1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十二年二月十三日(火曜日)
午前十時十七分開議
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議事日程 第十一號 大正十二年二月十三日
午前十時開議
第一 明治四十年法律第二十一號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 醫師法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 市町村義務教育費國庫負擔法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 所得税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 營業税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 石油消費税法廢止法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 賣藥税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第八 印紙税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第九 所得税法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ報〓ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
去ル六日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ即日裁可ヲ奏請シ又可決
ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
大正十一年度歲入歲出總豫算追加案(第一號)
同日豫算委員會ニ於テ決定シタル分科及分科擔當委員ノ氏名左ノ如シ
第一分科(歲入、大藏省、朝鮮總督府、(原油/加油)
府關東廳樺太廳、南洋廳ヲ除ク
子爵靑木信光君子爵八條隆正君子爵渡邊千冬君
男爵阪谷芳郞君男爵東郷安君仁尾惟茂君
若槻禮次郞君橋本圭三郞君菅原通敬君
和田豊治君橋本辰二郞君
兼務
若林資藏君二階堂三郞左衞門君
第二分科(外務省
四條畷,
公爵二條厚基君侯爵細川護立君伯爵寺島誠一郞君
男爵小澤武雄君子爵板倉勝憲君男爵中川良長君
男爵矢吹省三君藤田四郞君江木翼君
兼務
伯爵副島道正君子爵伊東祐弘君犬塚勝太郞君
和田彥次郞君男爵坂本俊篤君上山滿之進君
男爵佐竹義準君
第三分科Twing.)
candang
伯爵松木宗隆君伯爵林博太郞君伯爵松平賴壽君
子爵野村益三君北里柴三郞君木場貞長君
江木千之君男爵目賀田種太郞君岡田良平君
男爵南岩倉具威君男爵千秋季隆君阪本 多之助君
兼務
公爵二條厚基君侯爵細川護立君男爵木越安綱君
子爵大河內正敏君湯淺倉平君星島謹一郞君
第四分科(總理研究者)-
伯爵副島道正君男爵木越安綱君子爵樋口誠康君
男爵村上敬次郞君大島健一君男爵坂本俊篤君
石渡敏一君二階堂三郞左衛門君
兼務
男爵目賀田種太郞君男爵南岩倉具威君江木翼君
鎌田勝太郞君
第五分科(遞信義會會))
子爵酒井忠亮君子爵榎本武憲君犬塚勝太郞君
小松謙次郞君上山滿之進君若林賚藏君
男爵小畑大太郞君高橋琢也君湯淺倉平君
矢口長右衛門君藤本閑作君橫山章君
兼務
木場貞長君阪本彰之助君今井五介君
橋本辰二郞君
(鐵道省、朝鮮總督府、臺灣總督
第六分科府關東廳樺太廳、南洋廳
子爵牧野忠篤君子爵伊東祐弘君子爵大河內正敏君
和田彥次郞君男爵佐竹義準君男爵藤堂高成君
木內重四郞君山之內一次君星島謹一郞君
今井五介君鎌田勝太郞君
兼務
子爵樋口誠康君子爵野村益三君子爵板倉勝憲君
男爵千秋季隆君男爵矢吹省三君藤田四郞君
菅原通敬君矢口長右衛門君
去ル七日請願委員副委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表第三回報告書
去ル八日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
明治四十年法律第二十一號中改正法律案
去ル十日豫算委員長ヨリ分科擔當委員ノ兼務ヲ左ノ如ク決定セル旨ノ報告
書ヲ提出セリ
第一分科擔當委員子爵渡邊千冬君
第三分科兼務
同日政府ヨリ左ノ法律案ヲ提出セリ
醫師法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
市町村義務〓育費國庫負擔法改正法律案
所得稅法中改正法律案
營業稅法中改正法律案
石油消費稅法廢止法律案
賣藥稅法中改正法律案
印紙稅法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ法律案ヲ提出セリ
所得稅法中改正法律案
昨十二日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
癈兵院法中改正法律案特別委員會
委員長子爵〓城定政君
副委員長櫻井伊兵衛君
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
大學特別會計法中改正法律案
大正八年法律第十二號中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 去ル七日、議員候爵伊達宗陳君薨去セラレタルニ
依リ十日弔辭ヲ贈リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、山中男爵病氣ニ付
キ癈兵院法中改正法律案特別委員辭任ノ旨申出ラレマシタ、之ヲ許可イタス
コトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス、其補關トシテ佐竹男爵ヲ
指名イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ請暇ノ件ニ付キ御諮リヲ致シマス、柳澤伯爵
病氣ニ付キ十六日間、山中男爵病氣ニ付キ二十一日間、神野勝之助君病氣ニ付
キ十六日間、磯部四郞君病氣ニ付キ二十一日間、津島源右衛門君病氣ニ付キ二
十日間ノ請暇デゴザイマス、何レモ許可ヲ致スコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ議事日程ニ移リマス、議事日程第一、明治
四十年法律第二十一號中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、本
日ハ通牒文ノ朗讀ハ省略イタシタク考ヘマス、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス
〔左ノ通牒文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之
ニ做フ〕
明治四十年法律第二十一號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十二年二月八日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵徳川家達殿
明治四十年法律第二十一號中改正法律案
明治四十年法律第二十一號中左ノ通改正ス
第一條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
六漁業稅
附則
本法ハ大正十二年分ヨリ之ヲ適用ス
參照
○樺太ニ於ケル租稅ニ關スル法律(調船四十年法)律第二十一號
第一條樺太ニ於テハ左ニ揭クル租稅ヲ賦課徵收ス
一市街宅地稅
二所得稅
三營業稅
四酒造稅
五醬油稅
前項租稅ノ種類及課率ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條租稅ノ徵收及滯納處分ニ關シテハ國稅徵收法ヲ準用ス
第三條本法ニ規定スルモノク外租稅ノ賦課徵收其ノ他必要ナル事項ニ關
スル規程ハ樺太廳長官之ヲ定ム
附則
木法ハ明治四十年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員永井金次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=8
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009・永井金次郎
○政府委員(永井金次郞君) 唯今議題ニナリマシタ明治四十年法律第二十一
號中改正案ノ說明ヲ申上ゲマス、本案ハ極メテ簡單ナル問題デゴザイマシ
テ、即チ樺太ニ於キマスル租稅ノ項目中ニ漁業稅ノ一項ヲ追加セムトスルノ
デアリマス、此問題ハ全然新規ノデハゴザイマセ·ヌデ、從來ヨリ漁業料ト云
フモノデ徵收ヲシテ居ッタノデアリマス、ソレヲ租稅ト致シマスト當業者
モ納稅資格ニ編入サレマスガ故ニ、各種ノ點ニ利益、便益ガゴザイマスノデ
アリマス、又政府ト致シマシテモ收入ノ確實ヲ圖ルコトガ出來マスルノ
デ、要シマスルニ當業者モ便利デアリ、政府モ便利デアリマスルノデ、本案ノ
如ク改正イタシタイト存ズル次第デアリマス、尙ホ內容ニ付キマシテハ漁業
料ト大同小異デゴザイマス、唯此機會ニ於キマシテ負擔ノ輕減ヲ若干圖リタ
イト考ヘルノデゴザイマス、大體右樣ノ次第デゴザイマスルノデ、何卒御審
議ノ上御協賛ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第二、醫師法中改正法律案、政府提出、第一
讀會
醫師法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
大正十二年二月十日
內閣總理大臣男爵加藤友三郞
內務大臣水野鍊太郞
醫師法中改正法律案
醫師法中左ノ通改正ス
第九條ノ五道府縣醫師會ハ日本醫師會ヲ設立スルコトヲ得
日本醫師會ハ內地ヲ區域トス
道府縣醫師會ハ日本醫師會ノ會員トス
第八條第三項及前二條ノ規定ハ日本醫師會ニ付之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅合ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣水野鍊太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=10
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011・水野錬太郎
○國務大臣(水野鍊太郞君) 本案提出ノ理由ヲ簡單ニ說明イタシマス、現行
醫師法ニ於キマシテハ地方醫師會即チ道府縣醫師會ハアリマスルガ、之ヲ統
一スル所ノ醫師會ハナイノデアリマス、地方醫師會ノ事業ヲ統一シマスルト
同時ニ、我國全體トシテノ醫事ノ改良、衞生ノ進步ヲ圖ルベキ機關ト致シマ
シテ、全國的醫師會ヲ設立セシムルト云フコトハ、醫師會ノ系統ヲ完成イタ
シマシテ其職能ヲ發揮セシムル上ニ於テ、頗ル必要デアルト云フコトヲ認メ
ルノデアリマス、是ガ本案ヲ提出スル所以デアリマス、而シテ本案ノ要旨
ハ、道府縣醫師會即チ地方醫師會ノ全部ヲ會員トスル日本醫師會ヲ設立スル
ト云フコトニナリマシテ、法人ノ資格ヲ認メマシテ、醫事衞生ノ改良發達ヲ
圖ラムトスルニアルノデアリマス、大體ノ趣旨ハ斯ノ通リデアリマス、ドウ
ゾ御審査ノ上御協賛アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=11
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012・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第三、市町村義務〓育費國庫負擔法改正法律
案に、政府提出、衆議院送付、第一讀會
市町村義務〓育費國庫負擔法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十二年二月十日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
市町村義務〓育費國庫負擔法改正法律案
市町村義務〓育費國庫負擔法
第一條市町村立尋常小學校〓員ノ俸給ニ要スル經費ノ一部ハ國庫之ヲ負
擔ス
第二條前條ノ規定ニ依リ國庫ノ負擔トシテ支出スヘキ金額ハ每年度四千
萬圓ヲ下ラサルモノトス
第三條國庫支出金ハ第五條ノ交付金額ヲ除キ其ノ三分ノ二ハ市町村ニ、
三分ノ一ハ第四條ノ交付金額ヲ除キ町村ニ、各其ノ半額ヲ前年六月一日
ニ於ケル市町村立尋常小學校ノ〓員數ニ、他ノ半額ヲ前年六月一日ニ於
ケル市町村ノ就學兒童數ニ比例シテ交付ス
第四條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ從ヒ資力其ノ他ノ事情ニ依リ必要アリト
認メタル市ニ對シ前條ノ規定ニ依リ當該市ノ受クル金額ノ二分ノ一ヲ超
エサル範圍內ニ於テ特ニ交付金額ヲ增加スルコトヲ得
前項ノ增加交付金ノ總額ハ前條ノ規定ニ依リ市ニ交付スル金額ノ十五分
ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス
第五條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ從ヒ資力其ノ他ノ事情ニ依リ必要アリト
認メタル町村ニ對シ國庫支出金ノ十分ノ一ヲ超エサル範圍內ニ於テ特ニ
交付金額ヲ增加スルコトヲ得
第六條本法ニ定ムル市町村立尋常小學校〓員中ニ算入スヘキ代用〓員ノ
範圍ハ文部大臣之ヲ定ム
第七條本法ノ適用ニ付テハ市町村組合ハ之ヲ市、町村組合及町村制ヲ施
行セサル地域ニ於ケル町村ニ準スヘキ公共〓體、其ノ組合又ハ小學校設
置區域ハ之ヲ町村ト看做ス
本法ノ適用ニ付テハ市町村立尋常高等小學校ニ於テ尋常小學校ノ〓科ヲ
授クヘキ部分ハ之ヲ市町村立尋常小學校ト看做ス
附則
本法ハ大正十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣鎌田榮吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=12
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013・鎌田榮吉
○國務大臣(鎌田榮吉君) 諸君、市町村義務〓育費國庫負擔法改正法律案ヲ
提出イタシマス、御承知ノ如ク、從來小學校〓員ノ俸給ニ充テマスル爲ニ、
每年一千萬圓ヲ國庫カラ支出イタシテ居ッタノデアリマス、爾來此〓育費ハ
益〓增加イタシマシテ、又市町村ノ經濟ノ狀態等ニ鑑ミマシテ此儘ニ差措クコ
トガ出來マセヌ故ニ、更ニ三千萬圓ノ增加ヲ致シマシテ、都合四千萬圓ヲ支
出スルト云フコトニ致シマシタ、從ヒマシテ此ノ國庫負擔金ノ分配法ト云フ
モノニ付キマシテハ數年間ノ實績ニ照シ、又町村ノ狀態ニ鑑ミマシタ譯デ、相
當之ヲ改正スル必要ヲ認メマシタカラ、其分配法ニ付テモ改正ヲ施スコトニ
致シマシテ、玆ニ此改正案ヲ提出イタシタ譯デアリマスカラ、ドウゾ愼重御審
議アラセラレマシテ、御協賛アラムコトヲ希望イタシマス次第デアリマス
〔岡田良平君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 岡田君ハ何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=14
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015・岡田良平
○岡田良平君 通〓ガゴザイマセヌケレバ、チヨット質問イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 通〓ガゴザイマスカラ、通〓ガ濟ミマシテカラ顧
ヒマス、阪本釤之助君
〔阪本釤之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=16
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017・阪本さん之助
○阪本彰之助君 唯今議題ニナリマシタ市町村義務〓育費國庫負擔法改正案
ニ付キマシテ、唯〓文部大臣ヨリ簡單ナル御說明ガゴザリマシタガ、之ニ付
テ暫ク諸君ノ御〓聽ヲ煩シマシテ、質問ヲ致シタイト存ジマス、前內閣ハ高等
〓育機關ノ擴張ト申スコトノミ沒頭セラレマシテ、國家ノ存立上最モ重要ナ
ル國民〓育ノ施設改善ト云フコトニハ一向顧慮セラレナカタノデアリマス、
然ルニ現內閣ハ是ト撰ヲ異ニシマシテ、劈頭市町村義務〓育費國庫負擔法ノ
改正ヲ發案セラレテ、而カモ金額三千萬圓ヲ增サムトセラルルニ至リマシタ
ノハ、我〓ノ喜ブ所デアリマスル、此即チ義務〓育費國庫負擔ト申スコトハ
前々內閣、即チ寺內內閣ノ時ニ初メテ發案セラレマシタノガ發端デアルノデ
アリマス、當時貴衆兩院トモニ國庫ニ於テ義務〓育費ヲ分擔スルト云フコト
ノキ義ハ皆異議ハナカッタノデアリマスル、所ガ僅カ今日カラ申シマスレバ、
一千萬圓ノ金デアリマスルガ、衆議院ハ之ヲ以テ市町村費ノ節約ニ資シタイ
ト云フ希望ヲ持ッテ居ッタノデアリマス、我ガ貴族院ハ之ヲ以テ全ク義務〓育
改善ノ爲メ、言ヒ換ヘレバ小學〓員ノ俸給ヲ豊富ニスルト云フコトニ使ヒタ
イト云フ議論ヲ持チマシテ、此間少カラズ議論ニ間隔ヲ生ジマシタ、時ノ文
部大臣デアッタ所ノ岡田君ハ頗ル苦心ヲセラレタコトデアリマシテ、之ヲ今
日ヨリ追懷イタシマスレバ、誠ニ御氣ノ毒ニ堪ヘヌヤウナコトニ存ジマスル
ノデアリマス、之ニ比ベテ見マスレバ時代ノ推移トハ申シナガラ、三千萬圓
ト云フ巨額ノ增加ヲ提案セラレマシテ、衆議院ハ易々ト之ヲ通過イタシ、貴族
院モ亦蓋シ大體ニ於テ御異議ハナカリサウニモ思ハレルノデアリマスル現
文部大臣鎌田君ハ實ニ仕合セナ御方デアルト存ジマスルノデアリマス、ソレ
ニ付キマシテ、此本案ノ條文ニ付キマシテ、一應御尋ヲ致シテ見タイノデアリ
マスルガ、此度ノ三千萬圓及ビ先キノ一千萬圓ヲ合セマシテ即チ四千萬圓、此
四千萬圓ノ金ハ讀ンデ字ノ如ク、義務〓育ノ費用ニ充テラレルモノタルコト
ハ疑ヒナイト存ジマスルガ、全クサウデアルカ、之ヲ詳シク申シマスレバ、
義務〓育ノ改善即チ小學〓員ノ奬勵慰安ト云フコトニ向ッテ全部御使用ナサ
ル御積リデアリマスルカ、又ハ市町村費ノ節約緩和ト云フヤウナコトニ使用
セラレルト云フヤウナ御考ガ含ンデ居ルノデアリマスルカ、又次ニ此度第四
條ト云フノガ、加ハリマシテ從前ナカリシ所ノ市ニモ幾分ノ補助ヲ與ヘルト
云フ、補助ト申スト語弊ガアルカモ知レマセヌガ、市ノ〓育費モ分擔シヤウ
ト云フコトニナリマシタノデアリマスルガ、是ハ如何ナル理由ニ基クノデア
リマスルカ、先ヅ此三點ニ付テ伺ヒタイノデアリマス、次ニ此四千萬圓ハ此
法律ノ改正セラレル限リハ四千萬圓ヲ下ラナイ金額ヲ支出サレルト云フコト
ハ明カデアリマスルガ、尙ホ追〓進ンデハ六千萬圓トナリ八千萬圓トナリ、
遂ニハ一億圓以上ニモ上ボセラレマシテ、小學〓育ノ俸給ハ全部國庫ガ負擔
スルト云フ御方針ニ出テ居ルノデアリマスルカ、定メテ此法案ヲ御出シニ
ナリマスルニ付テハ、其邊モ御考慮ニナッテ居リマスルト存ジマスルガ故ニ、
現內閣ハ是等ノ方針ニ向ッテハ如何ナル御考ヲ有セラレルカト云フコトヲ此
際伺ッテ置キタイノデアリマス、尙ホ此機會ニ於キマシテ、唯今總理大臣ハ
御出席ハゴザイマセヌガ、總理大臣及ビ文部大臣ニ向ッテ御尋ヲ致シタイ重
大ナル問題ガアルノデアリマス、抑〓我國建國以來保有シ來リマシタ堅實ナ
ル國民精神、之ニ加フルニ德川幕府三百年間涵養シタル所ノ儒〓主義、忠信
孝悌ノ大道ト申スモノハ漸次頽廢ヲ致シマシテ、特ニ先年ノ歐洲大戰ノ後
ハ、其結果トシテ齋シマシタル所ノ奢侈享樂ノ風潮ト共ニ、全クトマデハ申
シマセヌガ大部分掃蕩シ去ラレマシテ、今日ハ御出席ガナイカモ知レマセヌ
ガ、德富猪一郞君ノ口吻ヲ借リテ申シマスレバ、思想ノ破產ヲ來タシタノデ
アリマス、尙ホ道德ノ不渡手形ガ續出スルト云フ有樣デアルノデアリマス、
現內閣諸公ガ若シ銀行重役デアラッシヤッタナラバ、此不渡手形ヲ如何ニ御始
末ヲナサルデアリマセウカ、又此破產銀行ノ整理ハ如何ニナサルノデアリマ
セウ、殊ニ專務取締役タル文部大臣ハ此點ニ付テ如何ナル御考ガアラッシヤ
ルノデアリマセウカ、誠ニ大切ナコトト存ジマスルガ故ニ伺ノテ置キタイ
ノデアリマス、斯ク申シマシタナラバ、當局ハ必ズ現ニ義務〓育費ノ國庫負
擔ヲ增加シテ居ルデハナイカ、增加セムトシテ居ルデハナイカ、又高等師範
學校モ昇格ヲ致シテ文理科大學ニスル、是等皆國民〓育ノ進歩〓育ノ進步
改善ヲ圖ル精神ニ過ギヌノデアル、斯ウ先ヅ御答ヘニナルカモ知レマセヌ
ガ、私考ヘマスルノニ思想ノ破產、道德ノ不渡手形ハ金ダケデ救フコトハ出來
ナイ、殊ニ高等師範學校ノ文理科大學ト改名スルガ如キ、寧ロ國民〓育ノ退
步デアルト迄、私共考ヘルノデアル、決シテ是等ノ施設ヲ以テ道徳ノ頽廢、
思想ノ惡化ヲ救フニハ足ラヌモノデアルト考ヘルノデアリマス、尙ホ斯ノ如
キ問題ガ起リマスルト直グ義務〓育年限ノ延長ト云フ聲ガ出テ來ルノデアリ
やっゝサウシテ義務〓育ノ年限ヲ延長シナケレバ〓育ハ徹底シナイト云フコ
トガ、能ク人ノ口ニ上ボルノデアリマスルガ、是等ノ年限ダケ延長シタッテ何
ニモナラヌト私ハ思フ、義務〓育ヲ二箇年延長イタシタトシマスレバ、尙ホ〓
日ノ高等小學ガ無クナッテ、是ガ普通ノ義務〓育年限ニナルノデ又中學ノ方
デ申シマスレバ、中學ノ二學年迄ガ小學ノ範圍ニ這入ルノデアリマス、而ジ
テ今日ノ〓育ノ狀況ヲ見マスルノニ、高等小學ノ卒業生ハ現ニ澤山居ルノデ
アリマス、又中學ノ二學年ノ生徒······修業生、是等ガ其儘社會ヘ出テドンナ
用ヲ爲スデアリマセウカ、甚ダ申シタクナイコトデアリマスルガ、尋常小學
ハ勿論ノコト高等小學二年ヲ經マシテモ、ソレガ社會ヘ出マシテドレダケ實
用ニ適スルカト云フコト、又中學ノ二學年······二學年ドコロデハナイ、中學
ノ卒業生ハ世ノ中ニ出デドレ程ノ働キヲ爲シ得ルカト云フコトハ、覺束ナク
感ズルノデアリマス、即チ此有樣ヲ其儘ニ唯小學校ノ年限ガ延長シテ多少ノ
學科ガ增加イタシ、授業時間ガ延ビタトシテモ、大シタ效果ガナイデハアル
マイカ知ラヌト云フコトヲ私ハ寧ロ信ゼムトスル者デアル、昨年十月三十一
日ニ文部省ガ學制頒布五十年記念祝典ヲ擧ゲラレマシテ、其際ニハ畏クモ
陛下ヨリ勅語ヲ賜ハリマシタノデゴザイマス、其御言葉末段ニ斯樣ナコトガ
アリマス
朕ガ紹述ノ意ヲ體シテ遺訓ヲ遵奉シ、常ニ中外ノ時勢ヲ察シテ心ヲ啓發成
就ニ用ヒ益〓力ヲ〓學ノ振興ニ盡シテ以テ文運ノ昌明ヲ圖ラムコトヲ望ム
ト仰セラレテ居ルノデアリマス、陛下ニ於カセラレマシテハ確ニ中外ノ時
ノ勢、即チ時勢ニ付テハ聖慮ヲ煩ハシ給ヒ、又知能ヲ啓發シ德器ヲ成就セヨト
云フコトハ、〓育勅語ノ御趣意デアリマスルガ、是ガ現代ノ今日ニ於テ果シテ
徹底シテ居ルヤ否ヤト云フコトヲ御軫念アラセラレルコトノ深ク且大ナルモ
ノガアルト云フコトヲ拜察イタシマシテ、我〓ハ恐懼措ク能ハザル所デアリ
やって又總理大臣ノ祝辭中ニ「此祝典ハ過去半世紀ノ囘顧ニ止マラズ更ニ將
來ニ向ッテ啓運ノ發展ヲ期スルノ一階段タラムコトヲ翹望シテ已マザルナ
リ」、斯ウ言ッテ居ラレマス、又文部大臣ノ祝辭中ニハ「本日御下賜ノ勅語ニモ
宣セラレタ如ク文運ノ昌明ヲ圖リ今後一層〓育ノ制度實質ト相竝ビテ其進步
ヲ遂ゲネバナリマセヌ」、例ノ國語體デ仰シヤッテ居リマス、終リニ於テ更ニ
其末文ノ所ニ「茲ニ五十年ヲ祝スルト共ニ本日ヲ以テ次ノ五十年ニ於ケル發
達ノ出發點タラシメ此祝典ヲ意義アラシメタイト存ジマス」ト結ンデ居ラレ
ルノデアル、是ニ依テ見マスルト、總理大臣ニ於テモ五十年祝典ガ今後奎運
發展ノ一階段デアルト云フコトヲ認メラレテ居ルノデアル、現狀ヲ以テ安ン
ジテ居ラレズ、是ハ一ツノ階段ヲ是カラ昇ルノデアルト是ガ認メラレテ居
ル、又文部大臣ニ於テモ〓育ノ制度ト實質トハ竝ビ行ハレネバナラヌ、ソレ
ニ過去五十年ヲ祝スルト共ニ次ノ五十年ニ於ケル發達ノ出發點タラシメ、此
祝典ヲ意義アルモノニシタイト云フコトノ御抱負御經綸ノアルト云フコトヲ
窺知スルコトガ出來マシテ、稍〓人意ヲ强ウスルモノガアッタノデアリマス、
之ヲ事實ニ現ハサルヽ上ニ於テハ、總理大臣及ビ文部大臣ハ如何ナル旅裝ヲ
整ヘテ此旅行ノ門出ヲ爲サルノデアリマスカ、未ダ今日マデ鞄一ツ持出サ
レタ樣子モ見ルコトガ出來マセヌ、甚ダ心細ク存ジマスルノデアリマス、今
少シク詳シク申シマスレバ、健全ナル思想ノ復興ハ······復シ興ル、健全ナル
思想ノ復興ハ如何ニシテ得ベキカ、道德ノ頽廢ハ如何ニシテ之ヲ救ヒ、又其根
本義ヲ如何ナル途ニ求ムベキカ、又〓育ノ實質ヲ如何ニ改善シテ社會ノ實用
ニ伴ハシムベキカト申スノデアリマス、先日總理ハ此席ニ於テ施政ノ方針ヲ
御演說ニナリマシタ中ニハ、是等ノ點ニ付テハ何等承ハルコトガ出來ナ
カッタノハ、甚ダ遺憾トスル所デアリマスルガ、學制頒布五十年記念式ト云
フ意義アル場所ニ於テ、而モ攝政宮殿下ノ御前ニ於テ、勅語ニ奉答スル意味
ヲ以テ兩大臣ノ闡明セラレタ所ハ斯ノ如シトスレバ、必ズヤ確乎タル抱負經
論ノ存セラレテ居ルノデアラウト信ズルノデアリマス、カルガ故ニ何卒此席
ニ於テ兩大臣ヨリ明ニ御答アラムコトヲ切望シテ已ミマセヌ、折惡シク總理
大臣ハ御席ニ御出デガゴザイマセヌガ爲ニ、本員ノ演說ヲ御聽キニナルコト
ガ出來マセヌノハ遺憾ニ存ジマスルガ、是ハ宜シク文部大臣ニ御傳ヘヲ願ヒ
マシテ、相當ノ機會ニ於テ總理大臣ガ一國ノ大政ヲ變理セラルヽ上ニ於テ、思
想ノ惡化道德ノ頽廢ヲ、ドウシテ御覽ニナッテ居ルカト云フコトニ付テ十分
ナル御考ヲ承リタイト存ジマス、文部大臣ハ御在席デアリマスルカラ、唯今
マデ本員ノ述べ來タッタ所ニ付テ成ベク詳細ナル御抱負經論ヲ承リタイト存
ジマスル
〔國務大臣鎌田榮吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=17
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018・鎌田榮吉
○國務大臣(鎌田榮吉君) 阪本君ノ御質問ニ御答ヲ致シマス、總理大臣へ御
質問モゴザイマシタガ、唯今ノ御言葉ノ如ク總理大臣ニハ私ヨリ傳ヘルコト
ニ致シマス、文部ニ關スルダケ御答イタシマス、第一條ノ點ニ付キマシテ、此
金額ハ如何ニ之ヲ使用スルカト云フ此點ニ付テ御答ヲ致シマス、是ハデス、從
來ノ衆議院其他ノ建議モゴザイマシテ、〓育ノ爲、〓育改善ノ爲、又市町村經
濟ノ救濟ノ爲ト云フ、二ツノ目的ヲ以テ是ガ建議サレテ居ルノデアリマス、依
テ此第一條ハ町村尋常小學校〓員ノ俸給ニ要スル經費、其一部ヲ國庫之ヲ負
擔ス、斯ウ云フコトニナッテ居リマス、主ニ是ハ〓員ノ俸給ニ向ッテ支辨スル、
即チ國庫ガ其一部ヲ分擔スルコトニナッテ居リマス、其結果町村ノ經濟ヲ緩
和スルト云フコトト、ソレカラ〓育ノ改善向上ヲ圖ルト云フコトガ、是ガ結
付ケラレテ居ル譯ノモノデ、要スルニ〓育ノ改善向上ト云フコトニ是ガ用ヒ
ラレルコトニナル、衆議院ニ於キマシテモ其趣意ヲ以テ決議ニナッテ居リマ
ス、併ナガラ是ハドウシテモ切リ離スト云フコトハ出來ナイモノデアル、
〓員俸給ニ向ッテ一部ヲ國庫ガ分擔スレバ、町村ハソレダケ經濟ニ於テ緩和
サレルト云フコトハ無論ノ話デアリマスカラ、即チ町村經濟ノ緩和ト〓育ノ
向上改善ト云フ、此二ツノ目的ガ一ツノ國庫負擔法ニ依ッテ達セラレル譯デア
ル、又此ノ國庫金ノ如何ナル效用ヲナスカト云フコトハ、町村ノ狀態ニ依ッテ
違ッテ參ル、例ヘバ俸給ガ十分ニ拂ヘナイト云フ所ナラバ、此ノ國庫金ノ增
額サレタガ爲ニ、ソレヲ十分ニ拂フコトガ出來ルヤウニナリ、又從來代用〓員
ヲ使ッテ居リマシテ正〓員ヲ使フコトガ出來ナイト云フヤウナル資力ノ弱イ
所デハ、努メテ之ヲ正〓員ニ取換ヘルト云フヤウナコトモ此增額ニ依ッテ出
來ルノデアリマス、併ナガラ國庫金ガ此〓員俸給ノ爲ニ非常ニ困窮ヲ覺エテ
居ルガ、併ナガラ拂フモノハ拂ハナクチヤナラヌト云フ所ニ其金ガ參レバ
ソレガ非常ナ重味ヲ輕減ヲスル、負擔ガ輕クナル譯デアリマスカラ、〓育改
善ノ目的ヲ逹シツヽ町村ガ大ニ經濟サシテ緩和サレルト云フコトニナル譯
デ、併ナガラ衆議院ニ於キマシテモ主トシテ是ハ〓育ノ改善ト云フコトニ用
ヒラレルト云フコトノ精神ヲ以テ決議ニナッテ居リマス次第デ、當局ニ於キマ
シテモ矢張リ其意志ヲ以テ之ヲ實行シテヤル積リデアリマス、第四條ヲ設ケ
マシテ或市ニモ此增額ヲスルト云フコトハ、是ハ丁度市ト申シマシテモ大都
市ト小都市ト、市トナッテ居ルモノノ中ニモ、資力ノ餘リ强クナイモノハ
丁度市町村ニ準ズベキモノガアリマス、是ハ人口三萬以上ノ町村ニ比シマシ
テ其資力ガ餘リ變ラナイ、寧ロ劣ル所ガアル、是等ノモノヲ市ノ方ノ取扱ノ
中ニノミ入レテ仕舞ッタノデハ餘程窮迫ヲ覺エマスカラ、斯ノ如キ資力ノ
弱イ方ノ市ニ向ッテ其幾ラカノ增額ヲ致スト云フコトガ必要デアリマセウ、
條文ニ示スガ如キ方法ヲ以テ、其普通ノ市町村トシテ受ケタ所ノ二分ノ一ヲ
越エザル範圍ニ於テ增額ヲスルト云フコトデ、早ク申シテ見マスルト云フ
ト、町村ノ中デ資力ノ弱イモノニ向ッテ特別增額スルガ如ク、市ノ內ノ資力ノ
弱イモノニ向ッテハ矢張リ五割以下ノ增額ヲ致シテ居ル、斯ウ云フ趣意ニナッ
テ居リマス、此法案ニ對シテハ御質問ハ二箇條デアッタト思ヒマス、ソレカラ
其次ニハ我國固有ノ道德ガ段々頽廢ヲ致シ思想ガ益〓惡化スル所ノ狀態デア
ル、恰モ之ヲ財界ニ喩ヘテ申セバ即チ破綻ニ赴イテ居ル、斯ウ云フ御說デアリ
マス、此點ニ付テハ人々ニ依ッテ之ヲ破綻ト見ル人モ有リ、又ソレ程ニ見ナイ
人モアリマセウ、併ナガラ兎ニ角思想ノ動搖シテ憂フベキ狀態ニアルト云フ
コトハ是ハ認メナケレバナラヌ、從ッテ先ヅ此德育道徳ヲシテ益〓向上セシム
ル、假令道德ノ類廢ガドレ程ノ程度ニアルニ致シマシテモ、道德ノ向上ヲ圖
ルト云フコトハ〓育上第一義トシテ大切ナコトデアリマスカラ、之ニ向ッテ
ハ當局ハ無論ノコト、國民相協力シテ其點ニ向ッテハ、大ニ努力シナケレバ
ナラヌ、如何ナル方法ニ於テ之ヲ致スカト申セバ、申ス迄モナク〓育勅語ノ
御趣旨ヲ益〓發揚致スト云フコトハ無論ノコトデアリマスケレドモ、當局ト
致シマシテハ色〓ノ其施設ヲ致シテ居リマス點デ申シマスト云フト、先ヅ第
一、國民全體ノ思想ヲ堅實穩健ニシテ、而シテ其批判力ヲ備ヘルト云フコトガ
必要デアリマス、ソレハ何デモ耳ニ聞クモノ眼ニ見ルモノニ付テ、直グニ心
ヲ動カスト云フノデハイケナイカラ、物ノ是非善惡ヲ差別ヲシテ、善キモノニ
從ヒ惡シキモノハ避ケルト云フコトノ善惡邪正ヲ識別スル所ノ批判力ト云
フモノヲ確實ニスルト云フコトニ努メナケレバナラヌ、是ハ其方法ニ付キマ
シテハ〓育上種々アルコトデアリマシテ、一言二言ニシテ盡スコトハ出來ナ
イノデアリマス、併ナガラ學校ニ於テハ成ルベク其點ノコトニ努メ、又學校〓
育以外ノ社會的〓育ト云フモノニ向ッテ大ニ努力シナケレバナラヌ、文部當
局ノ經營ヲ致シテ居ル、例ヘバ社會〓育課ナドノ致シテ居ル仕事デハ種々
社會ニ行ハレル讀物、或ハ活動寫眞デアルトカ、或ハ演劇デアルトカ、其他
講談類ト云フモノニモ能ク注意ヲ致シマシテ、ソレソレノコトヲ取リ計ラ
ヒ、又例ヘバ過日來現ニ行ハレテ居リマス所ノ消費經濟ノ展覽會ヲ主ナル都
市ニ設ケマシテ、其消費經濟ノ必要ナル所以ヲ示シ、生活改善ノ途ニ向ッテ
國民ヲ導キ、又講習曾ヲ設ケマシテ、ソレ等ノ趣意ヲ十分ニ徹底セシムベク
講習員ヲ講習セシメテ、ソレゾレ地方ニ歸ヘシマスルヤウナコトヲ致シテ居
ルノガ、先ヅ其實例デアリマス、ソレカラ唯〓ノ御問ノ中ニ、文理科大學ヲ
設ケルト云フガ如キハ、抑〓此國民ノ思想ヲ破壤シ、道德ヲ頽癈セシムル所
以トナリコソスレ、決シテソレ等ノ點ニ向ッテ益ハナイト云フ、サウ云フ御言
葉ガアリマシタヤウデス、私ノ聞違カ知レマセヌガ、サウ云フ御言葉ガアリ
マシタヤウデスカラ、是ハ一應辯ジテ置カナケレバナラヌ、私共ハ文理科大
學ナルモノガ、最モ此點ニ向ッテ有效ナモノト深ク信ジテ居ル、文理科大學
ノ主ナル目的ハ、即チ〓員ヲ養成スル、此〓員トナッテ、ソレゾレ地方ノ學
校ノ中堅トナルベキ人ハ、文ト理トノ知識ヲ兼ネタ思想ヲ有ッテ居ル人デナ
ケレバナラヌ、成程、此理學ニ精通シタ人モ無論必要デアル、文學ニ精通シ
タ人モ無論必要デアリマスケレドモ、唯文ニ偏シ、理ニ偏シタ人ノミデハイ
カヌ、文理ノ雙方ノ學ニ通ジテ、能ク一般ノ常識ト云フモノヲ有ッテ、學理
ニ通ジ常識ヲ備ヘタ人ガ、學校ノ校長トナリ、〓頭トナリ、其他〓員中ノ中
堅トナッテ指導ヲスルト云フコトガ、非常ニー宜シイコトデアル、穩健著實ナ
ル思想ト云フモノハ、何ニ依テ出來ルカト云フト、其人ノ圓滿ナル知識ト、
圓滿ナル修養ガアレバコソ、能ク物ノ平均ヲ考ヘ、物ノ權衡ヲ慮ッテ穩健著
實ナル思想ヲ備ヘルコトガ出來ル、ソコデ種々專門ノ人ハ無論大切デアリマ
スケレドモ、〓育ニ於テハ、寧ロ專門トシテハ少シク足ラザル所アリトモ、
廣ク文理ニ通ジテ、物ニ向ッテ穩健ナル判斷ヲ爲シ、正確ナル批判ヲスルト
云フ知識ヲ備ヘタ所ノ人ガ、最モ今日ニ於テ必要ヲ覺エル、之ヲ養成スルコ
トガ急務中ノ急務デアル、即チ文科理科ヲ併合シタル所ノ文理科大學ヲ設ケ
ルト云フコトハ阪本君ノ御說ノ如クニ、決シテ今日ノ道德ヲ頽廢セシメ、
今日ノ思想ヲ紊亂セシムルト云フモノデハナクシテ全ク此弊ヲ救ハムガ爲ニ
致ス所ノ一ツノ方策デアル、斯ク信ジテ居ル次第デアリマスカラ、其點ニ付
テ、ドウカ御了解アラムコトヲ希望スル次第デアリマス、ソレカラ年限延長
ト云フコトハ、マダ是ハ未定ノコトデアリマシテ、之ニ付テ、御確答申上ゲ
ル譯ニハ行キマセヌガ、豫テ質問等ニ對シテハ、年限延長ノ意思アリト云フ
コトヲ答ヘテ居リマスカラ、之ニ付テモ、一應申上ゲテ置キマスルガ、年限
延長ヲスレバ何等ノ效果ガアルカト云フ、此點ニ付キマシテハ、今日ノ中學
ノ二年生、或ハ高等小學ヲ終ヘタ者ガ、社會ニ立ッテソレガ何ニナルカ、サ
ウスレバ六年ヲ終ヘタ者ハ社會ニ立ッテ、何ニナルカト云フ問題ガ起ッテ來ル
ノデアリマスガ、サウスレバ國民悉クヲシテ、五年モ十年モ十五年モ、修學
セシムルト云フコトハ、到底出來ナイコトデアリ、又無益ナコトデアル、年
限延長ヲスルト云フコトハ、六箇年ニ於テ十分修養シ得ザル所ヲ、七箇年若
クハ八箇年ニシテ之ヲ修養セシムル、而カモ凡ソ人ノ能力ノ發達ノ順序ニ
ハソレゾレ十歲ニシテ理解シ得ルコトモアレバ、十二三歲ニシテ理解シ得
ルコトモアル、サウシテ見レバ如何ニ學科ヲ立テマシテモ、相當ノ年齡ニ
於テ、相當ノコトヲ修得スルト云フコトガ、最モ必要ナルコトデアル、即チ
國民トシテ、先ヅ一般ニ備ヘテ置カナケレバナラヌダケノ修養ヲ致スガ爲ニ
ハハ或ハ十年ニシテ出來得ザルコトガアル、或ハ十二歲ニシテ分ラヌコトガ
アル、之ヲ十三、十四マデ修養サセタナラバ、國民トシテノ義務、國民トシ
テノ權利、其他國家ニ盡ス所ノ要件ヲ體得サセルコトガ出來ルノデアリマ
ス、無論不完全ニハ違ヒナイガ、大體國民トシテ備フベキコトヲ、備ヘシ
ムルガ爲ニハ、或ル年齡マデ〓育スルト云フ必要ガアルト云フコトハ信ジテ
居リマス、併ナガラ是ハ全ク未定ノコトデアリマスカラ、之ニ向ッテ餘リ御
答辯ヲ申上ゲル必要モナケレバ、又之ニ向ッテ酷ク御質問ニナル必要モナイ
カト、私ハ思ッテ居ルノデアリマス、最後ニ、過日學制頒布五十年ノ式典ヲ
舉行ヲ致シ、其節至尊ヨリ賜ハリマシタ所ノ御言葉ハ、誠ニ我々ノ肝ニ銘
ジ、有難ク拜誦イタシタ所デアリマス、要スルニ此五十年、過去ノ五十年
ト云フモノヲ經過シテ、〓育ニ相當ノ進歩ヲ致シタコトハ、誠ニ喜ブベキコ
トデアルガ、今後ノ五十年ト云フモノハ過去五十年ニ於テ進步シタ如ク、
又此過去ノ五十年ヲシテ意義アラシメ、過去五十年ヨリ一層ノ進步ヲ次ノ五
十年ニ於テ見ルベク、茲ニ一ツノ時代ヲ劃シテ、玆ニ〓育ニ付テ努力スルヤ
ウニ致セト云フ御趣意ト、私ハ拜誦イタシマシタ、而シテ斯ル御言葉ヲ拜誦
イタシマシタ以上ハ、此御言葉ノ御趣意ニ從ッテ、此五十年ヲ意義アラシム
ルト云フ爲ニハ、是ハ總理大臣ヲ始メト致シテ、私共ハ及ブ限リノ努力ヲ致
ナナケレバナラヌノデアリマス、然ラバ今日、其御言葉ニ從フダケノ準備ガ
悉ク出來テ居ルカト云フ仰セデアリマスガ、ソレハ出來テ居ナイカモ知レマ
セヌ、此五十年ノ旅行ニ向ッテ總テノ旅裝ヲ整ヘルト云フコトハ、是ハ二箇月
ヤ三箇月デハ、恐ラク出來ナイダラウ、併ナガラ是ハ一日モ忽セニスルコト
ハ出來ナイ、日夕此御趣意ヲ奉體イタシマシテ、成ベク此〓育ノ改善、道德
ノ振興、思想ノ健全著實ニ進步イタシマスルコトヲセナケレハナラヌコト
ハ、深ク感銘イタシテ居ル次第デアリマス、是ダケノコトヲ申上ゲテ御答
ト致シマス、尙ホ總理大臣ヘノ御質問ノ趣ハ私ヨリ傳達スルコトニ致マシ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=18
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019・阪本さん之助
○阪本釤之助君 段々承ハリマシタ中ニハ、御誤解ノ點モアリマスルヤウデ
スガ、尙ホ詳シイコトハ、何レ豫算委員會等ニ於テ御尋ネスルコトニ致シマ
スルガ、唯今承ハリマシタ中デ、文理科大學ノコトニ付キマシテハ全ク文部
大臣ノ御聽取違ヒデアリマス、私ガ文理科大學ト改名ヲスルコトハ思想ヲ惡
化スル、道德ヲ破壞スルト云フヤウニ本員ガ述ベタカノ如ク御述べデゴザイ
マシタガ、本員ハ左樣ニハ申シマセヌノデゴザイマス、高等師範學校ト云フ
モノハ是ハ國民〓育ノ本山ナノデアル、學制頒布以來五十年、是ガ高等師範學
校ガアツテ、府縣ニハ師範學校ガアル、是ハ其分派デアリマス、高等師範學
校、府縣ノ師範學校ハ國民〓育ノ淵源ニナッテ居,テ、全國ノ小學〓員ノ是ガ母
校デアル、何トナク其處ニ一種ノ淵源ガアリ尊信ガアルノデアリマス、ソレヲ
一朝制度ノ何等カノ爲ニ文理科大學ナドト名前ヲ變ゼラレルト云フコトハ、
確カニ淵源ノ尊信ヲ損スルモノデアルカラ、言ヒ換ヘテ見レバ、國民〓育ノ退
步デアルト私ガ申スノデアリマス、其事ヲ申述べタノデアリマス、ソレダケデ
御分リニナッタコトト思ヒマスガ、唯疑ハシキハ文理科大學ト改メル所以ノモ
ノハ、國民〓育ノ衝ニ當ルモノハ文理ノ學識ヲ具ヘンケレバナラヌ、文理科大
學ニ於テ文理ノ學識ヲ具ヘサセルノデアルト云フコトヲ重ネ重ネ詳シク御述
ベニナリマシタガ、然ラバ一人ノ學生ガ文理科ヲ兼修スルモノデアルト云フ
ヤウニ聞エマスノデアリマス、左樣ナ譯デアリマセウカ、私共是マデ承知イタ
シテ居リマスノハ、文科ハ文科、理科ハ理科、詰リ一ツノ大學ニ併置サレルノ
デアッテ文理科ヲ兼修スルモノデナイヤウニ承知イタシマス、〓員養成所ガ附
屬シテ、出テ學校ノ〓育ニ從事スルニハ、更ニソレ等ノ學科ヲ修メテ〓育ニ當
ルト云フヤウニ承知シテ居リマスガ、只今文部大臣ノ御說明ハ私共ノ聞イテ
居ルコトト違ッタ新ナ御說明デアルコトハ意外ニ存ジマスノデアリマスカラ、
モウ一應伺ッテ置キタイト思ヒマス、年限延長ノコトハ、只今問題ノ場合デア
リマセヌカラ、モウ少シ申述ベタイト思ヒマスガ控ヘテ置キマス、併ナガラ是
ハ重大ナ問題デアルカラモウ一言ダケ、御答辯ニハ及ビマセヌガ申述ベマス、
私ガ申シタノハ六年〓育ヲ受ケテ出タ者ガ、社會ニ出テモ普通〓育ノ力ト云
フモノハ頗ル薄弱デアル、而カモ高等小學、即チ唯今仰ッシヤッタ年齡ノ相當ニ
延ビテ居ル者ガ高等小學ヲ出タカラト云フテ、世ノ中ニ出シテモ大シタ用ヲ
ナサヌ、中學二學年ヲ履修シタ者ヲ社會ニ出シテモ大シタ應用ガ出來ナイト
云フノデアルカラ、小學校ノ年限ヲ二年延長シタ所デ唯今通リノ有樣デハ詰
ラヌデハナイカ、之ニ付テ大ニ御考デモアルカト思フノデアリマスガ、問題外
ニナリマスカラ、他日ニ讓リマシテ御答辯ハ望ミマセヌ、ソレカラ〓育勅語ト
云フ、イツモ斯ウ云フコトニハ〓育勅語ト云フコトガ出ルノデアリマスガ、〓
育勅語ガ眞ニ徹底イタシテ居ルナラバ、何モ本員等ガ痛嘆ヲシテ御質問ヲ致
ス必要ハアリマセヌ、試ニ畏多キ申シ方デアリマスガ、此結構ナ〓育勅語ガ
殆ド形式ニナリマシテ、小學〓員ハ國民〓育ノ上ニ於テ〓育勅語ノ捧讀ト云
フコトヲ如何ナル塲合ニモ致スノデアリマスガ、殆ド言不敬ニ亙リマスカモ
知レマセヌガ、坊サンガ御經ヲ讀ムヤウナ意味ニナッテ居リマシテ、眞ニ〓
育勅語ノ言々句々ヲ實踐躬行シテ參ルト云フ小學〓員ニ覺悟ガアルヤ否ヤ、
是ガ兒童ニ如何ニ徹底シテ居ルヤ否ヤ、徹底イタシテ居リマスレバ思想ノ惡
化モ怖ルルニ足ラヌ、道德ノ頽廢モ決シテ招來シナイト存ジマスガ、之ヲ憂
フル所以ノモノハ、此結構ナ〓育勅語ガ動モスレバ形式ニ流レルト云フコト
ガ今日ノ〓育ノ最モ病弊デアラウト存ジマスガ故ニ御尋ネシタ譯デアリマス
ガ、矢張リ〓育勅語ヲ御引キニナッテ居ルト云フコトハ、甚ダ歎ハシイノデ
アリマス、現在ノ施設ハドウデアルカト御尋ネ申シヲ見ルト、生活改善展覽會
ヲ開クトカ、又社會〓育デドウヤラシタ、ソレデ以テ道德ノ頽廢ヲ防ギ、思
想ノ惡化ヲ妨ゲルト云フ御考ヘデ大層御手柄ノヤウニ仰ッシヤイマスガ、是等
ハホンノ一部分ノ枝葉デアリマス、根本ニ於テ文〓ノ主宰者ハ、斯ウ云フヤ
ウナ方針ニ向ッテ進ム積リデアル、假ニ申シテ見マスレバ、日本ノ道德ハ何ヲ
申シヲモ儒〓主義ガ根本ニナッテ居ル、モウチット儒〓主義ヲ鼓吹シテ、上
大學ヲ初メ小學ニ至ル迄、小學カラ大學ヲ讀マセロ、中庸ヲ讀マセロト申ス
ノデハアリマセヌガ、儒〓主義ノ徹底スルヤウニヤッテ行ク考ヘガアルカド
ウカ、勿論之ニ代ハルニ宗〓デモ宜イカモ知レマセヌガ、日本ハマダ外國
ノヤウニ宗〓ト云フモノガ徹底イタシタコトニ參ッテ居リマセヌ、而シテ固有
ノ佛〓ハドウデアル、羅馬法王廳ヘ使節ヲ遣ハサレルト云フト、坊サン達ガ
ワンワン言ッテ騒グ、マルデ向ヒノ寡婦ガ隣リノ娘ノ嫁入ヲ羨ムト云フヤウナ
態度デアル、私ハ法王廳ノコトハ政費多端ノ際ニ餘計ナコトヲナサルト思ッテ
居リマスガ、坊サン達ガ全國ニ立ッテワンワン言フト云フヤウナ事柄ハ誠ニ
見苦シイコトデアルト思フ、斯樣ナ人達ガ日本ノ宗〓ヲ扱ッテ居ッテハ、是ハ
一向信用ガアリマセヌ、宗〓ノ方面ニ矢張リ道德維持ノ見込ハナイ、何ニ因ツ
テ〓育勅語ガ結構デアルカト云フコトハ、一片ノ形式ノミデハ私ニ言ハセル
ト無理デハアリマスマイカ、之ニ付テ何等カノ方法ガアルカ否ヤト云フコト
ガ、總理大臣及文部大臣ニ伺ヒタイノデアリマス、是ハ誠ニ重大ナ問題デア
リマスカラ、一朝一夕ニ茲ニ御述べ下サイト云フノデハアリマセヌガ、此點ニ
付テ何ナリトモ感心シ得ル御答辯ヲ承ハレレバ仕合セデアルト存ジマスガ、
消費節約ノ宣傳クラヰガ其方針ト云フコトデハ甚ダ心細ク存ジマス、之ニ付
テ何カ御〓示ガアレバ結構デアル、ゴザイマセヌケレバ止メマシテ他日相當
ノ機會ニ御尋ネスルコトニ致シマス
〔國務大臣鎌田榮吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=19
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020・鎌田榮吉
○國務大臣(鎌田榮吉君) 再應ノ御尋ニ對シマシテ御答ヲ申シマス、最初此
文理科大學ノ內容ニ付キマシテ私ノ御答ヲ致シマシタノハ少シ言葉ガ不完全
デアリマシタカラ或ハ御聽取ガ出來ナカッタカモ知レマセヌ、之ヲ文理兩方ヲ
兼修スルト申シマシタナラバ、兼修ト云フ言葉ガ惡カッタノデ、是ハ〓育ニ從
事スル人ヲ養成スル爲メノ學校デゴザイマスカラシテ、ソレヲ主ト致シテ居
ル譯デアリマスカラ、ソコデ成ルベク先ヅ兩方ノ考ヲ有タセルト云フ趣意デ
アリマス、併シ理科ハ理科、文科ハ無論文科デアリマス、文理兩方ヲ學ブト云
フコトニハナリマセヌ、併ナガラ〓育學トカ心理學トカ、其〓育ニ直接樞要ナ
學科ハ、假令此文科デナクテモ之ヲ致サナケレバナラヌ、先ヅ主トシテ〓育學
ト云フモノハ、〓育心理ト云フヤウナコトハ、是ハ此理科ノ者モ學修スル譯
デ、又文科ノ者モ、文理ト云フモノヲ二ツ併セテ經營イタシマスガ爲ニ、直
接ニ學バズトモ理學上ノコト化學上ノコトト云フモノヲ常ニ見聞ヲ致シテ、
唯文ニノミ走ラズシテ、理科的考モ自ラ頭腦ノ中ニ有ツコトガ出來ルト、斯
樣ナ意味ニ御解釋ヲ願ヒタイ、年限延長ニ關スルコトハ唯〓ノ御話中ニモゴ
ザイマシタ通リ、當面ノ問題デゴザマセヌカラシテ、別段是ニ付テハ御答辯ハ
致シマセヌ、尙ホ此德育ノコトニ付キマシテハ縷々御述べガゴザイマシタガ、
如何ニモ御尤ナコトデアリマス、兎角形式ニ流レルト云フ弊ハ、是ハ當局ニ
於キマシテモ大ニ憂ヘテ居ル所デアリマスガ、併ナガラ如何ニシテ其精神ヲ
體セシムルカト云フコトニ付キマシテハ餘程苦心ヲ致シテ居リマス、又如何
ニ苦心ヲ致シタ所ガ、是ガ完全ニ理想的ニ達シ得ルト云フコトハ、容易ニ
期スルコトガ出來ナイノデアリマス、併ナガラソコ迄ニ行カナケレバナラ
ヌ、今阪本君ノソンナラバ儒〓主義ニ依ッテ之ヲスルト云フノカ、又ハ佛〓ニ
依ッテ之ヲ爲スカドウスルノダト云フ、具體的ニ之ヲ御答ヲ致スト云フコト
ハ差當リ出來マセヌ、成程我國ノ道德思想ヲ支配シ形造ッタ所ノモノハ、千年
以上モ我國ニ行ハレタ所ノ種々ノ神儒佛、其他ノ〓ニ依テ是ガ形成セラレ是
ガ醇化セラレタモノデアリマス、是ヲ無視スルコトハ出來ナイ、非常ニ是ニ
向ッテ重キヲ置カナケレバナラヌノデアル、ソレデ如何ナル形ニ於テ如何ナル
方式ニ於テ、之ヲ扱フカト云フコトニ付キマシテハ自ラ考モアリマス、アリマ
スケレドモ國家ノ〓育ヲ或一ツノ主義ニ依テ玆ニ德育ヲスル、委任スルト云
フコトニハ餘程ノ考慮ヲ要スルコトデアリマス、併ナガラ阪本君ト略同樣
ナ考ヲ當局ニ於テモ全ク致サヌ譯デハナイノデアリマス、此點ニ付キマシテ
ハ十分ナル〓究ヲ致サナケレバナラヌト考ヘマス、併ナガラ其御考ト餘リ遠
クナイ考ヲ有ッテ居ルト云フコトハ御承知ヲ願ヒタイ、宗〓ノコトニ付キマ
シテ、羅馬法王云々ノコトガゴザイマシタガ、是ハ今日ヤカマシクナッテ居
ルノハ全ク外交上ノ問題デアリマス
〔阪本釤之助君「外交上ノ問題ハ答辯ニ及ビマセヌ」ト述フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=20
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021・鎌田榮吉
○國務大臣(鎌田榮吉君) デハソレダケニシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=21
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022・阪本さん之助
○阪本釤之助君 段々御答辯ヲ得マシテ感謝イタシマスルガ、唯今ノ文理科
大學ノコトハ、マダ大ニ疑問ガアリマスルガ、本案ニチヨットモ關係ガゴザ
イマセヌ、餘リ質問ヲ致スト御差止メニナルカト思ヒマスカラ、他日是ハ質
問イタスト云フコトニ致シマシテ、本員ハ此場合ニ於ケル質問ダケハ是デ打
切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=22
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023・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 岡田良平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=23
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024・岡田良平
○岡田良平君 議席カラチヨット伺ヒマス、私ノ御尋ネ致シタイト思ッテ居ル
コトハ、阪本君カラ御尋ガアリマシテ一應ノ御答ハアッタノデアリマスガ、マ
ダ十分ニ諒解イタシマセヌノデ重ネテ御尋ヲ致シマス、極メテ簡單ナ事柄デ
ゴザイマスガ、今囘ノ小學校費用ノ國庫負擔金三千萬圓ヲ增加スルニ付キマ
シテ其使用ノ方法デゴザイマス、ドウ云フ風ニ御用ヰニナルノデアルカ、或
ハ〓育改善ノ爲ニ御用ヰニナルノデアルカ、或ハ市町村ノ負擔輕減ノ爲ニ御
用ヰニナルノデアルカ、其點ヲ明ニ承ッテ置キタイト思フノデアリマス、先
刻阪本君ヘノ御答ニ於キマシテハ、此二ツト云フモノハ引分ケルコトガ出來
ナイモノデアルト云フ御話デアリマシタガ、併ナガラ現今ノ狀態ニ於キマシ
テハ、是ハ明カニ區別スルコトノ出來ル塲合デアルト思フノデアリマス、即チ
市町村ト云フモノハ、其全力ヲ盡シテ今日〓育其他ノ事業ニ從事イタシテ居
ルノデアリマス、殆ド市町村ト云フモノハ其力ノ限リヲ盡シテ居ルト申シテ
モ宜イカト思フ、デアリマスルカラ最早此上ノ負擔ニ堪ヘヌト云フ狀况デ
アッテ、非常ナ苦心ヲ訴ヘテ居ルト云フコトハ御承知ノ通リノ狀態デアル、ソ
レデ今日國庫カラ三千萬圓ノ支出ガ增加イタシマスニ付キマシテハ更ニ此
上ニ〓育上ニ付テ進步改善ヲ圖ルコトノ御計畫ガアルノデアルカ、但シハ是
迄市町村ニ於キマシテ力ノ限リヲ盡シテ〓育ノコトニ從事イタシテ居ルノデ
アリマスルカラ、詰リ國庫デ負擔スベキ所ノ俸給ノ大部分ト云フモノヲ、是
ヲモ市町村ガ擔任シテ居ルノデアリマスカラ、之ヲ國庫ガ即チ肩代リト致シ
マシテ、此三千萬圓ト云フモノヲ、此市町村義務〓育ニ從事シテ居リマスル
〓員ノ俸給ニ充テマシテ、即チ從來市町村デ支出シテ居リマシタ〓員ノ俸給
ノ中デ、國庫カラ支出スルダケハ之ヲ輕減スルト云フコトニ致スノデアリ
マセウカ、此二ツヲ明カニ區別スルコトガ出來ルト思フ、即チモウ少シ具體的
ニ申シマセウナラバ、此三千萬圓增額ニナリマシタニ付テ、當局者ハ或ハ義務
〓育ノ延長トカ、或ハ補習〓育ヲ義務ニスルトカ、或ハ其他〓育上ニ付テ積
極的ノ施設ヲ爲スト云フ御見込デアリマスカ、但シハ是等ノ施設ト云フコト
ハ此場合ハ何モ御計畫ハナクテ、單ニ從來市町村ノ負擔ヲ致シテ居ッタモノ
ヲ國庫ガ代ッテ之ヲ負擔シテヤルト云フコトニ、此三千萬圓ハ御使用ニナル
ノデアリマスカ、此點ヲ明カニ致シテ置キタイノデアリマス、私ハ此三千萬
圓ヲ以テ全部積極的ノ施設ニ充テナケレバナラヌトハ思ヒマセヌ、初メテ小
學校ニ對シテ國庫カラ支出金ヲ致シマシタ時ノ事情ト今日ハ非常ニ事情
ガ違ッテ居リマス大正六年ニ初メテ國庫カラ一千萬圓ノ支出ヲ致シマシ
タ時ニハ、〓員ノ俸給ノ平均ガ正〓員ニ於キマシテ僅ニ二十圓少シ餘デアリ
マシタ、而シテ市町村ノ情況ハドウカト申シマスルト、當時米價モ相當高ク
アリマスルシ、其他農家ノ副產物モ相當ノ價ヲ維持シテ居リマスルシ、又
市町村ノ費用ハ餘リ他ニ多クヲ要シナカッタノデアリマスルカラ、市町村ノ
經濟ハ割合ニ緩カデアッタノデアリマス、ソレ故ニ當時國庫カラ支出イタシ
マシタ千萬圓ト云フモノハ、是ハ殆ド全部〓員ノ俸給ニ充テラレタノデアリ
マンカ、併ナガラ今日ハ其時分ト非常ニ事情ガ違ッテ居リマシテ、〓員ノ俸給
モ當時ノ殆ド三倍ニ增加イタシテ居ルノデアリマス、勿論之ヲ以テ十分トハ
申サレマセヌガ、併シ之ヲ當時ニ比較シテ見マスレバ、幾分カ、マシト云ツ
テ然ルベキト思フノデアリマス、又町村ノ經濟ノ狀況ヲ見マスト、是ハ當時
ニ比較シテ非常ナル窮迫ヲ〓ゲテ居ルノデ、是モ當時ニ比較スルト三倍以上
ニ增加シテ居ル、殆ド〓育ニ力ヲ盡シテ居ルト云フ狀態デアリマスル此際デ
アリマスカラ、國庫カラ支出イタシマシタル費用ハ、是ハ市町村ノ負擔ヲ輕
減スルト云フコトニ専ラ使用スルト云フコトモ、必シモ非デハナイト思フ
要スルニドチラデアルカト云フコトニ付テハ明カナ御答辯ヲ伺ッテ置キタイ
ト思フノデアリマス
〔國務大臣鎌田榮吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=24
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025・鎌田榮吉
○國務大臣(鎌田榮吉君) 御答ヘ致シマス、今囘ノ三千萬圓ヲ以テ義務〓育
年限ノ延長トカ、或ハ補習〓育ノ義務制ヲ立ツルトカ云フヤウナコトニ使用
スルト云フ考ハゴザイマセヌ、而シテ是ハ町村ノ狀態ニ依リマスルト、或町
村ハ例ヘバ〓員給ノ平均額ニ達シナイト云フコトナラバ之ヲ達セシムル、即
チ〓員俸給ニ之ヲ使ヒ、又代用〓員ト云フ者ヲ使ッテ居ルモノモ、全ク金ガ
無イ爲ニ代用〓員ニ甘ンジデ居ッタモノガ、此、金ヲ得テ正〓員ヲ聘スルコト
ガ出來ル、立入ッテ申セバ〓員給ニシタ所ガ、例ヘバ百圓ノ給料ヲヤラナケ
レバナラヌ者ニ七十圓遣ッテ居ル、名義上三十圓ハ寄附ニシテ居ルト云フコ
トガアリマス、ソレモ或ハ町村ノ狀態カラ三十圓ヲ囘復シテ百圓ニスル等多
々アリマセウガ、是ハ町村ノ經濟ヲ緩和スル方法ト思ヒマス、最初ニ經濟ヲ
緩和シ、〓育ヲ改善充實スルト云フコトノ二通リノ目的ヲ有ッテ居ルト云フ
コトヲ申上ゲタノハサウ云フ意味デゴザイマス、之ヲ以テ積極的ニ義務年限
ヲ延長スルトカ何トカ云フ意味ハ有ッテ居リマセヌ、ドウゾサウ云フ風ニ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=25
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026・岡田良平
○岡田良平君 積極的ノ御計畫ノナイト云フコトハ承ハリマシタ、サウ致
シマスルト或ハ俸給令ヲ改正スルトカ、或ハ又府縣ニ對シテ特別ノ訓令デモ
御發シニナッテ、サウシテ〓育ニ對シテ斯ノ如ク發達ヲ圖レト云フ御手段デ
モ御執リニナルカ、サウ云フコトハ全クナイト承知シテ宜シイノデゴザイマ
スカ
〔國務大臣鎌田榮吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=26
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027・鎌田榮吉
○國務大臣 鎌田榮吉君)唯〓ノ御尋ネノヤウナコトハ致シマセヌ積リデ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=27
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028・岡田良平
○岡田良平君 今囘國庫支出金三千萬圓增加セラレマシタニ付テハ何等積極
的ノ施設ハナサラヌ、或ハ訓令ヲ發スルト云フコトモナサラヌト云フコトモ
承ハリマシタ、之ヲ私ハ非議イタスノデハナイ、或ハ相當ノ御考デアラウト
思ヒマス、併シ左樣ナサレマシタ結果ハドウ云フ風ニ至ルデアラウカト申
シマスルト、今日市町村經濟ト云フモノハ非常ナ窮迫ヲ〓ゲテ居ルト云フコ
トハ申スマデモナイ狀況デアリマス、殆ド農村ノ如キニ至リマシテハ荒廢
ノ端ヲ發シテ居ルト申シテ宜イクラヰ、此儘ニシテ置キマシタナラバ、數年
ノ後ニハ農村ハ悉ク荒廢シテ仕舞フダラウト云フ心配ヲシテ居ル今日ノ狀況
デアル、市町村經濟ヲ緩和スルト云フコトハ、今日ニ於キマシテ洵ニ焦眉ノ急
デアラウト思フノデアリマス、斯樣ナ焦眉ノ急ニ際シマシテ、國庫カラ幸ニ
三千萬圓ノ增額ヲ支出スルト云フコトガ出來ルコトニナリマシタカラ、之、
ドウシテモ此市町村ノ焦眉ノ急ヲ救フト云フコトニ用ヒラレルト云フコト
ハ是ハ私ハ當然ノコトデアラウト思フ、當局者ガ何カ積極的ノ施設ヲナサ
ルト云フコトガゴザイマスルナラバ、是ハ格別デアリマスルガサウデナク、
之ヲ市町村ノ自由ニ委セルト云フコトナラバ、是ハ殆ド全部焦眉ノ急ニ應ズ
ルト云フコトニナルコトハ、是ハ疑ヒモナイコトデアラウト思ヒマス、丁度
眉毛ニ火ガ點イテ、額ニ火膨レガ出來ルト云フヤウナ時ニ方ッテ、滋養物ヲ
〓ベテ身體ノ榮養ヲ好クシテ行クト云フ考ヲスル遑ナイノデアリマスガ、自
〓〓育ノ改善ト云フコトニ付テハ、是ハ全國多クノ町村ノコトデアリマスカ
う、何分取除ケハゴザイマセウガ、大體ニ於テ此〓育ノ改善ト云フコトニ三
千萬圓ハ殆ド用ヒラレヌモノト私ハ斷定スルコトガ出來マセウカト思ヒマ
ス、是ハ私ハ已ムヲ得ヌカト思ヒマク、是ハ惡イトハ申シマセヌ、併ナガ
ラサウ致シマスルト考ヘナケレバナラヌコトハ、前內閣、前々內閣以來、
此專門〓育、高等〓育ノ爲ニハ少ナカラヌ國費ヲ費シマシテ、我國ノ高等
程度ノ學校ノ數ト云フモノハ、殆ド外國ニ類例ヲ見ヌ程ノ多數ノ學校ガ增
設セラルヽニ至リマシタルニ拘ハラズ、過去四五年ノ間ト云フモノハ、此小
學〓員ノ爲ニ、普通〓育ノ爲ニ、殆ド何等施設サレルコトガナカッタ、此點
ハ山川男爵カラ御質問ガアリマシタガ、山川男爵ハ中橋文相ハ〓育ノコトニ
素人デアリマスカラ斯樣ナル計畫デアル、鎌田君ハ〓育ノコトニ付テハ多年
ノ御經驗ガアル筈ダカラ、左樣ナコトハナイ筈デアル、斯ウ云フコトニ付テ意
見ヲ述ベラレタノデアリマスルガ、私モ矢張リ同ジヤウナ感ジヲ持チマスノ
デ、今囘三千萬圓ノ國庫支出金ヲ支出セラレマシタルガ故ニ、如何ニモ小學
校〓員ノ爲ニ國庫ガ支出サレタカノ如クニ思ヒマスケレドモ、是ハ市町村負
擔ノ輕減ニ全部用ヒマスモノト見マスルナラバ、小學〓育ノ爲ニ矢張リ依然
トシテ政府ハ何等施設スル所ハナク、獨リ高等專門ノ〓育ニバカリ力ヲ專ラ
ニサルヽモノデアッテ、所謂〓育ノ施設上ニ於テ權衡ヲ得テ居ラヌト云フコ
トハ、依然トシテ存スルコトデアラウト思ヒマス、即チ鎌田君ハ〓育ノ方面ニ
於キマシテハ寔ニ偉イ權威デアルニモ拘ハラズ、前ノ山川君ニ言ハセマスル
ト〓育上ノ素人ノ施設ヲ其儘踏襲セラルヽト云フコトニナリマシタノハ寔
ニ遺憾ノコトト考ヘマス、併ナガラ是ハサウデナイ、今囘ノ三千萬圓ニ依テハ
普通〓育ヲ大ニ改善ヲ圖ルト云フコトデアリマシタナラバ、是ハ私鎌田君ハ
サウ云フ御答ガアルカモ知レマセヌガ、事實上出來ナイコトデアルト私ハ考
ヘマス、尙ホ私ノ申シマシタコトニ付テ、誤ッタ點ガアリマスレバ御辯明ヲ
請ヒマス、別段ニ御辯明ヲ要求スル譯デハアリマセヌ、尙ホ此點ニ付テハ他
日質問ヲ致シ、又私ノ意見ヲ陳述イタシタイト考ヘマス、唯今御辯明ガアレ
バ承リ、御辯明ガナケレバ之ダケニ致シテ置キマス
〔國務大臣鎌田榮吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=28
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029・鎌田榮吉
○國務大臣(鎌田榮吉君) 御答イタシマス、此三千萬圓增額ガ、何等〓育上
ニ積極的ニ計畫ヲシナイ、〓育ノ程度ヲ上ゲナイヂヤナイカト云フ、斯ウ云
フ御尋ノヤウニ伺ヒマシタ、私ノ考ハサウハ思ヒマセヌ、今日御說ノ如クニ
市町村ノ財政ハ非常ナ窮迫ヲ〓ゲテ居ル、ソレガ爲ニ今日ノ〓育ノ程度ヲ維
持スルト云フ上ニ非常ナ困難ヲ感ジテ居ル、動モスルト云フト〓育ノ程度
ヲ低下シナケレバナラス、斯ウ云フ······〓師ノ給料モ御說ノ如ク三倍ニナッ
テ居ル、此三倍ヲ維持スルト云フコトハ、今日ノ狀態ニ於テ非常ナル困難
デアル、從ッテ之ヲ維持スルコトガ出來ナケレバ、即チ〓員モ優秀ナル〓員ヲ
失ヒ、學校モ低下スルト云フ譯デアリマスカラ、此三千萬圓ト云フ助ケ船ガ
行ク爲ニ之ヲ維持スルコトガ確ニ出來ル、消極的ノ〓育改善ノ向上ヲ圖ッタ
モノデアリマス、又從來資力足ラズシテ、劣等ナル〓育ニ甘ンジテ居リマシタ
モノモ、其增額ヲ得タガ爲ニ、優秀ナル〓員ニ代ヘルコトガ出來ル、是ハ積
極的ニ進ムコトガ出來ルノデアリマス、併ナガラ唯惜ムラクハ此金ヲ以テ
總テ積極的ニ進ムコトガ出來ルカト云ヘバ、ソレハ私ハ出來ナイダラウト思
フ、斯ノ如キ架空ナ事ヲ致シマスレバ、又困難ヲ感ジテ、折角上ボセマシ
タ〓育ノ程度ヲ低下シナケレバナラヌ、今日有ッテ居ル地步ヲ高メ、更ニ一
層進ムコトガ出來ル、ドウシテ出來ルカト云フト、今日ノ町村ノ窮迫ノ狀態
ハ永ク續クモノデハアリマセヌ、今日ハ最モ窮迫ノ狀態ニ居リマスカラ、將
來又是ハ幸運ニ向ッテ來ル見込ガアルカラ、サウスレバ町村ノ自發ノ力ヲ以
テ、〓育ノ向上ヲ圖ルコトガ出來ル、國庫ノ負擔金モ過日來衆議院デ答辯シ
タ如ク、是ニ止マルモノデナイ、先ヅ〓員給ノ半額マデ財政ガ許スナラバ進
ミタイト斯ウ考ヘテ居リマス、又〓育義務年限ガ延長サレテ、〓員數ガ殖
エマスカラ、即チ全體ノ負擔金ガ殖エマスガ、國庫ノ補助ノ增加モ伴ッテ殖
エテ來マスカラ、其方ニ於テ三千萬圓ノ支出デモ、〓育上ノ施設ニ效果ガナ
イト云フコトハ申サレナイト思ハレマス、尙ホ過日ノ山川男爵ノ御質問ニ
因ンデノ御尋デアリマスガ、前內閣ニ於テハ、高等〓育ノ擴張ノミニ力ヲ盡
シテ居ル、從テ國民〓育ノ改善ヲ圖ラナカッタ、然ルニ今囘ノ現内閣ニ於テ
三千萬圓ノ增額ヲシテ、國民〓育ノ改善ヲ圖ルガ如クニ見エタケレドモ、
其實ハ一向改善ニナラヌ、而シテ一方ニ於テハ、矢張リ高等〓育ノ擴張ヲ致
シテ居ルト云フコトハ、是ハ甚ダ其意ヲ得ナイト云フヤウナ御趣意ニ承リ
マシタガ、是ハ私ハサウデナイト思フ、山川男爵ノ仰セラレタ如クニ、普通
〓育ヲ三千萬圓ノ增額ニ止メル、而ジテ一方高等〓育ノ爲ニ多額ノ金ヲ使用
スルト云フコトハ甚ダ宜シクナイト云フ、斯ウ云フ御說ノヤウニ伺ヒシマ
タケレドモ、是ハ先日モ縷々申上ゲマシタ通リ、高等〓育ノ擴張ハ六箇年計
畫ト云フモノヲ致シマシタモノヽ詰リ缺漏ヲ補フ、所謂擴張整備ト云フ
ヤウナ言葉ヲ用ヒテ居リマスガ如クニ、之ヲ完成セシメル爲ニハ、其計畫ノ
最初ノ趣意ヲ完ウスル爲ニハ、今囘ノ所謂昇格案ト云フモノヲヤラナケレバ
ナラヌ、而シテ其金額ハ如何程デアルカト申セバ千萬圓强デアリマス、此千
萬圓ノ金額ハ、是ハ財政上ノ都合上カラデモアリマスシ、學校ノ設備ノ都合
カラデモアリマスガ、六箇年ニ千萬圓ヲ支出スルト云フノデアリマス、一方
ノ普通〓育ハ、四千萬圓ヲ每年出シテ行ク、尙ホ其上ニ、又餘裕ガアレバ之
ヲ增加シテ行カウ、永遠ニ此四千萬圓ノ金ヲ普通〓育ノ爲ニ、國庫ガ出シ
テ行カウ、一方ハ、六箇年間ニ千萬圓ノ金ヲ出ス、即チ是ハ年ニ二百萬······
百八十萬ノ金ヲ、六箇年出スト云フコトデアリマスカラ、サウ高等〓育ノ爲
ニ莫大ノ金ヲ使ッテ行クト云フ御說ハ當ラナイヤウニ考ヘマスガ、併ナガラ
之モ出サズシテヤレバ宜シイノデアリマスガ、必要ニ迫リ是非此計畫ヲ完
備シテ行クニハ、已ムヲ得ナイコトデアリマスカラ、其點モ御諒承下サイマ
シテ、高等〓育ニ決シテ無駄ノ金ヲ使フ譯デナイ、高等〓育ニ偏シテ、普通〓
育ニ一向何等ノ設備ヲシナイデハナイカト云フヤウナコトハ、私ハ、五つ)
ツ御考ヲ願ハナケレバナラヌ、サウシテソレガ財政ノ窮迫ノ町村ノ狀態デ
アリマスカラ、今囘ノ金ハ大ニ窮迫シタ〓育費ト云フ流レヲ傳ヒツヽ窮迫
ヲ大ニ緩和スルダラウト考ヘテ居リマスガ、又町村ノ、詰リ經濟ガ段々裕カ
ニナリ、又其他總テ此稅制等ノ關係カラシテ、町村ニ餘裕ヲ生ズルト云フコ
トニナレバ、國庫負擔金ト云フモノハ、〓育改善トカ、色々ノ途ニ向ッテ、
是ハ進ムコトガ出來ル時ガ來ルダラウト云フコトヲ、豫メ期シテ居リマス、
是ダケ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=29
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030・岡田良平
○岡田良平君 唯今承リマスト、此三千萬圓增額ニナッタガ爲ニ、消極的ニ、
〓育上ニ影響ヲ及ボスダラウト云フコトヲ御話ニナリマシタ、其點ハ能ク諒
承イタシマシタ、成程此三千萬圓ノ支出ガ出來ナカッタナラバ、現狀ヲ維持
スルコトガ出來ナイダラウト云フコトハ御同感デアリマス、必ズ之ヲ以テ現
狀ヲ維持スルコトガ出來ルト思ヒマス、併ナガラ此三千萬圓フ支出シタ爲
ニ、普通〓育ノ狀態ガ今日ヨリ善クナルト云フコトハ考ヘラレナイト思
フ、即チ、ヨリ惡クセヌト云フ消極的ノ效力ハアルダラウト思ヒマスガ積
極的ニ今日ノ現狀ヨリ、ヨリ善クナルト云フ效果ハアルマイト思ヒマス、即
チ現內閣ニ於キマシテハ、普通〓育ヲ、ヨリ善クスルト云フコトニ對シテ
ハ御盡力ガ足ラヌト云フコトヲ申シテモ、過酷ナ評デナイト思ヒマス、而
シテ之ニ反シテ、高等〓育ノ方ニ於テハ、六箇年計畫ト云フノガアルノニ、
更ニ第二期ノ擴張ヲスル、六年計畫ガ了ラヌ中ニ、更ニ第二期計畫ヲスルト
云フノハ、如何ニモ高等〓育ニ重キヲ置カレテ、而シテソレニ比較シテ見マ
スルト、此普通〓育ヲ度外ニ置カレルト云フ非難ハ免レルコトハ出來ナイト
思ヒマス、鎌田君ガ先刻斯ウ云フコトヲ言ハレマシタ、前ノ六箇年計畫ヲ完
成スルガ爲ニ、第二期ノ計畫ヲスルト云フコトヲ言ハレマシタ、過般山川男
爵ノ御尋ニ對シテ、高等學校ノ增設シタガ爲ニ、高等學校ノ卒業生ガ非常ニ
多クナル、從テ此高等學校ノ卒業生ヲ收容スル場所ガナケレバナラヌカラ、
已ムヲ得ズ第二期ノ計畫ヲヤッタノデアルト、斯ウ云フ御說デアリマシタ、
ソレハ何カ御間違デアルカト思ッテ居リマシタガ、今日ノ御答モ殆ド同樣ノ
趣旨ト承ッタノデアリマス、ナゼ、ソレハ御間違デアルカト、サウ考ヘル其
理由ハ、其第二期ノ計畫ト云フモノハ決シテ高等學校ノ卒業生ヲ救フト云
フ意味合ノモノデナイノデアリマス、ドウシテ、サウ申スカト云フナラ
バ、文理科大學ト云フモノヲ置カレヤウト云フノデアリマスガ、文科理科ハ
旣設ニ於テ尙ホ澤山ノ收容餘力ガアルノデアリマス、高等學校ガ全部完成シ
マシテモ、此文理科ハ既設ニ於テ收容スルコトガ出來ルノデアリマス、況ン
ヤ東北大學、九州大學ト云フモノニ、更ニ文科大學ヲ置カレルノデ、サウシ
テ見ルト、此卒業生ヲ收容スル所ハ綽々トシテ餘裕ガアル譯デアリマス、何
モ强ヒテ、此際文理科大學ヲ增設サレルト云フコトハ、高等學校卒業生收容ノ
意味カラ云ヘバ、何等意味ハナイノデアリマス、高等學校卒業生收容ノ意味
カラ言ヒマスナラバ、此文理科大學ト云フモノハ、高等學校以外ノ學校カラ
這入ルト云フコトハ、是ハ拒絕セヌケレバナラヌ、然ニ此文理科大學ノ計畫
ハドウカト申シマスルト、此收容人員ト云フモノハ大部分ハ高等師範學校ノ
卒業生ヲ容レルト云フ話デアル、是ハ必ズサウデゴザイマセウ、高等師範學
校ノ卒業生ヲ大部分收容スルト云フナラバ、此六年計畫ハ完成ト云フコトノ
意味ニハナラヌト云フコトハ分リキッタコトデアル、ソレカラ又更ニ此專攻
科ヲ全國ノ專門學校、十六校デスカ十八校デスカヲ通ジテ設置サレルト云フ
コトデアリマスガ、是ガドウシテ高等學校ノ卒業生收容ニ關係ガアルノデゴ
ザイマセウカ、高等學校ノ卒業生ヲ、專攻科デスカ研究科デスカ、名前ハ
違ッテモ實ハ同ジモノデアル、之ニ收容スルト云フコトハ決シテナイデゴザ
イマセウ、サウシテ見マスルト、之モ亦高等學校增設ト云フコトニハ何等關
係ノナイ計畫デアル、之ヲ要スルニ、所謂第二期擴張ト云フ今囘ノ計畫ハ高等
學校高等專門學校ノ擴張ニ非常ニ政府ハ重キ、非常ニ國費ヲ消費サレルト云
フコトデアリマス、先刻鎌田君ノ御話ニ六年間ニ亙ッテ千萬圓ノ金額デアル、
餘リ大キクナイト云フ御詰デアル、成程臨時費ハ千萬圓デアラウ、經常費ノ
コトヲ御忘レニナッテ居ル、經常費ハ確カニ五百萬圓カヽル、是ハ每年五百
萬圓費サナケレバナラヌ譯ニナルノデアリマス、決シテ是ハ少ナイ金額デハ
ナイト思フ、普通〓育ヲ大成スルニハ全國ハ甚ダ廣ク専門〓育ヲ相手ニスル
モノハ比較的少數デアル、其數ヲ比較シテ見マスレバ五百萬圓ト云フ金額
ハ此高等〓育ヲ受ケヤウト云フ者ノ爲ニ消費スルト云フコトハ、金額ガ甚
ダ多イノデアリマス、此兩者ノ間ノ權衡ヲ頗ル失シテ居ルモノト私ハ考ヘル
ノデアリマス、要スルニ是ハ此昇格問題ニ關係シタコトニナリマスノデ、尙
他日御尋ネ致サウト思ヒマスカラ、今日ハ之デ打止メテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=30
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031・鎌田榮吉
○國務大臣(鎌田榮吉君) 當席カラ失禮イタシマス、重ネテ申上ゲテモ同ジ
コトデゴザイマスルガ、此今囘ノ三千萬圓增額ニ依テ普通〓育ハ一向進步ト
云フヨリ唯退步ヲ防グダケデアル、或ハサウカモ知レヌ、是カラ退步ヲ防ギサ
ウシテ進步ヲシナイニシテモ、ドウシテモ退步ヲ防グト云フコトガ急務中ノ
急務デアル、尙餘力ガアレバ進步スルコトモ出來得ルノデアリマス、或ハ今囘
ノ增額ダケデ幾分ハ進步ハ出來ヤウト思ヒマス、併ナガラ之ニ依テ義務〓育
ノ延長補習〓育ト云フコトニシテモ、此三千萬圓ノ金デハエライ働キヲスル
モノデハナイノデアリマス、先ヅ三千萬圓ハ三千萬圓ダケノ働キヲナシ得ル
コトハ確カニアルト思フ、其結果ハ普通〓育ノ退步ヲ防ギ、又或點ニ於テハ普
通〓育ノ進步ヲ促スト云フコトニハ確カニナリ得ルコトヽ考ヘマス、ソレト
同時ニ町村ノ經濟ハ玆ニ緩和サレル働キハ確カニアル、濫用セザル以上、ア
ルコトト信ズルノデアリマス、而シテ此高等〓育モ矢張力ヲ用ヒル、高等〓
育ニ力ヲ用ヒルノガ惡イト云フコトニ決ッテ居ルト云フコトナラバソレハ惡
イカ知ラヌガ、高等〓育竝ニ普通〓育ハ決シテ偏頗ニスルコトハイカナイ、
普通〓育ニ心ヲ用ヒテ高等〓育ト云フモノヲ全ク怠ッテシマッテハナラヌ、ド
ウシテモ國家トシテハ詰リ雙方ヲ共進セシメルト云フコトニ心ヲ用ヒナケレ
バナラヌ、而シテ成程千萬圓ノ金ヲ六箇年ニ支出スルノハ決シテ少額デハナ
1、唯三千萬圓ト云フ大數ニ比ベテ少額デアルト云フコトダケデアリマス、
其利用ト云フコトニ至テハ決シテ兩者ニ優劣ハナイノデアリマス、是ハ全ク
御議論······御意見ノ相違ト思ヒマス、ソレト十五校ニ〓究科ヲ置ク、是ニハ
決シテ高等學校ノ卒業生ヲ收容スル爲デハナイノデアリマス、御承知ノ如ク
專門學校令第七條ニ〓究科ヲ置クコトヲ得ル、豫科別科、〓究科ヲ置クコト
ヲ得ルト云フコトヲ最初ニ規定サレテ居ルノデアリマス、其研究科ヲ此條項
ニ依リテ十五校ニ置キマス、高等學校卒業生ヲ收容スル爲デナイ、先日ヲ山
川男ニ御答ヲシタ如ク、專門學校ノ卒業生ニ特殊的〓究ヲサセタイ、又此〓
員ニ常ニ〓究ノ便宜ヲ得ルガ爲ニ、ソレト同時ニ、其地方ノ向上等ニモ間接
ニモ效果ガアルト云フコトカラ、是等ヲ主要ナル目的ト致シテ、研究科ヲ置
ク譯デス、現ニ此條項ノ中ニアル、其條項ニ從テ置クノデアリマスカラ、ソ
レヲ强ヒテ私ハ議論ノアル譯ハナイト私ハ考ヘマス、ソレダケノコトヲ申上
ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=31
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032・岡田良平
○岡田良平君 モウ質疑ハ止サウト思ヒマシタガ、段々御辯明ガアリマスル
ト、ドウシテモ疑ガ解ケマセヌカラ、モウ一ツ伺フコトニ致シマス、三千萬
圓ヲ支出スルノハ普通〓育ノ退步ヲ防グ爲デアルト云フ、是ハ分リマシタ、
併シ私ノ方ノ希望スル所ハ、專門〓育ヲ進メテ行クニハ、ソレト同時ニ普通
〓育ノ退步ヲ防グダケデナク、積極的ニ進メテ貰ヒタイ、專門〓育モ進メル
ト同樣ニ、普通〓育モ進メテ參リマシタナラバ、是ハ調和ヲ得テ居ルト申シ
テ宜シイ、併ナガラ普通〓育ノ退步ヲ防グダケデ、消極的ノ手段ニ止メテ置
イテ、專門〓育ダケヲ馬力ヲカケテ進メテ行クト云フノハ、權衡ヲ失スルコ
トニハナラヌカト申シタノデアリマス、ソレカラ專攻科ノ御話デアリマス、
成程是ハ專門學校令ヲ制定サレマシタ當時ニ、〓究科ヲ置クコトヲ得ルト云
フ簡條ハアルノデアリマス、其箇條ガアルニモ拘ハラズ今日マデ何レノ處ニ
於テモ殆ド其研究科ノ必要ヲ認メマセヌノデ、殆ド一校モ研究科ト云フモノ
ヲ設置シテ居ラナカッタノデアリマス、然ニ今囘ノ計畫ハ同時ニ十六校モ專
攻科ヲ置ク、斯ウ云フ話デアリマス、是ハ私ハ善イ惡イヲ申スノデハナイ、善
シ惡シノ論ハ是ハ他日申シタイノデアリマスガ、例ヘバ之ヲ善イコトトイタ
シマシテモ、普通〓育ニ對シテモ努力ト奮勵ヲ致シテ見マシタナラバ如何ナ
モノデゴザイマセウカ、此專門學校令制定ノ當時カラ定ッタ所ノ此研究料ト
云フモノヲ、普通〓育ハ度外視シテ、之ヲ施設スルコトヲ構ハズニ置イテ、
此際十六校ヲ同時ニヤラナケレバナラヌト云フ必要ハ何處ニアルノデアリマ
セウカ、例ヘバ其必要アリトシマシテモ、少ナクモ普通〓育ノ進步發展ヲ圖
ルト云フコトニ對シテ權衡ヲ得テ居ラヌト云フコトハ、是ハ鎌田文相ト雖モ
御認メニナラナケレバナラヌダラウト思ヒマス、ソレハ御認メニナルノデア
リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=32
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033・鎌田榮吉
○國務大臣(鎌田榮吉君) 普通〓育ニ付テ力ノ盡シ方ガ足リナイ、〓育ノ低
下ヲ防グト云フ消極的デナク積極的ノ施設ヲシナイカト云フ御說ノヤウデア
リマスケレドモ、三千萬圓デハ、サウ大シタ施設ハ出來マセヌ、併ナガラ第
一ニ義務〓育ノ低下ヲ防ギ、足ラザル收容ヲ增スト云フコトハ是ハ何ヨリモ
先ニ此增額ニ依テ圖ラナケレバナラヌ、多少地方ノ狀態ニ依テソレソレ異ナ
リマセウガ、大體サウ云フコトニナラナケレバナラヌト思ヒマス、要スルニ
低下ヲ防グト云フノモ進步ヲ圖ルト云フノモドッチニシテモ、是ハ言葉ノ
違ヒデアリマス、事柄ハ同ジデモ、實質上ハ同ジコトデアリマス、一尺ノモ
ノヲ八寸ニ下ゲヌノモ、八寸ノモノヲ一尺ニ延バスノモ矢張同ジコトデアリ
やっ、ソレハ言葉ノ違ヒデアリマス、要スルニ積極的トカ消極的トカ云フモ
ノハ、言葉ノ違ヒデ實質ニ於テ何等ノ違ヒハナイ、而シテ高等〓育ニ矢張力
ヲ盡シ過ギルト斯ウ云フ御說デアリマスケレドモ、主ニ金ノ點カラシテ仰セ
ニナルヤウデアリマスケレドモ、併ナガラ今申シマス通リ一千萬圓ヲ六箇年
ニ七拾萬圓トカ八拾萬圓トカニ致シタナラバ(聽取シ難シ)サウ云フ譯ニハ行
カヌ、況ヤ〓究科ヲ十五校ト云フコトヲ大キク仰ッシヤルガ、是ハ千萬圓ノ中
ノホンノ三分ノ一カ四分ノ一カ、是ハホンノ少シノ金デ出來ルコトデアリマ
スカラ、普通〓育ニ對スル害ヲ及ボシテマデモ、高等〓育ヲ擴張スルトカ振
興スルトカ云フコトデハナイ、矢張是ダケノコトヲ致サナケレバ今ノ缺陷ヲ
補フコトハ出來ナイト云フコトハ事實デアリマス、是ダケノコトヲ申シテ置
キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=33
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034・岡田良平
○岡田良平君 私ハ質問ヲ致シマスト益〓分ラナクナッテ參リマスカラ、他日
ノ機會ニ讓リマス、今日ハ是デ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=34
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035・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 唯〓問題ニ相成ッテ居リマスル議事日程ノ第三ハ、其
ノ特別委員ノ數ヲ十五名トセラレムコトノ動議ヲ提出イタシマス、何卒御賛
成ヲ請ヒマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=35
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036・八條隆正
○子爵八條隆正君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ本案ノ委員ノ數ヲ十五名トスル說
ニ、同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=37
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038・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=38
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039・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 次ハ御異議ガナケレバ日程第四ヨリ第八マデ一括
シテ說明ヲ煩ハシマス、日程第四、所得稅法中改正法律案、第五、營業稅法
中改正法律案、第六、石油消費稅法廢止法律案、第七、賣藥稅法中改正法律
案、第八、印紙稅法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
所得稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正十二年二月十日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議員長公爵徳川家達殿
(小字ハ衆議院ノ修正文、1ハ同削除ノ符號ナリ)
所得稅法中改正法律案
所得稅法中左ノ通改正ス
第二條及第三條中、「銀行定期預金又ハ定期預金ノ性質ヲ有スル銀行預金」
ヲ「又ハ銀行預金」三郎八
第二十六條中「申出テタルトキハ」ヲ「申出テタルトキハ前二項ノ規定ニ
拘ラス」ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
所得調査委員會閉會後第三種ノ所得ノ決定ニ付脫漏アルコトヲ發見シタ
ルトキハ其ノ決定ヲ爲スヘカリシ年ノ翌年ヨリ三年以内ニ於ケル所得調
査委員會ノ調査ニ依リ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定スルコトヲ得
第二十七條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ハ前條第二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十八條中「又ハ北海道、沖繩縣ノ區」ヲ削ル
第三十條中「又ハ北海道、沖繩縣ノ區」ヲ削リ同條ニ左ノ一頂ヲ加フ
町村組合ニシテ町村ノ事務ノ全部又ハ役場事務ヲ共同處理スルモノハ之
ヲ一町村ト看做ス
第三十二條ニ左ノ一項ヲ加フ
第三十條第二項ノ町村組合ニ付テハ其ノ組合管理者ヲ町村長ト看做ス
第七十三條ノ二政府ハ法人ノ株主又ハ社員ノ一人及其ノ親族、使用人其
ノ他特殊ノ關係アリト認ムル者ノ株式金額又ハ出資金額ノ合計カ其ノ法
人ノ株式金額又ハ出資金額ノ二分ノ一以上ニ相當スル法人ニ付テハ其ノ
留保シタル所得中左ノ各號ノ一ニ該當スルモノニ限リ之ヲ株主又ハ社員
ニ配當シタルモノト看做スコトヲ得
一事業年度末ニ於ケル積立金及其ノ事業年度ノ所得中留保シタル金額
ノ合計金額カ其ノ事業年度末ニ於ケル拂込株式金額又ハ出資金額ノ
二分ノ一ニ相當スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ニ屬スル其
ノ事業年度ノ所得中留保シタル金額ヨリ其ノ事業年度ニ於ケル所得
ノ二十分ノ一ニ相當スル金額ヲ控除シタル金額
二各事業年度所得中留保シタル金額カ其ノ事業年度ニ於ケル所得ノ十
分ノ三ニ相當スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額
各事業年度所得中留保シタル金額カ其ノ事業年度末ニ於ケル拂込株式金額又ハ出資金額ニ對シ
年三十分ノ一ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超過セサルモノニ付テハ前項第二號ノ規定ヲ適用
セス
第七十三條ノ三前條ノ法人ト其ノ株主又ハ社員及其ノ親族、使用人其ノ
他特殊ノ關係アリト認ムル者トノ間ニ於ケル行爲ニ付所得稅通脫ノ目的
アリト認ムル場合ニ於テハ政府ハ其ノ行爲ニ拘ラス其ノ認ムル所ニ依リ
所得金額ヲ計算スルコトヲ得
第七十三條ノ四政府ハ前二條ノ規定ヲ適用セムトスルトキハ所得審查委
員會ノ決議ニ依リ之ヲ決定ス
第七十四條第一項中「通脫シ」ノ下ニ「又ハ連脫セムトシ」ヲ加ヘ同條第
二項中「第一項」ヲ「第二項」ニ改ム
附則
本法ハ大正十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行地ニ於テ支拂ヲ受クル銀行預金利子中從前ノ規定ニ依リ第三種所
得トシテ計算スヘキモノニ付テハ支拂期ノ本法施行前ニアルモノニ限リ大
正十二年分第三種所得トシテ計算ス
營業稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正十二年二月十日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家逹殿
(小字ハ衆議院ノ修正文、ーハ同削除ノ符號ナリ)
營業稅法中改正法律案
營業稅法中左ノ通改正ス
第五條ノ二中「私設鐵道法、輕便鐵道法」ヲ「地方鐵道法」ニ改ム
第十二條第一項ヲ左ノ如ク改ム
營業稅ハ左ノ課稅標準及稅率ニ依リ每年之ヲ賦課ス
業名課稅標準稅率
卸賣一甲萬分ノ八
賣上金額~乙萬分ノ十一
物品販賣業小賣甲萬分ノ二十
~乙1950年
從業者一人每ニ二圓
銀行業、保險業、無盡業從資本金者額千分ノ三、五
業一人每ニ二圓
金錢貸付業、物品貸付業從運轉資本金者額千分ノ四、八
業一人每ニ二圓
製造業印刷業資本金額千分ノ三、三
出版業寫眞業從業者一人每ニ二圓
從業者ノ內職工勞役者一人每ニ五十錢
運送業、運河業、棧橋業、船資本金額千分ノ三、五
舶碇繫場業貨物陸庫場業從業者一人每ニ二圓
從業者ノ內職工勞役者一人每ニ五十錢
建物賃貸價格千分ノ五十七
倉庫業從業者一人每ニ二圓
從業者ノ內職工勞役者一人每ニ五十錢
收入金者額千分ノ十四
鐵道業從業一人每ニ二圓
從業者ノ內職工勞役者一人每ニ五十錢
請負金額千分ノ二、八
請負業從業者一人每ニ二圓
從業者ノ內職工勞役者一人每ニ五十錢
席貸業建物賃貸價者格千分ノ七十九
從業一人每ニ二圓
料理店業建物賃貸價者格千分ノ八十
從業一人每ニ二圓
族人宿業從建物賃貸價者格千分ノ五十
業一人每ニ二圓
周旋業、代理業、仲立從報償金者額千分ノ二十一
業問屋業、信託業業一人每ニ二圓
第十七條製造業ノ資本金額カ左ノ金額ノ十二割ニ相當スル金額ヲ超過ス
ルトキハ其ノ超過額ヲ課稅標準ヨリ控除ス
一前年ノ資本金額カ前前年ノ資本金額以下ナルトキハ前年ノ資本金額
二前年ノ資本金額カ前前年ノ資本金額ヲ超過スルトキハ前前年ノ資本
金額
第二十六條課稅標準ハ營業稅調査委員會ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決
定ス
調査委員會閉會後課稅標準ノ決定ニ付脫漏アルコトヲ發見シタルトキハ
其ノ決定ヲ爲スヘカリシ年ノ翌年ヨリ三年以内ニ於ケル調査委員會ノ調
査ニ依リ政府ニ於テ其ノ課稅標準ヲ決定スルコトヲ得
調査委員會閉會後營業者納稅義務アルコトヲ申出テ又ハ課稅標準ノ增加
アルコトヲ申出テタルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラス政府ニ於テ其ノ課稅
標準ヲ決定ス
第二十六條ノ二ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ハ前條第二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十六條ノ三中「又ハ北海道、沖繩縣ノ區」ヲ削ル
第二十六條ノ四調査委員ハ各選擧區ニ於テ之ヲ選擧ス
調査委員ヲ選擧スルトキハ同時ニ之ト同數ノ補闕員ヲ選擧スヘシ
第二十六條ノ五調査委員及補闕員ノ選擧區域ハ調査委員會ヲ置クヘキ區
域ニ依リ投票區及開票區ハ市町村ノ區域ニ依ル但シ市制第六條ノ規定ニ
依リ指定セラレタル市ニ在リテハ區ノ區域ニ依ル
町村組合ニシテ町村ノ事務ノ全部又ハ役場事務ヲ共同處理スルモノハ之
ヲ一町村ト看做ス
第二十六條ノ六選擧區域內ニ於テ營業シ其ノ年第十三條ノ申〓ヲ爲シ課
稅標準ノ決定ヲ受ケタル者ニシテ選擧人名簿ニ登錄セラレタルモノハ調
査委員及補闕員ヲ選擧シ又ハ調査委員若ハ補闕員ニ選擧セラルルコトヲ
得但シ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ此ノ限ニ在ラス
一無能力者
二破產若ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ復權セサル者又ハ身代限ノ處分ヲ受
ケ債務ノ辨濟ヲ了ヘサル者
三國稅滯納處分ヲ受ケタル後一年ヲ經サル者
四六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ又ハ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處
セラレタル者
五六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ニシテ其ノ刑ノ執行
ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
ノ二又ハ
六第三十四條乃至第三十四條ノ三ノ規定ニ依リ處罰セシシタル後五年
ヲ經サル者
其ノ年分課稅標準決定前選擧ヲ爲ス場合ニ於テハ前年營業稅ヲ納メ其ノ
年第十三條ノ申告ヲ爲シタル者ヲ以テ課稅標準ノ決定ヲ受ケタル者ト看
做ス
營業繼續ノ場合ニ於テハ前ノ營業者ノ爲シタル申〓若ハ納稅又ハ其ノ受
ケタル課稅標準ノ決定ハ後ノ營業者ノ爲シタル申告若ハ納稅又ハ其ノ受
ケタル課稅標準ノ決定ト看做ス
營業者カ法人ナル場合ニ於テハ選擧ニ關スル代表者ヲ定メ政府ニ申〓ス
ヘシ
調査委員ニ當選シタル者又ハ第一項但書ニ該當スル者ハ法人ノ代表者タ
ルコトヲ得ス
選擧人名簿ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條ノ七投票及開票ニ關スル事務ハ市區町村長又ハ戶長之ヲ擔任
シ選擧會ニ關スル事務ハ稅務署長之ヲ擔任ス
第二十六條ノ五第二項ノ町村組合ニ付テハ其ノ組合管理者ヲ町村長ト看
做ス
第二十六條ノ八稅務署長ハ調査委員及補闕員ノ選擧期日ヲ定メ之ヲ市區
町村長又ハ戶長ニ通知スヘシ
市區町村長又ハ戶長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ少クトモ選擧期日七日
前其ノ旨ヲ公示スヘシ
第二十六條ノ九選擧ハ無記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ調査委員及補闕員ノ各選擧ニ付選擧區域每ニ一人一票ニ限ル
選擧人ハ選擧ノ當日投票時間内ニ自ラ投票所ニ至リ被選擧人各一人ノ氏
名ヲ各別ノ投票用紙ニ記載シテ投票スヘシ但シ選擧區域ヲ異ニシ各別ニ
營業稅ヲ納ムル場合ニ於テハ代人ヲシテ投票セシムルコトヲ得
投票用紙ハ選擧ノ當日投票所ニ於テ之ヲ選擧人ニ交付ス
第二十六條ノ十市區町村長又ハ戶長ハ投票ヲ調査シ直ニ其ノ結果ヲ稅務
署長ニ報告スヘシ
第二十六條ノ十一稅務署長前條ノ報〓ヲ受ケタルトキハ選擧會ヲ開キ之
ヲ調查スヘシ
第二十六條ノ十二投票、開票及選擧會ニハ立會人ヲ立會ハシムヘシ
立會人ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條ノ十三投票ノ多數ヲ得タル者ヲ以テ當選人トス投票ノ數同シ
キトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
調査委員ニ當選シタル者同時ニ補闕員ニ當選スルモ補闕員タルコトヲ得
ス
第二十六條ノ十四調査委員及補關員ノ選擧終了シタルトキハ稅務署長ハ
常選人ノ氏名ヲ公示シ且之ヲ當選人及市區町村長又ハ戶長ニ通知スヘ
シ
市區町村長又ハ戶長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ當選人ノ氏名ヲ公示ス
ヘシ
第二十六條ノ十七調査委員及補闕員ノ任期ハ選擧期日ノ屬スル月ヨリ四
年トス但シ選擧區域ニ變更ヲ生シタル場合ニ於テハ其ノ任期ハ選擧區域
ニ變更ヲ生シタル日ノ屬スル月ヲ以テ終了スルモノトス
第二十六條ノ十九調査委員ニ闕員ヲ生シタルトキハ投票ノ最多數ヲ得タ
ル補關員ヨリ順次之ヲ補充シ投票ノ數同シキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
調査委員ニ闕員ヲ生シ之ヲ補充スヘキ補闕員ナキトキハ調査委員ノ補關
選擧ヲ行フ
第二十六條ノ二十中「補闕員ヨリ調査委員」ヲ「前條ノ規定ニ依リ調査委
員又ハ補闕員」三郎人
第二十六條ノ二十七中「五月三十一日」ヲ「三月三十一日」ニ改ム
第二十八條ノ一前條ノ請求アリタルトキハ營業稅審査委員會ノ決議ニ依
リ政府ニ於テ其ノ課稅標準ヲ決定ス
審査委員會ハ前條ノ請求ヲ爲シタル者ニ對シ營業ニ關スル事項ヲ質問ス
ルコトヲ得
第二十六條ノ二十八ノ規定ハ之ヲ審査委員會ノ決議ニ準用ス
第二十八條ノ二各稅務監督局所轄内ニ營業稅審査委員會ヲ置ク
審査委員會ハ左ノ審査委員ヲ以テ之ヲ組織ス
一收稅官吏中ヨリ大藏大臣ノ命シタル者三人
二稅務監督局所轄內各府縣又ハ北海道ニ於テ調査委員ノ互選シタル者
府縣ニ在リテハ各一人北海道ニ在リテハ四人
審査委員會、審査委員及其ノ補關員ニ關スル事項ハ本法ニ定ムルモノヲ
除クノ外命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八條ノ三調査委員ヨリ選擧セラレタル審査委員ニハ日當及旅費ヲ
給ス
第二十八條ノ四課稅標準中其ノ年ノ實蹟ニ依リ計算シタル額カ政府ノ決
定シタル額ノ二分ノ一ニ達セサルモノアルトキハ政府ハ營業者ノ請求ニ
因リ其ノ課稅標準ヲ更訂ス
第二十九條其ノ年ニ於ケル營業ノ利益カ其ノ年分營業稅額ニ達セサルト
キハ營業者ノ請求ニ因リ其ノ不足額ニ相當スル營業稅ヲ免除ス
前項ノ利益ノ計算ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第三十條前二條ノ規定ニ依リ課稅標準ノ更訂又ハ營業稅ノ免除ヲ受ケム
トスル者ハ翌年一月三十一日迄ニ之ヲ政府ニ請求スヘシ但シ法人ニ在リ
テハ前條ノ請求ニ限リ其ノ年十二月末日ヲ含ム事業年度終了後三十日以
內ニ請求スルコトヲ得
第三十一條前條ノ請求アリタルトキハ政府ハ其ノ處分ノ確定スルニ至ル
迄稅金ノ徵收ヲ猶豫スルコトヲ得
第三十一條ノ二營業者第二十八條ノ一ノ決定又ハ第二十八條ノ四若ハ第
二十九條ノ處分ニ對シ不服アルトキハ訴願又ハ行政訴訟ヲ爲スコトヲ得
第三十三條ノ二政府ハ同業組合其ノ他ノ營業者ノ團體ニ對シ營業稅ノ課
稅標準ニ關スル事項ヲ諮問スルコトヲ得
前項ノ諮問ヲ受ケタル團體ハ命令ノ定ムル所ニ依リ課稅標準ニ關スル調
書ヲ提出スヘシ
第三十四條第十三條ノ申告ヲ爲サス若ハ虛僞ノ申告ヲ爲シタル者、故意
ニ第三十二條ノ帳簿ノ記載ヲ怠リ若ハ虛僞ノ記載ヲ爲シタル者又ハ帳簿
ノ檢查ヲ拒ミタル者ハ五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第三十四條ノ三營業稅ノ調査又ハ審査ノ事務ニ從事シ又ハ從事シタル者
其ノ調査又ハ審査ニ關シ知得タル祕密ヲ正當ノ事由ナクシテ漏洩シタル
トキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十五條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第三十四條及前條ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
附則
本法ハ大正十二年三月三十一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第十二條、第十七條及
第二十八條ノ四乃至第三十一條ノ改正規定ハ大正十二年分營業稅ヨリ之ヲ
適用ス
營業稅調査委員及營業稅審査委員ニ關シテハ大正十二年五月十日迄ハ仍從
前ノ規定ニ依ル
第二十六條ノ二十七ノ改正規定中三月三十一日トアルハ大正十二年ニ限リ
五月十日トス
大正十二年三月末日ニ於テ任期ノ終了スヘキ營業稅調査委員及補闕員ノ任
期ハ大正十二年五月十日迄之ヲ延長ス
石油消費稅法廢止法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十二年二月十日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵徳川家達殿
石油消費稅法廢止法律案
石油消費稅法ハ之ヲ廢止ス
附則
本法ハ大正十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前外國ニ輸出若ハ朝鮮ニ移出ノ目的ヲ以テ消費稅ヲ納付セスシテ
製造場若ハ保稅地域ヨリ引取リ、消費稅ヲ納付シテ外國ニ輸出若ハ朝鮮ニ
移出シ又ハ消費稅ノ徵收ヲ猶豫シタル石油ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
賣藥稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十二年二月十日
衆議院議長奧繁三郞
貴族院議長公爵德川家達殿
賣藥稅法中改正法律案
賣藥稅法中左ノ通改正ス
第一條中「賣藥規則」ヲ「賣藥法」ニ改ム
第一條ノ二乃至第一條ノ六ヲ削ル
第二條、第三條、第五條及第十條中「賣藥印紙稅」ヲ「賣藥稅」ニ改ム
第十三條ノ二ヲ削ル
第十六條本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條
第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六
十六條ノ例ヲ用ヰス
第二十條ヲ削ル
附則
本法ハ大正十三年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前賦課スヘキ賣藥營業稅ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
印紙稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候
也
大正十二年二月十日
衆議院議長奧
貴族院議長公爵徳川家達殿
印紙稅法中左ノ通改正ス
第二條中「五圓」ヲ「十圓」ニ、「五十圓トナルトキハ五十圓」ヲ「百圓ヲ超ユル
トキハ百圓」ニ改ム
第三條削除
第四條左ニ揭クル證書、帳簿ニ關シテハ證書ハ一通每ニ、
年以內ノ附込ニ對シ左ノ印紙稅ヲ納ムヘシ
一貯金通帳、積金通帳及積金證書(貯蓄銀行法第一條
ノ貯金又ハ積金ニ付發スルモノニ限ル)
二產業組合ノ發スル貯金通帳
三產業組合又ハ住宅組合ノ發スル出資證劵
四農業倉庫證劵
五委任狀
六約束手形
七爲替手形
八銀行預金證書
九產業組合又ハ產業組合聯合會ノ發スル貯金證書
十產業組合聯合會ノ發スル出資證劵
+一船荷證劵
十二運送貨物引換證
十三倉庫證劵
十四保險證劵
十五株劵
十六債劵
十七相互保險會社ノ發スル基金證劵
十八株式申込證
繁三郎
帳簿ハ一冊一
錢
錢
十九社債申込證
二十地上權、永小作權又ハ地役權ニ關スル證書
二十一使用貸借、賃貸借、雇傭、寄託又ハ定期金ニ關
スル證書
二十二信託行爲ニ關スル證書
二十三無盡ニ關スル證書
二十四定款又ハ組合契約書
二十五權利ノ變更ニ關スル證書
二十六追認又ハ承認ニ關スル證書
二十七物品切手
二十八賣買仕切書
二十九物品又ハ有價證劵ノ賣買ニ關スル證書
三十送狀
三十一受取書
三十二金高記載ナキ證書
三十三擔保品差入證書及擔保品預證書
三十四通帳
三十五判取帳
第五條左ニ揭クル證書、帳簿ニ關シテハ印紙稅ヲ納ムルコトヲ要セス
一官廳又ハ公署ヨリ發スル證書、帳簿
二官廳又ハ公署ニ職ヲ奉スル者ノ職務上發スル證書、
三國庫金ノ取扱ニ關シ發スル證書
四慈善又ハ公共事業ノ爲ニスル寄附ニ關シ官廳又ハ公署ニ提出スル證
書
五小切手
六產業組合、產業組合聯合會又ハ住宅組合ノ發スル出資證劵ニシテ其
ノ記載金高十圓未滿ノモノ又ハ金高記載ナキモノ
七記載金高十圓未滿ノ約束手形及爲替手形
八記載金高十圓未滿ノ積金證書及銀行預金證書
九產業組合又ハ產業組合聯合會ノ發スル貯金證書ニシテ其ノ記載金高
十圓未滿ノモノ
三錢
二十五錢
帳簿
十記載金高一圓未滿ノ物品切手
十一記載金高十圓未滿若ハ金高記載ナキ又ハ非營業者ニ發スル賣買仕
切書
十二物品又ハ有價證劵ノ賣買ニ關スル證書ニシテ其ノ記載金高十圓未
滿ノモノ又ハ金高記載ナキモノ
十三記載金高十圓未滿若ハ金高記載ナキ又ハ運送契約ニ依ラサル送狀
十四記載金高十圓未滿若ハ金高記載ナキ又ハ營業ニ關セサル受取書
十五主タル債務ノ證書ニ併記シタル擔保契約書
十六手形及證劵ノ裏書又ハ之ニ併記シタル受取書
十七株劵又ハ債劵ニ記載シタル讓渡ノ證明書
十八手形ノ引受及保證
十九手形又ハ證劵ノ拒絕證書
二十手形又ハ證劵ノ複本及謄本
第十一條中「脫稅高二十倍ノ科料又ハ罰金ニ處ス」ヲ「證書、帳簿一箇每ニ
脫稅高二十倍ノ罰金又ハ科料ニ處ス但シ脫稅高二十倍ノ金額三圓ニ逹セサ
ルトキハ三圓ノ科料ニ處ス」ニ改ム
第十三條中「一圓九十五錢以下」ヲ「證書、帳簿一箇每ニ二圓」ニ改ム
第十四條本法ヲ犯シタル者ニハ刑法中犯罪ノ不成立、刑ノ減免、併合罪
及酌量減輕ノ例ヲ用ヰス但シ第十二條ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十四條ノ二證書、帳簿ノ作成名義人ノ代理人、戶主、一族族、同居者、
雇人等カ名義人ノ爲ニ作成スル證書、帳簿ニ關シ本法ニ違反シ之ヲ處罰
スヘキ場合ニ於テハ其ノ名義人ヲ處罰ス
附則
本法ハ大正十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前作成シタル證書又ハ帳簿ノ印紙稅ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
〔國務大臣市來乙彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=39
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040・市來乙彦
○國務大臣(市來乙彥君) 唯今議題ニ上リマシタ租稅ノ改廢ニ關シマスル法
律案ニ付キマシテ說明ヲ致シマス、一般ノ租稅制度ヲ改善スベシト云フコト
ガ從來ノ懸案ニ相成ッテ居リマスルノデアリマス、併ナガラ一般ノ稅制ヲ整
理イタシマスルト云フコトハ、其ノ範圍ガ極メテ廣汎デアリマスル爲ニ、
極メテ愼重ナル調査ヲ遂グルニアラザレバ、此問題ヲ解決スルコトハ困難デ
アルノデゴザイマス、從テ政府ハ一般ノ稅制ヲ整理スルニ付キマシテ、未ダ
適當ナル成案ヲ持ッテ居リマセヌコトヲ甚ダ遺憾ニ考ヘテ居リマス、併ナガ
ラ現行ノ稅法ノ中ニ付テ見マスノニ、著シキ缺點ガアルモノガアリマシテ、
之ニ對シマシテハ少クモ應急ノ整理ヲ必要ト認メマシタノデアリマシテ、
此趣意ニ依リマシテ、此處ニ稅法ノ改廢ニ關スル法律案ヲ提出イタシタ次第
デアルノデゴザイマス、各法律案ニ亙リマシテ其內容ノ大體ヲ說明ヲ致シマ
ス、現行ノ所得稅法ニ依リマスレバ、申スマデモ無ク個人ニ對スル課稅ト、
法人ニ對スル課稅トノ間ニ相違ガアル點ガゴザイマス、是ガ爲ニ近來所謂
保全會社ト稱スルモノ、即チ家族的ノ會社ヲ組織イタシマシテ、之ニ依リ
テ、所得稅ノ輕減ヲ得ムコトヲ圖ルト云フ傾向ガ出テ居ルノデアリマス、即
チ左樣ナ會社ニ於キマシテハ、其所得ヲ會社ニ留保イタシマシテ、株主ヤ社
員ニ對シマスル配當所得ノ綜合課稅ヲ免レルト云フ傾向ヲ見ルコトニ相成
ルノデゴザイマス、又甚シキ場合デアリマスレバ其會社ト其社員又ハ株主
トノ間ニ種々ノ取引ヲ致シマシタ形ヲ拵ヘマシテ、之ニ依リマシテ所得稅
ノ輕減ヲ得ムコトヲ圖ルヤウナ手段モ出テ參ッテ居ルノデアリマス、是等ノ
弊害ハ成ベク急イデ之ヲ改メルコトガ必要デアルト考ヘマシテ、此修正案ニ
於キマシテハ是等ノ會社ニ於ケル留保所得ノ或程度以上ノモノニ致シマシ
テハ、是ガ配當サレタルモノト見做スコトニ致シマシテ、適當ニ課稅ヲスル
コトニ立テタノデアリマス、又現行法ニ依リマスレバ、銀行預金ニ付キマシ
テハ、定期預金ノ利子ノミガ第二種ノ取扱ヲ受ケテ居リマシテ、其他ノ預金
ニ付キマシテハ貯蓄預金ヲ除キマス外ハ總テ其利子ノ第三種ノ所得トシテ綜
合課稅ヲ適用スルコトニ相成ッテ居リマス、然ル所ガ實際上ニ於キマシテ
ハ、此銀行預金ノ利子ヲ第三種ノ所得トシテ申告ノアリマスルコトガ殆ド稀
デゴザイマス、殆ド其申告ヲ見ルコトガ出來ナイト云フ今日ノ實情ニアルノ
デゴザイマス從テ銀行預金ノ中定期預金ヲ除キマシテハ殆ド稅法ガ適用
サレテ居リマセヌト云フ今日ノ現狀ニアルト申サレナケレバナリマセヌ、是
ハ申スマデモナク負擔ノ權衡ヲ失ッテ居ルノデアルノデゴザイマス、加之近
來ハ種々ノ手段ニ依リマシテ、實質ニ於テハ定期預金デアルト認メマスルモ
ノニ付キマシテモ、是ガ定期預金デナイト云フ形ニ裝ヒマスルト云フヤウナ
形モ現レテ居ルノデアリマス、ソレデ今囘ノ改正案ニ依リマシテハ、貯蓄預
金ヲ除キマスル外ハ、銀行預金ノ全部ヲ第二ノ所得トシテ、其利子ニ對スル
課稅ヲ致スコトニ立案ヲ致シマシタノデアリマス、次ニ營業稅ニ付キマシテ
申述ベマスレバ、御承知ノ如クニ、營業稅ハ其課稅標準ニ付キマシテモ、
亦調査ノ方法ニ付マシテモ、最モ議論ノアリマスル稅目デアリマス、今囘ノ
修正ニ當リマシテハ、出來マスルナラバ、根本的ニ改正ヲスルコトガ適當デ
アルト考ヘタノデアリマス、併ナガラ左樣ナ根本的ノ整理ヲ致シマスルニ
ハ前ニ申シマシタ一般ノ稅制整理ト待ツニ非ザレバ、到底出來難イコトデ
アルト存ジマス、從テ今回ノ修正ニ於キマシテハ、應急的ノ整理トシテ、立
案ヲ致ス外ナイト考ヘマシテ、其意味ノ提案ヲ致シマシタ次第デアリマス、
即チ營業稅ノ標準デアリマスル所ノ建物賃貸價格ハ、二三ノ業態ヲ除キマシ
テ其外ノ業態ノモノニ付キマシテハ、必シモ是ガ負擔力ノ大小ニ比例スルモ
ノデハナイト考ヘマスルノデアリマシテ、之ニ依リマシテ、建物賃貸價格
ヲ課稅標準ヨリ除キマスルコトニ致シマシタノデアリマス、其結果ト致シマ
シテ、尙ホ全體ノ業態ノ上ノ權衡ヲ考ヘマシテ、各業態ニ對スル稅率ニ變更
ヲ加ヘマシテゴザイマス、又現行法ニ依リマスレバ、課稅標準ノ減損更訂ヲ
致シマシタ場合ニ、新ニ定マリマシタ課稅標準ガ法律ニ定メラレテ居リマス
ル所ノ最低限度ヨリモ、以下ニ降ルコトガアリマシタト致シマシテモ、尙
ホ稅金ヲ賦課スルコトニ相成ッテ居ルノデアリマス、併ナガラ是ハ法律ガ課
稅標準ノ最低限度ヲ定メマシタ趣意ニハ適ハナイト申サナケレバナリマセ
ヌ、故ニ此場合ニハ課稅ヲ致サナイト云フコトニ改メマシテゴザイマス、
又現行法ニ依リマスレバ、營業所得ガ全然アリマセヌト云フ場合ニ於テモ、
矢張リ課稅ヲ致サネバナラヌコトニ相成ッテ居リマス、是ハ適當デナイト云
フ考ヲ以チマシテ、所得ガアリマセヌケレバ、課稅ハ致サナイト云フコトニ
スルコトヲ適當ト考ヘマシテ、左樣ニ改メマシタノデアリマス、又營業ニ
對シマシテ、調査ノ公平確實ヲ圖リマス爲ニ、一ツノ手段ト致シマシテ、營
業者ノ團體ニ對シマシテ、課稅標準ニ關スル事柄ノ諮問ヲスルト云フコトニ
新ナル立方ヲ、立案ヲ致シマシテゴザイマス、又調査委員竝ニ審查委員ノ制
度ヲ所得稅ト大體ニ同ジヤウニ致シマスルコトガ適當デアルト考ヘマシテ
是モ左樣ノ修正ヲ致シマシタノデアリマス、次ニ賣藥稅法ノ修正ニ付テ申述
ベマスレバ、現行ノ賣藥營業稅ハ藥劑ノ一方每ニ、製造定價ノ總額ニ對シ
テ、稅額ヲ定ムルコトニ相成ッテ居リマス、從テ一箇年間ノ製造定價ノ總額
ガ、相同ジキモノノ間ニアリマシテモ、其方數ガ多イモノト、少イモノトノ
間ニハ、課稅ノ金額ガ異ッテ居ルノデアリマス、又一方劑ガ十萬圓以上ノモ
ノデアリマスレバ、其製造高ガ如何ニ多額デアリマシテモ、十萬圓ノモノト
同一ノ課稅ヲ致スコトニ相成ッテ居リマス、是等ガ相當ニ公平ヲ缺イテ居ル
ト認メナケレバナラヌト考ヘマス、殊ニ賣藥ノ製造販賣ニ對シマシテ、課
稅ヲ致シマスル關係ガ他ノ物品ノ製造販賣ニ對シテ、課稅ヲ致シマスル關係
ト、別々ニ稅法ノ取扱ヲ致サネバナラヌト云フコトハナイト考ヘマスルノデ
アリマス、此考ヨリ致シマシテ、今回ノ修正案ニ於キマシテハ、賣藥營業稅
ヲ廢止イタシマシテ、賣藥ノ製造販賣ニ對シマシテハ、一般ノ營業稅法ヲ適
用イタシマスルコトニ改メルコトニ致シマシタ、次ニ印紙稅法ニ付テ申述
ベマスレバ、御承知ノ如ク、現行ノ印紙稅法ハ明治三十二年ニ制定イタサレ
マシタモノデゴザイマス、爾來多數ノ年所ヲ經過シテ居リマシテ、其間ニ申
スマデモナク、經濟事情ガ大イニ變遷ヲ致シテ參リマシタ、從テ現行ノ印
紙稅法ハ、今日ノ時勢ニ適シナイト考ヘマスル點ガ多々アリマスルノデゴ
ザイマス、故ニ今囘ノ修正案ニ於キマシテハ、或ハ課稅ノ最低限度ヲ引上ゲ
ルコトニ致シマシタシ、又種々ノ證書ニ對シマスル稅率ヲソレ〓〓適當ニ
改メルコトニ致シタノデアリマス、次ニ石油消費稅法ニ付テ申述ベマスレ
バ、申ス迄モナク石油消費稅ハ燈火用ニ供シマスル石油ノ消費ニ對シテ課稅
イタシマスルモノデアリマシテ、近來電氣ヤ瓦斯ノ發達ニ伴ヒマシテ、歲ヲ
追フテ石油ノ燈火用ニ供セラレマスルモノヽ需要ガ減少シテ參リマスルノデ
アリマシテ、其稅額モ年々減少ヲ見ルト云フヤウナ有樣デアルノデゴザイマ
ス且ツ燈火用トシテ石油ヲ消費イタシマスル者ハ、〓シテ下層ノ人〓デア
ルノデゴザイマス、又殆ド山間僻地ノ人〓ニ限ラレテ居リマスル狀況デアル
ノデゴザイマス、從テ此ノ石油消費稅ハ大體ニ於テ細民ノ負擔スル所デアル
ト申シテモ宜シイト考ヘマス、是等ノ關係ヨリ致シマシテ今囘ハ之ヲ廢止ス
ルコトニ致シマシタ次第デアリマス、政府ノ提出案ハ以上ノ通リデゴザイマ
シテ、之ニ對シマシテ衆議院ニ於テ二三ノ修正ガ加ヘラレマシテゴザイマ
ス、併ナガラ是等ノ修正ハ政府ノ原案ノ趣旨ニ對シテ格別ノ影響ヲ及ボスモ
ノデハナイノデアリマス、隨テ政府ト致シマシテハ、衆議院ノ修正ニハ同
意ヲ表スルコトト致シマシタノデアリマス、尙ホ各法律案ノ內容ノ詳細ノ點
ニ付キマシテハ、委員會ニ於テ十分ニ說明ヲ致シマスル考デコザイマス、
何卒十分ニ御審議ノ上ニ協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=40
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041・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ通告順ニ依リマシテ質疑ヲ許ス筈デゴザイ
マスガ、本日ハ都合上、諸君ニ於テ御異議ガナケレバ、延會イタシタイト考
ヘマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 議長ノ選定イタシマシタ特別委員ノ氏名ヲ書記官
ヲシテ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
明治四十年法律第二十一號中改正法律案特別委員
子爵牧野忠篤君子爵渡邊千冬君男爵目賀田種太郞君
男爵南岩倉具威君男爵東〓安君若槻禮次郞君
室田義文君菅原通敬君橫山章君
醫師法中改正法律案特別委員
伯爵中川久任君子爵西大路吉光君子爵米津政賢君
北里柴三郞君男爵今園國貞君男爵池田長康君
西久保弘道君永田秀次郞君根津啓吉君
市町村義務〓育費國庫負擔法改正法律案特別委員
侯爵蜂須賀正韶君子爵藪篤麿君子爵八條隆正君
大久保利武君木場貞長君江木千之君
和田彥次郞君男爵神田乃武君男爵千秋季隆君
男爵〓水資治君木內重四郞君高田早苗君
田所美治君鎌田勝太郞君山田歛君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=42
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043・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 明後十五日ノ議事日程ハ決定次第御通知ニ及ビマ
ス、本日ハ是ニテ散會イタシマス
午後零時二十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004603242X01119230213&spkNum=43
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