第45回帝国議会　衆議院　本会議　第24号　大正11年3月7日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  大正十一年三月七日（火曜日）午後一時二十五分開議
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  　議事日程　第二十三號　大正十一年三月七日
  　　　午後一時開議
  　　　　　質問
  　　一　社會主義者と軍隊に關する質問（田中武雄君提出）
  　　二　社會主義者取締に關する質問（田中武雄君提出）
  　　三　鹿町炭礦買收に關する質問（田中善立君提出）
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  　第一　船員職業紹介法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三　府縣制中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第四　北海道會法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第五　北海道地方費法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第六　市制中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第七　職業紹介法中改正法律案（安達謙藏君外十名提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　第八　失業保險法案（安達謙藏君外十名提出）　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第九　疾病保險法案（安達謙藏君外十名提出）　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十　疾病保險特別會計法案（安達謙藏君外十名提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十一　工場法中改正法律案（安達謙藏君外六名提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十二　鑛業法中改正法律案（安達謙藏君外六名提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十三　勞働組合法案（安達謙藏君外六名提出）　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十四　湖南鐵道建設に關する建議案（八田宗吉君外四名提出）
  　第十五　食料品配給設備に關する建議案（山本条太郎君外三名提出）
  　第十六　國有林野所在の府縣市町村に對し交付金下付に關する建議案（八田宗吉君外二名提出）
  　第十七　大船渡氣仙沼間鐵道速成に關する建議案（志賀和多利君外二名提出）
  　第十八　氣仙沼前谷地間鐵道速成に關する建議案（高橋長七郎君外三名提出）
  　第十九　高田川井間及水澤世田米間鐵道建設に關する建議案（志賀和多利君外一名提出）
  　第二十　縣社一條神社を別格官幣社に昇格に關する建議案（坂本素魯哉君外四名提出）
  　第二十一　墓地及埋葬取締規則中改正に關する建議案（松下禎二君提出）
  　第二十二　食糧充實の奬勵に關する建議案（多木久米次郎君外一名提出）
  　第二十三　鎭南浦築港完成に關する建議案（牧山耕藏君提出）
  　第二十四　帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案（八田宗吉君外五名提出）
  　第二十五　官幣小社竈門神社境域擴張に關する建議案（中村清造君外二名提出）
  　第二十六　朝鮮多獅島築港に關する建議案（牧山耕藏君外六名提出）
  　第二十七　新潟築港に關する建議案（丸山嵯峨一郎君外十四名提出）
  　第二十八　青森築港國營に關する建議案（北山一郎君外十五名提出）
  　第二十九　澁川上田間鐵道速成に關する建議案（木檜三四郎君外一名提出）
  　第三十　理化博物館建設に關する建議案（鈴木隆君外四名提出）
  　第三十一　地方鐵道買收法制定に關する建議案（中西六三郎君外四名提出）
  　第三十二　對支文化事業施設に關する建議案（山本条太郎君外六名提出）
  　第三十三　地方裁判所新設に關する建議案（藏内次郎作君外七名提出）
  　第三十四　北海道鐵道速成に關する建議案（木下成太郎君外七名提出）
  　第三十五　肥料官營に關する建議案（津野田是重君外三名提出）
  　第三十六　郡町村連絡直通電話特設奬勵に關する建議案（佐久間啓莊君提出）
  　第三十七　利根運河國有に關する建議案（本多貞次郎君外六名提出）
  　第三十八　原蠶種の種類制限に關する建議案（武藤金吉君外七名提出）
  　第三十九　醫師法中改正に關する建議案（八木逸郎君外十一名提出）
  　第四十　國立體育研究所設立に關する建議案（八木逸郎君外十一名提出）
  　第四十一　癈兵優遇及軍人遺族扶助料改正に關する建議案（津野田是重君外三名提出）
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• 001・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　本日モ私ガ代理ヲ致シマス、諸
  般ノ報告ガアリマス
  〔原田書記官朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  船員職業紹介法案
  (以上三月六日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  東京帝國大學農學部安科ニ關スル建議案
  提出者有馬秀雄君岩崎勳君
  天春文衛君高木第四郞君
  白井博之君
  群山港修築國營ニ關スル建議案
  提出者牧山耕藏君阪上貞信君
  蓮井藤吉君陣軍吉君
  多木久米次郞君
  神社調査會設置ニ關スル建議案
  提出者岩崎動君井上角五郎君
  熊谷直太君河上哲太君
  黑金泰義君安藤正純君
  紫安新九郞君大津淳一郞君
  川崎克君松下禎二君
  濱田國松君前川虎造君
  佐々木平次郞君
  官國幣社國庫供進金增額ニ關スル建議案
  提出者岩崎勳君井上角五郞君
  熊谷直太君河上哲太君
  黑金泰義君紫安新九郞君
  大津淳一郞君川崎克君
  安藤正純君濱田國松君
  前川虎造君佐々木平次郞君
  松下禎二君
  府縣社以下神社經費國庫補助ニ關スル建議案
  提出者岩崎勳君井上角五郞君
  熊谷直太君河上君
  黒金泰義君紫安新九郞君
  大津淳一郞君川崎克君
  安藤正記君濱田國松君
  前川虎造君佐々木平次郞君
  松下禎二君
  (以上三月六日提出)
  牧野法制定ニ關スル建議案
  提出者吉良元夫君
  三國港築港ニ關スル建議案
  提出者野村勘左衞門君山本条太郎君
  河崎清君高島七郞右衛門君
  柳原九兵衞君
  (以上三月七日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタ質問主意書左ノ如シ
  臨時外交調査委員會ニ關スル質問主意書
  提出者有森新吉君
  (以上三月六日提出)
  一昨六日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  衆議院議員田中萬逸君提出赤坂離宮闖入事件ニ
  關スル質問ニ對スル答辯書
  又今七日政府ヨリ受領シタル各辯書左ノ如シ
  衆議院議員田中武雄君提出社會主義者ト軍隊ニ
  關スル質問ニ對スル答辯書
  赤坂離宮闖入事件ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十一年二月十七日
  提出者田中萬逸賛成者井上剛
  外二十七人
  赤坂離宮闖入事件ニ關スル質問主意書
  一衆議院議員龍野周一郞君ハ大正十年十一月十五
  日御催ノ觀菊御會ニ當リ御召シノ御沙汰ヲ拜セスシ
  テ濫ニ離宮內ニ闖入セリ政府ハ斯ノ如キ事實ヲ聞知
  セリヤ
  一衆議院ヲ經テ傳達セラレタル御沙汰書ヲ拜受シタル
  者ノ氏名ヲ調査スルモ籠野周一郞君ハ此ノ恩命ヲ拜
  シタル事實ナシ而シテ又當日御沙汰ヲ拜シテ入苑シ
  タル者ノ氏名ヲ調査スルモ同君ノ氏名ヲ發見セス果
  シテ然ルトキハ同君ハ他ノ氏名ヲ詐稱シテ濫ニ離宮ニ
  闖入シタルモノト斷定セサルヘカラス
  一前陳セル龍野周一郞君ノ行爲ハ皇室ノ尊嚴ヲ冒濱
  スルノ甚シキモノナリ政府ハ觀菊ノ御會ハ宮中ノ御催
  シナリトシテ斯ノ如キ不敬行爲ニ對シ調査及處罰ノ
  途ヲ講スル必要ナシト思惟スルヤ
  右及質問候也
  大正十一年三月六日
  內閣總理大臣子爵高橋是〓
  衆議院議長奥繁三郞殿
  衆議院議員田中萬逸君提出赤坂離宮闘人事件ニ關
  スル皆問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員田中萬逸君提出赤坂離宮闖入事件
  ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  政府ハ質問ノ如キ事實ヲ聞知シタルヲ以テ其ノ調査ヲ
  遂ケタル處不敬ノ意思ニ出テタルニ非サルコト明白ニシ
  テ其ノ情狀ニ照シ處罰ノ途ヲ講スルノ要ナキモノト認メ
  タリ
  右及答辯候也
  大正十一年三月六日
  內閣總理大臣子爵高橋是〓
  司法大臣伯爵大木遠吉
  社會主義者ト軍隊ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十一年二月十六日
  提出者田中武雄賛成者井上剛
  外三十三人
  社會主義者ト軍隊ニ關スル質問主意書
  近時軍隊ニ於ケル社會主義者ニ對シテハ絕對ニ在營ヲ
  許ササル方針ナリヤ之ニ對スル政府ノ所見如何
  右及質問候也
  大正十一年三月七日
  內閣總理大臣子爵高橋是〓
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員田中武雄君提出社會主義者ト軍隊ニ關ス
  ル質問ニ對シ別紙答辯吉差進候
  (別紙)
  衆議院議員田中武雄君外三十四名提出社會主
  義者ト軍隊ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  社會主義者タルノ故ヲ以テ陸軍軍隊ニ在營ヲ許ササル
  コトナシ是レ兵役ハ法律上ノ義務ニシテ個人ノ主義如
  何ニ依リ之ヲ免セラルルヘキモノニアラサレハナリ
  右及答辯候也
  大正十一年三月七日
  陸軍大臣山梨半造
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭
  裁ス〕
  一內閣總理大臣ヨリ議長宛昨六日左ノ通發令アリタ
  ル旨ノ通牒ヲ受領セリ
  内務書記官河原田稼吉
  內務省所管事務政府委員被仰付
  一昨六日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
  移民局設置ニ關スル建議案
  竹澤太一君望月政友君宮崎友太郞君
  松岡俊三君〓瀨規矩雄君津崎尙武君
  松井鉃夫君岡本幹輔君奧村安太郎君
  片町長尾間電力鐵道延長ニ關スル建議案外四件
  戶狩權之助君植場平君八田宗吉君
  鐸木三郞兵衞君松岡俊三君石川淳君
  吉川吉郞兵衞君栗山博君板野友造君
  奈良ニ美術學校建設ニ關スル建議案外二件
  山本悌二郞君毛里保太郞君澤來太郞君
  木下成太郎君鵜澤總明君戶水寛人君
  市村貞造君福井三郞君武田德三郞君
  福井甚三君磯田粂三郞君添田飛雄太郞君
  淺野順平君佐久間啓莊君正木照藏君
  高橋久次郞君高草美代藏君木村權右衞門君
  一昨六日大正九年度豫備金支出ノ件外四件委員岩
  崎宗茂助君、蓮井藤吉君辭任ニ付其ノ補關トシテ牧
  山耕藏君、加藤久米四郞君ヲ、明治四十四年法律
  第六十一號中改正法律案委員秋虎太郞君、龍口了
  信君辭任ニ付其ノ補闘トシテ吉川吉郞兵衞君、高木
  正年君ヲ、第二期治水計畫確立ニ關スル建議案委
  員守屋松之助君辭任ニ付其ノ補閱トシテ由本藤助
  君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
  一今七日明治四十年法律第二十一號中改正法律案
  外一件委員久下豐忠君、鈴木義隆君、西川嘉門君
  辭任ニ付其ノ補閱トシテ植場平君、山口義一君、梅
  田潔君ヲ、刑事訴訟法案委員島本信二君辭任ニ付
  其ノ補開トシテ牧野良三君ヲ、第二期治水計畫確立
  ニ關スル建議案委員友田文次郎君辭任ニ付其ノ補
  關トシテ飯塚春太郞君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
  一今七日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
  移民局設置ニ關スル建議案委員
  委員長竹澤太一君理事津崎尙武君
  片町長尾間電力鐵道延長ニ關スル建議案外四件委
  員
  委員長戶狩權之助君理事鐸木三郎兵衞君
  奈良ニ美術學校建設ニ聞スル建議案外二件委員
  木下成太郞君
  委員長山本悌二郎君理事正木照花店
  高草美代藏君
  一今七日委員長及理事補關選擧ノ結果左ノ如シ
  貨幣法中改正法律案委員
  委員長柳原九兵衞君(委員長吉原祐太郞君補
  関
  第二期治水計畫確立ニ關スル建議案委員
  理事山本藤助君(理事守屋松之助君補關)

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• 002・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　是ヨリ會議ヲ開キマス、御諮リ
  ヲ致スコトガアリマス、西村丹治郎君外九名提出、府縣制
  中改正法律案ハ、提出者ヨリ撤回ノ中出ガアリマス、之ヲ
  許可スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 003・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、撤回ヲ
  許シマス、質問第一ニ對シマシテハ答辯書ガ參リマシタカラ、
  是ハ日程ヨリ省キマス、尙ホ田中萬逸君ノ御提出ニナリマ
  シタ、赤坂離宮闖入事件ニ關スル質問ニ對シマシテ、政府
  ノ答辯書ガ參リマシタ、之ニ對シテハ提出者カラ意見ノ陳
  述ノ通告ガアリマスカラ、本日ノ質問ヲ終リマシタ後ニ、其
  發言ヲ許シマス、質問第二、社會主義者取締ニ關スル質問、
  田中武雄君
  二社會主義者取締ニ關スル質問(田中武
  雄君提出)
  社會主義者取締ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十一年二月二十一日
  提出者田中武雄賛成者吉川吉郞兵衞
  外三十三人
  社會主義者取締ニ關スル質問主意書
  政府ハ近來發生セル過激社會運動發生ノ原因何レニ
  アリト思考スルヤ及其ノ取締ニ關スル方針如何
  右及質問候也
  〔田中武雄君登壇〕

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• 004・田中武雄

  ○田中武雄君　諸君、本員ハ社會主義者取締ニ關スル
  質問ヲ致スノデゴザイマス、其趣旨ハ現時社會主義者ガ非
  常ニ過激化致シマシテ、過激的ノ運動ヲ開始スルニ至リマ
  シタ形跡ガアリマス、之ニ對シマシテ其發生ノ原因ガ何レニ
  アルカ、サウシテ又如何ナル取締ノ方法ヲ以テ之ニ御臨ミニ
  ナルカト云フノガ其趣旨デゴザイマス、順序上此思想ノ發
  生ニ付キマシテハ、一般ノ思想界ノ有樣カラ說ク事ガ順序
  カト心得マス、我國ノ思想界ノ現狀ハ、丁度新舊思想ノ對
  立時代ト云フカ、或ハ其衝突時代トカ云フベキ時ニアルト
  考ヘルノデゴザイマスガ、何モ舊思想ト申シマシテ、孔子、孟
  子ノ〓、政治デ言フナラ官僚萬能主義ノ謳歌者ガ持ッテ
  居ル所ノ思想ト云フ意味ニモ非ズ、又新思想ト申シマシテ
  モ、近頃歐洲ニ發生シテ居ル種々ノ思想ヲ直譯的、鵜呑的
  ニ消化シヤウト云フ所ノ思想デモナイ、詰リ前者ハ嘗テハ德
  川三百五十年ノ專制政治ト中シマスカ、二重政治ト申シ
  マスカ、其將軍政治ヲ布イテ居ッタル、其政治ヲ國民ノ手ニ
  取返サウトシテ、獻身的ノ努力ヲセラレタル方々ガ、其時分
  ニ詰リ御維新時代ニ持ッテオイデニナリマシタル所ノ思想ト
  サウシテ現在ノ思想ト、對立ヲシテ居ルト云フ現狀デアルト
  思フ、斯ウ云フ方々ガ今ノ新思想ノ上ニ優越ナル所ノ地步
  ヲ占メヤウトスル所ノ努力、之ニ對シテ十ノ壓迫ガ來ルノデ
  アルナラバ、十二ノ反動力ヲ以テ之ニ對シテ行カウト云フ所
  ノ思想、卽チ五十年前ノ民本主義ト云フモノト、今日ノ民
  本主義ト云フモノヽ對立ガ、現狀デアルト私ハ考へルノデア
  リマス、サウシテ此舊思想ト稱スル詰リ前ニ屬スル所ノモノ
  ハ、政治界デ云フナラバ政治界ニ於ケル諸老、先輩諸君ノ頭
  腦ニ多ク存シ、サウシテ後カラ申シマシタ所ノ思想ハ、其他
  ノ全階級ニ廣ク存シテ居ル所ノ思想ト私ハ思ヒマスガ、併
  シ此特權階級デアルトカ、上流階級デアルトカ云フ人ノ頭
  ニ存シテ居ル所ノ思想ト、其他ノ多數級ノ人々等ニ存シテ
  居ル所ノ思想トガ、適當ナル比例ヲ以テ居ルノデアリマスレ
  バ、何モ思想界カラ社會主義發生ヲ恐レ、或ハ社會主義ノ
  危險化ヲ恐レルト云フ必要ハ無イノデアリマスガ、此日本ノ
  思想界ノ一番ノ弱點、一番ノ危險ナル所ノ一點ハ何デアル
  カト申シマスト、多數ノ民衆ノ上ニ立ツ人ノ思想ノ方ガ、一
  般ノ民衆ノ思想ヨリ遲レテ居ルト云フ所ニ、其危險ナル點
  ガアルト私ハ思フ(拍手)併シ片方ハ少數デアリマシテモ、資
  本家デ云フナラバ資本ヲ擁シテ居クテ、少數ノ資本家ガ多
  數ノ人間ヲ使ッテ居ル、政治上デ申シマスナラバ、其背景ニ
  ハ權力ト云フモノヲ以テ多數ノ者ヲ動カシテ居ル、政黨デ
  言フナラバ、少數ノ幹部ナル者ガ存在シテ、多數ノ黨員ヲ操
  縱シヤウトシテ居ルケレドモ、此少數ノ力ハ一般ニ勃興セン
  トスル所ノ勢力ニ對シテハ、之ヲ堰止メテシマフ、後へ戻シテ
  シマフト云フコトハ出來ナクトモ、何トカ堰止メヤウト思ッテ、
  勞働問題デアルナラパ溫情主義デアルトカ、協調主義ヲ以
  テ來ル、或ハ利權ヲ以テ來ルト云フ工合ニ、色々苦心ヲシテ
  居ルガ、其方法ガ足ラズ、力ガ足ラザルト見ルヤ、往々ニシテ
  壓迫的ノ態度、又極度ナ壓迫ヲ加ヘマスト、玆ニ少數ノ持ツ
  テ居ル特種階級ノ思想ト云フモノト、多數ノ民衆ノ持ッテ
  居ル所ノ思想ト云フモノガ「パランス」ヲ其處デ以テ失シテシ
  マヒマシテ、是迄多數ノ人間ノ中ノ或ル部分ノ者ガ、今迄
  正當ナリト思ッテ居リマシタル思想ヲ捨テヽ、サウシテ過激ナ
  ル方法ニ理窟ヲ付ケテ、之ガ正當ナル所ノ方法デアル吾々
  ハ之ヲ要求スル所ノ權利ガアルト言ッテ叫ンデ來ルノガ、私
  ハ民本主義カラ生レル所ノ社會主義ナルモノデアリ、社會
  主義カラ生レル過激主義ナルモノデアラウカト考へルノデア
  リマス、併シ思想ノ惡化ト云フコトハ、政府當局ノ御意見ニ
  依ルト、随分外國思想ノ流入ト云フコトニ付テ重キヲ置イ
  テ居ラルヽヤウデアリマスルガ、外國思想ノ流入ト云フガ如
  キ單純ナル所ノ事柄ニ非ズシテ、外國思想ガ入ルト入ラザ
  ルトニ拘ラズ、多數ノ國民ト云フモノガ、已ニ臨ム所ノ爲政
  者、若クハ已ニ臨ム所ノ支配者ト云フモノガ持ッテ居ル所ノ
  思想、ソレノ政策其方法ニ依フテ生活ノ安定ヲ失シ、思想ニ
  於ケル共鳴點ヲ發見シ得ラレザル場合ニ起ルモノデアルト
  思フ、ソレデアルカラ動モスルト院內デハ、政治ト思想、國民
  生活ト政治ト云フコトハ大シタ關係ノ無イヤウナ意見ヲ持フ
  テ居ラレル方モアルヤウデアリマスガ、是ハ大ナル誤リト私ハ
  言ハナケレバナラヌト思フ、政府ハ何處迄モ國民思想ノ善
  化、惡化、共ニ大ナル責任者デアル、又政治家ガ思想ノ潮流
  ト云フコトニ詳シクナケレバナラヌト云フノハ此點デアルト
  思ヒマスガ、當局ノ方ミカラハ、此思想ノ對策ト云フコトニ
  對シマシテ、確乎タル御意見ヲ未ダ聽イタコトガナイノデア
  リマス、先般安藤君ガ思想政策ニ對スル質問ヲナサイマシ
  タ、之ニ對シテ高橋總理大臣ガ御答辯ニナリマシタガ、甚ダ
  不明瞭極マルモノデアル、寧口不明瞭其物ガ御答辯デアル
  ト言ヘバソレハオシマヒカモ知レヌガ、唯嘗テ床次內務大臣
  ガ、思想ニハ思想ヲ以テ對スベシト云フコトヲ仰シヤッダコト
  ハ、誠ニ適當ナル言葉デアルト思ッテ居ッタガ、其後ノ當局ノ
  御行動ヲ見テ居ルト、何等此思想上ニ對スル對策ガナイケ
  レドモ、成程思想卜思想トヲ對立セシメラレルト云フノハ宜
  イ事デアリマスガ、現政府ハ實際現代ノ社會主義ト云フモ
  ノニ對シ、社會主義者ト云フモノニ對シテ、彼方ニ思想ガア
  ルナラバ、此方モ一ツノ思想ヲ持ッテ行カナケレバ、思想ト思
  想トノ對立ト云フコトハ得ナイノデアルガ、如何ナル思想ノ御
  持合セガアルカト云フコトハ、甚ダ疑ハザルヲ得ナイノデアリ
  マス(拍手)現ニ先日モ貴族院ニ出サレマシタガ、思想二ハ思
  想ヲ以テ對スベシト云フ代リニ-此社會主義者ニ對シマシ
  テハ、思想ヲ以テ對スル代リニ、過激社會運動取締法案ナ
  ルモノヲ御出シニナッテ、思想ニ對スルニ思想ヲ以テセズシテ、
  思想ニ對スルニ法律ヲ以テシタル如キハ、明ニ內務大臣ノ御
  言明ノ如キハ裏切ラレタルモノト私ハ思フノデアリマス(拍
  手)併シ茲ニ伺ヒタイコトハ、斯ル特別ナル法案ヲ御出シニ
  ナラナケレバナラナイ程ニ、現代ノ社會主義ト云フモノハ惡
  化シテ居ルト御考ニナルノカ、ソレヲ認メラレザルナラパ、何
  故ニ斯ル法案ヲ御出シニナラントシツヽアルノデアリマス、御
  認ニナルノデアレバ、其責任ハ何處ニアルカト云フコトヲ當
  局カラ伺ヒタイト云フノガ第一問デアリマス、次ハ第二問ニ
  入リマスガ、然ラバ斯ル法律ノミデナク、他ニ如何ナル方法
  ヲ以テ御取締ニナルカト云フコトヲ伺ヒタイノデゴザイマス、
  御承知ノ如ク思想ハ固定性ノモノニ非ズシテ、流動性ノモ
  ノデアリマス、有形體ニ非ズシテ無形體デゴザイマス、思想ガ
  川ノ流レノ如クンバ、或ハ堤防ニ以テ、或ル程度迄止メラレ
  ルカモ知レマセヌガ、此流動性ノ無形體ニ對シテハ、如何ニ
  劒ノ垣ヲ築イテモ、銃劒ノ垣ヲ築イテモ止メルコトハ出來ナ
  イノデアリマス、何ノ効力モ威力モナイト云フコトハ嘗テ西
  伯利ニ出兵ヲサレマシタ其出兵ニ依クテ、軍隊ガ惡化シタカ
  善化シタカト云フコトヲ御考ニナレバ、是ハ輙ク分ルコトデ
  アルト思フ、ソレデ現ニ軍隊デハ今日社會主義取締ハドウ
  デアルカ、其方法ガドウデアルカ、過激運動取締ガ軍隊內ニ
  於テドウデアルカト云フ風ナコトヲ御心配ノヤウデアリマス
  ルガ、洵ニ是等ハ大キナ矛盾デアッテ、此位ノコトヲ心配ニナ
  ルト云フコトハ軍隊ノ權威ニモ拘ハルコトデアッテ、大キナコ
  トヲ云フ軍隊〓育モ私ハ怪シイモノデアルト思フ、固ヨリ皇
  室ニ刄ヲ向ケヤウトスルガ如キ者ハ、斯ウ云フ怪シカラヌ輩
  ガ出マスレバ、ドシ〓〓ト處分ヲ致スベキデアリマス、所ガ玆
  ニ極ク少部分ノ泥棒ガアル、其泥棒ハ掏摸、中著切ノ類ニ
  屬スル小サイ泥棒デアル、其泥棒ヲ取締ルノニ、大キナ何十
  万圓、何百万圓ヲ人ノ目ヲ盜ンデ泥棒ヲシタ、或ハ强盜ヲ
  働イタト云フ風ナ者ヲ取締ルト同ジ方法、同ジ內容ノ苛酷
  ナル法律ヲ以テ之ヲ取締ラウト思ヒマスレバ、是マデ窃盜ヲ
  シテ居タタル所ノ小サイ所ノ泥棒ハ、自分ガ一廉大キナ泥棒
  ニ成リ澄マシテ氣取リ込ミ、偶ニハ一ツ大泥棒デモヤテ見
  ヤウカト云フ風ナ行爲ニ、却テ導キハシナイカト云フ心配ガ
  アリマス、玆ニ一例ガアリマスルガ、是ハ宇都宮聯隊ノ出來
  事デ追放ヲ喰ヒマシタ或ル一人ノ社會主義者ガ、自分ノ先
  輩ニ宛テヽ、送ッタル所ノ手紙ガアリマス、其手紙ノ一齣ニ、自
  分ノ如キハ赤化運動ニ關係ノアル故ヲ以テ、無病息災ナル
  ニ拘ラズ、心臟トカ云フ病氣ニ依ッテ軍隊ヲ追放サレマシタ
  サウシテ今ハ放タレタル獅子-獅子トハ「ライオン」デアリ
  マス、獅子ヲ氣取ッテ下野ノ野ニ横行ヲシテ居リマスト云フ
  ヤウナ手紙ヲ送ッテ居リマス、誠ニ自慢サウニ吹聽ヲシテ居
  ル、實ニ一面カラ見マスルト、他愛モナイ代物デアリマスガ、
  斯ル小サキ輩ヲ〓育シ得ズシテ、軍隊ガ追放ヲシタモノト致
  シマスレバ、私ハ軍隊ノ〓育ノ眞價ヲモ疑ハザルヲ得ナイノ
  デアリマス、然ルニ此處デ承リタイノハ、斯ウ云フ朝憲紊亂
  ノ行動ヲシタ者ナドハデス、前ニ申シマシタル如ク皇室ヲ倒
  サウトカ、皇室ニ刄ヲ向ケヤウトカ云フ風ナ者ノ行動ニ對シ
  マシテハ文句ハ無イノデアリマスルガ、社會主義ノ思想ヲ持
  チ、又ハ共產主義、無政府主義ニ興味ヲ持ッテ、或ハ之ヲ學術
  的〓究的ニ其意見ヲ社會ニ發表致シマシテ、眞ノ我國ノ改造
  ノ一步ニ資セントスル所ノ人〓等ニ對シマシテハ、自由ニ其
  〓究ヲ爲サシメ、意見ヲ發表セシムルコトガ正當卜考ヘマス
  ルガ、之ニ對シテ當局ハ如何ニ御考ヘニナルカト云フ問題デ
  アリマス、過激政治ト云フモノニ對シテハ、隨分亂暴ナ政治
  ノ如キ御解釋モアリ、又正體モ亂暴ナモノラシイケレドモ、日
  本ニモデス、嘗テハ僅ニ數十年前マデハ皇室ト人民ガ所有
  スベキ其土地ヲ、其間ニ領主ト云フ者ガアッテ、ソレデ自分
  等ガ勝手ニ領地ナルモノヲ拵ヘテ、其上前ヲ刎ネテ居シタ所
  ノ領分政治ナルモノガ存在シテ居ノタノデアリマス、サウシテ
  其末流ガ貴族デアルトカ、華族デアルトカ言ッテ、所謂日本
  ノ上流階級ヲ占メテ居ルコトハ、是ハ日本トシテハ一ノ皮
  肉デアリマス、ガ過激派ト雖モアノ永年ノ間、弊風ノ上ニ弊
  風ヲ積ミ、罪惡ノ上ニ罪惡ヲ重ネタル所ノ貴族政治、專制
  政治、罪惡政治ヲ一氣ニ屠リ去ッタル所ノ手際ニ至ッテハ、
  私ハ大ニ認メザルベカラザル點ガアルト思フ、又アノ塞爾維
  ノ一書年ノ放ケタル所ノ一發ノ彈デ、アノ大動亂、歐洲ノ
  大戰ヲ起シタノデアリマスルガ、此終末ト云フモノガ著キマ
  シタルノモ、亞米利加ノ兵隊ノ參加ト云フコトモ、或ハ聯合
  軍ガ「モットウ」トシテ居リマシタ所ノ正義ハ暴力ニ勝テリト
  云フコトモ、或ハ民本主義ハ軍國主義ヲ破レリト云フコト
  モ、ソレハ皆事實デアリマセウケレドモ、此裏ニ吾々ガ見ナケ
  バナラヌコトハ、肝腎ノ相手ノ獨逸ヲ倒シタルモノハ、是等ノ
  者ヨリ更ニ有力デアッタルモノハ、彼ノ永年蔓フテ居ッタル獨
  逸ノ軍閥政治ヲ根本カラ引繰返シタル所ノ獨逸社會黨ノ
  力デアッタノデアリマス、實ニ獨逸ノ軍國主義ト云フモノハ
  世界ニ有名ナモノデアリマシタガ、内部ノ破レニ於テハ仕樣
  ガナイ、大政黨ト雖モ表カラハ壞レルモノデハアリマセヌ、政
  黨ノ歷史ニ徵シテモ大抵內部カラ壞レルモノデアル、斯ル新
  行動ノ勃興ハ、軍隊ニ於ケル所ノ世界ノ大勢ノ重要ナル一
  部分デアル、又皆ガ一齊ニ叫ンデ居ル所ノ改造トカ何トカ
  言ヒマシテモ、此惡キ所ハ捨テヽシマッテ、善キ所ハ採ッテ之ヲ
  國政ニ資セントスル所ニ意味ガアルノデアリマス、故ニ之ヲ
  頭押シニ抑ヘテシマフノデアリマスレバ、折角大勢順應主義
  ノ看板ヲ上ゲテ居リマシテモ、其看板ヲ上ゲテ居リマスル所
  ノ商店ニハ、恐ラク頭ニ黴ノ生ヘタル代物ト、役ニモ立タヌ
  觸レバ危ナイ所ノ硝子ノ破片ノヤウナ代物許リニナッテシマ
  ハナケレバナラヌヤウナ時代ガ來ヤシナイカト思ヒマス、餘程
  此邊ハ當局ガ能ク〓〓御注意ヲ拂ッテ戴キタイ所ノ事デア
  リマスガ、ソレカラ社會主義者ト云フ者、斯ウ云フ思想ニ對
  シマシテハ、彈壓ト云フモノハ何等ノ威力モナイノデアリマ
  ス、社會主義ノ發生以來ノ歷史ヲ見マシテモ、斯ル事ヲ細
  細ト申ス必要ハアリマセヌガ、例ヘバ「ビスマルク」ガ社會主
  義ト云フコトニハ中ミ理解ヲ持フテ居ッタ人デアッタ、アッタケ
  レドモ彼ガ一度彈壓政策ヲ取シタル場合ニハ、アノ理想ヲ根
  本トスル「カールマルクス」ソレカラ實際主義ヲ發展シヤウト
  シタ「ラッセル」ガ却テソレガ動機ニナッテ手ヲ握ラシメテ、玆ニ
  獨逸社會共和黨ガ組織セラレタト云フコトモアル、英吉利
  デ以テ十八世紀ノ末項ニ普通選擧ノ起リタルトキニ、商工
  業者ハ隨分潤ヒガアリマシタガ、一般ノ勞働者ニ對シテハ、
  アレハ社會ノ組織ヲ破壊スルモノデアルトカ云フ風ナコトニ
  依リマシテ、其潤ヒガナカッタガ爲ニ、茲ニ英國ニ於ケル穩健
  ナル社會主義ト云フモノガ、初テ階級闘爭ノ第一歩ヲ開イ
  タノデアリマス、ソレデアリマスカラ當局ニ於テモ、能ク大勢
  ト近代思想ト云フモノニ對シマシテハ、完全ナル理解ヲ持ッ
  テ居ラルヽノデアリマスルナラバ、少クトモ思想問題ノ〓究
  者、之ニ對スル言論ニ對シマシテハ、解放的ノ態度ヲ御採リ
  ニナラナイト、議會否認ノ聲ヲ止メヤウトスル考ガ、却テ議
  會否認ノ聲ヲ作ルヤウナ事ニナリハシナイカト思フノデアリ
  マス、例ヘバ過激派ノ信條ト云フモノガ議會否認デアリ、又
  共產主義デアリマシテモ、日本ノ勞働者ノ大勢ヲ見、日本
  ノ社會主義者ノ大勢ヲ見マスト、其絕對多數ト云フモノハ
  日本ノ社會黨ト云フモノニハサウ云フ黨ト云フ組織ハマダ
  アリマセヌガ、確ニ議會政治ニ執著心ヲ持ッテ居ルト云フ一
  事ダケハ確カデアリマス、此勢カラ致シマシタナラバ、此議院
  ノ中ニモ或ハ民主黨デアルトカ、或ハ日本社會黨デアルトカ、
  或ハ立憲勞働黨ト云フ風ナ黨派ガ出來テ議席ヲ有スル事
  ニナルト云フノハ、是ハ來ルベキ當然ノ大勢ト私ハ思フ、實
  際野黨多數ノ勞働者ハ、譬ヘテ言フナラバ今日普通選擧
  運動ヲ助ケテ居ル、非常ニ熱心ニ助ケテ居ルト云フコトモ、
  亦吾々野黨ノ連中ト致シマシテモ、彼等ヲ尻馬ニ乘セテ働
  イテ居ルト思ッタラ大キニ間違デアル、彼等モ亦乘ッテルナド
  ト考ヘテ居ナイ、其信條ハ何デアルカト云フト、普通選擧ガ
  實行ノ曉ニハ、今度ハ自分等ガ出テ來テ此中ニ議席ヲ占メ
  テ、サウシテ主義主張ト云フモノヲ議會ヲ通ジテ天下ニ諒
  解セシメヤウト云フ所ニ彼等ノ本當ノ熱心ガアルノデアル、
  之ガ唯、一遍ノ煽動トカ、宣傳トカニ依ルト御覧ニナル御方
  ガアルト、是ハ大キナ誤リデアリマス、サウシテ一般ノ此普選
  運動-勞働者ノ普選運動參加ト云フコトニ對シマシテ、
  皆此實際ノ點ノ理解ガ少カッタノデハナイカト私ハ思フノデ
  アリマス、又政局全體カラ申シマシテモ、普選運動ガ實行セ
  ラレタナラバ、チット是ハ餘談ニ亙ルヤウデアリマスガ、之ヲ譬
  ヘテ言フナラバ野黨ガ政府黨ヲ破ルト云フヤウナ單純ナ事
  柄デハナイ、是カラ生レルモノハ恐ラク旣成政黨ノ破壞デア
  リマセウ(「ノウ〓〓」)恐ラクハ是カラ生レルモノハ少壯氣分
  ト、ソレカラ保守的氣分トノ鬪争デアリマセウ、玆ニ於テ意
  味ガアルノデアリマス、コンナコトハ、ノウ〓〓ト云フ聲ガ聞エ
  ルヤウデゴザイマスガ、政友會ノ少壯代議士諸君ニハ能ク御
  分リノ方ガアッテ、私ノ如キハ度〓意見ヲ交換シテ居リマス、
  而モ此大使命ヲ知リツヽ此普通選舉運動ト云フモノニ、心
  ナラズモ束縛的ニナル所ノ行動ヲ採ラレテ、此壇上ニ反對
  ヲサレタト云フコトハ、此思想界ノ上カラ見マシテモ私ハ洵
  ニ之ヲ悲シム者デアル、併シ此大勢ヲ見ルト云フコトハ肝腎
  デアルカモ知レナイ、又肝腎デアリマスガ、此狀態ヲ知ルト云
  フコトモ必要デアル、今度ノ法案ナシカヲ見マシテモ、其理
  由書中ニハ外國同志ト氣脈ヲ通ジト云フ風ナコトガ書イテ
  アリマスルガ、是ハ支那朝鮮-支那ノ中デモ上海等ニ居
  リマシテ、色ミナ行動ヲシテ居ルヤウナ者ニ其理由ガアルヤ
  ウデアリマスルガ、其根本ハ露西亞デアリマス、露國ヲ意味
  シタノデアリマセウガ、露國ガ此過激思想ノ發生前ノ狀態
  ハドウデアッタ、普通ノ多數級、庶民級ノ人ハ非常ニ極度ナ
  ル壓迫ヲ加ヘラレ、サウシテ文化ノ程度ハ些トモ進ンデ居ラ
  ナイ、字ヲ書ケナイ奴ハ澤山アル、一體誰ガドウ云フ政治ヲ
  シテ居ルノカ知ラヌ人間ガ澤山アル、斯ウ云フ多數ノ人間
  ハ、社會主義ト云フモノガドウ云フモノデアルカモ知ラヌ、民
  主主義ト云フモノガドウ云フモノデアルカモ知ラヌ、彼等ガ
  唯知っタモノハ貴族政治ノ壓迫其モノデアル、專制政治ダケ
  デアッタノデアリマス、仍テ彼等ハ合理的ナル、穩健ナル社會
  主義的ノ行動モ採ラナケレバ、民主的ノ行動モ採ラズ一足
  飛ニ此梯子段ヲ飛越シテシマヒマシテ、サウシテ〓度ハ貴族
  専制ニ代フルニ勞農專制ヲ布イタト云フノガ現狀デアリマ
  シテ、是ハ又實際デアリマスガ、此立國ノ基礎ガ相當ニアル
  日本ガ、直二一足飛ニ過激思想化シ「レーニン」ノ手下ニナ
  ルナゾト云フコトヲ御考ニナルノハ間違デアルト思フ、是ハ思
  想界ノ順調的ノ產物ニ非ズシテ反動的ノ產物デアルカラ、
  反動的ノ產物ニ對シマシテ唯單純ニ非常ナル恐怖ト非常
  ナル壓迫ヲ以テ臨ムト一云フコトハ、其自ラ侮ルモノデハナイ
  カト思フ能ク〓〓此邊ヲ御考ヲ願ヒマシテ、政府ハ是等ノ
  思想ニ對シテ如何ナル御取締ヲ爲サルノデアルカ、如何ナル
  對策ヲ御持ニナッテ居ルノデアルカト云フコトガ、私ノ趣旨デ
  ゴザイマス、ドウゾ御明答ヲ煩シタイト考ヘマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=4

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• 005・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　質問第三、鹿町炭磺買收ニ關
  スル質問、田中善立君
  三鹿町炭礦買收ニ關スル質問(田中善
  立君提出)
  鹿町炭礦買收ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十一年二月十八日
  提出者田中善立賛成者本田恆之
  外二十九人
  鹿町炭礦買收ニ關スル質問主意書
  本員ハ昨年三月七日鹿町炭礦買收ニ關シ
  長崎縣北松浦郡鹿町村ニ存在スル鹿町炭礦ハ濱野
  治八(前長崎縣會副議長政友會員)カ前持主中島
  德太郞外數名ヨリ一坪八厘乃至三錢ニテ買收經營
  セシモ維持困難ニ陷リ漸ク大倉喜八郞氏ノ援助ニ依
  リ株式會社ヲ組織シ繼續經營セシモ炭界不況ニ際シ
  殆ト破滅ノ境遇ニ在リテ時價僅三十萬圓內外ニ過
  キストノ公評アリ然ルニ製鐵所ハ一坪當リ一圓ツツ
  計金三百萬圓ノ高價ヲ以テ該炭礦ヲ買收セシ理由
  如何
  トノ質問ヲ爲セリ右ニ對シ山本農商務大臣ハ三月十四
  日書面ヲ以テ左ノ答辯ヲ爲セリ
  大正九年三月鹿町炭礦株式會社ヨリ製鐵所カ買收
  シタル礦區ハ總坪數四百六十七萬坪ニシテ一坪當
  五十九錢餘採掘可能總噸數ノ內良炭六割トシテ千
  八百五十五萬噸一噸當十五錢ノ計算ナリ
  本礦區買收ニ關スル事項ハ製鐵所長官ノ專行權限
  ニ屬スルヲ以テ同長官ノ意見ヲ質シタルニ本礦區ノ
  炭質ハ本邦ニ於ケル製鍊用骸炭配合材料ニ適シタル
  唯一ノモノニシテ從來年々買炭シ海外ヨリ購入シツ
  ツアル配合炭ノ不足ヲ補フモノ也而シテ此礦區ヲ買
  收シタルハ當時開平炭ヲ購入スルノ困難ナルト近キ
  將來ニ於テ開平附近ニ製鐵所設立ノ計畫アリテ該
  炭ヲ購入シ得サル場合ノ發生セムトスルニ由リタルモ
  ノナリ
  然ルニ其ノ後本員ノ精査スル所ニ依レハ鹿町炭坑ニ於
  ケル炭層ハ平均一尺以下ナリ其ノ炭厚八寸ナリトハ地
  方人ノ數十年來言ヒ來リタル周知ノ事實ナリ
  山本農相ノ答辯ニ依レハ確定炭量ハ千八百五十五萬
  噸トアレトモ本炭坑諸般ノ事情ニ精通セル工學士鮎川
  甚五右衞門氏ノ調査ニ依レハ僅カ百萬噸弱ニ過キス而
  カモ其ノ計數ハ五百萬坪全部ヲ採掘シ得ヘシト假定シ
  タル量ニシテ實際ハ其ノ二分ノ一又ハ三分ノ一ヨリ採
  掘シ能ハサレハ安全炭量ハ三十萬噸或ハ五十萬噸ニ過
  キサルヘシ
  鮎川工學士ヨリ鹿町炭礦株式會社ノ技師長タリシ工
  學士玉城孝大氏ニ對シ(一)鹿町炭坑ノ炭層平均厚サ
  ハ何程ナリヤ(二)鹿町炭坑礦區ノ全面積中有炭地竝
  採掘サルヘキ面積ハ何程ナリヤ(三)採掘ニ堪ユヘキ面積
  ノ採掘收率ハ何程ナリヤ(四)水洗ノ歩止リハ何程ナリ
  ヤ(五)鹿町炭坑ニ對スル將來ノ見込如何ト推問セルニ
  對シ玉城工學士ハ
  -鹿町ノ炭層「コークス」原料トシテノ炭厚ハ御見
  込ノ通リ平均八寸位ト見ルヲ至當ト存シ候現
  在稼行中ノ第一坑ハ厚キ所ハ一尺以上ノ所ア
  レトモ採掘スヘキ部分ハ最早幾何モナク第二坑
  ハ炭厚甚タ貧弱ニシテ第一坑寄リノ左片磐ノミ
  右片磐ハ四寸位ニシテ採掘スルモ到底引合ハス
  第三坑ハ小生開坑候モノニハ是ハ一尺位アルモ
  薄キ所ハ七寸位ナリ
  二四百餘萬坪ノ礦區ナレトモ現在稼行ノ處附近
  ハ大斷層三條アリ降下隆起シ全部ヲ纏メテ經
  營スルコト頗ル困難ナリ小生ハ小規模ニ一部分
  宛ヲ採掘スルノ方針ヲ立テタリ全面積中先ツ五
  十%ヨリ六十%位ノ所ナラムト存シ候ソレ以上
  ハナキモノト小生ハ信シ候
  三水洗前トシテ理藏炭ト採掘炭トノ割合ハ六割
  五分卽チ六十五%ヨリ七十%位ノモノニ候
  四水洗ノ步合ハ「ヂガー」不完全ナリシ時ハ六十%
  ナリシモ坑内手洗ヲ嚴重ニシ「ヂガー」ヲ直シテ七
  十五%ヨリ八十%ニ上ラシメタリ目下如何ニヤ
  五以上ノ如ク鹿町礦ノミニテハ四百萬坪アルモ半
  分位ノ採掘區域トシ平均八寸ノ厚サトシ七十
  %丈トシテ七十%乃至八十%ノ仕上リトセハ總
  炭量幾何モナキモノニ候是ニテ大事業ヲ計畫シ
  得ルヤ覺束ナキ樣存セラレ候
  ト回答セリ斯ノ如クニシテ尙且有望ナリト主張シ得ラル
  ル乎各專門家ノ異口同音ニ唱導スルトコロニ依レハ本
  炭坑ハ十年ナラスシテ廢棄セサルヘカラサルニ至ラムト假
  令此ノ「コークス」配合炭ヲ必要ナリトスルモ北松浦郡内
  ニハ鹿町同樣ノ石炭ヲ產スル礦區數ハ尙數十ヲ下ラス
  何レモ坪當リ五六錢ニテ買收シ得ラルルニ何故ニ斯ル
  貧弱ナル襤褸炭坑ヲ坪當五十九錢ノ最高價ニ買收セ
  シヤ
  右及質問候也
  〔田中善立君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=5

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• 006・田中善立

  ○田中善立君　本員ハ昨年ノ三月七日、天下ノポロ炭礦
  ヲ以テ炭礦界ニ有名ナル長崎縣北松浦郡鹿町村ニ在リマ
  スル鹿町炭礦ヲ、八幡製鐵所ガ時價僅カ三十万圓ノモノ
  ヲ三百万圓ノ不當價格デ買上ゲタト云フコトニ付テ質問
  ヲ致シマシタ、同月十四日附ニテ山本農商務大臣ハ、此炭
  礦ノ總坪數ハ四百六十七万坪デ、坪當リ五十九錢、炭量
  ハ一千八百五十五万噸、決シテ不當價格デハナイト云フ
  御答辯ガアリマシタ、其後本員ガ精査スル所ニ依リマスト、
  昨年申述べマシタ如ク其調査ハ全ク杜撰、殆ト虛僞ト斷
  言シテ憚ラヌ位ノ調査ニ依シテノ答辯デアッタコトヲ確メマシ
  タ、卽チ製鐵所技師ノ調査ニ依レバ、アノ炭礦ノ炭層ハ平
  均二尺二寸デアル故ニ、千八百五十五万噸ト云フ炭量ニ
  ナルト云フコトデアリマスガ、其實ハ平均僅カ八寸ニ過ギナ
  イノデアリマス、而シテ幾多ノ斷層ガアリマシテ、其炭量ハ僅
  カ百万噸ニ過ギナイノデアル、而モ其百万噸全部ヲ採掘ス
  ルコトハ出來マセヌカラシテ、其二分ノ一、又ハ三分ノ一ダ
  ケヨリドウシテモ採掘ハ出來ヌノデアリマスカラシテ、眞ニ採掘
  シ得ラルベキ量ハ三十万噸乃至五十万噸ニ過ギナイノデアル
  是ハ前鹿町炭礦ノ技師長デアル玉城工學士ノ證明及鹿町
  附近ノ人ニシテ炭礦界ニ於テ專門ノ知識ヲ有シテ居ラレマ
  スル、能ク鹿町炭礦ノ經歷ヲ知ッテ居ラレマス所ノ工學士
  鮎川甚五右衞門氏ノ實地調査ニ依リマスレバ、確ニ今申
  シタ僅カ平均八寸、炭量ハ百万噸ニ過ギナイト云フコトデ
  アリマス、昨年農商務大臣ノ御答辯及此炭礦ヲ賣買スル
  ニ付テ親シク關係サレマシタ所ノ、中倉万次郞君ノ此席ニ
  於ケル答辯ニ依リマスレバ、此炭礦ノ石炭ハ製鐵所ニ必要
  缺クベカラザル物デアル、此石炭ニ依ッテ拵へラレタル所ノ
  「コークス」ト云フモノハ、八幡製鐵所ニ缺クベカラザルモノデ
  アリ、是迄ハ支那開平炭ヲ買ッテ「コークス」ヲ製造シテ居クタ
  ノデアルガ、支那ノ開平炭ガ長ク自由ニ買收ガ出來得ナイ
  カモ知レヌカラ、强テ之ヲ買ッタノデアル、炭質ノ日本唯一デ
  アルト云フコトモ、其高價買收ガ不當デナイト云フ理由ニモ
  ナッテ居リマス、併シ此石炭ノ炭質ノ良イト云フ事ハ、成程
  普通ノ石炭トハ違シテ良イ點モアリマスルガ、必シモ鹿町ノ
  石炭ニ依ラズトモ、高島炭ノ如キハ遙ニ優良ナルモノデアリマ
  ス、又此鹿町炭礦ノ附近ニハ同ジク其炭ヲ有スル炭礦ガ約
  五六十アルノデル、必シモ鹿町炭礦ヲ急イテ一昨年ノ選擧
  間際ニ高價ニ買上グル必要ハナカッタノデアル、又其石炭ヲ
  採掘シテ年凡ンドノ位出ルカト申シマスレバ、八幡製鐵所
  ガ買收後幾百ノ役人、幾十ノ坑夫ヲ使ッテ採掘シテ見マシ
  タ所ガ、月僅カ二千噸、年ニ二万噸ヨリ出ナイノデアリマス、
  八幡製鐵所ノ要スル「コークス」原料ノ石炭ハ年ニ約六十
  万噸デアリマシテ見レバ如何ニ之ガ優良炭デアッテ、必要
  缺クベカラザルモノトスルモ、是ダケノ石炭デハ其所要額ノ
  僅カ三十分ノ一ヨリ充タスコトガ出來ナイノデアル、一朝開
  平炭ヲ買フ事ガ出來ナタナッタナラバ、迚モ是ダケヲ以テ製
  鐵事業ヲ進メルコトハ出來ナイノデアル、當時鹿町炭礦附
  近ニ在リマスル所ノ同ジ石炭ヲ有スル炭礦ノ買價格ハ、
  僅ニ坪當リ二三錢ニ過ギナイノデアル、高クモ五六錢ニ過
  ギナイノデアル、ソレヲ强テ坪當リ五十九錢ニ買上ゲタト云
  フコトハ、何トシテモ諒解スルコトノ出來ヌノデアリマス、是
  ガ卽チ質問ノ要點デアルノデアル、故ニ昨年私ハ唯製鐵所
  技師ノ調査ノミニ依ッテ如何ニ御答辯ニ相成ッタ所ガ、天下
  ノ疑惑ヲ晴スコトハ出來ヌカラ、須ク三者デアル専門家ヲ
  傭ヒ、能ク之ヲ調査シ、其結果ヲ速ニ天下ニ發表サレヌケレ
  バ、到底此疑ハ晴スコトハ出來ヌノデアルト云フコトヲ私ハ
  吳々モ言ウタノテアルケレドモ、更ニ其後何等ノ調査報告モ
  無イノデアリマス、遂ニ其後ニハ鹿町炭礦ノ主任者デアリマ
  シタ所ノ、政友會ノ長崎縣支部長デアッタ濱野治八君ハ、
  此炭礦賣買ニ關シテ收監サルヽニ至ッタノデアリマス、又聞
  ク所ニ依リマスルト、會計檢査院ニ於テモ其不當ナルコトヲ
  認メタト云フ事デアリマス、殊ニ此處ニ於テ申添ヘテ置キタ
  イコトハ、昨年此席ニ於テ何等疚シキコトナシト云フコトヲ
  御答辯ニナリマシタ所ノ中倉万次郞君-同君ハ赤貧ヲ
  以テ令名嘖々、人格者トシテ評判ノ高イ人デアリマス、ソレ
  ガ此賣買アッテ後ドウ云フモノデアリマスルカ、巨万ノ富ヲ造
  ラルヽニ至ッタト云フコトハ、其後稅務署ノ取調其他調査ニ
  依シテ明ニナッタト云フ事デアリマス、玆ニ於テ益〓世ノ疑惑
  ヲ深カラシムル次第デアリマスルカラシテ、昨年私ガ申シタ
  如ク、第三者ノ確タル調査ニ依ッテ、其疑ヲ晴サルヽニアラズ
  ンバ、如何ニ當局者ガ正當デアルト言ヒマシタ所ガ、到底疑
  ヲ晴スコトハ出來ヌノデアリマス、終リニ申上ゲテ置キマスル
  ガ、鮎川甚五右衞門氏ハ飽迄モ其不當ナルコトヲ天下ニ發
  表セントシテ、製鐵所長官等ニ公開狀ヲ曩ニ送ッテ居ルノデ
  アリマス、ソレニ對シテ何等當局カラハ今以テ一言ノ挨拶モ
  シテ居ラヌノデアル、如何ニ鮎川工學士ノ決心固キカハ、之
  ヲ一讀シマスレバ御分リニナラウト思フノデアル、昨年ノ十
  一月四日附デ製鐵所長官ノ白仁、同次長ノ中川、工學博
  士ノ服部君ノ三君ニ宛テラレタ公開狀デアリマス「一書呈
  上致シ候」-中略シマシテー「先達鹿町炭礦買收ニ關
  スル小生ノ意見書ヲ御送附申上置キ候ヘバ既ニ御落掌御
  一覽下サレ候事ト存ジ候之ニ依リテ右炭礦ニ關スル諸君
  ノ御意見ヲ伺フ事ヲ得ルナラント密ニ期待致シ居リ候ヘ共
  今日ニ至ル迄何等ノ御囘答ニ接セズ甚ダ遺憾ニ存ジ居リ
  候ニ付重ネテ左記ニ對スル貴志ヲ得度次第ニ御座候小生
  ハ鹿町炭礦ノ附近ニ人トナリ且ツ炭礦ニ開スル專門ノ學
  ヲ修メ候者ナレバ此炭坑ニ關シテハ相當ノ知識ヲ有スルモ
  ノト自信致シ候元來鹿町炭坑ナルモノハ過去二十年間ニ
  於ケル稼業ノ狀態ヨリ兒ル時ハ天下ノボロ炭坑ニシテ大事
  業ヲ採ルノ價値無キモノナル事ハ小生ノミナラズ斯業ニ經
  驗アル人士ノ等シク公言スル所ナルニモ拘ハラズ昨年春總
  選舉ノ將ニ來ラントスル一箇月前ニ三百万圓テフ驚ク
  ペキ高價ヲ以テ貴所ノ買收セラレシヨリ平生此炭坑ノ實
  質ヲ知レル地方人民竝ニ斯界ノ人士ハ驚異ノ眼ヲ瞠リ怪
  怪ノ耳ヲ聳テ流言蜚語巷ニ滿チ行路ノ人口耳相接スルニ
  至リ終ニ四十四議會ノ問題トナリシモ政府ノ答辯ガ不得
  要領ニ終リ我々專門家ヲシテ益〓奇怪ノ思ヒヲ爲サシメ候
  頃者又之ニ關セリト稱セラルヽ濱野某ノ收監中倉代議士
  ノ家宅搜索等幾多ノ不祥事件ヲ頻發シテ益、世人ノ疑惑
  ヲ昂メ候事ハ既ニ十分御承知ノ事ト存ジ候由來製鐵所ハ
  前年彼ノ醜怪事件暴露以來世人ハ之ヲ以テ不正ノ巢窟
  醜汚ノ淵叢トナシ居リ候ニ今又鹿町事件ノ起ルアリテ益〓
  其感ヲ深クセシムルハ天下國家ノ爲ニ痛恨ノ至リニ存ジ候
  此炭坑ハ專ラ貴下方ノ御意見ニ依リテ買收セラレタルモノ
  ト拜聞致シ居リ候處斯ノ如ク天下ノ耳目ヲ聳動セシメタ
  ル大事件ヲ諸君ガ平生公言セラルガ如ク單ニ意見ノ相違
  トシテ一笑ニ附シ世人ヲ滿足セシムルニ足ルノ何等辯解セ
  ラル事ナキハ世人ノ口ニスル醜汚ノ事實ヲ肯定スルモノニ
  シテ世道人心ニ害毒ヲ及ボスノ至大ナルノミナラズ諸君ノ
  名譽ノ爲ニモ遺憾此上モナキコトヽ存ジ候此事實ニ關シテ
  其間何等ノ疚シキコト無之ニ於テハ我等ヲ首肯セシムルニ
  足ルノ高明正大ナル理由ノ存スルナルベシト存ジ候ニ就テ
  ハ御職務御多用中恐縮ニ存ジ候へ共右ノ理由拜承致シ度
  ク新聞記者兩三人立會ノ上御面會願上度存ジ候御支障
  無之候ヘバ場所日時御一報被下候ヘバ小生拜趨可致候
  先ハ得貴意度如斯御座候稽額再拜」此書面ヲ送リマシタ
  ケレドモ、其後何等ノ回答ニ接シ居ラヌノデアリマス、此故
  ニ斯業界ニ於キマシテハ、益〓疑惑ヲ深カラシムルニ至ッテ居
  ルノデアリマスカラ、ドウゾ更メテ第三者ノ専門家ヲシテ十
  分ニ調査セシメテ、其結果ヲ回答ニ預リタイノデアリマス、
  尚ホ御參考ノ爲ニ議長ノ許可ヲ得マシテ、鮎川甚五右衞
  門氏ガ昨年七月十三日佐世保裁判所檢事局カラ質問ヲ
  サレタ時ニ送リマシタ其答辯書ノ印刷物ガアリマスカラ、是
  ハ専門的ノ事ガ詳細ニ書イテアリマスカラ、之ヲ速記ニ揭
  載スルコトニ致シマスルカラ、之ヲ能ク御熟讀ノ上、是非共
  本員ノ希望ニ依ッテ、天下ノ疑惑ヲ晴サレンコトヲ偏ニ希望
  スル次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=6

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• 007・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　田中萬逸君
  赤坂離宮闖入事件ニ關スル質問ノ答辯ニ
  對スル田中萬逸君ノ意見
  〔田中萬逸君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=7

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• 008・田中萬逸

  ○田中萬逸君　本員ノ提出致シマシタ赤坂離宮闖入ニ
  關スル質問書ニ對シマシテ、高橋總理大臣竝大木司法大
  臣連名ノ答辯書ヲ得マシタガ故ニ、此答辯書ニ對シマシテ
  意見ノ開陳ヲ致シタイト思ヒマス、其前ニ申上ゲテ置キタキ
  コトハ、本員龍野君ニ對シテ何等ノ恩怨アリマセズ、隨テ此
  問題ニ對シテ彼此レ中スコトハ私情トシテ忍ビザル所デア
  ルノミナラズ、老齡ノ龍野君ガ離宮闘入ノ事實ヲ承認セラ
  レテ、座シテ罪ヲ待ツト云フ健氣ナ態度ニ出デラレタコトヲ
  承知致シマシテ、深ク同情ノ思ヒガ胸間ヲ左右スルヲ覺ユ
  ルノデアリマス、併ナガラ畏多クモ離宮ノ神聖ヲ冒シ、聖明
  ニ悖ルガ如キ其不敬行爲ハ斷ジテ許スベキ事デハアリマセ
  ズ、隨テ本員一身ノ同情ニ依シテ此不敬行爲ノ總テガ拭ヒ
  去ラルヽベキモノデアリマセヌガ故ニ、茲ニ政府ニ對シテ、此
  處置ト政府ノ責任ニ對シテ質問書ヲ提出致シマシタ所、其
  答辯書ナルモノハ唯處罰ノ途ヲ講ズル云々ト云フコトニ重
  キヲ置カレテ、政府ノ責任ニ付テハ一言半句モ無イノデアリ
  マス、其答辯書ナルモノモ一讀致シマスレバ「政府ハ質問ノ
  如キ事實ヲ間知シタルヲ以テ其調査ヲ遂ゲタル所不敬ノ
  意思ニ出デタルニ非ザルコト明白ニシテ其ノ情狀ニ照シ處
  罰ノ途ヲ講ズルノ要ナキモノト認メタリ」實ニ驚入タ答辯デ
  アル、本員ハ處罰ノ事ヨリモ責任ノ所在ヲ明ニ致シタイト
  思ヒマシテ、此質問書ヲ提出シタニ拘ラズ、責任ノ事ハ何等
  御答ハナイ、斯ル答辯ヲ提出サレタ其事ニ對シテハ、現內閣
  諸公ノ有セラルヽ所ノ忠君愛國心ノ其根柢ニ對シテ、新ナ
  ル大ナル杞憂ヲ懷カザルヲ得ヌノデアリマス、元來龍野君ハ
  此不敬行爲ヲ敢テセラレタコトハ、過ル議場ニ於テ本員ガ
  質問依シテ世上ニ暴露サレタノデナクシテ、昨年ノ十一月十
  五日其事ノアリシ後間モナク、都下ニ於テ有數ノ新聞デア
  ル東京朝日新聞、日々新聞、大勢新聞及讀賣新聞ノ此
  四大新間ニ掲載サレタル天下公知ノ事實デアリマス、
  斯ク都下ニ於テ最モ信用アル所ノ新聞、而モ數紙ガ筆ヲ揃
  ヘテ掲載致シマシタル此事柄ニ對シテ、政府當局ハ五箇月
  後ノ今日ニ至ルマデ、此重大事件ニ對シテ何等ノ處置ヲ致
  サントハセズ、而モ本員ガ質問ヲ提出スルヤ遽々然トシテ其
  調查ヲ遂ゲラレタ如キ形跡ガアル、此質問ニ對スル答辯書
  ヲ出サレタト云フコトハ抑、如何ナル次第デアリマスカ、殊ニ
  龍野君ガ年來ノ園藝趣味ノ爲メ、ツイウカ〓〓ト他人名義
  ノ御召狀ヲ濫用致シテ離宮ニ入ッタト云フ、其告白敢テ他
  意ナカッタト云フ、其告白ニ根據セラレテ不敬ノ意思ニ出デ
  タルニ非ザルコト明白ナリト云フコドデ、此聖旨ニ悖ル不敬
  ノ行爲ヲ政テ糺サントハセス、延テハ自己ノ責任ヲモ免レン
  トスル如キ事ハ、以テノ外ノ沙汰ナリト言ハザルヲ得ナイノ
  デアリマス、然ラバ御尋ヲ致シタイ、現内閣諸公ハ帝國臣民
  トシテ萬有ルマジキ不敬行爲ヲ敢テシ、皇室ノ尊嚴ヲ冒瀆
  致シタ者ガアッテモ、ソレガ不敬ノ意思デナカフタト陳辯致シ
  タナラバ、之ヲ一切不問ニ付セラレ、延テハ當局自ラノ責任
  ヲモ免レ得ルモノト思シテオキデニナルノデアルカ、斯ノ如キハ
  政府自ラ帝國臣民ノ生命デアル所ノ、忠君愛國ノ其思想
  ノ根柢ヲバ破壞サレタノデアッテ、誤レルモ亦甚シキモノナリ
  ト斷ゼザルヲ得ナイノデアリマス、斯ル御考デアラレル以上ハ
  如何ニシテ皇室ノ尊嚴ヲ保チ、忠君ノ道ヲ明ニスルコトガ
  出來マスカ、又如何ニシテ我ガ國民性ヲ砥礪シテ、愛國心
  ヲ涵養スルコトガ出來マスルカ、更ニ又如何ニシテ帝國三
  千年來ノ傳統的精神デアル義勇奉公ノ精神ヲ振作致シ、
  國礎ノ固キヲ期スルコトガ出來マスルカ、サレバ政府當局者
  ガ如何樣ニ義勇奉公心ノ作興ニ努メラレ、又淳風良俗ノ
  作興ニ力ヲ致サレタトシテモ、其義勇奉公ノ根源、淳風良
  俗ノ根柢デアル所ノ忠國愛國、國民道德ノ根源デアル此
  忠孝ノ根本義ヲ自ラ破壞セラルヽガ如キ行爲ニ出デマシタ
  ナラバ、到底國民思想ノ善導ヲ期シテモ得ラレズ、綱紀ガ頽
  廢シ風〓ノ弛廢スルモ尤モノ次第デアルト言ハナケレバナラ
  ヌ、又政府當局者ハ此離宮闖入ノ問題ヲバ、非常ニ輕ク
  見テオキデノヤウデアリマスガ、ソレハ或ハ與黨代議士デアル
  ガ故ニ、殊更ニ輕視サレタノデアルカモ知レマセヌガ、本員ヨ
  リシテ見タナラバ、第一聖旨ニ悖ル所ノ重大問題デアリマ
  ス、更ニ又国禁ヲ犯セル重大問題デアッテ、決シテ輕祝スベ
  キモノデハナイ、凡ソ聖旨ニ背反致シ離宮ノ神聖ヲ冒ス如キ
  事ハ、吾々國民トシテ斷ジテ有ルマジキ事デアリマス、臣下ト
  シテ最モ恐ルベキ大罪惡デアルト確信ヲ致シマス、縱シ單ニ
  他ノ者ガ宮中ニ闖入ヲシタト云フコトヲ言ッタガ爲ニ、重キ
  罪ニ問ハレタ所ノ同僚ノ有ルコトハ諸君ノ記憶ニ新ナル所
  デアル、斯ウ言ヘバ宮中ト離宮トハ自ラ其事情ヲ異ニスルト
  仰セニナルカモ知レマセヌ、如何ニモ宮中ト離宮トハ自カラ
  其事情ハ違フテ居ルトシテモ、宮中ノ尊嚴、離宮ノ神聖、其
  尊嚴、其神聖ニ兩者ノ別ハアリマセヌノミナラズ、國法ニ依ッ
  テ嚴禁セラレテ居ル所ノ條文ニ照ラシテ見テモ、皇居ノ尊
  嚴ヲ冒瀆致シタ者ト、離宮ノ神聖ヲ冒シタ者ト、罪ノ同一ナ
  ルコトハ明ニ規定サレテアリマス、現ニ故原總理大臣ガ在
  世ノ其際ニ、原內閣失政ノ一ニ算ヘラレタ所ノ、彼ノ呂運
  亨ノ赤坂離宮菊花拜見問題ノ如キハ、頗ル重大ナル所ノ
  政治問題トセラレ、貴族院ニ於ケル所ノ緊張振ハ恰モ昨今
  ノ情勢ト髣髴タル有樣デアリマシタ、故ニ傲岸ヲ以テ鳴レル
  所ノ原總理大臣スラ、貴族院ノ壇上ニ立ッテ鞠躬如トシテ
  恐疎ノ至ナリト言ッテ、陳謝セラレタ事ハ、是亦諸君ノ記憶
  ニ新ナル所デアラウト田心フ、呂運亭ノ問題ハ單ニ其手續ガ
  誤ッタ問題デアル、今回ノ如キハ國禁ヲ犯シ、離宮ニ闖入ヲ
  致シ、皇室ノ尊嚴ヲバ冒濱サレタト云フ重大問題デアリマ
  ス、隨テ當局者ノ責任ハ斷ジテ許スベカラズ、宜シク罪ヲ闕
  下ニ待ツガ相當ノ處置デアルト私ハ斷言スルヲ憚カラヌ、實
  ニ本員ハ其犯罪ノアッタ時期ト、皇室ノ御事情ヲ拜察致シ
  マシテ、誠ニ恐惶恐懼ノ至ニ堪ヘナイノデアリマス、卽チ古
  來ヨリ皇室ノ式微ニ當フテ、亂賊ガ現レ、又陛下ガ御病中ニ
  渡ラセラレ、又陛下ガ御不豫ニ渡ラセラレル其際ニ、奸臣ノ
  跋扈スルト云フコトハ史上ニ徵シテ明カデアリマス、恰モ吾
  吾御亙ガ、英邁ナル所ノ陛下ガ御不例ニ渡ラセラレテ、未
  ダ攝政ノ事ガ御發布ニナラナイ其際ニ、卽チ御互國民ハ天
  日全ク暗キ思ヒヲ致シテ居ル其際ニ、社會ノ上流ニ居ル知
  識階級ヲ以テ任ズル御互、吾々卽チ國家ノ選良ヲ以テ任ズ
  ル者ノ中ヨリ、斯ル不敬行爲ヲ爲ス者ヲ出シタト云フコト
  ハ、此御事情ニ對シテ吾々ハ恐懼ニ堪ヘナイノデアリマス、
  故ニ此問題ヲ不問ニ付スルト云フ、其影響タルヤ殊ニ大ナ
  ルモノデアル、其世道人心ニ及ボス惡影響ニ想到シタナラ
  バ、實ニ慄然トシテ肌ニ栗ヲ生ズルヲ覺エルノデアリマス、要
  スルニ斯ル不敬ノ行爲ガ平然ト行ハレルノハ、現內閣ガ與
  黨ノ人デアレバ、何事ニ依ラズ曲庇スルト云フ斯ル行爲ヲ
  爲サレル結果デアリマスカラ、斯クシテ政友會ニ所屬ヲシテ
  居ッタナラバ、如何ナル惡事ヲ致シテモ罪ニナラヌ、如何ナル
  曲事ヲ働イテモ御構ヒナシト云フ所ノ間違ヲタ感ジヤラ信
  念ガ酸サレテ、而シテ國家ノ風〓ヲ害シ、綱紀ヲ奈シ、官紀
  ヲ紊亂シテ、竟ニ我ガ國民性ノ低下ヲ招クト云フコトニ相
  成ルノデアルト吾々ハ心外ニ堪ヘナイノデアリマス(拍手)政
  府當局ハ宜シク其責任ノ所在ヲ明ニ致シ、眞ニ臣下トシテ
  ノ節義ヲ全ウセラルヽ所ノ途ニ出デラレンコトヲ、玆ニ國家
  風〓ノ爲ニ本員ハ之ヲ熱望致シマシテ、此壇ヲ降ルモノデ
  アリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=8

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• 009・龍野周一郎

  ○龍野周一郞君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=9

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• 010・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　龍野君何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=10

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• 011・龍野周一郎

  ○龍野周一郞君　私ハ只今憲政會ノ田中萬逸君ガ、御
  意見ヲ御述ニナリマシタ事ニ付キマシテ、一身上ノ說明ヲ
  致スベク考ヘテ居リマシタガ、田中君ノ御論旨モ能ク分リマ
  シタ、又私ノ其時ノ心理狀態竝行動ハ赤裸々ニ新聞紙ヲ
  通ジテ世ノ中ニ知ラシテ置キマシタ、之ニ付テ私ハ一身上ノ
  辯明ハ殊更致シマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=11

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• 012・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三石)　日程第一、船員職業紹介法案
  ノ第一讀會ヲ開キマス、提出者ノ說明ヲ求メマス、秦遞信
  次官
  第船員職業紹介法案(政府提出)
  第一讀會
  船員職業紹介法案
  船員職業紹介法
  第一條本法ハ命令ノ定ムル場合ヲ除クノ外沿海航
  路以上ノ航路ヲ航行スル船舶ニ乘組ムヘキ船員ノ職
  業紹介ニ之ヲ適用ス
  本法ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前項ニ揭クル者以外ノ
  船員ノ職業紹介ニ之ヲ適用スルコトヲ得
  第二條船員職業紹介事業ヲ行ハムトスル者ハ行政
  官廳ノ許可ヲ受クヘシ
  第三條船員職業紹介ニ關シ必要アリト認ムルトキハ
  政府ニ於テ職業紹介事業ヲ行フコトヲ得
  政府ハ勅令ノ定ムル補助金ヲ支給シテ公益ヲ目的ト
  スル法人其ノ他ノ團體ヲシテ職業紹介事業ヲ行ハシム
  ルコトヲ得
  第四條船員職業紹介事業ヲ行フ者ハ何等ノ名義ヲ
  以テスルヲ問ハス其ノ報酬トシテ手數料其ノ他ノ財
  產上ノ利益ヲ受クルコトヲ得ス
  第五條船員職業紹介事業ノ管理及連絡統一ニ關シ
  必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第六條船員職業紹介事業ノ經營ニ關シ船員職業紹
  介委員會ヲ置ク遞信大臣之ヲ監督ス
  船員職業紹介委員會ノ組織及職務權限ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム
  第七條船員職業紹介事業ハ遞信大臣之ヲ監督ス
  監督官廳ハ船員鳳業紹介事業ノ監督上必要ナル場
  合ニ於テハ業務ニ關スル諸般ノ報告ヲ爲サシメ、書類
  帳簿ヲ徴シ及實地ニ就キ業務又ハ會計ヲ檢閲スルコ
  トヲ得
  第八條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ違
  反シ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ六月以下ノ懲役又
  ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
  -許可ヲ受ケスシテ船員職業紹介事業ヲ行ヒタル
  者
  二船員職業紹介ヲ爲シ其ノ報酬トシテ手數料其
  ノ他ノ財產上ノ利益ヲ受ケ又ハ他人ヲシテ受ケ
  シメタル者
  本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依リ船員職
  業紹介ヲ爲ス者强請シテ職業ノ紹介ヲ爲シタルトキ亦
  前項ノ例ニ同シ
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法施行ノ際現ニ無料ノ船員職業紹介事業ヲ行フ者
  ハ本法施行後二月以內ニ行政官廳ノ許可ヲ受クヘシ
  本法施行ノ際現ニ有料又ハ營利ヲ目的トスル船員職
  業紹介事業ヲ行フ者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ當分ノ內
  其ノ事業ヲ繼續スルコトヲ得
  〔政府委員秦豊助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=12

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• 013・秦豐助

  ○政府委員(秦豊助君)　船員ノ職業紹介ノ事務ハ、其
  改善ヲ要スル事ガ極テ緊要ニナッテ居ル次第デアリマス、又
  一昨大正九年「ゼノア」ニ國際海上勞働會議ガ開カレマ
  シテ、此船員ノ職業紹介ニ關スル所ノ事業ニ付テノ條約
  案ガ成立ッタノデアリマス、仍テ此度此條約案ノ趣意ニ副ヒ、
  又我國ニ於テ此船員職業ノ無料且ツ確實ナル所ノ機關ヲ
  助長セシムル必要ヲ認メマシテ、此案ヲ提出シタ次第デアリ
  マス、宜シク御審議ノ上御協賛アランコトヲ希望シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=13

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• 014・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　日程第二、右議案ノ審査ヲ付
  託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
  選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=14

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• 015・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ板野友造君提出、工場法中改正法
  律案ノ委員ニ併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=15

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• 016・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ本案ハ動議ノ如ク決シマシタ、日程第三、府
  縣制中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ
  報〓ヲ求メマス、坪田十郞君
  第三府縣制中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一府縣制中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
  段及報告候也
  大正十一年三月四日
  府縣制中改正法律案委員長
  坪田十郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  〔小字及-ハ委員會修正〕
  府縣制中改正法律案中左ノ通修正ス
  第六條第九項ヲ左ノ如ク改ム
  府縣ニ對シ請負ヲ爲シ若ハ府縣ニ於テ費用ヲ負擔ス
  ○ニ付府縣知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル者ニ對シ
  ル事業ノ。請負ヲ爲ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ
  同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社員、役員及支
  配人ハ其ノ府縣ニ於テ被選擧權ヲ有セス
  前項ノ役員トハ取締役、監査役及之ニ準スヘキ者竝
  〓算人ヲ謂フ
  〔坪田十郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=16

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• 017・坪田十郎

  ○坪田十郞君　付託ニナリマシタル府縣制中改正法律
  案ノ委員會ノ結果ヲ御報告申上ゲマス、本改正案ハ三十
  餘ノ條項ノ改正ガ主タルモノデアリマスガ、其最モ主タルモ
  ノハ選擧權ノ擴張ニアルノデゴザイマス、委員會ニ於キマシ
  テハ第六條九項ニ付テ修正ヲ致シマシタ、九項ニハ「府縣ニ對
  シ請負ヲ爲シ若ハ府縣ニ於テ費用ヲ負擔スル事業ノ請負
  ヲ爲ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス法
  人ノ無限責任社員役員、及支配人ハ其ノ府縣ニ於テ被選
  擧權ヲ有セス」斯ウゴザイマス中ノ「府縣ニ於テ費用ヲ負擔
  スル事業ノ」ノ「ノ」一字ヲ削リマシテ「ニ付府縣知事又ハ其
  ノ委任ヲ受ケタル者ニ對シ」此二十一字ヲ挿入スルコトニ
  改正致シマシタ、本改正ハ全會一致ヲ以テ可決セラレマシ
  タノデゴザイマス、其他數多ノ改正意見ガ提出サレマシテ、
  就中六條六項中ニ、府縣會議員中被選擧權ヲ有セザル者
  ノ中ニ第三、第四-第三ト致シマシテハ、神官神職僧侶
  其他諸宗ノ〓師、四、小學教員、右二項ハ國運ノ進展ニ伴
  ヒマシテ、是非削除シタイト申シマスノガ委員全部ノ意見デ
  ゴザイマシタ、右ニ付キマシテ内務大臣ハ矢張其削除ノ希
  望モアリマスノデ、就キマシテハ左ノ言明ト希望ヲ述ベラレ
  タノデゴザイマス、被選擧權ハ單リ府縣制ニ止ラズ、市制、
  町村制、其他衆議院議員選擧法モ共通ニ、相當ノ時期ニ
  於テ全般ニ亙シテ被選擧權ヲ附與スルモノト信ズルガ故ニ、
  本案ハ提案ノ儘可決アランコトヲ望ム、斯ノ如ク言明及ビ
  希望ガアリマシタ、委員會ハ此六條九項ノ修正ノ儘原案ノ
  通リ多數ヲ以テ可決サレマシタ、此段御報告申上ゲマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=17

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• 018・安藤正純

  ○安藤正純君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=18

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• 019・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=19

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• 020・安藤正純

  ○安藤正純君　一寸質問ガアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=20

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• 021・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　安藤正純君
  〔安藤正純君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=21

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• 022・安藤正純

  ○安藤正純君　簡單ニ只今委員長ノ報告ニ對シマシテ、政
  府當局者ニ質問ヲ致シタイノデアリマス、只今ノ御報告ニ
  依リマスト、府縣制ノ被選擧權制限條項ノ中ニ、第三神官
  神職僧侶各宗〓師、第四小學校〓員、是ガ現在法ニ於テ
  ハ制限サレテ居ル、之ニ對シテ現代國運ノ進展ニ伴ウテ之
  ヲ削除スル、制限ヲ削除スルノガ適當ト認メルト云フ委員
  會全體ノ意見デアッタ、面シテ内務大臣ハ之ニ對シテ又國
  運ノ進展ニ伴ウテ削除スルノガ至當デアルト認メルト明言
  ヲセラレタ、併ナガラ是ハ單リ府縣制ノミナラズ市町村制竝
  衆議院議員選擧法、是ト共ニ行ハナケレバナラナイカラ、此
  現在ノ改正ニ於テハ之ヲ行フコトハ出來ナイト、斯ウ云フ
  事ヲ言ハレタト、斯ウ云フ所ノ御報告デアリマシタ、之ニ付
  キマシテ質問ヲ致シタイノハ、ソレガ必要デアルナラバ現在
  玆ニ府縣制改正案ガ出テ居ルノデアリマスルカラ、國運ノ進
  展ニ伴ウテ削除スルガ必要デアルナラバ、直ニ此出テ居ル府
  縣制改正カラ行ハレタラドウ云フモノデアルカ、且ツ國運ノ
  進展ニ伴ウテ削除スルノガ必要ダトスルナラバ-今行ハナ
  イト云フノナラバ、何時カラ之ヲ行フノデアルカ、卽チ何時カ
  ラ-神官、神職、僧侶、各宗〓師及小學校〓員ニ對シテ
  被選擧權ヲ制限シテ居ル事ヲ削除スルト云フノハ、今ハ行
  ヘナイト云フノナラバ、主義ニ於テ御認ニナルトスルナラバ何
  時カラ御行ヒニナルノカ、來年ノ議會ニ於テ此改正案ヲ御
  提案ニナルト云フ内務大臣ノ御意嚮デアルカドウカ、之ヲ
  伺ヒタイノデアリマス、第二ニ伺ヒタイノハ普通選擧ハ選擧
  法ノ改正デアルカラシテ、是ハ先ヅ地方制度カラ及ボシテ中
  央ノ衆議院議員選舉法ニ及ボス、卽チ普通選擧ト云フモノ
  ハ地方制度ノ改正カラ段々及ボスト云フノガ政府ノ御意
  嚮デアル、然ラバ段々選擧權ニ於テモ被選權ニ於テモ、制限
  シテ居ル事ヲ順次制限ヲ撤廢シナケレバナラヌト云フ御意
  嚮デアルノデアリマスカラ、サウシテ見レバ之ニ從へバ只今玆
  ニ出テ居ル府縣制ノ改正案、卽チ地方制度ノ改正ニ當ッテ、
  先ヅ此制限ヲ撤廢サレルノガ至當デハナイカ、然ラズンパ政
  府ノ言ハレル事ハオ盾ヲシヤシナイカト云フ疑問デゴザイマ
  ス、此二點ニ付テ内務大臣ノ御答辯ヲ求メル次第デゴザイ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=22

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• 023・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　小橋內務次官
  〔政府委員小橋一太君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=23

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• 024・小橋一太

  ○政府委員(小橋一太君)　今內務大臣ハ他ノ委員會ニ
  出テ居リマスカラ私カラ御答致シマス、第一ノ御尋ハ、府縣
  制第六條ノ三號、四號、卽チ被選擧權ニ對スル制限ヲ撤
  廢スルコトニ付テ贊成デアル以上ハ、此際府縣制ノミデモ先
  ニヤッタラドウカ、又他日ヤルトスレバ何レノ時期ニ於テヤル
  カト、斯ウ云フ御尋ノ意味ノヤウデゴザイマス、神官、僧侶、
  諸宗〓師、若クハ小學校〓員等ニ對シ被選擧權ヲ認メル
  カドウカト云フコトニ付テハ、旣ニ委員會ニ於テ內務大臣ヨ
  リ明答サレタ通リデアリマス、今日ノ時勢ニ照ラシテ被選擧
  權ヲ認メテモ、元制限シタル時ノ法律制定ノ當時トハ事
  情ガ變ッテ居ルガ故ニ、差支ナイト云フ事ハ大體認メテ居ル
  ガ、獨リ府縣制ノミヲ此際被選擧權ヲ認メズシテ、地方制
  度中、市制町村制等モアルシ、又衆議院等ニモ同樣ノ關係
  ガアリマスガ故ニ、ソレ等ノ諸點ニ付テ通ジテ十分考慮ヲ加
  ヘテ、適當ナ時期ニ於テ被選擧權ヲ附與スルコトニハ決シ
  テ吝ナラヌト云フコトヲ內務大臣ハ答ヘタノデアッテ、其通リデ
  アリマス、時期ニ付テ御尋デアリマスガ、是ハ何レノ時期ト
  云フコトヲ御約束スル譯ニ行カヌ、サリナガラ衆議院議員
  選擧法等ノ適當ナル改正ヲ加フベキ場合ガアリマスカラ、ソ
  レ等ノ制度改正ト共ニ衆議院議員ノ選擧法竝ニ地方制
  度ノ被選擧權等ニ通ジテ考慮ヲ加ヘテ、其時期ニ於テ被
  選擧權ヲ認メタイト云フ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、大體ソ
  レダケ御答致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=24

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• 025・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　植原悅二郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=25

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• 026・植原悦二郎

  ○植原悅二郞君　簡單デアリマスカラ議席カラ御發言ヲ
  御許ヲ願ヒマス、只今委員長ノ報告竝ニ政府當局者ノ御
  答辯ヲ伺ヒマシテ、甚ダ意ニ解セザル點ガアルノデアリマス、
  委員長ノ報告ニ付キマシテハ安藤君モ申サレマシタ通リ、委
  員全體ガ神官、僧侶、神職、其他諸宗ノ〓師、小學校〓員
  等ニ對シテ被選擧權ヲ與ヘルト云フ事ガ當然デアルト認メ
  此當然ト認メテ居ル事ハ現在ニ於テト云フ諒解デアルト云
  フコトヲ理解致スヨリ途ガアリマセヌ、又政府當局ニ於テモ、
  內務大臣ハソレヲ與ヘルコトガ至當デアルト云フ事ヲ言明
  ナスッタ、ソレモ現在ニ於テ與ヘルコトガ至當デアッテ、現行法
  ハ此點ニ於テ是等ノ被選擧權ヲ有セザル者ニ對シテ不正
  義デアル、不合理デアルト云フ事ヲ當然御認デアルト云フ
  事ヲ諒解致スヨリ途ガナイノデアリセス、小學校〓師、神官、
  僧侶、神職、其他諸宗ノ〓師ノ數ヲ算ヘマシタラバ、或ハ十
  數万數十万ヲ以テ算ヘマセウ、其者ガ現在ノ法律ノ下ニ於
  テ、衆議院ノ委員ニ於テモ政府ニ於テモ、ソレヲ有スルコト
  ガ當然デアルト云フモノヲ、言ヲ左右ニシテ今日時期ヲ延
  期スルト云フ理由ハ何故デアルカ、之ヲ伺ハナケレバナラナ
  イノデアリマス、モノ一ツノ點トシテ御尋シナケレバナラナイ
  モノハ、原內閣カラ現在ノ高橋内閣ニ至ル迄ノ內閣ヲ私ハ
  指シテ言ヒマスガ、此内閣ガ會テ衆議院議員選擧法ヲ改
  正スルトキニ、其選擧資格ヲ定メ、總テノ規定ヲ定メル場合
  ニ於テハ、府縣制、町村制ト別ニ提出致シテ居リマス、選擧
  資格ニ付キマシテモ、衆議院ニハ衆議院ノ選擧法ヲ私明瞭
  ニハ記憶致シマセヌガ、併ナガラ第四十回カ四十一議會ニ
  於テ定メテ、同ジ規定ニ於キマシテモ、ソレカラ一二年-二
  三年置イテ府縣制、町村制ノ改正ヲ企テラレテ居リマス、
  現在ノ政府ニ於テモ一ツノ衆議院、府縣制、市町村制ノ必
  要ナル所ノ條項ヲ改ムル場合ニ於テ、同時ニ之ヲ爲シタル
  實例ハ一回モアリマセヌ、然ルニ此事ガ當然神官、僧侶、神
  職其他諸宗ノ〓師小學校ノ〓員ニ今日被選擧權ヲ與ヘ
  ル事ガ至當デアルト言ヒ、政府當局者モ之ヲ認メナガラ、言
  ヲ左右ニ致シ、此不公平ナル不合理ナル所ノ法律ヲ一日
  長ク存在セシメヤウトスル事ハ、極テ不徹底ノ事デアル、今
  迄ノ政府ガ辯解ノ辭ハ適當ナル辯解デナイ、一時ニ衆議院
  選擧法、府縣制、町村制ノ選擧法ヲ、其項ニ付テ一時ニ改
  メナケレバナラナイト云フ實例ハ今迄ナイノデ、此事ノミニ對
  シテ斯ク言明ナサル理由ヲ御伺シタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=26

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• 027・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　小橋内務次官
  〔政府委員小橋一太君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=27

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• 028・小橋一太

  ○政府委員(小橋一太君)　被選權ヲ認ムルニ付キマシテ
  ハ、僧侶、諸宗〓師ノ如キ、今日ノ時勢ニ於テ認メテモ宜シ
  イ、大體ニ於テ認メテモ宜シイト云フコトヲ政府ニ於テ認メ
  テ居リマスガ、併ナガラ今被選權ヲ認メナイ中ニハ神官、神
  職、僧侶、諸宗〓師、小學校〓員、斯ウ各種ニ亙シテ居リマ
  スガ故ニ、其中全部ニ付テ被選權ヲ認メルガ、或ハ其中ニ付
  テ或者ハ今日ノ場合被選擧權ヲ認メナイト云フヤウニ〓
  究スル餘地ハアリマスノデアリマス、大體ニ於テ被選擧權ヲ
  認メルノ趣旨ニナッテ居ルト云フコトヲ御答シタノデアル、同
  時ニモウ一ツハ曩ニ御答シ夕通リ、法制ノ統一上、甲ノ團體
  ノ場合ハ許シ、乙ノ團體ノ場合ハ許サヌト云フ事ハ、是ハ權
  衡ヲ失スルモノデアリマスカラ、ソレ等ヲ通ジ〓究ヲ遂ゲテ
  被選擧權ヲ與ヘルヤウニシタイト斯ウ云フヤウニ御答シタノ
  デアリマス、ソレカラ先刻安藤君ノ御尋ノ中ニ實ハ漏ラシテ
  居リマス、普通選擧ヲヤルニ付テ(植原悅二郞君「ソレハ私
  ノ御尋シタ要點ニ觸レテ居リマセヌ」ト呼フ)何故ニ地方制
  度カラ普通選擧ヲ採ラナイカ、政府ハ地方制度ヨリシテ選
  擧權ヲ擴張シテ、漸次衆議院ニ及ボスト云フ趣意ヲ以テ居
  ルカ、地方制度ニ付テ何ガ故ニ採ラヌカ、斯ウ云フ御尋デアッ
  タト思ヒマス、政府ニ於テハ從來ノ方針通リ、選擧權擴張ニ
  付テハ銳意其方針ヲ執ッテ居ルノデアリマス、ンレデ地方制
  度ニ付テハ、從來ノ國稅三圓ノ制限ヲ低下シテ國稅ヲ幾ラ
  納メテモ、國稅ヲ納メテ居リサヘスレバ府縣會議員ノ選擧權
  ヲ認メタノデアッテ、選擧權ノ擴張ニ付テハ十分今日ノ場合
  適當デアルト云フコトヲ考ヘテ居ルノデアッテ、政府ガ地方
  制度ヨリシテ先ヅ選擧權ヲ廣ク附與シ、續イテ國ノ議員ノ
  方ニ選擧權ヲ及ボスト云フ方針ハ、其通リニ致シテ居ルノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=28

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• 029・植原悦二郎

  ○植原悅二郎君　只今政府委員ノ御答辯ヲ伺ヒマシタ
  ケレドモ、私ノ質問ニハ御答ニナッテ居ラナイヤウデアリマス、
  若シ第一私ノ質問デアリマス-第一ノ質問ニ對スル政府
  當局者ノ御答辯ガ御各辯デアルト致シマスルナラバ委員長
  ノ報告ニ依リマスレバ、內務大臣ハ現在ニ於テ、神官僧
  侶-神職小學校ノ〓師ハ別ト致シテモ宜シウゴザイマス
  ガ神官、僧侶、諸宗ノ〓師ニ被選擧權ヲ與へルコトガ當然
  デアルト、斯ウ云フ事ヲ御聲明ナスッタ、併ナガラ此府縣制ノ
  改正案ノ場合ニ致スコトハ、其他ノ法律ト統一上差支ヲ生ズ
  ルカラ致サナイト、斯樣ナ御說明デアルト私ハ委員長ノ報告
  ヲ諒解致シテ居リマス、私ノ諒解ガ正シイト私ハ信ジテ居リ
  マス、然ルニ只今政府當局者ノ御答辯ニ依リマスレバ、神官
  ト云ヒ神職ト云ヒ、其他諸宗ノ〓師ト云ヒ、小學校ノ〓師
  ト云ヒ、色ミノ職業ガアッテ、或者ニハ與ヘテモ宜シ、或者ニハ
  其時期早イト思フト、ソレ故ニ調査シナケレバナラナイ、サウ
  云フ御答辯ガ正シイトスルナラバ、委員長ノ報告ノ内務大
  臣ノ聲明デアルト云フモノト、只今政府當局者ノ爲サレタ答
  辯トニ、全ク符合セザル矛盾ノ事ガアルノデアリマスガ、是ハ
  孰レヲ採ノテ宜イカ一ツ伺ヒタイ、モウ一ツノ點ニ付キマシテハ
  私ノ質問ノ要旨ハ此點ニ在ルノデアリマス、今迄衆議院ノ
  選擧法ヲ改正スル場合ニ、選擧資格ヲ擴張スルニ付キマシ
  テモ、府縣制、市町村制ト權衡ヲ保タナケレバナラナイコトハ
  澤山アリマシタケレドモ第一ノ議會ニ於テ-第一回ノ議
  會ニ於テ、是等ノ法律ヲ一時ニ立法シテシマフト云フコトハ、
  此三箇月ノ限リアル議會ニ於テハ不可能ノ事ナルガ故ニ、
  今迄ノ經驗ニ依リマスレバ、其所ニ議案ノ出タモノカラ必
  要ナル條項ヲ改メテ行クテ翌年ハ其他ニ及ボスト云フコトガ
  現在ノ執リ來クタ政府ノ方針デアリマス、此事ハ政府當局
  者ニ於テモ御存ジノ筈デアリマス、而シテ神官ナリ、僧侶ナ
  リ、其他諸宗ノ〓師ナリ、極テ多數テアリマス、此者ガ其被
  選擧權ヲ今日有セザルコトガ彼等ニ取ッテ他ノ者ト公平ヲ
  缺イテ居ル、不合理デアルト云フナラバ、卽時何處ノ箇條カ
  ラデモ御改メナサル方針ヲ其他ノ法律ニ付テハ總テ御執リ
  ニナッテ居ラレルニモ拘ラズ、此問題ニ付テ統一權衡ヲ口實
  トシテ延期ナサル御理由如何ト云フ質問デアリマス、率直
  ニ御答ヲ願ヒタイト思ヒマス
  〔政府委員小橋一太君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=29

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• 030・小橋一太

  ○政府委員(小橋一太君)　埴原君ノハ御意見ノヤウニ思
  ヒマスガ、(植原悅二郞君「埴原君デハアリマセヌ」ト呼フ)植
  原君ノハ御意見ノヤウニ思ヒマスガ、政府ニ於テハ僧侶ニ被
  選擧權ヲ認メルニ付キマシテハ、度〓御答シマシタヤウニ、少
  クトモ地方制度ニ於テモ通ジテ同樣ニ與ヘルヲ適當ト思ッ
  テ居リマス、單ニ府縣ノ團體ノミニ被選擧權ヲ認メテ市町
  村ト云フヤウナ同ジク地方〓體ノ選擧ノ場合ニ、被選擧權
  ヲ認メナイト云フ事ハ穏當デナイ、ソレデ同一ニ遣ラウト云
  フ事ヲ御答シテ居ルノデアル、植原君ノハ別ニ遣ッテ宜イヂ
  ヤナイカト云フ御意見ニ過ギナイト思ヒマス、政府ハ成ベク
  同時ニ造シタ方ガ適當ナリト認メテ居ルノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=30

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• 031・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異
  議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=31

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• 032・粕谷義三

  ○副議長(柏谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ本
  案ハ第二讀會ヲ開クコトニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=32

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• 033・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミ
  マス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=33

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• 034・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ直ニ第一一讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供
  シマス、本案ニ對シマシテハ板野友造君外一名ヨリ修正案
  ガ御提出ニナッテ居リマス、此趣旨辯明ヲ求メマス
  府縣制中改正法律案第二讀會
  〔板野友造君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=34

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• 035・板野友造

  ○板野友造君　吾々國民黨及憲政會-憲國兩黨カラ
  致シマシテ、府縣制中改正法律案ヲ提出ヲ致シテ置キマシ
  夕、此改正スベキ箇條ナリトシテ吾々ガ主張ヲ致シマシタ大
  部分ハ、政府提案ニモ改正セントシテ提案サレタモノト同一
  デアリマシタカラ、此部分ニ付テハ申述べマセヌ、吾々ノ改正
  セントスル所ト政府ノ改正セントスル所ト同一デアック部分
  ハ、全部委員長ノ報告ノ通リ委員會ニ於テ可決ニナッテ居
  リマスルカラ、此點ハ述ベマセヌ、此點ハ吾々ノ主張モ通ッテ
  居ル譯デアリマスルガ、唯吾々窓政會ノ諸君ト共ニ改正セ
  ントシテ改正案ヲ出シマシテ、委員會ニ於テ容レラレナカッタ
  點ニ於テ、政府案ニ對シ修正ト云フ形式ヲ採ッテ居リマス、
  此修正ヲ致シタイトシテ、吾々ハ憲政會ノ淺賀君ト共ニ修
  正案ヲ出シテ置キマシタカラ、此修正ノ意見ニ付テ、簡單ニ
  說明ヲ致シタイト考へマス、修正ノ箇條ハ多々アリマスカラ、
  是ハ一々說明スルコトハ省キマス、唯吾々ガ修正ヲセントス
  ル趣旨ノ或モノヲ項目ニ付テ簡單ニ述ベテ置キマス、ソレハ
  吾々ガ修正セント致シマスノハ、第一ニ政府案ノ第四條ニ
  第三項第四項ヲ設ケテ、府縣會ノ選舉ニモ小選擧區制ヲ
  採リ得ル、斯ウ云フ規定ヲ新ニ今度設ケヤウ、斯ウ云フ政
  府案ニ對シテ吾々ハ小選擧區制ヲ設ケタイ、政府ノ改正案
  ニ反對デアル、是ハ弊害ヲ生ジ易イ、斯ウ云フ趣旨カラシテ
  此政府ノ改正ヲシヤウト云フ點ニ對シテ反對ノ意味ヲ以テ
  修正ヲ致シタイ、是ガ一ツ、第二ハ只今問題ニナッテ議員諸
  君ト政府委員ト應答サレマシタ神官、僧侶、諸宗〓師、及
  小學校ノ〓師、是等ノ者ニ被選擧權ヲ與ヘタイ、之ガ第二
  ノ修正、ソレカラ第三八吾々ノ主張ニ依リマスレバ、納稅資
  格ヲ否定ヲ致シタイノデアリマスルカラ、其結果トシテ市町
  村會ノ議員ノ選擧名簿ガ其儘ニ縣會議員ノ選舉ニ適用
  ガ出來ル、斯ウ云フ風ナコトニナリマスノア、盟擧名簿ハ市
  町村會ノ選擧名簿ヲ重用スルコト、斯ウ云フ風ニ改正ヲ致
  シタイト云フ修正意見、第四ハ現在ニ於キマシテモ、事實ニ
  於テ選擧名簿ノ原本ダケデアリマセヌ、選擧ニ使ノテ居ルノ
  ハ選擧名簿ノ謄本ヲ使テ居リマス、事實ニハ使シテ居ルガ
  法律ノ上ニハ此謄本ヲ認メテ居ナイカラ、事實ニ於テ使テ
  居ル謄本ヲ、法定ノモノニシタイ、其意味ヲ以テ選擧人名簿
  ト云フ下ニ原不又ハ其謄本ト云フコトヲ八レテ、苟モ實際
  ニ現ハレテ居ル此事實上ヲ法律上ノモノニシタイト云フ意
  見、ソレカラ其次ハ、是ハ投票ノ許否、其決定權ヲ市町村
  長ニ與ヘタイ、ソレカラ投票ノ效力ノ決定權モ之ヲ選擧長
  ニ與ヘタイ、斯ウ云フ修正意見デアリマス、此點ハ衆議院議
  員ノ選擧デハ、サウナッテ居リマス、選擧長ニ決定權ヲ與ヘテ
  居ルニ拘ラズ、府縣制ニ於テノミ之ヲ與ヘナイデ、投票立會
  人ニ決定權ヲ與ヘテ居ルコトハ、理論ニ合ハサルノミナラズ、
  衆議院議員選舉法ト權衡ヲ失スル、斯ウ云ア意味デ衆議
  院議員ト同樣ニ選擧長ニ是等ノ決定權ヲ與ヘタイ、此修
  正ガ一ツ、ソレカラモウ一ツハ現制度デハ府縣會議員ノ選
  擧ニ付テノ法定數ガ七分ノ一ト云フコトニナッテ居リマスガ、
  之ヲ五分ノ一ニシタ方ガ宜カラウ、法定數ヲ最低限ヲ引上
  ゲル、斯ウ修正ガ一ツ、モウ一ツハ參事會ノ任期ガ只今デハ
  一年ト云フコトニナッテ、每年參事會員ノ改選ガアル、是ハ
  二年ニ致シタイ、最初舊制ハ四年デアッタモノヲ、四年デハ長
  過ギルト云フノデ、極端ニ一年更代ト云フコトニナッテ居リ
  マスガ、是ハ極テ現在ニ於テ不便デアル、弊害ガアル、其爲ニ
  每年騒ギヲ致シテ居リマス、吾々ハ四年ノ半分、二年更代
  ニ致シタイ、是ダクガ修正ノ要點デアリマス、是等ノ事ニ付
  キマシテハ、別ニ說明ヲ致シマセヌデモ、此修正ノ趣旨ハ明
  カデアルト考ヘマスガ、唯其一二ニ付キマシテ極ク簡單ニ其
  趣旨ヲ述ベテ置キマス、申述ベタイト考ヘマスル一ツハ、政府
  案ニハ市町村公民デアッテ而シテ國稅ヲ納メル者ニ、選舉
  權、被選擧權ヲ與ヘタイ、斯ウ云フ國稅主義ヲ執ッテ居リマ
  スガ、吾々ハ此國稅納付ト云フコトヲ資格ニ入レルコトヲ反
  對致シテ、之ヲ除キタイ、斯ウ云フ修正意見ヲ持ッテ居リマ
  スガ、是ハ唯府縣會議員ノ選擧ノミナラズ、吾々ニハ衆議院議
  員選擧ニ於テモ矢張納稅主義ニ反對致シ、稅金ヲ納メル
  ト否トニ拘ラズ、選擧権、被選擧權ヲ與フベキモノデアルト
  云フ、所謂普通選擧論ヲ唱ヘテ居ルノデアル、デ此衆議院
  議員ノ選擧ニ於テ、普通選擧論ヲ唱ヘル吾々ハ、同樣ノ理
  由ヲ以テ地方議會ノ議員選擧ニ於テモ、亦政府ノ案ノ如
  ク國稅主義-國稅ヲ納メル者ダケニ是ダケノ權利ヲ與ヘ
  ルト云フ案ニ對シテハ、反對ヲ致ス譯デアリマス、卽チ納稅
  資格撤廢論ヲ矢張此處ニモ主張スル譯ニナルノデアリマス
  カラ、政府ノ國稅主義ニ根本的ニ反對デアル、一反對デアリマ
  スガ、私共ハ唯國稅主義ニ反對ダト云フ理由ノミヲ以テ此
  國稅納付者ト云フ文字ヲ削ラウト云フノデハナイ、モウ一ツ
  政府案ハ國稅主義ヲ執ッテ居ルカラ惡イト云フダケデハナク
  假ニ、納稅主義ヲ認メルトシテモ、尙且ツ看過スベカラザル
  矛盾ト缺點ガアルカラシテ、吾々ハ之ニ反對ヲシヤウト思フ
  ノデアリマス、デ納稅主義ヲ假ニ採ルトシテモ政府案ガ矛盾
  デアル、撞著デアル、且ツ不權衡デアルト申シマスルノハ、現
  行ノ市町村制ニ依レバ、市町村稅ヲ納メテ居ル者ニハ市町
  村會議員ノ選擧權、被選擧權ヲ與ヘテ居ルノデアル、ソレカ
  ラ國稅ヲ納メル者ニシテ三圓以上ノ國稅ヲ納メル者ハ、衆
  議院議員ノ選擧權ヲ與ヘテアルノデアル、市町村稅ヲ納メ
  レバ市町村會議員ノ選舉權ヲ與ヘ、國稅ヲ納メテ居レバ國
  會議員、卽チ衆議院議員ノ選擧權ヲ與ヘテ居ル現制度ノ
  下ニ於キマシテハ、若シ此筆法デ以テスルナラバ、直接府縣
  稅ヲ納メテ居ル者ニハ、一般ニ選擧權ヲ與ヘネバナラヌ、若
  シ納稅主義ヲ採ルナラバ斯クシナケレバナラヌ、然ルニ今度
  ノ政府案デハ、是等府縣稅ヲ納メテ居ル者ニ對シテ、選舉
  權ヲ拒マウト云フノデアリマスカラ、是ニ於テ甚ダ不徹底デ
  アル、甚ダ矛盾デアル、權衡ヲ失スルト云フ非難ヲ受ケナケ
  レバナラヌ、此國稅主義ヲ採ルトスレバ、理論ノ矛盾ト撞著、
  權衡ヲ失スルト云フヤウナ不權衡ガアルノミナラズ、理論上
  ノ事ハ暫ク措クモ、事ノ實際ニ付テ見テ甚ダ怪シカラヌ事ガ
  アル、御承知ノ如ク此府縣稅ノ大部分ハ府縣營業稅、ソレ
  カラ家屋稅、是等ノモノガ大部分ヲ占メテ居ル、然ルニ是等
  府縣稅ノ納付者デアッテ、營業稅若クハ家屋稅ト云フヤウ
  ナ府縣稅ヲ納メテ居シテ、府縣財政ニ大ナル利害關係ヲ持ク
  テ居リナガラ、唯國稅ヲ納メナイト云フ一事アルガ爲ニ、府
  縣會議員ノ選擧權ヲ得ラレヌト云フコトハ、事實ノ上ニ於
  テ許スベカラザル事デアルト思フ、甚ダ不公平デアルト思フ
  實際ニ深イ利害關係ヲ持ッテ居ル者ニ、府縣稅經濟ノ議決
  機關タル、府縣會議員ノ選擧權、被選擧權ヲ奪フト云フコ
  トハ、趣旨ニ於テ甚ダ公平ヲ失シ、且ツ權衡ヲ失スルト思ヒ
  マス、是ハ全シ納稅主義ヲ採ルトシテモ、政府案ノ如ク國稅
  ト云フ標準ヲ置ク以上ハ、此非難ヲ受ケナケレバナラヌ、デ
  是ダケデハアリマセヌ、非難ハ更ニアル、政府案ニ依リマスト
  云フト、此府縣會議員ノ選擧權、被選擧權ヲ與ヘルモノヲ、
  府縣內ノ市町村公民ニシテ、且ツ直接國稅ヲ納ムル者ニ與
  ヘルト云フコトニナッテ居リマスガ、卽チ公民デアルト云フコ
  トヽ直接國稅ヲ納メルト云フコトヽ二ツノ資格ヲ要求シテ
  居ル、之ガ極テ私共ハ無意義デアル、且不條理デアルト思フ
  何故カト申セバ、市町村公民ト云フコトノ資格ヲ要求シテ
  居リマスガ、市町村公民トハソレデハ何ダ、是ハ昨年改正ヲ
  サレマシタ市制及町村制、是等市制、町村制ノ規定ニ依リ
  マスト、色ニナ要件ハアルガ、公民トシテハ色ミノ要件ハアリ
  マスガ、要スルニ直接市町村稅ヲ納メル者、斯ウ云フコトニ
  ナル、年齡トカ住所ノ制限ハ勿論アルガ、直接市町村稅ヲ
  納メル者ト云フ風ニナッテ居ル、然ラバ直接市町村稅ヲ納ム
  ル者トハ何ンゾヤト一云フト、市制ノ百七十五條、町村制百
  五十五條、及明治四十五年ノ內務省告示四十三號、是
  等ニ依リマスト、此市町村稅ト申スモノハ、直接國稅及直接
  府縣稅、是等ニ對スル附加稅、反別割、其他府縣知事ノ臨
  時告示シタル特別稅、是ダケニ過ギマセヌ、結局直接市町
  村稅ノ主ナルモノハ直接國稅、ソレカラ直接府縣稅、是等
  ニ附加シテ掛ケル市町村稅ガ主ナルモノデアリマスカラシテ、其
  結果トシテ國稅、府縣稅ノ納付者ガ市町村公民ノ大部分
  デアルト云フコトニ歸著致シマス、是等國稅ナリ府縣稅ナリ
  ヲ納メマス者ハ、同時ニ其附加稅タル市町村稅ヲ納メマス
  カラシテ、市町村稅ヲ納メテ市町村公民トナル、其公民資
  格ハ是等國稅及府縣稅ノ納付者デアルコトニ歸著ヲ致ス、
  斯ノ如クニ國稅ノ納稅者ハ必ズ常ニ其附加稅タル市町村稅
  ヲ拂シテ居リマスカラシテ、當然市町村公民トナル、國稅ヲ納メ
  テ居レバ其事ニ依ッテ當然市町村公民トナルノデアリマスカラ
  シテ、此者ニ對シテ更ニ國稅ヲ納ムル者ト云フコトノ要件ヲ
  要求スル必要ハナイ、國稅ヲ納メテ市町村公民ニナッテ居ル
  國稅納付者ニ對シテハ、更ニ國稅ヲ納ムル者ト云フ要件ヲ
  望ムノハ是ハ無意義ニナッテ來ルカラ、是等ノ者、卽チ國稅納
  付者ニ對シテハ、此法文ハ無意義ニナル、サウスレバ國稅納
  付者ト云フ文字ハ、是等國稅ヲ納メズシテ單ニ府縣稅ノミ
  ヲ納メテ、サウシテ其附加稅ヲ納メテ居ル者ノミニ適合サレ
  ル結果ニ相成リマス、サウスルト是等府縣稅ダケヲ納メテ居
  ル者ニ對シテハ、府縣稅ヲ納メテ且ツ其附加稅トシテ市町
  村稅ヲ納メテ居ル者ニ對シテハ、府縣會議員ノ選擧權ヲ與
  ヘナイト云フノデアリマスルカラ、甚ダ之ニ對シテハ不權衡デ
  アル、不條理デアル事ハ先刻申シタ通リデ、如何ニシテモ此
  國稅ヲ納ムル人ト云フコトノ條件ハ、國稅納付者ニ對シテ
  ハ無意義ニナリ、府縣稅ノミヲ納メル者ニ對シテハ不條理、
  不權衡ニナル、孰レニシテモ非難ヲ免レナイ落第スベキ法支
  デアル、法案デアルト云フコトヲ斷言スルニ憚ラナイ(拍手)
  ソレデ此點ニ付テ委員會ニ於テ色と政府ヘ御尋ヲ致シテ見
  マスルト、政府ノ御答辯ガ斯樣ナ事ニ歸著致ス、或時色と委員
  ノ質問ヲ聽イテ見タガ、併シ若シ府縣稅ヲ納付シタ者ニ權
  利ヲ與ヘルト云フコトニナルト、現在ノ約三倍ニナル、之ガ政
  府案ノ如ク國稅ヲ標準トスレバ、約二倍デ済ム、現在ヨリ
  一躍シテ三倍ニナルガ如キハ激變デアリ激增デアル、餘リ選
  擧權ヲ擴張スル事ニナルカラ、暫ク二倍ニ止ムベク國稅主
  義ヲ採ッタノデアルト云フヤウナ政府ノ答辯デアリマス、此答
  辯ハ甚ダ不徹底デアル、極テ不理窟デアルト云フコトヲ私ハ
  思フ、故原總理大臣ガ吾々ノ主張スル衆議院議員選擧法
  ノ改正、卽チ普選ニ對スル反對ノ御演說、床次現內務大
  臣ガ普選案ニ對スル反對ノ御演說、是等ニ依リマスト云フ
  ト先刻ドナタカノ御言葉ニアリマシタヤウニ、漸ヲ以テ進ムベ
  キモノ、先ヅ地方制度地方議會ニ於テ選擧權ヲ擴張シ、サ
  ウシテ漸次上ニ及ポシテ、衆議院議員ノ選擧法ヲ改メルヤ
  ウニシタイ、ソレダカラ吾々ハ普通選擧ニハ絕對ニ反對デハ
  ナイガ、、暫ク地方議會ニ於テ選舉權ヲ擴張シテ以テ衆議院
  ノ方ニ及ボシタイト云フコトガ、原總理大臣、床次內務大
  臣ガ此普選案ニ對スル御反對ノ骨子ニ相成ッテ居ルノデア
  ル、所ガ今日ンレデハ地方議會、府縣會議員ノ選擧ニ於テ、
  選擧權ヲ擴張シヤウト云フコトデ本案ガ提出サレナガラ、政
  府ニ於テハ餘リ選擧權ヲ擴張スル事ハ宜シクナイト仰セニ
  相成リマスルガ、此點ニ於テハ大ナル矛盾ガアルト私ハ信ズ
  ルノデアリマス(拍手、「ノウー〓」)先ヅ地方議會ニ於テ選擧
  權ヲ擴張シテ、ンレカラ衆議院議員ノ選擧ニ及ボシタイト
  云フ事ガ原總理大臣及床次內務大臣ノ此御演說ノ眞意
  ヨリ出タルモノナリトスレバ、吾々ガ主張スル大ニ選擧權ヲ
  擴張スルト云フ吾々ノ主張ニ對シテハ、政府ハ賛成ヲシナ
  ケレバナラヌ結論ニ到達スルモノハ私ハ考ヘマス、然ルニ今
  此地方議會ノ選擧ニ於テ、選擧權ヲ擴張スルト云フ事ガ
  三倍ニモナレバ困ルカラ、暫ク不徹底ナル擴張ニ止メントス
  ルガ如キハ、私ハ大ナル矛盾デアルト考ヘマス-矛盾デハナ
  イ、衆議院議員ノ選擧權ノ問題、卽チ普選案ニ對シテ言ッ
  タコトハ其場限リノモノデアルト仰シヤレバ、吾々亦何ヲカ
  言ハンヤデアル、殊ニ本案ヲ提出シタ理由トシテ、內務大臣
  ガ此席ニ於テ述ベラレタ提案ノ要旨ノ御演說ヲ承リマスト、
  木案ハ大ニ送擧權、被選擧權ヲ擴張スル爲ニ出シタノダト、
  斯ウ僧セニナッテ居ル、選擧權ヲ擴張スル爲ニ出シタモノナ
  ラバ、徹底的ニ擴張スル方ガ宜シクハアリマセヌカ、不十分
  ナル擴張デ宜イト云フコトハ、論理ノ上ニ於テ才盾デハアリ
  マセヌカ(拍手)吾々ガ此政府案ヲ修正セントスルノハ、斯ウ
  云フヤウナ事ガ一ツノ理由ト相成ッテ居リマス、デ斯ウ云フ
  理由ニ依リマシテ、吾々ハ國稅ヲ斥ケ、市町村公民ニ對シテ、
  普ク選擧權、被選舉權ヲ與ヘル、斯ウ風ナ事ニ致シタイト
  思フ、吾々ノ修正意見ノ如ク市町村公民ニ普ク選擧、被選
  舉ノ權ヲ與ヘルナラバ、國稅納付者ハ勿論、府縣稅ヲ納付
  セル者モ矢張附加稅ヲ拂フ結果トシテ當然權利ヲ得ルコ
  トニナリマス、是ハ暫ク納稅主義ヲ採ルトシテモ、尙ホ政府
  案ニハ斯ウ云フ〓盾ガアルト云フ事ヲ申シタニ止ルノデアル
  カラ、吾々ハ納稅主義ヲ採ラナイ結果トシテ、同時ニ市町
  村制ノ改正案ヲ提出シ、サウシテ是カラ一般ノモノニ對シテ
  選擧權ヲ與ヘヤウ、斯ウ云フ趣旨ニナリマスカラ、吾々ノ市
  町村制ノ改正案ガ通リマスレバ、公民ト致シテ置ケバ總テ
  ノ者ニ選擧權ヲ及ボスコトニナリマス、其他ノ神官、僧侶、
  是等ノ者ニ選擧權ヲ與フベキモノ、被選擧權ヲ與フベキモ
  ノデアルト云フコトハ、委員長御報告ノ通リ、政府ニ於テモ
  其趣旨ニ賛成シ、全委員之ニ贊成シタト云フ事ニ依シテ、當
  然私ハ此議場ニ於テ滿場ノ御同意ヲ得ラレルモノデアルト
  確信ヲ致シマス(拍手)全委員ガ賛成ヲ致シ、政府亦其趣
  旨ニ贊成ヲシ、只今小橋內務次官ノ御答辯ニモアリマス如
  ク、其趣旨ニ賛成デアルト云フナラパ、他ニ是ト同ジク改正
  ヲ要スベキモノモアリタレバトテ、之ニ反對スベキ理由ニハナ
  リマセヌ、他ニ本案ト同樣ナ理由ヲ以テ改正スベキモノ、卽
  ヲ衆議院議員選擧法若クハ市町村會議員ノ選擧法ニ於
  テモ、是等小學〓師若クハ僧侶等ノ選擧權、被選擧權ヲ拒
  ンデ居ッテ不都合デアルナラバ、本案ト共ニ之ヲ改正スベキモ
  ノデアル、然ルニ他ニ同樣ナモノガアルカラ、理窟ガアルケレ
  ドモ之ニ贊成セヌト云フ、只今ノ内務次官ノ御答辯ハ甚ダ
  滿足シナイノミナラズ、甚ダ不徹底デアルト信ジマス、此點ハ
  蓋シ滿場ノ御賛成ヲ得ラレルト私ハ確信ヲシテ大ナル期待
  ヲ持シテ居リマス、其他ノ小選擧區制、參事會員ノ任期ノ事
  是等ノ事ハ說明ヲ要シナイト信ジマス、ドウカ御賛成下サル
  コトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=35

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• 036・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　是ヨリ討論ニ移リマス、通告ニ
  依リマシテ、發言ヲ許可致シマス、阪上貞信君
  〔阪上貞信君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=36

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• 037・阪上貞信

  ○阪上貞信君　只今日程ニ上ッテ居リマスル府縣制ノ改
  正案ニ付キマシテ、本員ハ委員長ノ報告ニ贊成ヲ致シマシ
  テ、修正案ニ反對ノ意見ヲ表明スル者デアリマス、只今板野
  君カラ修正ノ箇所ニ付キマシテ、數點ヲ擧ゲラレテ居ルノデ
  アリマスルガ、其中主ナル箇所ニ付キマシテ御說明ガアリマ
  シタガ、他ノ點ハ說明ヲ省クト云フコトデアリマス、隨テ私モ
  其主ナル點ニ付キマシテ、聊カ委員長報告ニ贊成ヲスル理
  由ヲ述べタイト考ヘルノデアリマス、第一ニ修正意見トシマ
  シテ出シタノハ、第四條ノ「府縣知事ハ府縣會ノ議決ヲ經
  内務大臣ノ許可ヲ受ケ前項ノ規定ニ依ル選擧區ヲ分チテ
  數選擧區ト爲スコトヲ得」「前項ノ規定ニ依リ選擧區ヲ分
  ツ場合ニ付テ必要ナル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」ト云フ、
  此規定ヲ削除シタイト云フ御意見デアリマス、是ハ御承知
  ノ如ク現在ニ於キマシテハ、總テ郡市ヲ標準ト致シテ居ルノ
  デアリマス、然ルニ之ヲ時勢ノ進歩ニ伴ヒマシテ、其郡市ノ
  中ニ於テ更ニ其選擧區ヲ小區分ニシタイト云フノガ、此立
  法ノ精神デアリマス、御承知ノ如ク衆議院議員ノ選擧ニ付
  キマシテモ、大選擧區制ガ適當デアルカ或ハ又小選擧區制
  ガ適當デアルカト云フコトニ付キマシテハ、今日マデ學者及
  實際家ノ中ニ於テ幾多ノ議論ノ存シタル所デアリマス、併
  ナガラ今日世界ノ文明國ト稱セラルヽ所ノ各國ハ、何レノ
  國ニ於キマシテモ、總テ選擧ニ付キマシテハ、多クハ小選擧
  區制度ヲ採ッテ居ルノデアリマス、現ニ我ガ日本帝國ニ於キ
  マシテモ、現今實施シテ居ル所ノ衆議院議員選擧法ハ、明
  ニ此小選舉區制度ヲ採,テ居ルノデアリマス、此小選擧區
  制度ヲ採ッテ居ルニ付キマシテモ、多少ノ議論ハアリマスガ、
  要スルニ小選擧區制度ハ選擧ノ公正ヲ保ツ上ニ於テ、又
  選擧ニ於ケル所ノ競爭上ノ弊害ヲ避ケル點ニ於テ、總テノ
  點ニ於テ大層利益ノアルト云フコトハ、今日事實ニ於テ證
  明セラレテ居ル所ノ事實デアルノデアリマス、御承知ノ如ク
  府縣制カ實施セラレマシタ當時ト〓日トハ、我國ノ國情ハ
  餘程變っテ居ルノデアリマス、市ニ於テハ現行法ニ於キマシ
  テモ、或點マデハ其選擧區ヲ分ツコトガ出來ルノデアリマス
  カラ、之ヲ小サク分ツト云フコトヲ府縣會ノ議決ヲ經マシテ
  府縣知事ガ內務大臣ニ申請ヲシテ、之ヲ實行スルト云フコ
  トハ、今後ニ於ケル所ノ此選擧權ノ增加ニ伴ヒマシテ、殆ド
  倍數ニナラントスル所ノ此選擧人ノ增加ニ伴フ所ノ競爭
  上ノ弊害ヲ避ケル上ニ於キマシテハ、蓋シ最モ適當ナル所ノ
  一ツノ立法デアルト云フコトヲ私ハ深ク信ズルノデアリマス、
  此意味ニ於キマシテ其選擧ノ區分ヲスルト云フコトニ向ッテ
  修正ヲセラレルト云フコトニ付キマシテハ、私ハ絕對ニ反對
  ノ意思ヲ表シテ、卽チ政府ノ改正案通リニ之ヲ定メルガ最
  モ適當ナリト云フコトヲ信ズル者デアリマス(拍手)其次ニ板野
  君カラノ修正案ノ御意見トシテ出マシタ第六條ノ國稅主
  義デアリマス、何故ニ府縣制ノ改正ニ當ッテ、此國稅制度ヲ
  存置シタカト云フコトニ付キマシテ、色〓御意見ガ出マシタ
  ノデアリマスガ、御承知ノ通リ、憲政會竝ニ國民黨ハ衆議院
  議員ノ選擧ニ於キマシテモ、普通選擧主義ヲ採ッテ居ラレル
  ノデアリマス、普通選舉主義ヲ採ッテオ井デニナリマス、憲國
  兩黨ト致シマシテハ、固ヨリ此國稅主義ヲ排シテ、總テノ市
  町村ノ公民ニ對シテ選擧權ヲ與ヘルト云フコトヲ主張ザレ
  ルノハ、當然ノ歸結ダラウト考ヘルノデアリマス、併ナガラ吾々
  ハ御承知ノ通リ此普通選擧ニ對シテハ、未ダ之ヲ施行ス
  ルニ時機尙ホ早シト考ヘテ居ル者デアリマス、衆議院議員
  選擧ニ於テモ斯ノ如キ意見ヲ持ッテ居リマスガ故ニ、市町村
  制ニ於キマシテモ、府縣制ノ上ニ於キマシテモ、此納稅撤廢
  主義、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、財產制限主義ト云フモノヲ絕對
  ニ廢スルト云フコトニ付キマシテハ、吾々ハ同意ヲ致スコト
  ガ出來ナイノデアリマス、又板野君カラノ御意見トシテ、假ニ
  納稅主義ヲ採ルトシテモ、何故ニ國稅主義ヲ採ッタノデアル
  カ、之ヲ市町村ニ於テハ市町村稅ニ依リ、衆議院議員ニ於
  テハ既ニ國稅主義ニ依ッテ居ルデハナイカ、然ラバ府縣ニ於
  テハ當然府縣稅ヲ標準トシテ此選擧權ヲ定メルノガ當然ノ
  歸結デハナイカト云フヤウナ御意見ガ出タノデアリマス、是ハ
  一面ノ理窟デアリマスガ、之ヲ國稅主義ニ依リマスト云フト
  政府委員モ委員會ニ於テ屢、繰返サレテ居リマス如ク、現
  行法ニ於テ全府縣ニ於ケル選擧人ハ二百七十四万人、之
  ヲ改正法ニ依リマスト云フト、五百三十四万人、然ルニ若
  シモ此國稅主義ヲ棄テマシテ、府縣稅主義ニ依ルト云フコ
  トニナレバ、是ガ殆ド七百万人以上ニ上ッテ來ルノデアリマ
  ス、現在ノ改正ダケデモ現行法カラ見マスルト云フト、選擧
  人ノ數ハ殆ド倍加スルノデアル、然ルニ若シモ之ヲ國稅主
  義ヲ棄テマシテ、府縣稅主義ニ依ルト云フコトニナリマスレ
  バ、殆ド三倍以上ト云フ增加ヲ見テ來ルノデアル、斯樣ナル
  急激ナル改正ハ果シテ現下ノ我ガ國情ニ於テ適當デアルガ
  ドウカ、是ハ普通選擧ヲ議論サレマシタ時分ニ於テモ、色ニ
  御議論モアリマシタ如ク、我黨ハ今日マデ此普通選擧ニ對
  シテモ理想トシテ反對ヲ決シテ居ルノデハナイ、主義トシテ
  決シテ反對致シテ居ルノデハナイノデアリマス、卽チ我國ノ
  今日ノ現狀ニ顧ミテ、果シテ今日之ヲ實行スルノガ適當デ
  アルカドウカト云フコトヲ考ヘテ居ルノデ、選擧權ノ擴張ト
  云フコトハ年來我黨ノ主義トシテ今日マデ實行致シテ來シテ
  居ル、此度ノ府縣制ノ改正モ此理想ニ基キ、此理想カラ割
  出シマシテ、現在ノ選舉人ハ三圓以上、被選擧人ハ十圓以
  上ト云フヤウナ、斯ウ云フ制度ノ下ニアル所ノ此府縣制ヲ
  改メテ、之ヲ國稅サヘ納メルナラバ、其金額ニ於テ何等ノ制
  限ヲシナイト云フコトニシテ、所謂地方自治ニ於ケル所ノ選
  擧民ノ權利ヲ擴張致シタノデアリマス、斯ノ如キ時代ノ進
  展ニ伴ヒ、此時勢ノ進步ニ顧ミ、今日ノ我國ノ現狀ニ最モ
  適當ナル方法ナリトシテ、卽チ政府ハ此府縣制ノ改正ヲ企
  テタモノダト云フコトハ明カナル理由デアリマス、私ハ此意味
  ニ於キマシテ、府縣稅主義ト云フモノハ、板野君ニ依シテ府
  縣稅主義ヲ何故ニ採ラヌカト云フ御議論ニ對シマシテハ、只
  今申上ゲマシタヤウナ理由ニ依ッテ、是ハ漸次選擧權ヲ擴張
  スルト云フ此方針ノ下ニ、漸進主義ヲ採ルト云フ意味ニ於
  キマシテ、此政府ノ原案ハ最モ適當ナル所ノモノデアルト云
  フコトヲ信ジテ、修正案ニ反對ヲスル者デアリマス(拍手)更
  ニ此第六條ノ神官、神職、僧侶、又ハ諸宗ノ〓師、小學校ノ
  〓員ニ對シテ被選擧權ヲ與ヘルノ可否如何ト云フ問題ニ
  付キマシテ、只今板野君ヨリ此三項、竝四項ノ規定ヲ削除
  スルト云フ御修正ガ出マシタノデアリマス、此問題ニ付マシ
  テハ、過日來委員會ニ於キマシテモ、屢〓繰繰サレタノデアリ
  マシテ、本員モ亦此問題ニ付キマシテハ、大體ニ於テ同ジ意
  見ヲ持ッテ居ルノデアリマス、御承知ノ如ク、昔ハ宗〓ト云フ
  モノハ、或ハ政治、法律若クハ產業、或ハ〓育、其他美術社
  會百般ノ事ニ宗〓ハ關係ヲ致シテ居リマシタ時代モアッタ
  ノデアリマスガ、社會ノ一般ノ進歩發達ニ伴ヒ、產業、經濟
  ノ此變革ハ、自然一般ノ分業ノ發達ヲ促シマシテ、其結果、
  宗〓ト云フモノト政治ト云フモノガ漸次分離セラレタコトハ
  諸君モ御承知ノ通リデアル、政治ト宗〓ガ分離ヲ致シマシ
  テ以來、宗〓家ハ單ニ其信仰上ノ立場ニ立チマシテ、社會若
  クハ一般政治、總テノ方面ニ關係ヲ絕ッテ居ッタノデアリマス、
  而シテ社會カラ閑却サレ、國家カラ閑却サレタト云フコトハ
  今日迄ノ歴史上ニ於テ明カナル所ノ一ツノ現象デアルノデ
  アリマス、然ルニ最近ニ於キマシテ、此僧侶其他宗〓家ナル者
  ガ、大ニ自覺シテ彼等ハ單ニ信仰ト云フ一ツノ小サイ所ノ信
  仰ノ下ニ立タズシテ、更ニ進ンデ社會及國家ノ方面ニ向ッテ
  大ニ其力ヲ注ギ、大ニ貢獻セントスル考ヲ彼等ガ痛切ニ持シ
  テ來タノデアリマス、此意味ニ於キマシテ、此目覺メタル所ノ
  一般ノ宗〓家、卽チ僧侶竝ニ諸宗ノ〓師、或ハ小學校ノ〓
  員ニ對シマシテモ、唯政〓一致ヲ理由トスルトカ、若クハ是等
  ガ選擧ニ關係シタナラバ選擧ノ公正ヲ破ルトカ云フヤウナ
  單純ナル理由ニ於テ、是等ニ向ッテ選擧權ヲ與ヘヌト云フコ
  トハ、私ハ甚ダ時代ニ適セヌ所ノ議論デアルト考ヘテ居ルノ
  デアリマスガ、此意味ニ於キマシテ、是等ノ者ニ對シテ被選
  擧權ヲ與ヘルコトニ付キマシテハ、私モ固ヨリ板野君ト同ジ
  ヤウナ考ヲ懷イテ居ルノデアリマスガ、先刻委員長カラモ
  報告サレマシタ如ク、政府ハ此府縣制ノ上ニノミ是等ノ制
  限ヲ解除スルト云フコトニナレバ、法制ノ統一ヲ全ウスルコト
  ガ出來ナイト云フノデアル、衆議院議員選擧法ニ於テモ、明
  ニ此點ニ於テ制限ヲシテ居ル、更ニ又市町村制ノ上ニ於テ
  モ、是等ノ問題ニ付テハ旣ニ制限ヲシテ居ル、然ルニ單リ府
  縣制ノ上ニ於テノミ、之ヲ認メルト云フコトニナレバ、自治ノ
  最モ地方公民ノ直接利害ヲ感ズル所ノ地方町村ニ於テモ、
  此權利ヲ有セズシテ、而シテ比較的此關係ノ薄イ所ノ府縣
  ニ於テ、此權利ヲ有スルト云フコトハ、甚ダ權利ヲ附與スルト
  云フコトノ上ニ根本精神ニ於テ違ッテ來ルト云フノガ、當局
  ノ意見デアルノデアリマス、此議論ニ對シマシテハ、吾々ガ假
  令今玆ニ之ヲ修正シマシテモ、政府ガ若シ之ニ不同意ヲ表
  シ、更ニ之ガ一度貴族院ニ迴リマシタ時ニ於テ、貴族院ハ果
  シテ此所謂修正意見ニ對シテ吾々ノ修正意見ヲ容レルヤ
  否ヤト云フ事モ亦考慮シナケレバナラヌノデアリマス、現ニ貴
  族院ハ昨年ノ議會ニ於キマシテモ、請願ナドニ對シテモ是等
  ノ問題ニ對シマシテハ、其被選擧權ノ要求ヲ容レテ居ナイ
  ノデアル、斯ノ如キ貴族院ニ對シテ果シテ、此衆議院ノ修正
  ガ貴族院ニ於テ··
  〔「此所ハ貴族院ヂヤナイ、貴族院萬能論者カ」其他
  發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=37

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• 038・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　靜〓ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=38

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• 039・阪上貞信

  ○阪上貞信君(續)　衆議院ト貴族院トノ權能ノ異ナルコ
  トハ、本員ト雖モ之ヲ認メテ居リマスガ、要スルニ吾々ハ之ヲ
  改メテ更ニ制限ヲ解除セントスルノガ、吾々ノ目的デアル此
  目的ニ對シテハ最善ノ方法ト、最善ノ努力ニ依ッテ、此權利
  ヲ與ヘルコトガ當然デアラウト考ヘルノデアリマス、其目的ノ
  達シナイモノヲ殊更ニ斯ノ如ク修正シテ、サウシテ上院ニ送
  ルト云フコトハ、此場合吾々トシテハ相當ノ考慮ヲ拂ナケレ
  パナラヌト考ヘルノデアリマス(拍手)此意味ニ於キマシテ板
  野君ノ御修正ニ對シテハ、其精神ニ於テハ本員之ニ同意
  致シマスルガ直ニ此場合ニ於テ、此全條項ヲ修正スルト云
  フ事ニ對シテノ御意見ニハ、遺憾ナガラ同意スルコトガ出來
  ナイノデアリマス(拍手)更ニ色〓ノ方面ニ於テ修正ノ箇條
  ガ多々アッタヤウデアリマスルガ、其說明ヲ伺ヒマセヌデシタ
  カラ、私ハ之ヲ申上ゲルコトヲ省略致シマス、府縣參事會ノ
  任期ニ付テ現行法ノ一年制ヲ改メテ、之ヲ二年制ニシタイ
  ト云フコトニ付テモ御意見ガアッタノデアリマス、是亦本員
  之ニ對シマシテハ或ル點迄ハ同意致シテ居ルノデアリマスガ、
  政府ガ此點ニ對シマシテノ辯明ハ、本法實施以來僅ニ三年
  デアル、未ダ此一年制ガ果シテ惡イト云フ所ノ實際ノ事實
  ガ明ニナッテ居ラヌノデアル、四年制ガ果シテ適當デアルカ、
  年制ガ果シテ適當デアルカ、更ニ又二年制ガ最モ適當デア
  ルカト云フコトニ付テモ、未ダ其〓究ガ十分至ッテ居ラヌト
  云フ事ヲ政府ハ申シテ居ルノデアリマス、此神官、神職、僧
  侶、其他諸宗ノ〓師、小學校ノ〓員ニ對スル所ノ被選擧權
  ノ撤廢ニ付テモ政府ハ相當考慮ヲシテ、相當ノ時期ニ於テ
  之ガ改正ヲスルコトニ吝ナラヌモノデアルト云フ事ヲ言ハレ
  テ居ル、又府縣參事會ノ任期制度ニ付キマシテモ、略〓同
  一ナルコトヲ委員會ニ於テ政府ガ之ヲ言明サレテ居ルノデ
  アリマスルガ故ニ、本員ハ其時期ニ於テ政府ニ向ッテ之ガ改
  正ヲスルコトヲ望ンデ、今日ハ此原案ニ對シマシテ、板野君
  ノ修正意見ニ對シテハ遺憾ナガラ贊成ノ意ヲ表スルコトガ
  出來ナイト云フコトヲ申上ゲテ、此壇ヲ降ラウト考ヘルノデ
  アリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=39

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• 040・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　淺賀長兵衞君
  〔淺賀長兵衛君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=40

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• 041・淺賀長兵衞

  ○淺賀長兵衞君　諸君、私板野友造君ノ修正意見ニ
  賛成ヲ表スル者デアリマス、而シテ其第一點ト致シマシテハ
  卽チ政府改正案ノ小選擧區制ノ途ヲ開イタル點ニ在リマ
  ス、只今阪上君ヨリ小選擧區制ノ效能ニ關シマシテ色〓御
  意見ガアリマシタガ、此小選擧區制ノ途ヲ開クト云フコトハ、
  所謂大選擧區制ニ比シマシテ、請託、誘惑、買收及競爭ノ
  激烈ヲ來シ、選擧ノ公正、神聖ナル投票ノ行使ハ全然阻害
  セラルヽ所ノ途ヲ開クト云フモノハ、卽チ現在ニ於ケル地方
  選擧界ニ於ケル其腐敗墮落ヲシア、一層其堕落ノ底ニ沈
  淪セシメルト云フ、此點ニ關シテ私ハ先ヅ第一ニ反對ヲ表
  スルノデアリマス、加之現在ニ於ケル地方制府ノーイヤ地
  方議會ニ於ケル模様ヲ見マスルト云フト、殊ニ極端ナル黨
  弊、黨爭ニ陷リツヽアルノデアリマス、卽チ地方問題ノ大小
  ヲ問ハズ、其細大ヲ問ハズ、孰レモ其黨爭ノ具ニ供セラレツツ
  アリマス、而モ政友會內閣ニ至ッテカラ、此黨爭ガ激烈ニ
  ナリ、露骨ニナッタル點ニ付キマシテハ、卽チ天下周知ノ事實
  デアリマス(拍手一ノウ〓〓」)政友會內閣ハ大正九年衆議
  院議員選擧法ノ改正ヲ爲シ、同時ニ區制ニ關シマシテモ自
  黨ニ御都合ノ好キ小選舉區制ヲ採用致シテ、而シテ此選
  擧法ヲ實施シテ、第四十二議會ニ於テハ名ヲ普選案ニ藉
  リマシテ不當ナル改選ヲ爲シ、官權金權ノ力ニ依ッテ二百
  八十餘名ノ多數ヲバ衆議院ニ於テ得テ、其勢力ヲ扶植ス
  ルヤ今又府縣制第四條ノ改正ヲ爲シ、而シテ此便宜的規
  定ヲ設ケ、卽チ自己ノ黨務擴張ノ爲ニ利用セントスルハ明
  ナル事デアリマス(拍手)何トナレバ諸君、現在ニ於ケル一道
  三府四十三縣ヲ通ジテノ多數ノ知事ハドウデアルカ、卽チ
  政友會ノ知事ト自稱シ、或ハ政友會ノ意ニ迎合スル所ノ
  知事ガ多イト云フ事モ天下周知ノ事實デアリマス、卽チ此
  政友會ノ意思ニ迎合スル所ノ知事ヲシテ、小選舉區ノ發
  案ヲ爲サシメ、而シテ政友會員ノ多數ヲ占ムル所ノ地方議
  會ノ議決ヲ經テ、而シテ政友會ノ首領タル床次内務大臣
  之ニ許可ヲ與へ、而シテ其黨勢擴張ヲ圖ラントスルト云フ
  裏面ノ消息ガ、此規定中ニ包含セラルヽコトハ、蓋シ火ヲ睹
  ルヨリモ明カナコトデアリマス(拍手)卽チ此便宜的規定ハ、
  取モ直サズ地方選擧運用上ノ便宜的規定ニアラズシテ、政
  友會ノ黨勢擴張ノ爲メノ便宜的規定ト稱スルモ蓋シ過言
  デハナイデアリマス(拍手)思ヒ此所ニ到ックナラバ、斯ノ如キ
  便宜的規定ヲ設ケテ、而シテ小選擧區制ノ途ヲ開クト云
  フコトハ、愈、こ益〓地方自治制ノ一大破壞ニシテ、卽チ我國
  立憲政治ノ前途ハ洵ニ寒心ニ堪ヘナイ結果ヲ生ズルノデア
  リマス(拍手)此意味ニ於テ此便宜的規定設定ニ關シテ、
  全然反對ノ意ヲ表スルノデアリマス(「廢メテ置ケ」ト呼フ者
  アリ)廢メル必要ハナイ討論デアル、能ク聽キ給ヘ、吾々ハア
  ナタ方ノ方デヤル時ニハ吾々ハ謹聽シテ聽イテ居ッタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=41

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• 042・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　私語ヲ禁ジマス

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• 043・淺賀長兵衞

  ○淺賀長兵衞君(續)　次ニ第二點ト致シマシテハ、現行
  府縣制ニ對スル政府改正法律案ノ第六號ニハ、卽チ納稅
  主義ヲ採シテ居リマスルガ、吾々ハ勿論納稅撤廢主義ヲ主
  張スルノデアリマス、而シテ政府案ニ依リマスレバ、相變ラズ
  納稅主義ヲ固執シ、而モ府縣ニ對スル直接負擔義務者ニ
  之ヲ與ヘズ、直接國稅納稅者ニ與ヘルコトハ先程來ノ質問
  應答、竝ニ板野君ノ意見ノアリマシタ通リ、矛盾ヲ發揮スル
  ノデアリマス、何トナレバ諸君、此直接國稅主義ニ依レバ、
  結果ハドウデアルカ、所謂選擧權ノ擴張ハ比較的文化ノ程
  度ノ進步セル都會ニ於テ薄ク、所謂農村ニ於テ厚クナサル
  ノデアリマス、此點ニ關シマシテハ、政府ノ調査ニ依リマスレ
  バ、明ニ立證スルノデアリマス、卽チ有權者ノ擴張ノ增加割
  合ハ、市部ニ於キマシテ六割八分、郡部ニ於キマシテハ九割
  七分デアリマス、其間ニ於キマシテ二割九分ノ差違ガアルノ
  デアリマス、卽チ此事實ヲ以テ如何ニ直接國稅主義ノ不公
  平デアルカト云フコトヲ立證スルノデアリマス(拍手)申スマ
  デモナク、直接國稅、卽チ地租ノ如キハ一錢以上ヲ納ムル
  者ハ、何レモ此府縣會議員ノ選擧權、被選擧權ヲ有シ、而
  シテ都會ニ於ケル直接營業稅納付者、卽チ二千圓以下ノ
  府縣稅、營業稅、納稅者ノ如キハ、何レモ此選擧權ヲ有セ
  ザルガ如キハ最モ矛盾撞著セル誤解、竝ニ不徹底ナル案ノ
  理由ハ玆ニ在ルノデアリマス、此點ニ關シマシテハ、如何ニ
  政府ガ答辯ヲ婉曲ニ致ン、詭辯ヲ以テ各辯セントシテモ、
  吾々ハ此矛盾ニ反對セザルヲ得ナイノデアリマス、況ヤ吾々
  ハ人ノ人格ニ重キヲ置イテ、選擧權ヲ與ヘルコトガ普選論
  ノ主張ノ骨子ト爲ッテ、今日マデ政府ト戰ッテ居ル以上ハ、勿
  論府縣制ノ如キ改正ヲ爲スニ當ッテモ、所謂人格ニ重キヲ
  置キ、唯物主義ノ如キ近來ノ禽獸主義ヲ拾テヽ、玆ニ人格
  主義ニ依フテ選擧權ヲ與フルノガ急務デアリマス、吾々ハ常
  ニ人格ヲ本位トシテ、普選論ヲ唱ヘテ居リマス、本案改正ニ
  於テモ勿論此主張ニ基イテ、吾々ハ納稅資格ノ撤廢ヲ絕
  叫シタノデアリマスカラ、板野友造君ノ納稅資格撤廢ニ全
  然賛意ヲ表スル次第デアリマス、然ルニ只今阪上君ノ此點
  ニ關スル御討論ハ洵ニ不撤底デアリマス、加之去ル三月三
  日ノ當日ノ委員會ニ於キマシテハ、政友會委員ノ多數ハ、
  矢張直接府縣稅主義ヲ御執リニナラントシタノデアリマス、
  然ルニ一夜ニシテ再ビ此政府原案ニ對シテ贊意ヲ表セラル
  ルト云フ、其裏面ノ御苦衷ハ洵ニ御察シ申上ゲマス、卽チ
  其心ハ直接府縣稅納稅主義デアルニモ拘ラズ、偶〓政府ノ
  運動、又ハ政友會ノ幹部諸君ノ所謂御誘導ニ依リマシテ、
  一夜ニシテ直接府縣稅主義ヲ拾テラルヽガ如キハ、私ハ何
  トモ御形容ノ申上ゲヤウノ無イコトヲ遺憾トスルノデアリマ
  ス(拍手)シレカラ第三點ニ付キマシテハ、彼ノ神官、神職、僧
  侶、其他諸宗〓師、及小學校〓員ニ對シテ普通選擧權附
  與ノ件ニ關シマシテハ、ル元程板野友造君ヨリ既ニ御話ニナツ
  タ通リ、委員會ニ於キマシラハ、全會一致ノ希望デアリマシ
  タ、而シテ此點ニ關シマシテ特ニ私ハ-委員會當初ニ於
  ケル政府當局ノ御態度御答辯ハ如何デアリマシタカ、當時
  ニ於キマシテハ矢張以前ニ於ケルガ如ク彼等ニ選擧權ヲ
  附與スルコトハ洵ニ弊害ヲ助長スル故ニ、此問題ニ付テハ
  反對デアルト云フ意思ヲ表サレテアッタノデアリマス、然ルニ
  三月四日最終ノ委員會ニ於キマシテハ、此點ニ關シマシテ
  ハ政府ハ先程辯明ヲ度々受ケタル如ク、他ノ地方制度ノ改
  正竝ニ衆議院議員選擧法ノ改正ニ於テモ此點ハ必要デア
  ル、故ニ此被選擧權附與ノ問題ハ他日ニ讓ルベシト云フ答
  辯ヲ爲シタル點ニ付テハ、當初ノ委員會ニ於ケル御態度ト
  答辯ト比較致シタナラバ、卽チ政府當局者竝ニ政友會諸君
  ニ於ケル確カニ其蒙ヲ啓ケル一進步デアリマス、然リト雖モ
  此點ニ〓シテ、尙ホ一時ヲ彌縫セントスルガ如キ不明確ナ
  ル議論、不明確ナル他日解決主義ヲ此處ニ絕叫スルガ如
  キハ、何タル事デアルカ、卽チソレハ社會一般ヲ胡麻化シ、而
  シテ此爲ニ熱烈ナル要求希望ヲ有スル所ノ神官、神職、僧
  侶、諸宗〓師、及小學〓員ニ對シテ、彼等ノ熱烈ナル要求
  ニ對シテ一時的彌縫策タル點ニ於テ、何タル陋策デアルカ
  ト云フコトヲ批評セザルヲ得ナイノデアリマス、今ヤ此問題
  ノ如キハ、既ニ論ジ盡サレ、而シテ此府縣制第六條第六項
  中、第三號、第四號ヲ取去シテ、而シテ彼等ノ熱烈ナル要求
  ヲ充サルヽノハ、人格者タル爲政家ノ執ルベキ途デハアリマ
  セヌカ、此點ニ關シテ世ヲ胡魔化サントスルガ如キ、斯ル宣
  明ヲ爲スコトハ何ンタル遺憾デアルカト云フコトヲ私ハ此壇
  上ヨリ國民ト共ニ〓嘆セザルヲ得ナイノデアリマス、此點ニ
  關シマシテ、只今阪上君ヨリ不徹底ナル御意見ガアリマシ
  タガ、本員大體同意見デアルガ、此點ニ關シマシテハ暫ク
  政府ノ他日ノ解決意見ニ尊重ヲ置キ、以テ原案ニ賛意ヲ表
  スルノデアルト云フノデアリマスガ、私ハ男トシテハ一度理想
  トシテ賛意ヲ表スル以上ハ、必ズ此點ニ付テハ同時ニ實行
  スベク實現ニ向ッテ進マナケレバナラヌ、政友會諸君ハ常ニ
  所謂理想ヨリハ實行主義ヲ以テ進マウト云フコトヲ標榜シ
  テ居ルデアリマセヌカ、若シ此點ニ於テ然リトシタナラバ、此
  案ニ大體ノ賛意ヲ表スル以上ハ、何故ニ百尺竿頭一歩ヲ
  進メテ此案ニ全然賛意ヲ表セナイノデアリマスカ、斯ル事ハ
  私ハ男子トシテ洵ニ御行動ノ上ニ於テ遺憾ニ堪ヘナイ次
  第デアリマス、其他府縣參事會員ノ任期問題ニ付キマシテ
  モ、矢張本員ハ之ニ同意ヲ表シマスルガ、政府ノ意見ニ重キ
  ヲ置クト云フコトハ至當ナリト認メテ、原案ニ賛成デアルト
  言ヒマスルガ、此案ノ如キモ同樣ニ阪上君ノ爲ニ惜ム次第
  デアリマス、其他板野君ヨリ提出致サレマシタル府縣制ノ
  他ノ改正ノ要點ニ關シマシテハ、勿論府縣制運用上ニ最モ
  必要ナル修正箇條デアリマシテ、其理由ハ十分此處ニ申ス
  マデモナク諸君ノ御承知ノ通リノ事ト在ジマシテ、此點ヲ略
  シテ以上ノ主ナル點ヲ述ベテ板野君ノ修正意見ニ賛意ヲ
  表スル次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=43

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• 044・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　他ニ發言ノ通〓モアリマセヌカ
  ラ、計論ハ終結セラレマシタ-採決致シマス-先ヅ修正
  案ニ付テ採決致シマス、修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒ
  マス
  〔賛成者起立〕

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• 045・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　少數デアリマス、仍テ修正案ハ
  否決サレマシタ-次ニ禾員長ノ報告ニ付テ採決致シマス
  委員長ノ報告ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  〔賛成者起立〕

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• 046・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　多數デアリマス、仍テ委員長報
  告通リ可決致シマシタ、是デ第二讀會ハ終リマシタ

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• 047・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、第二讀會議
  決ノ通リ、可決確定アランコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 048・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハナイ
  ト認メマス、仍テ直ニ第三讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト
  致シマス
  府縣制中改正法律案第三讀會
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 049・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ハナイモノト認メマス、仍
  テ第二讀會デ議決ノ通リ可決確定セラレマシタ(拍手)-
  次ハ日程第四、第五、第六ノ三案ハ同一委員ニ付託シタ
  議案デアリマスカラ、一括議題トスルニ御異議ハアリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 050・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ハナイト認メマス、仍テ
  日程第四、北海道會法中改正法律案、日程第五、北海道
  地方費法中改正法律案、日程第六、市制中改正法律案、
  右三案ヲ一括シテ議題ト爲シ、其第一讀會ノ續ヲ開キ、委
  員長ノ報告ヲ求メマス-東武君
  第四北海道會法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一北海道會法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト決致候此
  段及報告候也
  大正十一年三月六日
  北海道會法中改正法律案委員長
  東武
  衆議院議長奧繁三郞殿
  〔小字及-ハ委員會修正〕
  北海道會法中改正法律案中左ノ通修正ス
  第七條第四項ヲ左ノ如ク改ム
  北海道廳若ハ北海道地方費ニ對シ請負ヲ爲シ若ハ
  ○ニ付北
  北海道地方費ニ於テ費用ヲ負擔スル事業ノ○請負
  海道廳長官又ハ其ノ委任ヲ受ケタル者ニ對シ
  ヲ爲ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ
  爲ス法人ノ無限責任社員、役員及支配人ハ北海道
  會議員ノ被選擧權ヲ有セス
  前項ノ役員トハ取締役、監査役及之ニ準スヘキ者竝
  〓算人ヲ謂フ
  第五北海道地方費法中改正法律案(政
  府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
  報告書
  一北海道地方費法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月六日
  北海道地方費法中改正法律案委員長
  東武
  衆議院議長奧繁三郞殿
  第六市制中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報〓)
  報告書
  一市制中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月六日
  市制中改正法律案委員長
  東武
  衆議院議長奥繁三郞殿
  〔東武君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=50

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• 051・東武

  ○東武君　只今上程ニナリマシタ三案ハ第一ハ北海道會
  法中ノ改正案デアリマス、第二ハ北海道地方費法ノ改正、
  第三ハ北海道ニ於ケル市制ヲ施行スル、所謂府縣ニ於ケル
  市制ノ改正案、第一ニ道會法ノ改正ハ北海道ト致シマシ
  テハ、殆ド十年來ノ懸案ガ當議會ニ於キマシテ解決ノ曙光
  ヲ見タコトヲ非常ニ喜シデ居ル次第デアリマス、北海道ノ道
  會ノ權限ハ極テ縮少サレテ居リマシテ、府縣會トハ餘程其
  權限ガ狹カッタノデアリマス、ソレヲ今囘改正ヲ致シタト云フ
  コトガ第一ノ趣意デアリマス、又選擧權ノ擴張ヲスルト云フ
  コトガ第二ノ趣意ニナッテ居ル、ソレカラシテ又同ジク北海
  道會法ノ權限ノ中デ、地方費支辨ノ取扱ノ事業ガ矢張是
  モ從來ノ權限ヨリ狹小ニ失シテアッタノデ、今回之ヲ擴張ス
  ルコトニナッタノデアリマス、第一ニ此道會ノ權限擴張ニ付テ
  ハ、法令ニ依ル權限ニ屬スル事項ノ外、第一歳入出豫算ヲ定
  ムルコト、決算報告ニ關スルコト、法令ニ定ムル外使用料手
  數料、北海道地方稅、及夫役、現品ノ賦課徵收ニ關スル權
  限擴張、不動產ノ處分竝ニ買受及譲受ニ關スルコト、積立
  金穀等ノ設置及處分ニ關スルコト、歲入出豫算ノ外新ニ
  義務ノ負擔ヲ爲シ及權利ノ抛棄ヲ爲スコト、財產及營造
  物ノ管理方法ヲ定ムルコト、是等ガ道會權限ノ主ナル擴張
  ノ事項ニナッテ居ルノデアリマス、第二ニ選擧權ノ擴張ニ對
  シマシテハ、獨立ノ生計ヲ營ムコト、二十五年以上ノ男子、
  又二年以來同一市町村內ニ住居ヲ有シ、市町村ノ費用ヲ
  負擔シ、一年以來直接國稅ヲ納ムルトキ、北海道内ニ於テ
  一年來土地ヲ所有スルトキ、北海道内ニ於テ直接國稅ヲ
  納メ、若クハ一年以上引續キ土地ヲ所有スルコト是等ハ府
  縣制ノ選擧權トハ多少趣ヲ異ニシテ居ルノデアリマス、ソレカラ
  シテ第三ニハ道參事會ノ設置デアリマスガ、從來此參事會
  ノ職務權限ニ屬スルモノハ、多ク道廳長官ノ權限ニ委囑致
  シテ居リマシタノヲ、今囘ノ改正ニ依リマシテ道參事會ヲ設
  置スルト云フコトニナリマシタ、同時ニ名譽職參事會員十
  名ヲ設ケルト云フコトガ此參事會設置ニ件フ所ノ內容デア
  ルノデアリマス、第四ニハ北海道地方費法ノ改正、此地方
  費ヲ以テ支辨スル所ノ事業ハ、從來權限ガ狹カッタノデアリ
  マスガ、之ヲ擴張スルコトニ致シマシタ、此事ニ付テハ營造
  物、土地ノ所有、其他色〓アリマスガ略シマス、第五ニ市制
  ノ改正案デアリマスルガ、北海道ニ於ケル所ノ市制ト云フモ
  ノハ、今日迄施行ニナッテ居ラナカッタ、札幌、小樽、函館、釧
  路、室蘭、旭川ト云フモノハ、内地ノ府縣ノ市以上ニ人口モ
  多イシ、其他總テノ資格ガ具。テ居タノデアリマスガ、古イ法
  令ノ下ニ於テ區制ニナッテ居リマシタノヲ、今回市制ノ改正
  ヲ致シマシテ-市制第百七十七條ヲ改正致シマシテ、是
  等ノ六箇所ニ市制ヲ施行スルト云フコトニナッテ居ルノデア
  リマス、ソレデ只今大要ヲ御報告申上ゲタコトデアリマスル
  ガ、委員會ニ於ケル質問應答ニ付テ最モ重要ナルコトハ、北
  海道會法ニハ府縣制ノ規定ニ在ル所ノ北海道會ハ法人デ
  アルト云フノ規定ガ無イノデアリマス、之ニ對シテ多少ノ疑
  問ガアリマシタ爲ニ、委員ノ中ヨリ屢〓政府ニ質問應答致シ
  タ所ガ-北海道會ヲ法人ト爲スト明ニ認定ヲシナイノカ
  ト云フ質問ヲシマシタ所ガ、之ニ對シテ政府ノ答辯ハ、法人
  デアルト云フ規定ガ無クトモ、法人デアルト云フコトニハ少
  シモ疑ヒハ無イノデアルト云フ、斯樣ナ御答辯デ、最モ明瞭
  ニナッタノデアリマス、終ニ臨ミマシテ、此三案ノ中ノ第一ノ
  北海道會法中ノ第七條ノ四項ニ於テ修正ガアルノデアリ
  マス、第七條第四項ヲ左ノ如ク改ムト云フ箇條ノ中ニ「北
  海道廳若クハ北海道地方費ニ對シ請負ヲ爲シ若ハ北海道
  地方費ニ於テ費用ヲ負擔スル事業ノ請負ヲ爲ス者及其ノ
  支配人又ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社
  員、役員及支配人ハ北海道會議員ノ被選擧權ヲ有セス」
  斯ウ云フコトニ原案ハナッテ居リマシタノヲ、「北海道地方費
  ニ於テ費用負擔スル事業ノ」ノ「ノ」「ヲ除キテ「ニ付北海道廳
  長官又ハ其ノ委任ヲ受ケタル者ニ對シ」ト云フ二十二字ヲ
  加フル修正ガ委員會ニ於テ可決ニナリマシタ、大要委員會
  ノ經過ハ申上ゲタ筈デアリマスガ、此段御報告申上ゲマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=51

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• 052・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　只今委員長ニ於テ報告ヲサレ
  マシタ三案ノ中デ、北海道會法中改正法律案ハ委員會ニ
  於テ修正ニナッテ居リマス、仍テ先ヅ此案ノ二讀會ヲ開クヤ
  否ヤヲ御諮リ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議ハ
  アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=52

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• 053・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、本案ハ
  第二讀會ヲ開クコトニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=53

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• 054・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミ
  マス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=54

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• 055・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハナイ
  ト認メマス、仍テ直ニ本案ハ第二讀會ヲ開キマス
  北海道會法中改正法律案第二讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=55

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• 056・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　本案ニ對シテ黑金泰義君外一
  名ヨリ修正案ヲ御提出ニナッテ居リマス、先ヅ提案ノ趣旨
  辯明ヲ求メマス、黑金泰義君
  〔黑金泰義君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=56

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• 057・黒金泰義

  ○黑金泰義君　只今議題ニ供セラレマシタ北海道會法
  中改正案ニ對シテ、國民黨ノ諸君ト吾々憲政會ト共ニ之
  ガ修正案ヲ提山致シマシ夕、其條項ハ改正案ノ第一條中
  ニ於キマシテ、第二項第三項ノ全部ヲ削除スル、第三條ニ
  於キマシテハ、之ヲ訂正致シマシテ「帝國臣民ニシテ獨立ノ
  生計ヲ營ミ年齡二十五年以上ノ男子ニシテ六箇月以上
  北海道内ノ同一市町村內ニ住所ヲ有スル者ハ北海道會
  議員選擧權及被選擧權ヲ有ス」第三項ノ第一項ヲ斯樣ニ
  改メマス、第二項、第三項、第四項、第五項ヲ削除致シマス、
  次ニ第二項ト致シマシテ「選擧人名簿ニ登錄セラレサル者
  ハ選擧ニ參與スルコトヲ得ス但シ選擧人名簿ニ登錄セラル
  ヘキ確定採決書又ハ判決書ヲ所持シ選擧ノ當日選擧會
  場ニ到ル者ハ此限リニアラス」又其次ニ一項ト致シマシテ、
  「選擧人名簿ニ登錄セラレタル者選擧權ヲ有セサルトキハ
  選擧ニ參與スルヲ得ス但シ名簿ハ之ヲ修正スルノ限リニア
  ラス」是ダケヲ追加スル意見デアリマス、此修正ノ理由ハ第
  一條ニ於キマシテ、二項三項ヲ創リマシタノハ、卽チ北海道
  ニ於テモ府縣制ノ改正案ノ如ク、小選舉區ヲ設ケルコトヲ
  得ルト云フ規定ニナッデ居リマスルガ爲ニ、之ニ反對ヲシテ
  削除致シタイト存ズルノデアリマス、第三條ノ修正ハ、是ハ
  選擧權被選擧權ノ資格ト致シマシテ、納稅ヲ根據ト致シマ
  ス、又北海道ハ一種ノ特色ガアリマスルガ爲ニ、一年以內
  土地ヲ所有スルト云フ所有權ヲ基礎ニ置イテ、選擧權被
  選擧權ヲ得ルコトノ規定ニ改正案ハナッテ居リマス、吾々ノ
  修正ハ之ヲ削除スルノデアリマス、此理由ニ付キマシテハ只
  今府縣制ノ改正案ニ付キマシテ、旣ニ國民黨ノ板野君ヨ
  リ、又我黨ノ淺賀君ヨリ、詳シク說明ニナラレマシタ爲ニ、時
  間ヲ省キ諸君ノ煩ヲ省イテ、私ハ其說明ヲ省略致シマス(拍
  手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=57

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• 058・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　賛否ノ通告ガアリマス、松實喜
  代太君
  〔松實喜代太君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=58

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• 059・松實喜代太

  ○松實喜代太君　只今議題ニ供セラレテ居ル所ノ北海道
  會法中改正法律案デゴザイマスルガ、本員ハ曩ニ委員長ヨ
  リノ御報告ニ賛成ヲ致シマス、サウシテ只今黑金君ヨリ提
  出ニナッタ所ノ修正案ニ反對ノ意ヲ表スル一人デアリマス、
  極テ簡單ノ御說明デアリマシタカラ、私モ極テ簡單ニ其反
  對ノ理由ヲ中述べタイト思ヒマス、先ヅ第一ニ此道會法ノ
  今囘ノ改正法ハ、先刻委員長ヨリモ述ベラレマシタガ、寶
  我ガ道民多年ノ希望デアッタノデアリマス、卽チ此現制度ヲ
  布イタノハ、明治三十四年デアッタノデアリマスガ、其當時ハ
  人口モ僅ニ百万餘ニ過ギナイ、又地方費ノ經濟モ百四五
  十万ニ過ギナカッタノデアリマスルガ、今日ニ至リマシテハ人
  口ハ二百三十五万餘ヲ算シテ居リマス、又地方費經濟ト
  シテハ實ニ一千万圓餘ヲ出テヽ居ルノデアリマス、所ガ此道
  會法ノ權限ト云フモノハ極テ狹小デアリマシテ、道參事會
  ノ設置モ無ク、道參事會ノ權限ハ道廳長官ノ專決處分ニ
  依ッテ之ヲヤルト云フヤウナ極テ變則ナ、極テ權限ノ狹小ナ
  ルモノデアッタノデアリマス、先ヅ之ヲ評シテ見マスルナラバ、
  平自治體ト申シテ宜シイノデアリマシタガ、今囘ノ改正案ニ
  依リマシテ、全然トハ申シマセヌガ、其十中ノ九分九厘マデ
  ハ、府縣制ヲ準用スルコトニナッタノデアリマス、卽チ道會法
  ヲ改正シ、地方費法ヲ改正致シマシテ、十中九分九厘マデ
  ハ府縣制ヲ準用スルコトニナッタノデアリマスルカラ、誠ニ是
  ハ吾々トシテハ大ニ贊成セザルヲ得ヌノデアリマス、卽チ其
  主ナル改正ノ中デハ、選擧權被選擧權く擴張、或ハ道會ノ
  權限擴張、又只今申シマシタヤウニ道參事會ノ新設等デア
  リマシテ、北海道ノ特殊ノ事情ガアル、其事情ノアル關係ノ
  事項ヲ除クノ外ハ、殆ド總テ內地ノ府縣制ヲ準用スル事ニ
  ナッタノデアリマス、故ニ私共ハ此政府提案ハ大ニ贊成ヲ表
  スルノデアリマス、只今黑金君ニ依ッテ「提案サレタ所ノ修正
  案ハ、是ハ一言ニシテ盡セバ、府縣制ノ改正ニナラナイ以上
  ハ、此處デ議論スル必要ハナイ、諸君ハ宜シク府縣制改正
  案ニ全力ヲ注イデ、サウシテ此道會法ニ依シテ斯ル修正案ヲ
  提出致シ、若シ之ヲ吾々ガ同意シテ黑金君ノ提案ノ如ク、
  之ヲ是認致シマシタナラバ、玆ニ府縣ト道會法トノ衝突ヲ來
  シマシテ、諸君カラ言ハスレバ、進ンダル法制デアリマセウガ、
  北海道ノ遲レタル地方ニ對シテ、諸君ノ所謂進ダル所ノ法
  制ヲ施行スルト云フコトニナル、是ハ矛盾デアリマス、餘リ之
  ヲ論ズル必要モナイガ、只今黑金君ニ依シテ提案サレタル所
  ノ一二ニ付テ、反對ノ意見ヲ述ベテ見ヤウト思フノデアリマ
  ス、先ヅ第一ニ此小選擧區制デアリマスルガ、是ハ府縣制ノ
  改正モ、今度小選擧區制ヲ採ルヤウニナリマシタケレドモ、
  暫ク府縣ハ別ト致シマシテ、北海道ハ土地ガ實ニ廣汎デア
  リマスシ、一支廳管内ガ府縣ノ一縣一府ヨリマダ大キイ所
  ガ澤山アルノデアリマス、故ニ北海道ニハ特別ノ事情ガアリ
  マスカラ、縱ンバ府縣制ハ此小選舉區制ヲ撤廢致シマシテ
  モ、北海道ハドウシテモ小選擧區制ガ必要デアルノデアリマ
  ス、ソレカラ次ニハ資格デアリマスガ、是モ根本ノ問題ニ於テ
  旣ニ諸君ト其思想ヲ異ニシテ居ル、諸君ハ衆議院其他ニ於
  テモ納稅主義ヲ撤廢シテ居ル、吾々ハ漸進主義ヲ以テ之ヲ
  漸次ニ擴張シテ行カウト云フノデアリマス(拍手)是ハ別ニ
  茲ニ述ベル必要ハアリマセヌガ、先ヅ今回改正ニナッタ要點
  ハドウ云フ所ニ在ルカト云フコトヲ一言申上ゲテ諸君ノ御
  參考ニ供シタイノデアリマス、ソレハ主ナル點ダケヲ申上ゲ
  マスガ、從來ハ北海道内ニ於テ三年來、直接國稅年額、選
  擧權ハ三圓、被選擧權ハ十圓以上ヲ納ムル者、斯ウアツ
  タノデアリマス、今回ハ三年ト云フ居住年限ヲ短縮致シ
  マシテ、一箇年ト云フコトニ致シタノデアリマス、ソレカラ直
  接國稅ハ選擧權三圓、被選擧權ハ十圓トアッタノヲ選擧權
  被選擧權トモ之ヲ全部金額ハ除キマシテ、直接國稅ヲ納ム
  ル時ニハ直ニ其權利ヲ得ルト云フコトニナッタノデアリマス
  ソレカラ又土地ノ所有デアリマスガ、從來ハ北海道內ニ於
  テ三年以來土地ヲ、選舉權ハ四町歩、被選擧權ハ十五町
  步ヲ持ッテ居ラナケレバ、其權利ガナカッタノデアリマス、而モ
  其土地タルヤ、其土地ノ種類ニ制限ヲ置キ、「土地トハ耕地
  宅地及採藻干場」ト云フヤウナ制限ガアリマシテ、山林原野
  ト云フヤウナ四種目ニ對シテハ選擧權ノ附與ガナカッタノデ
  アリマス、然ルニ是等ノ制限ヲ撤廢致シマシテ、北海道内ニ
  一年以來土地ヲ所有スルトキハ、斯ウ云フ風ニ年限ヲ一年
  ニ短縮致シ、又此土地ノ町步モ別段ニ制限ヲ置カナイデ、
  被選擧權ヲ與ヘルト云フコトハ、實ニ一大進步デアルノデア
  リマス、是デサヘモ内地同樣ニ諸君ハ之ヲ律シヤウトスルノ
  デアリマスガ、內地ノ府縣制ノ改正ハ吾々ノ道會法ノ改正
  ニ比スルト、マダ道會法ノ改正ハ一足飛ニ此程度迄進ンデ
  居ルノデアリマスカラ、先ヅ此程度ニ於テ今囘ハ吾々ハ宜シイト
  信ズルノデアリマス(拍手)ソレカラ神官、僧侶、其他ノ諸宗ノ
  〓師、或ハ小學校〓師ニ選擧權云々ニ付テハ、旣ニ府縣制ノ
  場合ニ討論シ盡サレテ居リマスカラ、是ハ略シマス、右樣ノ
  次第デアリマスカラ、私ハ委員長ノ根告通リ賛成致ス者デ
  アリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=59

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• 060・小橋藻三衞

  ○小橋藻三衞君　簡單デスカラ····私共ハ矢張黑金君ニ
  依ッテ提出セラレタノト同一ノ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、
  要スルニ根本ハ成ベク多數ニ參政權ヲ與ヘルト云フコトヲ
  基礎ト致シマシテ居ルノデアリマス、此趣意ニ依ヶテ府縣制
  ノ改正ニ對スル意見ヲ定メタノデアリマス、尙ホ同一ノ理由
  デ北海道會法ニ對シテモ意見ヲ決メタノデアリマス、甚ダ簡
  單明瞭デアリマス、黑金君ノ說ニ贊成致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=60

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• 061・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　他ニ通告モアリマセヌカラ、討論
  ハ終局サレマシタ、採決致シマス、先ヅ北海道會法案修正
  案ニ付テ採決致シマス、修正案ニ賛成ノ諸君ハ起立
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=61

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• 062・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　起立少數、修正案ハ否決サレマ
  シタ、次ニ委員長ノ報告ニ賛成ノ諸君ハ起立
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=62

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• 063・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　多數ト認メマス、委員長ノ報告
  ハ可決サレマシタ(拍手起ル)本案第二讀會ハ終リマシタガ
  第三讀會ヲ開クコトニ御異識アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=63

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• 064・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ハナイモノト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=64

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• 065・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、第二讀會議
  決ノ通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=65

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• 066・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ガナイ
  ト認メマス、仍テ直ニ第三讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト
  致シマス
  北海道會法中改正法律案第第三讀會
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=66

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• 067・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ガナケレバ第二讀會議
  決ノ通リ可決確定サレマシタ
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=67

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• 068・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　北海道地方費中改正法律案、
  市制中改正法律案、右兩案ハ委員會ニ於テ可決セラレテ
  居リマスカラ、一括シテ兩案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=68

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• 069・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ガナイト認メマス、仍テ兩
  案第二讀會ヲ開クコトニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=69

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• 070・岩崎勲

  ○岩崎動君　日程第五、第六ヲ一括シテ直ニ一一讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略、委員長報告通リ可決確定アランコト
  ヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=70

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• 071・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ガナイ
  ト認メマス、仍テ直ニ兩案ノ二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議
  題ト致シマス
  北海道地方費法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  市制中改正法律案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=71

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• 072・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ガナケレバ第三讀會ヲ省
  略シテ、雨案共委員長ノ報告ノ通リ可決確定サレマシタ
  〔拍手起ル」

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=72

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• 073・岩崎勲

  ○岩崎動君　議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致
  シマス、卽チ玆ニ政府提出明治四十年法律第二十一號中
  改正法律案、及政府提出大正九年法律第十二號中改正
  法律案ヲ一括議題トナシ、次ニ政府提出貨幣法中改正法
  律案ヲ議題トナシ、次ニ政府提出傳染病豫防法中改正法
  律案、及政府提出海港檢疫法中改正法律案ヲ一括議題
  トナシ、其第一讀會ノ續ヲ聞キ、各〓、委員長ノ報告ヲ求メ、
  且ツ其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=73

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• 074・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ガナイ
  ト認メマス、仍テ日程ハ變更サレマシタ-明治四十年法
  律第二十一號中改正法律案、大正九年法律第十二號中
  改正法律案、右兩案ヲ一括シテ其第一讀會ノ續ヲ開キマ
  ス、委員長ノ報告ヲ求メマス、八田宗吉君
  明治四十年法律第二十一號中改正法律案
  (政府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一明治四十年法律第二十一號中改正法律案(政府提
  也
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月七日
  明治四十年法律第二十一號
  中改正法律案委員長
  八田宗吉
  衆議院議長奥繁三郞殿
  大正九年法律第十二號中改正法律案(政府
  提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
  報告書
  一大正九年法律第十二號中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月七日
  大正九年法律第十一一號中
  改正法律案委員長
  八田宗吉
  衆議院議長奧繁三郎殿
  〔八田宗吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=74

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• 075・八田宗吉

  ○八田宗吉君　委員會ノ經過竝結果ヲ御報告致シマス、
  委員長ニ本員、理事ニ上塚司君ガ當選サレマシタ、委員會
  ヲ開クコト三回、而シテ本案ハ來ル四月ヨリ樺太ニ五ツノ
  町、十九ノ村ニ對シテ、町村制ヲ實施致シマスル結果、從來
  樺太廳ガ賦課徵收致シテ居リマシタル中ノ稅目中、戶數割、
  雜種稅、此二稅目ヲ町村ノ財源ニ移スコトニナリマシタル結
  果、宅地、租稅、所得稅--所得稅ハ第二種、第三種、是つ
  デ賦課スルコトニナリマシテ、酒造稅、醤油稅、營業稅、此五
  稅目ヲ以テ樺太廳ノ徵收稅目トスルコトノ賦課ノ改正案
  デアリマシテ、各委員ヨリ質問アリ、之ニ對シテ永井樺太長
  官ヨリ懇切丁寧ナル應答ガアリマシテ、滿場一致可決致シ
  マシタ次第デアリマス、サウシテ其次ノ案、大正九年法律第
  十二號中改正法律案ハ、今申シマシタル法律案ニ伴フ改
  正案デアリマシテ、所得稅ノ第二種、第三種ヲ樺太ニ課シ
  マスル結果、從來ノ所得稅法中第四條乃至第六條中ノ
  「臺灣」ト云フ文字ヲ更ニ「又ハ樺太」ト云フ字ヲ挿入スルト
  云フ簡單ナル案デアリマシテ、是亦何等異議ナク滿場一致
  可決確定致シマシタ次第デアリマス、何卒御賛同ヲ願ヒマ
  ス、報告致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=75

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• 076・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=76

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• 077・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ第
  二讀會ヲ開クニ決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=77

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• 078・岩崎勲

  ○岩崎勳君　兩案ヲ一括シテ直ニ第二讀會ヲ開キ、第三
  讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通リ可決確定アランコトヲ
  望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=78

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• 079・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニハ御異議ナイ
  ト認メマス、仍テ直ニ兩案ノ二讀會ヲ開キマス、議案全部ヲ
  議題ニ供シマス
  明治四十年法律第二十一號中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  大正九年法律第十二號中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=79

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• 080・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス-別ニ
  御異謀アリマセヌカラ、第三讀會ヲ省略シテ、兩案トモ委員
  長報告ノ通リ可決確定セラレマシタ(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=80

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• 081・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　次ハ貨幣法中改正法律案ノ第
  -讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ根告ヲ求メマス、柳原九兵
  衞君
  貨幣法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一貨幣法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月七日
  貨幣法中改正法律案委員長
  柳原九兵衞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  〔柳原九兵衞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=81

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• 082・柳原九兵衞

  ○柳原九兵衞君　只今提供サレマシタ本案ハ簡單ナ案デ
  アリマシテ、簡單ニ大略報告致シマズ、本案ハ歐洲戰爭ノ影
  響ヲ受ケマシテ、銀貨ノ暴騰ヲ來シ、之ガ爲メ鑄潰シ、銀貨
  ノ危險ヲ防グ爲ニ、本案ノ改正ヲ提出サレタノデアリマス、
  其要點ハ現行ノ補助銀貨ハ鑄潰點六十五片半トアルノヲ
  百片半ニ上ボセタノデアリマス、之ガ爲ニ五十錢ニアッテハ、
  品位八百ヲ七百二十トシ、量目ニアリテハ一匁八分ヲ一
  匁三分二厘トシ、二十錢ニアリテハ、品位七百二十ナルガ
  故ニ量目ニ於テ現行ノ八分ヲ五分二厘八毛ト致シタノデ
  アリマス、尙ホ右ニ關聯シテ量目ノ公差ニ相當ノ變更ヲ加
  ヘルコトニナッタノデアリマス、本案ハ全會一致、是ハ原案ニ
  可決ニナッタノデアリマス、唯憲政會ノ鈴木君ノ希望トシテ、
  此五十錢紙幣ガ非常ニ破損シマシテ、日本銀行其他ニ於
  テモ、非常ナ之ガ修繕等ニ手間ヲ潰スト云フヤウナ次第デ
  アル、此制度ハ一日モ早ク改正セラレンコトヲ希望スルト云
  フ案デアリマスノデ、唯是ダケノコトヲ御報告致シテ置キマ
  ス(拍手)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=82

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• 083・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異
  議ハナイト認メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=83

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• 084・岩崎勲

  ○岩崎動君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省
  略シテ、委員長報告通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=84

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• 085・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニハ御異議ナイ
  ト認メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ
  供シマス
  貨幣法中改正法律案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=85

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• 086・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　別ニ御異議モナイヤウデアリマ
  スカラ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通リ可決確定
  セラレマシタ(拍手)次ハ傳染病豫防法中改正法律案、海
  港檢疫法中改正法律案、右二案ヲ一括シテ其第一讀會
  ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス、八木逸郞君
  傳染病豫防法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報〓)
  報告書
  一傳染病豫防法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月七日
  傳染病豫防法中改正法律案委員長
  八木逸郎
  衆議院議長奥繁三郞殿
  海港檢疫法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一海港檢疫法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十一年三月七日
  海港檢疫法中改正法律案委員長
  八木逸郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  〔八木逸郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=86

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• 087・八木逸郎

  ○八木逸郞君　兩案ニ對シテ委員會ヲ開キマシテ、私ガ
  委員長ニ選バレ、大林君ガ理事ニ選バレテ續イテ三回委員
  會ヲ開キマシテ、各會共ニ數時間ニ互リ質問ガ出マシタノ
  デアリマス、併ナガラ其結果ハ此法案ガ兩案共ニ良クナッタ
  ト云フコトニ向ッテハ、委員ニ一人ノ異論ガナカッタノデアリ
  マス、先ヅ傳染病豫防法中改正案ノ各條ニ亙,テノ修正ヲ
  述べマスルコトハ、煩雜ニ亙リマスルガ故ニ、其改正ノ大體
  ノ主義ニ付テ申上ゲヤウト思ヒマス、傳染病ノ第一ニハ傳
  染病ノ種類ニ依シテハ豫防法ノ一部ヲ適用シ、又ハ地域ヲ限ク
  テ豫防法ヲ適用シ得ルト云フコトニ裁量ヲ廣クシテ、サウシ
  テ〓日ノ學術及豫防法ノ實際ニ適用スルヤウニ努メルコト
  ニ圖ッタノデアリマス、第一一ニハ「コレラ」「ベスト」ノ疑似症ニ對
  シテハ、當然「コレラ」「ペスト」ノ豫防法ヲ適用スル、此二病
  ニ付テハ非常ニヒドイ病氣デアリマスカラ、疑似症ニ向ッテモ
  同法ヲ適用セラレタ、第三ニ向ッテハ傳染病豫防法ハ明治
  三十年ニ拵ヘラレテ、三十八年ニ少シク改正ヲサレタ以來、
  今日迄改正ヲ遂ゲラレテ居ラナカッタノデアリマスガ、其間ニ
  於テ身體ハ健康デアッテ、而シテ病原體ヲ所有シ居ル者ガ
  澤山アルト云フ事ガ學問ノ〓究デ分ッテ來テ、是ノ豫防ニ
  向ッテ非常ニ苦ンデ居リマシタガ、今回之ヲ豫防法中ニ入レ
  テ、病原體保有者ノ豫防法ニ關スル取締ニ關スル規定ヲ
  設ケタノデアリマス、次ニハ「コレラ」、「ペスト」ノ如キ、日本ニ
  無クッテ外國カラ輸入スル病氣ニ對シテ、理想カラ言ヘバ是
  等ノ病氣ヲ眞ニ國庫カラ爲シテ居ル所ノ檢疫停船ヲ十分
  ニナシ得ラレタナラバ、内地ヘハ這入ッテ來ナイモノデアル、併
  ナガラ其理想ハ實際ニ中々行ハレナイデ、時々內地ニ這入〃
  テ參リマスガ、這入ルト直グニ檢疫停船ノ國庫費デアルニモ
  拘ラズ、之ガ町村費ニ移リマシテ、其町村費ニ對シテ府縣
  之ヲ補助シ、府縣ニ對シテ國庫費之ヲ補助スルト云フ規定
  デアックノデアリマスガ、吾々ハ常ニ之ヲ遺憾ト致シマシテ、此
  補助ノ增額、若クハ國庫皆支辨デアラントコトヲ望ンデ居
  リマシタガ、吾々ガ望ム所ノ意ニ達セラレナイ迄モ、前ニ國庫
  ガ六分ノ一ノ補助デアッタモノガ、「コレラ」「ペスト」ニ限ッテハ
  三分ノ一ヲ補助スルト云フ、ヨリ善キ改正ニ相成ッタノデア
  リマス、其他ハ罰則ヲ整理シタニ止マルノデアリマスルガ、此
  罰則ヲ、整理シタ中ニ、此傳染病豫防法中ニ於テハ、今度ノ
  改正ノ罰金ガ-罰金刑ガ現行法ヨリハ少シ高クナッテ居ル
  カラ、現行法ノ儘デ宜カラウト云フ議ガ委員ノ中ニ有リマシ
  タケレドモ、ソレハ少數デ原案ガ可決サレタノデアリマス、海
  港檢疫ニ向テノ改正ノ必要ノ點ヲ擧ゲマスレバ、先程申
  上ゲマシタ所謂病菌ノ保有者ノ取締ニ關スル規定ヲ設ケ
  タ、次ニハ暴風雨ノ場合ニ於テ、ドウシテモ船カ港內ヘ這入
  リ切レナイト云フ場合ニ於テノ規定ガ無カッタノデアリマス
  ガ、今囘ハ暴風雨ノ場合ニ於テハ、港外ノ檢疫ヲセズシテ、
  而シテ港內ニ入レテ檢疫ヲシ得ル所ノ條項ヲ設ケタノデア
  リマス、第三ニ於キマシテハ、船舶其レ自身ノ中ニ於テ〓ト
  カ、或ハ昆蟲トカ、其他ニ於ケル消毒ヲ實行シ得ルヤウナ規
  定ヲ致シタノデアリマス、其他朝鮮、臺灣、樺太ヨリ來ル所
  ノ船舶、卽チ所謂內地傾土カラ來ル所ノ船舶、若クハ內務
  大臣ノ指定シテ居ル所ノ海外諸港ヨリ來ル所ノ船舶、若ク
  ハ漁船ノ如キデアッテ、是等ノ法律ガ海港檢疫法ヲ適用シ
  得ラレナイモノハ、命令ヲ以テ適切ナル豫防-檢疫方法
  ヲ遂ゲル、斯ウ云フ裁量ガ出來ルヤウナ法律ニナッタノデアリ
  マス、デ右樣ノ二案ノ法律ノ精神ガ、委員全體ニ於テヨリ
  善ク改良サレタト見マシテ、全部可決ニ及ンダノデアリマス、
  此段報告致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=87

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• 088・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　兩案トモ第二讀會ヲ開クニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=88

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• 089・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ第
  二讀會ヲ開クニ決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=89

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• 090・岩崎勲

  ○岩崎勳君　兩案ヲ一括シテ、直ニ其第二讀會ヲ開キ、第
  三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ可決確定アランコトヲ
  望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=90

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• 091・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍ッテ兩案ヲ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議
  題ト致シマス
  傳染病豫防法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  海港檢疫法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=91

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• 092・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　別ニ御異議ナイト認メマス、仍
  テ第三讀會ヲ省略シテ、兩案トモ委員長報告ノ通リ可決
  確定サレマシタ、次ハ日程第七乃至第十二ハ相關聯スル
  議案デアリマスカラ、一括シテ議題ト爲スニ御異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=92

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• 093・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ハナイト認メマス、仍ッテ
  右六案ヲ一括シテ議題ト致シマス、日程第七、職業紹介法
  中改正法律案、日程第八、失業保險法案、日程第九、疾
  病保險法案、日程第十、疾病保險特別會計法案、日程第
  十一、工場法中改正法律案、日程第十二、鑛業法中改正
  法律案、右各案ヲ一括シテ議題ト致シマス、其第一讀會ヲ
  開キ各案每ニ提出者ノ說明ヲ許シマス-武內作平君
  第七職業紹介法中改正法律案(安達謙
  藏君外十名提出)第一讀會
  職業紹介法中改正法律案
  職業紹介法中左ノ通改正ス
  第六條ノ二職業紹介所カ失業保險組合ヨリ失業ニ
  關スル事項ニ關シ共助ヲ求メラレタルトキハ之ヲ拒ム
  コトヲ得ス
  前項ノ事務ノ遂行ニ付經費ヲ要スルトキハ賊業紹介
  所ノ負擔トス
  第十條中「二分ノ一」ヲ「三分ノ二」ニ改ム
  附則
  本法ハ失業保險法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  第八長大阪保險法案(安達謙藏君外十名
  提出)第一讀會
  失業保險法案
  失業保險法
  第一章總則
  第一條政府ハ勅令ヲ以テ指定スル事業ノ經營ニ當ル
  傭主及職工ヲシテ一定ノ地域ニ依リ失業保險ノ爲
  失業保險組合ヲ設ケシムルコトヲ得
  前項ノ組合成立シタルトキハ當該地域內ニ於ケル傭
  主及職工ハ組合ニ加入スルコトヲ要ス
  政府ハ一地域內ニ數箇ノ組合ヲ設立セシムルコトヲ
  得
  第一項ノ事業及地域ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第一項ニ依リ勅令ヲ以テ指定セラレタル事業ニ從事
  スル職業ハ之ヲ保險職業トス
  第二條失業保險ニ於テハ失業保險組合カ職工ノ失
  業ニ關シ保險給付ヲ爲シ之カ對償トシテ國家、傭主
  及被保險者ヨリ保險料ヲ徵收スルモノトス
  第三條失業保險ノ保險給付及保險料ハ被保險者
  ノ基本給料ニ依リ之ヲ量定ス
  第四條被保險者ノ基本給料及保險料ニ關シテハ勅令
  ヲ以テ之ヲ定ム但シ被保險者ノ負擔スヘキ保險料ノ
  額ハ基本給料ノ千分ノ十五ヲ超ユルコトヲ得ス
  第五條失業保險ニ關スル爭議事項ハ司法裁判所ノ
  管轄トス
  第六條失業保險ニ關スル書類ニハ印紙稅ヲ課セス
  保險給付ハ租稅其ノ他ノ公課ノ目的ト爲スコトヲ得
  ス
  第七條失業保險ノ事務ニ關スル郵便物ハ命令ノ定
  ムル所ニ依リ無料ト爲スコトヲ得
  第二章保險範圍
  第八條傭主ヨリ報償ヲ受ケテ指定セラレタル事業ニ
  從事スル左記ノ者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ從業ノ時
  ヨリ失業保險ノ被保險者タルモノトス
  -職工、傭人
  二事務員及技術員
  公吏及官公署雇員、傭人其ノ他國家又ハ公共團體
  ノ業務ニ從事スル者ニ付テハ國家又ハ公共團體ヲ以
  テ傭主ト看做ス
  傭主ヨリ受クル報償ハ俸給又ハ給料ノ外被保險者カ
  其ノ代用トシテ受クル利益配當、現品給與其ノ他ノ
  給與ヲ總稱ス
  前項ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ組合ニ加入スル
  コトヲ得ス
  -年齡十六年以下ノ者及見習職工
  二年齡六十年以上ノ者
  第十條第八條第一項第二號ニ掲ケタル者ニ於テハ
  其ノ受クル報償カ一年ノ所得額千二百圓以下ナルコ
  トヲ要ス
  第十一條被保險者カ任意ニ保險職業ヲ去リタルトキ
  又ハ前條ノ制限ヲ超過スル報償ヲ受クルニ至リタルト
  キハ被保險者タル資格ヲ失フ
  第十二條被保險者タルヘキ義務アル者ノ從業ノ開始
  又ハ終了、取得ノ變更其ノ他失業保險ニ關シ必要ナ
  ル事項ハ命令ノ定ムル所ニ依リ傭主ヨリ組合ニ報告
  スヘシ
  第三章失業保險組合
  第十三條政府カ失業保險組合ノ設立ヲ命シタル場
  合ニ於テハ關係者ハ規約ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ
  受クヘシ
  組合ハ前項ノ認可ニ依リ成立ス
  規約ヲ變更セムトスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘ
  シ
  第十四條失業保險組合ハ法人トス
  第十五條組合成立シタルトキハ主務大臣ハ遲滯ナク
  組合設立ノ旨ヲ告示スルコトヲ要ス
  組合ハ其ノ告示アル迄其ノ成立ヲ以テ第三者ニ對抗
  スルコトヲ得ス
  第十六條規約ニハ左ニ揭クル事項ヲ規定スルコトヲ
  要ス
  一組合ノ目的
  二組合ノ地區
  三組合員ノ資格、其ノ加入脫退ニ關スル規定
  四基本給料ノ等級
  五保險料ノ比率
  六保險料徵收ノ方法
  七保險給付支給ノ方法
  八組合ノ會議及役員ニ關スル規定
  九其ノ他勅令ヲ以テ定メタル事項
  第十七條組合業務ノ管理ハ政府、傭主、被保險者各
  同數ノ理事ヲ選任シ之ヲ爲スモノトス
  理事長ハ政府選任ノ理事ノ內ヨリ主務大臣之ヲ指
  命ス
  第十八條主務大臣ハ何時ニテモ組合ノ事業ニ關スル
  報告ヲ徴シ事業ニ付認可ヲ受ケシメ事業及財產ノ狀
  況ヲ檢查シ規約ノ變更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル
  命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
  第十九條組合ノ役員ニ故障アルトキ又ハ組合ノ役員
  其ノ執行スヘキ職務ヲ執行セサルトキハ監督官廳ハ
  官吏又ハ其ノ選任シタル者ヲシテ其ノ職務ヲ管掌セ
  シムルコトヲ得但シ其ノ費用ハ組合ノ負擔トス
  第二十條組合ノ事業若ハ組合財產ノ狀況ニ依リ其
  ノ事業ノ繼續ヲ困難ナリト認ムルトキ又ハ組合ノ決
  議若ハ役員ノ行爲ニシテ法令、主務大臣ノ命令若ハ
  規約ニ違反シ又ハ組合員ノ利益ヲ害シ若ハ害スルノ
  虞アリト認ムルトキハ主務大臣ハ左ノ處分ヲ爲スコト
  ヲ得
  -決議ノ取消
  二役員ノ解職
  三組合ノ解散
  第二十一條前條ニ依リ解散セラレタル組合ノ權利義
  務ハ政府之ヲ承繼ス
  前項ニ依リ政府カ承繼シタル場合ニ關シ必要ナル規
  定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第二十二條組合ノ設立、廢止、分合及之ニ要スル要
  件、手續竝組合加入ノ要件、手續其ノ他組合ニ關シ
  必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第四章保險給付
  第二十三條被保險者其ノ責ニ歸スヘカラサル事由ニ
  因リ保險職業ヲ去リタルトキハ組合ヨリ保險給付ヲ
  受クルコトヲ得
  第二十四條保險給付ノ支給ハ失業後第十六日目ヨ
  リ開始シ開始後一年ヲ以テ終了ス
  第二十五條保險給付ノ額ハ被保險者失業當時ノ基
  本給料ノ二分ノ一乃至三分ノ二ノ範圍ニ於テ勅令
  ニ依リ之ヲ定ム
  第二十六條組合ハ前條ノ給付ニ代ヘ住宅其ノ他現
  品ヲ貸與又ハ給付スルコトヲ得
  代用給付ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定
  ム
  第二十七條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニハ保險
  給付ヲ爲サス
  -疾病保險法、工場法又ハ鑛業法ニ依リ保險給
  付又ハ扶助ヲ受クル期間
  二陸海軍ニ召集セラレタル者
  三自己ノ便宜ニ依リ保險職業ヲ去リタル者
  四不當ナル勞働爭議ニ加ハリ因テ失業シタル者
  五禁錮以上ノ刑ニ處セラレ依テ刑ノ執行ヲ受クル
  ニ至リタル者
  六本法施行地外ニ其ノ住所ヲ移シタルトキ
  七公費ノ救助ヲ受クルニ至リタルトキ
  八感化院ニ收容セラレタルトキ
  第二十八條失業シタル被保險者ニシテ本人ノ技能ニ
  適當シタル職業ヲ紹介セラレ之ヲ拒否シタル者ニ對シ
  テハ組合ハ保險給付ヲ停止スルコトヲ得
  第二十九條季節勞働ニ從事スル職工ニ在リテハ季
  節失業ハ失業ト看做サス
  第三十條保險給付ヲ受クヘキモノ二年間請求ヲ爲サ
  サルトキハ請求權ハ時效ニ依リテ消滅ス
  第三十一條保險給付ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被保
  險者ノ申請ニ依リ組合之ヲ決定ス
  第三十二條保險給付ノ請求權ハ之ヲ讓渡スコトヲ
  得ス
  第三十三條保險給付ノ請求權ハ之ヲ差押フルコトヲ
  得ス
  第三十四條失業ニ關スル事故發生シタルトキハ傭主
  ハ命令ノ定ムル所ニ依リ組合ニ報告スヘシ
  第五章保險料
  第三十五條保險料ハ國庫、傭主及被保險者各其ノ
  三分ノ一ヲ負擔ス
  第三十六條被保險者カ報償ヲ受ケサルニ至リタルト
  キハ保險料ヲ徴收セス
  第三十七條傭主ハ命令ノ定ムル所ニ依リ自己ノ負
  擔タルヘキ保險料額ト共ニ其ノ使用スル被保險者ノ
  負擔タルヘキ保險料額ヲ拂込ムヘシ
  第三十八條前條ニ依リ傭主ノ拂込ミタル被保險者
  ノ負擔タルヘキ保險料額ハ被保險者ノ受クヘキ報償
  ノ中ヨリ控除スヘキモノトス
  第三十九條被保險者カ同時ニ二箇以上ノ勞務關係
  ヲ有スルトキハ各偏主ハ其ノ保險料ニ付連帶シテ其
  ノ責ニ任ス
  第四十條組合ハ保險料ノ滯納者ニ對シ市町村又ハ
  之ニ準スヘキモノヲシテ國稅徴收ノ例ニ依リ之ヲ徵收
  セシムルコトヲ得但シ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村
  又ハ之ニ準スヘキモノニ交付スルコトヲ要ス
  第四十一條前條ノ徵收金ハ市町村又ハ之ニ準スヘ
  キモノノ徵收金ニ次キ先取特權ヲ有シ其ノ追徵、還
  付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
  第六章監督
  第四十二條組合ハ必要ト認メタルトキ被保險者ヲシ
  テ組合事務所所在市町村役場又ハ職業紹介所ニ出
  頭セシムルコトヲ得
  第四十三條組合ハ檢査員ヲシテ傭主ノ事務所工場
  其ノ他附屬建設物及被保險者ノ住居其ノ他所在ノ
  場所ニ臨ミ必要ナル調査ヲ爲サシムルコトヲ得
  第四十四條組合ハ業務遂行ノ爲必要ナリト認ムルト
  キ市町村役場及職業紹介所ニ共助ヲ求ムルコトヲ
  第七章貸付及割戾
  第四十五條組合カ其ノ責任準備金及各種積立金ヲ
  以テ保險給付ノ支出ニ應スルコト能ハサル場合ニ於
  テ必要アリト認ムルトキハ政府ハ一千万圓ヲ限リ無
  利息ヲ以テ組合ニ貸付ヲ爲スコトヲ得
  前項ノ貸付ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
  第四十六條被保險者ニシテ五年以上繼續シテ保險
  料ヲ支拂ヒ其ノ間保險給付ヲ受クルコトナカリシ者
  年齡滿五十年ニ達シタルトキハ被保險者ノ掛金ニ相
  當スル一時金ノ割戾ヲ受クルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ相當ノ利
  息ヲ附スルコトヲ得
  第四十七條組合ハ三年間繼續シテ被保險者ヲ使用
  シタル傭主ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ間ニ於ケ
  ル傭主ノ掛金ノ三分ノ一ヲ割戾スコトヲ〓ス但シ其
  ノ間失業保險給付ヲ受ケタルコトナカリシ者ニ限ル
  第八章審議機關
  第四十八條失業保險ニ關シ重要ナル事項ヲ審議セ
  シムル爲失業保險委員會ヲ置ク
  失業保險委員會ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
  ム
  第四十九條本法ニ基キテ發スル命令ハ失業保險委
  員會ノ審議ヲ經ルコトヲ要ス
  第五十條失業保險委員會ハ政府、傭主及被保險者
  竝學識經驗アル者ノ中ヨリ政府ニ於テ委員ヲ命シ之
  ヲ組織ス
  第九章審査機關
  第五十一條失業保險ニ關スル爭議事項ヲ審査裁定
  セシムル爲失業保險審査會ヲ置ク
  失業保險審査會ノ審査ニ付スヘキ事項ハ本法ニ定ム
  ルモノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  失業保險審査會ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
  ム
  第五十二條失業保險ニ關シ民事訴訟ヲ提起セムト
  スル者ハ失業保險審査會ノ審査ヲ經ルコトヲ要ス
  前項ノ審査ヲ受ケタル後一箇月ヲ經過シタルトキハ
  訴訟ヲ提起スルコトヲ得ス
  第五十三條前條ノ審査ノ請求ハ時效ノ中斷ニ關シ
  テハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
  第十章罰則
  第五十四條正當ノ理由ナクシテ組合檢査員ノ臨場
  調査ヲ拒ミ若ハ之ヲ妨ケ又ハ其ノ訊間ニ對シ虚僞ノ
  答辯ヲ爲シ若ハ答辯ヲ爲ササル者ハ二百圓以下ノ罰
  金ニ處ス
  第五十五條正當ノ理由ナクシテ被保險者ニ關スル調
  査ノ提出ヲ拒ミタル者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
  第五十六條本法ノ保險給付ヲ受クル目的ヲ以テ故
  意ニ不實ノ告知又ハ陳述ヲ爲シタル者ハ六箇月以下
  ノ懲役ニ處ス
  第五十七條傭主カ故意ニ被保險者ノ負擔タルヘキ
  保險料額以上ノ金額ヲ其ノ支拂ハルヘキ給料中ヨリ
  控除シタルトキハ三箇月以下ノ懲役ニ處ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  保險給付、保險料、割戾其ノ他失業保險ニ關シ必要ナ
  ル事項ハ木法ニ定ムルモノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第九疾病保險法案(安達謙藏君外十名
  提出)第讀會
  疾病保險法案
  疾病保險法
  第一章總則
  第一條疾病保險ハ政府之ヲ管掌ス
  第二條疾病保險ニ於テハ政府カ被保險者ノ疾病、負
  傷、癈疾、分娩及死亡ニ關シ保險給付ヲ爲シ之カ對
  償トシテ國家、傭主及〓保險者ヨリ保險料ヲ徴收ス
  ルモノトス
  第三條疾病保險ノ保險給付及保險料ハ被保險者ノ
  基本給料ニ依リ之ヲ量定ス
  第四條被保險者ノ基本給料及保險料ニ關スル規定
  ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム但シ保險料ハ基本給料ノ百分
  ノ六ヲ超ユルコトヲ得ス
  第五條保險官署ニ於テ必要ト認メタル場合ハ醫師ヲ
  シテ被保險者ノ身體檢査ヲ爲サシメ若ハ健康證明書
  ヲ提出セシメ又ハ當該吏員ヲシテ傭主ノ事務所、工
  場其ノ他附屬建設物及被保險者ノ住居其ノ他所在
  ノ場所ニ臨檢セシムルコトヲ得
  第六條疾病保險ニ關シ保險官署又ハ傭主ニ對シ被
  保險者タル無能力者ノ爲シタル行爲ハ能力者ノ爲シ
  タル行爲ト看做ス
  第七條疾病保險ニ關スル爭議事項ハ司法裁判所ノ
  管轄トス
  第八條疾病保險ニ關スル書類ニハ印紙稅ヲ課セス
  第九條疾病保險ノ事務ニ關スル郵便物ハ命令ノ定ム
  ル所ニ依リ無料ト爲スコトヲ得
  第二章保險範圍
  第十條傭主ヨリ報償ヲ受ケテ從業スル左記ノ者ハ從
  業ノ時ヨリ疾病保險ノ被保險者タルヘキモノトス
  -勞働者、徒弟及小使
  二事務員及技術員
  三公吏、官署雇員及傭人
  四〓員
  五日本ノ國籍ヲ有スル船舶ノ下級海員
  公吏、官公署雇員及傭人其ノ他國家又ハ公共團體
  ノ勞務ニ從事スル者ニ付テハ國家又ハ公共團體ヲ以
  テ傭主ト看做ス
  傭主ヨリ受クル報償トハ俸給又ハ給料ノ外被保險者
  カ其ノ代用トシテ受クル利益配當、現品給與其ノ他
  ノ給與ヲ總稱ス
  前項ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  現品給與ノ價額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ市價ニ依リ
  政府之ヲ評價ス
  第十一條前條第一項第二號乃至第四號ニ揭ケタル
  者ニ於テハ其ノ受タル報償カ一年ノ所得額千二百圓
  以下ナルコトヲ要ス
  第十二條被保險者カ第十條ノ勞務ヲ去リタルトキ又
  ハ第十一條ノ制限ヲ超過シタルトキハ疾病保險ノ被
  保險者タル資格ヲ失フ
  第十三條前條ニ依リ被保險者タル資格ヲ喪失シタル
  者ニシテ喪失前一年以上間斷ナク疾病保險ノ被保
  險者タリシトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ任意ニ疾病
  保險ノ被保險者タルコトヲ繼續スルコトヲ得
  第十四條前條ノ被保險者ニシテ一年ノ所得額千八
  百圓ヲ超過シタルトキ又ハ二回以上引續キ保險料ノ
  拂込ヲ爲ササルトキハ疾病保險ノ被保險者タル資格
  ヲ失フ
  第十五條疾病保險ノ被保險者タル義務アル從業員
  ノ從業ノ開始又ハ終了、所得ノ變更其ノ他疾病保險
  ニ關シ必要ナル事項ハ命令ノ定ムル所ニ依リ傭主ヨ
  リ保險官署ニ屆出ツヘシ
  第三章保險給付
  第十六條疾病保險ノ保險給付ハ疾病給付、癢疾給
  付、分娩給付及死亡給付ノ四種トス
  基本給料ニ依リ保險給付ヲ爲スヘキコトヲ定メタル
  場合ニハ事由發生當時ノ基本給料ニ依ル
  第十七條疾病保險ノ被保險者カ其ノ犯罪行爲又ハ
  故意ニ因ラスシテ疾病ニ罹リタルトキハ被保險者ハ罹
  病期間命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ疾病給付ヲ受クル
  モノトス
  一醫師ノ診斷治療ヲ受ケシメ必要ナル藥劑其ノ他
  ノ治療品ヲ支給ス
  二疾病ノ爲勞務不能ト爲リタルトキハ發病後第四
  日目ヨリ每勞務日ニ付被保險者ノ基本給料ノ
  十分ノ六ニ相當スル疾病手當金ヲ支給ス不能
  ノ事實カ第四日目以後ニ發生スル場合ニハ其ノ
  發生ノ日ヨリ支給ス
  被保險者カ其ノ犯罪行爲又ハ故意ニ因ラスシテ傷害
  又ハ之ニ基ケル疾病ニ罹リタルトキハ前項ノ規定ヲ準
  用ス
  第十八條被保險者ノ同意アルトキハ前條ノ給付ニ代
  ヘテ命令ノ定ムル所ニ依リ被保險者ヲ病院ニ收容シ
  治療ヲ爲サシムルコトヲ得但シ左ノ場合ニ於テハ被保
  險者ノ同意ヲ要セス
  -疾病ノ性質ニ依リ自宅治療ノ不能ナルトキ
  二傳染病ナルトキ
  三斷ヘス診斷ヲ要スへキ病狀ニ在リテ醫師カ必要
  ト認ムルトキ
  第十九條前條ノ場合ニ於テ被保險者カ其ノ勞務所
  得ノミヲ以テ其ノ家族ヲ扶養シ又ハ家族ノ生計費ノ
  大部分ニ供シタル者ニ在リテハ命令ノ定ムル所ニ依リ
  疾病手當金ノ半額ニ相當スル家族手當金ヲ支給ス
  第二十條第十七條第一項第一號ノ給付ハ發病ノ日
  ヨリ同條第一項第二號及前條ノ給付ハ支給開始ノ
  日ヨリ起算シ六箇月ヲ以テ終了ス
  第二十一條入院ノ必要ヲ認ムルモ實行不能ナルトキ
  又ハ自宅治療ヲ爲サシメ若ハ家族ト同居セシムヘキ
  重大ナル事由アルトキハ被保險者ノ同意ヲ得テ看護
  人ヲ付スルコトヲ得
  第二十二條三年以上繼續シテ疾病保險ノ被保險者
  タリシ者ノ疾病又ハ負傷ニシテ六箇月ヲ超ユルトキハ
  被保險者ハ從業不能ノ繼續スル限リ命令ノ定ムル所
  ニ依リ其ノ基本給料ノ四分ノ一ニ相當スル金額ノ癈
  疾給付ヲ受クルモノトス但シ業務上ノ疾病又ハ業務
  上ノ傷害若ハ之ニ基ケル疾病ニ付テハ此ノ限ニ在ラ
  ス
  第二十三條疾病保險ノ被保險者ト爲リタル後六箇
  月ヲ經過シタル產婦ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被保險
  者ノ基本給料ノ十分ノ六ニ相當スル金額ノ分娩給
  付ヲ受クルモノトス
  前項ノ分娩給付中六週間分ハ分娩後支給スルモノ
  トス
  第二十四條被保險者ノ同意アルトキハ前條ノ分娩給
  付ニ代ヘ命令ノ定ムル所ニ依リ產婦ヲ產婦收容所ニ
  收容シ又ハ分娩給付ヲ減シテ看護婦ヲ付スルコトヲ
  得
  第十九條ノ規定ハ產婦ヲ產婦收容所ニ收容シタル
  場合ニ之ヲ準用ス
  第二十五條被保險者カ第十七條ニ定ムル疾病又ハ
  傷害若ハ之ニ基ケル疾病ノ結果死亡シタルトキハ命
  令ノ定ムル所ニ依リ其ノ[葬祭ヲ營ミタル者ハ被保險
  者ノ基本給料ノ二十日分ニ相當スル金額ノ死亡給
  付ヲ受クルモノトス
  被保險者カ疾病給付ヲ受ケ其ノ給付期間滿了後一
  年內ニ死亡シ且死亡ノ時迄勞務不能ナリシトキ亦前
  項ニ同シ
  死亡給付ハ相續人ナキトキハ之ヲ埋葬管理者ニ支給
  ス
  第二十六條本章ニ規定スル保險給付ヲ爲シ尙疾病
  保險特別會計ニ剰餘金アル場合ニ於テハ其ノ範圍
  內ニ於テ保險給付ヲ增額シ又ハ支給期間ヲ延長スル
  コトヲ得
  前項ノ場合ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第二十七條六箇月以上疾病保險者タリシ者ニシテ
  失業ノ爲被保險者タル資格ヲ失ヒタル後三週間以
  內ニ保險事故發生シタル場合ハ命令ノ定ムル所ニ依
  リ保險給付ヲ受クルコトヲ得
  第二十八條第十三條ノ規定ニ依リ繼續被保險者ト
  ナリタル者ハ繼續被保險者トナリタル時ヨリ二箇月ヲ
  經過スルニ非サレハ保險給付ヲ受クルコトヲ得ス
  第二十九條左ノ場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ
  其ノ期間保險給付ヲ停止ス
  -保險給付ヲ請求シ得ル者禁錮以上ノ刑ニ處セ
  ラレタルトキ
  二保險給付ヲ請求シ得ル者本法施行地外ニ其ノ
  住所ヲ移轉シタルトキ
  三治療中ノ被保險者カ醫師ノ指揮ニ從ハサルト
  キ
  四被保險者カ故意又ハ犯罪ニ因リ疾病又ハ傷害
  ヲ招キタルトキ
  五感化院ニ收容セラレタルトキ
  第三十條疾病保險ノ被保險者トナリタルトキ既ニ疾
  病ニ罹リタルモノナルトキハ其ノ疾病ニ付テハ命令ノ
  定ムル所ニ依リ保險給付ヲ爲サス又ハ之ヲ減額スル
  コトヲ得
  第三十一條保險給付ヲ受クヘキ者二年間請求ヲ爲
  ササルトキハ請求權ハ時效ニ因リテ消滅ス
  第三十二條保險給付ハ命令ノ定ムレ所ニ依リ被保
  險者其ノ家族、同居者若ハ相續人又ハ埋葬管理者
  ノ申請ニ基キ保險官署之ヲ決定ス
  第三十三條保險給付ノ請求權ハ之ヲ讓渡スルコトヲ
  得ス
  第三十四條保險給付ノ請求權ハ之ヲ差押フルコトヲ
  得ス
  第三十五條被保險者カ疾病ニ罹リタルトキ、傷害ヲ
  受ケタルトキ、分娩シタルトキ又ハ死亡シタルトキ其ノ
  他保險ニ關スル「事故ヲ」生シタルトキハ傭主ハ命令ノ
  定ムル所ニ依リ保險官署ニ之ヲ屆出ツヘシ
  第三十六條保險給付ヲ受クル者保險事故ニ付傭主
  其ノ他第三者ニ對シ損害賠償又ハ工場法、鑛業法ニ
  依ル扶助ヲ請求スルコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ保險
  官署ハ其ノ支給シタル保險給付ノ限度ニ於テ請求權
  者ニ代位シテ損害賠償又ハ扶助ノ請求ヲ爲スコトヲ
  得
  第四章保險料
  第三十七條疾病保險ノ保險料ハ國庫、傭主及被保
  險者左ノ割合ニ依リ之ヲ分擔ス但シ第十三條ノ規
  定ニ依リ繼續被保險者トナリタル者ハ保險料ノ全額
  ヲ負擔ス
  一國庫保險料ノ十分ノ二
  傭主保險料ノ十分ノ四
  一被保險者保險料ノ十分ノ四
  第三十八條被保險者ノ從事スル職業ニシテ罹病危
  險率著シク高キモノニ在リテハ命令ノ定ムル所ニ依リ
  其ノ保險料額ヲ割增スルコトヲ得但シ第四條ノ制限
  ヲ超ユルコトヲ得ス
  前項職業ノ傭主ハ前項ノ處分ニ對シ異議ヲ提出スル
  コトヲ得
  異議及其ノ決定ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定
  ム
  第三十九條前條ノ割增保險料額ハ傭主ノ負擔トス
  第四十條被保險者カ本法ノ規定ニ依ル保險給付ヲ
  受クル期間ハ保險料ヲ徵收セス
  第四十一條傭主ハ命令ノ定ムル所ニ依リ自己ノ負
  擔タルヘキ保險料額ト共ニ其ノ使用スル被保險者ノ
  負擔タルヘキ保險料額ヲ拂込ムヘシ但シ第十三條ノ
  繼續被保險者ノ負擔タルヘキ保險料額ハ此ノ限ニ在
  ラス
  第十三條ノ繼續被保險者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
  其ノ負擔タルヘギ保險料額ヲ拂込ムヘシ
  第四十二條前條第一項ニ依リ傭主ノ拂込ミタル被
  保險者ノ負擔タルヘキ保險料額ハ被保險者ノ受クヘ
  キ報償ノ中ヨリ控除スヘキモノトス
  第四十三條被保険者カ同時ニ二箇以上ノ勞務關係
  ヲ有スルトキハ各傭主ハ其ノ保險料ニ付連帶シテ其
  ノ責ニ任ス
  第四十四條保險料ノ徵收ニ付テハ國稅徵收法ノ例
  二九九
  前項ノ徵收金ハ國稅ニ次キ先取特權ヲ有シ其ノ追
  徵、還付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
  第五章審議機關
  第四十五條疾病保險ニ關シ重要ナル事項ヲ審議セ
  シムル爲疾病保險委員會ヲ置ク
  疾病保險委員會ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
  ム
  第四十六條本法ニ基キテ發スル命令ハ疾病保險委
  員會ノ審議ヲ經ルコトヲ要ス
  第四十七條疾病保險委員會ハ政府、傭主及被保險
  者竝學識經驗アル者ノ中ヨリ政府ニ於テ委員ヲ命シ
  之ヲ組織ス
  第六章審査機關
  第四十八條疾病保險ニ關シ爭議事項ヲ審査セシム
  ル爲疾病保險審査會ヲ置ク
  疾病保險審査會ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
  ム
  第四十九條現病保險ニ關シ民事訴訟ヲ提起セムト
  スル者ハ疾病保險審査會ノ審査ヲ經ルコトヲ要ス
  前項ノ「審査ヲ受ケタル後一箇月ヲ經過シタルトキハ
  訴訟ヲ提起スルコトヲ得ス
  第五十條前條ノ審査ノ請求ハ時效ノ中斷ニ關シテハ
  之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
  第七章罰則
  第五十一條正當ノ理由ナクシテ當該官吏ノ臨檢ヲ
  拒ミ若ハ之ヲ妨ケ又ハ其ノ訊問ニ對シ虛僞ノ答辯ヲ
  爲シ若ハ答辯ヲ爲ササル者ハ二百圓以下ノ罰金ニ處
  ス
  第五十二條正當ノ理由ナクシテ被保險者ノ身體檢
  査又ハ健康證明書ノ提出ヲ拒ミタルモノハ五十圓以
  下ノ罰金ニ處ス
  第五十三條本法ノ保險給付ヲ受クル目的ヲ以テ故
  意ニ不實ノ告知又ハ陳述ヲ爲シタル者ハ六箇月以下
  ノ懲役ニ處ス
  第五十四條傭主カ故意ニ被保險者ノ負擔タルヘキ
  保險料額以上ノ金額ヲ其ノ支拂ハルヘキ給料中ヨリ
  控除シタルトキハ三箇月以下ノ懲役ニ處ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  保險事故、保險給付、保險料其ノ他疾病保險ニ關ジ必
  要ナル事項ハ本法ニ定ムルモノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定
  ム
  第十疾病保險特別會計法案(安達謙藏
  君外十名提出)第一讀會
  疾病保險特別會計法案
  疾病保険特別會計法
  第一條疾病保險ヲ經營スル爲特別會計ヲ設置シ其
  ノ歲入ヲ以テ其ノ歳出ニ充ツ
  第二條本會計ニ於テハ傭主及被保險者ノ支拂フ保
  險料額、每年度豫算ノ定ムル所ニ依リ一般會計ヨリ
  繰入ルル國庫ノ負擔タルヘキ保險料額及積立金ヨリ
  生スル收入及附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入トシ保險
  給付トシテ支給セラルル一定金額及經費竝事業取
  扱費其ノ他ノ諸費ヲ以テ其ノ歲出トス
  第三條本會計ニ於ケル歲入總額ニ超過スル金額ハ
  之ヲ積立ツヘシ
  本會計ノ歳計ニ不足アルトキハ積立金又ハ一般會計
  ヨリ之ヲ補足スヘシ
  第四條政府ハ每年本會計ノ歲出ノ豫算ヲ調製シ歳
  入歳出ノ總豫算ト共ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
  第五條本會計ノ收入支出及積立金ノ運用ニ關スル
  規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  附則
  本法ハ疾病保險法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  第十一工場法中改正法律案(安達謙藏
  君外六名提出)第一讀會
  工場法中改正法律案
  工場法中左ノ通改正ス
  第十五條職工故意又ハ犯罪行爲ニ因ラスシテ義務
  上死亡シ負傷シ若ハ職業的疾病ニ罹リ又ハ業務上
  ノ負傷若ハ疾病ニ因リ死亡シタルトキハ工業主ハ勅
  令ノ定ムル所ニ依リ本人又ハ其ノ遺族ヲ扶助スヘシ
  職業的疾病ノ種類ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十二鑛業法中改正法律案(安達謙藏
  君外六名提出)第一讀會
  鑛業法中改正法律案
  鑛業法中左ノ通改正ス
  第八十條鑛夫故意又ハ犯罪行爲ニ因ラスシテ業務上
  死亡シ負傷シ若ハ職業的疾病ニ罹リ又ハ業務上ノ
  負傷若ハ疾病ニ因リ死亡シタルトキハ鑛業權者ハ命
  令ノ定ムル所ニ從ヒ本人又ハ其ノ遺族ヲ扶助スヘシ
  職業的疾病ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  〔武内作平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=93

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• 094・武内作平

  ○武內作平君　只今議題トナリマシタ法案ノ中デ、疾病
  保險法案及疾病保險特別會計法案ニ付キマシテハ、國民
  〓ノ板野君ヨリ御說明ガアル筈デアリマスカラ、私ハ其他ノ
  案ニ付テ〓要ヲ說明致スコトニ致シマス、失業保險法案ノ
  內容ヲ申上ゲマスルト、第一本案ハ被保險者卽チ勞働者
  ノ責ニ歸スペカラザル事由ニ依シテ、職業ヲ失ヒマシタル者ニ
  對シ、失業後十六日目ヨリ一箇年間給料ノ二分ノ一乃至
  三分ノ一ヲ支給スルト云フコトガ本案ノ目的デアリマス、サ
  ウ致シマシテ只今被保險者、卽チ勞働者ト申シマシタ中ニ
  ハ、職工傭人事務員技術員ニシテ、報酬年額一千二百圓以
  內ノ者ヲ全部包擁シテ居リマスル次第デアリマス、此勞働者
  ニ對スル給付ノ財源トナリマスルモノ、卽チ其保險料デアリ
  マスルガ、其保險料ハドウスルカト申シマスレバ、本案ニ於キ
  マシテハ國庫ト傭主ト被保險者ガ各〓三分ノ一宛ヲ負擔
  スルコトニナッテ居ルノデアリマス、而モ被保險者ニ對シマシ
  テハ、如何ナル場合ニ於テモ給料ノ百分ノ一以上ハ負擔ヲ
  セシメナイト云フ制限ガ附シテアルノデアリマス、失業保險
  ノ經營ハドウスルカト申シマスルト、之ニハ官營ト云フヤウナ
  主義モアリマスケレドモ、本案ニ於キマシテハ失業保險組合
  ヲ造ッテ、之ニ當ラセルコトニナッテ居ルンデアリマス、デ保險
  組合ノ業務ノ管理ハ、政府ト傭主ト被保險者ガ各〓同數
  ノ理事ヲシテ之ニ當ラシムルコトニナッテ居リマス、失業保險
  ニ依リマシテ國庫ノ負擔ニ歸スベキ金額ノ商ガドレ程ニナ
  ルカト云フコトニ付キマシテハ、甚ダ其正確ノ數ヲ得ルニ困ッ
  テ居リマスガ、大體ニ於テ先ヅ五百万圓ト計算ガ出來テ居
  ルンデアル、勿論是ハ〓數デアリマス、政府ノ從來調查シタ
  所ニ依リマシテモ、吾々モ調査モ致シマシタガ、十分ノ資料
  ヲ得ルコトガ出來ナイノデアリマス、ソレ故ニ正確ノ數ハ申
  上ゲラレナイノデアリマスガ、大體ニ於キマシテ五百万圓有
  レバ此疾病保險ノ實行ヲ完成スルコトガ出來ルト考ヘラレ
  ルノデアリマス、尤モ之ガ確定ノ數デナイト致シマスルナラバ、
  財政上ノ關係カラ、或ハ豫算編成ノ上カラ、異議ヲ挿ムコ
  トガ出來ルノデアリマスガ、此點ニ付テ一面ニ於キマシテ此
  疾病保險ヲ實行スルニ際シテ、如何ナル職業ト如何ナル地
  域ニ於テ實行スルカト一云フコトヲ勅令ニ讓ッテアルンデアリ
  マス、勅令ニ依リマシテ全體ノ勞働者ニ全體職業ニ實行シナ
  クテモ、或ル地域或ル職業ニ限ァテ實行スルコトガ出來ルヤ
  ウナコトニナッテ居リマス、所謂伸縮自在ニナッテ居ルノデア
  リマスカラシテ、此數ノ正確ヲ缺イデ居リマスル點ハ此仲縮
  自在、所謂勅合ニ依シテ定ムル伸縮自在ノ方法ヲ利用ヲ致シ
  マシテ、之ヲ實行スレバ少シモ差支ナイト云フコトニ歸著ヲ
  致スノデアリマス、之ガ失業保險ノ內容ノ大綱デアリマス、
  デ職業紹介法ノ改正ヲ要シマスル點ハ、第六條ノ一一ト致ン
  マシテ、一條ヲ加ヘルコトヽ、第十條ノ中ニ二分ノ一トアル
  ヲ三分ノ二ト改ムルノデアリマシテ、至極簡單デアリマス、是
  ハ失業保險ヲ實行致スト致シマスレバ、職業紹介所ト相
  俟ッテ其仕事ヲスルニアラザレバ、目的ヲ達スルコトガ出來ナ
  イノデアリマス、ソレ故ニ此六條ノ二ニ一條ヲ加ヘマシテ、失
  業ニ關スル事項ニ關シテ救助ヲ求ムルトキハ、職業紹介所
  ハ之ヲ拒ムコトガ出來ナイ、國家ハ勅令ニ定ムル所ニ依リ、
  職業紹介所ニ關スル經費ノ支出ヲ爲ス市町村ニ對シ、其
  支出額ノ二分ノ一以内ヲ補助スルト云フコトニナッテ居ル
  ノデアリマスガ、之ヲ只今申上ゲマシタ通リ、此失業保險ノ爲
  ニ格別ノ盡力ヲ致サナケレバナラヌノデアルカラシテ、此割
  合ヲ二分ノ一交付シ居ッタノヲ三分ノ二交付スルト云ノ事
  ニ改正ヲスルニ止マルノデアリマス、失業保險ト、職業紹介
  法中ノ改正ノ要點ハ只今申上ゲマシタ二點デ、國民黨り
  共同ノ提案デアリマスルガ、此工場法ト鑛業法ノ改正案ハ、
  憲政會ダケデ提出ヲシテ居ル案ニナッテ居ルノデアリマス、是
  ハ國民黨ノ方ニ於キマシテ別ニ此法案ガ提出サレテアル
  カラデアリマス、而シテ此兩改正案ヲ提出致シマシタ所以
  ハ、此鑛業法ニ規定シテアリマスル所ノ事項ト、鑛業法及
  工場法ニ規定致シテアリマスル所ノ此被保險者ノ所謂職
  工ノ過失ノ程度ヲデス、今回制定ヲセント致シテ居リマス
  所ノ疾病保險、及此疾病保險ノ規定ト權衡ヲ維持スルト
  云フコトニ在ルノデアリマス、從來ハ鑛業法及工場法ニ依
  リマスルト、重大ナ過失ノアリマシタ場合ニ於キマシテハ、總
  テノ扶助ヲシナイコトニナッテ居ッタノデアリマスルガ、今回ノ
  此保險法ニ依リマスルト、故意又ハ犯罪行爲ニ依ラズシテ
  業務上死亡シタル者、或ハ負傷シタル者、又職業的疾病ニ
  罹リ、又ハ業務上ノ負傷、或ハ疾病ニテ死亡シタルトキ雇
  傭主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ扶助スルト云フ、斯ウ云フ事
  ニナッテ居ルノデアリマス、デアリマスカラシテ從前ノ儘デアリ
  マスルト云フト、此工場法及鑛業法トノ權衡ガ取レナイノ
  デアリマスカラ、工場法及鑛業法ノ根本的改正モ吾々ハ希
  望致シテ居ルノデアリマスルガ、此場合ニ於キマシテハ、唯此
  保險法ト權衡ヲ維持スルコトノ出來ル點ダケヲ改善ヲ致シ
  タイト云フ考デアリマス、我國ノ勞働者卽チ筋肉勞働者及
  之ニ準スベキ傭人、事務員、技術員デアリマスルガ、此數ガ
  現在ニ於テドレ程アルカト申シマスルナラバ、政府ニ於テモ
  正確ナ統計ガ無イノデアリマス、ソレデ大正八年十二月ニ
  鑛業法ノ適用ヲ受ケテ居リマスル所ノ工場ノ職工、大正九
  年ノ十二月鑛業法ノ適用ヲ受ケテ居リマス職工ノ總數ト、サ
  ウシテソレニ官業勞働者ヲ加ヘマスト、云フト約二百二十
  六万人程アルト算定ガ出來ルノデアリマス、サウ致シマシテ
  是等ノ勞働者ガ帝國產業ノ爲ニ、日夜各處ノ工場及鑛山
  ニ於テ活動ヲ致シテ居ルノデアリマス、是等ノ勞働者ガ大
  戰中ニ於キマシテ優秀ナル武力ヲ供給シタト云フコトハ勿
  論ノ事デアリマスガ、今ヤ世界ノ形勢ガ一變致シマシテ、我
  國ニ於キマシテモ、產業ニ向ッテ金力ヲ傾注シナケレバナラ
  ヌ、サウシテ確乎不拔ノ實力ヲ養成シナケレバナラヌ、斯ウ
  云フ時代ニナッタノデアリマス、國民黨ノ大會ノ席上ニ於キ
  マシテ、犬養君ガ力說セラレマシタ産業立國論ト云フコトニ
  付キマシテハ、吾々モ全然同感デアリマス、產業ヲ興隆シ發
  展セシメマスノニハ、勞働者ノ活動ニ俟ツベキコトガ甚ダ多
  イノデアリマス、國民中ニハ財產家デアリ、或ハ顯要ナ地位
  ニ在ッテ、尙ホ不善ヲ爲シテ居ル者ガ少クハナイノデアリマス、
  是等ノ勞働者ハ只今申上ゲマシタ通リ、日夜我國ノ產業
  ニ汲々ト活動ヲ致シテ居ルノデアリマスカラ此勞働者ト內
  ニ居ッテ不善ヲ爲シテ居ルヤウナ種類ノ人ト比較ヲ致シマシ
  タナヲバ、勞働者ノ方ハ寧口國家ノ實トモ言ッテ宜シイモノデ
  アルト私ハ信ズルノデアリマス、サウ致シマシタナラバ、之ニ對
  シマシテ國家ガ相當ノ待遇ヲ爲スト云フコトハ、當然ナ事デ
  アルノデアリマス、又一面國家ノ立場カラ考ヘマシテ、只今
  申上ゲマシタ通リ、勞働者ノ數ハ二百二十六万人アリマス
  ガ、是ニハ或ハ妻モ有リマセウ、或ハ子モ有リマセウ、サウ云
  フヤウナ者モ正確ナ數ハ分リマセヌケレドモ、之ヲ合算致シ
  マシタナラバ、殆ド國民ノ十分ノ一ニ近イ人數ニ達スルダラ
  ウト考ヘラレルノデアリマス、サウ致シマスナラバ、此國民ノ
  十分ノ一ニ近イ人ノ幸不幸ト云フモノハ、忽チ國家ノ休戚
  ニ關スルト云フコトハ、申スマデモナイコトデアリマス、デアリ
  マスカラシテ國家或ハ爲政家ト云フモノハ、此點ニ付テ十
  分ノ注意ヲセンケレバナラヌコトモ勿論ノコトデアラウト思
  フ(拍手)然ルニ我國ニ於キマシテハ、此勞働者ニ對スル注
  意、勞働者ニ對シマスル所ノ保護ハ甚ダ十分デナイノデアリ
  マス、國家ガ此勞働者ノ保護ヲ致シマスル目的ヲ以テ、從來
  制定セラレテアリマスル所ノ法律ヲ調ベテ見ルト、工場法鑛
  業法傭人扶助令、共濟組合ニ對スル法規、職業紹介法、是
  ダケシカナイノデアリマス、サウシテ是等ノ法律ハ總テ不完
  全ナモノデアルト云フコトハ、諸君御承知ノ通リデアリマス、
  曩ニ國民黨諸君ノ中カラ此鑛業法ノ如キモノニ對シマシ
  テ、根本的ノ改正案ガ出テ居ルノデアリマス、殊ニ遺憾ト致
  シマスノハ勞働保險法ノ制定ガ、今日マデ無イコトデアリマ
  ス、御承知ノ通リ英國、米國、佛蘭西、伊太利、其他如何ナ
  ル小弱ノ國ト雖モ、勞働保險法ノ制定ノ無イ國ハ無イノデ
  アリマス、然ルニ日本ハ世界ノ三大國デアルト稱シテ居リナ
  ガラ、今日ニ至ルマデマダ此法案ノ制定ガ無イノデアリマス、
  御承知ノ通リ、一昨年華盛頓デ開カレマシタ國際勞働會
  議ニ於キマシテハ、速ニ失業保險法ヲ制定セヨト云フ勸告
  ヲ受ケテ居ルノデアリマス、小弱ノ國ノ一國カラ受ケタ譯デ
  ハアリマセヌガ、小弱ノ國ガ參加シテ居ル國際勞働會議カ
  ラ、勸告ヲ受ケルト云フヤウナコトハ、政友會ノ諸君ニ言ハ
  シテ置キマスレバ、又國情ガ違フカラ宜イヂヤナイカト仰シヤ
  ルカ知レマセヌケレドモ、餘リ卷メラレタ事デハナイノデアリ
  マス、サウ云フ譯デアリマスカラシテ、私共ハ一面ニ於キマシ
  テハ、勞働者ノ生活ノ不安ヲ除去致シマシテ、生產力ノ增
  進ヲ圖リ、同時ニ分配ノ不平等ヲ調節致シマシテ、人格ヲ
  尊重スル意味ニ於キマシテ、思想ヲ善導スルト云フ意味ニ
  依リマシテ、本案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、此法案
  ニ付キマシテハ、多分政府ニ於キマシテモ御反對ハアリマス
  マイト思フノデアリマス、施政ノ方針ニ關スル總理大臣ノ御
  說中ニ、經濟ノ上ニ於テモ、或ハ思想ノ上ニ於テモ、是ハ必
  要ナ事、デアルカラ、自分ハ著々調査フシテ、斯ウ云フ法案
  ヲ提出シタイト云フコトヲ仰セラレタノデアリマスガ、今日マ
  デマダ私共ガ餘リ必要ナリト認メナイ鐵道網ノ、問題ヤ一蓮
  托生問題ナドニ沒頭サレテ居リマシテ、私共ガ緊急ナリト
  認メル此法案ハ今日マダ御提出ニナリマセヌ、又失業保險
  ノ如キニ至ッテハ、何等御調査ニモ著手セラレテ居ナイト云
  フコトハ、甚ダ遺憾トスル所デアリマス、吾々ノ提出致シマシ
  タ此法案ハ、完全ナルモノデハアリマセヌケレドモ、大體ニ於
  テ其要ヲ得テ居ルト考ヘマスルカラ、十分御審査ノ上ニ於
  キマシテ、協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス
  〔前川虎造君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=94

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• 095・前川虎造

  ○前川虎造君　私ハ只今武內君カラ御說明ニナッタ殘リノ
  疾病保險ト、之ニ伴フ特別會計法トノ提案ノ理由ヲ說明致
  シマス、一體昨今勞働問題ガ非常ニヤカマシクナッテ居リマスガ、
  此問題ヲ如何ニシテ解決シタラ宜イカト云フコトハ、今日朝
  野ノ問題ニナッテ居ルノデアリマス、必シモ法律バカリデ之ヲ解
  決スルト云フコトハ、甚ダ至難デアルト吾々ハ信ジテ居ルノデア
  リマス、而シテ一部ノ立法ニ依シテ解決サレルト云フコトニナ
  リマスレバ、今日當面ノ問題トシテ、斯ル法律ヲ發布シテ一
  部勞働者ニ其所ヲ得セシメルト云フコトハ、頗ル至當ノ事デ
  アルト信ジテ、私共ハ此提案ヲ致シタノデアリマス、ンコデ私
  共ノ提案致シマシタ疾病保險ニ於テハ被保險者ノ資格ハ
  疾病、負傷、癈疾、分娩及死亡ト云フ此項目ニ向ッテ保險
  ヲシヤウト云フノデアリマス、之ガ本案ノ骨子デアリマス、此
  外ニ此案ノ骨子ト致シマスルコトハ、保險料ハ基本給料ノ
  百分ノ六以內デ定メルト云フコト、此制限ヲ致シテ居ルコト
  ガ此法案ノ特色デアリマス、如何ナル場合デモ基本給料ノ百
  分ノ六以上ハ、被保險者カラハ取取ナイト云フコトヲ原則ト
  致シテ居ルノデアリマス、其他ハ此範圍內ニ於テ勅令デ定メテ
  宜イト云フコトニ致シテ居リマス、ソ『レカラモウ一箇條ハ被
  保險者ノ保險料ノ分擔ハ、國家ト傭主ト被保險者ガ、幾ラ
  出スト云フ保險料ノ割合デアリマス、此割合ヲ此法律デ規
  定致スノデアリマス、卽チ國家ガ四分傭主ガ四分本人ガ二
  分ト云フコトニ特定致シテ居リマス、是ガ本案ノ特色デアリマ
  ス、其他各條ニハ之ヲ遂行スルニ付テ必要ナル定義、及之ニ
  伴フ法律ノ規定ヲ各條ニ列記致シテ居リマス、而シテ保險
  料ノ給付トカ、保險ノ範圍トカ云フヤウナコト、ソレデ保險ノ
  範圍ノ所デ少シ申上ゲヤウト思ヒマスガ、此保險ノ範圍デハ
  矢張〓員ノ如キモノヲモ强制保險スルコトニ致シテ居リマ
  ス、尤モ之ニ基本給料ノ制限ガ置イテアリマス、ソレハ官吏
  ノ所得千二百圓以下ノ者ニ限ルノデアリマス、百圓以上ノ
  俸給ヲ取ッテ居ル者ハ、此保險ノ恩典ヲ受クルコトガ出來ナ
  イヤウニ致シテアリマス、ンレデアルガ故ニ此保險ト云フモノ
  ハ月ニ百圓ノ俸給ヲ取ラナクトモ、是ト同ジヤウニ物品ノ給
  與ヲ受クル者モ、之ヲ換算致シマシテ、千二百圓以内ノモノ
  ナラバ、如何ナル人デモ此保險ノ恩典ヲ受クルコトニ規定致シ
  テ居リマス、一般ノ勞働者、事務員、傭員、何デモサウ云フ
  人〓デ百圓以下ノ俸給ノ人ニハ、此保險ヲ及ポスコトニ致
  シテ居ルノデアリマス、之ガ此保險ノ特色デアリマス、ソコデ
  第二ニ疾病保險特別會計法ニ於テハ、之ヲ特別會計ニ致
  シマシテ、サウシテ若シ此保險其モノニ於テ利益ガ生ズル場
  合ニハ、之ヲ保險ノ財源トシテ積ミ置クノデアリマス、若シ又
  不足ガアッタ時分ニハ、之ヲ一般會計ヨリ補フコトニ致シテ
  置クノデアリマス、是ハ簡單ナ條文デアリマス、初年度ニ於
  キマシテハ、或ハ足ラヌト云フヤウナコトニモナルカモ知レマ
  セヌガ、保險ガ五年十年ト進ムニ至リマシテハ、或ハ保險ノ
  基本ト云フモノガ自カラ此間ニ出テ來ルヤウナコトニナリハ
  シナイカト私共ハ考ヘテ居ルノデアリマス、餘リ一般會計ニ
  御迷惑ヲ掛ケズシテ、之ガ遂行セラルヽト云フ考ヲ持ッテ居
  ルノデアリマス、詳シイ事ハ委員會デ中上ゲマスガ、本案ハ斯
  ノ如キモノデアリマスカラ、御賛成ヲ願ヒタイト思ヒマス(拍
  き)

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• 096・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　日程第七乃至第十二ハ、一括シテ板野
  友造君提出工場法中改正法律案外一件ノ委員會ニ併セ
  テ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 097・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第十三勞働組
  合法案第一讀會ヲ開キマス、野田文一郞君
  第十三勞働組合法案(安達謙藏君外六
  名提出)第一讀會
  勞働組合法案
  勞働組合法
  第一條同種若ハ類似ノ企業又ハ之ニ密接ノ關係ヲ
  有スル企業ニ從事スルコトヲ目的トスル勞働者ハ相
  集リテ本法ニ依リ勞働組合ヲ設立スルコトヲ得
  前項ニ屬セサル勞働者ハ別ニ勞働組合ヲ設立スルコ
  トヲ得
  同種若ハ類似ノ企業又ハ之ニ密接ノ關係ヲ有スル企
  業ノ種類及前項ノ勞働組合ニ關シテハ主務大臣之
  ヲ定ム
  第二條勞働組合ハ組合員相互ノ扶助其ノ地位及利
  益ノ擁護竝上進ヲ以テ目的トス
  勞働ノ條件又ハ報酬ニ關シ協同ノ行動ヲ爲シ又ハ之
  カ爲組合員ノ行爲ニ制限ヲ加フルハ前項目的ノ範圍
  內ノ行爲ト看做ス
  第三條勞働組合ヲ設立セムトスルトキハ設立ニ同意
  シタル者ノ創立總會ヲ開キ定款ヲ議定スヘシ
  前項定款ノ議定ハ設立同意者ノ四分ノ三以上ノ同
  意アルコトヲ要ス
  第四條定款ニハ別ニ定ムル所ニ依リ規定スルコトヲ
  要スルモノノ外左ノ事項ヲ規定スルコトヲ要ス
  -目的
  二名稱
  三事務所
  區域
  五四
  組織及事務管理ノ方法
  資產ニ關スル規定
  九八七六組合員タル資格ニ關スル規定
  組合員ノ加入及脫退ニ關スル規定
  會費、加入金、手數料又ハ授業料等ノ額及拂込
  方法
  十組合員相互扶助ノ事業ニ關スル規定
  十一組合員相互又ハ組合及組合員間ノ爭議栽
  定ノ方法ヲ定ムル場合ニハ之ニ關スル規定
  十二組合カ職業紹介及職工資格ノ證明ヲ爲ス場
  合ニハ之ニ關スル規定
  十三組合カ販賣組合、購買組合又ハ生產組合ノ
  事業ヲ爲ス場合ニハ之ニ關スル規定
  十四前各號ノ外組合ノ目的タル事業ノ遂行ニ關
  スル規定
  十五準備金ヲ置ク場合ニハ其ノ額及積立方法
  定款ハ總組合員ノ四分ノ三以上ノ同意アルニ非サレ
  ハ之ヲ變更スルコトヲ得ス但シ定款ニ別段ノ定アルト
  キハ此ノ限ニ在ラス
  定款及其ノ變更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
  第五條勞働組合ハ定款ノ認可ヲ受ケタルトキハ遲滯
  ナク其ノ區域ヲ管轄スル地方廳ニ設立ノ屆出ヲ爲ス
  ヘシ
  屆出ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  地方廳第一項ノ屆出ヲ受ケタルトキハ直ニ之ヲ公示
  スヘシ
  前項ノ公示ハ法人ノ登記ト同一ノ效力ヲ有ス
  第六條勞働組合ハ法人トス
  第七條勞働組合ニハ所得稅及營業稅ヲ課セス
  組合ノ爲ス行爲ニ付テハ登錄稅ヲ課セス
  組合ト組合員トノ間ノ法律行爲ニ關シテハ印紙稅ヲ
  課セス
  第八條勞働組合カ組合員相互扶助ノ目的ヲ以テ生
  命保險ノ事業ヲ營ム場合ニ於テハ保險業法ヲ適用セ
  ス
  第九條勞働組合カ組合員相互扶助ノ目的ヲ以テ販
  賣組合購買組合又ハ生產組合ノ事業ヲ營ム場合ニ
  於テハ產業組合法ヲ適用セス
  第十條使用者ハ使用人ニ對シ其ノ勞働組合員タル
  ヲ理由トシ雇傭ヲ解クコトヲ得ス
  第十一條勞働組合ハ少クトモ毎年一囘組合員ノ通
  常總會又ハ總會ニ代ル機關ノ通常會ヲ開クコトヲ要
  ス
  必要アリト認ムル場合ニハ何時ニテモ臨時總會又ハ
  總會ニ代ル機關ノ臨時會ヲ招集スルコトヲ得
  第十二條特別ノ事由ニ依リ總會ヲ開クコト困難ナル
  勞働組合ニ在リテハ定款ヲ以テ總會ニ代ル機關ヲ設
  クルコトヲ得
  前項機關ノ組織員ハ組合員中ヨリ之ヲ選擧スルコト
  ヲ要ス
  本法ニ定ムルモノノ外總會ニ代ル機關ニ關スル事項
  ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
  第十三條總會ニ代ル機關ハ定款ノ議定其ノ變更解
  散及合併ノ決議ヲ爲スコトヲ得ス
  第十四條組合員ハ總組合員五分ノ一以上ノ同意ヲ
  得テ總會ノ目的及其ノ招集ノ理由ヲ記載シタル書面
  ヲ提出シテ總會ノ招集ヲ理事ニ請求スルコトヲ得但
  シ此ノ定數ハ定款ヲ以テ之ヲ增減スルコトヲ得
  前項ノ規定ハ總會ニ代ル機關ヲ設ケタル場合ニ之ヲ
  準用ス
  第十五條組合員ニシテ總會又ハ之ニ代ル機關ノ招
  集手續又ハ其ノ決議ノ方法カ法令又ハ定款ニ違反
  スト認ムルトキハ決議ノ日ヨリ一箇月以内ニ其ノ決
  議ノ取消ヲ監督官廳ニ請求スルコトヲ得
  第十六條總會及之ニ代ル機關ハ理事之ヲ招集ス
  第十七條總會又ハ之ニ代ル機關ノ招集ハ少クトモ五
  日前ニ其ノ會議ノ目的タル事項ヲ示シ定款ニ定メタ
  ル方法ニ從ヒテ之ヲ爲スコトヲ要ス
  第十八條勞勸組合ニ理事及監事ヲ圖ク
  理事及監事ハ總會又ハ之一二代ル機關ニ於テ之ヲ選
  擧ス但シ組合設立當時ノ理事及監事ハ定款ヲ以テ
  之ヲ定ム
  第十九條理事ノ任期ハ三年トシ監事ノ任期ハ一年
  トス但シ定款ニ別段ノ定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
  第二十條理事及監事ハ何時ニテモ總會又ハ之ニ代
  ル機關ン決議ヲ以テ之ヲ解任スルコトヲ得
  第二十一條理事及監事ノ選舉及解任ハ總組合員ノ
  半數以上出席シ其ノ議決權ノ四分ノ三以上ヲ以テ
  之ヲ決ス但シ定款ニ別段ノ定アルトキハ此ノ限ニ在ラ
  ス
  前項ノ規定ハ總會ニ代ル機關ヲ設ケタル場合ニルヲ
  準用ス
  第二十二條民法第五十三條乃至第五十五條、第五
  十七條第五十九條、第六十三條乃至第六十六條
  ノ規定ハ勞働組合ニ之ヲ準用ス
  第二十三條勞働組合ハ主務官廳之ヲ監督ス
  主務官廳ハ何時ニテモ理事ヲシテ組合ノ事業及財產
  ニ關スル報告ヲ爲サシメ組合ノ事業及財產ヲ檢査シ
  其ノ他監督上必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
  第二十四條勞働組合ノ事業又ハ行爲カ法令又ハ定
  款ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スルノ虞アルトキハ主務官
  廳ハ總會又ハ之ニ代ル機關ノ決議ヲ取消シ理事監
  事ノ改選ヲ命シ組合事業ヲ停止シ又ハ組合ヲ解散
  スルコトヲ得
  第二十五條民法第六十八條乃至八十四條ノ規定
  ハ勞働組合ニ之ヲ凖用ス
  第二十六條勞働組合相互ノ氣脈ヲ通シ其ノ目的ヲ
  達成スル爲同種ノ勞働組合ハ勞働組合聯合會ヲ設
  立スルコトヲ得
  勞働組合聯合會ヲ設立セムトスルトキハ各組合ノ聯
  合總會又ハ總會ニ代ル機關ノ聯合會ヲ開キ定款ヲ
  議定スヘシ
  本法ノ規定ハ勞働組合聯合會ニ之ヲ準用ス
  勞働組合聯合會ハ法人トス
  附則
  本法ハ大正千一年六月一日ヨリ之ヲ施行ス
  本法施行前ニ成立シタル組合ニシテ本法ニ該當スルモ
  ノ本法施行後二箇月以內ニ第四條第三項ノ認可ヲ受
  ケムトスル場合ニハ第三條ノ手續ヲ經ルヲ要セス
  〔野田文一郞君登壇〕

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• 098・野田文一郎

  ○野田文一郞君　只今議題ニナリマシタル我黨提案ノ勞
  働組合法案ハ、其內容ハ第四十四議會ニ提案ヲ致シタモ
  ノト全然同一デゴザイマス、而シテ第四十四議會ニ於キマ
  シテハ、鈴木富士彌君ガ提案ノ理由ヲ說明ヲ致シマシタカ
  ラ、私ハ今日ハ成ベク簡單ニ提案ノ理由ヲ說明ヲ致シタイ
  ト思ヒマス、我黨提出ノ勞働組合法案ハ、勞働者ガ共同シ
  テ其利益ヲ自衛的ニ保護スルト云フコトガ第一ノ目的デア
  リマスガ、而シテ其組合ノ單位ト致シマシテハ、共通ノ利害
  關係ヲ有スル者ヲ以テ組織ヲスル、之ガ組合ノ單位トナル
  ノデアリマス、而シテ其共通ノ利害ヲ有スル單位集團ガ又、
  更ニ集合ヲ致シテ、聯合會ヲ形成スルト云フ場合モアル、其
  單位ノ勞働組合ハ、主トシテ組合員各自ニ自助的ノ救濟
  事業ヲ爲サシムルト云フコトヲ目的トスルモノデアリマス、之
  ガ先ヅ案ノ大體ノ骨子デアリマスルガ、然ラバ何故ニ斯ル立
  法ヲ必要トスルカト云フ點ニ付キマシテ、聊カ所見ヲ述ベテ
  見タイノデアリマス、最近此數年ノ間ニ於キマシテ、民心ノ
  上ニ大ナル變化ヲ來シタ卜云フコトハ、爭ンベカラザル事實
  デアリマス、乾中労働階級ノ人ヒハ、思想ノ上ニ非常ナル
  進步ヲ致シテ居ルト云フコトヲ吾々ハ認メザルヲ得ヌノデ
  アリマス、勞働者ハ或ハ學者ノ著書ヲ讀ミ、新聞雜誌ヲ繙
  キ、若クハ講演ヲ聽キ、所在方法ニ依リマシテ、其知識啓發
  ニ不斷ノ注意ヲ怠リヤセヌ爲ニ、今日デハ勞働問題ニ付テ
  ハ、勞働者ハ相當ノ理解ヲ持ッテ居ルノデアリマシテ、是ハ一
  般ニサウデアルト云フコトハ中上ゲ惡イデゴザイマセウガ、先
  ヅ一部ノ勞働者ハ世間ノ人ガ想像ヲ致シテ居ルヨリハ、以
  上ノ理解ヲ持ッテ居ルト云フコトハ、爭フベカラザル事實デア
  ルト思フノデアリマス、サウシテ是等ノ者ガ、所謂勞働階級ノ
  中堅トナッテ中心勢力トナッテ、活動シツヽアルト云フコトモ
  事實デアリマス此ノ如クニシテ勞働者ハ所謂人格ノ自覺ト
  云フモノヲ一面ニ於テハ得テ居リマス、更ニ又勞働ナルモノ
  ガ、經済上ニ於テ如何ナル價値ヲ有スルモノデアルカ、卽チ勞
  働ノ產業界ニ於ケル立場ト云フモノニ付テモ、相當ノ認識
  ヲ持ツコトニナツタト云フコトモ當然デアリマス、斯樣ナル事
  情ヨリ致シマシテ、今日ハ勞働爭議ナルモノガ到ル處ニ頻發
  ヲ致シマシテ、而モ此勞働爭議ハ年ヲ逐ウテ其規模ガ擴大
  セラレ、大規模ノ勞働爭議ト云フモノガ起リマシタ、又大規
  模ノ勞働運動モ比較的節制ヲ保タレテ、稍〓見ルベキ形體
  ヲ備ヘテ居ルコトモ、吾々ノ爭フコトノ出來ナイ事實デアラ
  ウト思フノデアリマス、要スルニ今日勞働爭議ノ頻發シテ大
  規模ノ爭議ガ起ルト云フコトニナッタト云フコトノ原因ヲ考
  ヘマスレバ、所謂生活ノ困難ト云フコトガ第一デアル、第二
  ニハ失業ノ不安ト云フコトガ原因ヲ爲シテ居リマス、是等ノ勞
  働者ガ各〓自覺ヲ致シテ、其自覺ノ上ニ自己ノ主張ノ滿足ヲ
  得ントスルコトヨリ、今日ノ如キ勞働爭議ガ段々ニ殖エテ參ル
  ト私ハ觀測ヲスルノデアリマス、斯樣ニ今日ノ勞働運動ヲ爲
  ス者ハ、相當ノ理解ヲ持ッテ居ル故ニ勞働者ガ唯騒グト云フ
  コトニ見ルト云フコトハ、大ナル誤リデ、勞働者ハ先以テ自己
  ノ權利ヲ主張シ、利益ヲ仲張セントスルニ付キマシテハ、先以
  テ勞働組織ノ改善ヲ要スル、詰リ現在ノ如ク勞働團體ガ甚
  ダ不完全デアッテハ、自己ノ利益ヲ擁護スル上ニ於テ甚ダ不
  十分デアルガ故ニ資本家ヲシテ勞働者ノ組合加入ノ自由ヲ認
  メシメテ、而シテ其組合ナルモノヽ相手方トシテ組合ヲ卽チ資
  本家ノ相手トシテ、一ノ交渉ヲスルダケノ權能ヲ認ムル、所謂團
  體交涉權ト云フヤウナ言葉ヲ以テ之ヲ言ヒ現ハシテ居リマス
  斯樣ニ勞働組織ノ根本ニ向ッテ主張スルト云フコトニ形
  勢ガナッテ居ルト云フコトハ、是ハ確ハ勞働運動ノ一大進步デ
  アルト思フノテアリマス、現ニ昨年起リマシタ神戶大阪方面
  ニ於ケル勞働運動ニ於テ、第一ニ此勞働組織ニ關スルコト
  ヲ主張致シマシテ、其點ニ最モ力ヲ注イデ彼等ハ論爭ヲ致
  ンタノデアリマス、惟フニ蒙昧ノ時代ニ於キマシテハ、總テ團
  體ノ形式ト云フモノハ總テ不完全デアル、併ナガラ段々人
  文ノ進ムニ從ヒマシテ、團體意識ト云フモノガ明瞭ニナッテ
  來ル、ンコデ其團體ノ形式モ次第ニ整備セラレルコトニナリ
  マス、又其圏體ノ運動ト云フモノモ、統一ガアルト云フコト
  ニナッテ、玆デ段々團體ナルモノガ發達シテ來ルト云フコトハ
  是ハ單リ勞働組合ノミナラズ、總テノ團體ニ共通セル所ノ
  發達ノ歷史デアルト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、卽チ世運
  ノ進步ニ伴ヒマシテ、共通ノ利害ヲ有スル團體ガ次ニ勢力
  ヲ得ルコトニナルト云フコトハ、是ハ避クベカラザル社會現
  象デアリマスカラ、何人ノ力ヲ]以テスルモ、此進步ヲ阻止ス
  ルト云フコトハ斷ジテ出來ナイト信ズルノデアリマス、ソレ故
  ニ資本家ノ方カラ見ルト云フト、勞働者ガ結合ヲシテ運動
  ヲスルト云フコトハ、甚ダ自己ニ不利益ナルガ如クニ感ジマ
  シテ、其結合ヲ喜バザルガ如キ傾向ニ見エルノデアリマス、併
  シ今申ス如ウ、總テノ圓體ハドウシテモ次第ニ發達ヲシテ、
  其力ガ强クナルモノデアル運命ヲ持ッテ居ルト云フコトヲ達
  觀致シマシタナラバ、目前ノ利害ニ囚ハレテ大局ヲ誤ルト云
  フガ如キハ、私ハ資本家ノ爲ニハ執ルベキ策デナイト云フコ
  トヲ考ヘテ居リマス、又殊ニ理論カラ申シマシテモ、一方ニ於
  テ資本ノ結合ト云フモノガ認メラレテ居ル、資本ガ結合ヲシ
  テ商事會社ナルモノガ認メラレテ居ッテ此資本ノ團體ノ力
  ト云フモノガ相當ノ働ヲ致シテ居ル以上ハ、一面ニ於テ勞
  働者ノ團體、勞働者ノ結合權ヲ否認スルト云フコトハ、ドウ
  シテモ私ハ理論ニ於テ出來ナイコトデアラウト考ヘマス、强
  テ之ヲ拒ムト云フコトハ、公平ノ觀念ニ反シ、道德ノ思想ニ
  悖ルト云フコトヲ言ハナケレバナラヌ、今日勞働社會ニ於キ
  マシテハ、實際ニ於テハ二ツノ思想ガ流レテ居ルト云フコ
  トヲ私ハ考ヘテ居ル、第一ハ現在ノ經濟組織ヲ肯定致シマ
  シテ專ラ其改良ヲ目的トスル所謂勞働組合主義ヲ主張スル
  モノデアリマス、是ハ穏健ノ方デアッテ、一面ニハ所謂ーサンジ
  カリズム」ノコトヲ信ズルモノデアル、是ハ頗ル過激ナルモノデ
  アリマスガ、此「サンジカリズム」ト勞働組合主義トノ二ツノ
  思想ハ、現ニ勞働者ノ仲間ニ於テ思想ガ相鬪ヒツヽアルコト
  ハ、爭フベカラザル事實デアリマス、ソレ故ニ若シ此場合ニ於
  テ資本家ノ方デモ何時迄モ舊キ思想ニ囚ハレテ、勞働者ノ
  結合ヲ喜バザル情勢デアリ、政府ニ於テモ亦資本家ノ機嫌
  ヲ損ズルコトヲ恐レルトカ、其他種々ナル事情ニ囚ハレマシ
  テ、躊躇逡巡ヲ致シテ居ルト云フコトデアレバ、此勞働界ノ
  間ニ流レテ居ル所ノ危險ナル思想、過激ナル思想ハ偶〓宣
  傳ノ機會ヲ得マシテ、是ガ爲ニ將來我ガ國家社會ニ測ルベ
  カラザル所ノ危險ヲ釀成スルト云フコトノ憂ヲ私ハ懷カザル
  ヲ得ヌノデアリマス要スルニ此勞働〓體ヲ認ムルト云フコト
  ハ國民ノ力ガ政治ノ方面ニ現レヽバ普通選擧ノ要望トナリ、
  勞働者ガ自覺ヲスレバ、勞働ノ結合ト云フコトニナルノデア
  リマス、恰モ熱烈ナル普通選擧ノ要望ヲ拒ムコトガ出來ナ
  イト同樣ノ理由ニ依リマシテ、今日勞働者ノ結合ヲ否認シ、
  之ヲ拒ムト云フコトハ、私ハ斷ジテ出來ナイモノデアルト云
  フコトヲ確信スルノデアリマス、國內ノ情勢ガ今申ス通リデ
  アルノミナラズ、今日ハ我國ハ國際勞働會議ニモ參列致シ
  テ居ル一員トナッテ居ルノデアリマシテ、世界ノ一等國デアル
  ト稱シ、國際勞働會議ニ參加致シテ居ル我國ノ立場ト致
  シマシテ、勞働者ノ團結權ヲ認メナケレバナラヌト云フコト
  ハ、此點ニ於テモドウシテモ避ケルコトノ出來ザル形勢ニナツ
  テ居ルノデアリマス、是ガ昨年モ鈴木君ガ申シマシタ如ク、千
  九百十·九年デアリマスカ、第一回ノ國際勞働會議ニ於テモ
  我國ニ勞働團體ノ鞏固ナル組織無ク、隨テ勞働組合ヲ代
  表スル所ノ委員ガナカッタ爲ニ、枡本委員ガ佛蘭西、白耳義、
  瑞西、是等ノ各國ノ委員ヨリ窘メラレ、最後ニハ議長ニ哀
  訴嘆願デモ致シマシタカ、僅ニ記錄ニ留メルト云フコトニシ
  テ、日本ニ交涉ヲスルト云フコトノ決議ダケヲ許シテ貰ッテ、
  其場ヲ糊塗シタト云フヤウナ、洵ニ大耻辱ヲ世界各國ノ勞
  働委員ノ前デ演ジタト云フコトハ、諸君ノ御記憶ニナル所
  デアリマシテ、斯ル立場ヨリ致シマシテモ、今日勞働團體ノ
  結合ヲ認メテ、之ヲ保護奬勵ヲスルト云フコトガ、一日モ忽
  セニスベカラザル緊急ナル問題トナッテ居ルト云フコトガ明
  白デアルト思フノデアリマス、尙ホ勞働組合ノ仕事ハ、所謂
  對內的ト對外的トアリマスルガ、對內的ニ爲ス事業、所謂救
  濟事業ハ、或ハ葬式ノ給與金ヲ給與スルトカ、若クハ組合
  員ニ對シテ養老年金デ給與スルガ如キ、又傷害給與金ヲ與
  ヘルトカ、疾病給與金ヲ與ヘルカ、或ハ失業給與金、若タハ
  罷業ノ給與金ヲ與ヘルト云フヤウナコトガアリマスルガ、是ハ
  先ヅ普通ニ行ハルヽ方法デアリマスルガ、併シ一面ニ於テハ
  時代ニ促サレマシテ、資本家モ相當二溫情的ノ設備ヲスル
  ト云フコトモアリマセウ、又國家ガ社會政策ヲ普及スルト云
  フコトニモナリマセウ、斯ノ如クニシテ、資本家ノ溫情的施
  設、國ノ社會政策ノ普及ニ依リマシテ、組合ノ救濟事業ハ
  自ラ其範圍ヲ縮小セラルヽト云フコトハ當然ノ趨勢デアル
  ノデアリマス、故ニ是等ノ救済事業ノ事ニ付キマシテハ、本
  案ニ於テハ總テ之ヲ定款ニ讓ルコトニ致シマシテ、唯組合ガ
  生命保險事業ヲ營ミ、或ハ購買組合、販賣組合、若クハ生
  產組合、斯樣ナル事業ヲ營ミマスル場合ニハ、保險事業法
  其他產業法ノ特別ノ支配ヲ受ケシメズシテ、ソレ等ノモノヨ
  リ解放ヲ致スト云フコトヲ、原則トシテ決メテ置クト云フコト
  ニ止メテアルノデアリマス、斯樣ニ勞働者ガ組合ニ依シテ、平
  和的ニ最モ力ヲ盡サナケレバナラヌ點ハ、組合ノ相互救濟ノ
  事業デアリマスケレドモ、併ナガラ如何ニ資本家ガ溫情主
  義ヲ以テ之ヲ臨ミマシテモ、資本家ト勞働者ノ間ニハ利害
  相反スル事トガアル、勞働者ノ正當ナル要求デアッテモ、資
  本家ハ必シモ之ヲ容ルヽト云フコトガナイノデアリマスルカ
  ラ、此ニ於テ所謂同盟罷業ト云フ事モ、ドウシテモ起ラザル
  ヲ得ヌノデアリマス、勿論之ヲ奬勵シ之ヲ謳歌スルノデハア
  リマセヌケレドモ、矢張同盟罷業ト云フ事ハ、勢ヒ避ケルコ
  トノ出來ナイ一ツノ社會現象デアル、斯様ナル場合ニ於キ
  マシテ、今日ノ如キ國法ノ下ニ組合ガ統一セラルヽノデナク
  シテ、全ク警察力ノ取締ニ依ッテ、或ル範圍ヲ超エタモノヲ
  取締ヲスルト云フコトノ外、組合ノ準據スベキ何等ノ法則
  ガ無クシテ、自然ニ放任シテアルト云フコトハ、勞働者ガ自
  覺ハ致シテ居ルトハ云フモノヽ、動モスレバ常軌ヲ逸シ、節
  制ヲ缺クト云フヤウナコトモ、多數集團ノ行動トシテハ已
  ムベカラザル事情ガアルノデアリマス(「簡單ニ願ヒマス」「謹
  聽」ト呼フ者アリ)斯樣ナル意味ニ於テモ、矢張勞働組合ニ
  依シテ相當ノ機關ヲ設ケ、而シテ此組合ハ主務官廳ノ監督
  ノ下ニ行動ヲスル、斯ウ云フコトニ致シマスレバ、組合ヲシテ
  合理的ノ行動ヲ爲サシムルト云フコトニハ、寧ロ現在ノ儘ニ
  放任スルヨリハ、遙ニ有利デアルノデアリマスルカラ、資本家
  ハ之ヲ嫌フドコロデハナイ、寧口私ハ勞働組合法ノ制定ヲ
  歡迎スルト云フ態度ニ出デナケレバナラヌト云フコトヲ考
  ヘルノデアル、要スルニ勞働組合法ノ制定ニ依リマシテ、內
  ニ在ッテハ勞働者ヲシテ自給的ニ互ニ扶助援護ヲシテ發達
  ヲ遞ゲシメ、外ニ向ッテハ國際勞働會議ニ參加スル我國ノ
  立場ノ點ニ於テ、帝國ノ面目ヲ維持スル上ニ於テ、今日ノ
  場合、勞働組合法ヲ制定スルト云フコトハ、極メテ急ヲ要ス
  ル事柄デアッテ、政府ガ或ハ農商務省案ト云ヒ、若クハ內務
  省案ト云フヤウナモノガ世間ニ噂ヲサレテ居リマスケレドモ、今
  日ノ場合ニ於テ、尙ホ未ダ勞働組合法案ノ御提案ノナイト
  云フコトハ、是ハ吾々頗ル遺憾トスル所デアッテ、此勞働運
  動ノ益〓熾トナッテ、之ニ對シテ一定ノ法則ニ依ッテ之ヲ支配
  シ、勞働政策ナルモノガ今日ノ重要ナル一ツノ問題トナッテ
  居ル場合ニ於テ、尙ホ等閑ニ付セラルルガ如キハ、確ニ大ナ
  ル怠慢デアルト云フコトヲ私ハ斷言スルノデアリマス(拍手)
  若シ今少シ早ク此法案ノ制定ガアッタナラバ、國際勞働會
  議ニ於テモ、我ガ委員ガ世界列國ノ勞働委員ノ前デ恥ヲ
  掻クコトモ要ラナカッタノデアリマス、又昨年ノ如キ大勞働
  爭議モ或ハ起ラナカッタノデアリマセウ、何トナレバ彼等ガ第
  一ニ標榜シタ主張ハ、勞働組合ノ問題デアッタノデアリマシ
  テ、私ハ或ル意味ヨリ申セバ、昨年ノ神戶ノ勞働爭議ノ如
  キハ、此起クタル事ニ付テハ、政府ハ其一半ノ責任ヲ此點ニ
  於テモ負ハナケレバナラヌト思フ(拍手)殊ニ生活ヲ困難ナ
  ラシメ、非常ノ危險ト云フヤウナ事ニ向フテ、相當ナ施設ヲ
  爲サナカッタコトハ、全部政府ノ責任デアルト云フコトヲ斷
  言シナケレバナラヌ、斯樣ナ必要ニ迫ラレテ居ル本案デアリ
  マスカラ、愼重ナル御審議ノ下ニ、御賛成アランコトヲ希望
  致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=98

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• 099・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　本案ハ〓瀨一郎君外一名提出治安警
  法察法中改正法律案外六件ノ委員ニ併セテ付託セラレン
  コトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=99

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• 100・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ本案ハ動議ノ如ク決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=100

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• 101・鈴木錠藏

  ○鈴木錠藏君　殘餘ノ日程ニ對シテ延期ノ動議ヲ提出
  致シマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=101

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• 102・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマスカラ、動議ノ如ク決シマス、御諮リヲ致ス事ガアリマ
  ス、高橋金治郞君事故ニ付本月九日ヨリ二十二日マデ請
  暇ノ申出ガアリマス、許可シテ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=102

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• 103・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、許可ス
  ル事ニ取計ヒマス、尙ホ御諮リ致シマス、第二部選出豫算
  委員三浦得一郞君、第四部選出請願委員廣岡宇一郞君
  第八部選出豫算委員植竹龍三郞君、第一部選出決算委
  員河崎〓君、第四部選出豫算委員君加藤定吉君、右常
  任委員辭任ノ申出ガアリマシタ、許可スルニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=103

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• 104・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマス、許可ス
  ルコトニ致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補闕選擧ヲセラレテ、御
  屆出アランコトヲ希望致シマス、明日モ議案ガ輻輳シテ居
  リマスカラ特ニ會議ヲ開キマス、日程ハ公報ヲ以テ御報告
  致シマス、本日ハ是ニテ散會
  午後五時三十八分散會
  衆議院議事速記錄第二十二號中正誤
  頁段行誤正
  五〇〇中三四十幾万八十幾万
  衆議院議事速記錄第二十三號中正誤
  頁段行誤正
  五二一中三九法案ノ下ニ「外一件」ヲ加フ
  五二一下七外一件外二件
  五二一下三外一件外二件
  五二二上二二法案ノ下ニ「外一件」ヲ加フ
  五二二上二八外一件外二件
  五二二上三外一件外二件
  五四二上二六「外一件」ノ三字ヲ創ル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02419220307&spkNum=104

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