第45回帝国議会　衆議院　本会議　第21号　大正11年3月2日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  大正十一年三月二日（木曜日）午後一時十五分開議
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  　議事日程　第二十號　大正十一年三月二日
  　　　午後一時開議
  　第一　傳染病豫防法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二　海港檢疫法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第三　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第四　明治四十年法律第四十九號中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　第一讀會
  　第五　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第六　陪審法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第七　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第八　道路法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第九　朝鮮事業公債法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十　臺灣事業公債法改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十一　樺太事業公債法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十二　關東州事業公債法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十三　南洋廰特別會計法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十四　大正五年法律第四號中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十五　工場法中改正法律案（板野友造君提出）　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十六　勞働組合法案（星島二郎君提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十七　社寺現境内地無償下付に關する法律案（鵜澤總明君外二名提出）　　第一讀會
  　第十八　出版取締法案（星島二郎君提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十九　所得税法中改正法律案（岩本平藏君外十一名提出）　　　　　　　　第一讀會
  　第二十　婦女の人權保護に關する法律案（横山勝太郎君外一名提出）　　　　第一讀會
  　第二十一　借家法中改正法律案（横山勝太郎君外四名提出）　　　　　　　　第一讀會
  　第二十二　辯護士法改正法律案（鵜澤總明君外六名提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　第二十三　未成年者飮酒禁止法案（根本正君外四名提出）　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十四　電信線電話線建設條例第六條に依る手當金増額に關する建議案（木下甚三郎君外一名提出）
  　第二十五　免囚保護施設及司獄官待遇改善に關する建議案（太田信治郎君提出）
  　第二十六　橿原神宮第二期宮域擴張及建物修築に關する建議案（高草美代藏君提出）
  　第二十七　橿原神宮第二囘宮域擴張及建物修築に關する建議案（八木逸郎君外五名提出）
  　第二十八　多摩川改修費及水源涵養費國庫支辨に關する建議案（前田米藏君外九名提出）
  　第二十九　多摩川改修費及水源涵養費國庫支辨に關する建議案（高木正年君外五名提出）
  　第三十　三津濱港築港國庫補助に關する建議案（成田榮信君外五名提出）
  　第三十一　重信川改修に關する建議案（成田榮信君外五名提出）
  　第三十二　米穀專賣法制定に關する建議案（小菅劍之助君外一名提出）
  　第三十三　第二期治水計畫確立に關する建議案（川原茂輔君外三名提出）
  　第三十四　決議案（山道襄一君外一名提出）
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• 001・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　諸般ノ報告ヲ致シマス
  〔原田書記官朗讀〕
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  災害地地租免除法中改正法律案
  提出者植場平君岩崎幸治郞君
  福井甚三君赤田瑳一君
  樋口伊之助君
  (以上三月二日提出)
  宮河内谷川改修國庫補助ニ關スル建議案
  提出者岡〓次君原田佐之治君
  海原〓平君淺石惠八君
  市町村立小學校〓員加俸令改正ニ關スル建議案
  提出者野村勘左衞門君永屋茂君
  森恪君牧野良三君
  鵜澤總明君
  (以上二月二十八日提出)
  地租過納金下付ニ關スル建議案
  提出者日野辰次君萩亮君
  津崎尙武君陣軍吉君
  岩崎宗茂助君久木田叶君
  樋渡次右衞門君海江田準一郞君
  池田泰親君
  (以上三月二日提出)
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載
  ス〕
  一去二十八日議長ニ於テ選定シクル委員左ノ如シ
  銃砲火藥類取締法中改正法律案外一件
  吉木陽君長谷場敦君風間八左衞門君
  長田桃藏君樋口伊之助君南里琢一君
  作間耕逸君吉川吉郞兵衞君難波作之進君
  明治四十四年法律第六十一號中改正法律案
  三善〓之君松山常次郞君飯島信明君
  牧山耕藏君佐藤良平君秋乕太郞君
  高橋久太郞君手島鍬司君石川長右衛門君
  破產法案外一件
  前田米藏君高田良平君野副重一君
  益谷秀次君木村作次郞君岩崎幸治郞君
  櫻內幸雄君水野吉太郞君麓純義君
  金光庸夫君福井甚三君石川淳君
  横山金太郞君野田文一郞君作間耕逸君
  野村嘉六君渡邊昭君森下龜太郞君
  明治四十年法律第二十一號中改正法律案外一件
  八田宗吉君西川嘉門君松實喜代太君
  鈴木義隆君久下豐忠君上塚司君
  友田文次郞君山移定政君佐々木平次郞君
  貨幣法中改正法律案
  吉原祐太郞君今井今助君三浦権兵衞君
  高島七郎右衞門君岩切重雄君鈴木周三郎君
  淺川浩君粟山博君倉石知藏君
  裁判所ノ設立ニ關スル法律案外一件
  藏內次郞作君崎山克治君井坂豐光君
  三好德松君岡田伊太郞君北原永渡君
  定行八郞君吉田磯吉君納富陳平君
  大正十年勅令第三百七十五號(永諾ヲ求ムル件)外
  件
  津野田是重君松岡俊三君久慈貫一君
  高橋全治郞君〓瀨規矩雄君大石大君
  〓水留三郞君永井抑太郎君植原悅二郞君
  一去二十八日六大都市行政監督ニ因スル法(家委員
  野田文一郎君、與村安太郞君辭任ニ付其ノ補刷トシ
  テ阿由葉勝作君、森下龜太郎君ヲ執シモ議長ニ於テ
  選定セリ
  一昨一日信託法案外四件委員納富陳平君辭任ニ付
  ノ補闕トシテ上田彌兵衞君ヲ議長ニ於テ選定セリ
  昨一日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
  充金砲火藥類取締法中改正法律案外一件委員
  委員長吉木陽君理事風間八左衞門君
  明治四十四年法律第六十一號中改正法律案委員
  委員長三善清之君理事松山常次郞君
  破產法案外一件委員
  麓純義君
  委員長前田米藏君理事野田文一郞君
  渡邊昭君
  明治四十年法律第二十一號中改正法律案外一件
  委員
  委員長八田宗吉君理事上塚司君
  貨幣法中改正法律案委員
  委員長吉原祐太郞君理事今井今助君
  裁判所ノ設立ニ關スル法律案外一件委員
  委員長藏內次郎作君理事崎山克治君
  大正十年勅令第三百七十五號(永諾ヲ求ムル件)外
  一件委員
  委員長津野田是重君理事松岡俊三君
  一昨一日常任委員理事補關選擧ノ結果左ノ如シ
  決算委員
  理事高草美代藏君(理事最上直吉君補關)
  理事津原武君(理事古屋慶隆君補闘)
  一昨一日理事補閱選擧ノ結果左ノ如シ
  道路法中改正法律案
  理事西村正則君(理事深見寅之助君補闕)
  一今二日信託法案外四件委員河相三郞君辭任ニ付
  其ノ補閥トシテ國重政亮君ヲ裁判所設立ニ關スル法
  律案外一件委員崎山克治君辭任ニ付其ノ補闘トシ
  テ靑柳郁次郎君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ

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• 002・奧繁三郎

  ○議長(臭繁三郞君)　會議ヲ開キマス、諮問事項ガアリ
  マス、議員橫山寅一郎君病氣ニ付本月一日ヨリ本月二十
  日迄、〓水市太部君病氣ニ付本月一日ヨリ本月二十日
  迄請暇ノ申出ガアリマシタ、之ヲ許可スルニ御異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 003・奧繁三郎

  ○議長　(奧繁三郎君)御異議ナシト認メマス、仍テ許可
  スルコトニ決シマシタ、第四部選出懲罰委員塚原嘉藤君
  常任委員辭任ノ申出ガアリマス、許可スルニ御異議アリマ
  セマカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 004・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナシト認メマス、仍テ許可
  致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補闘選擧ヲ行ヒ屆出アランコ
  トヲ望ミマス、先日植原悅二郞君ヨリ松圖俊三君ノ演說
  中取消ヲ望マレマシタ、議長ニ於テ速記ニ依ッテ其演說ヲ
  調査致シマシタガ、此末段ニ於キマシテ「普通選擧ノ先驅
  者トシテ大ニ主張シテ居ル所ノ植原悅二郎君ノ行動ニ於
  テモ斯樣ナル危險性ガアルノデアリマス」此一言ハ松岡君ニ
  於テ取消サレルコトヲ勸告致シマス

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• 005・松岡俊三

  ○松岡俊三君　前段カラ述ベマシタル所ヲ文章ニ依ッテ見
  マシテモ、其事實ニ於キマシテモ、亦之ヲ證明スベキ所ノ議
  員友常穀三郞君ガアリマシテ、私ノ申シマシタル所ニ於テ何
  等ノ誤リハ無イノデアリマス、併ナガラ議院法ノ命ズル所ニ
  依リ、議長ガ特ニ危險性デアルト云フ此性ト云フ文字ガアル
  爲ニ只今ノ取消ノ御注意ガアリマシタカラシテ、議長ノ命
  令ニ服スルト云フ意味ヲ以テ取消ヲ致シマスルガ、事實上
  ニ於テハ何等之ニ關シテ誤レル所ガ無イト云フ事ダケハ特
  ニ申上ゲテ置キマス

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• 006・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　取消シタンデスネ

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• 007・松岡俊三

  ○松岡俊三君　取消シマシタ

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• 008・植原悦二郎

  ○植原悅二郞君　議長、一身上ノ辯明ニ付テ發言ヲ御
  許ヲ願ヒタウゴザイマス

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• 009・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　許シマス
  〔植原悅二郞君登壇〕

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• 010・植原悦二郎

  ○植原悅二郞君　先日私ガ問題ト致シマシテ、松岡君ノ
  普通選擧ニ關スル演說中、私ノ一身上ニ關スルコトニ付キ
  マシテ、議員ノ體面ヲ汚ス虞アリト思フコトニ付キマシテ議
  長ニ取消ヲ命ズルヤウニ御願ヲ致シテ圓キマシタ、其後段ニ
  關スル所ノ一文ニ付テハ議長ガ御取消ヲ御命ジニナリ松
  岡君ノ申サレマシタ、言葉ニ於テハ、甚ダ異樣ニ感ズル點ガ
  アリマスケレドモ、之ヲ取消シタ以上ハ之ニ對シテ私ハ彼此
  レ申シマセヌ、併ナガラ其他ノ點ニ付テ只今松岡君ガ事實
  ナリトシテ肯定セラレテ居ル事、ソレ自身ニ付キマシテモ全
  ク事實無根ノ事ナルノミナラズ、人ヲ中傷シ、讒誣シ、誣〓
  スルモノデアルト云云ココトヲ一應辯明シナケレバナラナイト
  思フ(拍手)御承知ノ如ク松岡君ハ普通選舉ニ關スル事ヲ
  御述ニナルガ爲ニ御登壇ニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ私
  ニ關スル事ヲ玆ニ述ベテ居リマス所ハ、何等普通選擧ニ關
  スル所デ無イノデアリマス、全ク普通選擧ニ關スル事デナイ、
  華府會議ニ關スル事デアリマスケレドモ、而モ其事實ハ松
  岡君自身ガ揑造シ、故ラニ人ヲ中傷シ、讒誣スル爲ニ玆ニ
  引出シタモノデアルト一云フコトヲ申スヨリ外ニ、之ヲ說明ス
  ル途ハナカラウト思ヒマス、其事實ヲ是カラ中上ゲマス、松岡
  君ノ述ベラレテ居ル事ハ斯樣ナ事デアリマス、「我ガ全權ヲ
  シテ米國ヲ」-詰リ「米國ノ」デアラウト思ヒマス「米國ノ全
  權ノ膝下ニ屈服セシメヤウト圖ッタノハ植原君一人デアル」
  ト斯様ナ言ガアリマス、松岡君自身モ前段ニ於テ述「ベラレ
  テ居リマス「ヒユーズ」ノ海軍ノ提案、卽チ英米ヲ十ト致シテ
  日本ヲ六トスル所ノ比率ニ對シテハ、報知新聞、大阪朝日、
  東京朝日、植原君等モンレヲ直ニ受ケルト云フコトガ宜イ
  ト云フ說デアッタ、是ハ其通リデアリマス、併ナガラ私自ラガ
  我ガ全權ヲシテ米國ノ膝下ニ屈服セシメヤウトスルガ如キ
  態度ハ、如何ナル場合ニ於テモ斷ジテ執ッテ居リマセヌ(拍
  手)ソレ許リデハアリマセヌ、事實ヲ申スナラバ松圖君御承
  知デアリマセウ、日本ノ大部分ノ新聞記者諸君ハ「ヒユーズ」
  ノ提案、英米ノ十ニ對スル日本ガ六ノ比率ヲ、其場合ニ承
  諾スル方ガ日本ノ爲ニ有利デアルト云フ說ヲ爲シタコトハ
  事實デアリマス、唯全權若クハ其他ノ壓迫ニ依ッテ後ニ緩
  和サレタト云フコトハ事實デアリマス、是ハ御承知デアリマ
  セウ、中外商業新聞ノ特派員自ラ牛耳ヲ執ッテ、全權ノ事
  務所ニ於テ多數ノ新聞記者ヲ集メテ、日本ノ全權ガ「ヒユ
  ーズ」ノ提案六ノ比率ヲ認メラレルト云フコトガ有利デアル
  ト云フ事ヲ申シタコトハ事實デアリマス、ノミナラズ實際ニ
  於テ此場合ニ日本ガ「ヒユーズ」ノ提案、英米ノ十ニ對シテ
  六ノ割合ヲ承認致シマシタナラバ、日本ハ今日ノ結果カラ
  見マシテモ明カナル事實デアリマス如ク、米國ノ華府ニ於ケ
  ル所ノ外交ニ於テ、第一ノ勝利者タル所ノ結果ヲ得クト云
  フコトニ付テハ、何人モ疑問ヲ懷ク者ハ無イノデアリマス、ノ
  ミナラズ更ニ進シデ日本ガ七ヲ唱ヘマシタケレドモ、其七ト
  云フモノガ、實際ニ於テ通ックカト言ヘバ、今日ニ於テモ通ッ
  テ居ラナイノデアリマス、是ハ明ニ日本ガ米國ノ政界ノ事情
  ヲ理解致サズ、米國民ノ心理狀態ニ對シテ適切ナル所ノ觀
  察ヲ誤リ、「ヒユーズ」ノ政治上ノ立場ニ對シテモ何等理解
  スルコトナタシテ、無鐵砲ニ七說ヲ唱ヘタ結果、米國ノ六ニ
  屬履シナケレバナラナイ狀態ニナッタト云フ事實ハ明瞭デア
  リマセウ、ソレノミナラズ十一月十九日デアルト承知致シマ
  ス、十九日ニ加藤金權ガ日本ノ代議士諸君ニ面會シタイ
  ト云フノデ、此場合ニ於テ橫田君モ林毅陸君モ望月、田
  川-吾々ト共ニ出席サレテ居ッタト云フコトハ、松岡君モ
  御承知デアリマセウ、其場合ニ何ト申シマシク、私共ハ如何
  ニ全權ガ七ノ說ヲ御唱ヘニナリマシテモ遞テナイト思ヒマス
  ガ、是ハ議論ニナリマスカラ他日ニ譲リマセウ、斯樣ナ事ヲ其
  場合ニ申シク、サウシテ陸奧ト安藝トハ如何致スカト言ヒマ
  シタラバ、加藤全權ハ松岡君御記憶デゴザイマセウ、陸奧ノ
  事ヤ安藝ノ事ハ此場合ニ問題ト致サナイト言ッテ居リマス、
  其事實ヲ承知致シテ居リナガラ、故ラニ人ヲ中傷シ、議誣ス
  ルガ爲ニ斯ノ如キ言動ヲ用ユルコトハ、議員トシテ議員同
  僚ニ對シテ侮辱ヲ注グモノト斷言スルヨリ途ガアリマセヌ(拍
  手、松圓君「アナクハ最初ヨリ之ヲ主張シタノデス」ト呼フ)
  主張スレバ其通リ却テ結構デアッタコトハ事實デアリマセウ、
  ノミナラズ私ガ議會ニ於キマシテモ、日本ハ何故ニ「ヒユーズ」
  ノ提案六ヲ其儘御承認ナサラナイカ、日本ノ海軍ガ七割說
  ヲ日本ノ本國ヲ出ル時ニ決メテ行ッタカラトハ云ヘ、其七割
  說ニ對シテ深キ根據ノアック譯デモナイト云フコトハ、其結果
  カラ見テ當然「ヒユーズ」ノ割出シマシタ所、英、米、日ニ對シ
  テ今日十、十、六ノ割合ノ比率協定ガ成立シテ居ル事實ニ
  徵シテモ明カデアリマス、其點カラ申シマスレバ、若シ近限政
  治家ト云フ語ガ用ヰラルヽモノナラバ、ソレハ吾々ト心ヲ同
  ジウシタル所ノ新聞記者ニアラズシテ、政府當局而モ此重
  大ナル所ノ外交ノ任務ニ當リマシタ所ノ者ヲ以テ、近眼政
  治家ト評スルコン、或ハ適當デアルカモ知レマセヌ、然ルニ私
  ニ對シテ私ノ〓眼-全權ヨリハ更ニ事實明瞭ナリシコト
  ヲ立證スルニ足ル事デアルニモ拘ラズ、故ラニ近眼政治家デ
  アルト言ハレマス、又松岡君ニ更ニ此點ヲ中上ゲナケレバナ
  リマセヌ、私ハ議會ニ於テ日本ガ七說ヲ唱ヘタコトヲ宜シイ
  ト申シテ居リマセヌ、何處迄モ之ガ惡イトシテ外務大臣竝
  ニ海軍當局ニ質問致シテ居リマス、ソレノミナラズ今日ニ至
  ルマデ、私ハ日本各地ニ於キマシテ二十四五回ノ講演ヲシ
  テ居ル場合ニモ、日本ガ「ヒユーズ」ノ六ノ提案ヲ七ニ上グヤ
  ウトシタト云フ事ハ、日本ノ政策トシテ良好ナリナドヽ云フ
  コトハ一回モ申シテ居リマセヌ、又雜誌ノ上ニ事實トナッテ
  現ハレテ居ル所ヲ御覽ナサイ、先月ノ實業之日本ニモ、今日
  ノ太陽ニモ、華盛頓ニ於テ主張シタト同樣ナル主張ヲ今日
  何處ニモ致シテ居ルノデアリマス、然ルニ松岡君ハ恰モ私ガ
  華盛頓ニ於テ主張セシ事ト、本國ニ歸ッテ主張セル所ト異
  ルガ如ク、全ク其時とニ臨機應變ノ事ヲ言フガ如キモノヽヤ
  ウニ斷定シテ、此中ニ申-サレテ居ルノハ甚ダ以テ松岡君ノ
  言動其當ヲ得ザルモノト認メル者デアリマス、松岡君ハ斯
  樣ニ申シテ居リマス、「此提案ニ無條件ニ屈服セシメヤウト
  圖ック所ノ此議員植原君ガ、先日本壇上ニ於テ述べラレタ
  所ノ其御演說ノ全然之ニ反對シテ居ルド云フコトハ何事
  デアリマスカ」松岡君ノ私ノ此演壇ニ於キマシテ、松岡君ガ
  此所ニ遠ベラレテ居ル所ノ海軍比率ノ問題ニ付テ、私ガ華
  感頓ニ於テ唱ヘタト同樣ナ言葉ヲ以テ海軍竝ニ外務大臣
  ニ質問シテ居ルコトヲ御存知ナイノデアリマスカ、若シソレヲ
  御存知デアリ、殊ニ私ガ尙ホ議會ノミナラズ、議會外ニ於テ
  主張シテ居ルコトモ同一ナ事ヲ言ッテ居ルノデアリマス、今
  日ニ於テモ私ハ日本ノ加藤全權が「ヒユーズ」ノ提案、英、米、
  日ノ海軍比率十、十、六ノ割合ヲ其場合ニ日本ガ受ケマシ
  タナラバ、日本ハ軍國主義ト云フ所ノ疑惑ヲ世界カラ一掃
  スルコトガ出來タ許リデナク、華盛頓ノ外交ニ於テ日本ノ全
  權ハ第一ノ勝利者トシテ世界各國ノ稱讃ヲ受クルノミナラ
  ズ、我國ノ世界ニ於ケル所ノ信用ト權威トヲ十分ニ確立ス
  ルコトガ出來タノヲ、全ク米國ノ政界、世界ノ大局ヲ理解セ
  ズシテ、最後ニ七ノ說ヲ唱ヘテ米國ニ屈従屈服シタコトハ、
  返ス〓〓モ遺憾ニ堪へヌト中シテ居リマス、此所信ニ於テハ
  米國ニ於ケル時モ、今日ニ於テモ、更ニ變ラナイノデアリマス
  カラ、松岡君ノ此言論ハ總テ事實ヲ捏造シ、人ヲ中傷シ讒
  誣スル爲ニ、普選ノ場所ニ於テ全ク關係ノ無イ言論ヲ弄ビ、
  同僚ヲ侮辱スル言動ニ出デタルモノナリト信ズルノデアリマ
  ス(拍手)

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• 011・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　一昨日ノ本會ニ於キマシテ關和知
  君ガ總選擧ノ結果トシテ忌ハシキ疑獄事件ト、不名譽ナル
  二百八十餘人ノ多數ヲ選擧シタト云フコトニ付テ取消ヲ注
  意致シマシタ、關君ハ其時分ニ演壇ニ於テ、其注意ニ對シテ
  直ニ取消サレマセナンダ、議長モ其取消サレナカッタニ付テ、
  速記錄ヲ見テ考慮シタ上適當ノ處置ヲ取ルト述ベテ置キ
  マシヤ此二百八十餘人ノ多數ヲ選出シタ不名譽ナルト云
  フ言葉ハ、不穏當ニ考ヘマスカラ闘君ニ於テ取消サレルコト
  ヲ再ビ望ミマス

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• 012・關和知

  ○關和知君　先日議場ニ於テ私ノ述ベマシタル、不名譽
  ナル二百八十人ノ多數ト云フ言葉ニ付テ、再度議長ノ御
  配慮ヲ煩ハスト云フコトハ、洵ニ不本意ニ存ジマス、强テ議
  長ノ命令ニ反抗スルト云フ次第デハ毛頭アリマセヌガ、此
  場合私ハ此議長ノ御注意ニナラレタ言葉ニ付テ、斯樣ニ訂
  正ヲ致シタイト思ヒマス、不名譽ナル二百八十ノ多數ト云
  フコトヲ、不ノ字ヲ削除致シテ名譽ナル二百八十ノ多數ト
  斯樣ニ訂正ヲ致シタイト存ジマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=12

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• 013・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　先日ノ會議ニ於テ紫安君ノ注意
  モアリマシテ、松田源治君ノ演說速記ヲ見マシタガ、別段議
  長ヨリハ何等要求スル點ハアリマセヌ、橫山君ノ演說ニ付
  テ議長ヨリ注意ヲ促シマシタガ、速記ヲ精讀致シマスト別段
  議長ヨリ殊ニ注意スル點ハアリマセヌ-日程第一、第二
  ハ便宜上一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 014・井上敬之助

  ○井上敬之助君　決算委員會ヲ開キタイ卜思ヒマス、御
  許可ヲ願ヒマス

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• 015・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=15

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• 016・井上敬之助

  ○井上敬之君　ドウゾ委員諸君ハ決算委員室ニ御集リ
  ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=16

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• 017・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　日程第一、傳染病豫防法中改正
  法律案、日程第二海港檢疫法中改正法律案ヲ一括シテ
  議題ト爲シ、其第一讀會ヲ開キマス、小橋內務次官
  第傳染病豫防法中改正法律案(政府提
  〓第一讀會
  傳染病豫防法中改正法律案
  傳染病豫防法中左ノ通改正ス
  第一條中「赤痢」ノ下ニ、仝人(錢ハラ)」ヲ加へ「虎列刺」ヲ「「コ
  レラ」」ニ、「腸窒扶私」ヲ「腸「チフス」、「パラチフス」」ニ、「發
  形室扶忍」ヲ「發疹「アラス」ニ、「資布垤利亞(塩竈籍)
  ヲ「「ヂフテリア」、流行性腦脊髓膜炎」ニ、「八病」ヲ「十病」
  ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
  主務大臣特別ノ事由アリト認ムルトキハ前項ニ依リ
  指定スル傳染病ニ對シ命令ヲ以テルノ法律ノ一部ヲ
  限リ適用シ又ハ地域ヲ限リ此ノ法律ノ全部若ハ一
  部ヲ適用スルコトヲ得
  第二條中「傳染病流行シ」ノ上ニ「「コレラ」及「ペスト」以
  外ノ」ヲ、「疑似症ニ對シ」ノ下ニ「命令ノ規定三從ヒ」ヲ加
  同條ニ第一項トシテ左ノ一項ヲ加フ
  此ノ法律ハ「コシラ」及「ヘスト」ノ疑似症ニ對ジ之ヲ遮
  用ス
  第二條ノ二傳染病ノ病原體保有者ハ此ノ法律ノ適
  用ニ付テハ之ヲ傳染病患者ト看做ス
  「コレラ」以外ノ傳染病ノ病原體保有者ニ對シ此ノ法
  律中傳染病患者ニ關スル規定ニシテ適用シ難キモノ
  ニ付テハ命令ヲ以テ別段ノ規定ヲ爲スコトヲ得
  第五條ニ左ノ一項ヲ加フ
  前項ノ〓潔方法及消毒方法ヲ行フヘギ義務者ニ付
  テハ前條第二項ノ規定ヲ準用ス
  第七條中「又ハ隔離病舎」ヲ「隔離病舍其ノ他適當ノ場
  所」ヲ加フ
  第八條ノ二傳染病患者ハ業態上病毒傳播ノ虞アル
  業務ニ從事スルコトヲ得ス
  前項ノ業務ノ範圍ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十二條中「公共ノ工事ノ爲」ヲ「特別ノ事由ニ因リ」ニ
  改ム
  第十五條中「市制第六十一條町村制第六十五條」ヲ
  「市制第八十三條町村制第六十九條」ニ改ム
  第十六條ノ二中「鼠族」ノ下ニ、「昆蟲等」ヲ加フ
  第十八條中「船舶汽車」ヲ「船舶汽車電車」ニ改ム
  第十九條中「其ノ物件ヲ廢棄スルコト」ヲ「其ノ物件ノ廢
  棄其ノ他必要ナル處分ヲ爲シ若ハ爲サシムルコト」ニ「之
  ヲ廢棄スルコト」ヲ其ノ飮食物ノ廢棄其ノ他必要サル處分
  ヲ爲シ若ハ爲サシムルコト」ニ改メ「鼠族」ノ下ニ「、昆蟲
  等」ヲ加フ
  第二十條中「、集治監」ヲ削ル
  第二十一條中「鼠族」ノ下ニ「、昆蟲等」ヲ加フ
  第二十二條中「府縣稅又ハ地方稅」ヲ「北海道地方費
  又ハ府縣」ニ、「府縣ニ於テ」ヲ「道府縣ニ於テ」ニ改メ左ノ
  一號ヲ加フ
  四前各號ノ外此ノ法律ニ依リ地方長官ニ於テ施
  行スル豫防事務ニ關スル諸費
  第二十四條中「府縣稅又ハ地方稅」ヲ「北海道地方費
  ヌハ府縣」ニ改ム
  第二十五條中「國庫ハ」ノ下ニ「勅令ノ規定ニ從ヒ」ヲ「其
  ノ六分一一下下ニ「乃至三分一」ヲ加へ「府縣稅又ハ地方
  稅」ヲ「北海道地方費又ハ府縣」ニ改ム
  第二十七條中「府縣稅又ハ地方稅」ヲ「北海道地方費
  又ハ府縣費」ニ改ム
  第二十九條中「五圓以下ノ罰金又ハ科料」ヲ「百圓以
  下ノ罰金」ニ改ム
  第三十條中「五圓以上五十圓以下ノ罰金」ヲ「三百圓
  以下ノ罰金」ニ改ム
  第三十一條中「第五條、」ノ下ニ「第八條ノ二、」ヲ加ヘ
  二圓以上二十圓以下ノ罰金」ヲ「二百圓以下ノ罰金」ニ
  改ム
  第三十三條中「及臺灣」ヲ「竝朝鮮臺灣及樺太」ニ改ム
  HE則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第二海港檢疫法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會
  海港檢疫法中改正法律案
  海港檢疫法中左ノ通改正ス
  第一條中「及臺灣」ヲ創ル
  第一條ノ二傳、病病ノ病原體保有者ハ此ノ法律ノ適
  用ニ付テハ之ヲ傳染病患者ト看做ス
  第二條中「及臺灣」ヲ削リ「傳染病患者ヲ發生シタルト
  キハ」ヲ「傳染病患者若ハ死者又ハ傳染病毒ニ汚染シ若
  ハ汚染シタル疑アルコトヲ發見シグルモノハ」ニ改メ同條
  第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ港外ニ於テ檢疫ヲ受ケ難キ事由アル場合ニ於テ
  ハ檢疫官吏ノ指示シクル場所ニ於テ檢疫ヲ受クルコ
  トヲ得
  第四條中「及臺灣」ヲ削リ「傳染病毒ニ汚染シタル疑」ヲ
  「傳染病毒ニ汚染シ若ハ汚染シタル疑」ニ、「患者發見ノ
  時ヨリ」ヲ「傳染病患者若ハ死者又ハ傳染病毒ニ汚染シ
  若ハ汚染シタル疑アルコトヲ發見シタル時ヨリ」ニ改ム
  第五條中「及臺灣」ヲ削リ「傳染病患者ヲ發生シタルモ
  ノハ」ヲ「傳染病患者若ハ死者又ハ傳染病毒ニ汚染シ若
  ハ汚染シタル疑アルコトヲ發見シタルモノハ」ニ改ム
  第六條中「患者死者」ノ下ニ「又ハ物件」ヲ、「鼠族」ノ下ニ
  「、昆蟲等」ヲ加へ「若ハ其ノ船舶ニ傳染病毒ノ汚染シタ
  ル疑」ヲ「其ノ他傳染病毒ニ汚染シ若ハ汚染シタル疑」ニ、
  「傳染病患者ヲ發生生ルトキハ更ニ第一號ノ規定ニ依
  リ」ヲ「傳染病患者若ハ死者又ハ傳染病毒ニ汚染シ若ハ
  汚染シタル疑アルコトヲ發見シタルトキハ更ニ第一號ノ
  規定ニ準シテ」ニ、「患者アルトキハ」ヲ「患者アルトキ又ハ
  傳染病ノ病原檢査上必要アルトキニ限リ」ニ改メ同條ニ
  左ノ一項ヲ加フ
  檢疫官吏ハ船舶ヲシテ前項ノ消毒方法又ハ鼠族、昆
  蟲等ノ驅除ヲ施行セシムルコトヲ得
  第七條ニ左ノ一項ヲ加フ
  入港後前條第一項第五號ノ規定ニ依リ停船ヲ命セ
  ラレタル船舶ハ檢疫官吏ノ許可ヲ受クルニ非レハ陸
  地又ハ他船ト交通シ船客乘組員ノ上陸、物件ノ陸揚
  ヲ爲スコトヲ得ス
  第九條中「鼠族ノ驅除ハ檢疫官吏之ヲ施行シ」ヲ「鼠族、
  昆蟲等ノ驅除ヲ檢疫官吏カ施行スル場合ニ於テハ」ニ
  改メ同條第二項中「鼠族」ノ下ニ「、昆蟲等ノ」ヲ加フ
  第十一條中「五十圓以上五百圓以下ノ罰金」ヲ「二千
  圓以下ノ罰金」ニ改ム
  第十二條中「二十圓以上二百圓以下ノ罰金」ヲ「五百
  圓以下ノ罰金」ニ、「五十圓以上五百圓以下ノ罰金」ヲ
  「千圓以下ノ罰金」ニ改ム
  第十二條ノ二此ノ法律ハ朝鮮臺灣又ハ樺太ヨリ來ル
  船舶ノ檢疫ニ關シ之ヲ準用ス
  第十二條ノ三朝鮮臺灣又ハ樺太ヨリ來ル船舶、内務
  大臣ノ指定スル海外諸港ヨリ來ル船舶及此ノ法律ヲ
  適用シ難キ船舶ニ對スル檢疫ニ關シテハ命今ヲ以テ
  別段ノ規定ヲ爲スコトヲ得
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  〔政府委員小橋一太君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=17

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• 018・小橋一太

  ○政府委員(小橋一太君)　只今上程ニナリマシタ傳染
  病豫防法中改正法律案、提案ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマス
  現行ノ傳染病豫防法ハ明治三十年三月ノ制定ニ係リマ
  シテ、其後明治三十八年ノ三月ニ其一部ノ改正ヲ致シマ
  シタノデアリマス、然ルニ其後學術ノ進步ト實際ノ取扱トニ
  鑑ミマシテ、改正ヲ要スル點ガ少クナイノデアリマス、卽チ内
  務大臣ノ指定スル傳染病ノ種類ニ依リマシテハ、傳染病豫
  防法ノ一部ヲ適用シ、又ハ其適用ヲ爲スベキ地域ヲ限局ス
  ルコトヲ得ルノ途ヲ開クノガ必要デアリマスコトガ一ツ、次ニ「コ
  レラ」「ベスト」ノ如キ傳染ノ猛烈ナル所ノ傳染病ノ疑似症ニ
  對シマシテハ、當然傳染病豫防法ヲ適用シテ、嚴重ナル豫
  防ヲ行フコトガ必要デアル、次ニハ傳染病ノ病原體保有者
  ノ取扱ニ關シマシテ、從來法文ニ明記。シテアリマセヌガ故ニ
  之ヲ法文ノ上ニ明ニ規定シ置クコトガ必要デアル、第四ニ
  ハ傳染病豫防患者ニ對シマシテ、其業體ガ病毒傳播ノ虞
  アル者ハ業務ニ從事スルコトヲ禁ズルノ必要ガアリマス、是
  等モ法文上ニ缺ケテ居リマスガ故ニ、是等ノ諸點ヲ規定致
  シマスルノ外、實際ノ必要ニ應ズベキ條項ヲ定メ、且ツ法文
  ニ適當ナル整理ヲ加ヘタノデアリマス、豫防法改正ノ要點
  ハ以上ノ通リデアリマスガ、何卒愼重御審議ノ上御協賛ア
  ランコトヲ願ヒマス、次ニ上程ニナッテ居リマス海港檢疫法
  中改正法律案提出ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマス、現行海港
  檢疫法ハ明治三十二年二月ノ制定ニ係リマシテ、其後世
  運ノ進步ト實際ノ取扱ニ鑑··マシテ、改正ヲ要スル點ガ少
  クナイノデアリマス、卽チ傳染病ノ病原體保有者ニ付テハ、
  現行法ニハ明文ガアリマセヌ、併シ此病原體保有者ト云フ
  ノハ、傳染病患者ト同樣ニ取扱ッテ、傳染病ノ侵入ヲ防グ
  必要ガアリマスガ故ニ、其病原體保有者ニ對スル取扱ヲ明
  ニスル規定ヲ揭ゲタノデアリマス、港外ニ於テ檢疫ヲ受ケタ
  イト云フ事由ガアリマシ夕場合ニアリマシテハ、檢疫官吏ガ
  指示シタル場所ニ於テ檢疫ヲ受ケルコトヲ得セシムルコトヲ
  設ケタコト、船舶其他ノ消毒方法若クハ鼠族等ノ驅除ハ、
  場合ニ依リマシテハ寧口船舶ヲシテ之ガ消毒驅除ヲ行ハシ
  ムル方ガ適當デアルガ故ニ、船舶ニ於テ消毒驅除ヲ爲スノ
  途ヲ開キマシタ、朝鮮、臺灣、樺太、及內務大臣ノ指定スル
  海外諸港ヨリ來ル船舶竝ニ船舶ノ種類ニ依リマシテハ、
  般船舶ニ對スル檢疫ト同一ノ方法ヲ以テ取扱ヒマスレバ、
  却テ不適當トスル場合ガアリマスルガ故ニ、是等ノ諸點ニ
  シマシテ、規定ヲ掲グマシタノデアリマス、其他實際ノ必要ニ
  應ジ、且ツ法文ニ對シテ適當ナル整理ヲ加ヘテ、本改正案
  ヲ提出シテ、傳染病豫防ノ目的ヲ十分ニ致シタイト云フノ
  デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛アランコトヲ望ミマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=18

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• 019・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　右兩案ノ審査ヲ付託スベキ委員
  ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第三右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選
  舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=19

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• 020・岩崎勲

  ○岩崎勳君　日程第一及第二ノ兩案ヲ一括シテ、委員ノ
  數ヲ九名トシ、議長ニ於テ指名アランコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=20

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• 021・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=21

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• 022・指田義雄

  ○指田義雄君　信託法案外四件ノ委員會ヲ開キタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=22

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• 023・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　宜シイ、許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=23

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• 024・木下成太郎

  ○木下成太郞君　治安警察法中改正法律案ノ委員會
  ヲ開キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=24

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• 025・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　宜シウゴザイマス、許可致シマス-
  日程第四、明治四十年法律第四十九號中改正法律案ノ
  第一讀會ヲ開キマス-川村政府委員
  第四明治四十年法律第四十九號中改正法
  律案(政府提出)第一讀會
  明治四十年法律第四十九號中改正法律案
  明治四十年法律第四十九中左ノ通改正ス
  「關東都督府」ヲ「關東廳」ニ、「看守及女監取締」ヲ「看
  守、判任官ノ待遇ヲ受クル消防手及女監取締」ニ改ム
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  本法ハ本施行前ニ於ケル判任官ノ待遇ヲ受クル消防手
  ノ在職月數ニモ之ヲ適用ス
  〔政府委員川村竹治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=25

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• 026・川村竹治

  ○政府委員(川村竹治君)　本案提出ノ理由ヲ簡單ニ申
  述ベマス、朝鮮京城ハ朝鮮ニ於ケル政治經濟ノ中心デアリ
  マスルガ故ニ、其消防設備ノ改善ヲ期センガ爲ニ、今回朝
  鮮總督府地方官官制ヲ改正致シマシテ、消防手ニ判任官
  ノ待遇ヲ與フルコトニ致シマシタ、隨テ是等ノ消防手ニ對シ
  テ巡査看守ト同ジヤウニ、明治三十五年法律第二十九號
  第一號ノ規定ヲ準用致シマシテ、退隱料及遺族扶助料法
  ノ勤續年數ヲ加算スル必要ヲ認メマシテ、本改正案ヲ提出
  シタ次第デアリマス、御協贊アランコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=26

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• 027・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　日程第五、各議案ノ審查ヲ付託
  スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第五右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選
  舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=27

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• 028・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ政府提出明治四十四年法律第六
  十一號中改正法律案ノ委員ニ、併セテ付託セラレンコトヲ
  望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=28

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• 029・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第六、陪審法案
  第一讀會ヲ開キマス、大木司法大臣
  第六陪審法案(政府提出)第一讀會
  陪審法案
  陪審法
  第一章總則
  第二章陪審員及陪審ノ構成
  第三章陪審手續
  第一節公判準備
  第二節公判手續及公判ノ裁判
  第三節上訴
  第四章陪審費用
  第五章罰則
  第六章補則
  附則
  陪審法
  第一章總則
  第一條裁判所ハ本法ノ定ムル所ニ依リ刑事事件ニ
  付陪審ノ評議ニ付シテ事實ノ判斷ヲ爲スコトヲ得
  第二條死刑又ハ無期ノ懲役若ハ禁鋼ニ該ル事件ハ
  之ヲ陪審ノ評議ニ付ス
  第三條長期三年ヲ超ユル有期ノ懲役又ハ禁錮ニ該
  ル事件ニシテ地方裁判所ノ管轄ニ屬スルモノニ付被
  告人ノ請求アリタルトキハ之ヲ陪審ノ評議ニ付ス
  第四條左ニ掲クル罪ニ該ル事件ハ前二條ノ規定ニ拘
  ラス之ヲ陪審ノ評議ニ付セス
  一大審院ノ特別權限ニ屬スル罪
  二刑法第二編第一章乃至第四章及第八章ノ罪
  三軍機保護法陸軍刑法又ハ海軍刑法ノ罪其ノ他
  軍機ニ關シ犯シタル罪
  四法令ニ依リテ行フ公選ニ關シ犯シタル罪
  第五條第三條ノ請求ハ第一囘公判期日前ニ之ヲ爲
  スヘシ但シ其ノ期日前ト雖最初ニ定メタル公判期日
  ノ召喚ヲ受ケタル日ヨリ十日ヲ經過シタルトキハ之ヲ
  爲スコトヲ得ス
  第六條被告人ハ檢事ノ被告事件陳述前ハ何時ニテ
  モ事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ辭シ又ハ請求ヲ取
  下クルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テハ事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルコト
  ヲ得ス
  第七條被告人公判又ハ公判準備ニ於ケル取調ニ於
  テ公訴事實ヲ認メタルトキハ事件ヲ陪審ノ評議ニ付
  スルコトヲ得ス但シ共同被告人中公訴事實ヲ認メサ
  ル者アルトキハ此ノ限ニ在ラス
  第八條地方ノ情況ニ由リ陪審ノ評詠公平ヲ失スルノ
  虞アルトキハ檢事ハ直近上級裁判所ニ管轄移轉ノ請
  求ヲ爲スコトヲ得
  公判ニ繫屬スル事件ニ付前項ノ請求アリタルトキハ訴
  訟手續ヲ停止スヘシ
  第九條前條第一項ノ請求ヲ爲スニハ理由ヲ附シタル
  請求書ヲ管轄栽判所ニ差出スヘシ
  前項ノ請求書ヲ差出スニハ管轄、裁判所ノ、檢事ヲ經
  由スヘシ
  公判ニ繫屬スル事件ニ付管轄移轉ノ請求ヲ爲シタル
  トキハ速ニ其ノ旨ヲ裁判所ニ通知シ且請求書ノ謄本
  ヲ被告人ニ交付スヘシ
  被告人ハ膽本ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三日內ニ意見
  書ヲ差出スコトヲ得
  管轄栽判所ハ檢事ノ意見ヲ聽キ決定ヲ爲スヘシ
  第十條管轄移轉ノ請求アリタルトキハ被告人ハ檢事
  ノ被告事件陳述後ト雖其ノ決定アル迄事件ヲ陪審
  ノ評議ニ付スルコトヲ辭シ又ハ請求ヲ取下クルコトヲ
  得
  被告人事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ辭シ又ハ請
  求ヲ取下ケタルニ因リ事件陪審ノ評議ニ付スヘカラサ
  ルニ至リタルトキハ檢事ノ管轄移轉ノ請求ハ之ヲ取
  下ケタルモノト看做ス
  共同被告人中事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ辭シ
  又ハ請求ヲ取下ケタル者アルトキハ其ノ被告人ニ關ス
  ル管轄移轉ノ請求ニ付亦前項ニ同シ
  第十一條上訴裁判所ニ於テハ事件ヲ陪審ノ評議ニ
  付スルコトヲ得ス
  第二章陪審員及陪審ノ構成
  第十二條陪審員ハ左ノ各號二該當スル者タルコトヲ
  要ス
  一帝國臣民タル男子ニシテ三十歲以上タルコト
  二引續キ二年以上同一市町村內ニ住居スルコト
  三引續キ二年以上直接國稅三圓以上ヲ納ムルコ
  四讀ミ書キヲ爲シ得ルコト
  前項第二號及第三號ノ要件ハ其ノ年九月一日ノ現
  在ニ依ル
  第十三條左ニ揭クル者ハ陪審員タルコトヲ得ス
  -禁治產者準禁治產者
  二破產者ニシテ復權ヲ得サルモノ
  三聾者、啞者、盲者
  四懲役、六年以上ノ禁錮、舊刑法ノ重罪ノ刑又ハ
  重禁錮ニ處セラレタル者
  第十四條左ニ揭クル者ハ陪審員ノ職務ニ就カシムル
  コトヲ得ス
  一國務大臣
  二在職ノ判事、檢事、陸軍法務官、海軍法務官
  三在職ノ行政裁判所長官、行政裁判所評定官
  四在職ノ宮內官吏
  五現役ノ陸軍軍人、海軍軍人
  六在職ノ廳府縣長官、郡長、島司
  八七在職ノ警察官吏
  在職ノ監獄官吏
  九在職ノ裁判所書記長、裁判所書記
  十在職ノ收稅官吏、稅關官吏、專賣官吏
  十一郵便電信電話鐵道及軌道ノ現業ニ從事スル
  者竝船員
  十二市町村長
  十三辯護士、特許辨理士
  十四公證人、執達史、代書人
  十五在職ノ小學校〓員
  十六神官、神職、僧侶、諸宗〓鰤
  十七醫師齒科醫師、藥劑師
  十八學生、生徒
  第十五條陪審員ハ左ノ場合ニ於テ職務ノ執行ヨリ除
  斥セラルヘシ
  一陪審員被害者ナルトキ
  二陪審員私訴當事者ナルトキ
  三陪審員被告人、被害者若ハ私訴當事者ノ親族
  ナルトキ又ハ親族タリシトキ
  四陪審員被告人、被害者又ハ私訴當事者ノ屬スル
  家ノ戶主又ハ家族ナルトキ
  五陪審員被告人、被害者又ハ私訴當事者ノ法定
  代理人、後見監督人又ハ保佐人ナルトキ
  六陪審員被告人、被害者又ハ私訴當事者ノ同居
  人又ハ雇人ナルトキ
  七陪審員事件ニ付〓發ヲ爲シタルトキ
  八陪審員事件ニ付證人又ハ鑑定人ト爲リタルトキ
  九陪審員事件ニ付被告人ノ代理人、辯護人、輔佐
  人又ハ私訴當事者ノ代理人ト爲リタルトキ
  十陪審員事件ニ付判事、檢事、司法警察官又ハ陪
  審員トシテ職務ヲ行ヒタルトキ
  第十六條左ニ揭クル者ハ陪審員ノ職務ヲ辭スルコト
  ヲ得
  ー六十歲以上ノ者
  二在職ノ官吏、公吏、〓員
  三貴族院議員、衆議院議員及法令ヲ以テ組織シ
  タル議會ノ議員但シ會期中ニ限ル
  第十七條市町村長ハ每年陪審員資格者名簿ヲ調製
  シ九月一日現在ニ依リ其ノ市町村内ニ於テ資格ヲ有
  スル者ヲ之ニ登載スヘシ
  陪審員資格者名簿ニハ資格者ノ氏名、身分、職業、住
  居地、生年月日及納稅額ヲ記載スヘシ
  市町村長ハ陪審員資格者名簿ノ副本ヲ調製シ之ヲ
  管轄區裁判所判事ニ送付スヘシ
  第十八條市町村長ハ十月一日ヨリ七日間其ノ廳ニ
  於テ陪審員資格者名簿ヲ縱覽ニ供スヘシ
  第十九條法律ニ違反シテ陪審員資格者名簿ニ登載
  セラレタル者ハ縱覽期間內及其ノ後七日內ニ市町村
  長ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
  法律ニ違反シテ陪審員資格者名簿ニ登載セラレサル
  者ハ前項ノ規定ニ依リ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
  異議ノ申立ハ書面ヲ以テシ其ノ理由ヲ疏羽スヘシ
  第二十條市町村長異議ノ申立ヲ正當トスルトキハ遲
  滯ナク陪審員資格者々□薄ヲ修正シ其ノ旨ヲ管轄區
  裁判所判事及異議申立人ニ通知スヘシ
  市町村長異議ノ申立ヲ不當トスルトキハ選常ナク意
  見ヲ附シ申立書ヲ管轄區裁判所判事ニ送付スヘシ
  第二十一條前條第二項ノ場合ニ於テ區栽判所判事
  異議ノ申立ヲ理由ナシトスルトキハ其ノ旨ヲ市町村
  長及異議申立人ニ通知スヘシ異議ノ申立ヲ理由アリ
  トスルドキハ陪審員資格者名簿ヲ修正スへキコトヲ命
  シ其ノ旨ヲ異議申立人ニ通知スヘシ
  前項ノ通知ハ異議申立書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ二
  十日內ニ之ヲ爲スヘシ
  第二十二條地方裁判所長ハ每年九月一日迄ニ翌年
  所要ノ陪審員ノ員數ヲ定メ管轄區域內ノ市町村ニ
  割當テ之ヲ市町村長ニ通知スヘシ
  第二十三條市町村長前條ノ通知ヲ受ケタルトキハ第
  二十條及第二十一條ノ規定ニ依リ整理シタル陪審
  員資格者名薄ニ基キ抽籤ヲ以テ前條ノ規定ニ依リ割
  當テラレタル員數ノ陪審員候補者ヲ選定シ陪審員候
  補者名簿ヲ調製スヘシ
  前項ノ抽籤ハ資格者三人以上ノ立會ヲ以テ之ヲ爲
  スヘシ
  第十七條第二項及第三項ノ規定ハ陪審員候補者
  名簿ニ之ヲ準用ス
  第二十四條區裁判所判事ハ陪審員候補者ノ選定ニ
  關スル事務ニ付市町村長ヲ監督ス
  區裁判所判事ハ前項ノ事務ニ付市町村長ニ必要ナ
  ル指示ヲ爲スコトヲ得
  第二十五條市町村長ハ十一月三十日迄ニ陪審員候
  補者名簿ヲ管轄地方裁判所長ニ送付スヘシ
  市町村長ハ陪審員候補者名簿ニ登載セラレタル者ニ
  其ノ旨ヲ通知シ且其ノ氏名ヲ告示ヌヘシ
  第二十六條市町村長前條ノ現定ニ依リ陪審員候補
  者名簿ヲ送付シタル後其ノ候補者中死亡シ若ハ國籍
  ヲ喪失シタル者アルトキ又ハ第十三條若ハ第十四
  條ノ各號ノ一ニ該當スルニ至リタル者アルトキハ市町
  村長ハ遲滯ナク之ヲ管轄地方裁判所長ニ通知スヘシ
  第二十七條陪審ノ評議ニ付スヘキ事件ニ付公判期
  日定リタルトキハ地方裁判所長ハ豫メ定メタル市町
  村ノ順序ニ依リ各陪審員候補者名簿ヨリ一人又ハ
  數人ノ陪審員ヲ抽籤シ陪審員三十六人ヲ選定スヘシ
  前項ノ抽籤ハ裁判所書記ノ立會ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
  第二十八條陪審員トシテ呼出ニ應シタル者ハ其ノ市
  町村ニ於ケル陪審員候補者名簿ニ登載セラレタル者
  四分ノ三呼出ニ應シタル後ニ非サレハ其ノ年內再ヒ
  陪審員ニ選定セラルルコトナシ
  第二十九條陪審ハ十二人ノ陪審員ヲ以テ之ヲ構成
  ス
  第三十條陪審ハ[檢事被告事件ヲ陳述スル時ヨリ裁
  判所書記陪審ノ答申ヲ朗讀スル迄同一ノ陪審員ヲ
  以テ之ヲ構成スルコトヲ要ス
  第三十一條裁判長ハ事件二日以上引續キ開廷ヲ要
  スト思料スルトキハ十二人ノ陪審員ノ外一人又ハ數
  人ノ補充陪審員ヲ公判ニ立會ハシムルコトヲ得
  補充陪審員ハ陪審ヲ構成スヘキ陪審員疾病其ノ他ノ
  事由ニ因リ職務ヲ行フコト能ハサル場合ニ於テ之ニ代ル
  モノトス
  補充陪審員數人アル場合ニ於テ前項ノ職務ヲ行フハ
  第六十五條ノ規定ニ依リ爲シタル抽籤ノ順序ニ依ル
  第三十二條同日ニ數箇ノ事件ノ公判ヲ開ク場合ニ
  於テハ數箇ノ事件ニ付同一ノ陪審員ヲ以テ陪審ヲ構
  成スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ最初ノ事件ノ取調
  前其ノ手續ヲ爲スヘシ
  第三十三條檢事及被告人異議ナキトキハ一ノ事件
  ノ爲構成セラレタル陪審ヲシテ同日ニ審理スヘキ他ノ
  事件ノ爲其ノ職務ヲ行ハシムルコトヲ得
  第三十四條陪審員ニハ勅命ノ定ムル所ニ依リ旅費、
  日當及止宿料ヲ給與ス
  第三章陪審手續
  第一節公判準備
  第三十五條陪審ノ評議ニ付スヘキ事件ニ付テハ裁判
  長ハ公判準備期日ヲ定ムヘシ
  第三十六條被〓人公判準備期日前辯護人ヲ選任
  セサルトキハ裁判長ハ其ノ裁判所所在地ノ辯護士中
  ヨリ之ヲ選任スヘシ
  被告人ノ利害相反セサルトキハ同一ノ瓣護人ヲシテ
  數人ノ辯護ヲ爲サシムルコトヲ得
  第三十七條公判準備期日ニハ被告人及辯護人ヲ召
  喚スヘシ
  公判準備期日ハ之ヲ檢事ニ通知スヘシ
  第三十八條召喚狀ノ送達ノ日ト公判準備期日トノ
  間ニハ少クトモ五日ノ猶豫期間ヲ存スヘシ
  第三十九條公判期日ヲ定メタル後被告人ノ請求ニ
  因リ事件ヲ陪審ノ評議ニ付スヘキモノトシタルトキハ
  其ノ公判期日ヲ公判準備期日トス
  第四十條、公判準備期日ニ於ケル取調ハ定數ノ判事
  檢事及裁判所書記列席シテ之ヲ爲ス
  公判準備期日ニ於テハ辯護人出頭スルニ非サレハ取
  調ヲ爲スコトヲ得ス辯護人數人アルトキハ其ノ一人ノ
  出頭ヲ以テ足ル
  公判準備期日ニ於ケル取調ハ之ヲ公行セス
  第四十一條第二條ノ規定ニ依リ事件ヲ陪審ノ評議
  ニ付スルトキハ裁判長ハ被告人ニ對シ事件ヲ陪審ノ
  評議ニ付スルコトヲ辭シ得ヘキ旨ヲ告知スヘシ
  第四十二條公判準備期日ニ於テハ裁判長ハ公訴事
  實ニ付出頭シタル被告人ヲ訊問スヘシ
  陪席判事ハ裁判長ニ告ケ被告人ヲ訊問スルコトヲ得
  檢事及辯護人ハ裁判長ノ許可ヲ受ケ被告人ヲ訊問
  スルコトヲ得
  第四十三條公判準備期日ニ於テハ裁判所ハ必要ナ
  ル證據調ノ決定ヲ爲スヘシ
  檢事、被告人及辯設人ハ證人訊問、鑑定、檢證又ハ
  證據物若ハ證據書類ノ集取ヲ請求スルコトヲ得
  前項ノ請求ヲ却下スルトキハ裁判所ハ決定ヲ爲スヘ
  シ
  第四十四條裁判所書記ハ公判準備調書ヲ作リ公判
  準備期日ニ於ケル被告人ニ對スル訊問及其ノ供述、
  檢事被告人辯護人ノ中立、裁判所ノ裁判其ノ他一切
  ノ訴訟手續ヲ記載スヘシ
  第四十五條公判準備調書ニハ前條ニ規定スル事項
  ノ外被告事件、被告人及出頭シタル辯護人ノ氏名竝
  手續ヲ爲シタル裁判所年月日及裁判長陪席判事檢
  事裁判所書記ノ官氏名ヲ記載シ被告人出頭セサルト
  キハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
  第四十六條公判準備調書ハ三日內ニ之ヲ整理シ裁
  判長及裁判所書記署名捺印スヘシ
  裁判長ハ署名捺印前ニ公判準備調書ヲ檢閲シ意見
  アルトキハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
  第四十七條檢事、被告人及辯護人ハ公判準備期日
  前第四十三條第二項ノ請求ヲ爲スコトヲ得公判期
  日七日前迄亦同シ
  第四十三條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用
  ス
  第四十八條裁判所公判準備期日外ニ於テ證據決定
  ヲ爲シタルトキハ之ヲ檢事、被告人及辯護人ニ通知ス
  ヘシ
  第四十九條公判準備期日外ニ於テ證人又ハ鑑定人
  ノ訊問ヲ爲ストキハ被告人モ亦之ニ立會フコトヲ得
  裁判所外ニ於テ前項ノ手續ヲ爲ストキハ拘禁セラレ
  タル被告人ハ之ニ立會フコトヲ得ス但シ裁判所必要
  ト認ムルトキハ之ニ立會ハシムルコトヲ得
  第五十條前條第一項ノ手續ヲ爲スヘキ日時及場所
  ハ被告人ニ之ヲ通知スへシ但シ急速ヲ要スル場合ハ
  此ノ限ニ在ラス
  第五十一條公判準備中陪審ノ評議ニ付スヘカラサル
  事由生シタルトキハ通常ノ手續ニ從ヒ審判ヲ爲スヘシ
  公判準備期日ニ於テ前項ノ事由生シタルトキハ其ノ
  期日ヲ公判期日トス但シ訴訟關係人中出頭セサル
  者アルトキハ此ノ限ニ在ラス
  第五十二條被告人ハ公判準備期日ニ管轄違ノ申立
  ヲ爲スコトヲ得
  前項ノ申立ハ豫審ヲ經タル事件ニ付テハ豫審判事ニ
  對シテ其ノ申立ヲ爲シタル場合ニ非サレハ之ヲ爲スコ
  トヲ得ス
  第五十三條裁判所公判準備期日ニ公訴棄却又ハ管
  轄違ノ原由アルコトヲ認メタルトキハ決定ヲ爲スヘシ
  第五十四條栽判所公判準備期日ニ免訴ノ原由アル
  コトヲ認メタルトキハ決定ヲ爲スヘシ
  免訴ノ決定確定シタルトキハ同一ノ事件ニ付更ニ公
  訴ヲ提起スルコトヲ得ス
  第五十五條前二條ノ決定ヲ爲スニハ訴訟關係人ノ
  意見ヲ聽クヘシ
  決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
  第五十六條第五十一條又ハ第五十三條ノ場合ニ於
  テ公判準備中ニ爲シタル手續ハ其ノ效力ヲ失ハス
  第五十七條公判期日ニハ第二十七條ノ規定ニ依リ
  テ選定シタル陪審員ヲ呼出スヘシ
  第三十八條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
  第五十八條陪審員ニ對スル呼出狀ニハ出頭スヘキ日
  時場所及呼出ニ應セサルトキハ過料ニ處スルコトア
  ルヘキ旨ヲ記載スヘシ
  第五十九條陪審員疾病其ノ他已ムコトヲ得サル事
  由ニ因リ呼出ニ應スルコト能ハサル場合ニ於テハ其ノ
  職務ヲ辭スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ書面ヲ以テ其
  ノ事由ヲ疏明スヘシ
  第二節公判手續及公判ノ裁判
  第六十條陪審構成ノ手續ハ判事、檢事、裁判所書記、
  被告人、辯護人及陪審員列席シ公判廷ニ於テ之ヲ行
  フ
  前項ノ手續ハ之ヲ公行セス
  第六十一條前條第一項ノ手續ハ陪審員二十四人以
  上出頭スルニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
  出頭シタル陪審員二十四人ニ達セサルトキハ裁判長
  ハ之ヲ補充スル爲裁判所所在地又ハ其ノ附近ノ市
  町村ノ陪審員候補者名薄ヨリ抽籤ヲ以テ必要ナル
  員數ノ陪審員ヲ選定シ便宜ノ方法ニ依リ之ヲ呼出ス
  ヘシ
  前項ノ抽籤ハ裁判所書記ノ立會ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
  第六十二條陪審員二十四人以上出頭シタルトキハ
  裁判長ハ其ノ氏名、職業及住居地ヲ記載シタル書面
  ヲ示シ檢事及被告人ニ對シ陪審員中除斥セラルヘキ
  者アリヤ否ヲ問フヘシ
  裁判長ハ陪審員ニ被告人ノ氏名、職業及住居地ヲ
  告ケ除斥ノ原由アリヤ否ヲ問フヘシ
  檢事、被告人及陪審員除斥ノ原由アリトスルトキハ其
  ノ旨ノ申立ヲ爲スヘシ
  除斥ノ原由アリトスルトキハ裁判所ハ決定ヲ爲スヘシ
  第六十三條出頭シタル陪審員中第十二條乃至第十
  四條ノ規定ニ依リ陪審員タル資格ヲ有セサル者アリト
  スルトキハ裁判所ハ決定ヲ爲スヘシ
  第六十四條檢事及被告人ハ陪審ヲ構成スヘキ陪審
  員及補充陪審員ノ員數ヲ超過スル員數ニ付各其ノ
  半數ヲ忌避スルコトヲ得忌避スルコトヲ得ヘキ人員奇
  數ナルトキハ被告人ハ尙一人ヲ忌避スルコトヲ得
  被告人數人アルトキハ忌避ハ共同シテ之ヲ行フ共同
  ノ方法ニ付協議整ハサルトキハ忌避ヲ行ハシムル方法
  ハ裁判長之ヲ定ム
  第六十五條裁判長ハ陪審員ノ氏名票ヲ抽籤函ニ入
  レタル後檢事及被告人ノ忌避スルコトヲ得ル員數ヲ
  告知スヘシ
  裁判長ハ氏名票ヲ一票宛抽籤函ヨリ抽出シ之ヲ讀
  上クヘシ
  裁判長氏名ヲ讀上ケタルトキハ檢事及被告人ハ承認
  又ハ忌避スル旨ヲ陳述スヘシ其ノ順序ハ檢事ヲ先ニ
  シ被告人ヲ後ニス
  忌避ノ理由ハ之ヲ陳述スルコトヲ得ス
  次ノ氏名票ヲ抽籤函ヨリ抽出ス迄ニ陳述ヲ爲ササル
  トキハ承認ノ陳述ヲ爲シタルモノト看做ス
  裁判長抽籤終リタル旨ヲ宣言スル迄陳述ヲ爲ササル
  トキ亦同シ
  陳述ハ次ノ氏名票ヲ抽出シタル後ハ之ヲ取消スコト
  ヲ得ス裁判長抽籤終リタル旨ヲ宣言シタル後亦同シ
  第六十六條前條ノ手續ニ依リ陪審ヲ構成スヘキ陪審
  員及補充陪審員ノ數ヲ充シタルトキハ裁判長ハ抽籤
  終リタル旨ヲ宣言スヘシ
  第六十七條陪審ヲ構成スヘキ陪審員ハ初ニ當鐵シタ
  ル十二人ヲ以テ之ニ充テ補充陪審員ハ其ノ他ノ當籤
  者ヲ以テ之ニ充ツ
  第六十八條陪審員ハ第六十五條ノ規定ニ依リ爲シ
  タル抽籤ノ順序ニ從ヒ著席スヘシ
  第六十九條裁判長ハ檢事ノ被告事件陳述前陪審員
  ニ對シ陪審員ノ心得ヲ諭告シ之ヲシテ宣誓ヲ爲サシム
  ヘシ
  宣誓ハ宣誓書ニ依リ之ヲ爲スヘシ
  宣誓書ニハ良心ニ從ヒ公平誠實ニ其ノ職務ヲ行フヘ
  キコトヲ誓フ旨ヲ記載スヘシ
  裁判長ハ起立シテ宣誓書ヲ朗讀シ陪審員ヲシテ之ニ
  署名捺印セシムヘシ
  第七十條裁判長ハ陪席判事ノ一人ヲシテ被告人ノ
  訊問及證據調ヲ爲サシムルコトヲ得
  陪審員ハ裁判長ノ許可ヲ受ケ被告人、證人、鑑定人、
  通事及翻譯人ヲ訊問スルコトヲ得
  第七十一條證據ハ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外栽
  判所ノ直接ニ取調ヘタルモノニ限ル
  第七十二條左ニ揭クル書類圖畫ハ之ヲ證據ト爲スコ
  トヲ得
  -公判準備手續ニ於テ取調ヘタル證人ノ訊問調書
  二檢證、押收又ハ搜索ノ調書及之ヲ補充スル書類
  圖畫
  三公務員ノ職務ヲ以テ證明スルコトヲ得ヘキ事實
  ニ付公務員ノ作リタル書類
  四前號ノ事實ニ付外國ノ公務員ノ作リタル書類ニ
  シテ其ノ眞正ナルコトノ證明アルモノ
  五鑑定書又ハ鑑定調書及之ヲ補充スル書類圖畫
  第七十三條裁判所、豫審判事、受命判事、受託判事
  其ノ他法令ニ依リ特別ニ裁判權ヲ有スル官署、檢事、
  司法警察官又ハ訴訟上ノ共助ヲ爲ス外國ノ官署ノ
  作リタル訊問調書及之ヲ補充スル書類圖畫ハ左ノ場
  合ニ限リ之ヲ證據ト爲スコトヲ得
  -共同被告人若ハ證人死亡シタルトキ又ハ疾病其
  ノ他ノ事由ニ因リ之ヲ召喚シ難キトキ
  二被告人又ハ證人公判外ノ訊問ニ對シテ爲シタル
  供述ノ重要ナル部分ヲ公判ニ於テ變更シタルト
  キ
  三被告人又ハ證人公判廷ニ於テ供述ヲ爲ササルト
  キ
  第七十四條前二條ノ場合ノ外裁判外ニ於テ被告人
  其ノ他ノ者ノ供述ヲ錄取シタル書類又ハ裁判外ニ於
  テ作成シタル書類圖畫ハ供述者若ハ作成者死亡シタ
  ルトキ又ハ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ召喚シ難キトキニ
  限リ之ヲ證據ト爲スコトヲ得
  第七十五條證據ト爲スコトニ付訴訟關係人ノ異議
  ナキ書類圖畫ハ前三條ノ規定ニ拘ラス之ヲ證據ト爲
  スコトヲ得
  第七十六條證據調終リタル後檢事、被告人及辯護
  人ハ犯罪ノ構成要素ニ關スル事實上及法律上ノ問
  題ノミニ付意見ヲ陳述スヘシ
  辯護人數人アル場合ニ於テ被告人ノ爲ニスル意見ノ
  陳述ハ重複シテ之ヲ爲スコトヲ得ス
  公判廷ニ現ハレサル證據ハ之ヲ援用スルコトヲ得ス
  被告人又ハ辯護人ニハ最終ニ陳述スル機會ヲ與フヘ
  シ
  第七十七條前條ノ辯論終結後裁判長ハ陪審ニ對シ
  犯罪ノ構成ニ關シ法律上ノ論點及問題ト爲ルヘキ事
  實竝證據ノ要領ヲ說示シ犯罪構成事實ノ有無ヲ問
  ヒ評議ノ結果ヲ答申スヘキ旨ヲ命スヘシ但シ證據ノ信
  否及罪貴ノ有無ニ關シ意見ヲ表示スルコトヲ得ス
  第七十八條裁判長ノ說所ニ對シテハ異議ヲ中立ツル
  コトヲ得ス
  第七十九條。裁判長ノ問ハ主問ト補問トニ區別シ陪
  審ニ於テ然リ又ハ然ラスト答ヘ得ヘキ文言ヲ以テ之ヲ
  爲スヘシ
  主問ハ公判ニ付セラレタル犯罪構成事實ノ有無ヲ評
  議セシムル爲之ヲ爲スモノトス
  補問ハ公判ニ付セラレタルモノト異リタル犯罪構成事
  實ノ有無ヲ評議セシムル必要アリト認ムル場合ニ於テ
  之ヲ爲スモノトス
  犯罪ノ成立ヲ阻却スル原由ト爲ルヘキ事實ノ有無ヲ
  評議セシムル必要アリト認ムルトキハ其ノ問ハ他ノ問
  ト分別シテ之ヲ爲スヘシ
  第八十條陪審員、檢事、被告人及辯護人ハ問ノ變更
  ノ申立ヲ爲スコトヲ得
  前項ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ決定ヲ爲スヘシ
  第八十一條栽判長ハ問書ニ署名捺印シ之ヲ陪審ニ
  交付スヘシ
  陪審員ハ問書ノ謄本ノ交付ヲ諸求スルコトヲ得
  第八十二條栽判長ハ評議ヲ爲サシムル爲陪審員ヲシ
  テ評議室ニ退カシムヘシ
  裁判長ハ公判廷ニ於テ而シクル證據物及證據書類
  ヲ陪審ニ交付スルコトヲ得
  第八十三條陪審員ハ裁判長ノ許可ヲ受クルニ非サレ
  ハ評議ヲ了ル前評議室ヲ出テ又ハ他人ト交通スルコ
  トヲ得ス
  陪審員ニ非サル者ハ裁判長ノ許可ヲ受クルニ非サレ
  ハ評議室ニ入ルコトヲ得ス
  第八十四條陪審ノ答申前陪審員ヲシテ裁判所ヲ退
  出セシムル場合ニ於テハ裁判長ハ陪審員ニ對シ滯留
  ノ場所及他人トノ交通ニ關シ遵守スヘキ事項ヲ指元
  スヘシ
  第八十五條陪審員第八十三條第一項ノ規定ニ違反
  シタルトキ又ハ前條ノ規定ニ依リ指示セラレタル事項
  ヲ遵守セサルトキハ裁判所ハ其ノ陪審員ニ對シ職務
  ノ執行ヲ禁止スルコトヲ得
  第八十六條陪審員ハ陪審長ヲ互選スヘシ
  陪審長ハ議事ヲ整理ス
  第八十七條陪審ハ評議ヲ了ル前更ニ說示ヲ請求スル
  コトヲ得此ノ場合ニ於テハ公判廷ニ於テ其ノ申立ヲ
  爲スヘシ
  第八十八條答申ハ問ニ對シ然リ又ハ然ラスノ語ヲ以
  テ之ヲ爲スヘシ但シ問ニ揭クル事實ノ一部ヲ肯定又
  ハ否定スルトキハ之ニ付然リ又ハ然ラスノ語ヲ以テ答
  申スヘシ
  第八十九條評議ハ先ツ主問ニ付之ヲ爲スヘシ
  主問ヲ否定シタル場合ニ於テ補問アルトキハ之ニ付
  評議ヲ爲スヘシ
  第九十條陪審員ハ問ニ付各其ノ意見ヲ表示スヘシ
  陪審長ハ最後ニ其ノ意見ヲ表示スヘシ
  第九十一條犯罪構成事實ヲ肯定スルニハ陪審員ノ
  過半數ノ意見ニ依ルコトヲ要ス
  犯罪構成事實ヲ肯定スル陪審員ノ意見其ノ過半數
  ニ達セサルトキハ之ヲ否定シタルモノトス
  第九十二條答申ハ問書ニ記載シ陪審長署名捺印シ
  テ之ヲ裁判長ニ提出スヘシ
  答申ニ不備又ハ齟齬アルトキハ裁判長ハ問書ヲ返付
  シ更ニ評議ヲ爲シ答申ヲ訂正スヘキ旨ヲ命スヘシ
  第九十三條裁判所ハ公判廷ニ於テ栽判所書記ヲシ
  テ問及之ニ對スル陪審ノ答申ヲ朗讀セシムヘシ
  第九十四條前條ノ手續終リタルトキハ裁判長ハ陪審
  員ヲ退廷セシムヘシ
  第九十五條裁判所陪審ノ答申ヲ不當ト認ムルトキハ
  訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス決定ヲ以テ事件
  ヲ更ニ他ノ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ得
  第九十六條陪審犯罪構成事實ヲ肯定スルノ答申ヲ
  爲シタル場合ニ於テ栽判所前條ノ決定ヲ爲ササルト
  キハ檢事ハ適用スヘキ法令及刑ニ付意見ヲ陳逋スヘ
  シ
  被告人及辯護人ハ意見ヲ陳述スルコトヲ得
  被告人又ハ辯護人ニハ最終ニ陳述スル機會ヲ與フヘ
  シ
  第九十七條陪審ノ答申ヲ採擇シテ判決ノ言渡ヲ爲
  スニハ裁判所ハ陪審ノ評議ニ付シテ事實ノ判斷ヲ爲
  シタル旨ヲ示スヘシ
  有罪ノ言渡ヲ爲スニハ罪ト爲ルヘキ事實及法令ノ適
  用ヲ示スヘシ刑ノ加重減免ノ原由タル事實上ノ主張
  アリタルトキハ之ニ對スル判斷ヲ示スヘシ
  無罪ノ言渡ヲ爲スニハ犯罪構成事實ヲ認メサルコト
  又ハ被告事件罪ト爲ラサルコトヲ示スヘシ
  第九十八條引續キ七日以上開廷セサリシ場合ニ於
  テハ公判手續ヲ更新スヘシ
  陪審ヲ構成スヘキ陪審員疾病其ノ他ノ事由ニ因リ職
  務ヲ行フコト能ハサル場合ニ於テ補充陪審員ナキトキ
  亦前項ニ同シ
  前二項ノ場合ニ於テハ新ニ陪審構成ノ手續ヲ爲スヘ
  シ
  第九十九條裁判所ハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ
  問ハス公訴棄却、管轄違又ハ免訴ノ栽判ヲ爲スヘキ
  原由アルコトヲ認メタル場合ニ於テハ陪審ノ評議ニ付
  セスシテ審判ヲ爲スヘシ
  第百條裁判所書記ハ陪審員ノ氏名、陪審ノ構成其
  ノ他陪審ニ關スル訴訟手續及裁判長ノ說示ノ要領
  ヲ公判調書ニ記載スヘシ
  第三節上訴
  第百一條陪審ノ答申ヲ採擇シテ事實ノ判斷ヲ爲シタ
  ル事件ノ判決ニ對シテハ控訴ヲ爲スコトヲ得ス
  第百二條陪審ノ答申ヲ採擇シテ事實ノ判斷ヲ爲シタ
  ル事件ノ判決ニ對シテハ大審院ニ上告ヲ爲スコトヲ得
  第百三條上告ハ刑事訴訟法ニ於テ第二審ノ判決ニ
  對シ上告ヲ爲スコトヲ得ル理由アル場合ニ於テ之ヲ
  爲スコトヲ得但シ事實ノ誤認ヲ理由トスル場合ハ此
  ノ限ニ在ラス
  第百四條左ノ場合ニ於テハ常ニ上告ノ理由アルモノ
  トス
  -法律ニ從ヒ陪審ヲ構成セサリシトキ
  二第十二條第一項第一號又ハ第十三條ノ規定ニ
  依リ陪審員タルコトヲ得サル者評議ニ關與シタ
  ルトキ但シ評議ヲ了ル前訴訟關係人異議ヲ述へ
  サリシトキハ此ノ限ニ在ラス
  三法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラルヽキ陪審
  員評議ニ關與シタルトキ但シ第六十二條第三
  項ノ申立ヲ爲ササリシトキハ此ノ限ニ在ラス
  四忌避セラレタル陪審員評議ニ關〓シタルトキ但
  シ評議ヲ了ル前訴訟關係人異議ヲ述ヘサリシト
  キハ此ノ限ニ在ラス
  五裁判長ノ說示法律ニ違反シタルトキ
  六裁判長證據トシテ說示シタルモノ法律上證據ト
  爲スコトヲ得サルモノナルトキ
  七裁判長法律上ノ論點ニ關シ不當ノ說示ヲ爲シ
  タルトキ
  第百五條上告栽判所原判決ヲ破毀スル場合ニ於テ
  ハ事實ノ審理ヲ爲サスシテ自ラ裁判ヲ爲ス場合ヲ除
  クノ外事件ヲ原栽判所ニ差戾シ又ハ原裁判所ト同
  等ナル他ノ裁判所ニ移送スヘシ
  破毀ノ理由ト爲リタル事項陪審ノ評議ノ結果ニ影響
  ナキモノナルトキハ陪審ノ答申ハ其ノ效力ヲ有ス此ノ
  場合ニ於テハ事件ノ差戾又ハ移送ヲ受ケタル栽判所
  ハ答申以後ノ手續ノミヲ爲スヘシ
  第四章陪審費用
  第百六條左ニ揭クルモノヲ以テ陪審費用トシテ訴訟
  費用ノ一部トス
  -陪審員ノ呼出ニ要スル費用
  二陪審員ニ給與スヘキ旅費、日當及止宿料
  第百七條陪審費用ハ第三條ノ場合ニ於テ刑ノ言渡ヲ
  爲ストキハ其ノ全部又ハ一部ヲ被告人ノ負擔トス
  第五章罰則
  第百八條陪審員ハ左ノ場合ニ於テハ五百圓以下ノ
  過料ニ處ス
  -故ナク呼出ニ應セサルトキ
  二宣誓ヲ拒ミタルトキ
  三第八十三條第一項ノ規定ニ違反シタルトキ
  四故ナク退廷シタルトキ
  五第八十四條ノ指而ニ違反シタルトキ
  第百九條陪審員評議ノ〓末又ハ各員ノ意見若ハ其
  ノ多少ノ數ヲ漏泄シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處
  ス
  前項ノ事項ヲ新聞紙其ノ他ノ出版物ニ揭載シタルト
  キハ新聞紙ニ在リテハ編輯人及發行人其ノ他ノ出版
  物ニ在リテハ著作者及發行者ヲ二千圓以下ノ罰金
  三段入
  第百十條裁判長ノ許可ヲ受ケスシテ陪審ノ評議室ニ
  八リ又ハ陪審ノ評議ヲ了ル前裁判所内ニ於テ陪審
  員ト交通シタル者ハ五百園以下ノ罰金ニ處ス
  第百十一條陪審ノ評議ニ付セラレタル事件ニ付陪審
  員ニ對シ請託ヲ爲シ又ハ評議ヲ了ル前私ニ意見ヲ述
  ヘタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二千團以下ノ罰金ニ
  處ス
  第百十二條過料ノ裁判ハ陪審員ヲ呼出シタル裁判
  所檢事ノ意見ヲ聽キ決定ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
  前項ノ決定ニ對シテハ抗告ヲ爲スコトヲ得此ノ抗告
  ハ執行ヲ停止スル效力ヲ有ス
  過料ノ裁判ノ執行ニ付テハ非訟事件手續法第二百
  八條ノ規定ヲ準用ス
  第六章補則
  第百十三條市制第六條ノ市又ハ北海道ノ區ニ於テ
  ハ本法中市ニ關スル規定ハ區ニ、市長ニ關スル規定ハ
  區長ニ之ヲ適用ス
  町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ本法中町村ニ關スル
  規定ハ町村ニ準スヘキモノニ、町村長ニ關スル規定ハ
  町村長ニ準スヘキ者ニ之ヲ適用ス
  第百十四條第十二條ノ直接國稅ノ種類ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム
  附則
  本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法施行前公判期日ノ定リタル事件ニ付テハ本法ヲ適
  用セス
  〔國務大臣伯爵大木遠吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=29

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• 030・國務大臣(伯爵大木遠吉君)

  ○國務大臣(伯爵大木遠吉君)　只今上程ニ相成リマシ
  タル陪審法案提出ノ理由ニ付キマシテ、其〓要ヲ述ベマス、
  司法上ニ陪審ノ制ヲ用ユベシト云フノ議ハ多年ノ懸案デア
  リマス、當局ニ於キマシテハ銳意〓究ニ〓究ヲ重ネマシテ、
  之ヲ法制審議會ノ議ニ付シマシテ十分ニ郞重ニ審議ノ結
  果、遂ニ滿場一致ヲ以テ其綱領ヲ定メタノデアリマス、其綱
  領ニ基キマシテ、主務省タル司法省ニ於キママテ、案ヲ起シ、
  之ヲ閣議ニ付シマシテ、更ニ極密院ノ議ヲ經テ、爰ニ帝國議
  會ニ提案スルコトヲ得マシタルコトハ、自分ノ度賀措カザル
  次第デアリマス、卒業ノ網領ヲ定ムルニ當リマシテ、又其綱
  領ニ基キマシテ法案ヲ作ルニ際シマシテモ、蔣又樞密院ノ
  會議ニ於キマシテモ、最モ慎重ニ審議ヲ重ネマシタル點ハ本
  案ト必法上ノ關係デマッタノデアリマス、本案ノ趣旨憲法ト
  反スル事ナキヤ否ヤ、此點ガ總テノ會議ニ於テ重要ナル點
  デアリマス、常ニ問題トセラレタ所デアリマス、而モ審議ニ審
  議ヲ負ヌルニ從ヒマシテ、本案ハ毫モ意法ニ牴觸スル事ナキ
  コトハ、總テノ會議ニ於テ理論ノ一致シタ所デアリマス、崇
  成ルニ至リマシテ司法當局ニ於テハ、其憲法ノ精神ニ毫モ
  反スル所ナキヲ確信致シマシテ、自分ハ安ンジテ本案ヲ帝
  國議會ニ提出スルコトヲ得タノデアリマス、此點ニ關シマシ
  テハ尙ホ司法次官其他ノ政府委員ヨリ、必要ニ應ジ十分
  御說明ヲ申上ゲル所ガアルト思ヒマス、本案兩院ヲ通過シ
  テ爰ニ確定シタル法律トナリマシタル曉ニハ、國民ハ進ンデ
  司法ノ一部ニ干與スルコトガ、恰モ立法行政ニ於ケルト同
  一ナルコトヲ得マスルコトハ、蓋シ立憲ノ本義之ヲ以テ完キヲ
  得ル次第デアルト思フノデアリマス(拍手)何卒斯樣ナ案ニ
  對シマシテ、諸君ハ盡派ノ別ナク司法事務ノ改善ノ爲メ、何
  卒滿場一致ヲ以テ本案ヲ御協賛下サランコトヲ自分ハ切
  ニ希望スル次第デアリマス(拍手)
  〇議長(奥繫三郞君)本案ニ付キマシテ質疑ノ通告ガア
  リマス、順序ニ依ッテ之ヲ許シマス-鈴木富士彌君
  〔鈴木富士彌君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=30

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• 031・鈴木富士彌君

  ○鈴木富士彌君　陪審法案ニ關シテ五點許リ疑ヲ質ス
  ノヲ御許ヲ得タイト思ヒマス、多年朝野法曹界ノ懸案トシ
  テ注目セラレテ居リマシタ陪審法案ガ免ニ角樞密院ノ審議
  ヲ經テ、我ガ衆議院ニ上程セラレル運ビニナリマシタコトハ
  國家ノ爲メ洵ニ祝福ニ堪ヘナイ次第デアリマス、同時ニ陪
  審法案ノ確立ニ盡力セラレマシク朝野法曹諸君ノ勞ヲ多
  トスル次第デゴザイマス、サリナガラ法案ヲ手ニシテ能ク其
  内容ヲ審査スルニ及ビマシテ、私共ハ非常ニ失望シ、落膽シ、
  且ツ感ヒヲ生ジタ次第デコザイマス、仍テ爰ニ質問ヲ致シ當
  局ノ答辯ヲ得テ、速記錄ニ留メテ置キタイト存ズルノデアリ
  マス、第一點ハ木案ニ於テ政府ハ何故ニ起訴陪審ノ制度
  ヲ採用シナカッタカ、此點ノ御意見ヲ永リタイノデアリマス、
  今更卒新シク申スマデモナク、陪審制度ノ元祖ハ英國デア
  リマシテ、其通用ノ巧妙ニシテ且ツ整然タル、亦英國ニ如ク
  モノハナイノデアリマス、然ルニ英國ニハ四種ノ陪審ガゴザ
  イマス、檢屍陪審、卽チ死體ヲ檢視スルニ立會フ所ノ陪密、
  竝ニ主婦陪審、卽チ婦人ノ姙娠ノ眞偽ヲ判定スル所ノ陪
  審、此〓ツノモノハ別問題ト致シマシテ、直接裁判ニ干與ス
  ル所ノ陪審ニ二種類ゴザイマス、卽チ大陪審(グラント、ジユ
  リー)ト小陪審(ベチー、ジユリー)ト此二制度デゴザイマス、大
  陪審ハ被告人ヲ起訴スベキヤ否ヤヲ判斷致シマシテ、愈こ起
  訴スベシト云フ判定ヲ得タル後ニ裁判所ガ之ヲ受理致シマ
  シテ、更ニ其罪アリヤ一否ヤ、事實ノ認定ヲ小陪審ニ掛ケテ判
  断ヲ致スノデアリマス、今回御提出ノ陪審法案ハ小陪審ノ
  制度ノミヲ採用致シマシテ、大陪審ヲ全然除外致シテ居ル
  ノデアリマス、元來大陪審、卽チ起訴陪審ト一云フ制度ハ、日
  本ノ如ク人權蹂躪ノデ實ガ多ク、且ツ檢察官横暴ノ聲ノ
  高イ國柄ニ於キマシテハ、最モ其必要ヲ感ズルノデアリマス、
  殊ニ目下審議中ノ刑事訴訟法ハ、檢事及司法警察官ノ權
  限ヲ著シク擴張致シテ居リマスルカラ、斯ル法制ノ下ニ於キ
  マシテハ、之ヲ要求スルノ理由ガ愈〓切實ナルヲ覺ユル次第
  デゴザイマス、無辜ノ民ガ一度被告人トシテ勾留セラレ、或
  ハ勾留セラレズシテ起訴セラレ、法廷ニ引出サレテ裁判ヲ受
  ケ、其詳細ガ一々新間紙ニ報道セラレルニ至リマシテハ、他
  日假令無罪トナリ靑天白日ノ身トナリマシテモ、其人ガ名
  譽上受クル所ノ打擊、健康上受クル所ノ苦痛、財產上受ク
  ル所ノ損害ハ中ニ恢復ガ出來ヌノデアリマス、故ニ人權尊重
  ノ趣旨ヨリ致シマスレバ、公判陪審ト共ニ起訴陪審ヲ採用
  スルノガ、其趣旨ヲ貫徹スル所以デアラウト信ズルノデアリ
  マス、苟モ英國法ヲ模範トスル以上、政府ハ何故ニ大陪審
  卽チ起訴陪審ヲ排斥セラレタノデアルカ、此理由ヲ承リタイ
  ト思フノデアリマス、日本ニ於キマシテモ花井博士、其他在
  野ノ法曹間ニハ此起訴陪審ヲ採用スベシト云フ論者ガ可
  ナリ澤山アルノデアリマス、尤モ起訴陪審ハ英國ニ於キマシ
  テモ無用ノ長物デアルト云フ議論ガアリマス、又米國ノ「モー
  リス、バーメリー」ト云フ人ノ如キハ、起訴陪審ノ弊害ヲ頻
  ニ指摘致シマシテ、寧口起訴ノ職務ハ豫審判事又ハ公訴提
  起ノ專門官吏ニ托スル方ガ適切デアルト云フヤウナ議論ヲ
  唱ヘテ居リマスルシ、又獨逸ニ於テモ、佛蘭西ニ於テモ、起
  訴陪審ノ制度ハ採用致シテハ居リマセヌ、サリナガラ反對
  論ノアルコトヲ申シマスレバ、陪審制度其モノニモ亦反對論
  ガアルノデゴザイマス、而シテ苟モ陪審制度ヲ採用スルト云
  フ以上ハ、矢張起訴陪審ニ付キテモ考慮ヲ回サナケレバナ
  ラヌモノデアラウト信ズルノデアリマス、ソコデ政府當局ハ此
  「パーメリー」說ノ如クニ起訴陪審ヲ絕對ニ不必要ナリトシ
  テ、之ヲ除外致シタノデアリマズルカ、或ハ陪審制度ノ採用
  ニ付キマシテハ朝野ニ異論者ガ少クアリマセヌカラ、先ヅ公
  判陪審ヲ設ケ、追テ漸次起訴陪審ニ及ポス趣旨デゴザイマ
  スルカ、此邊ヲ承シテ置クコトガ今日必要デアラウカト存ジマ
  ス、腹藏ナキ御意見ヲ承リタイノデアリマス、第二點ハ政府
  當局ハ陪審ヲ裁判所ノ諮問機關ト見テ居ルノカ、或ハ事實
  認定ニ關スル評決機間ト見テ居ルノカ、此點ヲ御伺ヒ致シ
  タイト思フノデフリマス、本案ノ第一條ヲ見マスルト「裁判
  所ハ本法ノ定ムル所ニ依リ刑事事件ニ付陪審ノ評議ニ付
  シテ事實ノ判斷ヲ爲スコトヲ得」ト規定致シテアリマス、此
  陪審ノ評議」ト云フ文字ガ著シク目障リニナルデアリマス、
  政府ガ樞密院ニ提出サレマシタ司法省提案ノ原案ニハ「陪
  審評決」ナル文字ヲ用ヰテ「評議」ト云フ文字ハ使用シテナ
  カッタ筈デアリマス「評決」ト云フ文字ハ極テ强イ意味ヲ持ッ
  テ居リマス、獨逸ノ刑事訴訟法ニ於テハ「スプルッフ」ト云フ
  文字ヲ用キテ「評議」ト云フ文字トハ之ヲ區別致シテ居リマ
  ス、然ルニ此「評決」ナツ文字ガ「評議」ト修正ヲサレタノデハ、
  本員甚ダ失望ヲ感ゼザルヲ得ナイノデアリマス、或ハ「評決」
  ト評議トハ同ジ意味デアッテ、其間何等ノ輕重ガ無イト云フ
  御意見ガアルカモ知レマセヌケレドモ、普通文字ノ用例トシ
  テ「評決」ト「評議」トハ著ジク違イマス、原案ニ於テ陪審ハ明
  ニ犯罪事實ノ評決機關デアッタコトハ爭フベカラザル事實デ
  ゴザイマス、英國ニ於テモ、米國ニ於テモ、米國ニ於テモ、獨
  逸ニ於テモ、佛蘭西ニ於テモ、陪審制度ハ[皆評決機關デア
  リマス、然ルニソレガ本案ニ至ッテ、俄ニ評議機關ト變シタノ
  デアリマス、評議機關ハ諮問機關ノ別名タルニ過ギヌノデア
  リマス、其證據ニハ本案ノ第九十五條ニ於テ、裁判所陪審
  ノ答申ヲ不當ト認ムル時ハ、何囘デモ繰返シテ事件ヲ他ノ
  陪審ノ評議ニ付スルコトノ出來ル旨ヲ規定致シマシテ、氣
  ニ入ラヌ評議ハ何十回ヂモ更新シテ、此評議ヲ改メサセル
  コトガ出來ルト云フ立テ方ニナッテ居リマス、而シテ第九十
  七條ニ於キマシテハ、「陪審ノ答申ヲ採擇シテ、判決ノ言渡ヲ
  爲スニハ云々」ト規定シテ、陪審ノ答申ヲ採擇スルトセザル
  トハ、全ク裁判所ノ自由ナルガ如キ、文句ヲ使用致シテ居リ
  マス、斯ノ如キ不都合ナ文字、卽チ「陪審ノ答申ヲ採擇シテ一
  ト云フ如キ、餘計ナ文字ハ臨時法制審議會ノ決定シタル綱
  領三十八箇條ノ中ニハ無カッタノデアリマス、隨テ之ニ基イ
  テ司法省デ起草シタル所ノ原案ニモ挿入致シテ無カッタノ
  デアリマス、現ニ本案ノ第九十七條ニ該當スル原案ノ第百
  十一條ニハ書イテ無イノデアリマス、法文全體ニ亙ッテ「評
  決」ノ文字ヲ「評議」ト改メ、且ツ九十七條ニ餘計ナ文句ヲ
  挿入スルコトニ依クテ、陪審ガ諮問機關ノ性質ヲ帶ビルニ至ッ
  タコトハ、殆ド疑ヲ容レルニ餘地ナキ程明白ナ解釋デハナイ
  カト信ズルノデアリマス、是デハ折角ノ陪審法モ殆ド骨拔同
  樣デアリマシテ、陪審制度ノ高遠ナル理想精神ハ全ク沒却
  セラレタモノデアルト私ハ信ズルノデアリマス(拍手起ル)若
  シ評議ト評決トガ同一ノ意味デアルト申シマスルナラバ、寧
  口原案ヲ尊重シテ、原案通リニ「評決」ト云フ文字ヲ使用ス
  ルコトガ適當ノ處置ト信ズルノデアリマス、然ルニ强テ之ヲ
  「評議」ト改メタ所ニ修正者ノ或ル策略ガアリ、或ル陰謀ガ
  アルノデハナイカト疑ハルヽ次第ニゴザイマス、政府ハ何故ニ
  斯樣ナ修正ニ御同意ヲ爲サレタノデアルカ、此點ニ對スル御
  說明ヲ承リタイ、勿論私ハ決シテ羊頭ヲ掲ゲテ狗肉ヲ賣ル
  ト云フヤウナ極言ハ致シマセヌガ、露骨ニ申シマスレバ本案
  ノ如キハ、名ヲ陪審ニ藉ッテ實ハ陪審ノ眞似事ヲシタニ過ギ
  ナイト言ッテモ、恐ラクハ過言デナイト存ジマス、沿革ヲ繹ネ
  テ見マシテモ、明治六年ノ十月ニ制定サレタ參座規則ト云
  フモノガアリマス、是ガ日本ニ於テ初テ陪審ノ精神ヲ法制ニ
  注入シタル濫觴デゴザイマス、此制度ニ於キマシテハ、陪審
  員ハ民間カラ選擧サレズシテ、官吏ノ中カラ選出サレマシタ
  カラ、之ヲ官吏陪審若クハ役人陪審、甚シキニ至ッテハ官僚
  陪審ナドヽ云フ文字ヲ用キテ居リマスケレドモ、其規則ノ第
  四項ヲ見マスルト、「罪ノ輕重ヲ決スルハ判事ノ任ト雖モ-
  罪ノ輕重ヲ決スルハ判事ノ任ト雖モ、罪有ルト否トヲ定ム
  ルハ参座ノ權トス」ト書イテ、極テ徹底的ノ陪審制度ヲ實行
  致シタノデアル、越エテ明治十五年施行セラレマシタ治罪
  法ハ、佛人「ポアンナトド」氏ノ起草スル所デアリマスガ、此草
  案ノ中ニ規定サレタ陪審制度モ、本案ニ較ブレバ遙ニ徹底
  的ノヤウニ私ハ思フノデアリマス、大正ノ御代、今日制定サ
  レタ所ノ本案ガ、五十年前ノ參座規則ニモ劣ルヤウデハ、其
  前途洵ニ憂慮ニ堪ヘナイノデアリマス、元來陪審制度ニ付
  キマシテハ、學者間ニ非難ノ聲ガ可ナリ高イノデアリマスケ
  レドモ、免ニ角文明國ト名ノ付ク國デ、此制度ヲ採用シテ居
  ラナイノハ、和蘭ト土耳其ニ過ギナイノデアリマス、日本ガ遲
  レ馳ナガラ此文明的ノ制度ヲ採用スルニ當リマシテ、何處
  ノ國ニモ類例ノ無イヤウナ不徹底ナ無氣力ナル陪審制度、
  形骸ダケ備ッテ精神ノ備ッテ居ラヌ陪審制度言葉ヲ換ヘテ
  言ヘバ陪審類似ノ制度ト申スヤウナ低級ノ制度ヲ布タト
  云フコトハ、內國民/信賴ヲ繫グ所以デナク、又外日本ノ名
  譽ヲ維持スル所以デナカラウト思ヒマス、唯一時ヲ糊塗ス
  ルニハ問題ガ餘リニ重大デアリマス、故ニ陪審法ニ對スル政
  府當局ノ誠意ヲ疑フト中シテハ言葉ガ過ギルカ知リマセヌ
  ガ、何トナク政府果シテ眞面目ナルヤト云フ心ノ生ズルノハ、
  洵ニ已ムヲ得ナイ次第ト存ジマス、尤モ政府ト致シマテハ、
  樞密院ニ於テ大ニ努力ヲシタノデアルガ、事志ト違ッテ其運
  ビニ至ラナカッタノデ、假令不完全デアッテモ、有ルハ無キニ
  優ルト云フ意味デ提出セラレタトスルナラバ、深ク追窮スル
  ニハ及パヌノデアリマス、免ニ角陪審ガ最初評決機關タリシ
  モノヲ後ニ改メテ諮問機關ニ致シタト云フコトハ洵ニ千秋
  ノ恨事ト思ヒマス、此點ニ關シテ政府ノ見解ヲ承シテ置ク必
  要ガアルト存ジマス、ソレカラ第三ハ陪審制度ト違憲論トノ
  關係デゴザイマスカ、是ハ先程大木法相カラ一通リノ說明
  ガアッタノデアリマス、私ハ元來陪審制度違憲論者デハ無イ
  ノデアリマス、併ナガラ違憲論者ガ樞密顧問官竝大審院判
  事ト云フヤウナ地位ノ高イ人々ノ間ニ存在スルコトハ動カ
  スペカラザル事實デアリマス、其議論ヲ一〓ニ愚論トシテ一
  蹴シ去ルノハ如何ナモノデアラウカト思ヒマス、本案ニ於キマ
  シテ陪審ノ評決ナル文字ヲ評議ト修正シタノモ、此違憲論
  ヲ顧慮シタノデハナイカト想像サレルノデアリマス、私ガ初テ
  司法省起草ノ原案ヲ見マシタ時分ニ、先ヅ第一ニ起ッタ感
  ジハ、政府ハ「ヂレンマ」ニ掛カラレテ居ルノデハナイカト云フ
  コトデアリマス、卽チ評決ヲ以テ裁判官ヲ拘束スルト云フコ
  トニナレバ、憲法違反ト云フ非難ガ起ルシ、評決デ拘束シナ
  イヤウニスレバ、諮問機關トナッテ陪審ノ根本義ヲ破壞スル
  ヤウニナリ、ドチラニ落チテモ不都合デアルガコ政府ハ果シテ
  如何ナル態度ヲ執ルカ、密ニ注目致シテ居タノデアリマスガ、
  政府ハ樞密院ノ修正ヲ容レテ評決ヲ評議ト改メテ、茲ニ違
  憲論ヲ免ルヽ方針ヲ執ラレタラシク『見エルノデアリマス、隨
  テ陪審制度ハ其根柢ヲ破ラルヽト云フ次第ニナッダヤウニ觀
  察致シテ居リマス、政府ノ苦シキ立場ニハ同情致シテ居リ
  マスルガ、陪審制度ト違憲論トノ關係ハ果シテ斯ク觀察シ
  テ差支ナイモノデアルカドウカ、此點ニ對シテハ今少シク政
  府ノ御釋明ガ必要ノヤウニ思フノデアリマス、ソレカラ第四
  點、政府ハ何故ニ此陪審ニ付スベキ事件ノ範圍ヲ縮小致
  シタノデアルカ、其理由ヲ承リタイノデアリマス、臨時法制審
  議會決定ノ綱領ニ於キマシテハ、第一法定陪審ニ付スベキ
  モノトシテ、死刑若クハ無期刑ニ當ル罪ノ外ニ皇室ニ對ス
  ル罪、内亂罪、外患罪、國交ニ關スル罪、騒擾罪ノ五罪ヲ揭
  ゲテアッタ、第二ニハ請求陪審ヲ短期一年以上ノ刑ニ當ル
  罪ニ適用シ、第三、別ニ費用豫納ノ請求陪審ト云フモノヲ
  認メ、第四ニ裁判所ノ職權ヲ以テ事件ヲ陪審ニ付スルコト
  ヲ許シ、第五ニ大審院ノ特別權限ニ屬スル事件ニ付テ特別
  陪審ナルモノヲ規定致シテ居リマス、而シテ此五項ハ司法
  省起案ノ原案ニ於テ、第二條、第三條、第四條、第六條、第
  十八條竝第四章九箇條ノ各條項ニ亙ッテ之ヲ規定致シタ
  ニモ拘ラズ、本案ニ於テハ法定陪審ノ中カラ前述ノ內亂罪
  外四罪ヲ削除致シテ居リマス、請求陪審ヲ長期三年ヲ超
  エル刑期ノ事件ニ適用スル、代リニ、費用豫納ノ請求陪審
  竝職權陪審及特別陪審ヲ削除シテ、陪審ニ付スベキ事
  件ノ範圍ヲ著シク縮小〓シテ居ルノデアリマス、尤モ其ノ中
  選擧ニ關スル罪ヲ陪審カラ除外致シタト云フコトハ、政爭
  ノ極テ激甚ナル今日、私ハ樞密院ノ御意見ニ同意致スノデ
  アリマスガ、其他ノ範圍ヲ縮小シタト云フコトニ付テハ、甚ダ
  感服致シ兼ネルノデアリマス、文明諸國最近立法ノ趨勢ヲ
  見マスルノニ、陪審制度ハ各方面ニ於テ反對ノ聲ガ極テ高
  イニモ拘ラズ、實際ニ於テハ其管轄範圍ガ益、擴張セラレマ
  シテ、却テ通常裁判所ノ管轄範圍ヲ著シク縮小致シテ居ル
  ト云フノハ動カスベカラザル事實デアリマス、然ルニ本案ハ
  反對ニ、原案ヨリ寧ロ陪審ノ範圍ヲ縮、少シタト云フノハ全
  體如何ナル理由ニ基クモノデアリマスルカ、斯樣ナル修正ニ
  政府ガ同意セラレタノハ如何ナル理由ニ基クノデアルカ、之
  ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、ソレカラ第五點ハ本案施行
  ノ期日ト其經費豫算ニ關スル政府ノ御見込ヲ伺ヒタイノ
  デアリマス、陪審制度ヲ初テ日本ニ施キマスルニ當リマシテ
  ハ、無論相當ノ準備ノ要ル事デゴザイマスルガ、全體何時頃
  カラ之ヲ施行スル事ニナルノデアリマセウカ、次ニ經費ニ付
  キマシテハ、司法省デ立テタ豫算ト臨時法制審議會ノ委員
  ノ計算シマシタ所ノ數額トノ問ニ非常ナ懸隔ガゴザイマス
  二割三割ノ差デアレバ格別ノ事ハアリマセヌケレドモ一方
  ハ他方ノ何倍ト云フヤウナ甚シキ懸隔ガアリマス、是ハ計算
  ノ基礎ガ異ッテ居ルカラ、斯樣ナ差ヲ生ジタ次第デアラウト
  存ジマスルガ、何卒此經費豫算ニ付キマシテハ、基礎ヲ示シ
  テ其大要ノ御說明ヲ願ヒタイノデアリマス、殊ニ初年ハ幾ラ
  愈と陪審制度ヴ全部完備シテ曉ニハ幾テ許リノ經費カ要ル
  事ニナルノデアルカ、此點ヲモ併セテ伺ヒタイト思フノデアリ
  マス、言フ迄モナク斯ノ如キ大法案ハ黨派問題デナク、國家
  ノ重大事項デゴザイマスカラ、何卒精密ナル御答辯ヲ願フテ
  置ク方ガ宜カラウト信ズル次第デゴザイマス、私ノ質問ハ以
  上五項デゴザイマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=31

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• 032・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　横田法制局長官
  〔政府委員橫田千之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=32

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• 033・横田千之助

  ○政府委員(横田千之助君)　鈴木君カラ本案ニ付キマ
  シテ五箇條ノ質問ガアリマシタカラシテ、逐次御各ヲ致シ
  マス、第一ニハ英國ノ陪審法ヲ模範ニシテ立案シタルニ拘
  ラズ、何故ニ英國ノ陪審法ノ骨子トナッテ居ル所ノ大陪審、
  謂フ所ノ基礎陪審、之ヲ採用シチカッタカト云フ仰セデアリ
  マスルガ、本案ハ必シモ英國ノ陪審法ヲ模範トシタモノデハ
  ナイ、各國陪審法ノ精神及形式ノ上カラ、出來得ル限リ日
  本ノ國情ニ適シテ居リ、現在ノ日本ノ人支ノ進步ニ合致シ
  テ居ル程度ノモノニ拵ヘヤウト云フ事ニ苦心シタノデアリマ
  ス、大陪審ノ事ハ今日ノ度合ニ於テハ、日本ニ採用スベキモ
  ノデハナイト云フ意味デアリマス(「ノウ〓〓」)言フ迄モナク、
  今日檢事若クハ警察官ノ人權蹂瞞ト云フヤウナ事柄ニ付
  テ、種々ノ非難ヲ承ルノデアリマス、併ナガラ一面ニ於テ又
  栽判所ノ判決ニ付テモ、中〓非難モアルノデアル、此場合ニ
  於テ他ノ方面カラ此判決ノ內容ニ何等干涉、拘束ノ出來
  ナイ方面ニ、一條ノ民心ヲ通ズル此處ニ徑路ヲ附ケルト云
  フコトガ最モ今日必要デアル、檢事ハ御承知ノ通リ司法行
  政官デアリマス、監督ノ上ニ於テ其他ノ手段方法ニ依ッテ、
  改善ノ途ガ自ラ附カウ、最初ノ試トシテハ先ヅ小陪審カラ
  實行スルノヲ以テ、最モ適當ノ立法ノ徑路ヲ踏ム所以デア
  ルト云フ解釋デアリマス、第二ノ陪審機關ハ諮問機關デア
  ルカ、評決機關デアルカト云フ御質問デアリマス、此事ニ付
  テハ先ヅ前ニ御說明ヲ申シテ置カナケレバナラヌノハ、御承
  知ノ通リ外國ノ立法例ニ依リマスルト云フト、陪審ノ評決
  ハ常ニ裁判所ヲ拘束スル、事實上ノ判斷ニ於テ-之ヲヤ
  リ直ス場合モアリマスルケレドモ、常ニ事實上ノ判定ニ於テ
  裁判所ヲ拘束スル、政府ガ起案シマシタ所ノ〓日ノ陪審法
  案ハ、陪審員ノ評定ノ結果ガ、裁判所ノ事實ノ認定ト合致
  スルトキニ、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、陪審員ノ評定ガ起訴トナッ
  テ裁判所ガ之ヲ採擇スルトキニ於テ、事實上ノ判斷ノ上ニ
  效果ヲ發スルト云フ主義精神ノ上ニ立ッタ立案デアリマス、
  是ハ政府ノ最初ノ提案ト、樞密院ノ修正ト云フ點ニ於テ何
  等觸ルヽ所ガナイ、政府ハ此主義ト云フモノハ終始一貫シ
  テ抂ゲタ事ハナイノデアリマス、ンコデ此評決ト云フ言葉ヲ
  評議ト直シ、或ハ答申ト云フ文字ヲ用ヰ、又採擇ト云フ文
  字ヲ入レタ、斯ウ云フ事柄ハ唯字句ノ修正ニ止マッテ、政府
  當初ノ原案ノ精神ト云フモノニハ少シモ觸レヌノデアリマス
  鈴木君ハ明治六年ノ頃ノ參座ノ制度、サウ云フモノヲ御引
  用ニナリマシテ、何カ現在ノ陪審法案ト云フモノハ、餘リ眞
  似事デアッテ、大シタモノデハナイカノ如キ御言葉モ伺ヒマシ
  タガ、參座ハ言フ迄モナク、役人ガ裁判ニ參與スル、今日ノ
  陪審法ハ國民ノ中カラ陪審員ヲ選出シテ、サウシテ此事實
  上ノ判斷ニ參與サセルト云フノデアリマス、司法制度ノ上ニ
  於テハ、一大革新ノ事業デアルノデアリマス、此司法權ノ上
  ニ國民中カラ参與シテ、事實上ノ判斷ニ立入ルト云フコト
  ハ、日本ノ法制史上ニ一大記錄ヲ遺スモノト私ハ考ヘテ居
  ル、一大革新ヲ司法制度ノ上ニ加ヘルモノト信ジテ居ルノ
  デアリマス、此意味ニ於テ此法案ハ眞似事ニアラズシテ、眞
  ニ將來此法制史上ニ遺ル上ニ於テハ、憲法ノ上ニ於テ國
  民ニ立法權ニ參與スルコトヲ與ヘルト、殆ド同様ナモノト私
  ハ考ヘル(拍手)是ハ法案全體ヲ御覽ニナッテ下サレバ、此精
  神ノ中ニ籠ッテ居ル所ノ意義ト云フモノハ、法律家ニシテ且
  ツ政治家タル鈴木君ノ深ク諒トセラレテ然ルベキモノデアル
  ト考ヘルノデアリマス、ンレカラ憲法論デアリマスガ、憲法論
  ニ付キマシテハ、是ハ鈴木君モ此說ヲ持ッテ居ラレル御方デ
  アラウカト思フノデアリマスガ、事實上ノ判斷ハ裁判デハ無
  イ、憲法ニアル栽判デハ無イ、裁判ト云フモノハ一定セル事
  實ニ法律ヲ適用シ闡明スル所ニ、裁判ノ眞意義ガアル、斯
  ウ云フ憲法學者モ澤山アルノデアル、法制審議會ニ於テモ、
  最モ有力ナル憲法學者ノ中カラ此說ガ出タノデアリマス、併
  シ政府ノ見ル所ハ從來ノ裁判ト云フ帝國ノ歷史、沿革、此
  歴史、沿革カラ呼起サレル所ノ國民ノ觀念ノ上カラモ解釋
  ヲシ、又栽判ガ事實判斷ト云フ、所ノ徑路ヲ必ズ經ナケレバ
  法律ノ適用若クハ闡明ガ出來ナイト云フ意味合カラモ考
  ヘマシテ、裁判ト云フモノハ矢張事實ノ判斷、法律ノ適用闡
  明此兩方ガ籠シテ居ルモノト政府ハ解釋シテ居リマス、此意
  味カラシテ率直ニ申上ゲルト云フト、陪審員ノ事實ノ認定
  ガ常ニ裁判所ヲ必然的ニ覊束スルト云フコトハ現在ノ憲
  法ノ解釋ノ有力ナル部面ニ於テ非常ナル反對ガ起シテ來ル
  此反對ハ合理性ヲ持ッテ居ル、此點ハ避ケナケレバナラヌ、同
  時ニ陪審ノ評議ト云フモノヲシテ威力ナカラシムルコトハ本
  案制定ノ大精神ニ違背スル、玆ニ於テ本案ハ陪審ノ意見
  ニ悖戾シテ裁判所ハ事實ノ認定ガ出來ナイト云フ組立ニ
  ナッテ居ル、裁判所ノ意見ハ陪審ノ意見ヲ排除シ、陪審ノ意
  見ヲ無視シテハ常ニ出來ナイ、同時ニ陪審ハ裁判所ヲ常ニ
  拘束スルコトハ出來ナイ、此中間性ノ性質ヲ採ッタ所ニ本
  案ノ最モ妙用ガアルノデアリマス、法律ノ妙用ハ斯ウ云フ所
  ニアルノデアリマス、例へバ兩院協議會ニ於テ協議不成立
  ノ場合ノ想像ガナイ、其外ノ點ニ付テモ法律ガ突詰メタ所
  ニ行カナイ所ニ妙用ガ存スルノデアル、此點ガ外國ノ立法
  例ニ於ケル所ノ陪審法ト非常ニ異フテ居ルト云フコトハ、是
  ハ自由ナル御批評ハ受ケマスケレドモ、ソレヲ甘受致シマス
  ケレドモ、自分共ハ最モ是ガ宜シイモノデアラウト考へテ居
  ル、ソレカラ陪審ノ適用ノ區域ヲ縮メタト云フノハドウ云フ
  譯デアルカ、斯ウ云フ御尋デアリマスガ、是ハ最初ノ試トシテ
  ハ先ヅ此程度デ然ルベキモノデアラウ、鈴木君ノ仰セノ如
  ク、陪審ニ付キマシテハ之ヲ廢メテシマッテ、官僚ノ獨斷裁判
  ニシロト云フ論ハ何處ニモ無イ、何處ノ國ニモ無イ、陪審ノ
  弊害ハ幾ラ論ジテ居ッテモ、陪審ノ弊ト云フモノハ非常ニヤ
  カマシク、外國ニ於テモ議論サレテ居ッテモ-要スルニ此法
  制ト云フモノハ運用如何ニ依クテハ中ミ面倒ガ起ルモノト政
  府ニ於テモ見テ居ル、玆ニ於テ最初ノ試トシテハ先ヅ此程
  度ニ止メテ、運用宜シキヲ得、陪審ノ法、國情ニ適シタモノ
  ト認メマシタナラバ、益、之ヲ改良シ擴張スルト云フ、此意味
  ニ於テ局限ヲ致シタノデアリマス、ソレカラ第五ニハ實施期
  限ト費用ノコトデアリマスガ、費用ハ約ン三百五十万圓位經
  常費ガ要ラウト思ヒマス、實施期限ハ出來ルダケ急イデ、十
  二年度カラ著々試ミタイ考デアリマス、左樣御承知ヲ願ヒ
  マス(拍手)
  〔關直彥君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=33

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• 034・關直彦

  ○關直彥君　私モ多少質問ヲ試ミタイト思ヒマス、只今
  鈴木富士彌君カラ質問ガアリマシテ、稍、重複スル嫌ハ無キ
  ニシモゴザイマセヌガ、最モ重大ナル法案デゴザイマスカラシ
  テ、尙ホ篤ト政府ノ御決心ノアル所、及意思ノアル所ヲ御說
  明ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、此陪審法ハ恰モ我ガ國民
  ヲシテ立法ニ參與セシムルト同時ニ、司法權ニモ參與セシメ
  ルト云フコトノ趣旨ニ依ッテ成立ッタモノデアルコトハ申ス迄
  モナイノデアリマス、殊ニ又亡クナラレマシタル故原首相ハ、
  本案ヲ以テ自ラ率キラレテ居ル所ノ黨派ノ、最モ重大ナル
  一ツノ綱領ト致サレタノデアリマス、本案ノ成立ハ故原首相
  ニ取リマシテハ、實ニ一大面目デアルト私ハ拜承致シテ居ク
  タノデアリマス、殊ニ又原首相ノ在職中ニ於キマシテ、法制
  審議會ヲ設置セラレマシタル當時ニ、第一ノ諮問案トシテ
  出サレタモノハ本案デアリマス、而シテ又其當時ニ於テ原首
  相ヨリ縷〓御演說アリマシタル趣旨ヲ伺ヒマスルト云フト、
  殆ド原首相ノ進退ハ此本案ニ懸ルトマデ察セラレタノデア
  リマス、勿論吾々ニハ〓日ノ時勢ニ順應シマシテ、國民ノ選
  擧權ヲ擴張シテ、所謂普選ヲ斷行セントスル主義ヲ持ッテ居
  ル者デゴザイマスカラ、其趣旨ニ於テ同ジク國民ヲシテ司法
  權ニ參與セシメルト云フ大體ノ主義ニ於キマシテハ、全ク御
  同感デアルノデアリマス、而シテナラウ事ナラバ本案ヲシテ完
  全ナル法律トシテ、帝國議會ノ協賛ヲ經テ實行セシメタイ
  ト云フコトハ、吾々ノ衷心ヨリ希望シテ居ル所テアルノデア
  リマス、ソレ故ニ法制審議會ニ於キマシチモ、御承知ノ如ク
  各方面ノ學者、若クハ當局者ノ御集リデアリマスルカラ、此
  間ニ於テモ最モ愼重ニ審議ヲ重ネラレタノデアリマス、或ハ
  先刻鈴木君カラ申サレマシタル違憲論ニ尋シテモ、最モ愼
  重ナル審議ヲ盡サレタノデアリマス、而シテ其綱領ヲ決定致
  シマシテ之ヲ內閣總理大臣ニ答申致シタノデアリマス、其綱
  領ニ基イテ司法省ハ原案ヲ作ラレタノデアリマシテ、綱領ト
  ハ少シモ違フ所ハ無カッタノデアリマス、併シ私共ハ尙ホ其
  法制審議會ニ於ケル綱領ニ付キマシテモ、多少ノ遺憾ヲ感
  ジテ居ッタノデアル、御承知ノ如ク陪審制度ハ事實ニ於テ陪
  審員ノ判定ガ所謂裁判所ヲ拘束スルモノデアル、事實ノ判
  決ハ陪審員ガ之ヲ與へ、法律ノ適用ハ判官ガ之ヲ爲スト云フ
  コトハ、陪審制度ノ本旨デナクテハナラヌノデアリマス、此間
  ニ於テ違憲論ガ生ジマシタ結果トシテ、遂ニ陪審員ノ評決
  ガ裁判所ヲ拘束セナイト云フ意味ニ於テ、法制審議會ガ決
  定ニナリマシタノハ頗ル遺憾ニ存ジテ居ッタノデアリマス、然
  ルニ本案ヲ見マスルト云フト、法制審議會ニ於テ決定サレ
  マシタル評決ト云フコトニサヘモ、尙ホ一層ノ修正ヲサレマ
  シテ、評議ト云フコトニ改メラレタノデアリマス、此點ハ吾々
  ノ甚ダ解釋ニ苦シム所デアルノデアリマス、果シテ左樣ニ修
  正サレテ、之ヲ本會ニ提出サレマシタト云フコトニナリマスル
  ト云フト、陪審員ノ決定ト云フモノハ何等ノ效用ヲ爲サヌ
  モノト認メナケレバナラヌ、判決ニアラズシテ全ク諮問ノ答
  案トシカ之ヲ取ルコトガ出來ナイノデアリマス、是デ果シテ
  陪審制度ノ本旨ガ徹底サレタモノデアリマセウカ、甚ダ疑ナ
  キヲ得ナイノデアリマス、政府ハ尙ホソレデモ陪審制度ノ本
  旨ニ適フモノトシテ、是ガ日本國ノ陪審法デアルト云フ決心
  ヲ以テ御提案ニナリマシタモノデアルカ、甚ダ疑ナキヲ得ナイ
  ノデアリマス、第一ニ露骨ニ申シマスレバ、法制審議會ニ於
  テ大ナル骨拔ヲ致シタノデアリマス、併シ已ムヲ得ナカッタノ
  デアリマスルガ、又本案ヲ見マスルト云フト、大キナ骨許リデ
  ナシニ、小サイ骨マデモ創リ去ッテ居ル形跡ガアルノデアリマ
  ス(拍手)是デ果シテ陪審法ガ制定サレタト政府ガ思ハレマ
  セウカ、而シテ又斯ル骨拔案、斯ル小サキ骨マデモ削リ去ッタ
  ル案ヲ提出シテ、果シテ之カ故原首相ノ面目ヲ保ヲタモノト
  シテ、諸君ハ之ヲ御協賛ニナルコトガ出來ルデアリマセウカ
  (拍手)又斯ル案ガ帝國議會ヲ通過シテ法律トナリマシテ、
  世界各國ニ對シテ日本ノ陪審法ハ斯ノ如キモノデアルトシ
  テ、帝國ノ面目ヲ保タレルモノデアリマセウカ(「ヒヤ〓〓」)歐
  米各國ハ必ズ我ガ帝國ノ陪審法ニ對シテハ、冷笑ノ眼ヲ以
  テ視ハシナイカト甚ダ懸念ヲ致スノデアリマス(拍手)現ニ我
  國ニ於キマシテハ、立憲政治ヲ施行スルト申シテ居リナガラ、
  尙ホ選擧權ハ直接國稅三圓ノ限度ヲ定メマシテ居リマシ
  テ、僅ニ三百万人ノ有權者ノミヲ有シテ居ルニ過ギナイノデ
  アリマスカラ、歐米各國ハ日本ニハ果シテ立憲政治ガ徹底
  的ニ行ハレテ居ナイト云フ事ヲ以テ冷笑シテ居ルノデアリマ
  ス、又ゾロ玆ニ陪審法ナル美名ヲ以テ制定シタル法律ガ、全
  ク陪審法ノ精神ニハ副ハナイモノヲ決定シタト云フコトニナ
  リマスルト云フト、二重ノ嗤ヒヲ外國ニ招キハシナイカト、私
  共ハ甚ダ憂慮ニ堪ヘナイノデアリマス(拍手)デ第一問ハ是
  ハ要シマスルニ、政府ハ本案ヲ以テ眞正ノ陪審法ト確信サ
  レルカ否ヤト云フ事ヲ伺ヒマス、ソレカラ第二ニ陪審ノ評
  議-陪審ノ評議ト云フ事ハ果シテ陪審法ノ精神タル事
  實ニ關スル判決デアルカ否ヤ、將タ之ガ只ノ諮問ノ答案デ
  アルヤ否ヤ、此點ヲモウ少シタ明瞭ニ確メテ置キタイノデア
  リマス、第九十五條ニアリマスルガ「裁判所陪審ノ答申ヲ
  不當ト認ムルトキハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス決
  定ヲ以テ更ニ他ノ陪審ノ評決ニ付スルコトヲ得」ト此處ニ
  アリマス、ンコデ若シ陪審員ノ事實ニ對スル判定ガ裁判官
  ノ意思ニ背イタ場合ニハ-意思ニ適ハナカッタル場合ニハ
  其陪審ノ評定ヲ姑ク措イテ、他ノモウ一ツノ陪審ノ評定ヲ
  得ルト云フコトノ、是ハ條項ニナッテ居マスルガ、第二ノ陪審
  委員ノ評定ガ尙ホ判官ノ意思ニ副ハナカッタ場合ニハ、如
  何ナサル積リデアリマスルカ、第三ノ陪審員ノ評定ヲ求メラ
  レルノデアルカ、又第四、第五-重ネテ際限ナク、其評定ヲ求
  メラレルノデアルカ、或ハ第二回ニ止メテ、陪審員ノ判定如
  何ニ拘ラズ、裁判官ノ意思ヲ以テ判決ヲ決定スルト云フコ
  トニナルノデアリマスカ、若シサウデアルトシマスレバ、陪審員
  ノ判定ト云フモノハ何等效用ヲ爲サヌモノデアリハシナイカ
  ト感ズルノデアリマス、此點ニ付テ政府ノ御說明アランコト
  ヲ希望スルノデアリマス、ソレカラ第三點ハ矢張鈴木君ノ質
  問サレタル點ト同ジ事デアリマスルガ、御答辯ガ不徹底デゴ
  ザイマスルカラシテ、重ネテ是ハ伺ッテ置カナケレバナラヌノハ、
  陪審制度ノ綱領ト本案トハ全ク相反シテ居ルノデアリマス、
  ソレハ法制審議會ノ決定シマシタル綱領ニ依リマスルト云
  フト、左ニ揭グル事件ハ之ヲ陪審員ノ評決ニ付スルトナッテ
  居ルノデアル、所ガ本案ヲ見マスルト云フト、左ニ揭グル罪ニ
  當ル事件ハ第二條ノ規定ニ拘ラズ、之ヲ陪審ノ評議ニ付セ
  ズト云フ事ニナッテ居ル、其一方ニ於テハ之ヲ付セズト決定
  シ、一方ノ本案ニ對シテハ之ヲ付セナイト云フ問題ハ如何
  ナル問題デアルカト申セバ、刑法ノ第二編ニゴザイマスル皇
  室ニ對スル罪、內亂ニ關スル罪、外患ニ關スル罪、國交ニ關ス
  ル罪、騒擾ニ關スル罪、是ダケノモノハ案其モノガ頗ル重大
  デアルカラシテ、陪審ノ評定ニ-評定ニ付セナケレバナラマ
  ト云フコトハ、法制審議會ノ決定ニ依リ明瞭ニ定ムル所デ
  アルノデアリマス、然ルニ本案ヲ見マスルト云フト、左樣ナル
  重大ナル案件ハ悉ク陪審ニ付セナイト云フコトニナッテ居ル
  ノデアリマス、陪審ノ教力何處ニ在ルカ、唯窃盜若クハ强盜、
  放火、殺人、斯樣ナ者ノミニ陪審ヲ附シテ、重大ナル犯罪ニ
  對シテ陪審ヲ附セナイト云フコトニナレバ、何等陪審ノ效力
  ハ無イモノト信ズルノデアリマス(拍手)勿論皇室ニ對スル罪
  ノ事ハ、私ハ畏多イカラ措イテ論ジマセヌガ、内亂ニ關スル罪、
  外患ニ關スル罪、國交ニ關スル罪、騷擾ニ關スル罪、是等ノ
  罪ニ於テ歷史ヲ繹ネテ見マスルト云フト、當時ノ裁判官ノ
  爲ニ死刑ニ處セラレタル者ガ澤山アルニ拘ラズ、後ニ於テハ
  或ハ位ヲ贈ラレタル者モアリ、或ハ神ニ祀ラレタル者モアル
  ノデアリマス、勿論其當時ノ時勢ニ於テハ仕方ガナカッタカ
  モ知レナイ、或ハ其當時ノ法律ニ於テハ已ムヲ得ナカッタカ
  モ知レマセヌケレドモ、事實ノ判斷ヲ爲スニ當ッテ、其時ノ橫
  暴ナル政治家若クハ判官ガ、無理ニ法律ヲ濫用致シマシテ、
  國家ノ爲ニ身命ヲ賭シテ活動致シタ者ヲ捕ヘテ、是レノ生
  命ヲ奪去ッテ、面シテ此人達ガ時勢ノ變化ト共ニ全ク國家
  社會ノ爲ニハ非常ナル功臣デアリシト云フコトヲ見ルコトガ
  吾々ハ歷史ヲ見テ甚ダ遺憾ニ感ズルノデアリマス、斯ル重大
  ナル案件ニ於テコソ、國民ガ其司法權ニ參加ヲ致シテ、而シ
  テ此陪審ノ制度ヲ行フト云フ本旨ニ適フノデアリハシナイ
  カト私ハ思フノデアリマス(拍手)現ニ是ハ最近ノ例デアリマ
  スルガ、騒擾罪デハアリマセヌケレドモ、例ヘバ田中君ノ如
  キ-若シ田中君ノ如キ者ガ之ヲ起訴セラレテ、而シテ判
  決ヲ受ケテ有罪トナル、然ルニ若シ陪審ガアッテ判決ヲ致シ
  マシタナラバ、之ヲ見テ居ヲタ者モ澤山アリ、事實ガ明瞭デア
  ルニ拘ハラズ、陪審ガ無イカラ如何トモスルコトガ出來ナク
  テ、刑事巡査ノ報告ヲ本トシ、又之ニ反對スル種々ナル薄
  弱ナル證據ヲ本トシテ、或ハ田中善立君ハ罪ニ處セラレル
  カモ知レナイノデアリマス、斯ル場合ニ於テ陪審員ガ公平ナ
  ル眼ヲ以テ其事實ノ判斷ヲ致シ、證據ヲ判斷ヲ致シテ、而
  シテ其事實ノ判斷ニ依ヶテ裁判官ヲ拘束致シマスル場合ニ
  於テハ、如何ニ官僚若クハ裁判官ガ之ヲ罪シヤウト致シマ
  シテモ罪スルコトガ出來ナイノデアリマス、此事實ハ或ハ本
  問題ニ適當スル事實デアルヤ否ヤハ知リマセヌケレドモ、若
  シ斯ル場合ニ於テ、騒擾罪ノ如キ場合ニ於キマシテ、徒ニ下
  僚ノ警察官ノ報告ノミニ依シテ、斷罪ノ資料トシテ有罪ノ
  判決ヲ下スト云フヤウナコトガ往々アリマシテハ、所謂我ガ
  司法權ノ威信ヲ損スルモノデアルト申サナケレバナラヌノデ
  アリマス、斯ル場合ヲ防禦スルガ爲ニ、國事ノ爲ニ奔走シ、或
  ハ時ノ權力ノ忌諱ニ觸レ、官僚ノ忌諱ニ觸レル場合ガアリマ
  シテモ、一身ヲ犧牲ニシテ國事ノ爲ニ過ッテ其罪ヲ犯スト認
  メラレル場合ガナキニシモアラズデアリマス、斯ル重大ナル犯
  罪ニ對シテ-事案ニ對シテコン陪審官ノ必要ガアルノデ
  アリマスガ、本案ニ於テハ全ク斯ルモノヲ削除シテシマッテ陪
  審ヲ附セナイト云フコトヲ殊更ニ斷ハリヲ言シテ、唯陪審ニ
  付スルモノハ殺人、放火、强盗、强姦、斯樣ナル洵ニ醜惡ナ
  ルモノヽミニ對シテ陪審ヲ附スルト云フ意味ハ、果シテ陪審
  法ヲ設定スルノ本旨ニ適フヤ否ヤト云フコトヲ承リタイノデ
  アリマス(拍手)其他細カイ事ガ多々アリマスルケレドモ、煩
  ヲ避ケマシテ委員會ノ質問ニ移シテ、私ハ此大體ノ御說明
  ヲ伺ヒタイト思スノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=34

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• 035・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郎君)　横田法制局長官
  〔政府委員橫田千之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=35

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• 036・横田千之助

  ○政府委員(横田千之助君)　關君ノ御質問ノ第一點ハ
  要約スレバ本陪審法案ハ直正ノ陪審法ト政府ハ考ヘテ居
  ルカ、斯ウ云フ御質問ガアリマス、陪審法ト云フモノハ別ニ
  定義モ無ク、各國ノ立法例ヲ見マシテモ、色〓違ッテ居ルノ
  デアリマス、ソレ故果シテ眞正ノモノナリヤ否ヤト云フ如キ
  議論ニナッテ來マスルト、長イ議論ニナリマセウガ、之ヲ要ス
  ルニ陪審ト云フ事ノ精神ハ、裁判官ノ民事若クハ刑事ノ事
  實判斷ニ、國民ノ側カラ參與スルト云フコトガ陪審法ノ根
  本精神デアラウト思フ、此意味カラ推究シテ見マスルト云フ
  ト、此法案ニ定メラレタ刑事ノ法定陪審、若クハ請求陪審
  ニ於テハ、必ズ陪審員ノ事實上ノ判斷ヲ俟ッテ、裁判所ガ裁
  判ヲシナケレバナラヌコトニナッテ居ルノデアリマスカラ、陪審
  ノ精神ガ此法案ノ中ニ躍如トシテ現レテ居ルモノト私ハ考
  ヘテ居リマス、ソレカラ第二ハ陪審ノ評議ハ諮問ニ答ヘルノ
  デアルカ、言葉ヲ換へテ言ヘバ審機陪關ハ評決機關カ、諮
  問機關カト斯ウ云フ御質問デアリマス、陪審ハ法律的ニ解
  釋ヲ致シマスレハ、司法裁判所ガ刑事事件ニ付テ事實判斷
  ヲ爲ス所ノ機關ダト御答ヲスルノ外】ハナイノデアリマス、普
  通世間デ謂フ所ノ諮問ト云フモノハ、其諮問ニ答ヘテモ之
  ガ採擇ヲスルト否トハ諮問ヲ求メタ方ノ自由デアリマス、決
  議機關デアリマスルト、其決議ヲドウシテモ用ヰナケレバナラ
  ヌト云フコトニナルノデアリマス、併シ上下兩院デ議決シタ
  法律案ト雖モ、例ハ無イコトデアリマスルガ、法制ノ上カラ
  言ヘバ、必シモ御栽可ガ無クテモ宜シイノデアル、此意味カ
  ラ言ヘバ決議機關ト諮問機關ト云フ事柄ヲ法律的ニ其性
  質ヲ分析シテ判斷スルト云フコトハ中々ムヅカシイ、ムヅカシ
  イノデアルガ、世間デ謂フ所ノ諮問機關評決機關ト云フヤ
  ウナ分類カラ關君ノ御質問ヲ段々考ヘテ行キマスルト云フ
  ト此陪審ノ機關ト云フモノハ普通謂フ所ノ諮問機關ヨリ
  强イノデアル、何故强イカト云ヘバ、此答申ニ合致シタトキ
  ニ初テ裁判所ガ事實上ノ判斷ヲスル、普通ノ諮問機關ヨリ
  强イノデアル、普通ノ世間ニアル所ノ評決機關ヨリモ其力
  ガ弱クナル、之ガ此本案ノ陪審機關ノ特性ニナクテ居ルノデ
  アリマス、ソレカラ第三ノ御質問ノ何囘モ繰返シテ窮極ス
  ル所ガナイカドウカ、一回陪審員ニ掛ケ、此陪審ノ評議ヲ不
  當ト認メ、二囘、是モ不當ト認メタトキハ三囘モ四回モ掛ケ
  ル、法律ノ組立ハ三回モ四回モ掛ケルコトニ出來テ居ル、詰
  リ各機關ガ獨立シタ意思ヲ衞カセル場合ニ於テ、兩箇ノ獨
  立シタ機關ノ意思ヲ制抑スル別箇ノ機關ヲ設ケ、若クハ一
  箇ノ機關ガ他ノ機關ヲ壓スルト云フコトノ制度ヲ設ケル場
  合ト、然ラザル場合ガ何處ノ法制ノ上ニモアル、日本ノ法制
  ノ上ニモ後ツモアル、此兩箇ノ機關ガ意思ガ合致セザルトキ
  ニ之ヲ決定スル機關ヲ設ケナイノハ法律ハ是ハ各機關ノ
  自己反省ニ待ツノデアル、此間ニ法ノ妙用ヲ收メヤウトスル
  ノデアル、是ハ日本ノ憲法附屬ノ法律ノ上ニ今アルノデアリ
  マス、此意味カラ此法案ハサウ云フ組立ニ致シテ置キマシテ
  運用ノ上デ相當ノ聲價ヲ收ムルト云フコトノ見込ヲ立ッテ
  居ルノデアリマス、ソレカラ法制審議會ニ於テ草案ガ出來テ
  居ルノヲ、此陪審ニ付セズト云フコトヲ削ッタ條項ニ付テノ
  御質問ガアリマシタガ、是ハ刑法第二編第一章乃至第四
  章及第八章ノ罪ト云フノハ、皇室ニ對スル罪、內亂、外患、
  國交、騷擾、是等ノ犯罪-是等ノ犯罪ニ付テハ公選ノ議
  員ノ選擧ニ關スル犯罪ト同樣ニ、政治上ノ黨派關係、其他
  今少シ時勢ノ推移ヲ見ナケレバ、今實行スルノハ危險デハ
  ナイカ、斯ウ云フ意味合ニ於テ削除シタコトニナッテ居リマス
  之ヲ除ケバ、關君ノ仰」セラレタヤウナ犯罪ダケニナルト云フ
  仰セデアリマシタガ、サウデハアリマセヌ、陪審法第三條ニ「長
  期三年ヲ超ユル有期ノ懲役又ハ禁錮ニ該ル事件ニシテ地
  方裁判所ノ管轄ニ屬スルモノニ付被告人ノ請求アリタルト
  キハ之ヲ陪審ノ評議ニ付ス」トアリマスカラ、二條三條ヲ總
  括致シマスレバ、陪審ニ付スベキ事件ト云フモノハ頗ル廣イ
  範圍ニナッテ居リマスルカラ、左左御承知ヲ願ヒマス、尙細
  條ニ至リマシテハ、委員會ニ於テ十分御質問ニ御答致ス考
  デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=36

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• 037・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　日程第七右議案ノ審査ヲ付託ス
  ベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
  第七右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選
  舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=37

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• 038・岩崎勲

  ○岩崎動君　本案ハ政府提出刑事訴訟法案ノ委員ニ併
  セテ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=38

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• 039・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト認メ
  マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-松岡俊三君ヨリ一身上
  ノ件ニ關シテ發言ヲ求メラレマシタ、之ヲ許シマス、松岡君ニ
  注意シマス、多分植原君ノ發言ニ付テデアラウト思ヒマス、植
  原君ノ發言ニ付テハ格別アナタノ一身上ニ亙ッテノ發言ハ無
  イヤウニ思ヒマス、併シ議長ガ知ラナイ所ニ於テアルカモ知
  レマセヌガ、十分注意シテ一身上ダケノ事ニ發言ヲ許シマス
  〔松岡俊三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=39

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• 040・松岡俊三

  ○松岡俊三君　植原君ハ-先程ノ植原君御自身ノ身
  上ニ關シタ御答辯中ニ於テ、私ノ述ベタル事ガ事實、ヲ捏造
  シテ讒誣中傷ヲスルモノデアル-植原君ヲ讒誣中傷スル
  モノデアルト斯樣ニ中サレテ居リマスルガ、事實ヲ捏造シテ
  讒誣中傷シタト云フコトハ、全ク誤リデアリマスルト云フコ
  トヲ中述ベテ置キマス、植原君ハ「ヒユーズ」ノ提案卽チ六割
  ヲ直ニ無條件ニテ其儘承諾シ、太平洋ノ協商問題或ハ防
  備問題等ハ何事モ爲サズ「ヒユーズ」ノ提案其儘ヲ無條件
  ニテ永諾セヨト云フノガ、植原君ノ華盛頓ニ於ケル熱心ナ
  ル御主張デアッタ、之ニ對シテ私共ハ全然反對デアリマスルノ
  デ、是ハ意見ノ相違ニナリマスルカラ、此點ニ付テハ申述ベマ
  セヌ、唯併シ植原君ハ事實ヲ揑造シタト云フガ、ドノ點ヲ揑
  造シタト申サルヽノデアリマスルカ、植原君ハ昨年十一月十
  六日卽チ十一月ノ十一一日ニ「ヒユーズ」ノ提案ガ出マシテ、十
  五日ニハ我全權ガ之ニ對スル所ノ演說ヲ爲シ、其經過カラ
  シテ我ガ在留新聞記者間ニ、此問題ニ付テ頗ル議論ガア。ツ
  タト云フコトハ、植原君ノ先程ノ御演說ニモ能ク認メラレテ
  居ルノデアル、中外商業新報ノ小松綠君、大坂朝日新聞、
  東京朝日新聞ノ全部ノ特派員ガ一團トナッテ、日本新聞
  記者倶樂部ノ總會ニ、此無條件ニテ「ヒユーズ」ノ提案ヲ承
  諾セヨト云フ-サセヤウト云フ所ノ動議ヲ提出シテ、新聞
  記者倶樂部ノ決議ノ名ヲ以テ、加藤全權ニ迫ラントシクコ
  トハ、アナタノ先程ノ御演說ニ申サレテ居ル、此時ニ於テハ
  植原君ハ確ニ之ニ共鳴シテ、サウシテ宣傳セラレタコトハ、ア
  ナタモ能ク御承知ノ通リノ事デアリマス、是ガ事實デナクシ
  テドウデアリマスカ、此事實ハ蔽フベカラザル所ノモノデアルヽ
  捏造スルト云フヤウナコトハ、何ノ邊カラ斯樣ナ御言葉ガ
  出ルカト云フコトヲ甚ダ疑ハザルヲ得ナイノデアル、若シ此
  時ノ事ガ誤リデアルトシタナラバ、私ハ實ニ植原君ノ御心
  中ヲ甚ダ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス(植原悅二郞君「嘘ダ」
  ト呼フ)是ハ嘘デハアリマセヌ、事實デアリマス、若シ十一月十
  五日、十一月十六日ノ植原君ノ行動竝ニ其以後ノ行動ニ於
  テ「ヒユーズ」君ノ此提案ニ無條件ニテ直チニ承諾セヨト
  云フコトヲ仰シヤラナイト云フコトハ、決シテ言ハセルコトハ
  出來ヌト思フ、ソレデアリマシテ私ハ此「ヒユーズ」ノ提案其
  儘ガ、植原君ノ演說ニモアリマス「ヒユーズ」ノ海軍協定案
  ナルモノガ、殆ド生命ヲ賭シテ提出シタモノデアルト云フガ、
  「ヒユーズ」ノ提案ガ彼レ生命ヲ賭シテ提出シタモノデアルト
  シテモ、之ニ聽クベキカ-亞米利加ノ「ヒユーズ」ニ聽クカ、
  加藤全權ニ聽クカト云フコトガ、自カラ岐レル所デアラウト
  思フ、之ガ間違ッタル、甚ダ近眼政治家ノ行動ハ斯樣ナモノ
  デアルト云フコトヲ私ハ申シタノデアリマス、是ハ事實デアリ
  マス、決シテ事實ヲ捏造シテ讒誣中傷シタモノデナイコトヲ
  天下國民ニ向ッテ之ヲ申上ゲルノデアル(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=40

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• 041・岩崎勲

  ○岩崎動君　日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致シマ
  ス、卽チ第三號大正十年度歳入歳出總豫算追加案、特第
  一號大正十年度各特別會計歲入歳出追加案、追第一號
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ要スル件、此三件ヲ一
  括議題トナシ、豫算委員長ノ報告ヲ求メ、且ツ其審議ヲ進
  メラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=41

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• 042・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ日程ハ變更サレマシタ-第一、第三號大正十
  年度歲入歲出總豫算追加案、第二、特第一號大正十年
  度各特別會計歲入歲出豫算追加案、第三、追第一號豫
  算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ニ關スル要求ノ件、一括シ
  テ議題ニ供シマス、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長田邊
  熊一君
  (第三號)大正十年度歲入歲出總豫算追加案
  (委員長報告)
  報告書
  一(第三號)大正十年度歲入歲出總豫算追加案
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月二日
  豫算委員長田邊熊
  衆議院議長奧繁三郞殿
  (特第一號)大正十年度各特別會計歲入歲出
  豫算追加案(委員長報告)
  報告書
  一(特第一號)大正十年度各特別會計歲入歲出豫算
  追加案
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月二日
  豫算委員長田邊熊
  衆議院議長奥繁三郞殿
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ
  要スル件(委員長報告)
  報告書
  一(追第一號)豫算外國庫ノ負擔ドナルヘキ契約ヲ爲ス
  ヲ要スル件
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月二日
  豫算委員長田邊熊
  衆議院議長奥繁三郞殿
  〔田邊熊一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=42

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• 043・田邊熊一

  ○田邊熊一君　只今上程セラレマシタ第三號大正十年
  度歲入歲出總豫算追加案外二案ノ豫算委員會ニ於ケル
  審査ノ大要及決定シタル所ヲ極テ簡單ニ御報告申上ゲマ
  ス、豫算委員會ハ數日間ニ亙リマシテ極テ郞重ニ質問應
  答ヲ重ネマシタ、且ツ極テ深切ナル審議ヲ致シマシタ、武藤
  金吉君ノ發議ニ依リマシテ、之ヲ分科ニ付託セズシテ直ニ
  討論ニ入ッタノデアリマス、討論ノ結果滿場一致ヲ以テ原
  案ヲ可決シタ次第デアリマス、極テ】簡單デアリマスガ是ダケ
  報告ヲ申シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=43

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• 044・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　討論ノ通告ガアリマス、順序ニ依ッ
  テ之ヲ許シマス、川崎克君
  〔用崎克君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=44

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• 045・川崎克

  ○川崎克君　大正十年度歲出入豫算追加案ニ對シテ、此
  豫算ニ偽資ヲ與フルニ當リマシテ警告ヲシタイト思ヒマス、
  此豫算ノ內容ヲ見マスルト、大體豫算ノ追加ヲ求ムルニ當リ
  マシテハ、其要求スベキ性質ガ、其年度ノ豫算ニ於テ計上シ
  タモノヽ中デ、計上スルコトノ豫メ豫知シ得ナイ所ノ事柄ガ
  臨時ニ起シタトカ、或ハ物價ノ騰貴ノ爲メサウ云フ事ガ生ジ
  タトカ、已ムヲ得ズ其豫算ンレ自身ノ不時ノ出來事ニ依シテ
  追加ヲ要シナケレバナラヌ場合ニ對シテハ、是ハ性質上已ム
  ヲ得ズシテ協賛ヲ與へルノデアリマスガ、其豫算案ノ内容ヲ
  見マスルト、毎年々々何時デモ警告ヲ附セラレテ、四十二議
  會ニ於テモ警告ヲ附セラレテ居リマス、警察費ノ中ノ警察
  連帶支辨金ノ如キモノハ、豫メ大體年度ノ初ニ於テ當然
  豫知セナクレパナラヌモノデアッテ、其中ニ於テモ此豫算ノ追
  加豫算ノ追加ニ關スル所ノ理由書ヲ要求致シテ見マスル
  ト、物件費ノ如キモノニ於テハ建築修繕ニ要スル經費ヲ要
  求致シテ居ル、建築修総ニ關スル經費ノ如キハ、豫メ年度
  ノ初ニ於テ分シテ居ル所ノモノデアッテ、追加豫算トシテ要求
  スベキ性質ノモノデハナイ、其中デ不時ノ出來事ニ因ヲテ起ッ
  タト見ルベキ人件費ノ增加ノ中ニ於テ、吾々ハ此追加豫算
  中甚ダ遺憾ニ感ズル點ガ多々アルノデアリマス、警視聽ノ追
  加豫算四十八万圓ノ中ニ於テハ、過日ノ議會ニ於テ普選
  案上程ニ當ッテ、院ノ内外ヲ脅威スル爲ニ巡査ヲ增員シ、或
  ハ巡查ニ對シテ給與ヲ與ヘタ所ノ經費モ之ニ含マッテ居ル、
  又各府縣ノ經費ノ中、十八万圓ノ追加ヲ要求致シテ居リ
  マスガ、此中ニハ嘗テ神戶ニ於テ勞働爭議ヲ起シタ場合ニ
  於テ、警官ガ技劍ヲシテ人民ヲ斬ッタ所ノ巡査ノアリシ經費
  モ要求致シテ居ルノデアル、私共ハ斯ル經費ニ對シテハ削
  除致シタイノデアルガ、是ハ法律命令ノ結果ニ依ッテ議院ノ
  修正スベカラザル範圍ニ屬シテ居ルカラシテ、已ムヲ得ヌカ
  ラソレニ協賛ヲ與ヘルノ外ハナイ、是ハ內容ノ議論デアリマ
  ス、形式論カラ言ヘバ-形式論カラ言ヘバ提出ノ時機ヲ
  誤クテ居ル、第一此豫算ハ本年ノ、少クトモ議會開會ノ初ニ
  於テ提出セナケレバナラヌ性質ノモノデアル、然ラザレバ現
  在之ヲ實行シテ居ルト言フナラバ、既ニ使ッテ居ルノデアッテ
  豫算デハ無イ、過年度支出ノ性質ニ屬スベキモノデアル、過
  年度支出ノ性質ヲ持っタモノデアレバ、此理由書ノ說明ニ
  依ッテモ是等ヲ要シタルモノナリト言ッテ、旣ニ支拂シテシマッタ
  ヤウニ說明シテ居ル點カラ言ヘバ、旣ニ豫算デ無クシテ拂ッタ
  モノノ要求デアルト言フナラバ、是ハ性質ハ豫算デ無シニ、過
  年度支出ノ性質ヲサッタモノガ、偶〓豫算ノ衣ヲ著テ出テ來
  タト云フノデ、断ルコトハ豫算ノ形式ノ上デ許スベカラザル
  事デアッテ、後來戒メナケレバナラヌ事デアル、改メナケレバナ
  ラヌト云フコトハ、政府〓タルト政府反對黨タルトニ拘ラズ、
  豫算審議權ノ性質ノ上カラシテ、ドウシテモ改メナケレバナ
  /ラヌ所ノ惡例デアルト思フノデアリマス(拍手「ノウ〓〓」)又
  全體ノ豫算ノ上カラ中セバ、今中シタヤウデアリマスガ、殊ニ
  其シイノハ朝鮮ノ豫算デアル、朝鮮ノ豫算ハ本年追加要求
  ヲ致シテ居リマスル中デ、澹漑ノ補助費トシテ、開墾補助費
  トシテ追加要求ヲ致シテ居リマスル金額ハ百三十五万圓
  デアリマス、此追加要求ノ本ハト云ヘバ、此經費ノ本ハ幾ラ
  デアッタカト云ヘバ、僅ニ九十万圓デアル、本ハ九十万圓デ
  アッテ、追加要求ガ百三十五万圓、而モ此開墾費ト云フガ
  如キモノハ、年度ノ初ニ於テ明ニ分ルモノデアル、何等緊急
  ノ事件デモナケレバ、何等揉定スベカラザル所ノ經費デ無イ
  ノデアル、當然豫知シ得べキ經費ニシテ、總督府ノ見積リ杜
  撰ナルガ爲ニ本豫算ヨリモ追加豫算ガ遙ニ其數ヲ增加シ
  テ居ルト云フガ如キ、實ニ亂暴ナル要求ト言ハナケレバナラ
  ヌノデアリマス、又煙草專賣創業費ノ三百五十万圓ト云
  フガ如キモノモ、元ノ經費ハ幾ラデアルカト言へバ、僅ニ四百
  万圓、殆ド前ニ要求致シタ所ノ金額ニ近イ三百五十万圓
  ノ要求ヲ爲シテ居ルト云フガ如キ事ハ、實ニ杜撰極マルノデ
  アル、斯ウ云フ要求ハ內地ノ豫算ノ上ニハ無イノデアル、朝
  鮮ニ於テ之ヲ現シテ居ルト云フコトハ、如何ニ朝鮮ノ豫算
  ガ杜撰孟浪デアルカト云フコトヲ證明シテ居ルノデアリマシ
  テ、斯ノ如キ事ヲ際限ナク許シテ置クト云フ事デアリマシタ
  ナラバ、豫算審議權ト云フモノハ蹂躪セラレルノデアル、全ク
  勝手氣儘ニ豫算ノ追加ヲ致シテ來ルト云フヤウナ、斯樣ナ
  弊ハドウシテモ改メナケレバナラヌ、朝鮮ノ豫算ニ對シテ大
  緊縮ヲ加ヘナケレバナラヌト思フノデアル、元來言ヘバ斯ノ
  如キ亂暴ナル所ノ朝鮮ノ追加豫算ニ對シテハ、削ルベキガ
  當然ト思ヒマスルケレドモ、吾々ハ本年ハ之ヲ見遁シテ、彼
  等ニ對シテ一大警告ヲ與ヘテ、從來ヲ戒メテ此豫算ニ協賛
  ヲ與ヘル所以デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=45

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• 046・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　武藤金吉君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=46

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• 047・武藤金吉

  ○武藤金吉君　討論ノ通告ヲ致シテ置キマシタガ、只今川
  崎君ノ警告ニ對シマシテ其御演說ヲ承ッテ見マスト、警察ノ
  連帶支辨國庫ノ下渡金ノ說明ニ付キマシテ、極テ穩カナ、
  豫算委員會ニ於ケル大津君ノ說明トハ全然其趣意ヲ變ヘ
  ラレテ居リマスカラ、反駁スル程ノ事モアリマセヌカラ、之ニ
  付キマシテハ討論スル必要ナイコトヲ認メマシテ、委員長ノ
  報告ノ通リ賛成ヲ致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=47

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• 048・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ヲ一括シテ委員長報告ノ通リ、卽時可
  決セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=48

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• 049・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハアリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリし

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=49

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• 050・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナシト認メマス、仍テ此三
  案ヲ一括シテ豫算委員長報告ノ通リ可決確定致シマス-
  日程第八道路法中改正法律案第一讀會ノ續ヲ開キマス
  第八道路法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一道路法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月一日
  道路法中改正法律案委員長
  石川玄三
  衆議院議長奧繁三郎殿

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=50

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• 051・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　委員長石川玄三君
  〔石川玄三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=51

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• 052・石川玄三

  ○石川玄三君　此法律案ハ曩ニ道路會議ニ諮問ニナリ
  マシタトキニ、道路會議ニ於テ特別委員ニ付託シテ、詳細
  審議ヲ遂ゲマシテ、原案ヲ可ト認メ其運用ヲ滑ラカナラシム
  ル爲ニ、二箇條ノ希望條件ヲ附帶シテ答申ニナリマシタモ
  ノデ、本議會ニ於キマシテモ辯難、討議、懇談ヲ交ヘマシテ愼
  重ニ審議ヲ重ネタ結果ハ、矢張原案ガ一番宜シイト云フコト
  ニ議決致シマシテ、委員長田君ノ動議ニ依リマシテ、矢張道
  路會議ノ希望條件ト同一ナルモノヲ附帶スルニ全會一致
  ヲ以テ決定シマシタノデアリマス、其第一ハ在來ノ郡道ヲ處
  理スルニ當ッテ、道路法第十一條ニアル「樞要ノ地」ナドトア
  リマス選擇標準ヲ、成ベク緩和シテ、主ナル郡道ハ事情ノ許
  ス限リ成ベク多ク府縣道ニ認定スル事、其第二ハ新ニ認定
  シタル府縣道ハ、其路面幅員若クハ勾配トカ橋梁トカ云フ
  ヤウナモノヲ、直ニ府縣道ノ資格ニ合致セシメルヤウニ、改
  築セネバナラヌト云フヤウナ、窮屈ナル解釋ヲ取ラズニ、緩急
  ノ度合ヲ考へ、財政ニ鑑ミテ、宜シク施設ヲ按排シテ順次道
  路構造令ニ依ル規劃ニ一致セシムルヤウニスル事、所謂漸
  進主義ヲ執ッタノデアリマス、其他國道ノ新設、改築等ニ關
  スル法案ニ對シテハ、委員會ハ直ニ之ヲ可ト認メマシテ、何
  等ノ論議ハアリマセンカシタ、而シテ此二箇條ノ希望條件ニ
  對シマシテハ、政府ハ直ニ同意サレ、尙ホ吾々ガ多年地方
  自治ニ參與シテ、實際ノ經驗上ヨリ得タル動カスベカラザル
  結論ト同一ニ、道路ノ行政ハ兔角大キナル團體ニ統一セシ
  メテ管理經營セシメル方ガ、交通ノ方ヨリ見テモ、經費ノ上
  カラ見テモ、頗ル便益ガ多イト云フコトニ一致致シマシテ、
  此法律ヲ運用スルニ當っテハ、宜シク其間ニ當ル者ニ注意シ
  テ、在來ノ郡道ヲ成ベク多ク府縣道ニ認定サセルヤウナ、徹
  底スル方針ヲ執ルト云フコトヲ聲明サレマシタノデアリマス、
  元來此郡制廢止ニ伴ウテ郡道ノ處分如何ハ、直接ニ地方
  交通產業ノ興廢財政等ニ至大ノ關係ヲ及ポスモノデアリ
  マシテ、一般ノ國民ハ其成行ヲ心配致スコトハ、決シテ先日
  來此議場ニ於テ四日間ニ亙ッテ論議サレタ普選問題ト同
  日ノ比デハアリマセヌノデ、之ニ依ッテ我委員會ハ此邊ニ深
  ク考慮ヲ拂ヒマシテ、以上ノ希望條件ヲ附帶シテ決定致シ
  マシタ、然ルニ國民ノ一角ニハ、斯樣ニ在來ノ郡道ヲ多ク府
  縣道ニ認定スルコトハ、地方費濫用ノ端〓ヲ開ク一種ノ罪
  惡デモアルヤウナ感想ヲ持ッテ居ル者ガアルサウデアリマスガ、
  是ハ全ク地方ノ實情ニ通ゼザル机上ノ空論デアリマシテ、何
  等ノ根據ヲ持ヲテ居リマセヌ、固ヨリ鎧袖一觸ノ價値ヒ無イ
  ノデアリマス、吾々ノ委員會ハ此委員會ニ於テ附帶致シマ
  シタル希望條件ヲ政府ガ容レテ、委員會ニ於ケル聲明ノ通
  リ現實サレル事ヲ以テ、此法律運用ノ妙ヲ得ルモノ、隨テ國
  利民福ヲ增進スル最善ノ方便ト信ジマシテ、以上ノ如ク決
  定致シマシタ次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=52

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• 053・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
  御諮リ致シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=53

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• 054・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト
  認メマス、第二讀會ヲ開クコトニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=54

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• 055・岩崎勲

  ○岩崎動君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省
  略シテ委員長報告ノ通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=55

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• 056・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郎君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=56

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• 057・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ
  本案ノ第二讀會ヲ開キマス
  道路法中改正法律案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=57

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• 058・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナシト認メマス、仍テ委員
  長報告通リ可決確定致シマシタ-日程第九號乃至第十
  四ハ同一委員ニ付託シタル議案ナルニ依リ、一括議題ト致
  スニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=58

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• 059・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナシト認メマス、仍テ日程
  第九乃至第十四ヲ一括シテ其第一讀會ノ續ヲ開キマス、委
  員長ノ報告ヲ求メマス、澤來太郞君
  第九朝鮮事業公債法中改正法律案(政
  府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月一日
  朝鮮事業公債法中改正法律案委員長
  澤來太郞
  衆議院議長與繁三郞殿
  第十臺灣事業公債法改正法律案(政府提
  빈第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  灣事業公債法改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月一日
  臺灣事業公債法改正法律案委員長
  澤來太郞
  衆議院議長奧繁三郎殿
  第十一樺太事業公債法中改正法律案(政
  府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報〓)
  報告書
  一樺太事業公債法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月一日
  樺太事業公債法中改正法律案委員長
  澤來太郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  第十二關東州事業公債法案(政府提出)
  第一議會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一關東州事業公債法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月一日
  關東州事業公債法案委員長
  澤來太郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  第十三南洋廳特別會計法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報〓)
  報告書
  一南洋廳特別會計法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月一日
  南洋廳特別會計法案委員長
  澤來太郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  第十四大正五年法律第四號中改正律案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報〓)
  報告書
  一大正五年法律第四號中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月一日
  大正五年法律第四號中改正法律案委員長
  澤來太郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  〔澤來太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=59

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• 060・澤來太郎

  ○澤來太郞君　私ハ只今議題ニナリマシタル朝鮮事業公
  債法中改正法律案外三件、、卽チ臺灣事業公債法改正法
  律案、樺太事業公債法中改正法律案、關東州事業公債
  法案、次ハ南洋廳特別會計法案、次ハ大正五年法律第四
  號改正法律案ニ付テ、委員會ノ經過竝結果ヲ御報告中
  上ゲマス、而シテ此朝鮮事業公債法中改正法律案ヨリ關
  東州事業公債法案ニ至ルマデノ四案ハ、其性質ヨリ見マシ
  テモ、其形式ヨリ見マシテモ、殆ド異名同體ノ案デアリマス
  カラ、先以テ此四案ノ結果ヲ報告致シマス、朝鮮事業公債
  法中改正法律案ハ、既ニ各位ノ御承知ノ通リ現行起債法
  定額ハ二億三千六十万圓トナッテ居ルノニ對シマシテ、今回
  ノ增加所要額一億千四百十餘万圓ヲ加ヘ、三億四千四
  百八十万圓ト此法定額ヲ改正スルト云フノニ在ルノデアリ
  マス、次ハ臺灣事業公債法改正法律案、是亦各位ノ通リ
  現行起債法定額ハ一億千五百六十万圓、之ニ對シテ此
  度ノ增加所要額千六十八万九千圓ヲ加ヘマシテ、卽チ其
  法定額ヲ一億二千六百三十万圓トスルト云フニ在ルノデ
  アリマス、次ハ樺太事業公債法中改正法律案デアリマスガ、
  是モ亦皆樣ノ御承知ノ通リ、現行起債法定額ハ千九百六
  十万圓ト相成ッテ居リマスノニ對シテ、今回ノ增加所要額
  九百八十万圓ヲ加へ、卽チ二千九百四十万圓ノ法定額ニ
  改訂スルト云フニ在ルノデアリマス、次ハ關東州ノ事業公
  債法案デアリマスガ、是ハ新二此法案ヲ定ムルノデアリマシ
  テ、卽チ大連上水工事ニ要スル三百十万圓ノ法定額ヲ玆
  ニ定メタイ、斯ウ云フノデアリマス、[此四ツノ案ニ付キマシテ
  ハ、二月七日ニ委員會ニ付託セラレマシタ以來三月一日
  ノ間ニ至ルマデ、委員會ヲ開キタルコト七度、其間委員ト
  政府委員トノ間ニハ詳細ニ涉ッテ質問應答ヲ重ネラレタノ
  デアリマス、其質問應答中ニハ熱心ノ餘リ、委員ノ中ニ於キ
  マシテハ甚シク當面ノ的ヲ離レラレタル質問ヲ試ミラレタル
  人モアリマシタ、動モスレバ此中心ヲ離レテ殆ド本案以外ノ
  質問ヲスル方モアリマシタカラ、委員長タル私ヨリ成ベク此
  中心ヲ離レザルヤウニ、的ノ外レザルヤウニト云フ御注意ヲ
  申上ゲマシタ所ガ、其後大變ニ委員諸君ハ其的ヲ離レザル
  ヤウニ御努メ下サイマシテ、適切ナル御質問ガアタタウデア
  リマス、其結果僅ニ七回ノ委員會ヲ開キマシタノミデ、全ク
  原案ノ通リニ可決スルコトニ相成ッタノデアリマス、但シ之ヲ
  可決スルニ方リマシテ、政友會ノ志賀和多利君ヨリ、此際
  一ツノ希望ヲ述ベテ、其希望ノ下ニ贊成ヲシテ置キタイト
  云フノデアリマス、其希望ハ豫算ニ關係スル法律案ハ、豫算
  提出以前、少クトモ同時ニ之ヲ提出スベキモノトス、政府ハ
  此點ニ關シ將來十分ノ御注意ヲ爲スコトヲ要ス、斯ウ云フ
  希望デアリマス、其他憲政會ノ山道襄一君ヨリハ、臺灣ニ
  於ケル酒類禁業交付金ヲ公平ニ配付スルコト、及關東州ニ
  於ケル政府ノ聲明セル態度ヲ變ヘナイヤウニシテ貰ヒタイト
  云フ御希望ガアッタノデゴザイマス、此二ツノ希望アリシノ
  ミデ、全會一人ノ反對者ナク、全ク一致ヲ以テ政府案ノ如
  ク可決致シタノデゴザイマス、次ハ南洋廳特別會計法案、次
  ハ大正五年法律第四號中改正法律案ノ二案デアリマシタ
  ガ、是亦政府委員ト委員トノ間ニ於テ、詳細ニ涉ッテ質問應
  答ヲ重ネマシタル結果、孰レモ原案ノ如ク可決致シタノデゴ
  ザイマス、斯樣ナ次第デアリマスルカラ、本會ニ於キマシテモ、
  全會一致ヲ以テ御賛成可決アランコトヲ望ミマス、終ニ臨
  ンデ私ハ餘リ前例ニ無イヤウデアリマスガ、一ツノ御報告ヲ
  申上ゲテ置キタイノデアル、ソレハ何ンデアルカト云フト、委員
  ノ卽チ勤惰成績ヲ御報告致シタイト思ヒマス、孰レモ本會
  ノ委員諸氏ハ御精勤ニナッタノデアリマシタガ、然ルニ遺憾
  ナガラ委員中ノ濱口吉兵衞君ハ委員長竝理事ノ選擧ノ日
  ニ一囘御臨ミニナリマシタ許リデ、此終リニ至ル迄終ニ御
  顏ヲ見セナカッタノデアリマス、其他ノ人〓ハ何レモ御精勵デ
  アリマシタ、是ハ怠リシ者ト勤メシ者トヲ明ニスル爲ニ、玆ニ
  更メテ私ハ御報告ヲ申シテ置キマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=60

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• 061・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　右六案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤ
  ヲ御諮リ致シマス
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=61

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• 062・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　第二讀會ヲ開クニ御異議ナシト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=62

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• 063・岩崎勲

  ○岩崎勳君　日程第九ヨリ第十四ニ至ル六案ヲ一括シ
  テ直ニ其第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報
  告ノ通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=63

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• 064・奧繁三郎

  ○議長(奥繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=64

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• 065・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナシト認メマス、仍テ直ニ日
  程第九乃至第十四六案ノ第二讀會ヲ開キマス
  朝鮮事業公債法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  臺灣事業公債法改正法律案
  第二讀會(確定議)
  樺太事業公債法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  關東州事業公債法案第二讀會(確定議)
  南洋廳特別會計法案第二讀會(確定議)
  大正五年法律第四號中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=65

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• 066・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　御異議ナイト認メマス、仍テ右六
  案ハ三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可決確定致シマシ
  タ-日程第十五、工場法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開
  キマス、板野友造君
  第十五工場法中改正法律案(板野友造君
  提出)第一讀會
  工場法中改正法律案
  工場法中左ノ通改正ス
  第一條第一項第一號中「十五人」ヲ「十人」ニ改ム
  第二條第一項中「十二歲未滿ノ者」ヲ「十四歲未滿ノ
  者又ハ義務〓育ヲ終ラサル者」ニ改メ但書ヲ削ル
  同條第二項中「十歲」ヲ「十二歲」ニ改ム
  第三條第一項及第二項ヲ左ノ如ク改ム
  職工ノ實際就業時間ハ一日八時間一週四十八時
  間ヲ超ユルコトヲ得ス
  主務大臣ハ業務ノ種類ニ依リ十六歲以上ノ男子ニ
  限リ前項ノ制限ヲ超エ就業時間ヲ一週六十時間迄
  延長スルコトヲ得
  第四條中「十五歲未滿」ヲ「十六歳未滿」ニ「午後十時ヨ
  リ午前四時ニ至ル間」ヲ「午後八時ヨリ午前六時ニ至ル
  間」ニ改ム
  第五條削除
  第六條職工ヲ二組以上ニ分チ交替ニ就業セシムル場
  合ニ於テハ三週間ヲ超エサル一期間ノ平均勞働時間
  カ一日八時間一週四十八時間ヲ超過セサル限リ或
  日ニ於テ八時間或週ニ於テ四十八時間ノ制限ヲ超過
  スルコトヲ得
  第七條每週日曜日及三大祝日ハ休日タルコトヲ要ス
  但シ主務大臣ハ事業ノ性質又ハ地方ノ事情ニ依リ日
  曜日ノ就業ヲ許シ他ノ日ヲ以テ休日ト爲サシムルコト
  ヲ得此ノ場合ニ於テハ休日ハ連續二十四時間ドス
  職工ヲ二組以上ニ分チ交替ニ午後八時ヨリ午前六
  時ニ至ル間ニ於テ就業セシムル時ハ六日ヲ超エサル期
  間每ニ其ノ就業時ヲ轉換スヘシ
  每日正午一時間ノ休憩時間ヲ設クヘシ
  第八條第一項中「乃至第五條」ヲ「、第四條、第六條」ニ
  改ム
  同條第二項中「第五條」ヲ「第六條」ニ改ム
  同條第四項ヲ左ノ如ク改ム
  延長時間ニ對シテハ二割五分ヲ下ラサル割增賃銀ヲ
  支給スルコトヲ要ス
  第九條、第十條及第十一條中「十五歲」ヲ「十六歳」ニ
  改ム
  第十二條ニ左ノ一項ヲ加フ
  產婦ニ就テハ產前及產後ニ於テ各四週間ヲ下ラサル
  休業ヲ爲サシムルコトヲ要ス
  第十五條中「職工自己ノ重大ナル過失ニ依ラスシテ」ヲ
  「職工カ」ニ改ム
  第二十條中「第五條」ヲ「第四條」ニ「五百圓」ヲ「千圓」ニ
  改ム
  第二十一條中「三百圓」ヲ「五百圓」ニ改ム
  第二十四條中「第九條、」ヲ「第九條乃至」ニ改ム
  附則
  本法ハ大正十一年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  本法施行ノ際現ニ本法ノ適用ヲ受クル工場ニ限リ第二
  條ノ適用ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
  〔板野友造君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=66

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• 067・板野友造

  ○板野友造君　國民黨ノ提案ニ係リマスル工場法中改
  正法律案、此提案ノ理由ヲ簡單ニ說明致シタイト思ヒマス、
  此工場法ハ一國ノ產業政策及勞働問題ニ重大ナル關係
  ヲ持チマスルコトハ申ス迄モアリマセヌ、所ガ現行ノ工場法
  ハ明治四十四年ノ制定ニ係リ、其當時未ダ我國ノ工業ハ
  極テ幼稚デアリマシタノト、殊ニ其當時ニ於キマシテハ只今
  ト異ッテ、社會政策ト云フヤウナ思想ハ未ダ普及ヲ致シテ居
  リマセヌ、ダカラ此工場法ノ制定モドチラカト申シマスレバ、
  多ク衛生其他警察ノ方面ノ思想カラ出テ居ル規定ガ多々
  アルヤウナ譯デアリマシテ、到底今日ノ工業社會ニ適應スル
  モノデハ無イノデアリマス、殊ニ現行工場法ノ制定ハ、明治
  四十四年ニ制定サレマシタケレドモ、餘程以前カラ政府ノ
  方デハ此制定ニ若手致シテ居ッタノデアリマスガ、其制定ノ
  前後ニ於テ、殊ニ明治四十四年ニ法律ハ成立ヲ致シマシタ
  ケレドモ、之ガ實施ハ餘程遲レデ、御承知ノ如ク大正五年
  ニ至ッテ初テ實施サレタト云フヤウナ譯デアリマスガ、是等ノ
  間ニ多クノ日子ヲ要シタル所以ノモノハ、主トシテ資本家、
  工場主ガ之ニ對シテ反對ノ運動ヲ爲シタル結果デアリマス、
  ソレデアリマスルカラシテ、元〓謂ハバ不徹底ナル立法デアル
  所へ、資本家ノ方カラ反對ノ運動ヲ致シマシタガ爲ニ、實施
  モ遲レマスルノト、此實施ニ伴フ所ノ勅令其他ニ於テ、非常
  ニ此法律ノ所期スル目的ヲ遂ゲルコトヲ邪魔ヲスルモノガ
  出來テ來テ居ルノデアリマスカラシテ、益〓以テ今日ニ於テ
  ハ之ガ改正ヲシナケレバナラヌト云フコトハ、喫緊ノ事デアル
  コトハ多辯ヲ要サヌコトヽ思ヒマス、デ今日ニ於キマシテハ
  是ガ制定當時ニ較ベマスレバ、非常ニ工業モ進步致シテ居
  リ、其他一般ノ事情モ異〃テ居ルノデアリマスカラシテ、此時
  ニ當ッテ工業ノ進步發達ヲ期スル上ニ於テ、是非此勞働能
  力ノ保全ヲ圖リ、勞働者ノ肉體上、精神上ノ健全ヲ保全
  シ、サウシテ能率ヲ進メルト云フコトヲ圖ラナケレバナラヌト
  考ヘルノデアリマス、デ是等ノ事情卽チ勞働能率ヲ增進シ
  テ以テ產業ノ振興ヲ圖ルト云フコト、前年開カレマシタ國
  際勞働會議ノ結果ヲ斟酌ヲ致ス必要ガアルコトハ、近時頻
  頻トシテ起リマスル勞働爭議、是等ノモノヲ未然ニ防グト云
  フヤウナコトノ必要ガアル、是等ニ鑑ミマシテ玆ニ改正案ヲ
  提出シタ譯デゴザイマス、デ改正ヲ試ミント致シマスル箇條
  ハ、案ヲ具ヘテ御廻付申上ゲテアリマスル通リ、各條ニ亙ッテ
  居リマスルガ、之ヲ一々說明ヲスルコトヲ省キマス、其改正
  ノ重要ナル點ハ、工場法適用ノ範圍ヲ擴大スルト云フコト
  ガ一ツト、ソレカラ只今デハ職工ノ最低年齡ガ十二歳ト云
  フコトニナッテ居リマスルガ、此最低年齢ヲ繰上ゲルト云フ
  コトニスル、之ヲ十四歲ニスルノミナラズ、若シ十四歳デアッ
  テモ普通〓育ヲ終ヘナイ者ハ就業ヲ許サナイト云フコトニ
  シテ、要スルニ最低年齡ノ繰上ヲスルコト、ソレカラ就業時
  間ヲ短縮スルコト、現行法ハ色ミノ例外ハ設ケテゴザイマスガ、
  先ヅ十二時間制度ト云ウテ宜カラウト思ヒマスガ、此時間
  ヲ短縮ヲスルコト、ソレカラ夜間就業ヲ禁止ハ致シテ居リマ
  スガ、色ニナ例外ヲ設ケテゴザイマス、是等ノ例外ノ大部分ヲ
  除イテ禁止スル、夜間ナル時間ヲモウ少シ長クスルト云フノガ
  其一ツ、ソレカラ休日ノ規定、是モ現行法ハ唯月二回ト云フ
  コトニナッテ居リマスルガ、此休日ノ日ヲ多クシ、且ツ其休日
  ヲ確定スルト云フノガ一ツ、女子ニ對スル保護-女子職
  工ニ對スル保護ヲ厚クスルコト、殊ニ產婦ニ對スル保護ヲ
  厚クスルト云フノガ一箇條、是等ガ主ナルモノデアリマス、ソ
  レカラ最後ニ扶助規定、職工ガ業務上ノ疾病若クハ負傷
  ヲ致シマシタ際ノ此扶助ニ關スル現行法ノ第十五條ハ極
  テ不完全デアル、極テ不完全デアルノミナラズ、重大ナル過失
  ガアッタトキニハ、負傷ナドガアリマシテモ之ヲ扶助ヲシナイト
  云フコトニナッテ居ルガ爲ニ、多クノ場合ニ於テ工場主ヲシ
  テ、是ハ過失ニ基クモノ、重大ナル過失ニ基クモノデアルト
  云フノ抗辯ヲ以テ、容易ク扶助ノ義務ヲ免レシムル虞ガア
  リマス、故ニ此扶助ノ規定ヲ改正シテ扶助ヲ完全ニスル、斯
  ウ云フ事ヲ所期シタノデアリマス、其他工場主ノ法律違反
  ノ制裁ヲ重クスルヤウナ點ニ、色ミノ改正ヲ加ヘテ居リマス
  ル、要スルニ職工ヲ保護シ、勞働能率ヲ增進シテ、產業ノ振
  與ヲ圖ル、斯ウ云フ事ニ出發ヲ致シテ居ル譯デアリマス、ド
  ウカ御審議ノ上御賛成下サルコトヲ希望シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=67

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• 068・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ議長指名ヲ以テ特ニ十八名ノ委員
  ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=68

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• 069・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス-日程第十六勞働組合
  法案ノ第一讀會ヲ開キマス土井權大君
  第十六勞働組合法案(星島二郞君提出)
  第一讀會
  勞働組合法案
  勞働組合法
  第一條本法ニ於テ勞働組合ト稱スルハ勞働條件ノ
  維持又ハ改善組合員相互ノ間ニ於ケル共同利益ノ
  保護增進竝共濟扶助ノ目的ヲ以テ設立シタル勞働
  者十人以上ノ團體ヲ謂フ
  第二條勞働者ニ非サル者ト雖組合ノ總會ニ於テ組
  合員三分ノ二以上ノ同意アルトキハ組合員タルコト
  ヲ得
  第三條勞働組合ハ法人トス
  第四條勞働組合ノ代表者ハ組合設立ノ日ヨリ二週
  間内ニ組合規約ヲ主タル事務所所在地ノ地方長官
  ニ屆出ルコトヲ要ス組合規約ニ變更アリタルトキ亦同
  第五條勞働組合ノ組合規約ニハ左ノ事項ヲ記載ス
  ルコトヲ要ス
  -名稱
  二目的
  三主タル事務所
  四組合員ノ資格ニ關スル規定
  五組合員ノ加入及脫退ニ關スル規完
  六組合ノ總會其ノ他ノ會議ニ關スル規定
  七組合ノ代表者竝其ノ他ノ役員ニ關スル規定
  八組合費及加入金ノ徵收方法竝會計ニ關スル規
  定
  九組合ノ目的タル事業竝組合員共済扶助ニ關ス
  ル規定
  十組合規約ノ變更ニ關スル規定
  第六條勞働組合ノ登記スヘキ事項左ノ如シ
  -第五條第一號乃至第三號
  二設立ノ年月日
  三理事ノ住所氏名及生年月日
  前項ノ事項中變更ヲ生シタルトキハ一週間內ニ變更
  ノ登記ヲ爲スコトヲ要ス登記ヲ爲シタル後ニ非サレハ
  第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
  第七條勞働組合ハ協同ノ目的ヲ達スル爲他ノ勞働
  組合ト聯合シ聯合組合ヲ組織スルコトヲ得聯合組合
  ニ對シテハ本法ノ規定ヲ準用ス
  第八條民法第四十四條、第四十五條、第四十八條、
  第五十條、第五十二條乃至第七十條、第七十二條
  乃至第八十四條ノ規定ハ之ヲ勞働組合ニ準用ス但
  シ總會ニ付テハ組合規約ノ定ムル所ニ依リ組合員中
  ヨリ選擧シタル代議機關ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得此
  ノ場合ニ於テハ總會ニ關スル規定ハ之ヲ代議機關ニ
  準用ス
  第九條勞働組合ニ對シテハ所得稅、營業稅及登記料
  ヲ免除ス
  第十條勞働組合ハ合併ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ハ民
  法第六十九條ノ規定ヲ準用ス
  勞働組合カ合併ヲ爲シタルトキハ二週間內ニ於テ合
  併後存續スル組合ハ變更ノ登記ヲ爲シ又合併ニ因リ
  テ消滅シタル組合ハ解散ノ登記ヲ爲シ合併ニ因リテ
  設立セラレタル組合ハ設立ノ登記ヲ爲スコトヲ要ス
  合併後存續スル組合又ハ合併ニ因リテ設立セラレタ
  ル組合ハ合併ニ因リテ消滅シタル組合ノ權利義務ヲ
  承繼ス
  第十一條雇主ハ勞働者カ勞働組合ノ組合員タルノ
  故ヲ以テ之ヲ解雇シ又ハ組合ニ加入セス若ハ組合ヨ
  リ脫退スルコトヲ雇傭條件ト爲スコトヲ得ス
  第十二條勞働組合又ハ其ノ組合員ハ勞働條件ニ關
  シテ組合又ハ組合員ト締結シタル契約ニ付雇主ニ對
  シ損害賠償又ハ違約金若ハ保證ノ責務ヲ負ハサルモ
  ノトス
  第十三條勞働組合ハ每年一回組合ノ事業竝財產ノ
  狀況ニ關シ地方長官ニ報告ヲ爲シ併セテ之ヲ公告
  スヘシ
  第十四條勞働組合ノ選擧又ハ會議ニシテ法令又ハ
  組合規約ニ違反スルトキハ主務大臣又ハ地方長官ハ
  其ノ取消ヲ命スルコトヲ得
  第十五條第四條ノ場合ニ於テ地方長官ハ組合規約
  カ法令ニ違反スト認ムルトキハ其ノ變更ヲ命スルコト
  ヲ得
  第十六條前二條ノ地方長官ノ處分ニ對シ不服アル
  トキハ主務大臣ニ訴願シ其ノ栽決ニ不服アルトキ及
  主務大臣ノ處分ニ對シ不服アルトキハ行政裁判所ニ
  出訴スルコトヲ得但シ訴願ノ提起ハ處分決定ノ日ヨ
  リ十四日內ニ行政訴訟ノ提起ハ其ノ裁決又ハ處分
  決定ノ日ヨリ三十日內ニ之ヲ爲フコトヲ要ス
  第十七條勞働組合解散シタルトキハ他ニ特別ノ規定
  アル場合ノ外第四條ノ手續ニ依リ地方長官ニ屆出ツ
  ルコトヲ要ス
  第十八條第四條及第十七條ノ屆出若ハ第十三條ノ
  手續ヲ爲サス又ハ第十四條ノ命令ニ違反シタルトキ
  ハ組合ノ代表者其ノ他ノ役員ヲ各五十圓以下ノ過
  料ニ處ス其ノ屆出又ハ手續ヲ爲スモ實ヲ以テセサルト
  キ亦同シ
  第十九條第十一條ニ違反シタル者ハ五百圓以下ノ
  過料ニ處ス
  第二十條勞働組合ノ役員其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收
  受シ又ハ之ヲ要求シ若ハ約束シタルトキハ三年以下
  ノ懲役ニ處ス賄賂ノ提供及交付又ハ約束ヲ爲シタル
  者亦同シ
  前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若其
  ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價
  格ヲ追徵ス
  第二十一條非訟事件手續法第二百六條乃至第二
  百八條ノ規定ハ本法ノ過料ニ之ヲ準用ス
  附則
  本法ハ大正十一年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  本法施行前ニ設立シタル勞働組合ハ本法施行後一週
  間内ニ第四條ノ手續ヲ爲スコトヲ要ス
  勞働組合ノ登記ニ付テハ產業組合法附則ヲ準用ス
  〔土井權大君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=69

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• 070・土井權大

  ○土井權大君　是モ亦國民黨ヨリ提出ニナッテ居リマス
  案デアリマス、卽チ勞働組合法案提案ノ理由ヲ說明致シマ
  ス、御承知ノ通リ近時工場ニ於ケル所謂勞働爭議ト云フ
  モノモ、隨分頻々トシテ起ッテ居ルノデアリマス、特ニ其甚シ
  キモノハ昨年神戶ニ於ケル所ノ勞働爭議ノ如キデアリマス、
  又二三日以前橫須賀ノ船渠ニ於キマシテ、非常ナル勞働
  爭議ガ起キマシテ其等ノ勞働者ト云フ者ハ、或ハ神戶ニ氣
  脈ヲ通ジ、或ハ足尾ニ氣脈ヲ通ジ、色〓ノ策戰ヲシテ居ルト
  云フコトモ御承知ノ通リデアリマス、ソレ等ノ勞働爭議ト云
  フモノガ御承知ノ通リ農村ニマデ波及致スノデアリマス、現
  ニ岐阜縣デアルトカ、或ハ愛知縣ト云フ所ハ、隨分農業勞
  働ノヤカマシイ處デアッタノデアリマスルガ、勞働爭議ト云フ
  モノガ、否、農業勞働爭議ト云フモノガ更ニ兵庫縣ノ農村
  ニヤカマシクナッタノハ、是ハ取モ直サズ昨年神戶ニ於ケル所
  ノ勞働爭議ガ農村ニ波及致シマシタル所ノ明ナル證據デア
  リマス、然ラバ此工業勞働爭議ハ如何ナル所カラ起ルカ、其
  原因ヲ調査致シマスルニ、是亦御承知ノ通リ、一ツニハ物
  質的、第二ニハ精神的力ラ原因致シテ居ルノデアリマス、卽
  チ生活ノ不安、若クハ將來生活ノ不安ニ襲ハレハスマイカ
  ト云ヲ生活不安ノ見越シ、之ガ所謂物質的ノ原因デアリマ
  ス、其處ヨリ致シマシテ熟、彼等勞働者謂ヘラク、我モ人ナ
  リ、資本家モ人ナリ、然ルニ彼レ資本家ハ裕をトシテ富ンデ
  居ル、我等勞働者ハ勞スルト雖モ、益〓貧ニ赴ク、而モ其資
  本ト勞働ニ依ッテ生產シタル所ノ財貨、否、其利潤ハ誰ガ澤
  山取ルカト言ッタナラバ、資本家デアッテ、勞働者ト云フ者ハ
  極テ其分配ハ不公平デアル、斯ウ云フヤウナ考ヲ彼等ガ持
  出スノデアリマス、是等ノ精神的ノ所謂思想上ノ變化ヨリ
  致シマシテ、或ハ賃銀ノ値上ノ要求トナリ、或ハ退職手當ノ
  要求トナリ、或ハ團體交涉ノ要求トナリ、委員制ヲ確認シ
  テ吳レト云フガ如キ要求トナル、之ニ對シテハ資本家ハ應ゼ
  ナイ、應ゼヌガ爲ニ最後ノ手段ト致シマシテ、彼等勞働者ハ
  同盟罷業ノ已ムナキニ至リ、或ハ怠業ノ已ムナキニ至リ、或
  ハ示威運動ノ已ムナキニ至ル、斯ウ云フコトニ相成ルノデア
  リマス、卽チ彼等ハ我ニ「バン」ヲ與ヘヨ、然ラサレバ我ニ劍ヲ
  與ヘヨ、此思想ヲ以テ資本家ヲ怨ミ、或ハ政府當路者ヲ怨
  ムト云フガ如キコトニ相成ッテ居ルノデアリマス、故ニ此時此
  際、如何ニシテ彼等ノ生活ヲ安定セシムルカト云フコトニ付
  テハ、勞働立法ノ必要アリト吾々ハ考ヘル次第デアリマス
  (拍手)卽チ勞働立法ノ目的ト申スモノハ、御承知ノ通リ第
  一ニハ勞働者ノ物質的及精神的ノ安定ヲ圖ルノデアリマ
  ス、第二ハ彼等ノ自體ノ健康ヲ維持スルト同時ニ、身體ノ
  發達ヲ圖ルノデアリマス、卽チ衞生、保健、是等ノ制度デア
  リマス、第三ニハ、彼等ガ假ニ勞働ノ間ニ爭ヒガ起キタナラ
  バ如何ニシテ之ヲ仲裁スルカ、又ハ其仲裁ト云フモノガ圓
  滿ニ運バナカッタ場合ニハ、如何ニシテ其爭ヒヲ審判スルカ、
  所謂勞働爭議ニ對スル所ノ仲裁審判、此制度デアリマス、
  是モ亦勞働立法ノ目的トシナケレバナラヌノデアリマス、第
  四ト致シマシテハ、勞働者ノ中ニモ隨分無謀ナル者ガアリマ
  ス、秩序ヲ紊ス所ノモノガアリマス、是等ニ對シテハ相當ノ
  制裁ヲ施シ、無謀ナル者ニ對シテハ十分ナル嚴重ナル取締
  ヲシナケレバナラヌ、此四ツガ勞働立法ノ目的デアルト私ハ
  考ヘルノデアリマス、果シテ然ラバ我ガ日本ニ於テ此四ツノ
  目的ニ合致スル所ノ現行法アリヤ否ヤト云フコトヲ調査致
  シマスルニ、無謀ナル者ヲ取締ル所ノ法律ト致シマシテハ
  刑法アリ、所謂騷擾罪ト云フ章ヲ設ケテンレ等ヲ取締ル法
  ガ出來テ居ル、又一方ニハ治安警察法ト云フモノモアリマ
  スケレドモ、治安警察法ナドハ非常ニ不完全ナモノデアリマ
  スルガ故ニ、各黨、各派ヨリ御修正ニナッテ案ヲ御出シニナッ
  テ居ルコトデアラウ卜思ヒマス、免ニ角此無謀ナル者ヲ取締
  ル所ノ法律ト致シマシテハ、治安警察法ニ刑法デアリマス、
  ソレカラ其次ノ目的デアリマスル所ノ彼等勞働者ノ身體ノ
  健康維持ニ關スル保健、衞生ニ關スル所ノ制度ハ、ドレデア
  ルカト言ヘバ、先刻板野君ヨリ修正案ヲ御出シニヂリマシタ
  ル所ノ工場法デアルト私ハ考ヘルノデアリマス、是ダケデアリ
  マス、勞働ニ關スル所ノ立法ハ、最モ大切デアル所ノ所謂仲
  栽ニ關スル所ノ事項、又勞働爭議ノ裁判ニ關スル所ノ事
  項、又勞働者ノ物質的及精神的ノ安定ヲ圖ル所ノ政策、
  法律、制度ト云フモノハ、悲シイ哉今日日本ニ無イノデアリ
  マス、ソレガ放ニ將來進ンデ官民一致ヲ以テ勞働者ニ關スル
  所ノ一般法ヲ制定シ、彼等ノ權利ヲ認メ、進ンデハ勞働爭
  議ノアリシ場合ニ、如何ニンテ之ヲ仲裁スルカ、仲栽ガ圓滿
  ニ行カナイ場合ニハ如何ニシテ之ヲ裁判スルカ、ソレ等ノ一
  般ニ關スル斯ノ勞働法ト云フモノヲ定メル必要アリト考ヘ
  ルノデアリマス、併ナガラ直ニ之ヲ此際作ルト云フコトハ困
  難デアリマス、仍テ此際ハ少クトモ彼等勞働者ノ直接ノ利
  益ヲ如何ニ保護スルカ、如何ニシテ彼等ノ福利增進ヲ圖ル
  カ、而シテ少クトモ彼等ノ生活不安定ト云フコトノ心配ヲ
  除クカ、如何ニシテ彼等ノ思想ヲ善導スルカト云フコトノ注
  意ハ、今日ニ於テ最モ必要ナルモノト私ハ考ヘルノデアリマス、
  是ガ卽チ一般勞働法律ヲ作ル階梯トシ、前提トシテ、勞働組
  合法案ナルモノヲ提出シタ第一ノ理由デアリマス、然ラバ吾
  吾ノ提案致シテ居リマスル所ノ勞働組合ハ、如何ナルコトヲ
  以テ目的トスルカト御尋ニ相成リマシタナラバ、第一ニハ勞
  働條件ノ維持改善デアリマス、第二ニハ彼等勞働者ノ共
  同利益ノ保護增進デアリマス、第三ニハ彼等勞働組合員
  ノ共濟扶助デアリマス、此三ツノ大ナル目的ヲ以テ此組合
  法案ナルモノヲ提出致シタ次第デアリマス、同時ニ組合ハ
  如何ナル事業ヲ行フカト御尋ニナルナラバ、此經濟的事業
  ノ經營ト云フコトニ重キヲ置イタノデアリマス、日用品ノ共
  同購入、若クハ彼等ノ日用品ノ共同製作、進ンデハ貯蓄進
  ンデハ金融、進ンデハ娛樂、是等ノ事ヲ其組合ヲ以テ行ハシ
  メヤウト考ヘルノデアリマス、所謂消費組合-消費組合ヲ
  モ此勞働組合ニ於キマシテ行フコトガ出來ル、斯ウ云フ事
  ニ致サウト考ヘテ居ルノデアリマス、此事ハ御承知ノ通リヽ
  海軍方面ニ於テハ變則的ニ實行ヲ爲サッテ居ル吳デアルト
  カ、或ハ横須賀、佐世保、舞鶴等ニ於テ、海軍共濟組合法
  ヲ運用サレマシテ、米デアルトカ、或ハ醬油、味噌、是等ノ物
  ヲ共同ニ、而モ低康ニ買求メテ之ヲ其職工ニ配付ナサッテ
  居ルノデアリマス、而モ共濟事業ト云フコトモ完全ニ實行ナ
  サッテ居ル、ソレガ爲ニ勞働問題ノヤカマシキ時ニ當リマシテ、
  未ダ海軍方面ニハ「ストライキ」デアルトカ、或ハ怠業デアル
  トカ云フガ如キ事ガ起キナンダノデアリマス、神戶ノ川崎
  造船所デアルトカ、三菱ト云フガ如キ方面ハドデウアルカト
  言ウタナラバ、唯彼等資本家ノ利益ノミヲ圖ッテ、如何ニシ
  テ勞働者ヲ保護スルカ、如何ニシテ彼等ノ福利增進ヲ圖ル
  カト云フコトヲ考ヘナカッタガ爲ニ、何等ノ福利增進ノ施設
  ヲ行ハナカッタ爲ニ、斯ノ如キ狀態ニナッタノデアリマス、斯ク
  私ハ斷定致シマス、既ニ實例モアルコトデアリマス、然ラバサ
  ウ云フ組合ノ效果トシテ、如何樣ナル效果ガアルカト申シマ
  シタナラバ、第一ニハ團體力ノ、公認デアル、如何ニモ彼等
  一人々々デハ經濟的施設モヤルコトガ出來ナイ、又彼等ノ
  共濟慰安ヲ圖ルコトモ出來ナイカラ、彼等ヲシテ團體トセシ
  メル、其集團、其團體ト云フモノヲ公ニ認メル、之ガ第一デア
  リマス、所謂組合ノ效果ノ第一デアリマス、第一一ニハ條理ア
  ル所ノ要求ヲ平和ノ裡ニ解決セシメタイ、今日ノ如ク〓體
  ヲ認メテ居リマセヌガ爲ニ、一部ノ煽動家、或ハ無法ナル謀
  ヲ爲ス者ガアリマシタナラバ、直ニ其煽動ニ乘リ、無法ナル
  企ニ乘リマシテ、往々ニシテ「ストライキ」ヲ起ス事ガアリ、往
  往ニシテ示威運動ヲ起ス事ガアリ、往々ニシテ怠業ヲ爲ス
  事ガアルト云フ狀態デアリマス、卽チ無組織デアル、組織的
  デナイ組織デ無イガ爲ニ「ストライキ」ヲ起シ、斯ノ如キ暴行
  ニ出ルノデアリマスガ故ニ、之ヲ組織的ニ、秩序的ニセシムル
  所ノ效果ガアルト考へルノデアリマス、卽チ組合ノ效果ハン
  レデアリマス、其次ノ效果トシテハ、勞働價値ノ承認デアル、
  資本モ貴イガ勞働モ貴イ、資本ノミヲ以テ富ノ生產ノ出來
  マセヌ事ハ御承知ノ通リデアリマス、勞働モ必要デアル、故
  ニ勞働モ資本ト同ジ如キ價値ノアルモノデアルト云フコトヲ
  承認スルト云フノガ、組合ノ效果デアリマス、其勞働價値ヲ
  承認致シマシタナラバ、自然ト彼等勞働者ノ社會的ノ地位
  向上ヲ圖リ、又組合經營ノ方法ニ依ッテ、經濟的地位ノ向
  上ヲ圖リ、進ンデハ公正ナル勞資協調ガ圖ラレルノデアリマ
  ス、決シテ私ハ勞働者ノミニ味方ヲシテ、此勞働組合法ヲ
  出ス次第デハナイ、資本モ貴イガ、勞働モ貴イ要ハ此組合ヲ
  造クテ、是迄誤解サレテ居ルガ如キ爭トカ、鬪爭ト云フガ如
  キ目的ニ出デズシテ、經濟的ニ而モ平和ニ彼等勞働者ノ福
  利ヲ增進シ、進デハ共同ノ利益ヲ增進シ、進デハ思想ノ善
  導ヲ圖リ、進デハ勞資協調ヲ圖リ、資本家モ宜カレ、勞働
  者モ宜カレ、以テ平和ノ裡ニ我ガ帝國ノ產業振興ノ爲ニ盡
  シタイト云フ一念ヨリ提案致シタ次第デアリマス是レ提案
  ノ第二ノ理由デアリマス、何卒御賛同アランコトヲ希望致
  シマシテ、此壇ヲ降リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=70

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• 071・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ〓瀨一郎君外一名提出治安警
  察法中改正法律案外三件ノ委員ニ併セテ付託セラレンコ
  トヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 072・奧繁三郎

  ○議長(奧繁三郞君)　鈴木君ノ動議ニ御異議ナシト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス-日程第十七、社寺現
  境内地無償下付ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、
  提出者岩崎動君
  第十七社寺現境內地無償下付ニ關スル法
  律案(鵜澤總明君外二名提出)
  第一讀會
  社寺現境內地無償下付ニ關スル法律案
  第一條社寺境内地ニシテ社寺上地處分ニ依リ現ニ
  國有ニ屬スル現境内地ハ之ヲ其ノ社寺ニ下付スヘシ
  第二條本法ニ依ル下付ノ申請ハ大正十四年七月三
  十一日迄ニ之ヲ主務大臣ニ差出スヘシ
  第三條此ノ申請ニ對スル處分ニ付不服アル者ハ其ノ
  指令ヲ受ケタル日ヨリ三箇月內ニ行政裁判所ニ出訴
  スルコトヲ得
  第四條第一條ニ依リ下付ヲ受ケタル者ハ其ノ境內地
  及立木ノ所有權ヲ取得ス
  前項ニ依リ所有權ヲ取得シタル者ハ其ノ土地及立木
  ニ付第三者ノ現ニ有スル權利ヲ害スルコトヲ得ス
  第五條本法ニ依リ下付ヲ受ケタル境內地及立木ハ主
  務大臣ノ許可ヲ受クルニ非サレハ地上權、抵當權又ハ
  質權ノ目的ト爲スコトヲ得ス
  第六條本法施行前行政處分又ハ裁判所ノ判決ヲ受
  ケタル者ト雖本法ニ依リ下付ノ申請ヲ爲スコトヲ妨ケス
  附則
  本法ハ大正十一年五月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔岩崎勳君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=72

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• 073・岩崎勲

  ○岩崎動君　極テ簡單ニ本案提出ノ理由ヲ說明致シマ
  ス、社寺境内又ハ山林ニシテ、朱印又ハ除地ノ證據アルモ
  ノハ社寺ノ所有デアルト云フコトハ、行政栽判所判例ノ認
  ムル所デアリマス、總テノ社寺境内山林ハ皆同ジ性質デア
  リマシテ、社寺佛堂ノ如キハ既ニ各、其當該寺院ノ所有ト
  ナッテ居ルニ拘リマセズ、獨リ其敷地ノミヲ國有ト致シテ置
  クコトハ、何等ノ理由ノ無イコトデアリマス
  〔奧議長議長席ヲ退キ粕谷副議長代リ著席〕
  卽チ衆議院ニ於キマシテハ、明治四十四年以來社寺上地
  下戾ニ關スル法律案ヲ議會ニ提出致シマシテ、大正五年
  三月ノ議會マデ四回衆議院ヲ通過致シマシテ、貴族院ニ
  囘付セラレタノデアリマス、貴族院ノ特別委員會ニ於キマシ
  テハ、時ノ委員長伯爵松平直之君ヨリ政府ヘ交涉致シマ
  シタ結果、社寺上地ニ關スル農商務省所管國有林ニ對シ
  マシテハ、保管林規則ヲ改正致シマシテ、保管年限ヲ五十
  年ニ延長シ、且ツ其主產物ノ三分ノ二ヲ其社寺ニ無償ニ
  テ交付スルコトニ致シマシタ、又内務省所管ニ屬スル社寺
  ノ境内敷地ハ、無償譲與ノ形式ニ依リマシテ其社寺ニ交
  付スルコトニ協定ガ成立ッタノデアリマス、此協定ニ依リマシ
  テ、農商務省ニ於キマシテハ、保管林規則ヲ改正致シマシテ
  大正六年六月之ヲ發布シ、現ニ施行セラレテ居ルノデアリマ
  スガ、内務省ニ於キマシテハ、右協定ノ趣旨ニ依リ、社寺境
  內敷地ヲ無償讓與ノ形式ニテ當該社寺ニ下付スベキ勅令
  ヲ發布スルト云フ豫定ニナッテ居ッタノデアリマスガ、其儘今
  日ニナッテ居ルノデアリマス、而シテ第四十四議會ニ於キマ
  シテハ、之ニ關スル建議案モ本院ヲ通過致シテ居ルノデアリ
  マスルガ、之ヲ法律トシテ制定スルコトガ最モ至當デアルト
  信ジマシテ、玆ニ本案ヲ提出致シタ次第デアリマス、何卒御
  協賛ヲ冀ヒマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=73

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• 074・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ議長指名ヲ以テ九名ノ委員ニ付
  託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=74

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• 075・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　鈴木君ノ動議ニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=75

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• 076・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマス、仍テ動
  議ノ如ク決シマス-次ハ出版取締法案、星島二郞君
  第十八出版取締法案(星島二郞君提出)
  第一讀會
  出版取締法案
  出版取締法
  第一條器械的、化學的又ハ其ノ他ノ方法ニ依リ交書
  圖畫ヲ印刷膽寫シ之ヲ發賣シ又ハ頒布スルヲ出版ト
  謂ヒ其ノ文書及圖書ヲ刊行物ト謂ヒ其ノ文書ヲ著
  述編纂シ若ハ圖畫ヲ作爲スル者ヲ著作者ト謂ヒ文書
  又ハ圖畫ヲ統括編輯スル者ヲ編輯者ト謂ヒ其ノ發賣
  頒布ヲ擔當スル者ヲ發行者ト謂ヒ其ノ印刷謄寫ヲ擔
  當スル者ヲ印刷者ト謂フ
  第二條一定ノ題號ヲ用井時期ヲ定メ一箇月一回以
  上出版スル刊行物及定時期以外本刊行物ト同一題
  號ヲ用井テ臨時出版スル刊行物ヲ定期刊行物ト謂
  ヒ其ノ他ノ方法ニ依リ出版スル刊行物ヲ普通刊行
  物ト謂フ同一題號ノ定期刊行物ニシテ他ノ地方ニ於
  テ出版スル時ハ各別種ノ定期刊行物ト認ム
  第三條左ニ揭クルモノハ定期期行物ノ發行者又ハ編
  輯者タルコトヲ得ス
  -本法ヲ施行スル帝國領土内ニ居住セサル者
  二未成年者、禁治產者及準禁治產者
  三懲役又ハ禁錮ノ刑ノ執行中ノ者
  第四條定期刊行物ノ發行者ハ左ノ事項ヲ內務大臣
  ニ屆出ツヘシ
  -題號
  二出版ノ時期
  三第一囘出版ノ年月日
  四出版所及印刷所
  五發行者、編輯者及印刷者ノ住所、氏名、年齡但
  シ編輯者印刷者二人以上アルトキハ其ノ主トシ
  テ編輯事務ヲ擔當スル者ノ住所、氏名、年齢
  前項ノ屆出ハ發行ノ日ヨリ十日以前ニ管轄地方官
  廳ニ差出スヘシ
  第五條普通刊行物ノ發行者ハ出版ノ日ヨリ到達ス
  ヘキ日數ヲ除キ三日前ニ製本二部ヲ添ヘ内務大臣ニ
  屆出ツヘシ
  第六條官廳ニ於テ刊行物ヲ出版スルトキハ其ノ官廳
  ヨリ其ノ刊行物ヲ內務大臣ニ送付スヘシ
  第七條定期刊行物ノ發行者ハ出版ト同時ニ內務省
  ニ二部管轄地方官廳、管轄地方裁判所檢事局及區
  裁判所檢事局ニ各一部ヲ納ムヘシ
  第八條書簡、通信、報告、廣告、社則、塾則、引札、番
  付、ピラ、ポスター、選擧ニ於テ用井ル候補者ノ意見書、
  諸種ノ用紙、證書類及寫眞其ノ他之ニ類スルモノハ
  屆出ツルヲ要セス但シ第二十四條ニ該當スルモノハ
  此ノ法律ニ依リテ處分ス
  第九條普通刊行物ノ屆出ハ著作者又ハ其ノ相續者
  及發行者連署ニテ之ヲ差出スヘシ但シ非賣品ハ著作
  者又ハ發行者ノミニテ屆出ツルコトヲ得
  學校、會社、協會等ニ於テ著作ノ名義ヲ以テ出版スル
  刊行物ハ其ノ學校、會社、協會等ヲ代表スル者發行
  者ト連署シテ屆出ツヘシ
  第十條刊行物ニハ左記ノ事項ヲ揭載スヘシ
  發行者、編輯者、印刷者ノ氏名
  普通刊行物ニ在リテハ著作者ノ氏名
  發行所及印刷所ノ位置、名稱
  第十一條普通刊行物ノ册號ヲ逐ヒ順次ニ出版スル
  モノハ其ノ都度第五條ノ手續ヲ爲スヘシ
  第十二條一度屆出ヲ爲シタル刊行物ノ再版ハ屆出
  ヲ要セスト雖若改正增減シ又ハ註解、附錄、繪畫ヲ加
  エタルトキハ第五條ノ手續ニ依ルヘシ
  第十三條第四條第一項第一號、第二號、第四號、第
  五號ノ事項ノ變更ハ其ノ變更ノ日ヨリ十日以內ニ發
  行者ヨリ之ヲ內務大臣ニ屆出ツヘシ
  第十四條死亡シ又ハ第三條ニ該當スルニ至リタル發
  行者ノ權利及義務ヲ承繼シタル發行者ハ其ノ發行
  者トナリタル日ヨリ十日以内ニ前條ノ手續ヲ爲スヘシ
  前項ノ場合ノ外發行者ノ變更ハ其ノ變更ノ日ヨリ
  十日以前ニ前條ノ手續ヲ爲スヘシ
  第十五條定期刊行物ハ屆出ヲ爲シタル出版時期又
  ハ出版休止ノ日ヨリ起算シテ百日間出版セサルトキ
  ハ其ノ出版ヲ廢止シタルモノト認ム
  第十六條發行者若ハ編輯者死亡シ又ハ第三條ニ該
  當スルニ至リ後繼ノ發行者若ハ編輯者ヲ定メサル間
  又ハ發行者若ハ編輯者一箇月以上本法ヲ施行スル
  帝國領土外ニ旅行スル場合ニ於テハ假發行者若ハ假
  編輯者ヲ設ケ之ヲ內務大臣ニ屆出ツルニ非サレハ定
  期刊行物ヲ出版スルコトヲ得ス
  發行者及編輯者ニ關スル本法ノ規定ハ假發行者及
  假編輯者ニ之ヲ準用ス
  第十七條編輯者ノ責任ニ關スル本法ノ規定ハ左ニ揭
  クル者ニ之ヲ準用ス
  揭載ノ事項ニ署名シタル者
  二正誤書、辯駁書ノ事項ニ付テハ其ノ掲載ヲ請求
  シタル者
  第十八條定期刊行物ニ揭載シタル事項ノ錯誤ニ付
  其ノ事項ニ關スル本人又ハ直接關係者ヨリ正誤又ハ
  正誤書、辯駁書ノ掲載ヲ請求シタルトキハ其ノ請求ヲ
  受ケタル後次回又ハ第三囘ノ發行ニ於テ正誤ヲ爲シ
  又ハ正誤書、辯駁書ノ全文ヲ掲載スヘシ
  正誤、辯駁ノ趣旨法令ニ違反スルトキ又ハ請求者ノ
  氏名、住所ヲ明記セサルトキハ之ヲ揭載スルコトヲ要
  セス
  正誤、辯駁ハ原文ト同號ノ活字ヲ用ウヘシ
  正誤書、辯駁書ノ字數原文ノ字數ヲ超過シタルトキ
  ハ其ノ超過ノ字數ニ付發行者ノ定メタル普通廣告料
  ト同一ノ料金ヲ要求スルコトヲ得
  第十九條官報又ハ他ノ定期刊行物ヨリ抄錄セシ事
  項ニシテ官報又ハ定期刊行物ニ於テ正誤シ又ハ正誤
  書辯駁書ヲ掲載シタルトキハ本人又ハ直接關係者
  ノ請求ナシト雖前條ノ例ニヨリ正誤シ又ハ正誤書、辯
  駁書ヲ揭載スヘシ但シ料金ヲ請求スルコトヲ得ス
  第二十條演說若ハ講義ノ筆記ニシテ出版セラレタ
  ルモノハ演說者若ハ講義者ヲ以テ著作者トス但シ筆
  記者ニ於テ演說者若ハ講義者ノ承諾ヲ得テ自ラ之ヲ
  出版スルトキハ筆記者ヲ著作者ト看做ス此ノ場合ニ
  於テ記載ノ事項カ第二十四條ニ觸ルルトキハ演說者
  若ハ講義者ハ同罪ヲ以テ論ス
  公會ノ席ニ於テ爲シタル演說若ハ講義ヲ筆記シテ之
  ヲ刊行物ニ記載シタルモノ及凡テ演說者講義者ノ承
  諾ヲ經スシテ其ノ筆記ヲ出版シタルモノニ關シテハ演
  說者若ハ講義者ハ著作ノ責ニ任セス
  第二十一條二種以上ノ著作及演說講義ノ筆記ヲ編
  纂シテ一部ノ刊行物ト爲ストキハ編纂者ヲ以テ著作
  者ト看做ス
  前條第一項ノ末段及第二項ノ規定ハ本條ニ之ヲ適
  用ス
  第二十二條翻譯ハ翻譯者ヲ以テ著作者ト看做ス
  第二十三條學校、會社、協會等ニ於テ著作ノ名義ヲ
  以テスル刊行物ハ其ノ屆出ニ署名シタル代表者ヲ以
  テ著作者ト看做ス
  第二十四條左ノ事項ヲ刊行物ニ揭載スルコトヲ得ス
  ー天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子、皇太孫、
  皇族、神宮及皇陵ニ對シ不敬ニ涉ル事項
  二暴力ニ依リ國家又ハ社會ノ組織ヲ變改セムトス
  ル事項
  三犯罪ヲ煽動シ若ハ曲庇シ又ハ犯罪人若ハ刑事
  被告人ノ犯罪行爲ヲ賞揚シ又ハ刑事被告人ヲ
  陷害スル事項
  四公判ニ付スル以前ニ於テ豫審判事ノ特ニ指定シ
  タル豫審中ノ事項若ハ公開セサル裁判ノ內容
  五軍事外交ノ機密ニ關シ掲載ヲ禁セラレタル事項
  及官公署又ハ法令ヲ以テ組織シタル會議ニ於テ
  公ニセサル文書又ハ公開セサル議會ノ議事
  六虚偽誇張亂侮猥褻ノ支言圖畫ヲ揭載シテ社會
  人心ヲ動搖セシメ又ハ善良ナル風俗ヲ壞亂スル
  事項但シ〓究ノ爲特定ノ者ニ頌布スル目的ヲ以
  テ豫メ當該官廳ノ許可ヲ得テ出版スルモノハ此
  ノ限ニ在ラス
  第二十五條内務大臣ハ前條ノ規定ニ觸ルル事項ヲ
  揭載セリト認メタル刊行物ノ發賣及頒布ヲ禁止シ必
  要ノ場合ニハ之ヲ差押フルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テ內務大臣ハ同一主旨ノ事項ノ揭
  載ヲ差止ムルコトヲ得
  本條ノ規定ニ依ル內務大臣ノ處分ニ關シ不服アルト
  キハ發行者竝直接利害關係人ハ行政裁判所ニ出訴
  スルコトヲ得
  第二十六條前條ノ規定ニ依リ差押へタル刊行物ニシ
  テ製本ノ體裁ニ依リ其ノ差押フヘキ部分ト其ノ他ノ
  部分ト分割シ得ヘキ場合ニ於テ發行者ノ請求アルト
  キハ之ヲ分割シ差押ヲ要セサル部分ヲ返還スルコトヲ
  要ス但シ之カ爲必要ナル費用ハ發行者之ヲ負擔ス
  第二十七條內務大臣ハ外國若ハ本法ヲ施行セサル
  帝図領土ニ於テ發行シタル刊行物揭載ノ事項ニシテ
  第二十四條各號ニ該當セリト認ムルトキハ本法施行
  地域内ニ於ケル發賣頒布ヲ禁止シ必要ナル場合ニハ
  差押フルコトヲ得
  刊行物ニ對シ一年以內ニ二回以上前項ノ處分ヲ爲
  シタルトキハ內務大臣ハ其ノ刊行物ヲ本法施行ノ地
  域內ニ輸入又ハ移入スルヲ禁止スルコトヲ得
  第二十八條前條第二項ニ依ル禁止ノ命令ニ違反シ
  テ輸八又ハ移入シタル刊行物及第三十九條ニ依ル
  禁止ノ裁判ニ違反シテ發賣又ハ頒布スルノ目的ヲ以
  テ印刷シタル刊行物ハ管轄地方官廳ニ於テ之ヲ差押
  フルコトヲ得
  第二十九條本法ニ依リ差押ヘタル刊行物ニシテ二一年
  以上其ノ差押ヲ解除セラレサルトキハ差押ヲ執行シタ
  ル行政官廳ニ於テ之ヲ處分スルコトヲ得
  第三十條第三條ニ該當スル者ニシテ事實ヲ詐リ發行
  者又ハ編輯者トナリタルトキハ三百圓以下ノ罰金ニ
  處ス
  第三十一條第四條ニ依ル屆出ヲ爲サスシテ定期刊
  行物ヲ出版シタルトキハ發行者ヲ三百圓以下ノ罰金
  二段六、
  第三十二條第五條ニ違反シタルトキハ發行者ヲ三百
  圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
  第三十三條第七條、第十一條、第十二條、第十三條
  ニ違反シタルトキハ發行者ヲ百圓以下ノ罰金又ハ科
  料ニ處ス
  第三十四條第十條ニ違反シ又ハ揭載ニ實ヲ以テセサ
  ルトキハ發行者及編輯者ヲ百圓以下ノ罰金又ハ科
  料ニ處ス
  第三十五條第十四條、第十六條ニ違反シタルトキハ
  發行者又ハ實際出版シタル者ヲ百圓以下ノ罰金又
  ハ科料ニ處ス
  第三十六條第二十四條第一號ノ罪ヲ犯シタル場合
  ハ著作者、發行者、編輯者ヲ各二年以下ノ禁錮又ハ
  千圓以下ノ罰金ニ處ス但シ被告人ニシテ特ニ犯意ナ
  カリシコトヲ裁判所ニ於テ認メシトキハ』禁錮ノ刑ヲ免
  除ス
  第二十四條第二號ノ罪ヲ犯シタル場合ハ著作者、發
  行者、編輯者ヲ各一年以下ノ禁錮ヌハ千圓以下ノ罰
  金ニ處ス
  第二十四條第三號乃至第六號ノ罪ヲ犯シタル場合
  ハ著作者、發行者、編輯者ヲ三月以下ノ禁錮又ハ五
  百圓以下ノ罰金ニ處ス
  第三十七條第二十五條ニ依ル禁止若ハ差止命令第
  二十七條ニ依ル禁止ノ命令第三十九條ニ依ル禁止
  ノ裁判ニ違反シタルトキハ發行者、編輯者ヲ六月日
  下ノ禁錮又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス情ヲ知リテ其
  ノ刊行物ヲ發賣又ハ頒布シタル者ハ二百圓以下ノ罰
  金ニ處ス
  第三十八條第二十五條、第二十七條、第二十八條
  ニ依ル差押處分ノ執行ヲ妨害シタル者ハ五百圓以下
  ノ罰金ニ處ス
  第三十九條第三十六條ニ依リ處罰スル場合ニ於テ
  裁判所ハ其ノ刊行物ノ出版ヲ禁止スルコトヲ得
  第四十條本法ニ定メタル犯罪ニハ刑法併合罪ノ規
  定ヲ適用セス
  第四十一條刊行物ハ之ヲ発賣頒布セスト雖其ノ目
  的發賣頒布ニ在ルモノハ凡テ此ノ法律ヲ適用ス
  第四十二條刊行物ニ揭載シタル事項ニシテ故意又ハ
  過失ニ依リ人ノ名譽ヲ毀損シ若ハ信用ヲ害シタルト
  キハ被害者ノ告訴ニ依リ編輯者ヲ千圓以下ノ罰金ニ
  處ス
  前項ノ場合ニ於テ惡意ニ出テス專ラ公益ノ爲ニスル
  モノト切心ムルトキハ裁判所ニ於テ被告人ニ事實ノ證F
  明ヲ許シ其ノ證明ヲ得タル場合ニ限リ之ヲ罰セス公
  訴ニ關スル損害賠償ノ訴ニ對シテハ其ノ義務ヲ免
  除ス
  第四十三條本法ニ依ル公訴、私訴ノ第一審裁判所
  ノ管轄ハ地方裁判所トス
  第四十四條本法ニ依ル公訴ノ時效ハ六箇月ヲ以テ
  完成ス
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  新聞紙法及出版法ハ之ヲ廢止ス
  第二十九條ノ規定ハ本法施行前ノ差押ニ係ル刊行物
  ニ之ヲ準用ス
  〔星島二郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=76

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• 077・星島二郎

  ○星島二郎君　本案ハ既ニ前議會竝前々議會ニ於テ吾
  黨ヨリ提案致シマシタル新聞紙法改正案ヲ、今少シク徹底
  シテ改正シタノデアリマス、實ハ現行ノ新聞紙法ト現行ノ出
  版法トハ甚ダ法規ガ重複シテ居ルノデアリマシテ、是ハ新聞
  紙法ヲ改正スルト共ニ、出版法ヲモ非常ニ改正シナケレバ
  ナラス狀態ニナッテ居リマスノデ、前回提出致シマシタル吾當
  提案ノ新聞紙法、之ヲ開放致シマシテ、卽チ出版法ト、新聞
  紙法トヲ混一シマシテ、新シク出版取締法案トシテ提出致
  シタノデアリマス、實ハ今少シ理想ヲ中シマスレバ、出版ニ關
  スル法規ト致シマシテハ、權利ノ部類ニ著作權ヲ加ヘテ、サ
  ウシテ取締法モ加ヘテ出版法規トシテ提出致シタカッタノデ
  アリマスケレドモ、著作権法ハ非常ナル〓究ヲ要スル學界ノ
  問題ニナッテ居リマスカラ、取政ヘズ急ヲ要スルモノトシテ、出
  版取締ノ法案ノミヲ今期提出致シタノデアリマス、之ニ付
  キマシテハ四十一議會ニ於キマシテ、政友會ヲ代表致シマ
  シテ、松田源治君ガ此壇上ニ於テ縷々新聞紙法ノ改正ヲ
  述ベラレテ居ルノデアリマス、私ハ其速記録ヲ見マシテ實ハ
  其言論ニハ甚ダ敬意ヲ拂ッテ居ルノデアリマシテ、而モ是ハ
  殆ド全會一致ニ近イ數ヲ以チマシテ、其建議案ハ本會ヲ通
  過致シテ居ルノデアリマス、而モ其說明者デアリ、提案者デ
  アル所ノ松田君ガ、今日內務省ノ勅任参事官トシテ時メク
  勢力ヲ持ッテ居ラレルニモ拘ラズ、而モ前議會、四十四議會
  ノ時ニ、新聞紙法改正ノ委員會ニ於キマシテ、多分今期中、
  卽チ四十四議會中ニ內務省カラ必ズ新聞紙法ノ改正案
  ヲ出スデアラウトマデ言明サレタニモ拘ラズ、四十四議會中
  ニモ提案シナカッタ、本期議會ニハ第一番ニ政府ヨリ新聞
  紙法ノ改正案ヲ提出スルデアラウト喜ンデ待ッテ居シタニモ
  拘ラズ、今以テ何等其改正案ガ出テ來ナイノデアリマス、私ハ
  此四十一議會ニ於ケル松田君ノ新聞紙法ノ改正ノ建議
  ノ說明ヲ讀ミマシテ、平素松田君ノ言論ニ對シテ非常ナル
  尊敬ヲ拂シテ期待シテ居ッタニ拘ラズ、却テ之ガ裏切ラレタ、
  而モ其反對ニ新聞紙法ノ改正ヲ要求スルト之ヲ言明シテ
  居リナガラ、是サヘモ出サナイデ、逆ニ過激社會運動取締法
  ト云フ是ヨリ一層此言論、新聞取締以上ニ之ヲ束縛スル
  ト云フヤウナ反對ノモノヲ出サレルト云フノハ、餘リ在野ノ
  時ト其考ガ違ッテ居ルト云フ事ヲ非常ニ私ハ殘念ニ思フノ
  デアリマス、私ハ實ハ斯ウ云フ議席ヲ以テ古證文ヲ出シテ
  云々スルト云フ事ハ私ハ本意デ無イケレドモ、餘リニ希望ヲ
  懷イテ居ッタ所ヲ裏切ラレタカラ一言致シマス、如何ナル事
  ヲ松田君ガ言ハレタカト云フト、之ガ獨リ松田參事官ノミ
  ナラズ、床次內務大臣モ先年地方長官會議ニ於キマシテ、
  思想ハ法律ヤ刑罰ヲ以テ取締ルコトハ出來ナイ、思想ハ思
  想ヲ以テ取締ラナケレバナラヌト云フコトヲ申サレテ、私モ
  非常ニ其言論ニハ敬服致シタノデアリマス、デ松田君ハ旣
  ニ四十一議會ニ於キマシテ、「思想問題ノ取締ニ關スル事
  デアリマス、新聞ハ思想ヲ發表スル重要ナル機關デアリマス
  歷代ノ政府ノ思想ヲ取締ル所ノモノハ間違。テ居ル、思想
  ヲ取締ルニ法律ヲ以テ取締リ、刑罰ヲ以テ取締ルト云フコ
  トハ、是ハ抑〓末デアル、思想ト云フモノハ思想ヲ以テ取締
  ラナケレバナラヌ、其他ノ朝憲紊亂或ハ安寧秩序、斯ウ云フ
  空漠タル文字ヲ用井テ居ルコトハ、今日ノ立憲政治ノ輿論
  ノ代表デアル此新聞紙ノ發達ヲ阻碍シ、憲法ノ條章ニ依ル
  言論ノ自由ヲ神壓スルモノデアル」ト云フ事ヲ縷々述ベラレ
  テ居ルノデアリマス、實ニ此議論ガ餘リニ良イノニ、却テ今
  回過激社會運動取締法案ヲ出サレタニ付キマシテ、非常
  ナ自分ハ其信賴ヲ裏切ラレタ事ヲ甚ダ遺憾ニ思フノデアリ
  マス、新聞紙法、否、出版取締法案ノ提案ノ說明ニ顧ミマ
  シテ、今日貴族院ニ出マシタ所ノ法案ヲ批評スルト云フコ
  トハ、或ハ討論ニ陷ル虞ガアリマスルケレドモ、之ヲ批評スル
  事ガ今回我黨ノ提案ノ出版法ノ精神ヲ十分ニ徹底スルコ
  トガ出來ルノデアリマスルカラ、我黨提案ノ此出版取締ニ
  關スル規定ハ、大部分或ハ朝憲紊亂ニ關スル事項トカ、安
  寧秩序ニ關スル事項トカ斯ウ云フ空漠タル文字ヲ取去ヲテ、
  モット具體的ニシタノガ其根本デアリマスルカラ、今回出サレ
  マシタル所ノ過激社會運動取締法案ハ、丁度正反對ノ思
  想ヲ表現シテ居ルノデアリマスカラ、茲ニ二言三言、マグ本
  院ニハ廻ッテ來ナイノデアリマスルケレドモ、私共提案ヲ能ク
  御諒解下サル爲ニ御聽キヲ願ヒタイト思フノデアリマス(「謹
  聽」)社會運動取締法案ノ條項ニ「無政府主義共產主義其
  他朝憲紊亂ニ關スル事項」云々ト書イテアル是ハ旣ニ貴旅院
  ノ本會議ニ於キマシテモ、委員會ニ於キマシテモ、非常ニ問
  題トナノテ居ル、無政府主義トハ如何ナル所ノモノカ、共產
  主義トハ如何ナルモノデアルカ、又其他ト云フ文字ハドウ云
  フ文字デアルガ、朝憲紊亂ト云フ文字ハ一體ドウ云フ解釋
  ヲスペキモノデアルカ、色〓問題ニナッテ居リマシテ、殆ド其案
  ハ或ハ古イ文字ヲ使ヒ、或ハ宣傳ト云フヤウナ新シイ文字
  ヲ使ヒ、實ニ矛盾極マルヤウナ缺點ダラケノ案デアッテ、結局
  スル所若シ斯ウ云フ案ガ通過致シマスナラバ、現行ノ新聞
  紙法、此上ニ縛ラレマシテ到底御互ガ眞ノ立憲治下ニ於ケ
  ル、言論ヲ十分ニスルコトハ出來ナクナル、憲法第二十九條
  ニ依ル所ノ集會結社言論ノ自由ト云フモノハ、全ク抑壓サ
  レテシマフノデアリマシテ、私ハアノ取締法案ノ第一條ハ是
  ハ根本的ニ批評致シマスレバ、實ニオ盾極マル、而シテ却テ
  反動思想ヲ喚起シテ、所謂「アクシヨン」ニ對スル「リアクシヨ
  ン」ノ物理的作用下同ジ」ヤウナ、却テ反動思想ヲ起シテ
  非常ナル禍ヲ爲スモノデアルト云フコトヲ言明シタイト思フノ
  デアリマス、其他色ミ金品ヲ供與スルトカ、或ハ社會ノ根本
  組織ヲ云々ト云フヤウナ茫漠タル文字ガアル爲ニ、之ヲ司
  法當局ガ使ヒヤウ如何ニ依ッテハ、ドンナ事ヲ日本ニ持チ來
  スカ分ラナイ、私ハ今回此議會ニ於キマシテ、普通選擧ノ議
  論ガ非常ニヤカマシカッタケレドモ、本議會中ヲ通ジテ眞ニ
  我國ノ將來ニ取リマシテ、最モ重要ナル問題ヲ惹起スル
  ノハ、現在貴族院ニ廻シテ來テ居ル此過激社會運動取締
  法案デアラウト實ハ田心フノデアリマス、一體獨逸ニ於キマ
  シテ、「ピスマルク」ガ彼ノ社會主義取締令ヲ出シタ、アノ時
  分ニ於キマシテハ、「ピスマルク」ハ右手ニ此社會政策ヲ十
  分ニ實行シタ、サウシテ左手ニ此社會主義取締法ヲ出シ
  タ、アノ「ピスマルク」ノ勢力ヲ以テサヘ、ンレハ完全ニ實行ス
  ルコトガ出來ナクテ、却テ反動的ニ社會黨ノ勢力ガ增シタ
  ト云フヤウナ結果ニナッテ居ル、又最近-最近デモアリマセ
  ヌガ、米國ニ於キマシテ彼ノ「マッキンレー」大統領ガ暗殺サレ
  タ當時、紐育州ニ於キマシテ、無政府主義ノ言論ヲ取締ル
  法律ヲ作ッタケレドモ、此紐育州ニ於キマシテ通過シマシタル所
  ノ-紐育州ニ於ケル議會ニ於キマシテ通過シマシタル所ノ言
  論抑壓ノ法規ノ、亞米利加ノ憲法ノ條章附屬條項ノ第一條
  ニ依リマシテ、卽チ如何ナル法律ト雖モ言論ヲ抑壓スル所
  ノ法律ヲ作ルコトハ出來ナイト云フ條文ニ照シテ、裁判官
  ガ之ニ判決ヲ下シテ、其法律ノ無效ナルコトヲ判決シタト
  云フヤウナ實例ガアルノデアリマス、政府當局ノ身ニナッテハ、
  今日ハ思想界ノ動搖ノ時期ニ色〓御心配ハ無理カラヌ事
  デアリマスケレドモ、實際ニ於テ、現在ノ日本ノ社會ニ、眞ノ
  無政府主義、或ハ共產主義、斯ウ云フヤウナモノニカブレテ、
  我ガ國威ヲ眞ニ動カシテ居ルカ、又如何ナル人ガ-何人
  ノ人ガ金品ヲ給與サレテ、サウ云フヤウナ運動ヲ致シテ居ル
  カ、新聞ニ依リマスレバ近藤某タッタ一名、何トカ云フ西洋
  人ガ來タト云フ是レ以外ニ私ハ間イタコトハナイ、サウ云ム
  ハシタノ一件カ二件、六千万同胞ノ中ニ一人カ二人、而モ
  僅カナ金デ此日本ノ本來ノ國體ヲ汚シ、此社會ノ根本組
  織ヲ壞スヤウナコトハ到底出來ナイ、ソレニ怖ヘテ斯ル時、
  恐怖時代ヲモ惹起スルヤウナ法案ヲ出サレルコトハ、本員ハ
  現行ノ新聞紙法デサヘ尙且ツ實ニ憲法ノ精神ニ悖リ、輿
  論ヲ抑壓シ、却テ非立憲ナルモノデアルト云フコトヲ論ズル
  ニ當フテ、其際ニ於キマシテ斯ノ如キ古イ壓迫的、專制的法
  案ガ出マシタト云フコトハ、實ニ遺憾千萬デアリマシテ、今
  日輿論ハ諤々トシテ此法案ノ通過セラレンコトヲ希望シテ
  居ルノデアリマス、ソレト正反對ニ此過激社會運動取締法
  案ノ不人氣ナルト同樣ニ、却テ逆ニ現行ノ新聞紙法サヘ、
  モット〓〓自由ニシナケレバナラヌト云フ聲ガ盛ニナッテ居ル
  ノデアリマス、私ハ此矛盾極マル又實ニ非常ニ疑點ノ多イ
  取締法案ガ、今日貴族院ノ委員會ニ於テ討論セラレテ居
  ルトキニ、敢然トシテ我黨ハ現行法ヲモット勇敢ニ改造シテ、
  輿論ノ指導者デアリ、實際立憲政治「デモクラシイ」ノ本領
  ヲ發揮スルニハ無クテナラヌ此新聞雜誌、此言論機關ヲ十
  分ニ發達サス爲ニ、思切シテ現行新聞紙法、出版法ヲ改正
  シナケレバナラヌト信ズルノデアリマス(拍手)其內容ニ付キ
  マシテハ諸君ガ御覽下スッタト思ヒマスシ、又微細ナ點ニ付
  キマシテハ、委員會ニ於テ十分ニ御調ヲ願ヒタイト思フノデ
  アリマスガ、其主ナル改正點ハ先刻モ申シタ如ク、第一ハ新
  聞紙法ト出版法トノ重複ヲ省イテ之ヲ統一スル、先般或ル
  新聞紙ヲ見マスルト、内、務省ニモ其草案ガ出來テ居ルラシイ、
  是ハ丁度偶然ニモ一致致シマシテ、内務省ノ草案ニハ所謂
  現行出版法ト新聞紙法ト一〓ニシマシテ、之ヲ合一シテ一
  ノ案ガ出來テ居ルヤウニ拜見シタノデアリマス、ソレガ第一、
  第二ハ保證金ノ全廢ヲ我黨ハ主張シテ居ルノデアリマス、
  今日日本ノ新聞紙ヲ發行スルニハ、或ハ二千圓、或ハ千圓、
  其他地方ニ於キマシテハ、ソレ以下ノ金ヲ先ヅ政府ニ供託
  シテ初テ言論ヲ爲シ得ル、是ハ非常ニ濫發ヲ防グト云フ
  點ニ於キマシテ、一應ノ理窟モアルヤウデアリマスケレドモ、
  本來憲法ノ保障ニ依リマシテ、國民ガ言論ヲ致スノニ、若シ
  モ惡イ事ヲ書クトカ、何カ法律ニ觸レルト云ウテ、先キニ金
  ヲ納メテ言論ヲスル如キハ、靜靜ニ考ヘレバ實ニオカシナ現
  象デアルノデアリマス、世界廣シト雖モ金ヲ納メテ初テ物ヲ
  言ハセテ貰フト云フヤウナ制度ハ、現在ノ日本以外ニハ殆
  ド無イノデアリマス(拍手)唯英吉利ノ政治下ニ在ル所ノ印
  度ガ、餘リニ獨立、或ハ革命ノ思想ガアル爲ニ、言論ヲ極端
  ニ壓迫シテ居ル爲ニ、タッタ一ツ印度ノミガ保證金ヲ取ッテ
  居ルノデアリマス、印度以外ニハ現在ノ文明諸國ニ於キマ
  シテ保證金ヲ納メテ切テ言論ノ出來ルト云フ處ハ絕對ニ
  無イノデアリマス、デ我黨提案ノ骨子ト致シマシテ、保證金
  全廢之ヲ主張シテ居ルノデアリマス、第三ニハ今日ノ新聞
  紙法ニ於キマシテハ發行禁止、或ハ發賣頒布ノ禁止ト云フ
  コトガ內務大臣ノ所管、或ハ裁判官ノ判決ニ依ッテ爲シ得
  ルノデアリマス、是ハ或ル場合ニハ必要デアル、故ニ我黨モ之
  ヲ認メテ居ルノデアリマスケレドモ、今日發行禁止ヲシタリ、
  或ハ發賣頒布ヲ禁止シマシテモ、之ヲ受ケタル所ノ人間ハ、
  發行者ハ、何等之ニ對シテ抗辯權ガナイ、苟モ財產ヲ處分
  サレ、差押ヘラレ、ソレニ對シテ不當デアッテモ、何等之ニ對
  スル訴訟ヲ提起シ、損害ヲ要求スルコトガ出來ナイト云フコ
  トハ、日本ノ民法、憲法ノ精神ニモ悖ッテ居ル、シコデ本改正
  案トシマシテハ若シ發行禁止ヲ喰ヒ、發賣禁止ヲ喰ヒ、差
  押ヲ命ゼラレタ場合ニハ、相當ナ理由ガアルナラバ免モ角、
  サウデアリマセヌケレバ行政訴訟ヲ提起シマシテ之ニ抗スル
  コトヲ認メテ居ルノデアリマス、第四ニハ最モ重要ナ點ハ掲
  載事項ノ禁止ヲ列擧主義ニシマシタ、卽チ現行法ニ於キマ
  シテハ空漠タル朝憲紊亂ト云フヤウナ文字ヲ使ヒ、或ハ安
  寧秩序ト云フヤウナ文句ヲ使ッテ、サウ云フモノヲ若シ書イ
  タナラバ罰スル、斯ウナッテ居ルノヲ改正致シマシテ、斯々云
  フ事項ハ書イテハナラヌ、斯々云フ事項ハ書イテハナラヌ、斯
  ウ云フ風ニ列擧主義ニシテ置クノガ其一ツノ特徴デアリマ
  ス、其主ナルモノハ只今申上ゲマシタ所ノ所謂朝憲紊亂ニ
  關スル事項、是ハ甚ダ古イ言葉デアリマシテ、朝憲ト云フ文
  字ハ一體何デアル、度々裁判ノ問題トナリマシテ、是ハ裁判
  官自ラ困ッタ言葉デアリマス、朝憲ト云フ文字、或ハ國憲ト
  云フ文字、何ガ一體朝憲デアルカ、朝ト憲、是ハ實ニ西〓戰
  爭當時ニ於ケル御詔勅ナリ、或ハ鹿兒島縣令等ニ見エテ
  居ル所ノ言葉ニ基因シテ居ルノデアッテ、[國憲ト云フ文字ト
  略〓同ジデアル、國家ノ根本組織トカ云フヤウナモノデアリマ
  シテ、甚ダ空漠トシテ裁判上是ハ困ルノデアリマスカラ、我
  黨提案ニ於キマシテハ、斯ウ云フ空漠タル文字ヲ避ケマシ
  テ、暴力ニ依フテ國家ノ組織ヲ破壞セントスル者トカ、具體
  的ニ其事實ヲ列擧シテ、ンレヲ禁止シテ居ルノデアリマス、
  其他目新シイコトハ、例ヘパ現行法ニ於キマシテハ刑事被
  告人ヲ賞恤救護シ、斯ウ云フヤウナ言葉ガアリマス、勿論刑
  事被告人ヤ犯罪人ノ犯罪行爲ヲ賞揚スルコトハ、言論上
  愼マナケレバナラヌコトデアリマスカラ、我黨提案ノ改正ニ
  於キマシテハ、賞恤救護ト云フ文字ハ古イ、賞恤ト云フ字ハ
  賞メタリ或ハ物ヲ吳レタリスル、ノレカラ救護、是ハ古イノデ
  アリマスカラ、之ヲ廢シマシテ、被告人若クハ犯罪人ノ犯罪
  行爲ヲ賞揚シタ場合ニハ罪トナル、サウ云フコトヲシテハイ
  カマ、斯ウ決メテアルノデアリマス、是ハ最近ニモ川崎ノ勞働
  爭議ニ参加シテ、實ニ可哀相ナ目ニ遭シタ所ノ犠牲者ニ對シ
  テ、或ル勞働者ノ團體ガ之ニ感謝狀ヲ送ッタ、其中堅人物
  デアル鈴木文治君ノ如キ人ガ、今日法廷ニ囚ハレテ居ルノ
  デアリマス、實際犯罪人或ハ犯罪行爲ソレ自身ヲ賞メルコ
  トハ確ニ是ハイケナイ事デアリマスケレドモ、主觀的ニ犯罪
  ノ行爲ハイケナイケレドモ、其精神ニ同情スベキ點ガアッタナ
  ラバ、其點ヲ賞メルコトハ決シテ差支ナイ、決シテ社會ノ安
  寧秩序ヲ壞スコトハナイト自分ハ思フノデアリマスカラ、犯
  罪行爲ヲ賞揚シタライケナイガ、若シ其犯人ノ眞意、主觀
  的精神ニ同情スベキ點保護スベキ點ガアレバ、是ハ一項ヲ
  書イテモ差支ナイ、斯ウ云フノガ私共ノ眞意デアリマシテ現
  在ノ現行法ト賞恤救護ト云フ文字ハ非常ニ古イ故ニ、之
  ヲ改正シタイ、其他色〓改正ノ文字ハ使ッテ居リマスルガ、要
  スルニ只今申述ベタヤウナ根本ノ精神、憲法ノ二十九條ノ
  法律ノ範圍內ニ於テ、言論、集會、結社ノ自由ヲ有スルト
  云フ其法律ノ範圍內ト云フ法律、ソレヲ無暗矢鱈ニ此議
  會デ以テ作ッテ、眞ノ憲法ノ大精神ヲ壞スヤウデハ此立憲
  國家ノ言論ノ自由ハ保障セラレテナイカラ、此現行-古
  イ現行法ハ取除イテ、新シイ出版法ト、新聞紙法ト合一シ
  テ出來マシタル此我黨提案ノ根本精神ニ贊成サレ、其字
  句ノ修正等ハ十分委員會デモ讓リマスカラ、ドウゾ皆サン
  之ニ贊成ヲ冀フ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=77

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• 078・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ〓瀨一郞君外一名提出ノ治安
  警察法中改正法律案外四件ノ委員ニ付託セラレンコトヲ
  望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=78

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• 079・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-次ハ日程第十九、
  所得稅法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-岩本平
  藏君
  第十九所得稅法中改正法律案(岩本平藏
  君外十一各提出)第一讀會
  所得稅法中改正法律案
  所得稅法中左ノ通改正ス
  第四條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
  前項所得中山林ノ所得ハ之ヲ山林以外ノ所得ト區
  分シ第三種山林所得ニ準シタル稅額ヲ賦課ス
  第十四條第一項第三號ヲ左ノ如ク改ム
  山林ノ所得ハ山林伐採ニ因ル前年ノ總收入金額ヨ
  リ其ノ植栽養成ニ必要ナル經費ヲ控除シタル金額
  〔岩本平藏君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=79

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• 080・岩本平藏

  ○岩本平藏君　只今上程セラレタル所得稅法中改正法
  律案ノ理由ヲ申述ベヤウト思ヒマス、本案ハ四十四議會ニ
  於キマシテモ既ニ理由ヲ述べ盡シタ如ク、卽チ此山林ノ立
  木ノ儘賣買讓渡セルモノニ屬シテモ、所得稅ヲ課スルノハ
  穩當デナイ、卽チ土地ヲ難レテサウシテ初テ所得ヲ認メラレ
  ルモノデアリマスルカラ、伐採ニ依ルコトヲ基礎トシテ此改
  正ヲ致スノデアルト、斯ウ云フ事ニ付キマシテハ、四十四議
  會ニ既ニ詳細ノ理由ハ述ベテ置イタノデアリマス、而シテ
  委員會ニ於テ政府委員トノ間ノ質問應答ヲ致シマスルト、
  唯ダ此山林ノ伐採ニ依ルト云フ改正ダケデハ、此必要ノ經
  費ヲ控除スルコトハ甚ダ不明瞭デアルト、斯ウ云フコトデア
  リマシタノデ、今囘ハ此第十四條ニ於キマシテ、必要ノ經費
  ト云フモノヲ、卽チ植栽養成ニ必要ナル經費ト、斯ノ如ク控
  除スルモノヲ限定ヲ致シタノデアリマス、斯ノ如ク致シマシタ
  ナラバ、伐採シタトキニ此必要ノ經費ヲ控除スルコトガ明ニ
  ナリマスルカラ斯ノ如ク致シマシタ、サウシテ第四條ニ於キマ
  シテ改正致シタノモ、矢張政府當局ニ於テハ此個人所有ノ
  山林ヲ法人ニ移シタ場合ニ、徴收上甚ダ困ル、斯ウ云フ事
  デアリマシタカラ、卽チ此條文ノ如ク改正ヲ致シマシタノデ
  アリマス、尙ホ內容ニ付キマシテハ現ニ此理由書ニ〓要モ
  書イテアリマスカラ、私ハ玆ニ詳細述ベルコトヲ避ケマス、但
  シ昨年ノ委員會ニ於テモ、政府當局ニ於テ、大藏省ノ當局
  ニ於テハ此山林所得ハ一種ノ不勞所得デアルト云フ事ヲ
  言ハレテ居ル、斯ウ云フ事ハ大藏當局ハ山林所得ノ何タル
  事ヲ能ク御調ベニナッテ居ラナイ結果デアラウト思フノデア
  リマス、山林ハ決シテ不勞所得デハアリマセヌ、或ハ國有林
  ノ如キ唯天然ニ成フタモノヲ伐採シタ場合ニハ不勞所得カ
  モ知レヌガ、今日ノ大部分ハ此植栽養成、就中竹林ノ如キハ
  容易ナラヌ費用モ加へテ居ル、決シテ是ハ不勞所得デハナ
  イノデアリマス、サウ云フ意味合ト致シマスレバ、迚モ此山林
  ナルモノノ大體ガ御判リニナラヌカラ、斯ウ云フ事ヲ御主張
  ニナルト致シマスレバ、今囘ハ斯ノ如ク修正ヲ致シマスレバ、
  十分政府ノ御主張ニナッテ居ル點モ是デ明瞭ニナリマスル
  シ、又納稅通脫ノ虞モ決シテ無イト私ハ考ヘマスルノデ、斯
  ノ如ク提案致シタノデアリマス、何卒審議ノ上皆サンノ御
  賛成ヲ乞フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=80

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• 081・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ政府提出明治四十年法律第二
  十一號中改正法律案外一件ノ委員ニ併セテ付託セラレム
  コトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=81

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• 082・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　鈴木君ノ動議ニ御異議ハナイ
  ト認メマス、仍テ本案ハ動議ノ如ク決シマシタ、次ハ日程第
  二十、婦女ノ人權保護ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キ
  マス、横山勝太郞君
  第二十婦女ノ人權保護ニ關スル法律案
  (橫山勝太郞君外一名提出)
  第一讀會
  婦女ノ人權保護ニ關スル法律案
  第一條何人ヲ問ハス自己若ハ他人ノ情欲ヲ滿足セシ
  ムル目的ヲ以テ婦女ヲ略取若ハ誘拐シタル者ハ二年
  以上ノ有期懲役ニ處ス
  帝國外ニ於テ前項ノ罪ヲ犯シタル者亦同シ
  第二條婦女ヲ欺〓シ若ハ暴行脅迫シ藝娼妓營業ヲ
  爲サシメ又ハ演藝場、寄席、活動寫眞、料理店等客ノ
  來集ヲ目的トスル場屋ノ雇人タラシメタル者ハ十年
  以下ノ懲役ニ處ス
  第三條婦女ヲ欺罔シ又ハ暴行脅迫シテ密賣淫ヲ爲
  サシメタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
  第四條藝娼妓又ハ酌婦タラシムルノ目的ヲ以テ十五
  歲未滿ノ女子ヲ養子ト爲シタルトキハ其ノ女子ニ代
  テ緣組ヲ承諾シタル父母若ハ繼父母又ハ嫡母竝緣
  組ノ相手方タル養親ヲ一年以上ノ有期懲役ニ處ス
  十五歲以上ノ女子ト雖前項ノ目的ヲ以テ女子ヲ欺
  罔シ若ハ暴行曾迫シテ養子緣組ヲ承諾セシメタル者
  亦同シ
  第五條營利ノ目的ヲ以テ前條ノ犯罪ニ加擔シタル者
  ニ對シテハ刑法第六十三條第六十六條ノ規定ヲ適
  用セス
  第六條藝娼妓ニシテ廢業セムトズルトキ又ハ第二條
  ニ揭クル場屋ノ雇女ニシテ解雇ヲ求ムルトキ之ヲ妨害
  シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
  第七條未成年ノ婦女ト雖親權者其ノ他尊屬親ノ許
  可ヲ要セス藝娼妓營業ノ廢業ヲ爲シ又ハ第二條ニ揭
  クル場屋ノ主人ニ對シ解雇ヲ求ムルコトヲ得
  第八條第二條、第三條、第六條ノ規定ハ婦女ノ親權
  者其ノ尊屬親ト雖之ヲ處罰ス
  第九條本法ニ規定スル罪ハ未遂ト雖之ヲ罰ス
  〔橫山勝太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=82

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• 083・横山勝太郎

  ○橫山勝太郞君　本案ハ極テ簡單ナ法律案デアリマス、
  其要旨ハ御手許ニ廻ッテ居リマスカラシテ悉シク述べマセヌ、
  要スルニ暴行、脅迫、詐僞等ノ不法ナル手段ニ依クテ、婦女
  ノ節操ヲ蹂躪スル者ヲ嚴罰ニ處スル精神デアリマス、其詳
  細ハ法律案ヲ御一讀ヲ願ヒマス、御承知ノ通リ立憲政治
  ノ究極ノ目的ハ個人ノ尊嚴ヲ維持シ、人權ヲ擁護スルニ在
  ルト考ヘマス、デ人權擁護ハ老幼男女ヲ通ジテ勿論必要ナ
  事デアリマス、殊ニ今日此法案ニ於テ保護セントスル事項
  ハ、我國ニ於テ明治初年人身賣買ヲ禁ジテアリマスル以來、
  法制ノ上ニ於テハ婦人ノ人權モ擁護セラレテ居ルコトニナ
  テ居ルケレドモガ、實際ノ現象ハ今尙ホ依然トシテ人身賣
  買ノ實行ガ行ハレテ居ルノデアリマス、又人身賣買トマデ
  行カザルマデモ、詐僞、暴行、脅迫等ノ手段ニ依ッテ、婦人ノ
  節操ニ對シテ甚ダ不都合ナル行爲ヲ爲ス者ガ頻々トシテ存
  在ヲ致シテ居ルノデアリマス、現行ノ法律ヲ以テシテハ、現
  下ノ時弊ヲ取締ルニ不十分デアリマスルカラシテ、此時弊
  ヲ救済センガ爲ニ此法律案ヲ提出致シタノデアリマス、詳
  細ノ事ハ委員會デ答辯ヲ致シマス、簡單デアリマスルガ、之
  ヲ以テ立案ノ精神ヲ諸君ニ訴ヘテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=83

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• 084・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ〓瀨一郞君外一名提出治安警
  察法中改正法律案外五件ノ委員ニ併セテ付託セラレンコ
  トヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=84

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• 085・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　鈴木君ノ動議ニ御異議ハナイ
  ト詔メマス、仍テ本案ハ動議ノ如ク決シマシタ、次ハ日程第
  二十一、借家法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-
  作間耕逸君
  第二十一借家法中改正法律案(横山勝太郞
  君外一名提出)第一讀會
  借家法中改正法律案
  借家法中左ノ通改正ス
  第三條第一項及第二項中「六月」ヲ「一年」ニ改ム
  第五條ノ二建物ノ賃貸借ヲ爲ス場合ニ於テ賃貸人
  ハ賃借人ニ對シ賃料三月分以上ノ敷金ヲ受領スルヲ
  得ス
  第五條ノ三何等ノ名義ヲ以テスルモ賃貸人ハ賃借人
  ニ對シ無償ニテ金錢其ノ他ノ利益ヲ提供セシムルコト
  ヲ得ス
  第五條ノ四前二條ノ規定ハ之ヲ差配人其ノ他ノ管
  理人ニ準用ス
  第五條ノ五敷金ヲ授受シタルトキハ賃貸人ハ其ノ翌
  月ヨリ賃貸借終了ノ前月迄一年三步五厘ノ割合ニ
  於ケル利息ヲ附スルコトヲ要ス但シ賃借人カ賃料ノ
  支拂ヲ怠リタルトキハ其ノ月分ノ利息ヲ支拂フコトヲ
  要セス
  賃借人ハ賃貸借終了ノ場合ニ非サレハ前項ノ利息ヲ
  請求スルコトヲ得ス
  第五條ノ六裁判所ハ建物ノ占據者ニ對シ其ノ明渡
  ヲ宣告スル場合ニ於テハ其ノ申立ニ依リ總テノ事情
  ヲ斟酌シテ相當ナル恩惠上ノ期限ヲ許與スルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テハ其ノ期間及所有者ノ損害賠償
  其ノ他必要ナル條項ヲ定メテ宣告スヘシ
  第五條ノ七思惠上ノ期限ヲ得タル者カ裁判所ノ定メ
  タル條項ヲ履行セサルトキハ恩惠ヲ言渡シタル栽判所
  ハ申立ニ依リ相手方ノ意見ヲ聞キ決定ヲ以テ恩惠上
  ノ期限ニ關スル宣告ヲ取消スヘシ
  此ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ルコトヲ得ス
  第六條中「前五條」ヲ「第一條乃至第五條ノ五」ニ改ム
  〔作間耕逸君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=85

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• 086・作間耕逸

  ○作間耕逸君　只今上程致サレマシタル議員橫山勝太
  郞君外四名ヨリ御提出ニナリマシタ借家法中改正法律
  案ノ提案理由ヲ、橫山君ニ代リ私カラ簡單ニ御說明申上
  ゲマス、借家問題ノ紛擾ニ付キマシテハ、政府モ時勢ニ順應
  シテ相當ノ解決ヲ爲サシムル爲ニ、昨年ハ旣ニ借家法ヲ制
  定シ、本年又將ニ借家調停法ヲ制定セントシツヽアルノデ
  ゴザリマスルケレドモ、實際上借家人ト家主トノ關係ニ於
  テ、最モ必要ナル部分ニ徹底ヲ缺イテ居ル點ガ少クナイノ
  デゴザイマスルカラ、洵ニ隔靴搔痒ノ憾ナキ能ハズデアリマス、
  仍テ玆ニ本案ヲ提出致シマシテ、本案中ニセメテハ最モ世
  間ニ問題トナッテ居リマスル明渡豫告期間ヲ延長スルコト、
  卽チ現行ノ借家法ノ明渡ノ豫告期間ハ六箇月ト定メテ居ル
  ノデアリマスルガ、ソレハ實際ニ於テ短ニ失シマスルカラ、之ヲ倍
  加致シマシテ一年ト改メマスルコト、第二ニハ敷金ニ制限
  ヲ設ケマシテ之ヲ三箇月分ト致シマシテ、之ニ最少限度ノ
  利息ヲ付ケルコトニ致シマシテ、以テ家賃支拂ノ擔保ニモ
  充テルコトノ出來ルヤウナ途ヲ開キマスルコト、尙ホ借家明
  渡ノ栽判宣告ノ際ニハ、相當ノ猶豫期間ヲ借家人ニ與ヘマ
  スコト、其他必要ナル條件ヲ定メマシテ、以テ現行借家法ノ
  缺陷ヲ取敢ズ補ヒタイト云フ趣旨デアリマスル、之ガ爲メ善
  良ナル家主ノ權利ト云フモノハ少シモ害セラレマセズニ、唯
  善良ナラザル家主ニ對スル借家人ノ權利ノ保護ヲ一層完
  全ニ致サントスル本案ノ精神ニ外ナラナイノデアリマスルカ
  ラ、其點ヲ御斟酌ノ上宜シク御賛成ヲ願ヒタイト思ヒマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=86

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• 087・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ上畠益三郞君外二名提出、身元
  保證ニ關スル法律案外三件ノ委員ニ併セテ付託セラレム
  コトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=87

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• 088・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト認
  メマス、仍テ本案ハ動議ノ如ク決シマシタ、次ハ日程第二十
  二、辯護士法改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、禱苗代君
  第二十二辯護士法中改正法律案(鵜澤總
  明君外六名提出)第一讀會
  辯護士法改正法律案
  辯護士法
  第一章辯護士ノ資格及職務
  第一條辯護士ハ當事者ノ委任ヲ受ケ又ハ裁判所ノ
  命令ニ基キ法律ニ關スル職務ヲ行フモノトス
  第二條辯護士タラムト欲スル者ハ左ノ條件ヲ具フル
  コトヲ要ス
  -帝國臣民ニシテ民法上ノ能力ヲ有スル男子タル
  コト
  二制規ノ試驗ニ及第シタルコト
  第三條前條ノ試驗ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
  ム
  試驗委員ハ司法省高等官判事檢事辯護士中ヨリ之
  ヲ詮衡ス
  第四條判事檢事又ハ辯護士タリシ者ハ試驗ヲ要セス
  シテ辯護士タルコトヲ得
  第五條左ニ揭クル者ハ辯護士タルコトヲ得ス
  無期若ハ六年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ處セラレ
  タル者
  二刑法第二編第一章乃至第三章第五章第七章
  乃至第十一章第十三章第十六章乃至第二十
  三章第二十五章第二十六章第三十五章乃至
  第四十章ノ規定ニ依リ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處
  セラレタル者
  三聾者啞者若ハ禁治產、準禁治產ノ宣告ヲ受ケ又
  ハ破產宣告ヲ受ケ復權セサル者
  四懲役ノ處分ニ依リ免官又ハ免職セラレタル者又
  ハ本法ニ依リ除名セラレタル者
  第六條辯護士タラムトスル者ハ辯護士會會員名簿ニ
  登錄セラルルコトヲ要ス
  前項ノ登錄ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第二章辯護士ノ權利及義務
  第七條辯護士ハ法廷ニ於テ職務上陳述シタル言語
  ニ付其ノ責ヲ負フコトナシ但シ法廷ノ秩序維持ニ關
  スル裁判所構成法民事訴訟法及刑事訴訟法ノ規
  定竝本法ニ因ル懲戒規定ノ適用ヲ妨ケス
  第八條辯護士ハ職務上取扱ヒタル事項ニ付默祕ノ
  權利ヲ有ス
  何人ト雖辯護士ノ職務上取扱ヒタル事項若ハ其ノ
  述ヘタル意見ニ付其ノ辯護士ノ意ニ反シテ推問ヲ爲
  スコトヲ得ス
  第九條辯護士ハ正當ノ理由アルニ非サレハ法令ニ依
  リ司法大臣又ハ裁判所若ハ所屬辯護士會ノ命シタ
  ル職務ヲ辭スルコトヲ得ス
  第十條辯護士ハ左ニ揭クル事件ニ付其ノ職務ヲ行フ
  コトヲ得ス
  -職務上相手方ノ協議ヲ受ケテ之ヲ賛助シ又ハ
  委任ヲ受ケタル事件
  二官吏公吏在職中取扱ヒタル事件
  三仲裁手續ニ依リ仲裁人トナリテ取扱ヒタル事件
  第三章辯護士會
  第十一條各地方裁判所管轄區域每ニ辯護士會ヲ
  置ク
  司法大臣ハ土地ノ狀況ニ依リ數個ノ地方裁判所管
  轄區域ヲ合シテ一組ノ辯護士會ヲ設ケシムルコトヲ得
  第十二條辯護士會ハ左ノ事項ヲ處理スルヲ以テ目
  的トス
  -司法上又ハ辯護士ノ利害ニ關スル事項
  二法律命令又ハ辯護士會會則ニ規定シタル事項
  第十三條辯護士會ハ法人トシ司法大臣之ヲ監督ス
  第十四條辯護士會ニ理事及常議員若干名ヲ置ク
  理事ハ會長副會長ヲ常議員ハ懲戒委員及其ノ豫備
  委員若干名ヲ互選ス
  會長ハ辯護士會ヲ代表ス會長差支アルトキハ副會長
  之ヲ代表ス
  第十五條辯護士會ハ左ニ揭クル事項ヲ定メ司法大臣
  ノ認可ヲ受クヘシ
  役員ノ選擧及其ノ職務ニ關スル規程
  二會員名簿ノ登錄ニ關スル規程
  三總會又ハ役員會ノ議事ニ關スル規程
  四辯護士ノ風紀及懲戒ニ關スル規程
  五辯護士ノ報酬ニ關スル規程
  六財產ノ管理及出納其ノ他會務ノ處理ニ必要ナ
  ル規程
  第十六條所屬辯護士會以外ノ地ニ事務所ヲ設クル
  辯護士ハ其ノ地辯護士會ノ會則ヲ遵守スヘシ
  第四章懲戒
  第十七條辯護士ニシテ法律又ハ辯護士會ノ定メタル
  規定ニ違反シタル者ハ懲戒ニ付ス
  第十八條辯護士ニ懲戒事犯アリト認ムル者ハ辯護
  士會ニ申告スルコトヲ得
  第十九條司法大臣ノ請求又ハ前條ノ申告アリタルト
  キ若ハ理事ニ於テ懲戒事犯アリト認メタルトキハ理事
  會ハ懲戒ニ付スルヤ否ヤヲ決スヘシ
  第二十條理事會ニ於テ懲戒ニ付スヘキモノト決定シ
  タルトキハ會長ハ直ニ懲戒委員會ニ對シ懲戒手續開
  始ノ請求ヲ爲スヘシ
  第二十一條懲戒委員會竝覆審懲戒委員會ニ關スル
  規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第二十二條懲戒ハ左ノ四種トス
  譴責
  二千圓以下ノ過料
  三三年以下ノ停職
  四除名
  前項第二號ノ過料ハ國ノ收八トス
  第二十三條懲戒委員會ノ議決ニ不服アル者ハ議決
  書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ七日內ニ辯護士會ニ申立
  書ヲ提出シテ覆審ヲ求ムルコトヲ得
  司法大臣ハ議決書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ七日內ニ
  覆審ヲ求ムルコトヲ得
  第二十四條覆審ハ覆審懲戒委員會ニ於テ之ヲ爲ス
  委員ノ數ハ大審院判事四名辯護士三名トシ司法大
  臣之ヲ任命ス
  第二十五條辯護士ニ非スシテ法律ニ關スル事務ヲ取
  扱ヒ又ハ其ノ周旋ヲ爲スコトヲ業トスル者ハ一年以
  下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
  第五章附則
  第二十六條本法ハ大正十二年一月一日ヨリ之ヲ施
  行ス
  第二十七條現在ノ各辯護士會ハ本法ニ依ル辯護士
  會ト看做ス
  辯護士會ハ本法施行ノ日ヨリ六箇月內ニ第十五條
  ノ認可ヲ申請スヘシ
  第二十八條本法施行ノ際現ニ辯護士會ニ加入セル
  辯護士ハ本法ニ依リ辯護士會員名簿ニ加入シ登錄
  セラレタル者ト看做ス
  第二十九條本法施行ノ際在任セル辯護士會役員ハ
  本法ニ依ル役員ノ選任ニ至ル迄本法ニ依ル役員ト看
  做ス
  第三十條本法施行ノ際開始セラレタル懲戒手續ハ
  明治二十六年法律第七號ニ依ル
  第三十一條本法施行ニ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ
  之ヲ定ム
  〔禱苗代君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=88

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• 089・祷苗代

  ○禱苗代君　只今議題トナッテ居リマスル辯護士法改正
  法律案ハ、多數同僚先輩ガ提出者トナッテ居ラレマスガ、私カ
  ラ僭越ナガラ簡單ニ提案ノ理由ヲ說明致シマス、御承知ノ
  如ク今日ハ時代ノ進運ト共ニ辯護士ノ人數モ增加ヲ致シ
  且ツ其社會上ノ地位及法律上ノ地位モ向上シテ居リマス
  又他ノ法令ノ改廢ノ結果、職務權限モ著シク擴張サレテ
  居ルノデアリマス、サウ云フ次第デアリマスルガ故ニ、此辯護
  士ノ法律上ノ地位ヲ確認シ、其權利義務ヲ法律上明確ニ
  シテ置ク必要ガアルノデアリマス、然ルニ現行法ハ御承知ノ
  如ク今ヲ去ル二十九年前ノ明治二十六年ニ制定サレタノ
  デアリマシテ、是等ノ點ガ明確ニナッテ居ナイノデアリマス、ソ
  レ故ニ此現行法ヲ以テ多數ノ辯護士ヲ律スルト云フコト
  ハ、今日ハ不適當デアリマスルガ故ニ、此改正案ニ於キマシ
  テハ、其辯護士ノ資格ニ於テ、今日ノ時勢ノ進運ニ順應ス
  ベク之ニ修正ヲ加へ、尙ホ職務ノ權利義務ニ付キマシテハ、
  言論自由ノ原則ヲ認メマシテ、國民ノ權利仲張、人權擁
  護ノ目的ヲ途行スベク規定ヲシテアルノデアリマス、又辯護
  士會卽チ其辯護士ヲ以テ組織シタル辯護士會ガ、從前ハ
  唯地方裁判所檢事正ノ監督ヲ受ケタル集團デアリマシテ、
  其法律上ノ資格ハ不明デアリマシタケレドモ、之ヲ法人トシ
  テ司法大臣監督ノ下ニ置キ、サウシテ其自治權ヲ認メテ今
  日ノ在野法曹ノ進歩ノ氣運ニ順應スベク規定ヲ設ケルト
  同時ニ、此法人ノ懲戒權ヲ認メマシテ、風紀ヲ維持シ品位
  ヲ保持スル所ノ趣旨ノ規定ヲ設ケテ居リマス、詳細ノ事ハ
  委員會ニ於テ說明ヲスルコトニ致シマスルカラ、宜シク御賛
  成ヲ願ヒマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=89

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• 090・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ議長指名ヲ以テ、特ニ十八名ノ委
  員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=90

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• 091・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ本案ハ動議ノ如ク委員付託ニ決シマシタ次
  ハ日程第二十三未成年者飮酒禁止法案第一讀會ノ續キ
  ヲ開キマス、委員長海江田準一郞君
  第二十三未成年者飮酒禁止法案(根本正
  君外四名提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一未成年者飮酒禁止法案(根本正君外四名提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年二月二十七日
  未成年者飮酒禁止法案委員長
  海江田準一郞
  衆議院議長奥繁三郞殿
  〔海江田準一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=91

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• 092・海江田準一郎

  ○海江田準一郞君　未成年者飮酒禁止法案ノ委員會ノ
  經過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、此禁酒法案ハ諸君御承
  知ノ通リ根本君ガ明治三十三年以來今日迄熱心主張セ
  ラレテ居ル法律案デゴザイマス、而シテ本院ニ於キマシテハ
  明治四十一年以來每議會通過シ來シタ歷史ヲ持ッテ居ルノ
  デアリマス、委員會ニ於キマシテハ松下禎二君、春日俊文
  君、〓水留三郞君、此三氏ヨリ色〓有益ナル質問ガアメタ
  ノデゴザイマス、併ナガラ其質問ノ内容ヲ伺ッテ見マスルト
  未成年者ニ酒ヲ飮マセルコトハ甚ダ宜シクナイ、健康狀態
  ニ甚ダ宜シクナイ、併ナガラ未成年者ノ齡ニ於テハ多少
  ノ異論ガアッタヤウデゴザイマズ、未成年者ヲ十七歲トスルカこ
  二十歲トスルカ、此點ニ於テハ質問者諸君ニ於テ意見ガアッ
  タノデアリマス、又條文ノ上ニ於テモ意見ガアッタノデアリマ
  スルガ、要スルニ未成年者ノ健康狀態ヲ良好ナラシメ、以テ
  國家生存ノ意義ヲ有效ナラシムルト云ブ、此點ニ於テハ
  一致シタヤウニ窺ハレタノデアリマス、仍テ委員會ハ討論ヲ
  省略致シマシテ、直ニ採決ノ結果滿場一致ヲ以テ可決シタ
  次第デゴザイマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=92

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• 093・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　本案ニ對シテ質疑ノ通告ガア
  リマス、中野寅吉君
  〔中野寅吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=93

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• 094・中野寅吉

  ○中野寅吉君　只今海江田委員長カラ御報告ガゴザイ
  マシタガ、洵ニ簡單デアリマシテ、モウ少シ御聽キシタイト思
  ウタデスガ、御謙遜ノ爲カ委員會ノ殆ド片鱗ヲ伺フニ過ギ
  ナカッタノデアル、私ハ委員會ノ樣子ハ能ク新聞ナリ、又同僚
  ノ話ナリ、又反對黨ノ人カラモ御聽キシタノデアリマス、要ス
  ルニ此案ハ物質的ニ於キマシテモ、將又精神的ニ於キマシ
  テモ、非常ナ大損害ノ之ニ伴フ案ダラウト私ハ思フノデアリ
  マスカラ、少シ許リ質疑ヲ致シマス、未成年者ニ酒ヲ飮マセ
  ルコトガ何故ニ國家ノ爲ニ不利益デアルカ、明治三十三年
  カラ根本君ガ唱ヘテ居ルカラ、是ハ其熱心ニ對シマシテモ通
  過ヲサセテヤラナケレハナルマイト云フヤウナ人情論ヲ以テ、
  國家ノ利害得失ヲ二三ニスル譯ニ行カヌノデアル(「ノウノ
  ウ」拍手)酒ヲ飮ンデ何ガ惡ルイ、抑、酒ノ德タルヤ一合ニシ
  テ元氣漸ク至リ、二合ニシテ春風駘蕩タリ、飮ンデ一升ニ至
  レバ羽化登仙ノ思ヒアリ、斯ノ如キ効能顯著ナル此酒ヲ何
  故未成年者ニ飮マセナイ、ソレカラモウ一ツ申シマセウ、多ク
  ノ人ガ今酒ノ飮マナイ親父ガアリマスカ、大抵ノ家庭デハ酒
  ヲ用キル、親ガ酒ヲ飮ンデ居ルノニ子供二飮ムナト云フノハ
  甚ダ間違シテ居ル、横シマニ匈ヘト〓ヘタ蟹ノ子ニ、直グニ行
  ケトハ無理ナ親蟹、少シ位イ酒ヲ飮マセテモ宜イ、親ガ二合
  飮ムナラバ子供ニ三勺ヲ飮マシテモ宜イト思フ、ドウシテ此
  酒ヲ飲マセナイカ、又冠婚葬祭等皆酒ヲ用ヰテ居ル、日本
  ノ習慣トシテ未成者ガ結婚ヲスル時ニ水ヲ飮マセルカ、水盃
  ナドハ本來緣起デナイデハナイカ、三三九度ノ盃、三寳島臺
  デ長柄ノ銚子、蝶花形ヲ置イテヤルトキニ、水ヲ飮マセテ、借
  白髮マデ一〓ニナラウト云フ祝事ガ出來ルカ、ソンナ馬鹿ナ
  話ハナイト私ハ思フノデアル、ソレカラ此禁酒デアル所ノ亞
  米利加デモ酒ハ現在飮ンデ居ル、宴會ニ招カレテ行クト、葉
  卷煙草ノ中ニ「ウヰスキー」ヲ仕掛ケテアル、サウシテ皆御馳
  走ヲスルト云フコトデ、何處デモ皆酒ハ飮ンデ居ル、親父ガ
  飮メバ子供ガ飮ミタイノハ當リ前ダ、又十三ヤ十四
  デ飮ム者ハ無イ、大低飮ムノハ十五、十六、十七デアル、酒ヲ
  飮メバ元氣益、盛ンデ、酒ヲ飮ンデヘナ〓〓シテ居ル奴ハ、
  朝事有フタ時ニ何ノ役ニ立ツカ、ソレカラ又歳入ト云フ方カ
  ラモ考ヘナケレバナラヌ、根本君モ歲入歲出ナド能ク御承
  知ノ人デアル、先ヅ酒造稅ハ一億八千八百三万餘圓アル、
  之ガ未成年者ガ飮マナクナッタナラバ、三千万圓ノ歲入減ヲ
  來ス、之ヲ以テ發入滅ヲ補フノデアル吾々ハ宜シク酒造稅
  法ヲ改正シテ、モウ少シ餘計ニ日本ハ酒ヲ飮ムヤウニシタイ
  ト思ッテ居ル、是ハ物質方面カラ來ス所ノ損害デアル、宜シ
  ク酒ヲ飲ムヤウニシナケレバナラヌ、之ヲ自由問題ニシタノハ
  無理デナイ、我黨モ自由問題デアル、多數黨ノ政友會ノ方
  モ自由問題デアル、宜シク自由ト云フヨリモ、斯ウ云フ事ハ
  黨議デ酒ヲ飮ムベシト云フヤウニ決メタ方ガ宜イト思フ、此
  點カラ申シマシテモ、私ハ此未成年者ニ酒ヲ飮マセナイト云
  フコトハイカヌト思フ、又病氣ニナルト云フガ、何ガ病氣ニナ
  ル、酒ヲ飮ンデ病氣ニナルヤウナ者ハ、餘程弱イ者デアル、世ノ
  中ハ太ク短ク送ルノモ亦世ノ中ニ處スル道デアル、細ク長ク何
  ニモシナイデ靑イ面ヲシテヤッテ居ル許リガ世ノ中ニ立ツ方
  法デハナイ、元氣ヲ鼓舞シテ浩然ノ氣ヲ養ッテ、國家ノ爲ニ
  盡サナケレバナラヌ、卽チ私ノ議論ハ未成年者ニ酒ヲ飮マセ
  ヌト云フコトハ、物質的ニ於テモ精神的ニ於テモ大損害ナ
  リト思ヒマスガ、提案者ハ損害無イト云フ御議論デアルカド
  ウカ、此點ヲ一ツ承ヲテ置カヌ以上ハ、私ハ此案ニ賛成ガ出
  來ナイ、三十三年以來提案サレタ熱心ナル根本君ニハ敬意
  ヲ表シマスガ、遺憾ナガラ國家ノ大事ニ對シテ人情論ハ許
  サヌノデアリマス(拍手)

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• 095・海江田準一郎

  ○海江田準一郞君　今ノ質問デゴザイマスガ、提案者ニ御
  質問デアリマスカ能ク分リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=95

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• 096・中野寅吉

  ○中野寅吉君　委員長ニ-提案者デモ宜シイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=96

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• 097・根本正

  ○根本正君　議長···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=97

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• 098・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　根本正君
  〔根本正君登壇〕

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• 099・根本正

  ○根本正君　諸君、只今有名ナル中野寅吉君カラ、又洵
  ニ有名ナル御質問ヲ戴キマシテ、私ハ之ニ御答スルコトヲ最
  モ國家ノ爲メ慶ブ者デアリマス(拍手)全體我帝國ノ人ニノ
  中ニ、中野君ノヤウナ御意見ヲ持ツ御方ガアルカラシテ、實
  ハ度と此所ニ懲罰問題ナドノ事ガ起ルノデアラウト私ハ思
  フ、全體私ハ此衆議院內ニ於テモ酒ヲ賣ルコトハ宜シクナ
  イト云フコトデ、此事ヲ議事進行ニ付テ實ハソレヲ申上ゲテ
  置キタイト思ッタノデアリマスガ、併ナガラ私ハ此ニ言ヒタイ
  事ヲ言ハナイデ、今日マデ愼デ居ッタ譯デアリマス、第一ノ御
  質問ノ中ニ、未成年者ニ對シテ酒ヲ飮マセルコトガ宜シイ、
  斯ウ云フ御意見、之ニ對シテ私ガ簡單ニ御答致シマス、未
  成年者禁酒ノ必要ハ卽チ理由書ニモアル通リ、未ダ精神モ
  比較的幼稚又體力ニ於キマシテモ、完全デナイカラシテ、未
  成年者ニ酒ヲ飮マセルト云フコトハ、精神ニ對シテモ亦衞
  生ニ對シテモ宜シクナイト云フコトハ、既ニ有名ナル醫學者、
  卽チ帝國大學ノ醫學博士特ニ法醫ニ通ジテ居ル所ノ片山
  醫學博士ガ既ニ文部省ノ修身書ニ詳シク書イテ、日本全
  國ノ數百万ノ學生及數万ノ〓員ニ之ヲ讀マセルヤウニナッ
  テ居ルノデアリマス、若シ之ガ未成年者ニ對シテ差支ナイト
  云フコトデアッタナラバ、此〓科書ニサウ云フ事ヲ〓ヘナイノ
  デアル、尤モ中野君ハ第一ニ水ト云フモノハ何ヲ以テ成立
  シテ居ルカト云フコトヲ御承知デ有ルカ無イカヲ伺ッテ置キ
  タイ、多分御承知アルマイト思フ、水ト云フモノハ、卽チ「ハイ
  ドロジン」ガ二ツニ「オキセージン」ガ一ツト云フモノデ「エッチ、
  ツー、オー」デ出來テ居ル、又「アルコール」ト云フモノハ何デ成
  立ッテ居ルカト云フト、是モ多分御承知ガアルマイカト思フ、
  是ハ詳シク申上ゲマセヌガ、「アルコール」ト云フモノハ石炭ノ
  ヤウナモノデ、熱力ヲ持っテ居ルモノデ、御承知ノ通リ火ヲ點
  ケレバ燃エルモノデアル、サウ云フモノヲ未成年者ノ身體ニ
  入レマスナラバ、胃囊ヲ始メ、心臟ヲ害シ、其他ノ滋養物ヲ
  排出蒸發シテ、智力ヲ燃シテシマノ物デアリマスルカラシテ、
  實ハ未成年者ノミナラズ、成ベクハ中野君ニ對シテモ酒ハ宜
  クナイモノト思ッテ居ル、斯ノ如ク酒害ト云フモノハ私ノ臆說
  デハナイ、是ハ立派ナ醫學博士ノ中デモ帝國大學ニ於テ〓
  授ヲサレテ居ル所ノ大澤博士、或ハ片山博士ト云フヤウナ
  方ガ、是ハ識認シテ居ル、又獨逸、亞米利加、英吉利ノ如キ
  文化ノ國ニ於テハ、諸君ノ御承知ノ通リ細密ニ分析サレテ
  居ルノデアリマス、未成年者ニ對シテ害ノ無イト云フコトデ
  アルガ、未成年者ニ對シテ害ノ有ルト云フ事ヲ簡單ニ一二
  證明シテ置クノデアリマス、實ハ先達此法案ヲ提出シタ時
  合ニ、此處デ說明シヤウト思ヒマシタケレドモ、如何ニモ貴重
  ナル時間デアリマスカラ、省略シテ置キマシタガ、中野君ノ御
  尋ニ依ッテ之ヲ說明スルノ機會ヲ得テ、私ハ大ニ悅ブモノデ
  アル、卽チ酒ガ如何ニ害ヲシタカト云フコトヲ申スト、先ヅ日
  露戰爭ノ一寸前ニ、學生靑年者ノ送別會ガ上野ノ某料理
  屋デアッタ、サウスルト酒ヲ飮ンデ其靑年ハ而モ靑山高樹町
  ノ某少將ノ令息デアルノデアル、所ガ其酒ノ結果、歸リニ靑
  山ノアル善光寺へ這入ッテ、喉ガ渴イタカラ酒ヲ飮ンダ結果、
  其寺內ノ井戶カラ水ヲ汲ンデ飮マウト思ッタ所ガ、所謂泥
  醉シテ居ックカラ、一其井戶ヘ落チテシマッタ、併ナガラ此寔ニ悲
  シムベキ出來事ガ、二三日間分ラナイデ何處ニアスコノ息子
  ガ行ヲタカト云ッテ非常ニ捜シタ所ガ、學生ノ〓子ガ井戶ノ中
  カラ出テ來タ、ソレニ依ッテ是ハ全クアノ送別會デ酒ヲ飮ンダ
  結果ガ、大切ナル而モ少將タルベキ、立派ナ方ノ令息ガ歿ク
  ナッタ事ガワカッタ事デアリマス、(「少シソレハ飮過ギダ」ト呼
  フ者アリ)其通リ、其他ニハ早稻田ニ火事ガアッタ事ガアル、
  其火事ノ時分ニ下宿屋ガ燒ケテ、家内ノ者殘ラズ逃ゲマシ
  タケレドモ、宵ニ酒ヲ飮ング學生二人ハ燒死ンダ例ガアル、
  今一ツ簡單ニ御話シマス、是ハ極ク最近ノ事デス、日本橋
  區內ノ最モ有力ナル人ノ子供デアルケレドモ、修業ノ爲メ立
  派ナ商家へ見習奉公ニ出シタノデアル、是ハ京橋區鈴木町
  ノ私ノ友人ノ話デアァチ、洵ニ同情ヲ寄セル所ノ話デアリマ
  スガ、此未成年者ガ七十圓ノ掛取ニ行キマシタガ、其七十
  圓ノ金ヲ懷中ニシテ歸ッテ來ル途中ニ、第一ニ蕃麥屋へ入ツ
  タ、蕎麥屋デ一杯ヤッタ所ガ、一杯デ濟マナクテ段々飮ンデ
  其結果ハドウナッタカト云フト卽チ淺草ヲ越エテ御承知モア
  リマセウガ、アノ北廓へ參ッタノデアリマス、其北廓へ參リマス
  ルト云フト、此北麻ハ中と無情機敏ナ所デアッテ、其靑年ガ
  参リマスルト云フト、先ヅ第一ニ風呂場へ連レテ行ッテ、紙入
  ヲスッカリ取ッテシマック、其時ニ紙入ニ這入ッテ居ッタ所ノ七
  十圓ト云フモノヲ殘ラズ其北廓ノ樓主ガ取ッテシマッタ、サウ
  シテオマケニ其主人ガ警察ヘ訴。ヘタノデアリマス、警察へ訴
  ヘタ所ガ、直ニ其靑年ガ喚出サレタ、サウスルト云フト、警察
  デハ物ヲ言ハズ、二ツ三ツ非常ナル鞭ヲ當テタ譯デアリマス、
  〓ニ於テ說明シタイ事ハ皆樣御承知デアルカ、何デアルカ分
  リマセマガ、私ハ初テ聞イタ、七十圓ノ金デスカラ樓主ガ奪ッ
  テシマフト云フコトハ甚ダ善クナイ、段々聞ケバ其費用ハ僅
  ニ十五圓位デアルノデアル、所ガ警察へ連レテ行ッタ時分ニ、
  十五圓ハ所謂酒、卽チ中野君ガ仰シヤル所ノ害デ無イト云
  フ所ノ大害ノアル酒デアリマス、其費用ガ十五圓、サウスル
  ト殘リガ五十五圓、此殘リノ五十五圓ハ此場所ノ習慣ニ
  依シテ、纏頭ト云フコトデ遣ルナラバ、五十圓遣,テモ百圓遣ッ
  テモソレハ警察デハ咎メナイサウデアリマス、デアルカラ中ニ樓
  主ト云フモノハ、惡智利口ナモノデ、甚ダドウモ惡イ習慣デ
  アル、十五圓ヲ酒肴、或ハ佳人ノ代デアルケレドモ、後ノ五
  十五圓ハ殘ラズ此靑年カラ纏頭ニ貰ヒマシタ、サウスレバ罪
  ニナラズニ全部奪取ッテシマッタ譯ニナルノデアリマス、所ガ其
  靑年ハ非常ニ叩カレタカラ、吃驚シテシマッタ、其後家ヘ歸ク
  テモウ決シテ酒ヲ飮ムモノデハ無イト言ッテ、又サウ云フ處へ
  行クベキモノデ無イト云フコトヲ申シマシタ、免ニモ角ニモ斯
  ノ如ク鞭打レ、斯ノ如ク主人ニマデ七十圓ノ損害ヲ掛ケタ
  ノハ何ニ因ルノデアルカ、酒ノ害デア】リマス(「改悛シタデハナ
  イカ」ト呼フ者アリ)改悛ト云フモノハ泥棒シテカラ改悛デハ
  遲イ、私ハ泥棒サセナイ爲ニ言フノデアル、諸君ハ泥棒サセ
  テカラ改心サセルト云フノデアリマスガ、其處ガ違フノデアリ
  マス、私ハ卽チ轉パヌ先ノ杖ト云フモノヲ以テ言フノデアル、
  諸君ハ轉ンデシマッテ傷ヲ受ケテ、ソレデ懲罰委員ニ付セラ
  レテカラ後ノ事ヲ言フノデアル(拍手)私ハ初ヨリ酒ヲ飮マナ
  イデ懲罰委員ナドニハ付サレナイト云フ所ノ精神デアル(拍
  手)吾々日本人七千有餘万ノ子弟ハ、立派ナル者ニナラナ
  ケレバナリマセヌノデ、酒ハ斯ノ如キ害ガアル物デアリマスカ
  ラ、ドウカ中野君モ之ニ御賛成ヲ願ヒマス、一ダ其他色ニ御
  說ガアリマスガ、此酒ヲ飮マセナイト云フト、酒ガ賣レヌカラ
  シテ租稅ガ減ルト云フ御話デアル、租稅ガ減ルト云フガ、是
  ハ大ナル間違デアル、若シ酒ヲ飮シマセヌデモ、日本ノ利益
  スルモット良イ事ガアル、其酒ノ爲ニ或ハ五十万、七十万圓
  ノ稅ガ減ルカラト言フケレドモ、減ッテモソレガ生產力トナッテ
  銀行ヘ金ガ入ッテ、之ガ鐵道ヲ敷ク所ノ資本トナリ、之ガ港
  灣ヲ施設スル所ノ資本トナリ、之ガ道路ヲ改良スル所ノ資
  本トナッタナラバ稅ガ減シテモ國家ヲ利益スル所ハ大ナルモ
  ノデアリマス(拍手)一言私ハ例ヲ引カネバナラヌ、亞米利加
  ノ紐育市デハ、此禁酒ヲシマシテカラ一箇年ニ銀行ヘ入レ
  夕金ガ、昨年ノ調ニ依リマスト、紐育市ダケデ二億一千万
  圓ト云フモノガ銀行ニ殖エタ、ンレダケ生產力ガ殖エタノデ
  アリマス、ドウカ諸君此酒ノ稅ガ減ルカラ酒ヲ飮マセロナゾ
  ト云フノハ、是ハ五十年、百年前ノ事デアッテ、卽チ科學ガ開
  ケナイ時デアルノデアリマス、昔年鐵道ノ出來ナイ時デアル
  ノデアリマス、能ク諸君ノ中デモ特ニ私ハ御記憶ヲ願ヒタイ
  ノデアリマス、此酒ノ害ト云フモノハ、決シテ私ガ申上ゲルノ
  ミナラズ、最早世界ニ於テ是ハ害有ルモノト言ウテ居ルノデ
  アリマス是ハ卽チ「狂藥佳味ニアラズ」ト言ウテ、卽チ昔ハ酒ヲ
  藥ト思シタガ、今ハ藥デアルケレドモ、狂人ニナル所ノ藥、之ヲ
  飮レバ狂人ニナル、決シテ佳味ニアラズデアリマス(「ノウ〓〓」)
  ノウ〓〓ト仰シヤル方ハ、ソレ迄デスガ、ドウカ諸君、是ハ日本
  帝國ノ爲ニ滿場一致ヲ以テ御賛成アランコトヲ冀ヒマズ(拍
  手

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• 100・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　本案ニ對シテ別段討論ノ通告
  モアリマセヌカラ直ニ採決致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開ク
  コトニ同意ノ諸君ノ起立ヲ願ヒマス
  〔賛成者起立〕

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• 101・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　多數ト認メマス、本案ハ第二讀
  會ヲ開クコトニ決シマシタ

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• 102・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
  省略シ、委員長報告ノ通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 103・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ直
  ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供シマス
  未成年者飮酒禁止法案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 104・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナケレバ第三讀會ヲ省
  略シテ、委員長報告ノ通リ可決確定致シマシタ

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• 105・岩崎勲

  ○岩崎勳君　議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出
  致シマス、卽チ前ニ議員〓瀨一郎君、議員西川嘉門君、議
  員中野寅吉君、議員金澤安之助君、竝ニ議員佐々木安五
  郞君、懲罰事犯ノ件ヲ一括議題トナシ、懲罰委員長ノ報
  告ヲ求メ、且ツ之ガ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 106・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 107・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、議事日
  程ハ變更サレマシタ、懲罰事犯ノ議事ハ秘密會議デアリマ
  スカラ、傍聽人ノ退場ヲ命ジマス
  議員〓瀬一郎君外四名懲罰事犯ノ件
  〔午後五時四分秘密會ニ入ル〕
  〔午後六時五十九分祕密會ヲ終ル〕

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• 108・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　祕密會ノ結果ヲ報告致シマス、
  祕密會ニ於テハ西川嘉門君、〓瀨一郞君、中野寅吉君、金
  澤安之助君、佐々木安五郞君、以上五君ノ懲罰事犯ノ件
  ヲ議決致シマシタ、仍テ其議決ニ基キマシテ宣告ヲ致シマス、
  議員西川嘉門君ニ對スル懲罰事犯ノ件ハ、懲罰事犯ニア
  ラズト決シマシタ、議員〓瀨一郞君ニ對スル懲罰事犯ノ件
  是モ懲罰事犯ニアラズト決シマシタ、議員中野寅吉君ニ對
  シマシテハ、議院法第九十六條第一項第三號ニ依リマシテ
  二週間ノ出席停止ヲ命ジマス、議員金澤安之助君ニ對シ
  マシテハ、議院法第九十六條第一項第三號ニ依リマシテ、
  二週間出席停止ヲ命ジマス、議員佐々木安五郎君ニ對シ
  マシテハ、議院法第九十六條第一項第三號ニ依リマシテ
  二週間出席停止ヲ命ジマス、以上

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• 109・岩崎勲

  ○岩崎勳君　殘餘ノ日程ニ對シテ延期ノ動議ヲ提出致
  シマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=109

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• 110・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハゴザイ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=110

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• 111・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ハナイト認メマス-御
  諮リ致ス事ガゴザイマス、第四部選出豫算委員森田茂君、
  第三部選出決算委員栗林五朔君、第五部選出決算委員
  長田桃藏君、右常任委員辭任ノ申出ガアリマシタ、許可ス
  ルニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02119220302&spkNum=111

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• 112・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ガナケレバ許可致シマス、
  其部ノ諸君ハ速ニ補關選擧ヲ行ハレ、屆出アランコトヲ望
  ミマス、次ノ日程ハ公報ヲ以テ御報告致シマス、本日ハ之ニ
  テ散會
  午後七時二分散會
  衆議院議事速記錄第二十號中正誤
  頁段行誤正
  四三八下二三櫻田門〓
  四三九上八疏明聲明
  四三九上三〇逃走闘爭
  四三九上三二逃走開爭
  四三九中一五一致セシメントス一致セシメントシ
  テテ
  〔衆議院議事速記錄第十四號未成年者〓酒禁止法案ニ
  關スル根本正君演說ノ參照〕
  未成年者飮酒禁止法案理由書
  未成年者ノ身體各部ノ組織ハ未タ定全セサルヲ以テ之ヲ成年者
  ニ比スレハ「アルコール」ノ浸害ヲ受クルコト一層多大ニシテ其
  ノ最患フヘキモノハ全國幾萬ノ學生カ飮酒ノ爲其ノ目的タル學
  業ヲ成ス能ハサルニアリ是レ支明諸國カ幼者ノ飮酒取締ニ關シ
  特ニ嚴重ナル規定ヲ設クル所以ナリ
  英國ニ於テハ千九百一年八月十七日議會ヲ通過シ其ノ翌年一月
  一日ヨリ施行セル幼者酒類賣買取締法アリス米國ニ於テハ千八
  百八十二年ヨリ千九百一一年ニ至ル二十年間ニ各州相前後シテ未
  成年者ニ酒類ヲ販賣スルコトヲ禁止スルノ法律ヲ實施シ千八百
  九十年ヨリ千九百年ニ至ル十年間ニ於テ合衆國ノ人民ノ壽命ハ
  平均四年ト十分ノ一ヲ伸暢セリトハ米國〓育協會「ハント」氏ヨ
  リ先年菊池前支部大臣へノ通信ニ確報セラレタル所ナリ殊ニ近
  來未國ニ於テハ益酒害ノ國家經濟及國民ノ衛生上ニ及ホス影響
  ノ甚大ナルヲ憂ヒ全國禁酒法ヲ制定セムトスルノ時ニ當リ我カ
  國ニ於テモ大ニ酒害ノ〓究ニ勉メサルヘカラス今靑年ニ對スル
  飲酒ノ害タル大要ヲ擧クレハ左ノ如シ
  心臟ノ神經又ハ筋肉ヲ刺戟シテ之ヲ衰弱セシムルノミナ
  ラス其ノ筋質ヲシテ脂肪ニ變セシメ終ニ其ノ作用ヲ完仝
  ニ營ムコトヲ能ハサラシム
  二血管ハ酒精ノ作用ニ依リテ變質シ血壓ノ爲ニ往々破裂ス
  ルコトアリ彼ノ卒中症ノ如キハ仝ク腦血管ノ破裂ニ因ル
  モノリ
  三身體衰へ肺膜ヨリ呼出スル炭酸ノ量ヲ減シ炭酸ノ排泄滅
  スレハ卽チ體內ノ酸化作用効害セラル其ノ結果體溫減シ
  身體衰フ
  四腎臟宮質ヲ脂肪性ニ變シ老廢物ヲ排除スルコト能ハサラ
  シム
  五肝臟ヲ肥大セシメテ常形ノ二倍ト爲スニ至ルノミナラス
  膽汁ヲ變シテ綠色ト爲シ甚シキハ黑色ト爲スニ至ル
  六消食器ノ粘膜ヲ害シ血管ノ彈力性ヲ變崩セシム
  七血管運動神經ニ痳痺ヲ起スヲ以テ血管劇張シ血行活潑ト
  爲リ諸器管ハ一時興奮シ從テ腐ノ判力ヲシテ錯雜ナラシ
  メ興奮ノ爲諸器管活潑トナリシ後尙飮酒ヲ持續スレハ先
  ツ小腦侵サレ爲ニ筋肉ヲ指揮スルノ力減弱シ俺ニ增進シ
  タル體溫忽チ減退シ身體寒冷トナルヘシ
  故ニ孰レノ點ヨリ觀察スルモ酒ノ人身ニ有害無益ノ毒物タルヤ
  明ナリ吾人國民ハ將來ノ良民ト爲ルヘキ未成年者ニ對シテ最愛
  ナル親權ヲ施行シ之ヲ監督養成スヘキ大責任ヲ負擔スルカ故ニ
  法律ニ依リ未成年者ノ飮酒ヲ取締ルハ決シテ干渉ニ過クルモノ
  ニ非サルナリ偶本案實行ノ困難ヲ說ク者アルモ其ノ困難ハ獨リ
  本案ノミニ限ラルヘキニ非ス若之レヲ口實トシテ本案ノ廢棄ヲ
  2唱フル者アテハ是レ强竊盜畫キサルノ故ヲ以テ之ヲ自由ニ放任
  スヘシト說キ其ノ取締ノ全發ヲ主張スル者ト何ン擇フ所アラム
  ヤ是レ其ノ制定ヲ必要トスル所以ニシテ莖ニ木案ヲ提出スル所
  以ナリ
  〔參照〕
  今ヤ北米合衆國ノ如キハ時勢ノ進運ニ隨ヒ經濟能率ノ增遂ヲ圖
  ルノ急務ナルヲ察シ憲法ヲモ改正シ仝國ニ禁酒法ヲ施行シ倍々
  禁酒ノ必要ヲ感スルモノノ如シ左ニ未成年者ニ對スル各國ノ禁
  酒法ニ關スル條項ヲ損載シ本案審議ノ參稽ニ資セムトス
  ○「カリホルニア」州ノ法律
  「カリホルニア」州ハ千八百九十一年三月十一日ヲ以テ幼者飲酒
  禁止法ヲ制定セリ
  幼者飮酒禁止法
  第一條滿十八年以下ノ幼者ニ酒類ヲ販賣シ又ハ給與シタル
  者竝ニ滿十八年以下ノ幼者ヲ來客トシテ出入セシメタル飮
  酒店料理店ノ店主ハ失行罪トシテ忠ヲ處分シ二百圓以上六
  百圓以下ノ罰金ニ處ス
  本條ノ罰金ヲ賊納シ得サル者ハ地方監獄ニ於テ百日以上ノ
  ホ禁錮ニ處ス
  第二條此ノ法律ニ牴觸スル法律規則ハ總テ鬼ヲ廢業ス
  第三條此ノ法律ハ議定ノ當日ヨリ有效ナルモノトス
  ○「メイリランド」州法律
  酒類取締法
  第八十九條第二項滿二十一年以下ノ幼者年齡ヲ偈テ成年者ト
  稱シ酒額販賣者ヨリ酒類ヲ購求シタルトキハ該幼者ヲ二圓以
  上四十圓以下ノ罰金ニ成シ五日以上三十日以下ノ禁錮ニ處
  ス
  同第三項滿二十一年以下ノ幼者ノ爲メ酒類ヲ購求シタル者ハ
  四十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處シ三十日以上九十日以下ノ禁
  3ニ處ス
  ○英國〓者酒類賣買取締法(明治三十四年八月十七日可
  决
  英國皇帝陛下ハ貴族院及衆議院ノ協賛ヲ經クル幼年酒類賣買取
  編法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
  第一條千八百八十六年ニ發布セラレタル幼者酒類賣買取締
  法ハ之ヲ廢棄ス
  第二條酒類販賣營業免許ヲ有スル者酒類ノ何タルヲ問ハス
  情ヲ知テ滿十四年以下ノ幼者ニ之ヲ販賣若ハ交付スルトキ
  又ハ人ヲシテ該幼者ニ販賣若ハ交付セシムルトキハ四十志
  以下ノ罰金ニ處シ再犯以上ハ五磅以下ノ罰金ニ處ス但シ購
  買者ノ住宅又ハ執業勞働所ニ於テ販賣若ハ交付スル場合並
  ニ酒類賣買ノ場所以外ノ地ニ於テ消費セラレムカ爲メ一平
  (二百五十二匁)以上ノ分量ヲ器物ニ入レ該器物ニ栓ヲ爲シ
  且封印シテ販賣若ハ交付スル場合ハ此限ニ在ラス
  何人タルヲ問ハス酒類ヲ得ヘキ目的ヲ以テ酒類ヲ販賣セラ
  レ若ハ交付セラレ又ハ配賦セラルル場所へ情ヲ知テ滿十四
  年以下ノ幼者ヲ使ニ送ルコトヲ禁ス此ノ禁ヲ犯ス者ハ前項
  ノ罰金一處ス但シ販賣交付又ハ配賦セラルヘキ酒類若ハ前
  項ノ如ク器物中ニ封印セラレタル場合ハ此ノ限ニ在ラ
  ス
  第三條酒類販賣營業免許ヲ有スル者ハ酒類ノ交付者トシテ
  家族、僕婢、履人等ヲ使用スルコトヲ得
  第四條此ノ法ノ下ニ訴訟ノ起リタル場合ニ於テハ此ノ法ハ
  英國ニ於テハ千八百七十二年ヨリ同七十四年マテ施行セラ
  レタル酒類免許條例、蘇格隨ニ於テハ千八百二十八年ヨリ
  同九十七年マテ施行セラレタル酒類免許條例、愛蘭ニ於テ
  ハ千八百三十三年ヨリ千九百年マテ施行セラレタル酒類免
  許條例ト同一ノモノトシテ解釋セラルヘキモノトス
  第五條此ノ法ニ於テ「栓」ト稱スルハ寒子ノ種類ノ木タルト
  其ノ他ノ物體タルヲ問ハス總テ之ヲ栓ト稱スルモノトス
  封印ト稱スルハ其ノ物ノ何タルヲ問ハス起ヲ破壞セサシハ
  栓ヲ引拔タ能ハサルモノヲ云フ
  第六條此ノ法ヲ稱シテ千九百一年ノ幼者酒類賣買取締法ト
  云フ
  第七條此ノ法ハ千九百二年一月一日ヨリ施行ス
  英國幼者酒類賣買禁止法案ノ提出
  英國衆議院議員「クロムビー」氏ヨリ同院ニ提出セル幼者酒類賣
  買禁止法案ハ千九百一年二月十九日ヲ以テ同院ノ議事日程ニ上
  リ同三月二十日其ノ第一讀會ハ開カレタリ
  是ヨリ先キ同法案ハ「サー、ジヨセフ、リース」氏ヨリ議院ニ提
  出スヘキ筈ニテ氏ハ多年衆議院議員トシテ議場ノ經驗ニ富ミ
  タル老練家ナルカ故ニ議院內外ノ禁酒主義者ハ深ク氏ニ望ヲ
  囑シ氏モ亦法案提出ノ件ニ付大ニ斡旋スル所アリシカ不幸ニ
  シテ病ニ罹リ到底同案提出ノ如キ重大ナル責任ヲ負擔スヘカ
  ラサルモノアリ依テ氏ハ後繼者トシテ「クロムビー」氏ヲ推薦
  シ同主義者モ亦一般ニ之ニ同意ヲ表セルヲ以テ氏ハ卽チ「ク
  ロムビー」氏ニ後事ヲ託シ政界ノ煩圈ヲ避ケ暫タ関地ニ靜養
  セリ
  「クロムビー」氏ハ新進ノ政治家ナレトモ其ノ技倆ノ非凡ナル
  ハ既ニ世人ノ認識セル所ナレハ氏ハ議院内外ノ與望ニ依テ愈
  愈禁酒法案ノ提出者トナリ左記ノ諸氏ハ賛成者トシテ同法案
  ニ署名セリ
  前國務大臣「アスケス」氏
  「ドーグラス」氏
  「ヘンリー、フヲーラー」氏
  「サー、エドワード、グレー」氏
  「ハーリー」氏
  「サー、ジヨセフ、リース」氏
  「サー、ウイリアム、ホーヅウヲース」氏
  「トリトン」氏
  「エー、トーマス」氏
  「ウイリアム、ジヨンストン」氏
  「ピール」氏
  一千九百一年三月二十日午後零時ヲ以テ禁酒法案ノ第一讀會
  ハ關カレタリ、此日傍聽席ハ開會前既ニ滿員シ近年稀ナル盛
  況ヲ呈シタリシカ原案提出者「クロムビー」氏ハ滿堂喝采拍手
  ノ裡ニ起立シテ左ノ如ク演說セリ
  「クロムビー」氏滿堂ノ諸君ヨ、余ハ原案提出ノ榮譽ヲ得タル
  コトヲ諸君ニ感謝スルト同時ニ豫メ諸君ニ懇望スヘキ一事カ
  アル、其レハ外ノ事テハナイ元來此ノ原案提出者ハ知名ノ人
  物テナイ(謙遲々々ト呼フ者アリ)提出者カ有名ノ人士テナイ
  カラト云フテ併テ原案其物ヲ輕ク見ラレヌ樣豫メ希望ス、扭
  テ是ヨリ本法律案ニ就キ鄙見ヲ開陳センニ抑々本案ハ三個ノ
  性格ヲ具備シテ居ル、則チ第一ニ本案ハ黨派問題ニ非サルコ
  ト(拍手喝采)第二ニ本案ハ時勢ノ必要ニ適合シテ居ルコト第
  三ニ本案ハ禁酒主義ヲ溫和ニ應用セルモノナルコト、此ノ三
  個テアルカ溫和ナル禁酒主義ニ對シテ本院中何人モ反對ハア
  ラサルヘシ、否ナ溫和ナル禁酒主義ハ滿堂諸君ノ歡迎セラル
  ル所ナラン(ヒヤ、〓〓)囘顧スルニ禁酒主義者ト其ノ反對者
  ハ近年マテ相共ニ極端ニ走テ水炭相容レス前者ハ法律ヲ以テ
  一國ノ酒類ヲ全滅シ根絕セヨト說キ後者ハ酒類ノ賣買ノコト竝
  ニ之ヲ飮ムトカ飮マヌトカ云フ樣ナコトハ一切法律ヲ以テ干
  涉スヘカラスト論シ雙方共實ニ非常ノ極端主義ヲ固執シタリ
  シカ爾來世ノ風潮全ク一變シテ復夕斯ル極端主義ヲ主張スル
  コトヲ止メ雙方共ニ中正穩和ノ意見ニ依テ酒類問題ヲ解釋ス
  ルニ至レリ余輩ハ國家ノ爲之ヲ祝セサルヲ得ス、(ヒヤ、〓〓)
  今ヤ酒類問題ハ抽象的討論問題ノ範圍ヲ脫シテ具體的實行問
  題トナリ、倫理道德問題ノ域ヨリ進ミテ國家生存問題トナレ
  リ(喝釆、拍手)然リ酒類問題ハ國家ノ生存ニ大開係ヲ有スル
  實際問題ナリ、請フ試ニ世界進化ノ大勢ヲ見ヨ、列國間ニ於ケ
  ル生存競爭ハ年一年ニ激烈ノ度ヲ加フルニアラスヤ、此ノ激
  烈ナル競爭場裡ニ立テ優勝ノ位置ヲ占ムル者ハ必ス心身ノ强
  健ナル國民ナルヘク、劣敗ノ悲境ニ落入ル者ハ體格ノ軟弱ナ
  ル人民ナラム是レ明々白々ナル自然ノ數ニシテ而シテ酒ハ人
  ノ體格ヲ軟弱ナラシムル諸原因中實ニ其ノ絕大ナルモノニ非
  スヤ(大喝采)果シテ然ラハ酒類害毒ノ蔓延ヲ防禦セムカ爲相
  當ノ取締ヲ爲スハ國家當然ノ義務ナルヘシ(大喝采)夫レ然リ
  酒類ノ害毒ハ之ヲ防止セサルヘカラス、但シ現代人民ノ飮酒
  ニ由テ生スル所ノ細大ノ弊害ハ嚴重ナル取締ニ依テ一切之ヲ
  掃蕩シ得ヘキカ之ハ一ノ疑問テアル、激烈嚴密ノ法律ヲ設テ
  之ヲ厲行スルトキハ現代國民飮酒ノ弊害ヲ悉ク除却スルコト
  ヲ得ヘキヤ否、之ハ疑問テアル、而シテ余ハ今玆ニ之カ解釋ヲ
  試ミサルヘシ、余ハ過去現在ノ國民ニ就テハ玆ニ喋々セサル
  ヘシ、然リト雖將來ハ吾人ノ眼前ニ在リ今ノ幼者ハ〓來ノ國
  民ナリ、此ノ將來ノ國民ハ今日ニ比シ數層激甚ナル世界列國
  生存競爭場裡ニ立タントスル者ナルカ故ニ彼等ノ心身ヲ强健
  ナラシムルハ彼等ノ父母タル吾人人民ノ一大責任ニ非スヤ
  (喝采拍手)次代國民ノ體格ヲ完全ニ發育セシムルハ當代ノ國
  民タル吾人ノ一大義務ニ非スヤ(喝采拍手)果シテ然リトセハ
  吾人ハ酒類害毒ノ幼者ニ傳染スルヲ豫防セサルヘカラス、是
  レ余輩同志者カ本案ヲ提出シテ諸君ノ賛同ヲ求ムル所以ナリ
  (拍手大喝采)、而シテ酒類ニ關スル現時ノ狀態ハ如何、彼ノ飮
  酒店及酒類販賣店ノ形況ハ如何、余固ヨリ是等ノ營業其ノ物
  ヲ非難スルニアラス亦店主其ノ人ヲ責ムルニ非ス、是等ノ營
  業者中ニハ寧口僉敬スヘキ人モ少ナカラス、然レトモ次代ノ
  國民トシテ國家ヲ負擔スヘキ少年子弟カ是等ノ營業店ニ出入
  スルコトニ關シテハ余輩絕對的ニ反對セサルヲ得ス(ヒヤヒ
  ヤ)、精確ナル統計ニヨレハ是等酒店ニ往來スル者ノ中ニテ少
  ナクモ其ノ一割四分ハ幼者ニシテ是等ノ幼者ハ其ノ初メハ父
  兄ノ爲メニ酒ヲ買フニ過キサルニモセヨ屢々酒店ニ出入スル
  ニ從ヒ幼者自カラ飮酒ノ惡習ニ感染スルコトナキヲ保シ難
  シ、否ナ酒氣ヲ帶ヒタル少年ヲハ吾人ハ途上ニ於テ往々目撃
  スルコトアリ、尤モ從來ノ法律モ幼者ノ飮酒ヲ禁止セサルニ
  非ス卽チ酒類ノ營業者ハ其ノ販賣ノ場所ニテ飮用セラルルモ
  ノト知リタル以上ハ幼者ニ賣渡スコトヲ禁止セラレ、酒ニ醉
  フタル幼者ハ警察官ニ依テ拘留ノ刑ニ處セラル、去レト此ノ
  現行法ハ實地格別ノ效用ヲナササルト云フ其ノ次第ハ成ルホ
  ト、販賣ノ場所ニ於テ幼者ハ飮用スルコトヲ得サレトモ其ノ
  場所以外ノ地ナラハ幼者ハ現行法ノ下ニテ自由ニ酒ヲ飮ミ得
  ルナリ、又酒ニ醉フタル少年ハ現行法ニヨリ拘留ノ處分ヲ受
  クルト雖之ハ酩酊セル少年カ警察官ニ反抗シテ其ノ命ニ服セ
  サル等ノ如キ場合ニ限ラレタルニ似タリ故ニ余ハ現行法ヲ評
  シテ同法ハ幼者ノ飮酒ヲ制止スヘキ效力ヲ有セサルモノト斷
  言スルヲ憚ラス、是レヨリ先キ政府ハ幼者飮酒弊害ノ漸ク大
  ナラムトスルヲ見テ卽チ調査委員ヲ任命シ少年ニ酒ヲ賣ルコ
  トニ據テ生スル所ノ弊害ノ度如何ヲ客査セシメタルニ其ノ容
  査ノ結果ハ幼者ニ酒ヲ賣ルコトノ大害アル事實ヲ充分ニ證明
  セリ、但シ二十餘名ノ委員ハ自他ノ間多少見解ヲ異ニシ從テ
  其ノ調査報告書モ多數者ノ意見及少數者ノ意見ナル二種ニ分
  レ卽チ多數者ハ酒ヲ幼者ニ賣ル者ト酒買ヒニ幼者ヲ遣ル父母
  トヲ併セテ罰スヘシト報告シ少數者ハ酒ヲ幼者ニ賣ル者ノミ
  罰スヘシト報告セリ、少數者ハ更ニ附記シテ曰ク法律ハ與論
  ニ適合セサルヘカラス而シテ幼者ニ酒ヲ買ハシメタル父母ヲ
  罰スルハ輿論ノ賛成スル所ニ非ス故ニ酒ヲ賣リタル者ノミヲ
  罰スレハ足レリト、去レハ父母ヲ罰スヘキヤ否ノ件ニ付テハ
  多數少數二派ノ調查委員其ノ說ヲ異ニスト雖酒類ヲ賣リタル
  者ヲ罰スルノ件ニ關シテハ二派其ノ意見ヲ同フシテ而シテ亦
  實ニ全國與論ヲ賛成スル所ナリ此ノ故ニ余輩同志者ノ提出セ
  ル本案ハ全國與論ノ後援ヲ得且政府ノ賛助ヲ得タルモノト云
  フヘシ何トナレハ調査委員ハ政府ノ代表者ニシテ而シテ本案
  ハ同委員全部ノ意見ニ符合スレハナリ、且又本案カ木院ニ提
  出セラレテヨリ以來或ハ個人ノ資格ヲ以テ或ハ圖體ノ資格ヲ
  以テ本院ニ宛テタル哀訴請願書竝ニ各議員ニ宛テタル勸告狀
  ハ其ノ數實ニ幾千萬通ナルヲ知ルヘカラス而シテ其ノ大部分
  ハ本案ノ通過ヲ懇請スル者ニ在ラサルハ無シ亦以テ本案カ輿
  論ヲ代表セルノ明證ナラム(大喝采)若夫レ本案ノ各條項ニ
  至リテハ其ノ字句中多少ノ修正ヲ要スルモノモアルヘシ本案
  ノ提出者ハ一字一句ノ修正ヲモ施スヘカラサル議案トシテ之
  ヲ本院ニ提供セルニハ非ス、卽チ幼者ニ酒類ヲ賣ルコトヲ禁
  止セムトスルヲ以テ本案ノ目的トナス(ヒヤ〓〓)此ノ目的ヲ
  達スルコトヲ得ハ卽チ足レリ、仰キ願クハ本案ヲシテ此ノ目
  的ヲ貫徹セシメヨ(拍手大喝采)
  「クロムビー」氏ノ演說ハ之ニテ終了シ夫レヨリ討論ニ八ル
  「ホーヅウヲース」氏(保守黨議員)余ハ本案ヲ賛成ス、法案ニ
  對シテ熱心ナル同情ヲ未ス
  「ゼームソン」氏余ハ本案ニ反對ナリ、併シ酒屋ト何カ關係カ
  アルカラ反對ト看做レテハ迷或ナリ、余ハ飮酒店ニハ何等ノ
  關係ヲ有セス(此トキ「ジヨンストン」氏橫合ヨリ皮肉ノ質問
  ヲ試ミ「火酒釀造所」ニモ關係ナキヤト尋ネタリ、之ニハ「ゼー
  ムシン」氏頗ル閉口シタリト云フ、其ノ譯ハ氏ハ「ダブリン市
  ニ於ケル有名ナル火酒釀造所ノ大株主ナレハナリ)余ハ決シ
  テ自カラ爲メニスル所アツテ反對スル譯テハナイ、本案ハ結
  構ナ者テアルカモ知ラヌカ併シ木案ニ由テ却テ秘密ニ酒ヲ飮
  ム弊害カ增長シヨウト思ハレル
  「タリー」氏余モ亦本案ニ反對ス、尤モ余ハ幼者ノ飮酒スルコ
  トヲ大ニ嫌惡スレトモ併シ法律ノ力ニ依テ此ノ弊害ヲ制止ス
  ルコトハ到底出來マイト思フ、是レ余カ本案ニ反對スル所以
  テアル
  「ルーカス」氏本案ニ反對
  「トムキンソン」氏本案ニ賛成
  「フローワー」氏本案ニ賛成
  「ヲーシヨーネシー」氏本案ニ賛成(同氏ハ愛蘭ヨリ選出セ
  ラレタル少壯議員ニシテ熱心ナル賛成演說ヲ爲シテ議場ニ非
  常ノ感動ヲ與ヘタリ)
  「ミドルモーア」氏斯ル法案ニハ反對セサルヲ得ス、斯ル法案
  ハ破壞セサルヘカラス
  「ハルデーン」氏本案ニ贊成ス而シテ余ハ本案ニ對スル政府
  ノ意嚮ヲ尋問セムト欲ス
  (此トキ政府委員席ニ在リタル內務次官「コリング」氏ハ直
  ニ起テ左ノ如ク答辯セリ)
  「コリング」氏(内務次官)内務大臣「リツチー」氏カ所勞ノ故
  ヲ以テ本日出席セラレサルハ余ノ深ク悲ム所テアル、併シ大
  臣カ居ラサルニモセヨ余ハ大臣ニ代リ責任ヲ以テ答辯スルコ
  トカ出來ル、元來政府ハ本案ニ對シテ干涉スルコトヲ欲セス、
  本案ノ取拾ハ全ク之ヲ議員各自由意思ニ放任スルコトニ攻府
  ハ決シテ居ル、本案ニシテ第二讀會ヲ開クコトトナラハ內務
  大臣ハ其ノ時意見ヲ述へラルルテアロウカ併シ同大臣ハ本案
  ノ幼者年齡十六年ヲ改メテ滿十四年トナスヘシト豫テ申テ居
  ラレタ、又本案第二條中ニ「情ヲ知テ」ナル文字ヲ挿入スヘシト
  申シテ居ラレタ、此ノ意見ニハ余モ同感テアル(「コリング」氏
  ハ斯ク答辯シテ演說ノ局ヲ結ヒタリシカ其ノ終局ニ當リテ暗
  暗裡ニ本案ニ對シテ同情ヲ表セサルカノ如キ口調ヲ漏シタ
  リ
  「ハーコート」氏(自由黨前內閣ノ內務大臣)只今内務次官ハ
  其ノ答辯ノ結末ニ於テ酒類問題ニ關シ法律ニ依テ幼者ヲ制裁
  スルハ不都合デアルカノ如キ口調ヲ漏サレタルカ併シ若之ヲ
  不都合ナリトスレハ普通〓育問題ニ關シ法律ニ依テ幼者ノ就
  學ヲ制裁スルコトモ亦不都合ト云ハネハナラヌ、法律ニ依リ
  幼者ノ就學ヲ督促スルハ何人モ是認スル所ナルト共ニ法律ニ
  依テ幼者ノ飮酒ヲ制止スルコトモ亦之ヲ是認スヘキ筈テア
  ル、故ニ余ハ政府カ本案ニ對シテ出來得ル限リ便宜ヲ與ヘ以テ
  本案ノ成立ヲ賛助セムコトヲ希望ス、又余ハ本案ヲ法律調查
  委員會ニ付託セムコトヲ希望ス、何トナレハ本案ヲ全院委員
  會ノ議ニ付スルトキハ本案ハ恐ラク破碎スヘケレハナリ
  「パートレー」氏(倫敦市ノ選出議員)余ハ大ニ本案ニ反對ス、
  余ハ本案ノ破滅ヲ熱望ス
  「サンドーソン」氏余ハ本案ニ大賛成ナリ余ノ選出地ナル愛
  繭ノ人民ハ其ノ政派宗派及階級ノ何何タルヲ問ハス國民一般
  ニ本案ニ對シテ深厚ナル同情ヲ表シ本案ノ通過ヲ熱望セリ
  (拍手喝采)木案ヲシテ當期議會ヲ通過セシムルハ全ク政府ノ
  責任ニ屬ス而シテ余ハ此ノ責任ヲ完フセムコトヲ政府ニ向テ
  懇望スル者ナリ(滿場拍手大喝采)
  (「サンドーソン」氏ノ演說ヲ了リタルハ午後五時過ナリシ
  カ軈テ原案提出者ナル「クロンビー」氏ヨリ計論終結ノ動議ヲ
  提出セリ)
  ○計論終結
  議長只今「クロンビー」氏ノ提出セル討論終結ノ動議ニ就キ
  採決スヘシ
  計論終結ヲ可トスル者四百〇七人
  討論終結ヲ非トスル者三十一人
  計論ハ玆ニ仝ク終結セリ
  ○採決
  議長次ニ第二讀會ヲ開ク可キヤ否ヤニ付キ採決スヘシ、之
  ヲ開クヲ可トスル者ハ則チ「可」ト云ヒ之ヲ聞クヲ否トスル者
  ハ則チ「否」ト云フヘシ
  「可」ト云フ者三百七十二人
  「否」ト云フ者五十四人
  依テ本案ハ非常ノ大多數ヲ以テ第二讀會ヲ聞クコトニ確定セ
  ラレタリ
  是レヨリ先キ議長カ第二讀會ヲ「可」トスル者過半數ナリト宣
  告スルヤ本案ノ反對者ナル「ゼームソン」「タリー」ノ諸氏ヨリ
  異議ヲ提出シテ「否」トスル者多數ナリト主張シ之レカ爲メ議
  場ハ一時混雜ヲ極メタルカ議長カ最後ニ「可」「否」兩派議員ニ
  起立ヲ命シ衆議院書記官ヲシテ其ノ頭數ヲ精算セシムルニ及
  ヒ前記ノ如キ結果ヲ得タルナリ
  次ニ「クロンビー」氏ヨリ本案ヲ法律調査委員ニ付託スヘシト
  ノ動議ヲ提出シ全院委員會ノ議ニ本案ヲ付スルコトノ不可ナ
  ル理由ヲ簡明ニ演說シタリシカ、時恰モ閉場時刻ニ接近セル
  ヲ以テ當日ハ之ニテ閉場セラレタリ
  又右ノ「可」三百七十二人ト「否」五十四人ヲ政黨ニ類別スレハ
  左ノ如シ
  「可」三百七十二人自由黨出席議員全部百四十七人
  此ノ內譯保守黨百三十二人
  統一黨四十二人
  國民黨五十三人
  「否」五十四人ー保守黨四十三人
  此ノ內譯統一黨三人
  國民黨十人
  但シ自由黨ノ出席議員中「否」ニ賛成シタル者ハ一人モ無ク、則
  チ自由黨員ハ仝部擧テ禁酒法案ノ賛成者ナリト知ルヘシ
  又右表中ノ統一黨ハ「チヤムバレン」氏「デポンシヤイア」公等
  ト共ニ曾テ自由黨ヨリ分離セル一派ニシテ國民黨ハ則チ愛蘭
  ヨリ選出セラレタル議員ノ團體ナリ又自由黨ノ名士ニシテ前
  內閣大臣タリシ「ハーコート」、ジヨン、モーレー」、「パンナーマ
  ン」、「アスケス」、「チヤール、ジルク」等ノ諸氏ハ當日打揃フテ議
  場ニ出席シ熱心ナル拍手喝采ヲ以テ禁酒派ノ演說ヲ歡迎シ且
  採決ノ際「クロムビー」氏ノ動議ヲ賛成セリ、然ルニ本案ニ反對
  シテ第二讀會ヲ開クヲ「否」トセル保守黨員以下五十四名ノ議
  員中ニハ知名ノ人士皆無ニシテ平凡ノ議員ノミナリシハ當日
  ノ一奇觀ニテアリキ
  「ハーコート」氏ハ「グラツトストン」氏終身ノ親友ニシテ「グ〓
  氏ト共ニ議場ニ出入セルコト數十年、其ノ間「グ」氏ト共ニ內
  關ニ列セシコト前後數回ニ及ヘリ、自由黨中議院ノ經驗ニ
  於テ「ハーコート」氏ノ右ニ出ツル者ナク氏ハ寧只ニ自由黨中
  屆指ノ老政治家ナルカ禁酒法案第一讀會ノ終了セル後或ル
  人ニ語テ曰ク「クロンビー」氏ノ演說ハ余カ議院ニ於テ多年
  聽聞セル演說中最モ善美ナルモノノ一ナリト、以テ「クロム
  ビー」氏演說ノ價値ヲ察スルニ足ラム
  英國諸領地ノ酒類販賣ニ關シ幼者ニ酒類ヲ販賣スル者ヲ罰スル
  法律ハ大同小異ナルヲ以テ玆ニ之ヲ概括シテ幼者ノ年齡ト罰金
  ノ額ノミヲ略記スレハ左ノ如シ
  「ノバススコシア」幼者年齡二十一年以下
  〔罰金五十弗
  「ノース、ウエスト、テリトリー」ニ於テハ幼者年齡十八年以下、
  初犯罰金二十五弗、罰金ヲ納付シ得サルトキ禁錮一箇月、再犯
  罰金五十弗、免許狀沒收、罰金ヲ納付シ得サルトキハ禁錮二箇
  月
  「オンタリヲ」一幼者年齢二十一年以下
  (罰金十弗以上五十弗以下
  「プリンス、エ未成年者
  ドワド」島罰金十弗、酒類販賣營業六箇月停止、再犯ハ罰
  金二十弗、酒類販賣免許狀沒收
  「クイペツク」一未成年者
  〔罰金二弗、罰金ヲ納付シ得サレハ禁錮二週間
  セーチルス」一幼者年齡十五年以下
  〔罰金十留、再犯以上ハ罰金二十留
  「タスマニア」〔幼者年齡十六年以下
  [罰金十磅以下
  「トリニダツト」、幼者年齡十二年以下
  (罰金五磅以下
  「タークス、ア幼者年齡十六年以下
  イランド」(罰金十磅以下、再犯以上ハ罰金二十磅以下
  一幼者年齡十六年以下
  「ヴイクトリア」[罰金二磅以上十磅以下
  前記法律ノ統計英國諸領地ニ於テ幼者ニ酒類ヲ販賣スルコ
  トヲ禁止スル諸州ハ約三十箇ニシテ
  此ノ內幼者ノ年齡ヲ十六年以下ニ定ムルモノ十二箇、十五
  年以下六箇、十八年以下三箇、未成年者三箇、二十一年以下十
  四年以下十二年以下各二箇宛ナリ又罰金ハ平均五磅乃至十
  磅ナリ
  米國未成年者飮酒禁止法理由害
  未成年者ノ身體各部ノ組織ハ未タ完成セサルヲ以テ之ヲ老者ニ
  比スレハ「アルコール」ノ侵害ヲ受クルコト一層多大ナリ其ノ最
  患フヘキモノハ全國都鄙幾萬ノ學生カ飮酒ノ爲其ノ目的タル學
  業ヲ成ス能ハサルニアリ是文明諸國カ幼者ノ飮酒取締ニ關シ特
  ニ嚴重ナル規定ヲ設クル所以ナリ
  酒ハ人身ノ臟腑ヲ損傷シ血液ヲ汚敗シ腦髓ヲ侵害シ神經ヲ痳痺
  ス
  酒ハ疾病貧困犯罪等社會百害ノ最大原因ナリ
  酒ハ國家ノ資力ヲ減殺シ國民ノ元氣ヲ消耗セシム酒ノ原質ハ酒
  精卽チ「アルコール」ナリ然ルニ「アルコール」ハ「モルヒネ」又ハ
  「タロロホルム」等ニ均シキ毒藥ニシテ専門醫家ノ外ハ激ニ定ヲ
  使用スヘキモノニアラス
  「アルコール」ノ胃ニ入ルヤ胃液及唾液ヲ非常ニ分泌セシメテ消
  化機ノ調和ヲ破リ且胃液中消化ニ必要ナル「ペプシネ」ノ作用ヲ
  妨害ス
  「アルコール」ノ血管ニ入ルヤ血液中ノ酸素ヲ奪取シ木分ヲ減少
  シ蛋白質ヲ憂固セシメ以テ血液ノ作用ヲ失ハシム
  「アルコール」ハ肝臟腎臟心臟等ニ危險ナル脂肪變化ヲ起シ肺臟
  ヲ侵害ス
  「アルコール」ハ神經及腦髓ヲ刺激シ殊ニ知覺感情ノ司府タル後
  腦部ハ「アルコール」ノ爲損傷セラルルコト最大ナリ
  故ニ何等ノ點ヨリ觀察スルモ酒ノ人身ニ有害無益ノ毒物タルヤ
  明ナリ或ハ飮酒家ノ肥滿ヲ見テ健康ノ表顯ナリト云フ者アレト
  モ事實ハ正シク反對ニシテ其ノ肥滿ハ卽チ不健康ノ證左ナリ蓋
  シ不淨ナル脂肪ノ凝積スルハ身體ニ害アリテ益ナケレハナリ或
  ハ酒ハ體溫ヲ增進スト云フ者アレトモ是亦誤謬ノ見解ナリ酒ヲ
  飮ムトキハ其ノ刺激ニ由リテ體內ノ溫度外部ニ發出スルヲ以テ
  皮膚ノ神經ハ體溫ノ增加ヲ感スト雖其ノ實外部ノ增加ハ內部ノ
  減少ニ由來スルヲ以テ全體ノ體量ハ寧口幾分カ減退スルモノト
  ス或ハ又酒ハ勇氣ヲ鼓舞シ氣力ヲ振興スト云フ者アレトモ其ノ
  鼓舞振典タルヤ恰モ鞭ノ馬ニ於ケルカ如ク鞭ヲ加フル愈々激シ
  ケレハ馬ハ唯夕益〓疲勞スルノミ
  要スルニ酒類ハ個人又ハ社會ヲ害スル各種ノ毒惡物中ニテ其ノ
  最タルモノナリ故ニ國家ハ之ヲ禁止スヘキ義務ヲ有ス國家既
  ニ阿片ヲ禁スル以上ハ酒類亦固ヨリ之ヲ禁セサルヘカラス蓋酒
  ノ害毒ハ阿片ニ比スレハ數倍甚シキモノアレハナリ之ヲ病患ニ
  除フレハ阿片ハ「コレラ」、「ペスト」ノ如ク酒ハ肺病、徴毒ノ如シ肺
  病黴毒ノ害毒ハ「コレラ」、「ペスト」ノ如ク顯著ナラサレトモ其ノ
  陰險頑强ニシテ而カモ流毒範圍ノ廣大ナルハ「コレラ」、「ペスト」
  等ノ遠ク及フ所ニアラス
  法律ニ依リ未成年者ノ飮酒ヲ禁スルハ聊カ干渉ニ過ルノ嫌ナキ
  歟ト疑惑スル者アレトモ現代ノ老者ト現代ノ未成年者トノ關係
  ハ一家親子ノ關係ト毫モ異ナルナク卽チ吾人國民ハ將來ノ良民
  トナルヘキ未成年者ニ對シテ嚴重ナル親權ヲ施行シ之ヲ監督養
  成スヘキ大責任ヲ負擔スルモノナリ此ノ理ヲ了解スレハ前記ノ
  疑惑ハ自ラ永解セム或ハ又幼者禁酒法實行ノ困難ヲ說ク者アレ
  トモ其ノ困難ハ獨リ同法ニ限ラルヘキニ非ス若シ之ヲ口實トシ
  テ同法ノ廢棄ヲ唱フル者アラハ是强竊盗盡キサルノ故ヲ以テ之
  ヲ自由ニ放任スヘシト說キ賣淫絕ヘサルノ故ヲ以テ之カ取締ヲ
  全廢スヘシト唱フル者ト何ン擇フ所アラム
  玆ニ北未合衆國諸州ノ法典中ヨリ幼者ノ飮酒取締ニ關スル條
  頂ヲ摑載シ以テ參稽ニ資セムトス
  「アイヲワ」州ノ法律
  第二千四百三條父母又ハ後見人若ハ醫者ノ保證狀ヲ有セサ
  ル幼者ニ酒類ヲ販賣シ又ハ給與シタル者ハ二百圓ノ罰金ニ
  處ス但シ罰金ノ一半ハ該罪狀ノ告發者ニ賊與シ一半ハ該罪
  狀發生地ノ學校基金中ニ寄贈スヘキモノトス
  「オレゴン」州ノ法律
  幼者ニ酒類ヲ販賣シ又ハ給與シタル者竝ニ幼者ヲ出入セシメ
  クル飮酒店、料理店等ノ店主ハ百圓以上六百圓以下ノ罰金ニ
  處シ一年以内ノ禁錮ニ處ス
  右ノ場合ニ於テハ酒類販賣者又ハ店主ノ有スル營業免許狀ハ
  之ヲ官廳ニ沒收ス
  幼者年齡ヲ詐リテ滿二十一年以上ノ成年者ト稱シ酒類ヲ購求
  シタルトキハ該幼者ヲ五十圓以上三百圓以下ノ罰金ニ處ス
  「イリノ井ス」州ノ法律
  父母若ハ後見人又ハ醫師ノ酒類購求委任狀ヲ有セサル幼者ニ
  酒類ヲ販賣シ又ハ給與シタル者ハ四十圓以上二百圓以下ノ罰
  金ニ處シ十日以上三十日以下ノ禁錮ニ處ス
  「ニーハンブシヤ」ノ法律
  飮酒店ノ店主又ハ酒類ヲ差出ス窃席ノ席主等ハ滿十六年以下
  ノ幼者ヲ出入セシメ又ハ列席セシムルコトヲ得ス此ノ條項ニ
  背反シタル店主、席主等ハ四十圓以下ノ罰金ニ處ス
  「フロリダ」州ノ法律
  第二千六百三十五條葡萄酒、麥酒等苟モ多少ノ酒精ヲ含有
  スル飮料ヲ幼者ニ賣與シタル者ハ無免許密賣罪ニ依リ之ヲ
  處分ス
  「アラバマ」州ノ法律
  第三千五百二十一條酒類販賣ノ免許ヲ出願スル者ハ幼者ニ
  酒類ヲ販賣シ又ハ給與セサルヘキ旨ヲ嚴正ニ官吾シタル誓
  約書ヲ當該官廳ニ差出スコトヲ要ス
  紐育州ノ法律
  酒稅法第三十條會社又ハ個人ニシテ酒類販賣ヲ營業スル者
  ハ滿十八歲以下ノ幼者ニ酒類ヲ販賣シスハ給與スルコトヲ
  得ス
  「ミゾリ」州ノ法律
  第三千九條父母或ハ監督者又ハ後見人ノ記名セル酒類購求
  認許狀ヲ有セサル幼者ニ酒類ヲ販賣シ又ハ給與シタルモノ
  ハ失行罪トシテ之ヲ處分シ百圓以上四百圓以下ノ罰金ニ處
  ス
  西「ウヲルジニア」州ノ法律
  第四千二百四十五條何人ニ限ラス幼者ニ酒類ヲ販賣シ又ハ
  給與シタル者ハ失行罪トシテ之ヲ處分シ二百圓以下ノ罰金
  ニ處シ三箇月以下ノ禁鋼ニ處ス
  第四千二百四十六條飮酒店ノ營業者幼者ヲ登店セシムルト
  キハ失行罪トシテ之ヲ處分ス
  又同州ノ酒類取締法中ニ左ノ一節アリ
  酒類販賣營業免許ノ出願者ニ對シ當該官廳ハ之ニ免許狀ヲ下
  付スル前豫メ誓約書ヲ差出サシムルコトヲ要ス
  該誓約書中ニハ該出願者滿二十一年以下ノ幼者ニ酒類ヲ販賣
  シ又ハ給與シタルトキハ償金七千圓ヲ差出スヘキコトヲ記載
  セシムルモノトス
  又該誓約書中ニハ該出願者ノ販賣シ又ハ給與シタル酒類ヲ飮
  用シタル者ノ醉狂ニ由リテ生シタル一切ノ損害ハ該出願者總
  テ之ヲ賠償スヘキコトヲ記載セシムルモノトス
  「ウイスコンシン」州ノ法律
  第千五百五十七條飲酒店營業者、酒類販賣者其ノ他何人タ
  ルヲ問ハス幼者ニ酒類ヲ販賣シ又ハ之ヲ給與シタル者ハ十
  圓以上百圓以下ノ罰金ニ處シ三十日以下ノ禁錮ニ處ス
  「ミスシツピ」州ノ法律
  第千五百九十四條幼者ニ酒類ヲ販賣スル者又ハ之ヲ給與シ
  タル者ハ二百圓以上二千圓以下ノ罰金ニ處シ六箇月以下ノ
  禁錮ニ處ス
  第千六百七條飮酒店營業者若シ幼者ヲ登店セシムルトキハ
  四十國以上一千圖以下ノ罰金ニ處シ三箇月以下ノ禁錮ニ處
  ス
  第千六百八條滿二十一歲以下ノ幼者其ノ年齡ヲ詐リテ成年
  ナリト稱シ飮酒店ニ八リタル場合ニ於テ年齡詐稱ノ證據ヲ
  發見シタルトキハ該幼者ヲ四十圓以下ノ罰金ニ處シ十日以
  下ノ禁錮ニ處ス
  「モンタナ」州ノ法律
  第五百四十條飮酒店又ハ酒類ヲ販賣スル料理店ノ營業者若
  シ幼者ヲ登店セシメタルトキハ失行罪トシテ之ヲ處分ス
  第五百四十一條何人ニ限ラス幼者ニ酒類ヲ販賣シ又ハ給與
  セムトスルトキハ其ノ父母又ハ監督者ノ認可ヲ受ケサルヘ
  カラス若シ其ノ認可ヲ經スシテ之ヲ販賣シ又ハ給與シタル
  トキハ販賣者又ハ給與者ハ幼者ノ醉狂ニ由リテ生シタル金
  錢上若ハ財產上等ノ損害ヲ賠償シ且失行罪ノ處分ヲ受クヘ
  キモノトス
  英國ニ於ケル幼者酒類賣買禁止ニ關スル實況
  英國希望協會ノ運動十有五年前卽チ千八百八十六年五月十五
  日ヲ以テ英國希望協會ハ幼者酒類賣買禁止ニ關スル意見書一百
  萬部ヲ印刷シテ之ヲ全國ニ配布シ大ニ輿論ヲ喚起シタリシカ同
  書ノ主意ハ幼者ヲ使トシテ酒類ヲ購求スルトキハ幼者ノ身體上
  及精神上ニ間接ニ直接ニ非常ノ惡影響ヲ及ホスモノアルカ故ニ
  幼者ヲシテ酒類ヲ購求セシムルコトハ斷然禁止セサルヘカラス
  ト云フニ在リ
  「コニービール」氏ノ提出議案衆議院議員「コニービール」氏ハ
  千八百八十六年ハ議會ニ於テ幼者ニ酒類ヲ賣ルコトヲ禁止スル
  ノ法案ヲ提供セリ當時議院內外ノ同志者ハ右法案ヲ通過セシメ
  ンカ爲メ大ニ運動シタレトモ不幸ニシテ議會ノ委員會ニ於テ修
  正セラレタリ卽チ原案ニ於テハ酒類賣買ノ場所ニ於テ該酒類ノ
  消費セラルルト否トヲ問ハス幼者ニ酒類ヲ賣ルコトハ一切之ヲ
  禁止スルノ法案ナリシニ修正案ハ酒類賣買ノ場所ニ於テ該酒類
  ノ消費セラルヘキ場合ニ限リ之ヲ幼者ニ賣ルコトヲ禁止スルコ
  トトセルカ故ニ幼年ハ父兄等ノ爲メニ酒類ヲ買テ之ヲ持チ去ル
  コトヲ得ルナリ斯ル不完全ノ修正案ニテハ固ヨリ有志家ノ目的ヲ
  達スルコトヲ得サルヲ以テ禁酒同盟會希望協會其他ノ同志者ハ
  相一致シテ貴衆兩院ノ各議員ニ意見書ヲ送リ「コニービール」氏
  ノ原案ヲ復活セシメンコトヲ請求シタレトモ遺憾ナカラ貴衆兩
  院ハ委員會ノ修正案通リ可決セリ卽チ左ノ如シ
  酒類取締法(修正案)千八百八十六年可決
  酒類販賣營業免許ヲ有スル者情ヲ知テ滿十三年以下ノ幼者ニ
  酒類ヲ賣リ之ヲ其賣買ノ場所ニ於テ使用消費セシムルトキハ
  二十志以下ノ罰金ニ處シ再犯以上ハ四十志以下ノ罰金ニ處
  ス
  右ノ法律ハ議會ニ於テ可決セラレタル後直ニ施行セラレタ
  レトモ格別善良ナル結果ヲ奏スルコトヲ得サリキ何トナレ
  ハ該法律ノ下ニ於テ幼者ハ酒ヲ買フタル場所ニテ飮ムコト
  ヲ禁セラルルニ止リ他ヘ携帶シ行クコトハ自由ナルカ故ニ
  幼年飮酒禁止ノ大目的ハ斯ル不完全ナル法律ニ依テ決シテ
  之ヲ達スルコトヲ得サレハナワ
  各團體ノ運動希望協會、禁酒同盟會、幼者飮酒禁止同盟會等
  ノ諸〓體ハ千八百九十一年十月更ニ一百萬部ノ禁酒意見書ヲ
  印刷シテ之ヲ全國ニ配布シ酒類ノ弊害ヲ國民ニ知悉セシメ與
  論ノ力ニ依テ前記「コニービール」氏ノ原案ヲシテ議會ヲ通過
  セシメントセリ然レトモ今囘モ亦議會ニ於テ否決セラレタリ
  「ハルデン」氏ノ議案同氏モ亦千八百九十六年ヲ以テ幼者飮
  酒禁止法案ヲ議會ニ提出シタレトモ是亦成功セサリキ
  其後ノ形況是レヨリ先キ禁酒ヲ主張スル各種團體竝ニ慈善
  有志家等ハ前記ノ如ク數百萬部ノ意見書又ハ雜誌ヲ全國ニ頒
  布シ或ハ演說ニ講話ニ遊說ニ百方手段ヲ盡シテ酒類ノ弊害ヲ
  人民ニ知ラシメタルヲ以テ飮酒上ニ於ケル諸種ノ惡習慣漸ク
  改善セントスルノ狀況ヲ示シ殊ニ幼者ヲ使トシテ酒ヲ買ハシ
  ムルノ惡習著シク減少シ從前夜ノ十一時頃迄續々トシテ幼者
  カ酒買ヒニ往水セル街衝モ近來ハ晩方ヨリ此ノ如キ兒女ノ隻
  影ヲ見サルニ至レリ又夜間兒女ヲ使ニ出スノ結果ハ兒女ハ朝
  寢ト爲リ從テ毎朝小學校へ出席スル者ノ數ヲ滅シ此弊害ハ就
  中下層社會ニ於テ甚シカリシモ近來幼者ヲシテ夜間使へシム
  ル惡習ノ大ニ減少セルカ爲メ自然動學兒童ノ數ニ增加ヲ末シ
  クリ一小習慣ノ改良ト雖モ其成績此ノ如ク著明ナルカ故ニ若
  シ吾人ノ熱望スル如ク幼者ノ飮酒ヲ全ク嚴シシ者者ニ酒類ヲ
  賣ルコトヲ禁止スルニ於テハ其功蹟ノ偉大ナル實ニ測リ知ル
  ヘカラサルモノアルヘシ、又前記諸圍體ヲ初メ有志諸士ハ爾
  來「ロンドン」、「マンチヱスター」、「リバブール」、ダブリン」等ノ
  諸都會ヲ中心トシテ禁酒運動ヲ繼續シツツアルヲ以テ「コニ
  ービール」「ハルデン」諸氏ノ法案ハ不幸ニシテ破レタリト雖モ
  是等運動か間接ニ直接ニ好果ヲ奏スルコト尠ナシトセス
  其他ノ運動各寺院、諸〓會、市會、町會幼者保護會、學務委員
  會等ハ一方ニ於テ政府及議會ニ向テ禁酒運動ヲナスト同時ニ
  他方ニ於テハ酒屋運動ヲ開始シ全國ノ酒類販賣營業免許ヲ有
  スル者ヲ調戒シテ〓者ニ酒ヲ賣ルヘカラサル理由ヲ說元セリ
  禁酒運動ノ反對者由來實業家ト稱スルノ徒ハ唯是レ我田引
  木的私利我慾ノ輩ノミ彼等ノ眼中ニハ唯金錢アルノミ彼等ハ
  牽强附會ノ說ヲ捏造シテ內務大臣及議會ニ宛テ幼者ニ酒類ヲ
  販賣スルモ〓テ弊害ナキ旨ヲ具申シタレトモ同ヨリ一顯ノ價
  値タモナキモノトス
  調査委員會禁酒運動益て激甚ヲ加フルニ從テ政府モ之ヲ默
  視スルヲ得ス卽チ調査委員二十四名ヲ任命シテ幼者ニ酒類ヲ
  賣ルコトニ由テ生スル所ノ弊害ノ度如何ヲ調査セシムルコト
  トハナレヲ
  調査委員會ノ報告該報告書ハ實ニ數千頁ノ記事ヨリ成ルモ
  ノナルカ各頁悉ク幼者ニ酒ヲ賣ルノ弊害ヲ證明スルモノニ非
  サルハナシト云フモ敢テ過言ニ非ス又該報告ハ多數者ノ意見
  ト少數者ノ意見ト甲乙二種ヨリ成ルモノニシテ二種共ニ滿十
  六年以下ノ幼者ニ酒類ヲ賣ルヲ以テ弊害アルモノト認定セリ
  但シ委員二十四人ノ內四名ナケハ多數者及少數者ノ意見ニ反
  對シ幼者ニ酒ヲ賣ルモ全ク弊害ナシトノ意見ナリシカ此四名
  ハ卽チ例ノ實業家中ヨリ撰拔セラレタル委員ナレハ彼等カ弊
  害ナシト言フモ無理ナラサル次第ナリ扨又右甲乙二種ノ報告
  ハ左ノ如シ
  (甲)多數者報告
  酒類賣買ノ場所ニ於テ該酒類ノ使用消費セラルルト否トヲ問
  ハス滿十六年以下ノ幼者ニ酒類ヲ賣ルコトハ一切之ヲ禁止ス
  ヘシ又該年齡ノ幼者ヲ酒類ヲ買ニ遣リタル者ハ之ヲ賣リタル
  者ト同界ニ爲スヘシ
  (2)少數者報告
  酒類賣買ノ場所ニ於テ該活ノ使用消費セラルルト否トヲ問ハ
  ス滿十六年以下ノ幼者ニ酒類ヲ賣ルコトハ一切之ヲ禁止スヘ
  シ
  卽チ見ルヘシ少數報告者ハ幼者ヲ酒買ニ遣リタル父兄ヲハ之
  ヲ賣リタル者ト同罰ニ處スルノ意見ヲ関クト雖モ幼者ヲシテ
  酒ヲ買ハシムルノ弊害ハ少數者多數者ノ共ニ等シク認定スル
  所ナルヲ
  法律改正ノ必要前記二十四名ノ調査委員ハ最モ公平ニ撰拔
  セラレク者ニシテ而カモ其報告右ノ如クナルカ故ニ從來ノ幼
  者酒類賣買取締法ヲ改定シテ一層嚴重ナル法律ヲ設クルノ必
  要ハ朝野ノ均シク是認スル所トナレリ
  英國ノ諸領地ニ於ケル法律幼者禁酒運動ハ歐洲大陸誇國ニ
  於テモ將ニ嫉ンナラントス然レトモ外國ノ禁酒形況記事ハ之
  ヲ他日ニ讓リ本誌ニ於テハ專ラ我英國ニ關スル禁酒運動ノ成
  否如何ヲ發達センニ我屬地及殖民地ノ現況ハ左ノ如シ
  「アンチグワ」ノ法律
  千八百七十九年「アンチグワ」ニ於テ制定セラレタル法律ハ左
  ノ如シ
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十六年以下ノ幼者ニ酒類ヲ賣リ
  タルトキハ二十志以下ノ罰金ニ處シ再犯以上ハ四十志以下ノ
  罰金ニ處ス
  「ペルムダ」ノ法律
  千八百八十年「ベルムダ」ニ於テ制定セラレタル法律ハ左ノ如
  シ
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十六年以下ノ幼者カ飮用スルヲ
  知テ之ニ酒類ヲ賣ルコトヲ得ス
  前項ヲ犯シタルトキハ二十磅以下ノ罰金ニ處シ竝ニ該罪犯ノ
  告發ニ聞スル一切ノ費用ヲ該犯罪者ヨリ徵收ス又再犯ノ場合
  ニ於テハ前記罰金及告發入費ノ外ニ酒類販賣免許ヲ三箇月以
  内停止シ三犯ノ場合ニ於テハ酒類販賣營業ヲ禁止ス
  「ケープ、コロニー」ノ法律(千八百八十三年制定)
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十五年以下ノ幼者ニ酒類ヲ販賣
  シ若シクハ交付シ又ハ飮用セシメタルトキハ十磅以下ノ罰金
  ニ處シ再犯以上ハ四十磅以下ノ罰金ニ處ス
  「セーロン」ノ法律(千八百九十一年制定)
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者又ハ飮食店ノ店主タル者滿十五年
  以下ノ幼者ニ酒類ヲ賣リ之ヲ飮用セシメタルトキハ十留以下
  ノ罰金ニ處シ再犯以上ハ二十留以下ノ罰金ニ處ス
  「フヲークランド」島ノ法律(千八百八十二年制定)
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十六年以下ノ幼者ニ酒類ヲ賣リ
  之ヲ消費セシムルトキハ十磅以下ノ罰金ニ處シ且初犯ニ於テ
  ハ酒類販費ノ免許ヲ六箇月間停止シ再犯以上ニ於テハ該免許
  ヲ取上クヘキモノトス又該免許ヲ有スル者ニシテ旅店飮食店
  等ノ營業者ナルトキハ再犯以上ニ於テハ該營業ヲ二年以上五
  年以下停止ス
  何人タルヲ問ハス滿十一一年以下ノ幼者ニ酒類ヲ販賣シ若クハ
  交付シ之ヲ持テ去ラシメタルトキハ五磅以下ノ罰金ニ處ス
  「ガムビア」ノ法律(千八百九十四年制定)
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十六年以下ノ幼者ニ酒類ヲ賣リ
  之ヲ飮用セシメタルトキハ二十志以下ノ罰金ニ處シ再犯以上
  ハ四十志以下ノ罰金ニ處ス
  「ヂブローター」ノ法律(千八百八十五年制定)
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十六年以下ノ兒女ニ酒類ヲ賣リ
  之ヲ飮用セシメタルトキハ二十五「ペセク」以下ノ罰金ニ處シ
  再犯ニ於テハ五十一ベセタ」以下ノ罰全ニ處シ三犯ニ於テハ百
  二十五「ペセタ」以下ノ罰金二處ス
  「グレナグ」ノ法律(千八百九十六年暫定)
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十二年以下ノ幼者ニ酒類ヲ賣リ
  又ハ人ヲシテ賣ラシメタルトキハ五十磅ノ罰金ニ處ス
  人島ノ法律(千八百九十七年制定)
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十四年以下ノ幼者ニ酒類ヲ販賣
  シ若クハ交付シ又ハ人ヲシテ販賣シ若クハ交付セシメタルト
  キハ四十志以下ノ罰金ニ處シ再犯以上ハ五磅以下ノ罰金ニ處
  ス
  「マルタ」島ノ布告(千八百八十三年發布)
  何人ニ限ラス滿十六年以下ノ幼者ニ酒類ヲ販賣スルコトヲ得
  ス
  「マニトバ」ノ法律(千八百九十一年制定)
  活類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十六年以下ノ幼者ニ酒類供給シ
  タルトキハ二十五弗ノ罰金ニ處シ他ノ命ヲ受テ酒類實地供給
  シタル者モ同罪ニ處ス
  罰金ヲ納付シ得サル場合ニ於テハ一箇月ノ禁錮ニ處ス再犯ニ
  於テハ五十弗ノ罰金ニ處シ之ヲ納付シ得サル場合ニ於テハ二
  箇月ノ禁鋼ニ處シ酒類販賣ノ免許ヲ沒收ス
  海峽殖民地ノ法律(千八百七十八年制定)
  何人タルヲ問ハス滿十五年以下ノ幼者ニ酒類ヲ賣リ之ヲ飮用
  セシメタルモノハ十留ノ罰金ニ處シ再犯以上ニ於テハ二十留
  ノ罰金ニ處ス
  「ナタル」ノ法律(千八百九十六年制定)
  酒類小賣營業免許ヲ有スル者滿十五年以下ノ幼者ニ酒類ヲ賣
  ルトキハ二十磅以下ノ罰金ニ處ス
  罰金ヲ納付シ得サル場合ニ於テハ三箇月以內ノ禁錮ニ處ス
  「ニユー、ブランスウイツク」ノ法律(千八百九十六年制
  定)
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者未成年者ニ酒類ヲ販賣シ若シクハ
  給與スルトキハ十弗以下ノ罰金ニ處シ再犯以上ハ二十弗以下
  ノ罰金ニ處ス(他ノ命ヲ受ケテ酒類ヲ實地販賣シ若クハ給與
  セル者モ亦同罰ニ處ス)
  「ニユー、フヲーンドランド」ノ法律(千八百九十五年制
  定
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十八年以下ノ少年ニ酒類ヲ販賣
  シ若クハ交付スルトキハ五十弗以下ノ罰金ニ處ス
  「ニユー、サウス、ウエールス」ノ法律(千八百九十八年制
  定
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十六年以下ノ幼者ニ酒類ヲ販賣
  シ若クハ交付シテ之ヲ飮用セシムルトキハ十磅以下ノ罰金ニ
  處シ再犯以上ハ四十磅以下ノ罰金ニ處ス他ノ命ヲ受テ酒類ヲ
  密地販賣シ若クハ交付セル者モ亦同罰ニ處ス
  「ニユー、ゼーランド」ノ法律(千八百八十一年制定)
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十六年以下ノ幼者ニ酒類ヲ供給
  シテ之ヲ飮用セシムルトキハ十磅以下ノ罰金ニ處シ他ノ命ヲ
  受テ酒類ヲ實地供給セル者モ亦同罰ニ處ス
  初犯ニ於テハ酒類販賣免許ヲ六箇月間停止再犯以上ニ於テハ
  該免許ヲ沒收ス
  南部濠洲ノ法律(千八百八十年制定)
  酒類販賣ノ免許ヲ有スル者滿十五年以下ノ兒女ニ酒類ヲ賣リ
  之ヲ飮用セシムルトキハ二十五志以上五磅以下ノ罰金ニ處ス
  濠洲「クイーンスランド」ノ法律(千八百八十五年制
  定
  飲食店ノ店主又ハ酒類小賣營業人タル者滿十四年以下ノ兒女
  ニ酒類ヲ販賣供給シタルトキ又ハ滿十八年以下ノ兒女ニ酒類
  ヲ販賣供給シテ之ヲ飮用セシメタルトキハ一磅以上五磅以下
  ノ罰金ニ處シ再犯以上ハ三磅以上十磅以下ノ罰金ニ處シ且ツ
  罪犯告發ノ費用ヲ納付セシム
  ○參考
  未成年者喫煙禁止法ノ實行シ能ハサル故ヲ以テ本案ニ反對ス
  ル者アリ是等ハ全ク其ノ事實ヲ知ラサルモノニシテ假ニ喫煙
  禁止法ニ付別紙內務省警保局ノ調査ニ依ルニ其ノ違反者數ハ
  去明治三十三年ヨリ大正十年末日マテ二十二年間ニ實ニ九十
  九萬百四十六人ノ多キニ達セルヲ見ル以テ本法未成年者飮酒
  禁止法ノ施行セラルル場合ニ於テモ亦如何ニ有效ナルヤヲ推
  知スルヲ得ヘシ
  き明治三十三年四月ヨ一未成年者喫煙禁止法違反者數調
  至六正十年十二月末日
  内務省警保局
  又はニ上メラ喫煙器具ヲ決数罰金又ハ〓計
  廳府縣レタル人員セラレタル人員ニ處セヲレメ合計
  ル人員
  北海道九、五四六七四八八四一〇、三七八
  東京三四五、二二八三、四四一一五三三四八.八二二
  京都二六八、七九二二、二九四二三二七一、一〇九
  大阪一五、一二九九七五三〇一六、一三四
  神奈川八、七九九一五二三六八、九八七
  兵庫一〇二、〇四〇一一八人一〇三、二八九
  長崎一一、〇五四五一六二七一一、八九九
  五八七八
  潟一一、三〇九三九一一、九〇五
  群埼新玉四、四五五七西三五匹六六四
  馬一、九一八一五四二九二、一〇一
  チ葉一、二一四二四五七四一、五三三
  城三、九〇一二三一三三四、一六五
  栃茨
  五、二九六四六五、三四三
  良木
  奈一、四三八六九六四二、五七一
  三重一、二七七一、二九五六九二、六四一
  愛知三、스九六七五五四、八三三
  静岡二、さ 六二二二四二、九五二
  四一
  山梨二、八四七四八八九三、三八四
  滋賀三、六六一二六三二二三、九四六
  岐阜二、六四〇一、〇九五一一七三、八五二
  長野一七.一三八五六一三九一七、七三八
  宮感一、六四八二八六二五一、九五九
  福島一七、四三五0七二一七、八八七
  二三六八
  巖手三、一九二八三〇三、四九〇
  青森一、〇九三八八八七六二、〇五七
  山形五、四三七九二七五、五三六
  田二、五六四三四二四三二、九四九
  福秋
  井四、三五一三三二四六四、七二九
  石川七二六二五二九八一、〇七六
  富山三、四三九九六八三八四、四四五
  鳥取二、五二〇五九六七三、一八七
  島根五九九四四一八一、四
  岡山一二、一九〇五六五一九一二、七三六
  廣島四、二〇九七〇三四三四、九五五
  山口三、一六五五〇七Tino三、八二二
  和歌山一、〇九七一二〇二〇一、二三七
  島三、九六九一六六二四、一五六
  川四、九六一二三五八〇五、二七六
  福高愛香德媛三、三八五六五七四九四、〇九一
  四〇二四一九四九人七〇
  分岡知二八、七二五三五四四八二九、一二七
  一九、五二三三九二一二四二〇、〇三九
  佐大
  賀九七五九〇九一、〇七四
  熊本二、八三九三二三四九三、二一一
  宮崎一、六九二一六六一一一、八七一
  鹿兒島三、四〇三二五六二九三、六八八
  沖繩三、三一七六四一0三、三九一
  合計九六一、〇六五二六、七五五二、三二六九九〇、一四六
  大正十年中未成年者喫煙禁止法違反者調內務省警保局
  廳府縣震國ニ止メラ喫煙器具ヲ受收罰金又ハ科新
  レタル人員セラレタル人員エ皇セラレタ合計
  ル人員
  北海道一、二七八三八一一、三一七
  東京一、八二一六一八、二一八
  京都四、七六一一二四、八八九
  大九七八八五八二
  阪一九九三
  神奈用五七九一、五八七
  兵庫七、三三〇五二一七、三八三
  長一、三二六七七一一、四〇四
  新玉潟崎一、二五八一二一、二七六
  埼二八五二九〇
  群馬二四一二四五五六二四六
  千葉六四四七二
  六九十一
  六三二六三二
  二二七三四
  一五
  七三三〇一〇四
  二五四二七八
  長岐滋山静愛三奈栃茨野阜賀梨岡知重良木城一六六
  一五二
  一〇八一一一七
  九二九七
  一四六六一二二六
  一、二八七一一五一、二九四
  宮城五四三六四七一八二六五五八四四五七
  福島五四五五五三
  巖手五七七二
  三一七四
  靑五九五
  四四六四五〇
  福秋山川井田形森六三六六五二
  一一二四一
  二二四
  石二〇一。三二
  六四二四
  富一一五二四一四三
  根取山一七二二八二〇六
  岡島鳥二四一三四
  山六五三二六七六
  廣島三七六一五二六
  一一五二
  山ロ二六四二八二
  和歌山二一四一六四一四〇一二一四一四六
  德島九〇九六
  二九一二九七
  媛川
  二二四二六六
  四四
  七人一一四八
  佐大福高愛香
  分岡知四、九二〇九四、九三七
  一七九一八九
  賀七七八六
  熊本三八一一四〇二
  七二人七一一三二
  宮崎九六九九
  鹿兒島一八五一九三
  沖繩五六五六一
  合計五〇、四二八一〇·九九八六五一、五三三

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