1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十一年三月八日（水曜日）午後一時十六分開議
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議事日程 第二十四號 大正十一年三月八日
午後一時開議
第一 刑事訴訟法案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第二 民事訴訟法中改正法律案（大道寺慶男君提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第三 湖南鐵道建設に關する建議案（八田宗吉君外四名提出）
第四 食料品配給設備に關する建議案（山本条太郎君外三名提出）
第五 國有林野所在の府縣市町村に對し交付金下付に關する建議案（八田宗吉君外二名提出）
第六 大船渡氣仙沼間鐵道速成に關する建議案（志賀和多利君外二名提出）
第七 氣仙沼前谷地間鐵道速成に關する建議案（高橋長七郎君外三名提出）
第八 高田川井間及水澤世田米間鐵道建設に關する建議案（志賀和多利君外一名提出）
第九 縣社一條神社を別格官幣社に昇格に關する建議案（坂本素魯哉君外四名提出）
第十 墓地及埋葬取締規則中改正に關する建議案（松下禎二君提出）
第十一 食糧充實の奬勵に關する建議案（多木久米次郎君外一名提出）
第十二 鎭南浦築港完成に關する建議案（牧山耕藏君提出）
第十三 帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案（八田宗吉君外五名提出）
第十四 官幣小社竈門神社境域擴張に關する建議案（中村清造君外二名提出）
第十五 朝鮮多獅島築港に關する建議案（牧山耕藏君外六名提出）
第十六 新潟築港に關する建議案（丸山嵯峨一郎君外十四名提出）
第十七 青森築港國營に關する建議案（北山一郎君外十五名提出）
第十八 澁川上田間鐵道速成に關する建議案（木檜三四郎君外一名提出）
第十九 理化博物館建設に關する建議案（鈴木隆君外四名提出）
第二十 地方鐵道買收法制定に關する建議案（中西六三郎君外四名提出）
第二十一 對支文化事業施設に關する建議案（山本条太郎君外六名提出）
第二十二 地方裁判所新設に關する建議案（藏内次郎作君外七名提出）
第二十三 北海道鐵道速成に關する建議案（木下成太郎君外七名提出）
第二十四 肥料官營に關する建議案（津野田是重君外三名提出）
第二十五 郡町村連絡直通電話特設奬勵に關する建議案（佐久間啓莊君提出）
第二十六 利根運河國有に關する建議案（本多貞次郎君外六名提出）
第二十七 原蠶種の種類制限に關する建議案（武藤金吉君外七名提出）
第二十八 醫師法中改正に關する建議案（八木逸郎君外十一名提出）
第二十九 國立體育研究所設立に關する建議案（八木逸郎君外十一名提出）
第三十 癈兵優遇及軍人遺族扶助料改正に關する建議案（津野田是重君外三名提出）
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=0
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001・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔原田書記官朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
速記者ノ養成及優遇ニ關スル建議案
提出者木下成太郎君志賀和多利君
(以上三月七日提出)
國籍法中改正ニ關スル建議案
提出者植原悅二郞君
(以上三月八日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
和歌山縣立日高農林學校廢校ニ關スル質問主意書
提出者田淵豐吉君
(以上三月七日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
一今八日常任委員補闢選擧ノ結果左ノ如シ
第一部選出決算委員野村勘右衞門君(河崎〓君補
閣
第二部選出豫算委員樋口秀雄君(三浦得一郞君補
關
第四部選出請願委員佐野正雄君(廣岡宇一郎君補
關
第四部選出豫算委員三木武吉君(加藤定吉君補
關
第八部選出豫算委員市村貞造君(植竹龍三郞君補
關
一昨七日辯護士法改正法案委員黑住成章君、井坂豊
光君辭任ニ付其ノ補關トシテ匹田銳吉君、北井波治
目君ヲ、破產法案外一件委員益谷秀次君辭任ニ付
其ノ補關トシテ久木田叶君ヲ、電信線電話線建設條
例第六條ニ依ル手當金增額ニ關スル建議案委員鈴
木周三郞君辭任ニ付其ノ補關トシテ佐久間啓莊君
ヲ、傳染病豫防法中改正法律案外一件委員三浦得
一郞君辭任ニ付其ノ補關トシテ香川保忠君ヲ、第二
期治水計畫確立ニ關スル建議案委員定行八郞君、
齋藤巳三郞君辭任ニ付其ノ補開トシテ神谷彌平君、
出口直吉君ヲ、孰レモ議長ニ於テ選定セリ
一今八日大湯鐵道及魚沼鐵道買收ノ爲公債發行ニ關
スル法律案委員牧口義矩君辭任ニ付其ノ補闕トシ
テ木檜三四郞君ヲ、銃砲火藥類取締法中改正法律
案委員長田桃藏君辭任ニ付其ノ補闕トシテ山本条
太郞君ヲ、工場法中改正法律案委員橫山勝太郞君
辭任ニ付其ノ補關トシテ正木照藏君ヲ孰レモ議長ニ
於テ選定セリ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=1
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002・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 會議ヲ開キマス、日程第一、刑事
訴訟法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求
メマス、委員長鵜澤總明君
第刑事訴訟法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一刑事訴訟法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
段及報告候也
大正十一年三月六日
刑事訴訟法案委員長
鵜澤總明
衆議院議長奧繁三郞殿
(別紙)
刑事訴訟法案中左ノ通修正ス
第二十五條ニ第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ
辯護人ハ被告人ノ爲忌避ノ中立ヲ爲スコトヲ得但シ
被告人ノ明元シタル意思ニ反スルコトヲ得ス
第三十九條第二項中「夫」トアル「配偶者」ト改ム
第八十二條ニ第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ハ宣告シタル栽判ニ對スル上訴ノ提起期
間ニハ之ヲ適用セス
第八十六條ヲ左ノ如ク改ム
被告人再度ノ召喚ヲ受ケ故ナク出頭セサルトキハ之
ヲ勾引スルコトヲ得
第九十五條中「人相書」トアルヲ「容貌、體格其ノ他ノ徵
表ヲ記載シタル書面」ト改ム
第百十四條中「檢事ノ意見ヲ聽キ」ヲ削ル
第百十五條中「夫」トアルヲ「配偶者」ト改ム
第百十九條第一項第一一項ヲ左ノ如ク改ム
被告人逃亡シタルトキ、逃亡スル虞アルトキ、召喚ヲ受
ケ正當ノ事由ナクシテ出頭セサルトキ、罪證ヲ湮滅ス
ル虞アルトキ又ハ住居ノ制限ニ違反シタルトキハ裁判
所ハ檢事ノ意見ヲ聽キ決定ヲ以テ保釋、責付又ハ勾
留ノ執行停止ヲ取消スコトヲ得
保釋ヲ取消ス場合ニ於テハ裁判所ハ檢事ノ意見ヲ聽
キ決定ヲ以テ保證金ノ全部又ハ一部ヲ沒取スルコト
ヲ得
第百二十三條削除(次條以下順次條數ヲ繰上ク)
第百二十七條中「若ハ」トアルヲ「又ハ」ト改メ「又ハ勾引
狀ノ執行ヲ受ケタル被疑者ヲ受取リ」ヲ削ル
第百二十八條第一項中「若ハ」トアルヲ「又ハ」ト改メ「又
ハ司法警察官檢事若ハ司法警察官ノ命令ニ因リ被疑
者ニ對シ勾引狀ヲ發シ」ヲ創ル
第二項割除
第百二十九條第一項中「若ハ」トアルヲ「又ハ」ト改メ「又
ハ勾引狀ノ執行ヲ受ケタル被疑者ヲ受取リ」及「場合ニ
於テ急速ヲ要シ判事ノ勾留狀ヲ求ムルコト能ハサル」及
「勾留狀ヲ發シ」ヲ削ル
第二項中但書ヲ削除
第三項削除
第百三十一條削除(次條以下順次條數ヲ繰上ク)
第百四十九條「辯護人、」ノ下ニ「辨理士、」ヲ加フ
第百七十條第一項中「ハ第百二十三條第一項各號ノ
場合又ハ」ヲ削リ「逮捕シ」ノ下ノ「若ハ」ヲ「又ハ」ニ改ム
第百七十四條第三項中「及第百二十三條第一項第三
號乃至第六號ノ規定ニ依リ發シタル勾引狀ヲ執行スル
爲前條ノ搜索ヲ爲ス場合」ヲ削ル
第百八十條第一項中「ハ第百二十三條第一項各號ノ
場合又ハ」ヲ削リ「逮捕シ」ノ下ノ「若ハ」ヲ「又ハ」ト改ム
第百八十七條「辯護人、」ノ下ニ「辨理士、」ヲ加フ
第二百十四條第一項中「ハ第百二十三條第一項各號
ノ場合又ハ」ヲ削リ「逮捕シ」ノ下ノ「若ハ」ヲ「又ハ」ト改ム
第二百十五條ヲ左ノ如ク改ム
檢事又ハ司法警察官證人ヲ訊問スル場合ニ於テハ
宣誓ヲ爲サシムルコトヲ得ス
第二百五十五條第一項中「捜査ヲ爲スニ付强制ノ處
分ヲ必要トスルトキ」トアルヲ「捜査ヲ爲スニ當リ罪證ヲ
湮滅シ又ハ之ヲ使用シ難キニ至ル虞アルトキ」ト改メ「被
疑者ノ勾留」ヲ削ル
第二百五十七條第一項削除
第二百七十四條削除
第二百七十五條削除(次條以下順次條數ヲ繰上ク)
第三百二十三條第一項「但シ」以下ヲ削ル
第三百四十一條ヲ左ノ如ク改ム
裁判長ハ證人其ノ他ノ者被告人又ハ或傍聽人ノ面
前ニ於テ十分ナル供述ヲ爲スコトヲ得サルへシト思料
スルトキハ其ノ供述中之ヲ退廷セシムルコトヲ得被告
人他ノ被告人ノ而前ニ於テ十分ナル供述ヲ爲スコト
ヲ得サルヘシト思料スルトキ亦同シ
前項ノ規定ニ依リ被告人ヲ退廷セシメタル場合ニ於
テ共同被告人、證人其ノ他ノ者ノ供述終リタルトキハ
被〓人ヲ入廷セシメ供述ノ要旨ヲ告クヘシ
第三百四十五條第一項第二號中「召喚シ難キトキ」ト
アルヲ「訊問スルコト能ハサルトキ」ト改ム
第三百五十一條第三項削除
第三百五十三條第二項ヲ左ノ如ク改ム
檢事及辯護人ハ前項ノ取調ニ立會フコトヲ得
第三百六十三條ヲ左ノ如ク改ム
區裁判所ニ在リテハ上訴ノ申立ナキ場合又ハ判決宣
告ノ日ヨリ七日內ニ判決書ノ謄本ノ詰求ナキ場合ニ
於テ判決主文竝罪ト爲ルヘキ事實ノ要旨及適用シタ
ル罰條ヲ公判調書ニ記載セシメ之ヲ以テ判決書ニ代
フルコトヲ得
第四百二十四條第一項中「三十五日」トアルヲ「五十
日」ニ改ム
第四百二十六條第一項中「十五日前迄」ノ下ニ「附帶」
ヲ加フ
第二項中「前項ノ」ヲ「附帶」ニ改ム
第四百八十七條第四號ノ次ニ左ノ一號ヲ加へ以下號
ヲ繰下ク
特許權、實用新案權、意匠權又ハ商標權ヲ害シタル
罪ニ因リ有罪ノ言渡ヲ爲シタル事件ニ付其ノ權利ノ
無效ノ審決確定シタルトキ又ハ無效ノ判決アリタルト
キ
第五百三十二條中「之ヲ抛棄シ又ハ」ヲ削ル
第五百三十五條中「抛棄若ハ」ヲ削ル
右條項修正ノ結果各條ヲ整理スルモノトス
〔鵜澤總明君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=2
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003・鵜澤總明
○鵜澤總明君 刑事訴訟法案ノ特別委員會ノ經過及結
果ヲ報告致シマス、委員會ハ案ノ全體ノ質問ノ爲ニ開會致
シマシタルコトガ十回デアリマス、更ニ逐條ニ亙リマシテ審
議質問致シマスル爲ニ、小委員ニ移シタノデアリマス、其小委
員會ハ熊谷直太君、磯田粂三郞君、禱苗代君、宮古啓三
郞君、黑住成章君、上畠益三郞君、橫山勝太郞君、鈴木
富士彌君、〓瀨一郎君、之ニ委員長ガ加ハリマシテ、逐條審
議ヲ致シマシテ、此小委員會ヲ開キマシタルコト八回デアリ
マス、小委員會ニ於キマシテハ、案ノ全體ニ對スル質問ヲ終
了致シマシテ、之ヲ更ニ特別委員會ニ報告致シマシテ、特別
委員會ニ於キマシテ修正ノ討議ニ這入ッタ次第デアリマス、
此刑事訴訟法ノ改正ハ、部分的ノ改正ト云フコトデハゴザ
イマセヌノデ、刑事訴訟法ノ全體ヲ改正シヤウ、斯ウ云フコ
トニナッテ居ルノデアリマス、卽チ現行ノ刑事訴訟法ニ於キ
マシテ、或ル部分ニ不完全ナ所ガアルカラ、[其部分ノ修正ヲ
以テ足レリト云フノデハナイノデゴザイマシテ、刑事訴訟法
全體ニ渉ッテ多年ノ問、卽チ明治二十八年カラ此刑事訴
訟法ノ改正ト云フ事業ニ政府ガ取掛リマシテ、遂ニ昨年ニ
至リマシテ、大體ノ成案ヲ得テ、之ガ此度ノ議會ニ提案サレ
タト云フコトニナルノデゴザイマス、サウ云フヤウナ次第デゴ
ザイマスカラ、委員會ニ於キマシテハ、各委員ノ勵精努力ニ
依リマシテ、極テ愼重ナル審議ヲ盡シマシテ、而シテ委員諸
君ノ本案ニ對スル意見ハ遺憾ナク開陳セラレタノデアリマ
ス、其上ニ尙ホ在野法曹ノ意見ト云フモノヲモ討議ノ資料
ニ加ヘマシテ、段々ト審査ヲ致シマシタル結果、遂ニ本案ハ左
ノ如キ修正ニ依ッテ、可決セラルヽト云フコトニナッタノデアリ
マス、修正案ハ禧苗代君ガラノ提案ト、横山勝太郎君ノ提
案ト、〓瀨一郞君ノ提案ト三種ニ分レテ居リマス、委員會
ニ於キマシテハ、禱君ノ修正案ニ對シマシテハ、殆ド全會一
致ヲ以テ可決致シマシタ、横山勝太郞君ノ修正、〓瀨一郞
君ノ修正ニ對シテハ、委員會ハ之ニ反對ヲ致シタ次第デア
リマス、此横山君ノ案、〓瀨君ノ案ニハ、少數意見トシテ此
議場ニ於キマシテ、提案セラルヽト『云フコトニナッテ居リマス
ルカラ、後ニ少數意見ノ御報告ノアルコトヽ存ジマス、先ヅ
修正サレマシタ箇條ヲ少シク煩瑣ニ涉リマスガ、此所デ議場
ニ御〓告ヲ致シタイト思フノデアリマス、實ハ訴訟法案ノ全
部ニ對シテ、一々整理ヲ致シマシタ印刷物ガ配布サルベキデ
ゴザイマスケレドモ、時間ノ關係ニ依リマシテ、大體ノ委員
會ニ現レマシタル修正通リノ議案ガ配布サレテアルト思ヒ
マスカラ、之ニ基イテ報告ヲ致シマス、其中ニ全部ニ對スル
整理ノ出來マシタ印刷物ハ、諸君ノ手ニ御配布ニナルコト
デアラウト信ジマス、刑事訴訟法案、卽チ此議會ニ政府カラ
提案セラレマシタ刑事訴訟法案ノ第二十五條ニ第二項ト
シテ左ノ一項ヲ加フ「辯護人ハ被告人ノ爲忌避ノ申立ヲ爲
スコトヲ得但シ枝告人ノ明示シタル意思ニ反スルコトヲ得
ス」第三十九條第二項中「夫」トアルヲ「配偶者」ト改ム、第
八十二條ニ第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ「前項ノ規定ハ宣
告シタル裁判ニ對スル上訴ノ提起期間ニハ之ヲ適用セス」
第八十六條ヲ左ノ如ク改ム「被告人再度ノ召喚ヲ受ケ故
ナク出頭セサルトキハ之ヲ勾引スルコトヲ得」第九十五條
中「人相書」トアルヲ「容貌、體格其ノ他ノ徵表ヲ記載シタ
ル書面」ト改ム、第百十四條中「檢事ノ意見ヲ聽キ」ヲ創ル、
第百十五條中「夫」トアルヲ「配偶者」ト改ム、第百十九條
第一項第二項ヲ左ノ如ク改ム「被告人逃亡シタルトキ、逃
亡スル虞アルトキ、召喚ヲ受ケ正當ノ事由ナクシテ出頭セサ
ルトキ、罪證ヲ湮滅スル虞アルトキ又ハ住居ノ制限ニ違反
シタルトキハ裁判所ハ檢事ノ意見ヲ聽キ決定ヲ以テ保釋、
責付又ハ勾留ノ執行停止ヲ取消スコトヲ得」「保釋ヲ取消
ス場合ニ於テハ裁判所ハ檢事ノ意見ヲ聽キ決定ヲ以テ保
證金ノ全部又ハ一部ヲ沒取スルコトヲ得」第百二十三條ハ
削除、次條以下順次條數ヲ繰上グ第百二十七條中「若ハ」
トアルヲ「又ハト改メ「又ハ勾引狀ノ執行ヲ受ケタル被疑者
ヲ受取リ」ヲ削ル第百二十八條第一項中「若ハ」トアルヲ「又
ハ」ト改メ「又ハ司法警察官檢事若ハ司法警察官ノ命令ニ
因リ披疑者ニ對シ勾引狀ヲ發シ」ヲ削ル、第百二十九條第
一項中「若ハ」トアルヲ「又ハ」ト改メ「又ハ勾引狀ノ執行ヲ
受ケタル被疑者ヲ受取リ」及「場合ニ於テ急速ヲ要シ判事
ノ勾留狀ヲ求ムルコト能ハサル」及「勾留狀ヲ發シ」ヲ削ル、
第二項中但書ヲ削除、第三項削除第百三十一條削除次
條以下順次條數ヲ繰上グ、第百四十九條「辯護人」ノ下ニ
「辨理士」ヲ加フ、第百七十條第一項中「ハ第百二十三條
第一項各號ノ場合又ハ」ヲ削リ「逮捕シ」ノ下ノ「若ハ」ヲ「又
ハ」ニ改ム、第百七十四條第三項中「及第百二十三條
第一項第三號乃至第六號ノ規定ニ依リ發シタル勾引狀
ヲ執行スル爲前條ノ搜索ヲ爲ス場合」ヲ創ル、第百八十條
第一項中「ハ第百二十三條第一項各號ノ場合又ハ」ヲ削
リ「逮捕シ」ノ下ノ「若ハ」ヲ「又ハ」ト改ム、第百八十七條「辯
設人」ノ下ニ「辨理士、」ヲ加フ、第二百十四條第一項中「ハ
第百二十三條第一項各號ノ場合又ハ」ヲ削リ「逮捕シ」ノ
下ノ「若ハ」ヲ「又ハ」ト改ム、第二百十五條ヲ左ノ如ク改ム
「檢事又ハ司法警察官證人ヲ訊問スル場合ニ於テハ宣誓
ヲ爲サシムルコトヲ得ス」第二百五十五條第一項中「搜査
ヲ爲スニ付强制ノ處分ヲ必要トスルトキ」トアルヲ「搜査ヲ
爲スニ當リ罪證ヲ湮滅シ又ハ之ヲ使用シ難キニ至ル虞アル
トキ」ト改メ「被疑者ノ勾留、」ヲ削ル、第二百五十七條、第
一項削除、第二百七十四條削除、第二百七十五條削除、
次條以下順次條數ヲ繰上ク、第三百二十三條第一項「但
シ」以下ヲ削ル、第三百四十一條ヲ左ノ如ク改ム「裁判長ハ
證人其ノ他ノ者被告人又ハ或傍聽人ノ面前ニ於テ十分ナ
ル供述ヲ爲スコトヲ得サルヘシト思料スルトキハ其ノ供述
中之ヲ退廷セシムルコトヲ得被告人他ノ被告人ノ面前ニ
於テ十分ナル供述ヲ爲スコトヲ得サルヘシト思料スルトキ
亦同シ」「前項ノ規定ニ依リ被告人ヲ退廷セシメタル場合
ニ於テ共同被告人、證人其ノ他ノ者ノ供述終リタルトキ
ハ被告人ヲ入廷セシメ供述ノ要旨ヲ告クヘシ」第三百四十
五條第一項第二號中「召喚シ難キトキ」トアルヲ「訊問スル
コト能ハサルトキ」ト改ム、第三百五十一條第三項削除、第
三百五十三條第二項ヲ左ノ如ク改ム、「檢事及辯護人ハ
前項ノ取調ニ立會フコトヲ得」第三百六十三條ヲ左ノ如
ク改ム「區栽判所ニ在リテハ上訴申立ナキ場合又ハ判決宣
告ノ日ヨリ七日內ニ判決書ノ謄本ヲ請求ナキ場合ニ於テ
判決主文竝罪ト爲ルヘキ事實ノ要旨及適用シタル罰條ヲ
公判調書ニ記載セシメ之ヲ以テ判決書ニ代フルコトヲ得」
第四百二十四條第一項中「三十五日」トアルヲ「五十日」ニ
改ム、第四百二十六條第一項中「十五日前迄」ノ下ニ「附
帶」ヲ加フ第二項中「前項ノ」ヲ「附帶」ニ改ム、第四百八十
七條第四號ノ次ニ左ノ一號ヲ加へ以下號ヲ繰下ク「特許
權、實用新案権、意匠權又ハ商標權ヲ害シタル罪ニ因ル有
罪ノ言渡ヲ爲シタル事件ニ付其權利ノ無效ノ審決確定シ
タルトキ又ハ無效ノ判決アリタルトキ」第五百三十二條中
之ヲ抛棄シ又ハ」ヲ削ル、第五百三十五條中「抛棄者ハ」
ヲ削ル、右條項修正ノ結果各條ヲ整理致シタノデアリマス、
ソレカラ一寸報告ノ漏ガアリマスガ、第百二十八條ノ所ニ
第二項削除ト云フコトヲ報告致ス積リデアリマシタガ、是ガ
漏レタノデアリマス、竝ニ附加ヘテ置キマス、ソレデ以上ガ先
ヅ修正ノ全體デゴザイマスガ、修正セラレマシタ趣旨ヲ、多
少時間ヲ取ッテ恐縮デアリマスルガ御報告ヲ致シタイト思フ
ノデアリマス、元來案ノ提案ニ當リマシテ、政府ノ說明スル
所ニ依リマスレバ、此刑事訴訟法ハ數多ノ點ニ於テ改正ヲ
加へ、數多ノ點ニ於テ現行法ニ優ル所ガアル、斯ウ云フノデ
十數箇條ヲ擧ゲテ說明セラレテ居ルノデアリマスガ、其中ニ
於テ特ニ此議場ニ御報告ヲ申上ゲテ置キタイ點ヲ先ヅ御
聽キヲ願ヒマス、政府ノ申シマスル第一ハ、此刑事訴訟法
案ニ於キマシテ、ドウ云フ點ヲ附加ヘタカト申シマスレバ「道
義ヲ重ンジ、淳風良俗ヲ保持スルノ趣旨ヲ以テ幾多ノ規定
ヲ設ケタルコト」斯ウ言ハレテ居リマスルカラ、之ヲ審査致シ
テ見マスルト云フト、案ノ第二百五十九條、案ノ第百七十
六條、案ノ第五百四十八條等ニ於キマシテ、政府ノ言ハレ
ルヤウナ點ガ加ヘラレテ居ルノデアリマス、試ニ其二百五十
九條ヲ御覽ヲ願ヒマスレバ「祖父母又ハ父母ニ對シテ告訴
ヲ爲スコトヲ得ス」詰リ我國ノ從來ノ良風ニ則リマシテ、祖
父母又ハ父母ニ對シテ告訴ヲスルト云フ事柄ハ、我國ノ孝
道ニ對シテ甚ダ遺憾ナ點デアルカラ、此度ハ告訴ハ出來ナ
イト云フヤウナ事ニ改メタノガ其一箇條デアルト云フノデア
リマス、ソレカラ「第二ハ訴訟能力ノ章ヲ設ケテ意思無能力
者及法人ノ代表ニ關スル規定ヲ置キタルコト」、斯ウ云フノ
デアリマス、從來ノ刑事訴訟法ニ於キマシテ、卽チ現行ノ刑
事訴訟法ニ於キマシテハ、此訴訟能力ノ點ガ缺ケテ居リマ
シテ、法人ノ犯罪ノ場合ニ於ケル代表ノ規定ト云フモノガ
明瞭ヲ缺イテ居ッタノデアリマスガ、本案ニ於キマシテハ之ヲ
明ニ定メルト云フ事ニナッタノデアリマス、ソレカラ第三ニ「公
訴ニ付任意主義ヲ採用シタルコトヲ明示スルト同時ニ公
訴ノ取消ヲ認メ尙檢事ノ上訴抛棄及取下ヲ認メテ主義ヲ
一貫シタルコト」卽チ公訴ハ公ノ訴デアリマスガ、此公ノ訴ニ
ニ對シマシテハ、法定主義ト云フ主義カラ變ッテ、檢事ノ任
意主義ヲ認メルト云フ事ニナッタ、而モ此任意主義ト云フモ
ノヽ主義ヲ一貫スルコトニ努メテ居ル、斯ウ云フノデアリマ
ス、公訴ノ任意主義ト云フモノハ、御承知ノ通リニ法律ニ
斯ク〓〓ノ條件ガ備シテ居レバ、必ズ事件ニ對シテ訴ヲ起シテ
之ヲ裁判所ニ送ランケレバナラヌト云フ主義ヲ改メマシテ、
檢事ニ於テ此事件ハ極テ輕微ナ犯罪デアル、或ハ犯人ガ非
常ニ悔悟ヲシテ居ノテ、善人トナッテ居ルト云フヤウナ狀況ヲ
認メマシタ場合ニハ、檢事ガ公ノ訴ヲ起サズニ済マスコトガ
う
出來ル、斯ウ云フ主義デアリマス、元來此刑事訴訟法ト申
シマスルト如何ニモ專門法ノセウナモノニナッテ居リマスルケ
レドモ、諸國ニ於ケル刑罰運用ノ標準法ト致シマシテ、刑事
訴訟ニ關スル所ノ原理ハ極テ古イ時代カラ種々ニ攻究セラ
レマシテ、若シ年代ヲ申シマスルナラバ、四千年、五千年ノ昔
ニ溯フテ居ルト申シテ宜シイノデアリマス、卽チ數千年ノ昔
カラシテ今日ニ至ルマデ、刑事々件、刑罰ノ事件ヲ如何ニ取
扱フカ、又此刑罰事件ト吾々ノ日常生活、天下國家ノ政
治ト云フヤウナ事ニ對シテ、ドレダケノ影響ヲ持ツカト云フ
コトハ、種々〓究セラレタ事ニ相成ルノデアリマス、ソレデ一
ツノ犯罪ニ對シマシテモ、例ヘバ檢事ガ訴ヲ起サズシテ濟マ
ス場合ガアリ、訴ヲ起シテ裁判ヲスルニ熟シテ居ルケレドモ、
此事件ニ對シテハ裁判ヲセズ、此ナリデ置クコトガ被告人ノ
爲ニナリ、又國家モ其事ヲ以テ却テ刑罰ニ優ルト致シマス
ルトキニハ、裁判猶豫ト云フ方法ニ依リマシテ、裁判ヲシナ
イト云フヤウナ制度ヲ執ッテ居ル國モアリ、又栽判ハ致シマ
スルケレドモ、此被告ニ對シテ實刑ヲ科シテ、懲役ニ送ル
トカ、或ハ禁錮ニスルトカ云フヤウナ方法ヲ執ラヌ方ガ宜
イト云フ、執行僧豫ト云フヤウナ制度ニナッテ居ル國モア
リマス、所ガ我ガ日本ニ於キマシテハ、十數年前ヨリ輕
微ナル犯罪ニ對シマシテハ起訴ヲシナイ、起訴猶豫ト云フ
ヤウナ事モ出來テ居ルヤウナ次第デアリマシテ、其起訴猶
豫ノ數ガ一年ニ九万件ニ達スル位アルト云フヤウナ場合
デゴザイマス、段々サウ云フヤウナ沿革、歷史ト云フモノニ
依リマシテ、公訴ノ提起ノ仕方ニ於テ、任意主義ヲ採ルガ宜
カラウト云フ事デ此主義ヲ採ッタト云フコトヲ政府ハ說明致
シテ居ルノデアリマス、ンコデ之ニ關シマスル所ノ條文ハ第二
百八十一條、第二百八十二條、第二百九十四條、第三百
八十四條等デアリマス、ンレカラ第四ハ彈劾式訴訟ノ主義ヲ
一貫シ、裁判所又ハ豫審判事ハ檢事ノ公訴提起アルニアラサ
レハ絕對ニ事件ノ審判ヲ爲スコトヲ得サルモノト爲シウルコト」、
斯ウ云フノデアリマス、彈劾主義ト云フノハ御永知ノ如ク、
公訴ニ於キマシテ檢事ノ訴ガアル、サウスルト檢事ノ訴ニ對
シテ、裁判所ガ初テ其訴訟手續ヲ始メル、之ニ對シ被告ガ答
辯ヲスルト云フヤウニ、恰モ民事ニ於ケル原告人、被告人タ
ルガ如キ關係ニ於テ訴訟ヲ致シマスノガ、之ガ彈劾式訴訟
デアリマス、此制度モ諸國ニ於テ色ミ論爭ガゴザイマシテ、糺
問主義ト云フ方ニ依リマスレバ、苟モ國家ガ犯罪者アリト
認ムルトキニハ、直ニ其犯罪ヲ糺問スルコトモ出來ルヤウナ
次第デアリマスルガ、又糺問主義ハ多クハ公開ノ手續ニ依
ラナイ、或ハ豫審デアルトカ、或ハ祕密ナル所ノ取調ノ方法
ニ於キマシテ、被告ニ自白ヲ迫ルト云フヤウナ方法ニナッテ居
リマシテ、其ノ結果ハ隨分殘酷、冷酷ナモノニ終ルノデゴザイ
マスルガ、此刑事訴訟法ニ於キマシテハ、彈劾式訴訟主義
ヲ一貫シテ、而シテ裁判所ノ豫審判事モ、儉事ノ公訴ノ提
起アルニアラザレバ事件ノ審理ヲ爲スコトガ出來ナイト云フ事
ニナッテ居ル、斯樣ニ政府ハ說明致シテ居リマス、ソコデ此點
ヲ調ベテ見マスルト云フト、第八十三條、第八十五條、第二
百九十條等ガ之ニ該當スル規定デアルノデゴザイマス、ソレ
カラ第五ハ「重罪事件ニ付豫審ヲ經由スルコトヲ要スルノ
制ヲ改メ豫審ヲ求ムルヤ否ヤヲ檢事ノ栽量ニ委ネタルコト」
豫審ヲ檢事ノ考デ求メル場合ト、直ニ公判ヲ請求スル場合
ガアルヤウニ改メタノデアリマス、重罪事件デアルカラ必ズ豫
審ヲ經由スルト云フコトニハシナイ、從來ハ重罪事件デア
ルト必ズ豫審ヲ經由スル、豫審ニ於キマシテ、大事件ト稱シ
マシテ記錄ガ千枚デアル、二千枚デアル、三千枚デアルト云
フヤウナ大記錄ヲ作リマシテ、而シテ此豫審ノ調査、卽チ祕
密ノ間ニ行ハレル調査ノ間ニ、事件ト云フモノヽ眞相ヲ究
メントシテ居"タノデゴザイマスガ、此法案ニ於キマシテハ、斯ノ
如キ事ハ正當デハナイト云フコトヲ認メマシテ、此豫審ニ付
スル付セナイト云フコトハ、檢事ノ栽量ニ委セル、又豫審ニ
於キマシテモ、相當ニ此意味ニ於テ改正ヲ加ヘテ居ルノデア
リマス、其規定ハ第二百九十條、ソレカラ第六ハ「被告ノ當
事者タル地位ヲ確保シ其ノ權利利益ヲ擁護スルノ趣旨ヲ
以テ幾多ノ規定ヲ設ケタルコト」ト云フノデアリマス、元來
今日ノ刑事訴訟法、卽チ現行法ニ於キマシテハ、被告ト云
フ名前ガ付ケバ彼ハ罪人ナリ、彼ハ惡人ナリ、斯ウ云フコト
ニ致シマシテ、確定裁判ヲ經ザル前ニ非常ニ被告人ニ對ス
ル所ノ虐待ト云フモノガ伴ッテ居ルノデゴザイマス、所ガ此
法律ニ於キマシテハ之ヲ改メテ、被告ノ當事者タル地位ト
云フモノヲ確ニ認メテ、其權利利益ノ擁護ト云フモノヲ全
ウセシメンコトヲ期シタノデアルト云フ說明デアリマス、此
條文ハ第九十二條、第百十二條、第百三十五條、第百四
十五條、第百七十六條、第二百五十三條、第二百七十九
條、第二百九十八條、第三百四十二條、第五百四十八條
モ加ヘテ宜カラウト思ヒマスガ、是等ニ現ハレテ居リマス、ソ
レカラ第七ニ「未決勾留ニ關シテハ人身ノ自由ヲ尊重スル
趣旨ニ於テ勾留日數ノ制限ヲ定メ其ノ他多クノ規定ヲ設ケ
タルコト」斯ウ云ムココトヲ說明致シテ居リマス、是ハ本案ノ百
十三條ニ於キマシテ其事ガ現レテ居ルノデアリマス、卽チ「勾留
ノ期間ハ二月トス特ニ繼續ノ必要アル場合ニ於テハ決定ヲ
以テ之ヲ更新スルコトヲ得」斯ウナッテ居ルノデゴザイマス、現
行法ニ於キマシテハ、勾留期間ニ對シテ何等ノ制限ガナイ、
ソコデ吾々ノ間ク所ニ依レバ檢事ガ證人ヲ調ベ、若クハ被
告人ヲ調ベルニ當リマシテ、或ハ豫審判事ガ被告人ヲ調べ
證人ヲ調ベルニ當リマシテ、往々ニシテ豫斷ヲ懷クコトガアル、
而シテ其豫斷ニ適合スル答辯ヲシナイトキニハ此事ニ對シ
テ答辯ヲシナイヤウデアレバ、一年デモ二年デモ法律ハ未決
勾留期間ヲ限定シテ居ラヌノデアルカラ汝ガ自白ヲスルニ至ル
マデ、汝ガ豫斷ニ合スル答辯ヲスルマデ、監獄ニ打込ンデ置
クト云フコトヲ言ハレル例ガアルト云フコトヲ私共ハ聞イテ
居ルノデアリマス、是ガ事實デ有ルカ無イカハ別問題ト致シ
マシテ、免モ角現行法ノ下ニ於キマシテ、斯ノ如キ威嚇ヲ加
ヘルコトモ出來ルノデゴザイマス、又實際ニ於キマシテ一遍
一寸氏名住所ヲ聽イテ調ベル、所謂勾留訊問ト云フコトヲ
ヤル、サウシテ六箇月モ七箇月モ事實ノ調ベヲセズニ監獄ニ
打込マレテ居ルヤウナ實例モアルノデゴザイマス、斯ノ如キ
事ハ實ニ人權蹂躪ノ甚シキモノデゴザイマス、此點ニ對シマ
シテ、此度ノ案ニ於キマシテハ、勾留ノ期間ハ二箇月以内ト
云フコトニナリマシタノデ、是レ以上ニ繼續スル場合ニ於テ
ハ、相當ノ理由ガナケレバ繼續ガ出來ナイノデアルカラ、明ニ
其理由ヲ示ス所ノ決定ト云フモノヲ以チマシテ、卽チ一ツノ
裁判ノ手續ニ依シテ勾留ヲ更メルト云フコトニナリマス、其勾
留ヲ更メルコトニ不服ノアル場合ニハ、更ニ抗告ノ途ヲ開イ
テ、抗告ガ出來ルト云フヤウニナッテ居ルノデアリマス、此條文
ノ計議ニ方リマシテ、委員各位ノ中カラ、是ハ規則ノ表面カ
ラ見レバ勾留ノ期間ハ二月ト云フコトニナッテ居ル、併ナガ
ラ決定ヲ以テ更新ガ出來ルト云フコトニナレバ、幾遍モ幾
遍モ決定デ更新スルコトニナルト、矢張一年デモ二年デモ勾
留スルコトガ出來ルヤウニナルガ、之ヲ其意味デナクシテ、容
易ナラザル事情ガナケレバ勾留ノ更新ト云フモノハ出來ナ
イモノデアルト云フヤウナ趣旨ニ、更ニ改メテハドウデアルト
云フヤウナ御意見モアッタノデアリマス、之ニ對シマシテ政府
ハ、此原則ヲ立テマシタ以上ハ、先ツ二月ト云フ原則ニ從フ
ト云フコトハ勿論デアリ、之ヲ更ニ更新スルト云フヤウナ場
合ニ於テハ、十分ナ理由ガナケレバ更新ノ出來ナイト云フ
趣旨ヲ徹底セシムルヤウニ、相當ノ方法ヲ執ル積リデアル、斯
樣ナ答辯ガアッタノデアリマス、第八「豫審中ニ於テモ辯護人
ノ選任ヲ許シ、辯護人ハ豫審手續ニ付一定ノ範圍ニ於テ
之ニ參與スルコトヲ得ルモノト爲シ、又公判ニ於テハ辯護
人ハ裁判長ノ許可ヲ受ケ、被告人、證人等ヲ直接ニ訊問ス
ル權ヲ有スルモノト爲シタルコト」卽チ豫審ニ於キマシテ辯
護人ヲ置クト云フ規定デゴザイマス、是ハ被告人ノ訊問ノ
際ニ、辯護人ノ立會フト云フコトハ本案ニ於テハ認メマセヌ
ケレドモ證人ノ調ベ又ハ檢證ノ場合ニ於キマシテハ、豫審
ニ於テ辯護人ノ立會ガ出來ルト云フコトニナリマシテ、現行
法ヨリモ數段優ッテ居ルト申シテ宜カラウト思フノデアリマス、
從來公判廷ニ於テ辯護人ガ被告人ヲ調ベル、證人ヲ調ベル
ト云フヤウナ必要ガアリマシテモ、直接ニ訊問ガ出來ナイ、裁
判長ニ賴ンデ裁判長カラ訊問ヲシテ貰フト云フ間接ノ訊問
デゴザイマシテ、如何ニモ手緩イコトニナッテ居タノデゴザイマ
スガ、此度ハ裁判長ノ許可ヲ得テ直接ニ訊問ガ出來ル、斯ウ
云フ事ニ改メタノデゴザイマス、此點ハ政府ノ說明ノ通リニ
ナッテ居ル次第デゴザイマス、ソレカラ第九ハ「公判ヲ以テ名
實共ニ刑事訴訟手續ノ中樞タラシムルノ趣旨ニ於テ豫審
ノ目的ヲ定メ之ヲシテ公判ノ前提手續タルノ性質ニ戾ルコ
!ナカラシメタルコト」卽チ公判ト云フモノガ刑事訴訟ノ中
樞ニナル、ンコデ豫審ハ先程申シタヤウニ、記錄ヲ何千枚作ッ
テ大事件ト稱スルト云フヤウナ弊害ヲ改メテ、豫審ニ於テ
ハ直接ニ公判ニ移スベキデアルカ否ヤト云フコトヲ取調ベル
ヲ以テ限度ト致シマシテ、ンレ以上ニハ涉ラヌト云フ主義ヲ
此案ニ於キマシテ貫クコトニナツタノデアリマス、是モ非常ニ
重大ナル修正ノ一箇條デアルト思フノデアリマス、ソレカラ
第十ハ「人ノ供述ヲ錄取シタル書類ヲ證據トスルハ原則ト
シテ法律ニ定メタル的確ナルモノニ限リ其ノ他ノモノハ證
據ト爲ラサルモノト爲シタルコト」斯ウ云フノデアリマス、從
來ハ警察官ノ聽取書、檢事ノ聽取書、其聽取書ハドウ云フ
モノデアルカト言ヘバ、何ノ某ガ當廷ニ出頭シテ、任意左ノ
供述ヲ爲シタリト云フノデ、任意ノ供述ナリトシテ聽取書ヲ
作リマスガ、其聽取書ハ決シテ任意デハナイ、非常ナル强制
ノ力ガ働イテ居ルト見ナケレバナラヌヤウナ聽取書ヲ作ツテ
居リマシテ、ソレヲ證據トシテ居ッタノデアリマスガ、"本案ニ
於キマシテハ、警察官ノ作リマシタ聽取書、或ハ檢事ノ作リ
マシタ聽取書、或ハ盜難屆書デアルトカ云フヤウナ、サウ云
フヤウナ趣旨ノ物ニ對シテ、之ヲ證據トシナイト云フヤウナ
趣旨ニ明ニ致シテ居ルノデアリマス、ソレカラ第十一ハ「上告
ニ關スル制度ニ重大ナル改正ヲ加ヘテ根本ノ主義ヲ-
變シタリ、卽チ第一審ノ判決ニ對シ控訴ヲ爲サスシテ上
告ヲ爲シ得ル場合ヲ認メタルコト、法令違背ヲ理由トスル
場合ノ外一定ノ條件ノ下ニ事實ノ認定又ハ刑ノ量定ノ不
當ヲ理由トシテ上告ヲ爲スコトヲ得ルモノト爲シタルコト、上
告裁判所原判決ヲ破毀シタル場合ニ於テハ原則トシテ之
ヲ他ノ裁判所へ移送セズシテ自ラ事實ノ審理ヲ爲シ被告
事件ニ付判決ヲ爲スヘキモノト爲シタルコト」是ハ本案ノ第
四百十四條、第四百十五條、第四百十六條、第四百十七
條、及四百四十二條等ニ於テ此趣旨ハ認メラレテ居ルヽ
從末上告ト云フモノハ唯法令違背法律ニ違ッタ裁判ヲス
ルニ止ッテ居リマシタカラ、大審院改正前ニハ七人ノ立派
十判事ガ居リ、改正後ニ於テモ五人ノ立派ナ判事ガ居リ、
其判事ガ審査セラルヽ所ト云フモノハ、單ニ法律ノ點ニ
止ッテ居ルノデアリマスガ、併ナガラ法律ノ點ト云フコトニ
ナリマシテ、終ニハ法律ノ本來ノ原理原則ヲ爭フト云フコ
トハ末ニナリマシテ、唯手續ノ爭トナリ、上告裁判所ニ於
テ裁判スル所ハ、檢印ガ一ツデアッタトカ、或ハ年月日ガ消エ
テ居ッタトカ、何ガ消エテ居ッタトカ云フ形式上ノ爭ヒニ止マッ
テ居リマシテ、上告裁判所、大審院ハ我國最高ノ裁判所タル
ニ拘ラズ、其扱フ所ノ事件ノ實際カラ見ルト、甚ダ遺憾ナル
節が多カッタノデアリマスガ、此改正案ニ於テハ、上告ニ於テ
モ或ル程度ニ於テハ、單純ナル法令違背ノミデナクシテ、事
實ノ審判ガ出來ル、其事實ノ審判ト云フモノハ、ドウ云フモ
ノヲ指スカト中シマスレバ、刑ノ量定甚シク不當ナリト思料
スベキ顯著ナル事由アルトキハ、之ヲ上告ノ理由ト爲スコト
ヨ得、昔ハ煙草一厘事件ト云フモノガゴザイマシテ、煙草一
厘ノ値段ノ物ヲ盜ンダト云フコトデ之ヲ有罪ニシタ實例モ
アルノデゴザイマスガ、斯ノ如ク刑ノ量定ノ極テ不當ナル場
合ニ於テハ、之ヲ上告ニ訴フテ、上告栽判所ニ於テ事實ノ
審理ガ出來ルト云フヤウニナリマシタ改正ガ一ツ、ソレカラ
四百十五條再審ノ請求ヲ爲シ得ベキ場合ニ當ル事由ノア
ルトキハ、之ヲ上告ノ理由ト爲スコトガ出來ルト云フ點、ソレ
カラ四百十六條ニ於テ、重大ナル事實ノ誤認アルコトヲ疑
フニ足ルベキ顯著ナル事由アルトキハ、之ヲ上告ノ理由ト爲
スコトヲ得、斯ウ云フコトニナリマシテ、事實ノ誤認ガアルト
云フ場合ノ上告ニ於テ、之ヲ裁判ヲスルト云フコトニ相成ッ
タノデアリマス、一此結果ト致シマシテ、上告裁判所ガ擴張
セラルヽト云フコトハ、是ハ免レナイ所デアリマス、其豫算ニ對
シテハ、只今政府ニ於テ相當大藏當局ト交涉致シテ居ルト
云フコトニ相成ルノデアリマス、斯ノ如クニシテ上告裁判所
ハ初テ本當ノ最高裁判所デアリ、大審院タル所ノ特徵ヲ發
揮スルコトガ出來ル次第デアラウト考ヘマス、是ハ英國等ニ
於テモ矢張近年ノ傾向ト致シマシテ、從來法令ノ關係
ヲ審査スル以外ニ、事實ニ對スル所ノ不當ナル下級裁判所
ノ判決ヲ翻シテ、裁判ヲスルト云フヤウナコトニナッテ居ルノ
デアリマスガ、サウ云フヤウナ例ヲ追ウタモノト考ヘルノデア
リマス是モ本案ニ於キマスル極テ重大ノ改正デアル
ト考ヘルノデアリマス、ソレデ斯ノ如ク改正サレマシテ
事實ノ裁判ヲ上告ニ於テ取扱フコトニナリマスカラ、從來破
毀移送ト申シマシテ、法律ノ違ッタ點デモ破毀致シマス例ハ
大阪控訴院ノ栽判ヲ破毀シテ名古屋控訴院ニ移ス、或ハ
廣島控訴院ニ移スト云フヤウナ、他ノ裁判所ニ移シ送ッタノ
デアリマスガ、今度ハ大體ニ於テハ、上告栽判所ニ於テ其審
理ニ當ルト云フコトニナリマシテ、破棄移送ト云フ場合、或
ハ元ノ裁判所ニ差戾スト云フ場合ヲ僅ニ認メルト云フコト
ニ相成ッタノデアリマス、ソレカラ第十二ノ再審ノ原因、竝
手續ニ付キマシテハ、周密ナル規定ヲ置イテ現制度ノ缺點
ヲ補ッタ、斯樣ナ說明デアリマスガ、是等ハ委員會ニ於テ愼重
ニ審議致シマシテ、此政府ノ言ハレテ居ル程ニ改正サレテ
居リマセヌ所モゴザリマスルガ、大體ニ於テ政府ノ說明サレ
テ居ル所、卽チ私ノ只今御報告申上ゲマシタヤウナ點ハ、之
ヲ認メテ差支ナイノデアリマス、ソコデ委員會ニ於テハ、是等
ノ點及本案ニ於テ、更ニ尙ホ人權ヲ蹂躪シテ居ル點ハナイ
カ、卽チ吾々國民ノ權利ヲ或ハ侵害スル虞ノアルヤウナ
規定ナル所ハナイカト云フヤウナ所ヲ慮リマシテ、サウ云フ
點ニ對シ、又法案ヲ維持スル上ニ於テ、是デハ不足デハナカ
ラウカト云フヤウナ點ニ於テ審査ヲ加ヘマシテ、此點ニ對シ
マスル所ノ修正ガ提案セラレ、其修正ニ依リ可決サレマシタ
所ハ、卽チ先程報告致シタ所ノ各條文デアリマス、ソレカラ
禱君ノ出シマシタ修正意見ハ、反對ハゴザイマセヌデアリマシ
タガ、是ハ先程モ御報告申上ゲマシタヤウニ、各委員ガ色と考
ヘマシテ、其考ヘマシタ所ノ結果ニ基イテ禱君ガ提案セラレ
タノデアリマスガ、是デモマダ不足デアルト云フノデ、橫山君
カラ修正ノ意見ガ出テ居ッタノデアリマス、是ハ孰レモ少數
意見ニ付テ御報告ガゴザイマセウガ、委員會ニ現レアシタ所
ノ修正意見ハ、第二百五十五條、第二百五十六條、第二
百五十七條削除、第二百六十四條創除、第三百四十五
條二項削除、第三百六十三條削除、第四百十四條「事由
アルトキ」ノ下ニ「又ハ不當ニ執行猶豫ヲ與ヘサルトキ」ト云
フ文字ヲ加ヘル、第四百三十五條「十五日前」ヲ削除致シ
マシテ「迄」ヲ加フ、斯ウ云フ修正デアリマスガ、是ハ何レモ橫
山君カラ御說明ノアルコトヽ思ヒマス、ソレカラ〓瀨君ノ修
正意見ハ、第二、百八十一條二項ト致シマシテ、「告訴又ハ
告發アリタル事件ニ付爲シタル不起訴處分若ハ起訴猶豫
處分ニ對シテハ告訴人又ハ告發人ヨリ檢事所屬ノ栽判所
ニ抗告ヲ爲シ其ノ處分ノ變更ヲ求ムルコトヲ得」ト云フノデ
アリマス、是モ〓瀨君カラ說明ノアルコトヽ考ヘテ居リマス、
而シテ此委員會ハ禱君ノ提案ニ對シマシテ、政府意見ヲ尋
ネマシタ所ガ、政府ハ此修正ニ對シマシテハ、大體ハ固ヨリ
同意デアル、或ル規定ニ付テハ、例ヘバ辯護人ノ下ニ辨理
士ヲ加ヘルト云フヤウナコト、或ハ特權等ノ問題等ニ付テ、
政府ハ寧ロ感謝ヲシテ同意ヲスルト云フヤウナ意見ノ陳述
モアッタノデアリマス、政府ハ反對シタ點モアルノデアリマスガ、
其反對ヲ致シマシタ所ノ要領ハ、唯要領デ申シマスルガ三ツ
デアリマス、警察官デアルトカ檢事ガ、被告人ノ勾引ノ出來ル
ト云フ點ヲ、此修正案ニ於テハ削ッテシマッタノデアリマス、卽チ
修正ヲシタノデアリマスガ、之ヲ削ラレテハ困ル、斯ウ云ウ政
府ノ反對意見、モウ一ツハ數人辯護人アル場合ニ於テハ、
重複辯論スルコトハ出來ナイト云フ規定ヲ、委員會ニ於テ
ハ辯護權ヲ制限スルノ虞ガアルト云フノデ之ヲ削ッタノデア
リマスガ、之ニ對シテ政府ハ同意ガ出來ナイ、ソレカラ略
式手續ニ於テ、正式栽判ノ抛棄ガ出來ルト云フ規定ハ、略
式裁判ノ略式ノ手續ヲ濫用スル虞ガアルト云フコトデ、委
員ハ削ッタノデアリマスガ、政府ハ此正式栽判ノ抛棄ト云フモ
ノニハ同意出來ナイ、卽チ原則的ニ申シマシテ、檢事、警察
官ノ勾引ヲ削ッタ點、辯論重複ノ點、正式栽判ノ地棄、此
三筒條ニハ同意ガ出來ナイト云フコトデ、政府ハ此三點ニ
對シテハ不同意デゴザイマシタ、先ヅ以上ニ於テ委員會ニ於
ケル報告ハ、大體ヲ盡シテ居ルモノデアルト思料〓シマスガ、此
刑事訴訟法ニ先ダッテ、既ニ前年陸軍軍法會議法、海軍軍
法會議法ト云フ同ジク六百條ニ亙リマシタ兩案、合セテ
千條ニ亙ル改正案ガ此當院ニ於テ改正セラレテ、今ヤ成案
ニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ此刑事訴訟法案ハデス、此
度ノ陪容案ト共ニ近來ニ於ケル最大ナル法典ノ一デアルト
中シテ差支ナイノデアリマス、而シテ此最大ナル法典ノ影響
スル所ハ、吾々國民ノ生命、身體、財產ノ安固ニ關スル所ノ
大問題デゴザイマス、國民ノ方カラ申シマスルナラバ、吾々ノ
日常生活ガ此法律ニ依ッテ遺憾ナク保障セラルヽカ、或ハ脅
威ヲ受ケルカト云フ大問題ニ對スル所ノ規定デアリマス、又
國家ノ方カラ申シマスルナラバ、所謂國家用政ノ大問題ニ
觸レテ居ル所ノ案デアリマシテ、先程私ハ數千年前、四千
年前、五千年前ト中シマシタガ、四千年前ノ事柄ヲ中ス必
要モナイヤウデアリマスガ、是ハ支那ナゾニ於キマシテハ、例へ
パ書經ノ上ニモ、周易ノ上ニモ、刑罰ノ事柄ガアル、殊ニ刑
事訴訟ノ事ニ付キマシテハ、非常ニ重キヲ以テ〓究セラレテ
居ルト云フコトガ分ルノデアリマス、ソレカラ例ヘバソレ等ノ
事ヲ申シテ兄マスルナラバ、五刑ヲ制斷シテ各、其名ニ當リ
罪人怨ミズ、善人驚カザル刑ト謂フ、罪人ガ怨ンデハ刑トナ
ラズ、善人ガ驚イテハ刑トナラヌ、罪人怨ミズ、善人驚カザル
之ヲ刑ト謂フト云フコトナドガ管仲ナドノ書物ニ書イテアル、
是ハ〓ニ大事ナコトデアリマス、何故私ガ斯樣ナ事ヲ申シマ
スカト云フト、刑事訴訟法ハ明治二十八年ニ改正ニ取掛
リマシテ、其後ニ大戰爭ヲ經テ居リ又此度ノ大戰爭ヲ經
テ居リマシテ、思想ノ問題ニモ非常ナ變遷ガアルノデアリマ
ス、其結果ト致シマシテ、政府當局ニ於テ調べラ」レテ居ル原
案モ屢こ變遷ヲ重ネタノデアリマスガ今日ノ學說ノ變化ト
云フモノニ伴ヒ、又實際家ノ經驗ニ伴,テ、案ヲ屢、變更セ
ヌケレバナラヌト云フコトニ相成ッタノデアリマス我國ハ從來
ハ支那カラ-例ヘバ唐ノ時代カラ刑罰ノ制度ヲ輸入シ、
德川時代ニハ明カラ刑割ノ制度ヲ輸入サレタト云フコトニ
ナッテ居ル、然ルニ今日ハ、支那ハ我國ニ模範ヲ採ル、我國
ニ傚フト云フヤウナ狀況ニナッテ居ル、今日我國ハ單リ東洋
ニ於テ獨立立法ヲ爲シ但付ルノミナラズ、此日本ノ實際家、日
本ノ學者、日本ノ國民ノ考へ出シマシタ所ノ刑罰ニ關スル
所ノ原理ハ、今日獨逸アタリノ學者ガ、印度ノ例ヘバ「シヤ
ンカラ」ノ註釋ニ基イテ居ル所ノ「ウバニシヤツド」アタリノ哲
學カラ考ヘテ來ル其議論ガ、圖ラズモ我ガ東洋ニ於テ採ッテ
居ル所ノ日本ニ於テ採ッテ居ル所ノ刑罰ノ原理ニ符合スル
コトニ相成テ居ルノデゴザイマシテ、是等ノ狀況カラ考ヘマ
スルト、此刑事訴訟法案ト云フモノハ、年代カラ申シマスト、
上下數千年、土地ノ關係カラ申シマスコトナラバ、東西ノ此
原理原則ヲ合セテ、其最モ長所ヲ採ッテ其部分ノ幾多ノモノ
ガ此法案ニ現レテ居ルト言ッテ差支ナイト思フノデアリマス、
斯樣ナ次第デゴザイマスカラ、私ハ此改正案ニ對シマシテ先
ヅ諸君ニ於カレマシテ十分御審議ノ上ニ、修正通リ御贊成
ヲ與ヘラレンコトヲ希望スル次第デゴザイマス(拍手起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=3
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004・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 少數意見ノ報告ヲ求メマス、〓瀨
一郞君
〔〓瀨一郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=4
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005・清瀬一郎
○〓瀨一郎君 本案ハ鵜澤委員長ノ報告ノ如ク、我ガ國
民生活竝國ノ法律組織ノ上ニ重大ナル影響ヲ持ツモノデ
アリマス、本員ハ今委員長ノ報告ニナリマシタ禱氏ノ修正
ニハ、全部同意ヲ致シタノデアリマス、尙ホ其外ニ此一箇條グ
ケハ是非議會ニ於テ御採擇アリタク、少數ノ意見トシテ報
告ヲ致スノデアリマス、廿六箇條ハ法案第二百八十一條ニ關
翳致シマシテ「告訴又ハ告發アリタル事件ニ付爲シタル不
起訴處分若ハ起訴猶豫ノ處分ニ對シテハ告訴人又ハ
告發人ヨリ檢事所屬ノ裁判所ニ抗告ヲ爲シ其ノ處分ノ變
更ヲ求ムルコトヲ得」此文言ヲ第二項トシテ挿入アランコト
ヲ求メタノデアリマス、是ハ簡單ナ事ノヤウデアリマスガ、我
國ノ法治組織ニ對シ、重大ナル影響ヲ持ツ所ノ案件デアリマ
ス、全體今日我因ニ於テ刑制ニ付テ、刑事裁判ニ付キ國民ノ
唱ヘタ所ノ不平ハ此二ツデアル、其一ツハ人權ガ十分ニ保
護サレテ居ラヌ、所謂人權蹂〓問題ガ一ツデアリマス、モウ
一ツハ起訴ノ不公平デアリマス、其人ノ地位身分等ニ依リ
適正ナル起訴ガ行ハレズ、偶〓政府ノ大官、或、社會上大ナ
ル勢力ヲ持ッテ居ル人ガ、刑辟ニ觸レル度每ニ、國民ハ是ハ
裁判所ガドウスルダラウ、是ハ檢事局ガドウスルダラウ、每日
汗ヲ握ッテ見テ居ナケレバナラヌ、卽チ起訴ノ公平ト云フコ
トニ國民ハ至大ノ不安フ持ッテ居ルノデアリマス、此二ツノ
問題ノ中、人權ノ保護ト云フ事ニ付キマシテハ、禱案ニ依ツ
テ相當ナル程度ノ修正ヲ加ヘラレテ居リマス、例ヘバ原案ニ
於キマシテハ、檢事ガ被疑者ヲ勾留スルト云フ事ガ認メラレ
テアル、若クハ檢事ガ證人ノ訊問ヲ爲スニ對シ宣誓ヲ求メ
ルト云フコト、斯樣ナル規定ガアッタノデアリマスガ、幸ニシテ
案ニ依リ是等ノ檢事宣誓、人權蹂躪ノ種子ハ芟除サル
ルコトニ相成ッタノデアリマスガ、只一ツ殘ッテ居リマスノハ、
此起訴ノ公平ニ對シ如何ニ擔保スルヤト云フ問題デアリマ
ス、デ此案ハ檢事ノ起訴權ニ付テハ、寧ロ現行法ヨリモ私ハ
改惡ト言ハナケレバナラス、現行ノ刑事訴訟法デハ、免モ角
モ合法主義、罪有レバ檢事ガ起訴ヲスルト云フ義務ガアル
ト云フコトヲ前提トシテ、唯數千年來ノ慣例上微罪ハ不檢
擧、此慣例ニ依シテ內證デ以テ微罪ヲ起訴猶豫ニスルト云
フコトニ依ッテ、我國ノ刑政ハ行ハレ來ッテ居ルノデアリマス、
然ルニモ拘ラズ、此改正案二百八十條、二百八十一條ヲ
見マスルト、是ハ徹底的ニ非常ニ一方ニ徹底シタ案デア
リマス、一方ニ於テハ檢事ノ絕對的訴追主義、卽チ第二百
八十條、如何ナル場合ニ於テモ、被害者ガ如何ニ泣カウガ
叫バウガ、ソレニハ關係ナク、檢事ノ關門ヲ潜ラナケレバ、如
何ナル場合ニ於テモ起訴ガ出來ナイ、此主義ヲ立テ、二百
八十一條ニ於テハ假令犯罪ガアッテモ、被告人ノ性格、年
齡、境遇、犯罪ノ情況、犯罪後ノ情況、是等ノ情況ヲ參酌
シテ訴追ノ必要ナキ場合ニ、公訴ヲ提起セザルコトヲ得ルト
云フ、公訴不提起權ヲ檢事ニ大ベラニ表面カラ認メテ居ル、
却チ檢事任意主義ト云フモノヲ極端ニ擴張シテ居ルノデア
リマス、少クトモ今日ノ法治國ニハナイ立法デアリマス、此點
ニ付テハ特ニ衆議院ニ於テ愼重ナル考慮ヲ廻ラスベキ必要
ヲ感ズルノデアリマス、此理由ヲ二三〓究致シテ見マスト
第一ニ檢事ノ絕對任意主義ト云フモノハ、刑ト云フモノヽ
本質ニ村テ誤タル考ヲ基礎トシテ居ルト思フノデアリマス、
當時獨逸ノ官僚萬能ノ時代ニ於テハ、刑事政策學ナルモ
ノガ與リ、其ノ思想ガ我國ニ輸入サレテ居リマス、改正ノ刑
法ノ失敗シタノハンレデアリマス、成程刑ト云フモノハ被告
人ノ改善ト云フコトガ、無論一ノ要素デアリマスルガ刑ノ外
ノ主ナルモノハ正義デアル、正義ノ確立ガ刑第一ノ要素デアル
之ヲ外ニシテ刑ト云フモノ實體ハナイ、刑ノ正義ノ觀念ガ確
立スルト同時ニ、刑事政策モ行ハレ被害者ノ復讎心ヲ緩和
スルコトグ出來ル、此ニ初メテ刑グ立ツノデアリマスガ、此檢
事任意主義如何ナル明瞭ナル犯罪デモ、如何ナル重大ナル
犯罪デモ、假令親ヲ殺サウガ、兄弟ヲ毒殺シヤウガ、檢事ノ
目鏡ニ適ヘバ起訴サヘモ受ケナイト云フコトハ、刑ノ觀念ニ非
常ナ動搖ヲ來スコトヽ思フノデアリマス、卽チ本案ハ我國古來
ノ國民ノ別ニ對スル觀念ヲ動搖セシムルト云フコトガ第一點
デアリマス、第二ニ政府委員ハ、檢事ノ任意主義ハ世界ノ大
勢ダト言ハレマスルガ、是ハ全ク僞デアリマス、今日ノ法治國
ニ於テ檢事ガ絕對任意ニ起訴不起訴ヲ定メ得ル國ハ何處ニ
モアリマセヌ、憲法ノ無イ國ハドウカ知リマセヌガ、憲法國ニ
ハアリマセヌ、唯成程獨逸ノ改正刑事訴訟法案ト云フモ
ノ-是ハ法律デアリマセヌ、其案ト云フモノ及諾威ノ刑法ノ第
八十四條ニハ、微罪竝幼者卽チ未成年者ノ犯罪ニ付テハ犯
罪ノ證據ガ有"テモ起訴セザルコトヲ得ル、從來吾々ガ唱ヒ
來ッタ微罪不檢擧主義ヲ法文ニ現ハシテ居リマスケレドモ、
其根柢ハ矢張合法主義-罪有レバ起訴スルノガ當リ前
デアル、之ヲ原則ニシテ置イテ緩和スル所ノ法文ガ二三アリ
マスケレドモ、原則マデ罪有ッテモ起訴セザルコトヲ得ルト云
フコトハ、之ガ世界ノ大勢デアルトハ申サレマセヌ、私ノ知ル
範圍ニ於テハ日本ダケデアリマス、第三ニ此檢事絕對任意
主義ハ、我國ノ檢事制度、檢事局ノ制度ト調和致シマセヌ、
我國ノ檢事局ハ裁判所構成法ノ規則ニ依リマシテ、司法大
臣ノ指揮ヲ受ケテ居リマス、司法大臣ハ檢事ノ一番頭タル
檢事總長ヲ指揮スルノデハナク、全國ノ檢事、全國ノ檢事局
ヲ指揮スル權利ヲ有シテ居ル、之ガ官僚政治ノ場合ハ免モ
角モ、今カラ段々ト我國ハ政黨政事ニ進ム傾向ヲ有シテ居
リマスルガ故ニ、一方ニ於テ檢事ガ司法大臣ノ指揮ヲ受ケ、
他方ニ於テハ檢事ガ起訴、不起訴ノ絕對自田ノ權ヲ有ス
ルト云フコトニナリマスルト、其結果ハ如何デゴザイマセウカ、
今日議院ノ或ル〓體ガ所謂政府黨デ在ラレマスガ、何時デ
モ政府黨ト云フ譯ニハ參リマセヌ、此害惡ト云フモノヲ是デ
以テ反省致ス必要ガアラウト思フノデアリマス、デアリマス
ルカラ此案ハ、我國ノ檢事制度ニ支障ヲ來シ、司法大臣ガ
檢事ヲ監督指揮スル權限ヲ有シテ居ル我國ノ制度ニ於テ
ハ思ハザル弊害ヲ發生スル事ノアルコトハ、洵ニ明ニ豫見
ノ出來ルコトヽ思ヒマス(拍手)第四ニ此制度ハ惡用セラル
ル虞ガアラウト思フノデアリマス、現ニ是ハ法律ノ事務ヲ執ツ
テ居ル者ハ知テ居ル事デアリマス、明治三十五年ノ四月二
十六日ニ、司法大臣ノ檢事局ニ對スル訓令ト一云フモノガア
リマス、之ニ依ルト假令犯罪ガ有テモ勅任以上ノ役人ハ奏
上ヲシタ上デナイト起訴スル勿レ、親任官ハ勅許ヲ得タ上
デナケレバ起訴ヲスルコト勿レ、[是ガ現ニ在ルノガアリマス、
私ハ政府委員ニ、此訓令ハ現行刑事訴訟法ニハ全ク牴觸
シタ不法ノ調令デアリマスルガ、改正刑事訴訟法案デハ如
何ニナルカ、斯ウ質問シタ所ガ、政府委員ノ答ハ、第二百八
十一條ニ犯罪人ノ境遇ニ依テ起訴セザルコトヲ得ト云フコ
トガアル、勅任官、親任官タルコトハ卽チ其境遇デアル、境遇
ニ依ッテ起訴ノ手續ヲ一一三ニスルコトハ此法案ノ豫見シテ
居ル所デアル、斯樣ナ說明デアリマスケレドモ、此吾々國民
ハ法ノ前ニハ平等デアル、假令性ニ男女アリ、財ニ貧富アリ
ト雖モ、苟モ、法律ノ前ニハ平等デアルト云フコトハ、是ハ實
ニ人類ガ血ヲ以テ購シタ所ノ大原則デアリマス(拍手)此法ノ
前ニ平等デアルト云フコトヲ破壞シテ、親任官ニナレバ衰龍
ノ袖ニ隠レテ起訴サルヽコトガナイ、勅任官ニナレバ奏上シ
ナケレバ惡事ヲ爲スト雖モ法ヲ免レル、斯ノ如キ制度ニスル
ト云フコトハ、吾々人類ノ先輩ニ對シテ愧ヅル事デアリマス
(拍手)現ニ過去ノ事デアリマスルカラ、氏名ヲ言ヒマスガ、彼
ノ大浦事件ハ如何デアッタカ、國民ハ實ニ切齒扼腕ニ堪ヘナ
カッタデハナイカ、是ガ此案デハ公々然行ケルノデアル、又最
近某長官ノ將ニ起訴サレントスルトキニ世間ノ輿論ハドウ
デアッタカ、犯罪ハ有リサウダガ、併ナガラ是ハ起訴サルヽカサ
レナイカト云フコトヲ非常ニ危惧シタデハナイカ、國家ノ正
義ニ付テ國民ガ危惧スルト云フコトハ、抑、風〓上如何ナル
影響ヲ持ツデアラウカ、綱紀〓正ト云フコト是ハ根本問題デ
アル、惡シキ者ハ必ズ罰セラレル、是ガ卽チ綱紀肅正ノ根本
源泉デアリマス、唯刑事政策ト云フノハ、今日ノ財產制度
ノ結果、所有權制度ノ結果將ニ餓エントシテ食ヲ與ヘラレ
ザル者ガアル、其ノ人ガ自分ノ生存權ヲ全ウスル爲ニ盜ミヲ
シタ、是ハ氣ノ毒デアルト云フノデ、此罪ヲ問ハヌト云フノガ
刑事政策デ、刑事政策ハ社會政策ノ一方面デアリマス、
之ヲ惡用致シマシテ、大奸巨猾ヲ故ラニ遁ガス所ノ綱ノ目
ヲ此處ニ拵ヘテ置クコトハ、吾々衆議院ハ黨派ノ如何ニ拘
ハラズ、今ハ在野黨デモ後ニハ責任ヲ持ツ黨ニナルカモ分ラヌ、
今ハ政府黨デアッテモ、後ニハ諸君必ズ切齒扼腕サレルコトガ
見エテ居ルノデアリマヌ、併ナガラ私ノ改正案ハ此政府ノ執ツ
夕所ノ職權訴追主義、竝ニ任意主義ヲ徹底的ニシヤウト
云フ案デハアリマセヌ、矢張社會政策ト云フコトガ必要デア
ル如ク、刑事政策ト云フコトハ吾々認メテ居リマス、ソレ故
ニ之ヲ調和致シ、竝ニ被害者ノ怨恨感情ト云フコトモ考ヘ
テ告訴、告發アル事件ニ付テ檢事ガ不當ニ不起訴處分ヲ
爲シタル場合於テハ、吾々ノ信賴スル裁判所ニ其曲直ヲ爭
フ途ヲ得セシメルト云フコトデアリマス、此起訴權ヲ裁判機
關ノ最後ニ持ッテ行クト云フコトハ、外國ニ於テモ大陪審ト
云フ制度ガアリ、又此改正案ニ於キマシテモ、檢事手續ニ對
シテ四百七十三條ニ於テ抗告ノ途ヲ開イテ居リマス、法文
ノ體裁トシテ毫モ缺點ハナイノデアリマス、此方法ニ依リマシ
テ、一方ニ於テハ正義ヲ維持シ、一方ニ於テハ被害者ノ感
情ヲ慮リ、一方ニ於テハ又刑事政策ノ實行ノ餘地ヲ與へ、
斯ノ如クシテ起訴任意主義ニ依ル消極的專制政治、此綱
ノ目ヲ繕ハント欲スルノガ、卽チ此修正案ノ眼目デアリマス
宜シク愼重ニ御審議アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=5
-
006・議長(奧繁三郞君)
○議長(奧繁三郞君) 尙ホ少數意見ノ報告ヲサレマス方
ガアリマス、横山勝太郎君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=6
-
007・横山勝太郞君
○横山勝太郞君 少數意見ノ報告ノ場合ニ議論ヲスル
ト云フコトハ、私ハ避ケタイト思ヒマスカラ、單ニ少數意見ノ
報告ダケ致シタイト思ヒマス、併ナガラ少數意見ノ報告ダケ
デ宜シイト云フコトニナリマスレバ、曩ニ鵜澤委員長ヨリシ
テ本員ノ提出シタル少數意見ノ報告ニ相當スル御演說ガ
アリマシタカラ、少數意見ノ報告ト致シマシテハ、委員長ノ
演說ヲ私ノ少數意見ノ報告ト云フコトニ代ヘタイト思ヒマ
ス、而シテ之ニ對スル意見ハ第二讀會ニ於テ許サレンコトヲ
希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=7
-
008・議長(奧繁三郞君)
○議長(奧繁三郞君) 此少數意見ニ付テ贊成ガアリマスカ
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=8
-
009・議長(奧繁三郞君)
○議長(奧繁三郞君) 定規ノ賛成アリト認メマス、仍テ
少數意見ハ修正案トシテ成立致シマシタ-本案ノ第二
讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマス
〔「第二讀會ヲ開クニ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=9
-
010・議長(奧繁三郞君)
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト
認メマス、仍テ第二讀會ヲ開クコトニ決シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=10
-
011・岩崎勳君
○岩崎勳君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミ
マス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=11
-
012・議長(奧繁三郎君)
○議長(奧繁三郎君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス-通告順ニ
依リマシテ討論ヲ許シマス、先ヅ禱苗代君
刑事訴訟法案第二讀會
〔禱苗代君登壇〕
0禱苗代君私ハ委員長ノ報告ニ賛成ヲ致シマシテ、少數
意見ニハ反對ヲスルノデアリマス、卽チ委員長ノ報告ノ如ク、
此刑事訴訟法ノ內容ハ現行法ニ之ヲ比較ヲ致シテ見マス
レバ、最新ノ學理ヲ參照致シ、且ツ多年實際ニ之ヲ徵シ、且
ツ各國ノ立法ニ鑑ミラレテ、其長ヲ採シテ時代ノ進運ニ順應
スルヤウニ此改正ヲ加ヘラレテ居ルノデアリマス、特ニ本案
ニ於キマシテハ、我國ノ古來ノ淳風美俗ヲ基礎ト致シ、之ヲ
保持スル所ノ趣旨ヲ規定セラレテ居リマスルコトハ、先刻委
員長報告ノ通リデゴザイマス、ソレノミナラズ多年吾々在野
ノ法曹ガ主張シテ參リマシタ所ノ、此捜査機關ノ搜査ヲ爲
スニ際シテ、錄取シタル所ノ聽取書ガ證據カラ除カレタト云
フコトハ、是ハ吾々此人權蹂躪問題ノ其根本ヲ除ク上ニ於
テ、一大進步ヲナシタモノデアリマス、殊ニ上告審ニ於テハ、
先刻委員長ノ報告ノ如ク、此法律違背ノ場合ノミナラズ、
刑ノ量定ガ著シク不當ナル場合、及此罪ヲ認定スル所ノ、
卽チ事實ノ認定ガ著シク不當ナル場合ニ於キマシテモ、大
審院ニ於キマシテ之ヲ審理シ、而シテ法律ノ統一ノミナラズ、
此刑ノ量定竝ニ事實ノ認定ヲ統一スル所ノ結果ニナリマ
シタト云フコトハ、此案ニ對シテ多大ノ感謝ヲセナケレバナ
ラヌノデアリマス、斯ノ如ク本案ハ現行法ニ較ベマスルト云
フト、一般ノ進步ヲナシテ居リマスルケレドモ、此人權擁護
ノ理想ノ上カラ考へマスレバ、幾多ノ距離モアルノデアリマ
スルカラ、其點ニ付キマシテハ、先刻委員長ノ御報告ノ通リ
改正ヲ加ヘマシタナラバ、今日我國ノ國情ト民意ニ照シテ、
此法律ニ依ッテ吾々ノ權利ガ擁護セラレ、吾々ノ財產、自
由、名譽ト云フモノガ安全ニ保護セラルヽコトニナルコトヽ
信ズルノデアリマス、此意味ニ於キマシテ、委員長ノ報告ニ
賛成スルト同時ニ、吾々ハ此少數意見ノ先刻委員長報告
ノ箇條ニ對シテハ、反對ヲスル者デアリマス、此修正意見ト
シテ現レテ居リマスル所ノ此箇條ニ對シテ反對スル所ノ理
由ヲ、前以テ一言中上ゲテ見タイノデアリマス、橫山君カラ
御提出ニナリマシタ所ノ反對理由、詰リ吾々ノ修正ニ對シ
テ賛成ヲサレテ、其以外ニ尙ホ修正案ガ出テ居ルノデアリマ
スガ、其中ノ横山君ノ第一點トシテハ、本案ノ二百五十五
條乃至二百五十七條ヲ削除シタイト云フ御意見デゴザイ
マスガ、遺憾ナガラ此點ニ付テハ反對ヲ表明セザルヲ得ヌノデ
アリマス、吾々ハ二百五十五條ニ於テ證據ヲ湮滅スル場合
或ハ之ヲ使用シ難キ場合ニ於テ被告人ヲ勾留スル所ノ以
外ノ事柄ハ之ヲ存シ、此條文ハ矢張有ル方ガ宜イノデ、之
ヲ削除スルニ依ッテ犯罪搜査ト云フモノガ十分ニ手ガ屆カ
ナイ、犯罪ノ搜査ノ手ガ十分ニ仲ビナイ、調査機關ノ手ガ
伸ビナイコトニナレバ、吾々ノ生命財產ハ何時惡人ガ出テ
來テ之ヲ脅威スルカ分ラヌノデアリマスカラ、此存在スルコ
トヲ希望スルノデアリマス、是ハ主義ニ於テハ彈劾主義ニ反
シテ居ルヤウニ、卽チ起訴スル以前ニ檢事ノ請求ニ依ッテ裁
判所ガ或ル强制處分ヲ爲スノデアリマスカラ、彈劾主義ニ
反シ、不告不理ノ原則ニ反スルヤウニアリマスルケレドモ、此
原則ヲ貫徹シテハ、先刻中上ゲマシタルガ如キ不便ガアリマ
ス故ニ、獨リ此刑事訴訟手續ノミナラズ、民事訴訟ニ於キ
マシテモ、御承知ノ如ク時期ノ經過スルニ依ッテ其證據ヲ使
用スルコトガ出來ヌ、或ハ時期ノ經過ニ依シテ、ソレヲ使用ス
ルノ困難ナル場合ガ幾多アリマス、故ニ民事訴訟ニ於キマ
シテモ、訴ノ繫屬シテ居ル場合ノミナラズ、其訴ノ繫屬シ
ナイ場合デモ證據保全ノ手續ヲ許シテアルト同樣ニ、矢張
此刑事訴訟手續ニ於キマシテモ、證據保全ノ手續ヲ爲スコト
ガ極メテ必要ナル事ダト信ズルノデアリマス、ソレ故ニ此
箇條ヲ全部削除スルト云フコトハ、今日ノ搜査ヲスル上ニ
於キマシテ、或ハ吾々ノ詰リ一般生命財產ヲ保護シテ枕ヲ
高クスル意味ニ於キマシテ、斯ノ如キ規定ノ存在ト云フコト
ヲ必要ト致シマスルノミナラズ、此〓瀨君カラ問題トナッテ
居リマスル所ノ二百八十一條ニ依ッテ、此起訴ガ絕對ニ任
意主義ヲ採ッテ居ル上カラ考ヘテ見マシテモ、是等ノ證據ヲ
蒐メテ、然ル後ニ判斷ヲ致スニ非ズンバ、此起訴ナルモノハ
之ヲ起訴スルカ若クハ之ヲセザル方ガ適當デアルカト云フ
コトヲ、判斷スルコトガ出來ナイノデアリマスカラ、此二百五
十五條乃至二百五十七條ノ規定ニ依リマシテ、被疑者ヲ
勾留スル以外ノ手續ヲナサシメテ、是等ノ主義ヲ貫徹スル
ニ至極便利デアラウト信ズルノデアリマス、横山君ガ委員會
ニ於キマシテモ述べラレタコト、及今日モ後カラ議論モゴザ
イマセウガ、是ハ先刻中上ゲマシタ所ノ卽チ彈劾主義ニ反シ、
不告不理ノ原則ニ反スルノデアリマスカラ、是ハ不都合デア
ルト言ハレルノデアリマセウケレドモ、斯ノ如キハ徒ニ唯理請
ニ走シテ、實際ヲ知ラナイ議論デアルト言ハナケレバナラヌ、
此意味ニ於キマシテ二百五十五條乃至二百五十七條ヲ
削除スルト云フ所ノ意見ニハ反對ヲ致ス者デアリマス、次ニ
ハ横山君カラ本案ノ二百六十四條ヲ削除スル意見カ出テ
居リマス、之ニ對シテハ絕對ニ反對シナケレバナラヌ意見ヲ
持ッテ居ルノデアリマス、横山君ハ或ハ此法條ナルモノハ、淳
風美俗ヲ維持スルノデナク、却テ淳風美俗ヲ破壞スルモノデ
ナイカ、卽チ茲通ガアッタ時分ニ、一々ソレヲ訴訟ヲ提起シタ
後ニ非ズンバ此姦通ノ告訴ヲ爲スコトガ出來ナイヤウニナツ
タナラバ、惡イ者ガ早ク其手續ヲ進行スルコトガ出來ナイデ
却テ淳風美俗ヲ破壞スルモノデナイカト云フコトヲ委員會
デモ述ベラレマシタガ(横山勝太郞君「サウデナイ」ト呼フ)私
ハサウ云フヤウニ承シテ居リマス、若シンレガ違ヒマシタナラバ
又更ニ他ノ意味ノ御意見ニ對シテハ意見ヲ述ベル機會ガ
アラウト思ヒマス、若シ今中上ゲタ通リデアルトスレバ、是ハ
一面ヲ見テ一面ヲ知ラヌモノト言ハナケレバナラヌ、此規定ヲ
設テタル所以ハ、卽チ一面ニ於テハ夫婦關係ヲ繼續シナ
ガラ、一面ニ於テハ告訴ヲ爲シテ、而シテ此刑罰ヲ受ケシメ
ルト云フコトハ相矛盾シタル關係デアル許リデナク、或ハ社
會ノ一部ニ於キマシテハ、夫婦關係ヲ繼續シナガラ、其夫婦
共謀シテ或ハ富豪ナリ、或ハ地位ノアル人ヲ脅迫或ハ曾喝
シテ、取財ヲシタ實例ガアルコトハ、其實際ニ通ジテ居ラルヽ
横山君ハ能ク知ッテ居ラルヽ事ト思ヒマス、ソレ故ニ斯ル惡
用セラルヽ虞ガアリマス故ニ、木案ノ如ク若シ告訴ヲセント
スレバ、卽チ夫婦關係ノ繼續ヲシナイ方法ヲ執ッテ、然ル後
ニ爲スベキコトデアッテ、之ヲ夫婦關係ヲ繼續シツヽスルコト
ハ不適當デアル、斯樣ニ信ズルノデアリマス、故ニ此淳風美
俗ヲ保持スル趣旨ニ於キマシテ、此修正意見ニ對シテ反對
ノ意見ヲ表明シテ置クノデアリマス、次ニハ三百四十五條、
此三百四十五條ニ付キマシテハ勿論吾々モ理想トスル所
カラ申シマスレバ、罪ヲ證明スル所ノ其事實、罪トナルベキ
事實ヲ證明スベキ證據ナルモノハ、直接ニ之ヲ審理スルノガ
至當デアルト云フコトハ、屢〓私ガ表明シテ居ルノデアリマス
而シテ直接審理ノ原則ハ、獨リ地方裁判所デアル許リデナ
ク、區裁判所ニ於キマシテモ、矢張同樣ニ之ヲ貫徹シテ行ク
ノガ當然デアリマス、區裁判所ナルガ故ニ、地方裁判所ニ繫
屬シテ居ル事件ナルガ故ニ、之ヲ二三ニスベキ性質ノモノデ
ハナイト信ズルノデアリマス、而シテ横山君ノ此修正意見ニ依
リマスレバ、區裁判所ニ於ケル卽チ三百四十五條ノ第二項
ヲ削除シタイト云フノデアリマスガ、サウ云フ結果ニナリマス
ト、斯ウ云フ矛盾ヲスル點カラ反對シナケレバラヌノデアリマ
ス、卽チ三百四十五條ノ第一項ニ依リマスレバ、地方裁判
所ニ於キマシテ、豫審ニ於テ審理シタル豫審調書其モノヲ
證據トスルコトガ出來ル結果ニナルノデアリマス、然ルニ横
山君ノ修正ノ如ク致シマシタナラバ、第二項ヲ削除スルノ
結果、區裁判所ニ於テハ悉ク直接ニ審理ヲシナケレバナラ
スト云フ所ノ結果ニ到達シナケレバナラヌノデアリマス、サウ
シマスト、事件ガ複雜デアッテ、且鄭重ニ審理ヲシナケレバナ
ラヌ所ノ此地方裁判所ニ於キマシテ、間接審理ヲ一部許ス
コトニナリ、極ク輕微ナ事件デアリマシテ、簡易ナ手續デ済
ム所ノ區裁判所ノ手續ナルモノハ、直接ニ皆シナケレバナラ
ヌト云フ斯ノ如キ矛盾ガ來ルノデアリマス、此意味ニ於キ
マシテモ、其主張ノ一貫セザル點ニ於テ反對スルノミナラズ、
區裁判所ノ今日ノ事件カラ申シマスレバ、私ガ申上グル迄
モナク、先ヅ窃盜或ハ賭博等至極簡單ナノデアリマシテ、之
ヲ一々直接審理ヲシナケレバナラヌト云フ事ニナリマシタナ
ラバ、土地ノ遠隔地ニ在ル所ノ各關係者ヲ一々喚バナケレ
バナラヌ、殊ニ被害者モ喚バナケレバナラヌ、サウシナケレバ
此犯罪者ナル者ヲ罰スルコトガ出來ヌト云フ事ニナリマス
レバ、被害者ノ迷惑モ少カラザル事デアリ、且又今日此刑
事訴訟ノ結果ト致シマシテ、上告裁判所モ擴張セラレ、竝
ニ又本議會ニ提出ニナッテ居リマスル陪審法、是ガ通過ノ
曉ニナリマシテ、實施セラルヽ暁ニナリマシタナラパ、少カラザ
ル國費ヲ要スルノミナラズ、栽判官モ非常ナ、適當ナ澤山ナ
ル人數ヲ增加シナケレバナラヌ事ニナルノデアリマスカラシテ、
假ニ國費ヲ支出スルコトガ許スト致シマシテモ、今日ハ到底此
區裁判所ニ於テ、直接審理ヲスルト云フ栽判官ヲ直ニ採用
スル所ノ事柄ハ困難ナル事情モアリマス、事件ノ性質ニシテ
モ、先刻申上グル通リ輕微デアリ、今日ノ國情ガ只今申上
ゲマスル如ク困難デアリマスルガ故ニ、今日ハ先以テ其直接
審理ニ近イ所ノ、詰リ證據ノ採用方法ナルモノハ、地方裁判
所ニ止メテ、區裁判所ハ從前ノ如キ證據ニ依テ判斷セシムル
モ、强チ此國民ノ權利ヲ侵害スルト云フ結果ハ生ズマイ、事
件ノ性質上及犯人ノ性質上、多ク是ハ簡易ナ手續ニ依
ル輕微ノ犯罪デアリマスルカラシテ、其弊害ガ少イコトヲ
信ジマスガ故ニ、此點ニ付キマシテモ、以上申上ゲル理由ニ
依リマシテ、此三百四十五條ノ第二項ヲ削除スルト云フ所
ノ修正意見ニハ賛成致スコトガ出來ナイノデアリマス、次ニ
ハ三百六十三條ノ全文ヲ削除スルト云フ御意見デゴザイ
マスルガ、是ハドウシテモ反對ヲ致シタイノデアリマス、判決
文ヲ、此判決書ヲ作製スルニハ、罪トナルベキ事實證據ノ理
由ヲ明確ニシテ、之ヲ作製シナケレバナラヌト云フ事ハ三百
六十二條ニ規定シテ居ルノデアリマス、而シテ是ハ地方裁
判所デアラウガ、區裁判所ノ事件デアラウガ、區別スベキ性
質ノモノデハナイト信ズルノデアリマス、併ナガラ事案ガ明白
デアッテ、而シテ之ニ爭ヒノ無イ所ノモノヲ一々判決文ヲ作
ルト云フコトニ付キマシテハ、是ハ判事ノ能率ヲ增進セシメ
ル上ニ於テ不適當デアリマスルガ故ニ、吾々ハ先刻委員長
報告ノ通リ、三百六十三條ト云フモノヲ修正ヲ致シテ置キ
マシタカラシテ、此三百六十三條ヲ全部削除致シテ、全部
ノ犯罪事實ニ對シテ、全部ノ又被告人ニ對シテ、三百六十
二條ノ如キ煩瑣ナル判決書ヲ作製スルト云フコトハ、國務
ノ進捗上不適當デアルト信ズルガ故ニ、此修正意見ニ對シ
テ反對ヲ述ベテ置クノデアリマス、次ニハ四百十四條、四百
十四條ニハ「刑ノ量定甚シク不當ナリト思料スベキ顯著ナ
ル事由アルトキハ」ト云フ斯ウ云フ事ガアリマス、刑ノ量定
著シク不當デアルト思料スベキ場合ハ、單リ刑期ノ長短ノ
ミラズ、刑ノ執行猶豫ヲ與フベキ場合ニ於キマシテモ、刑ノ
執行猶豫ヲ與ヘナイ場合ニ於キマシテモ、此中ニ包含スル
ト云フコトハ、一讀シテ明瞭デアリマスガ故ニ、橫山君ノ執
行猶豫ヲ與ヘナイ場合ハト云フ事柄ヲ、故ラニ示ス必要ハ
ナイト信ズルノデアリマス、此意味ニ於キマシテ、横山君ノ修
正意見ニ對シテハ悉ク反對ヲシナケレバナラヌコトヲ遺憾ト
スルノデアリマス、次ニハ〓瀨君ノ二百八十一條第二項ノ
規定ヲ設ケルコトニ付キマシテノ御意見ニ對シテ、之ニ對シテ
モ遺憾ナガラ實ハ贊成ヲスルコトガ出來ナイノデアリマス、
〓瀨君ハ該博ノ知識ノ所有者デ、吾々ハ不斷畏敬シテ居
リマス、殊ニ私ノ修正案ノ中ニ於キマシテモ、再審ノ理由ノ
所ノ特許ニ關スル事柄ハ、先生ノ〓示ニ依ッテ吾々ハ修正
ヲシタコトヲ感謝致シマスガ、併シ二百八十一條ノ修正案
ニ到底承服スルコトハ出來ナイノデアリマス、二百八十一條
アルガ故ニ、〓瀨君ハ數万言ヲ費サレテ、之ガ爲ニ國民ニ對
シテ不平等ナル待遇ヲ爲ス虞ガアル、或ハ之ヲ惡用スル虞
ガアル、斯ウ云フコトヲ申シテ居ラレマスガ、併シ是ハ一人二
人ノ人ニ斯ウ云フコトヲシロ、或ル特別ナル人ニ斯ウ云フ事
柄ヲ爲セト云ヲノデナタ、國民ノ中ニ若シ犯罪ヲ特シタル者
アリトセバ、何レノ人デアリマシテモ、二百八十一條ノ條件
ガ具リマシタナラバ、此ノ起訴スベキ、或ハスベカラザルハ、判
事、檢事ノ詰リ自由ニ任ス、所謂絕對自由任意主義ヲ採ッ
タノデアリマシテ、之ガ爲ニ或ル階級ガ强テ擁護セラレ、或ル
階級ガ非常ニ追窮セラレルト云フコトハ生ゼナイ、此規定
自體カラハ生ゼナイノデアリマス、或ハ其檢事ノ如何ニ依ク
テサウ云フ虞ガ生ジマセウケレドモ、是ハ此規定ノ關スル所
ア
デナク、ソレハ全ク別ノ關係デアリマス、殊ニデス、此清瀨君
ノ言ハレルガ如ク、二項トシテ檢事ノ爲シタル處分ニ對シテ、
裁判所ノ裁判ヲ受ケルコトニ若シ致シマシタナラバ、斯樣ナ
不都合ノ結果ガ生ズルト思ヒマス、若シ檢事ノ處分ニ對シ、
裁判所ガ裁判ヲ爲シ、其栽判ニ檢事ガ服從シナケレバナラ
ヌト云フ事ニナリマスルナラバ、是ハ司法機關ガ卽チ行政機
關ヲ指揮命令スル所ノ結果ヲ生ズルノデアリマシテ、此三
權分立ノ基礎觀念ト云フモノハ、根本カラ破壞セラレル結
果ト相成ルノデアリマス、尙ホ現行法ノ規定ノ上カラ考ヘマ
シテモ、檢事ノ起訴處分ト云フコトハ是ハ行政處分デアリ
マシテ、訴訟手續デハナイノデアリマス、卽チ裁判所ノ裁判
ナルモノハ、事實ニ對シテ法ヲ適用スルノ權限ヲ有スルコト
ガ裁判デアリマシテ、二百八十一條ノ如キ斯ウ云フ場合ニ
栽量スル所ノ權限ハ無イノデアリマス、若シ夫レ檢事ノ起
訴處分ガ是ハ不適富デアル、不當デアルト云フコトナラバ、
矢張他ノ行政官廳ノ處分ニ對シテ救濟ヲ求ムルガ如ク、卽
チ行政訴訟ノ手續ガアルガ如ク、是ハ矢張監督權ノ作用ニ
依ッテ、其處分ノ取消變更ヲ求メルノガ至當デアリマシテ、
裁判所ニ對シテ之ヲ訴ヘルト云フコトハ、現行法ノ解釋ノ
上カラ申シマシテモ不法デアルト考ヘマス、尙ホ之ヲ訴訟手
續ノ主義ノ上カラ考ヘマシテモ、若シ〓瀨君ノ御說ノ如ク
致シマスナラバ、卽チ彈効主義ヲ根本的ニ破壊スルモノデア
リマシテ、不告不理ノ原則ト云フモノハ根本カラ崩レテ來ナ
ケレバナラヌト云フ結果ニ到達シナケレバナラヌノデアリマス、
〓瀨君ノ只今ノ說、檢事ノ處分ニ對シテ栽判所ノ裁判ヲ
求メルト云フコトハ、前ニ申シマシタル如ク、司法行政ノ關
係ヲ混亂スルノデアリマシテ、卽チ一面ニ於キマシテハ、訴訟
手續ノ主義ヲ紊ルモノデアリマス、故ニ斯ウ云フ意見ニ對シ
テハ遺憾ナガラ反對ヲシナケレバナラヌノデアリマス、若シ夫
レ之ニ對スル救濟方法ニ對シマシテハ、又自カラ其方法ガ
無イデハアリマセヌケレドモ、兎ニ角栽判所ニ對シテ裁判ノ
裁判ヲ受ケルト云フ意見ハ吾々ノ採ラザル所デアリマス、
斯樣ニ本案ニ對スル修正ハ、先刻委員長ガ報告セラレタル
以外ニ對シテハ、其今日ノ國情ノ上カラ、民意ノ上カラ必
要ノ無イモノデアルト私共ハ信ズルノデアリマス、先刻モ申
上ゲマシタル通リ、勿論理想ノ上カラ申シマスレバ、尙ホ幾多
ノ修正スベキ所モアリマスケレドモ、今日ノ程度ニ於キマシ
テハ、是レ以上ノ修正ハ必要ハ無イノデアルト信ズルノデア
リマス、卽チ委員長ノ報告セラレマシタル所ノンレ以外ノ修
正ト云フモノハ、今日ノ社會ノ秩序ヲ維持スル上ニ於テハ、
却テ害ガ有ッテモ利益ハ無イノデアルト信ジマスガ故ニ、(ノウ
ノウ)吾々ハ委員長ノ報告通リノ修正案ニ對シテ、玆ニ贊
成ノ意見ヲ表明シ、且ツ少數意見ニ對シテハ反對ノ意見ヲ
表明シテ置ク次第デアリマス、ドウゾ委員長報告ノ通リニ、
此案ニ對シテ御賛成アランコトヲ切望致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=12
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013・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 少數意見ニ賛成ノ通告ガ作間耕
逸君ヨリアリシタガ、御出席ニナッテ居リマセヌカラ取消サ
レタモノト認メマス、横山勝太郞君
〔横山勝太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=13
-
014・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 本員ハ大體先刻委員長カラ御報告ニ
ナリマシタ事柄ニ贊成ヲ致ス者デアリマス、此委員會ニ於テ
全會一致ヲ以テ贊成ヲセラレタル修正案ノ中デ政府ノ反
對ニ係ルモノガ數點アルコトハ委員長報告ノ通デアリマス、
デ此場合ニ於テ其政府ノ反對意見ニ對シテ、本員ハ委員長
報告ニ贊成スル意味ニ於テ、私ノ意見ヲ述べテ置キタイト考
ヘマス、其第一ハ百二十三條ノ削除ニ關スル點デアリマス、
百二十三條ハ斯ノ如ク相成シテ居リマス、「左ノ場合ニ於テ
急速ヲ要シ判事ノ勾引狀ヲ求ムルコト能ハサルトキハ檢事
ハ勾引狀ヲ發シ又ハ之ヲ他ノ檢事若ハ司法警察官ニ命令
シ若ハ嘱託スルコトヲ得」ト斯ノ如キ包括的ノ規定ヲ設ケ
マシテ、大〓ノ場合檢事ガ自ラ勾引狀ヲ發シ、又司法警察
官ニ之ヲ命令シ、若クハ囑託スルコトガ出來ル原則ヲ規定
致シテ居ルノデアリマス、ンレカラ第二項ニ於キマシテハ、「司
法警察官ハ前項各號ノ場合ニ於テ勾引狀ヲ發シ又ハ之ヲ
他ノ司法警察官ニ命令シ若ハ囑託スルコトヲ得」ト云フ規
定ガアリマスガ、詰リ司法警察官ガ檢事同樣ノ勾引狀ヲ發ス
ル權利ヲ持ツ、斯ウ云フ規定デアリマス、ソレデ此規定ハ何
ガ故ニ起ッタカト申シマスト、從來吾々民間法曹ノ者カラ常
ニ人權蹂躪ト云フコトヲ叫ピマシタ原因ト云フモノハ、檢事
若クハ警察官ガ不當ニ被疑者ヲ拘禁シ、不當ニ被疑者ヲ
訊問スルト云フコトガ、人權蹂躪ノ場合ニ於テ屢〓演ゼラレ
ル所ノ弊害デアル、是ガ所謂人權問題ノ起ル一ノ原因デア
リマス、ソコデ政府ハ斯ノ如キ問題ノ起ル每ニ、民間ノ攻撃
ヲ受ケテ非常ニ困難ヲスル結果、法律ノ規定ニ依ッテ檢事
及司法警察官ニ斯ノ如キ權利ヲ與ヘテ、法律上正當デア
ルト、云フコトニ依ッテ、被疑者ノ勾留若クハ訊問ヲスルコト
ニシタイト云フコトノ希望カラ生ジタモノデアリマス、ソコデ
委員長ノ報告デ大體御分リニナッテ居リマセウガ、吾々ガ此削
除ニ賛成ヲ致シマスル理由ノ一端トシテ述ベテ置キタイト
思ヒマス點ハ、斯ノ如キ規定ガ有ルノデアリマス、卽チ百二
十三條ノ第一號ニハ、「被疑者定リタル住居ヲ有セサルト
キ」此被疑者ガ定リタル住所ヲ有スルカ有シナイカト云フコ
トハ、誰ガ認定スルノデアルカト云ヘバ、檢事若クハ司法警
察官ガ之ヲ認定スルノデアリマス、犯罪人ニ對シマシテ、オ
前ノ住所ハ何處ニアルカ、斯ク〓〓ノ處ニコザイマス、併ナガ
ラ之ヲ檢事、若クハ司法警察官ガ無イト認メルナラバ、直ユ
被疑者ト云フ者ヲ勾引スルコトガ出來ル、デ或ハ此規定ノ
中ノソレハ急速ヲ要スル場合ノミデアッテ、平常ノ場合ニ於
テハ斯ノ如キ規定ヲ濫用スルコトハナイト云フ政府委員ハ
辯明ヲ致シテ居リマスケレドモ、併ナガラ果シテ急速ヲ要ス
ルコトデアルカドウカト云フコトモ、誰ガ認定スルカト云ヘバ、
矢張檢事ガ之ヲ認定スルノデアリマス、斯ノ如キ次第デアッ
テ、相當ナル身分ヲ有シ、相當ナル位置ヲ有スル者デアリマ
シテモ、オ前ハ住所ガ無イ者デアルト云フ認定ノ受ケル以上
ハ、直ニ勾引狀ヲ發スルコトガ出來ルト云フ規定デアリマス、
ソレカラ第二號ニ於キマシテハ「現行犯人其ノ場所ニ在ラ
サルトキ」ト云フコトヲ規定致シテ居リマス、現行犯人ノ發
見セラレタル場合ニ、其犯行ノ現場ニ依然トシテ滯在ヲ致
シテ居ル者ハ、多クノ場合ニ於テ吾々ハ之ヲ想像スルコトガ
出來ナイノデアリマス、風癲白痴ノ者デアルカ、痴呆者デア
ルトカ、常識ノ無イ者デアリマスルナラバ、罪ヲ犯シテサウシ
テ、警察官、檢事ノ來ルマデ待ッテ居ル者モアルカモ知レマセ
ヌガ、普通ノ犯人デアリマシタナラバ、人ヲ殺シ、火ヲ放チ、其犯
行ノ終ル刹那ニ直ニ現場ヲ去ルト云フコトハ是ハ當然ノ事
デアリマス、斯ノ如キ場合ニ犯人ガ其場所ニ居ラナイカラト
云フテ、檢事ガ勾引狀ヲ發スルコトガ出來ルト云フナラバ、
多クノ場合ニ於テ直ニ此法條ヲ、濫用致シテ、サウシテ勾引
狀ヲ發スルコトガ出來ルト云フ規定ニナリマス、デ第六號ニ
ハ强窃盜ノ場合ヲ擧ゲテアリマスガ、斯ノ如キ場合ハ或ハ
必要デアルカモ存ジマセヌ、必要デアルカモ存ジマセヌガ、斯
ノ如キ場合ニ於テハ此法案ニ於テモ、現行ノ規定ニ於キマ
シテモ相當ナル方法ヲ執ルコトガ出來ルト云フ事柄ハ解釋上
疑ガナイノデアリマス、要スルニ百二十三條ハ從來檢事若
クハ司法警察官ノ處分ニ對シ、其處分ノ不當ナルコトヲ鳴
ラシテ、人權問題ヲ惹起スルコトガアル場合ヲ想像致シスシテ、
法律上人權蹂躪ヲヤラウト云フコトニナル、此勾引狀ハ不
當デアル、斯ノ如キ場合ニハ〓留狀ヲ發スルノハ不當デアル
ト申シマシテモ、ソレハ法律上ノ規定ニ依ッテヤッテ居ルノデ
アルト云フコトニ依シテ、入權蹂躪ノ叶ヲ避ケントスル規定
デアルノデアリマス、斯ノ如キ事柄ハ法律ノ手前カラ申シ
マスト、寔ニ一言半句モ異論ヲ挾ムコトノ出來ナイヤウニ規
定シテアリマスケレドモ、之ヲ現在ノ狀態ニ照ラシテ見テ、吾
吾ハ今日ノ檢事、今日ノ司法警察官ニ對シテ、斯ノ如キ過
大ナル信用ヲ拂フト云フコトハ出來ナイト斯ク信ジテ居リ
マス、政府ハ吾々ノ質問ニ對シテ結局ハ人ノ問題デアル、左
様ニ不當ナル事ヲスルナラバ、ソレハ所謂官吏服務紀律ノ
關係カラ致シテ、ドノヤウニモ救濟ノ方法ガアルノデアリマス
カラ、人ヲ信ジテ立法ヲ爲スベキモノデアル、斯樣ナ意味ノ
聲明ヲシテ居リマスケレドモガ、吾々民間ノ側ニ於テハ、少
クトモ現狀ノ儘ニ於テ〓日ノ檢事制度、今日ノ司法警察
官ノ態度ニ對シテ、全ク信用ヲ拂フコトガ出來ナイノミナラ
ズ、非常ニ危險ヲ感ジテ居ル場合デアリマスカラシテ、此百
二十三條ノ規定ニハ絕對ニ反對ヲセザルヲ得ヌノデアリマ
ス、此點ニ付テハ委員會ニ於テモ私ハ簡單ニ述ベテ置キマ
シタガ、尙ホ當席ニ於テ斯ノ如キ議論ヲスルト云フコトハ
決シテ吾々民間ノ側ノ者ノ爲ス意見タルニ過ギヌノデアル
ト言ハレル非難モゴザイマスガ、決シテサウデナイ、公平ナル
裁判官ノ側ニ於テモ、吾々ガ申スヤウナコトヲ論ジテ居ル人ガ
アル、斯樣ニ委員會ニ於テモ申上ゲテ置キマシタガ、當
席ニ於テモ繰返シテ私ハ全國裁判所ノ檢事、全國ノ司法
警察官ニ對シテ、多大ノ反省ヲ求ムルト同時ニ、此立法ノ
不當デアルト云フコトノ根據ニ供シテ置キタイト思フノデア
リマス、ソレハ第五回刑政〓究會ニ於テ法學博士横田秀
雄氏ガ演說ヲセラレテ居ル、其一節デアル、横田博士ハ御承
知ノ通リ多年民刑ノ栽判官ヲ御勤ニナリマシテ、聲名隆々
タル人デ、今日現ニ大審院ノ部長ヲ動メラレテ居ル人デア
ル、此横田博士ノ見解ニ對シテハ吾々民間ノ者モ毫モ異
論ガナイノミナラズ、裁判所ノ諸君及政府ニ於テモ、此見解
此議論ニ對シテ意見ヲ挿ム餘地ハナイト考へマス、卽チ「刑
事裁判ト國民ノ信賴」ト云フ題下ニ演說ヲナサッテ居リマス、
其一部ヲ極テ簡單デアリマスカラシテ、朗讀ヲ致シテ置キマ
ス「犯罪ノ搜索」ト云.フ所デ述ベラレテ居ル一端ヲ朗讀致ス
ノデアリマス「檢事及司法警察官ハ或ハ證憑、ノ所在ヲ明カ
ニシ尙進ンデ其證憑ヲ蒐集シ其他公訴提起ニ必要ナル準
備ヲ爲スノハ勿論其職責デアル」中略「然ラバ我國ニ於ケル
捜査處分ナルモノハ果シテ何等ノ强制手段ヲ用ヒズシテ公
明正大ニ行ハレテ居ルカト云フコトヲ考ヘテ見ルト、私ハ
此問題ヲ肯定スルニ躊躇スル者デアル、司法警察官トシテ
ノ警部、其補助機關トシテノ巡查ノ搜査處分ガ往々人權
ヲ無視シテ、刑事訴訟法ノ精神ニ背戾スルト云フ非難ハ吾
吾ガ裁判所ノ内外ニ於テ屢、耳ニスル所デアッテ、或ハ濫リ
ニ嫌疑者ヲ引致スル、或ハ嫌疑者竝ニ關係人ニ對シテ威力
ヲ用ヒル、其供述ヲ徵スルガ爲ニ威嚇又ハ詐術ヲ用ヒ、甚シ
キニ至ッテハ名ヲ道路妨害トカ、或ハ浮浪罪トカ其他ノ犯罪
ニ假託シテ之ヲ勾留シ、其勾留中ニ於テ其自白ヲ强ヒ、其
供述ヲ强ヒ、被告人ヲ毆打拷責シテ創傷ヲ負ハシメ、昔時
ノ拷問ニ等シキ所業ヲ敢テスル、斯ル非難ハ新聞紙上ニ之
ヲ見ルコトガアリ、法廷ニ於ケル辯護人ノ辯論、被告人ノ辯
解中ニ之ヲ聽クコトガアリ、其交際場裡ニ於ケル談話ニ上
ルコトガアルノデアル、是ハ果シテ眞實デアリマセウカ、私ハ警
部、巡査ノ搜査處分ニ付テ常ニ斯ノ如キ非違ガ行ハレルモ
ノトハ決シテ信ズルコトハ出來ナイ、併ナガラ時ト場合ニ依ッ
テ屢〓行ハルヽハ爭フベクラザル事實デアッテ、到底口舌ヲ以
テ打消スコトハ出來ナイノデアルト考ヘル、果シテ然ラバ此
警部、巡査ハ豫審判事ノ職權ヲヤッテ居ル者デアルノミナラ
ズ、豫審判事ノ爲ス事ヲ得ザル、又爲スコトヲ敢テセザル事マデ
スルノデアッテ、斯ルコトハ法治國ニ於テバ到底許スコトガ出
來ナイノデアル、元來我國ノ司法警察官ハ、職務上ノ觀念
ガ極テ鞏固デアッテ、専心一意犯罪ヲ檢擧セントスル其熱心
ハ如何ニモ賞讃ニ價スル、併ナガラ犯罪捜索ノ實績ヲ擧ゲ
ントスル、其熱心ノ爲ニ、人權ヲ無視スル、人權ヲ尊重スル
ト云フ精神ガ十分ニ徹底シテ居ラナイノデアル、是ハ實ニ慨
嘆ニ堪ヘナイ所デアル、官尊民卑ハ我國古來ノ弊風デアル、
今日ハ他ノ方面ニ於テハ其面目ヲ改メテ居ルガ、獨リ警察
部內ニ於テ此弊風ガ尙ホ存シテ居ルヤウニ思ハレル、是ハ警
察官ガ常ニ下級ノ人民ニ接觸シテ居シテ、動モスレバ其輕
侮ヲ招ク虞ガアルカラ、多少其威嚴ヲ保ツノ必要ガアルカラ
デアル、又治罪ノ手續ニ關スル舊幕以來ノ因裝ノ然ラシム
ル所デアルト考マスガ、併ナガラ斯ノ如キ舊思想ハ、到底新
時代ノ要求ト相容レザルモノニシテ、法治國ノ體面ヲ汚ス
モノト言ハナクテハナラヌト思フ、大正維新ノ捜査處分ハ、
之ヲ刑事訴訟法ノ精神ニ照ラスモ、又時代ノ思想カラ見テ
モ、ドウシテモ人權ヲ尊重シ、可及的人心ノ自由ヲ拘束セサ
ルコトヲ旨トシテ、之ヲ行ハナケレバナラヌ」中略「檢事ノ搜
査處分ハ警察官ノソレト異ナリ、其地位人格ノ保證ガアリ
警察官ニ認ムルガ如キ非違ノ行ハレテ居ラヌコトハ疑ヲ容レ
ナイ、併シ檢事モ亦刑事訴訟法ニ於テハ原告官タル地位ニ
アルノデアルカラ、犯罪搜査ノ實績ヲ擧ゲントスルニ、急ナル
トキニ、或ハ常規ヲ逸スル行動ガナイトハ言ヘヌ譯デアル、近
來檢事ニ對スル人權蹂躪ノ非難ガアッテ、議會ノ問題トモ
ナッタノデアルガ、私ハ其事件ノ内容其實否ハ承知シテ居ラ
ヌ、併シ檢事ノ行動ニ對スル非難ハ、矢張刑事裁判ノ信用
ニ危害ヲ及ポス虞ガアル、何トナレバ檢事ノ捜査處分ニ依ツ
テ組立テラレタル訴訟ニ依シテ裁判所ガ言渡シ夕刑事ノ裁
判ガ、結局其弊ヲ受ケナケレバナラヌコトガアルカラデアル、刑
事裁判ハ常ニ不正デアル、不公平デアルト云フヤウナ疑惑
ニ超越シテ居ラナケレバナラヌ、其疑惑ナルモノハ根據ノア
ル場合ハ勿論、根據ノナイ場合デアッテモ、尙ホ裁判ノ威信
ヲ傷ケル結果ヲ生ズルノデアル、ソレ故ニ私ハ警察官ニ於ケ
ルト等シク、檢事ノ捜査處分モ亦人權ヲ尊重スル所ノ開明
ノ思想ニ基イテ、最モ公明正大ニ行ハルヽコトヲ希望シテ已
マナイモノデアル」斯樣ニ述ベテ居ラレマフ、是ハ橫田博士ノ
演說ノ眞ニ其一端ヲ私ハ摘讀致シタノデアリマスルガ、只
今私ノ朗讀致シタ所ニ依ッテ見マシテモ、或程度迄、檢事若
クハ司法警察官ノ人權蹂躪ノ事實ノアルト云フコトヲ認メ
テ居リマス、而モ現時ノ裁判所ノ所謂施行法下ノ裁判官
ニシテ、此事實ヲ認メテ居ルノデアリマス、此故ニ斯ノ如キ
事ガ起ッテ來ルノハ、舊幕以來ノ舊習ニ陷ッテ居ル所ノ舊思想
ニ基クモノデアル、大正ノ御代ニ於タル搜査處分ト云フモノ
ハ、最モ公明正大ナルコトヲ要スルノデアル、斯樣ニ述ベマシ
テ居ル點カラ申シマシテモ、今日ノ檢事制度、今日ノ司法
警察官ノ態度、斯ノ如キモノニ對シテ政府當局ノ言明スル
ガ如ク、過大ナル信用ヲ置イテ、斯ノ如キ危險ノ存スル事柄
ヲ豫知シナガラ、檢事、司法官ニ對シテ頗ル過大ノ權能ヲ承
認スルト云フ事柄ハ、全ク今日ノ吾々ノ思想ト一致セザル
モノデアリマシテ、吾々ハ絕對ニ此規定ニ反對ヲ致シ、卽チ
委員長ノ〓〓ニ二成成ヲ致シマシテ、吾々ハ司法當局ノ考慮ヲ
求ムル次第デアリマス、次ニ私ハ此二百五十五條乃至二百
五十七條ノ削除ノ理由ヲ述ベテ置キタイト思ヒマス、此二百
五十五條ハ「檢事捜査ヲ爲スニ付强制ノ處分ヲ必要トスル
トキハ公訴ノ提起前ト雖押收、搜索、檢證及被疑者ノ勾留
被疑者若ハ證人ノ訊問又ハ鑑定ノ處分ヲ其ノ所屬地方裁
判所ノ豫審判事又ハ所屬區裁判所ノ判事ニ請求スルコト
ヲ得」而シテ二百五十六條、二百五十七條ハ、此二百五十
五條ノ規定ニ關聯スル規定デアリマスカラシテ、專ラ此二百
五十五條削除ノ理由ヲ述ベレバ、隨テ二百五十六條、二
五十七條ノ規定ヲ削除スルノ理由ハ判明スルノデアリマス、
デ此二百五十五條ノ規定ヲ一括シテ申上ゲマスレバ、檢事
ガ犯罪捜査中ニ犯罪ガ有ルカ無イカ、マダ判明セザル其事件
ノ搜査中ニ、卽チ未ダ會テ豫審判事ノ之ヲ起訴セザル前ニ、
强制ノ處分ヲ必要トスルト認メタル場合ニハ、豫審處分ニ
屬スル事ヲ一切豫審判事ニ囑託スルコトノ出來ルト云フ規
定デアリマス、詰リ此規定ノ裏面カラ解釋ヲ致シマスナラバ、
檢事ガ自由ニ獨立ノ栽判官ヲ自分ノ手足トシテ使用スル
コトガ出來ルト云フ結果ガアルノデアリマス、御承知ノ如ク
裁判官ト云フモノト、檢事判度ト云フモノヲ特別ニ立法致
シマシテ、サウシテ各〓特立ノ職務ノ範圍ヲ規定致シ、檢事
ハ裁判所ヲ侵スベカラズ、裁判機關ハ檢事ニ對シテ何等ノ
强制力ヲ持タナイ、此檢事制度ト裁判機關ト云フモノガ、
と各、特立シテ爰ニ彈劾主義ノ妙味ヲ發揮スルコトガ出來テ、
隨テ此人權ノ擁護ノ上ニ於テ、至大ナル關係ヲ持ツコトニ
ナルノデアリマス、此故ニ現行法ノ規定ニ於キマシテモ、又
本案立案ノ趣旨ニ於キマシテモ、檢事ガ裁判官ヲ自由ニ自
分ノ手足ノ如ク、卽チ司法警察官ヲ使フヤウニ使用スルコ
トハ出來ナイト云フコトノ精神ニ於テ出來テ居ルト云フコ
トハ明瞭デアリマス、又其意味ヲ司法當局ハ言明ヲセラレ
テ居ルノデアリマス、併ナガラ事實ニ於テ此二百五十五條
ノ如キ規定ヲ設ケテ置キマスレバ、檢事ハ如何ナル場合ニ
於テモ、本件ハ强制處分ヲ要スルモノデアルト云フコトノ認
定ヲ致シマスレバ、公訴提起前ニ檢證、鑑定、證人訊問等
ハ勿論、被疑者ヲ勾留スルコトガ出來ルト云フ規定ニ相成。>
テ居ルノデアリマス、斯ノ如キハ我ガ日本ノ刑事訴訟法、卽
チ現行法、或ハ本案ノ如キモノガ彈劾主義ノ大原則ヲ設ケ
タル其原則ノ精神ニ私ハ肯反スルト考ヘルノデアリマス、我
ガ刑事訴訟法ハ彈劾主義ヲ認メテ、國民ニ犯罪彈劾ノ權
能ヲ與へ、此國民ノ彈効權ト云フモノヲ檢事ガ代ッテ、裁判
所ノ起訴ハ檢事ノ名ニ於テ彈劾スルト云フコトノ方法ニナ
サレテ居ル、而シテ裁判所ハ如何ナル場合ニ於テモ、檢事ノ
起訴アルニアラザレバ卽チ彈劾權ノ行使アリシ後ニ於テ
初テ事件ノ審理裁判ガ出來ルト云フノガ、我ガ訴訟手續ノ
原則デアル、是ハ先刻禱君カラモ御述ニチリマシタ通リ、不
告不理ノ原則ヨリ出テヽ居ルモノデアル、裁判所ハ如何ナ
ル場合ニ於テモ訴ヲ受ケテ然ル後ニ審理ヲ始メルノデアル、
訴ノナキ場合ハ絕對ニ裁判ヲシナイノデアルト云フノガ、是
ガ不告不理ノ原則、卽チ彈劾主義ノ原則デアルノデアリマ
ス、然ルニ本案ニ於テ起訴前ニ檢事ガ判事ニ囑託ヲ致シテ、
被疑者ノ勾留、或ハ檢證、鑑定、證人ノ訊問ト云フヤウナコ
トヲ、豫審處分ノ出來ルコトガ全部檢事ノ囑託ニ依ッテ起
訴前ニ出來ルト云フコトデアリマスレバ、誤ガナイノニ裁判
官ガ裁判手續ヲヤルト云フコトニナリマシテ、此彈劾主義ノ
原則ニ非常ナル例外ヲ爲スモノデアルト私ハ考へマス、現行
法ニ於テハ御承知ノ通リ、附帶犯ノ規定ガアリマシテ、時ト
場合ニ依ッテハ、起訴セザル人ニ對シテ起訴ノ效力ノ及ブト云
フコトノ規定モゴザイマシタガ、本案ニ於テハ其規定ヲモ全
然廢止政シテ居ルノデアル、卽チ附帶犯ノ規定ヲ全部削除
致シテ居ルノデアル、其立法ノ精神カラ申シマシテモ、一百百
五十五條ノ如キ規定ハ宜シク之ヲ廢止スベキモノデアルト
私ハ考ヘルノデアリマス、吾々ガ此言ヲ爲ス所以ハ、先刻百
二十三條ノ檢事勾引狀ヲ發スルコトノ出來ル場合ノ規定
ニ付テ、議論ヲ致シマシタ當時述べテ置キマシタ通ノ、今ゴ
ハ制度ノ不完全デアリマスルカ、或ハ法律ノ運用ガ惡イノデ
アリマスルカ、其原因ハ孰レニ在ルカト云フコトヲ、此處ニ明
言スルコトハ、困難デアリマスルガ、免ニ角今日檢事ガ裁判
官ニ對シテ一種ノ勞力ヲ持ッテ居ル、ドウモ檢事ガ裁判官
ヲ壓迫スルノ虞ガアリ、壓迫スルノ事例ヲ見ルコトガアル、是
ガ亦人權問題ヲ起ス一ツノ原因デアリマス、然ラバ何故ニ
檢事ガ裁判官ノ例ニ對シテ一種ノ獨立ノ地位ト獨立ノ勢
力ヲ持ッテ居ルカト申シマスレバ、吾々ハ之ヲ經驗ヨリ申シマ
スルナラバ、今日裁判所内部ニ於テ豫審判事ヲ任命致シマ
スル手續ヲ承リマスノニ、裁判所ニ於テ豫審判事ヲ任命セ
ントスレバ豫メ其裁判所ノ檢事正ノ同意ヲ得ナケレバナラ
ヌト云フ習慣ニナッテ居リマス、卽チ檢事正ノ同意、檢事局
側ノ承諾ト云フモノガナケラネバ、豫審判事ヲ任命スルコト
ガ出來ナイト云フコトニナッテ居ル、此故ニ被告人ヨリシテ
保釋、貴付ノ請求ノアッタ場合ニ、豫審判事ハ自己獨立ノ
鑑識ニ依シテ其栽判ヲ致シテ居ルカト申シマスレバ、決シテ
サウデナイ、多クノ場合ニ於テ豫審判事ガ檢事/意見ニ盲
從ヲ致シテ居ルト云フノガ、實際ノ實例ブアリマス、此故ニ豫
審判事ニ對シテ保釋ノ請求ヲ致シマスルド、豫審判事ハ曰
ク、自分ハ保釋ヲ許スコトニ於テ多クノ異存ハナイガ、檢事
ハ如何ナル意見ヲ持シテ居ルカ、先ヅ檢事ノ同意ヲ得デト云
コトヲ屢〓被告竝ニ辯護人ノ側ニ對シテ言明ヲスル事ノア
ルコトハ事實デアリマス、斯ノ如ク豫審判事ガ保釋、貴付
等ノ裁判ニ付テ、檢事ノ鼻息ヲ窺フ所ノ弊害ガ由「テ生ス
ル原因ハ何處ニアルカト申シマスルト、豫審判事ヲ任命スル
ニ當シテ、豫メ檢事正ノ同意ヲ得テ居ルト云フ事實ガ其根
據ヲ爲スルモノデアルト私ハ認メテ居リマス、斯ノ如キハ栽
判ハ獨立シテ居ル、司法權ハ獨立デアル、栽判官ハ獨立ノ
保障ガアルト申シマスルケレドモ、實際ノ此法律ノ運用ノ上
カラ申シマスルト、豫審判事ハ決シテ獨立ヲ致シテ居ラナイ、
司法權ハ獨立ヲ致シテ居ラナイ、栽判ハ獨立デナイト云フ
コトヲ斷言スルコトガ出來ルト私ハ考ヘマス、斯ノ如キハ、吾
吾民間ノ側ニ居ル者カラ申シマスレバ、檢事萬能ノ一ツノ弊
害デアリマス、是ガ卽チ人權蹂躪ノ結果ヲ惹起スト云フコ
トニナルノデアリマス、現行刑事訴訟法實施以來三十年ニ
相成リマスルガ、幾多ノ人權蹂躪ノ事實ガ此議會ノ壇上ニ
モ運バレマスルシ、又議會以外ニ於テモ屢、之ヲ論難攻究セ
ラレテ居ル、此人權蹂躪ノ歴史ト云フモノハ、卽チ檢事橫
暴ノ歷史デアル、人權蹂躪ノ歷史ハ卽チ檢事萬能ノ歷史ヲ
語ゝクモノデアルト、私ハ斷言シテ憚ラヌノアリマス、百二十
三條ノ規定ト云ヒ、此二百五十五條ノ規定ト云ヒ、孰レモ
檢事本位ノ立法デアリマス、檢事ガ犯罪ヲ搜查スルニ付テ、
或ハ警察官ヲ使用シ、或ハ裁判官ヲ使用シテ、自由自在ニ
活動セントスルコトノ目的ノ爲ニ、立法セラレタルモノデアリマ
シテ、卽チ檢事本位ニ於テ立法セラレタルモノデアル、過日
モ委員會ニ於テ私ハ一言致シテ置キマシタ通リ、斯ノ如キ
檢事萬能ノ法律ヲ設クルト云フコトデアルナラバ、本案ノ如
キモノハ檢事訴訟法ト云ウタ方ガ宜イデハナイカ、刑事訴
訟法ニアラズシテ、檢事訴訟法デアルト云フコトヲ言フ者ガ
アルガ、司法當局ノ意見ハ如何デアルカト云フコトモ、私
質シテ置イタヤワナ次第デアリマス、孰レニ致シマシテモ、先
刻横田博士ノ演說ノ一部ヲ朗讀致シマシタ如ク、檢事竝
ニ司法警察官ノ橫暴ト云フコトハ、、裁判所ノ側ニ於テモ之
ヲ承認致シテ居ル人ガアル位デアリマスルカラシテ、民間ノ
側ノ要求ニ依ッテ斯ノ如キ規定ハ全然削除セラルベキモノ
ト私ハ考ヘマス、此點ニ付テ先刻禱君ノ御演說ヲ拜聽致シ
テ居リマスルト、之ニ反對デアルト云フコトノ御意見ノ陳述
ガアリマシタガ、是ハ或ハ政友會ノ黨議デアルカモ存ジマセ
ヌガ、禱君ノ御演說ニ依シテ此二百五十五條削除ノ意見ノ
反對ヲ受クルト云フコトハ、私ハ洵ニ遺憾ニ存ジマス、禱君
モ御記憶ニナッテ居リマスル通リ、其二百五十五條乃至二
百五十七條ノ規定ヲ削除スルト云フコトハ實ニ在野法曹
多年ノ意見デアルト云フコトハ御記憶デアリマセウ、而シテ
禮君モ嘗テ一タビ此二百五十五條ノ規定ヲ削除スルト云フ
コトニ付テハ、御賛成デアッタノデアル、御賛成デアルノミナラ
ス、此吾々ノ手ニ配付セラレタル此草案ト云フモノハ禱君
ガ御作リニナッタ、禱君ノ草案ノ中ニハ明ニ二百五十五條
乃至二百五十七條ノ削除意見ガ述ベラレテ居ルノデアリ
マス、而モ是ハ數日前ノ事デアリマス、二年モ三年モ以前ノ
事ヲ引張リ出シテ彼此レ私ハ議論ヲスルノデハアリマセヌ、
數日前ニ於テ禱君自ラ筆ヲ執ッテ二百五十五條、二百五
十六條、二百五十七條ノ規定ヲ削除致シタイト云フ、是一
吾々モンレニ贊成ヲ致シタ、否、此二百五十五條以下ノ削
除ノ意見書ヲ御作リニナル前ニハ、政友會ト言ハズ、憲政
會ト言ハズ、國民黨ト言ハズ、在野法曹ノ議員ガ辯護士協
會ノ棲上ニ集シテ協議ヲ致シタコトノ結果、是ハ出來タ草案デ
アルノデアリマス、斯ノ如キ草案ヲ出シテ削除ノ意見ヲ述ベラ
レタノデアリマスケレドモガ、政友會ノ黨議ト稱スルモノニ
束縛ヲセラレタル結果、不本意ナガラ此壇上ニ立ッテ反對
ノ意見ヲ述べラレタルモノト私ハ考ヘル、其政黨內部ノ御
事情ハ私ハ洵、二之ヲ諒トスルノデアリマシテ、彼此レ私ハ禱
君ノ一身ニ向シテ議論ヲスル意味デハアリマセヌガ、禱君自
ラ之ヲ出シテ置イテ、而シテ正面カラ之ヲ御攻撃ニナルト
云フコトハ、私ハ禱君ノ意思那邊ニ在ルカト一云フコトヲ頗
ル疑問トスル者デアリマシテ、又吾々同僚ノ間ニ於テ、斯
ノ如キ事マデ此壇上ニ於テ言ハザルヲ得ザルノ必要ニ迫シタ
ト云フコトヲ、洵ニ遺憾トスル者デアリマス、私ハ全部此
點ニ對スルノ言明ハシナイ積リデアリマシタケレドモガ、
禱君ガ自ラ此壇上ニ立っテ表面カラ此規定ニ對シテ反對!
意見ヲ述ベルラヽニ至テテハ、私ハ職責ト此事ヲ述ブルノ
必要ニ迫ラレタノデアリマス、此政友會ノ諸君ノ名ニ依ッテ
提出セラレタル修正案ニ賛成スル理由ヲ一言述ベテ置キマ
ス、是ハ政友會ノ名ニ依ッテ提出セラレタル多數ノ修正ノ中
ノ大部分ハ、民間法曹多年ノ意見デ、過日辯護士協會ノ
樓上ニ集マリマシタ際、吾々モ參加シ、國民黨諸君モ參加
シテ、サウシテ大體纏ヲタ意見デアル、故ニ能フベクンバ各派
一致ノ名ヲ以テ提出セラルベキモノト考ヘマス、之ガ政治上
ノ道德デアルト考ヘマスガ、併シ私ハ斯ノ如キ手續ニ拘泥ヲ
シテ、賛成シ反對スル者デハアリマセヌ、免ニ角削除スルト
云フ事柄ハ賛成デアル、賛成ヲスルコトハ合理的デアルト存
ジマスルカラ、吾々ハ謹デ敬意ヲ表シテ、政友會ノ提案ニ贊
成致ジテ居ル理由デアリマス、併ナガラ賛成ヲスルニ至リシ
徑路ハ、斯ノ如キモノデアルト云フコトヲ御記憶ヲ願ヒタイ
ノデアリマス、ソレカラ二百六十四條ノ規定ニ付テ私ハ申
上ゲテ置キマス、二百六十四條ノ規定ハ刑法百八十三條
ノ罪ニ關スル問題デアリマス、其如何ナルモノデアルカト云フ
コトハ、禱君ノ雄辯ニ依ッテ此壇上ニ紹介ヲセラレテアリマ
スカラ私ハ申シマセヌ、第百八十三條ノ規定ハ何デアルカト
云フ事柄ハ、御歸宅ノ上デ刑法ノ條文ヲ御一瞥ヲ願ヘバ、
ソレデ宜シイノデアリマス、私ガ此規定ヲ削除致シタイト云
フコトヲ申上ゲル理由ハ、斯ノ如キ規定ヲ置キマスル結果、
告訴ノ制限ヲスルト云フコトニナル、告訴ノ制限ヲスルコト
デアルナラバ、其半面ニハ刑法第百八十三條ノ罪ハ、或ル
程度マデ國家ガ之ヲ放任スルノ結果ヲ生ズル、又離婚ノ訴
ヲ起スニ非ザレバ、此告訴ガ出來ヌト云フコトデアリマスレ
バ、濫訴ノ弊ヲ助長スルト云フ事ヲ根據トシデ、私ハ二百六
十四條ノ削除意見ヲ述ベタノデアリマス、之ニ對シテ禱君
ノ御演說、又政府當局ノ聲明スル所ニ依レバ、此事件ニ口
ヲ藉リテサウシテ此罪ヲ犯セシ者カラ莫大ノ金錢ヲ要求ス
ル者ガアル、甚シキニ至ッテハ何千圓ト云フ莫大ナ金ヲ取7
タ者モアルト云フヤウナ聲明ヲセラレテ居リマスガ、是ハ百
八十三條ノ如キ罪ヲ犯シタル者ガ當然招イタ所ノ罪惡デ
アリマシテ、此處マデ法律ハ保護スルノ必要ハ無イト考ヘマ
ス、被害者ガ過大ノ要求ヲ致シテ、關係者ニ迷感ヲ及ボシ
タト云フ場合ニ於キマシテ、其程度ヲ超エマスルナラバ、脅
迫罪デアルトカ、脅喝取罪デアルトカ云フ罪名ニ依ッテ、之ヲ
罰スルコトガ出來テ、其被害者ヲ保護スル途ハ法律ノ上ニ
備シテ居ルノデアリマスカラ、其以外ニ二百六十四條ノ如キ
規定ヲ設ケマシテ、刑法第八十三條ノ告訴ヲ制限スルコトハ
立法上其策ヲ得タルモノデハナイ
〔奧議長議長席ヲ退キ、粕谷副議長代リ著席〕
斯ク信ズルガ故ニ、此案ヲ提出致シタノデアリマス、次ニ三
百四十五條ニ付テ一言致シテ置キマスガ、是ハ只今禱君ノ
御演說ニ依リマシテ、反對ノアル所ハ諒解ヲ致シマシタ、此
三百四十五條ノ規定ハ、原則トシテハ法律ニ依ッテ訊問調
書ヲ作製シタル場合ニ非ザレバ、證據トスルコトガ出來ナイ
併ナガラ區裁判所ノ事件ニ付テハ、如何ナル書類デモ之ヲ
犯罪ノ證憑トスルコトカ出來ルト云フ立法ノ精神デアリマ
ス、此事柄ハ吾々ガ多年同法ノ警察官ノ作フタ聽取書、或
ハ檢事ノ作ッタ聽取書、斯ノ如キモノニ對シテ法律上證據
力ガ無イモノデアルト云フ議論ヲ致シテ居リマス、又斯ノ如
キ書類ノ證據力ヲ認メタル所カラシテ、從來常ニ弊害ガ起
ルノデアリマス、殊ニ區栽判所ノ事件ニ付テハ、如何ナル書
類デモ之ヲ證據トスルコトガ出來ルト云フ規定ハ、甚ダ不當
デアルト思ヒマスノハ、裁判所構成法ノ規定ニ依フテ、區裁判
所ハ刑事ノ事件ニ付テ如何ナル管轄權ヲ有スルカト云フコ
トヲ調ベテ見マスレバ、直ニ明瞭ヲスルノデアリマス、區栽判所
ガ刑事ノ事件ニ付テ管轄權ヲ特ッテ居リマスモノ、卽チ事物
ノ管轄ニ付テ申上グマスレバ、其一ツハ勾留又ハ過料デアリマ
ス、勾留又ハ過料ト云フヤウナ輕微ナ犯罪事件ニ付テハ、私
ハ或ル程度マデ斯ノ如キモノヽ證據力ヲ認メルト一云フコトハ、
賓際ノ手續ノ運用上ニ於テ已ムヲ得ヌカトモ考ヘル節モアリ
マスガ、其事物ノ管轄ノ第一一ニ依リマスト、有期懲役、有期
禁錮、斯ノ如キモノガ此管轄ニ屬スルヤウニナリマス、郎チ有
期ノ懲役、若クハ禁錮、又ハ罰金ト云フ規定ガアルノデアリ
マス、併ナガラ有期懲役ト云フモノハドウ云フ犯罪デアルカト
ニ五フト、一月以上十五年以下ノ刑デアリマス、有期禁錮
モ矢張一月以上十五年以下ノ刑期デアリマス而シテ刑法
ノ規定ニ依リマスト、此有期懲後、若クハ有期禁錮ヲ加重
スル場合ニハ、加ヘテ二十年ニスルコトガ出來ルト云フ規定
ニナッテ居リマス、此故ニ區裁判所ニ對シテ、餘リ澤山ナ例
トシテ申シマセヌケレドモガ、二十年位ノ裁判ヲスルコトガ出
來ルコトニナッテ居リマス、卽チ窃盗事件ノ大部分ハ、十年
十五年ノ刑ヲ言渡シテ居リマスガ、悉ク區裁判所ニ於テ裁
判シテ居リマス、此一年以上十五年以下ノ刑ヲ言渡ス、加
重スレバ二十年ニスルコトガ出來ルト云フ重大ナル事件ヲ
審理シテ居ル、其區裁判所ノ事件ガ法律ノ規定ニ依ッテ作
製シタル訊問調書以外ノ物ヲ、例外無ク使用スルコトガ出
來ルト云フコトハ、斯ノ如キ事件ニ對シテ洵ニ危險千萬デ
アルコトヲ私ガ憂フルガ故ニ、此區裁判所ノ事件ニ付テ無
期限ニ訊問調書ヲ用ヰルト云フコトヲ削除シタ方ガ宜シイ
ト云フコトヲ申スノデアリマス、之ニ對シテ禱君ノ反對ノ御
議論ノ意味ハ、若シ削除意見ニ從ヘバ矛盾ヲ生ズル、卽チ
地方裁判所ノ事件ニ付テ、原則トシテ豫審訊問調書ヲ證
據トシテ採用致スノデアル、所謂問接審理ヲヤル、然ルニ區
栽判所ノ事件ニ於テ、三百四十五條第一項ノ如キ制限ヲ
設クズシテ、自由自在ニ此訳問調書ヲ使用スルコトガ出來
ルコトガ出來ルト云フ原則ニスルト、此規定ヲ削除スルト云
フコトニナレバ、區栽判所ノ事件ニ付テハ悉ク直接審理ヲ
ヤラナケレバナラヌコトニナッテ、關係者ガ非常ニ迷惑スルノ
デアル、裁判所モ非常ニ迷惑スルノデアルト云フ御話デアリ
マスガ、併ナガラ先刻申上ゲマシタヤウニ、一月以上十五年
以下ノ裁判ヲスルコトガアルト云フコトニ考ヲ及ボシマシタ
ナラバ、斯ノ如キ少シノ不便不利ノ爲ニ重刑ヲ言渡サレル、
犯人ノ人權ヲ無視スルト云フコトハ、甚ダ其當ヲ得ナイト
思フノデアリマスノミナラズ、三百四十八條ノ規定ヲ御一
瞥ヲ願ヒタイノデアリマス、三百四十八條ニハ「區栽判所ニ
於テ被告人自白シタルトキハ訴訟關係人異議ナキトキニ
限リ他ノ證據ヲ取調へサルコトヲ得」ト云フコトガアリマス、
是ハ現行法ト同ジデアリマスハ卽チ多クノ場合ニ於テ區栽
判所ノ事件デ被告ガ自白シテ居ルト云フ場合ニハ、簡單ナ
ル證據取調ノ方法ハアルノデアリマス、苟モ被告人ガ一箇
月以上十五年以下ノ刑ヲ受ケルト云フ場合二、其事件ニ
對シテ被告人ガ否認シア、其犯罪事實ノ成立ヲ爭フト云フ
場合ニハ、是ハ區裁判所デアラウカ、地方裁判所デアラウガ
一般ノ法律ノ規定ニ從っテ、法律ノ保障ノアル訊問調書ニ
アラザルモノハ之ヲ使用セズト云フコトニスル方ガ、私ハ人
權擁護ノ上カラ相當デアルト思ヒマスカラ、此案ヲ提出致
シタノデアリマス、次ニ三百六十三條ニ付テ一言ヲ致シテ
置キマス、此三百六十三條モ禱君カラ色〓御議論ガゴザイ
マシタガ、禱君ガ吾々ニ最初廻サレマシタ意見書ニ依レバ、矢
張三百六十三條ハ削除ト云フコトニナッテ居ル、ンレヲドウ
云ア御都合デ斯ク御改正ニナッタカ存ジマセヌガ、私ハ禱君
ノ御議論ニ依ッテ吾々ノ修正意見ニ反對ヲサレルト云フコ
トハ、洵ニ遺憾ニ思ヒマス、三百六十三條ノ規定ハ如何ナ
ル意味デアルカト申シマスレバ「區裁判所ニ於テ懲役若ハ
禁錮一年以下ノ刑ノ言渡又ハ刑フ免除ノ言渡ヲ爲スニハ
罪ト爲ルヘキ事實、證據及法令ノ適用ヲ元スヲ以テ足ル」
斯ノ如キ規定デアリマシテ、此三百六十三條ハ三百六十
二條ノ規定ノ例外ヲ規定シタモノデアリマス、三百六十二
條ハ「有罪ノ言渡ヲ爲スニハ罪トナルヘキ事實及證據ニ依
リ之ヲ認メタル理由ヲ說明シ法令ノ適用ヲ示スヘシ」ト云
フ規定デアリマス、此規定ノ例外ヲ設ケマシテ、區裁判所ノ
事件ニ付テハ單ニ犯罪ノ事實ヲ認メ、其犯罪事實ヲ認メタ
ル證據ハ、證據ノ項目ヲ示スヲ以テ十分ナリトズルト云フ
立法ノ精神デアリマス、卽チ證人何某ノ供述、鑑定人何某
ノ鑑定ニ依シテ十分デアルト云フ判決ノ形式デ十分デアル
ト云フノデアリマス、併ナガラ先刻中シマシタ如ク、區裁判
所ノ刑事ノ管轄ト云フモノハ、洵ニ重大ナル事物ヲ包含致
シテ居ルノデアリマシテ、區裁判所ノ事件ニ限ヲテノ如キ
簡易ナル證據方法ヲ認ムルト云フ事柄ハ、栽判ガ專横ニ流
ルヽノ弊ガアルト云フ事ヲ否ムコトハ出來ナイト考ヘマス、三
百六十二條ノ規定ニ於テ、有罪ノ栽判ヲ爲ス場合ニハ、證
據ニ依ッテ之ヲ認メタル理由ヲ示セト云フコトヲ規定シタ理
由ハ、犯罪事實ノ認定ヲ過重ナラシムル爲ニ、何人ガ判決書
ヲ見テモ、成程是ダケノ證據ガアレバ此事實ヲ認定スルコト
ハ已ムヲ得ナイト云フ、萬人ノ見テ以テ異存ノ無イト云フ
判決ヲ作ラシムルガ爲ニ、三百六十二條ノ規定ヲ設ケタノ
デアリマス、然ラバ此原則ハ區栽判所ノ事件デアルカラト云
ウテ、之ニ例外ヲ認ムベキ理由ガナイノデアリマス、强テ反對
ノ埋由ヲ求メマスレバ、區裁判所ノ事件ハ輕微デアル、區栽
判所ノ事件ハ數ガ多イ、栽判官ノ能率ヲ發揮スル爲メ、成
ベク輕易ニシタ方ガ宜シイト云フ便宜主義ノ理窟ヨリ外ニ
何等取ルベキ理由ハナイノデアリマス、併ナガラ區裁判所ノ
事件ニ付テ私ハ斯ノ如キ簡易ナ方法ヲ取ルト云フ事柄ハ、
人權ノ擁護ヲ主義トシ、人權ノ擁護ヲ目的ト致シテ居ル所
ノ立法デアルト云フ本案ノ規定ノ中ニ、斯ノ如キ例外ノ規
定ヲ設ケルト云フ事ハ全ク理由ノ矛盾デアリマシテ、政府當
局ノ意見ノ在ル所ヲ、吾々ハ諒解スル事ニ非常ニ困難ヲ感ジ
マス、斯ノ如キ次第デアリマスカラシテ、吾々ハ最初禱君ガ提
案ヲセラレタルガ如ク卽チ、禧君ガ吾々ニ贊成ヲ求メラレタル
如ク、卽チ禱君ノ意見ニ同意ヲ致シテ、私ハ三百六十二條
ハ削除ノ意見ヲ提出スル者デアリマスカラシテ、少クトモ私
ハ此點ニ於テ諸君ノ御賛成ヲ得ルコトガ出來ルト考ヘマス、
否、在野法曹ノ中デ、政友會ニ席ヲ持ッテ居ラルヽ諸君デモ
此禱君ノ提案ニ御異存ガナカッタ御方ハ、黨議カ何トアラウ
トモ、私ノ意見ニ御賛成下サルコトガ出來ルト信ズルノデア
リマス、斯ノ如キ理由ニ依ッテ、此三百六十三條ノ規定ヲ削
除スル意見ヲ出スノデアリマス、四百十四條ノ規定ニ付テ
一言ヲ致シテ置キマス(「簡單」ト呼フ者アリ)四百十五條ニ
不當ニ執行猶豫ヲ與ヘザル理由ヲ上告ノ理由ニシタイト
云フ希望ハ、只今禱君カラモ御話ノ如ク、政府當局ノ意見
ハ私共ノ趣旨ニ反對ヲスルノデハナイ、法律ノ明文ノ解釋
上、斯ノ如キモノハ當然這入ルト主張スルノデアリマスガ、
併ナガラ刑ノ量定甚シク不當ナリト云フ文字ノ解釋自體
カラ言ヘバ、執行猶豫ヲ與ヘザル場合ト云フノハ、之ニ包含
スルヤ否ヤト云フ事ハ、非常ナル問題デアルト考ヘマス、否、吾
吾ノ考フル所ニ依レバ、寧口刑ノ量定ト云フ中ニハ、執行猶
豫ヲ與フベキモノカ與フベカラザルモノカト云フ意味ヲ包含
シナイト解釋スルノガ相當デアラウト思フ、刑ノ量定ガ甚シク
不當デアルト云フノハ、一年ノ刑テアルベキモノヲ五年ニ致
シテ居ルトカ、三箇月ノ刑デアルベキモノヲ、一年ニ致シテ居
ルトカ云フヤウナ場合ヲ私ハ稱スルノデアルト考ヘマス、此
量定シタル刑ニ執行猶豫ト云フ條件ヲ附スルガ善イカ惡イ
カト云フ規定ハ、刑ノ量定問題デハナイト私ハ考ヘルノデア
リマス、此故ニ政府當局ノ聲明スル所ガ、果シテ四百十四
條ノ中ニ包含シテ居ルト云フ事デアリマスレバ、何ヲ苦シンデ
本員ノ修正ノ意見ニ反對ヲスルノデアリマスカ、其反對ノ
根據ヲ見ルニ苦ムノデアリマス、少クトモ斯ノ如キ疑ノアル
文字ヲ四百十四條ニ存スルト云フ事柄ハ、立法ノ技術ノ上
カラ觀マシテモ、甚ダ拙劣ヲ極メタモノト考へマスカラ、矢張
此場合不當ノ執行猶豫ヲ與ヘザル場合ヲ加へテ、サウシテ
上告ノ理由ニスルト云フコトガ宜カラウト思ヒマス次ニ四
百二十五條デアリマス、此四百二十五條ハ上告事件ノ公
判期日ノ十五日前ニ上告趣意書ヲ提出スルコトヲ要スル
規定デアリマス、此規定ハ被告人ニ取ッテハ甚ダ不利ナル規
定デアルト云フ事柄ハ、在野法曹一人ノ異存ノナイ所デア
リマス、卽チ法律ノ知識ニ乏シイ所ノ地方ノ被告人、裁判
法廷ノ手續ニ通曉セザル被告人ガ、此十五日以前ニ出ス
ベキ規定ヲ知ラザルガ爲ニ、上告趣意書ト云フモノハ公判
期日ノ當日迄ニ出セバソレデ宜シイモノデアルト考ヘテ、此
十五日ノ期間ヲ經過シタル爲ニ、上告ノ權利ヲ失ヒ、上告
棄却ノ運命ニ陷ッタモノガ屢、アルノデアル、斯ノ如キ規定ハ
人權擁護ノ上ニ於テ、卽チ上告制度ヲ認メタル精神ニ照シ
マシテ、全然之ヲ削除シテ公判當日マデニ上告趣意書ヲ出
シテ、サウシテ自由ニ上告ノ辯論ガ出來ルト云フ風ニシタ方
ガ宜シイト信ジマスルガ故ニ、此削除意見ヲ出スノデアリマ
シテ、是ハ恐ラク政友會ノ諸君ト雖モ、在野法曹トシテ刑
事ノ事案ニ經驗ヲ持ッテ居ラレル諸君ハ、悉ク之ニ御賛成
ニ相成ルペキモノデアルト信ズルノデアリマス、以上吾々ノ修
正案ヲ出シタ理由ヲ說明致シテ置キマスルカラシテ、之ニ御
賛成ヲ仰ギタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=14
-
015・岩崎勲
○岩崎動君 討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=15
-
016・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ討論終結ノ動議ニ成
規ノ賛成ガアリマス、仍テ採決ヲ對シマス、討論終結ノ動議
ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ願ヒマス
〔賛成者起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=16
-
017・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 多數ト認メマス、是デ討論ハ終
結サレマシタ、採決ヲ致シマス、先ヅ少數意見ニ付テ決ヲ採
リマス、少數意見ニ賛成ノ諸君ハ起立
〔賛成者起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=17
-
018・清瀬一郎
○清瀨一郞君 議長、議事進行ニ付テ意見ガアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=18
-
019・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 最早採決致シマシター--少數デ
アリマス、少數意見ハ否決サレマシタ、次ニ委員長ノ報告ニ
付テ採決ヲ致シマス、委員長ノ報告ニ賛成ノ諸君ハ起立
〔賛成者起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=19
-
020・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 多數デアリマス、委員長報告ノ
通リ可決致シマシタ、第二讀會ハ終了致シマシタ、本案ノ
第三讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマス、第三讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=20
-
021・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=21
-
022・岩崎勲
○岩崎動君 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、第二讀會可
決ノ通リ、卽チ委員會ニ於テ修正議決ノ通リ可決確定ア
ランコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=22
-
023・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト
認メマス、仍テ直ニ第三讀會ヲ開キ、本案全部ヲ議題ニ供
シマス
刑事訴訟法案第三讀會
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=23
-
024・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、仍テ本
案第二讀會議決ノ通リ可決確定サレマシタ(拍手)次ハE
程第二、民事訴訟法中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ
開キマス
第二民事訴訟法中改正法律案(大道寺
慶男君提出)第一讀會ノ續
報告書
一民事訴訟法中改正法律案(大道寺慶男君提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
段及報〓候也
大正十一年三月二日
民事訴訟法中改正法律案委員長
高見之通
衆議院議長奧繁三郎殿
(別紙)(-ハ委員會ノ修正)
民事訴訟法中左ノ通改正ス
第二百七十七條第一項ヲ左ノ如ク改ム
當事者ハ口頭辯論期日前ニ於テモ書面ヲ以テ證據
調ノ申立及ヒ證據決定變更ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ栽判所ハ相手方ニ對シ七日ノ期
間内ニ意見アラハ申立ツヘキコトヲ催告シ其期間滿
了後證據決定ヲ爲シタカトキハ之ヲ當事者ニ送達シ
口頭辯論期日ニ於テ其證據調ヲ爲スコトヲ得
第三百十五條第二項ヲ左ノ如ク改ム
當事者ハ裁判長ノ許可ヲ受ケ證人ニ問ヲ發スルコト
ヲ得発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=24
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025・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 委員長ノ報告ヲ求メマス、髙見
之通君
〔高見之通君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=25
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026・高見之通
○高見之通君 本案ハ此證據調ノ中立ヲ爲スニ付キマシ
テ、從來ハ必ズ口頭辯論ノ期日ニ於テ、證據調ノ申立ヲス
ル外ニ途ガ無イノデアリマス、證據調ノ事ハ民事訴訟ノ中
ノ最モ重大ナル事デアリマスルガ、口頭辯論ノ期日ガ延期
スル度每ニ、其證據調ノ申立ノ期日ガ延ビテ非常ニ不便ヲ
感ズル、ソレ故ニ此二百七十七條ヲ改正〕シマシテ、口頭
辯論ノ期日前デモ證據調ノ申立ヲ爲シタナラバ之ヲ受取ン
テ、相手方ニ一週間ノ期日ヲ以テ異議アルヤ否ヤヲ質シ、直
ニ此證據調ノ決定ヲスルコトガ出來ルト云フ特例ヲ開クノデ
アリマシテ、今日ノ民事訴訟ノ免角ニ遲延スルノヲ防グコト
ノ上ニ於テ、至極適當ナル改正案ナリトシテ、特別委員會
ハ一致シテ可決シタ次第デアリマス、尙ホ大道寺君提出ノ
同ジク第三百十五條ノ改正ガアリマスルガ、是ハ政府方ニ
於テハ賛否相半バシテ居リマスルカラ、寧ロ此條文ヲ削除
シテ、サウシテ政府モ委員會モ一致シタル此良キ法案ヲ貴
族院ニ送シテ一刻モ速ニ法律ニナルト云フコトヲ希望シテ、
斯樣ニ取計ッタ次第デゴザイマスルカラ、政府ハ此意味ヲ體
シテ、貴族院ニ於テ十分ニ努力アランコトヲ希望スル、以上
ノ理由ニ依リマシテ、特別委員會ハ滿場一致ヲ以テ決定
致シマシタ故ニ、本會議ニ於カレマシテモ、ドウカ御賛成アラ
ンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=26
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027・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異
議ノリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=27
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028・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマス、仍テ第
二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=28
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029・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會
ヲ省略シ、委員長報告通リ卽チ委員會ノ修正意見ニ可決
確定セラレムコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=29
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030・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 鈴木君ノ動議ニハ御異議ナイ
ト認メマス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題
ニ供シマス
民事訴訟法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=30
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031・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 別ニ御異議アリマセヌカラ、第
三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ可決確定致シマシタ
(拍手)日程第三、湖南鐵道建設ニ關スル建議案ヲ議題ト
致シマス
第三湖南鐵道建設ニ關スル建議案(八
田宗吉君外四名提出)
湖南鐵道建設ニ關ヌル建議案
湖南鐵道建設ニ關スル建議
政府ハ速ニ磐越西線廣田驛ヲ起點トシテ猪苗代湖ノ南
岸福良ヲ經東北本線白河驛ニ至ル間ノ鐵道ヲ建設セ
ラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=31
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032・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 八田宗吉君
〔八田宗吉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=32
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033・八田宗吉
○八田宗吉君 本鐵道ハ東北本線白河驛ヨリ分岐シマ
シテ、猪苗代湖ノ南岸ヲ過ギ、磐越線廣田驛ニ至ッテ、會津
若松驛ニ連絡フル鐵道デアリマスル、此沿線ハ古來會津方
面ヨリ江戶ニ通ジマスル所ノ所謂國道デアリマシテ、參勤
交代ノ通路トシテ會津侯、新發田侯、村松侯、各藩ノ諸侯
ノ往來頻繁ナリシ處デアリマシテ、最モ數百年來由緒ノア
ル地方デアリマスル、隨テ此沿線ノ森林、鑛物、物資ノ農富
ナルハ申スマデモナク、猪苗代湖卽チ海拔一千七百尺ノ高
原地帶ニ橫ッテ居ル所ノ周圍十六里ノ大湖水ヲ一望ノ裡
ニ收メ得ル所ノ風光明媚ノ絕勝地デゴサイマス、此交通機
關ガ此處ニ完備シテ居リマシタナラバ、世界的公園トナスベ
キ價値ハ十分アルト存ズル次第デアリマス、故ヲ以チマシテ
故有栖川宮威仁親王殿下ハ早ク此處ニ別莊地ヲ相定セ
ラレマシテ、現ニ對岸ノ翁島ニハ高松宮殿下ノ御用邸ガ決
定セラレテ居リマスル地方デゴザイマスル、而シテ又輸送ノ
上カラ申シマシテモ、傾斜ガ頗ル緩傾斜デアリマスルカラ、非
常ニ輸送力ヲ增進致シテ參リマスシ、又會津方面ヨリ致シ
マシテ、東京市ニ達シマスルニハ現在迂廻シテ居ル所ノ狀
態ヨリ、全ク此三角形ノ一邊ヲ參ジマスルコトニナッテ參リ
マスルデ、二十二哩許リ短縮ヲ來シマスル、距離ニ於テ二十
二哩輪送力ニ於テ增大スルト云フ狀況デアルノデアリマス
故ヲ以チマシテ、若シ此處ニ此交通機關ノ完備ヲ得マシタ
ナラバ、地方產業ノ上カラ申シマシテモ、又衞生上カラシテ、
避暑地トシテ好適當デアリマス上ヨリ考ヘマス地方殷賑ノ
上ヨリ實ニ必要ナル線路デアルト云フコトヲ本員ハ信ズル
者デアリマス、茲ニ地方民熱誠希望ヲ代表致シマシテ、此
鐵道ノ速ニ建設セラレンコトヲ要望スル次第デアリマス、何
卒御賛成ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=33
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034・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 本案ハ植場平君外一名提出、片町長尾
間電力鐵道延長ニ關スル建議案外四件ノ委員ニ、併セテ
付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=34
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035・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第四、食料品配
給設備ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、山本条太郞君
第四食料品配給設備ニ關スル建議案
(山本条太郞君外三名提出)
食糧品配給設備ニ關スル建議案
食糧品配給設備ニ關スル建議
國民ノ生活改善竝衣〓住費ノ輕滅ハ我カ國焦眉ノ急
務ナリ此等ノ目的ヲ達成スルカ爲ニハ國家的施設ヲ必
要トスルモノ多多アルヘシト雖就中最緊急ニシテ且實行
容易ナルハ冷藏庫冷藏船冷藏車等ノ如キ食糧品配給
ノ設備ヲ助成セシムルニ在リ政府ハ速ニ之ニ對スル適當
ノ施設ヲ講シ大正十一年度ヨリ之ヲ實施セラレムコトヲ
望ム
右建議ス
〔山本条太郎君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=35
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036・山本条太郎
○山本条太郞君 本建議案ハ目下我國ノ物價ノ中デ、最
モ高價ナル副食物ノ値段ヲ調節シマスル爲ニ、廣ク冷藏庫
ニ對シ政府ヲシテ補助ヲ與へ、其建設ヲ奬勵セントスルモノデ
アリマス、物價調節ノ事ハ貴族院及衆議院ニ於テモ屢〓議論
セラレタ問題デアリマシテ、私共モ其必要ヲ痛切ニ威ジテ居
リマス一人デアリマス、隨ヒマシテ此事ニ付テ聊カ〓究ヲ致
シマシノタデアリマスガ、究極スル所、根本策トシテハ產業政
策ニ依ッテ我國ノ生產能率ヲ增加シ、同時ニ國民ノ生活ノ
樣式ヲ根本ヨリ改善スルト云フ所ニ國歸結スルノデアリマス
ガ、併ナガラ是ハ極メテ重大ナル問題デ直ニ解決スベキ事
柄デハナイノデアリマス、隨テ此事ハ暫ク後日ノ問題ト致シ
マシテ、此處ニハ當面ノ急ニ處スル爲ニ、最モ必要ナルモノ
ヲ選ンデ提案致シマシタ次第デゴザイマス、御承知ノ通リ等
シク物價調節ト申シマスルガ、此物價ノ各項目ニ互シテ巨
細ニ調査ヲ致シマスルト、各〓事情ヲ異ニ致シテ居ルノデア
リマス、隨テ或ル品物ニ付テハ殆ド調節ヲシ能ハザル物モア
ルノデアリマス、又調節シ能フト致シマシテモ、甲乙ノ間ニ大
ナル懸隔ガアルノデアリマス、例ヘバ米ノ如キモノモ、御承知
ノ通リ昨今ハ既ニ三十圓前後ニ低下致シテ居ルノデアリマ
ス、此米ヲ更ニ政策ヲ以テ此以上低下セシムルコトハ、是ハ
農家經濟ノ上カラ餘程考物デアルノデアリマス、又生絲ニ
致シマシテモ、大部分海外ニ輸出サレテ居ル生絲ヲ、小部
分需要サレル内地ノ物價ヲ低下スル爲ニ、之ヲ低下セント
欲スルコトハ、是亦大ニ考慮ヲ要スル問題デアルノデアリマ
ス、其他日用品ニ致シマシテモ、例ヘバ砂糖ノ如キ、或ハ石
油ノ如キ、棉花ノ如キ、羊毛ノ如キ、是等ハ皆世界的共通
ノ商品デアリマシテ、隨テ世界ノ需要供給ノ大勢ニ依ッテ其
價ガ支配セラレルノデアリマスカラ、之ニ向フテ我國ガ己レダ
ケノ力ヲ以テ此物價ヲ左右スルコトハ、蓋シ絕對不可能ノ
事デアリマス、若シ强テ此調節ヲシヤウトシマスレバ、關稅
ニ於テ手加減ヲスル外調節ノ餘地ハ殆ド無イト見テ差支
ナイノデアリマス、左樣ニ此日用品ノ大體ノ商品ニ付テ、玆
ニ〓究ヲ致シテ見マスルト云フト、是等物價ノ調節セラルヽ
範圍ト云フモノハ、極テ縮小セラルヽノデアリマス、私共ノ取
調ベマシタ所デ見マスルト、此調節シ得ラルヽ範圍ハ究極ス
ル所、日用品ノ中デ内地デ製造セラレテ專ラ内地ニ需要セ
ラルヽ日用品及副食物ト云フ、此二點ニ當面ノ問題ハ歸
著スルヤウニ考ヘラルヽノデアリマス、日用品ノ物價ハ申ス
マデモナク、是ハ主トシテ勞銀ノ高下ニ關係スル問題デ、此
勞銀ノ値段ガ安タナラナケレバ日用品ノ物價ヲ下ゲルコ
トガ出來ヌト云フコトハ、是ハ諸君モ御認ニナヶテ居ル通リ
デアリマス、此物價ノ中デ最モ勞働者ノ需要品ノ中ノ重大
ナル米ノ値段ハ、先刻申上ゲマシタ如ク、旣ニ低落シテ此以
上之ヲ調節スル餘地ガ極メテ狹イトシテ見マスルト、是レ以
テ大ナル要求ハ副食物ノ調節ニ俟タナケレバナラヌト云フ
コトニ歸著スルノデアリマス、斯樣ニ論ジマスルト、只今ノ所
デ調節シ能フ、卽チ目的物トシテ方法ヲ講ズベキモノハ、殆
ド副食物ノ一點ニ歸著スルカノ如ク考ヘラルヽノデアリマ
ス、其他ノ先刻申上ゲマシタル輸入品ノ如キモノハ、世界的
ノ商品デ、若シモ日本ノ値段ガ特ニ騰貴シタ場合ニハ、世
界ノ各處カラ集中シテ、自然ノ調節ガ行ハレルノデアリマス、
現ニ昨年來日本ノ木材ノ値段ガ暴騰シタル爲ニ、嘗テハ輸
出國デアッタ日本ニ對シ、昨年來多數ノ外國カラノ輸入木材
ガアリマシテ、本年ノ如キハ其輸入額ガ殆ド四五千万圓ニ
ナッテ、輸出國デアッタ日本ハ轉ジテ木材輸入國ニナルト云
フヤウナ事實ガアリマス、是ガ卽チ世界的ニ自然ニ物價ヲ調
節スル次第ニナッテ居リマスカラ、只今行ヒ得ルト云フコト
ハ、要スルニ國內ノ事情ニ依ッテ支配セラルノ物、卽チ其中
デ特ニ副食物ニ向シテ調節ヲ加ヘル必要ガアリ、又餘地ガ
十分ニアルコトガ事實ニ在ルノデアリマス、現在ノ副食物ノ
値段ハ、大體ニ於テ他ノ物價ニ比シテ高イノデアリマスガ、其
中デ最モ高イ、高イノミナラズ、不合理的ニ高イノハ生物デア
リマス、生物ト申シマスト卽チ魚類、肉類、野菜等、共副食
物ノ中ノ大部分ヲ占メテ居ル所ノ生物ノ値段ガ最モ高イ
ノデアリマス、私ガ之ヲ不合理的ニ高イト申上ゲマスル譯ハ、
生產費ガ比較的甚ダ低廉デアルニ拘ラズ、消費者タル-需
要者タル吾々ガ、之ニ向ヲテ法外ナル値段ヲ支拂ッテ居ルト
云フコトハ、卽チ之ガ不合理ナル高値デアルト云ア譯ナノデア
リマス、卽チ支拂ニ於テハ二」錢內外ノ卵ガ、束京デハ七八
錢、卽チ三四倍ノ高サニ賣ラレテ居ル、或ハ二十錢内外ノ
勘察加ニ於ケル鮭ガ、二圓內外ニ販賣セラレテ居ル、靑島
ニ於ケル牛肉ガ一斤十五錢内外ノ物ガ、六七十錢ニ市中
ニ販賣セラレテ居ル、原價ニ對シテ三倍若クハ四倍ノ高値
ガ、生產者ニ需要者ガ支拂ッテ居ル間ニ懸隔ガアルト云フコ
トハ、甚ダ不合理千萬ノコトデアルト考ヘルノデアリマス、斯樣
ナ譯デアリマスカラ、副食物全體ガ高イノデアリマスガ、特ニ
此生物ハ右ノ狀況デアリマスカラ、先ヅ目前ノ調節ヲ試ミ
ルモノハ此生物ニ向ッテ加ヘナケレバナラヌ必要ガアルノデア
リマス、殊ニ常ニ値段ノ高イノミナラズ、此植段ノ高下ハ又著
シク亂調デアルノデアリマス、極ク手近ナ例ヲ申上ゲマスト、
此東京市ガ一年ニ需要致シマス魚類ハ約十五万噸アル、此
十五万噸ノ中七万五千噸ハ遠方カラ輸送セラレ、七万
五千頓ハ近海ノ漁船ニ依ッテ東京市中ニ運バレルノデアリマス、
此魚類ガ御承知通リ一朝大漁ノトキニハ、一貫目五圓內
外ノ例ヘパ魚ガアリマスガ、翌日之ガ不漁ノトキニハ直ニ十
圓乃至十五圓ト云フ倍若クハ三倍ニ騰貴スルト云フヤウ
ナコトハ普通ノ例ニナッテ居ル野菜ニ致シマシテモ、東京市
ノ野菜ノ一例ヲ申上ゲテモ、東京市ノ野菜ハ此附近四五
里ノ間ノ農地カラ毎日夜ニナルト手車ニ提灯ヲ付ケテ東京
市ニ輸入セラレテ居ル、是ガ江戶時代人口四十萬ノ時代
ニ於テノ野菜ノ供給方法ト今日ト何等差ガ無イノデアリマ
ス、斯樣ナ狀況デアリマシテ是モ一朝冬デアレバ大雪ガ降ル
トカ、若クハ夏デアレバ暴風雨ガ一朝アリマスト、野菜ノ供
給ガ殆下一時杜絕シテ、啻ニ値段ガ二倍三倍ニ騰貴スルノ
ミナラズ、或時ハ野菜ヲ全ク得ルコトガ出來ヌト云フコトハ、
吾々ガ屢、經驗シテ居ル所デアルノデアリマス、斯樣ナ譯デ
最モ甚ダシキ實例ハ御承知カハ存ジマセマガ、昨今臺灣カラ
輸出スル「パナナ」ノ如キ、之ガ殆下內地ノ各方ニ需要セラレ
テ、年額一億圓內外ノ需要ガアルノデアリマス、之ガ昨年中
東京ニ於テハ臺灣ニ於テ最モ安イトキハ百斤三圓、最モ高
イ時ハ三十六圓ニナッテ居リマス、一ノ商品ニシテ一年ノ間
ニ十二倍ノ高下ヲ示シテ居ルト云フヤウナ實例ガアルノヂ
アリマス、一定ノ收入ヲ得テ衣食スル所ノ吾々ガ、日常使フ
必要ナ食糧品ノ價額ガ一日ノ中ニ倍ニナリ、三倍ニナリ、
年フ中ニ十二倍ノ高下ヲスルト云フヤウナコトハ、是ハ吾々
ノ生活ヲ脅スモノデアリマス、ソコデ之ガ所謂因襲ソ久シキ
ニ馴レタ爲ニ、少シモ不思議ニ感ゼズ、此値段ヲ點々トシテ拂ッ
テ居ルノデアリマス、而シテ斯樣ニ他ノ商品ニ比較シテ値段
ノ高イコト、及此値段ノ斯ノ如ク亂調ニ高下シマスコトハ、
申スマデモナク是等ノ商品ノ性質ガ腐敗シ易ク、取扱ヒ難
イ爲メニ、此値段ガ高下シ、若ハ高イト云フコトガアルノデア
リマス、若シ是等ノ品物ヲ完全ニ輸送シ、完全ニ貯藏シ、且
ツ之ヲ配給スル完全ナル機關ガ出來マシタナラバ、此食糧
品ニ對シテ大ナル調節ヲ加フル餘地ガアルコトハ誠ニ明カデ
アルノデアリマス(拍手)之ガ建議案ノ大體ノ趣旨デアリマシ
テ、此設備ニ關シテ最モ必要ナルモノガ卽チ冷藏設備デアリ
マス、冷藏設備ノ事ハ既ニ大分問題ニナッテ居リマスノデ、御
耳ニモ這入ッテ居リマセウガ、列國ニ於ケル冷藏設備ハ先ヅ
食糧品關係カラ申シテ、我國ノ國情ト最モ似テ居リマス英吉
利デハ、陸上ニ七十万噸ノ冷藏庫アリ、海上ニ四十万噸以上
ノ冷藏船ヲ有シテ居ルノデアリマス、英吉利ガ是等冷藏船ニ
依テ輸入セラルヽ主要商品ハ牛肉デアリマス、之ガ英國マデ運
ブノニハ一箇月ヲ要スル、南米ノ諸國及濠洲カラ輸入セラレ
テ居ルノデアリマス、而シテ倫敦デ昨今賣ラレ居リマス牛肉
ノ値段ハ一斤三十五錢內外、一年ニ此牛肉ノ値段ガ平和
ノ年ニ高下シマシタコトガ一割二分以上ヲ出タ年ハ殆下無
イノデアリマス、日本デ先刻申上ゲマシタル「バナヘ」ノ例ガ
一年間ニ十二倍ノ高下ヲシテ居ルソニ對シテ、此腐〓スル
肉ガ一割二分ノ高下ヲ出チイト云フコトハ、全ク設備ノ如
何ニ關スルコトデアリマス(狛手)此倫敦ニ於ケル三十五錢
ノ牛肉ニ對シ、吾々ハ近年支那カラ牛肉ヲ輸八シテ居ルノデ
アリマスガ、僅ニ三日間ノ航海ニ依シテ支那カラ持ッテ來ラレル
此牛肉ガ、產地ニ於テハ僅ニ十五錢、之ガ東京市ニ於テ今日
デモ尙ホ五六十錢ノ値段ヲ拂フテ居ルト云フ、此一一ツノ對照
ヲ見マシタナラバ、此設備ノ〓陷ノ爲ニ吾々ノ生活ニ對シテ重
大ナル損害ヲ受ケテ居ルコトガハッキリ分ルヲデアリマス(拍手)
我國ノ國民ノ生活費ノ全體ト云フモノハ、正確ナル統計ニ
依シテ申上ゲルコトハ甚ダ困難デアリマスガ、大約五十億ト
計算セラレテ居リマス、卽チ米麥ニ於テ三十億、副食物ニ
於テ二十億、其二十億ノ中約半分ガ只今申上ゲタル生物
ノ食物ト見テ大差ナカラウト考ヘマス、若シ此冷藏設備及
販賣組織ノ改止ニ依リマシテ、吾々ノ信ズル所デハ少クト
モ三割乃至五割ノ節約ヲスルコト、、左樣ナ不當ノコトデ
ハナイト信ジテ居ルノデアリマスカラ、之ヲ假ニ三割ノ節約
ヲシ得ルト致シマシタナラバ、十億ニ對スル三割卽ヲ三億圓
ハ國民生活ノ節儉トナリ、同時ニ此三億圓ハ對外貿易ノ
一大戰鬪力トナッテ、吾々ノ經濟ノ上ニ大ナル力ヲ添ヘルノ
デアリマス、又前年歐洲ニ於テ列國ノ食糧品會議ガ開催セ
ラシタコトガアリマスガ、其結果ハ二ツノ點ニ歸著シタヤウデ
アリマス、一ハ國内ノ生產能力ヲ增加シ、一ハ冷藏庫ノ普
及ヲ圖ルト云フ、此二點ニ歸著シタヤウデアリマスガ、果シテ
其結果デアルカドウカハ分リマセヌガ、先刻申上ゲタ通リ英
吉利ノ如キハ既ニ宏大ナル設備ヲ有シ、又國ニ依テハ此建
設ニ對シテ大ニ奬勵皷吹ヲ致シテ居ルノデアリマス、現ニ加
奈陀政府ノ如キハ千九百年以來其建設費ノ三割ヲ國庫
ガ補助ヲ致シテ居リマス、又濠洲ノ如キ、是モ輸出貿易ニ
關係ガアリマスルケレドモ、冷藏庫全部官營トシテ今日デモ
行シテ、大ニ好成績ヲ納メツヽアルノデアリマス、私共ノ豫算
デ見マスルト、日本ノ重要ナル都市約五十箇所ニ冷藏庫ヲ
建設シマシテ、是ト市場ト連絡ヲ致シマスニハ、約二千五百
万圓ノ金ヲ要求スルノデアリマス、比二千五百万圓ヲ假ニ加
奈陀政府ノ例ニ做ウテ、建設費ノ三分ノ一ヲ補助致シマス
ルト七百五十万圓、七百五十万圓ノ一過建設費ノ補助ヲ
スルト云フ高ハ、私共ノ計算デハ陸軍省ノ糧食費ノ節約ノ
ミヲ以テシテモ、此七百五十万圓位ノ補助ヲ出スコトガ出
來ルダラウト考ヘルノデアリマス、尙ホ此問題ニ關連致シマシテ、
考慮スベキ事ガ一二アリマス、一ツハ我國ノ人口ガ御承知
ノ通リ、年々異數ノ增加ヲ致シテ居ルノデアリマスルガ、
面ニ顯ミテ此國民ノ健康狀態ヲ見マスルト、必シモ樂觀ヲ
許サヌノデアリマス、國民ノ健康ニ關シ營養物ノ供給ト云
フコトガ、最モ直接ナ原因ヲ存シテ居ルコトモ是モ論ヲ俟夕
ヌノデアリマス、是レ最近ノ兵營ニ入營ノ體格檢查、若クハ
學校ノ入學試驗ニ於ケル生徒ノ體格檢查ノ實績ナドニ見
マシテモ、我國ノ壯年、及兒童ノ健康ハ決シテ健全ナモノデ
ナイヤウニ見エルモノデアリマス、又勞働能率ノ點カラハ之ヲ
見マシテモ、八時間制ノコトデ先達モ亞米利加ノ最モ經驗
アル其途ノ人ト考ヲ練ッテ見マシタガ、今日ノ日本ノ勞働者
ノ食物デハ、到底八時間制ナドニ堪へ得ベキモノデナイト云
フコトヲ斷言シテ居ッタデアリマス、今一ツハ日本ト支那トノ
經濟關係ガ甚ダ重大ニナッテ參リマシテ、戰爭前以來、支那
ト日本ト生活ノ程度ニハ大ナル懸隔ヲ生ジマシテ、今日ノ
狀況デハ支那ノ生活費ト、我國ノ生活費トハ、約三ニ對ス
ル一ノ割合デ、此生活費ノ懸隔大ナルガ爲ニ、日本ノ工業
ハ近來漸次支那ニ移ッテ行ク傾向ヲ持ッテ居ルノデアリマス、
輸出品ノ如キモ、曾テハ重要輸出品トシテ居リマシタル種々
ナ品物ガ、今日ハ殆ド輸出ガ杜絕シテ居ルト云フヤウナ狀
況デアリマシテ、此勢ヲ以テ若シ進ミマスレバ、數年ナラズシ
テ日本ノ工藝品ノ支那ニ對スル輸出ハ、全ク其跡ヲ絕ッテ、
而シテ却テ遂ニ支那カラ工作品迄モ輸入シナケレバナラヌ
羽目ニ立ニ至ルカモ知レヌト見エルノデアリマス、例ヘバ我國
ノ重要生產品ノ生絲ノ如キハ、若シ人民ノ生活費ヲ根據
トシテ、此生產費ガ割出サレタナラバ、日本デ一千五百圓ニ
當ル生絲ハ、支那デ五百圓デ出來ルカラ、之ガ五百圓デ出
來テ、海外ニ發展シタ場合ニ於テハ、我國ノ產業ハ此順序
ヲ以テ根柢カラ破壞サレルコトニナルト云フコトハ、必シモ
吾々ノ悲觀ニ傾イテ居ル觀察デハナカラウト思ヒマス、デ此
左樣ナ狀況ガ進ミ、今日マデ日本ノ紡績業者ガ日本ノ紡績
業ノ生產過多ノ爲ニ、事業ヲ短縮シテ市價ヲ維持スルト云
フコトニナッテ居リマスガ、半面ニ於テハ有力ナル紡績會社
ハ、悉ク舉ゲテ支那ニ到ッテ新シク工場ヲ建設シテ居ルノデ
アリマス、今日デハ其資本金ノ總額ガ殆ド一億圓ニモ達シ
テ居ルト云フヤウナ狀況デアリマス、資本家ノ立場カラ見マ
スレバ、支那ニ行ッテ、日本デハ一割ノ利益ニシカナラヌモノ
ヲ、支那ニ轉ジテ一割五分ノ利益ヲ得ルト言ヘバ、或ハ採
算上當然ノ途カハ知レマセヌガ、併ナガラソレニ從事スル何
十万、何百万ノ失業者ノ起ッタ結果ヲ考ヘマスルト、此問題
ハ最モ重大ナル問題トシテ吾々ハ考慮セネバナラヌト考ヘル
而シテ是等ノ事績ガ畢意スル所ハ、此兩國ノ生活費ノ大ナル
懸隔ニ基イテ居ルト云フコトデアリマス、此兩國ノ生活費ノ
大ナル懸隔ノアリマス理由ハ、支那ガ古來米ノ輸出ヲ嚴禁
致シテ居リマス、之ガ種々ナ他ノ原因モアリマスカハ知リマセ
ヌガ、支那ガ米ノ輸出ヲ禁ジテ、世界ニ獨立ノ相場ヲ支那
デ維持シテ居ルト云フコトガ、支那ノ生活費ト日本ノ生活
費トノ間ニ大ナル懸隔ノアル理由ノ主ナルモノヽ一ツデアル
理想カラ申セバ、支那ト日本トノ間ニ、自由貿易、若クハ關
稅同盟ト云フヤウナコトガ出來テ、雙方ノ經濟ガ疏通シマスレ
バ、此困難ハ除キ得ラレルカモ知レヌガ、先ヅ只今ノ所デハ
之ニ對スル應急策トシテハ、支那ノ低廉ナル食糧ヲ日本ニ
輸入シ、彼ノ國ノ値段ヲ高メ、我國ノ食糧品ノ値段ヲ下ゲ
テ、彼我ノ縣隔ヲ成ルベク接近セシムルコトガ、產業政策ヲ
保ツ上ニ於テ、最モ重要ナル政策ノ一ツダト考ヘルノデアリ
マス、食糧問題ハ只今申上ゲル通リ、勿論國民生活ニ直接
ノ關係アル、又健康問題ニ對シテモ重要ナル關係ガアルノ
デアリマス、殊ニ只今申上ゲル日〓ノ經済關係ノ上カラ見
夕日本ノ產業保護ノ上ニ於ニモ、極テ重大ナル關係ガアリ
マスノデ、此案ハ一日モ早ク速ニ實現セラレンコトヲ希望致
シタイノデアリマス、建議案ノ大要ハ右ノ次第デアリマス(拍
手起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=36
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037・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 本案ハ議長ノ指名ヲ以テ特ニ十八名ノ
委員ニ付託セラレムコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=37
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038・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 鈴木君ノ動議ニ御異議ハナイ
ト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス、日程第五、國有林野
所在ノ府縣町村ニ對シ交付金下付ニ關スル建議案ヲ議
題ト致シマス-八田宗吉君
第五國有林野所在ノ府縣市町村ニ對シ
交付金下付ニ關スル建議案(八田
宗吉君外二名提出)
國有林野所在ノ府縣市町村ニ對シ交付金下付ニ關
スル建議案
國有林野所在ノ府縣市町村ニ對シ交付金下付ニ
關スル建議
近時地方公共團體ニ於テハ〓育、土木、勸業ヲ始メ地
方費支辨ノ新事業漸次增加シ現在ノ地方費財源ヲ以
テハ到底物價ノ暴騰ニ應シ時勢ノ進運ニ伴フ經費ヲ支
辨スルコト甚タ困難ナルノ狀態ニ在リ依テ政府ハ國有
林野所在ノ府縣市町村ニ對シ每年一定ノ金額ヲ國庫
ヨリ交付シ以テ地方財源ニ資セラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔八田宗吉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=38
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039・八田宗吉
○八田宗吉君 本建議案ハ去ル四十四議會ニ於キマシ
テ、本員外三名ヨリ地方稅財源擴張ニ關スル建議案ト致
シマシテ提案致シマシテ、三項目ヲ提案致シマシタル中、其
一トシテ修正可決セラレタル案デアリマス、デ政府ニ於テモ
當時此提案ニ對シテ略、こ同意ヲ表示セラレマシタノデアリ
マス、然ルニ未ダ此實行ニ至リマセヌコトハ、頗ル遺憾ニ堪
ヘザル次第デゴザイマス、デ地方ニ於キマシテ〓育ニ、勸業ニ、
土木ニ、斯樣ナル支辨ニ要シマスル費用ガ年々增シ來ッテ、
サウシテ物價ノ騰貴ニ伴ヒ、益〓支出ガ嵩ンデ來テ居ルニモ
拘ラズ、財源ガ枯渴シテ居ッテ、有ユル煩瑣極マル稅目ヲ捉
ヘテ賦課シツヽアル狀態ニ對シテハ、平素洵ニ自治當局者
ニ對シテ同情ニ堪ヘザル次第デゴザイマス、斯樣ナ時ニ當ッテ
吾々ノ最モ看過スルコトノ出來ナイモノハ、國有林野ニ對シ
テ何等賦課徴收シ得ザル狀態デアリマス、吾々ハ此財、源ニ
對シテ默過スルコトガ出來ナイノデアリマス、何故カト申シ
マスルノニ、既ニ民有地ニ對シマシテハ、國稅及附加稅ヲ課ス
ルコトニナッテ居リマスルガ、國有林ハ國ガ年々二千六七百
万圈ノ收入ヲ擧ゲツヽアルニモ拘ラズ、府縣及町村ハ之ニ
對シテ何等課稅權ヲ有サナイト云フ狀態ニナッテ居ルノデア
リマス、是ガ普遍的ニ國有林野ガ各縣、各地ニ洽ク公平ナ
狀態ニ配置サレテ居リマシタナラバ、是ハ又考一考ヲ要スル
カモ知レマセヌガ、或處ハ國有林野ガ其地方ノ大部分ヲ占
メテ居リ、或處ハ僅カシカナイト云フ處ガ澤山アルノデアリマ
ス、試ニ之ヲ申シテ見マスルト、全國ノ國有林野ノ面積ハ北
海道ヲ除キ、內地ニ於ケル面積ガ四百二十七万町アルノデ
アリマス、而モ其大部分ハドウ云フ事ニナッテ居ルカト云ヘバ
本員ノ選出地方ノ福島縣ノ如キハ五十万町步ヲ有シテ居
リマス、又束北各縣ハ何レモ四五十万町歩ノ面積ヲ有シテ
居ル次第デ、其縣ノ土地半バ以上ハ國有林デアリマシテ、殆
ド全國國有林ノ半バ以上ハ束北各縣ガ有シテ居ルト云フ
狀態デアリマス、然ルニ東京ノ如キハ僅ニ十五町歩、神奈
川縣ノ如キハ僅ニ二町步シカナイ、其他靜岡縣トカ愛知縣
トカ云フヤウナ處ハ、少シモ國有林野ノ面積ヲ有シテ居ラヌ
ノデアリマス、而モ御料林ヲ有スル地方ハドウナッテ居ルカト
云フト、近來帝室林野局ニ於テハ御料林ニ對シテ一町步ニ
付每年一圓ヅヽノ交付金ヲ交付シテ居ルヤウナコトニナッテ
居リマス、然ルニ全國ノ國有林野ノ面積四百二十七万町
步ニ對シテハ何等交付金ガナイ、御料林ガ五十万町デアッテ
御料林ノ地方ハ皆交付金ヲ得テ幸福ヲ享ケテ居ル、彼此レ
相比較シテ見マスルト國有林ヲ有スル地方ト、御料林ヲ
有スル地方トノ差ハ非常ナモノデアリマス、民有地ニ對シテ
ハ課稅シ得ルガ、國有地ニ對シテハ課稅サレナイト云フコト
ハ、是ハ地方ノ財源ヲ緩スル上ニ於テ看過ス能ハザル重大
ナル事ト考ヘマス、斯樣ニ考へ來ッタナラバ、當然吾々國有
林ヲ有スル方面カラ要求シテ、政府ニ此實行ヲ督促シナケ
レバナラヌト考ヘマス、免角斯樣ナル問題ガ多ク論究サレナ
イト云フ狀態ヲ吾々ハ甚ダ遺憾ト考ヘマス、政治ハ公平ナ
ラザルペカラスデス、然ルニ免角此農村方面ニ關スル問題ガ
閑却サレ勝デアリマス、農村カ多大ナル犧牲ヲ拂ッテ居ルニ
拘ラズ、免角權利上ニ於キマシテ眠ッテ居ルヤヤナ狀態ニア
リマスル爲カ、隨テ法律上ニ於テモ厚キ恩惠ニ浴スルコトノ
出來ナイト云フコトハ、吾々農村ヲ愛スル者ノ平素痛歎措
ク能ハザル所デアリマス(拍手)而シテ一方稅金負擔ノ狀
態ニ付テ、都市ト農村トヲ比較シ考ヘテ見マスルト、驚クベ
キ數字ヲ示シテ居ルノモアリマス、私共福島縣ノ縣農會及
帝國農會ニ於キマシテ調査シタ所ノ數字ヲ爰ニ御參考マ
デニ中述べマシテ、委シイ事ハ議長ノ許可ヲ得テ速記錄ニ
登載シテ御參考ニ供シタイト思ヒマス、福島縣ノ縣農會ノ
農工商ニ對スル負擔調査ヲ見マスルト、農ハ收益額ガ五千
八百八十三圓、商業ガ五千五百六十九圓、工業ガ五千
五百六十七圓ト云フヤウナ略、同ジ收益ニナッテ店リマスモ
ノヽ程度ニ付キ、是ガ如何ナル負擔ヲナシテ居ルカト調査シ
マシタルニ、農業者ガ國稅ニ於テ五百九圓、商業者ガ四百四
十六圓、工業者ガ二百八十二圓、縣稅ノ負擔額ガ農業者
ガ四百八圓、商業者ガ百六十圓、工業者ガ八十圓、市稅
ノ負擔額ガ農業者ガ千九百八十圓、商業者ガ二百二十九
圓、工業者ガ二百九圓、斯樣ニ相成ッテ居リマス、此百分比
例ヲ申シマスト、農家ノ負擔ト云アモノガ百デ、商業者ガ四
十五、工業者ガ三十一ト云フヤウナ數字ヲ示シテ居ルノデ
アリマス、斯樣ナ狀態ニハ農業者ハ非常ナ過重ナ負擔ヲ負
ヒツヽアル、都市ノ發展ハ年々驚クベキ發展ヲ爲シテ居ルニ
拘ラズ、農村ハ日々ニ衰退シツヽアル原因ハ、實ニ斯様ナル
不公平ナル事實ガ伏在シテ居ルト云フコトヲ、吾々看過シ
能ハザル所ノ大問題デアリマス(拍手)サウシテ尙ホ之ヲ兵
役ノ上カラ考ヘテ見マスルト、陸軍省ノ表示スル都市ト郡
トノ徵兵檢査ノ體格ヲ比較シタ所ノ、郡市別ノ比較一覽
表ヲ見マスルト、郡ナルモノガ徴兵ニ於テ如何ニ大ナル負擔
ヲシテ居ルカト云フコトヲ明ニ示シテ居リマス、郡ハ大正六
年ニ於テハ百分ノ中三十五·五六ト云フ甲種合格者ヲ出
シテ居ル、市ハ僅ニ二十七·一五、斯樣ナ數字ニナッテ居リマ
ス、是ハ例年殆ド斯ウ云フ數字ヲ示シテ居ルノデ、市街地ニ
比スレバ郡村農民ノ兵役ノ上ニ於ケル負擔ト云フモノハ非
常ニ過重ナモノデアルコトハ、此數字ニ依シテ明カナル事デア
リマスガ、是モ委シイ表ハ速記錄ニ登載シテ御參考ニ供スル
コトニ致シマス、斯樣ニ地方民ハ租稅ニ於テ重ク、兵役ノ業
務ニ於テ重キ負擔ヲ爲シテ居ルニ拘ラズ、免角權利ノ上ニ
要求セザル爲ニ、農民ガ閑却サレル狀況ニアルコトヲ吾々ハ
非常ニ遺憾ニ存ジマス(拍手)能ク普通選舉論者ノ高唱サ
レル議論ノ根據ハ、ドウカト申シマスレバ、選擧權ハ「公平ナ
ラザルベカラズト仰シヤル、ソレハ吾々御同樣ニ賛成デアル
所ガ斯樣ナ不公平極マル事柄ニ對シテ何等痛切ナル議論
ヲサレナイノハ、私共ノ甚ダ遺憾ニ堪ヘザル所デ「アリマス(拍
手)市街地ガ獨立シテ、三万ノ人口ニ付テ直グ一名ノ代議
士ヲ選出スル、郡部ハ租稅ノ上ニ於テ、又徵兵ノ上ニ於テ
斯樣ニ多大ノ犠牲ヲ拂っテ居ルニ拘ラズ、人口十三万人ニ
對シテ一名ノ代議士ヲ出ス、斯樣十不公平極マル點ニ對シ
テ普通選擧論者ガ論及セラレザルハ何タル事デアリマスカ(拍
手)免ニ角斯樣ナル所ヨリ私共ガ農民ヲシテ目覺メシメテ地
方民ノ權利ヲ要求スル聲ヲ熾ナラシメンガ爲ニ、斯ノ如キ
題目ヲ提供シテ、政府ニ之ヲ實現セシメンコトヲ切ニ望ム所
以デアリマス、先ヅ都市ト郡村トノ區別ヲ對照シテ、サウシ
テ此吾々地方ニ居ル者ガ農村民ヲ目覺メシメマシテ權利ノ
上ニ要求スル其聲ヲ大ニスベク、敢テ此題目ヲ揭ゲマシタ
次第デゴザイマス、何卒本案ニ御賛同アランコトヲ切望
付託致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=39
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040・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 本案ハ鵜澤總明君外二名提出、社寺現
境內地無償下付ニ關スル法律案外一件ノ委員ニ併セテ
セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=40
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041・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス、次ハ日程第六、大船渡
氣仙沼間鐵道速成ニ關スル建議案ヲ議題ニ供シマス-
志賀和多利君
第六大船渡氣仙沼間鐵道速成ニ關スル
建議案(志賀和多利君外二名提出)
大船渡氣仙沼間鐵道速成ニ關スル建議案
大船渡氣仙沼間鐵道速成ニ關スル建議
一ノ關、大船波間ノ鐵道ハ既ニ一ノ關方面ヨリ起工セ
ラレタリト雖其ノ速成ヲ期セムニハ更ニ大船渡氣仙沼間
ヲ起工スルヲ相當ト認ム政府ハ速ニ該地區ニ對シ工事
ニ著手セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=41
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042・志賀和多利
○志賀和多利君 本案ハ極テ案自體ニ於テ明瞭デアリ
マスカラ、說明ヲ省略致シマシテ委員會ニ付シテ、審議ヲ進
メラレンコトヲ希望致シマス』発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=42
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043・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 本案ハ植場平君外一名提出、片町長尾
間電力鐵道延長ニ關スル建議案外五件ノ委員ニ併セテ
付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=43
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044・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 鈴木君ノ動議ニハ御異議ナイ
ト認メマス、仍テ本案ハ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
七、氣仙沼前谷地間鐵道速成ニ關スル建議案ヲ議題ト致
シマス-高橋長七郞君
第七氣仙沼前谷地問鐵道速成ニ關スル
建議案(高橋長七郞君外三名提出)
氣仙沼前谷地間鐵道遠成ニ關スル建議案
氣仙沼前谷地間鐵道速成ニ關スル建議
政府ハ速ニ宮城縣氣仙沼ヨリ志津川ヲ經テ前谷地ニ
至ル鐵道ヲ建設セラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔高橋長七郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=44
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045・高橋長七郎
○高橋長七郞君 極テ簡單ニ議題ニ付テノ說明ヲ致シマ
ス、本案ハ是迄幾度カ本院ニ建議案トシテ提出セラレマシ
テ、其都度満堂ノ御賛成ヲ以テ採用セラレツヽアルノデアリ
マス、三陸沼岸鐵道、卽チ宮城ト巖手、靑森三縣ノ太平洋
沿岸ヲ縱貫シマス所ノ鐵道、卽ヲ三陸鐵道ノ中ニ在リマシ
テ最モ重要ナル部分ヲ占メテ居リマスル所ノ宮城ノ沿岸ニ鐵
道速設ヲ希望スル案デゴザイマス、勿論此線路ハ曩ニ政府
ヨリ提出ニナリマシタ鐵道敷設法案ノ別表ニ明記セラレテ
居リマスルシ、殊ニ鐵道ノ當局ヨリハ公式ニ此線路ノ速設
ガ聲明セラレテ居ルノデアリマス、此鐵道ガ。設設セラレマシ
タ曉ニ於テ、國家ノ受ケマスル所ノ有形無形ノ利益ニ付キ
マシテハ、是迄幾度カ三陸沿岸鐵道ノ提案者ヨリ說明ガ
盡サレテ居ルノデアリマスカラ、私ハ別ニ蛇足ヲ加ヘル必要
ハナカラウト思ヒマス、』此點ハ省略致シマス、何卒滿堂ノ御
賛成ヲ希望致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=45
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046・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 本案ハ植場平君外一名提出、片町長尾
閉電力鐵道延長ニ關スル建議案外六件ノ委員ニ併セテ
付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異識ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=46
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047・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 鈴木君ノ動議ニハ御異議ナイト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第八、高田川
井間及水澤世田米間鐵道建設ニ關スル建議案ヲ議題ト
致シマス-志加和多利君
第八高田川井間及水澤世田米間鐵道建
設ニ關スル建議案(志賀和多利君
外一名提出)
高田川井間及水澤世田米間鐵道建設ニ關スル建議
案
高田川井間及水澤世田米間鐵道建設ニ關スル建
議
一ノ關大船渡間ノ鐵道中高田ヨリ分岐シ遠野ヲ經テ
盛岡山田間ノ川井ニ達スル鐵道及其ノ中間世田米ヨ
リ東北本線水澤ニ達スル鐵道ハ急速其ノ建設ヲ爲スヘ
キ必要アルヲ認ム政府ハ其ノ計畫ヲ定メテ速ニ工事ニ著
手セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=47
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048・志賀和多利
○志賀和多利君 本案モ前申上ゲマシタト同樣ノ理由
書ニ極テ明瞭ニナッテ居リマスカラ、此際說明ヲ省略シテ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=48
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049・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 本案ハ植場平君外一名提出、片町長尾
間電力鐵道延長ニ關スル建議案ノ外七件ノ委員ニ併セテ
付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「異眠ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=49
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050・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト
認メマス、仍テ本案モ動議ノ如ク決シマシタ-日程第九、
縣社一條神社ヲ別格官幣社ニ昇格ニ關スル建議案ヲ議
題ト致シマス-坂本素〓哉君
第九縣社一條神社ヲ別格官幣社ニ昇格
ニ關スル建議案(坂本素魯哉君外
四名提出)
縣社一條神社ヲ別格官幣社ニ昇格ニ關スル建議案
縣社一條神社ヲ別格官幣社ニ昇格ニ關スル建議
高知縣幡多郡中村町鎭座縣社一條神社ハ畏クモ照憲
皇太后ノ御生家ニシテ一條公爵家ノ御祖先タル准三宮
攝政關白從一位太政大臣一條兼良公及其ノ夫人ヲ主
神トシ從一位關白左大臣一條〓房公正二位權大納言
土佐國司一條房家卿正二位權大納言左近衛大將土
佐國司一條房冬卿從三位右近衞中將兼阿波守土佐
國司一條房基卿從三位權中納言土佐國司一條兼定
卿從三位左中將土佐國司內政朝臣及土佐一條家歷
代ノ簾中竝連枝ヲ附祭シ之ニ藤原氏ノ大祖鎌足公ヲ合
祀セルモノナリ之ヲ別格官幣社ニ昇格セラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔坂本素魯哉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=50
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051・坂本素魯哉
○坂本素魯哉君 諸君、本員ハ高知縣幡多郡中村町鎭
座、懸社一條神社ヲ別格官幣社ニ昇格ニ關スル建議ニ付
キマシテ簡單ニ說明ヲ中上ゲマス、抑〓此一條神社ハ慶長
十二年一條家ノ舊臣竝舊恩ニ浴シタル中村町ノ市民ノ
請ヲ容レマシテ、山内侯ガ初テ高森山上ニ小祠ヲ建立セラ
レタルモノデアリマシテ、文久元年ニハ此社殿ヲ改築致シ、
郡ノ總鎮守ト爲シ、明治三十三年ニ縣社ニ昇格ヲセラレタ
ノデアリマス、其祭神ハ畏クモ昭憲皇太后ノ御生家デアル
一條公爵家ノ御先祖デアリマシテ、准三宮攝政關白從一
位太政大臣一條兼良公及其夫人ヲ主神トシ、從一位關
白左大臣一條〓房公及歷代ノ國司タル一條房家卿及房
冬卿、房基卿、兼定卿、內政卿竝一條家歷代ノ簾中竝連
枝ヲ附祭シ、尙ホ之ニ藤原氏ノ大祖タル所ノ大職官錄足
公ヲ合祀致シテアリマシテ、縣民ノ崇敬最モ深ク、既ニ大正
四年ニ於キマシテ崇敬者總代竝郡ノ各村長ガ連名ヲ致シ
マシテ、內務大臣ニ昇格ノ建議ヲ致シタコトガアッタノデア
リニシテ、一條兼良公ハ諸君ガ御永知ノ戰國叛亂ノ間ニ
在"マシテ、毅然トシテ其操守ヲ變スルコトナク輔弼ノ重任
ヲ盡サレタルコトハ前後五十餘箇手間ニ及ンデ居ルノデア
リマス、其間多クノ著述ヲ爲シ、神道ニ關スル意見ヲ發表ヲ
セラレマシテ、我國國體ノ根源タル所ノ敬神ヲ唱道ヲ致シ、
我ガ日本帝國ノ神國タル所以ヲ力說セラレタルノミナラズ、
國體ノ擁護ニ盡力ヲ致サレタル所ノ偉勳ト云フモノハ、國
民ノ永ク銘記スル所デアリマス、其嫡子〓房公ガ能ク此庭
訓ヲ遵守致シ、躬自ラ土地ノ莊園ニ立タレマシテ、大ニ仁
政ヲ布キ、子孫數世ノ基礎ヲ固メタルノミナラズ、其子房家
卿孫房冬卿等モ孰レモ父祖ノ意ヲ禮シマシテ、北ハ固防ノ
大内美隆ニ結ビ、西ハ豐後ノ大友宗鱗ニ結托シテ、其等ノ
諸豪族ヲシテ費用ヲ皇室ニ獻納ナサシメマシテ、サウシテ當
時之ヲ以テ將ニ廢レントスルノ國家ノ大禮ヲ執行シ得ルニ
至ッタト云フ所ノ、此一條家ノ苦心ト云フモノハ、實ニ鬼神
ヲ慟哭セシムルニ足ルモノガアルト存ジマス、私ガ申ス迄モナ
ク、我國今日ノ隆運ハ明治維新ノ大業ニ發源ヲ致シ、明治
維新ノ大業ハ固ヨリ我ガ皇室ノ天佑ヲ保有ヲ有シ給フニ
因ルトハ雖モ、抑、又幾百年間盡忠至誠ノ名臣ガアリマシ
テ、サウシテ國民ニ向ッテ大義名分ノ信念ヲ薰陶シタル力ニ
因ルコトヽ私ハ信ズルノデアリマス、卽チ一條家ノ此薰陶
感化ト云フモノハ、明治維新ノ際ニ於ケル所ノ土佐人ノ勤
王ノ〓節トナリマシテ、多クノ土佐人ガ勤王ノ爲ニ盡シ難
ニ殉ジマシテ、囘天ノ大業ニ參畫致シタコトハ、決シテ私ハ
偶然デナイト思フノデアリマス、彼ノ武市瑞山坂本龍馬、開
崎哲馬、大石彌太郎、那須信吾、〓岡道之助、岩崎彌太
郞、吉村寅次郞、中岡愼太郞、樋口直吉、安岡良亮、是等
ノ人々ハ皆一條家ノ舊封ニ因緣アル所ノ〓士地下浪人
若クハ里長タルコトニ鑑ミマシタナラバ、四百年前ニ一條家
歷代諸卿ノ薰陶感化ト云フモノヲ、最モ私ガ雄辯ニ語ッテ
居ルモノト思フノデアリマス、此一條家累代諸卿ノ如キハ
上皇室ノ爲ニハ全力ヲ傾注ヲサレテ、我國體ノ擁護者トナ
リマシテ、又下國民ニ向ヒマシテハ、善導啓發ヲサレテ、圓シー
私ハ功臣ノ模範ト謂ハナケレバナラヌト思フノデアリマス
故ニ本員ハ之ガ社格ヲ進メマシテ、別格官幣社ト爲シ、其
奉幣ヲ爲スト云フコトハ、國家ノ本ニ報ジ終ヲ愼ムニ於キ
アシテ當然ノ措置タルノミナラズ、特ニ今日我國思想ノ混
亂ニ鑑ミマシテ、政府ハ速ニ昇格致シマシテ、敬神ノ美風ヲ
涵養セラレンコトヲ望ムノデアリマス、滿場ノ諸君亦賛成ア
ランコトヲ偏ニ望ミマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=51
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052・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 本案ハ高草美代藏君提出、橿原神宮第
二期宮域擴張及建物修築ニ關スル建議案外二件ノ委員
ニ併セテ付託セランコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=52
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053・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト
認メマス、仍テ本案ハ動議ノ如ク決シマシタ、日程第十、墓
地及埋葬取締規則中改正ニ關スル建議案ヲ議題ト致シ
マス、松下禎二君
第十墓地及埋葬取締規則中改正ニ關ス
ル建議案(松下禎二君提出)
墓地及理葬取締規則中改正ニ關スル建議案
墓地及理葬取締規則中改正ニ關スル建議
墓地及理葬取締規則中第三條ノ規定ハ埋葬許可ノ方
針ヲ死後經過セル時間ニ取レリト雖屍徴ノ發現如何ニ
基クヘキヲ妥當トス故ニ現行法ノ時間制ヲ廢シテ屍徵
制ニ改メラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔松下禎二君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=53
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054・松下禎二
○松下禎二君 只今上程セラレマシタル建議ニ關シテ、提
出ノ理由ヲ簡單ニ述ベント欲シマスル、墓地及埋葬取締規
則中第三條ノ規定ハ、埋葬許可ノ方針ヲ死後經過シタル
時間ニ依シテ居リマスルカラシテ、色と弊害ガ起ルノデアリマ
スル、隨テ屍徵ノ發生、或ハ屍徴ノ發現如何ニ依ルノヲ妥
當ト思フノデアリマス、屍徵制ヲ採用シタル場合ニハ、勿論
當然ノ結果トシテ檢屍官ヲ設ケナクテハナラヌ、而シテ檢屍
官ガ提出シマスル屍徴檢案書ニ依ッテ、醫師ガ死亡診斷書ヲ
認ムルトキハ、從來屢〓發生シタ所ノ色こノ障害、又弊害ヲ
防ギ、且ツ色とノ利益ガアル、屍徵ハ眞死ノ場合ニハ、死後
三十分乃至十四五時間ノ後ニ現レルノデアリマス、隨テ埋
葬ヲ速ニスルコトガ出來ル、又ハ埋葬ノ時間ガ早マル結果、
傳染病ニ傳染スル危險ノ度ヲ防グコトガ出來ル、且ツ遺族
ノ悲嘆ノ度ヲ減却セシメマスル、又屍徵ヲ採用シタル結果
トシマシテ、假死者ヲ誤ッテ葬ルガ如キコトハ決シテ無イノデ
アリマス、何トナレバ假死者ニ於テハ、徴ト云フモ屍ノハ現レ
ナイカラデアル、蓋シ假死ノ狀態ニ陷ル者ハ、其數ハ眞死ノ
者ニ比較シマスレバ少イノデアリマス、其他故意若クハ誤ッテ
犯ス所ノ罪ヲバ避ケ、且ツ或種ノ犯罪ハ檢屍官ノ手ニ依ッ
テ之ヲ發覺スルコトガ出來ル、斯クノ如ク色〓ノ利益點ガア
ルノデアリマスガ、此問題ハ極メテ小ナル問題ノ如ク思ハレ
ルケレドモ、人道問題ト密接ナル關係ヲ持ッテ居ル極メテ大
ナル問題デアルノデアリマス、決シテ輕々ニ看過スベキモノデ
ハナイト思フノデアリマス、歐米ノ文明諸國ニ於キマシテ
ハ、舊來ノ時間割ヲ廢シテ、皆此屍徵制ヲ採用シテ居ルノ
デアル、三大强國ニ列シテ居ル我國ニ於テ、依然トシテ時間
制ヲ採用シ、屍徵制ニ之ヲ改メ得ナイノハ、聊カ國辱ノ感
ガアルト思フノデアリマス、ソレデアリマスカラ政府當局
ニ於カレテハ、速ニ屍徵制ニ依ル規則、又ハ法律ヲ制定セ
ラレンコトヲ希望スルノデアリマス、御審議ノ上御協賛アラ
ンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=54
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055・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 本案ハ伊藤廣幾君提出植物病理〓究
所設置ニ關スル建議案ノ委員ニ併セテ付託セラレンコトヲ望
ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=55
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056・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 鈴木君ノ動議ニ御異議ナイト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第十一食糧
充實ノ奬勵ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、多木久米次
郞君
第十一食糧充實ノ奬勵ニ關スル建議案
(多木久米次郞君外一名提出)
食糧充實ノ奬勵ニ關スル建議案
食糧充實ノ獎勵ニ關スル建議
政府ハ米麥作ノ充實增收ニ付テ最緊切ナル奬勵方法
ヲ實行シ國民生活ノ安定ヲ圖ルト共ニ輸出入ノ不權衡
ヲ防キ正貨ノ維持ニ力メムコトヲ望ム
右建議ス
〔多木久米次郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=56
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057・多木久米次郎
○多木久米次郞君 本案ニ付テ簡單ニ御說明申上ゲマス、
本案ハ極メテ小サイ問題デアリマス、決シテ世界ヲ驚カスヤ
ウナ問題デアリマセヌ、啻ニ小サイノミナラズ、極メテ陳腐ナ
問題デアリマス、併ナガラ私ハ此問題ガ實行サレマスレバ、
食糧問題ノ全部、若クハ全部ト參リマセヌデモ、五割若クハ
七割ハ、之ニ依テ解決セラレルト存ジマス、御承知ノ通リニ
經世ノ事ハ賞ヲ得ルト得ヌトニ依リマシテ、賞罰宜シキヲ得ル
ト得ナイトニ依リマシテ、事ノ盛衰人心ノ嚮背ニモ大關係
ノアルコトデアリマス、然ルニ我國ハ種々雜多ノ御獎勵ノ方
法モゴザイマスケレドモ、直接的ニ實際的ニ賞ヲ人民ニ遣ルト
云フコトハ極メテ吝ナル國デアリマス、甚ダ人民ニ遣ルコトヲ
惜ム國デアル、サル代リニ功ガ無クテモ賞與ヲ與ヘルヤウナコ
トガアリマス、現ニ華族ノ如キハ皇室ノ御爲ニモナッタコトモ疑
ガアリ、國家ノ爲ニナッタヤウニ聞カナイ者デモ、生レナガラニシ
テ榮爵ヲ恭ウシ、又位階勳章ノ榮譽ヲ被ッテ居ル者モゴザイ
マス、然ルニ非常ナル功勞ガアッテモ、地位門閥ニ依リマシテ
賞ヲ與ヘルヤウナコトガアリマス、現ニ日〓日露ノ戰爭ノ時ニ
當リマシテ、下瀨火藥ノ如キハ空前ナル大發明デアッテ、是ハ
忠勇武烈ナ軍人ヲシテ、此國難ヲ排シ、大敵ヲ擊退致シマ
スニ大ナル效ガアッタト云フコトハ、申スマデモナイ次第デアリ
マシテ、此大發明ハ後方勤務ノ東〓若ハ黑木大將ニ優タタ
大發明ダト思フニ拘ラズ、此大勳功ニシテ如何ナル政府ハ賞
ヲ與ヘテ居リマセウ、何ノ爵位ニ列シタコトガアリマセウカ、御
承知ノ獨逸ガ世界ヲ引受ケテ戰爭ヲスルヤウナ富强ナ國ニ
ナッタト事フコトハ、彼等ガ賞罰宜シキヲ得タ爲デアッタト云
フコトハ皆樣御承知ノ通リデアリマス、現ニ「ツエペリン」ノ風
船ノ發明サレルヤ、一國ノ皇族ガ委員長トナリ、發明ノ資ヲ
全國ヨリ寄セテ巨大ナル資ヲ集メ、發明ノ資本ニ供シタル
ノミナラズ、後顧ノ憂ナラシメ、ソレノミナリマセズ、他日一天
萬乘ノ君トナルベキ所ノ皇太子ヲシテ、未ダ完全ニ試驗
ノ濟ナイ、最モ危險ナル風船ニ臨乘サシテ、以テ國民ノ發明
工夫文化ノ奬勵ヲサレタト云フコトハ、實ニ當時私ハ血湧
キ肉躍ルノ感ニ堪ヘマセヌダッタ、ソレノミナリマセズ御醫者
サンノ發明ト云ヒ、畫工ト云ヒ、或ハ鍛冶屋ノ親爺ガ死ンデ
モ、皇帝親ラ淚ヲ零シテ位階動章ヲ與ヘマスル樣ナ實例モ
アルヤウデ、此發明工夫ノ奬勵ニ依フテ獨逸ノ大ヲ成シタト
云フコトハ、彼ハ今日戰敗國トハ申シナガラ、彼レノ發達ノ
事蹟ニ徵シマシテ、我ノ大ニ採ッテ以テ學ブベキモノガ尠クナ
イト思フノデアリマス(拍手)殊ニ農事ノ如キハ誠ニ極メテ
利益ノ少イ勞ガ多クシテ報酬ノ無イモノデアリマス、然ル
色々政府ニモ御奬勵ノ補助金等ノ手段モアリマスケレモド
直接ノ奬勵ト云フモノガ無イト云フコトハ甚ダ遺憾デアリ
マス、御承知ノ通リ人間ノ心ト云フモノハ、マルデ水ノ樣ナ
モノデアッテ、之ニ風ガ當レバ大船巨艦モ覆スヤウナ力ヲ持ク
テ居ル、熱ヲ加ヘレバ幾万噸ノ力ヲ出シテ、如何ナル生產モ
增加スルコトガ出來ル、是ガ冷レバ或ハ鑛物トナリ、種々雜
多ノ變化ヲスル位ノモノデアル、然ルニ發明奬勵ガ無イ爲ニ、
發明奬勵ノ權衡ヲ得ヌ爲ニ、卽チ常ニ官吏ニ多ク或ハ軍
人十ドニ-畢竟日本ノ位階動章ナルモノハ國家ノ功勞
者ニ與ヘズシテ、軍人若クハ官吏ノ專有物ナルガ如キニ近
イ狀態デアル(拍手)一朝大和魂ヲ振ハントシテ振ハズ、國
力ヲ發展セントシテ發展シナイ原因デハナイカト思フノデアリ
マス、實業家ガ國富ノ爲ニ一生ヲ犧牲ニ賭シテ、粉骨碎骨
シマシテ非常ナル人ニ職業ヲ與ヘ、人ノ生計ヲ助ケ、國ノ缺
點ヲ補ウタ者ニ與フベキ動章位階ヲ與ヘナイト云フコトモ、
甚ダ例ノ尠カラヌ所デアリマス、ドウモ私ハ農事ノ改良ノ如
キモ、直接ニ賞與ヲ與へルト云フコトガ一番之ガ發達ノ㨗
徑ト存ジマス、殊ニ私ノ申ス所ノ本問題ハ、稻ヲ上手ニ作ッ
タ者、麥ヲ上手ニ作ッタ者ニ、僅カ一村デ二百圓ダケ金ヲ
遺リタイト云フノデ、稻ヤ麥ト云ヒマスト誠ニ何デモナイ樣
デアリマスケレドモ、御互ニ生命ヲ維グ所ノ生命ノ親ノ木デ
アリマス(「ヒヤ〓〓」)此稻ヤ麥ヲ作ルニ付キマシテ、私ハ多年
暇モ費セバ金モ費シテ奬勵致シマシテ、各府縣マデ色ニ御
願シテ段々立毛品評會ト云フモノヲヤッテ居リマシタ、皆ガ
競ウテヤルト云フコトハ非常ナルカデ一片ノ注意一片ノ努力
ト云フモノハ非常ノ結果ガアル、御承知ノ維新以來農事ノ試
驗ダケニデモ、少クモ一億万圓ノ金ハ確ニ使ッテ居ルト思フ、
而シテソレガドレ程ノ結果ガアッタカト云フコトヲ皆サンガ御
考ニナリマシテモ、多少稻ニ於テモ、麥ニ於テモ、或ハ蠶ニ於
テモ大ニ發展ノ成績ヲ認ムベキモノガアルニハ違ヒナイガ、
此立毛品評會ヲヤッテ現在大ナル成績ハマダ擧ッテ居ラヌト
思フ、御承知ノ今日我國ニ於キマシテ、米ハ少ケレバ五千万
石、多ケレバ六千万石ヲ穫テ居ルガ、六千万石ノ米ト云フ
ト非常ニ大キイ樣デアリマスケレドモ、三百五万町步ニ付テ、
僅ニ一反歩ニ對シテ二石ンコ〓〓ノモノデアル、又現ニ昨年ト
一昨年ト較ベマスレバ、此收穫ノ差ダケデモ八百万石違シテ
居ル譯デアリマスガ、之ヲ三十圓ニ致シマシテモ、二億四千万
圓四十圓ニシマスレバ三億二千万圓ト云フコトニナリマス、
千万石ノ米ハ寔ニ驚クベキ米デアリマスガ、之ヲ三百五万
町ニ割當レバ一反步三斗、一坪ニ於テ一合多イ少イト云
フコトデ、米ヲ五百万石多ク穫ッタ少ク穫ッタト云フ大結果
ニナリマス、況ヤ今日ノ貿易ノ狀態ヲ見マシテモ、段々輸出
入ノ均衡ヲ失シマシテ、既ニ一月、二月ダケノ輸入超過デモ、
一億八千万圓ニ達シテ居リマス、今年ハ幾億万圓輸入超
過ヲ見ルヤ知レヌヤウナ狀態デアリマス、然ルニ此米ヲ三百
万石五百万石外國カラ買ハナケレバナラヌト云フコトハ、何
タル事デアルカ、是ハ昨年ニ於キマシテ少シ政府ガ御注意
ニナッタナラバ、斯ル大キナ不足ハセナンダト思フ、然ルニモ拘
ラズ事此ニ出デズシテ、玆ニ五百万石ノ米ガ少イ、是非買
八ヲシナケレバナラヌト云フコトニ至ッタト云フコトハ、仝ク此
獎勵ノ徹底シナイ爲ト存ジマス、既往ノ實驗ニ依ッテ將來ヲ
考ヘマスレバ、今日ノ人口ガ三四十年ヲ待タス、一億万ニナ
ルト云フコトハ明デアル、既ニ今日ニ於キマシテモ、豐凶ニ依ッ
テハ甚シク不足ヲ告ゲテ居ル、右様デアリマスカラシテ、三四
十年ヲ待タズシテ、少クモ三四千萬石ノ米ガ不足スルト云
フコトハ明デアリマス、是ニ於テ政府モ大ニ見ラルヽ所ガアッ
テ、御承知ノ通リ、或ハ開墾助成デアルトカ、或ハ肥料ノ〓究
デアルトカ、其他種々ナ御獎勵モゴザイマスケレドモ、直接ニ御
賞與ノアルコトガ甚ダ少イ、御承知ノ通リ人ト云フモノハ威
情ノ動物デアリマシテ、一ツノ學校へ一万圓寄附シテモ、村
ノ者ハ御禮ヲ言ハナイガ、饅頭一ツデモ御土產ヲ持ッテ來ル
ト御禮ヲ言フヤウナモノデ、間接ノ賞與ガ澤山有,テモ、直接
ノ賞與ガ無ケレバイカヌノデアル、僅ニ一ツノ農會ニ二百圓宛
遣ルト云フノデ、僅ノヤウデアリマスケレドモ、全國ニ一万千
五百ノ町村ガ有ルトシマスレバ、二百三十万圓程ニナルト
思ヒマス、二百三十万圓ト云フト澤山ノヤウデアリマスケレ
ドモ、二百三十万圓遣ノテ何億万圓ノ利益ヲ增スト云フコ
トハ、既往ノ實驗ニ依ッテモ、如何ナル御辯明モ中シ得ルコ
トヽ信ジテ居ルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」)然ルニ時勢ノ狀態
ニ應ズル進取開發ノ國柄トシテハ、已ムヲ得ヌ次第モアリマ
スケレドモ、多クハ商業工業ニ厚クシテ、農事ニ薄イト云フ
ヤウナ傾ガアルコトハ寔ニ遺憾デアル、御承知ノ通リ近ク戰
爭中ニ於キマシテモ、マルデ濡手デ粟ヲ摑ムヤウナ造船航海
ガ金ガ儲ッテ仕方ガナイト云フヤウナ狀態ヲ、赤手デ幾千万
圓ヲ儲ケタト云フ事モ少クナイ時代デモ、矢張澤山ナ補
助ヲ御與ヘニナッタト云フコトハ、皆樣ノ御承知ノ次第デア
ル、ソレノミナラズ戰時中ニ船舶ガ危險ダト申ス爲ニ、政府
ガ保險ノ責ニ當ラレタ爲ニ、其船舶ノ保險料ダケモ、三千五百
万圓モ四千万圓モ、政府ガ御出シニナックヤウニ承知シテ居
リマス、ソレノミナラズ、露國ニ大キナ商賣人ガ七千万圓ノ
品物ヲ賣ラレテ、是ガ露國政變ニ依ッテ囘收ガ出來ナイト
云フ爲ニ、卽チ政府ノ公債トシテオヤクニナッテ居ル、是ハ
寔ニ政府ノ英斷デアッテ、私ハ美擧ト思ヒマス、併ナガラ如
何デアリマセウカ、其戰時中ニ儲カッテ仕樣ノナイモノガ、忽
チ戰後ノ恐慌ニ遭ウテ不景氣ニナリマシタ爲ニ、或ハ砂糖
モ救ハレ、鐵モ救ハレ、生絲モ恐慌狀況ニナッタ爲ニ、五千万
圓ノ低利資金モ貸セバ、三千万圓ノ損ガ行ケバ政府ガ補助
シテヤルト云フヤウナ救済モ受ケ、又銀行、株式會社ニ至リ
マスマデ非常ナル恩惠ヲ受ケタト云コトハ、政府ノ美〓トシ
テ、英斷トシ私ハ感謝シテ居ル、併ナガラ農業トノ權衡ヲ考
ヘテ見マスト、甚ダ不釣合ナ次第デアル、寔ニ釣合ガ取レヌ、
諸物價ガ常ニ高クナッテ米ガ十圓致シマスヤ、政府ハ外米
ヲ高ク買シテ來テ、廉ク御賣ニナル、是ハ食物ノ缺乏ノ爲デ
スカラ已ムヲ得マセヌガ、又貴族院ガ常ニ排農ノ思想ヲ持ッ
テ居ル爲ニ此氣兼モアル、御付合モアル、是モ已ムヲ得ヌガ、
其爲ニ米ヲ下ゲラレルト百姓ハ困ル、又定期市場ナルモノ
ハ、日本ノ米ノ價格ノ標準ヲ立テル、處ト、吾々ハ信ジテ居ル
ニ拘ラズ、食物ノ不足ノ爲ニ、經濟調節ノ爲ニ、外米ヲ受渡
ノ標準米トスル、或ハ朝鮮米モ臺灣米モ標準トスルト云フ
馬
ヤウナ爲ニ、見ヤウニ依ルト農家ハ、チット壓迫デモサレタヤウ
ナ、干涉デモサレタヤウニ見エマスシ、政府ニ依レバ-或ハ
定期未ヲ賣買シタト云フ爲ニ、啻ニ罰金ドコロデハナイ、體
刑ニ遣ウタト云フヤウナ者モアル、此定期市場ニ立ッテ他ノ
物ナラバ宜イケレドモ、米ノ價格ヲ上ゲタト云フ爲ニ、國家
ノ犯罪者トシテ扱ハレタト云フ例モ有ル、ソレノミナラズ寺
內內閣ノ如キハ、或ハ農產收用令ト云フヤウナモノヲ設ケ
テ四十圏モ四十五圓モスル米ヲ、三十園カ三十二圓デ賣
ラネバナラヌト云フヤウナ無鐵砲ナ法律モ出シタ、是ガ立憲
政治デアルカドウデアリマスカ、而シテ五十圓ノ米ガ一一十
五國ニナリマシタガ如何デアリマスカ、一石持ッテ行ケバ濟ム
稅金ガ、一石五斗モ二石モ持ッテ行カナケレバナラヌト云フ
ヤウチ場合デアリマシテモ、如何ニモ百姓ハ氣ノ毒デアル、生
逢費ガ四十五國デアルノニ、二十五圓ニナックノデアルカラ、
如何ニカシテ之ヲ救済シナケレバナラヌ、併ナガラ世界的ノ豐
年デ未ガ七八百万石モ殘"テ居ル、救済ヲシナケレバナラヌ、
困ヲテ居ルダラウト云フ御同情ハ、寔ニ感謝ニ堪へマセヌガ、後
トノ一言ガデス、此未ガ澤山アルゾト云フ一言ガ、農家ノ爲ニ
ハ恐ラク此價格ヲ引下ゲルヤウナ御言葉ノヤウニ聞イテ居ル
次第デアリマス、サウ云フ風デ釣合ガ付カヌ爲ニ、現ニ昨年ナ
ドモ開闢以來滅多ニ無イ事デアッテ、百姓ノ代表者ガ帝都ニ
集ヲテ或ハ政府ニ歎願シ、議會ニ哀訴ヲ致シテ、漸クニ米價
調節法ト云フヤウナモノヽ御發布ガアリマシテ、之ニ依フテ後ラ
カ政府ガ御枚濟ニナルコトヽ皆信ジテ居リマシタガ圈ラザリ
キ、政府モ貴族院ニ對スル氣兼ニ依リマシテ、相場ガ廉ケレ
バ買ウテヤルト云フ理窟デ、二十五六七圖デ買ハレク、二十
五六七園デ買ハレルト、四十圓四十五圓ト云フヤウナコト
ニナッテ、政府ガ却テ四五百万圓モ御儲ケニナッタト云フヤウ
ナ〓日ノ形デアル、サウシマスト吾々ハ、其利益ハ政府ガ
收入ニシナイデ、ドウカ農村ノ奬勵ノ爲ニ此金ヲ使ッテ貫ヒ
タイト云フコトヲ希望シテ置キマシタ、然ルニモ拘ラズ本年
又米ガ不足ノ爲ニ多少米ガ騰ラントシテ、貧乏百姓ガ米ヲ
賣ッテサウシテ借ヲ拂ウタリ、必要ナ物ヲ買フ、國稅モ縣稅モ
濟マサウト云フ場合ニ又米ヲ賣ルゾ、賣ルゾ、政府ガ米ガ腐
ルト云フ御心区デ、能ク乾イク米ヲ御買ニナッタニ拘ラズ、腐
ルト云7御心配デ賣ラレル、四十圓ニナッタナラバ政府ガ御
賣リニナル、此ノ勢ニ乘ゼラレマシテ十幾圖ト云フヤウナ下
落ヲ致シタ、錢村ハ非常ニ衰弊シテ居ル、昨年政府ガ二十
六七圖デ御買ニナック所ヲ、モウ一步進ンデ三十五圓ニ御
買ニナッテ居ッタナラバ、私ハ決シテ昨年五千五百万石ヨリ
少ナイ收穫ハナカラウト思フ、政府ガモウ少シ御奮發ニナッ
テ居ッタナラバ、國民ハ四十圓以上ノ米ヲ食ハヌデモ濟ンデ
居ッタ、外國米ナドノ旨ウナイ物ヲ、食ハンナラヌト云フヤウ
ナ運命ニハ至ラヌト私ハ存ジマス、惜イ哉相場以下デ御買
ニナッタト云フ爲ニ、救濟ノ綱ト思ッテ國民ガ賴ンデ居ッタニモ
拘ラス、遂ニ農民ハ失望落膽シマシテ、其結果減收シタト
云フコトヲ私ハ確信スルノデアリマス、百姓ノ話ナドヲスルト
人格ガ下ルト言フヤウナ(ノウ〓〓)百姓ヲ卑メルト云フ風ガ
アルト云フコトハ、百姓ヲ發逹サセマス上ニ於キマシテモ寔
ニ遺憾ナ事デアリマス、是ハ大ニ私ハ諸君ノ考慮ヲ仰ギタイ
ト思ヒマスガ、御承知ノ通リニ米ノ足ラヌノハ常ニナッテシマッ
タ、輸入ノ超過モ〓ニ實際ニハ餘リ感ジガナイト云フヤウナ
傾ガアルト云フコトハ、私ハ甚タ遺憾ト思ヒマス、御承知ノ
農業國デアリナガラ、外米買ヲシテ居ル、農產物ト致シマシ
テ少クモ六七百万國、大正八年、九年ノ如キハ兩年デ非常
ナ韓入デアリマシテ、農產物ダケデモ、丁度日〓日露ノ戰費
ニモ勝ル位デアリマシテ、斯ウ云フコトニ付キマシテモ、日本
ノ土質ニ合ハヌ品物モ、ゴザイマスガ、又日本ノ國土ニ於キ
マシテ十分出來ル物モアルノデアリマス、ソレデ政府ガ種々
御吳勵ニナッテ居リマスケレドモ、迚モ農村ノ維持ハ三十圓
ヤ五十圖デ賣ッタダケデハイカナイ、農村カラドン〓〓都會ニ
集中シテ居ル所ノ勢ト云フモノハ、皆樣御承知ノ次第デア
ル、ドウカ政府モ私ノ希望スル所ハ、農產加工〓究所ト云
フモノヲ設ケテ、サウシテ値ヲ出シテ貰ウヤウニシテ貰ヒタイ
「シヤンバン」ノ如キ、葡萄酒ノ如キ、一罎何圓何十圓ト云
フヤウナ物ハ、〓究ニ〓究ヲ加ヘタニハ違ヒゴザイマセヌケレ
ドモ、最早今日科學ノ進步ト云フモノハ、殆ド原料ノ如何
ヲ問ハズ、或ハ空ヲ飛ビ、水中ヲ潜ルモノモ出來マスト同様
ニ、炎天ニ氷モ出來マスレバ、寒中ニ花モ咲ケバ實モ生ル、又
樟腦ノ如キモ、或ハ生絲ノ如キモ、或ハ實玉ノ如キモ、護謨
ノ如キマデ人工デ出來ルト云フ今日デアリマスカラ、葡萄ト
米トハ多少趣ガ違フト致シマシテモ、之ニ加工シ〓究致シ
マスレバ、相當ナ物ガ出來マスニモ拘ラズ、尙ホ亞米利加ノ
ヤウナ富ンダ所カラ何デモナイ「アスパラガス」マデモ罐詰ニシ
テ來ル、日本デ之ヲ拵ヘナケレバナラヌノニ、外國カラ輸入シ
テ來ル、ソレヲ平然トシテ之ヲ防グ方法モ講ゼズ、集約的農
事ヲシテ更ニ實際ニ應用スルト云フコトガ無イ、改良、發明、
工夫ト云フモノハ全ク地ヲ拂ウテゴザイマセヌ、農業國デ大
キナ機械ヲ使ハヌトシマシテモ、ドウカ政府ハ年々農具ノ共
進會ヲ開キ、又一面ニハ懸賞的ニ發明、工夫ヲ天下ニ募集
シテ、サウシテ何トカシテ、段々工夫、發明、機械ノ應用ト云
フコトヲ或ル程度マデ助ケルヤウニ、方法ヲ講ジテ戴キタ
イモノデアル、唯機械ト云ヘバ外國カラ買フニ極ッテ居ル、外
國カラ持ッテ來テモ、ソレヲ日本ニ適スルヤウニスルカト云ヘ
バ、ソレニ適スルヤウナ學者ガ何人アルカ、畢竟改良、發明ト
云フモノハ日本ニハ甚ダ禁物ノヤウナ狀態ニナヲテ居ル、眞
ニ食物ノ自給自足ヲ圖ラントセバ、私ハドウシテモ肥料ヲ國
營ニシナケレバナラヌト考ヘル、肥料ノ善イ惡イ、高イ廉イハ
鳥事ノ盛衰利害ニ大關係ガアル、五千万石ノ朱モ、七百二
十万石ノ繭モ、二千五百万石ノ麥モ、四千万圓ノ茶モ皆
是ハ肥料ノ化生デアル、日本國民ハ肥料ニ依テ生命ヲ維イ
デ居ルト言ッテモ宜イ、此肥料ヲ入レルヨリ外ニ收穫ハ無イ、
殊ニ日本ハ燐酸質ガ少イノミナラズ、加里質ガ少ナイ、加里
質ハ獨逸ヨリ外ニ世界ニ無イ物デアリマスカラ、獨逸カラ始
終買ハナケレバナラヌ、而モ一手販賣ノ商店ニナッタ爲ニ、忽
チ二割三分ト云フヤウナ風ニ價格ガ上ッテ居ル、將來此加
里ダケデモ何十万圓買ハナケレバナラヌ、人造肥料ダケデモ
國營ニ爲スッテ、サウシテ成ベク廉ク賣ッテ貰ヒタイ、政府ハ
旣ニ煙草屋モ爲サレバ、鹽屋モ爲サル、鍛冶屋モサレヽバ、
飛脚モ、車挽マデモシテ居ルヤウナ形ニナッテ居リマスガ、ドウ
カ肥料モ併セテオヤリニナリマシテ、サウシテ肥料ノ如キハ十
圓ノモノハ八圓、八圜ノモノハ六圓ト云フヤウナ譯デ、大ニ
普及シテ貰ヒタイ、農家ハ少シ農產物ノ價格ガ高イトドン
ドン入レマスガ、少シ價格ガ廉イト云フト中ニ入レナイ、ソレ
ガ爲ニ肥料ハ倉庫ニ積ンデ置イテ、サウシテ外米ヲ買ハナケ
レバナラヌ、食物ノ缺乏ヲセナケレバナラヌト云フヤウナ狀態
デアル、此肥料ナドト云フ物モ、非常ニ近代ハ大問題トナリ
マシテ、或ハ空氣中カラ取ル、或ハ煙ノ中カラ取ル、既ニ亞
米利加ナドハ何十万圓ト云フ金ヲ使ッテ、肥料ノ〓究ニ從
事シテ居ル、獨逸ナドハ何億圓ト云フ金ヲ使ッテ、サウシテ空
氣中カラ窒素ヲ取ッテ、終ニハ硝石トシテ五年間ニ至ル戰
爭ノ煙硝ヲ造シタト云フ位デアリマス、ソレモドンし〓日本ニ
入リ居リマシタガ、御永知ノ通リ昨年其工場ガ爆發シタ爲
ニ入リマセヌケレドモ、將來此工場ガ復舊サレマシタナラバ、
日本ノ化學肥料ナドト云フモノハ、ドウ云フヤウナ運命ニナ
ルカ分ラヌト存ジマス、ンレデ御承知ノ日本ハ人口ニ割當テ
テ僅ニ一反歩内外デ生活シテ居ル、英國ノヤウナ工業國デ
モ六反、佛蘭西ガ一町一反、獨逸ハ二町一反、亞米利加ナ
ドハ人口モ多イガ、七町、八町ナドト云フヤウナ反別ヲ持ッ
テ生活シテ居ルノデアリマス、然ルニモ拘ラズ、近頃間キマ
スト、當時大統領モ農事獎勵ニハ非常ニ全力ヲ注イデ居
ラレマス、ソレガ爲ニ此間中モ全國ノ農家!大會ヲ開カレ
テ、農事ノ改良、農事ノ發達ノ爲ニ、非常ナ英斷ヲ下サレ
タト云フコトデアリマスガ、御承知ノ通リニ、亞米利加ハ
農事ノ增收ヲ圖ル爲ニ、七億万圓ト云フ金ヲ投ジテ、サ
ウシテ今旣ニ六百億万圓ノ生產力ヲ持ッテ居ル、農事モ
少クモ三割以上ノ增收ヲスルト云フコトヲ圖ラレタト云
フコトデアリマス、故ニ二三年來ノ統計ヲ見マシテモ、年々
三百七十「エーカー」內外、卽チ百五十万圓ニ近イ開墾ヲ
獎勵シツヽアッテ、四百里ノ大原野ニマデモ灌漑ヲシテ、灌漑
設備ガ十分ニ行屆イテ居ルヤウナ次第デアリマス、現ニ亞
米利加ノ日本ノ農產物ヲ賣ラズシテ、亞米利加ノ米ガ滔々
トシテ入リツヽアッテ、日本ノ市場、日本ノ農業ヲ壓迫セント
シツヽアルコトハ、皆サン御承知ノ事デアリマス、ンレデ其後
日本ノ農業ト云フモノハ、是ハモウ改良シナケレバナラヌヤ
ウニ思ッテ居リマスガ、ドウカ是ハ私ハ自給自足ガ出來ルト
云フコトヲ確信シテ居ル、僅ニ一反歩二石ヅヽ穫レバ、自給
自足ガ出來ルノデアリマス、ソレヲ顯ミズシテ米ガ無イカラ、
外國カラ買ヘバ宜イト云フ政府ノ惡口バカリ云フ譯デハアリ
マセヌ、政府ノ擁護者ノ一人ヲ以テ任ジテ居リマスガ、然ル
ニモ拘ラズ、政府ガ外國米ヲ御買ニナル時ニハ、千万圓カノ
金ヲ惜ミモナク御掛ケニナリマスケレドモ、僅ニ二百万圓ヤ
三百万圓ノ金デ、何億万圓ノ生產ヲ增スト云フコトヲ棚上
ゲニナスッテゴザルト一云フコトハ、誠ニ惜シイ事デアル(拍手)
吾々ハ政府黨トシテ諸君ノ前デ訴ヘテ彼此言ヒ、殊ニ下手
ナ演說マデシテ政府ニ聽カスト云フコトハ甚ダ遺憾デアリマ
スガ、年中農商務大臣ニ叱ラレルニモ拘ラズ、御注意申シテ
居ル次第デアリマスケレドモ、中々聽カナイ、斯ウ云フ事デア
ルト〓程問題ハ國家百年ノ計ヲ誤ラナイトモ限ラヌ、現ニ
誤リツヽアルカモ分ラヌ(拍手)ソレデ政府ニ少シ考ヘテ貰フ
ト面白イ、僅ニ一町村ノ農會ニ補助ヲ二百圓ヅヽ遣ルト云
フ、是ハ政府ハ惜シイ顔ヲシナイ、既ニ政府ハ農事ノ奬勵ノ
爲ニ、或ハ地方稅ノ如キハ之ヲ合セマシタナラバ、中と少ク
ナイ、或ハ農事試驗場ノ如キ、或ハ農學校ノ如キアレバ、高
等農學校モアル、種々雜多ナ方面ニ五六万圓ノ金ヲ間接
直接ニ使ツテ居ルガ、試驗場ノ目的ハ何デアルカト言ヒマス
レバ、此米ヤ麥ヲドナイニシタラ餘計穫レルト云フコトガ目
的デアル、所ガ品評會ヲ開イテモ、ヨウ學理モ知ラナケレバ
學理應用ノ途モ知ラズ、又肥料ノ應用モ誤ラヌトモ限ラナ
イ、然ルニモ拘ラズ、三石、四石位ノモノデ、六石七石トハ穫
テ居ラヌ、是デモ大發明デアルト政府ハ思シテゴザルカ、政府
ハ是等ノ試驗場ニ何ラ御褒美ヲ御遣リニナッタカ、〓多ノ試
驗場ガアリマシテモ、六石以上日本ノ農事試驗場デ穫ッタモノ
ハアリアヘン、併ナガラ農事試驗場ノ結果ニ依シテハ、五石六石
穫ルトコ云フトニナルニ違ヒナイ、御承知ノ通リ三石平均穫ッ
テ〓九九万万石レルト云フコトハ、是ハ豐凶ニモ依リマス氣
候ニモ依リマス、氣候ト提携シテ行カナケレバナラヌモノデアリ
マスカラ、ソレニ定ッタ譯デハアリマセヌケレドモ、マダ私ハ穫レ
ル餘地ガ澤山アルト思フノデアリマス、況ヤ臺灣アリ、朝鮮ア
リ、朝鮮ノ如キハ或ハ水道デアルトカ、種々雜多ナ事ヲ中ミ
ヤッテ居ルヤウデアルケレドモ、殊ニ無秩序デヤッテ居ルト云フ
ヤウナ狀態デアル、是等ハ政府ガ英所ヲ下シテ、肥料ノ如キ
ハ國營トシテ、ソレデ入レヌ奴ハ罰スルト云フコトニシタナラ
バ、一圓ノモノガ三圓五圓ニナルノデアル、決シテ日本ハ米
ヤ麥ヲ買フヤウナ時期デナイト存ジマス、將來ハ兎ニ角五年
十年農商務省ニハ賢明ナ方バカリ居ラレナガラ、唯儀式的
ニヤッテ居ラレルヤウナ傾ガアル(「ヒヤ〓〓」)ソレデ何カ農事
ノ奬勵ト云フト、何ノ局トカ、何ノ課トカ云フヤウナ譯デ、多
クハ月給ヤ族費ニ費シテシマッテ、サウシテ農家ニ直接ニ遣ルコ
トガ甚ダ少ナイ、之ガ士氣ガ振ハヌ原因、日本ノ靑年ガ段々
士氣ガ振ハナイ、段々勞働ヲ好マナイ、勞働神加エト云フコトヲ
考ヘナイ、然ルニ亞米利加ハ啻ニ物質的ニサウー云フヤウニ獎
勵シテ店ルノミナラズ、農事ト云フコトハ殆ド無盡藏デアル、
御承知ノ通リニ今ヤ科學ハ非常ニ進步ヲ致シマシテ、物質
的ノ進步、建設的ノ狀態ハ、誠ニ驚クベキモノガアリマスガ、
併ナガラ誰ガ見テモ分ッテ居ル、鐵デアラウガ-金屬デアラ
ウガ、石炭デアラウガ、燐礦石デアルトカ云フ物ハ段々取切ッ
テ、燃料ヤ石灰石マデ取リ盡シテシマヒ、山林マデ切崩シテ
シマウテ、サウシテ之ガドナイニナルデアラウカ、人類ガ唯文明
進步々々ト云ヒツヽ之ヲ切崩シ、之ヲ使ヒ切ンテ、子孫アル
ト云フコトハ何所ニアルカ、一面カラ考ヘテモ、寔ニ心細イ狀
態デアルカモ知レナイ、況ヤ日本ハ石油ニモ乏シイ、石炭ニ
モ乏シイ、唯無盡藏ナノハ百姓デアルト私ハ存ジマス、此百
姓ハ迂遠デアル、誠ニ百姓ハ迂遠デアルカラ、隨分輕ンゼラ
レテ、百姓ノ話ナドハ聽ク者ハ無イ、是ハ聽キタウノウテモ聽
イテ戴カニヤナラヌト思フ(拍手)如何ニ百姓ガ微ナリトハ申
シナガラ、少クトモ價格ノ高イ廉イ、又收入ノ多イ少イニモ依
リマスケレドモ、五十億万、六十億万ト云フ生產力ヲ持ッテ
居ルノハ百姓ダケデアル、決シテ工業ヤ商賣ヲ無視シテ、斯
フ云フ方面ヲ止メテモ宜イト言フノデハアリマセヌ、國ノ進
步ハ百業競ッテ相進マナケレバナラヌコトハ無論デアリマスケ
レドモ、比較的無盡藏的ノ性質ヲ持シテ居リ、或ル程度マデ
自給自足ノ出來ルモノデアルニ拘ラズ、奬勵スベキ手段方法ヲ
盡サズ、自國ノ百姓ヲ奬勵セズシテ外國ノ百姓ヲ獎勵スルヤ
ウナ結果ニナルト云フコトハ、思ハザルノ甚シキモノデアルト
思ヒマス(拍手)僅ニ一町村ニ百圓、二百圓遣ルト云フヤウ
ナ事デ、見向キモシナイト云フコトハ、大間違デアル、ソレガ爲
ニ日本ノ國民ガ、或ル程度迄ハ自分ノ國デ出來夕米、自分
デ作ッタ所ノ麥デ命ヲ維ギタイト云フ考デアリマス、生命維
持程大切ナモノハ無イ卜思ヒマス、然ルニ拘ハラズ、外國ノ
美味クナイ米ヲ唯買ヒサヘスレバ宜イト云フ狀態ニ陷フテ居
ルト云フ事ハ遺憾千万デアル(拍手)況ヤ世界ノ三大强國
デアルト云フガ、食物ノ無イ世界ノ三大强國ト云フノガアル
デアリマセウカ、是ハ皆サンノ御考慮ヲ願ヒタイノデアリマス、
ドウカ皆サンノ御賛成ニ依リマシテ、唯衆議院ヲ通過シタト
云フダケデハ何ニモナラナイ、是ハ政府ガモウ一ツ安貝際ノ狀
態ヲ味ヒ、〓究サレマシテ、ドウカ自給自足ノ方法ヲ立テラ
レンコトヲ希望致シマス、詳細ノ事ハ又委員會デ御話ヲ致
シマス、ドウカ御賛成アラムコトヲ望ミマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=57
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058・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 本案ハ土井權大君提出、農業組合法外
二件ノ委員會ニ併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=58
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059・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ガナイト認メマス、仍テ
動議ノ如ク決シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=59
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060・鈴木錠藏
○鈴木錠藏君 殘餘ノ日程ニ對シテ、延期ノ動議ヲ提出
致シマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=60
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061・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 延期ノ動議ニハ御異議ナイト
認メマス、仍テ延期ノコトニ決シマス、報告ガアリマス、第四
部選出豫算委員早速整爾君ヨリ常任委員辭任ノ申出ガ
アリマシタ、許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=61
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062・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、仍テ許
可致シマス、其部ノ諸君ハ直ニ補閱選舉ヲ行ハレ、御屆出
デアランコトヲ希望致シマス、次會ノ日程ハ公報ヲ以テ御
通知ヲ申上ゲマス、本日ハ是ニテ散會
午後五時四十一分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X02519220308&spkNum=62
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