1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十一年三月十八日(土曜日)午後一時二十九分開議
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議事日程 第三十一號 大正十一年三月十八日
午後一時開議
第一 明治三十三年法律第七十五號及明治三十五年法律第二十九號準用に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 土地收用法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 取引所税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 内地、朝鮮、臺灣又は樺太と南洋群島との間に於ける船舶及貨物の出入に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 破産法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 和議法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 裁判所構成法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 司法事務共助法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 明治三十五年法律第四十九號中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 統計資料實地調査に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 社寺現境内地無償下付に關する法律案(鵜澤總明君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 國有土地森林原野下戻に關する法律案(阿部武智雄君外三十三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 治安警察法中改正法律案(一宮房治郎君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 治安警察法中改正法律案(清瀬一郎君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 治安警察法中改正法律案(横山金太郎君外三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 治安警察法中改正法律案(松本君平君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 「ローマ」字普及に關する建議案(松本君平君外七名提出)
第二十一 下級軍人の待遇改善に關する建議案(仙波太郎君外二名提出)
第二十二 別宮狹野神社昇格に關する建議案(陣軍吉君外三名提出)
第二十三 東京帝國大學農學部實科に關する建議案(有馬秀雄君外四名提出)
第二十四 群山港修築國營に關する建議案(牧山耕藏君外四名提出)
第二十五 神社調査會設置に關する建議案(岩崎勲君外十二名提出)
第二十六 官國幣社國庫供進金増額に關する建議案(岩崎勲君外十二名提出)
第二十七 府縣社以下神社經費國庫補助に關する建議案(岩崎勲君外十二名提出)
第二十八 牧野法制定に關する建議案(吉良元夫君提出)
第二十九 三國港築港に關する建議案(野村勘左衞門君外四名提出)
第三十 速記者の養成及優遇に關する建議案(木下成太郎君外一名提出)
第三十一 國籍法中改正に關する建議案(植原悦二郎君提出)
第三十二 松江隱岐間海底電信電話増設速成に關する建議案(若林徳懋君外四名提出)
第三十三 信樂(貴生川加茂間)鐵道速成に關する建議案(安原仁兵衞君外一名提出)
第三十四 淀川改修増補工事速成に關する建議案(吉川吉郎兵衞君提出)
第三十五 鹿兒島加世田間鐵道速成に關する建議案(樋渡次右衞門君外三名提出)
第三十六 寺泊築港に關する建議案(高橋金治郎君外三名提出)
第三十七 乃木神社昇格に關する建議案(植竹龍三郎君外三名提出)
第三十八 御殿場大宮間及吉田大月間鐵道速成に關する建議案(岩崎勲君外一名提出)
第三十九 熱海下田松崎大仁間鐵道速成に關する建議案(小泉策太郎君外一名提出)
第四十 狩野川改修に關する建議案(岩崎勲君外一名提出)
第四十一 日本銀行及特殊銀行條例中改正に關する建議案(星島二郎君提出)
第四十二 朝鮮に於ける參政權に關する建議案(多木久米次郎君外四名提出)
第四十三 都市計畫促進に關する建議案(河上哲太君外二名提出)
第四十四 第六囘内國博覽會開催に關する建議案(加藤重三郎君外八名提出)
第四十五 工業用酒精酒類其の他酒精含有飮料戻税法改正に關する建議案(植場平君外七名提出)
第四十六 農業用機械發明奬勵に關する建議案(成田榮信君外二名提出)
第四十七 農業用機械輸入税免除に關する建議案(成田榮信君外二名提出)
第四十八 農業者公課負擔輕減に關する建議案(成田榮信君外二名提出)
第四十九 大直鐵道建設速成に關する建議案(吉良元夫君外二名提出)
第五十 竹田三田井間鐵道速成に關する建議案(吉良元夫君外三名提出)
第五十一 軍人恩給法中改正に關する建議案(松實喜代太君外四名提出)
第五十二 京都市内鐵道線路改築に關する建議案(渡邊昭君外二名提出)
第五十三 第二期治水計畫確立に關する建議案(川原茂輔君外三名提出) (委員長報告)
第五十四 農務省新設に關する建議案(中倉万次郎君外八名提出) (委員長報告)
第五十五 (特別報告第二百六十一號)賀名生の宮創建の請願 (委員長報告)
第五十六 (特別報告第二百六十四號)癈兵及戰死者遺族に對する生活保全の請願外二件 (委員長報告)
第五十七 (特別報告第二百六十五號)漢方醫藥研究保存の請願 (委員長報告)
第五十八 (特別報告第二百六十六號)日光山を國立大公園と爲す請願 (委員長報告)
第五十九 (特別報告第二百六十七號)上高地國立公園設置の請願 (委員長報告)
第六十 (特別報告第二百六十八號)漁港修築費國庫補助法制定の請願 (委員長報告)
第六十一 (特別報告第二百六十九號)聲問川河口修築の請願 (委員長報告)
第六十二 (特別報告第二百七十號)苫前漁港竝避難港修築の請願 (委員長報告)
第六十三 (特別報告第二百七十一號)濱田港修築の請願 (委員長報告)
第六十四 (特別報告第二百七十二號)諸寄港漁港修築の請願 (委員長報告)
第六十五 (特別報告第二百七十三號)羽幌漁港修築の請願 (委員長報告)
第六十六 (特別報告第二百七十四號)湧別川治水の請願 (委員長報告)
第六十七 (特別報告第二百七十五號)根室、斜里間拓殖鐵道敷設速成の請願 (委員長報告)
第六十八 (特別報告第二百七十六號)國有林野に關する請願外四十三件 (委員長報告)
第六十九 (特別報告第二百七十七號)遠洋漁業奬勵法及附屬命令中改正の請願 (委員長報告)
第七十 (特別報告第二百七十八號)魚市場法制定に關する請願 (委員長報告)
第七十一 (特別報告第二百七十九號)福岡市に國立工業試驗場増設の請願 (委員長報告)
第七十二 (特別報告第二百八十三號)口總郵便局に集配事務開始の請願 (委員長報告)
第七十三 (特別報告第二百八十四號)王子郵便局管轄區内に無集配郵便局設置の請願 (委員長報告)
第七十四 (特別報告第二百八十五號)三山木村三山木無集配郵便局に電信、電話架設の請願 (委員長報告)
第七十五 (特別報告第二百八十六號)温泉村に郵便局設置の請願 (委員長報告)
第七十六 (特別報告第二百八十八號)八代郵便局に集配事務開始の請願 (委員長報告)
第七十七 (特別報告第二百八十九號)六合村に郵便局設置の請願 (委員長報告)
第七十八 (特別報告第二百九十號)湯口郵便局に集配事務開始竝志戸平に無集配郵便局設置の請願 (委員長報告)
第七十九 (特別報告第二百九十一號)大原村大字市場に無集配郵便局設置の請願 (委員長報告)
第八十 (特別報告第二百九十二號)戸ケ崎郵便局に電信、電話事務開始の請願 (委員長報告)
第八十一 (特別報告第二百九十三號)明治村に集配郵便局設置の請願 (委員長報告)
第八十二 (特別報告第二百九十四號)網干驛前郵便局に特設電話架設の請願 (委員長報告)
第八十三 (特別報告第二百九十五號)田澤村に郵便局を設置し電信事務開始の請願 (委員長報告)
第八十四 (特別報告第二百九十六號)津輕海峽に自働航送船増加の請願 (委員長報告)
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001・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔原田書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
土地收用法中改正法律案
取引所稅法中改正法律案
(第二號)大正十一年度歳入歳出總豫算追加案
(特第一號)大正十一度各特別會計歲入歳出豫算
追加案
(追第二號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件
(第三號)大正十一年度歳入歳出總豫算追加案
(第四號)大正十一年度歲入歲出總豫算追加案
(特第二號)大正十一年度特別會計歲入歳出豫算
追加案
(以上三月十七日提出)
一去十六日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案左ノ如
シ
明治三十三年法律第七十五號及明治三十五年法
律第二十九號準用ニ關スル法律案
又今十八日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案左ノ如
シ
取引所法中改正法律案
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
古社寺保存法改正ニ關スル建議案
提出者木下謙次郞君大口喜六君
樋口秀雄君若尾璋八君
八木逸郞君木下成太郞君
櫻井松坂間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者大道寺慶男君津野田是重君
天春文衞君加藤久米四郞君
伊坂秀五郞君宮田光雄君
荻田悅造君
四日市關ヶ原木ノ本間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者天春文衞君加藤久米四郞君
伊坂秀五郎君大道寺慶男君
東京神戶間高速度交通機關設備ニ關スル建議案
提出者櫻內幸雄君坪田十郞君
下出民義君川村數郎君
(以上三月十六日提出)
生絲檢査所擴張ニ關スル建議案
提出者武藤金吉君竹上藤次郎君
(以上三月十七日提出)
一去十六日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ議案
ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
(第三號)大正十年度歲入歳出總豫算追加案
和賀輕便軌道株式會社所屬軌道經營廢止ニ對スル
補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案(政府提出)
明治四十四年法律第六十一號中改正法律案(政府
提出)
明治四十年法律第四十九號中改正法律案(政府提
出
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載
ス〕
一去十六日辯護士法改正法律案委員匹田銳吉君、佐
野正雄君、〓瀨一郞君辭任ニ付其ノ補闕トシテ黑住
成章君。志賀和多利君、鮎川盛貞君ヲ、電信電話線
建設條例第六條ニ依ル手當金增額ニ關スル建議案
委員野呂丈太郞君辭任ニ付其ノ補關トシテ藤井啓
一君ヲ、大湯鐵道及魚沼鐵道買收ノ爲公債發行ニ
開スル法律案委員有森新吉君辭任ニ付其ノ補關ト
シテ山邑太三郞君ヲ、奈良ニ美術學校建設ニ關スル
建議案外二件委員磯田粂三郞君辭任ニ付其ノ補
闕トシテ吉良元夫君ヲ、露國政變及西比利亞事變ノ
爲損害ヲ被リタル者ノ救恤ニ關スル法律案委員山道
襄一君辭任ニ付其ノ補闕トシテ荒川五郞君ヲ、農業
組合法律案外一件委員多木久米次郞君辭
任ニ付其ノ補闕トシテ阿部武智雄君ヲ、貨幣
法中改正法律案委員今井今助君辭任ニ付其ノ補
關トシテ八田宗吉君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
一去十六日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
明治三十五年法律第四十九號中改正法律案外一
件委員
春日俊文君根本正君萩亮君
八木逸郞君高橋長七郞君中馬興丸君
小野重行君神谷彌平君倉石知藏君
一昨十七日食料品配給設備ニ關スル建議案委員松本
孫右衞門君辭任ニ付其ノ補閱トシテ岡田伊太郞君
ヲ、明治三十五年法律第四十九號中改正法律案外
一件委員高橋長七郞君辭任ニ付其ノ補關トシテ志
賀和多利君ヲ、破產法案外一件委員高田良平君、
久木田叶君、木村作次郞君辭任ニ付其ノ補關トシテ
〓瀨規矩雄君、毛里保太郞君、安原仁兵衞君ヲ、辯
護士法改正法律案委員淺石惠八君辭任ニ付其ノ補
關トシテ井坂豊光君ヲ、電信線電話線建設條例第
六條ニ依ル手當金增額ニ關スル建議案委員木下甚
三郞君、松山常次郞君辭任ニ付其ノ補闕トシテ志賀
和多利君、山口熊野君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
一昨十七日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
明治三十五年法律第四十九號中改正法律案外一
件委員
委員長春日俊文君理事倉石知藏君
一昨十七日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第三部選出請願委員富永孝太郞君(村田虎之助
君補闕)
第四部選出豫算委員望月小太郞君(大津淳一郞
君補闕)
第五部選出請願委員本多貞次郞君(竹澤太一君
補關)
第八部選出請願委員山口熊野君(高野毅君補
關
一昨十七日理事補闘選擧ノ結果左ノ如シ
貨幣法中改正法律案委員
理事八田宗吉君(理事今井今助君補闕)
一今十八日工場法中改正法律案委員樋渡次右衞門
君、佐野正雄君、土屋興君、武田德三郞君辭任ニ付
其ノ補關トシテ玉置良直君、安原仁兵衞君、高見之
通君、山口義一君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=1
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002・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 會議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=2
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003・山邊常重
○山邊常重君 議事ノ進行ニ付テ、簡單デスカラ自席カ
ラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=3
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004・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 許シマスガ、アナタヨリ先キニ通告
ガアリマス-矢張議事ノ進行ニ付テ、發言ヲ板野友造君
ヨリ求メラレテ居リマスカラ、其後デ-板野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=4
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005・板野友造
○板野友造君 簡單デアリマスカラ此席ヨリ發言ヲ御許
ヲ願ヒマス、私ハ都市計晝ニ關シテ、政府ニ對シマシテ質問
書ヲ提出致シテ之ニ付テ、一月三十一日ニ質問ノ趣旨ノ
辯明ヲ致シテ置キマシタ、其際小橋內務次官カラ、之ニ對
シテハ大藏省トノ關係ガアルカラ、何レ書面ヲ以テ答辯ヲス
ルト云フ意味ノ御答辯ヲ、其際得テ居ルノデアリマスガ、未
ダ此御答辯ニ接シマセヌ、會期モ將ニ盡キントスル際デア
リマスガ、私ハ玆ニ發言ノ御許可ヲ得マシタノハ、政府ニ向ツ
テ日ヲ限フテ御催促ヲ申上ゲタイト思ヒマス、從來此質問ニ
對スル政府ノ答辯ナルモノヲ見ルト、謂ハバ通リ一遍デア,
テ洵ニ形式ニ流レル、尤モ一面カラ申上ゲマスレバ、質問ニ
名ヲ藉シテ隨分質問ノ趣旨ノ辯明以上ノ御演說ヲ爲サル
傾ナキニ非ズデアリマスガ、政府ノ答辯ナルモノハ、要領ヲ盡
サナイノガ例デアリマス、ソレデアリマスカラ此儘ニシテ會期
ノ盡キルトキニ、例ノ不得要領ノ答辯ヲ得ルノハ遺憾ニ堪
ヘナイ、私ガ此質問ヲ致シマシタノハ演說ヲスル爲メノ質問
デアリマセヌ、其際ニ申シテ置キマシタガ、都市計畫ノ事業
ト云フモノハ極テ大事業デアッテ、各都市ノ財政ヲ壓迫スル
コト極テ大ナルモノデアル、之ニ對シテ政府ハ補助スルカ否
ヤト云フヤウナ點、ソレニ付テ、其財源ニ付テ箇條ヲ擧ゲテ
御尋ヲシテ居ル譯デアリマスガ、是ハ御承知ノ事ト思ヒマス、
各都市トモ此事業ニ付テハ随分事業ヲ進メテ居ル、事業ヲ
進メテ居リマスカラ、政府トシテハ此財源ニ付テ、一例ヲ擧
ゲマスレバ特別稅ニ付テ勅令ヲ以テ定メルト云フコトヲ言ッ
テ居ルノデアリマスカラ、遲クモ本法ガ適用サレル時-實
施サレル時、卽チ大正九年一月ニ於テ之ガ資源ニ關シ、財
源ニ關スル法律ヲ拵ヘナケレバナラヌモノガ、今日迄二年有
餘ノ間遲レテ居ルト云フ有樣デアル、其他政府ノ公約ニ付
テ-財源ニ付テ都市計畫ヲ實行セル都市ニ對シテ、公約
ヲセルモノ未ダ曾テ之ヲ履踐シタルモノアラズ、斯ウ云フ
有樣デアル、ソレデアリスカラ都市計畫法ガ實施ヲサレ、中
央ニ及地方ニ委員ガ出來テ、ドシ〓〓仕事ヲヤッテ居ルガ政
府ノ方デハ之ガ財源ニ付テ規定セラルベキ、例へバ勅令ナド
ヲ發布シナイ、之ガ爲ニ事業ヲ實行セル都市ノ困難一方ナ
ラズ、斯ウ云フコトニナッテ居ル、殊ニ私ハ此事ニ付テ二月二
十八日ニモ御催促致シマシタケレドモ、各都市トモ此事業
ニ付テ、丁度今日大正十一年度ノ豫算ニ付テ-事業遂
行ノ豫算ニ付テハ今審議中デアルノデアルカラ旁、今明決
ナル御各辯ヲ得ル必要ガアル、斯ウ云フ事ニ相成ッテ居リマ
スルカラシテ、會期愈、盡キントスル時デモ、滿足ノ御答辯ガ
得ラレルナラバソレデ宜シイガ、從來ノ例ニ依ルト十分ナル
御答辯ヲ得ルヤ否ヤハ甚ダ疑ハシイ點モナキニアラズ、斯樣
ニ考ヘマス、仍テ私ハ此一月三十一日ニ私ガ質問ノ趣旨ノ
辯明ヲ致シテ置キマシタ此速記ニ付テ、其際ニ擧ゲマシタ
七八箇條ニ付テ、本日此席ニ於テ御答辯ヲ得ラレマスレバ
洵ニ結構デアリマスガ、當時內務次官ノ仰セニナッタヤウニ、
書面デ御答辯下サルトー云フノデアリマスルナラバ、次ノ本會
議迄ニ書面ヲ以テ答辯ヲ煩シタイト思ヒマス、勿論此席ニ
於テ口頭ヲ以テ御答辯ヲ得ラレマスレバ、是レ以上ノ幸ハ
アリマセヌ、是ダケデアリマス
〔政府委員小橋一太君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=5
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006・小橋一太
○政府委員(小橋一太君) 答辯ガ遲レテ居ルカラシテ、
早ク答辯ヲセヨト云フコトデアリマシタガ、是ハ質問主意書
ノ御說明ノ際ニ申シテ置キマシタヤウニ、都市計畫ノ實行
上ニハ重大ナル關係ヲ有シマスルノデ、之ニ對スル御答ハ都
市計畫實行上ニ成ベク副フヤウニ、必要ナル事項デアルガ
故ニ今稅務當局等トモ交涉中デアリマスカラ、不日成ベク
早ク書面ヲ以テ十分ニ御答スル積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=6
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007・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 山邊常重君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=7
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008・山邊常重
○山邊常重君 簡單デアリマスカラ此席カラ-本員ノ
提出ニ係ル印紙稅法中改正法律案ハ、本月四日ノ本會
議ニ於テ委員付託ニナリマシタケレドモ、今日マデ未ダ一回
モ委員會ヲ開會サレマセス、甚ダ會期切迫ノ今日杞憂ニ堪
ヘマセヌ、一日モ早ク開會ヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=8
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009・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 議長ヨリ通達スルコトニ致シマス、
日程第一、明治三十三年法律第七十五號及明治三十五
年法律第二十九號準用ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開
キマス、川村拓殖局長官
第明治三十三年法律第七十五號及明
治三十五年法律第二十九號準用ニ
關スル法律案(政府提出、貴族院送
付)第一讀會
明治三十三年法律第七十五號及明治三十五年法
律第二十九號準用ニ關スル法律案
明治三十三年法律第七十五號ハ南洋群島ニ在勤スル
內地人タル文官判任以上ノ官吏ニ、明治三十五年法
律第二十九號ハ南洋群島ニ在勤スル內地人タル警部
補及巡査ニ之ヲ準用ス
附則
本法ハ大正十一年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法ハ本法施行ノ際現ニ南洋群島ニ在勤スル者ニ關シ
テハ本法施行前ヨリノ在職年月數ニ付亦之ヲ適用ス
〔政府委員川村竹治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=9
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010・川村竹治
○政府委員(川村竹治君) 本案ハ極テ簡單ナルモノデア
リマス、卽チ明治三十三年法律第七十五號、及明治三十
五年法律第二十九號ハ、臺灣、樺太ニ在勤スル官吏及巡
查ノ勤續年數加算ノ法律デアリマス、而シテ今回南洋廳ノ
設置ニ伴ヒ、南洋群島ニ在勤スル所ノ官吏、及巡査ニ對シ
テ同樣ノ加算ヲ與フル爲ニ、是等法律ヲ準用スルト云フ案
デアリマス、何卒協賛アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=10
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011・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第二、右議案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=11
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012・岩崎勲
○岩崎動君 本案ハ永屋茂君外二名提出、巡査看守退
隱料及遺族扶助料法中改正法律案外九件ノ委員ニ併セ
テ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=12
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013・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第三、土地收用法
中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、小橋内務次官
第三土地收用法中改正法律案(政府提
四第一讀會
土地收用法中改正法律案
土地收用法中左ノ通改正ス
第二條第五號ヲ左ノ如ク改ム
五前各號ニ揭クルモノヲ除クノ外國府縣市町村其
ノ他公共團體ニ於テ施設スル事業
第二條ノ二現ニ公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ノ用ニ供
スル土地ハ特別ノ事由アル場合ニ非サレハ之ヲ收用
又ハ使用スルコトヲ得ス
第五條中「權利ヲ有スル者」ノ下ニ「及其ノ土地ニ存スル
建物ニ付賃借權又ハ擔保權ヲ有スル者」ヲ、「土地ニ關シ
テ權利ヲ取得シタル者」ノ下ニ「又ハ其ノ土地ニ存スル建
物ニ付賃借權又ハ擔保權ヲ取得シタル者」ヲ、同條第二
項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
起業者ニ於テ第十九條ノ地方長官ノ公告又ハ通知
ノ時ヨリ六月以上ノ期間ヲ定メ建物ノ移轉ヲ要求ス
ル場合ニ於テ其ノ建物ニ付期間ノ定ナキ賃借權又ハ
移轉スヘキ期間內ニ終了スル期間ノ定アル賃借權ヲ
有スル者ハ關係人ト看做サス
第八條ノ二本法ノ規定ハ土地ニ定著スル物件ニシテ
之ヲ收用又ハ使用スルニ非サレハ事業ノ目的ヲ達ス
ルコト能ハサルモノヲ其ノ土地ト共ニ牧用又ハ使用ス
ル場合ニ之ヲ準用ス
第十條第三項ヲ左ノ如ク改ム
日出前日沒後ハ占有者ノ承諾アルニ非サレハ邸內ニ
立入ルコトヲ得ス
第十五條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加ヘ同條中「前項」
ヲ「前二項」ニ改ム
宮內大臣、主務大臣又ハ地方長官前項ニ規定スル
事業ノ爲土地ヲ使用スルトキハ事業ノ種類、使用スヘ
キ土地ノ區域及使用ノ期間ヲ郡市長ニ通知スヘシ
第十七條中「爲シタルトキ」ノ下ニ「又ハ第十五條第二
項ノ通知ヲ受ケタルトキ」ヲ加へ「第三項」ヲ「第四項」ニ
改ム
第十九條ノ二前條ノ地方長官ノ公告又ハ通知ノ後
土地所有者及關係人ハ行政廳ノ許可ヲ受クルニ非
サレハ收用又ハ使用スヘキ土地ノ形質ヲ變更シ又ハ
第八條ノ二ノ物件ヲ損壞若ハ收去スルコトヲ得ス
第二十條中「前條」ヲ「第十九條」ニ改ム
第二十一條第十九條ノ地方長官ノ公告又ハ通知ノ
後起業者ハ土地所有者又ハ關係人ト共ニ土地物件
ニ關スル調書ヲ作製スヘシ
前項ノ場合ニ於テ土地所有者又ハ關係人カ調書ヲ
作製スルコトヲ拒ミタルトキ又ハ之ヲ作製スルコト能
ハサルトキハ起業者ハ市町村長ノ立會ヲ以テ之ヲ作
製スヘシ市町村長カ起業者ナルトキ又ハ起業者ニ對
シ第四十條第二項ニ揭ケタル關係ヲ有スルトキハ起
業者ノ申請ニ依リ地方長官立會人ヲ指定スヘシ
起業者、土地所有者及關係人ハ本條ノ規定ニ依リ作
製シタル調書ノ記載事項ニ對シテ異議ヲ述フルコトヲ
得ス
第二十三條中「左ニ揭ケタル書類」ノ下ニ「及第二十一
條ノ規定ニ依ル土地物件ニ關スル調書」ヲ加フ
第二十四條地方長官前條ノ書類ヲ受ケタルトキハ二
週間內ニ之ヲ市町村長ニ送付スヘシ
市町村長前項ノ書類ヲ受ケタルトキハ五日内ニ公告
ヲ爲シ公〓ノ日ヨリ一週間之ヲ公衆ノ縱覽ニ供スヘ
シ
第二十六條地方長官ハ前條ノ期間終了シタル日ヨ
リ一月內ニ收用審査會ヲ開クヘシ但シ特別ノ事由ア
ル場合ニ限リ二週間内ノ延期ヲ爲スコトヲ得
第三十三條中「第三項」ヲ「第二項若ハ第四項」ニ改ム
第四十條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加へ同條中「市參事
會員、町村長」ヲ「市町村長」ニ、「委員ノ數減少シテ前條
第一項ノ數ヲ得サルトキ」ヲ「府縣名譽職參事會員タル
委員ノ數減少シタルトキ」ニ改ム
本條ノ規定ニ依リ高等文官タル委員ノ數減少シタル
トキハ地方長官ハ高等文官ニシテ其ノ本條ノ規定ニ
牴觸セサル者ノ内ヨリ臨時ニ指名シテ之ヲ補充スヘシ
第四十三條中「收用又ハ使用スヘキ土地以外ノ土地所
有者」ヲ「前項ニ揭クル者以外ノ者」ニ改ム
第六十六條ニ左ノ一項ヲ加フ
第二十二條ノ協議ニ因リ取得シタル土地ハ本條ノ適
用ニ付テハ之ヲ收用シタル土地トス
第七十五條第十九條ノ二ノ規定ニ違反シタル者ハ
二百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第七十六條第九條又ハ第十一條ノ規定ニ違反シ行
政廳ノ許可ヲ得スシテ土地ニ立入又ハ障害物ヲ除却
シタル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第七十七條鑑定人トシテ收用審査會ニ呼出サレタル
者詐僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處
ス
第七十八條中「四十圓以下ノ罰金」ヲ「百圓以下ノ過
料」ニ改ム
第七十九條ヲ削ル
第八十條中「二十圓以下ノ罰金」ヲ「五十圓以下ノ過
料」ニ改メ同條ヲ第七十九條トス
第八十條非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前二條ノ過料ニ付之ヲ準用ス
第八十六條第一項及同條中「及沖繩縣」ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法中期間ノ定アル場合ニ於テ本法施行前其ノ起算
期日ノ經過シタルモノニ付テハ本法施行ノ日ヲ以テ其ノ
起算期日トス
本法施行前土地收用法第七十八條又ハ第八十條ノ
規定ニ該當スル行爲ヲ爲シタル者ノ處罰ニ付テハ仍從
前ノ規定ニ依ル
〔政府委員小橋一太君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=13
-
014・小橋一太
○政府委員(小橋一太君) 本改正案ハ至テ簡單ナル改
正デアリマス、簡單ニ其理由ヲ申上ゲマス、近時世運ノ進步
ニ伴ヒマシテ、公共團體ニ於テ施設經營セザルベカラザル各
種ノ公共的事業ガ、段々大增加致シマスル結果トシテ、是等
ノ事業ニ要スル土地モ、其事業ノ遂行上之ガ收用又ハ使用
スルノ途ヲ開キマシテ、事業ノ進捗ヲ圖リ、且ツ關係人又ハ從
來ノ買戾權者ノ範圍ヲ擴張シ、其他手續上ニ於ケル不便ノ
點ヲ除キマシテ、起業者ノ利便ヲ圖リマスト共ニ、一方ハ被
收用者ノ權利ヲ保護スルノ必要ガアリマスノデ、現行土地
收用法ニ是尋ノ諸點ノ改正ヲ加ヘタノデアリマス、大體ニ
於テ極ク簡單ニ申上ゲマス、何卒御審議ノ上御協賛アラン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=14
-
015・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第四、右議案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=15
-
016・岩崎勲
○岩崎勳君 委員ノ數ハ特ニ十八名トシ、議長ニ於テ指
名アランコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=16
-
017・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニハ御異議ナシト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=17
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018・岩崎勲
○岩崎勳君 議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提出致
シマス、卽チ政府提出、貴族院送付、取引所法中改正法律
案ノ第一讀會ヲ開キ、政府ノ說明ヲ求メ之ヲ審議シ、引續
キ之ガ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ行ハレンコトヲ望ミ
マス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=18
-
019・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ日程變更ノ緊急動議ハ
御異議ナシト認メマス、仍テ日程ハ變更サレマシタ、取引所
法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、山本農商務大臣
取引所法中改正法律案(政府提出、貴族院
送付)第一讀會
(小字ハ貴族院修正)
取引所法中改正法律案
取引所法中左ノ通改正ス
第四條株式會社組織ノ取引所ハ他ノ株式會社組織
ノ取引所ヲ合併スル場合ニ限リ政府ノ認可ヲ受ケ其
ノ存在シタル地區內ニ支所ヲ設クルコトヲ得支所ノ
數ハ其ノ合併ニ依リ消滅スル取引所及支所ノ數ヲ超
ユルコトヲ得ス
○取引所ト看做シ
第四條ノ二有價證劵ヲ賣買取引スル市場ハ〓本法ニ
依ルニ非サレハ之ヲ設立スルコトヲ得ス
第六條中「仲買人及」ヲ削リ「仲買人ニ」ヲ「取引員ニ」ニ
改ム
第八條取引所ハ政府ノ認可ヲ受ケ取引所ノ賣買取
引ニ附帶スル業務ヲ營ムコトヲ得
第二十二條ノ規定ニ依リ賠償ノ貴ニ任スル株式會社組織ノ取
引所ハ倉庫業ヲ除クノ外前項ノ業務ヲ營ムコトヲ得ス但シ物
件又ハ銘柄ノ一部ニ付賠償ノ貴ニ任セサル場合ニ於テ其ノ一
部ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第三章取引所ノ會員及取引員
第十條第一項ヲ削リ同條中「仲買人」ヲ「取引員」ニ改ム
第十一條中「帝國臣民」ノ下ニ「又ハ帝國法令ニ依リ設
立シタル會社」ヲ加へ「仲買人」ヲ「取引員」ニ、「婦女、未
成年者、」ヲ「無能力者、」ニ、「其ノ執行ヲ受クルコトナキ
ニ至リ」ヲ「刑ノ執行ノ免除ヲ得」ニ改メ同條ニ左ノ一項
ヲ加フ
合名會社、合資會社又ハ株式合資會社ニ在リテハ其
ノ無限責任社員ノ全員カ帝國臣民タルモノ、株式會
社ニ在リテハ其ノ資本ノ半額以上及議決權ノ過半數
カ帝國臣民又ハ帝國法令ニ依リ設立シタル法人ニ屬
シ其ノ取締役其ノ他ノ業務ヲ執行スル役員ノ全員カ
帝國臣民タルモノニ非サレハ會員又ハ取引員トナルコ
トヲ得ス無限責任社員又ハ取締役其ノ他ノ業務ヲ執
行スル役員中前二項ニ該當スル者アル場合亦同シ
第十一條ノ二中「第十條第一項ノ要件ヲ缺キ又ハ」及
「第十條第一項ノ要件ヲ缺キ若ハ」ヲ削リ「第一項若ハ
第二項」ヲ「第一項、第二項又ハ第四項」ニ、「第一項第
二項」ヲ「第一項、第二項若ハ第四項」ニ、「仲買人」ヲ「取
引員」ニ、「第一項又ハ第三項」ヲ「第一項、第三項又ハ第
四項」ニ、「第一項若ハ第三項」ヲ「第一項、第三項若ハ第
四項」ニ改ム
第十一條ノ三取引員取引所ノ役員タル認可ヲ受ケ
タルトキハ其ノ免許ハ效力ヲ失フ
第十一條ノ四會員又ハ取引員ハ第二項但書ノ場合
ヲ除クノ外支店、出張所其ノ他何等ノ名義ヲ以テス
ルヲ問ハス二以上ノ場所ヲ以テ同一取引所ノ賣買取
引ノ取扱ヲ爲ス場所ト爲スコトヲ得ス
何人ト雖取引所ノ賣買取引ノ委托ノ代理、媒介又ハ
取次ヲ營業ト爲スコトヲ得ス但シ會員又ハ取引員ニ
シテ農商務大臣ノ認可ヲ受ケタルモノハ此ノ限ニ在ラ
ス
第十二條第一項ヲ削リ同條中「仲買人」ヲ「會員又ハ取
引員」ニ改ム
第十三條中「取引所ノ仲買人」ヲ「取引員」ニ改ム
第十四條中「取引所ノ會員及仲買人」ヲ「會員又ハ取
引員」ニ改ム
第十五條中「仲買人」ヲ「取引員」ニ、「五百圓」ヲ「千圓」
三枚入り
第十五條ノ二中「若ハ仲買人」ヲ「若ハ取引員」ニ、「又
ハ仲買人ノ」ヲ「又ハ其ノ」ニ改ム
第十五條ノ三中「仲買人」ヲ「取引員」ニ改メ「死亡シ」ノ
下ニー、解散シ」ヲ、「死亡、」ノ下ニ「解散、」ヲ加フ
第四章取引所ノ役員及商議員會
第十六條中「取引所ノ仲買人」,及「仲買人」ヲ「取引員」
ニ改メ「取引スル」ノ下ニ「株式會社組織ノ」ヲ加フ
第十六條ノ二、第二十七條及第二十八條中「仲買人」
ヲ「取引員」ニ改ム
第十七條中「役員又ハ取引所ノ」ヲ「株式會社組織ノ取
引所ノ役員又ハ」ニ、「仲買人」ヲ「取引員」ニ改ム
第十七條ノ二取引所ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ商議員
會ヲ置キ取引所ニ關スル重要ナル事項ヲ付議スヘシ
第十八條取引所ノ賣買取引ノ期限ハ有價證劵ニ在
リテハ二箇月、米ニ在リテハ三箇月、蠶絲ニ在リテハ
六箇月其ノ他ノ商品ニ在リテハ勅令ノ定ムル期間ヲ
超ユルコトヲ得ス
第二十二條第一項ヲ左ノ如ク改ム
取引所ハ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ賣買取引ノ違約
ヨリ生スル損害ニ付賠償ノ責ニ任スルコトヲ得
第二十二條ノ二株式會社組織ノ取引所ハ前條ノ規
定ニ依リ賠償ノ責ニ任スルトキハ營業保證金ヲ政府
ニ納ムヘシ
第二十四條ノ二取引所ノ賣買取引ノ委託者ハ會員
又ハ取引員カ委託契約ニ違ヒタル場合ニ於テ其ノ違
約ニ因ル債權ニ關シ違約シタル會員又ハ取引員ノ身
元保證金ニ付他ノ債主ニ對シ優先權ヲ有ス
前條ノ優先權ハ前項ノ優先權ニ對シ優先ノ效力ヲ有
ス
第二十五條中「仲買人」ヲ「會員又ハ取引員」ニ、「定期
取引」ヲ、「賣買取引」ニ、「三箇月」ヲ「一箇月」ニ改ム
第二十六條中「各仲買人」ヲ「各會員又ハ各取引員」ニ
改ム
第二十六條ノ二差金取引ヲ爲ス取引所類似施設ヲ
爲シ又ハ其ノ施設ニ依リテ取引ヲ爲スコトヲ得ス
第三十一條第十七條第一項ノ規定ニ違反シ又ハ同
條第二項ノ特別ノ利害關係ヲ生スルコトヲ目的トス
ル行爲ヲ爲シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十二條ノ三第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
免許ヲ受ケスシテ取引所ヲ設立シタル者又ハ〇
四○第二十六條ノ二ノ規定ニ違反シタル者
第三十二條ノ六中「仲買人」ヲ「取引員」ニ改メ「若ハ第
十二條第一項」ヲ削ル
第三十二條ノ七本法ノ罰則ハ法人ニ在リテハ其ノ行
爲ヲ爲シタル理事、取締役其ノ他ノ業務ヲ執行スル役
員ニ之ヲ適用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條ノ改正規定中有價證劵ノ賣買取引ノ期限ニ
關スル規定ハ勅令ヲ以テ他ノ規定ヨリ後ニ之ヲ施行ス
ルコトヲ得但シ其ノ施行ノ期日ヲ大正十三年四月一日
ヨリ後ト爲スコトヲ得ス
本法施行ノ際現ニ營業スル仲買人ハ其ノ營業部類ニ付
本法ニ依リ其ノ取引所ノ取引員タル免許ヲ受ケタルモノ
ト見做ス
本法施行前ニ爲シタル取引所ノ賣買取引ニ付テハ其ノ
取引ノ結了ニ至ル迄仍從前ノ例ニ依ル
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=19
-
020・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 現行取引所法ハ明治
二十六年ノ制定ニ係ッテ居ルノデアリマスガ、爾來必要ニ應
ジマシテ、同法及關係法令ノ改正ヲ爲シマシテ、時勢ノ進
運ニ伴ハシメル處置ヲ今日マデ執リツヽアルノデアリマスガ、
我ガ經濟界ハ最近非常ナル發達ヲ遂ゲマシテ、現行取引
所制度ヲ以テシテハ、到底社會ノ需要ニ應ジマシテ、其本
來ノ職貴ヲ全ウセシムル上ニ於テ遺憾ノ點ガ少クナイノデ
ゴザイマス、是ニ於キマシテ政府ハ速ニ適當ナル改善策ヲ講
ズルノ必要ヲ認メマシテ、一昨年ノ特別議會ニ於テ調査費
ノ協賛ヲ得、爾來取引所法改正調査委員會ヲ設ケマシテ、
改善ニ關スル調査研究ヲ爲シ、其調査ニ基キマシテ、此度
此成案ヲ提出致シマシタル次第デゴザイマス、本改正案ノ
根本義ハ、直物取引ヲ助成シ、無謀ナル投機取引ヲ成ベク
抑壓シテ、取引所當事者ノ團體トシテ物資ノ需給ヲ調節
シ、公正ナヲ相場ヲ公定スル機關タルノ機能ヲ十分ニ發揮
シタイト云フ精神デアリマス、ソレニ付キマシテ第一此取引
所ノ組織ニ關シマシテハ、株式會社組織、會員組織ノ孰レ
ヲ以テ可トスベキヤノコトニ付キマシテモ、論議ハ色〓アリ
マスガ、歐米ノ實例ニ徵シテ見マシテモ、又取引所ノ本質ヨ
リ論ジテ見マシテモ、共ニ當事者團體ヲ其本體ト爲シマス
ル會員組織ヲ以テ理想トスルコトガ適當ト考ヘルノデアリ
マス、併ナガヲ我國ノ株式會社組織ノ取引所ハ、既ニ四十
有餘年ノ歷史ヲ持ッテ居リマシテ、我ガ國情ニ應ジテ今日ノ
發達ヲ爲シタルモノデアリマシテ、此方ニ於テモ採ルベキ點
モ亦少クナイノデアリマス、仍テ今俄ニ此制度ヲ改メマシテ、
全國各取引所ヲ劃一的ニ會員組織ニ變更セシメルガ如キ
ハ、大ニ我ガ國情ノ爲メ考ヘナケレバナラヌ必要ガアルノデ
アリマス、故ニ斯ノ如キ急激ナル改革ハ之ヲ避ケマシテ、徐々
ニ時勢ノ要求ニ適合スル組織ノ現出ヲ期スルヲ以テ適當
ト認メタノデアリマス、株式會社組織ノ此取引所ニ對シマシ
テハ、會員組織ノ長所ヲ大ニ加味スルニ努メ、又是マデ會社
組織取引ニ關シマシテハ、從來ノ法規ハ餘リ嚴ニ過ギマシテ
實情ニ遠ザカッテ居ル事情ガアルノデアリマスル、今回ハ之ヲ整
理致シマシテ實情ニ適セシメ、以テ其實況ヲ促進セシメント
スル精神デアリマス、第二ニ從來ノ規定ニ於キマシテハ、株式會
社組織ノ取引所ハ取取所ニ於テ賣買取引ニ付テ其確實
安固ヲ期スル爲ニ、擔保ノ責ニ任スベキモノト致シテ居リマ
スル、併ナガラ賣買取引ノ當事者自ラ負擔ヲスルヲ以テ本
旨トスル擔保責任ヲ、第三者タル取引所ヲシテ負ハシムル
ガ如キ制度ハ、我ガ國情上之ヲ必要トスル事情ガアルモノ
デアリマス、其長所モ之ヲ認メザルヲ得ヌノデアリマスルガ、
又一面ニ於キマシテハ諸種ノ弊害ノ根源ヲナセルコトモ、何
人モ之ヲ看過スル事ガ出來ナイノデアリマス、仍テ本案ニ於
キマシテハ、取引所ノ擔保ハ當事者ガ相互的ニ之ニ任スベ
キコトヲ原則ト致シマシテ、取引所ノ强制擔保制度ヲ廢シ
タル譯デアリマス、而モ經濟界ノ實情ニ徵シ、取引所ニ擔保
責任ヲ負ハシムルヲ以テ必要ト爲ス場合モアルノデアリマス
カラ、此邊ヲ考慮致シマシテ、農商務大臣ノ認可ヲ受ケマシ
タル場合ニハ、取引所ハ擔保貴任ヲ負擔シ得ル制度ヲ設ケ
テ、サウシテ實際ノ必要ニ適應セントシテ居リマスル次第デ
アリマスル、第三ニ賣買取引ノ方法ニ關スル規定如何ハ、
取引所ノ利弊ノ岐レル根源デアリマシテ、極メテ重要ナル事項
デアリマスガ、就中最モ重要ナル取引ノ最長期ニ付キマシ
テハ、法律ニ明文ヲ設ケテ之ヲ限定シテ居リマス、蓋シ取引
ノ期限ヲ徒ニ長クセシムルトキハ、不健全ナル取引ヲ多カラ
シムルノ慮リガアリマスガ、又不當ニ之ヲ短縮スレバ實取
引ノ事情ニ適セズ、却テ物資ノ供給關係ヲ紊スニ至ルベキ
虞ガアリマス、仍テ有價證劵ニ付キマシテハ、其本質ヨリ之
ヲ二箇月ニ短縮スルヲ適當ト認メ、其他ノ商品ニ付キマシ
テモ、ソレ〓〓適當ト認ムル範圍ニ於テ之ヲ定メタノデアリ
マス、尙ホ取引所ノ賣買方法ニ付キマシテハ、從來ノ如ク其
種類ヲ法制ニ依リテ限定スルコトヲ廢メマシテ、直ニ社會ノ
需要ニ應ゼシメントスル次第デアリマス、併シ不健全ナル投
機取引ヲ抑制シ、取引ノ直物化ヲ期シ、取引所ヲシテ堅實
眞摯ノ取引機關タラシムルノ方法ヲ執リ、長期取引ニ付キ
マシテハ、證據金ヲ懸合セシメ、更ニ取引所ヲシテ倉庫業、
立替業ヲ經營セシメル等、賣買取引所ノ資力信用ノ保護
ト相俟ッテ、此目的ノ速成上必要ナル改正ヲ加ヘタ次第デ
アリマス、第四、一地區一箇所制ハ、現行法ノ根本原則デ
アリマス、然ルニ近時經濟界ノ發達ニ伴ヒマシテ、有價證劵
ノ數ガ著シク增加致シマシテ、其取引繁盛トナリ、取引所
外ニ有價證劵現物市場ノ設置ヲ出願スル者モ少クナイノデ
アリマス、併シ斯ル取引ハ之ヲル悉ク取引所ニ包容スルヲ以テ、
眞正ノ公定相場ヲ決定スル上ニ必要ト考へ、加ルニ有價
證劵ノ完全ナル投機物件タル性質上、之ヲ取引スル市場
ガ必然的ニ差金決濟ヲ伴フベキコトハ、古今東西ノ實例ニ
徵スルモ明ナル事實デアリマス、仍テ本案ニ於キマシテハ、有
價證劵ノ賣買取引ヲ爲ス市場ハ、總テ取引所法ニ依リ之
ヲ律スルコトヽ致シタノデアリマス、其他ノ商品ニ付キマシテ
モ、取引所外ニ於テ差金取引ヲ爲ス取引所類似ノ施設ヲ
爲シ、又ハ斯ル施設ニ依ッテ取引ヲ爲スコトヲ嚴禁致スコト
ハ勿論デアリマシテ、改正案中ノ他ノ條項ト相俟シテ、徒ニ投
機心ヲ誘發シ不健全ナル投機取引ヲ爲シテ社會ニ害毒ヲ
流スガ如キコトヲ防遏シタイト思フノデゴザイマス、以上ノ
趣旨ニ依リマシテ取引所法改正案ヲ玆ニ提出シタル次第
デアリマス、何卒御協賛アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=20
-
021・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 質疑ノ通告ガアリマス、奧村千太
郞君
〔奧村千太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=21
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022・奧村千太郎
○奧村千太郞君 私ハ只今上程サレマシタ取引所法中
改正案ニ付テ質疑ヲ致サウト存ジマス、取引所ニ於ケル賣
買取引、竝ニ之ニ關聯致シマスル所謂場外取引ニ絕エズ
注意ヲ拂ッテ居リマスル者ヨリ見マスレバ、近年程此賣買取
引ノ亂雜ニ流レ、秩序ノ紊レタコトハ既往ニ於テモ其例ガ
ナイノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)隨テ斯樣ナル無
秩序、無節制ニ陷ッテ居リマスル所ノ幾多ノ取引ヲ矯正シ
ヤウト思ヒマスルナラバ、時代ノ要求ニ適應シマスル所ノ法
規ヲ制定シ、若クハ法ノ威力ニ依ッテ之ヲ取締ラナケレバナ
ラヌノデアリマス、吾々ハ此點ヨリ致シマシテ取引所法改正
ノ急務ヲ認メ、同時ニ本改正案ガ現行法ニ比較致シマシテ、
確ニ一進步ヲ爲シタモノト云フコトヲ認メテ居ル者デアリマ
ス、併ナガラ改正ノ箇條ハ表面極テ一小部分デゴザイマシ
テ、此取引所法ヲ活カシテ使ハレルカ、或ハ殺シテ使ハレル
カハ、主トシテ取引所令ノ改正、竝ニ此取引所ノ運用如何
ニ在ルノデアリマス、然ル只今政府當局ヨリ承リマシタル
所ノ說明、竝ニ先般來貴族院ニ於キマスル本案審査ニ對
スル所ノ質問應答ヲ速記錄ニ依ヲテ〓見致シマスルト、政
所當局ガ果シテ取引所ノ改善ニ關シマシテ、徹底的ノ御意
見ト確信ヲ持ッテ此案ヲ提出サレタモノデアルカ否カヲ疑ハ
ザルヲ得ナイノデアリマス、何故ナレバ貴族院ニ於キマスル
所ノ質問ト應答ニハ、幾多ノ矛盾ガアリマス、撞著ガアリマ
ス、瞹眛不明瞭ナ點ガアリマス、ソレデ私ハ極テ肝要ナル二
三ノ點ニノミ對シテ、極テ簡單ナル質疑ヲ致シ明確ナル御
答辯ヲ得タイト存ジマス、第一ハ、本案ノ第八條ノ附帶事
業ノ點ト、此附帶事業ヲ營ム事ニ依ッテ起ル所ノ取引所ノ
資本金トノ關係デアリマス、本改正案ニ於キマシテハ、現在
株式組織ノ取引所ニ會員組織ノ精神ヲ加味シタコトヽ、
新ニ短期ノ定期取引ヲ認ムル事トノ二ツガ改正ノ主眼ト
ナッテ居リマス、サウシテ現在株式組織ノ取引所ハ何ヲ生命
ト致シテ存立シテ居ルカト申シマスト、是ハ御承知ノ如ク强
制擔保ノ制デアリマス、此制度アルガ爲ニ取引所ハ怡モ保險
料ニ等シイ所ノ賣買手數料ヲ取リ、之ニ依シテ株主配當
ヲ爲シ、取引所ノ經費ヲ支拂ッテ居ルノデアリマス、卽チ現
行取引所法ノ第二十二條ニ於キマシテハ、株式會社ノ取
引所ハ賣買取引ノ違約ヨリ生ズル損害賠償ノ責ニ任ズヘ
シト斯ウアリマシテ、取引所ハ是非共擔保ノ責ニ任ゼナケレ
バナラヌ制度ニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ〓回ハ之ヲ改
正サレマシテ、取引所ハ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ賣買取引
ノ違約ヨリ生ズル損害ニ付キ、賠償ノ責ニ任ズルコトヲ得
ト、斯ウ各取引所ノ心任セ、卽チ任意擔保ト變ァテ、現在ノ
積極主義カラ消極主義ニ變ルノデアリマスカラ、取引所ハ
其市場ニ於キマスル所ノ賣買取引ニ對シテ、擔保ヲシナイ
コトガ原則ノヤウニナリマシテ、擔保ヲスルコトガ寧ロ例外
ト看做サルヽヤウニナッタノデアリマス、隨テ若モ此制度ト方
法ガ今直ニ實行サレルモノデアルナラバ、各取引所ハ今日ト
違ッタ所ノ別個ノ生命ヲ見付ケ出サナケレバ其存立ハ出來
ナイノデアリマス、然ラバ此場合ニ於テ取引所ハドウシテ存
立シテ行クカ、斯樣ニ申シマスト、取引所ハ仲買人ニ現在ノ
市場ヲ貸シマシテ、其貸賃ヲ取ルコトヽ同樣ノ意味ト、賣買
取引ニ關シマスル〓算ヲ行フ爲ニ要スル費用ヲ取ルニ過ギ
ナイト云フコトニナルノデアリマス、勿論私ハ任意擔保制ニ
ナッタ所デ、現在ノ仲買ノ資產ノ信用程度ニ於キマシテハ、
總テノ賣買取引ヲ取引所ガ擔保セズシテ、何等ノ蹉跌ナク
行キ得ルモノトハ考ヘマセヌ、併ナガラ理論トシテハ右ノ樣
ナ結果ニナルノデアリマス、隨テ斯樣ニナリマスル曉ニ於テ、
現在ノ取引所ハ何ニ依ッテ立行クコトガ出來ルカト申シマ
スト、ソレハ本案八條ニアリマスル所ノ附帶事業ニ依ッテ、主
トシテ收入ヲ擧ゲルコトニスルノ外ハナイノデアリマス、故ニ
擔保制度ガ事實上全廢セラレナイ今日、若クハ近キ將來ニ
於キマシテハ、之ヲ附帶事業ト稱セラレマスケレドモ、改正
案ノ本旨カラ申シマスレバ、此附帶事業ハ實ハ取引所ノ事
業トナルノデアリマス、同時ニ現在ノ株式取引所ニ於ケル株
主等ニ大ナル打擊ヲ與ヘズシテ、又財政ノ波瀾ヲ惹起サシ
メズシテ、株式組織ノ取引ヲ會員組織ノモノニ移リ變ラシ
ムルコトノ希望ヲ達セントスレバスル程、所謂附帶事業ヲ盛
大ナラシメテ、取引所ガ賣買手數料ノ收入ヨリモ他ノ事業
ノ收益ニ重キヲ置クコトニ、其營業振ヲ變へナケレバ其目
的ヲ達スルコトガ出來ナイノデアリマス、茲ニ於テ私ハ之ニ
對スル政府當局ノ見解、又ハ〓後ノ對取引所方針ナルモ
ノニ多大ノ疑問ヲ懷ク者デアリマス、其次第ハ是等ノ事情
ニ關シテ政府當局ガ從來貴族院ニ於テ爲サッタ御說明ナル
モノガ、甚ダ不透明ナ爲メデアリマス、適〓貴族院ニ於テ二
十二條ニ修正ヲ加ヘラレ、附帶事業ヲ許サレル範圍ハ稍〓明
暸ニナッタヤウデアリマスガ、ソレデモ尙且ツ判然致サヌ點ガ
多イ、解釋次第ニ依シテ如何樣ニモ見ラレルノデアリマス、私
ノ考ヘマス所ニ依リマスト、比較的長期ノ取引ハ今後モ依
然トシテ擔保割ヲ採用サレ、短期ノ定期取引ハ無擔保ト
ナルコトガ殆ド原則トナリハ致サヌカ、勿論理窟ハ長期取
引ニ於テモ、平均シテ價格ノ變動ノ少イ取引物ロ四擔擔
制ヲ採用シナイデモ安心シテ取引ガ行ハレルコトト存ジマ
ス、又假令短期取引デモ取引ノ物品ノ種類ニ依リマシテ、
高下ノ荒イ其變動ノ多イモノハドチラカト申セバ取引所ガ
擔保ヲシナイデハ、安心シテ取引ノ行ハレナイヤウナ場合ガ
生ズルデアラウト考ヘマス、此場合ニ於テ政府ハアノ株ノ場
合ニハ擔保ヲナス、此株ハ擔保ヲシナイデモ宜シイト云フガ
如ク、取引物品ノ種類ヤ銘柄ト、時ト場合ニ依ッテ賠償責
任ノ有無ヲ生ズルヤウナ仕組ヲ御許ニナルカドウカ、又同ジ
株式ガ長期ノ定期取引デモ賣買サレ、短期取引デモ賣買
サレマス場合一方ハ有擔保デ一方ハ無擔保ダト致シマスレ
バ、全部ガ無擔保トナラザル限リ、附帶事業ヲ御許シニナラ
ヌ御積リデアルカドウカ、若モ萬一ニモ左樣ナ事ダト致シマ
スルト、長短相俟ヲテ取引ノ行ハルベキモノヲ人爲ヲ以テ取
引ヲ阻碍シ若クハ急激ニ制度ヲ改正スルト同樣ノ結果ニ
陷リハ致サナイノデアリマセウカ、右ノ理窟ヲ擴充致シマス
ト、種類ノ多イ所ノ株式ナラバ擔保ノ有無ハ銘柄次第デ如
何樣トモ出來ルカモ分リマセヌガ、一品取引卽チ格付賣買
ノ綿絲等ハ、定期カ現物カ孰レカ一方ノ取引ヲ行フコトニ
シナイ限リ、附帶事業ヲ營ムコトガ出來ナイヤウナコトニナ
リハ致サヌカト考ヘルノデアリマス、又「物件ハ銘柄ノ一部ニ
付云々」トアリマスガ、取引所ノ資本ハ一ツデアルモノヲ、此
内何百何十万圓迄ハ何ヽ株式賣買者ノ責任ニ任ゼラレル
カラ、ソレダケノ分ヲ附帶事業ノ資金トシテ運用ヲ許スト云
フガ如キ方法ハ、實際ト理論ト兩ツナガラ許サレ得ベキモノデ
ハナカラウト存ジマスガ、之ニ對スル政府當局ノ御所見ヲ承
リタイノデアリマス、次ニハ取引所ト資本ノ關係デゴザイマ
スガ、從來政府ハ此取引所ノ增資ナルモノニ付テハ、常ニ非
常ナ干涉主義ヲ執ラレテ居ルノデアリマス、併ナガラ私共考
ヘマスルノニ、從來トシテハ成程如何ニモサモアルベキ事デ、
强制擔保ニ對スル取引所ノ責任トシテハ、濫ニ危險ナル方
面ニ資本ヲ使フトカ、何トカト云フコトハ出來ナイノデアリマ
スカラ、如何ニモ左様ナ方針ヲ執ラレタノガ是ハ道理デアル
ト考ヘマス、又增資ハ動モスレバ手數料率引上ゲノ前提ト
ナリマスカラ、之ニ對シテモ斯ウ云フヤウナ方針ヲ執ラレ來ッ
タコトハ尤ダト考ヘマス、私共此點ニハ同感デアリマスガ、併
ナガラ法ガ一旦改正サレマシテ、取引所ノ性質ソレ自體ガ、
從來ノ强制擔保ヲ撤廢シテ、一種ノ事業會社トナルト云フ
コトソレ自身ガ、益〓會員組織ニ近ヅク道行ト致シマスレ
パ、寧口〓後ハ從來ト反對ニ、政府トシテハ手數料引上ニ
對スル所ノ認可權ヲ御持ニナル、之ヲ許否スル權能ヲ御持
ニナルノデアルカラ、此手數料率ノ引上ニ對スル認可權サヘ
固ク御持ニナッテ居レバ、一方ニ於テ如何程增資ヲ御許ニ
ナリマシテモ、一般資本家ニ對シテモ何等ノ苦痛ヲ與ヘナイ
モノデアラウト思ヒマス、寧口取引所ガサウ云フ自由ナ立場
デ營業スルト云フコトガ、一方ニ於テ會員組織ヲ助長スル
道程デハナカラウカト斯ウ考ヘル者デアリマス、然ルニ現在
ニ於テ政府當局トシテ此法ノ改正ハナサッタニ拘ラズ、依然
トシテ此增資ト云フコトヲ大變御嫌ヒニナルヤウナ御意見
ヲ間接ナガラ承ッテ居リマス、今後モ矢張同樣ノ御方針ヲ以
テ御進ミニナル積リデアルカ、是ハ取引所ノ增資ヨリモ、會
員組織ノ取引所ニ移リ變リ行クコトガ出來ルカ出來ナイカ
ト云フ、單純ナル問題ヲ解決スル所ノ前提ダト思ヒマスルカ
ラ、此際承ッテ置キタイト思ヒマス、第二ノ質疑ハ此近年全
國到ル處ニ非常ニ小現物屋ナル者ガ發生致シマシテ、種々
ノ害毒ヲ流シテ居ルノデアリマス、一方ニ於ケル定期其他ノ
仲買人ハ、政府當局ヨリ非常ナル此監督ヲ受ケマスルガ、
方ニ於ケル市中現物屋ナルモノハ非常ニ自由ノ立場デアリ
マシテ、假令如何ナル薄資ノ者デモ一夜ニシテ現物仲買ノ
看板ヲ掲グテ、サウシテ營業ヲシテ居ルノデアリマス、ソレガ
爲ニ此客筋ニ種々ノ迷惑ヲ及ポスコトガ尠クナイノデアリマ
スカラ、是ハ矢張丁度現在ノ質屋營業ト同樣ニ、一種ノ免
許營業トサレタナラバ、斯樣ナル害毒ヲ流サナイデ宜クハナ
イカト斯ウ考へマスルガ、政府ニ於テハ左樣ナ御考ハ少シモ
御持ニナッテ居ラナイカドウカ、此點ヲ伺ヒタイノデアリマス、
第三ハ綿絲ノ現物取引デゴザイマスルガ、本改正案ニハ有
價證劵竝ニ米或ハ蠶絲トカ云フモノハ、孰レモ改正案第十
八條ニ於テ、其限月デ規定サレマシタニ拘ラズ、獨リ綿絲ニ
付テノミハ何等ノ御規定ガナク、他ノ商品ト共ニ勅令ノ定
ムル所ニ依ルト云フ風ノ御方針ヲ御執リニナッタンデアリマ
ス、是ハドウ云フ譯デ此獨リ綿絲ノミヲ左様ニ御取扱ニナッ
タノデアルカ、之ガ私共ニ頗ル其意ガ解セヌノデアリマス、ソ
レト同時ニ株式等ノ現物ニ致シマスルト、定期トハ劃然タ
ル區別ガ出來得マスケレドモ、綿絲ハ御承知ノ如ク名ハ現
物デゴザイマスガ、或ハ六箇月或ハ一年ト云フ、此長期ナル
先約ヲ行フコトガ現物ノ特色トナッテ居リマス、此場合ニ於
テ主務省ガ從來申サレテ居ルガ如ク、此綿絲ノ現物取引ヲ
假令ヘバ大阪デゴザイマスレバ三品取引所ニ集中シヤウト
斯ウ云フ御計畫ガ假令出來マシタ暁ニ於キマシテモ、果シテ
此定期ト現物ト云フモノトノ區別ガドウシテ出來得ルカ、株
式ナラバ或ハ七日間、或ハ十日間ト云フ短カイ短期取引ガ
行ハレマセウガ、綿絲ニ於テハ之ガ行ハレ得ナイノデアリマ
ス、然ラパドウシテ現物ト定期ト云フモノトノ、其間ニ於ケル
期間ニ付テ區別ガ付キ得ルカ、此點ヲ御伺致シタイノデアリ
マス、ソレカラ第四ハ此改正案ヲ運用スルノハ、政府當局ノ
手心ニモ依リマスルガ、主トシテ此取引所令ノ結果ヲ見ナケ
レバ、此案ガドウ云フ效果ヲ奏スルト云フコトガ確カト分ラ
ヌノデアリマスガ、之ニ對シテ取引所令ノ大綱ト云フモノハ、
既ニ御腹案ガアルノデアルカドウカ、若シ御腹案ガアリマシ
テ、此改正法案ト密接ナル關係ガアリマスル點ガゴザイマス
レバ、其點ニ付テ何レノ日ニ於テカ此大體ノ大綱ト云フモ
ノヲ、御示シ下サランコトヲ望ンデ置ク次第デアリマス、私ノ
質問ハ大體右樣ナ質問デ、尙ホ質疑ノ細目ハ澤山アリマスケ
レドモ、本會議デハ申上ゲナイコトニ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=22
-
023・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 山本農商務大臣
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=23
-
024・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 御答致シマスガ、是マデ
ハ株式組織ニ付キマシテハ强制擔保ヲ主トシテ、サウシテ强
制擔保ヲ會社ニ爲サシメタ、此度ノ改正ニ於キマシテハ相
互的ノ擔保ヲ主ト致シマシテ、サウシテ强制擔保ト反對ナ
ル取扱ヲ致シタノデアリマスルガ、之ニ付テドウ云フ區別カ
ト云フコトデアリマス、此改正ノ趣旨ヲ述べマスル際ニ申述
ベマシタ如ク、此度ノ改正ハ矢張歐羅巴ナドニ行ハレテ居
リマスル會員組織ト云フモノヲ主トシテ、追々ニ其方ニ向ケ
タイト云フ考デアリマス、斯ウ致シマスト云フト、是マデノ如
ク、會社ニ於テ强制擔保ヲ政シマスルユトニ非ズシテ、會員
相互ニ付テ擔保ヲ置クヤウニナル方ニ變ズルノデアリマス、ソ
レデ斯ク致シタウゴザイマスガ、何シロ四十有餘年ノ歷史
ヲ持ッテ居リマスル此株式會社ニ於キマシテ、從來ノ强制擔
保ヲ免レルヤウナコトニ法ヲ用ヰテ行キマスト云フト、多大
ノ變化ガ起ッテ參リマシテ、ソレト同時ニ經濟社會ニ又尠カ
ラヌ變動ヲ起ス虞ガアルノデゴザイマスカラシテ、ソレデ此改
正ノ趣旨ト致シマシテハ、假令改正ヲ致シマシテモ、急激ナ
ル變化ヲ經濟社會ニ及ボサナイト云ワコトヲ、最モ考慮ノ中
ニ加ヘマシテ改正シタコトデアリマス、ソレデアリマスカラシ
テ、此會員組織ヲ主トシテ多ク改正ヲ致シマシタガ、從來取
引所ニ於テ、株式組織デ成立ッテ居ル會社ハ、矢張此意味ニ
於テ限月ヲ-定期デアリマス、限月ヲ主トシテ爲ス者ナラバ
矢張自由ニソレヲシテ宜シイ、政府ニ於テハ此間ニ付テ强
要シテ、サウシテ行クヤウナコトハ成ダケ避ケタイ、ンコデ此
案ニ於キマシテハ、從來今日行ハレテ居リマスル株式組織
ノ限月ニ於テ、卽チ定期-定期ニ於テ爲サント欲スレバ、
矢張是迄ノ通リ自由ニナサシメテ、少シモ變ルコトハナイノ
デアリマス、併シ世ノ中ノ進步ト共ニ追々仲買ノ地位ガ向
上致シマシテ、サウシテ時勢ニ伴ウテ段々參リマスト、ドウモ
會員組織ガ却テ適切ナリト云フ如キ時期ガ來リ、又サウ云
フヤウナル空氣モ起ルノデアラウ、其時ニ於テ徐ニ會員組織
ノ方ニ漸次ニ移レバ宜シイ、是ハ唯法ニ於テ何方デモ御採
リナサイ、會員組織ヲ欲スルナラバ、會員組織ニ編入ヲナサイ、
現行ノ儘デソレヲ欲スルナラバ其儘デオヤリナサイ、二ツノモ
ノヲ此處ニ置イテ置キマスルカラシテ、ソレデ從來ノモノハ何
方デモ宜シイヤウニシマセウ、併シ今後將來ニ於テ起ルモノ
ハ總テ會員組織、是カラ起ラントスルモノハ株式組織ハ法ノ
上デ許サナイ、唯〓來ノモノハ從來ノ儘トシテ、サウシテ變
化ヲ待ツト云フ意味ニ於テ、此組織ヲ致シマシタノデアリマ
ス、ンレハ今御質問ノ點ノ强制シテー强テ擔保ヲ要シタモ
ノヲ、今度ハ擔保シナクテ宜イト云フ如キ反對ノ結果ガ起
ルノデアリマスガ、唯ソシハ今申シク通リニ、會員組織ノ方デ
行キタイモノハ行キ、從來ノ慣例ニ依シテ爲サントスルモノハ
其儘ニ爲シテ宜シイ、斯ウ云フコトニナッテ參リマシタカラシ
テ、此反對ノ結果ガ起ッタ所以デアリマス、併シ現ニ此三箇
月ノ取引デ爲シテ居リマスル現行ノ株式ナラ株式ト云フモ
ノハ、此節ノ法ニ依リマスルト云フト、此三箇月ヲ二箇月ニ
縮メマスガ、二箇月ノ定期、サウシテ又短期ノ取引或ハ一
週間トカ、十日間トカ云フ如キ短期ノ取引、第三ニハ現物
ノ取引、是ハ實際品物ト現金トヲ交換致シマスルモノト、此
三ツノモノガ自由ニ一ツノ取引デナルノデアリマス、ソコデ其
定期ノ取引ニ依リマスト、從前ノ强制擔保ニナルノデアリマ
ス、今度ハ短期ノ取引ニ依リマスト、ソレハ相互ノ擔保ニシ
テ、サウシテ强制擔保ヲ拔クト云フコトニ相成ッテ居リマスカ
ラシテ、其間ノ移リ變リニ於テ、漸次ニ今迄ノ三箇月、二箇
月ノ取引ヲ短期ノ取引ニナサントシテ移スナラバ、其物件、
品物、又銘柄ニ依リマシテハ强制擔保ヲ爲シテ、サウシテ此
方ノ附帶事業ト申シマスル上ノ點ニ於テ爲スコトノ出來ル
ヤウニシタ次第デアリマス、ソレカラ斯ク法律ガ改マリマスト
云フト、從來ニ於テハ取引所ノ增資ナドハ、政府ニ於テ中々
認可ガムヅカシイ、此度ハ自由ナモノデアルカラシテ、增資ノ
ヤウナモノハ自由ニナル筈デアルガ、其點ハ如何カト云フコ
トデアリマスルガ、是ハ今後ニ於キマシテ愈、會員組織ニナ
リマシテ、サウシテ其借換決算等ヲ總テ此處ニ取扱フ機關
ガ起リマシテ、サウシテツレガ其取引繁閑ニ依リマシテ、ドウ
シテモ增資ノ必要ガアルト云フコトニナリマスレバ、無論是
ハ增資ヲ許スノデアリマスガ、併シ其必要ヲ認メナイ場合ニ
於キマシテハ、今日ト同樣政府ニ於キマシテハ、十分ニ其增
資ノ善惡ニ付テハ監督ヲスル心得デアリマス、ンレハ成程御
質問ノ通リ、ソレハ手數料ヲ決メテ置キサヘスレバ、增資ノ
增減ノ如キモノハ關係ガ無イデハナイカト云フ御話ニ對シテ
一應御尤デアリマス、御尤デアリマスガ、今日現ニ在リマス
ル如ク、ドウモ取引所ハ常ニ增資ヲ必要トシテ、サウシテ增
資々々デ求メルノデアリマス、併シ今日許シテアルモノニ於
キマシテモ、多クノ取引所ニ於キマシテハ、マダ拂込モ皆セズ
シテ、甚シイノニ於テハ、數千万ノモノガ矢張十二圓五十錢
ノ拂込ニシテ、其儘ニナッテ居ルモノガ段々アルノデアリマスカ
ラシテ、是ハサウ云フヤウナ新株ナドニ付テ拂込ヲ致シマシ
テ、愈、其上實際ノ取引ニ於テ必要ナルコトガ起キマスレ
パ、無論其時ニ於テ許ス積リデアリマス、此可否ニ付テハ現
行ト別ニ異ッタル取扱ハ致サヌ積リデアリマス、第二エハ此
小サイ取引ガアッテ、免角市場ヲ紊スガ、サウ云フモノハ組
合營業ノ如キモノヲ他ニ制定シテ行クト云フ考ハナイカト
云フコトデアリマスガ、是ハ此度ノ改正ガ幸ニ可決致シマス
レバ、類似ノ取引ニ屬スベキモノハ、皆禁ズル精神デアリマス
カラシテ、是ハ其途ニ於キマシテ、ソレ〓〓監督ヲシテ行キマ
シタナラバ、別段市場ヲ紊スヤウナ不都合ナ事ハアルマイ
ト信ズルノデアリマス、ンレカラ次ニ綿絲、綿布ノ取引、之ニ
付テ他ノ米穀、生絲ノ如キモノハ皆何箇月ト云フ定メガア
ルガ、單ニ綿絲、綿布、棉花ノ三品取引ニ於テハ何箇月ト云
フ期限ガ無イガ、是ハ何故ニ法律ニ設ケズシテ勅令ニ讓ツタ
カト云フ御質問ニ對シマシテハ、御承知ノ通リニ此綿絲、棉
花、綿布ノ如キモノハ總テ世界的商賣ニナッテ居リマシテ、例
ヘバ日本デ綿絲ヲ製シマスルノニ至リマシテモ、亞米利加、
印度ニ關係アリ、而モ其收穫如何ニ依リマシテ、初テ此方
ノ綿絲ノ價ヲ定メ、又其取引ヲ總テ爲スコトデアリマスル
カラシテ、此商買人ハ當リ前ノ三箇月トカ、四箇月トカト
云フヤウナコトデハ到底完全ナル取引ヲ爲シ得ナイノデア
リマス、御承知ノ通リニ綿絲、棉花ノ取引ハ大〓世界的
ニ於テ一箇年ノ期限ニナッテ居ルノデアリマス、英吉利ニ於
キマシテモ、亞米利加ニ於キマシテモ、綿絲、綿布ノ取引ハ一
箇年ト云フコトニ相成ッテ居ルノデアリマスカラシテ、之ヲ他
ノ商品ノ如ク三箇月ヤ四箇月ニ致シマスト、實際ニ付テ
餘程困難ヲ生ズルノデアリマス、カラシテ、是ハ六箇月ニ致シ
マスカ、八箇月ニ致シマスカ、但シハ一年ト云フコトニ矢
張世界的ノモノニ致シマスカト云フコトハ、大ニ事實ニ依
リマシテ、サウシテ考慮スル必要ガアルノデゴザイマスカラシ
テ、其意味ニ於テ此法律ニハ期限ヲ定メナイ譯デアリマス、
ソレカラ限月ト現物ノ取引ト云フモノハ何處ニ區別スルカ
ト云フコトデアリマシテ、成程今日此取引ニ於キマシテハ、延
取引ト稱ヘテ、サウシテンレ〓〓數箇月後ノ約束ヲシテ居リ
マス、サウシテ其間ニ矢張延トシテ是マデ禁ジテアリマシタル
差金賣買ノ如キモノモ實際行ハレテ居ルノデアリマス、斯ウ
云フヤウナル事ハ今申ス如キ法律ノ下ニ、期限ヲソレヲ或
點マデ長ク致シテ居ッタナラバ、其方ニハ一向差支ナイド
思ヒマス、其他現物ノ取引トシテ爲シマスルコトハ、丁度御
話ニアリマシテ、其外ニ於テ爲スモノハ、苟モ此取引所類似
ノ如キモノガアルナラバ、ソレハ成ダケ政府ハ出來得ルダケ
監督ヲ致シマシテ、サウ云フコトノ無イヤウニシタイト思ヒマ
ス、併シ唯本當ニ物ノ注文ニ應ジテ幾ラ買フ賣ルト云フコトニ
付テ、其間ニ相場類似ノモノデナクシテ、當リ前ノ商賣ニ於
テ爲ス如キ取引デアリマシタナラバ、是ハ無論自然ニ起ルコ
トデアリマスカラシテ、之ヲ如何ニスル途ハナイノデゴザイマ
ス、大阪ノ綿布ノ三品取引所外ニ於テ取引ヲスル如キモノ
ハ、是ハ今度ノ改正ニ依ッテ考ヘテ見マスト云フト、是ハ從前
ノ如キ自由ナル取引ハ出來ナイコトニスル積リデアリマス、
大體····(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=24
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025・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 山邊常重君
〔山邊常重君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=25
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026・山邊常重
○山邊常重君 諸君木員ハ只今上程ニナリマシタ取引所
改正法案ニ付キマシテ、聊カ政府當局ニ質疑ヲ致シタイノ
デアリマス、此改正法規ヲ全部通覽致シマスルト云フト第
一ニ限月短縮ノ問題デアリマス、現在ニ於テハ當、中、先、ト
三箇月ニナッテ居リマスケレドモ、之ヲ改正法規ニ依リマス
ト二箇月ニ短縮サレテアリマス、要スルニ此二箇月ニ短縮
サレタ政府ノ御趣意ハ、投機ノ期間ガ長ケレバ長イダケ、投
機思惑ノ心ヲ助長スル、之ヲ短縮シテ成ベク投機的思想、
及ビ思惑的思想ヲ抑壓シタイト云フノガ政府ノ御趣意デア
ルヤウニ思ハレマスケレドモ、是ハ大ナル間違デアリマシテ、
縱令限月ガ二箇月ニ短縮サレマシテモ、決シテ此投機取引
ト云フモノハ、ソレニ依クテ其數ガ減ルト云フコトハ申サレマ
セヌ、ソレハ明治四十一年ノ頃、東京株式取引所ニ於テ新
東株ノ直賣買ト云フモノガ盛ニ行ハレテ、日ニ六七万株、
乃至多イトキニハ十五六万株ノ賣買ガアッタト一云フコトヲ
間イテ居リマス、直取引ハ每日決濟ヲスル取引デアリマス、
ソレデスラ斯ノ如キ莫大ナル取引ガ行ハレルノデアリマスカ
ラ、況ヤ限月ヲ一箇月位短縮致シマシタ所デ、決シテ投機
心ヲ抑制シ思惑心ヲ之ニ依ッテ抑ヘルト云フコトハ、私ハ蓋
シ不可能ダラウト思ヒマス、却テ之ガ爲ニ現在ニ於テハ當、
中、先、三箇月ノ食合デアリマスケレドモ、之ヲ一一箇月ニシマ
スト、食合ノ數ガ多クナリマシテ、隨テ相場ノ波瀾ハ現在ヨ
リ以上ニ大キクナルト私ハ信ジテ疑ハナイノデアリマス、デア
リマスルカラ折角限月ヲ短縮ナサレテ、投機思惑ノ思想ヲ
抑壓シタイト云フ御企ハ、却テ投機思惑ヲ助長スル私ハ原
因デアルト云フコトヲ斷言致シタイノデアリマス、之ガ第一
點デアリマス、第二點ハ附帶事業ノ兼營デアリマスガ、附帶
事業ト申シマスルト、要スルニ取引所ガ立替假拂ヲスルト
云フコトニ止マルダラウト思ヒマス、是ハマダ受渡ノ期日ガ
來ナイ前ニ、代金ヲ立替ヘテ取引所ガ之ヲ拂ッテヤル、ソレニ
對シテ相當ノ利息ヲ取ルト云フコトニナリマスルト、銀行業
ノ兼營トナルヤウナ嫌ガアルノデアリマス、法文ノ上デ認メ
ルト云フコトニ致シマスレバ、取引所ノ理事者ガ買方ナリ、
賣方ナリ、孰レカニ間接直接ニ味方ヲスルト云フコトガ極
ク容易イコトニナルノデアリマス、矢張ヤリ易イヤウニナルノ
デアリマス、此點ニ付キマシテ、政府ハ如何ナル御考デ此附
帶事業ノ兼營ヲ許サレマシタカ、明確ナル御答ヲ承リタイノ
デアリマス、其次ハ會員組織ノ取引所ニ爲サレタ點デアリマ
ス、成程時代ノ進步ト共ニ取引所ヲ改革スル點ハ多々アリ
マスケレドモ、現在ノ株式組織ノ取引所ヲ會員組織ニス
ルトハ、甚ダ適法ノヤウデアリマスケレドモ、私ハ今日日
本ノ現狀、卽チ經濟界ノ狀態及有價證劵ノ數、其他銀
行等ノ關係ヨリ考ヘマスルト、現在ノ取引所ヲ會員組織ニ
導クコトハ出來ルカモ知レナイケレドモ、會員組織ニ之ヲ改
メルト云フコトハ殆ド百年河〓ヲ待ッ嫌ガアルダラウト私ハ
信ズルノデアリマス、殊ニ現在ノ東京ノ株式取引所ノ仲買
人ノ身元保證金ハ十五万圓、今納メテ居ルノガ十万圓、殘
リノ五万圓ハ本年七月マデニ納メレバ宜イト云フコトヲ聞
イテ居リマス、斯ノ如ク信用取引ヲ基礎トスル仲買人ガ十
五万圓ノ身元保證金スラ滿足ニ豫納スルコトガ出來ナイコト
ハ、此點カラ考ヘマシテモ我ガ日本ノ經濟界ガマダ如何ニ
幼稚デアルカト云フコトハ、大凡推定ガ出來ルダラウト思ヒ
マス、、之ヲ會員組織ニ致シマスルト、現在ノ株式取引所ト
云フモノハ無クナルコトニナリマス、サウシマスルト現ニ四千
五百万國ノ資本ヲ有シテ居ル東京株式取引所ガ、ドウ云フ
形ニ依クテ、ドウ處分サレルカ、私ハ疑ハザルヲ得ナイノデアリ
マス、若シ之ヲ政府ガ買上ゲナサルト云フナラバ、ワレハ別ニ
問題ハアリマセヌケレドモ、現在ノ東京株式取式所ヲ會員
組織ニ致シマシテ、仲買人全體ニ於テ之ヲ引受ケルト云フ
コトニスルト、今ノ時價ニ積ッテ約一億圓、東京株式取引所
仲買人ノ數ハ八十人ト限ラレテ居リマス、ザウスルト殆ド一
人頭約百二十万圓カラノ金ヲ固定サセナカッタナラバ、此
現在アル所ノ株式組織ノ取引所ハドウスルコトモ出來ナイ
コトニナルノデアリマス、此點カラ考ヘマシテモ、我ガ日本ノ國
デ會員組織ノ取引所ノ方面ニ進メタイト云フコトハ、是亦
現在ニ於テ不可能ナル事ト思フノデアリマス、殊ニ會員組
織ニ致シマスト、資力ノアル仲買及信用アル仲買ハ宜クア
リマスケレドモ、若シ會員中ニ信用モナク、或ハ資產モナイ
人ガ仲買ヲシテ居ルト、詰リ組合ノ會員デ仲買事業ヲシテ
居ルト致シマスルト、其人ノ不法行爲ニ依ッテ生ジタル所ノ
總テノ損害ハ、會員全體ガ連帶シテ責任ヲ負フト云フコト
ニナルガ故ニ、若シ現在ニ於テ會員組織ヲ實行ナサレマシ
タナラバ、性質ノ惡イ、信用ノ無イ、資產ノ無イ仲買ハ相當
繁昌スルカモ知レマセヌケレドモ、信用アリ資產アル仲買ハ
之ニ依ッテ却テ驅除サレハシナイカト云フコトヲ心配スルノ
デアリマス、之ガ第三ノ質問デアリマス、殊ニ現在ニ於テハ
强制擔保ノ下ニ取引ノ賣買ヲ致シテ居リマスケレドモ、ソ
レデスラ尙且ツ色〓ノ問題ガ起ッテ、昨年ノ如キハ東京株式
取引所ニ於キマシテモ、而モ二人ノ違約處分ヲ出シテ居ルノ
デアリマス、之ニ依フテ生ジタ損害ハ、私共ハ知リマセヌケレ
ドモ、サウ云フ問題ガ起ル度ニ、取引所ハ多少ナリトモ損害
ヲ被ムルト云フコトハ蓋シ明ナル事實デアリマス、之ヲ任意
擔保制ニ改メ、卽チ會員組織ニスルト云フコトハ、果シテ現
在ノ我ガ國情及經濟上ニ適合シテ居ルヤ否ヤト云フコトニ
付テ、政府當局ノ說明ヲ承リタイ、之ガ第一段デアリマス、ソ
レカラ序デアリマスルガ第二段-所管ガ違ヒマシテ大藏
省ノ-マダ上程ニナリマセヌケレドモ、序ニ質問致シタイノ
デス、ソレハ取引所稅法ノ改正デアリマス、現在ノ取引所稅
法ハ大正三年三月三十日、法律第二十三號ヲ以テ發布
セラレタノデアリマス、之ニ依リマスルト云フト第五條ノ第
一種ハ卽チ地方債證劵及社債劵ノ稅金ハ万分ノ二ニナッ
テ居リマス、御提出ニナリマシタ取引所稅法ヲ見マスルト云
フト是ガ万分ノ零六ニ引下ゲラレテ居リマス、ンレカラ第二
種ノ有價證劵、是ハ現在ノ法律ハ万分ノ五デアリマスケレ
ドモ、改正ノ稅法ヲ見マスルト云フト、万分ノ二半ニ引下ゲ
ラレテアリマス、第三モ同クサウナッテ居リマス、是ハ成程有
價證劵ノ賣買及其他ノ商品ノ賣買移轉ヲ圓滿ナラシムル
上ニ於キマシテ、稅金ヲ引下ゲラレタト云フコトハ私ハ謹デ
賛意ヲ表シマスルケレドモ、第六條ノ規定ヲ全ク削除セラレ
タト云フコトハ、私ハ甚ダ遺憾ニ堪ヘナイ、其理由ハ現在ノ
稅法ニ依リマスルト云フト、定期取引ニ於ケル所ノ轉賣買
戾ニ付キマシテハ稅金ヲ課セナイ、詰リ稅金ヲ取ラナイ事ニ
ナッテ居リマス、所ガ此規定ヲ削除サレマスルト云フト、此期
間ニ於ケル轉賣買戻ニ付キマシテモ、今回ハ万分ノ二、五ノ
稅金ヲ課スルト云フ事ニナリマスルト、今日ノ取引所ノ實狀
カラ致シマスルト、多イ日二八五十五万株、少イ時デモ六七万
株ノ取引賣買ガアルサウデアリマス、之ニ對シテドウ云フ風
ニ決濟サレルカト云フト、現在ニ於テハ取組高ノ約八割ハ、
轉賣買戾ノ形式ニ依ッテ決濟サレルノデアリマス、殘リノ二
割ガ實際ノ株劵取引、卽チ受渡ニ依ヲテ其決濟ヲ終了スル
ノデアリマス、サウシマスルト此轉賣買戻ヲスルト云フヤウナ
人ハ、多クハ小資本家若クハ小株主デアル、現在ニ於テハ
此小資本家小株主ニ對シテハ取引所ノ稅金ヲ課セナイケ
レドモ、改正法ニ依ルト之ニ稅金ヲ課スル、殊ニ大株主若ク
ハ大資本家ハ期月ニ至リマシテ其株劵ヲ引取ッテ之ヲ所
有シテ居ルコトハ出來マスケレドモ、小資本家ハサウ云フコ
トハ出來ナイノデ、巳ムヲ得ナイカラ轉賣買戾ノ形式ニ依ッ
テ此取引ヲ決濟スル、サウ云フ狀態デアリマスケレドモ、此
改正法ニ依リマスルト、所謂小株主及小資本家ヲ壓迫シ
マシテサウシマシテ大資本家ヲ援護スルニ餘リ厚クハナイカ
ト私ハ考ヘルノデアリマス、サウシマスト云フト、成程政府ノ
考デハ、一面カラ此轉賣買戾ノ取引ニ對シテ稅金ヲ課スル
ト云フコトハ、實際ノ取引ダケ行ハセテ、投機的、思惑的ノ
取引ハ行ハレナイヤウニナルト云フ御考デアルカモ知レマセ
ヌケレドモ、是ハ前段取引所改正法ニ於テ述べマシタ通リ、
決シテ之ヲ國民ノ投機心及思惑心ヲ抑壓スルコトハ蓋シ不
可能デアラウト思ヒマス、此點ニ付キマシテ政府ハ何故ニ第
六條ヲ削除ナサレマシタカ其理由モ併セテ、所管ハ違ヒマ
スケレドモ政府當局ニ承リタイ、是デ私ノ質問ハ終リマス
(拍手)
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=26
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027・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 御質問ノ三箇月ヲ二箇
月ニ致スコトニ相成リマシテ-斯ク致シテモ投機ノ抑制
ニハナラヌト云フコトデアリマスガ、之ハ見ル所ニ於テ或ハサ
ウ云フ御考モ出ルカモ知レマセヌガ、元來米卜カ、絲トカ、或
ハ綿絲トカ云フ如キ商品ト違ヒマシテ、證劵ナルモノハ餘程
趣ガ違クテ居ルノデアリマス、米ノ如キ、絲ノ如キモノハ、例
パ養蠶ナラ養醬ニ於テ春蠶ヲ拵ヘマシテ、ソレヲ絲ニ紡イデ
今度外國ニ賣出シマスルト云フモノハ、此春ノ養蠶ガ遂ニ
翌年ノ又養蠶ノ時期マデモ關係ヲスルモノニ相成ッテ居ル
ノデアリマス、又綿絲ノ如キモノニ於キマシテモ棉ノ豐凶ニ
依シテ綿絲ノ値ガ定マル、隨テ其生產ニ付テ幾ラニ賣ッタラ
宜シイカト云フコトノ勘定モソレカラ起ッテ參ルノデアリマス、
ソレ故ニ綿ヲ買付ケ、又繭ヲ買ッタト云フ人ハ、其繭ヲ土臺
ノ原價トシテ、サウシテ製絲ヲ幾ラシテ之ヲ幾ラニ賣ルト云
フコトノ勘定ヲ立テル次第デアリマスカラ、其間ニ於テハ大
變月日ヲ要スル次第デアリマス、併シ有價證劵ニナリマシテ
ハ、何モンレカラ造ルノデハアリマセズ、今日現存シテ居リマ
スル其會社ノ株ヲ賣買致スノデアリマスル、ソレ故ニ唯徒ニ
此期間ヲ長クシテ居ルト云フコトハ、謂ハヾ寔ニ意味ノ無イ
コトニナルノデアリマス、一會社ノ株ヲ賣リマスト言ヒマシタ
所ガ、此モノガ九州ノ端ヨリ東京ニ送リ、北海道ノ端ヨリ東
京ニ持ッテ來テ賣ルト見マシタ所ガ、サウ非常ナル時ハ要シ
ナイノデアリマス、又其間ニ於テ非常ナル變化モ大體ノ經
濟上ヨリ外ニ其品物ハ自身ニ於テハドウシテモ長イ間デ賣
買ヲシナケレバナラヌト云フ必要モ他ノ物ヨリモ少イノデアリ
マス、ソコデアリマスル故ニ、政府ニ於キマシテハ三箇月ノ如
キ長イモノハ昔鐵道或ハ電信、電話ト云フ如キモノヽ無イ
時ノ物ナラバ中ミ一時ニ品物ヲ運搬シマス上ニ付テモ、餘
程時ヲ費シマスケレドモ、今日ニ於テハ電信一本デ賣買モ
出來、又ンレニ付テ其品物ヲ送ルコトモ出來ルノデアリマス
カラシテ、マダ縮メテモ宜シイ位ニ考ヘルノデアリマス、併ナガ
ラ三箇月ノモノヲ二箇月ニスルト云フコト、ソレヲ尙ホヨリ短
クスルト云フコトハ餘リ經濟上習慣ヲ破ルコトニナリマシテ
宜シクナイト思ヒマス、ソコデ先ヅ是カラ三箇年ノ裕トリヲ
與ヘマシテ、大正十五年ニ於テ初テ二箇月ニスルト云フ如
キ、洵ニ緩漫ナル改正デゴザイマスカラシテ、之ニ付テハ政府
ニ於テハ適當ナル短縮ノ仕方ト心得ル次第デアリマス、ソレ
カラ第二ニ附帶事業ヲ爲サシメレバ、今日ノ株式組織ノ會
社ニ付テ賣買孰レカニ付テ遂ニコチラノ贔屓ヲスルトカ、ド
ウトカ云フ强弱ノ關係ヲ來シテ、ソレガ爲ニ弊ガ起ルト思フ
ガ、ドウカト云フ事デアリマスガ、之ニ付キマシテモ、マア附帶
事業ナルモノハ會員組織ニ於テドウシテモ無ケレバ缺損或
ハ立替ト云フ如キモノガドウシテモ生レテ來ルモノデアリマ
ス、强制擔保ヲ要スベキ會社ニ、其株式會社ニ直ニ强制附
帶事業ヲ爲サシメルト云フト、遂ニ御疑問ノ如キ事ノ生ズ
ル憂ガアルノデアリマスカラシテ、此會社ノ其株式組織ヲ離
レテ强制擔保ニ變ズル、例ヘバ十ノ有價證券ニ付テ、其間
ニ二ツトカ三ツトカ云フコトニソレヲ變ジテ、サウシテ會員ノ
相互ノ責任ト云フコトニシテ行クナラバ、ソレダケハ强弱ノ
關係ニナラヌ、卽チ會員組織ノ方ノ取引トナルノデアリマス
カラシテ、是ハ强弱ノ關係デ賣買孰レカニ偏スルト云フコト
ハナイダラウ、丁度今御話中ニアリマシタ如ク、取引所ノ其
賣買取引人ニ一ノ銀行ガ金ヲ貸シ株ヲ貸スト云フノト殆
ド同ジ關係ニナルノデアリマスカラシテ、ソレニ付テハ別段弊
ハ起キナイト云フ考デアリマス、ソレカラ第三ニ取引所ノ會
員組織ノ變更ハ、是ハ或ハ何時マデ經ッテモ行ハ〓ヌ、百年
河〓ヲ待ツ如キモノデアルト云フ事デアリマスガ、或ハ御疑
問ノ如キ事ニナルカモ知レマセヌ、ンコハ政府ニ於キマシテ
ハ、立テ前ヲ會員組織ニ致シマスガ、會員組織タルガ故ニ、
是迄ノ株式會社ヲ是非會員組織ニ改メロ、早クシロト云フ
如キ强要ハ決シテ致サナイ、唯株主、仲買人、其關係ノ人ガ
會員組織ニシタイト云フ如キ空氣ガ、世ノ進運ト共ニ自然
ニ起ッテ來タナラバ、其時ニ爲シ得ル事ノ法ヲ今日ヨリ設ケテ
置ク、將來ノモノハ會員組織デアルガ、從來ノモノハ今言フ如
キ自然ノ成行ニ任セテ行クト云フコトデ、成タケ變化ノナイ
モノニ致シテ居ル次第デアリマス、ソコニ至リマシテ株式會
社ニ於キ、又ソレニ關係ノ利害ヲ持シテ居ル取引人ニ於テ、
矢張從前ノガ宜シイ、從前ノ通リニヤリタイト言フナラバ、
少シモ是マデヨリ違タコトハナイ、從前ノ通リニ何時マデモ
爲シ得ルノデス、サウ云フ自由ヲ與ヘテ居ルノデアリマス、而
シ會員組織ニスルト云フコトハ、今ノ御質問ノ時ニアリマシ
タ仲買人ニ於テ或ハ會員組織ニナルト、仲買人ガ甚ダ資本
ノ微弱ニシテ、又信用ノ薄弱ナル者ガアリ、ソレガ仲間ニ這
入ッテ居ルト、互ノ連帶的責任デアル故ニ、外ノ善イ者ガ段
段去ヲテシマフヂヤナイカト云フ御話デアル、是モ成程資本
ノ微弱ニシテ信用ノ薄イ者ガ澤山アレバ、善イ人ハソレト仲
間入スルコトハ好ミマセヌ故ニ去ル譯デアリマス、併シンレト
同時ニ善イ仲買人ガアルナラバ、惡イ仲買人ハ成タケ仲間
ニ這入ラナイヤウニシテ行クヨリ外ニ仕方ガナイノデアル、ソ
コデ今ハ假令仲買人ニ信用ノ薄イ者ガアラウガアルマイガ、
會社ニ於テ强制擔保シテ居ルノデアリマスカラシテ、如何ナ
ル者ガ仲買人ノ中ニアッテモ、客ハ殆ド仲買人ヲ選バズシテ
何處ヘデモ注文シテ居ル、而シテ會社ガ責任ヲ負フト云フ
ノデアリマスカラシテ、仲買人ノ善惡ヲ餘リ選バズシテ行キ、
又仲買人ハ客ノ身代如何モ餘リ考ヘズシテ、サウシテ爲シ
得ルト云フ如キ、洵ニ責任ノ薄イモノデ取引シテ居ルノデア
リマス、其間ニ色〓ナ害ガ起ルノデアリマス、若シ連帶ニシマ
スト云フト、惡イ者ヲ仲間ニハ入レナイ、又皆ガ資本ノ少イ
者デアルナラバ、成タケ資本ヲ殖ヤサウ、又信用ヲ增サウ、自
身ノ地位ノ向上ヲ御互ニシヤウト思ウテ、互ニ戒メ合ヒ、互
ニ責メ合ノテ、サウシテ立派ナモノニシテ、客ノ成タケ來ルヤウ
ニ、顧客ノ爲ニ自身ノ信用ヲ增スト云フ事ガ起ルノデアル、
又客ニ於テモサウ云フモノデアリマスカラシテ、餘程仲買人
ノ身代、信用ヲ眺メテ、サウシテ注文シナイト云フト、是ハ色
色ナル引ッ掛リガ起リ、サウシテ困難ガ生ズルノデアリマス、斯
ウ云フヤウナコトハ會員組織ニシマスト、會員自ラ相戎メ、
又仲間ヲ選ブト云フヤウナコトニナッテ、顧客モ亦斯ノ如ク
シテ相倚リ相扶ケテ、サウシテ地位ノ向上ヲ圖リ、責任ヲ成
タケ持タシテ行ク、何デモ會社ガ强制擔保デアルカラ宜イト
云フガ如キコトハ色こ弊ガ起ル、故ニ丁度御議論ノ反對ノ
結果ヲ生ジタイト云フ積リデ、玆ニ變更致シタル次第デアリ
マス、此段御答致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=27
-
028・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ヲ議題ニ供シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=28
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029・岩崎勲
○岩崎動君 委員ノ數ハ特ニ十八名トシ、議長ニ於テ指
名アランコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=29
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030・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス、取引所稅法中改正法律
案ノ第一讀會ヲ開キマス、大藏大臣
第五取引所稅法中改正法律案(政府提
出第一讀會
取引所稅法中改正法律案
取引所稅法中左ノ通改正ス
第五條取引所ニ於ケル賣買取引ニシテ差金ノ授受ニ
依リテ決濟ヲ爲シ得ルモノニハ其ノ【賣買各約定金高
ニ對シ左ノ稅率ニ依リ取引稅ヲ課ス
第一種地方債證劵又ハ社債劵ノ賣買取引
甲七日以内ノ期限ヲ以テ履行期ト爲スヘキ収
引ニ屬スルモノ萬分ノ〇·六
乙其ノ他ノモノ萬分ノ一
第二種有價證劵ノ賣買取引
甲七日以内ノ期限ヲ以テ履行期ト爲スヘキ取
引ニ屬スルモノ萬分ノ一·五
乙其ノ他ノモノ萬分ノ二·五
第三種商品ノ賣買取引萬分ノ二·五
賣買ヲ解約スルモ其ノ稅金ハ之ヲ免除セス
第六條削除
第七條中「定期取引」ヲ「賣買取引」ニ改ム
第八條中「仲買人」ヲ「取引員」ニ、「毎月分ノ定期取引
ヲ「取引稅ヲ課セラルヘキ每月分ノ賣買取引」ニ、「種別」
ヲ「種別及其ノ區分」ニ改ム
第九條乃至第十四條、第十六條、第十八條、第十九條
及第二十一條中「仲買人」ヲ「取引員」ニ改ム
第十七條中「定期取引」ヲ「賣買取引」ニ改メ第三項ヲ
削ル
第十七條ノ二取引所ニ於ケル賣買取引ニシテ第五
條ニ規定スル賣買取引ニ該當セサルモノニ付差金ノ
授受ニ依リテ決濟ヲ爲シタルトキハ取引物件ノ種別
ニ從ヒ其ノ最高稅率ノ取引稅ヲ課セラルヘキ賣買取
引ヲ爲シテ脫稅シタルモノト看做シ其ノ稅金五倍ニ
相當スル罰金ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ稅金
二十圓未滿ナルトキハ罰金額ヲ百圓トス
前項ノ場合ニ於ケル稅額ハ賣買各約定金高ニ依リ
計算ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ニ爲シタル取引所ノ賣買取引ニ付テハ其ノ
取引ノ結了ニ至ル迄仍從前ノ例ニ依ル
「政府委員神野勝之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=30
-
031・神野勝之助
○政府委員(神野勝之助君) 此度取引所法案ガ提出セ
ラレマシタノニ伴ヒマシテ、取引所稅ノ賦課方法竝ニ稅率ニ
關シマスル規定ヲ修正致ス必要ガアリマシテ、本案ヲ提出
致シタル次第デアリマス、其要點ヲ申上ゲマスレバ、第一ニ
ハ現行取引所稅法ニ依リマスルト、定期取引ニ對シテ取引
所稅ヲ賦課スルコトニナッテ居リマスガ、今回ノ取引所法改
正案ニ於キマシテハ、定期取引ト云フ用語ヲ削ッタノデアリ
マス、ソレデアリマスカラ取引所稅法ニ於キマシテ、取引所稅
ヲ課稅スベキ取引ハドンナモノデアルカト云フコトヲ明ニ致
シテ置ク必要ガアルノデアリマス、仍テ取引所。ニ於キマスル
取引中、差金ノ授受ニ依ッテ決濟シ得ル取引ニ對シテ課稅
スルト云フコトニ定メマシタ、第二ニハ現行稅法ニ依リマス
ルト新規賣買ニ對シテ万分ノ五ノ稅率ヲ以テ課稅致シマ
シテ轉賣買戾ニハ課稅致サナイコトニナッテ居ルノデアリマ
ス、併ナガラ本案ニ於キマシテハ、轉賣買戾ヲ以テ一ツノ新
規ノ取引ト看做シマシテ、是ニモ課稅ヲ致ス事ニ致シマシテ
稅率ニ付キマシテハ從來ノ万分ノ五ノ稅率ヲ折半シテ、新
規賣買デアルト、又轉賣買戾デアルトヲ問ハズ、總テ賣買取
月ニ付テ萬分ノ二半ノ稅率ヲ以テ課稅スル事ト致シマシタ
第二ハ取引所改正案ニ依リマスレバ、有價證劵取引ニ付
テハ其最長期ヲ二箇月トスルコトニナッテ居リマスガ、尙ホ取
引ノ外ニ命令ヲ以テ短期ノ差金取引ヲ認ムルコトニ致シテ
ゴザイマス、此短期ノ取引ハ有價證劵ノ堅實ナル取引ヲ助
長スル趣旨ニ出デタルモノデアリマスカラ、其稅率モ長期ノ
取引ニ比シテ輕減スルト云フコトガ適當卜認メマシテ、其稅
率ヲ萬分ノ一半ト致シタ次第デアリマス、右ハ取引所稅法
改正ノ大體ノ要點デアリマスルカラ、御審議ノ上御協賛ア
ランコトヲ希望致シマス、尙ホ此場合ニ於キマシテ、先刻山
邊君ノ御質問ニ御答ヘ致シテ置キマス、第六條ヲ削除致シ
マシタル理由ハ御質問ノ如ク必シモ大資本家ニ利益シテ、
小資本家ニ不利益ヲ來ストハ考ヘマセヌ、轉賣買戾ヲ致ス
場合ニハ、従來ハ初ノ賣買取引ニ對シマシテ萬分ノ五ヲ徴
シタノデアリマス、然ルニ今回ハ之ヲ折半シテ當初ノ取引ニ
ハ其半分ヲ課シ、轉賣買戾ヲ致シタル時ニハ其半分ヲ課ス
ルノデアリマスカラ、轉賣買戾ヲ致シタルモノハ從來ト同ジ
負擔ニナルノデアリマス、而シテ轉賣買戾ヲ致スト云フコト
ハ、其ノ市場ノ狀況ニ依ッテ、思惑ニ依ッテ轉賣買戻モ爲ス
ノデアリマスルカラ、必シモ大資本家ハ轉賣買戾ヲ爲サズ、
小資本ノ人ハ轉賣買戾ヲ爲ストハ言ヘナイト思フノデアリ
マス、ソレ故ニ六條削除ノ結果、大資本家ガ利益シテ、小資
本家ガ却テ負擔ガ重クナルトハ考ヘマセヌ、ノミナラズ従來
ノ如ク轉賣買戾ヲ爲ス者ニモ、又決濟期ニ至ッテ受渡ヲ致
ス者ニモ、同一ノ稅ヲ課シテ居リマスルガ、受渡ヲ爲ス者ハ
却テ負擔ガ重クナルコトニナッテ、投機取引ヲ助長スル結果
ニナルト云フコトガ出來ルノデアリマス、然ルニ改正法案ニ
依リマスレバ、期ニ至ッテ受渡ヲ致ス者ハ、從來ノ稅ノ半額
デ以テ濟ムト云フコトニナリマスルカラ、堅實ナ取引ヲ助長
スル好影響ヲ來スモノト信ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=31
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032・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 奧村千太郞君
〔奥村千太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=32
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033・奧村千太郎
○奧村千太郞君 只今上程ニナリマシタ取引所稅法改
正案ニ付キマシテ、大藏竝ニ農商務、兩當局ニ質疑ヲ致シ
タイト存ジマス、本改正案ハ曩ニ上程サレマシタ取引所法ト
關聯致シマシテ、新ニ短期取引ニ對スル稅目ヲ設ケラレタ
コトヽ竝ニ從來定期取引ノ轉賣買戾ニハ取引稅ヲ課セラ
レナカックモノヲ、今回課稅セラルヽコトニ改メラレタ、此二ツ
"眼目トナッテ居リマス、而シテ新規賣買ト同樣ニ轉賣買
矣ニ課稅ヲ行フコトニ改メラレタノハ、隨分古ク學者ヤ實
際家ノ〓へ來ッタ說ヲ採用セラルヽニ至ッタノデアリマシテ、
確ニ稅法上ノ一新步ト中シテ差支ナイト存ジマス、併ナガ
ラ理論ハ免モ角ト致シマシテ、實際上ニ於ケル此課稅率ハ
從來万分ノ五デアッタ取引稅ヲ、新規賣買ト轉賣買戾、卽
チ手詰商ヒトノ二ツニ區別シタマデヾアリマシテ、課稅ノ形
式コン違クテ居リマスガ、其實質上ニ於テハ從來ト何等ノ相
違ガナイノデアリマス、否、僅ニ相違ガアリト致シマスレバソ
レハ單ニ實際受渡ノ行ハレマスル株式ハ、轉賣買戾ヲ必要
トシナイ結果、從來ノ万分ノ五ヲ万分ノ二半ニ減ゼラレル
ト同樣ノ結果ニナルニ止マルノデアリマス、現物受授ノ取引
ヲ奬勵スル意味ニ於テ、斯樣ナ稅率輕減ノ行ハルヽ其精神ニ
對シテハ、吾々モ無論賛成デゴザイマスルガ、而モ既往ノ統計ニ
依リマスルト、各定期市場ニ於ケル受渡ナルモノハ、大略平
均有價證劵ニ於テ實際賣買高ノ約一割、商品ニ於テ五分
ノ受渡ガ行ハルヽニ過ギナイノデアリマス、而シテ斯樣ナ程
度ノ減稅ニ依シテ、特ニ現物授受ノ受渡ガ今後增加スル見
込ガアルカドウカト申シマスレバ、其望ミハ殆ド皆無デアリマ
ス、取引物品ノ價格百圓ニ付テ僕三一錢五厘ノ減稅ニ依ッ
テ受渡カ增加スルモノトハ、如何ニシテモ豫想スルコトガ出
來ナイノデアリマス、然ルニ斯樣ナ極テ一部分的ナ改正案
ヲ案出サレマシタト云フコトハ、政府當局ガ短期取引ニ對
スル課稅ノ釣合カラ强テ斯樣ナ案ヲ出サレタモノデハナイカ
ト思ヒマス、私ノ見ル所デハ現物ノ受授ヲ奬勵スル爲ニハ
右ノ如キ方法モ勿論必要デハアリマスケレドモ、ソレ以上ニ
更ニ必要ナ事ハ、取引所ノ賣買手數料ヲ引下グルコトガ、
何ヨリモ眞面目ナル放資家ニ利便ヲ與ヘ、且ツ現物ノ授受
ヲ助長スル所以カト考ヘマス、之ニ對スル政府當局ノ御所
見ハ如何デアルカ、實ハ斯樣ナ質問ヲ致シマスルノハ、從來
取引所稅ノ輕減セラレタ割合ニ、取引所ノ手數料率ハ總ジ
テ左程ノ引下ガ行ハレテ居ナイカラ、之ヲ第一ニ御尋スル次
第デアリマス、第二ニ伺ヒタイノハ、由來取引所稅ハ投機抑
壓ノ意味カラ重稅ヲ課セラルル傾向ガアルノデアリマス、然
ルニ今囘ノ改正案ニ依リマスルト、有價證劵ノ取引ハ現在
三箇月ノ限月ヲ、二箇月ニ短縮セラルヽノデアリマスカラ、
若シ長期ノ取引程投機的取引ニ流レルト云フコトガ正當
ナ解釋ダト致シマスレバ、此改正ハ一箇月ダケ投機ヲ抑壓セ
ラルヽ結果トナルノデアリマス、果シテ然ラバ限月ヲ短縮ス
ル有價證劵ノ取引ニ對シテハ、啻ニ受渡ノ行ハルヽ分ニ對
シテノミ取引稅ノ負擔ヲ輕クスルニ止ラズ、一律ニ減稅ヲ行
ハルヽノガ當然デハナカラウカ、而シテ取引物ロ四ノ種類ニ依ッテ
限月ノ長短ヲ行フコトカ至當ダト致シマスレバ、其取引ニ課
セラルヽ稅率モ亦取引物品ノ種類ニ依ッテ差異ヲ生ズルノ
ガ合理的デアルト考ヘラレマス、又從來學者乃至實際家ノ
唱ヘマス如ク、投機抑壓ノ意味カラ中シマスレバ當限、中
限、先限ノ三限月ニ對シ、各限月ノ賣賣ニ依ッテ稅率ヲ異
ニシ、先物ニ對シテ程稅率ヲ重クスルノガ當然デアリマセウヽ
然ルニ從來ハ手數ノ煩雜デアルト云フ點カラ、此三ツノ限
月ニ向ッテ同率ノ稅ヲ課セラレ來ッタ次第デゴザイマスガ、旣
ニ今囘ノ改正ニ依テ受渡ノ行ハルヽ分ニ對シ、減稅同樣ノ
方法ガ行ハルヽナラバ、更ニ一步ヲ進メマシテ何故ニ限月ニ
依シテ稅率ヲ異ニセラレナカッタノデアルカ、乃至限月短縮ヲ
行ウタモノニ對シテ減稅ヲ行フノ方針ヲ採用サレナカッタノ
デアルカ、又取引物品ノ種類ニ依リマシテ稅率ヲ異ニシタ實
例ハ、嘗テ米商會所竝ニ株式取引所仲買人納稅規則ヲ制
定セラレタ頃ニハ、米商會仲買人ノ定期賣買ニ付テハ、賣
買雙方ヨリ各約定代金ノ千分ノ五、株式取引所仲買人
ノ定期賣買ニ付テハ各約定代金ノ千分ノ一ヲ納稅セシメ
タ歷史モアリマス、今回ノ稅法改正ニ付テ、政府當局ハ取
引物品ノ種類ヤ限月ノ相違ニ依シテ稅率ヲ異ニスルト云フ
此種ノ調査又ハ内議ヲ全然行ハレナカッタカドウカ、此點ヲ
承リタイノデアリマス、第三ニ伺ヒタイノハ、今回新ニ設ケラ
レマシタ短期取引ニ對スル課稅ノ點デアリマス、現在ノ直
取引及延取引ハ孰レモ無稅デアリマスガ、今囘取引所法ノ
改正ニ依ッテ、此直及延取引ニ代ルベキ短期取引ニハ課稅
ヲセラルヽコトニナリマシタ、本案ヲ見マスルト、長期
ノ定期ト同樣ニ從價稅ヲ課セラレ「七日以內ノ期
間ヲ以テ履行スヘキ取引ニ屬スル」云々トアリマシテ、地方
債證劵又ハ社債ノ賣買取引ハ万分ノ零·六、株式ハ万分ノ
一·五ト定メラレテアリマス、此万分ノ一半ハ如何ナル點カ
ラ割出サレタモノカハ存ジマセヌガ、短期ノ定期ハ長期ノ定
期ト同樣ニ、差金取引ヲ認メラレタトハ申セ、僅ニ七日以內
ヲ以テ受渡履行期限トセラレテ居ル、取引トシテハ如何ニ
モ稅率ガ高キニ過ギハセヌカト思、レルノデアリマス、一口ニ
申シマスルト万分ノ一半デハアリマスガ、轉賣買戾ヲ行ヘバ
實ハ万分ノ三デアッテ、現在三箇月限月ノ定期ガ万分ノ五
デアルニ對照致シマスルト、如何ニモ高率デアリマス、元來此
短期取引ハ現物取引ヲ助長スル趣旨カラ、時代ノ要求ニ應
ズベク與論ニ動カサレテ成立ッタモノデアリマス、然ルニ斯ル
重稅ヲ課セラレルコトハ、現物取引獎勵ノ精神ト甚ダ矛盾
ヲ致シハセヌデアリマセウカ、私ノ信ズル所ニ依リマスレバヽ
若シモ斯ル高率ナル短期取引ニ關シテ、脫稅ガ行ハレナイモノト
スルナラバ、政府ノ收入ハ非常ニ多額ニ上ルコトヲ斷定致シマス、
私ノ斯樣ニ斷言致シマスル根據ハ、現ニ大阪ノ北濱市場ニ於ケ
ル延取引ハ、遙ニ定期取引ヲ凌グ賣買高ヲ示シテ居ルノデアリ
マス、而シテ現在ノ延取引ハ無稅デアリマスカラ、假令脫稅ヲ致
シテモ稅法上ノ取締ヲ受ケナイ、故ニ定期ト違ヒマシテ、所謂
附合セヤ呑行爲ガ非常ニ行ハレテ居リマス、隨テ今後短期取
引ガ有稅トナッテ、稅法上ノ取締ガ行ハレルコトニナリ、且ツ短
期取引專屬仲買ガ公認サレ、將又從來延取引ニ對シ一種
ノ毛嫌ヲナシテ、成ベク其取引ニ携ハルコトヲ避ケテ居リマス、有
力仲買人ガ、現在ノ定期同樣ニ安心シテ、一般客筋ノ注文
ヲ受ケルコトニナリマスレバ、現在ノ直及延取引ヲ總括シタ賣
買出來高ヨリモ、恐ラク二倍以上ノ賣買高ニ上リハセヌカト
推想サレルノデアリマス、想フニ政府當局ハ取引所法、竝ニ取
引所稅法ノ改正ヲ企テラレナガラモ、現在ノ定期取引ガ次
第ニ短期取引ニ移リ變リ行ク時代ノ風潮ト、竝ニ此風潮ニ乘
ジテ現物取引ヲ助長スル方法ヲ理解セラレテ居ラヌ結果トシ
テ、短期取引ニ對シテモ、尙且ツ斯ル重稅ヲ課シテ怪マレナ
イノデハナイカト考ヘラレマス、仍テ私ハ此點ニ對シ政府當
局ニ斯ウ御尋致シタイ、大正三年ニ取引所稅ガ輕減サレマ
シテ以來、仲買人ノ呑行爲ガ殆ド根絕サレタノハ爭フベカ
ラザル事實デアル、政府當局ハ此事實ヲ承認サレルカドウ
カ、若シ稅率高クシテ脫稅、卽チ呑行爲ガ行ハルヽナラバ、
長期取引ニ比シ短期取引ハ一層呑行爲ノ行ハレ易イコト
ハ明白ノ理デアリマス、政府當局ハ此點ヨリシテ、今囘新設
サレマス短期取引ニ、斯ル傾向ト懸念ナシト思惟セラレルカ
ドウカ、私ハ取引所稅ナルモノハ餘リ高キニ過ギルト呑行爲
ガ行ハレテ、健全ナル取引ノ發達ヲ阻碍シ、之ニ反シ餘リ稅
率ガ低クテハ政府ノ收入ガ少クナル、稅率ノ高イ低イガ兩
極端ニ馳セテハ、共ニ政府當局ハ勿論、吾こゝ引所ノ改善
ヲ希望スル者ノ期待ニ反スル結果ニ陷ランコトヲ慮リ、茲ニ
以上ノ質疑ヲ致シタ所以デアリマス、最後ニ稅法上ノ質疑
デハアリマセヌガ、今回取引所法ノ改正ニ依ッテ、新ニ設ケラ
レマシク短期取引ノ期間ハ、勅令ヲ以テ定メラレルコトニナッ
テ居リマスガ、此稅法中改正案ニ現ハレタ所ニ依ルト、其期
間ヲ七日以内ニ限ラレテ居リマス、此短期取引ハ、殆ド現
物取引ノ代名詞トモ稱スベキ性質カラ言ヘバ、其取引ノ履
行期間ヲ成ベク短クスルト云フコトハ勿論必要デアリマス
ガ、而モ實際今日ノ取引狀態ニ於テハ、有價證劵ノ現物取
引ハ内地ハ勿論、朝鮮、滿洲、臺灣、上海方面ニモ及ビマシ
テ、其範圍ガ極テ廣イノデアリマス、斯ク遠隔ノ地方カラ賣
買注文セラレルモノヲ、七日ノ履行期間ニ限リマスト、實際受
渡ニ支障ヲ來シハセヌカ、此邊ノ事情ニ對シテ當局ハ十分
之ヲ考慮ノ中ニ加ヘラレタカドウカ、尙ホ万々一ニモ取引所法
中改正案ノミガ兩院ヲ通過シテ、取引稅法中改正案ガ會
期切迫ノ爲メ、兩院ヲ通過シナイ結果ヲ見マシタ場合ニ、政
府當局ハ短期ノ定期取引ヲ稅法ナシノ儘許可セラルヽカ、
其取扱方ニ對スル御意見ヲ併セテ承リタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=33
-
034・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 神野大藏次官
〔政府委員神野勝之助登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=34
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035・神野勝之助
○政府委員(神野勝之助君) 第一ノ御質問ノ、今回ノ改
正案ハ租稅ノミナラズ取引所手數料ニ於テ考慮ヲ施シタ
ラドウカト云フヤウナ御質問ニ伺ヒマシタガ、取引所ニ於テ
取リマスル手數料ニ付テハ、是ハ取引所當局者ノ考ヘル所
デアリマシテ、稅法ノ問題トハ別ニ考ヘネパナラヌコトヽ考ヘ
マス、第二ノ御質問ハ、取引物品ノ種類ニ依シテ稅率ヲ異ニ
シタ方ガ至當デハナイカ、誠ニソレハ道理ト致シマシテハ區
別シ得ルナラバ區別致シテ、稅率ヲ異ニ致シタ方ガヨリ宜イ
ト考マスガ、併シソレハ數多ノ物品デアリマシテ、一々之ニ適
當ナル稅率ヲ盛ルト云フコトハ事實困難デアリマス、又旣ニ
長期ト短期トヲ區別シタ以上ハ、限月ニ依ッテ稅率ヲ細カニ
分ケル方ガ宜イデハナイカト、是モ理屈ト致シマシテハ其方
ガ宜イカモ知レマセヌ、併ナガラ斯樣ニ致シマスルト非常ニ
複雜ヲ來シマシテ、是非實行上到底出來ナイコトヽ考ヘル
ノデアリマス、第三ハ短期取引ニ對スル稅率ガ餘リ重過
ギルカラ、却テ呑行爲ヲ獎勵スル結果ヲ來シハシナイカト云
フ御質問ノヤウデアリマス、萬分ノ一半ト致シマシタノハ、大
體此長期ガ二箇月ナラバ短期ハ七日以內ト致シマスト、其
期限ノ割合ニ致シマスト、二箇月ノ三分ノ一デアリマスカラ、
稅率モ亦萬分ノ二半ノ三分ノ一デ宜イト云フヤウナ勘定ニ
ナリマスガ、併ナガラソレハ期限ノ長短ニ依ッテ、直ニ其稅率
ヲ定メルト云フ譯ニハ參リ兼ネルト思フノデアリマス、ソレ故
ニ萬分ノ一半ト云フ程度ガ適當ト認メマシタ次第デ、强テ
是ハ重過ギルトハ考ヘテ居リセヌ、隨テ之ガ爲ニ呑行爲ガ一
層殖エルトハ考ヘマセヌ次第デアリマス、次ニハ又取引所
法ト、取引所稅法トガ相件ウテ成立致サナイヤウナ時ニハ
ドウスルカト云フ御質問デアリマシタガ、是ハ兩院ニ於テ
二ツノ稅法トモ御協賛ニ相成ルコトガ出來ルモノト信
ジテ居リマスカラ、サウ云フ考ハ今日ニ於テハ持ッテ居リマ
セヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=35
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036・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第六、右議案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選舉ヲ議題ニ供シマス
第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=36
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037・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ政府提出貴族院送付、取引所法中
改正法律案ノ委員ニ併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス
「「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=37
-
038・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニハ御異議ナイト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第七、內地、朝鮮、
臺灣又ハ樺太ト南洋群島トノ間ニ於ケル船舶及貨物ノ出
入ニ關スル法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
第七內地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ト南洋群
島トノ間ニ於ケル船舶及貨物ノ出
入ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一內地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ト南洋群島トノ間ニ於ケル
船舶及貨物ノ出入ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十六日
內地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ト南洋群
島トノ間ニ於ケル船舶及貨物ノ出
入ニ關スル法律案委員長
今泉嘉一郞
衆議院議長奧繁三郞殿
〔今泉嘉一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=38
-
039・今泉嘉一郎
○今泉嘉一郞君 委員會ノ經過ヲ報告致シマス、本案ハ
頗ル簡單デアリマシテ、南洋群島ト、一方ニ內地、朝
鮮臺灣及樺太、此兩者ノ間ノ貨物船舶ノ出入ヲ自由ニシ
互ニ輸出入稅ノ關係、或ハ船舶ノ噸稅ノ關係ヲ撤廢スル
コトニナルノデアリマス、是ハ委任統治ノ確定致シマシタル
今日ニ於テ當然ノ處置デゴザイマシテ、法文ガ極テ簡單ナ
ルト同時ニ提出ノ理由ガ明瞭デアリマスカラ、全會一致之
ヲ可決致シマシタ、此段御報告致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=39
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040・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
御諮リ致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=40
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041・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト認
メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=41
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042・岩崎勲
○岩崎勳君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省
略シ、委員長報告ノ通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=42
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043・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ
本案ノ第二讀會ヲ開キマス
內地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ト南洋群島トノ
間ニ於ケル船舶及貨物ノ出入ニ關スル法
律案第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=43
-
044・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ委員
長報告ノ通リ可決確定サレマシタ、日程第八、乃至第十一
ハ、同一委員ニ付託ニナリタル議案ナルニ依リ一括シテ議
題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=44
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045・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ一括
議題ニ供シマス、此四案ノ第一讀會ノ續キヲ開キマス、委
員長前田米藏
第八破產法案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一破產法案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十七日
破產法案委員長
前田米藏
衆議院議長奧繁三郞殿
第九和議法案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一和議法案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十七日
和議法案委員長
前田米藏
衆議院議長奧繁三郞殿
第十裁判所構成法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一裁判所構成法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十七日
栽判所構成法中改正法律案委員長
前田米藏
衆議院議長奧繁三郞殿
第十一司法事務共助法中改正法律案
(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一司法事務共助法中改正法律案(政府提出、貴族院
送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十七日
司法事務共助法中改正法律案委員長
前田米藏
衆議院議長奥繁三郎殿
〔前田米藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=45
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046・前田米藏
○前田米藏君 只今日程ニ上リマシタル破產法、和議法、
裁判所構成法、及司法事務共助法、此四法案ノ委員會ノ
經過、竝ニ結果ニ付キマシテ御報告致シマス、先ヅ順序ト
致シマシテ破產法ノ報告ヨリ始メマス、破產法ハ御承知ノ
如クニ三百九十一條ヨリ成リマス、殆ド四百條ニ垂々トス
ル大法案デアリマシテ、現行破產ノ規定ト比較對照ヲ致シ
マスレバ改正セラレマシタ點ハ非常ニ澤山アルノデアリマ
ス、或ハ實體法規ニ於テ、或ハ手續法規ニ於テ、詳細ヲ極メ
ラレタル規定デアリマスルガ故ニ、改正案ト申シマスルヨリ
ハ寧ロ新ナル立法ト中シテ然ルベキカト思ハレル程ノ體裁
ヲ爲ス法案デアリマス、併ナガラ此大修正案ヲ今此處デ一
一詳細ニ御報告ヲ申上ゲルト云フコトハ、時間ニ於キマシ
テモ聊カ皆樣ノ御迷惑カト考ヘマスガ故ニ、詳細ナル點ハ
速記錄竝ニ法案自體ニ於テ御覽ヲ願フコトニ致シマシテ、
重要ナル二三點ノミニ付テ改正ノ要點ヲ此處デ申上ゲヤ
ウト思ヒマス、御承知ノ如クニ現行法ハ商法ト舊商法ノ一
部トシテ編纂セラレタモノデアリマシテ、商人破產主義ヲ採
用致シテ居ルノデゴサイマス、商人ガ支拂不能ノ狀態ノ場
合ニ破產法ノ適用ガアルノデアリマシテ、商人ニアラザル者
ガ支拂不能ノ場合ニ於キマシテハ、家資分散法、身代限ト
云フコトニ相成ルノデアリマス、然ルニ今回ノ改正案ハ
般破產主義ヲ採用致ジマシテ、商人タルト非商人タルトニ
拘ラズ、又債務ノ原因ガ商事タルト非商事タルトニ區別ナ
ク、孰レモ此改正案ノ所謂破產法ノ適用ヲ受ケルコトニ至ッ
タノデアリマス、主義トシテハ非常ナル改正ニ相成ッテ居ル
ノデアリマス、ソレカラ現行法ハ地方裁判所ノ破產事件ハ
專屬管轄ニ相成ッテ居ルノデアリマスルガ、改正案ハ此區
裁判所ノ專屬管轄ニ之ヲ致シマシタノデアリマス、區裁判
所ハ合議裁判所ト異リマシテ、單獨判事ガ之ヲ爲スノデア
リマスガ故ニ、事務ノ進捗ヲ圖リ、關係人ノ利益ヲ保護ス
ル意味ニ於キマシテ、寧ロ合議制ヨリ單獨制ガ宜イト云フ
意味カラ今囘區裁判所ノ專屬管轄ニ移シダノモ重要ナル
改正ノ要點デアリマス、又現行法ハ金額數百万圓數千万
圓ノ多額ナルモノ、數千圓數百圓ノ小ナルモノモ、孰レモ同一
ノ破產規定ノ適用ヲ受ケテ居ルノデゴザイマスルガ、今囘ノ
改正案ハ小破產主義ヲ設ケマシテ-小破產ナルモノヲ設
ケマシテ、破產財團一万圓以下ノモノハ之ヲ小破產ト稱シ
マシテ、其手續ヲ簡易ニ致シタノデアリマス、又現在ノ破產
法ニ依リマスレバ、破產宣告當時ノ財產ノミナラズ、破產宣
告後ニ於テ取得シマシタ所ノ財產モ破產財團ニ加ヘルモノ
デアリマシテ、學者ノ所謂膨脹主義ヲ執ッテ居ルノデゴザイ
マスルガ、今回ノ改正案ハ破產宣告前ノ財產ノミヲ以テ破產
財團ガ造ラレルノデアリマシテ、破產宣告後ニ於テ得ラレタ
所ノ破產者ガ相續スル、其相續ニ依ッテ得タ所ノ財產ハ別
ニ破產財團ニハ加入シナイノデアリマス、故ニ此破產宣告
後ニ於ケル所ノ債權者ハ破產宣告後ノ財產ニ對シマシテ
ハ、別ニ破產ノ申請ヲ爲シ得ルコトガ出來ルコトニ相成リマ
シテ、同一破産者ニ於テ破產ガ二個モ三個モ出來得ルコト
ガ豫想シ得ルヤウニ相成ッテ居ルノデアリマス、是レ卽チ破産宣
告前後ノ債權者ヲ保護センガ爲ニ、其利益ノ恐慌ナカラシ
メンガ爲ニ、斯樣ナ規定ニナッテ居ルノデアリマス、其他或ハ
相續財產ニ關スル點、若クハ否認權、別除權ト云フヤウナ
ル權利確定ノ方法等ニ付キマシテモ、色ミナル改正ヲセラ
レテ居ル要點モアルノデゴザイマスケレドモ、先程申上ゲマ
スガ如ク、餘リニ細カク申上ゲテモ如何カト思ヒマスカラ、重
要ナル改正ノ要點ダケ以上申述ベタ次第デアリマス(拍手)
以上ノ點ニ付キマシテ、又全體ニ付テ愼重ニ政府委員トノ
間ニ於テ、委員ノ諸君ヨリ應答質問ガアリマシタ、其應答
質問ヲ一々御紹介ヲスルコトモ又之ヲ避ケマス、唯〓一ツ政
府ノ言明セラレタル點ニ付テ御報告ヲ申上ゲテ置キマス、ン
レハ區被判所ノ専屬管轄ニ移シマス結果ハ、多額ナル破產
事件、煩瑣ナル裁判所破產事件モ、或ハ單獨判事ノ處理
スル所ト相成ルノデゴザイマスガ故ニ、破產事件ノ集中スル
ヤウナ主ナル區裁判所ノ所在地ノ裁判所ニ對シマシテハ、
練達セル判事、熟練ナル判事、有爲ナル人ヲ配置致シマシ
テ利害關係人ノ權利ノ擁護ニ盡力スル積リデアルト云フコ
トヲ、司法當局ハ特ニ言明セラレタノデアリマス、右ノ結果
討論ト相成リマシテ、政友會ノ岩崎幸治郞君ヨリ、貴族院
修正ハ單ニ文字ノ一二箇所ノ修正ノミナルガ故ニ、其儘貴
族院ノ修正ノ通リ原案ニ賛成スルト云フ意味ノ御發言ガ
アリマシタ、之ニ對シマシテ憲政會ノ作間君、國民黨ノ渡
邊君ヨリモ御同樣ニ矢張贊成ノ御意見ガアリマシテ、全會
一致可決致シタ次第デアリマス、其際作間君ハ賛成ノ理
由ト致シマシテ述ベラレタル外ニ、希望條件ヲ付ケラレタノ
デアリマス、作間君ハ御自身ニ於テ本案贊成演說ヲ爲サル
ト云フコトデゴザイマスガ故ニ、私ハ其報告ヲ省略致シマス、
國民黨ノ渡邊君ガ希望セラレマシタ點ニ付キマシテ、特ニ本
議會ニ於テ委員長ヨリ之ヲ報告スベシト云フ渡邊君ノ申
出ニ依リマシテ、簡單ニ同君ノ希望ヲ此席ニ御報告申上
ゲテ置キマス、渡邊君ノ希望ノ第一ハ管轄ニ付テデゴザイマシ
テ、卽チ地方裁判所ニ付キマシテハ合議制テアルケレドモ、
區裁判所ハ單獨デアルガ故ニ、ドウモ其點ニ付テ不安ノ感
ナキ能ハズデアル、併ナガラ事件ノ進捗ヲ圖ルガ爲ニモ、又
司法當局ノ言明ニ依シテモ、有爲ナル人物ヲ區裁判所ニ配
置スルト云フコトデアルガ故ニ、其言ニ信賴シテ此案ニ贊成
スルノデアルカラ、區裁判所ノ判事ノ人選ニ付テハ、十分ナ
ル注意ヲ望ムト云フ御希望デアリマス、ソレカラ罰則ノ點ニ
付テ詐欺破產若クハ詐欺破產ニアラザル處ノ過怠破產ト
モ申スベキ破產ニ付テ、嚴重ナル處罰ノ規定ガアルノデアリ
マス、其嚴重ナ處罰ノ規定ガ法律ノ正面ノ解釋ト致シマシ
テハ疑義ノ點ガ幾多見出スコトガ出來ル、此點ハ宜シク裁
判所ニ於テ統一セル解釋ヲ下サレテ、國民一般ヲシテ、此
法律ノ統一セル解釋ニ信賴セシメタイト云フ御希望ガアッ
タノデアリマス、ソレカラ最後ニ本法案ノ實施期ヲ少クトモ
一年以上延期セラレタイト云フコトデアリマス、此法案ハ改
正案トハ申シナガラ私ガ劈頭ニ中シマシタル如ク、新ナル立法
ト申シテモ宜イ程改正ノ點ガ多イノデアリマシテ、國民ノ利
害關係頗ル深イ法律案デアリマスルガ故ニ、國民一般ニ此
法律ヲ知ラシムル爲ニ、又裁判官ヲシテ此法律ヲ〓究セシ
ムル爲ニ、少クトモ一年以上實施期ヲ延シテ、サウシテ國民
及裁判官ニ〓究ノ餘地ヲ與ヘラレタイト云フ希望デゴザイ
マシタ、此三點ガ同君ノ希望デアリマシテ、先程申上ゲマシ
夕如ク委員會ハ全會一致可決シタ次第デアリマス、次デ和
議法案ノ御報告ヲ致シマス、和議法案ハ我國ニ於テ新ニ
出來マシタ法案デアリマス、全ク新シキ試ミニ屬スルノデア
リマス、成程破產法ニ於テハ强制和議ナル規定ハ從前ヨリ
存スルノデアリマスケレドモ、破產宣告後ニ於テ和議ニナリ
マスヨリハ、破產ノ狀態ニ瀕シタ所ノ人ガ、破產ノ宣告ヲ受
ケズシテ自分ノ財產ヲ整理スルト云フコトハ、其債務者ノ爲
ニ誠ニ幸福ナ事デモアリ、又債權者ノ爲ニモ頗ル有益デアル
ノデゴザイマスガ故ニ、破產ヲ宣告ヲ致シ、破產ノ適用ヲ致
シマセヌデ和議ヲ致シテ、而シテ債權、債務者ニ滿足ヲ得セ
シメタイト云フコトガ本案ノ主タル趣旨デアリマス、所謂社
會政策ノ一端ヲモ之ニ依クテ解決セントスル御趣意デアル
ト云フコトヲ政府委員ハ申サレテ居ルノデアリマス、此案ハ
又頗ル新シキ試ミデハアリマスルケレドモ、一般ノ委員諸君
ハ此點ニ付テハ非常ナル賛成ヲセラレマシテ、全會一致殆
ド何等ノ討論ナクシテ可決致シマシタコトヲ玆ニ御報告申
上ゲマス、次デ裁判所構成法ニ付テ御報告申上ゲマス、裁
判所構成法ハ此破產法改正ノ結果、地方裁判所ノ專屬
管轄ヲ區裁判所ニ之ヲ移スト云フ點、及刑事訴訟法改正
ノ結果過日當院ヲ通過致シマシテ、只今貴族院デ審議中
ノ刑訴ノ改正ノ結果、第一審裁判所ノ判決ニ對シテ直ニ
上告ヲ許スト云フヤウナ爲ニ、必然的ニ生ズル改正ノ點及
破產法及刑事訴訟法改正ニ伴フ必然的改正ノ點、司法
官ノ資格ニ關シマシテ朝鮮、關東州、臺灣等ノ點ニ關スル
僅々ナル修正、此點ガ此裁判所構成法ノ改正ノ點デアリマ
シテ、是亦全會一致ヲ以テ可決致シタ次第デアリマス、最後
ニ司法事務共助法ニ付テ御報告致シマス、此法案ハ司法
官廳ガ內地ト臺灣、關東州、朝鮮トノ間ニ於テ事務ヲ共助
スルト云フコトノ規則ニナッテ居リマスルガ、今回諸君モ御
承知ノ如クニ、南洋群島ガ我國ノ統治ノ下ニ歸スルコトニ
相成リマシタニ付キ、此南洋群島ニ對シマシテ南洋廳ヲ設
クルコトニ相成リマシタ、故ニ此南洋廳ヲ臺灣、朝鮮、關東
州ノ中ニ之ヲ加ヘマシテ、而シテ此共助法ヲ完成セントスル
案デアリマス、是亦全會一致ヲ以テ可決シタノデアリマス、
以上御報告ノ如クニ、此本委員會ニ付託セラレマシタ所ノ
政府案四案共、全會一致可決致シタ次第デアリマス、諸君
ニ於テモ宜シク御賛成アランコトヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=46
-
047・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 日程第八、破產法案ニ付テ贊成
ノ討論通告ガアリマス、作間耕逸君
〔作間耕逸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=47
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048・作間耕逸
○作間耕逸君 只今上程致サレマシタ四個ノ法案ノ中
デ、破產法案ハ彼ノ刑事訴訟法案竝ニ陪審法案等ト共ニ、
政府ガ〓期議會ニ提出ヲ致シマシタ所謂司法改革案ノ中
ノ一ノ重大ナル法案デアリマスルカラ、玆ニ愈、最後ノ審議
ヲ終ルニ臨ミマシテ、特ニ私共ノ持ッテ居リマスル意見ヲ明
ニ致シテ贊成ノ意ヲ表シテ置ク次第デアリマス、成程本案ハ、
近來ニ於キマスル司法當局ノ努力ノ結果程アリマシテ、現行法
タル舊商法破產編ニ較ベテ見マスレバ、確二一段ノ進步ト一
掬ノ新シ味ヲ持ッテ居ルコトダケハ之ヲ認メマスケレドモ、具サニ
其內容ヲ點檢致シテ參リマスレバ、未ダ本員等ノ俄ニ滿足
ヲ表シ難イ點ガ少カラズ存スルノデアリマス、併ナガラ之ニ本
員等ノ思フ樣ナル修正ヲ加ヘマスレバ、殆ド案ノ生命ヲモ
損アルニ至ルノ虞モゴザイマスルカラ、暫ク司法當局ノ努力
ニ免ジマシテ、此際一切斧鉞ヲ加ヘズニ唯運用上最モ重大
ナリト認メマシタ數點ニ付キマシテ、茲ニ司法當局ノ注意ヲ
促シテ置キタイノデアリマスル、其第一點ハ、破產事件ハ今
日ニ於キマシテモ隨分輻輳シ、停滯ヲ致シテ居ルノデアリマ
ス、破產宣告以後短キモ數箇月、長キハ數箇年ニ及ンデ、尙
ホ其結末ノ著カザルモノモ多クアルノデアリマスルガ、此現
在ノ破產ヲ唯商人ニ限ルト云フ法律ノ下ニ於キマシテモ、
斯樣ナ有樣デゴザイマスカラ、改正案ノ如ク廣ク商人タルト
將タ商人タラザルトニ拘ラズ、一般ノ國民ニ之ヲ適用スルト
云フコトニ相成リマシタナラバ、蓋シ事件ノ輻輳ト停滞ハ一
層甚シキモノアルニ至ラント云フコトヲ懸念ニ堪ヘナイ次第
デアリマスル、尤モ管轄區裁判所ヲ、現在ノ地方裁判所カ
ラ木案ハ總テ區裁判所ノ方ニ移シマシタカラ、取扱ノ裁判
所ノ數ガ殖エマシタ結果、多少其點ヲ緩和スルコトハ出來
マセウケレドモ、司法當局ハ其事件ノ審理ト解決ヲ鄭重ニ
シテ、而モ之ヲ迅速ニ致シマスルニハ、精神上ニ於テ將又施
設ノ上ニ於テ、今ヨリ多大ノ準備ト用意トヲ加フルコトヲ
必要ト存ズル次第デアリマス、第二點ハ破產債權ハ破產前
ニ生ジマシタル財產上ノ請求權ト、單ニ明記シテアリマスル
ニ止マリマスルカラ、彼ノ貸金ヤ又ハ手形ノ如キ原因、數額
ノ單純ナルモノニ限リマセヌ、損害賠償ノ債權ノヤウナ複雜
ニシテ爭ヒノ多イモノニデモ破產ヲ申立テルコトガ出來得ル
ヤウニナッテ居ルノデアリマス、尤モ此點ト現行ノ商法ト違フ
所ハアリマセヌヤウデゴザイマスルガ、併ナガラ現在ニ於キマ
シテモ、地方裁判所ノ會議、三人ノ判事デサヘ此破產事件
ノ債權ノ審理ト云フコトニハ非常ニ惱マサレテ居ルノデアリ
マス、本員等ノ考ト致シマシテハ、金額一万圓以下ノ所謂
小破產事件位デモ、セメテ區裁判所ノ管轄ニ移シ其他ハ
現在ノ如ク矢張地方裁判所ノ管轄ニ止メテ置ク方ガ適當
デアラウト思ヒマスルケレドモ、旣ニ改正案ノ如ク全部ノ管
轄ヲ區裁判所ノ單獨ノ判事ニ移シマシタ以上ハ、事件ノ大
小、金額ノ多寡、其他債權ノ性質如何ニ拘ラズ、今迄ハ三
人ノ合議判事ガ地方裁判所デ取扱ヒ居リマシタモノヲ、改
正案施行後ニ於キマシテハ、區裁判所ニ於テ一人ノ判事ガ
總テ是等ノ捌キヲ致サナケレバナラヌコトニ相成リマスルカ
ラ、其取扱ハ一層困難ノ多キヲ加ヘルモノガアルデアラウト
思ハレマス、此點ニ付キマシテハ特ニ明敏練達ノ專門家的
判事ヲ十分優遇セラレテ、其擔當ニ當ラシメテ、而シテ債權
ノ性質ニ依ッテ其破產ノ申立ヲ受理スルト受理セザルトヲ
明快ニ御判斷ガ付クヤウニ、努力セラルヽコトヲ必要ト存ジ
マスル、第三點ハ、是ハ大ナル問題デゴザイマセヌケレドモ、
而モ實用上重要ナル問題ノ一ツデアリマスル、ソレハ破產ノ
申立ヲ致シマスル際ニハ、御承知ノ通リ破產豫納金ト稱シ
テ破產ノ手續費用ヲ前以テ裁判所ニ、破產申立債權者カ
ラ前納ヲ致シ置クコトヲ必要トスルノデアリマスルガ、其豫
納金ノ金額ト云フモノニ付キマシテハ、實際ニ於テ裁判所ノ
方ニ於テハ成ベク多ク積マシテ置キタイシ、又債權者ノ方デ
ハ成ベク少クシテ置キタイト云フ關係カラ、爭ヒアル場合ガ
アルノデゴザイマスルガ、本案ノ施行ノ後ニ於キマシテモ、從
來ノ通リ此破產手續ノ前納金ヲ唯漫然ト其金額ヲ定ムル
コトナクシテ、能ク債權者側ノ迷惑ト苦痛トヲ察セラレテ、
必要ナル最小ノ限度ニ止メラレテ置カルヽヤウニ、十分ノ斟
酌ヲ必要ト存ジマスル、之ニ付テハ嘗テ今日ヨリ數十年
前-十數年前名古屋ニ小栗銀行ト云フ銀行ガアリマシ
タ際ニ、其銀行ガ支拂ノ停止ヲ致シマシタガ爲ニ、債權者カ
ラ破產ノ申立ヲ致シマシタ所ガ、裁判所ニ於テハ其申立者
ニ對シマシテ、金五万圓ノ豫納金ヲ栽判所ヘ納メロ、ソレヲ納
メナイ限リハ申立ノ手續ヲ受付ケナイト云フ決定ヲ受ケ
マシタガ爲ニ、債權者ノ方デハ非常ニ困難ヲ感ジマシテ、遂
ニ確カ破產ノ申立ガ出來ナカッタコトノアッタヤウニ記憶致
シテ居ル次第デアリマス、斯ウ云フ事ハ其後ニモ再三其實
例ガアリマシテ、裁判所ガ斯ウ云フ金額ヲ成ベク多ク取ラル
ルト云フコトノ方針デアリマスル以上、債務者卽チ破產者
ノ側ニ於キマシテハ、矢張栽判所ニ對シテ多額ノ豫納金額
ヲ必要トスルヤウニ申立ヲ致シマシテ、債權者ヲシテ此點デ
惱マシムルコトニ相成リマスル場合モアリマスルノデ、私共ハ
債權者ガ既ニ債權ノ取立回收ガ出來ナイト云フ上ニ於テ、
非常ニ迷感ヲ感ジテ居リマス所ヘ、又更ニ多額ノ破產豫納
金ヲ供託ヲ致サナケレバナラヌト云フコトハ、債權者ヲシテ
二重ノ苦痛ヲ感ゼシムル結果ニナルノデゴザイマスルカラ、此
點ニ於キマシテ特ニ注意事項ノ中ニ加ヘタ次第デアリマス、
第四點ハ破產者ガ支拂不能ニ瀕シマスルヤ、從來多クハ合
資會社、株式會社等ノ會社ヲ形式上ニ設立ヲ致シマシタヤウ
ナ手續ヲ履ミマシテ、サウシテ自己ノ營業、又ハ財產ヲ出資
スルノ手續ヲ執リマシテ、甚シキハ財產モ消極的財產、卽チ
負債ヲ出資トシテ、會社ノ設立ノ方式ダケヲ執ル場合ガ多
イノデアリマス、此場合ニ現在ノ法律竝ニ改正案ニ依リマ
スレバ、唯破產財團ヲ保全致シマスル爲ノ否認權ト云フ權
利ノ行使ニ依ッテ、サウ云フ權利ノ行使ダケガ出來ルコトニ
ナッテ居ルノデアリマスルケレドモ、其否認權ノ行使ダケデハ、
此樣ナ所謂不拂會社ト云フヤウナ一種ノ財產隱匿ノ爲ニ
設立セラレマシタ形式上ノ會社ヲ、根柢ヨリ否定ヲ致ス、否
認ヲ致ス、而シテ會社ノ設立ヲモ取消サセルト云フヤウナコ
トハ出來ナイ場合ガ多イノデゴザイマスルカラ、私ハ此場合
ニ對シマシテハ改正案ダケデハ洵ニ心細キヲ感ゼザルヲ得ナ
イノデアリマス、卽チ政府當局ニ於カレマシテハ、斯樣ナ問
題ガ往々起リマスル實際ノ世態ニ考ヘテ見ラレマシテ、之ニ
相應スル所ノ相當ノ法律上ノ制定ガ必要デハアルマイカト
考ヘマスカラ、政府當局ニ於キマシテモ、此點ニ付テ又相當
ノ御考慮ヲ御願ヲシテ置カウト思フノデアリマス、モウ後二
點ダケデアリマスルガ、其中ノ第一點ハ、本案ハ破產當事者
卽チ債權者、債務者、又ハ其他ノ利害關係人ニ對シマシテ、
送達ヲ致シマスル總テノ場合ニ、裁判所ハ公告ヲ以テ何時
デモ送達ニ代ユルコトノ出來ルヤウナ主義ヲ執ッテ居ルノデ
アリマス、然ルニ裁判所ノ公告ト云フモノハ諸君モ御承知
ノ通リ、官報、新聞等ニ公告ヲ致シマスルシ、又市町村役場
ノ前ニ揭示ヲ致スコトニナッテ居ルノデアリマシテ、改正案モ
矢張同ジヤウナ手續ヲ執ルコトニナッテ居リマスルガ、官報ノ
公告モ、新聞ノ公告モ、廣告料ヲ餘リニ節約致シマスル結
果ト見エマシテ、甚ダ貧弱ナル小サイ公告ヲ出スノデアリマ
スルカラ、多クハ讀者ノ目ニ入ラナイ場合ガ多イノデアリマ
ス、又町村役場前ノ掲示板ノ公告ハ、唯公告ヲシテアルト
云フダケデ、其公告ノ書イテアリマスル紙ハ、風雨ニ曝サレテ
御稻荷サンノ御幣ヲ見タヤウナコトニナッテ、何處ノ何ノ公
告ガシテアルカ迚モ分ラナイ場合ガ多イノデアリマス、サウ云
フヤウナホンノ形式一片ノ公告ヲ以チマシテ、是デ利害關
係人ヘノ送達ヲ終ヘタ、卽チ送達ノ手續ヲ完全ニシタノデ
アルト云フコトデアリマシテハ、恐ラクハ利害關係人ハ知ラ
ズ識ラズノ間ニ測ラザル多大ノ損害ヲ蒙ルニ至ル虞ガアル
ノデゴザイマスカラ、此點ハ手數ノ上ヨリ申シマシテモ、將又
費用ノ上カラ中シマシテモ、公告モ送達モ同ジヤウナ計算ニ
相成ルノデゴザイマスルカラ、裁判所ニ於キマシテハ成ベク
公告主義ヲ避ケテ、利害關係人ニ對シテ直接ノ通知送達
主義ヲ屬行ヲシテ戴クヤウニ、是亦御注意ヲ促シテ置ク次
第デアリマス(拍手)最後ニ罰則ニ付キマシテ、本案ハ誠ニ
重要ナル制裁規定ノ中ニ、漠然タル文字ヲ用キラレテ居ル
場合ガアリマスルガ爲ニ、其見解ガ多岐ニ亙ルノ虞ガ少クナ
イノデアリマス、其結果若シ本案ヲ規定ノ表面カラ廣義ニ解
釋ヲ致シマスルトキハ、債務者ガ破產宣告ノ前、而モ制限ナ
ク前ニ、遡シテ自己ノ利益ヲ圖ッテ、單ニ自己ノ財產ヲ不利
益ニ處分シタト云フヤウナ點デモ、矢張之ガ財產隱匿、財產
毀棄ト云フヤウナ不正惡辣ノ手段ヲ弄シタ場合ト同樣ニ、
詐欺破產ノ罪トナッテ、十年以下ノ懲役ニ處セラルヽコトニ
ナッテ居ルノデアリマス、サウ致シマスルト、債務者ガ他ニ債
務アルコトヲ知ッテ、債權者カラ責メラレマシタ場合ニ、其債
務者ガ自分ノ財產ヲ安ク賣リマシテ、其賣ッタ金デ自分ガ
生活ヲ繼續シタリ、或ハ又借金ノ支拂ニ充テマシタ場合ニ
ハ、此規定ヲ廣ク解釋シマスレバ、ドウシテモ表面上ハ詐欺
破產ノ罪ヲ以テ罰セラルヤウナコトニモ見エルノデアリマ
ス、又債務者ガ多ク借金ガアリマシタ場合、或ル債權者カラ
支拂ヲ責メラレマシタガ爲ニ、其責メラレタ債權者ニ自分ノ
財產ヲ擔保ニ入レマシタ場合、抵當ニ入レマシテ、サウシテ
猶豫ヲ願ッタヤウナ場合ニモ、矢張之ヲ著シク過失怠慢ノ所
爲ガアッタモノト同樣ニ、五年以下ノ懲役又ハ五千圓以下
ノ罰金ニ處スルヤウナ規定ノ表面ニ相成ッテ居ルノデアリマ
ス、併ナガラ凡ン債務者ガ多クノ債務ヲ帶ビテ居リマスル場
合ニ、而シテ自分ノ生活ヤ或ハ借金ノ支拂ガ困難デアリマ
スル場合ニ、其自分ノ財產ヲ少シ安クデモ賣ッテ、之ヲ以テ
生活ヲ續ケテ行ッタリ、借金ヲ支拂ヲタリシタ場合ニ、或ハ詐
欺破產トナリ、又債權者カラ責メラレマスル結果、仕樣事ナ
シニ自分ノ財產ヲ其債權者ニ擔保ニ入レマシタ場合ニ、或
ハ過怠破產同樣ノ罪トナリマシテ、只今申シマスルヤウナ十
年以下ノ懲役、五年以下ノ懲役、又ハ五千圓以下ノ罰金
ニ處セラレルヤウナコトニモ相成リマシタナラバ、凡ン破產者
ニシテ詐欺破產若クハ過息破產ニ當ラザル者ナキニ至ルベ
シト申シテモ、過言デハナイ位ニ信ゼラレルノデアリマス、此
點ニ付キマシテハ、司法當局ハサウ云フヤウナ場合ハ此制
裁規定ニ依ッテ處罰スル精神デハナイノデアルト云フコトヲ
明確ニ御闡明ニ相成リハ致シマシタケレドモ、如何セン法
律ノ表面規定ガ其樣ナル解釋モ出來ルヤウナコトニ相成ッ
テ居マスト、栽判所ニ於キマシテ判事ガ法律ヲ適用致シマ
ス際ニハ、自己ノ獨立シタル見解ニ依ルノデアリマスカラ、往々
々私ガ只今申上ゲマシタヤウナ不安ナ場合ガ生ジテ參ラナ
イトモ限ラナイノデアリマスカラ、此點ニ付テハ特ニ國民黨
ノ渡邊君カラモ其見解ヲ統一スルヤウニ、政府ハ十分ナル
且ツ相當ナル處置ヲ全國ノ各栽判所ニ對シテ、執ラレテ而
シテ成ベク此罰則ハ狹義ニ解釋ヲスルヤウニ御取計ヒアラ
ンコトヲ望ムト言ハレマシタ通リ、私モ同一ノ見解ヲ以チマ
シテ、玆ニ同ジヤウナ意見ヲ申添ヘテ置ク次第デアリマス、
以上ノ諸點ヲ司法當局ニ警告ヲ致シマシテ、而シテ玆ニ本
案最後ノ討議ヲ終ルニ臨ミマシテ、本案ノ穏健ナル前途ノ
施行ヲ期待致シマシテ、而シテ貴族院ノ一部修正ノアリマ
シタル本案ニ賛成ノ意ヲ表シテ置ク次第デアリマス、私ノ意
見ハ、前田委員長ハ希望ト申サレマシタケレドモ、單純ナ希
望デハアリマセヌ、是ハ警告デアルト云フコトヲ特ニ明ニ申
添ヘテ置キマシテ、此壇ヲ降ル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=48
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049・奧繁三郎
○議長(奥繁三郞君) 日程第八、第九、第十ノ三案ハ、關
聯セル議案デアリマスカラ、先ヅ右三案ヲ一括シテ第二讀
會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマス
〔「二讀會ヲ開クニ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=49
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050・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ異議ナシト認メ
マス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=50
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051・岩崎勲
○岩崎勳君 日程第八、第九、第十ノ三案ヲ一括シテ直
ニ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=51
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052・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ直ニ
三案ヲ一括シテ其第二讀會ヲ開キマス
破產法案第二讀會(確定議)
和議法案第二讀會(確定議)
裁判所構成法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=52
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053・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ異議ナシト認メマ
ス、仍テ此三案ハ委員長報告通リ可決確定致シマシタ、次
ニ日程第十一、司法事務共助法中改正法律案ノ第二讀
會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=53
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054・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ御異議ナシト認
メマス、仍テ第二讀會ヲ開クコトニ致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=54
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055・岩崎勲
○岩崎動君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省
略シテ委員長報告通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=55
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056・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス
司法事務共助法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=56
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057・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ本案
ハ委員長報告通リ可決確定致シマシタ、日程第十二、第
十三ハ同一委員ニ付託セラレタル案デアリマスカラ、一括
議題ト爲スニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=57
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058・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ明治
三十五年法律第四十九號中改正法律案、統計資料實
地調査ニ關スル法律案ヲ一括シテ、第一讀會ノ續ヲ開キ
マス、委員長春日俊文君
第十二明治三十五年法律第四十九號中
改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一明治三十五年法律第四十九號中改正法律案(政
府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十七日
明治三十五年法律第四十
九號中改正法律案委員長
春日俊文
衆議院議長奧繁三郞殿
第十三統計資料實地調査ニ關スル法律
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一統計資料實地調査ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十七日
統計資料實地調査ニ關スル法律案委員長
春日俊文
衆議院議長奧繁三郞殿
〔春日俊文君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=58
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059・春日俊文
○春日俊文君 只今上程サレマシタ法案ハ、極テ簡單ノ
モノデアリマス、卽チ明治三十五年法律第四十九號中改
正法律案ハ所謂簡易國勢調査デアリマス、次ハ統計資料
實地調査ニ關スル法律案デアリマス、是ハ唯單ニ政府ハ勞
働ニ關スル統計資料蒐集ノ爲メ必要アルトキハ特ニ期日
ヲ定メ一定ノ期間區域ヲ劃シテ實地ノ調査ヲ行フ、斯ウ
云フ二ツデアリマスカラ、案ハ極テ簡單デアリマス、併ナガラ
其簡單ナルコトヨリ影響シマスコトハ中〓少クナイノデアリ
マス、故ニ此經過ノ御報告ニ兼ネマシテ、一二ノ委員會ニ
於ケル主ナル所謂希望的質問ヲ御紹介致シテ置キタイ
ト思ヒマス、委員會ニ於キマシテハ兩案共ニ全會一致デ可決
セラレマシタガ、其希望的質問ノ主ナルモノヽ、一ハ憲政會ノ
中馬君カラアッタモノデアリマシテ、卽チ國勢院ニ於テノ調査
ハ主トシテ戶口ノ調査ニ在ルノデアリマス、其調査ノ結果
ハ在來內務省ノ爲シマシタル統計ニ較ベテハ正確デアッタ
ト云フコトハ、昨年ノ結果ニ現レテ居リマスケレドモ、此國
勢調査ハ更ニ一歩ヲ進メテ單リ戶口調査ノミナラズ、或ハ
鑛業卽チ地中ノ埋藏量若クハ其他ノ工業ニ對スル生產、
消費、或ハ國民ノ保健狀態ニマデモ及ボシテ調査ヲシタイ、
就中食糧ノ生產配給ニ關シテハ、其統計ガ各省ニ於テ異。ツ
テ居ッテ、啻ニ信憑ガ出來ナイノミナラズ、甚ダ]不統一デアリ
マス、又其種類モ僅ニ米穀ニ關シテノミデアッテ、一般ノ食糧
品ニハ及ンデ居ラヌノミナラズ、其食糧品ノ榮養分量、卽チ
「カロリー」等ニ對シテノ調査ハ全ク出來テ居ラヌト言ッテ宜
イ位デアル、此故ニ國民ノ保健上カラ見マシテモ、又食糧品
ノ調節等ヨリ見マシテモ、殆ド策ノ立ツベキモノガナイト云フ
狀態デアリマス、所謂此榮養品ノ完全ナル調査ガ屆キマス
レバ、食糧ノ調節ト云フコトハ極テ十分ニ行ハレルノデアリ
マス、隨テ此問題ノ解決ハ、之ヲ前提トシテ國策ノ樹立ニモ
影響スルモノデアル、卽チ此日本ノ食糧ノ調査ガ出來テナ
イ場合ニ於キマシテハ、帝國主義モ實行シナケレバナラヌ、
又或ハ所謂新「マルサス」主義ノ絕叫モシナケレバナラヌト
云フヤウナコトノ前提トモナルモノデアルガ故ニ先以テ此等
ノ點ニマデ及ボシテ十分ノ調査ヲシテ貰ヒタイ、斯ウ云フコ
トガ中馬君ノ希望的質問モアッタノデアリマス、殊ニ此調〓
ニ於キマシテモ、今現在農商務省ニ國立榮養研究所ト云
フモノガアリマシテ、其處デ小規摸デ〓究シテ居リマスケレ
ドモ、殆ドシナイヨリ優ッテ居ル位ノコトデアル、更ニ進ンデ關
係各省ト大ニ協同シテヤル考ハナイカドウカト云フ質問ガアツ
タノデアリマス、此事柄ハ非常ニ重イ關係ヲ持ッテ居ルト思
フノデアリマス、是ハ私ガ思フノミナラズ、全會一致ノ考デア
リマス、更ニ他ニ今一ツヲ御紹介シタ後ニ、此二ツノ希望的
質問ニ共通シテ居ル所ノ根本ヲ申上ゲタイト思ヒマス、其
二ニハ政友會ノ根本正君ヨリ第二ノ統計資料實地調査ニ
關スルコトデアリマスガ、是ハ政府ノ說明ニ依リマスレバ、第
一條ヲ所謂勞働ニ關スルト局限サレテ居リマス、其勞働ト
云フ範圍ハ鑛業及工業ニ關スルモノヽミデアッテ、而モ是ハ
唯人員ノ調査ノミデアリマスガ、此勞働者ノ調査ヲスルニ付
キマシテ、勞働ノ範圍ヲ二ツノモノニ限局セラレテ、一般勞
働者ニ及ボスニ御考ハナイカドウカ、一般勞働者ノ【調査ヲ
十分ニ致シマスレバ、此爲ニハ御承知ノ如ク其分布ガ明ニ
ナリマス、其分布ガ明ニナッテ來マスレバ、各地方ニ於キマシ
テ特別ノ時ニ於テ使用サレル所ノ此供給ヲ、十分ニ圓滑ニ
スルコトガ出來ル譯ニナルノデアリマスカラ、極テ必要ナ事デア
ル、隨テ生產力モ增大サレ、生產費モ減少スルコトガ出來
ル、之ガ唯一ノ方法デアル、各國モ皆此點ニ腐心シテ居ル次
第デアルカラ、當局ニ於テモ速ニ勞働者ノ輸送、卽チ配給ニ
最モ關係深イ所ノ鐵道省ト協力シテ、サウシテ一定ノ期間
ノ運賃割引等ヲナサシメ、勞働政策ノ根本解決ヲシテ貰ヒ
タイト云フコトガ、根本正氏ノ希望的質問デアリマシタ、此
二ツノ質問ノ根本ニ橫ハッテ居ル所ノ觀念ハ、要スルニ國勢
上ノ現國勢院ノ現在ノ仕事デハ餘リニ範圍ガ狹イ、更ニ一
步進メテ大ニ國勢調査ヲシテ貰ヒタイト云フコトガ、此二ツ
ノ質問ニ橫ハッテ居ル所ノ觀念デアラウト思フノデアリマス、
是ハ啻ニ委員會ニ於ケル希望ノミナラズ、先達テ既ニ此會
ニ於キマシテ豫算ノ本會ノ節、國民黨ノ大口氏ヨリ行政上
ノ事務ノ刷新、整理統一ト云フコトハ、ドウシテモ各省ニ涉
ル所ノ仕事ノ縱斷デハイケナイ、横斷シナケレバナラヌ、然ラ
ザレバ系統的ニ又組織的ニ仕事ヲスルコトハ出來ナイト云
フ御演說ガアリマシテ、議員諸君ノ中ニモ既ニ之ニ共鳴サレ
夕方ガ澤山アル、國勢院ノ此仕事ハ簡單ニ調査ノ一部ヲ擴
張スルト云フコトノミデハナイ、大ニ擴張スルニ至リマシテヽ
初テ行政事務ガ整理サレ刷新サレ、統一サレ、而シテ行政
ノ費用ハ大ニ減ズルコトガ出來ルダラウト私共ハ確信シテ
居ル譯デアリマスガ、之ガ委員會ニ於ケル所謂質問的希望デ
アリマス、勿論希望條件トシテ可決サレタデハナイノデアリ
マスガ、併ナガラ希望トシテ茲ニ述ベマシタト云フコトハ、極
テ重大ナ事デアルト考へマスルガ故ニ、諸君ニ御參考マデニ
此點ヲ御紹介致シテ置キマス、卽チ委員會ニ於キマシテハ、
兩案共ニ全會一致ヲ以テ可決セラレテ居リマス、討論等ハ
ナカッタノデアリマス、此二ツノモノヲ重大ナルモノトシテ御參
考下サレテ、御協賛ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=59
-
060・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮致
シマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=60
-
061・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ御異議ナイト認
メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=61
-
062・岩崎勲
○岩崎動君 日程第十二、及第十三、兩案ヲ一括シテ直
ニ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通
リ可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=62
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063・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ
明治三十五年法律第四十九號中改正法律案
第二讀會(確定議)
統計資料實地調査ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=63
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064・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 兩案ハ委員長報告ノ通リ可決確
定致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=64
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065・岩崎勲
○岩崎動君 再ビ議事日程變更ニ關スル緊急動議ヲ提
出致シマス、卽チ玆ニ政府提出、大正九年法律第五十二號
中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求
メ、且ツ其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=65
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066・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ日程變更ノ緊急動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ日程ハ變更サレマシタ、大正九
年法律第五十二號中改正法律案第一讀會ノ續ヲ開キマ
ス、委員長今泉嘉一郞君
大正九年法律第五十二號中改正法律案
(政府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一大正九年法律第五十二號中改正法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十八日
大正九年法律第五十二
號中改正法律案委員長
今泉嘉一郞
衆議院議長奧繁三郞殿
〔今泉嘉一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=66
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067・今泉嘉一郎
○今泉嘉一郞君 委員會ノ經過ヲ報告致シマス、此法律
案ハ他ノ法律制度ノ當然ノ結果トシテ必要ノ生ジタルモノデ
アリマス、卽チ委任統治ノ南洋群島ニ對シテ、本國トノ間ニ
關稅ノ障壁ヲ撤廢シ、同時ニ南洋群島ダケニ於テ出港稅ノ
制度ヲ定メルト、斯ウ云フ事ニナリマシタ場合ニ於テハ、此
出港稅ヲ逋稅シテ内地或ハ樺太ニ來夕物ニ對シテ相當ノ
制裁ヲ加ヘルコトガ、恰モ從來朝鮮或ハ臺灣ニ對シテ爲シ
タル如クシナケレバナラヌ、斯ウ云フ關係ニ於キマシテ明治
九年法律第五十二號ノ中ニアル朝鮮、臺灣ノ次ニ南洋群
島ヲ加ヘタノデアリマス、極テ簡單明瞭デアリマスルガ、審議
ノ上委員會ニ於テハ滿場一致デ可決致シマシタ、此段御報
告致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=67
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068・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御
諮致シマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=68
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069・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 二讀會ヲ開クニ御異議ナイト認メ
マス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=69
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070・岩崎勲
○岩崎動君 直ニ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シ、
委員長報告ノ通リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=70
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071・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認メ
マス、仍テ直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス
大正九年法律第五十二號中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=71
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072・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス仍テ委員長
報告ノ通リ可決確定致シマシタ、日程第十四、第十五ヲ一
括議題ト爲スコトニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=72
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073・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナイト認メマス、仍テ社寺
現境内地無償下付ニ關スル法律案、國有土地森林原野
下戾ニ關スル法律案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
委員長長峰與一君
第十四社寺現境內地無償下付ニ關スル
法律案(鵜澤總明君外二名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一社寺現境內地無償下付ニ關スル法律案(鵜澤總明
君外二名提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
段及報告候也
大正十一年三月十四日
社寺現境内地無償下付
ニ關スル法律案委員長
長峰與
衆議院議長奧繁三郞殿
(小字及-ハ委員會修正)
第一條社寺境内地ニシテ社寺上地處分ニ液リ現ニ
國有ニ屬スル現境内地ハ之ヲ其ノ社寺ニ下付スヘシ
第二條本法ニ依ル下付ノ申請ハ大正十四年七月三
十一日迄ニ之ヲ主務大臣ニ差出スヘシ
第三條此ノ申請ニ對スル處分ニ付不服アル者ハ其ノ
指令ヲ受ケタル日ヨリ三箇月內ニ行政裁判所ニ出訴
スルコトヲ得
第四條第一條ニ依リ下付ヲ受ケタル者ハ其ノ境內地
유
及立木〇ノ所有權ヲ取得ス
前項ニ依リ所有權ヲ取得シタル者ハ其ノ土地及立
〓
木〇ニ付第三者ノ現ニ有スル權利ヲ害スルコトヲ得ス
〓f
第五條本法ニ依リ下付ヲ受ケタル境内地及立○木ハ
○之ヲ讓渡シ又ハ
主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非サレハ〇地上權、抵當權
若
又ハ質權ノ目的ト爲スコトヲ得ス
第六條本法施行前行政處分又ハ裁判所ノ判決ヲ受
ケタル者ト雖本法ニ依リ下付ノ申請ヲ爲スコトヲ妨ケス
附則
本法ハ大正十一年五月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十五國有土地森林原野下戾ニ關スル
法律案(阿部武智雄君外三十三名
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一國有土地森林原野下戾ニ開スル法律案(阿部武智
雄君外三十三名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十四日
國有土地森林原野下戾
ニ關スル法律案委員長
長峰奥
衆議院議長奧繁三郞殿
〔長峰與一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=73
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074・長峰與一
○長峰與一君 社寺現境内地無償下付ニ關スル法律案
ハ社寺上地處分ニ依リマシテ、國有ニナリマシタル境内地ヲ
社寺ノ所有ニ移スト云フ趣旨ノ立法ノ法案デアルノデアリ
マス、御承知ノ通リ本案提出ノ理由ニ付テハ、既ニ述ベテア
リマスル故ニ、簡單ニ此法案ノ委員會ノ經過ヲ述ベマスレ
バ、此法案ニ付テハ此現行法案ニ付テ聊カ修正スベキ點ガ
アルノデアリマス、ソレハ「社寺上地ノ處分ニ依リ」ト云フコ
トガアリマスケレドモ、國有ニナリマシタル際ハ、單ニ社寺上
地處分ノミデ國有ニナッタノデハナイト云フコトヲ見出シタ
ノデアリマス、又此法案ニ付キマシテハ、社寺ノ所有地ノ監督
上ニ於キマシテ、單ニ地上權、抵當權、質權ノ目的ニ付テハ
監督ノ事ガ書イテアリマスルケレドモ、所有權ノ移轉ニ付キ
マシテハ、監督ノ事ガナカッタノデアリマスル故ニ、是ニ於テ幾
分ノ玆ニ修正ヲ致シタノデアリマス、卽チ第一條ニ於キマシ
テ「社寺上地處分ニ依リ」ト云フ此文字ヲ削ッタノデアリマ
ス、次ニ第四條ニアリマスル「立木」ト云フ文字ノ下ニ「竹」ト
云フ字ヲ入レマシテ、「立木竹」ト云フ事ニシタノデアリマス、
第五條ニ至リマシテ、卽チ只今ノ申上ゲタル通リノ所有權
ノ移轉ニ監督ヲ要シマスル故ニ、玆ニ第五條ニ於キマシテ
「之ヲ譲渡シ」ト云フ文字ヲ入レタノデアリマス、斯ノ如ク修
正ヲ致シマシタ、本案ハ可決致シタノデアリマスガ、此案ニ
對スル當局ノ御意見ハ、政府ハ現在ノ制度ニ於テ滿足ヲシ
テ居ル次第デアルト雖モ、其土地ヲ社寺ノ所有トシテ、社寺
自ラ之ヲ愛撫擁護致シテ、而シテ此神靈ノ發揚ヲ期スルト
云フ事ニ於テハ、趣旨ニ於テ政府モ賛成スル所デアル、併ナ
ガラ此案ハ內務、文部、大藏、各省ニモ關係ガアル故ニ、是
等ト折衝ノ必要モアルシ、殊ニ又國有ノ財產調查會等モア
ル、故ニ是ト又折衝ヲ重ネタル上ニ於テ決定スベキモノデア
ラウト云フ趣旨デアルノデアリマス、卽チ全然賛成ヲ得タト
云フ次第デハゴザイマセヌガ、多大ノ同情ヲ得テ居ル案デア
リマスノミナラズ此法案ハ現在ノ狀況ノ國民思想ノ上ニ於
ケル重大ナル時ニ於キマシテハ、最モ必要ナ法案ト致シマシ
テ、委員會ニ於テハ一人ノ異議者ナク、滿場一致可決致シ
タ次第デゴザイマス、次ニ國有土地森林原野下戾ニ關スル
法律案、是ハ部落、個人、又ハ社寺ノ所有ニ係リマズ土地、
森林、原野、若クハ立木竹デアリマシテ、地租改正、又ハ社
寺上地處分ノ際ニ官有ニ這入ッタモノヲ、之ヲ民有ニ下戾
ヲスルト云フ法案デアリマス、御承知ノ通リ明治三十二年
ニ一タビ森林原野下戻法案ナルモノガ出來テアッタノデアリ
マスケレドモ、其當時ニ於キマシテハ、未ダ其法案ニ付テ救
濟ノ途ガ人民ニ徹底セザル爲ニ、政府ノ趣旨ノ通リノ救濟
ガ行ハレナカッタノデアリマス、故ニ之ヲ再ビ救濟スルノ途ヲ
以テ、此法案ヲ立法シタル次第デアリマスガ、委員會ニ於テ
ハ全部原案通リ可決確定ニナッタノデアリマス、ノミナラズ
四十四議會ニ於テモ、本案ハ本院ヲ通過シタノデアリマスガ
故ニ、何卒諸君ノ御贊成ヲ願フ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=74
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075・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 日程第十四、社寺現境內無償下
付ニ開スル法律案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シ
マス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=75
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076・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 第二讀會ヲ開クニ御異議ナシト認
メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=76
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077・岩崎勲
○岩崎動君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省
略シテ委員長報告ノ通リ、卽チ委員會ニ於テ修正議決ノ
通リ、可決確定セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ「ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=77
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078・奧繁三郎
○議長(奧繁三郎君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス
社寺現境內地無償下付ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=78
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079・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 本案ハ御異議ナシト認メマス、仍
テ委員長報告ノ通リ可決確定致シマシタ-次ニ日程第
十五、國有土地森林原野下戾ニ關スル法律案ノ第二讀會
ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマス
〔第二讀會ヲ開クニ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=79
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080・奧繁三郎
○議長(奧繁三郞君) 御異議ナシト認メマス、仍テ第二
讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=80
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081・岩崎勲
○岩崎勳君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミ
マス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=81
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082・奧繁三郎
○議長(臭繁三郞君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト認メ
マス、仍テ直ニ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ、本案ニ
付テ討論ノ通告ガアリマス、阿部武智雄君-阿部君ハ修
正案ヲ提出セラレマシタ
國有土地森林原野下戾ニ關スル法律案
第二讀會
〔阿部武智雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=82
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083・阿部武智雄
○阿部式智雄君 私ハ本案ノ賛成演說ヲ簡單ニ申上ゲ
タイノデアリマス、大分問題モ澤山アル場合、斯ウ云フ古イ
事ヲ申上ゲルト云フ事ハ甚ダ恐縮ニ堪ヘマセヌケレドモ、此
問題ハ山下村民幾百万ノ休戚ニ係ハル問題デアリマスカ
ラ、過日本案提出ノ場合モ、時間ノ關係上思フヤウニ申上
ゲル機會ヲ得ナカッタ、ンレガ爲ニ今日此時間ニ極ク搔摘ン
デ一應申上ゲテ見タイ積リデアリマス、此問題ハ御承知ノ
明治八年、而モ一新當時ノ問題デ、今日ニ至ッテハ甚ダ古
イ問題デアリマスカラ、斯ウ云フ古臭イ問題ヲ幾度モ出スト
云フ事ハ、皆樣ニ對シテモ濟ミマセヌケレドモ、斯ノ如キ古イ
問題ガ今日迄殘ッテ居ルト云フコトハ、如何ニモ遺憾ニ堪ヘ
ナイ次第デアリマス、カルガ故ニ、此問題ヲ申上ゲナクチヤナ
ラヌ、已ムヲ得ナイ事ニナルノデアリマス、一體此問題ハ明
治八年ノ地租改正ノ折ニ、民有ヲ官有ニ組替ニナッタト云
フノガ抑、ノ起リデアリマスガ、過日委員會ノ當時モ、私共カ
ラ政府ニ向ヒマシテ質問致シマスニハ、其當時人民ガ間違ッテ
官有ニ入レタノデアルカ、官ガ民ノ物ヲ無理ニ取上ゲタノデア
ルカ、其點ハ孰レデアルカト云フコトガ、其當時間題ニモナッタヤ
ウナ譯デアリマスガ、私共ノ考ヘマスニハ明治八年、而モ維新
ノ初メノ頃デアッタカラ、全ク當時ハ官卽チ時ノ政府ノ爲スガ
儘ニ委シテ、山下村民ガ卽チ屈服シタノデアル屈服シタノ
デアッテ、官デ無理ニ取上ゲタト云フ程ノ狀況ガ處ミニアリ
マス、サウ云フヤウナ譯デアリマスカラ、私ハ此當時ノ狀況ヲ
一寸御參考ニ申上ゲテ見タイノデアリマス、本議場ニ於キマ
シテモ明治八年地租改正ヲ御永知ノ方ト云フノハ洵ニ少イ
事ト思シテ居リマス、甚シキハ明治八年後生レタ諸君モアルデ
アリマセウ、諸君ノ生レナイ前ノ問題デアリマス、極ク近イ例ヲ
申上ゲマスレバ、明治八年ノ場合ニ私ノ靑森縣、而モ當時ハ
弘前藩-弘前藩ニ地租改正ノ御役人ガ參リマシタ時分
ニ何ヲ言フモノヤラ弘前ノ當時ノ役人ガ、地租改正ノ役人
ノ言フ事ガ一向通ラナイ、其通ラナイ爲ニ、到頭互ニ謠曲ヲ
以テ應對シタト云フ奇談デアリマス、果シテ其頃ハサウダラ
ウト思ヒマス、諸君ノ御永知ノ如ク明治二十三年ニ私ノ地
方カラ地方ヲ代表シテ來夕工藤行幹先生ガアリマシタガヽ
常時行幹先生ヲ評シテ「チンキユー」先生、「チンキユー」先生
ト言フテ居リマシタ、其當時工藤行幹先生許リデナク、吾々
ノ言フコトモ諸君ガ御聽キニナリマシタナラバ、其通リダラウ
ト思ヒマス、或ハ韃靼將軍ト云フヤウナ評ヲ受ケマス、工藤
行幹先生ナドハ古イ時代カラ諸國ヲ漫遊シ、自由黨時代カ
ラ天下ヲ漫遊シタ人デアッテモ、尙ホ此ノ通リデアリマス、況
ヤ明治八年ノ當時ナラ、サウ云フ事ハ有リ勝チノ事ト思ヒ
マス、サウ云フ事情ノ通ジナイ場合デアルカラ、地租改正ノ
當時ノ御役人ノ言フ事ハ一モ二モナクソレニ屈服シタト云
フ事實ガ明ニ分ッテ居マフ、中ニモ此東北ノ方ニハサウ云フ
ノハ澤山アリマスガ、併シ當時ノ政府ノ地租改正ニ對スル
方針ト云フモノヲ見マスルニ、決シテサウ云フ殘酷ナ無理ナ
事ヲシタノデハナイノデアリマス、唯其當時此縣令、其當時
其地方ニ來テ居ル所ノ縣令、或ハ地租改正ノ御役人、其方
方ノ此取扱ニ依シテ、斯ノ如クナンテ居ルト云フコトハ、明ニ此
私ガ古クカラ色ミナ書類ヲ調査シマシテ、當時ノ狀況ヲ能ク
調ベテ居リマシタガ、今諸君ニ御參考ノ爲ニ其當時ノ政府
ノ方針ト云フコトヲ申上グテ見タイ、之ガ明治八年十二月
二日福島縣廳カラ伺ッタノデアリマス、福島縣カラ伺ヒマシ
テ、其當時ノ此內務省ノ指令ヲ得タノデアリマスガ、其當時
ノ此伺書デ見マスレバ、當時縣廳アタリデハ如何ニ此土地
ニ對シテ考ヲ持フテ居ルカ、又當時ノ政府ガドウ云フ方針デ
アルカト云フコトハ能ク見エテ居リマス、其通リ東北地方デ
行ハレタカ、行ハレヌカト云フコトガ明ニ見エルノデアリマ
ス、或ハ東北地方ガ今申上ゲタヤウナ、此官民有ノ混同シ
タモノハ澤山アリマスケレドモ、之ヲ以テ全國ニ斯ノ如ク改
正ガ行ハレタトハ見エナイノデアリマス、之ヲ以テ見マシテモ明
治八年十二月二日福島縣伺地所名稱區別ノ義昨七年
太政官第百二十號ヲ以テ御定相成爾來調方ニ付同百四
十三號、尙本年地租改正局乙第三號等參酌査定可致筈
然ルニ乙第三號中數村入會、一村持、數人持、積年ノ慣行
存在致シ、比隣町村ニ於テ保證致シ候者ハ帳簿ニ記載無之
モ民有ニ可視做尙ホ疑似ニ涉ルモノハ詳細可伺出云々畢
竟實地之御詮議ニ出候儀ニハ可有之候得共倩相考へ候
ニハ官林及人跡モ之無キ深山ヲ除之外ハ是迄御拂下相
成候荒蕪地原野ノ類ト雖モ〓シテ多少積年慣行無之地
ハ有之間敷右ハ民有地ト相認候ハヾ自今後官地ハ從來
ノ官林及人物及人跡モ無之澤山而已ニ歸シ餘ハ悉皆民
有ト可相成然ル上ハ百年日進ノ今日ニ當リ勸農、授產、學
校、開拓、水理、堤防、道路、橋梁、鐵道、電線、鑛山、牧場
等ヲ始メ百年新設ノ事業ハ到ル處多少障害ヲ生ゼザルハ
有之間敷」此處ガ括弧シマシテ、尙ホ此處縣廳ノ意見ヲ入レ
テ居ルノデ「政府ノ公權ヲ以テ進退スルノ土地僅少ニ相成
人民ノ私權ニ屬シ候テハ必ズ一方一村ダケノ僻眼陋習ヲ
以テ其地ヲ制縛シ舊幕府ノ頃一畝一字モ開設スベカラズ
ト栽判シ又村々ノ條約ニ原野ニ於テ新田畑ヲ開クペカラ
ズ、樹木ヲ植ユベカラズ、抔ノ醜狀アルガ如クニ至ルベシ、自
然ニ地闘ケズ、產興ラズ、遂ニハ邦國ノ富强ニモ關スルカ」云
云ト斯ウナッテ玆ニ括弧ガ付ケテゴザイマス「依テハ山林ニテ
一人持或ハ一村持或ハ數村持等彼レノ林ハ多年勞力
相加ヘ且ツ賣買モ仕來候トカノ類ヲ積年慣行ト見做シ、
比隣無疑ヲ證シ候ハバ帳簿ニ記載無之モ民有地ニ編入、
其他ノ山林原野秣場等ノ類ハ假令採薪、刈秣等仕來候
共斷然是レヲ官有地ニ相認メ可然哉」尙ホ括弧ヲ掛ケテ
「政府ノ公權ニ屬スルノ地多ケレバ、土ヲ〓キ產ヲ擴シ、其
他百般ノ公業自在ニ著手シテ公益ヲ謀ルヲ得ペシ云々ト
云フコトヲ附加ヘテ居リマス、其後ハ除キマス、餘リ面倒ナ
事ヲ申上ゲテモ濟ミマセヌカラ除キマス、サウシマシテ其途
中ヲ除キマシテ、其後ニ「其他ハ互ニ天然生植ノ薪柴ヲ伐リ
萱芽ヲ刈ルノミ他ニ生養之功證之レナキノ類ハ一〓ニ慣
行ヲ以テ民有ニ編入シ難ク、故ニ一切ニ之ヲ問ハズ且草餞
等相納來候分ハ當年ノ借地料ト見做シ更ニ」一云々其後ニ
「尙管下之義山岳原野ヲ郡トシテ廣漠ノ地之ナキハナク、
村トシテ秣場之ナキハナシ、大抵初メノ公有地ニテ人民希
望スレバ代價ヲ徵シテ拂下ゲタルモノニ候、
〔奧議長議長席ヲ退キ粕谷副議長代リ著席〕
是等ハ總テ慣行ニヨリ處分候ヘハ將來百事御施行ニ障害
可有之歟、先以テ一例ヲ示シ伺」ト斯ウナッテ居リマス、デ之
ニ政府デ指令シマスニハ、ドウ指令ヲシマシタカト云フト、斯
ウ指令シテ居リマス「伺之趣乙第三號ノ趣旨タル地劵法施
行隨テ官民有地ヲ決定スルノ際ニ當ッテハ七年太政官第
百四十三號布達ノ如ク從前公有地ト稱スル內ニハ舊領主
及地頭ヨリ其村又ハ其者ニ進退セシメ或ハ積年賣買等ノ
慣行又ハ多少ノ勞費ヲ費シ樹木栽培ノ類モ不少、然ルニ
歳月ノ久シキ一ノ證狀ナキヲ以テ積年私有進退ノ實蹟ア
ルモ直チニ之ヲ官地トスルハ事實愍諒ノミナラズ妥當ノ措
置ニ無之依テ右等ノ如キハ假令現證ナシトイヘドモ比隣
郡村是ヲ瞭知シ、遺證ニ代ッテ保證スルモノハ政府之ヲ純
乎タル證狀ト認視シ假令刈秣、採薪場ト雖モ同然證狀ト
認視スルモノハ同樣ノ儀ニ有之」云々斯ウ云フ指令ニナッテ
居リマス、斯ノ如クシマスルト、殆ド此深山幽谷タルベキ卽
チ御本山ト稱スルモノヲ除クノ外ハ、總テ民有地トシテ開ク
ベキガ當然ノ政府ノ御趣旨デアッタヤウニ見エマス、然ルニ此
伺ハ單ニ福島縣デ伺ッテ、福島縣ダケニ指令シタモノデナク
シテ、此伺ハ靑森縣ニモ、秋田縣ニモ、總テノ方面ニ東北ニ
之ヲ出シテ迴ッテ來タノデアリマス、私ハ之ヲ持ッテ來タノハ
靑森縣デ寫シテ、持ッテ來タノデアリマス、サウ云フ譯デアリマ
スカラ、當時政府ノ御趣旨ハサウ云フ無理ナ事ヲスルト云
フ譯デハ決シテナカッタト云フコトハ明ニ見エマス、故ニ他府
縣デハ此政府ノ御趣旨ニ依ッテ相當民有林モ得、民有原
野モ民地ニナッタノダト思ハレルノデアリマス、モウ一ツ申上ゲ
テ見タイノハ、斯ウ云フ問題ガ殘ッテ居リマス、明治八年ノ
地租改正ノ場合ニ、村とノ御收納高ヲ定メマシタ場合ニハ
從前藩ノ場合ニ納メマシタ其御收納高ヲ押へテ、其押ヘタ
モノニ種子、肥料一割五步ヲ引イテ、其額へ明治八年カラ
遡シテ五箇年ノ平均相場ヲ掛ケテ地價ヲ定メ、地租モ定メ
タト云フコトニナッテ居リマス、是ニ至ッテ何等ノ不當ハナイ
ノデス、然ルニ玆ニ諸君ノ御同情ニ訴ヘナケレバナラヌノハ、
此福島縣ノ此頃請願書ガ出テ來タノニモ能ク書イテアリマ
ス、又秋田縣ヤ巖手縣ニモ此例ガアリマス、アルト云フノハ
舊藩ノ場合ニ村ノ御收納ヲ定メマシタ場合ハ、村ニハ上中
下アリマス、又田ニモ上中下アリマス、其上中下ノ田ノ位ヲ
定メ、村ノ上中下ノ位ヲ定メ、然ル後山林ノアル所ハ村ノ位
ヲ一等進メルノデアリマス、若シ甲ノ村ガ中村ニナッテ居ルモ
ノガアル所ニ持ッテ來テ、山林ガアリマスルトソレニ一等ヲ加
ヘテ上村ニ上ボセテ往ク、又下ノ村ガアル、下ノ村ノアル所ヲ
牧穫其他ノ點カラ見ルト中ニ位シタ所ガアル-下ニ位シ
夕所ガアル、ソレモ山林ノアル爲ニ上ノ村ニ上ポセテ、上ノ村
ニ相當スルノ御牧納ヲ納メタト云フコトニナッテ居リマス、然
ルニ昔ノ舊藩ノ場合ノヤウニ、山林ノ恩澤ハ官山トナッテ官
山ニ書入レラレテシマッテ、御收納ダケガ從來ノモノヲ脊負ク
タト云フ無理ノ形ニナッテ居リマス之ガ私ハ地租改正ノ場
合ニ御收納ノ制度、地租ノ制度ヲ定メマシタコトハ、大藏
省ニモ私ハ今申シマシタヤウナ算盤カラ出タト云フコトハ明
カデアリマスルシ、又舊藩ノ場合ノ地租ノ盛リ方ト云フモノ
ハ山ノアルガ爲ニ、村ノ位ヲ一等進メタト云フコトハ明カニ
分ッテ居リマス、斯ウ云フヤウナコトハ如何ニモ其山林、山下
村ト非常ニ長イ間重イ負擔ヲ脊負ッテ來タト云フコトハ明
カニナッタノデ、此意味カラシテモ相當ナ山林ヲ其村ニ下ゲ
テ、尙又官山ニ對シテモ相當其村ニ收益ノ分配等モ遣シテ貰
ハナケレバ、今申上ゲマスヤウナ地租改正ノ場合ノ重イ負
擔ガ今ニ殘ッテ居ルノデアリマス、今日斯ノ如キ事ヲ諸君ニ
訴ヘテ見テモ、何故其時ハソンナ詰ラヌ法ヲ背負ッタカト云
フコトデアリマスケレドモ、其當時ハ今申シタヤウニ、卽チ吾
々ノ生命財產ハ勿論、生殺與奪ノ權ヲ其藩主ガ持ッテ居タ
明治八年ノ頃デゴザイマスカラ、其當時ハ殆ド議論ヲシテ相
當ノ權利ヲ主張スルト云フコトハ今カラ考ヘテ見レバ有リ
得ベカラザルコトデアルノデアリマス、サウ云フ事情デアリマス
カラ、今日マデ斯ノ如キ無理ナ事ガ未ダ殘ッテ居ルト云フコ
トハ、諸君ニ御含ヲ願フコトデアリマスソレカラ尙ホ舊藩ノ
林政ト云フコトニ付テ私ガ各處ヲ調ベテ步イテ見マシタガ、
ドウモ何分ニモ束北ノ方ニハ稍、似寄ッタ制度ガ見エマスケ
レドモ、中國、關東、九州等ニ至リマシテモ、其制度ノ一定シ
タ方法ガ見出シ兼ネマスガ、要スルニ今申シマシタヤウナ官
山ト雖モ相當ノ收益ヲ分配スルト云フコトハ明カニ分ッテ
居リマスルシ、中ニモ九州ノ方ニ行キマスルト、宮崎縣ハ地
租改正ノ場合ニ何カ改正ニ對スル不服デモアッテ、蓆旗、竹
槍デ掛ッタト云フ譯デ、最後ニ非常ナ殘酷ナ調ベヲ受ケテ、
九州デモ宮崎縣ガ一番官林ガ多イト云フコトヲ聞イテ來マ
シタ、ソレカラ其他九州デモ鹿兒島、福岡縣等ニモアリマシ
タガ、大〓何カシラ西國九州等ニ至リマスルト、特別ニ事情
ノアッタモノト云フコトハ分ッテ居リマスルガ、偖テ束北ニナリ
マスルト、此山林ニ付テハ津輕藩ニ於テハ帝室御料局ニ居
リマシタ御陵墓-帝室ノ歷史ヲ調ペル側ニアリマスル外
崎覺氏ト云フ方ノ拵ヘマシタ津輕藩ノ信政公ト云フ本ガア
リマス、此木ニ津輕藩ノ林政ト云フコトハ委シク書イテアリ
マスルガ、又盛岡藩ニナリマスルト、前ノ總理大臣原敬先生
ノ拵ヘラレマシタ南部誌ト云フモノニ委シク書イテアリマス、
秋田ニハ秋田ノ大久保鐵作氏ト云フ人ノ著シタル秋田誌ト
云フモノニモ尙ホ此林政ニ付テハ詳シク出テ居リマス(「簡單
簡單」又「謹聽」ト呼フ者アリ)又上杉鷹山公ノ書キマシタ林
政ニ對シタ詳シイモノモ私ガ調ペテ持ッテ居リマス、斯ノ如
キ事ハ詳シク申上ゲルコトハ、時間ノ關係且恐縮ダカラ止
メマスガ、要スルニソレ相當ノ官山ニ對シテノ收益ト云フコ
トハ、今申上ゲタヤウニアルノデス、今假ニ例ヲ津輕藩ニ取〃
テ申上ゲテ見マス、津輕ノ林政カラ考ヘテ見マスト、御本
山ト云フモノト御本山以外ノ雜木林ト云フモノト二種ニナッ
テ居リマス、偖テ此雜木林ト云フ方ニナリマスト、薪炭材、
其他秣場、肥料等ヲ買フノデアリマス此雜木林ニナリマシ
テハ、薪炭材ヲ採リマシテモ、士族ノ焚ク薪炭材、又藩主ノ
焚ク薪炭等ニアッテモ、總テ御買上ニナッタモノデアル、雜木
林ハ純然タル民有林ノ形ヲシテ居リマス、偖テ御本山ト稱
スル津輕ノ檜ハ日本ノ三大美林ノ一ニナッテ居ル、檜ニ對シ
テハ根元カラ二切、根元カラ十三尺ヅ、二切、二ツ切ッタ根
元ダケハ官ニ納メル、ソレカラ上ハ三番末木ト稱シテ、根元
四間六寸ヲ取ッタ殘リハ全部村ニ下ゲタモノデ之ヲ稱シテ
二公八民ノ形ト稱シテ居リマス、ソレヲ考ヘテ見ルト算盤
ヲ取ッテ見ルト、二公八民ダ、此形ハ津輕藩ノ全部デアリマ
ス、偖テ此二公八民卽チ二公ナル所ノ木ハ如何ニ之ヲ使ッ
タカト云フト、之ヲ以テ藩主ノ御城ノ普請、士族サンナドノ
家ヲ建テ、塀ヲ建テ、其他樋管、水門、道路、橋梁等ニ眞木
ヲ無代デ拂下ゲタノデアリマス、拂下ゲテ吳レタノデアル、或
ハ波除其他ニ使ッタモノデ、考ヘテ見ルト殆ド民山同樣ノ形
ニナッテ居ッタノデアリマス、ソレガ爲ニ此制度ガ單リ津輕藩
許リデナイ、盛岡藩モ、秋田藩モ、仙臺藩モ、上杉モ、殆ド東
北ガ同ジ形ナリト私ガ調査シタモノニ明ニ見エテ居リマス、
サウナリマスルト、今ノ東北ノ官山ト稱スルモノガ殆ド二公
八民ノ部分林ニナルベキモノニ相違ナイノデアリマス、加フ
ルニ靑森縣ノ管轄ノ中ニ盛岡藩ノ支配ニナッテ居ル場所ニ
二公八民、或ハ三公七民ナドヽ云フ山ガ、未ダニ縣廳ニ部
分木臺帳、試植林臺帳ト云フモノニ殘ッテ居ル、明ニ縣廳ニ
其帳面ガアリマシテ、末ニ農商務デハ一年ニ一ツ許可シ二
ツ許可シト云フヤウニ、二三箇所ポツ〓〓取調ヲシテ、今日
尙ホ其取調ヲシテ下渡シテ居ルト云フ形ニナッテ居リマス、
斯ノ如キ狀況デアリマシテ、私共ノ此案ヲ唱ヘル所以ノモノ
ハ、國家トシテモ相當ナ之ニ對スル方法ヲ講究スルガ當然
ナリト考ヘルノデアリマス、又次ニ三十二年ノ年ニ色ニナ地
租改正其他ノ關係カラ官民有地ノ間違アル事ヲ知リマシ
テ、三十二年ノ法律九十九號ヲ以テ下戾法案ガ出來マシ
タ、偖テ此下戾法案ノ結果ガ果シテ如何デアッタカト斯ウ申
シマスト、之ガ甚ダ遺憾ナガラ全部ノ解決ガ付カヌト云フコ
トガ、今日尙ホ此議論ノ出テ來ル所以デアリマス、此ニ於テ
私共ハ先年以來東北ノ者ガ申合セマシテ、全國ニ此拂下ノ
卽チ官民有ノ殘"タモノ、下戾法案ノ恩惠カラ外レタモノガ、
如何程アルカト云フ事ヲ全國ニ向ッテ照會ヲシ、調査ヲシテ
貰ッタモノガアリマス、此調ガ私共ノ今申上ゲル此下戾法案
ニ殘ッタ數ト云フモノハ、決シテ確實ナモノトハ申兼マス、私
共ノ東北會カラ各縣ノ內務部長ニ向ッテ社寺林、民有林等
ノ下戻ニナラヌモノハ如何程アルカト云フ事ヲ、色〓箇條ヲ書
イテ照會シタ其結果デアリマス、其結果ニ依リマスト、京都ハ
四百三十六町歩、大阪ハ六十七町歩、長崎ガ千八百六十
一町步、埼玉六千九百七十三町步、群馬九万四千三百
九十六町歩、ソレカラ茨城十一万三千百七十五町步、滋
賀千二十一町歩、長野一万八千百八十二町步、福島六
万六千七百六十二町步、巖手九万二百四十三町歩、靑
森五万六千町步、山形ノ千六百六十町歩、秋田二万三
千八十五町步、島根千五百三十町步、香川八十二町步、
愛媛九千百七十二町歩、大分八十九町步、熊本六百十
町歩、宮崎千百三十町步ト云フ數デアリマシテ、總計ハ六十
一万九千百五十五町步ニナッテ居リマス、而シテ此中ニサウ
云フ書類ニ依ッテ取調べルト云フ事ハ出來マセヌ、有ルニハ
有リマスケレドモ、取調ノ法ガ付キマセヌト云ウテ來マシタノ
モアリマス、ソレハ東京、神奈川、兵庫、千葉、山梨、鳥取、岡
山、廣島、福岡、愛知、佐買、鹿兒島、沖繩、岐阜、ソレカラ下
戾スベキ山ガ無イト云ウテ來マシタノハ、奈良、三重、靜岡、
福井、富山、山口、和歌山、德島、斯ウ云フノデアリマスガ、併
シ是モ矢張私共ノ照會ニ對シテ或ハ諒解ヲ得兼ネタ處モ
アルカモ知レマセヌ、斯ノ如ク各縣ニ亙ッテ澤山ノ反別ハアル
ノデアリマスカラ、此關係ト云フモノハ主ニ大字持、所謂部
落有林、或ハ村民共有ノ地面ガ多イノデアリマスカラ、其關
係ノ廣イコトハ前申上ゲタヤウニ、幾百万人ト云フ數ニ私
ハナッテ居ルコトヽ思フノデアリマス、而シテ之ニ對スル]政府
ノ意見ヲ聽イテ見マスルト、昨年モ本議會ニ政府ノ答辯ナ
ルモノモ見エマシタシ現レテ居リマス、又此頃モ政府ニ聽イ
テ見マシタ、政府ノ言明スル所ニ依リマスト、政府ハ數字ハ
分ラヌケレドモ、下戾ノ未ダ殘ッテ居ルト云フコトハ認メテ居
ル、斯ウ云フノデアリマス、併ナガラ之ヲ下ルトスルト、未ダ幾
十人ノ案件ニ互ルノデ、ソレガ爲ニ政府ノ經營シテ居ル山
林ノ計畫ガ狂フ、計畫ガ狂フカラ困ル、ソレカラ今一ツハ計
畫ニ對シテ相當ノ植付手入等ノ方法ガ付カナクナッテ來ル、
卽チ其地面ニ對シテ、手ノ入レ方ガナクナッテ來ル、ソレガ爲
ニ政府ノ方デハ同意申兼ネルト云フコトヲ答ヘラレマシタガ、
私共ノ考カラ行クト三十二年ノ法律第九十九號ナルモノ
ハ、元々其改正ノ場合ニ民官林ノ間違ヒカラ、地方ノ山下
村民ニ特別ナ恩惠ヲ以テスルガ爲ニ、此法律九十九號ヲ以
テ救濟シヤウト云フノガ目的デアッタノデアリマセウケレドモ、
其結果ガ寧口下戾ヲ出願スベキ途ヲ開カレタノデアルノニ、
其出願スベキ道ヲ阻止サレタコトニナッテ居ルノデ、前申上
ゲタヤウニ部分目林ト云フノハ未ダ年々現レテ、相當ノ解
決ヲ得ルニモ拘ラズ、下戾ト云フ方ガ法律九十九號ヲ以テ
絕對ニ其後願等ガ出來ナイト云フ此處ニ一段落ヲ告ゲタ
モノニナッテ來タノデ、ンレガ爲ニ今日斯ノ如キ不幸ニ陷ッテ
居ルト云フ結果ニナッテ居リマス、私共此間ノ委員會デモ、
民地ガ地租改正ノ場合ニ官地ニ間違シテ這入ッテ居ッタトナ
ルト、政府ハ不當利得ヲ得テ居ルノヂヤナイカ、國有財產ノ
中ニ不當利得ヲ得タ官地ガアルト言ハナケレバナラヌ、ドウ
モ政府カ國有財產ヲ造ルニ當ンテ、民有ノ不當利得マデ加
ヘテマデモ、尙且ツ財產ヲ造ラナケレバナラヌト云フコトハア
ルマイ、ソレカラ又吾々ノ間カラ言フニハ、政府デ民林タル立
派ナ證據アルニモ拘ラズ、之ヲ期間過ギタリトシテ之ヲ官林
ニ編入シテ置クト云フコトニナルト、先ヅ個人カラ云ヘバ法
律上ハ適當デアラウケレドモ、德義上カラ言ッテモ一ノ横傾
トナルヂヤナイカト云フヤウナ極端ナ議論ヲサレテモ、辯解ノ
言葉ガナイヂヤナイカト云フコトマデ言ハレテ居リマス、斯ノ
如キ問題デアリマスカラ、前ニ私ノ申上ゲク如ク、深山幽谷
ニマデ入ルト云フヤウナ、卽チ國有林トシテ存置スベキ大キ
ナ官林ニ決シテ手ノ及ブコトデハナイト思フノデアル、前申
上ゲタヤウニ山下ノ者ハ草ヲ苅リ、柴ヲ取リ、或ハ甚シキニ
至ッテハ、深山ニ便所ヲ建テ、井戶ヲ造ルト云フ形ニマデナッ
テ居ルノダカラ、サウ云フヤウナ山下ノ者ノ今日生活安定ノ
爲ニ下ゲテ貰ヒタイト云フコトデアルカラ、決シテ是ハ無理ノナ
イコトヽ思ハレルノデアル、吾々ガ今尙ホ此問題ヲ唱ヘテ政府
ノ同情ヲ得兼ネテ居ルト云フコトハ、卽チ吾々ノ熱心ガ足
ラヌ、吾々衆議院議員カ政府ノ腹ノ底マデ、卽チ腦裡マデ通
ルヤウニ聲ガ未ダ達シナイモノト私ハ思ヒマス(拍手)今年
此目的ヲ達シナケバ來年、來年達シナケレバ再來年、幾年
ノ間デモ此議論ヲ唱ヘテ、而シテ政府ノ迷夢ヲ覺シテ、只今
ノ政府許リヲ云フノデハアリマセヌ、永イ間ノ政府ガ執リ來ツ
タ事ガ不法ナリト云フコトヲ唱フテ、以テ私ハ此目的ヲ達シ
タイト思フノデアリマス、私ハ嘗テ川ノ問題デ大キニ唱ヘタコ
トガアリマシタガ、其時分ニ田中正造先生ガ私ニ〓ヘルニ
ハ、熱心ト云フモノハ度ヲ越エナクテハ熱心デハナイ、尋常ニ
饒舌ッテ居ルノハ熱心デハナイノデアル、熱心ナルモノハ常軌
ヲ逸シテ掛ルノガ本當ノ熱心ダト言ハレマシタ(拍手)私モ
此常識ヲ逸シテマデモ此議論ヲ唱ヘ、目的ヲ達イシタト思ヒマ
スカラ、只今申上ゲタヤウニ、各縣斯ノ如キ關係ニナッテ居ル
ノデアリマスカラ、其縣々カラ一人ヅヽ常軌ヲ逸スルマデノ熱
心家ガ出テ、其問題ノ解決スルコトヲ御願ヒ申上ゲタイノ
デアリマス(拍手「修正ハドウシタノデス」「修正」「修正」ト呼
フ者アリ)常軌ヲ逸シタマデノ熱心ノ結果デアリマス、修正
意見ヲ提出シマス、此修正意見ハ國有林野下戾法案ノ第
一條ニ於テ但書ヲ加ヘマシテ「社寺ノ現境内地ニ付テハ此
ノ限ニ在ラス」、ソレカラ第三條ノ末文ニ、尙ホ但書ヲ加ヘマ
シテ「社寺ノ現境内地ニ付テハ此ノ限ニ在ラス」、斯ウ付ケル
ノデアリマス、其理由ハ社寺現境内地無償下付ニ關スル法
律案ガ先刻可決ニナリマシタカラ、今後社寺ニ對シテ更ニ
下戾請求ヲ總テ主張ヲ爲スト云フ意味カラ、此案ヲ提出ス
ルノデアリマス、委員會ノ場合ニ此前ノ決議ガ先キニ決定
スレバ、此訂正ヲシタノデアリマスケレドモ、此下戾法案ヲ先
キニ決シマシタカラ、此場合此修正ヲ出スノデアリマス、ドウ
ゾ御同意ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=83
-
084・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 中野寅吉君
〔中野寅吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=84
-
085・中野寅吉
○中野寅吉君 私ハ阿部武智雄君ノ修正意見ニ賛成ヲ
致シマス、此問題ハ簡單ニヤラナケレバ反對スルト云フ言論
ノ脅威ガゴザイマシタカラ、私ハ簡單ニシマス、自分ノ娘ニ面
倒ヲ見テ貫ヒタイト思へバ、其親爺ハ婚ニ對シテ言ヒタイ事
モ言ヒ得ナイト同ジデアル、此案サヘ通シテ貰へバ私ハゾレデ
宜シイト思フノデアリマス、簡單ニヤラヌト反對スル、是ハ此
案ニ對スル最モ重大ナル脅威デアルカラ、私ハ至極簡單ニ
二三分此修正意見ニ賛成ヲ述ベテ置キタイト思フ、此後ニ
治安警察法ノ改正案ト云フ大事ナ問題ガアッテ、而モ今日
ハ參政權ヲ大ニ主張サレル所ノ婦人諸君モ多イシ、又政治
ニ御熱心ナ傍聽ノ方モ多イノデアリマスカラ、私ハ此後ノ治安
警察法案ノ邪魔ニナラヌヤウニ致シマス、況ヤ又木下成太
郞君ハ委員長トシテ大ニ此委員會ノ結果ヲ此處デ鮮カニ
御報告ニナラントシテ手具勝引イテ待ッテ居ラルヽ次第デ
アリマスカラ、私ハ簡單ニ致シマス、ソレデ是ハ今阿部君ノ
言ハレタ如ク、此問題ニ對シマシテハ何モ解決ガ面倒ヂヤナ
イ、單刀直入ニ申上ゲレバ、阿部君ノ言ウタ通リ、政府ノ迷
夢ヲ覺シテヤレパソレデ宜イノデアル、政府ノ迷夢ヲ覺マスコ
トガ出來レバ、吾々ノ此初一念ヲ貫徹スルコトガ出來ル、此
初一念ヲ貫徹スルコトガ出來ナケレバ、全ク此山ニ依ッテ生
活シテ居ル地方ハ、寔ニ難儀ヲスルノデアル、又最モ極端ニ
言ヘバ、此山ニ依ッテ生活シテ居ル者ガ其處ニ依ッテ生活不
能ニナルト、卽チ選擧權モ無クナル、其處ニ選擧ヲスル人モ
無クナッテシマフカラ、其處ヲ土臺トシテ居ル吾々山議員ト
云フ者ハ、遂ニ議員ニナルコトガ出來ナクナルヤウナ心配モ
アルノデアル(拍手笑聲)ソレデ政府ハ之ニ依ヶテ何ボ得シテ
居ルカ、マア申ス迄モナイガ、木竹拂下代及雜收入マデノ間
ヲ讀ムト大變デスカラ、簡單ニヤランケレバ反對スルト云フ
カラモウ讀マナイ、卽チ森林收入ト云フモノハ三千九百二
十二万一千四百三十五圓ト云フ森林收入ガアル、政府ノ
收入ガ是ダケアルト云フコトガ、卽チ山ニ依ッテ生活シナケレ
バナラヌ國民ガ、是ダケノ迷惑ヲシテ居ルト云フコトハ分ルヂ
ヤナイカ、政府サヘ收入ガアレバ山ニ依ッテ生活シテ居ル人
民ハ瘦セテモ、枯レテモ、餓死シテモ宜シイト云フヤウナ政策
デアッタナラバ、是ハ鼓ヲ鳴ラシテ政府ノヤリ方ヲ攻メナケ
レバナラヌト私ハ思フノデアル、ソレデ此問題ハ昨年モ通過
シタ、阿部君ノ言葉ヲ藉リテ言ヘバ、何故此政府ニ對シテモ
ウ少シ突込マナイ、卽チ阿部君ノ屬シテ居ル所ノ政友會ノ
黨員ニ依ッテ、政府ガ成立ッテ居ルデハナイカ、卽チ國民ノ利
害休成ニ關スル問題デアッタナラバ、何故ニ阿部君ハ脫黨ヲ
賭シテモ此問題ヲ力爭シナイノデアルガ、其位デナケレバ初
一念ノ貫徹ハ不能デアル、政府者曰ク、趣旨ニハ賛成デアル
ガ遽ニ出來ナイ、趣旨ニ贊成スルナラバ何故早クヤラヌ、言
葉ハ立派デモ實行シナケレバ屁デモナイ、默シテ居ッテモ實行スレ
パ宜シイ、趣旨ニハ賛成デアルケレドモ實行ハ出來ヌ、ソンナ贊
成ガ何處ニアル、人民ヲ馬鹿ニスルノモ程ガアル、ソレカラマウ一
ツ言ッテ兄タイノハ、澤來太郞君ノ調査シタモノヲ私ノ方ニ
送ッテ吳レタガ、其調査ニ依ルト云フト、帝都ノ眞中ニ山林
ガアル、帝都ノ眞中ニ山林ヲ持ッテ居ルト云フヤウナ者共ノ
目カラ見タナラバ、山ニ依シテ生活シテ居ル此貪民ニ對シテ
ハ、淚ヲ流スヤウナ同情ハ起キマイケレドモ、ソンナヤウナ階
級ノ方ニ重キヲ置カズシテ、宜シク政治ト云フモノハ平等ニ
幸福ヲ得ラルヽヤウニヤッテ貰ハナケレバナラヌト、私ハ思フノ
デアリマス(拍手)其他申上ゲタイ事ハ問題ガ山ダケニ山々
アリマスガ、アルケレドモ此位ニシテ私ハオシマヒニシテ置キ
タイト思フ、修正意見ノ賛成ハ先刻阿部君ノ述べタ意見
ノ通リデアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=85
-
086・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 討論ハ終結致シマシタ、採決致
シマス、阿部君ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ乞ヒマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=86
-
087・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 多數デアリマス、修正案ハ可決
サレマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=87
-
088・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 他ハ委員長報告ノ通リ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=88
-
089・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマス、仍テ委
員長ノ報告ノ通リ決シマシタ、第二讀會ハ是ニテ終了致シ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=89
-
090・岩崎勲
○岩崎勳君 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、第二讀會ニ於
テ修正議決ノ通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=90
-
091・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナシト
認メマス仍テ直ニ第三讀會ヲ開キマス
國有土地森林原野下戾ニ關ズル法律案
第三讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=91
-
092・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、第二讀
會議決ノ通リ全部確定致シマシタコトヲ宣告致シマス、次
ニハ日程第十六乃至第十九ハ同一委員ニ付託シタ議案
デアリマスカラ、一括議題ニ爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=92
-
093・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、日程第
十六、治安警察法中改正法律案、日程第十七、第十八、
第十九、孰レモ同ジ名稱デアリマス、此四案ヲ一括シテ其第
一讀會ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長木下
成太郞君
第十六治安警察法中改正法律案(一宮
房治郞君外一名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一治安警察法中改正法律案(一宮房治郞君外一名
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十四日
治安警察法中改正法律案委員長
木下成太郞
衆議院議長奥繁三郞殿
第十七治安警察法中改正法律案(〓瀨
一郞君外一名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一治安警察法中改正法律案(〓瀨一郎君外一名提
山三
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十四日
治安警察法中改正法律案委員長
木下成太郎
衆議院議長奧繁三郞殿
第十八治安警察法中改正法律案(橫山
金太郞君外三名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一治安警察法中改正法律案(横山金太郞君外三名
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十四日
治安警察法中改正法律案委員長
木下成太郞
衆議院議長奧繁三郞殿
第十九治安警察法中改正法律案(松本
君平君外一名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一治安警察法中改正法律案(松本君平君外一名提
出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十四日
治安警察法中改正法律案委員長
木下成太郞
衆議院議長奧繁三郎殿
〔木下成太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=93
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094・木下成太郎
○木下成太郞君 本案ハ社會ニ於キマシテ大ニ注意ヲセ
ラレタル案デアルノデアリマス、隨ヒマシテ委員會モ出來得
ルダケ愼重ニ審議ヲ致サント思ヒマシテ、二月十五日ニ第
一ノ會ヲ開キマシタ以來、數日以前終リノ會ヲ開イテ、サウ
シテ決定ヲ致シタ次第デアリマス、御承知ノ通リニ一宮房
治郞君及〓瀨一郞君、横山金太郞君、松本君平君ノ此四
君ヨリ出テ居ルノデアリマス、此中デ所謂國民黨案ニ屬シ
テ居リマスル治安警察法中改正法律案ハ、第二條、第四
條、第五條、第八條、第十條、第十七條、第二十條、第二十
三條、第二十四條、第二十六條、第二十七條、第二十八
像、第二十九條、第三十條、第三十一條、第三十二條、是
ダケニ付テノ改正ナノデアリマス、ソレカラ憲政會ノ案ハ第
五條第二項中「女子及」ヲ削ルト云フノト、第十七條ノ第
一項中ヲ削ルト云フ都合ニナッテ居ルノデアリマス、宮君
ノ案ハ「女子及」ヲ削ルト云フダケノ案ニナッテ居リマシタガ、
色々之ヲ詳シク申上ゲマスルト長ウナリマスカラ、アトハ速
記錄デ御覽ヲ願ヒタイト思ヒマスル、要スルニ之ヲ審議致シ
マシテ、サウシテ本案ハ「女子及」ヲ削ルト云フコトニ決シタノ
デアリマスル、但シ本案ノ改正ヲセントシマスル所ノ精神ハ、
女子ノ自由解放及勞働者ノ解放ト云フコトガ之ガ治安警
察法ヲ改正セントスル所ノ趣意ニ外ナラヌノデゴザイマス、
就キマシテハ憲政會ノ代表トシテ野村嘉六君カラシテ、第十
七條ノ改正ニ付キマシテハ、內務大臣ノ言明ヲ聽イテ、其言
明ニ依ッテハ此事ハ强テ主張セヌト云フコトデアリマシタ爲ニ、
内務大臣ガ委員會ニ出席セラレマシテ、他日勞働及勞働
爭議ノ各立法ヲシテ提出スル考デアルト云フコトヲ言明セ
ラレタ爲ニ、憲政會ノ方デハ其事ニ付テハ爭ハヌト云フコト
デアリマシテ、ソレデソレハ決シマシタ次第デゴザイマス、尙ホ
國民黨ノ案ニ付キマシテハ、植原君カラシテ本會ニ於テ少
數意見ヲ述ベルト云フコトヲ留保セラレテアルノデアリマス、
以上ノ次第デアリマスルガ故ニ、「女子及」ヲ削ルト云フコト
ハ、卽チ前宰相原君カラシテ、我國ノ女子ニ參政權ヲ與フ
ベク、若クハ女子ノ自由解放ヲシヤウト云フ事ニ付テハ、卽
チ其琴線ノ一端ニ是ハ觸レテ居ルノデアリマスルガ故ニ、此
「女子及」ヲ削ルト云フコトニ政府ハ同意ヲ致シマシタ次第
デアリマス、委細ノ事ハ速記錄ニ依シテ御覽ヲ下サルコトヲ
希望致シマス、私ハ之ヲ以テ御報告ト致シテ置キマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=94
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095・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 是ヨリ討論ニ移リマス、通告順
ニ依リマシテ發言ヲ許シマス、植原〓二郞君
〔植原悅二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=95
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096・植原悦二郎
○植原悅二郞君 只今議題トナッテ居リマスル治安警察
法中改正案ニ付キマシテ、委員長ノ報告ノ四案共通ノ點
デアリマス、第五條ノ一項ノ中ノ「女子及」ト云フ字句ヲ改
メテ、女子ヲ政談集會ニ加ヘルコトヲ許スト云フ此規定ニ
付キマシテハ、委員長ノ報告ニ賛成ヲ致シマス、其他ニ付キ
マシテ我黨提出ノ案、其一項ヲ除イタ全部ニ對シテハ、委
員長ノ報告ニ反對ヲ致シテ、原案維持ノ主張ヲ述ベタイト
思フノデアリマス、立憲政治ノ下ニ於キマシテ、言論集會ノ
自由ノナケレバナラナイコトハ申スマデモアリマセヌ、此點ニ
於キマシテハ、政府當局ニ於キマシテモ、政府與黨ト言ハレ
ル政友會詰君ニ於テモ、原則ト致シマシテ言論ノ自由ト、集
會ノ自由ノ無イ下ニ於テ、立憲政治ノ發達ヲ期スルコトノ
不可能ナリト云フコトハ御承認ナサルコトヽ思ヒマス(拍手)
御承知ノ如ク、明治二十一年ニ極テ苛酷ナ-總テノ制
度ヲ撲滅シテ、官僚藩閥ノ政府ヲ維持シヤウト致シマシタ
彼ノ保安條例デアリマス、明治二十一年ニ定メラレタ保安
條例ガ三十一年ニ廢止サレタ、此廢止サレタノハ私ハ申上
ケルマデモナイコト、日〓戰爭ノ結果、政黨ノ勢力ガ非常ニ
仲張致シマシテ遂ニ是ハ廢止スルコトニナリマシタガ、其反
動ノ期間ニ於キマシテ、山縣內閣ノ當時ニ又政黨ノ發達ヲ
阻止シ、言論集會ニ壓迫ヲ加ヘヤウトシテ造リ上ゲマシタノ
ガ、現行ノ治安警察法デアリマス、此法ノ主タル條項ニ於キ
マシテハ、時代錯誤ノモノデアリ、立憲政治ノ原則ニ反スル
モノデアルト云フコトハ明ナル事デアリマス、私共ノ改正セン
トスル點ハ、第一ニ此點デアリマス、現行法ニ於キマシテハ、
政談ヲ論ズル所ノ集會ヲ致サウトスル場合ニ於テハ、其發
起人ヨリ六時間以前ニ屆出ヲ爲サナケレバナラナイト云フ
ノヲ、六時間前ニ屆出ルト云フコトハ、私共言論ヲ尊重スル
上ヨリ政談ヲ論議致シマシテ、國民ヲ政治〓育致ス上カラ
致シマシテ、是ハ成ベク手輕ニ出來タガ宜イト云フノデ、之
ヲ三時間マデニ改メヤウト云フノデアリマス、之ニ付キマシテ
ハ、政府當局ニ於テハ絕對ニ反對スル理由ガナイヤウニ私
共諒解出來タノデアリマス、又屋外ノ演說デアリマス、屋外
ノ演說ヲ致スニ付キマシテハ、現行法ニ依リマスレバ、十二
時間以前ニ屆出ヲ致サナケレバナラヌ規定ガアリマス、屋外
演說ハ大部分ハ天候ニ依ッテ決定サレルコトデアリマス、故
ニ若シ屋外演說ヲ開カウトスル場合ニ於テ、十二時間前屆
出ヲシナケレバナラヌト云フ如キ現行ノ規定ガアリマスレバ、
折角屆出デタ演說モ、天候ノ爲ニ行フコトガ出來ナイト云
フコトガ屢〓起ルノデアリマス、斯ノ如キ現在ノ規定ニ依リマ
スレバ、此屋外演說ヲ許スト云フコトハ、單ニ明文上ノミデ
實際ハ不可能ナル事ヲ定メテ居ルコトヽ私共諒解シテ居ル
ノデアリマス、又事實ニ於テ左樣ナル結果ヲ生ミ出スノデア
リマスカラ、此十二時間ト云フ規定ヲ六時間ニ短縮シヤウ
ト云フノデアリマス、之ガ爲ニ何故ニ社會ノ爲ニ不都合ヲ
生ズルカト云フコトニ付キマシテハ、政府ガ之ニ對スル所ノ
維持スベキ理由ヲ發見スルコトガ出來ナイノデアリマス、次
ニ私共ガ改正ヲ企テヽ居リマスル事ハ、神官、僧侶、神職、其
他諸宗ノ〓師ニ對シテ、政黨結社ニ入ルコトヲ許スコトニ
致サウ、現在ソレヲ禁ジテ居ル所ノ規定ヲ廢止シヤウト云フ
コトガ、私共ノ次ニ改正セントスル重ナル要點デアリマス、府
縣制ノ改正ノ時ニ委員會ニ於テ、內務大臣自ラ、今日ノ場
合、神官、僧侶、神職、其他ノ諸宗ノ〓師ニ選擧權ヲ與フル
コトハ當然デアル、併ナガラ府縣制ノ改正ニ付テハ衆議院
議員選擧法、市制、町村制ノ改正ガ之ニ伴ヒマスガ故ニ、改
正ハ致サナイケレドモ、左樣ナ事ヲ致サナケレバナラヌト云フ
現在ノ狀態ヲ認メマスルト云フ、斯ウ云フ御聲明デアリマ
ス、此治安警察法ハ、選擧法ト何等ノ關係ハアリマセヌ、若
テ內務大臣ノ聲明ノ如ク、今日ノ場合府縣制ニ於キマシテ
モ、衆議院議員選擧法ニ於キマシテモ、市制、町村制ニ於キ
マシテモ、神官、僧侶、神職、其他諸宗ノ〓師ニ被選擧權ヲ
與ヘテ宜イト云フコトヲ御言明ナサルナラバ是等ノモノヲ
政當結社ニ入ルヽ事ヲ禁止シテ置クト云フ理由ノ存在ス
ルコトヲ發見スルコトハ出來ナイノデアリマス、ソレガ故ニ之
ニ對シテ政友會竝政友會諸君ノ反對セラルヽ理由ヲ發見
スルニ苦ムノデアリマス、更ニ私共ノ改正ヲ企テヽ居ルノハ、
官公私立學校ノ〓師及生徒ニ對シテ、政黨結社ニ入ルコ
トヲ許スト云フ所ノ規定ニ致シタイト云フ改正デアリマス、
之ニ付キマシテ委員會ニ於キマシテ、政府當局ト致シテ松
田君カラ現在ノ場合ニ於テ小學校ハ別ト致シ、ソレ以上ノ
學校ニ取ッテ官公私立學校ノ〓師ニ被選擧權ヲ與フルコ
トモ、或ハ此結社ニ入ルコトモ差支ナカラウト一云フヤウナ御
言明ガアッタノデアリマス、然ラバ此項ニ對シマシテモ、反對
スルト云フ理由ヲ發見スルコトハ出來ナイノデアリマス、ソ
レ故ニ私共ハ此原案ヲ維持シナケレバナラナイノデアリマ
ス、次ニ私共ノ改正ヲ致シマスルノハ、現行法ニ依リマスレ
バ、屋外ノ集會若クハ多數ノ民衆ガ運動ヲ致ス場合ニ於キ
マシテ、其群衆ガ安寧秩序ヲ紊亂スル虞アリ、虞アル場合ニ
ハ之ヲ直チニ解散スルコトモ出來ルシ、運動ヲ禁止スルコト
ノ出來ル現行ノ規定ガアルノデアリマス、私ガ此所ニ申サナ
ンデモ諸君ノ御承知ノ通リ、現在ノ警察官ガ果シテ此政治
運動ガ-此政治ノ集會ガ社會ノ安寧秩序ヲ害スルモノ
デアルカ、ドウカト云フ如キコトヲ推定獨斷スルコトノ見識
ヲ有セザルモノデアルト云フコトハ、何レモ異議ガナカラウト
思ヒマス、斯樣ナモノニ對シテ私共ガ立憲政治ノ發達ヲ希
望スル言論集會ノ自由ヲ、私共ガ希望スルト云フ下ニ於テ、
斯樣ナル規定ノ存在スルコトハ才盾極マルモノデアルト信
ズルノデアリマス、ソレ故ニ私共ノ修正致サントスル所ハ、安
寧秩序ヲ紊シタル場合ニノミ限ッテ此集會ヲ解散シ、或ハ
運動ヲ制限スルコトノ出來ル現定デアリマス、斯樣ニ致シタ
イト云フノデアリマス、次ニ私共ノ改正トシテ主張スルノハ、
第十條ノ規定デアリマス、此規定ニ付キマシテハ、政府當局
ト致シマシテ松田君ヨリ私ニ對シテ質問ガアリマシタ、集會
ニ於ケル講談論議ニ對シテ安寧秩序ヲ紊シ、若クハ風俗ヲ
害スル虞アリト認ムルトキニハ之ヲ處理スル所ノ規定ガ定
メテアルノデアリマス、私共ハ此虞アリ、違反シ其他ノ秩序
ヲ紊シ、若クハ風俗ヲ害スル虞アリト認ムルヲ違背シタルト
云フコトニ修正致シタイ、之ガ爲ニ松田君ハ斯樣ニ私ニ對
シテ御質問ガアリマシタ、安寧秩序ヲ紊シ、若クハ風俗ヲ害
スル虞アル場合ニ於テ、此集會ヲ解散スルヤウナコトガ出來
ナイ場合ニ於テハ、社會ノ安寧秩序ヲ紊シタル場合ニハ如
何ニ致スカト、斯ウ云フ御質問デアッタト記憶致シマス、是ハ
政府當局トシテ松田君御承知ノ事デアラウト、私ハ思ヒマ
ス、現在ノ刑法ナルモノハ、生命財產ニ關スル規定ヲ除キマ
スレバ、全部社會ノ安寧秩序ヲ維持スル爲ノ規定デアリマ
ス、勿論治安警察法ニ於ケル此十條ノ私共ノ削除シヤウト
スルト同一ノ規定ガ存在スルノデハアリマセヌケレドモ、現
在ノ刑法ヲ以テ致シマスレバ、若シ集會ニ於テ、又ハ政治ヲ
論議スル場合ニ於テ、社會ノ安寧秩序ヲ紊スヤウナ場合ニ
於テハ、如何ナル取締法デモ出來ルノデアリマス、ソレ故ニ
私共ハ此規定ヲ改正シテモ、更ニ社會ノ安寧秩序ニ不安
ヲ生ズルガ如キコトハ、斷ジテ之無シト信ズルモノデアリマス
(「簡單」ト呼フ者アリ)次ニ私共ノ改正ニ付キマシテノ最モ
重要ナル點ト考慮致ス點ハ、多年問題ニナッテ居リマスル所
ノ治安警察法第十七條ノ削除デアリマス、之ニ付キマシテ
ハ、政友會諸君カラモ若シ此第十七條ヲ削除シタ場合ニハ、
將來勞働者バカリデナク、資本家ガ團結シテ「ロックアウト」
シタリ、勞働者ヲ脅威シタリスルヤウナ場合ニハドウ致スカ、
治安警察法第十七條ノ規定ハ單リ勞働者ガ團結々合致
シテ、其主張ヲ資本家ニ向ッテ强制シヤウトスル爲ニ運動シ
タリ、煽動シタリスル時ニ用ユルノミノ規定ニアラズシテ、資
本家ガ合同團結シテ勞働者ヲ「ロックアウト」シ、若クハ勞働
者ヲ壓迫スルガ如キ事アレバ、其場合ニ之ヲ取締ルコトガ
出來ル、決シテ勞働者ヲシテ虐メル所ノ偏重ノ法律デナイ
ト斯樣ナコトデアリマシタガ、之ニ對シテ私ハ政府當局ニ御
尋ヲ致シマシタ、治安警察法第十七條ニ依リマシテ、是迄
最近五六年ノ間ニ於テ同盟罷業ノ起ルコトハ頻繁デアル、
ノミナラズ屢。勞働者ガ同盟罷業ヲシタ場合ニハ、資本家ハ
合同シ團結致シテ、勞働者ノ權利ヲ動モスレバ侵害スルガ
如キコトガアル、又事實上勞働者ヲ「ロックアウト」シタ所ノ
實例モ多々アルガ、内務省ニ於テハ是迄此治安警察法ニ
依リマシテ、勞働者ヲ取締フタト云フ實例ハ枚擧ニ遑マラズ
デアラウト信ズルガ、資本家ヲ取締ッタ實例ガアルカ如何ト
御尋致シマシタ所ガ、此法律ニ依ッテ資本家ヲ取締ルコトハ
一回モ無シト云フ御答辯デアリマシタ、サウシテ見レバ此治
安警察法第十七條ハ、勞働者ト資本家ト同ジク團結致シマ
シテ、他ノ權利ヲ侵害シ、他ノ正當ナル要求ヲ抑壓スルヤウ
ナ場合ニ於テ、處分スル所ノ現定デアルト云フ所ノ事實ヲ
全部裏切ラレタモノデ、此十七條ノ規定ハ明ニ勞資協調ヲ
唱フル政府ガ自ラ資本家ニ偏シ、勞働者ヲ抑壓威壓スル
爲ノ武器トシテ存續セシメヤウトスル主張ニ外ナラナイト信
ズルヨリ途ノナイモノデアリマス、ソレ故ニ私共ハ此削除ヲ
必要トシ、之ヲ主張スル所以デアリマス、最後ニ政友會ノ諸
君カラ御尋ニナッタ一項ガアリマスカラシテ、之ニ對シテモ此
場合私共ノ主張ノ正シイコトヲ申上ゲテ、私共ノ修正ノ相
當ナルコトヲ申上ゲテ置カナケレバナラナイト思ヒマス、是ハ
政友會ノ志賀君ノ御質問ダト思ヒマス、治安警察法ニ依
レバ行政裁判所ニ出訴スルコトノ出來ル場合ニ於テハ、其
權利ヲ侵害サレタルヲ前提ト致スコトガ現行ノ規定デアル、
然ルニ私共ノ第三十二條ノ二ノ改正ニ付テハ、其原則ヲ裏
切ッタト云フ、斯ウ云云ヤウナ御質問ガアリマシタガ、之ニ對
シテ私ハ斯樣ニ御答シタナラバ、明瞭ニナルト思フ「本法ニ
依ル行政官廳ノ命令若ハ處分ニ對シテ」トアルコトハ自分
ガ權利ヲ侵害サレタト一云フ前提ガナケレバ、告訴スルコトノ
アルベキ筈ハアリマセヌ、ソレノミナラズ、其他ノ法律ニ依リ
マシテハ、行政官廳ノ命令、若クハ處分ニ對シテ訴願スルコ
トガ、今日ハ國ノ法律ノ原則トナッテ居リマス、ソレ故ニ此治
安警察法ニ於キマシテモ、此原則ヲ徹底セシムル爲ニ改正
ヲ試ミタ次第デアリマス、斯樣ニ申上ゲテ見マスレバ、政府
當局ト致シマシテハ、私共ノ改正ニ對シテ反對スル正當ナ
ル所ノ理由ヲ、委員會ニ於テモ發見スルコトガ出來ナカッタ
ノデアリマス、ソレ故ニ私共ノ改正案、卽チ委員長ノ報告
ニ依リマシテ贊成ヲ表シマシタ以外ニ、其他ノ私共ノ提出
ノ原案ニ付キマシテモ原案維持說ヲ唱フル所以デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=96
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097・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 武田德三郞君
〔武田德三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=97
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098・武田徳三郎
○武田德三郞君 諸君、本員ハ只今委員長ノ報告セラレ
マシタ通リニ賛成ヲ致ス者デアリマシテ、植原君ノ少數意
見ニ反對スル者デアリマス、本案ハ昨年モ同一ノ四案ガ提
出セラレ、又同一ノ結果ニナッタノデアリマス、而シテ其當時ニ
旣ニ〓植原君ヨリ述ベラレマシタ修正意見ニ對シテハ、相當ナ
論議ヲ盡サレテアッタノデアリマス、隨テ簡單ト云フ御催促
ヲ受ケナクトモ餘リ多ク私ハ議論ヲ費ヤスノ必要ヲ認メナ
イノデアリマス、唯併シ此十七條ノ點ニ取リマシテハ、今日
ニ始ッタ議論デナクシテ、是ハ世間ノ學者、論客ニ依リマシテ
モ多年ノ間論議サレタ重大ノ問題デアルト考ヘマスカラ、其
點ニ付キマシテハ一通リダケ私見ノアル所ヲ申述ベテ御聽
取リヲ願ヒタイト思ヒマス、一宮君ノ提出サレマシタ改正
案、卽チ治安警察法ノ第五條ノ「女子及」ト云フ三字ヲ削
ルト云フコトニ付キマシテハ、是ハ此改正案ノ四案ガ共ニ同
一ノ條項ヲ持ッテ居ルモノデアリマスカラ、此事ニ付キマシテ
ハ改テ申上ゲルノ必要ハナイト思ヒマス、其他國民黨カラ
提出サレマシタ此改正案ノ要旨ハ、大體ニ於テ三箇條ニ分
レルト考ヘマス、卽チ政治集會ノ自由ノ範圍ヲ成ベク廣ク
スルト云フコトガ、第一デアリマス、而シテ又此政治ノ運動
ヲスル者ノ資格ヲ擴メルト云フコトガ第二デアル、第三ハ勞
働運動ノ範圍ヲ成ベク自由ニスルト云フコト、卽チ治安警
察法ノ第十七條ヲ撤廢スルト云フコトハ第三デアリマス、而
シテ此第一ノ問題ニ至リマシテハ、植原君ハ非常ニ御論議
ニナリマシタガ、其大體ノ主義ニ於テハ吾々モ敢テ異論ハナ
イノデアリマス、又第二ノ問題ニ取リマシテモ、成ルベク解放
ヲ致シテ政治運動ノ範圍ヲ擴メル、其資格ヲ擴張スルト云
フコトニ至リマシテハ是亦餘リ多ク私ハ反對ヲシナイノデ
アリマス、唯併ナガラ實際上ノ政治カラ見マスルナラバ、大體ニ
於テ政治上ノ運動ヲ自由ニスルト云フコトニ賛成ヲ致シマ
シテモ、自ラ其事情ニ適スルヤウニ徐々トシテ其範圍ヲ擴メ
ルト云フコトハ、勿論是ハ必要ノ事デアルト信ジマス、私ハ此普
選問題、其他人民ノ自由ノ範圍ヲ擴メル、若クハ國民ノ權
利ヲ擴張スルト云フ法案ニ取リマシテハ、常ニ今年ノ議會
ニ於テハ憲政會ノ諸君ト國民黨ノ諸君ト常ニ協調致サレ
マシテ、同一ノ態度ヲ御執リニナッタニモ拘ラズ、此治安警
察法ニ取ッテノミハ、反對ノ態度ヲ御執リニナッテ、寧口吾々
ノ主張ニ御賛成ニナッタト云フコトハ、奇異ノ感ニ堪ヘナイ
ノデアリマス、併ナガラ是ハ私ハ思フニ、憲政會ノ諸君ハ比
較的責任ヲ御感ジニナル上ニ於テ、日本ノ現狀ヲ御觀察ニ
ナッテ、未ダ國民黨ノ諸君ノ言ハレルガ如クニ、改正ヲスルト
云フコトハ面白クナイト云フ所カラ出タモノト思ヒマシテ、此
憲政會ノ諸君ノ態度ニ敬意ヲ表スルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=98
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099・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 定刻ニ近ヅキマシタカラ時間ヲ
延長シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=99
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100・武田徳三郎
○武田德三郎君(續)·ンレデ私ハ國民黨ノ諸君ノ御意 見ニ對シテ、今申シマシタ通リニ大體ニ於テ異論ハナイノデ
ハアリマスルケレドモ、例ヘバ第二條公衆ヲ會同スル、若クハ
政治ノ集會ヲスルト云フコトニ至リマシテ、屆出ヲスルダケ
ニ止メルト云フダケデハ、今日ノ現狀ニ於テハ十分ニ之ヲ取
締ルト云フコトハ困難デハアルマイカト思ヒマス、若シ取締
ルコトガ無用デアルトスレバ、全部此條項ヲ削除シテ宜シイ
ノデアル、又適當ノ時機ニナッタナラバ、此條項ヲ總テ削除
スル時機モ來ルデアリマセウ、併ナガラ既ニ相當ノ
取締ヲ要スルト認メタ以上ハ、實際ニ於テ取締リ得ル程度
ニ取締ノ條項ヲ規定スルト云フコトハ、是亦巳ムヲ得ナイモ
ノデアラウカト存ジマス、卽チ此二條ノ修正ノ如キニ至リマ
シテモ、唯屆出放シト云フコトデハ、ドウシテモ今日ノ實情ト
シテ取締ヲ十分ニスルト云フコトハ困難デハアルマイカト存
ジマス、更ニ又第八條ノ改正ノ如キニ至リ、此運動ガ安寧秩序
ヲ奈シタル場合-現行法ノ虞アルト云フ字ヲ取ッテ、紊シタ
ル場合ト云フヤウナ改正デアリマスルガ、既ニ紊シテシマッテカラ
之ニ制裁ヲ加ヘルトニハフコトハ、決シテ取締ト云フ意味ニハ
相適ハヌコトデアルマイカト私ハ思フノデアリマス、更ニ又政
治運動ヲ致シマスル者ノ資格ノ點デアリマス、僧侶若クハ
諸宗〓ノ〓師、或ハ學校〓員、是等ハ植原君ノ言ハレル如
ク政府ニ於テモ、又吾々ニ於テモ必シモ是ハ反對デハナイノデ
アリマス、唯併ナガラ今日ノ實情ニ於テ他ノ法律上ノ關係
モアリマスルシ、又學校ノ〓員、若クハ僧侶ノヤウナ人々ハ
徒ニ政治ノ結社ニ加ハッテ、サウシテ此感情ノ激スルガ儘ニ、
自分ノ目的トスル事柄ヲ放任スルト云フヤウナ傾ガアリマ
シテハ、洵ニソレ等僧侶竝ニ〓員自身ノ爲ニ不利益デアル
ノミナラズ、併セテ國家ノ爲ニモ甚ダ面白カラヌ結果ヲ來スデ
アラウカラ、暫ク此社會ノ進歩ノ程度ヲ見テ、適當ノ時機ニ
此改正ニ同意スルト云フコトニハ、何等異存ガナイノデアリ
マス(拍手)而シテ私ハ第十七條ノ點ニ付テ、此點ダケヲ少
シク申述ベテ見タイト思ヒマス、【植原君ハ此十七條ノ削除
ノ事ニ付キマシテ、此條項ハ時代錯誤ノモノデアル、是ハ保
安條例ニ代ル所ノ法律デアッテ、洵ニ時代錯誤ノ法律デア
ルト云フヤウニ御論ジニナリマシタ、併ナガラ私共ノ見ル所
ヲ以テスルト、明治三十三年ニ發布サレマシタ此治安警察
法、而シテ又植原君ノ言ハルヽガ如クニ、山縣內閣ノ
當時ニ於テ發布サレマシタ此治安警察法トシマシテ
ハ、比較的進ンダ所ノ法律デアルト私ハ考ヘマス(拍手)
其當時ノ立法ノ趣旨ヲ、當時ノ立法者タル-立案者タル
有松政府委員ガ、其當時委員會ニ於テ說明シタモノヲ見
マスルニ、此十七條ノ點ニ於テ斯ウ云フ說明ヲシテ居ルノデ
アリマス、近時歐羅巴ニ於テ勞働者ト資本家ノ間ニ軋轢ガ
盛ニナッテ、勞働者ハ自分ノ利害ヲ擁護スルガ爲ニ、同盟罷
業ヲスルヤウナコトガ頻々トシテ起ッテ參ッタ、而シテ今日ノ
狀態ニ於テ、勞働者ノ利益ヲ保護スル上ニ於テハ、此同盟
罷業卽チ「ストライキ」ト云フモノヲ、一種ノ權利ト見ルト云
フヤウナ狀態ニナッテ來タノデアル、而シテ政府モ亦同盟罷
業ヲ一種ノ權求ト認メル考ヲ持ッテ居ルノデアルト云フ說
明ガ其一節ニ在ルノデアリマス、卽チ其當時ノ政府ハ既ニ
「ストライキ」ト云フモノヲ、勞働者ノ一ツノ權利ト認メル程
ニマデ進ンダ思想ノ下ニ、是ガ立案サレタモノデアリマス、此
立法ノ趣意カラ考へマシテモ、此十七條ト云フモノハ植原
君ノ御考ニナルガ如クニ、今日ノ「デモクラシー」ノ思想ト相
反シタ、時代錯誤ノ立法デアルトハ私ハ考ヘヌノデアリマス、
更ニ又植原君ハ此十七條ト云フモノハ、勞働者ノ働キ、或
ハ此勞働組合法ヲ組織スル上ニ於テ、非常ナル障碍ニナル
ノデアルト云フ御論議ガアリマシタケレドモ、私ハ之ヲ其點
ニ付キマシテハ、若シ此十七條ヲ仔細ニ御覧ニナルナラパ、
其誤解ハ直ニ解ケルデアラウト思ヒマス、第十七條ノ第一
號ニ於キマシテ斯ウ云フ事ガアリマス、「勞務ノ條件又ハ報
酬ニ關シ協同ノ行動ヲ爲スヘキ團結ニ加入セシメ又其ノ
加入ヲ妨クルコト」ト云フ事ガ書イテアル、其外第二號ニ於
キマシテ「同盟解雇若クハ同盟罷業ヲ」云々ト云フテ、其制限
ニ關スル規定ガアルノデアリマスルカラ、此第一號ノ「協同ノ
行動ヲ爲スヘキ團結ニ加入セシメ又ハ其ノ加入ヲ妨クルコ
ト」ト云フ條項ハ、卽チ勞働組合ト云フモノヲ豫定シテ、勞
働組合ノ存在ト云フモノヲ認メテアルガ故ニ、斯ル條項ガ
規定サレタモノト私ハ信ズルノデアリマス、旣ニ此治安警察
法ノ立法ノ趣意ニ於テ、其本旨ガ決シテ「デモクラシー」ノ思
潮ト相反スルモノデナク、而シテ此勞働組合ト云フモノヽ存
在ヲ豫定シテ居ルモノデアルナラバ、植原君ノ希望ニ決シテ
反スル條項デナイト私ハ信ズルノデアリマス、加之一方ニ於
テ治安警察法ノ十七條ハ、大ニ勞働者ヲ保護シテ居ル所
ノ條項ガアルノデアリマス、卽チ「同盟解雇若」ハ同盟罷業
ヲ遂行スルカ爲使用者ヲシテ勞務者ヲ解雇セシメ若クハ勞
務ニ從事スルノ申込ヲ拒絕セシメ」ト云フコトガアル、卽チ資
本家ノ方ニ於テ「ロックアウト」スルヤウナ事ヲ致シ、若クハ「ブ
ラックリスト」ヲ造ッテ、勞働者ノ從業ヲ妨ゲルヤウナ事ヲスル
場合ニハ、之ニ向ッテ資本家ニ相當ナ制栽ヲ加へル所ノ條
項ガアルノデアリマス、卽チ資本家ノ此制裁ト云フモノハ一
面ニ於テハ卽チ勞働者ヲ助ケ、勞働者ノ行動ニ自由ノ範
圍ヲ與フルモノデアリマス、故ニ此十七條ハ一面カラ觀レバ
勞働者ニ、相當ナ制栽ヲ加ヘルト同時ニ、資本家ニモ相當
ナ制裁ヲ加ヘテ、而シテ此勞働者ノ自由ヲ保護スル意味
ガ、十分ニ此間ニ現レテ居ルノデアリマス、然ルニ此點ニ關シ
テ植原君ハ委員會ニ於キマシテモ、亦只今ノ少數意見ノ說
明ニ於キマシテモ、政府ハ-成程其條項ハアル、併ナガラ
政府ハ未ダ曾テ資本家ヲ此條項ニ依シテ取締タタ例ハ一度
モ無イ、一度モ無イカラ此條項ハ不必要デアルト云フ、斯ウ
云フ御論斷ノヤウデアリマスケレドモ、是ハ此法律ガ必要デ
アルカ否カト云フ事ト、此法律ヲ適用スル途ガ誤ッテ居タカ
居ナイカト云フ事ト、全ク別種ノ論デアルト私ハ考ヘマス、
政府ノ說明セラルヽ所ニ依レバ、決シテ此條項ハ無用デア
ルトハ言ハナイ、此條項ヲ資本家ニ適用スルヤウナ場合ガ
今日マデ無カッタカラ適用シナカッタト云フ事實上ノ說明デ
アッテ(拍手)決シテ是ガ無用デアルトハ言ハナイノデアリマ
ス、若シ植原君-國民黨ニシテ之ヲ適用スベキ機會ガア
ルニモ拘ラズ、政府ガ之ヲ適用シナカッタト云フコトナラバ、
其適用シナカッタト云フ事實ヲ取ッテ、政府ヲ彈劾ナサルガ
宜イケレトモ、此法律自體ヲ廢スルト云フコトハ、到底論理
ノ一貫シタモノデナイト思フノデアリマス(拍手)更ニ又斯ウ
云フ御論旨ガアリマス、此法律ノ目的ガ私ノ說明シタ如ク
ニ、前提トシテ勞働組合ヲモ見テ居ル、又「ストライキ」ヲ以
テ勞働者ノ權利ト認メテ居ルト云フコトデアルナラバ其目
的ハ宜シイ、其宜シイ所ノ目的ヲ遂行スルニ當ッテ、若シ其
手段ガ不法デアルナラバイザ知ラズ、不法デナイ限リニ於テ
ハ、之ニ向ッテ何等ノ制裁ヲ加ヘル必要ハナイデハナイカ、苟
モ勞働者ガ或種ノ團結ヲ致シ、或種ノ相談ヲ致スト云フコ
トニ向ッテハ、期セズシテ一致ヲスルト云フコトハ必シモ有リ
得ルモノデナイ、何人カ首唱ヲ致シテ、何人カヾ之ヲ人ニ說
明致シ、勸誘致スト云フコトガ當然ナ事デアル、然ラバ誘惑
編動ト云ラヤウナ事柄ハ、是ハドウシテモ有リ得ベキ事アアツ
テ、何モ誘感煽動ト云フ事ガ目的ガ惡ケレバ、誘惑煽動モ隆
テ惡カラウケレドモ、既ニ目的ガ善良デアッタナラバ、誘惑煽動
ハ決シテ是ハ不法ノ事デハナイ、斯ウ云フ御議論デアリマス、此
點ハ一應一寸尤ノヤウニ考ヘマスガ、更ニ飜ッテ考ヘテ見マス
ノニ、是ハサウ輕々ニ論斷スベキ問題デハナイト考ヘル、成程或
ハ國民黨ノ諸君ハ、此點ニ於テハ憲政會ノ諸君モ、サウ云フ御
懸念ガアッタヤウデアリマス、誘惑若クハ煽動ト云フヤウナ、此
誤リ易キ言葉ヲ此法律ニ用ヰテ居ラレルト云フコトハ免角
政府ヲシテ勞働者ヲ壓迫セシメル傾向ガアルト云フヤウナ
御議論ガアルノデアリマス、併ナガラ誘惑煽動ト云フヤウナ
文字ハ、諸君ノ考ヘラレルガ如ク、爾ク不明白ナ言葉デハナ
イノデアリマス、吾々ノ從來ノ觀念カラ申シマシテモ、誘惑煽
動ト云フ文字ハ、決シテ普通ノ勸誘ト云フヤウナ言葉トハ同
一ノモノデハナイノデアリマス、煽動ト云フ文字ノ如キハ、洵
ニ不穏當ノ文字デアリマスノミナラバ、誘惑若クハ煽動ト云
フ字句ハ、吾々ノ從來ノ觀念カラシテ、不穏當ノ意味合ニ使
ハレテ居ルノミナラズ、司法官憲ノ問、若クハ法律家ノ間ニ於
テハ、旣ニ一定ノ意味ガ確定シテ居ルノデアリマス、昨年ノ
本案ノ委員會ニ於キマシテ、時ノ司法省ノ政府委員ハ旣ニ
說明サレタ如クニ、此誘感ト云フ意味ニハ詐術ヲ用ヰルト
云フコトガ本體デアル、斯ウ云フ說明ガアルノデアリマス、是ハ
政テ私共深ク說明ヲ申ス迄モナク、既ニ司法部內ニ於テハ
確定サレタル所ノ解釋ガ一定シテ居ルモノデアリマス、既ニ
是ガ詐術ヲ用ヰテ人ヲ迷ハスト云フコトガ此字句ノ本體デ、
其解釋ガ一定シタルモノデアルナラバ、之ヲ取去ッタ場合ニ、
此同盟罷工ヲ企テル所ノ人〓ガ同盟罷工ニ加ハラズシテ、
勞働ヲ繼續シタイト希望スル所ノ善良ナル勞働者ヲ、如何
ニシテ之ヲ保護ナサル積リデアルカト云フコトヲ私ハ反問致
シタイノデアリマス、此點ニ付テハ私ハ委員會ニ於テモ、國
民黨ノ諸君ニ反問ヲ致シテ御說明ヲ乞ヒマシタガ、遂ニ適切
ナル御答ノ無カッタノヲ遺憾トシテ居ルノデアリマス、ノミナ
ラズ、一體國民黨ノ諸君ハ、同盟罷工ト云フヤウナ事ヲ敢
テ御奬勵ニナルコトハ無論アリマスマイガ、此事ニ向ッテ成ベ
便宜ヲ與ヘル方ガ宜シイト云フヤウナ、勿論御考カラシテ此
本條ノ撤回ヲ御主張ナサルノデハナイカト私ハ思フ點ガア
ルノデアリマス、併ナガラ私モ此勞働者ニ同情致シ、勞働者
ノ行動ヲ自由ニ致シ、サウシテ彼等ノ生活ノ安定ヲ與ヘル
ト云フコトニ向ッテハ、私モ植原君ト同感デアリマス、併ナガ
ラ勞働者ニ同盟罷工ト云フ事ヲスルコトヲ成べク便宜ヲ與
へ、之ヲ助長スルヤウナ態度ヲ執リマシタ結果、偶〓以テ勞働
者ガ自ラ陷ル所ノ穽ヲ自ラ造ルモノデナイカト私ハ思フノデ
アリマス、成程同盟罷工ヲスルト云フコトハ、サウシテ其目
的ガ達セラレルカト云ヒマスナラバ、一時ハ勞働者ハ其賃銀
ノ値上ヲ得テ、或ハ一時滿足スルカモ知レマセヌ、併ナガラ
同盟罷工ハ頻發シテ、而シテ資本家ガ其資本ヲ用井ル所ナ
クシテ、或ハ何レカノー或ハ之ヲ外國ニ投下セシメルト云
フヤウナ場合ガアッタナラバ、如何ナル狀態ガ我ガ產業界ニ
行ハレマスカ、旣ニ國民黨ノ諸君ニシテ、此現在ノ我國ノ經
濟組織ヲ根本カラ御否認ナサルト云フノナライザ知ラズ、今
日ノ資本制度ヲ御承認ニナルト云フ上ニ於テハ、甚シキ壓
迫ヲ資本家ニ加ヘテ、サウシテ其適當ナル資本ノ働ヲ要求
スルト云フコトハ、是ハ無理ナル要求デアリマス、勞働者ニ便
宜ヲ與へ、其生活ニ安定ヲ與ヘル途ヲ講ズルト同時ニ、資本
家ニ對シテモ其資本ヲ安全ニ利用スルノ途ヲ與へ、相當ノ
保護ヲ與ヘナケレバ、資本家ト云フモノハ其資本ヲ活動サ
セルコトハ出來ナイノデアリマス、故ニ此同盟罷工ト云フモ
ノヲ奬勵スルガ如キ態度ヲ政治家ガ執ッテ、而シテ資本家ニ
甚シキ壓迫ヲ加ヘタ場合ニハ、資本家ガ其資本ヲ適當ニ利
用シナイ場合ハ、卽チ產業ハ段々ト萎靡衰頽スルト云フヤウ
ナ狀態ニナッタナラバ獨リ國家ノ不利益ノミナラズ、資本家
ノ不利益ノミナラズ、卽チ勞働者ハ其職ヲ失フト云フコトハ
當然デアリマス、近時歐米ノ勞働問題ニ對スル趨勢ハ、此
失業ト云フ事ニ向ッテ頗ル思ヲ致シテ居ルト云フコトハ、植
原君モ御承知ノ通リデアリマス、斯ル場合ニ於テ、私ハ此同
盟罷工ト云フコトヲ否認スル者デハアリマセス、已ムヲ得ナ
イ一種ノ出來事トシテ、又勞働者ガ已ムヲ得ナイ場合ニ、自
分ノ主張ヲ貫徹スル所ノ一ツノ武器トシテ、巳ムヲ得ナイモ
ノトハ認メマス、併ナガラ出來得ルナラバ同盟罷工ト云フモ
ノヽ無カランコトヲ希望スル者デアリマス、此同盟罷エヲ頻
發セシメルヤウナ事ヲ致シ、ソレヲ救濟スルノ手段ヲ執ラズ、
之ニ向ッテ相當ナ取締ヲスルコトヲシナカッタナラバ、先程申
スヤウニ資本家ハ其資本ヲ埋藏致シ、隨テ產業ハ萎靡不振
ニ陷ッテ、失業者ガ簇出スルト云フコトハ當然ノ事態デアリ
マス、斯ル場合ニ於テ此十七條ヲ全然御削除ナサルト云フ
コトニ至ッテハ、私ハ甚ダ其結果ヲ憂ヘザルヲ得ナイノデアリ
マス、加之今一箇條申添エタイ事ハ、此同盟罷工ニ向ッテ全
)然何等ノ取締ヲシナイト「云フコトハ、【是ハ資本家ヲ苦メル
ノミデハナイノデアル、社會公衆一般ニ頗ル不利益ヲ與ヘル
モノデアリマス、卽チ其事柄ニ依リマシテハ、水道ノ如キ、瓦
斯ノ如キ、電車ノ如キ、鐵道ノ如キ、最モ社會公衆ト密接ノ
關係ノアル事業ニ於テ、同盟罷工ニ向ッテ何等ノ制裁ヲ加
ヘナイト云フコトデアリマシタナラバ、其結果ハ社會ニ不安
ヲ與へ、公衆ニ不利益ヲ與ヘルト云フコトハ、是ハ明白ナ事
デアリマス、故ニ歐羅巴ニ於キマシテモ-勞働問題ノ最モ
進ンダル歐羅巴ニ於キマシテモ、斯ル事柄ニ取ッテハ、隨分
强イ制裁ヲ加ヘテ居ルノデアリマス、私ハ今一々サウ云フ實
例ヲ擧ゲマセヌガ、御承知ノ如クニ亞米利加ニ於キマシテ
モ、交通妨害禁止法ト云フヤウナモノガアリマシテ、若シ此
交通運輸ノ事ニ妨害スルヤウナ同盟罷エヲ爲スナラバ、ソレ
ニ向ッテ隨分强イ制裁ガ加ヘラレテアリマス、卽チ十一万弗ノ
罰金、若クハ十年以下ノ禁錮ト云フヤウナ制栽ヲ加ヘル所
ノ法律ガ出來テ居ルノデアリマス、而シテ獨リ是ハ亞米利加
ニ於テノミデハアリマセヌ、英吉利ニ於キマシテモ、獨逸ニ於
キマシテモ、是等一般公衆ニ關係ノアル事柄ニ向ッテ同盟罷
工ヲシタ場合ニハ、相當ナ制裁ヲ加ヘテ居ルノデアリマス、是
ハ洵ニ已ムヲ得ナイ事デアラウト思ヒマス、若シ此治安警察
法ノ十七條ヲ全然撤廢致シテ、之ニ代ルベキ何等ノ制裁法
ガ無イト致シマスルナラバ、今歐米各國ニ於テ行ハレル鐵道
交通ノ如キ事柄ニ對シテモ、尙ホ同盟罷業ニ向ッテ制裁ヲ
加ヘナクテ宜イト御論斷ニナルヤウナ結果ニ至ルデアリマセ
ウ、是ハ洵ニ歐米ノ勞働問題ノ趨勢ニモ相反シタ御議論ニ
ナリハシナイカト私ハ考ヘルノアアリマス、斯ノ如クニ何レノ
點カラ見マシテモ、此治安警察法ノ第十七條ヲ存置シテ置
クト云フコトハ、最モ必要ナ事デアリマシテ、他ノ先程申シタ
二箇條ノ趣意ニ付キマシテハ、大體其主義ニハ賛成デアリ
マスト先程中シマシタガ、第三ノ十七條ノ撤廢ニ付テハ、私
ハ根本的ニ國民黨ノ提案ニ反對ヲ致スノデアリマス、併ナ
ガラ私ハ此十七條ノ點ニ付テ根本的ノ反對ヲ聲明致シマ
シテモ、永久ニ此法律ノ存在ヲ必要トスル者デハアリマセヌ、
此點ニ向ッテ私ハ寧ロ政府ニ向ッテ、一ノ希望ヲ申述ベテ置キ
タイト思セマス、卽チ政府ニ於テモ、遠カラズ勞働組合法若
クハ勞働仲裁法ノ制定ニ向シテ、折角御詮議中デアルト
信ジテ居リ、マスガ、是等ノ點ニ向ッテ卽チ勞働者ト資本家
ノ關係、又同盟罷業ヲ適當ナル範圍ニ於テ制限ヲ致スト云
フヤウナコトニ付キマシテハ、更ニ愼重ニ〓究ヲ加ヘテ、歐米
ノ趨勢ハ勿論、殊ニ我國ノ現時ノ狀態ニ對シテ、適切ナル
立法ヲ速ニ御制定ニナル時期ガ、一日モ早カランコトヲ希
望スルモノデアリマシテ、斯ル適當ナル法制ガ出來マシタ後ニ
於テハ、勿論私モ此十七條ノ撤廢ニ決シテ異論ヲ申スモノ
デハナイノデアリマス、故ニ私ハ最後ニ於テ希望ヲ政府當局
ニ致シテ、此演壇ヲ降ルコトニ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=100
-
101・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 是デ討論ハ終結致シマシタ、採
決致シマス、右四案ノ中一ノ宮案ニ付テ採擇致シマス、一ノ
宮案ノ第二讀會ヲ開クコトニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=101
-
102・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 多數デアリマス、第二讀會ヲ開
クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=102
-
103・岩崎勲
○岩崎勳君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省
略シテ、委員長報告通リ可決確定アランコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=103
-
104・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト認
メマス、仍テ直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題
ニ供シマス
治安警察法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼ア者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=104
-
105・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ナイト認メマス、仍
テ本案ハ第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通リ可決確
定致シマシタ(拍手)他ノ三案ノ中ニ一宮案ト同一ノ點ガ
アリマス、此點ハ既ニ議決ニナリマシタカラ、之ヲ除キタル他
ノ部分ニ付テ三案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シ
マス
〔「反對」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=105
-
106・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 右三案ノ第二讀會ヲ開クニ賛
成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=106
-
107・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 少數デアリマス、三案共第二讀
會ヲ開カザルコトニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=107
-
108・尾崎行雄
○尾崎行雄君 此際皇居ノ正門ニ起ッタル出來事ニ付テ、
內務大臣ノ報告ヲ求ムル爲ニ日程ノ變更ヲ求メマス
〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=108
-
109・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 尾崎君ヨリ緊急質問ノ申出ガ
アリマシタ、是ハ成規ノ賛成ガアリマス、仍テ議事日程ヲ變
更スルヤ否ヤヲ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=109
-
110・岩崎勲
○岩崎勳君 日程ノ變更ニ同意ヲ表シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=110
-
111・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 日程變更ニ御異議ナイト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更サレマシタ
〔尾崎行雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=111
-
112・尾崎行雄
○尾崎行雄君 吾々亞民トシテ實ニ慄然トシテ恐懼シナ
ケレバナラヌ驚クベキ出來事ガ、皇居ノ正門ニ起ッタト承ッテ
居リマス、恐多クモ陛下ノ御住居ニナッテ居ル皇居ノ正門
ニ、肉ト血ヲ濺イデ上奏文ヲ奉ッタト云フガ如キハ、吾々未ダ
承ッタコトノナイ聖代ノ一大不祥事件ト存ジマス、斯ノ如キ
前例無キ非常ナル事件ガ起ッタ時ニハ、臣子タル者ノ本分ト
シテ、其上奏文ナルモノハ、朝廷ニ向ッテ如何ナル事ガ書イテ
アルカ、又國家ノ現狀ニ對シテドウ云フ心ヲ持ッテ居ノタノデ
アルカ、其人ノ如何ニ拘ラズ、一身ヲ抛ッテ上奏ヲスルト云フ
コトハ人生ノ最大事件デアル、面モソレガ皇居ノ正門ニ起
リ、紅血ヲ正門ニ濺グト云フニ至ッテハ、實ニ篤クベキ事デア
ル、凡ン斯ノ如キ事態ガ我ガ帝國ニ於テ起ッタ場合ニ於テ、
當局ノ大臣タル者ハ一刻モ早ク議院ニ報告ヲ致シ、朝廷ノ
爲ニ憂ヒ、國家ノ爲ニ憂フル所ノ臣子ヲシテ其實情ヲ
知ラシメ、安ンズル所アラシムベキ筈デアルノニ、是マデ待ッ
テ居ッテモ一切報告ヲセズ、恬然トシテ相關セザルガ如キ體
面ヲ致シテ居ルト云フニ至ッテハ、實ニ驚クベキ人ニト申サナ
ケレバナラヌ、是ニ於テ木員ハ已ムヲ得ズ日程ノ變更ヲ求メ、
當局大臣ノ細カナル報告ヲ求ムルノ必要ニ迫ラレタノデア
リマス、吾々ガ質問セズトモ自ラ進ンデ十分ナル說明ヲ爲サ
ルノガ、當局者タルモノヽ、朝廷ニ對シ國民ニ對スルノ一大
責任ト謂ハナケレバナラヌ(拍手)併シソレハ當局者ガ其責
ヲ感ゼヌトアレバ致方ガナイ、故ニ私ハ已ムヲ得ズ問ヒマス
ガ、第一エ其事件ノ〓末ノ眞相ヲ有ノ儘ニ報告ヲ願ヒタイ、
第二ニハ自殺者ノ爲人、性格等ガ分ッテ居ルナラバ、其分ッテ
居ル程度マデ殘リ包マズ御報告ヲ願ヒタイ、何故ナラバ世
問ニ傳フル所、殊ニ一部ノ人〓ハ直ニ之ヲ狂人ト言ヒ、或ハ
無賴漢ト傳フルガ如キ、不思議ナル働ヲ致シテ居ル者
ガ確ニ此世ノ中ニ在ル、如何ナル人デアッテモ上奏文
ヲ捧ゲテ、爆彈ヲ持ッテ己ノ身體ヲ爆發セシムルト云
フコトハ非常ナル事件デアリマス、死ハ總テノ罪ヲ滅ポスト
承ッテ居ルガ、斯ノ如キ場合ニ於テ其素性ノ正確ナルヤ否ヤ
ハ分リマセヌガ、直ニ狂人或ハ無賴漢ナド云フコトヲ傳フル
如キ浮薄漢、君國ノ何者タルヲ解セザル者ガ我帝國ニ多々
有ルト云フニ至ッテハ、實ニ驚カザルヲ得ナイ(拍手)故ニ分ル
ナラバ其性格ヲ分ッテ居ルダケデ宜シイ、或ハ偵察詳カナラ
ズシテ未ダ何事モ存ジナイカモ知レヌ、ナケレバ止ムヲ得ヌカ
ラ知ッテ居ルダケシ包マズ御話ヲ願ヒタイ、第三ニハ其捧ゲ
ントシタル所ノ上奏文、一命ヲ籠メテ血ヲ以テ捧ゲタル所ノ
上奏文、如何ナル事ガ書イテアルカ(笑聲、「何ヲ笑フカ」ト呼
フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=112
-
114・尾崎行雄
○尾崎行雄君(續) 朝廷ニ對シテハ如何ナル思想ヲ持シテ
居ッノデアルカ、今日ノ國狀ニ對シテハ何等ノ考ヲ持ッテ居フタ
ノデアルカト云フコトハ、是ハ餘程ノ重大事件デアリマス、
人ノ死ハ輕イ、併ナガラ今日ノ時勢ヲ見マスルト、容易ナラ
ヌ事ガ頻々トシテ起ル、襞ニハ東京驛頭ノ凶變アリ、今ハ皇
居ノ正門ニ向ッテ血ヲ濺グ者ガ有ル、之ヲ唯、一人一個ノ所
業デアルト見テ冷淡ニ扱フ者ハ、亦時代民心ノ變化ヲ察ス
ルコトヲ知ラナイ者共デアル(拍手)斯ノ如キ人ノ出ル其裏
ニハ、一世ノ空氣ガサウ云フ人ヲ激成シテ此舉ヲ爲サシメザ
ルヲ得ナイヤウナ空氣ガ、何レノ方面ニカ隨分濃厚ニ横ハッ
テ居ルト云フ事位ハ知ラナケレバナラヌ(拍手)是等ハ皆梅
花開イテ-一輪ノ梅花ト雖モ開ケバ春ハ隨ッテ來ルノデア
ル、霜ヲ履メバ堅氷ハ到ルノデアリマス、此一人一個ノ非常
ナル事件ニ對シテ其裏ニ何ガソリ、續イテ何ガ來ルト云フコ
トヲ考ヘナイ、時勢民心ノ趨ク所ヲ解セザルニ至ッテハ迚モ
政治ヲ談ズルニ足ラザル人ミデアリマス(拍手)故ニ願クハ彼
ガ捧ゲタ所ノ上奏文其儘ヲ、此議場ニ御報告アランコトヲ
希望致シマスス(拍手)
〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕
〔「嘘ヲ言フナ」「默ッテ居ロ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=114
-
115・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 静発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=115
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116・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 昨日二重橋正門前ニ於キ
マシテ自殺者ガアリマシタ、國民ノ最モ尊敬スベキ場所ヲ濱
スニ至リマシタ事、洵ニ當局トシテハ恐懼ニ堪ヘナイ次第デ
ゴザリマス、茲ニ今日マデ調査ノ結果知リ得マシ夕事實ノ眞
相、其他本人ノ身分ニ關スル事等ヲ御報告致シマス、昨日
ノ午後一時過宮城二重橋際ニ於テ、折柄附近ニ拜觀者モ
多數ゴザリマシタガ、其中ヨリ突如トシテ一壯漢ガ躍リ出デ
マシテ、二重橋ヲ渡シテ正門ニ向ヲテ驅ケ入ラント致シマシタ、
當時同所附近ノ取締ニ當ッテ居リマシタノハ、日比谷警察
署勤務巡查渡邊一治ト申ス者デアリマス、之ヲ認メテ直ニ
追跡致シマシタガ、同人ハ橋ノ半程ヨリ「直訴」ト連呼致シ
ツヽ、遂ニ御承知ノ正門前ニ步哨ガアリマスガ、步哨前ヲ驅
ケ拔ケマシテ、通用門ヨリ宮城内ニ闖入セントスル有樣デア
リマシタ、正門ノ方ハ平素締切ラレテ居リマス、其時勤務中
ノ步哨ガ之ヲ阻止致シマシタ、同人ハ豫テ懷中ニ用意致シ
マラタ爆榮ニ點火シテ居フタノデアリマシテ、火藥ノ臭氣甚
シク、且同人自ラ「爆彈々々アブナイ〓〓」ト絕叫ヲ致シマシ
タノデ、步哨等ハ之ヲ遠卷ト致シタノデアリマス、時ニ同人
ガ俯伏シトナリマシテ、其同時ニ轟然タル音響ヲ發シテ白煙
ガ立昇リ、瞬間ニ於テ五臟露出シテ、玆ニ自殺ヲ遂ゲマシタ
ル慘狀ヲ呈シタノデアリマス、二重橋ノ警戒ハ二重橋內正
門ノ外ニハ近衞兵ヨリ步哨ガ出テ配置サレテアリマス、二重
橋ノ前ハ行幸啓又ハ貴賓參內等、警衞警戒其他多數人ノ
集合ニ對スル、特別ノ警戒ヲ要スルト認メラレル場合ニ於キ
マシテハ、臨時適當ナル正服私服ノ警察官ヲ配置シテ警戒
ヲ致スノデアリマスルガ、平素ニ於キマシテハ、馬場先門內ニ
巡查派出所ガゴザイマス、此派出所ニ勤務致シテ居ル者ヲ、
交互ニ二重橋前ニ出張ッテ取締ニ當ラシテ居ルノデアリマ
ス、此取締ハ二重橋前拜觀者ニ於テ、不敬ナリ不謹愼ノ行
動ノナイヤウニ、又同廣場ニ猥リニ車馬ヲ乘入ルヽ事ナイヤ
ウニト云フコトヲ主眼トシテ、警察ノ任ニ當ッテ居ルノデアリマ
ス、卽チ昨日ハ別段異ッタル事モゴザリマセヌ、單ニ多數ノ二
重橋外ニ拜觀者ガ居リマシテ、前申上ゲマシタ渡邊巡查ガ
勤務シテ居リマスルト、一臺ノ自轉車ガ二重橋前廣場ノ方
向ニ進ンデ參ルノガアリマシタノデンレヲ制止致サントシテ
居ッタ際デアリマシタ、多數拜觀人ノ中ヨリ二重橋橋上ニ
向ッテ驅ケ出シテ參クタ者ガアルノヲ認メテ、直ニ追跡致シテ
正門前ニ參リマシタ、步哨ト共ニ門內ニ闖入セントスルノヲ
制止致シタノデアリマス、所ガ丁度通用門ト步哨ノ位置ト
ノ間位ニ石垣ノ脇ニ於テ、前申シタヤウナ次第デ遂ニ自殺
ヲ遂ケルニ至ッタノデアリマス、此人ハ藤田留次郎卜云フ者
デアリマシテ、前後ノ事情ヨリ察シマスルニ、豫メ覺悟ヲ致シ
テ居ッタノト認メマス、前申ス如ク他ニ危害ヲ加フルノ意思
ナドハ毫モ無カッタモノト思ハレマス、爆彈ノ危險ナル事ヲ呌
ンデ怪我人ノ無イヤウニト注意致シタモノト思ハレマス、事
情ハ斯ノ如クデゴザイマスルガ、尙ホ今日迄取調べ得マシタ
所ニ依リマスルニ、此藤田留次郎ナル人ハ、本籍ハ滋賀縣伊
香郡ノ人デアッテ、現住所ハ神田區東紺屋町火ノ番小屋ノ
中ニ住ッテ居ッテ、當年三十八、本人ハ明治四十年三月ニ滿
洲ニ參リマシテ、大連ニ於テ土木工事ニ從事シテ、爾後土
工ニ引續イテ從事シテ居リマシテ、大正三年ノ十一月ニ靑
島ニ渡リマシテ、此所ニ於テ諸種ノ事業ニ手出シヲ致シタヤ
ウデアリマスルガ、何レモ失敗ニ終シタ、其結果妻トモ離別ス
ルニ至ック、大正五年ノ三月朝鮮ニ轉ジ、同ジク六年更ニ內
地ニ戾リマシテ、ソレカラハ大阪、名古屋、東京、北海道、樺
太等ヲ浮浪シテ居クタ樣子デアリマス、大正九年ノ八、九月
頃ヨリ十年五月上旬迄ハ、神田三河町-檜ト申シマスガ
「トヨ」ト云フ人ノ家ニ同居致シタ、其時分ニハ度と靑年會
館其他ニ於ケル政談演說ノ傍聽ニ出掛ケ、或ハ普選其他
ノ民衆運動ニハ赤襷ヲ掛ケテ參加シタ事實ガアリマス、昨年
ノ二月十九日、本院ニ內閣不信任案上程ノ當日ニ於キマ
シテハ、院外ニ於ケル民衆運動ニ參加シテ、檢束セラレタ事
實ガゴザイマス、大正十年五月頃カラハ、北海道ニ居リマシ
テ、同年九月中ニ歸京ヲ致シテ、當時本人ハ非常ニ健康ヲ
害シテ居リマシテ、友達共ニ對シテ、俺ハ梅毒デ困ル此先二
年位シカ生命ハ持タヌカモ知レヌナドト云フコトヲ零シテ少
カラズ悲觀致シテ居ッタト云フコトデアリマス、歸京後、北海
道ニ出稼ヲ致シテ蓄ヘタ百二三十圓ノ金ヲ元手ニシテ、小間
物ノ行商ヲ始メタノデアリマスルガ、間モナク元金マデ無ク
シテシマヒマシタ樣子デアリマス、大正十年ノ十一月ヨリ本
月十一二日頃マデハ、神田ノ東紺屋町二十六ノ火ノ番小
屋ニ居住ヲ致シテ、同町ノ火ノ番ヲ勤メテ居リマシタガ、最
近著シク健康ヲ害シテ益〓世ノ中ヲ悲觀シテ、友達ノ新井貞
次郞トカ申ス人とニ對シチヤ、全ク此世ガ厭ニナッタ、一層死
ンデシマヒタイナドヽ口外ヲシテポンヤリ考へ込ンデ居ッタコ
トモ屢〓デアルト云フコトデアリマス、而シテ本年二月末頃ヨ
リ、何事カ熱心ニ書附ケヲ致シテ居シテ、初ハ書類ヲ認メ始メ
マシテ、職務ノ火ノ番ノ方モ免角怠リ勝トナリ、本月ニ至ッテ
ハ、全ク勤務モシナイ有樣デアッタト云フコトデアリマシタ、斯
ノ如ク本人ハ健康勝レズ、餘命幾許モナイト云フコトヲ自覺
シテ、將來ヲ餘程悲觀シタ精神狀態ニ陷ッテ居ッタモノヽ如ク
ニ認メラルヽノデアリマス、本人ノ携帶致シテ居リマシタ上
奏文ハ「天ニ奏問シ奉ル」ト題シテアリマスルガ「要領ヲ申上
ゲマスルガ「內外ノ政策及憲法上ノ大改革ヲ要スル件數々ア
ルガ樞要ノ地位ニ居ル者ノ利害ニ關シ當局容易ニ處決セ
ザルニ依リ直願ノ行動ヲ執ッテ自害ヲ致ス」ト斯ウ云フ前置
デ、社會ノ組織思想ノ動搖等ヲ述ベテ、吾々ハ過激ノ主義
デナイ、「〓邦」トアリマス、國ヲ憂フル所ノ革新主義デアルト、
斯ウ認メテアリマス、此文ハ二十枚許リノ長文デアリマス、其
中ノ主ナル事柄ヲ申上ゲマスレバ、普選ノ斷行···
〔「主ナル事柄デナク全文讀ンデ下サイ」ト呼フ者ア
〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=116
-
117・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君)(續) 今後カラ申上ゲマス、
其事ハ後カラ申上ゲマス、今私ガ申上ゲテ居ル最中-普
選ノ斷行、貴族院及華族制度ノ改革、言論集會結社ノ自
由、國政紊亂病ニハ如何ナル醫藥ヲ投ズベキカ、民族ヲ防護
シ社寺ヲ文化ニ活用サレタシ、宗〓ヲ改革シ、現代化ノ刷
新活用セラレタシ、惡差別ナル資本制度ノ改革、下級社會
ノ事トシテ不法極マル一例、是ハ北海道ニ於ケル土木工
事場ニ、惡周旋業者等ガ勞働者ノ待遇ヲ惡ク致シテ居ル
コトヲ非難シテ居ル、ソレカラ常備兵ヲ縮小シ、軍器軍需品
ヲ完備セヨナドト云フヤウナコトヲ論議致シテアリマス、右ハ
上奏文ノ大要デゴザイマスルガ、此所ニ上奏文本文ヲ其儘
朗讀ヲ致シマスルト云フコトハ、事件搜查ノ必要上、只今ハ
致シ兼ネマス、祕密會ノ席ニ於テ全文ヲ申上ゲルコトニ致
シタウゴザイマス、公開ノ席ニ於テハ、此程度ニ止メテ置キタ
ウゴザイマス、而シテ秘密會ニ入ル前ニ、尙ホ此所ニ申上ゲテ
置キタイコトハ、此上奏文ヲ讀ミマシタ所デ、皇室ニ對シ本
人ニ於テ何等不平不滿ヲ持ツヤウナ意思ノ無イト云フ
コトハ明デゴザイマス(拍手)ンレカラ他人ニ危害ヲ加フルト
云フ考モ有ッテ居ラヌト云フコトハ、先程申上ゲタコトニ於
テ明カデゴザイマス、大要右ノ通リデゴザイマス、此上ハ御
要求ガゴザリマスレバ、祕密會ニ於テ本文ヲ全文申上ゲル
事ニ致シタウトゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=117
-
118・尾崎行雄
○尾崎行雄君 私ハ上奏文全部ヲ承リタイト思ヒマス、祕
密會ヲ求ムルト求メメトハ當局者ノ隨意デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=118
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119・三木武吉
○三木武吉君 議事ノ進行ニ關シテ發言ヲ求メマス、只
今內務大臣ノ御說明ノ中ニ、上奏文全體ヲ朗讀スルニハ、
祕密會ノ席上ナラバト云フ御話ガアッタヤウデゴザイマス、私
共豫算委員會ヲ傍聽致シマシテ、右上奏文ナルモノノ全文
ヲ拜聽致シマシタ、大點ニ於テソレハ國民一般ニ示スモ、敢
テ公安ヲ害スルトカ、秩序ヲ破ルトカ、善良ノ風俗ニ害ガア
ルトカ云フヤウナ虞ガ無イモノト認メマス、右樣ノ次第デゴ
ザイマスカラ、國民ノ間ニ存スル疑惑ヲ一掃スル爲ニモ、寧
ロ此際國民全體ヲシテ、其事實ノ眞相ヲ知ラシメルコトガ、
兎ニ角適切ナル處置ト認メマス、故ニ私ハ寧ロ公開ノ席ニ
於テ、上奏文ノ全文ヲ朗讀セラレンコトヲ望ミマス、併シ特
ニ或事情ノ爲ニ祕シナケレバナラナイト云フヤウナ事柄ガア
ルト當局デ御覽ニナルナラバ、特ニ其點ダケハ祕密會ニ於テ
朗讀スルコトト致シテモ、其外ノ事ハ、全部公開ノ席ニ於テ
朗讀セラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=119
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120・武藤金吉
○武藤金吉君 只今尾崎君ヨリ上奏文ノ朗讀ハ、祕密
會ヲ開イテ聽キタイト云フ御要求ガアリマシタガ、ソレカラ
又只今三木君ノ御話ノ中ニ在リマシタガ、政府當局ニ於キ
マシテモ、搜查ノ關係上、或時機ニ於テハ公表シテ差支ナイ
ト云フコトヲ、豫算委員會ニ於テモ聲明サレテ居ルノデアリ
マス、故ニ此場合ハ尾崎君ノ御要求通リ、祕密會ヲ開イテ
朗讀セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=120
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121・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 武藤君ニ御尋ネ致シマス
〔此時發語スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=121
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122・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 靜ニ-靜ニ-尾崎君ハ別ニ
祕密會ハ要求サレタノデハアリマセヌ、若シ其内容ヲ朗讀ス
ルト云フコトニ付テ、政府ガ祕密會ヲ要求スルナラバ、ソレハ
妨ゲガナイ、自分ハ唯玆ニ其事ヲ政府ガ報告サルルコトヲ
望ムト、斯ウ云フ意味デアリマス、又三木君ノ申出ハ、一己
ノ御意見ト思ヒマス、政府ガドウシテモ此問題ヲ公開ノ席
上ニ於テ述ブルコトハ差支アリトスルナラバ、已ムヲ得ナイト
思ヒマス-內務大臣ハ祕密會ヲ要求シテ、只今ノ上奏文
ヲ御朗讀ニナリマスカ、内務大臣
〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=122
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123・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郎君) 折角御希望ノ方モアリマ
スルノニ、應ゼラレヌコトハ甚ダ遺憾デゴザイマスルガ、大體
本人ノ意思ト私ハ餘リ間違フテ此所ヘ御報告シテ居ル積リ
デアリマセヌ、其内容ニ立入ッテ今日玆ニ之ヲ公開ノ席デ申
上ゲルコトハ、事件搜査ノ上ニ差支へルト認メマスカラ、甚
ダ御希望ニ應ジ兼ネルコトハ遺憾デアリマスケレドモ、御斷
リヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=123
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124・尾崎行雄
○尾崎行雄君 公開ノ席上デ讀ムコトハ搜査ニ差支ヘル
ナラバ、内務大臣ハ祕密會ヲ御求メニナッタラ宜カラウト思
ヒマスルガ何レニ致シマシテモ、旣ニ豫算委員會ニ於テ讀ン
ダモノヲ、此本會ニ於テ讀マヌト云フ理由ハ無イノデアリマ
スー(此時發語スル者多ク聽取スル能ハス)--事件ハ斯
クノ如ク重大デアル、委員會ヨリカ、本會ノ方ニ報告スルノ
ガ本來デアル、小サナ豫算委員會ニハ讀ンダ、本會議ニハ讀
マヌト云フコトハ、本末ヲ〓倒シテ居ル、全體ニ對シテハ不
信任デアルガ、豫算委員ダケヲ信ズルト云フガ如キコトハ、如
何ナル次第デアルカ、内務大臣ノ意見ヲ問ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=124
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125・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 只今政府ヨリ祕密會ノ要求ガ
アリマシタ、就テハ傍聽人ノ退場ヲ命ジマス-是ヨリ秘密
會ヲ開キマス-事件ノ搜查上ノ必要カラ致シマシテ速記
ヲモ中止ノ要求ガアリマシタ、是ハ已ムヲ得ナイコトヽ考ヘマ
スノデ、速記モ中止致サセマス
〔午後七時一分祕密會ニ八ル〕
〔午後七時五十六分祕密會ヲ了ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=125
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126・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ公開致シマス
〔「議長」「議長」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=126
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127・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 一寸御待下サイ-横山勝太
郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=127
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128・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 極テ簡單デアリマスカラ、此席カラ發言
ヲ御許シヲ願ヒマス、昨日ノ宮闕正門前ニ於ケル慘事ニ對
スル質問ノ結果、所謂上奏文ナルモノヲ、祕密會ノ會議ト
ハ云へ、吾々國民ノ代表者ノ前ニ全部御朗讀ニナッタト云
フ當局ノ公明ナル態度ニ對シテハ、私一應ノ感謝ヲ致シマ
ス、從來斯ノ郊キ不祥事件ノアッタ場合ニハ、一切萬事祕
密ニナサレタ〓デアリマスガ、今回ハ何ノ感ズル所アリテカ、
之ヲ吾々ノ亜前ニ朗讀セラレタト云フ事ハ、當局ニ向ッテ免
ニ角私ハ敬責ヲ表シマス、之ニ關シテ極メテ簡單ニ承ッテ置
キタイト思ヒマスノハ、先刻ノ內務大臣ノ御話ノ中デハ、今
後ノ搜索上之ヲ祕密ニスルノ必要ガアルト云フ意味ノ御言
葉ガアリマシタガ、然ラバ此事案ニ對シテハ、尙ホ他ニ幾多
ノ共謀加擔ヲ致シテ居ル者ガアルト御認ニナッテ居ルノデア
リマスルカ、如何デアリマスカ、其點ヲ承リタイ(「無用」「無
用」ト呼フ者アリ)其次ニ承リタイノハ、只今佐々木君ノ御
質問ニ對シテ、機ヲ見テ此上奏文ヲ關下ニ奉ズルノ考ガア
ルト云フ御話デアリマシタガ、此上奏文ナルモノハ、國民一
般ニ對シテ公表セラルヽノ機アルコトヲ御考へニナッテ居ル
カドウカ、之ヲ承リタイ、第三ニ承リタイノハ、只今御朗讀ニ
ナッタ上奏文ノ大體ヲ承リマスノニ、是ハ〓シテ現內閣ノ諸
公ニ對スル彈効デアル(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」拍手)政府ハ如
何ニ考ヘテ居ラルヽカ、此點ヲ伺ヒマス、或ハ普通選擧ノ問
題、或ハ過激思想取締法ニ關スル問題ヲ始トシ、其他二三
ノ直接行動ニ出デタル者アル事ヲ例示シテ、幾多ノ犠牲者
ガアルト云フコトヲ書イテ居ルノノアアリマス、卽チ此上奏文
ノ內容ハ吾々內容ヲ此席ニ於テ指摘スルコトヲ致シマセヌ
ガ、併ナガラ〓シテ現内閣ノ諸公ニ對スル一大彈劾デアリ
マス(「ヒヤ〓〓」「ノウ〓〓」拍手)之ニ對シテ如何ニ考ヘテ居
ラレマスカ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=128
-
129・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 橫山君ニ注意致シマス、質問ノ
要旨ヲ御述べ下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=129
-
130・横山勝太郎
○橫山勝太郞君(續) 其ノ次ニ承ッテ置キタイノハ、近
時頻々トシテ我ガ帝都ニ流血ノ慘事ヲ見ル、例ヘバ東京
驛頭ノ一大慘事ノ如キ、又今囘ノ事柄ハ內務大臣ガ公開
ノ席デ言明セラレタル通リ、人ニ害ヲ及ポスノ意思ヲ持ッテ
居ナカッタコトハ明瞭デアリマスケレトモ、免ニ角宮闕正門ノ
前ニ於テ、縱令自殺ニセヨ、血ヲ流スノ慘事ヲ見ルコトハ、上
帝室ニ對シ、又吾々國民トシテモ、洵ニ遺憾ニ堪ヘナイ事デ
アリマスルガ、併シ斯ノ如キ慘事ガ頻々トシテ起リマスガ、之
ニ對シテ當局ハ如何ナル策ヲ以テ斯ノ如キ事ノ無カランコ
トヲ期スルカト云フコトヲ承リタイ、私ノ考フル所ニ依レバ、
現內閣ノ存スル限リ、斯ノ如キ慘事ハ頻々ト云フ起ルト思
フ(「煽動スルナ」「〓唆スルナ」ト呼フ者アリ)第五ニ承リタイ
ノハ、本員ハ過日帝都ノ公安ニ關スル質問ヲ內務大臣ニ對
シテ提出ヲ致シマシタ、其際ニ内務當局ハ帝都ノ公安ノ維
持ニ關シテ終始努力ヲ致シテ居ルト云フコトヲ言ハレマシ
タガ、昨日復此事ヲ見ルニ至テテ、我內務當局ハ帝都ノ
公安維持ニ關シテハ、何等ノ手段方法ヲ執ッテ居ラナイモノ
デアルト言ハナケレバナラヌ、此等ノ事項ニ關シテ、叮嚀ナル
御辯明ヲ得タイト考ヘマス(「辯明スル必要ナシ」「相手ニナ
ル必要ナシ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ)
あ
〔國務大臣床次竹二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=130
-
131・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 御答シマスガ、第一ノ點ハ
搜査上必要ガアルト申シマシタガ、何カ共犯者デモアル見込
デアルカト云フ御尋デアリマスガ、ソレハ御答致スベキ筋デハ
アリマスマイ(拍手)其次ニハ公表スル時ガアルカ、斯ウ云フ
御尋ノヤウデシタ、是ハ只今搜查上ノ爲ニ祕密ニ致シテ置
キマスカラ、其事件ガ止ミマスレバ、公表致シテ此ニモモ
ゴザイマセヌ、ソレカラ其次ニ上奏文ノ內容ハ內閣彈劾ト心
得ルガ、如何デアルカ、是ハ私ヨリ御答スベキコトデハアリマ
セヌ、銘々ノ考ヘル所ニ依ルヨリ外ハナイ(「ヒヤ〓〓」「其通
リ」ト呼フ者アリ)其次ハ斯クノ如キ事件ヲ如何ニシテ當局
ハ止ムルカ斯ウ仰シヤッタヤウデアリマスガサウデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=131
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132・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 斯ウ云フ事ガ頻々起ルガ、ソレヲ起ラナ
イヤウニスル方法ニ付テ、何カ御考ガアルカト云フノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=132
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133・床次竹二郎
○國務大臣(床次竹二郞君) 成程、ンレヲ御答致シマス、
斯樣ナ事ガ起ラヌヤウニスルノハ、御質問ノ御趣意デアルト
內閣ガ罷メデモシタラ良イノデハナイカト、斯ウ云フヤウニ一
寸承リマスガ、ソレハ御意見トシテ御答ハ致シマセヌ、ソレカ
ラ帝都ノ公安維持ニ如何ナル手段ヲ執ッテ居ルカト云フコ
トハ、今日相當ニ注意ヲ致シテ居リマス、ソレカラ此事件ニ
付テハ、警察ガ如何ニ行動ヲシテ居ルカト云フコトハ、先程
申上ゲタ所ニ依ッテ御了解下サルダラウト思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=133
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134・岩崎勲
○岩崎勳君 日程第二十ヨリ第五十二ニ至ル建議案ハ
全部延期シ、直ニ日程第五十三以下ノ委員長ノ報告ヲ審
議セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=134
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135・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ハナイト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、卽チ日程第五十三第
二期治水計畫確立ニ關スル建議案ヲ議題ト致シ、委員長ノ
報告ヲ求メマス-川原茂輔君
第五十三第二期治水計畫確立ニ關スル
建議案(川原茂輔君外三名提
〓(委員長報告)
報告書
一第二期治水計畫確立ニ關スル建議案(川原茂輔君外
三名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十一日
第二期治水計畫確立ニ
關スル建議案委員長
川原茂輔
衆議院議長奧繁三郞殿
〔川原茂輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=135
-
136・川原茂輔
○川原茂輔君 第二期治水計畫確立ニ關スル建議案ノ
委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、委員會ヲ開キマ
シタコトハ二回ニ涉リマシテ、政府ニ對スル質問モ詳細ヲ極
メ、而シテ遂ニ原案ノ通リ滿場一致ヲ以テ贊成ヲ致シタノ
デアリマス、而シテ此金額ハ六十二大河川ニ於テ三億八千
五百万圓、二十箇年ニ於テ此計畫ヲ爲スト云フコトニナル
ノデアリマス、此建議案ニ對シテハ、憲政會ノ野村君、其他
ノ各黨ヲ代表スル人ガ、悉ク贊成ヲ表セラレタノデアリマス、
仍テ滿場一致ヲ以テ此建議案ヲ可決致シマシタ、ドウカ御
贊成ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=136
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137・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ委員長報告ノ通リ可決確定アランコ
トヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=137
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138・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第五十四、農務
省新設ニ關スル建議案ヲ議題ニ致シマス、中倉万次郞君
第五十四農務省新設ニ關スル建議案
(中倉万次郞君外八名提出)
(委員長報告)
報告書
一農務省新設ニ關スル建議案(中倉万次郞君外八名
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
候也
大正十一年三月十六日
農務省新設ニ關スル建議案委員長
中倉万次郞
衆議院議長奧繁三郞殿
〔中倉万次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=138
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139・中倉万次郎
○中倉万次郞君 報告致シマス、本案ハ農務省新設ニ關
スル建議案デアリマス、此提出ノ理由ニ付キマシテハ、提出
ノ際ニ提出者天春君ヨリ詳シク述ベテアリマスカラ之ヲ略
シマス、此建議案ハ重大ナル國策ヲ立ツル案デアリマスカ
ラ、委員會モ極ク深切ニ調査ヲ致シマシテ、總理大臣ノ出
席ヲ求メマシテ、其意見モ質シタノデアリマス、其結果委員
會ハ滿場一致ヲ以テ可決致シマシタガ、未ダ御手許ニ速記
ガ廻ッテ居ラナイ上思ヒマスカラ、其應答ノ大要ヲ摘ンデ、茲
ニ一言申上ゲテ置カウト思ヒマス、此案ニ付キマシテ總理
大臣ノ出席ヲ求メマシテ、天春君ヨリ此建議案ノ趣旨、又
農務省新設ノ急務ナルコトヲ述ベテ意見ヲ問ヒマシタル所、
總理大臣ハ趣旨ニ於テハ自分モ同感デアル、又刻下ノ機宜
ニ適シタ問題デアルノデアル、併ナガラ此案ハ十分調查ヲ要
スル案デアルカラ、今此處デ何時之ヲ實行スルト云フコトノ
御約束ハ出來ナイト云フヤウナ答ガアリマシタ、ソレヨリ段
段委員中ヨリ是非臨時會モ開カレルト云フコトデアルカラ、
成ベク臨時會ニ於テ之ガ解決ヲ爲スヤウニ施設シテ貰ヒタ
イト云フヤウナ要求質問モアリマシタ、所ガソレニ對シマシテ
ハ、臨時會ハ今日開否未定デアル、假ニ臨時會ヲ開クトシテ
モ、臨時會ノ性質ハ海軍整理其他ニ付テデアッテ、或ハ斯樣ナ
問題ヲ解決スルコトハ到底出來ナイト云フコトニナルカモ
知レナイ、ソレデ臨時會ニ此案ヲ提出スルト云フコトヲ御約
束スルト云フコトハ出來ナイト云フ答辯デアリマシタ、ソレカ
ラ憲政會ノ齋藤君ヨリ、非常ニ此案ノ急施ヲ希望シテ居ル
ノデアルガ、此前豫算委員會ニ於テ國民黨ノ大口君ヨリノ
質問ニ對シテ首相ガ答辯セラレタノデ、非常ニ此案ニ付テ
モ希望ヲ屬シテ喜ンデ居ッタノデアルガ、今ノ答辯ハ少シ後
ニ戾フタヤウナ感シガスル、是非共國民ノ全體ガ希望スル案デ
アルカラ、臨時會ノ際マデニハ是非此案ノ解決ヲ希望スル
ト云フヤウナ押問答ヲ致シマシタ、ソレニ對シマシテモ先刻
述べマシタ通リ、總理大臣モ此趣旨ニ於テハ全然賛成デア
ル、又實際實行ヲシナケレバナラヌト云フ考ハ持ッテ居ルノデ
アル、原前首相トモ生存中ニ此事ニ付テハ協議ヲ遂ゲタコ
トモアルノデアル、併ナガラマダ其計畫ニ付テハ閣議デ決定
シテ居ル問題デモナイノデアル、併シ自分一個ノ意見トシテ
ハ、十二年度ノ豫算マデニハ成ベク此案ヲ實現セシムルヤウ
ニシタイト云フ考ハ持ッテ居ルノデアル、併ナガラ之ヲ實行ス
ルニ付テハ、例ヘバ山林ヲ農務省ニ併セルコトニスレバヽ
山林ハ治水關係ヨリ內務ニ屬スルヤウナ問題モアルノデア
ル、各省ニ關係ガアルノデアル、二ツノモノヲ一ツヅヽ分ケル
ト云フヤウニ容易ク分ケラレルモノデナイ、ソレデドウシテモ
臨時會ニ提出スルト云フ御約束ハ出來ナイト云フ答辯デア
リマシタ、先ヅ大體カラ申シマスレバ、十二年度ノ豫算マデニ
ハ成ベク是ガ實現ヲスルヤウニシテ見タイト云フ希望ヲ持ッ
テ居ルト云フヤウナ總理大臣ノ答辯ガアリマシタノデ、委員
會デハ皆安心ヲシテ、ソレデ質問ヲ終ラレテ討論ニ移リマシ
タ所、政友會ノ匹田君ガ原案賛成ノ演說ヲサレ、憲政會ノ
齋藤君ハ、首相ノ言明ハ洵ニ喜バシイ、自分ハ匹田君ノ賛
成演說ニ同意ヲスル、他ニ意見モナイト云フノデ、滿場一致
ヲ以テ本案ハ可決スルコトニナリマシタノデアリマス、此段
御報告致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=139
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140・岩崎勲
○岩崎勳君 本案ハ委員長報告ノ通リ可決アランコトヲ
望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=140
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141・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第五十五乃至
第八十四ハ請願特別報告デアリマスカラ、例ニ依テ一括議
題トナシ、委員長ノ報告ヲ求メマス
第五十五(特別報告第一一百六十一號)賀
名生ノ宮創建ノ請願
(委員長報告)
第五十六(特別報告第二百六十四號)癈
兵及戰死者遺族ニ對スル生活
保全ノ請願外二件
(委員長報告)
第五十七(特別報告第二百六十五號)漢
方醫藥〓究保存ノ請願
(委員長報告)
第五十八(特別報告第二百六十六號)日
光山ヲ國立公園ト爲スノ請願
(委員長報告)
第五十九(特別報告第二百六十七號)上
高地國立公園設置ノ請願
(委員長報告)
第六十(特別報告第一一百六十八號)漁
港修築費國庫補助法制定ノ請
願(委員長報告)
第六十一(特別報告第一一百六十九號)聲
問川河口修築ノ請願
(委員長報告)
第六十二(特別報告第二百七十號)苦前
漁港竝避難港修築ノ請願
(委員長報告)
第六十三(特別報告第二百七十一號)濱
田港修築ノ請願(委員長報告)
第六十四(特別報告第二百七十二號)諸
寄港漁港修築ノ請願
(委員長報告)
第六十五(特別報告第二百七十三號)羽
幌漁港修築ノ請願
(委員長報告)
第六十六(特別報告第二百七十四號)湧
別川治水ノ請願(委員長報告)
第六十七(特別報告第二百七十五號)根
室、斜里間拓殖鐵道敷設速成ノ
請願(委員長報告)
第六十八(特別報告第一一百七十六號)國
有林野ニ關スル請願外四十三
件(委員長報告)
第六十九(特別報告第二百七十七號)遠
洋漁業奬勵法及附屬命令中改
正ノ請願(委員長報告)
第七十(特別報告第二百七十八號)魚
市場法制定ニ關スル請願
(委員長報告)
第七十一(特別報告第二百七十九號)福
岡市ニ國立工業試驗場增設ノ
請願(委員長報告)
第七十二(特別報告第二百八十三號)口
總郵便局ニ集配事務開始ノ請
(委員長報告)
第七十三(特別報告第二百八十四號)王
子郵便局管轄區內ニ無集配郵
便局設置ノ請願(委員長報〓)
第七十四(特別報告第一一百八十五號)三
山木村三山木無集配郵便局ニ
電信、電話架設ノ請願
(委員長報告)
第七十五(特別報告第二百八十六號)溫
泉村ニ郵便局設置ノ請願
(委員長報告)
第七十六(特別報告第二百八十八號)八
代郵便局ニ集配事務開始ノ請
願(委員長報告)
第七十七(特別報告第二百八十九號)六
合村ニ郵便局設置ノ請願
(委員長報告)
第七十八(特別報告第二百九十號)湯口
郵便局ニ集配事務開始竝志戶
平ニ無集配郵便局設置ノ請願
(委員長報告)
第七十九(特別報告第二百九十一號)大
原村大字市場ニ無集配郵便局
設置ノ請願(委員長報告)
第八十(特別報告第二百九十二號)戶
ヶ崎郵便局ニ電信、電話事務開
始ノ請願(委員長報告)
第八十一(特別報告第二百九十三號)明
治村ニ集配郵便局設置ノ請願
(委員長報告)
第八十二(特別報告第二百九十四號)網
干驛前郵便局ニ特設電話架設
ノ請願(委員長報告)
第八十三(特別報告第二百九十五號)田
澤村ニ郵便局ヲ設置シ電信事
務開始ノ請願(委員長報告)
第八十四(特別報告第二百九十六號)津
輕海峽ニ自働航送船增加ノ請
願(委員長報告)
特別根告第二百六十一號
意見書
請願文書表第一二一六號
賀名生ノ宮創建ノ請願奈良縣吉野郡賀名生村和田五十四
番地平民靑木俊之呈出(紹介議員玉置良直君)
右請願ノ要旨ハ後村上、後龜山ノ二天皇ノ御成德ニ對シ其ノ靈
ヲ慰メ奉ラムカ爲御舊蹟タル奈良縣吉野郡賀名生宮址ニ奉祠シ
奉ルヘキ道ヲ講セラレタク依テ賀名生ノ宮ヲ創建セラレタシト
謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百六十四號
意見書
請願文書表第一一七六號
寢兵及戰死者遺族ニ對スル生活保全ノ請願仙臺市定禪寺
通梅丁四十八番地平民陸軍三等軍醫正山田令助外二十一
名呈出(紹介議員伊澤平左衞門君)
同第一一八七號
同上東京市麻布區谷町五十九番地平民退役陸軍步兵少佐
中村中郞呈出(紹介議員石川玄三君)
同第一一八九號
同上福島縣若松市南町三百九十六番地平民退役陸軍步兵
中尉金子德三郞外三十九名呈出(紹介議員八田宗吉君)
右請願ノ要旨ハ國家ノ犠牲者タル疫兵及戰死者ノ遺族ニ對シ生
活ノ安定ヲ與フルハ國家ノ爲スヘキ當然ノ義務ナルノミナラス
彼等ニ精神的ノ慰藉ヲ與フルノ方法トシテ最當ヲ得タルモノト
謂フコトヲ得ヘシ依テ(一)療兵及戰死者遣族ノ子弟ニ對シ官公
立學校ノ月謝ヲ免除スルコト(二)療兵及戰死者造族ニ職業〓育
ヲ施スコト(三)傷痍記章ヲ因定〓科書ニ揭クルコト(四)戰死者
遺族ノ記章ヲ制定スルコト等ノ事項ヲ實施セラレタシト謂フニ
在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スへキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百六十五號
意見書
請願文書表第一一五六號
漢方醫藥〓究保存ノ諸願東京市本〓區眞砂町三番地平民
新聞記者島田武男呈山(紹介議員志賀和多利君)
右請願ノ要旨ハ當〓漢方醫ハ醫衛トシテノ存在ヲ失ヒ延ヒテ漢
方醫藥モ亦衰滅ニ歸セムトス顧フニ施藥ノ效果ニ於テハ啻ニ歐
米醫藥ニ劣ラサルノミナラス難病持病ニ施シテ遙ニ效果ノ偉大
ナル點ヨリ觀ルモ其ノ間眞理ノ存スルヲ認メ得ヘシ依テ歐米醫
藥ノ〓究ノミニ委セスシテ速ニ漢方醫藥〓究保存ニ關シ適當ノ
施設アリタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百六十六號
意見書
請願文書表第一〇八一號
日光山ヲ國立公園ト爲スノ請願栃木縣上都賀郡日光町長
石井信敬外四十六名呈出(紹介議員松岡俊三君)
右請願ノ要旨ハ日光ノ我カ國ニ於ケル一大樂圍トシテ適當ナル
コトハ今更言ヲ俟サルトコロナリ然ルニ維新後ハ幕府瓦解ト共
ニ其ノ存在ノ財源ヲ失ヒ宏莊ナル寺院堂宇ハ荒廢ニ傾キ且此ノ
一帶ハ鬼怒用ノ水源地ニ局シ大谷、稻荷雨川ノ問ニ在ルヲ以テ
年年水害ノ厄ニ遭遇シ今ヤ全ク此ノ名勝ノ將來ヲ憂慮スルニ至
レリ依テ日光山ヲ國立大公園ト爲スト共ニ更ニ聞山一千二百年
ノ歷史ヲ有スル關東ノ名山足尾庚申山ノ奇勝ヲモ此ノ大公園ノ
區域ニ抱擁シ以テ世界的遊園地トセラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百六十七號
意見書
請願文書表第一一二六號
上高地國立公園設置ノ請願長野縣南安曇郡長手塚十五七
呈出(紹介議員塚原嘉藤君)
右請願ノ要旨ハ長野縣南安曇郡上高地ハ信飛山脈ノ中間ニ介在
シ梓川ノ上流ニ沿ヒテ延長數里海拔五千尺ノ高原地ニシテ御大
典記念保護林一萬餘町步ノ地籍ヲ占メ其ノ周圍ニハ鎗ケ岳、穗
高岳等ノ高峯重疊伏伏スルヲ以テ實ニ天然ノ美ヲ誇ルニ足レリ
依テ之ニ相當ノ設備ヲスヘヘ民民ヲシテル靈異ニ觸レシム
ル趣旨ニ於テ速ニ上高地ヲ國立公園トセラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリキ認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百六十八號
意見書
請願支書表第一二二一號
漁港修築費國庫補助法制定ノ請願岡山市野田尻町二百五
十四番地平民水產業高草美代藏外四名呈出(紹介議員成
田榮信君外二名)
右請願ノ要旨ハ政府ハ既ニ數箇ノ漁港修築ニ著手セラレタリ然
トモ七千四百有餘哩ノ沿海漁民ニ對スル希望ノ達成ニハ前途遼
遠ノ感ナキ能ハス於是乎漁港ノ修築ハ勿論漁港漁船曳揚場等ノ
築設ニ當リ漁業組合等地方公共〓體自ラ之ヲ爲サムトシツツア
リト雖其ノ負擔ノ過重ナル容易ノ業ニアラス依テ該事業奬勵金
トシテ國庫ヨリ相當補助セムカ爲河川法ト同樣ナル國庫補助法
ヲ制定セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百六十九號
意見書
講願文書表第一二三○號
聲問川河口修築ノ請願北海道宗谷郡稚內町大字聲問村字
コエトイ六百三十番地手來忍外百二十一名呈出(紹介議
員東武君)
右請願ノ要旨ハ北海道宗谷郡聲問原野ノ中央ヲ流ルル聲問川ハ
流域二十里三十餘町其ノ附近一帶ハ地味肥沃ニシテ無量ノ礦鑛
美林之ヲ圍繞シ農耕適地二萬五千町步在リ而シテ沿岸地方ノ生
產物ノ激增ニ伴ヒ唯一ノ輸送機關トシテ聲問川ノ利用ノ效果ハ
實ニ大ナリ然ルニ該川ハ近時漂砂ノ爲河水ノ激減ヲ來シ將ニ河
底ハ砂礫ヲ以テ埋沒セラレムトスル狀態ニ在リテ勢ヒ船舶ハ安
全ナル碇泊ヲ爲ス能ハサル爲風浪ノ危險ヲ冒シテ外湊ニ碇泊ス
ルノ止ムナキニ至レリ若此ノ儘ニ之ヲ放置セムカ物貨ノ輸出入
杜絕シ住民ハ拱手離散ノ運命ニ逢著スルハ明ナリ依テ速ニ聲問
川河口ヲ修築セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百七十號
意見書
請願支書表第一二三一號
苫前漁港竝避難港修築ノ請願北海道苫前郡苫前村大字苦
前三十九番地長島泰藏外百十四名呈出(紹介議員東武君
外一名)
右請願ノ要旨ハ北海道苫前郡苦前港ハ天〓國沿岸ニ於ケル唯一
ノ良港ニシテ又地形的ニ優秀ナル灣形ヲ爲シ殊ニ魚族無限ノ日
木海ニ面スルヲ以テ漁港設備ノ完全ハ此ノ際最緊要ナリ猶冬季
船舶ノ避難所トシテ之カ修築ノ上ハ一躍水產界ハ面目ヲ一新ス
ヘク加之天〓國唯一ノ大農耕地ヲ背後ニ擁シ礦層ニ富ム連峯亦
採掘セラレムカ此處貨物ノ一大集散地現出スルハ豫測シ難カラ
ス依テ速ニ本港修築設備ノ完成ヲ劃策セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百七十一號
意見書
請願文書表第一二八五號
濱田港修築ノ請願島根縣那賀郡濱田町大字淺井七十三番
地千葉小佐平外六百十九名呈出(紹介議員島田俊雄君)
右請願ノ要旨ハ島根縣那賀郡濱田港ハ縣下唯一ノ良港ニシテ又
唯一ノ輸出港タリ從テ裏日本ノ開發上同港ノ改修ハ一日モ之ヲ
忽諸ニ附スヘカラサルモノナリ依テ速ニ濱田港灣ヲ修築セラレ
タシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スへキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百七十二號
意見書
請願文書表第一二九六號
諸寄港漁港修築ノ請願兵庫縣美方郡西濱村長藤田治右衞
門外四十三名呈出(紹介議員松山常次郞君)
右請願ノ要旨ハ兵庫縣美方郡西濱村諸寄港ハ古來但馬三港ノ一
ニシテ港內ハ深ク天然ノ良港タルヲ以テ商船ノ出入頻繁ニシテ
遠近ノ物資ヲ集散シ恰モ貿易港ノ狀態ニ在リ然ルニ惜ムヘキハ
港口稍廣ク冬季西北ヨリ襲來スル風波ノ爲漁船ノ碇泊困難ナル
ヲ以テ斯業ノ發展ヲ阻止スルノ虞アリ玆ニ適當ノ設備ヲ見ルニ
至ラハ地方水產業ハ一躍進展ハ明ナリ依テ日本海沿岸ノ水產界
促進ノ爲速ニ諸寄港ヲ漁港ニ修築セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百七十三號
意見書
請願文書表第一三〇一號
羽幌漁港修築ノ請願北海道苫前郡羽幌町南大通一丁目十
番地平民五十嵐治郞外百九十三名呈出(紹介議員東武君
外一名)
右請願ノ要旨ハ北海道苫前郡羽幌町ハ西南ハ苦前村ニ東南ハ山
脈ヲ以テ雨龍郡、上川郡名寄、士別ノ兩村ニ界シ西北ハ日本海ニ
面シ明治初年以來漁民ノ移住ニ連レ年ト共ニ發展シ來リタリト
雖秋冬ハ西北風烈强ナレトモ避難錨地ナク是カ爲斯業衰退ン年
年疲弊困憊ニ陷リ其ノ窮惜實ニ見ルニ忍ヒサル、モノアリ是單ニ
漁民ノ不利不幸ナルノミナラス國家的見地ヨリシテ遺憾ニ堪へ
ス依テ速ニ羽幌漁港ヲ修築セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百七十四號
意見書
請願文書表第一三〇二號
湧別川治水ノ請願北海道紋別郡遠輕市街地公園通平民農
三澤恒助外七十一名呈出(紹介議員木下成太郞君外一名)
右請願ノ要旨ハ北海道紋別郡湧別川ハ流域百十三方里ニ亙ル大
河川ナリト雖每年洪水ニ因リ絕エス河身流域ヲ變更シ堤防ハ勿
論廣大ナル耕地ヲ缺潰流失スルコト算ナク其ノ慘狀言語ニ絕シ
爲ニ該地方ニ於ケル產業ノ開發ハ得テ望ムへカラサルモノアリ
依テ速ニ前記湧別川ヲ調査シテ根本的治水策ヲ講セラレタシト
謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百七十五號
意見書
請願文書表第一二二九號
根室、斜里間拓殖鐵道敷設速成ノ請願北海道根室郡根室
町兼古萬吉外百三十七名呈出(紹介議員木下成太郞君外
二名)
右請願ノ要旨ハ北海道根室國ノ原野ハ農耕適地十五萬町步ヲ存
シ専ラ農ヲ業トスル者ハ優ニ一萬戶ヲ收容シ得へシト雖交通運
輸ノ便未タ備ハラサル爲現在移住者一千三百戶ニ過キス之カ爲
此ノ地ノ開發遲遲トシテ進マス徒ラニ豐饒ノ富源ヲ遺棄スルハ
洵ニ遺憾ニ堪ヘス依テ拓殖進展上將又鐵道經營卜根室ヨリ標津
ヲ經テ斜里ニ至ル拓殖鐵道ヲ敷設セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百七十六號
意見書
請願文書表第九〇四號
國有林野ニ關スル請願福島縣東白川郡鮫川村大字赤坂面
野字名下八十一番地平民農須藤千代之助外十名呈出(紹
介議員金澤安之助君)
同第九〇五號
同上福島縣東白川郡竹貫村大字竹貫字竹貫百二番地矢内
森之助外九十五名呈出(紹介議員金澤安之助君)
同第九〇六號
同上福島縣岩瀨郡牧本村大字牧之内字矢中一番地鉛木勝
吉外八十一名呈出(紹介議員金澤安之助君)
同第九〇七號
同上福島縣岩瀨郡長沼町大字長沼字豐町三十三番地平民
農和田廣之助外百十九名呈出(紹介議員金澤安之助君)
同第九四三號
同上福島縣石川郡蓬田村大字永田字上永田四十二番地平
民農館龜松外六十名呈出(紹介議員河野廣中君)
同第九四四號
同上福島縣田村郡都路村大字古道宇新町二十八番地平民
農吉田廣吉外二十二名呈出(紹介議員河野廣中君)
同第九四五號
同上福島縣田村郡小野新町大字雁股田字麥二十九番地平
民農鈴木久吉外三十六名呈出(紹介議員河野廣中君)
同第九四六號
同上福島縣田村郡瀨川村大字大倉字本町百三十番地橋本
宗太外二百五十名呈出(紹介議員河野廣中君)
同第九四七號
同上福島縣田村郡夏井村大字北田原井字樋口二十番地平
民農根本精外七名呈出(紹介議員河野廣中君)
同第九六四號
同上福島縣雙葉郡大堀村大字大堀字漆畑百二十五番地士
族農山田則三外十九名呈出(紹介議員松本孫右衞門君)
同第九六五號
同上福島縣雙葉郡苅野村大字立野百八十九番地平民農上
野菊松外九名呈出(紹介議員松本孫右衞門君)
同第九六六號
同上福島縣雙葉郡大野村大字下野上字後山百七十三番地
平民農脇坂綱治郞外八十九名呈出(紹介議員松本孫右衞
門君)
同第九六七號
同上福島縣雙葉郡大久村大字小久字町田前三十六番地平
民農志賀末松外七十二名呈出(紹介議員松本孫右衞門君)
同第九六八號
同上福島縣相馬郡石神村大字信田澤宇内城二番地農佐藤
左吉外三百十六名呈出(紹介議員松本孫右衛門君)
同第九六九號
同上福島縣相馬郡原町大字南新田字町百六番地平民農堀
川忠助外百五十一名呈出(紹介議員松本孫右衞四君)
同第九七〇號
同上福島縣相馬郡山上村大字山岸五番地士族農荒亀治外
百二十五名呈出(紹介議員松本孫右衞門君)
同第九七一號
同上福島縣相馬郡高平村大宇北高平字入道迫五百十番地
平民農德野松藏外三百七十八名呈出(紹介議員松本孫右
衛門君)
同第九七二號
同上福島縣相馬郡太田村大字片倉字八重米坂十番地平民
農高橋廣外三百九十八名呈出(紹介議員松本孫右衞門君)
同第九七三號
同上福島縣相馬郡大甕村北原字東原八十二番地平民農早
川周之助外四百三十七名呈出(紹介議員松本孫右衞門君)
同第九七六號
同上福島縣河沼郡塔寺村字松原二千八百三十九番地平民
農蓮沼忠太郎外二十五名呈出(紹介議員八田宗吉君)
同第九七七號
同上福島縣西白河郡川崎村大字太田川字居平九番地小林
〓太郎外六十二名呈出(紹介議員八田宗吉君)
同第九七八號
同上福島縣耶麻郡奧用村大字高陽根字中ノ澤四百九十四
番地平民農矢部多重呈出(紹介議員八田宗吉君)
同第九七九號
同上福島縣耶麻郡關柴村字下柴字小松千四百二十九番地
平民農宇田成一外二百二名呈出(紹介議員八田宗吉君)
同第九八〇號
同上福島縣石城郡三阪村大字上三阪字中町八番地平民農
田子三次郎外二百十一名呈出(紹介議員白井博之君)
同第九八一號
同上福島縣伊達郡石戶村大字山戶田字中ノ內三十五番地
平民農菅野勇作外二百十名呈出(紹介議員鈴木周三郞君)
同第九八二號
同上福島縣伊達郡茂庭村字芦原五十四番地齋藤義一外百
八名呈出(紹介議員鈴木周三郞君)
同第九八三號
同上福島縣信夫郡水原村字三島三十五番地平民農加藤理
平次外五十九名呈出(紹介議員鈴木周三郞君)
同第一〇九四號
同上福島縣大沼郡野尻村大字下中津川三千六百一番地酒
井榮吉外九十九名呈出(紹介議員中野寅吉君)
同第一〇九五號
同上福島縣北會津郡大戶村字上三寄丙五百五十二番地平
民農大竹寅吉外三十三名呈出(紹介議員中野寅吉君)
同第一〇九六號
同上福島縣南會津郡伊北村大字石伏字下居廻二百六番地
平民農目黒平吉外四十一一名呈出(紹介議員中野寅吉君)
同第一〇九七號
同上福島縣大沼郡大芦村大字佐倉字水上六百八十八番地
農本名美吉外六十四名呈出(紹介議員中野寅吉君)
同第一〇九八號
同上福島縣南會津郡朝日村大字龜岡字山崎五百九十一番
地平民農齋藤辰三郎外二十五名呈出(紹介議員中野寅吉
君)
同第一〇九九號
同上福島縣大沼郡中ノ川大字砂子原二百五十九番地平民
農金子卯吉外四十九名呈出(紹介議員鈴木周三郞君外三
名
同第一一〇四號
同上福島縣南會津郡小梁村大字小林字上前田四百九十八
番地平民官吏山內文六外二十二名呈出(紹介議員中野寅
吉君)
同第一一〇八號
同上靑森縣上北郡大深内村大字八斗澤字家ノ下六十三番
地平氏農佐々木勝次郎外二十九名呈出(紹介議員阿部武
智雄君外四名)
同第一一三九號
同上福島縣安達郡山木屋村字西ノ脇二十六番地平民米倉
又次郞外十四名呈出(紹介議員粟山博君)
同第一一四〇號
同上福島縣安達郡高川村原田長九郎外十一名呈出(紹介
議員粟山博君)
同第一一四一號
同上福島縣安積郡月形村大字舟津字舟津七百九十八番地
仲田友太郎外九十九名呈出(紹介議員粟山博君)
同第一一四二號
同上福島縣安達郡鹽澤村字中里三十五番地齋藤粂治外二
百四十二名呈出(紹介議員粟山博君)
同第一一四三號
同上福島縣安積郡三和村大字富岡字本郷六十二番地中原
廣治外百六名呈出(紹介議員粟山博君)
同第一一九〇號
同上福島縣東白川郡宮木村大宇山上字大竹五十一番地平
民農大竹平次外十名呈出(紹介議員八田宗吉君)
同第一一九一號
同上福島縣南會津郡大川村大字大原二百八十五番地平野
留吉外五十名呈出(紹介議員八田宗吉君)
同第一一九二號
同上福島縣耶麻郡熱鹽村大字熱鹽八百十四番地遠藤長八
外百五十二名呈出(紹介議員八田宗吉君)
同第一一九三號
同上福島縣耶麻郡猪苗代町四千八百九十四番地平民農壽
田直喜外七十一名呈出(紹介議員八田宗吉君)
右請願ノ要旨ハ今ヨリ四十餘年前ノ地祖改正ニ際シ政府ハ當時
生活ニ困難ナリシ舊藩士ヲ歸農セシムルノ用ニ充テムカ爲福島
縣下ニ於ケル官有林野ノ增大ヲ圖リ官權ヲ利用シテ純然タル民
有林野又ハ入會ノ慣行アリシ林野ヲ官有林野ニ編八シタルヲ以
テ爾後諸種ノ民業ニ對シ不利不便甚シキモノアリ依テ現行林野
制度ヲ私案ノ如ク改正セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百七十七號
意見書
請願文書表第一二二二號
遠洋漁業奬勵法及附屬命令中改正ノ請願静岡縣磐田郡於
保村濱部四番地平民農川島瀧藏外四名呈出(紹介議員成
田榮信君外二名)
右請願ノ要旨ハ近時遠洋漁業ノ發展ニ從ヒ漸次漁場擴張シ船舶
上ニ於テハ諸種ノ船舶機國ヲ增大シ通信機關ヲ整備シ貯藏輸送
ノ方法ヲ改良スルノ必要アルハ勿論之ニ從事スヘキ乘組員ノ技
術ヲ練磨セシムル爲奬勵金ノ制ヲ復活シ又乘組員養成方法ヲ改
善スル等速洋漁業獎勵法及附屬命令中適宜改正ヲ爲シ海軍費節
減金ヲ以テ前記獎勵金ヲ增加セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百七十八號
意見書
請願支書表第一二二三號
魚市場法制定ニ關スル請願静岡縣磐田郡於保村濱部四番
地平民農川島瀧藏外四名呈出(紹介議員成田榮信君外二
名
右請願ノ要旨ハ本邦水產業ノ改善發達ト社會政策上物價ノ調節
トニ鑑ミ魚市場法ノ制定急切ナルヲ認ム依テ之ニ順應スヘク魚
市場法ヲ制定セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スへキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百七十九號
意見書
請願文書表第一一二三號
福岡市ニ國立工業試驗場增設ノ請願福岡市東中洲町福岡
縣酒造組合長小林作五郞外十五名呈出(紹介議員中村〓
造君)
右請願ノ要旨ハ近時農、工業ノ發達著シキニ拘ラス一般工業試
驗場ノ施設ノ是ニ伴ハサルハ遺憾トスルトコロナリ請願人等ハ
我カ福岡縣ニ於テ幾多ノ工業勃興シツツアルニ鑑ミ速ニ國立工
業試驗場ヲ福岡市ニ設立セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百八十三號
意見書
請願文書表第一〇二九號
口總郵便局ニ集配事務開始ノ請願愛媛縣越智郡岡山村長
大内勳呈出(紹介議員深見寅之助君外一名)
右請願ノ要旨ハ愛媛縣越智郡岡山村ハ面積一方里餘人口八千有
餘ノ大村落ニシテ近來商工業若シク發達セリ然ルニ所轄口總郵
便局ハ無集配局ナル爲不便尠カラス依テ該郵便局ニ集配事務ヲ
開始セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百八十四號
意見書
請願文書表第一〇七四號
王子郵便局管轄區內ニ無集配郵便局設置ノ請願東京府北
豊島郡王子町大字王子千二十七番地平民商長塚八郞兵衞
呈出(紹介議員高木正年君外一名)
右請願ノ要旨ハ東京府北豊島郡王子町ハ舊王子、上十條、下十
候、豊島、堀ノ内、船方ノ五箇ノ大字ヨリ成リ人口約四萬餘ニシ
テ住民ノ多クハ工業ニ從事シ通信ノ數頻繁ナリ然ルニ通信機關
トシテハ前記舊王子ニ郵便局アルノミニシテ其ノ不便實ニ尠カ
ラス依テ該王子郵便局管轄區内相當ノ地ニ無集配郵便局ヲ設置
セラレクシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スへキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百八十五號
意見書
請願文書表第一一二一號
三山本村三山木無集配郵使局ニ電信、電話架設ノ請願京
都府綴喜郡三山木村長森島富藏呈出(紹介議員長田桃藏
君)
右請願ノ要旨ハ京都府級喜郡三山木村ハ郡内樞要ノ地點ニ在リ
テ產業殷盛ナリ就中米麥、製茶、果實、薪炭等各種ノ物產豐富ニ
シテ多ク京、阪、神ノ各都市ニ移出セラル然ルニ通信機關不備ノ
爲往往商機ヲ違シ取引上不利不便尠カラス依テ該三山木村三山
木無集配郵便局ニ電信、電話ヲ架設セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當田ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別根告第二百八十六號
意見書
請願文書表第一一二七號
溫泉村ニ郵便局設置ノ請願島根縣仁多郡八川村大字大谷
八百五十六番地平民農絲原武太郞外十三名呈出(紹介議
員原夫次郞君)
右請願ノ要旨ハ島根縣仁多郡溫泉村ハ近來非常ナル發達ヲ遂ケ
交通又至便ナリ然ルニ通信ハ山谷ヲ經テ二里餘ヲ隔ツル布勢郵
便局ノ管轄ニ屬シ一日僅ニ一囘ノ集配ヲ受クルニ過キサルカ如
キ狀態ニシテ不便名狀スヘカラス依テ前記溫泉村ニ郵便局ヲ設
置セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百八十八號
意見書
請願文書表第一一五五號
八代郵便局ニ集配事務開始ノ請願山口縣熊毛郡八代村長
大中務熊呈出(紹介議員難波作之進君)
右請願ノ要旨ハ山口縣熊毛郡八代村ハ時運ノ進步ト共ニ通信事
項激增シタルニ拘ラス所管呼坂郵便局ヨリ一日一回ノ集配ヲ受
クルニ過キサルヲ以テ村民ノ不便尠カラス依テ速ニ八代郵便局
ニ集配事務ヲ開始セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百八十九號
意見書
請願文書表第一一六一號
六合村ニ郵便局設置ノ請願群馬縣吾妻郡六合村長本多佐
平呈出(紹介議員武藤金吉君)
右請願ノ要旨ハ群馬縣吾妻郡六合村ハ入山、小雨、生須、赤岩、日
影、太子ノ六大字ヨリ成リ其ノ所管郵便局ハ長野原、草津ノ雨局
ナル爲郵便物ノ遲著等アリテ住民ノ不便尠カラス依テ該村ニ郵
便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百九十號
意見書
請願支書表第一一六九號
湯口郵便局ニ集配事務開始竝志戶平ニ無集配郵便局設置ノ
請願巖手縣稗貫郡湯口村大字湯口第九地割宇渡リ三十
三番地ノ一農畠山市五郞外三十二名呈出(紹介議員大矢
馬太郞君)
右請願ノ要旨ハ嚴手縣稗貫郡湯口村大字湯口字大澤及志戶平ハ
溫泉地ニシテ浴客逐年增加シ通信ノ數寔ニ多シ然ルニ所管郵便
局ハ鉛郵便局ニシテ郵便物ノ遅著等アリ不便ヲ感スルコト甚大
ナリ依テ前記湯口郵便局ニハ集配事務ヲ開始シ志戶平ニハ無集
配郵便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百九十一號
意見書
請願文書表第一一七〇號
大原村大字市場ニ無集配郵便局設置ノ請願滋賀縣阪田郡
大原村字市場二十七番地平民農北村順三外三十五名呈
出(紹介議員中村喜平君外一名)
右請願ノ要旨ハ滋賀縣阪田郡大原村ハ產業殷盛ナルノミナラス
近來機業ノ發展實ニ著シキモノアリ然ルニ通信機關不備ノ爲其
ノ發達ヲ阻害スルコト甚シ依テ前記大原村大字市場ニ無集配郵
便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百九十一一號
意見書
請願文書表第一一八〇號
戶ケ崎郵便局ニ電信、電話事務開始ノ請願埼玉縣北葛飾
郡戶ケ崎村長内田瀧次郎外六名呈出(紹介議員神谷彌平
君外一名)
右請願ノ要旨ハ埼玉縣北葛飾郡戶ケ崎村ハ東京府ニ接續セリ而
シテ近來ハ市ノ郊外地トシテ會社諸工場等ノ新設ノ爲人口ノ增加
ヲ來シ交通亦頻繁ヲ極メツツアリ然ルニ所轄戶ケ郵便局ニハ末
夕電信、電話ノ設備ナク不便甚シ依テ速ニ該郵便局ニ電信、電話
事務ヲ開始セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百九十三號
意見書
請願文書表第一一九四號
明治村ニ集配郵便局設置ノ請願新潟縣中頸城郡明治村長
北川付次郞呈出(紹介議員武田德三郞君)
右請願ノ要旨ハ新潟縣中頸城郡明治村ハ鐵道沿線ニ在リテ交通
機關發達シ產業又殷盛ニシテ逐年郵便物ノ激增ヲ來セリ然ルニ
郵便物ハ管轄局タル末野郵便局ノ配達ヲ受ケツツアリテ通信機
關ノ不便甚大ナリ依テ地勢上最利便ナリト思惟サルル明治村驛
附近ニ集配郵便局ヲ設置セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百九十四號
意見書
請願文書表第一二一五號
綱干驛前郵便局ニ特設電話架設ノ請願兵庫縣揖保郡石海
村福地三百八十二番地圓尾龜代治外四名呈出(紹介議員
土井權大君)
右請願ノ要旨ハ兵庫縣揖保郡旭陽村ハ網干驛所在地ニシテ該地
方物產ノ集散地ナルカ故ニ商業殷盛ナリ然ルニ現在網干驛前郵
便局ハ特設電話ノ尠キ爲公衆ノ不利不便實ニ甚シク產業ノ發達
ヲ阻害スルコト大ナリ依テ該網干驛前郵便局ニ特設電話ヲ架設
セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百九十五號
意見書
請願文書表第一二七七號
田澤村ニ郵便局ヲ設置シ電信事務開始ノ請願新潟縣中魚
沼郡田澤村農樋口哲治外三十一名呈出(絡介議貞武田德
三郞君外一名)
右請願ノ要旨ハ新潟縣中魚沼郡田澤村ハ國道ニ沿ヒ近時産業著
シク發達セリ就中信濃川ヲ挾ムテ對岸各村ニ幾多電化事業施設
經營セラレ加フルニ鐵道ハ飯山、十日町間連絡ノ爲田澤村内ニ
停車場設置ノ決定ヲ見隨テ是等施設ニ件フ諸工事勃興シ商工業
ハ遂日殷振ヲ呈シツツアリテ通信機關ノ必要ヲ感スルコト切ナ
リ依テ前記田澤村ニ郵便局ヲ設置シ電信事務ヲ開始セラレタシ
ト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
特別報告第二百九十六號
意見書
請願支書表第一二一八號
津軽海峽ニ自働航送船增加ノ請願岡山市野田尻町二百五
十四番地平民水産業高草美代藏外四名呈出(紹介議員成
田榮信君外二名)
右請願ノ要旨ハ近時津輕海峽ハ運輸貨物ノ激增ニ伴ヒ物資配給
上其ノ設備充分ナラサルハ甚タ遺憾ナリ依テ自働航送船二隻以
上ヲ增加シ物資ノ配給ヲ完全ニセラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ採擇スヘキモノト議決
セリ依テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
〔龍野周一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=141
-
142・龍野周一郎
○龍野周一郞君 此機會ニ請願委員長トシテ一言希望
ヲ述ベテ置キマス、ソレハ請願ノ權利及請願人ノ意思ヲ尊
重致シマシテ、本院ニ提出ニナリマス請願ハ、全部最モ叮寧
深切ニ審査ヲ致シタイ考デアリマス、然ルニ今マデノ例ヲ調
ベテ見マスルト、閉院ノ當日マデ請願書ハ受理シテ居リマシ
タケレドモ、請願書ニ依シテ文書表ヲ作リ、印刷ヲ致シテ請
願委員會ヲ開キマス譯デアリマスカラ、餘リ會期切迫ノ時
ニ紹介御提出ニナリマシテハ、勢ヒ審查ヲスルコトガ出來マ
セヌ、故ニ願クハ諸君ガ請願聿ロヲ御紹介御提出下サイマス
ルノハ、私諸君ニ委員長トシテ希望スルノデアリマスガ、本
月二十日中ニ御提出ニナリマシタモノハ、全部叮寧深切ニ
審査ヲ致シタイ考デアリマスカラ、請願書ノ紹介ヲ御引受
ニナッテ居リマスル御方ガ在ラセラレタラバ、御忘レナク二十日
中ニ御提出アランコトヲ切ニ希望スルノデアリマス、次ニ只今
一括上程セラレマシタ所ノ此請願案件ハ、紹介議員諸君
ノ熱誠ナル說明、政府ノ說明及意見モ徵シマシテ委員會ニ
於テハ叮寧深切審査ヲ致シテ、全部採擇スベキモノナリト
決定致シタモノデアリマス、其理由ハ一々申上ゲマセヌ、例
ニ依フテ遠記錄ニ譲ッテ省略致シマスカラ、願クハ滿場一致
御可決御採擇アラムコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=142
-
143・岩崎勲
○岩崎動君 日程第五十五以下ノ請願特別報告ハ全部
之ヲ一括シテ、請願委員長ノ報告通リ採擇アランコトヲ望
ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=143
-
144・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、仍テ委
員長報告ノ通リ採擇スルコトニ決シマシタ(拍手)諮問ガア
リマス、第六部選出豫算委員友田文次郞君、常任委員辭
任ノ申出ガアリマシタ、許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「〕并議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=144
-
145・粕谷義三
○副議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマス、許可ス
ルコトニ致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補關選舉ヲ行ヒ、屆出
アランコトヲ希望致シマス、次會ノ日程ハ追テ公報ヲ以テ
御通知申上ゲマス、本日ハ之ニテ散會
午後八時二十二分散會
衆議院議事速記錄第二十五號中正誤
頁段行誤正
五九一下七規定ナル規定ノアル
五九一下八法案公安
衆議院議事速記錄第二十八號中正誤
頁段行誤正
大人もも中四一町村一市町村
六六七中三七懲戒懲役
六六八上七ソレカラ今ノソレカラ
六六八上七法律ニナリ本院ヲ通過シ
上二二考慮効カ
六六六六六六九九九中三重第一條第二條
下二七一剌日ク一刺ニ曰ク
六六九下二七二剌曰ク二刺ニ曰ク
六六九下二七三刺日ク三刺ニ曰ク
六六九下二八云々、民情云々民情
六七〇八以テ以テ上ヲ
六七〇上上
五九至ツテ上ヲハ至ツテハ
六七〇上一トスルトス
六七中二敵正義
六七〇中一公衆刑事
六七〇中四日
一ニ對セシメカラ發達シ
六七〇中二六思想的思想的ニ
六七〇中二六自由ト自由ハ
六七〇中二七於テ於テハ
六七〇中二七ナルニ
六七〇中二八自由ヲ自由ハ
〔衆議院議事速記錄第二十五號國有林野所在ノ府縣町村ニ對シ交付金下付ニ關スル
建議案八田宗吉君演說ノ參照」
農商工大正九年度納稅額比較表(福島縣農會調査)
所得額ノ近似セルモノ
國稅縣稅市稅負擔額收益ニ對スル備考
職業別收益額負擔額負擔額合計負擔率負擔率比較
負擔額
円円円円円円円
農五、八八三五〇九四〇八一、〇六二一、九八〇〇、三三六五一〇〇
商五、五六九四四六一六〇二二九八三五〇、一四九八四五
工五、五六七二八二八〇二〇九五七一〇二六三
道府縣市町村稅一覽(大正九年度豫算ヨリ)
地方稅
稅種國稅(本稅)
道府縣稅市區稅町村稅地方稅合計
円円円円円
國稅所得稅附加稅一八一、INH.一元九九、〇五二、四日、一五、五〇七、六七三一二、一〇七、六六六三六、六六七、七八〇
尉加地租附加稅一三、七二〇、六九九五二、五〇五、四六三一、八四九、三〇六二一、一一五、五九五七五、四七〇、三六四
稅營業稅附加稅四三、二七七、二九四八、四二〇、四九三八、七五一、一一四三、ロ七二、わたべ二、六四四、五三三
營業稅及附加稅1八、一二八、三七二二、一四五、四五〇三、八三三、六八九一四、一〇七、五一一
道府一二、六六三、三六五四五、四七五、九七九
雜種税及附加稅1二六、〇四七、四二五六、七六五、一八九
縣稅1三一、三二八、21ml五、八二〇、八九二一七二、九二八、一九七二一〇、〇七七、HIN
及附戶數割及附加稅
家屋稅及附加稅-五、一一三、一九三二、五二六、六八八四、七〇六、三九七七二一、三四六、四七八
加稅反割1六七七、二八〇六四八、六八一三、二八五、六九二四、六一一、六五三
別
市家屋稅1-五、六〇〇、〇一六1ユ、六〇〇、〇一六
町不動產移轉稅-1二、〇〇一、七九九1二、〇〇一、七九九
11一二二、〇〇元一二二、〇五九
村戶別割
其他ノ特別稅I1六、七六三、000一、八三〇、一九五八、五九三、八九五
稅
一四二、三四三、三一四六七、六六二、八七五二三七、六大二、六五七四四七、六六八、八四六
租稅收入合計
縣財政ニ於ケル農家ノ負擔額
年度農家ノ負擔ト見ルヘキ額農家戶數一戶當負擔額
円円円
明治二十五年八〇、五五一二五六、七三一三一四
同三十三年七七二、二八二二三〇、八六六三、〇七八
同四十三年一、〇五二、〇八六二一一、〇二一四、九八五
正九年三、六九二、五三二二〇二、八一八一八、二六一
同大三、五四八、八九二二〇二、六二一一七、五一八
十年
村財政ニ於ケル農家ノ負擔額
村歲入農家戶數村歳入一戶當
円円円
明治二十三年一、三〇六七六二一、七一三
同三十三年九、八四九七六〇一二、九五九
四十二年一三、三五七七一九一八、五七七
同大同正九年五一、四七七七二〇七一、四八五
十年五二、五二一七〇三七四、七〇九
愛知縣中流農家田畑一反步當租稅公課負擔調査(大正十年度)大野松藏氏調査
稅目田畑揺要
円円
租二·〇四〇一·〇七〇
縣地地租割ノ外戶數割ヲ一戶平均持ノ人ノ反別ニ割
稅三·七一〇二·三五三當テタルモノ
稅六·七九二六·三八四右ニ同シ
得一·五〇〇一·七〇〇二十町歩ヲ標準トシテ調査ニヨリ割當タルモノ
水農區所村·四〇〇·四〇〇反別割
費費費稅
利會·二〇〇·二〇〇右ニ同シ
·五四三1木津笈瀨川
地主會費·六〇〇·六〇〇奬勵米ヲ含ム
尙武會費·一二九·一二九
計一五·九一四一二·八三六
備考
本調査農家ノ所有地ハ二十町步(田十三町步、畑七町步)ナリ
ニ、同農家ノ調査ニヨレハ田畑一反步ニ對スル明治二十三年ト大正十年ニ於ケル租稅其他/
公課ノ比較左ノ如シ
明治二十三年度大正十年度
円円
一·五九〇一五·九一四
畑田
八一〇一二·八三六
東京市內ニ於ケル商業者ノ租稅公課負擔調査(大正十年度)
稅目流通資木金額約二千圓同上五千圓同上一万圓
円円円
得稅一六·〇〇〇五九·〇〇〇二〇三·〇〇〇
同所
附加三·二〇〇一一·八〇〇四〇·六〇〇
營業稅稅稅四〇·〇〇〇八〇〇〇〇一六〇·〇〇〇
同附加三二·〇〇〇六四·〇〇〇一二八·〇〇〇
自轉車九·〇〇〇一八·〇〇〇二七·〇〇〇
荷車稅稅稅六·〇〇〇一二·〇〇〇一八·〇〇〇
家屋1五·〇〇〇七·〇〇〇
同附加稅1二二·五〇〇三一·五〇〇
計一〇六·二〇〇二七二·三〇〇六一五·一〇〇
備考
本調査ハ東京市芝區內白米商業者ニツキ調査シタル實例ナリ
二、流通資木約二千圓ノモノニアリテハ一箇年ノ賣上高約二万圓ニシテ純益金約千四百圓
三、流通資本約五千圓ノモノニアリテハ一箇年ノ賣上高約四万圓ニシテ純益金約二千七百圓
四流通資本約一万圓ノモノニアリテハ一箇年賣上高約八万圓ニシテ純益金約五千圓ナリ
徴兵檢査ニ於ケル體格等位郡市別比較一覽表
受檢人員百分比
年次體格等位
郡市計郡市計
甲種一五七、二八一一四、五一〇一七一、七九一三五·八六二七·一五三口·九二
第一乙種六五、九四六七、六八二七三、六二八一七●〇四一四·三六一四·九六
第二乙種八二、〇九五一〇、六八四九二、七七九一八·七二一九·九九一八·八六
大正六年丙種一〇四、四六一一六、ノ八二一二一、一四三二三·八二三一·二〇二四·六一
丁二四、九一七三、二九八二八、二一五五六六六·一七五七七
戊種種
三、八六四大〇七四、四七一〇●八八一·一三〇·九一
計四三八、天行五三、四六三四九二、〇二七一〇〇·〇〇一〇〇·〇〇一〇〇·〇〇
種一五二、八六〇一六、一二八一六八、九八八三三·九五二七·八三二三·二六
丙第第甲一種七〇、九九七、一一九七七、四一四一五·六一一二·二八一五·二三
二乙乙
八九、四一六一二、六〇七一〇二C(N一九·八六二一·七六二〇·〇八
大正七年種種種種一〇九、三〇一一八、三二五一二七、六こ六二四·八三一·六二二五·一二
丁二四、三五三三、一四六二七、四九九五·四一五·四三五·四一
戊三、九七五六二四々、ち九九〇八八一·〇八〇·九〇
計四五〇、二〇〇五七、九四九五〇八、一八九一〇〇-〇〇一〇〇·〇〇一〇〇·〇〇
甲種一四六、八五九一六、八八四一六三、七四三三三〇七五二九·一八三三·二四
第一乙種六五、三六八七、四七四七二、八四二一五·〇一一二·九七一四ゝ七九
第二乙種一〇一、九八七戸、一七一一一六、一五八二三·四三二四·七五二三·五八
大正八年丙種九四、七五五一五、三五〇一〇·〇五二一·八二二六·五六三二三五
丁種二二、二四二三、一一〇二五、三五二五·一一五·四〇五シ一五
戊種三、八〇六五二四、四セ一〇·八七一·一四〇·九〇
計四三五、〇一一五七、六四〇四九二、六五一一〇〇·〇〇一〇〇·〇〇一〇〇·〇〇
備考大正九年以後ハ徴兵事務報告樣式改正ノ結果調查スルコトヲ得ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004513242X03219220318&spkNum=145
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