、大ニ自ラ省ミテ、其態度ヲ改メラレンコ
  トヲ更ニ警告スルモノデアリマス、(拍手起ル「答辯ノ要ナシ」
  ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=42

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• 043・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　諸君、靜ニ-モウ先ニ答ヘタノデ
  十分ト思ヒマスルガ、併シ誤解ガアッテハイケマセヌカラ尙ホ
  一言シマス、私ハ植原君ノ演說ノ論旨ヲ妨害シタルモノデナ
  イ、(「批評シタ」ト呼フ者アリ)如何ニモ經濟ノ原則ハ諸君
  ハ分ラヌダラウトカ、蠶絲家ハ日本ノ重要ナル事業デアルト
  云フコトヲ、御承知デナイト云フ言葉ヲ發セラレテ、偶〓議場
  ガ騒然トナッタカラ、左樣ナ動機ヲ作ラナイヤウニナサイト言ッ
  テ注意シタノデアリマス、(拍手起リ發言スル者アリ)諸君ノ
  諒解アランコトヲ望ミマス、日程第三公有水面埋立法案ノ
  第一讀會ノ續ヲ開キマス-委員長小山田信藏君
  第三公有水面埋立法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長)
  報〓
  報告書
  一公有水面埋立法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
  段及報告候也
  大正十年三月八日
  公有水面埋立法案委員長
  小山田信藏
  衆議院議長奥繁三郎殿
  (小字ハ委員會ノ修正)
  公有水面埋立法案中左ノ通修正ス
  第五十條本法ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ公有水面ノ一部シ區
  割シ永久的設備ヲ築造スル場合ニ之ヲ準用ス
  〔小山田信藏君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=43

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• 044・小山田信藏

  ○小山田信藏君　只今議題トナリマシタ公有水面埋立
  法案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、本案
  ハ四十九條ヨリ成立ッテ居リマスル法案デアリマシテ、委員會
  ハ四囘之ヲ開キマシテ、各派ノ委員諸君ヨリ幾多ノ質問ガ
  アリマスシ、又之ニ對シテ政府委員ノ答辯モアリマシタ、其
  中ノ主ナルモノ二三ヲ簡單ニ申上ゲヤウト思ヒマス、第一
  ハ憲政會ノ高木正年君ヨリ東京府ノ如キ漁業權ノ設定ヲ
  認可セザル場所ニ於テ、又一面ヨリ申シマスレバ一種ノ天
  然ノ養魚池トモ申スベキ場所ヲ埋立スルト云フコトニナリ
  マスレバ、幾多ノ住民ガ生活ヲ失フヤウナコトニナル、サウス
  レバ社會政策上由々シキ問題ヲ惹起スノデ、之ヲ防グニハ
  同法案第三條ノ「市町村會ノ意見ヲ徴シ」ト云フ所ニ漁業
  組合ノ意見ヲ徵スルト云フコトヲ入レテ貰ヒタイ、サウスレ
  バ是等ノ生活ノ安定ヲ失フコトヲ防グコトガ出來ル、斯ウ
  云フ譯デアリマス、(「聞エマセヌカラモット大キイ聲デ願ヒマ
  ス」ト呼フ者アリ)之ニ對シマシテ政府委員ハ、漁業權者ハ
  本法ニ依シテ其損害ノ補償ヲ受ケルコトガ出來ルノデアルカ
  ラ、又高木君ノ言ハルヽ多數人民ノ生活ヲ奪フヤウナ場合
  ハ、政府ハ埋立ヲ認可シナイノデアル、卽チ埋立處分手續ノ
  第三ニ、其埋立ガ公益其他ニ支障アリト認ムルトキハ地方
  長官ハ不許可ノ處分ヲ爲ス、斯ウ云フコトニモナッテ居ルノ
  デアリマスカラシテ、(「モウ少シ高聲ニ願ヒマス」ト呼フ者ア
  リ)詰リサウ云フ場所ニハ絕對ニ理立ヲ許サヌ、ソレカラ是
  等ハ尙又將來訓令ナリ省令ナリヲ以テ注意スル積リテアル
  ト、次ニハ淺野君南君ヨリノ第十四條ノ本文ノ末ニ於テ、
  「他人ノ土地ニ立入リ又ハ其ノ他ノ土地ヲ一時材料置場
  トシテ使用スルコトヲ得」ダケデハ、本案ノ趣旨ヲ貫徹スルコ
  トガ出來ナイノデ、卽チ埋立ノ如キハ最モ重キ土砂ヲ必要
  トスルカラ、是等ヲ運搬スル道路ヲモ、本法ヲ以テ通行シ得
  ルヤウニシナケレバナラヌ、折角本法ガ發布サレテモ其效力
  ヲ發揮シ得ナイ故ニ、「運搬シ得ル」ト云フ文字ヲ入レテ貰
  ヒタイ、斯ウ云フ質問的ノ意見ガアッタノデアリマス、政府委
  員ハ之ニ對シマシテ、諸君ノ意見ハ諒トスルモ、個人住宅ノ
  庭園若クハ料理屋ノ庭ト云フヤウナ所ニ「レール」ヲ敷設シ
  テ、其前ヲドシ〓〓通行スルヤウニナルト、餘リ個人ノ權利ヲ
  侵害スルヤウナコトニナリマシテ、條文デ之ヲ入レルト云フコ
  トハ面白クナイ、サリナガラ差支ナイ場所ニ於テハ、地方長
  官ガ訓令カ何カヲ以テユトリヲ取レルヤウナ方法ヲ講ズル、
  斯ウ云フ答辯デアリマシタ、第三ハ養魚場竝ニ船渠等ニ對
  スル質問デアリマス、是ハ吉原祐太郞君、高柳覺太郞君、
  其他ノ諸君ヨリ多數ノ質問ガアリマシタ、其要旨ヲ簡單ニ
  中上ゲマスレバ、養魚場ハ埋立ニ非ズ干拓ニ非ズ、本法ニ
  於テ其所有權ヲ認メ得ルヤ否ヤ、斯ウ云フノガ大體ノ御質
  問デアリマス、之ニ對シマシテ政府委員ハ、本法ヲ以テ直チ
  ニ其所有權ヲ認ムルコトハ六ケシイ、サリナガラ其設備ノ如
  何ニ依ッテハ認メナイコトモナイガ、要スルニ本文ハ目下政
  府ニ於テモ考慮〓究中デアル、斯ウ云フ風ナ答辯デアリマ
  シタ、尤モ高木正年君ヨリノ請求ニ依リマシテ、水產局長ノ
  出席ヲ乞ヒマシテ、吉原君ヨリ水產局長ニ向ッテ、養魚場ノ
  所有權ノ質問ガアリマシタ、水産局長ハ之ニ對シマシテ、本
  案ニ於テ其所有權ヲ認メテ貰ヘバ大變都合ガ好イ、斯樣ナ
  答辯ガアリマシタ、又小橋内務次官カ、本案ニ就テハ水產
  局ト相談シテ考慮中デアルケレドモ、諸君ニ於テ本案中
  ニ其等ノ規定ヲ入レタイト云フコトナラバ敢テ拒マヌ、斯ウ
  云フ風ナコトデアリマシタカラ、委員會ニ於テハ、各派委員
  ガ相談會ヲ開キマシテ、政府ノ同意ヲ得テ一ツノ成案ヲ得
  タノデアリマス、卽チ「本法ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ公有水
  而ノ一部ヲ區劃シ永久的設備ヲ築造スル場合ニ之ヲ準用
  ス」卽チ之ニ依ッテ、養魚場竝ニ船渠ノ如キモノヽ所有權ヲ
  認メラレルコトニナリマス、而シテ本條ハ本案ノ一番末尾ニ
  五十條トシテ加ヘルコトニ致シマシテ、詰リ各派協議ノ委
  員會ニ於ケル修正提案トナッタノデアリマス、委員會ハ討論
  ニ移リマシテ、其各派修正ノ提案竝ニ原案ニ對シマシテ、滿
  場一致デ以テ可決致シマシタ、此段御報告致シマス、(拍手
  起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=44

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• 045・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御
  諮リ致シマス
  〔「第二讀會ヲ開クニ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=45

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• 046・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=46

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• 047・岩崎勲

  ○岩崎動君　直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
  省略シテ委員長報告ノ通リ、卽チ委員會ニ於テ修正議決
  ノ通リ可決確定セラレンコトヲ希望致シマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=47

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• 048・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=48

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• 049・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ガ無ケレバ直チニ本案ノ第
  二讀會ヲ開キマス
  公有水面埋立法案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=49

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• 050・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナイト認メマス、仍テ委員
  長報告通リ可決確定致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=50

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• 051・岩崎勲

  ○岩崎勳君　議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致
  シマス、卽チ茲ニ特第一號大正十年度各特別會計歲入歲
  出豫算追加案ヲ議題ト爲シ、豫算委員長ノ報告ヲ求メ、且
  其審議ヲ進メラレンコトヲ希望致シマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=51

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• 052・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=52

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• 053・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ガ無イト認メマス、仍テ日
  程ハ變更サレマシタ、特第一號大正十年度各特別會計歲
  入歳出豫算追加案ヲ議題ニ供シマス、委員長ノ報告ヲ求
  メマス、武藤金吉君
  (特第一號)大正十年度各特別會計歳入歲
  出豫算追加報告電話番号
  報告書
  (特第一號)大正十年度各特別會計歲入歳出豫算追
  加案
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十年三月九日
  豫算委員長武藤金吉
  衆議院議長奧繁三郞殿
  〔武藤金吉君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=53

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• 054・武藤金吉

  ○武藤金吉君　簡單ニ委員會ノ成績ヲ御報告致シマス
  本案ハ特第一號大正十年度各特別會計歲入歳出豫算
  デアリマシテ、大藏省所管ニ於テハ、國債整理基金、十九万
  五千四百三十八圓、農商務所管ニ於キマシテハ、米穀需
  給調節四百九十七万六千三十五圓デアリマス、是ガ歲入
  ハ國債整理基金ノ收入、米穀需給調節特別會計ヨリ受人
  レルコトデアリマス、又歲出ハ此國債整理基金カラ支出ヲス
  ルノデ、是ガ國債整理基金ノ歲入歳出デアリマス、又農商
  務省ノ方ノ米穀需給調節ノ收入ハ、米穀需給調節カラ牧
  入ヲ得マシテ、是ハ借入金デアリマス、此借入金ハ四百九十
  六万千三十四圓デアリマス、其他雜收入一万五千圓、是
  ガ歲入歲出ノ金額デアリマス、本案ニ對シテ政府ノ說明ハ、
  米穀ノ需給調節借入金ノ利子、及ヒ國債ノ雜費等ノ增加
  ニ伴フ案デアリマシテ、此經費支辨ノ爲メニ借入金ヲ爲シ、
  是ガ利子ヲ要スルト、及米穀買入ノ爲メニ發行スル證劵ノ
  製造費デアルノデアリマス、又米穀法ノ發布ニ伴ッテ、米穀
  ノ需給ヲスルノ必要ガアッテ、是ガ經費ヲ見積ッタモノデアリ
  マス、之ニ對シテ委員會ニ於キマシテハ、極メテ簡單ナル質
  問應答ガアリマシタ、其要點ノ一二ヲ申上ゲマスレバ、買入
  ノ場所、全國ノ倉庫ノ數ハ如何、米穀ノ收容力ハドウデアル
  カ、又豫備金ヲ置イアー此案デ見ルト、十年度ニ於テ豫備
  金ヲ置カナイト云フト、支障ヲ生ズルノ虞ガアルカラモット、豫
  備金ヲ置イテ彈力ノアル支出ヲ何故シナイカト云フ質問
  ガアリマシタ之ニ對シマシテハ政府ハ、買入ノ箇所ハマダ何
  所ニ置クト云フコトハ定メテナイガ、全國ニ代表的場所ヲ
  七箇所選ム積リデアル、又倉庫ノ收容力ハ、東京ヲ首メ全
  國ノ十三大都市ニ、二百七十万石ノ收容力ガアル米ヲ容
  ルヽニ足ルベキ倉庫ガアル、其以外ニ農業倉庫等ガ六十万
  石ヲ收容スルモノガアル、斯ウ云フ答辯デアリマス、又此豫
  備費ヲ置カナイト云フコトニ就キマシテハ、豫算ノ範圍ニ於
  テ流用シ、又繼續的ニ是ガ資本ヲ運用シテ買入ヲ爲スト云
  フコトデアル是ガ質問應答ノ要旨デアリマス、斯樣ニ致シマ
  シテ、委員會ハ本日午前ニ開キマシテ分科會ニ移サス、直チ
  ニ討議ニ移リマシテ、滿場一致ヲ以テ原案ヲ可決致シマシ
  タ、此段御報告ニ及ヒマス(拍手起ル)

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• 055・岩崎勲

  ○岩崎動君　本案ハ委員長報告ノ通リ可決セラレンコト
  ヲ望ミマス
  〔、「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 056・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセ
  ヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 057・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナシト認メマス、仍テ本案ハ
  委員長報告ノ通リ可決確定致シマシタ、日程第四國有土
  地森林原野下戾ニ關スル法律案第一讀會ノ續キヲ開キマ
  ス、委員長缺席ニ付、理事日野辰次君ヨリ說明ヲ求メマス
  第四國有土地森林原野下戾ニ關スル法
  律案(戶狩權之助君外八十六名提出)
  (第一讀會ノ續)(〓〓〓)委員長ノ
  報告書
  一國有土地森林原野下戾ニ關スル法律案(戶狩權之
  助君外八十六名提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十年三月二日
  國有土地森林原野下戾ニ關スル法律案
  委員長戶狩權之助
  衆議院議長奧繁三郞殿
  〔日野辰次君登壇、拍手〕

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• 058・日野辰次

  ○日野辰次君　委員長戶特權之助君御缺席デアリマス、
  私ヨリ代ッテ本案ノ委員會ノ經過ニ就テ報告致シマス、此
  國有土地森林原野下戾法ニ關スル法律案ハ、御承知ノ通
  リ各派ヲ通ジテ、二百五十八名ノ多數議員諸君ニ依ッテ提
  出サレテ居ルノデアリマス、之ニ依ッテモ本案ガ國民多數ノ
  利害關係ノ上ニ、頗ル大ナルモノガアルト云フコトガ相分
  ルノデアリマス、特ニ又諸君ノ御記憶ヲ願ッテ置キタイ事ハ、是
  マデ、本案ト同一ノ法律案、卽チ下戾申請期問ノ延長スベ
  キ法律案ガ、度ミ此衆議院ニ提出サレタノデアリマス、而シ
  テ其度每ニ通過ヲシテ居ルノデアリマス、又政府モ一度ハ之
  ニ同意ヲ表シテ居ラルヽノデアリマス、斯ル歷史ヲ有スル法
  案デアリマス、事理至ッテ明瞭ナルモノデアリマスルガ故ニ、本
  案ノ委員會ハ僅カ一回ニシテ終了致シマシタ、委員會ニ於
  キマシテハ、先ヅ宮古啓三郞君ヨリ詳細提案ノ理由御說
  明ガアリマシタ、又他ノ委員諸君ヨリハ、代ル〓〓各地方ニ
  於ケル森林原野對人民ノ狀況ヲ詳シク御述ニナリマシテ
  何レモ切ニ政府ノ同意ヲ求メラレタノデアリマス、委員會ノ
  御所論ノ大要ヲ爰ニ搔摘ンデ申上ゲマス、此誤ッテ官有ニ編
  入セラレマシタ森林原野ニ對シテ下戾ノ申請ヲ爲シ得ル期
  間ガ、明治三十二年ノ四月ニ發布ニナリマシタ國有土地森
  林原野下戾法ニ依ッテ、明治三十三年六月三十日マデト
  限ラレタノデアリマス、此期限內ニ種々ノ事情ノ爲メニ、下
  戾ノ申請ヲ爲シ得ザリシ者モアッタ、又假令申請ヲシマシテ
  モ、行政訴訟ノ途アルヲ知ラズシテ、空シク此期間ヲ逸シタ
  ルモノモ頗ル多カッタノデアリマス、是等ハ其後ニ至ッテ下戾
  申請ヲ爲サント欲シテモ、之ヲ行フノ餘地ナク、不滿ノ念怨
  嗟ノ聲ハ、日ヲ經ルニ從ッテ高マッテ來テ、殊ニ近頃ノ如ク生
  活上不安ヲ感ズルコトガ甚シキニ至リマシテハ、此不滿ノ念
  怨嗟ノ聲ハ、益〓其度ヲ高メ來リ、動モスルト穏カナラザル
  行動ガ各地ニ續出スルヲ見ルノデアル、斯ノ如キハ誠ニ國家
  ノ爲メニ寒心ニ堪ヘナイノデアル、元來民有ニ爲スベキモノ
  ヲ誤ッテ官有ニ編入サレタモノガアルナラバ、是ハ當然國家
  ガ舊所有者ニ返付スベキモノデアル、故ニ本案ノ如キ法律
  ヲ制定シテ救濟ノ途ヲ講ズルコトハ、當然國家ガ執ルベキ
  途デアルト云フコトニナッタノデアリマス、委員會ハ別ニ討議
  ヲ用井マセズ、直チニ本案ヲ滿場一致可決致シタ次第デア
  リマス、ドウカ本院ニ於テモ、速ニ御審議ノ上可決アランコ
  トヲ希望スル次第デアリマス

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• 059・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　本案ニ就テハ何レモ賛成デアリマ
  スケレドモ、討論ノ通告ガアリマスカラ、順序ニ依シテ之ヲ許
  シマス、中野寅吉君
  〔中野寅吉君登壇、拍手〕

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• 060・中野寅吉

  ○中野寅吉君　原稿ハ長クテモ、話ハ簡單ニ致シマス、(拍
  手)此問題ハ衆議院ハ勿論、貴族院モ滿場一致通過スル
  ト思ッテ居リマスガ、遺憾ナガラ政府ノ意嚮ガ只今不明デア
  ル、政府ノ意嚮ガ不明ナノハ、此問題ニ對スル、民間ノ實情
  ノ御解リニナラナイ點ガアル爲メダラウト思フノデアリマス、
  田中次官ナゾハ山ノ中カラ出ラレタ人デアルガ、多クハ束京
  ニ御住居ニナッテ居ルノデ、所謂長袖寛帶ノ人こ二日ニ〓〓
  御交リニナッテ居ル爲メニ、田舍臭イ事ハ御忘レニナッタカ知
  レマセヌガ、少シ許リ實情ヲ申上ゲル、此問題ハ洵ニ簡單明
  瞭デアル、元〓民有若クハ部落有デアッタ土地ヲ返セト云フ
  ノデアル、甚ダ簡單明瞭デアル、所ガ返ス方法ニ就テ、今迄ハ政
  府ガ四ノ五ノ言ッテ居ル、所謂三百代言的ノ態度ヲ以テ、期
  間ガ經過シタカラ返セナイノ何ノ彼ノト云フヤウナ、卽チ輿論
  ニ耳ヲ假サナイヤウナ傾ガアル、之ガ爲メニ百姓ハ非常ニ困ッテ
  居ル、何ヘバ春ノ夢ヲ見テ-財布ヲ拾ッタ夢ヲ見テ明朝其
  夢ガ覺メタ時ニモ餘リ好イ氣持ハシナイデナイカ、然ルニ元〓
  民地若クハ部落有デアッタモノヲ取上ゲラレテサウシテ、ソレヲ
  今以テ返サレナイト云フヤウナ、サウ云フ詰ラナイ話ハ無イ
  一ノ谷ノ熊谷デナイケレドモ返セ戾セノ聲ガ盛ニナルノハ當前デ
  アリマス、是ハ當前デアル、大正ノ敦盛トモ目スベキ所ノ山本
  農商務大臣ハ、全ク引返スダケノ勇氣アリヤ否ヤ、確ニアルト
  思フ、アルト思フカラ、衆議院ハ滿場一致之ヲ通過サセテ貰
  ヒタイ、サウスレハ必ズ通過スルダラウト思フ、ソレカラ政府
  ノ方モ通過スルダラウト思フ(笑聲起ル)私ハ言葉ハ分ラナ
  イ、衆議院モ通過ト思フ、政府デ言フコトヲ肯クコトモ通過
  ト思フノデアル、ソレデ山ニ住ム者ハ山ヲ以テ生活スル、是ハ
  當前デアル、海ニ住ム者ハ海ヲ以テ生活スルノガ是ハ當前
  デアル、鹽ヲ製スルトカ、或ハ魚ヲ捕ルトカ-所ガ山ニ住ン
  デ伐ル木一本モ無イデハ、甚ダ是ハ氣ノ毒ノ次第デアル、此
  問題ニ就テハ非常ニ困ッテ居ル、ソレカラモウ一ツハ斯ウ云
  フモノヲ早ク返スト云フコトハ、非常ニ政府デハ惜ガッテ居ル
  カ知ラヌガ、是ハ愛林ノ思想カラ云ウテモ早ク返シタ方ガ宜
  イ、林ヲ愛スル思想カラ言ッテ-今ノ返サナイ官林ハ、大抵
  ハ皆ナ人民ガ惡戲スル、役人ガ一年ヤ半年其所ニ行ッテ實
  際ノ容子ハ分ルモノデナイ、其土地ニ長ク住ンデ居ッテ元ト
  自分ノ物デアッタ、元ト部落ノ物デアッタト云フ關係カラシテ、
  其地味ヲ能ク知ッテ居ル、地味ニ應ジテ其土地ヲ利用スル、
  卽チ子ヲ觀ル親ニ如カズデアル、官行作業ヲヤッテ居ル、今大
  林區署デ官行事業ヲヤッテ居ル、官デ行フ事業ト書クサウダ
  コンナ事ハ失敗バカリデアル、炭ヲ焼イタリ薪ヲ出シタリヤッ
  テ居ル、「スリッパ」ナドヲ出シテ見ル、皆ナ失敗ダラケデアル、
  所謂士族ノ商法デアル、斯ウ云フ事ヲスルヨリハ、矢張其土
  地ニ通ジテ居ル所ノ者ニヤラシタ方ガ宜シイ、早ク土地ヲ返
  シテ-又失敗スルモ當前デアル、ソレニハ百姓ノ怨ト云フ
  モノガ籠ッテ居ル(拍手、「ヒヤ〓〓」)ソレカラ今度ハ林ノ前ニ
  制札ヲ立テヽ居ル、官林ニ行ッテ見ルト-林ヲ大切ニシロ、
  イヤ火ヲ入レルナトカ、又濫リニ入ルナトカ、、麗々シイ制札ヲ
  立テヽ居ル、盜伐モアレバ火事モ大ニアル、民有地ニハ制札
  モ何モ無イガ火事ナドハチットモ無イ、皆ナ此怨ノ爲メニ火
  ヲ點ケラレル、怨ノ爲メニ泥棒ヲサレルノデアル、ソレカラ此
  林ニ對スル所ノ今ノ遣方ハ、所謂官本位デアル、民本位デハ
  ナイ、民本位-私ハ餘リ慣レナイ言葉デアルガ、此頃能ク
  流行ッテ來タ「デモクラシー」デアル、林ノ經營モ此「デモクラ
  シー」的ニヤレバ宜シイ、此話ハ僕ハ甚ダ得手デナイ、得手デナ
  イカラ餘リ繰返サナイガ、官本位デヤッテ居ル爲メニ失敗ガ
  多イ、諸君モ御承知ノ通リ、朝鮮ニハ赭山禿峰、卽チ私ノ頭
  ノヤウナ山ガ澤山アル、到ル處赭山禿峰デアル、朝鮮ハ何
  故斯ウカト云フト、官本位ガ崇ッタノデアル、昔江原道ト云
  フ所ハ非常ニ大森林デアッタ、(「長イゾ」ト呼フ者アリ)モット
  簡單ニシマス、此江原道ハ大森林デ良材ヲ伐出シタモンダ
  カラ、此景福宮ノ建築ニハ非常ニ良材ノ献納ヲ命ジタ、景
  福宮ハ我國ノ志士ガ王妃殺シニ入ッタ所デアルカラ能ク分
  ルダラウガ、非常ニ立派ナ建物デアル、大抵江原道カラ材木
  ガ來タ、サウスルト無償デ以テ納メナクテハナラヌカラ、今度
  ハ他ノ平安北道ノ方デモ、或ハ慶尙北道ノ方デモ、林ヲ持ッ
  テ居レバヒドイ目ニ遭フ、江原道ノヤウニ貧乏シテシマウカ
  ラ、早ク伐ッテシマヘト云フコトデ、無暗矢鱈ニ山ヲ荒シタモ
  ンダカラ、遂ニ只今ノ如キ〓山禿峰ニナッテシマッタ、官本位
  ハ是ダケノ罰ガ當ル、朝鮮ノヤウニナリタクナイカラ私ハ此所
  デ多少ノ話ヲスルノデアル、ソレカラ一ツ今ノ國有林ニ對シ
  テ、田舍デハ部分木ト云フモノヲ植ヱテ居ル、其部分木ノ七
  分ノ利益ハ民ガ取リ、三分ノ利益ハ官ガ取ル、大抵ソレデア
  ル、或ハ四分六分ノ所ガアル、此部分木ガチットモ育タナイ、
  育ツ所ハ甚ダ不便ナ所デアル、部分木ヲ植ヱル人ハ閔元植
  扱サレテ居ル、関元植扱-何デ貴様ハ部分木ナドヲ植ヱ
  ルノダ、(「簡單」「大ニヤレ」ト呼フ者アリ)元ト民地若クハ部
  落有デアルト云フコトガ貴樣ハ分ラナイカ、民地若クハ部落
  有デアルト云フコトヲ示スニハ、其土地ハ放ッタラカシテ置ケ、
  ソイツヲオ前ガ官ニ願ッテ七公三民ニ御願シマスト云フヤウ
  ナコトニナルカラ、元ト民地部落有デアルト云フコトデナイ仕
  事ヲスル、所謂官有地デアルト云フ裏書行爲ヲオ前ハスルノ
  デハナイカト云フノデ、関元植扱ヲサレル、何モ參政意見ナ
  ドハ要ラナイ、國權恢復スレバ宜イヂヤナイカト皆ナ言ッテ居
  ルノデス、ソレデ此部分林ノ濫伐ト云フコトガ多イ、ソレカラ
  部分木ヲ植ヱタ人ハ、大抵其部落デハ餘リ對手ニサレナイ、
  小林區ノ役人ナドハ區長ノ所へ行カナイデ、部分木ヲ植ヱ
  タ所ヘ行クノデ、彼奴ハ密告バカリシテ居ル奴ダ、稅金ナド
  ハ少シ餘計ニ課シテヤレト云フノデ、村會ナドデ儲ケガナク
  テモ上ノ方ニ等級ヲ上ゲラレテ居ル、斯ウ云フ理由デ山ノ利
  用ハ今ノヤウニシテ置クト、有ユル方面ニ百姓ノ怨ガアッテ
  迚モ駄目ダ、ソレカラ水源涵養デモサウテアル、水源地ハ官
  有デアルガ、其水源カラ出ル所ノ水ハ民有ダ、サウシタナラバ
  首尾一貫シタ所ノ產業政策ガ付クモノカ、斯ウ云フコトモ
  分ラナイ、ソレカラ馬ノ話デモサウダ、馬ハ秣草ガ足リナイ爲
  メニ瘠馬バカリ出來ル、瘠セタ牛バカリ出來ル、イザ鎌倉ト
  云フ時ニハ直チニ出合フコトガ出來ナイ、戰ノ上ニモ產業ノ
  上ニモ、馬ト云フモノハ最モ必要デアル、佐野源左衞門常
  世ノヤウニ、瘠馬ニ鞭ッテハ迚モ此戰ニ勝ヲ得ルコトハ出來
  ナイ、ソレカラモット酷イ事ヲ私ハ紹介シマセウ、斯ウ云フ事
  ハ澤山ハ無イガ、盜伐組合ト云フコトガアル、露骨ニ言ヘバ
  犯罪組合、是ハ已ムナクヤルノデアル、例ヘバ其部落ノ溜池
  ヲ修繕スル爲メニ木材ガ要ルトカ、或ハ道路橋梁ヲ修繕ス
  ル爲メニ木材ガ要ルト云フ際ニ、迚モ貧弱ナ部落デハ買フコ
  トガ出來ナイカラ、已ムナク官材ヲ盗伐スル、サウシテ部落全
  體牢ニ入ルト云フコトハ非常ニ困ルカラ、其中ノ中野デアル
  トカ加藤デアルトカ云フ者ヲ指定シテ、サウシテ其部落ノ犠牲
  ニナルノデアル、決シテ此木ヲ賣シタ爲メニ土藏ヲ建テタト
  カ、田地ヲ買フノデハナイ、此犯罪ヲ行ハナケレバ、其日ノ生
  活ガ出來ナイト云フコトハ、洵ニ悲慘事中ノ悲慘事ト謂ハ
  ナケレバナラヌト云フノデアル、(拍手起ル)斯クスレバ斯クナ
  ルモノト知リナガラ、已ムニ已マレヌ所ノ犯罪組合デアル、(拍
  手起ル、「旨イ〓〓」ト呼フ者アリ)今少シデス、(「面白イ面白
  イ」ト呼フ者アリ)ソレカラ肥料ノ話デスガ、此間モ肥料ノ話
  ヲシマシタカラ是ハ省キマス、(「ヤレ〓〓」)イヤ是ハ省キマセウ、
  此間モ肥料ノ話ヲシタ、餘リ此議場ヲ腐ラカシテモイケマセ
  ヌカラ、モウ一ツハ地方ニ於テ唯一ノ樂ミトシテ居ル所ノ昔
  狩ノ遊音狩ノ遊デアル、是ハ近來チットモ無クナッテシマッタ、東
  京ニ住ンデ居ル人ハ、今日ハ上野ヤ淺草ヤ、明日ハ何所ニ
  向島、京都方面ノ人ナラバ御室、飛鳥山、祇園トカ、サウ云
  フ所ニ杖ヲ曳イテ、數日ノ苦勞ヲ慰スルコトガ出來ヤウガ、
  田舍デハサウ云フ事ガ出來ナイカラ、一年ノ中ニハ昔狩ト云
  フ事ヲ唯一ノ樂ミトシテ居ノタ、『所ガ昔一本取ルニモ金ヲ納
  メナケレバナラヌカラ、洵ニ此樂ミハ無クナッタ、朝早クカラ觸
  出シテ、サウシテ今日ハ昔待デアルト云フノデ、老若男女皆
  一升樽ヲ提ゲテ、或ハ重詰ヲ持ッテ山へ登ル、私ハ實際ノ話ヲ
  言フ、實際ノ話ヲ言ハナケレバ、田中君ナドハ一生懸命ニナッテ
  呉レヌカラ、甚タベタヅケデ面白クナイガ-百姓染ミタ話
  ダガ、ソレヲ言ハナケレバ政府ノ決心ヲ促スコトガ出來ナイ、
  今ノ昔狩ノ際ニハ、年頃ノ娘ナドハ昔ヲ押付ケラレテ-山
  カラ採ッタ昔ヲ押付ケラレテ、顏ヲ眞赤ニスルヤウナコトモア
  ルノダ、サウシテ朝カラ晩マデ飮盡シ、唄ヒ盡シ、踊リ盡シテ、
  サウシテ子女兩三醉ヲ扶ケテ歸ルヤウナ此光景ト云フモノハ
  全ク田舎デナケレバ見ルコトハ出來ナイ、此間ニ剛健質朴
  ナ思想ガ養ハレルノデアル、ソレヲ只今デハ一日遊ブニハ四
  圓トカ五圓ノ金ヲ持ッテ行カナケレバ遊ブコトガ出來ナイカ
  ラ、此唯一ノ樂ミモ奪取ラレテシマッタ、ソレデ此問題ニ就テ
  衆議院ヲ通過シテ居ルコトハ五囘デアル、モウ輿論モ輿論
  大興論デ、五回モ通過シテ居ル、ソレデ炭焚議員ノ提案デ
  アル、新割議員ノ提案デアルカラ、ソンナモノハ葬レト言フナ
  ラパ承知ガ出來ナイ、山ノ神様ノ暴レ方ハチット暴レ方ガ違
  フ、徹底的ニヤル、ソレデ此問題ハ旣ニ國民ノ輿論デアルカ
  ラシテ、ドウシテモ政府ニ於テモ、十分決心ノ勝ヲ固メテ掛ツ
  テ貫ハナケレバナラヌ、若シ之ヲ等閑ニ付スルヤウナコトガアッ
  タナラバ、大ニ此山神ニ信心ヲシテ、大暴レニ暴レナケレバナ
  ラヌ、輿論ニ反クト云フコトハ、卽テ政府瓦解ノ端ヲ開クノ
  デアル、若シモ政友會政府ガ瓦角ノ端ヲ開クコトアリトスレ
  バ、卽チ此山ノ問題ガ發端デアルト思フノデアル、(拍手起
  ル)何卒今申上ゲタ事ハ地方ノ土臭イ問題デ、諸君ノ奇麗
  ナ御耳ニ入レタノハ洵ニ申譯ナイガ、(「ノウ〓〓」)併シ百姓
  ハ百姓ラシク話ヲシテ、實際ヲ訴ヘナケレバ徹底シナイノデ
  アル、(拍手起ル)政府ニ於カレマシテモ今申上ゲ夕外ニ、尙
  ホ此位モ材料モアルノデアルカラ、喋舌レト云フナラバ、農商
  務省ニ行ッテ二日デモ三日デモ喋古ッテ上ゲマス、ドウゾ此問
  題ハ輿論ノ聲トシテ、速ニ政府ニ於テモ御同意下サルヤウ、
  又此衆議院ニ於キマシテモ、『滿場一致此問題ニ御賛成下
  サルコトヲ、此壇上ヨリ切ニ御願致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=60

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• 061・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　宮古啓三郞君
  〔宮古啓三郞君登壇、泊手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=61

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• 062・宮古啓三郎

  ○宮古啓三郞君　此案ハ黨派問題デハ實際ゴザイマセヌ
  デ、只今委員長カラ申サレタ通リニ、各派ヲ通ジテ二百六
  十名內外ノ提出者、竝ニ賛成者ヲ以テ提案致サレタノデア
  リマシテ、而シテ委員會ニ於キマシテモ、滿場一致一人ノ異
  論ナク可決ニ相成ッタノデゴザイマス、ソレデアリマスルカラシ
  テ私ガ此所ニ出テ喋々スルト云フヤウナコトハ、恰モ敵ノ無イ
  ノニ矢ヲ放ツヤウデゴザイマシテ、必要ノ無イヤウデゴザイマ
  スケレドモ、併ナガラ此問題ハ御承知ノ通リ、我國ガ山林國
  デアリマシテ、(「分ッテ居ルヨ」「反對スル者ガ無イヂヤナイカ」
  ト呼フ者アリ)生活ノ安定竝ニ思想ノ善導ト云フコトニ就
  キマシテハ、大ナル關係ヲ有シテ居ルノデアリマス、(「反對ス
  ル者ハ無イヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)而シテ前途ヲ考ヘテ見
  マスルト云フト、決シテ樂觀ヲスルコトガ出來ナイノデアリマ
  ス、諸君ニ於キマシテハ十分ニ御贊成ヲシテ下サルト云フコ
  トハ固ヨリ承知致シテ居リマスケレドモ、不幸ニシテ(「簡單」
  ト呼フ者アリ)或ル一角ニ於テハ、之ニ對シテ反對ヲセラレ
  テ居ル者モアリマス、加之速記ヲ通ジテ、十分ニ貴族院議員
  諸君ノ諒解ヲ得ナケレバナラヌト云フコトモアルノデアリマ
  ス、(「ヒヤ〓〓」)左樣ナ關係ガアルモノデアリマスカラシテ、玆
  ニ私ガ從來二三回此案ニ關係ヲ致シタコトモゴザイマスル
  シ、且又専門的ニ〓究ヲ致シタコトモ聊カアルノデゴザイマ
  スルカラシテ、少シク卑見ヲ申上ゲテ、諸君ノ御〓聽ヲ願ヒ
  タイノデアリマス、(「謹聽」)ドウゾ二三十分間ノ時間ノ割愛
  ヲ願ヒタイノデアリマス、(「簡單」「澤山ダ」「此間聽イタヨ」「謹
  聽」ト呼フ者アリ)先ヅ此案ニ就キマシテノ沿革ヲ一應申上
  ゲタイノデアリマス、明治三十五年中ニ第十六議會ノ當時
  ニ於デ、靜岡縣選出ノ松島康作君等ヨリシテ、國有土地森
  林原野下戾法施行法ト云フモノガ提出ニ相成ッテ居リマス、
  此法案ハ國有土地森林原野下戾法ノ解釋法トモ申スペ
  キモノデアリマシテ、卽チ政府ガ之ニ對スル解釋ヲスルコトガ
  不當デアルト云フコトカラシテソレヲ法律ノ明文ニ現ハシ
  タイト云フノデ、其提案ヲナサッタノデアリマス、委員會ニ於
  テ質問應答ヲ致シマシク結果ニ於キマシテ、政府ハ其解釋
  法ニ大體ニ於テ贊成ヲ致サレタノデアリマス、賛成ヲ致サレ
  マシテ、其點ニ就キマシテハ、訓令ト云フ形式ヲ以テ之ヲ發
  布スルコトニ致シマシタ、然ル所此案ノ中ニ、一ツ申請ノ期
  間ヲ延長シタイト云フ一箇條ガアッタノデアリマス、此點ニ就
  キマシテハ、特別ナル法律ヲ設ケルト云フノ必要ガゴザリマ
  シテ、委員會ニ於テ一ツノ案ヲ作ッタノデアリマス、其案ナル
  モノハ斯樣ニ書イテアル「明治三十二年法律第九十九號
  國有土地森林原野下戾法第一條ニ該當スルモノニシテ期
  間內ニ下戾ノ申調ヲ爲サヽリシ者ハ明治三十五年十二月
  三十一日迄ニ主務大臣ニ下戾ノ申請ヲナスコトヲ得」ト云
  フノデアリマス、是ニハ時ノ農商務大臣平田束助氏ガ(「簡
  單」ト呼フ者アリ)同意ヲ致サレマシテ、委員會ニ於テハ可決
  ト相成リ、而シテ本院ニ於テ滿場一致ヲ以テ通過ヲ致シテ
  居ルノデアリマス、是ガ卽チ只今ノ此案ノ元租ト稱スベキモ
  ノデアリマスカラ、之ヲ御承知ヲ願ヒタイノデアリマス、而シテ
  其後明治三十六年第十八議會ニ於テ、又明治三十八年
  第二十一議會ニ於テ、是等ノ議會ニ於テハ本員等ヨリ提
  出ヲ致シテ居リマス、其次ノ明治四十三年第二十六議會
  ニ於テ、又明治四十四年第二十七議會ニ於テ、齋藤二郞
  君等カラ提案ニナッテ居リマス、ソレカラ又終リニハ大正三
  年ノ第三十一議會ニ於キマシテ、伊藤祐一君等ヨリ提案ニ
  相成ッテ居ルノデアリマス、(「議場報告ハイヽ加減ニシ給ヘ」
  ト呼フ者アリ)斯クノ如クデアッテ、明治三十二年ノ六月ニ
  期限カ切レマシテカラ、以後引續イテ其出願ニ漏レテ居リマ
  スルノヲ救濟シヤウト云フノデ、斯ノ如ク幾度カ提案ニ相成ツ
  テ居ルノデアリマス、ンレデアリマスカラシテ此案ナルモノハ
  卽チ多年ノ懸案デアリマシテ、今日突然トシテ現ハレタモノ
  デハナイノデアリマス、卽チ之ヲ以チマシテ、此案ガ如何ニ國
  民ノ要望シテ居ルモノデアルカト云フコトハ、十分ニ明瞭ヲ
  致シテ居ラウト思ヒマス、斯ノ如ク再ビ三度幾度カ通過ヲ
  致シテ居ルノデアリマスカラシテ、是ガ英吉利ノ如クニ二回
  以上衆議院ヲ通過シタモノハ、上院之ヲ否決スルコトヲ得
  ズト云フヤウナ法律ガゴザリマシダナラバ、疾クニ是ハ法律ニ
  ナッテ居ルモノデアルト一云フコトハ、洵ニ明カデアルノデアリマ
  ス、斯ノ如ク明治三十五年中ニ於テ、政府ニ於テモ同意致
  サレタノデアル、明治三十五年デゴザリマスルカラ、御承知ノ
  通リ官僚內閣時代デアリマス、此當時ニ於キマシテ、旣ニ此
  案ハ賛成ヲ致サレタノデゴザイマスカラシテ、民意ヲ尊重スル
  所ノ民本政治ヲ執ル所ノ今日ニ於キマシテハ、是ハ贊成ヲ
  願ッテ、聊カ差支ノナイモノデアルト私共信ズルノデアリマス、
  以上ハ卽チ此案ニ對スル所ノ沿革ノ大要デゴザリマス、是
  ヨリ進シデ幕政時代ヨリシテ今日ニ至リマスルマデノ變遷ノ
  大要ヲ申上ゲマシテ、如何ニ山林制度ナルモノガ、幕政時
  代ニ於テハ人民ノ利益デアッテ、今日ニ於テハ人民ノ不利
  益デアルカ、如何ニ山林制度ニ關シマシテ、人民ガ幕政時代
  ヲ謳歌シテ居シテ、今日ノ政府ヲ呪ッテ居ルカト云フコトノ大
  要ヲ、私ハ爰ニ申上ゲタイノデアリマス、幕政時代ニ於キマ
  シテハ、御承知ノ通リ各藩及幕府ニ於キマシテ、御林ナルモ
  ノヲ定メマシテ、或ハ藩ニ依リマシテハ、其名稱ハ異リマシテ
  或ハ御直山ト稱ヘル所モアリ、或ハ御留山ト稱ヘル所モア
  リマスガ、免ニ角御林ト云フモノヲ定メマシテ、其御林ノ以
  外ト云フモノハ、總テ是ハ人民ノ自由ニ委セテ置イタモノデ
  アリマス、ソレデアリマスカラ、幕政時代ニ於キマシテハ、人民
  ナルモノハ自由ニ此山林ニ入リマシテ、木ヲ伐ルコトモ出來
  レバ、草ヲ苅ルコトモ出來マスルシ、又必要ガアレバ質ニ入レ
  ルコトモ出來マスルシ、書人ニスルコトモ出來タト云フ狀態
  デアルノデアリマス、ソレ故ニ山ノ中ニ入リマシテ、山ヲ見當
  テニシテ住居ヲシテ居リマス所ノ者ハ、如何ニモ安ンジテ生
  活ヲスルコトガ出來タ狀態デアルノデアリマス、ソレデアリマ
  スルカラシテ、幕政時代ニ於キマシテハ、御林ヲ除キマシタ以
  外ト云フモノハ、人民ノ這入ラナカッタ所ノ奧山ヲ除キマシテ
  ハ、總テ民有地デアッタト云ッテ決シテ差支ナイノデアリマス、
  然ル所明治ニ至リマシテ社寺土地處分ト云フモノガ
  出來、續イテ地租改正ノ處分ト云フコトニ相成リマシテ、其
  時ニ如何ナル事ヲシタカト申シマスルト、其時ノ役人ナル者
  ガ各村々ニ臨ミマシテ、少シク段別ノ大キイ山林デゴデイマ
  スルト云フト、ソレヲ官ニ差出セト云フコトヲ命令致シマシ
  タモノデアル、山林ナルモノハ之ヲ却テ民有ト致シテ置ケバ、
  和稅ガ澤山出ルコトニ相成ル、然ルニ山林ハ逃ゲモ隱レモ
  セヌノデアルカラ、人民ハ自由ニ之ニ這入シテ利用ヲスルコト
  ガ出來ルノデアルカラシテ、之ヲ官ニ差出スガ利益デアルト
  云フコトヲ申シマシタ、切拾御免ノ時代ヲ去ルコト僅カデア
  リマス所ノ時代デゴザイマスカラシテ、人民ハ如何ニモ官吏
  ノ言フコトニ服シマシテ、山林ノ大キナモノハ總テ之ヲ官
  有ニ差出シテシマッタノデアリマス、社寺ニ就テモ同樣ニ舊
  境內ヲ恰モ諸大名ノ領地ノ如クニ、之ヲ官ニ差出シテシマ
  タノデアリマス、斯ノ如クシテ多クノ民有地ナルモノハ、總テ
  之レガ官有地ト相成ッタノブアリマス、先頃諸君ハ國有財產
  法ト云フモノヲ御議定ニ相成シテ居リマスルガ、驚クベシ此
  國有財產ノ大部分ハ、民有地ヲ取上ゲタ所ノ、卽チ横領ナ
  ル姿ヲ成シテ居ルモノデアルト云フコトデアリマス、(拍手起
  ハ)極端ニ申シマスレバ、全ク民有地ヲ横領ヲシテ、
  之ガ今日ノ國有財產ノ大部分ヲ占メテ居ルト云フ、
  奇怪ナル現象ヲ玆ニ呈シテ居ルノデアリマス、社寺
  上地處分竝ニ地租改正ノ處分ノ際ニ於テハ、最
  初ノ間ハ監督モ嚴重デゴザイマセヌカラシテ、人民ハ
  自由ニ山林ニ入ッテ使用收益ヲスル、然ル處段ニト監視ガ
  嚴重ニナリマシテ、木ヲ伐ッテハ相成ラヌ、草ヲ刈ッテハ相成
  ラヌト云ウテ、頻リニ役人ヨリシテ止メラレルコトニ相成リマ
  シテ、終ニハ或ハ木ヲ伐リ、或ハ草ヲ刈リタ所ノ者ガ牢獄ニ
  投ゼラレテ、懲役ヲシナケレバナラヌト云フ所ノ、憫レナル現
  象ヲ呈シテ參ッタノデアリマスル、玆ニ於テ初メテ人民ハ目
  ガ覺メマシテ、是デハナラヌ、元來自分ノ所有ノ物デアッタノ
  ヲ官ニ取ラレテ居ルノデアルカラ、ドウカシテ之ヲ囘復シナケ
  レバナラヌト云フノ考ヲ起シ來ッタノデアリマス、此所ノ始メ
  テ下戾ノ申請ト云フモノヲスルコトニ相成リマシタノデアッテ
  地租改正竝ニ社寺上地處分ヨリ明治三十二年ニ至リマス
  間ハ、此下戾ノ申請ト云フコトヲ致シタノデアリマス、然ル所
  明治三十二年ニ至リマシテ、第九十九號ト云フ法律ヲ設ケ
  マシテ、其下戾ヲ爲ス者ハ、明治三十三年ノ六月マデニセナ
  ケレバナラヌト云フノ法律ヲ制定致サレタノデアリマス、其法
  律ガ出來マシタカラシテ、ソレニ依ッテ人民ハ下戾シ申請ナル
  モノヲ致シタノデゴザイマスガ、併ナガラ元來ソレ迄ノ間ト云
  フモノハ、何日何時下戾ノ申請ヲ致シテモ差支ナイト云フコ
  トニ相成ッテ居タ、ソレデアリマスカラシテ、何日何時デモ下戾
  ナルモノハ出來ルモノト心得テ居シテ、遂ニ此九十九號ノ法律
  ノ一年二箇月ト云フ期間ヲ、知ラズニシマッタ者ガ多クアル
  ノデアリマス、ソレカラ又其申請ヲ致シマシテ却下ニ相成ッタ
  ナラバ、行政訴訟ノ途ガアルノデアリマスケレドモ、是ハ僅ニ六
  十日ノ期間デゴザイマスカラシテ、其期間ノ事ニ心付カズシ
  テ、遂々又其期間ヲ失シタ者ガ出テ參ッタノデアリマス、是ガ
  卽チ此度此法案ヲ提出致シマシテ、救濟致シタイト云フ
  所ノモノデアルノデゴザイマス、斯樣ナ譯デゴザイマスガ、元來
  今日ノ現狀ト云フモノハ、ドウナッテ居ルカト云フコトヲ一言
  御參考ニ申上ゲタイト思ヒマス、御承知ノ通リ今日人口ガ
  非常ニ殖エマシテ、生活ノ困難ヲ來シテ參リマシタ、生活ノ
  困殖ヲ來タシマシテ、山國デゴザイマスルト、山林ガ無ケレバ
  最モ生活ニ困難ヲ致スノデアリマス、軒下カラ官林デアルト
  云フヤウナ狀態デゴザイマスカラ、實ニ生活ニハ非常ナル苦
  痛ノ感ズルト云フノ狀態ニ相成ッタノデアリマス、併ナガラ元
  來自分ノ物デアルト云フ考ガ失セマセヌカラシテ、其山林ニ
  入リマシテ、ドシ〓〓ト盜伐ヲスルト云フノ狀態デアルノデア
  リマス、私ノ知ッテ居ル範圍內ニ於キマシテモ、此盜伐ヲ事ト
  シテ居リマシテ、盜伐ヲシナケレバ到底生活ガ出來ナイカラヽ
  已ムヲ得ヌノデアルト云フノデ、如何ニ檢擧ヲシマシテモ、之
  ニ對シテ止マルト云フコトガアリマセヌノデ、引續イテ何時デ
  モ盜伐ヲシテ、犯罪人ニナルコトヲ覺悟致シテ居リマス所ノ
  村ガゴザイマス、洵ニ憫レナ者デゴザイマスカ、併ナガラ生
  活ニハ代ヘラレマセヌカラシテ、懲役ヲドシ〓〓ト勤メテ居ル
  ト云フ狀態デゴザイマス、先刻中野君ノ申サレタ犯罪組合
  ト云フヤウナモノハ、矢張此種類ニ屬スルモノデアリマセウ、
  斯ノ如キ者ハ東北地方ノ山國ニ多イノデゴザイマスケレド
  モ、併ナガラ是ハ政テ束北ニ限ルノデアリマセヌデ、日本全國
  ニ於キマシテ、山林ノ多イ所ニ於キマシテハ多ク見ル所ノ現
  象デゴザイマス、御料地ノアル國ニ於キマシテハドウデアルカ
  ト申シマスルト、是ハ又實ニ言フニ忍ビザル所ノモノガゴザイ
  マス、靜岡縣カラ御選出ニナッテ居ル〓君ノ如キハ、能ク此
  事情ヲ御承知デ居ラッシヤイマスガ、隨分此御料地ニ於キマ
  シテハ、ヒドイ狀態ヲ爲シテ居ル、矢張軒下カラ御料林ニナッ
  テ居ルト云フヤウナ處ガ非常ニ多イ、而シテ此御料林ト云
  フモノハ、元來官林ヨリシテ出來タ所ノモノデゴザイマスカラ
  隨テ多クハ民有林ガ御料林ニ相成ッテ居ルノデアリマス、ン
  レデゴザイマスカラ、人民ニ於キマシテハ、御料林ヲ以テ依然
  トシテ自分ノ所有ナリト云フ觀念ヲ持ッテ居ルノデアリマス
  然ル所御承知ノ通リ御料林デゴザイマスカラシテ、皇室ノ御
  所有ニ相成ッテ居ル譯デゴザイマス、皇室ノ御所有ニナッテ居
  ルニ拘ラズ、自分等ノ所有デアルト云フ觀念ガ失セマセヌカ
  ラ、人民ニ於キマシテハ、實ニ皇室ニ對シマシテ申上ゲルコト
  ノ出來ナイヤウナ行動ヲ執ッテ居ル者ヲ、屢、耳ニ致スノデア
  リマス、如何ニモ恐懼ニ堪ヘヌ事柄ガ、諸方ニ現ニ存シテ居
  ルノデアリマス、御承知ノ如ク山梨縣ニ於キマシテハ、一万
  町歩ノ恩賜林ガゴザイマスガ、其由來ヲ調ペテ見マシタ所デ
  ハ、實ニ寒心ニ堪ヘヌ事ガアルノデアリマス、斯樣ナ譯合デゴザ
  イマシテ、先日委員會ニ於テ〓君ノ御話ニモゴザイマシタガ
  御料林ニ參シテ居ッタ所ノ御料技千ヲ、人民共ガ捕縛シテシ
  マッタノデアリマス、此料林村ノ御料技手ヲ捕縛シテシマッタ
  ト云フヤウナ事柄ハ、矢張自分ノ所有物デアル所ノモノニ就
  テ、木ヲ伐ッテ居ルノヲ制止サレルト云フ考ガ心ノ中ニアリマ
  スカラ、從ッテ左樣ナ穩カナラヌ行動ニ出ヅルモノデアラウト
  思フノデアリマス、而シテ今日ニ於キマシテモ、御料地カラシ
  テ下戾ヲシテ貰ヒタイト云フノ請願ガ、御料局ニ幾多山積
  致シテ居ルト云フコトデアリマス、御料局ニ於キマシテハ、矢
  張期限ガ切レテ居ルノデアル、明治三十四年ニ於キマシテ、
  御料林ノ下戾ノ期間ト云フモノハ切レテ居ルノデアリマス、
  然ルニモ拘ラズ左樣ナ下戾シノ申請ヲ今日ニ於テモ致シテ
  居ルノデアリマス、本案ト御料林ノ關係ハ如何デアルカト申
  シマスト、御料林ノ方ニ於キマシテハ、常ニ國有林ヲ標準ト
  致シテ取扱ヲ致シテ居リマス、ソレデアリマスカラ、本案ガ幸
  ニシテ議會ヲ通過致シマスレバ、御料林ノ方デモ矢張是ト同
  ジ法令ヲ設ケルト云フコトハ、今日迄ノ實例ニ於テ定マッテ
  居ルノデアリマス、左樣ナ次第デアルノデゴザイマスカラ、實ニ
  穏カナラヌ狀態デアルト云フコトハ諸君ノ御考ノ中ニ入レ
  テ置イテ戴キタイト存ジマス次ニ最モ諸君ニ御注意ヲ願ヒタ
  イコトガ一ツゴザイマス元來是ハ民有地デアルモノヲ官有ニ
  取上ゲラレタカラ之ヲ回復シテ貫ヒタイト云フノデアル、卽チ
  私權ヲ侵害セラレテ居ルカラ、其私權ノ回復ヲシタイト云フ
  ノガ此案ノ趣意デアリマス、事私權ニ關係致シテ居リマス以
  上ハ、民法ノ原則ニ從ッテ、所有權ノ囘復ガ出來ナクテハナ
  ラヌ筈デアリマス、ソレデアリマスカラ、〓日迄ニ屢、政府ヲ相
  手取ッテ、民事裁判所ニ訴訟ヲ起シタ者ガアルノデアリマス、
  其結果ガドウナッタカト云フコトヲ申シマスト、第一審ニ於キマ
  シテハ、多クハ原告ノ勝訴ニナッテ居ル、卽チ自己ノ所有デア
  ル所ノ物ヲ官林ニ編入サレ、官林ニ取ラレテ居ルカラ、所有
  權ヲ侵害セラレテ居ルノデアルカラ、是ハ原告ニ返スガ至當
  デアルト云フ民事ノ裁判ヲ受ケテ居ルノデアル、然ル所大審
  院ニ至リマシテハ、其栽判ガ遂ニ原告ノ敗訴ニ歸シマシタ、
  原告ノ敗訴ニ歸シマシタ理由如何ト中シマスレバ、地租改
  正竝ニ社寺上地處分ト云フモノニ依フテ、ソレガ官有地ニ編
  入サレタノデアルカラ、卽チ行政處分ニ依ッテ官有ニ編入サ
  レテ居ルノデアルカラ、如何ニ間違ッテ居ッテモ、旣ニ官有ト
  相成ッテ居ルノデアルカラ、民事裁判所ニ其所有權囘復ヲ
  訴ヘルコトハ出來ヌ、斯様ナ理由ニ依リマシテ、大審院ニ於
  テ敗訴シタノデアリマス、若シ大審院ニ於テ左樣ナ判決ガ無
  カッタナラバ、本案ノ如キ法律ノ必要ハ無イノデアリマス、卽
  チ民事裁判所ニ訴ヘテ、ドン〓〓所有權ノ爭ヲ致シテ差支
  ガナイノデゴザイマスケレドモ、併ナガラ只今申シマシタ通リ
  ニ、大審院ニ於テ敗訴ノ判決ガアリマシタガ爲メニ、已ムヲ
  得ズ本案ニ依シテ、之ヲ救濟シナケレバナラヌト云フコトニ相
  成ッタノデアリマス、併ナガラ免ニ角其性質ト云フモノハ、私
  權ヲ侵害シタモノデアルノデアッテ、民事ノ裁判所シ訴ヘテモ、
  是ハ救濟ガ出來ルモノデアルト云フコトヲ御承知ヲ願ヒタ
  イノデアリマス、此點カラ中シマシテモ、本案ノ如キ法律ヲ制
  定シテ、此民有財產ヲ民有ニ返シテヤルト云フコトガ相當
  デアルト云フ事柄ガ、明カデアラウト思フノデアリマス、次ニ
  一ツ御留意ヲ願ヒタイト存ジマスノハ、明治三十二年ノ法
  律第九十九號ト云フモノヲ施行シタ結果ガ、實ニ驚クベキ
  不公平ナルコトニ相成。テ居ルト云フノ一事デアリマス、是
  ハ御承知ノ通リ下戾法ト云フモノニハ證據ヲ要スル、其證
  據ハ公書若クハ公簿デナケレバナラヌト云フヤウナコトガ書
  イテアリマス、ソレデアリマスカラ、證據ガ而モ公書公簿ト云
  フヤウナ證據ガ無ケレバ、此下戾ハ出來ナイモノデアリマス、
  昔ノ有樣ニ於キマシテ、或ハ山論ヲ爲シ、或ハ貧乏ニシテ質
  入書入ヲ爲スト云フヤウナ村方デアリマスレバ、多少ノ證據
  ガ殘シテ居ルガ、山論モ無シ、又左程ノ貧乏ニ非ズシテ、質入
  書入モ致サヌト云フヤウナ所ニ於キマシテハ、證據ガ無イノデ
  アリマス、證據ハ無イケレドモ、併ナガラ同ジ藩デ同ジ支配ヲ受
  ケテ居ル甲乙ノ二箇村ニ於テ、決シテ其所有權ノ狀態ガ變
  ルベキ筈ガナイ、一ツハ證據ガ有リ、一ツハ證據ハ無イ爲メ
  ニ、一ツハ却下トナリ、一ツハ下戾トナルト云フヤウナ狀態ニ
  ナッタノデアル、斯樣ナ譯デアリマスカラシテ、農商務省ニ申請
  ニ相成リマシタ件數ガ、一一万六百餘件モアッタノデアリマスガ
  其中下戾處分ニナリマシタモノハ極メテ僅少デアル、昔ノ狀
  態ヲ申シマスレバ、先刻モ申シマシタ通リニ、民有財產デア〃
  タ所ノモノヲ、其中ボツ〓〓民有ニ下戾ニナッタト云フ狀態デ、
  恰モ籤ヲ引イテ、是ガ民有ニ相成ッタト云フガ如キ狀態ニナッ
  タノデアリマスソレデアリマスカラ、同ジ民有地デアリナガラ、片
  一方ハ民有トナッタケレドモ、多クノモノハ民有トナラヌト云
  フ、不公平ナル狀態ニ立至ッテ居ルト云フコトヲ御承知ヲ
  願ヒタイ、此法案ニ依ッテ、此不公平ノ全部ヲ救濟スルト云
  フコトハ勿論出來マセヌ、併ナガラ此法案ニ依ッテ、幾分
  カ此不公平ヲ救濟スルコトガ出來ルト云フコトハ、ドウノ
  御永知ヲ願ヒタイノデアリマス、シレカラ又今日此現狀
  ノ有樣ニ之ヲ放任シテ置イタナラバ、其結果ハドウナル
  デアラウカト云フコトモ、一ツ御留意ヲ願ヒタイ、此儘ニ放
  任シテ置クト云フコトニ相成リマスナラバ、是ハ元來自分ノ
  所有デアルト云フノ觀念ハ失セヌノデアリマスカラシテ、永ク
  官ヲ怨ミ、又永ク政府ヲ敵トスルト云フノ事實ニ相成ルノ
  デアリマス、殊ニ今日西洋思想ノ流入ノ甚ダシキ時代ニ於
  キマシテハ、取モ自己ノ財產ヲ奪ハレタノデアルト云フノ觀
  念ガ强ク響クモノデアラウト思ヒマス、サウシマスト云フト、其
  山林ニ對シテハ、或ハ火ヲ放チ、或ハ盜伐ヲ致シマシテ、政府
  ガ如何ニ山林ノ經營ヲ爲サウト致シマシテモ、ソレニ對シマ
  シテ、甚シク妨害ヲスルト云フコトハ覺悟シナケレパナラヌノ
  デアル、且又斯樣ナ狀態デゴザイマスルナラバ、此人民ノ思
  想ト云フモノハ、非常ニ之ヲ險惡ニ導クト云フコトニ相成ル
  ノデアルト云フコトハ、是亦覺悟シナケレバナラヌノデアリマ
  ス、若シ反對ニ之ヲ民有ニ下ゲタナラバドウデアルカト申シマ
  スルナラパ、是ハ必ズ愛林ノ情ヲ以テ之ヲ擁護致シマスカラ
  シテ、非常ニ山林其モノニ對シテ利益ト相成リマスシ、政府
  ニ於テモ亦是カラシテ、十分ノ租稅ヲ取立テルコトガ出來
  ルノデアルカラシテ、卽チ一擧雨得ニ相成ルデアラウト信ズ
  ルノデアリマス、斯樣ナ譯デアリマスカラシテ、本案ノ如ク是
  ハ更ニ期間ヲ與ヘテ、下戾シヲスルト云フコトガ至當デアル
  ト考ヘルノデゴザイマス、爰ニ終リニ反對論者ガアリマスコト
  ヲ聞及ビマスカラシテ····本院ニ於テ有ルト云フコトハ勿論
  ナイノデアリマスガ····或ル方面ニ於テ反對論者ガアルト云
  フコトヲ聞及ンデ居ルノデアリマスカラ、私ハ其反對論ノ一
  二ニ對シマシテ、終リニ爰ニ辯明ヲ致シテ置キタイノデアリ
  マス、反對論ノ一ツト致シマシテハ、期限ヲ旣ニ永ク與ヘテ居
  ルノデアッテ、地租改正竝ニ社寺上地處分ノ際ヨリシテ、明
  治三十二年マデ與ヘテ居ルノデハナイカ、斯ノ如ク永ク與ヘ
  テ居ルノデアルカラ、又之ヲ與ヘル必要ハ無イノデハナイカト
  云フコトガ卽チ一ツアリマス、然ル所先刻モ申シマシタ通リ
  地租改正社寺上地處分ノ時カラシテ、明治三十二年マデ
  ト云フモノハ、イツ何時デモ下戾ノ請求ヲスルコトガ出來ルト
  云フコトニ相成ッテ居フタカラシテ、人民ノ方カラ申シマスレ
  バ、何時デモ下戾ガ出來ルモノト心得テ居ッタノデアリマ
  ス、然ル所明治三十二年ニ一年二箇月ト云フ僅少ナル期
  間ヲ設ケテ、法律ヲ作フタノデアリマス、ソレデアリマスカラシ
  テ、今マデハイツ何時デモ下戾ガ出來ルト云フ頭ガアッテ、三
  十二年ノ法律ヲ氣ガ著カズニ居リマシテ、何時デモ出來ル
  ト云フ考ヲ持ッテ居リマシタカラシテ、遂ニ願損ヒヲ致シマシ
  夕所ノ者ガ、澤山出テ參クタノデアリマス、今日各所ニ於キマ
  シテ出願漏ガ澤山ゴザイマスル爲メニ、當院ニモ澤山請願
  ガ出テ居リマスガ、矢張斯樣ナ結果カラ來テ居ルノデアル
  之ヲ見マスレバ如何ニ出願漏ガ出來タカト云フコトガ明カ
  ニ判ルト思ヒマス、又元來此法律ガ官有地ヲ民有地ニシテ
  吳レロト云フノデハゴザイマセヌデ、民有地ガ誤ッテ官有地ニ
  ナッテ居ルノヲ、民有ニ引戾シテ吳レト云フノデアリマスカラ、
  國家ニ於テ之ニ反對スル理由ハ、ドウシテモ見出スコトハ出
  來ナイノデアリマス、期限ガ切レタカラト云フ理由ヲ以テ、之
  ヲ取上ゲテ差支ナイト云フ理由ハ、ドウシテモ私ハ發見スル
  コトハ出來ナイノデアリマス、今若シ人ヨリ金ヲ借リマシテ、
  時效ガ來タカラ、金ヲ返スニ及バヌト云フコトヲ紳士ガ申ス
  コトガ出來マセウカドウカ、期限ガ切レタカラト云ッテ返サヌ
  デモ宜イ、時效ニ係ッタカラシテ金ヲ返サヌデモ宜シイトハ、決
  シテ紳士タル者ハ申スコトハ出來ナイト思ヒマス、斯ノ如ク
  紳士ニシテ時效ヲ抗辯トシテ金ヲ返ヘサヌト云フヤウナコト
  ガ出來ナイトシタナラバ、苟モ堂々タル所ノ國家ガ期限ガ切
  レタカラト云フノデ、汝ノ所有地ナルモ之ヲ返スノ必要ナシ
  ト云フコトヲ言ッタナラバ如何デアリマセウ、私ハ此理由ヲ以
  チマシテ、如何ニ長イ間期限ガアッタト云ウテモ、此人民ニ所
  有物ヲ返サヌデモ宜イト云フ理由ハ、斷ジテ無イト謂シテ差
  支ナカラウト存ズルノデアリマス、且又一昨年家祿賞典祿處
  分ニ關スル法律ナルモノガ、本院ヲ通過致シテ居ルコトハ御
  承知ノ通リデアリマス、彼ノ家祿賞典祿ニ依ッテ御覽下サ
  レバ是ハ能ク判カル、是ハ一旦既ニ期限ガ切レマシタノデア
  リマスガ、明治三十年ニ於キマシテ、一旦此期限ヲ與ヘルコ
  トニナリマシタ、一箇年間ノ期間ト云フモノヲ與ヘマシテ、更
  ニ申請ヲスルコトヲ許シタノデアリマス、而シテ明治四十
  二年ニ至リマシテハ、又之ニ對シテ行政訴訟ヲ許ス途ヲ開
  イタノデアリマス、然ル所明治三十年ノ法律第五十號ニ於
  キマシテ、出願漏ガ出來マシタ又明治四十二年ニ於キマシ
  テ、行政訴訟ヲ起ス漏レガ澤山出來マシタノデアリマス、此
  二ツヲ救濟スルト云フノデ、一昨年第四十一議會ニ於キマ
  シテ、此家祿賞典祿處分ニ關スル法律案ガ本院ヲ通過致
  シマシテ、政府ニ於テ又最後ノ制法ナリトシテ同意ヲ與ヘラ
  レテ、貴族院モ通過致シテ法律トナッタノデアリマス、家祿賞
  典祿處分法ニ於キマシテハ、旣ニ左樣ナ關係ニナッテ居ルノ
  デアリマスカラシテ、是ヨリモット理由ノ强イ所ノ、卽チ民有
  地ヲ民有ニ返スト云フ所ノ此法律案ガ、政府ノ同意ヲ得ラ
  レヌト云フコトハ無キ筈デアラウト私ハ信ズルノデアリマス、
  其次ニモウ一ツ反對論ノアリマスルノハ、森林經營ノ妨害ニ
  ナルト云フ說デアリマス、成程森林經營ニ對シマシテハ、多
  少ノ妨害ニナルト云フコトハ覺悟シナケレバナラヌ、併ナガラ
  此森林經營ト申シマスルモノハ、非常ニ澤山アル森林ニ對
  シテ經營ヲ致スモノデアル、今下戾ノ申請ヲスル所ノモノハ
  今日迄ノ分ニ漏レタモノニ對シテ許サントスルモノデアリマ
  ス、只今申シマシタ通リ、一一万六百餘件ノ申請ガアリマシタ、
  ソレニ漏レタ所ノモノヲ申請セシメヤウト云フノデアリマス
  カラ、其數タルヤ極メテ微々タルモノト謂ウテ差支ナイノデ
  アル、ソレカラ又行政訴訟ヲ起サナカッタモノニ對シテ、之ヲ
  起スコトヲ許スト云フノデアリマスガ、此行政訴訟ナルモノ
  モ、前ノ處分ニ漏レタモノハ僅ニ一割ニ充タナカッタノデアリ
  マス、而シテ今日ニ於キマシテ其殘ッタ所ノモノハ、多クハ處
  分濟ニ相成シテ居ルノデアリマスカラ、今日此法案ニ依テテ行
  政訴訟ヲ起スト云フヤウナ數ハ、亦知レタモノデアルト云フ
  コトハ想像スルニ餘リアルノデアル、然ラバ斯ノ如キ僅カナル
  モノニ對シマシテノ、森林經營ヲ妨ゲルカドウカト云フコトニ
  相成ルノデゴザイマスガ、森林經營ヲ妨ゲルト云フコトガ餘
  リアリヤウハ無イ、ト申シマスノハ、森林經營ハ何所迄モ之
  ヲ中止セズシテ、依然トシテヤッテ宜シイノデアル、其中ヨリ民
  有トシテ下戾ニナル物ガアリマシタナラバ、其分ニ對シマシテ
  ハ、更ニ森林ノ經營費ヲ徵收スレバ宜シイノデアル、森林ノ
  經營費ヲ徴收シテ居ルコトハ、今日迄デモヤッテ居ルノデア
  リマスカラ、之ヲヤリサヘスレバ少シモ差支ナイノデアリマス
  カラ、決シテ森林經營ニ害ニナルカラト云フ理由ヲ以テ、本
  案ノ如キモノヲ葬リ去ルト云フコトハ出來ベキモノデナイト
  云フコトヲ、御承知ヲ願ヒタイノデアル、又其他人ノ所有物
  ヲ橫領シテ置キナガラ、自分ノ計畫ニ妨害ガアルカラト云フ
  ノ理由ヲ以テ、之ヲ返スト云フコトハ相成ラマト云フコトヲ、
  (拍手起ル)堂々タル國家ト致シテ、言フコトガ出來ナイト云
  フ事柄ハ明瞭デゴザイマスカラ、森林經營ニ害アルノ理由
  ヲ以テ、此案ヲ葬ルコトハ斷ジテ出來ナイト云フコトヲ私ハ
  爰ニ申述ベテ置キタイノデアリマス、左樣ナ次第デゴザイマ
  スカラシテ、本案ニ對シマスル所ノ反對論ト云フモノハ、如何
  ニモ理由ノ無イ事柄デアルト云フコトヲ、十分ニ御承知ヲ願
  ヒタイノデアル、家祿賞典祿處分ニ於キマシテモ、其數
  ガ大分多カラウト云フヤウナ懸念ヲ致シタモノモアリ
  マス、併ナガラ一昨年此法律ガ出來マシタ結果ヲ見マ
  スルト云フト、其數ハ極メテ少數デアリマス、少シモ計
  畫ヲ害スルト云フコトハ無イト云フ事柄ハ、此實例ニ
  徴シテ極メテ明白デアル、或ハ又委託林云々ト云フコトヲ申
  シマシテ、反對ヲ致スヤウナ方モアルヤウデアリマスルガ、御
  承知ノ通リ、委託林ト一云フモノハ、單ニ村ニ對シマシテ枯木
  ヲ採ル、或ハ草ヲ苅ルト云フコトヲ許スダケデゴザイマスカラ、本
  案ノ如キ所有權ノ關係ヲ解決スルノ問題ニハナラナイト云フコ
  トハ、洵ニ明瞭デアラウト思ヒマス、之ヲ要スルニ本案ナルモノハ、
  更ニ一回出願又ハ出訴ノ期問ヲ定メテ全ク民有地ヲ、官
  ニ取上ゲラレタ所ノモノヲ、民有ニ引戾セト云フ案デゴザイマシ
  テ、民法ノ原則ニ照シマシテモ、是ハ極メテ相當ナルモノデ
  アッテ、毫モ非難スベキ理由ノ無イモノデアリマス、又森林經
  營ニ害ガアルト云フ理由ヲ以チマシテ、之ニ反對スルト云フ
  ヤウナコトハ、是ハ一ツノ泣言ニ過ギナイノデゴザイマス、故ニ
  其樣ナ理由ヲ以テハ之ニ反對スルコトノ出來ヌモノデアル
  ト云フコトハ極メテ明瞭デゴザイマスルシ、而シテ又家祿賞
  典祿ニ依テ、其實例ト云フモノハ極メテ明カデアリマシテ、
  旣ニ家祿賞典祿ニ於キマシテ政府ノ同意ノアリマシタ以上
  ハ、本案ニ對シマシテモ亦同樣ノ御同意ヲ下サイマシテ、ド
  ウゾ滿場一致ヲ以テ御通過ヲ下サイマシテ、國民ノ希望ノ
  此ニアルト云フコトヲ天下ニ明ニサレクコトヲ望ミマス(拍
  手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=62

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• 063・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　田中農商務次官
  〔政府委員田中隆三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=63

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• 064・田中隆三

  ○政府委員(田中隆三君)　此場合簡單ニ本案ニ對スル
  政府ノ意思ヲ表明致シテ置キマス、本案ハ先刻來提案者
  其他賛成ノ方ミカラシテ、御熱心ニ御說明ノアリマシタ如ク
  既ニ十六議會、十八議會、或ハ二十一議會、二十六回、二
  十七囘ト云フ、引續イテ矢張議會ニ御提案ニナリ、又三十
  一議會ニモ御提案ニナッテ、何レモ本院ハ通過シテ居リマス
  此度デ七回目ニナル譯デアリマス、政府ニ於テモ、本案ニ對
  シテ御同意申上ゲ兼ネルト云フコトヲ述べマスコトハ、實ニ
  遺憾ニ堪ヘマセヌ次第デアリマス、併ナガラ其度こノ議會ニ
  於ラ申上ケマシタ如ク、此森林下戾ノ處分ト云フモノハ、地
  租改正以來ノ處分ノ誤謬訂正ト云フ名ノ下ニ、十七八年
  間續イテ處分シ來シテ居リマスノデ、而シテ其十七八年ノ間
  ニ於テ、尙ホ數回或バ訓令、或ハ省令等ニ依クテ、手續其他
  ノ事ハ人民ニ能ク知ラサレデアルノデアリマス、何時迄モ其
  處分ガ著カナイ爲メニ、國有林ノ經營上ニ於テ甚ダ遺憾ヲ
  感ズルト云フノデ、明治三十二年ニ至リマシテ、一年間ノ期
  限ヲ以テ最早之ヲ打切トスルゾト云フコトノ法律ガ出タノ
  ガ所謂下戾法デアルノデアル、サウ云フ次第デ今日ニ至ッテ
  居ルノデアリマシテ、今再ビ又此下戾手續ヲ開始スルト云
  フコトハ、政府トシテハ諸般ノ關係ニ於テ、甚ダ御同情ニハ
  堪ヘマセヌケレドモ、御同意致シ兼ネルト云フ結論ニナルノ
  デアリマス、尙ホ先刻來皆サンカラシテ、山林ト地方民トノ
  間ノ關係ノ圓滿デナイコトニ就テ、色〓御話ガアリマシタノ
  デ、此點ハ多年當局ニ於テモ非常ニ苦慮シテ居ル點デゴザ
  イマス、殊ニ國有林ト其國有林ノ所在町村トノ間ノ關係ヲ
  圓滿ナラシムルコトニ就キマシテハ、大變ニ苦慮シテ居リマ
  ス、殊ニ近ク此關係ヲ益〓親密ニナラシムル意味ヲ以テ、一
  面ニ於テ其所在町村或ハ部落等ニ其森林ノ保護ヲ御依
  賴致シマシテ、サウシテ其代リ報酬トシテ、或ハ山林ノ副產
  物、或ハ自家用ノ薪炭材、或ハ官公事業等ノアリマシタ際
  ニ、其主タル木材ハ別ト致シマシテ、枝デアリマストカ、枝條
  ニ屬スル末木デアルトカ云フモノモ、無償デ村民ニ與ヘヤウ
  其森林經營中ニ手入ノ爲メニ伐採シタ樹木等モ、所謂其
  保護料トシテ村民ニ與ヘヤウ、サウシテ兩々相俟ッテ、村民
  トシテハ保護ノ義務ヲ負ヒ、又政府トシテハ其保護ニ對シ
  テ、今申上ゲマシタヤウナ諸般ノ利益ヲ與ヘヤウ、先程中野
  君カラ特ニ熱心ニ御話ノアリマシタ如ク、栗ヲ拾ッタ、松茸ヲ
  取ッタト云ッテ叱ラレルト云フコトハ、其制度ガ實施シマスレ
  バ今後ハ起リマセヌ、ソレ以上ノ副產物ヲ村民ニ與ヘヤウト
  云フ計畫ヲ立テマシテ、只今著々其取調中デアリマス、近キ
  將來ニ於テ、私共責任ヲ以テ其方法ヲ實施セント致シテ居
  リマスノデゴザイマス、無論御滿足デナイコトハ承知シテ居
  リマスケレドモ、之ニ依ッテ先程來御述ニナリマシタヤウナ政
  府ト村民トノ間ニ敵味方トナッテ、面白クナイ感情ヲ醸成ス
  ルト云フヤウナコトハ無イコトニ至ルモノト期待シテ居リマ
  ス、之ヲ以テ御答辯ト致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=64

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• 065・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　本案ノ討論ハ既ニ盡キマシタ-
  採決シマス、本案ノ第一一讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマ
  ス-第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト認メマス、仍テ第二
  讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=65

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• 066・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
  省略シテ、委員長報告ノ通リ可決確定アランコトヲ望ミマ
  ス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=66

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• 067・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト.呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=67

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• 068・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ本
  案ノ第二讀會ヲ開キマス
  國有土地森林原野下戾ニ關スル法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=68

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• 069・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　御異議ナイト認メマス、仍テ本案ハ
  動議ノ如ク、卽チ委員長報告ノ通リ可決確定致シマシタ
  (拍手起ル)日程第五、決議案ヲ議題ト致シマス、小山松壽
  君
  第五決議案(齋藤總督ノ朝鮮統治ニ關
  スル件)(三木武吉君提出)
  決議案
  決議
  齋藤朝鮮總督ハ朝鮮統治ニ關シテ誠意ナキモノト認ム
  右決議ス
  〔小山松壽君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=69

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• 070・小山松壽

  ○小山松壽君　諸君、日韓ノ兩國併合ノ意義ニ照シマシ
  テモ、又明治大帝ノ聖旨ヲ奉體致シマスル次第カラ考ヘマ
  シテモ、去ル二十五日中野正剛君提出ノ、朝鮮統治ニ關ス
  ル調査機關設置ニ就テノ建議案ハ、外ハ國際關係上ニ帝
  國ノ威信ヲ保持シ、内ハ千七百万人ノ新同胞ノ福利ノ增
  進ノ將來ヲ考ヘマスル點カラ見マシテモ、極メテ重大デアリ
  マシテ、之ガ爲メニ提出者ノ說明ハ、懇切ニ丁寧ニ質疑ハ十
  分ニ應答アリマシテ、討論ハ愼重ニ盡サレタノデアリマス、然
  ルニ當日ノ光景ハ諸君ノ御覽ノ通リ、此壇上ニ於テ諸君ノ
  述ベラレマシタル其趣旨ガ言々適切、爲政者ノ宜シク採シテ
  其資料ト致サナケレバナラヌニ拘ラズ、一議員ノ齋藤總督
  ノ手許ニ往シテ私語スルヤ、總督倉皇トシテ政府委員ノ席ヲ
  離レ、而シテ其質疑ノ必要上其出席ヲ要求スルノ急ナルヲ
  看テ、本院ヲ退院セラレタルコトハ議長宣告ノ通リデアリマ
  ス、其職責上斯ノ如キ重大ナル案ノ議會ニ提出セラレタル
  ニ際シマシテハ、現下ノ情勢ニ鑑ミテ、總督親ラ其所信ヲ披
  瀝シテ、以テ鮮民ノ動搖ニ對シテ、其心アル所ヲ盡サナケレ
  バナラヌ、若又總督ガ所用アッテ、已ムヲ得ザルコトヽ致シマ
  スルナラバ、水野總監在ルアリ其部下ヲシテ斯ル機會ニ於
  テ、其趣旨ヲ辯明セシメナケレバナラヌニモ拘ラズ、一言モ之
  ヲ公ニスルコトナシト云フニ至リマシテハ、議院ヲ侮辱シ、其職
  貴ニ忠ナラザル者ト私ハ認メルモノデアリマス、(拍手起ル)
  對鮮政策ニ關シマシテ、吾〓ハ甚シク之ヲ憂慮シ、遺憾トス
  ルモノ多イノデアリマス、斯ノ如キ不誠意ハ、斷ジテ默過スル
  コトガ出來ヌガ故ニ、本案ヲ提出スル譯デアリマス、抑朝鮮
  統治ノ大本ハ、明治大帝ノ煥發シ給ヘル詔勅ニ瞭カデアリ
  マシテ、復夕絮說ヲ要シマセヌ事デアリマス、十年ノ治績ニ見
  マシテモ、波治リテ一難來ル所以ノモノハ、之ヲ遠因ト致
  シマシテハ、兩國併合ノ當初、其處置ノ宜シキヲ得ザリシ事
  モ亦數フベキ一デゴザイマセウ、併ナガラ之ヲ近因ト致シマ
  シテハ、武人治ニ臨ムニ苛酷ヲ以テシ、表面ニ現ハレタル反
  抗ヲ鎭壓スルニ專ラニシテ、其中ニ在ル所ノ不平不滿ヲ除去
  シ、福利ヲ圖リ、以テ我皇ノ德澤ニ悅服セシムルノ策ヲ缺イ
  タト云フコトガ、主ナル原因ト認メナケレバナリマセヌ、(拍
  手起ル)合邦ノ政策ニ就キマシテハ、先進國ノ歷史ニ此間
  ノ消息ヲ詳ニ語リ、事實ハ雄辯ニ致シテ居ル譯デアリマス、
  一昨年ノ騒擾以來、與論ハ武官制度ノ撤廢ヲ根本義ト致
  シテ論議致シマシテ、遂ニ同年八月十九日改革ノ大詔發セ
  ラルヽニ先ダチマシテ、長谷川總督ハ其責ヲ引イテ職ヲ退キ
  マシタ、茲ニ更始一新、必ズヤ人心ヲ新タニスペク、世人ハ多
  クノ期待ヲ持ッテ居ッタノデアリマス、然ルニ事實ハ全ク裏切
  ヲシテ居リマスル、其第一ハ時代錯誤ノ人選ト、總督ノ出處
  ヲ愆リタル事デアリマスル、既ニ制度ヲ變革シ、時代ニ順應
  スベク文化政策ヲ行ハントナラバ、其意義ヲ徹底ナラシムル
  爲メニ、名ニ於テモ正シク、同時ニ實ニ於テモ正シクナケラン
  ケレバナラヌノデアリマス、然ルニ齋藤實氏ヲ起用セシト云フ
  ガ如キコトハ、名實共ニ失ヒタルモノト批評致シテ居ル譯デ
  アリマス、(拍手起ル)之ガ實ニ第一誤謬ノ端ヲ發シタ事デ
  アリマス、而モ政府ハ此任命ニ對シ、釋明ヲ發スルノ滑稽ヲ
  演ジテ居リマスル、其當時新聞紙ニ依シテ公ニセラレタル釋
  明ニ曰ク、朝鮮總督ハ軍人ガ任命セラレタル場合モ、軍職ト
  シテニハ非ズシテ、文官トシテ就任スルコトヽナリ、齋藤大將
  ニ於テモ大將トシテニハ非ズシテ政治家トシテナリ云々ト言
  ハレテ居ル譯デアリマス、果シテ政治家トシテ其材ヲ用井ン
  トナラバ、何故ニ軍職ヨリ退隱シタル公敵、社會ノ陰人ヲ現
  役ニ復スルノ必要ガアッタデアリマセウカ、(拍手起ル)若又
  舊官制上已ムヲ得ザル所ノ任命デアルトシタナラバ、何ガ故
  ニ八月十二日ノ任命、而モ旬日ヲ出ズシテ、其同月ノ十九
  日ノ新官制ノ發布ト共ニ任命セラレシモノデアリマシタカ
  此事ハ軈テ治鮮上ニ一大障礙ヲ來スノ原因トナッテ居リマ
  ス、其反響ハ如何デアリマシタカ、當時御用新聞ノ京城日報
  ノ其態度、及新聞電報ノ報道シタル所ヲ綜合シテ見マスレ
  バ、齋藤總督任命ノ報アリ、御用紙京城日報ハ頻リニ之ヲ
  打消シ、其虛ナル旨ヲ以テ、動搖ヲ抑ヘテ居リマシタ、併ナガ
  ラ愈、事實ナルニ及ビテハ、唯ダ沈默致スバカリデアリマス、
  鮮人ハ、官制ヲ改革シテ尙ホ武官ヲ任命セル政府ノ不眞
  面目ヲ非難シ、先ヅ靑年團ノ奮起スルアリ、冠履〓倒ノ極
  ト言ヒ、自家撞著ヲ論難シ、羊頭狗肉ノ甚シキモノト異口
  同音ニ「武官政治ニ厭キタル吾等ハ、又齋藤大將ノ任命ヲ
  見ル吾等ハ、其爲人ヲ知ラザルモ、唯ダ「シーメンス」事件ノ
  海軍大臣タリシコトヲ記憶スルノミ」斯ノ如ク熱罵シ、斯ノ
  如ク冷笑致シテ居リマシタ、果セル哉、九月二日新總督ハ
  無前ノ警戒威壓ヲ以テ著任ヲ致シマスヤ、南大門ノ爆彈事
  變アリ、其當時東京驛「ホテル」ニ滯在致シテ居リマシタ宋
  秉畯氏ハ、此報ニ就テ何ト批評致シテ居リマス、其批評ニ曰
  ク「有識階級ハ無謀ナル擧ニ與ミシナイ、穏健ナル一派鮮
  人ト雖モ、新總督ニ對シテハ既ニ信賴ヲ持タナイ、何故ナラ
  バ今回ノ詔勅ノ御趣旨、官制ノ趣意ヲ事實ガ裏切ッテ居ル
  カラデアル、」總督赴任前ノ遣方ガ、政策ヲ誤ッテ居ルト批評
  致シテ居リマスル更ニ第二ハ治鮮策動搖シ、【秕政隨處ニ
  起ッテ居ル有樣デアリマス、齋藤總督ノ談ニ依レバ朝鮮ニ緣
  故ハ薄イ、會テ大正二年ノ春頃ニ、唯夕一回朝鮮ニ足ヲ停
  メタコトガアルノミデアシテ、何等ノ理解ヲ持タナイ、水野總
  監亦然リデアリマス、任地審カナラズシテ而シテ、事功ニ急
  ナルノ餘リ、憲兵制度ノ撤廢、自由解放ノ政策等其運用ヲ
  誤リ、結果ハ悉ク蹉躓致シテ居リマス、(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」)
  〓育ノ方針ト云ヒ、產業政策ト云ヒ、調査ニ名ヲ藉リ基礎
  ハ未タ定ラズ、任ニ在ルコト既ニ一年有半以上ニ達シ現レ
  來ルモノハ醜怪ナル事實ノミデアル、過日ノ當議場ニ於テ、朝
  鮮通ナル私ノ友人政友會ノ牧山耕藏君ノ所論モ承リマシ
  タガ、遺憾ナガラ內容甚ダ乏シクシテ、其要領ヲ申シマスレバ
  唯ダ斯樣デアル、現内閣ハ植民統治策ニ努メテ居ル、官制
  改革モ英斷ヲシタ、寺內總督マデノ過去十年ノ治鮮策ハ財
  政經濟ノ消極的持久政策ノ施設ノ爲メ、經營開發遅滯ヲ
  來タセシガ、現內閣成立後ハ大ニ積極方針ヲ執リ、大正九
  年度ノ豫算一千万圓ヲ中央國庫ヨリ補助シ、十年度ニハ
  更ニ一千五百万圓ヲ增加シ、開發施設ヲ爲シ云〓トアルノ
  ミデアリマス、之ガ爲メニ斯ノ如キ治績ガアル、斯ノ如キ事
  項ガアルト云フコトニ對シテノ、具體的ノ御話ハ一モアリ
  マセヌ、唯ダ調査ト云フコトノミデアリマス、會社令ヲ撤廢
  シテ、資金ノ連絡融通ヲ計ッタト云フヤウナコトモ御演說
  中ニアリマシタガ、此資金ノ連絡融通ヲ計ルト云フコトガ、
  反面ニ於テ其宜シキヲ得ズシデ、却テ惡政醜聞ガ此間ニ
  流レテ參ッタノデアリマス、(拍手)我黨ノ山道襄一君ノ演
  說ニハ斯樣ニ指摘シテアリマス「一體文化政策ヲ施サザ
  ル以前、寺內總督、長谷川總督ノ時代ニハ、統治其モ
  ノニ對シテハ、相當ノ非難モアリ攻擊モアリマシタガ、
  未ダ會テ醜イ聞キ苦シイ事件ハ無カッタノデアル、然
  ルニ文化政治施カレテ以來、官有地拂下事件、營林署拂
  下事件、或ハ輕便鐵道ノ事件、取引所事件、官民雙方ニ
  涉ル幾多ノ非難ハ數限リナイ程アッテ、或ハ役人ニシテ役人
  ノ體面ヲ汚ス行爲ヲシテ居ル幾多ノ事實ガアル」斯ウ明言
  致シテ指摘シテ居ルノデアリマス、憲兵制度ノ徹廢ノ如キ、
  其運用宜シキヲ得ザルガ爲メニ、服ハ變リマシテモ中味ハ同
  ジデアリマス、而シテ一道千人ノ憲兵ヲ以テ、其治安ヲ維持
  シテ居リマシタモノガ、十三道一万三千人ノ憲兵、今日ハ
  二万人以上ノ巡查ヲ以テシテモ、尙ホ維持スルコトガ出來
  ナイト云フ狀態デハアリマセヌカ、(拍手)而シテ國庫ヨリ
  中央國庫ヨリ補助致シテ居リマスル所ノ國費ノ大部分ハ、
  是等ノモノニ費サレツヽアル譯デアリマス、而シテ更ニ永井
  柳太郞君質疑ノ朝鮮自治ニ關スル要求、中央地方政治ノ
  諮問機關ノ設置、朝鮮內地雙互關稅ノ關係等、數項ニ亙
  リマシタ質問ハ、實ニ此場合總督トシテハ一言ナケレバナラ
  ヌモノデアリマス、就中關稅問題ノ如キニ至リマシテハ、政
  友會ノ鈴木錠藏君ハ、此間ノ消息ヲ審ニサレテ居ルコトヽ
  思ヒマス、關稅定率改正ニ關スル法律案、此委員會ニ於テ
  大塚常三郞君ノ答辯、其政府委員トシテノ答辯ニハ、大正
  九年限リ之ヲ廢止スル、又「朝鮮ノ新施設」ト題スル册子ニ
  モ此事ガ明瞭ニ記載サレテアリマス、然ルニモ拘ラズ、大正
  十年度ノ豫算ニ此事實アルニ拘ラズ、歲計ニ計上サレテ居
  ル譯デアリマス、事實ハ全ク裏切ッア居ル譯デアル、所謂二枚
  舌トモ稱スベキ所ノ玆ニ事實ヲ見ル譯デアリマス、而モ是等
  ノ重大ナル質問ニ對シ何等ノ答辯ナク、其時ノ狀態ハ如何
  デアリマスルカ、徒ラニ與黨ノ諸君ガ騒擾シテ、而シテ此質
  問ヲ沮止シヤウト致シタノデハアリマセヌカ、大ナル失態ヲ
  重ネテ居ル譯デアリマス、(「質問ノ時機ガ惡カッタ」ト呼フ者
  アリ)武官總督ノ時代ニ於キマシテハ、善意ノ惡政ト評シテ
  居リマシタガ、新總督ノ政治ハ、惡意ノ惡政ナリト彼等ハ評
  シテ居リマスル、(拍手起ル)合邦ノ大事業ヨリ今日ニ至ル
  迄、深ク思ヲ此ニ致シテ居リマスル內田良平君ガ、吾こニ致
  シマシタル此「朝鮮統治問題ニ就テ」ト題シマスル一小册子
  ハ、深ク此間ノ事情ヲ詳ニシ、治鮮策上最モ聽クニ足ルモノ
  ト考ヘマスル、私ノ所論ヲ進メマスル代リトシテ、玆ニ內田良
  平君ガ心血ヲ以テ原總理大臣、及田中、野田兩相ニ送リ
  マシタル書ヲ朗讀致シテ見マスル、其文ニ曰ク「朝鮮人ノ排
  日感情ヲ一掃シ同化ノ實ヲ擧ゲント欲セバ人心惡化ノ原
  因ヲ討ネ彼等ヲシテ必ラズ先ヅ其心ヲ安ンセシメ而シテ
  後彼等ヲシテ爲政者ニ信賴スルノ念ヲ起サシメザル可ラズ
  凡ン政ハ信無クシテ行ハレズ今ヤ鮮人等我ガ政府ノ一々
  合邦當初ノ期待ニ反スル結果ヲ見大ニ憤恨シテ理論ヲ超
  越セル感情ノ激動トナリ日本ヲ信賴スル念毫髮モ存セザル
  ノミナラズ却テ嫌忌反抗スルノ狀殆ド其極ニ達シツヽアリ
  故ニ刻下ノ急務ハ爲政者ガ彼等ノ感情ヲ融和シ日本ヲ嫌
  忌スルノ念ヲ驅逐スルヲ措キテ他ニ求ムル可ラズ然レドモ
  是ニ處スルノ途ハ尋常手段ヲ以テシテハ到底克ク彼等ニ滿
  足ヲ與ヘ其反感ヲ一掃セシムル能ハザルナリ蓋シ感情融和
  ノ道ハ鮮人登用、待遇無差別一般人民ヲシテ些ノ壓迫ヲ
  感ズル事無カラシムルニ存ス同時ニ行ハザル可カラザルモノ
  ハ鮮人生活ノ保障是ナリ、生活ノ保障ニシテ確立センカ彼
  等ノ信賴心ハ湧然トシテ起リ同化ノ端始メテ此ニ發生ス
  ルニ至ルベシ由來鮮人生活ノ脅威ハ田制ノ頽敗ニ在リ之
  レ合邦以前鮮民ノ忍ブ能ハズト爲セシ所ニシテ合邦後多
  少ノ改革行ハレント雖モ諸種ノ事情ハ彼等ノ生活上何等
  裨益スル所無カリシ爲、彼等ハ耕地ノ減失ニ由リテ益、生活
  不安ノ狀態ニ陷リ、年々四方ニ離故シツヽアリ故ニ是等ニ
  對シテ驛田屯土ノ如キモノヲ直接從來ノ小作人ニ拂下ゲ
  其生活ヲ安全ナラシムルヲ可トス是レ漢帝雍齒ヲ封ジタル
  ヨリモ人心ヲ安ンゼシムルニ效果ヲ奏スベキ良法ナリ昨年
  鮮人騒擾以來總督府ハ漸次彼等ノ自由ヲ解放シ銳意其
  治ヲ圖リシト雖一事ヲ弛フスレバ忽チ一難ヲ生ジ進退之レ
  窮スルノ狀態ニ陷リタリ其然ル所以ノモノハ總督府先ヅ自
  己ノ威信ヲ立テズシテ徒ラニ自由ヲ鮮人ニ與ヘ其歡心ヲ
  求ムルニ急ナリシガ爲メナリ而シテ其結果ハ憲兵制度ヲ廢
  スレバ軍隊ノ力ヲ借ルニ非ラザレバ其治安ヲ維持スル能ハ
  ズ言論ノ自由ヲ許セバ忽チ當局攻撃排日皷吹ノ新聞紙ト
  化シ遂ニ母國ニ迄モ危險ヲ感ゼシムルガ如キ事件ヲ發生シ
  已ムヲ得ズシア再ビ取締ヲ嚴ニスレバ鮮人ヲシテ益〓壓迫ヲ
  感ゼシムルガ如キ狀態ヲ呈スルニ至レリ此ノ如ク本ヲ治メ
  ズシテ徒ラニ其末ヲ追フノ政策ニ齷齪タランニハ偶、以テ鮮
  人ヲシテ總督政治ヲ輕悔セシムルニ過ギザルノミ總督府ニ
  シテ眞ニ克ク自己ノ威信ヲ立テ統治ノ任ヲ全フセント欲セ
  バ先ヅ其賞罰ヲ明ニシテ苟クモ功勞アルモノハ斷ジテ之ヲ
  沒スルガ如キ事アルベカラズ功勞アルモノニ對シ棄テヽ顧ミ
  ザランカ爰ゾ其信賴ヲ求ムル事ヲ得ンヤ今事實ニ就テ之ヲ
  見ルニ明治十六年以來鮮人ノ親日主義ヲ抱キ其主義ノ
  爲メニ殉ゼシモノ決シテ少ナカラズ而シテ其遺族ハ何レモ何
  等顧ミラレザルナリ偶"尙生存セル志士ニ至リテモ冷遇酷
  待往時日本ト深甚ノ關係アリシモノトハ思ハレザルノ現狀
  ニ在リ如此ニシテ彼等ヲシテ其恨ヲ抱カシメザラント欲スル
  モ能ハザルニ非ズヤ彼等ガ日本ニ信賴セザルノミナラズ擧ゲ
  テ嫌忌スルニ至レルモノ固トニ故ナキニアラザルナリ」ト書イ
  テ居リマス、(拍手起ル)要スルニ第一齋藤總督ノ出處ヲ誤
  レル時代錯誤ノ爲メニ、文化政策ハ根本ニ動搖シ、適從ス
  ル所ヲ知ラザルト云フコト、第二政令之ガ爲メニ行ハレズ威
  信失墜シテ早ク既ニ秕政ヲ見ル、此二點ガ只今申上ゲタ
  大要デアリマス、齋藤總督ニシテ良心ヲ有シ、心臟ノ鼓動ヲ
  感ゼラルヽナラバ、須ク自省ヲ表現セラレテ可ナリト信ジマ
  スルモノデアリマス、今更ニ施政ノ末ヲ論ジ、之ヲ批評スルガ
  如キハ、山容ヲ整ヘズシテ其河川ノ流域ヲ批判スルト同樣
  デアルト考ヘマス、(拍手起ル)私ハ爰ニ一言ヲ附シマス、若
  シ黨利黨〓ノ資源ヲ圖ルニ汲々トシテ、中央竝ニ地方政治
  ノ荒廢ヲ念トセザル政黨アリトシテ、其威力ヲ以テ機會ヲ
  利用スルナラバ、今日ノ如キ齋藤總督ノ立場ニ於テ、隨處
  ニ彼ノ公盜ト稱スル輩簇出スルニ至ルベク、(拍手起ル)斯ク
  テハ國政ノ爲メニ痛嘆スベク、又人ヲ誤ルノ根本デアルト考
  ヘマスルガ故ニ、此覺醒ヲ希望スルモノデアリマス、諸君ノ
  御賛成ヲ請ヒマス(拍手起ル)

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• 071・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　木下謙次郞君
  〔木下謙次郞君登壇、拍手起ル〕

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• 072・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　三枝君、成ベク御自身ノ席ニ著カ
  レルコトヲ望ミマス

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• 073・木下謙次郎

  ○木下謙次郞君　本案決議ノ注意ハ三點デアリマス、第
  一點ガ二月二十五日朝鮮統治ノ問題ニ就テ、本議場ニ於
  テ討議ノ際ニ、齋藤總督ガ當議場ニ出席シナカッタ、或ハ途
  中ニ退席シタト云フコトガ非難ノ一デアリマス、第二ハ其議
  場ニ於テ總督ガ何等意見ノ開陳ヲシナカッタト云フコトデア
  リマス、第三ハ一般ノ朝鮮統治ニ關スル不信任ノ批判デア
  リマス、第一ノ出席ノ有無ノ問題デアリマスルガ、此問題ハ
  單純ナル形式論デアリマシテ(「ノウ〓〓」)官僚臭味ノ時代
  ニ於テハ、斯樣ナ事ガ問題ニナッタコトガアルノデアリマスガ、
  苟モ新時代ヲ代表スル大政黨ノ言議トシテハ、如何ナモノ
  デアリマセウカ、殊ニ出席ノ有無ヲ以テ其人ノ誠意ヲ疑フト
  スルナラバ、諸君ノ中ニモ隨分御缺席ノ御方ガ多イヤウデア
  リマスルカラ、(「ヒヤ〓〓」)誠意ノ問題ハ如何デアリマスカ、
  殊ニ諸君ノ總理タル加藤子爵ガ、貴族院ノ議席ニ御出席
  ニナルコトハ甚ダ少ナイト云フコトヲ聞イテ居ルノデアリマス
  ガ、(「問題ガ違フ」ト呼フ者アリ)貴族院ノ議場ニ出席ノ無
  イコトガ、直チニ加藤子爵ノ誠意ヲ疑フト云フコトヲ斷定ス
  ルコトハ、是ハドウモ早計デアラウト考ヘマスカラ、(「ヒヤ〓〓」)
  私ノ斯ノ如キ形式論ヲ以テ當議場ノ問題トスルコトハ、甚
  ダ好シカラヌヤウニ考ヘルノデアリマス、(「ヒヤ〓〓」、拍手)又
  第二ノ意見ヲ開陳シナカッタト云フコトガ問題ニナッテ居ル
  ノデアリマスルガ、二十五日ノ議場ニ於テ討議サレテ居リマ
  シタ問題ハ、或事ヲ議會ガ行ハントスルコトニ就テ討議ヲ致
  シタノデアリマシテ、政府或ハ總督府ニ直接ノ關係ナキ事
  デ、衆議院ニ議席ヲ
  〔奧議長議長席ヲ退キ粕谷副議長代リ著席〕
  有セザル所ノ政府ノ一ノ官吏ガ、議院內ニ於ケル決議ニ對
  シテ可否ノ容喙ヲ爲スコトハ、寧口議院ノ權威ノ上ヨリ、餘
  リ好マシカラヌ事デアルト私ハ考ヘルノデアリマス、(拍手)齋
  藤總督ガ自重シテ發言ヲ差控ヘラレマシタコトハ、何等非
  難スベキ理由ニハ相成ラヌト私ハ信ズルノデアリマス、(拍手)
  若シ諸君ガ總督ノ意見ヲ徵スル必要ガアルナラバ、總督ノ
  出席シテ居リマスル際ニ、諸君ハ宜シク通告ヲシテ置イタラ
  宜イデハナイカ、其通告ガ議院法四十八條ノ規定ニ依ラザ
  ルコトヲ理由トシテ、總督ハ發言ヲ拒ムモノデハナイノデアリ
  マス、寧ロ發言ノ機會ヲ得タルコトヲ欣フデアラウト考ヘルノ
  デアリマス、然ルニ諸君ハ出席中ニハ何等ノ通告ヲモ爲サズ、
  退席後ニ至ッテ永井君ノ如キハ俄ニ此演壇ニ馳登ッテ、(「俄
  カデハナク」ト呼フ者アリ)足ガ御惡イカラ俄デハナカッタ、(笑
  聲起ル)是ハ取消シマスルガ、此演壇ニ御登リニナリマシテ、
  質疑ノ内容ヲ急ニ一變シテ、最初提議者ニ對スル質疑デア
  ルベキモノヲ、俄ニ其內容ヲ一變シテ、總督ニ對スル彈劾カ
  質問カ分ラヌヤウナ御演說ガアッタノデアリマスルガ、諸君ハ
  總督ニ對シテ發言ノ機會ヲ與フルコトヲ爲サズシテ、而シテ
  發言シナイノガ惡ルイト言フノハ是ハドウモ諸君ノ方ガ御
  無理デアラウト私ハ考ヘルノデアリマス(拍手起ル、「逃ゲタ
  ノハドウカ」ト呼フ者アリ)諸君、世ノ中テ對手ノ不在ヲ見
  計ッテ、隨分大法螺ヲ吹ク人ガアリマス、(笑聲起ル)世俗ニ
  之ヲ名ッ付ケテ陰辨慶ト申シマスガ、(拍手起ル)私ハ永井君
  ハ必ズシモ陰辨慶デアラウトハ考ヘマセヌガ、併ナガラ本日
  提案サレタ所ノ此彈劾案ノ理由ガ、餘リニ薄弱ナル點ヨリ
  考ヘテ見マスレバ、(「ソンナ事ヲ言フ資格ガアルカ」ト呼フ者
  アリ)如何ニモ陰辨慶ノテレ隠シデハナイカト思ハレル點ガ
  アルコトハ、甚ダ遺憾ニ思フ次第デアリマス、(拍手)第三ニ
  一般統治ノ問題デアリマスルガ、此問題ハ小山君大キイ聲
  ヲ御出シニナリマシテ、何カ六ケシイ書物カ何カヲ朗讀ナサ
  イマシテ、大ニ威勢ヲ御作リニナリマシタガ、要スルニ是ハ今
  少シク文化政策的ニ朝鮮ヲ治メロト云フ議論デアルノデア
  リマス、今少シク「ハイカラ」ニ朝鮮ヲ治メテハドウカ、斯ウ云
  フ議論ノ趣意ハ承ルノデアリマスガ、此議論ハ私甚ダ朝鮮ノ
  事ニ無學デ御對手ガ出來ヌカラ存ジマセヌガ、後トカラ朝鮮
  ノ事ニ精通ヲ致サレテ居リマスル同僚山崎君ガ、此演壇デ十
  分蘊蓄ヲ披瀝シテ御對手ニナル筈ニナッテ居リマス、隨テ私
  ハ重複ヲ避ケル爲メニ、統治問題ノ論議ヲ差シ控ヘマシテ、
  茲ニ加藤子爵ノ-卽チ諸君ノ總理デアル所ノ加藤子爵ノ
  朝鮮統治ニ關スル意見ヲ引用シテ、諸君ノ議論ト對照スル
  コトヲ御許ヲ願ヒタイト思フノデアリマス(拍手)加藤子爵
  ノ朝鮮統治ニ關スル意見ハ、昨年十月七日東北大會ニ於
  ケル演說ノ一節ニ發表致サレテ居リマスル、又今年一月二
  十一日ノ憲故會大會ニ於ケル演說ニ於テモ發表サレテ居
  リマス、私ハ之ヲ朗讀致シマシテ、諸君ノ記憶ヲ喚起シヤウ
  ト考ヘマス、(拍手、「必要ナシ」ト呼フ者アリ)能ク御聽ヲ願
  ヒマスガ、(「能ク聽ケルモノカ」「靜ニ聽キ給へ」ト呼フ者アリ)
  「政府當局ハ將來朝鮮ニ自治制度ヲ行フヲ目的トシ鮮人ヲ
  シテ漸次自治ニ慣熟セシムルガ爲メニ曩ニ地方制度ニ改
  革ヲ加ヘタリ是余ノ意ヲ得タルモノニシテ-余ノ意ヲ得
  タルモノニシテ自今鮮人ノ慣熟ニ伴ウテ漸次完全ナル自治
  制度ノ施行セラルヽニ至ランコトヲ望ムモノナリ」現政府ノ
  方針ニ全然賛成ヲ致シテ居リマス、一月二十一日ノ大會ニ
  於ケル演說ハドウデアルカ「寺内總督時代ニ於ケル極端ナル
  武斷主義壓迫主義ノ結果民心抂屈シテ欝勃タル不平ヲ
  懷キ面從腹背深ク政府ヲ怨ムニ至レル折抦現内閣ノ時代
  ニ至リ一氣ニ所謂文化政策ナルモノヲ聲明實行シタルガ爲
  メ深ク鮮民ノ輕侮ヲ招キ從來欝結シタル不平一時ニ勃發
  シタルモノナリ」御聽ニナリマシタナラバ御分リデアリマセウ
  ガ、昨年十月七日ニ於ケル演說ノ發表ハ、全然現政府ノ方
  策ニ賛成デアリマス、一月二十一日ニ於ケル意見ノ發表ハ、
  現内閣ニ大體ハ賛成デアリマスルガ、若シ反對ガアルトスル
  ナラバ、現内閣ハ文化政策的ニ早ク實行シ過ギタト云フノ
  デアリマス、(「ノウー〓」)是ガ現ニ書イテアリマス、此意味ヨリ
  言ヘバ、諸君ノ現政府ニ反對スル距離ヨリモ-現政府ニ
  反對スル距離ヨリモ、諸君ノ議論ハ諸君ノ總理ノ意見ニ反
  對スル距離ノ方ガ遠イノデアリマスカラシテ、(拍手起ル)諸
  君ガ現政府ニ反對スル前ニ當ッテ、先ヅ諸君ノ總理ニ、反對
  シナケレバナラヌト云フ結論ニ相成ルノデアリマス、(拍手起
  ル「ヒヤ〓〓」)シテ見レハ諸君ノ議論ハ此所デ大キナ聲ヲ御
  出シニナッテ御力味ニナルグレドモ、諸君ノ總理トハ子盾撞
  著ノ議論デアル-矛盾撞著ト謂ハナケレバナラヌ、諸君或
  ハ之ニ就テ多少ノ御立腹ガアルカモ知ラヌガ、併ナガラ矛盾
  撞著ハ此問題ノミデハナイノデアリマス、諸君ノ此議會ニ於
  ケル行動殆ド狂態ヲ極メテ居ル、(拍手起ル、「ヒヤ〓〓」)或
  ハ決議ニ名ヲ藉リ、或ハ質問ノ名ヲ藉リ··
  〔「狂態トハ何ダ」「無禮ダ」「取消セ」ト呼フ者アリ其
  他發言一時ニ起リ議場騒然〕

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• 074・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　静ニ-靜ニ

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• 075・木下謙次郎

  ○木下謙次郞君(續)　諸君、諸君、諸君、申上ゲマス、申
  上ゲマス、ドウモ「狂態」ト云フ言葉ガ御氣ニ障リマシタト見
  エマシテ、議場ノ混亂ヲ招キマシタコトハ私ハ恐縮ノ至デア
  リマスカラシテ私ハ-若シ諸君ガ御氣ニ障ルナラバ、此「狂
  態」ト云フ言葉ヲ取消サウト思ヒマス、ドウン御安心ヲ願ヒ
  マス
  〔拍手スル者アリ發言スル者多シ〕

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• 076・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御靜ニ願ヒマス-只今木下君
  ハ「狂態」ト云フ言葉ヲ取消サレマシタ

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• 077・木下謙次郎

  ○木下謙次郎君(續)　申上ゲマス-申上ゲマス··

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• 078・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　只今木下君ハ····(議場騒然)
  靜ニ御聽ナサイ-静粛ニ願ヒマス-三枝君ニ退場ヲ命
  ジマス

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• 079・木下謙次郎

  ○木下謙次郞君(續)　私ノ言葉ガ甚ダ極端ニ失シマシタ
  爲メニ、議場ノ混雜ヲ招キマシタ段ハ恐縮ノ至デアリマス、
  「狂態」ト云フ言葉ガ御氣ニ障リマシタナラバ取消サウト思
  ヒマス-取消シマス、併シ「狂態」ト云フ言葉ハ取消シマシ
  タガ、併ナガラ加藤總理ノ意見ト諸君ノ院內ニ於ケル行動
  ノ矛盾撞著デアルト云フコトハ、取消ス必要ガ無イノデアリ
  マス、(拍手起ル)私ハ世ノ中ニハ甚ダ惡イ言葉カ知リマセヌ
  ガ、不思議ナ政黨ガアルモノデアルト考ヘテ居ルノデアリマス
  政黨ノ總理-政黨總理ナルモノハ、選擧ノ時カ何カニ必
  要ガアルノデアッテ、平常ノ主義政策ノ上ニ於テハ、黨員ト風
  牛馬相關セヌト云フノハ、不思議ナ政黨デアルト思フノデア
  リマス、(拍手起ル)ソレニ諸君ガ御異議ガアリマスナラバ、少
  、シ脫線ノ氣味デアリマスケレドモ、證據ヲ爰ニ上ゲテ諸君ノ
  反省ヲ促サウト思ヒマス、(「默レ」ト呼フ者アリ)少シ御聽ヲ
  願ヒマス、此所ニ證據ヲ持ッテ居リマス、(「問題外」ト呼フ者
  アリ)問題外デハアリマセヌ、結論ヲ御聽ナサレバ分リマス、
  先ヅ私ノ演說ノ結論ヲ得ル爲メニ、加藤總理ノ演說ヲ批評
  シテ、之ヲ諸君ノ行動ニ對照シテ、以テ諸君ノ反省ヲ促スコ
  トヲ私ノ演說ノ結論ニシヤウト思ヒマス、(「何ダソレハ」「脫
  線ダ」ト呼フ者アリ)多少···
  〔「反省ヲ促ス必要ハアリマセヌ」ト呼フ者アリ、其他
  發言スル者多シ〕

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• 080・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　靜肅ニ···

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• 081・木下謙次郎

  ○木下謙次郞君(續)　多少御耳障リカハ知レマセヌガ、暫
  ク御〓聽ヲ願ヒマス、(「脫線ダ脫線ダ」ト呼フ者アリ)御聽
  ナサイ、(「聽ケナイ」「ヤルペシ〓〓」「脫線トハ何ダ」「脫線ヲ標
  榜シテ演說スル奴ガアルカ」ト呼フ者アリ)御聽ナサイ

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• 082・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　靜肅ニ-靜肅
  〔「下レ下レ」「默レ」「ヤルベシ〓〓」ト呼ヒ拍手スル者
  アリ議場騒然〕

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• 083・木下謙次郎

  ○木下謙次郞君(續)　先ヅ(拍手、「下レ下レ」ト呼フ者ア
  リ)加藤憲政會總理ノ總括的政治意見ハ、加藤總理ノ此
  演說ニ依リ批評致シタイト思ヒマス、此主意ト諸君ノ行動
  ヲ對照シタイノデアリマス(議場騒然)諸君ハ結論ヲ御聽
  ニナレバ分ルノデアリマス···
  〔「議長々々」「脫線々々」「ヤリ給ヘヤリ給へ」「降リロ
  降リロ」「馬鹿止メヌカ」ト呼フ者アリ議場騒然〕

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• 084・木下謙次郎

  ○木下謙次郞君(續)　加藤總理ノ演說ハ甚ダ多岐ニ涉ッ
  テ居リマスルガ、演說ノ順序ニ依リ申上ゲマス、(議場騒然)
  「第一日英同盟ノ所論ヲ見ルニ日英同盟ハ適當ノ修正ヲ
  加ヘテ之ヲ繼續スベキヲ主張スルモノナリ」云々、此議論ハ
  現政府ガ非公式ナガラ、或機會ニ於テ發表シタル意見ト少
  シモ變リガナイノデアリマスカラ、日英同盟ノ問題ニ就テハ、
  加藤子爵ハ現政府ニ賛成ヲ致シテ居ルト云フ證據デアリ
  マス、ソレカラ支那問題、(議場騒然)對支問題デアリマスガ
  支那問題ニ對シテ加藤子爵ハ斯ウ云フコトヲ言ッテ居リマ
  ス「現内閣ハ幸ニシテ今日ニ至ルマデ不偏不黨內政不干
  涉ノ主義ヲ採リツヽアリ是固ヨリ不可ナシ」云々、卽チ支那
  問題ニ就テモ加藤子爵ハ現政府ニ贊成ヲ致シテ居リマス、
  (議場騒然)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=84

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• 085・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　靜〓ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=85

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• 086・木下謙次郎

  ○木下謙次郞君(續)　ソレカラ内政問題ニモ色〓議論ガ
  アリマスガ、政友會ノ政策ノ四大政綱-云フモノニ色こノ批
  評ヲ加ヘテ居リマスガ、是モ結局賛成ト云フコトニナリテ居
  リマス、(「議長々々」ト呼フ者其他發言者多シ)尙又一月ノ
  憲政會ノ大會ニ於ケル演說ヲ見ルニ、國際聯盟軍備協定
  問題、加州排日問題、總テ現政府ノ政策ニ贊成致シテ居ル
  ノデアリマス、ゾレカラ西伯利亞問題ニ就テモ、加藤子爵ハ
  撤兵論者ト云フコトニナッテ居リマスガ、事實ハ左様デハアリ
  マセヌ、現ニ此演說ヲ見レバ斯樣ナコトニナッテ居リマス「第
  一囘ノチエック救援ノ目的ヲ達シタル時最初ノ宣言ニ從ヒ
  速ニ撤兵スルカ否ラズンバ大軍ヲ出シテ撤底的ニ少クトモ
  東部西伯利ヨリ過激派ヲ掃蕩シ有力ナル統一的反過激
  派ノ政府ヲ樹立スルカ二者其一ヲ擇ムベカリシナリ」トア
  リマス、卽チ西伯利問題ニ就テモ加藤子爵ハ撤兵論者ニ非
  ラズ、時ノ宜シキニ從ッテ兵ヲ用井ルト云フ趣旨デアリマスカ
  ラ、此方策ニ於テモ、現內閣ト全然反對トハ云ハレナイノデ
  アリマス(「退場々々」ト呼フ者アリ)若シ加藤子爵ニシテ、主
  義ノ上カラ現內閣ニ反對ガアリトスルナラバ、僅ニ普通選擧
  ノ問題アルノミデアリマスガ、而モ此普通選擧ノ問題モ漸次
  其方針ヲ改メラレテ、現在ニテハ獨立ノ生計ト云フ條件ヲ
  固執シ、現行法ト同一ノ主意、卽チ現內閣ノ主義ト同一ノ
  主義ニ同化シ來ッタコトハ明白デアリマスカラ、主義ノ上ヨ
  リ見レバ、加藤子爵ハ現政府ニ對シテ、反對スベキ政治上ノ
  根據ハ持ッテ居ラヌト謂フテ宜イノデアリマス、尙ホ此演說ノ
  他ノ部ニ多少ノ議論ハアリマスガ、財政問題竝ニ經濟問題
  ノ如キハ互ニ水掛論ニ過ギナイモノデ、斯クスレバ宜カッタラ
  ウト云フダケデアッテ、其證據ハ無イノデアリマスカラ、水掛
  論ト云フ外ハアリマセヌ、而モ水掛論以外ハ、愚痴ニ非ズン
  バ泣言ノミデアリマス、(拍手、「馬鹿」ト呼フ者アリ)此演說
  ヨリ愚痴ト泣言ヲ除キ、且ツ水掛論ヲ取シテ除ケバ、演說ノ
  總テノ題目及趣意ハ、現政府ニ賛成ノ意見ヲ表シテ居ルノ
  デアリマス、現政府ニ對シテ、少シモ反對ノ主意ノ見ルベキ
  モノ無シデアリマス、(拍手起ル)斯ノ如クニシテ憲政會ハ反
  對黨トシテ存在スル理由ガ何所ニアルカ、私ハ反對黨トシテ
  存在スル理由ヲ疑ウノデアリマス、此ニ至リ私ハ諸君ニ尙ホ
  注意シタイ事ガアリマス、(「注意トハ何ダ」ト呼フ者アリ)憲
  政會ハ本來桂公爵ノ創立ニ係ルモノデアリマスガ、其創立
  當時ニ於テ、此政黨ノ執ルベキ主義ニ就テ、當時ノ領袖ト
  稱スル人ト桂公爵トノ間ニ、種々交涉ヤ諒解ガ行ハレマシテ
  結局此憲政會ノ前身タル所ノ同志會ハ、進步主義ヲ執ル
  ト云フ方針ガ決定サレタノデアリマス、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ
  憲政會ナルモノハ軍閥ヲ保護スル所ノ保守主義ノ政黨デハ
  ナイノデアリマス、然ラバ急進主義ノ政黨デアルカト云フニ、
  諸君ハ急進主義ノ二三ノ黨員トモ分裂ヲ致シテマデ其立
  場ヲ固守サレテ居ルノデアリマスカラ、必ズシモ極端ナル急
  進主義ヲ抱クモノデナイコトモ明カデアリマス、急進主義ニ
  非ズ或ハ保守主義ニ非ズトスルナラバ、諸君ノ執ルベキ途
  ハ決定シテ居ルノデアリマス、是ハ何デアルカト云フニ、私ハ
  此機會ニ於テ原內閣總理大臣施政ノ方針ニ關スル根本
  主義ヲ、諸君ニ紹介スルコトヲ必要トスルモノデアリマス、原
  總理大臣ノ(「資格ナシ下レ」ト呼フ者アリ)演說ノ主意ハ、
  著實穩健ナル自覺ヲ促シ、積極進取ノ國民性ヲ發揮シ、以
  テ帝國ノ進運ニ貢献スルト云フノデアリマス、卽チ加藤總理
  ノ言ハント欲シテ言フ能ハザル所ヲ、原總栽先ヅ之ヲ喝破
  シテ居ルノデアリマス、又加藤子爵ノ行ハント欲シテ行フ能
  ハザル所ヲ、原總理先ヅ之ヲ實行セラレテ居ルノデアリマス、
  故ニ若シ政黨ノ離合集散ガ、政治上ノ主義ノミニ依ッテ行
  ハレルモノデアルナラバ、加藤子爵ハ宜シク憲政會ヲ解黨シ
  テ政友會ニ入黨シ、原總理ノ指導ノ下ニ立タナケレバナラ
  ヌト思フノデアリマス、併ナガラ若シモ政黨ノ離合集散ガ或
  ハ感情ニ依リ、或ハ行掛リニ依リ、或ハ政權爭奪ノ目的ニ
  依ッテ行レルモノデアルナラバ、議論ノ爲メニ議論ヲ作リ反對
  ノ爲メニ反對ヲセナケレバナラヌコトニナルノデアリマス、故ニ
  總理ノ主張ト黨員ノ行動トハ矛盾撞著、統一モ無ケ
  レバ條理モナイト云ヲ結果ニ陷リマス、或ハ彈効ト云ヒ或ハ
  決議ト云ヒ或ハ質問ニ名ヲ籍リ、或ハ建議ニ名ヲ籍リ、斯
  クシテ議會開會中ノ年中行事ト做シ、斯クシテ徒ラニ時局
  ヲ攪亂シ、國務ノ進行ヲ妨害セントスル狂態ヲ演ズルノデア
  リマス、私ハ此機會ニ於テ以上ノ所論ヲ述ベテ、諸君ノ
  反省ヲ促ス者デアリマス、最後ニ一言申上ゲマス、(此時發
  言スル者多ク議場騒然)最後ニ一言申上ゲマスガ、諸君ハ
  朝鮮總督ニ對シテ、色とノ理窟ヲ以テ非難攻擊ヲサレルノ
  ミナラズ、曩ノ「シーメンス」事件ノ如キモノマデモ持出シテ、
  人身攻撃ニ渉ル御議論ガアッタノデアリマスガ、(此時發言ス
  ル者多ク議場騒然)私ハ諸君ニ注意スル事ガアル、私ハ「シー
  メンス」事件ガ宜イト言フノデハナイ、「シーメンス」事件マ
  デ持出シテ齋藤總督ノ攻撃ヲサレルト云フコトハ-)此時
  發言スル者多ク議場騒然)諸君ガ是以上私ノ議論ヲ聽ク
  コトヲ好ミマセヌナラバ、私ノ言ハント欲スル所ハ略こ以上ニ
  テ盡キテ居リマスカラ、此以上述ベル必要ガアリマセヌ、以上
  ノ議論ヲ以テ、諸君ノ反省ヲ促スニ十分デアルト思ヒマス、
  速ニ本案ノ否決ヲ望ミマス

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• 087・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　次ハ春日俊文君ヨリ、議事進行
  ニ就テ發言ヲ求メラレテアリマスカラ、之ヲ許可致シマス、春
  日俊文君
  〔春日俊文君登壇、拍手〕

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• 088・春日俊文

  ○春日俊文君　只今木下謙次郎君ハ-(此時發言ス
  ル者多シ)騒ゲ、根氣ノアルダケ騒イデ見タラドウダ、幾ラデモ
  騒ゲ、モウ宜イカ···
  〔粕谷副議長議長席ヲ退キ奧議長復席〕
  〔此時發言スル者多ク議場騒然〕

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• 089・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　諸君靜ニ··

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• 090・春日俊文

  ○春日俊文君(續)　木下謙次郞君ハ其演說ノ中ニ於テ
  是カラ脫線ヲスルト云フコトノ前置ヲシテ、新、聞ヲ大分搖ッ
  テ居ッタ(「ソンナコトハ言ハヌヨ」ト呼フ者アリ、其他發言ス
  ル者多シ)何カ言フコトガアルノカ-脫線スルコトヲ前提
  ニシテ居ル演說ヲ、議長ハ承認サレルノデアリマスカ、之ヲ御
  尊致シマス、若シンレガ出來ルナラバ、僕モ一日位斯ウヤッテ
  見セル、何デモナイ話ダ、斯ウヤッテ居ルコトハ脫-線ヲ前
  提トシテ演說スルコトヲ承認爲サルカ、是ダケノ事ヲ議長ニ
  御尋致ス

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• 091・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　答ヘマス、議席ヘ御歸リナサイ-
  春日君ニ答マスガ、私少シク用事ガアリマシテ離席ヲシテ、
  副議長ノ議長中デアリマシタ、自ラ聽キマセナンダガ、今御
  尋ノ點ニ就キマシテハ、直グ速記ヲ調ベタ後御答致シマス、
  三木武吉君
  〔三木武吉君登壇、拍手〕

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• 092・三木武吉

  ○三木武吉君　諺ニ破鍋ニ級蓋ト云フコトガアル、牛ハ牛
  連レ馬ハ馬連レト云フコトガアリマス、齋藤總督ノ不信任
  ノ決議案ノ辯護ヲ爲ス其人ニ配スルニ、政界ノ思想堅實デ
  アル、大政治家木下謙次郞君ヲ以テシタト云フコトハ、洵ニ
  政友會ノ策戰其宜シキ得、齋藤總督ノ爲メニ、謹ンデ祝意
  ヲ申上ゲナケレバナラヌト思ヒマス、私ハ此決議案ニ贊成ノ
  演說ヲ致スノデゴザイマスガ、先ヅ第一ニ定メテ置カナケレ
  バナラヌ事ハ、去ル二十五日ノ議場ニ於テ現レタル眞實ノ事
  寳デアリマス、卽チ去ル二十五日中野正剛君ガ御提出ニナッ
  タル、朝鮮統治ノ根本方針ヲ定ムル必要上、調査機關ヲ設
  置セヨト云フ決議案ノ討議ノ眞最中ニ、其案ニ依シテ、自己
  ノ不信任ヲモ表白セラルベキ當面ノ責任者タル齋藤總督
  ガ、其席ヨリ去ラレタト云フ事實デアリマス、此點ニ就テハ何
  ノ爭モ無イト思ヒマス、第二ハ此齋藤總督ガ議院ヲ去ラレ
  ル其以前ニ於テ、我黨ノ永井柳太郞君ガ此決議案ニ賛成
  ヲ表明スルノ必要上、政府當局ニ對シテ質問ガ致シタイト
  云フ通告ヲ致シテ居ッタ事實デアリマス、此點ニ就テ木下謙
  次郞君ハ、決議案ヲ提出者ニ對シテ質問スルト云フ申出デ
  アッタト云フコトデゴザイマスルガ、是ハ事實ヲ御知リニナラ
  ナイカラ、無理カラヌ事デゴザイマスルガ、事實ハ明カニ政府
  當局ニ質問ヲスルト云フコトデアッタノデアリマス、此二ツノ
  事實ノ誤ナキコトヲ前提ト致シマシテ、以下私ハ多少意見
  ノ在ル所ヲ申述ベテ見タイ、(拍手起ル)只今木下君ガ第一
  ノ問題ニ就テノ御演說御辯護ト致シマシテ、新シイ時代ニ
  處スル政治家ハ、單ニ當局者ガ居ルベキ場所ニ居ラナイカ
  ラト云ウテ攻撃ヲスル如キ事ハ、言葉ハドウ御使ニナッタカ知
  リマセヌガ、時代後レデアルト云フヤウナ意味ノ御話ガアッタ
  木下君ハ御承知デアルカドウカ知リマセヌガ、古來明君賢
  相ト云ハレルヤウナ人ハ、士ニ接シ言ヲ聽クコトニハ、終日
  其怠リナキカヲ自ラ戒メテ居ルノデアリマスゾ、(拍手起ル)
  一哺二三タビ吐キ、一沐ニ三タビ其髮ヲ握ルト云フノハ、爲
  政家ノ常ニ心得ナケレバナラヌ態度デアリマスゾ、(拍手起
  ル)今日ノ我ガ政府ノ朝鮮統治ノ現狀ハ如何デゴザイマス
  ルカ、木下君ハ失禮テゴザイマスルガ、緣日商人ガ紙ヲ商フ
  カノヤウナ態度デ、紙ヲ振上ゲテ朝鮮統治ノ效能ヲ速記者
  ニ御陳述ニナッタ、漏レ伺フ所ニ依ルト、如何ニモ效能澤山
  ノ事ヲ述ベラレテ居リマシタガ、議論ヨリハ統治ハ事實デゴ
  ザイマス、如何ニ木下君ノ雄辯宏辭ヲ以テスルモ、現在ノ朝
  鮮ヲ天國ノ如クニ言ヒ現ハスコトハ出來マセヌゾ、現在ノ朝
  鮮ヲ日木內地ノ如クニ言ヒ現ハスコトハ出來マセヌ、世界ノ
  人ハ今ノ朝鮮ヲドウ言ウテ居リマスルカ、朝鮮ハ東洋ノ愛
  蘭デアルト云フ言葉ヲ御聞ニナリマセヌカ、(「嘘ダ〓〓」ト呼
  フ者アリ)朝鮮ノ獨立黨ハ、極東ニ於ケル「シンフエーン」黨
  ダト云フコトノ言葉ガ流布セラレテ居ルコトヲ、御聞ニナリマ
  セヌカ、此唯ダ二ツノ言葉-此唯ダ二ツノ言葉ガ、如何ニ
  雄辯ニ現在ノ朝鮮統治ノ現狀ヲ語ッテ居リマスルカ、(「ヒヤ
  ヒヤ」拍手起ル)如何ニ明治大帝ガ東洋永遠ノ平和ヲ保持
  スル爲メニ日鮮兩國民ノ同化ヲ圖リ、彼レ千七百万民衆ノ
  幸福增進ニ努メラレヤウト云フ大御心ガアッタニ拘ラズ、事
  ハ其御志ト違ッテ、非常ニ混亂ノ狀態ニ在ルト云フコトヲ、
  最モ雄辯ニ語ル所ノ言葉デハアリマセヌカ、(拍手起ル)私ハ
  朝鮮統治ノ內容ニ就テ、多クノ言ヲ費スノ必要ヲ認メマセ
  ヌ、斯ノ如ク混亂ニ陷リ、世界ノ耳目ハ、我ガ朝鮮統治ノ今
  後ガ如何ニナルカト云フコトニ注ガレテ居ル此際ニ於テ、此
  議場ニ中野正剛君ノ決議案トナッテ現ハレタノデアリマス、
  山道襄一君ノ賛成演說トナッテ現ハレテ居ルノデアリマス、
  永井柳太郞君ノ質問演說ニ形ガ變ッタノデアリマス、此決議
  案、此演說、此質問、苟モ日本ノ國民ナレバ、誰一人ト雖モ
  耳ヲ傾ケテ聽カナイ振リノ出來ル人ハ無イノデアル、(「ノウ
  ノウ」拍手起ル)而モ職ニ朝鮮總督ノ任ニ在ル者ガ、當面ノ
  責任者デアルベキ者ガ、此八釜シイ問題ニ何人モ傾聽ヲ惜
  マザル此重要問題ヲ前ニ見ナガラ、何ノ所用ノアッタノデゴ
  ザイマスルカ、忽然院外ニ去ルト云フノハ何タル不誠意ノ有
  樣デアリマスカ、(拍手起ル)私ハ唯ダ是ダケノ事實ヲ以テシ
  テ、齋藤總督ノ朝鮮統治ニ對スル不誠意ヲ斷定スルコトガ
  出來ルト思フ、(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」)所謂物ノ一斑ヲ見テ、
  其全豹ヲ窺フコトガ出來ル、齋藤總督ノ此決議案-過日
  ノ決議案ニ對スル其態度、之ニ依ヶテ彼レ齋藤君ノ平常ノ
  志ヲ窺フコトガ出來ル、元來此齋藤ト云フ人ハ、如何ナル
  誠意ヲ不斷所持セラレテ居ル人デアルカ、此事ニ就テ詳細
  ナル御話ヲ致スコトハ、聊カ齋藤君ノ爲メニ御氣ノ毒ナヤウ
  ナ心持ガ致シマスカラ、私ハ詳細ノ事ハ申シマセヌ(「馬鹿言
  フナ」ト呼フ者アリ)併シ馬鹿言フチ、生意氣ナ事ヲ言フナト
  云フコトヲ言ハレル以上ハ、馬鹿デナイ、生意氣デナイコトダ
  ケハ申上ゲナケレバナリマセヌゾ(「ヒヤ〓〓」、拍手起ル)一身
  上ノ事デハアリマセヌ、亦〓總督ガ過去ニ於ケル政治上ノ
  責任、政治上ノ罪惡ニ就テノ事デアリマシテ、決シテ一身上
  ノ事デハアリマセヌゾ、諸君ガ御記憶ノ通リ大正十三年-
  (笑聲起ル)大正三年ノ當時ニ於ケル此衆議院ト、アノ貴族
  院トドウ云フ有樣デアリマシタカ、(「大浦事件ハドウダ」ト呼
  フ者アリ)我ガ光輝アル帝國海軍、ソレニ終生拭フコトノ出
  來ナイ一大汚點ヲ染メタト云フコトハ、諸君モ御記憶デアリ
  マセウ、我ガ憲法史上ニ永却末代消スコトノ出來ナイ大キ
  ナ刻印ヲ捺シタコトハ、諸君ガ御承知デゴザイマセウ、(拍手起
  ル)其事件タルヤ所謂「シーメンス」事件デアリマス、所謂海
  軍收賄問題デアリマス、此海軍收賄問題ハ、其初メ「リヒテ
  ル」ト云フ者ガ獨逸ノ栽判所デ懲役二年ノ言渡ヲ受ケタ、
  ルコトガ、會、外國電報ニ依シテ日本ノ新聞紙ニ傳ヘラレタ
  其新聞紙ヲ見タル我黨ノ島田三郞君ガ、事重大ナリトシテ
  議院ニ於テ之ニ關スル質問ヲセラレタ、其質問ガ動機トナッ
  テ遂ニ前ニ申シマシタル大事件ヲ生ンダノデアリマス、其事
  件ノ發生シタル當時ニ於ケル、此處ニ居ラレル齋藤總督ノ
  態度ハドウデアッタカ、如何ナル態度ヲ執ラレ。テ居リマシタカ
  飽マデモ海軍ニハ收賄ヲスルヤウナ者ハ無イ、サウ云フ事實
  ハ無イ、サウ云フ事實ハ斷ジテ無イト云フコトデ之ヲ曲庇
  シ、甚シキニ至ッテハ、其職責上當然調査ヲスベキ事マデモ調
  査ヲ爲サミルノ態度ニ出デタ、所ガ此衆議院ニ於キマシテ
  ハ、今矢張御同情ニナリ御援助ナサッテ居ル政友會ノ諸君
  ガ、多數デ理ヲ非トシ非ヲ理トシテ、(拍手起ル、「ノウ〓〓」ト
  呼フ者アリ)山本內閣ノ-山本內閣ノ不信任決議モ、
  擊ノ下ニ葬リ去ラレルコトニナリマシタケレドモ、正義ノ味方
  トシテ强キ貴族院ニ於テハ散々ノ憂目ヲ見テ、脆クモ山本
  內閣ハ倒レル、ソコニ新タニ大隈內閣ハ出來ル、政友會ハ無
  慘ナル境週ニ立至ルト云フ、所謂天譴ニ依シテ山本內閣ト
  政友會ガ亡ビ去ッタト云フ歷史ガアル(拍手起ル)
  〔「亡ビ去ッタトハ何ダ」「大浦ハドウシタト」呼フ者ア
  〓

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• 093・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ··

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• 094・三木武吉

  ○三木武吉君(續)　其「シーメンス」事件ノ-其「シーハ
  ンス」事件ノ大渦中ニ、「シーメンス」事件ノ大渦卷ノ中ニ二
  ツノ大ナル統領ガアッタノデアリマス、(拍手起ル)其一人ハ
  權兵衞山本伯爵デアッテ、其一人ハ實齋藤君デアッタノデア
  リマス、(拍手起ル)當時一般國民ハ穿ッタ噂ヲ致シマシタ、
  齋藤君モ遠カラズ-遠カラズ海軍收賄犯人ノ連累者ト
  シテ、牢獄ニ投ゼラレルデアラウト噂ヲシテ居ッタノデアリマス、
  (拍手起ル、「ソレガドウシタ」ト呼フ者アリ)其噂ハ幸ニシテ
  我海軍ノ爲メニ、又齋藤君ノ爲メニ、事實トナッテ現ハレナ
  カッタケレドモ··
  〔「當然ダ」「馬鹿ナ事ヲ言ヘ」ト呼フ者アリ〕

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• 095・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ〓

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• 096・三木武吉

  ○三木武吉君(續)　現ハレナカッタケレドモ、其事情ノ中ニ
  潜ンダル或一ツノ事安頁ノ爲メニ、齋藤君ハ現役ヲ去ラナケ
  レバナラヌヤウナ憂目ヲ見タト云フコトハ、諸君御承知デゴ
  ザイマセウ、(拍手起ル)諸君ハ-政友會ノ御方ガ、飽迄モ
  齋藤君ヲ今日ニ至ッテ尙ホ庇護シナケレバナラヌト云フ、其
  間ニ於ケル切ッテモ切レヌ因緣ノアルコトハ、私ハ承知ヲ致
  シテ同情ヲ致シテ居ルノデアリマス、(拍手起ル)併ナガラ諸君
  ノ同情、諸君ノ因緣モイヽ加減ノ時ニ切ラナイト、再ビ「シー
  メンス」事件ノ時ト、同ジ運命ニナルコトヲ警告致サナケレ
  バナラヌ、(拍手起ル、「何ガ警告ダ」「不逞鮮人ノ聲色ヲ使フ
  ナ」ト呼フ者アリ)斯ノ如キ政治上ノ犯罪人、政治上ノ前科
  者、此政治上ノ犯罪人、政治上ノ前科者ガ、德ヲ以テ導カ
  ナケレバナラヌ我ガ新附ノ民、朝鮮人ニ向ッテ我陛下ノ統
  治ノ大權ノ御委任ヲ受ケテ向ッテ見タ所ガ、只ダ大權ノ發
  動ヲ瀆スノミデアッテ、到底其目的ヲ達スルコトガ出來ナイ
  位ハ誰デモ分リマス(拍手起ル)況ヤ-況ヤ此人ガ假令過
  去ノ罪惡ハアルニシテモ、今日己レノ罪科ニ省ミテ、(「罪科
  トハ何ダ」ト呼フ者アリ)愼ンデ其職ヲ執ル位ノ事ヲスルナラ
  バ、尙ホ恕スベキデアルニ拘ラズ、圖々シクモ烏滸ガマシクモ、
  飽迄モ不誠意、飽迄モ不熱心ナル態度ヲ以テ、千七百万ノ
  朝鮮人ニ對スルノミカ、吾〓日本本土ノ國民ニマデモ對スル
  ト云フコトハ、返スここモ此人ノ人格ヲ疑ハナケレバナラヌト
  思フ、(「君ノ人格ヲ疑フ」「退場ヲ命ジロ」ト呼フ者アリ)私ハ
  斯ノ如キ過去ノ政治上ノ罪惡ヲ有セラルヽ方ガ、假令總理
  大臣ノ御奏請ガアルト致シマシテモ、其職ヲ御受ニナルト
  云フコトハ旣ニ誤ッテ居ル、(拍手起ル)又御受ニナル心ガ
  アッテモ、之ヲ奏請スル總理大臣ガ誤ッテ居ルト思フ、(拍手
  起ル)一體官吏ハ如何ナル者ヲ之ニ任ズベキモノデアル、上
  ハ大臣宰相ヨリ下ハ判任官ニ至ル迄、飽迄モ官吏ハ廉恥
  ノ心ニ富ンダ人デナケレバナリマセヌ、恥ヲ知ル人デナケレバ
  ナリマセヌ、露聊カデモ貪慾ナ人デアッテハナリマセヌ、(拍手
  起ル)是ハ道德上カラ申スマデモナイ、法律ノ上ニ於テモ、ソ
  レガ決定セラレテ居ル官吏ノ服務紀律ト云フ法律ガゴザイ
  マス、其法律ノ第三條ニハ(「ソレハ法律ヂヤナイゾ」ト呼フ
  者アリ)「官吏ハ職務ノ內外ヲ問ハス廉恥ヲ重シ貪汚ノ行
  爲アルヘカラス」トアル、苟モ官吏デアル以上ハ、所謂刀筆ノ
  小吏ト雖モ、廉恥ヲ重ンジ、貪汚ノ所爲アルベカラザルモノ
  デアルニ拘ラズ、朝鮮統治ノ大任ヲ帶ビ陛下ノ御委任ニ
  依シテ其職務ヲ行フ所ノ此官吏ガ、廉恥ノ心ノ無キ者ヲ以
  テ任ゼラレ、又其職ニ就クニ至ッテハ、洵ニ私ハ官紀上ノ大
  問題デアルト信ズルノデアリマス、(拍手起ル)既ニ齋藤君其
  人ガ斯ノ如キ經歷ノ人デアリ、斯ノ如キ精神ノ人デアリ、斯
  ノ如キ人格ノ人デアリマス、(「アノ人ダ」ト呼フ者アリ)斯ノ如
  キ人格ノ人、斯ノ如キ精神ノ人、斯ノ如キ經歷ノ人ガ、此朝
  鮮統治ノ大任ニ就ク、其無誠意ニシテ、(「貴樣ハ何ダ」ト呼
  フ者アリ)亂暴ナル政治ヲスルコトハ申スマデモアリマセヌ、
  衆議院ノ諸君-政友會ノ諸君ト雖モ、此齋藤君ノ過去
  ノ事、齋藤君ノ人格、齋藤君ノ當時ノ事ニ就テハ、十二分
  ニ御承知デアリマセヌカ、飽迄モ諸君ガ此明カナル事實ヲ
  否認シテ、飽迄モ諸君ノ非違ヲ通サントスルコトハ、却ッテ諸
  君ノ爲メニ利益デナイノミナラズ、(拍手起ル)諸君ト特別ノ
  因緣ヲ取結バレテ居ル齋藤君ノ爲メニ·
  〔此時發言スル者多ク、議場騒然〕

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• 097・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　武田君、靜ニ

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• 098・三木武吉

  ○三木武吉君(續)　宜シクナイ事デアルト私ハ信ジマスル
  カラ、諸君ガ切ニ此決議案ニ對シテ賛成ノ意ヲ表セラレンコ
  トヲ希望致シマス(拍手起ル)
  〔「反對」「三木君周章狼狽ノ態憫ムベシ」ト呼フ者
  アリ〕

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• 099・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　三木君ニ御照會シマスルガ、只今
  ノ御演說中ニ、政治上ノ犯罪人、政治上ノ前科者、引續イ
  テ此罪科ト云フ御言葉ガアリマシタガ、刑法上ノ犯罪人ト
  云フ言葉ト區別サレテ居ルコトハ明瞭デゴザイマスケレドモ、
  少シク其人ニ對シテ敬意ヲ缺クヤウニ思ヒマス、(「ノウ〓〓」
  「ヒヤ〓〓」)皆サンニ御判斷ヲ請フノデハアリマセヌ、三木君
  ニ照會シテ居ルノデス、三木君、此言葉ヲ取消ス御考ハアリ
  マセヌカ

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• 100・三木武吉

  ○三木武吉君　議長:
  〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
  〔三木武吉君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=100

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• 101・三木武吉

  ○三木武吉君　私方齋藤總督ヲ評シテ政治道德上ノ犯
  罪人(「道德トハ言ハナイ」ト呼フ者アリ)政治道德上ノ前科
  者デアル、斯樣ニ評シタコトハ事實デアリマス、若シ道德ト云
  フ言葉ガ無カッタトスルナラバ、是ハ更メテ私ガ補足ヲ致シマ
  ス、而シテ齋藤總督ノ「シーメンス」事件ニ於ケル其前後ノ態
  度ハ、少ナクトモ吾ニノ見ル政治道德ニ對シテハ、大ナル犯
  罪者デアルト云フコトノ信ズルノデアリマス、若シ之ヲシモ道
  德上ノ大犯罪人デアルト云フコトガ言ヘナカッタナラバ、何ヲ
  カ天下ニ政治道德上ノ大罪惡ト云フモノガアリマセウカ、而
  シテ齋藤君ハ現役海軍大將ヨリ豫備大將ニナラレタト云フ
  コトハ、前後ノ事情ヨリ致シマシテ、此罪科ヲ償フ一ツノ手
  段デアッタカモ知レマセヌガ、ソレノミデハ未ダ其總テヲ償ヒ得
  タリトハ私ハ信ジマセヌカラ、之ヲ稱シテ尙ホ前科者ナリト
  云フ言葉ヲ使ッタノデゴザイマスガ、御惡ケレバ御惡イヤウナ
  御考ヲヤラレタラ宜イ、斯ウ云フコトガ政治道德上ノ犯罪
  デモ前科デモ無イト云フ風ニ、政治道德ノ心ヲ痳痺シタル
  人ハ、御判斷ニ委スヨリ外致方ガアリマセヌ(拍手起ル)

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• 102・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　議長ハ其犯罪人デアルナシノ事實
  ヲ追窮セズシテ、議場ニ於テ政府委員竝ニ議員相互ノ間ニ
  於テ、彼人ハ犯罪者デアルト云フコトハ不禮ノ言ナリト認メ
  マス、故ニ三木君ニ取消ヲ命ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=102

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• 103・三木武吉

  ○三木武吉君　私ハ此際一言致サナケレバナラヌ事ガアリ
  マス
  〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=103

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• 104・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　マダ許シマセヌ、諸君靜ニナサイ-
  一言ナサルノハ何事ニ就テデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=104

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• 105・三木武吉

  ○三木武吉君　只今議長ガ私ニ對シテ、取消ノ命令ヲ御
  宣告ニナリ、其理由ト致シマシテ、事實ヲ明ニシナイデ斯ノ
  如キ言ヲ爲スノハ、無禮デアルト云フコトデゴザイマス-

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=105

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• 106・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　イヤ私ハサウ申シマセヌ、又事實ノ
  有無ヲ問ハズ、議場ニ於テ誰某ヲ指シテ犯罪人ト言フコトガ
  無禮ダト云フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=106

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• 107・三木武吉

  ○三木武吉君　政治道德上ノ犯罪ト言ウタコトガ無禮ト
  云フノデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=107

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• 108・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　政治上ノ犯罪人-靜ニ諸君御
  聽ナサイ、政治上ノ犯罪人、政治上ノ罪科者、此罪科ト云
  フ言葉ガ、無禮ナ言葉デアルト議長ハ認メマス、ソレデ尙ホ
  三木君ハ政治上ト言ウタノハ、政治道德上ト云フ意味ガア
  ルト云フ釋明ヲ與ヘラレマシタ、(「補足シマシタ」ト呼フ者ア
  リ)釋明デモ補足デモ同ジ事デスケレドモ、ソレガ前ノ言葉ノ
  取消ヲ意味シテ居ラレルナラバ議長ハ追窮シマセヌ、取消ノ意
  味トハ認メナイカラ、是ハ無禮ノ言ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=108

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• 109・三木武吉

  ○三木武吉君　議長、議長、言論ノ自由ヲ束縛スルモ甚
  シイ

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• 110・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　三木君、何デス

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• 111・三木武吉

  ○三木武吉君　議長ノ私ニ對シテ御宣言ニナリマシタ事
  柄ニ就テ、先刻私ガ其壇上ニ於テ申シマシ夕通リ、政治上
  ノ犯罪人、或ハ政治上ノ前科者ト云フ言葉ガアッタトスルナ
  ラバ、ソレハ政治道德上ノ犯罪人、政治道德上ノ罪科者ト
  云フ意味デアルト云フコトニ補足シタ譯デゴザイマスケレト
  モ、ソレガ取消テナイト云フナラバ、私ガ政治上ノ犯罪ハ、前
  科者ト言ッタ其言葉ハ、政治道德上ノ犯罪人、前科者ト云
  フ意味デアッタト云フコトニ言明致シマシテ、議長ノ取消ノ
  命令ニ服從ヲ致シマス

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• 112・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　議長ノ三木君ニ對スル警告ハ、大
  半御受ニナッタヤウニ認メマスカラ、此問題ハ是デ打切リマ
  ス-齋藤朝鮮總督
  〔政府委員男爵齋藤實君登壇、拍手起ル〕

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• 113・齋藤實

  ○政府委員(男爵齋藤實君)　先月二十五日ノ····
  〔シーメンスドウシタ」「靜ニ聽ケ」ト呼フ者アリ〕

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• 114・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　金澤君、、靜ニナサイ

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• 115・齋藤實

  ○政府委員(男爵齋藤實君)(續)　二十五日ノ議場ニ
  於キマシテ、議事中ニ本員ガ公務ノ爲メニ退席ヲ致シマシ
  タ、他ノ政府委員ニ後ヲ託シテ此處ヲ去リマシタノデアリマ
  ス、然ルニ斯ノ如キ問題ヲ惹起シマシテ、甚ダ遺憾ニ存ズル
  ノデアリマス、併ナガラ何モ誠意ヲ缺キマストカ····(「誠意ヲ
  缺イテ居ル」ト呼フ者アリ)サウ云フコトデハ無イノデアリマ
  ス、卽チ他ニ政府委員モ居リ、承ルコトモ出來ルノデアル····
  (「シーメンスシーメンス」「默ッテ聽ケ」「確ニ居ラナカッ
  タ」ト呼フ者アリ〕

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• 116・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　靜ニ···

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• 117・齋藤實

  ○政府委員(男爵齋藤實君)(續)　ソレカラ朝鮮統治ノ事
  ニ就キマシテ、色〓御意見ガアリマシタガ、此事ニ就キマシテ
  ハ私共就任以來···
  〔「就任シタノガ間違ッテ居ル」ト呼ヒ其他發言スル
  者多シ〕

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• 118・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　金澤君、發言ヲ禁止シマス

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• 119・齋藤實

  ○政府委員(男爵齋藤實君)(續)　一視同仁ノ御趣旨ヲ
  奉戴致シマシテ、誠意誠心職ニ從事致シテ居ルノデアリマ
  ス、ソレデ今日ノ朝鮮ノ狀態カラ中シマシテモ、先刻諸君ノ
  御話ノヤウナ狀態デハナイノデアリマス、朝鮮內地ニ於テハ
  少クトモ靜謐ハ保タレテ、(「ノウ〓〓」)今日迄著任以來宣
  言ヲ致シ、實施致シテ居ル所ノ事柄ハ、著々進ミツヽアルノ
  デアリマス、順調ニ進ミンヽアル、(拍手起ル)唯ダ私ノ所管
  外ノ事ニ就テハ、往々遺憾ナ事ガアルノデアリマス、是ハ甚ダ
  遺憾ハ遺憾ト致シマスルガ、是トテモンレ〓〓其筋ニ交涉ヲ
  致シテ、將來ニ於テ斯ノ如キ事ノ無カランコトヲ期シテ居ル
  次第デアリマス、ソレカラ山道君ノ御說ノ中ニ、朝鮮ノ(「シー
  メンスハドウシタ」ト呼フ者アリ)朝鮮ノ間ニ於テ、朝鮮ノ統
  治上ノ事ニ就テ色〓御意見ガアッタ中ニ、樣〓ナル拂下ノ事
  デアルトカ、取引ノ事デアルトカ云フコトヲ仰セラレタヤウニ
  覺エテ居リマスガ、是等ハ何等事實ガ無イノデアリマス、若
  シ其事實ガ有リトスルナラバ、其事ヲ指摘シテ、ドウゾ御質
  問下サレムコトヲ切ニ希望致シマス、(拍手起ル)私一身上
  ニ關スル事ハ、旣ニ此所デ打止メニナリマシタカラ申上ゲマ
  セヌガ、私ニ於テハ何等破廉耻ノ事ハ無イノデアリマス(拍
  手起ル、「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)

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• 120・佐々木安五郎

  ○佐々木安五郞君　議長、議長··

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• 121・岩崎勲

  ○岩崎勳君　討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
  〔「賛成々々」ト呼フ者アリ拍手起ル、佐々木安五郞
  君「通告ガシテアル」ト呼フ〕

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• 122・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　討論終結ノ動議ニ賛成ノ方ノ
  ノ起立ヲ求メマス
  〔賛成者···立立〕
  〔「賛成々々」「少數々々」「大多數」ト呼フ者アリ〕

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• 123・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　多數、討論ハ終結サレマシタ
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=123

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• 124・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郎君)　本案ニ就テ採決シマス、此決議案
  ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔賛成者起立〕
  〔「反對」「賛成」「多數々々」「少數々々」ト呼フ者ア
  ツ

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• 125・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　起立少數、(拍手起ル)仍テ決議案
  ハ否決サレマシタ
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=125

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• 126・岩崎勲

  ○岩崎動君　殘餘ノ日程ニ對シテ延期ノ動議ヲ提出致シ
  マス
  〔「賛成々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02419210309&spkNum=126

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• 127・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニハ贊成ガアルト認
  メマス、仍テ延期スルコトニ決シマシタ、本日ハ是ニテ散會
  午後五時三十二分散會
  衆議院議事速記錄第二十號正誤
  頁段行誤正
  四五六中二「バンカース」ト云「バンクワースト」
  フ婦人夫人

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