1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十一年二月二十五日(土曜日)
午前十時十三分開議
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議事日程 第二十一號 大正十一年二月二十五日
午前十時開議
第一 大正十年度歳入歳出總豫算追加案(第二號) 會議(委員長報告)
第二 借地借家調停法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 農會法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
去ル二十一日本院ニ於テ修正議決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院
ニ送付セリ
破產法案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
和議法案
同日內閣總理大臣ヨリ左ノ通政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
内務省所管事務政府委員
內務省社會局長田子一民君
同日豫算委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
大正十年度歲入歲出總豫算追加案(第二號)可決報〓書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
借地借家調停法案
農會法案
去ル二十二日請願委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
請願文書表第五囘報告書
同日豫算委員長ヨリ分科擔當委員ノ兼務ヲ左ノ如ク決定セル旨ノ報告書ヲ
提出セリ
第一分科擔當委員鎌田榮吉君
第三分科兼務
一昨二十三日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正法律案
大學特別會計法中改正法律案
大正八年法律第十二號中改正法律案
森林資金特別會計法廢止法律案
同日政府ヨリ左ノ法律案ヲ提出セリ
司法事務共助法中改正法律案
昨二十四日請願委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願委員會特別報告第一號発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、去ル二十一日島定
治郞君病氣ニ付請願委員ノ辭任ノ申出ガゴザイマシタ、許可ヲ致スコトニ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、付マシテハ第二部ニ於テ
其補缺選擧ヲ行ハレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=3
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004・林博太郎
○伯爵林博太郞君 是ヨリ鐵道敷設法案特別委員會ヲ開會イタシタイト考ヘ
や、や、議場ニ御諮リヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 林伯爵カラノ特別委員會ヘ退席ノ要求ヲ、許可イ
タスコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ議事日程ニ移リマス、日程第一、大
正十年度歲入歲出總豫算追加案第二號、會議、委員長報告、豫算委員長前田
子爵
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス〕
一大正十年度歲入歲出總豫算追加案(第二號)
右衆議院ヨリ送付シタル案ヲ審査シ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報〓候也
大正十一年二月二十一日
豫算委員長子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家逹殿
〔子爵前田利定君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=7
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008・前田利定
○子爵前田利定君 唯今議題ニナッテ居リマスル大正十年度歲入歲出總豫算
追加第二號案、是ハ去ル三月二十一日······去ル二月二十一日ニ豫算委員ニ付
託ニ相成リマシテ、同日午後直ニ豫算委員會ヲ開會イタシマシタ、之ヲ分科
ニ移シマセヌデ總會デ審議ニ入リマシタ結果、多少ノ質問應答ノ末ニ、衆議
院決議案ノ通リニ全會一致デ可決相成リマシタ、本案ノ內容ニ付マシテハ、過
日大藏大臣ガ本議場ニ於キマシテ御說明アリマシタ通リニ、歲出ノ第一ハ「ゼ
ノア」ニ於ケル經濟財政會議ニ帝國ノ代表員及ビ隨員ヲ派遣スル所ノ經費デ
ゴザイマシテ、其金額ハ二十萬千餘圓デアリマス、第二ノ歲出ノ項目ハ國賓
歡迎ノ費用デアリマシテ、卽チ英國皇太子殿下ノ御來遊ニ付マシテ、沿道其
他ノ警備、衞生ニ關スル施設ノ準備、及ビ御通過道路ノ修築ノ工事費デアリ
PV、此金額ハ十八萬七千餘圓デアリマス、而シテ之ニ對シマスル財源トイ
タシマシテハ、前年度ノ剩餘金三十八萬八千餘圓ヲ充當スルノデアリマス、
而シテ年度末ノ使用殘額ハ翌大正十一年度ニ繰越シテスルト云フ案デゴザイ
マント。是ハ前申上ゲマシタ通リニ、豫算委員會ニ於キマシテハ、全會一致デ
衆議院決議案ノ通リニ可決ニ相成リマシタ、右御報〓申上ゲマス
〔男爵目賀田種太郞君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 目賀田男爵ハドウ云フコトデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=9
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010・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 豫算委員長ニ質問イタシタイ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯今質疑ノ通告ガゴザイマスカラ、ソノ濟ミマシ
テカラノ方ガ順序ガ正シイカト存ジマス、是ヨリ通〓順ニ依リマシテ質疑ヲ
許シマス、湯淺倉平君
〔湯淺倉平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=11
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012・湯淺倉平
○湯淺倉平君 私ハ唯〓日程ニ上ボリマシタ大正十年度ノ追加豫算ニ關聯イ
タシマシテ、內務大臣ニ御尋ヲ致シタイト存ズルノデアリマス、此追加豫算ノ
中ニハ國賓ヲ御歡迎イタシマスルニ付マシテ、警備ノ費用ヲ計上ニナッテ居
ルノデアリマス、私考ヘマスルニ此ノ國賓ノ御來朝ニ當リマシテ、當局ガ周
到緻密ナル警備ノ計畫ヲ立テラレテ、萬行屆カザルコトノナイト云フコトハ
私共ノ信ズル所デアリマス、而シテ熱心ニ之ヲ希望イタス次第デゴザイマ
ス、然ニ警備ト云フ事柄ノ中ニハ一面ニ於キマシテハ御警衞ヲ申上ゲルト云
フコトノ外ニ、又一面ニ於キマシテハ熱誠ナル我ガ國民ノ至情ガ御來遊ノ國
賓ニ對シマシテ通ジマスルヤウニ致サナケレバナリマセヌ、ソレガ爲ニハ警
察ハ民衆ニ對スル相當ノ取締ヲ致サレルニ相違ナイコトト考ヘルノデアリマ
ス、是ニ於テ本員ハ近時警察ノ狀態ニ付マシテ、其行動或ハ常軌ヲ逸スルモ
ノハナイカ、警察ノ民衆ニ臨ムニ當リマシテハ、冷靜デナクテハナリマセヌ
ト同時ニ、懇切デナケレバナリマセヌコトハ、申ス迄モナイコトト存ズルノ
デアリマス、此點ニ於テ本員甚ダ懸念ナキヲ得ナイコトヲ悲シムノデアリマ
ス、本員ハ輦糓ノ下ニ於ケル警察ノ紀律ト云フコトニ付マシテ、頻々我〓ノ
耳朶ニ入ル所ノ忌ムベキ事柄ガアッタノデアリマスルガ、特ニ最近ニ於テ起
リマシタ最モ顯著ナル、而シテ極メテ重大ナル、我〓議員ガ憲法ニ依テ保障
セラレタル、憲法上ノ保障ヲ警察官ニ依テ蹂躪セラレタルト云フ事實ニ付キ
マシテ、當局ノ御辯明ヲ煩ハシタイト思フノデアリマス、事柄ハ一昨日午後
八時半頃ニ起ッタ事柄デアリマス、ソレハ御承知ノ通リ各新聞ニ悉ク記載セ
ラレテ居ル事柄デアリマス、卽チ衆議院議員田中善立君ガ、此議事堂ヲ距ル
遠カラザル地點ニ於テ、謂ハレナク逮捕セラレタト云フ事柄デアルノデアリ
マイク改メテ申上ゲル迄モナク我〓議員ノ特權ト致シマシテ、憲法第五十三
條ハ內亂外患ニ關スル犯罪及ビ現行犯ノ場合ノ外ハ、其院ノ許諾ナクシテ會
期中議員ヲ逮捕スルコトガ出來ナイト云フコトハ、憲法ノ典章ニ炳トシテ日
星ノ如ク明カナルモノガアルノデアリマス、然ニ此議員ノ特權ニ關スル規定
ガ、謂ハレナク警察官ニ依テ蹂躪サレタト云フ事實ニ付マシテハ、事ハ衆
議院議員ノ身上ニ關シテ起ッタ事柄デアリマスケレドモ、我〓議員ト致シマ
シテ、之ヲ對岸ノ火災視スル譯ニハ參ラナイト存ズルノデアリマス、斯樣ナ
ル事實ガ若シ我〓ノ身上ニ關シテ起ッタト致シマシタラ如何デゴザイマセウ、
其衆議院議員タルト、貴族院議員タルトヲ問ハズ、兩院ノ議員ノ或者ガ憲法
ノ保障ヲ謂ハレナク蹂躪セラレ、議員ノ特權ヲ剝奪セラルルト云フコトハ
實ニ立憲治下ニ於ケル極メラ奇怪ナル出來事デアルト考ヘルノデ·アリマス、
之ニ付マシテハ當局ハ相當ノ辯明ヲ致サルルコトト存ジマスル、去ナガラ本
員ノ取調マシタ事實ニ付マシテ、一應申上ゲテ見タイト思フノデアリマス、
去ル二十三日議場附近ニ於ケル喧囂ノ狀態ハ皆サンノ親シク御目擊ニナツ
タ通リノ有樣デアリマス、而シテ之ニ對スル政府當局ガ相當ナル取締ヲ致サ
レルト云フコトハ是モ已ムヲ得ナイコトデアルト本員ハ考ヘルノデアリマ
ス而シテ其日ノ日沒後ニ於キマシテ、憲政會本部ニ多數ノ政黨員ガ群集ヲ
致シテ居ッタ、而シテ度〓彼處ニ於テ演說ガ繰返サレ、デ普選ヲ要求スル所
ノ群集ガ之ニ激昂興奮シテ、賛和シテ居ッタト云フ事實ガアル、サウシテ市
街各所ニ於テ多數ノ群衆ガ喧囂ヲ極メテ居ル、之ニ對シテ警察官ガ取締ヲシ
タ、想フニ當局ハ當日ノ群集ノ喧囂スル狀態ヲ見ラレマシテ、憲政會本部ニ
多數ノ群集ガ集合シテ居ル、之ガ此騒ギノ因デアル、斯樣ナ觀察ヲ下サレタ
モノト思フノデアリマス、ソレデ警視廳ノ或ル方面監察ハ、憲政會ノ幹部ノ
人〓ト協議ヲ遂ゲラレマシテ、憲政會本部ノ構內ニ居ル所ノ群集ヲ解散サセ
ルヤウニト云フ協議ヲ遂ゲラレタサウデアリマス、而シテ憲政會幹部ノ人〓
ハ此協議ニ應ジラレテ、同時ニ此地方カラ集マッテ居ル普選ノ要求スル靑年
ガ、此構內一步ヲ出レバ、多數ノ警察官カラシテ拘束ヲ受ケル虞ガアル、斯
樣ナ懸念ヲ持タレテ、此構內ヨリ此群集ハ解散ハサセルガ、構內一步ヲ離レ
タ所ニ於テ忽チ警察ガ之ニ檢束ヲ加ヘルト云フコトハ、甚ダ迷惑スル次第デ
アルガ、其邊ハドウデアルカト云フコトヲ訊サレマシタ所ガ、警視廳ノ方面
監察ハ左樣ナ處置ハ執ラナイカラ、穩カニ解散ヲサシテ世只ヒタイ、斯ウ云フ
コトデ雙方ノ協定ガ成立ッタサウデアリマス、此處分ハ私ハ何レモ穩カナ無
理ノナイ處置デアルト考ヘルノデアリマス、併ナガラ一方ニ於テハ警察ノ側
デハ、其要求ヲ容ラレテ居ルコトデアリマスカラ、此要求ノ實行ヲサレル責
任ガアル、又一方憲政會ノ幹部ノ人達ハ、此群集ヲシテ警察官ノ檢束ヲ受ケ
ルコトナク無事ニ解散サセル義務ガアル、斯樣ナ關係カラ此群集ヲ導イテ、
構外然ルベキ所ニ之ヲ連レ行クト云フコトガ當然ノ順序デアッタノデアリマ
ス、玆ニ於テ憲政會本部ニ居合ハシタ代議士數氏ハ、此群集ヲ引連レテ憲政
會ノ構內ヲ出テ、サウシテ〓究會ノ事務所ノ前ヲ通リマシテ、櫻田本郷町ノ
方ニ向ッタノデアリマス、サウシテ參リマスルト、櫻田本〓町デ交通遮斷ヲ
シテ居ッタ所ノ澤山ノ警察官ガ前ニ塞ガッテ居ル、後ノ方カラハ憲政會本部附
近ニ詰メテ居ッタ多數ノ警察官ガ其後トヲ追ッテ居ル、斯樣ナ有樣デ憲政會ノ
構內カラ外ニ出タ所ノ群集ハ警察官ニ依テ前後ヲ包圍セラレタ形勢ニ陷ッタ、
之モ別段怪シムニ足ラナイ事實デアルガ、其前路ヲ固メテ居ッタ所ノ警察官
ハ、先ニ憲政會本部ト交涉ヲシタ警察官トノ協定ガ十分ニ付イテ居ナカッタ
爲デアルカ、或ハ他ノ命令ニ依テ故意ニシタノカ、其何レデアルカハ存ジマ
セヌガ、私ハ之ヲ善意ニ解シテ、アア云フ光景ノ下ニ、アア云フ場合ニ、恐
ラク憲政會ニ交涉ニ行カレタ警察官ト、櫻田本〓町附近ヲ警戒シテ居ッタ所
ノ警察官トハ、十分ナ交渉ガ付イテ居ナカッタ、斯樣ニ善意ニ解シマス、ソ
コデ櫻田本郷町附近ニ居ッタ所ノ警察官ハ其群集ニ對シテ交通ヲ遮斷スル、斯
樣ナ處置ヲ執ラレタ、ソコデ憲政會本部カラ憲政會所屬ノ代議士數氏ニ引率
セラレテ構外ニ出タ所ノ群集ハ、自分等ハ欺カレタノデハナイカト云フコト
デ、又ソコデ苦情ガ起ルト云フヤウナ狀態ダ、デ此多數ノ群集ヲ引率シテ東
京驛附近マデ連レテ行ッテ解散ヲサセヤウトシテ居ッタ衆議院議員田中善立君
ハ其群集ノ殿リヲシテ其場所ニ行ッタ、而シテ群集ノ行クベキ道ガナイト
云フコトデ、身ヲ挺ンデテサウ云フ筈デハナカッタノデハナイカ、憲政會本
部ニ見エタ警察官ハ、穩カニ解散サセロト云フコトデアル、サウシテソレヲ
引連レテ適當ナ危險ノナイ地點マデ連レテ行ッテ退散ヲサセル途中デアル、
ソレヲ此所デ遮斷セラレテ仕舞ッテハ行キ付ク所ガナイデハナイカト云フ
交涉ヲ始メントシタ、其際ニ櫻田本郷町附近ヲ固メテ居ッタ所ノ警察官ハ、
其邊デ其群集ノ檢束ヲ始メタ、サウシテ田中善立君ノ背後ヨリ突ク者ガア
リ、前ヨリ飛掛カル者ガアリ、遂ニ强力ヲ用ヒテ之ヲ拉致シ去ッタノデアリ
マス、其際ニ此田中善立君ヲ逮補シタ所ノ指揮ヲシタ者ハ何人デアルカト云
ヒマスルト、象潟警察署長ノ弘田警視デアルト云フコトデアリマス、之ガ多
數ノ警察官ニ向ッテ、代議士モ何モアルモノカ、煽動ノ現行犯デアルト云フ
コトデ逮捕ヲ指揮セラレタト云フコトデアリマス、是ガ果シテ其通リデアッ
タカ否カト云フコトニ付マシテ、本員ハ當日ノ光景ヲ親シク目擊シタ多數ノ
新聞ニ依テ立證シタイト考ヘルノデアリマス、斯ノ如キ事件ニ付マシテハ、
必ズヤ一方ヨリハ事實ヲ誇張スルト推測セラレル疑ヲ抱ク者ガ起ルノデアリ
やっゝ、被害者ノ側ノ主張ニ付マシテハ、第三者カラ見マスルト、或ハ誇張セラ
レタル事實デナイカト斯樣ニ邪推セラルル虞ガアルト同時ニ、關係警察官ノ
自己辯護ト云フコトモ、此際起ルコトヲ免レヌノデアリマス、必ズヤ政府ハ
關係警察官ノ辯疏的報告ヲ得ラレタコトト考ヘルノデアリマス、併ナガラ本
員ハ此場合ニ於ケル最モ有力ナル證人ハ、此光景ヲ目擊シタ多數ノ新聞記者
諸君デアルト考ヘル、往々ニシテ新聞ノ記事ニ付マシテハ、新聞ノ記事ハ信
ヲ置クニ足ラズト云フコトヲ以テ當局ハ屢〓說明ヲ致サレ、答辯ヲサレル場
合ガ多イノデアリマスガ、固ヨリ新聞ハ報道ノ迅速ヲ尙ブガ爲ニ、時トシテ
極メテ正確ナリト信ズルコトノ出來ナイ記事ノアルコトハ免レヌト思ヒマ
ス、新聞其モノノ性質トシテ斯樣ナコトハ絕無デハナイト考ヘルデアリマス
ルガ、多數ノ新聞記者ガ現狀ヲ目擊イタシテ、サウシテ同ジヤウナ記事ガ都
下ノ各大新聞ニ載ッテ居ルノデアリマス、此ノ事實ハ利害關係ノナイ第三者ノ
現場ヲ目擊シタルモノトシテ、最モ有力ナル證據ナリト信ズルノデアリマ
ス、其多數ノ新聞ノ中ニハ或ハ平素陰ニ政府ヲ擁護スル新聞ナリトシテ、世
間ノ人ノ見テ居ル所ノモノモアリマスルガ、何レモ悉ク同樣デアルノデアリ
PV、其ノ眼前ニ於テ起ッタ所ノ一ツノ事實、其事實ヲ多數ノ新聞記者ガ之
ヲ目撃シテ、サウシテ各〓自己ノ所屬ノ新聞ニ之ヲ載セテ居ル、是ガ大體ニ
於テ一致シテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ事實ハ當局ハ御否認ニハ相成ルマ
イト考ヘルノデアル、更ニ或大新聞ハ其現場ノ光景、其刹那ノ光景ヲ寫眞班
ノ「レンズ」ニ收メテ居ルノデアリマス、如何ニ强力ガ用ヰラレタカト云フコ
トハ、此ノ事實ニ依テ分ルノデアリマス、今朝被害者ニ當時ノ光景ヲ尋ネマス
ルト、幾多ノ擦過傷ガアルノデアリマス、歷々トシテ其痕跡ガ殘ッテ居ルノ
デアリマス、事實ハ斯クノ通リデアリマス、而シテ被害者タル田中君ノ說明
ヲ聞キマスルト警視廳ニ拉致セラレテ、貨物自動車ニ入レラレテ警視廳ニ
送ラレテ、サウシテ警視廳ニ留置セラレルコト一時間、小泉搜査係長デゴザ
イマスカ、課長デゴザイマスカ、小泉警部ハ是ハ煽動ノ現行犯ナリト云フコ
トデ逮捕サレタモノナリト云フ說明ヲ、被害者ニ與ヘラレ居ルサウデアリマ
ス、而シテ其關係警察官ニ依テ、警視廳ニ報告サレタ報告書ヲ讀上ゲラレ
テ、煽動ノ現行犯ナルガ故ニ逮捕シタト云フコトデアリマス、是ニ於テカ此ノ
事實ハ、警察官ハ憲法第五十三條ノ議員ノ保障ハ、此場合ニ議員自カラ失ッタ
モノデアル、卽チ現行犯デアル、現行犯ナルガ故ニ憲法第五十三條ノ保障ハ當
然ナクナッテ居ルノデアル、ソレ故ニ逮捕シタモノデアル、斯樣ナ譯デ逮捕
サレタト云フコトデアリマス、然ニ是ハ事實ノ誤デアッタト云フコトヲ警視
廳デ發見セラレマシタノカ、或ハ其身分ガ衆議院議員デアル、事頗ル重大ナ
リト云フ所カラ一種ノ恐レヲ抱イテ、故ナク之ヲ釋放セラレタノデアリマス
カ、其何レカデナケレバナラヌト思フノデアリマス、若シ現行犯者ヲ逮捕シ
タリト云フナラバ、一時間拘置シタ後ニ謝罪シテ釋放セラレルト云フコト
ハ、何事デアリマセウ、若シ現行犯デナイト致シマシタナラバ、事ハ警察ノ
誤解粗漏カラ起ッタコトデアリマセウカ、憲法ニ依テ保障セラレタル議員ノ
特權ヲ蹂躪シタルモノト言ハナケレバナラヌト思フノデアリマス、煽動ノ現
行犯ナリト云フコトハ、抑〓如何ナル意味デアリマセウカ、何ヲ煽動シタ、
如何ナル犯罪ガアルカ、煽動ト云フコトガ意味ヲ爲サヌト思フノデアリマ
ス、或ハ內亂罪或ハ騷擾罪、其何レニ該當スルカデナケレバ意味ヲ爲サナイ
言葉デアルト思フ、併ナガラ關係警察官ハ之ヲ以テ煽動ノ現行犯ナルガ故ニ
逮捕シタリト云フ報告ヲシテ、小泉捜査係長ハ其報告書ヲ朗讀シテ、被害者
ニ斯樣ナコトデ逮捕シタノデアルト云フコトヲ明言サレタト云フコトヲ承ル
ノデアリマス、私ハ警察官ニ對シマシテハ相當ナ理解同情ヲ有ッテ居ル積リ
デアリマス、去ナガラ事ハ議員ノ保障ニ關シ、憲法ノ條章ヲ無視セラレテ、
是デ默止スル譯ニハ參ラナイト信ズルノデアリマス、更ニ昨日再ビ或ル衆議
院議員ハ、下級ノ警察官ニ依テ將ニ檢束ヲ受ケムトシタト云フコトデアリマ
スガ、是ハ幸ニシテ免カレタト云フコトデアリマス、併ナガラ過般衆議院議
員田中君ヲ逮捕シタルガ如キ事柄ヲ以テ、當局ハ誤ナシ適法ナ處置ナリト申
サルルヤウデアリマスナラバ、斯ノ如ク恐ルベキ事態ガ今後ニ幾度起ルカモ
分ラナイノデアリマス、內務大臣ハ一面ニハ衆議院議員デアラセラレ、警視總
監ハ一方ニ於テ貴族院議員デ御出デニナリマス、一萬ノ警察官ヲ指揮イタシ
マシラ、唯今ハ權力ハ我ガ手ニアリ、一萬ノ警察官ハ我ガ命令ヲ聞クモノデ
アル、斯樣ナ場合ニ於テ非ヲ蔽フテ此ノ事實ヲ辯護サレルコトハ、私ハアルマ
イト思フ、一朝所ヲ變ヘレバ矢張議員トシテノ特權保障ハ倶ニ之ヲ享受シナ
ケレバナラヌノデアル、之ヲ犯サレテ默止シ得べキモノデハナイト考へルノ
デアリマス、私ハ過チハ過チデアル、何カノ行違ヒデアルト云フコトデアリ
マスレバ、其ノ事實ガ率直ニ當局ニ依ラ釋明サレマスルナラバ、深ク之ヲ追窮
セムトスルモノデハアリマセヌ、私ハ輦〓ノ下ニ於テ、警視廳一萬ノ警察官
中最高級、最古參ノ最モ考功ナル象潟警察署長ガ多數ノ群衆ガ僅ニ喧囂ヲ極
メルカラト言ッテ逆上シテ、憲法ヲ蹂躪シ違法背法ノ處置ヲ敢行スルト云フ
コトガアルト致シマスルナラバ、警察官ノ民衆ニ對スル處遇ト云フコトニ付
テ、深ク懸念ヲ懷カナケレバナラヌノデアリマス、今ヤ將ニ國賓ヲ迎へ奉ラ
ムトスルニ當リマシテ、警察ガ斯ノ如キ冷靜ナル態度ヲ失シ、民衆ニ對スル
懇切ナル考ヲ失ッテ、只管ニ自己ノ權力ヲ恣ニスルヤウナコトガアリマシテ
ハ、萬々相濟マヌコトト考ヘマスルガ故ニ、此點ニ付マシテ明快ニ事實ヲ、
有ノ儘ヲ率直ニ御答辯相成ラムコトヲ切望スル次第デアリマス
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=12
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013・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 只今湯淺君ノ御質問ニ御答イタシマス、二十三
日普選案上程ノ日ニハ、豫テ諸種ノ流說ガ行ハレテ居ルコトヲ耳ニ致シマシ
テ、警戒ヲシ、若クハ又交通ノ整理上必要アリト認メマシテ、多數ノ警官ヲ配
置シテ事ナキヲ期シタ次第デアリマス、然ル所其間ニハ只今湯淺君ノ御尋ノ
如キ事柄ガ起ッタノデアリマスガ、其ノ事實ハ斯ノ如キコトデアリマス憲政
會本部ニ於テ午後六時頃ヨリ本部ノ構内、及ビ門前附近ニ蝟集イタシマシタ
所ノ千數百名ノ群衆ニ對シテ、代議士或ハ院外者等ニ於テ代ル代ル演說ヲサ
レタ、恰モ屋外集會ノ狀況ニ立至ッタト認メテ臨場ノ警察官ヨリ集會ノ解
散ヲ命ジマシタ所、後ニ民衆再ビ集合ヲ致シマシタカラ、更ニ解散ヲ實行ス
ルコトニ決定ヲ致シテ、先ヅ其旨ヲ本部內ノ代議士等ニ御話ヲ致シタ所、卽
チ代議土ノ賴母木桂吉君外ノ諸君ヨリ自分等ガ責任ヲ以テ群衆ハ解散セシム
ルカラ、實行ノ件ハ差控ヘテ貰ヒタイト云フコトデアッタ、此處デ申上ゲテ
置キマスルガ、先程申シマスルヤウニ當日ハ餘程ノ注意ヲ要スルコトト考ヘ
マシテ、當局ニ於テハ其當日屋外ノ集會ヲ禁止、竝ニ多衆ノ運動ヲ禁止イタ
シテ居ッタノデアリマス、自然ソレヨリ斯ウ云フコトニナッタ譯デアリマセウ
ガ、然ニ田中善立君ナドガ群衆ヲ解散セシムル爲ト稱シテ、自ラ先頭ニ立ッ
テ群衆ヲ率井テ本部ノ正門ヲ出デ、電車通リカラ更ニ日比谷公園ノ方面ニ向
ハウトシタノデアリマス、恰モ內幸町方面警戒ノ任ニ當ッテ居ッタノガ牛込ノ
早稻田ノ警察署長デアリマス、同町······此幸町ノ胃膓病院前ノ道路ニ於テ、
其署長ニ於テ運動ヲ阻止シタ譯デアリマス、サウシテ其群集ヲ櫻田本郷町方
面ニ解散セシムルヤウニ命令ヲ致シタノデアル、田中君ハ此制止ヲ聞カズ、
强ヒテ日比谷公園幸門前方向ニ進行ヲ續ケラレタノデアリマス、群衆ハソレ
ニ附纒ヲテ押寄セテ參ッテ、之ヲ制止シタ所ノ警察官ハ毆打セラレタノデ、ソ
七級一警察官ニ於テハ、現行ノ犯罪ト致シテ之ヲ引致シテ一應取調マシタ
所田中君ハ申迄モナク身柄ノアル方デアリマスカラ、歸宅ヲ許シタト云フ
次第デアルノデ、尙ホ關係者ハ引續イテ取調中ニ屬シテ居ルノデアリマス、
卽チ之ヲ申セバ當日屋外多衆運動ハ、禁止ヲ致シテアッタ、サウシテ警察官
ガ解散ヲ命ジタニ拘ハラス、多數ヲ率ヰテ、其制止ヲ聞カズシテ居ッタト云
フコトヨリ、斯ノ如キコトニナッタ次第デアリマス、私ハ斯樣ナル狀態ノ下
ニ於テハ、已ムヲ得ザル處置デアッタラウト考ヘテ居ルノデス、デ今湯淺君
ノ御述ノヤウナ事實トハ異ルヤウデアリマス、尤モ是ハ警察官ノ報〓デアリ
マスカラ、私ハ今ソレヲ信ジテ居ル次第デアルノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=13
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014・湯淺倉平
○湯淺倉平君 只今內務大臣ノ御答辯ニ依リマスト、當日田中代議士ガ先ヅ
手ヲ下シテ警察官ヲ毆打シタリト云フ風ノ御答辯ニナッテ居リマスガ、是ハ
警察官ノ報〓ニ止マル斯ノ如キ重大ナル出來事ニ對シテ、其責任ノ及ブ所
如何ト云フコトヲ恐レル所ノモノヨリ致シタ報告書ニ止マルノデアル、之ガ
先キニ本員ガ申シマシタ如ク、警察官ハ其非ヲ掩フ虞モアル、斯樣ニ第三者
ハ見ル、又一方被害者ノ申立デハ、第三者ハ或ハ誇張シテ申立テルノデハナ
イカト云フ邪推モ入ル、ソレ故ニ第三者ノ而モ多數ノ第三者ガ現場ヲ目擊シ
テ居ル、其人達ハ社會ニ之ヲ報道スル義務ヲ持ッテ居ル所ノ新聞記者ノ一團
ガ之ヲ目撃シテ居ル、而シテ其所見ハ田中代議士ガ手ヲ下シタノデハナクシ
テ警察官ガ手ヲ下シタ、然モ煽動ノ現行犯デアル毆ッテ了ヘト云フ命令ヲシ
テ居ルト云フコトガ、新聞ノ記事ハ期セズシテ一致シテ居ルノデゴザイマ
ス、而シテ之ヲ目擊シテ居ル所ノ者ハ、東京日日新聞ノ記者ガ三名、報知新
聞記者ガ二名、國民新聞一名、時事新報ガ一名、寫眞班ガ一名、帝通ノ記者
ガ二名、讀賣、萬朝報電通ノ記者、奉天社員、朝日新聞記者ト云フヤウナ多
數ノ人ガ現場ヲ見テ居ル、唯非行ノアリシト云フ疑ヲ受ケタ警察官ノ辯明ノ
ミヲ見テ、是ハ田中代議士ガ毆打ノ現行犯デアッタカラ引致シタ、現行犯デ
アッタカラ逮捕シタケレドモ、身分ガアルカラ許ス、斯樣ナ御答辯ヲ承ハル
ト云フコトハ、誠ニ遺憾千萬デアルト思フ、是ハ地ヲ換ヘテ御考ニナル必要
ガアルト思フ、立憲政治ハ幾度カ政變ガアリマス、申ス迄モナク或ハ朝ニ立
ッテ至大ノ權力ヲ振フコトモ出來ルコトガアル、或ハ野ニ下ッテ橫暴ノ權力ノ
濫用ニ服セナケレバナラヌ場合モ起ル、斯樣ナコトハ本員ノ恐レルノハ之ガ
惡例トナル、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、価ヲ作ル者ソレ後ナキカ、斯ノ如
キコトヲ當然ノ處置ナリト云フ御答辯ニ至ッテハ、實ニ驚カザルヲ得ナイノ
デアリマス、新聞ノ傳フル所ニ依リマスト、政府側ハ行政執行法ノ第一條ニ
依ル檢束ナリト云フコトヲ以テ、此コトヲ糊塗セムトスルカノヤウニ新聞紙
ハ傳ヘテ居ル、此點ニ付マシテハ本員ハ政府ノ正當ノ御考デハアルマイ、何
カノ誤傳デアルト考ヘルノデアリマスガ、只今御答辯ヲ承ハリマスト、現行
犯デアル、毆打ノ現行犯デアル、ソレ故ニ逮捕シタノデアル、當日ノ警察官
ハ煽動ノ現行犯ナリト言ッテ居ル、煽動ノ現行犯ナリト云フコトノ意味ヲ爲
サナイコトハ先程申シタ通リ、騷擾罪ヲ煽動シタ、其現行犯デアル、其意味
デナイカト想像イタスノデアリマス、煽動ノ現行犯ナリト言ッタト云フコト
ハ當時新聞紙ガ期セズシテ書イテ居ル、而シテ被害者タル田中代議士ガ警
視廳ニ行ッテ、官憲ノ調書ヲ讀ミ聞カセラレタル時ニモ、煽動ノ現行犯デア
ルガ故ニ逮捕シタト云フコトガ記載シテアッタコトノ記憶ガ、正シク殘ッテ居
ルノデアリマス、斯樣ナ事實ヲ無視サレテ、サウシテ其責任ヲ負ハナケレバ
ナラヌ警察官ノ事實ヲ僞ッテ居ルノデナイカト云フヤウナ報〓ヲ以テ、其結
論ヲ已ムヲ得ザル處置デアル、正當ノ處置デアル事ハ議員ノ特權ニ關
スルコトデアリマス、憲法ノ保障ニ係ル憲法違反ノ事實ヲ、橫暴ナ警察官ガ
ヤッタカ、ドウカト云フ事柄、之ガ部下ノ報〓ガ左樣デアル、ソレニ依テ內
務大臣ハ、是ハ的確ナモノデアルカ否ヤニ付テ疑ヲ持ッテ居ル、更ニ十分ノ
御調査ヲ求メナケレバナラヌ關係ニアルト私ハ信ズル、御答辯ニ依テ左樣感
ズルノデアリマス、然ニ內務大臣ガ左樣ナ報告ヲ前提トシテ、當然ノ處置デ
アル、正當ノ處置デアルト云フ御結論ヲ御下シニナルノハドウ云フ次第アリ
マスカ、私ハ之ヲ警察官ノ誤解、行違デアル、事實ハ左樣ニ信ズル、マサカ
內務大臣ガ、或ハ警視總監ガ、白薔薇ヲ著ケテ居ル代議士デアッタナラバ、悉
ク檢査セヨト云フ御命令ヲ下サッタト云フコトハ信ジマセヌ、私ハ實行ノ衝
ニ當ッテ居ル警察官ガ、斯クノ如キ喧〓ノ多數ノ群衆ヲ控ヘ事務ヲ執行ス
ル爲ニ、其際ニ擧措ヲ失シタ處置デアルト云フノガ、其事件ノ眞相デアルト
考ヘルノデアリマス、斯ノ如キ事柄ニ對シテ餘リニ事實ヲ糊塗サレテ鷺ヲ烏
ト仰セラレルヤウナコトノナイヤウニ致シタイト思フノデアル、尙ホ之ニ對
シテ內務大臣ハ本員ノ申ス所ガ誤ッテ居ルト御考ニナリマスナラバ、ドウゾ
之ニ對シテ相當ノ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=14
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015・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 湯淺君ニ御答致シマスガ、其前ニ私ガ只今御答
致シタ中ニ、毆打イタシタカラ其罪ニ依テト云フコトノ積リデハゴザイマセ
ヌ、當日ハ多衆運動ヲ禁止シテアル、而シテ先程申述べタヤウナ始末ノ下
ニ尙ホ解散ノ命ヲ聞カズシテ行動ヲサレタカラ、斯ウ云フコトデアリマ
ス、是ハ誤リナイヤウニ玆ニ申上ゲテ置キマス、ソコデ前申シマシタヤウニ
警視廳ノ報告ニ接シテ、其報告ニ依レバ、私ハ是ハ已ムヲ得ザル當然ノ處置
デアル、斯ウ考ヘルコトヲ申上ゲタイ、湯淺君ハ別ノ方面ヨリ、其ノ事實ノ御
判定ガ又異ッテ居ル、左樣デアレバ自ラ結論モ異ナラナケレバナリマセヌ、私
ハ今部下ノ報〓ヲ聞イテ、ソレナラバ當然ノコトデアッタト思ッテ居リマスケ
レドモ、其爲ニ外ノ議論ガアルコトヲ耳ニセズニ、其儘ニスルト云フ考ハ勿
論持チマセヌ、事實ノ取調ベヲ爲スベキハ致サナケレバナリマセヌ、是ハ當
然ノコトデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=15
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016・湯淺倉平
○湯淺倉平君 只今内務大臣ガ本員ノ先ノ內務大臣ニ依テ與ヘラレタル御答
辯ニ對スル諒解ガ誤ッテ居ルト云フ御言葉デゴザイマシタカラ、ソレハ誤ッテ
居ルト致シテ伺ヒタイト思フノデアリマス、本員ハ先ニ內務大臣ノ御答辯中
ニ、資格ノ分ラナイ者ガ何カ警察官ヲ毆ッタト云フ文字ヲ、報〓文ノ中ヨリ
御讀ミニナッタト思ヒマス、ソレニ此事件ニ對シテ田中代議士ガ先ヅ警察官
ヲ毆打シタリト云フヤウニ解シタノデアリマス、內務大臣ノ御朗讀ニナリマ
シタ、其又章ノ中ニ何者カ警察官ヲ毆ッタカ分ラナイト云フヤウナ文字ガアッ
タト本員ハ記憶イタス、ソレ故ニ本員ハ之ヲ田中代議士ガ警察官ヲ毆ッタト
シテ解釋ヲ致シタノデアリマスルケレドモ、只今內務大臣ノ御答辯ニ依リマ
スルト、本員ノ解シテ居ッタノハ誤解デアル、ソレハサウデハナイ、田中代
議士ガ警察官ヲ毆打シタノデハナイト云フコトマデハ能ク了解イタシマシ
タ、然ラバ現行犯トシテ警察官ガ逮捕シタルカト云フニ、如何ナル犯罪ヲ田
中代議士ガ犯サレタ、何ノ犯罪ヲ犯サレタルガ故ニ逮捕シタト云フノデアリ
マスカ、其嫌疑ノ罪名ヲ承リタイ
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=16
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017・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 御答イタシマスガ、治安警察法違犯ノ現行犯、
先ニモ申上ゲマシタ如ク多衆運動ハ禁止ヲ致シテ居リマス、其當時······サウ
シテ尙ホ其解散ノ命ニ應ジナカッタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=17
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018・湯淺倉平
○湯淺倉平君 只今承ル所ニ依リマスルト、治安警察法ノ規定ニ基イテ、其
命ニ應ゼラレザルガ故ニ引致シタ、逮捕シタ、斯樣ニ御答ニナル、所ガソレ
ハ如何ナモノデアリマセウ、警察官ハ一方、或地點ニ居ルコトヲ許サレナイ
群衆ガ、或地點ニ群衆シテ居ルノニ解散ヲ命ゼラレタ、其解散ヲ命ズルニ當
ッテハ双方ニ了解ガ遂ゲラレテ居ル、其群衆ヲ他ノ方面ニ導イテ穩ニ解散サ
セル、其前路ヲ塞グ、斯樣ナ場合ニ於テハ其先ニ約束シタ協定ヲ行使サレテ
居ルト云フ點デ、其警察官ノ了解ヲ求メルト云フコトハ當然ノコトデアル、
之ガ何故ニ治安警察法ノ違犯ニナルト云フ御見込デアリマセウカ、此ノ事實
ハ內務大臣ハ部下ノ御報告ヲ御取リニナル、本員ノ質問ハ被害者カラ聞イタ
モノナリトシテ、內務大臣ハ事實ノ見ル所ガ違ッテ居ルノダ、斯樣ニ仰セラ
レル、必ヤ左樣ナ御答辯デアラウト思ヒマシタガ、ソレ故ニ本員ハ第三者ノ
所見ヲ以テ之ヲ立證スル外ハナイ、玆ニ於テカ多數ノ新聞記者、多數ノ其光
景ヲ見タ所ノ第三者ノ見タ事實ヲ擧ゲテ、内務大臣ノ御答辯ヲ煩シテ居ル、
何デ之ガ治安警察法ノ違犯ナリト云フ御見解デアリマセウカ、群衆ハ進マム
カ、前路ヲ扼スル人垣ヲ造ッタ警察隊ガアル、退カムカ背後ニモ人垣ヲ造ッタ
警察隊ガ之ヲ扼シテ居ル、玆デグズグズスレバ忽チ檢束ト云フカ、逮捕ト云
フカ、自由ヲ拘束セラレル虞ガアル、ソン故之ヲ他ノ地點ニ連レテ行ヲテ退
散ヲサセヤウ、斯ウ云フ途中デアル、此交涉ヲシタ時ニ背後カラ弘田警視ガ
命令ヲ下シテ、多數ノ警官ハ其命令一下ノ下ニ飛掛ッテ捻伏セテ、貨物自動
車ニ詰込ンデ警視廳ニ之ヲ送ッタ、斯ウ云フ事實デアル、ドウモ御答ニナル
コトガ率直ナ御答辯トハ本員ハ信ズルコトガ出來ナイ
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=18
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019・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 御答イタシマスガ、私ハ報〓ニ接シテ、其報告
ヲ信ジテ其儘御答イタシテ居ルヤウナ次第デアリマスガ更ニ何モ僞リヲ申
上ゲテ居ル考ハ有チマセヌ、ソレカラ此退散ノコトハ玆ニ書イテアリマセヌ
ガ、聞イタノヲ記憶カラ申上ゲレバ賴母木君ナドハ矢張幾分ノ群衆ヲ率キ
テ出テ行ク門前デ解散ヲ命ゼラレタト云フコトデアリマス、田中君ノハ憲政
會ノ本部カラ胃膓病院ノ所マデ來テ、ソコデ警察官ノ方カラ解散ヲスルヤウ
ニト云フコトデアッタノニ拘ラズ、解散ヲセラレナカッタヤウニ見エマス尙
ホ新聞ノ御話デアリマシタケレドモ、是ハ私ハ新聞ノ記事ガ事實デアルカ、
事實デナイト云フコトハ申上ゲルコトガ出來マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=19
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020・湯淺倉平
○湯淺倉平君 本員ハ內務大臣ニ依テ新聞紙ノ記事ノ正確ナリヤ否ヤト云フ
コトヲ伺ハムトシタノデナイノデアリマス、併ナガラ現場ノ光景ヲ目撃シタ
多數ノ新聞記者ノ見ル所ガ、一ニ出テ居ル以上ハ、之ヲ以テ先ヅ正シイ事實
ノ報道ナリト見ルノハ當然ナリト思フノデアル、是ハ常識上サウデアル條理
上サウデアルト思フノデアル、或一ツノ新聞ガ誤ッタ記事ノ報道ヲシテ居ル
ト云フコトハアリマセウ、多數ノ異ッタ新聞記者ガ之ヲ目擊シテ居ル、ソレ
ニ重キヲ置イテ本件ヲ見ルノガ相當ナ條理デアルト言ハナケレバナラヌト思
フノデアル、只今內務大臣ノ部下カラ得タ報告ヲ先ヅ以テ信ズルト仰シヤ
ル、然ニ一方ニ於テハ小泉捜査係長ガ被害者ニ向ッテ讀聽カセタル報〓ガア
ル、斯樣ナコトヲ論議シテ居リマスト、其證據物件ハ直チニ無クナルデアラ
ウト考ヘマスルケレドモ、兎ニ角被害者ガ其朗讀ヲ聽イタ報告書ガアル、ソ
レハ煽動ノ現行犯ナリト云フ報〓デアル、當日新聞記者ノ多數聞イタ所モ煽
動ノ現行犯ダ、斯ウ聞イテ居ル、此事ハ其翌日ノ新聞ニ······多數ノ新聞ニ出
テ居ル、サウスルト内務大臣ノ御答ニナル所ハ、事實ヲ撓メラレテ居ルト解
スル外ハナイ、唯內務大臣ハ本員ガ新聞記事ノ正確ナリヤ否ヤト云フコトヲ
內務大臣ニ御尋シタカノ如キ御答辯ニナリマシタガ、本員ハ左樣ナコトヲ伺
フノデハ決シテナイノデアル、此事ハ能ク能ク冷靜ニ御考ニナリマセヌト、
斯樣ナ事柄ガ惡例トナッテ將來ニ遺ル、內務大臣ハ臺閣ノ高キニ居ラレマシ
テ、當日ノ光景ナドハ御承知ハアリマスマイ、本員ハ日沒前ニ於テ必要ガア
リマシテ、內幸町ニ屢〓出入イタシタモノデアリマス、其際ニ本員自身モ警
察官ニ取押ヘラレタノデアリマス、幸ニ顏ヲ知ッタ警察官ガアッテ、其巡査ガ
非常ナ勢ヲ以テ巡査ヲ押除ケテ、本員ノ通行ヲ許シテ吳レタノデアル、又我
ガ同僚ノ中ニハ公正會ニ屬スル所ノ貴族院議員ニシテ、公正會ノ總會ノ召集
狀ヲ手ニシテ之ヲ持ッテ幸倶樂部ニ行カムトシテ警察官ガドウシテモ行通ヲ
遮斷シテ許サナカッタト云フ事實ガアル、斯樣ナ沒常識ナ取締ヲナシテ居ル
警察官其者ガ、自己ニ之ヲ制裁シタト云フコトヲ懸念イタシテ、サウシテ事
實ヲ巧ミニ彌縫シテ報告ヲシテ居ルヤウナ其報告ヲ以テノ御答辯ハ、本員ハ
全然信ヲ置クコトハ出來マセヌ
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=20
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021・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 私ハ湯淺君ノ只今ノ御話デゴザイマスト、或ハ
御問ニナル所ヲ私ガ能ク諒解シテ居ラヌカモ知レマセヌガ、私ハ最初申上ゲ
マシタ如ク、當日多衆運動ヲ禁止シテアル、屋外集會ヲ禁ジテアル0多衆運
動ヲ田中君ガ多クノ人ヲ引連レテ警察官ノ解散ノ命令ヲ肯カズ、尙ホ其行動
ヲ續ケラレタト云フコトハ、當日多衆運動ヲ禁止シタ、其事ヲ聞カレナカッ
タト云フコトニアッタ、新聞ニ書イテアルノハソコノ所ガ私ニ能ク分ラヌ
所デスガ、ドウ云フコトヲ仰シヤルノデアリマスカ、煽動シタカラ引致シタ
ト云フ、現行犯ダカラ引致シタト云フ、ソコデ新聞ト警察官ノ言フ所ト異ナ
ルト、斯ウ仰シヤルノデアリマス、若シ其事デアルナラ先程カラ申シマスル
如ク、更ニ注意ヲ致スコトハ勿論ノコトデアリマスケレドモ、其當事者ガ現
行犯ダト申シタ、外ニ側ニ聞イテ居ル人ガサウデナイト申シタ、斯ウ云フ二
ツノコトガアル時分ニ、私ハ先ヅ其當局者ノ言フコトヲ信ジテ居ルト云フコ
トハ、順序トシテハ間違ハナイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=21
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022・湯淺倉平
○湯淺倉平君 內務大臣ハ私ノ質問ノ趣旨ヲ御諒解下サラヌ、私ノ申スコト
ハ分ラヌト仰セラレル、私ハ內務大臣ガ何ヲ御答辯ニナッタカ、少シモ私ニ
ハ分ラヌト考ヘル、內務大臣ハ田中代議士ハ治安警察法違犯ナリ、現行犯ナ
ルガ故ニ拘束シタト仰セラレル、然ニ當日田中代議士ヲ拘束シタ所ノ警察官
ハ、煽動ノ現行犯ナリト言ッテ居ッタノデアリマス、是ガ衆人環視ノ面前ニ於
テ行ハレタコトデアリマス、而シテ警視廳ニモ左樣ナ報〓ガ行ッテ居ル、ソ
レガ小泉捜査係長ニ依テ田中代議土ニ讀聞カサレタノデアル、是ダケノ事實
ニ相違ガアルデハアリマセヌカ、而シテ內務大臣ハ双方ノ事實ガ異ッタ場合
ハ當局ノ報〓ヲ信ズルノガ當然ダト仰セラレル、一應ハ最ニ聞エマス、之
ヲ水掛論ニシテ終ラウト云フニハ、誠ニ結構ナ御答辯デアルト私ハ考ヘル、
併ナガラ警視廳ニ煽動現行犯ナリト云フ報告ガ行ッテ居リ、群集モ亦煽動ノ
現行犯ナリト云フコトヲ聞イテ居ル、此事實ヲ御否認ナサルヤ否ヤ
〔國務大臣床次竹二郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=22
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023・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 前御答致シタ所デ既ニ分ッテ居ルト思ヒマスガ、
併シ重ネテ申上ゲマス私ハ警視廳ノ報〓ニ依テ御答ヲ致シタノデゴザイマ
スガ、併シ湯淺君ハ別ニ警視廳ニ煽動ノ云々ト云フコトニ付テ報告ガアッタ
ト云フコトヲ御承知デアレバ、ソレハ私ノ方デモ取調ベマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=23
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024・湯淺倉平
○湯淺倉平君 本員ハ幾度繰返シマシテモ當局ノ誠意アル御答辯ヲ伺フコト
ノ出來ナイノハ遺憾ト致シマスガ、是レ以上質問ヲスル必要ヲ認メマセヌカ
ラ、是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 目賀田男爵ニ伺ヒマスガ、豫算委員長ニ對スル質
疑ト議長ハ心得テ宜シウゴザイマスカ、此際發言ヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=25
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026・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 前田子爵ニチヨット伺ヒマスガ、先日ノ豫算ノ會議
ニ於テ、第一ニ「ゼノア」會議ノコトニ付テ大藏大臣ハ說明ヲ致シタ譯デゴザ
イマスカ、私ハ缺席イタシテ居リマシテ、〓末ヲ能ク存ジマセヌカラ伺ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=26
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027・前田利定
○子爵前田利定君 二十一日ノ豫算委員會ノ際ニ私ハ差支ガゴザイマシテ、
江木副委員長ニ席ヲ讓ッテ居リマシタ、私ノ出席イタシマシタノハ、豫算委
員會ノ半バ頃カラ出マシタ、其時ニハ或委員ノ方ノ御質問ガゴザイマシタ、
ソレハ獨逸賠償金ニ付テノ御質問デ、ソレカラ後ノコトデゴザイマスレバ御
答ガ出來マスガ、前半ハ江木君ニ御答辯ヲ煩ハシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=27
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028・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 ソレデハ副委員長ニ伺ヒマスガ、同樣ナコトヲ一ツ
御說明ヲ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=28
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029・江木千之
○江木千之君 當日ノ豫算委員會ニ於テハ第一ニ大藏大臣ノ說明ヲ求ムベキ
デアリマシタガ、其日ノ午前ニ本議場ニ於テ大藏大臣カラ詳シイ御說明ガア
リマシタノデ、豫算委員會ノ總會ニ於テハ其說明ヲ略シテモ宜イト云フコト
デ、議場ニ諮リマシテ、議場ニ於テハ之ヲ省略シテ宜イト云フコトデ、省略
ニナッテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=29
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030・目賀田種太郎
○男爵目賀田種太郞君 諒承イタシマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=30
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031・江木翼
○江木翼君 極ク簡單ナコトデゴザイマスガ、「ゼノア」會議ハ延期ニナル、
而モ期限ヲ決メズ延期ニナルト云フヤウナコトガ、稍〓確實デアリサウニ傳
ヘラレテ居リマスガ、之ニ對シテ何カ外務省ニ於テ報告ヲ得ラレテ居リマス
カ、チヨット伺ヒマス
〔國務大臣伯爵内田康哉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=31
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032・内田康哉
○國務大臣(伯爵内田康哉君) 唯今ノ江木君ノ御質問ニ御答イタシマスガ、
此「ゼノア」會議ノ延期ト云フコトニ付テハ、此前御答辯ヲ致シタ時ニハ、マ
ダ何方ヨリモ延期ト云フコトニ付テ相談ヲ受ケテ居ナカッタ、然ニ昨今此延
期ノコトガ關係各國ノ間ノ相談ニ上ッテ居リマス、多分幾何ノ延期ヲ見ルカ
ハ此處デ申上ゲルコトハ出來マセヌケレドモ、二三箇月ノ延期ニナリハセヌ
カト思ヒマスケレドモ、無期延期デ此會ヲ止メルト云フ意嚮ハ何方ニモアリ
マセヌ、又御承知ノ如ク伊太利ノ内閣ハ今尙ホ組織ニナリマセヌ、實際ノコ
トヨリ致シマシテモ、多少ノ延期ハ已ムヲ得ヌコトト思ヒマス、併シ色〓準
備ノ都合ガアリ、此會議ヲシテ完全ナル會議タラシメムガ爲ニ準備ヲ要スル
ト云フ趣旨デ、或ハ少シ長ク延期ニナリハセヌカト思ウテ居リマス、是ダケ
御答ヲ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=32
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033・江木翼
○江木翼君 無期延期ト云フコトハナイガ、長キ期間ノ延期ガアル、大凡
何時頃デアルト云フ豫定ヲ今協議ニナッテ居ルノデアリマスカ、本案ハ說明
ニモゴザイマスガ、本年三月八日ヨリ伊太利「ゼノア」ニ於テ開催セラルル會
議斯ウナッテ居リマス、而シテ本案丙號ニ依リマシテ繰越使用ガ許サレテ
居ル、此繰越使用ハ翌年度ダケニ繰越使用ヲ許サレテ、翌々年度ニハ繰越使
用ガ出來ナイノデゴザイマス、其期限ガ非常ニ遲レルト云フコトデアリマス
ト、此際比豫算ヲ議スルト云フコトガ甚ダ適當デナイト云フ感ジガ起ルノデ
アリマス、凡ソ今協議セラレル內容ハ何時頃マデ延期セラレルト云フコトニ
ナッテ居リマスカ、大體御見込ヲ承リタイ
〔國務大臣伯爵内田康哉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=33
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034・内田康哉
○國務大臣(伯爵内田康哉君) 先刻モ申シマシタ通リ、多分二三箇月デアラ
ウト思ヒマス、二三箇月ヲ超エルコトハナカラウト思ッテ居リマス、御承知
ノ如ク我國ハ遠隔ノ地方ニアリマスカラシテ、豫算ハ成ベク早目ニ之ヲ決メ
テ戴クコトヲ便利ト致シマス、決シテ此會議ガ流會ニナルト云フコトハ唯今
ノ所デハ信ゼラレマセヌ、長クトモ三箇月ヲ越スコトハナイダラウト思ヒマ
ス、併シ是トテモ決マッタコトデハアリマセヌカラ、或ハ三箇月中ニモ開ク
コトニナルカモ知レマセヌガ、然ル場合ニ於テ此會議中ニ於テ第一ニ必要ナ
ルモノハ、其委員ノ宿泊スル家ヲ借ルコトデアリマス、之ニ對シテハドウシ
テモ前ビロニ家ヲ借ラナケレバナラヌ必要ガアリマスカラシテ、無論豫算ハ
本年度ノ豫算デアリマスケレドモ、此中ノ一部ハ、三箇月後ニ開クコトニシ
テモ本年度ノ支出ハ必要ガアルカモ知レマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 採決ヲ致シマス、大正十年度歲入歲出總豫算追加
案第二號、全部ヲ問題ニ供シマス、全部同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、借地借家調停法案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ做フ〕
借地借家調停法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正十一年二月二十一日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
小字ハ衆議院修正文、
ハ削除ノ符號ナリ
借地借家調停法案
借地借家調停法
第一條土地又ハ建物ノ貸借、地代、家賃其ノ他借地借家關係ニ付爭議ヲ
生シタルトキハ當事者ハ爭議ノ目的タル土地又ハ建物ノ所在地ヲ管轄ス
ル區裁判所ニ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
當事者ハ合意ヲ以テ前項ノ區裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ調
停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第二條調停ノ申立ハ爭議ノ實情ヲ明ニシテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三條當事者義務ノ囘避其ノ他不當ノ目的ヲ以テ濫ニ調停ノ申立ヲ爲シ
タリト認ムルトキハ裁判所ハ其ノ申立ヲ却下スルコトヲ得
第四條爭議ノ目的タル土地又ハ建物カ數個ノ裁判所ノ管轄區域內ニ存ス
ル場合ニ於テ調停ノ申立ヲ受ケタル地方裁判所又ハ區裁判所相當ト認ム
ルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ他ノ管轄地方裁判所又ハ管轄區裁判所ニ移送
スルコトヲ得管轄權ナキ裁判所カ調停ノ申立ヲ受ケタルトキ亦同シ
前項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第五條調停ノ申立ヲ受理シタル事件ニ付訴訟カ繫屬スルトキハ調停ノ終
了ニ至ル迄訴訟手續ヲ中止ス
第六條裁判所ハ期日ヲ定メ調停申立人及相手方ヲ呼出スヘシ此ノ場合ニ
於テハ調停ノ結果ニ付利害關係ヲ有スル者ノ參加ヲ求ムルコトヲ得
○又ハ代理人辯護士ニ非サ
第七條當事者及利害關係人ハ自身0出頭スルコトヲ要ス但シ巳ムコトヲ
ル者ヲ代理人トスルクヘシ
得サル事由アル場合ニ於テハ裁判所ノ許可ヲ受ケ代理人ヲシテ出頭セシ
ムルコトヲ得
裁判所ハ何時ニテモ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
裁判所ハ當事者及利害關係人自身ノ出頭ヲ命スルコトヲ得
第八條調停手續ハ之ヲ公開セス但シ裁判所ハ相當ト認ムル者ノ傍聽ヲ許
スコトヲ得
第九條費用ヲ要スル行爲ニ付テハ當事者ノ一方又ハ雙方ヲシテ其ノ費用
ヲ豫納セシムルコトヲ得
第十條申立其ノ他ノ申述ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
口頭ヲ以テ申述ヲ爲ス場合ニ於テハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要
ス
第十一條調停ニ付テハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第十二條調停ハ裁判上ノ和解ト同一ノ效力ヲ有ス
第十三條裁判所ハ調停前調停ノ爲必要ト認ムル處分ヲ命スルコトヲ得
第十四條裁判所調停ノ申立ヲ受理シタルトキハ調停委員會ヲ開クコトヲ
得
當事者雙方ノ申立アルトキハ裁判所ハ調停委員會ヲ開クコトヲ要ス
第十五條調停委員會ハ調停主任一人及調停委員二人以上ヲ以テ之ヲ組織
ス
第十六條調停主任ハ判事ノ中ヨリ每年豫メ地方裁判所長之ヲ指定ス
調停委員ハ特別ノ知識經驗アル者ニ就キ每年豫メ地方裁判所長ノ選任シ
タル者又ハ當事者ノ合意ニ依リ選定セラレタル者ノ中ヨリ各事件ニ付調
停主任之ヲ指定ス
第十七條調停委員會ハ當事者ノ意見ヲ聽キ適當ト認ムル者ヲシテ調停ノ
補助ヲ爲サシムルコトヲ得
第十八條調停委員及前條ノ規定ニ依リ調停ノ補助ヲ爲シタル者ニハ旅
費、日當及止宿料ヲ給ス
第十九條調停委員會ニ於ケル調停手續ハ調停主任之ヲ指揮ス
第二十條調停委員會ノ決議ハ調停委員會ノ過半數ノ意見ニ依ル可否同數
ナルトキハ調停主任ノ決議スル所ニ依ル
第二十一條調停委員會ノ評議ハ之ヲ祕密トス
第二十二條調停委員會ヲ開キタル場合ニ於テハ第六條、第七條第一項但
書第二項、第八條但書及第十三條ニ規定スル裁判所ノ權限ハ調停委員會
三四郎、
第二十三條調停委員會ハ當事者又ハ利害關係人ノ陳述ヲ聽キ且必要ト認
ムルトキハ證據調ヲ爲スコトヲ得
調停委員會ハ調停主任ヲシテ證據調ヲ爲サシメ又ハ之ヲ區裁判所ニ囑託
スルコトヲ得
證據調ニ付テハ民事訴訟法ヲ準用ス
證人及鑑定人ノ受クヘキ旅費、日當及止宿料ニ付テハ民事訴訟費用法ヲ
準用ス
第二十四條期日ニ於テ調停成ラサルトキハ調停委員會ハ爭議ノ目的タル
事項及手續ノ費用ニ付適當ト認ムル調停條項ヲ定メ其ノ調書ノ正本ヲ當
事者ニ送付スルコトヲ要ス
當事者カ前項ノ正本ノ送付ヲ受ケタル後一月內ニ調停委員會ニ異議ヲ述
ヘサルトキハ調停ニ服シタルモノト看做ス
調停委員會ハ申立ニ因リ前項ノ期間ヲ伸長スルコトヲ得
當事者カ異議ヲ述ヘタルトキハ調停委員會ハ其ノ旨ヲ相手方ニ通知スル
コトヲ要ス
第二十五條調停委員會第三條ニ規定スル事由アリト認ムルトキハ調停ヲ
爲ササルコトヲ得
第二十六條調停成リタルトキ又ハ第二十四條第二項ノ規定ニ依リ當事者
カ調停ニ服シタルモノト看做サレタルトキハ裁判所ハ調停主任ノ報〓ヲ
聽キ調停ノ認否ニ付決定ヲ爲スコトヲ要ス
調停認可ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
調停不認可ノ決定ニ對シテハ民事訴訟法ニ從ヒ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第二十七條裁判所ハ調停カ著ク公正ナラスト認ムル場合ニ非サレハ調停
不認可ノ決定ヲ爲スコトヲ得ス
第二十八條調停委員會ヲ開キタル場合ニ於テハ調停ハ認可決定アリタル
トキニ限リ裁判上ノ和解ト同一ノ效力ヲ有ス
第二十九條調停ノ申立ヲ爲スニハ手數料ヲ納付スルコトヲ要ス
第三十條當事者又ハ利害關係人ハ手數料ヲ納付シテ記錄ノ閱覽若ハ謄寫
又ハ其ノ正本、謄本、抄本若ハ事件ニ關スル證明書ノ付與ヲ裁判所書記ニ
求ムルコトヲ得但シ當事者カ事件ノ繫屬中記錄ノ閱覽又ハ謄寫ヲ爲ス場
合ニ於テハ手數料ヲ納付スルコトヲ要セス
第三十一條第十八條ノ旅費、日當及止宿料竝前二條ノ手數料ノ額ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ地區ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣伯爵大木遠吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=37
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038・大木遠吉
○國務大臣(伯爵大木遠吉君) 只今議題トナリマシタル法案ニ付マシテハ、
提出ノ理由ヲ〓要申シマス、借地借家ニ關シマスル紛爭ニ付マシテ、通常ノ
裁判手續ノ外ニ調停手續ヲ設クルコトハ、前議會ニ於キマシタル借地法借家
法審議ノ際ニ當リマシテ、貴衆兩院共ニ希望トシテ表明セラレタル所デアリ
やぎ、從ッテ本案ハ其趣旨ニ基キマシテ、借地借家當事者ノ爭議ニ付マシテ、
其調停ノ制度ヲ定メマシテ簡易ナル方法ニ依テ之ヲ解決セムトスル爲ニ、本
法ヲ提案シタル次第デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛アラムコトヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=38
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039・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御質疑モナイト存ジマスカラ、特別委員ノ氏
名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
借地借家調停法案特別委員
伯爵寺島誠一郞君松室致君男爵船越光之丞君
男爵佐竹義準君加太邦憲君勝田主計君
江木翼君勝田銀次郞君成〓信愛君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、農會法案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會
農會法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十一年二月二十一日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
農會法案
農會法
第一條農會ハ農業ノ改良發達ヲ圖ルヲ以テ目的トス
第二條農會ハ法人トス
第三條農會ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ノ事業ヲ行フ
-農業ノ指導奬勵ニ關スル施設
二農業ニ從事スル者ノ福利增進ニ關スル施設
三農業ニ關スル〓究及調査
四農業ニ關スル紛議ノ調停又ハ仲裁
五其ノ他農業ノ改良發達ヲ圖ルニ必要ナル事業
第四條農會ハ營利事業ヲ爲スコトヲ得ス
第五條農會ハ農業ニ關スル事項ニ付行政廳ニ建議スルコトヲ得
農會ハ行政廳ノ諮問ニ對シ答申スヘシ
第六條行政官廳ハ農會ニ對シ農業ニ關スル報告書ノ提出及農業ニ關スル
事項ノ調査ヲ命スルコトヲ得
第七條政府ハ農會ニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ補助金ヲ交付スルコトヲ得
第八條農會ハ町村農會、市農會、郡農會、道府縣農會及帝國農會トス
第九條農會ノ地區ハ町村農會ニ在リテハ町村又ハ町村組合、市農會ニ在
リテハ市、郡農會ニ在リテハ郡又ハ島司ヲ置キタル島嶼、道府縣農會ニ
在リテハ道府縣、帝國農會ニ在リテハ內地ノ區域ニ依ル
特別ノ事由アルトキハ農會ノ地區ハ前項ノ區域ニ依ラサルコトヲ得
第一項ノ區域ニ增減アリタルトキハ其ノ區域ヲ地區トスル農會ノ地區モ
亦之ニ應シテ增減アリタルモノトス
町村カ市ト爲リタルトキハ其ノ町村ノ區域ヲ地區トスル町村農會ハ市農
會ト爲リタルモノトス
第十條農會ノ名稱ニハ町若ハ村農會、市農會、郡農會、道府若ハ縣農
會又ハ帝國農會ナル文字ヲ用ヰルヘシ但シ農會ノ地區カ町、村.市、郡
道府又ハ縣ノ區域ニ依ラサルトキハ其ノ名稱中ニ此等ノ區域ヲ示スヘ
キ文字ヲ用ヰサルコトヲ得
本法ニ依リ設立シタル農會ニ非サレハ其ノ名稱中ニ前項ニ揭クル文字ヲ
用キルコトヲ得ス
第十一條農會ハ町村農會及市農會ニ在リテハ國、公共〓體及命令ヲ以テ
規定シタル者ヲ除クノ外其ノ地區內ノ耕地、牧場又ハ原野ヲ所有スル者
及其ノ地區內ニ於テ農業ヲ營ム者、郡農會ニ在リテハ其ノ地區内ノ町村
農會、道府縣農會ニ在リテハ其ノ地區內ノ市農會、郡農會及郡農會ノ會
員ニ非サル町村農會、帝國農會ニ在リテハ道府縣農會ヲ以テ其ノ會員ト
ス
第十二條農會ヲ設立セムトスルトキハ其ノ地區內ノ會員タル資格ヲ有ス
ル者ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ會則ヲ議定シ行政官廳
ノ認可ヲ受クヘシ
町村農會及市農會ニ在リテハ前項ノ同意ヲ爲シタル者ノ所有シ又ハ占有
スル其ノ地區內ノ耕地、牧場及原野ノ面積ハ私用ニ供スル其ノ地區內ノ
耕地、牧場及原野ノ面積ノ二分ノ一以上ナルコトヲ要ス但シ特別ノ事由
アル場合ニ於テハ此ノ條件ニ依ラサルコトヲ得
第十三條郡農會、道府縣農會又ハ帝國農會ヲ設立セムトスルトキハ其ノ
農會ノ會員タルヘキ農會ハ其ノ總會ニ於テ創立委員各一人ヲ其ノ役員中
ヨリ選任スヘシ但シ道府縣農會ヲ設立スル場合ニ於テ郡農會ノ會員ニ非
サル町村農會カ選任スル創立委員ノ選出ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第十四條町村農會及市農會ノ創立總會ニ於テハ其ノ會員タル資格ヲ有ス
ル者ノ中ヨリ其ノ役員竝其ノ組織スヘキ農會ノ議員及豫備議員ト爲ルヘ
キ者ヲ、其ノ他ノ農會ノ創立總會ニ於テハ其ノ創立委員中ヨリ其ノ役員
竝其ノ組織スヘキ農會ノ議員及豫備議員ト爲ルヘキ者ヲ選任スヘシ但シ
第二十七條第二項但書及第三項ノ規定ハ此ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十五條農會ハ設立ノ認可ヲ受ケタル時成立ス
第十六條農會成立シタルトキハ其ノ地區內ノ會員タル資格ヲ有スル者ハ
總テ之ニ加入シタルモノト看做ス但シ行政官廳カ特別ノ事由ニ依リ加入
ノ必要ナシト認メタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第十七條農會ニ總會ヲ置ク
總會ハ町村農會及市農會ニ在リテハ會長副會長及會員、其ノ他ノ農會ニ
在リテハ會長副會長議員及特別議員ヲ以テ之ヲ組織ス
郡農會、道府縣農會又ハ帝國農會ノ議員ハ其ノ農會ノ會員タル農會ニ於
テ各一人ヲ其ノ役員中ヨリ選任スヘシ但シ郡農會ノ會員ニ非サル町村農
會カ選任スル議員ノ選出ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
郡農會、道府縣農會及帝國農會ノ設立ノ場合ニ於テハ創立委員其ノ農會
ノ議員ト爲ル
第十八條郡農會、道府縣農會又ハ帝國農會ノ會員タル農會ハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ豫備議員各一人ヲ其ノ役員中ヨリ選任スヘシ
豫備議員ハ議員事故アルトキハ之ヲ代理シ議員闕ケタルトキハ議員ト爲
ル
前條第三項但書ノ規定ハ豫備議員ニ付之ヲ準用ス
第十九條行政官廳ハ農業ニ關スル學識經驗アル者ヲ郡農會、道府縣農會
又ハ帝國農會ノ特別議員ニ任命スルコトヲ得
特別議員ノ員數ハ議員定數ノ三分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス
第二十條左ニ揭クル事項ハ總會ノ議決ヲ經ヘシ
-收支豫算
二經費ノ分賦收入方法
三事業報告及收支決算
四借入金
五基本財產ノ造成、管理及處分
六會則ノ變更
七役員、議員及豫備議員ノ選任及解任
八第十二條第一項、第二十四條第二項及第三十五條ノ同意
前項第一號、第二號、第四號及第六號ニ揭クル事項ノ決議ハ行政官廳ノ
認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第二十一條總會ハ會長之ヲ招集ス
總會ヲ組織スル者ハ其ノ總數ノ三分ノ一以上ノ同意ヲ得テ會議ノ目的タ
ル事項及招集ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ提出シ總會ノ招集ヲ請求スルコ
トヲ得
會長正當ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル請求アリタル後十四日以內ニ
總會ヲ招集セサルトキハ請求者ハ行政官廳ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコ
トヲ得
前三項ノ規定ニ依リ總會ヲ招集スルコト能ハサルトキハ行政官廳ハ會員
又ハ議員若ハ特別議員ヲ指定シテ總會ヲ招集セシムルコトヲ得
第二十二條總會ノ議長ハ會長、會長事故アルトキハ副會長ヲ以テ之ニ充
ツ會長及副會長共ニ事故アルトキ又ハ前條第三項若ハ第四項ノ場合ニ於
テハ出席者ノ互選ニ依リ議長ヲ定ム
第二十三條總會ノ議事ハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外出席者ノ
過半數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第二十四條會則ノ變更ハ總會ニ於テ之ヲ組織スル者半數以上出席シ出席
者ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決ス
會則ノ變更カ地區ノ增減ニ關スルトキハ前項ノ規定ニ依ル議決ノ外新ニ
編入セラレ又ハ削除セラルヘキ區域内ノ會員タル資格ヲ有スル者又ハ會
員ノ三分ノ二以上ノ同意アルコトヲ要ス
第二十五條總會ノ議決ヲ經ヘキ事項ニシテ輕微ナルモノニ付テハ會則ノ
定ムル所ニ依リ書面ヲ以テ其ノ總會ヲ組織スル者ノ意見ヲ徴シ總會ノ議
決ニ代フルコトヲ得但シ町村農會及市農會ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十六條町村農會及市農會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ總代會ヲ置キ總會
ニ代フルコトヲ得
總代會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ會員ノ選擧シタル總代ヲ以テ之ヲ組織ス
總會ニ關スル規定ハ總代會ニ付之ヲ準用ス
第二十七條農會ニ左ノ役員ヲ置ク
會長一人
副會長一人
評議員數人
役員ハ町村農會及市農會ニ在リテハ會員中ヨリ、其ノ他ノ農會ニ在リテ
ハ議員及特別議員中ヨリ之ヲ選任ス但シ會長及副會長ハ其ノ他ノ者ヨリ
之ヲ選任スルコトヲ妨ケス
前項但書ノ規定ニ依ル選任ハ行政官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效
力ヲ生セス
第二十八條會長ハ農會ヲ代表シ會務ヲ總理ス
副會長ハ會長ヲ補佐シ會長事故アルトキ其ノ職務ヲ代理ス
副會長ハ會則ノ定ムル所ニ依リ會長ノ職務ノ一部ヲ分掌スルコトヲ得
評議員ハ會長ノ諮問ニ應シ竝會務執行及財產ノ狀況ヲ監査ス
第二十九條總會ノ議決ヲ經ヘキ事項ニシテ臨時急施ヲ要シ總會ヲ招集ス
ルノ暇ナシト認ムルモノハ會長之ヲ專決處分スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ會長ハ次ノ總會ニ於テ其ノ承認ヲ求ムヘシ
第三十條農會ハ會則ノ定ムル所ニ依リ其ノ會員ニ對シ經費ヲ分賦シ及過
怠金ヲ徵收スルコトヲ得
町村農會及市農會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ物件ヲ以テ經費ノ負擔ヲ爲サ
シムルコトヲ得
町村農會及市農會ノ經費又ハ過怠金ヲ滯納スル者アル場合ニ於テ其ノ會
長ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ
於テ農會ハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スヘシ
前項ニ規定スル徵收金ノ先取特權ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモ
ノノ徴收金ニ次キ其ノ時效ニ付テハ市町村稅ノ例ニ依ル
經費ノ分賦又ハ過怠金ノ徵收ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ異議ノ申
立訴願及行政訴訟ヲ爲スコトヲ得
第三十一條農會ハ會則ノ定ムル所ニ依リ使用料及手數料ヲ徵收スルコト
ヲ得
前項ノ使用料及手數料ノ徵收ニ關シテハ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十二條行政官廳ハ農會ニ對シ會務ニ關スル報告ヲ爲サシメ、會務執
行又ハ財產ノ狀況ヲ檢査シ、會則收支豫算又ハ經費ノ分賦收入方法ノ變
更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第三十三條農會ハ會則ノ定ムル所ニ依リ其ノ會員タル農會ニ對シ農業ニ
關スル報告書ノ提出及農業ニ關スル事項ノ調査ヲ爲サシムルコトヲ得
第三十四條行政官廳ハ農會ノ決議又ハ役員ノ行爲カ法令若ハ會則ニ違反
シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ決議ヲ取消シ、役
員若ハ特別議員ヲ解任シ、議員豫備議員若ハ總代ノ改選ヲ命シ、農會ノ
事業ヲ停止シ又ハ農會ノ解散ヲ命スルコトヲ得
第三十五條農會解散又ハ合併ヲ爲サムトスルトキハ其ノ會員ノ三分ノ二
以上ノ同意ヲ得、道府縣農會ニ在リテハ尙其ノ會員タル郡農會及市農會
ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得且合併ノ場合ニ於テハ會則ヲ議定シ事由ヲ具
シ行政官廳ノ認可ヲ受クヘシ
農會分割ヲ爲サムトスルトキハ前項ノ規定ニ準スル同意ノ外分割ノ各農
會ノ會員又ハ會員タル資格ヲ有スル者ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得農會ノ
權利義務ノ限度ヲ定メ且會則ヲ議定シ事由ヲ具シ行政官廳ノ認可ヲ受ク
ヘシ
第十二條第二項、第十三條乃至第十五條及第十七條第四項ノ規定ハ前二
項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十六條合併後存續スル農會又ハ合併ニ因リテ設立シタル農會ハ合併
ニ因リテ消滅シタル農會ノ權利義務ヲ承繼ス
分割ニ因リテ設立シタル農會ハ前條ノ規定ニ依リテ定リタル限度ニ於テ
從前ノ農會ノ權利義務ヲ承繼ス
第三十七條農會ハ解散ノ後ト雖〓算ノ目的ノ範圍內ニ於テハ仍存續スル
モノト看做ス
第三十八條農會解散シタルトキハ會長及副會長ヲ以テ其ノ〓算人トス但
シ會則ニ別段ノ規定アルトキ又ハ總會ニ於テ選任シタル者アルトキハ此
ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ〓算人タル者ナキトキハ行政官廳〓算人ヲ選任ス〓算
人闕ケタルトキ亦同シ
第三十九條〓算人ハ農會ヲ代表シ〓算ヲ爲スニ必要ナル一切ノ行爲ヲ爲
ス權限ヲ有ス
〓算方法及財產處分ニ付テハ行政官廳ノ認可ヲ受クヘシ
第四十條行政官廳必要ト認ムルトキハ〓算方法及財產處分ノ變更ヲ命シ
又ハ〓算人ヲ解任スルコトヲ得
第四十一條本法ニ於テ市町村トアルハ市制町村制ヲ施行セサル地ニ在リ
テハ之ニ準スヘキモノトシ郡トアルハ北海道ニ在リテハ北海道廳支廳長
管轄區域トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
明治三十二年法律第百三號農會法ハ之ヲ廢止ス
明治三十二年法律第百三號農會法ニ依リ設立シ本法施行ノ際現ニ存スル農
會ハ之ヲ本法ニ依リ設立シタルモノト看做ス
本法施行ノ際現ニ前項ノ農會ノ役員、議員、豫備議員又ハ特別議員ノ職ニ
在ル者ハ其ノ任期中仍其ノ職ニ在ルモノトス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=40
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041・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 農會ノ我國農業界ニ重要ナコトハ、今更申上
ゲル迄モナイノデアリマスガ、尙ホ將來ヲ考ヘマスノニ、時勢ノ推移ハ農業ノ
發達ヲ一ツニ政府ノ勸業行政ニ依ルノミデナク、農業者ノ自治的發達ニ俟ツ
所ガ益〓大ニナリツツアルノデアリマス、殊ニ〓糧問題農村社會問題等、我
國ニ於テ最モ重大ナル問題ニ鑑ミマシテ、今後農會ノ活動ヲ要スルコトハ益
多クナリツツアルノデゴザイマス、然ニ現行ノ農會法ハ明治三十二年ノ制定
ニ係リマシテ、既ニ二十有餘年ヲ經過シテ居ルノデアリマス、今日時勢ノ進
運ニ伴ヒマシテ、運用スル上ニ付マシテ不便ガ多々アルノデアリマス、依テ
政府ハ年來農會ノ現狀ヲ調べ、更新スベキ要項ヲ審カニスル爲ニ種々調査ヲ
重ネマシテ、玆ニ農會法案ヲ提出スルコトニナリマシタノデゴザイマス、而
シテ此重要ナル事件ニ付マシテハ、從來ノ重要事項ヲ命令ニ讓ッテ居リマシ
タモノヲ、此度ハ其現行法ヲ廢シマシテ、新ニ農會法ヲ制定スルコトニ致
シマシタ、公法人タルコトヲ明カニスル爲ニ左ノ事業ヲ玆ニ揭ゲルコトニ致
シマシタ、ソレハ一、農業ノ指導奬勵ニ關スル施設、二、農業ニ從事スル者
ノ福利增進ニ關スル施設、三、農業ニ關スル〓究及調査、四、農業ニ關スル
紛議ノ調停又ハ仲裁、五,其他農業ノ改良發達ヲ圖ルニ必要ナル事業、尙ホ
農業者ノ多年ノ要望デアリマス左ノ二項ヲ規定スルコトニ致シマシタ、ソレ
ハ市町村農會ヲシテ滯納經費ノ强制徴收ヲ市町村長ニ請求スルコトヲ得セシ
メル、又市町村農會ニアリテハ會員ヨリ選任シタル總代會ヲ以テ總會ニ代ハ
ラシムルコトヲ得セシメル、而シテ此補助金ハ明治三十二年以來十五萬圓ヲ
極度ト致シテ居リマシタガ、此度ハ豫算ノ範圍內ニ於テ交付シ得ルコトニ致
シタノデアリマス、現今法令ノ規定ヲ必要ニ應ジ相當變更セシメル規定ヲ設
ケタイノデアリマス、先ヅ大體ノ主ナルモノハ今申述ベル如キモノデゴザイ
マン·ドウカ御協賛アラムコトヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ通告順ニ依リマシテ質疑ヲ許シマス、玉利
君
〔玉利喜造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=42
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043・玉利喜造
○玉利喜造君 此度ハ我〓共農業ニ關係ヲ致ス者ガ多年ノ間希望イタシマシ
ク農會法ノ改正案ガ提出ニナリマシテ、寔ニ喜ビニ堪ヘヌ次第デゴザイマス
ガ、一二心配ニ堪ヘナイ所ガゴザイマシテ、ソレヲバ二三點分ラナイ心配ニ
堪ヘヌ所ガゴザイマシテ、ソレヲバ政府委員ニ御尋ヲシタイト考ヘマス、其
一箇條ハ現行法ノ農會法ハ極ク單純ナモノデ唯補助法ト云フコトニナッテ
居リマス國庫金ノ補助ノ事ニ付テハ僅カ四五箇條ノ補助ニ關スルコトガア
リマシテ、其外ハ皆勅令デ規定シテゴザイマス所デ今度ハ皆大變此組織カ
ラ何カラ精シク此改正法ノ方デハ出テ居リマスケレドモ、マダ其中デ知リタ
イコトガ色〓ゴザイマシテ、其事ヲバ御尋ヲ致シマスルガ、何レ組織法ガ玆
ニ出マシタ以上ハ、是マデノ勅令ト云フモノハ、アレハ餘程其改正ニナルコ
トト存ジマスガ、其改正ニナルト云フコトニ付テ、勅令ニゴザイマスカラ我
我共ガ茲デ聽キマシテ、ソレニナイカラト云フコトデゴザイマセヌガ、參考
ニナリマスルカラシテ、何レ政府ノ方デハ是ハ此勅令ニナルダケノモノハ既
ニ御調ガ付イテ居ルコトト存ジマスカラシテ、ソレヲバ御洩シニナルコトヲ
願ヒタイノデス、御知ラセニナルコトヲ願ヒタイノデス、是ハ此會デナクテ
モ或ハ委員會デ御示シナスッテ下サルト都合ガ宜ウゴザイマスガ、サウ云フ
コトガ出來マセウカ、希クバソレガ欲シイノデアリマス、ソレカラ第二ハ
此只今農商務大臣ヨリ第三條ノ農會ノ仕事ノコトヲバ御示シニナリマシタ
ガ、第五項マデゴザイマスルガ、其中ニドウ云フモノカト考ヘテ居リマスノ
ハ農業ノ〓育ニ關スルコト、ソレカラ農村ノ風紀ノ維持ト云フヤウナ仕事
ニ關スルコトガゴザイマセヌカラシテ、斯ウ云フモノナラバ、此五項マデノ
間ハ殆ド何レノ項マデモサウ云フコトハ這入ッテ居ルト仰シヤレバ、ソレデ
又ソレデモ出來ルヂヤラウト考ヘテ居リマスガ、如何ナルモノデゴザイマセ
ウカ、大事ナコトデゴザイマスカラシテ、之ヲ明カニ伺ッテ置キタイノデア
リマス、ソレガ這入ッテ居ナイト云フト、ソレハ又ソレニ付テハ意見ガゴザ
イマスカラ申上ゲマスガ、マア這入ッテ居ルヂヤラウト考ヘテ居リマスガ、何
處ノトコロデ這入ック居リマスカ、農業ノ〓育ト云フモノハ、今ヤッテ居ルデ
アリマスガ、農會ハ皆〓ヤッテ居リマス、短期講習ナドト云ウテヤッテ居ルノ
デアリマス、大變效ガアルノデゴザイマスカラ、ドウ云フモノデゴザイマス
カ、ソレトソレカラ農村ノ風紀ト云フコトデゴザイマス、是ガ又非常ニ大事
ナモノト本員ハ見テ居ルノデアリマス、只今地方デハ此農村ノ風紀ナドト云
フ問題ニ付マシテハ靑年會ヂヤノ、或ハ修養團ヂヤノト云フヤウナモノモ
アリマシテ、靑年會ノ如キハ、餘程大キナ組織デヤリマシテ參リマシタガ、
實際ノ仕事ト云フモノハ、不斷餘リアリマセヌカラシテ、ドウモ振ハヌヤウ
ニ考ヘマス、仕事ガ不斷ゴザイマセヌカラ、マア謂ハバ萎靡振ハヌ、動モス
ルト沈滯ト云フヤウナ有樣デゴザイマス、所デ農會ノ方ニ於キマスルト不斷
仕事ガゴザイマス、色〓ノ仕事ガアリマス、マア申スト春夏秋冬、ソレニ應
ジテ仕事ガゴザイマス、色〓寄ッテ相談ナドシタリシマスカラ、サウ云フ會
デ以テ常ニ活動ノ氣ヲ持ッテ居ル所デモ、之ヲ矢張ヤル必要ガアルト考ヘテ
居リマス、又共ニ此靑年會ナド、提携シテ斯ウ云フ仕事ニ從事スル事ガ必要
ト考ヘテ居リマスガ、此事ハドチラニカ這入ッテ居ルト云フナラバ、這入ッテ
居ルカ居ナイカト云フ事ヲバ一ツ伺ヒタイノデアリマス、ソレカラ第三ハ最
モ此改正案ニ大事ナ所ノ此農會ニ對スル所ノ國庫ノ補助ト云フモノヲ、唯〓
豫算ノ範圍內ニ於テ、補助金ヲ交付スルコトヲ得ト云フコトニナリマシテ、
是マデノ金額ハゴザイマシタノヲ取ッテ、サウシテサウ云フ何モ言ハナイコ
トニナリマシタ、ケレドモ衆議院ノ方デハ、是ハ本文ハ本文ト致シマシテ、
此通リニ致シマシテ、之ニ條件ヲ附ケマシテ、サウシテ百萬圓ヲ補助スルト
云フ希望ヲ以テ、サウシテ此案ヲ無事ニ通過シタコトニナッテ居リマス、百
萬圓ヲ補助スルト云フコト、ソレハ今日ノ此澤山ノ一萬有餘ノ農會ノ活動ス
ルニ付マシテ、此百萬圓位ノ費用ト云フモノハ、何モ足リマセヌケレドモ、
ソレデモ是マデノ補助金カラシマスレバ宜シカラウト考ヘテ居リマスガ、我
我共ノ希望デハ、マダ中〓足リマセヌカラ、十分マチット補助ヲ願ヒタイノ
デアリマスケレドモ、-シカニ會費强制徵收ノコトガ今度ハ許サレマシタカ
ラ、是ガ其長イ間出來ナカタノデアリマス、最初出來ナイ時、是ガ初メテ
出來ル時、此問題ガ出來マシテ、ソレガ爲ニ長イ間此農會法ト云フモノガ成
立タナカッタノデアリマス、ソレガ成立ッタノガ卽チ三十二年ノ農會法デアリ
マスガ、所デ今度政府カラ徵收ノコトヲバマア許サレタ譯デアリマス、許ス
法律ノ改正案ニナッタノデアリマス、殊ニドウモ大事ナコトガ出來タコトニ
ナリマス、是カラハ餘程活動スルコトヂヤラウト考ヘテ居リマスガ、今ノ衆
議院デ以テ百萬圓補助アルヤウニト云フアノ希望條伴ト云フモノハ、政府デ
ハ矢張是認シテ在ラッシヤルノデアリマスカ、其コトヲ明カニ承リタイノデ
アリマス、又豫算ノ範圍內ニ於テ補助金ヲ交付スルコトヲ得トアリマスガ、
是ハ何カ其程度ト云フコトハ承ルコトハ出來ヌデアリマセウカ、程度デアリ
マスガ、先ヅ第一ニ百萬圓ト云フモノニ付テ希望條件ヲ付ケタノハ、政府ハ
是認シテ在ラッシヤルデアリマセウカ、如何デゴザイマセウカ、是ダケノコ
トヲバ伺ヒタイノデアリマス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=43
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044・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 御答致シマスガ、第一ノ是マデノ法律ハ殊ニ
簡單デアッテ、多ク勅令ニ讓ッテ居ルガ、其モノニ付テハ何レ委員會デモ明カ
ニ示シテ貰ヒタイト云フコトデ、成程三十二年ニ制定シマシタル法律ハ、僅ニ
六箇條ニナッテ居リマシテ、ソレデ總テ其他ノモノハ勅令ニ讓ッテ、數十ノ勅
令ガアルノデアリマスカラシテ、サウ云フモノヲ色〓集メマシタリ、尙ホ新
ニモ拵ヘマシテ、此度ハ法律ノ條項ガ四十二箇條ニナッテ居リマス、斯ノ如
ク六箇條ノモノヲ四十二箇條ニモ擴ゲルヤウニモ相成リマシタノデアリマス
カラシテ、此度ハ新ニ制定スルト云フコトニ致シマシタノデアリマス、尙ホ
其條項ノ詳シイコトハ御望ノ如ク後ヨリ御廻シスルコトニ致シマス、ソレカ
ラ第二ニハ此條項ノ中ニ最モ必要ナル農村ノ風紀及ビ〓育ノ如キモノガ缺イ
テ居ルヤウニアルガト云フコトデアリマシタガ、是ハ〓育ト申シマシテモ、
或ハ直チニ學校ヲ設立シテドウ斯ウト云フヤウナコトハ、文部ニ屬スルコト
ガ多イノデアリマス、併シ此農業ノ指導奬勵ヲスルト云フノニ於キマシテ
ハ、斯ウ云フヤウナルコトガ無論此一體ノ農業ノ繁榮ヲ圖ル上ニ付テ指導奬
勵ヲシナケレバナラヌヤウナコトハ、ソレニ伴ッテ起ルコトト思ッテ居リマ
ス、ソレカラ尙ホ一番仕舞ヒニ五項ニ其他必要ナルコトニ付テハ其事柄ヲ取
扱フト云フコトニナッテ居リマスカラシテ、是モ風紀ナドニ付マシテハ最
モ農家ノ一體ノ奬勵上必要デゴザイマスカラシテ、加ハルモノト考ヘテ居リ
マス、第三ノ補助ノコトデアリマスガ、是マデハ十五萬圓以內デアリマシタ
ガ、此度ハ豫算ノ範圍內ニ於テ決メルト云フコトニナリマシテ、今御話ノ通
リニ金高ガ揭ゲテアリマセヌ、是ハ農商務ト致シテハ、是マデ農會ノコトニ
付テモ、屢〓建議モアリマスシ、色〓其方ヲ奬勵イタシマスルニ付テハ相
當ナル補助ノ必要ガアルノデアリマスカラシテ、是モ色〓相談ヲ致シマシタ
ガ、大藏省ニ於テ豫算ヲ制定スル上ニ付テ、今玆デ金額ヲ是ダケ殖スト云フ
如キコトハ、一般ノ會計ノ上ニ付テ許サナイト云フコトデアリマシテ、先ヅ
ドウシテモ今マデヨリ殖シテ貰ハナケレバナラヌノデアリマスルカラシテ、
是ハ豫算ガ許スナラバソレヲ相當ナル額ニ殖シテ貰ヒタイ、ソレデ今玆デ
額ヲ定メマスト云フト、遂ニ他日之ヲ殖シ得ルト云フ如キ經濟ノ狀態ニナリ
マスル時ニ、甚ダ不便ヲ感ズルコトガアリマスカラシテ、額ヲ決メズニ豫算
ノ範圍內ト致シタ次第デアリマス、而シテ衆議院ニ於キマシテハ之ヲ約百萬
圓位ナ所ヲ以テ補助ノ額ニシテ貰ヒタイト云フ希望ガアリマシタ、是ハ政府
トシテハ尤ナル要求ト存ジテ居リマス、機會ガ參リマシタナラバ其邊マデハ
追〓進メテ行キタイト云フ考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 玉利君ハモウゴザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=45
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046・玉利喜造
○玉利喜造君 私ハモウ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=46
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047・阪本さん之助
○阪本釤之助君 チヨット發言ヲ御許シヲ願ヒタイ、甚ダ時間ノ御都合ガ惡
クテ恐縮デアリマスガ、極ク簡單ニ申シマス、此度農會法ヲ御設ケニナルコ
トニナリマシタガ、元來此農會ナルモノガドレ程ノ活動ヲ致シテ居リマシ
テ、國家ニ利益ヲ與ヘテ居ルカト云フコトハ、本員ハ聊カ疑ヲ持ツモノデア
リマス、殊ニ是ガ系統的ニナッテ居リマシテ、中央カラ下市町村マデ至ッテ居
ルノデアリマスガ、殊ニ市町村ナドニ一々是非農會ヲ作ルト云フコトハ如何
ナモノデアルカト云フコトハ、常ニ疑ヲ持ッテ居ル者デアリマスガ、付マシ
テハ府縣農會ハ沖繩ヲ除ク外ハ殆ド皆出來テ居ルカト存ジテ居リマスガ、郡
市以下ニナリマスト、出來テ居ナイ所ト出來テ居ル所ト率ガドノ位ニナッテ
居リマスカ、數ヲ承ルト云フコトヨリハ、寧ロ步合ガドウナッテ居ルカト云
フコトヲ一ツ承リタイト思フノデアリマス、各農會ノ利益ノ有無ヲ疑ヒマス
一例ハ、去ヌル卽チ去月ノ二十四日ニ本員ガ此議席ニ於キマシテ小作人對地
主ノ問題ヲ質疑ヲ致シタコトガゴザイマシタガ、之ヲ致シマスルニ先キダチ
マシテ各府縣ノ農會ニ取調ヲ御賴ミシタコトガアルノデアリマスルガ、ソレ
ニ對シテモ如何ニモ平生相當ニ〓究ヲ致シテ居リ相當ノ了解ヲ以テ居ラルル
カト思ハレル囘答ヲ得マシタノハ、甚ダ少數デアリマス、多クハ斯ノ如キコ
トニ就テ餘リ注意シテ居ラレナイモノト見エタノデアリマス、是ハ多ク、農
政ニ屬スルコトデアリマスカラ、或ハ農產上ノ奬勵ト云フコトニハ盡シテ居
ラレルカ知レマセヌガ、ドウモ府縣農會ト云フヤウナモノハドンナコトヲヤッ
テ居ラレルカト云フコトヲ窃ニ疑フノデアリマス、又古イコトデアリマス
ガ、自分ハ地方ニ居リマシテ古イ時分ノコトヲ多少心得テ居リマスガ、其後
ドウ云フモノデアルカト云フコトハ常ニ疑ッテ居リマスノデアリマスガ故ニ、
此法律改正ノ場合ニ於キマシテ、此度ハ第三條ニ於テ事業ノ項目ヲ擧ゲラレ
マシタモノデアリマスカラ、是ハ政府ハ非常ニ御奬勵ニナッテ、今日ノ農會
ヨリモ面目ヲ改メル御確信ガアルヤ否ヤ、此改正法律案ニ付テ、只今農商務
大臣ハ非常ニ箇條ガ殖エタト云フ御說明ニナリマシタガ、此法律案ハ規定ハ
殖エマシタガ、是マデハ農會法ノ附屬ノ勅令ガアリマシテ、其勅令ニ書イテ
アッタコトト今度ノ法律案ト大シタ違ヒハナイノデアリマス、今日マデト事
實ニ於テハ同ジコトデアリマスカラ、假令法律ガ改ッタ所デ今日マデノヤウ
ナ狀況デハ國庫ガ多クノ補助ヲ與ヘル、而モ此度ノ法律ニ依テ市町村稅ト同
ジク强制シテ費用ガ取レルコトニナリマスカラ、斯ノ如キ保護ヲ加ヘテ市町
村ノ末〓マデ設立シテ、ドレダケノ效能ガアルカト云フコトニ付テ、幾ラカ
我〓ノ了解ヲ得ルヤウニ御說明ヲ得ラレマスナラバ質問シテ見タイト存ジマ
スノデアリマス、モウ一ツ附加ヘテ伺ッテ見タイコトハ、郡農會デアリマス
ガ、郡制ト云フモノト直接ノ關係ハアリマセヌ、アリマセヌケレドモ、郡ノ
自治體ガ止ミマシタ今日デハ、ドウモ此農會ナドト云フモノハ行政系統ヨリ
モ、郡ノ自治體ト云フヤウナモノト關係ヲ有ツモノデゴザイマスルガ故ニ、
郡制ガ廢セラレタル後ハ郡農會ト云フモノハ、寧ロ無イ方ガ相當デハナイカ
ト云フコトヲ本員ハ思フノデアリマス、若シ必要ノ場合ニハ組合デ······町村
組合デサセテモ宜シイ、郡農會ト云フモノノ存在ヲ系統的ニ加ヘテ置クト云
フコトガ、法律改正ノ丁度時代デアリマスカラ、無イ方ガ宜クハナイカト云
フコトヲ思フノデアリマスルガ、是ハ當局ハドンナ風ニ御考ニナッテ居ッタノ
デアルカ、此點ヲ一ツ伺ヒタイノデアリマス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=47
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048・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 此農會法ノ必要ナル所以ハ、簡略ニ始メ說明
ノ中ニ申上ゲテ置キマシタガ、ドウモ〓糧問題或ハ又此小作問題、色〓ナル
コトガ起ッテ參リマスルニ付キマシテハ、農業ニ付テ益〓相當ナル機關ヲ設
ケ、又其發達ヲ計ルコトガ必要ナノデアリマス、是マデハ御承知ノ如ク農事
ノコトニ於キマシテハ、重モニ政府ガ總テ指導誘掖ノ道ニ立チマシテ、童
常ニ保護奬勵ヲ致シテ來タノデアリマスガ、追~世ノ中ガ進ンデ參リマスル
ノニ付マシテハ、矢張此政府ニ餘リ手賴ルヨリモ、彼等ガ自治的ニ進ンデ行
クト云フコトニ付テハ、最モ必要ナル時機ニ際會シテ參フタヤウニ思フノデ
アリマス、ソコデアリマスル故ニ、矢張彼等ガソレ〓〓法ノ上ニ付テ、サウ
シテ此中ニ於テ大ニ發達ヲ計ルコトニシテ貰ヒタイ、ソレニ付マシテハ先タ
ツモノハ所謂金デアリマシテ、是マデノ徵收ノ仕方デハ兎角不納者ガ殖エル
ノデアリマス、其不納者モ小農ニ於テドウカト言ッテ較ベテ見マスルト、却
テ上流ニ位スベキ方ノ人ニ其不納ガ段々增シテ來ルヤウナルコトニナッテ居
ル、或ハ地主デハアルガ其處ニ地主ガ住ンデ居ラナイ、所在ヲ異ニシテ居ル
所ノ地主ニ於テドウモ不納勝ニナルヤウナルコトガ多イノデアリマス、其處
デ之ヲ矢張自治團體トシテ奬勵スルノニハ、矢張商人ニ於テ商業會議所、又
昨年モ御協賛ヲ願ヒマシタル水產業ニ於キマシテモ、ソレゾレ强制徵收ノ方
ニ依ッタノデアリマスカラシテ、農業モ此ノ日本ノ重大ナル地位ヲ占メ又幅
ノ廣イ農業ニ付テモ、斯ノ如キコトヲシテ見ル方ガ發達ヲ計ル上ニ付テハ、
餘程必要ナコトデアルト云フ積リデ出シタ所以デアリマス、ソレカラ郡農會
ノコトデアリマスガ、郡制モ廢セラレマシテ、一時此コトニ付テハ尤ノヤク
デアリマスルガ、矢張此農會ヲ盛ニシテ行クト云フノニ付テハ、從前ノ如ク
矢張郡農會ト云フモノガアリ、此上ニ縣農會ヲ拵ヘテ置イタ方ガ、ドウモ種
種ノ點ニ付テ便利ナリト思ヒマシテ、矢張是ハ從前ノ形ニ依リマシテ、此度
ノ法令ニモ制定スルコトニ致シマシタノデアリマス、ソレカラ農會ノ具合ナ
ドノコトニ付マシテハ尙ホ政府委員ヨリ申上ゲルコトニ致シマス
〔政府委員田中隆三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=48
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049・田中隆三
○政府委員(田中隆三君) 只今御尋ノ中ノ農會ノ數ノコトニ付テ御答イタシ
やく、道府縣農會ハ四十六ゴザイマシテ、詰リ沖繩縣一縣ヲ除クノ外ハ總テ
成立ッテ居リマス、ソレカラ郡ハ總テ六百三十六ノ中五百五十七ダケノ農會
ガ出來テ居リマスカラ、マダ成立チマセヌノハ七十九、約總數ノ一割チヨット
餘ニ當ッテ居リマス、ソレカラ市ハ現在八十二ノ總數ノ中五十一出來テ居リ
マス、是ハ御承知ノ通リ市ト云フ關係デ農ノ方ニ緣ガ遠イノデゴザリマスカ
ラ、三十二ト云フノハ總數ノ約四割弱ニナリマス、ソレカラ町村ハ一萬二千
百四十八ノ中、成立ッテ居リマスノハ一萬千四百十デアリマシテ、未ダ成立ッ
テ居ラナイ七百三十八ト云フ數ハ、全體ノ町村數ニ比較シマシテ約六分バカ
リニナリマス、サウ云フ現狀デゴザイマス
〔阪本彰之助君「モウ是デ宜シウゴザイマス」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=49
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050・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ御質問ガナイト認メマスカラ、特別委員ノ氏
名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
農會法案特別委員
侯爵佐佐木行忠君伯爵吉井幸藏君服部-三君
子爵板倉勝憲君仲小路廉君玉利喜造君
男爵坪井九八郞君男爵島津健之助君山田斂君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=50
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051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次囘ノ議事日程ハ本院彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマ
ス、本日ハ是ニテ散會
午後零時十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004503242X02119220225&spkNum=51
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