1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十年三月十日(木曜日)午後一時十八分開議
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議事日程 第二十四號 大正十年三月十日
午後一時開議
第一 産業組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 住宅組合法案(政府提出) 第一讀會
第三 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第四 朝鮮私設鐵道補助法案(政府提出) 第一讀會
第五 樺太地方鐵道補助法案(政府提出) 第一讀會
第六 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 明治四十一年法律第三十五號中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第九 水道條例中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 大正九年法律第十號中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 憲兵補の恩給に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 地方鐵道法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 地方鐵道補助法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 刑事訴訟法中改正法律案(祷苗代君提出) 第一讀會
第十五 刑法中改正法律案(祷苗代君提出) 第一讀會
第十六 刑法中改正法律案(宮古啓三郎君外七名提出) 第一讀會
第十七 未成年者飮酒禁止法案(根本正君外五名提出) 第一讀會
第十八 非役壯丁税法案(荒川五郎君外六名提出) 第一讀會
第十九 辯護士法改正法律案(鵜澤總明君外九名提出) 第一讀會
第二十 所得税法中改正法律案(岩本平藏君外九名提出) 第一讀會
第二十一 明治三十四年法律第三十號中改正法律案(齋藤鷲太郎君外六名提出) 第一讀會
第二十二 地方學事通則中改正法律案(竹上藤次郎君提出) 第一讀會
第二十三 沒祿者給與法案(熊谷直太君外八名提出) 第一讀會
第二十四 營業税法中改正法律案(荒川五郎君提出) 第一讀會
第二十五 民法中改正法律案(奧村安太郎君提出) 第一讀會
第二十六 地租條例中改正法律案(下田勘次君外二名提出) 第一讀會
第二十七 刑事略式手續法廢止法律案(永屋茂君外四名提出) 第一讀會
第二十八 埼玉縣下郡界變更に關する法律案(粕谷義三君外七名提出) 第一讀會
第二十九 佐賀監獄移轉に關する建議案(川原茂輔君外三名提出) (委員長報告)
第三十 川内川改修に關する建議案(萩亮君外五名提出) (委員長報告)
第三十一 航空事業の擴張及其の行政機關の統一に關する建議案(三善清之君外五名提出) (委員長報告)
第三十二 徴兵令事務施行細則改正に關する建議案(植原悦二郎君提出)
第三十三 産業組合法及重要物産同業組合法改正竝同組合振興に關する建議案(土井權大君提出)
第三十四 成年調査に關する建議案(奧村安太郎君外一名提出)
第三十五 石油政策に對する燃料調査會設立に關する建議案(高野毅君提出)
第三十六 特別市制促進に關する建議案(作間耕逸君外五名提出)
第三十七 多摩川改修費及水源涵養費國庫支辨に關する建議案(秋本喜七君外二名提出)
第三十八 多摩川改修費及水源涵養費國庫支辨に關する建議案(高木正年君外六名提出)
第三十九 免囚差別待遇撤廢に關する建議案(鮎川盛貞君提出)
第四十 救世軍補助に關する建議案(横山勝太郎君提出)
第四十一 科學知識普及に關する建議案(鈴木錠藏君提出)
第四十二 遠美鐵道速成に關する建議案(松浦五兵衞君外五名提出)
第四十三 大垣、大野、金澤間鐵道速成に關する建議案(西村正則君外八名提出)
第四十四 熱海線完成に關する建議案(森恪君提出)
第四十五 米穀專賣法制定に關する建議案(小菅劍之助君外三名提出)
第四十六 商務省及工務省設置に關する建議案(奧村安太郎君外一名提出)
第四十七 癲狂院増設に關する建議案(中馬興丸君外三名提出)
第四十八 傳染病豫防法改正に關する建議案(松下禎二君外三名提出)
第四十九 中央線淺川驛鹽山驛間電力速成に關する建議案(三枝彦太郎君提出)
第五十 賣藥營業税廢止に關する建議案(高見之通君外二名提出)
第五十一 大阪和歌山間鐵道敷設に關する建議案(山口義一君外四名提出)
第五十二 國分岩川間鐵道敷設に關する建議案(日野辰次君外一名提出)
第五十三 櫻井松坂間鐵道速成に關する建議案(津野田是重君外九名提出)
第五十四 勢江鐵道速成に關する建議案(天春文衞君外七名提出)
第五十五 西條松山間鐵道豫定線一部變更に關する建議案(成田榮信君外五名提出)
第五十六 温泉政策に關する建議案(成田榮信君外一名提出)
第五十七 港灣行政に關する建議案(三善清之君外四名提出)
第五十八 鹿兒島縣各離島航海補助増額に關する建議案(祷苗代君外七名提出)
第五十九 三原呉間鐵道敷設速成に關する建議案(井上角五郎君外三名提出)
第六十 酒造税法中改正に關する建議案(中村清造君外四名提出)
第六十一 農産物收穫調査及農家經濟調査確立に關する建議案(土井權大君提出)
第六十二 軍人恩給法中改正に關する建議案(近藤達兒君提出)
第六十三 清酒の滓引及貯藏減量控除額増加に關する建議案(山邑太三郎君外二名提出)
第六十四 相可町大口港間鐵道敷設に關する建議案(伊坂秀五郎君外四名提出)
第六十五 野岩羽鐵道速成に關する建議案(八田宗吉君外三名提出)
第六十六 柳津小出間及只見古町間鐵道速成に關する建議案(八田宗吉君外三名提出)
第六十七 濃飛鐵道速成に關する建議案(匹田鋭吉君外三名提出)
第六十八 僧侶其の他諸宗教師に被選擧權附與に關する建議案(安藤正純君提出)
第六十九 東京外國語學校修業年限延長に關する建議案(菅原傳君外三名提出)
第七十 北海道本州連絡完成に關する建議案(伊藤廣幾君外四名提出)
第七十一 木次三次間鐵道建設に關する建議案(原夫次郎君外五名提出)
第七十二 落合木次間鐵道起工年度繰上に關する建議案(佐野正雄君外五名提出)
第七十三 日向沿岸國庫補助港設定に關する建議案(長峰與一君外二名提出)
第七十四 恩給法規の根本改正に關する建議案(高木正年君外二名提出)
第七十五 福山三次間鐵道速成に關する建議案(永屋茂君外三名提出)
第七十六 吉野縱貫鐵道建設に關する建議案(岩本平藏君外三名提出)
第七十七 癩豫防關係法規改正に關する建議案(中馬興丸君外二名提出)
第七十八 山田川に河川法適用に關する建議案(原田藤次郎君外五名提出)
第七十九 鴨緑江岸道路修築に關する建議案(高見之通君外五名提出)
第八十 京都監獄移轉に關する建議案(竹上藤次郎君外三名提出)
第八十一 六大都市特別市制速施に關する建議案(奧村安太郎君外三名提出)
第八十二 國幣大社大山祗神社昇格に關する建議案(深見寅之助君外五名提出)
第八十三 國幣大社大山祗神社國寶殿建築に關する建議案(深見寅之助君外五名提出)
第八十四 山田豐岡間鐵道速成に關する建議案(長田桃藏君外二名提出)
第八十五 富山伏木間鐵道建設に關する建議案(高見之通君外三名提出)
第八十六 松江隱岐間海底電線増設速成に關する建議案(若林徳懋君外五名提出)
第八十七 金融機關整備に關する建議案(河上哲太君外十一名提出)
第八十八 思想問題審議機關設置に關する建議案(星島二郎君提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=0
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001・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔原田書記官朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
阿武隈川阿賀川改修工事費國庫補助增額ニ關スル
建議案
提出者八田宗吉君松本孫右衞門君
鐸木三郞兵衞君川口誠三郞君
堀切善兵衞君白井博之君
石川淳君
信越東線鐵道速成ニ關スル建議案
提出者武田德三郞君丸山嵯峨一郞君
敦賀〓津間輕便鐵道豫定線追加ニ關スル建議案
提出者安原仁兵衞君阿崎〓君
(以上三月九日提出)
一議員ヨリ提出セラレクル質問主意書左ノ如シ
民心統一ニ關スル質問主意書
提出者早川〓介君
(以上三月九日提出)
一昨九日內閣總理大臣ヨリ議長宛左ノ通發令アリタ
ル旨ノ通牒ヲ受領セリ
農商務書記官長滿欽司
農商務省所管事務政府委員被仰付
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載
즈
一昨九日供託法案委員横山勝太郞君辭任ニ付其ノ補
闘トシテ作間耕逸君ヲ議長ニ於テ選定セリ
一今十日貯蓄銀行法案外一件委員松井鐵夫君辭任
ニ付其ノ補闕トシテ木檜三四郞君ヲ航空事業ノ擴張
及其ノ行政機關ノ統一ニ關スル建議案委員田中善
立君辭任ニ付其補闕トシテ荒川五郞君ヲ孰レモ議長
ニ於テ選定モリ
一昨九日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
供託法中改正法律案委員
委員長西村正則君理事横山啓太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=1
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002・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 會議ヲ開キマス、諮問事項ガアリ
マス、議員松島肇君病氣ニ付、三月十日ヨリ十日間請暇
ノ申出ガアリマス、之ヲ許可スルニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=2
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003・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ガ無イト認メマス、仍テ許可
致シマス、次ニ第五部選出決算委員鎌田三郞兵衞君ヨリ
常任委員辭任ノ申出ガアリマシタ、許可スルニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=3
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004・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ許可
致シマス、昨日春日君ヨリ議長ニ御導ノ事ガゴザイマス、之
ニ對シテ御答致シマス、速記錄ヲ見マスルト、木下謙次郞君
ハ「諸君ガ御異議ガアリマスナラバ少シ脫線ノ氣味デアリマ
スケレドモ、證據ヲ擧ゲテ諸君ノ反省ヲ促サウト思ヒマス」ト
云フ演說ガアリマス、其際ニ於ケル副議長-議長席ニ著カ
レテ居リマシテ、當時ノ考ヲ聽キマスト、少シ脫線ノ氣味ガア
ルト云フ前提デアリマシタガ、如何ナル事ヲ演說サレルカ之
ヲ聽イタ上、果シテ脫線ナラバ注意シヤウト云フ考デアックト
云フコトデス、當議長ニ於キマシテモ同樣ノ考ヲ懷キマスル
ノデ、脫線シテ餘計ナ事ヲ言ハレルノハ、之ヲ差止メルカ注
意スル考デゴザイマスカラ、左樣御承知ヲ-日程第一第
二ハ便宜上一括議題ト致シマス、日程第一、產業組合法
中改正法律案、日程第一一、住宅組合法案ヲ一括シテ議題
ニ供シマス、其第一讀會ヲ開キマス、岡本政府委員
第產業組合法中改正法律案(政府提
四第一讀會
產業組合法中改正法律案
產業組合法中左ノ通改正ス
第一條中「生計」ヲ「經濟」ニ、「購買シ之ニ加エシ又ハ加
工セスシテ」ヲ「買入レ之ニ加工シ若ハ加工セスシテ又ハ
之ヲ生產シテ」ニ、「組合員ノ生產シタル物ニ加工シ又ハ組
合員ヲシテ產業ニ」ヲ「組合員ヲシテ產業又ハ經濟二」ニ、
「(生產組合)」ヲ「(利用組合)」ニ、「出資一口」ヲ「出資一
口ノ金額及出資一口ニ付定款ノ定ムル所ニ依リ加入ニ關
シ拂込ムヘキ金額ノ合計額」ニ、「第四項ノ規定ニ依ル貯
金ヲ取扱フ」ヲ「第四項ノ規定ニ依リ手形ノ割引又ハ貯
金ノ取扱ヲ爲ス」ニ改ム
第十六條ノ六第一項但書ヲ削リ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
組合原簿ニ記載シタル事項ノ變更ノ屆出又ハ組合原
簿ノ提出ハ前二項ノ規定ニ拘ラス其ノ事業年度ノ終
ヨリ二週間內ニ之ヲ爲スコトヲ得但シ組合員ノ脫退
又ハ保證金額ノ減少ニ付テハ總組合員ノ同意ヲ以テ
定款ニ之ヲ定メタル場合ニ限ル
第三十四條ノ二理事缺ケタルトキハ總會ノ招集ハ監
事之ヲ行フ
理事カ第二十三條ノ規定ニ依ル請求アリタル日ヨリ
二週間內ニ正當ノ事由ナクシテ總會招集ノ手續ヲ爲
ササルトキハ監事ハ其ノ總會ヲ招集スヘシ
第四十三條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ配當スヘキ剩餘金ノ計算ニ付テハ計算上不便
ナル拂込金ノ端數金額ハ之ヲ切捨ツルコトヲ得
第六十條ノ二理事ノ缺ケタル爲損害ヲ生スル虞アル
トキハ地方長官ハ假ニ理事ヲ選任スルコトヲ得
第七十六條產業組合聯合會ハ左ノ目的ヲ以テ之ヲ
設立スルコトヲ得
所屬組合ニ必要ナル資金ヲ貸付シ及貯金ノ便
宜ヲ得セシムルコト(信用組合聯合會)
二所屬組合ノ賣却スル物ニ加工シ又ハ加工セスシ
テ之ヲ賣却スルコト(販賣組合聯合會)
三所屬組合ノ購買スル物ヲ買入レ之ニ加工シ若ハ
加工セスシテ又ハ之ヲ生產シテ所屬組合ニ賣却ス
ルコト(購買組合聯合會)
四所屬組合ヲシテ必要ナル設備ヲ利用セシムルコ
ト(利用組合聯合會)
產業組合聯合會ハ產業組合又ハ產業組合聯合會ヲ
以テ之ヲ構成ス但シ信用組合聯合會ハ同種ノ事業
ヲ行フ聯合會ヲ以テ、販賣組合聯合會及購買組合
聯合會ハ同種ノ事業ヲ行ハサル產業組合又ハ產業組
合聯合會ヲ以テ之ヲ構成スルコトヲ得ス
第九十三條ノ三第四條第二項又ハ第八十三條第二
項ノ規定ニ違背シタル者ハ十圓以上百圓以下ノ過料
ニ處セラル
第九十四條中「前條」ヲ「前二條」ニ改ム
第百六條中「伊豆七島ニ於テハ東京府知事、」ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ニ設立シタル生產組合又ハ生產組合聯合
會ハ之ヲ本法ニ依リ設立シタル利用組合又ハ利用組合
聯合會ト看做ス
第二住宅組合法案(政府提出)第一讀會
住宅組合法案
住宅組合法
第一條住宅組合ハ組合員ニ住宅ヲ供給スルヲ以テ目
的トス
住宅組合ハ法人トス
第二條住宅組合ハ前條ノ目的ヲ達スル爲左ノ事項ヲ
行フコトヲ得
-住宅用地ノ取得、造成若ハ借受又ハ組合員ニ對
スル貸付若ハ讓渡
二住宅ノ建設又ハ購入
第三條本法ニ於テ住宅ト稱スルハ住居ノ用ニ供スル
家屋及其ノ附屬設備ヲ謂フ
前項ノ附屬設備ノ種類及範圍ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條組合ノ供給スル組合員ノ住宅ハ一組合員ニ
付一戶ニ限ル
第五條住宅組合ノ供給スル住宅ニ關スル坪數其ノ他
ノ制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條組合員ノ持分ハ之ヲ相續スルコトヲ得
第七條組合員住宅ノ所有權ヲ取得シタル後出資拂
込ノ完了ニ至ル迄ノ間左ノ各號ノ一ニ該當スルト
キハ組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ組合員ニ對シ住宅
ノ所有權ヲ組合ニ讓渡スルコトヲ請求スルコトヲ得
-出資拂込ノ義務ヲ怠リタルトキ
二組合ノ定ムル住宅使用條件ニ違反シタルトキ
第八條組合員ハ前條ノ規定ニ依リ其ノ住宅ノ所有
權ヲ失ヒタルトキハ組合ヲ脫退ス
第九條組合員出資拂込ノ完了前住宅ノ所有權ヲ取
得シタルトキハ組合ハ組合員ヲシテ未拂込出資金額
ニ付其ノ住宅ノ上ニ抵當權ヲ設定セシムルコトヲ得
第十條住宅ハ定款ノ定ムル所ニ依リ之ヲ火災保險ニ
付スヘシ
第十一條住宅組合ノ住宅ノ建設、購入若ハ住宅用
地ノ取得又ハ組合ト組合員トノ間ニ於ケル住宅若ハ
其ノ用地ノ所有權移轉ニ關シテハ地方稅ヲ課スルコ
トヲ得ス
第十二條北海道地方費府縣又ハ市町村ハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ住宅組合ニ對シ住宅資金ヲ貸付スルコ
トヲ得
第十三條國、北海道地方費、府縣、郡又ハ市町村ノ所
有ニ屬スル土地ハ隨意契約ニ依リ住宅組合ニ之ヲ賣
拂又ハ貸付スルコトヲ得
第十四條住宅組合ハ主務大臣、地方長官、郡長及市
長之ヲ監督ス
第十五條本法中郡、郡長トアルハ郡長ヲ置カサル地ニ
在りテハ之ニ準スヘキモノトシ市町村、市長トアルハ市
制又ハ町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ之ニ準スヘキ
モノトス
第十六條民法第四十四條第一項、第四十五條第二
項第三項、第四十八條、第五十二條第二項、第五
十三條乃至第五十五條、第五十九條乃至第六十一
條第一項、第六十二條、第六十四條、第六十五條第
一項、第六十六條、第七十條、第七十三條、第七十
四條及第七十八條乃至第八十一條ノ規定ハ同法第
四十五條第三項及第四十八條第一項中期間ニ關ス
ル規定ヲ除クノ外住宅組合ニ付之ヲ準用ス
產業組合法ハ第一條、第五條、第十六條、第三十二
條、第三十四條、第三十八條、第四十三條、第四十
四條、第四十六條乃至第四十六條ノ三、第五十九
條、第六十九條、第七十五條、第七十六條乃至第九
十二條及第百六條ノ規定ヲ除クノ外住宅組合ニ付
之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員岡本英太郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=4
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005・岡本英太郎
○政府委員(岡本英太郞君) 產業組合法改正ノ理由ヲ
說明申上ゲマス、產業組合法ハ明治三十三年ノ制定ニ係ッ
テ居ルノデゴザイマシテ、其後時勢ノ必要ニ迫ラレマシテ三回
改正ヲシ來リマシテ、產業組合ノ發達ニ資シテ居ルノデアリ
マスガ、尙ホ時運ノ進展ニ件ヒマシテ、組合經營ノ事業、竝
ニ聯合會ノ構成者ノ範圍ヲ擴張致シマス、又組合管理上
ノ不便不利ノ點ヲ改メマス、又登記手續ノ簡捷ヲ圖リマシ
テ、以テ益、產業組合ノ發展ニ資セント致スノデアリマス、是
レ本案ヲ提出致シマシタ理由デゴザイマス、願クパ御審議ノ
上、御賛成アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=5
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006・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第一ニ對シテ質疑ノ通告ガア
リマス、之ヲ許シマス、土井權大君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=6
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007・土井權大
○土井權大君 住宅法モ共ニヤリクイノデスガ、マダ出テ
居ラヌノニ構ハヌノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=7
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008・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) ソレデハ住宅組合法ノ說明ヲ聽イ
タ上デアリマス、日程第二ハ內務大臣ヨリ說明ガアリマス、
床次內務大臣
〔国務大臣床次竹二郎君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=8
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009・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 住宅法案ニ就テ大體ノ說
明ヲ申上ゲマス、時局以來住宅難ノ聲ガ段々起ッテ參リマ
シタノミナラズ、此問題ハ國民生活上、申スマデモナク緊切
ナル事柄デゴザイマシテ、之ガ解決ニ就テハ少カラズ注意ヲ要
スルコトヽ考ヘルノデアリマス、御承知ノ如ク昨年來或ハ建
築資金ノ低利融通ノ如キ、建築用材廉價拂下ノ如キ、又ハ
用材ノ鐵道運賃ヲ減免致スト云フヤウナコトノ如キ、種々
便宜ヲ計ッテ參リマシタノデアリマス、今日迄此爲メニ低利
資金ヲ融通致シマシタ額ハ約二千三百万圓ニ上ッテ居リマ
シテ、其資金ニ依シテ建築サレムトスル家屋ノ數ハ、一万五
千有餘ニ上ッテ居ルノデアリマス、サリナガラ此住宅ノ問題
ハ時勢ノ進捗ニ伴レテ、益〓其必要ヲ感ズルニ至ルデアラウ
ト考ヘルノデアリマス、仍テ玆ニ住宅ニ關スル法制ヲ今日ニ
於テ整ヘテ置キマスト云フコトハ、極メテ相當ナリト考ヘルノ
デアリマスガ、ソレニ就キマシテハ小住宅ノ貸付ヲ目的トスル
所ノ住宅會社法、若クハ互助的ニ住宅ノ供給ヲ仰ギ得ル
所ノ、所謂住宅組合法ノ如キモノヲ制定致スト云フコトガ
宜シカラウト考ヘルノデアリマスガ、其中此住宅會社法ノ如
キハ審査ニ手數ヲ要シマスノデ、今調査中デアリマスガ、到
底此議會ニ提出スル運ビニハ參リマセヌ、幸ヒ住宅法ダケ
ハ爰ニ成案ヲ得テ御協賛ヲ仰グニ至ッタ次第デアリマスガ、
此法案ノ趣意ハ、組合員互ニ出資スル、十人以上ノ人ガ組
合ヲ組織致シマシテ、以テ互ニ小住宅ノ供給ヲ受ケル便
利ヲ得ル途ヲ開クト云フノデアリマス、ソレガ爲メニ此組合
ニ對シテハ、或ハ課稅ノ免除、若クハ資金貸付ノ便ヲ開キ、
若クハ官公有地賣却貸付等ニ就テ特ニ組合ノ爲メニ便利
ヲ與ヘマシテ、以テ此小住宅ノ供給ヲ出來ルダ乞都合好ク
致サウト云フ趣意デゴザイマス、今日ノ時勢ニ於テ極メテ必
要ナリト考ヘマス次第デアリマスガ、何卒御審議ヲ願ヒマス
(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=9
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010・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 土井權大君
〔土井權大君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=10
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011・土井權大
○土井權大君 只今提案サレマシタル產業組合法ノ改
正案、竝ニ住宅組合法案ハ、共ニ重要ナル法案デアリマシ
テ、社會政策實行ノ上ニ極メテ緊要ナル法案デアリマス、併
ナガラ爰ニ二三不滿足ナ點アリ、又不徹底ナル點アリト考
ヘマスルガ故ニ、疑ヲ質シタイノデアリマス、第一ハ產業組合
及聯合會ノ事業ヲ擴張シテ、國民生活及經濟ノ安定ヲ圖
ルト斯ウ云フ御說デアリマスガ、尤モ產業組合ト致シマシテ
斯ノ如キ事業ノ擴張ト云フコトモ必要デアリマセウガ、ソレ
ヨリモ今日日用品ガ高イ、小賣値段ガ高イト云フノハ、ドノ
邊カラ原因致シテ居ルカト〓究致シテ見マスルト、彼ノ小賣
商ガ重要物產同業組合法ノ蔭ニ隱レマシテ、卸賣ノ値段
ガ廉クナッテ居ルニモ拘ラズ、小賣値段ノ價格ヲ協定シテ、此
日用品ノ小賣値段ヲ下ゲナイコトニ致シテ居ル、所謂低落
ヲ阻止致シテ居ル現狀デアルノデアリマス、米ニ致シマシテ
モ、酒ニ致シマシテモ、薪炭ニ致シマシテモ、政府モ御承知デ
アラウト思ヒマス、故ニ國民生活安定ヲ圖ルト致シマスルニ
ハ、一方ニ產業組合ノ獎勵ヲスルト同時ニ、一方ニ同業
組合ノ改正ヲ致シマシテ、彼ノ小賣商ナドニハ同業組合ヲ
許サナイト斯ウ改正ヲ致シテ、小賣商ノ惡弊ト云フモノヲ
打破スルニ非ザレバ、折角ノ產業組合ノ改正モ其效ナシト
私ハ考ヘルノデアリマス、政府ニ於テ此點ニ就テ如何ニ御
考ナサッテ居ルカ、ソレカラ第二ハ現行ノ産業組合法、竝ニ
此改正サレタ所ノ產業組合法ノ案ニ依リマシテモ、其等ノ
運用ニ依ッテ、十分ニ此住宅問題ハ解決出來ルモノナリト
私ハ信ジテ居ル、更ニ此產業組合ハ、御承知ノ通リ信用組
合ノ兼營モ出來ルノデアリマスカラ、其資金ノ授受ト云フ
點ニ於テモ便利ガアルデアラウ、更メテ此住宅組合ナドヲ作
ラズトモ、產業組合ノ改正ヲ徹底的ニシテ、住宅問題ノ解
決ヲ爲スト云フコトガ便利デアル、又政務統一ノ上ニ必要
デハナイカト斯ウ私ハ考ヘルノデアリマス、此點ニ就テ政府
ハ如何ニ御考ナサッテ居ルノデアリマスカ、ソレカラ第三ハ此
產業組合法中、信用組合聯合會ヲ何故ニ此系統的組織
ニナサラナカッタノデアルカ、言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、信用
組合聯合會ニ他ノ信用組合聯合會ノ加入ヲ、何故ニ認メ
ナカッタノデアルカ、此事ガ承リタイノデアリマス、御承知ノ通
リ農村ニ低利資金ノ融通ト云フコトニ就テハ、隨分八釜シ
ク昨今問題トナッテ居リマスガ、其低利資金ガ完全ニ融通
シ能ハザル原因ハ、農村ニ於ケル經濟ノ組織ガ不完全デア
ル此一點デアリマス、ソレ故ニ普遍的ニ徹底的ニ農村ニ資
金ヲ融通致サウト致シマスレバ、一ツ村一產業組合ハ、更ニ
一郡ヲ區域トスルカ、若クハ便利ナ地區ヲ一區域トスル所
ノ聯合會ヲ造リ、其聯合會ハ更ニ進ンデ、大ナル一縣一區
域トスル所ノ信用組合ヲ造リ、其信用組合ハ更ニ一國
ヲ-國家ヲ本位rシ中心トスル所ノ信用組合、假リニ謂フ
所ノ庶民金融機關云フモノヲ設置シテ、始メテ此中產階
級竝ニ小サイ所ノ農民、水呑百姓五段百姓ニ對シテ、徹底
的ニ普遍的ニ金融ノ途ガ付クノデアル、然ルニ此改正案ヲ
見マスルト「信用組合聯合會ハ同種ノ事業ヲ行ハサル產業
組合又ハ產業組合聯合會ヲ以テ之ヲ構成スルコトヲ得ス」
卽チ更ニ系統的デナイ信用組合ハ-信用組合ノ聯合會
ハ、進ンデ上級ノ聯合會ヲ作ルコトガ出來ナイ、ト斯ウ云フ
コトニナッテ居ル、是ハ如何ナル理由デアルカ、私ヲシテ言ハ
シメタナラバ、資本家ニ味方ヲシ、或ハ銀行業者ニ味方ヲシ
テ、中產階級ニ味方ヲセザル所ノ條文デハナイカト、斯ウ考
ヘルノデアリマス、產業組合中ニ於テ、最モ必要ナ點ハ此
點デアラウト思フノデアリマス、政府ニ於テ何故ニ改正ヲ爲
サナカッタノデアルカ、之ヲ承リクイノデアリマス、ソレカラ第
四トシテ承リタイノハ、此住宅解決問題ニ就キマシテ、產業
組合法ニ依ッテモ宜シイ、私ノ說トシテハ、產業組合法ニ依
ルガ宜イト申スノデアリマスガ、假リニ依ラズトスルモ、假リニ
此住宅組合法ヲ實行スルト致シマシテモ、其住宅解決ニ最
モ必要ナルモノハ何デアルカト、申シマスルト云フト宅地デア
ラウト私ハ考ヘルノデアリマス、其宅地ニ要スル所ノ土地ヲ
如何ニシテ供給ヲ受ケルカ、此法案ヲ拜見致シマスニ、何等
其强制微收ナドノ方法モ無ケレバ、或ハ土地收用法ノ適
用モ無イカノ如ク見ユルノデアリマス、言葉ヲ換ヘテ言ヒマ
シタナラバ、住宅ニ必要ナル所ノ宅地-宅地ノ供給ヲ受
ケルノニハ、必ズヤ强制徵收カ若クハ其他ノ收用方法ヲ講
ズルニ非ザレバ、此住宅問題ト云フモノカ、徹底的三解決出
來ナイト斯ウ考ヘルノデアリマス、此四ツノ點ニ就キマシテ、
御答辯ヲ要求スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=11
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012・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岡本政府委員
〔府政委員岡本英太郞君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=12
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013・岡本英太郎
○政府委員(岡本英太郞君) 御答申上ゲマス、土井君ノ
第一ノ御質問ハ、產業組合ノ殊ニ購買組合デゴザイマセ
ウノ發達セザルノハ、小賣業者ガ其同業組合法ニ依ッテ
規定ヲ設ケテ、物資ノ價格ヲ定メテンレ以下ニ賣ラヌト、卽
チ不當ナ利益ヲ貪ルト云フヤウナ規定ヲ設ケテ、居ルカラシ
テ之ニ對抗シテ產業組合ト云フモノハ發達セネバナラズ、而
シテ是等ノ弊ヲ防グニハ、同業組合法ヲ改正スル意志アリ
ヤ否ヤト云フ御質問デアッタト思ヒマス、成程一般商人ガ同
業組合法ニ依リマシテ、組合規約ヲ設ケマシテ其中ニ小賣
業ナラバ小賣ノ價格ヲ定メテ居リマス、是ハ標準ヲ定メテ居
ル、是ハ一而カラ申シマスレバ、其標準相場ト云フモノニ依フ
テ商ヲ致シマシテ、無暗ニ不當ナ利益ヲ組合員ノ間ニ於テ
貪ラナイト云フ趣意モアルノデアリマス、而シテ農商務省ガ
其標準ヲ認可致シマス場合ニ、ソレヨリ廉ク賣ルノハ一向
差支ナイコトニ致シテ居リマス、廢ク賣ルコトハ構ハヌト云フ
趣旨デ認可ヲ致シタノデアリマス、同業組合法ノ改正ト云
フコトニ就キマシテハ、此點ニ於テハ無カラウト思ヒマス、ソレ
カラ第二ノ御質問ハ、住宅組合法ニ依ル組合ト、產業組合
法ニ依ル組合トノ關係ハドウナッテ居ルカ、斯ウ云フ御質問
ノヤウニ伺ヒマス、產業組合ニ依リマスル組合、譬ヘテ申シマ
スレバ住宅關係ノ組合ハ、是ハ信用組合ニ依リマシテモ、資
金ノ供給ヲ得ル途モアリマス、又購買組合ニ依リマシテ、住
宅ヲ供給スルト云フヤウナ途モアリマス、又本改正案ニ依リ
マシテ、利用組合ト致シマシテ組合ガ家屋ヲ拵へマシテ、組
合員ニ借家ヲセシメテ其家ヲ利用セシメルト云フコトモ出
來ルノデアリマス、是等ハ一般產業組合法ニ依ッテ、勿論出
來ルノデゴザイマスルガ、此度ノ住宅組合法ト云フモノハ、主
トシテ住宅ヲ供給スルノガ目的デアリマシテ、唯ダ一時貸家
ト云フヤウナコトモヤルノデゴザイマスケレドモ、目的ハ組合
員ニ速ニ住宅ノ所有權ヲ得セシメルト云フ趣旨デアリマシ
テ、所謂住宅難ヲ救フト云フ趣旨カラ來テ居ルノデアリマス、
是ハ各〓特長ガアルノデアリマシテ、其好ム所ニ依ッテ兩々
相併立シテ一向差支ナイノデアリマス、第三ノ信用組合聯
合會ガ、更ニ聯合會ヲ作ルト云フ途ヲ開カヌノハドウ云フ
譯デアルカ、信用組合聯合會ノ聯合會ヲ認メナイ理由如何
ト云フ御質問デゴザイマスガ、御承知ノ通リ信用組合ハ、土
井君ノ所謂庶民銀行トモ申スベキモノデゴザイマシテ、金融
機關デゴザイマス、是ハ產業組合法ニ於テモ、金融機關タル
性質上初メカラ區域ヲ大キクシテヤリ得ルモノデアリマスシ
又サウ云フモノハ望マシイ、其上ニ聯合會ノ又聯合會ヲ認メ
マスト云フコトハ、段階ガ多クナリマシテ金利ノ關係カラ申シ
マシテ、モ利鞘ガ詰リ多クナッテ、結局金ヲ借ル人ガソレダケ
金利ヲ高クセラルヽ譯デゴザイマス、是等ノ事ハ今日ニ於キ
マシテハ餘リ必要ニ迫ッテ居リマセヌ、是ハ尙ホ〓究スベキ餘
地モゴザイマスルカラ、今日ノ所ハサウ云フ趣旨ヲ以テ、信用
組合ノ聯合會ノ聯合會ハ認メナイノデアリマス、第四ノ御質
問ニ對シテハ、内務省ノ政府委員カラ御答辯申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=13
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014・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 田子政府委員
〔政府委員田子一民君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=14
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015・田子一民
○政府委員(田子一民君) 第四點ニ就キマシテ私ヨリ御
答ヲ申上ゲマス、只今ノ御質問ハ本法案ト住宅用地トノ
關係ト拜承致シマシタガ、住宅問題解決ノ爲メニハ、住宅
用地ノ重大ナリト云フコトニ就キマシテハ、質問者ト同意見
デアリマス、而シテ本法案ニ就キマシテ住宅用地ノ取得ニ關
シマシテハ、特ニ意ヲ用ヰテ居ルノデアリマス、卽チ官公有地
ニ就キマシテハ、約爭入札ノ方法ニ依ラズシテ、組合ニ對シ
テハ特ニ隨意契約ノ方法ニ依リマシテ、拂下若クハ貸付シ
得ル途ヲ開イテ居ルノデアリマス、而シテ御導ノ四點ト考ヘ
ラレマスル所ノ公用徵收ノ點ニ就キマシテハ、所有權ノ制限
若クハ使用權ノ制限ニ就テ、特ニ攻究ヲ重ネタノデアリマス
ルケレドモ、十數人ノ組合ニ於キマシテハ、一個人ノ所有權
ヲ、强制的手段ニ依ル所ノ土地收用法ノ力ニ依シテ制限ス
ルハ、現下ノ我國ノ情勢ニ鑑ミマシテ行過ギルモノナリト考
ヘタノデアリマス、故ニ是ハ特ニ本案ニハ載セズシテ、官公有
地ハ隨意契約ニ依ッテ、拂下若クハ貸渡ノ方法デ足レリト
信ジマシタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=15
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016・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 右兩案ノ審査ヲ付託スペキ委員ノ
選擧ヲ議題ニ供シマス
第三右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=16
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017・岩崎勲
○岩崎勳君 兩案ヲ一括シテ、委員ノ數ハ十八名トシ、議
長ニ於テ指名アランコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=17
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018・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=18
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019・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ
如ク決シマシタ、日程第四第五ハ、同種ノ議案ナルニ依リ一
括議題ニ供シマス、日程第四、朝鮮私設鐵道補助法案、日
程第五、樺太地方鐵道補助法案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス-水野政府委員
第四朝鮮私設鐵道補助法案(政府提出)
第一讀會
朝鮮私設鐵道補助法案
朝鮮私設鐵道補助法
第一條朝鮮ニ於テ鐵道ヲ經營スル株式會社ノ每營
業年度ニ於ケル益金カ鐵道ノ經營ニ要スル拂込資本
金額ニ對シ年八分ノ割合ニ達セサルトキハ朝鮮總督
ハ會社ニ對シ設立登記ノ日ヨリ十年ヲ限リ其ノ不足
額ヲ補給スルコトヲ得但シ補助金ハ鐵道ノ經營ニ要
スル拂込資本金額ニ對シ年八分ニ相當スル金額ヲ超
ユルコトヲ得ス
第二條社債又ハ借入金ニシテ鐵道ノ建設費ニ充ツル
モノニ對シテハ社債ノ登記又ハ借入金ヲ爲シタル日ヨ
リ十年ヲ限リ年八分ニ相當スル金額ヲ限度トシ社債
又ハ借入金ノ利息ヲ補給スルコトヲ得但シ其ノ社債又
ハ借入金ヲ以テ建設シタル鐵道ヨリ生スル益金アルト
キハ之ニ相當スル金額ヲ控除ス
第三條朝鮮總督ハ必要アリト認ムルトキハ一會社ノ
經營スル鐵道ヲ數區ニ分チ各區ニ付前二條ノ規定ニ
準シ補助ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テ會社カ資本
又ハ拂込資本金額ヲ增加シ一區又ハ數區ノ鐵道ヲ
經營スルトキハ當該區ノ鐵道ニ對スル補助ノ期間ハ
資本增加又ハ拂込資本金額變更ノ登記ノ日ヨリ之
ヲ起算スルコトヲ得
第四條前三條ノ規定ニ依ル益金、拂込資本金額、社
債及借入金ハ朝鮮總督ノ定ムル所ニ依リ算出シタル
金額ニ依ル
第五條補助金ノ年總額ハ最高二百五十萬圓トス
第六條補助金ノ每年度ノ豫算殘額ハ遞次之ヲ翌年
度ニ繰越シ使用スルコトヲ得
第七條補助ヲ受クル會社カ法令、法令ニ基キテ爲ス命
令、免許若ハ補助ニ附シタル條件ニ違反シ又ハ公益
ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ朝鮮總督ハ其ノ補助ヲ
停止シ又ハ廢止スルコトヲ得
第八條補助ヲ受クル會社カ補助期間中左ノ各號ノ
一ニ該當スルトキハ朝鮮總督ノ定ムル所ニ依リ既ニ交
付シタル補助金ヲ償還セシム
-免許ヲ取消サレタルトキ
二期限內ニ工事施行ノ認可ヲ申請セス若ハ工事
ニ著手セス又ハ工事施行ノ」認可ヲ得サルニ因リ
免許其ノ效力ヲ失ヒタルトキ
三合併以外ノ事由ニ因リ營業開始前解散シタル
トキ
第九條詐欺ニ因リテ補助金ヲ受ケタルトキハ法定ノ
利息ヲ附シテ之ヲ償還セシム
第十條前二條ノ規定ニ依ル償還金ハ國稅滯納處分
ノ例ニ依リ之ヲ徴收スルコトヲ得但シ先取特權
ノ順位ハ國稅ニ次クモノトス
附則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第五樺太地方鐵道神助法案(政府提出)
第一讀會
樺太地方鐵道補助法案
樺太地方鐵道補助法
第一條樺太ニ於テ鐵道ヲ經營スル株式會社ノ每營
業年度ニ於ケル益金カ鐵道ノ經營ニ要スル拂込資本
金額ニ對シ年八分ノ割合ニ達セサルトキハ政府ハ會
社ニ對シ設立登記ノ日ヨリ十年ヲ限リ其ノ不足額ヲ
補給スルコトヲ得但シ補助金ハ鐵道ノ經營ニ要スル
拂込資本金額ニ對シ年八分ニ相當スル金額ヲ超ユル
コトヲ得ス
第二條社債又ハ借入金ニシテ鐵道ノ建設費ニ充ツルモノ
ニ對シテハ社債ノ登記又ハ借入金ヲ爲シタル日ヨリ十
年ヲ限リ年八分ニ相當スル金額ヲ限度トシ社債又ハ
借入金ノ利足ヲ補給スルコトヲ得但シ其ノ社債ヌハ
借入金ヲ以テ建設シタル鐵道ヨリ生スル益金アルトキ
ハ之ニ相當スル金額ヲ控除ス
第三條政府ハ必要アリト認ムルトキハ一會社ノ經營
スル鐵道ヲ數區ニ分チ各區ニ付前二條ノ規定ニ準シ
補助ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テ會社カ資本又ハ
拂込資本金額ヲ增加シ一區又ハ數區ノ鐵道ヲ經營
スルトキハ當該區ノ鐵道ニ對スル補助ノ期間ハ資本
增加又ハ拂込資本金額變更ノ登記ノ日ヨリ之ヲ起
算スルコトヲ得
第四條前三條ノ規定ニ依ル益金、拂込資本金額、社
債及借入金ハ政府ノ定ムル所ニ依リ算出シタル金額
二代ノ
第五條補助金ノ年總額ハ最高五十万圓トス
第六條補助金ノ每年度ノ豫算殘額ハ遞次之ヲ翌年
度ニ繰越シ使用スルコトヲ得
第七條補助ヲ受クル會社カ法令、法令ニ基キテ爲ス
命令、免許若ハ補助ニ附シタル條件ニ違反シ又ハ公
益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ政府ハ其ノ補助ヲ停
止シ又ハ廢止スルコトヲ得
第八條補助ヲ受クル會社カ補助期間中左ノ各號ノ
一ニ該當スルトキハ政府ノ定ムル所ニ依リ既ニ交付シ
タル補助金ヲ償還セシム
一免許ヲ取消サレタルトキ
二期限内ニ工事施行ノ認可ヲ申請セス若ハ工事ニ
著手セス又ハ工事施行ノ認可ヲ得サルニ因リ免
許其ノ效力ヲ失ヒタルトキ
三合併以外ノ事由ニ因リ營業開始前解散シタル
トキ
第九條詐欺ニ因リテ補助金ヲ受ケタルトキハ法定ノ
利息ヲ附シテ之ヲ償還セシム
第十條前二條ノ規定ニ依ル償還金ハ國稅滯納處分
ノ例ニ依リ之ヲ徴收スルコトヲ得但シ先取特權ノ順
位ハ國稅ニ次タモノトス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員水野鍊太郎君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=19
-
020・水野錬太郎
○政府委員(水野鍊太郞君) 只今日程ニ上リマシタ、朝
鮮私設鐵道補助法案ノ理由ヲ簡單ニ說明致シマス、朝鮮
ニ於キマスル土地ノ開發ヲ圖リ、產業ノ進歩ヲ促シマスルノ
ニハ、交通機關ノ普及ニ待タナケレバナラヌノハ勿論デアリ
マス、此趣旨ニ於キマシテ、朝鮮ニ於キマシテハ、官設鐵道ノ
普及ニ意ヲ致シテ居ルノデアリマスルケレドモ、獨リ官設ノ
鐵道ノミヲ以テ此目的ヲ達スルコトガ出來マセヌノデ、私設
鐵道ニ對シマシテモ、相當ノ便宜ト相當ノ援助ヲ與ヘナケレ
バナラヌト思フノデアリマス、而シテ朝鮮ニ於ケル私設鐵道
ハ從來相當ノ企業者モアッタノデアリマスルガ、之ニ對シマシ
テハ、今日マデハ豫算ノ範圍內ニ於テ補給ヲ爲シ來ッタ人デ
アリマス、併ナガラ企業者ノ便利ヲ圖リ其安全ヲ期シマスル
ニハ、法律ヲ以テ之ヲ確定スルコトヲ適當ト思フノデアリマ
ス、此趣旨ニ基キマシテ、本法案ニ於キマシテ規定シテアリマ
スルガ如クニ、朝鮮ニ於キマシテ私設鐵道ヲ經營スル會社ニ
對シマシテ、每事業年度ニ於ケル益金ガ拂込資本額ノ八分
ニ達シマセヌトキニハ、其不足額ヲ會社設立ノ日ヨリ十年
間之ヲ補給スルト云フ趣旨デ此法案ヲ提出致シタ次第デ
アリマス、何卒御審査ノ上、御協賛アランコトヲ切望致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=20
-
021・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 永井樺太長官
〔政府委員永井金次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=21
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022・永井金次郎
○政府委員(永井金次郞君) 本案ニ對シマシテ說明ヲ致
シマス、本案ハ朝鮮ノ私設鐵道補助法案ト略〓同性質ノモ
ノデアリマシテ、隨テ理由モ略、2同一ナノデゴザイマス、樺太
ノ開發ヲ圖リマス上ニ於キマシテハ、交通機關ノ完備ニ待
タナケレバナラヌコトハ、申スマデモナイノデアリマスガ、殊ニ
就中鐵道ノ普及ヲ圖リマスルコトガ、目下ノ急務ニナッテ居
ルノデアリマス、隨ヒマシテ此國營政策ニ依リマシテ、卽チ官
營ノ方法ニ依ヲテ、今日マデ樺太ノ交通機關ノ完備ヲ圖リ
ツヽアリマシタケレドモ、財源ニ限ガアリマスル故ニ、官營ヲ
以テシテハ十分ニ目的ヲ達スルコトガ出來マセヌシ、遺憾ノ
點ガ少クナイノデアリマス、就キマシテハ之ヲ官營ニ加フルニ
民營ヲ奬勵致シマシテ私設會社ヲ起シマシテ鐵道ノ普及ヲ
圖ルト云フコトガ、今日ノ時代ニ於テ最モ必要ナル事ト考
ヘルノデアリマシテ、此度私設會社ニ補助金ヲ給與致シマシ
テ、私設會社ニ依シテ企業ヲ圖リタイト考ヘルノデアリマス、
其内容ニ就キマシテハ、矢張年八分ニ相當スル金額ヲ限度
トシテ、補助ヲ致シタイト考ヘルノデアリマス、其他ハ朝鮮私
設鐵道補助法案ト略〓内容ガ似テ居リマスカラ說明ヲ省
略致シマス、右様ノ理由デアリマスカラ、何卒御審議ノ上御
協賛アラムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=22
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023・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 山邊常重君-質問ノ通告ガアリ
マス
〔山邊常重君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=23
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024・山邊常重
○山邊常重君 只今提案ニナリマシタ朝鮮私設鐵道補
助法案、及樺太私設鐵道補助法案ニ就キマシテ、政府ニ質
疑ヲ致シマシテ其御答辯ヲ得タイト思ヒマス、勿論土地ノ
開發、及產業ノ發達、工業ノ奬勵ヲ圖ルニハ、鐵道ヲ敷設ス
ルト云フコトハ最モ必要ノ事デアリマス、殊ニ朝鮮ノ如キ未
開ノ地ニハ尙更其必要ヲ感ズルノデアリマス、併シ今マデハ
確力朝鮮總督ノ下ニ於テ、拂込資本ニ對シテ年六朱ノ補
給ヲ致シマシタケレドモ、此法案ニ依リマスト云フト、二朱
上ゲマシテ年八朱ニナッテ居リマス、私ノ憂慮シマスル點ハ、
若シ朝鮮ニ私設鐵道ノ認可ヲ受ケマシテ、其線路ガ假リニ
百哩アル其中拂込資本ニ依ッテ十哩ダケ營業開始ヲシテ、
殘リノ九十哩ハ容易ニ其營業ヲ開始シナイ、サウ云フ場合
ニモ、尙且ツ政府トシテ之ニ八朱ノ補給ヲスルト一云フコトニ
ナリマスト、ソレニ依ッテ大變ナ利益ヲ得ルノハ株主デアリマ
スケレドモ、政府トシテハ殘リ九十哩ニ對シテ拂込ンダ資本
ヲ、一方ハ銀行ニ預金シテ置ク、尙ホソレニ對シテモ八朱ノ
補給ヲスルト云フコトニナリマスルト、折角八朱補給シテ鐵
道ノ速成ヲ圖リ、產業ノ奬勵、工業ノ發達ヲ圖ルト云フ趣
旨ガ、或ハ沒却セラレハシナイカト云フ虞ガアルノデアリマス、
尙ホ實例デアリマスケレドモ、一昨年ノ十一月朝鮮ニ或ル
私設會社ガ出來マシテ、資本金ハ一千万圓昨年ノ一月十
五日ニ四分ノ一ノ拂込ヲ致シマシテ、東京ニ本社ガアッテ、
京城ニ支店ハアルサウデスケレドモ、唯ダ株劵ヲ發行シテ會
社ガ出來タダケデ、未ダ何等鐵道ノ事業ニ著手シテ居リマ
セヌケレドモ、尙且ツ旣ニ六朱ノ補給ヲ受ケテ居ルト聞キマ
ス、斯ウ云フ會社ガ澤山出來マスルト云フト、唯ダ徒ラニ一
部資本家ヲ擁護スルト云フヤウナコトニナリマシテ、此鐵道
ヲ敷設スル所ノ趣意ニ反スルノデアルト私ハ思フノデアリマ
ス、此點ニ就キマシテ政府ノ御考ハ如何デアルカ、之ヲ承リ
タイノデアリマス、ソレカラ此法律ニ依リマスト云フト、十年
間ダケハ年八朱ノ補給ヲシテヤル、十年後ハ補給ハヤラヌト
云フコトデアリマスガ、若シ假リニ朝鮮ニ於ケル鐵道會社ガ
八朱ノ補給ヲ受ケルガ爲メニ、十年マデハ立派ニ營業スル
コトガ出來ルケレドモ、若シ十年後政府カラ八朱ノ補給ヲ
受ケナイ爲メニ、其會社ノ株劵ガ非常ニ暴落シ、金融ガ思
フヤウニ行カナイデ、ソレカラ後此鐵道會社ガ事業ヲ繼續ス
ルト云フコトノ出來ナイヤウナ場合ニハ、政府ハ果シテドウ
云フ御處置ヲ御執リニナリマスカ、例令サウ云フ會社ガアッ
テモ、十箇年ダケ八朱ノ補給ヲシテソレカラ以後ハ構ハヌト
云ウテ、之ヲ御引離シニナルカドウカ、此點ヲ私ハ御伺ヒシ
タイト思ヒマス、以上二點ニ就キマシテ、政府ノ御深切ナル
答辯ヲ得タイノデアリマス-(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=24
-
025・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 大塚政府委員
〔政府委員大塚常三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=25
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026・大塚常三郎
○政府委員(大塚常三郞君) 只今ノ御質問ニ御答ヲ致
シマス、朝鮮ニ於キマシテハ、從來モ年八分ノ補助ヲ與ヘテ
居リマシタノデアリマス、今囘更メテ之ヲ八分ニ直シタ次第
デハアリマセヌ、ソレカラ本案ノ補助ノ方法ニ依リマスルト、
株式拂込金額ニ對シテ補助スルガ爲メニ、敷設ヲシナイ資
本ニ對シテモ、無用ノ補助ヲスル場合ガアルデハナイカト云
フヤウナ御質問ノヤウニ承リマシタガ、實際ニ於テハ鐵道ノ
建設資金ハ、一度ニ拂込ムト云フヤウナ場合ハ無イノデア
リマス、建設ノ必要ニ應ジテ、順次拂込ムノヲ以テ例ト致シ
テ居リマスノミナラズ、政府ト致シマシテハ、此補助會社ノ株
式ノ拂込ニ就キマシテハ、拂込ノ時期ノ承認ヲ受ケシメルコ
トニナッテ居ルノデアリマス、ソレデアリマスカラ實際ニ於キマ
シテハ、使用シマシタル建設費ニ對スル補助ヲ爲スト、稍〓、同
樣ナ結果ヲ生ズルノデアリマスカラ、會社ガ補助ヲ受ケテ居
リナガラ、鐵道ヲ敷設セズシテ會社ヲ解散スル、又ハ營業ヲ
開始セヌト云フヤウナ場合ヲ御心配ニナリマシタヤウニ拜聽
致シマシタノデアリマスルガ、其樣ナ場合ニ於キマシテハ、此
法案ノ八條ニ依リマシテ、鐵道會社ガ免許ノ效力ヲ失フカ、
或ハ免許ヲ取消サルヽガ、或ハ事業開始前ニ解散スルト云フ
ヤウナ場合ニ相當スルノデアリマシテ、總テ是等ノ場合ニ於
キマシテハ、補助金ノ返還ヲ命ズルノデアリマス、左樣ナ次第
デアリマシテ、實際ニ無用ナル國費ヲ補助ノ爲メニ濫費スル
ト云フヤウナ虞ハ無イト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ第
二點ノ鐵道會社ガ十年以後ニナリマシテ、尙ホ八分ノ配當
ガ出來ナカンタ場合ニハ、ドウスル積リデアルカト云フヤウナ
御尋デアリマシタガ、此場合ニ於キマシテハ、政府ト致シマシ
テハ、鐵道ノ建設ヲ許可スル當時ニ方リマシテ、大體將來ノ
見込ヲ立テマシテ、十年間程補助ヲ致シマスレバ、少クトモ
八分以上位ノ利益ヲ擧ゲルコトガ出來ルト云フ鐵道デナケ
レバ、之ヲ許可セヌ積リデアリマス、又朝鮮ノ實際ノ事情カ
ラ見マシテモ、八分位ノ利益ヲ十年間ニ擧ゲルコトハ出來
ルヤウニ考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=26
-
027・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 右各案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ヲ議題ニ供シマス
第六右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=27
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028・岩崎勲
○岩崎勳君 兩案ヲ一括シテ、政府提出地方鐵道法中
改正法律案外二件ノ委員ニ、併セテ付託セランコトヲ望ミ
マス
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=28
-
029・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス-日程第七明治四十一
年法律第三十五號中改正法律案第一讀會ヲ開キマス永
井樺太長官
第七明治四十一年法律第三十五號中改
正法律案(政府提出)第一讀會
明治四十一年法律第三十五號中改正法律案
明治四十一年法律第三十五號中左ノ通改正ス
第一條中「樺太廳立小學〓員」ノ下ニ、「樺太公立小學
校〓員」ヲ加フ
第三條及第五條中「樺太廳立小學校正〓員」ノ下ニ
「及樺太公立小學校正〓員」ヲ加フ
第四條中「市町村立小學校正〓員ノ在職年月數樺太
廳立小學校正〓員」ヲ「市町村立小學校正〓員、樺太
廳立小學校正〓員及樺太公立小學校正〓員」ニ、「小
學校ノ正〓員ト樺太廳立小學校正〓員トノ間」ヲ小
學校正〓員、樺太廳立小學校正〓員及樺太公立小學
校正〓員相互間」ニ改ム
附則
本法ハ大正十年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法ハ大正九年八月二十八日以後大正十年三月三十
一日迄ニ轉職、退職又ハ死亡シタル樺太公立小學校〓
員及其ノ遺族ニ付亦之ヲ適用ス
本法施行ノ際現ニ樺太廳立小學校又ハ樺太公立小學
校ノ〓員ノ職ニ在ル者ノ大正九年勅令第三百四十三
號ニ依リ樺太公立小學校ニ指定セラレタル小學校ニ小
學校本科正〓員ノ免許狀ヲ有シテ在職シタル期間ハ其
ノ二分ノ一ヲ樺太公立小學校ノ在職期間ト看做ス但
シ學校職員ノ退隱料ヲ受クル者ノ當該在職期間ハ此ノ
限ニ在ラス
〔政府委員永井全次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=29
-
030・永井金次郎
○政府委員(永井金次郞君) 本案ニ對シマシテ說明ヲ致
シマス、本案ハ樺太公立小學校ノ正〓員ニ對シマシテ、退隱
料及遺族扶助料給與ノ途ヲ開キタイ爲メニ、本案ヲ改正
シタイト云フノデゴザイマス、其理由ヲ聊カ中上グマス、現今
樺太ノ小學校ノ制度ニ於キマシテハ、國立卽チ國費ヲ以テ
設置致シテ居リマス廳立小學校ト、部落共同ノ費用ヲ以
テ設置致シタル所ノ公立小學校ト二種アルノデアリマス、而
シテ前者ニ在職スル正〓員ニ對シテハ、內地ノ小學校ノ〓
員退隱料ヲ適用致シテ居リマスケレドモ、此公立小學校ニ
奉職シテ居リマス正〓員ニ對シマシテハ、退隱料ノ恩典ガ
無イノデアリマシテ、斯ノ如ク同ジク國民ノ義務〓育ヲ擔
任シテ居ル者ニ差別的待遇ヲ致スト云フコトハ、甚ダ不公
平ノ極デアルト考ヘマスルデ、今囘此法律ヲ改正致シマシテ、
公立小學校〓員ニ對シテモ、同ジク其恩典ニ浴セシメタイ
ト云フノデアリマス、其意味ヲ以チマシテ、本案ヲ改正致シ
タイノデアリマス、ドウゾ御審議ノ上御協賛アランコトヲ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=30
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031・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第八、右議案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=31
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032・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ便宜土政府提出地方鐵道法中改
正法律案外三件ノ委員ニ併セテ付託セラレンコトヲ望ミ
マス
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=32
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033・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ガ無イト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第九水道條例
中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告
ヲ求メマス、麓純義君
第九水道條例中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(報告請參加多分
報告書
一水道條例中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年三月九日
水道條例中改正法律案委員長
麓純義
衆議院議長奧繁三郞殿
〔麓純義君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=33
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034・麓純義
○麓純義君 只今日程ニ上リマシタル所ノ水道條例中
改正法律案ノ委員會ノ經過ヲ御報告致シマス、御承知ノ
通リ本案ハ、内務大臣ノ職權ノ一部ヲ地方長官ニ委任ス
ルノ途ヲ開キタイト云フノガ、骨子デアリマスノデゴザイマス、
委員會ニ於キマシテハ審議ヲ盡シマシテ、全會一致可決致
シマシタノデゴザイマス、質疑應答ノ點ハ速記錄ニ讓リマシ
テ爰ニ省略スルコトニ致シマス、此段御報告致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=34
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035・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ諮
リマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=35
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036・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ノ二讀會ヲ開クニ御異議ガナ
イト認メマス、仍テ第一一讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=36
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037・岩崎勲
○岩崎動君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
省略シテ、委員長報告通リ可決確定アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=37
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038・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=38
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039・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ直チニ
本案ノ第二讀會ヲ開キマス
水道條例中改正法律案第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=39
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040・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ本案ハ
委員長報告通リ可決確定致シマシタ、日程第十、第十一
ハ同一委員ニ付託セラレタル議案ナルニ依リ、一括議題ニ
供シマス、大正九年法律第十號中改正法律案、憲兵補ノ
恩給ニ關スル法律案、之ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマ
ス、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長山本条太郞君
第十大正九年法律第十號中改正法律案
(政府提出)第一讀會ノ續/報告解析...
報告書
一大正九年法律第十號中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年三月九日
大正九年法律第十號中改正法律案
委員長山本条太郞
衆議院議長奥繁三郞殿
第十一憲兵補ノ恩給ニ關スル法律案
(政府提出)第一讀會ノ續(〓〓〓し
報告書
一憲兵補ノ恩給ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年三月九日
憲兵補ノ恩給ニ關スル法律案委員長
山本条太郞
衆議院議長奧繁三郞殿
〔山本条太郞君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=40
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041・山本条太郎
○山本条太郞君 大正九年法律第十號中改正法律案
ノ趣旨ハ、現行法ニ依ルトキハ學校〓員、職員、巡査、及看
守等ノ退職者ノ一部ニ對シマシテ、昨年改正增額セラレマ
シタル、恩給金ノ恩典ヲ與フルコトガ出來ヌコトニナッテ居リ
マスノデ、ソレ故ニ茲ニ特別ノ規定ヲ設ケマシテ一般恩給ヲ
受ケツヽアル人〓ト平等ノ待遇ヲ與ヘントスルノガ、此案ノ
趣旨デゴザイマス、委員會ハ審議ノ上、全會一「致ヲ以テ此
案ヲ可決致シマシタ、又朝鮮ノ憲兵補ニ對スル恩給令ノ延
長ハ委員會ニ於キマシテハ、其人〓ノ現在ノ職務及待遇等
ニ就キ質問應答ヲ重ネマシテ、政府ノ提案ヲ相當ト認メマ
シテ、是亦全會一致ヲ以テ可決致シマシタノデアリマス、兩
問題ノ委員會ノ報告ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=41
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042・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 兩案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
御諮リ致シマス
〔「二讀會ヲ開クニ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=42
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043・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ御異議ナシト認
メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=43
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044・岩崎勲
○岩崎勳君 日程第十第十一ノ二案ハ、一括シテ直チニ
第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通リ
可決確定セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=44
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045・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=45
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046・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ直チニ
右兩案ノ第二讀會ヲ開キマス
大正九年法律第十號中改正法律案
第二讀會(確定議)
憲兵補ノ恩給ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=46
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047・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ右兩
案ハ委員長報告通リ可決確定致シマシタ、日程第十二、
第十三是ハ共ニ同一委員ニ付託セラレタル議案ナルニ依
リ、一括シテ議題ニ供シマス、卽ヲ地方鐵道法中改正法律
案、地方鐵道補助法中改正法律案、兩案ノ一讀會ノ續ヲ
開キマヌ、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長米田穣君
第十二地方鐵道法中改正法律案(政府
提出)第一讀ノ會續(報告電話 か〓
報告書
一地方鐵道法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年三月九日
地方鐵道法中改正法律案委員長
米田穰
衆議院議長奥繁三郞殿
第十三地方鐵道補助法中改正法律案
(政府提出)第一讀會ノ續(報告麗
報告書
一地方鐵道補助法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
段及報告候也
大正十年三月九日
地方鐵道補助法中改正法律案委員長
米田穰
衆議院議長奥繁三郞殿
地方鐵道補助法中改正法律案中左ノ通修正ス
附則中但書ヲ削ル
〔米田穰君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=47
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048・米田穰
○米田穰君 御報告致シマス、只今議題ニナッテ居リマス
ル地方鐵道法中改正法律案、及地方鐵道補助法中改正
法律案、此二案ニ就テ委員會ノ經過及結果ヲ申上ゲタイ
ト存ジマス、委員會ハ種々ナル質問應答ヲ重ネマシタ末、此
地方鐵道法中改正法律案、是ハ愼重審議ノ末、全會一致
ヲ以テ、政府ノ提出セラレタル案通リ決定致シタ次第デアリ
マス、次ノ地方鐵道補助法中改正法律案ノ此但書ニ至リ
マシテ、種々ナル御意見ノ交換モアリマシタガ、匹田銳吉君
ノ御意見デ、但書ダケヲ削除スル、其但書ハ「但シ本法施行
前免許ヲ受ケタル地方鐵道ニ對スル補給金額ニ關シテハ、
仍從前ノ例ニ依ル」此項ヲ削除スルト云フ御意見ヲ提出サ
レタノデアリマス、其理由ハ大正十年四月一日ヨリ此改正法
律案ニ依ルト云フコトノ政府案デアリマスルガ、サウ致シマス
ルト、旣成鐵道竝ニ最近認可ヲ受ケタル鐵道ニ對シテ、矢
張現行法通リ五朱ノ補助シカ出來ナイト云フコトニナルノ
デアリマス、故ニ斯クナッテハ、既設鐵道中デモ餘程困難ナ鐵
道モアル隨テ改良スルコトモ出來ナイ、甚シキニ至ッテハ、提
灯ヲブラ下ゲテ進行シテ居ルト云フ鐵道モアルサウデアリマ
ス、是等ヲ如何ニ政府ガ監督シ、又其改良ヲ命ジテモ、命ジ
得ルコトガ出來ナイト云フ狀態ノモノガ多々アルト云フノデ
アリマス、又終ニハ既ニ認可ヲ得タケレドモ、今日漸クニ株ヲ募
集ニ掛ッテ居ルモノモアリ、又株ノ募集ニ至ラヌト云フモノモ
アルノデアル、又其等ニ對シテモ現行法卽チ五朱デアッテ、改
正法ニ依ルコトガ出來ナイト云フコトハ、全ク當ヲ得ナイ事デ
アルカラ、此但書ヲ削除スルノガ穏當デアルト云フ御意見
ガ出タノデアリマス、其修正意見ニ對シマシテハ、憲政會ヲ代
表シテ鵜澤宇八君、又國民黨ヲ代表シテ湯淺凡平君、庚申
倶樂部ヲ代表シテ佐々木平次郞君、此三君ガ何レモ修正案
ニ賛成ノ理由ヲ述ベテ、匹田君ノ此修正案ニ御賛成ニナッ
タ次第デアリマス、仍テ委員會ハ斯ノ如キ次第デ、一人ノ異
議者ナク修正案ヲ全會一致ヲ以テ可決致シタ次第デアリ
マス、故ニ本會ニ於カセラレテモ、何卒委員會ノ如ク全會一
致ヲ以テ可決アランコトヲ望ミマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=48
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049・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 兩案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御
諮リ致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=49
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050・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第三讀會ヲ開クニ御異議ナイト認
メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=50
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051・岩崎勲
○岩崎勳君 日程第十二及第十三ニ掲ケタル兩案ヲ一
括シテ、直チニ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ委員
長報告ノ通リ、卽チ日程第十三地方鐵道補助法中改正
法律案ハ、委員會ニ於テ修正議決ノ通リ可決確定セラレン
コトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=51
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052・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=52
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053・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ直チニ
右兩案ノ第二讀會ヲ開キマス
地方鐵道法中改正法律案
第二讀會(確定議)
地方鐵道補助法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=53
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054・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ此兩
案ハ委員長報告ノ通リ可決確定致シマシター-日程第十
四第十五ノ議案ハ、提出者同一ナルニ依リ一括議題ニ供
シマス、日程第十四、刑事訴訟法中改正法律案、第十五刑
法中改正法律案ヲ一括シテ其第一讀會ヲ開キマス、禱苗
代君
第十四刑事訴訟法中改正法律案(禱苗
代君提出)第一讀會
刑事訴訟法中改正法律案
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第九十條ニ左ノ但書ヲ加フ
但檢事又ハ司法警察官ノ作リタル文書ハ法令ニ特別
ノ規定アルモノヽ外犯罪ノ證據ト爲スコトヲ得ス
第百九十四條第一項及第二項ヲ左ノ如ク改ム
證人、鑑定人及ヒ被告人ノ訊問ハ裁判長之ヲ爲スモ
ノトス
陪席判事、辯護人ハ裁判長ニ告ケテ證人、鑑定人及
ヒ被告人ヲ訊問スルコトヲ得
第二百八條中第五號ノ次ニ左ノ一號ヲ加へ「第六號」
ヲ「第七號」ニ改ム
第六檢事及ヒ訴訟關係人カ必要ナリシトテ記入
ヲ求メタル事項
第二百八十七條ニ左ノ一項ヲ加フ
刑ノ執行猶豫ヲ爲スヲ相當ナリトスルトキ亦同シ
第二百九十二條第一項中「其判決確定シタルトキハ」ノ
下ニ「被告人又ハ辯護人若クハ」ヲ加フ
第十五刑法中改正法律案(禱苗代君提
〓〓第一讀會
刑法中改正法律案
刑法中左ノ通改正ス
第九十五條第一項中「三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處
ス」ヲ「三年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金
ニ處ス」ニ改ム
第二百五十三條中「一年以上」ヲ削ル
〔禱苗代君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=54
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055・祷苗代
○禱苗代君 本案提出ノ理由ヲ簡單ニ陳述致シマス、本
案ノ一部ハ昨年七月ノ特別議會ニ於キマシテ、滿場一致ヲ
以テ可決セラレタ案デアリマスルガ、會期切迫ノ爲メニ、貴
族院ニ於テ審議未了ノ儘デ法律トシテ成立致シマセナカッ
タガ故ニ、更メテ本議會ニ於テ提出ヲシ、尙ホ數箇條ノ緊要
缺クベカラザル箇條ヲ加ヘテ、改正ヲ加ヘントスル案デアリ
マス、本案ノ改正ノ要旨ハ、人權蹂躪問題ノ惹起ヲ未然ニ
防止ヲ致シ、サウシテ此時弊ノ救濟ヲ爲シ、尙ホ時勢ノ進運
ニ伴ヒマシテ個人ノ權利ヲ擴張シテ人權ヲ擁護セントスルノ
ガ目的デアリマス、此目的ヲ達スル爲メニ最モ急ヲ要スル點
ヲ選擇致シマシテ、刑事訴訟法ニ於テ五箇條ノ改正案ヲ提
出致シテ居ルノデアリマス、卽チ刑事訴訟法ノ九十條ニ檢
事、司法警察官ノ作製シタル所ノ聽取書ハ之ヲ證據ト爲
スコトヲ得スト云フコトノ但書ヲ加ヘマシテ、從來ノ捜査機
關ガ名ヲ搜査ニ藉リテ、被告其他ノ訴訟關係人ノ訊問ヲ
爲シテ、聽取書ナルモノヲ作製シテ居リマスガ、聽取書ヲ證
據トスルト云フ所ノ弊風ガアリマス故ニ、此弊風卽チ聽取
書ヲ證據ニスルト云フコトハ、刑法訴訟ノ本旨ニモ反シ、且
ツ人權蹂躪問題ヲ惹起スル所ノ虞ガアリマスカラシテ、此弊
風ヲ根絕セントシテ、刑事訴訟法九十條ニ只今申シマシタ
如キ但書ヲ加ヘントスルノデアリマス、第二ニハ刑事訴訟法
ノ百九十四條ニ於テ、陪席判事ハ裁判長ニ告ゲテ、被告人
其他ノ訴訟關係人ヲ訊問スルコトガ出來マスケレドモ、辯
護人ニ對シテハ、其權利ガ附與セラレテ居ナイノデアリマス、
ソレデアリマスルカラ此百九十四條ニ於テ、辯護人モ陪席
判事ト同樣ニ、其被告人ヲ直接訊問スルコトガ出來ルト云
フ箇條ニ訂正致シタイノデアリマス、尙ホ二百八條ニ於テ、
公判始末書ニ檢事及訴訟關係人ガ記載ヲ求メタル所ノ事
項ヲ書記ニ錄記セシメテ、サウシテ事實ノ眞相ヲ明確ニシテ
辯護權ヲ確實ニスルト同時ニ、其訴訟ノ進行ト證據方法
ヲ明カニスル必要ガアリマスノデ、此二箇條ニ口ハ今申上ゲマ
シタヤウナ文句ヲ加ヘタイト存ズルノデアリマス、次ニ第三ニ
ハ刑事訴訟法ノ二百八十七條二項トシテ、大審院ニ於テ
モ刑ノ執行猶豫ヲ相當ナリト認メタ時分ニハ、擬律ノ錯
誤、若クハ法律ニ反イテ公訴ヲ受理シタルニ依ッテ、判決ヲ
破棄シタルト同様ニ、大審院自ラ此執行猶豫ヲ爲サシメン
トスルノガ、刑事訴訟法二百八十七條第二項ヲ設ケマシタ
所以デアリマス、其理由ハ大審院ハ是ハ破棄スル理由ガアル
場合ニ限ッテ、刑法施行法ノ五十五條ノ第二項ニ依シテ、新
タニ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ爲シテ居リマスケレドモ、其他ノ
場合ニ於キマシテハ、下級栽判所ニ於キマシテ、常識ノ無イ
慘刑酷罰ガアッタト云ッテモ、執行猶豫ノ言渡ヲ爲サナイノ
デアリマスガ故ニ、國民ハ其栽判所ノ異ルニ依ッテ、非常ナ不
公平ナル裁判ヲ受ケツヽアルノデアリマス、乃チ吾ミノ取扱
ヒマシタ事件ニ就テ其一例ヲ擧ゲマスレバ、十二錢ニ相當
スル所ノ或財物ヲ盜ミタルガ故ニ、懲役四箇月ニ處スル、是
ガ而モ初犯デアルト、斯ノ如キ事ハ餘リニ人權、詰リ人ノ自
由ト云フモノヲ廉ク見積ッタト云フ、斯樣ナ判決ガアリマシ
テモ、大審院其他ニ於テ法律ニ違背シテ居ナイ、其手續ニ
違背シテ居ナイト云フコトデアリマシタナラバ、之ヲ破棄スル
コトモ出來ナケレバ、之ニ對シテ執行猶豫ヲ與へルト云フヤ
ウナコトガ出來ナイノデアリマス、デ斯樣ニ此改正案ヲ設ケ
ナケレバ、只今申上ゲタヤウナ不都合ガ生ジマスガ故ニ、サウ
シテ一面ニ於テハ又栽判所ガ、裁判所ニ依ッテハ其事情ヲ
見、其境遇ヲ考ヘテ、各〓相當ナル栽判ヲ受ケテ居リマスノデ
アリマスルガ故ニ、斯ノ如キ不權衡ヲ矯正致シテ、此慘刑酷
罰ヲ緩和ヲシテ、所謂之ヲ導クニ德ヲ以テシ、之ニ調ブルニ
禮ヲ以テシタナラバ、耻アッテ且ツ至レリデ、惡事ヲ再ビセズ
シテ、改過遷善ノ目的ヲ達スルコトガ出來ルノデアリマス、所
ガ卽チ二百七十八條ノ此第二項トシテ、大審院ニ於テモ刑
ノ執行猶豫ヲ破棄スル場合デアッテモ、刑ノ執行ヲ破棄スル
理由ガ無カッタ場合デアッテモ、其權能ヲ與ヘントスルノガ本
案改正ノ理由デアリマス、次ニハ刑事訴訟法ノ二百九十二
條ノ第一項ニ於テ被告人、ソレカラ辯護人ニ對シテモ、非常
上告申立期限ヲ認メントスルノデアリマス、從來ハ罪ナクシ
テ罰セラレ、若クハ相當ノ刑ヨリモ重ク罰セラレマシテモ、判
決ガ確定シタ以上ハ如何トモスルコトガ出來ナイ、唯ダ非常
上告栽判所ノ檢事ニ、其非常上告ノ申立權ガアルノミデア
リマスガ、是ハ其直接ニ利害關係及苦痛ヲ感ズル者ハ其檢
事ヨリモ卽チ被告人、及ソレニ關係シテ居ル辯護人ト云フモ
ノガ感ズルノデアリマスルガ故ニ、此被告人、辯護人ニモ、卽
チ非常上告權ヲ認メヤウトスルノデアリマス、此二百九十二
條ノ第一項ニ此箇條ヲ加ヘント欲スルノデアリマス、以上ハ
刑事訴訟法ノ改正ノ極ク簡單ナル理由デアリマスガ、次ニ
ハ刑法改正案提案ノ理由ヲ極ク簡單ニ申上ゲマス、我ガ刑
法ハ刑ノ量定ノ範圍ヲ頗ル廣クシテアリマス、又選擇刑ヲ
多クシテ置キマシテ、假令罪ガアリマシテモ、其境遇心事憫
ムベキ者ハ成ルベク之ヲ輕ク科シ、又其動機ニ於テ-情狀
ニ依ッテ自由刑ヲ科スルヨリモ、財產刑ヲ科シテ、一面ニ於
テハ改過遷善ヲ圖リ、又一面ニ於テハ勸善懲惡ノ目的ヲ闡
明シテ刑ヲ無クシ、又刑ヲ少クセントスル所ノ、進步シテ居
ル所ノ主觀主義ヲ執ッテ居ルノデアリマス、然ルニ改正案ト
シテ提案シテ居リマスル所ノ刑法第九十五條ハ、公務員職
務執行ノ妨害ノ場合、此場合ハ如何ニ其情狀憫ムベキデ
アッテモ、酌量スベキモノデアッテモ、自由刑ノミデアッテ財產刑
ヲ設ケテ居リマセヌ、是ハ他ノ場合ト頗ル權衡ヲ失シテ居リ
マスガ故ニ、此場合ニモ矢張自由刑ト同時ニ財產刑ヲモ設
ケテ、其情憫ムベク、其動機ニ於テ酌量スベキ場合デアリマ
シタナラバ、矢張自由刑ヲ科シタ方ガ適當デアルト信ジマス
ガ故ニ、此改正案ヲ提出致シマシタ、次ニハ二百五十三條ノ
業務上橫領ノ場合デアリマス、此場合ハ業務横領デアッタ
ナラバ、一年以上十年以下ノ懲役ヲ科スルト云フコトデア
リマスガ、シテ見ルト小僧ガ主人ノ金ヲ一圓盜ンデモ、尙ホ
之ヲ一年以上十年以下ノ懲役ヲ科セナケレバナラヌト云
フコトデアリマシテ、曩ニ申シマシタ我ガ刑法ノ輕ク-寧ロ
事情憫ムベキ境遇ニ於テ、頗ル憫諒スベキ場合ニ於テモ、其
條規ニ當嵌ラナケレバナラヌト云フコトニナリマシテ、一般
卽チ刑法ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイ事柄ガ、往々アルノ
デアリマスカラ、此條ヲ改正シテ、漸次先刻申上ゲマシタ所
ノ刑法ノ目的ヲ達スル爲メニ、此改正ヲ加ヘル必要ガアル
ト信ジマシタガ故ニ、以上ノ改正案ヲ提出シタ次第デアリマ
ス、ドウゾ御審議ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=55
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056・岩崎勲
○岩崎勳君 兩案ヲ一括シテ戶水寬人君外三名提出ノ、
刑事訴訟法中改正案外二件ノ委員ニ、付託セラレンコト
ヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=56
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057・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第十六刑法中改正
法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、提出者宮古啓三郞君
第十六刑法中改正法律案(宮古啓三郞
君外七名提出)第一讀會
刑法中改正法律案
刑法中左ノ通改正ス
第百九十六條ノ二裁判、檢察、警察ノ職務ヲ行ヒ又ハ
之ヲ補助スル者其職務ヲ行フニ當リ刑事被告人其他
ノ者ニ對シ恐嚇又ハ詐言ヲ用ヒテ陳述ヲ爲サシメタル
トキハ六月以下ノ禁錮又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
〔宮古啓三郞君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=57
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058・宮古啓三郎
○宮古啓三郞君 極メテ簡單ニ提案ノ理由ヲ申上ゲマ
ス、此案ハ人權蹂躪ヲ豫防致シマシテ、犯罪ヲ生ゼシメナイ
ト云フコトヲ目的ト致シマスルモノデ、前議會ニ提出致シマ
シタモノト大同小異デアリマス、要スルニ司法官憲ガ被告人
其他ニ對シマシテ、恐嚇詐言ヲ用井ルト云フコトヲ防ガウト
スルノデアリマス、而シテ又其恐嚇詐言ニ依ッテ調書ヲ作リ、
之ヲ證據トスルト云フヤウナコトノ無イヤウニ致サウトノ趣
意デゴザイマス、爰ニ一言附加ヘテ置キマスル事柄ハ、前議
會ニ於キマシテ、委員會ニ於テ政府モ之ニ對シテ同意ヲ表
セラレタノデアリマスガ、唯少シク範圍ガ狹キニ失スルト云フ
コトデゴザイマシタカラ、委員會ニ於テハ範圍ヲ擴メマシテ、
官吏吏員處罰ニ關スル法律案ト云フコトニ直シマシタ、サ
ウシテ委員會デ之ヲ可決致シマシテ、本院ニ於テモ亦之ヲ可
決シテ貴族院ニ送シタノデアリマス、然ル所「官吏吏員處罰
ニ關スル法律案」ト云フコトニシタ爲メニ、大分議論ガ起リ
マシタガ、此法案ハ目下焦眉ノ急トスル所ノモノニ對シテ、
當嵌メタイト云フ趣意デアルノデアリマシテ、其最モ焦眉ノ
急トスル所ノモノハ、卽チ司法官憲ニ對スル恐嚇詐言ヲ防
ガウト云フノデアリマス、他ノ官吏吏員ニ對シマシテモ、全ク必
要ガ無イト云フ譯デハゴザイマセヌガ、併ナガラ比較的焦眉
ノ急デハナイノデアリマス、ソレデアリマスカラ、成ベク議論ノ
無イヤウニシタイト云フ考カラ致シマシテ、此度ハ官吏吏員
處罰ニ關スルト云フヤウニ廣ク致シマセヌデ、矢張司法官憲
ニ對スルダケニ止メルコトニ致シマシテ、提案ヲ致シマシタノ
デゴザイマスカラ、何卒御賛成ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=58
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059・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ戶水寬人君外三名提出ノ、刑事訴
訟法改正法律案外四件ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=59
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060・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第十七未成年者飮
酒禁止法案ノ第一讀會ヲ開キマス、提出者根本正君
第十七未成年者飮酒禁止法案(根本正
君外五名提出)第一讀會
未成年者飮酒禁止法案
未成年者飮酒禁止法
第一條未成年者ハ酒類ヲ飮用スルコトヲ得ス
未成年者ニ對シテ親權ヲ行フ者若ハ親權者ニ代リテ
之ヲ監督スル者未成年者ノ飮酒ヲ知リタルトキハ之
ヲ制止スヘシ
營業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販賣又ハ供與スル者
ハ未成年者ノ飮用ニ供スルコトヲ知リテ酒類ヲ販賣
又ハ供與スルコトヲ得ス
第二條未成年者カ其ノ飮用ニ供スル目的ヲ以テ所
有又ハ所持スル酒類及其ノ器具ハ行政ノ處分ヲ以テ
之ヲ沒收シ又ハ廢棄其ノ他ノ必要ナル處置ヲ爲サシ
ムルコトヲ得
第三條第一條第二項、第三項ノ規定ニ違反シタル者
ハ科料ニ處ス
第四條營業者カ未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ
本法ニ依リ之ヲ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ
適用ス但シ其ノ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有
スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ
他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法ニ違反シタル
トキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ處罰ヲ免ルル
コトヲ得ス
明治三十三年法律第五十二號ハ本法ニ依ル犯罪ニ
之ヲ準用ス
附則
本法ハ大正十年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔根本正君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=60
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061・根本正
○根本正君 諸君、本案ハ明治三十三年第十四帝國議
會ヨリ提出セラレマシテ、旣ニ帝國議會ヲ經ルコト三十囘、
本院ニ提出セシコト此度デ十八囘デアリマス、而シテ衆議
院ヲ通過シマシタコトハ十一回ニナッテ居リマス、併ナガラ貴
族院ニ於テ其調査ヲ終了スルコトガ出來ズ、或ハ否決サレ
タコトモアリマシテ、今日ニ及ンダ歴史アル法案デアリマス、
元來未成年者禁酒法案ヲ出ス前ニ、私ハ此國家ノ基礎ト
シテ最モ重要ナル國民徵兵ノ實ヲ擧ゲ、又國民〓育ヲ完成
スルコトニ就テ、本案ハ最善必要ノ法律デアルト信ジマス、
我ガ帝國ニ於テハ早ク此徵兵令ト云フモノガ行レマシタケ
レドモ、國民〓育ノ制度ト云フモノハ、漸ク近來完成スルノ
氣運ニ際シタ譯デアッテ、明治三十一年マデハ、全國ノ小學
校ニ於テ授業料ト云フモノヲ取ッテ居ッタノデアリマス、併ナ
ガラ立憲政治ノ最モ大切ナルモノハ、國民ノ徴兵、又國民
ノ〓育デアルカラシテ、私ハ明治三十二年ニ於キマシテ、小
學校授業料全廢ト云フ建議ヲ出シタノデアリマス、此建議
案ガ通過ヲ致シマシタノデ、其當時明治三十二年二月千
五日ニ於テ、小學校〓育費國庫補助法案ト云フモノヲ提
出シマシタ所ガ、幸ニ此法律案ガ通過シマシテ、爾來二百万
圓ツヽ國庫ヨリ支辨スルコトニナッタノデアリマス、デ此〓育
費國庫植助ト云フコトハ何ノ爲メデアルカト云フナラバ、卽
チ國民徴兵ト云フモノノ實ヲ擧ゲル爲メニ、我ガ七千萬ノ
子弟、卽チ彼兵ニ出ルベキ者ガ同ジヤウニ〓育ノ大切ナルコ
トヲ覺エ、又同ジヤウナル〓育ヲ受ケナケレバナラヌ、單ニ金
持ノ子供バカリデナク、一般國民ノ子弟ガ徵兵ニ出ル以上
ニハ、同ジヤウニ國民ノ〓育ヲ受ケナゲレバナラヌ、ソレニハ
月謝ヲ取ッテハ宜シクナイ、所謂歐米先進國ニ做ァテ、〓育
ノ授業料ト云フモノハ全廢シナケレバナラヌト云フ結果ヨリ
乃チ明治三十三年ヨリ、日本ニ於テ此授業料ト云フモノガ
廢サレタノデアリマス、之ガ廢セラレタ以上ハデス、ドウ云フ
風ナ事ニ此稅ヲ取ルカト云フナラバ、御承知ノ通リ子供ガ
有ッテモ無クッテモ、地方稅ナリ又國稅ナリニ於テ、此小學校
ノ授業料ト云フモノハ、卽チ今ヲ去ルコト二十二年前ニ於
テハ、二千万圓デ足リタノデアリマス、然ルニ是ガ益〓其費用
ガ增加スルニ從ッテ、ドウシテモ此小學校ノ子供ヲシテ、無月
謝デ學パシメルト云フ法律ガ出來夕以上ニハ、子ガ無クテモ
租稅ヲ出シテ隣ノ子供ヲ〓育スルノデアルカラシテ、其子弟
ガ完全ナ〓育ヲ受ケ、又酒ナドヲ飮マナイデ立派ニ學ブコト
ガ出來ルナラバ、此租稅ト云フモノハ有效ニナルノデアル、併
ナガラ若シ此未成年者ニ於キマシテ、卽チ中學校或ハ其他
ノ學校ノ子弟ガ酒ヲ飮ンダ爲メニ、自分ノ健康ヲ害シ、又學
ブベキ所ノ學問ヲ遂グルコトガ出來ナカッタナラバ、卽チ吾ニ
カラ出ス所ノ租稅、其他二千万ト云フヤウナモノハ、無駄
ニナルト云フ結果ニナリマスカラシテ、此小學校授業料ノ全
廢ヤ云フモノヲ本員ガ提出シテ通過シタ以上ハ、是非トモ
本法案ト云フモノハ無クテハナラヌノデアリマス、(「ヒヤ〓〓」)
若シ之ガ無カッタナラバ、卽チ籠デ水ヲ汲ムヤウナ譯デアッテ、
其租稅ノ有效ナルコトヲ失フ譯デアリマスカラ、私ハ此法案
ヲ提出シタノデアッテ、何カ世間デハ此未成年者禁酒法案
ハ、私ガ突然ニ或ハ道德上或ハ宗〓上カラ提出スルモノデ
アルカノ如ク、思フテ御在デニナル方モ或ハアルカモ知レマセ
ヌガ、決シテサウ云フ譯デハナイ、則チ國民〓育ト云フモノハ
租稅ヲ以テシナケレバナラヌト云フ原則ヲ立テマシタ故ニ、
其子弟ヲ取締ルト云フコトガ、當然デアルト云フ所ノ所謂
理由アル下ヨリ、之ヲ提出シタモノデアリマス、我國ニ於キマ
シテハ、其結果貧富ノ別ナク授業料ト云フモノヲ取リマセヌ
故ニ、國民〓育ヲ興シ得ルコトニナッタノデアリマスカラシテ、
卽チ立憲政治ノ下ニ於テ特ニ注意スベキ一大問題デアルト
云フコトハ、諸君ノ御承知ノ通リデアリマス、斯ノ如ク此〓
有ノ方計ガ、卽チ無月謝ヲ以テ學バシメルト云フ法律ガ出
來マシタ故ニ、年々二百万圓ツヽ國庫ヨリ出スヤウニナリマ
シタケレトモ、二百万圓デハ足リナイト云ッテ、此授業料ヲ廢
シタ結果、年々歲々地方費ガ殖エテ來ルカラ、國庫ガ支辨ヲ
シナケレバナラヌト云フ建議ガ段々議會ニ出夕、則チ其結果
大正六年ニ至ッテ天下ノ輿論トナッテ、諸君ガデス、我ガ政友
會ヲ首メ其他ノ政黨ニ於キマシテモ、滿場一致ヲ以テ一千
万圓ノ國費ヲ支辨スルコトニナッタノデアリマス、斯ノ如ク二
十二年前ニハ僅ニ二千万圓ノ少數ノ費用デアリマシタガ、
今日ハ如何デアルカト言ヘバ、諸君、御承知ノ通リ小學校、
中學校、師範學校ヲ集メマスト、一億八千万圓ノ巨額ニ達
スルノデアリマス、一躍シテ二十有餘年ノ間ニ殆ト八倍九
倍ノ巨額ナル稅ヲ、諸君ヨリ御出シニナルコトニナッテ居ルノ
デアル、シテ見マスルト云フト、子供ノ無イ人デモ考ヘテ出サ
ナケレバナラヌデアルカラシテ、租稅ヲ出シテ〓育ヲスル以上
ニハ、卽チ是ハ法律ヲ以テ取締ルト云フコトハ、當前ノ事デ
アルノデアリマス、故ニ此法律ハ二十年前ニ私ガ提出シタ時
ヨリモ、尙ホ今日ハ國家ニ必要ナルモノト認メルコトガ出來
ルノデアリマス、何トナレバ一億八千万圓ノ巨額ノ租稅ヲ以
テ、今日養フ所ノ此國民〓育デアリマスルカラシテ、益、此
法律ノ必要ナルコトハ判ッテ居ル、又此〓育費ノ一億八千
万圓バカリデハナイ、此〓育ヲ受ケタ子弟ガデス、國民徵兵
ガアル、卽チ海陸軍ノ爲メニハ、此間モ度〓御演說ニナッテ居
ル通リ、吾〓國民ハ七億万圓ノ大金ヲ租稅ヲ以テ之ニ充テ
テ居ルノデアリマス、シテ見レハ此國民徴兵、【卽ヲ海陸軍ト
云フモノヲ有效ニセシムルノニハ、此普通〓育ト一云フモノヲ洵
ニ有利有效ナルモノニシテ、始メテ國民徵兵ノ實ヲ擧ゲルコ
トニナルノデアリマスカラシテ、此法案ハ益"諸君ノ重要ナル
一ノ問題トシテ、之ヲセナケレバナラヌト云フコトニナルノデ
アリマス、(「贊成」)實ニ靑年タル者ハ、酒ヲ飮ンデドウ云フ結
果ヲ見ルカト云フナラバ、サウ云フ事ハ今日ハ申上ゲマセヌ、
(「分リマシタ」ト呼フ者アリ)此事ハ諸君御承知デアリマス
ルカラシテ、申上ゲマセヌデアリマスルケレドモ、我國ニ於キマ
シテ、非常ニ此靑年ノ風〓ト云フモノガ近頃ハ紊レタ、私ガ
聞ク所ニ依リマスレバ、地方ニ靑年會ト云フモノガアル、隨
分地方ニ民力涵養ナドト言ッテ、內務省或ハ文部省杯ヨリ
派遣シテ演說ガアリマスルケレドモ、其民力涵養ノ御演
說ノ後デ、靑年ガ酒ヲ飮ムト云フヤウナ事ガアルノデアリマ
ス、之ヲ取締リマスルノニハ、ドウシテモ矢張此法律ト云フモ
ノガ無ケレバナラヌト云フコトニナリマスカラシテ、是非此法
律ト云フモノハ、此度ハ成立スルヤウニ御願シタイノデアリ
マス(「賛成々々」)又世界ノ大勢ハ今日ハ最モ吾こ國民トシ
テ注意スベキモノハ、時間ト能率デアリマス、若シ此時間ト
能率ト云フモノヲ閑却スル所ノ人、閑却スル所ノ國ト云フモ
ノハ必ズ衰微スルト云フ、亞米利加ノ紐育「コロンビヤ」大學
ノ「リー」博士ガ申スコトニ、後來世界人類ニ幸福ヲ與ヘルモ
ノハ、時間ト能率ト云フモノヲ能ク〓究ヲシテ、之ヲ利用ス
ル所ノ人、之ヲ利用スル所ノ國デアルト申シマシタノデアリマス
此時間ト能率ト云フモノヲ閑却シ、或ハ忘レル、是ハ何人ガ
スルカト云フナラバ、卽チ此酒ノ害デアリマス、之ヲ未成年者
ノ時分ヨリ、時間ト云フモノハ大切ナモノデアル、酒ト云フモ
ノハ飮ムベカラザルモノデアルト云フコトヲ、法律ヲ以テ之ニ
〓ヘマシタナラバ、向フ數年ノ內ニハ、格別ノ事モアリマスマ
イケレドモ、必ズ三十年五十年ノ内ニハ、偉大ナル幸福ノ結
果ヲ來スト云フコトヲ、私ハ確信シテ疑ハザルモノデアリマス
(「ヒヤ〓〓」)實ニ此酒ノ害ト云フモノハ吾ニノ健康ヲ害シ、
吾ミノ財產ヲ害シ、遂ニ國家ニ納メル所ノ租稅ヲモ納ムルコ
トノ能ハザルヤウナ結果ヲ來スモノハ、何人デアルカト云へ
バ、主ニ酒ヲ飮ンデ自分ノ妻モ子供モ顧ミザル所ノ者ガ多
イノデアリマス、是等ノ所ノ者ヲ矯正シ、又近來殊ニ此思想
問題ト云フコトガ起リマシタケレドモ、思想問題ヲ解決スル
ノニハ、何ヨリモ此未成年者ニ酒ヲ禁ズルト云フノガ、宜シイ
チハ亞米利加ニ於テ酒ヲ禁ズルノハ何ガ因デアルカト云フ
ナラバ、此惡イ危險思想、卽チ今日一家ノ財產ヲ十分ニ造
ルコトノ出來ナイノハ何ノ爲メデアルカト云フナラバ、卽チ此
勞働者デアル、其勞働者ノ中デ酒ヲ飮ム所ノ者ガ一番危險
思想ヲ抱ク、(「ノウ〓〓」笑聲起ル)其故ニ酒ヲ林示ズルト云フ
コトヲ申シタノデアリマス、(「簡單々々」ト呼フ者アリ)斯樣
ナ譯デアリマスルカラシテ、諸君ノ御賛成ヲ得テ是非今年ハ
通シタイト思ヒマス、終リニ臨ンデ一言申上ゲテ置キタイ事
ガアルノデアリマス、此酒ヲ禁ジマスナラバ非常ナル貯金ガ
出來ルノデアリマス、是ハ未成年者ニハ限ラナイ、總テデア
リマスルガ、亞米利加ノ紐育市ダケデ、一兩日前ニ國勢院
カラ諸君-私ニ配付サレタ所ノ彼ノ小サナ本ノ中ニ紐育
市ハ四百七十万人ノ人口デアルト云フコトガ書イテアル、既
ニ今日ハ世界ノ大勢ハ、昔ハ倫敦ガ世界ノ大ナル市デアッタ
ガ、一昨日國勢院カラ渡サレタ所ノ物ヲ見マスルト、世界ノ
大ナル市ハ紐育デアル、倫敦ヨリ人口ノ多キコト三十万人
デアル、其市ガデス、昨年此一箇年ノ間ニ郵便貯金ガ增加
シタ、全體ハ減ラナケレバナラヌ、何故ナラバ戰ノ後デアルカ
ラシテ、勞働者ガ勞働ヲスルノニモ口ガ無イト一云フ場合デア
ルカラ、貯金杯ハ減ルベキモノト思ッタ所ガ、豈ニ圖ランヤ四
億二千二百万圓ノ增加デアルト云フコトヲ新聞ニ書イテア
ル、僅ニ一箇年ノ間ノ單ニ紐育市ダケデ以テ、四億二千二
百万圓ノ貯金ノ增加ト云フモノハ何ヨリ出タカト云フナラ
バ、亞米利加ノ國ハ五十年前ニ未成年者禁酒法案ヲ制定
サレテ、其結果ガ昨年全國ノ禁酒トナッテ、金持トナッタ證據
ヲ爰ニ擧ゲルコトガ出來ルノデアリマス、(拍手起ル)又盜賊
ノ數ガ減ッタト云フコトガアル、是ハ「クレーブランド」ト云フ諸
君ノ御承知ノ通リ「オハイヲ州」デアリマスカ、此「クレーブラ
ンド」ト云フ所ハ、神戶ト同ジヤウナ人口ガアル、七十万ノ人
口デアリマスガ、昨年酒ヲ飮マナイト云フ所ノ結果ト云フモ
ノハドウ云フ事デアルカト云フナラバ、盜賊ガ三百二十八人
減タタ、又夜ノ泥棒ガ五百八十三人減ッタ、掏摸ガドレダケ
減シタカト云フト四百六十五人減クタ、殺人罪ガドレ程減ッ
タカト云フト十三人減デアル、斯ノ如ク僅ニ一年ノ間ノ禁
酒ト云フモノハ、唯ダ一ツノ市デサヘモ、殆ド日本全國ノ三
分ノ一位キ增加シタト云フ風ニナルノデアリマスカラシテ、
諸君、此未成年禁酒法案卜云フモノガ通過シマシタナラバ、
我日本國ニ於キマシテモ、必ズ此大ナル利益ヲ得ルト云フ
コトヲ確信スルモノデアリマスカラシテ、本年ハ是非滿場一
致ヲ以テ通過ヲスルヤウニ御配慮ヲ願ヒマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=61
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062・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 提案者ニ對シテ質疑ノ通告ガア
リマス、之ヲ許シマス-奥村安太郞君
〔奥村安太郞君登壇〕「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者ア
〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=62
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063・奧村安太郎
○奧村安太郞君 諸君、酒ノ今日ノ問題ハ、殆ド世界的
ノ大問題デアリマス、私ハ矢張禁酒論者ノ一人デアリマシ
テ、酒ヲ禁ジテ居ルノヂヤナイガ、能ク飮マナイノデス、(笑聲
起ル)所ガ只〓ノ根本君ノ御話ニ依リマスト、獨リ未成年
者ノミニ禁酒ヲ命ズルト云フコトハ、私ハ餘リ殘酷デハナカ
ラウカト思フノデアリマス(「ヒヤ〓〓」)酒ニ依ッテ世界ノ統計
ガ是ミノ犯罪人ガ減リ、是ミノ病氣ガ減シタト云フコトハ、洵
ニ結構ナ事デアリマスルガ、是ハ成年者ノ飮酒家ノ例デアル
ト考ヘルノデアリマス、若シ未成年者ガ酒ヲ飮ムト假定シマ
シテモ、是ハ僅ニ十七八歲以上ノ少數未成年者デアリマス、
如何ニ大人ガ自由ヲスルト雖モ、未成年ノ代議士ガ居ラヌ
ト雖モ、未成年者ノ一人ヲ壓迫スルト云フコトハ、餘リニ殘
酷デアラウト考ヘマス、是ハ煙草トハ大ニ其趣ヲ異ニスルノ
デアリマス、煙草ハ飮食物デハナイノデアリマス、所ガ之ニ反
シテ酒ハ飮食物デアリマス、之ヲ未成年者獨リニ禁ズルト
云フコトハ、到底私ハ不可能ノ事デハナカラウカト思ヒマス、
一ニ之ニ就テ質問致シタイト思ヒマス、其故ニ若シモ禁ズ
ルナラバ、何故ニ成年者ノ飮酒ヲ禁ズルマデニ、徹底的ニ御
提案ニナラヌノカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、第二ニ
西洋ノ例ガ御提案ノ理由ニ書イテアリマシタガ、西洋ノ子
供ガ酒ヲ飮マナイコトニシテアル國モアルサウデスケレドモ、
西洋ノ食卓卜日本ノ宴會トハ、自ラ趣ヲ異ニシテ居リマス、
殊ニ況ヤ日本ニ强制シテ飮酒スルト云フ習慣ガゴザイマス、
此强制飮酒ノ弊ヲ以テ、尙ホ未成年者ノミヲ禁ズルト云フ
コトハ、出來ナイ事デハナカラウカト思フニモ拘ラズ、茲ニ
未成年者ノミヲ强制シテ之ヲ止メルト云フコトハ、孟子ノ
所謂民ヲ綱ニスルモノデハナカラウカト思フノデアリマス、
(「ノウ〓〓」)强テ犯罪人ヲ作ルモノデハナカラウカト思ヒマス、
ソレカラ第三ニ伺ヒタイノハ、未成年者ノ身體ニ中風ガ起ル
ト云フコトガ書イテアリマス、御提案ノ理由ノ中ニ····是ハ寧
ロ大人ノ方ニ起ル事デアル、未成年者ノ中風ト云フコトハ、
餘リ澤山ナイ事デアリマス、(笑聲起ル)其次ニモウ一ツ第四
ニ伺ヒタイノハ、日本ハ昔カラ儀式ニ酒ヲ用井ルノ風ガゴザ
イマス、是ハ未成年者ノミニ廢スルノデアリマスカ、若シ之ヲ
廢スルトスレバ、洵ニ大事ナル日本ノ禮儀ヲ廢スルコトニナ
リマス、(「水盃ヂヤ」ト呼フ者アリ)簡單ニ一寸伺ヒマス
〔根本正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=63
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064・根本正
○根本正君 諸君、只今ノ御質問ニナリマシタ名譽アル紳
士ハ、私ノ承知シテ居ル所デハ、大阪朝日新聞ノ記者ヲモ
遊パサレテ居ルヤウナコトニ承知致シテ居ルノデアリマス、
「ノウ〓〓」「間違ッテ居リマス」ト呼フ者アリ)サウデナイノデス
カ-サウデナケレバ取消シマスガ、彼ノ出來テ居ル小サナ本
ニハサウ書イテアル、(「名ガ違フ」ト呼フ者アリ)違ノテ居リマ
スカ····(笑聲起ル)ソレダケハ取消シマス、併ナガラ洵ニ時
勢後レノ御質問、何故ナレバデス、子供ニ酒ヲ飮マセナイデ
ハ可哀想デハナイカト云フコトデアリマスガ、可哀想デアルカ
ラ飮マセナイノデ、是ガ卽チ違ッテ居ルノデアリマス、可哀想
デアルカラ飮マセナイノデ、立派ニシテ大學ヲ卒業シテ、貴方
ニ親孝行ヲスル所ノ子供ヲ拵ヘルノデアリマス、貴方/御議
論ニ依ノタナラバ、可哀想デアルカラ飮メ飮メト言ウト、家カ
ラ送ル所ノ爲替貯金モ、皆ナ此神田ノ下宿屋デ使ッテシマウ
ノデアリマス、ソレデドウデアリマスカ、是ハ眞ニ子供ヲ愛スル
所ノ途デアリマセウカ、之ニ依フテ私ノ最初ノ答辯ハ盡キテ
居ルト思フ、大人ニ之ヲセヌカト云フコトデアリマスガ、是ハ
物ニハ順序ガアル、卽チ吾ヒ政友會ハ今日普通選擧ヲ唱ヘ
ナイノハ其譯デアル、順序ガアルケレドモ、此度級別廢止ニ
賛成シタノデアリマス、今日中學校ヲ卒業サセナイデ、大學
校ニ入レヤウト云フノハ、卵ノ木登リデ出來ナイ相談デアル
今日私ハ成ベク日本帝國ノ七千餘万ノ諸君殊ニ只今ノ御
質問ノ御方ニ對シテモ、御酒ヲ飮マセナイヤウニ願ヒタイケ
レドモ、是ハ出來ナイ相談デアル、出來ナイ相談ヲシテ此議場
ヲ假リニ騒ガセタ所デ、所謂氣狂ト云フコトニナッテシマウ、私
ハ此氣狂ハ自ラ嫌ヒデアリマスカラ、左様ナ法律案ヲ出サナ
イデ、成ベク我ガ日本帝國ニ適當スル所ノ未成年者ニ止メ
タノデ、是デサヘモ實行ガ出來ナイノデ、之ニ就テサヘモ貴族
院ハ御反對ニナルノデゴザイマス、デアリマスカラ、先ヅ以テ
貯金ヲスルニモ、一圓二圓溜メテ百万圓ニスルノデアリマス、
只今御質問ノ御方ハ、急ニ百万圓ノ金持ニナリタイト言ハ
レルヤウナモノデ、ソレハ泥棒デモシナケレバ出來ナイ相談デ
アリマス、左樣ナ事ハ出來マセヌカラ、物ニハ順序ガアル、小
學校ヲ通シテ中學校、高等學校、大學ト行カナケレバナラヌ
ソレガ今未成年者ノ禁酒デサヘ出來ナイ前ニ、大人ニ飮マ
セナイヤウニシヤウト云フコトハ、成程一方カラ申セバ道理
アル、相談デアル道理アル相談デアリマスガ、唯タ時間ト能
率トヲ知ラナイ御方ノ論デアリマス、(「ヒヤ〓〓」拍手)デアリ
マスカラ之ヲ以テ私ガ亦御答辯ガ出來ルト思フ、又此日本
ノ風デ色ミマア御質問ノ趣旨ハ御神酒トカ、御祝儀トカ云
フヤウナ時分ニ酒ヲ飮マナイデ祝儀ガ出來ルカト云フコトデ
アリマスガ、是ハ所謂常識ガアレバ解ルノデ、此法律ヲ能ク
御覽ニナレバ、酒ヲ賣ッテハナラヌト云フノデアリマス、デ儀式
ナドデモ無論是ハ飮マナイ方ガ宜シイノデアルケレドモ、儀
式ニ飮ムト飮マナイトハ、其人ノマア工合デアッテ、(笑聲起
ル)此法律ニ於テハソコマデハ關係ヲシナイノデアリマス、此
法律ヲ能ク御覧ニナレバ判ルノデアル、是ハ卽チ賣ル人ヲ罰
シテ、子供ヲ罰シナイノデアリマスカラ、貴方ノ御子サンニ飮
マセタカラト云ッテ、是ハ法律デハ家デハ飮マセテモ、或ハ罰
シナイカモ知レマセヌケレドモ、德義上所謂祖先ニ重キヲ置
キ、國家ニ重キヲ置キ、中心君愛國ノ所謂紳士タル者ハ、此法
律ヲ歡迎セネバナラヌト思フノデアリマス、又此終リニ御質
問ニナッタ所ノ事デアリマスルガ、是ハ能ク江原素六君ガ答
ヘタノデアリマス、此法律ヲ明治四十一年ニ江原素六君ガ
此所デ演說ヲシテ、爾來通過シタ法律案デ、酒ヲ儀式ノ時
ニ飮ムノハ或ル人ハ國體デアルト云フガ、ソレハ國風デアル
國體ト云フモノハ決シテ崩スベカラザルモノデアルケレドモ、
國風ハ所謂風俗デアリマス、ソレニハ卽チ明治天皇モ仰セラ
レタ「舊來ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クヘシ」ト云フノモ、
卽チ祝儀ノ時ニ酒ヲ飮マナイトカ、或ハ色とノ儀式ノ時ニ飮
マナイト云フヤウナ事ハ、或ハ舊來ノ陋習ヲ破ッテシマッテ、天
地ノ公道ニ基クノデアリマス、是ハ酒ヲ飮ムノハ決シテ國
體デハナイ、舊來ノ陋習デアリマスカラ、決シテ是ハ關係ノ
無イ問題デアルト私ハ答辯スル、是デ御判リニナッタラウカラ
ドウカ之ニ御賛成ニナッテ、貴方ノ御子サンモ御酒ヲ飮マナ
イヤウニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=64
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065・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ議長指名、九名ノ委員ニ付託セラレ
ンコトヲ望ミマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=65
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066・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=66
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067・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ハナイト認メマス、仍テ動議
ノ如ク決シマシタ-日程第十八非役壯丁稅法案ノ第一
讀會ヲ開キマス-提出者荒川五郞君
第十八非役壯丁稅法案(荒川五郞君外
六名提出)第一讀會
非役壯丁稅法案
非役壯丁稅法
第一條帝國臣民ニシテ常備兵役ニ服セサル男子ハ本
法ニ依リ非役壯丁稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第二條非役壯丁稅ハ第一種第二種ノ二トス
第一種非役壯丁稅ハ左ノ稅率ニ依ル
-第三種所得稅ヲ納ムル者ハ其ノ稅額ノ百分ノ
三十
二前號以外ノ者ハ二圓トス
第二種非役壯丁稅ハ第一種非役壯丁稅ノ半額トス
第三條前條第二項第一號ノ課稅標準ト爲スヘキ第
三種所得稅額ハ左ノ區別ニ依リ之ヲ算定ス
納稅義務者カ戶主ナル場合ニ於テハ本人ノ納ム
ル第三種所得稅ノ金額ニ依ル
二納稅義務者カ家族ナル場合ニ於テハ本人ノ納ム
ル第三種所得稅ノ全額ト戶主ノ納ムル第〓種所
得稅ノ半額トヲ合算シタル金額ニ依ル
前項ノ第三種所得稅額ハ納稅義務發生ノ年一月一
日現在ノ前年度稅額ニ依ル
第四條徵兵身體檢査ニ合格セサル者及補充兵役又
ハ國民兵役ニ編入セラレタル者若ハ徵集ヲ延期セラ
レタル者ニシテ其ノ現役ニ服セサルコト又ハ〓育召集
ニ應セサルコトノ確定シタル者ハ其ノ翌年ヨリ七箇年
間第一種非役壯丁稅ヲ納付スヘシ
第五條現役ニ服シタル者又ハ〓育召集ニ應シタル者
ニシテ故意ニ免除ノ事故ヲ生セシメタル者ハ其ノ翌年
ヨリ七箇年間第一種非役壯丁稅ヲ納付スヘシ
第六條補充兵ノ〓育召集ニ應シタル者ハ召集解除
ノ翌年ヨリ六箇年間第二種非役壯丁稅ヲ納付スヘ
シ
第七條左ニ揭クル者ハ徵兵適齡ニ達シタル翌年ヨリ
起算シ七箇年ニ達セサルトキハ其ノ殘期間第二種非
役壯丁稅ヲ納付スヘシ但シ微集ヲ延期セラレタル後
兵籍ニ入リタル者ニ在リテハ其ノ服役ノ翌年ヨリ起
算ス
現役中六箇月ニ滿タスシテ補充兵役若ハ國民
兵役ニ編入セラレタル者
二第二十二條ニ揭クル者ニシテ兵籍ヲ離レ又ハ前
號ニ該當スル者
前項ノ殘期間ハ補充兵役又ハ國民兵役ニ編入セラ
レ若ハ兵役ヲ免セラレ又ハ兵籍ヲ離レ若ハ現役ニ服
セサルコトノ確定シタル年ヲ算入セス
第八條現役中又ハ補充兵部隊編入中公務ノ爲傷痍
ヲ受ゲ又ハ疾病ニ罹リ其ノ役ヲ免セラレタル者ニハ命
令ノ定ムル所ニ依リ非役壯丁稅ヲ課セス
第九條納稅義務者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ爾
後ノ納期ニ屬スル分ヨリ非役壯丁稅ヲ免除ス
戰時又ハ事變ニ際シ召集ニ應シタルトキ
二死亡シタルトキ
第十條納稅義務者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ命
令ノ定ムル所ニ依リ非役壯丁稅ヲ免除ス
癈疾不具ノ者
二貧民トシテ公ノ救助ヲ受クル者
第十一條一家二人以上同時ニ納稅義務者ナルトキ
ハ一人ヲ除クノ外他ノ者ハ其ノ半額ヲ免除ス
第十二條納稅ノ義務アル者ハ納稅義務發生ノ年一
月中ニ其ノ本籍住所及兵役關係ヲ列記シテ政府ニ
申告スヘシ戶主ニ非サルトキハ戶主ノ氏名及住所ヲ
モ併セテ申告スヘシ
納稅義務者又ハ其ノ戶主第三種所得稅ヲ納ムル者
ナルトキハ前項ノ外每年一月中ニ第三條第二項ノ規
定ニ依ル所得稅額及其ノ他課稅ノ算定ニ必要ナル事
項ヲ政府ニ申告スヘシ
第十三條第八條乃至第十一條ニ該當スル者ハ本人
又ハ其ノ戶主ヨリ其ノ旨ヲ政府ニ申告スヘシ
第十四條政府ハ每年四月中ニ各納稅義務者ノ納稅
額ヲ査定シ之ヲ本人又ハ其ノ戶主ニ通告スヘシ
第十五條納稅義務者前條ノ納稅額ニ對シ異議アル
トキハ其ノ通告ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ不服
ノ事由ヲ具シ政府ニ申出テ其ノ審査ヲ請求スルコト
ヲ得但シ此ノ場合ニ於テ政府ハ稅金ノ徵收ヲ猶豫セ
ス
第十六條前條ノ請求アリタルトキハ政府ハ審査委員
會ノ審査ニ付シ其ノ決定ヲ納稅義務者ニ通知スヘシ
但シ政府ニ於テ該請求ヲ理由アリトスルトキハ審査委
員會ノ議ニ付セスシテ直ニ第十四條ノ通告ヲ訂正ス
ヘシ
審査委員會ノ組織及會議ニ關スル規定ハ命令ヲ以
テ之ヲ定ム
第十七條前條ノ決定ニ對シ不服アル者ハ訴願又ハ行
政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十八條非役壯丁稅ハ年額ヲ二分シ左ノ納期ニ於
テ之ヲ徴收ス
第一期其ノ年七月一日ヨリ三十一日限
第二期翌年一月一日ヨリ三十一日限
第十九條納稅義務者家族ナル場合ニ於テハ戶主ハ
非役壯丁稅ノ納付ニ付連帶シテ其ノ責ニ任ス
第二十條非役壯丁稅ハ納稅義務者ノ住所地ヲ以テ
納稅地トシ住所ナキトキハ居所地ヲ以テ納稅地トス
但シ住所地以外ニ在ル納稅義務者ハ申告シテ居所
地ニ於テ納稅スルコトヲ得本法施行地内ニ住所又ハ
居所ナキ者ハ納稅地ヲ定メ政府ニ申告スヘシ申告ナ
キトキハ本籍地ヲ以テ納稅地トス
第二十一條納稅義務者納稅地ニ現住セサルトキハ非
役壯丁稅ニ關スル事項ヲ處理セシムル爲納稅代理人
ヲ定メ政府ニ申告スヘシ
第二十二條陸海軍ノ將校、同相當官、特務士官、豫
備員、准士官、候補生、見習官、下士及兵籍ニ編入セ
ラレタル學生、生徒ニハ其ノ在籍中本法ヲ適用セス但
シ第七條ニ該當スル者ハ此ノ限ニ在ラス
第二十三條徵兵事務ヲ掌ル官廳ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ非役壯丁ニ關スル事項ヲ收稅官廳ニ報告スヘシ
第二十四條第十二條第二十一條ノ申告ヲ爲サス又
ハ虛僞ノ申告ヲ爲シタル者ハ科料ニ處ス
第二十五條非役壯丁稅ヲ通脫シタル者ハ其ノ通脫
金額三倍ノ科料ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ施行ノ年以後徵兵適齢トナリタル壯丁及本法
施行ノ年ニ於テ現ニ徵集ヲ延期セラレタル者ヨリ之ヲ適
用ス
本法ハ徵兵令ヲ施行セサル地方ニハ之ヲ施行セス但シ
本法施行地内ニ本籍ヲ有スル者ハ本法施行地外ニアル
モ仍本法ヲ適用ス
〔荒川五郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=67
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068・荒川五郎
○荒川五郞君 非役壯丁稅提案ノ理由ヲ少シク申述べ
テ、滿場諸君ノ御賛同ヲ請ヒマス、我ガ帝國憲法ハ、納稅ト
共ニ兵役ノ義務ヲ國民ノ大義務、國民ノ名譽アル必任ノ
大義務ト致シテ、玆ニ國民皆兵ノ精神ヲ明カニ致シテ居ル
ノデアリマス、然ルニ年々ノ壯丁約五十餘万人、其中デ年々
兵役ニ服スル者ハ十二三万人ニ過ギナイノデアリマス、其餘
ノ四十万內外ノ壯丁ハ、疾病其他ノ故障ニ依シテ、兵役ニ合
格シナイ者モアリマス、又軍ノ編制上其必要ノ人員ニ制限
ガアリマス故ニ、抽籤ヲ以テ採用スル人數ヲ制限セラルヽノ
デアリマス、随テ五十餘萬壯丁中殆ド年々四十万人ハ、國
民皆兵ノ制度ノ下ニ此國防ノ任務ニ與カラナイ者ガアルノ
デアリマス、齊シク此重大ナル義務ヲ擔フ所ノ壯丁ニシテ、
身體檢査ニ合格シ、抽籤ニ當リ採用セラレタル者ハ、二箇年
以上其間學業ニ從事スル者ハ修學ノ妨ヲ受ケ、職務ニ從ン
テ居ル者ハ職務ヲ廢シ、若クハ中斷シナケレバナラヌノミナ
ラズ其兵營ヲ退イテ、後モ種々ノ負擔束縛ヲ受ヶ在〓軍人
ト致シマシテモソレ〓〓ノ役目ヲ持チマシテ、旅行等ニモ制
限ヲ受ケ、或年月ノ間ハ身體ノ自由ノ働モ出來ナイ程ノ、
種々ナ束縛、種々ノ制限ヲ受ケテ居ルノデアリマス、而モ一
旦緩急アレバ身ヲ挺シテ、我家ヲ拾テ、妻子ヲ捨テヽ國難ニ
赴カナケレバナラヌ重大ナル任務ヲ負ウテ居リマス、此兵役
ニ服スル所ノ壯丁ニ較ベテ服役シナイ壯丁ガ抽籤ニ免レ、
或ハ其他ノ事情ニ依ッテ何等義務ノ負擔ガ無イト云フコト
ハ、如何ニモ大ナル不權衡デアリ、如何ニモ大ナル不公平ヲ
認メルノデアリマス、殊ニ兵役ノ義務ニ服スル者ハ、從來之
ヲ血稅ト稱ヘテ、身ヲ以テ國防ノ重任ニ當リ、啻ニ我ガ一身
上ノ身體ニ專屬スル勤務ノ重イノミナラズ、今日ノ現在ノ
給與ハ甚ダ薄クアリマスカラ、身體ノ貢獻ノミナラズ、經濟
上ニモ多大ノ負擔ガ件フノデアリマス、身體上、精神上、財
產上、有ユル上ニ重キ負擔ヲセネバナラヌノデアリマス、中ニハ
家計ノ主ナル人デアル、其壯丁ガ現役ニ從事スルガ爲ニ、一
家ハ悲慘ニ其日ヲ送ラナケレバナラヌト云フ、同情スベキ氣
ノ毒ナル留守家族モ少ナクナイノデアリマス、斯樣ナ大ナル
不權衡大ナル差異ガ我カ國法ノ一視同仁デアリ、國民皆兵
ノ原則ニ打立テラレタル我微兵制度ノ下ニアルト云フコト
ハ、甚ダ遺憾ト致ス所デアリマス、此服役スル壯丁ニ對シテ、
服役シナイ壯丁、彼等服役ナイ壯丁モ、重大ナル責任ノ觀念
ヨリ、其レ等ノ者ノ義務心ヲ滿足セシムル途ヲ開クノモ一ノ
方法ト心得マス、隨ッテ玆ニ壯丁稅ナルモノヲ作リマシテ、資
產アル者ニハ無資產ニ相當スル課稅ヲ致シ、其牧入ヲ以テ
軍人ノ給與手當ヲ厚ク致シ、又一面ニハ留守家族ニモ補
助ヲ與へ遺族癈兵等ヲモ優遇シ、サウシテ彼等ヲシテ安ン
ジテ此名譽アル義務ヲ全ウセシムル途ヲ開クト云フコトハ、
啻ニ其等服役壯丁ノ爲メニ大ナル利益恩典デアルノミナラ
ズ、服役シナイ壯丁ト致シマシテモ、國民ノ責任ノ觀念ノ上
ニ、大ニ義務心ヲ滿足シ得ルコトト思ヒマス、隨テ其大ナル
懸隔ヲ、此稅ニ依ッテ幾ラカ近寄セヤウト云フコトハ、亦以テ
國法公平ノ精神ニ副フ所以ト思フノデアリマス、勿論今日
我カ日本國民ハ、皆ナ義勇奉公ノ精神ニ富ンデ居リマス、敢
テ不平ヲ言フ譯デハアリマセヌケレドモ、不平ヲ言ハナイカラ
ト云フテ、吾ミガ之ヲ其儘ニ看過スベキモノデハアルマイト思
ヒマス、殊ニ今日ノ實際ハ四十万ニ近イ非役ノ壯丁ヲ出シ
マスルガ、其服役シナイ壯丁ノ多クハ上流富豪ノ者デアリマ
シテ、兵ニ徵セラレテ服役致ス者ハ、多クハ下層ノ勞働者デ
アリマス、同ジ地方農村デモ、其富豪ノ者ハ免レテ、下層ノ
者ガ兵ニ出ルト云フコトガ多イノデアリマス、其實際ノ有樣
カラ考ヘテ見マシテモ、之ヲ相當ニ平均シ得ル途ハ、啻ニ此
非役壯丁稅ニ止マラズシテ、國家トシテハ玆ニ多大ノ〓究
スベキ必要フリト思フノデアリマス、凡ン人間ハ感情ノ動物
デアリマス、中ニハ感情ニ走ラヌ者モアリマセウケレドモ、時
ニ感情ノ前ニハ打算モ無ク、生命モ危險ヲ顧ミナイト云フ
コトモ生ズルノデアリマス、烈日鐵ヲ熔カスノ時ニ、コ〕レガ馴レ
ナイ規律ノ嚴重ナル中ニ、一方ニハ我ガ友人等ハ安逸ニ樂
ンデ居ルコト等ヲ思ヒ、或ハ又己レノ家庭ノ困難等ヲ思フ
時、或ル感情ノ發スルノモ已ムヲ得ヌ次第ト思フノデアリマ
ス、然ルニ此大差異ノ事柄ヲ抽籤ニ依ッテ決定スルコトハ
運命ト云ヘバ運命ナガラ、私共ノ考デハ、此抽籤ト云フコト
モ改メタイノデアリマス、此射倖的兒〓ニ類スル造方卽チ
抽籤ヲ以テ、國民ノ重大ナル必任義務ヲ決スルト云フコト
甚ダ當ヲ得ヌ事ト思フノデアリマス、仍テ玆ニ非役ノ壯丁稅
ヲ課シ一方安ンジテ國防ノ重任ニ當ル途ヲ開イテ、國民ハ
吾レ競ウテ身體ノ强健ヲ圖リ、合格服役スルコトヲ男兒ノ
名譽ト致スヤウニ、而シテ其等ガ殆ド悉ク志願ヲ致シテ、此
要員ヲ充スニ至ルヤウニナッタナラバ、今日徴兵ヲ忌避スルト
云フヤウナ者モ滅多ニナイケレドモ、餘リ差異ガアルガ爲メ
ニ、或ハ身體ニ少々ノ缺失ガアッテ、兵役ヲ免レレバト云フヤウ
ナ考ノ者ガ生ジテ、國民ガ漸次優柔惰弱ナ人間ニナルト云
フコトガアリマシタナラバ、國家ノ前途ノ爲メニ甚ダ遺憾ト
スル所デアリマス、全國ノ靑年ヲシテ競ウテ身心ノ强健ヲ圖
リ、皆ナ悉ク此必任義務ノ名譽ヲ擔ヒ得ルコトヲ希望スル
ニ至ッタナラバ、國民一般其身體其精神ノ上ニ、ドレダケノ
昂上發達ヲ見ルコトデアリマセウカ、其等國民ヲシテ悉ク義
勇奉公ニ、勇壯快活ニ、勇敢ナル精神ヲ養ハシメ、サウシテ
國民ヲシテ强健有爲ナル國民トナラシムベク導ク上ニ於テ
モ、是等ノ制度ヲ打立テルコトガ最モ必要ト思フノデアリマ
ス、軍人ノ士氣士風ノ獎勵ノ上ニモ、國民皆兵ノ精神ヲ貫
ク上ニモ、今日最モ必要ト思フノデアリマス、陸海軍ハ、從來
世間カラ頑冥不靈、祕密主義ノ巢窟デアルト言ハレテ居ッ
タノデアリマス、然ルニ其陸海軍ガ今議會ニ提出シテ、只今
委員會ニ係ッテ居リマスル海陸軍ノ軍法會議法ノ如キハ、
殆ト普通ノ裁判法ヨリモ優ッタヾケノ文化社會化致シテ居
リマシテ、祕密主義ヲ破ッテ辯護人ヲ附シ、祕密ノ審制ヲ改
メテ公開シ、一審デ終結スル法ヲ變シテ再審ノ途ヲ開クト
云フヤウナ、進歩ノ改正案ヲ提出シテ、軍當局者トシテハ實
ニ珍シキ進歩ヲ見ルノデアリマス、時代ハ日〓ニ進化スルノ
時、人心ハ日夜ニ變化スルノ時、斯ル時代思想ニ應ジテ、陸
軍當局モ海軍當局モ時代ニ順應シ來ッタト云フコトハ、吾と
ノ最モ歡ブ所デアリマス、本案ニ就テハ、政府當局ノ中ニ
ハ從來ヨリ反對ノ人モアル、其反對ハ稅ヲ出シ-兵役ノ
爲メニ稅ヲ出スト云フコトハ、此名譽ト義務ノ觀念ノ上ニ、
打立テラレタル必任ノ大事ナ國防ノ責任ヲ、稅ヲ以テ免レ
ルト云フ觀念ヲ生ゼシムルト云フコトハ、國民精神ノ上ニ於
テ非常ニ恐ルベキ事デアルト言フノデアリマスケレドモ、是ハ
金ヲ出シテ兵ヲ免レシメヤウト云フ、元ト外國ニモアッタ代償
稅、若クハ免役稅トハ其性質ヲ全ク異ニシテ居ッテ、金ヲ出
シテ兵ヲ免レルニ非ズシテ、兵ヲ免レタル者ニ相當ノ課稅ヲ
シヤウト云フノデアリマス、卽チ原因ト結果ガ全ク異ルノデ
アリマス、若シ此誤解ヲ根據トシテ、其誤解ノ上ニ打立テラ
レタル思想ヲ根據トシテ反對セラレルト云フコトハ洵ニ、私
共ノ心外ト致ス所デアリマス、曩ニ岡陸軍大臣ノ如キハ此
案ニ賛成デアッタノデアリマス、今ノ田中陸軍大臣ハ、隨分
思切ッテ時流ノ要求ニ順フ政策ヲ執ラレルコトモアリマス、既
ニ一昨年退營ノ軍人ニ軍服ヲ給與セラレタイ、軍人ハ紀律
ヲ主トスルノニ、軍服デナクテハ其紀律節制ノ上ニ甚ダ不便
デアル、仍テ在〓軍人ニ被服ヲ給セラレタイ、併シ是ハ國家
經濟ノ上ニ多大ノ負擔ヲ要スルト云フノデアリマシタ、併シ
私ノ考デハ相當ノ保存期限ヲ付ケテ、退營ノ時ニ一著宛ヲ
渡シ、軍務ニ服スル期間ハ此一著デ濟マスヤウニト云フコト
ニシタナラバ、決シテ國家ノ損ニナラナイ、軍隊ニ置クニシテ
モ、豫備ヲ置カナケレバナラヌ、豫備ヲ置ケパンレヲ保管スベ
キ倉庫ヲ要スル、保管スベキ人ヲ要スル、其他保管ノ費用ヲ
モ要スル、然ルニ之ヲ各自ニ渡シ與ヘ置クトキハ、他日召集
ニ際シテモ、各自ノ身體ニ合セテ與フルナドノ面倒モ省ケマ
ス、全國ノ在〓軍人ガ一大保管倉庫デアル保管番人デア
ル、隨テ費用ガ一時ハ幾ラカ要ルカモ知リマセヌガ、永久ノ
上ニハ保管倉庫ヲ要シナイト、保管番人ヲ要シナイ、保管諸
費ヲ要シナイ、却テ利益ニナルデハナイカト云フ一コトヲ、此議
場ニ於テ田中陸軍大臣ニ說イタ、所ガ田中陸軍大臣ハ卽
決英斷ニ、此日本ノ全國ノ在〓軍人ヲ一大保管倉庫トシ
テ、被服ノ保管、被服ノ使用ヲ彼等ニ託スルト云フコトハ甚
ダ名案ト思フ、是非採用シタイト』云フコトヲ直チニ田中大
臣ハ答辯セラレタ、其結果ガ既ニ本年ヨリハソレガ實施セラ
レルニ至ッタノデアリマス、隨分良イ事ト見レバ英斷ヲモセラ
レル田中陸軍大臣ノ如キハ、此案ニハ眞先キニ贊成セラレ
テ然ルベキコトヽ思フノデアリマス、殊ニ陸軍當局ガ最モ力
ヲ入レテ反對致シ、今マデ贊成セラレナイ所ハ、金ヲ出シテ
兵ヲ免レルト云フ、誤解ノ感ジヲ國民ニ持タスト云フノデア
リマス、是ハ前段辯明ヲ申上ゲタ通リニ、決シテ左樣ナ譯デ
ナイノミナラズ、今日ノ我ガ制度ノ上デハ、却テ金ヲ出シテ
兵役ヲ免レテ居ル部分モアルノデアリマス、ソレハ何デアルカ
ト云ヘバ部分的デハアリマスガ、彼ノ一年志願兵ノ制度ハ
卽チソレデアリマス、同ジク一年志願兵ニナリ得ル資格ノ有
ル者ニシテ、僅カ百五圓ノ金ガ有ル者ハ一年志願兵ニナル
コトガ出來ルガ、同ジ資格ガ有リナガラ、百五圓ノ金ヲ出シ得
ナイ者ハ、三箇年ノ普通現役ニ服サナケレバナラヌ、僅二百
五圓、ソレガ爲ノニ其服役ノ上ニ重大ナル差異ガアルノミナ
ラス、一年志願兵ハソレヲ卒ヘタ後ニハ豫備將校トナリ、在
〓軍人ノ幹部トナリ、各方面ニ多大ノ名譽ヲ荷ヒ得ルニモ
拘ラズ、僅ニ百五圓ガ無イ爲メニ現役ニ入リタル者ハ、全ク
斯ル名譽ヲ與ヘラレナイノデアリマス、是レ結果カラ嚴密ニ
申セバ、金ヲ出シテ兵役ノ一部ヲ免レルモノト申シテモ宜イ
ノデアリマス、況ヤ本法案ハ斯ル意味合ノモノデナイト云フ
コトハ、賢明ナル滿堂諸君ノ既ニ御諒知下サルコトヽ思フ
ノデアリマス、全體普通軍人下士卒ト將校トハ、同ジク國家
ノ爲メニ必要デアルノデアリマス、下士卒ガ國防ノ第一線ニ
立ッテ活動シナケレバ、如何ナル智慧ノアル將校モ、其目的
ヲ達スルコトガ出來ナイノデアリマス、況ヤ將校以上ハ是ハ
謂ハバ職業的軍人デアル、月給ヲ貰ヒ、一家ヲソレデ成シテ
行ク所ノ職業的軍人デアル、ソレニ較ベテ下士卒-此必
任義務ノ上ニ召集セラレタル兵士ハ、斯ル給與ノ無イノミ
ナラズ、其結果ニ於テ如何デアリマスカ將校將帥ハ或ハン
レガ爲メニ華族トナリ、子爵男爵ニ進ミ、終生長ク生キテ國
家ノ榮典ニ浴スルニモ拘ラズ、下級下士卒-其等ノ軍人
ハ、國難ノ眞先ニ我身ヲ犧牲ト致シテ、サウシテ其等ノ遺族
ヤ癈兵等ハ、今日ヲ過ススラ出來ナイ位ノ憫レナ有樣ノ者
モアルノデアリマス、斯ノ如キハ我ガ帝國國防ノ全般ニ顧ミ
テ、決シテ看過スヘカラザル事ト思フノデアリマス、(拍手)近
來多クノ問題ガ免角黨派的ニ取扱ハレマスガ、元封建時代
ニハ國ト國トガ敵デアル、村ト村トモ敵デアッテ、隣村ノ鎮守
ノ祭ヤ村芝居ニハ、若連中ガ喧嘩ヲスルノガ一ノ行事デアッ
タノデアリマス、然ルニ憲政施カレ全國一統ノ今日ノ世ノ中
ニ當ッテ、村ガ違フカラト云ッテ他ノ村ノ者ガ排斥セラレルト
云フヤウナ事ガアッテハ、此大正治下ノ爲メニ甚ダ遺憾トス
ル所デアリマス、政友村モ、國民黨村モ、庚申倶樂部ノ御方
モ、ドウゾ村ノ違ヲ以テ此國家問題ヲ二三ニセラルヽコトナ
ク、公平ニ採用アランコトヲ切ニ希望致スノデアリマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=68
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069・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 松岡俊三君ヨリ質疑ノ通告ガアリ
マス、之ヲ許シマス
〔松岡俊三君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=69
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070・松岡俊三
○松岡俊三君 私ハ只今議題トナリマシテ非役壯丁稅法
案ニ就テ、提案者ニ二三ノ御尋ヲ致シタイト思フノデアリマ
ス、本案ハ全國三百万ニ近イ所ノ在〓軍人諸君ノ懷イテ
居リマス、徵兵觀念上ノ根本ヲ變革セントスル所ノ疑ノア
ル重大ナル法案デアリマス、此法案ニ就テ、幸ニモ奉天戰爭
ノ占領記念日デアル當三月十日ヲ以テ私ガ質問ヲスルト
云フコトハ、地下ノ戰友ガ我ヲシテ言ハシムルモノデハナカラ
ウカト思フノデアリマス、同時ニ全國ニ淡ル所ノ三百万ノ在
〓軍人諸君ガ、私ヲシテ此所ニ立タシメタモノト思フノデア
リマス、私ハ當テ兵卒トシテ、十七年四箇月ノ兵役ヲ完全
ニ勤メタ者デアリマス、故ニ本案ニ對シテハ重大ナル意味ヲ
持テ居リマスカラ、委員會ニ於テ質問スベキデアリマスケレド
モ、其大體ノ根本ニ對シテハ、ドウシテモ明カニシテ置カナケ
レバナラヌコトガアルノデアリマス、荒川君ハ徵兵ト云フモノ
ニ對シテ非常ナル御同情ヲ以チマシテ、只今縷々御話ニナ
リ、本案ヲ提出セラレタヤウニ承リマシタノデアリマスケレド
モ、未ダ惜ムラクハ徴兵ノ心理狀態ヲ能ク御理解ニナッテ居
ラヌ憾ガアルノデアリマス、私ノ質問ハ此點ヨリ主トシテ起
ルノデアリマス、元來現役兵卒乃至嚴役者、私ハ荒川君ノ
言葉ヲ借リマシテ言上マスレバ、血稅ヲ納メタル者ト假リニ
申上ゲテ置キマス、此血稅ヲ納メタル者ノ心理狀態如何ト
云フコトヲ我身ニ照シテ、過去ノ經驗ニ徵シテ之ヲ申上ゲ
テ、サウシテ質問ヲ中上ゲネバナラヌト思フノデアリマス、彼
等ハ常ニ以爲ラク、自分コンハ國家ノ干城デアル、我アルガ
爲メニ國家ハ安泰デアル、國民亦杭ヲ高ウスルノハ我アルガ
故ニト云フ所ノ考ヲ以テ、此非常ナル自負心ヲ以テ服役シ
ツヽアルノデアリマス、故ニ少尉ヨリ大將ニ至ルマデノ者ヲ
見マシテモ、只今荒川君ガ仰セラレタル通リニ、彼等將校ハ
抑、ノ出發點ガ、職業トシテ自己ノ榮達ノ爲メニ、各種ノ職
業中ヨリ各選擇シテ、將校ト云フ所ノ官吏ノ志願ニ依ヲテ
ナッタ者デアル、吾ニハ之ニ對シテ、眞ニ國家ノ爲メニ家ヲ棄
テ、職ヲ地チ、一身ヲ度外ニシテ、以テ神聖ナル所ノ此血稅ヲ
拂フ所ノ者デアル、我等徵兵ノミガ眞ニ其名譽ヲ擔フベキ
モノデアルト云フヤウナ工合ニ、或ハ他ノ方面カラ申サレルナ
ラバ、多少ノ自惚ト云フヤウナコトモアリマセウケレドモ、實ニ
此信念ノ下ニ立ッテ、此自負心ノ下ニ立ッテ、此名譽心ヲ以
テ服役シテ居ルノデアリマス、(「古イヨ古イヨ」ト呼フ者アリ)、
古イト言フガ、新ラシイ者ガ國家ヲ保チ得ルモノカ-モウ
少シ御聽ヲ願ヒマス(「アンマリ妄斷ヲヤルナ」「泣言ヲ出サ
ナクテモ宜イ」ト呼フ者アリ)此點ニ就テ本案ノ提出ニ依ッテ
此徴兵ノ自負心名譽心ト云フモノガ、果シテ傷ケラレルモ
ノカドウカト云フコトニ就テ、御意見ヲ伺ヒタイノデアル、又本
案提出ノ主タル目的ハ物質的方面ニ在ルカ、サリトモ精神
的方面ニ在ルカ、卽チ自己ノ生產ヲ抛チ、己ノ家ヲ捨テヽ
服從シ、而モ荒川君ノ仰セラレタル通リ、非常ニ薄キ手當ヲ
以テ滿足セナケレバナラヌ、故ニ家〓ヨリ送金ヲ待タナケレ
バナラヌ、又貧困ナル所ノ家〓ハ、其入營ノ爲メニ被ル所ノ
打撃ハ非常ナモノデアル、是等ノ各種ノ物的方面ニ於ケル所ノ
彼等ノ苦痛ヲ慰メンガ爲メニ、本稅ニ依シテ彼等ニ與フベキモ
ノト云フ御考デアリマスカ、此結果トシテ-此結果トシテ
茲ニ荒川君ガ仰セラレタル工合ニ、徴兵ニ出ナイ所ノ所謂
非役壯丁者ノ國家奉公ノ義務心ト云フモノハ、其結果トシ
テ得ラルヽモノデアルカドウカト云フコトヲ承リタイノデアル、
此非役壯丁者ノ義務心ノ滿足、卽チ國民皆兵ト云フ精神
的方面ガ主トナルモノデアルカ、或ハ精神的、或ハ物質方面
此孰レヲ主トシ、孰レヲ從トスルコトナクシテ、兩者ヲ打ッテ
一丸トシタルモノガ、果シテ此目的デアルカドウカト云フコ
トヲ明瞭ニ承リタイノデアル、斯ノ如ク此徴兵ト云フモノハヽ
決シテ金デ買ハレルモノデナイト云フコトハ、荒川君ガ仰セ
ラレマシタ、勿論日本帝國ノ臣民トシテ、決シテ此〓兵ニナ
ルコトガ厭ヤナ爲メニ、金ヲ以テ代ヘルト云フヤウナ代償的
ノモノデナイト云フコトハ、確ニ承知致シタノデアリマスガヽ
併ナガラ此立法ノ精神ガ此ニ在リマシテモ、其結果ニ於テ
如何デアルカト云フコトヲ承リタイノデアル、卽チ血稅ヲ納
付シタルモノ、其他ノ家族ノ救護ノ爲メニスルモノデアルト
云フヤウナコトデアリマシタナラバ、在〓兵ノ此徴兵ニ對スル
義務心-觀念ト云フモノ、是ガ非常ニ此點ヨリ出發シテ
大ナル差ヲ生ジテ來ルノデアリマス、如何トナレバ今日兵營
ニ在リマスル者ハ、一箇年四十三圓二十錢ト云フ給料ヲ受
ケテ居ルノデアル、一日僅ニ十二錢煙草一ツニ葉書一枚ニ
足ラヌ所ノ十二錢ヲ受ケテ居ルノデアル、故ニ若シ是ガ荒
川君ガ仰セラルル通リ、本稅ニ依シテ得タル所ノ金ヲ以テ彼
等ニ與ヘルト云フコトデアッタナラバ、ドレダケ與ヘレバ宜シイ
ノデアルカト云フコトヲ承リタイノデアル、此ドレダケ與ヘル
カト云フ一事ニ依ッテ、我ガ日本帝國ノ徵兵主義ト云フモノ
ハ、或ハ傭兵主義ニ陷ルト云フ所ノ最モ重大ナル所ノ理由
ガアルモノデアル、(「君ガ傭兵ダート呼フ者アリ)卽チ今日大
正十年度ノ豫算面ヲ見マスルト云フト、僅ニ一日十二錢ノ
給料デアリマスケレドモガ、塵モ積レバ山トナルノ喩ノ如ク、
兵卒ノ給料總額ハ一千百万圓ニ達シテ居ル、又軍人救護
法ニ依ル所ノモノハ百万圓許リアル、癈兵院ニ要スル所ノモ
ノハ七万圓アル、是等ノモノニ若シ假リニ此機會ニ於テ荒
川君ノ言フ所ノ、非役壯丁稅ニ依ッテ得タル所ノ金ヲ以テ
三割增額、卽チ一日三錢六厘ノ增額ヲスルトシマシテモカ、
實ニ三百七十万圓ニ近イ所ノ金ガ要ルノデアリマスル、諸
君、斯ノ如ク今日ハ物價騰貴ノ世デアル、物價騰貴ノ今日
ノ場合ニ於テ、一日彼等ニ三錢六厘ノ金ヲ與ヘテ以テ滿足
ヲ買ハントスルト云フヤウナ事ハ、如何ニ氣ハ心ト申シマシ
テモ、滿足ヲ與へ得ルデアリマセウカ、殊ニデス、是ガ普ク國
民一般ヨリ、溢ルヽガ如キ熱烈ナル同情ニ依ッテ增額セラル
ルト云フコトデアッタナラバ、三割或ハ一割乃至五分デモ、彼
等ハ精神的ニ滿足スルノデアル、併ナガラ只今申上ゲマシタ
通リ、荒川君ノ此提出ナサル所ノ、非役壯丁稅ニ依ッテ得タ
ル所ノ、金ヲ以テ彼等ニ滿足ヲ與ヘルトシマスレバ、又半面ニ
ハ-此半面ニハ此僅カナ金ヲ以テ彼等ハ兵隊ニナラヌケ
レドモガ、其金ヲ納メテ居ルノ故ヲ以テ、其義務心ヲ滿足ス
ルト云フヤウナコトガアルノデアリマシテ、是ガ徵兵ニ取ッテ果
シテ苦痛トナラナイノデアリマセウカ、是モ承リタイノデアル、
又次ニハ此血稅納付者ガ-徴兵トナリタル者ガ現ニ受ケ
ツヽアル所ノ各種ノ優待法、竝ニ或ハ將來ニ於テ受ケント
スル所ノ特權、是等特權、竝ニ優待法ト云フモノハ、此非役
壯丁稅ヲ納メタル者ハ恐ク受ケルモノデアリマセウカ、卽チ
徴兵ト同樣ニ、何事モ特權竝ニ優待法ト云フモノヲ受ケル
モノデアルカ、否カト云フコトヲ承リタイノデアル、若シ此非
役壯丁稅者ガ徵兵ト同樣ニ、各種ノ特權優待法ト云フヤ
ウナモノヲ受ケルモノヲ受ケルコーガ出來ナイト云フコトデア
ルナラバ、此立法ノ精神ハ兵隊ニ出ナイ者ガ奉公ノ義務心
ヲ滿足スルト云フコトハ、自家撞著ニナルコトガナイカドウカ
ト云フコトモ亦承リタイノデアル、從來血稅ヲ納メタル者ハ、
〓里ニ歸ックナラバ一團トナリ、而シテ彼等ハ其已ノ自負心
己レノ名譽心ニ依ァテ節制自重ヲ爲シ、大ニ其〓土ニ於テ、
總テノ改革等ニ盡サントシテ居ル所ノモノデアル、所ガ此
非役壯丁稅ヲ納メタルノ故ヲ以チマシテ、假令立法ノ精神
ハソコニ無イト云フコトハ、荒川君ノ御說明ノ通リ「デハアリ
マスケレドモガ、其結果トシテ非役壯丁稅ヲ納メタル者ハ徴
兵ト同様ノ義務、所謂憲法ニ於ケル所ノ徵兵ノ義務ヲ滿足
スルト云フコトデアリマシタナラバ、此兩者ノ間ニ於ケル所ノ
徵兵上ノ觀念ト云フモノハ自ラ異ナルガ故ニ、兩者ノ間ノ
其扞格ト云フモノハ非常ナモノデアル、意思ノ疎通ト云フモ
ノニ一大溝渠ヲ造リマシテ、決シテ是ガ圓滿ニ行クト云フコ
〓ハナカラウト思フノデアリマスガ、此點ニ就テモ承リタイノ
デアル、(「南無阿彌陀佛」ト呼フ者アリ)過去ニ於テモ單ニ
兵隊ニ出夕者ノミガ特別ニ國家ニ盡シタル者デハナイ、吾
等ハ亦兵隊ト同樣ニ國家ニ盡シテ居ルト云フヤウナコトヲ、
能ク吾〓ガ聞イタノデアリマスル、併ナガラ兵隊ニ出タルノ
故ヲ以テ、彼等ハ他ノ一般國民ノ納メテ居ル所ノ納稅ノ義
務ヲ免除セラレテハ居リマセヌノデアル、己ノ生產ヲ抛チ、一
家一身ヲ度外ニシテ、眞劍ニ徵兵トナッタルノ故ヲ以テ其義
務ヲ盡サントスル、所謂二重三重ノ奉公ノ義務ヲ盡シテ居
ルト云フコトデアル、之ニ反シテ徴兵トナラナイ者ハ勿論、强
テ間接的ニ國家ノ爲メト云フコトハ申シ得ラルルデアリマセ
ウガ、大部分ト云フモノハ、自己ノ生產ノ爲メニ努力ヲ爲シ
居ルト云フコトハ申スマデモナカラウト思フ、斯ノ如ク理路
自ラ判明シテ居ルニモ拘ラズ、尙且ツ兩者ノ間ニ、斯樣ナル
場合ニ同一ナル所ノ憲法上ノ義務ヲ完ウスルト云フコトニ
ナッタナラバ、ドウシテモ此疏通ト云フモノヲ圖ルコトハ出來
ナカラウト思フ、斯ノ如クニ一ツハ血ニ依リマシテ-美シイ
所ノ血ニ依リマシテ、一ハ稅金ニ依リマシテ、各〓其徵兵ノ
義務ヲ盡ス結果トナルト云フコトヲ見ルトキハ、徵兵ト云フ
モノノ根本ノ觀念上意見ノ大疏隔ヲ生ジマシテ、一村一地
方ニ於ケル所ノ中堅的在〓兵ト其他ノ者トノ間ニ於テ、實
ニ事毎ニ相反目スルト云フコトニナッタナラバ、實ニ我國軍ノ
基礎ヲ危ウスルコトハ、先程荒川君ノ申サレテ居ル通リデア
ラウト思フ、(「ノウ〓〓」頭ガ古イ」ト呼フ者アリ)荒川君ハ
國民思想ノ惡化ト云フコトニ、常ニ注意御心配ナサレテ居
ル御方デアルト承ッテ居ルノデアリマスルガ、斯ノ如ク物ハ心
ニ變リ、金ハ血ニ變リ、富力ハ生命ヲモ支配スルト云フヤウ
ナコトニナリマシタナラバ如何デアリマセウカ、世ヲ擧ゲテ所
謂唯物主義ニ陷ラントスル所ノ虞ガアルト私ハ思フノデハ
アリマスルガ、荒川君ハ如何ニ御考ニナッテ居ルカ、又絕對ニ
兩者ノ間ニ於テ衝突ガ無イト思召シテ居ルノデアリマセウ
カ、荒川君ノ申サレタル通リ、戰鬪卜云フモノ-戰ト云フ
モノハ、如何ニ將校ガ立派ナ者ガアリマシテモガ、又如何ニ
機械ガ立派デアリマシテモガ、最後ノ止メヲ刺スモノハ此愛
國ノ精神ノ横溢シタル所ノ兵卒ノ肉彈ニ在ルト云フコトハ
御說ノ通リデアル此兵卒、此徵兵、此眞ノ徵兵ノ心理狀態
ト云フモノハ、身親シク徴兵トナッタル者竝ニ其家族ニ於テ
始メテ之ヲ諒解スルコトガ至當デアラウト思フノデアル、然ル
ニモ拘ラズ豫備將校トナラントスルヤウナ、荒川君ノ申サレ
ル通リ一年志願兵ヤ、又職業的ノ將校杯ハ、到底憶測ガ出
來ナカラウト思フノデアル、斯ノ如ク實ニ高潔ナル所ノ血稅
ヲ拂フ者ト云フモノハ、非役壯丁稅ニ依ッテ悉ク破壊セラル
ルト云フヤウナ虞ガアルカナイカト云フコトヲ、簡明ニ御返
答ヲ願ヒタイノデアリマス、況ヤ動トモスルト功利主義、唯
物主義ニ走ラントスル所ノ一部ノ政治家、或ハ片々タル所
ノ當世流ノ將校抔ハ、此兵卒ノ心理狀態ヲ到底諒解スル
コトガ出來ヌダラウト思フノデアリマス、故ニ本案ヲ荒川君
ハ頻リニ縷々述ベラレマシタケレドモガ殘念ナラガ、現役將
校ヲ特別ニ除外ナサレタト云フコトハ、國民皆兵ト云フ所ノ
立法ノ精神上ヨリシテ、自家撞著ニ陷ル結果ト云フコトハ、
是卽チ兵卒ノ心理狀態ヲ能ク御承知ナッテ居ラナイ所ノ結
果ノ、矛盾ト謂ハザルヲ得ナイノデアリマスルガ、是等ノ點ニ
就テ明各ヲ煩シタイト思フノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=70
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071・荒川五郎
○荒川五郞君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=71
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072・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 荒川君、答辯シマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=72
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073・荒川五郎
○荒川五郞君 答辯致シマス
〔荒川五郎君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=73
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074・荒川五郎
○荒川五郞君 只今松岡君ノ御質問ニ對シテ一言御答
ヲ致シマス、松岡君ハ十何年ノ間軍隊生活ヲセラレテ、名譽
アル軍人デアリマス、隨テ斯ノ如キノ案ニ向ッテ心配セラルル
ト云フコトハ至當ト心得マスル、併シ私ノ述ベマシタル所ノ
私ノ辯ノ足ラヌ所ハ已ムヲ得マセヌケレドモ、斯ル疑ヲ起ス
人ガアルカラ、已ムヲ得ズ少シ長クナリマシタケレドモ、其理由
ヲ說明致シタノデアリマス、此非役壯丁稅ヲ取ルガ爲メニ、
傭兵ト云フ精神ヲ起シハシナイカト言ハレタ如キハ、最モ私
ノ力ヲ用キテ左樣デナイト云フコトヲ明カニシタ積リデアリ
マス、(「傭兵デモ宜イデハナイカ」ト呼フ者アリ)今日ハ我ガ
國防ノ上ニハ巨億巨万ノ大國費ヲ投ジテ國防ニ充テテ居
リマスケレドモ、將來ノ我ガ國防戰爭ハ、決シテ物質的總動
員ニノミ依ルコトハ出來マセヌ、形而上無形的ノ總動員ヲ
必要ト致シマスカラ、其等ノ精神ノ上ヨリ致シテモ、國民皆
兵ノ精神ヲ貫徹スルニ近カラシメタイト云フノガ、此案ノ精
神デアリマシテ、此非役壯丁稅、元ト是ハ或ハ兵役稅ト唱ヘ
或ハ壯丁稅ト申シタノデアリマスガ、ソレデハ兵役ニ稅ヲ出
シテ免ルル途ヲ開クヤウナ感ジヲ與ヘルト云フ非難モアリマ
シタカラ、壯丁ノ中ノ服役シナイ、卽チ非役ノ者ニ此稅ヲ課
セヤウト云フノデアリマシテ、其等ノ非役者ガソレ〓〓其資
產ニ應ジテ幾分國家ニ盡スト云フコトハ、ソレガ爲メニ我國
民皆兵ノ主義、竝ニ軍人ノ崇高ナル尊敬スベキ精神ニ、何
等ノ障害ヲ來サナイノミナラズ、益〓此精神ヲ貫徹スル所以
デアルト思フノデアリマス、松田君ハ既ニ長キ軍隊ノ經驗ア
リ、又松岡君ノミナラズ、是迄日〓日露ノ其戰爭ニ携ハッタ
人〓ハ能ク言フノデス、一錢五厘ノ葉書ヲ以テ軍隊ハ直チ
ニ補充ガ出來ル、我ガ國軍ハ良好ダト言ヒマスケレドモ、時
勢ハ遷リ、人心ハ變リマスル、能ク時勢ト人心ヲ察シテ各〓
其滿足スベキ方ニ向ッテハ、有ユル努力ヲ要スルト思フノデ
アリマス、歐洲戰亂ニ於テ、伊太利ノ一人ノ中隊長ガ我ガ
部下ニ激勵叱咤シテ、吾ニハ「シーザー」ノ後繼者デアル、然
ルニ今墺地利ノ軍隊ニ、半バ許リノ兵ニ向ッテ、二年許リモ
無爲ニシテ過ギタト一ムフコトハ、吾ミノ「シーザー」ニ對シテ洵
ニ慚愧ニ堪ヘヌ次第デアル、今ヤ吾レ行ク、諸君モ進メ、吾レ
ハ死アルノミト、中隊長ハ勇躍シ、猛然トシテ濠ヲ越ヱテ進
ンダ時ニ、多クノ部下ノ兵隊ハ共ニ拍手致シテ唯タ萬歲々々
ト唱フルノミ、聲ノ聲援ハ與ヘマスケレドモ、一人モ之ニ
從シテ進ム者ハ無カッタ、彼レ中隊長ハ後ヲ振返ッテ、アヽ「シ
ーザー」ノ血ハ無イカト、玆ニ彼ハ悲壯ナル最期ヲ遂ゲタノデ
アリマス、「シーザー」ノ時ト、今日ノ伊太利ノ此變化、實ニ甚
シイデハアリマセンカ、又彼ノ柔順デアリ、能ク働クト云ハレ
タル露西亞ノ今日ノ有樣ハ如何、其等ヲ顧ミタナラバ、時代
ノ變遷思想ノ變遷ハ、松岡君ガ軍隊ニ立ッテ一部ノ指揮ヲ
セラレタ時分其通リガ何日マデモ續クト思ハレル、此誤解ノ
根柢ノ上ニ立チテ、斯ル攻撃的ノ此質問ハ、私共名譽アル
松岡君トシテ甚ダ遺憾ト致ス所デアリマス、(拍手起ル)殊
ニ今日ノ制度ニ於テハ、種々改廢ヲスベキモノガ多イ、其一
例ヲ擧ケマスルト、徴兵檢査ヲ受ケル者ニハ、國費デ旅費ヲ渡
スノデアリマス、是ハ國民ノ義務デアルカラ、ソレコソ旅費ヲ
渡サナイデモ濟マウト思フノニ、ソレニハ旅費ヲ。與ヘ、而シテ
兵役ニ服シテ〓里ニ歸ッタ在〓軍人ガ、時ニ點呼召集セラ
レルトキニハ、自費デ行カナケレバナラヌ、斯ノ如キ矛盾撞著
シタル所ノ法制ガ多イ、是等ハ軍隊結神ニモ種々ノ惡影響
ヲ來スノデアリマス、金錢ヲ以テ貴重ナル國民義務ノ精神ヲ
代ヘルコトノ出來ヌノハ勿論デア【リマスケレドモ、國民ガ此
必任義務ノ崇高ナル精神ニ依ッテ打立テマシタル軍人、ソレ
ニ向ッテ敬意ヲ拂フ、其趣意ヲ貫徹スルコトハ本案ヲ實行ス
ル上ニ於テ、何等ノ障碍ナキコトヲ思フノデアリマス、隨テ此
稅法施行ノ結果得タル金額ヲ以テ、必ズ一々充當シナケレ
バナラヌトハ、私此席デ申シマセヌケレドモ、大體軍人ノ給與
ヲ厚ウ致シ、留守家族ノ或ル者ニハ相當手當ヲ致シ、或ハ
軍人遺族、殊ニ癈兵ノ如キ今日ノ生活ニモ苦シム者ガアル、
彼等ヲ救フノ途ヲ開クト云フコトハ、軍人精神ヲシテ義勇
奉公ノ感念ヲ一層奬勵スル所以デアルト思フノデアリマス、
(拍手)殊ニ松岡君ハ三割····三錢六厘トカ云フ御算用ヲ
申サレマシタガ、何等ノ根據ニ出ラレマシタカ知リマセヌガ、
私ノ計算スル所ニ依レバ、先ヅ此稅法デ初年ニ二百五十万
圓ノ金ガ上ガル、ソレガ追こ增シテ七年ノ後ニハ、二千万圓
以上モ得ラレルノデアリマス、國民ハ滿足シテ此稅ヲ出シ、サ
ウシテ是ガ國防ノ上ニ國民精神メ上ニ善用セラレルト云フ
コトハ、吾〓ノ最モ是レ慶フ所デアリマス、尙ホ段と御質問
モアッタヤウデアリマスガ、是等ハ委員會其他ノ機會ニ於テ
說明致スコトニシ、玆ニ根本ノ大體ノ精神ニ就テ、御答致ス
コト斯樣デアリマスル(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=74
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075・岩崎勲
○岩崎動君 本案ハ三善〓之君外五名提出、航空事業
ノ擴張及其行政機關ノ統一ニ關スル建議案ノ委員ニ、併
セテ、付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=75
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076・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=76
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077・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ
如ク決シマシタ-日程第十九辯護士法改正法律案ノ
第一讀會ヲ開キマス、鵜澤總明君
第十九辯護士法改正法律案(鵜澤總明
君外九名提出)第一讀會
辯護士法改正法律案
辯護士法
第一章辯護士ノ資格及職務
第一條辯護士ハ當事者ノ委任ヲ受ケ又ハ相當官廳
ノ命令ニ基キ法律事務ヲ行フモノトス
第二條辯護士タラムト欲スル者ハ左ノ條件ヲ具フル
コトヲ要ス
帝國臣民ニシテ民法上ノ能力ヲ有スル男子タル
コト
二辯護士試驗規則又ハ判事檢事登用試驗規則
ニ依リ試驗ニ及第シ一年六箇月以上辯護士ニ付
實務修習ヲ爲シタルコト
第三條辯護士試驗實務修習ニ關スル規則ハ司法大
臣之ヲ定ム但シ試驗委員ハ司法省高等官判事檢事
辯護士中ヨリ之ヲ詮衡ス
第四條法律學ヲ修メタル法學博士判事檢事タル資
格ヲ有スル者又ハ辯護士ニシテ其ノ請求ニ因リ登錄
ヲ取消シタル者ハ試驗ヲ要セスシテ辯護士タルコトヲ
得
第五條左ニ揭ケタル者ハ辯護士タルコトヲ得ス
-無期若ハ六年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ處セラレタ
ル者但シ國事犯ニシテ復權シタルトキハ此ノ限ニ在
ラス
二刑法第二編第一章乃至第三章第五章第七章
乃至第十一章第百三十四條第十六章乃至第二
十三章第二十五章第二十六章第三十五章乃至
第四十章ノ規定ニ依リ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セ
ラレタル者
三破產又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ復權セサル者
四懲戒ノ處分ニ依リ免官又ハ免職セラレタル者又
ハ本法ニ依リ除名セラレタル者
第二章辯護士名簿
第六條辯護士ハ辯護士名簿ニ登錄セラルルコトヲ要
ス
第七條各地方裁判所ニ辯護士名薄ヲ備フ辯護士ハ
其ノ登錄セラレタル地方裁判所ノ所屬トス
法律ニ依リ職務ノ執行ヲ命セラルヘキ辯護士ハ事件
繫屬ノ裁判所所在地ノ辯護士ヲ以テ之ニ充ツ
第八條辯護士名簿ニ登錄ヲ請フ者ハ其ノ所屬地方
裁判所ノ檢事局ヲ經由シテ司法大臣ニ請求書ヲ差
出スヘシ此ノ請求書ニハ第一章ノ事項ニ關スル證明
書ヲ添付スヘシ
第九條司法大臣ハ左ノ場合ニ於テハ理由ヲ付シ登
錄請求ヲ却下スヘシ
-第一章ノ辯護士タル資格ナキ者ト認メタルトキ
二登錄請求ノ日ヨリ遡リ三箇年內ニ辯護士除名
ニ相當スヘキ行爲アリト認メタルトキ
三身體若ハ精神ノ衰弱ニ依リ辯護士ノ職務ヲ執
ルニ堪ヘサル者ト認メタルトキ
第十條司法大臣ハ左ノ場合ニ於テハ所屬辯護士會
ノ意見ヲ聞キ辯護士名簿ノ取消ヲ命ス
登錄セラレタル辯護士ニシテ辯護士タル資格ナ
キ者ナルコトヲ發見シタルトキ
二辯護士身體若ハ精神ノ衰弱ニ依リ職務ヲ執ル
コト能ハサルニ至リタルトキ
第十一條登錄請求却下及登錄取消命令ニ對シテハ
行政栽判所ニ出訴スルコトヲ得但シ出訴ノ爲登錄取
消ノ命令ハ其ノ執行ヲ妨ケラルルコトナシ
第十二條司法大臣カ登錄取消事件ノ行政訴訟ニ敗
訴シタルトキハ勝訴者タル辯護士ハ何等ノ手續費用
ヲ要セスシテ從前ノ地位ヲ回復ス
第十三條登錄手數料及登錄ニ關スル規則ハ司法大
臣之ヲ定ム
第三章辯護士ノ權利義務
第十三條辯護士ハ法廷ニ於テ職務上陳述シタル言
語ニ付其ノ責ヲ負フコトナシ但シ法廷ノ秩序維持ニ
關スル栽判所構成法民事訴訟法及刑事訴訟法ノ規
定竝本法ニ依ル懲戒規定ノ適用ヲ妨ケス
第十五條辯護士ハ正當ノ理由アルニ非サレハ相當官
廳ノ命シタル職務ヲ行フヲ辭スルコトヲ得ス
第十六條辯護士ハ左ニ揭クル事件ニ付其ノ職務ヲ行
フコトヲ得ス
-職務上相手方ノ協議ヲ受ケテ之ヲ賛助シ又ハ委
任ヲ受ケタル事件
二官吏公吏職務中取扱ヒタル事件
三仲栽手續ニ依リ仲栽人トナリテ取扱ヒタル事件
第十七條辯護士ハ報酬アル公務ヲ兼ヌルコトヲ得ス
但シ帝國議會ノ議員トナリ又ハ官廳ヨリ特ニ命セラ
レタル職務ヲ行フハ此ノ限ニ在ラス
辯護士ハ商業ヲ營ムコトヲ得ス但シ辯護士會ノ許可
ヲ得タル者ハ此ノ限ニ在ラス
第十八條辯護士ハ係争權利ヲ買受クルコトヲ得ス
第四章辯護士會
第十九條各地方裁判所管轄區域每ニ辯護士會ヲ開
司法大臣ハ土地ノ狀況ニ依リ數個ノ地方裁判所區
域ヲ合シテ一ノ辯護士會ヲ設ケシムルコトヲ得
第二十條辯護士會ハ法人トシ司法大臣ノ監督ヲ受
ケ法律命令ノ範圍內ニ於テ左ノ事項ヲ處理スルヲ以
テ目的トス
-法規ノ維持及發達ヲ圖ルニ必要ナル事項
二法律事務ノ完備改善ヲ圖ルニ必要ナル事項
三辯護士ノ利害ニ關スル事項
第二十一條辯護士會ハ會則ノ定ムル所ニ據リ會費
ヲ徵牧スルコトヲ得
會費ノ納付ヲ怠リタル會員ハ總會ノ決議ニ依リ除名
スルコトヲ得
第二十二條辯護士會ニ理事若干名ヲ置キ會務ヲ處
理セシム
會務ハ理事ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
辯護士會ハ理事中ヨリ特ニ其ノ會ヲ代表スヘキ理事
ヲ互選セシムルコトヲ得
第二十三條辯護士會ニ常議員若干名ヲ置キ會則ノ
定ムルトコロニ依リ重要ナル事件ヲ議決セシム
第二十四條辯護士會ノ役員ハ總テ其ノ會員タル辯
護士中ヨリ選擧スルモノトス
第二十五條辯護士ハ辯護士會ニ加入シテ其ノ會員
名簿ニ登錄ヲ受ケタル後ニ非サレハ職務ヲ行フコトヲ
得ス
第二十六條辯護士會ハ會員三分ノ二以上ノ同意ヲ
以テ會則ヲ作リ左ニ揭クル事項ヲ定メ司法大臣ノ認
可ヲ受クヘシ
-名稱、地域及所在地
二役員ノ種類、員數、職務代表權限及其ノ選擧方
法ニ關スル規定
三入會、退會及登錄ニ關スル規定
四總會又ハ役員會ノ議事ニ關スル規定
五辯護士ノ風紀及懲戒ニ關スル規定
六報酬ニ關スル規定
七辯護士會會費ノ取立及未納者ニ對スル制裁ニ
關スル規定
八財產ノ管理及出納其ノ他會務ノ處理ニ必要ナ
ル規定
第二十七條辯護士ハ其ノ所屬辯護士會ノ會則ヲ違
守スヘシ
所屬辯護士會以外ノ地ニ事務所ヲ設クル辯護士ハ
其ノ地辯護士會ノ會則ヲ遵守スヘシ
第二十八條役員選擧ノ結果總會開會ノ日時場所議
題竝總會及役員會ノ結果ハ辯護士會ヨリ檢事正ヲ
經由シテ司法大臣ニ屆出ツヘシ
第二十九條司法大臣ハ檢事長又ハ檢事正ヲシテ辯
護士會ノ會場ニ臨席セシムルコトヲ得
第三十條辯護士會ノ會議ニシテ法律命令若ハ會
則ニ違フモノアルトキハ司法大臣ハ其ノ決議ヲ無效ト
シ又ハ其ノ議事ヲ停止スルコトヲ得
第五章懲戒及罰則
第三十一條辯護士ニシテ法律命令又ハ辯護士會會
則ニ違反ノ所爲アルトキハ會長ハ常議員會又ハ總會
ノ決議ニ依リ懲戒ヲ求ムル爲司法大臣ニ申告スヘシ
第三十二條辯護士ニ對シ懲戒事犯アリト認ムル者ハ
何人ト雖辯護士會ニ申告スルコトヲ得
第三十三條懲戒處分ニ就テハ判事懲戒法ノ規定ヲ
準用ス
第三十四條懲戒罰ハ左ノ四種トス
ー譴責
二千圓以下ノ過料
三五年以下ノ停職
四除名
第三十五條辯護士ニ非スシテ法律事務ヲ取扱フコト
ヲ業トスル者ハ一年以下ノ懲戒又ハ千圓以下ノ罰金
二階八
第六章附則
第三十六條本法ハ大正十一年一月一日ヨリ之ヲ施
行ス
第三十七條本法施行ノ際現ニ辯護士タル者ハ本法
ニ依ル辯護士ト看做ス
第三十八條現在ノ各辯護士會ハ本法ニ依ル辯護士
會ト看做ス
第三十九條現在ノ各辯護士會ノ會則ハ本法ニ依ル
會則ト看做ス但シ本法施行ノ日ヨリ六箇月內ニ本
法ニ遵據シテ之ヲ修正スヘシ
第四十條本法施行ノ際現ニ辯護士會ニ加入セル
辯護士ハ本法ニ依リ其ノ辯護士會ニ加入シ登錄セラ
レタルモノト看做ス
第四十一條本法施行ノ際在任セル辯護士會役員ハ
本法ニ依ル役員ノ選任ニ至ル迄本法ニ依ル役員ト看
做ス
第四十二條本法施行ノ際開始セラレタル警戒手續
ハ明治二十六年法律第七號ニ依ル
第四十三條本法施行ニ必要ナル事項ハ司法大臣之
ヲルト
第四十四條明治二十六年法律第七號ハ本法施行
ノ日ヨリ之ヲ廢止ス
〔鵜澤總明君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=77
-
078・鵜澤總明
○鵜澤總明君 辯護士法改正法律案ハ、多數ノ辯護士
諸君カラノ提案ニナッテ居リマスルガ、僣越デゴザイマスルガ、
私カラ簡單ニ是案ノ内容ヲ說明ヲ申上ゲマシテ、詳細ノ事
ハ何レ委員會ニ於テ、他ノ提案者諸君カラ御說明ノアルコ
トヽ信ズル次第デアリマス、御承知ノ如ク現行辯護士法ハ
明治二十六年ノ制定ニ係ッテ居リマスルカラ、最早二十八
年前ノ舊イ法律ニナッテ居ルノデアリマス、而シテ今日ニ於
キマシテ、辯護士ノ法律的社會的竝ニ國家ノ法律秩序
ニ關スル地位ト云フモノヽ非常ニ向上致シテ參ッテ居ルト云
フコトハ、私ノ申上ゲルマデモナイ次第デアリマス、ソレ故ニ
此辯護士法ニ於キマシテモ、今日十分ナル改正ヲ加ヘマシ
テ、今日ノ辯護士ノ地位ト云フモノヲ十分法律ノ上ニ於テ
認メ更ニ辯護士ノ爲スベキ職務其他ノ點ニ付キマシテ、今ノ法
律ヨリモ一層明確ナル規定ヲ置ク必要ガアルト考ヘル次第
デアリマス、ソコデ此改正ノ案ニ於キマシテハ、大體辯護士
ノ資格ニ就キマシテ、今日ノ時代ニ應ズル修正ヲ加ヘタ積
リデアリマス、卽チ所定ノ試驗ニ及第シタル外ニ實務ノ修習
ヲ要件トスル規定ノ如キモノデアリマス、又登錄ノ規定ニ就
キマシテ修正ヲ加ヘマシタ、法廷ニ於ケル辯論ニ就キマシテ
ハ、言論自由ノ原則ヲ認メルト云フコトニ致シタノデアリマ
ス、又辯護士會ヲ法人トスルコトニ致シタノデアリマス、ソレ
カラ此法人ハ司法大臣ノ監督ヲ受ケルコトニ致シマシテ、檢
事正ノ監督カラ離脫ヲスルト云フコトニシタノデアリマス、
其他懲戒罰則ニ就キマシテモ修正ヲ加ヘマシテ、是ガ先ヅ
大要デゴザイマス、而シテ此案ニ就キマシテハ、何レノ辯護士
會ニモ諮問ヲ致シマセヌシ、又政府ニモ相談ハ致シテアリマ
セヌ、併ナガラ當院ニハ各辯護士會ニ屬スル、歷々ノ辯護士
諸君ガ議席ヲ有ッテ居ルト云フヤウナ次第デゴザイマスカラ、
是等ノ辯護士諸君ノ公正ナル心理ト判斷トニ愬ヘマシテ、
ドウカ良好ナル成案ヲ得タイモンデアル、斯樣ナ趣旨ニ於テ
提案ヲ致シタ次第デゴザイマス、何卒諸君ノ御賛成ヲ仰ギ
マス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=78
-
079・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 提出者ニ質疑ガゴザイマスカラ、之
ヲ許シマス、野田文一郞君
〔野田文一郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=79
-
080・野田文一郎
○野田文一郞君 本案ハ只今提出者ノ御說明ノ如ク政
友會ノ諸君、竝ニ我黨ニ於テモ二名許リ提出者ニ署名シ
テ居リマス、國民黨ノ諸君モ御署名ニナノテ居リマスカラ、是
ハ純然タル黨派ノ爭ニ非ザルコトハ明白デゴザイマス、而シ
テ此案ノ内容ニ就キマシテハ、吾こガ多年考へテ居リマシか
事ヲ用井ラレテ居ル點モゴザイマスルガ、併ナガラ尙ホ不十
分ナリト信ズル點モゴサイマスケレドモ、私ノ只今提出者ニ
問ハントスル所ハ、其等ノ內容ニ關スル事デハナイノデアリ
マス、内容ニ關シマシテハ他日ノ機會ニ讓リマスルガ、辯護
士以外ノ諸君ハ御承知ノ無イコトヽ存ジマスルガ、近年司
法省ニ於テ法律案ノ改正ヲ致シマスル場合、例ヘバ民法ノ
一部トカ、若クハ商法、民事訴訟法、破產法是等ノ法律ノ
改正ヲ企テラレマスル場合ニハ、必ズヤ全國ノ裁判所ノ側
ト辯護士ト此兩方面、所謂在朝在野ニ諮問致シマシテ、汎
ク是等ノ意見ヲ纏メテ起案ヲスルト云フコトノ一慣例ニナッテ
居リマス、是ハ全國在朝在野ノ法曹ハ、法ノ運用ニ携シテ居
リマシテ、法律上ノ専門ノ知識ヲ有スルノ外、經驗ノ上ヨリ
致シマシテ種々ナル意見ヲ持シテ居リマスルカラ、是等ノ意
見ヲ求ムルト云フコトハ、立法ノ完全ヲ期スル上ニ於キマシ
テハ、極メテ深切ナル遣方デアルト私ハ考ヘテ居リマス、斯ノ
如ク一般法律デサヘモ、司法省ハ在朝在野ノ法曹ノ意見
ヲ求メルノデゴザイマスカラ、若シ本案ノ如キ一般國民ヲ支
配スルト謂ハンヨリハ、寧口辯護士ヲ支配ヲ致ス法律ヲ改正
スル場合ニ於キマシテ、殊ニ此改正ハ全體ニ涉ル改正デアツ
テ、所謂根本的ノ改正デゴザイマス、斯ノ如キ改正ヲ企ツル
ニ方ッテハ、必ズヤ先ヅ第一ニ全國ノ辯護士會ニ諮問ヲ致
スト云フコトハ、當然爲スベキ事デアルト云フコトハ確信シ
テ宜シイノデアル、然ルニ本案ハ司法省ノ提案ニ非ズシテ
所謂法曹代議士ノ名ニ於テ提出セラレタルニ拘ラズ、常ニ
多數ノ輿論ヲ尊重シ、全國ノ辯護士ノ力ヲ認メテ居ルベキ
人〓ノ提案デアルニ拘ラズ、之ヲ辯護士會ニ諮ラズシテ突如
トシテ御提出ニナッタト云フコトハ、私ハ少クトモ所謂法曹
代議士ガ、全國ノ辯護士會ヲ無視シタモノデアッテ(「ノウ〓〓」)
全國ノ辯護士ハ、侮辱ヲ受ケタルモノナリト云フコトノ感
ジヲ持ッテ居ルト信ジマス、現ニ私共ハ數月前神戶若クハ大
阪ノ辯護士ニ會ヒマシタガ、何等ノ相談ガナクシテ、全國ノ
辯護士ニ發言ノ機會ヲ與ヘズシテ、突如トシテ提出シタト
云フコトニ就テハ、非常ニ憤〓ヲ致シテ居リマス、此數日ノ
中ニ辯護士會ヲ開クト云フコトモ申シテ居ルノデアル、地方
ノ辯護士デアリナガラ、自分ノ資格ヲ認メズシテ之ニ反對ノ
批評ヲ加ヘルガ如キハ、自ラ侮ルモノデアルト私ハ信ズル、或
ハ本案ハ辯護士協會ニ於テ、起案ヲセラレタモノデアルト云
フコトモ間キマシタ、若シソレナラバ辯護士協會ハ、須ラク全
國ノ辯護士會ニ向フテ諮問ヲ致スベキ筈デアル、勿論改正ハ
一年デモ早クシテ、完全ナル法律ニシタイト云フコトハ勿論
デゴザイマスルケレドモ、併ナガラ本案ハソレ程ニ急ヲ要スル
法案デハナイノデアル、故ニ若シ全國ノ辯護士會ヲ無視シ
タ、侮辱シタト云フヤウナ意味合デナクシテ、ソコマデハ氣ガ
付カナカッタト云フコトヲ御趣意デアッタナラバ、須ラク今回
ハ御見合ニナッテ次ノ議會マデニ全國ノ辯護士ノ意見ヲ纏
メ、サウシテ御提出ニナレバ、所謂辯護士ヲ支配スル所ノ法
律ヲ、全國多數ノ辯護士ノ輿論ノ上ニ作リ上ゲルト云フコ
トニナレバ、院外ニ於ケル辯護士諸君モ、恐クハ御信用ニナッ
テ御賛成ニナルコトヽ私ハ信ジマス、ソレ故ニ私ガ提出者ニ
問ハントスル所ハ、今申ス如クマサカ全國ノ辯護士會ヲ無
視スルト云フヤウナ御意見デハナカッタト信ジマスルガ故ニ、
是ハ手續上ノ誤デアッテ、全國ノ辯護士ヲ輕ンジタト云フコ
トハ免レマスマイケレドモ、惡意ノアッタモノデナイト信ジマス
カラ、ソレナラバ今囘ハ見合シテ、更ニ全國ノ辯護士ニ協議
ヲ致シタ上デ、御提出ニナルト云フ御意思ハゴザイマセヌガ、
勿論議員ノ提案權ハ憲法ノ認ムル所デアルカラ、左樣ナ理
窟ヲ申スノデハゴザイマセヌカ、司法省デスラモ執ルベキ手續
ヲ、辯護士ノ側ノ人ガ執ラズシテ出スト云フノハ、私ハ不穩
當デアルト信ズルノデアリマス、故ニ其處ニ就テ提案者ノ御
意見ヲ伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=80
-
081・鵜澤總明
○鵜澤總明君 簡單デアリマスカラ、此席カラ御答致シタ
ウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=81
-
082・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 提案者ハ撤回ヲ爲サル意思ガ有ル
カ、無イカト云フ御尋デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=82
-
083・鵜澤總明
○鵜澤總明君 承知致シマシタ-只今野田君ノ御質問
デアリマスガ、提案者ハ之ヲ撤囘スル意思ハゴザイマセヌ、ソ
レカラ司法省若クハ政府ノ拵ヘマスル法律案ハ、之ヲ汎
ク民間ニ諮リマセヌケレバ民情ヲ盡スコトガ出來ナイ虞ガア
リマスカラ、是等ノ官署若クハ官吏等ノ作ル案ニ就テハ、是
ハ汎ク民間ニ諮ルコトガ相當デアラウト考ヘル次第デアリマ
ス、併ナガラ私共ノ此提案ヲ致シマシタノハ辯護士多數ノ
輿論ヲ容レタル案ト信ジ、卽チ辯護士諸君ハ此案ニ當然共
鳴スペキモノデアルト云フコトヲ確信致シテ、提案シタ次第
デアリマス、之ヲ特別ノ法律ノ機關タル辯護士會ニ諮ラナカッ
タト云フ事柄ハ、官僚式ヲ避ケテ、民間ニ在ル所ノ吾〓ノ意
思ヲ直チニ議院ニ訴ヘテ、玆ニ良好ナル成案ヲ得タイト云
フ意思ニ外ナラヌノデアリマス、隨ッテ此法律規定ニ基ヅキマ
スル辯護士會ニ對シテハ、非常ナル尊敬ト敬意ヲ持ッテ居ル
ト云フコトヲ、茲ニ言明ヲ致シテ置キマス(「詭辯」ト呼フ者
アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=83
-
084・岩崎勲
○岩崎動君 本案ハ議長指名ヲ以テ、特ニ十八名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=84
-
085・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ハ無イト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第二十所得
稅法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-提出者岩本
平藏君
第二十所得稅法中改正法律案(岩本平
藏君外九名提出)第一讀會
所得稅法中改正法律案
所得稅法中左ノ通改正ス
第十四條第一項第三號中「山林ノ所得」ヲ「山林伐採
ノ所得」ニ改ム
〔岩本平藏君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=85
-
086・岩本平藏
○岩本平藏君 諸君、只今日程ニ上リマシタル、所得稅法
中改正法律案ノ提出ノ理由ヲ述ベヤウト思ヒマス、所得稅
法中ノ第十四條、山林所得、此所ニ極ク簡單ナル修正ガア
ルノデアリマス、卽チ現行法ノ第十四條第一項、第三號ニ
「山林所得ハ前年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタ
ル金額」斯ウアルノヲ、山林ノ所得ハ「山林伐採ニ依ル」卽チ
此七字ヲ加ヘルノデアリマス、ソレニ就キマシテ此理由ヲ簡
單ニ述ベヤウト思フノデアリマス、現行所得稅法ノ山林ニ關
スル所得ハ、前ノ所得稅法ニハ明カニ山林伐採ノ所得ト書
イテアッタノヲ、今回ノハ其「伐採」ノ二字ヲ除イタノデアリマ
シテ、卽チ山林ニ生存シテ居ル立竹木ハ、土地ト共ニ之ヲ
移轉スルモノニ對シテモ所得稅ヲ取ルコトニ相成ッテ居リマ
ス、是ハ大藏當局ニ於テハ、或ハ此林業ノ根本ヲ能ク御理
解ニナラナイ結果ニ依ッテ、斯ノ如クニナッタノデアルマイ
カト考ヘルノデアリマス、此造林ノ事ニ就キマシテモ、森林經
營ハ決シテ劃一的ノモノデハアリマセヌ、卽チ造林ノ目的ト
致シマシテモ、喬林作業、矮林作業、天然林作業、此三通リ
ニ分レルノデアリマシテ、此造林ノ目的ト致シマシテハ、主木
收利ト間伐收利、尙ホ其以外ニ副產物ヲ目的トスルノ方
法モアルノデアリマス、此方法此目的、ソレハ矢張需要地ノ
如何、或ハ土地ノ-地積ノ關係、或ハ運搬ノ便否、斯ウ云
フコトニ依シテ決定致スノデアリマス、ソレデアリマスカラ山
林ハ啻ニ立竹木ノ儘ヲ以テ移轉シタ所デ、決シテ其所得ナ
ルモノハ入ルモノデナイノデアリマス、只今申シタ間伐收利
ヲ以テ目的ト致スモノニ就テノ最モ近キ例ヲ申シマスレバ、
竹林ノヤウナモノ、林業ニ於テハ一番收益ノ多イモノハ竹
林デアリマス、併ナガラ竹林ハ御存ジノ如ク、決シテ皆伐ス
ルモノデハナイ、四分ノ一トカ、若クハ五分ノ一、此位ノモノ
ヲ間伐ヲ致シテ行クノデアリマスカラ、全體ノ賣買ヲ致シマ
シテモ、跡ニ四分ノ三、若クハ五分ノ四位ハ追こニ殘ッテ行
クノデアリマス、其殘フテ行キマスモノハ、是ハ移ッタモノヲ其
代價ノ中カラ利益ヲ見ルト云フコトニナリマスト、卽チ果實
ニ對シテ課稅スルニ非ズシテ、資產ニ對シテ課稅ヲスルト云
フ結果ニナルノデアリマス、就中副產物ヲ目的トスル如キハ、
最モ其中ニ間違ッタル是ハ制度ニナッテ居ルノデアリマス、例
ヘバ栗ノ實ノ如キ、昨日モ中野君ノ御話ガアリマシタガ、松
茸ノヤウナモノ、是ハ決シテ山ノ木ヲ目的トスルモノデナイ、
松ノ木ガアル爲メニ、ソコニ揚フテ來ル所ノ松茸ヲ目的トス
ルモノデアル、ソレデアリマスカラ、其山全體ヲ賣リマシタ所
デ、其山主ノ所得ハ年々揚ル所ノモノヨリ外ニ、所得ニナル
ノデハアリマセヌカラ、卽チ只今申シタ如ク、資產ニ對シテ課
稅ヲスルコトニナルノデアリマス、若シ此意味ヲ以テ行キマス
ナラバ、土地ノ賣買デモ、或ハ株劵ノ賣買デモ、五十圓ノ株
劵ヲ百圓ニ賣ッタカラト云ッテ、此五十圓ガ決シテ所得ニナ
ルノデハナイ、此株劵ニ對スル配當金、卽チ果實シカ眞正ナ
ル所得ニハナラヌノデアリマスカラ、山林ノ土地ニ附イタ物ヲ
賣ッタ所デ、一箇ノ不動產ノ移轉ニシテ、決シテ個人ノ收入
ニナルノデハアリマセヌ、ソレデアリマスカラドウシテモ山林ノ
所得ナルモノハ、伐採ニ依ッテ土地カラ離レテ、卽チ果實ニ
ナッテ始メテソレニ稅ヲ課スルノガ至當デアラウ卜思ヒマスガ
故ニ、此改正案ヲ出シタノデアリマス、殊ニ政府ハ此土地ノ
儘ニ賣買スルモノヲ共ニ取ルノハ、所得稅ノ徵收ニ於テモ頗
ル利益ノヤウニ申サレテ居リマスケレドモ、吾〓ノ調ベテ見ル
所デハ決シテサウデアリマセヌ、卽チ一般ノ-總テノ經費
ヲ控除スルノニ、矢張買人代金、及利息、斯ウ云フモノヲ矢
張算盤ノ中ニ入レルト云フ、斯ウ云フコトヲ言ハレテ居ルノ
デアリマスカラ、最初ニ賣買ヲシタモノヲ、例ヘバ十万圓ナラ
十万圓デ賣買シタモノヲ、五年目ニ一度ノ伐採ヲスル、十年
目ニ一度ノ伐採ヲスルト云フコトニナル、所ガ其利息位ハ取
リ得ラレルカモ知レマセヌケレドモ、何時マデ經ッテモ利益ハ
アリマセヌカラ、ソレヨリモ矢張伐採シタ時ニ、一度ニ其收
益ニ依クテ課稅スルコトガ至當デアラウト信ズル、故ニ此改
正案ヲ提出致シタノデアリマス、尙ホ詳細ノ事ニ就キマシテ
ハ、委員付託ニサレマシタラバ、其場合ニ於テ述ベヤウト思
マス、何卒御贊成アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=86
-
087・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託
セラレンコトヲ希望致シマス
〔「賛成」ト呼フ者ノリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=87
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088・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス-日程第二十一、明治三
十四年法律第三十號中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス、齋藤鷲太郞君
第二十一明治三十四年法律第三十號中
改正法律案(齋藤鷲太郞君外六名
提出)第一讀會
明治三十四年法律第三十號中改正法律案
明治三十四年法律第三十號中左ノ通改正ス
本法但書中「五十年」ヲ「六十年」ニ、「三十年」ヲ「四十
年」ニ、「七十年」ヲ「八十年」ニ改ム
〔齋藤鷲太郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=88
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089・齋藤鷲太郎
○齋藤鷲太郞君 議案輻輳ノ折柄デアリマスカラ、詳細
ハ委員會ニ於テ申上ゲルコトニ致シマス、簡單ニ提案ノ理由
ヲ陳述致シマス、本案ノ要旨ハ此法律第三十號中、開墾鍬
下年限、及地價据置年期ノ土地ニ就テハ、通ジテ「五十年」
トアリマスノヲ「六十年」ト致シマス、開拓鍬下年期ノ土地
ニ就テハ、通ジテ「三十年」トアリマスノヲ「四十年」トシ、新開
免租年期ノ土地ニ就テハ、通ジテ「七十年」トアリマスノヲ
「八十年」ト致シマシテ、各〓十年ヅヽノ延長ヲスルヤウニ改
正致シタイト云フノ趣旨デゴザイマス、明治三十四年法律
第三十號ノ地租條令中ニ於テ、鍬下年期若クハ地價据置
年期等ノ規定ニ盡サヾル所ガゴザイマシテ、特ニ大規摸ノ開
墾、若クハ成功ノ困難ナ開墾ニ就キマシテ、其地租若クハ地
價据置年限ノ猶豫ヲ長ク與ヘル所ノ途ヲ與へル法律案デ
ゴザイマシテ、此根本法タル地租條令ニ就キマシテハ、第四
十一議會ニ於テ各十年間ノ延期ニナリマシタノデ、此法律
案ニ就テモ此精神ニ從フテ、同樣其期間ヲ十年間延長スル
ト云フノガ當然ノ精神デアラウト考ヘマシテ、第四十一議會
ハ其理由ニ依クテ是ト同ジ法律案ガ提出サレマシテ、委員會
ハ滿場一致ヲ以テ可決シマシタガ、會期切迫ノ爲メニ遂ニ
審議未了ニ終リマシタ案デアリマス、四十二議會ハ解散ノ
爲メ、四十三議會ハ特別デ期間ガ短カヽッタ爲メ提出スル
コトガ出來マセヌノデ、今回ノ議會ニ本案ヲ提出シタ次第デア
リマス、本案ノ精神ハ結局開墾ヲ奬勵シテ、〓糧問題ノ解
決ニ資スルト云フコトノ目的デアリマスカラ、突然ノ豐年デ
アリマシタ現在ニ於テハ、日本ノ米穀ハ剩ッテ居ッテ、價格ノ
調節ヲシナケレバナラヌト云フ狀況ニナッテ居リマスガ、大體
ニ於テ我國ノ米穀ト云フモノハ、年々三四百万石ノ不足ヲ
告ゲルト云フ所カラ、勿論此開墾ト云フ事ヲ奬勵スルノ必
要ハアルノデアリマス、故ニ此開墾奬勵ノ趣旨、及地租條令
ヲ改正サレタル精神ニ基イテ、此改正ヲ圖ラウト云フコトモ
最モ至當ナル事ト信シマスカラシテ、ドウゾ審議ノ上、滿場
ノ御賛成アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=89
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090・岩崎勲
○岩崎動君 本案ハ前ノ日程第二十ノ委員ニ併セテ付
託セラレンコトヲ希望致シマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=90
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091・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第二十二、地方
學事通則中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、提出者竹
上藤次郞君
第二十二地方學事通則中改正法律案
(竹上藤次郞君提出)第一讀會
地方學事通則中改正法律案
地方學事通則中左ノ通改正ス
第三條ニ左ノ一項ヲ加フ
特別ノ事情アル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ拘ラス監
督官廳ノ認許ヲ受ケ市町村ニ於テ其ノ費用ノ一部ヲ
負擔スルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔竹上藤次郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=91
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092・竹上藤次郎
○竹上藤次郞君 地方學事通則中改正法律案ノ提出
ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマシテ、諸君ノ御賛同ヲ得タイト思
フノデアリマス(「謹聽」)我國ノ國民初等〓育ハ義務的〓
育デアリマスルガ故ニ、是ガ費用ハ國庫若シ餘裕ガアリマス
レバ、國庫支辨ニスベキガ適當ノモノデアラウト私ハ信ズル
ノデアリマス、併ナガラ現在ニ於キマシテハ此餘裕ガアリマセ
ヌガ爲メニ、其運ピニ至リマセヌガ、先ツ第二ト致シマシテモ、
地方ノ府縣ヲ以テ支辨セシムルガ適當ト云フノデアリマス、
併シ是モ尙ホ事情許シマセヌ場合ハ、小學校ノ設立者タル
所ノ市町村シレ自身ヲ以テ支辨セシムルガ、適當デアルト思
フノデアリマスガ、茲ニ明治三年ニ發布サレマシタ所ノ舊
キ地方學事通則ナルモノガアリマスガ爲メニ、其運ビニ至ル
コト能ハズシテ、其學費ハ各學區ニ於テノミ支辨セネバナ
ラヌコトニナッテ居リマスノデ、吾ミノ理想ニ餘リニ反スルモ
ノデアリマスガ故ニ、此改正案ヲ提出致シマシタ次第デアリ
マス、殊ニ此學區ニ於テ負擔ヲ致シマスコトニ就テハ幾多ノ
弊害ガアルノデアリマス、ソレハ近來世界ヲ通ジテ貧富ノ差
ガ非常ニ大キクナリマシタル結果、此學區ニ於キマシテモ、亦
貧富ノ差ガ甚シク生ジマシタガ爲メニ、甲ノ學區ニ於キマシ
テハ非常ニ大ナル敷地ヲ有シ、立派ナル所ノ校舍ヲ持チ、且
ツ完全ナル所ノ〓員組織ヲ以テ致シテ居リマスガ、直グ其
隣リノ學區ニ於キマシテ、貧弱ナルモノデアリマシタナラバ、
小サキ校舍、極ク狹キ所ノ敷地ト、代用〓員ヲ含ミマス所
ノ、貧弱ナル〓員組織ヲ以テ〓育ヲ致スノデアリマス、而
シテ之ニ通學スル兒童ニ於キマシテハ、直グ隣リ同士ノ兒童
,
デアリナガラ、甲ハ非常ナル立派ナル學校ニ於テ〓育ヲ受
ケ、乙ハ貧弱ナル二部〓授ニ通學ヲシナケレバナラヌト云フ
ヤウナ次第デアルノデアリマス、故ニ私ハ此地方學事通則
ノ改正ヲシテ、斯ル弊害ヲ除去シタイ、尙且ツ其市町村當
局ニ於キマシテ、〓員ヲ配給スル上ニ於キマシテモ、非常ノ
弊害ガアルノデアリマス、ンレハ貧弱ナル區ニ對シマシテハ、
代用〓員等ノ如キ月給ノ廉キ〓員ヨリ配給スルコトガ出
來ズシテ、富豪ノ多クアリマス學區ニ於キシマテハ、良キ〓員
ヲ配給スルコトニナッテ居リマス、中流以上ノ家庭ニ於キマ
シテハ、兒童ハ少ナウゴザイマスガ、中流以下ノ家庭ニ於キ
マシテハ兒童ノ數ハ實ニ澤山アルノデアリマス、故ニ富豪ノ
區ニ於キマシテハ、學事費ノ費用ハ少ナクアリマシテ、貧弱
ナル學區ニ於キマシテハ富豪ノ區ノ三倍五倍、或ハ十倍ノ
負擔ヲ致シテ居ルノデアリマスガ故ニ、各學區ニ於キマスル
費用ノ均等、及其〓員ノ配給ヲ圓滑ナラシメ、而シテ國民
〓育ヲ完全ニ行ヒタイト信ジマス次第デアリマス、ドウゾ諸
君、可憐ナル所ノ多數ノ兒童ノ爲メニ、本案ノ通過ニ贊成
アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=92
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093・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託
セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=93
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094・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ガ無イト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第二十三、沒祿
者給與法案ノ第一讀會ヲ開キマス熊谷直太君
第二十三沒祿者給與法案(熊谷直太君
外八名提出)第一讀會
沒祿者給與法案
沒祿者給與法
第一條明治元年一月ヨリ明治三年九月十日藩制
施行マテノ間ニ於テ國事ニ關スル犯罪ノ爲ニ家祿賞
典祿ヲ沒收セラレタル者及其ノ家名承繼人ニ限リ其
ノ當時ノ祿高ニ基キ明治三十年法律第五十號家祿
賞典祿處分法竝明治三十二年法律第八十四號家
祿賞典祿處分法施行法ヲ準用シ祿高整理ノ爲發行
スル公債證書ヲ以テ之ヲ給與ス
第二條前條ノ給與ヲ受ケムトスル者ハ本法施行ノ日
ヨリ六箇月以內ニ其ノ理由及證據ヲ具シ地方廳ヲ
經テ大藏大臣ニ願出ツヘシ
第三條前條ノ願出ニ對シ處分ヲ受ケタル者其ノ處分
ニ不服アルトキハ其ノ指令ヲ受取リタル曰ヨリ六箇月
以内ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
〔熊谷直太君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=94
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095・熊谷直太
○熊谷直太君 只今上程サレマシタル沒祿者給與法案
ノ提出ノ理由ヲ申上ゲテ見タイト思ヒマス、本案ハ最モ簡
單ナル法案デアリマスケレドモ、皆樣ノ多大ノ御同情ヲ求メ
ナケレバナラヌ所ノ法案デアリマス、申上ゲルマデモナク、大正
八年四月四日法律第三十五號ヲ以テ發布サレマシタ所ノ
彼ノ法案ハ、此衆議院及貴族院ニ於キマシテ、全會一致ヲ
以テ通過シタル所ノ法案デアリマス、此法案ト只今提出シ
マシタル所ノ法案ト對比シテ見マスルト、唯ダ一點相違ノ點
ガアルノデアリマス、卽チ法律第三十五號ノ法律ニ於キマシ
テハ、明治三年九月十日以後ニ、國事ニ關シテ沒祿サレマ
シタ所ノ者ヲ給與スル所ノ法案デアリマスガ、本案ハ更ニ遡
リマシテ、德川幕府ガ倒レマシテ大政ヲ帝室ニ收メタ以來、
卽チ明治元年一月ヨリ大正三年九月十日ノ間ニ於キマシ
テ、國家ノ爲メニ關係シ、沒祿セラレマシタ所ノ者ヲ給與シ
タイト云フ法案デアリマス申上グルマデモナク、彼ノ際ニ於
キマシテ國事ニ盡瘁シテ、或ハ身ハ鼎錢ニ附セラレ、或ハ妻
子ハ離散シ、沒祿セラレマシタ所ノ者、ソレハ見解ニ依ッテハ
不忠ノ臣トモナレバ、亦忠義ノ士トモナルノデアリマス、併ナ
ガラ是レ齊シク國家ノ爲メニ盡シタト云フコトハ同一デアリ
マス、既ニ明治三年九月十日以後ノ者ガ恩典ニ浴スル以
上ハ、此維新ノ際ニ於キマシテ、沒祿セラレマシタ所ノ者ニ
モ及バヌト云フ道理ハ無イノデアリマス、故ニ本案ヲ提出致
シマシタ、何卒皆サンノ多大ノ御同情ニ依リマシテ、本案ノ
通過アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=95
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096・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ日程第二十ニ揭ケタル岩本平藏君
外九名提出、所得稅法中改正案外一件ノ委員ニ併セテ付
託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=96
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097・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認メ
マス、仍テ岩崎君ノ動議ノ如ク決シマシタ、日程第二十四、
營業稅法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、提案者荒
川五郞君
第二十四營業稅法中改正法律案(荒川
五郞君提出)第一讀會
營業稅法中改正法律案
營業稅法中左ノ通改正ス
第十二條第二項中「麥、」ノ下ニ「麬、」ヲ加フ
〔荒川五郞君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=97
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098・荒川五郎
○荒川五郞君 極メテ簡單ニ說明申シマス、御承知ノ通
リニ小麥カラ麥粉ヲ取リマシタ粕ノ麬、其麬ハ主タル效用
ヲ爲シタル其副產ノ粕デ、副產物癈物デアリマス、殆ド價ノ
無イモノデアリマス、然ルニ此麬ト云フ規定ガ營業稅法ニ無
イガ爲メニ、非常ナ重稅ヲ課セラレテ居ルノデアリマス、其次
第ハ營業稅法ノ第十二條ニ於テ、物品販賣業ヲ規定シテア
リマス、其物品販賣業ハ、賣上ニ付テ課稅ヲ致シマスノニ卸
賣ト小賣トヲ分ケテ、卸賣ハ万分ノ八ト万分ノ十一ト甲乙
ニ分ケテアリマス、又小賣ハ万分ノ二十ト万分ノ三十ト、是
モ甲乙ニ分ケテアリマス、而シテ多クノ物品ノ中デ、米、麥、
豆、肥料、鹽、薪炭ト云フヤウナモノハ、卸賣小賣トモ廉イ方
ノ甲ノ課稅ヲ爲シ又絹ヤ麻、眞田、砂糖、燐寸ト云フヤウナ
モノハ、卸賣デハ甲ノ廉イ稅ヲ課スルノガ、小賣デハ乙ノ高
イ稅ヲ課スルトナッテ居ル、而シテ其以外ノ品ハ十二條ニ揭
ゲテアル「其ノ他ノ物ロ四」ハ、總テ小買モ御賣モ高イ分ノ乙
ノ稅ヲ課スルトナッテ居マス、其箇條中ニ「麬ト」云フ文句ガ
無イ爲メニ、「其ノ他ノ物品」ト云フ中ニ入ッテ居ルモノトシ
テ解釋シ、法律ヲ適用セラレテ、米ヤ麥カラ出夕其主タルモ
ノノ從デアル、癈物デアル、副產物デ、殆ド無價値ナ物デアル
麬ニ高稅ヲ課シツヽアルガ、其麬其物ハ今日如何ニ使ハレ
テ居リマスカト云ヘバ、元ト是レハ殆ド肥料ノ外ニハ使ハレ
ナカッタノデアリマス、近年ニナリマシテソレガ牛馬竝ニ鷄ナ
ド家畜ノ飼料ニ使ハレマス、家畜ノ飼料ト云ッテモ、ソレガ主
ニ使ハレルノデハアリマセヌデ、補助的ノ飼料ニ使ハレテ居
ル至ッテ價ノ乏シイ殆ド、無價値ナ物デアリマス、其無價値ナ
麬ニ對シテ、主物デアル麥米ナドヨリモ高イ、絹ヤ砂糖ナド
ヨリモ尙ホ高イ、卸賣小賣共ニ乙ノ重稅ヲ課セラレルト云
フコトハ如何ニモ不公平デアル、如何ニモ不權衡デアルト云
フノデ、此案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、全體營業稅
法ハ法律自體其己ノガ世間ニ歡迎セラレナイデ、惡稅ト唱
ヘラレテ居リマス、實際ノ公平ヲ缺キ、國稅タル性質ハ甚ダ
乏シイノデアリマスカラ、或ハ之ヲ地方稅ニ移ストモ國稅ト
スベキ性質ニハ適シナイモノデアルト云フコトニ、天下ノ輿論
ハナッテ居ルノデアリマス、隨ッテ其法律案ニ向ッテ彼此手ヲ
加ヘヤウト云フコトハ、私モ今其勇氣ガ乏シイノデアリマス
ケレドモ、苟モ一日デモ是ガ行ハレテ居ル以上ハ、成ベク之
ヲ公平ニ、平等ニ扱フノガ必要デアラウト思フノデアリマス、
私ガ此問題ニ氣ガ著キマシタノハ昨年明治天皇鎭座祭
ニ參列スベク、上京ニ際シ汽車ノ三等室ニ於テ、未面識ノ
一人カラ承ッタノデアリマス、仍テ其後法律ヲ調ベテ見ルト
果シア其通リデアル、之ヲ收稅官吏ニ聞イテ見ルト、洵ニア
レハ氣ノ毒デアルガ、「其他ノ物品」ト云フコトニ解釋スルノ
外ナイト言フ、ソレデハ甚ダ不都合ト心得マシテ、玆ニ本案
ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、事柄ハ簡單デアリ、小サ
ナモノデアリマシテ、主稅局ニ聞イテ見マスレバ、麬ノ稅額
ハドノ位カ判ラヌ位ノモノデアル、殆ド眼中ニ無イ位ノ僅サ
ナモノデアリマス、其稅ヲ幾ラカ康クスルト云フコトハ、國庫
ノ收入ニハ何等關係ノ無イ問題デアリマス、而シテ法律ノ
上カラハ公平ヲ期シ、權衡ヲ尙フ其精神ノ上ニハ、最モ看過
スベカラザル事ト考へマス、諸君ノ御賛成ヲ祈リマス(拍手
起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=98
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099・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ曩ノ岩本平藏君外九名提出、所得
稅法中改正法律案外二件ノ委員ニ、[併セテ付託セラレン
コトソ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=99
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100・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第二十五、民法
中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、提出者奥村安太郞
君
第二十五民法中改正法律案(奧村安太
郞君提出)第一讀會
民法中改正法律案
民法中左ノ通改正ス
第九百七十五條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
但法定ノ推定家督相續人カ婚姻ニ因リテ他家ニ八ラ
ント欲スルトキハ被相續人ハ其推定家督相續人ト共
ニ裁判所ニ申立ヲ爲シ其許可ヲ得テ廢除ヲ爲スコト
ヲ得
〔奧村安太郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=100
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101・奧村安太郎
○奧村安太郞君 諸君、民法改正ハ容易ナラヌ事デアリ
マス、併ナガラ玆ニ簡單ニ提案ノ理由ヲ說明致シタイト思
ヒマスガ、其民法ノ一部ニ一ツ容易ナラヌ問題ガアルノデゴ
ゲイマス、我國ノ制度ニ依リマスレバ、家ヲ重ンズルト云フ習
慣カラ起リマシテ、日本ハ其戶主權ノ喪失ノ所ニ、家督相
續ニ依リ戶主トナリタル者ハ、其家ヲ廢スルコトガ出來ナイ
ノデアリマス、所ガ玆ニ一ツノ例外ノ規定ヲ設ケマシテ、婚姻
ニ依ッテ他家ニ入ラント欲スルトキハ、裁判所ノ許可ヲ得テ
隱居ヲ爲スコトガ出來ルノデアリマス、是ハ法律ガ粹ヲ利カ
シタルモノデアリマス、最モ重イ所ノ戶主權ノ喪失デスラ、裁
判所ノ決定ニ依ッテ之ヲ行フコトガ出來ルノデアリマス、併シ
ナガラ法定ノ推定家督相續人ノ場合ニ於テノミ、裁判ヲ起
サナケレバ他家ニ人ルコトガ出來ナイ規定ニナクテ居リマス、
法定ノ推定家督相續人ガ他家ニ入ラント欲スルトキニハ、
被相續人ト相續人トノ問ニ、裁判ヲ起サナケレバナラヌノデ
アリマス、此栽判ハ一箇年ニ我國ニ於キマシテハ何千アルカ
判ラヌノデゴザイマス、殆ド滿場ノ諸君ハ此關係ニ依シテ、屢、
此事ニ遭遇セラレテ、不自由不便ヲ感ジラレテ居ルコトデア
ラウト思フノデアリマス、是ハ親子ノ間ニ裁判ヲ起スノデス、
外國ニ於テハ親子ノ間ニ裁判ヲ起スコトハ屢、アリマスガ、
我國ニ於テハ容易ナラヌ事デアリマス、而モ是ハ本當ノ裁判
デハナイノデ、所謂八百長ノ裁判デアリマス、親ガ子供ヲ外
ニ出サナケレバナラヌ爲メニ、子供ヲ被告人トシテ訴ヘナケ
レバナラヌノデアリマス、サウシテ一方ニハ勝訴ヲ與へ、一方
ニハ敗訴ヲ與ヘナケレバナラヌト云フヤウナ不都合ナ規定デ
ゴザイマス、隨ッテ訴訟費用ハ被告ノ負擔トスト云フヤウナ
妙ナ關係ガ出來テ來ルノデアリマス、此場合ニ於テモ、戶主
權ノ喪失ノ場合ト同ジヤウニ、單ナル決定ニ依ッテ、卽チ非
訟事件手續法ノ規定ニ從ッテ、判決ニ依ラズシテ決定ニ依ツ
テ之ヲ行フコトガ出來ル所ノ、所謂法律ガ梓ヲ利カシタ所ノ
規定ヲ玆ニ設ケタイト思フノデアリマス、故ニ民法九百七十
五條ノ二項ニ、今申シタヤウナ簡單ナル規定一項ヲ加ヘテ
貰ヒタイト云フノガ、本案提出ノ趣意デゴザイマス、宜シク御
賛成アランコトヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=101
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102・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託
セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=102
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103・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第二十六、地租條
例中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、下田勘次君
第二十六地租條例中改正法律案(下田
勘次君外二名提出)第一讀會
地租條例中改正法律案
地租條例中左ノ通改正ス
第二十條及第二十三條中「十五年以內」ヲ「二十五年
以內」ニ改ム
第二十四條中「二十年以內」ヲ「二十五年以內」ニ改ム
〔下田勘次君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=103
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104・下田勘次
○下田勘次君 極メテ簡單ニ提出ノ理由ヲ申上ゲマス本
案ハ至ッテ簡單ナ事柄デアリマシテ、卽チ地租條例第二十
條中、水害其他ノ天災ニ依リマシテ、土地ヲ變形ヲ來シマ
シタ、其荒地ニ對スル免稅年限ヲ延長スルト一云フノ案デア
リマス、諸君、我ガ瑞穗ノ國ノ國策ハ何ト云ヒマシテモ〓糧
問題、卽チ米ノ問題ガ第一デアリマス、此問題ニ就キマシテ
ハ、上下擧ッテ徹底的ニ其ノ送行ヲ期セナケレバナラヌノデ
アリマス、隨テ歷代ノ政府ニ於テモ、或ハ法令ヲ改正シ或ハ
單獨ノ法令ヲ設ケマシテ、施設甚ダ力メテ居ラレルノデアリ
マスガ、本員尙ホ之ガ徹底上遺憾ノ點ガアリマシテ、本改正
案ヲ提出シタ次第デアリマス、改正ヲ要スベキ第一ノ理由
ト致シマシテハ、此地租條例ノ第二十條ノ荒地ノ免租年限
ヲ定メテアル箇條ハ、其實行上ニ於キマシテ、極メテ今日不
公平ノ結果ヲ來シテ居ルノデアリマス、不時ノ天災ニ依リマ
シテ、美ハシキ田地畑宅地等ガ一朝ニ致シマシテ、二尺或ハ
三尺土砂ガ堆積致シ、或ハ缺落ナリ致シマシタ場合ニ於キ
マシテ、今日稅務官吏ガ其荒地ノ檢查ニ依リマシテ、此免租
年限ヲ與ヘマストキニハ如何ナル事ヲヤッテ居ルカ、今日ノ實
情カラ申シマスレバ、堆積シタ土砂ノ二尺乃至二尺五寸ノ
所ニ對シテハ、最極限ノ十五年ト云フ年限ヲ與ヘテ居ルノ
デアリマス、又ンレト同樣ニ、同樣ナ程度ノ缺落ニ對シテモ、
十五年ノ免和年限ヲ附與致シテ居リマス、是ハ尤ナ事デア
ル、之ガ復舊ニ要スル費用、其他ノ事ヲ打算致シマスレバ
十五年ヲ與ヘテモマダ足リナイ位デアル、併ナガラ此堆積シ
タル土砂ガ二尺五寸ノ程度ヲ超エ、或ハ三尺ニナリ、四尺五
尺ニナリ、六尺ニナルトカ、或ハ缺ケ方ガ二尺三尺ノ程度ヲ
超エテ、深ク缺落チルト云フヤウナ場合ニ至リマシテモ矢張
此條例ノ規定ニ依ッテ、十五年シカ免租年限ヲ與ヘルコト
ハ出來ナイノデアリマス、是ガ卽チ大ナル不公平、立法ノ不
深切デアリマス、第二ノ改正ノ理由ト致シマシテハ、荒地ト
云フモノト開墾ト云フ事ノ關係デアリマス、今日一朝不時
ノ天災ニ罹リマシテ、一面ノ砂河原トナル其荒地、或ハ一面
ノ湖沼ト化スル所ノ其荒地、其荒地ヲ復舊致シマシテ、元ノ
美田、元ノ畑、宅地ニ復舊スル所ノ仕事、今日ノ荒廢地フ
或ハ田面、或ハ畑宅地ニ致シマス事柄ト、其事柄ノ實體ニ
於テ何等ノ差異ガアリマセウカ、然ルニ法ノ取扱フコトハ之
ヲ區別致シテ居ル、卽チ開墾ニ對シテハ、地租條例ノ第十
六條ニ於キマシテ「開墾地ハ著手ノ年ヨリ二十一年目ニ其
ノ成功ノ部分ニ對シ地價ヲ修正ス」「十年以内ニ成功シ能
ハサル開墾ニハ鍬下年期四十年ヲ附セラル」尙ホ耕地整理
法第十四條ニ就キマシテ「開墾シタル土地ニ付テハ工業著
手ノ年ヨリ四十年以內ノ地價据置年限ヲ附ス」「若シ工事
完了セサルトキハ十年以內ノ年期延長ヲ爲ス」斯ノ如ク開
墾ニ對シテハ鍬下年期ハ四十年ヲ附セラレテ居ルノデアリ
マス、然ルニ荒地ノ復舊ニ對シテ、地租條例ノ第二十條ニ
依シテ十五年ガ最極年限デアル、而モソレガ被害狀況ニ依。ツ
テ、十五年以內ノ別々ニ與ヘラレル免租年限デアリマス、先
刻申上ゲマシタ理由ニ依ッテ、開墾ト荒地ノ復舊ト云フモノ
ハ同ジ性質デアルアルカラシテ、此開墾ニ對スル鍬下年期ト
云フモノハ、卽チ荒地ニ對シテハ、免租年限ト同ジ性質ノモ
ノデアリマス然ルニ同ジ土地ノ利用ヲ完クスル上ニ於キマ
シテ、開墾法ニ依ルノト荒他復舊シ依ルノトノ間ニ、斯ノ如
キ懸隔ガアルト云フコトハ、到底食糧政策ノ滿足ヲ期スル
上ニ就テ忍ブベカラザル事ト考ヘルノデアリマス、尤モ廣大
ナル荒地ヲ復舊致シマスニ就テハ、開墾助成法ノ一部ノ適
用デ、或ハ助成ヲ得ルコトモ出來ル、或ハ又耕地整理法ニ
依ルコトモ出來ルガ、併ナガラ荒地ノ復舊ト云フモノガ、原
則トシテ何トシテモ十五年以上ノ免租年限ハ與ヘラレナイ
コトニナッテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ理由ヲ以チマシテ、法
ノ權衡ヲ得ル爲メニ、食糧政策ノ徹底ヲ圓ル爲メニ、本改
正ヲ必要トスル所以デアリマスカラ、ドウカ諸君ニ於カセラ
レマシテモ、御賛同アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=104
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105・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ岩本平藏君外九名提出ノ所得稅法
中改正案外三件ノ委員ニ併セテ付託セラレンコトヲ望ミ
マス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=105
-
106・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第二十七、刑事略
式手續法廢止法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、佐野正雄君
第二十七刑事略式手續法廢止法律案
(永屋茂君外四名提出)第一讀會
刑事略式手續法廢止法律案
刑事略式手續法ハ之ヲ廢止ス
〔佐野正雄君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=106
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107・佐野正雄
○佐野正雄君 刑事略式手續法廢止法律案提出ノ理
由ヲ簡單ニ述ベマス、栽判ノ威信ト云フモノハ、極メテ之ヲ
保持ニ努メナケレバナラヌノデアリマス譯デ、刑事裁判ハ其
尤ナモノト思フノデアル、然ルニ刑事略式手續法ハ、其施行
日淺シト雖モ、御承知ノ通リ公判審理ヲ略スル所ノ裁判方
法デゴザイマスガ爲メニ、其今日ニ至ル迄ノ經過ハ、極メテ
議論百出致シマシテ、裁判ノ威信ト云フモノハ地ニ墜ヲ、刑
罰ノ威力ト云フモノモ隨テ零ト相成フテ居ルノデアリマス、今
日人權擁護ノ聲ノ叫ノ際ニ方リマシテ、斯ノ如キ威信ノ無
キ裁判方法ハ、甚ダ宜シキヲ得ナイモノト思フノデアリマシ
テ、卽チ本案ヲ提出シタ次第デアリマス、ドウカ滿場諸君ノ
御賛同ヲ願フ次第デアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=107
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108・岩崎勲
○岩崎動君 本案ハ戶水寛人君外三名提出、刑事訴訟
法中改正法律案外五件ノ委員ニ、併セテ付託セラレンコト
ヲ望ミマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=108
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109・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第二十八、埼玉縣
下郡界變更ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、【長谷
川宗治君
第二十八埼玉縣下郡界變更ニ關スル法
律案(粕谷義三君外七名提出)
第一讀會
埼玉縣下郡界變更ニ關スル法律案
埼玉縣秩父郡名栗村、吾野村ヲ同縣入間郡ニ編入ス
附則
本法ハ大正十年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔長谷川宗治君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=109
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110・長谷川宗治
○長谷川宗治君 埼玉縣下ノ郡界變更ニ關スル法律案
提出ノ理由ヲ簡單ニ申述ベマス、本案ハ埼玉縣秩父郡名
栗村吾野村ノ二箇村ヲ、同縣入間郡ニ編入替ヲ致サント
スルモノデアリマス、其理由ト致シマシテハ、此兩村ハ往昔入
間郡ニ屬シテ居リマシタノデゴザイマス、何時ノ頃ヨリカ明
カデハゴザイマセヌケレドモ、現在ノ秩父郡ニ編入ニナリマ
シタノデアリマス、併ナガラ天然ノ地形ハ、此兩村ト秩父郡
トノ間ニ、何レモ嶮阻ナル峠ガアリマシテ、之ヲ隔テヽ居リマ
スガ故ニ、此兩村ハ俗ニ外秩父ト申シマス、此兩村ノ秩父
郡ニ屬シテ居リマスコトハ、實ニ不自然ノ甚シキモノデアル
ト思ヒマス、地形斯ノ如キ次第デアリマスルカ故ニ、自然道
路ノ如キハ纔ニ形バカリデゴザイマシテ、其交通ノ不便ナル
コトハ想像ノ外デアリマス、殊ニ冬期ニ至リマシテハ全ク交
通ハ杜絕スルノデアリマシテ、兩村ノ人民ハ非常ナ不便ト不
利ヲ感ジツヽアルノデアリマス、之ヲ以テ其人情風俗、總テ
入間郡トハ同一デアリマスケレドモ、秩父郡トハ全ク異ッテ
居ル次第デゴザイマス、社交上ノ事、或ハ營業其他ノ取引
等モ、秩父郡トハ全ク沒交涉デアリマス、之ニ反シマシテ、入
間郡トハ密接ノ間接ヲ有シテ居リマス次第デアル、現ニ裁
判所ノ如キ警察署ノ如キ郵便電信ノ如キ、悉ク皆ナ入間
郡ニアル所ノ官衙ニ屬シテ居リマスノデアリマス、之ヲ見マ
シテモ、郡界ヲ變更スルノ必要ナルコトヲ知ルコトガ出來ヤ
ウト思フノデアリマス、或ハ秩父郡ヨリ此兩村ヲ除キマシタ
ナラバ、秩父郡ガ自治團體トシテ存在シ得ベキヤ否ヤヲ、懸
念セラレル御方モアリマセウケレドモ、秩父郡ハ相當ナル大キ
ナ郡デアリマシテ、地形上カラ申シマスレバ、埼玉縣ノ三分一ヲ
占メテ居ル次第デアリマス、其埼玉縣ニ於キマシテハ、比企
郡トカ、若クハ北足立郡トカ、兒玉郡トカ云フ各郡ヨリモ、
其人口、戶數、實力ニ於テモ、遙ニ優位ニ居ル次第デゴザイ
マス、殊ニ本年度マデハ同郡ニ於キマシテハ、郡費ニ於キマ
シテ一大苦痛ヲ感ジツヽアリマシタ所ノ郡立農學校ガアリ
マシタケレドモ、大正十年ヨリハ是ガ縣立ニナリマシテ、隨テ
郡費負擔上ニ大輕減ヲ見タノデアリマス、最早今日トナリ
マシテハ、此兩村ヲ入間郡ニ編入替ヲ致シマシテ、秩父郡ノ
自治上ニハ何等ノ影響ヲ及ボス虞ハナキモノト確信ヲ致シ
マス、以上ノ理由ニ依リマシテ、一日モ早ク兩村ノ舊來ノ緣
故ニ依リマシテ、入間郡ニ復舊致シマシテ、兩村民ガ地勢
上カラ被リツヽアル不便不利ヲ除キ去ランコトヲ熱望シテ
已マザル次第デゴザイマス、尙ホ詳細ノ事ハ委員會ニ於テ
申述ベマスガ、何卒御審議ノ上御賛成アランコトヲ希望致
シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=110
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111・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付託
セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=111
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112・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニハ御贊成ト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、只今議場著席ノ方ガ百名ニ
達セヌ勢デゴザイマスカラ、暫時休憩致シマス
午後四時五十五分休憩
午後五時六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=112
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113・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 定員ニ達シタヤウデスカラ、休憩前
ニ引續キマシテ會議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=113
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114・岩崎勲
○岩崎勳君 議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致
シマス、卽チ玆ニ政府提出供託法中改正法律案、及政府
提出職業紹介法案ヲ各別ニ議題トシテ、逐次其第一讀會
ノ續キヲ開キ、次ニ大正八年度豫備金支出ノ件、大正八年
度豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件、大正八
年度特別會計豫備金支出ノ件、大正八年度特別會計豫
備金外ニ於テ、豫算超過及豫算外支出ノ件、大正八年度
大正三年臨時事件豫備費支出ノ件、大正八年度大正三
年臨時事件豫備費外ニ於テ豫算外支出ノ件、大正八年
度帝國鐵道特別會計積立金支出ノ件、大正八年度帝國
鐵道特別會計積立金外ニ於テ豫算超過支出ノ件、以上
八件ノ承諾ヲ求ムル件ヲ議題ト爲シ、各其委員長ノ報告
ヲ求メ、且ツ其審議ヲ進メラレムコトヲ望ミマス
〔「賛成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=114
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115・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ヨリ提出ノ日程變更ノ動
議ハ御異議ナイト認メマス、仍テ日程ハ變更サレマシタ、第一
供託法中改正法律案ヲ議題ト致シマス、其第一讀會ノ續
ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長西村正則君
供託法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長し
報告
報告書
一供託法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年三月十日
供託法中改正法律案委員長
西村正則
衆議院議長奧繁三郞殿
〔西村正則君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=115
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116・西村正則
○西村正則君 只今議題ニナリマシタ供託法中改正法
律案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、本案
ハ會計法改正ニ伴ヒマシテ、金庫制度ガ廢止セラレタムデ
アリマシテ、ソレガ爲メニ、從來金庫ニ於テ取扱ヒ來ッタ所ノ
供託事務ヲ、別ニ供託局ナル一ノ官廳ヲ設ケマシテ、サウシ
テ此事務ノ取扱ヲ爲サシメルト云フノデアリマス、御承知ノ
如ク此供託ノ事務ナルモノハ、民事訴訟法又ハ民法ナドニ
密接ナル關係ヲ持ッテ居ルモノデアリマスル故ニ、司法行政
ノ監督ノ下ニ、其供託局ナルモノハ各栽判所內ニ設置スル
ノデアリマス、其地方裁判所ニハ供託局ノ本局ヲ置キマシ
テ、サウシテ各區裁判所ヲシテ其出張所トシテ、サウシテ供
託及供託品ノ保管事務ノ取扱ヲ爲サシメヤウト云フ法案
デアリマス、委員會ニ於キマシテハ愼重審議ノ上、本院ニ於
テ本案ハ可決スペキモノト決定致シマシタ、此段此報告中
シ上ゲマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=116
-
117・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案一ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
御諮リ致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=117
-
118・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト認
メマス、第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=118
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119・岩崎勲
○岩崎勳君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
省略シテ、委員長ノ報告通リ可決確定セラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=119
-
120・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=120
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121・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ直チニ
本案ノ第二讀會ヲ開キマス
供託法中改正法律案第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=121
-
122・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ委員
長ノ報告通リ可決確定致シマシタ、次ハ職業紹介法案ノ
第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長安原仁兵衞君
職業紹介法案(政府提出)
第一讀會ノ續((報〓(電話本局二
報告書
一職業紹介法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年三月十日
職業紹介法案委員長
安原仁兵衞
衆議院議長奧繁三郞殿
〔安原仁兵衞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=122
-
123・安原仁兵衞
○安原仁兵衞君 報告ヲ致シマス、勞働問題ノ聲漸ク熾
ナルノ時ニ方リマシテ、失業枚濟ニ關スル所ノ社會政策立
法ノ一トシテ提出セラレタノガ卽チ此職業紹介法案デア
リマス、本案ハ組織的劃一ノ下ニ系統ヲ追ウテ、市町村公
共〓體ヲシテ之ヲ經營セシムルト云フコトガ、本則ト相成ッ
テ居ル次第デアリマス、尤モ斯ノ如キ事業ハ、國家ノ當ニ經
營スベキコトハ勿論デハアリマスルガ、一面ニ於キマシテ市町
村公共團體ニ於キマシテモ、此公共〓體ノ中ニ於ケル所ノ
失業者ヲ救濟スル所ノ責任ノアルコドハ勿論デアリマス、故
ニ法文ニ示スガ如ク、經費ノ上ニ於キマシテモ、市町村ガ之
ヲ負擔スルヲ以テ原則トシ、國家ハ其二分ノ一以内ヲ補助
スルコトニ相成ッテ居ル次第デアリマス、而シテ現在我國ニ
存スル所ノ此種ノ經營ヲ爲ス人ニ對シテマシテハ、營利ノ目
的ヲ以テ經營シテ居ル者ニ對シテハ、他ノ法令ヲ以テ之ヲ
取締ルコトニ相成ッテ居リマス、又公益的慈善的ニ之ヲ經
營シテ居ル者ニ對シマシテハ、一定ノ期間內ニ監督官廳ノ
許可ヲ受ケシメテ、而シテ其經營ヲ爲サシメルト云フコトニ
相成シテ居リマス、而シテ本法案ハ、國際勝盟ニ依ル所ノ勞
働條約トハ關係ハ無イノデアリマスルガ、他日國際聯盟ガ
批准セラレマシテ勞働條約ガ實施サルヽ場合ニハ、之ニ當
嵌マルコトニ相成ッテ居ルサウデアリマシテ、委員會ニ於キマ
シテハ失業問題ニ關聯致シマシテ、失業保險ノ問題デアル
トカ、或ハ「ストライキ」ナトノ起ッタ場合ニ於ケル所ノ、職業
紹介法案トノ關係デアルトカ、或ハ失業者ガ其職ニ就クニ
相當リマシテ要スル所ノ簡易食堂、或ハ無料宿泊所ノ如キ
問題ヨリ、就職者ノ賃率問題等ニ就キマシテ、精細ナル所
ノ質問ガアッタ譯デアリマスガ、斯ノ如キコトハ速記錄ニ於テ
御承知ヲ願フコトヽ致シマシテ、玆ニ報告ヲ省略致シマス、而
シテ其委員會ノ結果ト致シマシテハ、委員諸君ノ中ニ於テ
ハ、條件付ニ於テ之ヲ賛成スルト云フ諸君モアリマシタガ、
要スル所現代社會ノ要求ニ應ズル所ノ適切ナル法案ナリ
トシテ、滿場一致ヲ以テ之ヲ可決シタ次第デアリマス、此段
御報告致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=123
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124・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御
諮リ致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=124
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125・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ異議ナシト認メ
マス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=125
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126・岩崎勲
○岩崎動君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
省略シテ、委員長報告通リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=126
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127・奧繁三郎
○議長(臭繁三郞君) 岩崎君ノ只今ノ動議前ニ、第二讀
會ニ於テ賛成ノ通告ガアリマス、直チニ第二讀會ヲ開キ之
ヲ許スコトニ致シマス
職業紹介法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=127
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128・岩崎勲
○岩崎勳君 ソレデハ動議ノ後段ヲ取消シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=128
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129・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 太田信治郞君
〔太田信治郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=129
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130・太田信治郎
○太田信治郞君 私ハ本案ニ賛成ヲ表シマスルト共ニ、聊
カ希望ヲ述べ、本案ニ賛成ノ趣旨ヲ明カニ致シタイト思ヒ
マス(「簡單」ト呼フ者アリ)本員ハマダ本案ヲ以テ完全無缺
ノモノトハ認メマセヌガ、免ニ角我國ニ於キマシテ、一番此不
備ナル所ノ勞働立法ニ本案ノ如キモノノ提出ヲ見マシタト
云フコトハ、先ヅ以テ必要ニ應ズル緊急已ムベカラザルモノ
デアリマシテ、故ニ多少ノ不備ナル點ハ、或ハ之ヲ施行スル
ニ於テ、之ガ運用上ニ於テ、此不備ヲ補フコトガ出來得ルカ
ト信ジマシテ、本案ニ賛成ヲスルノデアリマスルガ、要スルニ
本案ノ提出ガ、正ニ此國際聯盟ニ於ケル勞働會議ノ結果、
之レガ勸告案トシテ採擇セラレタ所ノ國際聯盟ノ、所謂勞
働紹介ノ勸告案ニ基ツイテ、我國ニ於テモ之ニ見ル所アッテ
提出ヲ促サレタモノデハナイカト云フ風ニ吾ミハ感ジマス、併
シ政府當局ニ於キマシテ、爾クハナト云フ說明デアリマスガ、
要スルニ此國際聯盟ガ他日完全ニ之ガ批准ヲサレマシタト
キニハ、此國際聯盟ノ勞働會議ニ於ケル協約ト、離ルベカラ
ザル關係ヲ持ツベキモノデアルト信ジマス、而シテ本法ノ如
キ此事業ハデス、今マデ社會的所謂救濟事業ノ一トシテ見
ラレテ居ッタノデアリマスルガ、ソレハ全然誤リデアルト云フコ
トヲ最近ニ至ッテ之ヲ發見セラレマシテ、而シテ本法ハ國家
的、生產的發達ノ向上ヲ圖ル上ニ於テ、當然國家ガ施設シ
ナケレバナラヌ事業ノ一デアルト云フコトヲ、世界各國ニ於
テ、之ヲ認メラレ尤モ此法案ニ於テハ、英國ガ一番發達シテ
居ルヤウニ思ハレマス、免角歐米各國ニ於テハ、既ニ一世紀
前ヨリ之ガ攻究ヲセラレテ、獨逸ノ如キハ一千八百年以前
ニ於テ、此職業法ト云フモノニ就テ「既ニ攻究ヲシ、或ハ實
施ヲセラレタルコトガアル位デアリマス、然ルニ我國ガ漸ク今
ニ至ッテ此案ノ提出ヲ見タト云フコトハ、非常ニ遲レテ居ル
コトデアリマスガ、併シ無キニ優ル譯デアリマス、去ナガラ此
國家的生產的事業ト致シマシテ、國家ガ爲サナケレバナラ
ヌ必然ノ事業トスル以上ハ、之ヲ町村ニ委託シテ、町村ノ事
業トシテ之ヲ行フト云フコトハ、甚ダ其當ヲ得ザルモノデア
リマス、町村ノ經費ハ年々增加致シテ參リマシテ、町村ニ於
テハ或ハ其町村ノ經濟ノ狀態ニ依リマセウケレドモ、中と負
擔ガ輕カラザルコトニナッテ居リマスカラシテ、斯ノ如キ國家
的事業マデモ、尙且ツ町村ニ於テ負擔ヲシナケレバナラヌト
云フ必要ハ無イト思フノデアリマス、是ハ國家ガ爲スベキ當
然ノモノデアルト信ジマスガ、併ナガラ今此案ガ本邦ニ於テ
ハ始メテ出タノデアリマシテ、英國ニ於テモ旣ニ千九百五六
年ノ頃ニ、此町村ニ於テスルト云フコトノ協議ヲセラレタト
云フコトデアリマスガ、ソレガ千九百九年ニナッテ國家的事
業ニ移ッタノデアリマシテ、而シテ之ガ實施ヲスルノニ、相當
ノ日子ヲ要シタト云フコトデアリマスカラ、最モ是ハ愼重ナ
ル必要ノアル、國家的事業デアルト云フコトハ相違ナイノデ
アリマスガ、今申上ゲタ通リ、此度始メテ此事業ニ著手シタ
ル我國ニ於テハ、之ヲ遂ニ國家的事業トシテ、國家ガ統一
連絡アル、所謂權威アル下ニ此事業ヲ遂行スルコトニ致シ
タイト云フ、本員ハ希望ヲ爰ニ陳述致ス次第デアリマス、
(「判リマシタ」「諒解致シマシタ」ト呼フ者アリ)ソレカラ致シ
マシテ此法ノ運用上ニ就テ、聊カ希望ヲ述ベタイト思フ、一
體本案ノ如キモノガ諸君ノ如キ金殿玉樓ノ中ニ居ラレテ、
(笑聲)御不自由ノナイ方ミニハ御諒解ニ苦ムコトデアラウ
ト思ヒマス、實際是ハ失業者救濟ノ一トシテ、勞働者ガ最
モ直接ニ痛苦ヲ感ズベキ、緊急ナル最モ必要ナル案デアリマ
ス、故ニ之ガ運用方法ニ於テモ、當ニ一國ノ利害關係、所謂
產業ニ關係シテ、影響ヲ及ボス重大ナル案件デアリマス、
(「判リマシタ」ト呼フ者アリ)而シテ先ヅ之ガ運用ヲ見ルト、
此法ノ第八條ニ依レバ、所謂職業紹介ノ事業ノ經營ハ、職
業紹介委員會ヲ置イテ、內務大臣之ヲ監督スト云フコトニ
ナッテ居リマス、此委員ノ組織權限ト云フモノガ、此法案ノ上
ニハ何等規定ハアリマセヌガ、之ガ至大ナル關係ヲ持ッテ居ル
ノデアル、一體今マデ我國ニ於ケル勞働ニ關係ノアル法規若
クハ、其他ニ就テハ多クハ其直接關係ノ無イ、所謂机上ノ
論ノ人達ガ之ヲ制定シ、之ヲ運用スルコトノ條規ヲ作ッテ居
ルノデアルガ、是ハ私ハ一大缺點デアルト思フノデアリマス、
故ニ此問題ノ運用ニ就テ、此法規ノ施行細則ノ如キモノヲ作
ルトスレバ、之ガ制定ニハ有ユル各種ノ階級ヲ網羅シテ、所
謂工場主若クハ其他ノ勞働者ヲ使用スル側モ、ヨシ、或ハ
勞働ニ關係ヲ持ッテ居ル所ノ事ヲ〓究ヲシテ居ル學者、若
クハ政治家ヲ網羅スルモ宜シイイガ、兎ニモ角ニモ勞働ニ實
際從事スル所ノ實業者ヲ以テ此委員ノ中ニ加ヘテ愼重審
議シテ、始メテ完全ナル運用ノ細則ガ出來得ルモノト私ハ
信ズルノデアリマス政府當局ニ於テハ、或ハサウ云フ御考ヲ
持ッテ居ラレルカハ知リマセヌケレドモ、先以テ之ガ運用方法
ノ施行細則ヲ作ル場合ニハ、當業者若クハ其關係ノアル直
接當事者ヲ以テ、此法規ノ運用ニ就テノ、施行細則ヲ作ル
ベキコトヲ私ハ希望致スノデアリマス、尙ホ又此法ニ於テ少
シク缺如シタル事ガアリマス、ソレハドウ云フ事デアルカト云
フト、補助ノ規定ノ完全ヲシテ居ラヌ事、ソレカラ此法ニ威
力ガ無イ、ドウ云フ點ガ威力ガ無イカト申シマスト、之ニハ罰
則ト云フヤウナモノガマダ設ケテナイノデアリマス、旣ニ英國
ノ法律ニ於テハ、勞働紹介法ニ於テ、其第三條ニ於テ罰則
ヲ設ケマシテアリマス、此罰則ヲ設ケルト云フコトハ、甚ダ之
ニ對シテ必要ナ事デアルト私ハ信ズルノデアリマス、而シテ之
ガ運用ノ上ニ於キマシテハ、或ハ勞働者ヲ紹介スル上ニ於
テ、旅費ヲ給與シ、若クハ汽車、其他郵便、電信、船舶等ヲ
應用スルヤウナ、所謂公益ニ使用スベキ官有ノ物ヲ利用
スル場合ガアラウト思フ、又之ガ取締ニ、警察權其他ヲ用井
ル必要モアラウト思フ、而シテ之ニ對スル法ノ威力ヲ具ヘル
コト、是ガ又大ニ必要デアッテ、ソレト共ニ又此財カト云フコ
トニ就テハ、今申ス通リ是ハ當然國家ガ爲スベキ事デアリマ
スカラ、之ガ運用上ニ就テ相當ノ給與ヲシ、若クハ下付金ヲ
與ヘルト云フヤウナコトニ立至ラナケレバ、之ガ運用上眞ノ
美果ヲ牧メルコトハ出來ナイノデアリマス、唯ダ看板ニ申譯
的ニ此法ヲ置クノデアルナラバ、唯ダ法律一點ヲ以テ足レリ
ト致シマスガ、之ヲ一ノ社會政策トシテ、國家的產業ノ發達
ニ資セントスルナラバ、此方法ヲ執ルコトガ最モ必要デアルト
信ズルノデアル尙ホモウ一ツ希望トシテ述ベタイ事ハ、之ニ附
随スル事業ノ設置デアリマス、ソレハ何デアルカト云フト、旣
ニ國際聯盟ニ於テモ決議セラレタ所ノ、勞働者ニ對スル失
業保險此失業保險ト云フモノガ、本案ニ對スル姉妹法トシ
テ、ドウシテモ無ケレバナラヌノデアル而モ此失業保險ヲ完
全ナラシムルニハ、又之ニ附隨スル所ノ勞働組合法ノ設定
ト云フコトガ必要デアル、是等ノ法ト共ニ此法案ヲ提出セラ
と、、始メテ完全ナルモノニナルノデアリマス、(「判リマシタ」
ト呼フ者アリ)唯ダ此法案ノミヲ提出セラレタルコトハ、甚
ダ物足ラヌ心持ガ致シマスガ、今ヤ會期モ將ニ盡キントスル
此場合デアリマスカラ、先以テ此法案ヲ通過セシメテ、-滿
場一致此法案ノ通過ヲ願ッテ、而シテ他日之ニ對スル所ノ
姉妹案ヲ-附隨スベキ所ノ法案ノ提出アランコトヲ、希望
トシテ茲ニ陳述致シテ置キマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=130
-
131・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 少シク手續ガ逆戾リシマスケレド
モ、太田君ヨリ通告ガアリマシテ、今ノ賛成演說ガアリマシ
タカラ、念ノ爲メニ二讀會二於テ委員長報告通リ異議ナキ
ヤヲ御諮リ致シマス
〔「委員長報告通リ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=131
-
132・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 委員長報告通リ御異議ナシト認
メマス、二讀會ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=132
-
133・岩崎勲
○岩崎勳君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、第二讀會議
決ノ通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=133
-
134・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ異議ナイト認メマ
ス、仍テ直チニ第三讀會ヲ開キマス
職業紹介法案第三讀會
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=134
-
135・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス仍テ本案ハ
二讀會ノ決議通リ可決確定致シマシタ(拍手起ル)-次
ハ大正八年度豫備金支出ノ外七件ヲ議題ニ致シマス、委
員長ノ報告ヲ求メマス、委員長熊谷直太君
大正八年度豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ム
(作)一金氏玉ノ
報〓一
報告書
一大正八年度豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ奥フヘキモノト議決致候此段及
報告候也
大正十年三月十日
大正八年度豫備金支出ノ
佇(承諾ヲ求ムル件)委員長
熊谷直太
衆議院議長奧繁三郎殿
大正八年度豫備金外ニ於テ豫算超過及豫
算外支出ノ件(承諾ヲポムル件)創造者は
一部分一
報告書
一大正八年度豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出
ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議決致候此段及
報告候也
大正十年三月十日
大正八年度豫備金外ニ於テ豫算超過及
豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)委員長
熊谷直太
衆議院議長奧繁三郞殿
大正八年度特別會計豫備金支出ノ件(承
諾ヲ求ムル件)報告加盟国人大代表
報告書
一大正八年度特別會計豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ム
(作)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議決致候此段及
報告候也
大正十年三月十日
大正八年度特別會計豫備金支
出ノ件(承諾ヲ求ムル件)委員長
熊谷直太
衆議院議長奧繁三郞殿
大正八年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算
超過及豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
報告(原油)
報告書
一大正八年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算超過及豫
算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議決致候此段及
報告候也
大正十年三月十日
大正八年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算超
過及豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)委員長
熊谷直太
衆議院議長奥繁三郞殿
大正八年度大正三年臨時事件豫備費支出
ノ件(承諾ヲ求ムル件)報〓問題はありがとう
報告書
一大正八年度大正三年臨時事件豫備費支出ノ件(承
諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議決致候此段及
報告候也
大正十年三月十日
大正八年度大正三年臨時事件豫備
費支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)委員長
熊谷直太
衆議院議長奧繁三郞殿
大正八年度大正三年臨時事件豫備費外ニ
於テ豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
Family:
報告書
一大正八年度大正三年臨時事件豫備費外ニ於テ豫算
外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議決致候此段及
報告候也
大正十年三月十日
大正八年度大正三年臨時事件豫備費外ニ
於テ豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)委員長
熊谷直太
衆議院議長奧繁三郞殿
大正八年度帝國鐵道特別會計積立金支出
ノ件(承諾ヲ求ムル件)委員長し
報告
報告書
一大正八年度帝國鐵道特別會計積立金支出ノ件(承
諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議決致候此段及
報告候也
大正十年三月十日
大正八年度帝國鐵道特別會計積立
金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)委員長
熊谷直太
衆議院議長奧繁三郞殿
大正八年度帝國鐵道特別會計積立金外ニ
於テ豫算超過支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
(報〓開通時間
報告書
一大正八年度帝國鐵道特別會計積立金外ニ於テ豫算
超過支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議決致候此段及
報告候也
大正十年三月十日
大正八年度帝國鐵道特別會計積立金外ニ於テ
豫算超過支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)委員長
熊谷直太
衆議院議長奧繁三郞殿
〔熊谷直太君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=135
-
136・熊谷直太
○熊谷直太君 只今議題ニ上ッテ居リマス、大正八年度
豫備金支出ニ關シ承諾ヲ與フル件外七件ニ關シマシテノ、
委員會ノ經過及結果ヲ御報告致シタイト存ジマス、本案ハ
御承知ノ如ク大正八年度ニ於キマスル所ノ、豫算超過及
豫算外ノ支出ノ案件デアリマス、案自體ニ於テ旣ニ重要ナ
ル所ノ法案デアリマスルコトハ申上ゲルマデモアリマセヌ、卽
チ帝國憲法第六十四條第二項ニ依ッテ、承諾ヲ求メラルヽ
所ノ案件デアリマスノミナラズ、此八件ニ於テ承諾ヲ求メラ
レル所ノ金額ト云フモノハ、實ニ莫大ノ金額デアリマス、卽チ
一般會計大正三年臨時事件費ヲ併セマスルト云フト、實ニ
三億五千四百三十九万某ト云フ高額デアリマス、又特別
會計ノ額ハ一億四千八十餘万圓ノ多額ニ上ル所ノ承諾
案デアリマス、故ニ委員會ニ於キマシテハ、數回之ヲ開會シ
或ハ午後ニ互ッテ審議ヲ凝ラシマシテ、慎重審議ヲシタノデ
アリマス、委員會ノ經過ハ詳シク申上ゲルコトヲ要シマセヌ
ガ、憲政會ノ諸君ヨリ、米穀管理竝ニ講和會議ノ費用ニ就
キマシテハ、最モ詳細ナル所ノ御質問ガアッタノデアリマス、殊
ニ米穀管理ニ就キマシテ外米管理ノ-買入ノ時期ニ關
シマシテハ、多少ノ御意見モ御漏シニナッタヤウデアリマス、併
ナガラ委員會ハ此八案ニ對シマシテ、承諾ヲ與フベキモノデ
アルト云フコトヲ、殆ド大多數ヲツテ決定致シタノデアリマ
ス、右御報告ニ及ブ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=136
-
137・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ委員長報告ノ通リ承諾ヲ與ヘラレン
コトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=137
-
138・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=138
-
139・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ本案ハ
委員長報告通リ承諾ヲ與ヘルコトニ決シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=139
-
140・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 次ハ日程第二十九佐賀監獄移轉
ニ關スル建議案ヲ議題ニ供シマズ、委員長ノ報告ヲ求メマ
ス、日野辰次君
第二十九佐賀監獄移轉ニ關スル建議
案(川原茂輔君外三名提出)飛行者報〓(·眞)
報告書
一佐賀監獄移轉ニ關スル建議案(川原茂輔君外三名
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年二月十日
佐賀監獄移轉ニ關スル建議案委員長
日野辰次
衆議院議長奧繁三郞殿
〔日野辰次君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=140
-
141・日野辰次
○日野辰次君 本案ノ委員會ニ就テ報告致シマス、此佐
賀監獄移轉ニ關スル建議案ノ主張ハ、其位置ガ元ノ佐賀
城内ノ監獄二ノ丸ノ跡ニ在ル、而シテ各種ノ學校ヲ以テ圍
マレテ居ルノデアル、之ガ爲メニ、風〓上又ハ思想上ニ惡影
響ヲ及ポシテ居ルノデアル、殊ニ又佐賀市ノ發展ノ方向ガ
此佐賀監獄所在地方面ニ向ッテ居ルノデアル、此監獄アル
ガ爲メニ、佐賀市ノ發展ガ阻害セラレテ居ルト云フ理由ニ
在ルノデアリマス、之ニ對シマシテ政府委員ヨリハ、本案ノ
主張ニ對シテハ固ヨリ事實ナリト認メテ同意ヲ表スルノデ
アルガ、尙ホ佐賀監獄ハ行政-監獄行政ノ上カラ見テモ、
甚ダ宜シカラヌノデアルト云フノハ、此監獄ハ明治十六年地
方稅ヲ以テ出來タノデアル、極メテ不完全ナル建物デアル、之
ガ爲メニ執務ノ便否上、非常ニ不都合ヲ感ジテ居ルノデア
ル、此點カラ見テモ、之ガ監獄ノ移轉改築ハ必要ト認メテ居
ルノデアルデアルガ、此全體全國ノ監獄ノ狀態ヲ看テ見ルト、
佐賀監獄ト同樣ノ狀態ニ在ルモノガ非常ニ澤山アルノデアル
仍テ政府ハンレ〓〓順ヲ追ウテ、移轉改築ノ計畫ヲ立テヽ
居ルノデアルケレドモ、唯タ如何セン財政ガ之ヲ許サナイガ
爲メニ、實行スルコトガ出來ズシテ、今日ニ及ンデ居ルノデア
ルカラ、佐賀監獄ノ如キモ何時カラ著手ヲスルト云フコトハ、
玆ニ明言スルコトハ出來ナイガ、勿論此建議案ノ趣旨ニハ
同意ヲ吝マヌノデアルト云フノガ、政府委員ノ御意見デアッ
タノデアリマス、委員會ハ別段議論モアリマセヌノデ、全會一
致本案ヲ可決致シタ次第デアリマス、ドウゾ本院ニ於テモ御
賛同アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=141
-
142・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ委員長報告ノ通リ可決セラレンコト
ヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=142
-
143・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=143
-
144・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ動議
ノ如ク委員長報告通リ可決致シマシク、日程第三十、川內
川改修ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、委員長ノ報告
ヲ求メマス、陣軍吉君
第三十川內川改修ニ關スル建議案(〓
亮君外五名提出)御飲食電車公司
報告書
一川內川改修ニ關スル建議案(萩亮君外五名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十年二月十六日
川內川改修ニ關スル建議案委員長
陣軍吉
衆議院議長奥繁三郞殿
〔陣軍吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=144
-
145・陣軍吉
○陣軍吉君 川内川改修建議案ニ關スル委員會ニ於ケ
ル經過竝ニ結果ヲ報告シマス、本川ハ鹿兒島宮崎兩縣ニ
跨ッテ居ル九州三大川ノ一ニ加ハッテ居ル、延長長イ川デア
ルノデアリマス、此水源ハ宮崎縣ノ方ニ屬シテ居リマスルノ
デ、而モ近來此水源ニ在ル所ノ山林約六千町歩ヲ伐採シ
テ居ルノデアリマス、尙ホ今後八千町步モ伐採シヤウト云フ
コトニナッテ居ルノデアリマス爲メニ、非常ニ洪水ノ際ハ水
源ニ於キマシテモ、約十五尺以上ノ洪水ヲ爲シ、殊ニ鹿兒
島縣ニ屬スル所ノ川內町附近約三四里ノ間ニ於テハ洪
水ノ際ハ二十尺以上モ洪水ガアルノデ、其被害ハ洵ニ莫大
ナモノデゴザイマス、本川ノ下流ト上流ト合セマスレバ、洪水
每ニ少クトモ約二百万圓近クノ大損害ヲ生スルノデアルノ
デゴザイマス、又此改修ニ就テ政府委員ノ意〓ヲ聽キマスル
ノニ、無論相當ノ改修ヲ加フベキモノト認ムルト、斯ウ云フ
コトデアッタノデゴザイマス、委員會ニ於キマシテハ、別ニ議論
モ無ク、本案通リ滿場一致ヲ以テ可決致シタノデゴザイマ
ス、此段報告ニ及ビマス(拍手スル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=145
-
146・岩崎勲
○岩崎動君 本案ハ委員長報告通リ可決セラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=146
-
147・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=147
-
148・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議無シト認メマス、仍テ本案
ハ委員長ノ報告通リ可決致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=148
-
149・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第三十一、航空事業ノ擴張
及其ノ行政機關ノ統一ニ關スル建議案ヲ議題ニ供シマス、
委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長菅原傳君
第三十一航空事業ノ擴張及其ノ行政機
關ノ統一ニ關スル建識案(三善〓
之君外五名提出)報告(Restaurance
報告書
一航空事業ノ擴張及其ノ行政機關ノ統一ニ關スル建
議案(三善〓之君外五名提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
段及報告候也
大正十年二月二十四日
航空事業ノ擴張及其ノ行政機關
ノ統一ニ關スル建議案委員長
菅原傳
衆議院議長奥繁三郞殿
航空事業ノ擴張及其ノ行政機關ノ統一ニ關スル建
議
航空事業ノ擴張ハ焦眉ノ急務ナリト認ム依テ政府ハ速
ニ之カ行政機關ヲ統一シテ內閣直屬ノ一院ヲ設置シ陸
海軍ニ屬スル編成、訓練、指揮等ノ件ヲ除クノ外一般機
材ノ製造、民間斯道ノ奬勵指導、航空路ニ關スル諸般ノ
設備、燃料ノ貯藏等ハ其ノ院ニ於テ管理シ以テ斯業ノ擴
張進步ヲ企畫セラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔菅原傳君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=149
-
150・菅原傳
○菅原傳君 委員會ヲ數回開キマシテ、提案者ノ說明ハ
固ヨリ、政府當局者ノ說明意見モ聽取リマシタ、尙ホ書類
等ノ提出モ求メタノデアリマス、詳細ノ事ハ速記ヲ御覽ヲ願
ヒタイノデアリマスガ、此建議案ガ修正サレタノデアリマスル
カラ、〓略簡單ニ申述べヤウト思フノデアリマス、此航空事
業ニ關シマシテ、各國行政上ノ組織ナリ、又事業自身ニ就
テモ、各〓異動ガアリ、優劣モアルノデアリマス、聞キマス所ニ
依リマスレバ、英國ノ如キハ海軍モ陸軍モ民間ノ方モ全ク
統一シテ、空軍省ノ下ニ管轄シテアルノデアリマス、斯ウ云
フコトニナッタノハ、大戰ノ場合ニ急速ニ此航空事業ノ擴張
ヲ圖ヲタノデ、海軍ハ海軍、陸軍ハ陸軍、民間ハ民間ト云フ
ヤウニ、互ニ競爭ノ氣味ガアッタノデアリマス、其結果トシテ
人ノ奪合、工場ノ奪合、機械ノ奪合ト云フヤウ十弊モアッタ
爲メニ、委員會ヲ組織シタガ、ソレデモ尙ホ協調ヲ保ツコト
ガ出來ナイノデ、空軍省ト云フ一省ノ下ニ統轄スルコトニナッ
タサウデアリマスガ、白ラ之ニモ利害ガアルコトヽ思フノデア
リマス、佛蘭西ノ方ハ今日ハ工務省ト云フ所デ、或程度マデ
統一サレテアルサウデアリマス、御承知ノ通リ大戰ノ場合ニ
ハ、佛蘭西ニ於キマシテハ陸軍ガ主ニ働イテ、陸軍內ニ工務
次官局ト云フモノヲ置キマシテ、此航空事業ノ事ヲヤッタサ
ウデアリマスガ、一體此製作其他ノ事ニ就テモ、佛蘭西デハ
民間ノ方ガ發達シテアッタノデ、今日ニ於テモ海軍ナリ陸軍
デ使フ所ノ-使用スル所ノ飛行機其他ノモノハ、他ノ方
面カラ供給スル、工務省カラ供給スルト云フコトニナッテアル
サウデアリマス、斯ウ云フ鹽梅デアリマスカラ、海軍ト陸軍ト
ハ軍事上ノ事ハ免モ角モ、機械其他ノ事ハ工務省カラ供
給サレ、工務省ガ豫算其他ノ事ニ就テモ責任ヲ負ウテヤル
ト云フヤウナ組織ニナッテ居ルサウデアリマス、亞米利加ノ如
キハドウデアル、英國ノヤウニ矢張全部統一シヤウト云フヤ
ウナ議論モアッタサウデアリマスガ、今日ハ海軍ハ海軍、陸軍
ハ陸軍、遞信ハ遞信ト云フヤウニ、大體分レテアルコトニ承
リマシタ、其他獨逸ナリ、或ハ伊太利ナリ、皆ナ各〓國情-
其狀況ニ依ッテ、此行政上ノ取扱モ違ッテ居ルサウデアリマ
スガ、偖テ帝國ノ行政ハドウデアル、是ハ御承知ノ通リ航空
局ガアッテ民間ノ事ヲ取扱ヒ、其上航空路ノ事ナドニ就テモ
調査中デアルサウデアリマスガ、至ッテ微々タルモノヲ、豫算カ
ラ申シマシテモ微々タルモノデ、初步デアルノデアリマス、陸
軍ハドウデアルカ、是モ此方面ニ於テ〓究モシ、擴張ノ事ヲ
圖ッテ居ル、海軍モ同樣デアルノミナラズ、海陸協調シテ會モ
作ッテ、協調ニ爲シ得ベキ事ハ協調シ、或ハ其受持區域等ニ
就テハ〓尙ホ〓究シテ、統一等ノ事ニ就テモ調査中デア
ルサウデアリマスガ、要スルニ今調査中デアッテ、行政上ノ事
モモウ一步進メテ、玆ニ確定的方針ヲ立テナケレバナラヌト
云フヤウナ狀態ニ今日在ルト云フコトデアル、是ハ行政上ノ
〓略デアリマスガ、實際事業自身ニ就テノ有樣ハドウデアル
カ、各國ト比較シテ、帝國ノ事業ノ不振ナルコトハ嘆ハシイ
ノデアリマス、量ニ於テモ、實質ニ於テモ、兵器ノ如キモ、亞
未利加ナリ、英國ナリ、佛蘭西ノ如キ何億ト云フノデアル、
機械ノ如キモ何千臺ト云フノデアル、軍隊ノ如キモ或ハ百
中隊、或ハ二師團トカ云フヤウニ、殆ト日本トハ桁ガ違ッテ
居ル、經營ノ點ニ於テモ勿論少ナイノミナラズ、中隊ノ如キ
モ、日本ニハ十中隊ソコ〓〓ト云フ話デアリマス、機械ノ如
キモ三十機位デアリマスガ、至ッテモウ桁ガマルデ違ッテ居ル
ト云フヤウナ狀態デアルノデアリマスガ、所デ今少シク細カク
此日本ノ飛行機ノ操縱、飛行機ノ製造、飛行機ノ原料、此
三ツニ分ケテ各國ト比較シタラドウデアルカ、日本ノ有樣ハ
ドウデアル、極ク短カク申シマスレバ此操縱ノ方法ニ於テモ、
他ノ亞米利加ナリ、英國ナリ、佛蘭西ニハ及バヌノデアリマ
ス、併ナガラ優良ナル飛行機ヲ供給シタナラバ、必ズ彼ニ及
バヌコトハナイト云フヤウナ狀態ニ在リマスノデアリマス、尤
モ此日本ノ飛行家ハ、或ハ墜落シ、死傷等モアルノデ、何カ
餘程日本人ハ下手デハナカラウカト云フヤウナ考ヲ持ッテ居
ル人モアルノデアリマスガ、決シテ統計上ハサウデナイサウデ
アリマス、今迄此統計ヲ見マスレバ、總計凡ソ一千八百時
間ニ-飛行時間ニ一人死亡シタ譯ニ日本デハナッテ居ル
サウデアル、歐羅巴ノ方デハ優良ナ機械デ、二千時間二一人
死ンデ居ルト云フヤウナ鹽梅、亞米利加ノ如キハ一千六百
時間ニ一人死亡ト云フヤウナ大凡ノ統計デアルサウデアリ
マスガ、此統計カラ見マシテモ、十分茲ニ勉强サヘスレバ、優
良ナル機械ヲ供給セバ、日本人ガ白人ニ劣ルト云フヤウナ
コトハ事實上ナイノデアル、必ズ十分ニ對峙スルコトハ得ル
ト云フヤウナ狀態デアルサウデアリマス、(拍手起ル)然ラバ此
製作上ニ就テハドウデアルカ、飛行機ノ製作、或ハ發動機ノ
造方ハドウデアルカ、是ハ餘程劣シテ居ルト云フ狀態ダサウ
デアリマス、英國ナリ、佛蘭西ナリ、大戰ノ場合何故アンナニ
急速ニ發達シタカト云フニ元〓彼ノ國ニニ於テハ、工業ノ基
礎ガ進ンデ居ル、學問モ技術モ進ンデ居ルカラ、金ヲ掛ケテ
一生懸命ニナッタカラ、直チニ發達シタト云フヤウナ譯合デ
アル、我ガ帝國デハ殘念ナガラ此工業上ノ事ナリ、學術上ノ
事ハ、未ダサウ云フ程度マデ進ンデ居ラヌノデ、中ニ〓究シ
テ新案ヲ造ルト云フコトニ就テハ容易デナイ、或新案ヲ造
ラウトシテモ、二年程掛ックト云フヤウナ譯デ、又外國ノ發動
機ヲ持ッテ來テ、其儘眞似シテ造ッテ見テモ、四年モ掛シタト
云フヤウナ鹽梅デ、此點ハ實ニ嘆ハシイノデアリマスガ、是モ努
力如何ニ依ッテ、此節ハ餘程此邊ノ大體ノ〓究モ付キ既ニ
外國人ナドニ習ッテ、今日デハ必ズシモ悲觀スルト云フコト
ナク、此點モ必ズ彼ニ對抗スルコトヲ得ベシト云フヤウナコ
トヲ、當局者ハ信ジテ居ルヤウナ次第デアル、然ラバ此原料
ニ就テハドウデアル、是ガ問題デアリマス、原料ト申シマシテ
モ飛行機ノ原料ハ澤山アリマスガ、其中ニ鋼鐵ト云フ特殊
ノ物ノ如キ餘程困ヲタサウデアリマス、我國ニ於テ特殊ノ鋼
鐵ト云フ物ハ中〓出來ヌノデアリマスが、是モ民間等ニ奬勵
シテ、今日ハソレモ出來ルコトニナッタト云フコトハ慶ブベキ
事デアリマス、サリナガラマダ輕イ金トカ-「アルミニユーム」
ナンデアリマセウ-輕イ金トカ、或ハ細イ張金ナント云フ、
此飛行機ニ使フ原料ガ、マダ旨ク造レヌト云フノデアリマス
併シ是モ必ズ近キ將來ニ於テ、何トカ造ルコトヲ得ベシト云
フヤウナ自信ヲ以テ、當局者ガ自信ヲ以テ當局者ガ聲明シ
テ居ルノデアリマス、尤モ是ハ日本ノミナラズ、或ハ佛蘭西ノ
ヤリ得ルモノヲ獨逸デヤレヌ事モアリ、獨逸デヤルコトノ出來
ルモノヲ亞米利加デヤレヌト云フヤウナ事ガアッテ、各國長短
ガアルノデアルカラ、日本ガ決シテ悲觀スベキ必要モ無イ、絕
望スベキ必要モ無イノデアリマスガ、總體ニ此飛行事業ナル
モノニ就テハ、非常ナ努力ヲ致シマセヌケレバ、各國ト對抗
スルコトガ出來ヌト云フヤウナ今日ノ狀態デゴザイマス、(拍
手起ル)斯ク〓括的ニ申シタナラバ、行政ノ方ノ事ヲドウシ
テモ一步ヲ進メテ、爰ニ確定的ニ方針ヲ立テナケレバナラヌ、
此事業ヲ擴張スル意味ニ於テシナケレバナラヌシ、事業自
身モ今申ス通リ低イノデアルカラ、大努力ヲ要スルコトハ申
スマデモアリマセヌ、今日ノ海陸軍ニ就テモ、御同樣經費ヲ
協賛シテヤッテ居リマスガ、イザト云フ國防ノ場合ニ國防上
ノ見地カラシテ、今日ノヤウナ貧弱ナル飛行事業デハ、國防
ノ眞意義ヲ發揮スルコトガ出來ヌト思フノデアリマス、(拍手
起ル)又平時ニ於テモ運輸交通ノ點カラ見マシテ、今ノ遞信
省ノミデハ、此遞信ノ眞意義ヲ發揮スルコトガ出來ヌト思
フノデアリマス、(「ヒヤ〓〓」)ドウシテモ此所ハ行政上ノ組織
ヲ一定シ、サウシテ此飛行機事業ノ大擴張、大發達ヲ圖ラ
ナケレバナラヌト思フノデアリマス、(拍手起ル)是等ノ意味
カラ致シマシテ修正案ガ出來タノデアリマスガ、今讀上ゲマ
ス、此修正案ナルモノハ、元〓其趣意ニ於テハ此壇上ニ於テ
提案者ノ一人三善君ガ詳細ニ御述ニナッタノデアリマスガ、
其趣意トハ大體ニ於テ變リガナイノデアリマス、唯ダ内容ヲ
明確ニシ、文字ヲ修正シテ、此修正案ガ成ッタノデアリマス
ガ、今讀上ゲマス「航空事業ノ擴張ハ焦眉ノ急務ナリト認
ム依テ政府ハ速ニ之カ行政機關ヲ統一シテ内閣直局ノ一
院ヲ設置シ陸海軍ニ屬スル編成訓練指揮等ノ件ヲ除クノ
外一般機材ノ製造民間斯道ノ奬勵指導航空路ニ關スル
諸般ノ設備燃料ノ貯藏等ハ其ノ院ニ於テ管理シ以テ斯業
ノ擴張進步ヲ企畫セラレムコトヲ望ム」ト云フノデアリマス、
大要ハ陸海軍軍事上特殊ノ編成ナリ、訓練ナリ、指揮ノ事
業ハ陸海軍デヤルガ、其他ノ事ハ內閣直屬ノ一院ヲ設ケテ、
航空事業ノ發達ヲ圖クタ方ガ宜カラウト云フ趣意ニ因ルノ
デアリマス、此修正案ニ就キマシテハ、政府當局ニ於テモ大
體ノ趣意ニハ賛成シ、委員會ハ全會一致ヲ以テ可決確定
致シタノデアリマスカラ、諸君ニ於テモ是非御賛成ヲ願ヒタ
イ次第デアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=150
-
151・岩崎勲
○岩崎動君 本案ハ委員長報告ノ通リ、卽チ委員會ニ於
テ修正議決ノ通リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=151
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152・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、依テ只今委員長ノ報告ニナッタ通リ、委員會ニ於テ
修正サレタル案ノ如ク可決致シマシタ(拍手起ル)日程第三
十二ハ延期ニナリマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=152
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153・岩崎勲
○岩崎動君 殘餘ノ日程ニ對シテ延期ノ動議ヲ提出致シ
マス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=153
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154・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=154
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155・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ
如ク決シマシタ、本日ハ是ニテ散會
午後五時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02519210310&spkNum=155
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