1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
大正十一年二月二十一日(火曜日)午後一時十七分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十四號 大正十一年二月二十一日
午後一時開議
質問
一 農村政策に關する質問(土井權大君提出)
二 帝都の公安維持に關する質問(横山勝太郎君提出)
三 綱紀頽廢の責任に關する質問(清瀬一郎君提出)
四 普通選擧に關する質問(松本君平君提出)
五 礦業被害に關する質問(古賀三千人君提出)
六 青年指導の方針に關する質問(田中萬逸君提出)
━━━━━━━━━━━━━
第一 信託法案(政府提出) 第一讀會
第二 信託業法案(政府提出) 第一讀會
第三 擔保附社債信託法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 不動産登記法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 非訟事件手續法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 大正九年度豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第七 大正九年度豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第七 大正九年度特別會計豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第七 大正九年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第七 大正九年度大正三年臨時事件豫備費支出の件(承諾を求むる件)
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第九 借地借家調停法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 工場法中改正法律案(板野友造君提出) 第一讀會
第十一 勞働組合法案(星島二郎君提出) 第一讀會
第十二 社寺現境内地無償下付に關する法律案(鵜澤總明君外二名提出) 第一讀會
第十三 出版取締法案(星島二郎君提出) 第一讀會
第十四 職業紹介法中改正法律案(安達謙藏君外十名提出) 第一讀會
第十五 失業保險法案(安達謙藏君外十名提出) 第一讀會
第十六 疾病保險法案(安達謙藏君外十名提出) 第一讀會
第十七 疾病保險特別會計法案(安達謙藏君外十名提出) 第一讀會
第十八 工場法中改正法律案(安達謙藏君外六名提出) 第一讀會
第十九 鑛業法中改正法律案(安達謙藏君外六名提出) 第一讀會
第二十 電信線電話線建設條例第六條に依る手當金増額に關する建議案(木下甚三郎君外一名提出)
第二十一 免囚保護施設及司獄官待遇改善に關する建議案(太田信治郎君提出)
第二十二 橿原神宮第二期宮域擴張及建物修築に關する建議案(高草美代藏君提出)
第二十三 橿原神宮第二囘宮域擴張及建物修築に關する建議案(八木逸郎君外五名提出)
第二十四 多摩川改修費及水源涵養費國庫支辨に關する建議案(前田米藏君外九名提出)
第二十五 多摩川改修費及水源涵養費國庫支辨に關する建議案(高木正年君外五名提出)
第二十六 三津濱港築港國庫補助に關する建議案(成田榮信君外五名提出)
第二十七 重信川改修に關する建議案(成田榮信君外五名提出)
第二十八 米穀專賣法制定に關する建議案(小菅劍之助君外一名提出)
第二十九 第二期治水計畫確立に關する建議案(川原茂輔君外三名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=0
-
001・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔原田書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
信託法案
信託業法案
擔保附社債信託法中改正法律案
不動產登記法中改正法律案
非訟事件手續法中改正法律案
(以上二月十八日提出)
壓縮瓦斯及液化瓦斯取締法案
明治四十四年法律第六十一號中改正法律案
(以上二月二十日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
軍機保護法中改正法律案
提出者安藤正純君土井權大君
橫山金太郞君
(以上二月十八日提出)
印紙稅法中改正法律案
提出者山邊常重君
關稅定率法中改正法律案
提出者鈴木錠藏君八田宗吉君
(以上二月二十一日提出)
原蠶種ノ種類制限ニ關スル建議案
提出者武藤金吉君津野田是重君
萩一亮君日野辰次君
市村貞藏君飯島信明君
今泉嘉一郞君渡邊修君
醫師法中改正ニ關スル建議案
提出者八木逸郞君齋藤壽雄君
大林森次郞君山田永俊君
岩崎宗茂助君宜保成晴君
三浦得一郞君中馬興丸君
香川保忠君松下禎二君
近藤達兒君前川虎造君
國立體育〓究所設立ニ關スル建議案
提出者八木逸郞君齋藤壽雄君
大林森次郞君山田永俊君
岩崎宗茂助君宜保成晴君
三浦得一郞君中馬興丸君
香川保忠君松下禎二君
近藤達兒君前川虎造君
癈兵優遇及軍人遺族扶助料改正ニ關スル建議案
提出者津野田是重君菅原傳君
熊谷直太君鈴木義隆君
肥料專賣ニ關スル建議案
提出者高田耘平君
僧侶其ノ他諸宗〓師ニ被選擧權付與ニ關スル建議
案
提出者安藤正純君
(以上二月十八日提出)
公娼制度廢止ニ關スル建議案
提出者橫山勝太郞君
靑森築港國營ニ關スル建議案
提出者北山一郞君中西六三郞君
東武君木下成太郞君
黑住成章君栗林五朔君
榊田〓兵衞君戶符權之助君
松本孫右衞門君菅原傳君
鈴木巖君阿部武智雄君
野村治三郞君梅田潔君
宇野勇作君原田藤次郞君
寬仁、文永及弘安ノ役ニ於ケル殉難志士奉祀ニ關ス
ル建議案
提出者中村〓造君古林與六君
靑柳郁二郞君三好德松君
(以上二月二十一日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
鹿町炭礦買收ニ關スル質問主意書
提出者田中善立君
(以上二月十八日提出)
一今二十一日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員清瀨一郞君提出綱紀頽廢ノ責任ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員松本君平君提出普通選擧ニ關スル質問
ニ對スル答辯書
衆議院議員田中萬逸君提出靑年指導ノ方針ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
綱紀頽廢ノ責任ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十一年一月二十八日
提出者〓瀨郎賛成者鈴木梅四郞
外二十九人
綱紀頽廢ノ責任ニ關スル質問主意書
現内閣(原首相時代ヲ通シテ)成立以來綱紀頽廢其ノ
極ニ達セリ其ノ責任ノ所在ニ付政治道德上明確ナル說
明ヲ求メムトス
右及質問候也
大正十一年二月二十一日
內閣總理大臣子爵高橋是〓
衆議院議長奥繁三郞殿
衆議院議員〓瀨一郎君提出綱紀頽廢ノ責任ニ關
スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員清瀨一郞君提出綱紀頽廢ノ責任ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
政府ハ機宜ノ方途ニ依リ時弊ノ嬌正ニ當リ國民ノ自省
ト相待ッテ常ニ綱紀ノ肅正ニ留意シ居レリ
右及答辯候也
大正十一年二月二十一日
内閣總理大臣子爵高橋是〓
普通選舉ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十一年一月二十八日
提出者松本君平賛成者野溝傳一郞
外三十五人
普通選擧ニ關スル質問主意書
普通選擧要求ノ聲ハ今ヤ天下ニ瀰漫ス在野各政派ハ
期セスシテ其ノ意見ヲ一ニシ全國ノ言論機關ハ勿論智
識階級、勞働者、僧侶ノ諸階級ヲ通シ普通選舉ノ要求
ハ益熾烈ナリ此ノ時ニ於テ高橋首相新ニ宰相フ地位ニ
立ツ首相ノ普通選舉ニ對スル意見竝其ノ態度ハ國民ノ
最知ラムト欲スル所ナリ政テ高橋首相ノ普通選擧ニ對
スル所見ヲ質ス
右及質問候也
大正十一年二月二十一日
內閣總理大臣子爵高橋是〓
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員松本君平君提出普通選擧ニ關スル質問ニ
對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員松本君平君提出普通選擧ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
政府ハ時世ノ進運ニ伴ヒ貴族院議員ヲ始メ地方議會
ノ議員ノ選擧資格ヲ擴張シ其ノ選舉有權者ヲ增加
スルノ緊要ナルヲ認ム曩ニ大正八年衆議院議員選擧法
改正案尋テ昨十年市制町村制中改正案ヲ提出シ帝國
議會ノ協賛ヲ得タルハ此ノ趣旨ニ出テタルニ外ナラス將
來モ亦此ノ方針ニ則リ漸ヲ迫ヒテ選擧權ノ擴張ヲ圖リ
以テ憲政ノ秩序アル發達ヲ期ス
右及答辯候也
大正十一年二月二十一日
內閣總理大臣子爵高橋是〓
靑年指導ノ方針ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十一年二月一日
提出者田中萬逸賛成者井上剛
外百四人
靑年指導ノ方針ニ關スル質問主意書
靑年指導ノ方針ハ健全ナル國民ト善良ナル公民タルトノ
素質ヲ得セシムルニ在リ果シテ然ラハ現内閣ノ下ニ行ハ
レツツアル所謂自主的指導ハ其ノ名ノ美ハシキニ似ス其
ノ實ノ之ニ伴ハサル憾アリ政府ハ眞ニ帝國將來ノ國運
ヲ其ノ雙肩ニ擔ハムトスル剛健眞摯ナル靑年ヲ養成セム
ト欲セハ靑年指導ノ方針ニ一大變革ヲ加ヘサルヘカラ
ス政府ノ所見如何
右及質問候也
大正十一年二月二十一日
內閣總理大臣子爵高橋是〓
衆議院議長奧繁三郞殿
衆議院議員田中萬逸君提出靑年指導ノ方針ニ關スル
質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員田中萬逸君提出靑年指導ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
靑年ヲシテ自主自立以テ其ノ力ヲ展ヘシムルハ將來健
全ナル國民善良ナル公民トシテ國運ノ負荷ニ堪フルノ素
地ヲ養ハシムル所以ニシテ之カ指導ノ方法ノ常ニ時代ニ
順應シテ適切ナルヘキハ又言ヲ俟タサル所ナリ從テ特ニ
靑年指導ノ方針ニハ何等變更ヲ加フルノ必要ナシト認
ム
右及答辯候也
大正十一年二月二十一日
內務大臣床次竹二郞
文部大臣中橋德五郞
一去十八日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案左ノ如シ
銃砲火藥類取締法中改正法律案
大正十年勅令第三百七十五號(承諾ヲ求ムル件)
大正十年勅令第三百七十六號(承諾ヲ求ムル件)
一去十八日衆議院規則第十五條但書ニ依リ議長ニ於
テ議席ヲ左ノ如ク變更セリ
三四五〓水留三郞君三五六樋口秀雄君
三五七鈴木富士彌君三五八紫安新九郞君
三五九佐々木千秀君三六〇井上剛一君
四二四中野寅吉君四三〇山邊常重君
四三七作間耕逸君四五一加藤定吉君
一去十八日內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令アリタル旨ノ
通牒ヲ受領セリ
山林技師松波秀實
農商務省所管事務政府委員被仰付
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載
ス〕
一去十八日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
露國政變及西比利亞事變ノ爲損害ヲ被リタル者ノ救
恤ニ關スル法律案
島田俊雄君廣瀨鎭之君梅田潔君
矢野丑乙君竹澤太一君山口嘉藏君
山道襄一君川崎克君高草美代藏君
和賀輕便軌道株式會社所屬軌道經營廢止ニ對スル補
償ノ爲公債發行ニ關スル法律案
中山佐市君中島鵬六君志賀和多利君
加藤紋右衞門君山口熊野君柿原政一郞君
菊池良一君粟山博君倉石知藏君
道路法中改正法律案
石川玄三君鈴木巖君熊谷直太君
西村正則君池田猪三次君長田桃藏君
平田民之助君富安保太郞君深見寅之助君
秋本喜七君岩切重雄君下田勘次君
神谷彌平君淺野順平君佐久間啓莊君
中川幸太郞君板野友造君木村權右衞門君
未成年者飮酒禁止法案
海江田準一郞君根本正君成田直一郞君
春日俊文君妹尾順平君大石大君
〓水留三郞君香川保忠君松下禎二君
身元保證ニ關スル法律案外三件
高見之通君大道寺慶男君高柳淳之助君
大島實太郞君久木田叶君太田信治郞君
井上剛一君森山儀文治君上畠益三郞君
軍備縮少ニ基因シテ生スヘキ失業勞働者ノ善後ニ關ス
ル建議案
高山長幸君松岡俊三君廣瀨爲久君
山本条太郞君川村數郞君田中定吉君
渡邊祐策君牧山耕藏君廣岡宇一郞君
萩亮君岩崎幸治郞君穴水要七君
橫山金太郞君紫安新九郞君野田文一郞君
川副綱隆君砂田重政君南鼎三君
小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ關スル建議案外三
件
改野耕三君鈴木錠藏君戶狩權之助君
佐藤寅太郎君鵜澤總明君菅原傳君
伊坂秀五郞君風鬪八左衞門君原田佐之治君
有馬秀雄君高木第四郞君大津淳一郞君
樋口秀雄君荒川五郞君高田耘平君
關和知君小橋藻三衞君守屋松之助君
一去十八日農會法案委員飯塚春太郞君辭任ニ付其ノ
補闕トシテ村山喜一郞君ヲ、議長ニ於テ選定セリ
一昨二十日身元保證ニ關スル法律案外三件委員井上
剛一君辭任ニ付其ノ補闕トシテ森達三君ヲ議長ニ於
テ選定セリ
一昨二十日常任委員補關選舉ノ結果左ノ如シ
第四部選出豫算委員大津淳一郞君(磯貝浩君補
關
一昨二十日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
露國政變及西比利亞事變ノ爲損害ヲ被リタル者ノ
救恤ニ關スル法律案委員
委員長島田俊雄君理事廣瀨鎭之君
和賀輕便軌道株式會社所屬軌道經營廢止ニ對スル
補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案委員
委員長中山佐市君理事中島〓六君
道路法中改正法律案委員
(深見寅之助君
委員長石川玄三君理事淺野順平君
木村權右衞門君
未成年者飮酒禁止法案委員
委員長海江田準一郞君理事大石大君
身元保證ニ關スル法律案外三件委員
委員長高見之通君理事大道寺慶男君
軍備縮少ニ基因シテ生スヘキ失業勞働者ノ善後ニ關
スル建議案委員
一岩崎幸治郞君
委員長高山長幸君理事野田文一郞君
砂田重政君
小學校〓員俸給國庫負擔額增加ニ關スル建議案外
三件委員
有馬秀雄君
委員長改野耕三君理事小橋藻三衞君
守屋松之助君
一今二十一日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第一部選出決算委員飯塚春太郞君(黑金泰義君
補闕)
第二部選出決算委員高木正年君(平出喜三郞君
補闕)
第三部選出決算委員萩亮君(深澤米太郞君補
關
第九部選出懲罰委員渡邊昭君(板野友造君補
海
一今二十一日六大都市行政監督ニ關スル法律案委員
太田信次郞君、武內作平君辭任ニ付其ノ補關トシテ
淺賀長兵衞君、佐久間啓莊君ヲ露國政變及西比利
亞事變ノ爲損害ヲ被リタル者ノ救恤ニ關スル法律案
委員山口嘉藏君辭任ニ付其ノ補闕トシテ佐々木平
次郞君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
一今二十一日理事補闕ノ結果左ノ如シ
六大都市行政監督ニ關スル法律案委員
理事淺賀長兵衞君(理事太田信治郞君補〓)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=1
-
002・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 會議ヲ開キマス、諮問致ス事ガア
リマス、第五部選出決算委員最上直吉君常任委員辭任
ノ申出ガアリマシタ、之ヲ許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=2
-
003・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ許可
致シマシタ、同部ノ諸君ハ速ニ補闕選擧ヲ行ヒ、屆出アルコ
トヲ望ミマス、農會法案ノ委員會ヲ午後二時ヨリ開會致シ
タイト委員長ヨリ請求ガアリマシタ、之ヲ許可スルニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=3
-
004・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ許可
致シマシタ、板野友造君ヨリ議事進行ニ關シテ發言ヲ求メ
ラレマシタ、此場合之ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=4
-
005・板野友造
○板野友造君 簡單デスカラ此席ヨリ發言ノ御許ヲ願ヒ
タウゴザイマス、ソレハ吾々國民黨及憲政會、無所屬、庚申
倶樂部ノ者ガ合同致シマシテ、府縣制改正法律案ヲ本年
ノ二月七日ニ提出ヲ致シテ置イタノデアリマスルガ、一方政
府ニ於テモ亦府縣制中改正法律案ヲ提出ニ相成リ、92°
委員ニ附託サレテ今審査中デアルノデアリマス、是ハ吾々國
民黨及憲政會其他カラ提出ヲ致シマシタ案モ、御承知ノ
如ク選擧權ノ擴張、選擧權ノ行使ニ付テ一層之ヲ便宜ニ
スルコト、其他自治ノ基礎ヲ鞏固ニスルコトニ涉ッテ改正ヲ
セントスルモノデアリマシテ、政府ノ御提案ト同時ニ審査ス
ルコトガ、最モ便宜デアル法案デアルノデアリマス(拍手)然
ルニ一方政府ノ提案ニ付テハ審査ガ進メラレ、ズン〓〓質
問ナゾニモ這入ッテ居ルノデアリマス、吾々ノ提案ハ未ダ
之ガ日程ニモ上リマセヌカラ、成ベクナラ案ノ性質カラ言へ
バ、同一委員ニ附託シテ同時ニ審査スルコトガ便宜デアル
ニ拘ラズ、未ダサウ云フ運ビニナル譯ニ參リマセヌコトニナッテ
居リマス、デ私ガ此處ニ議事ノ進行ニ付テ發言ヲ求メマス
ルノハ、斯樣ナ次第デアリマスル、サウシテ議長ニ於テハ此案
ノ性質ニ考ヘラレマシテ、速ニ之ヲ上程セラルヽコトヲ希望
致シマスト云フコトヲ玆ニ述ベテ置キマス(拍手)尙ホ一言
致シマスルガ、若シ政府ノ提案ニ付テ委員會ガ終了シ、之ガ
本會議ニ於テ決定ヲサレルト云フコトニナリマスルト、吾々及
憲政會其他カラ提案致シテ居リマスル法案ハ、之ヲ此改正
ヲ實現サスコトガ事實ニ於テ困難ニナリハシナイカト云フ虞
モ多少アリマス、旁、速ニ上程ナサルヤウニ希望致シマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=5
-
006・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 板野君ノ御希望ハ成ベク速ニ日
程ニ上セルヤウニ計ヒマス、軍備縮少ニ基因シテ生ズベキ失
業勞働者ノ善後ニ關スル建議案ノ委員會ヲ開キタイト云
フ請求ガアリマス之ヲ許スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=6
-
007・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 許ス事ニ決シマシタ、本日ノ質問ノ
中、今報告致シマシタ如ク第三、第四、第六ハ政府ノ答辯
ガ參リマシタカラ、是ハ本日若シ之ニ對シテー政府ノ答辯
ニ對シテ御意見ガアルナラバ、後刻許シマス、其他ノ部分ニ
付テ質問ノ趣意ヲ陳述セラルヽ方ガアルナラバ、此場合之
ヲ許シマス、第一農村政策ニ關ノル質問、土井權大君
一農村政策ニ關スル質問(土井權大君提
〓〓
農村政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十年十二月二十六日
提出者土井權大賛成者鈴木梅四郞
外二十九人
農村政策ニ關スル質問主意書
農村政策ノ實施ニ關スル政府ノ方針如何
右及質問候也
〔土井權大君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=7
-
008・土井權大
○土井權大君 極テ簡單ニ農村政策ニ關シ質問ヲ試ミ
マス、但シ先日來ノ委員會ナドニ於テ、政府ト委員ガ應答
サレマシタ如キ點ハ、重複ヲ週ケル爲ニ省略致シマス、第一
ニ御尋致シタイノハ、此小作爭議當面ノ對策デアリマス、卽
チ今ヤ小作爭議ハ全國ニ普遍シ、往々ニシテ其惡化ヲ見ン
ト致シテ居ルノデアリマス、之ニ處スル政府ノ當面ノ對策ガ
無イノデアリマス、其當面ノ對策ガ無イノハ何故デアルカト
云フコトニ付テ御尋ヲスルノデアリマス、御承知ノ通リ大正
六年ニハ、小作爭議ト云フモノハ全國ヲ通ジテ僅ニ八十五
件シカナカッタノデアリマス、ソレガ大正九年ニ參リマシテ四
百八件、大正十年ニハ一躍致シマシテ千二百五十五件ト
ナッタノデアリマス、之ハ卽チ内務省ノ調ベラレタル統計ニ依ツ
テ斯ク申上ゲル次第デアリマスルガ、其實際ニ至リマシテハ
中と是位ノ數デアリマセヌ、丁度小作爭議ヲ調查スベク全
國ヲ巡遊サレテ居リマスル所ノ帝國農會ノ幹事山崎延吉
氏ノ談、竝ニ岐阜縣ノ坪井秀ト云フ人ノ談ニ依リマスルト、
云フト、中ミ表面ニ現レテ居ル統計ノ如キ事デハナイ今ヤ殆
ド津と浦と、此小作爭議ノ問題ガ起キツヽアルト同時ニ又
將ニ起キントシテ居ルノハ洵ニ困シタ事デアルト、斯ウ云フ實
際ノ話ヲ聽イタ、更ニ御承知ノ通リ愛知縣、滋賀縣ノ一部
ニ於キマシテハ、小作爭議-云フモノガ旣ニ惡化致シテ居ル
ノデアリマス、卽チ一種ノ階級鬪爭ヲ演ジツヽアルノデアリマ
ス、而モ其他ノ各地ニ於ケル小作爭議ガ如何ニ惡化ニ赴キ
ツヽアルカト云フコトハ、私ガ喋々申シマセズトモ、每日ノ新
聞ハ常ニ其事實ヲ報道致シテ居ルコトニ依ッテ明カデアリマ
ス、特ニ此農民ノ數ハ御承知ノ通リ、我國全人口ノ六割ヲ
占メテ居ルノデアリマス、而シテ此六割ヲ占メテ居リマス中
ノ此農民中デ、小作竝自作兼小作、所謂他人ノ耕地牧地
ヲ賃貸借致シテ居ル者ハ七割ヲ占メテ居ルノデアリマス、言
葉ヲ換ヘテ言ヘバ、農業勞働-所謂農業勞働者デアルト
云フ、自作デナイ所ノ農業勞働者ト云フ者ハ七割ヲ占メテ
居ルノデアリマス、工業勞働ノ問題ガ大事デアルトカ、東
勞働爭議ヲ大切ニシナケレバナラヌト言ハレマスルガ、其數
ノ上カラ、分量ノ上カラ眺メマシタナラバ、決シテ農業勞働
ト云フモノハ、工業勞働ノ如キ少數ノ人ノ爭デハアリマセヌ、
非常ナル多數ノ人ノ爭ト云フコトニ相成ルノデアリマス、悉
クガ爭ウテ居ルトハ申シマセヌケレドモ、若ソレ此現狀ヲ此儘
ニ放任致シテ、今日將ニ起リツヽアル所ノ小作爭議ノ惡化
ニ對シテ、應急ノ手當ヲ施スコトヲシナカッタナラバ、此病氣
ト云フモノガ全國ニ蔓延致シマシテ、其結果ハ或ハ土地ノ
不耕作同盟トナルデアリマセウ、或ハ土地ガ荒蕪トナルデア
リマセウ、又農村ノ美風ノ破壞トナリ、又自治ノ不振トナリ、
遂ニハ農業ノ退步トナリマシテ、最モ重大ナル--最モ大切
デアル所ノ此〓糧政策ト云フモノヲ、根本ヨリ破壞シハシマ
イカ、又多クノ國民ヲシテ其思想ヲ惡化セシムルニ至リハシ
マイカト、斯ウ私ハ考ヘルノデアリマス、又考ヘルノミナラズ、
必ズ斯ク相成ルベキモノデアルト、斯ウ斷定スルノデアリマス
殷鑑遠カラズ、露西亞ガ亡ビ、〓西西ガがククル化シマシタ
原因ニ考へ及ボシマシタナラバ、今日此際此小作爭議ト云
フモノハ緩慢ニ致スベキモノデナイト、斯ウ私ハ考ヘテ居ル
次第デアリマス(拍手)然ルニ政府ハ此當面ニ對スル所ノ政
策ガ無イ、應急ノ手當ヲ施サレナイト云フノハ何故デアルカ、
是ガ第一ニ御尋ヲ致シタイ點デアリマス、斯ク申シマシタナ
ラパ、政府ハ必ズ斯ウ申サレル、是ハ先日委員會ナドノ應答
ニ依シテ、其應答ヨリ類推シテ述ベルノデアリマスルガ、決シ
テ政府ニ於テハ之ヲ忽ニシテ居ルモノデハナイ、等閑ニ付
シテ居ルモノデハナイ、現ニ農會法ノ改正ト云フコトヲ致シ
之ヲ提案致シテ居ル、又農商務省デハ小作制度調査會ナ
ルモノヲ拵ヘテ、小作法ノ審議ニ取掛ッテ居ル、是等くるさい
小作爭議ニ對スル方策デアルト、斯ウ御答ニナルデアリマセ
ウ、又斯ク御答ニナッタコトハ委員會ニ於テ承知致シテ居リ
マス、所ガソレハ決シテ應急ノ手當デハアリマセヌ、卽チ當面
ノ對策デハアリマセヌ、永遠ノ政策、所謂恒久ノ政策デアリ
マス、故ニ私ハ爰ニ更ニ是ガ恒久ノ政策デアッテ、當面ノ對
策デ無イト云フコトニ付テ御尋ヲ致シタイト思フノデス、ン
コデ第二問ヲ發シマス、ドウ云フ事デアルカト言ウタナラバ、
卽チ政府ハ小作及農業ニ關スル所ノ立法ヲ以テ對策ナリ
ト、斯ウ言ハレマスカ、其事ニ付テ御尋スルノデアリマス、第
二問ハ卽チ小作及農業立法ノ件デアリマス、農會法及小
作法ノ制定ハ、農村ニ對スル恒久政策ニシテ、小作爭議ニ
處スル當面ノ對策ニアラズト斯ウ私ハ考ヘル、政府ノ御考ハ
トウデアルカト云フコトニ付テ御尋ヲ致スノデアリマス、何故
サウ云フ事ヲ言フカト云ヘバ、農會法ハ御承知ノ通リ、其目
的ニ於テ農業ノ改良發達ヲ圖ルニ在ルト斯ウ述ベラレテ居
リマス、又其農會ニ於テ行フ所ノ事業中假ニ小作農竝ニ
小作爭議問題ニ關係ノ有ルベキ條項ヲ調ベマスルト、農業
ニ從事スル者ノ福利增進ヲ圖ルト云フ一項ト、ンレカラ農
業ニ關スル紛議ノ調停又ハ仲裁、卽チ小作爭議ノ仲裁ナ
ドハ農會ニ於テ致ス、斯ウ云フ風ニ書イテアリマス、所ガ御
承知ノ通リ、農會ト云フモノハ、營利事業ヲ行フコトガ出來
ナイ、公ナル法人デアリマス、故ニ間接ニ若クハ永遠ニ農民
ノ福利增進ヲ圖ルコトハ出來ルデアリマセウ、決シテ此農會
法ガ惡イト云フ譯デハアリマセヌ、間接ニ永遠ニ所謂農民ニ
對スル所ノ恒久對策デアルト云フ點ニ於テ、敢テ異議ヲ挾
ムモノデハアリマセヌ、併ナガラ今日農民ノ困っテ居ル、而モ
小作爭議ノ起ッテ居ル此問題ヲ、此農會法ニ依。テ解決ガ
付クカドウカ、言葉ヲ換ヘテ申シマシタナラバ、直接ニ小作
人及地主ニ何等ノ利益ハ與ヘマセヌト、斯ウ私ハ斷定スル
ノデアリマス、更ニ小作法デアリマス、小作法ハマダ議會ニ
提案ナサッテ居リマセヌガ、其小作法ナルモノヲ拜見致シマ
スルニ、私ヲシテ忌憚ナク言ハシメタナラバ、是ハ民法ニ對ス
ル所ノ一種ノ特別法ニ過ギナイモノデアルト思フ、何故デア
ルカト言フタナラバ、此永小作權デアルトカ、若クハ耕地及
牧地ノ賃貸借ニ關スル所ノ特別規定ノミヲ定メテアルノガ
取モ直サズ小作法デアリマス、强テ出色ノ點ヲ見出シタナラ
パ-民法ノ永小作権竝ニ賃貸借權以外ノ點ヲ見出サウ
トシタナラバ、小作審判所ノ規定ト、仲裁ニ關スル規定ノミ
デアラウト思ヒマス、決シテ此小作法ガ惡イト私ハ言フノデ
ハアリマセヌケレドモ、是亦農會法同樣、直接ノ利益ヲ小作
人及地主ニ與ヘルコトハ出來マセヌ、應急ノ對策ト云フコ
トハ言ヘマセヌ、間接ニ永久ニ農民ノ福利增進ヲ圖ル所ノ
制度デアルト斯ウ私ハ申スノデアリマス、政府モ御承知ノ通
リ、小作爭議ノ起ル所ノ原因ハ何レニ在ルカ、卽チ一ハ物質
的一ハ精神的デアリマス、言葉ヲ換ヘテ申シマシタナラバ、
生活ノ不安ヨリシテ斯ノ如キ、問題ガ起キ、進ンデハソレガ
原因トナッテ、思想ノ變化ヲ來スノデアリマス、衣食足ッテ禮節
ヲ知リ倉廩實チテ仁義起ルト往古ノ人ガ言ウテ居リマスガ、
卽チ此衣〓ガ足リナイノデアル、此倉廩ガ實タナイノデアル、
是ガ卽チ病原デアリマス、然ルニ政府ノ御見解デアル所ノ農會
法ノ改正デアルトカ、或ハ小作法ノ制定デアル卜云フガ如キ
コトハ、果シテ此衣〓ノ足リナイノヲ直ニ補フコトガ出來
ルデアリマセウカ、倉糜ノ實タナイノヲ直ニ實スコトガ出來ル
デアリマセウカ、此所デアリマス、丁度私ヲシテ言ハシメタナラ
バ、爰ニ怪我人ガアル-怪我ヲシテ居ル人ガアル、外科的
療治ヲ應急的ニ施サズシテ、先ヅ水藥ノ御調劑ニ御掛リニ
ナッテ居ルヤウナ事デハアルマイカ、甚ダ皮肉ナ事ヲ申スヤウ
デアリマスケレドモ、私ハサウ信ズルノデアリマス、果シテ然ラ
バ、政府ニ於テハ此農會法、小作法ヲ以テ、當面ノ對策デア
ルト言ヒマスカ、ドウカ私ノ見解ガ違ッテ居ル所ガアルカドウ
カ、之ニ對シテ御答ヲ得タイノデアリマス、是ガ私ノ問ハント
スル第二間デアリマス、斯ク申セバ政府ハ必ズ申サレルデア
ラウト思フ、是ハ先年私ガ質問ヲシタ時ニ御答ニナッタ、其
御答辯ヨリ類推シテ斷定ヲスル次第デアリマス、當局ノ對
策トシテハ-應意ノ農業者ノ福利增進ヲ圖ルノ政策トシ
テハ、產業組合法ト云フ制度ガアル、畜產組合ノ制度ガア
ル、又農業倉庫ノ制度ガアル、決シテ直接ノ福利增進、利
益保護ト云フコトニ付テハ、政府ハ怠シテ居ルモノデナイ、又
制度ノ上ニ於テモ完備シテ居ルト、斯ウ御答ニナルニ違ヒナ
イ、所ガ御承知ノ通リ、產業組合、又畜產組合ト云フモノ、
效果ノ遲々、所謂何等ノ效果ガ無イトハ申シマセヌケレド
モ福利增進ヲ與ヘルト云フ點ニ於テ、非常ニ緩慢ナル制度
デアルト云フコトハ御承知ノ通リデアリマス、又其設立ノ手
續ニ於テ、又其經營ノ手續ニ於テ、非常ニ煩瑣ヲ極メル所
ノ制度デアルト云フコトモ御承知ノ通リデアリマスノミナラ
ズ產業組合ガ何等小作爭議ニ效果ノナカッタト云フ一例ハ
現ニ岐阜縣ニ於テ小作爭議ト云フモノガ劇甚ヲ極メマシタ
トキニ、產業ノ組合ガ一方ニ岐阜縣ニ發達ヲ致シテ居ルニ
拘ラズ、何等其效果ヲ奏シナカッタ、小作人ハ產業組合ハ組
合デアル、一種ノ營業デアル、商賣デアル、是ハ取引デアル、
其取引ハ完全ニ致シマスルガ、小作問題ハ是ハ又別十問題
デアルト云フ見解ヨリ致シマシテ、產業ノ組合ハ小作爭議
ノ解決ニ何等ノ效果ガナカッタト云フコトハ是亦政府ノ御
承知ノ通リデアリマス、活キタ實例デアリマス、況ヤ產業組
合ノ惡口ヲ申ス譯デハアリマセヌケレドモ、此產業組合ト云
フモノハ、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、直譯的ノモノデアリマス-
飜譯的ノモノデアリマス、ソレガ爲ニ農民一般ニ其趣旨ト
云フモノガ徹底致シテ居ラヌ故ニ、數ノ上ニ於テハ日本ニ
一万三千アルト申シマスルケレドモ、實際此產業組合ガ、日
本ニ於テ效果ヲ現シテ居ルモノハ、僅カ八十二カ三デアル、
斯ウ云フ狀態デアルト云フコトモ御承知ノ通リデアリマス、
故ニ私ハ產業組合法ヲ以テ、又畜產組合法ヲ以テ、農業
倉庫法ヲ以テ、直ニ今日ノ應急手當ニ處スル所ノ對策デナ
イト斯ウ斷ズルノデアリマス(拍手)故ニ此際政府トサレマシ
テハ、從來ノ農業的經濟組織ノ良イ所ハ採ラナケレバナラ
ヌ、所謂產業組合、畜產組合、農業倉庫ノ長ガアレバ、其長
ヲ採ル、若シ手續ガ煩瑣デアルトカ、或ハ飜譯的デアルトカ
云フガ如キ短イ所ガアッタナラバ短イ所ヲ捨テヽシマウテ新
ナル此ニ經濟組織ヲ發見シナケレバナラヌ、例へバ小作組合
デアルトカ、又農業ノ組合デアルトカ、斯ウ云フヤウナ立法ヲ
爲シテ今日ノ時勢ニ適シ、又今日應急ニ處シ得ラレルダケ
ノ經濟組織ノ發見ト云フコトガ必要デアラウト、斯ウ私ハ
考ヘルノデアリマス、此ニ於テカ次ノ質問ヲ發シマス、卽チ第
三問、組合法制定ノ件デアリマス、「小作爭議ニ處スル當面
ノ對策ハ速ニ小作組合法又ハ農業組合法ヲ制定シ勞資
協調ノ趣旨ニ基キ地主及小作人ニ共濟慰安其他共同ノ
利益ヲ保護增進スルノ事業ヲ營マシムルニアリ政府ノ所見
果シテ如何」ト云フコトニ付テ御尋ヲ致スノデアリマス、小
作人ノミニ依シテ造ル組合ヲ、小作組合ト私ハ考ヘテ居リマ
ス、小作人ト地主トノ共同設立ヲ農業組合ト私ハ考ヘテ
居ル次第デアリマス、從來ノ產業組合法ハ御承知ノ通リ、
設立ニ非常ニ煩瑣ナル手續ヲ要シマス、所謂認可主義ヲ
御執リニナッテ居ル、故ニ此農業組合若クハ小作組合ト云フ
モノハ、屆出主義ヲ執ル、斯ウ云フコトニナサッタナラバドウデア
ルカ、所謂其長ヲ採リ其短ヲ捨ル所ノ一端デアリマス、ソレ
カラ如何ナル事業ヲ爲スカ-其組合ハ如何ナル事業ヲ爲
スカト言ウタナラバ、組合員ノ共濟慰安其他共同ノ利益
增進ヲ圖ル爲ニ、一ツ共同ノ事業ヲ行フコトガ出來ルト致
シマシテ、例ヘバ肥料ノ共同購入デアルトカ、化學肥料製造、
共同耕作、日用品ノ共同購入、新式農具ノ共同使用、籾
摺機械、或ハ精白機械ノ裝置、或ハ文明機械ノ應用、農產
物ノ共同販賣、資金ノ供給、貯金、娛樂、進ンデハ聯合組合
ノ運用ニ依リマシテ、共濟事業、若クハ保險事業ヲ經營シ
得ラレル斯ウ云フコトニ致シマシタナラバ、自然ト地主ト小
作ノ間ノ精神的融和ガ起ルト同時ニ、小作者ニ向ッテ彼等
ノ直接利益ヲ增進スルコトガ出來ルモノナリト私ハ考ヘル
ノデアリマス、而モ尙ホ農業方面ニ向ッテハ、生產費ノ輕減
トナリ、生活費ノ輕減トナリ、取モ直サズ小作者及ビ地主ノ
福利增進ニ效能ガアル、地主モ亦小作料減額ナドノ爭ヲ致サ
ズトモ、此小作組合或ハ農業組合ト云フモノニ極力カヲ盡シ
テ、資金ノ足ラナイ時ニハ資金ヲ貸シテヤラウ、又組合ノ管理
ナドハ、小作者ガ其暇ガナケレバ、卽チ地主ガ其管理ヲ致シ
テヤルト云フヤウナコトヲ致シテ、小作者ヲ保護致シタナラバ
此小作爭議ト云フモノハ自然ト無クナッテシマフモノナリト
私ハ考ヘルノデアリマス、其證據ト致シマシテ貴族院議員ニ
出ラレテ居リマスル福井縣ノ山田歛君ガ其主旨經營ノヤリ
方ヲヤッテ居ラレル、只今申上ゲマシタ農業組合ト云フガ如
キコトヲ爲ナレテ、金ノ足ラナイ時ニハ低利ノ、而モ無利息
ノ金ヲ山田君ガ提供致サレテ居ル、吉凶禍福ヲ共ニ致シ、
又其組合ノ經營管理ハ山田君ガ管理費マデ出シテ管
理經營ヲ致サレテ居ル、ソレガ故ニ山田君ノ村、山田君ノ地
方ト云フモノハ、何等小作問題ト云フ事ガ起キナイト云フ
實例ガアルノデアリマス、決シテ空理空論ヲ述ベルノデアリ
マセヌ、小作爭議解決ノ方策ハ、以上ノ如キ組合ノ運用ニ
俟ツノ外ハナイト私ハ考ヘルノデアリマス、政府ノ御考ハ如
何デアリマセウカ、是ガ卽チ私ノ第三問デアリマス、更ニ農
業ノ知識、農民ノ人格向上モ、小作爭議ト云フモノヲ鎮定
致シマス上ニ於テ、最モ必要ナ事デアラウト思ヒマス、然ルニ
此農業ノ〓育、農村〓育ト云フコトニ於テハ、殆ド今日見
ルベキモノガ無イノデアリマス、ンレガ爲ニ第四問ト致シマシ
テ、農業〓育ノ件ニ付テ、御伺ヲ致スノデアリマス、政府ハ少
數者ノ爲ニ學校昇格ニ急ニシテ多數國民ノ〓育、特ニ農
村ニ於ケル補習〓育及農業〓育ヲ忽ニセル理由如何、竝
ニ政府ハ其現狀ニ甘ンズルヤ否ヤト云フコトニ付テ御尋ヲ
致スノデアリマス、御承知ノ通リ、随分此學校ノ昇格問題
ト云フコトガ、議會ニ於テモ、貴族院ニ於テモヤカマシク論
議サレタノデアリマス、間クガ如クパ近日政府ヨリ致シテ昇
格豫算ノ編成ヲサレ、議會ニ要求サレルト云フコトデアリマ
ス、其總額一千二百餘万圓ト聞イテ居リマス、而モ少數者
ノ爲ニ是ダケノ莫大ナル豫算ヲ要求サレルノデアリマス、飜ッ
テ農村ノ補習〓育ハ下ウデアルカ、又郡ナドデ建テヽ居リマ
シタ所ノ簡易ナル農學校、所謂乙種農學校、是等ノ現狀ハ
ドウデアルカト云フコトニ付テ御考ヲ遊バサレタナラバ、此昇
格問題ヨリモ、是等ノ問題ノ方ガ必要デアルマイカト私ハ考
ヘルノデアル、何故デアルト言ウタナラバ、丁度此義務〓育ノ
學年ガ卒ッテ、生徒ガドウ云フ方向ニ進ムカト云フコトノ調査
ヲ致シマスルト、是ハ帝國農會ノ調査デアリマスルガ、大正十年
三月ニ小學校ヲ卒業致シマシタ人ノ-是ハ百分算デアリ
マスルガ、八十八人マデト云フモノハ、補習〓育ノ方ニ向テ
進ムノデアリマス、ソレカラ十二人ガ中學程度ノ入學者デア
ル、斯ウ云フコトニナッテ居ル、所ガ實際此農業補習〓育ノ
狀態ハドウデアルカト申上ゲマシタナラバ、羊頭狗肉ノ感ガア
ル、看板ハ如何ニモ何〓農業補習學校ト云フ立派ナル看
板ハ揭ケテ居リマスルケレドモ、内容ニ立至ッテ見マスト、果
シテ〓授ヲヤッテ居ルヤラ、ヤッテ居ラナイヤラノ分ラヌヤウ
ナコトデアル、此事ハ私ガ申サズトモ政府モ御承知ノ通リ、
又此學校ヲ御覧ナスッタ方モ御承知ノコトヽ思ヒマス、而モ
其學校ノ數ガ、日本ニ於テ八千八百二十七、小學校ノ三
分ノ一、卽チ三ツノ小學校ニ一ツ、斯ウ云フ農業補習〓育
ヲ置イテアル、ンレ等ノ點ニ付テ、政府ハ何等考慮ヲ煩ハサ
レテ居リマセヌ、又乙種農業學校ハドウデアルカ、是ハ丁度
日本ニ二百程アリマス、郡ノ數ハ六百三十六、故ニ三郡ニ
一ツ位ノ平均ヲ以テ此學校ガ出來テ居ルノデアリマス、所
ガ郡制廢止ノ結果、費用ノ出所ガアリマセヌ爲ニ、廢校ノ已
ムナキニ至ルコトニナッテ居ル、折角簡易ナル農業〓育ト云
フモノガ、特ニ進歩ノ端〓ヲ開カウト致シテ居ル時ニ當ッテ
郡制廢止ニナッタ、ソレガ爲ニ廢校ノ已ムナキニ至ル、斯ウ云
フ憐ムベキ狀態デアリマス、故ニ私ハ只今ノ如ク少數者ノ利
益ヲ圖ル昇格問題モ必要デアリマセウ、又高等〓育ト云フ
コトモ必要デアリマセウガ、一方ニ於テ此憐ムベキ多數ノ國
民ヲ如何ニ〓育スルカ、其點ニ付テ御伺致スノデアリマス、
以上ハ大體ニ於テ小作爭議ニ關スルコトノ質問デアリマス
カ、是カラハ小作争議ニアラズシテ其他農村社會問題ニ付
テ二三御伺致シタイノデアリマス、卽チ第五問ト致シマシテ、
都市集中ノ件デアリマス、近來經濟的ニ社會的ニ目醒メ
タル農民ト云フモノハ、農村ニ滯在致シマセズシテ、踵ヲ接シ
テ都會ニ集中スル所ノ趣ガアルノデアリマス、而モ都市計畫
こト云フコトガ出來マシテ、益〓此勢ヲ助長セラルヽ所ノ傾ガ
アル、政府ハ之ニ對シ如何ナル方策ヲ御執リニナル考デアル
カ、之ガ第五問デアリマス、卽チ東京市ノ統計ヲ取リマスト、
大正二年ニハ二百五十四万ノ人口ガアッタノデアリマス、然
ルニ其後五箇年ヲ經タル所ノ七年ニハ、六十万人ノ增加ヲ
致シテ居ル、卽チ三百十四万ニ相成ッテ居リマス、大阪ノ人
口ヲ調査致シマスト、矢張此五箇年ノ間ニ五十万人ノ增
加ヲ致シテ居ル、斯ウ云フ狀態デアリマス、其他神戶ニ致シ
マシテモ、名古屋ニ致シマシテモ、横濱ニ致シマシテモ、東京
大阪同樣ニ人口ハ增加シツヽアルノデアリマス、是亦政府ハ
御承知ノ通リデアリマス、然ルニ都市計畫ノ結果ハ、如何樣
ニ此部市ガ膨脹スルカト云フコトヲ調査致シマスルニ、東京
ハ六倍大キク相成ルノデアリマス、大阪モ亦六倍、京都ハ十
三倍、神戶ハ三倍、橫濱ハ今日ノ五倍、斯ウ云フコトニ相
成ルノデアリマシテ、益、農村ノ人間ヲ都會ニ集中スルヤウ
ナコトニ相成ルコトハ、火ヲ睹ルヨリ明カデアリマスガ、政
府ハ此都會集中ト云フコト、竝ニ此農村ヲ離ルヽ所ノ者ヲ
如何ニシテ喰留メテ置クカ、農村ガ荒廢ニ歸シテモ宜イカ、
何等カノ御考ガアル筈ト思フ、此事ニ付テ御伺〓シタイノ
デアリマス(拍手)ソレカラ其次ニ社會問題トシテ、農村ニ關
スル事ハ農村ノ中堅階級ノ滅亡ト云フコトデアリマス、仍
テ第六問トシテ、中堅階級ニ付テ御尋ヲ致スノデアリマス、
卽チ農村ニ於ケル中堅階級ハ、負擔ノ過重、物價ノ騰貴ナ
ドニ依クテ滅亡スルモノガ多イ、政府ハ之ニ處スル對策ヲ御
講ジニナッテ居リマセヌガ、其御講ジニナラナイ理由ハ如何デ
アルカ、此事ニ付テ御尋ヲ致スノテアリマス(拍手)卽チ地主
ト都會ノ商業者トノ負擔公平不公平ト云フコトニ付テハ、
先日帝國農會ニ於テ調査サレテ居リマスガ、地主ハ商業家
ノ三倍ノ負擔ヲシテ居ルト云フコトニ相成ッテ居リマス、卽
チ商業者ノ十圓ノ負擔ニ對シ、地主ハ三十圓ノ負擔ヲ致シ
テ居ル、斯ウ云フコトニ相成ッテ居リマス、其詳細ナル統計竝
ニ說明ハ此處デ申上ゲマセヌデ、議長ノ許可ヲ得マシテ速
記錄ニ記載スルコトニ致シマス、斯ウ云フ負擔ノ狀態デア
リマス、ソレカラ又物價ノ騰貴ト云フコトニ付テハ、私ガ諄々
シク申シマセヌデモ御承知ノ通リデアル、其結果農村ニ生活
致シテ居リマス、中農、中堅階級ト云フモノハ年々滅亡致シ
テ居ル、山崎延吉君ノ調査ニ依ルト、最近每年七千六百
戶ヅヽ中堅階級ハ滅亡シテ居ル、斯ウ云フコトヲ言ハレテ
居リマス、實ニ由々シキ問題ト私ハ思フ、御承知ノ通リ中堅
階級ト云フモノハ、農村ニ於ケル自治機關ノ中心トモナリ、
或ハ公共事業ノ中心トモナリ、公益事業ノ中心トモ相成ル
ノデアリマス、然ルニ今ヤ農村ニ於ケル中堅階級ハ滅亡ニ
向ンテ居ルノデアル、而シテ農村ニ於ケル不振ノ勢ヲ愈、甚シ
カラシメヤウトシテ居ル、然ルニ政府ハ私ノ見ル所デハ、是等
ノ社會問題ニ對シテ恰モ對岸ノ火事ヲ見テ居ラレルガ如キ
感ガアルノデアリマスガ、是ハ何故デアリマスカ(拍手)此中
堅階級ノ滅亡ハドウシテモ豫防シ、更ニ都市ニ集中スル所
ノ農民、離村スル所ノ農民ヲ引留メル方法ヲ考ヘナケレバ、
農業ノ發達ハ期シテ待ツコトガ出來ナイト思フノデアリマス、
ソコデ私熟〓考ヘマスルニ、是ハ確ニ制度ノ上ニ缺陷ガアル、
土地制度ノ上ニ於テ缺陷ガアルト考ヘルノデアリマス、故ニ
第七問トシテ土地制度ノ件ニ關シテ御伺ヲ致スノデアリマ
ス、政府ハ小面積ノ耕地所有者ノ地租ヲ免除シ、大面積ノ
所有者ニ對シテハ累進的地租ヲ課スルコト猶ホ所得稅ノ
如クシ、更ニ自作耕地資金ヲ供給スル爲メ營利ヲ目的トセ
ザル農業銀行ヲ設立スルノ意思ナキヤ、否ヤト云フコトニ付
テ御尋ヲスルノデアリマス、都市集中ノコト、竝ニ中堅階級
滅亡ノコトハ、前申上ゲタ通リデアリマスガ、更ニ之ヲ農家
ノ種類ヨリ分ッテ〓究致シマスルト、自作農ト云フモノハ年
々減ジテ、小作人ガ增加シツヽアルト云フコトハ御承知ノ
通リデアリマス、統計ヲ示サズトモ御承知デアリマセウ、而モ
五十町步以上ノ地主ト云フモノハ、年々增加シツヽアル、此
事モ政府ハ御承知デアリマス、是ハドウ云フ譯デアリマス、
中堅階級ガ無クナリ、自作農ガ無クナリ、而モ中堅階級ノ
子弟ハ田舎ヲ嫌ノテ都會ニ集シテ來ル、其原因ヲ考ヘマスト
云フト、是ハ第一ニハ負擔ノ過重、先刻申上ゲマシタ通リ
田舍ノ人ハ非常ニ澤山ナル率ノ稅ヲ拂ッテ居ル、負擔ノ過
重、第二ハ物價ノ騰貴、第三ハ土地制度ノ不公平、ソレカ
ラ第四ト致シマシテハ斯樣ナル原因ヨリ致シマシテ、生活致
シマス上ニ於テ、生產シタル其果實ニ依ッテ生活ヲ致サズシ
テ、負債ニ依シテ、所謂借錢ニ依シテ生活ヲ致スト云フガ如キ
狀態ニナリツヽアルノデアリマス、中堅階級竝ニ自作農ハン
レガ爲ニ是等ガ滅亡スルノデアリマス、丁度今日ニ於テ農
民ノ負債ト云フモノハ、一一十億万圓ヲ超過致シテ居ル、其
内生產的ニ使ハレテ居ルモノハ僅ニ十億万圓、アトノ十億
万圓ト云フモノハ生活費ニ使ッテ、所謂ソレガ借錢トシテ殘ツ
テ居ル、斯ウ云フ狀態ニ相成ッテ居ルノデアリマス、ソレガ爲
ニ中堅階級竝ニ自作農ト云フ者ハ亡ンデ行クノデアリマス、
故ニドウシテモ此時此際是等ヲ救濟致サウト致シマスルニ付
キマシテハ、五反步以下ノモノハ-五反步以下ノ土地ヲ
所有致シテ居ル者ハ免稅ニシテヤル、サウシテ彼等ノ生存
權ノ保證ヲ與ヘル、所謂生活ノ安定ヲ與ベル、ソレカラ五反
步以上三町步以上ノ土地所有者ニ對シテハ、現行ノ地租
ヲ課シテ宜シイ、併ナガラ是等モ中堅階級ノ人デアリマスル
ガ故ニ、〓日借錢デ困ッテ居ル、其借錢ニ對シテハ相當ノ救
濟、所謂舊イ所ノ借錢ヲ借替ヘテ、新シキ低廉ナル利息ノ借
錢ト借替ヘテヤルト云フ所ノ金融ノ途ヲ付ケテヤラナケレバ
ナラヌ、卽チ農業銀行ト云フモノヲ拵ヘテ、營利ヲ目的トセ
ザル所ノ、社會政策的ノ農業銀行ト云フモノヲ造ルコトガ
宜カラウト云フノハ、此意味ヨリ私ハ論ズルノデアリマス、而
シテ三町以上ノ土地所有者ト云フ者ハ、又大地主ト云フ
者ハ、袖手傍觀唯、小作料、小作米ノミニ依ッテ飯ヲ食ウテ居
ル人デアリマスカラ、恰モ華族ノ財產家ノ如キモノデアリマ
スガ故ニ、是等ハ征伐シテ宜シイ、故ニ是等ニ對シテハ所得
稅ノ累進稅ヲ課スルガ如ク-征伐ト云フノガ惡ケレバ是
ハ取消シマス-緩和致ス必要ガアルダラウト私ハ考ヘルノ
デアリマス、是等ノ所謂三町步以上ノ土地所有者ニ對シテ
ハ所得稅ニ定メテアルガ如キ累進稅率ヲ御執リニナッタナラ
バ、ドウデアラウカ、斯ク致シタナラバ、其制度ノ結果ト致シマ
シテ、自作農ノ創設トモナルデアリマセウ、又自作農ヲ維持
スルコトモ出來ルノデアリマセウ、而モ一方ニ都市-都會
ニ集中スル所ノ弊害ト云フモノヲ防グコトモ出來ルデアリマ
セウ、而モ土地分配ト云フモノガ極テ公平ニ相成リマシテ、
農村ト云フモノヽ美風ガ保タレル事ニ相成ルダラウト思フノ
デアリマス(拍手)現ニ斯ノ如キ所ノ制度ハ御承知ノ通リ、
丁抹ニ於テモ小農法ト云フ一ツノ制度ヲ以テ現在實行致
シテ居リマス、此營利ヲ目的トセザル所ノ農業銀行ハ御承
知ノ通、亞米利加ガ世界ニ率先致シマシテ、其制度ト云フ
モノヲ定メテ現ニ實行致シテ居ルノデアリマス、決シテ是亦
私ノ空理空論デハアリマセヌ、世界ノ所謂農業國ノ、而モ
農業ニ忠實ナル國ニ於ケル所ノ實例デアリマス、果シテ政
府ハ私ガ只今申上ゲマシタガ如ク、土地制度ノ改正ヲ行ハ
ルヽ意思アリヤ否ヤ、又營利ヲ目的トセザル所ノ農業銀行
ヲ設立サルヽ所ノ意思アリヤ否ヤ、是ガ第七問デアリマス、
要スルニ今日ハ御承知ノ通リ、産業立國ト云フコトガヤカ
マシク唱ヘラレテ居リマス、併ナガラ其議論ヲ綜合致シマス
ルニ、政府ト云ハズ、民間ト云ハズ、或ハ工業若クハ貿易
ヲ盛ニスベシト云フガ如キ事ニ傾イテ居ルノデハナイカト私
ハ考ヘルノデアリマス、卽チ日本ハ〓土狹シ、所謂領土ガ狹
イ、人口ハ少シ、是レ以上ハ工業ヲ盛ニシ、又國民ノ頭腦ヲ
發達セシメテ、工業品ヲ盛ニ製造シテ、而モ之ヲ外國ニ賣
出スヨリ方法ハナカラウト、斯ウ云フ風ニ私ハ聞エルノデア
リマス、併ナガラ此工業ニ從事致シマスル所ノ勞働者、所謂
壯健ナル勞働者ノ供給ハ何レカラ來ルカト言ヘバ是亦農
村デアリマス、而モ亦工業勞働、又ハ工業者其他貿易業者
ノ食糧、食物ト云フモノハ何所カラ供給ヲ致シテ居ルカト
言ヘバ是亦農村デアル、而モ軍備縮小ト云フ事ヲ三ロハレ
ルガ、少クトモ此軍備ト云フモノハ必要デアル、其軍備ニ要
スル所ノ軍人壯丁ハ何レカラ供給致シテ居ルカト言ヘバ
是亦農村カラ供給ヲ致シテ居ルノデアリマス、故ニ私ハ工
業ヲ盛ナラシメヤウ、貿易ヲ盛ナラシメヤウト云フ點ニ付テ、
異議ヲ挾ム者デアリマセヌケレドモ、ソレ等ヲ盛ナラシムル所
ノ一要素デアル所ノ農業卜云フモノモ、少クトモ商工ト同ジ
如ク、併進的ニ發達セシムルノ必要アリト私ハ考ヘルノデア
リマス、是亦國ヲ保ツ所以ナリト私ハ考ヘルノデアリマス、此
見解ヨリ致シマシテ、今日最モヤカマシク論議サレテ居ル所
ノ、而モ農村ニヤカマシイ所ノ小作爭議、其他農村ニ起リツ
ツアル所ノ社會問題ニ付テ御尋ヲ致シタ次等デアリマス、
何卒深切ナル御懇切ナル御答辯ヲ要求致シマス(拍手)
〔參照〕
商農負擔比較(帝國農會調査)
廢減稅ノ高唱サレル折柄商、農兩業者ノ公租公課負擔
ノ多寡輕重ニ就テ帝國農會ガ調査シタルモノニ依ルト
略左表ノヤウナ見當ニアル
商業者ノ負擔本調査ハ東京市芝區内ノ白米商ニ就
キ調ベタモノデ流動資本一万圓ヲ有シ一箇年ノ賣上
金高約八万圓ヲ得純益約五千圓ヲ計上シ得ル地位
ノモノデアル
所得稅二〇三、〇〇同附加稅四〇、六〇
營業稅一六〇〇〇同附加稅一二八、〇〇
自轉車稅二七、〇〇荷車稅一〇〇
家屋稅七、〇〇同附加稅三一、五〇
計六一五、一〇
農業者ノ負擔ハ愛知縣西春日井郡內ニテ田地十三町
步畑七町步ヲ有シ契約小作料高二百石ヲ有スル地主
ニ就テ調査シタモノデ田地一反步當リ公課額ハ左ノ通
リデアル
田畑
縣地利局 遞信局 附近-
二、五七
三、七十四 四十一 四 一三三
六、六、八
要項特製作五〇四七○
四
農會費二○二〇
水利費五四
地主會費六〇六〇
尙武會費三一一二
計一五、九一一二、八三
右ヲ所有田畑全部ニ賦課計算スルト年額二千九百六
十七圓三十四錢ノ多額ニ上ル二百石ノ小作料ヲ石三
十七圓ニ換算シテ七千四百圓デアルカラ此ノ地主ハ田
畑收入ノ三割四分六厘ヲ公租公課ノ爲ニ支出シテ居
ルモノデアル非常ナ重課デアルカラ全國モ大抵此ノ見當
ニナッテ居ル
商農兩者比較前記ノ地主ノ收入狀態ヲ芝區內ノ米
商ニ就テ比較考査スルト流動資本一万圓純益約五千
圓ノモノヲ純益金七千五百圓ニ換算計上スルトキハ稅
額ハ前記ノ六百十五圓十錢カラ九百二十二圓六十五
錢ヲ增加スル卽チ收益ハ同一ニシテモ其稅額ハ農業者
負擔ノ三分ノ一ニシカ當ラヌ尤モ商業ニハ物價ノ高低
商機ノ轉變賣上代金ノ囘收不能等到底農業ノ堅實ナ
ルニ比スベクモアラズ稅額ノ輕イノハ當然ノコトノヤウデ
モアルガ農業者ニモ米價ノ高低小作料ノ未拂ハアリ〓
シテ其ノ負擔偏重ノ觀ハ免レナイト発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=8
-
009・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 田中農商務次官
〔政府委員田中隆三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=9
-
010・田中隆三
○政府委員(田中隆三君) 只今土井君ヨリシテ農業政
策ニ關シテ種々御抱負ノアル所、御經綸ノアル次第ヲ承リ
マシテ、此席ニ於キマシテ敬聽致シテ居リマシタノデアリマス
而シテ其揭ゲラレマシタ所ノ諸項目、例ヘバ小作爭議ニ關ス
ルコトハ、或ハ農民ノ都市ニ集中スル趨勢、或ハ農商工トノ
負擔ノ割合如何、其輕重ノ模樣、或ハ又進ンデ土地制度
ニ關シテ、何等ノ施設ヲ此際スル必要ナキカト云フヤ
ウナ諸問題ニ付キマシテハ、政府ニ於テモ愼重調查考慮ヲ
盡シテ居ル事柄デアリマシテ、既ニ一昨年ノ臨時議會ニ於
テ、其調査ニ關スル費用ノ御協賛ヲ得マシテ、爾後小作制
度調査委員會ト云フモノヲ設ケマシテ、屢〓集合シテ意見ヲ
モ闘ハシ、又一方ニ於テハ其意見ヲ定メルニ付テノ各般ノ
調査ニ從事シツヽアルノデアリマス、土井君モ其委員ノ一
人ト成ラレテ居ルノデ、度々私共モ御名論ヲ拜聽シツヽア
ル譯デアリマス、ソレ故ニ此重大ナル問題ニ付キマシテハ、土
井君ハ勿論ノ事、皆樣ト共ニ政府ガカヲ協セマシテ、一日
モ早ク良案名策ヲ得テ、其實行ヲ致シタイト考ヘテ居ル次
第デアリマス、之ヲ以テ御答ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=10
-
011・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 横山勝太郞君
二帝都ノ公安維特ニ關スル質問(橫山勝
太郞君提出)
帝都ノ公安維持ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十一年一月二十一日
提出者横山勝太郞贊成者三木武吉
外二十九人
帝都ノ公安維持ニ關スル質問主意書
-最平和ヲ要スヘキ世界ノ公道タル東京驛頭ニ於テ
屢流血ノ慘事ヲ見ルハ一般國民ノ均シク遺憾トス
ル所ニシテ殊ニ帝都二百万市民ノ不安ニ堪ヘザル
所ナリ曩ニ親日鮮人関元植ノ事アリ今又内閣總理
大臣政友會總裁原敬君刺客ノ襲フ所トナリ非命
ノ死ヲ遂ク實ニ國家ノ不祥事ニシテ憲政史上ノ一
大惡痕タリ政府ハ原君被害ノ原因ハ奈邊ニ在リト
認ムル乎且其ノ責任如何
二政府ハ屢脅威セラルル帝都公安ノ維持ニ關シ從來
如何ナル手段ヲ採リ且將來如何ナル方策ニ出テム
トスル乎
三既往ノ事跡ニ微スルニ帝都ニ於ケル特殊ノ警察機
關タル警視廳ヲ存置スルノ必要ナク寧口之ヲ廢止
シ一般ノ制度ニ歸セシムルヲ適當ナリト信ズ政府ノ
所見如何
右及質問候也
〔奧議長議長席ヲ退キ粕谷副議長代リ著席〕
〔橫山勝太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=11
-
012・横山勝太郎
○横山勝太郞君 本員ハ帝都ノ公安ニ關スル重大ナル
事項ニ付テ、政府ノ所見ヲ質シテ置キタイト思ヒマス、此質
問ヲ起シマス理由ハ、其質問書ニ梗〓ヲ說明致シテ置キマ
シタ通リ、諸君モ御承知ノ通リ平和デアリ、最モ靜肅デアル
ベキ萬國ノ公道ト稱シテモ宜シイ東京驛ニ於テ、屢〓流血ノ
慘事ヲ見ルト云フコトハ、洵ニ帝都ノ爲ニ遺憾トスルノミナ
ラズ、我國ノ名譽ノ爲ニ甚ダ遺憾ニ存ズルモノデアリマス、曩
ニハ親日派ノ鮮人関元植君ガ束京驛ニ於テ暗殺ヲセラレ
マシタ、今復タ政友會ノ總裁、時ノ總理大臣デアラレタ所ノ
原敬氏ガ、不幸ニシテ刺客ノ襲フ所トナッテ、非業ノ死ヲ遂
ゲラレタト云フコトハ、洵ニ憲法史上ノ一大汚點デアリマシ
テ、吾々ハ非常ニ之ヲ遺憾トスルモノデアリマス、ソコデ第一
ニ吾々ノ憂フル所ハ、斯ノ如ク束京市ノ中央、而モ宮城ヲ
距ルコト僅ニ數町ノ東京驛ニ於テ、屢〓斯ノ如キ慘事ガ演
出セラレルト云フコトハ、先刻申上ゲタ如ク帝都ノ一大不
安デアリマス、吾々帝都ノ住民ハ、重大ナル生命、自由、財
產ト云フモノヲ何ニ依ッテ保護スルコトガ出來ルカト云フ不
安ノ狀態ニ陷ルノハ已ムヲ得ヌコトデアル、帝都ハ申ス迄モ
ナク政治ノ中心點デアリマス、政治ノ中心點デアル所ノ帝
都ノ住民ガ、不安ヲ感ズルト云フ事柄ハ、軈テ我ガ日本帝
國全體ノ不安デアルト云フコトヲ吾々ハ斷言シテ憚ラヌ者
デアリマス(拍手)斯ノ如ク政治ノ中心タル三百万ノ帝都ノ
住民ガ、生命、自由、財產ノ上ニ非常ナル脅威ヲ感ジ延テ
全國ノ不安ヲ來シタト云フ事柄ハ、全ク我ガ內務行政ノ一
部タル警察ノ不振ト云フコトヲ暴露致シタモノデアルト、私
ハ斷定致サナケレバナラヌ(拍手)是等ノ點ニ付テ、吾々ハ
屢、此壇上ニ立ッテ内務大臣ノ所見ヲ質シテ居ルノデアリマ
スケレドモガ、未ガ曾テ徹底シタル意見ヲ承ルコトガ出來ナ
イト云フコトヲ、私ハ遺憾ニ存ズルノデアリマス、斯ノ如ク吾々
帝都ノ住民ガ、非常ナル不安ヲ感ズルト云フ事柄ハ、我ガ
帝國ノ前途ノ爲ニ極テ憂慮スベキ事項デアルト存ジマスカ
ラ、私ハ以下數項ニ亙ッテ、政府當局ノ御意見ノ在ル所ヲ
承リタイノデアリマス、先ヅ第一ニ承リタイノハ、原總理ガ東
京驛ニ於テ暗殺ヲセラレタト云フコトハ、當時ノ新聞雜誌
ニ依シテ極テ詳細ニ報道セラレテ居リマスガ、併ナガラ其原
總理ガ暗殺ヲセラレタル原因ニ付テハ、當局ノ責任アル言
明ヲ永ッタコトガナイノデアリマス、苟モ大政黨ノ首領デアッテ、
而モ時ノ內閣ノ總理大臣デアル所ノ原氏ガ、暗殺ヲセラレ
タト云フコトデアリマスナラバ、内務當局ハ其司法上ノ責任
ガ何レニ歸スルヤハ、暫ク司法權ノ解決ニ之ヲ委託スルト
致シマシテモ、斯ノ如キ慘事ハ何ガ故ニ起シタノデアルカト云
フコトノ原因ハ、必ズ調査ヲ爲サルベキ筋合デアルト私ハ考
ヘル、而シテ一國ノ總理大臣トモアラウ者ガ、公然東京驛ニ
於テ殺害セラレルト云フヤウナ事柄ハ、將來ノ政治家ノ以テ
鑑トスベキ事項デアリマスガ故ニ、何故ニ斯ノ如キ重大ナル結
果ヲ生ジタカト云フ事柄ハ、苟モ國民治安ノ責任ヲ雙肩ニ
擔ウテ居ル所ノ內務當局ハ、最モ詳細ニ此事項ヲ調査致
シテ、再ビ斯ノ如キ慘事ノ國民ノ前ニ演出セラレルコトノナ
キヤウニ御盡力ニ相成ルノガ私ハ當然デアル、斯ウ考ヘテ居
リマス、而シテ原首相ハ如何ナル原因ニ依シテ、暗殺ノ害ヲ
被ラレタカト云フコトヲ、吾々ハ冷靜ニ考慮致シマスノニ、
是ハ或ル新聞ノ記事等ニ依レバ外來ノ危險思想ヲ抱懷
致シテ居ル所ノ或ル團體ノ〓唆煽動スル所デアル、斯
樣ニ傳ヘル者モアリマスケレドモ、併シ事實進行ノ今日ニ於
テ、其結果ヲ調査致シマスノニ、全ク原首相ノ暗殺ハ、外來
ノ思想ニ煽動セラレタルモノデモ、〓唆セラレタルモノデモナ
イト云フコトハ極テ明瞭デアリマス、共產主義ノ思想モ、無
政府主義ノ思想モ、過激思想ノ事柄モ、-切此問題ニハ
關係ヲ持ンテ居ラナイト云フコトガ今日明瞭デアル、隨テ何
カ迷信ノ結果ヤッタモノデアルカト申シマスレバ、左樣ナ事柄
モナイ、然ラバ原總理ヲ暗殺シタル所ノ中岡艮一ハ、知覺
精神ノ上ニ何等カ異常ノアル者デアルカー云フコトヲ調査
致シテ見ルノニ、是亦完全ナル貴任能力ヲ有スル者デアッテ
意思ノ點ニ於テ寸毫モ缺點ノ無イ人デアル、刑法ヲ適用ス
ル上ニ於テ、裁判官ハ毫モ考慮ヲ費スコトヲ要シナイ、完全
ナル意思ヲ持ッテ居ル人デアルト云フコトモ極テ明瞭デアル、
然ラバ多クノ場合、人ヲ殺シ、人ヲ害スルト云フ場合ニハ、私
ノ憤懣惡恨ノ情ト云フモノガ、能ク其原因ヲ爲スモノデアリ
マスガ、原總理ト中岡良一トノ問ニ、斯ノ如キ私的惡恨ノ
關係ガアルカト申シマスレバ、是亦絕對ニ何等ノ關係モナイ
コトガ明瞭デアリマス、斯ノ如ク詮ジ來レバ、何ガ原因デアル
カト云フコトガ問題トナルノデアリマス、是ニ於テ私ハ中岡
艮一ガ裁判官ノ前ニ於テ供述シタル其供述ノ一端ヲ、諸
君ニ御紹介ヲ申シテ、サウシテ政府當局ノ考慮ヲ爲サルヽ
資料ニ供シタイト斯ウ考ヘルノデアリマス、極テ簡單デアリ
マスカラ、朗讀致シテ置キマス、中岡艮一ハ豫審廷ニ於テ、
裁判官ノ訊問ニ對シテ、斯ウ答ヘテ居リマス、「問、政治問題
ニ付テハ何時頃カラ考ヘルヤウニナッタカ」「答、昨年ノ五月
頃尼港問題ガ起ノテカラ政治方面ニ注意スルヤウニナリマ
シター「問、ドンナ風ニ考へタカ」「答、尼港問題ヲ新聞雜誌デ
見テ政府ノ手拔リニ依ッテ彼樣ナ失政ヲ生ジタト憤慨シマ
シタ、ソレニ靑島問題ニ關スル政府ノ交涉ガ頗ル消極的デ
アルト思ヒ、東京市疑獄事件ニ付テハ、畏多クモ明治神宮
參道不正工事ヲシタリ、又瓦斯疑獄ニ付、現ニ代議士トモ
フ言ハルヽ者ガ政黨ニ關係アル爲メ、採消運動ヲシタト云フ
新聞記事ヲ見、又相當ノ辯護人ガ犯罪ヲ辯護スルモノハ宜
イガ、犯罪ヲ免レルヤウナ方法ヲ〓ヘタト云フコトナドハ怪
シカラヌト思ヒマシタ、滿鐵事件ニ付テモ、半官半民ノ會社
ガ個人ヨリ故ラニ高ク買込ミ、其何人ガ政友會ニ關係シテ
居ルト云フコトデアリ、阿片事件ニ付テハ高官分賄賂ヲ貫ツ
テ選擧ノ費用ニ供シ、內務次官トモ言ハルヽ者ガ、此國務
ノ忙シイノニ、伊勢神宮ヲ參拜スルコトハ宜イデスガ、伊勢神
宮參拜ノ序デアルト云ウテ、遙々熊本マデ行キ、政友會ノ人
ノ選擧應援運動ヲシタリ、福島ノ選擧デハ官憲ヲ以テ妨害
ヲシタリ、又華盛頓會議ノ大使ニハ平素軍備縮小ニ付テ
考ヘテ居ル島田、尾崎ナドノ適任者ガアルノニ、今マデ左様
ナ事ニ關係ノナイ德川公爵ヲ選ンダノハ、德川內閣ヲ作ル
準備デアリ、彼樣ナ事ヲ新聞雜誌デ見ル度ニ、現內閣ハ私
ヲスル、怪シカラヌ政府デアルト思ヒマシタ、古賀、阿部、內
務次官、其他ノ者モ惡イト思ヒマシタガ、斯樣ナ者ガ惡イ事
ヲシテモ、其儘打拾テ置クノハ、上ニ立ツ總理大臣ガ惡イト
思ヒマシタ一問勞働問題ニ付テハ別ニ考ヘナカンタカ」「答、
特ニ考ヘマセヌデシタガ、神戶ノ勞働問題ガ起ッタ時、警官
ガ三菱、川崎等ノ金持ヤ政黨關係アル者ニ味方ヲシ、勞働
者ハ亂暴スル者トキメテ抜劒シタナトハ怪シカラヌト思ヒマシ
タ」「問、斯樣ナ政治ニ對スル憤慨ニ付テ原首相ヲ殺スト云
フ考ハ何時頃持ッタカ」「答、本年ノ夏以來只今申上ゲタヤ
ウナ砒政ガ頻々トシテ起ッテ來タノデ、是ハ誰カガ原首相ヲ
斃スダラウ、斃セバ宜イガト思ッテ居リマシタラ、誰カ爆彈ヲ腰
ニシテ原首相ヲ斃サウトシタガ、失敗シタト云フ新聞ヲ見、
又原首相ヲ誰カガ斃サウトシテ居ルト云フ話ヲ聞キマシタ
ガ、若シ誰モヤラナケレバ自分ガヤラウト段々思フヤウニナリ
マシタ」「問、愈、自分ガ手ヲ下シテ原首相ヲ殺サウト決心シ
タノハ、何時カ」「答、前ニ申上ゲタ通リ朝日平吾ガ安田善
次郞ヲ殺シタニ付、驛デ話ヲシタ、翌晩寢テカラ決心ヲ固メ
シマタ」斯ウ云フコトニナッテ居リマス、此豫審判事ニ對スル
中岡艮一ノ答辯ハ果シテ中岡艮一ノ答辯ガ誤ッテ居ルカ
居ラヌガト云フコトハ、私之ヲ玆ニ論議スルノ自由ヲ有シマ
セヌ、免ニ角時メク政友會ノ總裁原敬氏ヲ東京驛頭ニ於
テ暗殺シタル中岡艮一ハ、斯ク政治上ノ原因ニ依ヶテ暗殺
シタノデアルト云フコトヲ、裁判官ノ前ニ公言致シテ居ルト
云フ事柄ハ、政友會ノ諸君モ、現內閣ノ諸公モ、大ニ考慮
ヲセラレナケレバナラヌ事項デアルト云フコトヲ私ハ申ス資
料ニ供スルノデアリマス(拍手)斯ノ如ク政治上ノ理由ヲ以
テ中岡艮一ハ原首相ヲ殺シタノデアルカ、此中岡艮一ノ考
ガ間違ッタカ、ドウカハ姑ク別問題ト致シテ、吾々セ中岡艮
一ノ行爲ニ共鳴スル者デハアリマセヌ、然レドモ原內閣ノ時
代ニ於テ、第一普通選舉ヲ阻止スルノ目的ヲ以テ、民意ヲ
知ルノ必要アリト稱シテ、帝國議會、卽チ衆議院ノ解散ヲ
致シタト云フ事柄ハ何トシテモ民衆ノ反對ヲ買フベキ一ツ
ノ原因デアルト」云フコトヲ私ハ斷言シテ憚ラヌ者デアル(拍
手)殊ニ今日坊間ニ宣傳セラレテアリマスル阿片事件ノ豫
審終結決定書ヲ拜見致シマスレバ、古賀長官ノ罪跡ハ裁
判官ノ責任ヲ以テ署名ヲシテ居ル、公表文書ニ於テ明瞭デ
アル如ク、其犯罪ハ今日此席デ申ス必要ヲ認メマセスガ兎
ニ角諸君モ御承知ノ通リ、數年前ニ廣東政府ノ紙幣ヲ僞
造シタリトノ嫌疑ノ下ニ、東京地方裁判所ノ檢事局ノ起
訴スル所トナリ、第一審ニ於テ自由刑ノ栽判ヲ受ケテ、東京
控訴院ニ控訴シタル結果、免ニ角無罪ニハナッタケレドモ、ン
レハ證憑不十分ノ結果無罪ト云フコトノ宣告ヲ受ケテ居
ルニ過ギナイ、兎ニ角前科トハ申シマセヌガ、非常ナル罪惡
ノ嫌疑ヲ受ケタ、社會的ニ觀察スレバ立派ナ政治的ノ前科
ノアル人間デアルト謂ハナケレバナラヌ(拍手)其惡名紛々
タル古賀廉造氏ヲ、處モアラウニ再ビ拓殖局長官ノ顯職ニ
推薦ヲ致シタト云フ事ハ、私ハ時ノ總理大臣原敬氏ハ、上、
天皇陛下ニ對シテ古賀廉造ヲ推薦シタル事ノ〓末ニ付
テノ責任ヲ感ゼラレナケレバナラヌト云フ事ヲ、私ハ玆ニ斷
言ヲスルノデアル(拍手)又古賀長官ノミナラズ、阿部府知
事ノ推薦ハ如何デアリマス、阿部府知事ノ今囘ノ事件以
前ノ事ハ私ハ此處デ言明スルノ必要ヲ認メマセヌガ、東京
府知事ニ再ビ任命セラレテ以來ノ阿部府知事ノ公人トシ
テノ行動ト云フモノハ、到底吾々東京府民、東京市民、否
國民ノ之ヲ承認スルコトヲ得ザルモノガ澤山アリマス、殊ニ
瓦斯問題ニ付テハ御承知ノ通リ警視廳ノ高等官デアル所ノ
熊谷巖カラ、郡部ノ瓦斯料金値上認可ノ一日モ速カナラン
コトノ請託ヲ受ケテ、サウシテ某待合ニ於テ五千圓ノ小切手
ノ提供ヲ受ケタト云フコトノ事實ハ極テ明瞭デアリマス、此
五千圓ノ小切手ノ提供ヲ受ケタル際ノ〓末ハ、是亦諸君
ハ新聞紙ニ依シテ御承知デアラウト考ヘマスガ、言下ニ之ヲ
排斥スルコトヲ爲サズシテ、明日午前十時ニ官邸ニ來レト、斯
ノ如ク裁判官ノ前ニ供述ヲ致シテ、纔ニ檢擧ヲ免レテ居ル
ノデアリマス、阿部府知事ト熊谷保安部長トハ役所ハ異ッ
テ居リマスルガ、同ジク我ガ帝國ノ高位高官ノ人デアリマシ
テ、上官下官ノ關係ヲ持ッテ居ルノデアリマス、若シ阿部氏
ニシテ最モ公平デアリ、最モ廉直ノ士デアルナラバ此五千
圓ノ提供ヲ受ケタル際ニ、明日午前十時ニ官邸ニ來レト言
フヨリモ、言下ニ之ヲ叱責シ之ヲ斥ケ、而シテ相當ナル官紀
〓正ノ手段ヲ執ルト云フノガ、阿部府知事ノ執ルベキ途デ
アラウト私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)吾々ハ此五千圓ノ
〓末ニ付テ、若シ明朝午前十時ニ熊谷保安部長ガ官邸ニ
行キシナラバ、ドウナッタノデアラウカト云フコトニ付テ、今日
之ヲ考ヘテ見マスト、甚ダ怪訴ニ堪ヘナイノデアル(拍手)斯
ノ如キ人ヲ推薦ヲ致シテ、斯ノ如キ事柄ガ原因トナリ結果
トナッテ、サウシテ東京市ノ所謂瓦斯事件、卽チ疑獄事件ト
云フモノヲ惹起シテ居ルノデアル、之ニ付テ上長官デアル所
ノ内務大臣モ總理大臣モ責任ヲ負ハヌト云フコトハ、私
ハ無責任ノ極デアルト斷言シテ憚ラヌモノデアル、原
總理大臣ハ此議會ニ於テ義勇奉公ノ念慮ガ國民ノ間ニ減
退シツヽアルト云フ事柄ヲ聲明セラレテ居リマシタガ、國民
ノ義勇奉公ノ精神ガ減退スルト云フ事柄ハ、其貴國民ニモ
在ルカモ存ジマセヌグ、苟モ天下ノ政柄ヲ握ッテ居ル所ノ一
國ノ總理大臣ガ、官吏ノ任命ニ付テモ、其他部下ノ官吏ノ
爲ニ爲シタル罪跡ニ付テモ、一モ責任ヲ負荷セズシテ、サウ
シテ顧ミテ他ヲ言フガ如キ態度ノアルト云フコトハ、綱紀紊
亂ノ責原首相ニ在ッテ、國民ノ義勇奉公ノ念衰頽ノ原因ハ、
原總理大臣自ラ之ヲ造ッタモノデアルト私ハ斷言スル者デ
アル(拍手)吾々ハ斯ノ如キ事柄ガ原因トナッテ、中岡艮一ガ
遂ニ東京驛頭ニ於テ之ヲ暗殺シ、而シテ帝都三百万ノ住
民ノ不安ヲ惹起スルヤウナコトニナッタモノト認メルノデアリ
マスルガ、果シテ政府當局ハ左樣ニ認メルカドウカ、若シ左
樣ニ認メルナラバ、此事項ニ付テ如何ナル責任ヲ執ルカ、
二ノ下級ノ警察官ヲ譴責シタリ處罰シテ、ソレデ此責任ガ
濟ムトハ私ハ信ジナイ、直接ノ責任ヲ負フベキ者ハ警視總監
デアルト私ハ考ヘル道路傳フル所ニ依レバ警視總監ハ此
問題ニ付テ責任ヲ引イテ進退伺ヲ出シタトカ、或ハ辭表ヲ
出シタトカ云フコトガ傳ヘラレテ居ルノデアリマスガ、ソレガ
今日依然トシテ警視總監ノ賦ニ在ルト云フコトハ、果シテ
如何ナル原因デアルカ、曩ニ関元植ノ事アリ、今又政友會
ノ總裁ガ暗殺セラレテ、サウシテ現内閣ノ諸君ガ平然トシテ
雲煙過眼シテ居ル、又二百八十ノ黨員ヲ有シテ居ル所ノ政
友會ノ諸君モ、諸君ノ最モ尊敬ヲセラレル、否或ル程度マデ
我ガ大日本帝國ノ國民ガ尊敬シテ居ル所ノ原總理大臣ガ
暗殺セラレタ、其責任者ヲ問責スルコトガ出來ヌト云フノハ、
何タル意氣地ノ無キコトカト私ハ思フノデアリマス(拍手)是
ハ獨リ現内閣ノ責任ノミナラズ、私ハ政友會ノ諸君モ亦此
點ニ付テ責任ヲ負擔セラルヽ必要ガアルト考へルノデアリマ
ス(拍手)此原因-此責任ニ付テ政府ノ御意見ヲ承リタ
イ、原因果シテ斯ノ如シトセバ、後ノ總理大臣トナリ、後ノ政
治家タルベキ者ハ、之ヲ以テ鑑トスベキ必要ガアルト、斯ウ
信ズルノデアリマス、ソレカラ第二ニ御尋ヲ致シテ置キタイノ
ハ、此從來ノ高位高官ノ人ニ對スル取締ハ、如何ナル方法
ヲ以テヤッテ居ッタカト云フコトデス、是ハ関元植ノ暗殺セラ
レタ當時ニモ、私ハ政府當局ニ質ス所ガアリマシタガ、唯尾
行ノ巡査ヲ附ケテ置イタトカ、警護ノ警察官ヲ附ケテ置イ
タトカ云フガ如キ、無責任極マル答辯ヲナサレテ、責任アル
答辯ヲ避ケテ居ラレマスガ、從來一體斯ウ云フ帝國ノ憲法
政治ヲ運用スル上ニ於テ、最モ尊敬シナケレバナラヌ一黨ノ
總裁デアリ、或ハ總理大臣デアルトカ云フ人ニ對シテ、如何
ナル警護ノ方法ヲ講ジテ居ッタカ、如何ナル取締ノ方法ヲ講
ジテ居ッタカト云フコトヲ私ハ馳キタイノデアリマス、尙ホ進
ンデ之ニ關聯シテ承ラナケレバナラヌコトハ、將來ヲドウスル
カト云フ問題デアリマス、今警視總監ノ指揮ノ下ニ在ル所
ノ警察官ハ、實ニ一万二千二百有餘ノ多キニ達シテ居リ
マス、サウシテ帝國ノ總理大臣トシテ、一國ノ政治ノ樞機ヲ
握ッテ居ル所ノ政友會ノ總裁ガ、最モ平安デアルベキ東京
驛頭ニ於テ暗殺セラレタ、此一万二千二百有餘人ノ警察
官ハ、何ヲ致シテ居ッタデアルカ、果シテ此一万二千二百有
餘人ノ警察官ヲ以テシテモ、斯ノ如キ慘事ヲ豫メ防止スル
コトガ出來ヌト云フノナラバ、將來大ニ經費ヲ增加シ更ニ又
人員ヲ增加シテ、サウシテ斯ノ如キ事ノ再ピ起ラザルコトヲ
注意スルノ必要ガアルト考ヘルノデアル、此點ニ付テ如何ナ
ル考慮ト用意トヲ爲サレテ居ルノデアリマスルカ、ソレヲ承ラ
ントスルノデアリマス、第三ノ事項トシテ承リタイノハ、質問
書ニ其要領ヲ盡シテ置キマシタ通リ、私ノ意見ハ警視廳ヲ
斷然此際廢止スベシト斯ウ云フノデアル、警視廳ヲ廢止シ
タカラト申シテモ、警視廳ノ警察事務ヲ全然抛擲シテ顧ミ
ルコトヲ要セヌト言フノデハアリマセヌ、各府縣ノ官制ト同
ジク、之ヲ府知事ノ手ニ一任スルト云フコトモ一ツノ方法デ
アル、又或ル論者ノ主張スル如ク、之ヲ東京市長ノ手ニ移
スト云フノモ一說デアル、其孰レヲ執ルモ、必シモ私ハ此際
議論ヲスル譯デハアリマセヌケレドモガ、吾々ガ警視廳廢止
ヲ唱フル所以ハ第一ニ感情ノ上カラ私ハ左樣ニ申ス···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=12
-
013・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 橫山君ニ注意致シマスガ質問
ノ要旨ヲ成ベク··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=13
-
014・横山勝太郎
○橫山勝太郞君(續) 宜シウゴザイマス、警規廳ト云フ
言葉ヲ聽クト吾々ハ何トナク異樣ナ感ジガ致シマス、ソレ
カラ警視廳ノ廢止ヲ政府ニ建言シ、又政府ノ意見ヲ尋ヌ
ル上ニ於キマシテ、第一ニ申上ゲナケレバナラヌノハ、從來
警視廳ガ警視廳トシテ如何ナル功績ガアッタカト云フコトデ
アリマス、吾々ノ見ル所ヲ以テスレバ、警視廳ハ從來民衆
ノ運動ヲ妨害シ、若シクハ民論ノ抑壓ヲヤッテ、不當ニ人權
ノ蹂躪ヲ致シタト云フ事實ハ極テ明瞭デアリマスケレドモ
ソレ以外ニ何等ノ功績ヲ認ムルコトガ出來ナイ(拍手)若シ
强テ警視廳ナル特別ノ高等警察機關ニ功績ガアリシト主
張スルナラバ、纔ニ內閣ノ高等「ボーイ」ヲ勤メタト云フニ過
ギナイト私ハ考ヘル(拍手)御承知ノ如ク警視總監ハ內閣
ニ直屬スルノ所以ヲ以テ、內閣ノ更迭スル每ニ警視總監モ
同時ニ更迭ヲスルノデアリマス、此故ニ警視總監トシテ帝
都公安ノ維持ニ對スル重大ノ責任ヲ持ッテ居ル警視總監
ハ、帝都ノ住民ノ保護ト云フヨリモ、寧ロ內閣擁護ヲ以テ
其職責ト致シテ居クタト云フ事柄ハ、蔽フベカラザル事實デ
アル、申ズマデモナク我方帝國ノ警察機關ハ帝國ノ警察機
關デアル、吾々國民ノ警察機關デアルト私ハ斯様ニ考ヘル、
其帝國ノ警察機關デアリ、又國民ノ警察機關デアルベキ重
大ナル任務ヲ持ッテ居ル警視總監ガ、其本來ノ任務ヲ忘レ
テ時ノ內閣ノ鼻息ヲハ規ッテ、内閣ノ耳目トナリ、內閣ノ走狗
トナッテ、纔ニ內閣ノ高等「ポーイ」、內閣保護ノ職貴ニノミ
沒頭致ス事柄ハ、是ハ警視廳ヲ廢シタガ宜シイト云フ重大
ナル根據ト私ハ信ズルノテアレ(拍手)私ハ警規廳當局ニ問
ハン、又警視廳ヲ監督ヲ致シテ居ル內務大臣ニ問ハン、大
正九年六月二十九日午後九時數十分ノ頃、卽チ第四十
三諸會、臨時帝國議會ノ召集セラレタル當時、衆議院ノ
正門ニ爆彈ヲ投ジタル犯人ノアルト云フコトヲ御記憶デア
リマセシ、最モ自由デアリ、最モ神聖ヲ尊ブ所ノ民論ノ府デ
アル所ノ帝國議會、衆議院ノ正門ニ爆彈ヲ投ジタル犯人ガ
アルト云フ事柄ハ、我ガ帝國ノ憲法史上洵ニ吾々ハ大ニ會
威ヲ感ジ、又憲法史上ノ一大汚點デアルト斯樣ニ考ヘル、
其犯人ハ未ダ以テ之ヲ逮捕スルコトガ出來ナイノデアル、私
ハ曾テ一言致シタコトガアル通リ、政友會ノ本部ニ放火
シタル犯人ハ、直ニ之ヲ檢擧スルコトガ出來タガ、一國ノ立
法府デアル此神聖ナル衆議院ノ正門ニ爆彈ヲ投ジタル犯
人ガ捕ラヌト云フコトハ、是ハ警視總監ノ無能無力ノ致ス
所デアルト、私ハ斷言致スノデアル(拍手)左様ニ無能無力
ナ者ヲ獨立ノ高等警察機關トシテ存續セシムル事ノ必要
ハ認メマセヌ、今ノ警視總監、今ノ警視ノヤル位ノ事ハ、之
ヲ東京府知事ノ管轄ニ歸屬セシメテモ、私ハ十分出來ルト
者ヘマス、否、十分出來ルノミナラズ、內閣ノ直屬デアルト
云フ事ノ關係ヲ離脫スル關係上、東京府知事ガ時ノ政爭
ニ卷込マレズシテ、時ノ政事運動ニ超越シテ其任務ヲ執ル
コトノ出來ル關係上、寧ロ東京府知事ガ此權利ヲ持ッテ
居ッタ方ガ公平ニ其職務ヲ實行シテ行クコトノ出來ハ便利
ガアルト私ハ斯樣ニ信ズルノデアリマス、斯ノ如ク警視廳ノ
歷史ハ最モ忌ムベキ歷史デアル、元來警視廳ナル、特別ノ
高等ナル警察機關ト云フモノヲ設ケタル理由ハ、數世紀前
歐羅巴各國ガ警察本位ヲ以テ政治ヲ致シタ時代ガアル、
政治ノ一切萬事ハ總テ警察官ノ力ニ依ッテ之ヲ行フ、斯ノ
如クニシテ歴史ノ上ニ所謂警察図時代ナルモノヲ造リ出
シタノデアリマス、併ナガラ十八世紀、十九世紀ニ及ンデ、
警察本位ヲ以テ政治ヲスルコトハ宜シクナイ、警察ハ軍事、
財政、司法、斯ノ如キモノト獨立シテ內務行政ノ一部トナル
ベキモノデアルト云フ思想ガ起ッテ參リマシテ、今日デハ警察
國時代ノ思想ト云フモノガ歐羅巴各國ニ無イノミナラズ
日本帝國ニモ左樣ノ思想ガアッテハナラヌノデアリマス然ル
ニ我ガ帝國ノ法制ハ何ノ必要アリテカ、何ノ見ル所アリテ
カ、十六、七世紀時代ノ歐羅巴各國ニ行ハレタル警察國
時代ノ舊思想ニ囚ハレテ、サウシテ內閣ノ手足トナッテ働ク
高等警察機關タル警視廳ヲ存置シテ居ル事柄ハ是レ、全
ク時代錯誤ノ思想ニ基クモノデアルト、私ハ斷言スルノデア
リマス、斯ノ如キ次第デゴサイマスカラ、此改造ノ時期ニ當ッ
テ、從來數十年ノ間、民衆ノ敵トナッテ民論ノ抑壓ヲ爲シタ
ル以外、何等ノ功績無カリシ國民ノ側カラ見テ、異樣ナ感
ジヲ起ス舊思想ニ基ク遺物デアル、警視廳ノ如キハ今日斷
然之ヲ廢止スルコトガ、此改造ノ時期ニ對スル第一策デアラ
ウト感ズルノデアリマス、此事項ヲ政府ニ質問致シテ、成ベク寧
丁ナル谷辯ヲ得タイト考ヘマス、之ヲ以テ壇ヲ降リマス(拍
手、
〔政府委員松田源治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=14
-
015・松田源治
○政府委員(松田源次君) 私ハ横山君ニ答辯致シマス、今
內務大臣ガ貴族院出席中デアリマスカラ、私ヨリ御答致シ
マシテ、其足ラナイ所ガアリマシタナラバ、他日或ル機會ニ於
テ內務大臣ガ、又直接ニ答辯致スデゴザイマセウ、此帝都ノ
公安ノ維持ニ關シマシテ、政府ハ常ニ必要ナル施設ヲ講ジ
マシテ、深甚ナル注意ヲ以ッテ其任ニ當ッテ居ルニ拘ラズ、曩
ニ中岡ト云フ一靑年カ、矯激無謀ノ行動ヲ敢テシマシテ、
時ノ內閣總理大臣原敬氏ヲ殺害スルニ至ッタルコトハ、最
モ遺憾トスル所デアリマス、此原因ニ付テ豫審調書等ヲ朗
讀セラレマシテ、橫山君ハ質問サレマシタガ、本件目下裁判
進行中デアリマス、此栽判結果ヲ待チマスレバ、彼ガ如何
ナル信念ヲ以テ時ノ內閣總理大臣原氏ヲ殺害シメタカト
云フコトモ、明カニナルコトデアラウト考へルノデアリマスカ
ラ、如何ナル原因ニ依ッテ中岡某ナル者ガ、時ノ總理大臣
ヲ殺害シタカト云フコトニ付テハ、今日是ハ答辯スルノ必
要ハナカラウ、栽判ノ結果ニ依シテ明カニナルコトデアラウト
私ハ考ヘルノデアリマス、面シテ其責任者ハ目下ソレ〓〓懲
戒處分ニ廻ハシテアルノデアリマスカラ、其懲戒處分ノ結
果ヲ待ンテ、ンレ〓〓職務上過失ガアレバ懲戒サレルコトデ
アラウト考ヘル、今ハ責任者ハソレ〓〓懲戒處分ニ廻サレマ
シテ、進行中デアリマス、ソレカラ内閣總理大臣ノ護衞ニ付
キマシテハ、政府ハ殊ニ注意致シテ居ルノデアリマスガ、其
護衞ニ付テ不注意ガアッタ、或ハ護衞ガ十分アレバアヽ云フ
ヤウナ不祥ナ事件ハ起ラナカンタカドウカト云フコトモ、是モ
今懲戒處分ノ進行中デアリマスカラ、其結果ニ依ッテ果シ
テ護衛其モノガ不十分デアッタカ、設衞ガ十分デアレバ、アヽ
云フ不祥ノ事ハ起ラナイモノデアルカト云フコトニ付テハ、
其結果ニ於テ明瞭スルコトヽ私ハ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、ソレカラ帝都ノ治安維特ニ關シテハ、政府ハ常ニ警視
廳ヲ督勵致シテ十分努力致シテ居リマス、今囘アリマシタ
ル事件等ニ鑑ミマシテ、一層時勢ニ順應スル適當ナル處
置ヲ講ジマシテ、銳意帝都ノ安寧ノ秩序保持ニ違算ナキヲ
期シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、以上中上ゲマシタヤウ
ニ、帝都ノ治安ニ付キマシテハ、十分ナル警察力ト之ヲ運用
スルコトニ付テ、深甚ノ注意ト放速ナル活動トヲ要シマスカ
ラ、是ガ爲ニハ一般內務行政ノ局ニ當ッテ居ル所ノ知事以
外ニ、別ニ警察ノ首腦者ヲ置キマシテ、專心其衝ニ當ラシ
ムルコトガ必要デアルト考ヘルノデアリマス、隨テ政府ハ帝
都ニ於ケル特別警察機開タル警視廳ヲ廢止スル意思ハナ
イノデアリマス、又此衆議院ノ前ニ爆彈ヲ投ジテ其犯人ガ
今日マデ分ラヌト云フコトハ、政府ニ於テモ非常ニ遺憾ヲ感
ズルノデアリマス、嚴重ニ搜査進行致シテ居ルノデアリマス
ケレドモ、今日マデ何人ガ犯人デアルカト云フコトノ明暸シ
ナイノハ遺憾デアリマスガ、斯ル一事ヲ以テ警視廳ヲ廢止ス
ルト云フコトニモナラナイト思フノデアリマス、ソレカラ世界
各國ニ警視廳見タヤウナ制度ハ無イト云フコトデアリマシタ
ガ、私ノ調ベマシタ所ニ依リマスレバ、巴里ニモ特別ナル警
察機關ガアリマス、伯林ニモアリマシタ、今ハドウナッテ居ルカ
知レマセヌガ、前ニハアリマシタ、是ハ日本特有ノ制度デアリ
マセヌ、要スル政府ハ帝都ニ於テハ特別ナル警察機關アル
コトヲ必要ト致シテ居リマスカラ、今日警視廳ヲ廢止スル
意思ハアリマセヌ、是ダケ御答シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=15
-
016・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 極テ簡單デアリマスカラ、此席カラ發言
ヲ御許願ヒマス、只今松田參事官ノ御答辯ノ中ニ、關係者
ヲ懲戒處分ニ付シテ居ル、ソレ〓〓審議中デアルト云フ御
答辯ガアリマシタガ、私ノ質問ノ主旨ハ下級ノ官吏ヲ懲戒
處分ニ付スルト云フヤウナコトヲ以テ滿足スル趣旨デハアリ
マセヌ、警視總監ヲドウスルカ、警視總監ノ責任ヲドウスル
カ、斯ウ申シタノデアリマス、サウスルト警視總監ヲ懲戒處
分ニ付シタト云フコトニ諒解シテ宜シウゴザイマスカ、更ニ進
ンデ承リタイノハ、私ハ警視總監ノ懲戒處分ノミヲ以テ滿
足スル者デナイト云フコトモ、先刻ノ演說中ニ述ベタ筈デア
リマス、然ラパ何ヲ望ムカト云フト、卽チ內務大臣ノ責任ヲ
ドウスルカ、警察ハ御承知ノ通リ、内務行政ノ一部デアル、
内務行政ノ最高ノ位置ニ居ル所ノ內務大臣ハ、當然其責
任ヲ負ハナケレバナラヌト私ハ考ヘル、其內務大臣ノ法律
上責任、或ハ政治上ノ責任ヲドウスルカト云フコトヲ承リタ
イノデアル、微々タル警察官ヲ懲戒處分ニ付スルト云フヤ
ウナコトハ、決シテ帝都ノ公安ヲ維持スル方法デナイ、帝都
ノ住民ノ不安ヲ除去スル方法デナイト私ハ思フ、内務大臣
ヲシテ政治的ノ責任ヲ負ハシメルト云フコトガ、卽チ吾〓住
民ノ生命、自由、財產ヲ保護スル所以デアル、又帝都住氏ノ
不安ヲ除去スル所以デアル、斯樣ニ信ズルノデアリマスガ、
其點ニ對スル政府ノ御意見ハ如何デアリマスカ、之ヲ伺ヒ
タイ、其次ニ承リタイノハ、今尙ホ懲戒處分ノ進行中デアル
ト云フコトデアリマスガ、ソレデハ餘リニ緩慢ニ失セズヤ、昨年
末ニ起ッタ事デアル、ソレヲ二月ノ二十日ヲ過ギテ居ルニ、マ
ダ詮議中デアルト云フニ至ッテハ、現政府ノ帝都治安維持ニ
關スル觀念ガ極テ稀薄デアッテ甚ダ冷淡不深切デアルト言
ハネバナラヌト思ヒマス、私ハ之ヲ緩慢ナリト考ヘマスガ、其
點ニ付テノ御答辯ヲ要求致シマス
〔政府委員松田源治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=16
-
017・松田源治
○政府委員(松田源治君) 御答致シマス、橫山君モ御承
知デアリマセウガ、懲戒處分ノ範圍ハ祕密デアリマス、結果
ハ公表致シマスケレドモ、今ハ懲戒處分ニ付シテアリマスカ
ラ、如何ナル人ヲ懲戒處分ニ付シテ居ルカト云フコトニ付
テハ此處デ明言スル限リデアリマセヌ、ソレカラ內務大臣ノ貴
任ノコトデアリマスガ、是ハ私カラ答ヘルト云フコトハ間違シ
テ居ルカ知レマセスガ、私ハ此點ニ付テノ内務大臣ガ、辭
職シテ責任ヲ負フ所ノモノデナイト云フコトヲ考ヘテ居リマ
ス、ソレカラ緩慢デアルトカ、緩慢デナイトカ云フコトハ、是ハ
各人ノ考ヘ次第デアリマスガ、政府ハ其事ハ進行中デアリ
マシテ、決シテ緩慢デナイト認メテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=17
-
018・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 次ハ礦業被害ニ關スル質問、古
賀三千人君
五礦業被害ニ關スル質問
礦業被害ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十一年一月三十一日
提出者古賀三千人賛成者石井〓二
外二十九人
礦業被害ニ關スル質問主意書
近時礦業ノ發展ニ伴ヒ煙毒、礦毒水ノ被害、炭礦採掘
ニ因ル土地陷落ノ損害ハ礦業地帶ニ於ケル住民ニ對ス
ル一大脅威ヲ來シツツアリ政府ハ之ニ對シ故濟ノ方法
ヲ如何ニセムトスルヤ
右及質問候也
〔古賀三千人君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=18
-
019・古賀三千人
○古賀三千人君 諸君、礦業ノ被害害濟ヲ如何ニスルカ
ト云フ問題ハ、國家ノ產業上カラ見マシテモ、又人道上カ
ラ見マシテモ、極テ重大ナル問題デアルト信ズルノデアリマ
ス、故ニ私ハ產業上、人道上、極テ重大ナル問題ニ對シ、政
府ノ所見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、近時礦業ノ發展ニ
伴ヒ、煙毒、礦毒水ノ被害、石炭採掘ニ依ル土地ノ陷落等
ノ被害ハ、實ニ甚シイノデアリマス、就中最モ悲慘ナル實例
ハ、此九州ノ筑豊炭田地方デアリマス、同地方ハ往年炭價
ノ未曾有暴騰ニ際シテ、盛ニ採掘ガ行ハレマシタル爲ニ頓
ニ其被害ノ度ヲ高ズ、耕地ノ陷落ハ勿論、住宅地ノ傾斜
陷落、又溜池ノ涸渴、道路、水路ノ陷落、障害、又井戶ノ
變質、涸渴、洗堰ノ陷落、煙害、礦毒水ノ流入、其他ノ土
地ニ對シマシテモ、其被害ハ實ニ甚シイノデアリマス、精神
上、物質上、關係地方ニ於キマシテハ、多大ノ慘害ヲ與ヘ
テ居ルノデアリマス、卽チ福岡縣ノ如キハ其被害ガ全縣下ニ
及ボシテ居ルノデアリマスガ、其中ノ最モ甚シイ遠賀、鞍手
嘉穗、田川ノ四郡ニ於ケル調査ノ大體ヲ申上グマスレバ、
耕地ノ陷落ノ反別ハ、大正六年ニハ百八十六町二反、大
正八年ニハ三百三十七町五反、大正九年ニハ四百二十
一町二反、礦毒水ノ流入ノ被害ハ、大正六年ハ五十四町
三反、又大正八年ハ百十三町四反、大正九年ハ二百八
十町二反デアリマス、此減收高ヲ計算致シマスレバ、米ニ
於テ三万四千二百九十六石、麥ニ於キマシテ十四万二十
四石、其見積債額ニ於キマシテ、百二十二万四千八百九
十圓、又麥ノ減收額ハ十五万四千五百圓、更ニ又家屋ノ
傾斜陷落ガ四千四十六箇所、井戶ノ變質、涸渴ガ二千七
十七箇所、又溜池ノ涸渴ガ八十六箇所、道路、水路ノ陷
落ハ、百八十四箇所デアリマス、而シテ財界不況後ニ於ケ
ル土地ノ陷落ハ、又賞ニ夥シイノデアリマス、斯ノ如キ有樣
デアリマスルカラ、之ヲ最近ノ詳シイ調査ガ出來上リマスレ
バ、福岡縣一縣ニ於キマシテモ、裕ニ千萬圓以上ニ其被害
ハ達スルノデアラウト私ハ信ズルノデアリマス、況ヤ全國ニ通
ジテ此被害ヲ通算シマシタナレバ、實ニ甚大デアルト私ハ信
ズルノデアリマス、故ニ政府ハ斯ノ如キ多數住民ノ利害休成
ニ係ル此問題ヲ、如何ニ救濟セラレントスルノデアリマスル
カ、此點ニ付テ私ハ承リタイノデアリマス、又次ニ承リタイ
ト考ヘマスルノハ、現在ノ鑛業法ハ我國ノ幼稚ノ時代ニ、
礦業者ニ頗ル有利、所謂保護奬勵的ニ極テ有利デアリマ
シテ、被害者ニ對シテハ何等考慮ヲ拂シテ居ナイト思フノデ
アリマス、是等ハ全ク法ノ缺陷デアリマスルガ故ニ、時代ノ
要求ニ應ジテ速ニ鑛業法ヲ改正シテ、住民ノ生存權ノ確
立、又國土ノ保安上損害ノ賠償ニ對スル條項、及礦業ノ
中止後ニ於ケル貴任等ニ關シテモ、之ヲ明記シデ完全ナル
鑛業法ヲ改定セラレナケレバナラヌト云フ事ヲ私ハ信ズル者
デアリマス、故ニ」大正八年ノ二月ニ帝國農會ハ主務省ニ
建議ヲ致シ、又大正八年ノ三月ニハ郡及縣ノ農會長、又
大正八年ニハ關係町村農會長ヨリ、被害ノ狀況ヲ具シテ
政府ニ陳情ヲ致シテ居ルノデアリマス、然ルニ政府ハ今日マ
デ斯ノ如キ重大ナル問題ニ對シ、何等適當ノ施設ヲ爲サナイ
ト云フコトハ、私ハ甚ダ奇怪千万デアルト思フノデアリマス、
故ニ私ハ昨年本院ニ於テ、之ニ關スル質問書ヲ提出致シマ
シタル所、政府ハ極テ簡單ナル答辯書ヲ交付サレマシタノミ
ナラズ、觀察點ニ於キマシテ事實ト大ニ担違ヲ致シテ居ル
點ガアルノデアリマス、昨年政府ノ交付セラレマシタ答辯書
ノ見マスレバ、斯樣ニ書イテアリマス、石炭礦業ニ關スル礦
業者ト、被害者トノ間ニ、土地ノ陷落ニ付テハ其土地ヲ買
牧シ、又ハ復舊ニ要スル費用ヲ辨償シ、若クハ收益ノ減少
ニ對シテ補償等ヲ爲スヲ常トシ、向ホ當中者間ニハ〓シテ
圓滿ナル解決ヲ見ルヲ常トスルト、斯樣ニ中サレテ居ルノデ
アリマスルガ、私ハ造憾ナガラ圓滿ナル解決ヲ致シタル事實ヲ
見ナイノデアリマス、又或ル礦業者ノ如キハ、此悲慘ナル狀況
ニ堪ヘ兼ネテノ要求ニ應ジテ、多額ノ金ヲ拂フ者モアリマ
スガ、是ハ決シテ補償ニ足ルモノデハアリマセヌ、又多クノ礦業者
ハ如何ニ要求〓シマシアモ、又如何ニ事情ヲ說イテ哀訴嘆願
ヲ致シマシテモ、更ニソレヲ顧ミナイノデアル随テ礦業者ト被害
者ノ間ニハ、常ニ紛擾ガ絕エナイヤウナ事實ガアルノデアリマス、
又昨年答辯書ノ末項ニハ、斯樣ナ事モ書イテアリマス「然
ルニ一般産業ト礦業トノ關係ニ付テハ、大ニ考慮ヲ要スル
モノアルヲ以テ、農商務省ハ旣ニ被害調査委員ヲ設ケ且ツ
來年度豫算ニ於テモ是ガ費用ヲ計上シ以テ十分調査ヲ遂
ゲ適當ナル措置ヲ執ラントス」ト斯樣ニ申サレテ居ルノデア
リマスガ、成程本年ノ豫算ヲ見マスレバ、礦害調査費ト云
フモノガ一万七千二百圓計上シテアリマスガ、其内譯ヲ見
マスレバ、奏任官費ガ六千四百圓、判任官俸給ガ三千圓
デアリマス、又廳費ガ二千二百五十圓デ、旅費ガ二千四百
圓雜給雜費ガ三千百五十圓ニナッテ居リマスガ、之ヲ見マ
スレバ、奏任官ガ一名若クハ判任官ガ三名位デハナイカト私
ハ思フノデアリマス、斯ノ如キ小額ノ經費ヲ以テ、斯ノ如キ
少數ノ役人ヲ以テ、是ガ救濟ヲ速ガニスルト云フ、果シテ御
考ガ私ハ疑フニ甚ダ堪ヘナイノデアリマス、故ニ私ハ政府ニ
對シテ此質問ノ要點ヲ三項ニ別ケテ御尋ヲ致シタイト思フ
ノデアリマス、政府ハ現在ノ礦業被害ヲ救濟スルニ如何ナ
ル方針ヲ有セラルヽノデアリマスカ、又第二ニ現在ノ礦業
被害ニ對シ、政府ハ本年度豫算ニ計上セラレタル如キ微
細ナル經費ト少數ナル役員ヲ以テ、是ガ救濟ヲスルニ十分
ナリト信ジラレマスルカドウカ、其邊ニ付テ承リタイノデアリ
マス、第三ニハ現行法ヲ改正シ、時代ノ要求ニ應ジテ完全
ナル鑛業法ヲ制定セラレマスルノ意思ガシルカドウカ、此三
點ニ付テ政府ノ深切ナル御答辯ヲ承リタイト思フノデアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=19
-
020・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 田中農商務次官
〔政府委員田中隆三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=20
-
021・田中隆三
○政府委員(田中隆三君) 御答申上ゲマスガ、只今北九
州ノ炭礦地方ニ於ケル被害ノ事ニ付キマシテ、三項目ニ
別ッテ御質問デゴザイマシタガ、此礦業ト其他ノ產業トノ利
害衛突ノ事ニ付キマシテハ、當局ニ於キマシテモ始終考慮、
調査〓究ヲ致シマシテ、出來ル限リ其間ニ立ッテ圓滿ナル
解決ヲ告ゲルコトニ努メツヽアリマスル譯デアリマス、而シテ
只今御示ノ如ク、大地域ニ亙シテ所謂被害場所ノアルト云
フコトハ事實デアリマス、併ナガラ其實際ノ被害區域ヲ數
字的ニ現ハスコトニ於キマシテハ、農會ノ調縣廳ノ調、或ハ
地方礦業組合ノ調等、各〓異ナル點ガアリマシテ、一メノ
テ居リマセヌ、サリナガラ其何故ニデス、ソレ等ノ被害地ガ復
舊セラレズニ、其儘ニ殘テ居リマスカト云フコトニ付キマシテ
ハ色ミナ事情ガアルノデアリマス、其主ナル事ヲ分類致シ
テ見マスルト、被害地ノ通常御視察等ニ赴カレテ、此被害
ハドウモ酷イト云フ風ニ目ニ著クヤウナ所ハ、礦業人ガ既ニ
賠償シテ、礦業人ノ所有地ニナッテ居ル所ガ澤山アルノデア
リマス、唯其被害地ヲ御視察ニイラッシヤルト、此處ハ被害
地デアル不毛ナ土地デアルト云フノデ、驚カレル方ガアリマ
スケレドモ併ナガラソレハ所有者ト礦業人トノ間ニ話ガ著
イテ、所謂土地ノ代價ヲ拂シテシマッタ後ナノデ、復舊スルコ
トハ利益ナラズト認メテ、拾ヽテアルノデアリマスカラ、是ハド
ウモ所有權ノ法規ノ上ニ於テ致方ガナイノデアリマス、第二
ハ礦業權者ノ所有ニハ屬シマセヌケレドモ、土地所有者ノ
方ガ賠償金ヲ取シタケレドモ、其賠償金ヲ外ニ有利ナル事
業ナリ何ナリニ流用シテ、自ラ其復舊工事ヲ爲サナイノガ
アリマス、是モドウモ所有者ノ自由デアリマスカラ、外カラ
ハ强制的ニドウサセルト云フ譯ニハイカヌ、ソレカラ根本的
ニ只今申上ゲルヤウニ或ハ礦業權者ガ之ヲ買取ルトカ、或
ハ土地所有權者ガ一時ニ賠償ヲ取ルト云フコトデナシニ、
年々其被害ノ場所ヲ現場ノ儘ニ此處ニ曝ケ出シテ置イテ、
サウシテ年々歲々補償金ヲ取ッテ繰返ヘス方ガ便宜ナリト
心得テ居ル土地所有者モアル、斯ク各〓ノ場所ニ付テ取調
ヲ致シテ見マスルト云フト、種々ノ事情ガアル譯デアリマス、
單ニ此處ニ是ダケノ被害ガアル、是ハ酷イト一云フコトデハ、
事ノ眞相ニ觸レタ觀察デナイト私ハ認メテ居ルノデアリマ
ス、ソレカラ是ハ一方ノ相手方ノ方ノ取調デアリマスカラ、
必シモ此數字ヲ以テ確實ナリト主張スル譯デハアリマセヌ
ケレドモ、筑豊ノ所謂北九州ノ有名ナル炭田地ニハ、有力
ナル數郡ニ亙ッテノ筑豊石炭組合ト云フモノガアルノデアリ
マス、其取調ニ依ッテ見マスルト云フト、田地ニシテ今日其
土地所有者ト礦業人トノ間ニ紛議ガ起シテ、話ノ纏ラナイ
ノガ五十一町步アルト云フコトヲ中シテ居リマス、詰リ其他
ノ田地ハ解決ガ付イテ居ル、或ハ賠償ガ済ンデ居ル、實際
解決ノ付カヌノハ五十一町步アルト申シテ居リマス、併シ
今御斷リ申シタ通リ其五十何町歩ハ或ハ百町步ト致シマ
シテモ、其纏リノ付カナイト云フコトハ、體ドウ云フコトニ
歸著スルカ、礦業人ガ拂フベキ責任ヲ盡サナイ者モアリマセ
ウケレドモ、又反對ニ被害者ノ方デ不當ナル價格ヲ要求スル
カラ出來ナイ者モアリ得ル道理デアル、要スル二一方ノ要
求ト一方ノ承諾トガ合致シナイ爲ニ、話ノ調ッテ居ラヌコトモ
アリマス、併シ是ハ結局其争ガ定リマセヌケレバ、司法權ノ
處分ニ依シテ是非曲直ヲ判斷スルヨリ致方ハナイ、單リ是
ハ礦業上ノ問題ノミナラズ、如何ナル行爲ニ致シマシテモ
故意過失等ニ依シテ、他人ニ損害ヲ及ボシタナラバ賠償シ
ナケレバナラヌ、而シテ賠償ノ事ニ付テ雙方ノ對談デ練ラナケ
レバ、結局之ヲ司法處分ニ仰グヨリ致方ガナイ、併ナガラ
唯一ツ其話ノ纏ラナイ原因ノ中デ、最モ深ク一ツ御考慮ヲ
煩シタイ事ハ、果シテ或場所ノ陷落ガ或ル鑛業人ノ行爲ニ
依ッテ起ッタモノデアルヤ否ヤト云フコトノ、原因結果ヲ定メ
ルコトノ困難ナル場合ハ往々ニシテアル、例ヘバ遙カ離レテ
居ル處デ礦業ヲシテ居ル者ガアル、離レテ居ル此方ノ方ニ
陷落シタ土地ノアッタトキニ、土地所有者カラ申シマスト云
フト、要求ノ仕易イ礦業人ニ向ッテ賠償ヲ要求スルニ相違
ナイ、礦業人ハ四面八方ニ皆軒ヲ竝ベテ居ルノデアリマス、
軒ヲ竝ベルト云フト言葉ガ惡イカ知レマセヌガ、煙突ヲ竝ベ
テ仕事ヲシテ居ル、ドノ煙突デ作業シタ結果ガ、土地陷落
ニ影響ヲ及ボシタノデアルカ否ヤト云フコトハ、中〓困難ナ問
題デアリマス、一ツノモノガ及ボシタコトモアリマセウシ、數
箇所ノモノガ關係ヲ持ッテ居ルカモ知レヌ、又ンレノミナラ
ズ御承知ノ通リ、此今ヤッテ居ル炭礦ハ何ノ某デアリマセ
ウケレドモ、其炭礦ナルモノハ數十年ヲ經テ色々ノ人/手
ニ渡リ、而モ數十年ノ昔ニ遡リマスト云フト、甚ダ規則ガ
立タナイ、俗ニ申シマスル濫掘ト申シマスカ、免モ角モ正則
デナイ適當ナル施業案ニ依ラズシテ作業シタコトガ、昔ニ澤
山アリマシタカラ、其昔ノ-今ノ人ニ一切緣故モ關係モ
何モナイ、昔ノ人ノ不作法ナル處爲ノ結果ガ、今日或ル場
所ニ或ル損害ヲ惹起シテ居ルト云フ事モアルノデアリマス、
詰リサウ云フヤウナコトデ、原因結果ガ明瞭シナイ爲ニ、爭
ノ解決シナイモノガ澤山ニアルノデアリマス、是等ノ諸般ノ
關係ヲ詳細ニ調査スルト云フコトハ、中〓一朝一夕デハ
出來マセヌ、行政官ノ力デハ頗ル困難テアル、裁判所ノ手ニ
之ヲ移シテモムヅカシカラウト思フ、若シモ明瞭ニ何ノ某ガ
斯ノ如キ被害ヲ惹起シタト云フコトデアルナラバ、直グ手近
ノ裁判所ニ訴ヘテモ解決ガ出來ル譯デアル、被害者ガ何故
ニ裁判所ニ之ヲ持出サヌカ、若シモ礦業人ガ不當ナル理窟
ヲ竝ベテ、サウシテ適當ナル損害賠償ヲシナイト云フナラバ、
何故ニ裁判所ニ持ッテ行カナイカト申シマスルト、裁判所ニ
持ノテ行カナイ原因ニハ、其礦業人ガソレダケノ害ヲ及ボシタ
ト云フ證據ヲ擧示スルコトガ困難デアルト云フ事情ハ
確ニアラウト私ハ思フノデアリマス、併ナガラ斯ノ如キ爭ガ
假令五十町步ナリ百町步ニ亙ッテ殘ッテ居ルト云フコトハ、
當局ニ於テモ甚ダ遺憾ニ思ヒマス、出來得ル限リ公式非公
式ニ各、此方ノ取調等ヲ根據ト致シマシテ、纏マル限リ雙
方ノ間ニ圓滿ナル解決ヲ求メヤウトスルコトニ努メツヽアル
譯デアリマス、固ヨリ議會ニ於テ特ニ御協賛ヲ得マシタ費
用ハ、只今御話ノ通リ僅カナル技師技手ニ過ギヌノデアリ
マシテ、ンレノミノ力ニ依クテハ調査ナドハ中〓捗リマセヌ、併
ナガラ御承知ノ通リ鑛務署ニハ其他ニ數十名ノ職員役員
ガ居ルノデアリマス、各、其任務ヲ持ッテ居リマセヌケレドモ、
矢張相共ニ扶ケテ出來得ル限リ是等ノ調査ニ付テ步ヲ進
メツヽ居ル譯デアリマス、又固ヨリ只今御質問中ノ御言葉
ニアリマス如ク、是ダケノ人數デハ迚モ出來ルモノデハナイ、
モット澤山ノ經費ヲヤルカラモット勉强セヨト云フコトデアル
ト、其御言葉ハ當局ニ於テ非常ニ有難ク感ズル次第デアリ
マス、人數ノ足ラヌコトハ當局ニ於テモ認メテ居リマス、併
ナガラ御承知ノ通リノ事情デ吾々カラ要求スル所ノ豫算ガ
旨ク通過シナイ、ンレ故ニ不足デアルト云フコトモ知リツヽ、
其不足ノ範〓內ニ於テ出來ルダケノ勉强ヲ致シマシテ、是
等ノ調査ニ當ッテ居ル譯デアリマス、追〓縣廳或ハ、當業者
或ハ土地所有者ノ御助力ニ依ッテ、紛議ガ段々少クナッテ
居ルト云フコトノ結果ヲ見タイト存ジテ居リマス、又サウ云
フコトニナラウト信ジテ居リマス、ドウゾ其邊ノ意味ヲ御了
承ノ上ニ、當局ノ趣旨ノアル所ヲ御認メ下サランコトヲ御
願ヒ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=21
-
022・古賀三千人
○古賀三千人君 極テ簡單デアリマスカラ此席カラ御許
ヲ願ヒタイ、只今私ガ伺ヒマシタ中ノ第三ノ現在ノ鑛業法
ハ、甚ダ不備デアルト信ズルノデアリマスルガ、之ヲ完全ニ
改正ヲサレマス意思ガゴザイマセヌカト云フコトヲ御尋シタ
所ガ、御答ガゴザイマセヌカラ、重ネテ御尋シテ置キマス
〔政府委員田中隆三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=22
-
023・田中隆三
○政府委員(田中隆三君) 甚ダ失禮ヲ致シマシタ、御質
問ノ一箇條大事ナ事ヲ取落シマシタ、此鑛業法ヲ改正ス
ル意思ガ無イカドウカト云フ事デゴザイマスガ、只今ノ所デハ
有リマセヌト御答スルヨリ外ニ致方ガアリマセヌ、ソレハ要ス
ルエ只今ノ御質問ノ趣旨ニ連絡シテノ改正ト云フ意味デ
アラウト思ヒマスガ、此紛議ヲ根絕スルヤウナ法律ハ、如何ニ
考ヘテモ見出スコトガ出來ナイノデアリマス、要スルニ此關
係ハ損害賠償ヲスルト云フ事ニ歸著スルノデス、故意過失
ニ依ッテ人ニ損害ヲ及ボシタ者ニハ、損害ヲ賠償セヨト云フコ
トダケハ法律デ出來マスケレドモ、何某ト何某トノ間ニ起ッ
夕所ノ事件ガ、何千何百圓賠償シテ宜イカドウカト云フ事
ハ、到底法律デ極メヤウガナイ、各般ノ起ッタル事情ニ基イテ
之ヲ判斷スル、爭ガアレバ裁判所ニ依ッテ公明正大ナル判決ヲ
得ルヨリ外ハ仕方ガナイノデス、若モ幸ニデス、斯ウ云フ方法
アヽ云フ案ガアル、ソレニ依シテ此損害賠償ノ問題ガ筑豊炭
田地方ニ起ラヌト云フヤウナ御名案ガアリマスナラバ、謹デ
承リマシタ上ニ何分ノ御答ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=23
-
024・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 是ニテ本日ノ日程ニアリマスル
質問ノ辯明ヲ終リマシタノデアリマスルガ、更ニ此日程ノ中
ノ綱紀頽廢ノ責任ニ關スル質問、普通選擧ニ關スル質問、
此二ツノ質問ニ對シマスル政府ノ答辯ニ關シテ、更ニ意見
ノ陳述ヲシタイト云フ申出ガアリマス、之ヲ順次許可致ス積
リデアリマス、〓瀨一郞君
綱紀頽廢ノ責任ニ關スル質問ノ答辯ニ對
スル〓瀨一郞君ノ意見発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=24
-
025・清瀬一郎
○〓瀨一郞君 總理大臣ノ答辯ニ關シ意見ヲ述ベマス
ガ、成ルベク高橋總理大臣ノ出席アランコトヲ希望致シ
マス
〔〓瀨一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=25
-
026・清瀬一郎
○〓瀨一郞君 本員ハ一月二十八日付ヲ以テ現内閣竝
原內閣ノ時代ヲ通ジテ、綱紀ノ頽廢ハ其極ニ達シテ居ル、其
責任ノ所在ハ何處ダト云フ質問ヲ致シタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=26
-
027・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 〓瀨君ニ申上ゲマスガ、只今總
理大臣ノ御都合ヲ伺ヒマシタガ、只今貴族院ノ本會議ニ出
席中デアッテ、一寸出席ガムヅカシカラウト思ヒマス、如何デ
アリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=27
-
028・清瀬一郎
○〓瀨一郞君(續) 續イテヤリマス-其趣意ハ當時高
橋總理大臣ハ貴族院本會議ニ於テ、綱紀紊亂ノ責任ニ對
シ議員ノ質問ヲ受ケテ、原內閣ハ原內閣、高橋內閣ハ高橋
内閣、原內閣デシタ事ヲ自分デ皆マデ責任ヲ負フ譯ニイカ
ヌト云フ答辯ヲザレテ居ルノデアリマス、又是ト前後致シマ
シテ、本院ノ豫算委員會ニ於テ議員永井柳太郞氏ノ質問
ニ對シ、政黨ハ前內閣ノ政策ヲ承繼シテモ、貴任ヲ承繼スル
譯ニハ參ラヌ、此點ニ付テハ質問者ト意見ガ違フノデアル、
斯樣ナ答辯ヲサレテ居ルノデアリマス、然ルニ高橋是〓子
爵ガ我國大宰相ノ印綬ヲ帶ビラレマシタ經過ヲ考ヘマスト
高橋子其人ニ左マデ信用ガアッテ、之ヲ總理大臣ニ推薦シ
タト云フ經過デモ無イノデアリマス、吾々ガ洵ニ不祥事デアル
ト考ヘテ居ル十一月四白ノ兒變カ、偶然高橋子ヲ總理大
臣ニ致シ、同時ニ又高橋子ヲ政友會ノ總裁デアラルヽカラ
シテ、原總理大臣ノ政策モ承繼スレバ貴任モ亦承繼サルヽ
コトヽ思ッテ、此人ヲ總理ニ推戴スル經過デアルコトハ政治
上ノ事實デアリマス、デアリマスガ故ニ原內閣ノ時代ノ事ニ
關シ、自分ハ責任ハ負ハヌト言ハルヽナラバ、吾々反對黨ガ
抗議ヲ申込ムヨリモ、先ヅ第一ニ政友會ノ諸君ガ、サウ云フ
積リデオ前ヲ總理ニシテ居ルノヂヤナイカト、諸君ノ方カラ
出ル筈ノ質問デアリマス(拍手)所ガ此質問ニ對シテ本日
受取ノタ答辯ハ、全ク私ノ質問ノ趣旨ヲ誤解シ、政府ハ時
弊ノ矯正ニ當ッテハ、國民ノ自省ト國民ノ反省ト相俟シテ綱
紀ノ肅正ニ留意シテ居ルト云フダケノコトデアル、吾ミハ總
理大臣ガ綱紀肅正ニ注意ヲサレテ居ラウガ、後悔ヲサレテ
居ラウガ、ソレヲ聽イタノデアリマセヌ、オ前サンハ前内閣時
代ノ罪惡ニ付テ其責ヲ負フ覺悟ガ有ルカ無イカ、責任ノ所
在ヲ聽イテ居ルノデアリマスカラ、其意味ニ於ケル答辯ヲ得
タイノデアリマス、此點ノ御答辯ハ今期議會ニ於ケル總テノ
問題ノ大前提トナルベキモノト思ヒマス、隨テ私ノ質問致ス
趣旨ヲ明瞭ニスル爲ニ、斯樣ナル事件ニ付テハ責任ヲ御負
ヒニナルノデハナイカ、是ハ責任ヲ負擔セラルヽ事件デハナ
イカト云フ二三ノ事ヲ申上ゲマスト云フノハ、高橋總理大
臣ノ委員會ニ於ケル各辯ガ、原內閣ノ責任ハ全部ハ負ハヌ
其間ニ一定ノ限界ガアッテ、或所マデハ負フケレドモ、ソレカ
ラ先ハ乃公ハ知ラヌノダ、此答辯デアリマスルガ故ニ、斯ノ
如キ罪惡ニ付テハ御責任ヲ御負ヒニナラヌノカ、之ヲ明瞭ニ
致シテ置キタイノデアリマス、先ヅ第一ニ明瞭ニスベキハ彼
ノ大連取引所ノ事件デアリマス、此事件ノ經過ノ大略ハ元
ト大正七年ノ七月頃ヨリシテ森上卯平ナル者ガ、大連ニ於
テ民營ノ取引所ヲ營マンコトヲ發起致シマシタノデアリマス、
當時同人ハ上京ヲ致シテ、或者ノ紹介ニ依フテ當時ノ拓殖
局長官古賀原造氏ニ面會ヲ致シタ、デ古賀氏ハ當時
拓殖局內ニ試論ハアルガ願ヒ出ヅレバ許シマセウ、ケレドモ
許シタ場合ニハ其株ノ七百乃至千ハ乃公ニモ吳レロ、自分
ノ方ニモ相當友人ガアルカラ之ヲ長官ニ吳レ、斯ウ云フ約
束ヲ致シ引續イテ大正八年ノ十二月十三日ニハ關東州
取引所令ナルモノガ發布セラレ、勅令デアリマス、大正九年
二月十日ニ設立ノ免許ヲ得タノデアリマス、所ガ大正九年
二月ニ議會ガ解散ニナリマシテ、全國各地ニ於テ選擧ノ運
動ガ行ハレタノデアリマス、茲ニ於テカ拓殖局長官古賀廉
造ハ設定ノ條件タル株劵ノ提供ヲ思出シテ、當時大連ニ居
リマシタ自分ノ息子古賀邦夫ト云フ者ニ手紙ヲヤッテ森上
卯平ヨリ前ニ約束シタ所ノ設立許可ノ條件タル株式ヲ、早
ク此際出スヤウニ要求シロト云フ賄賂提供ノ要求ヲ致シタ
ノデアリマス、當時此事件ニ付テ既ニ刑事ノ犯罪トシテ
〔粕谷副議長議長席ヲ退キ奧議長復席〕
起訴サレテ居リマス未ダ判決ハ下リマセヌガ豫審ニ於テハ既
ニ有罪ニ決セラレテ居リマス高橋總理大臣ハ確定判決ノアルマ
デト言ハレマスケレドモ、確定判決ヲ見ズトモ玆ニ動カスベカラザ
ル一ノ證據ガアルノデアリマス、卽チ古賀廉造ガ其子邦夫ニ對
シテ宛テタル書面デアリマス、是ガアル以上ハ假令確定判決
ガアラウガアルマイガ、裁判所ニ於テ手續上ノ理由デ無罪
ニナラウガナルマイガ、改治上ノ問題トシテハ終局ノモノト
致サナケレバナラヌ、古賀君ガ其子邦夫ニ宛テタ手紙ノ一節
ニ斯樣ナ事ガアル「曾テ御聽キ相成候一件ハ此際至急實
行致シ吳レ候樣談判相成度候拙者」卽チ康造デアリマス
拙者ヨリ請求致シ候事等ハ一言モ御洩シ無キ樣御注意
相成度候唯親父ニ於テ選擧ノ爲出金ノ必要アリトノ由聽
込ミ候ニ就キ何トカ工面シテ親父ヲ援度ク考ヘ相談致度
旨御申聽ケ相成度候事可然候森上モ一千株デモ七百株
デモ分配スルコトヲ明言致候上ハ今更引込ミ候道理モ無
之候何卒貴公ノ氣付ヲ以テ談判相成度候」此古賀廉造
ヨリ邦夫ニ宛テタル手紙ヲ受ケテ、邦夫ガ森上卯平ヨリ賄
賂ノ提供ヲ受ケタト云フノガ事實デアリマス、此事實アルニ
拘ラズ、未ダ判決確定セズトシテ、責任ヲ負ハヌト云フコトハ
政治上如何ナモノデアリマセウ、所ガ是ダナケレバ-此事
件ガ玆ニ止マレバ高橋內閣、原內閣ノ分界問題ニ左迄大
問題デハアリマセヌ、所ガ玆ニ見遁スコトノ出來ナイ問題ハ
此大連取引所ヲ造ルノニハ、新ニ勅令ノ發布ヲ要スルノデ
アリマスル、ソレ故ニ大正八年ノ十二月十三日ニ當時世論
囂々タル中ヲ排シテ遂ニ、大連取引所、關東州取引所令ナ
ル勅令ガ原總理大臣ノ副署ニ依ッテ發布サレテ居ルノデア
リマス、是ハ同月十五日ノ官報ニ、勅令第二百九十四號ト
シテ揭載ガアリマス、然ルニ此勅令ヲ一見致シマスルト、犯
罪ノ跡歷然ブアリマス、抑〓取引所ノ法律ニハ、取引所ヲ
惡用スル場合ノ罰則ト云フモノヲ必要トスル、內地ノ取引
所法デソレガアリマス、所ガ關東州取引所令ニハ罰則ノ規
定ハアリマセヌ、不法ニ公定相場ヲ作リ、相場ノ變動ヲ謀リ、
或ハ取引所ニ於テ取引類似ノ行爲ヲスル、是等ノ行爲
ヲナスト云フ規則ダケアッテ、シタ場合ノ罰則ガ無イノデア
リマス、此罰則ハ別ニ關東長官ノ關東廳令ト云フモノニ、之ヲ
讓ッテ居ルノデアリマス、何故ニ然ラバ此勅令ニ罰則ヲ附ケ
ナカッタカト申セバ、此勅令ニ罰則ヲ附ケレバ樞密院ノ會議ニ
之ヲ諮ラナケレバナラヌ當時大連取引所ト云フモノガ一ツ
ノ政治上ノ魂膽カラ生ジタ問題デアルト云フコトハ、當時
東京ノ新間、大阪ノ新聞、天下ノ新間デ、何人モ知ラザル者
ハナカッタノデアリマス、隨テ樞密院ノ會議ニ出セバ、此勅令
ハ必ズ否決サルベキ運命ヲ持チマシタガ故ニ、殊更ニ罰則ヲ
省イタ勅令ヲ作ッテ、サウシテ此取引所ノ設立ヲ致シタノデ
アリマス、政治ノ事務ニ鍛練ナル原敬君ガ、取引所法ニ罰
則ガ要ルト云フコトヲ知ラナカッタ筈モナク、法律ニ詳シキ法
制局長官ガ、罰則ヲ附ケレバ樞密院ニ行カナケレバナラヌト
云フ事ヲ知ラナカッタ筈モナク、我國ノ法律制度ヲ紊ッテ陛
下ノ畏クモ御裁可ヲ、變則狀態ヲ以テ仰ギ奉リ、世論囂々タ
ルノ中ニ、敢然トシテ原總理大臣ハ大連取引所ノ設立ヲ
贊助致シタノデアリマス(拍手)卽チ勅令發布ヲ以テ犯罪ヲ
敢行シタト云フノハ是デアル、況ヤ此事件ノ中心人物ハ誰デア
リマスルカ、古賀康造其人デアリマス、デ通常ノ役人ノ任用
ニ付テ總理大臣ノ責任ヲ云々スルト云フコトハ煩瑣ニ堪ヘ
マスマイ、併ナガラ古賀廉造ト云フ人ハ、前ニ天理〓事件ア
リ、後ニ贋札事件アリ、此人ハト言ウテ世ノ指彈ヲ受ケツヽ
アッタ人デアル、ソレヲ拔擢スルカラニハ、若モ古賀カ非常ナ
ル手柄ヲ奏セバ、迫ハ原總理大臣其人ノ旣住ヲ見ズシテ、
古賀ヲ擢用シタル其功ハ原總理大臣ニ收リマス、サル代リ
ニハ從來ト同ジ系統ノ犯罪ヲ犯シ、國家ニ害ヲ及ポスト云
フ以上ハ、天下ノ者ハ鼓ヲ鳴ラシテ原敬君ノ不誠實ヲ攻メ
ナケレバナラヌト思フノデアリマス(拍手)原總理大臣ニ斯ノ
如キ····行爲アル以上ハ、其罪ヲ負擔シナケレバナラヌ、高
橋總理大臣ガ、ソレハ前ノ人ノシタ事デ知ラヌ、責任ハ死ン
ダ人、御利益ハ私ト云フコトハ、如何ニモ不人情千万、是ロン
ソ····居ッタ人デナイ者ト言ハナケレバナラヌノデアリマス(拍
手)第二ハ世間ノ言葉デ阿片事件ト稱セラルヽ事件ニ付テ
內閣諸公ノ責任ヲ問フノデアリマス、眞實彼等良心ニ於テ
責仕ナシト神ノ前デ言ヒ得ルカドウカ、恰モ昨年ノ今頃デア
リマシタ、我黨ヨリ阿片事件ニ關スル決議案ナルモノヲ上
程致シ、同僚ノ小橋藻三衞君ガ其理由ヲ說明シタノデアリ
マス、當時決議ノ要項ハ斯ノ如クデアッタ、政府ノ關束州ニ
於ケル阿片取扱ハ、外ハ國際ノ信義ニ背キ、内ハ官紀ノ紊
亂ヲ極ムルモノト認ム、而シテ當時吾々ハ單ニ犯罪ヲ摘發
スルト云フ小サナ考デ、此問題ヲ起シタノデハナイ、當時ノ速
記錄ヲ御覽ニナルト、現ニ我ガ日本帝國ガ世界ニ於テ負擔
シテ居ル所ノ義務、卽チ對獨平和條約ヨリ生ズル義務國
際阿片條約ヨリ生ズル義務、是等ノ義務ノ履行ガ完全ニ
出來テ居ルカドウカ、既ニ外國ヨリシテ抗議マデ受ケテ居ル
デハナイカ、阿片ヲ過大ニ賣ッテ、單リ阿片廳者ニ供給スル
ノミナラズ、關東州ニモ、支那內地ニモ、阿片ヲ賣ッテ居ルノ
ハ日本ノ所爲デアルト世間カラ指彈ヲ受ケテ居ル吾々ハ
我國ノ恥ヲ曝スコトヲ好マヌガ、既ニ外國ヨリ指彈ヲ受ケル
以上ハ默視スルコトガ出來ヌ、淚ヲ揮シテ此議場ノ問題トス
ルト云フコトヲ吾々ハ言ッテ居ルノデアル、ソレニ對スル長官
ノ答辯ハ役所ノ中デ一人カ二人ガ惡イ事ヲシ夕者ガアルガ
役人ノ中テ心得違ノアルノハ此度バカリデナイ、、斯樣ナル者
ニ付テハソレ〓〓處分ヲスル、何モ過大ニ阿片ヲ賣ッタト云フ
事實ハ無イノデアル、事モナゲニ-關東長官ハ-山縣伊
三郞氏ハ事モナゲニ答辯ヲシテ居ラレルノデアリマス、然ル
ニ今日如何デアリマスカ、私ハ單ニ之ハ刑事問題トシテ言
フノデハナイ、人道ノ問題、國家ノ問題デアル、二ツノ事實ハ
是亦證明サレテシマッタ、卽チ關東州ニ於テ阿片ヲ澤山賣
ルト云フ原因ハ、關東廳ノ收入ノ目的デアッタト云フ事實
(拍手)日本政府ガ政治ヲスル費用ノ爲ニ、支那人ノ命ヲ
害フ阿片ソ多量ニ賣ヲタト云フ事實、モウ一ツハ此阿片ヲ
多量ニ賣ルト云フコトハ、矢張中央政府カラノ通牒ニ依ル
コトデアル、中野有光ノ獨斷デハナク、中央政府カラノ通牒
ニ依ノテ阿片ヲ過大ニ賣ッタト云フ、此悲シムベキ事實デアリ
マス(拍手)ソレハ此事件モ亦現ニ關束廳ニ於テ-關東ノ
裁判所ニ於テ審理中デアリマスルガ、判決ガアラウガアルマ
イガ、此處ニ動カスベカラザル斷案ヲ下ス一ツノ書類ガアリ
マス、ンレハ其中野有光自身カラシテ、關東廳ノ山縣閣下ニ
宛テタル辭職請求ノ理由書デアリマス、是ハ後ニ議長ノ許
可ヲ得テ全部速記ニ載セタイト思ヒマス、其一部分ヲ此處
ニ引用致シマスルド、斯樣ニ言ッテ居ル、是ハ言々句々吾々
ノ神經ヲ刺戟セザレバ已マヌ、文章デアリマス(拍手)書イタ
者ハ中野有光デ、宛名人ハ山縣伊三郞君デアリマス、其頭
デ御聽キヲ願ヒタイ「阿片賣捌ハ宏濟善堂ヲシテ元賣捌ヲ
爲サシメ癮者ニ供給スルニアレドモ其實ハ關束廳ノ收入增
加ヲ圖ルヲ目的トシタルモノナリ(拍手)大正六七年ハ年收
六七百万圓以上ニ達シ外務省系統ノ異議アリシニ依リ大
正八年度ハ大緊縮ヲ行ハレタリ小生關係スルニ至レルハ此
時ニシテ命ニ依リ從來ノ放漫ヲ節制シタラムニハ阿片ノ收
入殆ンド皆無ナルガ故ニ祕密ニ賣却セルハ頗ル努力ヲ要シ
タル所ニ有之候(拍手)大正八年度ハ關東廳ノ阿片收入
ハ五十万圓ノ豫算ナリ而シテ命ニ依リ三百万圓以上ヲ收
入シ(拍手)此外ニ仕入ロ四ノ資金ヲ收入シタリ阿片賣捌ハ
警察醫ノ診定シタル阿片癮者ノ外供給スベカラズ內閣通
牒ノ存スル所而シテ診定シタル癮者ノ數ハ關東州ヲ通ジ
僅ニ二千八百人ニシテ供給シタル範圍ハ大正八年度ニ於
テハ三百餘万圓程度ト思料ス然レバ十分ノ六ハ政府ノ移
牒セル規定ニ違反ス大正九年度ハ同人ノ癮者ニ供給スル
ニ關東廳ノ地方費豫算ハ阿片費三百万圓ヲ計上セラレタ
リ之ニ加フルニ仕入代金百万圓ヲ賣捌ク要アリテ四百万
圓收入ノ豫定ナリ尙ホ大正八年度ヨリハ價格非常ノ下落
ニテ若シ供給分量ヨリ打算セバ殆ド十分ノ八以上ハ規定
ニ違反セルモノナリトスルコトニ相成候而シテ議會ニ於ケル
閣下ノ御答辯ハ阿片賣捌ハ大連民政署長ニ一任シアリト
アリタレドモ決シテ一任セラレ居リ不申(拍手)宏濟善堂監
督事務執行ハ詳細ナル內閣通牒ニ更ニ關東廳ニ依リテ加
ヘラレタル事項ニ依リ行ヒツツアリテ小生ノ裁量範圍ハ極
メテ狹少ナルモノニ有之候小生ハ上官ノ命ヲ體シ唯政費
ノ收入ニ遺算ナカラシノムコトヲ期シ宏済善堂ニ命ジ努力
セシメタルモノニシテ特許料ノ如キハ靑島ハ十匁ニ對シ銀
二圓五十錢ナルニ關東州ハ金十圓以上、ノ期間永クシテ平
均靑島ノ倍額以上ヲ收入シタルハ阿片商人ノ利益ヲ割カ
シメタルニ外ナラズ候固ヨリ關東廳ノ方針ガ癮者ヲ救濟ス
ル意味ナレバ事ノ眞相ヨリ言ヘバ何等非難ヲ受クル所以
無之若シ之ヲ供給セザレバ密輸入犯罪者ヲ肥スニ過ギザ
ルモノニシテ事實ハ政テ論ズルヲ要セズ候得共唯小生ノ意
見ニテ斯ル違反ヲ行フタルガ如ク見做サルヽハ頗ル迷感ノ
至リニ有之若シ之ヲ司法事件トシテ調査セラルレバ明白ト
ナルノ外ナキヲ憂フルモノニ有之候尙ホ前述ノ癮者ニ供給
スル分量阿片ハ關束州內ノ癮者ニシテ供給セラルルモノハ
極メテ少量ニシテ關東廳管轄以外ノ天津上海等ニ向ッテ
輸出セラレ此等ノ地ヲ經テ支那內地ニ賣行クモノナルハ更メ
テ言フヲ俟タズ防グコト能ハザルモノニ有之候(拍手)然ルニ議
會ニ於ケル意見トシテハ閣下ハ明ニ之ヲ否認セラレ小生如キ
モ誠ニ安堵シタル所ニ候而モ若シ司法事件トシテ天下ニ
表明セラルル時ハ政府及關東廳ニ對シ非議ヲ挾ム者ヲ生
ジ由々敷大事ナルノミナラズ世界ノ人道及國際ノ信義ニ
反シタリトノ非難ヲ受クルニ至ルハ從來排日支那人ノ行
動ヨリ觀察シテ免ル能ハザル所ナリト思料致シ候斯ノ如キ
大影響ヲ生ムコト實ニ恐縮ニ堪ヘズ小生ハ現在及將來ニ
於テモ如何ニモシテ此事實ヲ飽迄隱蔽セント欲スルガ故ニ
先ヅ現職ヲ去リテ責任アル言ヲ避ケントスルモノニ有之候」
(拍手)マダ此書面ハ長イノデアリマス、言々句々吾々悲憤
慷慨ニ堪ヘナイ文字ヲ以テ埋メラレテ居リマス、中ニモ吾々
ノ決議ニ對シテ當時一部ノ刀筆ノ吏ガ、過ヲシタト云フガ
如クニ輕ク答ヘラレテ居リマスルガ、役人自身ガソウデハゴザ
ラヌ、閣下ハ議會ニ於デ斯樣ニ答辯サレタケレドモ、事ノ眞
相ハ之ニ反シ、關東州ノ收入ヲ得ル爲ニ致シタノデアルノミ
ナラズ、命令ヲ受ケテ致シタノデアル、而シテ阿片ハ關東州
外ニ移出サレテ支那内地ニ彌漫シツヽアルト云フコトヲ、當
ノ本人ガ告白スルニ至ッテハ、再ビ之ヲ否認スルコトハ出來
マスマイ(拍手)之ニ付テ當路ノ人ハ如何ニ御考ニナリマセ
ウカ、而シテ其責任ヲ承繼セラレタル高橋總理大臣ハ、今
如何ナル感ガアリマセウカ、加之當時吾々ガ此案ヲ說明シ
タノガ二月ノ十七日デアッタ、而シテ事モナゲニ當日答辯サ
レテ居ッテ、三月ニ入ルヤ否ヤ、彼ノ第二阿片事件ト云フモ
ノヲ惹起サレテ居リマス(拍千)其不誠意ナルヤ實ニ驚クニ
堪ヘタモノデアリマスル、吾々ニ事モナゲニ挨拶ヲシテ置キナ
ガラ、直ニ關東州ニ對シテ如河ナル命令ヲ下サレタカ、同年
ノ三月カラ六月ニ至ッテ本崎元八ト云フ者ニ對シ、前後四
百箱、七千六百六十貫ノ阿片ヲ通常ノ値段ヨリ安ク此者
ニ賣リ與へ、此者ヲシテ再ビ支那內地各方面ニ阿片ヲ濫
賣サセタ事實ガアルノデアリマス、此問題ハ一一ツニナリマスル
ガ、論理ヲ明カニスル爲ニ假ニ、爰デ關東廳ガ本崎ニ賣ッタ
所ノ阿片ノ代價ガ安カッタトカ、高カッタトカ云フコトハ申シ
マセヌ、是モ亦官紀紊亂ノ事賣デアリマスケレドモ、議會ニ
於テ斯ノ如キ決議ヲ上程サレ、質問ヲ受ケ、サウシテ再ビ同
ジ關東廳ガ又此二百箱、三百箱ト云フ大量ノ阿片ヲ支那
內地ニ賣出スト云フコトハ如何ナモノデアリマセウカ(拍手)
斯樣ナ事ヲ爲サルヽ以上ハ、是カラ先キ政府諸公ノ議會ニ
於ケル答辯ト云フモノハ吾々毫モ信用出來ナイノデアリマ
ス(拍手)信用シヤウト欲シテモ信用ガ出來ナイ、又無責任
極マル事ヲヤッタ後ヲ引受ケタ高橋首相ハ、如何ナル責任ヲ
吾々ニ向ッテ負ハルヽ覺悟デアリマセウカ(拍手)第三ニ滿鐵
事件ト稱セラルヽ事付ノ責任デアリマス、是ハ今日迄發表
サレテ居リマスル所ノ調書、證據物、自白、此等ニ依リマス
ルト、全員ヲ原敬君ニモ、野田卯太郞君ニモ渡シタト云フ記
事ハアリマセヌ、ソレ故ニ之ヲ以テ滿鐵事件ハ政府ノ責任
デナイト議論ヲサレルナラバ、是ハ政治家デハアリマセヌ、吾々
ハ此金ヲ原總理大臣ガ使ウテ、自分ノ家ノ臺所ノ足シニ
シタト論ズルノデハナイ、寧ロ私ハサウデナカッタノガ、卽チ政
治上ノ問題ヲ生ズル所以デアラウト思フ、満鐵事件起訴ニハ
ナリマセヌガ、化學工業ノ事件、大連丸ノ事件、前ニ述ベマシ
夕五品取引所ノ事件、結局是等ノ事件ニ依ヶテ得タ金ハ此
事ダケハ十目ノ視ル所、卽チ是等ノ金ハ選擧ニ必要デアッタ
ト云フコト-總選擧ニ必要ナル金デアッタト云フコトダケ
ハ、十目ノ視ル所、十指ノ指ス所、全國民ノ陪審員ガ之ヲ
判決スル所デアリマス(拍手)然ラバ何故ニ斯ノ如キ不正ナ
ル金銭ヲ必要ト致シタカ、是ハ原總理大臣ガ政略ノ爲ニ議
會ヲ解散シ、金力ヲ以テ多數ノ與黨ヲ得ント圖タ所ノ、其
政策ノ生ンダ私生兒テアリマス(拍手「ノウ〓〓」ト呼フ者ア
リ)私ハ眞實言フ、原總理大臣ガソレ程マデシテ制限選擧
ヲ行ハナケレバナラヌト確信シタル生粹ノ制限選擧論者デ
アッタトハ思ハナイ、彼自身モ亦或ル意味ニ於テ普通選擧ニ
ハ同情スルト言ッテ居ル、然ルニモ拘ラズ、現實ニ目ヲ眩シ
政府ニ溺レ、不必要ナル解散ヲ致シ、言論ヲ以テハ到底今
度ノ選擧ニハ勝テヌ、今度ノ選擧ニ勝ツニハ唯金力アルノ
ミ、ソレガ爲ニ金力ヲ要スル故ニ、爰ニ働カズシテ金ヲ集メル
コトノ必要ガ生ジタ、此必要ガ卽チ滿鐵、滿洲丸、大連取
引所ノ事件ヲ生ジタ一大原因デアルト私ハ考ヘル(拍手「ノ
ウノウ」ト呼フ者アリ)諸君、憤慨シ給フナ、私ハ原總理大臣
ノ人格ニ對シテ、彼ノ中岡艮一ノ言フガ如クニ私慾ヲ逞ウ
シタトハ思ハナイ、彼ハ私慾ノ爲デハナイ、只併ナガラ政策ニ
溺レ、普通選擧ノ如キ大問題ヲ一時ノ政略ニ使ウテ、議會
ヲ不必要ニ解散シ、ンレデ以テ自己ノ自我ヲ押通サウトシ
タ所ノ憫ムベキ彼ノ失策ガアルノデアリマス(拍手)彼ノ失
策ガ此點ニ在リトスレバ、其責任ハ彼ガ生キテ居ツタナラバ、
此壇上デ懺悔セザルベカラベカラザル時デアリマス、哀レムベ
シ、彼今亡シ、其相續者タル高橋首相ガ此罪ヲ贖フベキ時
期ガ時々刻々ニ迫リツヽアルノデアリマス、政府ノ答辯ハ顯
ミテ他ヲ言フ、責任ノ所在ハ何處ダト問フト、綱紀粛正ニハ
心ヲ用キテ居ルト言フケレドモ、サウ云フ無責任ナコトヲ言
フノデハ、綱紀肅正ニ心ヲ用ヰテ居ルトハ思ヘナイ(拍手)私
ハ高橋總理大臣ガ施政演說ヲサレタ際ニ、綱紀肅正ニハ
力ヲ盡シテ居ルト演說サレタ時分ニ、思ハズ吹出シアト云フ
ノハ、是ハ網紀〓正ノ問題ヲ起サレル場合ノ防禦線ヲ張ク
テ居ルニ相違ナイ、然ルニ彼ノ面上ニハ眞實綱紀肅正ニ心
ヲ用ヰテ居ルト云フ熱誠ガ露レテ居リマセヌ、斯ノ如キ人ヲ總
理大臣ニ戴ク我ガ國民ハ悲シムベシデアリマス、一日モ早ク
責任ヲ自覺セラレテ、深ク々々其罪ヲ國民ノ前ニ贖ハレン
コトヲ希望スル次第デアリマス(拍手起ル)
〔參照〕
中野有光ヨリ山縣長官ニ宛テタル手紙
一月二十四日夜閣下ノ招電ニ接シ小生ハ翌二十五
日出發上京致候處關東廳ノ特許阿片賣捌ニ付宏濟
善堂職員小畠貞次郞ニ不正行爲アリトシ櫻田倶樂
部ノ壯士谷長川隆通ナル者ヨリ密告アリタル趣ニテ
之ニ関シ各般ニ渡リ
閣下ノ御質問ヲ受ケ事實及ビ意見詳細ニ答辯申上
タルコト有之小生答辯ノ範圍ニ於テハ御諒解ヲ得ク
ルコトヽ信ジ候(中略)依テ小生速ニ歸任シ司法官ニ
對シ小生ノ知ル處ヲ陳告セバ速カニ眞相ヲ明カニシ得
ベシト信ジ歸任方中出候處當時御許容無ク其後小
生ノ行動ニ開シ司法官ノ搜索始マレルヲ聞キ甚遺憾
トシタル所ニ有之候小生ハ職務以外ニ於テ政治家ヲ
援ケ又ハ援ケントシタル事實アルモ良心何等愧ヅル所
無之
嫌疑アラバ辯明ノ日アルベシト期シ居タル所ニ有之候
然ルニ三月二十三日ニ至リ閣下ヨリ直ニ出發歸任ス
ベキ命ヲ受ケ尙小生ニ對スル司法官ノ審問アルベキヲ
伺ヒ候固ヨリ期シタル所ニ有之候得共目下世
間ノ狀勢ニ於テ小生在官ノ儘審問ヲ受クル時ハ左
ニ擧グルガ如キ事實ノ爲メ官紀紊亂ノ評ヲ受クルノ
虞アリ此際辭職シテ一私人トナリ而シテ其求メラルヽ
所ニ委セムコトヲ期シ候勿論在職中ナルト辭職後ナ
ルトヲ問ハズ他ノ不利益トナルベキ言ヲ爲スヲ欲セズ
候へ共
阿片問題ノ進行ニ就テハ司法官ノ審問ハ少クモ左記
第二第三ノ件ニ及バゲレバ眞相ヲ明カニスル事能ハザ
ルモノト信ジ候間苦東選ム所ニ迷ヒ候若シ此際閣下
ノ御處置トシテハ小生ヲ直チニ司法官ノ審問ニ附スルコ
トナク曩ニ閣下ノ御質問ヲ受ケタル如ク詳細ナル陳
辯ヲ求メラレ若シ小生ノ辯明其要領ヲ得ザル時始メ
テ司法官ニ附セラレ候樣希望シタル處ニ候得共已ニ
致シ方無之次第ニ候
第現政府攻擊ノ材料タル關東州阿片問題ヲ再燃
セシムルヲ恐ル〓期議會ニ於テハ政府反對黨ハ極力
現政府ヲ倒壞セムコトヲ期シテ關東州ニ於ケル阿片
賣捌問題ヲ最モ有力ナル材料ト信ジ憲國雨黨ハ全
力ヲ傾ケタリ而モ議院外ニ於テハ
全國ノ新聞紙上阿片不正問題ト稱シ官紀紊亂其極
ニ達シタルモノヽ如ク宣傳シ例令ハ一小生宅ハ家宅搜
索ヲ受ケ多額ノ財物ヲ藏シタル如ク曲筆シ世人ヲ信
ゼシメタルノミナラズ議院内ノ言論モ此曲筆ハ有力ナ
ル材料ニ供セラレタリ此ノ如ク近時新聞紙ノ不謹愼ナ
ル記事ハ其影響スル所測ルベカラザルモノ有之候今ヤ
議會終了ト共ニ世人ハ已ニ關東州ノ阿片問題ハ遺
忘セムトスルニ際シ小生ガ在官ノ儘審問ヲ受クルニ至
レバ閣下ガ
官紀紊亂ナシト答辯セラレタルヲ裏切リ天下ノ新聞
紙ハ再ビ關東州ノ阿片不正問題ヲ提唱シ幾度カノ針
小棒大記事ヲ揭載スルニ至ルベク中央政府及閣下ニ
對シ誠ニ恐縮ニ堪ヘズ先ヅ官職ヨリ退カムトスルモノ
ニ有之候
第二閣下ノ職務ニ對シ批議ヲ生ジ延テ中央政府ノ
責任問題ヲ惹起スルヲ虞ル
阿片賣捌ハ宏濟善堂ヲシテ元賣捌ヲナサシメ癮者ニ
供給スルニアレドモ其ノ實ハ關東廳ノ收入增加ヲ圖ル
ヲ目的トシタルモノナリ大正六七年ハ年收六七百万
圓以上ニ達シ外務省系統ノ異議アリシニ依リ
大正八年度ハ大緊縮ヲ行ハレタリ小生關係スルニ至
レルハ此時ニシテ命ニヨリ從來ノ放慢ヲ節制シタラム
ニハ阿片ノ收入殆ンド皆無ナルガ故ニ祕密ニ賣却セル
ハ頗ル努力ヲ要シタル所ニ有之候大正八年度ハ關東
廳ノ阿片收人ハ五十万園ノ豫算ナリ而シテ命ニ依リ
三百万圓以上ヲ收入シ此外ニ仕入品ノ資金ヲ收入
シタリ阿片賣捌ハ警察醫ノ診定シタル阿片癮者ノ外
供給スヘカラズ
內閣通牒ノ存スル所而シテ診定シタル癮者ノ數ハ關
東州ヲ通ジ僅々二千八百人ニシテ供給シタル範圍ハ
大正八年度ニ於テハ三百餘万圓程度ト思料ス然レ
バ十分ノ六ハ政府ノ移牒セル規定ニ違反ス大正九
年度ハ同人ノ癒者ニ供給スルニ關東廳ノ地方費豫算
ハ阿片費三百万圓ヲ計上セラレタリ之ニ加フルニ仕
入代金百万圓ヲ賣捌ク要アリテ四百万圓收入ノ豫
定ナリ尙大正八年度ヨリハ價格非常ノ下落ニテ若シ
供給分量ヨリ打算セバ殆ンド十分ノ八以上ハ
規定ニ違反セルモノナリトスルコトニ相成候而シテ議
會ニ於ケル閣下ノ御答辯ハ阿片賣捌ハ大連民政署
長ニ一任シアリトアリタレドモ決シテ一任セラレ居リ不
申宏濟善堂監督事務執行ハ詳細ナル內閣閣通牒ニ更
ニ關東廳ニ依リテ加へラレタル事項ニ依リ行ヒツヽア
リテ小生ノ栽量範圍ハ極メテ狹小ナルモノニ有之候
小生ハ上官ノ命ヲ體シ唯政費ノ收入ニ違算ナカラシ
メムコトヲ期シ宏濟善堂ニ命ジ努力セシメタルモノニ
シテ特許料ノ如キハ靑島ハ十匁ニ對シ銀二圓五十
錢ナルニ關束州ハ金十圓以上ノ期間永クシテ平均
靑島ノ倍額以上ヲ收入シタルハ阿片商人ノ利益ヲ割
カシメタルニ外ナラズ候固ヨリ關東廳ノ方針カ癒者ヲ
救濟スル意味ナレバ事ノ眞相ヨリ云ヘバ何等非難ヲ
受クル所以無之若シ之レヲ供給セザレバ密輸入犯罪
者ヲ肥スニ過ギザルモノニシテ事實ハ政テ論ズルヲ要
セズ候得共唯小生ノ意見ニテ斯カル違反ヲ行フタル
ガ如ク見做サルヽハ頗ル迷惑ノ至リニ有之若シ之レヲ
司法事件トシテ調査セラルレバ明白トナルノ外ナキヲ
憂フルモノニ有之候尚ホ前述ノ
癮者ニ供給スル分量阿片ハ關東州內ノ癮者ニシテ供
給セラルヽモノハ極メテ少量ニシテ關東廳管轄以外ノ
天津上海等ニ向テ輸出セラレ此等ノ地ヲ經テ支那內
地ニ賣レ行クモノナルハ更メテ言フヲ俟タズ防グコト
能ハザルモノニ有之候然ルニ議會ニ於ル意見トシテハ
閣下ハ明カニ之ヲ否認セラレ小生如キモ誠ニ安堵シタ
ル處ニ候然モ若シ司法事件トシテ天下ニ表明セラルヽ
時ハ政府及關東廳ニ對シ批議ヲ挿ムモノヲ生ジ由々
敷大事ナルノミナラズ世界ノ人道及
國際ノ信義ニ反シタリトノ非難ヲ受クルニ至ルハ從來
排日支那人ノ行動ヨリ觀察シテ免ル能ハサル所ナリ
ト思料致候斯ノ如キ大影響ヲ生ムコト實ニ恐縮ニ堪
ヘズ小生ハ現在及將來ニ於テモ如何ニモシテ此事實
ヲ飽迄隠弊セムト欲スルガ故ニ先ヅ現職ヲ去リテ責
任アル言ヲ避ケムトスルモノニ有之候
第三有力ナル紳士ノ名ヲ表ハスヲ怖ル
阿片小賣人トナルモノハ皆支那人ナレドモ內部ニ日
本人ノ關係アリ單ニ名義ノミヲ支人ニ委託シタルモノ
モアリ又ハ組合ヲナセルモノ等約三分ノ二アリト思料
ス此關係者ハ關束州ニ於ケル
顯若ナル紳士少カラズ又此度疑惑ヲ招ケル特賣人ハ
卽チ小賣人中手廣ク賣買ヲナスモノヲ言ヒ特賣人ハ
比較的利益多キハ自然ノ結果ニ有之此特賣人ヲ選
ブハ資本及手腕ヲ有スルモノヲ限リ宏濟善堂ニ於テ
適當ナル支那人ヲ指〓スルモノナレドモ一旦之ヲ指
定スレバ必ラズ其裏面ニ喰人ルモノアルヲ每トス從來
此裏面ノ人々ハ種々ノ運動又ハ情實ニテ默認セラレ
タル一私人多カリシガ如キモ大正八年ヨリハ尙ホ斯カ
ヽ利益ニ加ハルモノハ
國家的事業ヲナスモノヲ認容スルヲ可ナリトシ第一各
新聞社(當地ノ)第二日露戰役ノ時功勞アリタル支
那人二名ノ外第三蒲原基輔第四梶井盛ヲ默認セリ
蒲原基輔ハ支那人有力者及日本人タル所謂支那浪
人其他ヲ代表シタルモノ梶井盛ハ代議士ノ團體ヲ代
表シタルモノニテ當時ノ長官及事務總長ノ承認ヲ經
閣下ノ御就任後モ之ヲ報告シタルモノニ有之候若シ
一朝司法官ノ糺問ニ接スレバ告白セザルベカラザルニ
至ルベク爲ニ關東州ニ於ケル名譽アル紳士ニシテ面
目ヲ失スル者ヲ生シ秩序ヲ紊亂スルノ恐レアルノミナ
ラズ內地ニ於ケル有力者ヲシテ世間指彈ノ的トナルモ
ノヲ生ズルヲ免レズ
以上ノ如クニシテ第一ハ最モ恐ル處ニ有之又第二第
三ニ關シテハ小生敢テ職ヲ退キテ隱密ヲ表白セムトス
ル者ニハ無之阿片賣捌問題ヲ司法事件トセバ前述ノ
事實ハ到底之ヲ審問セサレバ要領ヲ得ル事能ハザル
ガ故ニ小生モ或程度迄ハロヲ開カシメラルルニ至ルヲ
怨ムモノニ有之候
元來本事件ハ告訴者アリタルニアラズ警察官ノ報告
ニ依リタルニアラズ檢察官ノ認定ニ出デタルニアラズ
政府反對黨ノ長谷川隆通ナルモノヽ材料ニ依リ閣下
ハ時日ヲ闡明スル爲特ニ御下命アリテ起リタル事件
ニ有之然ルニ檢察官若之吾寮官ノ捜査ハ實ニ辛辣ヲ極メ
小生部下ノ警察官ニシテ小生ヲ搜査シ或ハ外部ニ祕
密ヲ漏洩スル等言語ニ絕スルモノ有之候希クバ尙閣
下ノ御内命ニ依リ極メテ稔當ナル進行ヲ執ラシメラレ
候樣熱望致候小生辭表提出ノ苦情ヲ訴フルト共ニ
懇願止マザル所ニ有之候発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=28
-
029・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 〓瀨一郎君-〓瀨君ノ演說中
ニ原敬君ガ云々ノ行爲ヲ政テシタト云フ言葉ガアリマシタ、
又高橋首相ハ云々ト云フコトヲ言ハレマシタ、此二節ダケハ
少シ不穏當ノヤウニ思ヒマスカラ、御取消ニナルコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=29
-
030・清瀬一郎
○〓瀨一郞君 言ハナイト思ヒマスガ、前後ノ事情ニ依リ
マシテ、若シ速記ニアリマシタラ取消シマス
〔「取消サヌノカ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=30
-
031・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 取消サレマシタ-松本君平君
普通選舉ニ關スル質問ノ答辯ニ對スル松本
君平君ノ意見
〔松本君平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=31
-
032・松本君平
○松本君平君 本員ハ曩ニ普通選擧ノ問題ニ關シマシテ
高橋總理大臣ニ質問書ヲ提出シテ居シタノデアリマス、然ル
ニ今日高橋首相ヨリ得タル所ノ質問書ノ囘答ハ、私ガ普通
選擧ニ對シテ問ハント欲スル所ノ問題トハ、大變意味ヲ異
ニシテ居リ、或ハ誤解サレテ此質問ノ答辯書ヲ作ラレタコト
ト思フノデアリマス、故ニ此總理太臣ヨリノ答辯書ニ對シテ
更ニ私ハ私ノ意見ヲ述ベテ、而シテ此意見ニ對スル高橋首
相ノ何等カノ辯明ヲ得ルコトヲ望ムノデアリマス、普通選
擧ノ問題ハ既ニ非常ナル天下ノ與論トナッテ、方ニ國民ノ
聲トシテ有ユル方面ニ叫バレテ居ルノデアリマス、而シテ其
叫ブ所ノ聲ハ、日ニ月ニ熾烈ニ且ツ峻酷ニナリツヽアリマス、
而シテ議院ノ中ニ於テハ普通選擧ノ問題ニ付テ、今迄意
見ヲ異ニシテ居ッタ所ノ各派ガ輿論ノ勢力ニ同化サレテ、玆
ニ全ク一致ノ態度ヲ執ルコトニナッテ、此普通選擧統一案
ハ不日上程サルヽコトニナッテ居ルノデアリマス、此時ニ於
テ閣班ノ首座ニ立ツテ所ノ高橋首相ガ、普通選擧ニ關スル
考ヲ議場ニ於テ少クトモ述ベナケレバナラヌノデアリマスルガ
不幸ニシテ高橋首相ガ內閣組織以來、未タ一度モ本議
場ニ於テ、普通選擧ニ關スル意見ヲ述ベテ居ラナイ、是ハ本
員ノ甚ダ遺憾トシ、又國民モ最モ遺憾トスル所ト思フノデ
アリマス、高橋君ハ久シク海外ニ居ラレテ、世界ノ事情ニモ
能ク通ジテ居ル、又列國ノ形勢ニモ明ナル人デアル、固ヨリ
此政黨的經歷或ハ手腕トシテハ、原前首相ニ及パヌ所ガア
ルカモ知レヌケレドモ、政黨ヲ超越シテ、汎ク世界ノ眼光カ
ラ政治ヲ逹觀シタル其智識ニ於テハ、或ハ原首相ヨリモ一
步ヲ進メテ居ルカモ知レヌ、隨テ此高橋內閣ノ首相ガ普通
選擧ニ關シテ又民衆ノ政治ト云フコトニ對シテ、原首相ヨ
リモ更ニ一歩進ンダ考、又普通選擧ニ關スル所ノ理解ヲモ
持シテ居ラルルコトト私ハ思フノデアリマス、故ニ私ハ多大ナ
ル期待ト興味ヲ持ッテ、高橋首相ガ何等カ此本議場ニ於テ
普通選擧ニ關スル抱負、若クハ意見ヲ述ベラルヽコトヲ望
ンデ居ルノデアリマス、所ガ今得タル所ノ答辯書ヲ見レバ殆
ド空漠ナルモノデアッテ、何ヲ意味シテ居ルカ、私ガ問ハント欲
スル所ノ意味ハ少シモ入ッテ居ラナイ、在來リナ事ヲ述ベテ、
サウシテ時勢ノ進運ニ伴ウテ選擧權ヲ擴張スルト云フヤウ
ナ常套語ヲ述ベテ、斯ウ云フ事ニ依ッテ、私ハ高橋首相ガ現
代ノ政治ニ對スル理解、普通選擧ニ關スル所ノ諒解ヲ聽カン
トスルノデハナイ、言フマデモナク戰後ノ人心ハ非常ナル激
變ヲシテ居ル、益、險惡ヲ增シテ居ルコトハ、否ムベカラザル所
ノ事實デアリマス、生活ノ脅威ヨリ來ル所ノ人心ノ不安、之
ニ依ッテ生ズル所ノ道德ノ頽廢、思想ノ動搖ヨリ生ズル所ノ
社會的變態、隨テ從來ノ舊キ信條ト云フモノハ-政治的
信條ガ殆ド破埃サレテ來テ居ル、無產階級ノ人方自覺ヲ持ツ
テ、玆ニ自由ト平等ノ叫ヲ舉ゲテ來テ居ル、隨テ現代資本
家ト勞働者ノ爭議ガ起リ、小作人ト地主ノ爭ガ起リ、到ル
處ニ「ストライキ」ナリ騒動ガ今行ハレツヽアル、社會ノ各階
級ヲ通ジテ險惡ナル-最モ險惡ナル所ノ氛圍氣ガ醸成サ
レテ居ルコトハ、何人モ之ヲ否ムコトガ出來ナイト思フ、曩ニ
安田善次郞君ガ不幸ナル最期ヲ遂ゲタノモ、政治的ニ於テ
ハ原首相ガ暗殺セラレタノモ皆此惡化シタル、濃厚ナル政治
的社會的危險ナル氛圍氣ノ犧牲トナッタノデアル、而シテ此
過激思想、思想ノ動搖ヨリ生ズル所ノ人心ノ非常ナ兇險
ノ有樣ハ、加速度ノ勢ヲ以テ、深ク社會ノ人心ノ根柢ニ喰
入リツヽアルト思フノデアリマス、又現在軍隊內ニ於テ如何
ニ思想ガ荒ミ、人心ガ荒廢シ、軍隊ノ秩序ガ紊レツヽアルト
云フコトハ、賢明ナル諸君ノ皆知ラレル所デアラウト思フ、曩
ニ富山縣ニ於テ除隊兵ガ非常ナ亂暴ヲシテ、將校ニ對シテ
大ナル威嚇ヲ加ヘタ事モアル、又軍服ヲ燒棄テタト云フヤウ
ナ兵隊モアル、軍隊ノ中ニ非常ナル人心ノ荒ンデ行ク所ノ
聲ガ起リツヽアルノデアリマス、社會主義ノ人ガ軍隊ニ宣傳
スル程易イコトハナイト言ッテ居ル、彼等ハ今皆軍隊ニ向ッテ
宣俥ヲシテ居ルノデアル、ソレハ軍隊內ニ於テ非常ナル不平ト
不滿ト、人心ノ廢頽ガ行ハレツヽアルト云フ著シキ例デアリ
マス、此社會的危機、政治的危機ヲ取去ルニハ、ドウシテモ
普通選擧ヲ一日モ早クシナケレバナラヌト吾々ハ考ヘテ居
ル、一日早ケレバ一日ダケノ此國家國民ガ此危難ヨリ免ル
ルコトガ出來、一刻速ナケレバ、一刻速ナルダケノ社會ノ安
定ヲ得ルコトニ付テ大ナル助ケニナル、然ルニ總理大臣ノ答
辯書ヲ見ルト、何時普通選擧ニスルヤラ譯ノ分ラヌ雲ヲ摑
ム如ク、煙ヲ摑ムヤウナ返答ヲシテ、世ノ進運ニ從ッテ選擧ヲ
擴張スルト云フヤウナコト、サウ云フ樂觀的ナ氣樂ナ世ノ中
デハ私ハナイト思フ、元來普通選擧ノ思想ト云フモノハ、是ハ
自由黨以來ノ傳統的思想デアリマス、而シテ是ハ政友會諸
君ガ、此自由黨ノ尊キ自由民權ノ思想ノ相續者デアル、併
ナガラ不幸ニシテ此政友會ハ、十數年以來殆ト催眠ノ狀
態ニ陷ッテ居リハシナイカト思フ(拍手)最早諸君ガ覺醒シ
テモ好イ時ガ來テハ居ナイカ、曩ニ高橋首相グ內閣ヲ組織
サレタ時ニ、大膽ナル告白ヲ爲シテ、高橋内閣ハ高橋内閣
デアッテ、原內閣ハ原內閣デアル、是ハ別物デアルト云フヤウ
ナ、極テ大膽ナル意見ヲ發表サレテ居ル、私ハ是ハ非常ニ賛
成スルノデアル、而シテ此高橋內閣ノ成立ト云フコトハ、政
府與黨ニ取ッテハ絕大ノ好機會デアリハシナイカ、精神的ニ
政友會ガ復活スル時ハ正ニ此時デハナイカト私ハ思フ、故
ニ心機一轉シテ吾々ガ今唱ヘテ居ル所ノ普通選擧ニ諸君
モ賛同セラレテ、サウシテ此際國民國家ノ安定ヲ圖ル爲ニ、議
院總體ノ力ニ依シテ、此問題ヲ一日一刻モ速ニ解決スル方
ガ利益デアラウト思フノデアリマス、此事グ最モ賢明ナル策
デアルト思フ、今マデノ行懸ヤ面目ト云フ問題、區々タル問
題ニ拘泥セズニ、斯ノ如キ末節ニ心ヲ痛メズ、磊々落々タル
心事ヲ以テ、總テノ行懸政黨ノ關係ヲ破ッテ、サウシテ茲ニ
大政治家ノ襟度ヲ以テ、此機會ニ吾々年來ノ主張デアル
普通選擧ヲ實行サレテハドウカ、卽行サシテハドウカ、高橋
首相ハ是ダケノ全體度胸ガアルデアラウカ、或ハ勇氣ガアル
デアラウウ、又曩ニ原首相ハ其政治的信條トシテ、普通選
擧ト云フモノハ社會組織ヲ脅威スルモノデアル、或ハ階級ヲ打
破スルモノデアル、危險思想ヲ起スモノデアルト云フコトヲ
以テ、政治上ノ信條トシテ居ル、斯ノ如キ時代錯誤ノ思想
ハ、恐クハ高橋首相ハ之ヲ繼續シテ居ルヤ否ヤ、私ガ質問セ
ントスル問題ハ、卽チ曩ニ原敬君ガ持ッテ居ラレタ所ノ普通
選擧ニ對スル信條、此信條ハ高橋首相モ矢張同樣ナ考ヲ
持ッテ居ラルヽヤ否ヤ、是ハ餘程吾々國民トシテ考ヘナケレ
バナラヌ問題デアル、又今日尙ホ首相ハ依然トシテ、普通選
擧尙ホ早シト云フ意味デアルカ、此答辯ニ依ッテ見レバ、普
通選擧尙ホ早シト云フヤウナ意味ガ見エテ居ルノデアル、ケ
レドモ私ノ問ハント欲スル所ノモノハ、普通選擧ガ尙ホ早イ
ナラバ、其根據が何所ニ在ルカト云フコトヲ元シテ貰ヒタ
イ-國民ニ示シテ貰ヒタイノデアル、吾々ハ一日一刻ヲ爭ツ
テ此問題ノ解決ヲ迫ッテ居ル、唯ダ漢然トシテ時勢ノ進運
ニ伴シテ云々ト云フコトヲ言ハレテ居ッテハ、吾々ハ甚ダ覺束
ナク考ヘルノデアル、今若シ國民ノ〓育ガ無イガ爲ニ-國
民〓育ガ幼稚ナルガ爲ニ、普通選擧ヲ行フガ早イト云フ議
論ナラバ、是ハ非常ニ矛盾シタジ議論謂謂ナケレバナラヌ、何
トナレバ文部省ノ出シタ所ノ最近ノ調査ニ依ルト、日本ノ
國民〓育ハ世界文明國ニ於テ第一流デアル、英吉利、佛蘭
西ヨリモ遙カ國民〓育ノ程度ガ進ンデ居ル、唯タ僅ニ獨逸
ハ國民〓育ノ程度ニ於テ九十「パーセント」、日本ガ少シ獨
逸ニ劣ッテ居ルダケデアル、英吉利佛蘭西ヨリハ遙ニ國民〓
育ノ程度ガ進ンデ居ル、斯ノ如キ狀態デアルナラバ、國民〓
育ガ劣ッテ居ルガ故ニ、普通選擧尙ホ早シト云フ理窟ガ立
タヌ若シ他ニ立派ナ理窟ガアルナラバ之ヲ〓ヘテ貰ヒタイ、
又此答辯ニ依ルト、地方議會ノ議員資格云々ト云フコト
ヲ言ハレテ居ル、詰リ衆議院ノ選擧法ヲ改正シテ普通選擧
ニスル前ニ、地方議會ノ議員ノ資格ヲ改メナケレバナラヌト
云フ議論ノヤウニ見エル、併ナガラ是ハ根本ニ於テ政治ノ
道ヲ誤ッテ居ルモノト思フ、地方議會ニ於ケル政治ノ精神ト
中央議會ニ於ケル政治ノ精神トハ、根本ニ於テ政治ノ主義
ヲ異ニシテ居ル、中央ニ於ケル衆議院議員ノ選擧ヲ普通選
擧ニスル前ニ、地方議會ヲ云々シナケレバナラヌト云フ理窟
ハ少シモ無イノデアル、又今日國民ノ要求ガ-普通選擧
ニ對スル要求ガ尙ホ足ラヌト云フ理由ニ依シテ、尙ホ早シト
スルノデアルカ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=32
-
033・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 松本君ニ注意シマス、普通選擧ニ
付テハ御意見ヲ御述ナサルコトハ御自由デアリマスケレドモ
普通選擧ニ對シテ改正案ガ出テ居リマス、是ハ明後二十
三日ノ日程ニ上リ、其時ニ各派カラ十二分ノ御議論ノアル
コトデアリマセウカラ、高橋首相ニ對スル質問ダケニ止メテ、
普通選舉ノ事ハ各派ニ對シテ御遠慮ヲ爲サルコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=33
-
034・松本君平
○松本君平君(續) 分ッテ居リマス、今私ガ此辯明ヲスル
必要ガアルカラ此處ニ立ッタノデアリマス、又此總理大臣ノ
答辯ニ對シテ、斯ノ如キ漠然タル意味ノ分ラヌ答辯ハ、私ハ
滿足ヲスルコトガ出來ナイ、故ニ之ニ對シテ意見ヲ述ベルノ
デアリマス、而シテ此普通選擧ノ要求ナルモノハ、國民ノ今
日熱烈ナル叫トナッテ、津々浦々マデ徹底シテ居ルノデアル、
最早普通選擧ノ叫ハ政黨的色彩ヲ超エテ居ル、國民ノ痛
切ナル要求トナノテ來テ居ルノデアリマス、單純ナル政治運
動デナイ、國民的運動ニナッテ來テ居ル、今ノ全國ノ言論機
關ヲ見レバ、關西ニ於テハ數日前ニ於テ新聞記者大會ガア
リ、茲ニ言論機關ノ覇權ヲ握ッテ居ル新聞社及記者ガ一齊
ニ起ッテ、普通選擧ノ必要ヲ說イテ居ル、又昨夜モ日本全
國ノ新聞記者大會ガ催サレテ、言論機關ノ氣焰ヲ揚ゲテ
居ル、勞働者モ普通選擧ヲ叫ビ、又學生モ普通選舉ヲ叫ブ
僧侶ノ如キモ既ニ參政權ノ要求、普通選擧ノ叫ヲ揚ゲテ
居ルノデアル、而シテ議院ノ內ニ於テハ、在野黨ハ一致シテ
玆ニ統一スル所ノ議案ヲ提出シテ居ル、是ハ皆最近二箇
年間ニ於ケル所ノ大ナル形勢ノ變化デアッテ、此形勢ノ變
化ニ依ッテ來ル所ノ普通選擧ナルモノハ、非常ナル白熱的
要求ノ聲ニナッテ來テ居ルノデアル、然シ斯ノ如キ要求ガアツ
テモ、尙ホ普通選擧早シトシテ之ヲ拒ムノデアラウカ、私
政府ハ佛蘭西ニ於ケル二月革命ノ如キ、或ハ「チヤーチスト」
ノ騷動ノ如キモノガ起,テ、サウシテ血ノ雨ヲ降ラサナケレバ、
普通選擧ト云フモノヲ實行シナイト云フ考デアルデアラウカ
甚ダ疑ニ堪ヘナイノデアル、又非常ニ之ヲ危險ニ思フノデア
ル、二月革命ノ如キモノ起リ細民ノ-無產階級ノ人ノ偉
大ナル示威運動ガ起ッテ、玆ニ多クノ人ノ生命財產ヲ破壞
シテ、始メテ普通選擧ヲ行フト云フヤウナ歐羅巴ノ例ノヤウ
ニ、我國ガ普通選擧ノ歷史ヲ取ッタナラバ、是ハ實ニ大正ノ
不幸ナル出來事ト謂ハナケレバナラヌ、斯ノ如キ出來事ヲ
避クルコトヲ望ムガ故ニ、吾々ハ一日モ速ニ此問題ノ解決
ヲシタイト思フ、然ルニ總理大臣ノ此答辯書ヲ見レバ、漠然
トシテ曖昧模糊ノ答辯ヲシテ居ルト云フコトハ、何タル時代
ヲ諒解セザル政治家ノ言デアラウカ、議會既ニ恃ムニ足ラヌ、
直接行動ヲシナケレバナラヌト云フ聲ハ、到ル處ニ聞エテ居
ルノデアル、斯ノ如キ現代ノ有樣ヲ見レバ殆ド過激思想ニ
油ヲ注グ如キ狀態デアルト思フ、斯クノ如クニシテ時ガ推移
シ、日ガ推移シタナラバ、人心ノ荒廢ヲ如何ニセント思フノ
デアル、原氏ハ曩ニ議會ノ狀態ヲ見、院ノ內外ニ於テ議會
ニ强要シタルヲ以テ議會ヲ解散シテ、サウシテ之ヲ國論ニ問
ウタノデアルガ、今日ハ二年後ニ於テ此要求ノ聲ハ、更二一一
箇年前ニ於テ原前首相ガ議會ヲ解散シタ時ヨリモ、更ニ猛
烈ナル要求ヲシテ居ルノデアル、澎湃タル普選ノ叫ノ聲ハ、
二三年前ノ叫聲トハ餘程違ッテ居ルノデアル、私ハ此現代ノ
有樣、明後日ニ於テハ普選案ガ上程サレルノデアル、其普
選案ガ上程サレルニ付テ、三千有餘ノ警官ガ議會ヲ取卷イ
テ、郡集ノ威嚇カラ議會ヲ保護セントスルヤウナ狀態デアリ
マセヌカ、又聞ク所ニ依リマスレバ、明後日請願書ヲ持ッテ
議會ニ來ラントスル所ノ多クノ請願人ヲ、議會ニ近ヅカセヌ
ト云フヤウナコトヲ聞イテ居ル、又其爲ニ運動シテ居ル所ノ
有力ナル人々ヲ檢束シ、或ハンレヲ警官ニ依クテ捕縛スルト
云フヤウナ危險ナル噂モ間イテ居ルノデアル、今日ノ形勢ハ
正ニ革命的ノ色彩ヲ帶ビテ居ルト思フ、數日前ニ私ハ二三
ノ新ニ來夕所ノ外國人ヲ連レテ、普通選擧ノ元威運動ヲ
見セタ、ンレハ英吉利人デアル、彼レ曰ク、是ハ確ニ英吉利
ニ於テハ、之ヲ稱シテ革命的示威運動デアルト言シテ居ル、
外國人ノ目ニ映ズル所ノ日本ノ民衆ノ要求ハ、殆ド革命
的色彩マデ進ンデ來テ居ルノデアル、是デモ尙ホ普通選擧
尙早シト云フヤウナ緩慢ナル考ヲ以テ、總理大臣ハ政治ヲ
執ッテ居ラレルノカドウカ、元來政治ト云フモノパ、國民ノ總
テノ生活ノ基調デアル、所ガ我國ニ於テハ國民ノ政治的生
活卜云フモノガ甚ダ貧弱ニシテ、世界無比ト言ッテ宜イノデ
アル、英國ノ婦人ノ半分ノ數ニモ足ラナイ位ノ有權者ガ日本
ノ政治ヲシテ居ル、私ハ曾テ數年前ニ於テ、此演壇ニ於テ普通
選擧ノ論ヲ述べタ時ニ於テ、希臘ノ文明ト富强ノ絕頂ニ到ッタ
時ニ、二十人ニ對シテ一人ノ人ガ有權者デアッタ、卽チ自由人
民デアッタ、羅馬ガ權力ト富强ノ絕頂ニ達シタ時ニ於テハ、四
人ニ對シテ一人ノ有權者デアッタ、二十人ニ對シテ一人デアッ
タ所ノ希臘ノ文明富强ハ、百五十年ニシテ凋落シテシマッタ、
羅馬/文明ト富强ガ比較的長ク五百年ノ歲月ヲ維持シタ
コトハ、全ク自由人民ノ數ガ多ク、多クノ有權者ニ依シテ國ノ
政治ガ動キ、其多クノ自由人民ノ上ニ國家ノ政治ガ行ハレテ
居ッタト云フコトガ、卽チ羅馬ノ文明ノ永ク續イタ所以デアル
ト云フコトヲ「モンテスキユー」ガ羅馬盛衰論ノ雄大ナル結論
トシテ居ルノデアル、大多數ノ國民ガ、我國ニ於テハ尙ホ自由
人民ト云ヘナイ、奴隷ノヤウナ境遇ニ居ル、唯夕義務ノミヲ
持ヲテ居ッテ、何等ノ權利ヲ與ヘラレテ居ラヌ、高橋首相ハ貴
族院ニ於テ或ル議員ノ問ニ對シテ、日本ニ於テハ權利ノミ
ヲ主張シテ、義務ト云フモノヲ現サナイト云フコトヲ言ッテ居
ルケレドモ、日本ニ於テハ事實ニ於テ權利ハ與ヘラレズシテ、
義務ノミヲ脊負シテ居ルノデアル、今日ノ代議政體ハ此意味
カラ言ッタナラバ、私ハ有名無實ノモノデアルト思フ、而モ自
ラ稱シテ是ガ世界ノ大國民デアル、三大文明図ノ一デアル
ト言フガ、全ク恥カシイ話デアルト思フ、眞ニ文明ノ目カラ
見レバ、洵ニ日本ノ代議政體ナルモノハ、沐猴ニシテ冠スル
ヤウナモノデアル、何等ノ醜態力ト言ヒタイ位ノモノデアル、
私ハ此點ニ於テ、實ハ高橋首相ノ良心ニ向フテ問ハントシテ
居ッタノデアル、卽チ首相トシテ一國ノ文明ノ代表者政治ノ
首坐ニ立ツ所ノ人ガ、世界列國ニ對シテ斯ノ如キ狀態ニ國
民ヲ置クコトハ恥辱デハナイカ、文明ノ名ニ對シテ恥カシク
ナイカト云フコトヲ高橋首相ニ問ハントスルノデアル、此答
辯書ニ於テ見ルガ如キ考ニ依ッテ、高橋首相ガ此議會ニ臨
ミ政治ヲ爲サルヽナラバ、恐ラクハ民衆ハ猛然トシテ蹶起ス
ル時ガアラウト思フ、全國民ハ一大決心ヲ以テ立タナケレバ
ナラヌト私ハ思フ、今ヤ普通選擧ノ聲ハ、現代ノ醜惡ナル政
治ヲ改造セントスル所ノ新時代ノ叫デアリマス、此熱烈ナル
要求ハ根本的ノ問題デアル、而シテ此要求ノ背後ニハ、數
千万ノ政治ニ生キントスル所ノ、政治生活ヲ爲サントスル
所ノ民衆ガ控ヘテ居ルト云フコトヲ忘レテハナラヌト思フ、
尙ホ高橋首相ガ此問題ニ對シテ、誠心誠意ニ其政治的理
想ヲ披瀝シテ國民ニ安心ヲ與ヘ、而シテ將ニ切迫セントス
ル所ノ普選ノ大問題ニ對シテ、豫メ國民ニ其意思ヲ徹底セ
シムルト云フコトハ必要ノ事ト思フ、故ニ私ハ更ニ高橋首
相ガ、是等ノ重要ナル根本政治ノ問題ニ付テ、十分ニ御答
アランコトヲ望ムノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=34
-
035・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程ニ入リマス、日程第一乃至第
五ハ關聯セル議案デアリマスカラ、一括議題ニスルニ御異議
ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=35
-
036・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第-乃至第五ハ山內司法
次官ヨリ說明ガアリマス-山內司法次官
第信託法案(政府提出)第一讀會
信託法案
信託法
第一條本法ニ於テ信託ト稱スルハ財產權ノ移轉其ノ
他ノ處分ヲ爲シ他人ヲシテ一定ノ目的二從ヒ財產ノ
管理又ハ處分ヲ爲サシムルヲ謂フ
第二條信託ハ遺言ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ得
第三條登記又ハ登錄スヘキ財產權ニ付テハ信託ハ其
ノ登記又ハ登錄ヲ爲スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ
對抗スルコトヲ得ス
有價證劵ニ付テハ信託ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ證劵
ニ信託財產ナルコトヲ表〓シ株劵及社債劵ニ付テハ
尙株主名簿又ハ社債原簿ニ信託財產タル旨ヲ記載
スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第四條受託者ハ信託行爲ノ定ムル所ニ從ヒ信託財
產ノ管理又ハ處分ヲ爲スコトヲ要ス
第五條未成年者、禁治產者、準禁治產者及破產者
ハ受託者ト爲ルコトヲ得ス
妻カ信託ノ引受ヲ爲スニハ夫ノ許可ヲ受クルコトヲ要
ス
民法第十四條第二項及第十五條乃至第二十條ノ
規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六條信託ノ引受ハ營業トシテ之ヲ爲ストキハ之ヲ
商行爲トス
第七條信託行爲ニ依リ受益者トシテ指定セラレタル
者ハ當然信託ノ利益ヲ享受ス但シ信託行爲ニ別段
ノ定アルトキハ其ノ定ニ從フ
第八條不特定ノ受益者又ハ未夕存在セサル受益者
アル場合ニ於テハ裁判所ハ利害關係人ノ請求ニ因リ
又ハ職權ヲ以テ信託管理人ヲ選任スルコトヲ得但シ
信託行爲ヲ以テ信託管理人ヲ指定シタルトキハ此ノ
限ニ在ラス
信託管理人ハ前項ノ受益者ノ爲自己ノ名ヲ以テ信
託ニ關スル裁判上又ハ裁判外ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有
ス
裁判所ハ事情ニ依リ信託財產中ヨリ相當ノ報酬ヲ
信託管理人ニ與フルコトヲ得
第九條受託者ハ共同受益者ノ一人タル場合ヲ除ク
ノ外何人ノ名義ヲ以テスルヲ問ハス信託ノ利益ヲ享
受スルコトヲ得ス
第十條法令ニ依リ或財產權ヲ享有スルコトヲ得サル
者ハ受益者トシテ其ノ權利ヲ有スルト同一ノ利益ヲ
享受スルコトヲ得ス
第十一條信託ハ訴訟行爲ヲヲサシムルコトヲ主タル
目的トシテ之ヲ爲スコトヲ得ス
第十二條債務者カ其ノ債權者ヲ害スルコトヲ知リテ
信託ヲ爲シタル場合ニ於テハ債權者ハ受託者カ善意
ナルトキト雖民法第四百二十四條第一項ニ規定スル
取消權ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ爲シタルル消ハ受益者カ旣ニ受
ケタル利益ニ影響ヲ及ホサス但シ受益者ノ債權力辨
濟期ニ到ラサルトキ又ハ受益者カ其ノ利益ヲ受ケタル
當時債權者ヲ害スヘキ事實ヲ知リタルトキハ若ハ重大
ナル過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラ
ス
第十三條受託者ハ信託財產ノ占有ニ付委託者ノ占
有ノ瑕疵ヲ承繼ス
前項ノ規定ハ金錢其ノ他ノ物又ハ有價證劵ノ給付
ヲ目的トスル有價證劵ニ付之ヲ準用ス
第十四條信託財產ノ管理、處分、滅失、毀損其ノ他
ノ事由ニ因リ受託者ノ得タル財產ハ信託財產ニ屬ス
第十五條信託財產ハ受託者ノ相續財產ニ屬セス
第十六條信託財產ニ付信託前ノ原因ニ因リテ生シ
タル權利又ハ信託事務ノ處理ニ付生シタル權利ニ基
ク場合ヲ除クノ外信託財產ニ對シ强制執行ヲ爲シヌ
ハ之ヲ競賣スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ反シテ爲シタル强制執行又ハ競賣ニ對
シテハ委託者、其ノ相續人、受益者反受託者ハ異議
ヲ主張スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ民事訴訟法第
五百四十九條ノ規定ヲ準用ス
第十七條信託財產ニ屬スル債權ト信託財產ニ屬セ
サル債務トハ相殺ヲ爲スコトヲ得ス
第十八條信託財產カ所有權以外ノ權利ナル場合ニ
於テハ受託者カ其ノ目的タル財產ヲ取得スルモ其ノ
權利ハ混同ニ因リテ消滅スルコトナシ
第十九條受託者カ信託行爲ニ因リ受益者ニ對シテ
負擔スル積務ニ付テハ信託財產ノ限度ニ於テノミ其
ノ履行ノ貴ニ任ス
第二十條受託者ハ信託ノ本旨ニ從ヒ善良ナル管理
者ノ注意ヲ以テ信託事務ヲ處理スルコトヲ要ス
第二十一條信託財產ニ屬スル金錢ノ管理方法ニ關
シデハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二條受託者ハ何人ノ名義ヲ以テスルヲ問ハス
信託財產ヲ固有財產ト爲シ又ハ之ニ付權利ヲ取得
スルコトヲ得ス但シ已ムコトヲ得サル事由アル場合ニ於
テ裁判所ノ許可ヲ受ケ信託財產ヲ固有財產ト爲スハ
此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ受託者カ相續其ノ他包括名義ニ因リ
信託財產ニ付權利ヲ承繼スルコトヲ妨ケス此ノ場合
ニ於テハ第十八條ノ規定ヲ準用ス
第二十三條信託行爲ノ當時豫見スルコトヲ得サリシ特
別ノ事情ニ因リ信託財產ノ管理方法カ受益者ノ利
益ニ適セサルニ至リタルトキハ委託者、其ノ相續人、受
益者又ハ受託者ハ其ノ變更ヲ裁判所ニ請求スルコト
ヲ得
前項ノ規定ハ裁判所ノ定メタル管理方法ニ付之ヲ準
用ス
第二十四條受託者數人アルトキハ信託財產ハ其ノ
合有トス
前項ノ場合ニ於テ信託行爲ニ別段ノ定アル場合ヲ除
クノ外信託事務ノ處理ハ受託者共同シテ之ヲ爲スコ
トヲ要ス但シ其ノ一人ニ對シテ爲シタル意思表示ハ
他ノ受託者ニ對シテモ其ノ效力ヲ生ス
第二十五條受託者數人アルトキハ信託行爲ニ因リ受
益者ニ對シテ負擔スル債務ハ之ヲ連帶トス信託事務
ノ處理ニ付負擔スル債務亦同シ
第二十六條受託者ハ信託行爲ニ別段ノ定アル場合
ヲ除クノ外已ムコトヲ得サル事由アル場合ニ限リ他人
ヲシテ自己ニ代リテ信託事務ヲ處理セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ受託者ハ選任及監督ニ付テノミ
其ノ責ニ任ス信託行爲ニ依リ他人ヲシテ信託事務ヲ
處理セシメタルトキ亦同シ
受託者ニ代リテ信託事務ヲ處理スル者ハ受託者ト同
一ノ責任ヲ負フ
第二十七條受託者カ管理ノ失當ニ因リテ信託財產
ニ損失ヲ生セシメタルトキ又ハ信託ノ本旨ニ反シテ信
託財產ヲ處分シタルトキハ委託者、其ノ相續人、受益
者及他ノ受託者ハ其ノ受託者ニ對シ損失ノ塡補又
ハ信託財產ノ復舊ヲ請求スルコトヲ得
第二十八條信託財產ハ固有財產及他ノ信託財產ト
分別シテ之ヲ管理スルコトヲ要ス但シ信託財產タル
金錢ニ付テハ各別ニ其ノ計算ヲ明ニスルヲ以テ足ル
第二十九條第二十七條ノ規定ハ受託者カ前條ノ規
定ニ違反シテ信託財產ヲ管理シタル場合ニ之ヲ準用
ス
前項ノ場合ニ於テ信託財產ニ損失ヲ生シタルトキハ
受託者ハ分別シテ管理ヲ爲シタル場合ニ於テモ損失ヲ
生スヘカリシコトヲ證明スルニ非サレハ不可抗力ヲ理
由トシテ其責ヲ免ルルコトヲ得ス
第三十條信託財產ニ付附合、混和又ハ加工アリタル
場合ニ於テハ各信託財產及固有財產ハ各別ノ所有
者ニ屬スルモノト看做シ民法第二百四十二條乃至
第二百四十八條ノ規定ヲ適用ス
第三十一條受託者カ信託ノ本旨ニ反シテ信託財產
ヲ處分シタルトキハ受益者ハ相手方又ハ轉得者ニ對
シ其ノ處分ヲ取消スコトヲ得但シ信託ノ登記若ハ登
錄アリタルトキ又ハ登記若ハ登錄スヘカラサル信託財
產ニ付テハ相手方及轉得者ニ於テ其ノ處分カ信託ノ
本旨ニ反スルコトヲ知リタルトキ若ハ重大ナル過失ニ
因リテ之ヲ知ラサリシトキニ限ル
第三十二條受益者數人アル場合ニ於テ其ノ一人カ
前條ノ規定ニ依リテ爲シタル取消ハ他ノ受益者ノ爲
ニ其ノ效力ヲ生ス
第三十三條第三十一條ニ規定スル取消權ハ受益者
又ハ信託管理人カ取消ノ原因アルコトヲ知リタル時
ヨリ一月內ニ之ヲ行ハサルトキハ消滅ス處分ノ時ヨリ
一年ヲ經過シタルトキ亦同シ
第三十四條受託者タル法人カ其ノ任務ニ背キタルト
キハ之ニ干與シタル理事又ハ之ニ準スヘキ者亦連帶
シテ其ノ責ニ任ス
第三十五條受託者ハ營業トシテ信託ノ引受ヲ爲ス
場合ヲ除クノ外特約アルニ非サレハ報酬ヲ受クルコト
ヲ得ス
第三十六條受託者ハ信託財產ニ關シテ負擔シタル
租稅、公課其ノ他ノ費用又ハ信託事務ヲ處理スル爲
自己ニ過失ナクシテ受ケタル損害ノ補償ニ付テハ信
託財產ヲ賣却シ他ノ權利者ニ先チテ其ノ權利ヲ行フ
コトヲ得
受託者ハ受益者ニ對シ前項ノ費用又ハ損害ニ付其
ノ補償ヲ請求シ又ハ相當ノ擔保ヲ供セシムルコトヲ得
但シ受益者カ不特定ナルトキ及未夕存在セサルトキハ
此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ受益者カ其ノ權利ヲ抛棄シタル場合ニ
ハ之ヲ適用セス
第三十七條前條ノ規定ハ受託者カ信託財產ヨリ報
酬ヲ受クヘキ場合ニ其ノ報酬ニ付之ヲ準用ス受託者
カ受益者ヨリ報酬ヲ受クヘキ場合亦同シ
第三十八條第三十六條又ハ前條ニ規定スル受託者
ノ權利ハ受託者カ第二十七條又ハ第二十九條ノ現
定ニ依ル損失ノ塡補及信託財產復舊ノ義務ヲ履行
シタル後ニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
第三十九條受託者ハ帳簿ヲ備へ各信託ニ付其ノ事
務ノ處理及許算ヲ明ニスルコトヲ要ス
受託者ハ信託引受ノ時及每年一回一定ノ時期ニ於
テ各信託ニ付財產目錄ヲ作ルコトヲ要ス
第四十條利害關係人ハ何時ニテモ前條ノ書類ノ閲
覽ヲ請求スルコトヲ得
委託者、其ノ相續人及受益者ハ信託事務ノ處理ニ
關スル書類ノ閱覽ヲ請求シ且信託事務ノ處理ニ付
說明ヲ求ムルコトヲ得
第四十一條信託事務ハ營業トシテ信託ノ引受ヲ爲
ス場合ヲ除クノ外裁判所ノ監督ニ屬ス
裁判所ハ利害關係人ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ
信託事務ノ處理ニ付檢查ヲ爲シ且檢査役ヲ選任シ
其ノ他必要ナル處分ヲ命スルコトヲ得
第四十二條受託者カ死亡シタルトキ又ハ破產、禁治
產若ハ準禁治產ノ宣生ロヲ受ケタルトキハ其ノ任務ハ
之ニ因リテ終了ス受託者タル法人カ解散シタルトキ
亦同シ
前項ノ場合ニ於テハ受託者ノ相續人、其ノ法定代理
人、破產管財人、後見人、保佐人又ハ〓算人ハ新受
託者カ信託事務ヲ處理スルコトヲ得ルニ至ル迄信託
財產ヲ保管シ且信託事務ノ引繼ニ必要ナル行爲ヲ
爲スコトヲ要ス法人合併ノ場合ニ於テ合併ニ因リテ
設立シタル法人又ハ合併後存續スル法人亦同シ
第四十三條受託者ハ信託行爲ニ別段ノ定アル場合
ヲ除クノ外受益者及委託者ノ承諾アルニ非レハ其ノ
任務ヲ辭スルコトヲ得ス
第四十四條信託行爲ニ依リ特定ノ資格ニ基キ受託
者ト爲リタル者其ノ資格ヲ喪失シタルトキハ其ノ任務
ハ之ニ因リテ終了ス
第四十五條第四十三條又ハ前條ノ規定ニ依リ任務
終了シタル者ハ新受託者カ信託事務ヲ處理スルコト
ヲ得ルニ至ル迄仍受託者ノ權利義務ヲ有ス
第四十六條已ムコトヲ得サル事由アルトキハ受託者
ハ裁判所ノ許可ヲ受ケ其ノ任務ヲ辭スルコトヲ得
第四十七條受託者カ其ノ任務ニ背キタルトキ其ノ他
重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ委託者、其ノ相續
人又ハ受益者ノ請求ニ因リ受託者ヲ解任スルコトヲ
得
第四十八條第四十六條又ハ前條ノ規定ニ依リ受託
者其ノ任務ヲ辭シ又ハ解任セラレタルトキハ裁判所ハ
信託財產ノ管理人ヲ選任シ其ノ他必要ナル處分ヲ
命スルコトヲ得
第四十九條受託者ノ任務終了ノ場合ニ於テハ利害關
係人ハ新受託者ノ選任ヲ栽判所ニ請求スルコトヲ
得
前項ノ規定ハ遺言ニ依リ受託者トシテ指定セラレタ
ル者カ信託ノ引受ヲ爲サス又ハ之ヲ爲スコト能ハサル
場合ニ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ハ信託行爲ニ別段ノ定アルトキハ之ヲ
適用セス
第八條第三項ノ規定ハ受託者ニ付之ヲ準用ス
第五十條受託者ノ更迭アリタルトキハ信託財產ハ前
受託者ノ任務終了ノ時ニ於テ新受託者ニ讓渡サレタ
ルモノト看做ス
受託者數人アル場合ニ於テ其ノ一人ノ任務終了シタ
ルトキハ信託財產ハ當然他ノ受託者ニ歸ス
第五十一條第二十七條又ハ第二十九條ニ規定スル
權利ハ新受託者亦之ヲ行フコトヲ得
第五十二條受託者ノ更迭アリタルトキハ新受託者ハ
前受託者カ信託行爲ニ因リ受益者ニ對シテ負擔シ
タル債務ヲ承繼ス
前項ノ規定ハ第五十條第二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
信託事務ノ處理ニ付生シタル債權ハ信託財產ノ限
度ニ於テ新受託者ニ對シテモ亦之ヲ行フコトヲ得
第五十三條信託財產ニ對スル强制執行又ハ競賣手
續ハ新受託者ニ對シテ之ヲ續行スルコトヲ得
第五十四條前受託者ハ第三十六條第一項ニ規定ス
ル費用若ハ損害ノ補償ヲ受クル權利又ハ第三十七
條ニ規定スル報酬ヲ受クル權利ニ基キ新受託者ニ對
シ信託財產ニ付强制執行ヲ爲シ又ハ之ヲ競賣スルコ
トヲ得
前受託者ハ前項ノ權利ヲ行フ爲信託財產ヲ留置ス
ルコトヲ得
第五十五條受託者更迭ノ場合ニ於テハ信託事務ノ
計算ヲ爲シ受益者又ハ信託管理人ノ立會ヲ以テ事
務ノ引繼ヲ爲スコトヲ要ス
受益者又ハ信託管理人前項ノ計算ヲ承認シタルトキ
ハ前受託者ノ其ノ受益者ニ對スル引繼ニ關スル責任
ハ之ニ因リテ解除セラレタルモノト看做ス但シ不正ノ
行爲アリタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第五十六條信託行爲ヲ以テ定メタル事由發生シタル
トキ又ハ信託ノ目的ヲ達シ若ハ達スルコト能ハサルニ
至リタルトキハ信託ハ之ニ因リテ終了ス
第五十七條委託者カ信託利益ノ全部ヲ享受スル場
合ニ於テハ委託者又ハ其ノ相續人ハ何時ニテモ信託
ヲ解除スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ[民法第六百五
十一條第二項ノ規定ヲ準用ス
第五十八條前條ノ場合ヲ除クノ外受益者カ信託利
益ノ全部ヲ享受スル場合ニ於テ信託財產】ヲ以テスル
ニ非サレハ其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハサルトキ其ノ
他已ムコトヲ得サル。由由アルトキハ裁判所ハ受益者
又ハ利害關係人ノ請求ニ因リ信託ノ解除ヲ命スルコ
トヲ得
第五十九條第五十七條及前條ノ規定ニ拘ラス信託
ノ解除ニ關シ信託行爲ニ別段ノ定アルトキハ其ノ定
ニ從フ
第六十條信託ノ解除ハ將來ニ向テノミ其ノ效力ヲ生
ス
第六十一條第五十七條又ハ第五十八條ノ規定ニ依
リ信託カ解除セラレタルトキハ信託財產ハ受益者ニ
歸屬ス
第六十二條信託終了ノ場合ニ於テ信託行爲三尺ノ
タル信託財產ノ歸屬權利者ナキトキハ其ノ信託財產
ハ委託者又ハ其ノ相續人ニ歸屬ス
第六十三條信託終了ノ場合ニ於テ信託財產カ其ノ
歸屬權利者ニ移轉スル迄ハ仍信託ハ存續スルモノト
看做ス此ノ場合ニ於テハ歸屬權利者ヲ受益者ト香
候ス
第六十四條第五十三條及第五十四條ノ規定ハ信
託ノ終了ニ因リ信託財產カ受益者其ノ他ノ者ニ歸
屬シタル場合ニ之ヲ準用ス
第六十五條信託終了ノ場合ニ於テハ受託者ハ信託
事務ノ最終ノ計算ヲ爲シ受益者ノ承認ヲ得ルコトヲ
要ス此ノ場合ニ於テハ第五十五條第二項ノ規定ヲ
準用ス
第六十六條祭祀、宗〓、慈善、學術、技藝其ノ他公益
ヲ目的トスル信託ハ之ヲ公益信託トシ其ノ監督ニ付
テハ後六條ノ規定ヲ適用ス
第六十七條公益信託ハ主務官廳ノ監督ニ屬ス
第六十八條公益信託ノ引受ニ付テハ受託者ハ主務
官廳ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
第六十九條主務官廳ハ何時ニテモ公益信託事務ノ
處理ニ付檢査ヲ爲シ且財產ノ供託其ノ他必要ナル
處分ヲ命スルコトヲ得
受託者ハ每年一回一定ノ時期ニ於テ信託事務及財
產ノ狀況ヲ公告スルコトヲ要ス
第七十條公益信託ニ付信託行爲ノ當時豫見スルコ
トヲ得サリシ特別ノ事情ヲ生シタルトキハ主務官廳ハ
信託ノ本旨ニ反セサル限リ信託ノ條項ノ變更ヲ爲ス
コトヲ得
第七十一條公益信託ノ受託者ハ已ムコトヲ得サル事
由アル場合ニ限リ主務官廳ノ許可ヲ受ケ其ノ任務ヲ
辭スルコトヲ得
第七十二條公益信託ニ付テハ第八條第一項、第三
項、第二十二條第一項但書及第四十七條乃至第四
十九條ニ規定スル裁判所ノ權限ハ主務官廳ニ屬ス
但シ第四十七條及第四十九條ニ規定スル權限ニ付
テハ職權ヲ以テ之ヲ行フコトヲ得
第七十三條公益信託終了ノ場合ニ於テ信託財產ノ
歸屬權利者ナキトキハ主務官廳ハ其ノ信託ノ本旨ニ
從ヒ類似ノ目的ノ爲ニ信託ヲ繼續セシムルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二信託業法案(政府提出)第一讀會
信託業法案
信託業法
第一條信託業ハ主務大臣ノ免許ヲ受クルニ非サレハ
之ヲ營ムコトヲ得ス
前項ノ免許ヲ受ケムトスル者ハ申請書ニ定款竝業務
ノ種類及方法ヲ記載シタル書面ヲ添附シ之ヲ主務大
臣ニ提出スヘシ
第二條·信託業ハ資本金百萬圓以上ノ株式會社ニ非
サレハ之ヲ營ムコトヲ得ス
第三條信託會社ハ其ノ商號中ニ信託ナル文字ヲ用
ウヘシ
信託會社ニ非サルモノハ其ノ商號中ニ信託業者タルコ
トヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス但シ擔保附社債
ニ關スル信託業ヲ營ム者ハ此ノ限ニ在ラス
第四條信託會社ハ左ニ揭クル財產以外ノモノノ信託
ノ引受ヲ爲スコトヲ得ス
-金錢
二有價證劵
三金錢債權
四土地及其ノ定著物
五地上權及土地ノ賃借權
第五條信託會社ハ左ニ揭クル業務ニ限リ之ヲ併セ營
ムコトヲ得
-保護預リ
二債務ノ保證
三不動產賣買ノ媒介又ハ金錢若ハ不動產ノ貸借
ノ媒介
四公債社債若ハ株式ノ募集、其ノ拂込金ノ受入又
ハ其ノ元利金若ハ配當金ノ支拂ノ取扱
五左ノ事項ニ關スル代理事務
イ財產ノ取得、管理處分又ハ貸借
ロ財產ノ整理又ハ〓算
ハ債權ノ取立
ニ債務ノ履行
主務大臣ハ債務ノ保證ニ付命令ヲ以テ必要ナル制
限ヲ設クルコトヲ得
第六條信託會社ハ擔保附社債信託法ニ依リ擔保附
社債ニ關スル信託業ヲ營ムコトヲ得
第七條信託會社ハ信託義務ノ違反ニ因リテ受益者ニ
生スルコトアルヘキ損害ノ擔保トシテ資本金ノ十分ノ
一以上ノ金額ニ相當スル國債ヲ供託スヘシ但シ其ノ
金額ハ百萬圓ヲ超ユルコトヲ要セス
第八條受益者ハ信託會社カ前條ノ規定ニ依リテ供託
シタル國債ニ付他ノ債權者ニ先チ辨濟ヲ受クルノ權利
ヲ有ス
第九條信託會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ運用方法
ノ特定セル金錢信託ニ限リ元本ニ損失ヲ來シタル
場合又ハ豫メ一定シタル額ノ利益ヲ得サリシ場合
ニ於テ之ヲ補塡シ又ハ補足スル契約ヲ爲スコトヲ
得
第十條信託法第二十二條一第項但書ノ規定ハ信託
會社ニ之ヲ適用セス
信託會社ハ金錢信託ニ付其ノ運用ニ依リ取得シタル
財產カ取引所ノ相場アルモノナルトキハ信託行爲ニ
依リ受益者ニ對シ負擔スル債務ヲ履行スル爲必要ナ
ル場合ニ限リ信託行爲ノ定ムル所ニ依リ之ヲ固有財
產ト爲スコトヲ得
第十一條信託會社ハ左ノ方法ニ依ルノ外其ノ營業
上ノ資金ヲ運用スルコトヲ得ス
-公債、社債又ハ株式ノ應募、引受又ハ買入
二公債其ノ他前號ニ揭クル有價證劵ヲ質トスル貸
付
三不動產又ハ法令ニ依リテ設定シタル財團ヲ抵當
トスル貸付
四公共〓體又ハ產業組合ニ對スル貸付
五銀行ヘノ預ヶ金又ハ郵便貯金
六銀行又ハ信託會社ノ引受アル手形ノ買入
第十二條信託會社ハ資本ノ總額ニ達スル迄ハ利益ヲ
配當スル每ニ準備金トシテ其ノ利益ノ十分ノ一以上
ヲ積立ツヘシ
第十三條信託會社ハ每半年業務報君書ヲ作リ之ヲ
主務大臣ニ提出スヘシ
貸借對照表ハ每半年新聞紙ニ依リテ之ヲ公告スヘシ
第十四條信託會社ノ合併ハ主務大臣ノ認可ヲ受ク
ルニ非サレハ其效力ヲ生セス
第十五條信託會社ハ左ノ場合ニ於テハ主務大臣ノ
認可ヲ受クヘシ
-定款ヲ變更セムトスルトキ
二業務ノ種類又ハ方法ヲ變更セムトスルトキ
三代理店ヲ設置セムトスルトキ
第十六條合併後存續スル信託會社又ハ合併ニ因リ
テ設立シタル信託會社ハ合併ニ因リテ消滅シタル信
託會社ノ信託ニ關スル權利義務ヲモ承繼ス
信託會社ノ合併ニ付異議ヲ述ヘタル受益者アルトキ
ハ其ノ信託ニ付テハ信託法第四十二條及第四十九
條第一項第三項ノ規定ヲ準用ス
第十七條主務大臣ハ何時ニテモ信託會社ヲシテ其ノ
業務ノ報告ヲ爲サシメ又ハ業務及財產ノ狀況ヲ檢查
スルコトヲ得
第十八條主務大臣ハ信託會社ノ業務又ハ財產ノ狀
況ニ依リ必要ト認ムルトキハ業務ノ種類若ハ方法ノ
變更又ハ業務ノ停止ヲ命シ其ノ他必要ナル命令ヲ爲
スコトヲ得
第十九條信託會社カ法令、定款若ハ主務大臣ノ命
令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スヘキ行爲ヲ爲シタルトキハ
主務大臣ハ業務ノ停止若ハ取締役監査役ノ改任ヲ
命シ又ハ營業ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第二十條主務大臣ノ免許ヲ受ケスシテ信託業ヲ營ミ
タル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十一條左ノ場合ニ於テハ信託會社ノ取締役監
査役又ハ〓算人ヲ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
-第四條、第五條第一項、第七條、第十一條乃至
第十三條及第十五條ニ違反シタルトキ
二第九條ノ規定又ハ同條ニ基ク命令ニ違反シテ信
託ニ付補塡又ハ補足ノ契約ヲ爲シタルトキ
三第十條ノ規定ニ違反シテ信託財產ヲ固有財產
ト爲シタルトキ
四第十七條ノ規定ニ依ル報告ヲ爲サス又ハ檢査ヲ
妨ケタルトキ
五本法ノ命令又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反
シタルトキ
六信託會社カ信託法第二十八條ノ規定ニ依リテ
爲スヘキ信託財產ノ管理ヲ爲ササルトキ
七信託會社カ信託法第三十九條ニ規定スル事務
ノ處理若ハ計算ヲ爲サス又ハ財產目錄ヲ作ラサ
ルトキ
八信託會社カ正當ノ理由ナクシテ信託法第四十
條ノ規定ニ依ル閲覽ノ請求ヲ拒ミ又ハ說明ヲ爲
ササルト
第二十二條第三條第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ
十圓以上百圓以下ノ過料ニ處ス
第二十三條非訟事件手續法第二百六條乃至第二
百八條ノ規定ハ本法ニ定メタル過料ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際迄一年以上引續キ信託業ヲ營ム者ニシテ本
法施行後六月內ニ信託業ノ免許ヲ申請スルモノニハ本法
施行後五年ヲ限リ第二條ノ規定ヲ適用セス但シ其ノ資本
金ハ二十五萬圓ヲ下ルコトヲ得ス
本法施行ノ際現ニ信託業ヲ營ム者ニシテ本法ニ依リ免許
ヲ受ケタルモノハ本法施行前其ノ爲シタル契約ニシテ本法
ニ依リ信託會社ノ爲スコトヲ得サル業務ニ屬スルモノニ付
テハ其ノ契約ノ完了スル迄仍之ヲ繼續スルコトヲ得
第三擔保附社債信託法中改正法律案(政
府提出)第一讀會
擔保附社債信託法中改正法律案
擔保附社債信託法中左ノ通リ改正ス
第六條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ銀行事業ヲ兼營セサル株式會社ニ在リテハ信託
業法ニ依リ信託業ヲ營ムコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四不動產登記法中改正法律案(政府提
〓〓第一讀會
不動產登記法中改正法律案
不動產登記法中左ノ通改正ス
第百四條ノ二不動產ノ信託ノ登記ニ付テハ受託者
ヲ登記權利者トシ委託者ヲ登記義務者トス
第百四條ノ三信託法中第十四條ノ規定ニ依リテ信
託財產ニ屬スル不動產ノ信託ノ登記ハ受託者ノミニ
テ之ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ規定ハ信託法第二十七條ノ規定ニ基ク信託
財產ノ復舊ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百四條ノ四受益者又ハ委託者ハ受託者]ニ代位シ
テ信託ノ登記ヲ申請スルコトヲ得
第四十六條ノ二ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ代位登
記ノ申請ニ之ヲ準用ス此場合ニ於テハ申請書ニ代位
原因ヲ證スル書面ノ外登記ノ目的タル不動產カ信託
財產タルコトヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
第百四條ノ五信託ノ登記ノ申請ハ信託ニ因ル不動
產ノ所有權ノ移轉ノ登記ノ申請ト同一ノ書面ヲ以テ
之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ハ信託法第十四條ノ規定ニ依リテ信託
財產ニ屬スル不動產ノ取得ノ登記ヲ申請スル場合ニ
之ヲ準用ス
第百四條ノ六受託者更迭ノ場合ニ於テ所有權移轉
ノ登記ヲ申請スルニハ申請書ニ其更迭ヲ證スル書面
ヲ添附スルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ信託法第五十條第二項ノ場合ニ於テ
爲スベキ變更ノ登記ニ之ヲ準用ス
第百四條ノ七受託者ノ任務カ死亡、破產、禁治產、準
禁治產又ハ裁判所若ハ主務官廳ノ解任命令ニ因リテ
終了シタルトキハ前條ノ登記ハ新受託者又ハ他ノ受
託者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得受託者タル法人ノ
任務カ解散ニ因リテ終了シタルトキ亦同シ
第百四條ノ八信託ノ登記ヲ申請スル場合ニ於テハ左
ノ事項ヲ記載シタル書面ヲ申請書ニ添附スルコトヲ
要ス
-委託者、受託者、受益者及ヒ信託管理人ノ氏名
住所法人ニ在リテハ其名稱及ヒ事務所
二信託ノ目的
三信託財產ノ管理方法
四信託終了ノ事由
五其他信託ノ條項
前項ノ書面ニハ申請人署名捺印スルコトヲ要ス
第百四條ノ九前條ノ規定ニ依リ申請書ニ添附シタル
書面ハ之ヲ信託原簿トス
信託原簿ハ之ヲ登記簿ノ一部ト看做シ其記載ハ之
ヲ登記ト看做ス
第百四條ノ十裁判所カ信託管理人ヲ選任シ又ハ解
任シタルトキハ遲滯ナク信託原簿ノ記載ヲ登記所ニ
囑託スルコトヲ要ス主務官廳カ信託管理人ヲ選任シ
タルトキ亦同シ
第百四條ノ十一前條ノ規定ハ裁判所又ハ主務官廳
カ受託者ヲ解任シタル場合ニ之ヲ準用ス
第百四條ノ十二裁判所カ信託財產ノ管理方法ヲ變
更シタルトキハ遲滯ナク信託原簿ノ記載ヲ登記所ニ
囑託スルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ主務官廳カ信託ノ條項ヲ變更シタル場
合ニ之ヲ準用ス
第百四條ノ十三前三條ノ場合ヲ除ク外第百四條ノ
八第一項ニ揭クル事項ニ變更ヲ生シタルトキハ受託
者ハ遲滯ナク其變更ヲ證スル書面ヲ添ヘテ信託原簿
ノ記載ヲ申請スルコトヲ要ス但第百四條ノ六又ハ第
百四條ノ七ノ場合ニ於テ登記ヲ爲シタルトキハ登記
官吏ハ職權ヲ以テ信託原薄ノ記載ヲ爲スコトヲ要ス
第百四條ノ十四第百四條ノ十一ノ規定ニ依リテ信
託原簿ノ記載ヲ爲シタルトキハ登記官吏ハ職權ヲ以
テ登記簿ニ其旨ヲ附記スルコトヲ要ス
第百四條ノ十五第百四條ノ二乃至前條ノ規定ハ擔
保附社債信託法ニ依ル登記ニ之ヲ適用セス
第百二十七條ノ二第百三條及ヒ第百三條ノ二ノ規
定ハ土地ニ關スル所有權以外ノ權利ノ收用ニ因ル權
利移轉ノ登記ニ第百四條ノ二乃至第百四條ノ十五
ノ規定ハ不動產ニ關スル所有權以外ノ權利ノ信託ノ
登記ニ之ヲ準用ス
第百四十三條ノ二信託財產タル不動產ニ關スル權
利ノ移轉ニ因リ其權利カ信託財產ニ屬セサルニ至リ
タル場合ニ於テ爲スヘキ信託登記抹消ノ申請ハ移轉
登記ノ申請ト同一ノ書而ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ハ信託終了ニ因リ信託財產タル不動產
ニ關スル權利カ移轉シタル場合ニ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ハ擔保附社債信託法ニ依ル登記ニ之
ヲ適用ヌ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五非訟事件手續法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
非訟事件手續法中改正法律案
非訟事件手續法中左ノ通改正ス
目錄第二編中第三章ヲ第四章トジ以下順次繰下ケ第
二章ノ次ニ左ノ如ク加フ
第三章信託ニ關スル事件
第三條ニ左ノ但書ヲ加フ
但其裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ適當ト認ム
ル他ノ管轄栽判所ニ事件ヲ移送スルコトヲ得
第四十條中「此栽判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得
ス」ヲ削ル
第四十條ノ二管理人ノ選任又ハ改任ノ栽判ニ對シ
テハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第四十九條中「第四十條、」ノ下ニ「第四十條ノ二、」ヲ
加フ
第二編中第三章ヲ第四章トシ以下順次繰下ケ第二章
ノ次ニ左ノ一章ヲ加フ
第三章信託ニ關スル事件
第七十一條ノ二信託法第八條第一項第三項、第二
十二條第一項但書、第一一十三條、第四十一條、第四
十六條乃至第四十八條及ヒ第五十八條ニ定メタル
事件ハ受託者ノ住所地ノ區裁判所、同法第四十九
條第一項第四項ニ定メタル事件ハ前受託者ノ住所
地ノ區裁判所ノ管轄トシ受託者又ハ前受託者數人
アル場合ニ於テハ其一人ノ住所地ノ區栽判所ノ管轄
トス
信託法第四十九條第二項ニ定メタル事件ハ遺言者
ノ最後ノ住所地ノ區裁判所ノ管轄トス
第七十一條ノ三栽判所ハ信託事務ノ監督ニ付キ必
要ト認ムルトキハ財產目錄及ヒ信託事務ニ關スル帳
簿竝ニ書類ノ提出ヲ命シ且信託事務ノ處理ニ付キ
受託者其他ノ關係人ヲ審訊スルコトヲ得
前項ノ命令ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第七十一條ノ四栽判所ハ信託法第八條第一項又ハ
同法第四十八條ノ規定ニ依リテ選任シタル信託管
理人又ハ信託財產ノ管理人ヲ改任スルコトヲ得
第七十一條ノ五第三十九條、第四十條第二項及ヒ
第四十條ノ二ノ規定ハ信託管理人又ハ信託財產ノ
管理人ノ選任又ハ改任ニ付キ之ヲ準用ス
第四十三條ノ規定ハ裁判所カ選任シタル信託管理
人又ハ信託財產ノ管理人ニ之ヲ準用ス
第七十一條ノ六第百二十八條ノ規定ハ信託法第四
十一條第二項ノ規定ニ依リテ裁判所カ選任シタル檢
査役ニ付キ之ヲ準用ス
第八十二條中「第四十條、」ノ下ニ「第四十條ノ二、」ヲ
加フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員山内確三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=36
-
037・山内確三郎
○政府委員(山内確三郞君) 信託法案、不動產登記法
中改正法律案、非訟事件手續法中改正法律案、此三ツガ
關聯致シテ居ルノデアリマス、先ズ信託法案ニ付キマシテ、
提案ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマスト、信託ノ觀念ハ本案第一條
ニ之ヲ明ニ付シテ居リマシル通リニ、財產ヲ他ニ移轉シ、財產
ヲ他人ノ物ニスルガ、併ナガラ其所有者ガ財產ヲ管理處分ス
ルノハ人物ニスルガ、併ナガラ其所有者ガ財產處分スルノハ
人ノ爲ニスルノデアッテ、自己ノ爲ニスルノデハナイト斯ウ云フ事
ニナッテ居ルノデアリマス、此觀念ハ現在我國ノ經濟社會ハニ
澤山アル事デアリマシテ、例ヘバ集會ニ於テ、會長ガ不動產
ヲ自己名義ニ於テ登記スル、集會ノ財產ヲ會長名義ニ登
記スル、或ハ或ル集金ニ於テハ其集金ノ財產ヲ會長ノ名義
デ他ニ預金ヲスル、或ハ賴母子講ニ於テ借用證書ヲ證書ヲ
講元名義ニ於テ、其講元宛ニ於テ之ヲ出スト云フヤウナ事
ガ澤山アル、而シテ信託業ノ發達ニ伴ヒマシテ、信託觀念ト
云フモノガ段々進步致シタノデアリマス、然ルニ現行法中
信託ノ事ニ付テ、實體規定ナルモノハ擔保附社債信託ニ
關スル事ダケデアリマス、其他ハ民法、商法其他ノ法規中、
信託ガドウ云フモノデアルカト云フコトヲ明ニセザルガ爲ニ、
此法律關係ニ付テハ、解釋ガ極テ暖味ニナッテ居ルノデアリ
マス、解釋ノミナラズ、或ル立法ヲ以テシナケレバ、此信託關
係ヲ完全ニ保護シテ行クト云フコトハ出來ナイノデアリマス
卽チ信託法案ハ、此實體的法規ヲ定メル所ノ案デアリマス、
而シテ信託財產デアル所ノ不動產船舶ハ、之ヲ登記シナケ
レバナラヌト云フコトヲ此案ニ定メテ居ルノデアリマス、隨テ
不動產登記法中ノ規定ニ付テ、或ル改正ヲ加ヘナケレバナ
ラヌノデ、不動產登記法ヲ改正スレバ、自ラ船舶登記ノ適
用ガアルノデアリマス、ソレカラモウ一ツハ營業ヲ目的トスル
卽チ信託業ナルモノニ付キマシテハ、是ハ主管ガ主務官廳
ニ於テ監督スルノデアリマスガ、然ラザル信託、卽チ營業ニ非
ザル信託ハ、裁判所ニ於テ、之ヲ非訴事件トシテ監督スルト
云フ事ニナルノデアリマスカラ非訟事件手續法中改正ヲ加
ヘル必要ガアル、要スルニ此三案ハ皆信託實體法ニ關スル所
ノ法規ヲ定メルニ付テ、必要ナル規定デアリマスカラ、何卒
愼重審議ノ結果、速ニ御協賛アランコトヲ希望致シマス(拍
き、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=37
-
038・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 日程第二、第三ハ神野大藏次官
ヨリ說明ガアリマス、神野大藏次官
〔政府委員神野勝之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=38
-
039・神野勝之助
○政府委員(神野勝之助君) 信託業法案ニ於テ說明ヲ
申上ゲマス、近年我國ニ於ケル所謂信託業ト稱スルモノガ、
著シク增加シテ參リマシテ、又其營ンデ居ルノ業務ハ極テ
汎クアリマシテ、本來ノ信託業務ト認メ難イモノモ多々アル
ノデアリマス、中ニハ銀行業務ト類似スル業務ヲ營ム者モ
亦多イノデアリマス、信託業務ハ財產ノ管理上十分ナル知
識ヲ有シテ居ナイ者、又ハ知識ハ有シテ居ッテモ、自ラ自分
ノ財產ヲ運用スル暇ノナイ者ガ、其者ノ爲ニ之ニ代ッテ財產
ノ運用利殖ヲ圖ルトカ、若クハ處分ヲ爲スト云フ機能ヲ有
シテ居ルモノデアリマシテ、此業務ガ堅實ニ發達致シマスレ
バ、社界經濟ノ爲ニ貢獻スル所尠カラザルモノト考ヘマス、
然ルニ現今簇出スル所ノ信託業者ノ中ニハ、其基礎極テ
薄弱ノモノモアリマシテ、又其業務ノ方法モ極テ不堅實ナ
モノガ尠カラヌノデアリマス、デ此儘ニ放任シテ置キマスルト、
云フト、獨リ個人ニ對シテ不測ノ損害ヲ與ヘマスルノミナラ
ズ經濟界ニ大ナル害毒ヲ流ス虞ガアリマス、仍テ玆ニ信託
法ト相須ッテ、信託ノ本質ヲ明ニ致シマスルト同時ニ、之ヲ
營業トスル者ニ對シテ必要ナル取締ヲ致シ、同時ニ業務經
營上準據スベキ法規ヲ制定致シマシテ、斯業ノ建全ナル發
達ヲ期スル爲ニ、本案ヲ提出致シタル次第デアリマス、次ニ
擔保附社債信託法中改正ヲ要シマスル點ノ、信託業法ニ
於テ、信託業ト銀行業トノ兼營ヲ禁ジマシタル結果、銀行
業ヲ兼營シナイ擔保附社債信託事業ヲ營ム會社ニ限ッテ、
信託業法ニ依リ信託業ノ兼營ヲ認メル爲ニ、必要ナル規定
ヲ設ケントスルノデアリマス、御審議ノ上御協賛アランコト
ヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=39
-
040・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 右各案ノ審査ヲ附託スベキ委員ノ
選擧ヲ議題ニ供シマス
第六右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選
舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=40
-
041・岩崎勲
○岩崎勳君 日程第一ヨリ第五マデノ五案ハ一括シテ、
委員ノ數ハ特ニ十八名トシ、一議長ニ於テ指名アランコトヲ
望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=41
-
042・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第七、大正九年度豫
備金支出ノ件、外四件承諾ヲ求ムルノ件ヲ議題ト致シマス
大正九年度豫備金支出
ノ件
大正九年度像備金外ニ
於テ豫算超過及豫算外
支出ノ件
第七大正九年度特別會計豫- )
備金支出ノ件ムル件
大正九年度特別會計豫
備金外ニ於テ豫算超過
及豫算外支出ノ件
大正九年度大正三年臨
時事件豫備費支出ノ件発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=42
-
043・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 神野大藏次官
〔政府委員神野勝之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=43
-
044・神野勝之助
○政府委員(神野勝之助君) 大正九年度ニ於キマスル
一般會計及特別會計豫備金及豫備金外支出、大正三年
臨時事件豫備費支出ニ關シマスル事項ノ承諾ヲ求ムル爲
ニ、玆ニ議案ヲ提出致シマシタニ付テ、其大體ニ付テ申上ゲ
マス、大正九年度一般會計第一豫備金ノ豫算額ハ六百万
圓デアリマシテ、在外公館、電信料、傳染病豫防、檢疫諸費、
貨幣交換差金、諸拂戾金、陸軍一年志願兵及幼年學校
自費生諸費、其他必要缺クベカラザル豫算ノ不足ニ對シマ
シテ、其全部ヲ充用致シマシタ、又大正九年度ノ第二豫備
金ハ八百万圓デアリマシテ、國際聯盟總會參列費、國際聯
盟常設軍事委員費、各廳災害復舊費、米國派遣軍艦費、
其他緊急措キ難キ豫算外ノ支出ニ對シテ、是ガ全部ヲ充
用致シマシタ、大正九年度、大正三年臨時事件豫備費ノ施
行豫算額ハ一億七千二百万圓デアリマシテ、實行豫算額ハ
一億二百万圓デアリマス、之ヲ臨時事件ニ關スル諸般ノ費
途ニ充テマスル爲ニ支出致シマシタル金額ハ、九千八百七
十二万八千餘圓デアリマシテ、實行豫算額ニ對シテ、差引三
百二十七万千餘圓ノ殘額ヲ生ジマシタ、大正九年度一般會
計第一豫備金ノ豫算額全部拂切リトナリマシタルガ爲ニ、
傳染病豫防檢疫諸費、在監人費、染料及火藥爆藥原料
製造奬勵金、遞信事業用證票及式紙類費等ノ費用ノ補
充ノ費途ニ對シマシテ、豫算超過支出ヲ爲シタル金額ハ四
百六十八万餘圓デアリマシテ、又第二豫備金ガ拂切リニナ
リマシタ爲メ、各廳災害復舊費、北海道災害土木費補助、
物價騰貴ニ由ル陸軍諸經費ノ補足、其他必要ナル費途ニ
對シマシテ、豫算外支出ヲ爲シタル金額ハ五百八十三万餘
園デアリマシテ、此二廉ヲ通計シテ、一千五十一万餘圓ヲ
國庫剰餘金ヨリ支出致シマシタル次第デアリマス、以上ノ
外各特別會計ニ在リマシテモ、亦必要已ムヲ得ザル費途ニ
對シマシテ、豫備金又ハ豫備金外ニ、其歳入若クハ剩餘金
ヲ以テ、豫算超過及豫算外ノ支出ヲ爲シタルモノガアリマ
ス、以上ハ何レモ緊急避クベカラザル事項ト認メマシテ、之
ガ支出ヲ爲シタル次第デアリマスカラ、御審議ノ上承諾ヲ與
ヘラレンコトヲ切望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=44
-
045・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第八、右議案ノ審査ヲ付託
スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ニ供シマス
第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選
舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=45
-
046・岩崎勲
○岩崎勳君 委員ノ數ハ特ニ十八名トシ、議長ニ於テ指
名アランコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=46
-
047・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第九、借地借家調
停法案第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長北井波治目君
第九借地借家調停法案(政府提出)
第一讀會ノ讀(委員長報〓)
報告書
一借地借家調停法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
段及報告候也
大正十一年二月十八日
借地借家調停法案委員長
北井波治目
衆議院議長奧繁三郎殿
(小字及-ハ委員會修正)
借地借家調停法中左ノ通修正ス
○又ハ代理人
第七條當事者及利害關係人ハ自身○出頭スルコトヲ
辯護士ニ非ラサル者ヲ代理人トスル
要ス但シ已ムヲ得サル事由アル場合ニ於テハ裁判所
クヘシ
ノ許可ヲ受ケ代理人ヲシテ出頭セシムルコトヲ得
裁判所ハ何時ニテモ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
栽判所ハ當事者及利害關係人自身ノ出頭ヲ命スルコトヲ得
〔北井波治目君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=47
-
048・北井波治目
○北井波治目君 借地借家調停法案ノ委員會ノ經過
及結果ヲ御報告致シマス、此案制定ノ趣旨ハ近來借地借
家人間ノ爭議ガ多クアッテ、之ヲ嚴重ナル所ノ普通裁判所デ
解決ズルヨリモ、寧口平易ナル所ノ穩和ナル手續デ以テ、特
別ノ機關ヲ設ケテ之ヲ調停的所謂示談デ解決スル方ガ
最モ便宜デアッテ、必要ト認メテ此案ガ提出ニナッタノデアリ
マス、而シテ此案ノ内容ヲ簡單ニ申シマスルト云フト、借家
及借地、之ニ關スル所ノ爭議ガ區裁判所ノ方ニ調停ヲ申
立ッテ、裁判所ノ判事ガ之ヲ調停シ、若クハ必要ナル場合ニ
於テハ、調停委員ト云フモノヲ選ンデ、サウシテ此間ニ於テ
調停スル、其調停ノ手續中ハ、普通ノ訴訟手續ハ中止シテ
置ク、斯ウ云フ風ニナルノデゴザリマシテ、區域ヲ限フテ此法
律ハ施行シテヤラウ、併シ何ニ致シマシテモ調停デアリマス
カラ强制力ハ無イ、必ズ當事者ノ意思ノ合致所謂談合ガ
成立シタ時分ニ、之ガ目的ヲ達スルノデゴザイマス、此案ハ
可ナリ重要ナ案ト思ヒマシテ、委員會ハ前後六囘ノ委員會
ヲ開キマシテ、質疑應答ヲ致シマシテ、結局委員會ニ於キマ
シテハ第七條ヲ修正致シマシテ、其他ハ原案ノ如ク決シタ
ノデアリマス、此修正ニ對シマシテハ、政府ハ强テ反對ハセヌ
ケレドモ、同意ハ致サヌノデアリマス、故ニ此修正ノ點ニ付テ
ハ一應理由ヲ說明シテ置キマス、第七條ノ原案ハ斯ウナッテ
居ルノデス「當事者及利害關係人ハ自身出頭スルコトヲ要
ス但シ已ムコトヲ得サル事由アル場合ニ於テハ裁判所ノ許
可ヲ受クベシ」斯ウ云フ風ニナッテ居ル、此條文ハ詰リ此調
停ニ於テ、當事者本人ヲ成ベク出廷セシメル、代理人ヲ避
ケル、サウシマセヌト云フト、或ル代理人デアルト云フト、本
人ガ出夕程譲リ合ッテ譲步シテ話ヲ纏メルコトガムツカシイ、
代理人ガ出ルトドウモ議論ガ多クナッテ來テ纏リ兼ネルカラ
本人ヲ呼出シテ膝突合セテ、話ヲサセテ纏メルト云フ目的
デアルト云ブ政府ノ理由デアリマス、然ルニ我委員會ニ於テ
之ヲ修正致シマシタニハ、斯ウ云フ風ニ修正致シマシタ「當
事者及利害關係人ハ自身又ハ代理人出頭スルコトヲ要ス
但シ辯護士ニ非ザル者ヲ代理人トスル場合ニ於テハ裁判所
ノ許可ヲ受クベシ」二項ハ原案ノ儘ト致シマシテ、三項ノ一
項ヲ加ヘマシタ「裁判所ハ當事者及利害關係人自身ノ出
頭ヲ命スルコトヲ得」斯ウ云フ風ニ三項ヲ加ヘタノデアリマ
ス、此理由ハ一通リ申シマスガ、本人ノ出頭ト云フコトモ一
應御尤デハアルケレドモ、我國ノ狀態ニ於テハ、家主若クハ
地主ト云フ者ハ比較的資產モアッテ、其借主ノ方ト膝突合
セテ話ヲスルト云フヤウナコトニハ、餘程ムヅカシイモノト思ヒ
やくか。普通ナラバソレデ宜シイノデアリマスガ、既ニ訴訟ヲ
シテ居ル、或ハ將ニ訴訟ヲセントスル、此間ニ爭ヲ生ジテ居
ル時ニハ、多少感情ノ行違モ生ジテ來ルノデアリマス、然ル
ニ之ヲ本人ヲ呼出シテ膝突合セテ談合セシメルト云フコト
ハ隨分難キヲ責メルモノデハナイカ、是デハ却テ調停ノ目
的ヲ達スルコトガ出來ナイ、代理人ヲ成ベク避ケルト云フ此
本案ノ趣旨ガ、却テ調停ノ機會ヲ失フコトニナリハセヌカ、
ンレカラ又當事者本人ガ裁判所ニ出ルト云フ事柄ハ、我國
ノ國狀ニ於テハドウモ好マヌノデアリマス、呼出サレテ何時
間モ待ッテ居ッテ、サウシテ借主ノ方ト膝突合セルト云フ程ノ
好意ト云フモノハ、爭ッテ居ル問ハ乏シイノデアリマス、是ハ
司法當局ノ見ル所ガ實情ニ合ハヌヤウウニ思ヒマス、又
加之若シ裁判所デ本人ガ出マシテ言ヒ損フトカ、若シ不利
益ナ事ヲ言フト後ノ訴訟ニ影響スル、若クバ現時係爭シテ
居ル訴訟ニ影響ヲスル不利益ヲ爲ス、是ハ往々アルコトデ
アリマス、何カ言ヒ損フト後ノ差支ヲ爲スカラ、先ヅ辯設士
ノ方ニ行ッテ相談シテ見ヤウ、或ハ辯設士ニ出テ貰フト云フ
コトガ、總テノ爭議ニ於テ當然ノ事デアラウト田心ヒマス、權利
防護ト致シマシテ-然ルニ本人ヲ呼出シテ事實有リノ儘
ヲ言ハセルト、調停ガ成立チマスレバ宜シイガ、成立タヌトキ
ハ、普通ノ裁判所ニ行クモノデアリマスカラ、先ヅ成立ッタモ
ノト看做シテ極メテ行クト云フコトハドウデアラウカ、斯ウ云
フ目的ヲ以テ本人ヲ必ズ呼出スト云フコトハドウデアラウ
カ、出夕所ガ眞情ヲ吐クコトハムツカシカラウ、斯ウ云フ風
ナ理由ノ爲ニ、委員會ニ於テハ必ズ本人デナクテモ宜イ、代
理人ヲ許シテモ宜イト、斯ウ云フヤウナ理由ノ爲ニ此案ヲ
修正致シマシタ、而シテ辯護士以外ノ者ハ、ドウモ權利
義務ニ關スル所ノ紛議ニ於キマシテハ素人デハ分リ兼ネル
コトガアル、出テモ能ク分ラヌカラ話ガ纏ラヌト云フ理由
モアリマスシ、然ラバ辯護士以外デ其他ノ者デ、若シサ
ウ云フコトニ手慣レタ者ト致シマスルト云フト、是ハ三
百的ノモノデアッテ、此調停ノ爲ニ不利益デゴザイマ
ス、故ニ辯護士ニアラザル者ヲ代理人トスル場合ニ於テハ、
是ハ裁判所ノ許可ヲ得ル、辯護士ニハ許可ヲ要セヌ、司法
當局ハ矢張辯設士ニモ許可ヲ要スルト云フ意見デアリマシ
タガ、御承知ノ如ク、、辯護士ハ裁判上若クハ裁判後ニ於キ
マシテ、權利義務ニ關スル所ノ爭議ニ本業トシテ干與シテ
居ル者デアリマスカラ、本業トシテ干與シテ居ル辯護士ガ代
人トシテ出頭スルノニ、一々區栽判所ノ判事ノ許可ヲ得ル
ト云フコトハ、全ク辯護士ニ對シテハ不必要ナ規定ト思ヒ
マシテ、此點ハ辯護士ニ對シテ許可ヲ要セヌト致シマシタ、
又司法當局ガ本人ノ出頭ヲ必要トスル場合ニハ、特ニ參考
トシテ本人ヲ喚出ス方ガ便宜デアル、調停上效果ヲ奏スル
ト認メタ時分ニハ、裁判所ニ何時デモ當事者又ハ利害關
係人ヲ喚出ス職權ヲ與ヘテ居ル、サウ致シマスレバ、此法案
ノ妙味ヲ發揮スルコトガ出來ルト云フ趣意ノ下ニ、第七條
ノ修正ヲ致シマシタヤウナ次第デゴザイマシテ、七條ハ只今
申ス如クニ修正ヲ致シマシテ、其他ハ三十一箇條原案ノ如
クニ可決致シマシタ、委員會ニ於テハ、此修正及原案共全
會一致ヲ以テ可決致シ夕次第デアリマス、最後ニ決議後横
山君ヨリ一ツノ希望條件ガアリマシタカラ、之ヲ御紹介致
シテ終ラウト思ヒマス、斯ウ云フノデアリマス、司法當局ハ本
法借地法竝ニ借家法ノ效果ヲ全ウセシムル爲メ、司法官ハ
之ガ運用ニ細心ノ注意ヲスルノミナラズ、繫爭ノ事案ニ關
シテハ、成ベク和解ノ方法ヲ以テ落著セシムル樣、相當ノ手
段ヲ採ランコトヲ希望ス、斯ウ云フ意味ノ希望條件ガアリ
マシテ、是モ尤ナコトヽ思ヒマシテ、此希望條件ニ對シテハ、
政府委員モ何等異議ハナイノデゴザイマス、斯樣ナ次第デ
ゴザイマスカラ、何卒此案バ只今ノ如クニ御賛成アランコト
ヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=48
-
049・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
御諮致シマス
〔「第二讀會ヲ開クニ異議ナシ」ト呼フ者アリ」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=49
-
050・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ御異議ナシト
認メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=50
-
051・岩崎勲
○岩崎勳君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ第三讀會ヲ省
略シテ、委員長報告ノ通リ、卽チ委員會ニ於テ修正可決ノ
通リ、可決確定セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=51
-
052・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=52
-
053・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス
借地借家調停法案第二讀會(確定議)
〔「贊成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=53
-
054・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ本案
ハ委員長報告通リ、卽チ委員會ノ修正通リ、可決確定サレ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=54
-
055・岩崎勲
○岩崎動君 議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致
シマス、卽チ茲ニ政府提出農會法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キ、
委員、長告報求求且ツ其審議ヲ進メラレンコトヲ望シマス
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=55
-
056・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ日程變更ノ動議ハ御異
議ナシト認メマシタ、仍テ日程ハ直ニ變更サレマシタ、農會
法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス
農會法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一農會法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年二月二十一日
農會法案委員長
植場平
衆議院議長奧繁三郞殿
〔植場平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=56
-
057・植場平
○植場平君 農會法ニ關シマスル委員會ノ結果ヲ御報
告申上ゲマス、本法ハ十數年來ノ希望デゴザイマシテ、漸
ク此案ヲ見ルコトヲ得マシタノハ私共ノ最モ喜ブベキコトデ
ゴザイマス、故ニ委員會ニ於キマシテモ、四日ヲ要シマシテ極
テ愼重ニ審議ヲ遂ケマシテ、二箇ノ希望事項ヲ決議致シマ
シテ原案ハ全部可決致シタノデアリマス、其希望事項ヲ申
上ゲマス、「政府ハ農事改良發達ノ任ニ當ル農會ニ對シ每
年國庫ヨリ金一百万圓ノ補助金ヲ交付シ事業ノ遂行ヲ
助長セラレムコトヲ望ム」是ハ政友會ノ成田榮信君ノ提案
デアリマス、今一ツハ憲政會ノ齋藤宇一郞君ノ提案「本法
ノ第十一條ニアル原野ハ直接農業ニ關係アル者ニ限ルモ
ノナルコトヲ施行細則ニ明記セラレムコトヲ望ム」此兩案ト
モ是亦一人ノ異議者ナク、滿場一致ヲ以チマシテ、決定ヲ
致シタノデアリマスッ委員會ノ質問應答ニ對シマシテハ、一々
報告ヲ申上ゲルコトヲ避ケマス、速記錄ニ依ッテ御覽ヲ願
フコトニシタイト思フ、右御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=57
-
058・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
御諮ハ致シマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=58
-
059・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト
認メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=59
-
060・岩崎勲
○岩崎勳君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省
略シテ委員長報告ノ通リ可決確定アランコトヲ望ミマ
ス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=60
-
061・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認メ
マス、仍テ直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス
農會法案第二讀會(確定議)
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=61
-
062・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=62
-
063・岩崎勲
○岩崎動君 再ビ議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提
出致シマス、卽チ玆ニ議員春日俊文君懲罰事犯ノ件ヲ議
題ト爲シ、懲罰委員長ノ報告ヲ求メ、且ツ其審議ヲ進メラ
レンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=63
-
064・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ日程變更ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=64
-
065・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 御異議ナシト認メマス、日程ハ變
更サレマシタ懲罰事犯ノ議事ハ祕密會議デアリマスカラ、
傍聽人ノ退場ヲ命ジマス
春日俊文君懲罰事犯ノ件
〔午後五時九分秘密會ニ八ル〕
〔午後五時十八分祕密會ヲ終ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=65
-
066・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 祕密會ノ結果ヲ報告致シマス、祕
密會ニ於キマシテハ、春日俊文君懲罰事犯ノ件ヲ議決致
シマシタ、只今其議決ニ基キマシテ宣告致シマス、議員春日
俊文君ニ對シテ、議院法第九十六條第一項第三號ニ依リ
三日間ノ出席ヲ停止ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=66
-
067・岩崎勲
○岩崎動君 殘餘ノ日程ニ對シテ延期ノ動議ヲ提出致
シマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=67
-
068・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニハ御異議ナイト認
メマス、故ニ動議ノ如ク決シマス、一寸諮問事諮ガアリマス、
第五部選出懲罰委員鈴木富士彌君、第六部選出決算委
員古屋慶隆君常任委員辭任ノ申出ガアリマシタ、許可ス
ルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=68
-
069・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマシテ許可致シ
マス、其部ノ諸君ハ速ニ補關選舉ヲ行ウテ屆出アランコト
ヲ望ミマス、ソレデハ本日ハ是ニテ散會、明後日ハ定時刻ヨ
リ木會議ヲ開キマス、何レ公報デ日程ヲ報告致シマス
午後五時二十二分散會
衆議院議事速記錄第十四號中正誤
頁段行誤正
二七六下二三第十二第十六発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X01519220221&spkNum=69
-
本文はPDFでご覧ください。
3. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。