第44回帝国議会　衆議院　本会議　第27号　大正10年3月15日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  大正十年三月十五日（火曜日）午後一時十八分開議
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  　議事日程　第二十六號　大正十年三月十五日
  　　　午後一時開議
  　　　　質問
  　　一　徳島市長選擧に關する質問（野田文一郎君提出）
  　　二　官吏と政黨員とか權力を濫用し官規を紊り民心を害ひ自治を破壞したる事實に關する質問（山道襄一君提出）
  　　三　大井浦鹽派遣軍司令官の責任に關する質問（田中武雄君提出）
  　　四　霞ケ浦沿岸江戸崎入干拓に關する質問（田中萬逸君提出）
  　　五　滿洲に於ける施政方針に關する質問（吉野小一郎君提出）
  　　六　東京市及其の附近に於ける颱風及海嘯に依る水害防備に關する質問（太田信治郎君外一名提出）
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  　第一　府縣制中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二　北海道會法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第三　北海道地方費法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第四　郡制廢止に關する法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第五　衆議院議員選擧區に關する法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第六　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第七　産業組合法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第八　住宅組合法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第九　明治四十一年法律第三十五號中改正法律案（政府提出）　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十　小田原電氣鐵道株式會社所屬軌道經營廢止に對する補償の爲公債發行に關する法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十一　市制中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十二　町村制中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十三　決議案（床次内務大臣不信任の件）（佐々木安五郎君提出）
  　第十四　樞密院官制改正に關する建議案（副島義一君提出）
  　第十五　商務省及工務省設置に關する建議案（奧村安太郎君外一名提出）
  　第十六　癲狂院増設に關する建議案（中馬興丸君外三名提出）
  　第十七　傳染病豫防法改正に關する建議案（松下禎二君外三名提出）
  　第十八　中央線淺川驛鹽山驛間電力速成に關する建議案（三枝彦太郎君提出）
  　第十九　賣藥營業税廢止に關する建議案（高見之通君外二名提出）
  　第二十　大阪和歌山間鐵道敷設に關する建議案（山口義一君外四名提出）
  　第二十一　國分岩川間鐵道敷設に關する建議案（日野辰次君外一名提出）
  　第二十二　櫻井松坂間鐵道速成に關する建議案（津野田是重君外九名提出）
  　第二十三　勢江鐵道速成に關する建議案（天春文衞君外七名提出）
  　第二十四　西條松山間鐵道豫定線一部變更に關する建議案（成田榮信君外五名提出）
  　第二十五　温泉政策に關する建議案（成田榮信君外一名提出）
  　第二十六　港灣行政に關する建議案（三善清之君外四名提出）
  　第二十七　鹿兒島縣各離島航海補助増額に關する建議案（祷苗代君外七名提出）
  　第二十八　三原呉間鐵道敷設速成に關する建議案（井上角五郎君外三名提出）
  　第二十九　酒造税法中改正に關する建議案（中村清造君外四名提出）
  　第三十　農産物收穫調査及農家經濟調査確立に關する建議案（土井權大君提出）
  　第三十一　軍人恩給法中改正に關する建議案（近藤達兒君提出）
  　第三十二　清酒の滓引及貯藏減量控除額増加に關する建議案（山邑太三郎君外二名提出）
  　第三十三　相可町大口港間鐵道敷設に關する建議案（伊坂秀五郎君外四名提出）
  　第三十四　野岩羽鐵道速成に關する建議案（八田宗吉君外三名提出）
  　第三十五　柳津小出間及只見古町間鐵道速成に關する建議案（八田宗吉君外三名提出）
  　第三十六　濃飛鐵道速成に關する建議案（匹田鋭吉君外三名提出）
  　第三十七　僧侶其の他諸宗教師に被選擧權附與に關する建議案（安藤正純君提出）
  　第三十八　東京外國語學校修業年限延長に關する建議案（菅原傳君外三名提出）
  　第三十九　北海道本州連絡完成に關する建議案（伊藤廣幾君外四名提出）
  　第四十　木次三次間鐵道建設に關する建議案（原夫次郎君外五名提出）
  　第四十一　落合木次間鐵道起工年度繰上に關する建議案（佐野正雄君外五名提出）
  　第四十二　日向沿岸國庫補助港設定に關する建議案（長峰與一君外二名提出）
  　第四十三　恩給法規の根本改正に關する建議案（高木正年君外二名提出）
  　第四十四　福山三次間鐵道速成に關する建議案（永屋茂君外三名提出）
  　第四十五　吉野縱貫鐵道建設に關する建議案（岩本平藏君外三名提出）
  　第四十六　癩豫防關係法規改正に關する建議案（中馬興丸君外二名提出）
  　第四十七　山田川に河川法適用に關する建議案（原田藤次郎君外五名提出）
  　第四十八　鴨緑江岸道路修築に關する建議案（高見之通君外五名提出）
  　第四十九　京都監獄移轉に關する建議案（竹上藤次郎君外三名提出）
  　第五十　六大都市特別市制速施に關する建議案（奧村安太郎君外三名提出）
  　第五十一　國幣大社大山祇神社昇格に關する建議案（深見寅之助君外五名提出）
  　第五十二　國幣大社大山祇神社國寶殿建築に關する建議案（深見寅之助君外五名提出）
  　第五十三　山田豐岡間鐵道速成に關する建議案（長田桃藏君外二名提出）
  　第五十四　富山伏木間鐵道建設に關する建議案（高見之通君外三名提出）
  　第五十五　松江隱岐間海底電線増設速成に關する建議案（若林徳懋君外五名提出）
  　第五十六　金融機關整備に關する建議案（河上哲太君外十一名提出）
  　第五十七　思想問題審議機關設置に關する建議案（星島二郎君提出）
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  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=0

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• 001・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　諸般ノ報告ヲ致シマス
  〔原田書記官朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  所縣制中改正法律案
  北海道會法中改正法律案
  北海道地方費法中改正法律案
  郡制廢止ニ關スル法律案
  衆議員議院選擧區ニ關スル法律案
  (以上三月十四日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  官吏恩給及遺族扶助料增額ニ關スル法律案
  提出者荒川五郞君春日俊文君
  宇都宮岐阜及和歌山監獄ノ移轉促進ニ關スル建議
  案
  提出者植竹龍三郞君山田永俊君
  久下豐忠君
  印紙稅免除ニ關スル建議案
  提出者安原仁兵衞君〓瀨規矩雄君
  帝國在〓軍人會國庫補助ニ關スル建議案
  提出者八田宗吉君津野田是重君
  成田直一郞君一宮房治郞君
  石川玄三君
  稱號撤廢ニ關スル建議案
  提出者奧村安太郎君
  蛤港牛深間鐵道敷設ニ關スル建議案
  提出者池田泰親君島本信二君
  上塚司君松野鶴平君
  原田十衞君
  楠浦港富岡間鐵道敷設ニ關スル建議案
  提出者池田泰親君島本信二君
  上塚司君松野鶴平君
  原田十衞君
  北海道產業資金充實ニ關スル建議案
  提出者伊藤廣幾君木下成太郎君
  束武君中西六三郞君
  栗林五朔君松實喜代太君
  岡田伊太郞君黑住成章君
  橫須賀ヨリ浦賀三崎ヲ經テ三浦半島ヲ一周スル鐵
  道敷設ニ關スル建議案
  提出者森恪君若尾幾造君
  小鹽八郎右衞門君吉野小一郞君
  決議案(南滿鐵道會社ニ對スル監督責任ノ件)
  提出者箕浦勝人君關直彥君
  下岡忠治君古島一雄君
  早速整爾君濱田國松君
  關和知君押川方義君
  (以上三月十二日提出)
  市制中改正法律案ニ對スル修正案
  提出者小山松壽君三木武吉君
  黑金泰義君植原悅二郞君
  大口喜六君
  町村制中改正法律案ニ對スル修正案
  提出者小山松壽君三木武吉君
  黑金泰義君植原悅二郞君
  大口喜六君
  山形福島高知神戶德島及京都ノ監獄移轉ニ關スル
  建議案
  提出者戶狩權之助君水野吉太郞君
  鐸木三郞兵衞君植竹龍三郞君
  坪田十郞君小山田信藏君
  私立中學校私立高等女學校ニ補助金下附ニ關スル
  建議案
  提出者鳩山一郞君秋本喜七君
  島田俊雄君竹澤太一君
  〓崟太郞君
  醫師ニ對スル適當ノ〓育機關設置ニ關スル建議案
  提出者香川保忠君三浦得一郞君
  中馬興丸君
  竹田三田井間鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者吉良元夫君原田十衞君
  松野鶴平君一宮房治郞君
  長峰與一君陣軍吉君
  木下謙次郞君
  (以上三月十四日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
  朝鮮ニ於ケル行政司法ノ衝突ニ關スル質問主意書
  提出者鮎川盛貞君
  (以上三月十二日提出)
  蠶絲及織物ノ根本政策ニ關スル質問主意書
  提出者〓水留三郞君
  (以上三月十四日提出)
  一昨十四日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  衆議院議員高草美代藏君提出
  市町村ノ自治體ヲシテ煙草元賣捌事務ヲ取扱ハシ
  ムルノ件ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員小池仁郎君外三名提出
  小樽官有地處分ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員木村權右衞君外一名提出
  第四師〓射的場ノ流彈ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員横山勝太郞君外一名提出
  言論自由ノ抑壓ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員田中善立君提出
  鹿町炭礦買收ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員下岡忠治君外二名提出
  昇格問題ニ付原內閣總理大臣及中橋文部大臣ノ貴
  族院ニ於ケル釋明ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  〔市町村自治體ヲシテ煙草元賣捌事務ヲ取扱ハシ
  ムル件ニ關スル質問主意書ハ大正十年二月二十
  二日速記錄第十七號三五七頁揭載〕
  大正十年三月十四日
  内閣總理大臣原敬
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員高草美代藏君提出市町村ノ自治體ヲシテ
  煙草元賣捌事務ヲ取扱ハシムル件ニ關スル質問ニ對シ
  別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員高草美代藏君提出市町村ノ自治體ヲ
  シテ煙草元賣捌事務ヲ取扱ハシムルノ件ニ關スル
  質問ニ對スル答辯書
  市町村ノ自治體ヲシテ煙草元賣捌事務ヲ取扱ハシムル
  モ其ノ收益ハ地方財政ヲ緩和スルノ效少キノミナラス之
  レカ爲政府ノ經費膨脹ヲ來タスト共ニ煙草ノ賣行ニモ
  影響ヲ及ホシテ政府ノ收入減少ヲ見ルノ虞アルヲ以テ政
  府ハ市町村ヲシテ煙草元賣捌事務ヲ取扱ハシムルノ意
  思ヲ有セス
  右及答辯候也
  大正十年三月十四日
  大藏大臣子爵高橋是〓
  小樽官有地處分ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十年二月二十四日
  提出者小池仁郞岡本幹輔
  山本厚三淺川浩
  賛成者早速整爾
  外三十九人
  小樽官有地處分ニ關スル質問主意書
  一北海道廳長官ハ小樽區若竹町所在官有地一萬
  七百餘坪ヲ無償同樣ノ使用料ヲ以テ三十箇年ノ長
  期ニ亙リ小樽船渠株式會社發起人ニ貸付スルコトニ
  內定セリト聽ク果シテ事實ナリヤ若事實ナリトセハ其
  ノ貸付條件ノ明示ヲ望ム
  二右發起人ナルモノハ表面色々ノ人物加ハリ居ルモ
  其ノ眞ノ計畫者ハ某政黨ノ地方幹部ニシテ誠實ニ船
  渠經營ノ意思ナク單ニ海岸重要ノ地積ヲ獲得シテ巨
  利ヲ獲ムトスルノ劃策ナリトノ評アリ當局者ハ其ノ眞
  相ヲ調査セシコトアリヤ
  三本件ニ付當初出願ノ際ハ地價約百萬圓(地積一
  萬坪)ノ土地ヲ僅ニ十分ノ一卽チ十萬圓ニテ拂下ヲ受
  ケ且六千五百坪ノ接續海面埋立權ヲ得ムトスルニ在
  リシカ其ノ後地積ヲ二萬坪トシ時價約二百萬圓ノ土
  地ヲ二十分ノ一卽チ十萬圓ノ價格ニテ拂下ヲ受ケム
  トスルノ計畫ヲ立テ而モ豫メ其ノ筋ノ內諾ヲ得タリト
  右發起人ハ聲明シ居リタリ當時斯ノ如キ法外ノ價格
  ニテ拂下ノ意思アリタルヤ
  四然ルニ其ノ後拂下ノ方針ヲ變更シ一箇年僅二五十
  錢(時價一坪一箇年ニ付三圓乃至五圓)ヲ以テ三十
  箇年ノ長期貸付トスルコトトナシ是ヲ該發起人ニ內元
  シ內諾ヲ與ヘタリト云フ果シテ此ノ如キ事實アリヤ
  五小樽港ニ船渠築設ノ要アルハ勿論ナルカ貸付許可
  內定セリト稱スル地點ハ海岸一帶ニ海底岩盤ナルニ
  加フルニ水深淺ク船渠トシテ極メテ不適當ノ箇所ナ
  リ近時內外ノ航路ハ大船巨舶ヲ使用スルノ傾向ナル
  ヲ以テ船渠ノ設備亦之ニ順應スルノ要アリ當局ハ小
  樽船渠會社計畫ノ船渠設備ニ付調査セシヤ其ノ設
  備ノ内容如何
  六若船渠會社不成立ニ終ルカ又ハ直ニ事業ニ著手
  セサル場合ハ如何ナル處置ヲ執ラルル方針ナルヤ
  七小樽港ノ利用ニ關シテハ速ニ其ノ方針ヲ確定スル
  ノ要アリト認ム鐵道省ニ於テハ既設高架棧橋ノ現ニ
  腐朽シテ大修繕ヲ要スルヲ以テ寧ロ此ノ際之ヲ本問
  題ノ地點ニ移轉シ現在ノ貯炭場ヲ同時ニ變更スルノ
  內議アリト聞ク當局ハ此ノ點ニ付鐵道省ト充分意見
  ノ交換ヲ爲シタルコトアリヤ又當局ノ此ノ點ニ對スル
  意見如何
  貯炭場トシテハ地形上最適當ニシテ石炭業者モ之
  ヲ希望シ居リ且隣接セル港外海岸ノ埋立ニ依リ七
  萬坪ノ地積ヲ得ルノ利アリ
  八現在ノ石炭棧橋ヲ移シ貯炭場ヲ移轉スルトキハ現
  在ノ貯炭場用地一帶ハ海岸水深最深ク風浪ニ對シ
  テ最安全ナルヲ以テ一部ヲ普通貨物ノ積卸場トシ船
  渠ヲ其ノ一部ニ築設スルハ最適當ノ施設ト思ハル當
  局ノ意見如何
  九本件ニ關シ小樽區會ノ反對及世論ノ喧シキカ爲ニ
  一時貸下ノ形式ト爲スモ遠カラサル内ニ機ヲ見テ之
  ヲ拂下ムトスル方針ナリト云フ果シテ然ルカ
  十會社發起人中ノ幹部ハ此ノ權利ヲ評價ノ眞正ノ
  船渠業者ニ株式ヲ轉賣シ以テ巨利ヲ獲ムトスルノ計
  畫ナリトノ評アリ此ノ計畫目論見當時ハ財界事業界
  ノ全盛時代ニシテ時價二十分ノ一ノ價格ニテ廣大ノ
  土地ヲ獲得セムトスルカ如キ計畫ニ對シテハ其ノ株式
  ニ對シテ多額ノ「プレミアム」ノ付クコト當然タリシモ昨
  今ノ財界殊ニ海運界極度ノ悲況ニ際シテモ發起人等
  ハ尙且本計畫ヲ實行スルノ意思アリヤ又實行シ得ル
  モノト認ムルヤ如何
  十一小樽區ハ明治四十一年來數回ニ亙リ區會ノ決
  議ニ依リ公共使用ノ目的ヲ以テ該地積ノ拂下ヲ出
  願セルニ對シ當局ハ之ヲ排斥シ一法人タル發起人等
  ニ之ヲ貸與セムトス其ノ理由如何
  北海道廳長官ハ小樽區カ道廳ノ諮問ニ答申セス自
  然同區拂下ノ目的判明セサルヲ以テ排斥ノ唯一理由
  トセルモ該答申ノ如キハ區ノ理事者及區ノ公職者ヨ
  リ屢親シク陳情ヲ遂ケ事情明白ナリト聽ク果シテ然
  リトセハ單ニ形式上答申ナキヲ理由トシテ之ヲ排斥セ
  ムトスルハ諒解シ難シ卽チ、世評ノ如ク發起人等ニ內
  諾ヲ與ヘタルニ依リ之ヲ口實トシテ小樽區ノ出願ヲ拒
  否スルモノナリト解スルノ外ナシ果シテ小樽區ノ拂下
  出願ハ其ノ目的未タ不明ナリヤ
  十二小傳區カ該地積ノ拂下ヲ受ケテ之ヲ公共ノ用ニ
  供スルハ論ヲ俟タサル處ナルヘシト信ス只其ノ形式上
  答申ヲ爲サスト云フニ依リ公共ノ用ニ供スルヤ否ヤ不
  明ナリト云フハ曲解ナラスヤ而モ其ノ後ノ出願ニ依リ
  海陸聯絡ノ用ニ供セムトスルコト極メテ分明ナルニ拘
  ラス最初答申ヲ爲ササリシニ依リ今日ニ於テハ事情分
  明トナルトモ尙且之ヲ拒否セムトセラルルヤ
  十三小樽區ハ屢區會ノ決議ニ依リ同港海陸聯絡ノ
  施設上之ヲ區ニ拂下ラレムコトヲ熱望シ區民ノ大多
  數モ同一ノ熱望ヲ有スルハ本問題ニ關スル區民大會
  ノ決議及其ノ他ノ情況ニ依リテ明ナリ然ルニ徒ニ事
  ノ成行ニ拘泥シテ少數ノ船渠會社發起人ニ貸下ムト
  スルハ自治體ノ決議ヲ無視シ同區將來ノ禍根ナリト
  信ス當局ノ見解如何
  右及質問候也
  大正十年三月十四日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員小池仁郞君外三名提出小樽官有地處分
  ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員小池仁郞君外三名提出小樽官有地
  處分ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  -小樽船渠會社發起人ノ小樽區所在官有地一部
  拂下出願ニ對シ當局ハ築港工事竣成後公用ヲ廢止
  セル上貸付スヘキ旨通牒ヲナセルモ其ノ貸付期限條
  件等ニ付テハ貸付ノ際決定スヘシ
  二眞相ヲ調査スルニ質問者ノ云フ如キ事實ナシ
  三當局ハ嘗テ拂下ノ意思ヲ有シタルコトナシ
  四其ノ事實ナシ
  五貸付セントスル地點ハ小樽港內ニ於テ船渠設置ニ
  最モ適當ナル箇所ト認ム小樽船渠會社計畫ノ船渠
  設備ニ付テハ調査ノ上大體ニ於テ適當ナルヲ認メタ
  ルモ設計ニ於テ多少ノ不備アリ目下之カ更正ヲ求メ
  ツヽアリ
  六貸付條件ヲ以テ適當ノ方法ヲ定ムヘシ
  七鐵道省ニ於テハ既設高架棧橋移轉ノ計畫ナシ
  八高架棧橋移轉ノ計畫ナキヲ以テ本項ハ問題トナラ
  ス
  九然ラス
  十本計畫ハ實行ノ意思アリ又實行シ得ルモノト認ム
  十一小樽區拂下出願ノ目的ハ度々變更セラレ一定
  計畫ノ認メ難キノミナラス小樽船渠會社事業ノ緊要
  ナルヲ認メタルヲ以テ之レニ貸付スルコトニ內定セル次
  第ナリ
  十二十一ニ對スル答辯ニ依リ明ナリ
  十三當局ノ處置ハ小樽區ノ將來ニ對シ最モ適當ナル
  ヲ以テ禍根ヲ將來ニ貽スモノニアラスト信ス
  右及答辯候也
  大正十年三月十四日
  內務大臣床次竹二郞
  鐵道大臣元田肇
  第四師團射的場ノ流彈ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十年三月一日
  提出者木村權右衞門上畠益三郞
  賛成者矢島專平
  外三十人
  第四師團射的場ノ流彈ニ關スル質問主意書
  大阪第四師團射的場ノ構造不完全ナル爲流彈頻々ト
  シテ場外ニ落下シ或ハ街路通行中ノ人馬ニ命中シ或ハ
  人家ニ穿入シテ住居者ヲ傷ケタルコト枚擧ニ遑アラス射
  擊場附近ノ住民及通行者ハ何時傷害ヲ受クルヤモ知レ
  サル不安ノ位置ニ在リテ人心常ニ恟々タリ
  昨年七月下旬居民一同當局官廳ニ陳情シテ其ノ應急
  設備ヲ求メタルニ當局者ハ何等省慮スルトコロナク依然
  射撃ヲ續行シ日々實彈ヲ街路及人家ニ雨下セシメ之カ
  爲一箇月未滿ノ間ニ更ニ又三名ノ重傷者ヲ出スニ至リ
  タルハ天下公知ノ事實ナリ是レ固ヨリ國家ノ人命保護
  上一日モ坐視スヘカラサルトコロナルノミナラス國民ヲシ
  テ不知不識ノ間ニ軍隊ノ無情ヲ怨ミテ反感ヲ起サシム
  ル虞アリ依テ左ノ三點ニ付政府ノ答辯ヲ求ム
  -右ノ如キ重大ナル危險ノ頻出ヲ看過シナカラ大正
  九年八月末日マテ依然射撃ヲ繼續シ來リタル事實ニ
  對シ政府ハ之ヲ當局者ノ怠慢ト認メサルヤ若怠慢ト
  認メタリトセハ之ニ對シテ如何ナル措置ヲ爲シテ其ノ
  責任ヲ明ニシタリヤ
  二昨年九月以後政府ハ該射的場ニ如何ナル危險豫
  防工事ヲ施シツツアリヤ該工事竣成ノ上ハ絕對ニ流
  彈ノ危險ナキコトヲ確保シ得ルヤ若確保シ得ルトセハ
  其ノ工事ノ内容ヲ詳細ニ說明シテ大阪市民及中本
  町民ノ不安ヲ除去セラレタシ若又此ノ確保ヲ爲シ得
  サルトキハ該射的場ヲ他ニ移轉シテ關係住民ノ生命
  ニ對スル脅威ヲ除去スルノ意ナキヤ
  三從來流彈ノ爲死傷シ又ハ財產ヲ毀壞セラレタル者
  ニ對シ政府ハ相當ノ慰藉又ハ補償ヲ爲シタリヤ若然
  リトセハ其ノ內容如何
  右及質問候也
  大正十年三月十四日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員木村權右衞門君外一名提出第四師團射
  的場ノ流彈ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員木村權右衞門君外一名提出第四師
  團射的場流彈ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  一從來大阪射撃場ノ設備ハ學理上完全ニ流彈ヲ防
  止シ得ルモノト認メ多年之ヲ使用セリ然ルニ昨年流
  彈ノ災害ヲ生セシヲ以テ直ニ其原因ヲ調査セシモ射
  手竝監督者共ニ過失怠慢等ノ所業ナカリシヲ以テ別
  ニ責任者ヲ問フトコロナシ
  二以上ノ事實ニ鑑ミ一層流彈防止ヲ完全ニセムカ爲
  メ昨年九月斷然各部隊ノ射擊ヲ中止シ臨時ニ三萬
  圓ヲ投シ跳彈墻トヲ一層强大ニスルト共ニ的阜上ノ
  防彈柵ノ張鐵鈑ヲ更新シ更ニ兩翼部分ノ高サヲ增加シ
  テ流彈ノ防止ヲ講シ尙射庭鋸ノ齒形不整ヲ改修シ
  跳彈ノ原因ヲ除去スル等ノ處置ヲナシ十二月ニ到リ
  竣工セリ而シテ流彈防止ニ就テハ學理上ハ增築以前
  ニ於テモ既ニ充分流彈ヲ防止シ得タリシヲ以テ今囘
  ノ改修ニヨリ從來ヨリ尙一層完全ニ流彈ヲ防止シ得
  ヘキヲ信スルモ尙萬一ノ場合ヲ顧慮シ射撃場移轉ノ
  問題ニ就テモ亦調査〓究中ナリ
  三大正九年八月十九日步兵第八聯隊射擊演習ノ
  際流彈ノ爲ニ婦人ヲ負傷セシメタルモ右婦人ニ對シ
  テハ衞戌病院ニテ應急手當ヲナシ更ニ地方病院二八
  院セシメ入院諸費ヲ辨セリ
  其他流彈ノ爲微傷ヲ受ケタル地方人二名アルモ右ハ
  師團ニ於テ相當ナル處置ヲ執リ彼我ノ間ニ滿足ナル
  解決ヲ了セリ但シ此等ノ事件ハ何レモ射擊場改築以
  前ノ出來事ニ係ルモノトス
  右及答辯候也
  大正十年三月十四日
  陸軍大臣男爵田中義
  言論自由ノ抑壓ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十年三月四日
  提出者横山勝太郞八並武治
  賛成者箕浦勝人
  外三十人
  言論自由ノ抑壓ニ關スル質問主意書
  一政府ハ大正十年三月三日附ヲ以テ大正十年三月
  一日發行中外新論(發行人田代順一)ノ記事ハ安寧
  秩序ヲ紊スモノト認メ新聞紙法第二十三條ニ依リ其
  ノ發賣及頒布ヲ禁止セリ該記事ノ如何ナル點カ安寧
  秩序ヲ害スルモノト認ムルヤ
  二頃者政府ハ新聞雜誌ニ對シ記事ノ差止發賣禁止
  等ノ行政命令ヲ頻發シ言論ヲ抑壓スルコト從來其ノ
  比ヲ見サルトコロナリ是レ憲法上保障セラレタル言論
  ノ自由ヲ無視スルノ甚シキモノナリト思料ス政府ノ所
  見如何
  右及質問候也
  大正十年三月十四日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員橫山勝太郞君外一名提出言論自由ノ抑
  壓ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員橫山勝太郞君外一名提出言論自由
  ノ抑壓ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  -大正十年三月一日發行ノ中外新論ハ「政海ノ氣
  運」ト題スル記事中安寧秩序ヲ紊ルモノアリト認メ其
  ノ發賣頒布ヲ禁止シタリ
  二政府ハ言論ノ自由ハ固ヨリ之ヲ尊重スト雖モ安寧
  秩序ヲ紊亂シ又ハ風俗ヲ壞亂スト認ムル出版物ニ對
  シ相當ノ取締ヲ爲スハ法律ニ基ク處分ニシテ憲法上
  保障セラレタル言論ノ自由ヲ無視スルモノニアラス
  右及谷辯候也
  大正十年三月十四日
  內務大臣床次竹二郞
  鹿町炭礦買收ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十年三月七日
  提出者田中善立
  賛成者箕浦勝人
  外二十九人
  鹿町炭礦買收ニ關スル質問主意書
  長崎縣北松浦郡鹿町村ニ存在スル鹿町炭礦ハ濱野治
  八(前長崎縣會副議長政友會員)カ前持主中島德太
  郞外數名ヨリ一坪八厘乃至三錢ニテ買收經營セシモ維
  持困難ニ陷リ漸ク大倉喜八郎氏ノ援助ニ依リ株式會
  社ヲ組織シ繼續經營セシモ炭界不況ニ際シ殆ト破滅ノ
  境遇ニ在リテ時價僅ニ三十萬圓内外ニ過キストノ公評
  アリ然ルニ製鐵所ハ一坪當リ一圓ツツ計金三百萬圓ノ
  高價ヲ以テ該炭礦ヲ買收セシ理由如何
  右及質問候也
  大正十年三月十四日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員田中善立君提出鹿町炭礦買收ニ關スル質
  問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員田中善立君提出鹿町炭礦買收ニ關ス
  ル質問ニ對スル答辯書
  大正九年三月鹿町炭礦株式會社ヨリ製鐵所ヲ買收シ
  タル礦區ハ總坪數四百六十七万坪ニシテ一坪當五十
  九錢餘採掘可能總噸數ノ内良炭六割トシテ千八百五
  十五万噸一噸當十五錢ノ計算ナリ
  本礦區買收ニ關スル事項ハ製鐵所長官ノ專行權限ニ屬
  スルヲ以テ同長官ノ意見ヲ質シタルニ本礦區ノ炭質ハ
  本邦ニ於ケル製鍊用骸炭配合材料ニ適シタル唯一ノモノ
  ニシテ從來年々買炭シ海外ヨリ購入シツヽアル配合炭ノ
  不足ヲ補フモノ也而シテ此礦區ヲ買收シタルハ當時開
  平炭ヲ購入スルノ困難ナルト近キ將來ニ於テ開平附近
  ニ製鐵所設立ノ計畫アリテ該炭ヲ購入シ得サル場合ノ
  發生セムトスルニ由リタルモノナリ
  右及答辯候也
  大正十年三月十四日
  農商務大臣男爵山本達雄
  昇格問題ニ付原內閣總理大臣及中橋文部大臣ノ貴
  族院ニ於ケル釋明ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十年三月十一日
  提出者下岡忠治早速整爾
  關和知
  賛成者小山松壽
  外三十人
  昇格問題ニ付原內閣總理大臣及中橋文部大臣ノ貴
  族院ニ於ケル釋明ニ關スル質問主意書
  去十日貴族院本會議場ニ於テ爲シタル原内閣總理大
  臣及中橋文部大臣ノ専門學校昇格ニ關スル釋明演說
  ニ依レハ「學校問題ニ關連セル風紀問題ニ付テハ最近文
  部當局カ其計畫中ノ一部ヲ他ニ漏洩シ夫カ爲メ一層ノ
  紛糾ヲ重ネタルハ官紀上注意ノ足ラサリシニ起因ス依テ
  政府ハ此點ニ充分ノ注意ヲ爲シ且ツ部下ニモ之ヲ爲サ
  シムヘシ云々」是ニ由テ之ヲ觀レハ本院ニ於テ屢問題ト
  ナリタル中橋文部大臣ノ昇格問題ニ關スル食言ハ政府
  ニ於テ之ヲ認メ其ノ言明ハ官紀紊亂ヲ承認シタルモノト
  云ハサルヘカラス果シテ然ラハ政府ハ之ニ對シ其ノ責任
  ヲ負フヘキモノト信ス政府ノ所見如何
  右及質問候也
  大正十年三月十四日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長奧繁三郎殿
  衆議院議員下岡忠治君外二名提出昇格問題ニ付原
  內閣總理大臣及中橋文部大臣ノ貴族院ニ於ケル釋明
  ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員下岡忠治君外二名提出昇格問題ニ
  付原内閣總理大臣及中橋文部大臣ノ貴族院ニ於
  ケル釋明ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  本月十日ノ貴族院本會議場ニ於テ文部大臣ハ文部當
  局ノ計畫中ニ屬スルモノノ一部カ昨年末他ニ漏洩シタル
  カ爲一層ノ紛糾ヲ重ヌルニ至リタルハ注意ノ至ラサリシ點
  モアリシカ故ニ今後其ノ邊ニ充分ノ注意ヲ爲スヘキ旨ヲ
  述ヘタルモ質問書ニ云フカ如ク當局カ計畫ノ一部ヲ漏
  洩シタリト云フカ如キコトヲ述ヘタルコトナシ
  右及答辯候也
  大正十年三月十四日
  內閣總理大臣原敬
  文部大臣中橋德五郞
  一今十五日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  衆議院議員田中武雄君提出
  大井浦鹽派遣軍司令官ノ責任ニ關スル質問ニ對スル
  答辯書
  衆議院議員吉野小一郞君提出滿洲ニ於ケル施政方
  針ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  大井浦鹽派遣軍司令官ノ責任ニ關スル主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十年三月二日
  提出者山田武雄
  賛成者小山松壽
  外三十人
  大井浦鹽派遣軍司令官ノ責任ニ關スル質問主意書
  浦鹽ニ於ケル「ラングトン」大尉ニ對スル事件ハ西原少將
  ノ待命ヲ以テ終了シタルノ觀アルモ之ニ對スル大井司令
  官ノ責任如何
  右及質問候也
  大正十年三月十五日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員田中武雄君提出大井浦鹽派遣軍司令官
  ノ責任ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員田中武雄君提出大井浦監派遣軍司
  令官ノ責任ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  今囘發生シタル「ラングトン」事件ハ舍營勤務ニ屬スル事
  項ナルカ故直接ノ責任ヲ負フヘキモノハ舍營司令官以
  下ノ將校ナリ之ニ關スル大井司令官ノ責任ハ答辯ノ限
  ニアラス
  右及答辯候也
  大正十年三月十五日
  陸軍大臣男爵田中義
  滿洲ニ於ケル施政方針ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十年三月五日
  提出者吉野小一郞
  賛成者松野鶴平
  外二十九人
  滿洲ニ於ケル施政方針ニ關スル質問主意書
  近時日支間ノ親善ハ所謂國際儀禮ニ屬スルモノノ
  外諸般ノ事實ニ於テ殆ト總テ寧ロ逆轉ノ觀アリ政府
  ハ支那ノ自覺ヲ待ツト謂フ外ニ日支共存共榮ノ根本
  義ニ基キ兩國ノ政治經濟上親善ノ實ヲ擧クヘキ積極
  的具體的ノ促進策ニ付奈何ノ考慮ヲ有スルヤ
  二滿蒙ニ對スル我カ施政上政府ヲ直接間接ニ代表
  スル領事館關東廳陸軍滿鐵ノ相互ハ其ノ政治經濟
  的施爲方針ニ付頗ル聯絡統一ヲ缺クヲ恆トス各機關
  ノ當事者亦之ヲ確認セリ政府ハ此ノ際實情ノ調査ヲ
  進メ制度ノ更新ヲ圖ールコトニ付奈何ノ考慮ヲ有スル
  ヤ
  三南北滿洲ノ貿易ハ近時異常ノ發展ヲ遂ケ其ノ產
  業ノ發達ハ將來益觀ルヘキモノアルヘク隨テ本邦トノ
  關係ハ更二一層重要ナルモノアラムトス政府ハ滿蒙ヲ
  管轄區域トスル獨立ノ商務官ヲ速ニ設置スルニ付考
  慮ノ要ヲ認メサルヤ
  四東支鐵道ノ支配權及其ノ管內ニ於ケル行政權ハ
  事實上漸次露國ヨリ支那ニ奪囘セラレタリ且東支鐵
  道ニ依ル交通運輸ハ今日著シク支障ヲ生シ居レリ政
  府ハ從來ニ於ケル日支露間ノ協定ニ照ラシ支那ニ對
  シ國際通義上何等ノ交涉ヲ要セスト認メラルルヤ
  五日支兩國間既定ノ協約ニ係ル鐵道ノ速成及商租
  契約ニ關スル施行細則ノ協定ニ付政府ハ現在如何
  ノ進行ヲ爲セルヤ
  又本邦ノ滿蒙經營根本義ハ北滿ニ於ケル優越權ヲ
  獲得シテ初テ其ノ意義徹底スヘシ政府ハ北滿ニ對シ
  テモ南滿ト均シク商租權ヲ承諾セシムル等具體的ノ
  所見ヲ有セサルヤ
  六滿蒙ニ於ケル經濟產業ノ發展ヲ希圖セハ我カ低利
  資金ノ注入ニ銳意スルヨリ急ナルモノ莫シ政府ハ其ノ
  保有セル資金ノ一部ヲ割キ適當ノ機關ヲ通シ一定年
  間特殊貸出ヲ行フコトニ付考慮ノ要ヲ認メサルヤ
  七所謂滿蒙經營ニ關シ現在金融上ノ任務ヲ有スル我
  カ特殊會社ハ正金銀行、朝鮮銀行及東洋拓殖會社
  ノ三者ナルカ是等各會社孰レモ其ノ業務方針組織權
  限資力ニ於テ多大ノ缺陷ヲ有シ且均シク政府ノ特設
  會社ニシテ對滿經營上ノ聯絡統一ヲ缺如セリ政府ハ
  此ノ際滿蒙經營上其ノ實情ニ適當セシムヘキ滿蒙本
  位ノ中樞的金融機關ヲ特設スルコトニ付考慮ノ必要
  ヲ認メサルヤ
  右及質問候也
  大正十年三月十五日
  內閣總理大臣原敬
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員吉野小一郞君提出滿洲ニ於ケル施政方針
  ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員吉野小一郎君提出滿洲ニ於ケル施政
  方針ニ關スル質問ニ對スル各辯書
  -帝國政府ハ日支共存共榮ノ根本義ニ基キ政治經
  濟上親善ノ實ヲ擧クル爲各方面ヨリ銳意考慮ヲ懈ラ
  スト雖之カ具體的實現ニ就テハ單ニ政府ノ焦慮施設
  ニ依リテノミ其達成ヲ期スルヲ得ス必スヤ支那ノ協力
  國民ノ努力ニ俟タサルヘカラス卽チ第2一支那國内ノ
  統一康寧ノ回復ニ依リ協力ニ便ナル政情ノ到來ヲ要
  ス乍併之カ爲帝國政府ニ於テ內政干涉ニ陷ルカ如キ
  擧措ニ出ツルハ之ヲ避ケサルヘカラス要ハ先ツ支那有
  爲ノ政治家ニ於テ些々タル感情ヲ排シ和平統一ノ實
  現ニ努力セムコトヲ熱望セサルヲ得ス帝國政府ニ於テ
  ハ數年來列國ト共ニ之ヲ支持スルノ方針ヲ確立シ之
  カ實現ニ努メ居レリ第二ニ我民間ニ於テモ兩國民相
  互ノ了解協力ニ努メ國民感情ノ融和ヲ來シ從來ノ誤
  解ヲ釋クニ力メ以テ共存親善策實行ノ途ヲ圓滑ナラ
  シムルニ盡力セムコトヲ切望セサルヲ得サルナリ
  二滿洲ニ於ケル諸機關ノ間ニ聯絡統一ヲ缺キタルカ
  如キ事實ナシ
  三支那一般ニ對スル商務官ヲ置クカ爲之ニ要スル豫
  算ハ已ニ今期議會ニ提出シタリ特ニ滿蒙ヲ管轄スル
  商務官ノ設置ニ付テハ政府ニ於テ差當考慮セス
  四東支鐵道問題ニ關シ最近露支間ニ折衝ノ事實ア
  ルモ右ハ畢竟露國ノ崩壞ニ伴フ異常ノ事態ニ胚胎ス
  ルモノニシテ如斯機微ナル局面ニ際シ帝國政府ニ於
  テ進テ右露支間ノ問題ニ介入スルカ如キハ決シテ策ノ
  得タルモノニ非スト信ス只常ニ事態ノ推移ニ留意シ帝
  國及國民ノ旣得利益ノ侵迫ヲ防止スルニ就テハ機宜
  ノ措置ヲ怠ラサルヘキコト勿論ナリ尙東支鐵道ノ運行
  確保ニ關シテハ聯合國間ノ協定ニ基ク聯合國委員
  會依然存續シ必要ノ措置ヲ講シツヽアリ
  五日支間既定ノ協約ニ係ル鐵道ニ就テハ政府ハ素ヨ
  リ其ノ速成ヲ希望シ之カ實現ニ努力シツヽアルモ未タ
  具體的ニ其進行ノ程度ヲ發表シ得ルノ時機ニ達セ
  ス
  商租契約ノ施行細則協定ニ付テハ目下對案考査中
  ナルカ支那ノ政情我交涉ニ便ナル時機ニ於テ可成速
  ニ我目的ヲ達スル樣努力シツヽアリ
  北滿ニ於ケル商租權ヲモ承諾セシムルコトハ或ハ質問
  書ノ說ノ如ク我國ニ有利ナランモ四圍ノ情勢ニ顧ミ
  政府ハ未タ之ヲ考慮スルノ時機ニ達セスト思考ス
  六預金部ノ資金トシテ餘裕アル場合ニハ滿蒙ニ於ケ
  ル經濟產業發展ノ爲ニモ利用スルコトニ付考量ヲ加
  フルヲ辭セス
  七滿蒙ニ於テハ金融機關トシテ既ニ横濱正金銀行朝
  鮮銀行及東洋拓殖會社各活動シ相當效果ヲ擧ヶ居
  レリ從テ將來益々努力シテ滿蒙ノ需要ニ應スル樣指導
  スル積ナリ差當リ此等ノ機關ヲ放棄シテ滿蒙本位ノ
  中樞金融機關ノ急設ヲ要ストハ思考セス
  右及答辯候也
  大正十年三月十五日
  內閣總理大臣原敬
  外務大臣伯爵内田康哉
  大藏大臣子爵高橋是〓
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載
  ス〕
  一去十二日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
  六大都市行政監督ニ關スル法律案外一件
  松浦五兵衞君鳩山一郞君宮崎三之助君
  土屋興君若尾幾造君加藤重三郎君
  竹上藤次郞君坪田十郞君樋口伊之助君
  赤田瑳一君向井倭雄君小山松壽君
  森田茂君武內作平君作間耕逸君
  高木正年君板野友造君森下龜太郎君
  都市計畫地方委員會職員ノ恩給及遺族扶助料ニ關ス
  ル法律案外五件
  八田宗吉君佐藤寅太郞君西村伊亮君
  吉木陽君龍野周一郞君江崎幸太郞君
  荒川五郞君樋口秀雄君石川長右衞門君
  黃燐燐寸製造禁止法案
  今井今助君高島七郞右衞門君山本〓三郞君
  福井甚三君多木久米次郞君中馬興丸君
  淺川浩君中川幸太郞君山邑太三郞君
  畜牛結核病豫防法中改正法律案
  柳原九兵衞君池田猪三次君伊藤廣幾君
  木下甚三郞君岩崎宗茂助君久慈貫一君
  鈴木久次郞君村山喜一郞君小橋藻三衞君
  石油政策ニ對スル燃料調査會設立ニ關スル建議案
  高野毅君三浦權兵衞君中島鵬六君
  木村〓三郞君三好德松君坂本素魯哉君
  齋藤巳三郞君古賀三千人君守屋松之助君
  多摩川改修費及水源涵養費國庫支辨ニ關スル建議案
  外一件
  秋本喜七君土屋興君長谷場〓君
  內山安兵衞君森恪君淺賀長兵衞君
  小野重行君出口直吉君最上直吉君
  救世軍補助ニ關スル建議案
  中村喜平君吉良元夫君波多野喜右衞門君
  竹澤太一君若林德懋君岡順次君
  橫山勝太郞君小池仁郞君奧村安太郎君
  延美鐵道速成ニ關スル建議案外二件
  池田猪三次君吉原祐太郞君野呂駿三君
  西村正則君森恪君三枝彥太郞君
  永井柳太郞君古屋慶隆君近藤達兒君
  一去十二日地方鐵道法中改正法律案外一件委員河
  相三郞君辭任ニ付其ノ補闕トシテ阪上貞信君ヲ、陸
  軍軍法會議法案外十一件委員上畠益三郞君辭任
  ニ付其ノ補闕トシテ仙波太郞君ヲ、地方學事通則中
  改正法律案委員山邑太三郞君辭任ニ付其ノ補闕ト
  シテ森下龜太郞君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
  一昨十四日委員長理事互選ノ結果左ノ如シ
  六大都市行政監督ニ關スル法律案外一件委員
  宮崎三之助君
  委員長松浦五兵衞君理事小山松壽君
  板野友造君
  都市計畫地方委員會職員ノ恩給及遺族扶助料ニ關
  スル法律案外五件委員
  委員長八田宗吉君理事吉木陽君
  黃燐燐寸製造禁止法案委員
  委員長多木久米次郞君理事福井甚三君
  畜牛結核病豫防法中改正法律案委員
  委員長柳原九兵衞君理事鈴木久次郞君
  石油政策ニ對スル燃料調査會設立ニ關スル建議案
  委員
  委員長高野毅君理事守屋松之助君
  多摩川改修費及水源涵養費國庫支辨ニ關スル建議
  案外一件委員
  委員長秋本喜七君理事小野重行君
  救世軍補助ニ關スル建議案委員
  委員長中村喜平君理事奧村安太郞君
  遠美鐵道速成ニ關スル建議案外二件委員
  委員長池田猪三次君理事永井柳太郞君
  一昨十四日六大都市行政監督ニ關スル法律案外一件
  委員森田茂君辭任ニ付其ノ補闘トシテ野田文一郞
  君ヲ、多摩川改修費及水源涵養費國庫支辨ニ關ス
  ル建議案外一件委員淺賀長兵衞君辭任ニ付其ノ補
  闕トシテ高木正年君ヲ、遠美鐵道速成ニ關スル建議
  案外二件委員三枝彥太郞君辭任ニ付其ノ補闕トシ
  テ松浦五兵衞君ヲ就レモ議長ニ於テ選定セリ
  一今十五日身元保證ニ關スル法律案委員上畠益三郞
  君辭任ニ付其ノ補闕トシテ森下龜太郞君ヲ議長ニ於
  テ選定セリ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=1

  ---

• 002・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　會議ヲ開キマス、諮問致シマスル件
  ガアリマス、箕浦勝人君外三名提出市制中改正法律案、
  町村制中改正法律案、濱田國松君外二名提出市制中改
  正法律案、町村制中改正法律案、右提出者ヨリ撤回ノ申
  出ガアリマス之ヲ許可スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=2

  ---

• 003・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナイト認メマス、仍テ之ヲ許
  可致シマス-議事ノ進行ニ就テ發議ノ要求ガアリマスカ
  ラ、之ヲ許シマス-高田耘平君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=3

  ---

• 004・遠藤良吉

  ○遠藤良吉君　議長、議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=4

  ---

• 005・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　今高田君ニ發言ヲ許シマシタ、遠
  藤君何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=5

  ---

• 006・遠藤良吉

  ○遠藤良吉君　是ヨリ所得稅法中改正法律案外四件
  ノ委員會ヲ開キタウ存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=6

  ---

• 007・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=7

  ---

• 008・遠藤良吉

  ○遠藤良吉君　ソレデハ委員ノ諸君ハ、第九委員室ニ御
  參集ヲ願ヒマス
  〔高田耘平君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=8

  ---

• 009・高田耘平

  ○高田耘平君　私ハ議事ノ進行ニ就キマシテ動議ヲ提出
  シタイト思ヒマス、ソレハ衆議院規則第五十五條ニ基ヅクモ
  ノデアリマス、卽チ小學校〓員俸給國庫負擔金增加ニ
  關スル建議案ノ委員會ハ、速ニ其審査ヲ終了シ、次ノ本
  會議ニ於テ其結果ヲ報告スベシ-斯ウ云フ動議デゴザイ
  マス、國民黨及我黨ガ國家ノ大問題タル小學校〓員俸給
  國庫負擔額增加ノ建議案ヲ出シマシタコトハ、議會開會ノ
  劈頭、卽チ昨年ノ十二月二十七日デゴザイマス、然ルニ此建
  議案ガ今尙小審査未了ニナッテ居]ルノデゴザイマス、而シテ
  此建議案ニ關聯致シマシテ、政友會ヨリ二月ノ十五日ト思
  ヒマス、小學校〓育費整理ニ關スル建議案ナルモノガ出マ
  シタノデゴザイマス、而シテ其席上ニ於キマシテ井上角五郞君
  ヨリ、三割標準ヲ以テ市町村ノ〓育費ヲ節約セシムルト云
  フ意味ソ建議案ガ出タノデアリマス、吾ミハ斯樣ナル事ハ到
  底不可能デアルガ故ニ、是ハ委員會ニ付スベキモノニ非ズト
  ノ意味ヲ持シテ居リマシタガ、遺憾ナガラ是ガ多數ヲ以テ委
  員會ニ付セラレマシタ、委員會ハ此問題ニ就キマシテ數回<
  委員會ヲ開キマシタ、『勿論吾〓ノ提出シタル案ト併セテ政
  府ニ向ッテ質問ヲ致シ、或ハ委員會ニ於テ質問ヲ爲シタノデ
  ゴザイマス、併ナガラ其委員會ニ於キマシテハ、井上君ノ本
  會議ニ於テ申サレタル三割標準節減稅ハ全然裏切ラレマ
  シタ、井上君モ及委員トナラレマ『シタル鵜澤總明君ナドモ、
  (「委員會ノ報告デスカ」ト呼フ者アリ)此節約ト云フコトニ
  就キマシテハ、何等ノ餘地ガナイト云フコトヲ略ホ答辯ニナツ
  テ居ルノデアリマス、政府委員ニ於キマシテ』モ尙ホ其通リデ〓
  ゴザイマス、而シテ此委員會ハ三月七日ニ兩案トモ質問ガ
  終了致シマシテ、直チニ討議ニ移ル筈デゴザイマスケレドモ、
  今尙ホ委員長ハ何故カ逡巡決セズシテ、此委員會ヲ開會
  セラレナイノデゴザイマス、申スマデモナク此問題ハ如何ニモ
  大問題デゴザイマス、政友會ノ人〓ト雖モ恐クハ吾〓ノ提出
  シタル建議案ニ、心中反對スル人ハ一人モ無イデアラウト思
  フノデゴザイマス、唯夕ル併ナガラ政府ガ調査機關ヲ設ケルト
  云フコトヲ發表シマシタ爲メニ、其意思ヲ迎合シテ、誤ッテ三
  割節減ト云フヤウナ、途方途徹モナイ間違ッタル建議案ヲ御
  出シニナッタモノデアラウト思フ、『ソレガ爲メニ委員會ニ於キ
  マシテハ數回質問應答ヲ致シマシテ、而モ鵜澤君ナドモ質
  問ヲ政府ニ致シマシタケレドモ、鵜澤君ナドハドウモ餘地ガ
  無カリサウダト云フコトデ、窮餘ノ策トシテ「ゲーリーシステ
  ム」デモ採用シテハドウカト云フコトデアリマシタ、政府ハ、此
  「ゲーリーシステム」ハ是ハ實業〓育ニ行フベキモノデ、小學
  〓育ニハ實行スベカラザルモノデアル、斯ウ云フヤウナ答辯
  ヲ得マシタ結果ハ、殆ド調査機關設置ノ必要ナシト云フ斷
  案ヲ下サヾルヲ得ナクナッタ、私ハ委員長ガ三月七日ニ既ニ
  委員會ノ終了シタニモ拘ラズ、今尙ホ此問題ヲ討議ニ移サ
  ナイト云フコトハ、要スルニ政友會諸君ガ誤ッタル建議案ヲ
  提出シテ、今其處置ニ困窮シテ居ル爲メデアラウト思フノデ
  アリマス、(拍手)或ハ漏レ聞ク所ニ依レバ、其眞僞ハ判リマ
  セヌガ、政友會ノ諸君ハ此問題ニ對シテ、何等カ政府ニ向ッ
  テ五百万圓ナリ一千万圓ナリノ金ヲ出サセナケレバ、其進
  退ニ窮スルト云フコトカラ、内密ニ交涉シテ居ルト聞及ンデ
  居リマス、併ナガラ此問題ハ、既ニ小學〓員ノ俸給ソレ自身
  ノ問題デハゴザイマセヌ、市町村自治體ノ基礎ニ大關係ヲ
  持ッ問題ニナッテ居ルノデゴザイマス、『近キ例ヲ申上ゲマスレ
  バ、近頃地方ノ新聞ヲ見ルト、今ヤ大正十年度ノ豫算審議
  中ニ各町村トモナッテ居リマシテ、各縣ニ於テ町村會ガ費用
  ノ增加ニ困難シタ結果、如何ナル方面ニ向ッテカ斧鉞ヲ加
  ヘザルヲ得ナイ、其結果ハ市町村ノ吏員、卽チ村長助役、有
  給吏員等ノ俸給ニ向ッテ大削除ヲ加ヘタ結果、各所ニ於テ
  名譽職有給吏員ノ全部ガ辭職スルト云フ實況ガ各所ニ見ユ
  ルノデアリマス、若シ現在ノ儘ニ抛擲シテ置キマシタナラバ、此
  傾向ハ益〓多クナリマシテ、或ハ小學校ノ〓員ニ向ッテモ、其俸
  給ハ知事ノ辭令ニ依ル結果、削減ヲ加ヘルコトハ出來ナイ
  カ知レマセヌケレドモ、併ナガラ市町村ガ勝手ニ決議ノ出來
  ル設備、其他ニ向ッテハ、大ニ斧鉞ヲ加ヘル結果ニ相成ルコ
  トデアラウト思ヒマス、一ソレガ若シ合理的ノ斧鉞ナラバ吾こ
  構ハヌノデアリマスケレドモ、非合理的ニ設備其他ニ向ッテ
  斧鉞ヲ加ヘルト云フコトハ明カデゴザイマス、加之吾こガ最
  モ憂フル所ハ、市町村當然ノ施設タル勸業、土木、衞生等
  ノ施設ハ益、等閑ニセラレマシテ···

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• 010・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　注意致シマス、成ベク議事ノ進行
  ニ就テ··

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• 011・高田耘平

  ○高田耘平君(續)　自治體ノ發展ヲ害スルヤウニナルト
  思ヒマス、故ニ此市町村〓育費ノ國庫負擔金增加ノ問題
  ハ、決シテ文部當局ノ問題ニ非ズ全ク自治體ノ基礎ヲ、如
  何ニシテ維持スルカト云フ大問題ニ逢著シタノデゴザイマス、
  故ニ吾〓ハ此大問題ハ、下院一致ノ力ヲ以テ吾〓ノ建議案
  ヲ通過シテ之ヲ政府ニ迫レバ、如何ニ頑冥不靈ノ政府ト雖
  モ、國民ノ要求ヲ容レナイコトハ無イト思フノデゴザイマス、
  現ニ再々申ス通リ文部大臣ハ、昨年ノ二月ノ(「簡單」ト呼
  フ者アリ)委員會ニ於テモ、或ハ七月ノ委員會ニ於キマシテ
  モ、米價ガ半値ニナッタ場合ニ於テハ、何ヲ質ニ置イテモ此問
  題ヲ解決シナケレバナラヌト云フコトヲ2議議ニ於テ明言サ
  レタノデゴザイマス、(拍手起ル、「ヒヤ〓〓」)私共ハ此意味ニ
  於キマシテ、此大問題ヲ是非トモ本會期中ニ於テ解決シタ
  イト云フ意味ニ於キマシテ、ドウゾ政友會ノ諸君モ前ニ御提
  出ニナリマシタル三割節減ナドヽ云フ、不得要領ノ不可能
  ノ建議案ハ御撤回ニナッテ、而シテ委員會ヲ開イテ-速ニ
  委員會ヲ開イテ、此次ノ本會議。マデニ此問題ノ審査ノ結果
  ヲ終了セシメタイト思フノデアリマス、ドウゾ滿場諸君ノ御
  同意ヲ乞ヒマス(拍手起ル)

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• 012・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　高田君ニ一寸聽キマスガ、今御發
  議ノ要旨ハ、次ノ本會議マデニ委員會ノ結果ヲ報告セヨト
  云フノデスカ

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• 013・高田耘平

  ○高田耘平君　サウ云フ動議デス

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• 014・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　尙ホ一寸聽キマスガ、シレヲ議長カ
  ラ委員長ニ請求セヨト云フニ非ズシテ、院議デソレヲ決メタ
  イト云フ動議デスカ、サウ云フ動議デスカ明カニ仰シヤイ、速
  記ニ載セニャナリマセヌ

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• 015・高田耘平

  ○高田耘平君　私ノ動議ハ先程申シマシタ通リ、議院規
  則第五十五條ニ基ヅキマシテ、之ヲ根據ト致シマシテ、此
  小學〓員俸給國庫負擔增加ノ建議案ハ昨年ノ十二
  月.

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• 016・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　ソレハ宜シイ、院議ヲ以テ決メルト
  云フノデスカ

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• 017・高田耘平

  ○高田耘平君　ソレガ今尙ホ委員會ニ於テ質問ハ終了シ
  タケレドモ、討論ハ終結シナイ、其儘ニナッテ居ルコトハ甚ダ
  困ルカラ、速ニ委員會ノ審査ヲ終了シテ、サウシテ其結果ヲ
  次ノ本會議ニ報告スベシト云フ動議デアリマス

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• 018・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　高田君ノ動議ニ賛成ガアリマスカ
  〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕

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• 019・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　賛成ガアリマスカラ採決致シマス
  〔「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ〕

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• 020・岩崎勲

  ○岩崎動君　只今ノ動議ハ吾ミハ反對デアリマス、ソレハ
  吾とハ委員長及委員諸君ニ信賴致シマシテ、必ズヤ委員長
  及委員諸君ガ適當ナル時機ニ、適當ナル報告ヲセラルベキ
  モノデアルト云フコトヲ確信シテ疑ハナイ、(拍手、「ヒヤ〓〓」)
  ソレ故ニ只今ノ動議ニハ反對致シマス

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• 021・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　高田君ノ動議ニ賛成ガアリマスカ
  ラ採決致シマス、高田君ノ動議ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メ
  マス(「反對」ト呼フ者アリ)
  〔贊成者起立〕

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• 022・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　起立少數、仍テ此動議ハ否決セラ
  レマシタ、質問ニ入リマス、德島市長選舉ニ關スル質問、野
  田文一郎君
  德島市長選舉ニ關スル質問(野田文一郞
  君提出)
  德島市長選擧ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十年二月二十四日
  提出者野田文一郎
  賛成者古屋慶隆
  外三十人
  德島市長選擧ニ關スル質問主意書
  -大正十年一月十八日德島市會ニ於テ市長ヲ選擧
  スルニ方リ政友會員タル市會議長村井茂市ハ與黨議
  員ヲ擁シ無賴漢ヲ使嗾シテ非違橫暴ヲ逞フシ甚シク
  市民ノ公憤ヲ招キ同地未曾育ノ紛擾ヲ惹起セシメ今
  ヤ德島辯護士團亦起テ事ノ眞相ヲ調査シ旣ニ其ノ選
  擧無效ノ意見ヲ公表スルニ至リタリ內務大臣ハ果シ
  テ其ノ監督ノ任ヲ完ウシタリト爲スカ
  二右選擧ニ方リ議長ハ多數ノ無賴漢ヲ議場ニ配置シ
  テ自ラ議場ノ秩序ヲ亂リ反對派議員ヲ脅迫シテ其ノ
  選擧ノ自由ヲ妨害セシメ議員ニ投票用紙ヲ交付セス
  與黨議員ヲシテ豫メ議場外ニ於テ記載セルモノト認ム
  ヘキ投票ヲ咄嗟ニ投函セシメ且投票前投票函ヲ改ムル
  コトナク又他ノ議員ヲシテ議長ノ職務ヲ代理セシメタ
  ル形跡ナキニ拘ラス議長ノ一票ヲ得票ニ算入シ尙出
  席議員法定數ヲ缺クニ至リタルモ適法ノ手續ヲ執ラ
  スシテ選擧ヲ敢行シタルハ違法ニシテ該選擧ハ當然無
  效ニ屬スヘキモノト認ム內務大臣ハ之ニ對シ果シテ如
  何ナル見解ヲ有シ現ニ如何ニ處理シツツアリヤ又今後
  如何ナル處置ヲ執ラムトスルヤ
  三右市會議事錄ノ記載ハ緊要ナル點ニ於テ眞實ヲ僞
  ルモノ甚夕多ク素ヨリ之ニ依リテ會議ノ經過ヲ判斷ス
  ルコトヲ許サス宜シク速ニ其ノ非行ヲ糺彈シテ責任ノ
  所在ヲ明ニスルコトヲ要ス政府ハ此ノ點ニ關シ如何ナ
  ル處置ヲ執リツツアリヤ又將來如何ニ之ヲ處理セムト
  スルヤ
  右及質問候也
  〔野田文一郞君登壇、拍手起ル〕

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• 023・野田文一郎

  ○野田文一郞君　私ハ德島市長選舉ニ關シマシテ、如何
  ニモ看過スルコトノ出來ナイ甚シキ不法ナル事ガゴザイマス
  ルノデ、而モ此事ハ本年一月十八日ノ事柄デゴザイマスル
  ガ、今尙ホ此問題ガ解決サレマセヌカラ、此事ニ向ッテ質問
  致サントスル者デゴザイマヌ、(「簡單」ト呼フ者アリ)諸君モ
  御承知ノ如ク床次內務大臣ハ、曾テ德島ニ知事トシテ在
  任ヲシテ居ッタ人デゴザイマス、ソレ故ニ德島ニハ床次內務大
  臣ハ特別ノ緣故ガアリ、深キ關係ヲ有セラルヽ人デゴザイマ
  スカラ、德島ニ於ケル縣政-市會ニ於テハ、相當ナル人ハ
  悉ク床次君ノ知遇ヲ受ケテ居ル人ガ多イノデゴザイマシテヽ
  現ニ德島市ヨリ選出セラレマシタル海原君ノ如キハ、床次
  君ノ祕書官タリシ關係ノアル人デゴザイマス、斯樣ナル關係
  デアッテ、德島ニ於ケル政友會ノ別働除タル公民會ハ、此議
  場ニ御在ニナル原田君ガ統率シテ居ラルヽト聞イテ居リマ
  スルガ、併シ是等ノ團體ハ、團體ノ内情ニ就テモ床次內務
  大臣ハ詳シク御承知ノ筈デアル、現ニ昨年十月政友會ノ中
  國四國大會ガ德島ニ於テ開カレマシタ際ニモ、(「質問ノ要
  點ヲ言へ」ト呼フ者アリ)床次內務大臣ハ總裁代理ノ格デ
  出張ヲセラレマシテ、其當時德島市ハ一千四百圓ト云フ費
  用ヲ、內務大臣ノ歡迎費用トシテ支出スルコトヲ決メマシ
  タ、所ガ歡迎會ノ席上ニ臨ンデハ、內務大臣ト云フ資格デ
  ナクシテ、政友會ノ相談役タル床次君ト云フヤウナ挨拶ガ
  アッタ爲メニ、『物議ヲ招イタコトモアルノデゴザイマス、要スル
  ニ床次内務大臣ハ德島ノ縣會、市會ニ就テハ、其情僞ヲ詳
  ニシテ居ル人デゴザイマスルカラ、內務大臣トシテ地方ノ自
  治體ニ對シテ監督權ヲ持ッテ居ル地位ニ於テハ、內部ノ事
  情ニ精通致シテ居ルダケンレダケ、大臣ハ自ラ其責任ノ重
  キヲ感ジナケレバナラヌト思フ、此事ヲ私ハ先ヅ以テ御斷リ
  申シテ置ク、然ルニ一月十八日ニ德島市長トシテ候補ニ擧
  ケラレク人ハ、一阪俊太郞卜云フ人デゴザイマスルガ、此人
  ハ多年市長ノ職ニ在ッテ、現ニ是マデ二回マデモ不信任ノ決
  議ヲ受ケ、大正五年ニモ市長選擧ノ爲メニ一大紛亂ヲ醸シ
  タコトガアル人デアル、此一阪俊太郞ト云フ人ヲ公友會ノ
  人とガ、是非共之ヲ擧ゲナケレハナラヌト云フコトノ爲メニ、
  有ユル手段ヲ盡シテ、神聖ナル市會ノ議場ニ於テ、有ルベカ
  ラザル亂暴詐術ヲ用ヰテ選擧ヲセント試ミタノデゴザイマ
  ス、故ニ德島ノ多數ノ市民ハ之ヲ評シテ、白晝强盜ニ均シ
  キ市長選擧ヲ爲サントシタノデアルト叫ンデ居ル、(拍手起
  ル)之ガ爲メニ-餘リニ亂暴ナル事ノ爲メニ、德島市民ハ
  非常ニ憤激ヲ致シマシテ、一月二十日ニハ約四十ト云フ市
  民ノ多數ノ人〓ガ、別ニ之ヲ誘導スル者ノ無カリシニ拘ラズ、
  此多數ノ人とガ自發的ニ集リマシテ、サウシテ(「簡單々々」
  ト呼フ者アリ)或ハ市會議長ノ村井ノ宅ヲ襲擊セントスルト
  カ、非常ナル紛亂ヲ來シタノデアッテ、ソレカラ後更二二月二
  日ニ至リマシテハ、組織的ニ市民大會ト云フモノヲ開イテ、
  サウシテ此選擧ノ違法ナルコトヲ叫ビマシタ、其結果數箇ノ
  決議ヲ取纏メテ、當時內務大臣ニ此事ハ進達ヲ致シタコト
  ニナッテ居リマス、ソレノミナラズ德島】ノ辯護士〓體ハ全部
  此事ヲ憤〓ヲ致シマシテ、所謂德島市ニ於ケル法曹トシテ、
  斯ノ如キ違法ナル事ヲ此儘ニ看過スルト云フコトハ、市民
  トシテ德島市ニ居住ヲ致ス法律家トシテ忍ブ能ハザル事ナ
  リトシテ、遂ニ辯護士團體中僅ニ一二名ノ人ヲ除クノ外ハ、
  全部起ッテ此問題ヲ調査シ、サウシテ其〓究ノ結果ヲ公表
  スルト云フコトニナリマシタノデアル、此德島市ノ辯護士團
  體ハ、是ハ政黨政派ニ何等ノ關係ナキ人ガ多イノデゴザイマ
  シテ、全ク法律家トシテ此違法ヲ看過スルコトガ出來ナイト
  云フ見地ヨリ起ッテ、調査ヲスルト云フコトニナッタノデアル、
  而シテ其調査ノ結果ニ依リマスルト、吾〓ガ以前ヨリ聞イテ
  居リマシタ事ト少シモ相違ガ無イノデアッテ、此辯護士團體
  ノ調査シタ事柄ハ、十分ニ信ヲ置クニ足ルト信ジマスカラ、
  私ハ先ヅ此選擧ノ經過ニ就テハ大體ノ辯護士團體ノ調査
  ニ基礎ヲ置イテ、此事實ノ眞相ヲ見ルト云フコトガ、最モ穩
  當デアラウト思ヒマス、其調査ノ結果ニ依リマスルト、細カク
  申上ゲルト長クナリマスカラ、成ベク要點ヲ摘ンデ申上ゲマ
  スルガ、一月十八日ノ午後一時先ヅ會議ヲ開キマシテ、議
  長ハ公友會ノ村井茂市ト云フ人デアル、此議長ノ下二一月
  十八日ノ午後一時頃開會ヲ致シマシタ所ガ、三十六名ノ
  市會議員ノ中デ、議長ヲ入レテ十七名ヨリ集ラナカッタノデ
  アル、ンコデ議員ガ定數ニ充テマセヌカラ一旦休憩ヲ命ジテ
  サウシテ二一十十分分市長選擧ヲ行フカラ出頭シロト云フ
  コトノ催告狀ヲ發シマシテ、三時五分ニ開會スルコトニナッタ
  ノデアル、但シ催告狀ハ議員全體ニ達シテ居リマセヌデ、一
  部ノ議員ハ受取ッテ居ナイ人モアルノデアル、所ガ此村井議
  長ハ會議ヲ始メルニ當ッテ、今日ノ時代ニ於テ、吾ミノ想像
  モ及バナイ所ノ亂暴ナル遣方ヲヤッテ居ルノデアル、ソレハ多
  數ノ無賴漢ヲ議場ニ配置ヲ致シマシテ、反對派ノ議員ヲ脅
  迫シテ、咄嗟ノ間ニ其選擧ヲ終了セント試ミタノデアル、今
  少シ詳シク其模樣ヲ申シマスナラバ、議長席ノ左ノ方ノ側ニ
  ハ暴漢ガ五名許リ椅子ヲ列ベテ控エテ居ル、其議長ノ右ノ
  方ニハ、卽チ議場ノ入口ニハ、或ル俠客ノ一人ガ乾兒ノ數
  名ノ者ヲ其處ニ立タシテ、サウシテ議場ハ、全ク是等ノ暴漢
  ガ守衞ノ役ヲ勤メタト云フヤウナ觀ヲ呈シテ居ッタノデアリ
  マス、又議場ノ中ニハ「マント」ヲ著テ居ル者モアレバ、或ハ襟
  卷ヲシテ居ル者モアル、帽子ヲ目深ニ被ッテ居ル者モアル、是
  等ハ何レモ土地ニ於テ蛇蝎ノ如ク扱ハレテ居ル所ノ、所謂
  無賴ノ徒デアル、サウシテ又議員ノ一人ノ席ニハ暴漢ガ議
  員ト同ジヤウニ議席ニ坐ッテ居ッタト云フヤウナ事實モゴザイ
  マス、其議員ノ一人ノ名前モ今日ハ明カニナッテ居リマシテ、
  久住久藏ト云フ人ノ議案デアル、斯樣ナル光景ノ下ニ議長
  ハ開會ヲ宣告致シマシタカラ、是ニ於テ反對派ノ議員ノ一
  人ハ立ッテ、議場ノ秩序、議事ノ進行ニ關シテ發言ヲ求メマ
  シタケレドモ、議長ハ更ニ之ニ耳ヲ假サナイ更ニ之ニ耳ヲ假
  サズシテ、突然ト投票ヲスベシト云フコトヲ宣告致シタノデ
  アル、此議長ガ投票ヲセヨト云フコトノ宣告ノ聲ニ應ジテ、
  公友會ニ屬スル市會議員ノ十六名ハ、直チニ自分ノ席ヲ離
  レテ議長ノ前ニアッタ所ノ-演壇ノ上ニアリシ投票函ニ投
  票セントシタノデゴザイマス、是ニ於テ議長ノ横暴ヲ訴ヘル
  議員ガアリ、又餘リニ亂暴ナ遣方デアッタ爲メニ、傍聽席カラ
  飛込ンデ其不法ヲ詰ル者モアル、又先程申シマシタ入口ノ
  方ノ側ニ居ッタ所ノ俠客ハ、議長ノ後ノ方ニ立ッテ、自分ノ乾
  兒ヲ指揮シテ居ルト云フヤウナ有樣デアル、斯樣ナル有樣ノ
  下ニ議場ハ一大混亂ヲ來シテ、議員ノ一團ト暴漢ノ一團
  トハ大格闘ヲ演ズルコトニナリ、遂ニ市長-助役モ勿論、
  議長スラモ其席ニ留マルコトガ出來ナクシテ、遂ニ退席ヲ致
  シタト云フヤウナ有樣デアッタノデゴザイマス、此時ニ市長反
  對ノ十二名ノ議員モ亦同時ニ退場致シタ、此混雜ノ紛レニ
  於テ、公友會ニ屬スル十七名、議長ヲ除イテノ十六名ノ人
  人ハ投票ヲ致シタノデアリマスガ、併シ今申ス通リ先ヅ開會
  ヲ宣告ヲ致シテ、直チニ議場ガ大混亂ニナッテ格闘マデモシ
  テ、殆ド收拾スルコト能ハザル狀態ニナッタノデゴザイマスカ
  ラ、十六名ノ議員ノ人〓ハ其席ニ於テ投票ヲスルト云フコト
  0
  ハ、無論出來ナイノデアル、筆ヲ執ッテ投票ヲ認メルト云フヤ
  ウナ餘裕モゴザマセズ、又事實ニ於テ左樣ナ事ハ出來ナカッ
  タノデアル、ソレニモ拘ラズ十六名ノ者ハ其混雜ニ紛レテ、投
  票函ニ投票ヲ投入致シタノデアル、惟フニ是ハ議場內ニ於
  テノ投票ハ絕對ニ出來ナイノデゴザイマスカラ、或ハ議事ノ
  始マル前ニ、投票用紙ヲ議席ノ空席ニ配付セシメタ事實ガ
  ゴザイマスカラ、此用紙ヲ窃ニ控室ヘ持ッテ參ッテ書イタモノ
  カ、然ラザレバ同一ノ他ノ用紙ヲ以テ議場外ニ於テ豫ノ書
  イテ、サウシテ之ヲ懷ニ入レ、若クハ袖ニ入レカシテ持ッテ參ッ
  テ投入ヲシタト云フノガ、事實デアルト認メル外ハ無イノデ
  アリマス、德島辯護士團體ノ調査シタ結果モ亦斯樣ニナッテ
  居リマス、又今申ス通リノ狀況デゴザイマスカラ、議長自ラ
  モ投票用紙ニ投票ヲ認メルト云フコトノ餘裕モ時間モ無
  イ、又議長ガ他ノ副議長若クハ其他ノ議員ヲシテ其職務ヲ
  代理セシメタト云フコトハ、絕對ニ無イノデゴザイマシテ、此
  事ハ僞造ノ嫌疑ノアル議事錄ニモ書イテナイノデゴザイマス
  カラ、確ニ間違ナイ事實デアル、而モ議長村井茂市ノ投票モ
  一票トシテ計算サレテ、ソレヲ合シテ卽チ十七票ト云フコト
  ニ依ッテ、一阪俊太郞ガ當選ヲ致シタト云フコトニナッテ居ル
  ノデアル、左樣ナ事實デアル以上ハ、議長ノ村井茂市ノ一票
  ハ、或ハ後カラ入レタモノデアルカ、若クハ其以前ニ入レテア〃
  タモノデハナイカト云フ疑ヲ容レザルヲ得ヌ、何トナレバ投票
  函ヲ檢メタト云フ事實ハ絕對ニ無イノデアル、議事錄ニハ
  投票函ヲ檢メタト書イテゴザイマスケレドモ、事實ニ於テハ
  投票函ヲ檢メズ、議長自ラ筆ヲ執ル時間モ餘裕モ無クシテ、
  而モ其一票ガ加ッテ居ルトスレバ、此投票ハ眞正ナル投票ト
  認メルコトヲ得ヌノデアリマス··
  〔「簡單々々」「言論ヲ壓迫スルナ」ト呼フ者アリ〕

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• 024・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=24

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• 025・野田文一郎

  ○野田文一郞君(續)　而シテ議場ハ今申ス如キ大混亂
  ニ陷ッテ、又復議員ノ定數ニ充タザルニ至ッタノデゴザイマスカ
  ラ、議長ハ控室ニ在リシ議員ニ對シテ、會議ヲ繼續スルカラ
  著席ヲセヨト云フコトノ口頭ノ催告ヲ致シマシタケレドモ、併
  ナガラ此時ハ、反對派ノ議員ノ多數ハ、最早控室ニモ居ラ
  ナカッタノデアルカラ、其催告ハ缺席議員ニ對シテ屆イテ居
  ナイノデアル、斯樣ナル有樣デアッテ、議員ノ定數ニ充タザル
  ニ拘ラズ、矢張議事ヲ進行ヲ致シタト云フコトハ、是ハ明カ
  ニ市制ノ規定ニ反スルモノト謂ハナケレバナラヌ、以上申ス
  如キ大要ノ事實デゴザイマスカラ、此市長選擧ノ投票ハ、法
  律上絕對ニ無效ナリト謂ハザルヲ得ヌノデアル、之ヲ區別ヲ
  シテ要點ヲ申シマスナラバ、凡ソ議場ハ「神聖ニシテ犯スベカ
  ラザルモノデアッテ、其議場ノ中ニ暴漢ヲ配置シ、暴力ヲ以テ
  議事ヲ進行セントスルガ如キ事ハ明カニ違法デアル、斯ル
  有樣ノ下ニ進行シタル議事ハ、絕對ニ無效ナリト謂ハナ
  ケレバナラヌ、更ニ又市長選擧モ矢張市制ニ於テハ、市會議
  員等ノ選舉ノ規定ニ準用ヲ致シテ居リマスカラ、此選擧ノ
  方則ニ依フテ考ヘテ見マスナラバ、申ス迄モナク選擧ハ自由
  公正ト云フコトヲ尊重スルノデアッテ、選擧ノ自由公正ハ、總
  テノ選舉ニ通スル大原則デアル、此暴漢ノ壓迫ヲ受ケ、若ク
  ハ議員ト暴漢トガ議場ニ於テ格闘ヲスルガ如キ有樣ノ下ニ
  市長ヲ選舉致シタノハ、選擧ノ例カラ見マシテモ、是ハ明カ
  ニ無效ナリト謂ハナケレバナラヌ、又第二ニハ市制ノ第五十
  五條ニ於テ、二十五條ト二十八條トヲ準用致シテ居リマス
  ガ、二十五條ニ依レバ、投票用紙ハ市長ノ定ムル所ニ依フテ、
  一定ノ式ヲ用井ヨト云フコトニナッテ居ル、而シテ二十八條
  ニ依レバ、成規ノ用紙ヲ用井ザル投票ハ無效ナリト云フコト
  ニナッテ居リマスカラ、衆議院議員選擧法ノ如ク、投票用紙
  ヲ議員ニ交付セヨト云フコトノ明文ハゴザイマセヌガ、此二
  十八條二十五條等ノ精神ヨリ解釋ヲ致シマスルナラバ、投
  票用紙ハ須ラク一定ノ式ノ物ヲ、議員自身ニ之ヲ交付シナ
  ケレバナラヌト云フコトハ、理論上當然ナ事デアルト私ハ信
  ズル、然ルニ議員ノ未ダ著席ヲセザルニ方ッテ、空席ニソレヲ
  置クト云フガ如キ事ハ、此選擧ニ關スル法律ノ精神ヨリ考
  ヘテ、明カニ是ハ違法ナリト云フコトニ論結ヲシナケレバナラ
  ヌモノト信ジマス、(拍手)又第三ニハ矢張市制ノ五十五條
  ノ準用ニ依テテ、第二十五條ノ五項ニ依ルト云フト、是ハ明
  カニ選擧場、卽チ議場ニ於テハ選舉人、卽チ市會議員ガ自
  ラ記名シナケレバナラヌト云フコトニナッジデ居ル、自ラ書カナ
  ケレバナラヌノデアル、選擧場外卽チ議場ノ外ニ於テ十六名
  ノ議員ガ作製シタル投票ハ、是ハ明カニ無效デアルト云フコ
  トハ一點ノ疑ガ無イト思フ、ソレカラ前ニ申ス如ク、議長ノ
  一票ト云フモノハ是ハ違法ノモノデアッテ、眞正ナル投票ト云
  フコトニハ認メラレナイ、而モ此一票ガ加ヲテ居ルト云フコト
  ハ、是亦選擧ノ無效ナルコトヲ認ムベキ一ツノ理由デアルト
  信ジマス、第五ニハ出席議員ガ法定數ニ充タズ、而モ適法
  ノ催告ヲセズシテ選擧ヲ終了致シタノデアル、是ダケノ理由
  ニ依リマシテ、此市長ノ選擧ハ當然無效タルベキモノデアル
  ト信ズル、殊ニ最モ不都合ナル事ハ、此會議ノ經過ヲ證明
  スベキ最モ大切ナル、議事錄デアル此議事錄ノ樞要ナル點
  ハ、僞造ノ嫌疑ガアルノデアリマス、此事モ辯護士團ノ調査
  ノ結果判ッタノデアッテ、或ハ最初ニ二十九名ノ議員ガ出席
  ヲ致シタト書イテ居ルケレドモ、其中一人ハ現ニ其時ニ市役
  所ニモ來テ居ナカッタト一云フコトノ事實ガアル、其名前モ判ッ
  テ居リマス、デ其外此會議ノ眞正ニ行ハレタノデアルカ、其
  選擧ハ有效ナリヤ否ヤヲ判定スベキ根據トナル所ノ議事錄
  ハ數個所ニ於テ、數個ノ點ニ於テ僞造ノ嫌疑ガアルノデアツ
  テ、現ニ德島ノ辯護士團ハ之ヲ告發スルト云フコトノ手續
  ヲシタト云フコトモ聞イテ居リマスガ、併ナガラ此事ハ新聞
  ニモ出テ居リマセヌカラ、實際告發ガ有ヲタカ無カッタカ知リ
  マセヌガ、司法官憲ハ必ズヤ其調査ヲシテ、速ニ責任ノ所在
  ヲ明カニスル筈デアルニ拘ラズ、今尙ホ其事ガ行ハレテ居ル
  ト云フコトヲ聞キマセヌ、斯ノ如クニシテ一面ニ於テハ市民
  ノ憤激ヲ招キ、サウシテ德島市ニ於ケル(「簡單」ト呼フ者ア
  リ)七新聞ノ記者モ新聞記者大會ヲ開イテ、此市長選擧ハ
  甚ダ失當デアルカラ、(「簡單」「簡單」「謹聽」ト呼フ者アリ)
  市長ニシテ當選セシメザルヤウニ、更ニ進ンデ市會議員全體
  ノ辭職ヲシナケレバ、德島市政ノ圓滿ナ働ハ、ドウシテモ出
  來ナイト云フコトノ決議ヲ致シテ居ルノデアリマス
  〔「少數意見デスカソレハ」「負腹癒セハ困ルヨ」「裁判
  所ガアルヂヤナイカ」「默レ」「大問題ダ能ク聽ケ」「貴
  樣ニ判ルカ」「何ダ俊文」「氣違」「醉拂」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=25

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• 026・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜肅ニ·

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• 027・野田文一郎

  ○野田文一郞君(續)　更ニ最モ痛心ニ堪ヘナイ事ハ此問
  題ハ德島市ニ於ケル一市長ノ選擧デゴザイマスルガ、斯ノ如
  キ亂暴ナ事ヲ致シタ爲メニ、遂ニ此事ヲ聖慮ニ訴ヘント試
  ミルニ至ッタノデアル、客月十五日ニ松方内大臣ニ對シテ此
  事ノ書面ヲ發シテ、聖慮ニ訴ヘムトスルト云フヤウナ事マデ
  モ致シテ居ルノデアッテ、問題ハ一德島ノ問題デゴザイマスル
  ケレドモ、此事ノ爲メニ市民激憤ノ結果、遂ニ聖慮ニ訴ヘン
  トスルニ至ッテハ、是ハ一重大ナル問題ト謂ハナケレバナラヌ
  (「ノウ〓〓」「能ク聽ケ」「餘リ馬鹿々々シイ」ト呼フ者アリ)而
  シテ此公友會ハ嚮ニ申ス如ク政友會ノ別働隊デアッテ、中
  央ニマデ勢力ヲ持ツモノデハアリマセヌケレドモ、併ナガラ現
  政府竝ニ與黨ノ遣方ニ如可ナル事ト雖モ、此議會ニ絕對
  多數ヲ擁シテ居レバ、ドンナ亂暴ナ事ヲ致シテモ、(「ノウ
  ノウ」)如何ニ非立憲ナ事ガアッテモ、(拍手起ル、「何ガ亂暴
  ダ」ト呼フ者アリ)必ズ是ハ通ルモノデアルト云フ、左樣ノ
  範ヲ中央ニ於テ··
  〔「貴樣ノ演說ガ亂暴ダ」「五尺ノ男子ガ泣言ヲ言フ
  ナ」ト呼フ者アリ議場騒然〕

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• 028・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ·

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• 029・野田文一郎

  ○野田文一郞君(續)　私ハ德島ニ對シテ何等ノ利害ノ關
  係モ無イノデアリマス、(「御雇ダ」ト呼フ者アリ)ケレドモ問
  題ハ頗ル重大デアッテ、德島ニ於ケル問題ハ所謂一支流デ
  アル、未流デアリマス、源泉ハ政友會ノ中央ニアルノデアル、
  (拍手起ル)此濁リノ源泉ガアルガ爲メニ、(「ノウ〓〓」「馬鹿」
  ト呼フ者アリ)此末流ニ至ルマデモ斯ノ如キ有樣デアッテ、
  (「出鱘目ヲ言フナ」ト呼フ者アリ)東京ニ於ケル醜怪ナル事
  件ノ如キ其支流ノ一ツデアル、(拍手起ル「貴樣ノ演說ガ濁ツ
  テ居ル」「演說料ハ幾ラダ五圓カ十圓カ、辯護士モ廉イモノ
  ダ」「德島ノ少數意見カ德島ノ少數意見ヲ持ッテ來テハ困
  ルヨ」「モット好イ問題ヲ持ッテ來イ」「裁判所ガアルヂヤナイカ」
  ト呼フ者アリ)裁判所ノ働ハ、必ヤ近キ將來ニ起リマシテ、此
  市長ノ問題ハ必ズ解決スルト信ジマスガ、併ナガラ議場ニ於
  テ質問ヲ致スノハ、裁判所ノ判決ヲ待ツノ必要ハ無イノデ
  アリマス
  〔此時發言スル者多ク議場騒然〕

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• 030・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜肅ニ··

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• 031・野田文一郎

  ○野田文一郞君(續)　德島ノ市長ノ問題デアルケレドモ、
  斯ノ如キ事ヲ看過スルト云フコトニナルト、全國ノ自治機關
  ハ之ガ爲メニ根柢ヨリ破壞セラレルト云フ虞ガアルノデア
  ル、(「ノウ〓〓」)而シテ斯ノ如キ事ガ段々ト傳播ヲスルト云
  フコトニナレバ、(「ソンナ事ハナイ」ト呼フ者アリ)是ハ天下ノ
  民心ニ惡シキ影響ヲ及ボスト云フコトハ、ドウシテモ免ルベ
  カラザル事デアル、シレ故ニ吾ミハ此問題ハ、一德島ノ問題
  デアルケレドモ、內務大臣ハ特ニ德島ノ縣市政ノ表裏ノ事
  情ニ精通ヲシテ居ル人デアッテ、監督者トシテ斯ノ如キ問題
  ハ早クニ之ヲ調査シテ適當ノ解決ヲスベキデアルニ拘ラズ、
  今尙ホ何等ノ調査ヲ進行シタト云フコトヲ聞カヌ、未ダ結
  末ガ著キマセヌガ爲メニ、私ハ爰ニ内務大臣ハ、果シテ此問
  題ニ就テ監督ノ責任ヲ完クシタト信ズルノデアルカ、又第二
  ト致シマシテハ、嚮ニ申ス如キ數箇ノ理由ニ依リテ、此選擧
  ノ無效デアルト信ズルノデアルカ、内務大臣ハ之ニ對シテ如
  何ナル見解ヲ持ッテ居ラルヽノデアルカ、而シテ將來之ニ對
  シテ如何ナル處置ヲ執ラントスルノデアルカ、此事ヲ第二ト
  シテ聽キ、第三ニハ此議事錄ノ記載ガ眞正ニ反イテ居ルト
  云フコトハ、確實ナル事實ト信ジマスガ、之ニ對シテ政府ハ
  如何ナル處置ヲ執ラントスルノデアルカ、此事ヲ質問スルノ
  デアリマス、願クバ一地方ノ問題ナリトシテ冷淡ナル取扱ヲ
  セズシテ、殊ニ屢、申ス如ク、緣故アル德島ニ於ケル內務大臣
  ノ問題デゴザイマスルカラ、深切明快ナル答辯ヲ與ヘラレン
  コトヲ希望致シマス(拍手起ル、「答辯ノ必要ナシ」ト呼フ者
  アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=31

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• 032・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　床次內務大臣
  〔國務大臣床次竹二郞君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=32

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• 033・床次竹二郎

  ○國務大臣(床次竹二郞君)　御答致シマスガ、只今ノ事
  件ハ調査中デゴザイマス、ソレデ縷々申述ベラレタ事ハ何レ
  モ處分濟ノ上ニ御議論然ルベキコトヽ考ヘマス(拍手起ル)
  (「判ッタカ」「顏色ガアルカ」ト呼フ者アリ)

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• 034・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　官吏ト政黨トガ權力ヲ濫用シ官
  規ヲ紊リ民心ヲ害ヒ自治ヲ破壞シタル事實ニ關スル質
  問-(山道襄一君提出)
  二官吏ト政黨員トカ權力ヲ濫用シ官規
  ヲ紊リ民心ヲ害ヒ自治ヲ破壞シタル
  事實ニ關スル質問(山道襄一君提出)
  官吏ト政黨員トカ權力ヲ濫用シ官規ヲ紊リ民心ヲ害
  ヒ自治ヲ破壞シタル事實ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十年二月二十八日
  提出者山道裏、
  贊成者河野廣中
  外二十九人
  官吏ト政黨員トカ權力ヲ濫用シ官規ヲ紊リ民心ヲ
  害ヒ自治ヲ破壞シタル事實ニ關スル質問主意書
  -大分縣ニ於ケル縣當局者カ監督權ヲ濫用シ自治
  團體ヲ壓迫シテ政友會員"ノ增加ニ努メタ〓ルコトハ天
  下公知ノ事實ナルカ其ノ代表的事實ノ一トシテハ同
  縣宇佐郡津房材村會ハ大正九年一月十二日村長
  選擧ヲ行ヒ現任村長尾立維忠多數ヲ得テ當選シタル
  ヲ以テ翌十三日認可申請書ヲ宇佐郡長ニ提出シ尾
  足維孝ハ大分縣知事ヲ訪ヒ右村長認可ノ速ナラムコ
  トヲ述ヘタルニ知事ハ當然ノコトナルヲ以テ書類到達
  次第其ノ手續ヲ了スヘシト答ヘタルニ月餘ヲ經過スル
  モ認可セラレサルヲ以テ村會議員江藤健太郞外五名
  ハ請願書ヲ提出シタリ然ルニ三月二十三日ニ至リ知
  事ハ維孝ニ對シ津房村長認可ノ件ハ郡長ヨリ不認可
  ノ申請アリタルヲ以テセリ故ニ維孝ハ維忠ハ永ク村長
  タルノ意思ナケレハ今回ハ認可サレタシト云ヒシニ知
  事ハ再ヒ曰ク然ラハ維忠ヲシテ豫メ辭表ヲ作製セシメ
  郡長ニ預ヶ置カシメ得ルカト云ヒシカハ維孝之ヲ保證
  スヘキヲ告ケ知事亦然ラハ郡長ヲ呼出シテ認可方取
  計ヒ本月中ニ回答スヘシト約シ別レタル四月一日知
  事ハ維孝ニ對シ仲裁不調ニ付辭退ヲ望ム旨ヲ電報シ
  越エテ五月十二日再ヒ維孝ニ電報ヲ以テ維忠ノ辭退
  ヲ希望スル旨云ヒ來リタルヲ以テ維孝ハ返電ヲ發シ
  維忠辭退セスト明答セシカハ五月二十五日大分縣知
  事ハ右不認可ノ命令ヲ發シタリ
  宇佐郡役所ハ津房村長尾立維忠就任不認可ノ命
  令書ヲ津房村役場ニ送致セス直ニ郡書記中井常之
  助ヲ津房村長職務管掌ニ任命シ且速ニ津房村長選
  舉ヲ行フヘシト命令シタリ常之助ハ津房村ニ赴任シ
  此ノ旨ヲ助役遠島藤十郞ニ傳ヘタル儘病氣ニ罹リ缺
  勤セルヲ以テ藤十郞ハ町村制ノ規定ニ依リ村長職
  務管掌代理トシテ內務大臣宛村長就職認可申請書
  ヲ提出シタルニ郡役所ハ之ヲ却下シ六月六日更ニ中
  島馨ヲ村長職務管掌トシテ任命シ津房村會ニ選擧
  會ヲ開カシメ其ノ間警察官ト政友會員トカ協力シテ憲
  政會所屬村會議員ヲ誘惑シ又ハ暴力ニ訴ヘテ脅迫シ
  タルノ事實アリ遂ニ政友會員大坪重軌ヲ村長ニ當
  選セシメ縣當局ハ直ニ就職認可ノ手續ヲ爲シタルカ
  之レ實ニ監督權ヲ濫用シテ地方自治ヲ紊リ黨〓擴張
  ノ爲官權ヲ濫用スルモノニ非サルカ
  二熊本縣ニ於ケル政友會ノ黨勢擴張ニ對シ縣當局
  者カ權勢ヲ濫用シテ之ヲ援助セルノ事實ハ各方面ニ
  涉リテ殆ト亂暴狼藉ヲ極ム今其ノ顯著ナル事實ヲ列
  擧セム
  (イ)阿蘇郡小峯村會ハ村長選擧ヲ行ヒ倉岡友彥當
  選シ大正九年三月認可中請ヲ爲シ就職ニ至ル迄
  六十日間政友會員ト駐在巡查ト協力シテ倉岡ニ
  シテ若政友會ニ入黨セサレハ就職認可ナキコトヲ脅
  迫シ遂ニ入會內諾ヲ得テ認可シタリ
  (ロ)飽託郡川口村會ハ大正八年七月二十九日中島
  仙太郞ヲ助役ニ選任シ翌日認可申請ヲ爲シタルニ
  容易ニ認可ヲ與〕ヘス其ノ間ニ於テ政友會員中村
  辰彥及林田寧熊等ハ頻ニ中島ヲ誘感シ之カ爲認
  可ヲ五箇月間延引セリ
  (ハ)上益城郡中島村村長選擧當日卽チ大正九年十
  二月二十五日憲政會所屬村會議員ニ對シ警察署
  ハ同日午前九時迄ニ出頭スヘシト命シ午後四時ニ
  至ル迄之ヲ留メ置キ遂ニ會議ニ出席スルヲ得サラ
  シメタル面已ナラス同郡長ハ郡書記三名ヲ中島村
  ニ派遣シ選擧運動ヲ爲サシメタルノ事實アリ
  (ニ)上益城郡名連川村村會ハ大正八年十一月二十
  四日滿場一致ヲ以テ憲政會員堀萬八ヲ村長ニ選
  擧シ卽日認可申請ヲ爲シタルモ五箇月間認可ヲ與
  ヘスシテ一方政友會員濱口町長ハ堀ニ對シ若政友
  會ニ入會七ハ直ニ認可アルヘシトノ其ノ筋ノ有力者
  ヨリノ直話ナリトテ百方入會ノ勸誘ニ努メタルカ堀
  ノ意志堅クシテ其ノ效ナカリシナリ
  (ホ)菊池郡原水村助役辭職セルヲ以テ後任選定ニ當
  リ大正九年九月十一日三島弟雄當選シタルカ當
  局者ハ容易ニ就任ヲ許可セスシテ其ノ間惡竦手段
  ヲ弄シテ政友會ニ入會セシメムトセシカハ三島ハ知
  事及政友會員等ノ行爲ヲ不快トシ十一月十二日
  認可アリタルモ就職ヲ辭退セリ
  (ヘ)天草郡富津村村會ハ村長選舉ヲ行ヒ多數ヲ以
  テ山下龜造當選シ大正八年十二月一日認可ヲ申
  請セルモ餘リニ認可遲延セルヲ以テ村會議員ハ事
  務ノ澁滯ヲ恐レ當局ニ對シ再三懇請シタルモ決セ
  ス遂ニ山下ハ當局ノ措置ニ憤慨シテ自ラ當選ヲ辭
  退セリ之レ大正九年三月二十八日ナリ之ニ乘シテ
  第一監督官廳ハ郡書記ヲ富津村ニ派シテ山下再
  選ノ不可ヲ吹聽セシメタルカ大正九年五月二十五
  日ノ選擧會ニ於テ山下ハ九點ノ中八點ノ多數ヲ以
  セラレタルニ郡書記ハ村會議員ニ對シ再選ノ不可
  テ再選ヲ說キ且政友會員增田禎次ヲ選擧スヘク選
  擧ノ遣リ直シヲシテハ如何ト說キ山下ニ對シテ亦直接
  辭退ヲ勸告シタリト云ワ斯クテ認可申請中種々ノ
  手段ヲ以テ政友會入會ヲ勸誘シ甚シキハ外米購入
  分配等ニ付不正事件アルカ如ク吹聽セシメ警察官
  ノ活動ヲ名トシテ認可ヲ遷延シツツアリ
  (ト)八代郡太田〓村村會ハ小田三郞八ヲ收入役
  ニ推薦シ、大正九年九月認可ノ申請ヲ爲シタル
  モ七十日間之ヲ許可セス其ノ間政友會ノ西三圭
  ヲシテ小田ニ對シ政友會ニ入會セサレハ就職認
  可セラレサルヘシト會迫シタルヲ以テ小田ハ認可
  ヲ得ムトシテ政友會八會ノ口約ヲ與ヘタルニ果然
  三日目就職認可ヲ得タリ而シテ政友會ハ其ノ約
  ヲ履行シ新聞ニ廣告スヘシト迫リタルヲ以テ朴直
  ナル小田ハ憲政會ニ對スル從來ノ關係ヨリシテ
  苦煩ノ結果遂ニ精神ニ異狀ヲ來シ辭職ノ已ムナキ
  ニ至レリ
  (チ)八代郡太田〓村助役片岡伊吉ニ對シ惡竦手段
  ヲ以テ辭職セシメ政友會ハ井村某ヲ後任トナサム
  トセルモ憲政會片岡伊吉再選セラレタルヲ以テ未
  タ當局ハ認可ヲ與ヘス
  (リ)八代郡八千把村助役本田嘉市ノ認可申請書ハ
  大正九年十一月二十六日提出セラレ殊ニ本田ハ
  前助役滿期ノ結果再選セラレタルモノニシテ何等
  缺點ナキニ拘ラス憲政會員ナルノ故ヲ以テ認可セ
  ス
  (ヌ)八代郡下松求麻村ニテハ村長西岡義憲(政友會
  員)カ刑事被告事件ニテ失格シタルヲ以テ村會議
  員多數ハ選舉會ノ開會ヲ要求セルモ助役岩橋與
  一郞(政友會員)ハ之ヲ拒ミ更ニ大正八年十月岩
  橋亦滿期トナルヤ八代郡長ハ政友會員佐伯義方
  ト稱スル同村ト無關係ナル人物ヲ臨時村長代理ニ
  任命シ今日ニ至ル迄二箇年餘ニ及ヘリ
  三熊本縣ニ於ケル政友會員增加ノ手段ハ行政監督
  權ノ濫用ニ止マラス〓育土木勸業等各種ノ方面ニ及
  ヘルカ其ノ二三ヲ指摘スレハ
  (イ)中學校建設ニ際シ縣當局者ハ縣會ノ決議ヲ無視
  シ原案執行ヲ爲シテ先ツ之ヲ利用シテ上益城郡御
  船町民ノ政友會入會勸告ノ具ニ供シタレトモ其ノ
  效少カリシカハ甲佐町民ヲ誘惑シ更ニ轉シテ菊池
  郡大津町民ヲ勸誘シツヽアリト云フ
  (ロ)飽託郡河內道路豫算二萬三千圓ハ既ニ縣道存
  在セルニ拘ラス衆議院議員選擧ノ際全村ノ投票ヲ
  政友會派ニ投スヘシトノ條件ニテ道路取廣ケヲ約
  シ大正十年度豫算トシテ計上セラレタルモノナリト
  云フ
  (ハ)字土郡松合道路豫算八千圓ハ松合村民ノ政友
  會入會ヲ條件トシテ大正十年度豫算ニ計上シタリ
  ト云フ
  (ニ)以上ノ諸費ハ縣會ニ於テ否決セラレタルモノナリ
  然ルニ知事ハ内務部長ヲ上京セシメ遂ニ原案ヲ執
  行セリ
  (ホ)葦北郡吉尾村ニテハ村有林ヲ以テ學校ヲ建築セ
  ルニ用材多量盜難ニ罹リタルコトヲ發見シ大正九
  年九月一日村民大會ヲ開キ約五十名宛十組ニ分
  レ搜索ノ結果附近山間、溪谷、鐵道橋渠ノ下及建
  築委員ニシテ區長タル宮崎某ノ小屋二階ヨリ多量
  ノ建築用材ヲ發見シタル爲檢事局ニ告訴シタルモ
  爾來五箇月何等ノ解決ヲ見ス右ハ村長カ政友會
  員ニシテ此ノ事件發展セムカ同村政友會全滅ノ恐
  アル爲ナリト云フ
  (ヘ)阿蘇郡朝陽村ニテハ村長ヲ始メ一級公民ノ租稅
  滯納三年ヲ越ユルモノアリ公金費消ノ嫌疑アリ學
  校建築費ノ決算ヲ爲ス能ハサル等ノ不始末アルモ
  村長カ政友會員ニシテ黨勢擴張ニ熱心ナルカ爲當
  局ハ之ヲ放任セリト云フ
  四島根縣ニ於ケル政友會ノ黨勢擴張運動亦各方面ニ
  涉リ露骨ニ行ハル殊ニ驚クヘキ一事アリ大正九年十二
  月總理大臣官邸ニ於ケル豫算內示會ニ提示セラレタ
  ル大正十年度豫算綱要中內務省所管臨時部出雲
  大社境內擴張整理費五萬圓ノ計上セラレアル備考欄
  ニ依レハ總額三十一萬九千百零九圓ニシテ六箇年
  繼續費ナルカ此ノ豫算ハ出雲大社ノ地元タル杵築町
  竝附近數箇村ノ重立者ニハ數箇月前ヨリ明示セラレ
  今期議會ニ必ス提出セラルヘキヲ以テ大社境内整理
  ヲ條件トシテ政友會ニ入會スヘシト島根縣政友會支
  部幹部ヨリ勸誘セラレ町村民ノ重立者ハ皆之ニ應シ
  タリト云フ
  五鐵道敷設ヲ好餌トシテ政友會カ黨員ヲ募集シツツ
  アルコトハ天下之ヲ知ラサルモノナシ之ヲ列擧スルコト
  ハ其ノ煩ニ耐ユル所ニ非サレトモ爲ニ地方民心ヲ惡化
  シ地方財界ヲ混亂セシメ自治ノ圓滿ヲ破壞セル二三
  ノ實例ヲ擧クレハ
  (イ)巖手縣一ノ關町ヨリ千厩町ヲ經テ宮城縣氣仙沼
  町ニ至ル所謂磐仙鐵道ハ寺內內閣當時ニ於テ大
  正十年度ヨリ起工ニ著手スヘキコト決定セルモノナ
  ルニ千厩町地方ハ非政友ノ氣勢旺盛ナルヲ以テ之
  ヲ破壞スヘク特ニ線路ヲ變更シテ政友會所屬代議
  士某ノ居住地卽チ束磐井郡北部ヲ通過スルコトノ
  計劃ヲ立テ一方ニ於テハ千厩町民ニ對シ若線路ノ
  變更ヲ防カムト欲セハ政友會ニ入會スヘシ而モ其
  ノ保證トシテ憲政會員タル千葉町長ヲ辭職セシム
  ヘシト脅迫シ千葉町長ハ辭職シタレトモ線路何レ
  ニ決スヘシトモ思ハレス黨勢擴張ノ口實ニ過キサル
  ヲ思ハシムルモノアリ地方民心頗ル不安ニ襲ハレツ
  ツアリト云フ
  (ロ)八戶久慈間ノ線路卽チ靑森縣八戶驛ヨリ巖手
  縣久慈町ニ至ル鐵道ヲ敷設スルヲ條件トシテ由來
  非政友會員多數ナル同地方民ヲ政友會ニ入會セ
  シメ縣會議員村田矢太郞(憲政會)先ツ其ノ犧牲
  ニ供セラレタリト云フ
  (ハ)熊本縣宮地線ノ立野驛ヨリ分岐シテ高森町ニ達
  スル鐵道線路ノ敷設ヲ條件トシテ沿線十一箇村民
  ハ大正八年縣會議員選擧前政友會ニ入黨セシメ
  ラレタルモノナリト云フ
  (ニ)玖摩郡人吉町ヨリ多良木町ニ至ル輕便鐵道線
  ハ私設出願アリタルヲ却下シテ官設ノ計劃アルコト
  ヲ公表シ沿道村民ニ對シ交換條件トシテ政友會入
  會ヲ勸誘セリト云フ
  (ホ)熊本縣ヨリ宮崎縣延岡町ニ至ル鐵道及熊本縣
  菊池郡ヨリ阿蘇郡ノ一部ヲ經テ大分縣ニ通スル鐵
  道線路ノ如キハ數囘測量技師ヲ派遣シテ地方ヲ徘
  個セシメ測量隊ノ後方ニ政友會員附隨シテ沿道人
  民ニ政友會入會ヲ勸誘セリト云フ
  (ヘ)廣島縣三原町ヨリ吳市ニ至ル所謂海岸鐵道ハ緊
  急ノ線路ニシテ又有利ナル鐵道タリ爲ニ鐵道省ハ
  之ヲ豫定線ニ編入シ衆議院ハ已ニ之ニ同意ヲ與ヘ
  寧口今年度迄提案ナカリシヲ怪ム程ナルニ今更白々
  シクモ之ヲ利用シテ若沿線五千人ノ政友會入會
  者ヲ得ラレスムハ右鐵道敷設ハ困難ナルヘシト脅威
  シ地方民ハ長イ物ニ卷カレロト嘲笑シツツ入黨書
  ニ捺印セリト云フ
  (ト)北海道天鹽國留萌ヨリ天鹽ニ至ル所謂沿岸鐵
  道敷設ハ地方民ノ最希望スル線路ナルカ同國ニテ
  五千人ノ政友會入會アルニ非スムハ成功シ難シト
  吹聽シ町村長ハ政友會入黨書調印ノ爲村費ヲ以
  テ管內出張ヲ爲シ爲ニ問題ヲ惹起シタル而已ナラ
  ス各町村ハ鐵道期成同盟會ナルモノヲ組織シ各數
  百乃至數千圓ヲ醵出シ支出明瞭ナラサルモノアリ
  ト云フ
  以上ハ全國ニ於ケル事實ノ千萬分ノ一ヲ指摘シタルニ
  過キサレトモ而モ政府ハ全然之ヲ否認シ去ルコトハ不可
  能ナルヘシ卽チ之レ全ク權力ノ濫用ニシテ官規ノ紊亂ナ
  リ民心ノ攪亂ナリ自治ノ破壊ナリ政府ハ果シテ如何ナ
  ル態度ヲ以テ之ニ處セムトスルカ
  右及質問候也
  〔山道襄一君登壇、拍手起ル「簡單」「要領ヲ言ヒ給
  へ」「速記者泣カセ」「冗辯ハ却テ效ヲ爲サズ」「會期
  餘ス所十日間簡單ヲ望ミマス」「默レ默ッテ聽ケ」ト
  呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=34

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• 035・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　質問サレル方ニ申シマスガ、本日ハ
  質問サレル方モ隨分多ウゴザイマシテ、殊ニ同ジ派ノ方ニ限
  ラレテ居リマスカラ成ベグ、内輪同士時間ノ節儉アランコト
  ヲ望ミマス
  〔「賛成」「議長公平」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=35

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• 036・山道襄一

  ○山道襄一君　私ノ質問セント致シマスル事ハ全國ニ亙ク
  テ居リマシテ、而モ事實ヲ一々列擧シマスレバ、之ヲ文章語
  デ申シマスレバ數限リナイコトデアリマス、併ナガラ只今議
  場ヨリ誰方カノ御言葉モゴザイマシタ、殊ニ議長ノ御注意
  モゴザイマシタ、左ナクトモ私不肖ト雖モ本日會期ノ切迫
  致シテ居ル位ノコトハ心得テ居リマス、又多少ノ私ハ議場
  ノ德義心ヲ承知致シテ居リマス故ニ、努メテ簡單ニ申
  述ベル積リデアリマス、併ナガラ簡單ニ申述べルト申シマシ
  テモ、私ノ質問ノ趣旨ガ徹底致サナイヤウナコトデハ甚ダ困
  ルノデアリマス、又本日私ノ申述ベントシマスル事ハ、殊ニ政
  友會ノ御方ミニ取リマシテハ、御聽惡イ點ガ多々アラウト考
  ヘマス、故ニ若シソレガ爲メニ種々ナル批評ヲ御試ミニナル
  場合ニ於テ、若シ私ノ陳述ノ御妨ゲナサルヤウナコトガゴザ
  イマスレバ、隨テ私ハ其事實ヲ、幾ラノ時間ヲ要シテモ申述
  ベナケレバナラヌノデアリマス、故ニ私ヲシテ簡單ニ此事實
  ヲ陳述セシメ、質問セシメントスナラバ、先ヅ諸君モ靜ニ御聽
  取リ下サレンコトヲ、切ニ御願シテ置クノデアリマス、(拍手起
  ル)私ノ第一ニ御尋致シタイ事ハ、此官吏ト政黨員トガ權
  力ヲ濫用シ、官紀ヲ紊シ民心ヲ害ヒ、自治ヲ破壞シタル事
  實ノ第一ト致シマシテ、大分縣下ニ於ケル縣當局者ガ、監
  督權ヲ濫用致シテ、自治團體ヲ壓迫致シタト云フ事カラ申
  述ベタイ、是等ノ事實ハ幾多、アルノデアリマス、併ナガラ此
  中ニ於テノ、唯ダ一ツノ代表的ノ事實ヲ申述べタイノデアリ
  マス、而モ其事實ハ私ノ存ジテ居ル一事實ヲ述ベマスダケデ
  モ、此文書ダケノモノガゴザイマスガ、之ヲ私ハ努メテ簡單
  ニ申述べマスガ、大分縣ノ宇佐郡津房村ニ於キマスル村會
  ハ、大正九年一月十二日村長選擧ヲ行ヒマシタ、其時ニ滿
  期トナッテ居リマスル現任ノ村長デゴザイマシタ、尾立維忠
  君ヲ多數ヲ以テ推選致シタノデアリマス、然ルニ其翌日認
  可申請書ヲ提出致シタルニ拘ラズ、約百三十日間ニ亙リマ
  ス間、是ガ認可ヲセラルトモ認可ヲセラレヌトモ決セズシテ、
  放任セラレテアッタノミナラズ、此間ニ於キマシテ、內務大臣
  モ御承知デアリマセウガ、此尾立君ノ令兄ニ當ラルヽ尾立
  維孝君、最モ地位アル人デアリマシテ、錦鷄間祇候ヲ致シテ
  居ラレル人デアリマス、此紳士ナル所ノ、名譽アル地位ニ在
  ラレマス所ノ、此尾立維孝君ガ大分縣知事ヲ訪問セラレ
  テ、速ニ其認可アランコトヲ述ベラレタ際ニ於テハ、大分縣
  知事ハ何トソレニ答ヘテ居ルカト云ヘバ、適法ナル選擧ニ依ッ
  テ選擧セラレマシタ村長デアルカラ、直チニ申請書ノ到達次
  第認可スルノガ當然ナリト云フコトデ、其會談ヲ終ッテ歸ラ
  レマシタガ、其後ニ於テ依然トシテ其認可ガゴザイマセヌカ
  ラ、再ビ此尾立維孝君ガ知事ヲ訪問セラレマスト、意外ニモ
  知事ハ斯ノ如キ事ヲ言ッテ居ラレルノデアリマス、若シ君ガ
  令弟デアル所ノ維忠君ヲシテ、豫メ辭表ヲ作ッテ置カセ
  テ-村長ヲ辭スルト云フコトノ辭表ヲ作ッテ、之ヲ郡長ノ
  手許ニ預ケテ置カルヽナラバ、郡長ニ言ッテ此認可ノ出來ル
  ヤウニ取計ハウト云フ知事ノ話デア〔リマス、洵ニ驚入ッタ事
  デアリマス、豫メ村長ノ認可ヲスルニ當ッテ、辭表ヲ郡長ノ手
  許ニ差出シテ置クナラバ、其認可ヲ取計ッテヤルト云フ其當
  時ノ言葉ハ、認可ヲ取計ハウト云フヨリハ、寧口仲裁スルト
  云フヤウナ言葉ヲ以テ知事ガ言ッテ居ル、然ルニ斯樣ナ事
  ハ、到底兄弟ノ間柄ト雖モ出來ル事デハゴザイマセヌ、又當
  然斯樣ナ事ヲ爲スベキコトデハゴザイマセヌ、ソレ故ニ其儘
  ニシテ置キマシタ所ガ、其後大分縣知事ハ度〓此尾立維孝
  君ニ向ッテ、電報ヲ以テ調停ガ或ハ不能デアルトカ、或ハ斯
  樣ニ取計フヤウニナッタカラ、辭表ヲ出シテ置カルヽナラバ、何
  トカ方法ヲシテ見ヤウト云フヤウナコトヲ繰返シテ居ラレマ
  シタケレドモ、遂ニ其事ニ就テハ、尾立維孝君ハ名譽アリ地
  位アル人デアルカラ、斯樣ナ事ニハ無論關與セズシテ、其儘
  ニ放任シテ置キマシタ、所ガ遂ニ百三十幾日ヲ經過シテ、五
  月二十五日ニ不認可ノ命令ガ來タ、而モ其不認可ノ命令ハ
  役場ニ送達セズシテ、郡役所カラ直チニ其郡長ハ那書記中
  井某ヲ以テ、村長ノ職務管掌ニ任命致シテ津房村ニ赴カ
  シメタ、然ルニ其書記ガ病氣ノ爲メデゴザイマセウカ、一日モ
  出勤致サナイ、ソレ故ニ其當時ノ助役ハ町村制ノ命ズル所
  ニ從ッテ、内務大臣ニ向ッテ申請書ヲ出シマシタケレドモ、是
  亦郡役所ニ於テ阻止セラレテ、遂ニ何等ノ事ナシデ、其間ニ
  於テ郡役所ハ再ビ六月六日ニ、更ニ又中島某ナル者ヲ村
  長職務管掌ニ任命シマシテ、此津房村ノ村會ヲ開カシテ、
  村長選擧ヲ行ハシメタノデアル、其際ニ於ケル警察官ノ行
  動及政友會員ト稱スル人達ノ行動、是等ノ行動ガ、其憲政
  會ノ所屬村會ノ議員ニ對シテ非常ナル誘感ヲ試ミ、甚シキ
  ハ暴力ニ訴ヘテ以テ、威壓ヲ加へ、壓迫ヲ加ヘタニモ拘ラズ、
  警察官ハ之ニ對シテ、何等ノ保護ヲ憲政會ノ村會議員ニ
  加ヘナカッタト云フ事實ハ、此處ニアル此文書中ニ、十分其
  事實ノ調査ガ記錄セラレテハゴザイマスガ、是ハ略スト致シ
  マス、斯樣ナ事實ガアリマシテ、遂ニ此政友會ノ大坪重軌ナ
  ル人ガ村長ニ當選セラレマスト云フト、直チニ其認可ガ出來
  タノデアリマス、洵ニ此間ノ事情ニ就キマシテハ、吾ミハ不可
  解ニ堪ヘナイノデアリマス、ノミナラズ之ガ爲メニ、此大分
  縣民心ヲ惡化シテ居ル此代表的ノ事實ニ等シキモノガ、各
  郡ニ互フテ幾多存在致シテ居ルコトハ、自治ノ將來ニ對シテ
  非常ニ憂慮ニ堪ヘナイノデアリマス、是ガ私ノ第一ノ質問デ
  アリマス、其次ニ於キマシテハ、諸君ハ旣ニ度ミ御聞ノ如ク
  デアリマス、御承知ノ通リデアリマス、殊ニ全國中ニ於テモ、
  地方官ガ權力ヲ濫用致シマシテ、地方自治ノ紊亂ヲ致シテ
  居ル上ニ於テ、最モ甚シイト云ハレテ居ルノハ熊本縣デアリ
  マス、此熊本縣ニ於ケル選擧干涉等ニ就テハ、曾テ內務大
  臣ハ縣知事ニ向ッテ、或ハ郡長ニ向ッテ、相當ナル戒飭ヲ加
  ヘマシタコトガアル位、有名トル所ノモノデアリマス、自己ノ
  政府ノ下ニ於テ、自己ノ其政府ノ下ニ於テ行レタ選擧ニ對
  シテサヘ斯樣ナ事ヲセラレタ、幾多ノ驚クベキ事實ノ存在致
  シテ居ルコトハ、恐ラク內務當局モ御否認ナサルコトハナイ
  ト思ヒマス、更ニ私ハ此直接地方自治ノ實體ニ渉リマシテ
  ノ不德ナル事、各郡ニ涉ル代表的ノ事實ノミヲ陳述致シテ、
  御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、先ヅ阿蘇郡小峰村カラ申
  シマス、此阿蘇郡小峰村ニ村長選擧ヲ行ヒ、倉岡友彥ナル
  人ガ大正九年三月ニ村長ニ當選ヲ致シマシタノデ、認可ノ
  申請ヲ致シマシタ、然ルニ認可就職致シマスマデニ六十日
  ヲ費シタ、此六十日ノ間ニ於テ、政友會員ト稱スル人ト駐
  在所ノ巡査トガ協力シテ、此村長ニ當選シマシ夕倉岡氏ニ
  對シテ、政友會ニ入黨シナケレバ、如何ニシテモ村長ノ認可
  ハ出來ナイト云フコトヲ以テ盛ニ脅迫シマシテ、辛ウシテ政
  友會ニ入ルト云フ內諾ヲ與ヘテ直チニ認可サレタ、六十日
  掛ッテ認可ヲサレタノデアリマス、次ニ飽託郡ニ於ケル川口
  村ノ村會ハ、大正八年七月二十九日中島仙太郞氏ヲ助
  役ニ推薦シ、其認可申請ヲ致シマシタニ拘ラズ、中と認可ヲ
  得ラレナイ、其間ニ於テ政友會ニ屬シテ居ラレマスル中村辰
  彥氏及村田寧熊氏等ガ、頻リニ中島氏ヲ誘惑シタケレドモ、
  中島氏ガ應ジナイノデ、五箇月餘リヲ經テモ、認可ガ容易ニ
  來ナカッタト云フ事實ガアルノデアリマス、更ニ上益城郡ニ於
  キマシテ、中島村ノ選擧當日ニ於キマシテ、卽チ此日ハ大正
  九年十二月二十五日デアリマス、此選擧當日ニ當ッテ、土
  地ノ警察署ハ憲政會ニ屬シマスル一名ノ村會議員ニ對シ
  テ、午前九時ニ警察ニ出頭スベキコトヲ命ジテ置キナガラ、
  午後四時ニ至ルマデ一向ニ其取調ヲ致サナイ、之ガ爲メニ
  遂ニ此一名ノ村會議員ハ、當日ノ選擧會ニ加ハルコトガ出
  來ナカッタ、ソレガ爲メニ一名ノ多數ヲ得テ居ル憲政會議員
  ハ敗北シテ、之ガ爲メニ政友會ノ人ガ當選セラルヽコトニ相
  成ッテ居ル、ソレノミナラズ其間ニ郡書記三名ヲ中島村ニ派
  遣シ、此郡書記等ガ盛ニ選擧運動ナドヲシタ事實ガ明ニ
  ナッテ居ルノデアリマス、又上益城郡ニ於キマシテハ、名連川
  村會ガ大正八年十一月二十四日ニ、滿場一致ヲ以テ憲
  政會ノ堀萬八氏ヲ村長ニ推薦致シマシタ、然ルニ五箇月ノ
  間認可ヲ與ヘズニ置キマシテ、其間ニ於テ濱口町ノ町長ハ、
  其筋卽チ縣或ハ郡ノ官憲ノ、有力ナル人カラノ直話デアル
  ト云ッテ、君ガ政友會ニ入會シナケレバ、決シテ村長ノ認
  可ヲセラルヽコトハナイト言ウテ誘惑シ脅迫シ、村長
  ノ認可ヲシナカッタノデアリマス、菊池村原水村ノ助役
  ガ辭職セラレマシタ、其後任選定ニ當ッテ、是モ大正九
  年九月十一日デアリマスガ、三島弟雄ト云フ人ガ當
  選セラレマシタ、一然ルニ當局ハ之ニ認可ヲ與ヘナイ、其
  間ニ於テモ非常ナル惡辣手段ガ行ハレマシテ、遂ニ三
  島氏ハ、熊本縣知事及政友會ニ所屬セラルヽ人〓ノ行爲
  ガ不快デアルトシテ、氏ハ自ラ其就職ヲ拒絕シテ居リマス、
  更ニ大草郡ニ於キマシテハ、最モ篤クベキ事ガアリマスガ、此
  天草郡富津村ノ村會ハ、多數ヲ以テ山下電造ナル人ヲ大
  正八年十二月一日ニ村長ニ選擧致シマシタ、然ルニ其認可
  ガゴザイマセヌカラ、遂ニ山下ナル人ハ斯樣ナ當局者ノ下ニ、
  假令認可アリト雖モ就職スルヲ欲セズトシテ辭退ヲシタ、是
  ガ辭退ヲスルト、更ニ第一監督官廳ハ其村ニ郡書記ヲ派遣
  シテ、盛ニ山下氏ヲ再選シテハナラヌト云フコトヲ吹聽シタ、
  ソレノミナラズ其後ノ選擧、卽チ大正九年五月十五日ノ選
  擧會ニ於テ、再ビ山下氏ガ選舉セラレマシタ、其當時派遣
  セラレタ郡書記ハ村會議員ニ對シテ、其再選ノ不可ヲ說ク
  ノミナラズ、更ニ政友會員ノ增田禎二ト云フ人ヲ選舉セヨ
  ト言ッテ盛ニ勸誘シテ居ル、斯ノ如キ事ヲ致シマシテ、果シテ
  完全ニ地方自治ヲ發達セシムルコトガ出來マスカ、殊ニ八
  代郡太田〓村村會ハ、小田三郞八ト云フ人ヲ收入役ニ推
  選シタ、然ルニ此人ハ矢張同樣ナル事ニ依ッテ、當選シナガ
  ラ、認可ヲ得ラレナイ、認可ヲシナイ間ニ於テ、盛ニ政友會ニ
  入レバ許スト云フコトヲ言ハレマシテ、此人ハ名譽ノ爲メニ
  政友會ニ入ルコトヲ內約ヲシタ、併ナガラ其內諾ヲスルト、
  直チニ三日目ニ何十日間モ認可ニナラナカッタモノガ認可サ
  レタ、政友會ニ入ルト云フ內諾ヲ與ヘタ爲メニ、三日目ニ就
  職ノ認可ヲ得タノデアリマス、就職ノ認可ハ得タケレドモ、小
  田ナル人ハ一面ニ於テハ政友會ノ諸君ニ向ッテ、入會ノ內諾
  ヲ與へ就職ノ詔可ヲ得夕義理ガアリ、一面ニ於テハ從來憲
  政會員トシテ行動シ來ッタ義理ガアリ、其兩義理ニ絡マレ
  テ、氣ノ毒ニモ小田ナル人ハ遂ニ精神上ニ異狀ヲ來シ精神
  病者トナッテ、其職ヲ退カナケレバナラヌヤウナ憫レナ立場ニ
  立至ッタノデアリマス、八代郡ノ八千把村ノ助役本田嘉市
  ト云フ人ノ認可申請ハ、大正九年十一月二十六日ニ提出
  サレテ居ル、而モ本田氏ハ前助役滿期ノ結果再選セラレマシ
  タ者デ、何等缺點ナキニ拘ラズ、此人ガ憲政會員デアルト云
  フ爲メニ認可サレヌト云フノハ、不可思議千萬ナ事デアリマ
  ス、斯樣ナ事實ヲ一々數へ擧ゲマスレバ、數限リナイ事デア
  リマス、熊本縣下ノ各郡ニ涉ル代表的ノ一事實ノミヲ陳述
  シタニ過ギマセヌケレドモ、斯樣ナ事實ハ熊本縣下ノミナラ
  ズ、全國各府縣各町村ニ於テ行ハレテ居ルノデアリマス、更
  ニ又熊本縣下ニ於テ驚クベキ事ハ、此行政監督權ノ濫用ニ
  就キマシテハ、以上村長助役及收入役等ノ認可不認可ノ
  問題ヨリモ、更ニ進ンデ驚クベキ事ハ、〓育ニ關シ、土木ニ關
  シ、勸業其他ノ方面ニ關シテ、所謂監督權其他ノ權力ヲ濫
  用シタ事實ガ幾多アリマス、之ニ就キマシテモ二三ノ事實ヲ
  擧ゲテ置カナケレバナラヌ、殊ニ内務次官ハ熊本縣ノ出身
  デ、〓土ノ事ハ十分御承知ト思ヒマス、先年宇土中學校ヲ
  建設スルノ議ガ纏リマシテ、ソレヲ宇土ニ置クカ否ヤト云フ
  コトニ就テ、宇土町民ガ全部擧ッテ政友會ニ入ラヌケレバ、
  他ノ地方ニ置クト云フヤウナ威迫ヲ試ミテ、何者ガ使嗾シ
  タカ知リマセヌガ、斯様ナ威迫ヲ試ミテ、宇土町民ヲシテ心
  ニモナキ入會セシメテ居リマス、其後昨年縣會ニ於テ決定
  致シマシタ、新シキ縣立中學校設置ニ關シマシテモ、縣會ハ
  土地買收費ノミヲ認メテ、他ノ費用ヲ認メナカッタト云フコ
  トニ就キマシテモ、縣當局者ハ總テ原案執行ヲ致シタ、而モ
  此原案執行ニ就テハ、宇土町民ニ對シテ脅迫シテ入會ヲ强
  イタ通リ、上益城郡御船町民ニ對シ、政友會入會勸告ノ具
  ニ供シテ居ル、然ルニ其效果入會者ガ少カッタカラ、御船町
  ニ中學校ヲ置クト言ッタケレドモ、其入會スル會員ノ少カリ
  シ爲メニ、更ニ再ビ轉ジテ甲佐町民ヲ誘惑サレク、併ナガラ
  甲佐町ニ於テモ十分ナル效果ガ現ハレナカッタ爲メニ、更ニ
  轉ジテ菊地郡ノ大津町民ヲ勸誘サレテ居ルノデアリマス、
  中學校ノ設置モ、地方民ガ政府會ニ入ルカ入ラヌカニ依ッ
  テ議ガ定マルト云フコトハ、實ニ由々シキ怪事デアルト信ズ
  ルノデアリマス、又飽託郡ノ河內道路ハ、豫算二万三千圓
  デ縣道ガアルニ拘ラス、地方民ノ申ス所ニ依リマスレバ、是ハ
  政友會派ニ投票ヲスルト云フコトニ依ッテ提案サレル、卽チ
  投票ヲスルナラバ道路ノ取擴ヲシテヤル、大正十年度ノ豫
  算ニ計上シヤウト云フ約束ノ下ニ出來タト云フコトデアリ
  マス、縣會ガ多數ヲ以テ否決シタニモ拘ラズ、此原案ヲ執行
  セラレタノデアリマス、宇土郡ノ河合道路ノ豫算ノ八千圓
  ハ、矢張河合村民ノ政友會入會ヲ條件トシテ計上サレタト
  云フコトハ、地方民ノ公言シテ居ル、所デアリマス、更ニ又葦
  北郡ノ吉尾村ニ村有林ヲ以テ學校ヲ建設シタ、其木材ガ
  紛失シタノデ、昨年九月一日ニ村民大會ヲ開イテ、相當ナ
  大紛擾ヲ來シマシタ結果、其材木ノ或者ノ家ニ隱マレテアッ
  タト云フコトガ發見サレマシタガ、五箇月モ經過シテ居ルニ
  拘ラズ、今日迄何等之ニ對スル處置モ無イト一云フコトハ、土
  地ノ政友會ノ功勞者ニ累ヲ及ボス爲メニ、其儘抛ッテ置カ
  ルヽト云フコトヲ明カニ地方民ハ言ッテ居リマス、之ニ對シテ
  政府ハ如何ナル考ヲ有ッテ居ラレマスカ、殊ニ阿蘇郡朝陽村
  ニ於テ、村長以下一級公民ノ租稅ノ滯納ガ三年ヲ超ユルノ
  ガアル、公金消費ノ嫌疑ガアル、學校建築費ノ決算ヲ出スコ
  トガ出來ナイト云フヤウナ不始末ガアルニ拘ラズ、依然トシ
  テ何等ノ監督權ガ行使セラレザルハ何故カ、卽チ是ハ村長
  ガ政友會員デ、黨勢擴張ニ功勞ガアッタ爲メデアルト云フコ
  トヲ地方民ハ一般ニ言ッテ居ル、斯クノ如クニシテ政友會ニ
  入ッテサヘ居レバ如何樣ナ失錯事實モ等閑ニ付シテ置カル
  ルト云フコトデアルナラバ、地方ノ民心ニ對シテ、自治破壞
  及惡化上由々シキ何物カヲ與ヘルコトトナル、之ニ對シテ政
  府ハ何等ノ處置ヲ執ラレナイノデアルカ、更ニ私ハ諸君ト共
  ニ最モ憂フベキ悲シムベキ一事ヲ、一爰ニ質問シナケレバナラ
  ヌノデアリマス、卽ヲ此事實ハ島根縣ニ於ケル黨勢擴張ニ
  關シテ行ハレタル事ノ一項デアリマス、其一項ハ實ニ言フニ
  堪ヘザル事デアリマス、彼ノ出雲大社ニ關係シマス國庫支
  出ノ費用ヲ利用シテ、黨勢擴張ノ具ニ供セラレタ一事デア
  リマス、政府ハ昨年十二月ニ於テ總理大臣ノ官邸ニ於テ、貴
  衆兩院議員ヲ御招ニナッテ、初メテ大正十年度豫算ノ內示
  ヲサレタ、然ルニ拘ラズ內務省所官臨時部出雲大社境內
  擴張整理費五万圓ガ計上[サレテアル、其備考欄ニ依レバ、
  總額三十一万九千百九圓ト云フ六箇年繼續費デアリマ
  スガ、此費用ガ出雲大社ノ地許デアル杵築町、竝ニ其附近
  數箇村ノ重立ッタ育志ニハ、既ニ數箇月前ヨリ明示セラレ
  テアッタ、貴衆兩院議員ニ內元セラレタノハ十二月デ、出雲
  大社ノ附近ノ者ニ對シテハ六箇月以前ニ之ヲ明示サレテ
  居ル、而モ此地方ノ重立。夕者ガ政友會ニ入會ヲスルナラバ
  必ズ大正十年度ノ豫算ニ此費用ヲ繰入レルト云フコトノ
  條件ノ下ニ入會ヲ强ヒラレマシタ遂ニ此地方ノ人間ハ土
  地ノ發展ノ事デモゴザイマスシ、神社ニ關スル事デアルカラ
  ト云フノデ、何等ノ政治的意思ナクシテ、政友會ニ入會ヲ餘
  儀ナクサレテ居ルト云フ事實ガアルノデアリマス、(「ソンナ事
  ハ無イ」ト呼フ者アリ)斯樣ナ事ニ就キマシテハ、諸君ト共ニ
  非常ナル謹嚴ノ態度ヲ以テ考ヘナケレバナリマセヌ、斯樣
  ナ事ハ普通ナル單ナル事實トハ事柄ヲ異ニ致シテ居リマ
  ス、殊ニ私ハ此點ニ於テ、內務大臣ノ明確ナル御答辯ヲ要求
  致スノデアリマス、更ニ私ハ最後ニ鐵道敷設ニ關シマスル事
  ニ就テ、卽チ此鐵道敷設ヲ餌ト致シテ黨勢ノ擴張ヲシ、而シ
  テ官吏ガ之ニ相伴ッテ、種々ナル不都合ナ行爲ヲ爲シテ居ル
  ト云フ事ニ就テ質問セネバナラヌ、是モ全國ニ涉リマスルガ、
  時間ノ都合上僅ニ數箇ノ事實ヲ質問致スニ止メタイノデア
  リマス、巖手縣ノ一ノ關町カラ、宮城縣ノ氣仙沼町ニ至リマ
  スル鐵道、是ハ御承知ノ如ク寺內內閣ノ當時ニ於キマシテ、
  大正十年度ヨリ起工ニ著手スルコトニ決定致シテ居〃タノ
  デアリマス、然ルニ其中間ニ在リマス所ノ千厩町ノ地方ハ、
  御承知ノ如ク由來政友會ニ反對スル人ガ多數ヲ占メテ
  居ル所デアリマス、ンレ故ニ此地方ノ非政友ノ氣勢ヲ破
  壞スル爲メニ、先ヅ此政友會所屬ノ代議士ノ或方ノ地方
  ヲ通ルヤウニ致ス、詰リ東磐井郡ノ北部ノ方ヲ通過スル
  ヤウニ致スト云フ運動ガ起リ、一方ニ於キマシテハ此千厩
  町民ニ對シテ、若シ線路ヲ千厩町ヲ通ルヤウニシテ貰ハ
  ウ、卽チ此決定線變更ノ運動ヲ防ガントスルナラバ、政友會
  ニ入會シナケレバナラヌ、其政友會ニ地方民ガ入會スル條
  件トシテハ、先ツ第一憲政會ノ會員デアッテ、千厩町ノ町長
  ヲ致シテ居リマス、千葉君ヲ辭職セシムルニ非サレバ、到底
  其目的ヲ貫徹スルコトガ出來ナイ、ト言ッテ脅迫サレタコト
  デアル、爲ニ千葉君ハ多年此町ノ興望ヲ擔ッタ、非常ナ名望
  家デゴザイマスニ拘ラズ、自分ガ憲。政會員デアッテ町長デア
  ルガ爲メニ、地方ノ發展ヲ阻碍セラレテハ相成ラヌト云フノ
  デ、千葉君ハ全ク地方ノ爲メニ永年ノ間輿望ヲ負ウテ、町村
  ニ盡シテ居ル功勞者デアルニ拘ラズ、其犧牲ト相成ッテ政友
  會希望通リ辭職シタト云フ事實ガアルノデアル、然ルニ今日
  ハ線路ハ東磐井郡ノ北部ヲ通ズルヤウニナルカ、千厩町ヲ
  通ルヤウニナルカ今ニ至ルマデ何方ニニナルカ分リマセヌガ爲
  メニ、地方ノ民心ニ非常ナ不安ノ念ヲ與ヘテ居ルト云フ事
  實ガアルノデアリマス、又靑森縣ノ八戶カラ巖手縣ノ久慈
  町ニ至ル鐵道線路、此地方モ依然トシテ非政友ノ熱ノ熾
  ンナ所デアリマス、之ニ對シテ矢張此線路ヲ利用シテ、地方
  民ガ政友會ニ入ラナケレバ、鐵道ハ著ケテ貫ヘナイ政友會ヘ
  入リサヘスレバ、鐵道ノ敷設ガ出來ルト云フコトデ、眞先ニ
  憲政會ニ屬シテ居リマシタ縣會議員ノ村田矢太郞君ガ、其
  犧牲ニ供セラレタト云フコトデアリマス、又熊本縣ノ宮地線
  ノ立野カラ岐レマシテ、高森町ニ達スル鐵道線路ノ敷設ヲ
  條件ト致シテ、十一箇町村民ガ大正八年縣會議員ノ選擧
  ノ際ニ、政友會ニ入黨セシメラレタト云フノハ、私ガ言フマデ
  モナク何人モ是ハ承知シテ居ル事デアリマス、更ニ又熊本縣
  ノ玖摩郡人吉町カラ多良木町ニ至ル輕便鐵道ハ、私設ノ
  出願ガアリマシタニモ拘ラズ、之ヲ却下シテ官設ノ計畫ヲ公
  表セラレタ、是ハ洵ニ結構デゴザイマスガ、其公表セラレルト
  同時ニ、沿道ノ村民ニ對シテ交換條件トシテ、政友會ニ八
  ラナケレバナラヌト云フコトヲ勸誘シテ、若シ入ラヌケレバ此
  鐵道ハドウナルカ分ラヌト云フヤウナ脅威ヲ受ケツヽアル
  ノデアリマス、更ニ又熊本縣カラ宮崎縣ノ延岡町ニ至リマ
  スル鐵道及熊本縣ノ菊池郡カラ阿蘇郡ノ一部ヲ經テ大分
  縣ニ通ジマス所ノ鐵道線路ノ如キモノハ、數回測量技師ヲ
  派遣シテ地方ヲ徘徊セシメタ、其測量技師ガ旗ヲ持ッテ、西
  ニ東ニ驅ケ歩ルイテ居リマス、其後トカラ政友會員ガ附隨
  シテ步ルイテ、陰ニ陽ニ黨勢ノ擴張ヲスル、斯ンナ事ヲ繰返
  シテ入會ノ勸誘ヲシテ居ラレマス、此事ニ就テハ私ハ曾テ委
  員會ニ於テ斯樣ナ事實ノ質問ヲ致シタ、其當時今ノ內務
  大臣ハ鐵道院總裁ヲ兼ネテ居ラレマシタカラ、私ノ質問シ
  タ事ハ御承知デアリマセウガ、當時ノ副總裁今ノ石丸次官
  ハ、委員會ニ於テ何ト答ヘラレタカト云ヘバ、斯樣ナ事ヲシ
  タコトハ、是マデノ內閣ノ時ニモ隨分アルノデアルト云フノデ
  アル、而モ事實ハ否認シナカッタ、卽チ如何ニモ是マデモアッタ
  カラ、今日モ以然トシテ之ヲ致シテモ差支ナイト云フヤウデア
  ル、此事實ハ明カニ承認セラレタヤウデゴザイマスガ、政府ハ
  如何ナル不都合ナ事デモ、前ノ內閣ニ其事例アリトスルナ
  ラバ之ニ倣フト云フヤウナ御決心デ、斯樣ナ事ヲ奬勵シテ居
  ラレルノデアルカ、否ヤト云フコトガ聽キタイノデアリマス(「愚
  問々々」ト呼フ者アリ)更ニ私ハ廣島縣ノ三原町カラ呉ニ至
  リマス、所謂海岸鐵道ニ就テモ、亦同樣ナル御尋ヲシナケレ
  パナラヌ、此事ニ就キマシテハ、政友會ノ望月君カラ既ニ請
  願ヲセラレテ、其速成ノ請願ガ採擇セラレタ、又井上角五郞
  君其他ノ方ミカラハ速成ノ建議案ガ提出セラレテ、今ヤ委
  員付託トナルデアラウト云フヤウナ狀況ニナッテ居ル、恐クハ
  今日ソレガ議セラレヤウト考ヘマス、此鐵道ノ如キニ就キマ
  シテハ、旣ニ只今ノ鐵道次官石丸君ハ、今カラ十四五年前
  ニ技師タリシ時代此地方ニ出張セラレテ、サウシテ實地ノ調
  査ヲセラレタノデアリマス、其當時ニモ盛ニ黨勢擴張ノ具ニ
  此鐵道ガ使ハレ、而モ其當時出張シタ今ノ石丸鐵道次官
  ヲ、招待スル爲メニ使ヒマシタカ何カ知リマセヌガ、免ニ角沿
  道各町村ハ一万餘圓ノ負債ヲ惹起シタ、今カラ十四五年
  前ノ一万餘圓ノ金トー云フモノハ、今日ニ於テハ多額ノ金ニ
  上ッテ居リマス、最近ニ至リマスマデ、此鐵道速成ノ爲メニ、
  消費シタ金ニ就テハ、各町村ガ其借財ノ處分ニ非常ニ持餘
  シテ居ッタト云フヤウナ、洵ニ氣ノ毒ナ地方民ニ對シテハ迷
  惑ヲ掛ケタ所ノ事例ガアリマス、然ルニ此鐵道ガ長ク其儘
  ニサレ、漸ク今期議會ノ問題トナリ、殊ニ政府ノ鐵道豫定
  網ノ一ニ入ッテ居ル、ソレハ結構デアリ、當然デゴザイマスガ、
  此間ニ於テ私ハ洵ニ驚クベキ黨略行爲ナルモノガアルノヲ
  悲シムノデアリマス、私ハ之ニ對スル澤山ノ手紙ヲ其關係村
  民ヨリ得テ居リマス、其中ニ於テ二三ノモノヲ爰ニ申上ゲテ
  御參考ニ供シテ置カナケレバナラヌ、此手紙ハ單ニ此鐵道
  ノミニ關係致サヌ事デアリマスカラ、私ハ申上ゲテ置キタイ、
  其一ハ斯フ書イテアル、「海岸鐵道」卽チ此鐵道デアリマス
  「ノ運動ニ對シ政友會ノ入黨强要ニモ恐入候斯ク申ス小
  生モ捺印强要セラレ無意味ノ調印致シ候之レテ鐵道カ敷
  設サルレハ萬々歲ニ御座候致ス者ハ致サルヽト或ル漢書ニ
  テ少年時代ニ誦セラレタル事ヲ思ヒ出サレ候」更ニ他ノ一
  書面ニハ「舊臘十二月ヨリ今日ニ至ル政友會ヲ中心トスル
  黨略運動ハ實ニ言語ニ絕シタル大シタルモノニ御座候彼ノ
  三原吳間ニ於ケル沿岸鐵道問題ニ付テハ沿岸各町村ノ有
  志ノ大會合其交換條件トシテ鐵道敷設ト最低三千五百
  名ノ政友入會者ノ穫得ニモ已ニ其數モヨリ以上ニ達シ此
  三四日前各町村ヨリ鐵道敷設請願者上京セシ次第ニ御
  坐候其情報ハ先刻御承知ノ事ニ可有之候」ト書イタノガ
  アリマス、又他ノ書面ノ中ニハ「賀茂郡ト豊田郡ニテハ三原
  呉間ノ沿岸鐵道ヲ敷設シ遣ルトテ政友會入黨ヲ勸誘シ多
  數ノ人當者有之候而シテ入黨者ノ多クハ政友會ノ政策ニ
  賛成セサルモ政友會ニ入當セハ鐵道ヲ敷設シ貰ハレヽハ入
  黨スト云フ者多ク小生ハ彼等ノ政治思想ノ薄弱ナルニ驚
  入候」斯ウ云フ事ガ書イテアリマスガ、是等ハ諸君ハ何ト思
  召ニナリマスカ、是ハ既ニ政友會ニ入ッテ居ル人ノ手紙デア
  ル、又此中ハ私ガ其人ヲ擧ゲテ申上ゲレバ、其人ハ恐クハ何
  等ノ處分ヲ受ケル-復讐セラレルノ虞ガゴザイマスカラ、其
  人ノ爲メニ名前ハ申上ゲマセヌガ、決シテ憲政會員ノ書イ
  夕手紙デハナイノデアリマス、是ハ地方ニ於テモ地位アリ、地
  方ノ公ノ職ヲ有ッテ居リマス人達ノ書イタ手紙デアリマス、
  爰ニ私ノ讀ミマシタノハ、僅ニ二三通デゴザイマスガ、實ニ夥
  シク斯樣ナ手紙ニ接シテ居ルノデアリマス、斯樣ナ最モ必要
  ナ鐵道、架ケナケレバナラヌ急ヲ要スル鐵道、卽ナ此三原カ
  ラ吳ニ至リマス沿岸鐵道、此緊要ナ國家ノ爲メニ、地方ノ
  爲メニ、地方民ノ爲メニ必要ナル鐵道ガ、政友會ニ何千人
  以上入レバ敷設シテヤルガ、入ランケレバ敷設シテヤラヌト
  云フヤウナ事ニ相成リマシタナラバ、天下ノ事何トナリマス、
  將來ノ國民ノ幸福思ヤルベキモノガアラウト考ヘルガ爲メニ
  此質問ヲ致スノデアリマス、(拍手)更ニモウ一ツヲ附加ヘテ
  置キマス、是ハ實地ノ問題デゴザイマスカラ、モウ一ツ附加ヘ
  テ置キマス、北海道ノ天鹽國ノ留萌カラ天鹽ニ至リマスル
  沿岸鐵道ハ、地方民ノ最モ此敷設ヲ希望致シテ居ル所デ
  アリマス、然ルニ此所ニモ五千人以上ノ政友會入黨ガ天鹽
  一國デアルナラバ、此沿岸鐵道ハ著ケテヤル、ツレデナケレバ
  著ケテヤラヌト言ハレルノデ、町村長ハソレガ爲メニ町村ノ
  公ノ費用ヲ以テ政友會ニ入黨者ヲ募集スル爲メニ、村民ノ
  調印ヲ求メテ步イタト云フノデ、或村デハ一昨年ノ九月デ
  スカ、其村ノ靑年會ノ決議ヲ以テ村長辭職ノ勸告ヲ受ケテ
  遂ニ其村ヲ逃出シタト云フ事實モアルノデアリマス、而モ其
  沿道ノ各町村ニ一万餘圓ノ金ヲ寄附サセテ、サウシテ其金
  ハドウシタカト云ヘバ、聞ク所ニ依レバ、是ハ私ノ聞キマシタ
  所ガ事實デナイコトヲ希望致シマスガ、何ダカ其一部分ハ委
  員ノ上京運動スル費用ニ使シタト云フコトデアリマスガ、其
  大部分ノ金ハ何所カノ火災ニ罹ッタ爲メニ寄附ヲセラレタ
  ト云フコトヲ聞イテ居リマス、又更ニ此鐵道ニ就キマシテハ
  憲政會ノ逸見氏-羽幌ニ居ル逸見某氏、是ハ憲政會支
  部ノ幹事ヲ致シテ居ッタ、主義ヲ一貫シ來ッタ人デアリマスガ
  此鐵道問題デ一昨年ノ九月上京ヲ致シテ當路ノ大官ニ
  會ッタ時ニ、其當路ノ大官ノ一人ハ、此逸見氏ガ役所ニ行ク
  ト、オ前ノヤウナ反對黨夕ル憲政會ノ會員ガ鐵道速成ノ運
  動ニ來テ、ソレデ吾ミガ其陳情ヲ聽クト思フカト言ッテ一言
  ニシテ、其室カラ追出サレテシマッタ、ソコデ此人ハ宿ニ立歸フ
  テ、或他ノ大官ニ賴ンデ、再ビ先キノ大官ニ紹介シテ貰ッテ、
  私ハ憲政會ヲ脫會スルカラ、此鐵道ハ速成シテ貰ヒタイト
  云フコトヲ申述べ、遂ニ其事ヲ二人ノ大官ノ前デ誓ッテ、サ
  ウシテ憲政會ヲ脫會シテ、此鐵道敷設速成ノ委員ニナッテ
  居ルトキノコトヲ、昨年ノ九月私ガ羽幌ニ參ッタ時ニ、演說
  會場デ其交涉〓末ヲ聞カサレ、地方人ノ苦衷ヲ訴ヘラレタ
  ノデアリマス、其人ガ憲政會ヲ脫會シタ理由ハ、其人ガ憲政
  會ニ居レバ大官ニ面會モ出來ナイ、又反對黨ノ者ガ行クタ
  ノデハ、鐵道ノ速成ノ請願モ出來ナイカラ、淚ヲ呑ンデ反對
  黨タル憲政會ヲ退イタト云フコトヲ私ニ告白シタ、其事ハ他
  ニモ聽イテ居ル人ガアリマス、以上ノ如キ事トヲ擧ゲマスレ
  バ數限リモナクアル、若シ文章ノ言葉ヲ以テ述ベマシタナラ
  バ、是ハ事實ノ千万分ノ一ニモ過ギナイ、數限リナイ中ノ一
  二ニ過ギマセヌト言ヒ得ルノデアリマス、斯ノ如キコトハ全ク
  政府ガ全然御否認ノ出來ナイ事實デアルト私ハ思フ、併ナ
  ガラ此事實ガ全部政府ノ說明ニ依ッテ、明カニ否認サレ得
  ルヤウナ的確ナル答辯ヲ得レバ、私ハ國家ノ爲メニ幸福デア
  ト
  ルト存ジマス、斯ノ如キ權力ノ濫用、官紀ノ紊亂、民心ノ攪
  亂、自治ノ破壞、之ニ對シテ政府ハ如何ナル考ヲ持ッテ居ル
  カ、以上ノ事ニ就テ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=36

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• 037・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　床次內務大臣
  〔國務大臣床次竹二郞君登壇、拍手〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=37

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• 038・床次竹二郎

  ○國務大臣(床次竹二郞君)　只今種々ノ事項ヲ擧ゲテ
  御尋デアリマシタガ、要スル所行政監督權ガ黨派ノ事情ノ
  爲メニ濫用セラレ、若クハ緩慢放任ニ流レテ居ルデハナイカ、
  斯ウ云フ事ニ歸著スルノデアリマス、(「其通リ」ト呼フ者ア
  リ)一々事實ニ就テ調査ヲ致シマシタガ、左樣ナ事ハアリマ
  セヌ、(「ヒヤ〓〓」)地方ニ於テハ地方ノ人〓ガ其立場ニ依ツ
  テ色ニ申スコトガアリマセウ、サリナガラ今私ノ調査シタ所デ
  ハ左樣ナ事ハゴザイマセヌ、是ハ爰ニ一々申上ゲルコトヲ省
  イテ、書面ニ致シテ御答スルコトニ致シマスガ、要ハ左樣デゴ
  ザイマス、殊ニ末段ニ至ッテ出雲大社境内整理ノ費用ヲ此
  年度ノ豫算ニ要求シテゴザイマス、之ガ恰モ黨派ノ爲メニ、
  若クハ一地方ノ人とノ利益ノ爲メニ要求サレテアルガ如ク
  ニ御尋デアリマシタガ、私ハ神社ノ尊嚴ヲ維持センガ爲メニ
  必要ナリト考ヘテ、其豫算ヲ要求致シタ次第デアリマス、
  (「ノウ〓〓」拍手)決シテ一部ノ人ノ利害ノ爲メニ、此豫算
  ヲ提出シテアル次第デハゴザイマセヌ(「詭辯々々」ト呼フ者
  アリ)ソレ故ニ-若シ詭辯ト云フ仰セガアリ、又一黨一派
  ノ爲メデアリ、若クハ一地方ノ爲メノミノ事カラ要求シテア
  ルモノナラバ、相當ノ御審議權ニ依ヶテ御處置アルコトヲ希
  望スルノデス、(拍手)地方ノ人とハ色〓申シマセウ、考ヘモ致
  シマセウ、併ナガラ私ト致シテハ、神社ノ尊嚴ヲ維持スルニ必
  要ナル事柄トシテ要求シテアル次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=38

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• 039・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　元田鐵道大臣
  〔國務大臣元田肇君登壇、拍手〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=39

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• 040・元田肇

  ○國務大臣(元田肇君)　鐵道關係ノ點ヲ私ヨリ御答致
  シマス、只今ノ御質問ノ趣意書ニ書イテアリマス第五項「イ」
  ヨリ「ホ」ニ至ル點デゴザイマス、此數線路ノ中ニ於キマシテ
  ハ、既ニ御協賛ヲ得テ工事ニ著手シテ居ルモノモゴザイマ
  ス、又工事ニ著手セントシツヽアルモノモアリマス、又マダ御
  協賛ヲ得テ居ラナイモノニ就キマシテハ、鐵道網ニ入レテ將
  來完成スベキ必要ノ線路ナリト認メテ、『敷設法ニ提案致シ
  テ居ル部分モアリマス、一一部分ハ既ニ協賛ヲ經タモノモアリ
  マス、或線路ニ於キマシテハ事實工事ニ著手スル前ニ、實測
  ニ於キマシテ水害其他ノ事ニ考慮致シマシテ、多少ノ比較
  線等ヲ調査致シテ居ルモノモアリマス、要スルニ既ニ協賛ヲ
  經テ確定致シテ居ル、若クハ鐵道網ニ之ヲ列擧スベキモノ
  ニシテ、既ニ御承認ヲ得得居ル線路デアルノデアル、之ニ就
  キマシテ政府ガ提案シタル所以ハ、決シテ一黨一派ノ爲メニ
  提案致シタノデハアリマセヌ、而シテ帝國議會上下兩院ガ
  之ヲ可決サレタノモ、一黨一派ノ爲メニ可決サレタモノトハ
  存ジマセス、卽チ政府提案ノ趣旨ノ如ク、國家交通機關ノ必
  要ナルヲ認メラレテ、採用セラレタコトヽ信ジテ居ルノデア
  リマス、隨テ是等ノ線路ニ就キマシテハ、或政黨ノ爲メニ提
  案シタトカ、或政黨ノ爲メニドウシタトカ云フヤウナコトハ、
  全ク眞相ニ違ックコトデアルト存ジマス、又此數線路「イ」カ
  ラ「ホ」ニ至ルマデノモノニ就キマシテ、地方ノ人民地方ノ政
  黨ノ黨員ガ、ドウデアル斯ウデアルト云フヤウナコトガ澤山記
  載シテアリマスガ、是ハ『政府ト致シマシテハ全然關係ガアリ
  マセヌカラ、ソレダケハ御承知ヲ願ッテ置キマス、地方ノ人民
  ガドウスル斯ウスルト云フコトハ、一々鐵道省デ監督ノ出來
  ルモノデハアリマセヌ、政府ニ於キマシテハ、公明正大ニ最善
  ノ線路ヲ成ベク至急ニ完成致シクイト云フ決心ヲ持ッテ居
  リマス、尙ホ只今大官ニ會ッタ所ガ云々ト云フ御話デアリマ
  シタ、何人デアルカ存ジマセヌガ、私ガ當局トナリマシテカラ
  政黨ノ反對ノ人デアルトカ何トカ云フノデ、面會ナドヲ謝絕
  シタ覺ハゴザイマセヌ、寧ロ吾〓ノ同志トシテ政黨ニ立ッテ居
  ル人ヨリハ、反對ノ地位ニ居ル御方ガ御訪問下サレバ、出來
  ルダケ丁寧深切ニ御意見ヲ承ルコトニ努メテ居ル積リデゴ
  ザイマス、又鐵道ノ線路ニ就キマシテ、或場合ニ於テハ一方
  ノ政黨ト他ノ政黨ノ爭ト云フコトニ就キマシテ、吾ミノ立場
  カラ見レバ反對ノ政黨-政黨關係ヲ申シマシテモ、正當
  ナル線路ト認メタモノハ、其方ニ許可スルコトニ決シタ例モ
  澤山ゴザイマス、デドウカ今後ニ於キマシテ、鐵道省ニ訪ネテ
  行ッテ見テモ、憲政會デアルカラ、國民黨デアルカラ、定メテ嫌
  ナ顏ヲシテ會ハヌデアラウト云フヤウナ御考ガアリマシタナラ
  バ、不肖ニ於テハ斷ジテサウ云フコトハアリマセヌカラ、ドウゾ
  御用ガゴザイマシタラバ、何時ナリトモ御出下サルヤウ、適當
  ノ御要求デアリマスレバ、ドナタノデモ容レマスカラ御出ヲ願
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=40

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• 041・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　次ニ田中武雄君提出第三質問、
  吉野小一郞君提出ノ第五ノ「質問ハ、何レモ政府ヨリ答辯
  ガアリマシタカラ、之ニ對シテ意見ノ御陳述ガゴザイマスナラ
  バ、次ノ本會ニ於テ之ヲ許ス。考デゴザイマス、第四ノ霞ヶ浦
  沿岸江戶崎入干拓ニ關スル質問、田中萬逸君-田中君
  ハ御出席ハアリマセヌカ-ンレデハ是ハ延期ニ決メマシタ、
  第六東京市及其ノ附近ニ於ケル颱風及海嘯ニ依ル水害
  防備ニ關スル質問、太田信治郞君
  六東京市及其ノ附近ニ於ケル颱風及海
  嘯ニ依ル水害防備ニ關スル質問(太
  田信治郞君外一名提出)
  東京市及其ノ附近ニ於ケル颱風及海嘯ニ依ル水害
  防備ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十年三月七日
  提出者太田信治郞高木正年
  賛成者橫山勝太郞
  外三十人
  東京市及其ノ附近ニ於ケル颱風及海嘯ニ依ル水害
  防備ニ關スル質問主意書
  東京灣ニ面シクル束京市及其ノ附近ノ地カ近年颱風
  及海嘯ノ爲水害ヲ蒙ルコト連リナリ殊ニ最近都市ノ膨
  脹ニ依リ本所區深川區南葛飾郡荏原郡ノ如キハ人家
  稠密シテ人口彌々增加ス今三於テ其ノ防備ノ法ヲ講セ
  サレハ其ノ災害ノ激甚ナルコトハ想像スルニ難カラス幸ニ
  シテ昨年ハ其ノ被害少キモ若大正六七年ノ如キ高浪怒
  濤ノ颱風ニ乘シテ現在ノ堤防ヲ打越シ水害ノ來ルアラハ
  物質ノ損害ハ勿論人畜ノ死傷ヲ生シ其ノ被害慘狀到
  底昔日ノ比ニ非サルヘシ現ニ是カ根本的救濟策ヲ講セ
  ラレムコトノ請願書ハ大正八年、二月本院ニ於テ採擇セ
  ラレタリ當時政府當局二、於テモ是カ救濟策ヲ講究中ト
  聞キシカ其ノ後未タ以テ是カ豫防方法ノ實現ヲ見ス政
  府ノ所見如何
  右及質問候也
  〔太田信治郞君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=41

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• 042・太田信治郎

  ○太田信治郞君　本員ハ本日ハ極メテ重要ナル議案ノ輻
  輳シテ居リマス折柄デアリマスカラ、簡單ニ質問ノ趣旨ヲ
  一言申述ベタイド存ジマス、此問題ハ一地方ノ問題ノ如ク
  ニ御覽ニナルカモ知レマセヌガ、決シテサウデハアリマセヌデ
  シテ、此關係スル所ハ東京府三百六十九万ノ人ト、又此東
  京府近縣ノ千葉縣若クハ神奈川縣ニ涉リマシテ、其關係
  スル所頗ル大デアリマシテ、而モ此災害地ニ於テ生活ヲスル
  者ガ約六十五万人アリマス、此六十五万人ノ生活ノ安定
  ヲ如何ニスルカト云フ大問題デアリマスノデ、此點ハ餘程御
  留意ヲ先ヅ願ヒタイト思フノデアリマス、デ政府ニ於キマシ
  テモ、此水害ノ治水事業ハ最モ國家的事業トシテ必要ナル
  コトヲ認メラレマシテ、屢、此問題ニ就テハ、當院ニ於テモ協
  議セラレマシタコトモゴザイマスガ、申スマデ:モナク本年卽チ
  大正十年度ノ豫算ニ依リマシテモ、內務省ノ所管ノ歳出臨
  時費ノ七千六百四十二万圓ノ中デ約三千五百万圓ハ、全
  ク此治水事業河川改修費其他ノ水害ニ對スルモノニ支出
  セラレテ居ルモノデアリマス、又大正十年以後ノ一般會計
  所屬繼續費中ノ內務省ノ所管ニ屬スルモノガ二億一千
  五百万圓、此中一億六千六百万圓、二億一千五百万
  圓ノ中ノ一億六千六百万圓ガ、治水事業河川改修其他
  水害ニ關スル費用ニ充テヽアリマスニ依リマシテモ、是ガ
  國家的事業ト致シマシテ、如何ニ緊要デアルカト云フコトハ
  分ッテ居ルノデアリマス、然ルニ此東京市及其附近ノ水害ニ
  對シマシテハ、當局者タル內務省ハドウ云フ風ニ之ヲ御覽
  ニナッテ居リマスデアリマスカ、水害ト云フコトヲ一口ニ申
  シマスケレドモ、先ヅ此水害ヲ大別シテ見マスト五ツニナリ
  マス、先ヅ第一ニハ霖雨ニ依ル所ノ水害卽チ出水デアリマス、
  ソレカラ其次ニ起リマス所ノ水害ハ、大雨ニ因ッテ起ル水害、
  其次ニ起ル所ノ水害ハ暴風雨ニ因ヲテ起ル所ノ水害デアリ
  マス、又其次ニ起ル所ノ水害ハ颱風、卽チ風力ガー一十米突
  以上ノ大烈風ヲ以テ起ス所ノ颱風ノ水害デアリマス、其次
  ニ起ル所ノ水害ガ海嘯ノ水害、此水害ト云フモノヲ大別致
  シマスト以上ノ五種ニナリマスケレドモ、此中ノモノガ共ニ併
  發スル場合モアリ、單獨ニ出テ居ル場合モアリマスカラ、之ヲ
  誤ッテ一ツノ水害ト云フ中ニ入レテシマッテ、水害ノ設備ト御
  覽ニナルト大ナル間違ヲ生ズルノデアリマス、ンコデ東京市
  及其附近ニ於ケル水害ハ、往古ノ事ハ分リマセヌガ、德川氏
  ガ入國以來、卽チ天正十八年カラ昨年ノ大正九年ニ至ル
  三百三十年間ニ起リタル所ノ風水害ハ、二百二十八回デ
  アリマス、左樣致シマスト十六箇月ニ一回起ッテ居ルコトニ
  ナリマス、隨分地方ニモ水害ガゴザリマスガ、最モ此水害ハ
  多イコトヽ思フノデゴザイマス、[而シテ此水害ノ中ニ、所謂
  二十米突以上ノ颱風ニ因ッテ起ッタ水害ハ三十七囘、九年
  ニ一回强ニ當リマス、ンレカラ海嘯ニ因ッテ起ッタ水害ハ二十
  三囘、大凡十四箇年ニ一囘弱ニナリマス、之ヲ合セマスト此
  三百三十年間ニ颱風及ビ海嘯ノ東京灣ニ起ッタル原因ニ
  依ッテ被ッタル所ノ水害ガ六十囘、五年半ニ一囘ニ當リマス、
  左樣致シマスレバ此水害ハ六十年目ニ起ルトカ、八十年目
  ニ起ルトカ云フ誤解ヲ去ッテ、常時屢〓起ルコトデアルト云フ
  コトニ、政府ハ御承知ヲ願ヒタイノデアリマス、而シテ此中最
  モ甚ダシイノハ、大正六年ノ十月一日ニ起リマシタ海嘯ガ、
  諸君モ御承知ノ通リ、最近ニ起リマシタモノデハ最モ甚シイ
  ノデアリマシテ、東京市ノ中ノ僅ニ深川區ダケデ死者七十
  九人、傷者百六十一人、家屋ノ全潰、百四十四戶、半潰
  九十八戶、床上浸水ガ三万五千六百四十四戶、其損害
  約三千五百万圓デアリマス、此外ニ本所區、京橋區、月島、
  南葛飾郡、荏原郡、日本橋區ノ一部、是等ノ災害區域ノ死
  傷者ハ五百名以上ニ上ッテ居リマス、又個人ノ財產ノ流失
  其他ノ損害ハ、數億万圓ニ上ッテ居ルノデアリマス、ソレカラ
  其翌年ノ大正七年ノ九月ニモ矢張水害ガアリマシテ、是亦
  床下ニ浸水シタ家屋ガ約十万戶ト云フノデアリマスカラ、又
  之ニ從ッテ死傷者モ生ジ、其損害ノ甚大ナルコトモ明カデ
  アリマス、デ尙ホ其他ニモ明治四十四年七月ニモ海嘯ノ水害
  ガアリマシタ、此時ニモ死傷者數百名、全潰半潰ヲ合セテ千
  二百戶以上ノ家屋ヲ潰シテ居リマス、ソレカラ浸水ガ九万
  六千四十一戶デアリマス、是亦海嘯ニ因ヲテノ災害ノ著シ
  キコトヲ相像ガ出來ルノデアリマス、而モ亦其他ニ今申上ゲ
  ル如ク二百數十囘ノ被害、之ヲ一々此場合ニ申上ゲマスル
  ト非常ニ長クナリマスカラ、先ヅ申上ゲマセヌデ之ヲ略シマ
  スガ、諸君ノ中ニ御承知ノ方モアルカモ知レマセヌケレドモ、
  最モ甚シカッタノハ安政年間ノ海嘯デアリマス、ソレカラ寛政
  年間ノ海嘯、是ハ江戶大海嘯トシテ既ニ歷史ニ遺ッテ居リ
  マシテ、數万ノ人ガ死ンダト云フコトガアルノデアリマス、是
  等ハ皆ナ要スルニ、海岸カラ引起リマシタル颱風ニ因ッテ生
  ジマシタ水害デアリマス、左様致シマスト之ニ對シマシテ、今
  同一ニ-前ニ申上ゲタ通リ、河川ノ水害、所謂治水事業
  ニ依ッテ之ヲ救濟致シマス所ノ水害ト同一ニ、政府ハ御覽
  ニナリマスノデアリマセウカ、如何デアリマセウカ、河カラ起リ
  マシタ所ノ水害、河川ノ出水ニ因ル水害ハ、荒川ノ改修工
  事ガ完成ヲ致シマシタナラバ、ソレハ幾分ヲー-イヤ幾分ニ
  非ズシテ、必ズ除去スルコトガ出來得ルデアリマセウケレド
  モ、此海ヨリ起ル所ノ水害ニ對シテハ、如何ト致シマシテモ
  ソレガ爲メニ相當ナ設備ヲ怠リマシテハ、之ヲ遺憾トスル事
  ガ甚ダ多イノデアリマス、以上ノ如ク』死傷者ヲ生ジマスノミ
  ナラズ、物質上ノ損害ガ多大ト云フコトデアリマシテモ、是ハ
  先ヅ忍プト致シマシテモ、人畜ノ死傷ヲ生ジ、卽チ多數ノ死
  傷者ヲ出スト云フコトハ、實ニ由々シキ重大問題デアリマシ
  テ、是ハ國家問題デアリマス、決シテ東京市一地方ノ問題
  デアリマセヌノデアリマス、全ク是ハ國家的社會問題デアリ
  マス、而シテ此災害地ノ區域ガ亦ドウ云フ關係ヲ持ッカト申
  シマスト、東京府卽チ三百六十餘万人ノ生活ニ至大ナル關
  係ヲ持ッテ居ル地域デアリマス、卽チ日用必需品タル米、味
  噌、砂糖、醬酒、綿布、棉絲ト云フヤウナ衣食住ニ必要ナル
  物ハ、皆此災害地附近ニ於テ大倉庫ヲ置イテ貯藏シ、若ク
  ハ之ヲ製造シテ供給ノ任ニ當ッテ居ル地方デアリマスカラ、
  此地方ニ於テ災害ヲ被ル場合ニハ、全ク此輦轂ノ下、王城
  ノ地全體ニ影響ヲ及ボシマシテ、非常ナル生活ノ安定ヲ失
  フト云フコトガ、只今マデノ前例ニ依リマシテモ確ニ是ハ明
  カデアリマス、然ラバ斯ノ如キ問題ニ對シマシテ、如何ニ政
  府ハ御考ニナリマスデアリマスカ、而シテ最近ニ於キマシテ此
  地方ガ非常ナル發展ヲ致シマシテ、商工業ノ發展、又居住
  者ノ增加等ヲ來シマシタノデアリマスカラ、若シ-只今申
  ス如ク必ズシモ五ヶ年許リニ一回アルトハ申シマセヌガ、今
  ノ比例ニ依リマシテ、若シ災害ガアルト致シマスレバ、本年若
  クハ明年ノ內ニモ或ハ災害ガ無イトモ限リマセヌガ、其時分
  ニハ到底前年ノ比ニ非ザル、非常ナル災害ガ生ズルト思フ
  ノデアリマス、而シテ之ニ對シマシテ既ニ政府ニ於キマシテ、
  ドウ云フ御考デ御在デニナルカ判リマセヌガ、此問題ニ就キ
  マシテハ、既ニ當議場ニ於キマシテ、大正八年ノ一一月國民黨
  ノ高木益太郞君、政友會ノ磯部尙君ニ依リマシテ質問應
  答ヲセラレマシテ、尙ホ此時ニ此災害ニ對シマスル防備ノ請
  顯ガ貴衆兩院ニ於テ採擇セラレマシテ、而シテ政府當局者
  ニ於キマシテ-其當時ノ政府委員ハ水野鍊太郞君ダト
  思ヒマシタガ、是ガ災害ヲ防備スベク、相當ノ考慮ヲ政府ニ
  於テモ費サレルガ如キコトヲ承ックト思ヒマス、然ルニ如何デ
  アリマセウカ、今ニ至リマシテモ之ガ更ニ其實現ヲ見ナイノ
  デアリマス、是程ノ大問題ガアリマスニモ拘ラズ、未ダ今日ニ
  至リマスマデ更ニ何等ノ設備ノ設備ヲ見ナイノミナラズ-
  ノミナラズ却テ德川時代ニ於テ此防備ノ設備ヲ致シテアリ
  マシタ、寬政三年ニ於テ此東京灣ニ面シタル海岸ニ著ケテ
  アッタ所ノ防波堤ヲ、明治三十何年デシタカ之ヲ破壞シテシ
  マッテ、全ク之ヲ除イテシマッタノデアリマス、此當時卽テ寬政
  三年大海嘯ノアリマシタ場合ニ、此處ニ德川政府時代ニハ
  石標ヲ建テマシテ、「寛政三年波荒ノ時家屋流失シ人死ス
  ル者少カラズ此後高波ノ變測リ難ク流死ノ難謂フベカラ
  ズ是ヨリ西三百八十五間餘ノ所家屋取拂ヒ空地ト爲シ置
  クモノナリ」ト云フ石標ガ建シテ居リマシタ、是ハ全ク防波堤
  ヲ置キマシテ、防波堤ノ內ヲ空地トシテ置イテ、サウシテ海嘯
  ノ防備ニ供シタノデアリマス、然ルニンレヲ取拂ッテ、却テ明
  治大正ノ聖代ニ至ッテ何等ノ防備ノ設備ガ無イト云フコト
  八、實ニ遺憾ノ極デアリマス、而シテ現在束京市若クハ束京
  府ニ於テ設備致シテアリマス所ノ堤ハ、決シテ防波ノ效用
  ヲ爲サナイ防水堤デアリマス、假令如何ナル高サノ堤防ヲ造
  リマシテモ、一朝颱風-三十米突、三十八米、若クハ二十
  米突以上ノ颱風ニ依ッテ高浪激波ヲ起シテ參ッテ、之ニ衝
  突ヲ致シマスルナラバ、忽チ奔騰ヲ致シマシテ、二十尺若ク
  ハ三十尺ノ激浪トナッテ、サウシテ此海岸カラ打寄セマスル
  海水ノ其速力ト云フモノハ、實ハ偉大ナルモノデアリマス、既
  ニ御承知ガモ知レマセヌガ、三陸ノ大海嘯ニ於テハ、千石ノ
  船ハ山ノ上ニ昇ッタト云フコトニ於テモ、海波ノ激甚ナルコ
  トガ判リマス、旣ニ大正七年ノ水害ニ於キマシテモ、洲崎ノ
  堤防ヨリ打越シタル波ガ、五分間ニ本所ノ小梅町ニ到來シ
  マシタニ徵シマシテモ、海水ノ速力ガ如何ニ偉大ニシテ、隨
  テソレニ因ル損害ノ偉大ナルモノト云フコトガ證明サレテ居
  ルノデアリマス、仍テ此問題ニ對シマシテ、政府ハ如何ナル御
  所見デ入ラッシヤイマスカ、政府ハ如何ナル方法ヲ御執ニナ
  リマス御考デアリマスカ、全ク是ハ一地方ノ問題ニ非ズシテ、
  實ニ輦糓ノ下今申ス百十五万ノ人間ハ、此安定ニ苦ンデ
  居ルノデアリマス、居住ノ安定ヲ得ナイノデアリマス、此問題
  ガ政府ノ答辯如何ニ依ッテ、大ニ此居住人民ノ精神狀態ニ
  不安ヲ與ヘルカ、慰安ヲ與ヘルカト云フ大問題デアリマスカ
  ラ、爰ニ本員ハ此事情ヲ述ベマシテ、政府ノ所見ヲ伺フ次第
  デアリマス
  〔政府委員小橋一太君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=42

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• 043・小橋一太

  ○政府委員(小橋一太君)　只今御尋ノ問題デアリマスガ、
  颱風或ハ海嘯ニ對シテ相當ノ防禦ヲ致スコトハ、政府ニ於
  テモ固ヨリ必要ト認メテ居リマスガ、東京灣ノ問題ハ、東京
  灣ノ築港問題、又都市計畫ノ問題等ト關聯ヲ持ッテ居ル重
  大問題デアリマシテ、而シテ今太田君ノ質問サレルヤウナ非
  常ナル大キナ海嘯ガ、百年ニ一遍カ、八十年ニ一遍來ルヤ
  ウナ大キナモノヲ防グ設備ヲスルヤ否ヤト云フコトハ、慎重
  ナル調査ヲ待タナケレバナラヌシ、又巨額ノ費用ヲ要スル事
  デアリマシテ、各種ノ關係、竝ニ技術上カラシテ、容易ニ決
  定セラルベキモノデハアリマセヌ、政府ニ於テハ愼重ニ此點
  ニ於テ調査ハ致シテ居リマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=43

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• 044・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　日程ニ入リマス、第一乃至第五ハ
  關聯シテ居ル議案デアリマスカラ、一括シテ議題ニ致シマ
  ス-日程第一、府縣制中改正法律案、第二、北海道會
  法中改正法律案、第三、北海道地方費法中改正法律案、
  第四、郡制廢止ニ關スル法律案、第五、衆議院議員道擧區
  ニ關スル法律案ヲ一括シテ議題ニ致シ、其第一讀會ヲ開キ
  マス-床次內務大臣
  第府縣制中改正法律案(政府提出)
  第一讀會
  府縣制中改正法律案
  府縣制中左ノ通改正ス
  第四條ニ左ノ一項ヲ加フ
  府縣知事ハ府縣會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ受
  ケ前項ノ規定ニ依ル選擧區ヲ分チテ數選擧區ト爲ス
  コトヲ得
  前項ノ規定ニ依リ選擧區ヲ分ツ場合ニ付テ必要ナル
  規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第六條第一項乃至第三項ヲ左ノ如ク改ム
  府縣内ノ市町村公民ニシテ一年以來其ノ府縣內ニ
  於テ直接國稅ヲ納ムル者ハ府縣會議員ノ選擧權及
  被選擧權ヲ有ス
  家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ニ付テハ其ノ財
  產ニ付被相續人ノ爲シタル納稅ヲ以テ其ノ者ノ爲シ
  タル納稅ト看做ス
  確定名簿ニ登錄セラレタル者ハ其ノ名簿調製期日後
  選擧權ノ納稅要件ヲ闕クニ至リタル場合ト雖其ノ確
  定名簿据置ノ期間內仍選擧權ヲ有ス
  同條第五項ノ次ニ左ノ二項ヲ加フ
  陸海軍軍人ニシテ現役中ノ者及戰時又ハ事變ニ際シ
  召集中ノ者ハ府縣會議員ノ選擧權及被選擧權ヲ有
  セス
  市町村公民權停止中ノ者ハ府縣會議員ノ選擧權及
  被選擧權ヲ有セス
  同條第九項ヲ左ノ如ク改ム
  府縣ニ對シ請負ヲ爲ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ
  同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社員、役員及支配
  人ハ其ノ府縣ニ於テ被選舉權ヲ有セス
  前項ノ役員トハ取締役、監査役及之ニ準スヘキ者竝〓
  算人ヲ謂フ
  第八條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
  議員關員ト爲リタルトキ其ノ議員カ第二十九條第二
  項ノ規定ノ適用ニ依リ當選者ト爲リタル者ナル場合
  又ハ本條本項、第三十二條第一項但書若ハ第三十
  六條第一項但書ノ規定ニ依ル第二十九條第二項ノ
  規定ノ準用ニ依リ當選者ト爲リタル者ナル場合ニ於
  テハ選擧長ハ直ニ第二十九條第二項ノ規定ノ適用
  又ハ準用ヲ受ケタル他ノ得票者ニ就キ當選者ヲ定ム
  ヘシ此ノ場合ニ於テハ第二十九條第二項及第三十一
  條ノ規定ヲ準用ス
  第十一條中「九月十五日」ヲ「九月二十日」ニ改ム
  第十二條中「郡市長ハ十月二十日ヨリ十五日間其ノ郡
  市役所ニ於テ」ヲ「郡市町村長ハ十月二十日ヨリ十五日
  間其ノ郡市役所町村役場ニ於テ」ニ、、町村長ハ之ヲ告示
  スヘシ」ヲ「町村長ハ名簿ヲ修正シ之ヲ告示スヘシ」ニ改ム
  第二十三條第二項中「場所」ノ下ニ「及日時」ヲ加フ
  第二十四條第一項及第二項ヲ左ノ如ク改ム
  郡市長ハ選擧人中ヨリ選擧立會人二名乃至六名ヲ
  選任スヘシ
  第二十五條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加ヘ同條中「前
  項」ヲ「第一項」ニ改ム
  天災事變等ノ爲所定ノ期日ニ選擧會ヲ開クコトヲ得
  サルトキハ郡市長ハ前項ノ規定ニ拘ラス更ニ其ノ期日
  ヲ定ムヘシ
  第二十七條第六號ヲ第七號トシ同條ニ左ノ一號ヲ加
  フ
  六被選擧人ノ氏名ヲ自書セサルモノ
  同條ニ左ノ一項ヲ加フ
  前項第七號ノ規定ハ總選舉ノ場合ニ於テ第二十二
  條ノ規定ニ依リ投票期日ヲ定メタルトキハ之ヲ適用
  セス
  第三十一條中「第六條第七項」ヲ「第六條第九項」ニ改
  ム
  築三十二條當選者當選ヲ辭シタルトキ、數選擧區ノ
  選擧ニ當リ前條第三項ノ規定ニ依リ一ノ選擧區ノ選
  擧ニ應シタル爲他ノ選擧區ニ於テ當選者タラサルニ至
  リタルトキ、死亡者ナルトキ又ハ選擧ニ關スル犯罪ニ依
  リ刑ニ處セラレ其ノ當選無效トナリタルトキハ更ニ選
  擧ヲ行フヘシ但シ其ノ當選者第二十九條第二項ノ規
  定ノ適用又ハ準用ニ依リ當選者ト爲リタル者ナル場
  合ニ於テハ第八條第二項ノ例ニ依ル
  當選者選擧ニ關スル犯罪ニ依リ刑ニ處セラレ其ノ當
  選無效トナリタルトキ其ノ前ニ其ノ者ニ關スル補闕選
  擧若ハ前項ノ選擧ノ告示ヲ爲シタル場合又ハ更ニ選
  舉ヲ行フコトナクシテ當選者ヲ定メタル場合ニ於テハ
  前項ノ規定ヲ適用セス
  第三十四條ニ左ノ二項ヲ加フ
  第八條、第三十二條又ハ第三十六條ノ選舉ハ之ニ關
  係アル選擧又ハ當選ニ關スル、異議申立期間、異議ノ
  決定確定セサル間又ハ訴訟ノ繫屬スル間之ヲ行フコ
  トヲ得ス
  府縣會議員ハ選擧又ハ當選ニ關スル決定確定シ又ハ
  判決アルマテハ會議ニ參與スルノ權ヲ失ハス
  第三十六條第一項但書ヲ左ノ如ク定ム
  但シ更ニ選擧ヲ行フコトナクシテ當選者ヲ定メ得ヘキ
  場合ニ於テハ第二十九條第二項及第三十一條ノ規
  定ヲ準用ス
  第三十七條第一項ヲ左ノ如ク改メ同條中「會議ニ列席
  シ及發言スルノ權」ヲ「會議ニ參與スルノ權」ニ改ム
  府縣會議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ
  失フ其ノ被選擧權ノ有無ニ關シテハ府縣會議員カ左
  ノ各號ノ一ニ該當スルニ因リ【被選擧權ヲ有セサル場
  合ヲ除クノ外府縣參事會其ノ異議ヲ決定ス
  -禁治產者又ハ準禁治產者ト爲リタルトキ
  二家資分散又ハ破產ノ宣告ヲ受ケ其ノ宣告確定
  シタルトキ
  三禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタルトキ
  四選擧ニ關スル犯罪ニ依リ罰金ノ刑ニ處セラレタル
  ドキ
  第七十七條中「内務大臣ノ許可ヲ得」ヲ削ル
  第七十九條ニ左ノ一項ヲ加フ
  前項ノ規定ニ依リ府縣參事會ノ審査ニ付シタル場合
  ニ於テ府縣參事會意見ヲ述ヘサルトキハ府縣知事ハ其
  ノ意見ヲ俟タスシテ議案ヲ府縣會ニ提出スルコトヲ得
  第八十條第二項中「事務ノ一部ヲ」ノ下ニ「府縣ノ官吏
  吏員ニ委任シ又ハ」ヲ加フ
  第八十二條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加ヘ同條中「前
  項」ヲ「第一項ノ」ニ改ム
  前項ノ取消處分ハ府縣會又ハ府縣參事會開會中ニ
  非サルトキハ之ヲ告示スヘシ
  第百三條ニ左ノ一項ヲ加フ
  勅令ニ別段ノ規定アル場合ニ於テハ府縣ハ其ノ費用
  ヲ市ニ分賦スヘシ
  第百六條中「其ノ法人タルトキ亦同シ」ヲ削ル
  第百十五條中「第百三條第二項」ヲ「第百三條第二項
  又ハ第三項」ニ改メ「徵收」ノ下ニ「竝夫役及現品賦課ㄴ
  ヲ加フ
  第百十六條府縣稅ノ賦課ニ關シ必要アル場合ニ於テ
  ハ當該行政廳ハ日出ヨリ日沒マテノ間營業者ニ關シ
  テハ仍其ノ營業時間家宅ニ臨檢シ又ハ帳簿物件ノ檢
  查ヲ爲スコトヲ得
  府縣稅、使用料、手數料、夫役又ハ現品ニ代フル金錢、
  過料其ノ他ノ府縣ノ收入ヲ定期內ニ納メサル者アル
  トキハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ
  急迫ノ場合ニ於テ夫役又ハ現品ノ賦課ヲ受ケタル者
  其ノ履行ヲ爲ササルトキハ更ニ之ヲ金額ニ換算シ期
  限ヲ指定シテ其ノ納付ヲ命スヘシ
  第二項ノ規定ニ依ル督促又ハ前項ノ規定ニ依ル命令
  ヲ受ケタル者其ノ指定ノ期限マテニ完納セサルトキハ
  國稅滯納處分ノ例ニ依リ處分スヘシ
  第二項及第三項ニ規定スル府縣ノ徴收金ノ先取特
  權ノ順位ハ國ノ徵收金ニ次クモノトス
  府縣ノ收入金及支拂金ニ關スル時效ニ付テハ國ノ收
  入金及支拂金ノ例ニ依ル
  府縣知事ノ委任ヲ受ケタル官吏吏員カ第四項ノ規定
  ニ依リ爲シタル處分ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴
  願シ其ノ栽決又ハ府縣知事ノ處分ニ不服アル者ハ行
  政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
  前項ノ栽決ニ關シテハ府縣知事又ハ其ノ委任ヲ受ケ
  タル官吏吏員ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
  第四項ノ規定ニ依ル處分ニ係ル差押物件ノ公賣ハ處
  分ノ確定ニ至ルマテ執行ヲ停止ス
  第百二十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
  特別會計ニハ豫備費ヲ設ケサルコトヲ得
  第百二十八條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ第八十二條第二項ノ規定ニ依リ告示ヲ爲シタル
  場合ニ於テハ告示ノ日ヲ以テ處分ヲ受ケタル日ト看
  做ス
  第百三十三條中「手數料」ヲ削ル
  第百三十八條第三項ヲ左ノ如ク改ム
  沖繩縣ニ於テハ第十三條中二十日トアルハ三十日、
  七日トアルハ十日、第十五條中五日トアルハ十日、第
  三十一條中十日トアルハ二十日、二十日トアルハ三
  十日、第三十四條及第五十一條中十四日トアルハ二
  十五日トス
  第百三十九條島司ヲ置ク地ニ於テハ本法中郡ニ關ス
  ル規定ハ島嶼ニ、郡長ニ關スル規定ハ島司ニ、郡役所ニ
  關スル規定ハ島廳ニ之ヲ適用ス
  町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ本法中町村ニ關スル
  規定ハ町村ニ準スヘキモノニ、町村長ニ關スル規定ハ
  町村長ニ準スヘキモノニ、町村吏員ニ關スル規定ハ町
  村吏員ニ準スヘキモノニ、町村役場ニ關スル規定ハ町
  村役場ニ準スヘキモノニ之ヲ適用ス
  附則
  本法中選擧ニ關スル規定ハ次ノ總選舉ヨリ之ヲ施行シ
  其ノ他ノ規定ノ施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法ニ依リ初テ議員ヲ選擧スルニ必要ナル選擧人名簿
  ニ關シ第九條乃至第十二條ニ規定スル期日又ハ期間
  ニ依リ難キトキハ勅令ヲ以テ別ニ期日又ハ期間ヲ定ム
  但シ其ノ選舉人名簿ハ次ノ選擧人名簿確定ノ日迄其ノ
  效力ヲ有ス
  第二北海道會法中改正法律案(政府提
  〓第一讀會
  北海道會法中改正法律案
  北海道會法中左ノ通改正ス
  第一條第二項ヲ左ノ如ク改ム
  選擧ハ區ハ北海道廳支廳長管轄區域及市ノ區域ニ
  依ル
  北海道廳長官ハ北海道會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許
  可ヲ受ケ前項ノ規定ニ依ル選擧區ヲ分チテ數選擧區
  ト爲スコトヲ得
  前項ノ規定ニ依リ選擧區ヲ分ツ場合ニ付テ必要ナル
  規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三條帝國臣民ニシテ獨立ノ生計ヲ營ム年齡二十
  五年以上ノ男子二年以來北海道内ノ同一市町村內
  ニ住所ヲ有シ二年以來其ノ市町村ノ費用ヲ負擔シ且
  北海道內ニ於テ一年以來直接國稅ヲ納ムルトキ又ハ
  北海道内ニ於テ一年以來土地ヲ所有スルトキハ北海
  道會議員ノ選擧權及被選擧權ヲ有ス
  家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ニ付テハ其ノ財
  產ニ付被相續人ノ爲シタル納稅ヲ以テ其ノ者ノ爲シ
  タル納稅ト看做ス
  家督相續ニ依リ土地ヲ取得シタル者ニ付テハ被相續
  人ノ所有シタル期間ヲ以テ其ノ者ノ所有シタル期間
  ト看做ス
  土地所有ノ期間ハ所有權ノ登記ヲ爲シタル日ヨリ之
  ヲ起算ス
  確定名簿ニ登錄シタル者ハ其ノ名簿調製期日後選
  擧權ノ納稅要件又ハ土地所有要件ヲ闕クニ至リタル
  場合ト雖モ其ノ確定名簿据置ノ期間内仍選擧權ヲ
  有ス
  本條ニ於テ土地ト稱スルハ耕地、宅地及海產干場ヲ
  謂フ
  第四條本法ノ適用ニ付テハ町村ノ役場事務ヲ共同
  處理スル共同處理スル町村組合又ハ一戶長役場ノ
  所轄ニ屬スル數町村ハ之ヲ一町村、其ノ町村組合役
  場又ハ戶長役場ハ之ヲ町村役場、其ノ町村組合管理
  者又ハ戶長ハ之ヲ町村長ト看做ス
  第五條中「三年」ヲ「二年」ニ改ム
  第六條削除
  第七條中「重役」ヲ「役員」ニ改メ同條第四項ノ次ニ左ノ
  一項ヲ加フ
  前項ノ役員ハ取締役、監査役及之ニ準スヘキ者竝〓
  算人ヲ謂フ
  第八條北海道會ハ法令ニ依リ其ノ權限ニ屬スル事項
  ノ外北海道地方費ニ關シ左ノ事項ヲ議決ス
  -歲入出豫算ヲ定ムル事
  二決算報告ニ關スル事
  三法令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料、手數料、北
  海道地方稅及夫役現品ノ賦課徵收ニ關スル事
  四不動產ノ處分竝買受及讓受ニ關スル事
  五積立金穀等ノ設置及處分ニ關スル事
  六歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義
  務ノ負擔ヲ爲シ及權利ノ抛棄ヲ爲ス事
  七財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法令
  中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
  第九條北海道參事會ハ北海道廳長官、北海道廳高
  等官二人及名譽職參事會員七人ヲ以テ之ヲ組織ス
  北海道廳高等官ニシテ北海道參事會員タルヘキ者ハ
  内務大臣之ヲ命ス
  第十條北海道參事會ノ職務權限左ノ如シ
  北海道會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ其ノ委任ヲ
  受ケタルモノヲ議決スル事
  二北海道會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ
  要シ北海道廳長官ニ於テ之之招集スルノ暇ナシト
  認ムルトキ北海道會ニ代リテ議決スル事
  三北海道廳長官ヨリ北海道會ニ提出スル議案ニ
  付北海道廳長官ニ對シ意見ヲ述フル事
  四北海道會ノ議決シタル{範圍內ニ於テ財產及營
  造物ノ管理ニ關シ重要ナル事項ヲ議決スル事
  五北海道地方費支辨工事ノ執行ニ關スル規定ヲ
  議決スル事但シ法令中別段ノ規定アルモノハ此ノ
  限ニ在ラス
  六北海道地方費ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル
  事項ヲ議決スル事
  七其ノ他法令ニ依リ北海道參事會ノ權限ニ屬スル
  事項
  第十一條中「北海道會」ノ下ニ「及北海道參事會」ヲ加
  フ
  第十二條及第十三條中「北海道會」ヲ「北海道參事會」
  三六人
  第十四條府縣制第五條、第六條第五項第六項、第
  八條乃至第三十八條、第四十條、第四十二條乃至
  第六十四條、第六十六條、第六十七條、第六十九條
  乃至第七十四條、第七十九條、第八十二條乃至第
  八十五條、第百二十七條乃至第百二十九條、第百
  三十一條、第百三十五條及第百三十六條ノ規定ハ
  之ヲス但シ其ノ規定中郡トアルハ北海道廳支廳長管
  轄區域トシ、郡長トアルハ北海道廳支廳長トシ、準用
  郡役所トアルハ北海道廳支廳トシ、町村長、町村役場
  トアルハ北海道一級町村制及北海道二級町村制ヲ施
  行セサル地ニ在リテハ戶長、戶長役場トシ、其ノ第三十
  一條中第六條第九項トアルハ本法第七條第二項ト
  シ、其ノ第七十三條中第六十八條第二トアルハ本法
  第十條第二號トス
  第十八條本法ハ北海道廳根室支廳管內占守郡、新
  知郡、得撫郡及色丹郡ニハ勅令ヲ以テ之ヲ施行スル
  迄之ヲ施行セス
  第十九條ヲ削ル
  附則
  本法中選擧ニ關スル規定ハ次ノ總選擧ヨリ之ヲ施行シ
  其ノ他ノ規定ノ施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十四條ノ規定ニ依リ準用スル選擧ニ關スル府縣制ノ
  規定ハ次ノ府縣會議員ノ總選擧ニ付適用セラルル規定
  ヲ謂フ
  本法ニ依リ初テ議員ヲ選擧スルニ必要ナル選擧人名簿
  ニ關スル期日又ハ一期日又ハ期間ニシテ本法ニ依リ難キ
  モノハ勅令ヲ以テ『別ニ之ヲ定ム但シ其ノ選擧人名薄ハ
  次ノ選擧人名薄確定ノ日迄其ノ效力ヲ有ス
  北海道參事會ノ權限ニ屬スル事項ニシテ本法施行ノ際
  急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ル迄ノ間北海道廳長
  官之ヲ行フ
  北海道會又ハ北海道參事會ノ議決ヲ要スル事項ニシテ
  從前ノ規定ニ依リ北海道廳長官ノ爲シタルモノハ本法
  ニ依リ北海道會又ハ北海道參事會ノ議決ヲ經タルモノ
  ト看做ス
  本法施行前ニ爲シタル處分ニ對スル異議、訴願又ハ訴
  訟ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
  第三北海道地方費法中改正法律案政
  府提出)第一讀會
  北海道地方費法中改正法律案
  北海道地方費法中左ノ通改正ス
  第二條北海道地方稅ニ關シテハ法律勅令ニ別段ノ
  規定アル場合ヲ除クノ外府縣稅ニ關スル規定ヲ準用
  ス
  第三條段別割ハ地租ヲ賦課セサル土地ノ所有者ニ對
  シテハ其ノ土地ノ民有ニ歸シタル年ノ翌年ヨリ二年
  間之ヲ賦課スルコトヲ得ス
  第四條削除
  第五條削除
  第七條削除
  第八條ノ二北海道廳長官ハ北海道地方費ノ行政ヲ
  擔任ス
  第八條ノ三府縣制第七十五條乃至第七十七條、第
  八十條、第八十一條、第八十八條乃至第百一條、第
  百三條第二項第三項、第百十二條、第百十五條第
  二項乃至第五項、第百十六條第二項乃至第九項、
  第百十七條乃至第百二十六條、第百二十七條乃至
  第百三十條及第百三十二條乃至第百三十六條ノ
  規定ハ之ヲ準用ス
  第八條ノ四第二條及前條ノ規定ニ依リ準用スル府
  縣制ノ規定及府縣稅ニ關スル規定中郡島ノ官吏吏
  員トアルハ北海道廳支廳ノ官吏吏員トシ、町村、町村
  會、町村長、町村吏員トアルハ北海道一級町村制及
  北海道二級町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ戶長役
  場ノ所轄區域、總代人會、戶長、戶長役場吏員トス
  第十條及附則ヲ削ル
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  從前ノ規定ニ依リ定メタル段別割ハ本法ニ依リ之ヲ定
  メタルモノト看做ス
  北海道會又ハ北海道參事會ノ議決ヲ要スル事項ニシテ
  從前ノ規定ニ依リ北海道廳長官ノ爲シタルモノハ本法
  ニ依リ北海道會又ハ北海道參事會ノ議決ヲ經タルモノ
  ト看做ス
  本法施行前ニ爲シタル處分ニ對スル異議、訴願又ハ訴
  訟ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
  第四郡制廢止ニ關スル法律案(政府提
  〓第一讀會
  郡制廢止ニ關スル法律案
  第一條郡制ハ之ヲ廢止ス
  第二條郡制廢止ノ爲郡又ハ郡組合ニ屬スル營造物
  及事業ノ處分竝權利義務ノ歸屬ニ付必要ナル事項
  ハ關係府縣、郡、郡組合、町村、市町村組合及町村組
  合ノ府縣會、郡會、郡組合會、町村會、市町村組合會
  及町村組合會ノ意見ヲ徵シ主務大臣之ヲ定ム
  本法ニ依リ郡又ハ郡組合消滅スル場合ニ於テハ郡又
  ハ郡組合ヲ當事者トスル訴訟ノ手續ハ訴訟ノ目的タ
  ル權利義務ノ歸屬者又ハ相手方カ之ヲ受繼ク迄中
  斷ス
  前二項ノ外郡制廢止ニ、付必要ナル事項ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム
  附則
  第一條施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム但シ第二條ノ
  處分及歸屬ニ關スル手續終了シタル府縣ニ付テハ內務
  大臣ハ其ノ施行ノ期日前別ニ施行ノ期日ヲ定ムルコト
  ヲ得
  第五衆議院議員選舉區ニ關スル法律案
  (政府提出)第一讀會
  衆議院議員選擧區ニ關スル法律案
  郡ノ區域ニ變更アルモ衆議院議員ノ選舉ニ關シテハ仍
  從前ノ區域ニ依ル但シ一選擧區內ニ於ケル郡ノ區域ニ
  變更アリタルトキ又ハ市町村ノ境界ノ變更アリタル爲郡
  ノ區域ニ變更アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
  前項ノ規定ハ島司又ハ北海道廳支廳長ノ管轄區域ニ
  付之ヲ準用ス
  前二項ノ規定ノ適用ニ付テハ町村ニ準スヘキモノハ之ヲ
  町村ト看做ス
  前三項ノ規定ニ依リ從前ノ區域ニ依ル選擧ニ關シ衆議
  院議員選擧法ノ規定ヲ適用シ難キ事項ニ付テハ勅令ヲ
  以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
  附則
  本法ハ郡制廢止ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣床次竹二郎君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=44

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• 045・床次竹二郎

  ○國務大臣(床次竹二郞君)　府縣制中改正注律案ニ就
  キマシテ、大體ノ說明ヲ中上ゲマス、今度ノ改正ノ主ナル點
  ハ、選擧權被選擧權ノ擴張デゴザイマス、ソレト同時ニ選擧
  手續其他ニ多少ノ改正ヲ加ヘタノ『デアリマス、選擧權ノ擴
  張ニ就テ申上ゲマスレバ、現在選擧有權者ハ其數二百四
  十三万デゴザイマス、此選擧有權者ノ數ヲ我國ノ人口ニ比
  例致シマスルト云フト、人口百人ニ付キ四人四分ニ當シテ居
  リマスルガ、現行府縣制ノ施行セラレマシタ當初:卽卽明治
  三十二年ニ於キマシテハ、丁度此人口百人ニ對スル割合ハ
  四人五分ニ當ッテ居ルノデアリマス、乃チ今日ハ『實際ニ於テ
  其當時ヨリ比例ガ減少致シテ居リマス、之ヲ衆議院議員選
  擧有權者ニ比較致シマスルト云フト、卽チ衆議院議員選擧
  有權者ハ其數三百万以上デゴザイマスルカラ、府縣會議員
  ノ選擧有權者ハ、尙ホンレニモ及バヌト云。フ今日デゴザイマ
  ス、惟フニ現制度施行以來玆ニ三十有餘年ニ相成ヲテ居リ
  マスルガ、其間ニ於ケル〓育ノ普及、民度ノ向上、竝ニ自治
  團體行政ニ關スル府縣民ノ經驗訓練ノ情勢モ、大ニ進ン
  デ參クタコトデゴザイマスルノデ、相當ニ選擧權ノ擴張ヲ圖リ
  マヌルト云フコトハ、申スマデモナク必要ナ事ト考ヘマス、仍
  テ其擴張ヲ圖ランガ爲メニ、此度ハ直接國稅ノ三圓ヲ納付
  スル今日ノ制度ヲ改メマシテ、單ニ直接國稅ヲ納付スル、斯
  ウ云フコトニ致シタノデアリマス、左樣致シマスルト玆ニ選擧
  有權者ノ數ハ五百一万ニ增加致シマスノデアリマス、是ハ
  衆議院議員ノ方カラ申シ、又此度改正ニ相成リマスル市町
  村制ノ方ト比較致シマシテ、旁、此邊デ相當デアラウト考ヘ
  タ次第デゴザイマス、尙ホ從來ハ選擧權枕選擧ノ要件ト致
  シマシテ、直接國稅納額ニ等差ガゴザイマシタ、卽チ選擧權
  ハ三圓以上、被選擧權ハ十圓以上ニ相成ッテ居ルコトハ御
  承知ノ通リデゴザイマスルガ、今日ニ於キマシテハ、選擧權被
  選擧權ノ間ニ、其等差ヲ設ケル」必要ハ無イト考ヘマシタノ
  デ、區別ヲ設ケヌコトニ致シマシタ、卽チ選擧權者ハ同時ニ
  被選擧權者タルコトニ改メタノデゴザイマス、次ニ選擧手續
  其他多少改正ヲ致シマシタ、是ハ衆議院議員選擧法ニ做
  ヒマシテ、改正ヲ致スガ宜シカラウト云フノガ一點デアリマス、
  他ノ點ハ既往ノ實績ニ徵シマシテ、委員ノ設置、手數料ノ
  設定ノ手續、竝ニ府縣行政ノ委任、府縣費ノ分賦等ニ關
  シマシテ、相當ノ改正ヲ致シタノデゴザイマス、何レ詳細ノ事
  ハ尙ホ委員會ニ於テ御答ヲスルト致シマシテ、說明ハ之ニ止
  メマス、何卒御協賛下サルコトヲ望ミマス(拍手起ル)尙ホ北
  海道會法、竝ニ北海道地方費法中ニ改正ヲ加へマシタ、現
  行北海道法竝ニ北海道地方費法ハ、孰レモ明治三十四年
  ニ制定セラレマシテ、始メテ道會竝ニ地方費ニ關スル制度
  ガ北海道ニ開ケタノデアリマス、其當時ハ人口僅ニ百万足
  ラズデアリ、地方費ノ經濟モ僅ニ百四十万圓デゴザイマシタ
  ノガ、爾來拓殖ノ進捗ト共ニ北海道ノ開發ハ洵ニ著シク、
  戶口ノ增殖ト云ヒ、生產ノ增加ト云ヒ、其他各般事業ノ勃
  興致シマシタコトヽ申シ、現時ノ北海道ハ現在ノ制度ガ立
  テラレマシタ當時ニ比シテ、殆ド其面目ヲ一新致シテ居ル感
  ガアルノデアリマス、其人口カラ申シマシテモ、今日デハ二百
  十六万ニ相成ッテ居リマス、地方費ノ經濟ヲ申シマシテモ、
  七百四十一万圓以上デゴザイマス、左樣ナ次第デゴザイマ
  スルノデ、現制度ノ儘推行クト云フコトハ、今日ノ事情ニ適
  セナイト考ヘマスノデ、相當ナル改正ヲ致スコトガ最モ必要
  デアラウト思ヒマス、ソコデ此度改正ヲ企テマシタ主ナル點
  ヲ申シマスレバ、道會法ニ在リマシテハ、選擧權、被選舉權
  ヲ擴張スルコトニ致シマシタ、又新タニ道參事會ヲ設置スル
  コトニ致シマシタ、尙ホ議員ノ選擧ニ關スル事項ハ、從
  來勅令ノ規定ニ讓讓テゴザイマシタガ、是等ハ道會法中ニ
  統一スルノヲ適當ト認メマシタノデ、改正案ニ於テハ大體
  府縣制ニ準據スルコトニ致シマシタ、而シテ選擧權ノ擴張
  ハ、大體府縣會議員ノ選擧權ト同樣ナル立場ヨリ改正致
  シマシタ所、現行法ニ比シテ約二倍一分餘ノ增加ニ相
  成リマス、北海道地方費法ニ於テハ、從來地方稅ノ賦課
  微收、竝ニ地方費ノ支出費用ニ關シ、大綱ヲ規定シテア
  リマシタダケデゴザイマシテ、此他地方費ノ行政ニ關スル後
  多重要ノ事項ハ、地方費令及單行勅令デ今日ハ定メテゴ
  ザイマス、此等ハ地方費中ニ統一致シマスルガ適當ナリト考
  ヘマシテ、大體府縣制ノ規定ニ準ジデ、ソレ〓〓相當ノ改正
  ヲ致シタ次第デアリマス、是以テ時勢ノ進運ニ伴レ適當ナル
  事ト考ヘマスルノデアリマスルガ、宜シク御審議ヲ願ヒタウゴ
  ザイマス、尙ホ郡制廢止法案ニ就テ大體ノ說明ヲ申上ゲマ
  スルガ、郡制廢止ノ事ハ、旣ニ數囘本院ニ於テハ可決通過
  致シテ居ル事柄デゴザリマスルガ、未ダ今日マデ其目的ヲ達
  セズニ居ルコトデアリマス、然ルニ更ニ愼重ニ攻究致シテ見
  マシタ結果、今日ニ於テモ尙ホ此郡制ハ之ヲ存置スルノ必
  要ナク、廢止スルコトヲ以テ適當ナリト考ヘマシタノデ、爰ニ
  重ネテ廢止案ヲ提出致シタ次第デアリマス、郡制ハ施行以
  來二十有餘年ヲ經テ居リマスルガ、郡自治體ノ施設ヲ致シ
  テ居リマスル事業ノ實況ヲ調べマスルニ、其成績ノ見ルベキ
  モノハ甚ダ少ナイノデアリマス、試ニ經費ノ點カラ申シマスル
  ト、大正九年度ノ郡費歲出豫算總額ハ三千百餘万圓デア
  リマシテ、之ヲ道府縣ノ歲出豫算中、北海道竝ニ沖縄縣ヲ
  除キマシタ府縣ノ歲出豫算ヲ申シマスレバ、二億六百餘万
  國ニ相成シテ居ル、其一割五分强デゴザリマス、同ジク市區
  町村歲出豫算五億四千七百餘万圓ニナッテ居リマスルガ、
  郡ノ歲出豫算ハ之ニ對シテ、僅ニ其五分强ニ過ギナイ有樣
  デアリマス、郡ノ事業ガ遠ク府縣市町村ノ事業ニ及バザルコ
  トハ、ソレデモ明カデゴザイマス、殊ニ郡費ノ中事務費補助
  費等ノ類ヲ除イテ、眞ニ郡ノ事業費ト見ルベキモノヲ擧ゲマ
  スレバ、其額僅ニ千八百餘万圓デアリマシテ、之ヲ一郡ニ平
  均致シマスレバ約三万五千圓ニ過ギマセヌ、今日町村ニ於
  テモ其事業費ハ四五万圓ニ上ッテ居リマスルモノモ少クナイ
  ノデアリマス、卽チ一郡ノ事業ハ一町村ノ事業ニモ及バナイ
  モノガ少クナイノデゴザリマス、加フルニ今日全國ノ郡ニ於
  テ經營致シマスル所ノ事業ハ、土木デモ、〓育デモ、勸業、衞
  生、各種ノ方面ニ涉ッテ居リマスルガ、之ヲ各郡ニ就テ見マ
  スルニ、事務費補助費ノ外事業費トシテハ經常費支出豫
  算額僅ニ五千圓ニモ達セザルモノ、卽チ殆ド事業トシテ見ル
  ベキモノヽアリマセヌノガ、全國五百三十七郡ノ中百二十
  七郡モゴザイマス、斯ノ如ク郡ノ事業ハ其量カラ申シテ少イ
  ノミナラズ、又此事業ノ內容ニ於テモ、滿足スベカラザル狀
  態ニ在ルモノモ少クナイノデアリマス、是等ハ地方ノ事情ニ
  通ズル人ミノ齊シク承知シテ居ル所デアリマス、府縣又ハ大
  ナル市町村ガ〓育、勸業、土木、其他、各般ノ事業ノ並ビ
  行ッテ其ノ費用各數万圓乃至數十万圓ノ多キニ上ヲテ、自
  治體トシテノ實績ヲ擧ゲツヽアルノニ比較致シマスレバ、郡
  ノ狀態ハ日ヲ同ジウシテ語ルコトノ出來ナイ有樣デアリマ
  ス、斯ノ如ク郡ノ事業ノ成績ノ擧ラナイノハ、何ニ依ッテ斯ノ
  如クデアルカト申シマスレバ、一ハ郡ノ自治體ハ、府縣及市
  町村ニ遲レテ發達致シタノデゴザイマス、隨テ住民ノ郡ニ對
  スル自治觀念薄ク致シテ、自治體トシテノ基礎ノ鞏固デナ
  イト云フノガ其一ツデアリマス、又或ハ郡ハ府縣ト町村トノ
  間ニ介在致ス所ノ中間〓體デアッテ、而モ府縣町村ハ郡ヨ
  リモ先キニ發達致シテ、組織モ隨テ鞏固デアルガ爲メニ、地
  方事業ノ主ナルモノガ、多クハ府縣市町村ニ於テ經營セラ
  レル結果トシテ、郡ノ經營スベキ事業ガ、自ラ少カラザルヲ得
  ナイノデアラウト考ヘマス、加之我國ノ町村ハ其面積頗ル廣
  ク、戶口モ又隨分多イノデアリマス、而モ府縣ハ其郡ノ上ニ
  在ッテ面積割合ニ狹ク、戶口モ割合ニ少ナイノデアリマス、是
  ニ於テ其中間ニ在ル所ノ郡ノ自治體ト云フモノハ、實際ニ
  於テ其必要ヲ見ザルノデアルト考ヘマス、我國ノ町村ハ町
  村制施行ノ際其數七万デゴザイマシタ、之ヲ合併シテ一万
  三千ト致シタノデアリマスルニ依ッテ、一町村ノ廣袤、人口、
  戶數ハ、之ヲ英吉利ナリ獨逸等ニ比較致シマスレパ、彼ノ數
  町村ニ匹敵致シテ居リマス、『隨テ現ニ彼ノ國々ニ於テ郡ノ
  經營スル事業モ、我國デハ一町村ガ多ク之ヲ經營致シテ居ル
  ト謂ウテ宜シカラト思フノデス、卽チ我國ノ郡ハ彼ノ國々ノ
  郡ニ比較致シマスルニ、其活動ノ範圍ハ狹小デアリマスルノ
  ハ、洵ニ當然ナ事デアルト申シテ宜シカラウト考ヘル、畢竟シ
  マスルニ郡事業ハ成績ノ擧ラナイノハ、我國自治制度ノ沿
  革ト、郡ノ地位トガ其原因ヲ成スモノデアルトスル以上、今
  日竝ニ將來ニ於テモ、大ニ其發達ヲ期待スルコトハ出來ナ
  イト考ヘマスル、果シテ左樣デゴザイマスレバ、今日五百有餘
  ノ郡ノ自治體ヲ、全國ニ普遍的ニ存置セシムル必要ハ無イ
  ト考ヘマス、之ヲ廢止致シマシテ、其經營ノ事業ヲ府縣ニ或
  ハ町村ニ移シマシテ、各〓是等ヲシテー活動セシムル方ガ、地方
  行政ノ效果ヲ擧ゲルニ、一層適切ナル遣リ方デアルト認メル
  ノデアリマス、卽チ資力豐富ナル機關ノ整備シテ居ル所ノ府
  縣、或ハ利害關係ノ一層切實ナル町村ヲシテ、ソレ〓〓有效
  ニ經營致サシムル方ガ宜シカラウト考ヘマス、之ヲ要シマスル
  ニ無クモガナノ郡ヲ存シテ、地方ノ三級制度ヲ維持致スヨ
  リハ、寧口之ヲ廢シテ簡明ナル制度ニ致スコトガ、大體ニ於
  テ其宜シキヲ得タルモノト考ヘルノデアリマス、乃チ由ッテ以
  テ事務ノ簡捷ヲ期シ、町村自治ノ活動ヲ促シ、又町村ノ自
  治行政ヲ指導スル上ニ於テ、大ニ力ヲ伸ベルコトモ出來得
  ルコトデアラウト考へルノデアリマス、右ノ理由ニ依リマシテ
  今日之ヲ廢止致シマスルコトハ、最モ適當ナリト信ジマスル
  コトデアリマス、何卒御協贊ヲ願ヒタイノデゴザイマス、(拍手
  起ル)次ニ衆議院議員選擧區ニ關スル法律案郡制廢止
  ノ結果ト致シマシテ、自然郡ノ配置分合、若クハ區域ノ變
  更ガアリマスル際ニ、衆議院議員選舉法別表ノ選擧區ニ影
  響ヲ及ボスコトデアリマスルノデ、爰ニ衆議院議員選擧法別
  表ノ選擧區ハ特ニ此法律ニ依ッテ致スニ非ズンバ、濫リニ變
  更セザルモノデアルト云フコトヲ、明カニ致シテ置ク方ガ必
  要ナリト考ヘマシテ、是ハ郡制廢止ニ伴ッテ提出致シマシタ
  次第デ是亦然ルベク御審議ヲ願ヒマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=45

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• 046・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　府縣制中改正法律案、郡制廢止
  ニ關スル法律案ニ就テハ、質議ノ通告ガ數人ヨリアリマス、
  順次之ヲ許シマス、荒川五郞君
  〔荒川五郞君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=46

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• 047・荒川五郎

  ○荒川五郞君　現政府ハ主トシテ己レノ黨利黨益ノ爲メニ
  沒頭セラレテ、國家ノ大事ヲ殆ド閑却セラレテ居ルト傳ヘラレ
  テ居ルノデアリマス、(「ノウ〓〓」)併シ政友會ノ諸君ガ
  ノウ〓〓ト言ハルヽ通リ、私ハ爾ク信ジナイノデアリマス、ソレデ
  アルノニ、然ルニ今玆ニ一言セナケレバナラヌ必要ガ生ジタノ
  デアリマス、何故デアルカト言ヘバ、議會ノ會期ハ三ヶ月デア
  ルト云フコトハ、政府是ハ御承知ダラウト思ヒマス、然ルニ今
  三月ノ切迫ニ拘ラズ、種々重要ナル大議案ハ、殆ド雨ノ如ク
  議會ニ降リ注ガサレテ來リツヽアルノデアリマス、中ニモ重要ナ
  ル議案ガ緊急動議デ提出セラレ、次ノ會日ニ直チニ緊急動
  議トシテ可決セラルヽガ如キ、殆ド只ダ其紙ヲ議會ニ通シサ
  ヘスレバ、以テ事足レリト云フガ如キ有樣ハ、大事ノ國務ニ
  對シテ、甚ダ不深切亂暴ノ至リデアルト私共ハ是マデ感ジ
  テ居ッタノデアリマス、(拍手起ル、「駄問ハ早ク止メ給へ」「早
  クヤレ」ト呼フ者アリ)、早クヤルコトヲ希望スルナラバ靜ニ御
  聽ナサイ、邪魔ヲスルカラ長クナルノデアリマス、(「簡單ニヤ
  リ給へ」ト呼フ者アリ)農工銀行ニ關スル事、或ハ勸業銀行
  貯蓄銀行ノ改正案ノ如キニ於テモ、多クノ議案ガ、多クノ人
  人ニハ知ラレヌ間ニ通過シツヽアルノデアリマス、(「ソンナ事
  ハ無イ」ト呼フ者アリ)併シ問題ニ依ッテハ、其時こヲ以テ生
  ズル問題モアリマスカラ、必ズシモ緊急動議ヲ私共ハ悉ク反
  對スル者デハアリマセヌ、然ルニ過日市制町村制ノ改正案
  ガ出サレマシタ、國家ノ基礎、地方ノ地盤ヲ成ス自治體之
  ニ關スル所ノ此重大ナル市町村制ノ案ガ出タ當時スラ、ソ
  レスラ吾とハ其提出ノ遲イノニ驚イタ「ノデアリマス、併シ是
  ニハ床次內務大臣ガ先々々ノ議會以來、此改正案ヲ出ス
  ト云フコトハ議會ニ言明セラレテ、既ニ其成案ハ夙ニここ出
  來テ居ッタト承ッテ居ルノデアリマズ、議會ガ斯ク亂暴ナ解散
  ナクシテ濟ンダナラバ、疾クニモ議會ニ出サレタ筈ノモノデア
  ル、然ルニンレガ黨派的情實ノ爲メニ、階級ヲ撤廢スベシ、撤
  廢スベカラズト云フヤウナ各自ノ自利自益ノ上ニ、實ニ陋劣
  千萬ナル卑ムベキ澤山ナルガヤ〓〓ノ議論ガ出タガ爲メニ、
  此大事ノ地方制度ガ換骨脫體セラレテ鶴案トナッテ、議會
  ニ現ハルヽニ至ッタカラ、ソレガ爲メニ該改正案ガ遅レラレタト
  云フコトハ、床次內務大臣ノ苦哀ニ對シテ、私共ハ聊カ同
  情ヲ表シテ此案ガ看過致シタノデアリマス、然ルニ今ヤ會期ヲ
  餘スコト僅々十日ト云フ此切迫ノ場合ニ當ッテ、國家ノ重大
  ナル此府縣制或ハ郡制ノ廢止案ノ如キヲ、突如トシテ此ニ出
  サルヽニ至ッテハ、吾〓ハ內務大臣ノ政治上ノ責任觀念ヲ疑
  ハザルヲ得ナイノデアリマス、(拍手起ル)何タル無責任ノ事
  デアリマセウカ、果シテ誠心誠意ニ地方ノ改良ヲ圖リ、國家
  ノ進運ヲ期スルモノデアルヤ否ヤ、口ニハ國ヲ念ヒ、又政治ニ力
  ヲ盡スト云フ人モ、此事〓貝ヲ奈何セン今玆ニ顯シツヽアル此
  事實ガ、誠意ニ政治ヲスルモノト云フコトガ言ハレマセウカ、
  (拍手)現政府ハ黨利黨略ニ耽ッテ、國家ノ大事ヲ忘レテ居
  ルト世間カラ言ハレテ居ル批難ヲ私ハ信ゼヌデ居ッタノデア
  リマスケレドモ、今日此席ニ斯ノ無責任ノ事實ヲ見ルニ至ッ
  テハ-私ハ實ニサウ諸君ニ嫌味ヲ言フノハ嫌ヒデ、平素
  言ッタコトモ無イノデアリマス、甚ダソレヲ嫌フノデアル、然ルニ
  今日ニ至ッテハ、遂ニ玆ニ內務大臣ニ向ッテ、責任ノ觀念ノ
  上ニ攻擊的質問ヲセザルヲ得ヌコトニナッタノデアリマス、內
  務大臣ノ如キ、此地方自治問題ハ年々歲々常ニ〓究サレ
  タルベキモノデ、今日突如トシテ湧イタ問題デナイ、ソレヲ斯
  ル會期切迫ノ今日ニ出シタト云フコトハ、政治家ノ良心ニ
  顯ミテ、之ヲ至當ト考へラルヽヤ否ヤ、私ハ實ニ是レ立法ノ
  府ヲ弄ブモノト思フノデアリマス、(拍手)而シテ今提出セラ
  レタル諸案ノ內容ハ如何デアルカト云フニ、内務大臣ノ說
  明セラレタル如ク、選舉權三圓ヲ只ダ直接國稅ニ變ヘタト
  云フノガ、府縣制改正案ノ骨子デアルノデアリマス、今會期
  切迫ノ場合ニ、何故ニ斯ル事ヲ出サナケレバナラヌカ、縣會
  ノ選擧ハ何年ノ後デアルカ、之ヲ運用シ働カスノハ何時デア
  ルカ、必ズシモ此切迫ノ場合ノ今日之ヲ出ス必要ハ無イ
  出シタ所ガ、是ハ一二年ノ間ハ高閣ニ束ネテ置カネバナラヌ
  モノデアル、若シ提出スルナラバ、此大事ナ案ハ早クヨリ議
  會ニ出シテ十分ニ審議討論ヲ盡シテ完璧ヲ求メ、サウシテ
  地方ノ政治ノ改良進捗ニ資スルコン、是レ大臣當然ノ責任
  デハアリマセヌカ、是ガ第一點ノ質問デアリマス、(「時間ヲ費
  スナ」ト呼フ者アリ)府縣制案ノ内部ノ各箇條ニ就テ、種々
  質疑ヲ致シタイ事ガアリマスケレドモ、氣短カナ先生ガ隨
  分少ナクナイカラ、是ハ其方ニ免ジテ省キマス(笑聲起ル、「皆
  ンナ省ケ」ト呼フ者アリ)、次ニ郡制廢止ノ問題デアリマス、郡
  制廢止ノ問題ハ、市町村ノ階級撤廢、若クハ府郡制ノ三圓
  納稅ヲ低下シタ如キトハ、決シテ同日ニ視ルコトノ出來ナイ、
  全國幾百ノ郡自治、ソレガ關聯シテ一般ニ關スル重要ナル
  問題デアリマス、然ルニ此問題ガ更ニ爰ニ初メテ出ルト云フ
  コトニハ、實ニ驚カザルヲ得ヌノデアリマス、今ノ政府ノ首班
  デアル原總理大臣ハ明治四十年ト覺エマス、郡制廢止ノ
  議案ヲ議會ニ出サレテ、爾來今日迄ノ問題懸案トナッテ居
  リマスケレドモ、原總理大臣、床次内務大臣ハ、爾來郡制ハ
  廢止スルコトニ腹ハ決メテ居ラレタノデハアリマセヌカ、(「ソ
  レカラドウシタ」ト呼フ者アリ)、何故ニ此會期切迫ノ今日ニ
  ソレヲ出シタノデアルカ、(笑聲起ル)、是ガ分ラヌノデス、(「君
  モ分ラヌヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)而カモ既往ノ政府ノ遣リ
  方ヲ顧ミレバ、未ダ是ニハ定見ガ無イト思ハレル所ガアル、
  何故ナラバ道路法案ヲ議會ニ出サレテ、ソレガ成立ッタノハ
  何時デアリマスカ、僅カ昨年ノ事デセウ、其道路法ハ今ヤ漸
  ク實施ニ掛ッタ位ノ法律デアリマス、其通路法ニハ郡道ナル
  モノヲ認メテ、郡自治ト云フ精神ヲ認メテ、其上ニ打立テラ
  レタ此法律デアリマセウ、明治四十年カラ以來、郡制ハ廢止
  スベシト云フ意見ヲ支持シテ居ラレタモノナラバ、何故ニ此
  道路法制定ノ當時ニ、郡道ナルモノヲ認メラレタノデアルカ、
  朝令暮改ト云ヒマセウカ、豹變無定見ト云ヒマセウガ、驚ク
  ベキノ至リデハアリマセヌカ、(拍手、「郡制廢止ニ反對カ」「何
  ダカ分ラヌ」ト呼フ者アリ)殊ニ只今内務大臣ノ說明ヲ承レ
  バ、郡費ガ少ナイ郡ノ事業ガ少ナイ、ソコデ郡ナルモノハ、
  之ヲ特別ニ存置スル必要ヲ認メヌ、斯ウ云フノデアリマ
  スケレドモ、內務大臣ハ確カ郡制ト云フ此大事ヲ法
  律ノ中ノ、大事ナ箇條ヲ御承知ナイノデハナイカト思フ、
  苟モ郡制ノ本文ヲ承知シタル者ナラバ、只今ノヤウナ
  議論ガ出ル譯ガナイト思ヒマス、何故ナラバ····(「君ヨリ
  カ餘計知ッテ居リマス」ト呼フ者アリ)マア御聽ナサイ、
  ト何故ナラバ郡ノ經費ガ少ナイ、郡ノ事業ガ擧ラナイト云フ
  ノハ、郡制ノ箇條ガサウナッテ居]ルノデアリマス、郡ニハ經費
  ノ徵收權ヲ許シテ居リマセヌ、此大事ナ働クベキ-何ヲ働
  クニモ金ガ無クテハナラヌ、其金ヲ自由ニ徵收スル權利ヲ與
  ヘナイ、此變則ノ郡制ヲ置イテ、サウシテ郡ニ金ガ無イ、郡ノ
  事業ガ擧ラヌトハ何事デアリマスカ、恰モ咽喉ヲ抑ヘテ脊中
  ヲ叩クヤウナモノデハアリマセカ、(拍手)サウシテ其制度ガ斯
  ル變則ナル制度デ、郡ノ活動ガ出來ナイヤウナ制度ヲ置イ
  テ、サウ云フ其制度ノ上ニ成來ッタル今日ノ費用ヲ計算シテ、
  ソレガ三千百餘万圓、府縣ノ二億何千万圓ニ較ベテ、少
  ナイナドヽ云フヤウナ事ヲ論ゼラレルト云フノハ、全ク制度
  ヲ顧ミナイ議論デアリマス、一、若若郡ニ事業ヲ、興サウ、郡ニ經
  費ヲ餘計入レヤウト思へバ、郡ニ費用ノ徴收權ヲ許シ、郡ニ
  完全ナル自由ノ活動ヲ許シタナラバ出來得ルノデアリマス、
  法制ノ上ニ堅ク締リヲ置イテ、サウシテ郡ノ仕事ガ無イト言
  ハレルガ如キハ、本末ヲ〓倒シタル驚クベキ議論ト謂ハナケ
  レバナラヌ、(拍手)此點ニ顧ミテ內務大臣ハ、郡制ヲ御承知
  ナイト私ハ考ヘルノデアリマス、(笑聲起ル、「君モ御承知アル
  マイ」ト呼フ者アリ)其邊ニ批評ヲスル人モ、郡制ヲ御承知
  ナイカラデアル(笑聲起ル)且又郡ニ、費用ヲ要スル事ガ少ナ
  イ、事業ガ少ナイト云フコトハ、是ハ却テ今日ノ幸福ヲ致シ
  テ居ルノカモ知レヌノデアリマス、若シ郡ニ自由ノ働ヲ許シ
  テ事業ヲサレタナラバ、或ハ今日ノ町村ハ財政枯渴シテ、町
  村ノ維持ガ出來ナイヤウニ至ッタカモ知ラナイ、、財政ハドレダ
  ケノ難義ニ陷ッテ居ルカモ知ランノデアリマス、府縣政ナル自
  治制アリ、其下ニ市町村アリ、其間ハ相當ノ調節ヲ保ッテ、
  格別玆ニ大働ノ出來ヌヤウナ相當ナ階段ヲ置イテアルノデ
  アル、其制度ノ可否ハ、別問題ト致シテ、今日右樣精神デ出
  來タ郡制制定ノ方針ニ顧ミテ、今床次內務大臣ガ之ヲ存
  スペカラズ、廢スルガ宜シイト云フ理由トセラルヽノハ、實ニ
  一文ノ値ハ無イ論デアリマス、(拍手起ル「廢止ニ反對カ賛
  成カ」「ソレガ質問デスカ」ト呼フ者アリ)諸君、凡ン居ハ氣ヲ
  移シ、養ハ體ヲ變ヘルノデアリマス、郡制ハ明治二十四年ニ
  布カレテ、全國一般ニ行ハレタル三十三年、最後ノ三十三
  年ヨリモ二十箇年ヲ經過致シテ居リマス、凡ソ諸種ノ制度
  ノ如キニシテモ、制度其物ニ伴ッテ自然ノ發達ガアルノデア
  リマス、進步ハ遲々トシテ居リマスケレドモ、併シ郡ノ事業ハ
  漸次ニ進ンデ居ル、其大ニ進マザルハ、制度ガ進マセナイノデ、
  郡ガ進マナイノデハナイノデアリマス、然ルニ今日ハ
  全國各郡トモ多ク種々ノ事業ガ出來マシタ、或ハ郡デ女學
  校、農學校、中學校ト云フヤウナ學校ヲ經營シテ居ル所モ
  アル、或ハ蠶業講習所其他ノ事業ヲ經營シ、又財產ヲ所有
  致シテ居ル所モアルノデアリマス、若シ郡ヲ發達セシメヤウト
  思ヘバ、相當ノ働ヲ得ルヤウニ致シタナラバ、郡ハ次第々々ニ
  發達シ得ルコトハ、郡ノ歴史ニ願ミテ決シテ疑フ餘地ノナイ
  ノデアリマス、(「ソンナ事ガ「質問デスカ」「要點ヲ早ク言ヘ」ト
  呼フ者アリ)斯ウ云フ譯デアリマシテ、内務大臣ノ述ベラル
  ル理由ハ更ハ其理由ヲ成サナイ、此地方自治ノ階級ニ關シ
  テ、地方自治ノ三階級-ヲ二階級ニスルト云フノハ、市ノ
  三階級ヲ二階級ニスルト云フノニ似タヤウナモノデアリマス
  ケレドモ、此三階級ヲ二階級ニスルガ良イカト一云フコトハ、殊
  ニ地方政治上ノ大問題デアリマスカラ、只今内務大臣ガ述
  ベラレタ御說明ノ如キハ、實ニ一文半錢ノ値ガ無]イト思ヒ
  マス、無價値ナル斯ル理由ヲ以テ論ジ去ルペキモノデハアリ
  マセヌ、敢テ問フ內務大臣ハ、此郡制廢止ニ對シ、之ヲ廢ス
  ペキ根據ニ就テ如何ナル理由ヲ持ッテ居ラレルカ、又世間ニ
  ハ郡役所ヲ廢スル其前提トシテ郡ノ自治ヲ廢シヤウト云フ
  議論ガアルノデアリマス、是ハ其議論ノ價値ハ別トシテ議論
  トシテハ一ツノ議論ヲ成スノデアリマス、然ルニ今我政府ハ
  郡役所ハ廢シナイノデアリマス、廢シナイコトハ別ニサウ云フ
  御說明ハ無イケレドモ、府縣制改正案ヲ見レバ、確ニ其箇
  條ガアルノデアリマス、郡役所ハ廢シナイ、郡役所ヲ廢セズシ
  テ郡ノ自治ヲ廢スルノミト云フコトハ、只ダ表面ニ自治ヲ廢
  スルト云フコトデ、內部ニ於テハ必ズ之ニ相當スル、自治ニ
  代ル必要ノ方法ヲ生ズルト云フコトハ明カデアル、何ガ故カ
  ト云ヘバ、若シ郡ニ財產ヲ持ッテ居レバ、其郡有財產ヲ管理
  スル方法ヲ決メナケレバナラヌ、又郡ノ各町村ガ組合ヲシテ
  學校若クハ試驗場其他ヲ維持スルト見レバ、郡全部ノ町村
  組合ヲ設ケテ、組合議員デソレヲヤラセナケレバナラヌ郡制
  ナラバ一ツノ郡會デ出來ルモノデ、若シ二ツカ』三ツノ事業ガ
  アレバ、其事業每ニ組合會議員ヲ置イテ-組合會ニ役員
  ヲ置イテヤラナケレバナラヌカラシテ、此郡制ヲ廢スルガ爲メ
  ニ費用ガドレダケ增加シテ來ルカ分ラヌト思フノデアリマス
  果シテ今日ノ場合ニ殊ニ二十年-初メヨリハ三十年モ釧
  致シ來ッタル所ノ郡制ヲ廢止シテ、サウシテ改惡ヲ致シテ、費
  用ヲ增シ、而シテ人民ノ不便利ヲ致スヤウナ事ヲ致シテ顧
  ミナイト云フコトニナルノデアリマスガ、内務大臣ハ以テ如
  何トセラルヽカ、殊ニ内務大臣最後ノ說明ハ、マルデ机上ノ
  空論デアル、簡單デアルガ、最後ノ說明ハ內務大臣自ラドウ
  スル積リデアルカ全ク空デアル、ソレハドウデアルカト云ヘバ
  郡ニ事業ガアレバ、ソレヲ或ハ府縣ニ移シ、或ハ町村ニ移ス
  ト云フノデアリマスガ、ドウシテ移シマスカ、府縣ノ府縣會ニ
  於テ、郡ノ學校ハ要リマセヌト言ッタラドウスル、町村ニ持ッテ
  行ッテモ、町村ガ受ケ付ケネバドウスルカ、斯ル大事ナ事業ヲ
  之ヲ府縣ニ移シ、又ハ町村ニ移ス、恰モ机ノ上ノ紙ヲ右ノ抽
  斗カラ左ノ抽斗ニ移スガ如クニ、此國家ノ活キタ仕事ヲ自
  由ニ分配シ得ルト思ハルヽハ、內務大臣ハ空疎ナル(「ノウ
  ノウ」ト呼フ者アリ)全ク空疎ナル、事實ニ接觸シ得ナイ政治
  家ト謂ハナケレバナラヌ、實際ニ於テ斯ノ如キモノハ斷ジテ
  出來得ルモノデハアリマセヌ、若シ幸ニ中ニ此事業ヲ府縣ニ
  取ッテヤリマセウト云フモノガアックラ難有イ、ソレハ中ニハア
  リマセウケレドモ、ソレヲ皆ナ此机ノ抽斗カラ出スガ如ク出
  來ルヤウニ考ヘルト云フノハ、全ク政治ノ實際ヲ知ラナイ空
  論政治家ノ爲ス所デアル、(「君ガ知ラナイ」ト呼フ者アリ)內
  務大臣、果シテ以テ如何トスル(笑聲拍手起ル)
  〔國務大臣床次竹二郎君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=47

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• 048・床次竹二郎

  ○國務大臣(床次竹二郞君)　御答致シマスガ、第一提出
  ノ期日ノ大ニ遲レタコト、種々ナル手續ヲ途中ニ要シタ爲メ
  ニ斯ノ如ク遲レタコトハ、是ハ洵ニ遺憾デアリマス、モウ少シ
  早ク提出スベキデアッタ、是ハ洵ニ遺憾デアリマス、去リナガ
  ラ郡制廢止ニ致シマシテモ、又府縣制等ノ事ニ致シマシテ
  モ、決シテ今日俄ニ起ッタ議論デナク、郡制廢止ノ如キハ、前
  ニモ申シタ如ク旣ニ確カ二囘デアッタカト思ヒマス、本院ヲ通
  過致シ居ル問題デアリマス、府縣制ノ選擧權ノ擴張ノ如キ
  モ、蓋シ今日ハ苟モ政治ニ關スル人とトシテハ、其必要ナル
  コトハ、申スマデモナク必要ト見テ居ラレルデアラウト思フ、
  提出ノ期限ハ遲レマシタガ、事ハ甚ダ世ノ中ニ知レテ居ル問
  題ノコトデアリマスカラ、定メテ諸君ニ於テモ御審議下サレ
  ルコトヽ私ハ信ジテ居ル、又左樣ニ御願致シタウゴザイマス、
  郡制ト道路法トノ事ニ就テ御話デアリマスガ、郡制廢止ノ
  事ハ、終始變リナク考ヘテ居ル所デアリマスガ、併ナガラ此
  廢止案ヲ提出スルト致シマシテモ、私ノ考トシテハ、他ノ地
  方制度改正ノ時期ニ同時ニ致スガ宜カラウト云フノデ、今
  日マデ差控ヘテ居ッタ次第デアリマス、昨年通路法制定ノ
  際ニ御質問モアリマシタガ、郡制廢止ノ意見ハ今日尙ホ持ッ
  テ居ルノデアル、但シ提出ノ時期ハ御話ハ申上ゲラレヌト
  斯ウ言ッテ御答シテアルノデアリマスカラ、其邊ニ於テハ何等
  變リハナイ積リデアリマス、ソレカラ郡ニハ財源ガ無イ、隨テ
  事業ガ無イノデアル、今日郡ハ餘リ働イテ居ラヌノハ制度ノ
  罪デアル、斯樣ナ仰セデアリマス、或ハ左樣デアルカモ知レヌ
  ト私モ考ヘル、卽チ左樣ナル詰ラナイ制度ハ廢メタラ宜カラ
  ウト云フノガ、矢張私ハ其廢止ノ一ツデアリマス、(拍手起
  ル)今日ノヤウナ事ヲシテ、何方ニモ付カヌヤウナ自治制ハ、
  畢竟スルニ地方ノ眞ノ自治ヲ進メル所以デナイト考ヘルノ
  デス、(拍手起ル)郡ノ事業ヲ如何ニスルカ、縣デハ受取ラヌ
  シ、町村デハ受取ラヌシ、誰モ受取ル人ガ無イトキニハ如何
  ニスルカト云フ御話デアルガ、眞ニ地方ノ福利ノ爲メニ必
  要ナル事業デアルナラバ、受取人ノ無イコトハナイト考ヘマ
  ス、何人モ受取ルコトヲ嫌フヤウナ事業ナラ、態ト拵ヘタ仕
  事デアリマスカラ、廢スルガ最モ可ナリト考ヘルノデアリマス、
  (拍手「ヒヤ〓〓」)其他ハ私個人ニ對シテ多ク御忠告ノヤウ
  ニモ承リマシタ、是ハ謹ンデ承ッテ置キマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=48

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• 049・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　大口喜六君
  〔大口喜六君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=49

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• 050・大口喜六

  ○大口喜六君　私モ此際內務大臣ニ質問ヲ致シテ置キタ
  イト思フノデアリマス、勿論詳細ナル事ハ委員會デ永リマス
  ル考デアリマスガ故ニ、極メテ重要ナル點、僅ニ三四點ヲ伺ッ
  テ置キタイト思フノデアリマス、先ヅ此府縣制ノ方ニ就キマ
  シテ伺ヒタイト思フノデアリマスガ、今囘此府縣制ノ改正ニ
  當リマシテハ、選擧權被選擧權ノ擴張ヲ行ハレマスノヲ眼
  目ト致サレマシテ、殊ニ是マデ選舉權ト被選擧權トノ間ニ
  納稅額ノ等差ガアリマシタノヲ、之ヲ撤廢致サレテ、只ダ單純
  ニ直接國稅ヲ納メテ居レバ宜イ、[斯ウ云フコトニ致サレマシ
  タル御返意ハ、先刻内務大臣ノ御說明ニ依ッテ大體ハ諒承
  致シタノデアリマス、是ニ於テ一ツノ疑問ガ起リマスノハ、ソ
  レダケニ爲サルナラバ、何ガ故ニ此直接國稅ヲ納メル者ト
  云フコトヲ存置セラレタノデアルカ、斯ウ云フ事ガ私共ニハ
  諒解ニ苦ムノデアリマス、卽チ現行ノ市町村制カラ申シマス
  レバ、公民權ヲ得マスルニハ、言フマデモナク直接國稅ハ納
  メテ居ラナケレバナラヌ者デアリマス、而シテ此府縣制ニ於
  キマシテ、府縣會議員ノ選擧權被選擧權ヲ得マスルノニハ、
  直接國稅ノ資格モアリマスガ、一面ニ市町村ノ公民タルコ
  トヲ要スルコトニナッテ居リマスガ故ニ、現行ノ市町村制カラ
  云ヘバ、既ニ公民權ヲ得テ居ル以上ハ、多少共直接國稅ヲ
  納メテ居ルノデアリマスガ故ニ、此箇條ハ要ラナイ譯ニナル、
  併ナガラ政府ハ只今市町村制ノ改正案ヲ本會ニ提出致シ
  テ居ラレマス故ニ、之ガ通過スレバ果シテドウナルモノデアル
  カ、是ガ一ツノ問題ニナルノデアル、卽チ今囘政府ガ提案シ
  テ居ラレル所ノ市町村制ニ於キマシテ、公民權ハ如何ナル
  者ニ得セシムルノデアルカト申シマスレバ、言フマデモナク種々
  ナル條件ガアリマスガ、其條件ノ一トシテ、直接市町村稅
  ヲ納メル者デナクテハナラナイト云フコトヲ、政府ハ提案致シ
  テ居ルノデアル、而シテ此直接町村稅トハ如何ナルモノデア
  ルカト云ヘバ、内務大藏雨大臣ガ市制町村制ノ定ムル所ニ
  依ッテ指定ヲ致シテ居リマシテ、只今告示ニ相成ッテ居ル其
  告示ニ依ッテ見マスト、直接國稅ガ直接府縣稅ニ對シテ市
  町村ガ附加稅ヲスル、其附加稅ハ卽チ直接市町村稅デア
  ル、斯ウ云フコトニ相成ッテ居ルノデアル、其外ニ直接町村
  稅ト云フモノハドレダケアルカト云ヘバ、極メテ僅カデアヽマ
  シテ、一般的ニハ反別割ガ一ツ、其外ニハ市町村ニ於テ特
  別稅ヲ設ケテ、其特別稅ニ對シテ、府縣知事ガ必要ト認メ
  テ禀申ヲ致シテ告示ヲ致シタモノダケガ、其市町村ニ限ッテ
  ノ直接市町村稅ト相成ッテ居ルノデアリマスガ故ニ、只今申
  シマシタ直接國稅ニ對スル市市村ノ附加稅、直接府縣稅
  ニ對スル所ノ市町村ノ附加稅、是レ以外ノ市稅ト云フモノ
  ハ、極メテ僅カナモノデナクテハナラヌノデアリマス、シテ見ルト
  今囘政府ガ程案サレタル所ノ市制町村制ガ議會ヲ通過致
  シマシテ、之ガ行ハルヽ場合ニナレバ、苟モ市町村ノ公民トジ
  テ公民權ヲ得ル者ハ、必ズ其半數ハ既ニ直接國稅ト云フモ
  ノヲ、二年以來納メテ居ル者デナクテハナラナイト云フコト
  ガ、理論ノ上カラモ實際ノ上カラモ明カニナルノデアリマス、然
  ラバ半數ハ如何ナル者デアルカト云ヘバ、直接府縣稅ヲ納
  メテ、ソレニ對シテ市稅ヲ附加サレテ居ル所ノ者デアルノデ
  アリマス、斯ノ如ク實際ニ相成ル場合ニ當ッテ、更ニ又此府
  縣稅ヲ提案ヲサレル、今囘提案サレタ府縣制ノ條文デ見ル
  ト、市町村ノ公民卽チ公民權ガアルコトガ第一必要デアル
  カラ、此中ニハ半分ハ直接國稅ニ依フテ公民權ヲ得タル者、
  半分ハ直接府縣稅ニ依ッテ公民權ヲ得タル者ト解釋シナケ
  レバナラヌ、然ルニ其上ニ一年以來直接國稅ヲ納メナケレ
  バナラヌト云フ條件ヲ付ケラレルト云フト、直接國稅ヲ納メ
  テ、其附加稅ニ依ッテ公民權ヲ得テ居ル所ノ者ニハ、此箇條
  ハ適用スル必要ハ無イコトニナルノデアリマス、當然直接國
  稅ハ納メテ居ル、納メナケレバ公民權ハ得ラレヌノデアリマス
  カラ、直稅國稅ニ對スル市町村附加稅ニ依シテ公民權ヲ得
  テ居ル者ニ對シテハ、此一箇年以内直接國稅ヲ納メルト云
  フコトハ、適用スル必要ガ無イコトニナルノデアル、卽チ此箇
  條ヲ適用サルヽハ何所デアルカト云ヘバ、直接府縣稅ヲ納
  メテ、此附加稅ニ依ッテ公民權ヲ得テ居ル者ノミニ對シテ、
  之ガ適用サレルコトニナルノデアル、卽チ同ジ納稅者デアッテ、
  直接國稅ニ依シテ公民權ヲ得テ居ル者ハ、洵ニ關係スル所
  ハ無イガ、直接府縣稅ヲ納メテ「居ル所ノ者デアルナラバ、二
  重ニ更ニ其上ニ國稅ヲ納メテ居ルコトヲ要求サレルコトニ
  相成ルノデアルト思フ、安貝際ノ上ニサウナル、蓋シ是ハ同ジ府
  縣會議員ノ選擧權被選擧權ヲ與ヘルニ於テハ、蓋シ論理ニ
  合ハナイ、頗ル不公平ナル組立デアルト私共ハ信ズルノデア
  リマスガ、是ニハ何カ特殊ノ理由ガアルノデアルカ、之ヲ第一
  私ハ承リテ見タイノデアリマス、殊ニ之ニ附加ヘテ中上ゲ
  テ見タイノハ、市制町村制ニ於テハ、今回政府ガ提案サレ、
  是マデハ直接國稅ニ依ッテ公民權ヲ定メラレテアッタモノガ、
  ソレヲ廢シテ、直接市町村稅ニ依ッテ公民權ヲ得ラレルコト
  ニ今囘改正サレタノデアリマス、シテ見レバ府縣會議員ノ選
  擧權被選擧權ヲ得ル上ニ於テハ、其市町村制ノ提案カラ
  行ケバ、直接府縣稅ヲ納メル者ニ對シテ、此選擧權被選擧
  權ヲ與ヘテ宜サヽウナモノデアルノニ、特ニ直接國稅ト決メ
  ラレタ理由ガ、吾〓ニハ分ラナイノデアリマス、サウ云フ事ニ
  ナレバ、益〓此直接府縣稅ト云フモノヲ納メテ、其附加稅ニ
  依ッテ公民權ヲ得テ居ル者ニ對シテハ、極メテ辛キ取扱ヲ致
  スト云フ結果ニ相成ルノデアルガ、此點ニ對シテ、政府ハ如何
  ナル論據アッテ斯ノ如キ提案ヲサレタノデアルカ、第一ニ此理
  由ヲ承リタイノデアリマス、次ニ承リタイノハ郡制ニ關スルコ
  トデアリマス、郡制廢スベシト云フノ御主意モ、先刻御說明
  ニ依クテ承リ、又只今荒川君ニ對スル御說明ニ依リマシテ、
  御主意ダケハ略、私共了解致シマシタガ、併ナガラ爰ニ一ツ
  承ッテ置カナケレバナラヌノハ、是マデ郡ノ廢置分合ヲ致ス場
  合ニハ、現行法ノ郡制ノ第三條ニ依ッテ致スノデアリマシテ
  法律ヲ以テ之ヲ定ムルコトニ相成ッテ居ルノデアリマスガ、今
  回郡制ガ廢止サレルド云フコトニ相成リマスレバ、將來郡ノ
  廢置分合ハ何ニ依ッテ爲サレル御考デアルカ、法律ニ依ルト
  云フコトハ消エテシマウノデアルカラ、ドウ云フ事ニ依ッテ此
  廢置分合ヲ爲サル御考デアルカ、是ハ極メテ大切ノ事デア
  リマスガ故ニ、此點ニ對シテ政府ノ見ル所ヲ承ッテ置キタイ、
  而シテ郡制ヲ廢シタル結果ハ、政府ハ行政整理ノ一端トシ
  テモ、或ハ郡役所ノ併合ヲ行ヒ、又ハ郡役所ヲ全廢シテ縣
  廳ノ出張所ヲ御置キニナリ、然ルベキ方法ヲ執ラレテ、獨リ
  郡制ヲ廢シテ自治體ヲ止メルバカリデナク、一面ニ於テハ行
  政上ノ整理ノ實ヲ擧ゲラレルデアラウト思フノデアルガ、ソレ
  ニ對シテ政府ハ如何ヤウナル成案ヲ持ッテ居ラレルカ、此三
  點ニ就テ御答辯アランコトヲ希望致シマス(拍手)
  〔國務大臣床次竹二郞君登壇、拍手〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=50

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• 051・床次竹二郎

  ○國務大臣(床次竹二郞君)　只今ノ御導ニ御答シマス
  ガ、「國稅」ト云フ字ヲ殘シマシタノハ、御承知ノ如ク只今マ
  デハ公民權ニ加フルニ、直接國稅三圓以上ノ納稅資格ヲ
  以テ致シタ譯デアリマス、大體ノ主義ハ現行法ヲ其儘襲ヒ
  マシテ、唯ダ國稅ノ納稅ノ要件ヲ引下ゲタニ止マル譯デアリ
  マス、卽チ現行法ヲ唯ダ程度ヲ引下ゲタト云フコトニ止マル
  次第デアリマス、デ重複ハ致スマイト「思ヒマス、公民權ヲ制
  限スルニ、國稅ノ納稅者ト云フコトヲ以テスルノデアリマス
  カラ、重複ハ致スマイト考ヘマス、ソレカラ將來郡ノ廢置分
  合ノアリマスル際ハ。法律ヲ要セヌコトニナラウト思ヒマス、命
  令ヲ以テ出來得ルト考ヘマス、隨テ左樣ナコトニ相成リマスレ
  バ、例ヘバ衆議院議員選擧法ノ選擧區ノ如キガ、命令ノ爲
  メニ動クヤウナコトニ相成ッテハナラヌトー考へマシテ、爰ニ衆
  議院議員選擧區ニ關スル法律案ヲ提案致シタ譯デアリマ
  ス、尙ホ最後ニ御導アリマシタ自治體トシテノ郡ヲ廢シテ以
  後、或ハ行政區トシテノ郡ヲ廢合スル考デモアルカト云フコ
  トニ就テハ、單ニ自治體トシテ存セヌ以上ハ、行政區トシテ
  ノ存廢ハ餘リ必要ハアルマイカト思ヒマス、併ナガラ御導ハ
  郡役所ノ廢置分合ヲ致スコトハナイカト云フコトニ、結局ナ
  ルデアラウト思ヒマスガ、郡役所ハ多少其數ヲ減ジ得ルト考
  ヘテ居リマス、的確ナ數ハ今此所デ申上ゲルコトハ出來マセ
  ヌガ、自然左樣ナ事ハアリ得ルト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=51

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• 052・大口喜六

  ○大口喜六君　簡單デアリマスカラ、此席カラ申上ゲマス、
  只今ノ御答ニ依リマシテ、郡制ニ關スル方ハ大體了解致シ
  マシタ、併ナガラ府縣制ニ關シマスル方ハ、私ノ質問ヲ致シ
  タ點ニ少シモ御答ガ無イヤウニ思フノデアリマス、大體法文
  ヲ見マシテモ、是マデ直接國稅三圓トカ十圓ト一カアリシモノ
  ガ.金額カ取去ラレテ、格ガ下ッタモノデアルト云フコトハ、質
  問ヲ致けナクテモ能ク判ッテ居ルノデアリマス、其結果先刻
  私ガ演壇ニ於テ述ベタ如キ事ガ出來ルカ、其不公平ニ對シ
  テ、政府ハ何ト御考ニナッテ居ルカト云フ質問ヲシタノデアリ
  マス、卽チ直接國稅ヲ納メル者ガ、其附加稅ニ依ッテ公民權
  ヲ得テ居ル者ハ是デ宜シイノデスガ、直接府縣稅ヲ納メテ
  居ッテ、其附加稅ニ依ッテ公民權ヲ得ル者ニ對シテハ、一方
  ノ者ト比較シテ不公平デアル、卽チ府縣稅ノ納入ヲ要求シ
  テ居ル者ニ對シテ、不公平ニ當ルデハナイカト云フ質問デア
  リマス、之ニ對シテ御答辯ヲ要求致シマス
  〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=52

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• 053・床次竹二郎

  ○國務大臣(床次竹二郞君)　御答致シマスガ、府縣稅ノ
  納稅者ト云フ者ハ、今日ノ府縣制ノ上ニモ認メテア」リマセ
  ヌ、御承知ノ如ク市町村稅竝ニ國稅ノ若干以上ヲ納メル
  者ヲ以テ、資格者ト致シテ居ルノデアリマス、之ヲ府縣稅ノ
  納稅者ヲ以テ尙ホ有權者トスルヤ否ヤト云フコトハ、確ニ
  一ノ議論デアリマス、ソレモ立テ方ニ依ッテ宜シカラーウト思フ
  ノデアリマス、併ナガラ是ハ其點ニ就テハ現行法其他ヲ襲ウ
  テ、別ニ變ヘルコトヲ致サナカッタ、唯夕程度ヲ下ゲルダケデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=53

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• 054・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　高木正年君
  〔高木正年君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=54

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• 055・高木正年

  ○髙木正年君　只今荒川、大口君ニ依ヲテ、私ノ問フベキ
  所ノ大體ハ分明致シタノデアリマス、唯タ一ツ府縣制ノ上
  ニ就テ、最モ諒解ニ苦ンデ居ル點ガアルノデアリマス、改正
  府縣制ノ第四條ニ、府縣知事ハ府縣會ノ決議ヲ經、内務
  大臣ノ許可ヲ受ケテ、前條ノ規定ニ基キ數箇ノ選舉區ニ分
  ツコトヲ得ルト云フ箇條ガアルノデアリマス、其內容ヲ申シ
  マスレバ、從來郡ヲ單位トシタ所ノ府縣會議員ノ選擧區ハ、
  府縣會ノ決議ヲ經テ、內務大臣ノ許可サヘ受ケレバ、之ヲ
  數箇ニ分ツコトガ出來ルト云フ箇條デアル、讀來リマスト何
  等ノ意味モ無イヤウデアリマスケレドモ、府縣會一ノ實際ノ上
  ニ於キマシテ、此箇條ハ事口現在ノ制度ヲ、惡化スルヨリ外
  ナイト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、斯ク申シマスルト議論ノ
  ヤウデアルガ、少シク其事情ヲ申申マ】スレバ、元來選擧區ヲ
  細カニ分ケルト云フコトハ、要スルニ地方問題ヲ惹起スルト
  云フ弊ガ益〓殖ユテ來ルノデアリマス、郡ノ中デモ河ヲ以テ其
  利源トナス所モアレバ、山ニ依ッテ郡ヲ成シテ居ル所モアル、
  又海ニ依シテ是等ノ業務ニ依ッテ、多クノ人口ヲ集メテ居ル
  所モアル、若シ之ヲ一郡ノ上ヨリ選出致シマスレバ、大體
  ノ利害ヲ考ヘテ、其上ニ是等ノ府縣會議員ガ、一代表的ニ府
  縣會ノ上ニ集ッテ論議スルノデアリマス、若シ斯樣ニ分レマ
  ストキニハ、勢ヒ數箇町村若クハ有力ナル五六ノ町村ハ、其
  所ダケガ集ッテ一府會議員ナリ一縣會議員ヲ出スト云フコ
  トニナル、實際行ハレル上ノ利害ノ上ニ就テ、斯ノ如キハ徒
  ラニ府縣會ニ於テ小ナル地方ノ問題ノ爲メニ騒擾ヲ惹起
  スル仲立トナルトモ、決シテ公平ナル。結論ヲ得ル途デナイト
  云フコトハ分ッテ居ルノデアリマス、(拍手)現ニ昨年ノ臨時
  議會、本年ノ此帝國議會ニ、何故ニ斯ク每日澤山雨ノ如
  ク議案ガ降ッテ來ルカト云フト、是ハ要スルニ大選擧區ヲ小
  選擧區ト更へタ結果、各〓片ズミタル所ノ地方ノ利害ヲ持
  出シテ、中央ノ此議場ノ問題ニスルト云フコトハ、自然是ガ
  起ルノデアル、如何ナル理想ノ人ト雖モ、其立場トシテ選バ
  レタル地方ノ爲」ニニ、膝ヲ屈セザルヲ得ナイ今日狀態ニ
  ナッテ居ルノデアル、衆議院議員選擧區制改正ノ結果、斯ノ
  如クナッタコトハ、諸君自ラ此事ハ御了解ニナッテ居ルコトヽ
  思ヒマス、況ヤ府縣ノ上ニ於テ斯ノ如キ事ヲ爲スコトハ、
  暫ク黨略上之ヲ利用セズトシテモ、其害ノ及ポス所ハ、ドレ
  ダケ甚大デアルカト云フコトハ考ヘテ見ネ』バナラヌ、(拍手起
  ル)況ヤ府縣會ニ於テハ、恐ラクハ中央政界ヨリモ一層所謂
  黨弊ト云フモノガ多イ、黨ノ力ト云フモノガ一方ニ偏スルノ
  デアル、其場合ニ於テ郡ノ狀況ニ依ッテ、所謂黨派ノ消長若
  クハ黨略上、徒ラニ一郡ヲ數箇ニ分ケテ選出シテ、府縣會
  議員ヲ私スルト言フト少シ語弊ガアルカ知ラヌガ、所謂製造
  スル爲ニ各選舉區ヲ分ツト云フコトニナッタナラバ、寧口今
  日ノ府縣會ハ無キニ優ル結果ヲ得ルカ知レヌノデアリマス、
  何故ニ政府ハ第四條ニ一項ヲ加ヘテ、斯ノ如ク將來ニ弊害
  ノ起ルモノヲ御拵ニナッタカ、此點ニ就テ簡明ナル內務大臣
  ノ御答辯ヲ承リタイノデアリマス、(拍手起ル)第二ハ郡制ノ
  事デアリマス、荒川君モ色〓仰セガアリ、大口君モ此事ニ就
  テハ有力ナル御質問ガアリマシタガ、私ハ此問題ニ就テ、最
  モ露骨ニ政府ガ今ノ郡制施行ト或法律施行ノ上ニ、行詰ッタ
  政策ノ結果デアルト云フコトヲ自白セラレンコトヲ望ムモノ
  デアリマス、斯樣ニ申スト、如何ニモ突飛ナ事ヲ申スヤウデア
  リマスガ、忘レモ致シマセヌ、大正八年春ノ議會デアリマス、
  道路法案ガ出テ、私モ當時審議ニ與ッタ一人デアリマスガ、凡
  ソ道路法施行ノ上ニ於テ、徹底スベカラザルモノガ幾多アリ
  マシタケレドモ、其中ニ郡道ナルモノ程、徹底シナイ事柄ハ無
  イト當時認メタノデアリマス、荒川君モ言ハレタ通リ、郡ナ
  ルモノハ收稅力ヲ有ッテ居ラヌ、郡會デ決メレバ之ヲ町村ニ
  割當テル、町村ニハ所謂納稅ノ制限ガアル、郡會カラ澤山
  ノ金ヲ割當テヽ來タ所ガ、町村自身ハ或ハ之ガ爲メニ〓育
  費ノ幾分ヲ割イテ、〓育ヲ廢シテモ郡費ヲ辨ジナケレバナラ
  ヌト云フ行詰タ結果ガ來ルノデアリマシテ、已ムヲ得ズ郡ノ
  賦課力ト云フモノハ最モ少ナキ程度ニ行ハレル、無クモガナ
  ト言ッタ內務大臣ノ自由ハ、卽チ此事ヲ意味シテ居ルノデア
  ル、制度ノ罪デアルト申セバ申スガ、畢竟道路法ノ上ニ郡道
  ナドヲ置イテ、此郡道ノ負擔ノ上ニ就テ必ズ政府ハ行詰ッテ、
  郡制廢止嘗テヨリノ理想デアルト申シナガラ、突然今日之
  ヲ御提出ニナッタノハ、現內閣政策ノ行詰リノ結果、斯ノ如キ
  事ガ生ジタト私ハ斯ウ了解ヲ致シテ居ルノデアル、此所デ承
  リタイノハ、郡制ヲ廢止シタ後ノ事デアリマス、私共ハ郡制ヲ
  廢シタ後ノ處分ガ最モ善良ニ解決セラルヽナラバ、必ズシモ
  郡制廢止ニハ反對ヲシナイノデアリマス、有體ニ言ヘバ更ニ
  郡役所ヲパ廢シテ貰ヒタイ、郡役所ヲ廢シテ、何カ此間ニ行
  政機關ノ運轉ノ上ニ就テ、特殊ナル方法ヲ設ケテ置キマシ
  タナラバ、今日郡役所ガ徒ラニ中間ノ機關トナッテ用ヲ澁滯
  サセルダケデアッテ、毫モ郡役所ハ用ヲ機敏ニ爲スノ機關ニ
  ナラヌノデアリマスッソレ故ニ郡制ト共ニ郡役所ヲ廢シテ貰
  ヒタイガ、郡制ヲ廢スル上ニ承リタ]イ事ハ、現在手ヲ著ケテ
  居ル所ノ〓育、衞生-衞生ト云ヘバ主ニ避病院、〓育ト
  云ヘバ或ハ特殊ノ學校、餘リ課程ノ高クナイ所ノ學校ヲ立ツ
  テ居ルガ、一番困難ナノハ所謂郡道デアリマス、此將來ヲド
  ウ爲サル積リデアリマスカ、之ヲ府縣費ニ引繼グ積リデアル
  カ、町村ノ組合ニ負擔サセル積リデアルカ、之ヲ府縣ノ上ニ
  引繼グナラバ私共ハ之ニ深ク反對ヲシナイガ、之ヲ町村組
  合ニ負擔サセルト云フコトニサルト、元來今日ノ郡道ナルモ
  ノヽ性質ヲ考ヘマスト、道路法ノ規定ニ依クテ、郡ノ中央カラ
  出發シテ或ハ港灣ニ行タトカ、或ハ停車場ニ行クトカ、色と
  ナ道路ノ著ケ方ガ道路法ニ決"テ居ルガ、道路ヲ著ケル數
  箇ノ町村ガ、必ズシモ道路ト利害ヲ一ニシテ居ラヌ非常ニ
  厚薄ガアルカラ、之ヲ町村組合ノ上ニ入レルト云フト、必ズ
  今日ノ道路ト云フモノハ恐クハ荒廢ニ屬スルモノガ多イ、ソ
  レ故ニ郡制存置ノ上ニ於ケル郡道モ宜シクナイガ、郡制ヲ
  廢シタ後ノ此郡道ナルモノヽ將來ト云フモノモ、頗ル是ハ考
  フベキモノデアルト私共ハ思フノデアル、ソレ故ニ是等ノ善後
  處分ニ就テ、政府ハドウ云フ御考ニナッテ居ルカ、此點ニ就
  テ政府ノ御答ニ諒解ヲ得レバ、私ハ郡制廢止ニハ必ズシ
  モ反對スベキデナイト思ッテ居ルノデアル、以上申上ゲマシタ
  通リニ、郡制第四條及郡制ノ上ニ就キマシテ、私ノ疑ノ存
  シテ居ル點ニ就キマシテ、明快ナル御答ヲ煩シタイト思フノ
  デアリマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=55

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• 056・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　床次內務大臣
  〔國務大臣床次竹二郎君登壇、拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=56

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• 057・床次竹二郎

  ○國務大臣(床次竹二郞君)　高木君ニ御答致シマスガ、
  府縣制ノ第四條ハ此度ノ改正ニ依リマスト云フト、選擧有
  權者ノ數ハ今日ノ約倍數ニナリマス、今日最モ困ッテ居ル事
  ハ、選擧費ノ多クヲ要スルト云フコトデアリマス、デソレ故ニ
  御承知ノ如ク現在府縣會議員ノ選擧區ハ、郡ヲ以テ選擧
  區ト致シテ居リマスノデ、或ハ一郡一名ノ所モアリマスガ、ー
  郡數名ヲ出シテ居ル所モゴザイマス、是等ニ於テハ、便宜郡
  內ニ選擧區ヲ設ケテ選擧スルト云フコトガ、或ハ適當デハナ
  イカト考ヘル、ソレ故ニ是ハ縣ノ意ニ任セテ、選擧區ヲ設ケ
  得ルト云フコトニ致シタ方ガ宜カラウト云フ考デ、第四條ヲ
  設ケタ次第デアリマス、ンレカラ郡制廢止ノ結果、種々ノ事
  業ヲ如何ニ引繼處分スルカト云フコトニ就テハ、廢止案第
  二條ニ依シテ御承知ヲ願フ次第デアリマスガ、只今ノ御尋ハ
  專ラ道路法施行ノ結果、郡道ナルモノガ出來テ居ルガ、ソレ
  パ如何ニスルカト云フコトニ御質問ノ眼目ガ在ッタヤウニ思
  ヒマス、ソレハ郡道ハ將來准府縣道トシテ、府縣知事ヲシテ
  認定管理セシメル、斯ウ大體ニ致シマシタナラバ、宜シカラウ
  カト云フ考ヲ持ッテ居リマスガ、或ハ其費用ハ府縣費ノ負擔
  トシテ、關係町村ニ一部ヲ分擔セシメルト云フヤウナコトモ
  宜カラウカト思ヒマスガ、兔モ角准府縣道ト云フヤウナコト
  ニ致シテ處分ヲ致シタラ宜シカラウカ、併シソレニハ何レ道
  路法ノ改正ヲ致サナケレバナラヌ、大體ノ考ダケヲ申上ゲテ
  置キマス(拍手)

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• 058・高木正年

  ○高木正年君　簡單デスカラ此席デ···

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• 059・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　高木正年君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=59

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• 060・高木正年

  ○高木正年君　前ノ府縣制第四條ノ事ニ就テ一應申上
  ゲマス、内務大臣ガ選擧人ノ增加ノ結果、其爲メニ幾分選
  擧區ヲ分ケタ方ガ選擧ノ手數ヲ減ズルノデアラウト云フ御
  言葉ガアリマシタガ、是ハ分ケルモ分ケナイモ別ニ手數ニ變
  リハナイ、一郡役所ニ總テノ選擧人ヲ集メルトキナラバ、郡
  ノ大小若クハ廣狹等ニ依ヲテ、數區ニ分ツト云フコトハ無論
  當然デアルカモ知レマセヌガ、各役所へ投票ヲ集メルノデア
  ルカラ、候補者ハ便宜トスルノデアリマスガ、候補者ノ便宜
  トスル所ハ、軈テ一方ニ今申上ゲタ通リ種々ナル弊害ガ起
  ル、此點ニ就テ的確ナル御答辯ガ無イヤウデス、併シ內務大
  臣ハ只今或ハ其方ガ便宜デアルト云フ御言葉ハ、第四條ヲ
  御決メニナッタ上ニ、確タル御確信ガ無イト云フコトヲ、或
  ト云フ御言葉ガ言ヒ表ハシテ居リマスカラ、此上私ハ追窮ハ
  致シマセヌ
  〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=60

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• 061・床次竹二郎

  ○國務大臣(床次竹二郞君)　只今ノ御質問デモナカッタ
  ヤウデアリマスケレドモ、併シ條文ガ「縣ハ選擧區ヲ設クルコ
  トヲ得」トナッテ居リマスカラ、「或ハ」ト云フ言葉ヲ使フノハ當
  然ダト私ハ思フ(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=61

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• 062・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　井上孝哉君
  〔井上孝哉君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=62

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• 063・井上孝哉

  ○井上孝哉君　私ハ府縣制改正ニ就キマシテ簡單ニ御尋
  ヲ致シマスガ、府縣制改正ノ機會ニ於キマシテ、現在ノ七ツ
  ノ府縣ニ於テ施行サレテ居リマス所ノ三部會制度ハ、之ヲ
  廢止セラレルノ御見込ヲ御持ニナッテ居リマスカト云フコ
  トガ伺ヒタイノデアリマス、選擧法ガ改正ニナリマシテ、選擧
  權ガ擴張サレマシテ、適材ガ選出サレマシテモ、若シモ縣會ノ
  組織ニ於テ缺クル所ガアリマスレバ、適當ナル決議ヲ得ルコト
  ガ出來ナイデアラウト云フ遺憾ガアリマス、恰モ建築ニ於キマ
  シテ、杉檜ノ良材ヲ用井マシテモ、其設計、其組立ガ惡カッタナ
  ラバ、其建築ノ價値ハ頗ル少ナイコトニ歸著ヲ致シマセウ、
  今日ノ三部會制度ハ、明治十三年竝ニ十四年ノ布告ニ於
  キマシテ定メマシタル制度デアリマシテ、其當時ハ名古屋若
  クハ神戶、橫濱等ニ於キマシテモ、僅ニ六七万人、若クハ七
  八万人ノ人口デアッテ、其當時其事情ニ於テ必要ガアッテ、
  斯ノ如キ制度ガ設ケラレタモノデアルト存ジマスガ、爾來大
  ナル年所ヲ經テ、今日ノ事情ニ於キマシテハ、其設ケマシタ
  當時ノ理由ハ全ク消滅ヲ致シマシテ、今日ニ於テハ斯ノ如
  キ制度ハ不利ガアリマシテモ、利益ノ無イモノデアラウト存
  ジマス、諸般ノ制度ノ御改正ニ頗ル急ガレテ居リマス今日ニ
  於キマシテ、斯ノ如キ制度ハ全ク速ニ御廢止ニナル御見込
  ガアリサウナモノデアラウト信ズルノデアリマス
  〔「八百長」「ソレハ內務省ヘ行ッテ聽クガ宜イ」ト呼フ
  者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=63

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• 064・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ····

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=64

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• 065・井上孝哉

  ○井上孝哉君(續)　一縣ノ經濟ガ三ツニ分タレマシテ、縣
  會ガ三ツモアリマシテハ、洵ニ以テ窮窟ナル狀態デアリマス、如
  何ニ議員ガ抱負ヲ持ッテ縣政ニ參與シヤウト思ヒマシテモ、
  此方ニ差支へ、此方ニ差支へ、殆ド議員ガ十分ナル才能ヲ
  用井ルノニ頗ル窮窟ヲ感ジテ、總テノ議員ガ殆ド迷惑ヲ致シテ
  居ル狀態デアルト確信ヲ致シマス、當局モ之ガ爲メニ迷惑シ
  議員モ之ガ爲メニ迷惑ヲスル、其迷感ハ尙ホ忍ブベシト致シマ
  シテモ、縣民ガ縣政ノ發達ノ爲メニ、大ナル遺憾ヲ免レナイ
  デアラウト存ジマス、私ハ現在ノ三部會制度、卽チ連帶ノ縣
  會アリ、市部會ノ縣會アリ、又郡部ノ縣會ガアッテ、三ツモ縣
  會ガ一府縣ニアリマスコトハ、恰モ二人三脚ノヤウナ狀態ダ
  ト存ジマス、市部ト云フ一人アリ、郡部ト云フ一人アッテ、連
  帶ノ會議ト、市部會ト、郡部會ノ三脚ガアルガ如ク形ヲ成シ
  テ進マウトシテモ、思フヤウニ進マレズ、止マラムトシテモ意ノ
  如クナラズ、往々ニシテ未議了復タ未議了ニ終ルコトガ頻々
  ト行ハレテ居ルノハ、實ニ此三部會制度ノ結果デアルマイカ
  ト存ジマス、政府ニ於キマシテハ(「何ダ其話ハ」ト呼フ者ア
  リ)斯ノ如キ制度ハ一府縣ヲ一自治體ト認メマシタ所ノ
  主義ニ對スル、大ナル障害ヲ與ヘルモノデアルト御考ニナリ
  マスマイカ、此邊モ重ネテ御伺ヲ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=65

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• 066・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　床次內務大臣
  〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=66

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• 067・床次竹二郎

  ○國務大臣(床次竹二郞君)　御答致シマスガ、此度ノ府
  縣制ノ改正ハ、選擧權ノ擴張竝ニソレニ伴ッタ事ト併セテ、
  僅カナ小サイ事ニ就テ改正ヲ主トシテ企テル積リデアリマ
  ス、只今御話ノ如キ事ハ、確ニ論議スベキ一ツノ點デアリマ
  スルケレドモ、マダサウ云フヤウナ事ヲ吟味致シマシタナラバ
  外ニモゴザイマスガ、是ハ他日ニ致シタイ積リデ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=67

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• 068・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　是デ質疑ハ終リマシタ、右五案ノ
  審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ニ供シマス
  第六右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
  選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=68

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• 069・岩崎勲

  ○岩崎勳君　右五案ヲ一括シテ、濱田國松君外二名提
  出ノ府縣制中改正法律案外六件ノ委員ニ、併セテ付託セ
  ラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=69

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• 070・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　岩崎君ニ御尋シマスガ、濱田國松
  君ノ案ハ旣ニ撤回サレマシタガ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=70

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• 071・岩崎勲

  ○岩崎動君　濱田國松君ノ撤回シタノハ、町村制ト市制
  ダケト思ッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=71

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• 072・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　サウデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=72

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• 073・岩崎勲

  ○岩崎動君　府縣制ハ撤回ニナッテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=73

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• 074・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　居リマセヌカ-岩崎君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=74

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• 075・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程
  第七第八ハ同一委員ニ付託シタル議案ナルニ依リ、一括シ
  テ議題ニ供シマス、日程第七、產業組合法中改正法律案、
  日程第八、住宅組合法案ヲ一括シテ第一讀會ノ續キヲ開
  キマス、委員長福井三郞君
  第七產業組合法中改正法律案(政府提
  〓第一讀會ノ續(報告(記憶小池)
  報告書
  一產業組合法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十年三月十四日
  產業組合法中改正法律案委員長
  福井三郞
  衆議院議長奥繁三郞殿
  第八住宅組合法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(Saturday.
  報告書
  一住宅組合法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十年三月十四日
  住宅組合法案委員長
  福井三郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  〔福井三郞君登壇、拍手〕
  〔「大ニヤレ金覆輪」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=75

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• 076・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　私語ヲ禁ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=76

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• 077・福井三郎

  ○福井三郞君　ナニ無禮ヲ言フト承知シナイゾ、生意氣ニ
  何ダ、(笑聲起ル)本案ハ二案共一〓ニ報告ヲ致シマスカラ
  シテ、其御積リデ御聽取ヲ願ヒマス、二案共ニ大變三評判
  ノ好イ案デゴザイマシテ、此議會ノ委員會ニ罕ニ觀ルベキ、
  和氣靄々ノ委員會デゴザイマシテ、一人ノ異論者モ無ク、大
  シタ質問モ無シ致シマシテ、二案共滿場一致ヲ以テ原案ノ
  通リ可決ニナリマシタノデアリマス、此外ニ何モ御報告申ス
  事ハゴザイマセヌガ、唯ダ附ケテ一言申シテ置キタイノハ、國
  民黨選出ノ委員、憲政會選出ノ委員兩方カラ、是ガ法律ト
  ナッテ實際ニ行ハレル時分ノ注意希望トデモ云ヒマスカ、
  二點ノ附加ガアリマシタ、是モ御報告シテモ宜シウゴザイマ
  スケレドモ、大抵速記錄ニ載ッテ居ルダラウト田心ヒマス、氣早
  ノ諸君ハ御覽ニナッテ居ルダラウト思ヒマスカラ別ニ御報告
  申シマセヌ、以上御報告ヲ申上ゲテ置キマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=77

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• 078・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　兩案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ諮
  リマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=78

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• 079・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=79

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• 080・岩崎勲

  ○岩崎勳君　日程第七第八ノ兩案、一括シテ直チニ其
  第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ可
  決確定アランコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=80

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• 081・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中野君靜ニ-周圍ノ人ハ構ハヌ
  ヤウニ靜ニ著席ナサイ-靜ニナサイ、岩崎君ノ動議ニ對シ
  テ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=81

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• 082・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナイト認メマス、仍テ直チニ
  兩案ノ第二讀會ヲ開キマス
  產業組合法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  住宅組合法案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=82

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• 083・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郎君)　御異議ナイト認メマス、仍テ兩案
  ハ委員長報告通リ可決確定致シマシタ
  〔「暴レテ見ヨ」「著炭默レ」ト呼フ者アリ其他發言ス
  ル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=83

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• 084・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニナサイ-靜ニ-靜ニナサイ、
  日程第九第十ハ同一委員ニ付託シタル議案ナルニ依リ、一
  括シテ議題ニ供シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=84

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• 085・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　日程第九、明治四十一年法律第
  三十五號中改正法律案、日程第十、小田原電氣鐵道株
  式會社所屬軌道經營廢止ニ對スル補償ノ爲公債發行ニ
  關スル法律案ヲ議題トシ、其第一讀會ノ續ヲ開キマス、委
  員長ノ報告ヲ求メマス、委員長米田穰君
  第九明治四十一年法律第三十五號中改
  正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(報〓調節
  報告書
  一明治四十一年法律第三十五號中改正法律案(政府
  提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十年三月十四日
  明治四十一年法律第三十
  五號中改正法律案理事
  大石大
  衆議院議長奧繁三郞殿
  第十小田原電氣鐵道株式會社所屬軌道
  經營廢止ニ對スル補償ノ爲公債發
  行ニ關スル法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長
  報〓
  報告書
  一小田原電氣鐵道株式會社所屬軌道經營廢止ニ對ス
  ル補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十年三月十四日
  小田原電氣鐵道株式會社所屬
  軌道經營廢止ニ對スル補償ノ爲
  公債發行ニ關スル法律案理事
  大石大
  衆議院議長奧繁三郞殿
  〔米田穰君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=85

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• 086・米田穰

  ○米田穰君　報告致シマス、第一案ハ明治四十一年ノ法
  律第五十五號中ノ改正案デアリマス、此改正ノ趣意ハ、樺
  太廳ニ於ケル〓員ノ優遇ニ關スル案デアリマス、此案ガ改
  正ニナリマスルト、從來一方ノミヲ待遇シテ居リマス事柄ガ、
  今後從來ノ如ク廳立小學校ノ〓員ト、公立學校ノ〓員ト
  同一ノ待遇ヲ受ケルコトニナルノデアリマス、仍テ委員會ハ
  愼重審議ノ末、最モ良案ナリトシテ、一人ノ異議者ナク、滿
  場一致ヲ以テ可決致シタ次第デアリマス、(拍手)次ハ小田
  原電氣鐵道株式會社所屬軌道廢止ニ對スル補償ノ爲公
  債發行ニ關スル法律案、是ハ小田原ノ電氣軌道デアリマス
  ルガ、御承知ノ熱海線ガ開通ニナリマスルト同時ニ、此軌道
  ノ中小田原カラ國府津間、此間ガ自然廢線ニナルノデアリ
  マス、ソレニ對スル補償デアリマスルノデ、委員會ハ屢、質問ヲ
  重ネマシタガ、殊ニ公債ノ利子ニ對シテ各派其將來ヲ慮リ、
  又今後補償ヲ與ヘル上ニ於テモ、非常ニ憂慮セラレタ點デ
  アリマス、此利子支拂ニ對シマシテハ、政府ハ斯ク答辯ヲ致
  シタ次第デアリマス、公債ヲ發行シマシタル以後デナケレバ、
  利子ヲ拂フコトハ不可能デアル、併ナガラ省線ガ運輸ヲ開
  始シタ結果會社ガ實際ニ於テ損害ヲ被ル場合ニ於テハ、ソ
  レハ政府ニ於テモ調査ノ末考慮ヲ要スル次第デアル、謂ハ
  バ損害ヲ被ッテ居ルコトヲ能ク調査シ、果シテ損害ヲ被ッテ居
  ルト見ル場合ニハ、政府ノ考慮ヲ要スルト云フノデアリマス
  カラ、會社ハ隨テサウ損害ヲ受ケルコトハ無イト云フ答辯ノ
  下ニ、本案モ一人ノ異議者ナク全會一致ヲ以テ可決シタ
  次第デアリマス、此段御報告致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=86

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• 087・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御
  諮リシマス
  〔「二讀會ヲ開クニ異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者ア
  リ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=87

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• 088・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　第二讀會ヲ開クニ異議ナシト認メ
  マス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=88

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• 089・岩崎勲

  ○岩崎動君　日程第九第十ノ兩案ヲ一括シテ直ニ第二
  讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報告通リ可決
  確定アランコトヲ望ミマス
  〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=89

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• 090・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ異議ナシト認メマ
  ス、仍テ直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キマス
  明治四十一年法律第三十五號中改正法律
  案第二讀會(確定議)
  小田原電氣鐵道株式會社所屬軌道經營廢
  止ニ關スル補償ノ爲公債發行ニ關スル法
  律案第二讀會(確定讀)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=90

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• 091・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　異議ナシト認メマス、仍テ兩案ハ委
  員長ノ報告通リ可決確定致シマシタ日程第十一第十二
  ハ同一委員ニ付託シタル議案ナルニ依リ、一括シテ議題ニ
  供シマス、第十一、市制中改正法律案、第十二、町村制中
  改正法律案ヲ一括シテ第一讀會ノ續キヲ開キ委員長ノ報
  告ヲ求メマス-田邊熊一君
  第十一市制中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(修正) 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓し
  報告書
  一市制中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
  段及報告候也
  大正十年三月十四日
  市制中改正法律案委員長
  田邊熊
  衆議院議長奧繁三郞殿
  市制中改正法律案中左ノ通修正ス
  第十一條第二項中「禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケ」ヲ「六
  年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ」ニ改ム
  第三十八條第一項第三號ヲ左ノ如ク改ム
  三禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
  第百二十五條中「直接市稅ヲ賦課セサル市ニ於テハ直
  接國稅ヲ準率ト爲シ」ヲ削ル
  第十二町村制中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(復告修正
  報告書
  一町村制中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正ススキモノト議決致候此
  段及報告候也
  大正十年三月十四日
  町村制中改正法律案委員長
  田邊熊
  衆議院議長奧繁三郞殿
  町村制中改正法律案中左ノ通修正ス
  第九條第二項中「禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケ」ヲ「六年
  未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ」ニ改ム
  第三十五條第一項第三號ヲ左ノ如ク改ム
  三禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
  〔田邊熊一君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=91

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• 092・田邊熊一

  ○田邊熊一君　只今上程サレマシタ市制及町村制中改
  正法律案特別委員會ニ於キマスル、經過ノ大要ト其結果ヲ
  簡單ニ御報告申上ゲマス、御承知ノ如ク本案ハ時勢ノ進
  運ニ件ヒマシテ、地方ノ自治團體ノ圓滿ノ發達ヲ期センガ
  爲メニ、御提案セラレタノデアリマス、ソレ故ニ委員會ハ政府
  ノ說明スル所ヲ諒ト致シマシテ、委委會ニ於ケル諸般ノ委
  託セラレタル調査スベキ事項ト切離シマシテ、特ニ本案ヲ審
  査シタノデアリマス、滿場ノ委員ハ『地方制度ノ改善ニ關ス
  ル提案デゴザイマスガ故ニ、先程荒川君ノ御論旨ト少シ違
  ヒマシテ、各委員ハ虛心坦懷ニ全ク黨派心ヲ去リマシテ、私
  情ヲ捨テヽ、最モ深切ニ最モ丁寧ニ本案ヲ審査シタノデア
  リマス、併ナガラ本案ガ去ル八日上程セラレタル當日ニ於テ、
  床次內務大臣ガ其大要ヲ說明セラレマシタニ對シマシテ、
  砂田君ノ如キ、三木君ノ如キ、一騎當千ノ勇將ヲ首メト致
  シマシテ、數多ノ諸君ガ、交ミ其骨子ニ向ッテ質問セラレタノ
  デアリマスガ故ニ、委員會ハ御蔭樣ニテ洵ニ簡單ニ濟ンダノ
  デアリマス、諸君モ御承知ノ通リ、當時内務大臣ノ御說明
  ニ對シマシテ、長時間ニ亙ル此議場ノ質問應答デ大體御承
  知デアリマスル故ニ、時間モ切迫シテ居リマスル此議場ノ光
  景ニ顯ミマシテ、私ハ其内容ヲ紹介スルニ就テ、極メテ煩ヲ
  省キマシテ、唯ダ最モ重要ナ問題トシテ現ハレマシタ數箇ノ
  質問要領ヲ、御紹介致シタイト思フノデアリマスケレドモ、本
  案ハ地方自治ニ最モ重要ナル關係アルモノデアリマスルガ
  故ニ、立法府トシテハ審議ノ際ニ斯ノ如キ事モアッタト云フ
  コトヲ御紹介スルコトモ、必ズシモ無用ニ非ズト信ジマスル
  故ニ、數分間御〓聽ヲ汚シタイト思フノデアリマス、先ヅ第
  一ニ選擧權ノ擴張ニ對シマシテ、能力主義ヲ廢シタル理由
  如何、勞働階級ノ智識ガ相當ニ發達シテ居ルコトヲ認メナ
  ガラ、內務大臣ハ此强キ選擧權ノ要求ヲ容レザリシ理由如
  何、之ニ對シマシテハ、政府ハ今日ノ時勢ニ於テハ、急激ノ
  變化ヲ避ケネバナラヌノデアル、若シ急激ノ變化ヲ避ケナカッ
  タナラバ、今日マデ圓滿ニ發達シ來リマシタ所ノ自治制度
  ニ、幾分ノ動搖ヲ來シハセヌカト云フ憂ガアルノデアリマスカ
  ラ、他日サウ云フ機會ガアルデアラウガ、今日ノ場合、マダ其
  程度ニ同意スルコトニハ行カヌト云フコトデアリマス、次ニ納
  稅ノ條件ニ關シテハ、國稅主義ヲ廢シマシテ、直接市町村
  稅ニ改メマスト共ニ、選擧權ヲ擴張シテ有權者ガ約五割ヲ
  增シ、卽チ二百五十万人增スコトガ出來ルノデアル、政府ハ
  今日ノ場合先ヅ此程度ニ於テ擴張シテ止ムル積リデアル、
  斯ウ云フ答デアリマシタ、次ニ等級選舉制度ヲ廢シマシ
  テ-卽チ原則トシテハ町村ハ廢シテ、特別ノ事情アルモノ
  ハ、内務大臣ノ下ニ之ヲ許スト云フコトニナリマシタノデア
  リマスガ、市ニ於テハ三級ヲ二級ニ改メタノデアリマス、大分
  此事ニ就キマシテハ、委員會ニ質問ガ起キマシタ、其趣意ハ
  若シ文化ノ程度ガ發達シテ居ルニ從ッテ階級ヲ設ケザルモ
  ノナラバ、市ニ設ケナイノガ順當デアル、町村ニ廢シテ市ニ廢
  シナイト云フコトハ-文化ノ程度ノ進ンデ居ル市ニ廢セズ
  シテ、町村ニ廢スルト云フコトハ矛盾デナイカ、又若シ此制度
  ガ完全ニ市モ廢シ町村モ一度スト云フコトナラ格別デアルケ
  レドモ、町村ハ原則トシテ廢シテ市ニ廢シナイト云フコトハ、
  ドウシテモ本末ヲ誤ルモノデアルト云フコトノ、中〓嚴シイ御
  質問デアリマシタ、併ナガラ政府ハ矢張事ニ對シマシテモ、先
  ヅ原則トシテハ此場合町村ニ廢シ、市ハ三級ヲ二級ニ進メ
  ルノデアル、併シ特ニ此階級ノ卽チ納稅ノ關係ノ上ニ於テ、
  著シク一級ノ人員ガ多クナル結果デアルガ故ニ、今日ノ場
  合ハ此程度ヨリ政府ハ同意スルコトハ出來ナイト云フ言明
  デアリマシタ、次ニ獨立ノ生計ト云フモノハ如何ナルモノデ
  アルカ之ニ對シマシテ政府ハ、自己ノ經濟ヲ以テ生活ヲ營
  ム者デアルト云フ定義ヲ與ヘタノデアリマス、是ハ簡單明瞭
  デアリマス、其次ハ直接市町村稅ニ於テ各ミ異ルモノガ多
  イガ、甚ダ不公平デハナイカ、政府ハ之ヲ如何ニ處理スル積
  リデアルカト云フ質問ニ對シマシテハ、實施ノ際ニハ間接稅
  等モ色と大藏當局ト交涉シテ整理シテ、全國成ベク統一ス
  ル積リデアルト云フ答ヲ得タノデアリマス、次ニ戶數割ノ賦
  課標準ニ就テハ政府ハ考慮シ、富豪ト下級民トノ間ノ輕重
  ノ調和ヲ圖ル意思ハ無イカ、之ニ對シテ政府ハ是亦大藏當
  局ト協議ノ上、決定スルト云フ方針デアルコトヲ答ヘマシタ
  選擧人名簿ハ大ナル市ニ在リテハ、到底二十日間ノ期間ニ
  ハ調製出來兼ネル、實際上困難デアルガ、政府ハ此期間ヲ
  延長スル意思ハ無イカト云フ御質問モアリマシタ、又餘リニ
  長キニ失スルカラ、短クシテハドウカト云フ意見モアリマシタ
  ガ結局政府ハ短シ長シト云フ程度ガアルカラ、此程度ガ適
  當デアルト云フ挨拶ヲ受ケタノデアリマス、『次ニ議員定數ガ
  三分ノ一ノ缺員ノ場合ニ、始メテ補關選擧ヲ行フノデアル
  ガ、是ハ自治代表ノ精神ニ反シハシナイカト云フ質問ガ出
  マシタ、答ヘテ政府ガ申シマスルニハ、若シ必要ヲ感スルトキ
  ハ、市町村會又ハ監督官ガ其選擧ヲ命ズルコトガ出來ルガ
  故ニ、却テ此方ガ自治精神ニ副ウテ居ルモノデアルト云フ御
  答ヲ得マシタ、次ニハ父子兄弟ノ緣故アル者ガ同時ニ當選
  シタル場合ニハ、投票ノ少ナイ者ヲ辭』セシムル規定ニナッテ
  居リマスルノガ、是ハ寧口當選人ノ自由意思ニ任シテハドウ
  デアルカ、此質問ニ對シマシテ、現狀ニ在リテハ、當選者ハ何
  レモ希望者ガ當選シタモノト推定スルガ故ニ、寧ロ少數ノ投
  票ヲ辭セシムルガ適當デアルト云フ答ヲ得タノデアリマス、次
  ニ市參事會ノ任期デアリマスルガ、之ヲ短クスル意思ハ無イ
  カ、政府ハ今日ノ場合府縣制ノ如ク一年交代ト云フコト
  ハ、市參事會ニ於テハ弊害ガアリマスルガ故ニ、之二同意ス
  ルコトガ出來ナイト云フ答辯ガアッタノデアリマス、其他町村
  會議長ヲ、市會ノ如ク町村長ニ其職ヲ執ラシメズシテ、議員
  ヨリ公選シテハ如何ナモノデアラウカ、又又村長ヲ公選スル
  意思ハ無イカ、其他選擧施行ニ關シマシテハ、六十日前ノ
  準備ノ要ガアッテ、四月一日ト假定シタ場合ハ、六月一日以
  後ニ選擧ヲセラレルモノデアルト云フ、選擧實施ノ方法ナド
  ノ御答ガアリマシテ、更ニ北海道ニ對シテハ、町村制ヲ實施
  スル意思ハ無イカ、之ニ對シテハ區ニ對シテハ市制ヲ行ヒマ
  スルケレドモ、町村ハ其程度ニ達シナイト云フ御答ガアッタノ
  デアリマス、大體ハ右ノ如クデアリマシタガ、最後ニ町村條例
  ヲ以テ等級選擧存置ノ申請ノアッタ場合ニハ、成ベク內務
  大臣ハ地方自治ノ精神ヲ尊重致シマシテ、認可スル方針デ
  アルト云フコトヲ言明致シタノデアリマス、右ノ如クニシテ質
  問ハ終リマシタガ、之ニ對シテ修正案ガ出タノデアリマス、此
  修正案ハ既ニ諸君ノ御手許ニ提出シテアリマセウガ、市制
  第十一條第二項中「禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケ」ヲ「六年
  未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ」ニ改メタノデアリマス
  第三十八條ノ第一項第三號ヲ左ノ如ク改ム、卽チ三ノ「禁
  錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ」ト云フコトニ改メタノデアリ
  マス、此第十一條ノ修正ノ意味ハ、禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ
  受ケレバ直チニ公民權ヲ失ヒマシテ、公民ヲ資格ノ要件ト
  スル府縣會議員、市町村會議員等ハ其職ヲ失フコトニナル
  ノデアリマス、是ハ衆議院選擧法ノ確定判決ノ後ニ失格ス
  ル、合法的ノモノガ適當デアルト云フノデ修正意見ガ出タノ
  デアリマス、更ニ第三十八條第一項第三ノ修正ハ、右同樣
  ノ理由ニ依リマシテ、議員ノ權利ヲ尊重スルト云フ精神ニ
  改メヤウト云フノデアリマス、次ニ第百二十五條中ノ「直接
  市稅ヲ賦課セサル市ニ於テハ其ノ直接國稅ヲ準率ト爲シ」
  ト云フコトハ是ハ削ルノデアリマス、卽チ市制第九條末項ノ
  「市稅ヲ賦課セサル市ニ於テハ市公民ノ要件中市ノ負擔分
  任ニ關スル規定ヲ適用セス」ト云フコトハ削除致シマシタガ
  ソレハ現在市稅ノ賦課ナキ市ハ一モ無イガ故ニ、將來ニ斯
  ノ如キ市ハ無カルベキコトヲ信ジマシテ、削除スルコトニ致シ
  タノデアリマス、町村制ノ第二項中「禁錮以上ノ刑ノ宣告
  ヲ受ケ」ヲ「六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ」ト改
  メマシタ、第三十五條ノ第一項第三號ヲ「禁錮以上ノ刑ニ
  處セラレタルトキ」ト云フコトニ改メタノモ、前同然ノ精神デ
  改メタノデアリマス、此他討論ニ移リマシテ政府原案ヲ總テ
  ハ可決致シタノデアリマスガ、之ニ對シ國民黨ノ大口君ヨリ
  修正案ガ提出サレマシテ、小山松壽君ノ賛成ガアリマシタ
  ケレドモ、少數デ消滅シタノデアリマス、右大要ヲ御報告致
  シマス、願クハ諸君ノ御賛成ヲ請ウテ通過センコトヲ希望致
  シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=92

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• 093・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　此兩案第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
  御諮リ致シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=93

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• 094・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　第二讀會ヲ開クニ異議ナイト認メ
  マス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=94

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• 095・岩崎勲

  ○岩崎勳君　兩案共一括シテ直チニ第二讀會ヲ開カレン
  コトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=95

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• 096・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ兩案ヲ一括シテ直チニ此第二讀會ヲ開キ、議
  案全部ヲ議題ト致シマス
  市制中改正法律案第二讀會
  町村制中改正法律案第二讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=96

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• 097・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　此場合ニ於キマシテ、小山松壽君
  外諸君ヨリ兩案ニ對スル修正案ガ提出サレテ居リマス、修
  正案ノ少數辯明ヲ許シマス、黑金泰義君
  〔黑金泰義君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=97

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• 098・黒金泰義

  ○黑金泰義君　只今議題ニ供セラレマシタ市制町村制ノ
  改正案ハ、如何ニモ委員長ノ御話ノ如ク、國家ノ基礎ヲ固
  メマスル所ノ最モ重要ナル法律案デアリマスルガ故ニ、吾こ
  ハ無論政黨政派ノ觀念ヲ離レ、愼重ニ審議ヲ致シマシタガ、
  不幸ニシテ原案ニ賛成スルコトハ出來マセヌ隨テ國民黨ノ
  諸君竝ニ憲政會ノ吾〓同志ト共ニ、茲ニ修正案ヲ提出スル
  次第デゴザイマス、此修正案ハ昨日事務局マデ提出致シマ
  シタケレドモ、時間ノ關係上、マダ御手許ニ廻ラヌト云フコ
  トデアリマスカラ、少シ詳細ニ亙ルカモ知レマセヌガ、御辛抱
  ノ程ヲ願ヒマス(「謹聽」ト呼フ者アリ)市制改正案ノ第九條
  第一項中ニ於テ、貧困ノ爲公費ノ救助ヲ受ケタル後二年
  ヲ經過スルニアラザレバ、公民權ヲ得ラレヌト云フ規定ニナッ
  テ居リマス、是ハ私共ハ一年ニ短縮致シタイト思ヒマス、又
  同ジク同條ノ中ニ於キマシテ、公民權ヲ有スル住民ガ、其市
  ニ於テ二箇年居住シナケレバ公民權ヲ得ラレナイト云フコ
  トニナッテ居リマスルガ、是ハ私共ハ六箇月ニ短縮シタイト思
  フノデアリマス、又同條ニ於キマシテ、改正案ニ依リマスレバ
  第四號二二年以來其市ノ直接市稅ヲ納ムル者ト云フコトニ
  ナッテ居リマス、-豫メ御斷リスルコトヲ落シマシタガ、私共ノ
  改正ヲ要シマスル點ハ、市制町村制ヲ通ジテ根本ノ主義ニ於
  テハ同一デアリマス、隨テ市制町村制ヲ區別セズニ、同一ナル
  所ハ同一ニ論ジテ參リマス積リデアリマスカラ、左樣御承知ヲ
  願ヒタウゴザイマス、此二年以來其市ノ直接市稅ヲ-町村
  稅ヲ納ムル者ヲ以テ市町村ノ公民ノ資格トスコトニ規定サレ
  マシタガ、吾ミハ之ヲ絕對ニ除去スルノ希望ヲ持ッテ居ルノデ
  アリマス、最モ改正案ニ於キマシテハ、公民權ノ擴張ヲ圖ラ
  レタル結果ト致シマシテ、今日迄市稅ノ外-市町村ノ負
  擔ノ外、直接國稅竝ニ地租ト云フ條件ガアリマシタノヲ、地
  租及直接國稅ノ條件ヲ除去セラレタガ爲メニ、五百万人ノ
  公民者ガ、之ガ爲メニ七百五十万人ノ公民者ニ其數ヲ增
  加シタト云フコトデゴザイマス、併ナガラ私共ガ最モ公民權
  ノ擴張ヲ希望スルト云フコトハ、申迄モナク今日ノ最モ熱心
  ナル所ノ希望デゴザイマスルケレドモガ、私共ノ希望スル所
  ハ、單ニ納稅ニ根據ヲ置クノデハアリマセヌ、又只今ノ政府
  ノ改正案ノ如ク、何處迄モ納稅主義ヲ確守スルト云フコト
  ハ、甚ダ私共ノ取ラザル所デアルノデアリマス、何ガ故ニ市町
  村制ニ於テ此納稅主義ヲ公民權ノ資格ニ置カレタカ、全部
  何故ニ之ヲ除去セラレナカッタカト云フコトヲ政府當局ニ
  向ケテ質問致シマシタ所ガ、政府當局ノ答ハ、先刻委員長/
  御話ノアッタ如ク、先ヅ今日我國ノ現代ニ於テハ、此邊ガ適
  當デアラウト思フト云フ御說明デアリマシタ、又モウ一ツノ
  理由ハ、今日市町村ノ事業ハ、多ク財政ニ關係シテ居ルモ
  ノデアル、然ラバ自治ノ責任觀念上、納稅ヲ基礎トシテ其
  資格ヲ公民權ノ條件ニ定ムルコトハ、又適當ト思フト云フ
  コトノ御說明ニ過ギナイノデアリマス、納稅主義ヲ選舉權ノ
  條件、若クハ公民權ノ條件ニスルト云フコトハ我國今日ノ
  狀勢ニ適セナイト云フコトハ、吾〓同士ガ今日迄何度トナ
  ク此壇上ニ於テ說明シ盡シ來シタ所デゴザイマスルガ故ニ、
  私ハ此點ニ於テ最早言葉ヲ加フルノ必要ガ無イト存ズルノ
  デアリマス、然ルニモ拘ラズ政府ハ今囘市町村制ノ改正ヲ
  爲スニ方リマシテ、尙且此納稅主義ヲ採ラレマシタト云フコ
  トニ就テハ、實ニ此現時ノ狀勢ヲ理解セラレザルモ亦甚シキモ
  ノデアリマシテ、實ニ其基礎論據トセラルヽ所ノ主張ヲ吾と
  ハ疑ハザルヲ得ヌノデアリマス、此直接市町村稅ヲ公民權ノ
  條件トスルコトハ、今日ノ狀勢ニ於テ適當デアル-適當デ
  アルカ適當デナイカト云フコトハ、是ハ各〓其人ノ見ヤウニ
  依ルコトデアリマスカラ、最早議論ニハナラヌ事デアラウト
  存ジマス、併ナガラ市町村ノ今日ノ事業ヲ財政ニ關係スル
  コトガ多イト云フ所ノ點ニ至リマシテハ、『私共一言シナケレ
  パナラヌコトデアルト思ヒマス、何故ナラバ、今日市町村ノ事
  業ハ、財政ニ關係スルモノヽミデナイト云フコトハ申迄モナ
  イ、但シ財政ニ關スル事ガ多イダケデアッテ、分量ノ差デアツ
  テ、決シテ市町村ノ事業ハ財政ニ關係スルモノヽミデハナイ
  ノデアリマス、又市町村ノ財政ノ根原ハ、直接市町村稅デ
  アルカト申シマスレバ、今日ハ決シテサウデハアリマセヌ、間接
  稅ノ-間接稅ヲ以テ其二三分ヲ占メテ居ルト云フコトハ、
  今日各市町村ノ狀勢デアラウト思ヒマス、果シテ然ラバ此
  市町村-直接市町村稅ノミヲ以テ公民權ノ條件トスル
  ト云フコトハ、是亦甚ダ穏當ナラザル處置デハナイカト存ズ
  ルノデアリマス、今日我國ノ各社會ニ於キマシテ、選擧權ノ
  擴張ニ就テハ、最モ熱心ナル所ノ要求ガアルノデアリマス、殊
  ニ我ガ資產無キ智識階級及勞働階級ニ於テハ、最モ熾烈
  ナル所ノ要求ガアルノデアリマス、然ルニ今日此市町村制ヲ
  改正セラルヽニ當リマシテ、直接市町村稅ヲ此條件トセラ
  ルヽ如キコトニ至リマシタナラバ、此資產無キ所ノ知識階
  級竝ニ勞働者ノ如キニ至リマシテハ、今日所得稅ヲ納メザ
  ル限リハ、全ク此公民權ヲ有スルコトガ出來ヌ結果ニナルノ
  デアリマス、果シテ斯ノ如キニ至リマシタナラバ、今日ノ最モ
  熱心ナル所ノ要望-之ヲ要望スル所ノ各階級ガ、如何ニ
  失望スルコトデアリマセウカ、又今日ノ時勢ニ鑑ミマシテ、是
  等ノ階級ニ對シテ此公民權ノ擴張ヲ圖ラナイト云フコトニ
  至リマシテハ、實ニ國家ノ前途ニ對シテモ憂フベキ次第デア
  ルト私共考ヘルノデアリマス、殊ニ甚ダ奇怪ナル所ノ現象
  ヲ來シマスルノハ、此改正案ガ直接市町村稅ト云フコトヲ
  條件ニ致シマシタ結果トシテ、今日車挽、或ハ馬車挽、或ハ
  遊藝稼人幇問、斯ノ加キ者ハ公然タル所ノ公民權ヲ有スル
  ノデアリマス、而シテ今申上ゲク學校ノ〓員ノ如キ、或ハ銀
  行會社ニ勤ムル人ノ加キ、所謂資產ナキ所ノ階級ニ屬スル
  智識階級ニ屬スル人ハ、全ク公民權ヲ得ルコトガ出來ナイ、
  之ニ反シテ今申上ゲタ加キ者ガ公民權ヲ得ルト云フヤウナ、
  實ニ奇怪ナル所ノ現象ヲ來スノデアリマス、斯ノ加キ事ハ全
  ク納稅主義ヲ固執セラレタル所ノ結果デアリマシテ、時代ノ
  要求ニ伴ハザル、最モ不都合ナル所ノ事柄ト吾ニハ存ジマ
  シテ、如何ニ熟慮致シマシテモ、此改正案ニ賛成スルコトガ
  出來マセヌ爲メニ、改正案ノ第一項ノ第四號ヲ削除スルコ
  トニ致シタ次第デアリマス(「簡單」ト呼ヒ「詳シクヤレ」ト呼フ
  者アリ)重要ナル問題デアリマスカラ、暫ク御辛抱ヲ願ヒマ
  ス、次ニ改正案ノ第十五條ニ於キマシテ「選擧人ハ分チテ
  二級トス」所謂今日ノ選擧ノ等級制ヲ又復採用セラレタノ
  デアリマス、併ナガラ政府ノ意見ヲ聽キマスルニ、選擧ニ對シ
  テ階級ヲ存置スルト云フコトハ、全體ニ於テハ是ハ撤廢スベ
  キモノデアルト云フコトノ政府ノ御意見デアルサウデアリマス、
  併ナガラ今俄ニ全部之ヲ撤回スルト云フコトハ、甚ダ其當
  ヲ得ザルモノト思考スルガ故ニ、先ヅ漸進主義ヲ執ノテ斯ノ
  如ク致シタノデアル、卽チ町村制ニ於テハ階級ヲ全廢シ、市
  制ニ於テハ現在三級ナルモノヲ一級廢シテ二級ト爲シタト
  云フコトデアリマス、成程數ノ上カラ申シマシテ、二級ノモノ
  ヲ全廢シ、三級ノモノヲ二級ニスルト云フコトハ、漸進デアリ
  マセウケレドモガ、是等ハ私共ニ於テ如何ニシテモ今日ノ時
  勢ニ於テ贊成ヲ表スルコトノ出來ナイ點デアルノデアリマス、
  今日ノ現行法ニ依リマスルト、市ニ於ケル所ノ一級ノ選擧人
  ガ、三級ノ選擧人ニ對シテハ百倍、二百倍、甚シキハ一千倍
  ニ對スル所ノ强キ所ノ選擧權ヲ有シテ居ルノデアリマス、又
  町村ニ於キマシテハ、恰モ一ニ對スル所ノ六ト云フヤウナ割
  合ニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ今囘政府ノ改正セラレマ
  シタ案ニ依リマスレバ、全體ヲ通ジテ一ト三トノ割合デアル
  ト云フコトデアリマスカラシテ、今迄ノ不權衡ナル所ノ釣合
  ニ於テハ、大ニ緩和サレタルコトハ勿論デアリマス、併ナガラ
  尙ホ〓日ノ實際ノ狀況ヲ見マスルニ、此改正案ニ依リマシ
  テモ、尙ホ一級ノ一ハ、一一級ノ五ニ對シ、若クハ十ニ對シ、甚
  シキハ十二ニ對スルト云フヤウナ市モ、今日ニ於テハ尙ホ現
  存スルコトハ、統計ノ而ス所デアリマス、吾こノ元來要求致
  シマス所ノモノハ、選擧權ノ擴張ハ勿論デアリマスルガ、擴張
  ノミデアリマセヌ、選擧權其モノヲシテ平等ナラシムルト云フ
  コトガ、又吾ミノ希望ノ一ツデアリマス、階級制度ハ(「モウ五
  時半ニナリマス」「成ベク簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)或時
  代ニ於キマシテハ、勿論此社會ノ階級間ニ於テノ節制ニ力
  ノアッタコトデアラウト存ジマス、政治思想ノ發達セザル間ニ
  於テハ、或場合ニ於テハ資產階級ヲ保護スルト云フヤウナ
  必要モアッタデアリマセウガ、最早我國ノ今日ノ現狀ニ對シ
  テ、斯ノ如キ必要ハ認メマセヌノミナラズ、現ニ町村ニ於テ今
  日此階級選擧ノ制ヲ廢シテ實行シテ居ル所ノモノハ、二十
  三箇町村アリマス、其二十三箇町村ニ對シテ内務省ニ於
  テ地方長官ノ意見ヲ徴セラレマシタル-吾〓ニニ與ヘラレタル
  參考書ニ依リマスルト、其弊害ノアル所ノモノト云フモノハ
  一ツモ無イノミナラズ、之ニ反シテ資產階級ノ横暴ヲ防ギ、
  或ハ資產階級ト其下ノ階級トノ間ノ杆格ヲ取去ッテ、洵ニ
  結構デアルト云フヤウナ總テノ復命ニナッテ居ル、現ニ今日
  ト雖モ、各町村ニ於テ現ニ斯ノ如キ有樣デアリマス以上ハ、
  今日全部ニ對シテ之ヲ撤廢スルト。云フコトハ何ノ弊ガアリ
  マセウカ、私共ハ其利益ヲ見ルノミデアルト存ズルノデアリマ
  ス、又····(「能ク判リマセヌ、今少シ大キイ聲デ願ヒマス」ト
  呼フ者アリ)

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• 099・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ

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• 100・黒金泰義

  ○黑金泰義君(續)　今日ノ此改正ハ時勢ノ進運ニ伴ヒ、
  文化ノ進步ニ從シテ此改正ヲシタト云フコトデアリマス、果シ
  テ然ラバ町村ト市ニ對スル文化ノ程度ハ如何デアリマセウ、
  又其他社會ノ諸般ノ程度ガドチラガ進步シ、ドチラガ後レ
  テ居リマセウカ、今更申迄モナイコトデアリマス、然ルニモ拘
  ハラズ、漸進主義ト稱シテ二級ノモノヲ全廢シ、三級ノモノ
  ヲ二級トスルガ漸進ダト稱シテ、斯ノ如キ進步シタル所ノ市
  ニ對シテハ階級制度ヲ實行シ、進步セザル所ノ町村ニ對シ
  テ此制度ヲ取去ラレタト云フコトハ、殆ド是ハ其遣方ニ於
  テ冠履轉倒ノ行爲ト謂ハナケレバナラヌト存ズルノデアル
  (拍手起ル)吾ミハ斯ノ如ク時勢ニ件ハザル、寧口時代錯誤
  トモ謂フベキ所ノ改正、舊時ノ思想ノ存續ニ向ッテハ、何處
  マデモ賛成スルコトハ出來ヌノデアリマス(拍手起ル)次ニ第
  十八條ニ於キマシテ-市制ノ第十八條ニ於キマシテ、第
  二項ノ第四號及第五號ヲ削リタイト云フコトデアリマス、是
  ハ今囘ノ政府ノ改正案ニハ現行ノ儘存置シテア:リマス、併
  ナガラ吾〓ニハ之ヲ除去ス』ルコトノ【希望ヲ持ッテ居ルノデア
  リマス、ツレハ申迄モナク神官、神職、僧侶其他諸宗ノ〓師、
  竝ニ小學校〓員ノ被選擧權デアリマス、折角今囘市制町
  村制ノ改正ヲ企テ、公民權ノ擴張ヲ圖ラレタニ拘ラズ、此在
  來ノ規定ニ向ッテ何等改正ヲ加ヘラレザリシ政府ノ意嚮ハ、
  ドウデアッタカト云フコトヲ御尋ネ致シマスレバ、是ハ獨リ市
  制町村制ノミナラズ、他ノ法律ニモ關係シテ居ルノデアリマ
  ス、郡制、府縣制、竝ニ衆議院議員ノ選擧法ニモ關係シテ
  居ルノデアリマスルガ故ニ、是ハ先ヅ今日ニ於テハ手ヲ觸レ
  ズニ殘シタト云フコトデアリマス、成程此規定ハ他ノ法律ニ
  存置シテ居リマスケレドモ、此總テノ法律ヲ一時ニ改正ス
  ルト云フヤウナ時期ガ何時參リマセウカ、吾〓屢〓衆議院議員
  ノ改正案ヲ提出致シマシテモ、其改正ノ目的ヲ達スル機會
  ガ今日マデ得マセヌノデアリマス、況ヤ其諸法律ガ總テ同一
  ニ改正サレルト云フ時期ノ來ルベキヲ見ルコトハ出來マセ
  ヌ、殊ニ今日ニ於テハ折角市制町村制ノ改正ヲ企テラレル
  以上ハ、先ヅ以テ第一著ニ此點ニ於テ著手サレテモ、他ノ法
  律ノ權衡ヲ得ナイト云フ理論ハアルマイト私ハ存ズルノデア
  リマス、又此規定ハ元來何ガ故ニ斯ノ如キコトハ起ルカト申
  シマスレバ、是ハ恐ラク外國ノ法律ヲソックリ其儘飜譯致シ
  テ來タ所ノ結果デアルト申スヨリ外仕方ガナイノデアリマ
  ス、如何トナレバ我國ノ歷史上ニ於テ、神官神職若クハ儈
  侶ノ如キ、政治上ニ關シテ如何ナル弊害ヲシタ事ガアリマセ
  ウカ、是ハ決シテ歷史上ノ事實ニ基イタモノニズ非シテ、全
  ク外國ノ法律ヲソックリ其儘用井タ結果ニ過ギナイノデアリ
  マス、殊ニ其本家本元タル所ノ外國ニ於テ、總テ其點ニ於テ
  改正ヲ加ヘテ居ルノデアリマス、獨リ之ヲ襲用致シマシタ我國
  ニ於テ之ヲ存置スルト云フコトハ、甚ダ世界ニ對シテ時代後
  レナル面目ヲ失スル次第デハアリマセヌガ、(「簡單」ト呼フ者
  アリ)又小學校〓員ノ如キモノハ、是ハ神官儈侶ト道伴レ
  ニ規定サレタモノデアラウ存ジマスル、別別理由ノアッタ事デ
  ナイト存ズルノデアリマス、又是等ノ人達ガ其職業上カラ考
  ヘテ見マシテモ、社會ノ人心ニ對シテ一部ノ勢力ヲ有シテ居
  ルト云フコトハ申迄モナイ事デアリマスルガ、今日ノ政治思
  想ノ發達シタル場合ニ於テ、是等ノ人ニ向ッテ被選擧權ヲ
  與ヘナイト云フコトハ、何等理由ノ無イモノト私共ハ認メテ
  居ルノデアリマス、況ヤ今日是等ノ人達ガ一般市公民-
  市町村公民ト何等ノ異ッタル所ノ負擔ヲナシテハ居リマセ
  ヌ、總テノ點ニ於テ同一ノ負擔ヲナシテ居ルニ拘ラズ、又時
  ト致シマシテハ、是等ノ人ノ力ニ依シテ今日ノ國民思想ノ善
  導ヲ圖リ、政府當局トシテモ常ニ之ヲ圖ッデ】居ラレルノデア
  リマス、又是等ノ人〓ノ努力ニ俟ット云フコトハ、最モ必要デ
  アルト私ハ感ズルノデアリマス、斯ノ如キ事デアリマスルナラ
  バ、單ニ負擔ハ其人ニサセ、又殊ニ此社會ノ爲メニ盡力ヲサ
  セルト云フ上カラ考ヘマシテモ、之ニ被選擧權ヲ與ヘズシテ
  區別スルト云フヤウナコトハ、甚ダ理ニ於テ適セザル所ノ事
  柄デアルト存ジマス、寧ロ進ンデ是等ノ人ニ被選擧權ヲ與
  ヘ、此活世界ニ携ハラシメタナラバ、總テノ點ニ於テ、彼我ノ
  間ニ於テ利益スル所少カラザルモノト存ジマスル爲メニ、是ハ
  折角改正ノ序デアリマスルカラ、是非此條文ヲ削除シタイ
  ト云フコトノ意見ヲ以テ、修正ヲ加ヘタ次第デアリマス(拍
  手起ル)次ニハ先刻委員長ノ御話ガアリマシタガ、現行ノ法
  律ニ依リマスレバ、市町村ノ議員ニシテ闕員ノ生ジタ場合
  ニ於テ、其關員ガ三分ノ一ニ達セザル迄ハ補關選擧ヲ行ハ
  ザルト云フコトガ原則ニナッテ居リマス、併ナガラ私共之ヲ修
  正シテ、闕員ガアッタナラバ直チニ關員ノ選擧ヲ行フト云フコ
  トヲ原則トシタイト存ズルノデアリマス、申迄モナク議員ハ市町
  村民ノ代表者デアリマス、其代表者ヲ關イタト云フ場合ニ於
  テハ、之ヲ補充スルト云フコトハ、原則トシテ適當デアルト自分
  ハ感ズルノデアリマス、併ナガラ之ヲ嚴正ニ關員ノアル度每ニ
  選擧スルト云フコトニ致シマシテハ、或ハ事情ノ許サザル所モ
  アラウカト存ジマシテ、之ニ對スル所ノ除外例ヲ設ケテ、修正
  ヲ致シタイト存ズルノデアリマス、丁度現行規定ノ其裏面ヲ
  行ッタコトニナッテ居ルノデアリマス、又次ニ吾〓ガ修正ヲ加ヘ
  タイト存ジマスルノハ、選擧人名簿ノ事デアリマス、是モ先刻
  委員長ヨリ御說明ガアリマシタガ、政府當局ニ於テハ、現行
  ノ儘ニシテ然ルベシト云フ事デアリマスケレドモ、今日市町
  村ノ事務ノ實際ヲ見マスレバ、決シテ此選舉人名簿ト云
  フモノハ、今日ノ法律ノ規定ノ如ク、選擧期日ヲ基礎トシ
  テ、其六十日以前ニ於テ選擧名簿ノ作成ニ著手スルト云フ
  ヤウナ事ハ、中〓煩瑣ニシテ行ハレル事デハナイノデアリマ
  ス、故ニ今日市町村ノ實際ヲ見マスレバ、常ニ此點ニ於テ加
  除訂正ヲ加ヘテ、サウシテ其時ノ來ル場合ニ於テ間ニ合フ
  ヤウニシテ居ルト云フコトハ、今日ノ優良ナル市町村ノ狀況
  デアルノデアリマス、果シテ然ラバ是ハ年々一圓確定的ニ作
  成スルト云フコトガ、最モ必要デアルト存ジマスルノミナラ
  ズ、私共ガ今申上ゲター前段ニ申上ゲマシタ闕員ノアッタ
  場合ニ、補闕選擧ヲ隨時ニ行フト云フコトノ趣旨ヲ貫徹ス
  ル爲メニモ、是ハ確定的ニ作成スルト云フコトノ必要ヲ生ジ
  タ爲メニ、之ヲ改メント欲スルノデアリマス、ソレカラ名譽職
  參事會員ノ任期ハ、今日ハ議員ノ任期ノ通リト云フコトニ
  ナッテ居リマス、併ナガラ是ハ府縣會ノ規則ニ依リマスレバ、
  其任期ガ一年ト云フコトニナッテ居リマス、一年ト云フコトハ
  甚ダ短キニ失シマスルシ、又四年卜云フコトハ長キニ失スル
  ト存ジマシタ爲メニ、此改正ニ伴フテ是ハ二年ト云フコトニ
  改メタイト存ズルノデアリマス、ソレカラ現行法ノ第二十九
  條ニ於キマシテハ「投票ノ拒否及效力ハ選擧立會人之ヲ
  決定ス」ト云フコトニナッテ居リマスガ、是ハ他ノ法律ニ依リ
  マシテモ、選擧立會人ノ意見ヲ聽キ、選擧長之ヲ決スト云
  フコトガ適當デアラウト存ジマシテ、其趣旨ニ依ッテ改メタイ
  ト存ズルノデアリマス、尙ホ分會ノ場合ニ於テモ、分會長之
  ヲ決スト云フコトニ改メタイト存ズルノデアリマス、以上ハ市
  制町村制ヲ通ジマシテ改正ヲ要スル所ノ點デアリマス、又町
  村制ニ於キマシテハ、尙ホ此外ニ一箇條ヲ加へタイト存ジマ
  スルノハ、今囘ノ政府ノ修正案ニ依リマスレバ、北北道ノ區
  ニ向ッテハ、内地ノ市制ヲ適用スルコトニナッテ居リマス、然ル
  ニ北海道ノ町村ニ對シテハ、此町村制ヲ施行セヌコトニナッ
  テ居リマス、所ガ北海道ノ今日ノ狀況ハドウデアルカト申セ
  バ、北海道ニハ一級町村、二級町村、及戶長役場ノ制ガア
  リマス、其一級町村ノ狀況ハ今日ノ內地ノ町村ト何等異
  ル所ガナイノデアリマス、其人口ニ於キマシテモ、其財政ノ狀
  態ニ於キマシテモ、全ク內地ノ町村ト異ナル所ガアリマセヌ
  ノミナラズ、北海道ノ一級町村ニ屬スル所ノ公民權ノ資格
  ハ、北海道ノ區ノ公民權ノ資格ト殆ド同ジデアフテ、納稅ニ
  於テ僅ニ九十錢ノ差ガアルノミデアリマス、其他ニ於テハ全
  部同一デアリマス、斯ノ如キ有樣デアリマスルカラ、町村制
  ヲ北海道ノ一級町村ニ限ッテ實施セント欲スルノガ、此改正
  ノ要旨デアリマス、以上ノ諸點ヲ改正シマシタガ爲メニ、法
  律ノ各條文ニ向ッテ多々修正ヲ加ヘル所ガアリマスガ、ソレ
  等ハ餘リ煩瑣ニ亙リマスルシ、御退窟デアリマスカラ、此要
  點ノミヲ述ベテ修正ノ意見ト致シ、此壇ヲ降ル次第デアリ
  マス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=100

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• 101・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　討論ノ申込ガアリマス、通告順ニ
  依ッテ之ヲ許スコトニ致シマス、小田切磐太郞君
  〔小田切磐太郞君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=101

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• 102・小田切磐太郎

  ○小田切磐太郞君　只今議題ニナリマシタル市制竝ニ町
  村制ニ就テ、委員長ノ報告ガアリマシタ、之ニ對シテ只今憲
  政會ノ黑金君カラ修正ノ意見ヲ御提出ニナッタノデアリマ
  スル、修正ノ條項ハ多々アリマス、未ダ印刷ガ間ニ合ハヌト
  云フノデ吾〓ノ手ニハ參リマセヌケレドモ、只今ノ御演說ニ
  依ッテ委細了承シタ次第デアリマスル、今囘政府ノ提案ニ依
  リマスルモ、將夕又只今ノ修正案ニ依リマスルモ、此度ノ修
  正案ノ骨子ト云フモノハ二點デアリマスル、卽チ公民權ノ擴
  張、選擧權ノ擴張ト云ッテモ宜イノデアリマスルガ、公民權ノ
  擴張ト等級制度ノ改廢ノ問題デゴザイマスル、只今修正論
  者モ此點ニ最モ力ヲ入レテ論ゼラレタノデアリマスルカラ、
  本員モ亦此點ニ就テ政府ノ提案ニ對シテ贊成スル所以ノ
  理由ヲ簡單ニ申上ゲマスル積リデアリマス、御承知ノ如クニ
  現行法ハ公民權ヲ與ヘルコトニ就テ、種々ノ條件ヲ規定シ
  テ居ルノデゴザイマスル、政府ノ改正案ハ、其條件ノ中、納稅
  資格ヲ改メルト云フコトニ相成ッテ居ルノデアリマスル、卽チ
  御承知ノ如クニ現行法ニ於テハ、公民權ヲ附與スルニ市町
  村ノ負擔ヲ分擔スルト云フ上ニ、尙且ツ國稅ノ納入ヲ條件
  トシテ居ルノデアリマスル政府ノ改正案ハ、此國稅ノ納入資
  格ヲ撤廢スルト云フノデアリマスル、只今修正意見ヲ拜聽
  致シマスルト云フト、獨リ納稅資格ヲ全廢スルノミナラズ住
  居ニ於テ、現行法ニ於テ一一年ト云フノヲ六箇月ニ短縮シヤ
  ウト云フノデアリマスル、翻ッテ現行ノ市町村制發布ノ理由
  ヲ見マスルニ、市町村ノ公民ハ名譽職ヲ負擔シ、或ハ自治ノ
  機關ニ參與スルモノデアリマスルカラ、此者ニハ【相當ノ財產
  ガ無ケレバナラヌト云フ立前ノ上ニ、現行法ハ制定セラレテ
  アルノデアリマスル、併ナガラ諸君御承知ノ通リ自治制發布
  以來玆ニ三十年、我ガ帝國國民ノ文化ト云フモノハ、非常
  ニ發展シタノデアリマスカラ、此財產ヲ要スルト云フ觀念ハ、
  又昔日ノ如ク必要デアルト云フコトハ或ル程度マデハ無イ
  ノデアリマス、殊ニ又市町村制ヲ運用シ、我ガ帝國國民ノ福
  利ヲ增進スルト云フコトニ就テハ、ドウシテモ此參政權ヲ擴
  張シテ行カナケレバナラヌト云フコトハ、申上ゲル迄モナイコ
  トデアルノデアリマスル、ソコデ問題ニナルノハ、程度問題ト
  云フコトニナッテ來タノデスリマスル、政府案ハ只今申上ゲタ
  通リ、國稅ノ條件ハ撤廢ハ致シマシタケレドモ、直接市町村
  稅ヲ納メルト云フコトヲ、尙且ツ條件トシテ居ルノデアリマ
  スル、之ヲ只今ノ修正意見ノ如クニ全部今直グニ撤廢スル
  ト云フコトハ、餘リ大ナル-急激ナル變化ヲ自治制ノ上ニ
  與フルモノデアルト本員ハ信ズルモノデアリマスル(拍手起ル
  「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)凡ン風俗ニシロ習慣ニシロ、將夕又
  立法ニシロ、餘リ急激チル變化ヲ與フルト云フコトハ、事ノ
  穏健ナル秩序ナル所ノ進步發達ヲ促ス所以デハナイト本員
  ハ信ズルノデアリマス(拍手起ル)ソレ故ニ政府案)/如ク順
  次進步スルト云フノヲ以テ、市町村ノ直接稅ヲ納メル者ニ
  公民權ヲ付與スルト云フコトガ、最モ適當デアルト信ズルモ
  ノデアリマス、況ヤ市町村ノ事務ハ、多クハ【財政ニ關係スル
  事デアリマスカラ、此點カラ考慮致シテモ少クトモ市町村稅
  ヲ納メル人ニ自治機關ニ參與スル權ヲ與ヘルト云フコトハ、
  極メテ穩健ナルモノデアルト考ヘル』ノデアリマス、ソレデ此間
  中ノ質問應答、或ハ只今修正論者ノ意見ヲ聽イタノデアリ
  マスルガ、市町村ノ財政ニ寄與スル者ハ、直接市町村稅ノ
  ミニ限ラナイ、何故ニ直接稅ニ限シテ公民權ヲ付與シタカト
  云フ問題ガ此ニ在ルノデアリマス、或ハ言フノニ間接稅ト直
  接稅ノ區別ハドウスル、直接國稅ヲ納メル者ニノミ選擧權
  ヲ與ヘテ、直接稅ヲ納メル者ニハ選擧權ヲ與ヘナイ、間接稅
  直接稅ト云フモノハ、何ニ依ッテ區別ヲ求メルコトガ出來ル
  カト云フ疑ガアルノデアリマスケレドモ、若モ租稅區別ノ標準
  ヲ學理的ニ依シテ區別スルト云フコトデアッタナラバ、直接稅
  間接稅ノ區別ハ頗ル困難デアルト云フコトハ、本員モ了承
  スル者デアリマスル、【併ナガラ今日直接稅或ハ間接稅ヲ區
  別スル標準ト云フモノハ、サウ云フモノデハナイ、御承知ノ通
  リ明治四十五年五月內務省告示第四十三號ニ依シテ、如
  何ナルモノガ直接稅デアリ、如何ナルモノガ間接稅デアルカ
  ト云フコトハ、一見明瞭シテ居ル然ラハ則チ直接稅ヲ納入
  スル者ニ向ッテ選舉權ヲ與ヘテモ、決シテ差支ハナイノデアリ
  マスル、尙又間接稅ノ如キハ、納入者ヲ明確ニ調ベルト云フ
  コトハ、修正論者ト雖モ至難デアルト云フコトハ御了承ニ相
  成ル次第ト存ズルノデアリマスル(「時勢ヲ解セズ憫ムベシ」
  ト呼フ者アリ)

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• 103・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　木檜君、靜ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=103

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• 104・小田切磐太郎

  ○小田切磐太郞君(續)　ソレカラ又或ハ申サレルノニ、市
  町村ノ財政ニ寄與スルモノハ市町村稅バカリデナイ、此間
  モアリマシタガ、今日例へバ市ガ電車ヲ經營スル、或ハ水道
  ヲ經營スル、電車賃ヲ拂ヒ、水道料ヲ拂フ者ハ市ノ財政ニ干
  與シテ居ルノデアル、然ルニ斯ノ如キ市ノ財政ニ干與スル者
  ヲ省イテ、何故ニ直接稅ヲ納メル者ニノミ限ルカト云フト御
  承知ノ如クニ使用料デアルトカ、或ハ手數料デアルトカ云フ
  モノハ、格段ニ營造物ヲ使用スルカ、或ハ格段ニ市町村ニ或
  ル行爲ヲサセルモノデアル、電車ニ乘ル、水道ヲ使フ、ソレニ
  對スル一ツノ對價デアル-代價デアル、斯ノ如キ代價ノ性
  質ヲ帶ビル所ノ使用料デアルトカ、或ハ手數料デアルトカ云
  フモノヲ納メル者ニ向ッテ、公民權ヲ附與スルト云フコトハ、
  茲ニ納稅主義ヲ執ッテ居ル以上ハ、斷ジテサウ云フ者ニ與フ
  ルコトハ出來ヌダラウト信ズルモノデアリマスル(拍手起ル)
  次ニ此國稅ノ條件ヲ撤廢スルコトニナリマスルト、市ト町村
  トノ間ニ不權衡ヲ來ス、不公平ヲ來ス、サウ云フコトヲ言ハ
  ルヽノデアリマス、何故ナラバ、市ハ〓大抵家屋稅ヲ施行シテ
  居ル、之ニ反シテ町村ハ多クハ戶數割ノ賦課ヲ受ケテ居ル、
  今直接國稅ノ要件ヲ撤廢スルト、町村ニ住スル人ハ、卽チ
  戶數割ノ賦課ヲ受ケルノデアリマスカラ、皆ナ直接町村稅
  ヲ拂フコトニナリ、市ノ如キ家屋稅ヲ施行シテ居ル所ニ於テ
  ハ、借家人ハ家屋稅ヲ拂ハナイノデアルカラ、サウ云フ人ハ公
  民權ヲ得ルコトガ出來ナイ爲メニ、不權衡デアルト、云フコト
  ヲ言ハルヽケレドモ、併ナガラ實際ニ於テ觀察致ジマスルニ、
  市ニ於テハ町村ニ於テ賦課シテ居ラヌ所ノ直接ノ特別稅
  ガアリ、其他營業稅或ハ商工業稅ノ負擔ヲ受クルコトハ市
  ハ町村ニ比シテ頗ル多イノデアリマスカラ、結局市ハ町村ニ
  對シテ不利益デアルト云フ議論ハ「決シテ「出來ナイノデアリ
  マス、又之ヲ實際ニ就テ見マスト、今日市ニ於ケル公民ノ數
  ハ三十三万人デアリ、之ヲ國稅ノ要件ヲ撤廢スルト云フコ
  トニナリマスト、市ニ於テ將來增加スル公民ト云フモノハ、六
  十九万人トナリ、而シテ其增加ノ步合ト云フモノハ二倍强
  ニ相成リマス、之ニ反シテ町村ハ如何ナル狀態カト云フト、
  町村ニ於ケル公民ハ今日ニ於テハ四百六十六万人デア
  リマシテ、國稅ノ要件ヲ撤廢シタ結果百八十二万人ノ增加
  トナル、此增加ノ步合ハ三割九分ニシカ當ラナイノデアル、
  只今申上ゲタ通リ、直接市町村稅ヲ標準トシテ公民權ヲ
  與ヘルコトニナリマスレバ、町村ニ重ク市ニ輕イカラ不權衡
  デアルト言ハルヽガ、事實ニ於テハ〓只今申上タ通リ、市ハ二
  倍ノ增加トナリ、町村ハ三割九分ノ增加ニ過ギナイノデア
  リマスカラ、此點カラ論ジテモ、杞憂ドコロデハナイ、議論ハ
  全ク根柢ヨリ間違ッテ居ルト謂ハナケレバナラヌト信ズル、又
  修正論者ハ今日勞働者ガ選擧權ヲ要求スルノハ非常ニ熱
  烈デアル、然ルニ直接國稅ヲ納ムルト云フコトニナレバ、多數
  ノ勞働者ハ公民權ヲ得ルコトガ出來ナイ、勞働者ヲ除外シ
  タモノデアルカノ如ク言ハルヽケレドモ、今日ニ比スレバ勞働
  者モ大ニ選擧權ヲ得ルコトニナル、直接國稅ヲ撤廢シタ結
  果、勞働者ノ公民權ヲ得ル數モ、論者ノ想像スル如ク少クナ
  イノデアッテ、決シテ其點ニ於テ勞働者ヲ除外スルナドト云フ
  コトハ、以テノ外ノ議論ト謂ハナケレバナラヌ、又或ハ市等ニ
  於テハ遊藝人ノヤウナ者ガ稅ヲ納メテ、其他ノ正業ニ就テ居
  ル者デ選擧權ヲ得ナイ者ガアルト云フコトモアリマスガ、ソレバ
  苟モ納稅主義ヲ取ッタ以上ハ、多少サウ云フコトハ免レマセ
  ヌ、併ナガラ政府ハ直接特別稅ヲ整理シテ居ルト云フノデ
  アリマスカラ、其點カラ考慮シテ、苟モ稅ヲ納メテ居ル者デモ
  選擧權ヲ與ヘテイカヌト云フヤウナモノハ、特別稅ヲ整理ス
  ルトキニ於テ、吾ミハ政府一ニ向ッテ十分考慮ヲ望ムノデアリ
  マスカラ、其點ニ於テモ、大ナル差支ハナイト吾〓ハ信ズルノ
  デアリマス···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=104

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• 105・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　諸君、時間モ迫リマシタナレドモ、
  討論ガ容易ニ盡キマセヌト認メマシテ、時間ヲ延長致シマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=105

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• 106・小田切磐太郎

  ○小田切磐太郞君(續)　次ニ重大問題デアッテ、而モ修正
  論者ガ最モ力ヲ入レテ論ゼラレタモノハ、等級制度改廢ノ
  問題デアリマス、御承知ノ通リニ現行法ニ於テハ市ハ三級、
  町村ハ二級デアリマス、此立法ノ精神ハ-等級制ヲ採ッタ
  立法ノ精神ハ、多ク稅ヲ納ムル者ニハ多クノ權利ヲ附與ス
  ル必要ガアリ、又多數無產階級ガ少數ヲ壓迫スル弊ヲ防グ
  ト云フ趣旨カラ出來テ居ルノダト云フコトデアリマスケレド
  モ、是ハ文化ノ程度ノ大ニ發達シタル我日本帝國今日ノ狀
  況ニ於テハ、サウ云フ必要ハ多ク認メナイノデアリマスカラ、
  曩ニ政府案ヲ提出セラレタ時ニ、政府當局者ガ言ハルヽ如
  ク、大體ニ於テ斯ウ云フ制度ヲ撤廢スルト云フコトハ、『本員
  モ差支ナイト信ズルノデアリマス、併ナガラ是亦先程公民權
  擴張ノ時ニ述べマシタ通リ、風俗デモ、習慣デモ、立法デモ、
  理想デモアルカト云フテ、餘リ急激ナル變化ヲ來スト云フコ
  トハ、却テ其モノヲシテ[進步發達セシムル所以デハナイノデ
  アリマス、ソレ故ニ今日ニ於テハ市ノ三級ヲ二級トシ、二級
  デアル所ノ町村ノ階級ヲ撤廢シテ平等選擧ニスルト云フコ
  トハ、一面ニ於テ時勢ノ要求ニ應ジテ不平等ナル制度ヲ廢
  スルト共ニ、一面ニ於テハ餘リ急激ノ變化ヲ避ケルト云フ當
  局立法ノ用意周到ナルヲ以テ私ハ稱スルモノデアリマス、且
  又現行法ニ於テハ、級別ヲスルノニ、澤山ノ稅ヲ納ムル者カ
  ラ級ヲ別ケテ居ル、ソレカラ公民デナイ者モ、多額ノ稅ヲ納
  ムル者ニハ、年齡ノ制限モナク、男女ノ區別モナク、禁治產
  者デアルトカ、准禁治產者デアルトカ云フ者ニモ選擧權ヲ與
  ヘテ居リマス、併シ是等ノ制度ノ時勢ニ合ハヌト云フコトハ、
  申迄モナイコトデアリマスカラ、政府ハ是等ノ者ニ選擧權ヲ
  與ヘルト云フコトハ、今度ノ法案ニ於テハ廢止シテ居リマス、
  斯ノ如クニシテ級別ヲスルノニ今度ハドウシタカト云フト、全
  體ノ稅ヲ納稅總人員デ割ッテ、其平均額以上ノ者ヲ一級ト
  シ、以下ノ者ヲ二級トスルト云フヤウニシタノデアリマス、現
  今ニ於テハ市ノ一級選舉人ハ三級選擧人ノ五十人ニ當ッ
  テ居ル、甚シキニ至ッテハ千人ニ當フテ居ルト云フヤウナ不公
  平ナル選擧ヲシテ居ルノデアリマスケレドモ、只今申上ゲタ
  通リ政府ノ改正案ニ依レバ、市ノ一級選擧人ハ、一一級選擧
  人ニ對シテ一對三ト云フ關係ニナッテ居ルノデアッテ、殆ド從
  前カラ見タナラバ、平等選擧ノ理想ニ稍、近イ所迄改正サレ
  テ居ルノデアリマス、何故ニ全部之ヲ撤廢シナカッタカト云フ
  コトハ、屢〓申上ゲタ通リ、餘リ急激ナル變化ヲ自治制ノ上
  ニ及ボスト云フコトハ、却テ自治制ノ圓滿ナル進步發達ヲ
  期スル所以デハナイト云フ周到ナル注意ノ下ニ出タノデア
  リマス、斯ノ如キ次第デアリマスカラ、本員ハ政府ノ提案ノ
  市ヲ二級トシ、町村ヲ原則トシテ此級別制ヲ撤廢スルト云
  フ此改正案ニ賛成致シマシテ、修正案ノ如ク急轉直下、全
  部撤廢スルト云フ急激ナ議論ニハ反對ヲ表スル者デアリマ
  スル(「急激デハアリマセヌ當然デス」ト呼フ者アリ)其他マダ
  條文ハ一ミ手許ニアリマセヌデアリマスルガ、只今ノ修正ノ
  御意見ハ、公民權擴張ニ基ク所ノ關係上、條文ヲ訂正シタ
  モノ、ンレカラ級別制ヲ撤廢シタ關係上、條文ヲ整理シタモ
  ノ、及ビ其他ニ於テハ只今修正者ガ述ベラレタノデアリマス
  ルガ、市會議員ノ闕員ヲ生ジタ時ニハ、今日ニ於テハ三分一以
  上ナル迄ハ、先ヅ補關選擧ヲ行ハナイノデアリマスル、併ナガラ
  府縣知事市長又ハ市會ガ必要ト認メル時ニハ、何時タリト
  モ補關選舉ヲ行フト云フコトニナッテ居ルノヲ原則トシテ、補
  關選擧ハ直グニ行フト云フコトデアリマスルケレトモ、市町
  村ノ狀熊ニ於テ、決シテ現行法ノ如キ法ノ下ニ於テ不便ト
  云フコトハナイノデアッテ、改正ヲシタ方ガ却テ不便デアルト
  本員ノ信ズルノデアリマスル、其他選擧名簿調製期間ヲ一
  定スルト云フヤウノ御議論ガアリマスケレドモ、是モ現行法
  ノ方ガ本員ハ宜シイト田心フノデアリマスカラ、憲政會國民黨
  カラ御出シニナッタ修正案ニハ反對ヲ致シマス、其他市參事
  會議員ノ任期ヲ二年トスル、斯ウ云フヤウノコトモ、今日ノ
  現行法ヲ改正スル所ノ必要ハ少シモ無イノデアリマスル、只
  タ茲ニ一ツノ問題トシテアリマスルノハ、今日現行法ニ於テ
  モ、亦政府ノ改正案ニモ現ハレテ居ラナイノデ、一ツ改正ヲ
  加ヘラレタ比較的重大ナル事項ト云フモノハ何デアルカト
  云フト、只今修正者ノ御意見ヲ拜聽シマスルト、神官神職
  諸宗ノ〓師、僧侶、ソレカラ小學〓員、是等ノ人ニハ現行法
  ニ於テ被選擧權ヲ與ヘテ居ラナイノデアリマスルシ、又政府
  ノ改正案ニモ無イノデアリマスル、是等ノ人ニ被選擧權ヲ與
  ヘヤウトスルノデアリマスルガ、此事ハ最モ愼重ニ〓究ヲ要セ
  ナケレバナラヌ所ノ重大問題デアリマシテ、獨リ市町村ノ選
  擧ト云ハズ、衆議院議員選擧法其他ニモ大ナル關係ヲ持ツ
  テ居ルノデアリマスルカラ、斯ノ如キ重大問題ハ、同一ノ下ニ
  解決スルヲ以テ本員ハ至當ト思ヒ、今市町村制ヲ改正スル
  此場合ニ、市町村制ノミニ此所へ出シテ來ルコトハ、當ヲ得
  テ居ラヌト信ズルノデアリマシテ、此事ハ十分〓究ノ上ニ、
  衆議院議員選擧法其他ノ法ト同時ニ解決スルヲ以テ本員
  ハ最モ至當ナリト信ズルノデアリマスル、其他委員會ノ修正
  ヲ委員長ガ御述ベニナリマシタガ、是ハ最モ適當ノ修正ト思
  フノデアリマスル、其修正ノ主ナルモノハ、只今御報告ニナリ
  マシタガ、市制或ハ町村制ニ於テ、現行法ニ於テハ禁錮以
  上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタ者ハ、公民權ヲ停止セラルヽコトニ相
  成ルノデアリマスルケレドモ、是ハ刑ノ確定ヲ待ッテ公民權ヲ
  停止スルト云フコトニ改メルト云フコトモ、最モ適當ナ事デ
  アリ、現ニ衆議院議員選擧法ニ於テ斯ウナッテ居リマスルカ
  ラ、是ハ同一ニスルト云フコトハ最モ必要デアルト本員ハ信
  ズルノデアリマスル、要スルニ本員ハ委員長ノ報告ニ贊成シ
  マシテ、只今黑金君カラ御述ベニナリマシタ修正ニ就テハ反
  對ヲスル者デアリマスル、之ヲ要スルニ若シモ公民權ノ擴張、
  卽チ選擧權ノ擴張ヲ最モ大ニスル所ノ法律ガ最モ良イ法
  トシタナラバ、曩ニ國民黨諸君ニ依ッテ提出セラレタ改正
  案ガ最モ良法ト謂ハナケレバナラヌノデアリマスル、何故ナラ
  バ國民黨諸君ニ依シテ曩ニ提出セラレタ案ニ依リマスルト、
  年齡ハ二十歲ニナリ、住住居ハ六箇月、納稅資格一ハ全部撤
  廢ト云フコトニナッタノデアリマスガ、今度ノ修正案ニ依レバ
  年齡ハ確カ二十五歳ト相成ッテ居ルト存ズルノデアリマス、
  若シモ只今申上ゲタ通リ、公民權ノ擴張ノ大ナルモノ、卽チ
  公民權サヘ擴張スレバンレガ最モ良イ法トシタナラバ、今日
  御提出ニナッタ所ノ修正案ハ改惡ト言ハナケレバナラヌ、併
  ナガラ本員ハ改惡トハ信ジナイノデアリマス、恐ラクハ國民
  黨諸君ハ、曩ニ提出セラレタ案ノ如クデアッタナラバ、餘リ大ナ
  ル急激ナル變化ヲ自治制ノ上ニ及ボスノデアッテ、餘リ大ナル
  急激ナル變化ヲ自治制ノ上ニ及ポスハ不可ナリト御考へ直
  シニナッテ、少シ選擧權ヲ狹メテ、此修正案トナッテ現ハレタ
  モノデナカラウカト信ズルノデアリマス、旣ニ然リトスレバモ
  ウ一步御考ヘ下スッタナラバ、政府ノ改正案ニ就テ御賛成
  ヲ得ルコトハ蓋シ至難デハナカラウト本員ハ信ズルノデアリ
  マス(拍手起ル)諸君、此政府提案ニ依リマスルト、結果カラ
  申シマシテモ、公民ノ數ハ增加スルコト五割デアリマスル、此
  法案ガ成立ヲ致シマシテ、此多數ノ人ガ新タニ選擧權ヲ得
  テ、自治制ニ參與スルコトニ相成リマシタナラバ、自治ノ圓
  滿ナル發達ヲ期スルニ於テ、多大ノ幸福ガアリ、吾〓國民ハ
  非常ナル幸福ヲ感ズルノデアリ、賴テ以テ憲法政治ノ健全
  ナル發達ヲ期スルコトガ出來ルト信ズルノデアリマスル、本議
  會ニ提出セラレタ重要法案ハ頗ル多クアリマスルケレドモ、
  本案ノ如キ國利民福ヲ增進スル案ハ、他ニ其比ヲ見ナイノ
  デアリマス、依テ本員ハ切ニ本案成立ヲ希ヒ、只今黑金君
  カラ御述べニナリマシタ、修正ノ意見ニ反對シ委員長ノ報
  告ニ賛成ヲ表スル者デアリマスル(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=106

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• 107・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　大口喜六君
  〔大口喜六君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=107

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• 108・大口喜六

  ○大口喜六君　私ハ黑金君ヨリ御提出ニ相成リマシタル
  修正案ニ贊成ヲ致スモノデアリマス、黑金君御提出ニナリマ
  シタル修正案ハ、大分澤山ノ箇條ガ修正サレテアルヤウデア
  リマスルガ、大要之ヲ約シマスト、七箇條許リノ要點ニ相成
  ルヤウデアリマス、而シテ其他ニ此委員長ヨリ御報告ニナリ
  マシタル所ノ二箇條ノ修正、是モ矢張含マレテ居ルノデアリ
  マスルガ故ニ、委員長ヨリ御報告ニナリマシタル二箇條ノ修
  正ニ就テハ、矢張私共モ之ヲ賛成スル者デアリマス、此二箇
  條ノ御修正以外ニ於テ、七箇條許リノ要點ニ依ッテ更ニ修
  正ヲ加ヘントスル此黑金君ノ御修正ニ賛成ヲスル者デアリ
  マス、而シテ此御修正ハ、只今モ小田切君カラモ御話ニナリマ
  シタ如ク、其主ナル點ハ先ヅ公民權ノ擴張ト、階級選擧ノ
  撤廢デアリマスルガ故ニ、私モ先ヅ此二ツノ問題ニ就テ其
  贊成ノ趣意ヲ述ベマシテ、而シテ更ニ他ノ條件ニ亙リマシテ
  ハ、其後ニ於テ之ヲ申述ベタイト思フノデアリマス、勿論此
  公民權ノ擴張ト階級選擧撤廢ト云フコトハ、市町村制ノ
  何レニモ相通ジマシテ、同ジ趣意ニナルノデアリマスルガ故ニ、
  私ハ矢張此問題ニ對シテモ、市制町村制ヲ通ジテ爰ニ贊
  成ノ意見ヲ申述ベテ見タイト思フノデアリマス、凡ン此自治
  ノ發達ト云フモノニ就テハ、住民ニ成ルベク多數參加セシメ
  テ、此行政ノ事務ニ當ラシムルト云フコトハ、當然デアルト
  云フコトハ、內務大臣旣ニ之ガ言明ニナッテ居リマス、只今
  小田切君モ其意見デアリマシテ、卽チ此自治ノ發達ヲ希望
  スルガ爲メニハ、一人デモ多ク住民ヲシテ所謂公民權ヲ得七
  シメ、而シテ行政事務ニ參加セシムルト云フコトハ、一人モ
  異議ノ無イコトデアラウト思ヒマス、只ダ是ヨリ先キハ程度
  ノ問題デアルト云フ御議論デ、私共ハ先日來屢、此委員會
  等ニ於キマシテ、內務大臣首メ政府委員ニ對シテ、質問應
  答ヲ重ネマシタル結果、決シテ此程度ノ問題ノミニ非ズト
  云フコトヲ認メテ居ルノデアリマス、卽チ根本ノ觀念主義ガ
  相分レテ居ルヤウニ私共ハ信ゼラレルノデアリマス、既ニ内
  務大臣ガ段々御說明ニナッタ所ヲ承リマシテモ、又只今小
  田切君ノ御演說ヲ承リマシテモ、所謂此納稅主義デアル、
  卽チ公民權ヲ與ヘル、此自治體ト云フモノニ對シテ、權利ヲ
  得セシメルト云フコトノ條件トシテハ納稅主義デアル、納稅
  ト云フコトヲ土臺トシテ稅ヲ納メテ居ル者ニ對シテ、權利ヲ
  與ヘルノデアル、卽ヲ納稅ト云フコトガ權利ト云フモノヽ代
  償物ニナル、是ガ根本ノ觀念ニ相成ッテ居ルヤウデアリマス、
  卽チ私ハ此委員會ニ於キマシテ、内務大臣ノ御意見ヲ承ッ
  テ見タノデアリマシタガ、凡ソ此我國ニ於テ明治二十一年
  四月十七日初メテ市町村制ヲ發布サレマシテ、其翌年ノ
  二十二年カラ之ガ實行サレタコトハ、諸君ノ御承知ノ通リ
  デアリマスルガ、其當時此政府ノ出サレテ居リマスル所ノ理
  由書ト云フモノハ、是ハ只今小田切君ガ大體御述ベニナッ
  夕如クデアリマスルガ、此當時ニ於ケル根本觀念ト云フモノ
  ガドウナッテ居ッタノデアルカ、之ヲ讀上ゲテ見ルト、』極メテ其
  當時ノ爲政者ノ思想ト云フモノガ判ルノデアリマス、卽チ斯
  ウ云フコトガ書イテアル「蓋シ本制ニ定ムル要件中納稅額ノ
  制限ヲ設クル所以ハ市町村ヲ以テ其盛衰ニ利害ノ關係ヲ
  有セサル無智無產ノ小民ニ放任スルコトヲ欲セサルカ爲ナ
  リ」之ガ當時ノ根本觀念、其當時ノ納稅資格ヲ以テ、公民
  權ノ要件ト致シテ置イタト云フコトハ、無智無產ノ小民ニ
  地方ノ自治ヲ放任スルコトハ欲シナイ、ソレガ根本觀念ニ
  ナッテ居リマス、ソレカラ等級選擧ヲ設ケラレル觀念ハ、ドウ
  デアルカ、斯ウ云フ事ガ書イテアル、「蓋シ名譽職ニ任スルハ
  町村公民ノ輕カラサル義務ナレハ資產アル者ニ非サレハ之
  ニ任スルコト能ハス又其稅額ノ多寡ハ姑ク之ヲ論セサルモ
  其專ラ自治ノ義務ヲ負擔スル者ニ相當ノ權力ヲ有セシムル
  ハ固ヨリ當然ノ理也今等級選擧法ヲ以テ常例トセルハ卽
  チ此要旨ニ外ナラス」卽チ等級ヲ分ケルト云フコトモ、矢張
  之ヲ納稅スル者稅金ヲ餘計納メル者ニハ、相當ノ權力ヲ與
  ハルノハ當然デアル、斯ウ云フ意味カラ等級ヲ設ケラレマシ
  タ、故ニ我國ノ自治制ト云フモノニ對シテ、納稅ノ主義ヲ
  執ッテ居ルト云フコトガ、權利ヲ與ヘル代償物トシテ稅金ヲ
  持ッテ行クノデアル、金ヲ餘計納メル者ニハ權利ヲ餘計與ヘ
  ルノガ當然デアル、此根本觀念カラ來ッテ居ルモノデアルガ、
  今囘政府ガ提案サレタ所ニモ、矢張納稅額ヲ認メテ居ル、
  ソレガ矢張昔ノ如キ主義ヲ執ラルヽカト云フコトヲ私ハ質
  問シタトキニ、内務大臣ハ何ト御答ニナッテ居リマスカ、矢張
  納稅主義デアルト云フコトヲ御答ニナッテ、明治二十一年ニ
  出サレテアル理由書ノ御趣意ヲ明カニ御認ニナッタノデアリ
  マス、之ガ吾ヒト根本觀念ニ於テ、自治ノ根本ナル所ノ選擧
  權公民權ヲ定メル上ノ根本思想ニ於テ、私ハ政府當局ト
  遺憾ナガラ意見ヲ異ニシテ居居ノノアアリマス、決シテ是ハ程
  度ノ問題デハナイノ『デアリマス、根本主義ノ問題デアルノデ
  アリマス、我國自治制ト云フモノハ、何所カラ參クテ居ルカト
  云フコトヲ考ヘテ見マスニ、總テノ說明ニ依リマスト、母法ト
  シテ採ラレタ所ノモノハ獨逸、殊ニ普魯西ノ制ヲ採ッタモノ
  デアルト云フコトデアルガ、私ガ申スマデモナク、諸君ノ御承
  知ノ如ク獨逸デアルトカ、英國デアルトカ云フ所デ、最初階
  級制ヲ執ッテ居リマシタ、ソレガ歷史的沿革ヲ十分ニ備ヘテ
  居ルノデアリマス、卽チ英吉利ノ立憲政體ニ於テハ、國王ガ
  人民ノ權利ヲ承認致シマスルノニ、人民ガ一方ニ於テ納稅
  ヲ承諾スル其代償トシテ、權利ヲ與ヘタト云フコトノ歴史ノ
  有リマス爲メニ、根本ノ觀念ガ權利ノ代償物トシテ、納稅ヲ
  認メラレテ居ル經歷ガアルノデアリマス、獨逸モ御承知ノ通リ
  デアリマス、然ルニ我國ノ國體國情ハ全然異テ居リマシテ
  神代ノ昔ヨリ吾々日本臣民ハ一天萬乘ノ君ヲ戴キ、皇室ニ
  ハ絕對服從致シテ居ル者デアリマスルガ故ニ、皇室ニ對スル奉
  仕ノ觀念、國家ヲ維持スル熱心義務ノ上カラ、必要ニ應ジテ
  納稅ヲ致シマシタ故ニ、決シテ納稅ト云フモノハ權利ノ代償
  物ニナラナイト云フコトハ、我國ハ全ク獨逸、英吉利ト其事情
  ヲ異ニシテ居ルカラデゴザイマス、況ヤ今日ノ立憲思想ニ依リマ
  スレバ、人民ト云フモノニ斯ル理由ニ於テ權力ヲ與ヘルコトハ
  有ルベカラザル事デアリマス、我國ノ人民ハ御承知ノ通リ非
  常ニ進ンデ居ルノデアリマシテ、決シテ此納稅ノ多寡ニ依。ツ
  テ國民ニ對スル所ノ奉仕、又ハ己ノ自治體ニ對スル所ノ義
  務ニ對シテ、多イ少ナイト云フ如キ勸念ヲ、持ツガ如キ人民
  ハ、我國ニハ一人モアルマイト吾〓ハ信ジテ居ルノデアリマス
  (拍手起ル)ソレ故ニ此資格トカ、納稅額ト』カ云フモノヲ權
  利ノ代償物ト爲シ、之ヲ土臺トシテ公民權ヲ定メ、殊ニ我
  國ノ基礎ニナル所ノ自治體ノ如キモノニ對シテ、重要ナル位
  置デアル公民權其モノヲ定ムルニ、納稅ノ多寡ヲ以テ標準
  ト爲シ、內務大臣ノ所謂納稅主義ヲ執ルト云フガ如キハ、我
  國ノ國情國體ノ上カラ、吾マハ反對セザルヲ得ザル者デアリ
  マス、旣ニ吾ミガ此納稅ヲ認メナイト云フ趣意ガ此ニ在ルソ
  デアリマス、故ニ吾ミハ決シテ内務大臣ノ言ハルヽ事ヲ、漸
  進主義トハ見ナイノデアリマス、內務大臣ハ漸進主義ト言
  ハルヽガ、漸進主義ト言フナラバ、同シ主義ニ於テ秩序能ク
  或點マデ進ンデ行クナラバ、漸進主義デアルケレドモ、一 四
  ニ於テハ納稅ト云フモノハ權力ノ代償物トシテ認メナイト
  云フ主義、一方ハワレヲ認メルト云フ主義ノ違フモノガ歩ミ
  合フト云フコトハ、吾〓ハ漸進主義ト云フコトガ出來ナイト
  思フノデアリマス、此見地ニ於キマシテ、私共ハ此改正ノ場
  合ニ於テ、全ク是迄申シテ居ッタ如ク、英國デアルトカ、獨逸
  デアルトカ云フ如キ、或ル歷史的沿革ヲ持ッテ居ル國トハ、全
  ク違フ我國ノ國情デアリマスルガ故ニ、此納稅ヲ根本トナス
  主義ヲ撤廢シテ、納金ニ依ラズ、我ガ國民ノ智識ニ信賴シ、
  我ガ國民ノ愛國心ニ信賴シテ、之ニ相當ノ公民權ヲ與へ、我
  ガ國家ノ基礎ヲ鞏固スルハ、今日當ニ爲スベキ事ナリト吾こ
  ハ信ジテ疑ハヌノデアリマス、(拍手起ル)次ニ此階級ノ事ニ
  就テ-等級選擧ノ事ニ就テ申上ゲテ見タイト思ヒマスガ
  是モ明治二十一年ニ政府ガ出シマシタ理由書デ、當時ノ當
  局ガ如何ナル觀念ニ依シテ此等級選舉ヲ設ケタモノデアルカト
  云フコトヲ申サレタノデアリマスガ、此理由書ヲ段々味ッテ分
  ケテ見マスト云フト、斯ウ云フ觀念ニナッテ居ルヤウニ思フノ
  デアリマス、卽チ此等級選擧ヲ必要ト致シマシタ第一ノ理
  由ハ多ク納稅シテ居ル者ニハ多クノ權力ヲ與ヘナクテハナ
  ラナイ、第二ノ多數ノ細民ノ音一思ニ依ッテ、或ル少數ノ富豪
  者ヲ壓迫スルト云フガ如キ事ガアッテハナラナイ、是ガ第二ノ
  觀念、第三ノ觀念ハドウデアルカト云フト、成ベク選擧權ハ
  擴張シナクテハナラナイ、之ヲ擴張スレバスル程、一面ニ弊害
  ガ起ルノデアルガ故ニ、此社會ラ三ツニ。見テ、上流ト中流ト
  下流ト云フモノヽ、各階級ノ間ノ權力ノ」平衡ヲ圖ラナクテ
  ハナラナイト云フノガ、第三ノ觀念デアッタト吾ニハ思フノデ
  アリマス、然ルニ只今モ申シタ如ク、吾〓ハ今日ノ時代ニ於
  テハ、決シテ此納稅額ヲ標準トシテ、權力ノ對象トシテ納稅
  額ト云フモノヲ認メルト云フコトハ、大カル誤リデアルト思ヒ
  マスルガ故ニ、此理由ハ採ルニ足ラナイノデアル、今日ノ時代
  ニ於テハ、此觀念ハ打捨テナクテハナラヌ、第二ノ細民ガ富
  豪階級ヲ壓迫スルト云フコトハ、事實ニ於テ如何デアリマセ
  ウカ、現在ノ市制町村制ニ於テハ、細民ガ富豪ノ人ヲ壓迫
  スルヨリモ、寧口極メテ少數ノ富豪ノ人ガ三人ヤ、五人デ多
  數ノ議員ヲ選出シテ、多數ノ細民ヲ壓倒スルト云フノガ、事
  實ノ上ニ爭フベカラザル事ニ相成ッテ居ル、(拍手)故ニ此觀
  念ト云フモノモ、全ク打破シテ居ルノデアリマス、ソレカラ又
  一般社會ニアル所ノ各階級ト云フモノヽ權力ノ權衡ヲ得ネ
  バナラヌト云フコトハ、一應尤ナ事柄デアル、吾〓モ左樣ナ事
  ハ心懸ケネバナラヌ事デアルト思』ヒマスケレドモ、此各階級
  ノ權力ノ均衡ヲ得ヤウト云フコトハ、獨リ納稅ノ多寡ニ依ッ
  テ等級ヲ定メテ、ソレニ依ッテ目的ヲ達セラレルモノデハアリ
  マセヌ、(拍手)其中ニハ勿論納稅モ必要デアラウガ、學識デ
  アルトカ、職業ニ依ッテモ餘程違フノデアリマス、其他人〓ノ
  地位、其他社會上有ユル原因ヲ採用致シマシテ、其間ノ相
  當ナル權力ノ平均ヲ圖ルニ非ザレバ、決シテ此目的ハ達セ
  ラレルモノデハナイ、サウ云フ事ハ容易ニ出來得ベカラザル事
  デアッテ、獨リ納稅額ノ多寡ニ依シテ、人民ニ選擧權ヲ與ヘル
  ノニ階級ヲ決メテ、之ニ依ッテ上流階級ト下流階級ノ權力
  ノ平衡ヲ圖ラントスルガ如キハ、蓋シ二十年モ三十年モ前
  ノ思想ノ發達セザル時代ノ』考デアリマス、(拍手)今日左樣
  ナ事ハ決シテ行ハレルモノデハナイト云フコトヲ、私共信ジテ
  疑ハナイ、是亦主義ノ上ニ於テ、現內閣ノ出サレタ所ノ此法
  案ニ、吾〓ガ反對セザルヲ得ザル所デアリマス、(拍手)殊ニ今
  囘政府ノ出サレタ所ノ此案ノ中ニ、公民權ノ要件トシテ、直
  接市稅ト云フモノヲ認メラレタト云フコトニ就キマシテハ、頗
  ル〓究ヲ要スルモノデアリマス、勿論是ハ理論ノ上カラ申シ
  マスレバ、國稅卜云フコトニ致スヨリハ、直接市稅ト云フコト
  ニ致シタ方ガ、宜イヤウニモ吾ヒハ考ヘルノデアリマスルガ、然
  ラバ此直接市稅トハ如何樣ナモノ』デアルカト一云フコトヲ〓
  究シテ見レバ、先刻府縣制ノ場合ニ私ヨリ內務大臣ニ質問
  ヲ致シマシタガ如ク、或ハ市制町村制ノ明文ニ定メラレテア
  ル所ニ依ッテ、内務大藏兩大臣ガ、直接市稅ト云フモノヲ指
  定ヲサレテ居ル、其指定ハ先刻小田切君ガ申サレタルガ如
  キ形式ニ依クテ、指定ヲサレテ居ルノデアルガ、此指定ニ依ル
  ト云フト、第一ガ直接國稅ニ對シテ附加サレル所ノ市町村
  稅、是ガ直接市町村稅ノ一ツ、モウ一ツハ直接府縣稅ト云
  フモノニ對シテ附加サレタ所ノ市町村稅、是ガ第二ノ直接
  市稅デアリマス、其外ニ段別割、此三ツガ一般ノ直接市稅
  デアッテ、其他ハ其市、町村々々ニ於テ、特別稅ヲ起シテ居ル
  場合ニ、其特別稅ガ直接市稅ニ準ゼラ』ルベク認メラレタ場
  合、府縣知事ヲ禀申ニ依ッテ、特ニ告示サレ「タモノガ、其市
  町村ニ限ッテ是ガ直接市稅ト相成ッテ居ル、是ハ極メテ僅カ
  ナモノデハアリマセウガ、併シ京都市、大阪市ノ如キハ、ズット
  舊イ時ニ出來タ所ノ步一稅、卽チ家屋建物ノ移轉稅ノ如
  キモノガ、既ニ直接市稅トナッテ只今モ殘ッテ居ルコトハ、內
  務省ガ吾ヒニ示サレタ所ノ參考書ニ依ッテ明デアリマス、殊ニ
  縣稅ノ中ニハ、御承知ノ通リ雜種稅ナルモノガアッテ、之ニハ
  自轉車一臺持ッテ居ッテモ雜種稅ヲ納メテ居ル、或ハ藝妓置
  屋ノ如キ、小サキ料理屋ノ如キ、何レモ是ハ雜種稅デアル、嘗
  テ愛知縣ノ如キハ乳母車ニ對シテモ、雜種稅ヲ取ッテ居ッタ
  コトガアル金庫ヲ備ヘテ居ル者ニ對シテモ、雜種稅ヲ取ッタ
  コトガアル、ツノ此間迄之ヲ徴收致シテ居ッタノデアル、斯ノ
  如キモノニ對シテ附加サレタ所ノ市町村稅ト云フモノハ、直
  ヂニ直接市稅ニナルノデアリマスガ故ニ、直接市稅ノ種類ト
  云フモノハ極ノテ多キモノデアッテ、其煩雜ナルコトハ實ニ驚
  クベキモノデアラウト思フ、隨テ其間ニ於テ頗ル不公平ナル
  事ガ出來ルノデアリマス、是ハ見樣デアッテ、色ニナ事モアリ
  マセウ、先刻小田切君ガ述ベラレタヤウナ事モアルノデアリ
  マセウガ、併シ一面ニ於テ大ナル不公平ガアルト云フコトハ、
  事實ノ上ニ於テ立證スルコトガ出來ル、先ヅ第一ニ私ガ-
  市ニハ餘リ無イ事デアルガ、町村ニ於テハ常ニ見ル事テアツ
  テ、極メテ不公平ヲ來サウト思フノハ、夫役現品ニ對スル所
  ノ事柄デアリマス、町村ニ於テハ道路ノ普請ヲスルノニ必ズ
  悉ク稅金デ取ッテ居ナイ、夫役現品ヲ賦課シテ、其土地ノ者
  ガ出テ道路ノ普請ヲスルノデアリマスガ、普通ノ法條ヲ適用
  シテ參リマスレバ、市制デ云ヘバ百二十五條、町村制デ云ヘ
  バ百五條ニ依ッテ、是ハ直接町村稅竝ニ直接市稅ト云フモ
  ノヲ準率トシテ之ヲ賦課スベキモノデアルガ、是ハ普通ノ場
  合、急激ヲ要シタ場合ニハサウ云フコトヲ致サナクテモ宜イ
  コトハ、法文ノ定ムル所デアリマス、ソレノミナラズ、府縣知事
  ノ認可ヲ受ケレバ、夫役ノ現品ト云フモノハ、必ズシモ直接
  市稅、直接町村稅ト云フモノヲ準率トシナクテモ宜イコトニ
  ナッテ居ルノハ、諸君ガ御承知ノ通リ市町村制ニ明カニ書イテ
  アル、而シテ其夫役現ロ四ヲ出スコトニ應ジナカッタ場合ハ、矢
  張金ヲ以テ之ヲ徵收スルコトハ、諸君ノ御承知ノ通リデア
  リマス、是ガ果シテ此取ラレタ所ノ金ガ、直接市町村稅ニ入
  ルカト云ヘバ是ハ入ラナイ、是ガ入ラナイノハドウスルカ、不
  公平デハナイカト云フコトヲ私ハ委員會ニ於テ承リマシタ所
  ガ、塚本政府委員ノ御答ニ依レバ、是ハ已ムヲ得ナイ、斯ウ云
  フ御答デアリマス、此位不公平ナ事ハ私ハ無イト思フ、卽チ
  納稅額ト云フモノヲ根據トシ、殊ニ直接市町村稅ヲ根據
  トスレバ、村ノ如キ處ニ依ッテ夫役現品ヲ課シタ場合、其課
  ケ方ノ如何ニ依ッテハ、如何ニ之ニ對シテ働ヲ爲シ之ニ對シ
  テ金錢代償セシメタ場合デアッテモ、市町村ノ公民權ハ得ラ
  レナイト云フ結果ヲ出スコトハ明デアリマス、此位先ヅ不公
  平ナ事ガアル、ソレカラ市ノ方デ云ヘバ、先刻モ小田切君ノ
  御話ガアリマシタカラ、之ヲ引用シテ申述ベテ見タイト思フ
  ノアルガ、家屋稅ヲ施イテ居ッテ、等差割ヲ課ケテ居ラナイ所
  ノ市制地ハ御承知ノ通リ澤山アリ、假リニ此市制地ニ於テ
  官吏又ハ學校〓員ノ如キ人デアッテ、一箇年ニ一千圓ノ所
  得ノアル人ハドウデアルカ、而シテ此人ノ借家ヲ借リテ居ル
  ト致シマス、サウスルト一千圓ノ所得デアッテハ、其中カラ
  色こナ入費等ヲ差引キマスレバ、八百圓以下ニナル、或ル場
  合ニ於テハ-或ル場合デハナイ、大〓ノ場合ニ於テハ、所
  得稅ハ課カラヌデ濟ムノデアリマスガ故ニ、此人ハ公民權ヲ
  得ルコトハ出來ナイノデアリマス、直接市稅ト云フモノヲ納
  メナイノデアリマスガ故ニ、公民權ヲ得ルコトハ出來ナイ、併
  ナガラ如何ニ借家借リデアッテモ、小商人デアッテモ、錢
  厘モ家屋稅ヲ納メテ居ナイ人デアッテモ、自轉車ヲ一臺持
  チ、乳母車ヲ一臺持ッテ、縣ノ雑種稅ヲ持ッテ居ル場合ハ之
  ニ對シテ其市町村ガ附加稅ヲ賦課スル、之ヲ納メレバ公民
  權ヲ得ルト云フコトニナルノハ、事實ノ上ニ於テモ明カナ問
  題デアリマス、(拍手)斯ノ如キ次第デアリマスガ故ニ、此
  直接市稅ト云フモノヲ準標的トシテ爰ニ之ヲ定メラレルト
  云フコトハ、公民權ヲ附與スル上ニ於テ頗ル煩雜デアルノミ
  ナラズ、極メテ不公平ナ事ガ出來ルト云フコトヲ私ハ思フ者
  デアリマス、(拍手起ル)殊ニ今日ノ狀態テアッテ諸君如何デ
  アリマセウ、多額納稅者必ズシモ智識階級ニ非ズ、智識階
  級必ズシモ多額納稅者ナラズト云フコトハ、諸君ノ御承知
  ノ通り、卽チ國家ト云フモノハ、私ガ申スマデモナク、和稅ヲ
  納ムルガ故ニ權力ヲ多ク與ヘヤウト云フモノデハナイ、國民
  ハ何所マデモ國ヲ念ヒ、國家ニ奉仕セントスル所ノ熱誠ヨ
  リ、必要ニ對スル、所ノ租稅ヲ一面ニ出ス、其代リニ國家ト
  云フモノハ、如何ニ國家ヲ經營スベキカ、此自治體ハドウ云
  フ者ニ任セバ完全ニ行クデアラウカ、國家ハドウスレバ善ク
  ナルデアラウカト云フコトヲ考ヘテ、所謂國家ノ行政ヲ進ム
  ル上ニ於テ、適任ト認ムル者ニ權力ヲ與ヘルト云フコトガ當
  然ナ事デアル、卽チ稅ヲ餘計納ムレバ、必ズシモ其人ガ行政
  上ニ適シテ居ル者トハ見ラレナイ相當ニ之ニ對シテ知識ア
  ル者ヲ選バナケレバナラヌノデアリマスガ故ニ、今日ノ我國ノ
  知識程度今日我國ニ於ケル文化ノ程度ニ於テハ、納稅額
  ノ如キハ明カニ之ヲ撤廢スルノガ、當然ナ事デアル尙且ツ之
  ヲ爲サヾルト云フコトデアルナラバ、其弊ヤ極メテ大ナルモノ
  デアルト私共ハ信ジテ疑ハナイノデアル、(拍手起ル)私共ハ
  此主義ニ於テ、政府ノ今回ノ案ニ贊成スルノデアリマスガ故
  ニ既ニ根本ノ觀念ガ違ヲテ居ル漸進主義デハナイ、漸進主
  義デアレバ程度問題、ドウデモ言ヘルノデアルガ、吾ミハ根本
  觀念ニ於テ、斯ノ如キ舊思想ヲ打破シ、新シキ我國ノ國情
  ニ照シ、殊ニ我國ハ先刻申シタ通リ、極メテ古キ時代ヨリ完
  全ナル歴史ヲ以テ進ンデ來タ國柄デアリマシテ、國家ト人民
  トノ間ハ、密接ナル關係ヲ持ッテ居ルノデリマス、英國ヤ獨逸
  ノ古キ例ヲ學ンデ今日此納稅資格ヲ認メルガ如キハ、極メ
  テ我國情ニ適セザルモノデアル、況ヤ英國獨逸ノ如キハ、御
  承知ノ通リ大戰前ニ於テ旣ニ著々此制度ヲ廢シテ、比例選
  擧ニ致シテ居ルコトハ、私ノ喋々ノ辯ヲ俟タザル所ノ事ト私
  共ハ信ジテ居ルノデアリマス、(拍手起ル)是ダケ申上ゲマス
  レバ、此稅ト云フモノヲ當テマスルト云フコトノ宜シクナイコ
  ト、竝ニ等級選擧ノ宜シクナイ、之ニ反對スル理由ハ申述べ
  タコトヽ思ヒマスガ、此次ニ一言ヲ費シテ置キタイノハ、選擧
  名簿調製ノ事デアリマス、只今小田切君ハ、現制度ノ方ガ
  名簿ノ調製ニ宜シイト云フコトヲ言ハレタノデアリマスガ、是
  ハ一ツノ御見識デアリマスガ故ニ、之ニ對シテ吾ミハ彼是言
  フ者デハアリマセヌガ、現制度ハ一體ドウナッテ居ルノデアリ
  マセウカ、御承知ノ通リ衆議院議員ノ選擧ニ關スル選擧名
  簿ト云フモノハ是ハ定時名簿デアッテ、每年々々一定ノ期
  間ヲ定メテ調製スル所ノモノデアリマス、府縣會議員ノ選擧
  名簿ハ如何ナルモノデアリマセウカ、是亦一定ノ期間ヲ定メ
  マシテ、毎年々々定期ニ之ヲ調製スルモノデアル、郡會議員
  ノ名簿亦然リデアリマス、然ルニ獨リ市町村會議員ノ選擧
  名簿ノミガ随時名簿ニナッテ居ッテ、選擧ノアル度每ニ六十
  日前ノ現在ニ依シテ此名簿ヲ調製シテ、四十日前ニ縱覽致
  サナケレバナラヌノデアリマスガ故ニ、此名簿ヲ眞ニ調製スル
  所ノ期間ハ僅ニ二十日シカ無イノデアリマス、今日迄ニ於テ
  既ニ此選擧名簿調製ニハ各市町村長ガ頭ヲ惱シテ居ルノ
  デ、今回ノ選擧權擴張ニ依ッテ假リニ政府ノ原案ガ通ルト
  致シマシテモ、此公民權ノ數ト云フモノハ非常ナ殖エ方デア
  ル、何倍ト云フ非常ナルモノニナル、一寸シタ人口十万ニ足
  ラザル所ノ市デアッテモ、八千九千一万ト云フガ如キ、大ナル
  數ノ公民權者ヲ出スノデアル、之ヲ僅ニ二十日ノ間ニ有ユル
  複雜ナル所ノ直接市稅ニ就テ之ヲ調べ、有ユル人ニ就テ獨
  立ノ生計デアルヤ否ヤヲ取調ベテ、此名簿ヲ完全ニ作ラウ
  ト云フコトハ、蓋シ普通人間ニ於テハ、極メテ能フベカラザル
  所ノ事柄デアリマス、(拍手起ル)殊ニ私ノ奇怪ニ感ズルノ
  ハ、今回政府ガ御出シニナリ、今朝拜見シタ改正ノ府縣制
  ニ依リマシテモ、府縣會ノ選擧名簿ハ、矢張每年定時々々ニ
  調製スルコトニナッテ居ッテ、每年九月十五日ヲ期トシテ此
  名簿ヲ作ルコトニナッテ居ル、毎年ドウシテモ名簿ヲ作ラナケ
  レバナラヌ、其要件トシテ公民權ト」云フモノヲ備ヘナケレバ
  ナラナイコトニナッテ居ル、ソレデアルカラ毎年々々九月十五
  日ヲ期トシテ、縣會議員ノ選擧名簿ヲ作ラントスレバ、必ヤ
  先ヅ每年々々公民權ト云フモノヲ取調ベナケレバナラヌノデ
  アリマス、是ガ調ベラレナケレバ、每年々々九月十五日現在
  ニ依シテ府縣會議員ノ選擧名簿ハ出來ナイノデアル、ソレデ
  アルカラ獨リ市町村會議員ノ選擧名簿、卽チ公民權ノ資格
  ヲ調ペルノニンレニ限ッテ隨時名簿ニシテ置ク、或ル場合ハ
  五月ニナル所モアルデアリマセウシ、選舉ハ今日ノ儘ニ依ル
  ト其六十日前ノ現在ニ依ルノデアルカラ、各都市ニ依ッテ
  色〓違ヒ、町村モ色〓違フ、三月ノ所モ二月ノ所モア
  ル、有ラユル區別ニナッテ居ルカラ、迷惑千萬ナ話デアル
  ケレドモ之ヲ府縣會議員ノ選擧名簿ト同ジヤウニ、毎
  年每年九月十五日ヲ期トシテ作ルヤウニ定メタナラバ、
  市町村長ハ府縣會議員ノ選擧名簿ヲ作ルニハド
  ウシテモ之ヲ調ベナケレバナラナイ、公民權ノ名簿ガ出
  來レバ、府縣會議員ノ選擧名簿モ直キニ出來テシマウ
  府縣會議員ノ選擧名簿ガ出來レバ、之ト同時ニ每年
  每年市町村會議員ノ選舉名簿ハ出來ル譯ニナルノデアル、
  斯ノ如キ輕便ニシテ確員ナル方法ガ明カニアルニ拘ラズ、今
  尙ホ市町村會ノ選擧名簿ニ對シテノミ隨時名簿ヲ採ル、而
  シテ今ノ現行法ノ方ガ餘程宜シイナドト言ハルヽノハ、私ハ
  此自治ノ事務ニ當ラレタ所ノ方ノ言ハレルコトヽモ覺エヌノ
  デアリマス、(拍手起ル)甚ダ遺憾千萬ニ存ズル次第デアルノ
  デアリマス、(「マダアリマスカ」ト呼フ者アリ)三枝君、今少シ
  御辛抱ヲ願ヒマス、吾とノ親友三枝君ニ御願ヲ致シマス、モ
  ウ是ヨリ先ハ餘リ多ク爰ニ論ジマスル事ハ無イヤウデアリマ
  スガ、尙ホ簡單ニ申シテ置キタイノハ、神官、僧侶、小學校〓
  員ニ被選權ヲ與ヘルト云フコトデアリマス、是ハ多クハ論ズ
  ル必要ハ無イト思ヒマスガ、先刻小田切君ヨリ斯ウ云フ御
  話ガアリマシタ故ニ、一言申シテ置キタイト思フ、是ハ先ヅ
  今暫ク見合セテ-惡イトハ思ハナイガ、今暫ク之ヲ見合セ
  テ、衆議院議員ノ選擧法改正ト共ニ行フガ宜カラウト云フ
  コトデアリマシタガ、凡ン此國ノ基礎ヲ確メマスルニハ、先ヅ
  自治體ヨリシナケレバナラナイト云フノデ、吾ニガ普通選擧
  ヲ出シマシタ時代ニ於テモ、是ハ後迴ニシテ先ヅ自治制カラ
  改正セヨト云フコトハ、政府自ラモ言ハレ、其他多數黨ノ諸
  君モ言ハレテ居ル所ノ事柄デアル、(拍手起ル)ソレデアルカ
  ラ宜イト思ッタナラバ、衆議院議員ト一緒ニスルコトハナ
  イ、其例ニ做シテ自治制ノ改正-國家ノ根本トナル所
  ノ自治制ノ改正ヨリ、先ヅ之ヲ實行スルノガ當然デア
  ル、斯樣ニ吾ミハ信ジテ居ル次第デアリマス、(拍手起ル)ン
  レカラ此補缺選舉ノ事デアリマスガ、是モ補缺ガアレバ選
  擧スルノガ當然デアリマス、ソレ故ニ吾ミハ之ヲ原則ト致シ
  タノデアリマスガ、併シ此原則ニ於テモ、理論ノミデハ或ハ迷
  感ヲ感ジラルヽ事ガアルト宜シクナイ、斯樣ニ吾〓ハ信ジマシタ
  爲メニ、之ニハ一ツノ除外例ヲ設ケマシテ、三分ノ一ノ議員
  ガ缺ケルマデ打拾テヽ置ケルト云フコトハ、餘リ是ハ極端デア
  ラウ、人民ガ代表シ得ベキ所ノ權利ノ一部ヲ抑ヘル如キ結
  果ニナルモノデアリマスガ故ニ、之ヲ縮メテ定員ノ五分ノ一マ
  デ頭マデハ、缺ケテ居ッテモ之ヲ許シテ宜シイ、ケレドモ成ベク
  是レハ正則ト致シテ補缺選擧ヲ致スヤウニ斯樣ナ事ヲ定メ
  タル次第デアリマス、參事會員ノ年限デアルトカ、或ハ投票
  ノ效力ノ決定權トカ云フ如キ事ヲ論ズレバ、色ミアルノデア
  リマスガ、是ハ提案者夕ル黑金君ヨリ一通リ御述ニナリマシ
  テ、私ガ蛇足ヲ添エル必要ハ無イト思ヒマスガ故ニ、爰ニ是
  ハ論ジナイ次第デアリマス、又此町村制ニ」於キマシテ、北海
  道ニ關スル御修正ガアリマシタガ、是モ私ハ當然ノ事デアル
  ト信ズル次第デアリマス、而シテ委員長ヨリ【報告ニナリマシ
  タ御修正ノ點ニ對シテハ、吾ニハ是ハ勿論賛成ヲ致スコトハ
  前ニ申シタ通リデアリマス、之ニ對シテハ滿場一致デアッタ
  次第デアリマスガ故ニ、大ニ理由ヲ申述ベル必要ハナカラウ
  ト思ヒマス、吾ミハ此點ニ於テ今回政府ガ提案サレマシタ本
  案ニ對シテ、根本ノ觀念ニ於テ反對スル者デアリマス、故ニ
  黑金君ノ提案セラレタ此修正案ニ對シテ、絕對贊意ヲ表ス
  ル所ノ者デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=108

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• 109・岩崎勲

  ○岩崎勳君　第二讀會ノ討論ハ此程度ニ於テ終結スペシ
  トノ動議ヲ提出致シマス
  〔「賛成々々」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=109

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• 110・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ヨリ討論終結ノ動議ガ出
  マシタ、御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=110

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• 111・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナイト認メマシタ、仍テ第二
  讀會ニ於テ討論ハ終結サレマシタ、採擇致シマス、小山松壽
  君外四名ヨリ提出ノ修正、曩ニ黑金君ガ說明ニナリマシタ修
  正デス、是ト委員長ノ報告ト共通ノ點ガアリマス、卽チ市制
  ニ於テハ、第三十條第三號ノ修正、同ジク第百二十五條中
  ノ修正、町村制ニ於テハ第三十五條第三號ノ修正、是ハ孰
  レモ共通デゴザイマス、先ヅ其共通ノ點ヲ除キマシタル、小山
  君ノ修正全般ニ就テ採決致シマス、只今說明致シマシタ如ク
  共通ノ點ヲ除キマシタル小山君ノ修正全部ニ對シテ、賛成
  ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔贊成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=111

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• 112・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　少數-少數ト認メマス、仍テ修正
  說ハ否決ニナリマシタ、次ニ委員長ノ報告ニ就テ採決致シ
  マス、委員長ノ報告二賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔贊成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=112

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• 113・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　多數ト認メマシタ、仍テ兩案ハ委
  員長報告通リ決シマシタ、兩案ノ第二讀會ハ是デ終了致シ
  マシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=113

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• 114・岩崎勲

  ○岩崎勳君　日程第十一及第十二ハ、兩案ヲ一括シテ直
  チニ其第三讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=114

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• 115・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ガナイト
  認メマス、仍テ兩案ニ就テ直チニ第三讀會ヲ開キマス
  市制中改正法律案第三讀會
  町村制中改正法律案第三讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=115

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• 116・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　此第三讀會ノ場合ニ於テ討論ノ
  通告ガアリマス、之ヲ許シマス植原悅二郞君
  〔植原悅二郞君登壇拍手、「簡單々々」ト呼フ者ア
  リ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=116

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• 117・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=117

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• 118・植原悦二郎

  ○植原悅二郞君　私共ハ只今議題ニナッテ居リマス、市制
  町村制ノ改正ニ就キマシテハ、熱心ニ之ヲ切望スル點ニ於テ
  ハ、政府當局ニ劣ラザル者デアリマス、私共ハ是マデ數回既
  ニ此改正ヲ議會ニ提出シテ居リマス、故ニ現在ノ制度ニ於
  テハ、時代ノ進運ニ適應セザルモノナリト云フコトヲ痛切ニ
  感ズル點ニ於テハ、人後ニ落チザル一者デアリーマス、故ニ此改
  正ヲ望ムコトハ切デアリマスケレドモ、只今我ガ同僚ノ大口
  君カラモ、私共ガ修正案ヲ提出スル理由ニ就キ、又政府ノ案
  其物ニ就テ、最モ適切ナル所ノ批評ヲ加ヘラレテアリマシ
  タカラシテ、之ニ對シテ私ガ多言ヲ要スル必要ハ無カラウト
  思ヒマス(「其通リ」「必要ナシ」ト呼フ者アリ)洵ニ國民ガ是
  等ノ改正ニ就テ切望シテ居ルニモ拘ハラズ、只今政府ノ提
  案サレタモノニ對シテハ、私共ハ反對セザルヲ得]ナイノヲ甚
  ダ遺憾ト致シマス、併ナガラ私ガ申スマデモナク、旣ニ此席上
  ニ於テ述ベラレマシタ通リ、政府ノ提案サレタ此二案ニ就キ
  マシテハ、私共根本ニ於テ第一ニ其觀念ヲ異ニ致シテ居リ
  マス、公民權ノ資格ニ就キマシテ、私共ハ政府ノ主張スルガ
  如クニ、財產ヲ以テ公民權ノ對象物トスルガ加キ案ニ賛意
  ヲ表スルコトハ絕對ニ出來マセヌ、又第二ノ點ニ於キマシテヽ
  政府ノ提案ハ頗ル牙盾ガアルノミナラズ、時代錯誤ノモノデ
  アルト存ジマス、假リニ政府ノ述ベラレタ所ニ依リマシテ、漸
  進主義ト致シマシテモ、町村ト市トハ甚シク異ッテ『居リマス、
  此點ニ就キマシテハ、委員會ニ於キマシテモ私ハ內務大臣
  ニ質問ヲ試ミマシタ、此三十年間ニ於テ、日本ノ町村ノ發
  達ト、都市ノ發達ト如何ナル相違ガアルカ、又都市ニ於ケル
  所ノ今日ノ狀態ニ於テ、衞生ノ點カラ申シマシテモ、〓育ノ
  點カラ申シマシテモ、交通機關ノ點カラ申シマシテモ、通商貿
  易ノ點カラ申シテモ、文化ノ點カラ申シテモ、漸進主義ヲ採フ
  テモ、市制ニ於テ等級ヲ撤廢スルコトガ焦眉ノ急】デアル、此
  立場カラ行キマシテ、文化ノ町村ト都市トニ於テ甚シク相オ
  違ノアルコトヲ、内務大臣自ラ承認]サレマシタ、而シテ何故
  ニ斯ル等級ヲ市制ニ存スルヤト云フ點ニ就キマシテ、之ヲ維
  持シナケレバ危險ガアルト思フカ、或ハ都市ノ市政ヲ紊亂ス
  ルト思フカト言ヒマシテモ、之ニ對シテ何等ノ答ガアリマセヌ、
  故ニ唯ダ漸進主義ト云フ言葉ノ上ニ隱レテ、此矛盾且ツ時
  代錯誤ノ案ヲ提出シタモノト、私ハ認定スルヨリ外ニ途ハ無
  イノデアリマス、故ニ私共ハ此點ニ於テ、遺憾ナガラ政府提
  出ノ案ニ反對ヲ表シナケレバナラヌ、今一ツノ反對スル理由
  ガアリマス、是ハ政府ガ此提案ヲ爲スニ就テ、誠意ノアルコ
  トヲ私共ハ認メルコトガ出來ナイノデ」アリマス、此案ハ多年
  ノ問題デアリマス、而シテ若シ政府ニシテ誠誠ガア】ママナ
  ラバ、此議會ノ既ニ終局ニ近ヅイタ時期ニ於テ提案スルト
  云フ如キ理由モナシ、又此案ヲ說明スル政府當局者ノ態度
  ヲ見マシテモ、私共委員會ニ於テ、私共委員ハ黨派ノ問題
  ハ別ト致シマシテ、私共虚心坦懷地方自治ノ爲メニ、委員
  長報告ノ如クニ誠心誠意審議ヲ進メラレタ、然ルニ政府
  ノ答辯ニ於キマシテハ、如何ナル理由ヲ、取フテモ、唯ダ漸進
  主義ト云フガ如キ言葉ノ背後ニ隱レテ、誠心誠意其意思
  ノ在ル所ヲ披瀝シタル事實ヲ承認スルコトガ出來マセヌ、私
  共ハ此三ッノ理由ニ依リマシテ、第一ニ根本觀念ノ相違、第
  二ニハ矛盾アリ、錯誤アル提案デアル、第三ニ於テハ之ヲ提
  案スルニ、政府自ラ誠意ナキモノトシテ、私共ハ反對ノ意ヲ表
  スルノデアリマス

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• 119・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　高山長幸君
  〔高山長幸君登壇、拍手〕

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• 120・高山長幸

  ○高山長幸君　私ハ委員長報告通リニ賛成スル者デアリ
  マス(「ソレデ分ッテ居ル」「止メロ」ト呼フ者アリ)只今植原君
  ノ原案廢棄ノ御說ニハ、絕對反對ノ意見ヲ有スル者デアリ
  マス、御承知ノ通リ現行市町村制ガ制定セラレマシテ以來、
  既ニ三十有餘年ノ歲月ヲ經過シタ今日、我國ノ社會ノ其
  三十年間ニ進步シタコトハ、御承知ノ通リ著シイ事デアリ
  マス、殊ニ歐洲戰後ニ於テ、社會上、思想上ニ於テ一大轉
  機ヲ劃シタト云フコトモ又御承知ノ通リデアル、此時勢ニ適
  應スルベク市町村制ノ改正案ヲ政府ガ提出シタノガ、我こ
  ノ最モ適切ナルモノトシテ、之ヲ歡迎シタ「所以デアルノデア
  リマス、然ルニ只今ノ提案者タル植原君ハ、此重要ナル改正
  案ニシテ、而モ國民ノ權利ノ伸張デアル所ノモノヲ、等閑ニ
  附セラレルヤウナ廢棄ヲ爲サルト云フコトハ、ドウシテモ私共
  其眞意ヲ解スルコトガ出來ナイノデアリマス、内務當局者ノ
  說明ニ依リマシテモ、今囘ノ此納稅資格ノ變更ニ依リマシ
  テ、現在ノ有權者ノ五百万ト云フモノガ、七百五十三万ニ殖
  エルノデアリマス、卽チ五割以上ノ增加ニナルノデアリマス、
  (「シッカリ長廣舌ヲヤリ給へ」ト呼フ者アリ)

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• 121・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中野君靜ニナサイ···

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• 122・高山長幸

  ○高山長幸君(續)　況ヤ此增加スル所ノ權利擴張ト云
  フモノニ對シテハ、我〓ハ大ニ之ヲ賛成セヌケレバナラヌ、然
  ルニモ拘ラズ、此權利ノ伸張ヲ無視スルト云フコトハ、提案
  者ノ眞意ヲ甚ダ解スルニ苦シムノデアリマス、又納稅資格ヲ
  撤廢スルト云フコトニ就キマシテハ、先刻來色と御議論モア
  リマスルヤウデアリマスルガ、私ノ考ヘル所ニ於キマシテハ、凡
  ン自治制度ノ本體ニ於キマシテ、其町村ノ負擔ヲ分任スル
  所ノ者ニ、特殊ノ權利ヲ與ヘルト云フコトハ當然ノ事デアル、
  無論此意味ニ於テ、卽チ今回ノ改正ニ依リマシテ、直接町
  村制ヲ分擔スル者ニハ、總テ選擧ノ権利ヲ附與スルト云フ
  コトニナッタノデアリマス、(「ノウ〓〓」)此點ニ就テハ、餘リ多ク
  ノ議論ヲ試ミル必要ハナイト考ヘマス
  〔「間違ッテ居ル」「議長議場ヲ整理スヘシ」ト呼フ者
  アリ〕

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• 123・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜ニ···

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• 124・高山長幸

  ○高山長幸君(續)　又一方此級別廢止ノ御議論ニ對シ
  マシテハ、私ハ内務當局者ノ言明ニ依リマシテ、即チ內務當
  局者ノ級別撤廢ト云フコトハ矢張理想デアル、併ナガラ今
  曰ノ社會ノ狀態ニ於テ、俄ニ之ヲ撤スルト云フコトハ、一種
  急激ナル變化ヲ起スニ依ッテ、暫ク之ヲ後日ニ延バスト云フ
  コトデアリマス、決シテ諸君ト考ノ違ッテ居ルコトハナイノデ
  アリマス、唯ダ之ヲ實行スルノヲ、後日ニ延バスト云フコトデ
  アリマス、反對黨ノ諸君ノ平生ノ言說ヲ見ルノニ、多クハ理
  想ヲ主トシ、唯ダ徒ラニ理想ニ突進スルト云フ事バカリヲ御
  考ニナッテ居ルヤウデアリマスルガ、凡ン政治ノ要道ハ制度ニ
  在ル、(「差等ニ在リダ」ト呼フ者アリ)制度ノ基礎ハ卽チ必ズ
  ヤ實際ノ上ニ置カネバナラヌノデアリマス、實際ヲ離レテ政
  治ヲ論ズルコトハ出來ナイノデアリマス、(拍手、「ヒヤ〓〓」「貧
  弱ナ拍手」ト呼フ者アリ)然ルニ反對黨ノ諸君ノ言論ヲ伺
  ヒマスルノニ、多クハ理想ヲ主トシテ、直チニ其理想ニ突進シ
  ヤウトスル御言說ガ多イノデアリマス、(「理想ヲ御持チデア
  リマスカ」ト呼フ者アリ)例ヘバ昨年ノ議會以來、諸君ガ提
  唱セルヽ所ノ普通選擧ノ問題ノ如キモ、之ヲ理想トシテハ、
  我ミモ之ヲ不可トスル者デハナイノデアリマス、(「ソンナラ贊
  成シロ」ト呼フ者アリ)

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• 125・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　中野君ノ發言ヲ禁止シマス

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• 126・高山長幸

  ○高山長幸君(續)　唯夕今日ノ我國ノ社會ノ狀態、及文
  化ノ實際ニ於キマシテ、今日直チニ之ヲ斷行スルト云フコト
  ヲ不可トスルコトデアリマス、(「簡單」「此方ヲ向イテ下サイ」
  ト呼フ者アリ)詰リ諸君ト我ニト理想目的ハ同ジデアル、唯
  夕是ノ目的點ニ達スル途ニ於テ、諸君ト我〓ト自ラ違フノ
  デアリマス、諸君、封建ノ時代ニ於キマシテハ、各藩ニ於テ政
  治ガ行ハレタ時ニ、所謂名將賢君ト謂ハレタ人ノ政治ノ跡
  ヲ見マスルノニ、必ズヤ其領土内ノ地理、地勢、及人情、氣
  風ト云フモノヲ能ク實際ニ考察ヲシテ、然ル後ニ之ニ適當
  ナル制度ヲ立テ、之ニ適當ナル攻法ヲ行フウタノデアリマス、
  (「ソンナ事ハ分ッテ居ル」ト呼フ者アリ)今日ノ市町村ヲ見ル
  ノニ、市ニ於テハ七十三、町村ニ於テハ一万千七百〓ツト
  云フ澤山町村ガアルノデアリマス、而シテ其町村ノ中ニハ、
  山村ノ住民ハ自ラ山村ノ住民ノ氣風氣質ガアル、海村ノ住
  民ハ自ラ海村ノ住民ノ氣風氣質ガアル、之ヲ一〓ニ劃一ノ制
  度ノ下ニ取扱フト云フコトハ、ドウシテモ考ヘナケレバナラ
  ヌ事デアル、今日政府當局者ガ其點ニ留意シマシテ、級別
  撤廢ト云フコトヲ總テ徹底セシメナカッタト云フコトハ、洵ニ
  爲政家トシテ尤モナ事ダト我〓ハ同感ヲスルノデアリマス、
  (拍手起ル)乃チ諸君ハ理想論デアル、實行ニ就テハ、餘程
  御考ヲ要スル事デアラウト思フノデアリマス、例ヘバ憲政會
  諸君ニ於テハ、此普通選擧ノ問題ニ於キマシテ、色〓徹底
  的ノ御議論モアッタノデアリマスケレドモ、結局獨立ノ生計
  ト云フコトヲ固ク御守ニナッタノハ、是亦一種ノ漸進論テナ
  イトハ云ヘナイノデアリマス、諸君ノ言フ所ハ矢張漸進論デ
  アック、卽チ我ヒハ憲政會ノ中ニ獨立ノ生計ト云フコトヲ維
  持サレタト云フコトニ就テ、敬意ヲ表シタ者デアリマス、唯ダ
  漸進ト云ヘバ或ハ因循姑息ト云ヒ、或ハ社會ノ情勢ヲ解セ
  ザル者ナドト云フ御批評ガアルヤウデアリマスケレドモ、凡ン
  世ノ中ノ事ハ必ズ其目的ニ達スルト云フコトガ能事デハナ
  イノデアリマス、諸君ハ唯ダ理想ニ任ゼヨ、吾〓ハ何處マデモ
  十分國民ノ狀態、國家ノ狀態ノ實際ニ就テ十分〓究ヲシ
  テ、サウシテ國ノ前途ニ對シテ、吾ミハ大イニ努力スルト云フ
  コトハ、卽チ國家ニ重キヲナス吾ニノ任務デアルト考ヘテ居
  ルノデアリマス(拍手起ル)此故ニ本案ニ對シテハ、卽チ植原
  君ノ廢棄論ニ對シテハ、全然反對スルモノデアリマス(拍手
  起ル)

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• 127・岩崎勲

  ○岩崎勳君　討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 128・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

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• 129・奧繁三郎

  ○議長(臭繁三郞君)　御異議ナイト認メマス、仍テ討論ハ
  終結サレマシタ、採決致シマス、此兩案ニ就テ第二讀會決
  議ノ賛否ヲ決シマス、兩案共二讀會ノ決議ノ通リ、決定ス
  ルニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔賛成者起立〕

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• 130・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　起立多數、仍テ兩案ハ第二讀會
  議決ノ通リ可決確定致シマシタ(拍手起ル)

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• 131・岩崎勲

  ○岩崎勳君　議事日程變更ニ關スル吸急動議ヲ提出致
  シマス、卽チ玆三政府提出六大都市行政監督ニ關スル法
  律案、政府提出黃燐寸製造禁止法案、政府提出畜牛
  結核病豫防法。中改正法律案ヲ、各別ニ議題トナシ、其第
  一讀會ノ續キヲ開キ、各委員長ノ報告ヲ求メ、且ツ其審ヲ
  進メラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕

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• 132・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ贊成ト認メマス、
  仍テ日程ハ變更サレマシタ、六大都市行政監督ニ關スル法
  律案ノ第一讀會ノ續キヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマ
  ス、松浦五兵衞君
  六大都市行政監督ニ關スル法律案(政府
  提出)第一讀會ノ續
  報告書
  一六大都市行政監督ニ關スル法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十年三月十五日
  六大都市行政監督ニ關スル
  法律案委員長
  松浦五兵衞
  衆議院議長奧繁三郎殿
  〔松浦五兵衞君登壇、拍手起ル〕

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• 133・松浦五兵衞

  ○松浦五兵衛君　本案ハ「市又ハ市長ニ屬スル國ノ事務
  ニ關シ府縣知事ノ許可又ハ認可ヲ要スル事件ニ付テハ六
  大都市ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ其許可又ハ認可ヲ受
  ケシメサルコトヲ得」ト斯ウ云フ簡單ナ文案デアリマスガ、而
  モ其内容ハ中〓重大ナモノガアルノデアリマス、就キマシテ其
  委員會ノ經過及結果ヲ御報告致シマスガ、委員會ハ昨日
  及本日午前二囘ニ互ッテ開會致シマシテ、其政府當局ニ對
  シ、詳細ナル質問應答ヲ遂ゲマシタ、就中其質問中、最モ重
  要ナルモノト感ジマス一一三ノ點ヲ簡單ニ御報告シヤウト思
  ヒマス、先ヅ第一ハ東京ヲ初メ大都市ハ、十數年前ヨリ既
  ニ特別市制ノ施行ヲ希望シテ居ル、然ルニ拘ラズ政府ハ今日
  迄ソレヲ施行シナイガ、一方ニ於テ今回ノ如キ法案ヲ提出
  スルト云フコトハ、益〓以テ特別市制ヲ執行スルノ意思ノ有
  無ヲ疑ハンケレバナラヌ、政府ハ果シテ此東京市ノ如キ大都
  市ニ對シ、特別市制ヲ執行スルノ意アリヤ否ヤノ質問ガア
  リマシテ、之ニ對シテ政府ハ都市ハ其發達ニ從シテ色〓行政
  上ノ手續ヲ變ヘナケレバナラヌコトハ當然デアル、又大小ノ
  都市ヲ通ジテ一樣ノ規定ニ依ルト云フコトモ、段〓不便ヲ
  感ズルコトダラウト思ヒマス、是等ヲ考慮シテ今回先以テ此
  六大都市ニ關シテモ、言スレバ二重監督ヲ省クト云フヤ
  ウナコトデアリマスガ、或ハ市長ノ權限增加トモ云ヘマセウ、是
  ガ此案ヲ提出シタ所以デアル、サレバ此案ハ所謂市ノ行政
  ノ監督權ノ改廢ニ止マッテ居ッテ、市制ノ改廢トハ全然別モ
  ノデアル、故ニ特別市制ニ就テハ、此案ハ別物トシテ考慮シ
  テ貰ヒタイト云フ、斯ウ云フヤウナ答辯デアリマス、次ニ勅令
  ヲ以テ許可又ハ認可ヲ要シナイト云フヤウナコトヲ規定スル
  ト云フコトハ、他ノ法律ニ規定シテアル所ノ規定ヲ動カス次
  第ニナッテ、詰リ勅令ヲ以テ法律ヲ改廢スルト一云フヤウナ結、【
  果ニ陷ル、卽チ或ハ憲法上ノ規定ニモ、幾分牴觸スル嫌ヒハ
  ナイカト云フ質問モ出マシテ、是亦重要ナモノト思ハレマシ
  タ、之ニ對スル政府委員ノ各辯ハ、矢張是ハ一種ノ委任立
  法ノ一形式デアッテ、理論上決シテ差支ガナイモノト認メテ
  居ル、殊ニ既ニ先例ハ幾ツモアルト云フノデアリマシテ、是亦
  之ヲ諒ト致シマシタ、ソレカラ次ニ此勅令ニ規定スルト云フ
  コトハ、寔ニ抽象的デアッテ漠然トシテ居ルガ、而モ其內容ニ
  依ッテ此法律ノ效果ニ非常ナル差異ヲ生ジテ來ルノデアル、
  故ニ其內容ハ一體ドウ云フモノデアルカ、勅令ニ規定シヤウ
  ト云フ所ノ條項ハ如何ナルモノデアルカト云フ質問ガ出マ
  シタ、之ニ對シテ、又政府委員ハ數十項ニ涉ル所ノ項目ヲ
  列擧シタ參考書ヲ提出サレマシテ、先ヅ第一ニ現在市制ニ
  規定シテアル所ノモノハ、勿論全部ヲ包含セシムル積リデ
  アル、又其他各種ノ關係法律ニ於テ規定サレテアル所ノモ
  ノモ、成ベク大部分之ヲ包含セシメテ、勅令ニ規定スル積リ
  デアル、併ナガラ各種ノ關係法律ニ就テハ、獨リ内務省ノ所
  管ノミナラズ、他ノ各省ニ關係スル所ノモノモアルカラ、只今
  之ヲ斷言スル譯ニハ行カナイガ、免ニ角成ルベク廣ク、成ベク
  今日マデ各法律關係ニ於テ規定サレタ所ノモノハ、之ヲ大部
  分包括セシムルヤウナ趣意デアルト云フノ答辯デアリマシ
  テ、是亦委員會ニ於テハ之ヲ諒ト致シマシタ、斯ノ如クニシ
  テ、其他二三質問モアリマシタガ、是ハ簡單デアリマスカラ省
  略致シマス、斯クシテ質問ハ終結致シマシテ、更ニ討論ニ移
  リマシタ所ガ、宮崎三之助君ヨリ原案全部賛成御演說ガ
  アリマスシ、其次ニ武內作平君、高木正年君ヨリモ賛成ノ
  御演說ガアリマシテ、全會一致ヲ以テ可決シマシタ、右御報
  告申シマス(拍手起ル、「異議ナシ」ト呼フ聲アリ)

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• 134・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　討論ノ通告ガアリマス、作間耕逸
  君
  〔作間耕逸君登壇、拍手起ル〕
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 135・作間耕逸

  ○作間耕逸君　本員ハ只今委員長カラ御報告ノアリマシ
  タ通リ、六大都市ノ(「簡單」「簡單」ト呼フ者アリ)自治行政
  竝ニ國ヨリ六大都市ノ市長ガ委任ヲ受ケタル行政事項ニ
  付テ特ニ府縣知事ノ認可又ハ許可ヲ要スル事柄ニ付、此
  法律ノ委任シタル勅令ヲ以テ、其許可又ハ認可ヲ要セサル
  コトニ定メラルヽト云フ次第『アアリマスルガ(「賛成」「贊成」
  「モウ宜イ」ト呼フ者アリ)此法案ノ趣旨ノ如キハ、旣ニ早ク
  自治制施行ノ當初ニ於テ、元來六大都市位ニ限リテハ、其
  當時施行セラレナケレバナラヌ位ニ、本員共ハ考ヘテ居ッタ
  ノデアリマス、今日ニ於テ、此法案ノ提出ノアリマスルコトハ、
  寧口時期ニ於テハ大ニ晩キヲ感ジマスルノデアリマスルケレ
  ドモ、併ナガラ時期晩シト雖モ、尙ホ無キニ勝レルノデアリマ
  スルシ、又本員等ガ(「餘計ナコトハ止シ給へ」「無用無用」ノ
  聲起ル)多年熱求シテ參リマシタ特別市制ノ一部ノ實現ト
  (「無用無用」「簡單」ト呼フ者アリ)認メラレル事柄デアリマ
  スルカラ、(「無用々々」「議長々々」ノ聲起リ議場騒然)本員
  等モ固ヨリ異議ハ申上ゲマセヌケレドモ、併ナガラ本案ニ對
  シマシテ、賛成ノ意見ヲ表白スルニ付キマシテハ、玆ニ政府
  當局ニ對シマシテ一二希望(「無用々々」ノ聲起ル)緊急ナ
  ル希望ヲ表白スル必要ガアルノデアリマス(「無用々々」ト呼
  フ者アリ)元來此法律ハ(「止セ〓〓」ト呼フ者アリ)許可又
  ハ認可事項ノ免除ヲ勅令ニ委任スルト云フノデアリマスル
  ケレドモ、其勅令ニ委任セラルヽ命令ノ內容ト云フモノハ、
  今日ニ於テハ確定シテ居ナイノデアリマス、(「無用々々」「議
  長議長」「迷惑千萬ダ」ト呼フ者アリ)果シテ政府當局ガ吾
  吾ノ期待スルガ如キ事項ヲ、總テ此命令ノ中ニ擧ゲテ吳レ·
  ルカドウガハ(「愚論愚論」「駄辯駄辯」ト呼フ者アリ)吾ミノ
  甚ダ不安ニ感ズル次第デアリマス、何トナレバ(「止メロ」「無
  用ノ辯ダ」ト呼フ者アリ)市制中府縣知事ノ許可又ハ認可
  ヲ要スル事項ハ、凡ソ(「無用」「無用」ト呼フ者アリ)五十九
  箇條モアル、又市制附則ノ諸命令ニ其事柄ノ規定シテアリ
  マスルコトハ、凡ソ三十一事項モアリ又(「一同ノ迷惑ダ早
  ク止メテ吳レ」ト呼フ者アリ)國ノ行政事務ニ於キマシテハ、
  衆議院選擧法外九種ノ法律ニ於テ、凡ツ三十一項モアル
  ノデアリマス、其性質ハ頗ル輕重ノ差アリ、又其所管ニ就キ
  マシテモ、内務省外各省ニ關係ヲ有シテ居ル筋合デアリマ
  スルガ、政府當局ハ果シテ此勅令ノ中ノ(「無用々々」「馬鹿
  ナ奴ダ」ト呼フ者アリ)性質ノ輕微ナル事項ハ固ヨリデアリマ
  セウガ、性質ノ輕微ナラザル重要ノ事柄ヲモ、全部勅令ヲ以
  テ(「簡單々々」ノ聲起ル)之ヲ定ムルコトニシタイト云フ希望
  デアリマスルシ、尙ホ所管ニ就テハ內務省ノ所管事項ハ勿
  論內務省以外關係各省ニ對シマシテハ、內務省カラ十分
  ニ交渉ヲ遂ゲテ、此各關係者ノ所管事項ヲモ、總テ勅令ノ
  中ニ包含セシメラレタイト云フ希望ヲ持ッテ居ルノデアリマス
  (「簡單々々」)ト呼フ者アリ)而シテ尙ホ此種ノ(「モウ宜イ分ク
  タ」ト呼フ者アリ)立法ハ吾ミハ特ニ不安ヲ感シマスル次第ハ、法
  律ノ效力ヲ、法律ノ委任シタル勅令ヲ以テ一部之ヲ制限シヤ
  ウト云フノデアリマスカラ(「洟ヲカメ」ト呼フ者アリ)餘程特
  例ニ屬スルノデアル、卽チ最モ便宜ヲ尊ブ場合カ、又最モ必要
  ニ迫ラレタル場合ノ外ハ、將來ニ於テ此種ノ立法ハ、餘程政府
  當局ニ於キマシテ、愼重ナル注意ヲサレテ、而シテ漫リニ此
  種ノ立法ヲナサレナイト云フコトニ就テ、私共ハ政府當局ノ
  注意ヲ求ムル次第デアリマス(「止セ〓〓」ト呼フ者アリ)尙ホ
  本案ハ政府當局ハ特別市制トハ別物デアルト云フコトヲ辯
  明サレマシタケレドモ、併ナガラ吾ミノ主張致シマスル特別
  市制ノ中ニハ、本案ノ如キコトハ當然含マルベキ案件デアリ
  マスルカラ、固ヨリ別物デハアリマセヌ、只ダ本案ノ公布ガ特
  別市制促進ノ前提デアレカシ(「無用々々」「非常識」ト呼フ
  者アリ)決シテ是等阻止ノ材料ニナラヌヤウニト云フコトハ、
  吾ミハ本案ニ對シテ衷心カラ希望スル所デアリマス、尙ホ特
  別市制(「簡單々々」「無用々々」ト呼フ者アリ議場騒然)
  制度ノ本位トシタル府縣對立ノ規定ヲ定メテ戴ケパ、政府
  當局ガ言フガ如ク、左程愼重ナル考慮ト調査ヲ費サズトモ、
  モウ少シ速カニ其提案ヲ見ルコトヽ信ジテ居ルノデアリマス
  ガ、此點ニ就キマシテハ、諸君院外ノコトデアリマスルガ、本
  日我ガ(「無用々々」ト呼フ者アリ)東京全代議士ノ指名ニ
  依リマシテ、國民黨ノ近藤達兒君、政友會ノ宮崎三之助君
  竝ニ本員ト三名ガ非公式ニ內務大臣ニ懇談ヲ遂ゲマシタ
  結果(「餘計ナ事ヲ云フナ」「簡單々々」ト呼フ者アリ議場騒
  然)內容ハ玆ニ申上ゲマセヌケレドモ(「無用々々」ノ聲盛ニ
  起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=135

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• 136・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　靜肅····

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=136

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• 137・作間耕逸

  ○作間耕逸君(續)　愈〓近ク··
  〔議場騒然〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=137

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• 138・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　諸君靜ニ御聽キナスッタガ宜シイ、
  而シテ作間君ニ注意シマス、貴方ハ本案ニ賛成デアリマス
  カラ、賛成ノ趣旨サヘ說明スレバ宜シイ
  〔「其通リ」「無用々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=138

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• 139・作間耕逸

  ○作間耕逸君(續)　希望ヲ述ベルニ差支アリマセヌ、愈〓
  諸君近ク或ル種ノ(「止メロ」「無用」ト呼フ者アリ)方式ニ
  依ッテ或ル程度ノ特別市制ニ近キモノガ現ハルヽ見込ヲ生
  ジタノデアリマスガ、此内容ハ今此處ニ申上ゲ兼ネマスケレ
  ドモ、之ガ爲メニ特別市制ノ御催促スルヲ目的ト致シマス
  ル第三ノ希望ダケハ、玆ニ私ハ申上ゲマセズシテ、內務大臣
  ニ花ヲ持タセテ上ゲルノデアリマス(「生意氣ヲ言フナ」「非常
  識」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=139

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• 140・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　本案第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御
  諮リ致シマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=140

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• 141・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=141

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• 142・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直チニ本案第二讀會ヲ開キ、第三讀會ノ省
  略シテ、委員長報告通リ可決確定アラムコトヲ望ミマス
  〔「賛成々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=142

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• 143・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ガナイト認
  メマス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キマス
  六大都市行政監督ニ關スル法律案(政府
  提出)第一讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=143

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• 144・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ガナイト認メマス仍テ本案
  ハ委員長報告通リ可決確定致シマシタ、(拍手起ル)次ハ黃
  燐燐寸製造禁止律案ノ第一讀會ノ續キヲ開キマス、委員
  長福井甚三君
  黃燐燐寸製造禁止法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(報告委員長
  報告書
  一黃燐燐寸製造禁止法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十年三月十五日
  黄燐燐寸製造禁止法案委員長
  多木久米次郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  〔福井甚三君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=144

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• 145・福井甚三

  ○福井甚三君　唯〓議題ト相成リマシタ、黄燐寸製造禁
  止法案ノ委員會ノ經過竝ニ其結果ヲ簡單ニ、私ヨリ報告
  致シマス、本案ハ黃燐ガ人體ニ害毒ガアリマスルカラ、黃燐
  ヲ原料ト致シマスル燐寸ノ製造輸入竝ニ其販賣ヲ禁止ス
  ルト云フ案ナノデアリマス、既ニ主ナル工業國ニ於キマシテ
  ハ、千九百六年ノ「ペルン」條約ノ趣旨ニ基イテ、禁止ヲ致シテ
  居ルノデアリマス、此機ニ於キマシテ、我國ガ之ヲ禁止セント
  スル簡單明瞭ナル法案デアルノデアリマス、委員會ニ於キマ
  シテハ、政府委員ヨリ詳細ナル說明ヲ聽キ、之ニ對シマシテ、
  各委員ガ愼重審議、質問應答ノ上、滿場一致デ可決ヲ致シ
  タ次第デアリマス、此段御報告致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=145

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• 146・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御
  諮リシマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=146

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• 147・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=147

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• 148・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
  省略シテ、委員長ノ報告通リ可決確定アランコトヲ望ミマ
  ス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=148

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• 149・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ハ賛成アリト認メマ
  ス仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス
  黄燐燐寸製造禁止法案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=149

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• 150・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナイト認メマス、仍テ本案
  ハ動議ノ如ク可決確定致シマシタ、畜牛結核病豫防法中
  改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ
  求メマス、柳原九兵衞君
  畜牛結核病豫防法中改正法律案(政府提
  四第一讀會ノ續(特別)
  報告
  報告書
  一畜牛結核病豫防法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十年三月十五日
  畜牛結核病豫防法
  中改正法律案委員長
  柳原九兵衞
  衆議院議長奥繁三郞殿
  〔柳原九兵衛君登壇、拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=150

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• 151・柳原九兵衞

  ○柳原九兵衞君　只今問題ニ上リマシタ、畜牛結核豫
  防法ノ委員會ノ經過ヲ報告致シマス、本案ハ結核豫防法中
  手當金支給ノ改正案デアリマス、委員會ニ於キマシテハ、政
  府委員ノ說明ヲ聽キ、質問應答ヲ重ネマシテ、全會一致ヲ
  以テ可決致シマシタ、御賛成アランコトヲ希望致シマス(拍
  手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=151

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• 152・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
  御諮リ致シマス
  〔「二讀會ヲ開クニ異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者ア
  リ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=152

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• 153・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　第二讀會ヲ開クニ異議ナイト認メ
  マス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=153

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• 154・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
  省略シテ、委員長報告ノ通リ可決確定アランコトヲ望ミマ
  ス
  〔「贊成々々」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=154

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• 155・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=155

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• 156・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナシト認メマス、仍テ直チニ
  本案ノ第二讀會ヲ開キマス
  畜牛結核病豫防法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=156

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• 157・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナシト認メマス、仍テ委員
  長報告通リ、可決確定致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=157

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• 158・岩崎勲

  ○岩崎勳君　日程ノ審議ハ本日ハ此程度ニ止メ、殘餘ノ
  日程ハ之ヲ延會シ、明十六日定刻ヨリ特ニ本會議ヲ開キ、
  他ノ日程ト共ニ審議セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=158

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• 159・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　マダ諮問ガアリマス、第一部選出
  請願委員奥村千太郞君辭任ノ申出ガアリマス、許可スル
  ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=159

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• 160・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　許可致シマス-而シテ岩崎君ノ
  動議ニハ御賛成ト認メマス、動議ノ如ク決シマシタ、就テハ
  明十六日本會議ヲ開クコトニ致シマス、本日ハ是ニテ散會
  午後七時二十五分散會
  衆議院議事速記錄第二十五號正誤
  頁段行誤正
  六一五下~To九第十四條第一項第第十四條第一項第
  三號中「山林ノ所三號中「山林ノ所
  得」ヲ「山林伐採ノ得ハ」ノ下ニ「山林
  所得」ニ改ム伐採ニ依ル」ヲ加フ
  衆議院議事速記錄第二十六號正誤
  頁段行誤正
  六二七上一八「鳩山一郞君」ヲ削ル
  六二七上二「石川淳君」ヲ削ル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004413242X02719210315&spkNum=160