1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十一年二月十八日(土曜日)午後一時十四分開議
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議事日程 第十三號 大正十一年二月十八日
午後一時開議
第一 (第二號)大正十年度歳入歳出總豫算追加案
第二 露國政變及西比利亞事變の爲損害を被りたる者の救恤に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第四 和賀輕便軌道株式會社所屬軌道經營廢止に對する補償の爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第六 道路法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第七 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第八 六大都市行政監督に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 少年法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 矯正院法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 未成年者飮酒禁止法案(根本正君外四名提出) 第一讀會
第十二 身元保證に關する法律案(上畠益三郎君外二名提出) 第一讀會
第十三 家産法案(上畠益三郎君提出) 第一讀會
第十四 裁判所構成法中改正法律案(大道寺慶男君提出) 第一讀會
第十五 民事訴訟法中改正法律案(大道寺慶男君提出) 第一讀會
第十六 軍備縮少に基因して生すへき失業勞働者の善後に關する建議案(大岡育造君外二十九名提出)
第十七 小學校教員俸給國庫負擔額増加に關する建議案(砂田重政君外二名提出)
第十八 小學校教員俸給國庫負擔額増加に關する建議案(本田恒之君外七名提出)
第十九 小學校教員俸給國庫負擔額増加に關する建議案(守屋松之助君外一名提出)
第二十 市町村教育費國庫負擔額増加に關する建議案(鵜澤總明君外一名提出)
第二十一 決議案(中野正剛君提出)
第二十二 (特別報告第一號)城内郵便局に電信、電話事務開始の請願 (委員長報告)
第二十三 (特別報告第二號)五日町郵便局に電話事務開始の請願 (委員長報告)
第二十四 (特別報告第三號)神邊に福山區裁判所出張所設置の請願 (委員長報告)
第二十五 (特別報告第七號)大田、瀧原間鐵道敷設工事に關する請願外一件 (委員長報告)
第二十六 (特別報告第八號)小松島町、後免町間(阿土海岸線)鐵道敷設速成の請願外四件 (委員長報告)
第二十七 (特別報告第九號)彼杵、武雄間鐵道新設の請願 (委員長報告)
第二十八 (特別報告第十號)酒田町、觀音寺村間輕便鐵道敷設速成の請願 (委員長報告)
第二十九 (特別報告第十一號)元寇殉難將士の祀靈竝史蹟保存の請願 (委員長報告)
第三十 (特別報告第十二號)青年局急設の請願 (委員長報告)
第三十一 (特別報告第十三號)富士山を國立大公園と爲すの請願 (委員長報告)
第三十二 (特別報告第十四號)鴛泊漁港修築の請願 (委員長報告)
第三十三 (特別報告第十六號)鍼術灸術醫師法制定の請願 (委員長報告)
第三十四 (特別報告第十七號)軍人恩給竝扶助料増加の請願外八件 (委員長報告)
第三十五 (特別報告第十八號)大俣村に郵便局設置の請願 (委員長報告)
第三十六 (特別報告第十九號)沼江郵便局に集配事務開始の請願 (委員長報告)
第三十七 (特別報告第二十號)洞戸郵便局に電信、電話架設の請願 (委員長報告)
第三十八 (特別報告第二十一號)宇久島平戸島間海底電線敷設の請願 (委員長報告)
第三十九 (特別報告第二十二號)黒木村に無集配郵便局設置の請願 (委員長報告)
第四十 (特別報告第二十三號)池田村に登記所新設の請願 (委員長報告)
第四十一 (特別報告第二十四號)田名部町に區裁判所設置の請願 (委員長報告)
第四十二 (特別報告第二十五號)羽田村に水澤區裁判所出張所設置の請願 (委員長報告)
第四十三 (特別報告第二十六號)和寒村に名寄區裁判所出張所設置の請願 (委員長報告)
第四十四 (特別報告第三十號)鐵道敷設法の確定竝鐵道既定線の敷設速成の請願 (委員長報告)
第四十五 (特別報告第三十一號)白濱北條間鐵道敷設速成の請願 (委員長報告)
第四十六 (特別報告第三十二號)田島、古町間鐵道敷設の請願 (委員長報告)
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001・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔原田書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
大正九年度豫備金支出ノ件
大正九年度豫備金外ニ於テ豫算
超過及豫算外支出ノ件
大正九年度特別會計豫備金支
出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
大正九年度特別會計豫備金外ニ
於テ豫算超過及豫算外支出ノ件
大正九年度大正三年臨時事件
豫備費支出ノ件
(以上二月十七日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
對支文化事業施設ニ關スル建議案
提出者山本条太郞君一宮房治郞君
岩崎動君熊谷直太君
吉原正隆君瀧正雄君
森恪君
地方裁判所新設ニ關スル建議案
提出者藏内次郞作君毛里保太郞君
崎山克治君三好德松君
吉田磯吉君定行八郞君
古賀三千人君鮎川盛貞君
北海道鐵道速成ニ關スル建議業
提出者木下成太郎君東武君
中西六三郞君黑住成章君
松實喜代太郞君伊藤廣幾君
岡田伊太郞君栗林五朔君
肥料官營ニ關スル建議案
提出者津野田是重君天春文衞君
東武君井上敬之助君
郡町村連絡直通電話特設獎勵ニ關スル建議案
提出者佐久間啓莊君
利根運河國有ニ關スル建議案
提出者本多貞次郞君竹澤太一君
濱口吉兵衞君鈴木隆君
西川嘉門君土屋興君
中山佐市君
(以上二月十六日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
赤坂離宮闖入事件ニ關スル質問主意書
提出者田中萬逸君
(以上二月十七日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載
ス〕
一去十六日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
北海道會法中改正法律案外二件
東武君松實喜代太君岡田伊太郞君
長谷場敦君米譯與三次君伊坂秀五郎君
樋口伊之助君佐野正雄君仲田德三君
崎山克治君矢野丑乙君一柳仲次郞君
小池仁郞君友田文次郞君平出喜三郞君
黒金泰義君小橋藻三衞君山本藤助君
朝鮮醫院及済生院特別會計法中改正法律案外三
件
花岡次郞君高橋辰二君中村喜平君
古林新治君上塚司君中馬興丸君
阿由葉勝作君手島鍬司君近藤達兒君
農會法案
植場平君小鹽八郞右衞門君伊藤廣幾君
河崎〓君天春文衞君多木久米次郞君
中村〓造君八田宗吉君成田榮信君
中倉万次郞君木村〓三郞君市村貞造君
齋藤宇一郞君高田耘平君飯塚春太郎君
山道襄一君土井權大君守屋松之助君
一去十六日六大都市行政監督ニ關スル法律案委員奧
村安太郞君辭任ニ付其ノ補闕トシテ森下龜太郞君
ヲ、治安警察法中改正法律案外三件委員荻田悅造
君辭任ニ付其ノ補闕トシテ南鼎三君ヲ、孰レモ議長
ニ於テ選定セリ
一昨十七日朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正法
律案外三件委員古林新治君高橋辰二君辭任ニ付
其ノ補闕トシテ國重政亮君高橋善五郞君ヲ、孰レモ
議長ニ於テ選定セリ
昨十七日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
北海道會法中改正法律案外二件委員
伊坂秀五郞君
委員長東武君理事平出喜三郞君
山本藤助君
農會法案委員
一八田宗吉君
委員長植場平君理事高田耘平君
(土井權大君
朝鮮醫院及濟生院特別會計法中改正法律案外三
件委員
委員長花岡次郞君理事上塚司君
一昨十七日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如シ
第五部選出懲罰委員鈴木富士彌君(金澤安之助君
補闕)
一今十八日農會法案委員山道襄一君辭任ニ付其ノ
補闕トシテ佐久間啓莊君ヲ、朝鮮事業公債法中改
正法律案外三件委員武內作平君辭任ニ付其ノ補
闕トシテ山道襄一君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=1
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002・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 會議ヲ開キマス、諮問事項ガアリ
マス、議員鈴木梅四郞君海外旅行ニ付、本月二十一日ヨ
リ三月二十六日マデ請暇ノ申出ガアリマス、之ヲ許可スル
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=2
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003・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ許可
スルコトニ決シマシタ、第一部選出決算委員黑金泰義君、
第二部選出決算委員平出喜三郞君、右常任委員辭任ノ
申出ガアリマシタ、之ヲ許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=3
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004・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ許可
スルコトニ決シマシタ、農會法案委員會ヲ本會議中ニ開キ
タキ旨、委員長ヨリ申出ガアリマス、之ヲ許可致シマス-
議事ノ進行ニ付キ森田茂君ヨリ發言ヲ求メラレマシタ、之
ヲ許シマス、森田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=4
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005・植場平
○植場平君 農會法ニ關係ノ委員諸君ハ第三委員室ニ
御集リヲ願ヒマス
〔森田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=5
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006・森田茂
○森田茂君 議事ノ進行ニ關シマシテ、主トシテ議長ノ御
辯明ガ得タイト云フ意味ニ於テ、玆ニ其質疑ヲ致シマスル
次第デアリマス、本月十六日ノ本會議ニ於キマシテ、西川
嘉門君ヲ懲罰ニ附スルノ動議ノ場合ニ於テ、議員春曰俊
文君ガ、頗ル醜穢ナル言辭ヲ弄シタト云フ事ニ付キマシテハ、
旣ニ同君ガ滿場一致ヲ以テ懲罰事犯トシテ委員會ニ付セ
ラレタ事實ニ依リマシテ、最早多クヲ言フノ必要ハナイノデ
アリマス、此際ニ於キマシテ、議長ハ春日君ニ對シマシテ、其
醜穢ナル言辭ノ取消ヲ命ジマシタ事ガ二回ニ及ンダモノデ
アリマス、是ハ議長ノ處置ト致シマシテ、頗ル當然ノ事デア
ルト吾ミハ感心ヲ[致シテ居ルノデアリマス、所ガ春日君ハ此
議長ノ適當ナル命令ニ對シマシテ、二度トモ之ニ抵抗致シ
テ居ルト云フコトモ、是亦事實及速記錄等ニ依リマシテ、誠
ニ明瞭ナル事實デアルノデアリマス、議長ガ取消ヲ命ズルト
云フコトハ、卽チ衆議院規則第百四十條ニ依リマシテ、速
記錄ニ之ヲ記載セザルダケノ效果ヲ生ズルト云フコトハ、是
ハ明カナ事實デアリマス、併ナガラ議長ガ此命令ニ依リマシ
テ、速記錄ニ記載セザルダケノ效果ヲ生ジタト云フ事實ハ、
斯ノ如キ醜穢ナル言辭ヲ弄シタト云フコトヲ、此議場ヨリ
除却スルコトノ出來ナイノハ當然デアリマシテ、是ガ爲ニ汚
サレマシタル議場ノ神聖ナルモノハ、全然滅却セラレザル事
モ是レ多クヲ言フ必要ハナイノデアリマス、卽チ只今モ申シ
マスルガ如ク、速記ニ記載シナイト云フダケノ效果シカ生ゼ
ヌノデアリマス、サレバ此場合ニ於キマシテ、春日君ニ對シマ
シテハ、第一ニ此醜穢ナル言辭ヲ發シタル事實ニ依リ、又第
二ニハ議長ノ命令抗拒ニ對シマシテ、適當ナル處置ヲ執ラ
ナケレバナラヌコトハ當然ナ事デアリマス、詳言致シマスレバ、
春日君ハ醜穢ナル言辭ヲ發シタルコト、及又議長ノ命令ニ
抗拒致シタト云フコトニ付キマシテ、二ツノ玆ニ懲罰事犯ト
モナルベキ事實ヲ產出シテ居ルト云フ事ハ、洵ニ明瞭ナル事
實デアリマス、幸ニ〓瀨一郞君ガ、第一ノ事實ニ付キマシテ
ハ、之ヲ懲罰委員ニ附スルト云フコトノ動議ヲ提出致シマ
シテ、只今申ス如ク與黨ノ諸君、春日君ガ席ヲ置キマスル
所ノ政友會ノ諸君モ、滿場一致ヲ以テ之ニ賛成セザルベカ
ラザルコト程、左樣ニ立派ニ此動議ガ成立致シマシタコトデ
アリマスルガ、併シ吾ヒカラ考ヘテ見マスルト、此場合ニ於キ
マシテ、議長ノ處置ト致シマシテハ、只今申ス通リ第一及第
二ノ所爲ニ對シマシテ、適當ナル處置ヲシナケレバナラヌ、議
長ハ此場合ニ於テ怠慢、或ハ不公平、若クハ故意力過失カ
ニ依リマシテ、其處理ヲ執ラナカッタト云フ非難モ、到底免ル
ルコトハ出來ナイト、云フコトヲ確信スルノデアリマス(拍手)
其當時ニ於キマシテ、我黨ノ小泉又次郞君ハ、此事實ニ關
シテ、議長ニ對シテ警告的質問ヲ發シタト云フコトモ、是亦
速記ニ依ッテ寔ニ明瞭ナル事實デアリマス、然ルニ此事實ニ
對シマシテ、議長ハ取消命令ナルモノハ官報ノ速記ニ取消
ヲ命ズルノデアル、ソレ故ニ議長ノ命令ノ效果ハ、必ズ實現
サルヽコトヽ信ジマス、斯ウ云フコトニ依リマシテ、唯官報カ
ラ是ガ取除カレタナラバ卽チ宜シイ、是ダケノ御滿足ヲ以チ
マシテ、此事件ヲ終局セラルヽヤウニ致シタコトデアリマスガ
是ハ甚ダ本員共ノ敬服ノ出來ザル點デアリマス、少クトモ
此第二ノ命令抗拒ト云フ事實ニ對シマシテハ、議長ハ相當
ナル處置ヲ執ラナケレバナラヌ、國民黨ノ〓瀨君ノ動議ナル
モノハ、是亦速記錄ニ明ニナッテ居リマスガ如ク「ソレハ偖措
キ議員ノ一人ニ對シ、斯ノ如キ亂暴狼藉ナル言ヲ爲ス者ハ
此事實ニ依リマシテ、彼ノ醜穢ナル事實ニ依リマシテ之ヲ
懲罰委員ニ付スベシト云フ動議」ニ限局サレテ居ルコトモ
洵ニ明デアリマス、ソレ故ニ議長ハ只今申ス如ク、二度マデ
モ發シタレ命令ノ行ハレザルコト、卽チ春日君ガ之ヲ抗拒
致シタト云フ事實ニ對シマシテハ、適當ノ處置ヲ執ラナケレ
バナラヌ、然ルニ議長ノ態度ハ、只今申上ゲマシタル百四十
條ノ解釋ヲ以テ滿足致シマシテ、春目君ニ對スル態度ガ甚
ダ寛容デアリシコトハ、寔ニ爭フベカラザル事實デアル、議長
ハ斯ノ如キ二回ニ及ブ所ノ命令抗拒ト云フ事ヲ以テ、之ニ
對シテ法律或ハ規則ノ命ズル所ニ依リマシテ、適當ナル處
置ヲ執ルノ必要ナシ、卽チ斯ノ如キ事實ヲ重大視スル程ノ
必要ノナイモノデアルト云フ御答デアルヤ否ヤ、言換レバー
寧口之ヲ露骨ニ言ヒマスレバ、斯ノ如キ行爲ハ議長ノ平生
ノ御手並カラ見マスナラパ懲罰事犯ニ付スル、卽チ懲罰委
員ニ付セラルヽ所ノ態度ヲ執ルノガ適當ナ事デアラウト思
ヒマスガ、之ヲ一切オヤリニナラナカッタト云フコトハ、是ハド
フ云フ譯デアリマセウカ、此點ヲ第一ニ伺ヒタイ、ソレカラ又
議院法ノ解釋ニ於テ、速記錄ニ之ヲ記載セザルト云フコト
ヲ、議長ハ之ヲ根本的ニ、議場ヨリ此事實ヲ滅却シ去ルコ
トノ出來ルモノ、卽チ發シタル此醜穢ナル言辭其モノガ、取
消サレタト同ジヤウナ意味ニ、御解釋ニナッテ居ルト云フコト
デアルト致シマスレバ、是ハ衆議院規則第百四十條ニ對シ
マスル所ノ誤解デアリハシナイカ、斯ウ云フ事ガ又伴ヒマシ
テ、議長ノ御說明ヲ得ナケレバナラヌノデアリマス、サレバ私
共ハ議長ノ斯ノ如キ態度ニ對シマシテハ、是レ恰モ一昨日申
シマシタ如ク、我黨ニ對シテハ頗ル懲罰權ヲ濫用スル、而シテ
與黨ニ對シテハ、甚ダ其偏頗ナル御處置ヲ執ラレルト、斯ウ
云フ非難ハ此事實ニ依ッテ寔ニ明瞭セラルヽモノデアルト考
ヘル次第デアリマス(拍手)是ハ議場ノ神聖ノ爲ニモ、亦議
長ノ尊嚴ノ爲ニモ、此場合遺憾ナキ御說明ヲ承ルト云フコ
トハ當然デアラウト考へマス、殊ニ此言ヲ爲シマスルノハ、是
レ私ノ唯、一家言ニアラズシテ、本日ノ各新聞等ヲ御覽ニナ
リマシテモ分リマス如ク、是レ議長ノ偏頗ナル處置デアルト
云フコトヲ、何レノ新聞モ言ウテ居ルヤウニ私ハ見テ居ル、
斯ノ如キ理由ニ依リマシテ、此春日君ノ醜穢ナル言辭ヲ發
シタル所ノ事實、及議長ノ命令抗拒ニ對シマスル所ノ事實
ニ對シテ、議長ハ今日ヨリモ尙且ツ適當ナル處置ヲ執ルト
云フ御考ガアルカ否ヤ、及旣往ニ於テ斯ノ如キ寬容振ヲ發
揮サレマシタノハ、法律ノ誤解デアルカ、或ハ他ニ之ヲ重大
視スル程ノ必要ガナイト、斯ウ云フヤウニ御考ニナッタモノデ
アリマスルカ、詳シク御說明ヲ得タイト思フ次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=6
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007・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 森田君ノ質疑ニ一言御答致シマ
ス、議長ハ春日君ノ發言ノ或ル一齣ノ取消ヲ命ジマシタ、
速記ニアル通リ-而シテ春日君ハ私ノ述ベタ事ハ事實デ
アリマスト言ハレマシ夕故ニ、事實ノ有無ヲ問ハズ取消ヲ命
ジマシタ、其後デ春日君ハ取消ハ致シマセヌトカ、應ジマセヌ
トカ云フヤウナ發言ガアッタコトモ、耳ニ致シマシタケレドモ、
應ジマセヌトカ取消ハ致シマセヌト云フコトハ、議長ノ命令
ニ抗拒致シタ形ニナッテ居ルコトモ認メテ居リマス、ケレドモ
退場命令ノ時分ニ退場致シマセヌト言ッテ退場シナイノハ、
明ニ議長ノ命令ヲ行ハレヌノデ、取消命令ハ規則百四十
條ニ依シテ、議長ガ命令致シマシタノハ、速記ニ載セナイト云
フコトニナッテ居リマス、サウスレバ是ハ議長ノ命令ハ行ハレ
タコトニナッテ居ル(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)ノウ〓〓ハアナタ
方ノ御考、議長ハ斯ウ考ヘマシタカラ、此上春日君ヲ追窮
セナカッタノデアリマス、而シテ〓森田君ノ御尋ノ取消ト云
フノハ、速記ニ載セヌト云フ意味ダケヂヤナイカ、發言サレタ
其言葉ヲ總テ發言以前ノ狀態ニシテシマフト云フコトハ出
來ナイノデハナイカ、議長ハ下ウ解釋スルカト云フ御尋ハ、森
田君ノ御考ノ如ク速記ニ載セナイト云フ-發言以前ノ狀
態ニ復スルコトハ議長ノ命令デ行フコトハ出來マセヌ、サウ
御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=7
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008・森田茂
○森田茂君 只今ノ御說明ニ依リマシテハ、益〓私ハ議長
ニ御尋ヲシナケレバナラナイ、而モ此問題ハ將來ニ貽リマス
問題デアッテ、議長ノ御解釋ニ依リマスレバ卽チ取消ヲ命
ズルト云フコトハ、是ハ言フ迄モナク春日君自身ヨリ、只今
ノ言葉ヲ取消シマスル-發言ヲ取消シマスルト云フコト
ニ依シテ、卽チ其事實ハ行爲自體ガ取消サレルト云フコトニ
ナルノデアリマス、所ガ規則百四十條ノ規定ニ依リマスレバ
單ニ之ヲ速記ニ載セナイト云フコトダケノ事實デアリマスノ
デ、此點ニ關シマシテハ、恐ラク與黨ノ諸君ト雖モ、何人ト
雖モ春日君ノ取消サレザル限リハ、春日君ノ爲シタル言辭
ナルモノガ依然トシテ存在ヲ致シテ居ルト云フコトハ、爭ノ
ナイ事實デアルト思ヒマス(拍手)是ハ餘程將來ニモ關係ス
ル事ノデアリマスカラ、私ハ此場合ニ於テ卽席ニ議長ノ何モ
御解釋ヲ求メヌデモ宜イ、議長ノ御解釋ニ依リマスト云フ
ト、取消命令ナルモノハ官報ノ速記ニ取消ヲ命ズルノデアル、
是ハ揭載ヲシナイト云フダケノモノデアル、決シテ議長ガ官
報ヤ速記ニ對シテ取消ヲ命令スベキモノデナイ、又議長ノ
言葉ガ其行爲自身ヲ取消シタト云フ、其效果ヲ生ズルモノ
デナイト云フコトハ明カデアリマス、甚ダ失禮デアリマスルガ、
私ハ是レ以上ノ事ニ付キマシテ、議長ガ御考ノ及バナイト
云フコトヲ甚ダ遺憾ト致シマスルガ、ドウカ議長ハ尙ホ能ク
是等ノ事ニ付キマシテハ、御勘考ノ上デ後刻御出席ニナッタ
時デモ宜シウゴザイマス、又明日デモ明後日デモ宜シイ、斯
ウ云フ重大ナル法律規則ヲ、唯卽座ニサウ云フ御解釋ヲサ
レマシタナラバ、實ニ將來ニ對シマシテ、惡解釋ヲ此名議長
ニ依シテ貽スト云フヤウナ結果ヲ生ズルコトヲ悲シマナケレバ
ナラヌ(拍手)如何デゴザイマスカ、議長ノ公平ナル御解釋ヲ
茲ニ求メ、而シテ以上斯ク解釋ガナルトスレバ、成程自分ノ
行爲ニ付テ少シク足ラナカック所ガアル、若クハ全然行屆カ
ナカッタ所ガアル、斯ク議長ガ御反省ヲ下サイマシタラバ、私
ハ以上敢テ議長ニ對シテ、何故ニ之ヲシナカッタカト云フコ
ト迄、是レ以上ハ申サヌ積リデアリマス、ドウカ私ハ此點ニ關
シマシテ、議長ノ公平ナル御解釋ト、サウシテ又一步進ンダ
ル御辯明ヲ得タイト思フノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=8
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009・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 森田君ハ一昨日執ッタ處置、ソレニ
付テドウ云フ考デアッタカト云フ御尋デゴザイマシタカラ、今
答ヘマシタ、尙ホ議長ハ此點ニ付テ、是マデ考へ及バナイ所
ヲ再考シテ〓究シテ吳レト云フ御注意デアリマスカラ、是ハ
〓究モ致シマス
〔「一昨日ノ處置モ再考スベシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=9
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010・森田茂
○森田茂君(續) 〓究ヲ致シマスト云フコトデアリマスレ
バソレハ此次ノ本會議ナリ、又本日ナリ御答ヲ得ル事ト解
釋シテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=10
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011・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) ソレハ考ヘマシテ、同樣ノ答カモ分
リマセヌ、尙ホ御求デアリマスレバ答ヘマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=11
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012・森田茂
○森田茂君(續) 私ハ議長ガソレ迄考へルト云フコトニナ
リマスルナラバ、政テ多クヲ言ヒマセヌ、ドウカ冷靜ニ一ツ能
タ御考ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=12
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013・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第一大正十年度歲入歳出
總豫算追加案ヲ議題ニ致シマス、委員長ノ報告ヲ許シマス、
田邊熊一君
第(第二號)大正十年度歲入歳出總豫算
追加案
報告書
一(第二號)大正十年度歲入歳出總豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年二月十七日
豫算委員長田邊熊
衆議院議長奧繁三郞殿
〔田邊熊一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=13
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014・田邊熊一
○田邊熊一君 只今上程セラレマシタ、第二號大正十年
度歲入歲出總豫算追加案ハ、極テ簡單ノ案デアリマシテ、
一ツハ內務省所管デ國賓歡迎諸費デアリマス、其金額十八
万七千二百七十三圓、本費ハ英國皇太子殿下ガ御來遊
ニナルニ付キマシテ、我ガ國民ハ赤誠ヲ披瀝致シマシテ、之
ヲ歡迎スルニ費ス費用デアリマス、次ハ外務省所管「ゼノア」
經濟財政會議ニ、我ガ代表者ヲ參列セシムル費用デアリマ
ス、此金額ハ二十万千六百六十圓デアリマス、此二案デア
リマスガ、豫算委員會ニ於キマシテハ、愼重ニ審議ヲ致シマ
シタ、質問ハ僅カデゴザリマシタケレドモ、極テ重大デアリマ
スガ故ニ、一、二御紹介シテ置キタイト存ジマスル、國賓殿下
ガ御來遊ニ付キマシテハ、政府當局ト致シマシテハ、十分ニ警
戒シテ遺算ナキヲ期スルヤウニト云フ高木正年君ノ質問ニ
對シマシテ、內務大臣ハ、最モ注意ヲ致シマシテ、其方法ハ十
分ニ行屆クヤウニ致シテ、遺算ナキヲ期スルト云フ御答辯デ
アリマシタ、「ゼノア」經濟財政會議出席ノ問題ニ付キマシテ
ハ、濱口雄幸君ヨリ大凡二ツノ意味ヲ以テ御質問ガ出タノ
デアリマスノデ、第一ハ「ゼノア」經濟會議ニ亞米利加ガ參
加スルヤ否ヤハ重大ナル關係ガアルガ、亞米利加ハ果シテ
參加スルノデアルカ否ヤト、斯ウ云フ質問ガ第一デアリマシ
タ、外務大臣ノ御答辯ハ、亞米利加ハ未ダ參加スルヤ否ヤ
ハ確定シテ居ラナイ、此御答辯ニ對シマシテ、更ニ濱口君ガ
亞米利加ノ出席スルコトガマダ分ラナイ今日ニ於テ、我國
ガ參加スルコトヲ決定シタノハ、甚ダ早計デハナイカト、斯ウ
云フ質問デアリマス、之ニ對スル政府ノ答辯ハ、亞米利加ノ
參加スルコトヲ希望スルコトハ、勿論何人ニモ後レハ取ラヌ
ノデアルケレドモ、縱シ亞米利加ガ參加シナクトモ、我國ハ此
經濟財政會議ニ出席スルコトガ、凡テノ方面ニ於テ利益ナ
リト信ジテ、出席スルコトヲ決シタノデアル、斯ウ云フ答辯デ
アリマシタ、更ニ濱口君ノ御質問デ、露國代表者ガ之ニ參
加スルヤウニナッタノハドウ云フ譯デアルカ、若シ露國ノ代表
者ト此會議ニ協議ヲスルコトノ結果、卽チ「レニン」政府ヲ承
認スルト同一ノ事ニナリハシナイカ、此質問ニ對シマシテ外
務大臣ノ御答辯ハ、我國ガ重要ナル關係ヲ露國ニ有シテ
居ルガ故ニ、是非露國代表者ノ出ルコトモ當然デアルト思
フシ、又露國代表者ガ出席スル故ヲ以テ、必シモ「レニン」政
府ヲ永認スルト云フ意味デハナイ、或ハ其結果ハ承認スル
ヤウニナルカモ知レヌ、今ヤ「レニン」政府モ共產主義ヲ改メ
掛ッテ來タノデアルカラ、早晩ハ認メルヤウナ場合ニナラヌト
モ限ラヌ斯ウ云フ答辯デアリマシタ、質問ハ斯ノ如クニシテ
終了致シマシテ、武藤金吉君ノ發議ニ依リマシテ、之ヲ分
科會ニ移シテ審査スルト云フコトハ略シマシタケレドモ、愼
重ニ審議致シマシタ結果、討論ニ入ッタノデアリマス、武藤君
ハ直ニ卽決可決說ヲ提議セラレマシタガ、濱口雄幸君ハ之
ニ對シマシテ贊成ハセラレマシタケレドモ、賛成ガ少シク意
味ガ籠ッテ居リマシタカラ、ソレモ申上ゲテ置キマス、米國ノ
參加スルコトガマダ極ラナイ今日ニ於テ、我國ガ參加ノ通牒
ヲ出シタト云フコトハ、甚ダ早計ニ失スルヤウニ思ハレル、併
ナガラ既ニ參加ヲ申送ッタ以上ハ、國際信義上、之ニ向ッテ贊
成スルト云フコトハ不本意デアルケレドモ、賛成スルト云フ
コトデアリマシタ、採決ノ結果滿場一致ヲ以テ通過致シマ
シタ次第デアリマス、右御報告致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=14
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015・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ豫算委員長ノ報告通リニ卽決可決
アランコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=15
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016・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=16
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017・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ本案
ハ豫算委員長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手起ル)-
日程第二、露國政黨及西比利亞事變ノ爲損害ヲ被リタル
者ノ救恤ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-內田
外務大臣
第二露國政變及西比利亞事變ノ爲損害ヲ
被リタル者ノ救恤ニ關スル法律案
(政府提出)第一讀會
露國政變及西比利亞事變ノ爲損害ヲ被リタル者ノ
救恤ニ關スル法律案
第一條露西亞內又ハ露支國境地方ニ在リタル帝國
臣民ニシテ露國政變及西比利亞事變ノ際引揚又ハ
遭難ノ爲損害ヲ被リタルモノニ對シテハ本法ニ依リ救
恤金ヲ交付ス
第二條前條救恤金ノ總額ハ百五十万圓以内トス
第三條救恤金ハ額面金額ニ依リ五分利付國債證劵
ヲ以テ之ヲ交付ス但シ二十五圓未滿ノ金額ハ現金
ヲ以テ之ヲ交付ス
第四條政府ハ前條ノ規定ニ依ル交付ニ必要ナル額ヲ
限度トシ國債證劵ヲ發行スルコトヲ得
第五條救恤金ノ交付ハ之ヲ受ケムトスル者ノ申請ニ
因リ救恤審査會ノ審査ヲ經テ主務大臣之ヲ決定
ス
救恤審査會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條前條第一項ノ申請ハ大正十一年七月三十
一日迄ニ之ヲ爲スヘシ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣伯爵内田康哉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=17
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018・内田康哉
○國務大臣(伯爵内田康哉君) 本案ハ大藏、外務、兩省
ニ關係致シマスル法律案デゴザイマスルガ、便宜上私ヨリ一
應ノ御說明ヲ致シマス、路國政變、殊ニ西比利亞事變ニ際
シマシテ、露西亞國內、又ハ露西亞ト支那トノ國境地方ニ
在留致シマシタル我ガ臣民ニシテ、事變ノ爲ニ引揚ゲ、若ク
ハ其他ノ事情ニ依ッテ、實質上ノ損害ヲ被ッタ者ガ少クアリ
マセヌ、殊ニ尼港事件ノ如キニ於キマシテハ、獨リ財產ノミ
ナラズ、生命ヲ失ヒタル者モ少クナイ次第デゴザイマス、是等
ノ利害關係者ヨリ致シマシテ、其損害ノ救恤ニ對シテ、政
府ニ願出タル者モ多々アリマスル、然ルニ此種ノ損害ニ對
シマシテハ、我ガ政府トシテ之ニ賠償ヲ致シマスル義務ハ固
ヨリ有シテ居ル次第デハアリマセヌ、是等ノ損害ノ其種類ニ
依リマシテ、露國側ノ政府トノ間ニ交涉ヲ開クベキモノモア
リマセウ、然ルニ露國ニ於キマスル政情ハ、目下尙ホ不安定
デアリマシテ、何時其政情ガ安定スルカハ豫見スルコトガ出來
マセヌ、其間被害者若クハ關係者ガ、甚ダ窮乏ノ位置ニ在
リマスルコトハ洵ニ同情ニ堪ヘザル次第デアリマス、故ニ此際
帝國政府ニ。キキマシテハ、一定ノ金額ヲ限ッテ、其範圍內ニ
於テ、被害者若クハ關係者ニ相當ノ救恤ヲ致シテ、因テ以
テ他日彼等ノ露國內若クハ露支國境ニ於テ發展ヲ致シマ
スル地步ノ便ニ供セント致ス次第デアリマス、此救恤金ノ總
額ハ日露戰役當時、個人損害申請者ニ對シマスル救恤ノ
先例ヲ追ヒマシテ、大凡金額百五十万圓以内ト致シマシテ
此爲ニ救恤審査會ヲ設ケテ、詳細嚴密ナル調査ヲ遂ゲテ
各個々ノ場合ニ付テ救恤スベキ程度ノ金額ヲ定メル筈デ
ゴザイマス、以上ノ趣意ニ依ッテ本案ノ提出致シマシタルニ
ヨリ、何卒御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=18
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019・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ニ對シマシテ質疑ノ通告ガア
リマス、之ヲ許シマス、元川五郞君
〔荒川五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=19
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020・荒川五郎
○荒川五郞君 諸君、西比利亞引揚被難民ノ救濟ニ付
キマシテハ昨年來私共政府ニ交涉致シマシテ、彼等身ヲ
以テ纔ニ生命ヲ免レテ居リマスル同情スベキ人こニ對シテ、
一日モ速ニ救濟セラレタイト云フコトヲ警告シ迫ッテ居ッタ
ノデアリマス、然ルニ爰ニ殆ンド滿二年ヲ經タル今日、漸ク
此案ガ出マシタコトハ、洵ニ遲々トシテ手緩ルイト言ハナケ
レバナラヌ、抑、西比利亞ニハ明治四年ヨリ弗〓日本人ガ入
リ込ミマシテ、日露戰爭後ニハ大ニ發展致シタノデアリマス、
彼等勇士ハ母國ヲ離レテ遠ク異域奧地ニ入リ、或ハ荒凉
不毛ノ地ニ進ミマシテ、惡戰苦鬪シテ漸次其基礎ヲ造リ我
ガ國民ノ平和的發展ノ先驅ヲ爲シタ者デアリマス、國家國
民ハ大ニ尊敬ヲ拂ヒ、彼等ノ前途ニハ出來得ル後援ヲシナ
ケレバナラヌノデアリマス、然ルニ一朝出兵致シ、且ツ無謀ノ
駐兵ヲ致シ、ソレガ爲ニ却テ急遽勿忙トシテ是等ヲ引揚ゲ
シメテ、意外ニモ巨大ノ困難不幸ヲ與ヘ、流離〓沛今日ノ
窮狀ニ陷レマシタコトハ、實ニ政府ノ無謀ノ出兵、駐兵ノ罪
デアルノデアリマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)洵ニ一掬同情ノ
淚ニ堪ヘナイ次第デアリマス、政府ハ今ヤ漸ク其罪ヲ悟ッテ、
此救濟案ヲ出スニ至ッタノデアリマスガ、政府ノ失態カラ其
生ジタル費用ヲ國家ガ負ヒ、國民ノ膏血ヲ以テ其罪ヲ塗ラ
ントスルコトハ、洵ニ是レ遺憾ノ至リデハアリマセヌカ、私
昨年遣支議員トシテ哈爾賓ニ參リマスルヤ、到ル處ニ多ク
ノ避難民ガ窮狀ヲ訴ヘル有樣、其事實、實ニ聞キシニ優ル
殘酷慘絕ノ有樣デアルノデアリマス、而シテ其損害高ナドモ
旣ニ政府ニモ調バッテ居ルコトヽ思ヒマスルノニ、本案ニハ只
今外務大臣ノ御說明ノ如ク、僅ニ五十万圓以內ヲ限シテ救
濟スルト云フノデアリマス、而シテ只今ノ御說明ニ依レバ、是
ハ日露戰爭ノ當時ノ引揚ゲ、ソレニ做ウテヤルトノコトブア
ルガ、日露戰爭當時ノ引揚民ト此度ノ西比利亞引揚民ハ
全ク事情ガ違フノデアリマズ、政府ハ如何ニ此金額ノ目安
ヲ出サレタモノデアリマスカ、此中ニハ尼港ノ慘狀、ソレ等ノ救
濟モ籠ッテ居ルト思ヒマスガ、果シテサウデアレバ、露西亞ノ
政情安定ノ上ハ、露西亞ニ對シテ請求スベキモノモ多々ア
ルト思フノデアリマスガ、ソレ等モ此中ニハ含ンデ居ルノデア
リマスカ、全體此引揚ノ仕方ト云フモノハ、恰モ敗戰ノ大軍
ガ潰エ走ルガ如ク、國民ハ殆ド坐ル隙ナク、立ツニ隙ナキ有
樣ヲ以テ引揚ゲタヤウナ有樣デアリマス、諸君一例ヲ擧グレ
バ「ハバロフスク」ノ引揚ゲ-「ハパロフスク」ハ浦湖ヨリ日本
ノ里數デ二百里許リアル所デアリマス、其州ノ首府デ總テノ
機關モ備ッテ、又我國ノ人〓モ中ニ發展致シテ居リマシテ、
商業會議所モ、帝國銀行、露西亞銀行、其他ノ銀行モ數
質商業會議所、日本商工會ト云フヤウナモノモアッテ、非
常ニ發展シテ居ッタノデアリマスガ、西比利亞ノ政情幾分カ
危險ヲ感ズルニ至ッテ、ンレ等商工會等ハ引揚グベキカ、如
何ニスベキカヲ協議シテ居ル所へ、大正七年八月ニ我ガ出
兵ニナッタノデアリマス、出兵ニナルト共ニ、彼等居留民ハ此
所ニ安ンズルヲ得、又政府ニ於テハ新ニ此所ニ領事館ヲ置
キンレカラ朝鮮銀行ノ支店モ開キ、有ユル力ヲ注ガレタモノ
デアリマスカラ、サナギダニ發展シツヽアル此「ハバロフスク」ノ
如キハ、非常ニ盛ニナリツヽアッタノデアリマス、露西亞人モ
非常ニ我ヲ信賴致シテ、「ハバロフスク」ノ露西亞市會ニ於
テハ、我ガ朝鮮銀行ノ支店長、其他日本ノ實業家ヲ聘シテ
特ニ市會ニ列シサセテ、サウシテ「ハバロフスク」ノ實業上ノ
問題ヲ會議ヲシタト云フヤウナ有樣、進ンデハ日本商工會
へ露西亞人民モ加ハラシテ貰ヒタイト云フノデ、日本商工
會ヲ日露商工會トマデシヤウト云フコトニナッタノデアリマス、
然ルニ大正九年ノ三月、遠然トシテ玆ニ撤兵ノ方針ヲ執リ
直ニ是等ノ居留民ニ對シテ引揚ゲセシメラレル、是迄僅カ
數日前マデハ此至レル保護ニ安心シ、露西亞人モ安心シテ
賴シタ其モノガ、大正九年三月二十六日、二十九日此兩日
ニ直ニ引揚ゲサセラレルコトニナリマシテ、我ガ居留民ハ賣
掛代金ノ取集ノドコロデハアリマセヌ、開イタ農園ノ收穫ド
コロデハアリマセヌ、家ヲ疊ミ、店ヲ疊ム遑モアリマセズシテ、
我身ノ廻リスラ之ヲ片付ケルコトガ出來ナイ、有樣デアリマ
シタ、其當時ノ命令ニハ、僅ニ手廻品ハ三個ニ限ル、僅ニ三
個以內ノ手廻品ヲ携ヘテ急遽勿忙歸ラナケレバナラヌコト
ニナッタノデアリマス、幾年幾十年苦心慘憺努力以テ打立
テタル根據ヲ見捨テヽ、彼等ハ憐ニモ此所ヲ引揚ゲルニ至ノ
タノデアリマス、然ルニソレガ三月ノ事デアリマシタノニ、僅ニ
一箇月バカリヲ經テ、四月ノ末ニハ更ニ我軍隊ハ其所ニ駐
兵スルコトニナッタノデアリマス、隨テ「チタ」方面ニ引揚ゲテ
居ル人民サヘモ、其所ニ又歸ッテ來タノデアリマス、サウシテ
愈、彼ノ荒レタル所ニ又入込ンデ居タ、所ガ其九月ニナッテ、
又突如トシテ軍司令官ハ撤兵ヲ宣言致サレ、而シテ僅カナ
日ヲ期シテ、彼等ハ又モヤ追拂ハルヽニ至ッタノデアリマス、
斯ノ如クニ致シテ「ハバロフスク」ノ人民ダケデモ其被ッテ居ル
損害ハ、世帶デ申セバ三百七十七戶、其金額ハ殆ド二百
万ニ近イト稱セラレテ居ルノデアリマス、但シ是ハ「ハバロフ
スク」一箇所デアリマス、其他「チタ」或ハ「ブラゴエシチエンス
ク」、「ストレーチエンスク」「ゼーヤ」黑河、「ウエルフネウヂンス
ク」「イマン」「イルクツク」是等各地方引揭民ノ損害モ中ニ多
額デアリマス、「イルクツク」/如キモ大正八年、是デ危險ハ
生ジマスマイカト、我官憲ノ方針ヲ尋ネタトコロガ、駐在ノ
領事ヨリ、陸軍官憲ト申シ合フタケレドモ、生命財產ハ完全
ニ保護スルト云フ確答ヲ得テ、安心ヲシテ居ル所へ-ソレ
ガ大正八年十二月二十一日デアリマスガ、僅カ數日隔タッタ
二十六日ノ午後五時ニハ、直ニ是カラ引拂ヘト云フ、洵ニ敗
軍ガ潰走スルニモ優ッタ慘酷ナ目ニ遭ウテ居ルノデアリマス、
唯其中ニ於テ只今外務大臣ノ特ニ言ハレタル支那、露西
亞國境ニ於ケル滿洲里地方居留民ガ、其引揚ノ際ニハ割
合ニ官憲ガ深切デアッタト認メラレテ、他ノヤウニ困難不平
ヲ愬フル事情ハ少ナイヤウデアルガ、ソレデスラ之ニ猶豫ヲ與
ヘズシテ、直ニ之ヲ追拂ヒテ歸ラシメ、是等多クノ者ハ今ヤ
多ク哈爾賓ニ集ッテ食フニ食無ク、若ルニ衣無キヤウナ有樣ニ
陷ッテ居ルノデアリマス、是等引揚難民ノ狀況ハ、既ニ昨年
來請願委員會、其他ニモ現レテ居リマスガ、其金額ハ中〓容
易ナラヌ巨額ニ達シテ居ルノデアリマス、是等ハ決シテ日露
戰爭ノ避難民ト同樣ニスベキモノデハナイノデアリマス政府
ガ兵ヲ出シテ安心ヲ與ヘ、兵ヲ以テ追拂ヒ、而シテ彼等ハ多
年苦心經營以テ築キ上ゲタ其根據ヲ失ヒ、斯ル困難ニ陷クタ
ノハ、全ク政府無謀ノ出兵、無謀ノ駐兵ノ其結果ナル罪ニ外
ナラヌノデアリマス(拍手)本案ハ卽チ其政府ノ謝マリ證文ヲ
此法律ヲ以テ出シタモノデアリマス、吾ミニハ斯ル事情ニ對シテ、
政府ガ唯摑ミ算用デ、サウシテ金額ヲ極メテ其實際ヲ調ベ
ナイデ定ムル云フコトハ、洵ニ其事情ニ逆ッタル、實際ニ距リタル
モノト謂ハナケレバナラヌ、政府ガ玆ニ唯百五十万圓ト限ラレ
タル其根據玆ニ是等ハ曩ニ申シタ「ニコライウスク」其他露國政
府ノ責任ニ關スル事ヨモ含ンデ居ルノデアルカ、其等ノコトモ
此際其說明ヲ請ヒマス
〔國務大臣伯爵内田康哉君登壇)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=20
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021・内田康哉
○國務大臣(伯爵內田康哉君) 荒川君ノ御質問ニ答ヘ
マスガ、私ハ今玆ニ出兵ノ當否ヲ論ズベキ場合デナイト思フ、
出兵ノ事柄ニ付テハモウ屢〓本會議ニ於テモ、委員會ニ於
テモ、論ジ盡サレテ居ル、此現內閣ハ出兵後ノ內閣デアリマ
ス、事情ノ許ス限リ速ニ此兵ヲ引揚ゲタイト云フノデ、出來
得ル限リ盡力ヲ致シテ、今日ニ至ッタ次第デアル、奈何セン
5時間
浦方面而政政未ダ安定ヲ告ゲマセヌカラシテ、他ノ方面
ニ於テ二万內外ノ兵ヲ尙ホ駐メナテレバナラヌ次第デアル、
最初七万何千ノ兵ヲ出シダモノヲ、漸次撤退シタ次第デア
リマス、此撤兵ニ伴ウテ起リマスル所ノ我ガ國民ノ引揚、卽
チ本日此救恤ニ關スル法律案ヲ出シマスコトニナック次第
デアリマスガ、是ハ洵ニ已ムヲ得ヌ次第デアル、唯荒川君ハ
何カ政府ガ强制的ニ命令ヲ下シテ引揚ゲシメタト云フコト
ヲ言ハレマスガ、是ハ大變間違フテ居ル、之ニ根據シテ、政府
ハ當然其損害ヲ賠償スル義務ガアルト云フ御論斷ノヤウデ
アリマスガ、是ハ私ハ間違ッテ居ル、事實ニ於テ間違シテ居ル、
政府ハ決シテ退去ヲ命令シダノデアリマセヌ、併シ軍ガ引揚
レバ、其所へ留ッテ居ルト一云フコトハ、甚ダ危險ニ感ジマスカラ
シテ、寧ロ引イタ方ガ宜シイト云フ忠告ヲ與ヘタ、併シ中ニ
自分ノ責任ヲ以テ、自分ノ危險ヲ冒シテ、踏留マル者マデモ
無理ニ引揚グタノデハナイ、之ガ卽チ政府ニ於テ是等ノ損
害ヲ賠償スル義務ガ無イト私ガ申シタ所以デアリマス、洵ニ
引揚ゲザルヲ得ナイヤウニナッタ我國民ニ對シテ同情ニ堪ヘ
ナイ次第デアリマス、併シ是等ニ政府ガ一々賠償スル義務
ハ當然執ルコトガ出來ナイ、卽チ救恤金ノ形ニ於キマシテ、
我ガ財政ノ許ス範圍ニ於テ、出來得ル限リ同情ヲ表シタイ
ト云フ趣旨ニ外ナラヌノデアリマス、ンレデ尙土其救恤ヲ致
シマスル事件ニ付キマシテハ、寧口是ハ私ハ委員會ニ於テ、詳
細ニ御話ヲシタ方ガ宜カラウト思フ、併シ大要ヲ申上ゲマス
レバ、無論尼港ノ分モ此中ニ這入ッテ居リマス、又漁業ニ關
スル分モ這入ッテ居リマス、其他各地方ニ〓在シテ居ル各我
ガ臣民ヨリ願出マシタ件數ノ如キハ、殆ド七百八十一件ニ
達シテ居ルヤウナ譯デアリマス、デ勿論是等ニ對シテ十分ナ
ル救恤ヲ致シタイトハ思ヒマスケレドモ、是ハドウモ思フヤウ
ニイカヌ話デアリマス、ンコデ何カ標準ヲ取ラナケレバナラヌ
ノデアリマスカラシテ、之ヲ日露ノ場合ノ例ニ取ッタ譯デアル、
日露ノ場合ト今日ノ場合トハ、大變事情ガ違ッテ居ルト云
フコトヲ御話デアリマシタケレドモ私ハサウハ見テ居ラナイ、
是モ荒川君ガ何カ今度ノ露國政變、若クハ西比利亞政變
ニ對シテ、我ガ國民ガ引揚ゲタノハ、政府ガ命令シタカラト
云フ意味合カラシテ、其相違ヲ述ベラレタヤウデアリマスケ
レドモ、決シテサウ云フ次第デナイ、先刻私ガ申述べタ通リ
デアリマス、日露ノ際ト、今日ノ場合ト、何等私ハ區別ヲスル
必要ガナイ、唯其例ヲ取リマシタノハ、主ニ我ガ臣民ヨリ願
出デマシタル金額ニ對シテ、凡ソ此位ノ率デアレバ宜カラウ、
其率ガ略〓日露ノ場合ト同ジヤウニシタ次第デアル、尙ホ詳細
ノ事ハ何レ委員會デ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=21
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022・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 高草美代藏君
〔高草美代藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=22
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023・高草美代藏
○高草美代藏君 私共モ本案ヲ審議スル上ニ付キマシテ、
二三ノ質疑ヲ致ンタイト考ヘルノデアリマス、私ノハ成ベ
ク案ニ近寄リマシタ問題ヲ極ク簡單ニ御尋スルノデアリマ
ス、無論申スマデモアリマセヌ、此救恤ト云フ事ト、損害賠
償ト言ヒマスル事ハ異シテ居リマスノデ、只今提案ニナッテ居
リマスル所ノ救恤金ト申シマスルモノハ、無論是ハ私共一
時之ヲ救恤スルト云フ意味ニ解シテ居ルノデアリマス、所ガ
此百五十万圓ノ枚恤金ト申シマスル金額ハ、何ヲ基礎トシ、
何ヲ標準トシテ之ヲ御出シニナッダモノカ第一ニ承リタイノデ
アリマス、ソレカラ其次ニ私共ノ考デハ露國ノ政變ニ依リマ
シテ損害ヲ被リマシク高ト申シマスルモノハ、非常ナ金額ニ
上ッテ居ルト考ヘルノデアリマス、多クノ損害者ノ中デ一例
ヲ擧ゲマシテモ御承知ノ通リ「オコック」海ニ於キマスル所ノ
此三十一ノ漁場ガ、悉ク「パルチザン」ノ爲ニ破壞セラレタト
云フコトハ、皆樣御承知デアラウト思フノデアリマス、是
ハ倉庫若クハ漁具、漁船、其他色〓設備ヲ致シク物ガ悉ク
燒拂ハレ、悉ク之ガ破壞セラレタノデアリマス、故ニ此一兩
年下申シマスルモノハ、漁業ヲ爲スニ殆ド其資產ヲ盡シテモ
出來ヌト云フ現狀デアッタノデアリマス、是等ヲ考ヘテ見マシ
テモ、其損害ノ額ハ殆ド此三十一ノ漁場ノ「バルチザン」ノ
爲ニ燒カレ、破壞セラレタト云フ金高ガ、殆ド七百三十万
圓ノ高ニ上シテ居ルト申ス程デアリマス、斯ウ云フ事カラ考
ヘマスルト、陸ニ於テ亦水產ニ於キマシテモ殆ド幾千万圓ノ
金額ノ損害ヲ確ニ被シタト思フノデアリマス、政府ハ是等ニ
付キマシテ、如何ナル調査ガ出來テ居リマセウカ、モウ旣ニ
餘程ノ年數ヲ經テ居リマスルガ故ニ、綿密ニ御調査ガ出來
テ居ラウト考ヘマスルカラ、此際序ニ是等ノ調査ヲ御說明
ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、而シテ又此損害高ガ分ッテ
居リマスレバ、此損害ノ賠償ト云フコトニ付キマシテ、政府
ハ露西亞ニ向ハレマシテ、交涉ヲ爲スッテ居ラルヽカドウカ、
尤モ先刻ノ說明ヲ永リマスルト、確カリシタ政府ガ出來ナケ
レバムヅカシイト云フヤウナ御話モアリマシタガ、然レドモ御
承知ノ通リニ、大連ニ於キマシテ先日來長ク色ニナ事ヲ此
會議ニ於テ御交涉モ出來テ居ルノデアリマスカラ、矢張此
漁業問題、其他ニ付キマシテモ損害ノ賠償ノ交涉ハ確ニ爲
サルベキ責任ガアリ、又爲サッテ居ラルヽ事ト考ヘマスルガ、サ
ウ致シマスレバ、其交涉ヲ致シテ居ラレマスル經過ヲ、此際
御報告ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、ソレカラ其次ニ今囘
ノ此事件ニ依リマシテハ、御承知ノ通リ軍人ヲ除キマスレバ、
多ク實業者ガ損害ヲ被ッテ居ル者ガ多イノデアリマス、サス
レバ實業者ト申シマスレバ、無論事農商務省ニ關係アル事
項ガ多イノデゴザイマスカラ、外務省ハ農商務省ニ十分ノ交
涉ヲ遂グラシマシテ、此百五十万圓ノ救恤金ヲ御出シニナッ
タカ、ドウカト云フコトヲ承リタイト思フノデアリマス、ソレカ
ラ其次ニ本案ノ第五條ニアリマスル救恤審査會ト云フモノ
ヲ經テ、主務大臣之ヲ決定ストアリマスガ、救恤審査會ト
云ヒマスルモノハ、如何ナル人ヲ以テ組織爲サルノデアルカ、
此事ヲ御尋シダイノデソリマス、ソレカラ若シ救恤審査會ガ
出來マシタラ、此救恤金ノ分配デゴザイマス、是ハ成程曩ニ
モ御話ニナリマシタルヤウニ、前年ノ露國ノ時ノ救恤ノ法ニ
依ッテヤルト云フ御話ガアリマシタガ、私ハ其當時ノ事情ハ
知リマセスガ、今回ノ事ニ付キマシテ御尋シタイト思ヒマス
ノハ、此分配ノ方法ハ、損害高ニ應ジテ之ヲ分配セラルヽノ
デアルカ、又憐ムベキ實情ニ居ル其人ノミニ分配ナサルノデ
アルカ、此事ハ餘程重大ナル關係ガアルト思フノデアリマス、
故ニ其方法如何ヲ御尋スルノデアリマス、以上ノ質問ニ付
キマシテ御答ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=23
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024・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 內田國務大臣
〔國務大臣伯爵内田康哉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=24
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025・内田康哉
○國務大臣(伯爵内田康哉君) 只今ノ高草君ノ御質問
ニ御答致シマスガ、此百五十万圓ヲ限ルト云フ事ニ致シマ
シタノハ、是マデ外務省ノ側ニ分ッテ居リマスル損害高、卽チ
被害者、若クハ關係者ヨリ願出夕額デゴザイマス、ソレト外
務省ノ方ニ於テ凡ン其他ニモ此位ノモノガアラウト云フコ
トモ、算用ニ入レマシテ、先ヅ百五十万圓デ宜カラウト、斯ウ
云フ風ニ極メタ次第デアリマス、ソレハ尙ハ御質問ガアリマ
スカラ、此所デ內容ヲ申上ゲマスガ、其事ヲ申上ゲマスレバ、
百五十万圓ノ出マシタ基礎モ御分リニナルダラウト思フ、ン
レデ申請件數グ、今日マデ外務省ニ來テ居リマスノハ、七百
八十九件デアリマス、其金額ハ邦貨ニ致シマシテ二千五百
九十七万九千二百十圓、ソレカラ英貨デ六万二千九百磅
餘又露貨デハ千九百六十一万餘、斯ウ云フ事ニナッテ居
リマス、是等ヲ總計致シマスレバ、三千万圓内外ニナッテ居
ル次第デアル、ソレデ此中ニハ一般引揚民ノ分ガ、其申請ノ
件數ガ七百六十九件ニナッテ居ル、其金額ハ邦貨ノ分ガ、
千五百万圓餘、英貨ガ六万二千磅餘、露貨ガ千九百万餘
ソレカラ尼港ノ分ニ付キマシテハ、多ク死亡ヲ致シマシタカ
ラシテ、申請シテアル件數バ甚ダ少ナイ、先ヅ六件デゴザイマ
ス、其金額ハ四百六十五万圓餘ニナッテ居ル、ンレカラ漁業
ニ關スル分ガ、是ハ卽チ高草君ノ言ハレマシタ「オコツク」方
面ノ損害モ含マッテ居ルモノト思ハレル、是ガ七百十何万ニ
ナッテ居ル次第デアリマス、ンレデ申請金額ヲ總計致シマス
レバ、斯ノ如ク多額ノ金ニナッテ居ル、果シテ是等ノ要求額
ガ過當ニ積ッテアルカ、ナイカト云フコトハ、嚴重ニ審査シナ
イト分リマセヌ、日露戰爭ノ場合ニ於テモ、多額ノ申請額ニ
ナッテ居ッタ次第デ、之ヲ審査シテ相當ノ額ニ縮メテ、之ニ對
シテ救恤金ヲ出シタ次第デアリマス、卽チ其標準ニ依ッテ今
囘モ百五十万圓ト云フコトニ限シタ次第デアリマス、ソレカ
ラ露國ニ向シテ交涉スル積リデアルカ、只今大連ニ於テ會
議ヲシテ、此會議ニ於テ損害モ交涉シツヽアルガ、其經過ノ
報告ヲ得タト云プコトデアリマスガ、是等ノ損害ニ對シマシ
テハ、追テ露國政府ノ-當然力アル露國政府ガ樹立シタ
ル上デナイト、到底是等ノ損害ヲ賠償シ得ル力ハ私ハ無イ
ト思シテ居リマス、唯事件ニ依リマシテハ、只今ニ於テモ交涉
シテ居ルモノモアリマス、卽チ「オコック」方面ノ事ニ付テハ「メ
ルクロフ」政府ニ對シテ交涉ヲスル積リデ居リマス、御永知
ノ通リ政變ガ度々相次グ地方デアリマスカラ、此交涉モ思
ハシク行カナイ次第デアリマス、其他ノ方面ニ於ケル損害ニ
對シテモ、未ダ對手トスベキ政府ガ樹立シナイト言ノテモ宜
シイ、「チタ」政府ト云フモノモ、未ダ日本ニ於テハ認メテ居
リマセヌ、是亦今般大連ニ於テ會議ヲシタ結果、幸ニ協商
ガ旨ク成立チマスレバ、無論彼等ヲシテ此交涉ニ應ゼシムル
積リデアリマス、今日ニ於テハ未ダ其域マデ達シテ居リマセ
ヌ、ソレカラ西比利亞方面ニ於ケル損害ハ、多ク實業者ノ
損害ニナッテ居ルガ、農商務省ト相談ヲシタカ、是ハ無論農
商務省側トモ十分ニ相談ヲシタ次第デアリマス、尙ホ救恤
審査會ハ如何ナル人ヲ以テ組織スルカト云フ御質問デアリ
マシタガ、是ハ追テ勅令ヲ以テ定メル積リデアリマス、卽チ此
事件ニ關係アル必要ナ人こハ、成ベク網羅シテ審査ヲ正確
ニ致シタイ積リデ居リマス、尙ホ分配ノ事ニ付テ、其分配ハ
申請シタル金額ニ依ルカ、又ハ損害ヲ被シタ實情ニ依ルカト
云フ御質問デアリマシタガ、是ハ雨方共ニ考慮ニ加ヘル積リ
デアリマス、卽チ申請シタ所ノ金額モ無論第一ニ考慮シナ
ケレバナラヌ次第デアリマスガ其實情ニ依シテハ或ハ其方ニ
多ク救恤金モ出サナクチヤナラヌ場合モアルダラウト思ヒマ
ス、デ是等ノ事ハ個々ノ事件ニ對シテ審議ヲシ、割當ヲスル
ヨリ外ナイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=25
-
026・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第三右議案ノ審查ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第三右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選
舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=26
-
027・岩崎勲
○岩崎勳君 委員ノ數ヲ九名トシ議長ニ於テ指名アラン
コトヲ望ミマス
〔〕「賛成ニ賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=27
-
028・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第四、和賀輕便軌
道株式會社所屬軌道經營廢止ニ對スル補償ノ爲公債發
行ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ聞キマス
第四和賀輕便軌道株式會社所屬軌道經營
廢止ニ對スル補償ノ爲公債發行ニ關
スル法律案(政府提出)第一讀曾
和賀輕便軌道株式會社所屬軌道經營廢止ニ對スル
補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案
和賀輕便軌道株式會社所屬黑澤尻仙人間ノ軌道經
營ノ廢止ニ對スル補償ノ爲政府ハ該補償ニ必要ナル額
ヲ限度トシテ公債ヲ發行スルコトヲ得
〔國務大臣元田肇君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=28
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029・元田肇
○國務大臣(元田肇君) 和賀輕便軌道補償ニ關スル法
律案ノ提出ノ理由ヲ開陳致シマス、省線橫川目、黑澤尻、
略シテ横黑東線ト申シマス、此線路ハ和賀輕便軌道ニ全
ク竝行シテ居リマシテ、線路ヲ敷設致シマシタ爲ニ、和賀輕
便鐵道ハ營業ヲ繼續スルコトガ出來マセヌノデ、會社ハ營
業ヲ廢止致シマシタ、仍テ軌道條例第五條ニ依リ、補償ヲ
爲ス爲ニ公債ヲ發行スル必要ヲ生ジマシテ、本案ヲ提出致
シマシタ次第デゴザイマス、何卒御協賛ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=29
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030・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第五、右議案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第五右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選
舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=30
-
031・岩崎勲
○岩崎動君 委員ノ數ヲ九名トシ議長ニ於テ指名アラン
コトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=31
-
032・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第六道路法中改
正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス
第六道路法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
道路法中改正法律案
道路法中左ノ通改正ス
第八條中「五種」ヲ「四種」ニ改メ「三郡道」ヲ削リ第四
號ヲ第三號トシ第五號ヲ第四號トス
第十一條中「數郡市ヲ連結スル幹線」ヲ「數市町村ヲ連
結スル重要ナル幹線」ニ改メ第八號ヲ第九號トシ左ノ一
號ヲ加フ
八樞要ノ港津又ハ鐵道停車場ヨリ之ト密接ノ關
係ヲ有スル國道又ハ府縣道ニ連絡スル路線
第十二條削除
第二十條ニ左ノ一項ヲ加フ
主務大臣必要アリト認ムルトキハ國道ノ新設又ハ改
築ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テ道路管理者ノ權限
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣之ヲ行フ
第三十三條中「國庫ノ負擔トス」ノ下ニ「第二十條第二
項ノ規定ニ依ル國道ノ新設又ハ改築ニ要スル費用ニ付
亦同シ」ヲ加へ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
第二十條第二項ノ規定ニ依ル國道ノ新設又ハ改築
ニ要スル費用ハ命令ノ定ムル所ニ依リ管理者タル行
政廳ノ統轄スル公共團體ヲシテ其ノ一部ヲ負擔セシ
ムルコトヲ得
第四十三條中「第三十三條第一項ノ國道」ヲ「第三十
三條第一項ノ主トシテ軍事ノ目的ヲ有スル國道其ノ他
主務大臣ノ指定スル國道」ニ改ム
第六十條中「及沖繩縣」ヲ削ル
第六十一條中「沖繩縣ニ付テハ郡道ニ關シ」ヲ削ル
附則
本法中第二十條、第三十三條、第四十三條及第六十條
ノ改正規定ノ施行期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
其ノ他ノ規定ハ大正十年法律第六十三條第一條施行
ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ同法附則但書ノ規定ニ依リ別
ニ其ノ施行ノ期日ヲ定ムル府縣ニ付テハ其ノ日ヨリ之ヲ
施行ス
〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=32
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033・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 此改正案ハ極テ簡單デゴ
ザイマスガ、郡制ノ廢止ニ伴ヒマシテ、郡道ノ始末ヲ致サウ
ト云フノガ一ツ、モウ一ツハ國道改良ノ促進ノ上ヨリシテ、
場合ニ依ッテハ政府自ラ直接ニ此國道ノ改修ヲ致シタイ、
其爲ニ玆ニ改正ヲ致ス次第デゴザイマス、郡道ノ始末ニ付
テハ之ヲ準府縣道ト致シテ關係市町村ニ費用ヲ分擔セシ
メテ、將來之ヲ管理維持シヤウカト云フ考モ起シタコトモア
リマシタガ、段々地方ノ意見ヲ聽キ、或ハ道路會議等ニ諮リ
マシタ結果ハ、此案ニアリマスル如ク府縣道若クハ市町村
ト區分ヲ致シテ始末ヲ付ケル方ガ宜シイ、斯ウ云フ考デ此
案ノ如ク致シマシタ、宜シク御審議ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=33
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034・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第七、右議案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧
第七右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選
舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=34
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035・岩崎勲
○岩崎勳君 委員ノ數ハ特ニ十八名トシ議長ニ於テ指
名アランコトヲ望ミマス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=35
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036・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第八、六大都市行
政監督ニ關スル法律案第一讀會ノ續キヲ開キマス、委員
長ノ報告ヲ求メマス、坪田十郞君
第八六大都市行政監督ニ關スル法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一六大都市行政監督ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年二月十七日
六大都市行政監督ニ關スル法律案委員長
坪田十郎
衆議院議長奧繁三郞殿
〔坪田十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=36
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037・坪田十郎
○坪田十郞君 本案ハ昨年本院ヲ通過致シマシタル法
律案デゴザイマス、故ニ格別ノ質問モアリマセヌ、唯主トシマシ
テハ市制第百五十七條ノ二重監督ヲ脫セシムルコトガ委
員全部ノ意見デゴザイマス、此點ニ付キマシテハ政府ト相容
レマセヌ故ニ、玆ニ二ツノ希望條件ヲ委員會ニ於テ附シマ
シタノデゴザイマス、第一ト致シマシテハ「六大都市ニ限リ主
務大臣ノ許可認可ヲ要スル事件ニ關シテハ申請書二通ヲ
作製シ其一通ヲ第一次監督官廳ニ提出スルト同時ニ他ノ
一通ヲ主務大臣ニ提出シ得ル途ヲ開カレンコトヲ望ム」、第
二「政府ハ速ニ都制法ヲ提案セラレンコトヲ望ム」此二箇ノ
希望條件ヲ附シマシテ本案ハ滿場一致可決致シマシテゴ
ザイマス、此段御報告申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=37
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038・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 贊成ノ通告ガアリマス、之ヲ許シマ
ス、太田信治郎君
〔太田信治郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=38
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039・太田信治郎
○太田信治郞君 本員ハ委員長ノ御報告ニナリマシタ通
リ、政府ハ速ニ都制法ヲ提案セラレンコトヲ望ムト云フ希望
條件ヲ附シテ、本案ニ贊成致シマシタ理由ヲ一言申述ベタ
イト思ヒマス、デ本案ハ旣ニ昨年ノ議會ニ於テ、本院ヲ通過
致シテ居リマシテ、此六大都市ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依ツ
テ、府縣知事ノ認可又ハ許可ヲ要セザルコトニナル次第デ
アリマスカラ、市ノ公共事務ノ手續上非常ニ事務ノ進捗ヲ
圖リ、手續ヲ省略スルト云フ利便ガ確ニアルコトヽ信ジマス
併ナガラ此大都市ノ市民ガ年來希望致シテ居リマスル所
ノ、市制ノ第百五十七條ノ所謂二重監督ヲ撤廢シ、内務
大臣ノ直屬タラシムル特別市制ノ目的ニハ副ハナイノデア
リマス、殊ニ東京市ノ如キハ帝都ノ首府、王城ノ地デ、人口
ハ既ニ二百十七万餘ノ人口ヲ有シ、又面積ニ於テ五里四
方ノ面積ヲ有シ、歳計モ一億万圓以上、斯ノ如キ〓大ナル
行政事務ヲ取扱ッテ居ル所ノ都市モ、總テ之ヲ同一ノ法案
ノ下ニ律スルト云フコトハ間違シテ居ルト云フコトハ、今更
私ガ喋々申ス必要ハナイノデアリマス、故ニ此問題ニ付キマ
シテハ、既ニ政府ニ於テモ之ヲ必要ト認メラレ、又貴衆兩院
ニ於テモ屢〓此特別市制ト云フ問題ニ付テハ、愼重審議セ
ラレテ居ルノデアリマスガ、不幸ニシテ未ダ其成案ヲ見ズシ
テ、而シテ其一部分ノ免ニ角進步トシテ、本案ヲ提出セラレ
タノデアリマス、故ニ之ヲ物ニ譬ヘテ申シマスレハ、電燈ノ必
要ヲ感ジテ居ル所へ、丁度行燈ヲ點ケタヤウナモノデアル、
併シ行燈デモ無キニ勝ルト云フ意味ニ於テ、確ニ首肯セラ
ルヽノデゴザイマス、併ナガラ斯ノ如キ法案ヲ以テ滿足致ス
コトハ出來ナイノデアリマス、如何ニシテモ此特別市制ヲ徹
底セシメテ、而シテ二重監督ヲ除イテ、內務大臣ニ之ヲ直
屬セシノテ、サウシテ以テ此大都市ノ經營ヲスルト云フコトガ
現下ノ必要ニ迫ッテ居ルノデアリマス、然ルニ政府ハ其必要
ヲ認メマシテ、旣ニ昨年ノ當議會ニ於テモ、本年ニ於テモ、是
ガ調査ヲ爲シツヽアッテ、調査ノ步ヲ進メテ居ルト云フコトヲ
御言明ハ得テ居リマスケレドモ、今ニ於テ是ガ提案ヲ得ナイ
ノデアリマス、故ニ或ハ調査ニ名ヲ藉リテ、御提案ノ果シテ
誠意ガアルヤ否ヤト云フコトヲ疑フ次第デアリマス、併ナガ
ラ前ニ申上ゲタ如ク、免ニモ角ニモ、一步進シデ利便ヲ得タ
ル案デアリマスカラ、本案ニ賛成ヲ致シマスト同時ニ、前ニ
申上ゲタ如ク、速ニ此特別市制、所謂特別市制ニ對スル何
ト申シマスカ、政府ノ此用語ニ依リマスト、都制案トナッテ居
リマスガ、特別市制案ヲ御提案セラレンコトヲ望ミマシテ、
此希望ヲ附シテ本案ヲ賛成致シマシタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=39
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040・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
御諮リ致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=40
-
041・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=41
-
042・岩崎勲
○岩崎勳君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省
略シテ、委員長報告通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=42
-
043・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認メ
マス、仍テ直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス
六大都市行政監督ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=43
-
044・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ本案
ハ委員長報告通リ可決確定致シマシタ-日程第九、第
十ハ同一委員ニ付託シタ議案デアリマスカラ、一括シテ議
題ニ供スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=44
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045・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、日程第九
少年法案、日程第十矯正院法案ヲ一括シテ、其第一讀會
ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長戶水寬
人君
第九少年法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一少年法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年二月十七日
少年法案委員長
戶水寬人
衆議院議長奧繁三郎殿
第十矯正院法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一矯正院法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年二月十七日
矯正院法案委員長
戶水寛人
衆議院議長奥繁三郞殿
〔戶水寬人君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=45
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046・戸水寛人
○戶水寛人君 少年法案及矯正院法案、此二ツニ付テ
委員會ノ經過及決議ノ報告ヲ致シマス、此兩案トモ屢〓議ヒ
院ニ提出セラレテ居ッタノデアリマシテ、其内容ハ諸君モ既
ニ略、御存知ノ事デアリマスカラ、詳シイコトハ申シマセヌ、唯
本年提出ノモノガ昨年ノト少シク違ッテ居ル點ガアルノデス、
卽チ少年法案ノ第二十八條第二項ニ「十四歳ニ滿タサル
者ハ地方長官ヨリ送致ヲ受ケタル場合ヲ除クノ外少年裁
判所ノ審判ニ付セス」ト書イテアルノデス、ソレデ十四歲未
滿ノ者ハ場合ニ依ッテハ內務省所管感化院ニ收容セラレテ
居ッタガ、十四歲以上ルノ者ハ少年審判所ノ審理ヲ受ケテ、
必要ナ場合ニハ矯正院ニ收容セシムルノデアリマスガ、地方
長官カラ送致ヲ受ケタル場合ニ於テハ、十四歳未滿ノ者ト
雖モ少年審判所ノ審理ヲ受ケルコトニナルノデ、卽ヲ此條
文ハ感化院ト矯正院トノ調停ヲ圖ル爲ニ出來タモノデアル
ノデ、本年ノ案ハ昨年ヨリモ少シク勝クテ居ルト思ヒマス、委
員會ニ於テハ審議ノ末、雨案共全會一致ヲ以テ可決致シ
マシテ、本會ニ於テモ速ニ可決アランコトヲ希望致シマス、
御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=46
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047・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 兩案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
御諮リ致シマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=47
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048・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ御異議無イト
認メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=48
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049・岩崎勲
○岩崎勳君 日程第九及第十ノ兩案ヲ一括シテ直ニ其
第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=49
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050・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス
少年法案(政府提出)第二讀會(確定議)
矯正院法案(政府提出)第二讀會(確定議)
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=50
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051・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 兩案トモ御異議無イト認メマス仍
テ本案ハ委員長報告ノ通リ可決確定致シマス-日程
第十一、未成年者飮酒禁止法案ノ第一讀會ヲ開キマス提
出者根本正君
第十一未成年者飮酒禁止法案(根本正君
外四名提出)第一讀會
未成年者飲酒禁止法案
未成年者飮酒禁止法
第一條未成年者ハ酒類ヲ飮用スルコトヲ得ス
未成年者ニ對シテ親權ヲ行フ者若ハ親權者ニ代リテ
之ヲ監督スル者未成年者ノ飮酒ヲ知リタルトキハ之
ヲ制止スヘシ
營業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販賣又ハ供與スル者
ハ未成年者ノ飮用ニ供スルコトヲ知リテ酒類ヲ販賣
又ハ供與スルコトヲ得ス
第二條未成年者カ其ノ飮用ニ供スル目的ヲ以テ所
有又ハ所持スル酒類及其ノ器具ハ行政ノ處分ヲ以テ
之ヲ沒收シ又ハ廢棄其ノ他ノ必要ナル處置ヲ爲サシ
ムルコトヲ得
第三條第一條第二項、第三項ノ規定ニ違反シタル者
ハ科料ニ處ス
第四條營業者カ未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ
本法ニ依リ之ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ
適用ス但シ其ノ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有
スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ
他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法ニ違反シタル
トキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ處罰ヲ免ルル
コトヲ得ス
明治三十三年法律第五十二號ハ本法ニ依ル犯罪ニ
之ヲ準用ス
附則
本法ハ大正十一年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔根本正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=51
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052・根本正
○根本正君 諸君未成年者飮酒禁止法案ノ理由ヲ申
上ゲマスガ、本案ニ付キマシテハ、諸君ガ御承知ノ通リ過ル
二十三年間御〓究ニナリマシテ、能ク御承知ノ問題デアリ
マスカラシテ、極テ簡單ニ申上ゲテ、此埋由トスル所、又參
考書ハ例ノ通リ議長ノ御許ヲ得テ、速記ニ遺スコトニ致シ
マス、本案ハ明治三十三年ニ提出サレマシテ、其理由トスル
所ハ國民〓育ニ最モ重大ナル所ノ關係アル法案デアリマス、
デ此未成年者禁酒法案ヲ提出スル以前ニ於テ、卽チ明治
三十二年ニ於テ、本員ハ國民〓育國庫補助法案ト云フモ
ノヲ提出シタノデアリマス、是ガ卽チ通過サレマシ夕結果、年
年其當時二百万圓宛國庫ヨリ支出サレ、大正七年以來ニ
ナリマシテハ一千万圓、卽チ今日ニ於キマシテハ、種々ノ
國稅補助ヲ合セマシテ、國庫ヨリ一千二百五十万圓程出
テ居ルノデアリマス、デ明治三十二年ニ於キマシテハ、國民
〓育ノ全體ノ費用ト云フモノガ、僅ニ二千五百万圓デアッ
タノデアリマス、然ルニ今日ハ御永知ノ通リ、殆ド一億七千
万圓ニナリ、斯ノ如ク此國民〓育ノ結果、法律ヲ以テ授業
料卜云フモノヲ廢止シ更ニ租稅ヲ徴收スルコトニナッタノデ
アリマス、故ニ國民〓育ヲシテ國費ヲ以テスルモノモアリ、又
地方稅ヲ以テ其大部分ヲ出スコトデ、ドノ途租稅ヲ以テ〓
育ヲスル所ノ、卽チ立憲政治ニ最モ適フ所ノ〓育法ガ、今
日行ハレテ居ルノデアリマス、シテ見マスルト、此未成年ノ〓
育ヲ地方稅、尙ホ國費、其國費ノ如キハ、是ヨリ益〓二千万、
三千万、五千万圓ト云フヤウニ增加スベキコトハ、既ニ諸君
ノ御認ノ通リデアリマス、必ズヤ軍備縮少ノ結果ハ、道路、鐵
道其他ニ劣ラズ、此〓育ノ方面ニ數千万圓ノ金ヲ國庫ヨ
リ支出サレテ、地方稅ト云フモノヲ減ズルト云フコトハ、是
ハ洵ニ見易キ所ノ事デアリマス、斯ノ如ク我國ニ於キマシテ
モ、歐米先進國ノ通リ〓育ト云フコトヲ國家ガセンケレバナ
ラヌト云フコトガ、輿論トナッテ、是ガ法律ニ極メマシタ以上
ニハ、其子弟ヲシテ最モ有效ナル所ノ國民ト爲サシメルノガ
目的デアリマス、故ニ未成年者タル者ヲシニ先ヅ第一ニ明
治三十二年ニ喫煙禁止法ト云フモノガ出タノデアリマス、
所謂煙草ヲ喫ンデハナラヌト云フ、是ハ直ニ諸君ノ御贊成
ニナッテ、法律トナッテ今日行ハレテ居ル、併ナガラ酒ノ方ニ
至リマシテハ、今日マデ過ル二十三年間、年々歲々提出ス
ルコトニナッテ居リマスケレドモ、衆議院ハ明治四十一年ヨ
リ過ル十五箇年間通過サレテ居ルノデアリマス、尤モ大正
三年大隈內閣ノ時分ニハ否決サレタ、デ斯ノ如キ履歷ヲ
持ッテ居リマズル所ノ法案デアリマシテ、是非此法案ハ通過
致サセタイ、或人ノ論旨ニ依リマスト云フト、道德上ノ問題
デアルカラシテ、法律トシテ定ムベキモノデハナイ、或ハ宗〓ニ
委セテ置クベキモノデアル、斯ウ云フ御議論モアリマス、併シ
是ハ國民〓育ト云フ事ガナクテ、吾ミノ子弟ヲシテ其人ノ
力ニ依ッテ、自分ノ授業料ヲ以テ〓育スル時代デアッタナラ
バ、ソレデ宜シイ、併ナガラ一億七千萬圓ノ巨額ノ金ヲ以テ、
租稅ヲ以テ吾〓ノ子弟ヲ養フ場合ニナリマシタ故ニ、卽チ
法律ヲ以テ此未成年者ヲ取締ルト云フコトハ、當然ノ事デ
アリマス、卽チ亞米利加ニ於キマシテハ、五十年前ヨリ是ガ
行ハレ、又英吉利ニ於キマシテモ、明治二十三年ヨリ行ハレ
テ、既ニ二十五箇年程ニナッテ居ルノデアリマス、是ハ何レノ
國ニ於キマシテモ、昔ハ國民〓育ト云フコトガ無カッタ、卽チ
立憲政治ト云フモノハ無カッタノデアリマス、併ナガラ立憲
政治ノ國、卽チ舉國一致、上下心ヲ一ニスルト云フ場合ニ
於キマシテハ、此〓育ト云フモノハ個人ニ委セテ置ク譯ニイ
カヌ、卽チ國民兵ト云フモノハ、國家ガ强ユル譯デアリマスカ
ラシテ、此國民兵タルベキモノハ、矢張其〓育ヲモ國家ニ於テ
之ヲ世話ヲセンケレバナラヌト云フノデ、歐米ニ於テハ之ヲ
行ッタコトデアリマス、デ此〓育ガ斯ノ如ク進步發展ヲ致シ
マシタ結果、卽チ未成年者ヲ取締ルト云フコトハ、是ハ當然
ノ事デアル、何故當然デアルト云フナラバ、假ニ租稅ヲ納メ
ル人デモ子供ノ無イ御方ガアル、サウスルト隣ノ子弟ヲ養フ、
卽チ〓育ヲシテ居ルト云フヤウナ譯ニナッテ居ルノデアリマス
カラシテ、此子供ノ無イ人ガ、子供ノ有ル人ノ子ヲ今日ハ〓
育シテ居ル譯デアルカラシテ、若シ其子弟ガ落第ヲ爲シ、或
ハ不良少年ニナルト云フヤウナ場合ニハ、決シテ子供ヲ持ッ
テ居ル所ノ父兄ノ不幸バカリデナク、卽チ國家ノ不幸、吾こ
ノ子ノ無イ人ノ不幸ニナルト云フコトニナルノデアリマス、故
ニ何レノ點ヨリ考ヘマシテモ、未成年者飮酒禁止法案ト云
フモノハ、最モ今日世界ノ進運ニ對シテ、順應スベキモノデア
ル、此法律ノ無イノハ、卽チ立憲政治ノ不十分ナル所ノ國デア
リマス、卽チ露西亞ニ於テモ此法ガナカッタ、或ハ支那ニ於テ
モ其通リデアリマスル、我ガ日本帝國ハ列强ノ一ツニ加ハリ
此度ノ軍備縮小ニ於テハ、特ニ其有力ナル世界ノ三大强
國ノ一ツニ加ハッタモノデアリマス、故ニ吾ヽノ子弟ヲシテ
益、國家ノ爲ニ忠勤ナラシメ、大ニ國力ヲ發展セシメ、實業ヲ
盛ニスルノニハ、此法案ヲシテ是非貴衆兩院共ニ通過スルコ
トヲ私ハ切ニ望ム者デアリマス、終ニ臨ンデ一言申上ゲテ置
キタイコトハ、或人ハ斯ウ云フ事ヲ述ベル、此未成年者飮酒
禁止法案モ、此喫煙禁止法ト同ジデ、ドウモ實行ガ出來マ
イト云フヤウナ事ヲ御述ニナル御方ガアルノデアリマス、今
日未成年者喫煙禁止法案ハ、能ク實行サレテ居ルノデアリ
マス、明治三十二年ヨリ大正十一年ノ十二月末迄ニ、警官
ノ取締ヲ受ケ、此煙草ガ未成年者ニ對シテ宜シクナイト言ッ
テ、覺ッタ者ガ、内務省ノ警保局ノ調査ニ依リマスレバ、九十
九万百四十六人アリマス(拍手)若シ此法律ガ無カッタナラ
パ、此過グル二十三年間ニ九十九万百四十六人ト云フ所
ノ子弟ハ、或ハ落第ヲシ、或ハ其結果親不孝トナル者ガアッ
タカモ知レナイノデアル(拍手)此實例ヲ見マシテモ、決シテ
未成年者飮酒禁止法案ガ行ハレナイト云フコトハナイノデ
アリマス、故ニ何法案ト雖モ決シテ完全無缺ニ行ハレル法
ト云フモノハ無イ、何卒諸君ノ御贊成ヲ得テ、本年ハ日本
帝國ノ輿論トシテ通過スルコトヲ特ニ願ヒマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=52
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053・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ニ對シテ提出者ニ質疑ノ通
告ガアリマス、吉良元夫君
〔吉良元夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=53
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054・吉良元夫
○吉良元夫君 只今當壇上ニ於キマシテ、私共ノ最モ尊
敬致シマスル所ノ根本正君ヨリ、此未成年者飮酒禁止法
案ニ於ケル大體ノ御說明ガゴザイマシタ、勿論私ハ此法案
根本精神ニ於テハ何等反對ヲ唱ヘル者デハアリマセヌ、實
ニ未成年者ガ酒ヲ飮ミマシタ爲ニ、身體ヲ害シ、及一生ノ
方向ヲ誤ルガ如キ事ガアリマスト致シマシタナラバ、是ハ由
由シキ國家ノ一大損害デアリマスカラシテ、斯ウ云フ法案ガ
一日モ早ク成立スルコトヲ希望スル者デアリマスケレドモ、
私ハ自分ノ營業卽チ白分ノ職業ガ酒造デゴザイマスカラ
(笑聲)此飮酒禁止法案ト云フモノニ向ッテハ、餘程愼重ニ
考慮ヲ費シタ者デゴザイマス、凡ソ國法ナルモノハ日本帝國
ノ七千万人ガ悉ク之ヲ遵奉シナケレバ、國法トシテノ權威
ハアリマセヌ、若シ立法府ニ於テ之ヲ議決致シマシテモ、其
國法ヲ輕ンジ、若クハ其國法ト云フモノヲ守ラナイ國民ト
云フ者ガアリマシタナラパ、其法律ハ徒法ニ屬シ、實ニ法律
トシテノ權威ヲ失ヒマシテ、國法上一大憂慮スベキ事ニナルノ
デアリマス、デ此酒ヲ飮ンデ宜シイカ飮ンデハ宜シクナイカト
云フコトハ、簡單明瞭デアリマシテ、今日ノ國定〓科書ニ於
テモ、酒ト煙草ハ養生ニ害アリト云フヤウニ〓エテアリマス、
アリマスルガ、今日此本案ハ今日御出シニナッタノデハアリマ
セヌ、根本君ハ帝國議會開會以來、每議會之ヲ御出シニ
ナッテ居ル、其熱心、熱誠實ニ感佩致シテ居リマスルガ、之ヲ
容易ニ通過スルコトガ出來ナカッタノデアル、所ガ近來ニ於
テハ衆議院ニ於テ之ヲ通過シタ實例ヲ見テ居リマス、然ル
ニ此法案ガ貴族院ニ廻ルヤ、貴族院ハ未ダ一囘モ之ヲ通
過シマセヌカラシテ、無論御栽可ガアリマセズ、法律トナッテ出
マセヌノデアリマス、其處ニ就テ、私共ハ餘程是ハ攻究セナ
ケレバナラヌモノデアルト云フコトヲ考ヘタノデアリマス、反
對デハアリマセヌ-反對デハアリマセヌガ、此世界ニ於ケル
澤山ナ宗〓ガアリマスルガ、何レノ宗〓ニ於テモ、何レノ道
德大家ニ於キマシテモ、何レノ哲學者ニ於テモ、酒ハ大ニ飮
ムベシ、酒ハ飮ンデ宜シイト云フヤウナル格言ヲ吐カレタ御
方ハナイヤウニ私ハ思ヒマス、殊ニ世界ニ於テ最モ行ハレテ
居ル所ノ二大宗〓タル佛〓ノ如キモ、梵網經ナドニハ酒器
ヲ人ニ供與致シテ飮マシメ、若クハ自ラ飮ンダ者ハ、五百世
手無カラント云フ風ニ御戒メニナッテ居ル、彼ノ基督〓ニ於
キマシテモ、非常ニ嚴重ニ戒メラレテ居リマス、併ナガラ此基
督〓ニ於テハ、或ル儀式ニ於テ葡萄酒ヲ基督ノ血デアルト
シテ、之ヲ戴ク例ニナッテ居リマス、是ハ決シテ酒ヲ飮ムト云
フ譯デハナイサウデアリマス、サウ云フヤウナコトデアリマシテ
此酒ヲ飮ンデ宜シイト一云フ〓ハ更ニアリマセヌノデアリマス
ルガ、然ルニ此世界萬國、凡ソ文化ノ進ンダ國デモ、又野蠻
ノ國デモ、何レノ國トシテモ「アルコール」飮料ノ絕對ニ無イ
國ハ無イト云フコトモ、是亦明カナ事實デアリマス、其邊ヲ
考ヘテ見マスト云フト、酒ハ無論百毒ノ長デアリマセウ、併
シ又或點ニハ百藥ノ長デアリマセウ、絕對的不都合ナモノ
トハ信ジラレマセヌノデアリマス、併ナガラ少年トシテ之ヲ飮
ムト云フコトハ、甚ダ宜シクナイノデアリマス、所ガ外國ニ於
テハ、英國ノ如キハ五十年前ヨリ既ニ禁酒法案-未成年
者禁酒法案ガ成立シテ居リ、米國ノ如キモ二十五年前ヨリ
アル、又此參考書ニ列擧サレテ居リマスルモノヲ見マスレバ、
何レノ國モ文明國ニハ斯ウ云フ法ガアリマス、而シテ比較的
文化程度ノ進ンデ居ラヌ國ニハ、此提案ガナイノハ甚ダ殘
念デアルト云フヤウナ御話デアリマシタケレドモガ、是ハ私共
大ニ見方ガ違ヒマスノデアリマス、西洋各國ニ參ノテ見マス
ルト云フト、此未成年者ガ酒ヲ飲ムト云フコトノ弊ガ甚シク
アリマスル、殊ニ御承知ノ如ク、西洋ノ酒ハ最モ「アルコール」
分ガ强烈デアリマス、麥酒ハ麥湯見タヤウナモノデアリマシ
テ、餘程「アルコール」分ガ少ウゴザイマスケレドモ、「ウ井スキ
ー」ニシマシテモ、「ベルモット」ニシマシテモ、「プランデー」ニ致シ
マシテモ、中々日本ノ〓酒ノ如キ「アルコール」分デハアリマ
セヌ、僅ニ少量ナル「コップ」一杯飮メバ、殆ド全身ガ麻痺ヲ
覺ユル如ク强イノデアリマス、然ルニ之ヲ少年ガ飮ミマシテ、
其害ヲ受ケタ實例ガ多イノデアリマス、殊ニ佛菌西ノ國ナド
ニ於キマシテハ、宗〓學校ニ於ケル-彼處ハ舊〓ノ國デア
リマスガ、此舊〓國ニモ拘ラズ、禁酒ヲ最モ勵行シテ居ル國
ニ拘ラズ、女學生ガ驚クベキ酒ヲ飮ンデ居ル事實ヲ私ハ實地
目撃致シマシテ、實ニ其社會狀態ノ隱レタル大弊害ヲ認メテ
居リマス、斯フ云フ國ニ於テハ、未成年者ニ於ケル禁酒法ト
云フモノハ極テ必要デアルト信ジマス、然ルニ私ノ信ズル所
ニ依リマスレバ、近時我ガ日本帝國ニ於テ二十歲以下ノ所
謂未成年ナル人々ガ、酒ヲ飮ンデ醉パラッテ甚シキ不法行
爲ヲ爲スヤウナ人ハ、私共多年餘程營業上注意致シテ居
リマスケレドモ、殆ド見當リマセヌノデアリマス、ソレヨリカ、不
良壯年不良老年ノ中ニ酒ニ醉パラッタ人ヲ見受ケルノデア
ル、洵ニ是ハ悲ムベキ次第ト考ヘマスノデアリマス、是ニ於テ
此法案ニ於キマシテ、私パ一ツノ質問ガアルノデアリマス、此
未成年者飮酒禁止法、第一條ノ二項ニ於キマシテ、斯ウ云
フ規定ガアリマス「營業者ニシテ其業態上酒類ヲ販賣又ハ
供與スル者ハ未成年者ノ飮用ニ供スルコトヲ知リテ酒類ヲ
販賣又ハ供與スルコトヲ得ス」洵ニ明カナ條文デアリマスガ
吾ミ酒ノ商賣ヲ致シテ居ル實驗ニ依リマスレバ、日暮レテ
非常ニ勞働ニ從事シマシタル農家カラ、父兄ハ非常ニ一日
ノ勞働ヲ致シテ居ルカラ、今晩晩酌ヲシタイト云フノデ、五
合德利一升德利ヲ持シテ買ヒニ來ル、小サイ未成年者ガア
リマス、然ルニ是ハアナタガ飮ムノデアルカ否ヤト云フコトヲ
一々尋ネヽバナラスト云フコトニチッテ來ルノデアル、而シテ
又自分之ヲ飮ムニアラズト答ヘマセウ、併ナガラ實際ソレヲ
飮ムヤモ圖リ難イノデアリマスカラ、之ニ對シテ營業者ガ盡
ク制裁ヲ受ケルト云フ場合ト云フモノハ、大ニアルト云フコ
トヲ想定致サナケレバナラヌノデアリマス、決ジテ惡意デハア
リマセズシテ、非常ナル國法ヲ犯ス、苟モ法律ヲ犯スト云フ
コトハ、國民トシテ恥ヅベキコトデアルガ、無意識的ニ犯サナ
ケレバナラヌ破目ニ陷ルト云フ憂ガアルノデアリマス、斯ウ云
フコトハドウ云フヤウニ御制裁ヲ御設ケニナレバ、左樣ナ事
ノ無イト云フ御考デアリマスヤ否ヤヲ伺ヒタイノデアリマス、
ソレカラモウ一ツハ此禁酒法ノ末項ニ於テハ「營業者ハ其
ノ代理人戶主家族同居者雇人其他ノ從業者ニシテ其ノ
業務ニ關シ本法ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサル
ノ故ヲ以テ處罰ヲ免ルヽコトヲ得ス」ト云フコトガ書イテア
リマス、是ハ何レノ法律ニ於テモ斯ノ如キ事例ハ多々アリマ
スノデアリマス、營業主自ラガ關知シナイ雇人ガシタノデア
ルカラト言ッテハ、制裁ガ付キマセヌカラ、是ハ已ムヲ得マセヌ
斯ウ云フ制定ヲ致サナケレバナラヌガ、吾とモ餘リ多數ノ人
ヲ雇ウテモ居リマセヌケレドモ、營業期節等ニハ、或ル場合
ニハ四五十人雇ウテ居リマス、之ニ對シテ一々此事ハ申シ
聞カセ致シマスガ、今未成年者ガ酒買ニ來ル事實ハ澤山ア
リマス、其場合知ラズシテ此國法ヲ犯スニ至ッタ時ニ、其雇
人、從業者、悉ク此法ノ制裁ヲ受ケネバナラヌト云フ事ガ出
來ルノデアリマス、斯樣ナ點ニ至リマシテ、甚ダ此法律ヲ執
行スル上ニ付テ、營業者トシテ惧ヲ懷カナケレバナラヌノデ
アリマス、又根本君ハ曰ク此未成年者喫煙、禁ル法案ト云
フモノガ執行サレテ、九十九万人ノ喫煙ヲ止メタ者ガアル、
是ハ洵ニ法律制定ノ效果デアルト云フコトヲ、述ベラレマシ
タ、成程表面上左樣ナコトモゴザイマセウ、併ナガラ此參考
トシテ出サレマシタノヲ詳細ニ見マスルト、此法案ガ制定サ
レテ以來、此法案ニ依リマシテ罰則ハ受ケヌト致シマシテモ
說諭ヲ受ケタ人ノ數ニ致シマシテモ、九十三万人ノ多キニ
及ンデ居ルノデアリマス、實ニ未成年者禁煙法案ノ如キハ、
實際ニ於テハ社會ニ本當ニ行ハレテ居ルト云フコトハ申シ
惡イノデアリマス、ドウモ田舍ノ中學校ノ生徒等ニハ、能ク
窃ニ喫ンデ法網ヲ潜ノテ居ル者ガアルノデアリマス、併ナガラ
煙草ノ點ハ先ヅ宜シト致シマスケレドモ、日本ノ風俗慣習
ニ於テ甚ダ困ルコトガアル、例ヘバ冠婚葬祭ノ如キ、又直ニ
參リマス三月三日ノ雛節句ノ如キ、家庭ニ於キマシテハ從
來ノ慣習ト致シマシテ、白酒ヲ少シヅヽ戴イテ雛樣ノ祭ヲス
ルト云フ所ニ、甚ダ美ナル風俗ガアリマス、是モ絕對ニイケナ
イノデアルカ、或ハ又婚禮ガ行ハレルトキハ、夫婦盃ハ申スニ
及バヌコトデアリマスガ、親子盃ト云フモノガアル、是ヲモ禁
ジナケレバナラヌモノデアリマスカ、其時ハ水盃デ宜イデハナ
イカト云フカ知レマセヌガ、水盃デハ御祝儀ニハナリマセヌト
思ヒマス、其邊ニ付テ甚ダ此法ノ權威ヲ、事實ノ上ニ法律
トシテ行フト云フコトガ洵ニ容易ナラヌ考慮ヲ要スベキコト
デアルト思ヒマス、蓋シ貴族院ガ容易ニ之ヲ通過シナイノモ
其邊ノ考慮デハナカラウカト想像致シテ居ルノデアリマス、
大體ニ少年ニ酒ヲ飮マセルナドト云フコトガ、善イカ惡イカ
ト云フ事ハ議論ハナイ、イケナイ事デアリマスガ、是ハ俄ニ國
法ヲ以テ文明國ノ御仲間入ヲスルヤウナ流行カブレヲ致シ
マセズトモ、私ハ良キ方法ガアリハシナイカ、又之ヲ行ハント
シテ眞ニ法ノ權威ノ無イ國法ヲ制定致シマスノハ、洵ニ日
本帝國ノ爲ニ喜バナイコトニナリハセヌカト思ヒマス、此點
ニ付テ御辯明ヲ請ヒマス
〔根本正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=54
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055・根本正
○根本正君 只今吉良君ヨリ洵ニ御深切ナル御質問ガ
アリマシタ、私ハ審ニ御答ヲ致シテ、吉良君ノ御滿足ヲスル
コトヲ切望スルノデアリマス、吉良君ハ最初ヨリ酒ヲ賣ル者
デアルト云フ其立場ヲ明瞭ニナサッタト云フコトハ、非常ニ
感服スル者デアリマス、此未成年者ノ法律ト一云フモノハ、結
局行レ難イモノデアラウト云フノガ卽チ趣旨デ、其行レ難イ
モノヲ法律トスルノハ宜クナイト云フノガ御結論ノヤウニ拜
聽シマシタ、此法律案ク第一條ノ二項ニハ、ソレガ明瞭ニナッ
テ居リマス、此法案ハ酒ヲ賣ル方ノ人ヲ罰シテ、未成年者ハ
罰シナイト云フ事ニナッテ居リマス、故ニ此酒ヲ賣ル人ガ自
分ノ飮ムモノデアルカ、或ハ父兄ノ飮ムモノデアルカ、一々聽
クコトニシテハ而倒デアル、又間違ヒ易イト云フヤウナコトデ
アリマス、是ハ此法律ニモアル通リ、知リテト云フノデ、其使
ヒノ子供ガ自分デ飮ムノデアルツ、父兄ガ飮ムノデアルカ、御
客サンガ飮ムルノデアルカト云フヤウナコトハ、是ハ吉良君ノ
如キ賢明ナル御方ニハ能ク御分リニナルコトデアル、又數十
人ノ多クノ人ヲ御使ヒニナッテ居ルカラ、其人こノ爲シタル
事ニ付テ、酒屋ノ主人ガ罰セラルヽト云フコトニナルト、是ハ
困ルト云フコトモ一應御尤ノヤウデアリマスガ、常ニ其召使
ノ人ニ能ク法律ノ趣旨ヲ御話ニナッテ置イタナラ、餘リムヅ
カシイ事デモ無イカト思ヒマス、殊ニ吉良君ハ斯樣ナ行レ難
イ法律ヲ出スノハ宜クナイト云フ御意見デアル、併シ多ク法
律ト云フモノハ-決シテ完全ニ行レル法律ト云フモノハ
無イノデアリマス、每日々々泥棒ガアッテ、裁判所ハ非常ニ
忙ガシイコトハ、吉良君モ御承知ノコトデアル、此禁酒ト云
フコトハ〓育ニ最モ關係アルコトハ、先刻申上ゲマシタ通リ
デ、或ハ判明シナイ點モアリマセウガ、是ハ行政官ノ手心ニ
依シテ、能ク處分スルヨリ仕方ガナイノデアル、或ハ博奕ヲス
ル者モ澤山アル、併ナガラ博奕ト云フモノハ取締ハ出來ナイ
カラ勝手ニシロト三ロフナラ、實ニ亂脈ニナル、先刻御質問ノ
中ニ、可ト言ウテ宜イガ賛成ハ出來ナイ、マア一寸伺フト趣
旨ハ結構デアルガ、本案ニハ賛成ガ出來ナイト云フノデ、非
常ニ御心配デアリマスガ、是ハ決シテ御心配ニ及バナイ、此
法律ハ矢張能ク行ハレルト思フ、行ハレナイモノハ仕方ガナ
イ、全體此禁酒ノ事ニ付キマシテハ、世界ノ有力ナル人ガ、今
ヲ去ルコト八十年前、亞米利加ノ「アブラハムリンコルン」ガ
三十歲ノ時分ニ、米國ニ於テハ此禁酒ヲ法律ニシナケレバ
ナラヌト云フコトヲ演說サレタノデアル、又此酒ト云フモノニ
付キマシテ、外國デハ飮マヌガ日本デハ飮ンデモ宜カラウト
云フコトガアルガ、全體酒ト云フモノハサウ良キモノデナク、此
所デ申上ゲレバ憚リマスガ、野蠻ナモノデアル-野蠻人ノ
飮ム物デアル(拍手)日本デ誰ガ一番好ムカト言ヘバ「アイ
ヌ」人デアリマス-北海道ニ居ル所ノ「アイヌ」人デアリマス、
此酒、卽チ燒酎ヲ一升二升貰ノテ、百町歩、二百町歩ノ土
地ヲ取換ヘタト云フ例ガアル、亞米利加デモ其通リ、亞米
利加ノ「インデヤン」ハ燒酎「アルコール」、「ウヰスキー」二壜
貰ッテ、二百町步ヲ取換ヘタト云フ例ガアリマス、是ハ十分
ニ開ケザル幼稚ノ時代、卽チ科學ノ所謂學力ノ不十分ナル
時代、水ト云フ物ハ何ト何ガ混ッテ出來テ居ルト云フコトガ
解ラヌ時デアリマシタ、併シ今日ハ水ト云フ物ハ諸君ノ御
永知ノ通リ「エッチッー、オー」デ出來テ居ル、此「エッチッー、オー」
ノ分ラヌ方ガ反對ナサルノデアラウト思ヒマス、殊ニ吉良君ノ
御話ノ中ニ、勞働者ガ疲レテ來ダ時分ニハ、酒ヲ飮マナイデ
ハ可哀相デアルト云フノガ間違デアル、飮マセレバ可哀相
飮マセレバ其細君ニ對シテ著物ヲ買ッテヤルコトガ出來ナイ
此勞働者ガ酒ヲ飮ミマスレバ、子弟ラ物ヲ買ッテヤルコトガ
出來ヌ譯デアリマス、此勞働者ニ酒ヲ飮マセナイト云フノガ
卽チ此社會政策ノ根本デアルノデアル、是ニ於テ此議論ノ
立テ方ガ全ク間違シテ居ルノデアル(「議長ハドウダ」ト呼フ
者アリ)ソレハ別物ダ、諸君此酒ヲ勞働者ニ飮マセナイト云
フノハ、卽チ此所謂共產主義ナドノ超ラナイコトニナルノデ
アリマス、亞米利加デ酒ヲ禁ズルノハ、全ク勞働者ノ爲ニ勞
働者ニ酒ヲ飮セナイノガ始リノ元デアリマス、勞働者ガ御承
知ノ通リ亞米利加ニ於テ、大〓土曜ノ晩ニ日給ヲ貰フ、土
曜ノ晩ト日曜ニ酒ヲ賣ラセナイノハ五年十年前デアッタノデ
アリマス、若シ勞働者ニ酒ヲ飮マセテ宜シイ、可哀相ダト云
フナラバ、吉良君ノ御子サン、二ツ三ツノ者ニ剃刀ヲ御宛行
ヒナサルノト同ジ事デアリマス、飴ガ嘗メタイト言テ朝カラ
晩マデ飴ヲ嘗メサセルノト同ジ事デアリマス、子供ニ斯ノ如
ク健康ヲ害スル所ノ飴菓子ヲ、朝カラ晩マデ営サセルト同ジ
道理デ、殊ニ勞働者ニ朝カラ晩マデ酒ヲ飮マセルト云フ者
ガ此議場ニ在ルコトハ私ハ日本帝國ノ爲ニ悲ムノデアリマ
ス(拍手)ドウカ諸君、此勞働者コン可哀相テアルカラ酒ヲ
飮マセナイヤウニスル、月給ヲ取ックナラバ「ポケット」ニ入レル
月給ヲ取ッタナラバ銀行ヘ持ッテ行ッテ入レル、サウシテ此子
孫ヲ益、健康ニシテ、家モ立派ニシ、障子モ張替へ、疊モ取
替ヘルヤウニシナケレバナラヌ、若シ此勞働者ニシテ朝カラ
晩マデ可哀相ダトシテ酒ヲ飮マセタラ、成程酒屋サンハ儲ケ
ルカ知ラヌガ、千万人ノ勞働者ハ貧乏ニナッテシマヒマス、其
結果ハ何デアルカト云フト、卽チ共產主義ニナルノデアリマ
ス、是ガ卽チ見解ノ違シテ居ルノデアル、可哀相ダ可哀相ダ
ト言ウテ潰シテシマフ、貧乏ニシテシマフ、ソコヲドウカ吉良
君ハ御〓究ニナリマシテ、此可哀相ノ程度ト云フモノガ、
ウモ私ノ諒解ト、御酒屋サンノ諒解トハ少シ違フト思フ、ド
ウゾ此未成年者ニ禁酒スルト云フコトハ、大人ニナッテモ自
分ヲ支配スルコトノ出來ルヤウナ、知識ヲ持タセタイ爲ニス
ルノデアル、身代限ヲスル所ノ靑年ヲ拵ヘルノデハアリマセヌ
ノデアリマス(「諒解シマシタ」ト呼フ者アリ)其他御質問ノ
事ガ色ヒアリマシタケレドモ、是ハ私ガ大〓此一ノ問ノ事ハ
ソレデ分ルト思ヒマス、第二ノ事モ一ヲ以テ十ヲ知ル吉良君
ノコトデモアリマスカラシテ、々御說明ヲスルニモ及ビマセ
ヌ、所謂方針目的ト云フモノガ違フト云フト、卽チ西へ行ク
ペキ者ガ東へ行ク、東へ行クベキ者ガ西へ行ク、ドウカ諸君
ハ此法案ガ假ニ行ハレナイコトガアルトシテモ、卽チ成立ス
レバ其實ヲ行フト云フコトガ極シテ居ルノデアリマスカラシテ、
彼此レ小ナル所ノ事ハ取ヶテ捨テヽシマッテ、善イ事ヲ取ッテ
以テ、國ノ法律トスルノガ卽チ國家ノ爲ニ忠良ナルモノデア
ル、吾ミハ諸君ノ御子サン、諸君ノ御子孫、日本帝國ノ國
民ト云フ者ヲ立派ニシテ、英吉利ノ國ヨリモ、亞米利加ノ
國ヨリモ尙ホ優シタ、本當ノ列强ノ位置ニ立ツニハ、此禁酒ヲ
以テ此國ヲ先ヅ以テ〓育ヲシ、サウシテ益〓有力ニシナケレ
バナラヌ、若シ禁酒セズシテ〓育ダケデアリマシタナラバ、一
億七千万圓ノ國民〓育ノ費用ト云フモノハ、河ノ中ニ
抛ッテシマフト同ジ事デアリマス、諸君是ヲ以テ此答辯ニ代
ヘマスカラ、御賛成アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=55
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056・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 本案ハ議長指名ヲ以テ、九名ノ委員ニ付
託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=56
-
057・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 鈴木君ノ動議ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第十二、第十三ハ
便宜上一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=57
-
058・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 御異議ナシト認メマス、日程第十
二身元保證ニ關スル法律案、日程第十三家產法案ヲ一
括シテ議題トシマス、其第一讀會ヲ開キマス、上畠益三郞
君
第十二身元保證ニ關スル法律案(上畠益
三郞君外二名提出)第一讀會
身元保證ニ關スル法律案
第一條身元保證契約ハ其ノ成立ノ日ヨリ二年ヲ經
過シタルトキハ身元保證人ニ於テ之ヲ解除スルコトヲ
得
前項ノ場合ニ於テ契約ノ解除ハ六箇月前ノ豫告ヲ
以テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二條身元保證契約成立ノ日ヨリ五年ヲ經過シタ
ルトキハ其ノ契約ハ當然解除セラレタルモノト看做ス
但シ此ノ期間ハ商工業見習者ノ身元保證ニ付テハ
之ヲ十年トス
第三條身元保證契約ノ解除ハ將來ニ向テノミ其ノ
效力ヲ生ス
第四條前三條ノ規定ニ反スル特約ニシテ身元保證
人ニ不利益ナルモノハ之ヲ爲ササリシモノト看做ス
附則
本法ノ規定ハ本法施行前ニ成立シタル身元保證契約
ニ亦之ヲ適用ス但シ第一條第一項及第二條ノ期間ハ
本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第十三家產法案(上畠益三郞君提出)
第一讀會
家產法案
家產法
第一節家產ノ設定
第一條不動產ノ所有者ハ本法ノ規定ニ依リ家産ヲ
設定スルコトヲ得
第二條家產ヲ組成スル不動產ハ質權、抵當權、不動
產ノ先取特權、永小作權、留置權及賃借權ヲ負擔セ
サルモノニシテ且左ノ各項ノ一ニ該當スルモノニ限ル
一設定者カ其ノ所有權ヲ有シ且現住スル家產但
シ設定者カ職業ノ爲又ハ其ノ他ノ事故ニ因リ一
時他ノ地方ニ寄留スル場合ハ本號ノ適用ニ於テ
之ヲ現ニ住居スルモノト看做ス
二設定者カ所有權ヲ有シ且其ノ者又ハ其ノ家族
カ自ラ耕作又ハ管理スル田畑、山林
三前二號ノ不動產ハ同時ニ家產ノ目的ト爲スコト
ヲ得但シ其ノ田畑又ハ山林カ家屋ト同一又ハ
隣接セル市町村內ニ在ルトキニ限ル
第三條家產ヲ設定スル資格ヲ有スル者左ノ如シ
配偶者アル者
二家族アル者
三尊族親又ハ卑族親アル者
四家督相續ニ因リテ戶主ト爲リタル者
第四條親權ヲ行フ父、母又ハ後見人ハ未成年者ノ爲
家產設定ノ申請ヲ爲スコトヲ得
相續財產又ハ遺贈財產ニ付キ家產ヲ設定スヘキ旨ノ
遺言アリタルトキハ遺言執行ノ義務アル者ノ外尙相
續人、受遺者竝相續人、受遺者又ハ遺言者ノ親族及
檢事ヨリ家產設定ノ申請ヲ爲スコトヲ得
第五條一人ニシテ一箇以上ノ家產ヲ設定スルコトヲ
得ス
家產ノ價額ハ其ノ設定當時ニ於テ金五千圓ヲ超過
スルコトヲ得ス
前項ノ價額ニ達スル迄ハ家產追加ノ申請ヲ爲スコト
ヲ得此ノ申請ニ付テハ總テ設定申請ニ關スル手續ヲ
準用ス
第六條家產ヲ設定セムトスル者ハ左記ノ書類ヲ添へ
不動產所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ家產設定ノ申
請ヲ爲スヘシ
-家產タルヘキ不動產ノ登記簿謄本
二從物ノ目錄
三第三條ノ關係ヲ明ニスヘキ戶籍謄本
不動產カ數個ノ區裁判所ノ管轄地ニ跨ルトキハ各栽
判所ヲ併セテ管轄スル直近上級ノ裁判所ハ申請ニ因
リ管轄裁判所ヲ指定ス
第七條不動產ノ所在地カ町村ナルトキハ前條ノ申請
ハ其ノ書類ヲ町村役場ニ提出シテ之ヲ爲ス
町村長ハ遲滯ナク申請ニ關スル各事項ヲ調査シ其ノ
報告ヲ添付シテ一切ノ書類ヲ管轄區裁判所ニ送致
スヘシ
不動產所在地カ數箇ノ町村ニ跨ルトキハ先ツ書類ヲ
受理シタル町村長ハ前項ノ書類ヲ關係アル他ノ町村
役場ニ回付スヘシ
第八條栽判所カ前二條ノ規定ニ依リ申請ヲ受理シタ
ルトキハ其ノ不動產ノ目錄ヲ登記所、市町村役場及
申請人ノ住所ニ一箇月間揭示シ且其ノ揭示シタル曰
ヲ調書ニ依リテ明確ニスヘシ
第二條第一號但書ノ場合ニ於テハ該掲示ハ目的タル
家屋ニ貼付スヘシ
第九條家產設定ニ依ル權利ヲ害セラルル者ハ前條ノ
期間内ニ區裁判所ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第十條異議ニ付テノ裁判ハ申請人及異議申立人ニ
告知スヘシ
申請人又ハ異議申立人ハ自己ノ主張ニ反スル裁判ニ
對シテ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得此ノ抗告ハ執行停止
ノ效力ヲ有ス
第十一條第八條ニ定メタル期間カ異議ナクシテ滿了
シ又ハ異議申立ヲ却下スル裁判カ確定シ及第十二
條ニ據ル登記ナキトキニ限リ且栽判所カ申請ヲ第二
條乃至第七條ノ規定ニ適合スルモノト認メタルトキハ
決定ヲ以テ家產設定ヲ認可スヘシ但シ數箇ノ不動產
又ハ從物中其ノ一部分ヲ不適法ト認メタルトキハ其
ノ殘餘ニ付テノミ此ノ認可ヲ爲スヘシ
前項ノ場合ニ於テ裁判所ハ職權ヲ以テ速ニ家產設定
ノ登記ヲ囑託スヘシ
右囑託アリタルトキハ登記官吏ハ土地又ハ建物登記
簿ノ甲區事項欄ニ該裁判ノ年月日裁判所名及申請
者ヲ記載スヘシ
第十二條第八條ニ定メタル期間ノ滿了ニ至ル迄ハ其
ノ掲示ニ先チテ取得シタル物權及賃借權ニシテ且其
ノ日付ヲ公正證書ニ依リテ證明スルモノニ限リ其ノ
權利ヲ有效ニ登記スルコトヲ得
第十三條前條ニ定メタル條件ヲ具備セサル權利ニシ
テ右揭示ノ初日ヨリ家產設定登記ノ日迄ニ爲シタル
總テノ登記ハ當然無效トス
登記所ニ於テ前項ノ事情カ顯著ナルトキハ登記官吏
ハ職權ヲ以テ其ノ登記申請ヲ却下スヘシ
第十四條本節及以下數節ニ定メタル申請及裁判ニ
關シテハ非訟事件手續法ニ依ル
第二節家產ノ效力
第十五條家產設定登記アリタルトキハ不動產登記
法第一條ニ揭ケタル所有權移轉ノ登記、地上權、永
小作權、地役權、先取特權、質權、抵當權及賃借權
設定ノ登記ヲ爲スコトヲ得ス但シ土地收用法及耕地
整理法ニ依リ權利ニ異動ヲ生スル場合ハ此ノ限ニ在
ラス
第十六條前條但書ノ場合ニ於テハ其ノ異動ヲ生シタ
ル日ヲ以テ其ノ部分ニ限リ家產ハ當然解除セラルルモ
ノトス收用者又ハ耕地整理施行者ハ收用地又ハ整
理施行地ニ關スル登記申請又ハ嘱託ヲ爲スト同時ニ
家產設定登記ノ抹消登記ノ申請又ハ囑託ヲ爲スヘシ
耕地整理ノ場合ニ於テ換地アルトキハ家產ノ效力ハ
當然其ノ換地ノ上ニ存續スルモノトス耕地整理施行
者ハ家產設定登記ヲ換地ニ移轉スル申請ヲ爲スヘシ
第十七條家產設定ノ登記アリタルトキハ此ノ設定ヲ
妨クヘキ一切ノ權利及一般ノ先取權ハ家產ニ對シテ
消滅シ且發生セス但シ民法第三百二十五條第一號
第二號ニ該當スル債權ハ家產廢止後ニ於テ有效ニ
先取特權ノ登記ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其
ノ登記ノ日ニ先取特權ノ原因發生シタルモノト看做
ス
第十八條家產ハ如何ナル債權ニ依ルモ之ヲ差押フル
コトヲ得ス
家產ヨリ生スル果實ハ左記ノ債權ニ依ルトキニ限リ
之ヲ差押フルコトヲ得
-其ノ不動產ニ課セラレタル公租公課
二其ノ不動產ノ爲ニスル火実保險料及蟲害、早水
害其ノ他各種ノ農業保險料
三傭人給料竝日用品及種子、肥料供給代金
四其ノ不動產ノ保存又ハ修繕ノ工事費
第十九條家產設定者ハ如何ナル行爲ニ依ルモ前條
ノ權利ヲ抛棄スルコトヲ得ス
第二十條公用土地收用法ニ依リ家產ヲ組成スル土
地ヲ收用スルトキハ收用者ハ其ノ補償金ヲ國又ハ府
縣ノ出納事務ヲ取扱フ銀行ニ預金スヘシ此ノ預金
ハ預入ノ日ヨリ五年間元金ノ拂戾ヲ爲スコトヲ得ス
又如何ナル債權ニ依ルモ其ノ元利ヲ差押フルコトヲ
得ス但シ所有者カ該預金ヲ他ノ不動產ノ買入代金二
充當スル場合ニ限リ區裁判所ノ認可ヲ得テ自己又ハ
第三者ノ爲該預金ノ支拂ヲ求ムルコトヲ得
第二十一條家產ヲ成ス建物カ滅失シタル場合ニ於テ
保險者カ家產設定ノ事實ヲ知リタルトキハ其ノ保險
金ノ支拂ニ付テモ亦前條ヲ準用ス
第三節家產ノ變更及廢止
第二十二條家產設定者カ死亡シタル後五年ヲ經過
シタルトキハ家產ハ當然廢止セラル但シ其ノ以前ニ於
テ現所有者ハ更ニ設定繼續ノ申請ヲ爲スコトヲ得此
ノ申請ニ付テハ總テ設定ノ手續ヲ準用ス
前項但書ノ場合ニ於テハ第十七條ノ規定ニ依リ先取
特權ノ登記ヲ爲スコトヲ得ル債權者ニ限リ異議申立
ヲ爲スコトヲ得
第二十三條家產繼續中ハ相續人及受遺者ヨリ分割
ノ請求ヲ爲スコトヲ得ス
第二十四條設定者ハ正當ノ事由アルトキハ配偶者
及家族ノ承諾ラ受ケ且尊族親アルトキハ其ノ許可ヲ
受ケテ家產ノ廢止ヲ家產設定ニ付テノ所〓區裁判
所ニ申請スルコトヲ得但シ家族中ニ未成年者アルト
キハ親族會ノ同意ヲ要ス
第二十五條栽判所ハ家產廢止ノ正當ナル事由ナシ
ト認ムルトキハ該申請ヲ却下スヘシ
却下ノ裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
申請ヲ許可スル決定ニ對シテハ親族利害關係人及
檢事ヨリ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得此ノ抗告ハ執行停
止ノ效力ヲ有ス
第二十六條廢止ノ裁判確定シタルトキハ裁判所ハ職
權ヲ以テ其ノ登記ヲ囑託スヘシ
第二十七條家產ヲ組成スル不動產ヲ他ノ不動產ト
交換スルコトハ其ノ新不動產カ舊不動產ト同等以上
ニシテ且家產設定ノ各條件ヲ具備スル場合ニ限リ之
ヲ許ス但シ新不動產ノ價格カ第五條第二項ノ制限
ヲ超ユル場合ト雖舊不動產ノ價格ト同等ナルトキハ
其ノ設定ヲ妨クルコトナシ
前項ノ申請及裁判ニ付テハ家產設定ノ手續ヲ準用ス
附則
家產設定登記ニ付テハ登錄稅法第二條第一號、第二
十一號ノ稅率ヲ適用ス
本法施行ノ時期及其ノ細則ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔上畠益三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=58
-
059・上畠益三郎
○上畠益三郞君 簡單ニ提出ノ趣旨ヲ中上ゲマス、身元
保證法案ハ、從來我國ニ於テ銀行、會社、商店等ガ雇人ヲ
使用スル初メニ於テ、身元保證人ト云フ者ヲ付ケシメテ、雇
人ガ雇主ニ加ヘタル一切ノ損害ニ付テ、代ッテ賠償ノ責任
ヲ負擔セシムル慣習ハ、廣ク我國一般ニ行ハレテ居ルノデア
リマスルガ、此保證人ノ責任タルヤ其金額ニモ制限ガ無ク、
其期間ニモ制限ガゴザイマセヌカラ、一旦保證ヲシタナラバ、
假令幾十年ノ久シキニ及ビマシテモ、何時雇主カラ晴天ノ
霹靂ノ如ク巨額ノ損害賠償ヲ請求セラルヽカ分ラヌト
云フ、至テ危險至極ノ位置ニ陷ラレルノデアリマス、故ニ此
法案ハ、一面ニ於テ身元保證ト云フモノヽ制度ヲ認ムルト
共ニ、是グ賠償責任ノ程度ヲ實際的ノ必要ナ點ニ制限ヲ
致シマシテ、少シモ雇主ニ不安、危險ヲ感ゼシメズシテ、而モ
此契約ノ無限ニ付ケルカラ生ズル所ノ不安ニシテ、サウシテ
殘忍ナル法律上ノ結果ヲ除却セントスルノガ本案ノ日的
デアリマス、本案ハ前期議會ニ於キマシテ、既ニ委員會竝
本會ハ滿場一致ヲ以テ通過シタ次第デアリマスカラ、ドウ
カ宜シク御審議ノ程ヲ願ヒマス、ソレカラ其次ハ家產法
案デアリマス、此家產法案ハ國民ノ最少限度ノ恆產ヲ
保護スル趣意デアッテ、就中小サキ土地ヲ所有シ、自己竝ニ
其家族ガ之ヲ耕作シテ、由テ以テ其質素、サウシテ堅實ナル
所ノ生活ヲ營シデ居ル全國大多數ノ自作農夫ヲ保護シテ、
其土地ト其住宅トヲ保全シテヤルト云フ事ガ主タル目的デ
アリマス、デ此法案ノ結果ト致シマシテハ、第一ニ國ノ基本
タル農夫、而シテ農夫ノ基本タル自作農夫ヲ保護シテ、其
減少ヲ防ギ、隨テ是カラ生ズル所ノ農村廢頽ノ憂フベキ傾
向ヲ防グト云フコトガ出來マス、ソレカラ第一一ニハ、ソレハ我
國ノ家族制度ノ特色夕ル家ト云フモノニ、戶主ノ自由ニモ
ナラナイ、又家族ノ自由ニモナラナイ所ノ一ノ特殊ノ財產ヲ
家ニ附屬セシメテ、之ニ由テ以テ家ト云フモノヲ社會ノ實生
活ニ連絡セシメテ、家ニ經濟上ノ權威ヲ附シテ、之ニ實在
的ノ意義ヲ與ヘテ、由テ以テ國家組織ノ單位ヲ鞏固ニスル
コトガ之ニ依ッテ出來マス、ソレカラ第三ニハ我國ノ長子相
續法カラ、必然生ズル所ノ弊害ト致シマシテ、財產ハ總テ戶
主一人ノ所有ニ係シテ、無資產ナル所ノ家族、戶主ノ父母、
戶主ノ妻子、戶主ノ兄弟、姊妹ト云フ者ガ、悉ク資產ヲ有
シテ居ル、戶主一人ノ無分別、或ハ無思慮ナル放蕩、若クハ
投機ノ犧牲ニナリマシテ、夢ニモ知ラナイ間ニ自己ノ住居シ
テ居ル家屋カラ、追出サレ自己ノ耕作シテ居ル土地ヲ競賣
セラルヽト云フ如キ悲慘ナル、不安極マル所ノ境遇ニ居ルノ
デアル、吾ヒハ法律的職業ニ從事スル結果トシテ、屢、斯ノ
如キ實例ニ遭遇致シマシテ、最モ此愍ムベキ弱者ノ境遇ニ
對シテ、同情ノ淚ヲ濺イダルコトハ其幾何ナルヲ知ラナイデア
リマス、家產法ノ設定ハ卽チ家族ヲ不幸不安ナル境遇カラ
救ヒ出ス所ノ唯一ノ途デアッテ、卽チ此家族ヲシテ、此家產
法制定ノ爲ニ、安心シデ祖先ノ宅ニ住ミ、祖先ノ土地ヲ耕作
シテ行クコトガ出來ル所ノ是ハ唯一ノ方法デアリマス、要ス
ルニ此家產ノ制度ハ、農村社會政策ノ眼目トナラナケレバ
ナラヌモノデアル、我國ニ於テハ新シキ計畫ニ屬スルノデアリ
マスケレドモ、他ノ文明國ニ於テハ嚴然タル立法ノ先例モゴ
ザイマスルシ、殊ニ我國ノ德川幕府、三百年間ノ傳統的ノ
小農保護政策ト符節ヲ合スガ如ク、其精神ニ於テ一致致
シテ居ルノデアリマス、斯ル歷史ト傳統トヲ有スル我國ニテ
コン、此家產法ノ制定ト云フモノハ初テ其眞個ノ目的ヲ達
シテ、美果ヲ收メルコトガ出來ルト思ヒマス、詳細ハ理由書
ニモアリマスガ、尙ホ委員會ニ述ベルコトニ致シマス、何卒諸
君ノ愼重ナル御審議ヲ煩シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=59
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060・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 日程第十二、第十三ノ兩案ヲ一括シテ、
議長指名ヲ以テ九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=60
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061・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 鈴木君ノ動議ニ御異議ハ無イト
認メマス、仍テ此兩案ハ鈴木君動議ノ如ク決シマシタ-
日程第十四、第十五ハ提出者同一デアリマスカラ、一括議
題ト致シマスルニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=61
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062・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ハ無イト認メマス、日程第
十四裁判所構成法中改正法律案、日程第十五民事訴訟
法中改正法律案ヲ一括シテ議題ニ供シ、其第一讀會ヲ開
キマス-提出者大道キ慶男君
第十四裁判所構成法中改正法律案(大道
寺慶男君提出)第一讀會
裁判所構成法中改正法律案
栽判所構成法中左ノ通改正ス
第十四條中「五百圓」ヲ「一千圓」ニ改ム
第十五民事訴訟法中改正法律案(大道寺
慶男君提出)第一讀會
民事訴訟法中改正法律案
民事訴訟法中左ノ通改正ス
第二百七十七條第一項ヲ左ノ如ク改ム
當事者ハ口頭辯論期日前ニ於テモ書面ヲ以テ證據
調ノ申立及ヒ證據決定變更ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ裁判所ハ相手方ニ對シ七日ノ期間
內ニ意見アラハ申立ツヘキコトヲ催告シ其期間滿了
後證據決定ヲ爲シタルトキハ之ヲ當事者ニ送達シ口
頭辯論期日ニ於テ其證據調ヲ爲スコトヲ得
第三百十五條第二項ヲ左ノ如ク改ム
當事者ハ裁判長ノ許可ヲ受ケ證人ニ問ヲ發スルコト
ヲ得
〔大道寺慶男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=62
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063・大道寺慶男
○大道寺慶男君 提案ノ理由ハ極ク簡單ニ說明致シマ
ス、玆ニ改正ヲ求メント致シマスル裁判所構成法ノ第十四
條ハ、區裁判所ノ事物ノ管轄ヲ定メマシタ法案デアリマシ
テ、卽チ現在區栽判所ニ於テ取扱ヒマスル民事訴訟ノ制
限ハ、五百圓ヲ限リトシテ居ル、五百圓ヲ超エザル所ノ金額
又五百圓ヲ超過セザル所ノ物ニ對スル請求ト云フコトニ制
限サレテ居ルノデアリマス、此數額ハ本法ノ最初發布サレマ
シタ、明治二十三年ノ當時ニ於テハ、此制限ガ一百圓デアッ
タノデアル、ノレガ時代ノ進運ニ伴ヒマシテ、明治三十八年
ニハ之ヲ二百圓ニ增加致シマシテ、更ニ大正二年ニ至リマ
シテ、現行法ノ五百圓迄增額サレタノデアリマス、爾來十年
日本ノ經濟狀態ガ著シク膨脹ヲシテ居ルニ拘リマセズ、依
然此制限ハ其儘ニナッテ居リマス結果、區裁判所ノ事件取
扱数ガ年々減少致シマシテ、之ニ反シテ地方裁判所ノ事件
ガ漸次增加スル傾キヲ持ッテ居ルノデアリマス、現ニ大正四
年以後ノ區裁判所ノ取扱件數ノ統計ヲ見マスルト、每年
一割若クハ二割ノ範圍ニ於キマシテ、受理事件數ガ減リツ
ツアルノデアル、是ト反比例ヲ致シマシテ、地方裁判所ノ事
件ガ漸次增加シツヽアルノデアリマス、斯ノ如クニシテ此儘
ニシテ置キマスルト、區裁判所ノ事件ガ自然々々ニ尠クナッ
テシマッテ、各地方民ガ區裁判所ニヤルベキ事件ヲ、悉ク地
方裁判所ニ持ッテ往カナケレバナラヌト云フヤウナ傾キヲ生
ジテ、非常ニ地方民ノ之ガ爲ニ被ムル所ノ不便ハ尠クナイ
ノデアル、卽チ此法條ヲ改正致シマシテ、之ヲ一千圓迄增
額シテ、此間ノ緩和ヲ圖ラントスルノガ、本改正案ヲ提出致
シマシタ理由デアリマス、尙ホモウ一ツノ提案ニナッテ居リマ
スル民事訴訟法ノ改正ノ方ハ、我ガ民事訴訟ノ審理ガ現
在非常ニ長引クト云フ非難ノアリマスルコトハ、朝野法曹
ノナミナラズ、國民一般ノ認メテ居ル所ノ今日ノ有樣デアリ
マス、此訴訟ノ遲レマスル理由ニ付テハ色ミノ理由ノアルコ
トハ勿論デアリマス、總テノ證據決定ハ證人ヲ申請致シマ
シテ、ソレヲ採用スルトカ、或ハ檢證、鑑定ノ申請ヲシテ、之
ヲ採用サレルト云フヤウナ證據決定トカ、若クハ一旦決定
シマシタ證據決定ノ變更ト云フヤウナ手續ハ、現在ニ於テ
ハ悉ク口頭辯論ニ於テ辯論ヲ開イテ、其上デナケレバ出來
ナイコトニ相成っテ居ルノデアリマス、ソレデアリマスルガ爲ニ
殆ド無用ノ形式的ノ辯論ヲ開カナケレバ訴訟ガ進行シテ
往ケナイコトニナッテ居ルノデアリマス、ソレデク)ヲ改正致シ
マシテ、口頭辯論期日以前ニ於テモ、證據申請ガアルナラパ
之ヲ必要ナリト認メタ場合ニ於テハ、裁判所ガ此決定ナリ、
若クハ變更ヲ爲シ得ルコトニ改メルト云フノガ、此改正ノ趣
意ノ一點デアリマス、尙ホモウ一點ハ、從來證人調ニ際シマ
シテ、當事者訴訟關係人ハ證人ニ發問セントスル場合ニ於
テハ、裁判長ヲ通ジテ問ヲ發シテ居ルコトニナ,テ居ルノデア
ル、ソレデアルガ爲ニ何時デモ發問ノ趣旨ガ證人ニ徹底シナイ
憾ガアルノデアリマス、此徹底シナイ結果ト致シマシテ、登
書ノ眞相ヲ得ルコトガ出來ナイコトニ相成ルノデアル、之ヲ
改メマシテ直接ニ審問致シ得ルコトニシタイト思フノデアリ
マス、是ガ卽チ第二ノ改正デアリマス、兩案共吾と法曹ハ
勿論、世人一般ノ訴訟關係者ノ利益ニ影響スル重要ナル
改正ト思慮致シマスノデアリマス、何卒一同ノ御賛同アラ
ムコトヲ切望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=63
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064・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 日程第十四、十五兩案ヲ一括シ、日程第
十二、卽チ上畠益三郞君外二名提出身元保證ニ關スル法
律案外一件ノ委員ニ併セテ付託セラレムコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=64
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065・奧繁三郎
○議長(奥繁三郎君) 鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第十六、軍備縮
少ニ基因シテ生ズベキ失業勞働者ノ善後ニ關スル建議案
ヲ議題ト致シマス、井上角五郞君
第十二軍備縮少ニ基因シテ生スヘキ失業
勞働者ノ善後ニ關スル建議案(大
岡育造君外二十九名提出)
軍備縮少ニ基因シテ生スヘキ失業勞働者ノ善後ニ關
スル建議案
軍備縮少ニ基因シテ生スヘキ失業勞働者ノ善後ニ
關スル建議
政府ハ軍備縮少ニ基因シテ生スヘキ失業勞働者ニ對ス
ルノ善後ノ措置ニ付適當ノ方法ヲ講セラレムコトヲ望ム
右決議ス
〔井上角五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=65
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066・井上角五郎
○井上角五郞君 本建議案ハ極テ文意ガ簡單デゴザイマ
スカラ、一應此處デ朗讀致シマス「政府ハ軍備縮少ニ基因
シテ生スヘキ失業勞働者ニ對スル善後ノ措置ニ付適當ノ
方法ヲ講セラレムコトヲ望ム」今回華府會議ニ於キマシテ、
卽チ海軍軍備縮少ヲ當ニ決行セントスルノハ、要スルニ世
界平和ヲ確保スル爲デアッテ、國際各國ノ希望ニ出デタモノ
デアリマス、我ガ國ガ此大業ヲ實現スルニ當リマシテ、卽チ
大ニ努力スベキハ實ニ我國ガ世界平和ニ貢獻スル所以デ
アルノデアッテ、其實現ニ努メナケレバナラヌト云フコトハ、多
クノ言辭ヲ要シマセヌ、然ルニ一面ニ於キマシテハ、從來國
防充實ノ事ニ貢獻シテ居ツタ所ノ幾多ノ勞働者ガ、爲ニ失
業スルニ至ルヲ免レナイノデアリマス、是等ノ人ミニ先ヅ生
活ノ安定ヲ得セシムルト云フコトハ、實ニ刻下ノ急務ト言ハ
ネバナラヌノデアリマシテ、吾ミハ海軍軍備ノ縮少ヲ完全ニ
實現ヲシテ、世界ノ平和ニ貢獻スルト同時ニ、爲ニ犧牲ト
ナッタ人ミヲシテ能ク生活ノ安定ヲ得セシムルト云フコトヲ、
茲ニ實行シタイト云フノガ、此建議案ヲ提出シタ所以デア
リマシテ、政府ハ速ニ善後ノ對策ヲ樹テヽ萬遣憾ナキ實行
ヲ努メラレタイト希望スル所以デアリマス、大體ノ趣意ヲ茲
ニ說明シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=66
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067・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 質疑ノ通告ガアリマス、許シマス、
佐々木千秀君
〔佐々木千秀君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=67
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068・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 賛成ノ演說ノ通告ダサウデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=68
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069・佐々木千秀
○佐々木千秀君 只今議題ト相成ッテ居リマスル海軍ノ
軍備縮少ニ依シテ生ズル失業勞働者ニ對シテ、救濟ノ途ヲ
講ズルト云フ事ハ、今更申上ゲル迄モナク、之ヲ道義上ノ點
カラ申シマシテモ、更ニ又政治上ノ意味カラ之ヲ〓究致シ
テ見マシテモ、最モ適切デアリ、更ニ又最モ當然ノ事デアル
ト云フ事ハ、只今井上氏ニ依ッテ言ハレタ通リデゴザリマス、
殊ニ又御承知ノ如ク現代ニ於キマシデ、文化ノ發達ト共ニ
人類共存ノ大精神ト云フモノガ盛ニ主張セラレテ居ルノデ
アル、此時代ニ於テ、政府ガ國家ノ政策ヲ變更シタルガ爲ニ、
由テ以テ起ル所ノ失業者ニ救濟ノ途ヲ立ツルト云フコトハ、
國家當然ノ責務デアラネバナラヌト信ズルノデアリマス(拍
手)然ルニ曩ニ總理大臣ガ施政方針ノ演說トシテ爲サレタ
ル所ノ其演說ニ於キマシテ、軍備縮少ニ依ッテ生ズル所ノ此
財源ハ、治水〓育費ニ充ツルト云フ事ヲ述ベラレテ、軍備縮
少ニ由ッテ起ル所ノ失業者ニ對シテ要スル所ノ經費ニ充ツル
ト云フコトニ、一言モ論及セラレナカッタノデアリマス、之ガ爲
ニサナキダニ彼等關係ノ勞働者ト云フモノハ、生活ノ不安ト
云フ事ニ及ンデ大恐慌ヲ來シテ居ッタノデアリマス、誠ニ當
局大臣ト致シマシテ、當然彼等ニ向ッテ救濟ノ途ヲ講ズベキ
モノデアルトスルナラバ、一日モ早ク其意ノ在ル所ヲ天下ニ
聲言セラルヽト云フ事ガ、彼等ヲシテ安定セシムル所ノ途デ
アルト信ズルノデアリマス、此點ニ付テハ甚ダ遺憾トスルノデ
アリマス、斯樣ナ事情デゴザイマスルガ故ニ、我ガ憲政會ハ
昨年ノ末ニ於キマスル大會ニ依シテ決議セラレタル所ノ政
策ノ一項ニ軍備縮少ニ依ッテ生ズル所ノ財源ハ、先以テ之
ヲ軍縮ニ伴フ必要ナル經費ニ充ツト云フコトヲ明記致シテ
廣ク天下ニ之ヲ公示致シタノデアル、此趣旨ニ於キマシテ
本員ハ之ヲ決議案ト致シテ提出致サウカト存ジテ居シタノ
デアリマス、所ガ時偶こ各派ノ有志ニ依ッテ一致ノ步調ヲ以
テ、只今上程セラレタルガ如キ建議案トシテ、提出スルニ至ッ
タト云フコトハ、目的ヲ貫徹スル上ニ於キマシテ、誠ニ至便
デアリ、甚ダ本員ノ至幸トスル所デアリマス、申上ゲル迄モナ
ク華盛頓會議ニ於ケル所ノ協約ハ、今ヤ既ニ終結ヲ告ゲテ
居ル、隨テ近ク御批准ニ俣チマシテ、軍備縮少卜云フモノガ
實行セラルヽダラウト思フ、軍備縮少ガ實行セラルヽ曉ニ於
キマシテハ、其影響其打撃ノ及ブ所ハ、勿論全土ニ亙ッテ廣ク
及プコトデアラウト思ヒマスガ、併ナガラ何ト言ッテモ此打撃
此影響ヲ最モ深刻ニ更ニ又最モ直接ニ被ル所ノ者ハ、卽チ本
建議案ニ揭ゲテアル通リニ、軍備ノ作業ニ從事致シテ居ル所
ノ卽チ勞働者デアルノデアリマス、此勞働者ガ直接ニ而モ深
刻ニ打擊ヲ被ルト同樣ニ、更ニ又海軍ノ將校ノ如キモ亦其
中デアル、今一ツ進シデ同樣ナル打撃ヲ被ル所ノ者ハ、軍港ノ
存在ニ依ッテ生レ出デタル所ノ軍港都市デアリマス、御承知
ノ如ク軍港都市ト云フモノハ、軍港ニ依ッテ生レタト同時ニ
軍港ノ消長ニ依シテ軍港都市ハ同ジク消長致スノデアル、
故ニ軍港都市ノ市民ト致シマシテ、幾十万ノ市民ハ今ヤ將
ニ將來ヲ顧ミテ不安ノ狀態ニ陷ッテ居ルト云フコトハ事實
デアリマス、而シテ官營工場ニ於ケル所ノ勞働者、此勞働
者ハ工場自身ガ國家直營ノ工場デアリマスルノト、軍備ナ
ルモノハ永久的ノモノデアルト云フコトヲ確信致シテ居ッタ
ノデアル、軍備ガ永久的ノ勞務デアルト云フコトハ、單リ彼
等勞働者ノミデハゴザイマセヌ、恐ラクハ政府當局モ爾ク信
ジテ居ラレタノデアル、又吾〓一般國民モ爾ク信ジテ居ノタ
ノデアル、故ニ彼等勞働者ハ、軍備ニ關スル所ノ政策作業
ニ從事致シテ居ルコトハ、決シテ一時的ノモノデナイ、是ハ
永久的ノモノデアル、斯樣ニ信ズルガ故ニ、一般普通ノ民營
工場ニ於ケル勞働者ニ對スル所ノ給與金、或ハ賞與金、其
他待遇ニ於キマシテモ、官營工場ノ勞働者ハ甚ダ冷タク扱
ハレテ居ッタノデアル、斯樣ニ冷タク扱ハレテ居リマシテモ、尙
ホ依然ト致シテ其處ニ勤務スルト云フコトハ、卽チ只今申
上ゲルガ如クニ、永久失職ノ憂目ニ遭遇スルト云フコトハナ
イモノト信ジテ居ルガ故ニ、勤續致シテ居ルノデアル、而モ誠
實ニ終身自己ノ勞務ハ保障セラレタルモノトシテ從事致シ
テ居ッタノデアリマス、斯樣ナ例ハ直ニ諸君ニモ御分リニナラ
ウト思ヒマス、先年歐洲ノ戰亂當時ニ於キマシテ、我ガ帝國
ノ財界ハ甚ダ好調デアッタ、此時代ニ於テ勞力ト云フモノガ
頗ル缺乏致シタノデアル、故ニ一般營利會社ハ其當時勞
力ヲ充スベク高給ナル所ノ給與金、高給ナル所ノ「ボーナス」
有ユル方法ヲ以テ彼等官營工場ノ勞働者ヲ誘致致シタノ
デアル、併ナガラ今申上ゲタ如ク、永久失職ノ憂目ヲ見ザルト
云フコトヲ唯一ノ樂ト致シテ、一時ノ利益ニ迷ハズ誠實ニ、而
モ謹直ニ勤續シ來ッテ居ルノデアリマス、是ガ國家ノ政策ノ
爲ニ彼等ヲシテ失業セシムルト云フコトガアッタナラバ、終身
勞務ニ付テノ保障ヲ持ッテ居ルト信ジテ居シタ所ノ彼等ノ確
信ト云フモノハ、全ク裏切ラレルコトニ相成ルノデアリマス、
殊ニ又官營工場ノ勞働者ハ、是ハ全部トハ申シマセヌガ、
艦船ノ製作、或ハ兵器造兵ノ製作作業ニ從事致シテ居ルノ
勞働者ト云フモノハ、其勞務ノ性質ト云フモノハ御推察下
サルデアラウト思ヒマスガ至テ特殊的デアリ、専門的デアル
専門的デアリマスルガ故ニ、隨テ他ノ普通一般ノ民營會社
ニ共通スルト云フコトガ甚ダ困難デアル、通用スルト云フコ
トガ困難デアルガ故ニ、隨テ是ガ終身的ノ仕事ト相成ルノ
デアル、此専門的ニ多年鍛上ゲタル所ノ其技能ト云フモノ
ニ依シテ、今日現在得テ居ル所ノ收入ヲ假ニ他ニ轉業シ得
タト致シマシテモ、現在ト同樣ノ收入ヲ得ルト云フコトハ頗
ル至難デアル、斯樣ナ不自由ナル場合ニ立至ルノデアリマス
デ斯ノ如ク甚ダ專門的デアリ、區域ガ狹ク其通性ニ乏シイ、
斯樣ナ點ハ恰モ軍屬軍人ト相共通シテ居ル點ガ澤山アル、
私ハ此機會ニ於キマシテ、尙ホ政府當局ニ此將校ニ對スル
將來ノ生活ノ保障ニ付テ、十分ノ御攻究ヲ願ヒタイト思ン
テ居ルノデアリマス、海軍將校ハ從來社會ニ於キマシテ多
少ノ尊敬ヲ受ケ、多少ノ生活上ノ保障ヲモ得テ居ル譯デア
リマスケレドモ、此將校ハ何等ノ自己ノ過失モナク、更ニ又
自己ガ無爲無能ニアラズシテ、更ニ又將校ハ靑年ノ時ヨリ
特殊ノ教育ヲ受ケ、特殊ノ技能ニ長ジテ居ルノデアル、是ガ
軍備縮少ノ爲ニ職ヲ失ハレ、他ニ轉業セヨト言ッタ所デ、轉
業スルコトガ出來ナイ、殆ド是ハ不可能デアラウト思フ、デ
現在退職手當ノ制ハ勿論ゴザイマスケレドモ、此退職手當
ノ制ト云フモノハ、謂ハバ舊式ノ頭ニ依シテ作ラレタ所ノ制
度デアッテ、非常ナ勢ヲ以テ進轉シ來シタル所ノ現在ニ於テ、
更ニ又物價モ昂騰セル所ノ當時ニ於テ、現在制定セラレテ
居ル所ノ退職手當金ナドノ如キハ、生活ノ保障ヲ爲シ得ザ
ルノミナラズ、斯ノ如キ異樣ノ事情ニ於テ失職スル場合ニ
於テハ、何等ノ意義ヲ爲サナイト云フコトニ相成ラウト思フ
斯樣ニ共通致シテ居ル點ガアル、此點ハ軍人モ官營工場ニ
於ケル所ノ勞働者モ全ク共通致シテ居ル、而シテ凡ン此一
般ノ營利會社、民營ノ會社ニ於キマシテ、而モ其會社ガデ
ス、事業振ハズシテ事業ニ依シテ利益ヲ出シ得ナイノミナラ
ズ、寧口損失ヲ被ッテ會社ヲ閉鎖スル爲ニ、勞働者、從業者
員ヲ馘首シ、解備スルト云フ場合ニ於テスラモ、現在ニ於テ
ハ彼等ガ就職口ヲ見付ケルノミ、十分ナル期間ヲ見越シテ、
十分ナル退職手當ト云フモノヲ今日支給セラレテ居ルノデ
アル、今日ニ於テハ是ハ會社ノ義務ト殆ド認メラレ、又勞働
者ノ方カラ申シマスナラバ、斯ノ如キ場合ニ於テ生活ノ保
證ヲ得ルト云フ事ハ、勞働者ガ有スル當然ノ權利ナリト致
シテ居ル時節ナノデアリマス、恐ラク社會一般モ爾ク認メルダ
ラウト思フ、營利會社ガ損失ヲ致シテ已ムナク解傭スル場
合ニ於テモ、尙且ツ斯樣ニ致サレテ居ルノデアル、ソレガ官
營工場ニ於ケル所ノ勞働者ハ、國家ノ政策ノ爲ニ終身失
職ノ憂目ニ遭フコトハナイト信ジテ居ッタ所ノ、此確信ヲ裏
切ラレル場合ニ於テハ、國家トシテヨリ以上ノ同情ヲ有シ、
ヨリ以上ノ救濟ノ途ヲ立テルト云フコトハ、國家常然ノ義
務デアラウト信ジマス、同時ニ又吾と國民ハ喜ンデ斯ノ如
キ經費ノ負擔ハ應ジナケレバ相成ラヌ事デアラウト信ズルノ
デアリマス、而シテ私ハ此際一言申述ベテ見タイノハ、世界
平和ヲ保障セラレル意味ニ於ケル所ノ軍備ハ頗ル結構デゴ
ザイマス、何等之ニ向ッテ反對ノ意ヲ有スル者デハアリマセヌ
ガ、軍縮ニ依シテ失業者ヲ多ク出スト云フコトハ、決シテ又
手柄デハナイノデアル、失業者ノ續出ト云フコトハ成ベク之
ヲ避ケタイト思フ、然ラバ如何ニシテ之ヲ避ケルカ、斯ウ云フ
事ニナリマスレバ、色〓方法モゴザイマセウ、例へバ現在官
營工場ノ所在地ニ對シテ、文化事業ヲ起スト云フコト、例
ヘバ將來國有鐵道モ段々延長セラレルコトデゴザイマスル
ガ故ニ、之ニ要スル所ノ「レール」、機關、汽機、若クバ郵便ノ
輸送、旅客ノ輸送ノ爲ニ要スル所ノ航空機トカ、飛行機ト
カ云フ文化事業ヲ新ニ玆ニ現在ノ官營工場ニ起シテ、サウ
シテ成ペク失業者ノ續出ヲ防止スルト云フコトニ努メルト
云フコトハ、彼等勞働者ニ對シテノ救濟ノ趣旨ニ副フノミ
ナラズ、一面ニ於テ先程申上ゲタ如ク勞働都市、軍港都市
ヲ救済スルト云フ方法ニモ相成ラウト思フノデアリマス、此
點ニ付キマシテハ、政府ノ深甚ナル御考慮ヲ切ニ私ハ望ン
デ置クノデアリマス、尙ホ然ラパ彼等勞働者ニ對シテ退職
手當、其他ノ優遇ノ途ヲ講ズルノハ結構デアルガ、手當ノ標
準等ニ付テハ如何ナル意見ヲ持ッテ居ルカ、斯ウ云フコトデ
ゴザイマスレバ、若干私ハ卑見ヲ持ッテ居リマス、持ッテ居リマ
スルガ、玆ニ明確ニ私ノ所信ヲ述ベルト云フコトハ、政府當
局ノ權限ニ餘リニ立入ルカノ如キ感ジガ致シマスガ故ニ、私ハ之
ヲ申上ゲズシテ、切ニ政府當局ニ向ッテ彼等ヲシテ不平ヲ起
サシメザルヤウ、一面ニ於テ思想善導ノ意味ニ於テモ、亦只
今申上ゲタ如キ特殊ノ事情ニ顧ミラレテ、十分ナル御考慮
ヲ煩サレンコトヲ切ニ御願シマシテ、本建議案ニ贊成スル次
第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=69
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070・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 本案ハ議長指名ヲ以テ、特ニ十八名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=70
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071・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 鈴木君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=71
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072・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ動議
ノ如ク決シマス-日程第十七乃至二十ハ同種ノ議案デ
アリマスカラ一括シテ議題ニ供スル考デアリマス、御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=72
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073・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ日程
第十七乃至二十ヲ一括シテ、說明ハ各案每ニ提出者ノ趣
旨辯明ヲ許スコトニ致シマス
第十七小學校〓員俸給國庫負擔領增加ニ
關スル建議案(砂田重政君外二名提
〓
小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ關スル建議案
小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ關スル建議
國民〓育ノ振興ヲ圖ルヘク小學〓員ノ待遇ヲ改善シ品
位ヲ向上セシムルノ急務タルハ敢テ呶々ノ要ナシ政府ハ
旣ニ之ヲ認メ優遇ノ途ヲ講シタリト雖今ヤ市町村ノ負
擔ハ益膨脹シ此ノ費途ノ捻出ニ窮ムノ現狀ニ在リ仍テ
政府ハ大正十一年度ヨリ小學校〓員俸給トシテ更ニ
相當金額ヲ增加支出スルノ方法ヲ講スヘシ
右建議ス
第十八小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ
關スル建議案(本田恆之君外七名提
He.
小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ關スル建議案
小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ關スル建議
小學校〓員ノ待遇ヲ改善シ其ノ品位ヲ向上セシメ以テ
國民〓育ノ振興ヲ圖ルハ刻下ノ急務タリ然ルニ義務〓
育費ノ劇增ハ今ヤ市町村ヲシテ其ノ負擔ニ堪へサラシム
政府ハ宜シク國庫負擔法制定ノ本旨ニ則リ大正十一
年度ヨリ更ニ其ノ金額ヲ增加支出スルノ方法ヲ講スヘ
シ
右建議ス
第十九小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ
關スル建議案(守屋松之助君外一
名提出)
小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ關スル建議案
小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ關スル建議
國民〓育ノ發達ヲ期セムトセハ須ラク小學校〓員優遇
ノ途ヲ講シ以テ其ノ品位ヲ向上セシメサルヘカラス而シ
テ今ヤ全國市町村ハ全力ヲ注キテ其ノ施設ノ時世ニ後
レサラムコトヲ期セリト雖動モスレハ財源涸渴シ其ノ根
本ヲ誤ルノ虞ナシトセス故ニ政府ハ大正十一年度ニ於
テ義務〓育國庫負擔額ヲ增加シ國民〓育ノ基礎ヲ鞏
固ナラシメムコトヲ望ム
右建議ス
第二十市町村〓育費國庫負擔額增加ニ關
スル建議案(鵜澤總明君外一名提
〓
市町村〓育費國庫負擔額增加ニ關スル建議案
市町村〓育費國庫負擔額增加ニ關スル建議
小學〓育ノ振興ヲ圖ルト同時ニ市町村〓育費負擔ヲ
輕減スルノ急務ナルコトハ言ヲ俟タス當議會ニ於ケル內
閣總理大臣ノ聲明ニ依ルモ政府ハ小學校〓育費國庫
負擔額增加ニ關シ痛切ニ其ノ必要ヲ認メラルルモノト
信ス政府ハ宜シク大正十一年度ヨリ相當金額增加ノ
途ヲ講セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=73
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074・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第十七ハ砂田重政君
〔砂田重政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=74
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075・砂田重政
○砂田重政君 只今議題ニ供サレマシタル小學校〓員俸
給國庫負擔額增額ニ關スル建議案ヲ說明ヲ致シマス、此
問題ハ四十二議會以來ノ問題デアリマシテ、吾ヒハ憲政會
ノ諸君ト四十二議會及三議會ニ亙リマシテ、建議案ヲ提
出致シ、更ニ四十四、卽チ昨年ノ議會ニ於テモ此案ヲ提出
シタノデアリマス、幸ニシマシテ、昨年ハ吾ニノ主張ノ大部
分ヲ政友會ノ諸君モ御容レ下サッテ、速ニ政府ハ國費負擔
ノ增額ヲ行フベシト云フ建議案ニ御贊成ヲ得テ、滿場殆ド
大多數ヲ以テ決セラレタノデアリマス、然ルニ不幸ニシテ本
年ノ豫算中ニ未ダ此俸給國費負擔ノ增額ノ案ノ出ナイト
云フコトハ、吾とノ最モ遺憾トスル所デアリマス(拍手)申ス
マデナク近年國費ノ膨脹ニ伴ヒマシテ地方費ノ負擔モ非
常ナ金高ニ上ッテ參ッタノデアリマス、誠ニ大正九年度ノ地
方費、卽チ府縣市區町村ノ歲入歳出ノ後算ニ付テ取調ベ
ヲ致シテ見マスルト、全國ヲ通ジテ八億二百万圓ノ多額ニ
達シテ居ルノデアリマス、其中ニ於テ或ハ國費ノ交付金、或
ハ各府縣自治體ノ財產ヨリ生ズル收入、又ハ公債ニ依ル
收入、是等ノ總テ雜收人ヲ加ヘタルモノヲ合セマシテ、其金
高ヲ差引キ、卽チ市町村住民ガ自治體ノ租稅トシテ納付
致シテ居リマスル全高ノ總額ヲ調ベテ見マスト、大正九年
度ニ於テ五億五千七百万圓ノ多額ニ上ッテ居ルノデアリマ
ス、是ハ大正九年度ノ豫算デアリマスルガ、大正十年度、大
正十一年度ハ更ニ此金高ガ、此以上ニ增額ヲ致シテ居ル
ト信ジマス、之ニ對シテ大正十一年度ノ過日本會議ニ於テ
論議サレマシタル豫算ノ中ニ於テ、國稅トシテ國民ニ賦課
サルベキ租稅ノ總額ハ七億三千四百万圓デアリマス、之ヲ
雙方合セマスト、現在日本ノ國民ハ少クモ、十三億圓以上
ノ租稅ヲ負擔シテ居ルト云フ有樣ニナッテ居ルノデアリマス、
此多額ノ負擔ノ中ニ於テ、帝國ノ〓育ニ向ッテ使ッテ居ル金
ガ、ドノ位ノ金高ニ上ッテ居ルカト云フコトヲ更ニ內譯ヲ致
シテ見マスルト、約二億八千万圓ニ達シテ居ルノデアリマス、
此〓育費ノ中ニ於テ、小學校ノ〓育費ガ其大部分ヲ爲シ
テ居ルト云フコトハ申ス迄モナイ事、吾ミハ此莫大ナル地方
費ノ負擔ノ救濟ヲ圖リ、地方民ノ負擔力ノ增大ヲ圖ル意
味ニ於テ、少クトモ市町村ノ財源ニ對シテ、相當ノ屈伸力
ヲ與ヘタイト云フ考ヲ常ニ持ッテ居ルノデアリマス、言葉ヲ換
ヘテ申シマスルナラバ、市町村住民ノ負擔ノ輕滅ヲ圖リタイ
ト云フコトヲ常ニ考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)此方法ハ獨
リ國費ヲ以テ、此多額ナル自治體ノ經費ニ補助ヲ與ヘルト
云フコトモ一ツノ方法デアリマセウ、又他ノ方面ニ於テハ行
政ノ整理、或ハ地方事務ノ簡㨗方法ヲ圖リ、陸軍或ハ海軍ノ
整理ニ依ッテ得タル金ノ一部分ヲ以テ、惡稅ヲ廢止シテ而
シテ地方民ノ負擔力ノ屈仲力ノ增大ヲ圖ルコトモ一ツノ方
法デアラウト思フノデアリマス、併ナガラ之ヲ爲スニハ尙ホ多數
ノ日子ヲ要シ、多數ノ手續ヲ要スルノデアリマスガ、大正十一
年度ヨリ直ニ此場合ニ實行ヲシナケレバナラヌ問題ハ、其
中ニ於ケル〓育費ノ問題デアリマス、殊ニ小學校ノ〓育費
ハ國民全體ノ〓育ノ普及ヲ圖ル上ニ於テ、國家ニ於テ主ト
シテ之ヲ爲スベキモノデアルト云フコトヲ、吾ニハ常ニ理想
ト致シテ居ルノデアリマス、此見地ヨリ試ニ列國ノ狀態ヲ見
マスルト、獨逸ニ於テハ小學校〓育費ニ對スル三割强ヲ、國
費ヲ以テ負擔ヲ爲シテ居リマス、英吉利ニ於テハ六割强/
負擔ヲシテ居リマス、佛蘭西ハ七割、亞米利加ハ各州ニ依ッ
テ多少ノ差ガアリマスルガ、大體ニ於テ殆ド半額ヲ國費デ
負擔ヲ致シテ居ルノデアリマス、我國ハ大正十年度ノ豫算
ニ依リマスト、小學校ノ〓育費ノ總額ハ一億八千七百七
十万圓、其中ノ大部分ハ小學校ノ〓員俸給デアリマシテ、
一億一千四百五十餘万圓、是ダケノ金高ニ對シテ、國費ノ
負擔ハ僅ニ〓員俸給ニ對シテ一千万圓、其他ニ對シテ二
百五十万圓、言葉ヲ換ヘテ申シマスルナラバ、小學校〓育
費ニ對シテ一割ニ足リナイ金ヨリ國費ノ負擔ハナイノデア
リマス、斯ノ如キ狀態ヲ持續致シマスルコトハ、地方民ハ堪
へ難キ負擔ヲ負ウテ、是ガ爲ニ警察費、土木費、勸業費、其
他幾多ノ地方ノ急ヲ要スル事業モ繰延ベナケレバナラヌ有
様ニナッテ居リマスガ故ニ、速ニ此部分ニ對シテク少トモ英
吉利、少クトモ佛蘭西、少クトモ亞米利加ト同一ナ程度マ
デ國費ノ負擔ノ增額ヲ圖リタイト云フコトヲ吾ニハ切ニ希
望シテ居ルノデアリマス、昨年ノ議會ニ於テ政友會ノ諸君
カラハ、井上君ガ當議場ニ於キマシテ大演說ヲ爲サレマシテ、
小學校〓育費ニ關シテハ、尙ホ整理節約ノ餘地アリ、此整
理節約ヲ行ヒ、然ル後ニ尙ホ不足ノアル場合ニ於テハ國、
費ノ增額ヲ爲スベシト云フ建議案ヲ出サレタノデアリマス、
吾とハ整理ノ餘地ハ有ルカモ知レナイガ、殆ド節約ノ餘地
ハ無イト見テ居ル、故ニ大正十年度ヨリ國費ノ負擔增額ヲ
行フベシト云フコトヲ主張致シマシテ、慎重審議ヲ重ネラレ
テ、殊ニ政友會ノ當時委員長デアリマシタ鈴木君ハ、最モ熱
心ニ此間ニ御立ニナッテ奔走努力サレマシタ結果、遂ニ吾ニ
ハ政友會ノ諸君ト其處ニ調和ヲ圓ルコトガ出來テ、卽チ昨
年ノ議會ニ於テ、政府ハ速ニ〓育行政調査會ヲ開キ、市町
村ノ〓育費ヲ整理シ、尙ホ相當ノ金額ヲ支出シ、以テ〓育
ノ振興ヲ圖ルト共ニ、市町村〓育費ノ負擔輕減ノ途ヲ講
ズベシ、斯樣ナ修正ヲサレタノデアリマス、此意味ハ井上君
ノ提案ヲ致サレマシタル、〓育費ノ整理節約ヲ圖リ、尙ホ必
要アル場合ニ於テハ其結果ニ依シテ國費ノ負擔ヲ增額スベ
シト云フ案ヲ、整理ト云フ言葉ヲ入レテ、節約ノ二字ヲ削リ
尙ホ其以上ニ一面ニ於テ、〓育行政ノ調査ヲ爲スト共ニ他
ノ一面ニ於テハ同時ニ國費負擔ノ增額ヲ爲スベシト云フコ
トヲ、此案ノ中ニ決定ヲサレタノデアリマス、吾ミハ此議會
ニ於ケル大多數ノ決議シタル此案ハ、政府ニ於テモ必ズ尊
重ヲサレル事ト信ジテ居ッタノデアリマス、然ルニ不幸ニシテ
本年モ十一年度ノ豫算中ニモ、未ダ此國費負擔ノ增額ノ
案ガ出テ居ラヌ、併ナガラ總理大臣ハ議會ノ劈頭ニ於ケル
演說ニ於テ、海軍縮少ニ依シテ得タル金ハ、先ヅ第一ニ小學
校〓育費ニ充テルト云フコトヲ明言サレマシタ、殊ニ幸ニシ
テ今回ハ政友會ノ諸君モ、大正十一年度ヨリ增額スベシト
云フ建議案ヲ御出シニナッテ居ルノデアリマス、無論吾々ハ
十一年度ヨリ增額ヲ斷行サレル事ト思ヒマス、吾ヒハ單ニ
總理大臣ノ主張サレタル如キ海軍ノ縮少ニ依ッテ得タル金
ヲ以テ、之ニ充テタイト云フ考デハナイ、根本ニ於テ此縮少
ニ依シテ得タル金ガアルト否トニ拘ラズ、現在ノ國民ノ狀態、
〓育ノ狀態ハ是非トモ國費負擔ノ增額ヲ斷行シナケレバ
ナラヌ、目前ニ迫ッタル一日モ忽セニスルコトノ出來ナイ問
題デアルト考ヘマシテ本案ヲ提出シタ次第デアリマス(拍手)
願ハクバ滿場一致ヲ以テ此案ノ決議ヲ斷行サレ、而シテ政
府ハ宜シク其主張ヲ尊重サレテ、十一年度ノ追加豫算ヲ
提出サレンコトヲ切望シテ已マナイ次第デアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=75
-
076・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第十八ニ付テ、樋口秀雄君
〔樋口秀雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=76
-
077・樋口秀雄
○樋口秀雄君 吾ミノ提出致シマシタル小學校〓育費
國庫負擔額增加ニ關スル建議案ノ趣旨ハ、只今國民黨ヲ
代表シテ砂田君ノ御述ニナリマシタ案ト殆ド同一デアリマ
ス、卽チ小學校〓育ノ待遇ヲ改善致シ其品位ヲ向上セシ
メテ國民〓育ノ振興ヲ圖ルノガ刻下ノ急務デアリマス、然
ルニ近年市町村ニ於ケル義務〓育費ノ負擔ガ多額ニ上リ
マシテ、爲ニ市町村ノ財政上危殆ニ瀕シテ居リマスガ爲ニ、
吾ミハ市町村〓育費國庫負擔法制定ノ當時ノ本旨ニ則
リマシテ、政府ハ速ニ本年度ヨリ增額支出サレンコトヲ望ム
ト云フノガ建議案ノ趣意デアリマス、只今砂田君ガ英米各
國ノ例ヲ引イテ御話ニナリマシタ通リ、歐米ノ各國ニ於キ
マシテハ戰前ニ於テモ然リデアリマシタガ、戰後ニ於テモ一
層此普通〓育、國民〓育ノ充實ニ全力ヲ傾注シテ居ル次
第デアリマス、其戰前ニ於ケル英、佛、米等ノ各國ガ、義務
〓育費ニ對シテ多額ノ國庫ノ負擔ヲ致シテ居リマスルコト
ハ、砂田君ノ御申述ニナッタ通リデアリマス、其上ニ尙ホ〓
育費全體ト、國庫ノ歳入歲出ノ總豫算等ノ關係ヲ見マシテ
モ、著シク我國トハ徑庭ガアルノデアリマス、例ヘバ英吉利ノ
例ヲ引キマスルト云フト、英吉利デハ本年度ノ豫算ハ行政
費ノ總額ガ三億八千万磅、卽三十八億圓デアリマス、之ニ
對シテ〓育費ノ總額ガ六千四百五十万磅、卽チ六億四千
五百万圓ノ多キニ達シテ居リマス、此行政費ノ總額ニ比較
致シマスルト、〓育費、文部省ニ於テ使ハレテ居ル所ノ金ハ
約一割六分五厘ニ當,テ居リマス、更ニ英吉利政府ニ於ケ
ル歲入歳出總豫算ニ較ペ、マスルト云フト、約五分ニ當ッテ居ル
ノデアリマス、然ルニ我國ニ於キマシテハ、文部省ノ經費ハ
數年來次第ニ增加ハ致シテ居リマスル、ガ本年度ノ豫算ヲ
見マシテモ、約二千二百万圓少シ越エテ居ル許リ、之ヲ十
四億ニ達シマスル所ノ總豫算ニ比較シマスルト云フト、殆ド
物ノ數ニモナラヌ程度ニアリマス、又英吉利ニ於ケル此〓
育費、就中總テノ國家カラ補助致シマスル文化施設ニ對ス
ル英吉利ニ於ケル支出額ニ較ペマスルト云フト、此〓育費
ハ約七割八分ニ當ッテ居ルノデアリマス、更ニ其陸軍、英吉
利ノ陸軍ノ總經費ニ比較致シマスレバ、殆ド六分八厘、海
軍ノ經費、世界第一ノ海軍國ト申シテ居リマスル英吉利ノ
大海軍ノ經費ニ比較致シマスレバ、八割ニモ達シテ居ルノ
デアリマス、現內閣ノ諸公ハ屢〓財政問題ニ付キマシテモ、
物價問題ニ付キマシテモ、世界ノ大勢ト云フコトヲ仰セラレ
テ居リマスルガ、世界ノ大勢ハ戰前ヨリハ戰後ニ於テ、更ニ
此〓育文化的施設、就中國民〓育ニ全力ヲ舉ゲツヽアリ
マス、卽チ千九百十九年戰爭-世界戰爭終結ノ年ニ於
キマシテノ英吉利ノ行政費ノ總額ハ、五億八千万磅デアリ
マシタガ、シレガ三年後ノ今日ニ於テハ、三億八千万磅ニ下ッ
テ、約二割八分-約三割近イ所ノ減額ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、之ニ比較致シマスルト、逆マニ〓育費ノ方ハ五千
八百万磅カラ六千四百五十万磅迄、約五百万磅ニ逆マソ
比例ヲ示シテ居リマス、戰時ノ最中デアリマスルカラ、行政
費ノ總額ガ多額ニ達スルコトハ、是ハ當然デアリマス、日本
ハ同ジク此大戰ニ參加ハ致シマシタガ、僻遠ノ地ニ位ヒ致
シマスルノト、直接敵國ノ正面ニ當ッテ居リマセヌ爲ニ、戰時
中ノ日本ノ行政費ハ英吉利ノ例ヲ以テ律スベキモノデハナ
イノデアリマスガ、其英吉利ガ斯ノ如キ大負擔ヲ致シ八年
ノ-足掛ケ八年ニ亙リマスル大戰争ニ堪へ、財政ノ疲弊
ヲ致シテ居リマスル英吉利ヲ以テシテ、尙且ツ戰後ニ於テ〓
育費ニ五百万磅ノ增額ヲ致シテ居ル、然ルニ吾と衆議院ニ
於キマシテハ、殆ド全部一致ノ希望ヲ以テ、第四十二議會
以來此小學校〓員費ノ國庫負擔額ノ增加ヲ迫シテ居リマ
スルガ、未ダ不幸ニシテ實現スルニ至ラヌノデアリマス、其額
幾許カアルト申シマスレバ、吾ニノ提案致シマシタ、國庫負
擔法ノ提案ト申シマスルノハ、小學校〓育費ノ全部ヲ國庫
ニ於テ支辨致スト申スノデハ決シテナイ、斯ル無算當ノ要求ヲ
爲スモノデハナイ、現在ニ於テ小學校〓育費ノ總額一億八
千万圓以上ニ達シテ居リマスル其中デ、〓員費國庫ノ補
助ヲ除キマスル地方ノ負擔ハ一億六百万圓ニ餘ッテ居リマス、
此一億六百万圓ノ地方ノ負擔ヲ半減シテ貰ヒタイ、少クト
モ半バニ至ルマデノ國庫ノ支出ヲ希望スルノガ、吾ミノ提案デ
アリマス、抑〓此〓員費ノ半額ヲ國庫ニ於テ補助スベシト云フ
議論ハ、今ニ始マッタコトデハナイノデアリマス、曾テ三十九
議會、寺內內閣ノ時ハ各派共ニ共同一致シマシテ、此案ヲ
此意味ニ於テ通過致シテ居ル、其結果其當時ノ主張ハ二
千万圓ニ達セシムベシト云フノデアリマシタガ、當時財政ノ
狀況之ヲ許サザルモノガアリマシタ爲ニ、讓ッテ一千万圓ニ
止メテ、ソレガ今ニ至ッテ現存ノ儘ニナッテ居リマス、若シ此
當時ニ於テ三千七百万圓ノ〓員費ヲ要シマシタ當時ニ。於
テスラ、其半額二千万圓ヲ支出スベシト云フ此立法ノ精神
ガ嚴トシテ存シマスルナラバ、又其當時ノ委員會ニ於テ委
員長トナラレタ現文部大臣中橋德五郞君ガ、其御精神ヲ
今ニ至シテ主張ナサルナラバ、疾クニモ我ガ〓育費ハ二三千
万圓ノ增加支出ヲシテ居ルベキ筈デアッタト私ハ思ヒマス(拍
手)然ルニ不幸ニ致シテ、斯ノ如クナラズ、勿論政府當局ノ
答辯ハ財政ノ狀況之ヲ許サズト云フコトデアリマシタガ、實
ハ財政ノ狀況必シモ之ヲ許サザリシニアラズト、私ハ信ズル
事實ガアル、卽チ第四十四議會ニ於キマシテ政友會ノ一議員
ガ、其代表トシテ豫算討論ノ壇上ニ立タレマシタトキ、斯ウ
云フ一言ガアリマス、大藏大臣、今ノ總理大臣ニ私カニ尋
ネテ見タナラバ、金ハアル、三億以上ノ餘裕ハアルケレドモ、
大キナ聲デ言ヘバ各方面カラ手ガ出テ困ルカラト云フ內證
話ヲサレタト云フコトヲ、堂々タル壇上ニ於テ政友會ヲ代表
サレタ方ガ御述ニナッタコトハ、官報ノ記錄ニ載ヲテ居リマス、
然ラバ其當時カラ政府ガ若シサウ云フ誠意誠心アリト致シ
マスレバ、此小學校〓育費ノ半額負擔ノ如キハ、容易ニ出
來得タ狀況デハナカッタノデハアルマイカト私ハ思フノデアリ
マス、財政之ヲ許サザルニアラズ、惜ムラクハ當局ノ誠意ガ
少シク缺ケテ居リハシナカッタカト私ハ遺憾ニ思フ、又本年
度ノ豫算ハ御承知ノ如ク極テ切詰メタル豫算デアリマス此
際ニ更ニ此支出ヲ望ムノハ或ハ過當ノ要求デハアルマイカ
ト云フヤウナ御意見ガ一部ニ無キニシモアラズ、併ナガラ現
ニ昨日マデニ終結致シマシタ〓育評議會ニ掛ケラレテ居リ
マシタ高等〓育機關ノ增設、年限ノ延長ト云フガ如キニ付
テハ、不日追加總豫算ガ出ル筈デアリマス、其額凡ソ一千
四百四十五万圓以上デアリマシタカ、此修正ニ依ッテ多少
ノ減額ハアルニ違ヒナイ、高等〓育ノ方面ナラバ一千四百
万圓位ナ追加豫算ヲ出シ得ル財政ノ伸縮力ガアルナラバ、
更ニ全國民ノ要望タル、而シテ國民〓育ノ根抵タル此重
大問題ニ對シテ、政府考慮ノ誠意サヘアリマスレバ、二千万
三千万ノ金ヲ出スコト決シテ難事ニアラズト吾ニハ信ズル
ノデアリマス(拍手起ル)斯ノ如キ信條ノ下ニ吾こハ本案ヲ
提出致シタノデアリマスルガ、更ニ其財源ニ付キマシテ、國
民黨ノ砂田君ヨリ御述ニナリマシタ通リ、獨リ華盛頓會議
ノ結果ニ成ル所ノ海軍ノミヲ當ニ致スト云フガ如キ、不安
ナル財源ヲ當ニサルヽ此議論モ、世上ニハアルヤニ承知致シ
マス、併ナガラ其財源ハ之ニ求メズトモ、彼ノ陸軍縮少ノ問
題モアリマスルシ、各省ニ亙ッテ是程ノ金ノ出ナイト云フ理
由ハナイノデアリマス、既ニ昨年井上角五郞君ノ御發議ニ
依リマシテ、現在ノ此切詰ッタル〓育費ノ上デモ、尙ホ整理
節約ニ依ッテ二千万、三千万ノ金ハ出來ルト云フ言明ガアツ
夕程デアリマス、吾ミハ此說ニ不幸ニシテ同意ヲ致シマセヌ
ガ、假ニ政府ノ一部ニ於テモ、斯ル信條ヲ持シテ居ラルヽ方
ガアッタト致シマスルナラバ獨リ義務〓育費ト言ハズ、一般
ノ十四億ノ行政費ニ亙ッテ、整理節約ノ大斧ヲ下シマシタ
ナラバ、三千万、五千万ノ金ノ出ナイト云フコトハ斷ジテナ
イ、若シナイトスレバ、或ハ誠意ヲ缺クカ、或ハ其行政整理ノ
手腕無シト云フコトニ歸著スルノ外ハナイト信ジマス(拍手)
何レノ點ニ見マシテモ、必要ハ旣ニ目焦ノ間ニ迫リ、財源ハ
必ズアルベキ立證ガ到ル處ニアルノデアリマスカラ、此際ハ
政府當局ニ於キマシテモ、更ニ考慮ヲ重ネラレ、一部ニ傳ヘ
ラルヽガ如ク臨時議會ヲ待チ、不確定ノ華盛頓會議ノ結果
ヲ待ツガ如キ事ナク、直ニ誠心誠意ヲ以テ他ノ行政整理ナ
リ其他ノ方法ニ依ッテ吾〓ノ要求スル所、否國民全部ノ要
求致シテ居リマスル此國民〓育充實案、換言致シマスレバ、
小學校〓員ノ俸給國庫負擔額ヲ少クトモ全額ノ半バニ達
セシムルダケノ誠意ヲ以テ、御努力アランコトヲ希望スル次
第デアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=77
-
078・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第十九ニ付テハ、守屋松之
助君
〔守屋松之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=78
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079・守屋松之助
○守屋松之助君 只今國民黨ノ砂田君、竝ニ憲政會ノ
樋口君ヨリ本案ニ對シマシテ、十分ナル御說明ガアッタノデ
ゴザイマス、本員ハ昨年第四十四議會ニ於キマシテ、本案ノ
骨子タル義務〓育國庫負擔法ノ改正法律案ヲ提出シタ
ノデアリマス、然ルニ政府ハ義務〓育費ニ付テ整理節約ヲ
スル、若クハ增加シテモ構ハナイト云フ意味ノ御明言ガアタ
ノデアリマスカラ、尙ホ其上ニ政友會ニ於ケル井上角五郎君
ノ提出ニ依リマスル〓育費整理ニ關スル建議案ガ、吾と提
出ノ案ト同一ノ委員會ニ付託サレタコトニ依リマシテ、委
員會ノ協調維持ヲ保ツ爲ニ私ハ法律案ヲ撤囘致シマジテ、
政友會ノ案ニ賛成致シタ一人デアリマス、然ルニ政府ハ昨
年以來臨時〓育行政調査會ヲ設置サレマシテ、サウシテ此
調査會ニ御提案ニナリマシタ第六號ヨリ第一號案ニ至ル
案ヲ見マスルノニ、私等ガ期待致シテ居リマシタル所ノ〓育
整理ニ對シテハ、甚ダ遺憾ナガラ裏切ラレタノデアリマス、此
點ニ依リマシテ、更ニ本員ハ此議會ニ於テ建議案ヲ提出ス
ルノ已ムナキニ至ッタノデゴザイマス、而シテ此建議案ヲ提出
致シマス多クノ理由ハ、先程國民黨竝ニ憲政會ヨリ御說
明ニナリマシタコトニ依リマシテ、十分ナル意味ヲ盡シテ居
ルノデアリマスルガ、要スルニ國家ハ國民〓育ノ基礎ヲ國民
ニ要求シテ居ルノデアル、同時ニ又國家ハ國民〓育ヲ施ス
ベキ義務ガアルノデアルト私ハ信ズルノデゴザイマス、尙ホ更
ニ進ンデ是等ノ國民〓育ノ義務ヲ果ス爲ニ法律命令ニ依
リマシテ、町村ニ向ッテ色ミナル施設ヲ强要サレテ居ルノデア
リマスルガ、此强要ニ對シテ町村ハ費用ノ負擔ニ堪ヘナイ、
先程中サレマシタ通リニ、大正七年ニ於ケル國庫負擔法制
定ニ於テ、其當時ニ於ケル町村費ノ費用ト、今日大正十年
ノ調ニ依リマス費用トヲ比較致シマスト云フト、殆ド二倍
四分ノ增加ニ至シテ居ルノデゴザイマス、斯ノ如ク町村費ハ
增加シテ居リマスカラ、ソレガ爲ニ町村ハ自治體ノ本體ヲ
盡スコトガ出來ナイ狀態ニ在リマシテ、〓育費ニ對シテハ
汲々トシテ費用ヲ支出シ、其他勸業竝土木費ニ對シテハ、殆
ド町村ガ施設スベキ總テノ事業ヲ放棄スルノ已ムナキニ至ツ
テ居ルヤウナ狀態ニナッテ居ルノデゴザイマス、サウシテ一面
是等ノ町村ニ於ケル小學校ノ施設經營ハ、如何デアルカト
云フコトヲ觀察致シマシタナラバ、遺憾ナガラ吾ヒガ期待シ
テ居リマス所ノ施設經營ニ付テハシテ居ラナイノデアリマス
殊ニ〓員ノ優遇方法デアリマス、是ハ先程憲政會ノ樋口君
ヨリ申サレマシタ通リニ、〓員ノ優遇ノ途ヲ講ズルト云フコ
トガ第一義デアル、卽チ兒童ノ〓員ヲ直接ニ掌ッテ居ル所ノ
〓員ニ對シテハ、相當ナ優遇ノ途ヲ講ジテ遣ラナケリヤナラナ
イト云フコトハ、誰シモ知ッテ居ル所ノ議論デアリマスト同時ニ
併シ之ニ對シテハ勅令ヲ以テ相當ナル小學校〓員ノ俸給
ヲ增加シタデハナイカト云フ論者ガ或ハアルカモ知レマセヌ
ガ、是ハ俸給ニ對シテノ增加、卽チ物質的ノ增加ハ或ハ行,
テ居ルカモ知レマセヌケレドモ、現在小學校〓員ノ待遇上、
精神的待遇ニ於テハ或ハ缺陷シテナイカト云フコトヲ御承
知ニナリマスレバ、此點ニ付テ大ニ考慮シナケレバナラヌト
私ハ信ズルノデゴザイマス、譬ヘテ申シマスレバ-一例ヲ擧
ゲテ申シマスレバ、現在小學校ノ〓員ガ、ドレ程ノ時間ヲ小
學校〓育ニ-小學校ノ〓授ニ時間ヲ費シテ居ルカ、又小
學校ノ〓員ガ此〓授時間ニ費ス爲ニ色とナル〓案ノ整理
或ハ答案ノ處理ニ對シテドレダケ時間ヲ費シテ居ルカト云フ
コトヲ考慮致シマシタナラバ、恐ラクハ彼ノ肉體勞働ヲ以テ
ヤカマシク言ッテ居リマスル八時間勞働以上ノ勞働ニ服シ
テ居ナイカト云フコトヲ憂フルノデアリマス、吾こガ最モ心配
致シマスンハ、是等ノ大切ナル國民ノ基礎〓育ヲ受クベキ、
サウシテ國民道德ノ基本トナルベキ小學校ノ〓員ガ、斯クモ
多數ノ勞働時間ヲ費シ、而モソレガ精神的ニ肉體的ニ於テ
費シテ居ルコトヲ考へマシタナラバ、何所カニ是等ノ優遇ノ
途ヲ講ズルノハ色とナル形式ヲ要シマスルケレドモ、是ハ矢
張町村ノ費用ヲ要スルノデゴザイマス、尙ホ町村ノ費用ヲ
要スルト同時ニ、之ニ對シテ町村ガ〓員ニ對スル精神的懸
安ヲ與ヘル、何等ノ施設ヲ爲シテ居ナイト云フコトヲ遺憾ニ
思フノデゴザイマス、更ニ進ンデ小學校ノ現狀ヲ考ヘテ見マ
スレバ、正〓員ノ數ト准〓員、代用〓員ノ數ノ比例ハ、吾こ
ガ期待シテ居ル程比例ガ少クナイノデアリマス、卽チ正〓
員ノ數ト准〓員、代用〓員ノ數トヲ比較シマスレバ、約三
割ノ數ヲ示シテ居ルノデゴザイマス、止〓員ノ數ハ卽チ各府
縣ニ於ケル師範學校卒業生ニ依ッテ、補充スルコトガ出來
ルト考ヘマスケレドモ、之ニハ二ノ理由ガアラウト私ハ信ジマ
ス、其第一ハ各縣ニ於ケル經費ノ關係デ、尙ホ此正〓員ヲ
補充シタトキニ於テ、町村ガ之ヲ引受ケルヤ否ヤト云フ關係
デ、尙ホ町村ニ於ケル〓員ノ老朽淘汰ノ關係ニ依リマシテ、
成ベク正〓員ノ數ヲ少ク養成スルヤウナ途ヲ執ッテ居ルノデ
ハアルマイカト思フノデアリマス、又一ハ町村ニ於テハ正〓
員ノ數ハ成ベク少クシテ、サウシテ町村費ノ輕減ヲ圖リタイ
卽チ自己ノ財政難ニ對シテ、相當ニ苦痛ヲ遁レルコトノ出
來ルヤウニシタイト云フ希望カラ致シマシテ、成ベク其配當
ヲ受ケナイヤウニシテ居ルノデハナイカト思ヒマス、此二ツノ
理由ヲ綜合シテ見ルト、詰リ町村ノ財政ガ、優良ナル〓員
ヲ受ケル資格ガナイ程、町村ノ財政ニ窮乏ヲ來シテ居ルト
云フコトヲ證スルノデアリマス、〓員ノ素質ノ善イ惡イト云
フ事ハ吾〓最モ心配致シマス、全國ノ兒童三百八十万人
ノ感化ニ於テ、將來如何ナル影響ヲ與ヘルカト一云フコトヲ考
ヘタナラバ、ドウシテモ〓員ノ素質品位ノ改造ト云フ事ニ對
シテハ、相當ノ考慮ヲ要スルノデアラウト思ヒマス、大正七
年國庫負擔法ガ制定セラレマシタ當時カラ、今日ノ〓育費ハ
殆ド倍額以上ニ達シテ居ルノデアリマス、此倍額以上ニ達
シテ居ルノヲ、政府ハ〓日迄開却シテ居ルノデアルカドウカ、
私ハ政府ハ此子弟〓育ニ對シテ閑却シテ居ルノデハナイカ
ト云フ感ジガスルノデアリマス、或ハ子弟〓育ニ對スル市町
村住民ノ熱情ニ甘ヘテ、此點ヲ閑却シテ居ルカ、對岸ノ火
トシテ見テ居ルノデハナイカト云フ感ジガアルノデアリマスガ
幸ニシテ議會ノ初頭ニ於テ、總理大臣ハ太平洋會議ノ結
果、海軍縮少ニ依リマシテ、〓育費ニ對シテ相當ナル增加
ヲスルト云フ御明言ガアッタノデゴザイマスガ、或ハ此明言ハ
願クハ此重要問題ニ對シテ一時ノ御座ナリデナイヤウニ、
相當ナル御考慮ヲ願ヒマシテ、現在支給シテ居リマス〓員
俸給ノ、少クトモ半額以上ハ國庫ガ負擔ヲシテ戴キタイコ
トヲ希望スルノデアリマス、此町村ノ窮乏ニ對シテハ、町村
以外ニ誰モ之ニ對シテ負擔ヲシテ補助スル者ガナイノデア
リマス、單リ政府ノ力ヲ待ツヨリ外ニハナイノデアリマス、ソレ
ガ爲ニハ全國ノ町村長ハ勿論、其他ノ有識階級ノ者ハ、此
問題ニ對シテハ殆ド普通選擧問題以上ノ熱誠ヲ以テ政府
ニ迫ッテ居ルト云フコトハ私ノ言ヲ待タヌデモ既ニ御承知ノ
コトヽ存ジマス、願ハクバ本案ハ全會一致ヲ以テ通過スルコ
トヲ偏ニ希望致シタイノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=79
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080・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二十ニ付キマシテハ鵜澤總明君
ノ說明ガアリマス-鵜澤總明君
〔鵜澤總明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=80
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081・鵜澤總明
○鵜澤總明君 建議案ニ付キマシテハ砂田君、樋口君、守
屋君等ヨリ極テ明瞭ニ、今日吾と義務〓育ニ對スル國庫
ノ負擔額ヲ增加センケレバナラヌト云フ理由ヲ盡サレテ居
ルト考ヘテ居リマス、ソレ故ニ私ハ玆ニ重ネテ必要ナル理由
ヲ述ブルコトヲバ省略致シマシテ、此場合政府ガ-總理
大臣ガ既ニ聲明セラレタルガ如クニ、直ニ此重要ナル案件
ノ解決ヲ望ム次第デアリマス、町村小學校費ノ大正七年
以來今日ニ至ルマデ加ッタ率ガ、大正七年ニハ三割八分、
大正八年ニハ五割一分、九年度ノ豫算ニ依リマシテモ、四
割二分、市ノ方ニナリマスト、幾分數字ガ違ヒマスガ、大正
七年ニハ一割二分、大正八年ニハ一割七分、大正九年ニ
ハ一割二分、斯樣ナ狀態デ負擔ノ額ハ年々加ハルト云フ狀
態ニナッテ居ルノデアリマスカラ、之ニ對シマシテ政府ハ小學
〓育ノ爲ニ、卽チ町村ノ負擔ノ輕減ヲ圖リ、又〓員ノ優遇
ノ途ヲ講ジ、小學〓育ニ從事致シマスル所ノ此重大ナル職
責ヲ持シテ居ル〓員ガ、安ンジテ吾ミノ少年ノ〓育ニ當ルト
云フ方法ヲ執ルト云フコトハ、極テ重大ナ事デアルト信ズル
ノデアリマス、政府ハ或ハ高等ノ〓育ニ、或ハ大學ノ〓育ニ
著々解決ノ方法ヲ執ッテ居ルノデアリマスルガ、是ト同時ニ
中等〓育及小學〓育ニ對シテ、同ジク苦心ヲシテ居ルト云
フコトハ吾ヒハ之ヲ認メルノデアル、併ナガラ此苦心ガ唯苦
心ダケニ止ラズシテ、直ニ實際ノ效果ヲ擧ゲルヤウニ望ム次
第デゴザイマシテ、本建議案ヲ提出シタ理由デアリマス(拍
手ノ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=81
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082・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 此四案ノ說明ヲ終リタル場合ニ
於テ質疑ガアルト云フコトデ、野溝君ヨリ通告ガアリマス、
之ヲ許シマス
〔野溝傳一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=82
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083・野溝傳一郎
○野溝傳一郞君 私ハ此小學〓育問題ニ關シテ、政府
當局ニ質問書ヲ提出致シテ置イタノデアリマスルガ、丁度
本案ガ上程ニナリマシタニ付キマシテ、之ヲ審議スル上ニ於
テ、私ノ曩ニ質問書ヲ出シマシタ其點ヲ此場合伺ッテ置クコ
トガ便宜ト考ヘマシテ、玆ニ當局ノ御意嚮ヲ伺ハウトスルノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=83
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084・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 此案ノ提出者ニ質問ト違ヒマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=84
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085・野溝傳一郎
○野溝傳一郞君 政府ノ意嚮ヲ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=85
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086・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 豫テ質問ガ出テ居ル···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=86
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087・野溝傳一郎
○野溝傳一郞君 サウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=87
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088・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) ンレハ矢張當リ前ノ質問ノ時ニヤッ
テ戴キタイ、質問ガ旣ニ、出テ居リマスナラバ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=88
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089・野溝傳一郎
○野溝傳一郞君 ケレドモ本案ヲ審議スル上ニ付テ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=89
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090・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ニ付テノ質疑ナラ宜シイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=90
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091・野溝傳一郎
○野溝傳一郞君 當局ノ意嚮ヲ質シタイト思ヒマス(「ヤ
リ給へ」「ヤリ給へ」ト呼フ者アリ)此小學校ノ〓育費問題ヲ
解決ヲセナケレバナラヌト云フコトガ、刻下ノ急務デアルト
云フコトハ、今更呶々ヲ要シナイ所デアリマス、ンレ故ニ政府
當局ニ於カレテモ、前議會ニ於テ本員ガ建議シタ所ノ趣意
ヲ容レラレテ、地方〓育行政調査會ヲ設ケラレテ、サウシテ
其對策ヲ講ゼシメラルヽコトニナッタノデアリマスルガ、爾來
此調査會ノ經過ヲ見テ居リマスルト云フト、既ニ其設置以
來半歲以上ヲ經過致シテ居ルニモ拘ハラズ、今ニ至ッテモ尙
ホ何等ノ成案ヲ得テ居ラレヌ、唯僅ニ假決議ト云フモノガ
出來テ居ルノデアル、併ナガラ其假決議ハ發表ニチルト同
時ニ、世上ノ非常ナル物議ヲ醸シテ居ルト云フヤウナ次第
デアッテ、今後是ガドウ云フコトニ處置サレルヤト云フヤウナ
事ニ付テハ、滿天下非常ナル疑惑ヲ持シテ居ルノデアリマス、
ソコデ此〓育費ノ解決ニ付キマシテ、當局ガ是迄ニ漏ラサ
レタ所ノ意嚮ヲ承リマスルト、當局ニ於テモ最早ドウシテモ、
此解決ヲシナケレバナラヌト云フコトハ認メテ居ル、相當ノ
增額ヲシテヤラナケレバナラヌト云フコトハ認メテ居ル、ソレ
ニ付テハ海軍制限ノ結果、ソレヨリシテ相當ノ金ガ生ミ出
サレルノデアルカラシテ、之ヲ振リ向ケルト云フヤウナ事ヲ漏
サレ、ツイ先頃全國町村長ノ代表者ガ、當局者ト會見シタ
場合ニ當リマシテモ、矢張當局者ハサウ云フヤウナ意嚮ヲ以
チマシテ、何レ其中ニ臨時議會ヲ開イテ、其場合ニ追加豫
算トシテ之ヲ計上シヤウト云フヤウナコトマデ言ハレタト傳
ヘラレタガ、其事ハ其後ニ至ッテ當局カラシテ取消サレテシマッ
テ居ルヤウナ譯デアル、ソレ故ニ今日迄ノ當局者ノ態度ニ
付テ見マスレバ、全ク此問題ニ對シテ如何ナル御考ヲ持ッテ
居ルノデアルカ、洵ニ有耶無耶ニ歸シテ居ルヤウニ思ハレル
ノデアリマス、今日此地方ノ自治體ハ御承知ノ如ク、來年
度ノ豫算ヲ決定セネバナラヌ時期ニ際會シテ居ルノデアリ
マス、ソレ故ニ其町村費ノ大部分ヲ占メテ居ル所ノ〓育費
ニ關係シタル此問題ガ、如何ニ解決ヲサレルカト云フコトニ
付キマシテ、其事ガ判然シマセヌ爲ニ、町村トシマシテハ來
年度ノ事業計畫ヲ如何ニスベキカ、政費ノ按排ヲ如何ニス
ベキカト云フコトニ付テハ、非常ナル當感ニ陷ッテ居ルコトヽ斯
ウ思フノデアリマス、此等ノ點ヲ當局ガ顧ミラレマシタナラバ、
一日モ速ニ此解決ヲ告ゲラレナケレバナラヌ、相當ノ處置ヲ
講ゼラレナケレバナラナイト斯ウ思フノデアリマスルノニ、只
今申上ゲタヤウナ態度デアル、而モ此事ガ前年來ノ懸案デ
アルニモ拘ラズ、當局ハ海軍制限ノ結果生ミ出サレル所ノ
其金ニ依シテ此解決ヲ付ケヤウト云フヤウナコトヲ言ハレル
コトハ、吾ヒハ甚ダドウモ其意ヲ得ナイト思フノデアリマス、
此海軍制限ノ事ハ、言フマデモナク是ハ天カラ降ッテ湧イタ
ヤウナ事デアルノデアリマス、斯樣ナ事ヲ當ニシテ此懸案ヲ
解決シヤウトナサレルノデアルカ、若モ此海軍制限ノ事ガ現
レテ來ナカッタナラバ當局ハ如何ニシヤウト爲サルノデアリ
マスカ、ソレヤ是ヤヲ考ヘテ見マスルト、當局ノ此問題ニ對ス
ル態度ト云フモノハ如何ニモ不深切デアル、如何ニモ不誠
意デアルト斯ウ思フノデアリマス、然ルニ今日又此建議案ヲ
持出サレルノデアリマスルガ、當局ノ斯樣ナ態度ヲ以テシマ
シテハ、折角此議會ニ於テ全員一致デ之ヲ決議致シタトシ
マシテモ、直ニ其目的ヲ達シ得ラレルヤ否ヤ、甚ダ疑ハシク
思フノデアリマス、ソレ故ニ私ハ此場合ニ於テ、當局ハ此建
議案ニ對シテ如何ナル御考ヲ持ッテオキデニナルカ、ソレヲ承
リタイノデアリマス、卽チ第一ニハ此地方〓育行政調査會
ニ於テ假決議トナッテ居ル所ノ事、此事ガ愈、本決議トナッ
テ來タ場合ニハ、如何ニ之ヲ當局ハ御取扱ニナラウト爲サ
ルノデアルカ、更ニ又此〓員俸給國庫負擔ノ增額ト云フ事
モ、直ニ此事モ十一年度ノ豫算ニ於テ計上ナサル御意嚮デ
アルヤ否ヤ、此二ツノ點ヲ承ッテ置キタイノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=91
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092・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 中橋文部大臣
〔國務大臣中橋德五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=92
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093・中橋徳五郎
○國務大臣(中橋德五郞君) 只今各派ヨリシテ國庫負
擔金ノ增額ノ御建議ヲ御提出ニナリマシテ、各〓其御說明
ナサル御方ノ御演說ヲ拜聽致シマシタ、當局ニ於テハ大體
ニ於テハ御同意ヲ致シテ居ル譯デアリマス、色〓其中ニ理
由ヲ御述ニナリマシタガ、ソレニ付テ一々當局ノ意見ヲ申上
ゲルノモドウカト思ヒマスルカラ、大體ヲ御話致シマス、昨年
地方〓育行政調査會ヲ、當局ガ當院ノ建議ニ基キマシテ、
設置致シマシタヤウナ譯デアリマス、之ニ付キマシテハ、色こ
推測モアリ、疑惑モアリ、誤解アルヤウニ思ヒマス、當局ノ考
ハ、是ハ年々〓育費ガ增額スルモノデアリマスカラ、之ヲ一
面ニハ整理ノ途ガアレバ出來ルダケ整理シテ見タイ、有效ニ
之ヲ使ヒタイト云フ考ヲ執ッテ居リマス、一面ニハドウシテモ
國庫ノ補助ヲ增額ヲ致サナケレバナラヌト云フコトヲ豫テヨ
リ考ヲ持ッテ居ル譯デアリマス、唯中ニハ當局ノ頻リニ誠意
ヲ御疑ヒニナッテ、今日マデ出サナイノハドウカト云フコトデ
アリマスガ、是ハ洵ニ殘念デアリマス、當局ハ之ニ對シテ年々
心配ヲシテ居ル次第デアリマス、又此方法ニ付キマシテハ、
今日御提出ニナリマシタル建議案ニ於キマシテモ、色〓違シ
テ居ルヤウニ見受ケマス、或ハ〓員ノ俸給ノ半額ヲ國庫ヨ
リ支出スルヤウニト云フ御趣意ガ多イ、ソレニ加フルニ町村
ノ財政ノ救濟ヲ致シタイト云フコトニナッテ居リマス、當局ガ
今日マデ實行致シマシタ實驗ノ御話ヲ申上ゲマスルト、先
年發布ニナリマシタ法律、國庫負擔法ト云フモノヲ實施致
シマシタガ、此目的ヲ十分ニ達シテ居ラナイト思ヒマス、ドウ
云フコトカト申シマスト、全國市町村ノ數ガ非常ニ多イ、其
又富力、負擔力ト云フモノヲ極テ等差ガアルノデアリマス、纔
ニ經費ノ七八步、一割位デ〓育費ヲ支拂ッテ居ル所ガアル、
多イ所ハ殆ド七割五分カラ八割ニ互ッテ居ルヤウナ懸隔ガ
アルノデアリマス、今日最モ當局トシテ考へテ居リ、是非救
濟シナケレバナラヌト思ウテ居リマスノハ、卽チ此全國ニ於
キマスル、資力ノ薄弱ナル町村ノ財政ヲ第一ニ救濟ヲシテ
見タイ、斯ウ云フ計畫ヲ持ッテ居リマス、卽チ六割、七割、八
割ト云フヤウナ〓育費ノ負擔ヲ持ッテ、而シテ此負擔ヲ支
拂フニ其村ノ資力ガ乏シイ、斯ウ云フノハ第一ニ之ヲ救濟
シナケレバナラヌト云フ考ヲ持ッテ居リマス、之ニ反シマシテ、
主トシテ市デス、就中六大都市ノ如キ資力ノ富有ナル所ハ、
其〓育費ノ負擔ニ苦痛ヲ感ジテ居ナイト見受ケルノデアリ
マス(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」)中〓立派ナル學校ヲ拵ヘテ、實
ニ立派ナル設備ヲ段々サレルノデ、私共ハ之ニ向ッテ非常ニ
敬意ヲ表シテ居ル次第デアリマス、又比較的サウデナクテモ
貧弱ナル三百戶、四百戶アタリノ負擔力ノ乏シイ村ニ比ベ
マスト、マルデ比較ニナリマセヌ、當局ハ之ヲ愈.ヒ實行スルニ
於キマシテハ、是等ノ事モ御相談ニ及バウト思ウテ居リマス、
ソレカラ十一年度ノ追加豫算ニ提出ヲシロト云フ御注意
ガアリマシタ、又中ニハ先日總理大臣ガ施政ノ方針ニ付テ
申述ベマシタヤウニ、軍縮ノ金ガ出ル其暁ニ、之ヲ以テ第一
此補助費ニ充テル、斯ウ云フノニ御同意ノ御方モアルヤウ
ニ見受ケマス、當局ト致シマシテハ、十一年度豫算編成ニ
當リマシテ、色ニ財源ヲ見付ケルコトニ苦心ヲ致シマシタ、
又ソレニ付テ方法モ考ヘマシタケレドモ、是ハ今日當局ノ苦
心トシテドウゾ御聽ヲ願ヒタイト思ヒマス、其折丁度此華
盛頓會議ノ軍縮ノ問題ガ米國ニ於テ發議ヲサレタト云フ
コトデアリマスカラ、我國ノ大體ノ財政ト一云フモノニ對シテ
影響ヲ及ポシタ、卽チ好影響ヲ及ボシタ譯デアリマス、是ナ
ラバ此會議ヲ終ルノヲ待ツノガ目的ヲ達スルニ宜カラウ、金
ヲ支出ヲ致シマシタ所ガ、出ス以上ハ相當ノ金額ヲ出サナ
ケレバナラヌ、是ナラバ或ハ相當ノ金額ヲ支出スル途ガ開ケ
ルダラウ、斯ウ云フ事ニ田局ハ苦心致シマシテ、十一年度追
加豫算ヲ提出スルノヲ止メマシタノデアリマス、財源ガ乏シ
イノデアリマス、ソレニ付キマシテ先程政府ハ、折角高等〓
育ニハ金ヲ出スガ、初等〓育ニ金ヲ餘リ出サナイト云フ御
話ガアリマシタ中ノ一例ニ、一億五千万トカ、高等〓育機
關ニ金ヲ出スダラウト云フ御話ヲ承リマシタガ、是ハ蓋シ御
記憶違ヒ、桁違ヒダラウト思ヒマス、又桁違ヒデモソレ程モ
出ナイカモ知レマセヌト云フヤウナ譯デアリマス、從來高等
〓育機關ニ力ヲ用ヰタ、斯ウ云フ御話ガ段々アリマスルガ、
無論其通リデアリマス、當局ハ熱心ニ高等〓育機關ノ擴
張ニ力ヲ用ヰマシタ、之ニ一大缺點アリト思ヒマシタカラ、
之ニカヲ用キタノデアリマス、然ルニ初等〓育ニハドウデア
ルカ、初等〓育ニ向フテモ餘リニ政府ハ力ヲ用キナイト云フ
ヤウナ御話ガ段々アリマスガ、是ハ國庫ノ金ヲ使シタト云フ
ダケノ單純ナル意味ト、私ハ解釋スルノデアリマス、ト申シマ
スノハ小學校ノ〓員ノ給料ノ補助ト致シマシテ、前內閣ノ
時ニ一千万圓ヲ支出シ、ソレガ今日ニ來テ居リマス、現內
閣ニナリマシテ、五千万圓ノ給料ノ增額ヲシタ、是ハ急速ニ
實行ヲスル考デヤリマシタノデ、市町村デ之ヲ支拂フ、斯ウ
云フコトニナッテ居リマス、殆ド〓員ノ給料ヲ倍ニシタ、三百
圓ノ給料ヲ六百圓以上ニシテ、初等〓育ニ非常ニ力ヲ用
井タト云フコトニドウカ(「物價騰貴ハドウカ」ト呼フ者アリ)
デ向フノ力ノ乏シイ所ニ對シテハ段々苦痛ヲ感ズル事ガ多
クナリマスカラ、之ニ負擔ノ轉換ヲヤラウト云フ考デアリマス、
卽チ國庫ノ方ニ財源ヲ求メルカ、租稅ヲ何シテ地方ノ貧弱
ナ處ニ之ヲ廻ハス計畫ヲシテ居リマス、幸ニ華府會議ノ結
果、軍縮デ相當ナ金ガ出マセウ、ソレデ只今最後ノ御質問
ノ中ニアリマシタ來年度ノ豫算ノ編成ニ付キマシテ、市町
村ニ於キマシテ餘程面倒ヲ感ジテ居ル、是ハ洵ニ同情ニ堪
ヘマセヌ、故ニ十一年度ニ追加豫算ヲ提出致シマシタナラ
バ、洵ニ好都合デアリマスルガ、只今當局ト致シマシテ、殘念
ナガラ其手續ヲ運ビ兼ネマスノデ、是非軍縮ノ整理ガ出來
マシタ場合ニハ、速ニ此方ニ金ヲ向ケタイ、斯ウ云フ當局ハ
意嚮ヲ持ッテ居リマス、當局ノ所信ダケヲ申述ベテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=93
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094・樋口秀雄
○樋口秀雄君 私ノ演說中ノ數字ノ訂正ヲサセテ戴キタ
イ、宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=94
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095・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=95
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096・樋口秀雄
○樋口秀雄君 只今文部大臣ノ御答辯中ニ、所謂昇格
案其他ニ伴ヒマスル經費ノ總額ヲ、一千四百四十万圓ト
云フベキノヲ、私ガ誤ッテ一億四千四百万圓ト申シマシタ、
是ハ只今速記錄ノ方へ訂正ヲ申込ンデ置キマシタガ、改テ
議長ノ許可ヲ得テ滿場ノ諸君ニ訂正シテ置キタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=96
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097・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 日程第十七ヨリ第二十ニ至ル四案ヲ一
括シテ、議長ノ指名ヲ以テ特ニ十八名ノ委員ニ付託セラレ
ンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=97
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098・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 鈴木君ノ動議ニ御異議ハナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第二十一決議
案ヲ議題ト致シマス-提出者中野正剛君
第二十一決議案(中野正剛君提出)
決議案
決議
政府當局ハ華盛頓會議ノ經過ニ就テ國民ノ理解ヲ求
ムルニ不十分ナルモノト認ム
右決議ス
〔中野正剛君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=98
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099・中野正剛
○中野正剛君 「政府當局ハ華盛頓會議ノ經過ニ就テ國
民ノ理解ヲ求ムルニ不十分ナルモノト認ム」ト云フノガ本決
議案デアリマスガ、政府ハ速ニ我國ガ如何ナル國際的地位
ニ置カレタルカヲ明白ニシ、此新時代ニ適應スベク、國民ト
共ニ拮据經營ノ決意ヲ定メヨト云フノガ本案ヲ提出スル
根本理由デアリマス、今簡單ニ此根本理由ヲ說明致シマス、
凡ン國家トシテノ不幸ハ、其國民ガ自ラ所屬スル國家ノ地
位ヲ諒解セザルヨリ甚シキモノハアリマセヌ、政府當局者ハ
須ラク國民ニ向ッテ國家ノ現存スル地位ヲ解セシメ、此正
當ナル諒解ノ上ニ立チテ、正當ナル努力ニ出デシムルコトガ
最モ必要デアルト思フノデアリマス、我國ハ巴里講和會議
ニ於テ、其意味ヲ明白ニ徹底セシムルコトガ出來ズ、サウシ
テ華盛頓會議ニ臨ンダ、華盛頓會議ノ結末ハ、幾多忌ムベ
キ悲ムベキ事ガアル、多クノ效果ヲ齎シタル半面ニ、多クノ
悲ムベテ事實ガアル、曩ニ巴里講和會議ノ意義ヲ自ラ明白
ニセズ、國民ニ明白ナル諒解ヲ求メズシテ、華盛頓會議ニ臨
ンダル政府當局者ハ、今日其意義ヲ國民ニ徹底セシメザル
ニ於テハ、來ルベキ國際政局ニ於テ、更ニ々々悲ムベキ地位
ニ陷ルデアラウト云フコトヲ、本員ハ衷心ヨリ憂慮ニ堪ヘナ
イノデアル(拍手)英吉利ノ「ロイドジヨージ」ガ大戰ノ最初英
吉利ガ幾多ノ不覺ヲ取リタル時ニ、吾〓ハ世界ノ那邊ニ置
カレタルカ、明ニ事實ヲ直視スルコトガ、卽チ正當ナル努力
ニ出ヅル第一步ナリト稱シ、政府當局者ノ一員デアリナガ
ラ、國民ノ前ニ英吉利ノ失態ヲ暴露シ、努力ヲ求メタルコト
ガ、英國ヲシテ此大戰ノ「チヤンピオン」タラシメタル所以デア
ルト信ズル、高橋總理大臣モ此處デ述ベラレマシタヤウニ、
國ノ進ミガケニハ樂デアルガ、退却際ハ色〓困難デアルト言
ハレタ、日本ハ外交的地位、經濟、產業、貿易ノ大勢カラ見
マシテモ、此國ハ明ニ難局ニ置カレテ居ル、或意味ニ於テ退
湖ニ引立テラレテ居ル、此際ニ於テ國民ヲ緊縮セシメ、國民
ヲシテ其居ル所ノ地位ヲ理解セシメ、努力ニ出ヅルコトガ、
最モ急務デアル、徒ニ自國ノ地位ヲ誇揚シ、其誇揚シタル
地位ヲ以テ自己內閣ノ成功ナルガ如クニ吹聽シ、弛緩セル
人心ヲシテ益〓緊張ヲ缺カシムルガ如キハ、邦家ノ爲ニ取ラ
ザル所ト私ハ信ジマス(拍手)想フニ巴里講和會議ヨリ華盛
頓會議ヲ經テ、幾多我國ノ前ニ困難ナル問題ガ提供セラレ
テ居ルガ、其事實ガ明白ニナッテ居ナイ、外務當局者ハ此頃
書類ヲ頻ニ發表シテ、華盛頓會議ヲ文書的ニ公開セラレテ
居リマスルガ、其根本ノ意味ガ、少シモ國民ニ明白ニナッテ居
ナイ、吾ミハ諸君ト共ニ、此議場ニ於テ當局者ノ外交上ノ
意見ヲ承リマシタガ、諸君ノ中ノ如何ナル人ト雖モ、アノ形
式一片ノ報告ヲ以テ御滿足ハ爲サルマイ(拍手)國民ニ代ッ
テ眞意義ヲ諒解セシメント欲セバ、モウ少シ政府當局者ヲ
シテ振假名拔キノ、玄人ニ分カル、而シテ徹底シ易キ意味ヲ
發表セシムルト云フヤウナ御希望ガ無イ筈ハナイノデアル、然
ルニ此意味ガ何故明白ニナラスカト言ヘバ、第一政府當局
者ハ國家ノ地位ハ困難デアル、外交ハ至難デアル、我日本
ノ前途ハ安クナイト言へバ、直グ自分ノ失敗カノ如クニ了解
サレヤウト云フ怖ヲ懷イテ居ラレル、ソコデ時局ヲ明白ニス
ルト、國ノ困難ナル所以ガ分カリ、之ニ關聯シテ自己ノ失敗
ガ出テ來ル、ンレガ厭ヤナノデアル、卽チ內閣諸公ハ、國家ヲ
重シトシナイコトハアリマスマイガ、更ニ一身ノ地位ヲ重シト
スル感情ニ支配セラレテ、端的ニ國民ノ前ニ事實ヲサラゲ
出ス勇氣ヲ持ッテ居ラレナイ(拍手)モウ一ツハ、私ハ、今日ノ
官僚外交家、政治家、舊式ノ頭腦ヲ有スル人ミニハ、世界
ノ形勢ガ分ラナイト思フ、形ノ上ノ形勢ハ分ッテ居リマセウ
ガ、其形勢ヲ造ル世界ノ人心ノ波ノ打チ加減ガ分ッテ居ナ
イト思フ、更ニ其人心ヲ造ル世界ノ經濟狀態、世界人類ノ
生活ノ實情ニ徹底シテ居ラレナイト思フ、私ハ前者デアルナ
ラバ、明白ニ不德デアル、知リナガラ國民ノ前ニ發表シナイ
ノハ不德デアルト思フ、知ッテ之ヲ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=99
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100・野溝傳一郎
○野溝傳一郞君 議長、議事ノ進行ニ付テ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=100
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101・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 今發言中デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=101
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102・野溝傳一郎
○野溝傳一郎君 外務大臣ノ出席ヲ求メマス(「ヒヤ〓〓」)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=102
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103・中野正剛
○中野正剛君(續) 知リテ之ヲ明白ニシナイノハ不德デ
アルガ、形勢ヲ理解シナイコトモ亦不德デアル、今日ノ倫理
觀念ニ於テ、極メテ無智ナルコトハ、極メテ不德ナルコトヽ
一致スル、況ヤ先日外務大臣ガ此壇上デ本員ノ質疑ニ對
スル答辯ノ如キハ、最モ奇々怪々デアリマス、私ハ此新形勢
ニ對シテ、總理大臣ト共ニ經濟的ニ解說ヲ下シ、明白ニ御
說明ヲ願ヒタイト、斯ウ云ヘバ、新シク出來タ四國協約其
他ニ向ッテ疑義ヲ挾ミ、他國ノ動機ヲ疑ウ、言葉ハ古イ、世界
ハ國際協力ノ時代デアッテ、ソンナ競爭時代デハナイ、アナタ
ハ「インピリアリズム」ノ思想ヲ持ッテ居ルノダト、私ハ其答辯
ヲ聞イテ實ニ驚イタ、左樣ニ簡單ニ、世界ノ問題ガ、昔ハ國
際競爭デアッタガ、今日ハ國際協力ダ人間ノ心ガ、サウ十年
二十年ニハ一變シナイ、國際協力モアレバ國際競爭モアル、
競爭シナガラ協力スル、協力シナガラ競爭スルノガ今日ノ實
狀デアル、又强テ列國ノ侵略主義トカ、軍國主義ト云フモ
ノガ無イニシテモ、列國共ニ產業立國主義ヲ拾テナイ、國民
黨ヨリ軍備縮少案ガ出テ居リマスガ、同ジ國民黨ハ同時ニ
產業立國主義デアル、產業國ヲ立テヨト言ヒ國ヲ廢セヨト
ハ言ハナイ、乃チ產業立國主義ガ存スル以上ハ、原料問題
トナリ、市場問題トナリ、世界列國ノ間ニ競爭ノ起ルコトハ、
必然ノ結果デアル、卽チ競爭ヲ緩和シ、協力シナガラ世界ノ
大勢ニ後レナイダケノ實力ヲ養ハナケレバナラヌ、其實力ヲ
涵養スベク、今日ノ外交ガ果シテ我國ニ十分ノ餘地ヲ與ヘ
クカドウカト云フノガ私ノ質問デアッタ、其意味スラ御了解
ニナラナイ、昔ハ國際的競爭ヲシタガ是カラ後ハ協力デアル
ト、私ハ國民生活ノ苦痛ヲ自ラ嘗メナイ所ノ官僚者流ノ言
トシテ、多ク之ヲ恠マナイガ、私ハ其簡單ナル議論ニ驚ザル
ヲ得ヌ、丁度帝國主義ノ穂積流義ノ憲法デガチ〓〓ニ固メ
ラレタ無智ノ學生ガ、少シ風ノ吹キ廻ハシデ「ウキルソン」ノ
十四箇條ニ有頂天ニナッテ嘆美スル、一轉シテ「マルクス」ニ
ナリ、再轉シテ「クロポトキン」ニナル、ソレト同ジデアル、昨日
マデ西伯利出兵ヲ裏書キシタ内閣ノ外務大臣ガ、今度ノ日
本ノ外交ガ退潮ニナッテ、敵ハヌトナッテノ穩健沙汰デ、今度
ハ協力ダト云フ、丁度無智ナル學生ガ穗積流ノ憲法ヨリ「ク
ロポトキン」ニ急轉直下シタト同ジデアル、是ハ頭腦ガ無イカ
ラデアル、現實ノ苦惱ヲ經テナイカラデアル、內閣諸公ノ中
ニハ高橋總理大臣ノ如キ、野田卯太郎君ノ如キ、今度華
盛頓會議ニオイデニナッタ橫田千之助君ノ如キ、現實ノ波
ヲ潜ッタ人ガ居ラレル、政友會ノ領袖諸君ガ、戰鬪力ヲ有セ
ラルヽノハ、其現實ノ試練ヲ受ケテ居ラレル其人々ガ、モウ
少シ世界ノ狀況ヲ常識ヲ以テ判斷シ、其常識ヲ以テ國ヲ
立テル根本精神ヲ何故維持セラレナイカト言ヒタイノデア
リマス(拍手)巴里講和會議ニ於ケル世界ノ外交ガ、舊式ノ
駈引デナクシテ、國際生活ノ現實ノ相磨擦スル舞臺デアルコト
ヲ知ラズシテ、殿上人ノ西園寺公ヲ任命シタル內閣ハ、同ジ
ク華盛頓會議ニ德川公爵ヲ任命シク(拍手)私ハ德川公
爵ニ對シテ何等批評ヲ挾マナイ、サリナガラ彼ノ人ハ生レナ
ガラニシテアノ貴イ人デアル、國民生活ノ現實ヲ經ナイアノ
人ガ、國民生活ヲ按排セントスル所ノ國際舞臺ニ立ッテ、何
程ノ胸中ノ衝動ヲ感ズルカ(拍手)假ニ英語ヲ話シテモ、外交
ヲ論ジテモ、產業ヲ說イテモ、ソレハ自ラ體驗セザル言葉デア
ル、左樣ナ事デハ、主張ニ壓力ナク、世界ノ列國ノ千辛萬苦
ヲ經來タッタル政治家外交家ノ中ニ立チテハ、恰モ田舍ノ
酋長カ何カノヤウナ感ジヲ與ヘタコトハ、理ノ當然デアルガ、
國民トシテハ最モ遺憾ニ堪ヘナイ次第デアル、抑モ我當局
者ハ、最初ヨリ華盛頓會議ノ意味ヲ了解シテ居ナカッタ、軍
備制限ナドト云フコトハ、先ヅ出來ル問題デモナカラウ、出
來タ所デ黴底的ニ行クマイ、ソレニハ地位アリ、名望アル公
爵ヲ出シタラ、ソレデ宜カラウト、其態度ガ國際競爭ノ間ニ
立チテ、我國ヲ困難ニ陷ル、根本理由デアルト私ハ思フ(「拍
手」「ノウ〓〓」)抑モ華盛頓會議ナルモノガ如何ナル理由ニ
依ッテ始メラレタカ、軍備制限ナル聲ハ、是ハ世界人類ノ聲
デアル、此軍備制限ト云フ案ヲ協定シタダケガ成功デアルト
云フナラバ、如何ナル人ヲ出シテモ、又日本ヨリ委員ヲ出サ
ズ、英米ニ委託シテ盲印ヲ捺シテモ、是ダケハ成功スルニ決
マッテ居ル(「ヒヤ〓〓」拍手)世界ハ四年半ノ大戰爭ヲ經テ、
彼ノ一大破壞ヲ終ヘタル後ニハ、經濟ニ於テモ、金融ニ於テ
モ其組織ヲ恢復スルコトガ急務デアル、國民ハ又負擔ノ輕
減ヲ圖リタイ、資本家ハ租稅ノ輕減ヲ圖リタイ、亞米利加
ニ於テモ其レデアル、卽チ軍備縮少ト云フ聲ハ、世界人類
ノ生活問題ト關聯シテ居ル、卽チ力ノ第一義ノ上ニ居ル、
此軍備縮少卽チ世界人類ノ生活問題ト關聯スル案ヲ提
ゲテ立上ッタ亞米利加ノ政治家ハ、如何ナル者デアルカト云
ヲコトヲ、當局者ハ了解シテ居ナイ、亞米利加ノ國民ハ租
稅ノ輕減ヲ希フ外ニ別ニ考ハナイ、サリナガラ亞米利加ノ時
局ニ與ッテ居ル此共和黨ノ「ハーデイング」其背後ニ居ル幾
多ノ政治家ハ、皆帝國主義者デアル、此人々ガ世界人類ノ
生活ヲ緩和セントスル其力ニ依ッテ、外交問題ヲ解決シヤウ
ト云フノガ、今度ノ華盛頓會議デアル、卽チ軍備制限ト云
フモノハ、生活問題ニ關聯スル、譬ヘバ機關車デアレバ隨分
强イ石炭ガ燒カレタ、此强力ナル機關車ヲ以テ、世界萬國
ノ反對シ得ザル問題ヲ先キニ立テヽ、實際ノ外交問題ヲ處
理シヤウトシタノガ、卽チ亞米利加ノ政治家ノ魂膽デアル、
此意味ガ日本ノ政治家ニ徹底シテ居ナイ、私共ハ軍備制
限ニ付テハ、少シモ異議ヲ挾マヌト共ニ、最モ熱心ナル賛成
者デアル、サリナガラ抑モ軍備制限ト云フ問題ガ起ッテ、之ニ
太平洋ト云フモノヲ關聯シテ提案シタ時ニ、政府當局者ハ
何故モウ少シ考ヘナカッタカ、太平洋問題-軍備制限ナラ
バ、世界普遍ノ問題デアル、世界到ル處ニ戰爭ノ危機ハ伏在
シテ居ル、其戰爭ノ危機ヲ除カンガ爲ニ、軍備制限ト共ニ外
交問題ヲ議スルナラバ、國際聯盟ノ繼續デ宜シイ、何モ太平
洋ニ限ルコトハナイ、軍備制限ト太平洋問題トヲ關聯セシ
メテ提案シタ所ニ、亞米利加ノ實際政治家ノ魂膽ガアル、而
モ太平洋問題ナラバマダ宜イガ、軍備制限及太平洋極東問
題ト來テ居ル、若シモ英吉利ニ對シテ軍備制限及印度洋印
度問題會議ヲ開カウト言ッタラ、英吉利ハ之ヲドウシマスカ、
亞米利加ニ對シテ太平洋問題及墨西會議ヲ開カウト言ッ
タラドウシマスカ、佛蘭西ニ對シテ地中海問題及「モロッコ」
問題ヲ會議ノ題トシヤウト言ッタラ賛成シマスカ、軍備縮少
ト共ニ太平洋極東問題、卽チ日本生死殺活ヲ託スル重大
問題ノ中心ヲ世界ノ一番人氣ノ好イ軍備制限問題ト結
付ケテ提案來シタ所ニ、亞米利加ノ實際政治家ノ深キ手腕
ガアル、私ハ國際問題ニ對シテ、他ヲ疑フ心ヲ持ツコトヲ必
要トハシマセヌガ、他ニ欺カレザル聰明ハ、國民ノ爲ニ政府
當局者ガ持テテ居ナケレバナラヌト思フ、其極束會議ガ開カ
レル、太平洋會議ガ開カレルノヲヂット見テ居ッテ御覽ナサイ
其太平洋會議ハ、何時ノ間ニカ東經百八十度以西ノ問題
トナッタ、太平洋ノ眞中カラ中斷シテ、亞米利加ノ力ノ及ブ
束ノ半面ハ取シテ除ケテ、日本ヲ拘束スル百八十度以西ノ
問題卽チ太平洋問題トナッタ、更ニ御覽ナサイ、國防制限
區域ヲ御覽ニナルト、東經百八十度カラ束經百十度マデ、
而モ赤道以北ニシテ北緯三十度以南ト云フ丁度日本ヲ
中心トシテ日本ノ國防ヲ制限スル所ダケガ國防制限區域
ニナッテ居ル(拍手)東京府下小笠原島ガ國防制限區域ノ
中ニ置カレテ居ル、亞米利加ハ二千哩ヲ飛ンデ、日本ニ近
接シタル布哇ヲ十分ニ防備シテ宜イコトニナッテ居ル、常識
デ考ヘテ、東京府下ニ防備制限ヲ命ゼラレ、他ヲシテ二千
哩ニ突出セシムル、此ヤリ方ガ果シテ常識ヲ以テ成功デアル
ト見ラレルカドウカ、太平洋問題ヲ軍備縮少會議ト結付ケ
タル事、既ニ失敗デアル、更ニ其太平洋ガ太平洋ノ波打ツ
所ノ總テノ問題トシ、或ハ墨西哥ニ及ボシ、或ハ巴奈馬ニ
及ボシ、南米ニ及ボシ、全太平洋ノ問題トシテ、日本ガ世界
人類ノ爲ニ最モ公平ナル立場ヲ闡明スルト共ニ、亞米利加
ヲシテ此日本ノ態度ニ倣ハシムルダケノ大主張ヲ爲シ得ズ
シテ、唯有耶無耶ノ間ニ自己ノ主張ニノミ制限ヲ加ヘルガ
如キ會議ト爲シタルゴトハ、常識ヨリ判斷シテ、甚シキ大失
態ト私ハ斷言シタイノデアル(拍手起リ「十年臥新嘗膽」ト
呼フ者アリ)凡ン斯ノ如キ立場ニナッタ時ニ-臥薪営膽ト
仰シヤルガ、臥薪嘗膽ハ當年ノ武力侵略ニ對スル國民ノ覺
悟デアルガ、私ハ此經濟的難局、經濟的列國ノ壓迫ニ對ス
ル拮据經營ヲ諸君ノ前ニ說クノデアル、是ガ最モ必要デア
ルト私ハ思フ、太平洋問題ハ斯ノ如クシテ解釋セラレ、四國
協約ハ英米佛三國ノ多數決ヲ以テ臨ム時ハ、日本ノ生死
殺活ヲ託スル大問題ヲ、此多數決ノ判斷ニ御委セスルト云
フ、三國干涉ヲ文字ノ上ニ許シタノガ、四國協約デアルト、
此間此壇上ニ突込ンダ時ニ、外務大臣ハ何タル御答モ出
來ナカッタ、更ニ又進ンデ御考ヘニナルト、極東問題デス、緩
クリ呑氣ニ考ヘテ居ルト、幾多ノ問題ガ安逸ニ流レタル我國
民ヲシテ、近接スルニ遑アラシメズ、後カラ後カラ追隨シテリ
來ル、支那問題ニ於テドンナ事ガ決マッタカ諸君御存ジデア
マセウ、九箇國條約ガ決フタ、「ルート」四原則ガ決マッタ、更ニ
支那ノ經濟開放ニ對スル日本支那兩國ノ宣言ガ發表セラ
レタ、是等ヲ捉ヘテ當局者ハ總テ成功ナリト言ヒ、是レアル
ガ故ニ日本ノ立場ハ益安泰トナッタト言ハレル、私ハ是等ノ
條約及協約宣言ノ内容ヲ見マスルト云フト、餘リ具體的局
モノハナイ、併ナガラ經濟學デ申セバ「コスモポリチカル」國際
經濟主義ノ原則ガ亞細亞ニ適用セラレルト云フ意味デア
ル、至極私ハ結構デアル、サリナガラ是程徹底的ノ國際經
濟主義ヲ極東ニ適用スルナラバ、同ジク經濟開放ヲ何故南
米ニモ、墨西哥ニモ、印度ニモ、適用シナイカト私ハ言ヒタイ
(拍手)凡ン世界人類ガ平和ヲ樂シマント欲セバ、世界人類
各こ立場ヲ曝ケ出シテ、互ニ公平ニ向フ事デナケレバナラヌ
今日國際協力ト當局者ガ唱ヘラレルケレドモ、國際協力ノ
基礎トナルモノハ、國際經濟政策デナケレバナラヌ、昔「アダ
ム、スミス」ガ國際經濟論ヲ唱ヘタ時ニ、ソンナモノデハ物ニ
ナラスト人ガ言ッタ、何故カト云フト、國際協約ガ樹立シナケ
レバナラヌ、國際聯盟ノ如キモノガナケレバ駄目ダト言ウタ、
今日モ同樣デアッテ、國際協力ヲ說クナラバ、國際經濟主
義、國家經濟ヲ超越シタ超國家的經濟主義、國境ヲ排ス
ルヤウナ經済主義デナケレバナラヌ、然ラザル限リ、其國際協
力論ハ理想デハアリマスガ、未ダ机上ノ空論デアルト思フ、而
モ其國際經濟主義ヲ東洋ニ於テノミ之ヲ强制シ、彼等ノ
歐米デハ一切之ニ反對スル經濟的鎖國主義、國家主義ヲ
高調シ來シテ居ルノガ現實デナイカ、私ハ之ヲ衷心ヨリ遺憾
ニ思フ、支那ニ於ケル門戶開放、機會均等ト云フコトハ、言
換ヘレバ支那ノ自主的、自發的意見ニ藉リテ、他ノ强力ナ
ル經濟的ニ優越ナル國ガ、日本ヲ支那ヨリ驅逐スル前提ト
ナルコトハ明白ナル事實テアルト私ハ論斷シタイ(拍手)斯
ク中セバトテ、私ハ亞米利加ノ帝國主義ヲ云々スルノデハナ
イ、亞米利加ノ產業立國主義ハ、既ニ斯ノ如キ政策ニ出ツ
ルノ己ムヲ得ザル所ニ進ンデ居ル、亞米利加ハ當年ノ原料
國デナクシテ、今日ハ製造工業品ヲ賣出シテ、原料ヲ輸入
スル勢トナッテ居ル、此國ガ市場ヲ求メ、原料ヲ求メ、太平洋
ヲ躍リ越エテ、支那ニ進ンデ來ル時、玆ニ支那ノ原料ヲ獨
占シ、市場ヲ獨占スル所ノ政策ヲ生ムハ必然ノ勢デアルト
思フ、是ト協力セント欲セバ是ト協力スルニ足ル堅實ナル
立場ヲ以テ、彼ヲシテ侵サシメザルダケノ地位ヲ維持セザレ
バ協力ハ無意味デアル、絕對ノ强者ト絕對ノ弱者トノ間
ニハ協力ハナイ、太平洋問題ヲ西太平洋問題トナシ、赤道
以南トナシ、丁度大阪ノ冬ノ陣ニ外濠ヲ埋メテ、講和ヲナシ
タヤウナ大勢ヲ促シタル曉ニ、此極東ニ於ケル列國トノ角
逐ニ於テ、日本ガ如何ナル地位ニ陷レラレルカト云フコトハ、
常識アル諸君ガ御考ヘニナレバ、私ハ明白ナル事實トシテ
分ルデアラウト思フ(拍手)モウ一ツ諸君ト共ニ一考セザル
ベカラザルコトハ、山東問題デス、山東問題ハ未解決デアル
ト云フコトハ、私ガ巴里講和會議ヲ見テ歸ッテ來タ時ニ、天
下ニ宣傳シタ、當局者ハ其時ニ、何ヲ言ッテ居ルノダ、別ナ事
ハ免モ角モ、山東問題ハ巴里デ立派ニ濟ンダ、之ヲ以テ天
下ニ御臨ミニナッタ、サリナガラ支那ガ對獨講和條約ニ調印
セズ、亞米利加ガ自ラ唱ヘ出シタル國際聯盟ヲ足蹴ニシテ、
聯盟ノ外ニ立チタル時ニ、米國ガ支那ヲシテ山東問題ヲ次
ニ提ゲシムルコトハ、明白ナル事實デアッタ、此常識ヲ以テ了
解シ得ベキ事實ヲスラ否認シテ、華盛頓會議ニ臨ンダデハ
ナイカ、而モ其山東ニ於ケル讓歩ノ有樣ハ、恰モ緣日商人
ガ懸値ヲ言フヤウナモノデ、先ツ靑島膠州灣ニ對スル議論
ハ、最初專管居留地論、其次ハ共同居留地、モウ一ツ譲ッテ
今度ハ自開商阜トナッテ居ル、巴里ニ於テ共同居留地ニ出
來ルコトヲ、華盛頓マデ引張シテ自開商阜ニシタ、山東鐵道
問題デモ、最初ハ山東鐵道ヲ自ラ獨占スル積リ、其次ハ借
款鐵道ニスル積リ、モウ一ツ讓シテ買收-買收ヲ許ス其年
限モ、二十年カラ十年、五年ト云フ風ニ段々讓シテ、其譲ッタ
ルハ何ガ故ニ讓ッタカト云ヘバ、支那ニ對スル親善ノ意義ヲ
徹底セシメン爲デハナクシテ、英米ニ對スル恐怖屈辱ノ政
策ガ產ンダル結果デアル(拍手)宜ナル哉、支那ノ全權ハ華
盛頓ニ於テ山東問題ヲ日本ト共ニ議スル時ニ、日本ニ向ツ
テハ議論セズ、恰モ陪審官ノ如キ地位ニ置カレタル英米ニ
向ッテ哀訴難願シタ、英米ガ睨メバ何處マデモ下ル、自ラ極
東ニ於テ日支親善ノ大策ヲ持チ、此亞細亞ノ平和ヲ保全
スル任務ニ居ル日本ガ、支那ニ向シ」テハ少シモ親善ノ考ヲ持
タヌ、國際協力ノ時代トナッタナドヽ仰シヤルケレドモ、腹ノ
底ニ支那ニ對シテハ何處マデモ高壓主義ヲ持チナガラ、英
米カラ睨マレテ敵ハヌト見テハ德健沙汰トナル、乃チ苛メレ
バ何處マデモ下ル、此大和民族ノ傳來的仁俠ノ精神ニ背
イタル政策ガ、卽チ山東問題ノ交渉ノ經緯デアッテ、シレヲ
今日ノ程度ニ讓シタト云ソコトハ、私ハ怪マナイガ、其讓方ノ
陋劣ナルコト、以テ日本ノ國柄ヲ世界ノ前ニ如何ニ卑シク
シタカト云フコトハ、諸君ト共ニ如何ニモ殘念ニ堪ヘヌノデ
アリマス(拍手)ンコデ山東問題ガアンナ風ニ解決シタ、アレ
デ御安心ニナッテ居ルト、又次ノ問題ガ起リマス、巴里デ夢
ヲ見テ居ノタト同樣、華盛頓會議デ山東問題ガ濟ンダト思ッ
テ居レバ、又次ニ問題ガ起ル、何カト申シマスレバ、山東問
題ハ所謂對支二十一箇條ノ要求中ニ、獨逸ノ權利ヲ繼承
スルト云フコトハ、チヤント極ッテ居ツタ、華盛頓會議ガ開カレ
タ最初ニ於テ、當局者ハ揚言シテ曰ク、特殊國家間ノ條約
及既定ノ事實ニハ斷ジテ遡ラナイト仰シヤッタ、ソレガ遡ッタ、
山東問題ハ遡ッテ日本ノ立場ヲ今日ノ如ク極メタノデアル、
此ニ於テカ對支二十一箇條ノ要求ナルモノハ、既ニ部分的
ニ破壞セラレタ、又當然投出シテ然ルベキ第五項ノ保留ヲ
投出サレタノモ尤デアル、ソレモ支那ニ對スル親善ノ大策
ニ依ルニアラズ、英米ノ前ニ恐怖シテ投出シタノデアル、
此ニ於テカ英米ニ對スル恐怖ノ爲ニ日本ハ對支二十
一箇條ノ問題ヲ切放シテ、既ニ譲步シ始メタ、ソコデ今日
對支二十一箇條ノ問題ハ國際政局ニ於テ既定ノ問題ニア
ラズシテ、未定ノ問題トシテ、今懸案トナサレテ居ル、此ニ於
テカ次ノ問題ハ必然ニ起ッテ來ル、諸君ト共ニ大ニ警戒スベ
キ事デアル、對支二十一箇條ノ要求ニ於テ、旅順、大連ヲ含
ム關東州ノ租借期限ハ、二十五箇年ヨリ九十九年ニ延バ
サレタノデアリマスルガ、既ニ對支二十一箇條ノ要求ヲ切
レ〓〓ニ抛棄シタトスレバ此問題モ亦起シテ來ル、二十五
箇年トスレバ千九百二十三年、乃チ來年ハ旅順大連ヲ含
ム關東州ノ租借期限ガ切レル、支那ハ必ズ是ガ還付ヲ要
求スル、亞米利加ハ必ズ之ヲ後援スル、更ニモウ少シ延ビテ、
千九百三十九年ニハ例ノ三十六箇年ノ滿洲鐵道ノ期限
ガ切レル、滿鐵モ千九百三十九年ニハ支那ガ之ヲ要求シテ、
亞米利加ハ必ズ之ヲ後援スル、而シテ滿鐵ヲ其際日本ガ
投出シタ刹那、支那自ラ之ヲ經營スルコト能ハズシテ、其後
ノ富强ナル國ノ影ガ映ジ來ッテ、我滿洲ニ太平洋ノ彼岸ニ
於ケル加州ノ如キ狀態ヲ演出シ來ルコトハ、今日ヨリ豫メ
警戒スベキ問題デアルト私ハ思フ、斯ノ如キ事ハ國家ノ根
本問題デアル、決シテ政黨ノ立場ニ依シテ見解ヲ二ツニスベ
キ事デナイ、或ル政府當局者ノ宣傳係ハ述ベテ曰ク、ンンナ
夢ヲ見ナクテモ宜イ、華盛頓ニ於ケル空氣ハ全然サウデナイ
亞米利加人モ現ニ言ッテ居ル、關東州トカ滿鐵トカ、云フモ
ノガ問題ニナルモノカト言ッテ居ル、併シンンナコトヲ言ヒナ
ガラ何時モソレガ問題ニナッテ來ルノデス、問題ニシナイノナ
ラバ此機會ニ是ハ問題ニナラナイト云フコトヲ國際條約ニ
於テ極メナケレバナラヌ、明白ニ極メズシテ、窃ニ亞米利加
人ガ言ッタカラ大丈夫ダ、是ハ問題ニナラヌト言ッテ呑氣ニ
構ヘテ居ルト云フコトガ、是ガ所謂日本ノ今迄ノ傳統的外
務省ノヤリ方デアッテ、有利ナ事ハ決定セズシテ延シテ置ク、
延シテ置イテ更ニ日本ノ地位ガ不利ナル時ニ之ヲ押付ケラ
レルノガ、今マデノ傳統的ヤリ方デアル、斯ク申セバトテ私ハ
關東州及滿洲ニ對シテ帝國主義ノ政策ヲ執レト言フノデ
ハナイ、滿洲鐵道ノ如キハ世界列國ノ公ノ道トシテ、世界ノ
前ニ公開スルコトニ付テ、其ヤリ方ニ依シテハチットモ私ハ反
對シナイ、例ヘバ滿鐵ヲ投出シ、露西亞ヲシテ西伯利鐵道
ヲ投出サシメ、日露兩國ヲ以テ西伯利滿洲鐵道ノ合辨ヲ
ヤル、亞米利加ガ異存ヲ提起スルナラバ、亞米利加ヨリモ金
ヲ借リテヤルト云フ位ノ雄圖大略ハ、日本人ガ持タナケレバ
ナラヌガ、今日ノ當局者ノ頭ハ、依然トシテ「インペリアリズ
ム」デアリマシテ、譲ッタノヲ言譯スル爲メニ、世界ハ以前ノ如
ク競爭時代デナクシテ、協力時代デアルト云フヤウナコトヲ
陳ベテ居ル、是ガ日本ノ爲メニ最モ憂慮スベキ現象デアルト
私ハ思フ(拍手)マダ〓〓見レバ澤山アリマスガ、太平洋ノ防
備協定區域ヲ御覽ニナッテモ【如何ニ太平洋會議ナルモノ
ガ偏務的ノモノデアルカト云フコトハ(此時何事カ發言スル
者アリ)何ヲ言ッテ居ルカ、君ダッテ分ル、能ク見ルト分ル、モウ
一ツ進ンデ見テ、支那問題ダッテ、此明白ナ事實ト云フモノ
ハ、如何ナル無智ナル者モ分ル、分ルナラバ此新時局ニ對應
スベク國民ニ桔据經營セヨト云フ、桔据經營』ヲスル前提ニ
先ヅ此新時勢ヲ了解七ヨト云フノデス、徒ラニ自己ノ地位
ヲ維持センガ爲メニ、ウカ〓〓ト色こナ事ヲ言ッテ、日本ハ三
大國ノ地位ニ上ッタトカ、或ハ我當局者ノ立場トシテ大イニ
宜シイトカ、左樣ナ言論ヲナスベキ時代デハナイ、思フニ政
友會ノ中カラモ現實ニ徹底セル諸君ガ華盛頓ニ行ッテ御覽
ニナッテ居ルカラ、如何ニ日本ノ立場ガ困難デアッタカ、御了
解デアラウト思フ、私ハ此際ニモウ少シ徹底セル意義ヲ提ケ
テ國民ノ諒解ヲ求メ、次ニ脅シ來ラントスル幾多ノ問題ニ
對シテ舊式ノ頭デナタ、世界列國ノ承認スルガ如キ方法ニ
於テ大ナル經綸ヲ立テ、上下ノ力ヲ戮セテ此經綸ヲ遂行セ
ヨト云フノガ私ノ議論デアル、此議論ヲ遂行スルノ前提トシ
テ、政府當局者ヲシテ吾こノ前ニモウ少シ意義ガ徹底スル
ヤウニ、華盛頓會議ヲ中心トシテ其經過ナリ、其結果ナリヲ
明白ニセシメ、諸君ノ了解ヲ求メテ、サウシテ天下國民ノ了
解ヲ求メシメ、臥薪甞膽ト迄ハ言ハズトモ、國民ヲシテモ少
シ緊張セシムルノ態度ニ出デヽ貰ヒタイト思フ、政府ガ財政
ヲドウスルトカ、國民ニ儉約ヲ奬勵スルトカ、色〓ナ事ヲ言ハ
レルケレドモ、日本ノ立場ハ大丈夫ダ、國際的地位ト云フモ
ノハ好都合ダト、大ニ浮カラカシテ置イテハ、國民ハ「緊張シ
ナイ國民ヲ緊張セシムル」大前提トシテ、國民ニ此現存スル
所ノ地位ヲ明白ニ了解セシムルト云フ事ガ、今日當局者ノ
責任デアリ、又政友會ト憲政會ト國民黨ト吾ニトヲ問ハズ
議員諸君ガ此方針ヲ以テ政府當局者ニ迫リ、サウシテ政
府當局者ヲシテ其責任ヲ遂行セシムルコトガ、私ハ日本國
民ニ對スル諸君ノ本分デアルト信ズル(拍手)此問題ニ對シ
テハ、私ハ恐ラク如何ナル御方モ御反對ノ御方ハナカラウト
思フ、ドウゾ滿場一致ノ御賛成ヲ願ヲテ演壇ヲ退キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=103
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104・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 此決議案ニ對シテ反對賛成ノ通
告ガアリマス、先ヅ反對カラ許シマス、林教陸君-マダ賛
成ノ通告モアリマスカラ、六時ノ定刻迄ニ討論ハ終ルマイト
思ヒマス、續イテ請願案件ノ日程ガ上ッテ居リマスガ、是ハ
極ク少時間デ終ルト思ヒマス、本日ハ總テノ日程ヲ議了ス
ル迄時間ヲ延長スルコトノ御同意ヲ求メマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=104
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105・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議無イト認メマス、時間ヲ延
長シマス
〔林毅陸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=105
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106・林毅陸
○林教陸君 諸君、私ハ只今中野君ニ依ヲテ御說明ニナ
リマシタ決議案ニ反對致ス者デアリマス、此決議案ハ只今
モ申サレマシタ通リ、政府當局ハ華盛頓會議ノ經過ニ付テ
國民ノ理解ヲ求ムルニ不十分ナルモノト認ム、斯ウ云フノデ
アリマシテ、十二月二十七日ニ、御提出ニナッテ居ルノデアリ
マス、只今御演說ヲ拜聽致シマシテ、中野君ガ我ガ國際關
係ノ事柄ニ付テ、多大ノ注意ヲ拂ハレ、大ナル熱心ヲ以テ、
之ヲ論ゼラレマシタニ對シテハ、甚ダ敬意ヲ表スルノデアリマ
スガ、唯其御說明ハ、多ク今日マデノ外交問題ニ付テノ同
君ノ所見ヲ發表セラレタモノヽヤウデアリマス、此決議案ノ
理由ヲ說明スルモノトシテハ、甚ダ其要領ヲ捉フルニ苦ンダ
ノデアリマス(拍手)華盛頓會議ハ御承知ノ通リ二月六日
ニ至ッテ結了致シタノデアル、二月六日ニ於テ重要ナル條約
z等モ調印ヲ了シ、愈〓閉閉會ヲ告ゲタノデアル、十二月末頃ニ
於キマシテハ、マダ此會議ガ如何ナル結末ニナルカ、確定的
ノモノトハナッテ居ナカッタノデアリマス、其十二月末ニ於テ
此決議業ガ出サレテ、華盛頓會議ノ經過ニ付テ國民ノ理
解ヲ求ムルニ不十分デアルト御叱責ニナリマシタガ、此場合
ニ於テハ、マダ此會議ノ成績等ニ付テ、十分ノ說明ヲスベキ
場合ニモ實ハナッテ居ナイノデアル(拍手)今年ノ一月ニ至ッ
テ議會ガ開カレマシテ、一月二十一日ノ本議場ニ於テ、外
務大臣ハ稍〓大體ノ經過ニ付テノ說明ガ出來マスノデ、ソレ
ゞ必要ノ部分、又說明シ得ラレル部分ニ付テハ、此處デ
演說ガアッタノデアリマス、サウシテ其時ノ演說ノ最後ノ部
分ニ於キマシテ、今日ノ國際狀態ハドウデアル、世界ノ大勢
ハ如何ニ動キツヽアルカ、又今日ノ場合ニ於テ、吾ニトシテ
如何ナル點ニ注意スベキデアルカト云フ、餘程廣イ國際政
治ノ全局ニ涉ッテノ注意スベキ點ヲ外務大臣ガ指摘シテ居
ラレルノデアリマス、中野君ハ先程ノ御演說ノ中ニ、國家ノ
地位ノ諒解ヲ爲サシメルコトガ必要デアル、國民ヲシテ居ル
所ヲ知ラシムルコトガ必要デアル、斯ウ云フ點ニ付テノ諒解
ヲ國民ニサセナクレバナラヌト云フコトヲ申サレタノハ、如何
ニモ其通リデアルガ、此一月ノ二十一日ノ外務大臣ノ演說
ノ末節ヲ御一讀ニナリマスナラバ、今日ノ場合ニ於テ、我國
民ハ如何ニ此國際政局ヲ見ルベキデアルカ、今日我國ハ如
何ナル狀況ノ下ニ居ルカト云フコトヲ、十分說明シテ居ルノ
デアリマス、多分此點ハ御聽キニナッタニ相違ナイ、私ハ中野
君ニ向ッテ一應更ニンレヲ繰返シ、一讀セラレンコトヲ希望
スルノデアリマス、デ中野君ノ段々御話ヲ承ッテ居リマスト
云フト、實ハ斯ウ云フ風ニ見ルノデアリマス、政府當局ハ華
盛頓會議ニ付テ理解ガナイ、華盛頓會議ト云フモノガ能ク
分ッテ居ナカッタノダ、軍備制限、海軍制限ト云フ、サウ云フ問
題ニ付テモ、ドウ云フモノデアルカト云フ理解モナク、大體此華
盛頓會議ト云フモノニ付テ、分ラズニ居タノダト云フヤウナ
意味ノ御意見ガアッタヤウデス、ンコニナレバ華盛頓會議ニ
付テ國民ニ理解セシムルノ問題デナイ、華盛頓會議ニ付テ、
政府當局ガ理解シテ居ラナイト云フ問題デアッテ、是ハ御意
見ノ儘、如何樣トモ御隨意デアリマス、又此會議中ニ出來マ
シタ事柄ニ付テ、太平洋ノ防備現狀維持ノ協定ノ意味デ
アリマセウ、之ニ付テ斯ク〓〓ニナッタコトハ是ハ日本ニ取ツ
テ甚ダ失態デアルトカ、大變是ハ日木ニ取ッテ不利益ナ協
定ニナッタモノト認メラレルヤウデアル、是ハ併ナガラ御意見、
若シ彼ノ太平洋防備現狀維持ニ付テノ協定ニ御不滿デア
ル、國家ノ爲ニ甚ダ不利益ナルモノデアルト云フ御意見デア
レバ、ソレハ又御意見デアッテ、若シ其問題ヲ提ゲテ政府ヲ
責メントセラレルナラバ、吾と又相當ノ辯論モ致ス、併ナガラ
今日ハソンナ議論ヲスルノガ此案ノ目的デハナイ、今日ノ此
決議案ト云フノハ、唯政府ガ國民ノ理解ヲ求メルニ不十分
デアルト云フ趣意カラノ決議案デアリマス、華府會議ノ成
績ニ付テ、是ガ成功デアルトカ、失敗デアルトカ、サウ云フコ
トヲスルノガ今日ノ問題デハナイト私ハ考ヘル、若シ華府會
議ノ成績ニ付テ、果シテソレガ成功デアルカ、失敗デアルカ、
ドノ點ニ付テ國家ノ爲ニソレガ禍ヲ爲スモノデアルカ、サウ
云フコトヲ大ニ論ジテ當局ヲ責メヤウト云フコトデアルナラ
バ、私ハ更ニ案ヲ改メテ、サウ云フ問題ヲ御提出ニナルコト
ヲ希望スル(拍手)山東問題ニ付テモ同ジク然リデアリマス、
山東問題ニ付テ、日本ハ大ニ讓歩シテ斯ク〓〓デアルトカ、
或ハ第五項ノ問題ガドウデアルトカ、或ハ更ニ滿洲ノ問題
ガ是カラ後ニ問題トナルデアラウトカ、色〓御意見ガアリマ
シタガ、是ハモウ唯承リ置クベキダケノモノデアッテ、今之ニ付
テ論戰ヲ交ハス必要ハナイト思フ、要スルニ中野君ノ御演
說ハ、幾多ノ外交上ノ事柄ニ付テノ御意見ヲ御發表ニナッ
タノガ主デアリマシテ、此決議案ノ文面ニ對シテ、其趣旨ヲ
說明セラレルモノトシテハ、甚ダ其要領ガ捕捉シ難カッタノデ
アリマス、併ナガラ斯ウ云フ點ハ、私ハ多分斯ウ云フ意味デ
ナイカト推測致ス、此今日ノ國際政局ト云フモノハ、サウ氣
樂ニ見ルベキモノデハナイ、政府當局者ハ、口ヲ開ケバ國際
協調デアルトカ、平和デアルトカ、正義デアルトカ、能ク言フ、
併ナガラサウ暢氣ニ居ラレルモノデハナイ、中ミ國際ノ競爭
ト云フモノハ激シイ、英米皆色々ナタクラミヲ以テ我ニ壓迫
ヲ加ヘントシテ居ルノデアル、油斷シ難キ場合デアル、東洋
ノ問題、極東ノ問題ニ付テモ、如何ナル事ヲ他ノ國等ガ持
チ出シテ來ルカモ知レヌ、決シテ油斷ハ出來ナイ、敢テ臥薪
嘗膽トマデハ言ヘナイガ、併シ是ハ用心シテ掛ラネバナラヌ、
危險ナモノデアルト云フコトヲ思ハネバナラヌ、其點ニ付テ
政府當局者ガ、十分ニ國民ニ向ッテ其注意ヲ喚起スルダケ
ノコトヲシナイノガ不都合デアル、斯ウ云フ精神デハナイカト
思フ、多分斯ウ云フ御精神デアラウト思フ、ソレハ成程中野
君ノ御意見トシテ、私ハ尊重シテ其御意見ハ承ッテ置キタイ、
サリナガラ政府當局者ニ向ッテ、ヤレ英吉利ガ斯ウ云フ計畫
ガアルゾヨ、亞米利加ガ油斷ナリ難イ計畫ヲ持ッテ居ルゾヨ、
諸君ハ大ニ用心シテ居レト云フヤウナコトヲ政府當局者カ
ラ國民ニ向ッテ言ヘトハ、是ハドウモ中野君トシテ如何ナル
モノデアラウカ(拍手)所謂先程モ常識ヲ以テ判斷セヨト云
フ御尋デアリマシタガ、此邊ハ少シク常識デ御考ヲ願ヒタイ
ト思フ(拍手)政府當局トシテハ大體ニ於テ、今日ノ國際狀
勢ノ如何ニ推移シツヽアルカト云フコトヲ見テ、國際聯盟ハ
夢ノ如クニ思ハレテ居ッタモノガ、既ニ成立ヲシタ、華盛頓會
議ニ於テハ益。平和正義ノ思想ガ國際政治ノ上ニ現レツヽ
アル、此國際協調ノ新シイ大ナル機運、大ナル傾向之ニ順
應ヲシテ立ツト云フノガ、卽チ今日ノ場合ニ於テ最モ吾〓
ノ心掛ケネバナラヌ點デアル、卽チ其點ニ於テ政府當局者
ガ機會アル每ニ、之ヲ四調スルト云フノハ是ハ至當ノ事デア
ル、サリナガラ又反面ニ於テ中野君ノ言ハレルヤウニ、競爭
モアルデアラウ、油斷シテ居レナイト云フコトモアルデアラウ、
ソレハソレデ又愛國者ガ識者ガ、ソレ〓〓國民ヲ警醒スレバ
宜シイ、政府ノ當局者ガサウ云フコトヲ言ハナイ、何ダカドウ
モ唯平和ノ風許リ吹イテ居ッテ、一向國際競爭上ノ臥薪嘗
膽トマデ行カナイニシテモ、國民ノ油斷ナリ難シト云フコト
ニ付テノ注意ヲ喚起スルヤウナコトヲ言ハナイノガ不都合デ
アル、ソレガ卽チ國民ヲ十分ニ理解セシメザル點デアルト云
フ御趣意デアルト、私ハ察セラレルガ、ソレハンレヲ爲ス人白
ラ他ニアルペク、中野君ノ如キ卽チ最モ其人デアル(拍手)私
ハ同君ニ對シテ其方ノ意味ニ於テ重大ナル使命ヲ有セラル
ルコトヲ敢テ同君ニ申上ゲルノデアリマス(拍手)國際問題
ヲ論ズルニ當シテハ、各〓其立場々々ガアル、ソレニハ其人ノ
責任ノ地位ガアリ、無責任ノ地位ガアル、是ハ大抵常識ヲ
以テ解シテ居ルコトデアリマス、(笑聲起ル)故ニサウ云フ次第
デアリマスルカラ、此議決ノ文面、卽チ華盛頓會議ノ經過ニ
付テ、國民ノ理解ヲ求ムルニ不十分ナリト認ムト云フ此文
面ハ甚ダ當ヲ得ナイモノト吾こハ信ズル、政府當局ハ機會
アル每ニ、華盛頓會議ニ付テノ情報ヲ發表シ、或ハ各種ノ
決議等ニ付テモ、出來ルダケ之ヲ速ニ發表シ、或ハ確定トナ
ラザル場合デスラモ、之ヲ發表スルコトハ努メテヤッテ居ル、サ
ウシテ啻ニサウ云フ文書類ヲ發表スルバカリデハナイ、又演
說ニ於テ-外務大臣ノ演說ニ於テモ、ソレ〓〓必要ナル言
明モシテ居ル程デアリマス、之ニ對シテ理解ヲ求ムルニ不十
分ナルモノト認ムト云フ決議ヲシヤウト云フコトハ、甚ダ是
ハ穩當デナイ、當ヲ得ナイモノト思フノデアリマス、若シ政府
ニ甚ダ怠慢ノ點ガアリ、大ニ之ヲ彈効セザルヲ得ズト云フ次
第デアルナラバ、十分其理由ヲ擧ゲテ攻擊ノ案ヲ御提出
ニナレバ宜シイガ、此決議案ハソレ程ノモノデモナイヤウデア
リマス、要スルニ中野君ノ段々長ク御述ニナリマシタ御意見
ハ、私モ大ニ尊敬ヲ拂ッテ承リマシタガ、此決議案ノ理由ト
致シテハ、甚ダ承服シ難イノデアリマス、且又斯ノ如キ理解
ヲ求ムルニ不十分ナリト認ムト云フヤウナ、甚ダ要領ヲ得ナ
イ、甚ダ理由ノ薄弱ナルモノヲ衆議院ノ決議トシテ、玆ニ議
決スルト云フコトハ如何ノモノデアルカ、是モ亦私甚ダ提出
者ノ一考ヲ煩シタイノデアリマス、苟モ衆議院ガ或ル決議ヲ
議決スルト云フ場合ニ於テハ、十分ニ權威アル內容ヲ有シ、
權威アル所ノモノデアラネバナラナイ、斯ノ如ク要領甚ダ漠
然トシテ居リマシテ、何ノ爲ノ決議デアルカ、頗ル人ヲシテ其
意ノ在ル所ヲ知ルニ迷ハシムルト云フヤウナモノヲ衆議院ノ
名ニ於テ決議スレバ、却テ此衆議院ノ決議ナルモノヽ權威
ヲ失墜セシムル所以デアラウト思フ(拍手)苟モ決議ヲ爲シ
テ或ハ政府ノ反省ヲ促スナリ、當局ヲ責ムルナリ、爲スベキ
必要ノアルト云フ場合デアレバ、十分其理由ヲ具へ、其形ヲ
整ヘテ、堂々タル決議案トナシテ貰ヒタイト思フ、今玆ニ現
ハレテ居リマスルガ如キ、唯何トカヾ不十分ナリト認ムト云
フ決議-ソンナ事ヲ一々決議ヲシテ居リマシテハ、日モ亦
足ラズ(拍手)實ニ每日々々ヤレ文部大臣ハ何こスルニ熱
心足ラザルモノト認ム、何とハ骨折ラザルモノト認ムトカ、ソ
ンナ事ヲヤリ居ッタラ切リガナイ、マ少シ形ヲ整ヘタル決議案
トシテ衆議院ノ名ニ背カザルヤウナモノナラバ、先ヅ傾聽シ
テ尊敬ヲシテ見タイノデアリマスケレドモ、卽チ形ノ上ニ於テ
モ甚ダ私ハ賛成シ兼ネルノデアリマス、是ダケノ事ヲ以テ此
案ニ反對致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=106
-
107・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 田淵豐吉君
〔田淵豊吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=107
-
108・田淵豐吉
○田淵豊吉君 今中野君カラ提案ニナリマシタ此決議案
ニ付テ、私ハ玆ニ賛成ノ演說ヲ致ス積リデ、此處ニ參ッタヤ
ウナ次第デアリマス、暫クドウカ御〓聽ヲ煩シタイ···
〔「ハイ〓〓」ト呼フ者アリ、笑聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=108
-
109・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 靜〓ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=109
-
110・田淵豐吉
○田淵豊吉君(續) 林君ノ今ノ反對演說ガアリマシタガ、
ソレニ付テ私ハ少シク又其反對ヲ述ベテ見タイ、一體林君
ガ斯ウ言ッタカラト言ッテ、向キニナッテ其事バカリ言フ必要モ
ナイデスケレドモ、政友會カラ代表シテ出ル位ノ人デスカラ、
相當ナ考慮ヲ拂ッテ來タト思ッテ敬意ヲ表シテ、私モ少シク
述ベテ見タイ(拍手)私ハ専門家デハゴザイマセヌカラ、其事
實ガ日ガ幾日デアッタト云フ事ヲ到底知リマセヌノデ、林君
ガ二月トカ、六日トカ、何トカ彼トカ言ヒマシタガ、ハッキリシ
マセヌデスケレドモ、大體ニ付テ、林君ノ言フ所デハ、中野君ノ
演說ハ非常識ダト云フヤウナ事ヲ言ウテ居リマス(「違フヨ」ト
呼フ者アリ)大分褒メタヤウナ、罵倒シタヤウナ、マルデ分ラ
ヌヤウナ事デアル(笑聲)一體此世界ノ大勢ハ如何ニ動キツ
ツアルカ、全局ヨリ外務大臣ガ指摘シテ居ルト云フヤウナコ
トヲ言ハレテアリマスガ、ドウモ外務大臣ノ言ウ夕事ガサッパ
リ分ラヌ(笑聲)此問題ニ付テモ私ハ後デ段々述ベテ見タイ
ト思フ、サウシテ林君ハ華盛頓會議ガ分ラズニ行ッタノデハ
ナイカト云フ、中野君ノ問ニ對シテハ、解ッテ行ッタノデアルト
言ウテ怒ラナイヤウデアル、之ヲ否認シナイ所ヲ見ルト、アノ人
モ慥カ亞米利加へ行ッタ人デアル、分ラナイデ亞米利加ニ行,
タノデアルト云フコトヲ是認ナスッタカト云フコトヲ聽キタイ
ノデアル、何ガ何ヤラ分ラヌ、一國ノ大使ハドウシテ行ッタノ
カト云フ事ガ分ラヌ、ソレカラ私ハドウモ怪シカラヌト思フノデ
アリマス、私モハッキリ先生ノ演說ガスッカリ分ラナンダガ、斯
ウ云フ風デアリハセヌカ、私ニハ分ラヌコトガ多イカラ問ヒタ
イノデアル、亞米利加ガドウダ、支那ガドウダト云フ事ハ、彈
効案ヲ出セバ宜イノデハナイカト言ハレルケレドモ、ドウモ言
ウタコトガ少シハ彈劾的ニナルカモ知リマセヌケレドモ、政府
ハモウ是デ天下ハ泰平ダ何デモ宜イ、是ハ世界ノ大湖ニ順
應シタノデアルト言ハレルガ、吾ミハサウ云フ事ハ少シモ分
ラヌノデアル、故ニソレヲ問ヒタイノデアル、サウ云フ林君ノ
辯明ト云フモノモ、私ハドウモハッキリ分ラヌヤウニ思フ、マア
林君ダケノ事ヲ愚圖々々言ッタッテ仕方ガナイカラ、私ハ此
位デ措キマスガ、唯私ノ問ヒタイノハ、ドウモ外務省及政府
ガー政府當局ガデスネ、ドウモ國民ヲ嘘欺シテ居ルヤウニ
私ハ思フ、ソレカラシテ第一分ラヌ、私カラシテ申シマスト、ド
ウカ外交上ノ問題ハ成ベク外國ニモ嘘ヲ吐クノハ惡イケレ
ドモ、日本人ニハ成ベク嘘ヲ吐イテ貫ヒタクナイト云フノガ
私ノ問題デアル、私等ハ何モ參考書モナイ「レポート」モナイ、
「エゼント」ヲ置イテナイ、日本ハ外務省ノ大部分ノ金ト云フ
モノハ「エゼント」ヲ置イテ、大使館トカ何トカヲ置イテアル、ソ
レガ一々此處へ來ル、外交調査會モ關係ガアルダラウガ、サ
ウ云フ所カラ來ル、吾こハ少シモ開係ガナイ、此處へ來テ居
ラレマセヌガ、内田サンナドモ一寸何カ聽キニ行クト、何モ言
ハナイ中カラ、祕密ニシテ置イテ吳レト言ッテ何モ言ハナイ、
少シモ吾々ニ〓ヘテ吳レナイ、故ニ吾ミハ眞面目ニ國家ノ
大問題ヲ議スルニ當ッテ、非常ニ材料ニ困ルト云フヤウナ狀
態デアル、是ハ私ハ非常ニ殘念ニ思シテ居ル、今囘デモサウデ
アル、行ク時カラ殆ド何モ分ッテ居ナカッタ、ソレデ行ッテ來テ
カラドウカト云フト、殆ド成ッテ居ナイ、例ヘバ大臣ノ言フ事
ニ付テモ、私ハ非常ニ懸念ヲ持ッテ居ル、斯ウ云フ事ヲ高橋
是〓サンガ貴族院デ答ヘラレテ居ル、江木君ニ對スル說明
デ、斯ウ云フ事ガ第一私等ニ分ラヌ、卽チ防備ノ事柄ニ付
テハ先刻モ申述べタ云々ノ項デアル、ソレニ「無論日本ニ於
テモ小笠原島等ニ於テ防備ハ現狀ヲ維持スルモノト云フ、
其諒解ノ下ニ商議ガ進ンデ居ッタ、其後專門家ノ會議ニ移ッ
テ大體ノ定ッタモノヲ條約文ニ作ルト云フ場合ニ於テ、其互
ノ諒解ヲ十分ニ遂ゲテ居ナカッタト云フコトガ分ッテ來タト、
斯ウ察シラレルノデス、ドウモ暗號電信ヤ何カデアリマスカラ
經緯ノ詳シイコトハ分リマセヌケレドモ、サウ察シラレテ居ル
是レ以上申上ゲルコトハ出來ナイノデアリマス、總テノ商議
ガ濟ミマスルト云フト、其邊モ明瞭ニナリマセウ」ト斯ウ云フ
コトデアリマス、是ガ私ハ譯ガ分ラヌ、ドウ云フ譯デアルカ之
ヲ私ハ知リタイ、詰リ御存知ノ通リ要塞問題ニ付テ本土ト
云フ問題「インシユラーポゼッシヨン」ガ「インシユラードミニオ
ン」ニ這入ッタト思フガ、日本デモ奄美、大島ヲ本土ト主張シ
向フデハ撤廢スルヤウニ極シテ居ッタ所ガ、本土ト云フコトガ
日本ニヤカマシクナッテ來タカラ、本土ハ取除ケテ貰ハナケレ
バナラヌ、併シオ前等ハ承諾シタヂヤナイカト言フ、ソレガ日
本ガ困ッタ、多分私ハ向フノ「ヒユーズ」トカ何トカト聯絡シテ
斯ウ云フ事ニシタ、ソレデ本土ト云フコトハ亞米利加ハ言ハ
ヌ、ソンナコトハドウデモ宜イ、詰リ防備ノ會議デアルカラ、其
問題ガ片付ケバ宜イ、ソレナラバ安心ダ、ソレハ內密ニシテ
置イテ貰ヒタイ、其代リニ何ヒト云フ島ヲ列擧致シマセウ、
布哇ハ別デスガ他ノ島ハ列擧致シマセウト、島ニ變化致シ
タノデアリマス、是ハ私ノ推察デゴザイマスケレドモ、マサカ私
ノ馬鹿ナ頭デモ、判斷ハ誤ラナイモノト確信スル者デアリマ
ス、然ルニンレガドウモ暗號電信ヤ何カデアルカラ、經緯ノ詳
シイ事ハ分ラナイ、暗號電信ハソレガ分ラナイヤウニヤッテ居
ルノデハナイカト云フ疑ガアル、其罪ヲ暗號電信ニ持ッテ行ノ
テ、暗號電信デヤッテ居ルカラ間違ノ起ルノハ當然ダト云フ
ヤウナコトデアル、サウ云フヤウニ暗號電信ガ分ラヌヤウデハ、
千里ニ使スル所ノ者ハ、昔ノ全權ノヤウニヤラナケレバナ
ラヌ、然ルニ日本ノ全權ハ遠イカラ電報ヲ以テヤッテ居ル、固
ヨリ成ッテ居ナイ、ソレデ以テ暗號電信デアルカラ分ラヌト云
フコトヲ言フノハ、亞米利加ノ諒解ノ上デサウ云フコトヲ言ッ
テ貴族院ノ速記錄ニハ斯ウ云フコトガチヤント戴ッテ居ルト
云フノハ、亞米利加トグルニナッテ、日本國民ヲ馬鹿ニシテ
騙シタノデ、怪シカランコトデハナイカ(笑聲)諸君之ヲ御覽
ナサイ、笑ヒ事デハナイ、重大ナル問題デアル、サウデセウ、第
二ニ於キマシテ、私ガ聽キタイノハ此海軍ノ比例ト云フモノ
ヲ、七割ト言ッタコトハ覺エハナイト云フコトヲ內田大臣ガ
言ハレテ居ル、七割ノ主張ハ七割トカ何トカ一云フヤウナ的
確ニ申シタコトハアリマセヌト言ッテ居ル、斯ウ云フヤウナ狀
態デアル、是ハ軍事當局モ言ッテ居ル、或ハ其當時行ッタ所
ノ人ガ皆ナ之ヲ唱ヘテ居ル、亞米利加デモ多分サウ云フコ
トニナッテ居ルダラウト思フ、日本デ吾〓衆議院ニ於テ聽イテ
見ルト、サウ云フコトヲ言ウタ覺ガナイト云フコトハ、何タル
國民ヲ愚ニスルコトデハナイカ、亞米利加デハンレガチヤント
分クテ居ル、日本デハ斯ウ言ウタ者ガアルト云フコトヲ英語
ニ直シテ持シテ行ッテ、日木人ハ大ナル抗議ヲ揭ゲルト云フコ
トヲ言ハレタノハ、日本ノ外交ト云フモノハ內兜ヲ見透サレ
テ淺マシイト思フ、斯ウ云フコトハ諸君ハ何ト見マスカ、非
常ナ大ナル失策デハナイカト私ハ思フノデアリマス、其他色こ
ノ斯ツ云フ點ニ付テ、非常ニ疑惑ヲ懷イテ居ルヤウナ次
第デアリマス、一體此海軍比例ニ致シマシテモ、詰リ向フガ
五デアレバ、此方モ五デ、對等ニ行カナケレバナラヌモノデア
リマセウ、此方ガ任意ニ金ガ無イカラヤルト云フノハ宜シイ
ケレドモ、向フカラ「ヂクテート」サレテ、オ前ノ所ハ三デ宜イト
云フヤウナコトヲ言ハレテ、ハイ〓〓宜シイト言ウテ承知シタ
コトヲ成功ト稱シテ居ルガ、何ガ成功デアル、「ヂクテート」サ
レテ居ル、日本ハ土耳古デハナイ、墨西哥デハナイ、〓ナガラ
英米ノ言フ通リニナッテ居ッテ「ヂクテート」サレテ居ルノデア
リマス、ソレガドウシテ成功ト言ハレヤウカ、私ハ非常ニ之ヲ
遺憾トスル者デアリマス、ンレカラ要塞ノ點デアリマス、日本
ノ總テノ要塞ヲ収ッテ-大方總テノ要塞ヲ取ッテシマッテ、
而シテ布哇ト云フモノハ中野君ノ言ウ夕通リ、他ノモノハ悉
ク塡メテ居ルケレドモ、布哇ハ嚴然トシテ塡メテナイコトニ
ナッテ居ル、而シテ海軍ハドウデアルカト云フト、米國ハ五デ
アッテ、日本ハ三デアルト云フノデアリマス、サウ云フヤウナ殆
ド戰ヘナイヤウナ狀態ニ置イテ、サウシテアノ布哇ヲ措キ「ニ
ユーギニヤ」ヲ措イテ、而シテ日本ガ皆取シテシマフト云フコト
ハ、果シテソレデ國防ガ十分ニ完全ニ出來マセウカ、高橋是
〓サンモ國防ガ保テル所ノ最少限ダケハ承認シタト言ヒマ
スケレドモ、是ハ眞赤ナ僞デアラウト私ハ思フノデアリマス、
然ラバドウシテモ亞米利加ニ敵ハナカッタカラ、斯ウ〓〓斯ク
斯クシタノデアルケレドモ、トウ〓〓負ケテ歸ッテ來タノデアル、
政府モ仕方ガナク永認シタノデアルナラパソレ迄デアル、マルデ
成功ノヤウナコトヲ言ウテ居ルノハ、國民ヲ侮辱シタモノデ
アッテ、外國ノ侮ヲ買フモノデアルト思フノデアリマス、其他
四國協約トカ條約トカ申シマスルガ、是等ニ於テモサウデア
リマス、私ハ聞ク所ニ依ルト、太平洋上ノ孤島ニ起ッタ所ノ
爭ヲ、互ニ寄ッテ集ッテ極メヤウヂヤナイカト云フノデ、日英條
約トカ他ノ條約トハ、マルデ違ッタモノデアルト聞イテ居リマ
ス、日英同盟ガ無クナッタガ、四國協約ガ有ルカラ宜イヂヤナ
イカト云フコトヲ、私ハ片腹痛イト思フノデアリマス、是等モ
一體國民ヲ愚ニシテ居ルノデナイカト思フ、ソレカラ私ガ言
ヒタイノハ、全權等ノ非常ナ手落ト云フ事ニモナリセウカ、
批准デス、批准ニ付テハ、亞米利加ハ前科者デアル、言葉ハ
チト酷イカモ知レマセヌガ、非常ニ惡イノデアリマス、亞米利
加ハ、彼ノ「ウイルンン」ガ「ヴエルサイユ」會議ニ於テ、堂々ト
決メテ來タモノヲ批准シナイデハアリマセヌカ、然ラバ今囘ノ
事デモ批准スルカモ知レヌ、シナイカモ知レヌト云フヤウナ狀
態ニ思ッテ居ルデハアリマセヌガ、日本ガ先ヅ批准スルト云フ
コトハ、或ハ國威ヲ失墜スルヤウナ狀態リ來スデハナイカト
思フ、故ニ亞米利加ガ批准シタナレバ、日本モシヤウト云フ
コトニシナケレバナラヌ、何デモ彼デモ亞米利加ノ言フ通リ
ニナルト云フコトハ、日本ノ軟弱ナル所ノ外交ノ致ス所ト思
ヒマス、此點ニ於テモ大ニ考慮スル必要アルト思フノデアリ
マス、ソレカラ其他私ハ四五述ベタイノデアリマスガ、第二ニ
全權ノ任命ニ付テモ、ドウモ旨ク行シテ居ナイヤウニ思フ、支
那通ナント云フ者ハ行ッテ居ナイ、或ハ作病ヲ起シタト云フ
ヤウナ噂モアル、或ハ又此貴族ノ人ヲ送シテ、唯夕政友會ガ、
間違ッタ所ガ轉ンデモ只タ起キヌト云フヤウナ政策ヲ執ッテ、
サウ云フ人ヲ派遣シテ居ルト云フコトハ、詰リ內政上ニ使ン
テ居ルヤウナ點ガアル、實、ニ是等ノ人ニ對シテハ、氣ノ毒ノヤ
ウナ感ジガスルノデアリマス、皇太子殿下ハ陛下御病中
ニ拘ラズ、萬里ノ波濤ヲ蹴ッテ彼ノ民情ヲ視察シ、日本ノ國
威ヲ輝カス爲ニ御出デニナラレタノデアル、『然ルニ原君ハ二
週間テモ三週間デモ向フヘ行シテ、大體ノ條項ヲ決メテ歸ノ
テ來ルノガ當然デアルト云フコトハ當時國論デアッタ、然レド
モ彼ハ行カナカッタ、故ニ氣ノ毒ニモ到頭殺サレタト云フ狀
態デアル、詰リ向フデハ御承知ノ通リ、彼ノ「バルフオアー」ト
カ、「ヒユーズ」トカ、「ブリアン」トカ、或ハ「シヤンデル」ト云フヤ
ウナ有名ナ人ガ行シテ居ルノニ、日本ハ唯夕二三見物ノヤウ
ナ狀態デ生命賭ケデヤッタノデナイ、彼ノ「ヴエルサイユ」ノ會
議ト同ジヤウナ趣意デアッタト云フコトハ、如何ニ此華盛頓
會議ハ、戰後海牙會議以後初メテデアルト云フ此種ヲ蒔ク
ト云フ時ニ當ッテ、日本ガ眞面目ニシッカリ掛シテ居ナイト云
フコトハ、後年又必ズ此收穫ト云フモノヲ、吾ニハ穫ラナケ
レバナラヌト云フコトヲ知ラナケレバナラヌ、然ルニ之ニ付テ
政府竝ニ政友會ハ、何等考慮シテ居ナイト云フコトハ、如
何ニモ國民ノ大ナル任務ヲ負ウテ居ル人ト私ハ信ズルコト
ハ出來ナイノデアリマス、私ハ斯ウ云フヤウナ意味カラシテ、今
囘ノ會議ト云フモノハ、マルデ失敗デアルノミナラズ、失敗シタ
コトヲ皆ナ糊塗シテ、少シモ國民ニ知ラシメナイヤウナ、斯ウ云
フ遣口デハ、日本ト云フモノハ非常ニ危イノデアリマス、政友會
ノ諸君ハ危クナイト言ハレルカモ知レマセヌガ、吾とハ危イト
思フ、故ニ諸君ニ警告シ、又大臣ニ警告シ、此日本外交官
ニ警告スル所以デアリマス、彼等ハ世界ノ大勢ニ通ジナイデ、
吾ミハ悉ク物ヲ知ッテ居ルト云フヤウナ顏ヲシテヤッテ居ルノハ、
是ハ非常ニ怪シカラヌ事ト思ヒマス、私ハ此日本ガ何ガ故
ニ此日英同盟ト云フモノヲ、斯ノ如ク輙スク破棄シタカト
云フ點ニ付テモ、大ナル疑ヲ持ッテ居ル者デゴザイマス、此二
十年モ續イタ所ノ同盟、之ヲ卽チ廢メルト云フコトハ專ラデ
アリマシタケレドモ、是ト手ヲ切ルト云フトキニハ、非常ナル
愼重審議ヲシテソレト切レタナラバ、他ハドウスルト云フ重
大ナル事ヲ考ヘナケレバナラヌコトハ、吾々國民ノ分リ切ッタ
事デアリマス、然ルニ是ガドウナルカト云フコトモ知ラナイデ、
我ガ全權ガウカー〓ト〓盛頓會議ニ行シタ、國民ガ如何ナル
程度マデ與論ガ考ヘテ居ルト云フコトヲモ糺サズニ行シタト
云フコトハ、大ナル縮尻デハナイカト思ヒマス、諸君ヨ、或
米國々民、英國々民ニ失禮デアルカ知ラヌガ、私ノ推察ヲ少
シ述ベテ見タイ、彼ノ英國ノ愛蘭ノ問題ニ付テ、「エドワー
ドグレー」ガ愛蘭問題ノ爲ニ、英米ハ戰爭ヲシナケレバナラ
スト云フコトヲ言ッテ居ル、其位ニ重大ニ思ノテ居ル、詰リ此
亞米利加ガ愛蘭ニ軍器トカ金ヲ貸シテ、其獨立ヲ助ケテ居
ルト云フコトデアリマス、故ニ此愛蘭問題ヲドウカ助ケナイ
ヤウニ、亞米利加ニ賴ミタイト云フコトガ、一ツノ英國ノ魂
膽デハナイカト思フノデアリマス、他ノ一ツノ魂膽ハ何カト言
ヘバ英國ガ米國ニ非常ニ大ナル借金ヲシテ居ルト云フコト
デアリマス、他ノ一ツハ戰爭ノ創痍ヲ受ケテ居ッテ、租稅ガ嵩
ムトカ、色ニノ費用ガ嵩ムカラ、軍艦ヲ成ベク縮少シタイト
云フヤウナ意思ガアル、或ハ現狀ニ置キタイト云フヤウナ意
思ガアル、之ヲ滿足シナケレバナラヌ、而シテ勞働黨ガ勃興
シテ來マシテ、其勢ガ强クナッテ來タ、又勢ヒ濠洲ハ英國ガ
負擔シナケレバナラヌ七割何分ヲ英本國カラヤラナケレバナ
ラヌ、サウスルト英國ガ費用ガ嵩サンデ來ルカラ、日本ノ海軍
ヲ成ベク減サセタイ、米國ノ海軍ニモ競爭サセナイヤウニシ
タイト云フノデ、ンコデ英國ガ彼ノ「ノースクリップ」記者ト
ナッタト申シマスガ、亞米利加ト手ヲ組ンデ、サウシテ亞米利
加ニモ軍備ノ擴張ヲセヌヤウニシテ貰ヒタイト言フタンデア
ル、亞米利加ガ宜シイ、然ラバ日英同盟ヲ破棄ナサイ、サウ
言ウタンデアリマス、サウシテ更ニ曰ク日本ハ六割、五ト三ノ
割合、十ト六ノ割合デヤラセレバ宜イデハナイカト、米國、英
國ガ共同ノ上ニ決メタンデハナイカト思フノデアリマス、ソレ
ハ何故カト云フト、戰前私ガ獨逸ニ居リマシタ時ニハ、戰
爭ノ一二年前ニ、獨逸ニ對シテ旣ニ十ト十六ノ割合ト云
フコトヲ言ハレタノデアリマスガ、獨逸ガ應ジナカッタ、詰リ
英國ガ勃興シテ、其跡ニ跟イテ行カウト云フノデハ國
威ニ關ヌルト云フコトデ、之ニ反對シマシタカラ、到頭遂
ニ戰爭ニナッタト云フヤウナ狀態デアル、此十ト十六ノ關係
ヲ移シテ、日本ト米國、日本ト英國ニ持ッテ來夕ノハ、獨逸ニ
對スル條約トマルデ一緒デアルト思フノデアリマス、斯ウ云
フヤウナ意味ニ於テ、英國ガ米國ノ背後ヲツヽツイテ、而シ
テ日本ニ斯ウサセルト云フノデ、日本ガ行ッタトキニ海軍ノ
協定案ガ出タ、檢事ハ誰デアルカト云フト、「ヒユーズ」デアル
ンレガ檢事ノ格デ、オ前サウシナサイト云フコトヲ「ジクテー
ト」サレタ、日本ニ好意ヲ装フテ居ルト言ッテハ少シ失禮カモ
知レマセヌガ、日本ニ好意ヲ持ッテ居ルト推定サレタ「バルフ
オアー」ガ、日本ヨ、オ前ハドウシテモ之ヲシナケレバイカヌヨ
ト言フテツヽカレテ、日本ハ仕方ナク之ニ應ジタト云フコト
デハナイカト思ヒマス、斯ウ云フヤウナ非常ナ入込ンダ事ヲ
前ニチヤントヤッテ居ルノデアリマス、御承知ノ通リ此問題ニ
付テハ、南阿ノ「スマツツ」將軍ハ、白人ト黑人トハ同一ノ場
所ニ置イテハイケナイカラ、別ノ所ニ置カナケレバナラヌト云
フノデ、人種不平等主義デアル、此人等モ干與シテ居ルト
云フコトハ明ナル事實ト思ヒマス、斯ウ云フヤウナ事デ、英國
ト米國カラシテ居ッタノニ、日本ノ政府ハ果シテ之ヲ知ッタカ
知ラナカッタナラバ實ニ無能デアッテ、知ッテ居ッタナラバ何故
國民ノ前ニ披瀝シテ、國家ハ斯ノ如クデアルト云フコトヲ
吾ミニ言フコトガ出來ナカッタカ、私ハ遺憾ニ思フノデアリマ
ス、私ハ此今回ノ日英同盟ガ斯ノ如ク輙ク破棄セラルヽト
云フコトハ、假令ンレハ何デモナイモノデアッタ所ガ、日本ノ面
目ガ踏潰サレテ居ルト云フコトヲ思フノデアリマス、而シテ
英國ガ斯ノ如キ擧ニ出デタト云フコトハ、日本ノ政府、殊
「デモクラチック」デアル所ノ英國ガ、何ガ故ニ日本ノ政府ニ、
日本ノ國民ニ十分ナル諒解ヲ求メナカッタトー云フコトモ、吾
吾ハ英國ニ對シテ大ナル不滿ヲ懷ク一人デゴザイマス、斯ウ
云フ點ニ於テモ、私ハ英國ガ大ナル手落ヲシテ居ルヨリ以
上ニ、日本ノ政府ガ手落ヲシテ居ルト思フノデアリマス、ソレ
カラ私ハ今日ノ戰爭ガデスネ、今日ノ戰爭ト云フモノガ、果
シテ諸君ガ唱ヘテ居ル如ク、或ハ外務大臣ガ唱ヘラレテ居
ル如ク、或ハ高橋サンガ言ハレテ居ル如ク、唯ダ單ニ此戰爭
ガ斯ウ云フヤウナ華盛頓會議デ熄ムモノデアルト云フコトハ
デスネ、彼ノ伊太利ノ「シヤンテルス」ガ言ハレテ居ル、卽チ經
濟ト云フモノヽ安固ト云フコトヲ假令會議デ決メテモ、アカ
ヌト云フコトヲ言ハレテ居ル、ソレヲドウ云フ目デ見テ居ラレ
ルカ、私ハサウ云フ點ニ付テ聞キタイノデアリマス、諸君、吾こ
ハ諸君ハ何ト見テ居ルカモ知ラヌケレドモ、今日色こノ日
本人ガ排斥サレテ居ルコトハ、中野君モ言ハレマシタガ、排斥
ヲ受ケテ居ル、或ハ「カリホルニヤ」ニ於テモ排斥ヲ受ケテ
居ルト云フコトハ否ムコトガ出來ナイ、紳士協約ニ於テ唯
ダ單ニ取止メテ居ルガ、體裁ノ好イ所ノ亂暴ナ取扱ヲ受ケ
テ居ル、寫眞結婚ト云フヤウナ事ヲ禁止サレテ居ル、米國ハ
何ト言ッタカ、寫眞結婚ト云フモノヲ何ト言ッテ居ルカト云フ
ト、寫眞結婚ハ道德ニ反スルカライケナイト言ッテ居ルガ、道
德ニ反スルカライケナイト言ッタノデハナイ、日本人ハ子ヲ產
ンデ仕方ガナイ、子供ガ多ク殖エルト、市民權ヲ持ツ者ガ殖
エテ困ルト云フ上カラ言ッタノデアル、今囘ノ華盛頓會議ヲ
旨クヤルナラバ、平和ヲ持來スト言ヒマスケレドモ、私ハンコ
ニ大ナル「エゴイズム」ガ含ソデ居ルト云フコトハ、私ハ中野
君ト其揆ヲ一ニスル、諸君見給へ、布哇ノ防備ヲ撤廢シナ
イデナイカ、人種差別デ叩付ケテ置ケト云フノガ、大ナル政
策デハナカラウカト思フ、日本移民ト云フモノハ、少シモ彼
國ニ這入ルコトガ出來ナイ、又這入シタ者ハドウカ、土地ヲ
持ツコトサヘモ出來ヌト云フ、不平等極マル所ノ法律ヲ以テ、
吾ミヲ侮辱シテ居ルデハアリマセヌカ、片方ニハサウ云フ事
ヲヤッテ居リナガラ、一方ニ於テハ人種平等、機會均等トカ
言ヒ兼ネマジキ口吻ヲ持ッテ居ル、又ンレヲ安請合ニ請合ッ
テ、外務大臣ノ内田ト云フヤウナ人ガ、ソレヲ受繼イデ平和
ノ風ガ吹キ、自由平等デアル、博愛デアルトカ言ヒマジキ口
吻ヲ以テ言ハルヽノハ、國民ヲ欺クモノデハナカラウカト思フ
ノデアリマス、サウ云フヤウナ點ニ於テモ、吾ミハ非常ニ諒解
スルコトガ出來ナイ、ソレカラ彼ノーヴエルサイエ」會議ニ人種
平等案ガ提出サレタ、其人種平等案ガ提出サレタ時ニ、日
本ノ使節ガ何ト言ッタカト云フト、是ハ移民問題トハ別問
題ダカラ、通シテ吳レト言ッテ哀願シテ居ル、實ニ怪シカラヌ
事デアル、移民問題ハ吾ミハ堂々ト言フベキモノデアル、又
政府ガ言フコトガ、移民問題ヲ言フコトガ出來ナケレバ、人
種平等問題ニ付テ、何故ニ堂々ト苹盛頓會謙ニ於テ言ハ
ナイノデアルカト云フコトヲ不思議ニ考ヘル、少シモサウ云フ
コトハ云ッテ居ナイヂヤナイカ、私ハ「シヤンテルス」ト見ヲ同ジ
ウスル、戰爭ト云フモノハ唯タ單ニ兵隊トカ、或ハ要塞ダト
カ、或ハ軍艦ヲ減スノミヲ以テ戰爭ヲ廢スコトハ出來ナイ、
是ハ「エコノミー」デアル、戰爭ノ禍根ヲ絕ツコトガ、戰爭ノ根
ヲ絕ツコトデアラウト思フ然ラバ其戰爭ノ根ヲ切ルト云フノハ
ドウダ、日本ノ人民ガ彼ノ廣イ所ノ濠太利、或ハ加奈陀、或ハ
亞米利加ト云フヤウナ國ニ溢レテ行クコトガ一ツ、又食糧問
題ノ自給ガ旨ク解決スルト云フコトガ一ツ、日本ノ海外貿
易ガ旨ク發展スルト云フコトガ一ツ、日本ノ接壤地ニ於クル
石井「ランシング」協約ト云フモノガ、十分ニ實行サレルト云
フコトデナケレバ假令五年八年平和ガ續イテモ其後ニ大
ナル慘劇ト云フモノガ必ズ來ルモノデアルト云フコトヲ吾こ
ハ虞レルノデアル、此點ヲドウ云フ風ニ見ラレテ居ルカト
云フコトガ、私ハ非常ニ慨嘆ニ堪ヘナイノデアリマス、斯ウ云
フヤウナ問題ニ於テ、日本ガ非常ニ大ナル侮辱ヲ受ケテ居
ルノデアリマス、彼ノ「ヂノトランド」ガ佛蘭西ヲ引受ケテ小國
ヲ聯合シテ大國ニ當,タト云フヤウナ歴史ガアルノデアリマ
ス、日本ハ今ヤ此小國ノ味方ヲシテ、而シテ大國ニ向シテ堂
堂ト反抗シテ行カナケレバナラヌ立場ニ在ル、斯ウ言ッテハ失
禮デハアルカモ知レマセヌガ、庚申倶樂部ノヤウナ立場ニ在
ル、大キナモノニ附カナケレバナラヌ、小ナルモノニモ附イテ
行カナケレバナラヌヤウナ苦シイ立場ニ在ル、原サンノ死ト云
フモノニ付テモ反對シナケレバナラヌ、或ハ又山縣サンノ國
葬ニ付テモ反對シナケレバナラヌヤウナ牛ヲ言ウテ、善イカ
惡イカト云ンコトニ迷シテ居ルヤウナモノデハナイ〓ト思フ、
甚ダ失禮デハゴザイマスケレドモ、日本ノ狀態ガサウ云フヤ
ウナ狀態デアル、故ニ日本ハ未ダ積極的ノ十分ナル政策ヲ
執ルコトハ出來ナイ、政友會ハ内政ニ於テハ積極々々ト言フ
テ居ルケレドモ、外政ニ於テハマルデ消極退要ノ主義ヲ執ッテ
居ルト云フコトハ、明カナ事實デアリマス、サウ云フコトガア
ルト思フノデアリマス、私ハ今日日本人ダトカ、支那人ダト
カ、或ハ色ミノ民族ガ非常ニ蹴ッタリ、踏マレタリシテ居ル、國
際的政策ト云フモノト、平和ト云フモノハ兩立スベキモノデ
アル、國際的主義ノ衝動及實行ナクシテ、眞ノ平和ト云フ
コトハ出來ナイ、故ニ此點ニ於テハ十分ナル所ノ吾ミハ覺
悟ヲ以テ、反對ヲシナケレバナラヌ、詰リ諸君モ御存ジノ通
リ、一デモクラシー」ト國際主義ト云フモノガ段々ト起ッテ來
ル、又國際主義ニ於テモ、或ハ「インターナシヨナリズム」「イン
ダラルナシヨナリズム」ト色ミノ形式ニ於テ段々進ンデ、博愛
主義ガ盛ニ進ンデ來ルニ違ヒナイ、併ナガラ今日ハ亞米利
加及英國ガ斯ノ如キ態度ヲ執ヶテ居ルト云フコトハ、私ハ非
常ニイケナイト思フ、獨逸ノ哲學者「ヂンメル」ガ言ハレタ、「エ
ボリューシヨン」ハ、唯人文ノ進ムノミガ進化デハナクシテ、色
色ノ條件ヲ具備シテ、此條件ヲ綜合シテ進ムト云フコトガ
進化ノ大原則デナケレバナラヌ、然ルニ唯空漠ナル所ノオ世辭
ヲ貰シテ來夕日本ガ餘リニ頭ガ頑ナデナカッタト一云フコトヲ褒
メラレタノヲ以テ、日本ノ外交ト云フモノハ行詰フテ居ナイ
ト云フコトヲ言ハレルト云フコトハ、私ハ非常ニ大ナル誤リ
デハナイカト思フノデアリマス、彼ノ「バーネル」ガ言ハレテ居
ル、諸君此所ヘ進メ、併ナガラソレ以上ハ進ムコト勿レト云
フコトハ、誰ガ明言スルコトガ出來ルカ、今米國ヤ英國ガ此
所迄進メ三迄ハ宜イガ、四迄ハ惡イトカ、此要塞ハ取ラナク
テハナラヌトカ此要塞ハ取ッテハナラヌトカ、或ハ何ハ斯ウシ
テハイカヌトカ、マルデ吾ミガ「ヂクテート」サレテ居ル、是デ三
大國、五大國デアルト云フコトヲ吾ミガドウシテ考ヘルコトガ
出來マセウカ、諸君ガサウ云フヤウナ責任ヲ持ツト云フナラ
バ、私ハ諸君ニ良心ガ有ルカ無イカト云フコトヲ疑ハザルヲ
得ヌト云フ狀態デアリマス、私ハ思フノデアリマス、今ヤ英國
ガ引心的勢力、求心的勢力ノ爲ニ、今ヤ餘程熟シテ居ル實
ノヤウナモノデ、植民地ト云フモノハ彼ノ果實ノ如キ物デア
ル、熟スレバ遂ニ木カラ落チル、故ニ濠洲、或ハ加奈陀ノ運
命ハドウ云フモノニナルカ分ラヌ、亞米利加モサウデアリマス、
何時迄其大勢力ガ續クカ分ラヌ、吾ミハ東洋ニ於テハ或ハ朝
鮮ナリ、或ハ支那ナリ、或ハ印度ナリヲ導イテ行カナケレバナ
ラヌ所ノ、大ナル使命ノアルモノデゴザイマス、是等ノ點ニ於
テ、吾ミハ公明正大ナル所ノ態度ヲ以テ進マナケレバナラヌ、
私ハ虞レルノデアリマス、彼ノ波斯ト希臘トハ大戰爭ニナッ
タ、或ハ羅馬「カルセージ」ガ戰爭ニナリ、或ハ英國ト和蘭、西
班牙、佛蘭西、獨逸ト云フモノガ戰爭ニナッタ、或ハ禾國ト
我ガ日本ト云フモノハ、何時如何ナル所ノ大ナル衝突ヲ起
サヌトモ限ラヌノデアリマス、吾ミハ此大衝突ヲ避ケンガ爲ニ、
此會議ニ列席シテ居ルノデハナイカ、唯ダ單ニ豫算ガ數億
万圓減ルト言ッテ、此會議ニ臨ンデ居ルノデハナイ、此大ナル
衝突ヲ避ケテ、世界ノ平和ヲ招來センガ爲ニ、之ヲヤッテ居ル
ノデハナイカ、諸君ガ治水費〓育費ヲ言フモノモ結構デアル、
結構デハアリマスケレドモ、ソレガ十分ニ吾ミガ唯ダソレノミ
ニ著目スルノデハナイ、國家ノ安危興亡ト云フモノガ、大一
吾ミノ雙肩ニ繫ッテ居ルト云フコトヲ知ラナケレバナラヌ、故
ニ吾とハ今回華盛頓ニ於ケル所ノ會議ハ、平和ノ戰爭ト見
ルノデアリマス、「ヂュツトランド」ノ戰爭ヨリモ大ナル所ノ戰爭
ガ行ハレテ居ル、日本ハ海軍ヲ下ゲル、要塞ヲ斯ノ如クスル、
サウシテ英國及米國ハ五ナラ五ト云フモノヲ持ツト云フヤウ
ナ、大ナル紙ノ上ノ戰爭ガ行ハレテ居ル、是ガ條約ニ規定サレテ
モ、吾ミガ遵奉シナケレバナラヌ、詰リ惡ク言ヘバ日本ガ大ナル
海軍ノ敗戰ヲシタモノト思フノデアリマス、故ニ吾〓ハ大ニ
我ガ日本ノ前途ハ如何ニナルカト云フコトヲ考ヘナケレバナ
ラヌ、然ラバオ前ハ軍國主義デアルカト云フト、サウデハナイ、
吾ミハ平和ヲ招來シタイト云フ熱心ナル希望ヲ持ッテ居ル、
人類ノ罪惡ハ卽チ戰爭デアルト云フコトヲ知ノテ居ル、併ナガ
ラ歴史ヲ見レバ悉ク戰爭デアルガ、吾ミノ理想ハ(平和ニ在
ルト云フコトヲ知ッテ居ル、海牙會議ノ開設以來未ダ十分
ナル諒解ナキニ、今回ハ幾分ノ芽ヲ出シタモノデアルト云フ
ノハ喜バシイ事デアリマスケレドモ、吾〓ハ其間ニ亞米利加
ヤ英吉利ノ「エゴイズム」ガ色〓其間ニ吾ミノ發達ヲ阻碍ス
ルヤウナ點ガアルカラ、ソレニ向ッテハ大ナル反省ヲ請ハナケ
レバナラヌト思フ、然ルニ政府竝ニ議員諸君ガ、唯單ニ眼前
ノ利益ニ汲々トシテ、國家ノ大勢ハ何所ニ行クカト云フコ
トノ大ナル點ニ付テ憤〓ノ聲ヲ放ツ者ガ少イノハ、私ハ大ニ
憂フルノデアル、私ハ未熟ナ者デ、外交ノ事ハ分リマセヌケレ
ドモ、吾ニハ平和ヲ招來スルト共ニ、正義公道ノ爲ニ日本
ノ大ナル使命ヲ持ッテ行クニハ、今一層大ニ奮發シテ行カナ
ケレバ、我ガ帝國ノ前途ハ實ニ危イト思ヒマスカラ、中野君
ノ決議案ニ賛成シ、諸君ガ黨派ノ如何ヲ論ゼズ、國家ヲ思
フト云フ意味カラ、政府ノ反省ヲ促シ、國民ノ自覺ヲ促シ、
國民外交ノ實ヲ舉ゲルニハ極テ緊要適切デアルト思ヒマス
カラ、此決議案ニ賛成スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=110
-
111・岩崎勲
○岩崎勳君 討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=111
-
112・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 討論終結ノ動議ガ出マシタ、成規
ノ賛成ガアルト認メマス
〔「通告ガアリマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=112
-
113・奧繁三郎
○議長(奥繁三郎君) 通告ハアリマスガ、今動議ガ出テ贊
成ガアリマスカラ、先ヅ之ヲ採決致シマス-討論終結ノ動
議ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=113
-
114・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 起立過半數デアリマス、仍テ計諭
ハ終結サレマシタ-是ヨリ採決致シマス、中野正剛君提
出ノ決議案ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=114
-
115・奧繁三郎
○議〓(奧繁三郞君) 起立少數-仍テ此決議案ハ否
決サレマシタ-日程第一一十二乃至第四十六ハ請願特別
報告デアリマスカラ、例ニ依ッテ一括シテ議題ニ供シタイト
思ヒマス、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=115
-
116・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 異議ナシト認メマス、仍テ日程第
二十二乃至第四十六ハ一括シテ議題ト致シマスー-委員
長ノ報告ヲ求メマス
第二十二(特別報告第一號)城內郵便局
ニ電信電話事務開始ノ請願
(委員長報告)
第二十三(特別報告第二號)五日町郵便
局ニ電話事務開始ノ請願
(委員長報告)
第二十四(特別報告第三號)神邊ニ福山
區裁判所出張所設置ノ請願
(委員長報告)
第二十五(特別報告第七號)大田、瀧原間
鐵道敷設工事ニ關スル請願外
件(委員長報告)
第二十六(特別報告第八號)小松島町、後
免町間(阿土海岸線)鐵道敷設
速成ノ請願外四件
(委員長報告)
第二十七(特別報告第九號)彼杵、武雄間
鐵道新設ノ請願(委員長報告)
第二十八(特別報告第十號)酒田町、觀音
寺村間輕便鐵道敷設速成ノ請
願(委員長報〓)
第二十九(特別報告第十一號)元寇殉難
將士ノ祀靈竝史蹟保存ノ請願
(委員長報告)
第三十(特別報告第十二號)靑年局急
設ノ請願(委員長報告)
第三十一(特別報告第十三號)富士山ヲ
國立大公園ト爲スノ諦願
(委員長報告)
第三十二(特別報告第十四號)鴛泊漁港
修築ノ請願(委員長報告)
第三十三(特別報告第十六號)鍼衞灸術
醫師法制定ノ請願
(委員長報告)
第三十四(特別報告第十七號)軍人恩給
竝扶助料增加ノ請願外八件
(委員長報告)
第三十五(特別報告第十八號)大俣村ニ
郵便局設置ノ請願
(委員長報告)
第三十六(特別報告第十九號)沼江郵便
局ニ集配事務開始ノ請願
(委員長報告)
第三十七(特別報告第二十號)洞戶郵便
局ニ電信、電話架設ノ請願
(委員長報告)
第三十八(特別報告第二十一號)宇久島
平戶島間海底電線敷設ノ請願
(委員長報告)
第三十九(特別報告第二十二號)黑木村
ニ無集配郵便局設置ノ請願
(委員長報告)
第四十(特別報告第二十三號)池田村
ニ登記所新設ノ請願
(委員長報告)
第四十一(特別報告第二十四號)田名部
町ニ區裁判所設置ノ請願
(委員長報〓)
第四十二(特別報告第二十五號)羽田村
ニ水澤區裁判所出張所設置ノ
請願(委員長報告)
第四十三(特別報告第二十六號)和寒村
ニ名寄區裁判所出張所設置ノ
請願(委員長報告)
第四十四(特別報告第三十號)鐵道敷設
法ノ確定竝鐵道既定線ノ敷設
速成ノ請願(委員長報告)
第四十五(特別報告第三十一號)白濱北
條間鐵道敷設速成ノ請願
(委員長報告)
第四十六(特別報告第三十二號)田島、
古町間鐵道敷設ノ請願
(委員長報告)
特別報告第一號
意見書
請願文書表第三一號
城内郵便局ニ電信、電話事務開始ノ請願新潟縣南魚沼郡城
內村平民農南雲浩一外十九名呈出(紹介議員靑木恆太郞
君
右請願ノ要旨ハ新潟縣南魚沼郡城內村ニハ大正十年五月三等郵
便局設置セラレタリト雖未タ電信、電話事務ノ取扱ナキ爲徒ニ
村民ノ商機ヲ失シ事業ノ經營等日常生活上ニ支障ヲ生スルコト
尠カラス依テ城內郵便局ニ電信、電話事務ヲ開始セラレタシト
謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二號
意見書
請願文書表第三二號
五日町郵便局ニ電話事務開始ノ請願新潟縣南魚沼郡大卷
村大字五日町七十二番戶農西野彌五郞外二十八名呈出
(紹介議員靑木恆太郞君)
右請願ノ要旨ハ新潟縣南魚沼郡五日町ハ大正十二年一月竣工ス
ヘキ上越鐵道開通ノ暁ニハ郡內百貨ノ集散地トシテ殷盛ヲ來ス
ヘキハ言ヲ俟タス依テ前記五日町郵便局ニ大正十一年度ヨリ電
話事務ヲ開始セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第三號
意見書
請願文書表第七號
神邊ニ福山區裁判所出張所設置ノ請願廣島縣深安郡川北
村長黑瀨福松外一名呈出(紹介議員井上角五郞君)
右論願ノ要旨ハ廣島縣深安郡中條村福山區裁判所出張所ノ管轄
區域ハ廣汎ニシテ關係人民ノ不便尠カラス依テ其ノ管轄區域タ
ル川北、川畜、御野、八尋、上竹田、下付田ノ六箇村及湯田村内大字
湯野、德田、這上村內大字十九軒屋、十三軒屋ヲ制キテ一區域ト爲
シ其ノ區域中樞要ニシテ且便利ナル神邊市街地ニ大正十一年度
ヨリ福山區裁判所出張所ヲ設置セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第七號
意見書
請願文書表第一號
太田、瀧原間鐵道敷設工事ニ關スル請願島根縣邇摩郡大森
町八ノ六十三番地農熊谷三左衞門君外二十二名呈出(紹
介議員平田民之助君)
同第二號
同上島根縣安濃郡大田町長菊田金次郞外三十九名呈出
(紹介議員平田民之助君)
右請願ノ要旨ハ政府ハ大正十一年度ヨリ三次、江津間鐵道敷設
工事ニ著手セラルルニ田リ之ト特殊ノ聯絡ヲ保ツ前記三次、江
津間豫定線中瀧原ヨリ分岐シ大森町ヲ經テ山陰線大田驛ニ達
スル鐵道ヲ速ニ敷設セムカ爲該工事費ノ豫算ヲ明元シ其ノ工事
年度割ヲ定メラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第八號
意見書
請願文書表第四號
小松島町、後免町間(阿土海岸線)鐡道敷設速成ノ請願徳島
縣那賀郡新野町長森新三外三名呈出(紹介議員淺石患八
君外三名)
同第五號
同上德島縣海部郡赤河内村長五島利明外三名呈出(紹介
議員原田佐之治君外三名)
同第六號
同上德島縣海部郡下木頭、中木頭村組合村長宮本則太郞
外二名呈出(紹介議員原田佐之治君外三名)
同第三九號
同上德島縣那賀郡〓津村長齋伊久太外五名呈出(紹介議
員淺石恵八君外三名)
同第四〇號
同上德島縣那賀郡桐生村長森浦悅藏外五名呈出(紹介議
員原田佐之治君外三名)
右請願ノ要旨ハ四國ニ於ケル交通機關ハ僅ニ短距離ノ鐵道ニ過
キサルノミナラス而モ各線其ノ連絡ヲ缺クヲ以テ不便尠カラス
殊ニ阿土沿岸ニ至テハ鐵道ノ敷設ナク海運亦完カラサルカ爲
運輸ノ發展ヲ阻害スルコト多大ナリ依テ速ニ四國循環鐵道中阿
土海岸線トシテ德島縣勝浦郡小松島町ヨリ同縣那賀郡羽之浦
町、海部郡日和佐町、牟岐町、高知縣安藝町ヲ經テ同縣長岡郡後免
町ニ至ル鐵道ヲ敷設シ以テ地方產業ノ開發ニ資セラレタシト謂
フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第九號
意見書
請願文書表第三七號
彼杵、武雄問鐵道新設ノ請願佐賀縣藤津郡 監田町長淵新
外七名呈出(紹介議員南里琢一君外二名)
右請願ノ要旨ハ佐賀縣藤津郡鹽田地方ハ生產物曲富ナルニ拘ラ
ス未タ交通機關ノ便ヲ缺ク爲其ノ發展比較的遲キハ該地方民ノ
甚タ遺憾トスルトコロナリ依テ之カ產業開發ニ資セムカ爲彼杵
驛ヨリ分岐シテ嬉野、鹽田ヲ經由シ武雄驛附近ニ至ル鐵道ヲ敷
設セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第十號
意見書
請願文書表第四一號
酒田町、觀音寺村間輕便鐵道敷設速成ノ請願山形縣飽海
郡日向村長兵藤喜藏外七名呈出(紹介議員熊谷直太君)
右請願ノ要旨ハ山形縣飽海郡酒田町ヨリ同郡觀音寺村ニ達スヘ
キ輕便鐵道敷設ノ件ハ第四十二回及第四十四回議會ニ於テ既ニ
採擇セラレタルモノナルヲ以テ地方ノ開發上一日モ忽諸ニ附ス
ヘカラサル現下ノ情況ニ鑑ミ直ニ次年度ヨリ之カ敷設工事ニ著
手セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第十一號
意見書
請願文書表第七五號
元寇殉難將士ノ祀靈竝史蹟保存ノ請願長崎縣北松浦郡鷹
島村二百四十九番地士族農吉永綠外三名呈出(紹介議員
中倉方次郞君)
右請顕ノ要旨ハ我カ國空前ノ一大國難タリシ元寇ノ役ニ於ケル
殉難將士及功勞者ノ偉靈ヲ祭祀セスシテ空シク地下ニ眠ラシメ
其史蹟保存ニ就テモ何等ノ方法ヲ講セサルハ現今思想界ノ狀況
ニ鑑ミ甚夕遺憾トスルトコロナリ依テ元寇殉難將士ノ靈ヲ祀リ
同時ニ其ノ史蹟ヲ永遠ニ保存セムカ爲長崎縣北松浦郡鷹島村ニ
相當ノ施設アリタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第十二號
意見書
請願文書表第八號
靑年局急設ノ請願朝鮮京城府本町四丁目八十九番地平民
鑛業許斐謙造呈出(紹介議員井上角五郞君)
右請願ノ要旨ハ政府ハ社會風〓ヲ維持シ國運ノ隆昌ヲ圖ラムカ
爲靑年局ヲ急設シ以テ靑年指導ノ機關ヲ完備セラレタシト謂フ
ニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
持根別告第十三號
意見書
請願文書表第七四波
富士山ヲ國立大公園ト爲スノ請願靜岡縣山林會長道岡秀
彥呈出(紹介議員石井〓二君外一名)
右請願ノ要旨ハ富士山ハ我カ帝國ノ代名詞トシテ廣ク世界ニ知
悉セラレ且其ノ莊嚴ナル風姿ハ內外人ノ均シク憬仰スルトコロ
ニシテ山麓一帶ト共ニ一大天然公園ヲ形成セルヲ以テ之ニ相當
ノ施設ヲ加ヘ以テ國立大公園トセラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至田ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第十四號
意見書
請願文書表第六八號
鴛泊漁港修築ノ請願北海道利尻郡爲泊村字鴛泊村平民漁
業西野與市郞外二百九十九名呈出(紹介議員東武君外七
名
右請願ノ要旨ハ北海道利尻郡鴛泊村字爲泊灣ハ〓漁ヲ以テ著名
ナル天然ノ港灣ナリト雖東風强烈ナルトキハ船舶ノ定繫困難ナ
ルヲ以テ屢不慮ノ慘害ヲ受クルコトアリ依テ速ニ鴛泊漁港ヲ修
築セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第十六號
意見書
請願文書表第六四號
鍼術灸術醫法制定ニ關スル請願大阪市南區難波新地五番
町四十番地平民大日本鍼灸師會長藤林高吉外千五百五名
呈出(紹介議員砂田重政君外二名)
右請願ノ要旨ハ人體保護ノ安全ヲ期シ我カ國獨特ノ理學的醫術
ノ進步ヲ圖ル爲私案ノ如キ鍼術灸術醫法ヲ制定セラレタシト謂
フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別〓〓第十七號
意見書
請願文書表第二六號
軍人恩給竝扶助料增加ノ請願東京市麻布區谷町五十九番
地退役陸軍步兵少佐中村中郎外五十名呈出(紹介議員近
藤達兒君外一名)
同第四三號
同上静岡縣安倍郡安東村大岩六十二番地ノ一平民永嶺謙
光外十四名呈出(紹介議員宮崎友太郞君)
同第八九號
同上東京府北豊島郡流野川町田端四百二十番地平民無職
陸軍憲兵中佐藤谷淺吉外二十三名呈出(紹介議員高木正
年君外一名)
同第九〇號
同上佐賀市赤杉町百二十六番地七族無職陸軍步兵少佐坂
田英一外九十五名呈出(紹介議員副島義一君)
同第九一號
同上名古屋市西區前ノ川町三丁目三番地士族無職陸軍少
將河村秀一外二百八十五名呈出(紹介議員小山松壽君)
同第九二號
同上京都市上京區下鴨膳部町百四番地平民無職陸軍少將
小野寺實外百十一名呈出(紹介議員竹上藤次郎君)
同第九三號
同上東京府豊多摩郡渡谷町大字下澁谷千百十四番地平民
無職陸軍中將河部貞次郞外百二十五名呈出(紹介議員長
谷場敦君)
同第九四號
同上千葉縣安房郡北條町字八幡三百八十番地士族無職陸
軍少將久米猪一外六十七名皇出(紹介議員竹澤太一君)
同第九五號
同上沖繩縣那覇區高崎町陸軍步兵中尉大見謝恒享外四十
一名呈出(紹介議員麓純義君)
右請願ノ要旨ハ現行軍人恩給法第九條ニ依ル增加恩給ハ大正九
年法律第十〓ヲ以テ改正增額セラレタリト雖是等軍人ノ生計ハ
今尙安定ヲ保持シ難シ依テ國民最高ノ義務ヲ果セル犧牲者ヲ遇
スルノ一端トシテ更ニ軍人恩給法ヲ改正シ增額給與セラレタシ
ト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第十八號
意見書
請願文書表第三號
大俣村ニ郵便局設置ノ請願德島縣阿波郡大俣村大字上喜
來字窪二又千七百三十六番地商松永製治郎外六名呈出
(紹介議員原田佐之治君外一名)
右請願ノ要旨ハ德島縣阿波郡大俣村ハ山間僻地ニシテ交通不便
ナルノミナラス往往洪水氾濫等ノ障害ニ因リ交通杜絕音信不通
ヲ來スコトアリテ郵便物ノ遲延又ハ不著等夥シク之カ爲公衆ノ
不便尠カラス依テ速ニ大俣村ニ電信事務ヲ取扱フ郵便局ヲ設置
セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第十九號
意見書
請願文書表第九號
沼江郵便局ニ集配事務開始ノ請願德島縣勝浦郡生比奈村
長福良理平外一名呈出(紹介議員原田佐之治君外二名)
右講願ノ要旨ハ德島縣勝浦郡生比奈村ニハ沼江郵便局アリト雖
其ノ集配事務ハ小松島郵便局ヨリ横瀬郵便局ニ迂廻シテ集配セ
ラルルヲ以テ生比奈及家良ノ兩村民ノ不便甚大ナリ依テ前記沼
江郵便局ニ集配事務ヲ開始セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二十號
意見書
請願文書表第四七號
洞戶郵便局ニ電信、電話架設ノ請願岐阜縣武儀郡洞戶村
長野村傳治外六名呈出(紹介議員匹田銳吉君)
右請願ノ要旨ハ岐阜縣武儀郡洞戶村ハ同郡西部ニ於ケル唯一ノ
物資集散地ニシテ近ク町制ノ施行ヲ見ムトスルニ至リタルニ拘
ラス通信機關ノ完備セサル爲村民ノ不便甚シキモノアリ依テ洞
戶郵便局ニ大正十一年度ニ於テ電信、電話ヲ架設シ以テ其ノ不
便ヲ除去セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二十一號
意見書
講願文書表第六五號
宇久島平戶島間海底電線敷設ノ請願長崎縣北松浦郡平村
長代理助役山田辰三郞外四名呈出(紹介議員中倉万次郞
君)
右請願ノ要旨ハ長崎縣北松浦郡福江村字戶樂、若松村晝ノ浦間
竝前方村、南松浦郡北魚目村間ノ海底電線ハ每年故障ヲ生シ爲
ニ電信不通ヲ來スコト一再ナラス且其ノ故障ハ〓シテ該地方ノ
盛漁期ニ發生スルヲ以テ地方民ノ不利不便尠カラス依テ北松浦
郡宇久島平戶島間ニ平戶局ヲ中繼局トスル海底電線ヲ敷設セラ
レタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二十二號
意見書
請願文書表第六十六號
黒木村ニ無集配郵便局設置ノ請願鹿兒島縣薩摩郡黑木村
長川添新之助外十一名呈出(紹介議員萩亮君)
右請願ノ要旨ハ鹿兒島縣薩摩郡黑木村ハ現在同郡大村麓郵便局
ノ管轄ニ屬スト雖距離其ノ他ノ關係ニ於テ地方民ノ不便尠カラ
ス依テ右黑木村内ニ無集配郵便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在
サ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二十三號
意見書
請願文書表第四十六號
池田村ニ登記所新設ノ請願岐阜縣揖斐郡本郷村池田村組
合管理者安藤榮太外二名呈出(紹介議員井上孝哉君)
右請願ノ要旨ハ岐阜縣掛斐郡本〓、池田、八幡、宮地ノ各村ハ登記
事件ノ數多キニ拘ラス大垣區裁判所神戶出張所ノ管轄ニ屬スル
爲其ノ不便尠カラス依テ右四箇村ノ中央ニ位スル池田村ニ登記
所ヲ新設セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別〓告第二十四號
意見書
請願文書表第五四號
田名部町ニ區裁判所設置ノ請願靑森縣下北郡田名部町長
菊池門五郞呈出(紹介議員阿部武智雄君外五名)
右請願ノ要旨ハ地方ノ情勢ニ鑑ミ其ノ不便ヲ除去セムカ爲靑森
縣下北郡田名部町ニ同郡及上北郡ノ一部ヲ管轄スル區裁判所ヲ
設置セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二十五號
意見書
請願文書表第六二號
羽田村ニ水澤區裁判所出張所設置ノ請願巖手縣江刺郡羽
田村長菊地要佐久外一名呈出(紹介議員志賀和多利君)
右請願ノ要旨ハ巖手縣江刺郡ノ南部ニ位スル羽田村ハ該地方ニ
於ケル最樞要ノ地ニシテ近〓ノ物資ハ總テ同村ニ依リ集散スヘ
キ現狀ニ在リ然ルニ所轄登記所ハ本郡岩谷堂町ニ於ケル水澤區
裁判所ニ屬シ距離其ノ他ノ關係ニ於テ不便尠カラス依テ設置費
用ハ羽田村有志ヨリ酸出スヘキニ付黑石村、羽田村ノ全部ト田
原村ノ内大字田代ノ全部大字石原ノ內字西前田、前田、土手前、後
田戶崎、御免、駒場、蟹澤、馬形、白山前、大日、大日前、松川下、川崎
中田ヲ管轄區域トスル水澤區裁判所ノ出張所ヲ羽田村ニ設置セ
ラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二十六號
意見書
請願文書表第七〇號
和寒村ニ名寄區裁判所出張所設置ノ請願北海道上川郡和
寒村字和寒市街地平民農矢久保佐助外百名呈出(紹介議
員淺川浩君外一名)
右請願ノ要旨ハ北海道上川郡和寒村ハ從來名寄區裁判所ノ直接
管轄ニ屬スト雖同區栽判所ハ距離遠キノミナラス其ノ他各般ノ
事情ニ於テ不便尠カラス從テ該地方ノ發達ヲ阻害スルモノアリ
依テ廳舍ハ同村民ニ於テ建設寄附スヘキニ付右和寒村内ニ名寄
區裁判所出張所ヲ速ニ設也セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第三十號
意見書
請願文書表第六一號
鐵道敷設法ノ確定竝鐵道既定線ノ敷設速成ノ請願巖手縣
氣仙郡盛町長須藤覺三郞外二十四名呈出(紹介議員志賀
和多利君)
右請願ノ要旨ハ鐵道敷設法ヲ確定シ且速ニ既定線ヲ敷設セラレ
タシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第三十一號
意見書
請願文書表第六九號
白濱、北條間鐵道敷設速成ノ請願千葉縣安房郡白濱村長
早川敬治郎外八名呈出(紹介議員竹澤太一君)
右請願ノ要旨ハ地方ニ於ケル各種事業ノ發達ヲ促進セムカ爲第
四十四囘議會ニ於テ採擇セラレタル千葉縣安房郡白濱村ヨリ安
房北條驛ニ至ル鐵道ヲ速ニ敷設セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議、院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第三十二號
意見書
請願文書表第七六號
田島、古町間鐵道敷設ノ請願福島縣南會津郡伊南村大字
古町五番地五十嵐德太郞外十八名呈出(紹介議員八田宗
吉君外一名)
右請願ノ要旨ハ地方開發ニ至大ナル關係ヲ有スル福島縣南會津
郡田島町ヨリ同郡古町ニ至ル鐵道未成線ヲ速ニ敷設セラレタシ
ト謂フニ在リ
爰議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
〔龍野周一郞君登壇〕
○龍野周一郞極テ簡單ニ御報告致シマス、先ヅ初ニ請
願委員會ノ經過ヲ一言致シマス、開院以來二月十七日
卽チ昨日迄ニ受理致シマシタ請願書ノ總數ハ一千六十七
件デアリマス、其中既ニ審查ヲ了シマシタモノガ六百八十
九件、其中ニ於テ採擇ト決シマシタモノハ六百二十七件、
政府參考トシテ送付シタモノガ、六十一件、不採擇ニ決シマ
シタモノガ一件、之ヲ差引キマシテ只今審査中ノモノガ三
百七十八件デアリマス、之ヲ御諒承ヲ願ヒマス、只今一括
シテ上程サレマシタ、日程第二十二ヨリ第四十六マデノ諸
案ニ付キマシテハ、各紹介議員諸君ノ極テ熱誠ナル御說明
ト政府當局ノ說明竝ニ必要アル場合ニハ意見モ聽キマシ
テ、最モ丁寧深切ニ審議調査ヲ致シマシタ、其結果採擇スベ
キ理由アル請願ト認メマシテ、此日程ノ分ハ全部採擇致シタ
モノデアリマス、其理由ノ詳細ハ御手許ニ配付ニナッテ居リマ
ス、速記錄ニ就テ御諒承ヲ願ヒタイト存ジマス、願ハクバ本
會ニ於テモ滿場一致御採擇アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=116
-
117・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 日程第二十二以下ノ請願特別報告ハ之
ヲ一括シテ請願委員長報告通リ採擇アランコトヲ望ミマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=117
-
118・奧繁三郎
○議長(奧十三郞君) 鈴木君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=118
-
119・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ガナイト認メマス、仍テ日
程第二十二乃至第四十六ノ請願ハ全部委員長報告通リ
採擇スルコトニ決シマシタ-諮問事項ガアリマス、第四部
選出豫算委員磯貝浩君ヨリ常任委員辭任ノ中出ガアリ
マス、許可シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=119
-
120・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ許可
致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補闕選擧ヲ了セラレテ屆出ア
ランコトヲ望ミマス-本日ハ是デ散會
午後六時三十六分散會
衆議院議事速記錄第十一號中正誤
頁段行誤正
一五五下O西村丹治郞君創ル
一五五下一一高柳覺太郞君前川虎造君削ル
一五五下一二板野友造君削ル
五五下一七西村丹治郎君削ル
五五下八高柳覺太郞君前川虎造君削ル
一五五下一九板野友造君削ル
一五六頁上段第二〇行ノ次ニ左記ヲ加フ
一去三日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ議案ヲ可決シタル
旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
(第一號)大正十年度歲入歲出總豫算追加案
衆議院議事速記錄第十二號中正誤
頁段行誤正
一二1二九制度廢止制度改正
二一二上三二養生養成
衆議院議事速記錄第十三號中正誤
頁段行誤正
二五一中二九動機動議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01419220218&spkNum=120
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