第46回帝国議会　衆議院　本会議　第10号　大正12年2月8日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  大正十二年二月八日（木曜日）午後一時十五分開議
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  　議事日程　第九號　大正十二年二月八日
  　　　午後一時開議
  　第一　簡易生命保險特別會計に於ける土地建物の買入又は建物の建設に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三　樺太に於ける鹽專賣に關する法律案（政府提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第五　東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠の各特別會計合併に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第六　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第七　明治四十年法律第二十一號中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第八　農業組合法案（土井權大君提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第九　水先法中改正法律案（阪上貞信君提出）　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十　恩給法改正に關する建議案（高木正年君外二名提出）
  　第十一　文武官竝巡査看守等恩給増額に關する建議案（横田千之助君外十一名提出）
  　第十二　恩給法改正に關する建議案（三浦得一郎君提出）
  　第十三　霧島山國立公園設置に關する建議案（日野辰次君外三名提出）
  　第十四　奈良縣吉野郡を中心とする國立公園設定に關する建議案（岩本平藏君外五名提出）
  　第十五　大日光國立公園設置に關する建議案（松岡俊三君外五名提出）
  　第十六　日足鐵道速成に關する建議案（松岡俊三君提出）
  　第十七　自由港設置に關する建議案（野田文一郎君外四名提出）
  　第十八　産業組合中央金庫設置に關する建議案（土井權大君提出）
  　第十九　銀行預金者救濟に關する建議案（板野友造君提出）
  　第二十　氣仙沼前谷地間鐵道速成に關する建議案（高橋長七郎君外八名提出）
  　第二十一　肝屬川改修速成に關する建議案（津崎尚武君外二名提出）
  　第二十二　米穀專賣法制定に關する建議案（小菅劍之助君外一名提出）
  　第二十三　八幡濱中村間鐵道速成に關する建議案（矢野丑乙君外三名提出）
  　第二十四　國有林野所在の府縣市町村に對し交付金下付に關する建議案（八田宗吉君外六名提出）
  　第二十五　帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案（八田宗吉君外六名提出）
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• 001・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　諸般ノ報告ヲ致サセマス
  〔原田書記官朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  樺太ニ於ケル鹽專賣ニ關スル法律案
  東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ各特別會計合併
  ニ關スル法律案
  (以上二月六日提出)
  陪審法案
  恩給法案
  (以上二月七日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  中込高崎間鐵道敷設ニ關スル建議案
  提出者佐藤寅太郞君小坂順造君
  春日俊文君花岡次郞君
  塚原嘉藤君
  (以上二月七日提出)
  筑波山國立公園設置ニ關スル建議案
  提出者鈴木錠藏君
  行政栽判制度改革ニ關スル建議案
  提出者〓瀨一郞君
  (以上二月七日提出)
  決議案(陸軍々備ノ整理縮少ニ關スル件)
  提出者安達謙藏君關和知君
  賴母木桂吉君田中善立君
  三木武吉君
  (以上二月六日提出)
  決議案(內閣不信任ノ件)
  提出者安達謙藏君關和知君
  賴母木桂吉君田中善立君
  三木武吉君
  (以上二月七日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
  西伯利駐兵ニ關スル質問主意書
  提出者野村嘉六君
  (以上二月六日提出)
  一去六日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  衆議院議員森下龜太郞君提出財界動搖ニ關スル
  質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員横山勝太郞君提出司法權ノ運用ニ關
  スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員木下甚三郎君提出米穀法ニ依リ食料
  ノ安定農民ノ困憊防止ニ關スル質問ニ對スル答辯
  書
  衆議院議員〓水留三郞君提出米國ノ日本人歸
  化權ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  財界動搖ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十一年十二月二十七日
  提出者森下龜太郞
  賛成者矢島專平
  外三十名
  財界動搖ニ關スル質問主意書
  -近時財界ニ於ケル不祥事頻出シ世道人心ニ及ホ
  ス影響鮮シトセス之レ素ヨリ財界當務者ノ無自覺
  ニ原由スルコト勿論ナリト雖同時ニ政府當局モ亦
  監督不行屆ノ貴ヲ免レサルカ如シ政府ノ所見如何
  二政府ハ其ノ職責上急速ニ徹底的救濟ノ方策ヲ確
  立シ之ヲ公表シ以テ一面財界ノ動搖ヲ防止スルト
  同時ニ他面一般民心ノ安定ヲ圖ルヲ刻下ノ喫緊
  事ナリト認ム政府ノ所見如何
  右及質問候也
  大正十二年二月六日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員森下龜太郞君提出財界動搖ニ關スル質問
  ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員森下龜太郞君提出財界動搖ニ關スル質
  問ニ對スル答辯書
  一近時財界ニ不祥事ノ生シタルコトハ誠ニ遺憾トスル所
  ナリ政府ニ於テモ此等不祥事ヲ可成未然ニ防止ス
  ルコトニ付テハ常ニ最善ノ努力ヲ怠ラサル所ナルモ充
  分之レカ目的ヲ達セムトスルニハ主トシテ檢査監督ノ
  方法ニ依ラサルヘカラス然ルニ現在此等檢査ニ從事
  スル官吏ノ數ハ甚タ僅少ニシテ金國二千有餘ノ金融
  機關ニ對シテハ遺憾ナカラ充分ニ其ノ檢査ノ周到ヲ
  期スル能ハス今後漸次檢査機關ノ充實ヲ計ルト同時
  ニ金融機關ノ合同ヲ勸メ當業者ノ覺醒ヲ促ズ等必要
  ナル施設ヲ講セムトス
  二政府ハ當業者ヲ督勵シテ自ラ速ニ整理ノ實ヲ擧ケシ
  メムコトニ努ムルト同時ニ特殊銀行ヨシテ不動產貸付
  ノ肩代リヲ爲サシムル等夫々適當ノ方策ヲ講シツヽア
  リ
  右及答辯候也
  大正十二年二月六日
  大藏大臣市來乙彦
  司法權ノ運用ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十一年十二月二十八日
  提出者橫山勝太郞
  賛成者鈴木富士彌
  外三十一名
  司法權ノ運用ニ關スル質問主意書
  近時司法權ノ運用甚タ公明ヲ關キ天下多ク疑惑ヲ懷
  ク者アリ曰ク檢擧ノ方法不徹底ニシテ不公平ナリ曰ク
  無用ノ拘禁ヲ爲シ或ハ必要アル拘禁ヲ爲サス曰ク保釋
  貴付ニ吝ナリ曰ク刑ノ量定平衡ヲ失ス曰ク檢事ハ專橫
  ナリト之レ司法官ノ素質ノ低級ナルニ因ル乎或ハ陰險
  ナル或勢力ノ壓迫干渉ニ因ル乎抑亦既成制度ノ非ナル
  モノアルカ爲ニ然ル乎本員等ハ由來嚴正獨立ナルヘキ司
  法權ノ現實ノ行用ニ關シ大ナル不安ヲ感シ國家ノ爲ニ
  深憂ニ堪ヘサルモノアリ現政府ハ司法權ノ神聖ト獨立
  ニ關シ如何ナル所見ヲ有スル乎
  右及質問候也
  大正十二年二月六日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議院議長奥繁三郞殿
  衆議院議員橫山勝太郞君提出司法權ノ運用ニ關スル
  質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員横山勝太郞君提出司法權ノ運用ニ關ス
  ル質問ニ對スル答辯書
  司法權ノ運用ハ最モ公正ニ行ハレ質問主意書ニ掲クル
  カ如キ事實アルヲ認メス若シ司法權ノ運用公明ヲ關ク
  カ如キ疑惑ヲ懷ク者アリトセハ是レ恐ラクハ事ノ誤解ニ
  基クモノナルベシ政府ハ常ニ司法權ノ神聖ト獨立トヲ尊
  重シ倍々其ノ光輝ヲ發揚セシメムコトヲ期セリ
  右及答辯候也
  大正十二年二月六日
  司法大臣岡野敬次郎
  米穀法ニ依リ食料ノ安定農民ノ困憊防止ニ關スル質
  問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年一月二十三日
  提出者木下甚三郞
  賛成者廣岡字一郞
  外三十四名
  米穀法ニ依リ食料ノ安定農民ノ困憊防止ニ關スル
  質問主意書
  米穀法ニ依リ食料ノ安定農民ノ困憊ヲ防止スル所期ノ
  目的ヲ達成スルコトヲ得ルヤ當局ノ所見如何
  右及質問候也
  大正十二年二月六日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議院議長奥繁三郞殿
  衆議院議員木下甚三郞君提出米穀法ニ依リ食料ノ安
  定農民ノ困憊防止ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
  進候
  (別紙)
  衆議院議員木下甚三郞君提出米穀法ニ依リ食料ノ
  安定農民ノ困憊防止ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  米穀法ノ運用ニ依リ米穀生產ノ過不足ヨリ生スル需給
  ノ不均衡ヲ調節シ延イテ米價ノ急激ナル變動ヲ緩和シ
  以テ〓糧ノ安定ニ資スルト同時ニ農民ニ對シ生產過剩
  ニ依リテ特ニ生スルコトアルヘキ困憊ヲ防止シ得ルモノト
  認ム
  右及答辯候也
  大正十二年二月六日
  農商務大臣荒井貴太郞
  米國ノ日本人歸化權ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年一月二十四日
  提出者〓水留三郞
  贊成者石井〓二
  外三十名
  米國ノ日本人歸化權ニ關スル質問主意書
  -米國大審院カ日本人ノ歸化權ヲ否認セルニ對シ政
  府ハ如何ナル處置ヲ採ラレシヤ
  二日本人ノ米國歸化權ニ對シ政府ハ如何ニ考慮セラ
  レツツアリヤ
  右及質問候也
  大正十二年二月六日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  衆議院議員〓水留三郞君提出米國ノ日本人歸化權ニ
  關スル質問ニ對シ別紙各辯書差進候
  (別紙)
  衆議院議員〓水留三郎君提出米國ノ日本人歸化
  權ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  -米國大審院ノ歸化判決ニ對シ政府ハ何等容喙ス
  ヘキ餘地ヲ認メス
  二自國民ノ歸化ハ外國ニ對シ强要スヘキモノニアラス
  從テ政府ハ邦人ノ爲歸化權ノ附與ヲ米國政府ニ求ム
  ル意思ヲ有スルモノニアラサルモ歸化法ノ規定ヲ轉用
  シ本邦人ニ對スル差別的待遇ヲ與フルハ政府ノ常ニ
  遺憾トスル所ニシテ適當ナル機會ニ之カ解決ヲ講シタ
  キ所存ナリ
  右及答辯候也
  大正十二年二月六日
  外務大臣伯爵内田康哉
  一去六日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提
  出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
  (第一號)大正十一年度歳入歳出總豫算追加案
  〔左ノ報〓ハ朗續ヲ經サルモ參照ノ爲玆ニ揭載ス〕
  一議員ノ異動左ノ如シ
  東京府第九區選出議員秋乕太郎君ノ補闕トシテ中
  原德太郞君當選セラレタリ
  一昨七日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
  第六部選出豫算委員橋本喜造君(鈴木富士彌君補
  關
  第七部選出豫算委員古屋慶隆君(野田文一郞君補
  關
  一今八日所得稅法中改正法律案外四件委員近藤達
  兒君辭任ニ付其ノ補關トシテ大口喜六君ヲ議長ニ於
  テ選定セリ

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• 002・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　諸君、一昨日本院ノ議決ニ
  係リマスル、大勳位貞愛親王殿下ニ奉リマスル弔辭ハ、卽日
  宮家ニ參邸致シマシテ、捧呈ヲ致シマシテゴザイマス、此段
  御報告申上ゲテ置キマス-是ヨリ會議ヲ開キマス、諮問
  事項ガアリマス、第九部選出決算委員野村嘉六君、第七
  部選出豫算委員小鹽八郞右衞門君、右何レモ常任委員
  辭任ノ申出ガアリマシタ、許可スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 003・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ許
  可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補關選舉ヲ行ヒ、屆出アラ
  ンコトヲ希望致シマス--尙ホ御諮ヲ致シマス、千賀千太郞
  君病氣ニ付、二月五日ヨリ二月十六日迄、綾部惣兵衞君
  病氣ニ付、二月八日ヨリ二月二十一日迄、本間三郎君病
  氣ニ付、一月月日ヨリ二月十六日迄、大矢馬太郞君病氣
  ニ付、二月九日ヨリ二月二十八日迄、何レモ請暇ノ申出ガ
  アリマシタ、許可スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 004・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ許
  可スルコトニ致シマス

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• 005・横山勝太郎

  ○橫山勝太郞君　議長

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• 006・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　横山君何デスカ

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• 007・横山勝太郎

  ○横山勝太郞君　本員ノ質問ニ係ル司法權ノ運用ニ關
  スル件ニ付キマシテ、各辯書ノ提出ガ只今報告ニナリマシ
  タ、其谷辯ニ對シテ意見ノ陳述ヲ致シタイト思ヒマス、其故
  ニ適當ナ機會ニ於テ、其陳述ヲ御許アランコトヲ今ヨリ御
  願ヲ致シテ置キマス

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• 008・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　議事ノ進行ニ關シマシテ、田淵
  豐吉君ヨリ發言ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許可致シマス、
  田淵豊吉君
  〔田淵豊吉君登壇〕

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• 009・田淵豐吉

  ○田淵豐吉君　私ハ議事ノ進行ニ付テ一言申述ベタイノ
  デアリマス、先ヅ第一ニ、一昨六日ノ本會議ニ於キマシテ、私
  ハ議事ノ進行ニ付テ發言ヲ求メタイガ爲ニ、私自身參リマ
  シテ、祕書課ニ之ヲ通ジタノデアリマス、祕書課カラ確ニ議
  事課ニ其旨ヲ報告シタサウデアリマス、然ルニ粕谷副議
  長-當時ノ議長ハサウ云フコトヲ受ケタコトハ無イト云フ
  コトデアリマス、所ガ調ベテ見ルト云フト、名前マデ分ッテ、是
  レ々々へ渡シタト云フコトガ明ニナッテ居ルノデアリマスガ、議
  長ハ直接ニ受ケタモノヲ受ケナイト云フノカ、サウ云フコトハ
  ナカラウト思ヒマス、直接ノ責任ヲ御持ナサルカ、或ハ間接
  ニ監督ノ責任ヲ怠ッタモノデナイカト云フコトヲ私ハ確メタイ
  ト思フノデアリマス、是ハ私ハ議長ニ對スル一ツノ質問デア
  リマス、第二ニ於キマシテ其當時ニ、私ガ頻ニ私ノ心カラ致
  シマスルト云フト、"豫メ通告ヲシテゴザイマスカラ、議長カラ御
  言葉ガアルコトカト思ッテ居ッタノデアリマス、適當ノ時二-所
  ガ何等ノ御言葉ガナイカラ、私ハ議長ヲ連呼致シマシテ、議事
  ノ進行ニ付テ發言ヲ求メタノデアリマス、所ガ數回議事ノ進
  行ニ付テト云フコトヲ申シマシタケレドモ、議長ハ其內容ノ
  何デアルカト云フユトヲ聽カレタト云フコトハ、是ハ小サイ事
  デアリマスケレドモ、幾分カ是迄ノ慣例ニ背イテナイガ知ラ
  ント云フコトヲ私ハ疑フノデアリマス、私ノ間違ウタコトモゴ
  ザイマセウケレドモ、私ハ私ノ言ウタ所ノモノヲ用ヒ、玆ニ繰
  返シテ蛇足デモゴザイマセウケレドモ、茲ニ再ビ繰返スノハ過
  チノ尠イコトヲ期センカ爲デアリマス、去六日ノ本會議ニ於
  キマシテ、國葬費ノ豫算ガ可決サレ、弔辭ガ可決サレマシテ、
  其後ニ岩崎動君ガ「衆議院ハ」速記錄ニ據リマズーー「衆
  議院ハ敬弔ノ意ヲ表スル爲メ本日ハ是ヨリ体會ヲ致シ、且
  ツ御葬儀當日休會ヲ致スコトノ動議ヲ提出致シマス」ト書
  イテアル「贊成ノ聲起ル、田淵豐吉君議長ト呼フ、副議長粕
  谷義三君、田淵君何デスカ-岩崎君ノ動議ハ成規ノ賛
  成ヲ得テ成立致シテ居リマス-田淵君何デスカ」斯ウアリ
  マス、モウ旣ニ私カラ見ルト通告ヲ致シテアリマスカラ、發言
  ヲ求メタト云フコトハ分リサウナモノデアルト云フコトヲ私
  ハ其當時思ッタノデアリマス-諸君ニハ分ラナカッタノデア
  リマセウ-「無用々々ト呼フ者アリ、田淵豊吉君、、議事ノ進
  行ニ付テ發言ヲ求メテ居リマス、副議長粕谷義三君、議事
  ノ進行デスカ」斯ウ云フコトヲ言クテ居ル「田淵豊吉君、ヘー
  議事ノ進行ニ付テ發言ヲ求メマス」サウシタラ是デ分ッテ居
  ル筈デアルニ拘ラズ、副議長ハ更ニ「副議長粕谷義三君、F
  ウ云フ何デスカ」ト聽イタ、是ハ一體何ト云フ意味デスカ(笑
  聲拍手)私ハ新米議員デアリマシテ、議場ノ事ハ餘リ知ラ
  ヌノデアル、唯〓、コンモンセンス」卽チ常識ニ依ッテ玆ニ立ッタ
  ノデアルカラ、成ベク議員ト云フモノヽ職權ヲ重ンジテ、足ラ
  ヌ所ガアレバ議長ガ足シテ吳レルノガ、議長ノ大ナル責任デ
  ハナイカト思フ「進行々々、無用々々、無禮者ト呼フ者アリ、
  田淵豊吉君、今日休會スル必要ガナイト云フコトヲ私ハ述
  ベタイノデアリマス、無用々々、無禮者ト呼フ者アリ其半ニ付
  テ-議事進行ニ付テ發言ヲ許シマセヌカ」ト聽イテ居ル
  許シマセヌナラバ許シマセヌト云フコトヲ其所デ明言スレバ
  宜イ、而シテ何ガ故ニ許サヌカト云フコトヲ明ニ元スト云フ
  コトガ、議事ノ進行ヲ妨ゲナイ所以デナイカト思フ、然ルニモ
  拘ラズ「副議長粕谷義三君、ドウ云フノデスカ」ト聽イテ居
  ル、何ノ事ダカ分ラナイ、多分私ノ察スル所ニ依リマスルト、
  田淵ハ通告ヲシテ居ル、言ハセタイト思ッタノデアルガ、政友
  會及憲政會ノ一部、革新倶樂都ノ一部ノ人ガ囂々トシテ
  鳴ルモノデアルカラ、議長ハ其職權ヲスルコトガ出來ナイ、政
  友會ノ諸君ノ爲ニ壓セラレタ傾向ガアルノデアル、實ニ議長
  ハ怠慢ノ責ハ免レナイト思フ「田淵豊吉君、通告シテアリマ
  ス、發言ヲ求メマス、議事ノ進行ニ付テ-反對動議」ト書
  イテアル、其反對動議ト云フノハ私ハ何モ知ラヌノデアル、吾
  々ノ背後ノ革新倶樂部ノ席ノ方カラ、反對動議ト言ッタラ
  宜イノダト言フカラ反對動議ト言ッタノデアル(天聲)詰リ私
  ハ「アントノニム」デナクシテ「シノニムデアルト思ッタ、議事ノ
  進行ニ付テデナク、其動議ニ於テ反對スルノデアルト云フコ
  トヲ言ハシテ吳レタナラバ、ソレデ濟ムノデアル、然ルニ其深
  切ノアル道理ハナイ、成ベク早ク田淵ノ發言ヲ禁ジヤウ、禁
  ジヤウト云フ惡イ心ヲ持ッテ居ルカラ言ウテ吳レナイノデアル
  (笑聲)「ソレデ副議長粕谷義三君、反對動議ト云フコトハ
  アリマセヌ」ト來タ(笑聲)「田淵豊吉君、私議事ノ進行ニ付
  テ發言ヲ求メマス」ト言ッテ私ハ私ノ發言ヲ求メントシテ居
  ル「副議長給谷義三君、休會ニ付テ-田淵君ニ御尋シマ
  スガ」ト聽イテ居ル、ンコデ「採決々々、無禮者、其他發言者
  多ク聽取スル能ハズ、副議長粕谷義三君、旣ニ岩崎君ノ動
  議ハ成立致シテ居リマス、此動議ニ付テ採決致シマズ、此動
  議ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ望ミマス、副議長粕谷義三君、田
  淵君ヲ除クノ外ハ悉ク起立サレマシタ、殆ド滿場一致ヲ以
  テ可決サレマシタ、仍テ其通リ決シマス、本日ハ是ニテ散會
  致シマス、午後一時三十分散會」ト速記錄ニ出テ居ル、諸
  君、一體此議會ト云フモノハ何ノ爲ニ開イテ居ルカ、相互ノ、
  意思ヲ疏通シテ、國民ノ權利ヲ伸張シテ、外ハ列國ニ對シ、
  內ハ內爭ヲシテハイケナイト云フコトノ爲ニ協議スル所ノ會
  合デハナイカ、諸君ハ一體何ヲ以テ議會ヲ開イテ居ルカ、實
  二議長及諸君ノ態度ハ、私ノ解スル能ハザル所デアルト云
  フコトヲ私ハ國民ノ前ニ斷言スルユトヲ憚ラナイノデアリマ
  ス、粕谷義三君ガ-議長ガ一番先キニ岩崎君ノ動議ハ贊
  成ヲ得テ成立ヲ致シタト云フテ居ル、サウシテ結論ガ、矢張動
  議ハ成立シテ居リマスト言ヲテ居ル、議長ハ何故斯ノ如ク議
  場ヲ混亂サセルヤウナ事ヲ爲サッタカト云フコトヲ聽キタイ、
  之ニ就テ諸君ハ私ノ罪デアルト言ハレルカモ知レヌガ、私ノ
  罪デハナクシテ、議長及政友會ノ諸君ノ罪デアルト斷言シ
  テ憚ラナイト思フ、是ハ私ハ議長ニ對シテノ二ツノ質問ト、
  幾分カ諸君ニ對シテノ反對ヲ述ベタ次第デアリマス、ソレカ
  ラ私ハ第三ニ於キマシテ、私ノ意見ヲ諸君ニ向ァテ-殊ニ
  重ク政友會ノ諸君ニ向ッテ私ハ言ヒタイト思フノデアリマス、
  私ヲ呼ブニ斯ノ如ク速記錄ニ「無禮者、無禮者」ト云フコト
  ヲ連呼シテ居ル、甚シキニ至ッテハ「不敬漢」ト云フコトヲ言ッタ
  ト云フコトヲ新聞記者ノ人ガ傳ヘテ居ル、如何ナル理由ヲ
  以テ斯ノ如キコトヲ申サレタカ、諸君コソ不敬漢デアリ、諸
  君コソ無禮者デハナイカト思フ-反對ガアレバ聽キマセウ、
  反對ガアレバ仰シャイマセ、岩崎君
  〔「ヤレ〓〓」「何ヲ言フカ」「田淵シッカリヤレ」「大切ナ
  ル法案ガ澤山アル」ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕

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• 010・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　田淵君成ベク議長ニ對スル範
  圍ダケニ御止メ願ヒタイ

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• 011・田淵豐吉

  ○田淵豐吉君(續)　議長ノミデハアリマセヌ、議長ニ對シテ
  ハモウ申シマシタ、是カラ「無禮者」ト云フコトニ付テ言ハナケ
  レバナラヌ、議長ハ此間モ質問ヲ禁ジタ、餘リニ政友會ノ肩
  ヲ持ッテヤルト云フコトハ宜クナイデス-私ハ過日モ議事
  進行ニ付テ一言述ベタノデアリマシタ、ソレハ何故デアルカ
  ト云フノニ、一月ニ於キマシテモ非常ニ長ク休ンデ居ル、然ル
  ニ本〓ニ選舉ガアルト云ヲテ、其選擧ニ狂奔シテ議〓ヲ休ン
  デ、而シテ選舉ニ狂奔ヲシタト云フコトヲ私自身認ムルノデ
  アリマス(「ソシナ事ガアルモノカ」ト呼フ者アリ)中野正剛君
  ノ如キ其一人デアッタト思フ(拍手、笑聲)私ハサウ云フヤウ
  ナ點ニ於キマシテ、非常ナル所ノ反對ヲ持ヲテ居,タヤウナ次
  第デアリマス、併ナガラ吾人ハ選舉ニ向ケテ狂奔スルト云フ
  コトハ惡イ事デハアルケレドモ、是ハ私ノヤカマシク言フ所デ
  ハナイ、唯ヤカマシク言フノハ、諸君ガ議會ヲ休ムト云フコ
  トデアル、太陽ハ二六時中、二十四時間此地球ヲ照シテ居
  ルト云フヤウニ、此立法ノ最モ中心ナル所ノ議會ガ休ムト云
  フコトハ、太陽ガ照サナイト同ジデアルト私ハ思フ、故ニ私ハ
  當日國葬ノ豫算ガ可決セラレ、又弔辭ヲ可決セラレタ後ニ
  至リマシテ其後ニ於テ休會ノ事ニ付テノ動議ガ出マシタガ
  既ニ本會議ノ豫定日數ハ三十二日シカナイノデアル、而モ既
  ニ此間モ一囘休ンデ、其埋合セサヘモシテナイノデアル、故ニ
  私ノ發言セントシタ趣旨ハ、當日ハ休ム必要ハナイト云フコ
  トヲ私ハ言ヒタカッタノデアリマス、何故必要ガナイカト云フ
  ト、其前日ナレバ廢朝仰出デラレタル日デアリマスルシ、又貴
  族院ハ休ンデハ居ルノデアリマス、併ナガラ其翌日六日ト云
  フモノハ何等關係ハ無イノデアル、唯豫算ヲ議了スルト云
  フ事ダケデアル、豫算ヲ議了スルト云フコトハ國務ノ進行上
  デアッテ、少シモ他ノ事ト變ッテナイノデアリマス、諸君ハ是ヲ
  シモ混同シテ、豫算ヲ議了シテシマッテカラ直グ休ムト云フコ
  トハ何ノ事デアルカ、併ナガラ私ダケノ意見デハ通ラヌ、諸君
  モ矢張諸君ノ考ヲ以テ議場ニ居ラレルノデアリマスカラ、私
  ハ私ノ心ヲ以テ諸君ヲ壓倒シヤウトスル者デハナイ、若シ萬々
  一其日ハドウシテモ休マナケレバナラヌト云フナラバ、翌日ニ
  スルトカ、他ノ日ニ繰延スルトカシテ仕事ヲ捗ラセ國務ノ澁滯
  シナイヤウニヤルト云フコトガ當然ノ事デアルト思フノデアル、
  諸君、元帥トシテ動功爀々タル所ノ殿下ノ地下ニ瞑シテ居ラ
  レル場合ニ、サウ云フヤウナオツチヨコチヨイ的ニ議會ヲ休ン
  デ、小人閑居シテ不善ヲ爲スト云フヤウナ事ヲ誰ガ喜ブデア
  リマセウカ、私ハ諸君ノ態度ヲ聽キタイ、然ルニ諸君ハ無禮
  者無禮者ト言フノハ何デ無禮者ト言フカ、諸君ハ私ノ發言
  ヲ禁止シテ、而シテ私カラ考ヘマスト議長ヲ壓倒シテ、私ノ言
  ヲ議長ガ許サウトスルノヲ諸君ガ妨ゲタデハナイカ、是卽チ憲
  法ヲ蹂躪シ憲法ノ體面ヲ汚シテ居ル所ノ、諸君ノ大ナレ罪
  惡デハナイカト私ハ信ジテ疑ハヌノデアリマス、(拍手)斯ノ如
  ク無禮ナル立憲政體ノ本旨ニ背イタ事ヲヤリツヽ、人ヲ無禮
  者ト呼ハル心事ハ何デアルカ、諸君ニ聽キタイノデアル、諸
  君ハ斯ノ如キ所ノ言動ヲ弄サレテ居ルト云フコトハ、私ハ非
  常ナ間違デアルト思フノデアリマス、各國ハ〓ヤ此復舊事業
  ニ忙ガハシクシテ、年ガ年中議會ヲ開イテ働イテ居ルデハナ
  イカ、然ルニ日本ハ會期九十日ノ中僅カ七十餘日開會シ
  テ、ソレモ本會議ノ豫定期日ハ三十二日デハアリマセヌカ、
  前ニモ一日ガ既ニ失ハレテ、其埋合セト云フコトヲ少シモシ
  ナイノデアリマス、諸君ガソレヲシナイデ唯〓休ムト云フコト
  ハ、私ハ上陛下ニ對シ下國民ニ對シテ、輔翼ノ任ニ背ータル
  モノデアル、愼重審議ト云フコトハ諸君ノ「モットー」デアル、然
  ルニ諸君ハソレヲ裏切ッテ何等シナイデ「サボ」ッテ居ルデハナイ
  カ、私ハ是ハ元帥殿下ニ致サレマシテモ、諸君ノ議會ヲ休會シ
  テ議事ヲ抛擲シテ、而シテ斯ノ如キ生半可ナル所ノ事ヲヤル
  ト云フコトハ、決シテ喜パレル道理ハ無イト私ハ思フ、諸君ヨ
  神ヲ祭ルコト神在スガ如シト言ハレテ居ルガ、諸君ハ神ヲ祭
  ルコト神在サミル如シト云フヤウナ事ヲヤッテ居ルデハナイカ、
  實ニ私ハ善クナイト思ヒマス、故ニ私ハサウ云フ點ニ付テハ
  此國葬當日ハ日本全國盡ク休ムモノデアリマセウカラ、衆
  議院ハ特ニ休會シテ其敬意ヲ表スルト云フコトハ、是ハ今
  日適當ナル所ノ處置デアルト信ズルノデゴザイマス、併シ何
  等ノ理由ナクシテ唯〓豫算ヲ議決シタカラト云ウテ、鬼ノ首デ
  モ取ッタヤウナ氣デ居ルノハ如何ナル譯カ、又弔詞ヲ參內シ
  テ捧呈スルト云フコトハ固ヨリ當リ前ノ手續デアル、併ナガ
  ラ其時ニモ諸君ノ決議ニ依ッテ議長ガ居ナイデハナイカ、是
  モ諸君ノ過失デハナイカ、若シ議長ガ副議長ニ代ラシテ議
  長ガ之ヲ持ッテ參内スルナラバ宜シイ、然ルニ議長ガ居ナイ
  爲ニ副議長ガ之ヲ持テテ行フテ、議會ヲ休會スルト云フヤウナ
  事デアッタナラバ、誠ニ畏多イ話デハナイカト思フ、實ハ今度
  ノ議會ハ色々ナ事ガ打ツ突カッテ居ル、當日ハ質問日デアル
  カラ、大臣ハ成ベク外交ナンゾニ對スル質問ヲ避ケタイノデ
  アル、故ニ開會サレル事ヲ決シテ好マレナイ、議會ノ會期ガ短
  クテ質問ヲ無クシテシマッタラ、都合ガ好イト云フヤウナ塊膽
  デハナイカト私ハ恐レルノデゴサイマス、諸君ハソレマデ惡辣デ
  ハ無イト思フケレドモ、私ハ恐レルノデアル、諸君ヨ、私ハ乃
  木大將ガ伯林ニ來ラレマシタ時ニ、或ル有力ナル人ガ日本
  倶樂部デ何百人ト云フ人ヲ代表シテサウシテ演說ヲ爲
  スッタ、歡迎ノ辭ヲ述べラレタ、乃木大將ハ武動嚇々タル旅
  順ニ於テ大功ヲ樹テラレテ光輝アル將軍デアルト述べ
  ラレタノデアリマスガ、其時ニ當リマシテ乃木大將ハ
  只今ノ御賛辭ヲ私ハ御辭退致シマスト言ハレタノデアル
  其所ガ將軍ノ大ナル、所デアルサウ云フ武動爀々タルト云フ
  ヤウナ事ヲ述べテ貰ヒタクナイ、世界ニハサウ云フ事ハ澤山
  アル、決シテ誇ルベキ事デナイト云フ大ナル精神ヲ發揮サレ
  タモノト思フ、大偉人ニナルト、サウ云フヤウナオッチヨコチヨ
  イノ、我ガ業務ヲ抛擲シテ選擧ニ奔走スルヤウナ事ハシナイ
  ト思フノデアリマス、又諸君ガアノ日休會シタト云フコトハ
  私ハ決シテ善クナイト思フ、サリナガラ諸君ガ若シンレガ必
  要ト云フナラバ、何カ爲ニ其翌日ニ於テ本會議ヲ開カヌカ、
  諸君ガ去年議會ノ閉會末日ニ方リマシテ、百數十件ノ建
  議案ト云フモノヲ一括シテ議題ニ供シ、憲法蹂躪ノ聲ガ此
  處ニ叫バレテ居ルト云フコトヲ知ラナイノデアルカ、諸君ハ自
  己ノシタ事ヲ採消ス爲ニ遽テフタメイテ、此壇上ニ格闘マデ
  ヤラナケレバナラヌト云フヤウナ醜態ヲ演ジナガラ、悠々閑々
  トシテ、今日ハ物價騰貴シテ人民ハ負擔ノ重キニ苦ミ、餓莩
  途ニ横ハルト云フ時ニ、唯〓豫算ヲ議了シタカラ會ヲ休ムト
  云フコトハ、其行ハ義ノ如ク見エルケレドモ、其心事ノ陋劣
  ナル事ハ唾棄スルニ値シテ居ルト私ハ信ジテ疑ハナイノデア
  リマス(拍手)併ナガラ私ハ昨日此壇上ニ一人デ飛上ッタモ
  ノデハナイ、憲政會ノ人モ、政友會ノ人モ、革新倶樂部ノ人
  モ、庚申倶樂部ノ人モ、十二三名ノ人ニ當ッテ、本會議ヲ休
  會スルノハ善イカ惡イカト聞イタノデアル、所ガ床次竹二郞
  君一人マア止メテモ宜イデハナイカト言ッタヾケデ、他ノ十何
  人ノ人ハ悉ク私ノ意見ニ賛同サレタノデアル(「嘘々」ト呼フ
  者アリ)嘘デハナイ、ソレハ政友會ノ津野田是重君ガ委員會
  デ斯ウ言ウテ居ル、ソレハ尤ナ話ダ、全クダ全クダト三遍モ言
  ハレタ、津野田君ガ若シソレガ間違ウテ居ルト言フナレバ私ハ
  返答ヲ致シマス、政友會ノ人モアリ、憲政會ノ人モアル、名前
  ヲ擧ケロト言ヘバ一々擧ゲマス、ソウ云フヤウナ事情デゴザイ
  マスルカラシテ、私ハ突飛ニ此處デ言ヲ好ンデ言フノデハナイ、
  故ニ成ベクナラバ其休マナクシテ翌々日ニ繰延ペルカ、他ノ日
  ニ讓ルヤウニシタナラバ、國務ハ澁滯シナイデ濟ムモノト思
  フ、ソレカラ言ウタノデアル、諸君、今日日本帝國ト云フモノ
  ハ過激思想ガ侵入シ、社會問題ハ頻々トシテ起リ、餓莩途
  ニ橫ハッテ居ルヤウナ時デハナイカ、此時ニ方ッテ立法機關ガ休
  止ニナリマシテ、議會ガスッカリ休ミニナッタナラバ、誰ガ之ヲ爲
  スコトガ出來ルデアリマセウカ、此外國ノ憲法ハ各國ニ於テ大
  ナル犠牲ヲ拂ヒ、血ヲ流シテ得タモノデアリマスガ、日本ニ於テ
  欽定憲法ニ依フテ吾々議場ニ列スルト云フコトハ-三百
  年ノ德川幕府ヲ倒シテ、全日吾々ノヤウナ百姓議員ガ此處
  ニ出テ來ルト云フコトハ、人生ノ惡戰苦鬪ノ結果デアルト云
  フコトヲ忘レテ居ルノデハナイカ、諸君ハ斯ノ如キ貴イ所ノ
  權利ヲ蹂躪シテ、而シテ吾輩ガ發言スルト云フト、其機會ヲ
  與ヘズシテ國賊呼ハリ、無禮呼ハリヲシテ吾輩ヲ彈効スルト
  云フコトハ、私ハ諸君ニ向ッテ憲政ノ敵デアルト云フコトヲ憤
  慨シテ已マザル者デアリマス、諸君ヨ大ニ心セヨ、決シテ諸君
  許リガ善イ者デハナイト云フコトヲ知ラナケレバナラヌ、諸君
  ガ若シ田淵ハ一人デアルケレドモ、四百五十ノ力ガ强イト言
  フナラバ、唯〓カデ行クナラバ、或ハ「ガイフオクス」ハ加持力
  〓ヲ餘リ阻害シタ爲ニ英國ノ上院議員ト下院議員ガ寄ッテ
  居ル議會ノ床ノ下ニ、十一月五日カニ數樽ノ火藥ヲ詰メテ
  置イタノヲ爆發サセヤウトシテ捕ヘラレタノデアル、或ハ原敬
  君ガ殺サレタノハ餘リニ諸君ガ橫暴シタ結果デハナイカト思
  フ、諸君ガ自分ノ權利ヲ擁護シヤウト云フナラバ、西洋ノ諺
  ニアル硝子ノ家ニ住ム人ハ決シテ石ヲ-硝子ノ家ニ住ム
  人ハ決シテ石ヲ抛ラヌト云フコトガ必要デアラウト思ヒマス、
  諸君ハ諸君ノ權利ヲ擁護スル爲ニ、諸君自身ノ後ロニ大キ
  ナ穴ヲ堀ラントスルト云フコトハ-卽チ諸君ノ持ヲテ居ル
  權利ヲ蹂躪シナイ、又他ノ權利ヲ蹂躪シナイト云フ此議事
  規則ナリ、或ハ憲法ノ精神ナリヲ擁護シナケレバ、今ニ諸君
  ハ酷イ目ニ遭シテ、アヽ斯ンナ事デハナカッタト云フヤウナコト
  ガ來ルデハナイカト思ヒマス、諸君ハ我ガ後ロニ穴ヲ堀ッテ嵌
  リ込ムト云フコトヲセズ、硝子ノ家ニ住ンデ居ル者ハ石ヲ抛
  ルコト勿レ、議會ニ向ッテ包圍シテ、議會ニ火ヲ放ケルト云フ
  コトハ樂々デアルガ、暴ヲ以テ暴ニ易ヘルト云フコトハ立憲
  政治デハナイ、立憲政治ハ斯ノ如キ事ヲシナイト云フコト、
  詰リ善イ所ノモノガ御互ニ權利ト權利ノ爭ヲシテ、國民ノ
  休戚ヲ玆ニ訴ヘンガ爲ニヤッタモノデアリマスカラ、成ベクハ
  此大精神カラ來テ-政友會モ自由黨ノ後デアル、諸君ハ
  卽チ諸君ノ山口熊野君等ノ如キハ頭ヲ叩カレナガラ此立
  憲政治ヲ拵ヘタノデハナイカ、諸君ノ板垣退助ハドウデアル
  カ、板垣死ストモ自由ハ死セズト言ッタアノ絕叫ハ、今日ノ諸
  君ニ於テ毛頭モ無イデハナイカ、サウ云云ヤヤナ事ヲシナガラ
  諸君ハドウカ、憲法ノ條章ニ從シテ、議事規則ニ從ッテ、慣例
  ニ從ッテ、諸君ノ權利ヲ擁護シ、吾々ノ權利ヲ擁護スルト云
  フコトガ、諸君最モ必要デアルト思フノデアリマス、然ルニ諸
  君ハ吾輩ノ言語ノ一端ヲ見テ不敬漢呼ハリ、無禮者呼ハリ
  ヲスルト云フコトハ、諸君コソ不敬漢、諸君コン無禮者デア
  ルト云フコトヲ斷言シテ此壇ヲ降ル、曩ニ二問ヲ發シタ、議
  長ニ向ッテ其責任ヲ問ヒ、吾輩ニ向ッテ斯ノ如キ非禮ナ言ヲ
  發シタ議員ニ向ッテ、私ハ此責任ヲ問ハントシテ此壇ニ登ツタ
  次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=11

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• 012・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　只今田淵君ヨリ、-昨日田淵
  君ニ發言ヲ許サナカッタコトニ付テ、議長ニ對シテ御尋デアリ
  マス、之ニ對シテ一應御答致シテ置キマス、一昨日田淵君カ
  ラ開會間際ニ際シマシテ、書記官ノ手許ニマデ議事ノ進行
  ニ關スル發言ノ通告ガアリマシタノデ、書記官ニ於キマシテ
  ハ、例ニ依シテ一應其要點ヲ確メヤウト致シテ居リマスル中
  ニ、既ニ議會ハ開會セラレタノデアリマス、當時議長ニ於キマ
  シテハ玆ニ告白致シマスガ、全ク私ハ其通告ヲ受取ッテ居リ
  マセヌ、而シテ御承知ノ通リ一昨日ノ議場ハ、最モ嚴〓ヲ要
  スベキ所ノ議場デアリマス、又議場ノ實際モ實ニ珍ラシキ程
  ニ嚴肅ナル所ノ議場デアッタノデアリマス、偶〓田淵君ガ起立
  セラレマシテ、發言ヲ求メラレマシタ故ニ、私ハ先例モアルコ
  トデアリマスカラ、一應其如何ナル御發言デアルカト云フコ
  トヲ伺ッタ上ニ、許否ヲ決シヤウト思ッタノデアリマス、斯ノ如
  ク致シマシテ、再應田淵君ト押問答ヲ致シマシタ所ガ、初ニ
  ハ田淵君ハ議事ノ進行ト言ハレタノデアリマス、而シテ後ニ
  至リマスルト云フト、反對動議ト言ハレタノデアリマス、其議
  事ノ進行デアルカ、或ハ動議デアルカ、或ハ反對說デアルカ、
  殆ド其要領ヲ得ラレナイノデアリマス、然ルニ他方ニ於キマ
  シテハ御承知ノ通リ、既ニ岩崎君ノ動議ハ成立ヲ致シテ居
  リマシテ、採決ノ機モ正ニ熟シテ居リマシタカラ、アノ場合私
  ハ岩崎君ノ動議ヲ採決スルノヲ相當ト認メテ決ヲ採リマシ
  タノデアリマス、議長ニ於テハ只今縷々田淵君ヨリ、議長ハ
  田淵君ノ言論ヲ壓迫スルガ如キ態度ヲ執ッタト非難セラレ
  マシタケレドモ、私ハ決シテ諸君ノ言論ヲ壓迫セント思フ者
  デハナイノデアリマス、唯、此事ヲ一言釋明致シテ置ク次第
  デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=12

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• 013・田淵豐吉

  ○田淵豊吉君　議長-議長
  〔「無用」「無用」「無用トハ何ダ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=13

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• 014・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　田淵君ニ許シマス
  〔田淵豐吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=14

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• 015・田淵豐吉

  ○田淵豐吉君　私ハ議長ニ御尋致シタイ、今ノ議場デハ
  私聽漏レタ所ガアレバ、議長カラ再ビ言ウテ戴キタイ、私ハ
  斯ウ云フヤウニ聽キマシタ、先キノ通告ハ議長ハ受取ッテ居ナ
  イト云フ、私ハ今少シ精密ニ聞イタ筈デアリマス、直接及間
  接ノ點ニ付テ聞イタノデアリマス、私ハ過日六日ノ三時頃ニ
  議長ノ席ニ參リマシテ、副議長ニ御目ニ懸ッタ-當時ノ議
  長ニ御目ニ懸ッタ、所ガ議長ガ言フノニ、ンレハ調ベタ上ニ致
  シマセウト云フ御言葉ガアッタ、故ニドウ云フ御調ニナッタカト
  云フコトヲ今日聽キタカッタノデアリマス、ソレカラ又私ハ秘
  書課ノ或人ニ之ヲ尋ネタ、所ガ祕書課ノ或人ハ之ヲ議事課
  ノ或人ニ持ッテ行ッタト云フノデアリマス、若シ名ヲ言ヘト云
  フナラバ名ヲ言ヒマス、サウシテ何ダカ話ニ聞クト、サウ云フ
  筈ハナイノニナアト云フヤウナ話デアル、如何ニモ私ハ解セ
  ヌ、私ハ副議長ノヤウナ人格者ヲ疑ヒタクハナイ、併ナガラサ
  ウ云フコトハ嘗テ餘リ少イノデアリマス、而シテ議長ガ田淵
  ニ許シタカッタト云フ所ノ心根ト云フモノハ、曩ニ受取ッテ居ッ
  タカラ良心ノ苛責ニ堪ヘナカッタノデハナイカト思ヒマス、是
  ハ甚ダ失禮デアルカモ知レヌガ、私ハサウ思ウタノデアリマス、
  ソレデ私ハ議長ガ若シソレハ私自身ニ受取ッテ居ナイ、斯ウ斯
  ウ云フヤウナ手違ヒデ、其紙トカ言葉ハサウ云フヤウニ來ヌ
  ノデアルト言ハレルカドウカ、其經緯ヲ明ニシテ貰ハナケレバ、
  衆議院ノ議事ハ進行スルコトハ出來ナイ、又私ハ若シソレハ
  誰々ノ間違ヒデアルト云フナラバ、議長ハ、或ハ副議長ハ監
  督ノ責任ヲ如何ニ爲サレタカト云フコトヲ私ハ聽キタイノデ
  アリマス、此點ニ付テハ一言半句モ言葉ガ無カッタヤウニ聽
  イタノデアリマス、第二ニ於テ議長ガ今答辯サレタ如ク、田
  淵君ハ議事ノ進行ト云フコトハ言ヒマシタケレドモ、其内容
  ニ付テ聽イタ時ニモ少シ變ナコトヲ言ハレタ、後ニ於テ反對
  動議ト云フタカラ、反對動議デハアリマセヌト一ムフ、ナケレバ
  何故其時ニ岩崎君ニ直グ許サナカッタノデアルカ、其後ニ私
  ハ一番終リニ矢張議事ノ進行ニ付テ發言ヲ求メテ居ル、私
  ノ一番終リノ言葉ハ發言ヲ求メタ大ナル言葉デハナカラウ
  カ、三遍モ四遍モ言ウテ許サナイデ置イテ、、中途デ間違ヘタ
  ト云ウテ此處ヘ持ッテ來ルト云フコトハ、三百代言以下ノ言
  葉デアルト斷言シテ憚ラヌ、其最終ノ言葉ハ如何ニスルカ如
  何ナル人デモ日本國民デアル人ハ、斯ノ如キ言ヲ以テ胡麻
  化サレル人ハ無イ、斯ノ如キ言ヲ以テ胡麻化サレルナラバ、
  副議長ハ三文ノ値打モナイト云フコトヲ言ッテ此壇ヲ降ル、
  而シテ答辯ガ出來ナケレバ出來ナイデ宜シイ、敢テ斯ノ如キ
  副議長ニ私ノ言ヲ汚ザヾランコトヲ私自身ニ誓フノデアリ
  マス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=15

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• 016・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　田淵君ノ重ネテノ御質問ニ御
  答ヲ致シマス、初ニ御述ニナリマシタコトハ、私ガ只今御答
  辯ヲ致シマシタ其初ニ於テ、其手續ヲ御答致シテ置キマシタ、
  私ノ手許へ通告ガ參リマスルノハ、卽チ斯ウ云フ紙片ニ依。う
  テ私ハ承知致スノデアリマス、然ルニ一昨日ノ議事ノ當時
  ニ於キマシテハ、此通知ガ私ノ手許マデ參ラヌノデス、而シ
  テ其來ナカッタ理由ハ、卽チ私ガ今初ニ御答致シタ通リデア
  リマス(田淵豊吉君「其通リト云フノハドウ云フノダ」ト呼
  フ)重ネテ申シマセヌ、此場合私ハ田淵君ニ一ツ御相談ヲ
  致シタイノデアリマスガ、只今田淵君ノ御發言中ニ、諸君コ
  ソ不敬漢デアル、斯樣ナ御言葉ヲ繰返サレテ居ルノデアリマ
  ス、或ハ田淵君ハ、一昨六日ノ議事ニ付テ新聞紙上ニ不敬
  漢云々ノ言葉ガアッタコトニ激昂サレマシテ、斯ノ如キ意見
  ヲ發セラレタノカ知レマセヌガ···
  〔田淵豐吉君「サウヂヤナイ、傍聽席ノ人ガ聞イタト
  言ッタ」ト呼ヒ「默レ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=16

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• 017・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　免ニ角此議場ニ於テ、議員諸君
  ニ對シテ不敬漢ノ言葉ヲ發セラレマスルト云フコトハ、甚ダ
  穩カデナイト私ハ思セマス、是ハ田淵君ニ於カレマシテモ篤
  ト御考慮丁サイマシテ成ベク私ハ田淵君ガ自發的ニ御取
  消下サランコトヲ希望致スノデアリマス-田淵豊吉君
  〔田淵豊吉君登壇〕
  〔「ソンナ事ヲシテ居テハ議事ノ妨ゲデハナイカ」ト呼
  フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=17

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• 018・田淵豐吉

  ○田淵豊吉君　妨ゲデハナイ、君等ガ妨ゲヲシテ居ッタノダ、
  怪シカラヌ
  〔「無用」「無用」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=18

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• 019・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　6ヶ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=19

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• 020・田淵豐吉

  ○田淵豊吉君(續)　私ハ議長ガ間接的ニ受取ラナカッタ
  ト云フナラバ、其貴任ハドウスルノデアルカ、間接的ニ職責ヲ
  誤ッタト云フ所ノ陳謝ヲ何故私ニ爲サラヌノデアルカ、其陳
  謝ガナケレバ滿足シナイノデアル(「間接ノ事ガ何デ責任ニナ
  ル」ト呼フ者アリ)間接デモ責任ハ責任デハナイカ、第二ニ私
  ハ申述ベタイ(「無用々々」ト呼フ者アリ)私ガー-私ガ今不
  敬漢云々ト言ウタコトハ、私ハ議長ノ言ニ服從シテ、私ハ取
  消ス爲ニ此壇上ニ登ッタノデハアリマセヌ、私ノ言ハント欲ス
  ル所ハ無禮者、無禮者ト呼ブト云フ事ハ怪シカラヌ、斯ノ如
  キ人コン卽チ無禮者デアルト云フコトヲ絕叫シタノデアル、
  (「無禮者デハナイ」ト呼フ者アリ)無禮者ダカラ無禮者ト
  言ッタノデアル、君等ガサウ思ハヌナラソレデ宜イ、國民ノ判斷
  ヲ仰ギ給へ、ソコサデ私ハ新聞記者ニ聞イタ、不敬漢、、不敬
  漢ト云フコトヲ言ウタト云フコトヲ新聞記者ガ報告シテ居
  リマスカラ、私ヲ不敬漢ト云フ者ハソレ自身コン憲法ヲ蹂
  躪スル所ノ不敬漢ト云フコトヲ私ハ斷言シナケレバナラヌノ
  デアル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=20

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• 021・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　田淵君ハ議長ノ勸告ニ從ハレマ
  セヌ故ニ議長ハ尙ホ特ニ速記錄ヲ調査致シマシタ上ニ、相
  當ノ處置ヲ致ス考デアリマス-日程ニ八リマス、日程第一
  簡易生命保險特別會計ニ於ケル土地建物ノ買入又ハ建
  物ノ建設ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、前田遞
  信大臣
  第簡易生命保險特別會計ニ於ケル土
  地建物ノ買入又ハ建物ノ建設ニ關
  スル法律案(政府提出)第一讀會
  簡易生命保険特別會計ニ於ケル土地建物ノ買
  入又ハ建物ノ建設ニ關スル法律案
  簡易生命保險特別會計ニ於テハ簡易保險局廳含ニ充
  ツル爲當分ノ内土地建物ヲ買人レ又ハ建物ヲ建設スル
  コトヲ得
  附則
  本法ハ大正十二年度ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣子爵前田利定君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=21

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• 022・前田利定

  ○國務大臣(子爵前田利定君)　只今日程ニ上リマシタ
  法律案提案ノ趣旨ヲ〓略申述タイト思ヒマス、簡易保險
  局ノ應舍ハ、事業開始以來貯金局ノ廳舍ノ一部ヲソレニ充
  テヽ居ッタノデアリマス、然ル所事業ガ年ヲ逐ヒマシテ發展ヲ
  致シマスニ付キマシテ、頗ル廳舍ノ狹隘ヲ感ジテ參ッタノデア
  リマス、爲ニ民有ノ建物ヲ借入致シマシテ、其不足ヲ補ッテ
  參ッタノデアリマスケレドモ、是ガ爲ニ保險契約ノ締結竝ニ保
  險金額ノ支拂等ニ於テ、加入者ノ被ル不利不便ガ尠クナ
  イノデアリマス、ノミナラズ事業ガ益、進展致シマスニ連レマ
  シテ、到底現場ノ儘デハ從業員ノ收容ヲスルコトガ出來ナイ
  ヤウナ狀況ニ立至ツタノデアリマス、故ニ大正十二年度ノ簡
  易生命保險特別會計ノ豫算ノ上ニ於キマシテ、廳舍ノ新
  營ノ費用ヲ計上致シタノデアリマス、然ル所現行ノ簡易生
  命保險特別會計法ニ於キマシテハ、土地建物ノ買入又ハ
  建設ヲ爲スコトガ法規ノ上ニ出來マセヌノデゴザイマス、因
  リマシテ〓ニ土地建物ノ買入建設ヲ爲シ得ル途ヲ開キタ
  イノデアリマス、而シテ事務ノ圓滑ナル所ノ運行ヲ期シテ參
  リタイト云フノガ、此法案提出ノ主旨デアルノデアリマス、何
  卒皆様ニ於カセラレマシテハ、御審査ノ上御協贊ヲ御與ヘ
  下サラムコトヲ希望致ス次第デゴザイマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=22

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• 023・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　日程第二、右議案ノ審査ヲ付
  託スヘキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
  第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
  選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=23

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• 024・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ木下甚三郞君提出電信線電話
  線建設條例第六條ニ依ル手當金增額ニ關スル建議案ノ
  委員ニ併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=24

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• 025・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=25

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• 026・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ガナイト認メマス、仍テ動
  議ノ如ク決シマシタ--日程第三、樺太ニ於ケル鹽專賣ニ
  關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-永井樺大長官
  第三樺太ニ於ケル鹽專賣ニ關スル法律
  案(政府提出)第一讀會
  樺太ニ於ケル鹽專賣ニ關スル法律案
  樺大ニ於ケル鹽専賣二關シテハ鹽專費法ニ依ル
  附則
  本法ハ大正十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  本法施行ノ際現ニ鹽ノ消費者及販賣者ノ所有シ又ハ
  所持スル鹽ニ關シテハ本法ヲ適用セス
  本法施行ノ際現ニ販賣ノ目的ヲ以テ鹽ヲ所有シ又ハ所
  持スル者ハ其ノ種類、等級、數量及所在ヲ本法施行後一
  月內ニ政府ニ中告スヘシ申告ヲ怠リ又ハ不正ノ申告ヲ
  爲シタルトキハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
  〔政府委員永井金次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=26

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• 027・永井金次郎

  ○政府委員(永井金次郞君)　只今議題ニナリマシタ法
  案ニ付キマシテ、私ヨリ一言說明致シマス、本案ハ樺太ニ鹽
  專賣ヲ設ケタイト云ア法案デアリマス、現在樺太ニ於テハ鹽
  ノ販賣ハ自由ニナッテ居リマス爲ニ、供給ガ極テ圓滑ヲ缺イ
  テ居リマス、又價格ニ於テモ其高低甚ダ定マラナイノデゴザ
  イマシテ、殊ニ樺太ニ於キマシテハ此鹽ガ最モ多量ニ要シマ
  スノハ漁業鹽デゴザイマス、然ルニ此漁業ノ際ニ於テハ、鹽
  ノ供給ガ不十分デアル爲ニ魚類ノ製造ヲ完備スル上ニ於
  テ、非常ニ不便ヲ感ズルソミナラズ、甚シキハ豐漁ニ際シマシ
  テハ鹽ガ非常ニ不足ヲ告ゲマシテ、鹽造ニスルコトガ出來ナ
  クテ、或ハ肥料ニ製造スルト云ヲヤウナ苦境ニ陷ルコトガア
  ルノデアリマス、斯樣ナ實況デゴザイマシテ、樺太水產物ノ
  價値ヲ損スルコトガ少クナイノデアリマス、又漁業者ノ損害
  モ甚ダ多大デゴザイマス、又此家庭用鹽ニ於キマシテモ、價
  額ノ動搖ガ常デナイ爲ニ、日常必須ノ鹽ニ於キマシテハ、島
  民ガ非常ニ不便不利ヲ感ジテ居ルノデアリマス、斯樣ナ次
  第デゴザイマスノデ、今後樺太ノ鹽ノ上ニ對シテモ、專賣法
  ヲ施行致シマシテ、確實ナル供給ヲ圖リマシテ、而シテ値段
  ニ於テハ一定ノ價格ト致シタイ考デゴザイマス、斯樣ニ致シマ
  シテ樺太ノ重要産業デアル所ノ水産業ノ發達ヲ圖リ、且ツ
  住民ノ生活上ノ不便ヲ除キタイ考デ、本案ヲ提出シタ次第
  デゴザイマス、何卒御審議ノ上御協賛アランコトヲ希望致
  シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=27

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• 028・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　日程第四、右議案ノ審査ヲ付
  託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第四右議案ノ審查ヲ付託スヘキ委員ノ
  選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=28

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• 029・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ政府提出、明治四十年法律第二
  十一號中改正法律案ノ委員ニ併セテ付託セラレンコトヲ
  望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=29

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• 030・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=30

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• 031・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ動
  議ノ如ク決シマシタ-日程第五、東京砲兵工廠及大阪
  砲兵工廠ノ各特別會計合併ニ關スル法律案ノ第一讀會
  ヲ開キマス-山梨陸軍大臣
  第五東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ各
  特別會計合併ニ關スル法律案政
  府提出)第一讀會
  東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ各特別會計合
  併ニ關スル法律案
  東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ各特別會計ハ之ヲ合
  併シテ陸軍造兵廠特別會計トシ陸軍作業會計法ニ依ル
  前項ノ規定ノ適用ニ關シテハ陸軍作業會計法中東京
  砲兵工廠及大阪砲兵工廠ニ關スル規定ハ之ヲ陸軍造
  兵廠ニ關スル規定トス
  附則
  本法ハ大正十二年度分ヨリ之ヲ適用ス
  大正十一年度末ニ於テ東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠
  ノ各特別會計ニ屬スル固定資本、据置運轉資本及收入
  支出ノ未濟額ハ各之ヲ陸軍造兵廠特別會計ノ固定資
  本据置運轉資本及收入支出ノ未濟額トス
  東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ各特別會計ノ大正十
  一年度豫算中翌年度ニ繰越ヲ要スルモノハ之ヲ陸軍造
  兵廠特別會計ニ繰入ルヘシ
  〔國務大臣山梨半造君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=31

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• 032・山梨半造

  ○國務大臣(山梨半造君)　只今日程ニ上リマシタ法律案
  ノ〓要ノ說明ヲ致シマス、御承知ノ通リ砲兵工廠ハ二箇所
  ニアリマス、卽チ一ハ東京、一ハ大阪ニ分レテ各、別ノ特別會
  計ヲ立テマシテ、作業ヲ經營シテ居ル次築デアリマス、デ會計ガ
  別ニナッテ居ルガ爲ニ、資本ノ運用上、又作業上ノ諸材料ヲ
  調達致シマスル上ニ、其他種々ノ點ニ於キマシテ不利不便ガ
  少ナカラヌノデアリマス、其故ニ此二ツノ砲兵工廠ヲ合併致
  シマシテ、其資本ヲ合一シテ全ク一箇ノ作業會計ト致シテ、
  サウシテ資本ヲ有利ニ運用シテ、又作業ニ要シマスル所ノ諸
  材料等ヲ一層經濟的ニ調達ヲ致シ、又組織設備等ヲ統一
  致シマシテ、作業ノ經營ヲ圓滑ニスル必要ヲ認メマシタ故ニ、
  本案ヲ提出シタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛ア
  ランコトヲ切望致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=32

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• 033・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　日程第六、右議案ノ審査ヲ付託
  スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第六右議案ノ審査付託スヘキ委員ノ選
  舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=33

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• 034・高見之通

  ○高見之通君　委員ノ數ハ九名トシ、議長ニ於テ指名セ
  ラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=34

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• 035・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス、日程第七、明治四十年
  法律第二十一號中改正法律案第一讀會ノ續キヲ開キマ
  ス、委員長ノ報告ヲ求マス、委員長海江田準一郞君
  明治四十年法律第二十一號中改正法律案
  (政府提出)第一讀會ノ續(報告(確定長)(確定議)
  〔海江田準一郞君登壇〕
  報告書
  一明治四十年法律第二十一號中改正法律案(政府
  提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段報告候
  也
  大正十二年二月三日
  明治四十年法律第二十一號中改正法律委員長
  海江田準一郞
  衆議院議長奧繁三郞殿

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=35

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• 036・海江田準一郎

  ○海江田準一郞君　明治四十年法律第二十一號中改
  正法律案ノ委員會ハ、滿場一致原案通リ可決シタ次第デ
  ゴザイマス、今其經過ヲ至極簡單ニ御報告申上ゲマス、本案
  ハ御承知ノ通リ去二十五日本會議ニ於キマシテ、永井樺
  太長官ノ說明サレタ如ク、至テ簡單ナ問題デゴザイマス、ソ
  レハ從來樺太ニ於キマシテハ漁業料トシテ徵收シ來ッタノヲ、
  今囘漁業稅ニ改メルノデゴザイマス、卽チ樺太ノ租稅ノ項
  目ノ中ニ、漁業稅ノ一項目ヲ追加セントスルノ改正法律案
  デゴザイマス、而シテ其改正下同時ニ、政府ハ從來ノ漁業料
  千分ノ七十ヲ千分ノ五十ニ輕減セラレルノデゴザイマス、委
  員會ニ於キマシテハ鵜澤宇八君、松實喜代太君等ヨリ色々
  ノ質問ガアッタノデゴザイマスルガ、是ハ速記錄デ御承知ヲ願
  ヒタウゴザイマス、唯〓併シ玆ニ一言適切ナル質問ナリト思
  フノヲ申上ゲテ見タイノデゴザイマスルガ、ソレハ此漁業料ノ
  千分ノ七十ヲ千分ノ五十ニ輕減スルコトハ至極宜シイガ、
  稅目ニナルト町村ノ附加稅ヲ課シテ、其結果ハ却テ漁業者
  ノ負擔ガ過重シヤシナイカト云フ質問ガアッタノデゴザイマス、
  併シ政府ニ於キマシテハ、樺太ニ於テハ當分町村稅ノ附加
  稅ハ課セナイト云フ御各ガアッタノデゴザイマス、次ニ田邊熊
  一君ヨリ炭田開發ニ關スル適切ナル希望的御意見ガアッタ
  ノデゴザイマスルガ、是モ速記錄ニテ御承知ヲ願ヒタウゴザイ
  マス、以上ノ次第デゴザイマシテ、無事委員會ハ可決致シマ
  シタガ、本會議ニ於キマシテモ、何卒御協賛アランコトヲ希
  望致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=36

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• 037・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ讀會ノ順序ヲ省略シテ、委員長報
  告ノ通リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成々々」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=37

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• 038・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三丑ロ)　高見君ヨリ讀會省略ノ動議ガ
  出マシタ、之ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=38

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• 039・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ讀
  會ハ省略サレマシタ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=39

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• 040・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ本
  案ハ委員長報告通リ可決確定セラレマシタ、次ニ日程第八、
  農業組合法案ノ第一讀會ヲ開キマス、土井權大君
  第八農業組合法案(土井權大君提出)
  第一讀會
  農業組合法
  第一條本法ニ於テ農業組合ト稱スルハ小作條件ノ維
  持改善、組合員ノ共済慰安其ノ他共同利益ノ保護
  增進ヲ目的トシテ設立シタル農業從事者三十人以上
  ノ團體ヲ謂フ
  第二條農業組合ハ法人トス
  第三條農業組合ノ名稱中ニハ農業組合ノ文字ヲ用
  ウヘシ
  農業組合ニ非スシテ其ノ名稱中ニ農業組合タルコト
  ヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス
  第四條農業組合カ組合員ノ共済慰安其ノ他共同ノ
  利益ヲ增進スル目的ヲ以テ事業ヲ營ム場合ニ於テハ
  保險業法及產業組合法ヲ適用セス
  第五條農業組合ニハ所得稅營業稅ヲ課セス
  組合ノ爲ス行爲ニ付テハ登錄稅ヲ課セス
  組合ト組合員トノ間ノ法律行爲ニ關シテハ印紙稅ヲ
  課セス
  第六條農業組合ノ代表者ハ組合設立ノ日ヨリ二週
  間内ニ組合規約ヲ添へ主タル事務所所在地ノ地方
  長官ニ屆出ツルコトヲ要ス
  組合規約ニ變更アリタルトキ亦同シ
  第七條農業組合ノ規約ニハ左ノ事項ヲ記載スルコト
  ヲ要ス
  一名稱
  二目的
  三主タル事務所
  地域
  組合員ノ資格ニ關スル規程
  八七六五四組合員ノ加入及脫退ニ關スル規程
  組合員ノ總會其ノ他ノ會議ニ關スル規程
  組合ノ代表者其ノ他ノ役員ニ關スル規程
  九組合費、加入金及會計ニ關スル規程
  十組合財產ノ管理ニ關スル規程
  十一組合ノ目的タル事業ニ關スル規程
  十二組合規約ノ變更ニ關スル規程
  第八條農業組合ノ登記スヘキ事項左ノ如シ
  -第七條第一號乃至第四號
  二設立ノ年月日
  三理事ノ住所氏名
  四監事ヲ置キタルトキハ其ノ住所氏名
  前項ノ事項中變更ヲ生シタルトキハ一週間內ニ其ノ
  登記ヲ爲スコトヲ要ス登記前ニ在リテハ其ノ變更ヲ以
  テ他人ニ對抗スルコトヲ得ス
  第九條理事及監事ハ必要アルトキニ限リ組合員ニ非
  サル者ヨリ之ヲ選擧スルコトヲ得
  第十條民法第四十四條、第四十五條、第四十八條、
  第五十條、第五十二條乃至第七十條、第七十二條
  乃至第八十四條ノ規定ハ農業組合ニ之ヲ準用ス但
  シ總會ニ付テハ組合規約ノ定ムルトコロニ依リ組合員
  中ヨリ選擧シタル代議機關ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
  此ノ場合ニ於テハ總會ニ關スル規程ハ之ヲ代議機關
  ニ準用ス
  第十一條農業組合ハ合併ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ハ
  民法第六十九條ノ規定ヲ準用ス
  農業組合カ合併ヲ爲シタルトキハ二週間內ニ於テ合
  併後存續スル組合ハ變更ノ登記ヲ爲シ又合併ニ因リ
  テ消滅シタル組合ハ解散ノ登記ヲ爲シ合併ニ因リテ
  設立シタル組合ハ設立ノ登記ヲ爲スコトヲ要ス
  農業組合カ合併ヲ爲シタルトキハ合併後存續スル組
  合又ハ合併ニ因リテ設立シタル組合ハ合併ニ因リテ
  消滅シタル組合ノ權利義務ヲ承繼ス
  第十二條地主ハ小作人カ農業組合ノ組合員タルノ
  故ヲ以テ小作契約ヲ解除シ又ハ組合ニ加入セス若ハ
  組合ヨリ脫退スルコトヲ小作條件ト爲スコトヲ得ス
  第十三條農業組合ハ每年一回組合ノ事業竝財產ノ
  狀況ニ關シ地方長官ニ報告ヲ爲シ併テ之ヲ公告スヘ
  シ
  第十四條農業組合ノ役員選舉又ハ決議ニシテ法令
  又ハ組合規約ニ違反スルトキハ地方長官ハ其ノ取消
  ヲ命スルコトヲ得
  第十五條第六條ノ場合ニ於テ地方長官ハ組合規約
  カ法令ニ違反スルト認ムルトキハ其ノ變更ヲ命スルコ
  トヲ得
  第十六條前二條ノ地方長官ノ處分ニ對シ不服アルト
  キハ訴願又ハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
  第十七條農業組合解散シタルトキハ他ニ特別ノ規定
  アル場合ノ外第六條ノ手續ニ依リ地方長官ニ屆出ツ
  ルコトヲ要ス
  第十八條農業組合ハ組合相互ノ氣脈ヲ通シ其ノ目
  的ヲ達スル爲農業組合聯合會ヲ設立スルコトヲ得
  農業組合聯合會ハ他ノ農業組合聯合會ニ加入スル
  コトヲ得
  第十九條農業組合又ハ農業組合聯合會カ農業組合
  聯合會ニ加人シ又ハ脫退セムトスルトキハ總會ノ決議
  ニ依ルヘシ
  第二十條農業組合ニ關スル規定ハ農業組合聯合會
  ニ之ヲ準用ス
  第二十一條第六條及第十七條ノ屆出若ハ第十三條
  ノ手續ヲ爲サス又ハ第十四條ノ命令ニ違反シタルトキ
  ハ組合ノ代表者其ノ他ノ役員ヲ各五十圓以下ノ過
  料ニ處ス其ノ屆出又ハ手續ヲ爲スモ實ヲ以テセサルト
  キ亦同シ
  第二十二條第十二條ニ違反シタル者ハ五百圓以下
  ノ過料ニ處ス
  第二十三條農業組合ノ役員其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ
  收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ三年以下
  ノ懲役ニ處ス賄賂ノ交付、提供又ハ約束シタル者亦同
  シ
  前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若其
  ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價
  格ヲ追徴ス
  第二十四條第三條第二項ノ規定ニ違反シタルトキハ
  五十圓以下ノ過料ニ處ス
  第二十五條非訟事件手續法第二百六條乃至第二
  百八條ノ規定ハ本法ノ過料ニ之ヲ準用ス
  附則
  本法ハ大正十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  本法施行前ニ設立シタル農業組合ハ本法施行後四週
  間内ニ第六條ノ手續ヲ爲スコトヲ要ス
  農業組合ノ登記ニ付テハ產業組合法附則ヲ準用ス
  〔土井權大君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=40

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• 041・土井權大

  ○土井權大君　農業組合法案ノ說明ヲ致シマス、是ハ昨
  年國民黨ノ案トシテ提案ニナッタノデアリマス、其當時縷々
  說明ヲ致シテ置キマシタガ爲ニ、今日ハ極テ簡單ニ要領ノミ
  ヲ申上ゲタイト思ヒマス、御承知ノ通リ本年ハ各政黨政派
  ヨリ農村振興上ニ關スル熱心ナル問題ガ提案サレタコトデ
  アリマス、寔ニ同慶ノ至リニ堪ヘマセヌ、併ナガラ其論議サレ
  テ居ル所ハ、負擔ノ輕減若クハ地租ノ委讓、要スル所當面
  ノ問題デアリマス、又政府ニ於カセラレマシテモ、農村問題ニ
  付テハ種々ノ〓究ヲサレツヽアルコトモ承知致シテ居リマス、
  ソレハ土地ノ保護若クハ土地ノ利用ニ關スル事ニ重キヲ置
  イテ居ラレルノデアリマス、言葉ヲ換ヘテ言ヒマスナラバ、何
  故ニ今日ノ如ク農村ガ困憊疲弊シタカ、其原因ニ付テノ〓
  究ト云フコトガ、或ハ缺ケテ居リハスマイカト私ハ考ヘルノデ
  アリマス(拍手)農村困憊ノ其原因ハ何レニ在ルカト申セバ、
  卽チ產業革命ニ私ハ原因致シテ居ルモノト確信致スノデア
  リマス、御承知ノ通リ鐵ノ利用、蒸汽ノ利用、電氣ノ利用、
  是等ノ利用ニ依リマシテ、大キナ機械大キナ資本、是等ガ勝
  利ヲ得ルコトニ相成ッタガ爲ニ、ソレガ原因ト致シテ農村ノ
  所謂家族的自給自足ノ經濟政策、否經濟ノ組立ト云フモ
  ノガ打壞サレテシマッタノデナイカト私ハ考ヘルノデアリマス、
  丁度三十年モ五十年モ前ノ農村ト申シマスモノハ、御承知
  ノ通リ己ノ家ニ於テ米麥ヲ作リ、醤油モ造リ味噌モ造リ、酒
  モ造リ、煙草モ造リ或ハ著物モ造リ、悉クノ物ガ家族的ニ自
  給自足デアッタノデアリマス、所ガ產業革命ノ結果、卽チ大キ
  ナ機械、大キナ資本、鐵、蒸汽、電氣ノ利用ノ爲ニ、ソレ等ノ
  仕事ト云フモノ、ソレ等ノ經濟組織ト云フモノヲ奪去ラレタ
  ノデアリマス、ソレガ卽チ困ッテ居ル原因デハナイカ、抑、農村ノ
  困シテ居ルノハ米ガ高イトカ安イトカ、或ハ負擔ガ重イトカ輕
  イトカ、ソレ等モ原因デアリマセウケレドモ、更ニ沿革的ニ〓
  究致シマスト、家族的ノ自給自足ト云フ經濟組織ヲ奮ハレ
  タ、是ガ最大原因デナイカト私ハ考ヘルノデアリマス、シコデ
  吾々ハ此際農民ヲシテ如何ニ自覺セシムルカ、彼等ハ既ニ
  自給自足ノ經濟ヲ奮ハレテ居ルノデアル、如何ニシタナラバ
  之ヲ復舊セラレルカト云フコトヲ、農民ヲシテ自覺セシムル必
  要ガアルト私ハ考ヘルノデアリマス、ソコデ如何ナル事ヲシテ
  自覺セシメルカト申セバ、立法的ニモ色〓アルデハアリセマウ、
  又其他ノ方法モ色ミアルデアリマセウケレドモ、彼等ヲシテ
  如何ナル方法ヲ以テ一致協同ノ精神ヲ持タシムルカ、一致
  協同ノ精神ヲ以チマシテ、團體的ニ自給自足ト云フ所ノ經
  済組織ニセシムル必要ハアルマイカト斯ウ考ヘルノデアリマ
  ス、昔ノヤウニ一軒一戶ニ於テ自給自足ノ事ハ今日ハ出來
  マスマイ、故ニ〓體的ノ自給自足ヲ講ズルノ方法ヲ講ズル
  必要ガアルト斯ウ私ハ考ヘル、卽チ玆ニ組合ヲ造リマシテ、
  總テノ生產ヲスル點ニ於テモ團體的ニスル、能ク此肥料ノ
  國營、肥料ノ專賣ナドノコトヲ本會ニ於テ論議サレル方ガア
  リマスルガ、左樣ナ事ヲ致サズトモ、專賣トカ或ハ官營トカ云
  フコトヲ致サズトモ、彼等ガ一ツノ組合ヲ造リ、團體ヲ造リ、
  而シテ此化學的肥料、卽チ窒素、燐酸加里、是等ノモノヲ
  彼等〓體ニ於テ之ヲ造ッタナラパドウデアルカ、其他若物ニ
  致シマシテモ、或ハ醬油ニ致シマシテモ、家族的ノ自給自足
  ガ或ハ今日ノ時勢ニ合ハナイトスレバ、團體的ノ自給自足
  ガ必要デアル、ソレニハドウシテモ組合ト云フ所ノ組立ヲ造
  ル必要ガアル、斯ノ如ク致シマシタナラバ、自然彼等農民ノ
  生活費ノ輕減ト相成ルコトヽ思フノデアリマス、又進ンデハ
  此共同的作業、或ハ共同的生產、又共同的ノ購入、共同
  的ノ販賣ソレ等ノ事例ハ申シマセヌ、事例ハ申シマセヌガ、
  斯ノ如ク致シマシタナラバ自然ト生產費ノ輕減ト云フコト
  ヲ來サシメハシナイカト思ヒマス、卽チ共同的作業、共同的
  生產ニ依リテ農產物生產費ノ輕減ヲ圖ル、是ハ私ハ第二ノ
  問題デアルト思フ、第一ハ生活費ノ輕減、第二ハ生產費ノ
  輕滅、更ニ肥料ヲ買フト致シマシテモ共同的ニ買フ、又農產
  物ヲ販賣致スト致シマシテモ、之ヲ共同デ販賣スル、斯ノ如
  ク致シマスレバ、自然ニ冗費ノ節減ト云フコトニ相成ルデア
  ラウト考ヘルノデアリマス、是等ハ斯ノ如キ園體ノ力、組合
  ノ力ニ依ラナケレバ、其效ヲ奏スルコトハ出來ナイモノト考へ
  ルノデゴザイマス、更ニ進ンデ農村振興ノ問題トシテハ、各
  種アルデアリマセウガ、特ニ化團體ノ力ニ依リマシテ、副業ノ
  獎勵、土地ノ開拓及改良、耕作法ノ改良肥料ノ改良、農具
  ノ改良、斯ノ如キコトニ致シマスレバ、白然ト農村ノ收入ガ增
  加スル壬ノナリト私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)斯ク固體ノ
  力ニ依リマシテ、只今申シマシタヤウナ事ヲ致シマシタナラ
  バ、農村ノ生活ハ自然ト安定ニナリ、思想モ亦自然ニ良イ
  方ニ導クコトガ出來ル、又農村ノ美風ヲ維待スルコトモ出
  來ルト私ハ考ヘルノデアリマス、ドウ致シマシテモ今日ハ農村
  ニ於キマシテ、如何ニシタナラバ彼等ガ共同一致ノ下ニ樂ン
  デ仕事ノ出來ルカ、天ノ時ハ地ニ利ニ如カス、地ノ利ハ人ノ
  和ニ如カズ、此三ツノ天地人三才ヲ應用スルヨリ外私ハ途ハ
  無イト考ヘマス、ンコデ農業組合法案ノ理由書ニモ書イテア
  リマスガ、斯ウ云フ理由ヲ認メテ居ル、「小作爭議ノ頻發、都
  市集中ノ流行、農村中堅階級ノ滅亡ハ農村ニ於ケル現下
  ノ趨勢ニシテ其ノ原因ハ農民ノ生活不安ニ基クヤ明ナリ今
  ニシテ農業的經濟組織ヲ更新シ彼等ヲシテ共同一致ノ下
  ニ或ハ共濟慰安ノ計ヲ爲サシメ或ハ共同利益ヲ增進セシメ
  或ハ小作條件ノ維持改善ヲ爲サシメ或ハ勞資ノ協調ヲ爲
  サシムルニ非サレハ農村ノ滅亡ヲ來シ遂ニ產業ノ基礎ヲ破
  リ食糧ノ缺乏ヲ來シ國家ヲ危殆ニ陷ラシムルヤ必セリ之ヲ
  豫防シ農村ノ維持確立ヲ圖ルノ目的ヲ以テ農業組合ヲ設
  立セシムルハ現下ノ急務ナリト認ム是レ本案ヲ提出スル所
  以ナリ」斯ウ云フ理由書ニ相成シテ居リマス、所ガ往々產業
  組合ハ期ノ如キ仕事ヲ致シテ居ルガ故ニ、最早農業組合ノ
  如キモノヲ送ル必要ハナカラウカト云フ、斯ウ云フ御意見ヲ
  持タルヽ方ガアルノデアリマス、固ヨリ日本ニ產業組合ハ御
  承知ノ通リ一万三千三百、組合員ノ數ハ二百五十万アル
  ノデアリマス、所ガ是ハ飜譯的直譯的ノ經濟組織デアリマ
  シテ、非常ニ煩雜ナル手續ガアルノデアリマス、故ニ農村ニハ
  餘リ向カナイノデアル、不向デアル總テ縣廳デアルトカ、農商
  務省デアルトカ、或ハ大藏省ガ色〓ノ手續ノ事バカリ申シマ
  シテ農民ハ其手續ノ煩雜ナルガ爲ニ、此組合ノ發達ヲ圖ル
  コトガ出來ナイ、斯ウ云フ狀態ニ相成ッテ居リマス、又其區
  域ナドモ或ハ一部落、或ハ一町村ニ限ルト云フガ如キ拘子
  定木ノ事ヲ申シマス、ンレガ故ニ本當ニ此農村ノ從來ノ美
  風、從來ノ習慣等ヲ產業組合ニ依シテ維持シ、發展セシムル
  ト云フコトガ出來ナイノデアル、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ此產業
  組合ハ認可主義ニナッテ居リマスガ爲ニ、非常ニ不便デアルヽ
  又農氏ハ斯ノ如キ不便ナルコトヲ好ンデヤラナイ、斯ウ云フ
  狀態デアリマス、ソレガ爲ニ產業組合ノ數多シト雖モ、萎靡
  トシテ振ハナイ、色と振ハナイ原因モアリマスガ、一ツハ此認
  可主義、一ツハ餘リ煩瑣ナル手續ガ多イカラデアリマス、ンコ
  デ吾々ノ提案致シテ居リマス農業組合ハ、認可主義ニ非ズ
  シテ屆出主義デアル、商事會社ノ經營ヲスルガ如ク、範圍モ
  自由デアル、仕事モ自由デアル、併ナガラ主務官廳其他縣廳
  トシテハ相當ノ取締ヲ致シマス、或ハ地主ト爭フガ如キ-
  喧嘩ヲスルガ如キ目的ニ出デタナラバ、其組合ヲ停止スル斯
  ウ云フコトニ相成シテ居ル次第デアリマス、餘程產業組合ヨ
  リモ一步進ンダ所ノ經濟組織ナリト確信致シテ居ルノデア
  リマス、何卒御賛同アランコトヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=41

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• 042・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ安達謙藏君外四名提出ノ農村振
  與ニ關スル建議案外一件ノ委員ニ、併セテ付託セラレンコ
  トヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 043・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第九、水先法
  中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、阪上貞信君
  第九水先法中改正法律案(阪上貞信君
  提出)第一讀會
  水先法中改正法律案
  水先法中左ノ通改正ス
  第三條中第一號ヲ削リ第二號ヲ第一號ニ改メ以下順
  次繰上ク
  〔飯上貞信君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=43

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• 044・阪上貞信

  ○阪上貞信君　只今日程ニ上ッテ居リマスル水先法中改
  正法律案ハ、昨四十五議會ニ於キマシテ、本院ヲ通過致シ
  テ居ルノデアリマス、而シテ貴族院ニ於キマシテ、會期切迫
  ノ爲ニ本案ハ審議未了ニ終ッタノデアリマス、故ニ今期再ビ
  茲ニ本案ヲ提出致シマシテ、皆サンノ御同意ヲ仰ガントスル
  ノデアリマス、簡單ニ提出ノ理由ヲ述べマシテ、御賛同ヲ得
  タイト思フノデアリマス、本法ハ明治三十三年ノ制定ニ係ル
  所ノ法律デアリマシテ、其第三條ニ於テ、年齢滿二十三年
  ニ達セザル者及滿六十年以上ノ者ト云フ制限ガアルノデアリ
  マス、卽チ二十三年カラ六十年迄ハ水先人トシテ業務ヲ營
  ムコトガ出來ルガ、六十歲ニ達スレバ直ニ其免狀ヲ返付セナ
  ケレバナラヌト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、此制限ニ
  付テ私ハ法制統一ノ上カラ見マシテモ、總テノ點カラ考ヘマ
  シテモ、最モ不適當ナル所ノ制限デハナカラウカト感ズルノデ
  アリマス、此法律ガ出來マシタ當時ニ於テ、何故ニ斯ノ如キ
  制限ヲ設ケタカト云フト、是ハ一ノ政略上ノ立法デアリマ
  ス、當時我國ニ於テハ外國人水先人ト云フモノガ多ク居タ
  ノデアリマス、然ルニ本法ヲ制定致シマシテ、總テノ水先人
  ヲシテ内地人ニ此水先業務ヲ營マシメルト云フ考カラシ
  テ、ドウシテモ外國人ノ水先人ハ之ヲ罷メサセナケレバナラ
  ヌト云フ必要ガ生ジテ來タノデアリマス、爲ニ此法律ニ於キ
  マシテ、外國人ニ對スル所ノ水先人ニ制限ヲ設ケナケレバナ
  ラナカッタノデアリマスルガ、國際上ノ關係ガアリマスルガ故
  ニ、直ニ之ヲ罷メサスト云フコトニハ參ラヌ、是ニ於キマシテ
  附則第三十條ニ於テ「此法律施行後五年間ヲ限リ主務大
  臣ハ第二條第一號ノ規定ニ拘ラス水先免狀ヲ授與スルコ
  トヲ得」ト云フ規定ガ設ケラレテアルノデアリマス、而シテ又
  此滿五年ヲ經過致シマシテモデス、尙ホ外國人ニ對スル所
  ノ所謂水先人ニ對シテハ、營業ヲ繼續シ得ルコトガ出來ル
  ト云フ規定ガ、更ニ第三十三條ノ末項ニ規定サレテ居ルノ
  デアリマシテ、斯樣ニ致シマシテ外國人ハ何時迄モ我國ニ於
  テ水先業ヲ營ムコトガ出來ルト云フコトニナッテ參ッタノデア
  リマス、茲ニ於テドウシテモ之ヲ制限シナケレバナラヌト云フ
  必要カラシテ、只今申上ゲタ通リ六十年ニ達スレバ當然内
  外人ヲ問ハズ、總テ免狀ヲ返付シナケレバナラヌト云フ規定
  ヲ設ケテ、此外國人水先人ヲ排斥スル所ノ規定ガ設ケラレ
  タモノデアルト思フノデアリマス、斯樣ナ理由ニ依リマシテ、
  卽チ政略上ノ立法カラ是ハ設ケラレタノデアリマスルガ故
  ニ、此規定ガ偶〓内地人ノ水先人ノ爲ニ非常ナル不利益ヲ
  生ジテ來タノデアリマス、卽チ内地人ハ滿六十年ニ至ラズシ
  テ-六十年ト云フ規定デアリマスカラ大抵五十七八歳ニ
  シテ其職ヲ退カナケレバナラヌト云フコトニナッテ參ッタノデア
  リマス、是ハ洵ニ私共今日經濟上總テノ點カラ考ヘマシテ、
  此水先人業務ト雖モ矢張自由競爭ニ支配サレル所ノモノ
  デアリマスカラ、苟モ一旦法律ガ認メテ其免狀ヲ交付シテ資
  格ヲ有シタル所ノ者ガ、或ル一定ノ年限ニ達スレバ直ニ其職
  ヲ退カナケレバナラヌト云フコトハ、是ハ甚シキ立法ノ一ノ弊
  害デアルト考ヘル、卽チ醫師ニ致シマシテモ或ハ又藥劑師
  ニ致シマシテモ、或ハ獸醫ニ致シマシテモ、或ハ機關士ニ致シ
  マシテモ、苟モ免許制度ヲ設ケテ一度人ニ免狀ヲ交付シテ
  居ルモノニ限ッテ、其免許ヲ受ケタル者ガ一定ノ年齡ニ達ス
  レバ當然其職ヲ罷メナケレバナラヌト云フ法制ハ、我國ノ法
  制ノ上ニ於テ一ツ〓無イノデアリマス、獨リ此水先人ニ限リ
  テ斯ノ如キ制限的ノ規定ヲ設ケテアルト云フコトハ、立法
  ト甚シキ弊害デハナイカト思フ、或人ハ六十年ニ達スレバ最
  早身心ガ老衰シテ、是ガ爲ニ水先人ノ如キ最ヒ貴重ナル人
  命ヲ預カル所ノ此職務ニ堪ヘザルガ爲ニ、法ハ斯ノ如キ規
  定ヲ設ケタモノデアルト云フコトヲ言ッテ居リマスガ、私ハ水
  先人ノ如キ業務デアルガ故ニ、經驗益〓豐富ニシテ、而シテ
  其技術ト云フモノガ最モ老熟シテ來ナケレバナラヌ、老熟ン
  テ初テ其職務ヲ十分ニ執行シ得ルコトガ出來ルモノダラウ
  ト考ヘルノデアリマス、技能圓熟或ハ經驗豊富ナル所ノ水
  先人ハ、ドウシテモ相當ナル年齡ニ達シナケレバナラヌト云フ
  コトハ申スマデモナイ、然ルニ只今申上ゲタヤウナ風ニ、是ガ
  一定ノ年齡ニ達スルト云フ爲ニ、職ヲ退カナケレバナラヌト
  云フコトハ、甚ダ謂レナイコトデアラウト思フノデアリマス、ソレ
  カラ又二十三年以上ト云フコトデアリマスルガ、是ハ別段ニ
  法律ヲ以テ此規定ヲ設ケル必要ハナカラウトカト思フ、ソレ
  ハ何デアルカト云ヘバ、明治三十二年ノ遞信省令第三十四
  號ノ水先人試驗規程第三條竝ニ船舶職員試驗現程ガア
  リマシテ滿二十三歲ニ達七ザル者ハ所謂水先人トナルコト
  ガ出來ナイト云フ規定ニナッテ居ルノデアリマス、故ニ法律ハ
  別段此水先法ヲ以テ二十三年以上ト云フ制限ヲ爲スベキ
  必要ハナイノデアリマス、卽チ此船舶職員規程ニ依ッテ當然
  制限サレテ居ルノデアリマスルガ故ニ、別段斯ウ云フ重複シ
  タル規定ヲ設ケル必要ハナカラウト考ヘルデアリマス、大體
  斯樣ナル理由デアリマシテ、此法律ハ法制ノ統一ノ上カラ
  見マシテモ、或ハ人ト云フモノニ對シテ一旦附與シタル權利
  ヲ、故ナク消滅セシメルト云フヤウナコトハ、今日ノ進步シタ
  ル法律ノ上カラ見レバ、甚ダ宜シクナイト云フ考カラ、吾々ハ
  本案ヲ提出致シマシタ次第デゴザイマス、詳シイ事ハ委員會
  ニ於テ尙ホ申上ゲマスルカラ、ドウカ滿場ノ御賛同ヲ得タイ
  ノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=44

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• 045・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ木下甚三郞君提出、電信線電話
  線建設條例第六條ニ依ル手當金增額ニ關スル建議案外
  一件ノ委員ニ併セ付託アランコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=45

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• 046・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニハ御異議ナイト
  認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第十乃至第十
  二ハ同種ノ議案デアリマスルカラ、一括シテ議題ニ供スルコ
  トニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=46

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• 047・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ一
  括シテ議題ニ供スルコトニ致シマス、各案每ニ提出者ノ趣
  旨辯明ヲ求メマス、日程第十、恩給法改正ニ關スル建議案、
  提出者高木正年君外一一名-高木正年君
  第十恩給法改正ニ關スル建議案(高木
  正年君外二名提出)
  恩給法改正ニ關スル建議案
  恩給法改正ニ關スル建議
  現行官吏恩給法及軍人恩給法ハ孰レモ明治二十三年
  ノ制定ニ係リ其ノ後數次ノ改正ヲ爲スト雖一時ノ彌縫
  策ニ止リ尙不備不公平ニシテ統一ヲ缺キ其ノ給與金額
  ノ如キハ甚タ低クシテ物價ノ暴騰セル今日ノ狀勢ニ適セ
  ス故ニ政府ハ曩ニ帝國議會ニ於テ其ノ根本改正ヲ明言
  セラレタルコトアルニモ拘ラス未タ何等提案ナキヲ遺憾
  トス蓋恩給ハ恩惠的給與ニ非スシテ現職中執務ノ爲喪
  失シタル經濟上ノ能力ヲ塡補シ又增加恩給ノ如キハ軍
  務ノ爲受ケタル傷害ニ對スル賠償トシテ政府ハ之ニ要ス
  ル費目ヲ支出スル義務アルモノニシテ恩惠的又ハ不生產
  ノ費目ナリトシテ看過スヘキモノニ非ス若夫レ歐米諸國
  ノ恩給ト我カ國ノ恩給トヲ比較スルトキハ我カ國ノ恩給
  ハ著シク低位ニ在リ政府ハ宜シク速ニ之ヲ改正スヘシ
  右建議ス
  第十一文武官竝巡査看守等恩給增額ニ
  關スル建議案(橫田千之助君外
  十一名提出)
  文武官竝巡査看守等恩給增額ニ關スル建議案
  文武官竝巡査看守等恩給增額ニ關スル建議
  現行法ニ據ル恩給額ハ近時ノ物價ニ比準セサルヲ以テ
  之ヲ增額シ特ニ軍人恩給ニ對シテハ格別ノ考慮ヲ加フ
  ルノ要アリト認ム政府ニ於テ速ニ適當ノ途ヲ講セラレム
  コトヲ望ム
  右建議ス
  第十二恩給法改正ニ關スル建議案(三
  浦得一郞君提出)
  恩給法改正ニ關スル建議案
  恩給法改正ニ關スル建議
  現行官吏恩給法及軍人恩給法ハ孰レモ明治二十三年
  ノ制定ニ係リ其ノ後數次ノ改正ヲ爲スト雖一時ノ彌縫
  策ニ止リ不備不公平ニシテ統一ヲ缺キ其ノ給與金額ノ
  如キハ甚タ低クシテ物價ノ暴騰セル今日ノ狀勢ニ適セ
  ス依テ速ニ根本的改正アラムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔高木正年君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=47

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• 048・高木正年

  ○高木正年君　此建議案ハ大正九年以來殆ド引續イ
  テ提出致シテ居ルノデアリマス、ソレガ爲ニ成べク言語ヲ約
  メテ皆樣ノ御迷感ヲ買ハヌ考デハアリマスケレドモ、特ニ申
  スベキ事ヲ申上ゲテ皆樣ノ御賛助ヲ受ケタイト思フノデア
  リマス、恩給法ノ改正ノ建議ハ、啻ニ恩給者ノ要求ヲ充ス
  爲ニ吾々ガ申スノデハナイノデアリマス、財政及行政ノ改革
  ノ廣キ場面ニ亙〓テ、多クノ關係ヲ有スル一ツノ改革ノ爲ニ
  要求スベキ重大ナル問題デアルト云フコトハ、特ニ御承知
  ノ事デアラウト思フノデアリマス、此改正ニ付キマシテハ、昨
  日皆樣ノ手許ニ政府ハ恩給法案ナルモノヲ提出シテアルノ
  デアリマス、此恩給法案ヲ政府ガ提出スル以上ハ、吾々ノ建
  議ハ無用ナリト考ヘラルヽ諸君ガアルカモ知ラヌノデアリマ
  スルガ、多年ノ要求デアル恩給法改正ハ、政府ハ提出シタケ
  レドモ、其内容ニ於テ議會ノ要求シタル實質ハ、確ニ此法
  案ニハ〓イテ居ルノデアリマス、此法案ノ提出前ニ於キマシ
  テ、先ヅ吾々ガ主張ヲ國民ニ訴ヘルト云フコトハ、極メテ必
  要ナ事柄デアルト信ズルガ爲デアリマス、恩給ハ只今申上ゲ
  マシタ如ク、吾々ガ年々歲々主張シ來ル所ノ豫算ノ各項目ニ
  亙リ、行政萬般ニ亙〓テ忠實ニ是等ノ職務ヲ執ル者ガ之ヲ行
  ヒ得ルカ得ザルカノ點ニ於キマシテハ、確ニ此法ニ缺點ガア
  ルト否トニ於テハ、政治ノ上ニ徹底ヲ缺クト云フコトハ自カラ
  來ルベキ所ノ結論デアルト思ハナケレバナラヌノデアリマス、殊
  ニ財政行政ノ上ニ亙ッテ特ニ改革ヲ要シ、特ニ豫算ノ削減ヲ
  要スベキ今日ニアッテハ、先以テ恩給法ノ改善ヲ望ンデ置カ
  ナケレバ、此改革ナルモノガ遠慮ナク各種二亙ッテ手腕ヲ揮
  フト云フコトガ實際ニ於テ出來ナイノデアリマス、今ヤ國民
  負擔ノ輕減ヲ叫ブ時ニ於テ、恩給法ノ改正ニ依ッテ、尙ホ幾
  何カノ國費ヲ要スルト云フコトハ極テ矛盾ノ事柄ノヤウニ
  考ヘラレマスケレドモ、畢竟今日豫算ノ上ニ亙ッテ各種ノ改
  革ヲ爲シ得ザル點ハ何デアルカト云フト、是ガ爲ニ負擔スベ
  キ所ノ官吏、文官及武官ノ上ニ亙ッテ聊カ躊躇セザルベカラ
  ザル事情ガ存スルト云フコトハ、畢竟スルニ是等在官者ノ上
  ニ對スル恩給法ガ完全デナイト云フコトガ一ツノ主要點ニ
  ナッテ居ルト云フコトハ見遁スコトノ出來ナイ事柄デアルト
  謂ハネバナラヌノデアリマス、ソレガ爲ニ一時國費ニ若干ヲ
  要スル事柄ナリト雖モ、此要スベキ金額ヨリモ、密ロ豫算ノ
  款項ニ亙ッテ改革スベキ所ノ金額、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ國
  民負擔ノ上ニ輕減スベキ事柄ガ極テ多イモノデアルト云フ
  コトヲ信ゼネバナラヌノデアリマス、先ヅ武官ノ上ニ於キマス
  ル恩給ノ點ニ於テ改革スベキ點ヲ中シマスレバ従來ノ恩給
  ハ、殊ニ議會ノ叫ビヲ大ニシタル所ノ增加恩給及扶助料ノ
  點ニ於テハ、政府ノ提出シタル恩給法ノ上ニ於キマシテハ、
  大體我意ヲ得タルモノト之ヲ謂ハネバナラヌ、然ルニ一般ノ
  文官恩給ニ至→テハ、恩給法ノ改正ハ政府ガ此通リ提出シ
  テ居ルケレドモ、之ニ伴フ所ノ武官ノ恩給表ト云フモノハ、
  少シモ之ヲ改革サレナイノデアル、恩給法案其モノハ稍〓完
  全ニ出來テ居リマスルケレドモ、文官ノ點ニ於キマシテモ矢
  張從來通リ四分ノ一ノ金額ニ其恩給額ヲ止メテ居ル、武
  官ニ於キマシテハ別表ヲ改正セザル爲ニ、此改正案ハ更ニ
  文官武官ノ上ニ其改正ヲ及ボサナイト少シモ變ラヌヤウナ
  實際ニナッテ居ル、武官ノ恩給ハ極テ其數ガ多ク其金額モ
  亦增加スベキ點ニ於キマシテ少シトハ言ハナイ、併ナガラ是
  ハ恩給ヲ受クベキ武官其者ノ自ラ招イタ事デハナイ、陸軍
  ノ改革或ハ師團增設ノ事ガアリ、或ハ部隊增設ノ事ガアル
  其場合ニ於テ、兵數ヲ殖スヨリモ寧口佐官以上ノ數ヲ殖シ
  テ居ル、是ハ今日陸軍ノ實際デアル恩給ハ國民一般ニ受ケ
  ルモノデアリマスケレドモ、徴兵ニ依ッテ出ヅル所ノ兵士ノ上ニ
  於テ恩給ヲ受クル者ハ戰爭ノ場合ニ依ッテ若クハ戰爭アッ
  テモ僅カ一時ノ戰爭デハ未ダ恩給ニ達シナイ者ガ多イ要ス
  ルニ將校下士ノ上ニ多イノデアリマスルガ、是ハ代々ノ政府ガ
  自ラ招イタ結果デアルト言ッテモ宜シイ、陸軍ノ師團ハ或ハ
  二個ヲ增設シ、或ハ部隊ヲ增設スル更ニ軍事當局ガ、或時
  ニ於キマシテハ現在ノ師〓ヲ倍數ニスル、或ハ莫大ナル所ノ軍
  團ノ設立ヲ希望スルト云フ上カラ、其場合ニ適用シ得ラルヽ
  ヤウニ將校ヲ殖シテ置ク、士官ヲ殖シテ置クト云フ現在ノ狀
  況ニナッテ居ル、ソレガ爲ニ一朝恩給問題ニナルト、金額ガ多
  イト云フコトガ至難ノ點ニナルガ、是ハ軍人自身ニ招イタノ
  デハナイ、内閣ガ政策ヲ誤レル結果、就中軍事當局ノ隱レタ
  ル政策ガ此累ヲ爲シテ居ル實際ニナッテ居リマス、又軍人恩
  給ノ內容ニ付テ考ヘテ見マスト、實際今日ノ恩給額デハ啻
  ニ物價ノ騰貴ノ今日ノ時代ニ合ハナイ許リデナイ、抑〓其出
  發點ヲ誤ッテ居ルノ結果、在〓軍人トシテ其資格ヲ完ウシ
  テ、一朝事有ル時ニ臨ンデ、國民皆兵ノ實ヲ擧グルト云フマ
  デヾナクモ、幾何カノ動員アッタ後ニ在〓軍人ヲ召集シテ留守
  師團ナリ、若クハ其位ノ師團ノ活動ヲ爲ス場合ニ於テ、平
  生其資格ヲ失ハズシテ、軍人タルベキ面目ヲ保持シ、而モ專
  門ノ技術ヲ在〓軍人トシテモ、尙ホ心懸ケテ、之ヲ〓究シテ
  置クト云フコトニ付キマシテハ、今日ノ恩給額デハ迚モ是等
  ノ要求ヲ充シ得ベキ實際デナイ、殊ニ甚シキニ至ッテハ、隊ニ
  在ッテハ自己ノ從卒トシテ使ッタ者ノ中ニ、在〓軍人トナルト
  キハ或ハ聯隊長若クハ大隊長ガ其從卒ノ膝下ニ跪イテ救
  助ヲ乞ヒツヽアル、若クハ其膝下ニ跪クニ非ザレバ自己ノ生
  活ヲスルコトガ出來ナイト云フ狀態ニアッテ、如何ニシテ一朝
  動員ノ際ニ完全ニ其職務ヲ執行スルコトガ出來マセウカ、
  其威嚴ヲ完ウスルコトガ出來ルデアリマセウカ、斯カル狀態ニ
  在ルノデアリマスカラ、殊ニ恩給增額ノ叫ノ起ルト云フコト
  ハ、是亦時代ヲシテ斯ノ如キ要求ヲ爲サシムルニ至リタルモ
  ノデ、過去ノ内閣ノ失政ガ今日ノ財政ヲ累シテ居ルト云フ
  コトハ、是亦何人モ否ムコトノ出來ナイ實際デアルノデアリ
  マス、是ガ爲ニ今日ノ最モ急務ナル所ノ軍備縮小ノ如キモ、
  軍事當局ハ或ハ此點ニ躊躇セラレルノデアリマセウ、思切。〃
  タ改革ヲ爲シ得ルコトガ出來ナイ、極端ニ言へバ今日ノ我ガ
  陸軍ハ世界ニ對シテ極テ不完全ナ素質ヲ持ッテ居ル、兵器
  ノ改革モ十分爲スコトガ出來ナイ、斯カル場合ニ於テハ師
  〓數ヲ減ジ、兵數ヲ減ジテ其金ヲ以テ軍備ノ充實ヲ爲シ
  手取リ早ク今日ノ軍隊ヲシテ世界ニ對抗シ得ルマデニスル
  方ガ、兵ハ減ジテモ其實力ノ上ニ其對抗力ノ上ニ於テ、此
  方ガ便ナリトシナケレバナラヌ、其事ハ極テ能ク分ッテ居ルニ
  拘ラズ、軍事當局ガ之ヲ爲シ得ナイト云フコトモ、軍備縮小
  ニ依シテ淘汰スベキ所ノ將校或ハ靑年士官、或ハ下士等ノ
  上ニ付テ聊カ其退官以後ノ狀態ヲ顧ミルガ爲ニ、容易ニ手ガ
  出セナイト云フコトガ、今日ノ實際上起ル所ノ軍備縮小上
  ニ於ケル支障ノ大ナルモノデアルト私ハ考ヘテ居ル、ソレガ爲
  ニ今申上ゲルガ如ク恩給ニ於テモ後多ノ增額アリト雖モ、
  之ヲ行政ノ改革財政ノ改革ノ上ヨリ來ル豫算ノ創減ノ上
  カラ申シマスレバ、極テ少イ價デアッテ、此價ヲ拂ハナケレバ
  今日ノ改革ハ徹底シナイ、又文官ニアリマシテモ三十三年
  ノ四月三十日以前ノ所謂增俸成ラザル以前ノ恩給者ハ、
  矢張當時ノ恩給額ニ依ッテ恩給ヲ受ケテ居ル、又官吏ノ增
  俸ハ其以後ニモアリマシタガ徹底セザル所ノ俸給額、卽チ
  增俸ノ十分ナラザリシ以前ニ於ケル所ノ文官ノ人々ニ對シ
  テ、今日ノ物價騰貴ノ上カラ申シマシテハ、極テ難儀ナ境遇
  ニ在ル、殊ニ文官ニ在ッテハ各自俸給ノ後分ヲ積立ッテ置イ
  テ、是ニ於テ退官後ノ生活ノ保障ヲ受ケルト云フコトニナッ
  テ居ル、所ガ物價騰貴以前ニ積立ッタ所ノ金額デ、今日ノ通
  貨膨脹シテ、物價ハ騰貴シタガ通貨ハ下落シタ今日ニ、以前
  ノ恩給額ヲ受ケルト云フコトハ、極テ慘酷ナル支給デアルト
  申サナケレバナラヌノデアリマス、此事ハ今日マデ餘リ論議
  サレナカッタノデアリマスガ、熟、文官ノ恩給ノ上ニ付テ考ヘ
  テ見マスルト確ニ此傾ガアル、玆ニ一ツ申スノハ文官ノ恩給、
  所謂受恩給者ト云フ者モ中〓多イ、是モ受恩給者自ラガ
  此數ヲ造シタノデハナイ、一元來言ヘバ官廳ガ官吏ヲ任免スル
  場合ニ於テ其行ウタ所ノ結果ガ恩給者ノ製造デアルト云フ
  コトノ幾多ノ例證ヲ吾々ニ示シテ居ル、官廳ガ人ヲ淘汰スル
  場合ニ彼ノ者ハ恩給者デアルト言ッテ、恩給年限ニ達スルト
  直ニ其人ヲ罷メルト云フ癖ガアル、成程新シイ人物モ入レネ
  バナラヌニハ相違アリマセヌガ、ソレモ人ニ依リ、其官職ニ依
  ルノデアリマス、恩給ヲ受クベキ年限ニ達シタ者ハ極テ謹嚴
  ニ、自己ガ懲戒處分ヤ何カニナッタ時ハ恩給ガ無クナルト云
  フコトヲ、彼等ノ觀念ニ置クガ爲ニ最モ忠實ニ職務ヲ爲シ
  得ルノデアル、爲サントスル事情ガ彼等ニアル、然ルニ官省ニ
  於テモ最モ重寶視スベ【キ所ノ斯カル部類ノ人ヲ、先ヅ
  罷免スルト云フコトガ從來ノ遣方デアル、軍隊ノ方
  面ニ於テモ軍事當局ヤ內閣ノ方針ニ依ッテ減スコトヨ
  リハ寧口將來恩給ヲ受クベキ所ノ國家ノ累トナ
  ルベキ者ノ數ヲ餘計造ッテ居ル、文官ニ於テモ唯〓
  申シマシタヤウナ事情ノ上カラ、知ラズ識ラズ今日ノ受恩給
  者ノ數ヲ殖ヤシタト云フ結果ニナッテ居ル、既ニ多クノ數ガ
  アルカラ、此數ノ上ニ均霑セシムルニハ澤山ノ金ガ要ル、恩
  給ノ改正、爲ニ容易ニ出來ナイト考ヘルカモ知レマセヌガ、此
  改正ヲスルニハ退職者ノ上ニ何等ノ考慮ヲ置クノ必要ナシ
  トシナケレバ、今日ノ改革ハ出來ナイト云フコトハ前ニ申上
  ゲタ通リデアル、ソレ故ニ吾々ノ恩給法ノ改正ハ、決シテ恩
  給者ノ要求ノ聲ニ動カサレタニアラズシテ、財政行政ヲ整理
  スベキ所ノ最モ重要ナル所ニ立脚シテ、此改革ヲ要スル時
  代ニ於テハ、先ヅ第一ニ此恩給法ノ改正ヲシナケレバナラ
  ヌ、是ハ大正九年ノ臨時議會ニ於テ、恩給法ノ一部改正ノ
  アッタ時ニ、吾々ハ當壇上ニ叫ンダノデアリマス、當時恩給局
  長タリシ所ノ横田君ハ政府ヲ代表シテ、政府ニ於テハ早晚
  根本的ノ改正ヲ爲スベシト云フコトヲ聲明セラレタ、是ガ爲
  ニ十年ニモ、十一年ニモ、每年吾々ハ其催促ヲ爲スガ如クニ
  恩給法ノ改正ヲ要求シタ所デ今年度幸ニ恩給法ノ改正案
  カ出タガ、之ヲ讀ンデ見ルト僅ニ增加恩給ト扶助料ダケハ稍、
  吾々ノ要求ヲ充スヤウニ書イテアルケレドモ、文官ニ於テハ在
  來ノ通リ、武官ニ於テハ別表ヲ變ヘナイ、殆ド門ハ造ッタケレ
  ドモ、家ハ造ラナイ人ノ住フベキ設ケハシテナイ、人ハ招イタ
  ガ其人ニ饗スベキ物ヲ供サナイト同ジヤウナ實體デアル所ノ
  恩給法案デアル、ソレ故ニ恩給法案既ニ現レタリト雖モ、ド
  ウシテモ吾々ハ國民ノ要求トシ、時代ノ缺クベカラザル所ノ
  必要ナル事項トシテ、此壇上ニ立ッテ吾々ノ改正案ノ速ニ成
  立スルヤウニ、諸君ニ御協賛ヲ希フ次第デアルノデアリマス、
  以上申上タ通リデアリマスカラ、何レ此問題ハ委員付託ニ
  ナルデアリマセウガ、諸君ニ於テモ篤ト御攻究下サイマシテ、
  完全ニ此機會ニ於テ恩給法ノ徹底的成案ヲ造ラレンコト
  ヲ、深ク希望スルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=48

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• 049・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　日程第十一、文武官竝巡査看
  守等恩給增額ニ關スル建議案、橫田千之助君外十一名
  提出-三善〓之君
  〔三善〓之君登壇〕

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• 050・三善清之

  ○三善〓之君　只今高木君ヨリ恩給法ノ改正ニ付キマシ
  テ縷々御述ニナリマシタガ、本員ニ於テモ其趣旨ニ於テ大
  體御同感デアリマス、其點ニ付キマシテハ只今ヨリ十分ニ私
  ガ申上ゲヤウト考ヘマス、唯〓高木君ガ年々恩給ニ關スル建
  議案ヲ御出シニナルノハ、至極私共同感デアリマスルガ、眞
  意ヲ吾輩高木君ニ御尋センケレバナラヌコトガアル、併シ是
  ハ本員ガ段々述べマスル中ニ分リマスカラ茲ニハ述ベマセヌ、
  ンレカラ此度政府ガ提出ニナリマシタ改正案ハ、御說ノ通リ
  增加恩給ト扶助料ニ關スルモノデアリマス、木員ガ玆ニ述べ
  マスモノハ、其他ノ一般ノ恩給增額ニ付テ述べルノデアリマ
  スカラ、左樣御承知ヲ願ヒタイ、是ヨリ提出案ノ理由ヲ述べ
  マス、文武官竝小學校〓員、巡査看守等是等、全部ニ對シ
  テ一般ノ恩給及其遺族扶助料及癈兵等ノ增加恩給等、是
  等ヲ總テ增額恩給ヲスルノ建議デアリマス、本案ハ我黨ノ
  總務床次竹二郎、橫田千之助、三土忠造、本員等ノ提出
  ニ係ルモノデアリマス、元來官吏ハ嚴格ナル服務規律中ニ
  拘束ヲサレテ居リマシテ、世間一般ニ好景氣ナル時、卽チ成
  金ヲ輩出スルヤウナ時、一般ノ國民ガ華美贅澤ニ渉リマス
  時ニ於テモ、一定ノ俸給ニ衣食致シマシテ、孜々トシテ國家
  ニ奉仕スルモノガ官吏デアリマス、然ルニ官吏ノ俸給其モノ
  ガ、旣ニ我國ノ官吏公歐米ノソレトハ大分俸給ガ低イノデア
  リマス、況ヤ其何分ノ一ヲ給サレル所ノ恩給、扶助料ハ更ニ
  少イ譯デアリマス、殊ニ軍人ハ申スマデモナク戦時ニ於キマ
  シテハ身ヲ千軍萬馬、彈丸函飛ノ間ニ投ジテ、國家ノ機牲
  ニ供シ、護國干城ノ任ニ當ルモノデアリマス、戰時ニ於テハ
  斯ノ如ク、平時ニ於キマシテモ軍律及軍規ノ中ニ服從ヲ致
  シマシテ、絕對上官ニ服從ヲ强ヒラレテ居ルト云フ有樣ニ在
  ルノガ軍人デアリマス、カルガ故ニ軍人ノ勤務ト文官ノ勤務
  トハ自ラ大ニ異ル所ガアリマス、國家ハ之ニ對シテハ特別ノ
  考査ヲ用ヒ、軍人ヲ優遇シナケレバナラヌノデアラウト思フ
  ノデアリマス、本員ガ玆ニ述べマスモノハ、一般ニ對シテノ步
  合等ノ意見ヲ建議致スノデアリマスガ、特ニ軍人ニ對シテ國
  家ハ厚ク致サナケレバナラヌト思フノデアリマス、殊ニ最近
  軍縮ノ聲ハ國民ガ國防ヲ輕視スルノ弊風ヲ惹起シテ、軍人
  ノ士氣ニ非常ニ關係ヲシ、影響ヲシテ居リマス、現ニ其實例
  ヲ中シマスレバ、最早中學校ヲ出マシダ者デ軍人ノ學校等
  ニ這入ルモノハ殆ド無イト云フ有樣デアル、偶ヘアレバ誠ニ劣
  等ノ者デアル、卒業シマシタ靑年ノ士官ハ制服ヲ拵ヘルモノハ
  殆ド無イ、制服ヲ拵ヘルヨリハ背廣ヲ拵ヘル、調練ヲスルヨリハ
  他ノ書物ヲ研究センケレバナラヌ、斯樣ナ狀況ニ成ツヽアリ
  マス、實ニ我ガ國家ノ爲ニ深憂ニ堪ヘザルコトデアリマスガ、
  政府ハ此點ニ特ニ意ヲ用ヒテ、軍人ノ優遇ノ途ヲ明ニセン
  ケレバ相成ラヌト考ヘルノデアリマス、斯樣ナ次第ニ依ッテ、私
  ハ增加恩給、巡査看守ノ恩給、小學校〓員ノ恩給、一六六、
  扶助料、軍人ノ恩給、文官ノ恩給、是等ニ付テ逐次建議ノ
  要旨ヲ述ベヤウト欲スルノデアリマスガ、先以テ恩給ノ歷史
  カラ御話ヲ申上ゲナケレバナラヌト思フ、我図ノ恩給法ハ明
  治九年ノ頃ニ誠ニ粗末ナ規則ガアリマシタノデアリマスガ、
  是ガ法律ニナリマシタノハ明治二十三年ノ山縣内閣ノ時
  デアリマス、其際ニ軍人恩給法、文官恩給法、小學校〓員
  ノ退隱料等ガ制定サレマシタノデアリマスガ、是ガ現在存在
  シテ居ル所ノ只今ノ恩給ノ法律デアリマス、左樣ニ古イノデ
  アリマスカラ完全ノモノデハアリマセヌ、然ルニ其制度ガ定マ
  リマシテ二十年ノ後、明治四十年ニ於キマシテ桂內閣ノ時
  卽チ吾黨ハ、西園寺侯ヲ總栽トシテ吾黨ガ議金ニ多數ヲ占
  メテ居リマシタ時デゴザイマスガ、其時ニ於テ一般ノ文武官
  ニ對シテハ二割五分ノ增額ヲ致シマシタノデアリマス、其次
  ハ大正六年寺內內閣ノ時ニ武官ノ軍人ノ恩給ハ、明治四
  十年ヲ境トシテ前後平等デナカッタノデアリマス、之ヲ改正致
  シマシテ平等ニ致シマシタ、文官ノハマダ平等ニナッテ居リマ
  セヌガ、ソレハ此度此改正案ヲ出ス譯デアリマス、當時モ矢
  張吾黨ガ議會ニ多數ヲ占メテ居リマシタ、卽チ寺內内閣ヲ
  支持シタ時デアリマス、其後ハ大正七年吾黨ノ純然タル內
  閣、卽チ原內閣ニ於キマシテ此恩給ノ增加ニ付キマシテハ、
  政府ハ五割デアリマシタカ、六割デアリマシタカ、大變ナ增額
  ヲ致シマシタガ、尙且ツ吾々ハ努力シテ之ヲ七割-現ニ三
  土君ガ其委員長デアリマシタト思ヒマスガ、七割ニ致シマシ
  タ、我國ノ思給法アッテ以來洵ニ大ナル增加デ、七割ノ增額
  ヲ致シタノガ卽チ吾黨内閣デアリマス、次ハ昨年ノ高橋內
  閣ニ於キマシテハ、此癈兵ノ所謂增加恩給、癈兵ハ今日千
  六百人許リデアリマスガ、大正十年マデノ癈兵ニ對スル給
  與額全體ハ百數十万圓ニ過ギナカッタ、ソレヲ高橋内閣ニ於
  キマシテハ約信額ニ致シマシタ、百二十万圓程ノ增額ヲ致
  シマシタコトハ諸君御承知デアラウト思ヒマス、斯樣ナ次第
  デアリマシテ、歷代ノ此忍給ニ付キマシテノ改正增額甚ダ不
  十分デハアリマスルガ、吾黨ハ斯ノ如ク受恩給者ニ對シマシテ
  好意ヲ以テ圖リツヽアルノデアリマス、然ルニ最近奇怪千萬ナ
  事ヲ承リマシタ、今囘ノ豫算ニ恩給增額ヲ現内閣ハ豫算ニ
  編入ヲシタノデアル、然ルニ政友會ノ反對ニ依フテソレガ潰レ
  タノデアル、斯樣ナ奇怪ナ宣傳ヲ致ス者ガアリマス、私ハ或ル
  將官カラ聞キマシタ、非常ニ激昂致シマシテ、左樣ナ事實ガ
  何處ニ在ルカ、直ニ恩給局長ニ電話ヲ掛ケテ調ベマシタ所
  ガ決シテ左樣デナイ、私共少シ豫算ヲ組ミマシテ大藏省ニ
  出シマシタガ、大藏省ニ於テ全然省カレマシタノデアリマス、
  左樣ナ事實デアリマスカラ、ソレハ何處マデモ私說明ヲ致シ
  マスト言ッテ居ル、床次君ハソレガ爲ニ或ル將官ヲ呼ビマシテ、
  何處カラサウ云フ宣傳ガアルカト云フト全ク出所ガ分ラヌ、
  堪ヘテ吳レ、斯ウ云フコトデアリマシタ、又昨年ノ議會ニ於
  キマシテ、各黨ノ諸君カラ恩給增顏ノ建議案等ヲ御出シニ
  ナリマシタノガ七八種アリマシタ、不肖委員長トナリマシテ
  之ヲ整理致シマシタ、我黨ノ委員多數ニ依テテ悉ク通過ヲサ
  セマシタ、而シテ此壇上ニ私ガ詳細ノ報告ヲ申上ゲ、諸君ノ
  御賛同ヲ得ント欲シタノガ卽チ最後ノ二日デアリマシタ、松
  下君ノ埋葬法案ノ長演說、荒川君、高田君ノ長廣演說ニ
  依クテ遺憾ナガラ私共玆ニ報告スルコトヲ得ナカッタ、私共熱
  心ニ諸君ノ御出シニナリマシタモノヲ通過サシテ、此報告ヲ
  セント欲シタノニ其時間ガナカッタ、幸ニ我黨ノ岩崎君ノ機
  轉ニ依ッテ動議ヲ出シテ、吾々多數ニ依ッテ之ヲ決シタ、此位
  吾々ハ誠意ヲ以テヤッテ居ル、數日前ニ憲政會ノ永井君ハ此
  壇上ニ立ッテ、受恩給者ノ悲慘ナル狀態ヲ縷々御述ニナッタ
  コトハ御尤デアル、私共同感デアル、其終リニ於テ內閣諸公
  ヲ、實ニ日本ノ政治家ハ政治家デハナイト言ハレタ、其口吻
  ヲ藉リテ言ハシメレバ、憲政會ノ政治家ハ政治家デナイト私
  ハ思フ、何トナレバ大隈内閣ハ數年內閣ヲ持ッテ居ッタノデア
  ル、其時分ニ恩給ノ改正ヲ一ツモヤリハセヌ、一厘半毛モ增
  額ヲヤラヌ(「何ヲ言ッテ居ルノダ」ト呼フ者アリ)サウ云フ實例
  ガアルデナイカ、實例ダカラ如何トモスルコトガ出來ナイ、アル
  ナラバ言ウテ見給へ、是ヨリ私ハ案ノ内容ニ入ッテ詳細ニ申上
  ゲマセウ、大體英國ニ於キマシテハ恩給省ト云フモノヲ獨立
  致シテ居ル、日本ノヤウニ小サナ恩給局デハナイ、恩給省ヲ獨
  立シテ恩給ノ事ヲ扱ウテ居ルノデアリマス、隨テ多數ノ官吏
  ガ居クテ、此受恩給者ノ爲ニ十分ナル政府ハ努力ヲ拂ッテ居ル、
  恩給法ナル法律ハアルガ、法律以外ニ受恩給者ノ中二八非常
  ニ困難ニ陷クテ居ル者ガアル何レノ國デモアル、ソレ等ノ者ヲ
  十分ニ調査シテ、特別ノ救濟ヲスルト云フコトガ英米ノ恩
  給ノ制度デアル、然ルニ我國ニ於キマシテハ、大正九年マデ
  ハ我國ノ恩給局ノ經費ハ僅ニ一万二千圓シカナイ、斯ンナ
  事デ日本ノ受恩給者ノ十分ノ扱ヒガ出來ルカ、原內閣ガ成
  立スルヤ、之ヲ四割增シタ、現在ニ於テハ恩給局ハ十万圓ニ
  ナ→テ居ル、尙且ツ是デ以テモ吾輩ハ足ラヌト思フ、行政機
  關ノ上ニ於テ、各府縣ニ於テ、更ニ三人五人ノ吏員ヲ出シ
  テ十分ニ調査ヲシナケレバ行屆キマセヌ、恩給ヲ受ケル者ニ
  困難シテ居ル者ガ澤山アル、是ハ恩給局制度ニ付テ建議ノ
  一ツデアリマス、是ヨリ增加恩給ヲ逐次述ベル、增加恩給ハ
  先刻申シマシタ如ク、高橋內閣ノ時ニ倍額ニ致シマシテ、只
  今千六百万圓ニ對シマシテ二百五十万圓程デアリマス、然
  ルニ此度ノ豫算ニ政府ガ更ニ百万圓以上ヲ豫算ニ編入ニ
  ナッテ居リマスガ、吾々ハ此程度ヲ以テ滿足スルコトガ出來
  ナイ、故ニ政府ニ向ッテ更ニ追加豫算デモ出シテ十數万圓、
  出來得ルナラバ二百万圓マデ增額ヲシテ、大正十年ニ於ケ
  ル所ノ額ヨリハ五倍位ニ增額ヲシタイ、此恩給ヲ受ケル者ノ
  中デ一番增加恩給ヲ受ケル人ハ、御承知ノ通リ癈兵ノ種
  類デアリマスガ、一番困難デアリマス、故ニ今囘政府ガ豫算
  ヲ組ンデ居リマスノハ百五十万圓カデアリマスケレドモ、更ニ百
  五十万圓程ノ追加豫算ヲ政府ハ提出セラレンコトヲ吾々ハ
  建議致シタイノデアリマス、次ニ巡査看守ノ恩給デアリマス
  ガ、巡査看守ハ現在ノ所デ恩給ヲ受ケル者ガ一千五百人ア
  リマス、現在ノ受ケル金額ハ八十五万圓デアリマス、一併ナガ
  ラ是以テ只今ノ恩給デハ誠ニ困難ニ感ジマス、故ニ少クトモ
  二割五分三割/增加ヲシナケレバナラヌト考ヘテ居リマス
  此事ヲ政府ニ建議致シマス、其次ハ小學校〓員ノ退隱料デ
  アリマスガ、現在ニ於キマシテハ其恩給ヲ受ケル者八百六十
  人、此金額ハ百七十万圓デアリマスガ、小學校ノ〓員ハ御
  承知ノ通リ、十五年カラ先ハ年々歳々累加シマシタ所ノ退
  隱料デ受ケルノデアリマスカラ、一般ノ恩給者ニ較べマシテ
  ハ割合ガ一番好イノデアリマス、故ニ小學校ノ〓員ニ對シマ
  シテハ二割迄ノ增額デ宜カラウ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリ
  マス、其次ハ一般ノ扶助料デゴザイマスガ、此扶助料ハ極テ
  問題デアル、此度政府ニ於テ多少ノ案ガ出テ居リマスガ、是
  以テ增加恩給ト同樣ニ吾々ハ甚ダ不足デアルト思フ、是ハ一
  般ヲ通ジテ五割迄ノ增額ヲシナケレバ相成ラヌト考ヘテ居
  ル、次ハ軍人ノ恩給デアリマスガ、現在デモ文官ヨリハ少シク
  宜シウゴザイマス、其等差ガ甚ダ少イ、隨テ此度歩合ノ改正
  ヲ致シマスナラバ、軍人ニ對シテハ三割以上ノ增加ヲ致シタ
  イト云フ趣旨デアリマス、文言ニ付キマシテハ二割五分ノ增
  加デ宜カラウ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、是等ノ大體ノ
  比例ヲ以チマシテ、政府カラ不日茲ニ恩給法改正ノ法案モ
  出マスケレドモ、高木君ノ言ハレタ如ク、是等ノ步合ノ改正
  等ハ出來テ居リマセヌノデアリマスカラ、是非共此議會中ニ
  改正法律案ヲ政府ハ出サレテ、御同樣ニ之ニ向ッテ可決致
  シタイト考ヘマスノデス、ソコデ是非玆ニ申上ゲナケレバナラ
  ヌコトガアリマス、憲政會カラ御出シニナッタ建議案、此次ニ
  三浦君ガ御述ニナリマスガ、三浦君ハ私友人デアリマシテ、
  至テ溫厚ノ君子デ、私共非常ニ敬服スル人デアリマス、然ル
  ニ此度御出シニナリマシ夕建議案ハ、軍人社會ニ恩給ノ運
  動者ガ大分アリマス、其者等ガ言フコトヲ其儘建議案ニ御
  書キニナッテアル、私共其通リノモノヲ此處ニ持ッテ居リマス
  ガ、斯ウ云フ事ヲ建議シテ貰ヒタイト云フコトヲ、軍人ノ而モ
  將官ノ連中ガサウ云ウヤウナ事ヲ申シテ居ル、三浦君ハ其
  儘建議案ニ御書キニナッタモノデアラウト思フ、憲政會ノ御
  方ハ全部之ニ賛成ノ御名前ガアルガ、恐ラクハ盲判ヂヤナイカ
  ト思フ(「ノウ〓〓」)「マア聽キ給へ」-「聽キ給へ」(「引込メ」
  ト呼フ者アリ)默クテ聽ケ、斯ウ云フ事ヲ書イテアル(「眞面目
  ニヤレ」「謹聽」「傍聽席ヲ向イテヤリ給へ」ト呼フ者アリ、其
  他發言者多シ)馬鹿ヲ言ヘ、必要ノ建議案ダカラ聽キ給へ、
  聽ケ(「ヤレ〓〓」ト呼フ者アリ)三浦君ノ提出ノ建議案ニ斯
  樣ナ事ガ書イテアル、軍人ノ今日ノ恩給ハ(發言者多シ)
  默ッテ聽ケ··

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• 051・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　靜肅ニ

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• 052・三善清之

  ○三善〓之君(續)　默ッテ聽ケ、聽イタラ宜イヂヤナイカ、
  三浦君ノ(「議長注意セヨ」ト呼フ者アリ)建議案ニハ軍人ノ
  恩給ハ二割五分殖エタ、然ルニ文官ノ恩給ハ四割五分ト
  斯ンナコトハ何處ニアル
  〔發言者多ク議場騷然〕

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• 053・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　靜肅ニ

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• 054・三善清之

  ○三善清之君(續)　憲政會ノ案ハ吾々ハ決シテ贊成ハシ
  ナイ、駄目ダ

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• 055・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　成ベクアナタノ案ヲ說明スルヤウ
  ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=55

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• 056・三善清之

  ○三善〓之君(續)　私ノ說明ハ濟ンデ居リマスカラ御賛
  成ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=56

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• 057・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　次ハ日程第十二、恩給法改正
  ニ關スル建議案、三浦得一郞君提出-三浦得一郞君
  〔三浦得一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=57

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• 058・三浦得一郎

  ○三浦得一郎君　諸君、私ハ恩給法改正ノ事ニ付キマシ
  テ、建議案ヲ提出致シマシタノデアリマスガ、本案ニ付キマシ
  テハ旣ニ高木君カラ詳細ナル御說明ガアリ、今又三善君カ
  ラモ詳細ナル御說明ガアリマシタノデ、大要既ニ御了解ノ事
  ト存ジマス、故ニ私ハ此建議案ノ提出ノ理由ニ付テ一二數
  衍的ニ中述ベタイト思ヒマス、只今三善君カラ本案提出ノ
  事ニ付キマシテ色々何ダカ、斯ウ黨爭的ノ事ノヤウニ御話ガ
  アリマシタガ、斯ノ如キ案ハ決シテ政黨政派ノ別ノアルベキモ
  ノデハナイト私ハ確ク信ジマス(ヒヤ〓〓)固ヨリ軍人ノ恩給
  文官ノ恩給ト云フ事ニ付キマシテハ、各派共ニ年來是ハ
  致ノ行動ヲ執ッテ居ルノデアリマス(拍手)恩給法ハ明治二
  十三年ニ初テ制定セラレマシテ、爾來今日ニ至ルマデ屢〓改
  正ガゴザイマシタガ、何時モ唯〓一時ヲ彌縫シタニ止マッテ居
  ルノデゴザイマス、ソレ故ニ受恩給者ニ於キマシテハ非常ナ
  ル生活ノ苦痛ト云フ所カラ、屢〓請願ガ出マスルノデ、殆ド請
  願書類ハ山ヲ成シチ居ルノデアリマス、玆ニ於テ一昨年ノ卽
  チ四十四議會ニ於キマシテ、吾々ガ三善君其他ノ方々ト御
  相談ヲ致シデ、政府ニ建議ヲ致サウカト云フコトニ話ガ立
  至ッタノデアリマスガ、政府ハ既ニ五割ノ增額ヲ致スカラ、ソ
  レニハ及バヌト云フコトデアリマシテ、如何ニモ原內閣ノ時
  分ニ政府カラ提出ヲ致シタノガ卽チ五割增デゴザイマシタ、
  ソレガ後ニ又七割ト云フコトニ訂正セラレタ、其七割ハ決シ
  テ平等ニ七割ニナル譯デハナイノデアリマス、中將階級ガ先
  ヅ二割、下ヲテ三割、四割、五割トナリマシテ、最下級ガ十割
  ト云フ程度ニ一昨年極マッタノデアリマス、ソレニ依ッテ聊カ
  一般ニ增額サレタノデアリマスガ、併ナガラソレヲ以テ滿足ス
  ベキモノデハナイノデアリマス、故ニ昨年卽チ四十五議會ニ
  於キマシテ、私ハ更ニ增額ノ建議案ヲ提出致シマシタ所ガ、
  曩ニ三善君カラ御話ガアリマシタガ、當時九名ノ委員付託
  ニナリマシテ、其委員長ガ三善君デアッタノデアリマス、所ガ
  三善君ノ曰ク三浦是ハオ前ノ建議案ハ撤囘シタラドウカ、
  必ズ政府カラ出スト云フノデアルカラ撤回シロ、斯ウ云フ仰
  セデアリマシタガ(三善〓之君「ノウ〓〓」ト呼フ)其當時政
  府委員ハ今回ハ間ニ合ヒマセヌガ、十分調査ガ出來テ居ル、
  次ノ議會ニハ必ズ提出スルカラ、此建議案ヲ撤回シタラ宜
  カラウト云フコトデアリマシタ(三善〓之君「ソンナコトハ言
  ハナイ」ト呼フ)多分速記錄ニハゴザイマス、ソコデ自分ハ現
  內閣ヲ信ジナイノデアル、ソレデ果シテ明年出スカ出サヌカ
  ト云フコトモドウモ信ゼラレナイ、撤回致サヌト云フコトヲ申
  シマシタ所ガ、然ラバ是ハ否決スル、ソレハ御勝手デアルカラ
  ト云フノデ遂ニ否決セラレタノデアリマス、所ガ今日ニ至ル
  迄新聞ノ傳フル所ニ依リマスルト云フト、今回更ニ又出タヤ
  ウデアリマスルガ、マダ吾々ノ手ニハ來ッテ居ラヌ、ソレヨリ先
  キニ吾々ハ此本案ヲ提出シタノデアリマス、旣ニ第三囘ノ建
  議案ニナッテ居ルノデアリマス、何時モ其理由ハ同ジ事デアリ
  マスカラ、此理由書ニ詳細認メテアリマスルガ故ニ、御一讀
  下サッタナラバ御諒解出來ヤウト思フノデアリマス、大〓今ノ
  兩君ガ述ベラレマシタカラ、私ハ細カイ事ハ申シマセヌガ、唯ミ
  敷衍的ニ申シマスレバ、今日軍備縮少ト云フコトヲ誤解シ
  テヾス、永久ノ平和ガ得ラレルモノカノ如ク思ッテ、遂ニ軍事
  ヲ疎外シテ居ルト云フコトハ、私ハ甚ダ遺憾ニ思フノデアリ
  マス、如何ニモ軍備ハ縮小シナケレバナラヌ、或ル程度迄ハ、
  最小限度迄ハ、縮小セヨト云フコトハ國民ノ聲デアリマス、
  然ラバ唯、と單ニ師團ヲ減ラス、或ハ五万何千ヲ減ラスト云フ
  ヤウナ事デハイケナイノデアリマス、之ヲ徹底的ニ縮小致シテ
  或ル程度迄縮小シテ、之ニ代ヘルニ內容ヲ充實シナケレバナ
  ラヌ、内容ヲ充實シナケレバ、決シテ國防ハ出來ナイノデアリ
  マス、故ニ此內容ヲ充實スルニハ、種々ゴザイマセウ、或ハ精
  銳ナル機械ヲ輸入スルコトモアリマセウ、又種々ナル新シキ所
  ノ精銳ノ機關モ澤山要ルデアリマセウガ、一番此軍隊ノ要
  素ニナルモノハ何デアルカト云フニ、所謂軍人精神デアリマ
  ス、此精神ガ無カッタナラバ、如何ニ立派ナル機械ガアッテモ、
  之ヲ利用スルコトハ出來ナイノデアリマス、然ルニ熟、此軍
  人界ノ有樣ヲ見マスルト、如何ナル狀態ニ在リマスルカ、段
  段將校生徒ヲ志願スル靑年ハ年一年ト滅ジツヽアルノデア
  リマス、又國家ノ干城タル所ノ最モ有勳者タル癈兵ハ如何
  ナル狀態ニ在リマスカ、彼等ハ今日自活ノ道ヲ殆ド缺イテ
  居ル有樣デアルノデアリマス、之ヲ見テ徵兵忌避ノ念モ幾分
  起ルデアリマセウ、彼等ノ狀態ヲ見、又ハ在〓軍人ノ一旦現
  役ヲ退イタ後ニ慘メナル生活ヲシナケレバナラヌト云フ
  コトヲ見テ、遂ニ靑年者ガ軍人ヲ志願スルト云フ
  者ハ年一年ト減ジテ居ルノデアリマス、此事實ニ
  見テ在〓軍人ノ生活ニ安定ヲ與ヘ、又癈兵ニ對
  シテ十分ナル國家ガ保護ヲシテヤラナケレバナラヌ、之ニ
  依ッテ軍人思想ト云フモノガ、益〓緊縮シテ行カナケレバ、國
  防ノ精神ヲ完ウスルコトハ出來ナイト私ハ信ズル者デアリマ
  ス、故ニ私ハ本案ヲ提出致シテ、ドウカ均等ニ恩給法ヲ改正
  シテ貰ヒタイト云フ所カラ、諸君ノ御協賛ヲ願ッ夕譯デアリマ
  ス、今一例ヲ擧ゲテ見マスト云フト、兵卒ノ遺族ハ月ニ三圓
  ノ寡婦ノ扶助料ト云フモノデアリマス、外國殊ニ英佛ノ扶
  助料ハ寡婦ガ一週間ニ十圓ト云フノデアリマス、ソレニ親又
  ハ子供ガアリマスト、各個人ニ付テ更ニ五圓宛ノ增額ガアル
  ノデアリマス、日本デハ月ニ三圓、外國デハ一週間ニ十圓ト
  云フヤウナコトニナッテ居ルノデアリマス、又文武官ノ恩給ノ不
  統一ト云フコトハ甚シキモノデアリマス、例ヘバ陸軍大將デア
  リマシテ、停年四十年デ職ヲ退キマシタ時分ニハ二千六百四
  十圓ノ恩給ヲ受クルノデアリマス、同等ソ文官デ四十年勤メタ
  所ノ裁判官ハ四千二百八十二圓五十錢ヲ受ケルノデアリマ
  ス、又學校ノ〓員デアッテ年俸千五百六十圓ヲ受クル者ノ
  恩給ガ千四十圓ト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、之ヲ比
  例ヲ取ッテ見マスト云フト、裁判官ハ五割七分ト云フコトニ
  ナッテ居ルノデアル、學校ノ職員ハ七割ニ當ッテ居リマス、大
  將ノ恩給ハ現役俸ノ二割八分ト云フ所ニナッテ居ルノデア
  リマス、同ク國家ニ盡ス所ノ文武官ニ於キマシテ、斯ノ如ク
  不統一、不公平ト云フコトハ甚ダ恩給法ニ於テ不都合千
  萬ナ事ト思ヒマスガ故ニ、是ハ是非トモ統一スルコトガ必要
  デアルト云フノデアリマス、其他マダゴザイマスガ、大〓前ノ
  兩君ガ述ベラレマシタカラ玆デハ私ハ省略致シマス、今先ヅ
  軍備ヲ縮小致シテ内容ヲ充實スルト云フコトハ、何處迄モ
  在〓軍人ニ生活ノ安定ヲ與ヘテ、平時ニ於キマシテハ矢張
  軍事上ノ〓究ヲ致サセル、而シテ喜ンデ戰場ニ傷キ、或ハ殖
  レルト云フコトニナラナケレバナラヌ、ソレニハ癢兵ヲ十分優
  遇シテ置カナケレバ、軍ノ充實ト云フコトハ恐ラクハ出來ナ
  イト思フノデアリマス、卽チ精神動員ナルモノガ强實デナケレ
  バ、國防ハ出來ナイト思フガ故ニ、斯ノ如キ案ヲ提出シタ所
  以デアリマス、ドウカ御審議ノ上御賛成ヲ仰ギマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=58

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• 059・高見之通

  ○高見之通君　日程第十乃至第十二ノ三案ヲ一括シテ
  議長指名ヲ以テ九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 060・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ハナイ
  ト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、只今緊急質問ノ請
  求ガアリマシタ

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• 061・高見之通

  ○高見之通君　只今ノ委員ノ數ニ間違ガアリマシタカラ訂
  正致シマス、委員ノ數ヲ十八名ト訂正セラレンコトヲ望ミマ
  ス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 062・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ヨリ委員數ノ訂正ノ發
  議ガアリマス、之ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 063・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ其通
  リ決シマス-只今緊急質問ノ請求ガアリマシタ、卽チ安
  藤正純君ヨリ勞農露國ノ「ヨッフエ」氏來朝ニ關スル件、副
  島義一君ヨリ樞密院官制改正ニ關スル件、右二ツノ緊急
  質問ノ請求ガアリマシク、此際日程ヲ變更シテ之ヲ許可ス
  ルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 064・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ許
  可スルコトニ致シマス、先ヅ安藤正純君ニ發言ヲ許シマス
  勞農露國ノ「ヨツフエ」氏來朝ニ關スル緊急
  質問(安藤正純君提出)
  〔安藤正純君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=64

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• 065・安藤正純

  ○安藤正純君　私ハ此場合緊急ニ簡單ニ質問ヲ致シクイ
  ト思フ事ハ、目下來朝中デアリマスル勞農露國ノ「ヨッフエ」
  氏ノ事デゴザイマス、「ヨッフエ」氏ハ後藤子爵ノ招ギニ應ジ
  テ來朝セラレタト傳ヘラレテ居リマスガ、之ニ付キマシテ後藤
  子ト政府トノ間、若クハ「ヨッフエ」氏其人ト政府トノ間ニ、
  何等カノ諒解ガゴザイマシテノ來朝デゴザイマスカ、來朝スル
  マデニハ何等ノ關係ハ無イト致シマシテモ、來朝サレテカラ
  以後既ニ數日ニナリマスガ、此間ニ於テ「ヨッフエ」氏ト政府
  トノ問、若クハ之ヲ幹旋シタ所ノ後藤子ト政府トノ間ニ、新
  ニ何等カノ關係若クハ諒解ガ成立致シマシタカ、如何デゴ
  ザイマスカ、之ヲ承リタイノデアリマス、之ニ續キマシテ此「ヨッ
  フエ」氏ノ來朝ガ機會トナッテ、日露ノ間ニ親交關係ガ開
  ケル基トナルトシテ之ヲ歡迎シツヽアル人ト、否、是ハ赤化ノ
  宣傳ノ媒介ヲスルモノデアルトシテ、之ヲ排斥セントスル者
  トノ二ツノ派ガ國内ニアリマシテ、而モ是等二ツノ思想ハ旣
  ニ事實トナッテ現ハレ來リツヽアルノデアリマス、就キマシテハ
  此「ヨッフエ」氏竝ニ之ニ關係スル所ノ人ヒノ周園等ヲ警戒
  スル所ノ程度、若クハ是等兩派ニ對スル所ノ取締ノ程度如
  何ト云フ問題デアリマス、私ハ此際「ヨッフエ」氏ガ必シモ赤化ノ
  宣傳ヲスルトハ思ヒマセヌ、或ハ此機會ヲ善用致シマスレバ、
  早晩開カナケレバナラナイ日露ノ親交ニ一步ヲ早メル途ヲ
  開クノ好イ機會ヲ、或ハ得ルコトニナリハシナイカトモ考ヘテ
  居リマス、併ナガラ之ニ對シテノ國民ノ間ニ二ツノ思想ト、
  二ツノ運動トガアリマシテ、是ガ事實トナッテ居リマスカラ、之
  ニ對スル警戒及取締ノ程度如何ト云フコトヲ伺ヒタイノデ
  アリマス、最後ニ之ニ付キマシテハ、最モ關係ノアルルハ言論
  界デアル、殊ニ全國ノ新聞デアリマス、之ニ就キマシテ今後
  何等カノ言論ニ制栽等ヲ御加ヘニナル政府ノ御方針デアリ
  マスカ、如何デアリマスカ、是モ伺ヒタイ、而シテ最後ニ昨年
  政府ガ提出セラレタ過激社會運動取締法案ト云フモノハ、
  其後幾多ノ缺點ヲ發見セラレマシテ、審議未了ノ間ニ前議
  會ヲ通過致シタノデアリマスガ、是ハ言論界ニ取クテ、此法案
  ガ若シ成立致シマスレバ、大ナル影響ガアッテ、頗ル困ルコトデ
  モアルシ、又良イ影響ハ無カラウト思フノデアリマス、然ルニ
  最近新聞紙ノ傳フル所ニ依リマスレバ、政府ハ最早此過激
  社會運動取締法案ナルモノハ提出ヲシナイト云フコトガ新
  聞紙ニ傳ッテ居リマスルガ、果シテ政府ハ此法案ヲ斷念ヲ致
  シマシテ、最早議會ニ御提出ニナラナイ積リデアリマスルカ、ド
  ウデアリマスルカ、是等ノ點ニ付キマシテ外務大臣、內務大
  臣、司法大臣等ノ關係大臣カラ以上ノ質問ニ對シマシテ、
  明確ナル御答辯ヲ願ヒタイ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=65

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• 066・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　內田外務大臣
  〔國務大臣伯爵内田康哉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=66

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• 067・内田康哉

  ○國務大臣(伯爵內田康哉君)　只今安藤君ノ「ヨッフエ」
  氏來朝ニ關スル御質問ニ對シテ、同氏ガ我國ニ來ル迄ノ事
  ハ私ノ主管ニ屬シマスカラ、私ヨリ御答ヲ致シマスガ、其他
  ノ事ハ主務大臣ヨリ御答サレルコトヽ思ヒマス、「ヨッフエ」氏
  ハ日本ニ來タイト云フ希望ヲ持ッテ居ッタヤウニ間及ビマス
  ルシ、又只今安藤君ノ御話中ニハ、後藤子爵ガ案內ヲシタ
  ト云フコトデアリマシタガ、是モ後藤子爵ヨリ我ガ閣僚ノ中
  ニサウ云フ話ノアッタト云フコトヲ聞及ンダノデアリマス、ソコ
  デ「ヨッフエ」氏ガ來朝スルニ付テハ、其旅劵ニ、支那ニ居ル
  我ガ領事ヲシテ裏書セシメル必要ガ起ッテ來タノデ、之ニ對
  シテ政府ハ「ヨツフエ」氏ノ來朝ヲ差止ムベキモノデナイ、差
  止ムル理由ガナイモノト認メマシテ、若シ「ヨッフエ」氏ガ日本
  ニ行キタイ、隨テ其旅劵ニ「ピゼー」ヲシテ貰ヒタイト云フ場
  合ニ於テハ之ニ「ピゼー」シテモ差支ナイ、是ダケノ訓令ヲ發シ
  タ、卽チ其「ビゼー」ヲ得テ個人トシテ同氏ハ來朝シタノデアリ
  マス、ソレ以上ニ政府ト「ヨッフエ」氏トノ間ニ何等ノ諒解ハア
  リマセヌ、唯、個人トシテ日本ニ來ルコトヲ許シタニ過ギナ
  イノデアリマス、左樣御承知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=67

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• 068・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　副島義一君-一寸誤リマシ
  タ、水野內務大臣
  〔國務大臣水野鍊太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=68

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• 069・水野錬太郎

  ○國務大臣(水野鍊太郞君)　「ヨッフエ」氏ノ來朝ニ付キ
  マシテ、第二段ノ點ニ付キマシテ、私ヨリ御答ヲ致シマス、「ヨ
  ツフエ」氏ノ來朝ニ付キマシテハ、一面ニ於キマシテハ同氏ノ
  身體其他ヲ十分ニ保護スル必要ガアルノデアリマス、又一
  面ニ於キマシテハ外面ニ於キマスル諸般ノ情勢ニ對シマシ
  テ、警戒ヲスル必要ガアルノデアリマス、此方面ニ於キマシテ
  警察官憲ニ於キマシテハ、諸般ノ狀況ニ注意致シマシテ、
  十分ナル取締ト警戒ヲ爲シツヽアルノデアリマス、第二ニ言
  論ノ事ニ付キマシテハ從來ト何等異ナルコトハナイノデアリ
  マス、第三ニ過激法案ノ提出ガアリヤ否ヤト云フコトデアリ
  マスガ、是ハ只今ノ所デハ之ヲ提出スル意思ヲ持ヲテ居ラナ
  イノデアリマス、是ダケ御答致シマス

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• 070・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　副島義一君
  樞密院官制改正ニ關スル緊急質問(副島
  義一君提出)
  〔副島義一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=70

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• 071・副島義一

  ○副島義一君　諸君、私ハ樞密院官制改正ニ關シテ政府
  ニ緊急質問ヲ爲ス必要ヲ認メテ、玆ニ此演壇ニ立ッ夕次第
  デアリマス、本問題ハ頗ル重要ナル案件デアリマスカラ、特ニ
  加藤總理大臣ノ出席ヲ請求致シマス、デ私ハ既ニ第四十
  四回議會ニ於テ樞密院官制改正ノ建議ヲ爲シ、其趣意ヲ
  說明致シマシタ、而シテ〓ヤ此改正ガ最モ緊急ヲ要スルコ
  トヲ認メマシテ、更ニ玆ニ質問ヲ提出スル所以デアル、元來
  樞密院官制ハ既ニ三十年前ノ規定ニ係ルモノデアッテ、樞
  密院ハ之ニ依ッテ種々ノ不法不當ノ言動ヲ爲シテ居ルノデ
  アル、先ヅ第一ニ此議會ノ權限ニ關スルコトモ、議會議決ノ
  前後ニ於テ之ニ干涉ヲシテ、始終此立憲制ノ本質ニ反スル
  ヤウナ行動モアルノデアル、現ニ假議長等ヲ設クル今日必
  要ガアッテモ、其議院法ヲ改正スルニ付テモ樞密院ノ矢張
  議決モ經ネバナラヌト云フコトデ、議會ダケデ此議院法ヲ自
  由ニ改正スルコトモ出來ナイノデアル、斯ウ云フコトハ立憲
  制ノ本質上不適當ナ事デアッテ、殊ニ今日ノ時勢ニ於テハ
  一ノ時代錯誤デアルト云ハネバナラナイ、今日ノ我ガ現狀ハ
  二院制デハナクテ三院制ノ狀態ヲ馴致シテ居ルノデアッテ、
  議會ノ獨立ノ地位ヲ傷ケ、其議決ノ效力ヲ不徹底、不十
  分ナラシメルモノデアル、(ヒヤ〓〓)此點モ先ヅ改正センケレ
  パナラヌノデアル、又樞密院ハ此對國務大臣關係ニ於テモ、
  現在ハ不當ノ地位ヲ有シテ居ルコトニナッテ居ル、御存知ノ
  如ク樞密院ハ天皇ノ諮詢府デアル、唯、天皇ノ諮詢ニ
  依シテ奉答スル爲ニ議決ヲスベキモノデアル(而シテ其議決
  ヲ採用スルト然ラザルトハ固ヨリ天皇ノ全ク自由デアル、
  随テ樞密顧問ハ責任ヲ負ハナイ、議會ニ對シテモ責任ハ負
  ハナイ、其議決ガ採用セラレ、セラレナイト云フノハ全ク天皇
  ノ自由デアル、サウ云フ地位ヲ有スルモノデアルカラ、貴任ヲ
  負ハナイト云フコトハ之ハ當然ナ事デアル、之ニ反シテ國務
  大臣ハ御存知ノ如ク天皇ヲ輔弼シ、其責ニ任ズルモノデ
  アル、政治上百般ノ事ニ付テ輔弼シ其責任モ國務大臣ガ
  之ヲ負ハネバナラヌモノデアル、天皇ヲ輔弼シ其責ニ任ゼネ
  バナラヌ國務大臣ト、唯自由ニ議決ヲ爲シテ責任ヲ負ハ
  ナイ樞密顧問トハ、決シテ憲法上同一ノ地位ニ在ルベキ筈
  ノモノデハナイ(拍手)同一ノ地位ニ立ッテ、天皇ヲ輔翼
  スベキモノデハナイ、國務大臣ノミガ獨立ノ地位ヲ有スルモ
  ノデアル、國務大臣ハ樞密顧問ノ上ニ位スル地位ヲ有セネ
  パナラヌモノデアル、(拍手)然ルニ現時ノ樞密院官制ハ此道
  理ヲ沒却スルコトニナッテ居ルノデアル、是ハ今日ノ樞密院
  官制ノ上ニ於テ生ズル結果デアル、今日樞密院官制ニ從ウ
  テ樞密院ガ行動シテモ、尙ホ立憲ノ本義ニ反スル結果ニ至
  ルノデアル、然ルニ樞密院ノ近頃ノ行動ハ樞密院官制ノ規
  定ニ矛盾ヲシツヽアルノデアル、是ハ決シテ吾人ガ默過スル
  コトノ出來ナイコトデアル、樞密院官制ノ第六條ニハ樞密
  院ハ諮詢ヲ待テ會議ヲ開キ意見ヲ上奏スルトアル、又第八
  條ニハ「樞密院ハ行政立法ノ事ニ關シ天皇ノ至高ノ顧問
  タリト雖モ施政ニ干與スルコトナシ」トアル、故ニ樞密院ハ行
  政、立法ニ對シテハ唯、天皇ノ諮詢ニ依ッテ、又諮詢セラ
  レタル事項ニ付テ、會議ヲ開キ意見ヲ上ルダケノモノデアッテ
  決シテ施政ニ干與シ政治ニ干與スルコトハ出來ナイモノデ
  アル、是ハ卽チ樞密院ガ諮詢機關デアリ、顧問機關デアッテ、
  輔弼機關デハナイ、內閣ノ監督機關デハナイト云フコトカラ
  シテ生ズル當然ノ歸屬デアル、然ルニ樞密院ノ行動ハ果シ
  テ政治ニ干與シナイノデアルカ、聞ク所ニ依レバ今囘ノ日支
  郵便約定ニ付テ、樞密院ハ一應是ハ可決ハシテ居ルケレド
  モ、同時ニ又附帶決議ヲ爲シテ、其諮詢ノ手續ガ誤デアル、
  政府ノ對支外交ガ失態デアル、殊ニ國權國威ノ失墜デアル
  ト云フコトヲ言上ヲシテ、卽チ政府ノ責任ヲ問糺シテ居ル、
  是ハ卽ヲ政治ニ干與スルノ甚シキモノデアル(拍手)是ハ樞
  密院官制ノ第八條ニ矛盾スルコトデアル、憲法第五十六
  條ニハ樞密顧問ハ樞密院官制ノ定ムル所ニ依クテ國務ヲ審
  議スルトアル樞密院ガ樞密院官制ノ規定ニ反シテ議決ヲ
  爲スノハ、卽チ樞密院ハ憲法違反ノ行動ヲ執ッテ居ルモノト
  謂ハナケレバナラヌ、其罪ハ甚ダ輕カラザルモノデアル、日支
  郵便約定ニ付テハ樞密院ハ其約定ノ適當デアルト云フコ
  トヲ是認シテ居ルト云フコトデアル、併ナガラ其諮詢ノ日ガ
  遲レタル爲ニ十分ノ論議ヲ盡スコトガ出來ナイト云フコト
  ヲ咎メテ居ルト云フコトデアルガ、若シ約定ガ大體ニ於テ適
  當デアルナラバ、ソレニ何モケチヲ附ケテ政府ニ過失ガアルト
  云フヤウナコトヲ言フノハ、是ハ餘計ナ事デアル、卽チソレハ
  政治ニ干與スルト云フコトニナルノデアル、又南滿洲鐵道
  附屬地郵便協定ト云フモノハ、政府ハ是ハ唯〓參考的ニ樞
  密院ニ示シタモノデアッテ、其實ハ諮詢セラレタルモノデハナ
  イ、然ルニ樞密院ニ於テハ、此協定ニ付テモ、是非ノ議論ヲ
  爲シタト云フコトデアル、此郵便協定ニ付テハ此議會ニ於
  テ-衆議院ニ於テ論議ヲ盡スト云フコトハ固ヨリ當然ノ
  事デアルガ、樞密院ノ態度トシテハ是ハ決シテ適當デハナイ、
  何トナレバ樞密院ニ詰詢セラレナイ事ニ付テ論議ヲ盡スト
  云フノハ、其權限ヲ超エテ居ルト謂ハネバナラヌノデアル、殊
  ニ附屬地ノ郵便協定ト云フモノハ、地方官憲ノ郵便事務
  ニ付テノ一ノ取極ト見ルコトモ出來ル、果シテ是ガ國際的
  約束ト謂フベキモノデアルカモ疑ガアル、ソレヲ諮詢ノナイモ
  ノニ付テ議決ヲ爲スト云フノハ、其意見ガ假令適當デアッテ
  モ、權限ハ之ヲ超エテ居ルモノトシテ之ヲ許スコトハ出來ナ
  イモノデアル、政府ガ樞密院ニ四ツノ約定ヲ提出シテ其議
  決ヲ求メタル際ニ於テ、ソレハ既ニ記名調印サレテ有效ノモ
  ノデアルト政府ガ既ニ說明シタルニ反シ、政府ハ議會等ニ於
  テハ天皇ノ栽可ニ依ッテ效力ヲ有スルト云フ說明ヲシタト
  云フコトデ、樞密院ニ於テハ、政府ハ其言葉ヲ二三ニシタト
  云フコトヲ大ニ咎メテ居ルト云フコトデアル、現ニ先日〓浦
  議長ガ加藤總理大臣ヲ訪問シタルモ是ガ爲デアルト云フコ
  トデアル、此樞密院ノ態度ハ決シテ適當ナルモノデハナイ、元
  來樞密院ハ此約定ニ付テ議決スル際ニハ、其獨立ノ意見
  ニ依ッテソレガ果シテ有效ノモノデアルカ、ドウデアルカト云フ
  コトヲ定メテ、天皇ニ上奏スベキモノデアル、必シモ政府ノ
  意見ニ從ッテソレヲ可決シテ上奏スルモノデハナイ、無論政
  府ノ意見ヲ參照トスルコトハアルケレドモ、併ナガラソレヲ樞
  密院ガ議決ニ際シテハ、獨立ノ意見ヲ以テ有效カドウカト
  云フコトヲ決定シテ上奏スベキモノデアル、政府ガ何ト言ウ
  テモソレヲ樞密院ガ彼此レ言フベキモノデハナイ、政府ガ議
  會ニ於テ如何ナル說明ヲシテモ、ソレガ樞密院デ說明シタ所
  ト違ッタ所ガアッタトシテモ、咎ムル必要ハナイ、議會ニ對シテ
  說明シタコトヲ樞密院ニ對シテ說明シナイト咎ムルノハ、卽
  チ政府ノ政治ニ干涉スルモノデアル、是ガ樞密院官制ニ反
  スルモノデアル、卽チ是等ハ樞密院ガ其諮詢府タルニ過ギ
  ズ、決シテ政府ノ監督官デナイ、隨テ其施政ノ失當ヲ責ムル權
  限ヲ有セザルモノナルニ、違法ノ行動ヲシテ居ルモノデアルト
  謂ハナケレバナラヌ、政府ノ失當ヲ責ムルノハ議會ガアル、樞
  密院ハ此議會ノ權限ヲ犯スモノデアル、何モ樞密院ハ政府
  ノ監督機關デハナイ聞ク所ニ依レバ外務當局ハ樞密院會
  議ニ辯明スル際ニ、樞密院ハ自分ニ辭職ヲ求ムル所存デア
  ルカト云フコトヲ質問セラレタト云フコトデアル、是ガ果シテ
  事實デアルカドウカ知リマセヌガ、若シ事實デアルトスレバ、
  其外務當局者ハ不見識7甚シキモノデアルト謂ハナケレバ
  ナラヌ、監督官廳デナイ樞密院顧問ニ、辭職ナドノ質問ヲナ
  スコトガ當ヲ失シテ居ル、是ハ樞密顯問ガ政府ノ監督官デ
  ナイ所カラ生ズル論結デアル、又聞ク所ニ依レバ政府ハ樞密
  顯問ノ所ニ出入シ、所謂戶別訪問ヲシテ百方陳謝釋明シテ
  居ルト云フコトデアル〓ヘ何タル、政府ノ失態デアルカ、監督
  官廳デナイモノニ、斯樣ナ陳謝釋明スル理由ハ少シモ無イノ
  デアル、是レ卽チ樞密院監督機關デアルヤウニ思フコトヨリ
  生ズル、誤謬デアル世間ニ於テモ樞客顧問ガ斯ウ言ッタト云
  ウテ政府ヲ問糺スル者アルハ大ナル謬見デアル、樞密院ガ政
  府監督者クル如キ態度ヲ以テ不法不當ノ上奏ヲ爲シタル
  爲ニ、此政界ニ今日後多ノ紛擾ヲ惹起シテ居ルノデアル、卽
  チ其一ハ日支約定ノ效力ニ關スル幾多ノ議諭デアル、貴族
  院衆議院ニ於キマシテ續々トシテ此約定ノ效力問題ガ起
  サレ、政府モ非常ニ困却ヲシテ居ルノデアル、然ルニ是等ノ
  議論ハ、要スルニ法律學校ニ於ケル口頭試驗樣ノモノデア
  ル、政府ノ答辯ガ如何ニ拙クッテテモ耻トスルニ足ラナイ、
  議員ノ質問ガ如何ニ巧妙デアッテモ榮譽ト爲スニハ足ラナ
  イ、既ニ此日支約定ハ本年ノ一月一日カラ行ハレテ居ル、之
  ヲ行ハナイ前ノ十二月九日ニ效力ガ生ズルカ、三十一日ニ效
  カガ生ズルカト云フコトヲ議論スルノハ、政治ノ實質ニハ何
  等ノ交涉ガ無イコトデアル(拍手)斯ウ云フコトヲ喧々囂々ト
  スルノハ卽チ學校ノ口頭試驗デアル(拍手)併ナガラ是ニハ
  策略ガアル、策略ガ其所ニ伏在シテ居ル、卽チ是ハ一ハ大權
  干犯論デアル、大權干犯論ヲ以テ政府ヲ責付ケントシタノ
  デアル、若シ大權干犯論デ政府ガ其效力ニ付テ樞密院ニ言
  ウタコトヽ議會ニ言ウタコトガ違へバ、今度樞密院カラ政
  府ヲ責ムルノデアルト云フ策略デアル、策略トシテハ愚策デ
  アルガ、其愚策ニ感フ政府モ亦愚ノ甚シキモノデアルト謂ハ
  ナケレバナラヌ(拍手)大權干犯論ハソレ自身ニ矛盾ガアル、
  若シ此約定ガ記名調印ニ依シテ成立チ、效力ヲ有スルモノデ
  アルトスルナラバ、其記名調印ヲスルモノハ其約定ヲスル權
  限ヲ有センケレバナラヌ權限ガ無ケレバ有效ノ約定ハ成立
  タヌノデアル、既ニ有效ノ約定ガアルトスレバ、卽チ權限ハ認
  メナケレバナラヌ、其權限ハ大權ノ發動ニ依シテ生ジテ居ル
  大權ノ發動ニ依シテ記名調印スル、ソレガ效力ヲ生ズルノハ
  少シモ大權干犯ニナラヌ、若シモ權限ガ無クシテ協約ヲスル
  ナラバ-約定ヲスルナラバ、其約定ハ無效デアルカラ成立
  タヌノデアルカラ、又大權干犯論ハ生ジナイノデアル、所ガ大
  權干犯論ヲ以テスレバ、政府ガ天皇ノ栽可ニ依ッテ效力ヲ生
  ズルト云フ風ナ答辯ヲシテ、ソコニ押付ケンガ爲ニ此大權干
  犯論ヲ以テシタノデアル、裁可ヲ以テ有效デアルト政府ガ答
  辯スレバ、ソレハ樞密院ニ於テノ言論トハ違フト言テテメル
  ノデアル、是ハ策略デアッテ、結局樞密院ガ策略ヲ弄ビツヽア
  ル不祥ノ事デアル、尙ホ一ツ此樞密院ノ上奏ニ關聯シテ不
  祥ナ事ガアル、卽チソレハ先帝ノ遺業云々、或ハ御沙汰云
  云、或ハ違勅云々ヲ突付ケテ、政府ニ賢明ノ方法ヲ執レト
  迫クタ、是ガ大ナル不祥ノ事デアル、或ル一派ノ者ハ此御沙
  汰書ノ內容ハ如何ニシテ之ヲ知リ得タノデアルカ、御沙汰書
  ノ内容ヲ知リ得ルニハ宮中ニ接近ノ者カラ之ヲ洩シタルニ
  依ラネバナラヌ、宮中ニ接近ノ者ガ何故ニ之ヲ洩シタノデア
  ルカ、洩シタノハ卽チ陰謀アッテノ事デアル(拍手)卽チ違勅
  云々、御沙汰云々、先帝ノ遺業云々ト云フコトヲ以テスルハ、
  九寸五分ヲ突付ケテ詰腹ヲ切ラスル昔ノ此政治ノ遣方ト
  少シモ違ハナイモノデアッテ、貴族院ダケニ昔ノ御家騒動ヲ
  演ゼントシテ居ルノハ、實ニ戰慄セザルヲ得ザル陰謀デアル
  (拍手)此御沙汰、先帝ノ遺業ト云フ如キ事ヲ以テ政府ヲ
  責ムルノハ、卽チ皇室ヲ政治ニ利用シ、皇室ヲ政爭ノ裡ニ引
  入ルヽモノデアッテ、卽チ皇室ノ尊嚴ヲ瀆ス畏多イ事デアル、
  (拍手)政治上最モ愼ムベキ事デアルガ、政争ノ爲ニ手段ヲ
  擇バナイト云フコトハ、實ニ〓嘆スベキ至デアル、(拍手)曾テ
  濱口君ハ租稅ノ事ヲ說明スルニ對シテ、國民ノ愛國心ヲ濫
  用スル勿レト云フコトヲ言ハレマシタガ、私ハ是ハ至言トシテ
  傾聽シタノデアル、御沙汰書ヲ以テ政府ヲ威嚇スルノハ卽チ
  忠君愛國ノ濫用デアル(拍手)若シ貴族院數名ノ者ガ御沙
  汰書ヲ突付ケテ、政府ガ所謂賢明ノ途ヲ取ッテ辭職ヲ爲ス、
  內閣ガ更迭ヲスルト云フコトニナッタナラバ、國民ハ内閣更
  迭ノ理由ヲ知ラズシテ、政治トハ沒交涉ニナッテシマフノデア
  ル、陰謀ニ依シテ卽チ政治ガ左右サルヽコトニナル、斯ノ如キ
  ハ政治ヲ公明正大ノ道ニ依ッテ運轉スルコトヲ理想トスル
  立憲政體トハ、全ク相矛盾スルモノデアッテ憲政逆轉ノ甚シ
  キモノデアル、實ニ斯ル事ハ立憲政治ノ害毒デアル、之ヲ行
  フ者ノ心理ハ實ニ陋劣デアッテ、國民ノ敵トスルモノデアルノ
  デアル(拍手)我ガ衆議院ニ於テハ一人モ之ヲ是認スル者ハ
  無イト私モ確信スル者デアル(拍手)要スルニ今日ノ如ク政
  界ノ紛擾ヲ惹起シタト云フノハ、卽ナ樞密院ガ憲法ノ精神
  一官制ノ現定トニ違反シテ、政治ニ干與シテ不當ノ議決ヲ
  爲シタルニ由ルノデアル、此紛擾ノ咎ハ樞密院ガ之ヲ負ハネ
  バナラヌモノデアル(拍手)而シテ是ハ他ノ一方ニハ樞密院ノ
  權限ヲ不當ニ擴張シテ居ル今日ノ官制ノ不備ニ基クモノ
  デアル、是ガ卽チ改正セネバナラヌ今日ノ急務ガアルト云フ
  所以デアル、此點ニ付テ政府ノ覺恬ヲ質問スルノデアル、卽チ
  樞密院官制ハ憲法ニ觸レザル限リ自由ニ之ヲ企テナケレバ
  ナラヌ、殊ニ樞密院ガ事每ニ政務ニ干與シナイヤウニスルコ
  トガ必要デアッテ、差當リ天皇諮詢ノ自由ヲ明ニスルコトガ必
  要デアル、卽チ天皇ハ樞密院ノ議決デ左右セラレナイノモ
  自由デアルナラパ諮詢セラルヽノモ諮洵セラレナイノモ、自由デ
  アルコトニスルノガ當然デアルト謂ハナケレバナラヌ、或ハ今日ノ現
  行ノ官制ニ於テモ成程樞密院官制ニ列擧シテアル事ガアリマス
  ケレドモ是ハ、果シテ天皇ノ諮詢スベク拘束スルモノデアルカ
  ト云フコトハ疑デアル、併ナガラ今日マデノ慣例ニ依レバ、列擧シ
  タル事ハ何時デモ諮詢セネバナラヌ、卽チ天皇ガアノ官制ニ
  拘束セラルヽヤウニ今日ハ行ハレテ居ルノデアル、其點ヲ明
  ニ改正シテ、天皇ハ諮詢ニ拘束サレナイヤウニスルコトガ
  先ヅ必要デアル、而シテ政府ヲ監督スルノハ唯、議會ノミデ
  十分デアル、政府ヲ監督スル權ハ唯〓議會ニ與ヘテ置ケバ十
  分デアル、人民ト交涉ヲ有セズ、又其會議ガ秘密デアッテ公
  開シナイ、又責任ヲ負ハナイト云フ如キ樞密院ニ、政府ヲ監
  督スル權ヲ有セシムルト云フコトハ、立憲制ノ本則ニ反スル
  モノデアル、其點ヲ改正スルコトガ最モ必要デアル、併ナガラ
  樞密院官制ノ改正ハ容易デハアリマセヌ、一旦政府ガ之ヲ
  企テントスルナラバ、樞密院ハ直ニ内閣ヲ倒ス計ヲ爲スニ違
  ヒナイノデアル、或ハ樞密院顧問ガ總辭職ヲ爲スト云フ如
  キ噂モアル、「ストライキ」ヲ爲スカモ分ラヌ、併ナガラ若シ樞
  密院ガ「ストライキ」ヲ爲シ、總辭職ヲ爲スト云フコトデアレ
  バ、私ハ却テ是ハ物怪ノ幸ト思フノデアル、卽チ政府ハ此際
  腰ヲ强クシテ樞密院廓〓ノ計畫ヲ大ニ攻究シ、之ヲ實現ス
  ルト云フコトヲ努メナケレバナラヌノデアル、全力ヲ盡シテ之
  ニ從事スル覺悟ガアルカドウカ、若シ之ヲ遂グルナラバ、此政
  府ノ國家ニ貢獻スル所以ノモノガ甚ダ大デアッテ、從來政府
  ニ幾多ノ失策ガアッテモ、ソレヲ償ヒ得テ尙ホ餘リアルト云フ
  コトヲ言得ルノデアル、政府ハ果シテ此覺悟アリヤ否ヤヲ質
  問スル所以デアリマス(拍手)
  〔國務大臣男爵加藤友三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=71

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• 072・加藤友三郎

  ○國務大臣(男爵加藤友三郞君)　只今副島君ヨリ樞密
  院官制改正ノ意アリヤ否ヤト云フ御質問ノヤウニ拜聽致
  シマシタ、此御意見ハ參考トシテ拜聽致シテ置キマス、結論
  ハ卽チ今日ノ樞密院ノ官制ハ不備デアル、此不備ヲ利用
  シテ樞密院ハ其權限ヲ擴張シ、或ハ政治ニ、或ハ議會ノ權
  限ニモ及ンデ居ルカノ如キ御意見ニ聞エタノデアリマス、私
  ハ果シテ副島君ノ御述ニナリマスヤウニ、今日ノ官制ノ範圍
  ヲ脫シタル態度ヲ樞密院ガ執ッタト云フコトハ、未ダ認メナ
  イノデアリマス、樞密院ハ樞密院ノ權限ノ範圍內ニ於テ行
  動シテ居ルモノト考ヘテ居ルノデアリマス、併ナガラ官制ガ完
  全デアルヤ否ヤト云フコトニハ、御話ノ如ク〓究スベキ餘地
  ガアリマセウ、併シ現在ニ於キマシテ、政府ハ官制ヲ改革シ
  ヤウト云フ意思ヲ今日ハ持ッテ居リマセヌト云フコトヲ御答
  ヘ致シテ置キマス
  〔副島義一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=72

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• 073・副島義一

  ○副島義一君　只今ノ總理大臣ノ御答辯ハ、私ニ於テ甚
  ダ不滿足デアルコトヲ遺憾トスルノデアリマス、併ナガラ如何
  ニ滿足ナル谷辯デアリマシテモ、私ハ言葉ノ上ノ御答辯デハ
  滿足致シマセヌ、實行ノ答辯ヲ得タイ考デアルガ、併ナガラ
  其實行ハ容易ノ事デハアリマセヌデセウカラ、私ハ更ニ他ノ
  方法ヲ以テ實行ノ端〓ヲ開キタイト云フコトヲ留保シテ置
  キマシテ、玆ニ質問ヲ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=73

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• 074・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　日程第十三乃至第十五ハ同種
  ノ議案デアリマスカラ、一括議題トナスニ御異議ハアリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=74

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• 075・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマス、仍テ其
  通リ取計ヒマス、日程第十三霧島山國立公園設置ニ關ス
  ル建議案、岩切重雄君
  第十三霧島山國立公園設置ニ關スル建
  議案(日野辰次君外三名提出)
  霧島山國立公園設置ニ關スル建議案
  霧島山國立公園設置ニ關スル建議
  霧島山ニ國立公園ヲ速ニ設置セラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  第十四奈良縣吉野郡ヲ中心トスル國立
  公園設定ニ關スル建議案(岩本
  平藏君外五名提出)
  奈良縣吉野郡ヲ中心トスル國立公園設定ニ關ス
  ル建議案
  奈良縣吉野郡ヲ中心トスル國立公園設定ニ關
  スル建議
  奈良縣吉野郡ヲ中心トスル國立公園ヲ政府ニ於ニ速ニ
  設定セラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  第十五大日光國立公園設置ニ關スル建
  議案(松岡俊三君外五名提出)
  大日光國立公園設置ニ關スル建議案
  大日光國立公園設置ニ關スル建議
  栃木縣日光町ノ男體山ヲ中心トシ方十餘里ノ地ハ山
  容秀麗且雄大ニシテ眞ニ天下ノ偉觀タルハ夙ニ世界萬衆
  ノ認ムル所タリ政府ハ速二大日光國立大公園ヲ設置シ
  以テ廣ク社會ヲ裨益セムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔岩切重雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=75

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• 076・岩切重雄

  ○岩切重雄君　只今日程ニ上リマシタ霧島山國立公園
  設置ニ關スル建議案ノ說明ヲ致シマス、建議案ノ提出ノ理
  由ハ諸君ノ御手許ニ配布シテゴザイマスカラ、私ハ極メテ簡
  單ニ申上ゲタイト考へルノデアリマス、國立公圓ノ設立ニ關
  シマシテハ、政府ニ於テモ色々ノ調査ヲ進メテ居ルコトヲ私
  間イテ居リマス、今日ノ文化的施設ニ於キマシテ、國立公園
  ノ如キモノガ速ニ設置セラレルコトハ國民性ヲ涵養スル上
  ニ於テハ私ハ極テ必要デアルト考ヘルノデアリマス、是ガ簡
  單ナル第一ノ理由デアリマス、第二ノ理由ト致シマシテ吾々
  ガ大國民ノ國民性ヲ養成スル上ニ於テ國家トシテ自然ヲ
  愛護シ、天然ヲ保護シテ行クト云フコトハ、是亦極メテ必要
  ナル事ト考ヘマス、私共ノ建議致シマシタ霧島山一帶ハ極
  メテ天然ノ風光ニ富ンデ居リマス、其偉大ナル規模雄大ナ
  ル風景ハ、偉大ナル國民性ヲ養成スル上ニ於テ最モ力ノア
  ルコトヽ考ヘルノデアリマス、此意味ニ於キマシテ一日モ早
  ク國立公圓ヲ霧島山一帶ニ設立セラレンコトヲ希望スルノ
  デアリマス、最後ニ我ガ霧島山ハ畏多クモ歷史上ニ於テ皇
  統發祥ノ靈地トシテ今日知ラレテ居ルノデアリマス、嘗テ志
  賀重昂先生ガ國民新間ノ紙上ニ於テ霧島ノ麓ニ、畏多イ事
  デスガ日本ノ皇室ノ御學問所ヲ設立スルナラバ、以テ國家
  ヲ統治セラレル御精神ヲ養成スル上ニ於テ最モ當ヲ得タモ
  ノデアルト云フコトヲ述ベラレタコトガアル、是等ノ意味カラ
  考ヘマシテモ、私ハ霧島山一帶ガ日本ノ公園トシテ、國民〓
  育ノ上カラモ、國民思想養成ノ上カラ見マシテモ、最モ適切
  ナル次第デアルト云フコトヲ玆ニ言明スル者デアリマス、是
  等ノ諸點ヨリシマシテ、國立公園ガ設置セラレンコトヲ皆サ
  ンノ御協賛ニ依シテ一日モ速ナランコトヲ希望スル次第デア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=76

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• 077・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　次ハ日程第十四、奈良縣吉野
  郡ヲ中·心トスル國立公園設定ニ關スル建議案、提出者岩
  本平藏君ノ說明ヲ求メマス
  〔岩本平藏君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=77

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• 078・岩本平藏

  ○岩本平藏君　只今上程サレマシタル奈良縣吉野郡ヲ中
  心トスル國立公園設定ニ關スル建議案ノ理由ヲ說明シヤ
  ウト思ヒマス、只今岩切君ヨリ國立公園ノ其必要ナル事柄
  ニ付テハ既ニ述ベラレマシタカラ、私ハ其事ヲ省クコトニ致
  シマス、私ノ建議ニ係ル卽チ此吉野郡ヲ中心トスルト申シ
  マスルノハ、卽チ奈良縣ノ南部ヨリ和歌山縣ニ掛ケ三重縣
  ニマデ亙ッタ所ノ此一大山嶽、約二十里三十里位ノ間ヲ之
  ヲ一ツノ公園ニ致シタイト云フ大體ノ建議ナノデアリマス、
  此區域ハ卽チ紀伊山脈、紀伊山脈トモ申シマスルシ、又吉
  野郡山トモ申シ、大和連峰トモ言ウテ居ルノデアリマシテ、
  近頃ハ之ヲ大和「アルプス」トモ云フノデアリマス、此山脈ノ
  背梁ヲ成スノヲ熊野ノ方ヨリ段々申シマスナラバ、吉野山
  ニ至ル所ノ連山デ、最モ著名ナルモノヲ擧ゲマスレバ、先ヅ那
  智ヨリ始メ玉置山、地藏ケ嶽、笠捨、大日ケ嶽、釋迦ケ
  嶽、佛生ケ嶽、明星ケ嶽、孔雀嶽、八經ケ嶽、彌山、普賢、彌
  勤、七曜、山上、斯ウ云フ風ナアノ卽チ大和「アルプス」全體
  ヲ唱ヘルノデアリマス、併ナガラ今日大和「アルプス」ト申シマ
  シテモ、又日本「アルブス」ト申シマシテモ、本當ノ實際ノ歐羅
  巴ノ「アルプス」ニハ全ク及バナイ事ハ勿論デアリマスルガ、是
  ハ矢張中世代ノ前半ニ於テ、其當初ニハ矢張此世界的「ア
  ルプス」ノヤウナ山デアッタ事ハ想像シ得ラレルコトハ、ツレ〓〓
  學者ノ言クテ居ル所デアリマス、現今其山ニ殘ッテ居リマス所
  ノ種々ナル動植物等ニ付キマシテ、ソレニ依シテ想像致シマシテ
  モ、矢張今日ノ「アルプス」ノヤウナ堂々タル山嶽デアッタ事ハ想
  像シ得ラレルノデアリマス、而シテ此山ヲ先ヅ以テ一番先ニ
  踏破致シマシタモノハ神武天皇東征ノ際八咫烏ガ此山巓
  ヲ通過シタト云フコトガ、矢張此踏破ノ一番最初デアリマス、
  其後今ヨリ千二百年程前、彼ノ行者ガ再ビ其道筋ヲ通ッテ、
  其通リ方モ矢張八咫鳥ガ神武天皇ヲ嚮導シタト同ジヤ
  ウニ、熊野ヨリ吉野へ出タノデアリマス、ソレデ其後此役ノ行者
  ハ熊野一帶ヲ修驗道ノ本道場ト致シテ世ニ山上詣リト言ウ
  テ今日ニ至ッテ、矢張引續イテ山へ登ッテ居ルノデアリマス、ソレ
  デ熊野ノ本宮カラ此吉野村ニ至ルマデノ間ハ之ヲ七十五麓
  ト言ッテ、其間ニ色々ナ名所ガ澤山アルノデアリマス、殊ニ此山
  上ケ岳マデハ從來陛下トシテモ宇多、白河ノ兩帝ガ御登リ
  ニナッタ歷史モアリマス、其後聖護院ノ宮ト云フノハ二十三
  代一代每ニ必ズ登ラレテ居ル、近頃ニ當ッテ每年約二十万
  ノ登山者ガアルノデアリマス、斯樣ニ山脈附近ノ史蹟ニ
  付テハ-吉野山ノ史蹟ニ付テハ今更喋々スル必要ハアリ
  マセヌ、其附近ニハ澤山ナル名所ノアル事ハ諸君ノ御存知
  ノ通リ、例ヘバ丹生川上官幣社ノ如キ、或ハ賀名生宮趾ノ
  如キ或ハ大塔宮ノ十津川ヲ通過サレタガ如キ、或ハ北山宮
  ノ舊蹟トカ、近クハ天誅黨ノ旗ヲ揚ゲテ終末迄ノ史蹟等
  モアノ一帶ニ在ルノデアリマス、サウシテ其山ノ』一帶ノ群峰
  ノ雄大ナル事ニ付キマシテハ、是亦申ス迄モアリマセヌノデア
  リマシテ、其上ニ植物ノ實ニ珍ラシイモノヽ澤山アル事ハ、是
  ハ恐ラク日本何レノ所ニ行ッテモ、餘リ類ノ無イ所デアラウ
  ト思フ、卽チ其中ノ彌山ノ「シラベ」ノ張林釋迦岳ノ唐檜林
  或ハ綠ノ鼻ニ於ケル所ノ高野槇ノ森林、斯ウ云フヤウナモ
  ノ、其他殊ニ佛經岳ニ於ケル大山「レング」大普賢岳ノ石南
  花、斯ウ云フヤウナ外ニハ餘リ無イヤウナ植物ガアルノデアリ
  マス、而シテ此一帶ノ植物ハ寒帶植物モ溫帶植物モ暖帶
  植物モアルノデアリマス、日本「アルプス」ノ如キニ至ッテハ、此
  暖帶植物ハアノ地方ニハアリマセヌ、卽チ高山性植物中山
  性植物トシテハ、總テノ大峰山連峰及大臺ケ原山等ニハ總
  テニ是ハ分布サレテ居ルノデアリマス、此植物中ニ於キマシ
  テモ、是ハ諸君モ御存知デゴザイマセウガ、栂、椹ノ如キハ現世
  ニ於キマシテ北亞米利加ト日本ノ西南臺灣、此方面ニ分
  布サレテ居リマスルガ、是ハ最モ此松柏科ノ中ノ植物トシテ
  誠ニ珍ラシイモノニナッテ居ルノデアリマス、就中此虎ノ尾
  樅、虎ノ尾樅ト云フモノハ是ハ全ク前世紀カラ遺ッテ居ル所
  ノ植物デアリマシテ、今ノ世ニ於テハ段々絕滅ニ近付キツ
  アリマス、多少ノ森林帶ヲ成シテ居ルモノハ富士山ノ麓ノ一
  部ニアルノト、大臺ケ原山ノ一部ニアルダケデ、是ハ世界ノ
  何レヲ見テモ斯ウ云フ植物ハ無イノデアリマス、又動物ト致
  シマシテモ是亦或ル亞米利加ノ理學者ノ如キモ、全ク世界
  ノ逸品デアルト云フモノガアル、ソレハ何デアルカト云フト、大
  臺ケ原山ニハ尾部ノ上下ノ平タイ所ノ井守、卽チ諸君モ御
  承知ノ如ク、井守ノ尾ハ必ズ上下ニ廣イ、大臺ケ原山ニ居
  ルノハ横ベッタイ、斯ウ云フモノハ世界ノ何レニモ無イ、全ク
  世界ノ珍品デアルト云フ動物、其他吉野ノ駒鳥佛法僧、斯
  ウ云フヤウナモノモ貴イ動物デアリマス、斯ノ如キ動物ハ實
  ニ世界ノ珍品ニシテ、日本ノ國寶トシテ、又吉野ノ誇トシナ
  ケレバナラヌノデアリマス、是レ卽チ國立公園トシテ斯ウ云
  フヤウナ動植物ノ將ニ絕滅セントスルヤウナモノヲ相當保護
  シ、斯ウ云フモノヲ世界ニ紹介致ス、斯ウ云フ事ハ最モ此地
  方ヲ國立公園トスル必要ナル要素デアルト吾々ハ信ズルノ
  デアリマス、而シテ此山脈ハ申ス迄モナク、大體ハ六千尺內
  外ノ馬鹿ニ高イ山デハナイノデアリマスカラ、此處ニ登ルニハ
  子供デモ女デモ譯ナク登レルノデアリマス、玆一二年ノ間ニ
  ハ大臺ケ原山ニハ自動車ガ通ルヤウニナルノデアリマス、而
  モ此五千尺以上モアル大平原デアッテ、其處ニ種々ナルサウ
  云フ動植物ノアル上ニ、景色ト申シマシテモ南ノ方ニハ太平
  洋ヲ見、東ノ方ニハ伊勢海ヲ見ル、サウ云フ風ナ非常ニ景色
  ガ佳イ、又衞生土カラ申シマシテモ、夏ハ避暑地ト致シマシ
  テモ、非常ニ都合ノ好イ處デアルノデアリマス、尙ホ關係的
  要素ト致シマシテハ、卽チ近クニ大都市ノ大阪アリ或ハ京
  都アリ、神戶アリ、アノ附近ハ高イ山ハアリマセヌガ、其處ヘ
  來ルニ至ッテモ僅カ數時間デ汽車デ來ルコトモ出來、自動車
  デ行クコトモ出來ル、サウ云フコトニナリマスカラ、卽チ直接
  ノ必要要素ト致シマシテモ、關係的要素ト致シマシテモ、斯
  ウ云フ國立公園ト致シマシテハ、完全ニ具ッテ居ルト吾々ハ
  信ズルノデアリマス、而モ此少シ南ノ方へ行キマスレバ、有名
  ナ滯八丁、熊野ノ三山ガアリ、東ノ方へ參リマスレバ伊勢ノ
  大杉谷ノ絕景、斯ノ如キ著明ナモノガアリマスガ、世間ニ多
  ク知ラレナイノヲ甚ダ遺憾トスルノデアリマスカラ、政府ニ於
  テハ速ニ是等ヲ調査致シ、早ク國立公園ヲ設立サレンコト
  ヲ希望スルノデアリマス、而シテ是等ニ付テハ相當ニ內務省
  ニ於テモ調查ヲ致シ、或ハ活動寫眞ヲ撮リ、ンレ是レ相當ノ
  調査ハ進メテ居リマスガ、何卒一日モ早ク實現セラレンコト
  ヲ希望スル爲ニ、本案ヲ提出シタ所以デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=78

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• 079・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　次ハ日程第十五、大日光國立
  公園設置ニ關スル建議案、提出者松岡俊三君
  〔松岡俊三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=79

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• 080・松岡俊三

  ○松岡俊三君　私ハ大日光國立公園設置ニ關スル建議
  案ニ付テ其趣旨ヲ陳述スルモノデアリマズ、日光竝ニ富士バ
  帝國ニ於テ名勝ノ地デアルト云フコトハ殆ド言ヲ俟タナイ、
  所デアリマス、故ニ極ク簡單ニ申上ゲルノデアリマスガ、大日
  光國立公園ニ關シテハ、過去十數年ノ間熱心ニ其關係地方
  民ガ請願ヲ帝國ノ兩院ニ提出シタノデアリマスルガ、漸ク第
  四十五議會ニ於テ、貴族院ハ初メテ之ヲ採擇セラレタノデ
  アリマス、權威アル此兩院ガ大日光國立公園ヲ設置スルト云
  フコトニ付テ、請願ヲ御採擇セラレタ、此事實ニ照シマシテ
  モ、如何ニ必要デアルカト云フコトハ申上ゲルマデモナカラウ
  ト思フノデアリマス、唯、、我栃木縣ニ於テハ日光ヲ中心トシ
  タル山嶽ガ重疊シテ居リマス爲ニ、河水常ニ氾濫シ殆ド其
  經費ガ之ヲ負擔スルコトガ出來ナイ程度ニアリマス、故ニ此
  大日光國立公園ニ關シ、大正二年度畏多クモ陛下ヨリ御
  下賜ニナリマシタ御下賜金ニ依リマシテ、縣當局ニ於テ殆
  ド十回ニ跨シテ調査ノ步ヲ進メタノデアリマスケレドモ、奈何
  セン之ヲ完成スルノ途ガ無イノデアリマス、殊ニ中禪寺湖ノ
  畔ノ如キ文明國民ガ一度此中禪寺ニ參リマシタナラバ、彼
  ノ湖畔ヲ一巡スル道路サへ無イト云フ其貧弱ナル程度ヲ見
  マシタナラバ、大凡帝國ニ來タナラバ富士及日光ヲ見タイト
  思フ外國人ガ、斯ノ如キ貧弱ナル狀態ニハ嘸ヅ落膽失望ス
  ルダラウト思フノデアリマス、私ハ敢テ我田引水ノ說ヲ爲ス
  モノデハアリマセヌケレドモ、帝國ノ名勝ノ誇トシテ富士及
  日光ト云フコトガ世界全體ニ跨。テ居ル今日ニ於テ、其外國
  人ガ日光ニ來リマシテモガ、彼ノ名勝ノ寔ニ立派ナ中禪寺
  湖畔、男體山ヲ中心トシタ彼ノ附近一體ニ完全ナル道路モ
  無イト云フコトハ、寔ニ國民トシテ恥ヅル事デアラウト思フノ
  デアリマス、故ニ男體山ヲ中心トシテ北ハ鹽原方面ニ通ズル
  所ノ奇勝ヲ採リ、又南ノ方ハ湯元ヲ通リ金水峠ヨリ群馬縣
  ノ尾瀨沼ノ方ニ至ル道路、又中禪寺湖畔ノ巡回ノ道路ヲ
  作成シテ、彼ノ馬琴ノ八犬傳ニ依シテ有名ナル所ノ庚申山
  方面ニ至ル所ノ道路ヲ造リ、サウシテ完全ナル道路ヲ造リマ
  シタナラバ、三百万ノ人民ヲ有シテ居ル所ノ大東京ニ接近
  シタ所ノ、最モ立派ナル國立公園トシテ、國內ノ學生其他ノ
  人ニ向ッテ、十分ナル保健ノ途竝ニ見學ノ途或ハ高山植物
  等ニ付テ十分ナル知識ヲ與ヘルノミナラズ、外國人ニ向ッテ
  帝國ノ誇トンテ之ヲ大ニ傳ヘル所ノ途ガ出來ルデアラウト
  思フノデアリマス、内務當局ニ於テハ數年前ヨリ熱心ニ調
  査ナサレテ居リマスケレドモ、幸ニ貴族院ニ於テ十年ノ請願
  ガ初テ御採決ニナッタ其經驗ニ照シ、此實績ニ照ラシマシテ
  モ、必ズヤ內務當局ガ相當ノ案ヲ出サレルコトデアラウト思
  ヒマスケレドモ、尙ホ一日モ早ク速成シタイト云フ熱心ヲ以
  テ本案ヲ提出シタ所以デアリマスカラ、滿場ノ諸君ニ於カレ
  マシテハ、何卒御協議御審査下サランコトヲ御願致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=80

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• 081・高田耘平

  ○高田耘平君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=81

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• 082・粕谷義三

  ○副議長(柏谷義三君)　高田君何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=82

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• 083・高田耘平

  ○高田耘平君　私ハ此問題ニ付テ政府ノ意見ヲ聽キタイ
  ト思ヒマス、大臣或ハ其他ノ人ミ···
  〔「委員會ニ讓リ給へ」ト呼フ者アリ〕

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• 084・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　今通知シテ置キマシタガ、出席
  ノ有無ハ分リマセヌ、委員會ニ御讓リ下スッテハ如何デスカ

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• 085・高田耘平

  ○高田耘平君　本會議デナケレバ困ル事ガアル-衞生
  局長ハ居リマセヌカ

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• 086・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　ソレデハ留保シテ御置キニナッタラ
  如何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=86

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• 087・高田耘平

  ○高田耘平君　內務當局ノ來ラレルマデ私ハ質問ヲ留保
  シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=87

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• 088・高見之通

  ○高見之通君　日程第十三乃至第十五ノ三案ヲ一括シ、
  議長指名ヲ以テ九名ノ委員ニ付託サレムコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 089・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、依テ動議ノ如ク決シマシタ、次ニ日程第十六、日
  足鐵道速成ニ關スル建議案ヲ議題ニ供シマス、松岡俊三
  君
  第十六日足鐵道速成ニ關スル建議案
  (松岡俊三君提出)
  日足鐵道速成ニ關スル建議案
  日足鐵道速成ニ關スル建議
  栃木縣上都賀郡日光驛(日光線)ヨリ足尾驛(足尾線)
  ニ達スル十五哩間ノ日足鐵道ハ鐡道敷設法別表中ニ
  編入セラレ居ルノミナラス產業上交通上特ニ大日光國
  立公園設置計畫調査地帶內ニ在ル極メテ重要ナル線
  路タリ政府ハ速ニ敷設完成セラレムコトヲ望ム
  右建議ス

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• 090・松岡俊三

  ○松岡俊三君　簡單デアリマスカラ本席カラ御許ヲ願ヒ
  タウゴザイマス、本案ハ昨年ノ議會ニ於テモ御採擇ニナッテ
  居ル案デアリマス、何卒御協賛下ラムコトヲ御願ヒ致シマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 091・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ中野寅吉君外三名提出、柳澤小
  出間及只見古町間鐵道速成ニ關スル建議案ノ委員ニ併
  セ付託セラレムコトヲ望ミマス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=91

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• 092・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、依テ動議ノ如ク決シマタ-次ハ日程第十七、
  自由港設置ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、野田文一
  郞君
  第十七自由港設置ニ關スル建議案(野
  田文一郞君外四名提出)
  自由港設置ニ關スル建議案
  自由港設置ニ關スル建議
  國際的經濟競爭ニ優越ノ地位ヲ占メ國力ヲ增進スルノ
  途一ニ外國貿易ノ伸張ヲ圖リ併テ海運業ノ發達ヲ期ス
  ルニ在リ此ノ目的ヲ達スルノ途一ニシテ足ラスト雖我カ
  國天然ノ地形ヲ利用シ適當ノ地點ヲ選ミテ自由港區ヲ
  設置スルヲ以テ最良ノ政策ナリト信ス政府ハ速ニ適當ノ
  施設ヲ爲サムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔野田文一郞君登壇、拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=92

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• 093・野田文一郎

  ○野田文一郞君　私ハ自由港設置ニ關スル建議案ニ付
  キマシテ聊カ提案ノ理由ヲ說明致シタイト思ヒマス、自由港
  問題ハ、近頃世間一般ノ注意ヲ惹キマシテ、實業家方面ニ
  於テモ、或ハ學者方面ニ於テモ各、意見ヲ發表致シマシテ、
  此問題ノ解決ニ對シテ、參考トナルベキ材料ヲ色、提供ヲ
  セラレ、其自由港ノ開設ニ對スル促進ノ機運ヲ作リツヽア
  ルト云フコトハ、私ノ最モ喜ブ所デアリマス、自由港設置ノ
  議論ガ盛ニ提唱サレマスノハ、單リ我國ノミナラズ、保護貿
  易主義ヲ取ッテ居リマシテ、ドウシテモ之ヲ緩和スル方法ヲ
  講ジナケレバナラヌ必要ヲ感ジタ國ニ於テハ何レモ熱心ニ
  〓究シ又自由港ノ設置ニ向ッテ運動シツヽアルノデアリマシ
  テ、諸君ノ御承知ノ如ク、米國ニ於テモ桑港ト紐育トノ兩
  方ニ於テ、何レモ大規模ノ自由港ノ設置ヲ希望致シマシテ、
  色と調査モシ、運動モシテ居ルト云フ事實モアリマス、又更
  ニ最近千九百二十二年ノ九月ニ、瑞典ノ「マルモ」港モ矢
  張自由港ニ編入セラレマシテ、其他佛蘭西ナドニ於テモ、矢
  張自由港設置ノ議論ガ盛ニナリツヽアルノデアリマシテ、今
  ヤ世界ノ到ル所ニ於キマシテ、保護貿易主義ヲ緩和スル爲
  ニハ、自由港設置ノ必要ガアルト云フ事ヲ認メラレテ居ルノ
  デアリマスカラ、今日其必要ニ付テ、餘リ多ク說明ヲスル必
  要ガナイト信ジマスルケレドモ、成ベク要點ヲ摑ンデ申上ゲ
  タイト思ヒマス、農村振興ノ問題モ亦近頃頗ル重要視セラ
  レマシテ、此議場ニ於テモ農村振興ノ問題ハ、建議案其他ノ
  形式ニ於テ屢。論議セラレタノデアリマシテ、私モ亦今日ノ
  農村ヲ振興ヲスルニ付テ、有ユル政策ヲ實行スルコトノ必要
  ナルコトハ認メテ居リマスノデ、勿論之ニ對シテ異議ナキノ
  ミナラズ、滿腔ノ賛意ヲ表スル一人デアリマスガ、併ナガラ內
  ニ在ッテ如何ニ農業政策ガ完成ヲ致シテ、農村ガ振興ノ實
  ヲ擧ゲマシテモ、私ハソレノミヲ以テ滿足スルコトハ出來ナイ
  モノデアルト信ジマス、國家ノ永遠ノ隆昌ヲ圖ル方法トシテ
  ハ、農業政策ノ外ニ、更ニ商工業ヲ最モ盛ナラシムルト云フ
  コトニ付テ、深甚ノ注意ヲ拂ヒ、出來得ルダケノ努力ヲ致サ
  ナケレバナラヌト云フコトヲ深ク感ズルノデアリマス、一々統
  計ヲ擧ゲテ申上ゲル迄モナク、我國ハ面積ハ狹ク、而シテ天
  然ノ富源ハ極メテ乏シイノデアル、一面ニ於テ人口ハ世界デ
  第四番目ニ位スル所ノ、極メテ稠密ナル人口ヲ持テ居ルノ
  デアリマシテ、而モ此人ロハ年々約六十万ト云フ多數ノ增
  加ヲシツヽアルノデアリマスカラ、如何ニ農村振興ノ實ヲ擧
  ゲテ努力ヲ致シマシテモ、此吾々同胞ノ食糧問題ヲ解決ス
  ルニ付テハ、農村振興ノミヲ以テ滿足ヲスルコトハ出來ナイ
  ト云フコトハ、深ク辯ズル必要ハナイト」信ズルノデアリマス、
  私共二十年以前ニ食糧問題ナルモノヲ聞キマシタトキニハ、
  是ハ學者ノ机上ノ議論デアルトシテ、深ク注意ヲ拂ハナカ。ツ
  タノデアリマスルケレドモ、今日ハ旣ニ年ニ依リマシテ食糧ノ
  不足ヲ現實ニ感ズルノデアッテ、如何ニ食糧問題ガ吾々ノ重
  大問題デアルカト云フコトニ付テ、今更ノ如ク感ゼザルヲ得
  ヌト云フコトノ狀態ニナッタノデアリマス、如何ニ開墾助成法
  ニ依シテ開墾ヲ奬勵シ、又農業ノ技術ノ改良ヲ圖ッテ增收ヲ
  圖リマシテモ、如何ニシテモ他ニ何等カノ方法ヲ講ズルニア
  ラズンバ、吾々ノ食糧問題ヲ解決スルトトフフトハ出來ナイ
  ノデアリマス、併ナガラ海外移民ト云フコトモアリマスガ、先
  日小川平吉君ハ移民ニ付テハ、極メテ容易ニ出來ルモノノ
  如ク御述べニナリマシタガ、併シ今日ノ狀態ハ、我國ノ移民
  政策ハ行詰リデアッテ、何レノ方面ニ向ッテモ思フヤウニ行カ
  ナイト云フコトガ實際ノ事實デアル、故ニ移民ト云フコトニ
  重キヲ措イテ、吾々ハ安心ヲスルト云フコトハ無論出來マセ
  ヌ、又ソレガ出來ナケレバ已ムヲ得ズンバ產兒制限ヲスルト
  云フコトニナリマセウガ、是ハ結局民族ノ滅亡ヲ來スト云フ
  コトノ結果ニ相成ルノデアリマスルカラ、一無論斯樣ナ事ノ政
  策ヲ執ルコトノ出來ナイコトハ論ヲ俟チマセヌ、一斯樣ナ次第
  デアリマスルカラ、商工業ヲ盛ナラシムルト云フコトガ最モ大
  切ナル問題デアッテ、是ハ農村振興ニ讓ラザル重大ナル問題
  デアルト信ジマスルガ、併シ或ハ此方面ニ向ッテハ多大ノ注
  意ヲ拂ハザルガ如キ嫌ノアル遺憾ノ點モアリマス、故ニ私ハ
  我國ノ商工業ヲ盛ナラシメ、海運業ノ發達ヲ圖ルト云フコ
  トノ方法ト致シマシテ、保護貿易主義ノ下ニ自由貿易主
  義ノ長所ヲ採ッテ、此缺陷ヲ補ヒマシテ、之ニ由ッテ產業貿易
  ノ發達、海運業ノ奬勵ヲスルト云フコトガ、今日ノ最モ急務
  デアルト信ズルノデアリマシテ、此理由ニ基キマシテ私ハ自由
  港ノ設置ヲ主張スルモノデアリマス、自由港ノ如何ナルモノ
  デアルカト云フコトハ、私ガ〓玆ニ申上ゲルマデモナク、諸君
  ノ御承知ノコトデアリマスケレドモ、併シ單ニ自由港ト申シ
  マシテモ、其中ニハ細別ヲ致シマスルト色ミアリマスルカラ、簡
  單ニ要ヲ摘ンデ申上ゲタイト思ヒマス、申ス迄モナク自由港
  トハ、港ノ全部若クハ一部ヲ全然關稅ノ拘束外ニ置イテ、
  關稅ノ支配ヲ受ケルコトナキコトニ致シマシテ、出入ノ船舶
  ニ對シテハ自由ニサセル、一口ニ申セバ之ガ自由港デアリマ
  スルガ、併シ其自由港ニハ、普通區別ヲ致シマスレバ三ツニ
  ナルノデアル、第一ハ自由港市、詰リ商港ノ全部ヲ-商港
  ノ全部ヲ關稅ノ拘束外ニ置キマシテ、唯〓港灣ノ設
  備利用ニ關スル料金ノ外ハ、一切ノ輸出入稅ヲ
  免除スル、斯ウ云フコトハ制度デアリマスガ、諸君
  ノ御承知ノ如ク、此自由由港市ハ種々ナル缺點ガアルト
  云フコトデ、近來ハ殆ドナクナッテ居ルノデアリマス、
  唯、纔ニ其背後地-港ノ背面ノ地、此背後地ト全然關
  係ノ無イヤウナ所トカ、若クハ遠ク本國ヲ離レタル亞細亞ノ
  方面ニ於テ殘ッテ居リマスケレドモ、併ナガラ自由港市ハ今
  日何レモ閉鎖セラレル運命ニアルノデアリマーシテ、特別ノ事
  情ガナイ限リハ斯ノ如キ制度ヲ我ガ內地ニ採用セラレント
  スルコトハ、時代錯誤デアリマシテ、私ノ主張スルノ六ハ、斯ノ
  如キ自由港市デハナイノゴアリマス、第二ハ自由港區デアリ
  マシテ、矢張港ノ全部若クハ一部ヲ關稅ノ。拘束外ニ置クノ
  デアリマシテ、其點ハ自由港市ト同樣デアリマスガ、唯、自
  由港市ト異ル所ハ、自由港市ニ在ッテハ其市ニ居住ノ自由
  ヲ許シマスケレドモ、自由港區ニ在ッテハ居住ノ自由ヲ許サ
  ナイ、此點ガ自由港市ト異ルノデアリマシテ、卽チ獨逸ノ漢
  堡、丁抹ノ「コッペンハーゲン」、斯ノ如キノ自由港區ヲ指スノ
  デアリマス、其外自由地區ト云フヤウナモノモアリマスガ、是
  モ私ハ其開設ヲ要求スルモノデナイノデアリマスカラ省略ヲ
  致シマス、要スルニ私ノ開設ヲ望ムモノハ自由港區デアリマ
  ス、第二ノ自由港區デアリマシテ、之ニ對シマシテハ產業貿
  易海運ノ奬勵ノ爲ニ、多大ナル利益ガアルト云フコトヲ深ク
  信ズルモノデアリマス、先ヅ其效果ノ重ナルモノヲ舉ゲマスレ
  バ、中繼貿易ヲ盛ナラシメルト云フコトノ效果ガアル、又第
  二ノ顯著ナル效果ト致シマシテハ、委託販賣ノ制度ガ發達ヲ
  スル、外國カラ送ッテ參リマス品物ヲ自由港區ノ倉庫ニ入レ
  テ置イテ、倉庫證劵ヲ發行スル、倉庫デ倉庫證劵ニ依リマシ
  テ品物ヲ賣買スル、或ハ內地ニ於テ賣買スルトカ、更ニ他ニ
  輸出スルトカ、荷主ハ免モ角自由港區ニ荷物ヲ送ッテ置イ
  テ、而シテ倉庫證劵ニ依ッテ貨物ノ賣買ヲ致シマスカラ、頗
  ル便利デアルト云フコトハ、英國倫敦等ニ行ハレテ居ル事例
  ニ依ッテ明白デアリマシテ、是モ細カク申上ゲル必要ハナイト
  信ジマス、更ニ又我國ノ貨物ハ勿論、自由港ガ出來マスレバ、
  自然外國ノ品物モ多ク入ッテ來ルヤウニナリマスカラ、我國
  ノ貨物ハ勿論、第三國ノ取引ニ係ル貨物ト雖モ、矢張我國
  ノ船舶ニ依シテ運輸ヲスルト云フコトニナリマスレバ、海運業
  ノ發達ノ上ニ於テ、多大ナ效果ノアルコトハ論ヲ俟チマセヌ、先
  ヅ是等ガ普通顯著ナルモノトシテ擧グラレテ居ル益利デアリ
  マスガ、自由港區ガ日本ニ出來タト云フコトニナリマスレバ、
  ソレダケ日本ノ看板ガ付ク譯デアル、港ニ金看板ガ出來ル
  譯デアリマスカラ、自然外國カラ此自由港區ニ向ッテ容易ニ
  荷物ヲ送ルコトニナリマスカラ、直接間接ニ擧ゲテ算フルコ
  トノ出來ナイ利益ガアルト云フコトヲ信ズルノデアリマス、或
  ハ極メテ少數デハアリマスケレドモ、一部ノ人ハ自由港區ヲ
  設ケズトモ、我國ニハ現ニ保護貿易政策ニ對スル緩和ノ方
  法トシテハ、保稅倉庫ノ制度モアリ、假置場ト云フコトモア
  ル、又更ニ戾稅ノ制度モアリマスカカ、之ニ依クテ自由港ニ
  依ヲテ得ベキ利益ハ擧ゲ得ラレルノデアルカラ、今日財政緊
  縮ヲ要スル時代ニ於テ、多額ノ金ヲ使っテサウ云ウ「ヤウナ事
  ヲスル必要ハナカラウト云フコトヲ論ゼラレル者ガアルノデア
  リマスガ、併ナガラ詳細ニハ申シマセヌガ、保稅倉庫、假置場、
  若クハ戾稅ト云フガ如キ制度ハ、要スルニ手續煩瑣デアッテ、
  到底自由主義ヲ認メルダケノ十分ナ效果ヲ發揮スルコトガ
  出來ナイノデアリマシテ、恰モ間造リノ便利ノ惡イ家ガアッテ、
  其家ハ如何ニ修繕ヲ加へテモ立派ナモノニハナラナイカラ、
  寧口新シキ座敷ヲ造リマスナラパ、客モ心持宜ク其處ニ來ル
  ト云フコトニナルト同ジ事デアリマシテ、斯樣ナル制度-現
  在ノ制度ヲ繕ヒスルト云フコトヨリハ、更ニ一步ヲ進メテ自
  由港ニスルト云フコトニナリマスレバ、頗ル大ナル效果ガアル
  ト云フコトヲ確信ヲ致スモノデアリマス、併ナガラ自由港區
  ヲ作ルニ付テハ、果シテ何ンノ地點ヲ擇ンデ之ヲヤルカト云
  フコトノ問題ヲ生ズルノデアリマス、自由港區ヲ開設ヲ致シ
  マスレバ、其港ハ頗ル繁榮スルト云フコトハ明ナ事實デアル、
  隨ッテ何レノ港ニ於テモ其開設ヲ要望スルコトニナルデゴザ
  イマセウガ、併ナガラ吾々ハ極テ公平ナル考ヲ持タナケレバナ
  ラヌノデアッテ、自由港ノ開設ハ、我帝國ノ最高經濟政策ト
  シテ之ヲ主張スルノデアリマスカラ、單ニ地方ノ利害ノ問題
  ニ依ッテ彼此論議スベキモノデハナイト信ジマス、既ニ此國家
  的ノ見地ヨリ候補地ノ選定ヲスルト云フコトニナレバ、其以
  上ハ深ク申上ゲズトモ中繼貿易ニ於テ只今全國ノ總テノモ
  ノヲ併セマシテモ、ソレヨリモ尙ホ多クノ額ヲ擧ゲテ居ルモノ
  ハ神戶デアリマスカラ、恐ラクハ斯樣ナ方面ガ候補地トシテ
  選定セラレルコトハ當然ノ事ト信ジマスガ、併シ私ハ今候補
  地ニ付テ唯〓一片ノ感ジヲ申シタノデアッテ、此點ニ迄深ク
  論及ヲスル考デハナイノデアリマス、要スルニ是ハ國ノ最高
  政策トシテ爲スベキ問題デアッテ、地方問題デナイト云フコト
  ヲ此處ニ特ニ一言ヲ致シテ置クノデアリマス、又其經營者ハ
  如何ナル人ニ依フテ經營セシムルカト云フコトデアリマスガ、
  外國ノ例ニ依リマスレバ、政府ガ直接自由港ノ經營ヲ致シ
  テ居ル所ハナイヤウデアル、或ハ會社ニ於テシテ居ル、是ハ他
  日政府ニ之ヲ買收スルト云フ條件ノ下ニ於テ行ハレテ居ル
  モノデアル、或ハ市ニ於テヤッテ居ルモノモアル、之ヲ如何ニス
  ルカト云フコトハ、最モ大切ナル問題デゴザイマセウガ、私ノ
  只今考ヘテ居ル所ハ、或ハ半官半民ノ經營ト一云フガ如キコ
  トハ、蓋シ適當ナル方法デハナイカト考ヘマス、併シソレ等ノ
  點ハ更ニ專門家ノ意見等モ徵シマシテ、設備經營者等ニ付
  テハ〓究ノ餘地ガアルト信ズルノデアリマス、今日國內ニ於
  キマスル港灣-小サイ港灣トカ或ハ鐵道トカ云フ斯ウ云
  フモノニ付テハ、諸君モ多大ナル御注意ヲ御拂ヒニナッテ、鐵
  道ノ建設等ニ付キマシテ最モ御盡力ニナルノデアリマスカ
  ラ、更ニ我國ノ立場ヲ御考ヘニナリマシテ、ドウシテモ我國ハ
  船舶ニ依テ交通ヲシナケレバナラヌノデアル、貿易ニ依ッテ
  立タナケレバナラナイ國デアルト云フコトノ御考ヘヲ願ヒマ
  シテ、此內地ニ於ケル港灣鐵道ニ對スル諸君ノ御努力ヲ、
  更ニ此方面ニ向ッテ御用ヒアランコトヲ切ニ希望セザルヲ得
  ヌノデアリマス、若シ此自由港ニシテ成立ヲ致シマスレバ、我
  國ハ東洋ニ於テハ最モ優勝ナル地位ヲ占メテ居ルノデアリマシ
  テ、一方ニ對シテハ支那大陸ヲ控ヘテ居ル、他日露國ト通
  商ヲ開クニ至レバ、比方面トノ貿易モ頗ル多大ナルモノガア
  リマセウ、又南洋諸方面ニ於テ是等ノ關係ヲ見レバ、恰モ英
  國ノソレニ似タモノガアッテ、日本ハ所謂東洋ノ英國デアル
  ト云フガ如キ地位ヲ占メテ居ルノミデアリマスカラ、此大局
  ヨリ著眼致シマシテ、先ヅ第一ニ自由港ヲ設置シ、サウシテ世
  界ニ於ケル少クト。モ東洋ニ於ケル貿易ノ中心ハ我日本帝
  國デアル、斯ウ云フコトノ事實ヲ見マシテ、始メテ吾々ノ食糧
  問題卜云フモノモ解決ガ出來ル、卽チ國土ノ狹イ富源ノ乏
  シキ我國ハ、支那露國方面、其他ノ方面ヨリ安キ原料ヲ持〃
  テ參リマスレバ、食糧ハ出來ル、工業原料モ亦外國ヨリ取ッ
  テ安イ品物ヲ造シテ海外ニ輸出ヲスル、斯樣ナコトニシテ始
  メテ我國ハ完全ニ其富ヲ致スノデアッテ、吾々共ハ內ニアッテ
  農村問題ヲ解決シ、食糧ノ充實ヲ得テ、唯、糊口ヲ凌ギ、寒
  暑ニ堪ヘ、雨露ヲ凌グト云フ、所謂此肉體ノ衣食住ヲスル
  ト云フコトノミヲ以テ滿足スベキモノデナクシデ、少クトモ吾
  吾ハ日本民族トシテ、文明的ノ生活ヲシテ、世界ノ文明ニ
  貢獻スルト云フダケノ、大使命ヲ帶ビテ居ルト云フコトノ自
  覺ヲ持タナケレバナラヌノデアリマシテ、此見地ヨリ考へマスレ
  バ、内ニ於テノ農村振興ト云フガ如キ-云フガ如キト申シテ
  ハ、之ヲ輕ンズルヤウニ聞エマスガ、ソレ等ノ問題ノミヲ以テ滿
  足スベキモノデナクテ、ドウシテモ自由貿易主義ノ長所ヲ採ツ
  テ以テ我國ノ發展ヲ圖リ、國家永遠ノ隆昌ヲ圖ルト云フコ
  トガ、今日吾々ノ執ルベキ最モ賢明ナル政策ナリト信ジマス
  ガ故ニ、斯樣ナ理由ヲ以テ本案ヲ提出シタ次第デアリマスヽ
  願クバ諸君速ニ御賛成アランコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=93

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• 094・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ大島實太郞君外二名提出、舞鶴
  軍港廢止ニ伴フ地方善後ニ關スル建議案委員ニ併セ付託
  セラレンコトヲ希望致シマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=94

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• 095・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-次ハ日程第十八、
  產業組合中央金庫設置ニ關スル建議案ヲ議題ニ供シマ
  ス、土井權大君
  第十八產業組合中央金庫設置ニ關スル
  建議案(土井權大君提出)
  產業組合中央金庫設置ニ關スル建議案
  產業組合中央金庫設置ニ關スル建議
  產業組合ハ社會政策實行ニ最必要ナル経済組織タルハ
  今更之ヲ贅スルノ要ナシ而シテ本邦ニハ既ニ其ノ數一萬
  ヲ超過ス然リト雖組合相互ノ連絡トク有無相通スルノ
  作用ヲ缺如シ組合ノ眞目的ヲ達スル能ハサルツ現狀ナリ
  特ニ庶民階級唯一ノ金融機關タル信用組合ニ至リテ其
  ノ甚シキモノアリ玆ニ於テカ中產階級及中產階級以下
  ノ金融ハ圓滿ヲ缺キ彼等ノ福利ヲ增進スル能ハサルノ現
  狀ナリ依テ政府ハ此等信用組合ノ連絡ヲ保チ加之系統
  的ニ庶民金融ヲ圖ル爲產業組合中央金庫設置ニ關ス
  ル途ヲ開クヘシ
  右建議ス
  〔土井權大君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=95

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• 096・土井權大

  ○土井權大君　本案ハ簡單ナルモノデアリマス、特ニ此產
  業組合ノ中央金庫設置ト云フコトニ付キマシテハ、政友會
  ニ於テモ、近日ニ法律案ヲ御出シニナルカノ如ク新聞デ拜見
  ヲ致シタノデアリマス、又先日憲政會ニ於テハ、下岡君ヨリ
  シテ其必要ナル所以ヲ此壇上ニ於テ述べラレタコトモ承知
  致シテ居ルノデアリマス、私ガ縷々申上ゲマセヌデモ、旣ニ御
  賛成下サッテ居ルコトヽ思フノデアリマス、要スルニ今日農
  村トシテ苦ンデ居ルノハ、私カ彼此申サズトモ御承知ノ通リ
  デアリマス、而シテ其困憊ノ原因ハ何レニ在ルカト云ヘバ曩
  ニ農業組合法ヲ說明致シマシタル時ニ說明セシ如ク、產業
  ノ革命ヨリ致シテ、家族的自給自足家族的自給自足ノ經
  濟組織ガ破壞サレタ、是ガ原因トナッテ今日農民ハ苦シミ、
  農村ハ困憊致シテ居ルノデアルト申シタ通リデアリマス、而
  シテツレ等ノ困憊ソレ等ノ苦ミト云フモノヲ救濟スルニ付キ
  マシテハ、ドウシテモ此農民ノ組合、農村ノ〓結ノ必要アリ
  ト云フコトモ既ニ述ベタ通リデアリマス、所ガ幸ヒ產業組合
  ト云フモノガ我國ニ一万三千以上アル、特ニ農村ニ於テー
  故ニ此產業組合ノ力ニ依ッテ-ンレ等ノ團體ソレ等ノ組合
  ニ依リマシテ、團體的自給自足ノ方策ヲ農民自身ガ自覺シ
  テ立テタナラバ宜イト、斯ウ私ハ申シタノデアリマスガ、併ナガ、
  ラ產業組合トシアノ缺點ハ、非常ニ總テノ經營總テノ手續
  ニ於テ煩瑣ナル點ガアル、是ガ一ツノ缺點デアル、故ニ多數
  組合アリト雖モ、組合ハ微々トシテ振ッテ居ラナイト云フコト
  モ先刻申シタ通リデアリマスガ、モウ一ツ此產業組合ノ發達
  シナイ所ノ一大原因ハ何デアルカト申セバ產業組合ノ聯
  絡〓一ト云フモノガ無イノデアリマス、一万三千アル特ニ信
  用組合ト申シマシテ、御承知ノ通リ庶民金融ヲ掌ッテ居ル所
  ノ組合ノ數ハ一万一千以上アリマスケレドモ、此等ノ組合
  ト云フモノハ、微々トシテ振ハナイ、金ノ有ル組合ハ非常ニ
  餘ッテ居ル、無イ所ノ組合ハ無イ、有無相通ズル所モアレバ、
  又之ヲ統一シ之ヲ聯絡スルト云フガ如キ機關モナイノデア
  リマス、ソレガ爲ニ如何ナル事業ヲ農村ニ於テ〓體的ニ起サ
  ウト致シマシテモ、金ガ無イ、斯ウ云フ結果ニ今日相成クテ居
  ルノデアリマス、固ヨリ銀行モアリマス、財產家モアリマスケレ
  ドモ、銀行トカ財產家等ハ、サウ云フ中產階級ノ團體的ノ
  事業ニ金ヲ出スベキ性質ノモノデナイト同時ニ、有ルモノト
  雖モ大ナル資本家、大ナル地主等ハ、左樣ナ方面へ金ヲ出
  スコトヲ惜ムノデアリマス、ソレガ爲ニ往々小作爭議ナドモ起
  キマスガ、ソレハ餘談ト致シマシテ、要スル所〓體的ノ自給
  自足、其他ノ團體的ノ事業ヲ起サウト致スニ付キマシテ、資
  金缺乏ト云フコトニ今日相成ッテ居ルノデアリマス、又假ニ
  米殼法ナラ米穀法ト云フモノヽ運用ガアル、米ヲ農民ナラ
  農民ガ暫ク投賣ヲ止メヤウト致シマシテモ、金ガ無イガ爲ニ
  已ムナク其米ヲ安ク賣ラナケレバナラナイ、斯ウ云フ狀態ニ
  相成リマシテ、折角米穀法ト云フモノガアリマシテモ、金融ノ
  途ガ杜絕致シテ居ルガ爲ニ、其米ト云フモノヲ或ル時期マデ
  一定ノ時期シ持耐ヘル所ノカガ無イト云フ今日ハ狀態デア
  リマス、是ハ私ガ縷々申上ゲマセヌデモ御承知ノ通リデアリ
  マス、故ニ今日農村ノ振興ヲ圖リ農村ノ發達ヲ圖ラウトス
  ルニ付テハ、農村ノ金融ヲ如何ニスルカト云フコトガ最モ重
  大ナル問題デアルト私ハ考ヘルノデアリマス、一方此農民ハ
  如何ナルコトヲシテ居ルカト言ヘバ、郵便貯金ナドモ御承知
  ノ通リ隨分零碎ナル資金ヲ預ケマス、或ハ簡易生命或ハ勸
  業銀行債劵、或ハ農工銀行債劵、ソレ等ト云フモノハ總テ
  中央ニ集マルカ、若クハ此大資本家ニ使ハレルト云フガ如キコ
  トニ相成リマシテ、僅十貯金ト雖モ此貯金ト云フモノハ中央
  ニ集マリマシテ、御承知ノ通リ預金部ニ十億万圓ノ金ガア
  ルケレドモ、ソレ等ノ金ヲ農村ニ還元スルコト能ハズシテ、資
  本家若クハ大都市ノ事業ニ使ハレル、若クハ政府ノ色こノ
  政策ニ使ハレル財政計畫ニ使ハレルト云フガ如キ狀態ニ相
  成ッテ居ル、丁度此農民ト云フモノハ、大キナ吸玉ヲ掛ケラ
  レテヽ血ト膏ヲ搾ラレ、其血ト膏ト云フモノハ、或ル一部ノ特
  權階級ガ利益ヲ得テ居ル、或ル一部ノ特權階級ノ肉トナ
  リ、或ハ血トナルト云フガ如キ今日狀態ニ相成フテ居ルノデ
  アリマス、又飜シテ都會ノ狀態ハドウデアルカ、都會ノ狀態ハ
  ドウデアルカト申セバ、是亦中產階級竝ニ中產階級以下ノ
  金融ト云フモノハ、極メテ不圓滑ニ相成フテ居ルノデアリマ
  ス、大キナ銀行ナドハ金利ガ非常ニ安イ、所ガ中產階級、
  中產階級以下ノ小賣商ハ、ドレ程ノ日歩ノ金ヲ使クテ居
  ルカト言ヘバ最低十錢、百圓ニ付テ十錢、甚シキニ至ッテ
  ハ二十錢、三十錢、斯ウ云フ高イ金ヲ使ッテ、サウシテ漸
  ク商賣ヲシテ居ル、斯ウ云フ狀態デアリマス、小賣値段ガ
  高イ、高イト云フノハ色ミノ原因モアルデアリマセウ、租
  稅ノ原因モアルデアリマセウ、營業稅ノ關係モアルデアリマ
  セウ、又ハ彼等生活費ノ關係モアルデアリマセウガ、最モ
  小賣値段ヲ高カラシムルモノハ、中產階級竝ニ中產階
  級以下ニ對スル所ノ金融ノ機關ト云フモノガ不完全ニシ
  テ、高キ所ノ利息ヲ拂ッテ商賣ヲ致シテ居ルト、斯ウ私ハ斷
  定ヲ致スノデアリマス(拍手)翻シテ日本ノ銀行ハドウデア
  ルカ、一般銀行モアリマス、御承知ノ通リ特殊銀行モアリマ
  スケレドモ、是等ノ銀行ト云フモノハ、悉ク中產階級以上ニ
  利便ヲ提供スル所ノ銀行デアル、中產階級以下ニハ何等利
  便ヲ與ヘテ居ラヌ、勸業銀行農工銀行アリト雖モ、大地主
  ノ機關デアリマセウ、興業銀行アリト雖モ、之ハ大キナ不動
  產銀行デアル-興業銀行デアル、横渚正金銀行アリト雖
  モ、是ハ大キナ貿易業者ノ親方銀行デアル、其他日本銀行
  ハ大キナ商業家、大ナル事業家ノ機關ト相成ッテ居ル、丁度
  大藏省ニ於テ取調ベル所ニ依レバ、最近ノ統計ニ依リマス
  ト、日本全國ニ金ヲ貸出シテ居ルコト百三十億万圓デアル、
  百三十億万圓ノ中、銀行ノ手ニ依ッテ貸出シテ居ルノガ百
  二十七億、殘ル三億万圓ガ信用組合或ハ無盡若クハ問屋、
  斯ウ云フヤウナ狀態デアリマシテ、多數ノ國民ハ僅カ三億万
  圓シカ金ハ借リテ居ラス、少數ノ特權階級、少數ノ資本階
  級ト云フモノハ百二十七億万圓ノ金ヲ使シテ居ル、斯ウ云フ
  統計ニ相成シテ居ル、卽チ平タイ言葉デ申シマスレバ、今日ノ
  金融狀態ト云フモノハ、中產階級以上ニ非常ニ便利デアル、
  中產階級竝ニ中產階級以下ハ洵ニ不便デアル、是ハ農村
  ト云ハズ、都會ト云ハズ洵ニ苦ンデ居ル、庶民ノ金融機關ト
  云フモノハ極メテ不完全デアル、斯ウ云フ事ニナッテ居ル、或
  人ハ今日ノ日本ノ金融狀態ヨリ日本ノ國ノ批評ヲスルナラ
  バ-日本國ノ批評ヲスルナラバ、日本ノ經濟狀態ハ頭熱
  足寒ト云フ病氣ニ罹ノテ居ル、斯ウ云フ事ヲ言ッテ居ッタ人ガ
  アル、是ハ私ハ眞理デアラウト思フノデアリマス(拍手)特權
  階級以上ニハソレ〓〓金融ノ途ガアル、中產階級竝ニ中產
  階級以下ニハ單ニ信用組合アリト雖モ、之ヲ聯絡シ、之ヲ
  運用スル所ノ一ツノ大機關ガ無イノデアリマス、仍テドウシ
  テモ信用組合ノ親方銀行デアル所ノ產業組合中央金庫ナ
  ルモノヲ設置致シマシテ、庶民階級ノ金融ト云フモノヲ滑力
  ニシナケレバナラヌト云フ意味ヨリ致シマシテ、此建議ヲ出
  シタ次第デアリマス(拍子)然ラバ如何ヤウナル骨子デアルカ
  ト云ヘバ極メテ簡單デアリマス、第一「中央銀行ハ產業銀行
  法ニ依リ法人トス」新ニ法律ヲ制定スルノデアリマス、第二
  ニ「中央銀行ノ出資金ハ政府ト產業組合聯合會及產業組
  合之ヲ出資ス出資總額ハ五千万圓以上トシ、政府ハ其半
  額ヲ出資ス政府ノ出資ニ對シテハ十五年間利益ノ配當ヲ
  爲スコトヲ要セス」是ハ農工銀行デモ斯ノ如キコトガアリマ
  スガ故ニ、其例ヲ取シタノデアリマス、第三「中央銀行ハ產業
  組合聯合會竝產業組合ニ對シテ定期貸付手形ノ割引又
  ハ當座預金貸越ヲ爲シ又資金ノ餘裕アル場合ニハ年賦貸
  付ヲ爲ス」無擔保貸付ヲ原則トスルモ、擔保ヲ徵スルコトモ出
  來ル、原則トシテハ無擔保主義、第四「產業組合聯合會竝
  產業組合公共團體營利ヲ目的トセザル法人若クハ團體ヨ
  リノ預リ金ヲ爲スコト」第五「其他產業組合聯合會竝產業
  組合ノ爲ニ爲替事務國債又ハ有價證劵ノ委託賣買ヲ爲スコ
  ト」第六「中央銀行債劵ヲ發行スルコトヲ得」ト「發行ニ關
  スル諸稅ハ免除セラルヽモノトス」、七「中央銀行ハ理事監
  事若干名ヲ置キ政府ノ任命トス」八「中央銀行ニハ所得稅
  及營業稅ヲ課セス一九「中央銀行ハ定款貸付金ノ利子步
  合等重要事項ニ付政府之ヲ監督ス」斯ウ云云次第デアリマ
  ス、卽チ中產階級竝ニ中產階級以下ヲ救フ社會政策中、
  最モ重要ナル案件デアルト思フノデアリマスルガ、故ニ、何卒
  御賛同ノ程ヲ願ヒマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=96

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• 097・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ安達謙藏君外四名提出、農村振
  興ニ關スル建議案外二件ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ
  望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=97

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• 098・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、動議ノ如ク決シマシタ····日程第十九ハ提出者
  ヨリ延期ノ申出ガアリマシタ、許可スルニ御異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=98

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• 099・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ延
  期ヲ許シマス····日程第二十、氣仙沼前谷地間鐵道速成
  ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、提出者中島鵬六君
  第二十氣仙沼前谷地間鐵道速成ニ關ス
  ル建議案(高橋長七郞君外八名
  提出)
  氣仙沼前谷地間鐵道速成ニ關スル建議案
  氣仙沼前谷地間鐵道速成ニ關スル建議
  宮城縣氣仙沼ヨリ志津川ヲ經テ前谷地ニ至ル鐵道ヲ政
  府ニ於テ速ニ建設セラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔中島鵬六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=99

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• 100・中島鵬六

  ○中島鵬六君　極メテ簡單ニ本案提出ノ理由ヲ說明致
  シマス、此建議案ハ俗ニ所謂三陸沿岸鐵道ト申シマス中ノ氣
  仙沼ヨリ前谷地ニ至ル鐵道ヲ速成シテ戴キタイト云フ建議
  デゴザイマス、此線ハ政府ニ於キマシテモ早ク旣ニ其必要ヲ
  認メテ居リマシテ、彼ノ靑森縣ト竝ニ巖手縣ニ於キマシテ
  ハ、旣ニンレ〓〓起工サレテ居リマス、唯〓單リ宮城縣ノ部
  分ガ未ダ起工セラレマセヌカラ、速ニ起工シテ戴キタイト思
  ヒマス、申ス迄モナク三陸沿岸ノ地方ハ非常ニマダ開發セ
  ラレテ居リマセヌノミナラズ、此度ノ建議ニ現レテ居リマスル
  線路ノ沿岸ハ森林アリ、鑛山アリ、而モ金華沖ト云フ大漁
  場ヲ控ヘテ居リマスルカラ、斯ノ如キモノヲ速成スルコトハ獨
  リ地方國民ノ利益ナルノミナラズ、國家ノ重大ナル利益デ
  アルト考ヘマスカラ、之ヲ速成セラレンコトヲ希望致シマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=100

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• 101・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ中野寅吉君外三名提出、柳澤小
  出間及只見古町間鐵道速成ニ關スル建議案外一件ノ委
  員ニ併セ付託アランコドヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=101

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• 102・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニハ御異議ナイ
  ト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次ハ日程第二十
  一、肝屬川改修速成ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス-津
  崎尙武君
  第二十一肝屬川改修速成ニ關スル建議
  案(津崎尙武君外二名提出)
  肝屬川改修速成ニ關スル建議案
  肝屬川改修速成ニ關スル建議
  鹿兒島縣下肝屬川ハ其ノ流域廣ク沿岸豐穰ナル土地
  多キモ堤防ノ不完全ナル爲每年河水ノ氾濫甚シク土地
  家屋農作物ノ被害多大ナリ殊ニ大正三年一月櫻島大
  爆發ニ際シ其ノ砂石燒灰ノ大部分ハ當時風ノ方向ニ依リ
  肝屬川ノ水源地ニ堆積シタルヲ以テ爾來降雨每ニ砂石
  燒灰ハ流下シテ川床ヲ嵩上シ爲ニ堤防ヲ破壞シ慘害實
  ニ名狀スベカラサルモノアリ沿岸地方ニ於テハ此ノ天災
  ニ對シ町村又ハ土木組合ニ於テ凡ユル防禦ヲ施スモ地
  方ノ負擔過大ニシテ到底此ノ天災ニ抗スルコトヲ得ス而
  モ災害ハ比年其ノ度ヲ加へ地方ノ困憊其ノ極ニ達セム
  トス幸ニ該川ハ第二期治水計畫中ニ編入セラレタルヲ
  以テ政府ハ本河川ニ關スル特別ノ事情ヲ斟酌シ急速改
  修工事施行ノ計ヲ立テラレムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔津崎尙武君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=102

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• 103・津崎尚武

  ○津崎尙武君　鹿兒島縣下肝屬川ハ大正三年ノ櫻島ノ
  大爆發ト云フ非常ナ天災ガアリマシテ、其天災ノ結果當時
  風ノ方向ニ因リマシテ、爆發ノ砂石焼灰ノ大部分ガ其水源地
  ニ堆積致シマシテ、ソレガ年々流下シテ河床ニ堆積致シタ特
  別ノ事情ノアル川デゴザイマス、沿岸ノ町村ニ於キマシテハ
  爾來其水害ノ防備ニ努メマシテ、今日迄既ニ七十餘万圓
  ノ經費ヲ其防備ニ投ジテ居ルノデアリマス、甚シキ町村ハ戶
  數割一戶平均五十餘圓ト云フ負擔ヲシテ此天災ニ對抗
  シテ居ルノデアリマスケレドモ、地方ノ力ヲ以テシテハ今日
  是レ以上ハ如何トモスルコトガ出來ナイ狀態デアリマスノ
  デ、每年場所ガ變ル地域デアリマス、爲ニ水害トナリマスレ
  バ二千四百町步ノ浸水ヲ見、約一千戶ノ浸水家屋ヲ見ル
  ノデアリマス、斯ウ云フ情況デアリマスカラ、他地方ノ河川ト
  異リマシテ、櫻島ノ大爆發ト云フ特殊ノ天災ニ基イテ居リ
  マスノデ、所謂急病人ノ狀態ニ在ルノデアリマスカラ、本河
  川ヲ速ニ改修セラレタイト云フ希望デアルノデアリマス、幸
  ニ本河川ハ第二期河川ノ中ニ入ッテ居ルノデアリマスカラ、
  他ノ河川ト異ル狀態ニ在ルコトヲ參酌セラレマシテ、速ニ改
  修セラレンコトヲ希望スルノデアリマス(拍子)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=103

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• 104・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ議長指名ヲ以テ九名ノ委員ニ付
  託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=104

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• 105・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見之通君ノ動議ニハ御異議
  ガナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第二十
  二モ提出者ヨリ延期ノ申出ガアリマシタ、許可スルコトニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=105

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• 106・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ガナイト認メマス、仍テ延
  期ヲ許シマス、日程第二十三、八幡濱中村間鐵道速成ニ關
  スル建議案ヲ議題ト致シマス、提出者矢野丑乙君
  第二十三八幡濱中村間鐵道速成ニ關ス
  ル建議案(矢野丑乙君外三名提出)
  八幡濱中村聞鐵道速成ニ關スル建議案
  八幡濱中村間鐵道速成ニ關スル建議
  政府ハ愛媛縣八幡濱ヨリ宇和島ヲ經テ高知縣中村ニ
  至ル間ノ鐵道ヲ速成シ以テ運輸交通ノ發達ヲ促進セラ
  レムコトヲ望ム
  右建議ス
  〔矢野丑乙君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=106

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• 107・矢野丑乙

  ○矢野丑乙君　極メテ簡單ニ本案提出ノ理由ヲ申述ベ
  マス、本案ハ愛媛縣ノ西宇和郡八幡濱ト云フ處カラ卯ノ
  町ト云フ處ヲ通シテ宇和島市へ出マシテ、高知縣下宿毛町
  ヲ經テ中村町ニ達スル線デゴザイマシテ、鐵道敷設法ノ中
  ニ規定シテアリマス、第百三號線ノ一部デアリマス、此鐵道
  ハ四國ノ西部ノ海岸ヲ通ズル線デアリマシテ、人口ハ頗ル稠
  密デアリマス、而シテ物產モ中〓豊豊ナ處デアルノデゴザイ
  マス、故ニ此鐵道ヲ速ニ敷設ヲシテ貰ヒタイト云フ譯デゴザ
  イマス其地方ノ住民ハ叫ンデ曰ク、四國ハ鐵道ニ付テ頗ル
  虐待ヲサレテ居ル、繼兒扱ニサレテ居ルノデアル、吾々ハ日
  本全國々民同一ノ負擔ヲシ、今日既ニ六七千呷ト云フ鐵
  道ヲ架シテ居ルニモ拘ラズ、縱令島國ト雖モ四國ハ餘リニ
  鐵道ニ付テ虐待ヲ受ケテ居ルト云フコトヲ申シテ、非常ニ其
  地方ノ人ハ鐵道敷設ニ付テ熱心ニ主張シテ居ル譯デゴザ
  イマス、右ノ次第デゴザイマスカラドウカ滿場一致ノ御賛成
  ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01019230208&spkNum=107

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• 108・高見之通

  ○高見之通君　本案ノ議長指名ヲ以テ九名ノ委員ニ付
  託セラレンコトヲ望ミマス

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• 109・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニハ御異議ナイト
  認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第二十四、第二
  十五共、提出者ヨリ延期ノ申出ガアリマシタ、之ヲ許可スル
  コトニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 110・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ許
  可スルコトニ決シマシタ是ニテ本日ノ日程ヲ議了致シマシタ、
  次會ノ日程ハ追テ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是ニ
  テ散會
  午後五時十七分散會
  衆議院議事速記錄第九號中正誤
  頁段行誤正
  一五七上二三公奉

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