第46回帝国議会　衆議院　本会議　第11号　大正12年2月10日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  大正十二年二月十日（土曜日）午後一時十七分開議
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  　議事日程　第十號　大正十二年二月十日
  　　　午後一時開議
  　第一　陪審法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三　恩給法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第五　市町村義務教育費國庫負擔法改正法律案（政府提出）　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第六　所得税法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第七　營業税法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第八　石油消費税法廢止法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第九　賣藥税法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十　印紙税法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十一　地租條例廢止法律案（中川幸太郎君外十六名提出）　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十二　地租條例廢止法律案（松下禎二君外一名提出）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十三　地租條例中改正法律案（安達謙藏君外四名提出）　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十四　營業税法廢止法律案（林田龜太郎君外十七名提出）　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十五　營業税法廢止法律案（安達謙藏君外四名提出）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十六　營業税法廢止法律案（上田彌兵衞君提出）　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十七　醤油税則廢止法律案（安達謙藏君外四名提出）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十八　自家用醤油税法廢止法律案（安達謙藏君外四名提出）　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十九　織物消費税法中改正法律案（安達謙藏君外四名提出）　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十　所得税法中改正法律案（岩本平藏君外六名提出）　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十一　決議案（陸軍々備の整理縮少に關する件）（安達謙藏君外四名提出）
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• 001・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　諸般ノ報告ヲ致サセマス
  〔原田書記官朗讀〕
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  國有土地森林原野下戾ニ關スル法律案
  提出者阿部武智雄君長峰與一君
  匹田銳吉君〓水市太郎君
  熊谷直太君久慈貫一君
  成田直一郞君宮古啓三郞君
  遠藤良吉君佐藤榮吉君
  八田宗吉君黑住成章君
  中倉万次郞君近藤達兒君
  砂田重政君高草美代藏君
  植原悅二郞君屋島二郞君
  (以上二月十日提出)
  重信川改修ニ關スル建議案
  提出者成田榮信君渡邊修君
  高山長幸君河上哲太君
  深見寅之助君
  伊豫三津濱町ニ停車場設置ニ關スル建議案
  提出者成田榮信君渡邊修君
  高山長幸君河上哲太君
  深見寅之助君國澤新兵衞君
  竹內明太郞君水野吉太郞君
  大石大君坂本素魯哉君
  熱海大仁間鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者小泉策太郞君岩崎勳君
  國立公園設定速進ニ關スル建議案
  提出者平野光雄君
  鹿野山國立公園設置ニ關スル建議案
  提出者鈴木隆君中山佐市君
  本多貞次郞君濱口吉兵衞君
  木次三次間鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者原夫次郞君望月圭介君
  國稅徵收事務ニ對スル交付金增額ニ關スル建議案
  提出者長谷川宗治君八田宗吉君
  中島守利君毛里保太郞君
  川之江池田間鐵道敷設ニ關スル建議案
  提出者河上哲太君原田佐之治君
  深見寅之助君岡順治君
  高山長幸君浅石恵八君
  成田榮信君海原〓平君
  矢野丑乙君渡邊修君
  竹內明太郎君
  (以上二月八日提出)
  宮津河守間鐵道敷設ニ關スル建議案
  提出者大島實太郞君長田桃藏君2
  愛媛縣三津濱港修築ニ關スル建議案
  提出者成田榮信君渡邊修君
  高山長幸君矢野丑乙君
  深見寅之助君河上哲太君
  水野吉太郞君大石大君
  坂本素魯哉君國澤新兵衞君
  竹內明太郞君
  (以上二月九日提出)
  決議案(內閣不信任ノ件)
  提出者濱田國松君林田龜太郞君
  前川虎造君
  (以上二月十日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
  米國ノ日本人歸化權ニ關スル再質問主意書
  提出者〓水留三郞君
  (以上二月九日提出)
  製鐵所ノ整理及經營方針ニ關スル質問主意書
  提出者永井柳太郎君
  (以上二月十日提出)
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲玆ニ掲載ス〕
  一昨九日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如シ
  第七部選出豫算委員森恪君(小鹽八郎右衞門君補
  關
  第九部選出決算委員礙貝浩君(野村嘉六君補闕)
  一昨九日理事補關選擧ノ結果左ノ如シ
  所得稅法中改正法律案外四件委員
  理事大口喜六君(理事近藤達兒君補闕)
  東京砲兵工廠及大阪砲兵工廠ノ各特別會計合併ニ
  關スル法律案委員
  委員長河相三郞君理事大石大君
  恩給法改正ニ關スル建議案外二件委員
  八田宗吉君
  委員長高橋光威君理事長谷場敦君
  三浦得一郞君
  霧島山國立公園設置ニ關スル建議案外二件委員
  委員長日野辰次君理事松岡俊三君
  肝屬川改修速成ニ關スル建議案委員
  委員長有馬秀雄君理事津崎尙武君
  八幡濱中村間鐵道速成ニ關スル建議案委員
  委員長矢野丑乙君理事岡順次君
  一昨九日明治四十年法律第二十一號中改正法律案
  委員野呂駿三君辭任ニ付キ其捕關トシテ山田永俊
  君ヲ朝鮮事業公債法中改正法律案外二件委員淺
  賀長兵衛君辭任ニ付キ其補闕トシテ中野寅吉君ヲ
  孰レモ議長ニ於テ選定セリ

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• 002・粕谷義三

  ○副議長(柏谷義三君)　是ヨリ會議ヲ開キマス、日程第
  、陪審法案ノ第一讀會ヲ開キマス-岡野司法大臣
  第陪審法案(政府提出)第一讀會
  陪審法
  第一章總則
  第二章陪審員及陪審ノ構成
  第三章陪審手續
  第一節公判準備
  第二節公判手續及公判ノ栽判
  第三節上訴
  第四章陪審費用
  第五章罰則
  第六章補則
  附則
  陪審法
  第一章總則
  第一條裁判所ハ本法ノ定ムル所ニ依リ刑事事件ニ付
  陪審ノ評議ニ付シテ事實ノ判斷ヲ爲スコトヲ得
  第二條死刑又ハ無期ノ懲役若ハ禁錮ニ該ル事件ハ
  之ヲ陪審ノ評議ニ付ス
  第三條長期三年ヲ超ユル有期ノ懲役又ハ禁錮ニ該
  ル事件ニシテ地方裁判所ノ管轄ニ屬スルモノニ付被
  告人ノ請求アリタルトキハ之ヲ陪審ノ評議ニ付ス
  第四條左ニ揭クル罪ニ該ル事件ハ前二條ノ規定ニ拘
  ラス之ヲ陪審ノ評議ニ付セス
  -大審院ノ特別權限ニ屬スル罪
  二刑法第二編第一章乃至第四章及第八章ノ罪
  三軍機保護法、陸軍刑法又ハ海軍刑法ノ罪其ノ
  他軍機ニ關シ犯シタル罪
  四法令ニ依リテ行フ公選ニ關シ犯シタル罪
  第五條第三條ノ請求ハ第一囘公判期日前ニ之ヲ爲
  スヘシ但シ其ノ期日前ト雖最初ニ定メタル公判期日
  ノ召喚ヲ受ケタル日ヨリ十日ヲ經過シタルトキハ之ヲ
  爲スコトヲ得ス
  第六條被告人ハ檢事ノ被告事件陳述前ハ何時ニテ
  モ事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ辭シ又ハ請求ヲ取
  下クルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テハ事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルコト
  ヲ得ス
  第七條被告人公判又ハ公判準備ニ於ケル取調ニ於
  テ公訴事實ヲ認メタルトキハ事件ヲ陪審ノ評議ニ付ス
  ルコトヲ得ス但シ共同被告人中公訴事實ヲ認メサル
  者アルトキハ此ノ限ニ在ラス
  第八條地方ノ情況ニ由リ陪審ノ評議公平ヲ失スルノ
  虞アルトキハ檢事ハ直近上級裁判所ニ管轄移轉ノ請
  求ヲ爲スコトヲ得
  公判ニ繫屬スル事件ニ付前項ノ請求アリタルトキハ訴
  訟手續ヲ停止スヘシ
  第九條前條第一項ノ請求ヲ爲スニハ理由ヲ附シタル
  請求書ヲ管轄裁判所ニ差出スヘシ
  前項ノ請求書ヲ差出スニハ管轄裁判所ノ檢事ヲ經由
  スヘシ
  公判ニ繫屬スル事件ニ付管轄移轉ノ請求ヲ爲シタル
  トキハ速ニ其ノ旨ヲ裁判所ニ通知シ且請求書ノ謄本
  ヲ被告人ニ交付スヘシ
  被告人ハ謄本ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三日內ニ意見
  書ヲ差出スコトヲ得
  管轄裁判所ハ檢事ノ意見ヲ聽キ決定ヲ爲スヘシ
  第十條管轄移轉ノ請求アリタルトキハ被告人ハ檢事
  ノ被告事件陳述後ト雖其ノ決定アル迄事件ヲ陪審ノ
  評議ニ付スルコトヲ辭シ又ハ請求ヲ取下クルコトヲ得
  被告人事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ辭シ又ハ請
  求ヲ取下ケタルニ因リ事件陪審ノ評議ニ付スへカラサ
  ルニ至リタルトキハ檢事ノ管轄移轉ノ請求ハ之ヲ取
  下ケタルモノト看做ス
  共同被告人中事件ヲ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ辭シ
  又ハ請求ヲ取下ケタル者アルトキハ其ノ被告人ニ關ス
  ル管轄移轉ノ請求ニ付亦前項ニ同シ
  第十一條上訴栽判所ニ於テハ事件ヲ陪審ノ評議ニ
  付スルコトヲ得ス
  第二章陪審員及陪審ノ構成
  第十二條陪審員ハ左ノ各號ニ該當スル者タルコトヲ
  要ス
  -帝國臣民タルハ男子ニシテ三十歲以上タルコト
  二引續キ二年以上同一市町村內ニ住居スルコト
  三引續キ二年以上直接國稅三圓以上ヲ納ムルコ
  ト
  四讀ミ書キヲ爲シ得ルコト
  前項第二號及第三號ノ要件ハ其ノ年九月一日ノ現
  在ニ依ル
  第十三條左ニ掲クル者ハ陪審員タルコトヲ得ス
  一禁治產者、準禁治產者
  二破產者ニシテ復權ヲ得サルモノ
  三聾者、啞者、盲者
  四懲役、六年以上ノ禁錮、舊刑法ノ重刑又ハ重禁
  錮ニ處セラレタル者
  第十四條左ニ揭クル者ハ陪審員ノ職務ニ就カシムル
  コトヲ得ス
  -國務大臣
  二在職ノ判事、檢事、陸軍法務官、海軍法務官
  三在職ノ行政裁判所長官、行政裁判所評定官
  四在職ノ宮内官吏
  五現役ノ陸軍軍人、海軍軍人
  六在職ノ廳府縣長官、郡長、島司、廳支廳長
  七在職ノ警察官吏
  八在職ノ監獄官吏
  九在職ノ裁判所書記長、裁判所書記
  十在職ノ收稅官吏、稅關官吏、專賣官吏
  十一郵便電信電話鐵道及軌道ノ現業ニ從事スル
  者竝船員
  十二市町村長
  十三辯護士、辨理士
  十四公證人、執達吏、代書人
  十五在職ノ小學〓員
  十六神官、神職、僧侶、諸宗〓師
  十七醫師、齒科醫師、藥劑師
  十八學生、生徒
  第十五條陪審院ハ左ノ場合ニ於テ職務ノ執行ヨリ除
  斥セラルヘシ
  -陪審員被害者ナルトキ
  二陪審員私訴當事者ナルトキ
  三陪審員被告人、被害者若ハ私訴當事者ノ親族
  ナルトキ又ハ親族タリシトキ
  四陪審員被告人、被害者又ハ私訴當事者ノ屬スル
  家ノ戶主又ハ家族ナルトキ
  五陪審員被告人、被害者又ハ私訴當事者ノ法定
  代理人、後見監督人又ハ保佐人ナルトキ
  六陪審員被告人、被害者又ハ私訴當事者ノ同居
  人又ハ雇人ナルトキ
  七陪審員事件ニ付告發ヲ爲シタルトキ
  八陪審員事件ニ付證人又ハ鑑定人ト爲リタルトキ
  九陪審員事件ニ付被告人ノ代理人辯護人、輔佐
  人又ハ私訴當事者ノ代理人ト爲リタルトキ
  十陪審員事件ニ付判事、檢事、司法警察官又ハ陪
  審員トシテ臓務ヲ行ヒタルトキ
  第十六條左ニ掲クル者ハ陪審員ノ職務ヲ辭スルコト
  ヲ得
  -六十歲以上ノ者
  二在職ノ官吏、公吏、〓員
  三貴族院議員、衆議院議員及法令ヲ以テ組織シ
  タル議會ノ議員但シ會期中ニ限ル
  第十七條市町村長ハ每年陪審員資格者名簿ヲ調製
  シ九月一日現在ニ依リ其ノ市町村內ニ於テ資格ヲ
  有スル者ヲ之ニ登載スヘシ
  陪審員資格者名簿ニハ資格者ノ氏名、身分、職業、
  住居地、生年月日及納稅額ヲ記載スヘシ
  市町村長ハ陪審員資格者名簿ノ副本ヲ調製シ之ヲ
  管轄區裁判所判事ニ送付スヘシ
  第十八條市町村長ハ十月一日ヨリ七日間其ノ廳ニ
  於テ陪審員資格者名簿ヲ縱覽ニ供スヘシ
  第十九條法律ニ違反シテ陪審員資格者名簿ニ登載
  セラレタル者ハ縱覽期間內及其ノ後七日內ニ市町村
  長ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
  法律ニ違反シテ陪審員資格者名簿ニ登載セラレサル
  者ハ前項ノ規定ニ依リ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
  異議ノ申立ハ書面ヲ以テシ其ノ理由ヲ疏明スヘシ
  第二十條市町村長異議ノ申立ヲ正當トスルトキハ遲
  滯ナク陪審員資格者名簿ヲ修正シ其ノ旨ヲ管轄區
  裁判所判事及異議申立人ニ通知スヘシ
  市町村長異議ノ申立ヲ不當トスルトキハ遲滯ナク意
  見ヲ附シ申立書ヲ營轄區裁判所判事ニ送付スヘシ
  第二十一條前條第二項ノ場合ニ於テ區裁判所判事
  異議ノ申立ヲ理由ナシトスルトキハ其ノ旨ヲ市町村長
  及異議申立人ニ通知スヘシ異議ノ中立ヲ理由アリト
  スルトキハ陪審員資格者名簿ヲ修正スヘキコトヲ命シ
  其ノ旨ヲ異議申立人ニ通知スヘシ
  前項ノ通知ハ異議申立書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ二
  十日內ニ之ヲ爲スヘシ
  第二十二條地方裁判所長ハ每年九月一日迄ニ翌
  年所要ノ陪審員ノ員數ヲ定メ管轄區域內ノ市町村
  ニ割當テ之ヲ市町村長ニ通知スヘシ
  第二十三條市町村長前條ノ通知ヲ受ケタルトキハ第
  二十條及第二十一條ノ規定ニ依リ整理シタル陪審
  員資格者名簿ニ基キ抽籤ヲ以テ前條ノ規定ニ依リ
  割當テラレタル員數ノ陪審員候補者ヲ選定シ陪審員
  候補者名簿ヲ調製スヘシ
  前項ノ抽〓ハ資格者三人以上ノ立會ヲ以テ之ヲ爲ス
  ヘシ
  第十七條第二項及第三項ノ規定ハ陪審員候補者名
  簿ニ之ヲ準用ス
  第二十四條區裁判所判事ハ陪審員候補者ノ選定ニ
  關スル事務ニ付市町村長ヲ監督ス
  區裁判所判事ハ前項ノ事務ニ付市町村長ニ必要ナ
  ル指示ヲ爲スコトヲ得
  第二十五條市町村長ハ十一月三十日迄ニ陪審員候
  補者名簿ヲ管轄地方裁判所長ニ送付スヘシ
  市町村長ハ陪審員候補者名簿ニ登載セラレタル者ニ
  其ノ旨ヲ通知シ且其ノ氏名ヲ告示スヘシ
  第二十六條市町村長前條ノ規定ニ依リ陪審員候補
  者名簿ヲ送付シタル後其ノ候補者中死亡シ若ハ國
  籍ヲ喪失シタル者アルトキ又ハ第十三條若ハ第十四
  條ノ各號ノ一ニ該當スルニ至リタル者アルトキハ市町
  村長ハ遲滯ナク之ヲ管轄地方栽判所長ニ通知スヘ
  シ
  第二十七條陪審ノ評議ニ付スヘキ事件ニ付公判期
  日定リタルトキハ地方裁判所長ハ豫メ定メタル市町
  村ノ順序ニ依リ各陪審員候補者名簿ヨリ一人又ハ
  數人ノ陪審員ヲ抽籤シ陪審員三十六人ヲ選定スヘ
  シ
  前項ノ抽籤ハ裁判所書記ノ立會ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
  第二十八條陪審員トシテ呼出ニ應シタル者ハ其ノ市
  町村ニ於ケル陪審員候補者名簿ニ登載セラレタル者
  四分ノ三呼出ニ應シタル後ニ非サレハ其ノ年內再ヒ
  陪審員ニ選定セラルルコトナシ
  第二十九條陪審ハ十二人ノ陪審員ヲ以テ之ヲ構成
  ス
  第三十條陪審ハ檢事被告事件ヲ陳述スル時ヨリ裁
  判所書記陪審ノ答申ヲ朗讀スル迄同一ノ陪審員ヲ
  以テ之ヲ構成スルコトヲ要ス
  第三十一條栽判長ハ事件二日以上引續キ開廷ヲ要
  スト思料スルトキハ十二人ノ陪審員ノ外一人又ハ數
  人ノ補充陪審員ヲ公判ニ立會ハシムルコトヲ得
  補充陪審員ハ陪審ヲ構成スヘキ陪審員疾病其ノ他
  ノ事由ニ因リ職務ヲ行フコト能ハサル場合ニ於テ之
  ニ代ルモノトス
  補充陪審員數人アル場合ニ於テ前項ノ職務ヲ行フハ
  第六十五條ノ規定ニ依リ爲シタル抽籤ノ順序ニ依ル
  第三十二條同日ニ數箇ノ事件ノ公判ヲ開ク場合ニ
  於テハ數箇ノ事件ニ付同一ノ陪審員ヲ以テ陪審ヲ構
  成スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ最初ノ事件ノ取調
  前其ノ手續ヲ爲スヘシ
  第三十三條檢事及被告人異議ナキトキハ一ノ事件ノ
  爲構成セラレタル陪審ヲシテ同日ニ審理スヘキ他ノ事
  件ノ爲其ノ職務ヲ行ハシムルコトヲ得
  第三十四條陪審員ニハ勅令ノ定ムル所ニ依リ旅費、
  日當及止宿料ヲ給與ス
  第三章陪審手續
  第一節公判準備
  第三十五條陪審ノ評議ニ付スヘキ事件ニ付テハ裁判
  長ハ公判準備期日ヲ定ムヘシ
  第三十六條被告人公判準備期日前辯護人ヲ選任セ
  サルトキハ裁判長ハ其ノ裁判所所在地ノ辯護士中ヨ
  リ之ヲ選任スヘシ
  被告人ノ利害相反セサルトキハ同一ノ辯護人ヲシテ
  數人ノ辯護ヲ爲サシムルコトヲ得
  第三十七條公判準備期日ニハ被告人及辯護人ヲ召
  喚スヘシ
  公判準備期日ハ之ヲ檢事ニ通知スヘシ
  第三十八條召喚狀ノ送達ノ日ト公判準備期日トノ
  間ニハ少クトモ五日ノ猶豫期間ヲ存スヘシ
  第三十九條公判期日ヲ定メタル後被告人ノ請求ニ
  F事件ヲ陪審ノ評議ニ付スヘキモノトシタルトキハ
  其ノ公判期日ヲ公判準備期日トス
  第四十條公判準備期日ニ於ケル取調ハ定數ノ判事、
  檢事及裁判所書記列席シテ之ヲ爲ス
  公判準備期日ニ於テハ辯護人出頭スルニ非サレハ取
  調ヲ爲スコトヲ得ス辯護人數人アルトキハ其ノ一人ノ
  出頭ヲ以テ足ル
  公判準備期日ニ於ケル取調ハ之ヲ公行セス
  第四十一條第二條ノ規定ニ依リ事件ヲ陪審ノ評議
  ニ付スルトキハ裁判長ハ被告人ニ對シ事件ヲ陪審ノ
  評議ニ付スルコトヲ辭シ得ヘキ旨ヲ告知スヘシ
  第四十二條公判準備期日ニ於テハ裁判長ハ公訴事
  實ニ付出頭シタル被告人ヲ訊問スヘシ
  陪席判事ハ裁判長ニ告ケ被告人ヲ訊問スルコトヲ得
  檢事及辯護人ハ裁判長ノ許可ヲ受ケ被告人ヲ訊問
  スルコトヲ得
  第四十三條公判準備期日ニ於テハ裁判所ハ必要ナ
  ル證據調ノ決定ヲ爲スヘシ
  儉事、被告人及辯護人ハ證人訊問、鑑定、檢證又ハ
  證據物若ハ證據書類ノ集取ヲ請求スルコトヲ得
  前項ノ請求ヲ却下スルトキハ裁判所ハ決定ヲ爲スヘ
  シ
  第四十四條栽判所書記ハ公判準備調書ヲ作リ公判
  準備期日ニ於ケル被告人ニ對スル訊問及其ノ供述、
  檢事被告人辯護人ノ申立、栽判所ノ裁判其ノ他一切
  ノ訴訟手續ヲ記載スヘシ
  第四十五條公判準備調書ニハ前條ニ規定スル事項
  ノ外被告事件、被告人及出頭シタル辯護人ノ氏名竝
  手續ヲ爲シタル栽判所年月日及裁判長陪席判事檢
  事裁判所書記ノ官氏名ヲ記載シ被告人出頭セサル
  トキハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
  第四十六條公判準備調書ハ三日內ニ之ヲ整理シ裁
  判長及栽判所書記署名捺印スヘシ
  裁判長ハ署名捺印前ニ公判準備調書ヲ檢閱シ意見
  アルトキハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
  第四十七條檢事、被告人及辯護人ハ公判準備期日
  前第四十三條第二項ノ請求ヲ爲スコトヲ得公判期
  日七日前迄亦同シ
  第四十三條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用
  ス
  第四十八條栽判所公判準備期日外ニ於テ證據決定
  ヲ爲シタルトキハ之ヲ檢事、被告人及辯護人ニ通知ス
  ヘシ
  第四十九條公判準備期日外ニ於テ證人又ハ
  ノ訊問ヲ爲ストキハ被告人モ亦之ニ立會フコトヲ得
  栽判所外ニ於テ前項ノ手續ヲ爲ストキハ拘禁セラレ
  タル被告人ハ之ニ立會フコトヲ得ス但シ裁判所必要
  ト認ムルトキハ之ニ立會ハシムルゴトヲ得
  第五十條前條第一項ノ手續ヲ爲スヘキ日時及場所
  ハ被告人ニ之ヲ通知スヘシ但シ急速ヲ要スル場合ハ
  此ノ限ニ在ラス
  第五十一條公判準備中陪審ノ評議ニ付スヘカラサル
  事由生シタルトキハ通常ノ手續ニ從ヒ審判ヲ爲スヘ
  シ
  公判準備期日ニ於テ前項ノ事由生シタルトキハ其ノ
  期日ヲ公判期日トス但シ訴訟關係人中出頭セサル
  者アルトキハ此ノ限ニ在ラス
  第五十二條被告人ハ公判準備期日ニ管轄違ノ申立
  ヲ爲スコトヲ得
  前項ノ申立ハ豫審ヲ經タル事件ニ付テハ豫審判事ニ
  對シテ其ノ中立ヲ爲シタル場合ニ非サレハ之ヲ爲スコ
  トヲ得ス
  第五十三條裁判所公判準備期日ニ公訴棄却又ハ管
  轄違ノ原因アルコトヲ認メタルトキハ決定ヲ爲スヘシ
  第五十四條裁判所公判準備期日ニ免訴ノ原由アル
  コトヲ認メタルトキハ決定ヲ爲スヘシ
  免訴ノ決定確定シタルトキハ同一ノ事件ニ付更二公
  訴ヲ提起スルコトヲ得ス
  第五十五條前二條ノ決定ヲ爲スニハ訴訟關係人ノ
  意見ヲ聽クヘシ
  決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
  第五十六條第五十一條又ハ第五十三條ノ場合ニ於
  テ公判準備中ニ爲シタル手續ハ其ノ效力ヲ失ハス
  第五十七條公判期日ニハ第二十七條ノ規定ニ依リ
  テ選定シタル陪審員ヲ呼出スヘシ
  第三十八條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
  第五十八條陪審員ニ對スル呼出狀ニハ出頭スヘキ日
  時、場所及呼出ニ應セサルトキハ過料ニ處スルコトア
  ルヘキ旨ヲ記載スヘシ
  第五十九條陪審員疾病其ノ他已ムコトヲ得サル事
  由ニ因リ呼出ニ應スルコト能ハサル場合ニ於テハ其ノ
  職務ヲ辭スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ書面ヲ以テ
  其ノ事由ヲ疏明スヘシ
  第二節公判手續及公判ノ裁判
  第六十條陪審構成ノ手續ハ判事、檢事、裁判所書
  記、被告人辯護人及審陪員列席シ公判廷ニ於テ之
  ヲ行フ
  前項ノ手續ハ之ヲ公行セス
  第六十一條前條第一項ノ手續ハ陪審員二十四人
  以上出頭スルニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
  出頭シタル陪審員二十四人ニ達セサルトキハ裁判長
  ハ之ヲ補充スル爲裁判所所在地又ハ其ノ附近ノ市町
  村ノ陪審員候補者名簿ヨリ抽籤ヲ以テ必要ナル員數
  ノ陪審員ヲ選定シ便宜ノ方法ニ依リ之ヲ呼出スヘシ
  前項ノ抽籤ハ裁判所書記ノ立會ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
  第六十二條陪審員二十四人以上出頭シタルトキハ
  裁判長ハ其ノ氏名、職業及住居地ヲ記載シタル書面
  ヲ示シ檢事及被告人ニ對シ陪審員中除斥セラルヘキ
  者アリヤ否ヲ問フヘシ
  裁判長ハ陪審員ニ被告人ノ氏名、職業及住居地ヲ告
  ヶ除斥ノ理由アリヤ否ヲ問フヘシ
  檢事、被告人及陪審員除斥ノ原由アリトスルトキハ其
  ノ旨ノ申立ヲ爲スヘシ
  除斥ノ原由アリトスルトキハ裁判所ハ決定ヲ爲スヘシ
  第六十三條出頭シタル陪審員中第十二條乃至第十
  四條ノ規定ニ依リ陪審員タル資格ヲ有セサル者アリ
  トスルトキハ裁判所ハ決定ヲ爲スヘシ
  第六十四條檢事及被告人ハ陪審ヲ構成スヘキ陪審
  員及補充陪審員ノ員數ヲ超過スル員數ニ付各其ノ
  半數ヲ忌避スルコトヲ得忌避スルコトヲ得ヘキ人員奇
  數ナルトキハ被告人ハ尙一人ヲ忌避スルコトヲ得
  被告人數人アルトキハ忌避ハ共同シテ之ヲ行フ共同
  ノ方法ニ付協議整ハサルトキハ忌避ヲ行ハシムル方法
  ハ裁判長之ヲ定ム
  第六十五條裁判長ハ陪審員ノ氏名票ヲ抽籤函ニ入
  レタル後檢事及被告人ノ忌避スルコトヲ得ル員數ヲ
  告知スヘシ
  裁判長ハ氏名票ヲ一票宛抽籤函ヨリ抽出シ之ヲ讀
  上クヘシ
  栽判長氏名ヲ讀上ケタルトキハ檢事及被告人ハ承認
  又ハ忌避スル旨ヲ陳述スヘシ其ノ順序ハ檢事ヲ生九ニシ
  被告人ヲ後ニス
  忌避ノ理由ハ之ヲ陳述スルコトヲ得ス
  次ノ氏名票ヲ抽籤函ヨリ抽出ス迄ニ陳述ヲ爲ササル
  トキハ承認ノ陳述ヲ爲シタルモノト看做ス裁判長抽籖
  終リタル旨ヲ宣言スル迄陳述ヲ爲ササルトキ亦同シ
  陳述ハ次ノ氏名票ヲ抽出シタル後ハ之ヲ取消スコト
  ヲ得ス裁判長抽籤終リタル旨ヲ宣言シタル後亦同シ
  第六十六條前條ノ手續ニ依リ陪審ヲ構成スヘキ陪審
  員及補充陪審員ノ數ヲ充シタルトキハ裁判長ハ抽籤
  終リタル旨ヲ宣言スヘシ
  第六十七條陪審ヲ構成スヘキ陪審員ハ初ニ當籤シタ
  ル十二人ヲ以テ之ニ充テ補充陪審員ハ其ノ他ノ當籤
  者ヲ以テ之ニ充ツ
  第六十八條陪審員ハ第六十五條ノ規定ニ依リ爲シ
  タル抽籤ノ順序ニ從ヒ著席スヘシ
  第六十九條裁判長ハ檢事ノ被告事件陳述前陪審員
  ニ對シ陪審員ノ心得ヲ諭告シ之ヲシテ宣誓ヲ爲サシ
  ムヘシ
  宣誓ハ宣誓書ニ依リ之ヲ爲スヘシ
  宣誓書ニハ良心ニ從ヒ公平誠實ニ其ノ職務ヲ行フヘ
  キコトヲ誓フ旨ヲ記載スヘシ
  裁判長ハ起立シテ宣誓書ヲ朗讀シ陪審員ヲシテ之ニ
  署名捺印セシムヘシ
  第七十條栽判長ハ陪席判事ノ一人ヲシテ被告人ノ
  訊問及證據調ヲ爲サシムルコトヲ得
  陪審員ハ裁判長ノ許可ヲ受ケ被告人、證人、鑑定人、
  通事及翻譯人ヲ訊問スルコトヲ得
  第七十一條證據ハ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外裁判
  所ノ直接ニ取調ヘタルモノニ限ル
  第七十二條左ニ揭クル書類圖畫ハ之ヲ證據ト爲スコ
  トヲ得
  -公判準備手續ニ於テ取調ヘタル證人ノ訊問調
  書
  二檢證、押收又ハ搜索ノ調書及之ヲ補充スル書類
  圖畫
  三公務員ノ職務ヲ以テ證明スルコトヲ得ヘキ事實
  ニ付公務員ノ作リタル書類
  四前號ノ事實ニ付外國ノ公務員ノ作リタル書類ニ
  シテ其ノ眞正ナルコトノ證明アルモノ
  五鑑定書又ハ鑑定調書及之ヲ補充スル書類圖畫
  第七十三條裁判所、豫審判事、受命判事、受託判事
  其ノ他法令ニ依リ特別ニ裁判權ヲ有スル官署、檢事、
  司法警察官又ハ訴訟上ノ共助ヲ爲ス外國ノ官署ノ
  作リタル訊問調書及之ヲ補充スル書類圖畫ハ左ノ場
  合ニ限リ之ヲ證據ト爲スコトヲ得
  共同被告人若ハ證人死亡シクルトキ又ハ疾病
  其ノ他ノ事由ニ因リ之ヲ召喚シ難キトキ
  二被告人又ハ證人公判外ノ訊問ニ對シテ爲シタル
  供述ノ重要ナル部分ヲ公判ニ於テ變更シタルト
  キ
  三被告人又ハ證人公判廷ニ於テ供述ヲ爲ササルト
  キ
  第七十四條前二條ノ場合ノ外裁判外ニ於テ被告人
  其ノ他ノ者ノ供述ヲ錄取シタル書類又ハ裁判外ニ於
  テ作成シタル書類圖畫ハ供述者若ハ作成者死亡シ
  タルトキ又ハ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ召喚シ難キト
  キニ限リ之ヲ證據ト爲スコトヲ得
  第七十五條證據ト爲スコトニ付訴訟關係人ノ異議
  ナキ書類圖畫ハ前三條ノ規定ニ拘ラス之ヲ證據ト爲
  スコトヲ得
  第七十六條證據調終リタル後檢事、被告人及辯護
  人ハ犯罪ノ構成要素ニ關スル事實上及法律上ノ問
  題ノミニ付意見ヲ陳述スヘシ
  辯護人數人アル場合ニ於テ被告人ノ爲ニスル意見ノ
  陳述ハ重複シテ之ヲ爲スコトヲ得ス
  公判廷ニ現ハレサル證據ハ之ヲ採用スルコトヲ得ス
  被告人又ハ辯護人ニハ最終ニ陳述スル機會ヲ與フヘ
  シ
  第七十七條前條ノ辯論終結後裁判長ハ陪審ニ對シ
  犯罪ノ構成ニ關シ法律上ノ論點及問題ト爲ルヘキ事
  實竝證據ノ要領ヲ說〓シ犯罪構成事實ノ有無ヲ問
  ヒ評議ノ結果ヲ答中スヘキ旨ヲ命スヘシ但シ證證據ノ
  信否及罪責ノ有無ニ關シ意見ヲ表示スルコトヲ得ス
  第七十八條裁判長ノ說元ニ對シテハ異議ヲ申立ツル
  コトヲ得ス
  第七十九條裁判長ノ問ハ主問ト補問トニ區別シ陪
  審ニ於テ然リ又ハ然ラスト答へ得ヘキ文言ヲ以テ之ヲ
  爲スヘシ
  主問ハ公判ニ付セラレタル犯罪構成事實ノ有無ヲ評
  議セシムル爲之ヲ爲スモノトス
  補問ハ公判ニ付セラレタルモノト異リタル犯罪構成事
  實ノ有無ヲ評議セシムル必要アリト認ムル場合ニ於
  テ之ヲ爲スモノトス
  犯罪ノ成立ヲ阻却スル原由ト爲ルヘキ事實ノ有無ヲ
  評議セシムル必要アリト認ムルトキハ其ノ問ハ他ノ問
  ト分別シテ之ヲ爲スヘシ
  第八十條陪審員、檢事、被告人及辯護人ハ問ノ變更
  ノ申立ヲ爲スコトヲ得
  前項ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ決定ヲ爲スヘシ
  第八十一條裁判長ハ問書ニ署名捺印シ之ヲ陪審ニ
  交付スヘシ
  陪審員ハ問書ノ謄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
  第八十二條栽判長ハ評議ヲ爲サシムル爲陪審員ヲシ
  テ評議室ニ退カシムヘシ
  裁判長ハ公判廷ニ於テ示シタル證據物及證據書類
  ヲ陪審ニ交付スルコトヲ得
  第八十三條陪審員ハ裁判長ノ許可ヲ受クルニ非サレ
  ハ評議ヲ了ル前評議室ヲ出テ又ハ他人ト交通スルコ
  トヲ得ス
  陪審員ニ非サル者ハ裁判長ノ許可ヲ受クルニ非サレ
  ハ評議室ニ八ルコトヲ得ス
  第八十四條陪審ノ答申前陪審員ヲシテ裁判所ヲ退
  出セシムル場合ニ於テハ裁判長ハ陪審員ニ對シ滯留
  ノ場所及他人トノ交通ニ關シ遵守スヘキ事項ヲ指示
  スヘシ
  第八十五條陪審員第八十三條第一項ノ規定ニ違
  反シタルトキ又ハ前條ノ規定ニ依リ指示セラレタル事
  項ヲ遵守セサルトキハ栽判所ハ其ノ陪審員ニ對シ職
  務ノ執行ヲ禁止スルコトヲ得
  第八十六條陪審員ハ陪審長ヲ互選スヘシ
  陪審長ハ議事ヲ整理ス
  第八十七條陪審ハ評議ヲ了ル前更ニ說元ヲ請求ス
  ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ公判廷ニ於テ其ノ申立
  ヲ爲スヘシ
  第八十八條答申ハ問ニ對シ然リ又ハ然ラスノ語ヲ以
  テ之ヲ爲スヘシ但シ問ニ掲クル事實ノ一部ヲ肯定又
  ハ否定スルトキハ之ニ付然リ又ハ然ラスノ語ヲ以テ答
  申スヘシ
  第八十九條評議ハ先ツ主問ニ付之ヲ爲スヘシ
  主問ヲ否定シタル場合ニ於テ補問アルトキハ之ニ付
  評議ヲ爲スヘシ
  第九十條陪審員ハ問ニ付各其ノ意見ヲ表示スヘシ
  陪審長ハ最後ニ其ノ意見ヲ表示スヘシ
  第九十一條犯罪構成事實ヲ肯定スルニハ陪審員ノ
  過半數ノ意見ニ依ルコトヲ要ス
  犯罪構成事實ヲ肯定スル陪審員ノ意見其ノ過半數
  ニ達セサルトキハ之ヲ否定シタルモノトス
  第九十二條答申ハ問書ニ記載シ陪審長署名捺印シ
  テ之ヲ裁判長ニ提出スヘシ
  答申ニ不備又ハ齟齬アルトキハ裁判長ハ問書ヲ返付
  シ更ニ評議ヲ爲シ答申ヲ訂正スヘキ旨ヲ命スヘシ
  第九十三條裁判長ハ公判廷ニ於テ栽判所書記ヲシ
  テ問及之ニ對スル陪審ノ答申ヲ朗讀セシムヘシ
  第九十四條前條ノ手續終リタルトキハ裁判長ハ陪審
  員ヲ退廷セシムヘシ
  第九十五條裁判所陪審ノ答申ヲ不當ト認ムルトキハ
  訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス決定ヲ以テ事件
  ヲ更ニ他ノ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ得
  第九十六條陪審犯罪構成事實ヲ肯定スルノ答申ヲ
  爲シタル場合ニ於テ裁判所前條ノ決定ヲ爲ササルト
  キハ檢事ハ適用スヘキ法令及刑ニ付意見ヲ陳述スヘ
  シ
  被告人及辯護人ハ意見ヲ陳述スルコトヲ得
  被告人又ハ辯護人ニハ最終ニ陳述スル機會ヲ與フヘシ
  第九十七條陪審ノ答申ヲ採擇シテ判決ノ言渡ヲ爲
  スニハ裁判所ハ陪審ノ評議ニ付シテ事實ノ判斷ヲ爲
  シタル旨ヲ示スヘシ
  有罪ノ言渡ヲ爲スニハ罪ト爲ルヘキ事實及法令ノ適
  用ヲ示スヘシ刑ノ加重減免ノ原由タル事實上ノ主張
  アリタルトキハ之ニ對スル判斷ヲ示スヘシ
  無罪ノ言渡ヲ爲スニハ犯罪構成事實ヲ認メサルコト
  又ハ被告事件罪ト爲ラサルコトヲ元スヘシ
  第九十八條引續キ七日以上聞廷セサリシ場合ニ於
  テハ公判手續ヲ更新スヘシ
  陪審ヲ構成スヘキ陪審員疾病其ノ他ノ事由ニ因リ職
  務ヲ行フコト能ハサル場合ニ於テ補充陪審員ナキトキ
  亦前項ニ同シ
  前二項ノ場合ニ於テハ新ニ陪審構成ノ手續ヲ爲スヘ
  シ
  第九十九條裁判所ハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ
  問ハス公訴棄却、管轄違又ハ免訴ノ裁判ヲ爲スヘキ原
  由アルコトヲ認メタル場合ニ於テハ陪審ノ評議ニ付セ
  スシテ審判ヲ爲スヘシ
  第百條栽判所書記ハ陪審員ノ氏名、陪審ノ構成其ノ
  他陪審ニ關スル訴訟手續及裁判長ノ說〓ノ要領ヲ
  公判調書ニ記載スヘシ
  第三節上訴
  第百一條陪審ノ答申ヲ採擇シテ事實ノ判斷ヲ爲シタ
  ル事件ノ判決ニ對シテハ控訴ヲ爲スコトヲ得ス
  第百二條陪審ノ答中ヲ採擇シテ事實ノ判斷ヲ爲シタ
  ル事件ノ判決ニ對シテハ大審院ニ上告ヲ爲スコトヲ得
  第百三條上告ハ刑事訴訟法ニ於テ第二審ノ判決ニ
  對シ上告ヲ爲スコトヲ得ル理由アル場合ニ於テ之ヲ
  爲スコトヲ得但シ事實ノ誤認ヲ理由トスル場合ハ此
  限ニ在ラス
  第百四條左ノ場合ニ於テハ常ニ上告ノ理由アルモノ
  トス
  -法律ニ從ヒ陪審ヲ構成セサリシトキ
  二第十二條第一項第一號又ハ第十三條ノ規定ニ
  依リ陪審員タルコトヲ得サル者評議ニ關與シタル
  トキ但シ評議ヲ了ル前訴訟關係人異議ヲ述ヘ
  サリシトキハ此ノ限ニ在ラス
  三法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラルヘキ陪審
  員評讃ニ關與シタルトキ但シ第六十二條第三
  項ノ申立ヲ爲ササリシトキハ此ノ限ニ在ラス
  四忌避セラレタル陪審員評議ニ關與シタルトキ但
  シ評議ヲ了ル前訴訟關係人異議ヲ述ヘサリシト
  キハ此ノ限ニ在ラス
  五裁判長ノ說示法律ニ違反シタルトキ
  六裁判長證據トシテ說示シタルモノ法律上證據ト
  爲スコトヲ得サルモノナルトキ
  七裁判長法律上ノ論點ニ關シ不當ノ說示ヲ爲シ
  タルトキ
  第百五條上告栽判所原判決ヲ破毀スル場合ニ於テ
  ハ事實ノ審理ヲ爲サスシテ自ラ栽判ヲ爲ス場合ヲ除
  クノ外事件ヲ原栽判所ニ差戾シ又ハ原裁判所ト同
  等ナル他ノ裁判所ニ移送スヘシ
  破毀ノ理由ト爲リタル事項陪審ノ評議ノ結果ニ影響
  ナキモノナルトキハ陪審ノ答申ハ其ノ效力ヲ有ス此ノ
  場合ニ於テハ事件ノ差戾又ハ移送ヲ受ケタル裁判所
  ハ答申以後ノ手續ノヽヲ爲スヘシ
  第四章陪審費用
  第百六條左ニ掲クルモノヲ以テ陪審費用トシ訴訟費
  用ノ一部トス
  -陪審員ノ呼出ニ要スル費用
  二陪審員ニ給與スヘキ旅費日當及止宿料
  第百七條陪審費用ハ第三條ノ場合ニ於テ刑ノ言渡
  ヲ爲ストキハ其ノ全部又ハ一部ヲ被告人ノ負擔トス
  第五章罰則
  第百八條陪審員ハ左ノ場合ニ於テハ五百圓以下ノ
  過料ニ處ス
  -故ナク呼出ニ應セサルトキ
  二宣誓ヲ拒ミタルトキ
  三第八十三條第一項ノ規定ニ違反シタルトキ
  四故ナク退廷シタルトキ
  五第八十四條ノ指示ニ違反シタルトキ
  第百九條陪審員評議ノ〓末又ハ各員ノ意見若ハ其
  ノ多少ノ數ヲ漏泄シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處
  ス
  前項ノ事項ヲ新聞紙其ノ他ノ出版物ニ揭載シタルト
  キハ新聞紙ニ在リテハ編輯人及發行人其ノ他出版物
  ニ在リテハ著作者及發行者ヲ二千圓以下ノ罰金ニ
  處ス
  第百十條裁判長ノ許可ヲ受ケスシテ陪審ノ評議室ニ
  入リ又ハ陪審ノ評議ヲ了ル前裁判所內ニ於テ陪審員
  ト交通シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
  第百十一條陪審ノ評議ニ付セラレタル事件ニ付陪審
  員ニ對シ請託ヲ爲シ又ハ評議ヲ了ル前私ニ意見ヲ述
  ヘタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金
  二段六、
  第百十二條過料ノ栽判ハ陪審員ヲ呼出シタル栽判
  所檢事ノ意見ヲ聽キ決定ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
  前項ノ決定ニ對シテハ抗告ヲ爲スコトヲ得此ノ抗告
  ハ執行ヲ停止スル效力ヲ有ス
  過料ノ裁判ノ執行ニ付テハ非訟事件手續法第一一百
  八條ノ規定ヲ準用ス
  第六章補則
  第百十三條市制第六條ノ市ニ於テハ本法中市ニ關ス
  ル規定ハ區ニ、市長ニ關スル規定ハ區長ニ之ヲ適用ス
  町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ本法中町村ニ關スル
  規定ハ町村ニ準スヘキモノニ、町村長ニ關スル規定ハ
  町村長ニ準スヘキ者ニ之ヲ適用ス
  第百十四條第十二條ノ直接國稅ノ種類ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム
  附則
  本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法施行前公判期日ノ定リタル事件ニ付テハ本法ヲ
  適用セス
  〔國務大臣岡野敬次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=2

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• 003・岡野敬次郎

  ○國務大臣(岡野敬次郞君)　私ハ玆ニ議題トナリマシタ
  ル陪審法案提出ノ理由ヲ說明致シマス、政府ハ陪審ノ制
  度ヲ立テマシテ、司法制度ノ完備ヲ圖リマスルコトハ、今日
  ノ時勢ニ於キマシテ最モ必要ナリト認メタノデアリマス、卽
  チ茲ニ陪審法案ヲ提出スルコトニ致シタ次第デアリマス、政
  府ガ陪容制度ヲ採用スルコトヲ必要ナリト認メマシタル所
  ノ理由ハ、司法事務ニ關シマシテモ、或ル範圍ニ於キマシテ
  國民ヲシテ之ニ參與セシムルコトガ、立憲政治ノ本旨ニ適フ
  所以ナリト存ジマスル、殊ニ輓近人文益〓發達スルニ伴ヒマ
  シテ、國民ノ國務ニ參與シマスルコトハ、漸次其範圍ヲ擴メ
  マスル傾向アルノ時ニ當リマシテ、單リ司法事務ニ關シテノ
  ミハ、依然トシテ國民ヲシテ無關係ナル地位ニ置カシムルコ
  トハ、司法制度ト致シマシテハ十善ナリト申スコトハ出來ナ
  イノデアリマス、又現行制度ノ下ニ行ハレマスル裁判ニ對シ
  マシテ、敢テ國民ト致シマシテ、不審ヲ懐ク者ハ無イトハ存
  ジマスルケレドモ、國民ヲシテ裁判手續ニ關與セシメテ、裁判
  ニ關スル十分ノ理解ヲ得ルヤウニ致シ、又裁判ヲ常識トス
  ル所ノ栽判官ガ時ニ陷ラントスル所ノ情弊ヲ救ヒマシテ、以
  テ國民ヲシテ裁判ニ關スル信賴ヲ厚ク致シマシテ、裁判ニ對
  シマシテ十分ニ歸服セシムルト云フコトガ、社會ノ變遷ト人
  心ノ趨向トニ顧ミマシテ、極テ緊要ナル事ト信ズルノデアリ
  マス、而シテ此度提出致シマシタル陪審法案ノ內容ニ付キ
  マシテハ、第四十五帝國議會ニ於キマシテ、當衆議院ニ於テ
  可決セラレマシタルモノトハ二三極ク微細ナ點ニ於テ修正
  ヲ加ヘマシタル外ハ、全然同一ノモノデアルノデアリマス、其
  修正ヲ加ヘマシタル點ハ、餘リ細カイ點ガアリマスルカラ、却
  テ茲ニ御說明ヲ申上グルコトヲ省略致ス方ガ便宜デアラウ
  カト存ズルノデアリマス、何卒愼重御審議ノ上ニ、御協賛ア
  ランコトヲ切望致シマスル(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=3

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• 004・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　本案ニ對シテハ質疑ノ通告ガア
  リマス、順次之ヲ許シマス、横山勝太郞君
  〔横山勝太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=4

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• 005・横山勝太郎

  ○横山勝太郞君　只今司法大臣カラ陪審法案提出ノ理
  由ヲ御說明ニ相成リマシタガ、其理由ノ大要ハ前政府ノ時代
  ニ於テ大木司法大臣ヨリ、又法制局長官ヨリ御說明ニ相成
  リマシタ所ト殆ド同一デアリマス、其提案ノ趣旨ノアル所ハ、方
  今人文ノ發達ハ國民ヲシテ總テノ政務ニ參與セシムルノ道
  ヲ擴張スルコトガ相當デアル、隨テ司法事務ニ關シテモ、國
  民ノ參與ヲ許スト云フ意味デアル、又現時ノ裁判ニハ別ニ
  弊害ハ無イト思フガ、常職裁判官ガ或ハ時ニ陷ラントスルノ弊
  害ヲ救濟スルノ意味ヲ以テ、本案ヲ提出致シタノデアル、大
  體斯樣ニ仰セニナリマシタ、此點ニ付テ私ハ御尋ヲ致シテ置
  キタイノデアリマスルガ、總テノ國民ニ對シテ度ク國政ノ參
  與ヲ許スト云フコトノ提案ノ理由ニ付テハ、本員亦之ニ賛
  成ヲ致ス者デアリマシテ、吾々ハ其國民ノ參與ヲ許スコトノ
  範圍ガ今日極テ狭小デアル、殊ニ可法事務ニ對シテ國民ノ
  參與ヲ許スノ意味ヲ以テ陪審制度ノ如キモノヲ提案スルコ
  トガ晩カッタト云フコトヲ寧ロ憾ム者デアルノデアリマス、是ハ
  固ヨリ當然ノ理由デアリマス故ニ、深ク論議スルノ必要ハゴ
  ザイマセヌが、後段ニ御說明ニナリマシタル現時ノ裁判制度ニ
  別ニ弊害ハ無イ、併ナガラ常職ノ裁判官ガ時ニ或ハ陷ラン
  トスルノ弊害ト云フモノヲ豫メ防衞スルノ意味ヲ以テ之ヲ
  提案シ、而シテ國民ノ信賴ヲ深カラシメテ、司法權ノ威信ヲ
  保ツコトヲ圖ル斯樣ニ仰セラルヽ點ニ付テハ、本員多少ノ疑
  ナキ能ハズデアリマス、前內閣ノ時代ニ本案ヲ提出セラレテ、
  委員會ニ於テ本員ノ質問ニ對シテ、或ル政府委員カラハ現
  時ノ裁判ニ對シテ缺陷ハ無イト云フコトヲ御話ニナリマシタ
  ケレドモ、時ノ法制局長官橫田氏ハ、現時ノ裁判ニ現ニ或
  ル程度ノ弊害ガアルト云フコトハ乎實デアル、ト御答辯ニ
  ナッテ居ルノデアリマス、又政友會總裁高橋子ガ、或ル所ニ
  於テ演說セラレテ居ル要旨ヲ私一讀致シマスルノニ、現時
  司法權ノ運用ニ關シテ公明ヲ缺クモノガアルト云フコトデ、
  國民ノ間ニ異論ヲ挾ム者ガアル、今後司法權ノ運用ニ關シ
  テハ、深甚ナル注意ヲ拂フコトヲ要スル、斯樣ナ意味ノ御演
  說ヲ爲サレテ居リマス、卽チ前内閣ノ時代ニ於ケル政府委
  員、政友會ノ總裁、共ニ現時ノ司法權ノ運用ニ關シテ、多
  少公明ヲ缺イテ國民ノ非難ヲ受クルベキモノガアルト云フ
  コトハ、之ヲ御認ニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ現政府ガ
  現時ノ裁判ニハ弊害ナシト信ズルガ、常職ノ裁判官ガ時ニ
  或ハ陷ラントスルノ弊害ヲ豫メ防衛スルノ手段トシテ、陪審
  法案ヲ提出スルト云フコトノ提案ノ理由ト云フモノハ、目下
  ノ司法ノ現狀ニ照シマシテ、岡野司法大臣ガ現時ノ狀態ト
  云フモノヲ御存知ナイカラシテ、斯樣ナ理由ヲ御說明ニ
  ナルノデアラウト私ハ信ズルノデアリマス、此故ニ第
  一ニ司法大臣ニ對シテ御尋ヲ致シタイノハ、現下ノ
  司法權ノ運用ノ一部トシテ、檢事或ハ裁判官ガ日常國民
  ニ向クテ執リツヽアル法律上ノ働ハ、國民側カラ見テ若クハ
  監督ノ官吏カラ之ヲ見テ、毫モ非難スル程ノモノハ無イト云
  フコトヲ斷言シ得ルカドウカ、若シ現時ノ裁判ニ關シテ非難
  攻撃ヲ加フルノ事實アリトスルナラバ、其事柄ヲモ矯正スル
  ノ目的ヲ以テ本案ヲ提出致シタノデアルカドウカ、言葉ヲ換
  ヘテ言ヘバ、裁判上ノ時弊ヲ救濟スルノ目的ヲモ、本案提出
  ノ理由ノ一トシテ居ルノデアルカドウカト云フコトヲ承リタ
  イノデアリマス、若モ司法大臣ノ辯明ノ如ク、全然現時ノ裁
  判ニ關シテ、何等ノ非難攻撃ヲ加フルモノナシトスルナラバ、
  何等人權蹂躪ノ事實ナシトスルナラバ、何ヲ苦ンデカ數千
  万圓ノ國帑ヲ費シテ、裁判ノ革命デアルトマデ稱セラルヽ本
  案ヲ提出スルノ必要ガアルノデアリマスルカ、或ハ人文發達
  上、國民ヲシテ總テノ國政ニ參與セシムル必要ガアルカラ提
  出スルト云フノデアルナラバ、[何故司法當局ガ今日迄之ヲ
  抛擲シテ置イタノデアルカ、人文發達ニ依シテ司法權ノ參與
  ヲ許スト云フコトガ、本案ノ主タル理由デアリト致シマスル
  ナラバ、玆ニ一ノ矛盾ヲ生ズルト私ハ考ヘル、譬ヘテ見レバ現
  政府ハ普通選舉ノ問題ニ關シマシテモ、吾々ハ國民ノ側ニ
  在ヶテ普通選擧ハ卽時斷行スベキモノデアルト云フコトノ議
  論ヲ提唱致シテ居ルニモ拘ラズ、現政府ノ大官ハ、普通選
  擧ノ問題ニ關シテハ毫モ考慮致シタコトハ無イト云フ暴言
  ヲ發セラレタコトモアル、又其後ニ及ンデ選擧權擴張ニ關ス
  ル調査會ナルモノヲ設ケテ、普通選擧ニ關シテハ調査ヲ要
  スルト云フコトノ意味ヲ天下ニ聲明セラレテ居リマス、國民
  ノ側ノ要求ト致シマシテハ、吾々ハ常ニ國民ニ接觸致シテ
  居〓テ、國民ノ意思ノ在ル所ヲ忖度致シマスルノニ、六千万
  ノ國民ノ最大多數ノ者ガ〓日要求致シテ居ル所ノモノハ何デ
  アルカト申シマスレバ、無論陪審法案ノ實現ト云フコトモ其
  一デハアリマスルケレドモ、最モ緊急ニシテ一日モ速ニ其實
  行ヲ期シテ貰ヒタイト云フコトノ要求ヲ致シテ居ルモノハ、
  無論普通選擧ノ問題デアルノデアリマス(拍手)新聞雜誌
  ノ論調ニ依リマシテモ、全國到ル處靑年ノ要求ニ聞キマシ
  テモ、又屢〓此壇上ニ運バレマスル所ノ普通選擧案ノ上程
  サレル際ノ議論ニ徵シマシテモ、國民ハ齊シク普通選擧ノ實
  行ヲ望ンデ居ル、言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、行政ニ關與シ
  立法府ニ國民ノ代表者ヲ一人ト雖モ多ク送リタイ、其代表
  者ヲ送ルニ付テハ、一人ト雖モ多ク之ニ向ッテ投票ヲシタイ、
  卽チ國民ガ互ニ立法府ニ參與致シタイト云フコトノ、極テ
  熾烈ナル要求ガアルニモ拘ラズ、現在政府ハ此國民ノ熾烈
  ナル要求ヲ無視シテ、卽チ國政ニ參與シタイト云フ國民ノ
  要求ヲ蹂躪シテ、今日此頃普通選擧ノ得失ノ調査ヲスル
  ト云フコトヲ聲明セラレテ居〃テ、マダ現ニ遲ミトシテ其働ハ
  進捗致シマセヌ、時々新聞紙ノ報道ニ依ッテ拜見致シテスレ
  バ、兔ニ角普通選舉ニ關スル問題ノ調査ヲ致シテ居ラレル
  ト云フ有樣デアル、現政府ノ諸公ハ此明カナル國民ノ要求ト
  云フモノガ一體見エナイノデアルカドウカ、乃チデス、方今人文
  ノ發達上國民ヲシテ國政ノ全體ニ向ッテ參與セシムルノ途ヲ擴
  張スルコトガ、社會國民ノ要求デアルト云フ事柄ガ、眞ニ司法
  大臣ノ心肝ヨリ出ヅル言語デアルトスルナラバ、何ガ故ニ今日
  普通選擧ニ關スル調査會ナルモノヲ設ケテ(「問題外」ト呼フ
  者アリ)而シテ普通選擧ノ進行ヲ阻碍スルヤウナ態度ヲ執
  ルカト云フコトヲ、現政府ニ問ハナケレバナラヌ(「普通選擧
  ハ別ニシロ」「默レ」ト呼フ者アリ)固ヨリ普通選擧ノ議案ニ
  對シテハ別ニ論ズルノデアリマスガ、現政府ノ態度ニ矛盾ガ
  アルト云フコトヲ爰ニ論證シテ置クノデアル(ノウ〓〓)此故
  ニ只今岡野司法大臣ノ、人文ノ發達ガ陪審法案ヲ要求ス
  ルノデアルト云フコトノ御說明ハ、唯〓前ノ政府ノ言ッタコト
  ヲ其儘鸚鵡返シニ御襲踏ナサレテ、山內次官デモ筆記ナサ
  レタモノヲ此所デ御朗讀ナサレタモノデアルト云フコトヲ、私
  ハ爰ニ斷言シテ憚カラヌモノデアル(拍手)故ニ吾々ハ只今
  司法大臣ガ此席ニ立タレテ、目下ノ裁判制度及目下ノ栽
  判ノ實情ニ關シテハ、何等ノ弊害ガ無イト云フコトヲ言ハレ
  マスケレドモ、吾々ハ日常此裁判ノ問題ニ關シテ非常ナル弊
  害ガ簇出致シテ、常ニ多クノ人權ヲ蹂躪致シテ居ルト云フ
  事柄ヲ確信シテ疑ハヌ者デアリマス、乃チ政府ハ之ニ備フル
  ノ意味ヲ以テ、陪審法案ヲ提出スルト云フコトガ、其眞意ノ
  裡ニ橫クテ居ル一ノ理由デアルト認メルノデアル、若シ政府ノ申
  シマスル常職ノ裁判官ガ時ニ或ハ陷ラントスル將來ノ弊害
  ヲ豫防スル爲ニ、本案ヲ提出致シタノガ眞ノ理由デアルト致
  シマスルナラバ、此本案ノ如キ貧弱ナル陪審法案ニ依シテ將
  來起ル所ノ弊害ヲ、如何ナル程度マデ防禦シ得ルト信ジテ
  居ルカ、是レ既ニ一ノ錯誤デアルト考ヘル、司法大臣ハ多年
  司法權ノ運用ニ與カラレテ居ル法曹界ノ先覺者デアリマス
  ルカラシテ、無論司法官ノ現狀ニ付テハ相當ナル知識ヲ
  持ヲテ居ラレルト私ハ信ジテ居リマス、尤モ暫ク方角違ヒノ
  行政栽判所トカ云フ方面ニ閑居シテ、直接人民ノ權利義
  務ニ影響ノアル方面ハ閑却セラレテ居ッタヤニ拜承致シテ居
  リマスルカラシテ、多少現代ノ裁判ト云フモノガ、ドノヤウニ
  運行シツヽアルカト云フコトニ付テノ知識ハ私ヨリモ多少
  貧弱デアルカト考ヘマス(拍手)試ニ行政裁判所ヲ去ラレタ
  ル岡野司法大臣ニ私ハ申上ゲタイノデアリマスルガ、足一タ
  ビ東京區裁判所若クハ地方裁判所ノ門ニ到レバ、如何ナ
  ル感想ガ起ルカ、先ヅ刑事ノ法廷ヲ覗イテ見マスルト云フト、
  吾々ノ同胞タル國民ガ鐵ニテ造リシ鐵錠ニテ兩手ヲ扼サ
  レ、昔用井テ居リマシタ編笠ナルモノヲ頭ノ上ニ置イテ、其上
  ニ大キナ繩ヲ以テ腰ノ周リヲ强ク縛セラレ、五人デモ十人デ
  モ珠數繫ギニシテ之ヲ法廷ニ運ンデ居リマス、斯ノ如ク獸類
  ヲ扱フガ如キ態度ニ依ッテ運パレテ居ル被告人ガ、ドノヤウ
  ナ事ヲ致シテ居ルカト云フコトヲ聞テ見ルト、或ハ二圓カ三
  圓ノ泥棒ヲ致シタ、五錢カ十錢ノ〓博ヲ致シタ、或ハ宴會
  ノ席デ興ニ乘ジテ友人ノ頭ヲ毆ッタトカ、斯ノ如キ輩ヲ現實
  裁判所ニ引來ッテ、サウシテ憲法上獨立ノ保障ガアルト稱セ
  ラルヽ栽判官ガ、オ前ハ懲役三箇月、オ前ハ六箇月、才前
  ハ一年ト云フ裁判ヲ致シテ居ル、而シテ其栽判ノ方法ヲ見
  ルト、依然トシテ舊式ノ法廷ノ態度ヲ改メテ居リマセヌ、刑
  事被告人デハアルケレドモ、矢張吾々ノ同胞デアル、帝國ノ
  國民ニ對シテ我デアルトカ、汝デアルトカ、其方デアルトカ、オ
  前デアルトカ、有ユル罵倒言語ヲ浴セ掛ケ、サウシテ碌々辯
  解モ聽カナイ、辯論モ爲サシメナイ、其狀恰モ牛馬鷄犬ヲ屠
  ルガ如シト云フノガ現在ノ裁判所ノ現狀デアルノデアリマス、
  或ハ大政黨ノ人々ガ、過テテ樣樣ナ法廷ニ御出ニナッタ時分ニ
  ハ、十人モ二十人モノ辯護士ガ御附ニナッテ、三年デモ五年
  デモ盛ニ辯論ヲ致シテ居ルノデアリマスガ、左樣ナ事實ハ御
  承知ニハナリマスマイ、併ナガラ左樣ナ階級ニ非ザル者ノ被告
  事件ノ審理ト云フモノハ、今私ガ申シタ通リデアル、此狀態
  ヲ岡野司法大臣ハ全然抹殺スル譯ニハ參リマスマイ、斯ノ
  如キ狀態ガ存シテ居シテ、今日國民ノ人權ト云フモノガ尊
  重セラレテ居ルト云フコトヲ、玆ニ斷言セラルヽ勇氣ガ
  アルカ、斯ノ如キ裁判ノ方法ガ司法權ノ威信人權ヲ尊重ス
  ル方法デアルカ、斯ノ如キ方法デアッテモ、現在ノ裁判ニハ何
  等缺陷ナシト見ハルヽカ、私ハ他ノ機會ニ於テ、今日ノ裁判
  制度ニ關スル問題ニ付テ卑見ヲ述ブル考デアリマスカラ、今
  日其點ヲ主トシテ申スノデハアリマセヌガ、司法大臣ガ、白々
  シク國民ノ前ニ立ッテ、此壇上ニ立ッテ、現在ノ裁判法廷ニハ
  何等ノ弊害ガ無イ、國家ノ司法權ノ運用ニ對シテ、何等ノ非
  難スベキモノガ無イト云フ御聲明ヲ爲サルト云フ事柄ハ、洵
  ニ大膽至極デアル、而シテ今ハ少シモ弊害ハ無イガ、時ニ常
  職栽判官ガ陷ラントスル將來ニ來ルベキ弊害ヲ豫メ防護ス
  ルノデアル、ソンナ閑問題ノ爲ニ三千万圓若クハ四千万圓
  ト云フヤウナ莫大ナ國費ヲ投ジテ、此法案ヲ制定スル必要
  ハ斷ジテナイ、私ハ寧ロ將來ニ起ル人權問題ニ對シテハ、相
  當ナル方法ガアルト思量致シマス、司法大臣其他ノ人々ノ努
  力ニ依シテ、ドノヤウニモ將來ニ對スル問題ハ解決スルコトガ
  出來ル、吾々ハ寧口現時ノ裁判制度ヲドウスルカ、現ニ吾々
  ノ同胞タル刑事被告人ガ微細ナル罪ヲ犯シテ、サウシテ裁
  判官、檢事ノ前ニ於テ奴隸ノ如キ板ヒヲ受ケル、牛馬ノ如キ
  取扱ヒヲ受ケテ居ル現狀ヲ如何ニスルカ、是等ヲ救濟スル爲
  ニ陪審法案ヲ制定スルト云フナラバ、多少陪審法案提出ノ
  價値ヲ認ムルノデアルガ、依然トシテ司法大臣ハ只今此壇
  上ニ立タレテ聲明セラレタコトヲ維持セラルルカドウカト云
  フコトヲ冒頭ニ於テ聞キタイノデアリマス、ソレカラ第二ニ
  承ニテ置キタイト思ヒマス事柄ハ、此法案ニ對スル司法大臣
  ノ諒解如何ト云フコトデアル、今司法大臣自ラ此席ニ於テ
  御演說ニナリマシタ如ク、第四十五議會ニ提案セラレタモノ
  モ、此議會ニ提案セラレタル法案モ殆ド同一デアル、僅カ一
  二點字句ノ修正ガアッタニ過ギナイ、斯カル大法案ニ關スル
  第四十五議會ニ於ケル當議場ノ討論ノ模樣、竝ニ委員會
  ニ於ケル討論ノ模樣ハンレ〓〓諸君ニ御報告致サレテアリ
  マス通リ、各人悉ク意見ガ異ナッテ居ル、政友曾諸君ノ意見
  モ、革新倶樂部ノ諸君ノ意見モ、憲政會ノ人々ノ意見モ皆
  異ナッテ居ル、而モ多年研究シテ居ル人々ノ間ニモ、尙且ツ
  此陪審法案ノ性質、運用、施行ノ時期等ニ付テ色々議論ガ
  アル、所ガ現政府ハ昨年高橋內閣瓦解ノ後ヲ承ケテ出來
  上ッタ内閣デアリマスガ、僅カ半年程ノ間ニ、此大法典ヲ此
  壇上ニ御提出ニナッタノデアリマスデ、一言一句修正スル所
  無ク、僅カ字句ノ修正ヲシタニ過ギヌ、其精神ニ於テハ全ク
  同一デアル、能クモ前ノ內閣諸公ノ意見ト、現內閣ノ意見
  トガ一致シタト云フコトニ付テ、寧口不可解ニ感ズルモノデ
  アル、現政府ノ諸公ハ此陪審法等ニ對シテ如何ナル理解ヲ
  持ッテ居ラルヽカ、政友會內閣當時ニ於テハ、御承知ノ通リ
  政友會ノ政綱ノ一ニ掲ゲラレ、原總裁自ラ陪審法ノ必要ナ
  ル事ヲ提唱セラレテ、恐ラク二百八十ノ黨員熱心ニ御〓究
  ニナッタコトヽ考ヘル、其成案ヲ四十五議會ニ御提出ニナッタ、
  而シテ現内閣ガ僅カ半年程ノ後ニ此法案ヲ提出スルト云フ
  ニ當リテ、何等ノ修正ヲ加フルコト能ハズシテ、其儘此處ニ
  出シテ居ル、私ハ想フ、恐ラク現政府ノ諸公ハ此陪審法案
  ニ對シテ何等ノ諒解ガ無イノデハナイカ、政友會ノ某名士ノ
  御發表ニナッテ居ル意見ノ中ニモ、加藤內閣ハ政友會ノ事
  務取扱內閣デアルト、私ハ此政友會ノ某名士ノ說ヲ其儘
  信用致シタイノデアル、政友會ノ爲ニハ洵ニ賀スベキコトデ
  アルカ知リマセヌガ、併シ現内閣ノ名譽ニ懸ケテ、國民ノ權
  利幸福ノ上カラ考ヘテ、此位不幸ナ事ハナイト斷言スルノデ
  アル、現政府ハ果シテ政友會ノ造リシ成案以外ニ、何故モッ
  ト徹底的ノ案ヲ此壇上ニ運バナイカト云フコトヲ司法大臣
  ニ聽カムトスルモノデアル、殊ニ私ハ申上ゲテ置カネバナリマ
  セヌガ、橫田法制局長官ハ委員會ノ席上デ何ト御答辯ニナ
  リマシタ、長イ經過ハ固ヨリ之ヲ省略シマスガ、或ル議員ニ
  對シ、陪審法案ハ洵ニ不徹底デアルト云フ意味ノ質問ニ答
  ヘテ、「此陪審法案ハ最初ノ試ミデアル」カラシテ、其樣ニ諒
  解シテ呉レ、最初ノ試ミデアル、之ヲ行フ事ガ如何ニ國家民
  人ノ利益ニ資スル所ガアルカト云フ抱負ニ基イテノ提案デ
  ハナイ、善イカ惡イカ先ヅ最初ノ試ミデアルカラシテ、諸君諒
  解シテ吳レト斯ウ仰シヤッタ、ソレカラ又或ル議員ノ質問ニ
  對シテ、陪審員ノ方カラモ裁判官ヲ拘束スルコトガ出來ズ、
  裁判官ノ方カラモ陪審員ヲ拘束スルコトガ出來ナイ、何方
  カラモ拘束スルコトガ出來ナイ、不徹底極マル法案デアル、
  卽チ陪審員ガ事實ノ認定ヲ致シマシテモ、裁判官ガ之ニ從
  ハヌト言ヘバソレ迄デアル、三遍デモ五遍デモ陪審員ハ其認
  定ヲ繰返サナケレバナラス、卽チ陪審員ハ其認定ニ依シテ裁
  判官ヲ拘束スル力ガ無イ、裁判官ハ又自分ノ鑑識ニ基イテ
  斯ノ如ク事實ヲ認定セヨト云フコトノ權能モ無イノデアル、
  相互ニ拘束力ヲ持タナイ極テ不完全ナモノデアルガ、其點
  ハドウデアルカト云フコトノ質問ニ對シテ、ソレハ何方カラモ
  相互ニ拘束スルコトガ出來ヌト云フ所ニ法案ノ妙味ガ存ス
  ルノデアル、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、此陪審法案ハ中間性ノモ
  ハデアルカラシテ、是モ其意味ニ諒解シテ吳レト斯ウ御答ニ
  ナッテ居ル、數千万圓ノ費用ヲ投ジテ、而シテ裁判ノ革命デ
  アルト迄唱ヘラレル陪審法案ヲ實行セントスルニ當ッテ、最
  初ノ試ミデアルト云ヒ、或ハ中間ノ性質ヲ帶ビテ居ルモノデ
  アルト云フヤウナ聲明ヲセラレテ居ル、其ノ法支自體ニ何等
  ノ修正ヲモ加フルコトノ出来ナイ、加フルコトヲ欲セザル現
  內閣ノ諸公ハ前內閣ノ時代ニ於テ法制局長官ガ聲明致
  シマシタ通リ、最初ノ試ミデアルトカ、或ハ中間性ノモノデア
  ルトカト云フヤウナ考ヲ以テ、此提案ヲ致シテ居ルノデアルカ
  ドウカ、私ハソレヲ確メテ置カネバナラヌト考フルノデアリマ
  ス、恐ラク現政府ニハ若シ私ガ某政友會名士ノ演說ヲ紹
  介致シマシタ通リ、眞ニ政友會內閣ノ延長內閣ニ非ズ、政
  友會ノ事務取扱内閣ニ非ズト云フノ確信ガアルナラバ、モット
  進ンデ斯ク々々ノ理由ニ基イテ提案致シタノデアルト云フ、
  高橋内閣ノ時代ノ理由ノ外ニ特立シタル現内閣ノ特色ト
  スル所ノ理由ガナケレバナラヌト私ハ考フルノデアル(拍手)
  第三ニ御尋ヲ致シテ置キマス、司法大臣ハ只今ノ御演說ノ
  通リ、目下ノ裁判制度及目下ノ裁判ニ關シテハ、何等
  考慮スベキモノハ無イト言ハルヽノデアリマスルガ、併ナガラ
  其然ラザルコトハ私前段極テ簡單ニ申述ベタ通リデアリマ
  スルガ、或ハ私ノ主張スル通リ現時ニ或ル程度ノ栽判ノ缺
  陷ガアリ、或ハ司法大臣自ラ御說明ニ相成リマスル通リ、將
  來起ルベキ、卽チ常職ノ栽判官ガ時ニ或ハ陷ラントスル所ノ
  弊害ヲ豫防スル、斯ウ云フコトデアリマスルナラバ-ソレダ
  ケガ理由デアリマスナラパ、私ハ陪審法案ヲ實行スルノ必要
  ハ無イト斯ウ申スノデアリマス、試ニ裁判官ノ任命配置ノ方
  法ニ付テ、本案ノ運用ニモ重大ノ關係ノアル事デアリマスル
  カラシテ、承ッテ置キタイノデアリマスガ、岡野司法大臣モ御
  承知ノ通リ、裁判所構成法實施以來ノ司法省內部ノ習
  慣ト致シマシテ、栽判官ガ相當ナル年齡ニ達シ、相當ナル經
  驗ヲ積ンダ者ハ、皆大審院判事ニ補セラルヽノデアルノデ
  アル、十年、二十年ト云フ經驗ヲ持ッテ、此位ナ經驗
  ガアルナラパ事實裁判官トシテハ極テ適當デアルト
  云フ時分ニハ、既ニ大審院ニ行ッテ仕事ヲ致シテ居ルノデ
  アル、大審院判事ノ職務ハ何デアルカト申シマスレバ、事實
  ノ認定ニ非ズシテ法律ノミノ適用デアル、裁判官ガ事實ノ
  認定ニ付テ經驗ヲ重ヌルニ比例シテ法律ノ知識ト云フモノ
  ハ漸次薄クナリツヽアルノデアル、時ニ例外モアリマセウケレ
  ドモ、大體ハサウデアル、政友會內閣ノ時代ニ停年法ヲ作ッテ、
  老年ノ裁判官ヲ淘汰スルコトニ致シマシタノモ其
  意味デアル、而シテ大學ヲ出若クハ試驗ニ卒業ヲ致シマシ
  テ、新ニ裁判官トナッタ者ガ、悉ク東京區裁判所、東京地方
  裁判所ノ要部ヲ占メテ居ルノデアル、法律學ニ付テハ一廉
  ノ見識ヲ持っテ居リマスケレドモ、事實ノ認定ニ關シテハ極
  テ無經驗デアル所ノ、年少ナル裁判官ガ、事實ノ認定ヲ爲シ
  ツヽアル次第デアル、今ノ裁判制度ト云フモノハ足ノ能ク
  立ツ者ガ坐ッテ居〓テ、足ノ立タナイ者ガ郵便飛脚ヲ致シテ
  居ルト云フヤウナ狀態デアル、司法部ノ要所々々ニ適材ヲ
  配置スルコトノ方法ト云フモノガ、甚ダ拙劣デアル、是ハ
  一〓ニ司法當局ヲ貴メル譯ニ行キマセヌ、司法當局ヲ拘束
  スル法制ノ結果デモアリマスルケレドモ、併ナガラ法律ハドノ
  ヨウニモ改正ガ出來ル、又或ル程度迄ハ此法律ノ缺陷ト云
  フモノヲ補フコトモ出來ルノデアル、卽チ事實ノ認定ニ堪能
  ナル者ヲ、事實ノ認定ヲ爲サミル大審院ニ配置シ、事實ノ
  認定ニ付テ最モ知識經驗ニ富ンデ居ル所ノ者ハ、其用ヲ爲
  サナイ所ノ大審院判事デアッテ、法律ノ適用ニ付テハ寧ロ堪
  能ナル卽チ新知識ヲ持,テ居ル所ノ靑年判事ト云フ者ガ悉
  ク下級裁判所ニ居ル、其處デ最モ不得手トスル所ノ事實ノ
  認定ヲヤッテ居ルト云フノデアル、吾々ノ考フル所ニ依レバ、
  比較的若イ新知識ニ富メル判事ヲ大審院ニヤッテ法律ノ
  解釋ヲ掌ラシメ、事實ノ認定ニ堪能ナル經驗ヲ持ッテ居ル所
  ノ老練ナル裁判官ヲ下級栽判所ニ配置スルノガ、裁判制度
  ノ最モ效果ヲ得ル所以デアルト考ヘルノデアル、現政府ハ此
  點ニ付テ如何ナル考ヲ持"テ居ラレルカ、依然トシテ〓ノ制
  度ノ儘ニシテ置イテ、サウシテ陪審法案ヲ御實行ニ相成ッタ
  所デ、到底其陪審法案本來ノ目的ヲ遠スル事ハ出來ナイ
  ト思フノデアリマス、而シテ法官養成ノ方法ニ付テモ、今日
  ノ方法ハ全然間違クテ居リマス、今ノ司法官卽チ檢事、裁判
  官ト云フ者ハ、最高學府ヲ出デ若クハ試驗制度ニ依クテ採
  用セラレタル者デアル、試驗ニ及第ヲシテ大學ノ門ヲ出ヅル
  ト直ニ司法省ニ來リ、若クハ裁判所ヘ行キ其所ニ一年半ノ
  修習ヲ終ノテ直ニ事實裁判官トシテ法廷ニ立ッテ居ルノデア
  リマス、吾々國民ノ實際生活ト云フモノニ對シテハ、何等ノ
  知識ノ無イ經驗ノ乏シイ裁判官ガ、堂々タル獨立ノ保障ヲ
  得テ高等官ト稱シテ、吾々人民ノ權利自由ヲ栽判致シテ、
  居ル狀態デアル、是カ爲ニ屢、吾々ガ引例ヲ致シテ居リマ
  ス通リ、第一審ニ於テ無罪ノ宣告ヲ受ケタ者ガ、第二審ニ
  於テ死刑ノ宣告ヲ受ケル、第一審ニ於テ死刑ノ宣告ヲ受ケ
  タル者ガ、第二審ニ於テ無罪ニナル、洵ニ人ノ首ヲ取ルコト
  ヲ犬カ猫ノ首ヲ取ルガ如キ考ヲ以テ裁判ヲ致シテ居ルコトハ、
  現ニ吾々ガ日常ニ屢、、經驗シテ居ル事デアリマス(拍手)此
  故ニ國民ノ一角ニハ、裁判ハ水物デアルト云フコトヲ申ス
  位デアリマス、是ハ洵ニ司法官ニ對スル一大侮唇デアルト
  同時ニ、司法權ノ威信ノ爲ニ吾々ハ心外ニ堪ヘナイ、懲役
  一箇月ノ者ガ一箇月半ニナッタトカ、一年ノ者ガ六箇月ニ
  減ッタトカ云フ程度ナラバ、御互ニ忍耐スベキ事情モゴザイ
  マスケレドモ、諸君試ニ裁判所ニ行ッテ、首ガ飛ンダリ、跳ネ
  タリシタラドウシマスカ、サウ云フコトヲ裁判所ヂヤッテ居ル、
  甚シキニ至ッテハ一審、一一審デ事實ノ認定ヲ同ウシテモ、大
  審院之ヲ破毀シテ、他ノ控訴院ニ送移セラレ、又異ナッタル判
  決ヲ受ケルト云フ樣ナ場合モアル、是等ハ裁判制度ノ罪デモ
  アリマスルケレドモ、一ハ栽判官ノ養成ト云フコトニ司法當
  局ハ其意ヲ致サヾルノ罪デアル成ベク國民ニ接著セシメテ、
  國民ノ實生活ヲ諒解シタル栽判官ヲ置ク方針ヲ執レバソ
  レデ宜シイノデアル、今司法當局ノヤッテ居ル仕事ハ、法律ノ
  學問ヲサセテ、試驗委員ノ面前ヲドウカ斯ウカ通過サヘスレ
  バ、ソレデ人民ノ權利ヲ栽判シテモ宜シイト云フ考ヲ持ッテ
  居ル、卽チ人權尊重ノ精神ガ無イカラ斯樣ナ間違ッタ方法
  ヲヤッテ居ルノデアル、斯樣ナ司法官養成ノ方法、司法官採
  用ノ方法ヲ以テシテ、能クモ此人權ノ擁護ガ出來、人文ノ
  發逹ニ資スルコトガ出來ルカト私ハ憂ヘル者デアル(拍手)
  第四ニ承ッテ置キマス、本案ニ起訴陪審ノ制度ヲ設ケザルコ
  トヲ私ハ甚ダ不徹底ナリト認メルノデアリマス、此點ハ前議
  會ニ於キマシテモ問題トナッタ點デアリマスルカラシテ、詳シ
  ク之ヲ論ズルノ必要ガ無イノデアリマス、今日國民ガ司法
  權ノ運用ニ關シ、若クハ現實ノ栽判ニ關シテ免角非難ノ聲
  ヲ發スル所以ノモノハ那邊ニ在ルカト言ヘバ、公判以後ノ
  手續ニ於キマスル狀態ヨリモ、寧ロ事件ガ檢事局ニ在ル時
  代ニ、行政官タル檢事ガ上官ノ命ヲ受ケテ事件ヲ抹殺シ、
  或ハ暗カラ暗ニ葬ルト云フヤウナコトニ付テ國民ノ非難ヲ
  蒙リ、國民ノ疑惑ヲ蒙,テ居ル、此點ニ付テモ後日或ル機會
  ニ於テ例證ヲ擧ゲテ、諸君ノ判斷ニ訴ヘル考デアリマスカラ
  今日ハ申シマセヌ、卽チ栽判ニ移リタル以後ニ於テ陪審ヲ
  施スヨリモ、裁判官ノ行動ヲ促進スベキ檢事ガ、起訴不起
  訴ノ決定ヲスル時代ニ、陪審ニ附シテ國民ノ與論ヲ問フト
  云フコトガ、寧口陪審制度ノ根本的精神デハナイカ、譬ヘテ
  見レバ一ツノ事件ガ起ッタ、國民ガ擧ゲテ之ヲ起訴シヤウト
  云フ場合ニ、檢事ガ司法大臣ノ命令ニ依シテ之ヲ起訴シナ
  イ、或ハ一事件ガ起リシ場合ニ、國民ガ擧ゲテ此事件ハ起
  訴スベカラズト云フ場合ガアル、此場合ニ檢事ガ民情ニ遠
  ザカッテ居クタ爲ニ、國民ノ要求ノ那邊ニ在ルカヲ察スルコト
  ガ出來ヌ爲ニ誤ッテ此事件ヲ國民ノ意向ニ反シテ起訴スル
  ヤウナ場合ガアル、卽チ檢事ノ起訴以後ニ於テ陪審制度ノ
  必要ナルコトハ無論私ハ之ヲ承認致スノデアリマスガ、公判
  以後ニ於ケル陪審制度ノ必要ト云フヨリモ、寧ロ判事ノ行
  動ヲ促進スル以前ニ於テ、此事件ハ裁判所ニ〓スベキカ、
  若クハ之ヲ祕密ノ裡ニ葬ルベキカト云フコトニ付テ、先ヅ第
  一ニ國民ノ感情ニ訴ヘルト云フヤウナ陪審制度ガ根本的
  精神デアルト考ヘル、檢事ノ取扱ニ對シテ吾々ハ憤慨ニ堪
  ヘヌモノガ、澤山アル、此點ニ於テ岡野司法大臣ハドノヤウナ
  御考ヲ持ヲテ居ラレマスカ、若シ陪審制度カラ起訴陪審ノ
  制度ヲ除去致シマシタナラバ、所謂陪審制度ハ全ク骨拔デ
  アル、然ルニ此陪審制度ノ問題ニ對シテ起訴陪審、卽チ檢
  事ノ起訴不起訴ニ關シテ、全然之ヲ考慮ノ外ニ置イタ政
  友會內閣時代ノ不徹底極マル法案ヲ、其儘踏襲シテ茲ニ
  御提案ニナルト云フコトハ、私ハ岡野司法大臣ノ名譽ノ爲
  ニ甚ダ之ヲ遺憾ニ感ズルノデアリマス、要スルニ吾々ノ問ハン
  トスル所ハ、人文ノ發達ノ爲ニ本案提出ノ必要アルト云フ
  コトヲ言ハレマシタガ、ソレデアルナラバ、私ハ前段申上ゲル
  如クニ甚ダ理由ガ不徹底デアル、若シ人文發達ノ爲ニ國民
  ヲシテ總テノ國務ニ參與スル途ヲ擴張スル必要ガアルナラ
  バ陪審法案ヨリモ先ヅ普通選擧ノ問題ヲ解決スルコトガ
  第一義デアル、此分リ切ッタ普通選擧案ヲ抛擲シ高閣ニ束
  ネテ、不徹底極マル陪審法案ヲ出シテ、將來數千万圓ノ國
  帑ヲ費消スルニ至ッテハ、司法大臣ノ意思ノ在ル所ヲ忖度
  スルニ苦ムノデアリマス、併ナガラ私ハ後ニ來ルベキ本案ノ
  第一讀會ノ續キニ於キマシテ、ドウ云フ意見ヲ表白スルカト
  云フコトニ付テ豫メ申上ゲテ置キマスガ、私ハ不徹底ナリト
  雖モ、不完全ナリト雖モ、是レ無キニハ優ルノデアリマスカ
  ラ、無論本案ニハ或ル程度マデハ贊成ヲスル者デアルガ、本
  案ノ提出ニハ滿足シナイカラ、要スルニ今少シク徹底シタ案
  ヲ出スコトガ出來ナイカ、現內閣ノ諸公ハ政友會內閣ノ諸
  公ヨリ一段進ンダル見解ヲ以テ、此提案ヲ爲スノ確信ガ無
  イカト云フコトノ根本義ニ向ッテ、聊カ質問ヲ試ミタノデアリ
  マス
  〔國務大臣岡野〓次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=5

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• 006・岡野敬次郎

  ○國務大臣(岡野敬次郞君)　只今横山君ヨリ陪審法案
  ニ對シテ御質問ガアリマシタ、其御質問ノ御演說中ニハ、大
  分橫山君ノ御意見、御議論モ加ハッテ居ッタヤウデアリマス、
  其御意見ヤ御議論ノアル所ハ姑ク措キマシテ、私ノ横山君
  ノ陪審法案ニ對スル御質疑ナリト信ズル點ニ付テ御答辯致
  シタイト思フノデアリマス、其第一ハ陪審法案提出ノ理由
  トシテ、私ガ先刻述ベマシ夕栽判ニ對シテ、國民ガ今日敢テ不
  信ヲ懷イテ居ルモノデハナイト思フケレドモト云フコトヲ私
  ハ申シマシタ、其一語ニ對シテ橫由君ハ大ニ其見解ヲ異ニ
  セラレテ居ルヤウデアリマス、私ノ中シマスル理由ハ裁判其
  物ニ對シテ國民ハ不信ヲ懷イテ居ルモノデナイトン云フコト
  ヲ申シタニ止マルノデアリマス、裁判事務、司法事務ニ對シ
  マシテ、一モ改善ノ餘地ナシト云フコトヲ私ハ申シタノデア
  リマセヌ、段々御引例ニナリマシクルヤウナ小サイ問題ニ付キ
  マシテハ、向ホ改良ヲ加フルノ餘地アルモノモゴザイマセウ、私
  モ改良ヲ加フルノ餘地アルモノト信ズルモノニ對シテハ、是
  ガ方策ヲ立テルコトヲ無論借マナイ積リデアリマス、而シテ今
  日ノ裁判ニ對シテ果シテ横山君ガ御述ニナリマシタヤウナ、
  國民全體ガ不信ヲ懷イテ居ルカドウカ、是ハ私ハ司法當局
  ト致シマシテハ見解ヲ異ニスルノデアリマス、併ナガラ橫山君
  ノ如キ見解ヲ採ル方ガ、提案ノ理由ガ己レノ言フ所ト異ナ
  ルガ故ニ反對デアルト云ンコトヲ仰シヤルノハ、少シク諒解
  ニ苦ムノデアリマス、若シ横山君ノ御說ノ如ク、從來ノ弊ヲ
  矯ムルガ爲ニ陪審法案ガ必要デアルト云フ御論デアリマス
  ナラバ、其理由ニ依リマシテモ陪審法案ニ御賛成ヲ得ルコ
  トハ一向差支ナイト私ハ思フノデアリマス、唯一此點ニ付キ
  マシテハ司法當局ハ見解ヲ異ニスルト云フニ止マルノデアリ
  マス、ソレカラ尙ホ同ジ第一ノ御質問中ニ陪審法案ノ提出
  ガ甚ダ時機ニ遲レタリト云フ感ガアルト云フ御說モ承ッタノ
  デアリマス、中ス迄モナク陪審制度ハ司法制度ノ根本ニ對
  シテ大ナル變革ヲ加フルモノデアリマスカラ、固ヨリ慎重ニ是
  ガ審議ヲ爲サネバナラナイノデアリマス、數年前卽チ原內閣
  ノ時ニ於キマシテ、此人心ノ嚮フ所ヲ察シテ特ニ法制審議
  會ト云フ機關ヲ設ケマシテ、玆ニ民間ノ法曹諸君ヲ煩シマ
  シテ愼重ニ審議ヲ盡シタ上ニ於テ、陪審法案ナルモノガ制
  定セラレタト云フノデアリマス、而シテ昨年ノ議會ニ於キマ
  シテハ、陪審法案ガ衆議院ヲ其儘ニ通過致シマシタ、固ヨリ
  其衆議院ニ於ケル御審議ノ際ニ於キマシテハ、色〓ノ御意
  見モゴザイマシタ、色ミノ御意見モアッタニ相違アリマセヌガ、
  結局衆議院ヲ通過致シタ所ノモノデアルノデアリマス、而シ
  テ是モ申述ベル必要モナイコトデアリマスガ、現內閣ニ於テ
  提案ノ理由トスル所ノモノハ、前內閣ニ於テ提案ノ理由ト
  スルモノト何等異ナル所ガナイ、斯ウ云フ御話デ、其點ニ
  向ッテノ御說モ伺ヒマシタノデアリマスガ、陪審法案提出ノ
  理由ニ至リマシテハ、先刻述べマシタ通リノ理由ニ基クノデ
  アリマス、此度提案ヲ致シマシタ所ノモノヲ政府ハ最善ノ法
  案ナリト信ジテ提案ヲ致シタノデアリマス、敢テ修正ノ必要
  ナキモノニ修正ヲ加フルコトハナイノデアリマシテ、修正ノ必
  要ヲ認メザルガ故ニ、曩ニ提案シタノト同一ノ法案ヲ提出
  シタ次第デアリマスカラ、左樣ニ御諒承ヲ願ヒタイノデアリ
  マス、第二ノ御質問ハ、前年ノ議會ニ於キマシテ審議ノ際ニ
  於テハ、各人各個陪審法案ノ内容ニ付テモ、其施行ノ時期
  ニ付テモ、大ニ意見ヲ異ニシタモノデアル、現內閣ハ如何ナ
  ル理解ヲ以テ此度此法案ヲ提出シタノデアルカ、果シテ此
  法案ニ付テ當局ハ十分ノ理解ヲ有スルヤヲ疑ハザルヲ得ナ
  イ、斯ウ云フ御尋デアッタヤウデアリマス、私ハ陪審法案ノ內
  容ニ付テハ相當ノ理解ヲ持ッテ居ル積リデアリマス、而シテ
  此度議會ニ提出スルニ付キマシテハ、尙ホ司法當局ト致シ
  マシテハ十分ノ調査ヲ致シ、十分ノ〓究ヲ遂ゲタノデアリマ
  シテ、葉ニ提案シタルモノニ對シテ修正ヲ加フルノ必要ナシ
  ト認メテ此法案ヲ提出シタ次第デアリマス、第三ノ御質問
  ノ點ハ司法官ノ配置ニ付テノ御意見ヲ承リマシタ、是ハ現
  在ノ地方裁判所或ハ區裁判所ノ若イ者ヲ大審院ニ採用
  シ、大審院ニ於キマシテ事實ノ審理ニ付テ經驗ノ積ンダ者
  ヲ地方裁判所、區裁判所ニ用ヰタラ宜カラウト云フ御意見
  ノヤウデアリマス、是ハ上級裁判所トシテノ威信威嚴ヲ保ツ
  ダケノ組織ニハ致シテ置カネバナリマセヌ、是ハ申スマデモナ
  イノデアリマス、又地方裁判所、區裁判所等ニ採用致シマ
  スル所ノ若イ司法官ノ養成ニ付キマシテハ、司法當局ト致
  シマシテハ常ニ十分ノ注意ヲ致シテ居ルノデアリマス、固ヨ
  リ司法官ノ採用ニ付キマシテ或ハ年限ガ短カヽラウ、或ハ修
  養ガ十分デナカラウト云フヤウナ御疑ガアッタノデアリマスガ、
  是ハ全然改善ノ餘地無シトハ私モ信ジテ居リマセヌノデアリ
  マス、此點ニ付キマシテハ今後トモ司法官ノ養成ニ付テハ十
  分ノ努力ヲ致ス考デアルノデアリマス、第四ノ御尋ハ起訴陪
  審ノ事デアリマス、是ハ橫山君ノ御質問中ニゴザイマシタ通
  リ、起訴陪審ハ陪審法案ニ採用致シテ居ラヌノデアリマ
  ス、之ニ就キマシテモ橫山君ノ御演說ノ如ク、前年委員會
  ニ於テ審議ノ際ニ相常議論ノアッタコトハ承知致シテ居ル
  ノデアリマス、是ハ主トシテ意見ノ相違ニ屬スルコトデアリマ
  ス、尙ホ委員會ニ於キマシテ、御審議ノ際ニ於テハ司法當
  局ノ意見ノアル所ヲ十分ニ述ベル積リデアリマス、是ハ寧口
  委員會ニ讓ル方ガ適當デアラウカト存ジマスルノデ、只今ノ
  横山君ノ御質問ニ對スル所ノ答辯ハ之ヲ以テ終リト致シ
  マス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=6

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• 007・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　作間耕逸君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=7

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• 008・作間耕逸

  ○作間耕逸君　本員ノ質問ハ委員會ノ際ニ讓リマス、隨
  テ此場合ニ於ケル發言ノ通告ハ之ヲ取消シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=8

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• 009・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　次ハ森下龜太郞君
  〔森下龜太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=9

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• 010・森下亀太郎

  ○森下龜太郞君　本案ハ帝國ノ法制史上ニ於キマシテハ
  眞ニ一新紀元ヲ劃スベキ先程橫山君ノ言ハレマシタ通リ
  ニ、司法制度ノ一ノ革命ヲ意味スル所ノ重大ナル法案デア
  リマス、殊ニ事柄ソレ自身ガ吾々ノ日常生活ニ接觸致シマ
  シテ、一般國民ノ身體、生命、自由、名譽、竝ニ財產ト密接
  ノ關係ヲ有スル法案デアリマシテ、殊ニ大權ノ發動ト致シ
  マシテ畏多クモ陛下御名ニ依ッ其其神聖ヲ保タルベキ裁判
  ノ尊嚴ニ關スル問題デゴザイマスカラ、吾々議員ト致シマシテ
  ハ、特ニ愼重ノ考慮ヲ要スベキモノアリト信ズルノデアリマ
  ス、ンコデ私ハ圖野法相竝ニ加藤首相ニ對シマシテ、二三ノ
  疑ノアル點ヲ質シタイト思ヒマスガ、併シ先程橫山君ノ言ハ
  レタヤウニ、現内閣ノ諸公ガ政友會ノ事務取扱代人デアリ
  マスト云フナラバ私ガ此質問ヲ致ス理由ハ茲ニ失ッテシマ
  フノデアリマスガ、私ハ現內閣ノ諸公ニ對シマシテ、敬意ヲ
  以テ斯ノ如キ侮辱的ノ言葉ヲ以テ對スル程ノ考ハ持ッテ居
  リマセヌ、先ヅ第一ニ私ハ岡野法相ニ對シマシテ、此陪審
  ナルモノヽ構成組織ニ關シマシテ、私ノ疑ノ有スル點ヲ質シ
  タイト思フ、陪審ノ構成組織ニ關シマシテハ、本案ノ第十二
  條ニ於キマシテ、此陪審員タル者ノ資格ニ四ツノ條件ヲ求
  メテ居ルノデアリマス、其一ハ年齢ノ要件デアリマシテ、二十
  歲以上、第二ガ住居ノ要件デアリマシテ、二箇年以上其市
  町村内ニ居住シテ居ルト云フコトデアリマスガ、此二ツノモ
  ノハ茲ニ私ノ疑ヲ質ス所ノ要點トハナラヌノデアリマス、私
  ノ御伺ヲ致シタイト思ヒマスルノハ、殘リノ二ツニ屬スル、卽
  チ第三ニ於ケル陪審員タル資格ニ三圓以上ノ稅金ヲ納ム
  ル者ト云フ、納稅資格ニ制限ヲ求メラレタト云フ理由デア
  リマス、ソレカラ第四ニ於テ、私共ガ國民ノ有罪無罪ヲ定ム
  ル其前提トシテ、事實ノ判斷ヲ爲ス重大ナル責任アル陪審
  員ト致シマシテハ、何ト致シマシテモ、或ル程度ノ知識的條
  件、卽チ智的要件ト云フモノガ或ル程度ニ於テ備ハッテ居ラ
  ナケレバナラヌト考ヘルニモ拘リマセス、十二條ノ第四號ト
  致シマシテハ、僅ニ讀書キヲ爲シ得ルコトヽ云フ程度ニ止メ
  テ居ルノデアリマス、斯ノ如ク貧弱ナル智的要件ニ御止メニ
  ナッタト云フ立法ノ御趣旨ヲ玆ニ御伺攻シタイト考ヘル、私
  共ガ忌憚ナキ理想ヲ申上グルコトヲ御許下サルト致シマス
  ルナラバ、斯ノ如キ重大ナル職務ヲ執ルベキ所ノ陪審員ト
  致シマシテハ其第一條件ト致シマシテ、公平ナル判斷ヲ爲
  ス人格者ナルコト、第二ハ此紆餘曲折セル世態人情ヲ或ル
  程度ニ咀ミ分ケ得ル所ノ智的要件ト云フモノヲ必要トスル
  ト考ヘルノデアリマス、然ルニ此法案ニ於キマシテハ、私共ノ
  理想ト致シテ居リマスル公平ナル判斷ヲ爲ス人格ノ標準ト云
  フモノヲ、三圓以上ノ納稅者ト云フコトニ結付ケラレタト
  云フコトハ、何ト致シマシテモ不可解デナラヌノデアリマス、
  ソレカラ第三ニ於テノ世態人情ヲ或ル程度マデ咀ミ分ケ
  得ルト云フ所ノ智的要件ヲ、僅ニ讀書キヲ爲シ得ルト云フ
  程度ニ於テ、此要件ガ滿サレルト云フコトニ御考ニナッテ居
  ルト云フコトガ、何ト致シマシテモ了解シ兼ネルノデアリマス、
  故ニ私ハ此二ツノ點ニ於キマシテ、岡野法相ノ徹底セル御
  〓示ヲ願ヒタイト思フ、或ハ法相ハ此二點ニ對スル說明ノ一
  トシテハ、此法案ナルモノハ現行ノ選擧法ナドト其程度ニ於
  テ權衡ヲ保ッタガ爲ニ、斯ノ如キ要件ヲ餘儀ナクサシタノデア
  ルト云フ御說明ヲ爲サルカモ分ラヌト思フノデアリマス、併ナ
  ガラ吾々ノ先輩トシア居ル、法律ニ精通セラレル岡野法相ハ、
  御承知デアリマセウ、現行ノ選擧法、卽チ衆議院議員選擧
  法竝ニ市町村制若クハ府縣制ノ選擧規程ニ於キマシテモ、
  其選擧法ナルモノハ悉ク選擧ト云フ形式ニ依リマシテ、千
  万人中ヨリ一粒撰ヲスルト云フ意味ニ於テノ規定ヲサレテ
  居ルノデアリマス、然ルニ此陪審法ニ於ケル陪審員ノ選
  舉法ナルモノハ、盲滅法ノ籤シ引ヲ以テ擧ゲルト云フ方法
  デアリマス、盲滅法ノ立前ニアルカラ、或ハ熊公ガ出ルカ、八
  公ガ出ルカ、其點ニ於テハ如何ナル人ガ選出セラレルカ、-
  切分ラヌト云フ籤%引ノ形式ニ此法制ノ基礎ヲ採ラレテ居
  ルニモ拘ラズ、其陪審負タル所ノ資格ノ範〓ヲ、僅ニ三圓以
  上ノ納稅トセラレタト云フコトヽ僅ニ讀書キヲ爲シ得ル者
  ト云フ極テ廣汎ナル範圍ニ置カレタト云フ、北點ノ御處置
  ニ於キマシテハ、何ト致シマシテモ私共ハ了解スルコトガ出
  來ヌノデアリマス、第二ニハ籤引、所謂抽籤ノ形式デアリマ
  ス、此規定ハ本法ノ十七條、二十三條及二十七條ニ其大
  要ヲ揭ゲテアルノデアリマス、第十二條ニ於テ僅ニ讀書キヲ
  爲シ得ルト云フ極テ廣キ範圍ニ於テノ有權者ニ付キマシテ、
  其有權者ハ一市若ハ一町村ニ於キマシテハ二千人アルカ
  三千人アルカ、ソレハ悉ク有權者デアリマス、ソレニ依テテ陪
  審員ノ資格名簿ト云フモノヲ作ル、ソレハ千人ニナルカ、二
  千人ニナルカ、五千人ニナルカ、市町村ノ大小ニ依ッテ定マ
  ルノデアリマス、其資格名簿ノ中ニハ熊公モ八公モ入ッテ居
  ル、其廣イ選擧名簿ノ中ニ於テ、籤引ヲ以テ玆ニ陪審員ノ
  候補者ト云フモノヲ定メ、其貧乏畿ニ當ッタ者ヲ以テ陪審
  員ノ候補名簿ト云フモノヲ作ルノデアリマス、其陪容員ノ
  候補名簿ノ中カラ、又ゾロ茲ニ載引ヲ以テ三十六人ト云フ
  本當ノ陪審員ヲ造ルノデアリマス、卽チ本法ノ規定ハ廣キ
  範圍ニ於ケル有權者ノ中カラ、其人物ヲ銓衡ニ依ッテ選定
  スルト云フモノカ、若クハ一般投票ニ依フテ相當ノ人格ノ人
  ヲ引出スト云フコトナラバ是ハ問題ハナイノデアリマス、或
  ハ恐ラク私共ハ加藤總理ヤ或ハ陸軍大臣ナドハ、此陪審
  法案ハサウ云フ杜撰ナ法案デアルカト云ッテ初耳ノ如クニ
  御考ニナルカ知レマセヌケレドモ、事實此法案ノ内容ハ斯ノ
  如キ杜撰ナモノデアリマス、恐ラクハ滿場諸君ノ中ニ於テ
  ハ、此陪審法案ト云フモノガ、極テ民衆化セルモノナリト云
  フヤウナ立派ナ著物ヲ著セテ共鳴サレルガ故ニ、或ハ吾々ノ
  國民ノ相當權利ヲ擁護スルニ適切ナモノト考ヘテ居ルカモ
  知レマセヌケレドモ、此法案ノ實質ヲ段々〓究致シマスルト、
  熊公ガ出ルカ、八公ガ出ルカ、權兵衛ガ出ルカ、太郞兵衛ガ
  出ルカ、次郞兵衛ガ出ルカ、運天主義ノ籤引ニ依ッテ規定サレ
  テ居ルノデアリマス、私ハ斯ノ如キ規定ノ下ニ引出サレタ所
  ノ陪審員ノ下ニ、衣冠束帶ヲ正シテ居ル此森嚴ナル法廷ニ
  於テ、果シテ諸公ノ理想トセラルルヤウナ公正ナル裁判、而
  モ國民一般ガ信賴ヲ置クニ足ルベキ所ノ裁判ヲ構成スルコ
  トガ出來ルヤ否ヤト云フコトヲ疑フ者デアリマス、果シテ諸
  公ニ於カレマシテ、斯ノ如キ杜撰ナ規定ニ於テ期待セラルヽ
  如キ效果ヲ齋シ得ラルヽト云フ御自信ガアルカト云フコト
  ヲ承リタイノデアリマス、是ハ加藤總理ニ御尋スルノガ無理
  カハ分リマセヌカラ、是モ岡野法相ヲ煩ハシテ徹底セル御說
  明ガ願ヒタイト思フ、ソコデ私ガ今更申上ゲルマデモナク、之
  ヲ歐洲先進國ノ立法竝ニ習慣ニ依シテ見マスルト、何レモ委
  員制度ニ依シテ相當ノ人物ヲ銓衡スルカ、若クハ裁判所長
  ノ眼鏡ニ適ッタ所ノ者ヲ銓衡スルト云フ方法ニ依テテ出ルカ、
  若クハ一般投票ニ付シテ此陪審員ナル者ヲ取定メルト云
  フ方法ニ出テ居ルノデアリマシテ、本案ノ如ク〓引カラ出テ、
  錢引ニ終ル如キ杜撰ナル規定ヲ爲シテ居ル所ハ一箇國モ
  私寡聞ニシテ知ラスノデアリマス、而モ日本現在ノ最近發
  布セラレタ所ノ借地借家調停法案ニ於テハ、裁引ニ依テテ調
  停委員ヲ選定スルト云フ方法ハ執ッテ居ラナイノデアリマ
  ス、斯ノ如キ生キタル手本ガ現在日本ノ國ニアルニ拘リマセ
  ズ、何ヲ苦ンデ籤引ニ依ッテ尙且ツ此神聖ナル裁判ヲ左右
  セントスル陪審法案ナルモノヲ作ラントスル御考ニ執著セ
  ラルヽカ、其執著セラルヽ所ノ理由ヲ極テ明快ニ御說明ヲ
  願ヒタイト思フノデアリマス、陪審制度ヲ謳歌スル所ノ人ノ
  口ニ言ハセマスレバ、陪審制度ハ全ク司法制度ヲ民衆化ス
  ル所ノモノデアッテ、之ニ依ッテ初テ吾々ノ權利ノ保護ガ完璧
  ニサレルモノデアルト、極テ嬉シガラセノ言葉ヲ以テ世ノ中
  ノ人ニ吹聽サレマスケレドモ、私共斯ノ如キ內容ヲ持ッテ居
  ル所ノ法案ガ實行セラルヽト云フコトニナリマスレバ、是ハ
  司法制度ノ民衆化ニアラズシテ、寧口司法制度ノ俗惡化ナ
  リト考ヘル、第三ニハ私ハ是ハ加藤總理大臣ニ對シテ御伺
  致シタイト思フ、現內閣ハ行政竝ニ財政ノ整理緊縮ヲ標榜
  シテ立タレタ内閣デアリマス、其御標榜ノ下ニ、本年ノ豫算
  ハ餘程現內閣諸公ノ苦心ノ痕ガ見エテ居リマシテ、私共ハ
  少クトモ吾々庚申倶樂部ノ大部分ト云フモノハ、此現内閣
  ハ理想上カラ言ウタナラバ極テ不合理ナル變態内閣デアル
  ケレドモ、併ナガラ四六時中政爭ノ渦中ニ沒頭シテ居ル忌ム
  ベキ政黨内閣ヨリカ(ノウ〓〓)或程度ノ眞面目ナ仕事ヲスル
  ダラウト云フコトデ、實ハ或ル程度ノ同情ヲ以テ之ヲ迎ヘテ
  居ル者デアリマス、然ルニ私ハ本案ノ御提案ヲ見マシテ、實ハ
  現內閣ノ諸公ノ態度ニ對シマシテ、或ル程度ノ疑惑ヲ持ツ
  コトニナッタ、此法案ハ國民ノ何等負擔ヲ增スコトナシニ
  實施セラルヽコトデアレバ免ニ角、先程橫山君ガ數千万圓
  ヲ要スル所ノ是ハ施設デアルト云フコトデアリマシタケレド
  モ、昨年ノ議會ニ於キマシテ政府委員ノ御說明ニ依リマス
  レバ設備費ニ於テ三四百万圓ヲ要スル、ソレカラ年々歲々
  經常費トシテ三百四五十万國ノ金ヲ要スルト云フ御說明
  デアッタノデアリマス、設備費トシテ三四百万圓及經常費ニ
  於テ三百四五十万圓是ハ決シテ少イ金デナイト思ヒマス
  ガ、現內閣ノ財政計畫ノ上カラ申シマシテ、此三百四五十
  万圓若クハ三四百万圜ト云フモノハ、恐ラクハ之ヲ繰出ス
  ト云フコトニ付テ、血ノ出ルヤウナ思ヲシテ繰出サレル目論
  見ヲサレタ事デアラウト思ヒマスガ、斯ノ如キ苦シイ思ヲシ
  テ迄モ此法案ヲ此議會ニ御出シニナラネバナラヌ必要ハ果
  シテ何處ニ在ルカト云フコトヲ御尋致シタイノデアリマス、
  恐ラク私ハ是ハ法曹界ノ多年ノ懸案デアルカラ、此機會ニ
  之ヲ實施シテ見タイト云フ御考、又先程岡野法相ノ御說
  明ノ如ク人文ノ發達上此提案ハ餘儀ナクサレタモノデアル
  ト云フ御說明デアリマスケレドモ、人文ガ如何ナル程度ニ發
  達シタガ故ニ、斯ノ如キ杜撰ナル、又斯ノ如キ負擔ノ重大ナ
  ル陪審法案ヲ此議會ニ御提出ニナラナケレバナラヌト云フ
  理由ハ何處ニ在ルカ、私ハ考ヘル、此法案ハ法曹界多年ノ
  懸案デアルト云フコトハ事實相違アリマセヌケレドモ、是ガ
  天下ノ輿論デアルト云フコトハ非常ナ間違デアルト云フコ
  トヲ申上ゲル(ノウ〓〓)現ニ失禮ナガラ私共ノ居ル商工都
  市ノ中心デアル大阪ノ辯護士ニ於キマシテハ、其大多數ヲ
  以チマシテ本案ニハ反對ノ答申ヲ致シタノデアリマス、其他
  全國ノ辯護士大會ニ於キマシテモ、多數本案ニ反對ノ意
  見ヲ表シタ者モアルノデアリマス、是ガ法曹界一部ノ意見デ
  アルト云フコトハ否定致シマセヌケレドモ、是ガ法曹界全部
  ノ輿論デアル若クハ是ガ國民ノ興望デアルト一云フコトハ以
  テノ外ノ事デアリマス、殊ニ私共カラ考ヘルト云フト、此陪
  審法ノ施設ト云フコトヲ謳歌スル其聲ノ中ニハ、或ハ營業
  上ノ利害ト云フモノカラ出發シタ所ノ聲モ尠クハナイト云
  フコトヲ御了解ヲ願ハナケレバナラヌ(ノウ〓〓)之ヲ私ガ露
  骨ニ申シマスナラバ、熊モ八モ-無知無識ナル熊モ八モ竝
  ンデ居ル此陪審ノ裁判ニ於テハ、其熊ヤ八ヲ煙ニ卷イテ、而
  シテ其神聖ナル栽判ヲグチヤ〓〓ニシテ、而シテ一面ニ於テ
  自分ノ營業上ニ於ケル成功謝金ヲ夢ミテ居ル者モ尠クナ
  イト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌ(「ノウ〓〓」「コラ馬鹿野
  郎」「馬鹿トハ何ダ」ト呼フ者アリ)默レ、斯ノ如キ法案ニ對
  シマシテ、是ガ輿論デアルト云フコトハ以テノ外デアル、此陪
  審法ナルモノト、サウシテ法曹界一部ノ後援ナルモノト、國民
  ノ輿論ナルモノトハ全然沒交涉デアルト云フコトヲ御了解
  ヲ願ヒタイ、特ニ私御尋シタイノハ、財政緊縮ヲ圖ル現内閣
  ノ下ニ於キマシテ、斯ノ如キ澤山ノ全ノ要ル法案ヲ今日直
  ニ御出シニナラナケレバナラヌト云フコトハ何處ニ在ルカ、此
  陪審制度ナルモノハ現内閣ノ認メラレタ如ク、今日差迫ッタ
  ル急迫ノ案件デアルト御認ニナッタ理由ガ果シテ何處ニ在
  ルカト云フコトヲ、私ハ加藤首相ニ御尋致シタイト思ヒマス、
  ソレヨリカ岡野法相モ御承知ノ通リ、アナタノ部下ニハ澤山
  ノ-之ヲ行政官ニ比較ヲ致シマスレバ其待遇ノ冷カニ泣イ
  テ居ル所ノ司法官ガ澤山アル、可憐ナル栽判書記ナル者ガ
  如何ニ此待遇ノ冷カナル爲ニ泣イテ居ルデセウカ、ソレガ爲
  ニハ今日〓腕ナル司法官、練達ナル栽判書記ガ相率井テ民
  間ニ吸收サレツヽアル所ノ此形勢ハ、是ハ諸公ハ何ト御覽
  ニナッテ居ルノデアリマスカ、司法制度ヲ改善セントスルナラ
  バ、先ヅ司法省内ニ於ケル其部下ノ素質ヲ改善スルコトガ
  急務中ノ急務ナリト考ヘルノデアリマスガ、斯ノ如キ練達ナ
  ル司法官、裁判書記ガ相率井テ民間ニ吸收サレル形勢ヲ、
  之ヲ改訂スルト云フ事柄ハ、今ノ熊公八公ノ如キ陪審法デ
  以テ救濟サレルト御考ニナリマスカ、私ハ現内閣ノ此御提
  案ト云フモノハ、全ク本末輕重ヲ誤リタル所ノ御提案ナリ
  ト考ヘルノデアリマスガ、玆ニ明晰ナル御說明ヲ願フ爲ニ登
  壇シタ次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=10

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• 011・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　加藤內閣總理大臣
  〔國務大臣男爵加藤友三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=11

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• 012・加藤友三郎

  ○國務大臣(男爵加藤友三郞君)　只今ノ御質問中、財
  政緊縮ノ此場合ニ何故斯樣ナル金ノ要ル法案ヲ出シタカ、
  之ニ對シテ私ニ御尋デアリマス、此點ハ私ヨリ御答ヲ致シマ
  シテ、其他細目ニ亙リマシテハ司法大臣ヨリ御答致シタイ
  ト思ヒマス、勿論陪審法案ヲ實行致シマスルノニハ金ガ要
  リマセウ、併ナガラ陪審法案ハ多年ノ問題デアル、且ツ昨年
  ハ本院ヲ通過シタ問題デアリマス、此問題ハ國民ノ輿論デ
  ナイト云フ御說デアリマスガ、果シテ左様デアリマスルカ如
  何デアリマスカ(ヒヤ〓〓)旣ニ昨年本院ヲ大多數ヲ以テ通
  過シタト私ハ承知致シテ居リマス(ヒヤ〓〓)左樣ナル意味
  ニ於テ本案ガ輿論ニ非ズト云フコトハ果シテ言得ルヤ否ヤ、
  甚ダ私ハ此點ニ付テ疑點ヲ持ヲテ居ルノデアリマス、故ニ多
  少ノ金ヲ出スコトハ已ムヲ得ナイ事デ、斯樣ナ意味ニ於テ
  本法案ヲ實施致シマスルコトガ司法大臣ノ申ス如ク必要
  デアルト認メマシタ、財政緊縮ノ場合デハアリマスケレドモ、
  忍ンデ之ヲ實行スルコトガ可ナリト認メテ提案シタ次第デ
  アリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=12

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• 013・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岡野司法大臣
  〔國務大臣岡野敬次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=13

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• 014・岡野敬次郎

  ○國務大臣(岡野敬次郞君)　先刻ノ森下君ノ御質問ノ
  第一及第二ニ對シテ、私ヨリ簡單ニ御答ヲ致シマスル、第
  一ノ御質問ノ點ハ、本案ノ第十二條ノ陪審員ノ資格トシテ
  定メタ所ノモノガ洵ニ低イ、所謂智的要件ハモウ少シ嚴重
  ニシタラバ宜カラウ、其方ガ適當デアラウト云フ御意見ノヤ
  ウニ承リマシタノデアリマス、之ニ就キマシテハ此第十二條
  ニ明記シテアリマスル通リ固ヨリ條件ヲ以テ足レリトスルノ
  デアリマスガ、斯ノ如キ條件ヲ以テ足レリトシタル所以ハ、陪
  審ト云フ制度ガ國民ノ常識ニ訴ヘルト云フコトヲ以テ眼
  目ト致シテ居ルノデアリマス、成ベク餘リ重イ條件ヲ加ヘナ
  イ方ガ陪審制度ノ趣意ニ適フモノト政府ハ考ヘテ居ルノデ
  アリマス、ソレカラ第二ノ御尋ノ點ハ、本案ノ十七條デアッタ
  カ、卽チ其陪審員候補者ト云フ者ハ之ヲ抽籤ニ依ッテ定メ
  ルト云フコトニ定ッテ居ルガ、何カ他ニ適當ノ方法ハナカラウ
  カ、籤ニ當ッタ者ハ甚ダ迷惑デアル、而シテ熊公八公ガ、何レ
  ガ當ルカ分ラナイ、陪審員ノ候補者ノ低級ニナル虞ガアリハ
  シナイカト云フ御心配ノヤウデアリマス、是ハ森下君ノ御質
  問ノ中ニモゴザイマシタ如ク、此抽籤ノ方法ニ依ルト云フコ
  トハ、幾分カ此陪審員ノ素質ヲ低メルト云フ嫌ハ確ニアラ
  ウト私ハ思フノデアリマス、併ナガラ此選定ノ公平ヲ期スル
  上ニ於キマシテハ、抽籤ガ極テ適當デアルト信ズルノデアリ
  マス、既ニ十二條ニ於テ國民ノ常識ニ訴ヘルト云フ意味ヲ
  以テ、餘リ嚴重ナル條件ガ定メテナイノデアリマス以上ハ、
  寧口此候補者ノ選定ハ、他ノ言葉ヲ以テ申セバ、素質ガ下
  ルトモ極テ公平ナル方法ニ依ル方ガ、却テ陪審ノ評決ヲシ
  テ適當ナラシムル所以デアラウト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=14

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• 015・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　日程第二、右議案ノ審査ヲ付
  託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
  選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=15

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• 016・高見之通

  ○高見之通君　委員ノ數ハ特ニ十八名トシ、議長ニ於テ
  指名セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=16

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• 017・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=17

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• 018・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ動
  議ノ如ク決シマシタ、日程第三、恩給法案第一讀會ヲ開キ
  マス、加藤內閣總理大臣
  第三恩給法案(政府提出)第一讀會
  恩給法案
  恩給法
  第一章總則
  第一條公務員及之ニ準スヘキ者竝其ノ遺族ハ本法
  ノ定ムル所ニ依リ恩給ヲ受クルノ權利ヲ有ス
  第二條本法ニ於テ恩給トハ普通恩給、增加恩給、
  時恩給、傷病賜金、扶助料、一時扶助料及一時給與
  金ヲ謂フ
  普通恩給、增加恩給及扶助料ハ年金トシ一時恩給、
  傷病賜金、一時扶助料及一時給與金ハ一時金トス
  第三條年金タル恩給ノ給與ハ之ヲ給スヘキ事由ノ生
  シタル月ノ翌月ヨリ之ヲ始メ權利消滅ノ月ヲ以テ終
  ル
  第四條恩給年額竝一時恩給及一時扶助料ノ額ノ圓
  位未滿ハ之ヲ圓位ニ滿タシム
  第五條恩給ヲ受クルノ權利ハ之ヲ給スヘキ事由ノ生
  シタル日ヨリ七年間請求セサルトキハ時效ニ因リテ消
  滅ス
  第六條普通恩給又ハ增加恩給ヲ受クルノ權利ヲ有ス
  ル者退職後一年內ニ再就職スルトキハ前條ノ期間ハ
  再就職ニ係ル官職ノ退職ノ日ヨリ進行ス
  前項ノ規定ハ普通恩給又ハ增加恩給ヲ受クルノ權
  利ヲ有スル者退職後一年内ニ宮內官トシテ就職シタ
  ル場合ニ付之ヲ準用ス
  第七條時效期間滿了前二十日內ニ於テ天災其ノ他
  避クヘカラサル事變ノ爲請求ヲ爲スコト能ハサルトキ
  ハ其ノ妨碍ノ止ミタル日ヨリ二十日內ハ時效完成セ
  ス
  時效期間滿了前六月內ニ於テ前權利者生死若ハ所
  在不明ノ爲又ハ未成年者若ハ禁治產者法定代理人
  ヲ有セサル爲請求ヲ爲スコト能ハサルトキハ請求ヲ爲
  スコトヲ得ルニ至リタル日ヨリ六月內ハ時效完成セス
  時效期間滿了前ニ適法ニ請求書ヲ發シタルコトノ通
  信官署ノ公證アルトキハ時效期間內ニ權限アル官公
  署ニ到達セサルモ之ヲ時效期間內ニ到達シタルモノト
  看做ス
  第八條公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族互ニ
  通算セラレ得ヘキ在職年又ハ同一ノ傷病ヲ理由トシ
  テ二以上ノ恩給ヲ併給セラルヘキ場合ニ於テハ其ノ
  者ノ選擇ニ依リ其ノ一ヲ給ス但シ特ニ併給スヘキコト
  ヲ定メタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
  公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族互ニ通算セ
  ラレ得ヘキ在職年又ハ同一ノ傷病ヲ理由トシテ本法
  ニ依ル恩給ト宮内官ノ恩給規程ニ依ル恩給トヲ給セ
  ラルヘキ場合ニ於テ宮內官ノ恩給規程ニ依ル恩給ヲ
  給セラレタルトキハ本法ニ依ル恩給ハ之ヲ給セス
  第九條年金タル恩給ヲ受クルノ權利ヲ有スル者左ノ
  各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ權利消滅ス
  -死亡シタルトキ
  二死刑又ハ無期若ハ六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ
  刑ニ處セラレタルトキ
  三國籍ヲ失ヒタルトキ
  第十條恩給權者死亡シタルトキハ其ノ生存中ノ恩給
  ニシテ給與ヲ受ケサリシモノハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
  之ヲ當該公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ遺族ニ給シ遺
  族ナキトキハ死亡者ノ相續人ニ給ス
  第十一條恩給ヲ受クル權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ擔保ニ
  供スルコトヲ得ス
  恩給ヲ受クルノ權利ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス但シ國
  稅徵收法又ハ國稅徵收ノ例ニ依ル場合ハ此ノ限ニ在
  ラス
  第十二條恩給ヲ受クルノ權利ハ勅令ヲ以テ定ムルモ
  ノヲ除クノ外內閣恩給局長之ヲ栽定ス
  第十三條行政上ノ處分ニ因リ恩給ニ關スル權利ヲ侵
  害セラレタリトスル者ハ處分後一年內ニ內閣恩給局
  長ニ具申シ其ノ栽決ヲ求ムルコトヲ得
  前項ノ栽決ニ不服アル者ハ裁決ヲ受ケタル日ヨリ六
  月內ニ内閣總理大臣ニ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出
  訴スルコトヲ得
  第一項ノ具申ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十四條内閣總理大臣及內閣恩給局長ノ裁決ハ
  關係官廳ヲ覊束ス
  第十五條內閣總理大臣第十三條第二項ノ訴願ノ裁
  決ヲ爲ス場合ニ於テハ恩給審査會ニ諮問スヘシ
  恩給審査會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十六條恩給ノ負擔ハ左ノ區分ニ依ル
  -文官及準文官竝其ノ遺族ノ恩給ハ國庫之ヲ負
  擔ス但シ文官ニシテ國庫ヨリ俸給ヲ受ケサル者
  ノ一時恩給ハ最終ニ之ニ俸給ヲ給シタル者之ヲ
  負擔ス
  二軍人及準軍人竝其ノ遺族ノ恩給ハ國庫之ヲ負
  擔ス
  三朝鮮、臺灣及樺太ニ於ケルモノヲ除クノ外公立ノ
  小學校、實業補習學校、幼稚園及盲啞學校其
  ノ他ノ小學校ニ類スル各種學校ノ〓育職員及
  準〓育職員竝其ノ遺族ノ恩給ハ其ノ學校又ハ
  幼稚園ノ所在地ヲ管轄スル府縣又ハ之ニ準スヘ
  キ地方經濟之ヲ負擔ス
  四前號ニ規定スル者以外ノ〓育職員及準〓育職員
  竝其ノ遺族ノ恩給ハ國庫之ヲ負擔ス但シ在外指
  定學校職員ノ一時恩給ヲ除クノ外一時恩給ハ最
  終ニ之ニ俸給又ハ給料ヲ給シタル者之ヲ負擔ス
  五警察監獄職員及其ノ遺族ノ恩給ハ最終ニ之ニ
  俸給又ハ給料ヲ給シタル者之ヲ負擔ス
  六待遇職員及其ノ遺族ノ恩給ハ最終ニ之ニ俸給
  又ハ給料ヲ給シタル者之ヲ負擔ス但シ官國幣社
  ノ神職及其ノ遺族ノ恩給ハ國庫之ヲ負擔ス
  第十七條前條第一號、第二號又ハ第四號ニ揭クル公
  務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ在職年中ニ第三號ニ揭ク
  ル公務員若ハ之ニ準スへキ者ノ在職年又ハ第五號若
  ハ第六號ニ掲クル公務員ニシテ國庫ヨリ俸給ヲ受ケ
  サルモノノ在職年ヲ通算シテ國庫ヨリ恩給ヲ給スル場
  合ニ於テハ國庫ハ通算セラルヘキ在職年ニ應シ勅令
  ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分擔ヲ第三號ニ揭クル
  公務員若ハ之ニ準スヘキ者ニ恩給ヲ給スル者又ハ第
  五號若ハ第六號ニ揭クル公務員ニ俸給ヲ給スル者ニ
  對シ請求スルコトヲ得
  前條第三號、第五號若ハ第六號ニ揭クル公務員若ハ
  之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ニ恩給ヲ給スヘキ國庫
  以外ノ者ハ其ノ恩給ノ基礎在職年中ニ第一號、第二
  號若ハ第四號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ
  在職年又ハ第五號若ハ第六號ニ揭クル公務員ニシテ
  國庫ヨリ俸給ヲ受クルモノノ在職年ヲ通算シテ恩給
  ヲ給スル場合ニ於テハ國庫ニ對シ其ノ通算セラルヘキ
  在職年ニ應シ勅令ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分
  擔ヲ請求スルコトヲ得
  前條第三號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ
  其ノ遺族ニ恩給ヲ給スへキ者ハ其ノ恩給ノ基礎在職
  年中ニ他府縣又ハ之ニ準スヘキ經濟ノ管轄內ニ於テ
  在職シタル第三號ニ揭クル公務員又ハ之ニ準スヘキ
  者トシテノ在職年ヲ含ム場合ニ於テハ當該他府縣又
  ハ之ニ準スヘキ經濟ニ對シ其ノ合算セラルル在職年ニ
  應シ勅令ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分擔ヲ請求ス
  ルコトヲ得
  前項ノ規定ハ前條第四號若ハ第五號ニ揭クル公務
  員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ノ恩給ノ分擔
  及同條第三號、第五號若ハ第六號ニ揭クル公務員若
  ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ノ恩給相互ノ分擔ニ
  付之ヲ準用ス
  第十八條國庫ヨリ恩給ヲ給スルモ俸給ヲ給セサル公
  務員ニ俸給ヲ給スル者ハ其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相當
  スル金額ヲ國庫ニ納付スヘシ但シ在外指定學校及國
  庫ノ支辨ニ屬スル地方費ヲ以テ維持スル公立學校ニ
  付テハ此ノ限ニ在ラス
  國庫以外ノ經濟ヨリ恩給ヲ給スルモ俸給ヲ給セサル
  公務員ニ俸給ヲ給スル者ハ其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相
  當スル金額ヲ其ノ經濟ニ納付スヘシ
  前項ノ經濟ニ對シテハ國庫ハ前項ニ規定スル納金額
  ノ二分ノ一ニ相當スル金額ヲ交付ス
  第二章公務員
  第一節通則
  第十九條本法ニ於テ公務員トハ文官、軍人、〓育職
  員及警察監獄職員竝第二十四條ニ揭クル待遇職員
  ヲ謂フ
  本法ニ於テ公務員ニ準スヘキ者トハ準文官、準軍人
  及準〓育職員ヲ謂フ
  第二十條文官トハ武官又ハ宮內官以外ノ官ニ在ル
  者ヲ謂フ但シ勅令ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外國庫ヨ
  リ俸給ヲ給セサル官ニ在ル者ハ此ノ限ニ在ラス
  準文官トハ高等文官ノ試補、判任官見習及國庫ヨリ
  俸給ヲ給セサル官ニ在ル者ニシテ前項但書ノ規定ニ
  基ク勅令ヲ以テ指定セラレサルモノヲ謂フ
  第二十一條軍人トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
  -陸軍又ハ海軍ノ現役、豫備役、後備役又ハ補充
  兵役ニ在ル者
  二國民兵役ニ在ル者ニシテ召集セラレタルモノ及
  志願ニ依リ國民軍ニ編入セラレタル者
  準軍人ナハ左ニ掲クル者ヲ謂フ
  陸軍ノ見習士官及海軍ノ候補生
  二勅令ヲ以テ指定スル陸軍又ハ海軍ノ學生生徒
  第二十二條〓育職員トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
  公立ノ學校若ハ圖書館又ハ在外指定學校ノ職
  員ニシテ國庫ヨリ俸給ヲ給セサル官ニ在ルモノ及
  判任官以上ノ待遇ヲ受クルモノ
  二府縣立師範學校長
  前項ノ在外指定學校トハ在外國本邦人ノ爲ニ設置
  シタル學校ニシテ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ指定シ
  タルモノヲ謂フ
  浮教育職員トハ官立又ハ公立ノ學校ノ職員ニシテ勅
  合ヲ以テ指定スルモノヲ謂フ
  第二十三條警察監獄職員トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
  -警部補、巡査、陸軍警査、海軍警査、貴族院守
  衞及衆議院守衞
  二看守、女監取締、陸軍監獄看守及海軍監獄看
  守
  三判任官ノ待遇ヲ受クル消防手
  第二十四條待遇職員トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
  -判任官以上ノ待遇ヲ受クル神宮司廳職員、神
  宮神部署職員及官國幣社ノ神職
  二判任官以上ノ待遇ヲ受クル監獄ノ保健技師、保
  健技手、〓誨師、〓師、作業技手、感化院職員
  及矯正院職員
  三地方待遇職員令ニ依リ判任官以上ノ待遇ヲ受
  クル者ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ
  四前三號ニ揭クル者ヲ除クノ外國庫ヨリ倭給又ハ
  給料ヲ給スル待遇職員ニシテ勅令ヲ以テ指定ス
  ルモノ
  第二十五條本法ニ於テ就職トハ左ノ各號ノ一ニ該當
  スルコトヲ謂フ
  -文官ニ在リテハ任官但シ終身官タル文官ニ在リ
  テハ任官ノ外復職
  二現役軍人ニ在リテハ任官又ハ入營若ハ入團、非
  現役軍人ニ在リテハ召集ニ依ル部隊編入又ハ
  志願ニ依リ軍人タル勒務ニ就クコト
  三〓育職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ任官、其
  ノ他ノモノニ在リテハ任命
  四警察監獄職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ任
  官、其ノ他ノモノニ在リテハ任命但シ巡査若ハ判
  任官ノ待遇ヲ受クル消防手警部補ニ任シ又ハ警
  部補巡査若ハ判任官ノ待遇ヲ受クル消防手ニ
  就職スルトキハ之ヲ轉任ト看做ス
  五待遇職員ニ在リテハ任命
  第二十六條本法ニ於テ退職トハ左ノ各號ノ一ニ該
  當スルコトヲ謂フ
  -文官ニ在リテハ免官、退官又ハ失官但シ終身官
  タル文官ニ在リテハ免官、退官、失官ノ外退職
  二現役軍人ニ在リテハ現役ヲ離ルルコト非現役軍
  人ニ在リテハ召集セラレタル者ニ付テハ召集解
  除志〓ニ依リ軍人タル勤務ニ服スル者ニ付テハ解
  職
  三〓育職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ免官、退
  官又ハ失官、其ノ他ノモノニ在リテハ免職、退職、
  解職又ハ失職
  四警察監獄職員ニシテ官吏タルモノニ在リテ免官、
  退官又ハ失官、其ノ他ノモノニ在リテハ免職退
  職又ハ失職但シ警部補他ノ官職ニ轉シ又ハ他ノ
  官ヨリ警部補ニ轉シタルトキハ之ヲ退職ト看做ス
  五待遇職員ニ在リテハ免職、退職又ハ失職
  第二十七條第二十五條第一號及前條第一號ノ規
  定ハ準文官ノ就職及退職ニ付之ヲ準用ス第二十五
  條第三號及前條第三號ノ規定ハ準〓育職員ノ就職
  及退職ニ付之ヲ準用ス
  準軍人ノ就職トハ戰務、戒嚴地境內ノ勤務又ハ外國
  ノ鎭戌ニ服スルコトヲ謂ヒ退職トハ其ノ勤務ヲ終ルコ
  トヲ謂フ
  第二十八條公務員ノ在職年ハ就職ノ月ヨリ之ヲ起
  算シ退職又ハ死亡ノ月ヲ以テ終ル
  退職シタル後再就職シタルトキハ前後ノ在職年月數
  ハ之ヲ合算ス但シ一時恩給ノ基礎ト爲ルヘキ在職年
  ニ付テハ前ニ一時恩給ノ基礎ト爲リタル在職年ノ年
  月數ハ之ヲ合算セス
  退職シタル月ニ於テ再就職シタルトキハ再在職ノ在
  職年ハ再就職ノ月ノ翌月ヨリ之ヲ起算ス
  第二十九條公務員二以上ノ官職ヲ併有スル場合ニ
  於テ其ノ重複スル在職年ニ付テハ年數計算ニ關シ利
  益ナル一官職ノ在職年ニ依ル
  第三十條軍人ノ恩給權ニ付其ノ在職年ヲ計算スル
  場合ニ於テハ十一年ニ達スル迄ハ軍人又ハ警察監獄
  職員以外ノ公務員トシテノ在職年ハ其ノ四分ノ三ニ
  當ル年月數ヲ以テ之ヲ計算ス
  第三十一條警察監獄職員ノ恩給權ニ付其ノ在職年
  ヲ計算スル場合ニ於テハ十年ニ達スル迄ハ警察監獄
  職員又ハ軍人以外ノ公務員トシテノ在職年ハ其ノ三
  分ノ二ニ當ル年月數ヲ以テ之ヲ計算ス
  第三十二條公務員其ノ職務ヲ以テ從事シタルトキハ
  左記各號ノ規定ニ依リ加算ス
  -戰地ニ在リテ戰務ニ服シタルトキハ從軍期間ノ
  一月ニ付三月
  二戰地外ニ在リテ戰務ニ服シタルトキハ其ノ期間
  ノ一月ニ付一月半
  前項ノ加算年ハ内國戰ニ在リテハ其ノ二分ノ一トス
  前二項ノ規定ハ公務員其ノ醫務ヲ以テ戰爭ニ準スヘ
  キ事變ニ際シ戰務ニ服シタル場合ニ付之ヲ準用ス
  戰爭ノ期間及地域、戰務ノ範圍竝戰爭ニ準スヘキ事
  變ハ勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十三條公務員外國ノ交戰又ハ擾亂ノ地域內ニ
  於テ危險ヲ顯ミス其ノ職務ヲ以テ勤務シタルトキハ在
  勤期間ノ一月ニ付二月ヲ加算ス
  前項ノ外國ノ交戰又ハ授亂ノ地域及期間ハ勅裁ヲ
  以テ之ヲ定ム
  第三十四條公務員戒嚴地境内ニ於テ危險ヲ顯ミス
  其ノ職務ヲ以テ勤務シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付
  二月ヲ加算ス
  前項ノ場合ニ於テ其ノ勤務ノ場所カ內國ナルトキハ
  加算年ハ其ノ二分ノ一トス
  第三十五條公務員外國鎭戌ニ服シタルトキハ其ノ期
  間ノ一月ニ付一月半ヲ加算ス
  第三十六條航空機乘員タル公務員其ノ職務ヲ以テ
  航空勤務ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付二月
  以內ヲ加算ス
  第三十七條潜水艦乗員タル公務員其ノ職務ヲ以テ
  在役潜水艦ノ勤務ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月
  ニ付一月ヲ加算ス
  第三十八條公務員其ノ職務ヲ以テ邊陬又ハ不健康
  ノ地域ニ引續キ一年以上在勁シタルトキハ其ノ期間
  ノ一月ニ付一月以內ヲ加算ス不健康ナル業務ニ引續
  キ一年以上服務シタルトキ亦同シ
  前項ノ地域相互間ノ轉勤ハ之ヲ引續キタル在勤ト看
  做ス
  第一項ノ地域及業務ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十九條海上勤務ニ服スル公務員其ノ職務ヲ以
  テ遠洋航海ヲ爲シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付半
  月ヲ加算ス
  前項ノ遠洋航海ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第四十條第三十二條乃至前條ノ規定ニ依リ附スヘ
  キ加算年ハ在職年ノ計算ニ付勅令ノ定ムル所ニ依リ
  實在職年ニ從トシテ之ヲ算八ス
  加算年ヲ附スヘキ基礎在賊年ハ加算事由ノ生シタル
  月ヨリ之ヲ起算シ其ノ事由ノ止ミタル月ヲ以テ終ル
  二種以上ノ加算年ヲ附セラルヘキ期間ニ對シテハ最
  モ利益ナルモノニ依リ其ノ一ヲ附ス
  第四十一條左ニ揭クル年月數ハ在職年ヨリ之ヲ除算ス
  ー普通恩給又ハ增加思給ヲ受クルノ權利消減シタ
  ル場合ニ於テ其ノ恩給権ノ基礎ト爲リタル在職年
  二第五十一條ノ規定ニ依リ公務員カ恩給ヲ受ク
  ルノ資格ヲ失ヒタル在職年
  三在職中六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラ
  レタル場合ニ於テハ其ノ月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又
  ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄ノ在職年
  月數但シ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付
  テハ此ノ限ニ在ラス其ノ言渡ヲ取消サレタルトキ
  ハ其ノ取消ノ月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ
  受クルコトナキニ至リタル月迄ノ在職年月數
  四公務員ノ不法ニ其ノ職務ヲ離レタル月ヨリ職務
  ニ復シタル月迄ノ在職年月數
  五宮內職員トシテノ在職年月數ニシテ宮內官ノ恩
  給規程ニ依リ除算セラルヘキモノ
  第四十二條左ニ掲クル年月數ハ之ヲ在職年ニ通算ス
  -宮内官ノ恩給規程ニ依リ宮内官恩給權ノ基礎
  ト爲ルヘキ宮内職員トシテノ在職年月數
  二準軍人ノ在職年月數
  三高等文官ノ試補又ハ判任官見習引續キ公務員
  ト爲リタルトキハ公務員トシテ就職ニ接續スル其
  ノ勤續年月數ノ二分ノ一ニ相當スル年月數
  四準〓育職員引續キ〓育職員ト爲リタルトキハ〓
  育職員トシテノ就職ニ接續スル其ノ勤續年月數
  ノ二分ノ一ニ相當スル年月數
  第二十八條、第二十九條及第三十一條ノ規定ハ前
  項ノ規定ニ依リ在職年ニ通算セラルヘキ年月數ノ計
  算ニ、第三十條ノ規定ハ前項第一號第三號又ハ第
  四號ノ規定ニ依リ在職年ニ通算セラルヘキ年月數ノ
  計算ニ付之ヲ準用ス
  第四十三條第三十二條乃至第四十條ノ規定ハ準軍
  人ノ在職年ノ計算ニ付之ヲ準用ス
  第四十一條ノ規定ハ前條第一項第二號乃至第四號
  ノ規定ニ依リ在職年ニ通算セラルヘキ年月ニ付之ヲ
  準用ス
  第四十四條本法ニ於テ俸給トハ本俸及之ニ準スヘキ
  モノヲ謂フ
  本体ニ準スヘキモノハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  公務員二以上ノ官職ヲ併有シ各官職ニ付俸給ヲ給
  セラルル場合ニ於テハ俸給額ヲ合算シタルモノヲ以テ
  其ノ者ノ俸給額トス
  第四十五條公務員所定ノ年數在職シ、退職シタルト
  キハ之ニ普通恩給又ハ一時恩給ヲ給ス
  第四十六條公務員公務ノ爲傷病ヲ受ケ又ハ疾病ニ
  罹リ不具癈疾ト爲リ失格原因ナクシテ退職シタルト
  キハ之ニ普通恩給及增加恩給ヲ給ス
  公務員公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ失格原
  因ナクシテ退職シタル後五年內ニ之カ爲不具癈疾ト
  爲リ又ハ其ノ程度增進シタル場合ニ於テ其ノ期間內
  ニ請求シタルトキハ新ニ普通恩給及增加恩給ヲ給シ
  又ハ現ニ受クル增加恩給ヲ不具〓疾ノ程度ニ相應ス
  ル增加恩給ニ改定ス
  前項ノ期間ヲ經過シタルトキト雖恩給審査會ニ於テ
  不具痿疾カ公務ニ起因シタルコト顯著ナリト議決シタ
  ルトキハ決議後之ニ相當ノ恩給ヲ給シ又ハ改定ス
  公務員公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具癈
  疾ト爲ルモ公務員ニ重大ナル過失アリタルトキハ前三
  項ニ規定スル恩給ヲ給セス
  第四十七條前條ノ規定ハ準文官陸軍ノ見習士官海
  軍ノ候補生以外ノ準軍人又ハ準〓育職員ニシテ在
  職中公務ノ爲傷痍ヲ受ヶ疾病ニ罹リタルモノ及陸軍
  ノ見習士官又ハ海軍ノ候補生ニシテ公務ノ爲傷痍ヲ
  受ケ又ハ疾病ニ罹リタルモノニ付之ヲ準用ス
  第四十八條公務員左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ公
  務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルモノト看做ス
  -勅令ヲ以テ指定スル地域ニ在勤中其ノ地ニ於テ
  流行病ニ罹リタルトキ
  二戰地ニ於テ又ハ公務旅行中流行病ニ罹リタルト
  キ
  三公務員タル特別ノ事情ニ關職シテ生シタル不慮
  ノ災厄ニ因リ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ恩給審
  査會ニ於テ公務ニ起因シタルト同視スヘキモノト
  議決セラレタルトキ
  前項ノ流行病ノ種類ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  前二項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ付之ヲ準用ス
  第四十九條公務傷病ノ原因ヲ分ツテ戰闘又ハ戰鬪
  ニ準スヘキ公務ト普通公務トス
  戰鬪ニ準スヘキ公務ノ範圍及公務傷病ニ因ル不具
  癈疾ノ程度竝〓育職員、警察監獄職員、待遇職員、
  準文官、準軍人及準〓育職員ノ公務傷病ニ關スル規
  定ノ適用ニ付テノ階等ハ効令ヲ以テ之ヲ定ム
  第五十條裁定官廳ハ增加恩給ノ裁定ヲ爲スニ當リ
  將來不具癈疾ノ囘復シ又ハ其ノ程度低下スルコトア
  ルヘキコトヲ認メタルトキハ五年間之ニ普通恩給及增
  加恩給ヲ給ス
  前項ノ期間滿了ノ六月前迄傷痰疾病囘復セサル者
  ハ再審査ヲ請求スルコトヲ得再審査ノ結果恩給ヲ給
  スヘキモノナルトキハ之ニ相當ノ恩給ヲ給ス
  第五十一條公務員左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其
  ノ引續キタル在職ニ付恩給ヲ受クルノ資格ヲ失フ
  -懲戒、懲罰又ハ〓員免許狀褫奪ノ處分ニ因リ退
  職シタルトキ
  二在職中陸軍刑法若ハ海軍刑法ニ依リ死刑、懲役
  刑若ハ一年以上ノ禁錮ノ刑ニ處セラレ又ハ其ノ
  他ノ法令ニ依リ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルト
  キ
  第二十六條第四號但書ノ規定ハ前項ノ規定ノ適用
  ニ關シテハ之ヲ適用セス
  第五十二條公務員ニシテ其ノ退職ノ當時仍他ノ公
  務員トシテ在職スルモノニ付テハ總テノ公務員ヲ退職
  スルニ非サレハ之ニ恩給ヲ給セス
  公務員ニシテ退職ノ當日又ハ翌日他ノ公務員ニ就職
  シ之ヲ勤續ト看做サルルモノニ付テハ後ノ公務員ヲ退
  職スルニ非サレハ之ニ恩給ヲ給セス
  公務員ニシテ恩給ヲ給セサル官職ニ轉シ退職シタルモ
  ノニ付テハ其ノ轉任ヲ退職ト看做シ之ニ恩給ヲ給ス
  第五十三條公務員ニシテ其ノ退職ノ當時仍第四十
  二條第一項第一號ニ規定スル宮內職員トシテ在職
  スルモノニ付テハ木法ニ依ル恩給ハ之ヲ給セス
  第五十四條普通恩給ヲ受クル者再就職シ失格原因
  ナクシテ退職シ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ恩
  給ヲ改定ス
  -再就職後在職一年以上ニシテ退職シタルトキ
  二再就職後公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ
  不具痿疾ト爲リ退職シタルトキ
  三再就職後公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ
  退職シタル後五年內ニ之カ爲不具癈疾ト爲リ
  又ハ其ノ程度增進シタル場合ニ於テ其ノ期間內
  ニ請求シタルトキ
  前項第三號ノ場合ニ於テハ第四十六條第三項ノ規
  定ヲ準用ス
  第五十五條前條ノ規定ニ依リ普通恩給ヲ改定スル
  ニハ前後ノ在職年ヲ合算シ其ノ年額ヲ定メ增加恩給
  ヲ改定スルニハ前後ノ傷痍又ハ疾病ヲ合シタルモノヲ
  以テ不具痿疾ノ程度トシ其ノ恩給年額ヲ定ム
  前項ノ場合ニ於テ前後ノ傷痍又ハ疾病カ原因ヲ異
  ニスルトキハ左ノ區別ニ依リ其ノ年額ヲ定ム
  -後ノ傷痍又ハ疾病カ戰鬪又ハ戰鬪ニ準スヘキ公務
  ニ基因スルトキハ別表第二號表甲號中前項ノ規定
  ニ依リ定メタル不具癈疾ノ程度ニ相應スル增加恩給
  年額ヨリ前ノ增加恩給年額ト別表第二號表甲號
  中其ノ不具癈疾ノ程度ニ相應スル增加恩給年額
  トノ差額ヲ控除シタルモノヲ以テ增加恩給ノ年額ト
  ス但シ後ノ傷痍又ハ疾病ノミニ因ル增加恩給年額
  カ前後ノ傷痍又ハ疾病ヲ合シタルモノニ依ル增加
  恩給年額ト同額ナルトキハ此ノ控除ヲ爲サス
  二後ノ傷痍又ハ疾病カ普通公務ニ基因スルトキハ別
  表第二號表乙號中前項ノ規定ニ依リ定メタル不具
  癈疾ノ程度ニ相應スル增加思給年額ニ前ノ增加
  恩給年額ト別表第二號表乙號中其ノ不具癈疾ノ
  程度ニ相應スル增加恩給年額トノ差額ヲ加ヘタル
  モノヲ以テ增加恩給ノ年額トス
  第五十六條前二條ノ規定ニ依リ恩給ヲ改定スル場
  合ニ於テ其ノ年額從前ノ恩給年額ヨリ少キトキハ從
  前ノ恩給年額ヲ以テ改定恩給ノ年額トス
  第五十七條前三條ノ規定ハ宮內官ノ恩給規定ニ依
  ル恩給ヲ受クル者公務員ト爲リ退職シタル場合ニ付
  之ヲ準用ス
  第五十八條普通恩給ハ之ヲ受クル者左ノ各號ノ
  ニ該當スルトキハ其ノ間之ヲ停止ス
  ー公務員又ハ第四十二條第一項第一號ニ規定スル
  宮内職員トシテ就職スルトキハ就職ノ月ノ翌月ヨ
  リ退職ノ月迄但シ實在職期間一月未滿ナルトキ、
  軍人以外ノ公務員トシテ恩給ヲ受クル者陸軍若ハ
  海軍ノ兵卒トシテ就職スルトキ又ハ准士官以下ノ
  ノ軍人若ハ準軍人トシテ恩給ヲ受クル者軍人以
  外公務員トシテ就職スルトキハ此ノ限ニ在ラス
  二六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタルトキ
  ハ其ノ月ノ翌月ヨリ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ
  受クルコトナキニ至リタル月迄但シ刑ノ執行猶豫
  ノ言渡ヲ受ケタルトキハ恩給ハ之ヲ停止セス其ノ
  言渡ヲ取消サレタルトキハ取消ノ月ノ翌月ヨリ刑
  ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタ
  ル月迄之ヲ停止ス
  前項第二號ノ規定ハ增加恩給ニ付之ヲ準用ス
  第五十九條文官ハ每月其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相當
  スル金額ヲ國庫ニ納付スヘシ
  〓育職員ハ每月其ノ体給ノ百分ノ一ニ相當スル金額
  ヲ國庫ニ納付スヘシ但シ朝鮮臺灣又ハ樺太以外ノ
  地ニ於ケル公立ノ小學校、實業補習學校、幼稚園及
  盲啞學校其ノ他ノ小學校ニ類スル各種學校ノ〓育
  職員ハ此ノ限ニ在ラス
  待遇職員ハ之ニ俸給ヲ給スル國庫、府縣其ノ他ノ經濟
  ニ對シ其ノ俸給又ハ給料ノ百分ノ一ニ相當スル金額
  ヲ納付スヘシ
  第二節恩給金額
  第六十條文官在職年十五年以上ニシテ退職シタル
  トキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
  前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年以上十六年
  未滿ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ六十
  ニ相當スル金額トシ十五年以上一年ヲ增ス每ニ其ノ
  一年ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ一
  ニ相當スル金額ヲ加へタル金額トス
  前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ外國實勤續在職年
  十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤續在職年中十
  五年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年一年ニ付退職當
  時ノ俸給年額二百四十分ノ一ノ割合ヲ以テ之ニ加
  給ス
  在職年四十年ヲ超ユル者ニ給スヘキ恩給年額ハ之ヲ
  在職年四十年トシテ計算ス
  第一項ノ在職年ハ國務大臣トシテ退官スル者ニ付テ
  ハ國務大臣トシテノ在職年五年以上ルルヲ以テ足ル
  第四十六條第五十四條第一項第二號若ハ第三號
  又ハ前項ノ規定ニ依リ在職年十五年未滿ノ者ニ給
  スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年ノ者ニ給スヘ
  キ普通恩給ノ額トス
  第四十七條ノ規定ニ依リ準文官ニ給スヘキ普通恩給
  ノ年額ハ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ六十
  ニ相當スル金額トス
  第六十一條軍人在職年十一年以上ニシテ退職シタ
  ルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
  前項ノ規定ハ準軍人在職年十一年以上ニシテ退職
  シ且其ノ身分ヲ免セラレタル場合ニ付之ヲ準用ス
  前二項ノ普通恩給ノ年額ハ退職當時ノ階等及其ノ
  在職年數ニ依リ定メタル別表第一號表ノ金額トス
  前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ外國實勤續在職
  年十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤續在職年中
  十五年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年一年ニ付退職
  當時ノ軍人ノ階等ニ應シ別表第一號表/十一年ノ額
  ト十二年ノ額トノ差額ニ相當スル金額ヲ之ニ加給ス
  在職年五十年ヲ超ユル者ニ給スヘキ恩給年額ハ之ヲ
  在職年五十年トシテ計算ス
  陸海軍准士官ニシテ其ノ官ニ對スル最高ノ俸給ヲ受
  ケタル者ニハ高等官八等ノ額ヲ給ス
  第四十六條、第四十七條又ハ第五十四條第一項第
  二號若ハ第三號ノ規定ニ依リ在職年十一年未滿ノ
  者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十一年ノ者
  ニ給スヘキ普通恩給ノ額トス
  準軍人ノ階等ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第六十二條〓育職員在職年十五年以上ニシテ退職
  シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
  前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年以上十六年
  未滿ニ對シ退職當時ノ俸給年額二百四十分ノ六十
  ニ相當スル金額トシ十五年以上一年ヲ增ス每ニ其ノ
  一年ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ一
  ニ相當スル金額ヲ加へタル金額トス
  前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ小學校、實業補習
  學校、幼稚園又ハ盲啞學校其ノ他ノ小學校ニ類スル
  各種學校ノ〓育職員トシテノ勤續在職年十五年以
  上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤續在職年中十五年ヲ控
  除シタル殘ノ勤績在職年一年ニ付退職當時ノ俸給
  年額ノ二百四十分ノ三ノ割合ヲ以テ之ニ加給ス
  第一項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ中學校又ハ之ト
  同等以下ノ程度ノ學校ノ〓育職員トシテノ勤續在職
  年十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤續在職年中
  十五年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年]一年ニ付退職
  當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ一半ノ割合ヲ以テ
  之ニ加給ス
  前項ノ中學校ト同等以下ノ程度ノ學校ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム
  第四十六條又ハ第五十四條第一項第二號若ハ第三
  號ノ規定ニ依リ在職年十五年未滿ノ者ニ給スヘキ普
  通恩給ノ年額ハ在藏年十五年ノ者ニ給スヘキ普通恩
  給ノ額トス
  第六十條第三項及第四項ノ規定ハ〓育職員ニ付之
  ヲ準用ス
  第四十七條ノ規定ニ依リ準〓育職員ニ給スヘキ普通
  恩給ノ年額ハ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ
  六十ニ相當スル金額トス
  第六十三條警察監獄職員在職年十年以上ニシテ退
  職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
  前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十年以上十一年未
  滿ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ六十
  ニ相當スル金額トシ十年以上一年ヲ增ス每ニ其ノ一
  年ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ一ニ
  相當スル金額ヲ加ヘタル金額トス
  前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ警察監獄職員ト
  シテノ勤續在職年十年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤
  續在職年中十年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年一年
  ニ付退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ一ノ割合
  ヲ以テ之ニ加給ス
  第四十六條又ハ第五十四條第一項第二號若ハ加
  第三號ノ規定ニ依リ在職年十年未滿ノ者ニ給スヘキ
  普通恩給ノ年額ハ在職年十年ノ者ニ給スヘキ普通恩
  給ノ額トス
  第六十條第三項及第四項ノ規定ハ警察監獄職員ニ
  付之ヲ準用ス
  第六十四條待遇職員在職年十五年以上ニシテ退職
  シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
  前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年以上十六年
  未滿ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ六
  十ニ相當スル金額トシ十五年以上一年ヲ增ス每ニ其
  ノ一年ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ二百四十分ノ
  一ニ相當スル金額ヲ加ヘタル金額トス
  第六十條第三項及第四項竝第六十二條第六項ノ
  規定ハ待遇職員ニ付之ヲ準用ス
  第六十五條公務員ノ增加恩給ノ年額ハ退職當時ノ
  階等、傷病ノ原因及不具癈疾ノ程度ニ依リ定メタル
  別表第二號表ノ金額トス
  前項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ給スヘキ增加恩
  給ノ年額ニ付之ヲ準用ス
  第六十六條下士以下ノ軍人公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又
  ハ疾病ニ罹リ不具癈疾ノ程度ニ至ラサルモ之カ爲退
  職シ又ハ退職後一年內ニ之カ爲一種以上ノ兵役ヲ
  免セラレタルトキハ之ニ傷病賜金ヲ給ス
  傷病賜金ハ之ヨ普通恩給又ハ一時恩給ト併給スル
  ヲ妨ケス
  傷病賜金ノ額ハ退職當時ノ階等竝傷病ノ原因及程
  度ニ依リ定メタル別表第三號表ノ金額トス
  前項ノ傷病ノ程度ハ勅合ヲ以テ之ヲ定ム
  第六十七條文官在職年一年以上十五年未滿ニシテ
  退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
  前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ノ二
  分ノ一ニ相當スル金額ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金
  額トス
  第六十八條下士以上ノ軍人在職年十一年未滿ニシ
  テ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス但シ下士以
  上トシテノ在職年一年未滿ナルトキハ此ノ限ニ在ラス
  前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ階等及在職年
  ノ年數ニ依リ定メタル別表第四號表ノ金額トス
  第六十九條〓育職員在職年一年以上十五年未滿
  ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
  前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ノ二
  分ノ一ニ相當スル金額ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金
  額トス
  第七十條警察監獄職員在職年一年以上十年未滿
  ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
  前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ノ三
  分ノ二ニ相當スル金額ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金
  額トス
  第七十一條待遇職員在職年一年以上十五年未滿
  ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
  前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ノ二
  分ノ一ニ相當スル金額ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金
  額トス
  第三章遺族
  第七十二條本法ニ於テ遺族トハ公務員又ハ之ニ準ス
  ヘキ者ノ祖父、祖母、父、母、夫、妻、子及兄弟姉妹ニシ
  テ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ當時之ト同
  一戶籍内ニ在ルモノヲ謂フ
  公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ當時胎兒夕ル子
  出生シタルトキハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ公務員
  又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ當時其ノ戶籍內ニ在リ
  タルモノト看做ス
  第七十三條公務員又ハ之ニ準スヘキ者左ノ各號ノ一
  ニ該當スルトキハ其ノ遺族ニハ妻、未成年ノ子、夫、父、
  母、成年ノ子、祖父、祖母ノ順位ニ依リ之ニ扶助料ヲ
  給ス
  -在職中死亡シ其ノ死亡ヲ退職ト看做ストキハ之
  ニ普通恩給ヲ給スへキトキ
  二普通恩給ヲ給セラルル者死亡シタルトキ
  前項ノ規定ニ依ル同順位ノ子數人アルトキハ公務員
  又ハ之ニ準スヘキ者ヲ被相續人トシタル家督相續ノ
  順位ニ準シ之ヲ定ム
  父母ニ付テハ養父母ヲ先ニシ寶父母ヲ後ニス祖父母
  ニ付テハ養父母ノ父母ヲ先ニシ實父母ノ父母ヲ後ニ
  シ父母ノ養父母ヲ先ニシ實父母ヲ後ニス
  先順位者タルヘキ者後順位者タル者ヨリ後ニ生スルニ
  至リタルトキハ前三項ノ規定ハ當該後順位者失權シ
  ケル後ニ限リ之ヲ適用ス
  第七十四條未成年ノ子ハ未タ婚姻セサルトキニ限リ
  之ニ扶助料ヲ給ス
  夫又ハ成年ノ子ハ不具癈疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ
  途ナク且之ヲ扶養スル者ナキトキニ限リ之ニ扶助料ヲ
  給ス
  養子ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ家督相〓人タル
  トキ又ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者カ家督相續人ニ
  シテ之ヲ戶主ト看做ストキハ其ノ死亡ノ時ニ於テ其ノ
  家督相續人タルヘキ者ニ限リ之ニ扶助料ヲ給ス
  前項ノ家督相續人ニハ之ニ準スヘキ者ヲ包含ス
  第七十五條扶助料ノ年額ハ左ノ各號ニ依ル
  -公務員又ハ之ニ準スヘキ者戰鬪又ハ戰闘ニ準ス
  ヘキ公務ニ因ル傷疾疾病ノ爲死亡シタルトキハ
  其ノ普通恩給年額ノ全額
  二公務員又ハ之ニ準スヘキ者普通公務ニ因ル傷
  痍疾病ノ爲死亡シタルトキハ其ノ普通恩給年額
  ノ十分ノ八ニ相當スル金額
  三其ノ他ノ場合ニ於テハ公務員又ハ之ニ準スヘキ
  者ニ給セラルル音通恩給年額ノ十分ノ五ニ相當
  スル金額
  第七十六條公務員ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡後遺族
  左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ扶助料ヲ受クルノ資格
  ヲ失フ
  -子婚姻シ又ハ其ノ家ヲ去リタルトキ但シ父ノ屬シタ
  ル家ヨリ分家シ又ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ
  妻若ハ子ニシテ分家スルモノニ伴ヒ其ノ家ニ入リ
  タルトキハ此ノ限ニ在ラス
  二公務員又ハ之ニ準スヘヰ者女子ナル場合ニ於テ
  夫婚姻ン又ハ家ヲ去リタルトキ
  三父、母、視父又ハ祖母其ノ家ヲ去リタルトキ
  第七十七條扶助料ヲ受クル者六年未滿ノ懲役又ハ
  禁錮ノ刑ニ處セラレタルトキハ其ノ月ノ翌月ヨリ其ノ
  刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ヲ受クルコトナキニ至リ
  タル月迄扶助料ヲ停止ス但シ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ
  受ケタルトキハ扶助料ハ之ヲ停止セス其ノ言渡ヲ取消
  サレタルトキハ取消ノ月ノ翌月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又
  ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄之ヲ停止ス
  前項ノ規定ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレ刑ノ執行中又ハ
  其ノ執行前ニ在ル者ニ扶助料ヲ給スヘキ事由發生シ
  タル場合ニ付之ヲ準用ス
  第七十八條扶助料ヲ給セラルヘキ者一年以上所在
  不明ナルトキハ次順位者ノ申請ニ依リ裁定官廳ハ所
  在不明中扶助料ノ停止ヲ命スルコトヲ得
  第七十九條前二條ノ扶助料停止ノ事由アル場合ニ
  次順位者在ルトキハ停止期間中扶助料ハ之ヲ営該次
  順位者ニ轉給ス
  第八十條遺族左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ扶助料
  ヲ受クルノ權利ヲ失フ
  其ノ家ヲ去リタルトキ但シ妻夫ノ屬シタル家ヨリ
  分家シ又ハ遺族タル子ニシテ分家スルモノニ伴ヒ
  其ノ家ニ入リタルトキ及子父ノ屬シクル家ヨリ分
  家シ又ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ妻若ハ子
  ニシテ分家スルモノニ伴ヒ其ノ家ニ入リタルトキハ
  此ノ限ニ在ラス
  二妻子又ハ夫婚姻シタルトキ
  三不具癈疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ途ナク且之ヲ
  扶養スル者ナキ夫又ハ成年ノ子ニ付其ノ事情止
  ミタルトキ
  第八十一條公務員又ハ之ニ準スヘキ者第七十三條
  第一項各號ノ一ニ該當シ兄弟姉妹以外ニ扶助料ヲ
  受クル者ナキトキハ其ノ兄弟姉妹未成年又ハ不具癈
  疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ途ナク且之ヲ扶養スル者ナ
  キ場合ニ限リ之ニ一時扶助料ヲ給ス
  前項ノ一時扶助料ノ金額ハ兄弟姉妹ノ人員ニ拘ラス
  扶助料年額ノ一年分乃至五年分ニ相當スル金額ト
  ス
  第八十二條文官〓育職員又ハ待遇職員在職年一
  年以上十五年未滿ニシテ在職中死亡シタル場合ニハ
  其ノ遺族ニ一時扶助料ヲ給ス
  前項ノ一時扶助料ノ金額ハ左ノ各號ニ依ル
  -小學校、實業補習學校幼稚園又ハ盲啞學校其
  ノ他ノ小學校ニ類スル各種學校ノ〓育職員ノ遺
  族ニ在リテハ公務員死亡當時ノ俸給月額ノ二分
  ノ一ニ相當スル金額ニ其ノ公務員ノ在職年ノ數
  ヲ乘シタル金額
  二文官前號ノ〓育職員以外ノ〓育職員又ハ待遇
  職員ノ遺族ニ在リテハ公務員ノ死亡當時ノ俸給
  年額ノ百分ノ一ニ相當スル金額ニ其ノ公務員ノ
  在職年ノ年數ヲ乘シタル金額
  第八十三條下士以上ノ軍人在職中死亡シタル場合
  ニハ一時給與金ヲ勅令ノ定ムル所ニ依リ遺族ニ、遺族
  ナキトキハ死亡者ノ相續人ニ給ス
  前項ノ一時給與金ノ金額ハ死亡當時ノ軍人ノ階等
  ニ依リ定メタル別表第五號表ノ金額トス
  附則
  第八十四條本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令ノ定ム
  ル所ニ依ル
  第八十五條左ノ法令ハ之ヲ廢止ス
  官吏恩給法
  官吏遺族扶助法
  軍人恩給法
  -市町村立小學校〓員退隱料及遺族扶助料法
  府縣立師範學校長俸給竝公立學校職員退隱
  料及遺族扶助料法
  -明治二十四年法律第四號
  明治二十九年法律第十三號
  官吏恩給法及官吏遺族扶助法補則
  ー明治二十九年法律第七十八號
  -明治三十三年法律第七十五號
  -
  -
  -
  明治三十三年法律第七十六號
  明治三十三年法律第七十七號
  巡查看守退隱料及遺族扶助料法
  明治三十五年法律第二十九號
  在外指定學校職員退隱料及遺族扶助料法
  明治四十年法律第四十八號
  明治四十年法律第四十九號
  明治四十一年法律第三十五號
  明治四十三年法律第三十號
  明治四十四年法律第六十一號
  明治四十四年法律第六十七號
  明治四十五年法律第十一號
  明治四十五年法律第十二號
  大正七年法律第三十號
  大正十年法律第三十五號
  大正十年法律第九十四號
  大正十一年法律第十八號
  大正十一年法律第十九號
  一明治二十二年勅令第百三十三號
  一明治二十三年勅令第九十八號
  明治二十五年勅令第十八號
  明治二十五年勅令第三十二號
  明治三十二年勅令第百九十六號
  明治三十八年勅令第二百二十九號
  明治四十年勅令第百八十八號
  明治四十年勅令第百八十九號
  明治四十一年勅令第七十一號
  明治四十五年勅令第七十號
  大正七年勅令第六十二號
  大正十年勅令第二百六十八號
  大正十一年勅令第八十七號
  大正十一年勅令第二百八十四號
  明治九年第九十九號達陸軍恩給令
  明治十五年第四十一號達巡查看守給助例
  明治十六年第三十八號達海軍恩給令
  明治十七年第一號達官吏恩給令
  第八十六條本法施行前給與事由ノ生シタル恩給、退
  隱料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノニ付テハ從
  前ノ規定ニ依ル
  從前ノ規定ニ依ル恩給、退隱料、遺族扶助料其ノ他
  之ニ準スヘキモノハ之ヲ本法ニ依リ受ケ又ハ受クヘキ
  恩給ト看做ス
  前項ノ場合ニ於テ從前ノ規定ニ依ル恩給、退隱料遺
  族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノカ本法ニ依リ給與
  スル恩給ノ何レノ種類ニ屬スヘキカハ公務員及其ノ遺
  族ノ種類竝給與ノ事由ニ依リ之ヲ定ム
  從前ノ規定ニ依ル恩給、退隱料、遺族扶助料其ノ他
  之ニ準スヘキモノニシテ本法ニ依ル恩給ニ該當セサル
  モノアルトキハ本法ニ依ル思給中最近キ性質ヲ有スル
  モノニ依ル
  第八十七條第五條乃至第七條ノ規定ハ從前ノ規定
  ニ依リ生シタル恩給、退隱料、遺族扶助料、退官賜金、
  退職給與金、退職一時金、給助金、賑恤金、一時扶
  助金其ノ他之ニ準スヘキモノヲ受クヘキ權利ニシテ本
  法施行ノ日迄ニ從前ノ規定ニ依ル請求期間ヲ經過セ
  サルモノニ付之ヲ適用ス
  第八十八條第十條ノ規定ハ本法施行前給與ノ事由
  ヲ生シタル恩給、退隱料、遺族扶助料、退官賜金、退
  職給與金、退職一時金、給助金、賑恤金、一時扶助金
  其ノ他之ニ準スヘキモノニ付本法施行後其ノ給與ヲ
  爲ス場合ニ付之ヲ適用ス
  第八十九條從前ノ規定ニ依リ内閣總理大臣ノ爲シ
  タル栽定ハ具申、訴願又ハ行政訴訟ニ付テハ之ヲ本
  法ニ依ル內閣恩給局長ノ裁定ト看做シ從前ノ規定ニ
  依ル具申ノ裁決ハ之ヲ本法ニ依ル具申ノ栽決ト看做
  フ
  本法施行ノ際現ニ具申中又ハ訴願中ノ事件ニ付テハ
  從前ノ手續規定ニ依リ之ヲ完結ス
  第九十條府縣ニシテ本法施行ノ際市町村立小學校
  〓員退隱料及遺族扶助料法第十四條ノ規定ニ依リ
  小學校〓員恩給基金ヲ備フルモノハ本法施行後引
  續キ其ノ恩給基金ヲ備フルコトヲ得
  前項ノ恩給基金ヲ備フル府縣ニ於テハ第十八條第二
  項ノ規定ニ依ル納金ハ之ヲ其ノ恩給基金ト爲スヘシ
  恩給基金ハ其ノ利子ヲ以テ府縣カ給與スヘキ〓育職
  員若ハ準〓育職員又ハ其ノ遺族ノ恩給ニ充ツルノ外
  之ヲ支消スルコトフ得ス
  府縣ニ於テ給與スヘキ〓育職員若ハ準〓育職員竝其
  ノ遺族ノ恩給ハ恩給基金ノ利子及第十八條第三項
  ノ規定ニ依リ國庫ヨリ交付スル給與金其ノ他ノ收入
  ヲ以テ之ヲ支辨シ不足アルトキハ府縣費ヲ以テ之ヲ補
  充スヘシ
  恩給基金ノ管理ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第九十一條本法施行前ノ在職ニ付在職年ヲ計算スル
  場合ハ從前ノ規定ニ依ル但シ本法施行ノ際現ニ在職ス
  ル者ニ付テハ其ノ在職ニ繼續スル在職ニ限リ本法施
  行前ノ在職ト雖加算年ニ關スル規定ヲ除クノ外本法
  ニ依リ其ノ在職年ヲ計算ス
  前項但書ノ場合ニ於テ從前ノ規定ニ依リ特ニ通算シ
  得ヘキコトヲ定メラレタル年月數アルトキハ前項但書
  ノ規定ニ拘ラス之ヲ在職年ニ通算ス
  第九十二條內地人クル公務員其ノ職務ヲ以テ臺灣
  朝鮮、關東州(關東廳及其ノ所屬官署職員ニ付テハ
  南滿洲鐵道附屬地ヲ含ム)、樺太又ハ南洋群島ニ一
  定ノ期間引續キ在勤シタルトキハ在勤期間ノ一月ニ
  付半月ヲ加算ス
  前項ノ引續キ在勤スヘキ期間ハ軍人ニ在リテハ六月、
  警察監獄職員ニ在リテハ二年、其ノ他ノ公務員ニ在リ
  テハ三年トス
  第四十條ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
  第九十三條公務員其ノ職務ヲ以テ國境警備又ハ理
  蕃ノ爲危險地域內ニ勤務シタルトキハ當分ノ內在勤
  期間ノ一月ニ付一月半ヲ加算ス
  前項ノ危險地域及期間ハ勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
  第四十條ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
  第九十四條海軍警吏補ヨリ海軍巡查ト爲リシ者
  ニシテ本法施行ノ際迄引續キ現ニ南洋廳巡査ノ職ニ
  在ルモノニ付テハ其ノ海軍警吏補トシテノ在職年月
  數ハ本法ノ適用ニ關シテハ之ヲ巡查トシテ在職シタル
  モノト看做ス
  第九十五條朝鮮總督府巡査補ヨリ朝鮮總督府巡
  査ト爲リシ者ニシテ本法施行ノ際迄引續キ在職スルモ
  ノニ付テハ其ノ統監府巡資補及朝鮮總督府巡査補
  トシテノ在職年月數ハ本法ノ適用ニ關シテハ之ヲ巡
  査トシテ在職シタルモノト看做ス
  第九十六條臺灣總督府巡査補ヨリ臺灣總督府巡
  査ト爲リシ者ニシテ本法施行ノ際迄引續キ在職スル
  モノニ付テハ其ノ臺灣總督府巡査補トシテノ在職年
  月數ハ本法ノ適用ニ關シテハ之ヲ巡査トシテ在職シ
  タルモノト看做ス
  第九十七條大正九年七月三十一日以前ニ体職若ハ
  待命ト爲リタル者ニシテ本法施行ノ際迄引總キ休職
  若ハ待命中ノモノ又ハ其ノ遺族同日以前ノ俸給ニ基
  キ年金タル恩給ヲ受クヘキ場合ニ於テハ其ノ金額算
  出ノ基礎タル俸給年額ハ其ノ額ニ勅令ノ定ムル金額
  ヲ加ヘタル額トス
  第九十八條第四十六條第二項第三項及第五十四
  條第一項第三號第二項ノ規定ハ本法施行前退職シ
  タル公務員ニ付之ヲ適用ス
  前項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ付之ヲ準用ス
  前二項ノ規定ニ依リ給スル恩給ノ金額ハ本法施行前
  ソ分ニ付テハ從前ノ規定ニ依ル
  第九十九條第四十八條ノ規定ハ木法施行前傷痍ヲ
  受ケ又ハ疾病ニ罹リ本法施行後退職シ本法施行後
  不具癈疾ト爲リタル者ニハ之ヲ適用セス仍從前ノ例
  二於ノ
  第百條第五十八條ノ規定ハ〓育職員及〓官其ノ他
  〓育事務ニ從事スルヘ官ニ付テハ當分ノ内之ヲ適用
  セス其ノ退隱料又ハ恩給ノ停止ハ仍從前ノ例ニ依ル
  但シ〓育職員及〓官其ノ他〓育事務ニ從事スル文
  官學習院ノ職員ト爲リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
  前項ノ規定ノ施行セラルル期間内ニ屬スル〓育職員
  ノ在職年ト〓官其ノ他〓育事務ニ從事スル文官以
  外ノ公務員ノ在職年トハ互ニ之ヲ通算セス仍從前ノ
  例ニ依ル〓育職員ノ在職年ト第四十二條第一項各
  號ニ揭クル在職年トノ間ニ付亦同シ但シ學習院ノ職
  員トシテノ在脳年ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
  第一項ノ規定ノ施行セラルル期間内ニ文官ヨリ〓育
  職員又ハ〓官其ノ他〓育事務ニ從事スル文官ニ轉
  任シタル者失格原因ナクシテ退職シ年金タル恩給ヲ
  受ケサル場合ニ於テハ文官ノ在職年數ニ應シ之ニ一
  時恩給ヲ給ス
  〓育職員ヨリ文官ニ轉シタル者〓官其ノ他〓育事務ニ
  從事スル文官以外ノ文官トシテ失格原因ナクシテ退
  職シタルトキハ〓官其ノ他〓育事務ニ從事スル文官
  トシテノ在職最終ノ俸給額ニ基キ之ニ恩給ヲ給ス
  第百一條本法施行前死亡シタル者ノ遺族ノ扶助料ニシ
  テ本法施行後轉給セラルヘキモノニ付テハ從前ノ規定
  ニ依ル恩給額ヲ標準トスルノ外本法ニ依リ之ヲ給ス
  前項ノ規定ハ本法施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ依リ扶
  助料ヲ愛クル事ヲ得ル者ノ權利ヲ妨クルコトナシ
  本法施行前ニ扶助料ヲ受クルノ權利ヲ有シ且其ノ權
  利ヲ有セサルニ至リタル者ハ之ヲ受クルノ權利ヲ本法
  ニ依リ取得スルコトナシ
  第一項ノ場合ニ於テ本法ニ依リ扶助料ヲ受クルニ付
  先順位ニ在ルヘキ者ト雖本法ニ依リ後順位ニ在ル者
  先ニ扶助料ヲ受ケタル場合ニハ本法ニ依リ扶助料ヲ
  受クルノ權利ヲ有スルコトナシ
  大正六年法律第六號附則ノ規定ニ依リ恩給ノ增額
  ヲ受ケサリシ軍人ノ遺族本法施行後扶助料ヲ轉給セ
  ラルヘキ場合ニ於テ第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ軍
  人ノ恩給ハ之ヲ請求ヲ竢タスシテ同法附則ノ規定ニ
  依リ增額セラレタルモノト看做ス
  第百二條警察監獄職員公務ニ因ル傷痍疾病ノ爲死
  亡シタル場合ニ其ノ遺族ニ給スヘキ扶助料ノ年額ニ
  付テハ當分ノ内第七十五條第一號及第二號ノ規定
  ヲ適用セス仍從前ノ例ニ依ル
  第百三條本法施行前退官退職シ從前ノ規定ニ依リ
  年金タル恩給ヲ給セラレ又ハ給セラルヘカリシ公務員
  又ハ之ニ準スヘキ者ニシテ本法施行ノ際其ノ權利ヲ
  有シ本法所定ノ恩給ノ金額ヲ受ケサルモノニハ本法
  施行ノ日ヨリ勅令ノ定ムル所ニ依リ本法所定ノ各相
  當ノ恩給ヲ給ス但シ從則ノ規定ニ依ル金額カ本法所
  定ノ恩給額ヨリ多キトキハ其ノ額ニ依ル
  本法施行前死亡シタル公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ
  遺族ニシテ第七十三條第一項各號ノ一ニ該當シ本
  法施行ノ際其ノ權利ヲ有シ本法所定ノ扶助料ノ金
  額ヲ受ケサルモノニハ本法施行ノ日ヨリ勅令ノ定ムル
  所ニ依リ本法所定ノ各相當ノ扶助料ヲ給ス但シ從前
  ノ規定ニ依ル金額カ本法所定ノ扶助料額ヨリ多キト
  キハ其ノ項ニ依ル
  第百四條明治二十四年八月十六日以降明治四十
  三年三月三十一日迄ニ退官退職シ又ハ死亡シタル文
  官、看守、陸軍監獄看守、海軍監獄看守、陸軍警査、
  海軍警査、貴族院守衞若ハ衆議院守衞又ハ其ノ遺族
  ニシテ明治四十三年四月改正前ノ俸給令ニ依ル俸
  給ヲ基礎トシ恩給又ハ扶助料ヲ受ケ本法施行ノ際迄
  其ノ權利ヲ有スル者ニハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ恩
  給又ハ扶助料ヲ本法施行ノ日ヨリ增額給與ス
  前項ノ規定ハ明治四十四年三月三十一日以前ニ退
  職シタル小學校、實業補習學校、幼稚園及盲啞學校
  其ノ他ノ小學校ニ類スル各種學校ノ〓育職員若ハ巡
  査又ハ其ノ遺族ニシテ本法施行ノ際迄其ノ權利ヲ有
  スルモノニ付之ヲ準用ス
  第百五條前二條ノ規定ノ適用ニ關シテハ勅令ヲ以テ
  之ヲ定ム
  (別表)
  階等
  在
  後年歐
  十一年
  十二年
  十三年
  十年
  十五年
  十六年
  十七年
  十人年
  十九年
  二十
  年年
  二十一
  二十二年
  二十三年
  二十四年
  二十五年
  二十六年
  二十七年
  二十八年
  二十九年
  三十年
  三十一年
  三十二年
  三十三年
  三十四年
  三十五年
  三十六年
  三十七年
  三十八年
  三十九年
  四十年
  四十一年
  四十二年
  四十三年
  第一號表
  為官及相當官佐尉官及相當官富士宣下士兵
  高等官判任官海軍
  親任一等二等三〓一四等一五等一六等七七一八等一等二等三等四等
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  一、八三〇一、七五て一、六六七一、三四七一、一二〇公斤六〇一貝六五十四三二二二四二〇〇一七六一〇〇
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  二、一六〇二、〇七一、九六六一、五八八一、HIH一、〇一八+∞·〇표二WHE三八二八八元六二四(101
  二、一九〇二、一〇三一、九九五13h一、三四一一、〇三四七六五八四八八三·日·二九九14142三六人〓
  二、二二〇二、一ヨ三二、〇二一一、六三二一、三五九一、〇四六七三八五人日付印三人八공0二三六二〓三二二
  二、二五〇二、一六〇二、〇四九一、六五六一、五七七一、〇六二三六エールセ國九九三八五三〇人二八兵〇二六
  二、二八〇三、一八九二、〇七五一、六七六一、三九六一、〇七四+ハ八프 た個人大三八五二三ㅊ二六貫11m
  二、三一〇二、二一八二、一〇四一、七〇〇一、四一四一、〇九〇五八八天八七四五五三八五三二〇二六九二〓〓二二六
  二、三四〇三、二四111.一二)ー、+〇〇一、四三三ー、1cm3大八五九九四大人三八人San090二三六=三
  二、五七〇二、二七六二、一五八一、七日式一、四五一一、一一八七·七·八ちくせ員立四〇〇프로듀서·三·六四二三六
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  四十四年
  四十五年
  四十六年
  四十七年
  四十八年
  四十九年
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  階
  傷症
  病狀
  原
  因
  戰闘
  甲又ハ
  戰鬪
  ニ準
  スヘ
  號キ公
  務
  普
  乙
  通
  公
  號
  務
  備考
  傷病
  原因
  甲
  戰ハ又鬪戰
  鬪
  ヘス準ニ
  二、七九〇
  二、八二〇二、七〇八
  二、八五〇
  二、八八〇二、七六五
  二、九一〇
  二、九四〇二、
  二、九七〇
  第二號表
  等
  s
  差
  特別項
  第一項
  第二項
  第三項
  第四項
  第五項
  第六項
  特別項
  第一項
  第二項
  第三項
  第四項
  第五項
  第六項
  第三號表
  症狀等差
  第款
  第二款
  第三款
  第四款
  第五款
  第六款
  第七款
  二、六七九、二、三四一二、〇五三一、七〇八一、三一六六·大
  二、五六七二、〇七三一、七二六一、三三たニ大
  二、七三六、二、五九五二、〇九七一、十四位一、三四四九三
  二、六二一二、一一七一、七六三一、三五七九四五
  二、七九四三、六五〇二、一四一一、七八一一、三七三九十年
  八二三二、六七六、二、一六一一、八〇〇一、五八九久九九
  二、八五三二、七〇四二、一八五一、八一八一、四〇一九七五
  任奏
  勅親三等乃至五等一六等乃至九等
  任
  勅任待遇奏任
  將官佐官
  圖
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  四七六三六〇三〇〇三·〇
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  三〇〇二四〇二〇〇一八〇
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  七二〇六〇〇조0四五〇
  五十六四八〇四〇八三六〇
  四四四三·五·〇三一五二七八
  三六〇三〇〇二五五二二五
  六六二四〇二〇円1ヘ0
  二四〇二〇〇一七〇一〇〇
  傷病
  症狀等差下士兵卒
  原因
  로
  第一款八五〇七月〇
  普第二款七大五六十五
  乙
  第三款六八〇六〇〇
  第四款天天皇皇至三五
  通
  第五款포二四五〇
  第六款四二五三七五
  公第七款三四。三〇〇
  號務公キ第八款三〇〇二七〇
  號
  第九款二〇〇10務
  第十款一〇〇九〇
  第四號表
  階將官及相當官佐尉官及相當官
  等高等官
  在歷年數親任一一等一二等一二第一四等一五第一六等一七等一八等
  圓〓圓贋〓屋■圓
  一年九九七七
  二年二八三二九七一五三
  三年五五一四四二九六二三〇
  四年八八四七三五玉米·三九四三〇大
  〔國務大臣男爵加藤友三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=18

  ---

• 019・加藤友三郎

  ○國務大臣(男爵加藤友三郞君)　恩給法案ニ付キマシ
  テ大體說明ヲ致シマス、御承知ノ如ク現行ノ恩給ニ關シマ
  スル規定ハ、明治二十三年頃ヨリ三十四、五年ニ亙クテ出
  來マシタ所ノ規程ヲ基礎ト致シテ居ルノデ、其前後ニ於キ
  マシテ數回改正ヲサレテ居ルノデアリマス、斯樣ナル事情ノ
  下ニアリマスル所ノ現行規程ハ、複雜且ツ多岐ニ亙ッテ居ル
  點ガアルノデアリマス、故ニ政府ニ於キマシテハ、前年來十
  分ニ〓究調査ヲ遂ゲマシテ、玆ニ一ノ案ヲ得マシタノデアリ
  マス、然ルニ一般ノ恩給額ハ、卽チ文武官ニ對スル恩給額
  ハ、現行規程ニ依リマスルモノデハ不備デアル、不十分デア
  ルト云フコトデ、十分ニ認メテ居ルノデアリマス、隨テ是ガ增
  額ニ付テモ種々〓究調査ヲ遂ゲマシタガ、財源ノ關係上此
  點ヲ今囘ノ改正案ニ記載シマスルコトノ出來マセナカッタコ
  トヲ甚ダ遺憾ト致スノデアリマス、今回ノ改正ノ二三ノ要
  點ハ、其額ヲ增額致シマシタモノハ遺族扶助料、公務ニ依リ
  不具ニナリマシタモノ、或ハ四十三年頃ト記憶致シマスガ、
  其以前ニ退隱致シタ所ノ文官ノ恩給、是等ノモノニ若干ノ
  增額ヲ認メマシタ、其外ハ前申上ゲマスル規程上ノ複雜ナ
  ル點ヲ矯正シ、不備ノ點ヲ增補スルト云フガ如キモノヲ今
  囘ノ案ノ骨子ト致スノデアリマス、尙ホ詳細ニ至リマシテハ、
  何レ委員會ニ於テ主務者ヨリ說明致サセマス、何卒御審
  議ノ上御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=19

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• 020・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　質議ノ通告ガアリマス-三浦
  得一郞君
  〔三浦得一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=20

  ---

• 021・三浦得一郎

  ○三浦得一郞君　私ハ簡單ニ此恩給法改正案ニ付テ御
  尋ヲ致シタイト思ヒマス、恩給法ノ是迄不備デアッタコトハ、
  旣ニ總理大臣カラ只今御辯明ガアッタ通リデアリマスルガ、
  四十四議會ニ於テハ根本的改正ヲスル、又四十五議會ニ
  第八款二五九二二五年一、三六五
  第九款一七〇- 8 0年一、七二八一、六三八
  第十款八五七五九八七六五年二、一〇〇二、〇一六一、九一一
  年二、四〇〇二、三〇四二、一八四
  年二、七〇〇二、五九二二、四五七
  准士官下士
  判任官十年三、〇〇〇二、八八〇二、七三〇
  一等一二等一三等一四等
  圓圓ニ圓圓第五號表
  六二五三六二二)二八將官及相當官
  1三m一〇二七一六四五六高
  一八四一五三一八九六親任一等-二等一三〓
  八四圓ㄷ
  二四六二〇四一四四三六一一二一、八〇〇一、七二八一、六三八一、三二三
  於キマシテモ、其通リノ聲明ガアッタノデアリマス、然ルニモ拘
  ラズ此度ノ法案ヲ見マスルト云フト、更ニ恩給法ノ增額ト
  云フコトハ、只今モ御說明ノアリマシタ通リ、僅ニ遺族ノ扶
  助料ト、增加恩給ノ幾分ニ止マッテ居ルノデアリマス、之ヲ以
  テ根本的改正ト云フコーガ申サレルデアリマセウカ、如何デ
  アリマセウカ、今日迄恩給者四十万ノ人々ガ政府ニ向ッテ
  請願嘆願ヲ致シテ居リマスルノハ、今日ノ物價騰貴ノ際
  ニ於テハ、恩給ニ依テテ生活スルコトガ出來ナイ、故ニ恩給ヲ
  增加シテ貰ヒタイト云フノガ一般ノ叫デアルノデアリマス、
  政府ハ其事ハ十分ニ御承知ニナッテ居ルノデアリマスガ、只
  今モ御說明ニナッタヤウニ、唯〓財源ガ乏シイカラ甚ダ遺憾
  デアルト、斯ウ仰セラレルノデアリマス、サリナガラ此四十万
  ノ人ミノ怨嗟ノ聲ハ悉ク政府ニ向ッテ放シテ居ルノデアリマ
  ス、殊ニ在〓軍人ニ於テ然リデアリマス、又癈兵ノ如キニ於
  テハ、此度僅ニ增額サレマシタノデ、兩眼ヲ盲シ、或ハ四肢ノ用
  ヲ失ッ夕者ガ、年額僅ニ四百五十圓、一箇月三十七圓ト云
  フヤウナ少額デアリマス、又第六公傷ニ於テ最モ一番輕イ
  所ノ者ガ、月ニ十二圓五十錢ト云フヤウナ割ニナッテ居ルノ
  デアリマス、斯ノ如キ零碎ナル增額ハ彼等ノ生活上果シテ
  安定ヲ得ルカドウカ、ト云フコトヲ御考ヲ願ヒタイト思フノ
  デアリマス、又外國ノ例ニ依リマスルト云フト、癈兵ハ一公
  傷ニ於キマシテハ、卽チ他人ノ介抱ヲ要スルト云フヤウナ重
  傷デアリマシタナラバ、看護料ヲ支給シテ居リマス、月ニ四
  十圓ト云フ看護料ヲ支給シテ居リマス、自分一人デ食事
  ヲスルコトガ出來ナイ、或ハ兩便ヲ辨ズルコトガ出來ナイ
  ト云フ人間ハ、矢張日本人デモ看護料ヲ要スルノデアリマ
  ス、ソレガ年ニ三百七十圓デ果シテ生活シテ行クコトガ出
  來ルカドウカ、是ハ常識カラ考ヘテモ直チニ分ル話デアリマ
  ス、又彼等ノ慘メナル有樣ヲ見テハ、一昨日モ此壇カラ申シ
  マシタ通リ徵兵忌避ノ念ヲ起ス者ハ年一年ト殖エルデアラ
  一、一〇二九一九七〇七四九三三八三三〇七二〇五一〇〇一七〇一份,
  一、三二三一、一〇二八四八玉九店四五九三六六三〇六二一六一九二一六六
  一、五周円一、二八六カルル六九〇至三六六四三〇三五七二五二二二四一六六
  一、七六四一、四七〇一、一三、七八八六一二四九一四〇八二八二五六二二四
  一、九八五一、六五三一、二七二八六七六八九五五三四五九三二四二八二五二
  二、二〇五一、八三七一、四一四九六五七六五六一三조0三六〇三二〇二八〇
  佐尉官及相當官唯士官下士
  等官判任官
  四等五等六等七等八等一等二等三等四等
  員0ej〓
  一、一〇二八四八五九一四五九三六八三〇六二一六一九二一六
  ウト思フノデアリマス、斯ノ如キ不具癈疾ニ陷ッ夕者ハ、戰時
  ニ於テハ死ヲ鴻毛ヨリ輕シトシテ-自分ノ生命ヲ輕シトシテ
  如何ナル辛苦艱難ニモ堪へ、又命ヲ失フコトヲ潔シトスル所
  ノモノデアルノデアリマス、斯ノ如キ勇士ガアッテ初テ國家ノ
  安泰ガ得ラレ、又國ノ資格モ進ンデ來ルト云フヤウナコトニ
  ナルノデアリマス、斯樣ナル國家ニ功勞アル所ノ人々ガ慘メ
  ナル有樣ニ在ルト云フコトハ、將來士氣ヲ伸張スル上ニ於
  テ、非常ナル影響ヲ及ボスコトデアラウト私ハ信ズルモノデア
  リマス、又軍備縮少ノ結果內容ハ何處マデモ充實シナケレ
  バナラヌ、内容ノ充實ハ軍人精神ノ緊張ガ必要デアリマス、
  今日ハ在〓軍人ハ悉ク當局ニ向ッテ怨嗟ノ聲ヲ放シテ居ル
  ノデアリマス、而シテ癈兵ハ斯ノ如キ有樣デアルノデアリマ
  ス、是デ果シテ精神動員ガ出來ルヤ否ヤ、銳利ナル所ノ機
  械、或ハ新シキ所ノ機械ヲ充實シテモ、肝腎ナル所ノ兵卒ガ
  其士氣ガ全ク頽廢致シテシマックナラバ何等內容ノ充實ハ
  更ニ一文ノ價ハナイ軍隊デアルト私ハ思フノデアリマス、ド
  ウカ此意味ニ於テ何卒一般軍人ノ生活ノ安定ヲ圖リ、又
  癈兵ヲ救フト云フコトニ付テ、モウ一應ノ御考慮ヲ煩シタイ
  ト思フノデアリマス、是ハ最モ急務ナルコトデアリマスルガ故
  ニ、本案ノ第一號表カラ第三號表ニ至ルマデノ間ヲ、モウ一
  應御改正アラヌ以上ハ、吾々ハ此案ニ付テ贊成ヲ表スルコ
  トガ出來ナイノデアリマス、就キマシテハ根本的改正ヲスル
  ト云フコトヲ二年ニ亙ッテ御聲明ニナッテ居ルニモ拘ラズ、斯
  ノ如キ不備ナル點モ厭ハズシテ、唯〓法案ノミヲ改正セラル
  ルト云フコトハ、少シモ其意味ヲ爲シテ居ラヌノデアリマス、
  此點ニ付テモウ一應ノ御說明ヲ煩シタイト思ヒマス(拍手)
  〔國務大臣男爵加藤友三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=21

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• 022・加藤友三郎

  ○國務大臣(男爵加藤友三郞君)　三浦君ノ恩給ニ關シ
  殊ニ軍人ニ於テ非常ニ其不足ヲ感ジ、是等在〓軍人ノ困
  難ナル狀態ヲ御述ニナリマシテ、モウ少シ徹底シタル增額案
  ヲ立ッタラドウカト云フヤウナ意味、竝其成立ニ付テノ御希
  望ヲ拜聽致シマシタ、私ハ三浦君ノ御述ニナリマシタ點、卽
  チ在〓軍人ノミナラズ、文官等ノ恩給ニ對シマシテモ、先刻
  申上ゲマスル今日ノ程度ヲ以テ、無論滿足致シテ居ル者デ
  ハアリマセヌ、寧口是等ノ人ミニ對シマシテハ其不十分ナル
  點ニ於テ、滿腹ノ同情ヲ表スルノデアリマス、故ニ今回モ如
  何ニカ致シテ增額案ヲ立テタイト云フ意思ヲ以テ、調査研
  究致サセタノデアリマス、今回ノ財政計畫ヲ御覽下サイマス
  レバ、政府ノ方針モ御了解下サルコトヽ存ジマスガ、此增額
  ヲ實行致サント致シマスノニハ、少クモ二三千万ノ全ハ要スル
  ノデアリマス、一方ニ於キマシテハ是等受恩給者ニ同情致
  シマスル點ニ於キマシテハ、更ニ三浦君ノ御意見ニ反對ハナ
  イノデアリマスガ、政府ノ方針ト致シマシテ立テマシタ所ノ財
  政計畫上、遺憾ナガラ之ヲ許サナウッタノデアリマス、勿論今
  後ニ於キマシテモ、此問題ハ是非共解決致シタイト云フ意
  思ヲ持クテ居ルノデアリマス、相當ノ名案ヲ得マスルナラバ、
  必ズ之ニ反對スル者デハナイノデアリマス、出來ルダケ早ク
  是ガ實行ヲ期シタイト云フ意思ニ於キマシテハ、何人ノ後ニ
  モ落チナイ積リデアリマヌガ、寔ニ遺憾ナガラ本年之ヲ實行
  スルコトヲ得ナカッタノヲ遺憾トスルノデアリマス、三浦君ノ
  殊ニ在〓軍人ニ對スル御同情ノ御意見ニ對シテハ、私モ同
  感ノ意ヲ表シテ置キマス、重ネテ申シマスガ、今回ノ財政計
  畫上許シマセンカッタ爲ニ、提案致シマシタ程度ニ止マッタト
  云フコトニ御了解ヲ發ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=22

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• 023・三浦得一郎

  ○三浦得一郞君　此席カラ申シマス、只今總理大臣ノ御
  答辯ニ依リマスト、此度此增額ヲ致サナカッタト云フコトハ
  甚ダ遺憾デアル、十分同情シテ居ルト云フ〓セデアリマス、是
  ハ私トシマシテハ甚ダ感謝ノ至ニ堪ヘナイ、〓ナガラ同情ス
  ル同感デアルト云フダケデハ、在〓軍人一般ハ決シテ滿足
  致スマイト思フノデアリマス、希クハ此案ヲ御撤囘ニナッテ、
  財源ノ出來ルト同時ニ御始メニナッテ然ルベキモノデアラウ
  ト私共ハ信ズルノデアリマス、斯ノ如キ案ガ出マシテモ唯、
  空文ニ屬スルノデアッテ更ニ實效ハナイノデアリマス、又過般
  癈兵ガ陸軍大臣ヲ御訪ネ申シテ、彼等ノ窮狀ヲ御訴シタ際
  ニ、陸軍大臣ハ少クモ五六千万圓ハオ前達ノ爲ニ出ス積リ
  デアルト云フコトヲ御辯明ニナッタト云フコトヲ異口同音ニ
  申シテ居リマス、閣議ニ於キマシテハ定メシ右樣ナ御協議モ
  アッタコトヽ存ジマスガ、斯ノ如キ零碎ナル增額デハ、彼等モ
  亦不滿足デアラウト思フノデアリマス、若シ彼等ガ負傷ヲ致
  サナカッタナラバ、勞働ヲ致シテモ一日二圓五十錢ノ給料ヲ
  取リ得ルノデアリマス、シレガ負傷ヲシタ爲ニ僅ニ一圓ニ足
  ラザル所ノ金額ヲ以テ生活シテ行カナケレバナラヌト云フ有
  樣デアリマスガ、果シテンレデ人間一人ノ生活ガ出來ルカド
  ウカ、又子女ノ〓育ヲ如何ニシテ彼等ガ〓育スルデアリマセ
  ウカ、此點ニ付キマシテモ唯、御同情バカリデナク十二分ノ
  同情ノ淚ヲ注ガレテ、速ニ增額アランコトヲ希望スル次第デ
  アリマス、其增額ノ資金ガ無イト云フナラバ、ソレマデ本案ヲ
  撤回セラレン事ヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=23

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• 024・加藤友三郎

  ○國務大臣　男爵加藤友三郞君)當席カラ御答致シマ
  ス、今回提案致シマシタモノヲ撤回致ス意思ハ持ヲマセヌ、
  併ナガラ今後ニ於キマシテ御希望ニ對シテハ出來得ルダケ
  ノ努力ヲ致シタイト考ヘテ居リマス

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• 025・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　日程第四、右議案ノ審査ヲ付
  託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
  選擧

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• 026・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ高木正年君外二名提出恩給法
  改正ニ關スル建議案外二件ノ委員ニ併セ付託セラレンコ
  トヲ望ミマス
  〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕

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• 027・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ動議ノ如ク決シヤシタ 日程第五、市町村う
  義務〓育費國庫負擔法改正法律案第一讀會ノ續ヲ開キ
  マス、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長田中隆三君
  第五市町村義務〓育費國庫負擔法改正
  法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續委員長し
  報告
  報告書
  一市町村義務〓育費國庫負擔法改正法律案(政府提
  出
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年二月九日
  市町村義務〓育費國庫負擔法改正
  法律案委員長
  田中隆三
  衆議院議長奧繁三郎殿
  〔田中隆三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=27

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• 028・田中隆三

  ○田中隆三君　市町村義務〓有費國庫負擔法改正法
  律案ニ關スル委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、
  此改正案ハ現行法ニ於テ國庫ガ負擔スル金額ヲ一千万圓
  ト定メテ居リマスルモノヲ、此度ハ更ニ之ヲ四千万圓ヲ下ラ
  ザルモノトスルト云フコトガ一ツノ要點、又今日ノ法律ニ於
  テハ此分配方法ニ付テ一割ダケヲ差引イテ、資力薄弱ナル
  市町村ニ增加交付スルト云フ特例ガアリマスル外、其殘リ
  ノ九割ノ金額ヲ全國各市町村ニ、或ル一定ノ標準ノ下ニ
  配分スルト云フコトニナッテ居リマスルモノヲ、此度ノ法律ニ
  於テハ更ニ其方針ヲ改メマシテ、稍〓町村ノ方ノ配當額ヲ多
  クスルト云フコトニ改メントスルノガ、此改正案ノ趣旨デア
  リマス、申上ゲルマデモナク此國庫ノ負擔額ヲ四千万圓ト
  云フ全額ニ增加スルト云フコトハ、一ツニハ全國一万二千
  ニ餘ル所ノ市町村ノ財政ヲ緩和スル意味ニ於テ、又一ツニ
  ハ一千万ニ垂〓トスル所ノ就學兒童ノ〓育ヲ改善向上セ
  シムル意味ニ於テ、又一ツニハ國家富强ノ根柢基礎トモ申
  スベキ、此國民〓育ト云フモノヽ根柢ヲ大ニ養フ、非常ニ國
  家富强ノ源泉基礎ヲ大ニ培養スルト云フ根本政策ニ關ス
  ルモノデアリマスルガ、故ニ其法案ノ極テ重大ナルモノデアル
  ト云フコトハ、更メテ申上ゲルマデモナイコトデアリマス、此
  意味ニ於テ委員會ニ於キマシテハ、此法案ニ關聯スル事項
  ニ付キマシテ、極テ愼重審議ヲ盡シマシテ、當局トノ間ニ色ミ
  應答ヲ重ネマシテ、又各委員ニ於テモ種々ノ意見ヲ述ベマ
  シテ十分ノ審議ヲ盡シタ上ニ、本案全部ヲ可決スルニ至リ
  詳細ノ事ハ速記錄等ニ就テ御覽n
  マシタ次第デゴザイマス、
  ヲ願フコトヽ致シマシテ、其重ナル點二三ニ付テ、此場合御
  報告申上ゲルコトハ必要デアラウト信ジマス、暫ク御〓聽ヲ
  願ヒマス(謹聽)改正案ノ改正ノ第一要點ハ、只今モ申上
  ゲマシタ如ク一千万圓ラ四千万圓ニスル、旣ニ法案ニハ四
  千万圓ヲ下ラザルト書イテアリマスカラ、詰リ法律的ニ申シ
  マスレバ四千万圓以上トスルト云フコトニナリマス、併ナカ
  ラ此度ハ之ヲ四千万圓トシテ既ニ豫算ニ計上シテアリマス
  ルコトハ御承知ノ通リノコトヽ存ジマス、此增額ト云フコト
  ハ多年ニ亙ル〓育社會ノ輿論デアリマシテ、又曩ニ我衆議
  院ニ於キマシテハ建議案トシテ之ヲ可決シテ居ルヤウナ次
  第デゴザイマス、政府ニ於キマシテモ此輿論、此建議等ニ鑑
  ミマシテ結局少ナクトモ國庫ノ負擔額ヲ〓員俸給ノ半額
  ニ達セシムルト云フコトヲ曰標トシテ、此法案ヲ提出シタト
  云フ次第デゴザイマス、只今ノ所此〓員俸給ノ總額ハ一億
  二千万圓許リニナッテ居ルノデゴザイマスカラシテ、其目的ノ
  通リト致シマスレバ六千万圓ナケレバ半額ニ達セナイ次第
  ニナルノデアリマス、サリナガラ限リアル歲入ヲ以テ國政百般
  ノコトヲ按排スルト云フ上ニ於テ、今日ノ場合此法案ノ如
  ク四千万圓ニ止メルノ已ムヲ得ザルニ至ッタト云フコトハ、政
  府當局ノ說明デゴザイマシタノデアリマス、免モ角モ國費多
  端ノ際ニ一躍ヲシテ現行ノ負擔額ノ四倍ニナッタト云フコ
  トニ付キマシテハ、委員ニ於テモ當局ノ努力ヲ諒トスル意味
  ガ十分ニ現レマシタケレドモ、併ナガラ之ヲ決議スルニ當リ
  マシテ尙ホ特ニ一ツノ希望ヲ添ヘタイト云フ御意見ガ出マ
  シタ、其希望ハ本件ノ負擔額ヲ〓員俸給ニ達セシムルト云
  フコトノ一日モ速ニ到來スルヤウニ、政府當局ノ努力ヲ望
  ムト云フ御意見ガ出マシテ、是ハ別ニ決ヲ採ノタ譯デハアリ
  マセヌケレドモ、多數委員ノ御希望、否恐ラクハ全委員一同
  ノ御希望ノヤウニ委員長ニ於テハ見受ケマシタ次第デゴザ
  イマス、此意味ヲ以テ千万圓ト云フモノヲ四千万圓ニスル、
  又此四千万圓ヲ一日モ速ニ俸給ノ半額ニ達セシムルト云
  フコトノ心持ヲ以テ、本案ノ大眼目タル第二條ニ付キマシ
  テ、何レモ喜ンデ贊成ヲ表シタ次第デゴザイマス、此負擔額
  ヲ增加スルト云フコトニ付テ、尙ホ特ニ本議場ニ御報告申
  上ゲルノ必要アリト認メマシタコトガゴザイマス、ソレハ此增
  額ト云フコトハ市町村ノ財政ヲ緩和スルトカ、救済スルト云
  フコトガ趣旨デアルカ、將又國民〓育ノ改善向上ト云フコ
  トヲ目的トスルノガ趣旨デアルカ、サウ云フコトノ問答ヲ數
  回政府當局ト委員トノ間ニ交換セラレタノデアリマス、政府
  當局ノ之ニ對スル確然タル御答辯ヲ得タイト希望スル委員
  ノ趣旨ハ、蓋シ二ツノ理由ガアルヤウニ見受ケラレマシタノ
  デアリマス、一ツハ若モ此增額ガ單ニ市町村ノ財政ヲ緩
  和スルト云フ意味デアルナラバ、例ヘバ今後地租營業稅等
  ノ委譲ノコトガアッテ、幸ニ市町村ノ財政ニ餘裕ヲ生ジタ、ソ
  レニ限ッタコトモアリマセヌケレドモ、若モ市町村ノ財政ニ餘
  裕ヲ生ジタト云フ場合ニ於テ、單ニ救濟トカ緩和トカト云
  フ目的デ此法案ガ出來タモノトスルナラバ、其餘裕フ生ジタ
  時ニ相當程度ニ於テ、或ハ之ヲ減ズルトカ、或ハ極端ナ場合
  ヲ申シマスレバ、之ヲ廢止スルト云フヤウナコトガ無キニシモ
  非ズト云フ結論ガ生ズル譯デアル、又今一ツニハ單ニ是ハ市
  町村ノ財政ヲ緩和スルコトノミデアルナラバ、市町村ニ於テ
  ハ國庫カラシテ受ケタ所ノ分擔額ダケヲ自己ノ懷中カラ支
  出セザルコトニスル、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ市町村ノ〓育ニ對
  スル〓育費ハ分擔額ヲ貰ノテモ貰ハヌデモ、總テ同額ニ止
  メテ、〓育ノ改善向上其物ハ現狀ノ如クニシテ、別ニ改善
  向上ノ效果ヲ現ハサヌヤウナコトノ虞ガアリハシナイカ、斯ウ
  云フヤウナ意味合ヲ以テ特ニ只今申上ゲマシタヤウナ此增
  額ノ趣旨ハ何處ニアルカト云フコトヲ御尋ニナリ、又政府ノ
  答辯ヲ要求シタヤウナ風ニ私ハ見受ケマシタノデアリマス、
  之ニ對シテ政府當局ハ國庫負擔額ノ增額ト云フコトハ市
  町村ノ〓育費ノ重キ負擔ヲ緩和スルコトニ在ル、ソレニハ相
  違ナイガ、其結果ハ大ニ〓育ノ改善向上ニ資スルコトアル
  コトハ明瞭デアル、唯、全國各市町村ハ各〓其事情ヲ異ニ
  スルモノガアリマスガ故ニ、必シモ此負擔額ヲ補給スルコト
  ヲ條件トシテ、其交換的ニ强制的ニ或改善ノ施設ヲ命ズル
  ト云フ譯ニハ行カヌ、サウ云フ考ハ當局ニ於テハ持ヲテ居ラ
  ヌ、サリナガラ我國ノ父兄ハ世界ニ稀ナリト言ハレル程子弟
  ノ〓育ノコトニ付テ熱心デアル、大ニ努メテ居ルト云フ狀況
  デアリマスカラ、此場合ニ於テ〓育ノ振興、改善、向上ト云フ
  ヤウナ氣風ガ、必ズ見ルベキモノアルダラウト當局ニ於テハ信
  ズルノデアル、又偶、只今問フ者ノ如ク、國庫ノ補給ヲ受ケテ
  モソレヲ市町村ノ現在ノ經費ニ充當スルノミニシテ、他ニ〓
  育費ノ增加ヲ見ナイト云フコトガアッタトシテモ、今後國民〓
  育ノ爲ニ施設シナケレバナラヌコトハ多々アル、殊ニ義務〓
  育年限延長問題ノ如キハ、時ノ問題デアル、其他色〓施設
  ヲ要スベキ事ガアルカラシテ、今後ソレ等ノ施設ニ向ッテ
  今日此場合町村ノ實力ヲ涵養シテ置クト云フコトノ必要
  ガアルトモ言ヘルト云フヤウナ、稍〓消極的ト申シテハ或ハ當
  ラヌカモ知レマセヌケレドモ、何トナク問フ人ノ意ニハ十分當
  箝ラヌヤウナ、生溫イト申シテハ失禮デアリマスケレドモ、餘リ
  活潑デナイ御答辯ガアッタノデアリマス、是ニ對シテ委員中ヨ
  リハ、ドウシテモ政府當局ハ此一千万圓ノ負擔額ヲ四千万
  圓ニモスルト云フ此好機ヲ逸セズシテ、其監督權ノ作用ニ
  依シテ何等カノ方法ヲ執ッテ、積極的ニ進ンデ、國民〓育ノ
  振興、改善向上ニ向ッテ、相當ノ施設ヲスルコトノ必要アリ
  ト認ムルト云フヤウナ御意見ガ續々出マシタノデアリマス、
  是モ別ニ決ヲ採クテ多數少數ヲ定メタ譯デアリマセヌカラ、
  ハッキリ申上ゲ兼ネルヤウナ次第デゴザイマス、ケレドモ、蓋シ文
  部當局ノ考ヘテ居ルヨリモ强キ意味ニ於テ、〓育ノ改善向
  上ヲ切望スルト云フ意嚮ハ、委員全體ノ御希望デハナカッタ
  ラウカト私ハ見受ケマシタノデアリマス、又此地租委譲等ノ
  問題ノ爲ニ、今後市町村ノ財政ニ餘裕云々ト云フヤウナ點
  ニ付テノ質問ニ對シテハ、政府當局ニ於テハ是ハ何等ノ關
  係ノ無イコトデアル、國庫ノ財政ノ許ス範圍ニ於テ、今後ニ
  於テモ成ベク速ニ〓員俸給ノ半額ニ達スルダケノ交付金ヲ
  爲サシムルコトニ、當局ニ於テハ努メルト云フ意味ヲ以テ、本
  案ヲ提出シタモノデアルト云フコトヲ文部大臣モ御言明ニ
  ナリ、尙ホ更ニ大藏大臣ノ御出ヲ願ヒマシテ、大藏大臣ヨリ
  モ重ネテ同樣ナル御辯明ガアリマシタ次第デゴザイマス、第
  二ニ申上ゲナケレバナラヌコトハ、先程モ申上ゲマシタ通リ、
  此負擔額ヲ各市町村ニ割當マス方法デゴザイマス、是ハ只
  今デハ-現行法ニ於キマシテハ全額ノ中ノ一割ヲ差引キ
  マシテ、其殘リヲ全國各市町村ニ半分ハ〓員ノ數、半分ハ
  就學兒童數ニ比例シテ之ヲ分ツト云フコトニナッテ居リマス、
  其差引キマシタ一割ノ金ハ、貧弱ナ資力ノ薄弱ナ町村ノ方
  ニ、ソレ〓〓分配ヲスルト云フコトニナッテ居リマス所ガ此度
  ノ改正案ハ、一割ヲ差引イテソレヲ資力ノ薄弱ナ町村ノ方
  ニ分ツト云フコトハ變リハゴザイマセヌガ、其殘ル所ノ九割ヲ
  市町村ニ同ジ比例デ分チマセヌデ九割ノ中ノ三分ノ二、言
  葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、全額ノ六割ニ當ル金額ヲ、市町村
  ニ矢張前ノヤウナ比例デ分ッテ、尙ホ餘ル所ノ三分ノ一ヲ町
  村ニ分ツ、之ヲ半面カラ申シマスレバ、町村ニ分配スル高ハ
  市ニ分配スル高ヨリモ稍。割合ガ現在ノ法律ヨリハ良ク
  ナッタ次第デアリマス、サウシテ殘リノ三分ノ一ハ、是ハ町村
  ノミニ分ツ、斯ウ云フ譯デアリマスガ、ソレハ大數カラ見タノ
  デアリマシテ、其三分ノ一全體ヲ町村ニ特別ニ分ツノデハア
  リマセヌ、三分ノ一カラ稍、、或ル程度マデノ差引ヲ致シマシ
  テ、其差引クト云フノハ何カト云フト、今度ハ資力ノ薄弱ナ
  市ニ特別ナ割當ヲシタイ、是ハ現行法ニハゴザイマセヌ、此
  度ノ改正案ニ新ニ規定セラレタル箇條デアリマス、併シ其金
  高ハ二ツノ方面カラ制限ガゴザイマシテ、市ニ交付スベキ總額
  ノ十五分ノ一ヲ上ラザルコト、十五分ノ一ヲ限リトスルコト
  又各市ニ付テ申シマスレバ、市ガ受クベキ金額ノ五割以上、
  ニ、二分ノ一以上ニハ上セナイコトデ千圓貫フモノハ千五百
  圓以上ニハドウシテモレ〓セルコトガ出來ナイ、又十五分ノ一
  ト云フコトヲ、之ヲ金高ニ積ッテ見マスルト云フト二十二万
  圓許リニナルサウデゴザイマス、詰リ二十万圓前後ヲ程度ト
  シテ、尙ホ各市ニハ其市ノ受クベキ金高ノ半額ヲ程度トシ
  テ、ンレ以內ノ範圍ニ於テ資力薄弱ナル特別ノ市ニ對シテ、
  相當割當額ヲ增加スルト云フノガ、此改正案ノ分配方法ノ
  要點デゴザイマス、此資力薄弱ナル市ト云フコトニ付テハ、
  相當ノ疑ヲ以テ御質問等モゴザイマシタガ、政府當局ノ說
  明スル所ニ依レバ、同ジ市ノ中ニモ隨分差等ガアル、例ヘバ
  沖繩縣ノ首里ノ市ノ如キハ、其富ノ力ニ於テ、其他ノ點ニ於
  テ隨分弱イ力ノモノデアル之ニ反シテ町村ト云ウテモ、例
  バ皆樣ノ始終御覽ニナル大崎ノ町ノ如キハ、町村ト云ウテモ
  中〓大ナル力ヲ備ヘテ居ル所ノ町村デアッテ、單ニ町トカ市
  トカ云フ名前ニ依ッテ一律ニ之ヲ定メルト云フコトハ、實際ニ
  適應セシムル施設トシテハ面白クナイ、ソレ故ニ此度ノ法案ニ
  於テハ、市ニ付テモ、特別ナル市ニ付テハ特別ノ分配方法ヲ
  執ル、町村ニ付テ特別ナ分配方法ヲ執ルト同ジヤウナコト、
  但シ同ジク資力薄弱ナ市ニ致シマシテモ、ソレー〓等級モア
  ルコトデアリマスカラ、何レ何段カノ階級ヲ設ケテ、實際ニ適
  應スルヤウニ、當局ニ於テハ努メタイ斯ウ云フ說明デゴザイ
  マシタ、デ斯ノ如ク分配方法ヲ三分ノ二ハ市町村ニ分ツ、三
  分ノ一ハ町村ノミニ分ツ、斯ウ云フ風ニ致シマシタ事ニ付テ
  ハ、大體ノ上カラ觀察シテ、政府當局ノ定メラレタモノデアリ
  マシテ、確實ナル數字的根據カラシテ出タノデハナイサウデ
  アリマス、併ナガラ或ハ町村ノ富ノ力、或ハ市町村ノ負擔力
  等ノコトヲ假ニ一例トシテ取調ベテ見ルト云フト、稍〓此標
  準ニ適合スルヤウナ結果ヲ見タ、ソレハドウ云フ事カト云フ
  ト、例ヘバ直接國稅、直接國稅ト云フモノハ假ニ富ノ力ヲ現
  シタモノデアリト、斯ウ見ルト云フト、市ノ直接國稅ヲ定ムル
  力ガ一·五トスレバ、町村ノ直接國稅ヲ納メルカハ一デアル、
  一戶當リデアリマス、尤モ是ハ普通町村ニ付テ標準ヲ取ッテ
  調ベタ結果アゴザイマス、今度ハ反對ニ府縣ノ一戶當リノ
  負擔額ヲ調ベテ見ルト、サウスルト、戶數割及家屋稅ノ附
  加稅、之ヲ一戶當リニ當箝メテ見マスト云フト、此方ハ町村
  ノ方ガ一·六ニナリマシテ、サウシテ市ノ方ハ一ニナル-一·
  六ト云フノハ間違デゴザイマシタ、一·五デゴザイマシタ-イ
  ヤ是ハ私ノ書損ヒカモ存ジマセヌ、一·五カ一·六カ其中デゴ
  ザイマシタ、免モ角モ一ト一半前後ノ數字ガ現レルノデ、詰
  リ負擔ノ實況カラ見テモ、ソレカラ富ノ力カラ見テモ、市ト町
  村トノ割合ガ二ト三ト云フヤウナ數字ニ現レテ來ルト云フ
  コトハ大勢デアル、又半面ニ市ノ稅、町村ノ稅ノ總額カラ之
  ヲ見マシテモ、矢張二ト三ト云フヤウナ數字ガ現レテ來ル、
  夢此度ノ改正案ニ依ル所ノ三分ノ二ヲ市町村全體二分
  チ、三分ノ一ヲ町村ノミニ特別ニ又分ッテヤルト云フコトハ、
  大勢カラ觀察シテ適當ナル分配方法ト認メルト云フノガ、
  政府當局ノ辯明デゴザイマシタ、但シ此事ニ付キマシテ委員
  中ヨリ修正ノ意見ガ出マシテ、松下君ノ修正案ガ現レタノ
  デアリマス、ソレハ此三分ノ二ヲ市町村、三分ノ一ヲ町村ト
  云フノヲ半分々々ニ分ッテ、半分ヲ市町村、半分ヲ町村ト、斯
  ウ云フコトニ改メタイ、ソレニ改メマスル結果、松下君ノ御計
  算ニ依レバ、八十五万幾圓ト云フモノガ市ノ方ガ減ッテ、ソレ
  ダケ町村ノ方ガ殖エテ參ルコトニナリマス、併ナガラモット之
  ヲ詳シク申上ゲマスレバ、市ノ方ノ割當額ヲ第三條ノ規定
  ヲ改メテ、半分々々トシテ之ヲ減ズルモノトスレバ、第四條ノ
  方ニ書イテアリマスル所謂特別交付、特別交付ノ方ノ金額
  ガ又市ノ方ガ減フテ參リマスコトニナリマスカラシテ、松下君
  ノ御計算ヨリモモット割合ノ移動スル高ガ多クナル譯ニナリ
  マス、是ハ正確ニ取ッ夕算盤デハゴザイマセヌケレドモ、蓋シ九
  十万圓前後ノモノガ政府ノ案ヨリハ市ノ方カラ差引イテ、
  之ヲ町村ノ方ニ分ツトー云フコトニナラウト思ハレマス、此點
  ハ松下君ノ御提案デゴザイマシタケレドモ、一人ノ賛成者ガ
  ゴザイマシタノミデ、可決セラレマセヌデゴザイマシタ、勿論松
  下君モ非常ニ强キ意味ニ於テ此御主張ヲ爲サルト云フ風ニ
  モ見エナカッタノデアリマス、先程伺ヒマスルト云フト、本議場
  ニ於テモ別ニ修正ノ意見等ハ述べナイ積リダト、斯ウ云フ御
  話ガアッタ位ノコトデアリマスルカラ、格別强イ意味デモナカッタ
  ラウト思ヒマス、ソレカラ第三ニハ分配方法ノ基礎トナルペ
  キ數字ニ、現行法デハ正〓員ト准〓員ノミヲ計算ニ入レル
  コトニナッテ居リマスガ、此度ノ改正案ニハ、代用〓員ヲモ之
  ニ加ヘルト云フコトニナッタノデアリマス、此代用〓員ヲモ交
  付金額ノ標準基礎トスルト云フコトニ付テハ、大分激烈ナ
  ル議論的質問應答ガアッタノデアリマス、ソレハ申上ゲル迄モ
  ナク、代用〓員ト云フモノハ、成ベク速ニ之ヲ正〓員ニ換ヘ
  シムルコトガ希望スル所デアッテ、固ヨリ文部當局モ各委員
  モ、同樣ナ考ヲ持ッテ居ルガ、之ヲ只今カラ代用〓員ヲ持フテ
  居ル所ニハ、ソレニ對スル補助金ノ計算ヲ少クスルゾ、ソレダ
  ケハ計算ニ入レナイゾト云フコトハ、却テ町村ヲ激勵セシメ
  テ、一日モ速ニ正〓員ニ換ヘシムル途ヲ開カシムル事ニナル
  ノカ、或ハサウデナシニ、假ニ斯ノ如キ已ムヲ得ズシテ代用〓
  員ヲ使シテ居ルヤウナ所ニハ、益〓補助ノ必要ガアルカラシ
  テ、サウ云フ所ニハ補助金額ヲ矢張割當テシムルヤウニ制度
  ヲ定メタ方ガ、早ク此法ノ目的ヲ達スルコトニナルカト云フコ
  トノ意見ノ相違ニナルノデアリマス、只今申上ゲマス通リ、此
  點ニ付キマシテハ、隨分激シキ議論ガゴザイマシタケレドモ、
  結局此點モ別ニ修正意見ヲ提出スルト云フニ至リマセヌデ、
  要スルニ雙方望ム所ハ同ジデ、一日モ速ク正〓員ヲ充實シ
  テ、國民〓育ノ改善向上ヲ圖リタイト云フコトニ歸著スル次
  第デゴザイマスカラシテ、此點ニ付テ特ニ一ツノ希望ヲ添へ
  テ、サウシテ原案ヲ贊成スルト云フコトニナッタノデアリマス、
  其希望ハ申上ゲル迄モナク當局ニ於キマシテハ、師範學校
  ノ師範〓育ノ改善擴張ヲ圖ヲテ、優良〓員ヲ充實スルコト
  ニ一層努力セラレンコトヲ望ム、斯ウ云フ意味デアリマス、其
  意味ヲ以テ只今申上ゲマシタ、ヤカマシイ激シイ議論ノアッタ
  代用〓員計算云々ト云フ問題モ無事ニ治マッタ次第デゴザ
  イマス、其他義務〓育ノ年限延長デゴザイマスルトカ、〓員
  ノ素質待遇ノ問題デアリマストカ、ソレカラ視學制度、殊ニ
  郡視學ノ問題デアリマストカ、精神的修養、學校衞生及體
  育、ソレカラ高等ノ學校ニ入學スル入學難、國民〓育ト軍
  事〓育トノ關係、貧困兒童ノ救濟トカ、或ハ政治上ノ會場ト
  シテ小學校ヲ使用セシムル事トカ云フヤウナ、各般ノ事ニ亙
  リマシテ、種々ナル熱心ナル應答ガ澤山ゴザイマシタガ、餘リ
  長クナリマスカラ、是ハ速記錄デ御覧ヲ願ヒマス、免モ角モ
  以上ノ徑路ヲ經テ本案ハ委員會ニ於キマシテモ、滿場一致
  的可決デス-一致トハ申シマセヌ、松下君ノ少々ノ御修
  正ガゴザイマシタガ、稍、:一致トモ認ムベキ形勢ニ於テ可決ニ
  ナッタ次第デゴザイマスカラシテ、本議場ニ於カレマシテモ、願
  クハ滿場一致ヲ以テ、皆樣ノ御賛成アランコトヲ切望致シ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=28

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• 029・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　委員長報告ニ贊成ノ通告ガアリ
  マス、大津諄一郞君
  〔大津淳一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=29

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• 030・大津淳一郎

  ○大津淳一郞君　本員等ハ委員長ノ只今報告ニナリマシ
  タ趣意ニ依フテ本案ヲ賛成致ス者デアリマス、サリナガラ本
  案ニ對シテハ甚ダ不滿足ナル點ガアルノデアリマス、吾々共
  多年ノ主張ニ添ハナイ體ガアリマスルガ故ニ、之ヲ希望條佇
  トシテ委員會ニ於テ申述ベマシタ所ガ、政友會ノ原田君モ、
  何等政友會ニ於テモ此希望條件ニハ異論ナシトアッテ決定
  ヲシタノデアリマス、別ニ希望條件ヲ決議シタト云フコトハ、
  委員長カラ報告ハアリマセヌケレドモ、サリナガラ其場合此
  希望條件ハ如何ニナサルカト云フコトヲ質問ヲシマシタ、所
  ガ、委員長ハ是ハ私カラ委細報告ヲスルト云フノハ、委員會
  多數ノ意見ノ決シタル希望條件デアルト吾々ハ思ッテ居リマ
  シタガ、只今委員長ノ報告ハ左樣ハツキリノ御報告ハナ
  カッタガ、併シ今更其點ヲ爭フノデハナイガ委員會ノ事實ハ
  斯樣デルト云フコトヲ玆ニ申上ゲテ置クノデアリマス、此法
  案審査ニ當ッテ、吾々共ノ稍、意ヲ强ウスルニ足ル二個ノ言
  明ヲ得タノデアリマス、此言明ハ國民〓育ノ爲ニ本議會ヲ
  通ジテ國民ニ知ラシメテ置キタイモノデアルト考ヘテ居リマ
  ス、其一ツノ言明ハ國民〓育費ニ對スル國庫負擔ノ定義デ
  アリマス、何ガ爲ニ國庫ハ此四千万圓ヲ支出スルノデアルカ
  ト云フ問題デアリマス、吾々ハ申上ゲル迄モナク、固ヨリ國民
  〓育ニ對シテハ國家ガ盡スベキ義務デアル、國民〓育ハ國
  家ノ事業デアルト共ニ町村ノ事業デアル、國家ノ事業トシテ
  爲スベキ事柄デアルト一云フコトハ、初ヨリ吾々ハ主張シ來タ
  ノデアルノデアリマス、申ス迄モナク國家ハ國民ヲ要素トシテ
  立ッテ居ルモノデアッテ、國民ノ文化ガ國運ノ伸張ニ關スルモ
  ノト云フコトハ昔カラ是ハ唱ヘテ居ル、歐米諸國ノ〓育學
  者ノ議論デアリマス、然ルニ我國ニ於テハ此事ハ頗ル瞹昧
  ニ付シテ居ッタ、何ガ爲ニ國庫ガ支出スルカト云フ定義ハ一
  ツモ定マラナイデ居クテ、今囘現内閣ガ三千万圓ヲ增額支
  出スルニ當ッテ、當局タル文部大臣ノ說明ニ依レバ、委員長
  ハ三個ニ其趣意ヲ分ケテ報告致サレマシタケレドモ、
  私ノ聞イテ居ル所ニ依レバ、第一ノ趣旨ハ、町村ノ
  經濟ヲ緩和スルガ爲ノ支出デアル、之ニ重キヲ置カレテ、私
  ハ是ガ第一ノ趣旨デ本案ハ提出セラレタト、斯樣ニ承知シ
  テ居リマス、是ガ甚ダ吾々了解セナイ所デ、成程此金額ヲ町
  村〓育費ニ支出シマシタナラバ、其結果ハ町村ノ經濟ヲ緩
  和スルコトニナルニハ相違ナイ、又緩和モ致シタイ、併ナガラ
  〓育費ハ町村緩和ノ費用トハ違フ、〓育費ナルモノハ固ヨ
  リ〓育ノ經費デナケレバナラヌ、殊ニ國民教育費ニ支出ス
  ルノハ、國民〓育費ノ必要カラ起ラナケレバナラヌ、町村經
  済ヲ緩和スルノ必要カラ起リナガラ、敢テ〓育費ノ國庫負
  擔ト云フ名義ヲ付ス必要ハナイノダ、此點ニ於テ文部大臣
  ニ質問ヲ致シ、殊ニ町村財政ヲ緩和スル爲ノ支出デアルナ
  ラバ、若シ町村經濟ガ緩和シテ、假ニ地租ヤ營業稅ノ如キ
  モノヲ委譲シテ、町村ノ財源、府縣町村ノ財源ガ豐カニナッテ
  經濟ハ緩和サレル狀態ニナッタナラバ、其支出ハ如何ニスル
  カト云フコトヲ御質問申シタノデアリマス、然ルニ委員長ノ
  報告モ必ズ私ハ皆聽違ッテ居ルトハ私ハ申シマセヌケレドモ、
  私ノ耳ニ達シタノハ、地租委讓、營業稅委譲トハ全ク無關
  係デアッテ、此支出ハ將來共ニソレ等ノ關係ハナク、小學校
  經費トシテ支出スルモノデアル、斯樣ナル辯明ヲ得タノデア
  リマス、偖テ此辯明、斯ク御辯明ニアッタ以上ハ、取リモ直サ
  ズ是ガ小學校、卽チ國民〓育ニ對シテハ國家ノ負擔トスペ
  キモノデアルト言ハレタト何等ノ言葉ノ違ハアッテモ變ラナイ
  ノデアル、卽チ町村〓育費ハ國家ガ負擔シテ、國家ガ事業
  ノ一部ヲ負擔スルモノデアルト解釋シテ何等ノ違ヒハナイト
  思フ、固ヨリ斯樣ニ解釋シテ宜イノガ本案ノ精神デアッテ、第
  一條ニハ市町村尋常小學校〓員ノ俸給ニ要スル經費ノ一
  部ハ國庫之ヲ負擔ス、寔ニ一部ト云フコトハ甚ダ吾々ノ意
  ニ充チマセヌケレドモ、併ナガラ一部タリトモ國庫之ヲ負擔
  スト云フカラニハ、國民〓育ハ國家ノ仕事デアルト云フコト
  ヲ認メテ居ルト解サナケレバナラヌ、然ルニ大體ノ-大體
  デモナイケレドモ、現内閣ノ如キハ其解釋ヲ甚ダ違ハセテ
  居ッタノデアリマス、第四十二議會ニ於テハ前内閣ノ當局
  者、今日モ御列席デゴザイマスケレドモ、中橋君ハ市町村ノ
  小學校ハ市町村ノ經費、府縣ノ中學校ハ府縣ノ經費デ經
  營スベキモノデアルト云フ說明マデモシテアル、是ハ甚ダ吾々
  ノ考ヘテ居ル事トハマルデ相違ヲシテ居ルノデ、市町村ニ
  アッテモ、國民〓育ハ全部市町村ノ負擔ニアラズシテ、國庫
  ガ相當ニ負擔ヲシテ、國家ノ事業トシ、竝ニ町村ノ事業ト
  シテ共ニ爲スベキモノデアル、各國ノ事例ニ徵シテモ皆斯ノ
  如クナッテ居ルト云フコトハ吾々共多年ノ主張デアッタノデア
  リマス、然ルニ此度ハ不完全ナガラモ現當局ハ、之ヲ永久ニ
  支出スルモノデアッテ、町村ノ財政ヲ緩和スルデハアルケレド
  モ、ソレガ緩和サレタト否トニ拘ラズ、財政ガ豐カニナッテモ
  此支出ハ引續イテ支出ヲシテ行クモノデアルト云フ說明ヲ
  得クノハ、稍〓此第一條ノ意義ヲ徹底スルヤウニナッタト云フ
  コトハ、是ガ此支出金ノ定義ガ定マッタモノトシテ、國民全
  體ノ者ガ記憶シテ貫ヒタイト私ハ思フノデアリマス、今一ツ
  ハ此支出金ノ金額デアリマス、支出金ノ金額ト云フモノガ是
  マデ決マッテ居ラナカック、図庫ノ餘裕ガアル時ニハ段々支出
  スルノデアルケレドモ、ト云フノデ、何時モ町村救濟ナドト云
  フコトノ名ヲ付ケテ居ラレクケレドモ、其救濟サヘ十分ニ出
  來ナカッタノガ今日マデノ狀態デアリマス、吾々ハ夙ニ國家
  ノ負擔スベキ金額ヲ定メテ置イテ、市町村ハ何程、國家ハ
  何程ト定メテ置イテ、少クモ十年位ハ動カサズニ基礎ヲ定
  メテ置イテ〓育ヲヤリタイト云フコトガ、吾々多年ノ希望デ
  アリマシク、然ルニ政府ハ更ニ何程マデハ國家ガ負擔スルト
  云フ金額ノ決定ハ是マデナカッタノデアル、然ルニ現當局ハ
  說明シテ曰ク、小學校ニ支出スル國庫ノ負擔金ハ、小學校
  〓員ノ半額迄ニ達セシムルノ見込ヲ持っテ居ルガ、今財政
  上如何トモスベカラザルガ故ニ三千万圓ヲ支出スルノデア
  ル、斯樣ニ明言サレタノハ初テヾアリマス、半額マデハ支出ス
  ルノデアルケレドモ、左樣ニハ財政上許サナイカラ三千万圓
  ニ止メタト云フコトハ、最早半額マデ支出スルト云フ方針ヲ
  言明セラレタノデアル、サリナガラ此文部大臣ノ說明ニ疑惑
  ヲ置クノデハナイガ、國庫ノ支出ハ主トシテ大藏大臣ガ關
  係ヲ有シテ居ルノデアルガ故ニ、更ニ大藏大臣ノ御出席ヲ
  求メテ質問致シタ所ガ、大藏大臣カラ又小學校〓員俸給
  ヲ半額マデ支出ヲスル見込ヲ持クテ居ルケレドモ、今財政如
  何トモスベカラズ、漸ク三千万圓ダケヲ支出スルニ至ッタト、
  斯様ニ說明ヲシテ居リマス、然ラバ大藏大臣モ亦半額マデ
  支出スルト云フコトハ定義デアル、卽チ政府ノ方針デアルト
  云フコトヲ是認シタノデアリマス、是ガ卽チ今回審査ニ方ッテ
  此定義ノ定ッタルコトハ、本議會ヲ通ジテ國民ニ知ラシメテ
  置キタイモノデアルト私ハ存ジマシテ、此二ツノ定義ハ吾々
  共ノ在來ノ意見ニ符合シテ寔ニ心强ク思フノデアリマス、サ
  リナガラ其支出金ニ對シテマダ〓〓〓足スルコトガ出來ナ
  イ、如何トナレバ左樣半額マデ支出スルノガ目的デアル、方
  針デアルトシタナラバ、何故ニ今一千四百万圖ノ金ヲ增シ
  テ、教員ノ俸給ノ半額マデヲ支出シナイノデアルカ、一體此
  問題ノ起リナルモノハ、御列席ノ諸君ニハ澤山御承知ノ方
  モアリマセウガ、吾々ガ十年來國庫負擔金ヲ主張シテ居ダ
  ガ、具體的トシテ現レタ所ノモノハ大正六年ノ三十九識
  會ニ現レタノデアリマス、當時政友會國民黨ヨリハ小學校
  ニ國庫ノ支出ヲシテ、町村ノ負擔輕減ヲ圖レト云フ建議案
  デアリマシタケレドモ、吾々共ハソレニハ滿足ヲシナイ、之ヲ
  以テ法律案トシテ議院ノ權能、議會ノ權能ニ依テテ案ヲ
  決定シテ置カネバナラヌト云フ法律案ヲ提出シタ、其法律
  案ガ當時小學校ノ經費ハ六千万圓デ其三分ノ二卽チ四
  千万圓ガ〓員俸給デアルガ故ニ、其半額ノ二千万圓ヲ支
  出スベシト云フ法律案ヲ提出シタノデアリマス、其精神ハ卽
  チ大正六年ヨリ小學校〓員ノ俸給ノ半額ト云フコトハ、
  吾々ガ常ニ主張シテ來タノデアリマス、サリナガラ此法律案
  ハ委員會ニ附セラレテ、床次代議士ガ委員長トナフテ審査
  致シマシタ、當時內閣總理大臣タル寺內伯及大藏大臣、
  文部大臣ノ出席ヲ求メテ質問ト申サウカ、協議ト申シマセ
  ウカ、應答ヲ重ネタル結果、次ノ議會ニ於テ、卽チ政府ガ法
  律案ヲ提出スルガ故ニ、ドウカ左様ニ御承知下サレタイト
  云フコトガ結局ノ應答ノ結果デアリマシタ、玆ニ於テ政友會
  ノ諸君ヨリハ、既ニ政府ガ斯ク明言シタル以上ハ、憲政會ノ
  提出シタル法律案ハ撤回ヲシテ呉レテ、吾々ノ建議案デ一
  緒ニ行カウヂヤナイカ、斯ウ云フ御交涉ガアリマシタガ、吾々
  共ハ内閣ハ前途ドウナルヤラ決シテ測ルベカラザルモノデア
  ルガ故ニ、ソレハ御免蒙ル、吾々ハ權能ニ依ッテヤッテ行クカ
  ラ、御交涉ニハ應ジ難シト丁事ニ御返事ヲ申上ゲタ所ガ、
  政友會ノ諸君ハサリナガラ諸君ノ議案ガ否決サレタ後ハ、
  政友會案ニ同意シテ吳レ、成ベク滿場一致ヲ以テ行キタイ、
  之ニ對シテ吾々ハ反對ハシタクナイガ、アナタ方ノ御提出ノ
  建議案ハ〓育改善ト云フ文字ハ一ツモ無イデハナイカ、町
  村ノ負擔輕減ト云フ事許リデアルガ、吾々ノ建議案ハ〓育
  改善ト町村許リニ此〓育費ヲ預ケテ置クベキモノデナイカ
  ラ、國家ガ負擔シヤウト云フノ精神ヲ以テ提出シテ居ルノ
  デアル、此趣意デアルカラ、若シアナタノ方ノ建議案ニ於テ
  〓育改善ヲ目的トスル一項ヲ加ヘタナラバ、考慮スル餘地
  ガアルト申シマシタ所ガ、ソレナラバ加ヘヤウト云フノデ加ヘ
  テ來タ爲ニ、吾々ハ否決セラレタ後ニ賛成ヲシタノデアリマ
  ス、斯ウ云フ結果ニ後ノ議會ニ於テ此負擔法ナル法律案ガ
  制定セラレテ、千万圖ヲ下ラザル支出金ヲ見タノデアリマス
  ガ、斯ノ如ク既ニ此法案ヲ提出シテカラモ七箇年、每年之
  ヲ提出シマシタケレドモ、遂ニ行ハレナイデアルガ故ニ、如何
  ニモシテ此三分ノ一ダケ、卽チ〓員俸給ノ半額ダケヲ定義
  トシテ〓究ヲシテ、後ハ町村ガ負擔スルモノダト云フコトヲ
  確定トシテ、向フ十年間チヤント此方法ニ依ッテ〓育ヲ進メ
  テ行ク、基礎ヲ固クシテ〓育ノ改善ヲ圖リタイト云フノガ、
  吾々ノ精神デアルガ故ニ、附帶條件トシテ卽チ希望ヲ述べ
  ザルヲ得ナイノデアリマス、斯ノ如キノ趣意ヲ以テ希望條件
  ヲ附シタノデアリマスガ、サリナガラ本案ノ三千万圓ノ支出
  ト云フコトハ、不十分ナガラモ吾々ハ稍、滿足ヲスル、之ヲ以
  テ前議會ノ當時ニ見マシタナラバ、吾々ノ負擔增加ノ建議
  案等ハ一蹴シ去ラレテ、更ニ支出ノ考ガ無キノミナラズ、却
  テ反對ニ〓育ノ效果ヲ危クスルト吾々ガ信ズル、臨時〓育
  行政調査會ナルモノヲ設ケテ、二部〓授ニスルノ、三學級
  二〓員ニスルノ、若クハ一學級ヲ八十人ニシテ經費ヲ減ラ
  スノト云フガ如キ調査ヲ爲サレテ、却テ〓育ノ效果ハ滅却
  セラレヤウトシタル前内閣ノ當時ニ比セバ、マダシモ三千万
  圓ノ支出ハ吾々ニ於テハ多トスルノデアリマス、併ナガラ文
  部大臣ハ三千万圓ヲ出スノニシテモ非常ナ苦心ヲシタ、骨
  折ヲシタト云フコトヲ仰セラレテ居リマスガ、是ハ文部大臣
  ノ御骨折ハアルカモ知レマセヌ、併ナガラ文部大臣ガ此支
  出ヲサセタモノト思ッタラバ御考違デハナイカ、道理アル國民
  多數ノ輿論ガ卽チ三千万圓ヲ支出スルニ至ッタノデアッテ時
  恰モ文部大臣カ其當局ニ在ッタカラ、其名譽ヲ擔フト云フ
  コトハ幸運デ、仕合者ト私ハ申シテ宜カラウト思フノデアル
  (拍手)サリナガラ斯ノ如キ道理ノアルモノヲ、何故ニ今一歩
  進メテ解決ヲシナイカト云フコトハ、吾々共ノ遺憾ニ思フ所
  デアリマス、次ニ希望條件トシテ提出シタルハ、代用〓員ナ
  ルモノガ〓ヤ〓員總數ノ二割六分アルノデアリマス、二割
  六分ハ代用〓員、准〓員モ這入ッテ居リマス、サリナガラ是
  ハ必シモ代用〓員、准〓員ガ人格ノ惡イ、〓師ニ堪ヘナイ
  者許リト見テ居リマセヌケレドモ、大體ニ於テ正〓員ニ及バ
  ザル者ト見ルノガ當然デアリマス、現在其通リニナッテ居ル、
  然ラバ〓育ノ效果ヲ收メルニ於テハ國庫ガ支持スルト同
  時ニ、〓育ノ改善ト云フ方ニ力ヲ盡スニハ、師範〓育ヲ擴
  張シテ、今少シ優良ナル〓員ヲ出シテ、代用〓員ヲ少クスル
  ト云フ方法ヲ何故講ジナイノデアルカ、然ラズンバ〓育ノ效
  果ハ何ヲ言ッテモ〓員ガ惡クテハ決シテ擧ラナイカラ、優良
  ナル〓師ヲ多數ニ出ス方法ヲ取ラレタイト云フコトヲ、吾々
  ハ希望ノ一ツトシテ述べタノデアリマス、現在ノ師範〓育ナルモ
  ノハ、四十年ノ師範學校令、古イカラ惡イト云フノデハアリマ
  ユヌ、ケレドモ、三十年ニ定メラレタ師範學校令、而シテ其師
  範〓育令ノ規程ヲ定メタノハ四十年、此四十年ニ文部省ガ
  勅令ヲ以テ定メラレタ所ノ此規程ハ、總テ府縣知事ニ師範
  學校ノ經費、校費等ノ事ヲ委任シテアルノデアリマス、故ニ師範
  學校ハ幾テ文部省ガ監督シテモ、區々ナル方法ヲ取ッテ居ルノ
  デアルガラ、優良〓員ガドウシテモ出ヤウガナイト思ノテ居リ
  マスル、然ルニ今ヤ世ノ中ハ進ンデ、如何ナル國デモ六箇年
  ノ義務〓育ナドト云フコトヲ行ッテ居ル國ハアリマセス、如
  何ナル國デモ八箇年以上ノ義務〓育ヲ行ッテ居ルノハ、大
  戰後、卽チ歐未ノ諸國ハ戰後ノ經營ハ國民ノ〓育ニ在リ
  ト云フコトヲ自覺サレタル結果デアルト吾々ハ信ジテ居リマ
  スル、隨テ經費モ、非常ニ國庫ノ支出モ殖シテ居リマスル、サ
  ウ云フ場合ニ師範〓育ト云フモノハ、全體他ノ國ニ於テハ
  佛蘭西ニ師範學校見タヤウナモノガアッタケレドモ、歐米ノ
  諸國ニ完全ナル師範學校ト云フモノハ無イト稱シテモ宜シ
  イ、日本ニハ不完全ナガラ小學校ノ〓員、中等〓員ノ普通
  〓育ニ充ツルダケノ〓員養成ノ機關ハ備ッテ居ッタノデアル、
  然ルニ專門〓育ノ歐米ノ國ヲ見マスレバ、何レノ國モ師範
  學校ヲ置イテ〓員養成ヲヤリ、一層ノ力ヲ盡シテ居ルト云
  フコトハ一昨年文部省ガ囑託ヲ以テ取調ベニ歐米ニ派遣
  シタ所ノ帝國〓育會長ノ澤柳君ノ報告ニ依っテ明カデアル
  ノデアリマス、斯ノ如キ狀勢ニ世界ノ大勢ハ向フテ居ルノニ、
  我國ハ師範〓育ヲ閑却シテ、八箇年ノ義務〓育ハ是非共
  國民ノ輿論デ實行シナケレバナラヌ場合ニ當ッテ居ルニ、當
  局ハ七千万圓ノ金ヲ要スルカラ出來ナイノデアル-如何
  ニモ七千万圓、聞ケバ大變デアリマスケレドモ、經常費ハ一
  千八百万圓デアル、是モ少シ高キニ失シテ居ルト思フ、後ト
  ノ五千二百万圓ト云フモノハ、都市ノ建築費ヲ通ジテ一坪
  當リ百五十圓ノ計算ダカラ、此算當ガ出テ居ルト云フノデ
  アルガ、是ハ見樣ニ依ッテ考ガ違ヒマスケレドモ、一坪百圓當
  リトシマスレバ、四千万圓以內デハナイカ、ソレハ如何ナル方
  法モアラウ、高等〓育機關ヲ前內閣ガ擴張スルノ當時ニ
  アッテスラ、有難キ恩命ニ接シタガ、私ハ有難キ恩命ヲ强テ
  期待スルデハナイガ、文部當局ノ誠心誠意ヲ以テ爲サント
  スルニ當ッテハ、高等〓育機關ノ擴張ノ當時ノ如ク、御内帑
  ノ恩命ニ接スルコト無シトハ限ラレナイト思フノデアリマス、
  サリナガラ是モ小學校〓員ノ〓師ノ數ガ足ラナイカラ今出
  來ナイノデ、〓師ノ數ガ足ラナイノデアル-然ラバ師範學
  校ノ改善ト云フコトハ尙更ラ急デハナイカ、〓師ノ不足ハ
  知ッテ居リナガラ其不足ノ〓師ヲ補足セシムル方法ト云フ
  モノハ一ツモ講ジテナイ、現在デスラ足ラナイ、尙ホ八年制ノ
  實行ニ付テハ尙ホ足ラナイト云フ此點カラ見テモ、師範〓
  育ハ改善ヲシテ、大ニ優良ナル〓員ヲ出スト云フコトハ必
  要デアッテ、吾々共ハ此條件ハドウシテモ盡サヾルヲ得ザル場
  合ニ差迫ッタノデアリマス、サリナガラ文部ノ當局モ八年制
  ノ義務〓育延長ハ一時ニヤラナイデ、三年、五年、七年ノ繼
  續事業トシ、其他ニ種々ナル方法ヲ講ジテ、是非實行スル
  積リデアルト云フノデアルカラ、吾々ハ別ニ希望條件ヲ附サ
  ナカッタノデアリマス、必ズ是ハ實行セラルヽデアラウト、私共
  ハ文部當局ニ信任ヲ置イテ、希望條件ト致シマセヌ、以上
  述ベタル理由ニ依シテ、如何ニシテモ吾々共爰ニ十數年ノ要
  求シテ居ルコト、及初ヨリ小學校〓員俸給ノ半額ダケハ國
  庫ガ負擔シテ、國家ハ國民ノ〓育ニハ大ナル義務ヲ負ッテ
  居ル、國家ノ事業デアッテ同時ニ町村ノ事業デアルカラ、國
  民ノ文化ヲ促ガス上ニ於テハ、國家ガ全力ヲ竭サネバナラヌ
  ト云フ趣意ヲ、稍一步ヅヽ進メテ來タト云フコトヲ多トス
  ルト同時ニ、速ニ其實行ヲ期セラレンコトヲ希望條件トシ
  テ附シテ、本案ヲ賛成シタル次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=30

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• 031・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　本案ニ對シテハ外ニ通告ハアリ
  マセヌ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=31

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• 032・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ第
  二讀會ヲ開クコトニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=32

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• 033・高見之通

  ○高見之通君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ
  省略シテ委員長報告ノ通リ、可決確定セラレンコトヲ望ミ
  マス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=33

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• 034・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニハ御異議ハナイ
  ト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、直ニ第二讀會ヲ開
  キ議案全部ヲ議題ト致シマス
  市町村義務〓育費國庫負擔法改正法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=34

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• 035・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　別ニ御異議モナイヤウデアリマス
  カラ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ可決確定サレ
  マシタ、是ヨリ稅制各案ノ議事ニ入リマスノデアリマスガ、此議
  事ハ大分時間ヲ要シヤウト考ヘマスノデ、此間十分間ノ休
  憩ヲ致シマス
  午後四時十一分休憩
  午後四時三十四分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=35

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• 036・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　休憩前ニ引續イテ會議ヲ聞キマ
  ス、日程第六乃至第二十ハ同一委員ニ付託シタ議案デア
  リマスカラ、一括議題トナシ、委員長ノ報告ヲ求メ、且ツ一
  括シテ討論ニ付スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=36

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• 037・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ其
  通リ決シマス(中野寅吉君「議長々々」ト呼フ)日程第六、所
  得稅法中改正法律案外十四件ヲ議題ト致シマス、委員長
  ノ報告ヲ求メマス、委員長山本悌二郞君
  第六所得稅法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續((委員長)
  報報
  報告書
  一所得稅法中改正律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
  段及報告候也
  大正十二年二月九日
  所得稅法中改正法律案委員長
  山本悌二郎
  衆議院議長奧繁三郞殿
  (小字及-ハ委員會修正)
  所得稅法中改正法律案中左ノ通修正ス
  第二十六條中「申出テタルトキハ」ヲ「申出テタルトキハ
  前二項ノ規定ニ拘ラス」ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一
  項ヲ加フ
  所得調査委員會聞會後第三種ノ所得ノ決定ニ付脫
  漏アルコトヲ發見シタルトキハ其ノ決定ヲ爲スヘカリシ
  年ノ翌年ヨリ三年以内ニ於ケル所得調査委員會ノ
  調査ニ依リ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定スルコト
  ヲ得
  第七十三條ノ二政府ハ法人ノ株主又ハ社員ノ一人
  及其ノ親族、使用人其ノ他特殊ノ關係アリト認ムル者
  ノ株式金額又ハ出資金額ノ合計カ其ノ法人ノ株式
  金額又ハ出資金額ノ二分ノ一以上ニ相當スル法人ニ
  付テハ其ノ留保シタル所得中左ノ各號ノ一ニ該當ス
  ルモノニ限リ之ヲ株主又ハ社員ニ配當シタルモノト看
  做スコトヲ得
  -事業年度末ニ於ケル積立金及其ノ事業年度ノ
  所得中留保シタル金額ノ合計金額カ其ノ事業
  年度末ニ於ケル拂込株式金額又ハ出資金額ノ
  二分ノ一ニ相當スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ
  超過金額ニ屬スル其ノ事業年度ノ所得中留保
  シタル金額ヨリ其ノ事業年度ニ於ケル所得ノ二
  十分ノ一ニ相當スル金額ヲ控除シタル金額
  二各事業年度所得中留保シタル金額カ其ノ事業
  年度ニ於ケル所得ノ十分ノ三ニ相當スル金額ヲ
  超過スルトキハ其ノ超過金額
  各事業年度所得中留保シタル金額カ其ノ事業年度末ニ於ケ
  ル拂込株式金額又ハ出資金額ニ對シ年三十分ノ一ノ割合ヲ
  以テ算出シタル金額ヲ超過セサルモノニ付テハ前項第二號
  ノ規定ヲ適用セス
  第七十四條第一項中「通脫シ」ノ下ニ「又ハ通脫セムト
  シヲ加へ同條第二項中「第一項」ヲ「第二項」ニ改ム
  第七營業稅法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(特別)那須田圭太郎
  報告書
  一營業稅法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
  段及報告候也
  大正十二年二月九日
  營業稅法中改正法律案委員長
  山本悌二郞
  衆議院議長奥繁三郞殿
  (小字及-ハ委員會修正)
  營業稅法中改正法律案中左ノ通修正ス
  第二十六條課稅標準ハ營業稅調査委員會ノ調査ニ
  依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
  調査委員會閉會後課稅標準ノ決定ニ付脫漏アルコト
  ヲ發見シタルトキハ其ノ決定ヲ爲スヘカリシ年ノ翌年
  ヨリ三年以內ニ於ケル調査委員會ノ調査ニ依リ政府
  ニ於テ其ノ課稅標準ヲ決定スルコトヲ得
  調査委員會閉會後營業者納稅義務アルコトヲ中出
  テ又ハ課稅極準ノ增加アルコトヲ申出テタルトキハ前
  二項ノ規定ニ拘ラス政府ニ於テ其ノ課稅標準ヲ決定
  ス
  第二十六條ノ六選擧區域内ニ於テ營業シ其ノ年第
  十三條ノ申告ヲ爲シ課稅標準ノ決定ヲ受ケタル者ニシ
  テ選擧人名簿ニ登錄セラレタルモノハ調査委員及補
  闕員ヲ選擧シ又ハ調査委員若ハ補閱員ニ選擧セラル
  ルコトヲ得但シ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ此ノ限ニ
  在ラス
  -無能力者
  二破產若ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ復權セサル者
  又ハ身代限ノ處分ヲ受ケ債務ノ辨濟ヲ了ヘサル
  者
  三國稅滯納處分ヲ受ケタル後一年ヲ經サル者
  四六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ又ハ舊
  刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者
  五六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者
  ニシテ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコ
  トナキニ至ル迄ノ者
  ノ二又ハ
  六第三十四條乃至第三十四條ノ三ノ規定ニ依リ
  處罰セラレタル後五年ヲ經サル者
  其ノ年分課稅標準決定前選擧ヲ爲ス場合ニ於テハ
  前年營業稅ヲ納メ其ノ年第十三條ノ申告ヲ爲シタル
  者ヲ以テ課稅標準ノ決定ヲ受ケタル者ト看做ス
  營業繼續ノ場合ニ於テハ前ノ營業者ノ爲シタル申告
  若ハ納稅又ハ其ノ受ケタル課稅標準ノ決定ハ後ノ營
  業者ノ爲シタル申告若ハ納稅又ハ其ノ受ケタル課稅
  標凖ノ決定ト看做ス
  營業者カ法人ナル場合ニ於テハ選擧ニ關スル代表者
  ヲ定メ政府ニ申告スヘシ
  調査委員ニ當選シタル者又ハ第一項但書ニ該當スル
  者ハ法人ノ代表者タルコトヲ得ス
  選舉人名簿ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十四條第十三條ノ申告ヲ爲サス若ハ虚偽ノ申告
  ヲ爲シタル者、故意ニ第三十二條ノ帳簿ノ記載ヲ怠リ
  若ハ虚僞ノ記載ヲ爲シタル者又ハ帳簿ノ檢査ヲ拒ミ
  タル者ハ五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
  第三十四條ノ三營業稅ノ調査又ハ審査ノ事務ニ從
  事シ又ハ從事シタル者其ノ調査又ハ審査ニ關シ知得
  タル祕密ヲ正當ノ事由ナクシテ漏洩シタルトキハ五百
  圓以下ノ罰金ニ處ス
  第三十五條ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ第三十四條及前條ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ此
  ノ限ニ在ラス
  第八石油消費稅法廢止法律案(政府提
  問第一讀會ノ續報〓(昭和4年)、
  報告書
  一石油消費稅法廢止法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年二月九日
  石油消費稅法廢止法律案委員長
  山本悌二郎
  衆議院議長奧繁三郞殿
  第九賣藥稅法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長
  (報告
  報告書
  一賣藥稅法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年二月九日
  賣藥稅法中改正法律案委員長
  山本悌二郞
  衆議院議長奧繁三郎殿
  第十印紙稅法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(體驗組長)
  報告書
  一印紙稅法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年二月九日
  印紙稅法中改正法律案委員長
  山本悌二郎
  衆議院議長奧繁三郎殿
  第十一地租條條廢止法律案(中川幸太
  郞君外十六名提出)
  第一讀會ノ續(領収書)委員長)
  報告書
  一地租條例廢止法律案(中川幸太郞君外十六名提
  山田
  右ハ本院ニ於テ否決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年二月九日
  地租條例廢止法律家委員長
  山本悌二郞
  衆議院議長奥繁三郎殿
  第十二地租條例廢止法律案(松下禎二
  君外一名提出)
  第一關會ノ續(開幕誌
  報告書
  一地租條例廢止法律案(松下禎二君外一名提出)
  右ハ本院ニ於テ否決スへキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年二月九日
  地租條例廢止法律案委員長
  山本悌二郎
  衆議院議長奧繁三郎殿
  第十三地租條例中改正法律案(安達謙
  藏君外四名提出)
  第一讀會ノ續(観舍委員長
  報告書
  一地租條例中改正法律案(安達謙藏君外四名提出)
  右ハ本院ニ於テ否決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年二月九日
  地租條例中改正法律案委員長
  山本悌二郎
  衆議院議長奥繁三郞殿
  第十四營業稅法廢止法律案(林田龜太
  郞君外十七名提出)
  第一讀會ノ續( )消費税等
  報告書
  一營業稅法廢止法律案(林田龜太郞君外十七名提
  出
  右ハ本院ニ於テ否決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年二月九日
  營業稅法廢止法律案委員長
  山本悌二郞
  衆議院議長奥繁三郞殿
  第十五營業稅法廢止法律案(安達謙藏君
  外四名提出)第一讀曾ノ續(雪
  報告書
  一營業稅法廢止法律業(安達謙藏君外四名提出)
  右ハ本院ニ於テ否決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年二月九日
  營業稅法廢止法律案委員長
  山本悌二郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  第十六營業稅法廢止法律案(上田彌兵
  衞君提出)第一讀會ノ續調節
  報告書
  一營業稅法廢止法律案(上田彌兵衞君提出)
  右ハ本院ニ於テ否決スへキモノト議決致候此段及粗告
  候也
  大正十二年二月九日
  營業稅法廢止法律案委員長
  山本悌二郎
  衆議院議長奧繁三郞殿
  第十七醬油稅則廢止法律案(安達謙藏
  君外四名提出)
  第一讀會ノ續(報告加盟 白金
  報告書
  一醬油稅則廢止法律案(安逹謙藏君外四名提出)
  右ハ本院ニ於テ否決スヘキモノト議決致候此段及報告
  候也
  大正十二年二月九日
  醬油稅則廢止法律案委員長
  山本悌二郞
  衆議院議長奧繁三郞殿
  第十八自家用醤油稅法廢止法律案(安
  達謙藏君外四名提出)
  第一讀會ノ續(報告)(委員長)
  報告書
  一自家用醤油稅法廢止法律案(安達謙藏君外四名提
  出
  右ハ本院ニ於テ否決スヘキモノト議決致候此段又概告
  候也
  大正十二年二月九日
  自家用醤油稅法廢止法御案委員長
  山本悌二郞
  衆議院議長奧繁三郎殿
  第十九織物消費稅法中改正法律案(安
  達謙藏君外四名提出)
  第一讀會ノ續(變換)
  報告書
  一織物消費稅法中改正法律案(安達謙藏君外四名
  提出)
  右ハ本院ニ於テ否決スへキモノト讃決致候此段及報告
  候也
  大正十二年二月九日
  織物消費稅法中改正法律案委員長
  山本悌二郞
  衆議院議長奥繁三郎殿
  第二十所得稅法中改正法律案(岩本平
  藏君外六名提出)
  第一讀會ノ續(委員長0
  報告
  報告書
  一所得稅法中改正法律案(岩本平藏君外六名提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此
  段及報告候也
  大正十二年二月九日
  所得稅法中改正法律案委員長
  山本悌二郞
  衆議院議長奥繁三郞殿
  (-ハ委員會修正)
  所得稅法中左ノ通改正ス
  第十四條第一項第三號ヲ左ノ如ク改ム
  三山林ノ所得ハ竹木伐採ニ因ル前年ノ總收入金
  額ヨリ其ノ植栽養成ニ必要ナル經費ヲ控除シタ
  金額
  第二十三條但書ヲ左ノ如ク〓ム
  但シ山林ノ所得ハ山林以外ノ所得ト之ヲ區分シ其ノ
  所得ノ原因タル竹木ノ年齡ニテ除シタル平均額ニ對
  スル稅率ヲ適用ス
  〔山本悌二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=37

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• 038・山本悌二郎

  ○山本悌二郞君　所得稅法外十四件ノ委員會ノ結果竝
  ニ經過ヲ御報告致シマス、此委員會ニ付託セラレタル諸案
  ハ、政府案ガ五箇、議員提出ノ議案ガ十一箇、合セテ十六
  箇ノ法案デアリマシタガ、其中十五件議了ニナリマシテ、ア
  ト一件ハ延期ト云フコトニ相成リマシタ、此法案ハ政府提
  出案タルト議員提出案タルトヲ問ハズ、凡テ地租、營業稅、其
  他國氏ノ負擔ニ至大ノ影響ヲ及ボス所ノ諸案デアリマシ
  タガ爲メ、委員ノ諸君モ連日熱心ニ其審査ニ從事ナサレタ
  ノデアリマスル、此連日ノ御勵精ニ對シテハ、爰ニ特ニ御報
  告ヲ致シテ感謝ノ意ヲ表スル次第デアリマスル、此審議中ニ
  行レタル質疑應各ノ經過ニ付テハ、爰ニ之ヲ詳シク御報告
  申上ゲルノ餘裕ヲ有シマセヌ、隨テ其最モ重要ナルモノヽ更
  ニ又重要ナルモノヽミニ付テ、一二先以テ御報告申上ゲマ
  スル、所得稅ニ付キマシテハ今回ノ政府提出ノ法律案ハ、所
  謂合法的租稅ヲ取締ランガ爲ノ法案デアリマスル、之ニ對
  シテ委員ノ諸君ヨリ、元來斯ノ如キ法律ヲ作ッテ、斯ノ如キ
  通脫ヲ防ガントスル其必要ノ起ル所以ハ、所得稅ニ於テ株
  式ノ配當ニ第三種ノ所得ヲ課スルト云フ、斯樣ノ事ニナッテ
  居ルノナドハ、卽チ其主ナル原因デハナイカ、隨テ此株式配
  當ト云フモノヲ源泉課稅ニ引直スカ、然ラズンバ此株式配
  當ヲ得ルガ爲ニ借入レタル所ノ借入金ハ利子ヲ差引クカ
  斯樣ナ途ヲ講ジタナラバ、特ニ保全會社ノ如キモノヲ造ッテ
  逋脫ヲ圖ル者ガ少イデアラウ、之ニ對シテ當局ノ意見ハ如
  何デアルカト云フヤウナ質問ガアリマシタ、之ニ對シテ當局
  ハ、株式配當ヲ源泉課稅ニ引戾スト云フコトハ、是ハ到底行
  ヒ得ナイコトデアル、從來株式配當ハ一定ノ比較的率ニ依ヶテ
  課セラレテ、特殊ノ取扱ヲ受ケテ居ッタト云フコトハ、他ノ所
  得稅ニ比シテ甚ダ權衡ヲ失シテ居タノデアル、之ヲ先ニ改正
  ヲシテ第三種所得ニシテ、其均衡ヲ保ツヤウニシタノデアル、之
  ヲ更ニ又從前ノ不均衡、不衡平ナル制度ニ引戾スト云フコト
  ハ到底同意ガ致シ兼ネル、又株式ヲ取得スルガ爲ニ、若ク
  ハ株式ノ配當ヲ得ルガ爲ニ、費シタ所ノ借入金ノ利子ヲ差
  引クト云フコトハ、是ハ到底實行上不可能デアル、現在ノ所
  得稅法ハ、其所得ヲ得ンガ爲ニ費シタル經費ハ差引クト云
  フ原則ニハナッテ居ル、併ナガラ此株式ヲ特ニ取得スルガ爲
  ニ此借入金ヲシタノデアルカ、如何デアルカト云フコトハ容
  易ニ其確證ヲ得ルコトガ難イノデアル、ソレ故ニ理論トシテ
  ハ、ソレガ或ハ當然デアルカモ知レナイガ、事實上行ヒ得
  ナイコトデアル、稅制ノ根本義カラ改正スル場合ニ於テハ、
  左樣ナ事モ出來得ラルヽデアリマセウガ、今日ノ所得稅ノ原
  則、主義ニ於テハ之ヲ行フコトガ甚ダ困難デアル、斯樣ナ政
  府當局ノ說明デアリマシタ、元來此法案ハ特ニ世間ニ謂フ
  所ノ保全會社ナルモノヲ造クテ、第三種累進所得ヲ免レン
  トスルモノヲ防ガウトスル法案デアリマスルガ、一體保全會
  社ト云フモノガ如何ナル性質ノモノデアッテ、此法律ハ如何
  ナルモノニ向ッテ之ヲ適用スルノデアルカト云フ確トシタ定義
  ガ玆ニ定マッテ居ラヌト一云フト、此法律ヲ適用スル結果トシ
  テ、非常ナル負擔ノ不權衡ト不衡平ヲ來シテ國民ニ迷感ヲ
  掛ケルト云フヤウナ結果モ生ジナイトモ限ラナイノデアル、故
  ニ此法律ヲ適用セントスル所ノ保全會社ナルモノハ、如何ナ
  ルモノデアルカト云フ其定義ヲ當局ハ說明シテ貰ヒタイ、斯
  樣ナ委員會ノ質問モアリマシタ、之ニ對シテ政府ハ此定義
  ヲ下スト云フコトハ甚ダ困難デアル、此法律ノ精神ハ大體ニ
  於テ政府ニ相當廣汎ナル自由栽量ノ餘地ヲ與ヘテアルノ
  デアッテ、此自由裁量アッテ初テ此法ヲ活用スルコトガ出來ル
  ノデアル、ンレ故ニ法文ノ上ニ於テ判然タル定義ヲ下スト云
  フコトハ甚ダ困難テアル、ケレドモ之ヲ出來ルダケ明カニスル
  ガ爲ニ、更ニ出來ルダケ明確ニ之ヲ言ヒ現ハサントスレバ
  先ヅ斯樣ナモノデアラウカ、卽チ家族近親等ヲ以テ組織シタ
  ル會社デアッテ、其經濟上ノ實質ニ付テハ大體一個人ノ會社
  ト認メルモノ、而シテ其目的ハ財產ノ管理運用ヲ主トスルモ
  ノ、斯樣ナモノヲ政府ハ考ヘテ居ルノデアル、然ラバ財產ノ管
  理運用デナクシテ、事實事業ヲ營ンデ居ル所ノ此種類ノ會社
  ニ對シテハ、此法律ヲ適用スルノデアルカドウカト云フ質問ニ
  對シテハ、政府ハ之ニ答ヘテ曰ク、家族近親等ヲ以テ組織
  シタル會社ト雖モ、其留保積立シタ所ノモノガ、此法律ノ
  規定ニ該當シテモ、其會社ノ事業ノ性質ガ此多額
  ノ積立金ヲ必要トスモルノデアレバ、之ヲ適用シナイ、必要ナ
  ル積立ト認ムルモノデアレバ、其積立ニハ課稅シナイ、併シ
  事業ヲ經營シテ居テモ、其積立金ガ必シモ其事業ニ左樣ニ
  多額ノモノガ必要ナリト認メナイ場合ニハ、此法ニ依ノテ其
  留保ヲ配當ト看做シテ個人所得、綜合所得ヲ課ケルノデア
  ル、例ヲ舉ゲテ申スト保險業ノ如キ船舶業ノ如キモノハ、是
  ハ多額ノ積立金ヲ要スルモノト認ムル、隨テ其積立ガ多額
  デアッテモ、必シモ此法ヲ適用シナイノデアル、斯様ニ例證ヲ
  舉ゲテ元サレタノデアリマス、併シドウ云フ性質ノ會社ニ向ッ
  テ此法ヲ適用スルカト云フ判然タル區分ハ非常ニムヅカシ
  イノデアッテ、ソレハ要スルニ實行上ニ當リ、其社會ノ性質ニ
  付テ政府ハ之ヲ判斷スルヨリ外ハナイ、故ニ之ヲ實行スル上
  ニ付テハ、最モ細心ナル注意ヲ拂ヒテ、其間ニ不権衡、不衡
  平ノ生ゼザルヤウニ十分注意スル積リデアル、斯樣ナ說明デ
  アリマシタ、尙ホ此所得稅ノ質問ノ場合ニ於テ、信託預金ノ
  件ニ關シテ、元來此信託預金ヲ銀行預金ト區分シテ、第三
  種所得稅トシテ置クト云フコトハ甚ダ不條理デハナイカト
  云フ質問モアリマシク、之ニ對シテ政府ハ銀行預金ト信託
  預金トハ性質ヲ異ニスルモノデアッテ、殊ニ之ヲ第二種所得
  トシテ銀行預金ト同ジヤウニ取扱ウコトニナレバ理論ノ點
  ハ別問題トシテ、實行上脫稅行爲ノ起ル虞ガアル、故ニ信
  託預金ハ矢張第三種トシテ取扱フベキモノナリト政府ハ信
  ズル、斯樣十說明デアリマシタ、次ニ營業稅ニ移リマシテ最モ
  問題トナリマシタノハ、卽チ附加稅ノ問題デア,テ、今囘營業
  稅ノ改正ニ依シテ偶〓輕減サレル所ノ金額ガ千九百万圓許
  リ、此木稅ガソレダケ輕減サルレバ、之ニ對シテ從來賦課シ
  來クク附加稅ハ約千五百万園許リデアッテ、是ノ出所ガナク
  ナルノデアル、此千五百万ノ附加稅ト云フモノヽ處分ノ仕
  方ニ依ッテハ、其結果容易ナラヌコトニ相成ルノデ、之ヲ全然
  千五百万圓ノ附加稅ト云フモノヲ本稅ノ廢止ト同時ニ之
  ヲ徵收セザルコトニシテシマヘバ、地方ノ財政ニンレダケノ缺
  陷ヲ生ジテ、地方ノ行政ハ非常ニ困難ヲスルト云フコトニ相
  成ルノデアル、然ラバ從來ノ通リニ、此營業稅ノ本稅ニ對シテ
  取立テルト云フコトニ相成レバ、附加稅ノ率ヲ高メザルヲ得
  ナイコトニナル、從來七千万圓近イ營業稅ニ對シテ課稅シ
  來ッタモノヲ、今囘ハ五千万園近クノ本稅ニ附加稅ヲ課スル
  ト云フコトニナルノデアルカラ、卽チ營業稅ニ對スル附加稅
  ノ稅率ヲ高クシテ取立テルト云フコトニナルノデアル、ソレモ
  尙ホ可ナリトシテモ、是ダケノモノヲ殘レル本稅ニ轉嫁スル
  結果トシテ、非常ナル負擔ノ不權衡ヲ來スト云フコトニナ
  ル、今回ノ改正ハ主トシテ最モ苦痛ノ種ニナッテ居ッタ所ノ賃
  貸料ト云フモノヲ大體ニ於テ撤廢シタト云フコトガ、是ガ改
  正案ノ骨子デアル、所ガ業體ニ依シテハ從來賃貸料トシテ、賃
  貸料ノ課稅標準ニ依シテ支拂ヒ來シ夕稅額ハ、自己ノ全體ノ
  營業稅トシテ納メル所ノ金額ノホンノ一小部分ニ過ギナイ
  ト云フヤウナ業體ガ多々アル、此場合ニ於テハ賃貸料ニ於テ
  少シ許リ減稅ニナッテ、附加稅ノ方デ非常ナ增稅ヲ蒙ラナケ
  レバナラヌト云フヤウナ結果ヲ來ス事實モアルノデアル、斯樣
  ナ兩方ノ處分ノ仕方ニ依ッテハ結果ヲ生スルノデアルカラシ
  テ、是ハドウスル積リデアルカト云フノガ、是ガ委員會ノ政府
  ニ對スル質問テアッタノデアリマス、政府ハ之ニ對シテハ同ジ
  ク矢張顔ル苦心ヲ致シテ、大藏内務兩省ノ間ニ今交渉ヲ
  重ネツヽアルト云フコトヲ申シテ居リマシタガ、最終ノ委員
  會ニ於テ政府ハ之ニ對シテノ方法ガ愈と決定セリトシテ聲
  明サレクノデアリマス、ンレニ依リマスレバ則チ此千五百万
  國許リノ附加稅ノ中カラシテ、千二百三十五万圓ダケヲ殘
  シテ之ヲ取立テルコトニシテ、二百七十万圓許リヲ地方ノ
  節減ニ依ノテ緊縮ヲスル、斯樣ナ方針ヲ立テタノデアッテ、之
  ニ付テハ地方稅ノ制限ニ關スル法律案ヲ別ニ出ス積リデア
  ル、斯樣ナ聲明ガアリマシタ、尙ホ營業稅ニ於テハ、現行法ニ
  於テ魚類ノ養成、卽チ養魚ノ業ニ向フテ營業稅ヲ課シテ居
  ル、是等ハ隨分不穏當ノモノデハナイカ、又證劵賣買業ノ如
  キ薄利ノ如キモノヲ販賣業トシテ取扱ッテ、高イ稅金ヲ拂ハシ
  テ居ルト云フコトハ不秘當デハナイカ斯樣ナ質問きアリマシタ
  ガ、政府ハ其等ニ對シテハ他ノ種類ノ稅種ト權衡ヲ取ラナ
  ケレバナラナイノデアッテ、今是ダケヲ例へバ養魚、例ヘバ債劵
  販賣業、是ダケノモノヲ引拔イテ特ニ之ヲ輕減スルト云フヤ
  ウナコトハ、目下ノ所トシテハ困難デアル、將來稅制整理ノ
  場合ニ於テ、各種ノ稅目ニ渉クテ整理ヲ行フ場合ニ、之ヲ一
  ツノ其中ニ知ヘタルモノトシテ、他ノ權衡ヲ取ッテ之ヲ整理ス
  ルト云フコトハアルニシテモ、目下ノ所是ダケヲ斷片的ニ取
  〓フト云フコトハ出來ナイト、斯樣ニ申サレテ居リマシタ、此
  所得稅營業稅ニ付テ此雨稅案ニ付テ交〓非難的質問ノ
  聲ガ起ッタノハ、卽チ苛歛誅求ト云フ點デアックノデアリマス、
  殊ニ委員ノ中カラ一例ヲ擧ゲテ、例へバ所得稅ニ於テハ財
  產價格ヲ無理ニ高ク評價サシテ、其評價益ニ對シテ課稅ヲ
  スルト云フガ如キコトガ實際アル、是ナドハ隨分亂暴デハナ
  イカ、斯樣ナ質問モ起クテ居リマシタ、又十一年度ノ營業稅
  ノ總收入、豫算ハ六千六百万國デアッタノニ、實際ノ收入ハ七
  千九百万圓カラ取ッテ居ル、是等ハ確ニ苛飲誅求ノ結果デ
  ハナイカ、是ハ合業稅デス、デ之ニ對シテ政府ハ無理ニ評價
  〓ヲ計上サシテ之ニ課稅サセルガ如キコトハ斷ジテナカッタ、又
  若シ將來左樣ナ事ガアリト云フ虞ガアルナラバ、政府ハ十
  分其邊ノ取締ヲシテ、左樣ナ不都合ノ亭ノ起ラナイヤウニ
  致シマセウ、要スルニ苛斂誅求ト云フコトハ国ヨリ政府ノ意
  思デナイノデアルニ依クテ、將來トモ稅務官吏ヲ戒飭シテ、左
  樣ナ事ガ屢、起ラナイヤウニ精々注意ヲ致スト云フコトデア
  リマシタ斯様ナ議員ヨリノ非難、又斯樣ナ政府ヨリノ聲明
  ハ、實ハ今迄諸君御案内ノ通リニ度とアリてシタガ、ソレニモ
  拘ラズ矢張苛歛誅求ノ跡ヲ絕タナイノデアリマスルニ依ッテ、
  今回ノ聲明モ果シテ又其通リノ效果ヲ現スヤ否ヤ、私初メ
  トシテ甚ダ不安心ニ思ヒマス、但シ政府ハ左樣ニ聲明ヲ致
  シタト云フコトヲ御報告ヲ致シテ置キマス、議員提出ノ諸案
  ニ付テノ質問ノ中デ、憲政會ヨリ提案サレタル所ノ廢減稅
  案ニ對シテ、其財源ヲ何レニ求ムルヤト云フコトデアリマシ
  タ、尤モ大體ノ財源ノ筋ハ本會ニ於テ其理由ヲ說明サルヽ
  場合ニ、憲政會ノ代表者ヨリ述ベラレテハ居リマスルケレド
  モ、ソレヲモウ少シ具體的ニ示スコトガ出來ナイカト云フ質問
  ガアッタノデアリマス、之ニ對シテ憲政會ノ濱口君ハ具體的
  ノ案ハ持ッテ居ル、サリナガラソレハ豫算査定ノ場合ニ於テ
  デナケンケレバ之ヲ言明スル譯ニ參ラナイ、尙ホ委員ヨリハ
  此憲政會ノ提案ニ賛否ヲ表スルガ爲ニハ、財源ノ不足ヲ如
  何ナル具體的ノ方法ニ依クテ補塡スルカト云フコトガ確カト
  分ッテ居ラヌケレバ、甚ダ賛否ノ意見ヲ定ムルニ困ルデハナイ
  カ、故ニ此際之ヲ言明シテ貰ヒタイト云フ註文モアリマシタ
  ケレドモ遂ニ其御言明ハアリマセヌデシタ、又織物稅、織物
  稅ノ廢止案、之ニ對シテハ委員ノ一人ヨリ憲政〓提案ノ織
  物稅廢止案ハ、綿織物ノ稅ヲ廢止スルト云フコトデアルガ、
  今日純粹ナル綿織物ト云フモノハ極テ少イノデアッテ、下級
  社會ノ用ユル所ノ織物デモ、何分カ毛絲又ハ絹絲ヲ含ンデ
  居ル、是ガ大多數ヲ占メテ居ルノデアル、故ニ眞ニ下層階級
  ノ日用品ヲ免稅セントスルナラバ、純粹ノ木綿織物ダケニ
  免稅スルノデハ其目的ヲ達スルコトガ出來ナイノデアル、此
  綿織物ト絹綿若クハ毛絲入ノ織物トノ此區別ヲ、ドノ點ニ
  於テ立テラレルノデアルカト云フ質問ガアリマシタ、之ニ對シ
  テ憲政會ノ早速君ヨリハ、ンレハ政府ガ從來取扱ッテ來ッタ
  慣例ガアリ、取扱ノ區別ノ仕方ガアルカラシテ、ソレニ從フノ
  デアルト云フコトデアリマシタガ、尙ホ質問サレタ委員ヨリ今
  日純粹ノ本綿ノ織物モ亦毛絲絹絲ノ交ック交織ノ織物モ
  同一ノ課稅ヲシテ居ルノデアルカラシテ、此間ニ政府ハ何等
  ノ區分ヲシテ居ラナイノデアルガ、是ハドウスル積リデアルカ
  ト云フ意味ノ質問ガアリマシタガ、之ニ對シテハ別段御明答
  ガナカッタヤウデアリマス、又其純粹ノ綿織物ダケニ對シテ免
  稅ヲスルト云フコトナラバ下層階級ノ負擔ヲ輕ウスルト云
  フコトノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイガ、是ハ如何デアルト
  云フ此質問ニ對シテモ別段明確ナ御答ガ無カッタヤウニ記
  憶致シマス(「ノウノ〓」)ソレカラモウ一ツ織物ニ對シテ矢張
  今送ニ直ニ綿織物ニ免稅ヲスルト云フコトデアッタナラバ、綿
  織物ノ多額ノ貯藏品ヲ持っテ居ル-手持品ヲ持シテ居ル
  所ノ商家問屋ハ悉ク被產シナケレバナラヌト云フコトニナル
  ガ、其方法ニ付テハ何カ考ヲ持ノテ居ラルヽノカ、斯樣ナ質
  問モ出マシタガ、ソレハ其時ニ於テ相當ノ方法ヲ講ズル積リ
  デアル、併シ旣ニ免稅案ヲ出ス以上ハ、之ニ伴ウテ起ル結果
  ニ對スル方法モ同ジク提案ヲスルノガ、筋道デナイカ、隨テ免
  稅案ヲ出ス以上ハ、故免稅ノ結果商賣人ガ破產ヲスル虞ガ
  アルナラバ、ソレニ對スル別ノ方法ヲ立テ法律ヲ提案スルト
  共ニ之モ提出スベキガ筋デナイカト云フ質問ガアリマシタガ、
  別段御答ガ無カッタヤウデアリマス、(「ノウ〓〓」)是ヨリ討議
  ニ移リマシテ、政府案及議員提出ノ一案ニ對シテ修正ガア
  リマシタ、卽チ政府提出ノ所得稅法案ニ於テ三個ノ修正ヲ
  致シマシタ、其修正ノ詳細ナルモノハ御手許ニ廻ッテ居ル印
  刷物ニ於テ明カデアリマスカラ、其要點ダケヲ申シマスルガ、
  卽チ此所得稅ノ決定シク後ニ於テ三年間、尙ホ後カラシテ
  調査ヲシテ之ヲ追叙スルコトガ出來ルト云フ新ナル箇條ガ
  アツタノデアリマス、是ハ納稅者ニ取→テハ非常ナル不安ヲ與
  ヘル法案デアッテ、三年間尙ホ何時々々追微ヲサレルカ分ラ
  ヌト云フヤウナコトデハ、是ハ大變ナ事デアル、斯樣ナ意味
  ヲ以テ委員ヨリ修正ガ出マシタノハ、卽チ是ハ一年ニ短縮ス
  ル、卽チ一年間遡及スルコトヲ得ルト云フコトニ修正ヲシタ
  イ次ニハ罰則ニ於キマシテ新ニ〓マデ通脫シ夕者ノミニ
  對シテ適用シタ罰則ヲ、更ニ通脫セントシタ者マデニ及ボス
  コトニナッテ居リマスガ、是ガ現行法通リニスルノガ相當
  テアラウ、此意味ニ於ケル修正ヲ施サウトシタノデ、
  更ニ又第七十三條ノ一一項ニ、所得ノ十分ノ三以上ヲ
  積立テタ場合ニ於テ、ソレヲ配當シタモノト看做シテ、個人
  累進綜合率ヲ課ケルコトニナッテ居リマシタガ、是ハ少シ資
  本金トノ釣合ヲ取ッテナカッタノデアリマス、故ニ大ナル資本
  ニ對シテ洵ニ輕微ナ利益シカナカッタ、而シテ其利益ヲ積立テ
  夕場合ニ於テモ、矢張個人綜合率ヲ課ケル結果ヲ生ズルノ
  デアリマス、一千万圓ノ資本ニ對シテ僅カ五万カ六万ノ利
  益シカ無クテモ、其中カラ十分ノ三以上ヲ積立テレバ、其積
  立テタモノヲ個人配當ヲシタモノト看做シテ、之ニ累進綜合率
  ヲ課ケルト云フコトニナッテ居ル、斯樣ナコトハ如何ナモノデ
  アラウカト云フノデ、之ヲ資本ノ三十分ノ一ニ其所得ガ遠セ
  ザル場合ニ於テハ、此條項ヲ適用シナイコトニシタイ、斯樣
  ナ修正案デアッタノデアリマス、此三個ノ修正トモ成立致シ
  マシテ、修正可決致シタノデアリマス、營業稅ニ於キマシテハ
  矢張此所得稅ト同ジコトニ、三箇年ノ後ニ至っテ脫漏ヲ追
  徴スルコトノ出來ルト云フ、此規定ヲ一箇年ニ短縮致スコ
  トニナッタノデアリマス、又罰則ニ於テ從來唯〓科料バカリデ
  一圓九十五錢ガ極度デアック所ノモノヲ、更ニ之ヲ五百圓
  以內ノ罰金ニマデシヤウト云フコトガ新ニ提案サレテ居ルノ
  デアリマスガ、是ハ人權ニ對シテ由々シキ問題デアル、故ニ現
  行法通リニスルノガ適當ダラウト云フノデ、此條項ヲ削除ス
  ル修正ヲ施シタ次第デアリマス、是レ同ジク修正通リニ決定
  可決致シマシタ、又山林所得稅ニ付キマシテハ、-部分ヲ
  削ッテ之ヲ同ジク修正可決致シマシタ、次ニハ此議員提出
  ノ諸案ニ對シマシテ、政府ノ意嚮ヲ問ウテ見マシタ所ガ、此
  議員提出ノ地租營業稅及醬油稅、織物稅等ニ關スル所ノ
  此法案ニハ反對デアルト云フコトノ聲明ガアリマシタ、採決
  ニ移リマシテ、結局斯樣ナ結果ニ相成ッタノデアリマス、政府
  提出ノ所得稅法中改正法律案、岩本平藏君外六名提出
  ノ所得稅法中改正法律案、並政府提出ノ營業稅法中改
  正法律案、此三案ガ修止可決致シマシタ、又政府提出ノ石
  油消費稅法廢止法律案、賣藥稅法中改正法律案、及印
  紙稅法中改正法律案、此三案ハ何レモ原案ノ通リ可決致
  シマシタ、而シテ中川幸太郞君外十六名提出ノ地租條例
  廢止法律案、林田龜太郞君外十七名提出ノ營業稅法廢
  止法律案、安達祿藏君外四名提出地租條例中改正法律
  案、安達謙藏君外四名提出營業稅法廢止法律案、安達
  謙藏君外四名提出醬油稅則廢止法律案、安達謙藏君外
  四名提出自家用醤油稅法廢止法律案、同ジク安達謙藏
  君外四名提出織物消費稅法中改正法律案、松下禎二君
  外一名提出地租條例廢止法律案、上田彌兵衞君提出營
  業稅法廢止法律案、此九案ハ多數ヲ以テ否決ニ相成リマ
  シタ、是デ政府提出竝ニ議員提出ノ各案ノ中デ十五案ハ
  決定ヲ致シマシタ、殘ル一案ハ林田龜太郞君外一名提出
  ノ、明治四十一年法律第三十七號中改正法律案、是ハ地
  方附加稅ノ制限ニ關スル法律案デアリマス、此案ハ延期ス
  ルコトニ相成クタノデアリマス、以上本委員會ノ經過竝ニ結
  果ヲ御報告致ス次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=38

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• 039・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　是ヨリ討論ニ移リマス、通告ニ
  依ッテ發言ヲ許シマス--早速整爾君
  〔早速整爾君登壇〕
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=39

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• 040・早速整爾

  ○早速整爾君　只今委員長報告ガアリマシタ、委員會ニ
  於テハ政府提出ノ案ノミヲ可決セラレテ、吾々竝ニ他ノ議
  員諸君カラ御提出ニナリマシタル案全部ハ之ヲ否決セラレ
  タノデアリマス、私ハ吾々同志ノ提出致シマシタル各種ノ廢
  減稅案ヲ維持スル爲ニ、只今ノ委員長ノ報告ニハ反對ヲ
  表スルモノデアリマス、尤モ政府提出ノ所得稅法中改正法
  律案、印紙法中改正法律案、石油消費稅廢止法律案
  竝ニ賣藥營業稅法中改正法律案、此等ハ全ク例外デアリ
  マス、吾々モ此案ニ向ッテハ同意ヲ表スルニ躊躇シナイ、私共
  ノ提出致シマシタル案ノ第一ハ營業稅法廢止法律案-
  此營業稅法ヲ廢止スベシト要求スルノ案デアリマス、別ニ其
  内容ハ說明スル迄モナイ、私共ハ此營業稅法ヲ廢止シテ、
  財源ノ關係ニ於テハ更ニ此營業、所得ニ課稅スベキ新ナル
  法律案ヲ作レト云フ要求デアルノデス、第二ハ地租條例中
  改正法律案、是ハ所誦地租二步ヲ減ズルト云フ減稅案ニ
  屬スルノデス、第三ハ織物消費稅法中改正法律案、織物
  消費稅ノ中ニ綿織物ニ對スル課稅ヲ免除スベシト云フ要
  求ノ案デアリマス、其次ハ醤油稅則廢止法律案、是ハ醬油
  稅ノ廢止ト云フコトニ關スル法律案デアリマス、之ニ伴フ
  テ更ニ自家用醤油稅法廢止法律案モ併セテ提出致シテ
  居ルノデアリマス、吾々ハ國民ノ負擔ヲ輕減スル必要アルガ
  爲ニ、此各種ノ廢減稅案ヲ提出致シタノデアリマス、委員
  會ニ於テ此案ヲ否決セラレタト云フ、其否決セラレタル理
  由ハ判明ハ致シテ居ラヌノデアリマス、是ハ尙ホ此後ニ於テ
  種々ノ討論ヲ交換セラルヽコトヽ存ズルノデアリマスガ、委
  員會ニ於テ否決セラレタル理由ハ全ク分ラナイノデアルガ、
  第一ニ吾々ノ廢減稅案ニ反對スル所ノ理由トシテ、稅制ノ
  根本整理ト云ヘルコトヲ口ニセラレテ居ル者ガアル、卽チ稅
  制整理ハ必要デアルカラ、各種ノ廢減稅案ハ暫ク之ヲ其時
  マデ猶豫ヲシテ宜カラウト云フ御議論ニ基クモノト見受ケ
  マスルノデアリマス、是ハ吾々トシテハ一向其眞意ヲ了解ス
  ルコトガ出來ナイ、稅制ノ整理ト云ヘルコトハ今日ニ起ッタ
  問題デハゴザイマセヌ、我國多年ノ懸案デアル、然ルニ今日
  此稅制整理ト云フコトヲ口ニシテ、當面ノ問題タル各種ノ
  廢減稅案ニ反對ヲスルト云フノハ、畢竟是ハ最近ニ於テ政
  友會ガ稅制ノ根本整理ニ關スル建議案ヲ提出セラレタ、ソ
  レニ基イテ此廢減稅案ノ反對論ノ起キタル一說デアラウト
  想像セラルヽノデアリマス、私共此稅制ノ根本整理ヲ唱ヘ
  ラルヽガ爲ニ、國民ノ負擔輕減ト云ヘル當面ノ問題ニ反對
  セラルヽ眞意ハ、之ヲ認ムルコトガ出來ナイノデアリマス、稅
  制ノ根本整理、固ヨリ結構ナル問題デアル、私共之ニ反對
  ヲスル者デハナイ、併ナガラ此稅制ノ根本整理ト云ヘルコト
  ハ、果シテ何レノ時ニ於テ實行ガ出來ルノデアリマスカ、政
  友會內閣多年ノ間色々御〓究ニナッタト云フコトハ事實ニ
  於テ承ァテ居ルガ、此必要ナル問題ガ政友會內閣ノ時代ニ
  於テスラ全ク行ハレナカタノデハナイカ、臨時財政經濟調査
  會コ於テ長イ間此事ヲ調查セラレタト云フダケニ止マッテ、矢
  張其結果ヲ示スコトモ出來ナカッタト云フコトハ、稅制ノ根
  本整理ト云ヘル事ガ如何ニ困難ナ問題デアルカト云アコト
  ヲ證スルニ足リルノデアル、是ハ政友會ノ諸君能ク御承知
  ノ事ナノデアル、ソレガ最近ニ至クテ此根本整理ガ急速ニ行
  ハルヽカノ如キ說ヲ立テラレルニ至ッタノハ、私共甚ダ其眞意ヲ
  解スルニ苦ム希望トシテハ尤デアリマセウ、建議ヲセラレタリ
  其希望ヲ表白セラルヽ點ニ於テハ、私共敢テ非議スルノデハ
  ナク、是ガ直チニ行ハルヽト云フコトハ、ドノ點ニ於テ之ヲ明
  言シ得ラルヽノデアルカ、現ニ政府ハ-現內閣ノ諸公、總
  理大臣モ大藏大臣モ本會議竝ニ豫算委員會ニ於テ議員
  ノ質問ニ對シ稅制ノ根本整理ト云フコトハ、一朝一夕ニハ
  行ハレナイト云フ意味ノ御言明ニナッテ居リマス、政府ガ吾
  吾ノ手ニ渡シタル、アノ稅制整理要項ト云フモノヽ中ニモ書
  イテアル、稅制整理ニ關シテハ到底急速ノ實行ハ不可能ナ
  リ、卽チ今日ノ政府ノ意見到底不可能ナリトマデ明言ヲシ
  テ居ル、此政府ニ迫ッテ稅制ノ根本整理ヲ行フトシタ所ガ、
  其要求ハ尤デアッテモ、私ハ此稅制ノ根本整理ガ急速ニ行
  ハルベシトハ想像スルコトガ出來ナイノデアル是ガ急速ニ
  行ハルヽ位ナラバ、多數黨ノ權威ニ依ッテ政友會內閣ノ時
  代ニ於テ是ガ行ハレナレバナラヌ筈デアッタ、自分ノ內閣デハ
  行ハレナカッタカラ、他ノ内閣ニ向ッテ之ヲ急速ニ迫ル、是ハ
  如何ニモ政友會諸公ノ不見識デハアリマセヌカ(拍手)尙ホ
  先日ノ本議場ニ於テモ其議論ハ有ッタノデアリマス、根本整
  理ヲ行フト云フ御意見ガアル以上、建議ヲシテ見タリ、希望
  ヲ表白シ見テタリスルニ止メズ、唯〓其一部分ノミデモ多
  數黨ノ權威ヲ示スガ爲ニ、實行的ノ道程ニ進マレナイノハ
  何故デアルカ、唯〓徒ラニ政府ヲ責メテ之ヲ實行セシムル
  成程根本ノ整理ハ全部ハ直ニ行フコトガ一出來ナイニシテ
  モ、急速ヲ要スル部分ノミニ對シテモ、何故ニ政友會ハ實行
  的ノ法案ヲ提出致サレヌノデアルカ、此點ニ付テ吾々頗ル
  疑ヲ懷カザルヲ得ナイ、吾々ハ實行スルト諸君ハ明言セラレ
  ルケレドモ、實行的ノ態度ハ採ラレテ居ラヌノデハナイカ、唯
  徒ラニ現内閣ヲ責メル、現内閣ニ鞭ツ、是ダケノ事デ以テ
  果シテ我ガ國民ガ要求シテ居ル負擔ノ輕減ト言ヘル大問
  題ヲ解決スルコトガ出來ナイト云フコトハ明カデハナイカ
  (拍手)政友會ノ建議案ハ全ク一時凌ギニ出サレタノデハナ
  イカ、建議ト云フモノノ蔭ニ隱レテ、國民負擔ノ輕減ト云ヘ
  ル要求ヲ拒ム態度ニ出デラレタノデハナイカ(「ノー〓〓」)實行
  ハ前途頗ル遼遠デアル、此實行頗ル、前途遼遠ナル稅制ノ
  根本整理ヲ唱ヘテ、其建議ノ蔭ニ隱レテ、幾多ノ廢減稅案
  ニ反對セラルト云フコトニナレバ、建議案ハ唯、政友會諸
  君ノ一ツノ方略ニ止マルデハナイカ、國民ノ要求ニ對シテ、唯
  々一場ノ逃途ヲ講ゼラレタニ過ギナイデハナイカト私ハ疑ハ
  ザルヲ得ナイノデアリマス、先日三木君ガ此壇上ニ於テ、租
  稅政策ガ黨略ノ犠牲ニセラレテ云々ト云フ御言葉ヲ述ベラ
  レタノデアリマス建議案ニ隱レテ國民ノ要求ヲ拒ムト云フゴ
  トニナレバ、其點コン黨略ノ爲ニ國民ノ利益ヲ犧牲ニスルモ
  ノデハナイカト私ハ思フノデアル(拍手)吾々同志ハ當面ノ急
  要問題ヲ解決スル必要アリトシ、茲ニ國民負擔ノ輕減ヲ要
  求スルノデアリマスカラ、根本整理ノ考案ガアレバトテ、此目
  前ノ急要ナル廢減稅ノ問題ヲ犧牲ニスルコトハ出來ナイ、
  殊ニ根本整理ヲ御要求ニナル目的ハ誠ニ正々堂々タルモノ
  デアル、私ハ此點ニ於テ無論同意ヲ表スルノデアリマス、根
  本整理ノ目的ハ主トシテ組織ノ完備ヲ圖ラナケレバナラヌ
  ト云フコト、體系ノ整理ヲ圖ラナケレバナラヌト云フコト、國
  民負擔ノ均衡ヲ行ハナケレバナラヌト云フコト、是ガ主タル
  目的デアッテ負擔ノ輕減ト云フコトハ、寧口之ヲ第二位ニ置
  カレテ居ルノデハアリマセヌカ、是ハ三土君ノ御說明ニ依ッテ
  モ其意思ヲ了解スルコトガ出來ルノデアリマス、吾々ハ卽チ
  稅制ノ根本整理ヲ希望スルケレドモ、ソレト同時ニ當面ノ
  問題ヲ解決センガ爲ニ、玆ニ廢減稅ノ問題ガ頗ル〓究ニ屬
  スルト云フコトヲ絕叫スル者デアリマス、卽チ稅制ノ根本整
  理ヲ口ニシテ、此各種ノ廢減稅ニ反對セラレル理由ハ、私
  共トシテドウシテモ首肯スルコトガ出來マセス、一元來政友會
  ノ諸君ハ國民ノ負擔ノ輕減ト云フコトニ付テハ反對ノ意
  見ヲ持ッテ居ラレルヤウデアリマス(ノウ〓〓)政友會ノ總裁
  タル高橋氏ガ今日ハ廢滅稅ヲ行フノ時機ニアラズ
  ト明言セラレタコトハ一再ニ止マラナイ、恐ラクハ政友會ノ
  諸君ハ同樣ナ考ヲ持ッテ居ラルヽデアリマセウ、此政友會ノ
  廢減稅ニ反對セラレル議論ノ骨子ハ二ツニ分レテ居ルヤウ
  ニ私ハ見受ケル、一ハ卽チ國民ハ現ニ負擔ノ重キニ苦ンデハ
  居ナイト云フコト三土君ノ如キハ屢〓之ヲ高唱シテ居フレ
  ルノデアリマス、第二ハ廢減稅ヲ行フヨリモ更ニ新事業ノ計
  畫ヲ立テナケレバナラヌト言ハレル、此二ツニ分レテ居ルヤウ
  ニ見受ケルノデアリマス、是ハ卽チ政友會ガ多年唱へ來ラレ
  タル、所謂積極政策ノ意見ニ基クモノデアッテ唯と遮二無二
  財政ヲ膨脹セシメタル、其積惡ヲ辯護シ、尙ホ其餘弊ニ驅
  ラレツヽアル主張デアラウト思フ(拍手)私ハ此說ニ對シテ諸
  君ニ十分ノ御了解ヲ求メナケレバナラヌ、無論諸君ノ此二
  樣ニ分タレタル御議論ニ對シテハ、絕對ニ反對スル者デアリ
  マス、過日我ガ同志ノ濱口君カラモ本議場ニ於テ述ベラレ
  マシタル如ク、我ガ國民ノ負擔ハ今日ニ於テハ非常ニ增加
  シ來ヲテ居ル、租稅負擔ノ增加ニ於テ日〓戰役後三億九千
  七百万圓、約四億万圓ノ增稅ニ及ンデ居ルト云フコトヲ述
  ペラレタノマアリマスガ、而モ國民ノ負擔ハ漸次增加シタト
  云フコトハ、唯〓此租稅ノミニハ止マリマセヌ、幾多ノ方面
  ヨリ我ガ國民ハ種々ノ壓迫ヲ受ケテ居ルノデアリマスガ、唯と
  租稅ニ於テモ自然層收ノ名ノ下ニ屢、苛歛誅求ガ行ハレ
  テ、法律上ノ租稅ト云フヨリモ、ソレ以上ノ增稅ヲ受ケテ居
  ルデハナイカ(拍手)ソレデアリマスカラ最近世界ノ大戰前ニ
  比較スルト、是ハ私ガ申スマデモナイ、大正三年度ノ租稅收
  入ノ決算ハ三億四千九百万圓、是ハ今日ニ於テハ七億四
  千万圓、租稅收入ハ此世界ノ大戰後ニ於テ二倍以上ニナッ
  テ居ルノデアル、四億幾ラノ增加ハ此八九年ノ間ニ示サレ
  テ居ルノデアリマス、其他ノ收入モ何レモ增加ヲ致シテ居ル
  ノデアリマスガ、私ハ國稅中ニ於テモ最モ甚シキモノヲ擧ゲ
  レバ、營業稅ノ如キハ大正三年度ニ於テハ二千八百万圓、
  是ガ今日ニ於テハ現在六千六百万圓ト云フ增額ヲ示スニ
  至ッテ居ルノデアル、問題ニナッテ居ル織物消費稅モ其通リ、
  大正三年度ニ於テハ一千六百万圓ノモノガ、今日ニ於テハ
  四千三百万圓ニ增加スルト云フ結果ニナッテ居ルノデアリ
  マス、政友會ノ諸君ハ國民ノ懐ガ裕ニナレバ、租稅ノ實收ガ
  增加スルカラト云フコトヲ既ニ唱ヘテ來ラレタノデアル、此間
  ニ卽チ苛歛誅求ト云フコトヲ諸君ガ默認セラレタ事實ガア
  ル、其結果斯樣ニナッテ居ル、國民ノ負擔輕シト云フコトハ、
  斷ジテ言ヘナイノデアリマス、而シテ現在ノ經濟事情ハ果シ
  テ如何デアルカ、是ハ政友會諸君ニモ責任ガアルト謂ハナケ
  レバナラヌノデアル、多年行ハレタル放漫政策ノ結果、我ガ
  經濟事情ハ著シク攪亂セラレ、物價ハ騰貴シ、生產費ハ增
  加シ、產業ハ振ハズ、貿易ハ減退シ、國民ノ生活ハ甚シク不
  安定ノ狀況ニ陷クテ居ルデハナイカ、是ハ政友會ノ諸君モ御
  認ニナラナケレバナヌデハナイカ、國民ノ富ノ力ガ增加シタカ
  ラ負擔ガ增加シテモ宜シイ、國民ノ所得著シク增加シタカ
  ラ、負擔ノ苦痛ハ感ジナイト云フノガ諸君ノ土臺デアルケレ
  ドモ、今日ノ如キ狀態カラ言ヘバ、國民ノ富ハ各方面ノ壓迫
  ニ依クテ奪ハレツヽアルデハナイカ(拍手)國民ノ所得ハ漸次
  減少。シツヽアルデハナイカ、我ガ國民ノ困難、我ガ國民ノ苦
  痛、決シテ輕シト云フコトハ出來ヌノデアリマス、是ハ斷ジテ
  笑事デハナイ、重大ナル我ガ國民ノ負擔ニ關スル問題デア
  ヱマス、ソレデアルノニ國民ハ困難ヲ感ジナイ、國民ハ苦痛ヲ
  感ジナイト言ッテ、此負擔輕減ノ問題ヲ度外ニ措カントセラ
  ルヽノハ、如何ニモ殘酷ナル政黨デアルト斷言シナケレバナ
  ラヌノデアリマス(拍手)又減稅ヨリモ新事業ト唱ヘラルヽ所
  ノ說ハ、是ハ一應尤ニ聞エル、國運ノ進展ニ資センガ、爲ニ
  已ムヲ得ザル新事業ヲ計〓スルト云フコトハ、固ヨリ必要ニ
  相違ナイノデアリマスガ、併シ是コン全ク程度問題デアル、政
  友會ノ諸君ハ積極政策ヲ標榜シテ、徒ニ新事業計畫論ヲ
  唱ヘラルヽノデアルガ、今日ノ場合ハ左樣デハイカナイ、財政
  ヲ緊縮シナケレバナラナイト云フ立場ニ居ル我國ノ今日、遮
  二無二新事業ヲ計畫スルコトガ出來ナイト云フコトハ無論
  ノ話、但シ眞ニ已ムヲ得ザル新事業ノ計畫ト云フコトニ付
  テハ、吾々モ決シテ反對ハ致シマセヌ、現ニ政府ガ企テヽ居ル
  新事業ノ或モノニ付テハ之ヲ認メナケレバナラヌ、相當ノ
  計畫ハ之ヲ立テナケレバナラヌト云フコトハ勿論デアルガ、此
  新事業ノ計畫ヲ爲スト同時ニ、國民負擔ノ輕減ヲ行フト云
  フコトハ、矢張併セテ之ヲ兩立セシムルコトガ出來ルデハア
  リマセヌカ、已ムヲ得ザル新事業ハ計畫スルト同時ニ、國民ノ
  負擔ヲ輕減スル、是ハ決シテ爲シ能ハザル事デハナイノデア
  リマス、唯〓是ガ卽チ諸君ト意見ノ岐ルヽ所、行政ノ整理ヲ
  斷行シナケレバナラヌト云フノハ、卽チ之ニ基ク所ノ說デア
  ル、思切ヲテ行政ヲ整理スレバ國民ノ負擔ノ輕減ト云フコト
  ハ、必ズ出來ナケレバナラヌト云フコトヲ吾々ハ繰返シテ言
  フノデアリマス、此點カラ考ヘマスレバ、減稅ヨリ新事業ノ計
  畫ヲト御唱ニナル諸君ノ說ハ如何ニモ其當ヲ得ヌ、諸君
  ハ廢減稅ニ反對ヲシテ、其レダケノ金ガアレバ之ヲ新事業ニ
  用井ヤウト思ハルヽノデアルガ、是ハ卽チ積極政策ニ崇ラレ
  タル諸君ノ議論デアルト謂ハナケレバナラヌノデアル(拍手)
  此間ノ按排ヲ能クスルニ非ザレバ、今日ノ財政ヲ整理ス
  ル目的ヲ達スルコトガ出來ナイト思フ、財政ノ現狀三照シテ
  已ムヲ得ザル新事業ヲ計畫スルト雖モ、ソレト同時ニ矢張
  國民ノ負擔ヲ輕減スル爲ニ財政ノ整理ヲ行ハナケレバナ
  ヌト云フ議論ニハ、諸君トシテハ一體反對ハ出來ナイ筈デア
  ルト思クテ居ルノデアル(納手)又今日ハ實際ニ於テ軍備縮小
  ヲ斷行シナケレバナラヌ時機ニ際會シテ居ル、此事ニ關シテ
  ハ政友會ノ諸君モ正面ヨリ反對セラルヽ譯ハアリマスマイ、
  世界ノ大勢ニ照シテモ、我國四圍ノ狀況ニ照シテモ、今日
  ハ正シク軍備ヲ縮小スベキ時機ニ際會シテ居ルノデアル、此
  時期逸スベカラズ、飽迄モ軍備縮小ヲ斷行シナケレバナラマ
  ト云フ時機ニ際シテ、之ヲ唯:自然ニ放任シテ置クト云フコ
  トハ、全ク國民ノ要求ニ應、スル所以ノ道デハナイ、殊ニ昨年
  開カレタル華盛頓會議、此華盛頓會議ハ全ク世界ノ國民
  ノ負擔ヲ輕減スル目的ノ爲ニ開カレタルモノト謂ハナケレバ
  ナラヌ、軍備縮小ヲ行フノガ今日ノ時機デアル、而モ苹盛頓
  會議ニ於テノ軍備縮小ノ問題ハ、國民ノ負擔ヲ輕減スルト
  云フ目的ノ爲ニ開カレタトスレバ、今日ニ於テコン國民負擔
  ノ輕減ヲ行フノガ、全ク時機ニ相當シテ居ルト斷言シナケレ
  バナラヌデハナイカ(拍手)此時機ニ於テコソ國民負擔ノ輕
  減ヲスルト云フコトハ洵ニ適當ナル處置デアル、私ハ此大切
  ナル時機ヲ逸スルニ於テハ、吾々ハ國民負擔ノ輕減ヲ斷行
  スルノ場合ヲ、全然失ッテシマヒハシナイカト云フコトヲ虞レ
  ルモノデアリマス(拍手)政友會ノ諸君ハ、今日ハ減稅ノ時
  機デナイト言ハレルガ、此位ノ適當ナ時機ハ無イ、此時機ヲ
  逸スルコトガ出來ナイト云フ場合ニ、尙ホ減稅ハ時機ニ非
  ズト斯樣ニ御唱ニナルト云フコトハ、如何ナル理由ニ基クモ
  ノデアルカ私共之ヲ解スルコトハ出來ナイノデアル(拍手)デ
  私ハ更ニ言フ、吾々ハ此負擔輕減ヲ主張致スノハ、決シテ消
  極一方ニ偏シタルノ說デハアリマセヌ、前途ノ經濟上ノ發展
  ニ資センガ爲ニハ、民力休養ハ必要デアル、將來ノ經濟上ノ
  競爭ニ備ヘンガ爲ニハ、實力競爭ノ必要ガアルカラ、玆ニ負
  擔ノ輕減ヲ主張スルノデアル、卽チ負擔ノ輕減ノ主張ハ、國
  民ヲシテ大ニ前途ニ發展セシメンガ爲ニ外ナラナイノデアリ
  マスカラ、斷ジテ萎縮退嬰ノ態度ニ出ルモノデハナイ、大ニ進
  マンガ爲ニ、大ニ伸ビンガ爲ニ、大ニ活動センガ爲ニ、此場合
  ニ於ケル國民ノ苦痛ヲ取除キタイト云フノガ吾々ノ主張ニ
  外ナラヌ(拍手)全ク此要求ハ國運ノ發展ニ資スル所以ノ
  要求デアルト申サナケレバナラヌノデアル、政友會ノ諸君ガ
  徒ニ他ヲ嘲ッテ、萎縮退嬰ヲ是レ事トスルナドヽ御述ニナル
  ノハ、全ク其的ヲ外レテ居ルト云フコトヲ、私ハ玆ニ斷言ヲ
  スルノデアリマス(拍手)斯樣ニ申セバ諸君ハ吾々ノ廢減稅
  案ニ反對セラルヽ理由ト云フモノハ全ク分ラナイデハナイカ、
  其理由ハ何レニ在ルカ、私ハ實ニ今日ノ場合ニ於テ、此國
  民ノ負擔輕減ニ反對セラルヽ諸君ノ無責任ヲ嗤ハザルヲ
  得ナイノデアリマス(拍手)飜ッテ現内閣ノ態度ヲ見ル、内閣
  ハ御自身デハ國民負擔ノ輕減ノ必要ヲ認メテ居ラルヽヤウ
  デアル、是ハ各大臣ガ時々世間ニ向ッテ公表セラレタル意見
  ニ徵シテモ、國民負擔ノ輕滅ハ必要ナリト云フコトヲ御認ニ
  ナッテ居ル、然ルニ之ヲ實際ニ行フコトヲ爲サヾルト云フノハ、
  果シテ何故デアルカト云フコトヲ先日モ御尋ヲ致シタ、背後
  ニ於ケル勢力ノ牽制ノ爲ニ、自分ノ意見ガ行ハレナイト云
  フ事ニナッタト致セバ、私ハ內閣ノ不見識ヲ憫マナケレバナラ
  ナイ、此度御提案ニナッタモノハ、先ヅ主ナルモノトシテハ、營
  業稅法ノ改正デアル、廿六他ハ別ニ論ズルマデノ必要モナイノ
  デアリマス、此營業稅法ノ改正ハ頗ル姑息ヲ極メテ居ルト
  云フコトハ殆ド私ガ論ズルマデモナイ、元々現行ノ營業稅
  ハ、主トシテ外形標準ニ依ッテ課稅セラレテ居ルガ爲ニ、根本
  ニ於テ洵ニ課稅原則ニ反シテ居ル、其課稅ハ必シモ公平ナ
  ラズ、各人ノ所得ニ副ハナイト云フ大缺點ヲ有シテ居ル稅
  法デアルノデアリマス、殊ニ徵稅ノ方法ニ關シ、頗ル弊害ノ
  多キヲ免レナイモノデアリマスカラ、根本カラ之ヲ改革スルニ
  アラザレバ、決シテ營業稅ノ整理ノ實ヲ擧ゲタリト云フコトハ
  出來ナイ、政府案ノ如ク唯、賃貸價格ヲ課稅標準ノ中カラ
  取除イタト云フ位ノ事デ、此營業稅ノ性質ヲ一變シタリト
  云フコトハ出來ナイノデアリマス(拍子)惡稅ハ何所マデモ惡
  稅デアル、此故ニ現行ノ營業稅法ハ之ヲ廢止スルヨリ外ニ
  途ハナイ、之ヲ廢止スルト云フコトガ、卽ナ稅制ノ整理ヲ行
  フ所ノ第一歩デアルト謂ハナケレバナラヌノデアリマス、政府
  ハ唯、應急整理ヲ行ックニ止ルト辯解シテ居ルガ、應急整理
  ト致シテモ、此改正ハ全ク姑息ヲ極メタモノデアルト斷言ヲ
  シナケレバナラヌ(拍子)又吾々同志ガ屢〓此席ニ於テモ申述
  ベタル如ク、營業稅ノミノ改正ヲ政府ハ今囘之ニ著手シタ
  併シ一方地租ノ問題ヲ閑却シタノハ果シテ何故デアルカ、
  是ハ偏頗ハナイカ、不權衡極マルデハナイカ、鳥ノ兩翼ニ比
  セラレテ居ル營業稅ニ付テハ、免ニ角ニモ手ヲ著ケテ之ヲ改
  正スルト云フコトヲ求メテ置キナガラ、此農村ノ問題ノヤカ
  マシイ今日ニ方ッテ、農民ノ苦痛ハ全ク之ヲ度外ニ措ク、農
  民ノ經濟ハ全ク之ヲ顧ミナイト云フコトハ、政府トシテハ如
  何ニモ無責任デアルト斷言ヲシナケレバナラヌノデアリマス
  (拍手)此事ハ吾々ノ同志ガ屢〓論及シタ事デアリマス、諸君
  ハ全ク辯解スルノ辭ヲ有シナイデハナイカ、之ヲ辯解スルコ
  トガ出來ナイガ爲ニ、窮策トシテ稅制ノ根本整理ヲ建議ス
  ルト云フニ至ッテハ、如何ニモ諸君ノ不見識ヲ暴露シタルニ
  止マルト謂ハナケレバナラヌ(拍手)又消費稅ノ問題ニ關シ
  テハ私モ此席ニ於テ曩ニ申述ベタコトガアル、社會政策的
  見地ヨリシテモ國民ノ苦痛ヲ救ヒ、國民ノ生活ノ安定ヲ圖
  ルト云フ上カラ申シテモ、產業發展ノ前途ノ爲ニモ、此消費
  稅ノ苦痛ヲ減ジナケレバナラヌト云フコトハ、固ヨリ重大ナル
  問題デアリマス、然ルニ政府ハ唯、石油消費稅ノ廢止ト云
  フコトヲ實行セラルヽニ止マッテ、今一步ヲ進メテ各般ノ消
  費稅ニ對スル輕減改正ト云フコトニ御注意ニ相成ラヌト云
  フコトハ、私ハ今日ノ政府トシテハ、今日ノ國民ニ對シ、今日
  ノ經濟社會ニ對スル、全ク其政策ヲ忘レラレタルモノト斷言
  ヲシナケレバナラス、國民ノ生活ノ苦痛ト云フコトハ、前內
  閣ハ之ヲ眼中ニ措カナイト稱シテ、前內閣ノ如キハ國民ハ
  生活ノ脅威ヲ受ケテ居ルト云フコトハ認メナイト、斯樣ニ御
  答ニナッテ居ッタノデアルカラ、是ハ論外デアル現内閣諸公ノ
  如ク、國民ノ苦痛ハ之ヲ認メテ居ルト稱シナガラ、消費稅ノ
  改正ト云フコトニ付テ一向御考ガ及バナカッタト云フコトハ、
  私ハ現内閣ハ如何ニモ國民ニ對シテ不忠實デアルト斷言シ
  ナケレバナラヌノデアリマス(拍手)斯樣ナル次第デアルカラ
  私ハ、私共ガ提出シタル此各種ノ廢減稅法案ヲ維持セザル
  ヲ得ナイ、之ヲ否決シタト云フコトニ付テハ、全然理由ガ無
  イト云フコトハ洵ニ明白デハナイカ、唯〓玆ニ廢減稅ノ問題
  ニ關シテ、政友會諸君ガ述ベラルヽ說、之ヲ廢シ之ヲ減ズル、
  其歲入ノ缺陷ヲ如何ニスルカト云フコトノ問題デアリマス、
  併シ此事ニ關シテハ、委員會ニ於テモ吾々同志カラ明瞭ニ
  御答ガシテアル、廢減稅ヲ行ウテ、其財源ヲ如何ニスルカ、尤
  ラシク先刻委員長ハ御述ニナッテ居ル、吾々ノ廢減稅案ニ
  依シテ歲入ノ缺陷ヲ生ズルコト約四千九百万圓、此四千九
  百万圓位ノ財源ハ、之ヲ求ムルコトハ決シテ困難ニ非ズト
  思フノデアル、此事ハ屢、吾々同志ニ依ッテモ說明セラレテ居
  ルノデアリマス、行政整理、軍備縮小、此斷行ニ依〃テ四千万
  圓ヤ五千万圓ノ玆ニ整理ガ出來ナイト云フ筈ハナイ、私
  大體ニ於テ此事ハ諸君ノ御記憶ヲ願ヲテ置カナケレバナラ
  ヌ、行政整理ニ付テ申シマシテモ、政府ガ行政整理ヲ行ッタ
  ル所ノ實績ニ徵スルト、政府ハ各省ノ此整理ニ關シテ、經常
  部ニ於テハ平均一割二分ノ整理ヲ行ッタト計算シテ居ラ
  ルヽ、私共ハ經常部ニ於テ一割二分ノ整理ヲ、更ニ之ヲ進
  メテ二割平均ノ整理ヲ行フコトハ、必シモ困難ニ非ズト信
  ジテ居ル、此點ノミニ付テモ生ズル所ノ金額ハ約二千万圓デ
  アル、更ニ臨時部ニ於テハ二割三分ト云フ平均ニ於テ、行政
  整理ヲ行ッテ居ラルヽノデアリマス、假ニ之ヲ三割トスル、平
  均三割ノ整理ヲ行フト云フコトニナレバ、茲ニ八百七十万圓ノ
  剩餘ヲ生ズルコトニナル、一寸行政整理ノ金額ヲ合セテモ二
  千九百万圓許リノ餘裕ヲ茲ニ生ズルコトガ出來ルノデアリ
  マス、思切ッテヤレバ是ダケノ事ガ出來ナイ筈ハナイ、徒ニ姑
  息ノ考ヲ持ッテ居ル所ノ諸君ハ是ハ論外デアル、又軍備縮
  小ニ關シテモ、陸海軍ヲ合セテ茲ニ千万圓ヤ二千万圓ノ財
  源ヲ生出スコトノ減少ガ出來ナイ筈ハナイ、唯、陸軍ノミニ
  付テモ昨年ノ要求ニ對シテモ-手取四千万圓ト云フ要
  求ニ對シテ、政府ハ僅ニ二千三百万圓ノ節減ニ止ッタ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=40

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• 041・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　既ニ定刻ニ近ヅキマシタカラ、時
  間ヲ延長致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=41

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• 042・早速整爾

  ○早速整爾君(續)　之ヲ本員ノ意見ノ如クスレバ-各
  派ノ一致シテ決議セラレタル意見ノ通リニシテモ、陸軍ニ於
  テ千六百万圓以上餘裕ヲ生ジテ來ナケレバナラヌト云フコ
  トハ明デハナイカ、〓略是ダケノ意見ヲ以テ致シマシテモ-
  此他ニモ尙ホアル、アルケレドモ大體是ダケヲ以テ致シマシ
  テモ、四千万圓ヤ五千万圓ノ財源ヲ玆ニ捻出スルコトハ、決
  シテ難キニ非ズト私ハ確信致シテ居ルノデアリマス、是ガ出
  來ナケレバ、諸君ハ行政整理ヲ叫ブト云フコトハマルデ無責
  任デアル、是ガ出來ナイト云フモノハ、行政整理ト云フ論ニ
  反對ノ諸君ノ御意見デアルト謂ハナケレバナラヌ、故ニ財源
  ノ攻究ガ足ラナイト御唱ニナルノハ、卽チ諸君ノ勝手ノ議
  論デアル、行政ヲ整理スル、軍備ヲ縮小スルト云フコトニナレ
  パ、決シテ此財源ノ乏キハ憂ヘナイ、又吾々トシテハ之ヲ斷行
  シナケレバナラヌ、政府モ亦此吾々ノ要求ニ應ジナケレバナ
  ラヌト云フコトハ、洵ニ條理ノ正シキ議論デアルト謂ハナケ
  レバナラヌデハナイカ、斯ノ如クシテ吾々ハ大正十二年度ヨ
  リシテ、此廢減稅ノ實行ヲ要求スルノデアリマス、唯〓徒ニ
  二年先キデモ宜シイ、三年先キデモ宜シイ、四年先キデモ宜
  シイト云フガ如キ說ヲ吾々ハ弄シナイ、急速ニ國民負擔ノ輕
  減ヲ實行スベシト云フノガ吾々ノ主張デアルノデアリマス、又
  一方ニハ地租及營業稅ノ委譲ト云ヘル說ガ起ッテ居ルノデ
  アリマス、此說ハ矢張稅制ノ根本整理ニ伴フベキモノデアリ
  マスカラ、直ニ之ヲ實行スルト云フコトハ私共ノ考デハ頗
  ル困難デアルト思ハレル、私共ハ主義ニ於テ絕對ニ此委譲
  ニ反對ヲスル者デハゴザイマセヌ、併ナガラ此委譲ヲ行フニ
  於テハ、更ニ〓究ヲ要スル問題ガ幾多アル、先ヅ之ニ就テノ
  財源ヲ如何ニスルカト云フコトモ重大ナル問題デアリマセウ、
  租稅ノ體系ヲ如何ニスルカト云フコトモ重要ナル問題デア
  リマセウ、又之ヲ委譲スルニ於テ中央及地方ノ稅法ヲ如何
  ニスルカト云ヘルガ如キコトモ、亦大ニ〓究ヲ要スル所ノ問
  題デアルト思フ、故ニ此委譲ヲ可ナリト致シマスルモ、是ハ卽
  チ根本整理ノ問題ト共ニ之ヲ解決スルノ外ハナイ、根本整
  理ノ問題ト共ニ之ヲ解決スルト云フコトニ致シマスレバ、當
  面ノ問題タル國民負擔ノ輕減トハ、是ハ切離シテモ少シモ
  差支ハナイノデアリマス、當面ノ問題デアル國民負擔ノ輕減
  ト、地租、營業稅ノ地方委譲ト云ヘル問題トハ、是ハ切離ス
  コトハ蓋シ已ムヲ得ザル事デアルト私ハ思シテ居ル、卽チ吾々
  ハ茲ニ當面ノ問題ヲ解決スルガ爲ニ、國民ノ負擔ノ輕減ヲ
  實行スルガ爲ニ、各種ノ廢減稅案ノ通過ヲ切望致スノデア
  ル、吾々ノ唱フル所ノ廢減稅案ハ、他日委譲ガ行ハルヽ場合
  アルコトヲ豫想シテモ、實行上何等ノ矛盾ハナイ、實行上何
  等ノ衝突ハナイト云フコトヲ私ハ玆ニ明言ヲ致シテ置クノデ
  アリマス、(拍手)大要右ノ如クデゴザイマスカラ、吾々ノ廢減
  稅案、卽チ國民ノ負擔ヲ輕減スルト云フコトハ、今日ニ於テハ
  是非トモ之ヲ斷行シナケレバナラヌ、之ニ反對ヲセラルヽ所
  ノ諸君ハ、卽チ政友會ノ諸君ノ如キハ、全ク國民ヲ度外ニ
  措ク所ノ御方々デアルト斷言シテ此壇ヲ降ラウトスルノデア
  リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=42

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• 043・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　島田俊雄君
  〔島田俊雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=43

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• 044・島田俊雄

  ○島田俊雄君　只今早速君ヨリ、問題トナッテ居リマス廢
  滅稅ノ案ニ付テ縷々御議論ヲ拜聽致シマシタ、其論ゼラレ
  タ所ハ甚ダ長時間ニ亙ッタヤウデアリマスケレドモ、御論旨ニ
  至ッテハ極テ簡單デアッタト考ヘルノデアリマス、又早速君外
  同志ノ諸君ヨリ御提出ニナッテ居リマスル廢減稅ノ案ニ付
  テハ、今日早速君ヨリ御述ニナル以上ニ、詳シキ議論ガ既ニ
  其提出ノ當時ニ於テ述ベラレテ居ルノデアリマス、吾々ハ茲
  ニ是等ノ廢減稅案ト政府提案トヲ對照致シマシテ、此政府
  ノ提案ヲ此場合ニ認メテ、各派ノ提案ニ係ル減稅、廢稅ノ
  案ニ對シテ否決ヲスルト云フコトノ、委員長報告ノ意見ヲ支
  持スル理由ヲ簡單ニ述ベテ置キタイト思フノデアリマス、政
  府ノ提案卽チ所得稅及營業稅ニ付テノ改正ノ案ヲ、大體
  於テニ認メタト云フコトノ理由ハ、極テ簡單デアル、卽チ其
  提案ノ内容ガ最モ完全ニ稅制整理ノ目的ヲ、ソレニ依ッテ
  遺憾ナク遂行スルモノデアルト云フ意味デハナイノデアル、卽
  チ吾々ハ政府ノ提案ニ對シテ、委員長ノ報告ニ於テ現レタ
  ル如ク、之ヲ稅制整理ノ一端トシテ見ル場合ニ於テハ、其提
  案自體ニ於テ多ク論議スペキ點ガアルコトヲ認メテ居ルノ
  デアリマス、唯〓吾々同志ハ大正十二年度ニ對スル政府ノ
  財政計畫ヲ大體ニ於テ認ムルガ故ニ、其意味ニ於テ之ガ財
  源ニ關係シテ居ル所ノ法律案ト致シマシテ、暫ク此モノヲ
  是認スルト云フ立場ニ出デタニ過ギナイノデアリマス(拍手)
  吾々ガ稅制ノ全體ニ付テ如何ナル方法ヲ以テ之ヲ整理
  シ、如何ナル手段ニ依フテ之ヲ整頓シテ行クカト云フコトハ、
  卽チ過日當議場ニ於テ、稅制整理ニ關スル建議案ニ於テ
  明ニ其意思ヲ表明シテ居ルノデアリマシテ、近キ將來ニ於
  テー、最モ近キ將來ニ於テ、又最モ出來得ル近キ將來ニ於
  テ、此稅制整理ノ案ヲ擧グルト云フコトガ吾々ノ趣意デアル
  ノデアリマス(拍手)卽チ吾々ハ少クトモ大正十三年度ニ於
  テ地租ノ委譲、其他之ヲ根本トスル所ノ財政ノ整理ヲー
  稅制ノ整理ヲ實行シヤウト云フコトガ吾々ノ提案ノ趣意デ
  アル、故ニ其前提ト致シマシテ茲ニ政府ノ提案ニ對シテ其
  內容ニ立至ッテ多クノ論議フスルコトヲ避ケタノデアリマス
  又各派ノ提案中、殊ニ此憲政會ノ御提案ニ係ル廢減稅ノ
  案ニ對シテ反對シタル理由モ亦此ニ存スルノデアル憲政
  會ノ諸君ハ、殊ニ早速君ガ只今此壇上ニ於テ頻ニ種々ナル
  言議ヲ弄セラレマシタケレドモ、大正十二年度卽チ明年度
  ノ豫算ニ於テ直ニ斯ノ如キ廢減稅ノ實ヲ擧ゲルト云フコト
  ニ付テハ相當根本ノアル、又根柢ノアルベキ論據ニ立ッテ述
  ベテレナケレバナラスト考ヘルノデアリマス、然ルニ委員會ニ
  於テ委員ノ一人トシテ吾々ガ此提案者ニ質問致シマシタ
  當時ニ於テ、此御提案ノ實行ニ依ヶテ生ズル此缺陷之ニ對
  スル財源既チ四千九百万圓ノ收入減ヲ生ズル案ニ對シテ
  如何ナル方法ヲ以テ之ヲ、補塡セラルヽカト云フコトニ對
  スル御答辯ハ極テ不明瞭デアッタノデアリマス、豫算ハ既ニ
  諸君ノ手ニ在ル、豫算ハ旣ニ諸君ノ手ニ在リ豫算ノ審議ハ
  既ニ盡サレテ居ルノデアリマシテ、遠カラズ此議場ニ於テ大
  正十二年度ノ豫算ヲ報告セラルヽノデアラウト思フノデア
  リマス、果シテ然ラバ諸君ガ此大正十二年度ニ於テ、諸君
  ノ提案ノ結果トシテ四千九百万圓ノ收入減ヲ見ル場合ニ
  對スル、具體ノ案ヲ〓サレナイト云フコトハナイノデアリマ
  ス、行政整理ニ依ッテ二千何百万圓、或ハ陸軍ノ縮小ニ依テテ
  千幾百万圓ヲ出スト言ハレマスガ、此軍縮ニ依クテヤリ或ハ
  行政整理ニ依ッテヤルト云フコトハ果シテ如何ナル事ヲ意
  味スルノデアルカ、又稅制ノ全體ニ付テハ此度ノ御提案ハ
  果シテ憲政會ノ諸君ハ之ヲ唯。斷片的ノモノトシテ、所謂
  負擔ノ輕減ト云フヤウナ意味カラシテ出サレタモノデアルカ、
  或ハ稅制ノ全體ニ付テ整理ノ大ナル御意見ヲ持ッテ居ラレ
  テ、其稅制整理ノ一端トシテ之ヲ出サレタモノデアルカト云
  フコトニ付テ質問致シマシタニ付テ、今年ハ先ヅ是ダケノ事
  ヲスルノデアル、大正十三年度ニ至レバ復夕他ノ擬案ヲスル
  ク知レナイト云フ御意見デアッタノデアリマス、果シテ然テバ
  憲政會ノ諸君ノ御提案ト云フモノニ對シテハ稅制整理ニ
  對スル一定ノ脈絡アル御意見ハ無イト云フコトニ斷定セザ
  ルヲ得ナイノデアリマス(拍手)卽チ其日々々ノ都合ニ依シテ、
  其日々々ノ都合ニ依シテ、所謂其場限リノ議論デアルト云フ
  コトニ斷言セラレテモ致方ハナイノデアリマズ、御提案ニナリ
  マシタ此廢減稅ノ案ノ中ニ於テ、其一々ニ就テ之ヲ論ジテ
  見マスレバ其中ニハ御尤ナルモノモアルノデアリマス、御尤
  ナモノモナイトハ言ハナイノデアリマスケレドモ、其案ガ唯こ
  一時ノ思付ニ依ッテ出シタモノデアッテ、十三年ニ至レバ十三
  年ノ風ガ吹ク、十四年ニ至レバ十四年ノ風ガ吹クト云フガ
  如キ、其場限リノ議論トシテ之ヲ聽イタトキニ、之ニ贊成ス
  ルコトハ出來ナイノデアリマス(拍手)我國ニ於テ申ス迄モナ
  ク國稅ノ種類ハ地租、營業稅ヲ首メト致シマシテ、關稅等
  ニ至リマスレバ二十種ノ多キニ達シテ居ルノデアル、又地方
  稅ハ其種類ガ吾三百十〓種ノ多ヤニ遠シデ居ルノアアリマ
  ス、是等ノ多クノ國稅、地方稅ヲ通ジテ相當ナル整理ヲ爲シ
  脈絡ヲ保ツト云フコトニ付テハ計畫ガナクテハナラスノデア
  ル、其計畫ナクシテ、漫然トシテ玆ニ斯ノ如キ提案ヲ爲シテ、
  而モ其財源ヲ示スコトガ出來ナイト云フニ至ッテハ、此案ニ
  對シテ吾々ハ賛成スルコトヲ躊躇セザルヲ得ナイノデアリマ
  ス、我國ノ現時ノ狀況ハ、總テノ方面ニ於テ徹底的ナル整
  理ヲ要スル時期ニ達シテ居ルノデアリマス、或ハ原内閣ノ時
  代ノコトヲ云々致シテ居ラレマスケレドモ、原內閣ノ時代ニ
  於テモ、此稅制ノ事ニ付テハ相當ニ事業ヲシテ居ルノデアリ
  マス、卽チ現在ノ所得稅ノ如キハ、原內閣ノ時代ニ於テ計
  畫セラレテ居ルモノデアリマス、現行所得稅ノ如キハサウデア
  ルノデアリマス、併ナガラ戰後ノ我國ヲ經營スルト云フ場合
  ニ於テ、其國ノ財源トシテ最モ必要ナル稅種ニ付テハ、最モ
  根柢的、徹底的ナル立案ヲ要スル時機ニ到達シテ居ルノデ
  アッテ、此點ニ於テハ國民一人トシテ之ニ注意ヲセザル者ハ無
  イト考ヘルノデアリマス、斯ノ如キ根柢ニ涉、テ整理スベキ時
  機ニ際シテ、唯、一時ノ思付イタト云フガ如キ提案ニ對シテ、
  吾々ハ贊成スルコトハ出來ナイノデアリマス、殊ニ憲政會ノ
  地租ノ二分減ノ御提案ニ對シテハ、私ハ其御提案ニナッタ、
  動機等ニ付テ玆ニ論ズルコトヲ好マナイノデアリマスガ、常ニ
  農民ノ負擔ノ輕減ト云フコトニ口ヲ引カレテ、サウシテ地
  租ノ二分減ノ御提案ヲ爲スニ付テ、其權衡上營業稅ノ廢
  止ト云フモノヲ出シテ居ラレル、諸君ハ營業稅ニ付テハ廢止
  ノ提案ヲシテ居ルト云フコトヲ言ハレテ、商工業者ニ對シテ
  ハ非常ニ負擔ノ輕減ヲ圖ラレルガ如クニ述ベラレテ居ラレ
  マスケレドモ、御提案ノ理由書ヲ見、又其御說明ニ依ッテ見
  マスト云フト、營業稅ニ付テハ諸君ノ御提案ハ、營業稅全
  廢ノ御提案デハナイノデアル、卽チ營業稅ヲ一方ニ於テ全
  廢スルト同時ニ、他ノ一方ニ於テ營業所得ニ對シテ特別ノ
  課稅ヲスルト云フコトデアリマシテ、營業稅ニ付テハ卽チ一
  種ノ減秘案ニ過ギナイノデアッテ、廢止案デハナイノデアリマ
  ス、若モ之ヲ諸君ガ營業稅ノ廢止案ヲ提出シタト云フコト
  ヲ言ハレルナラバ、所謂羊頭ヲ掲ゲテ狗肉ヲ賣ルト云フコト
  ニ陷リハシナイカト思フノデアリマス、卽チ地租ニ於テ二分
  減ノ主張ヲ爲ス故ニ、營業稅ニ於テモ多少ノ減額ヲ爲スベ
  キ案ヲシナケレバナラスト云フ、其御苦心ニ對シテハ吾々ハ
  同情ヲ表スルノデアル、併ナガラ玆ニ地租、營業稅ノ委譲ノ
  議論ガ出夕場合ニ於テ、諸君ノ御提案ハ所謂月前ノ煙火
  タルノ觀ヲ免レヌト思フノデアリマス、又憲政會ノ諸君ハ現
  內閣ニ對シテ、原內閣ノ時代ニ於テ實行セザリシコトヲ現
  内閣ニ對シテ求メルノハ、難キヲ責ムルト云フコトヲ申サレ
  テ居リマスケレドモ政友會ノ提案···
  〔「頭ガ惡イノダ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=44

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• 045・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　靜肅ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=45

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• 046・島田俊雄

  ○島田俊雄君(續)　提案ハ決シテ現内閣ニ對シテ難キヲ
  求メテ居ルノデハアリマセヌ、私ハ此意味ヲ一言明ニシテ置
  キタイト思フノデアリマス、攻友會ハ卽チ其難キヲ求メザル
  ガ故ニ、其主張ニ於テ建議案ノ形式ヲ採ッタト云フコトニ於
  テ御承知ヲ願ヒタイノデアル、大正十二度ヨリ直ニ行ヒ難キ
  財政ノ計畫ヲ-根柢ニ於テ動搖スベキ如キ計畫ヲ、大正
  十二年度ニ於テ直ニ實行スルガ如キ計畫ハ、是卽チ政府ニ
  對シテ寧ロ難キヲ責ムルモノデアッテ、難キヲ責ムルモノハ卽
  チ諸君デアルト謂ハナケレパナラヌノデアル、大正十三年度
  ニ於テ之ヲ實行スルト云フコトニ付テハ、自ラ其計畫者ハ相
  當ナ餘格ヲ持ヲテ居ルノデアリマス、又地租ノ委譲ニ付テハ
  吾々ハ之ヲ言明シテ居ルケレドモ、其委譲ノ實行ニ於テ幾
  多ノ困難ヲ伴フ所ノ營業稅等ニ付テハ、固ヨリ言明ヲ致シ
  テ居ラナイノデアリマス、卽チ相當ナル調査及準備ノ時機ヲ
  政府ニ向クテ與ヘルノ趣意ヲ述ベテ居ルデハアリマセヌカ誠
  意ノ無イ法律等ヨリハ誠意ノ有ル所ノ建議案ガ、吾々ハ
  國民ノ利益デアルト思フノデアリマス、吾々ハ從來其主張シ
  タルモノニシテ、必ズ之ヲ實行シナイ所ノモノハ無イノデアリ
  マス、諸君ノ御提案ニ對シテ私ハ是レ以上ノ事ヲ批評スル
  ト云フコトヲ致シマセヌガ、諸君ガ種々ナル提案ヲ爲シ、種々ナ
  ル實行困難デアル、若クハ不可能デアルト云フ如キ促案ヲ爲
  シテ、其提案ノ容レラレザル場合ニ於テハ豫算ニ付テ豫算
  返上論ヲ爲サレルト云フ如キ態度ハ果シテ是ガ國ノ爲ニ
  謀ッテ忠ナル所以デアルカドウカ、責任ヲ知ル所ノ政黨ノ爲
  スベキ事デアルカドウカ、今年豫算ニ對シテ諸君ガ果シテ如
  何ナル態度ヲ執ラレルカ、今日此廢減稅案ノ否決セラレタ
  場合ニ於テ如何ナル態度ヲ執ラレタカト云フコトハ、固ヨリ
  今日豫言スルコトハ出來マセヌケレドモ、若シ今年ノ豫算ニ
  對シテ又例ノ豫算返上論ノ如キモノヲ繰返サレルト云フコ
  トデアッタナラバ、國民ニ對シテ不忠實ナルモノハ卽チ憲政會
  諸君デアルト思フ、吾々ハ政府ニ對シテ難キヲ彼メテ豫算返
  上ト云フガ如キ態度ニ出デザルガ爲ニ、之ヲ建議案ノ形ニ
  於テ要求シテ居ルノデアリマス、卽チ其誠意ノ在ル所ハ苟
  モ理解アル所ノ人々ハ能ク諒解スル事柄デアルト云フコト
  ヲ玆ニ斷言スルノデアリマス、又早速君ハ是ハ憲政會全體
  ノ御意見デアルカドウカ知ラヌガ、早速君ハ政友會ガ此國
  民負擔ノ輕減ニ對シテ、反對ヲシタト云フガ如キコトヲ中サ
  レテ居リマス、凡ン我國ニ於テ苟モ政治ヲ談ズル者是ハ我
  國バカリデハナイ、何レノ國ニ於テモ苟モ政治ニ携シテ居ル者
  ハ國民負擔ノ輕減ヲ圖ルト云フコトニ付テ、反對スル所ノ
  人ハ蓋シ無カラウト思フノデアリマス、國民ノ負擔ノ輕減ヲ
  スルト云フコトニ付テ反對ヲスル者ガアルト云フ如キ相像ヲ
  スルト云フコトハ、卽チ其人々ハ或ル場合ニ於テハ、必要ハナ
  キニ國民ニ負擔ノ增加ヲ政テスル所ノ人デアルト謂ハナケレ
  バナラヌノデアリマス、卽チ私ハ此議院ヲ通ジテ-全院ヲ
  通ジテ、國民ノ負擔ノ輕減ニ付テ反對スルコトノ人ノ無キコ
  トヲ確信シテ居ルノデアリマス、サリチガラ國家ノ必要ニ應ジ
  必要已ムペガラザル場合ニ於テ、相當ナ負擔ヲ爲スト云フコ
  トハ是ハ又國民ノ義務デアル、卽チ納稅、兵役ハ國民ノ大ナ
  ル義務デアルト云フコトヘ當然ノ事デアリマス、此意味ニ於
  テ政友會ガ必要ナル場合ニ於テ、租稅ノ徵收ニ付テ相當ナ
  ル計畫ヲ爲スト云フコトハ當リ前ノ事デアッテ負擔ノ輕減論
  ト租稅ノ賦課ヲ爲スト云フ所ノ議論トハ、同一ニ視ルコトハ
  出來ナイノデアリマス、卽チ國家ニ一朝不時ナ時機ガアリマ
  スレバ、負擔ノ加重モ已ムヲ得ナイデハアリマセヌカ又國家
  ノ緊縮ヲ要シ、又負擔ヲスル必要ノナキ場合ニ於テ負擔ヲ
  モトムルト云フコトハ、是ハ國ヨリイカヌ事デアリマセウ、故ニ
  吾々ハ早速君ノ言ハルヽ政友會ハ國民ノ負擔ノ輕減ニ
  付テ意ナキモノデアルト云フ議論ハ、其儘之ヲ、返上シテ、
  斯樣ナ事ヲ言フ所ノ諸君ガ、或ル場合ニ於テハ負擔ノ過重ヲ
  强ヒラルヽガ如キ事ガアリハシナイカト云フコトヲ、疑フト云
  フコトヲ明ニシテ置キタイト思フノデアリマス、又早速君ハ其
  御演說中ニ、國稅ノ非常ニ最近數年間ニ於テ其收入ノ增
  加シタ事ニ付テ云々セラレ、何カ苛欽誅求ノ結果デアルト云
  フガ如キコトヲ議論セラレテ居リマシタガ、固ヨリ此收稅官
  吏ノ徵稅ニ對スル態度等ニ付テハ、吾々モ國民ト共ニ遺憾ト
  スル點ノ多イコトヲ知ッテ居リマス、併ナガラ最近ノ我國ニ於
  ケル國稅、地方稅ノ牧入ノ增加ト云フコトハ、是ハ我國ノ進
  步ノ結果ニ過ギナイノデアルト考ヘナケレバナラヌ、決シテ此
  租稅收人ノ增加ト云フコトガ、直ニ國民負擔ノ過重、或ハ
  國民負擔ノ非常ニ困難デアルト云フコトヲ意味スルモノデ
  ナイト云フコトヲ言ッテ置カナケレバナラヌ今日ノ我國ノ國
  民ハ、決シテ租稅ノ負擔ヲ輕シトシテ居ラナイト云フコトハ
  吾々モ知〓テ居ルノデアリマス、故ニ稅制整理ト云フコトモ考
  ヘナケレバナラヌ、又都會ト地方トノ關係ニ於テ、其生活ノ調
  和ヲ圖ルト云フコトモシナケレバナラヌ、故ニ今日動モスレバ
  閑却セラレントスル所ノ農村ニ付テハ、其振興ノ建議案ヲ
  提出シテ居ルノデアリマス、又其振興策ニ付テ實行可能ナ
  ルモノニ付テハ、著々法律案トシテ、或ハ建議案トシテ之ヲ
  提案シテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ問題ニ付テ相當據ルベ
  キ論據ナクシテ、唯〓急言喝論シテ、徒ニ負擔ノ過重ニ贊成
  ヲシテ居ルモノデアルトカ、或ハ負擔ノ重キコトヲ意トセザル
  モノデアルト云フガ如キ議論ヲ爲サルヽト云フコトハ、ソレハ
  俗論ニ向ッテ、大ニ向フニ對シテハ或ハ好キ議論デアルカモ知
  レマセヌケレドモ、識者ノ嗤ヲ買フ議論デアルト謂ハナケレバ
  ナラヌ、之ヲ要スルニ憲政會ノ御提案ニ對シテハ其大體ニ
  於テ、卽チ之ヲ稅制整理ノ大ナル計畫ノ一部トシテ見ル場
  合ニ於テハ、必シモ其事ガ一〓ニ絕對ニ惡イトハ言ハナイ
  卽チ吾々モ餘リ遠クナイ時期ニ於テ、地租、營業稅其他稅
  制ノ整理ヲ爲シ、之ヲ地方ニ委讓スルト云フコトヲ計畫シテ
  居ルノデアリマスカラシテ、敢テ絕對ニ之ヲ反對スルト云フコ
  トデハアリマセヌケレドモ、大正十二年度ニ於テ直ニ之ヲ實
  行スル意味ニ於テ財源ヲ明ニ示サズ、又稅制整理ノ組織ニ
  付テ其系統ヲ示サヾル斯ノ如キ提案ニ對シテハ贊同スルコ
  トハ出來ナイト云フコトガ、吾々ノ此諸君ノ提案ニ對スル反
  對ノ理由デアルト云フコトヲ御永知ヲ願ヒタイノデアリマス
  (拍手)又革新倶樂部其他ノ御提案ニ對シテハ、是ヨリ同派
  ノ代表者ノ御演說モアルコトデアリマスカラシテ、靜ニ其御
  諭旨ヲ承ッ夕後ニ批評スベキ事柄デアラト思ヒマスルガ、此
  革新倶樂部ノ諸君ノ御提案タル地租、營業稅ヲ地方ニ委
  讓スルト云フ所ノ御案ハ、其超意ニ於テ吾々ハ、少シモ異ル
  所ハナイノデアリマス、之ヲ憲政會ノ只今批評シタル所ノ議
  論ト比較致シマスレバ、其間ニ非常ナル差異ノアルト云フコ
  トヲ吾々ハ認メテ居ルノデアリマス、卽チ地方ニ確實ナル財
  源ヲ與ヘルト云フ意味ヲ以テ、之ヲ地方ノ財源トシテ委譲
  シ、竝ニ其缺陷ニ對シテハ相當ナル計畫ヲ立テヽ之ヲ行フト
  云フコトデアリマス、故ニ其趣意ニ於テハ吾々ハ少シモ反對
  ヲ致シテ居ラヌノデアリマス、唯、吾々ガ之ニ向ッテ直ニ賛同
  スルコト能ハザル所以ハ、大正十二年度ニ於テ此事ヲ豫算
  ノ上ニ實現シヤウトスル一點ニ過ギナイノデアリマス、廢減
  稅ハ國家ノ收入ニ關スル事デアルガ故ニ、苟モ之ヲ可決致
  シマスレバ、直ニ大正十二年度ノ財政計畫ノ上ニ大ナル變
  動ヲ來サナケレバナラヌ、大正十二年度ノ現政府ノ立テクル
  豫算ノ計畫ニ對シテハ、吾々ハ大體之ヲ是認スル所ノ者デ
  アリマス、故ニ其吾々ガ是認スル所ノ財政計畫ノ根本ヲ動
  搖スベキ所ノ御提案ニ對シテ、卽チ此廢滅稅、地租、營業稅
  ノ委譲ヲ大正十二年度ニ於テ直ニ行フト云フ所ノ御提案
  ニ對シテ、吾々ハ賛成スルコトハ出來ナイノデアリマス、然ラ
  バ、大正十三年度以後ニ於テハ如何ナル態度ヲ執ルカト云
  フコトニ付テハ、是ハ憲政會ノ諸君ニ對シテ申シタ如ク、吾
  吾ハ卽チ此點ニ付テハ二ツノ有意義ナル建議案ヲ玆ニ提
  出致シテ居リマシテ、現ニ委員會ニ於テ審査ヲ〓シテ居ル
  次第デアリマスカラシテ、其建議案ノ審査ニ於ケル質問廳
  答ニ於テ、自ラ諸君ハ吾々同志ノ提案ノ意ノ在ル所ヲ御諒
  解下サルデアラウト思フノデアリマス、吾々ハ此御提案ニ對
  シテハ、其趣意ニ於テ賛成致シテ居ルノデアリマス、之ニ對シ
  テハ··
  〔此時發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=46

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• 047・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　金澤君ニ再ビ注意致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=47

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• 048・島田俊雄

  ○島田俊雄君(續)　之ニ對シテハ詳細ナル御議論ノアル
  コトヽ考ヘテ居リマスケレドモ、其御議論ニ對シテハ又更ニ
  之ニ對シテ應答スル機會モアラウト考ヘテ居リマス故ニ、私
  ハ此處ニハ革新倶樂部及庚申倶樂部ノ方面カラ出テ居リ
  マス地和、営業稅、委譲ノ意味ヲ以テスル所ノ廢減稅案ニ
  對シテハ其趣意ニ於テハ賛成スル者デアルガ、其實行ノ時
  機ニ付テ賛成スルコトハ出來ナイト云フコトノ一語ヲ殘シ
  テ、之ニ對スル議論ヲ止メテ置キタイト思フノデアリマス、之
  ヲ要スルニ先キニ冒頭ニ於テ述ベタル如ク、吾々ガ政府ノ提
  案、卽チ所得稅、營業稅及其他ノ收入ヲ目的トスル所ノ諸
  法案、政府提出ノモノニ對シテハ大體之ヲ賛成シタル所以
  ハ卽チ大正十二年度ノ政府ノ立テタル財政計畫ヲ是認ス
  ルト云フ意味ヲ前提トシタモノデアリマシテ、而シテ諸君ノ提
  案ニ對スル所ノ-廢減稅ニ對スル提案ニ付テハ、吾々ハ別
  ニ根本的ノ整理案ヲ持ッテ之ニ對應シタイト思フガ故ニ、之
  ニ賛成スルコトハ出來ナイト云フ意思ヲ表明シテ此壇ヲ降
  ルノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=48

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• 049・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　通告者數名ヲ殘シテ居リマス、
  而シテ時間モ討論ノ終結ニ至リマスマデニハ、尙ホ數時間ヲ
  要スルト思ヒマスカラ、此際諸君ノ御食事ノ爲ニ一時間休
  憩ヲ致シマス
  午後六時二十九分休憩
  午後七時三十九分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=49

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• 050・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　休憩前ニ引續イテ會議ヲ開キマ
  ス、大口喜六君
  〔大口喜六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=50

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• 051・大口喜六

  ○大口喜六君　只今議題ト相成ッテ居リマスルノハ、政府
  提出所得稅法中改正法律案外十四件ノ多キニ及ンデ居
  リマス、其故ニ一々之ニ對シテ賛否ノ議論ヲ致シテ居リマス
  ルコトハ、時間ノ都合上等ヨリ到底爲シ得ベカラザル所ノ
  事デアリマス、然ルニ此中ニ付キマシテ、私ハ林田龜太郞君
  外提出營業稅法廢止法律案、竝ニ中川幸太郞君外提出
  ノ地租條例廢止法律案ニ賛成ヲ致ス者デアリマシテ、此說
  ヲ支持スル者デアリマスルガ故ニ、此二ツノ問題ニ對シテ茲
  ニ賛成ノ意見ヲ中述ベマスレハ、隨テ其他ノ十三案ニ付キ
  マシテモ意見ガ明ニナル譯デアリマスルト存ジマスルガ故ニ、
  先ヅ此二ツノ問題ニ賛成スル趣意ニ付テ、諸君ノ御〓聽ヲ
  煩シタイト思フノデアリマス、私共ノ此案ヲ支持シマスル譯
  ハ政府ガ御提案ニナリマシタリ、又憲政會ノ諸君ヨリ御話
  ガアリマスル如ク、應急的ノ改正トハ思ッテ居ナイノデアリマ
  シテ、結局稅制ヲ根本的ニ整理スベキモノデアルト信ズル所
  カラ、稅制ノ根本的整理案ヲ持ッテ居ルノデアリマス、其自
  信ノ一端ヲ本年ニ於テ-大正十二年度ニ於テ實現致シ
  タイト云フノガ、此案ヲ提出シタル所以ニ相成ッテ居ルノデア
  リマス、先刻島田君ノ御話ニハ、趣意ニ於テハ御賛成デアル
  ガ、大正十二年度ニ於テ之ヲ行フト云フコトハ、時機宜シキヲ
  得ザルモノデアルガ故ニ賛成ガ出來ナイト云フ御演說デアリ
  マシタガ、此點ガ成程私共ト政友會請君ト見ル所ヲ異ニシ
  テ、居ルノデアリマシテ、私共ハ此稅制ノ根本的整理ヲ致
  シマスルノニハ、此大正十二年度ヲ措テ他ニ好イ時機ハ無
  イト確信シテ居ルノデアリマス(拍手)ソレハドウ云フ譯デ
  アルカト申シマスレバ、御承知ノ通リ此世界ノ大戰ニ依ッテ、
  我國ノ經濟モ非常ニ膨脹ヲ致シタコトハ御承知ノ通リデアリ
  マス、而シテ此大戰ガ濟ミマシテ、世界的經濟界ノ變動ガ參ッ
  テ居リマスルノデ、ドウシテモ此我國ニ於テモ財政ノ緊縮ヲ
  致サネバナラナイト云フコトハ、天下一般ノ認ムル所デアリマ
  ス、政府ニ於テモ既ニ玆ニ御著眼ヲ致サレテ居ルコトハ、先
  日來政府ノ人ミノ申述ベラレタ所デ明デアルノデアリマス、
  斯ノ如キ次第デアリマスルガ故ニ、玆ニ軍備縮小ノ問題モ
  起ル、又之ガ事實ニ於テモ現レテ居ルノデアリマス、此際ニ
  當ッテ御承知ノ如ク財政經濟調査會ニ於テモ、既ニ昨年ノ
  八月デアリマスカ、免ニ角具體的ノ稅制ノ根本的整理案ヲ
  定メテ委員會ノ決議ダケデハアリマスルガ、之ニ相當ノ意見
  ヲ添ヘテ政府ニ出シテアルヤウナ次第デアリマス、其故ニド
  ウシテモ我國ノ現狀ハ、一方ニ於テハ何所迄モ此軍備ノ整
  理ヲ致サナクテハナラナイ、一方ニ於テハ財政ノ緊縮ヲ致シ
  行政ノ整理ヲ致サナクテハナラナイト云フ場合デアリマスル
  ガ故ニ、斯ノ如キ場合ニ此稅制ノ根本的整理ヲ爲ス其一端
  タリトモ現スト云フコトヲ致サナケレバ、實ニ好キ時機ヲ逸
  スルモノデアル、是ガ吾々ガ根本的ノ稅制整理案ヲ提ゲテ、其
  一角ヲ大正十二度ニ實行シタイ、斯樣ニ信ズル次第デア
  ルノデアリマス(拍手)勿論此稅制ノ整理ト申シマスルコト
  ハ、私ガ申ス迄モナク減稅ノミヲ目的ト致スノデハナイノデア
  リマス、負擔ノ均衡ヲ得ルト云フコトガ一方ノ大目的デアル
  ニハ相違ナイノデアリマスガ只今モ申シマシタル如ク、現時
  ノ我國ノ狀況ニ於キマシテハ、矢張一面ニ於テ減稅ヲ目的
  トスル所ノ根本的稅制整理ヲシナクテハナラナイ、斯ウ云フ
  コトヲ私共ハ一方ニ感ズル所ノ者デアリマス(拍手)ソコデ
  顧ミテ現在ノ我國ノ財政ハ如何ト見マスレバ、先日私共ガ
  總理大臣首メ質問致シ夕所ニ依ルト、非常ニ我國ノ歲計ハ
  膨脹致シテ居リマシテ、大正八年ニ於テハ八億九千万圓ト
  云フ一般會計ノ歲出ガ、其翌年大正九年度ニハ十二億七
  千万圓トナリ、更ニ其翌年ハ十五億八千万圓トナッタト云
  フ譯デアリマスルガ故ニ、其後色〓財政上ノ困難ニ遭遇シ
  テ、幾ラカ減額ハ致シテ出シマシタガ、尙且ツ大正十二年度
  ニ於テ、十三億四千万圓ト云フ支出ヲ計上シテ政府ハ出シ
  テ居ルヤウナ譯デアル、頗ル我國ノ歲出ハ膨脹シテ居ル、之
  ニ伴ッテ我國ノ租稅ト云フモノモ、容易ナラヌ膨脹ヲ致シテ
  居ルノデアリマシテ、先刻早速君カラ述べマシタ如ク、既ニ大
  正十一年度ニ於キマシテハ、租稅ノ收入約七億三千四百
  万圓ニ對シテ、實收一億三千万圓超過デ、合計八億六千
  万圓ト云フ租稅ヲ取ッテ居ルト云フヤウナ次第デアルノデア
  リマス、大正十二年度ニ於キマシテノ豫算ハ七億四千三百
  万圓デアリマスガ、是モ矢張實收ノ上カラ見レバ、恐ラク八
  億以上ヲ取ラルヽコトデアリハシナイカト思フノデアリマス、此
  負擔ト云フモノヲ飜フテ我國旣往カラ考ヘテ見マスレバ頗
  ル大ナルモノデアルト云フコトヲ思ハナクテハナラヌノデアリ
  マス、ソレノミナラズ先日モ私ガ此壇上デ申シタ如ク、我國ノ
  地方費ノ膨脹ト云フモノハ、國費ノ膨脹以上デアリマス、先
  日モ此豫算ノ總會ガアリマシタガ、水野內務大臣ノ私ニ御
  答ニナッタノニ、洵ニ私ノ申ス通リデアル、實際ハ其通リデアル
  ガ、併シ每年々々四千万圓位ヅヽ殖エタモノデアルカラト云
  フ御言葉モアリマシタガ、其後私ハ宅ニ歸ッテ能ク調ベテ見
  マスト、地方費ノ膨脹ハ決シテ每年々々四千万圓許リヅヽ
  デハナイノデアリマス、先日モ中シタ如ク、大正二年度ニ地方
  稅全部ノ支出ハ三億二千万圓タリシモノガ、大正十年度ニ
  ハ十億二千七百万圓トナッテ、三倍二割五分ノ增加ヲ致シ
  テ居リマス、デ大正十一年度ハソレガ十一億九千六百万圓
  ト相成ッテ居リマスガ故ニ、差引昨年度ト本年度トハ一億
  七千万圓ノ增加ヲ元シテ居ルノデアリマス、之ト同時ニ地
  方稅ノ膨脹致シタコトモ非常ナモノデ、大正十一年度ニ於
  テノ豫算六億四千三百万圓ト云フノデアリマスガ故ニ、此地
  方費ノ增加ハ非常ナモノデアリマス、隨テ實ニ微細ナモノマ
  デ稅ヲ漁ッテ居ノテ、先日モ一寸申シタコトヽ存ジマスガ、私ノ
  存ジテ居ル者ナドデ、荷車一挺ヲ商賣道具ニシテ營業シテ
  居ル者ガ、荷車稅ヲ納メルコトガ出來ズシテ、其車ヲ差押ヲ
  受ケテ居ル者ガアルノデアリマス、斯ウ云フ物ヲ差押シテ善
  イカ惡イカヾ問題トナッタコトガアルノデアリマス、是ハ唯〓廣
  イ間ノ一例デアリマスガ、頗ル此地方稅ハ困難ヲ致シテ居ル、
  是モ内務大臣首メ諸君ノ十分ニ御認ニナッテ居ル通リデア
  リマス、然ラバ之ヲドウ云フ風ニ整理シテ、我ガ國民ノ負擔
  ヲ減ジ、我國ノ稅ノ基礎ヲ鞏固ニシタラ宜イカ、是ガ第一ニ
  起ルベキ問題デナクテハナラヌト思フノデアリマス、ンコデ私
  ガ考ヘマスルニ、違フテ居ルカハ存ジマセヌガ、私ハ確ク信ジテ
  居ルノデアリマス、例へバ亞米利加ノ國ノ如キハ、其國體ガ
  我ガ日本國トマルデ違ッテ居ル組織デアリマスガ故ニ、自治
  ノ費用ト云フモノハ、我國ノ費用ト直接關係ノ無イ形ヲ成
  シテ居ル樣子デアリマスガ、我ガ日本國ハサウデナイ、自治ハ
  何所迄モ自治デアッテ、官治トハ自ラ別デアリマスケレドモガ、
  矢張此國家ノ一分子トナッテ、國家ニ統一サレテ居ル所ノ自
  治デアリマス、此自治ハ私ハ極テ我ガ國體上當然ナル自治
  デアルト思ッテ居ル、隨テ此租稅ノ如キモノモ、國ノ租稅ト地
  方ノ租稅トガ權衡ガ取レ、此間ニ一ツノ統一ガアッテ、國家
  全體ヲ見テ-地方稅モ國稅モナク國家全體ヲ見テ、地方
  民ノ負擔、國民ノ負擔ト云フモノガ按排サレテ、ソレニ依ッテ
  矢張社會政策モ加味サレテ行カナクテハナラヌ、國稅ハ國
  稅、地方稅ハ地方稅ト云フノデ分ケテ之ヲ論ジ、分ケテ之ヲ
  〓究スルト云フコトハ我國ノ租稅ヲ論ズル上ニ於テ蓋シ誤ッ
  テ居ナイカト云フコトヲ私ハ思フノデアリマス(拍手)是ニ於
  テ私ハ我國ノ稅ノ根本的整理ヲシヤウト云フニハ、單リ國稅
  ノミヲ以テ論ジテハナラナイ、ドウシテモ地方稅モ共〓ニ是ハ
  論ジテ、共とニ今日ノ或ル學者等ノ言フガ如キ言葉ヲ使ヘバ、
  體系ヲ正シクシテ、其間ニ秩序脈絡ト云フモノヲ付ケシメテ
  行ク必要ガアル、斯フ云フコトヲ私ハ考ヘルノデアリマス、ソコデ
  免ニ角サウスルニ付テ第一ニ起ル問題ハ地方ノ財源デアリマス、
  我國ノ地方費ト云フモノハ、主ナル財源ハ大〓國ニ取ラレテ
  シマッテ居ル、ソレ故ニ我國ノ地方費ト云フモノヲ得ルニハ、甚
  ダ薄弱ナル財源ニ依シテ金ヲ得テ居ルノデアリマスガ故ニ、之ヲ
  改正シ、之ヲ整理シヤウト云フニハ、先以テ地方ニ適當ナ財
  源ヲ與ヘルト云フコトガ私ハ必要デアルト思フ、之ヲ爲サナ
  ケレバ、ドウシテモ此地方ノ稅制整理ト云フモノハ困難デア
  ルト思フノデアル、然ラバ如何ナル財源ヲ地方ニ與ヘテ、如
  何ニシテ國稅ヲ整理スルカ、斯ウ云フ問題ガ直ニ起ッテ來ル
  ト思フ、之ヲ論ジテ見ヤウト云フニハ、先ヅ我國ノ現行ノ稅
  制ガ如何ヤウニナッテ居ルカト云フコトカラ〓究シテ見ナク
  テハナラヌノデアリマスガ、ソレヲ一々此處デ論ジテ居リマス
  レバ時間ヲ要シマスシ、又諸君モ能ク御承知ノ通リデアル、
  ソレ故ニ私ハ簡單ニ我國ノ國稅ノ種類カラシテ申述ベテ、地
  方稅ト比較シテ、然ル後ニ之ヲ如何ニ整理スルカト云フ議
  論ニ及バウト思フノデアリマスガ、我國ノ國稅ハ御承知ノ通
  リ、只今ノ所デハ免ニ角先ヅ所得稅ト云フモノヲ中心ト致
  シテ居リマス、之ニ先刻モ御話ノアッタ如ク、車ノ兩輪、鳥
  ノ兩翼ノ如クニ、一方ニ營業稅、一方ニ地租ト云フモノヲ
  配置シテ、恰モ是ガ今日ノ言葉デ言フト保管稅ノ如クニ
  相成ッテ、不完全ナガラ一ツノ租稅ノ體系ヲ成シテ居ルノデ
  アル、之ニ又通行稅、相續稅、登錄稅、鑛業稅、賣藥營業
  稅ナドガ直接國稅トナッテ之ニ伴ヒ、更ニ間接國稅トシテ、
  御承知ノ如ク酒造稅、麥酒稅、醬油稅、石油消費稅、砂糖
  消費稅、織物消費稅、印紙稅ナドガ之ニ伴ッテ居ル、斯ウ云
  フコトニ相成ッテ居ルノガ我國ノ稅ノ現況デアリマスガ、其歷
  史ヲ考ヘテ見ルト云フト、頗ル是ガ異樣ナモノデアル、最初カ
  ラ體系ヲ備ヘ、稅ノ原則ニ依シテ之ヲ編出シタモノニ非ズシ
  テ、明治八年ニ初テ國稅ト府縣稅ト云フモノガ分レタ時ニ、
  國稅ハ地租ヲ中心トシ、府縣稅ハ營業稅ヲ中心トシテ形
  造ッテ居ッタモノデアリマスガ、其後屢〓我國ハ外國ト戰爭ヲ
  致シ、其結果軍事上ノ費用ガ頗ル要ルト云フノデ、營業稅
  ハ結局大部分ガ國稅ニ編入サレ、所得稅ト云フモノモ其間
  ニ出來、次第々々ニ之ニ向ヲテ稅ノ高ガ殖エ、種類ガ殖エテ
  参ッタト云フノガ、我國ノ稅ノ狀況、殊ニ甚シキニ至クテハ、戰
  爭ガアルカラト云フノデ戰時特別稅ト云フモノヲ取ッテ、斯ウ
  云フモノハ戰爭ガ濟メバ戰爭ガ済ンダカラ要ラナクナッタト
  云フノデ、人民ニ返スノガ適當デアルト思ヒマスガ、如何セン
  其後我國ハ國家多事デアッテ費用ガ要ルト云フノデ、一度
  取上ゲタ戰時ノ特別稅デアルト稱シテ取ッタ稅ガ、戰争ガ濟
  ンデモ人民ニ返サナイデ、忽チ形ガ變ッテ、是ガ恆久的ノ稅ニ
  取ラレテ居ル、斯ウ云フ事ヲ私ノ國ナドデハ冗談ノヤウニ牛
  控ト云フコトヲ申スカ、理窟ガ美クテモ惡クテモ、一旦取ッタ
  モノハ離サナイ、之ヲ牛控ト云フノデアルガ、殆ド我國ノ稅ガ
  全部牛控ニサレタ結果、固マリ固マッテ出來テ居ルト云フノ
  ガ今日ノ稅ノ現況デアルト思フノデアル、ソレ故ニ今日學者
  ガ無理ナ理窟ヲ付ケテ體系トカ何トカ言ヘバ、氣ガ利イタモ
  ノデアルガ、之ヲ事實ノ上カラ云ヘバ、只今申シタヤウニ戰爭
  ノ度每ニ必要ニ應ジ、特別稅トシテ之ヲ取っタモノヲ、所謂
  牛控ニ今日ノ稅ガ出來テ居ル狀況デアルノデアルカラ、頗ル
  此間ニ不均衡デアリ、亂雜デアリ、複雑デアル狀況ニ相成ァテ
  居ルト思フノデアル、ソコデ地方稅ノ現況ハ如何デアルカト
  云ヘバ、御承知ノ如ク其中心ハ戶數割デアリマス、六億幾ラ
  ノ地方稅ニ對シテ、二億三千幾万圓ト云フノガ戶數割デ
  アリマスガ故ニ、此位多額ナ稅金ハ日本全國ニ無イノデア
  リマス、此戶數割ガ中心ト相成ッテ居ル、サウシテ幾分カ之
  ニ代ルベキ家屋稅ハアリマスガ、其他ハ國稅ノ附加稅竝ニ
  雜種稅ト云フモノガ之ヲ助ケテ、此地方稅ヲ形造ッテ居ルノ
  デアリマスガ故ニ、此戶數割ト云フモノニ對シテ、金ガノセバ
  ノス程苦情ガアル、國民ガ困ルト云フコトハ是ハ當然ナ狀態
  ニ相成ッテ居ル((拍手)ソコデ斯ウ云フ狀態デアルガ、之ヲド
  ウ改正シヤウカト云フコトニ付キマシテハ、御承知ノ如ク之ヲ
  財政經濟調査會ニ諮問サレテ、勿論此財政經濟調査會ト
  云フモノハ、私ガ言フ迄モナク去ル四十一議會ニ於テ、此席
  ニ斯樣ナル調査ヲスベシト云フ建議ガアッテ、之ガ成立ッテ時
  ノ政府ガ之ヲ容レテ、先ヅ此稅制ヲ調査スル爲ニ出來タ所
  ノ會デアル、卽チ之ニ向ッテ此租稅ノ根本的整理案ガ諮問
  ニナッタノデアリマスガ、多分約二箇年ト云フ大ナル-我國
  トシテ比較的大ナル歲月ヲ費シテ、此委員會デ之ヲ調査ヲ
  致シテ、其委員會デ決メタノガ昨年ノ八月デアリマシタガ、
  初テ財政經濟調査會ノ本會議ニ現レタノデアリマスガ、是
  ニハ御承知ノ通リ既ニ新聞ニモ現レテ居ルコトデ三ツノ說
  ガアッタノデアリマス、第一ノ說ハ私ガ申ス迄モナイ事デアリ
  マスガ、矢張是ハ一般所得稅ヲ中心トシテ、之ニ配スルノニ
  財產稅ヲ以テシヤウ、サウシテ所謂體系ノ中心ヲ作ラウニ
  シテ地租ト營業稅トハ之ヲ全部地方ニ委讓シテ、地方稅整
  理ノ財源ニ充テヤウ、是ガ第一說デアッタ、第二說ハ矢張一
  般所得稅ヲ中心トスルノデアルガ、財源稅ヲ以テ之ヲ補助
  スルヨリハ、寧ロ特別所得稅ヲ起シテ、之ヲ補助スベシト云
  フノガ第二說デアッタガ、是モ矢張地租、營業稅ハ其全部ヲ
  地方ニ委讓シテ、地方ノ稅制ヲ整理セシメタイト云フノデ
  アッタ、所ガ第三說ハ地租、營業稅ト云フモノハ是ハ廢サナ
  イ、此儘置イテ修正ヲシテ減稅ヲ廢シテ、其減稅ヲ補塡スル
  爲ニ、建物稅ト資本利子稅ヲ起サウト云フノニ在ッタノデア
  リマス、是ハ色々此間ニハ學者ノ方モアリマスカラ、學說カラ
  云ヘバ色々ナ理窟ガアリマス、或此財產力ヲ得ル所ノ所得
  ハドウ、勤勞ノ所得ハドウ、斯ウ云フ風ニ均衡ヲ取ルニハド
  ウト、隨分議論ガ闘ハサレタモノデ、學術上ノ議論、實地上
  ノ議論色々鬪ハサレタモノデアッタガ、結局小委員會ニ於テ
  ハ第一說ヲ採ッタノデアリマス、卽チ一般所得稅ヲ中樞トシ
  テ、之ニ配スルニ財產稅ヲ以テシテ、サウシテ地租ト營業稅
  全部ヲ地方ニ委讓シタイト云フ論デアッタノデアリマス、然ルニ
  此中ノ財產稅ヲ置クト云フコトニ付テハ、大分反對モアッタ
  ヤウニ私共ハ承知致シテハ居ルノデアルガ、此議論ハ本會ニ
  於テハ決スル所ガナクシテ、種々ナル議論ガアッタ、其議論ハ
  其儘參考トシテ政府ニ送付シテ、此小委員會ノ案ヲモ共々
  ニ政府ニ提出サレタコトニナッテ居ルト私ハ記憶ヲ致シテ居
  ルノデアリマス、ソコデ此財政經濟調査會デ免ニ角ソレダケ
  ニヤッテ、一ツノ根本ガ出來テ居ルノデアルガ、斯樣ナル案ガ
  出來タト云フコトハ、免ニ角我國ニ於テハ先ヅ初テヾアラウ
  ト思フ、ソレガ完全デアルカ、不完全デアルカハ別問題トシ
  テ、是ダケノ年月ヲ掛ッテ我國ノ稅ノ體系ヲ正サントシテ、稍と
  理窟ニ合ッタ遣方ニ依シテ事ヲ爲シタト云フコトハ、先ヅ初
  テヾアッタカト思フノデアリマス、先刻モ申シタ通リ之ヲ我國
  ガ此儘棄テテ置ク譯デハアリマセヌガ、此儘荏苒トシテ日ヲ
  送ヲテ宜シイカト云ヘバ、決シテサウデハナイ、私ガ申ス迄モナ
  イ事デアルガ、英國ニシテモ、米國ニ於テモ、殊ニ英國ノ如キ
  ハ戰後ニ於テ一大改革ヲシテ、財政行政ノ整理ヲ行ッテ居
  ル、亞米利加ニ於テモ矢張其通リデ、我國ニ於テモ戰時ニ
  於テ多額ノ富ヲ得テ、總テノモノガ膨脹シタノデアルガ、戰後
  ノ今日ニ於テ貿易ハ次第ニ輸入超過トナリ、斯ノ如キ狀況
  デアル場合ニ於テハ、ドウシテモ我國ハ經濟上カラ考ヘテモ
  一日モ忽ニスル譯ニハ行カナイ、財政ノ整理ヲ爲シ、稅制ノ
  根本整理ヲスルノハ實ニ此秋デアル、之ヲ忽ニスルコトハ出
  來ナイ、此秋ニ當フテ只今ノヤウナ免ニ角案ガ財政經濟調
  査會ニ於テ調バッテ居ル、之ニ對シテ吾々ハ相當ノ〓究ヲ爲
  シ、相當ナル主張ガ無イト云フコトハナイノデアリマス、ソコ
  デ吾々ハサウ云フモノヲ根據トシテ、自己等ノ同志ガ力ノ及
  プ限リ、及パズナガラ國家ノ爲ニ相當ノ〓究ヲ致シテ見タノ
  デアルガ、之ニ依ッテ得タ所ノ吾々ノ主張ガアルノデアリマス
  其當ッテ居ルヤ否ヤハ謹デ諸君ノ御批判ヲ仰グノ外ハナイ
  ノデアリマスルガ、自分等ハ斯ウ信ジテ居ル、色〓今日ノ學
  者ガ理窟ハ申シマス、是モ吾々ハ學者デハナイガ、御蔭デ色ミ
  ナル事ヲ承ッテ居ル、讀ミモ致シテ居ル、所ガ大體ニ於テ素人
  考カラ申シテモ、租稅ト云フモノハ、出來ルナラバ成ベク輕ク
  アリサヘスレバ苦情ハ無イ、少クサヘアレバ苦情ハ無イ、ソレ
  デアルカラ出來ル限リ先ヅ是ハ今日ノ場合輕減スルト云フコ
  トガ必要デアル、ソレカラ又租稅ト云フモノハ、成ベク簡易ニ
  シタイト云フノガ吾々ノ目的デアリマス、幾ラ理窟ガ好クテ
  モ、所謂體系ガ備フテ居?テモ、均衡ガドウト云フヤウナコトヲ
  學者等ガ言っテ見タ所ガ、複雜ナモノハ實際ニ之ヲ應用シ
  テ決シテ宜シイモノデハナイ、出來ル限リハ租稅ハ簡
  易ヲ尙プト私ハ思フ、ソレカラ勿論均衡ヲ得ルト云フコトハ
  當然デアリマス、均衡ヲ得ナカッタナラバ、矢張苦情百出デア
  リマスル、故ニ均衡ヲ得ルト云フコトハ私共ハ必要デアルト
  思フ、ソレカラモウ一ツ必要ナ事ハ、出シ易イ所カラ金ハ取ラ
  ナクチヤイカヌ、同ジ金デアッテモ、出シ難イ金ヲ取ルト云フコ
  トヲ致スナラバ、是ハ租稅ノ政策トシテ面白イモノデハナイ、
  出シ易キモノニ著眼スルコトガ必要デアル、此點カラ-私
  共バカリ言フノデハアリマセヌガ、私共モ此點カラ出來ル限
  リハ主ニ大農家稅ニ重キヲ措キタイト思ヒマス、卽チ大部
  分大農家稅主義デアリマス、デ斯ウ云フ見地カラ參リマスル
  ト、私共ハ現在ノ國稅トシテハ、寧ロ所得稅單一主義ヲ執
  ルガ宜シイト云フ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、デ所得稅ダケ
  ヲ單一〓シテ之ニ依ッテヤッタナラバ、種々ナ缺點ガアルデハナ
  イカト言ハレルガ、成程缺點ガ有ルノデアリマス、然ラバ財產
  稅ヲ以テ補ヲタナラバ缺點ハ無イカト云フニ、是モ缺點ガ有
  ルノデアリマス、財產稅ニ對スル反對者ニ論ジサセレバ、財產
  稅ト云フモノハ非常ニ不完全ナモノニナル、或ハ獨逸ガドウ
  デアル、亞米利加ガドウデアルト言フガ、吾々ノ承ル所デハ、
  亞米利加ナドデハ非常ニ不成績デアル、殊ニ國ニ於テヤッテ
  居ルノデハナイ、或ル州々デヤッテ居ルノデ、其成績甚ダ面白
  カラヌ、之ニ特別所得稅ヲ賦課シテモ矢張缺點ガアル、或ル
  場合ニハ調和ガ取レテ宜シイガ、或ルモノニ對シテハ二重ニ
  稅ヲ課スルヤウナ結果ニナル、是ハ私ノ申ス迄モナク諸君ノ
  御承知ノ通リ、ソレデアルカラ吾々ハ寧ロ先刻申シタ主義ニ
  依クテ、所謂單一主義ヲ執ッテ、我ガ國稅ノ中樞トナリ、サウシ
  テ勤勞所得ト財產所得ノ區別ニ付テハ、現行ノ所得稅ニ改
  正ヲ加ヘテ大ニ社會的政策ヲ加味スル、ソレハドウ云フ事ヲ
  ヤルカト云ヘバ、マダ爰ニ細カイ具體案ヲ示スコトハ出來ナ
  イガ、大體所得稅改正案ノ時ニモ少數デ倒レタ點モ大分ア
  リマスガ、吾々ハ此演壇ニ於テ吾々ノ主張ヲ信ジテ居ル、アレ
  ガ一ツノ例デアリマス、アレガ完全トハ見マセヌガ、アレハ一ツ
  ノ例デ、卽チ所得稅ヲ段々改メテ、勤勞所得ト財產所得ト
  ノ釣合ヲ相當ニ取ル、之ニ依シテ社會政策ヲ行テテノ中樞
  ト爲ス、所ガ是ダケデハイケナイト云フ論ガアリマセウ、吾々モ
  之ニ對シテハ物足ラナイ感ガアル、之ヲ補フニハ國稅トシテ
  ハ吾々ハ相續稅ノ改正ニ在ルト思ヒマス、之ヲ相當ニ改正
  ヲシテ、此所得稅ノ單一ナル中樞ニ之ヲ配合シタナラバ、餘程
  其間ニ權衡ヲ得ラレヤウト云フコトヲ考ヘルノデアリマス、ン
  レカラモウ一ツ此所デ考ヘナクテハナラナイノハ稅ハ多ク收
  入ノアル所謂金持カラ、先ヅ有ル手カラ漏ルデ、サウ云フ所
  カラ取ルノガ宜シイデアルガ、併シ國民ガ勤勉力行スル所ノ氣
  風ヲ、之ヲ稅ニ依シテ損スルヤウナ事ガアッテハナラナイト吾々ハ
  思フノデアリマス、此點ハ餘程深ク注意シテ租稅ヲ課ケナイ
  ト、働クハ宜シイ、勤勉力行ハ宜シイガ、眞面目デ働イテ、如
  何ヤウニモ其事ガ成就スレバ成就スル程、極端ナル重キ稅ヲ
  課ケラレルト云フヤウニナレバ、國民ハ腕ヲ拱イテ公債證書
  ヲ持ッテ遊ブヤウニナル、斯樣ナル事ニナレバ、我國ノ產業ノ
  發達、國民ノ勢力ニ關スルコトニナリマスカラ、此邊ハ餘程
  考ヘテ事ヲ爲サナクテハナラナイ、之ヲ色〓斟酌スルニ、只今
  ノ所得稅ト相續稅ノ間ニ出來ル限リノ事ヲ致シ、之ヲ稅ノ
  中樞ト爲シ、之ニ間接稅其他ノ直接稅ヲ配合シテ行カウト
  云フノガ吾々ノ信ズル所デアリマス、所ガ之ニ缺點ガ無イカ
  ト云ヘバ、無論其缺點ハ有ル學者ニ言ハシタラパ、色々アリ
  マセウ、學者デナクテモ決シテ是ガ完全トハ思ハナイ、之ヲ
  ドウシテ補フテ行クカト云フト、先刻申シタ地方稅ト云フモノ
  デ政策ヲ行ッテ、之ヲ補ッテ行カウト云フノデアリマス、卽チ
  吾々ハ國稅ト地方稅トヲ共通ニ考ヘテ、均シク國民ノ負擔デ
  アルト云フ所ニ重キヲ置イテ、國稅ノ體系ニ依ッテ不備ナ點
  ハ更ニ地方稅ニ依クテ之ヲ補ッテ調和ヲ取ッテ行カウト云フ
  ノガ、吾々ノ一ツノ政策ト思フノデアリマス、ンレデ此點カラ
  言フト先ヅ地租ト營業稅ト云フモノヲ、國稅ヲ只今ノヤウ
  ニ致シテ、サウシテ現在ノ地租營業稅ト云フモノヲ地方ニ委
  讓スルト云フコトハ、是ハ極テ必要ナ事デアルトシテ、私共ハ
  此事ニ對シテハ、極テ此財政經濟調査會ノ委員會デ調ベ
  ラレタ所ニ贊成スルノデ、唯〓財產稅ヲ起ストカ、特別所得
  稅ヲ起ストカ云フコトニ反對ナノデアリマス、然ラバ其財源
  ハドウスル、是ハ後ニ詳シク御話スル考デアル、所得稅ト云
  フモノヲ一本ニシテ行クノデアルガ、此所得稅ハ增稅ハシナ
  イ、增稅ハシナイガ、地租、營業稅ダケノ金ガ減ル、國稅ガ減ル、
  卽チ只ハラカラ云ヘバ一億二千三百万圓國稅カラ減ルノデ
  アリマス、其減ル金ハドウスル、是ハ後ニ詳シク私ハ申述ベル
  考デアリマス、免ニ角之ヲ地方ニ委譲スルノデアルガ、然ラバ
  其地方委譲ノ方法ハ之ヲドウスルカ、此所へ來ルノデアリマ
  ス、地方委譲ノ方法ハ之ヲドウスルカ、是ハドウスルカト云ヘ
  バ申ス迄モナク私ハ之ヲ二ツニ分ケテ實際上カラ之ヲ論ジ
  テ見タイト思フ、是ハ必ズ諸君ガ疑問ニサレルコトデアラウ
  ト思フ、或ル一派ノ方々ハ斯ウ云フコトヲ言フ、革新倶樂
  部ノ出シテ居ル所ノ營業稅、地租ノ全廢ハ全廢ニ非ズシテ
  アレハ地方へ委譲ダ、委譲デアルカラ、地方稅ヲ大〓ソノ位取
  ラレルモノダト言フ方ガアル、決シテ吾々ハサウデナイ、又吾々
  ハ詰ラヌ所ノ講釋ヲスルノデモナイ、實際ヲ御聽ニ達スル
  カラ、ソレヲ御聽ニナッテカラ批評ヲシテ戴キタイ、先ヅ之ヲ
  擧ゲテ論ズルニハ、吾々ハ道府縣稅ト市町村稅トニ分ケテ私
  ハ玆ニ言ッテ見タイト思フ、均シク之ヲ地方稅トシテ論ジテ
  ハ少シク分リガ惡カラウト思フ、ソコデ現在ノ道府縣稅ハ
  言フ迄モナク先刻言ッタ通リナ系統ニナッテ居ルノデアルガ、
  ソレヲ將來改メマシテ、地租、營業稅、ソレニ新ニ家屋稅ト
  云フモノヲ起スト云フコトヲ許ス、サウシテ之ヲ中樞トスルノ
  デアリマス、之ニ所得稅ノ國ノ附加稅ヲ配置スル、斯ウ云フ
  コトガ宜シイト吾々ハ思フノデアリマス、卽チ現在取ッテ居ル
  所ノ-卽チ現在取ッテ居ル所ノ地租、營業稅ト云フモノヲ
  是ハ國家ガ-國ガ取ッテ居ル國稅、國稅ノ營業稅十二億
  三千-一億二千三百万圓(「國ガ取ルノハ國稅デ地方デ
  取ルノハ地方稅ダト言フノハ當リ前ヂヤナイカ」ト呼フ者ア
  リ)ソレダカラソレヲ論ジテ居ルノデアリマス、之ヲドウシテ委
  譲スルカト云フコトヲ段々ニ申述ベルノデアリマス、卽チ今地
  租、營業稅ト云フモノヲ國稅トシテ一億二千三百万圓取ッ
  テ居ルガ、之ヲ地方ニ委譲シテ國稅ヲ廢メテシマウ、其三分
  ノ一ヲ府縣ニ與ヘテ取ラセルノデアリマス、サウスルト其額ガ
  今年大正十二年度ノ豫算デ見ルト、其額ガ約四千百万圓
  ニナルノデアリマス、此四千百万圓ト云フモノニ對シテ、現在
  ノ道府縣稅中戶數割ガ、四千百万圓ト云フモノガ丁度國
  家カラ地方ガ貰フノデアリマス、卽チ國稅ノ營業稅ト地租
  ト云フモノヽ三分ノ一ヲ、之ヲ府縣ニ委譲スルノデアリマス
  カラシテ、四千百万圓ト云フモノガ府縣ニ之ヲ與ヘテヤル、
  是ハ別ニシテ置イテ、サウシテ吾々ハ此現在道府縣デ取ッテ居
  ル戶數割ト云フモノハ四千六百万圓デアリマス、之ト同ジ
  性質デアル家屋稅ガ八百万圓デアリマスカラ、之ハ全廢シ
  テシマウ、卽チ府縣ト云フモノガ-道府縣ガ取ッテ居ル戶
  數割、家屋稅ト云フモノヲ全廢スル、サウシテ其外ニ府縣
  營業稅中ノ下級ノ者ニ對シテ今迄府縣デ取ッテ居ル營業
  稅中ノ極ク低イモノニ對シテ、約二百万圓ヲ減ズルノデア
  リマス、是ハ極テ細カイモノガアル、是モ二百万圓ヲ減ズル、ン
  レカラ雜種稅中ノ極ク零碎ナモノニ對シテ、約三百万圓ト
  云フモノハ之ヲ減ジテ廢止シテシマウノデアリマス、ソレニ對
  シテ先刻別ニシテ置イタ國家カラ貰フ所ノ營業稅、地租ト
  云フモノヽ三分ノ一ヲ差引キマスルト、差引一千八百万圓
  ト云フモノガ不足ニナル、是ハ新ニ起ス所ノ褄屋稅ト云モフ
  ノニ依ッテ補塡セシメヤウ、其家屋稅ノ趣旨ハ之ニ賃貸價格
  コ標準トスル所ノ、低率ノ家屋稅ヲ起スベシト吾々ハ信ジテ
  居ルノデアリマス、是デ府縣ト云フモノヽ稅ハ辻褄ガ合ヒ道理
  ガ立ツト吾々信ズル、ソコデ市町村稅ノ方ガドウナルカト云
  フト、ソレハ市町村稅ノ體系ト云フモノハ、町村營業稅、家屋
  稅ノ附加稅ト云フモノヲ中樞トシテ、之ニ戶數割ノ一部ト
  云フモノヲ存置スル、是モ色と理由ガアリマスルガ、長クハ申
  述べナイノデアルガ、市町村ダケニ吾々ハ戶數割ノ一部ハ殘
  シテ置ク考デアル、是モ矢張大體ハ財政經濟調査會ノ案ト
  こ咯〓同一デアルノデアリマス、唯此所得稅附加稅ト云フモ
  ノヲ財政經濟調査會ナドデハ、市町村カラ全部廢シテ府縣
  稅へ持ッテ行カウト云フ案ガアルガ、是ダケハ吾々ハ反對ヲス
  ル、ソレデ只今申シタヤウナ遣方ニスルノデアリマス、サウシテ
  結局地租ノ附加稅ト云フモノニ對シテハ、府縣稅ノ六十ヲ
  制限トシテ滅ゼシメル、サウスルト市町村ニ對シテ是ガ六千
  万圓取ラレル譯ニナル、ソレデ現在市區町村デ四千四百
  万圓取ッテ居ル地租ノ附加稅ト云フモノハ、、市區町村デ四
  千四百万圓取ッテ居リマスルガ故ニ、只今ノヤウニスルト差
  引キ一千六百万圓ダケ多ク取ラレル事情ニ相成ルノデアリ
  マス、ソレガ丁度今ノヤウニ百分ノ六十-府縣稅ノ百分ノ
  六十課セシメルコトニナルト、國稅ノ地租ガドレダケ委譲ニ
  ナルカト云フト、約五分ノ一ノ委譲ヲスルトソレデ宜シイコト
  ニナル、ソレカラ營業稅、雜種稅ノ方へ參リマスルト、府縣ノ
  營業稅、雜種稅ガ只今私ガ言ッタヤウニスルト、八千四百万
  圓ニナルノデアルガ、其百分ノ百迄取ラシテ宜シイト私ハ思
  フ、是ハ現在ドレタケ取ッテ居ルカト云フト、八千四百万圓既
  ニ取シテ居ルノデアリマス--イヤ現在ガ七千六百四十万圓
  取ッテ居ルノデアリマス、ソレデアリマスカラ差引イテ八百万
  圓ダケ增シニナルガ、ソレハ國稅ノ營業稅ヲ委讓スル、丁度
  六分ノ一ヲ委讓スルト云フト此辻褄ガ合フノデアリマス、ソ
  レカラ縣ノ家屋稅ニ對シテ百分ノ五十ノ附加ヲ許ス、是ガ九
  百万圓ニナルノデアリマス、ソレデドレダケ今言ッタノデ此町村
  ノ金ハ今迄ヨリ多ク取レルカト言ヘバ、三千三百万圓多ク
  取レルノデアル、然ルニ現在市區町村ガ取ッテ居ル戶數割ハ一
  億八千九百万圓デアリマスカラ、其中三千三百万圓ダケ減
  稅セシメルト云フト殘リ一億五千万圓、丁度地租、營業稅、
  家屋稅ヲ合セタノト殆ド同額ニナルノデアリマスルカラ、今日專
  門家ガ理想トシテ居ル所ノ、少クトモソレノ半額ダケト云フ理
  論ト一致ヲシ、實際ノ上ニモソコヘ行クノデアリマス、斯ウス
  レバ結局私共ノ體系ノ上ニモ、總テノ政策ノ上ニモ宜シイ
  ト云フコトヲ思フ、ソコデ之ヲ約メテ言フト、國稅ノ營業稅
  ト地租ト云フモノヲ仝部全廢ヲスル、サウスルト一億二千
  三百万圓ト云フモノガ國稅カラ減ルノデアル、其中ノ約半
  分ヲ府縣-道府廳ト市町村トヘ委譲スルコトニナル、其
  半分ノ中ノ三分ノ二ハ道府縣デ、三分ノ一ガ市町村、全體
  カラ言ヘバ全體ノ半分ガ委譲サレテ、半分ハ國民ノ手ニ殘
  ル、然ラバ其半分ト云フモノハ取ラレテシマッタノデアルカト
  云フト、今申シマス通リ戶數割、雜種稅、程度ノ低イ營業
  稅ニ於テ減額シテ整理サレマスルガ、故ニソレデ矢張國民ノ
  手ニ戾ッテ來ルノデアルカラ、國民全體カラ云ヘバ國家ト地
  方トヲ通ジテ、矢張一億二千三百万圓減稅ニナル、斯ウ云
  フコトニナルノデアリマス(拍手)是ガ私共ノ地方委讓ノ極
  テ大體デアリマス、斯ウ云フコトニナルト、然ラバ地方稅ノ監
  督方法ハドウスルカ、ソレハ理窟ハ洵ニ宜シイガ、ソレハ非常
  ニ面倒ナ事デ宜シクナイ、弊ヲ貽シハシナイカト云フ御說モ
  アリマセウガ、如何ニモ其點ハ吾々モ注意ヲ拂ハナケレバナ
  ラヌト思フノデアリマス、ンコデ吾々ハ是ハ兩稅トモ法律ヲ
  以テ、其組織竝ニ課稅ノ方法ト云フモノヲ規定スルノハ勿
  論デアリマスルガ、地租課稅ノ標準ト云フモノハ、法定地價
  ヲ廢シテ賃貸價格ニ依ルコトヽシテ、其調査決定ノ方法ハ
  矢張現行ノ所得稅法ニ依ル所ノ調査委員會ヲ設ケル、此
  方法ガ矢張宜シイト吾々ハ信ジテ居ルノデアリマス、全體此
  地價ト云フモノ位、是ハ私ハ申スマデモナイノデアリマスガ、
  現在不公平ナモノハ無イノデ此地價修正卜云フモノハ最モ
  必要ナ事デアルガ、全國ヲ通ジテ之ヲ爲スコトハ頗ル困難
  デ、中ミ費用ガエラク要ルコトデアッテ、頗ル是ハヤリ難イ事
  柄ニ相成シテ居ルノデアリマス、然ルニ之ヲ府縣ニ分ケテ賃
  貸價格標準ヲ定メシムルト云フコトニナレバ、或縣ト或縣ト
  ノ間ニ多少不權衡ヲ生ズル嫌ガナイトハ云ヘナイノデアリマ
  スガ、其縣ト縣トノ間ニ於テハ比較的均衡ガ保タレテ、割合
  ニ早ク完全ニ之ヲ整理スルコトガ出來ルト吾々ハ認メテ居
  ルノデアリマス(拍手)此點ニ於テ地租ヲ地方稅ニ委譲シテ、
  先刻申シタヤウニ課稅セシメルト云フコトハ、極テ吾々ハ必
  要デアルト信ズルノデアリマス、ソレカラ此地方ノ營業稅ニ
  對シテハ、現國稅ノ遣方ニ大ニ改善ヲ加ヘル、是ハ今回政府
  ガ出サレタ改正案ノヤウニ、建物賃貸價格ヲ削除スルト云
  フコトハ勿論デアリマスケレドモ、各稅ノ課稅ノ種目ノ計算
  等ニ修正ヲ加ヘテ、且ツ課稅ノ最低限度ヲ相當ニ低下スル
  考ヲ持ッテ居ルノデ、ソレデ詰リハ先刻申シタ算盤ニナルト
  思フノデアリマス、殊ニ兩稅間ノ收入ヲ根據トシテ權衡ヲ
  保持セシム所ノ最高率ヲ法律デ定メテ、之ニ依ッテ相當ニ
  取締ル途ヲ講ジタイ、斯ウ云フノガ地方委譲ノ方法デアリ
  マス、然ラバ先刻申シタ所ノ一億二千三百万圓-今國稅
  デアル所ノ營業稅地租兩方ヲ合セテ一億二千三百万圓デ
  アレバ、之ヲ廢シテ其財源ヲ何カラ取ルカト云フコトニ相成
  ルノデアリマス、是ハ先刻モ申シタ通リ我國ノ只今ノ財政ノ
  現狀ニ於キマシテハ、是ハドウシテモ海陸軍ノ費用ト云フモ
  ノハ、或ル時代ニ總支出ノ殆ド半額ヲ占メ、只今ハ大分之ガ
  縮小サレテ、本年ノ如キハ比較的大ナル減リ方ヲ致シタヤ
  ウデアルガ、尙且ツ四億幾許ト云フ陸海軍ノ費用デアッテ、
  此總豫算ノ三分ノ一强ヲ占メテ居ルノデアリマス、殊ニ我
  國ハ平和條約ノ間ニ立チマシテ華府會議ニモ參加シ、英吉
  利及亞米利加ノ十ニ對シテ六ト云フ我國ノ軍艦ノ制限ニ
  モ之ニ服シ、旣ニ御裁可ニ相成シテ居ルヤウナ今日デアリマ
  スルガ故ニ、何所迄モ是ハ平和ヲ主張シテ行クコトハ當然デア
  ル、固ヨリ吾々ハ國防ヲ否認シヤウト云フノデハナイガ、國防
  ハ申スマデモナク最小限度デナクテハナラヌ-其國ヲ守ル
  最小限度デナクテハナラヌ、此上カラ吾々ハ最モ小サキ所ノ
  限度ニ採ラナケレバナラヌト思フ、サウ云フ次第デアリマスル
  ガ故ニ、先ヅドウシテモ是ハ陸軍ト海軍ト云フモノノ費用カ
  ラシテ、吾々バ相當ニ創減ノ途ヲ講ジテ行カナケレバナラヌト
  思フ、ンコデ然ラバ此陸軍ノ費用ヲドウスレバ宜シイカト云
  フト、是ハ私ハ餘リ多クノ議論ヲ要セヌト思フ、昨年ノ議會
  ニ於テ我ガ陸軍ハ相當ノ縮小ヲ行ハシメテ、手取四千万圓
  ノ削減ヲサセルト云フコトハ、政友會ノ諸君モ憲政會ノ諸
  君モ賛成シタ所ノ案デアル、是ハ殆ド議會滿場一致ヲ以テ
  決ッタト云フ案デアリマスルカラシテ、今日之ヲ此處デ私ガ詳
  シク論ジナクテモ、陸軍ニ尙ホ整理ノ餘地ガアル、四千万圓
  マデハ減ゼシムルト云フコトハ一般ノ認メル所デアリマス(拍
  手」「ノウ〓〓」)勿論四千万圓許リデハアリマセヌ-勿論
  四千万圓許リデハナク、マダ減ジ得ル餘地ガアルコトハ吾々
  モ認メテ居ル、決シテ四千万圓ヲ以テ滿足スルモノデハナイ
  併ナガラ少クトモ四千万圓ヲ減ゼシムルト云フノガ昨年ノ
  議論デアッタ然ルニ大正十二年度ノ此政府ノ案ヲ見マスル
  ト隨分節約シテ出サレタヤウデアルガ、其節約シタト稱セラル
  額ノ中ニハ、航空局ノ移管デアルトカ、或ハ馬政局ノ移管テ
  アルトカ云フヤウナモノガ含マレテ居ル、之ヲ除クト云フト
  眞ニ此節約ヲサレタノガ一千九百八十餘万圓ニ過ギナイ
  ヤウデアリマスルガ故ニ、之ヲ四千万圓ニ減ズレバ二千十六
  万圓ト相成ルノデアリマスガ、是ダケヲ陸軍費カラ減ズル分
  ニハ、恐ラク滿場ノ諸君ハ異存ハナカラウト思フ(拍手)次ニ
  吾々ガ減ジヤウト思フノハ海軍ノ費用デアリマス、海軍ハ只
  今モ申シマシタ通リ、華府會議ノ結果我國ニ於フハ相當ノ
  制限ヲ加ヘタノデアル、若シ我國ガ尙ホ或ル敵國ヲ認メテ
  茲ニ海軍ノ充實ヲシナクテハナラナイト云フコトデアルナラ
  バ、華府會議ニ參加シ、之ニ同意ヲスルト云フコトハ全體ナ
  イ筈デナクテハナラヌ(拍手)況ヤ或國ニ對シテ我國ノ國防
  ノ在ル奄美大島デアルトカ、小笠原島デアルトカ云フヤウナ、
  或ル我國ノ設備マデモ之ヲ中止カ撤廢ヲスベキコトニマデ
  同意ヲサレテ居ルヤニ自分等ハ承知シテ居ル、是迄ニシテ
  他ノ國ノ間ニ平和ヲ保タウト云フ所カラ、我國ニ於テハ誠
  意ヲ以テ約束シタモノデアルトスレバ、玆ニ更ニ我國ニ於テ
  海軍ノ計畫ヲスルト云フコトハ、是ハ假ニ百步ヲ譲,テ其中
  二二ノヤラナケレバナラヌ事ガ、大正十二年度ノ計畫ニ
  アッタトシテモ、之ヲ計畫スルト云フコトハ餘リ宜シカラザル
  事デアルト吾々ハ思フノデアリマス(拍手)ンコデ此海軍ノ計
  書ヲ見マスルト、是迄ハ八八艦隊ノ計畫、卽チ大正十六年
  度迄續イテ居ッタ所ノ國防充實/計畫ト云フモノハ、今回
  改メラレテ是ガ大正十四年度迄デ終ルヤウデアリマスルガ、
  更ニ其中ヨリ一億八千万圓ヲ組替ヘテ、ソレニ一億八千万
  圓ヲ追加ヲ致シテ、三億六千万圓ト云フモノハ大正十六年
  度迄ノ計畫ニ依シテ艦艇ノ製造ヲサレルノデアリマス、此艦艇
  製造費ト云フモノハ、今日ノ場合ハ甚ダ矛盾シテ居ルコト
  デアッテ、我國ノ今日ノ方針上之ヲ削ルノガ相當デアルト吾々
  ハ信ジテ居ルノデアリマス(拍手「ノウ〓〓」)ケレドモ之ニ對
  シテ吾々ハ玆ニ百步ヲ譲ッテ、是ガ必要ナモノデアルトシタ所
  デ、大正十二年度ニ始メルコトヲ一箇年延ベテ、大正十三年
  度ヨリ之ヲ始メテ二箇年ヲ延期シテ、大正十八年度迄之
  ヲ持フテ行クコトニスル、斯ウ云フコトニシテ舊イ計畫ト新シ
  イ計畫トヲ通ジテ、每年七千万圓ノ程度デ之ヲヤルト云フ
  コトニナレバ、結局每年四千六百万圓ト云フモノハ恆久的
  財源トシテ見ラレベキ理由アリト吾々ハ信ズルノデアリマス、(拍
  手)卽チ之ニ依ッテ四千六百万圓ノ恆久的財源ヲ得ルト云
  フコトハ、決シテ吾々ハ無課ナル無理ナル議論デハナイト云フコ
  トヲ考ヘタ、凡テ陸軍ニシテモ海軍ニシテモサウデアリマスケ
  レドモ、陸軍ノ如キモ矢張其通リ、何所迄モ國防上是迄ノ
  兵ガ人用ダト云フナラバ、吾々ニ言ハセルナラバ濟南ナリ靑
  島ナリヲ彼國ニ返シテ、彼處ノ兵ヲ撤兵セシムルト云フコト
  ハ蓋シ無謀デハアリマセヌカ(拍手)サウ云フ事ヲ一方ニ致
  シテ、既ニ平和ト云フコトヲ我國ガ主張シ、之ヲ實行シ誠
  心誠意之ヲ爲ス者ガ、一方ニ於テ今囘同ジ陸軍ノ兵ヲ要
  スル、同ジ海軍ノ計畫ヲ要スルト云フナラバ、一面ニ於テ平
  和ヲ以テ外國ニ向ヒ、一面ニ於テ我國ハ武力ヲ以テ向フ形
  ニナルノデアリマス、ソレ故ニ今日ハ我國ニ於キマシテハ、陸
  軍ヲ縮小シテ相當ノ費用ヲ減ジ、只今言フ通リ大正十二
  年度ニ於キマシテモ、二千万圓ノ費用ヲ減ジ、海軍ニ於テハ
  少クトモ艦艇ノ新建設費ト云フモノヲ一箇年延バスト云フコ
  トハ、是ハ絕對ニ止メルベキモノト信ジテ居ルガ、數百步ヲ
  該ッテ一箇年之ヲ延バシ、サウシテ後ト二箇年之ヲ延長スル
  コトニスレバ、四千六百万園ノ融通ガ付クノデアル、モウ一
  ツアル所ノ財源ハ、是ハ図債整理基金ノ積立デアリマス、是
  ハ本年ノ豫算ニ····(「甚ダ浅薄ダ」ト呼フ者アリ)淺薄デア
  ルト淺薄ニ非ザルトハ諸君ノ御威シデ吾々ハ眞面目ニ己レ
  ノ信ズル所ヲ言フノデアル、御批評ハ後デ緩クリ此演壇ニ御
  出ニナッテ爲スッタラ宜シイ、結局吾々ハ此國債整理資金四
  千二百万圓ノ復活ハ、矢張必要ナキモノデアルト信ズルノデ
  アリマス、是ニハ必ズ相當ノ議論ガアルコトヽ思フ、所ガ吾々
  ハ之ニ對シテ相當ノ自信ガアル、勿論國債整理基金ハ第四
  十三議會ニ於テ中止ヲシタ、言フ迄モナク其時ノ理由ハ國
  防計畫ヲヤルノデアルカラ、其財源トシテ之ヲ中止
  スルト云フノデアッタカラ、只今國防計畫ヲシテ縮メルニ付
  テハ、此國債整理資金ヲ舊ノ如ク戾スト云フコトハ一ノ理
  由ガアルノデアリマス、然ルニ一面ニ於テ我國ノ國民ニ對シ
  テ政府カ增稅ヲ行ッタノハ何ト言ッテ行ッテ居ル、矢張是ハ國
  防充實費デアル、國防充實ニ必要デアルト云フノデ、今マデ
  相當ニ層稅シテ來タモノデアル、然ラバ玆ニ減債基金ヲ返ス
  理由ガ國防計畫ノ縮小ニ依ッテ來ルモノナラバ、ソレヨリ先
  ニ吾々ハ先ヅ國民ニ減稅ヲシテ信ヲ保タナケレバナラヌト思
  フノデアル、此點カラ言ヘバ國債整理基金ナルモノヲ繰入レ
  ルコトヲ爲スヨリ、先ヅ我國ニ於テハ相當租稅ノ減額ヲ行
  フト云アコトハ、政府ガ國民ニ向フテ信ヲ保ツ所以デアラウ
  ト信ズルノデアリマス、殊ニ國債整理基金十云フモノハ、四
  十三議會ニ於テ是ガ中止サレル其法律案ガ議會ニ提出サ
  レタ時、委員會ニ於テ我ガ政府委員ハ之ヲ何ト說明致シテ
  居リマスカ、其委員ノ說明ニ依ッテ見マスト、第一ニ國債整
  理基金中止ニ付テ一般ニ顧慮サルベキ事ハ、大正十四年
  ニ償還スル英貨公債ノ關係デアル、英貨公債ト云フモノハ、
  諸君ガ御承知ノ如ク其以前ニ於テ四分半附ノ公債デ、是
  ガ八千五百万圓デアッタガ、其當時ハ一億六千九百万圓ヲ
  旣ニ償還ヲシ、其後も千万図以上ノ買入償還ガ實行サレ
  テ居ルカラ、殘リハ三億四千餘万圓シカ無イ、是ハ或ハ一部
  償還ヲ爲スカ、借模ヲ爲スカ、若シ償還ガ出來ナケレバ、預
  金部デ持ッテ居ル在外正貨ヲ以テ支拂ッテ差支ナイト云フ
  確實ナル計書ニチッテ居ルソレデアルカラ之ヲ中止シテモ一
  向差支ナイ、斯ウ云フコトヲ答ヘテ居ル、卽チ國債整理資金
  ナルモノヲ積立テルト云フコトハ、主ニ外國カラ借リテ居ル
  我國ノ借リ、卽チ外債ニ對シテ相當ノ信用ヲ持ヲ、此償還ヲ
  確實ニスルコトガ第一ノ目的デアルト云フコトハ明瞭デアリマ
  ス、然ラバ現在ノ狀態ハ如何デアルカ、矢張六正十四年ニ
  返スベキ英貨公債ハ三億四千餘万圓アルガ、在外正貨ハ
  其通リ我國ニハ今モアル、預金部ノ力ハドウカト云ヘハ、其
  時ヨリハ寧ロ少シ優ッテ居ル位デアル、卽チ減債整理基金ナ
  ルモノハ此儘中止シテ行ッテモ、決シテ外國債ニ對シテ恐ル
  ルコトハナイコトハ四十三議會ニ於テ政府委員ガ說明サレ
  ヲ通リデアリマス、况ヤ其時政府委員ノ申サレタコトノ中ニ
  ハ我國ノ國防充實ノ爲ニ、租稅ノ增徵ヲ計畫シテマデ之ヲ
  ヤルト云フ場合ニ於テハ暫ク國債償還ノ中止ヲシナケレバ
  ナラヌト明言ヲシテ居ル、然ラバ先ヅ租稅ヲ減ジテ、是ダケ租
  稅ヲ減ジタノデアルカラ、始テ是ハ國債償還資金ヲ積マナケ
  レバナラヌト云フナラバ、此時ノ說明ト一致スルノデアルガ
  其時ノ說明ニハ租稅ノ增徵ヲ計畫シテマデヤル國防計畫デ
  アルカラ、國債整理基金ヲ中止スルノハ當然デアルト云フノ
  デアルカラ、ソレヲ先ヅ國債整理基金カラ返シテ、國稅ト云
  フモノヽ減額ヲ後ニスルト云フコトハ、ドウシテモ理窟ガ合ハ
  ナイコトニナル、其外國債整理資金ト云フモノヲ積ンデ、永
  遠ニ償還ヲ爲シテ行ケバ言フマデモナク、多少內國債ノ値段
  ガ保タレルト思フ、銀行家ナドハ頻ニ之ヲ希望シテ居ルト思
  フガ、是ハ對內的ニハ吾々ハソレ程必要ナモノトハ思ハヌ對
  內的ニハ先刻來申ス通リ今日餘リ必要ハ無イノデアルカ
  ラ、ンレダケノ必要ヲ認メナイ、或ハ是ハ政府トシテハ、公債
  ヲ募集スル爲ニ斯ウ云フコトヲスルノガ都合ガ好イ事デセウ
  ガ、政府ニ都合ガ好ケレバ都合ノ好イダケ、吾々國民ニハ不
  利デアッテ、ソレヨリ寧ロ我ガ國民ハ租稅ヲ減ジテ貰ッタ方ガ
  宜シイト吾々ハ信ジテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ次第デ、只
  今申シタ所ノ海軍ト陸軍、ワレカラ國債整理資金此三ツノ
  モノヲ集メレバ、本年度大正十二年度ニ於テ一億一千五
  百万圓ト云フモノガ出ル、勿論只今中シタ外ニ地租營業稅
  ヲ廢シクナラバ、此地租、營業稅ノ微收費七百十餘万圓減
  ゼラレル、之ヲ加ヘルト一億一千五百万圓減ゼラレルノデア
  ル、其外僅ノモノハ新規事業或ハ行政整理等デ減ズルコト
  ガ出來ル故ニ、之ニ依ッテ地租、營業稅ヲ全廢シテモ其財源
  ハ十分デアルト吾々ハ信ズルノデアル、是デ地租營業稅ヲ減
  ジテ、之ヲ以テ地方ニ委讓シテ、先刻申ス通リ地方ニ於ケル
  雜種稅細カイ營業稅、竝ニ戶數割ノ如キモノニ充テル、殊ニ
  府縣ニ於ケル戶數割ト云フモノハ、市町村ニ於ケル戶數割
  以上ニ非常ナル弊害ガアルト云フコトハ私ガ中スマデモナイ、
  之ヲ全廢シテ、我國ノ此體系ヲ比較的ニ正シ、稅制整理ヲシ
  ヤウト云フノガ吾々ノ根本ノ問題デアリマス、若シモ之ヲ否
  認サレルナラバ、稅制整理ハ根本ニ必要デアルト言ハレテ、サ
  ウシテ來年ニハ考ヘルト言ハレル方モアリ、來年必ズ之ヲ行
  フト言フ人モアル、來年行フト言ハレル方ハマダ宜シイガ、來
  年考ヘテ見ルト言フヤウナ人ハ、何ヲ財源トシテ爲サルノデ
  アルカ、今日ハ極テ大切ナ秋デアル、此時期ニ海軍ノ縮小ヲ
  爲シ、陸軍ノ縮小ヲ爲シ、行政整理ヲヤッテ出サナケレバナラ
  ヌ此場合ニ當リ、此機ヲ逸シテ繼續事業ノ大正十二年度
  デ始メタモノヲ、大正十三年度デドウシテ之ヲ中止サレルノ
  デアリマスカ、今日之ヲ止メル事ハ止メテ玆ニ財源ヲ得、將
  來行政整理ヲ爲シテモ、矢張之ニ加ヘテ其他ノ總テノ整理
  フ爲スト云フコトノ端〓ヲ開クト云フコトハ、今日ノ時代ニ
  於テ極テ必要ナ事デアルト本員ハ信ズルノデアル、ソレデ地
  租營業稅以外ノ諸稅ハ然ラバ如何ニスルカト云ヘバ、吾々
  ハ行政整理ヲモット遂行スル考デアル、其結果ニ於テ勿論通
  行稅ノ全廢ヲ信ジテ居ル、ソレカラ改正スベキモノトシテハ
  先刻申ス通リ相續稅ノ如キ、登錄稅ノ如キ、所得稅モ大ニ
  改正シナケレバナラヌコトハ先刻申ス通リデアル、間接稅ノ
  中ニ於テハ、吾々ハ醬油造石稅ヲ全廢スル所ノ意見ヲ持ッテ
  居ル者デアル、石油消費稅モ亦之ヲ全廢スベキモノ、賣藥稅
  ノ如キモ矢張之ヲ全廢スル所ノ考ヲ持っテ居ルノデアリマス、
  而シテ酒造稅、麥酒稅、酒精稅、砂糖消費稅、織物消費稅、
  印紙稅ノ如キモノハ相當ニ改正ヲスベク計畫ヲ致シテ居ル
  所ノモノデアルノデアリマス、此總テノ計畫ヲ致シテ居ル中
  ニ、今期ノ議會ニ現レマシタモノハドウデアルカト云ヘバ、所
  得稅ノ一部改正ガ政府カラ提案サレタ、是ハ吾々ハ到底滿
  足ハシナイガ、改正スルコトハ吾々ハ宜イコトデアルト思フシ、
  此吾々ノ計畫ノ一部ニ嵌ルコトデアリマスガ故ニ、此政府提
  出ノ所得稅一部ノ改正ニハ賛成ヲスル所ノ者デアリマス、
  ソレカラ又政府カラ出サレタ所ノ賣藥營業稅、石油消費稅
  ト云フモノモ是亦政府ハ全廢ヲスルト云フ案ヲ出シタノデア
  ル、只今申シマスル通リ吾々モ亦是ハ全廢スル計畫ヲ立テ
  テ居ルノデアルガ故ニ、是ト一致スル爲ニ政府ノ此案ニハ矢
  張賛成ノ意ヲ表スル所ノ者デアルノデアリマス、ソレカラ印
  紙稅ノ如キ改正、是モ矢張先刻申シタ通リ政府ガ今回改
  正案ヲ出シタガ、是亦決シテ滿足ハ致サナイガ、此改正ハ吾
  吾ノ計畫ノ一部ニ相當スルモノデアリマスルガ故ニ、是ハ勿
  論贊成ヲ致スノデアリマス、而シテ其財源ハ吾々ガ之ヲ申述
  ペズトモ、政府既ニ相當ニ是ガ計畫ヲシテ豫算ヲ出シテ居ル
  ノデアルガ故ニ、是ハ贊成ヲシテ差支ナイモノデアルト思フ、
  ソレカラ次ニ醬油造石稅ノ廢止、自家用醬油稅ノ廢止、織
  物稅ノ改正ガ出テ居ルノデアリマス、只今申シマス通リ此
  二ツノ稅ノ廢止、又一ツノ稅ノ改正、是ハ趣意ニ於テハ吾
  吾勿論賛成デアリマス、次第ニ行政整理ヲ致シテ、矢張吾々
  ハ再來年度、十三年度ニ於テハ是等ヲ廢止又ハ改正ヲスベ
  ク計畫ヲ立テヽ居ル所ノ者デアルノデアリマス、併ナガラ大
  正十二年度ニ於テモ、吾々ハ寧ロ先刻述べタ所ノ道理ニ
  依ヶテ、營業稅又ハ地租ト云フモノヲ地方ニ委讓シ、之ヲ國
  稅カラハ全廢スルト云フコトヲ寧ロ急務ナリト致シタ結果、
  財源ノ關係上、醬油造石稅ト織物稅ノ改正ニハ賛成ヲ致
  スコトガ出來ナイ、唯、自家用醤油稅ハ吾々ノ主義ニ一致
  スルノミナラズ、其稅額ガ甚ダ少イノデ、財源ニ苦シマナイ結
  果トシテ、是ハ吾々ハ賛成ヲ致スノデアリマス、右樣ナル關係
  ニ於テ總テ吾々ハ是デ此大體ノ稅ノコトニ付テ申述ベタ考
  デアリマスルガ、其外ニ此岩本君カラ出サレタ所ノ所得稅改
  正案ガアリマスルガ、是ハ山林ノ所得ニ對シテ改正ヲスルモ
  ノデ、寧ロ吾々ハ早クカラ之ヲ主張シテ居クタ所ノ者デ、岩本
  君ノ御說ニ一致スルノデアリマスガ故ニ、是ハ修正案モ出テ
  居リマスガ、吾々ハ寧ロ是ハ原案ニ賛成ノ意ヲ表スル所ノ者
  デアリマス、要スルニ此稅制ノ根本整理ハ、吾々ハ目下ノ急
  務デアルト思ッテ居ル、今日ノ時代ニ當リマシテハ最早是ハ
  逡巡躊躇スベキ場合デハナイ、或ハ物事ハ考慮ニ考慮ヲ重
  ネ愼重ニ愼重ヲ重ネルノハ誠ニ結構ナコトデアリマスルガ
  是モ餘リニ度ガ過ギマスレバ、其時機ヲ失スルノ虞ガアルト
  思フノデアリマス(拍手)ソレ故ニ吾々ハ此好時機ヲ逸セズ、
  此信ジテ居ル所ノ一端ヲ實際ノ上ニ行ッテ、サウシテ此國家
  ノ福利增進ニ努メタイト信ズル次第デアルノデアリマス、旣
  ニ第四十一議會ニ於テ此財政經濟調査會ノコトガ建議サ
  レ、而シテ是ノ調査ト云フコトモ出來上ッテ居ル今日デアリ
  マスルガ故ニ、宜シク政府ニ於テハ此點ヲ考慮サレ、又諸君
  ニ於カレマシテモ此點ヲ十分ニ御〓究ヲ戴キマシテ、ドウカ
  吾々ノ趣意ニ御賛成ニナリマスヤウニ、之ヲ御願ヲ致シテ此
  壇ヲ降ルコトニ致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=51

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• 052・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　堀切善兵衞君
  〔堀切善兵衞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=52

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• 053・堀切善兵衞

  ○堀切善兵衞君　諸君、私ハ政府提案ニ對スル修正、之
  ニ賛成致シ、遺憾ナガラ其他ノ各派ヨリ出テ居リマス地方
  委讓論、或ハ減稅論等ニ反對ヲ致サヾルヲ得ナイノデアリマ
  ス、只今私ノ尊敬スル大口君ノ御演說ヲ承リマシタ、稅制
  及財政ノ各般ノ點ニ亙リ洵ニ詳細ナル御說ガアリマシテ、
  吾々ノ參考ニナリマスル點ガ非常ニ多カッタノデアリマス、大
  體ニ於テ吾々ハ無論大口君ノ御說ニ對シテ反對ノ意見ハ
  持タナイノデアリマス、唯〓每度革新倶樂部ノ諸君ノ御主
  張、態度ハ今囘ノ此委譲論ニ依ッテ私ハ能ク代表セラレテ
  居ルト思フノデアリマス、卽チ諸君ハ高ク理想ヲ標榜シ、此
  理想ニ達スルガ爲ニ直ニ目的ニ向ッテ突進セラレントスルノ
  デアリマス、吾々ハ目的ニ於テハ或ハ同ジ所ヲ見テ居ルカモ
  知レヌノデアル、併サガラ吾々ハ革新倶樂部ノ諸君ノヤウニ
  直ニ此目的地ニ到達シナケレバナラヌトマデ吾々ハ急ガナイ
  ノデアル徐々ニ、併ナガラ堅實ニ此目的地ニ吾々ハ進マント
  欲シテ居ルノデアリマス、卽チ只今大口君ノ御說ヲ承ッテ居
  リマスルト云フト、縷々數千言、吾々ガ過グル二年間財政經
  濟調査會ニ於テ案ヲ立テタリ、討論ヲシタリ色ニ致シタル所
  ノコトヲ、其一部分フ更ニ繰返シテ今日承ッタヤウナ感ジガ
  致スノデアリマス、隨テ之ニ對スル私ノ批評ヲ申上グルナラ
  バ、少クトモ大口君ノ費サレタル所ノ三倍ノ時間ガ必要デア
  リマス、更ニ詳細ニ申上グルナラバ、或ハ之ヲ學校ノ講義ナ
  ドニ申上グルナラバ、同ジ趣意ノ下ニ一年間位ハ是ハ講義
  致シテモ宜シイノデアリマス、斯樣ナ點ニ付テ今日私ハ左樣
  ナ無意義ノコトヲ申サナイノデアリマス、唯〓吾々ハ何故ニ
  大口君ノ御說ニ反對セザルヲ得ナイカト申セバ、後半ニ御
  演說ニナリマシタルガ如ク、直ニ今年度ヨリ之ヲ實行シナケ
  レバナラヌ、而シテ今年度ヨリ實行スルニハ斯ク々々ノ用意
  ガアル、其用意ノ點マデヲ御述べニナリマシタコトニ對シ私ハ
  寧口是ハ敬意ヲ表シテ居ル、併ナガラ一々之ヲ理由ヲ申上
  グルナラバ、地租、營業稅ノ兩者ヲ地方ニ委讓シテ、其合計
  一億二三千万圓、之ニ對シ何處ニ財源ヲ求メルカ、今年度
  ノ豫算ノ中カラシテ先以テ此陸軍ノ整理、陸軍ハ四千万圓
  ノ整理ヲヤルト申シタニ拘ラズ、更ニ今年事實ニ於テヤッタ
  所ノモノハ二千万圓足ラズデアル、其差額ダケハ陸軍ニ整
  理ヲ追ッテモ宜シイ、豫算ノ中カラ之ヲ減ジテモ宜シイト仰シ
  ヤルノガ其一ツデアリマス、一應御尤デハアリマスケレドモ、
  陸軍當局者ガ世ノ中ノ輿論ニ鑑ミ、從來ハ頗ル頑固デアッタ
  所ノ考ノ陸軍ノ當局モ、世論ニ鑑ミテ免モ角モ一大奮發ヲ以
  テ行政ノ整理ニ從事セラレマシタト云フコトニ對シテハ、或點
  ニ於テハ吾々ハ之ヲ認メテヤラナケレバナラヌ、卽チ吾々ハ餘
  リニ責メルコトニバカリ急デアッテハナラヌノデアリマス、况ヤ
  陸海軍當局ハ之ヲ以テ打切リトナスモノニ非ズ、吾々ハ今
  後ニ於テモ尙ホ繼續シテ之ヲヤルト云フ考ヲ持ッテ居ル旨ヲ
  表明シテ居ル以上ハ、餘リニ難キヲ貴メルノハ如何デアラウ
  カト思フノデアリース、併ナガラ是デ十分ナリト吾々ハ無論
  申ス譯デナイノデアリマス、今後ニ於キマシテ更ニ進ンデ所
  期ノ目的位ノ整理ヲ實行セラレンコトヲ吾々ハ希望スル、次
  ニハ海軍ノ艦艇補充計畫、之ヲ削除シヤウ、少クトモ今年度
  ノ四千六百万圓、之ヲ削除スベシト云フ御意見デアリマス、
  是ハ此補充艦艇製造ノ計畫ヲ全然止メテシマフト仰シヤル
  御趣意デアッタガ、今年或ハ一年二年位ハ之ヲ延バシテ宜イ
  カラ、一二年遲レテ著手セヨト仰シヤルノデアッタカ、是ハ私
  ハ今日甚ダ聽取ルコトガ出來ナカッタノデアリマスガ、先日委
  員會ニ於キマシテ砂田君カラ承ル所ニ依ルト、是ハ本年ダケ
  ヲ見合セテ、一年ダケ繰下ゲテ來年カラ著手シタラドウカト
  云フ御說ノヤウニ私ハ記憶致シマス、今日ノ大口君ノ御演
  說トハ、多少是ハ違フテ居ル點ノヤウニ思ヒマス、併ナガラ此
  補充計畫ガ果シテ其必要無シトスルナラパ、何故ニ全然之
  ヲ削除セラレヌノデアルカ、此間ニ或ハ一二年延バストカ、或
  ハ此處ヲ斯ウヤル、彼處ヲ斯ウヤルト云フ間ニ細工ヲ施サ
  レントスルノハ、一面ニ於キマシテ此補充計畫ノ全然廢棄ス
  ルコトノ出來ナイ理由ヲ物語ッテ居ルノデナイカト考ヘマス、
  續イテ減債基金四千万圓ハ削除セヨ、是ハ財政經濟ノコト
  ニ御經驗ノ深イ大口君ノ御意見トモ私ハ受取リ兼ネルノデ
  アリマス、卽チ本年マデ政府ハ減債基金法ノ働キヲ停止シ
  テ居ッタノデアリマス、大口君ノ所說ノ如ク、將來全然此減
  債基金法ヲ廢シテシマヒマシタナラバ、日本ノ公債ノ上ニ於
  テ-内外ニ於ケル日本ノ公債ノ上ニ、容易ナラザル影響ヲ
  及ボスニ相違ナイト考へル、今日世界各國ガ公債ヲ減ズル
  爲ニ、何レノ國ニ於テモ減債基金ノ制度ヲ設ケ、孜々トシテ
  之ヲ實行シテ居ナイ國ハナイノデアリマス、我ガ日本ガ此際
  之ヲ廢シテシマフ抔ト云フコトハ、責任アル經濟財政ノ局ニ
  當ル人ノ私ハ斷ジテ爲シ能ハザル所ナリト信ジテ疑ハヌノデ
  アリマス(拍手)斯ノ如ク諸君ノ理想トセラルヽコトハ、吾々
  ハ無論御同感デアリマスケレドモ、今年ヨリ直グ之ヲ實行シ
  ナケレバナラヌト云フノハ、少シク是ハ無理ヲ諸君ガ主張セ
  ラルヽモノデアル、此意味ニ於テ吾々ハ大口君ノ御說明ニ對
  シテ、革新倶樂部、庚申倶樂部ノ御提案ニ對シ、反對セザル
  ヲ得ナイノデアリマス、併ナガラ革新倶樂部ノ只今ノ御意
  見、殊ニ免ニモ角ニモ本年度ノ豫算ニ對シテ斯ク〓〓ノ途ヲ
  執ッテ、吾々ハ地租委譲ヲ實行スルノデアルト云フコトヲ言
  明セラレマシタ點ニ於キマシテハ、之ヲ憲政會諸君ト比較シ
  マスルト、其間ニ多大ノ相違ヲ見出サヾルヲ得ナイノデアリ
  マス(拍手)憲政會ノ提出者濱口君ニ對シ、私ハ如何ナル點
  ニ於テ幾ラノ金額ヲ今年度ノ豫算ノ中カラ削除シテ、此廢
  減稅ニ充テラルヽノデアルカ、幾囘カ之ヲ繰返シテ御聽キ致
  シマシタケレドモ、御答辯ガ無カッタノデアリマス、先程早速
  君ガ此所ニ於テ述ベラレタ事ハ、大體諸君モ御聽キノ通リ
  デアル、卽チ行政ノ整理ニ於キマシテモ、經常部ニ於テ二割
  位ノ削減ハ出來ルダラウ、臨時部ニ於テ三割位ノ削除ハ出
  來ルダラウ、軍縮モ尙ホ此上ニ出來ルダラウ、ンレヲ以テ財
  源ニ充テルト云フコトヲ申サレマシタ、早速君ノ御說ト只今
  詳細ニ斯ク々々ノ財源ニ依ッテ實行スルト申サレタ革新倶
  樂部ノ御意見ヲ比較スレバ私ハ早速君ハ昔カラ能ク知루
  居ル友人ナリト雖モ、大口君ノ方ニ是ハ賛成セザルヲ得ナイ
  ノデアリマス、卽チ此一點ニ於テサヘモ憲政會ノ此減稅案
  ハ、如何ニ無責任ナモノデアルカト云フコトハ明カデアリマス
  (拍手)而シテソレヲ地方ニ委譲スル、殊ニ現在ノ營業稅ヲ
  廢止シテシマッテ、特別所得稅トセヨ、而シテ其間ニ於テ約
  二千万圓ノ減稅ヲ實行スベシト斯樣ニ申サレル、何故ニ是
  ト共ニ地租ノ方ニ同ジ特別所得稅ニスル御主張ヲナサラナ
  カッタカ、先程早速君ハ政府ハ營業稅ニ手ヲ著ケテ減稅ヲ
  ヤッタニ拘ラズ、何故ニ地租ヲヤラヌカト云ッテ政府ヲ責メ
  ラレタノデアリマス、私ガ今思出スノハ今カラ丁度十年許カリ
  前ニ、憲政會ノ諸君ガ營業稅ノ全廢ヲ主張セラレタトキ、之
  ニ對シテ營業稅ダケヲ全廢ヲセヨト言ハレタコトデ吾々ハ反
  對ヲ致シタノデアル、更ニ今囘ハ地租ト營業稅トハ同ジ立
  場ノ下ニ置カナケレバナラヌト云フ御議論ニ到達セラルルニ
  至ッタコトハ、憲政會ノ諸君ノ經濟上ノ智識ノ御進歩ヲ私
  ハ慶賀スル者デアリマス(拍手)併ナガラ是ハ同ジモノデアル
  カラ同ジ取扱ヲシナケレバナラヌト吾々ノ主張シタモノハ十
  年前、今日ハ諸君ハ或ハ十年位遲レテ居ナイカ、今日最早
  左樣ナル權衡論ノ時代ニ非ズシテ、恐ラク私ハ委譲論ノ時
  代デアルト考ヘテ居リマス(拍手)而シテ之ヲ減稅致シタバカ
  リデハ-殊ニ中央ノ稅ヲ減シタバカリデ直ニ是ハ國民負
  擔ノ輕減ニハナラヌノデアリマス、卽チ只今大口君モ論ゼラ
  レタ如ク、國民ハ一面ニ於テハ中央ニ對シ稅ヲ拂ヒ、一面ニ
  於テハ地方ニ對シ稅ヲ拂フ、同ジ「ポケツト」カラ稅ヲ拂フノ
  デアリマスカラ、中央ニ對シテ減稅率ガ上リタレバトテ、地方
  ノ稅ノ戶數割ニ轉嫁サレ、家屋稅ニ轉嫁サレルナラバ、減稅
  ノ實ヲ爲サヌノデアリマス、諸君ハ地租營業稅ノ五千万圓
  ノ減稅案ヲ主張セラレテ居リマス、ケレドモ、其結果國民今
  日ノ懷合カラ申シテ如何ナル結果ニナルカ、其附加稅ノ跡
  始末ヲ如何ニ爲サレルカト云フコトニ付テハ、豫メ何等ノ用
  意ヲ爲サレズ漠然之ヲ提出セラレタノハ是ハ無責任ノ
  至ナリト中サヾルヲ得ヌノデアリマス、何故ニ諸君ハ是等ノ
  點ニ對シマシテモ相當ノ計畫ヲ爲シ、而シテ眞ニ國民ノ負
  擔ヲ輕減スル此方法ヲ御提出ニナラナカッタノデアルカ、是
  等ノ點ニ對シテモ、吾々ハ實ニ不思議ニ堪ヘナイノデアリマ
  ス、殊ニ地租ヲ二歩減ジテ、之ニ依クテ農民ノ負擔ヲ減ジ、農
  村振興ノ一助トモ爲サント云フガ如キ、濱口君ノ過日此處
  ニ於ケル御提案御說明ノ演說ノ中ニモアリマシタケレドモ、
  併ナガラ憲政會ノ諸君ガ農村ノ振興ヲ叫バルヽヤウニナッタ
  コトニ付テ、私ハ又一種ノ感慨ニ堪ヘナイノデアリマス、憲政
  會ノ諸君ハ今日農村ガ疲弊シテ居ル、農村ノ疲弊ニ付テ叫
  パレテ居ルケレドモ、今日ノ日本ノ農村ガ疲弊スルニ至ル所
  ノ主ナル理由ハ何處ニ在リマスカ、卽チ地方農民ノ生產シ
  タル所ノ物ガ、其生產費ヲ償フ能ハザル程ノ安イ價ニマデ下
  落シテ來夕爲ニ、地方ガ今日疲弊シ農村振興ノ必要ヲ四バ
  ザルヲ得ザルニ至ッタ主ナル原因ノ一デアルト私ハ思フ、面シ
  テ農民ノ拵ヘタ所ノ物ガ斯ノ如ク安クナッタ原因ハ何處ニ
  在ルカ、卽チ或ハ濱口君、或ハ早速君、其他憲政會ノ諸君ガ
  數年來事每ニ如何ナル手段方法ヲ以テシテモ物ノ價ヲ安ク
  セヨ、如何ナル高イ價ヲ拂シテモ敢テ辭スル所ニ非ズ、唯〓無暗
  ニ價ヲ安クセヨト云フ其聲ガ、今日ノ地方ノ窮子)ヲ招クニ至ッ
  タ原因タルコトヲ私ハ信ジテ疑ハヌノデアリマス、卽ヲ濱口君
  ガ農村ノ振興策ノ一トシテ、過日此壇ニ於テ、米穀其他ノ
  農作物ノ價ハ適當ニ調節スベシト申サレタノデアリマスガ、此調
  節ハ此上尙ホ低クシロト云フ意味ノ調節ニ非ズシテ、恐ラクハ
  價ヲ高クシロト云フ調節デアッタラウト思フ、然ラバ濱口君
  ガ物價ノ調節ト云フコトハ、唯〓徒ニ物ノ價ヲ安クスレバ良
  イー云フ意味ニ非ズシテ、時トシテハ生產者ノ利益、消費者
  ノ利益等ヲ調和セシメナケレバナラヌ、卽チ低クスル許リガ
  本能デナイト云フコトヲ憲政會ノ諸君ガ自覺セラルヽニ
  至ッタコトヲ、私ハ憲政會ノ爲ニ、地方農村ノ爲ニ、之ヲ喜バ
  ザルヲ得ナイノデアリマス、僅ニ其二步減位ヲヤッテ、之三
  依ッテ地方農村ノ振興ナドト中サルヽノハ、吾々ハ之ヲ以テ
  片腹痛キ次第ナリト斷定スルノデアリマス、其外ニ或ハ織物
  稅ノ減少、卽チ木綿ノ織物ヲ減稅、廢稅スル、或ハ醬油稅、
  自家用醤油稅、之ヲ廢止スル、是等ノ御議論ニ對シテハ一
  應ハ吾々モ御同感ニ存ズル點モアルノデアリマス、併ナガラ
  苟モ是等ノ消費稅ノ廢減ヲ論ズルニ當ッテハ、唯、一ツ々々
  是等ノ稅ニ付テダケ考ヘテ判斷シテハナラヌノデアリマス、
  苟モ消費稅デアル以上ハ、如何ナル消費稅モ其物一ツヲ
  取シテ言ヘバ皆惡稅ナリト中シテ宜シイ、酒ト云ヒ、煙草ト云
  ヒ、或ル意味ニ於テハ之ヲ廢止シタラ宜イカ知レヌノデアル、
  僅チガラ是等ハ外ノ稅ト比較シテ見マスルト、或ハ醤油ハ必要
  品ニ相違ナイ、併ナガラ鹽ニ比較スレバ果シテ如何デアラ
  ウカ、織物稅ハ廢止シテ宜イカモ知レマセヌガ、併ナガラ之ヲ
  以テ通行稅ニ比較致シマシタナラバ如何デアルカ、或ハ今日
  ノ所得稅、或ハ今日ノ營業稅、此所得稅、營業稅ノ中ニモ
  納稅者ノ殆ド堪へ難シトスル所ノ苦痛ノ點モ含マレテ居ル
  ノデアリマス、斯ノ如キ他ノ稅ノ一部分トモ吾々ハ比較シテ
  見テ、初テ本當ニ是ハ廢止スベキカ、然ルヤ否ヤ最後ノ判斷
  ヲ下サナケレバナラヌノデアル、隨テ是等ノ消費稅ノ改廢ニ
  付テハ、吾々ハ之ヲ他日、卽チ根本的稅制整理ノ際ニ之ヲ
  審議スベキモノトシテ、此理由ニ依ヶテ悉ク憲政會ノ提案ニ
  對シテ、吾々ハ判斷ヲ致シテ居ルノデアリマス、何時行ルカ、
  申ス迄モナク吾々ハ來年度カラ之ヲ實行スル、我ガ政友會
  ガ一度之ヲヤルト聲言シタモノハ、萬難ヲ排シテモ必ズ之ヲ
  ヤッテ居ルノデアリマス(拍手)憲政會ノ諸君ガ或ハ三稅ノ廢
  止ヲ主張シ、或ハ營業稅ノ全廢ヲ主張シ、而シテ之ヲ何時
  諸君ハ實行シタルコトガアルカ、吾々ハ多ク言ハズシテ多ク
  實行スルノデアル、一旦口ニ出シタモノハ必ズ之ヲ實行セズ
  ンバ止マヌノデアリマス、是等ノ點ニ於テ我ガ國民ノ多數ハ
  必ズ我ガ黨ノ主張ヲ諒トセラルヽコトヲ信ジテ疑ハヌノデア
  リマス、斯ル意味ニ於テ吾々ハ遺憾ナガラ革新倶藥部及憲
  政會ノ諸提案ニ對シテ、斷然之ヲ葬リ去ルノ主張ヲ爲スモ
  ノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=53

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• 054・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　奧村千太郞君
  〔奧村千太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=54

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• 055・奧村千太郎

  ○奧村千太郞君　私ハ主トシテ地租ノ一點ノミニ付テ申
  シマス、吾々ノ提案致シマシタ地租條例廢止法律案ハ、不幸
  ニシテ委員會ニ於テハ否決サレマシタ、隨テ此本會議ニ於
  ケル本案ノ運命モ既ニ決シテ居ル次第デアリマス、然ルニ私
  ガ玆ニ少數意見ヲ維持スルコトハ徒勞ノヤウデアリマスガ、
  私ニハ左樣ニ考ヘラレマセヌ、現ニ政友會カラ提出サレマシ
  タ行政及稅制整理ニ關スル建議案ノ趣意モ、要スルニ地租
  ヲ地方稅ニ委譲スルコトヲ眼目トセラレテ居ル、故ニ其結果
  カラ申シマスレバ吾々ノ地租廢止案モ、政友會ノ建議案モ、
  其精神ニ於テハ同一デアリマス、斯樣ニ議會ノ多數ハ總テ
  地租ノ全廢ト竝ニ之ヲ地方稅ニ委譲スルコトノ必要ヲ確
  認セラレテ居ルノデアリマス、唯ツノ是ガ實行スベキ時機
  ノ遲速ニ付テ意見ノ一致ヲ見ナイ爲ニ、本案ガ委員會ニ於
  テ否決サレ、更ニ本會議ニ於テ同一ノ運命ニ陷ラントスル
  所以デアリマス、而シテ私ハ之ニ對シテ斯樣ニ批評シヤウト
  思フ、ソレハ諸君ノ仰セニナルガ如ク、農村ノ疲弊困憊甚シ
  ク、且ツ之ヲ救濟スルコトガ焦眉ノ急デアルト致シマスレバ、
  政友會ノ建議ハ時機ニ於テ焦眉ノ急ヲ救フニ足リマセヌ、
  同時ニ憲政會ノ建議案ハ其程度ニ於キマシテ效果ガ餘リ
  ニ微弱デアルト中サネバナリマセヌ(ノウ〓〓)旣ニ農村ノ疲
  弊困憊ヲ認メ、同時ニ之ヲ救濟スルコトガ焦眉ノ急デアルト
  認メナサル限リ、何事ヲ擱キマシテモ農村ノ負擔ヲ減ジ、他
  ノ半面ニ於キマシテハ更ニ適切ノ積極的振興策ヲ講ジナケ
  レバナラヌト考ヘマス、然ルニ此疲弊困憊ヲ認メ、且ツロデハ
  之ヲ救フベキ焦眉ノ急ヲ說キナガラ、眞ニ效果アル應急策
  ノ講ゼラレナイノハ、丁度大病人ヲ見ナガラ誠ニ御氣ノ毒ダ
  ト言フバカリデ、藥ヲ與ヘナイト同樣デアリハシナイカ、見殺
  シニシテ居ルモ同樣デアリハシナイカト考へルノデアリマス、
  彼ノ普選問題ニ於テ諸君ハ常ニ卽時斷行ト云フコトヲ申
  サレマスガ、吾々ノ見ル所ニ依リマスト、此農村ノ救濟コソ普
  選以上ニ卽時斷行ヲ要スル大問題デ、農家ノ死活問題デハ
  ナカラウカト考ヘマス、先般來此本會議竝ニ委員會ニ於キ
  マシテ、地租及營業稅ニ付テハ幾多ノ論議ガ重ネラレマシ
  タ、隨テ私共ガ玆ニ彼此レ贅辯ヲ繰返ス必要ハ無イヤウデ
  アリマスガ、千百ノ議論モ一ノ實行ニ如カナイデ、農民ニ取ッ
  テハ負擔ノ輕減サレナイ問ハ、假令農村ノ救濟ニ關シテ同
  情アル所ノ御說ヲ伺ヒマシテモ、ソレハ畢竟畫ニ描イタ餅ニ
  過ギナイノデアル、其目的ヲ達スルマデハ敢テ辯ヲ好マナイ、
  吾々ガ餘儀キク此處ニ立ッテ、尙ホ少シク農家窮境ノ現狀
  ト、地租ヲ全廢スベキ必要アル所以ヲ訴ヘナケレバナラナイ
  ノデアリマス、元來農商工ハ鼎立シテ、與ニ共ニ進步發達致
  サナケレバナラナイモノガ、今日ニ於テハ商工業ニ比シマシ
  テ、獨リ農業ノミガ取殘サレノ姿トナッテ居リマス、丁度鼎ノ
  足ガ一本ダケ短クナッテ居ル形デアリマス、斯ノ如クニシテ國
  家ノ安泰ナルコトヲ得ナイノハ理ノ當然デアリマス、畢竟是
  ハ明治維新以來ノ我ガ產業政策ガ、舊幕時代ニ於ケル所
  ノ重農主義ノ反動トシテ商工主義ニ傾キ、爾來政府ガ民間
  經濟界ニ臨ム所ノ政策ヤ施設ガ、常ニ農業ヨリモ商工業ニ
  重キヲ置カレテ、遂ニ農村ノミ獨リ取殘サレノ姿トナッテ、農
  家ノ經濟ハ全ク行詰リノ結果ヲ招致スルニ至ッタノデアリマ
  ス、由來農家ハ比較的柔順デアル、同時ニ文化ノ程度モ低
  イノデアリマス、随テ政府ハ動モスレバ此農家ノ柔順ナルニ
  乘ジテ、農家ニ對スル萬般ノ施設ト云フモノハ、由ラシムベ
  シ知ラシムベカラズト云フ斯ノ見地カラ割出サレテ、因襲ノ
  久シキ、農民自身モ遂ニ所樣ナ政策ヤ壓迫ヲ被リナガラ、自
  分カラ怪マザルノミナラズ今日マデ來ッタノデアリマス、併ナガ
  ラ時代ハ終ニ多數ノ農家ヲシテ目醒メシムルニ至リマシタ、
  ノミナラズ近時諸物價ト米價ノ均衡ヲ失シテ、農家經濟ノ
  上ニ大打撃ヲ與ヘマシタガ爲ニ、多年欝結シテ表面ニ現レ
  ナカッタ農村問題ハ、玆ニ爆發シテ來マシタノデアリマス、而
  シテ此問題ヲ最モ手早ク且ツ最モ有效ニ解決シヤウト致シ
  マシタナラバ、唯〓二ツノ途アル許リデアル、卽チ一ハ米穀法
  ヲ運用致シマシテ、米ノ價ヲ引上ゲルカ、他ノ一ハ農家ノ負
  擔ヲ輕減スルコト、此二ツヨリ外ニハアリマセヌ(拍手)勿論
  農家自身ト致シマシテモ、農事ノ改良トカ、勞力ノ節約トカ
  副業ノ選擇トカ、自ラ收入ノ增加ヲ圖リ、且ツ生活ノ安全
  ヲ工夫スルコトノ必要ハ勿論デアリマスケレドモ、是等ノ方
  法ハ遺憾ナガラ何レモ多數ノ農家ガ焦眉ノ急ヲ告ゲツヽア
  ル急迫ノ現狀ヲ救フニ足リマセヌ、然ルニ是等ノ事情ヲ能ク
  御承知デアル筈ノ政府當局ハ、折角制定セラレテ居リマス
  所ノ米穀法ヲモ、農家ノ爲ニ有利ニ運用サレズ、然ラバト申
  シテ減稅ヲモ行ハレナイノハ何故デアリマスカ、實際今日農
  家ノ經濟狀態ハ局外者ノ想像以上デアル、私ハ滋賀縣ノ
  者デゴザイマスカラ、滋賀縣ニ於キマスル所ノ二三ノ實例ニ
  付テ申上ゲマス、其一ハ滋賀縣蒲生郡ニ於ケル純然タル農
  村ノ統計デアリマス、此處ニ引證致シマスル某村ハ地租八
  千八百六十三圓、其他ノ直接國稅ヲ合シマシテ合計九千
  五百五十五圓、卽チ一万圓足ラズノ直接図稅ヲ納メテ居
  リマス、而シテ之ニ對シマスル地租割、戶數割其他ノ縣稅ハ
  一万七千二百十圓、科稅一万八千七百九十三圓デアリマ
  スカラ、直接國稅ニ對シマシテ三倍半以上ノ地方稅ヲ取ラ
  レテ居リマス、ノミナラズ尙ホ其上ニ殆ド村稅ニ匹敵スル所
  ノ大字ノ協議費ナルモノヲモ出サネバナラナイカラ、彼此レ
  加算致シマスルト農家ノ負擔ハ公ケノ統計ニ現レタル以
  上ノ數字ヲ示スノデアリマス、農家ガ自家ノ食糧ヲ差引キ
  マシタル所ノ米ノ賣却金ノ實收入ハ幾許ニ上リマスルカ、
  確實ナル統計ヲ得ルコトガ容易デアリマセヌ、併ナガラ私ガ
  前ニ申シマシタ或ル村ニ就テ調査致シマシタ所ニ依リマス
  ルト、一町半乃至二町位ノ田地ヲ所有シテ居ル自作農
  家ノ經濟ハ、地租ニ對シマスル地方稅ノ負擔ガ更ニ重イ割
  合ニヤッテ居リマスルト同時ニ、之ヲ肥料代ノ支出ト、一箇
  年ニ四百五六十圓カラ五百圓ノ生活費ヲ支拂ヒマスル
  ト、假ニ米ガ石四十圓致シマシテモ、收支差引多少ノ不足
  トナリマス、尙ホ米作又ハ二毛作以外ノ收入、卽チ縣外ヘ
  出テ稼イデ居ル人〓ノ送金ヤ、山林ノ伐採ヤ何カデ得ル
  代金ヲモ加ヘテ、五百戶ニ對スル一箇年ノ平均收入ヲ
  〓算致シマスルト、一戶當リ百七十六圓ノ收入ト
  ナッテ居リマス、是ハ勿論正確ナル數字デアルトハ
  申上ゲ兼ネマスガ、免ニ角事實ト餘リ大差ナキ數字デアリ
  マスカラ、如何ニ農家ガ自給自足ノ生活ヲ營ム特長アリト
  ハ申シナガラ、一戶平均五人暮シノ農家ガ現金トシテハ、-
  戶平均百七十六圓、卽チ二百圓足ラズヲ以テ一箇年ノ生
  計ヲ支ヘナケレバナラヌト云フコトハ、農村ノ實狀ヲ知ラナ
  イ富豪トカ、或ハ都會人士ナドノ到底夢想スルコトノ出來
  ナイ有樣デアッテ、是ガ爲ニ或ハ營養不良トナリ、或ハ都會
  ニ於テナラバ當然癒ルベキ病氣モ、癒ラズシテ死ニ行ク哀ム
  ベキ狀態ノ人々スラアルノデアリマス、斯樣ナ實情ニアリマス
  ガ故ニ、是レ軈テ今日農家ハ實收入ノ半額、若クハソレ以
  上ヲ租稅ニ取ラレテ、恰モ租稅ヲ納メル爲ニ働イテ居ルニ
  等シイト言ハルヽ所以デアリマス、古來三公七民ガ善政ト
  稱セラレ四公六民ガ普通ノ政治ト唱へ來リマシタ點カラ申
  シマスト、今日ノ農家ハ正ニ五公五民、若クハソレ以上ノ惡
  政ニ惱マサレテ居ルト申シテモ決シテ過言デハアリマセヌ、
  斯ク農家ガ虐待ヲ受ケマスル結果、農家ノ子弟ガ相率井テ
  都會ニ赴キ、同時ニ年ヲ送ウテ農村ガ衰頽スルノハ當然デ
  アッテ、前申ス所ノ某村ノ人口ハ男女合計二千六百六人ニ
  對シマシテ、他ニ出寄留シテ居リマス者ガ七百十八人ニ上リ
  マシテ、郡全體トシテ見ルトキニハ、更ニ出寄留ノ比率ガ多
  クシテ、全郡人口九万二千八百二十五人ニ對シテ出寄留
  男ガ二万九千七百五十五人、卽チ約三万人デアルカラ、殆
  ド三人ニ一人ノ割合デ他ノ府縣ヘ出テ居ル勘定ニナッテ居リ
  マス、勿論此地方ハ近江商人ノ本場デアリマスルカラ、他府
  縣ニ比較シテハ寄留ノ多イノハ當然デアリマスルケレドモ
  ガ、而モ近年ニ至ノテ此風潮ガ益こ顯著トナリマシテ、小作人
  カラ田地ヲ返サレテ、已ムヲ得ズ、草蓬々ノ儘打遣ッテ居ル
  實例ヲ見ルニ至リマシタノハ、獨リ滋賀縣下ニ止マリマセヌ
  ノミナラズ、中流竝ニ中流以下ノ者ガ縣外へ出、乃至ハ都
  市へ走ルト云フコトハ、單リ中流以下トカ中流ノ人トカニ
  止マリマセヌデ、資產家マデガ同ジク都會へ向,テ走リ去ル
  傾向ガアリマス、ソレハドウカト申シマスレバ、此地方稅ノ負
  擔ガ如何ニモ重イ結果、到底ソレニ堪ヘラレナイ爲ニ都市
  ニ向ッテ馳セ去ルノデアリマス、既ニ中農及中農以下ノ人ノ子
  弟ガ相率井テ走リ、サウシテ資產家ガ走リ去ルノデアリマス
  カラ、後ニ殘ッタ者ハ益、重稅ニ苦シマナケレバナラヌト云
  フ結果ニナッテ居リマス(「ヒヤ〓〓」)斯樣ニ致シマシテ只今
  ノ農村ハ、大ニ働イテ米ヲ多ク穫レバ取ル程、農家ハ却テ米
  安ノ爲ニ自分カラ苦シマナケレバナリマセヌ(「ヒヤ〓〓」)又
  出寄留者ガ多クナレバ農村ハ衰頽致シマスケレドモガ、同
  時ニ出寄留者カラノ送金ガゴザイマセヌデハ、農村ハ立行ク
  コトガ出來ナイノデアリマス、現在ノ農家ハ斯樣ナ「ヂレン
  マ」ニ陷クテ居ルノデアリマス、隨テ現在ノ農家又ハ資產家ト
  致シマシテハ租稅ノ負擔ガ少クシテ、且ツ小作爭議ノ虞ノ
  ナイ所ノ山林ナドニハ放資ハ致シマスケレドモガ、新ニ田地
  ニ放資ヲシヤウトスル者ハ極テ少クシテ、寧口大地主程機
  會ガアレバ祖先傳來ノ田地ヲ次第ニ手放サウトシツヽアル
  コトハ、皆樣ノ御承知ノ通リデアリマス(「謹聽」)世間デハ
  往々ニシテ小作人ヲシテ自作農タラシムベキ、低利資金ノ運
  用ナドヲ云爲致シマスケレドモ、是等ハ畢竟學者ノ机上ノ
  空論ニ類シマシテ、地主自身ガ算盤上引合ハナイ故ヲ以テ
  手放サウトスル所ノ田地ヲ、小作人ガ買受ケル道理ガナイ
  ノハ極テ明白デアリマス、舊幕時代デハ處ニ依ッテ「カヽリモ
  ノ」ノ多イ結果、山ヤ畑ヲ持ツコトヲ嫌ハレタサウデアルガ、
  事情コン違ヒマスガ、田地ニ放資スルコトヲ厭ガル現況ト云
  フモノハ、其結果ニ於キマシテ大正時代ノ農家ガ、再ビ舊幕
  時代ニ逆戾リヲセシメラレツヽアルト同一デアリマス(拍手)
  デ私ハ今少シ中農及中農以下ノ純然タル農家ノ人々ガ、
  如何ニ自家ノ窮狀ヲ愬ヘ、如何ニ怨嗟ノ聲ヲ放チツヽアル
  カト云フコトヲ、此壇上カラ取次イデ申上ゲタイノデアリマ
  ス(拍手)ソレハドウ云フ事ヲ申スカト申シマスト、吾々ハ彼
  ノ商工業者ガ營業稅ノ廢止運動ヲ爲セルガ如キ運動ニ付
  テノ調練モナケレバ運動スベキ資金モ持タナイ、隨テ政府ハ
  營業稅法ノ改正ヲ行ウテモ、地租ノ改廢若クハ米價ノ引
  上ハ行ウテ呉レナイノデアル、然ルニ一旦國家ニ緩急アレバ身
  ヲ捧ゲテ國ニ殉ズル兵士ノ大部分ト云フモノハ農家ノ子弟
  デアル、而シテ全國ノ農家ガ斯ル血稅ト多額ノ消費稅ヤ、
  其他ノ間接稅ヲ納メテ居リマスノニ對シテ、戰爭アル每ニ
  儲ケテ居ル者ハ何人デアルガ日ク商工家デアリマスノミナラ
  ズ多クノ文化的施設ナルモノハ都市ニノミ重キヲ置ガレマ
  シテ、地方ハ其ノ恩恵ヲ受ケルコトガ稀デアリマス(「ヒヤ〓〓」)
  大都市ニ於ケル土地ト云フモノハ二坪三坪ニシテ、能ク地
  方ニ於ケル田地ノ一段步ニモ比スベキ價格ヲ示セルニ拘ラ
  ズ、公課ノ負擔ト云フモノハソレニ少シモ比例シテ居リマセ
  ヌ、且ツ農家ノ資本ハ田地ニ固定シテ利廻リ薄ク、特ニ本
  年ノヤウナ米安ノ場合ニ於キマシテハ、播種ヨリ收穫ニ至ル
  間ト、並ニ俵裝其他ニ對スル一段步當リノ延人員ガ、平均
  二十五人ノ勞力ヲ要スルニ對シマシテ、其報酬ハ餘リニ少
  ク所謂勞シテ效ナキ結果ニ了レルニ對シマシテ、商工業者ハ
  假令利廻リ薄クトモ、幾度カ資金ヲ運用スルノ利便ガアル、
  ソレガ爲ニ農家ト商工業者ノ生活狀態ニハ大ナル懸隔ガ
  アル、農民モ同ジク人間デアルカラ、到底今日ノ生活狀態ニ
  ハ滿足スルコトガ出來ナイ、ソレト同時ニ其筋ノ人々カラハ、
  免モスレバ節約ヲセヨトノ宣傳ヲ受ケテ居リマスケレドモ、
  都市附近ノ農家ハ率知ラズ、今日地方ノ農家ハ節約ノ餘
  地スラ無イ程デアルカラ、何時々々マデモ重稅ノ苦痛ヲ忍ブ
  コトハ出來ナイノデアル、殊ニ直接國稅ニ比シテ、地方稅ノ
  年々增加スルコトハ最モ苦痛デアリ、將夕不合理ノ點ガ多
  イ、現ニ中學校ヤ女學校ヲ年々競爭的ニ新設擴張セラルル
  コトニ依シテ、縣ノ財政ハ非常ニ膨脹ヲ告ゲ、之ガ爲ニ地方
  稅ハ增加シテモ、吾々ノ子弟ハ中學校ヤ女學校ニ八レル餘
  裕ガ無イノデアル、重稅ヲ負擔セシメラレルバカリデ其利益
  ハ毫末モ受ケナイノデアル、縣會議員ヤ縣農會ノ役員ガ農
  家ヲ代表シアモ、ソレ等ノ人々ハ農業以外ノ收入ノアル向
  デアルカラ、眞ニ純然タル農家ノ懷工合ガ今日ドレダケ苦シ
  イカヲ知ラナイ人々デアル、然ラズンバ政黨關係等ニ依ッテ、
  强硬ニ自己ノ意見ヲ言ヒ表ハシ得ナイ向デアル、故ニ吾等
  ハ全國ノ農家ヲ代表スル所ノ帝國農會ガ、彼レガ如キ生溫
  キ地租ノ輕減ヲ決議セルコトヲ怪マザルト同時ニ、是ガ決
  シテ吾々ノ意思ヲ代表スルモノデハ斷ジテナイノデアル(「ヒヤ
  〓〓拍手)隨テ吾々ハモット根本的ニ、モット徹底的ノ救済
  策ヲ要求スル、農村ノ振興ヲ期ストカ、治水ノ完成ヲ期スト
  カ云フガ如キ、各政黨ノ宣言ヤ金看板ニハ、餘リニ幾度カ瞞
  サレテ來タカラ(ノウ〓〓)最早左樣ナ御定リ文句ニハ承服
  ガ出來ナイノデアル、今日只今ハ根本的ニ農村ヲ救フカ救
  ハヌカノギリ〓〓決著ノ時代ガ來タノデアル、形式的ニ地方
  カラ上京シテ農家ノ困難ヲ說キ迥ル人々ヨリモ、救濟セヨト
  ノ聲スラ出サナイ所ニ、却テ救濟ヲ要スル事情ガ潜ンデ居ル
  ノデアリマス(拍手)政府當局ハ何事ニモ調査中ト言ウテ一
  時逃レヲスル例デアル、斯クテ謂查中ニ內閣ガ迭リ又調查
  ヲスルト言フ、是デハ何時マデ待ツモ駄目デアル、ソレ故ニ結
  局農家ノ資源ガ全ク涸レ盡シマシテ、餘儀ナク稅ヲ納メナ
  イ同盟、卽テ不納同盟デモスルヤウニデモナラナケレバ、政府
  富局ノ目ハ(「ノウ〓〓」拍手)政府當局其他ガ目ヲ覺マシテ
  吳レナイノデハアルマイカト唱ヘテ居ル、是ハ本當ニ言ッテ居
  ルノデアル、醇朴ナル農民中ヨリ斯ル奇矯ノ言スラ聽クニ至
  リマスコトハ、最モ注意ヲ要スル點デアラウト考ヘマス、卽チ
  本問題ハ啻ニ經濟上ノ大問題デアルバカリデナク實ニ我ガ
  國民ノ中堅ヲ成セル所ノ多數農民ノ思想上ニ由々シキ影
  響ヲ及ボスベキ大問題デアリマス、私ハ此種ノ關係ニ付キマ
  シテ頃來深ク感ジタ事ガアリマス、ソレハ諸君モ御承知ノ
  如ク彼ノ羅馬法王廳ニ對スル所ノ使節派遣ノ問題ニ關シ
  マシテ、各地ノ佛〓徒竝ニソレニ關係アル團體カラ吾々ニ
  對シテ、右使節派遣ニ反對ダト云フ幾十百通ノ電報乃至
  書面ガ參ッテ居リマス、然ルニ全國約五百五十万戶ノ農家
  カラハ、農家ノ負擔輕減ニ對スル所ノ請願書モ、可ナリ此
  議會ナドニモ參ッテ居ルヤウデアリマスガ、其以外ニハ格段
  示威メイタ運動ハ表面ニ現レテ居ラナイノデアリマス、併ナ
  ガラ多數ノ農民ガ斯ク靜マリ返シテ居ルコトハ、却テソコニ
  深イ意味ガアッテ、實際農民中ニ於テモ最モ數多キ中流以
  下ノ人々ト膝ヲ交ヘテ、農村ノ實況ヲ語リマシタナラバ、ソコ
  ニ初テ其眞相ニ觸レ得ルノデアリマス、而シテ前ニ申シマシ
  タル如ク、今日ノ農村ハ表立シテ大ニ救濟ノ聲ヲ高メナイ所
  ニ、救濟ノ必要ヲ認メラレルノガ實情デアルノデアリマス、然
  ルニ今日ソレ等ノ人々ガ默々トシテ働イテ居ルカラト申シマ
  シテ、ソレデ彼等ガ滿足シテ居ル、ソレデ天下ハ秦平タナド
  ト考ヘテ居リマシタナラバ、ソコニ恐ルベキ禍根ガ養ハレ、ン
  コニ恐ルベキ反動ガ突發シハシナイカ、地主ノ困難ハ延テ小
  作人ノ困難トナリ、小作人ノ窮迫ハ軈テ地主ヲ窮迫セシムル
  因果關係カラ推シマシテ、是ハ決シテ單ニ吾々ガ一片ノ
  杞憂ニ止マラナイコトヲ虞ルヽモノデアリマス、而シテ斯ル事
  態ヲ未然ニ防ギ、農村ノ健全ナル發達ヲ圖リマスルニハ、ドウ
  致シマシテモ急速ニ地租ヲ全廢スルトカ、地方稅へ移譲スル
  トカ、最モ適切ナル有效ノ方法ガ他ニ無イト考ヘマス、ソレ
  ト同時ニ地租ノ全廢ハ必然的ニ地方ノ稅制整理ガ問題ト
  ナッテ來マスカラ、此場合ニ於キマシテ矢張課稅ノ標準タル
  所ノ地價ノ大修正ヲ行ウテ、以テ國民負擔ノ公平ヲ期サ
  ナケレバナラナイト存ジマス(拍手)併ナガラ何分ニモ地租
  ハ我國ニ於キマシテ最モ舊キ所ノ租稅トシテ、多
  年租稅ノ體系ノ中樞トシテ、取扱ハレテ來マシタ
  爲ニ、政府モ今日マデハ之ヲ手離スコトヲ躇躊サ
  レタノデアリマスルガ、現內閣ハ地方財源ノ枯渇ニ
  鑑ミテ、之ヲ地方稅へ移譲スルコトハ、主義トシテ贊成デア
  ルトノ意嚮ヲ仄カシテ居ルノデアリマス、且又政府ノ諮問機
  關タル所ノ臨時財政經濟調査會ノ答案中ニ於キマシテモ、
  地方稅ハ地租及營業稅家屋稅ヲ中軸トシ、之ニ配スルニ所
  得稅附加稅ヲ以テスル云々トアリマシテ、地租ノ全廢若クハ
  移譲ト云フコトハ、最早今後ニ於テ調査スベキ問題デナク
  シテ、實行時期如何ノ問題ガ殘サレテ居ルダケデアリマス、
  隨テ本問題ハ政府竝ニ多數黨ノ諸君ニ、是ガ實行ノ勇氣
  ガアリヤ否ヤニ依シテ直ニ解決スベキ問題デアッテ、之ニ代ル
  ベキ財源ヲ云爲セラルヽノハ寧口其心事ヲ疑ハレルノデアリ
  マス、義務〓育費ノ國庫負擔額ガ增加サシマシタ一事ニ徵
  シマシテモ、地租ノ全廢ハ是亦能ハザルニ非ズシテ、爲サミル
  爲メナリト評シテモ差支ナイト思ヒマス、只今モ大口サンノ
  申サレマシタ如ク、現ニ政府ハ明年度ノ豫算ニ於キマシテ減
  債基金ヲ復活セラレシガ如キ、其趣旨ト精神ニ於キマシテハ
  何人モ異論ノ無イ話デアリマスルガ、今日ノ如ク全國多數
  ノ農家ガ非常ノ窮境ニ立テル場合ニ、之ヲ輕ミニ看過シ
  テ、却テ少數ノ資木家階級タル公債所有者ノ歡心ヲ求メ、
  若クハ政府ガ將來募債ノ便宜ニ供セントスルガ如キ制度ヲ
  採用スルノハ、國民利害ノ輕重ト事ノ緊急ヲ考ヘザル遣口
  デアッテ、寧口斯ル費用ガアリマスレバ、之ヲ農民負擔ノ輕減
  ニ振向クベキモノダト考ヘマス、尙ホ地租廢止案ニ對シマシ
  テ、動トモシマスルト何所カラソレダケノ財源ヲ生ミ出シテ
  來ルトカ、或ハ十二年度ノ豫算デ直グニ之ヲ削除シテ實行
  スルコトハ、早計デナイカト云フヤウナコトヲ申サレマスルガ、
  私ハ斯ル方ニ對シテハ私ノ方カラ逆ニ反問ヲ致シタイ、ソレ
  ハ左様十質問ヲ發セラル人ニハ、今日如何ナル手段方法ニ
  訴ヘマシテモ、農家ノ窮狀ヲ救フ必要ハアラウト認メテ居ラ
  ルヽノデアルカドウカ、サウシテ其必要ナシト言ハルヽナラバ、
  ソレハ自ラ別問題デアリマスケレドモ、然ラザル限リ左樣ナ
  質問ヲ發セラレナイ筈デアッテ、ソレ程私ハ地租全廢ノ必要
  ガ焦眉ノ急ニ迫ラレテ居ルト申上ゲル者デアリ、本年各派一
  致ヲ缺イテ此廢稅案ガ葬リ去ラレルト致シマシテモ、ドウカ
  明年ハ各派一致シテ地租廢止ノ法律案ヲ提出セラレンコ
  トヲ、今ヨリ希望シテ置ク次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=55

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• 056・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　川崎克君
  〔川崎克君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=56

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• 057・川崎克

  ○川崎克君　先程カラ各黨ノ諸君ガ自黨ノ案ニ付テ色〓
  鄭重ナル御說明ヲ承リマシテ、私ハ先ヅ第一革新倶樂部ノ
  大口君ノ御話ニナリマシタ地租移譲ニ關スル所ノ事柄ニ付
  テ、大體ノ御趣意ニ於テハ吾々モ地方ノ負擔ヲ輕ク致シタ
  イト云フ事ニ付テ、同ジヤウナ考ヲ持ツモノデアリマスケレド
  モ、直ニ地方移譲ヲ爲スト云フ事ニ付テハ、此大正十二年
  度ヨリ之ヲ行フト云フニ至ッテ、此財源ヲ何ニ求ムルカト云
  フコトニナルト、此財源ニ付テ大口君ノ御話ニナリマシタル點
  ハ、減債基金ノ繰延ノ爲ニ四千二百万圓、ソレカラ海軍補
  助艦艇ノ方ニ向ケル金ハ四千六百万圓、其外ニ陸軍ノ縮
  小カラ生ズル所ノ金ヲ約二千万圓近ク御見積ニナッタヤウ
  デアリマス、其外ニ一般行政ノ整理ヲ合セテ一億二千三百
  万圓ト云フモノヲ、本年カラ輕減ヲ行フノデアルト云フコト
  ノ御議論デアリマス、私ハ此議論ニ對シマシテ先ヅ第一ニ
  海軍ノ艦艇ノ此經費ヲ御削リニナッタト云フコトニ對シマシ
  テ、私ハ直ニ御同意申上ゲ兼ネルノデアリマス、其譯ハ此海
  軍ノ比率關係ハ、過般ノ華府會議ニ於テ大體ニ依テ定メラ
  レテ、五、五、三ノ開係ニナッテ、此關係カラ割出サレタル所ノ
  此海軍補助艦艇ハ、此大正十三年ノ比例ニ依リマスルト
  (「違ヒマス」ト呼フ者アリ)違ヒハ後カラ仰シヤイ、十三年ノ
  例ニ依リマスルト十對四ノ割合ニナッテ居ル、而シテ大正十
  六年ニ於テ初テ此補助艦艇ガ完成スル計畫ニナッテ居ルノ
  デアル、而シテ此關係ガ假ニ大口君ノ言ハレルヤウニ來年カ
  ラ-大正十三年カラ十七年マデト云フコトニオヤリニナル
  ト云フナラバ-十六年ト言ハヌ十七年マデニオヤリニナル
  ト云フナラバ、矢張必要ヲ御認ニナルノデアリマスガ、其事ハ
  免モ角モ、全ク之ヲ認メナイト致サレテモ、免モ角地租及營
  業稅ト云フ此稅金ヲ減スト云フコトニナリマスレバ、是ハ恆
  久的財源ヲ得ナケレバナラヌ、恆久的財源ヲ得ナケレバナラ
  ヌノヲ海軍ノ補助艦艇ノ計畫ハ大正十二年カラ十六年マ
  デノ計畫デ五箇年ノ計畫デアル、十七年以降ニ於キマシテ
  ハ斯樣ナル金額ハアリマセメ、故ニ十七年以降ニ斯樣ナル
  金額ガ計上サレテ居ナイ以上ハ恆久的財源ナリトシテ之
  ヲ削ルコトハ斷ジテ許サヌノデアリマス、ソレカラ第二ニ公債
  整理基金ヲ御延シニナルト云フコトデアル、是モ恆久的財
  源ヲ失ハレルノデアル、卽チ此國債ノ今日マデニ殖エテ參リマ
  シタ高ハ、高橋内閣ノ當時ニ於テ、大正八年カラ大正十一
  年マデノ間ニ於テ、日本ノ國債ハ非常ニ膨脹致シタ、今日ハ
  御承知ノ通リ四十億ニ達シタ、斯ノ如キ大キナ公債ヲ募集
  セラレテ、サウシテ少シモ減債基金制度ヲ置カナイデ置クト
  云フコトハ、公債ヲシテ非常ニ價格ヲ下落セシメルコトニナ
  ルノデアル、公債ノ價格ガ安クナルト云フコトハ、他日ニ借
  換ヲナスコトガ出來ナクナル、借換ガ不可能ニナル、不可能ニ
  トラザルマデモ非常ナル高利ノ金ニ借換ヘナケレバ出來ナイ
  コトニナルノデアル、又新ニ國ノ進歩ニ伴ウテ要スル所ノ此
  新募集ト云フモノガ、中こ行ヒ惡クナルコトハ明カデアル(「政
  府ノ提灯ヲ持ツナ」ト呼フ者アリ)政府ノ提灯ハ持タナイ、
  吾々ハ減債基金ヲ早ク置ケヨト云フコトハ前カラ論ジテ居
  ル、吾々ノ議論ハ前カラ一貫致シテ居ルノデアル、去年高橋
  內閣ノ時分ニ減債基金ヲ置カナイ爲ニ、吾々ハ減債基金ヲ
  設ケヨト云フコトヲ唱ヘタデハナイカ、此議論ハ一貫シテ居
  ル、吾々ハ又此公債ノ價格ガ下ルト云フ問題ニ付テ、大口
  君ハ色〓亞米利加トカ、英吉利トカノ例ヲ御引ニナッテ居ラ
  レマスガ、亞米利加デモ、英吉利デモ公債ノ償還ハ依然トシ
  テヤッテ居ル(「亞米利加英吉利ノ例ハ引キマセヌ」ト呼フ者
  アリ)最前御引ニナッタ、殊ニ本年亞米利加ニ於テモ現在ド
  レダケノモノヲ返シテ居ルカト云ヘバ、千九百二十四年ニ二
  億九千八百万弗返ス計畫ニナッテ居ル、亞米利加ハ現在
  其計畫ニナッテ居ル、又英吉利ハ千九百二十年ニ於テ二億
  五千万圓ヲ返シテ居リマス、又其後此千九百二十二年ニ
  五千万磅ヲ返シテ居リマス、唯〓本年幾ラカ之ヲ返サヌト
  云フコトニナッタ、此事ニ付テハ此理窟ハ大ニ理窟ガアル民
  力ヲ休養シナケレバナラヌト云フノデ、英吉利ハ一時國債ノ
  償還ヲシナクナッタ、之ヲ或ハ例ニ御用ヒニナルカモ知レナイ
  ガ、御承知ノ通リ英吉利ノ所得稅ハ彈力稅デアッテ、量定稅
  デアッテ景京ガ好ケレバ所得稅ヲ增シテ餘計ニ徵收スル、不
  景氣ノ時ニハ減稅スルト云フ方針ヲ執ッテ居ル、日本ノ所
  得稅ノ組方ト違ッテ彈力稅、量定稅ニナッテ居ルカラ此二十
  三年ハ不景氣デアルカラト云フノデ減ジタノデアル、此減シ
  タ結果トシテ是ガ爲ニ減債基金ガ減ラサレタノデアル、併シ
  大口君ノ仰シヤルヤウナ工合ニ此恆久的財源ハ除ケナケレ
  バナラヌ、地租トカ營業稅トカ云フモノハ一時之ヲ減ラシタ
  ナラバ、復活スルコトハ出來ナイ恆久的財源デアル是ガ爲ニ
  國債ノ全ク償還ナシデ行カレルト云フコトニナッタナラバ、公
  債ノ價格ハドウシテモ維持スルコトハ出來ナイト思フノデア
  リマス、極端デハアリマセヌ、明ニ地租及營業稅ニ於テ、其營
  業稅ノ財源ヲ地方ニ持ッテ行カレル爲ニ其財源トシテ四千
  二百万圓ト云フ國債ノ償還ヲシナイト仰シヤ「ルノデアルナ
  ラバ、恆久的財源デハナイカ、之ヲ恆久的財源ニアラズシテ
  何ゾヤト言ハナケレバナラヌノデアリマス
  〔此時發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=57

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• 058・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　靜〓ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=58

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• 059・川崎克

  ○川崎克君(續)　而シテ營業稅モ、地租モ共ニ之ヲ地方
  ニ委讓ナサルト云フコトハ成程地方ハソレデ喜ブカモ知レ
  マセヌ、成程地租ハ嬉シク受取ルデアラウ、併ナガラ營業稅
  ハ惡稅デアッテ、之ヲ廢止シナケレバナラヌト唱ヘテ居ッタ人
  人ガ、其惡稅ヲバ地方ニ委讓ナサルト云フコトハ、ソレヲ受
  取シタ地方ハ迷惑千萬ノ限リノ沙汰デアルト言ハナクレバナ
  ラヌデハナイカ、斯樣ナコトヲ爲サラズニ、國稅トシテ存スル
  營業稅ハ斯ルコトヲ爲サラズニ、營業稅ト云フモノヽ惡イ點
  ヲ除クト云フコトガ必要デアル、營業稅ノ徵稅方法ヲ改正
  スルコト、課稅標準ヲ政正スルト云フコトガ必要デアル營業
  稅ヤ地租ヲ之ヲ地方ニ委譲スルト云フコトハ間違ッテ居ルト
  言ハナケレパナラヌノデアル、更ニ政府ノ案件ニ付テ伺ヒタ
  イ
  〔發言者多ク「議長整理ヲナサイ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=59

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• 060・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　靜肅ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=60

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• 061・川崎克

  ○川崎克君(續)　政府ハ本年稅制整理ヲ御提案ニナッタ
  御趣意ハ、政府ノ稅制整理ノ返意トスル所ハ減稅ヲ目的ト
  シタノデハナイ稅制整理ガ目的ダト言ッテ唱ヘラレテ居ルノ
  デアル、而シテ總理大臣ガ屢、議會デ此事ヲ御辯明ニナッテ
  居ルノデアリマスガ、此頃ニナッテ一月二十四日ノ貴族院ノ
  議場ニ於テ、總理大臣ノ御述ニナッタ御言葉ノ中ニハ、此海
  軍ノ經費ヲ節約ヲシテ國民負擔ノ輕減ヲスルト云フコトヲ
  言ハレテ居ルノデアル、未ダ曾テ政府ハ稅制整理ノ場合ニ
  ハ斯樣ナ言葉ヲ用ヰラレタコトハナイ、國民負擔ノ輕減ナド
  ト云フ言葉ハ少シモ用ヰラレナカッタノデアルガ、一月二十四
  日ノ議場ニ於テ明ニ其言葉ヲ用キラレタ、速記錄ニモ明ニ
  ナッテ居ル、此前ノ高橋內閣ハ、何時デモ國民負擔ノ輕減ト
  云フコトハ用ヰラレナカッタ、軍縮ノ結果餘"夕所ノ金ハ何ニ
  持ッテ行クカト云ヘバ、文化事業ニ持ッテ行ク、或ハ國庫負擔
  〓育費ノ增額、或ハ治水事業ニ持ッテ行クト云フコトヲ言ハ
  レテ、少シモ國民負擔ノ輕減ト云フコトヲ言ハレテナイノデ
  アリマスルカラ、此點ニ於テハ徹底致シテ居ルノデアル、併シ
  現內閣ノ言ハルヽ所ハ、施政方針ノ御演說ヲヱホッテモ、又稅
  制整理案ニ對スル說明ヲ永ッテモ、明ニ此點ニ於テハ國民
  負擔ノ輕減ト云フコトハ少シモ言ハレテナイニ拘ラズ、一月
  二十四日ノ貴族院ニ於ケル加藤子爵トノ質問應答ノ場合
  ニハ、此國民負擔ノ輕減ト云フコトヲ言ハレテ居ルノデアッテ、
  吾々ハ非常ニ疑ヲ挿マザルヲ得ナカッタノデアル、故ニ若シ國
  民負擔ノ輕減ヲ主トシテ、稅制整理ヲオヤリニナルト云フ考
  デアッタノナラバ、現在陸海軍ノ整理ヲオヤリニナッテ七千万
  圓ノ金ヲ出サレ、又行政整理ヲヤラレテ六千七百万圓ノ金
  ヲ出サレテ、是ダケノ金ヲ出シテ居ルニ拘ラズ、先ヅ直接ニ國
  民負擔ノ輕減ニ向ケラレタ所ノ經費ハト云ヘバ僅ニ營業
  稅ニ於テ千九百万圓餘デアル、又間接ニト云ヘバ國民ノ〓
  育費デアル所ノ國庫補助金ノ三千万圓ヲ增額爲サレタト云
  フコトデ、此兩方ヲ合セテ僅ニ五千万圓、此五千万圓ハ直
  接間接ニ國民ノ負擔ノ輕減ニ向ケラレタ經費ト稱セラレテ
  居ルノデアリマスルガ、其金額ガ陸軍ノ整理費ニ對シテ、又
  行政整理ノ費用ニ對シテ、其額ノ餘リニ少キニ失スルコトヲ
  吾々ハ遺憾ニ思フノデアル、又更ニ此稅制整理ニ付テ第一
  ニ御注意ニナラナケレバナラヌ點ハ、言フ迄モナク此負擔ノ
  均衡ト云フ問題デアル、此負擔ノ均衡ヲ破ルト云フコトハ、
  稅制整理ヲ爲ス所ノ趣旨ニ反スルモノト謂ハナケレバナラヌ
  ノデアル、然ルニ此度オヤリニナッタル所ノ稅制整理ハ營業稅
  フ輕減セラレル、營業稅卽チ商工業者ニ對スル一部負擔ノ
  輕減的ノ意味ニ於テノ、一稅制整理ハオヤリニナッテ居ルケレ
  ドモ、農民ニ對スル負擔ノ輕減ヲオヤリニナラヌ結果ハ、所謂
  租稅ノ負擔ノ均衡ヲ破ラレタ所ノ稅制整理ヲオヤリニナッタ
  モノト謂ハナケレバナラヌノデアル、私共ハ斯樣ナ點ニ於
  テ實ニ甚ダ遺憾ヲ感ズル、殊ニ營業稅ノ課稅標準ヲ一部改
  正爲サレタ其結果トシテハ、成程國稅ノ上ニ千九百万圓餘
  ノ金ハ出テ來タ、併ナガラ之ヲ地方ニ持ヲテ行っテ地方ノ附
  加稅ハト云ヘバ、地方ノ附加稅ノ率ハ高クナッテ居ル、地方
  ノ附加稅ガ髙クナッタ結果ハ、商品ニ對スル課稅ト云フモノ
  ハ非常ニ殖エタノデアル
  〔此時發言スル者多ク議場騒然〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=61

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• 062・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　靜粛ニ願ヒマス

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• 063・川崎克

  ○川崎克君(續)　營業者ニ對スル負擔ト云フモノハ、此賃
  貸價格ニ對スル課稅ト云フヤウナモノハ、營業者ニ對スル影
  響卜云フモノハ極テ少イノデアル、卽チ商品ニ對スル所ノ課
  稅ガ、營業者ノ打撃ヲ受ケル程度ガ最モ多イノデアリマシテ、
  此商品ニ對スル附加稅ニ於テハ此度非常ニ稅率ガ上ッタ
  結果ハ、政府ノ改正ニナタ所ノ營業稅ハ、國稅ニ於テハ
  減ック關係ニナッテ居ルガ、地方稅ニ於テハ却テ增加シタト云
  フ、前門ノ虎ヲ防イデ後門ノ獅子ヲ迎ヘタ結果ニナッテ居ル
  デハアリマセヌカ、吾々ハ斯ノ如キ事ヲ以テ、決シテ國民負擔
  ノ輕減ニ向ケラレタモノトハ思ハヌノデアル、又一體政友會
  ノ諸君ノ御演說ニナッタモノヽ中デ、先程島田君ノ御話ヲ
  拜聽致シマスト、嘗テ政友會ハ此負擔輕減ノ問題ニ付テ、高
  橋總裁ノ御演說ニナンタコトヲ御忘レニナッテ居ルノデアル、
  高橋德裁ハ昨年ノ十一月十九日ニ大津デ開カレタ政友會
  ノ近畿大會ニ於テ、減稅反對ノ演說ヲ爲サッテ居ルデハナイ
  カ、明ニ減稅反對ノ演說ヲ爲サレタデハアリマセヌカ、斯樣
  ナ事實ガアッテモ、尙且ツアナタ方ハ高橋總裁ハ斯樣ナコト
  ハ言ハナカッタト言フノデアリマスカ、是ハ高橋總栽ニ御聽ニ
  ナレバ能ク分ルト思フ、而シテ此政友會ノ今日マデノ經過ヲ
  見マスト、何等ノ御提案ガ無イ、何等ノ提案ガ無クシテ、地
  方委讓ト云フ言葉ニ隱レラレテ、サウシテ政府ノ原案ヲ維
  持爲サラウトスルノデアル、併ナガラ政友會ノ言ハレル所ノ
  地方委讓論ノ本體ハ何レニ在ルヤ吾々ハ分ラナイ、今日少シ
  モ明言セラレナイ、其內容ハ如何ナルモノデアルト云フコトモ
  分ラナケレバ、何時ヤルト云フコトモハッキリ分ッテ居ナイノデ
  アル、何時ヤルカハッキリ分ッテ居ルナラバ、何故ニ法律案ヲ御
  提出ニナラヌノデアル(拍手)責任アル政治家トシテ、愈ミ大
  正十三年度カラオヤリニナルナラバ、法律案ヲ提出セラレル
  ト云フコトハ、責任アル政黨、責任アル政治家ノ當ニ爲サナ
  ケレバナラヌ行爲ト私共ハ認メルノデアル、而シテ政府ノ言
  ハレル所ニ依ルト、此地方委譲ノ問題ニ付テハ、政府ハ未ダ
  明白ニ之ヲ答ヘラレテ居ナイヤウデアリマス、愈〓地方委譲
  ヲオヤリニナルトスルナラバ、其財源ハ行政整理ニ依ルノデア
  ルカ、或ハ軍縮ニ依ルノデアルカ、或ハ新稅ヲ起サレルノデア
  ルカト云フコトヲ御尋致シテモ、ソレハ何レニ依ルト云フコト
  ヲ明白ニ言ハレナイ、而シテ先ヅ此地方委譲ヲヤラウト云フ
  ノニ當フテハ、租稅ノ體系ヲ定メテ後ニ行ハレナケレバナラヌ
  ノデアルガ、租稅ノ體系ハ如何カト云ッテ大藏大臣ニ御伺致
  シタガ、一昨日ノ豫算委員會ニ於テハ租稅ノ體系ハ未ダ
  考中デアルト言フ、租稅ノ體系モ未ダ定ラザルニ地方委譲
  ヲ說クト云フガ如キハ、是レ柱ヲ建テズシテ家ヲ建築スルモ
  ノト謂ハナケレバナラヌノデアル、(拍手)又政府ノ示サレタル
  所ノ〓計表ナルモノニ依テテマシテモ、本年度以降ノ〓計
  表ニハ、此地方委譲ニ付テハ何等明言シテ居ラヌノデアル、
  財源ノコトモ謳ッテ居ラナケレバ、ドウスルカト云フコトニ付テハ
  少シモ語ッテ居ルモノハ無イノデアル、吾々ハ之ニ於テ疑ハザ
  ルヲ得ヌ、政府及政友會ノ唱ヘラルルハ所ノ地方委譲ハ、
  此財源ヲ明ニセズ、租稅ノ體系ヲ明ニセズ、其行フベキ年度
  ヲ明ニシナイト云フニ至ッテ、殆ド夢物語ニ類スルモノデアル
  ト謂ハナケレバナラヌノデアル、而シテ吾々ノ此財源論ニ對
  シテ、吾々ガ今マデ唱ヘテ居ル所ノ議論ノ中デ、四千九百万
  圓ノ財源ハ無イ、其財源ヲ明元シナイト云フコトヲ屢〓、何フ
  ノデアリマスガ、私共ハ其財源ノ一端トシテ擧ゲテ居ルモノノ
  中ニ、諸君ト一緒ニ昨年此議會ニ於テ、吾々ハ陸軍ノ軍備
  ヲ縮小スベシ、而シテ四千万圓ノ金額ヲ捻出スベシト云フ決
  議ヲ爲シテ居ルノデアル、其決議ハ滿場一致デ決メタ決議
  デアル、政友會ノ諸君モ御同意ニナッタデハナイカ、然
  ルニ今日陸軍ノ御提出ニナッテ居ル所ノ此減ッタ金額ハ
  幾ラデアルカト云ヘバ、二千三百六十万圓ニ過ギナイ、
  先程大口君ノ御說ニ依ッテモ、二千万圓以下ト言ハ
  レタガ、私ハ大口君ノ御說以外ニマダ尙ホ陸軍ハ行政
  整理ト人事整理ヲ混淆サレテ居ル所ノ痕ガアル、現
  在老朽淘汰トシテ每年々々淘汰セラレナケレバナラヌ所ノ
  人員ヲ軍備整理ニ入レテ、軍備整理ノ金額ヲ增シテ居ルノ
  デアル、今日行政整理トシテ現ハレタ所ノ金額ハ幾ラカト云
  ヘバ、百二十一万圓ニ過ギヌデハアリマセヌカ、陸軍ノ經費
  一億八千万圓ニ對照致シマシタナラバ、百五十分ノ一
  ニ過ギナイ所ノ行政整理シカ出來テ居ラヌデナイカ、陸軍ノ
  整理ガ餘リニ大キクシテ、行政整理ガ餘リニ少イデハナイカ、
  此行政整理人事整理ノ區別ヲ明ニセズシテ、之ヲ全部擧
  ゲテ是ハ軍備整理デアルト一云フコトヲ唱ヘラレルノハ、恰モ
  銀ニ對シテ鉛ヲ入レテ、是ハ銀デアルト云フテ賣ル所ノ商人
  ノ類デアルト謂バナケレパナラマノデアル、吾々ハ此點ニ於テハ
  明ニ二千万圓以上ノ金額ヲ減ジ得ルト思フ、殊ニ行政ノ整
  理ヲ行ヒ、海軍ノ整理ヲ行フナラバ二三千万圓ノ金額ハ
  立所ニ出テ來ルデハナイカ、吾々ノ整理案ハ根據ノ無イコ
  トヲ少シモ言ッテ居ルノデハナイノデアル、吾々ハ斯ノ如キ見地
  ニ立ッテ、吾々ノ唱ヘル所ハ本年度カラ地租モ營業稅モ共ニ
  輕減スベシト云フ議論ヲ唱ヘルノデアッテ、此議論ヲ主張ス
  ル根據ニハ、吾々ノ此租稅ヲ起シタ元ニ立歸ッテ考ヘテ見テ
  モ、軍國議會ノ產ミ出シ夕所ノ此和稅、明治三十七八年ノ
  戰役ガ產ミ出シタ所ノ此租稅ハ、此度軍備縮小ト云フコト
  ニ依シテ、此軍國主義ノ殻ヲ踏破ルベキ時代ガ來テ居ルノデ
  アル、此軍國主義ノ時代ガ產ミ出シタ軍國議會ノ產物デア
  ル所ノ非常特別稅ハ、之ヲ元ニ還元スベシト云フコトヲ吾々
  ガ唱フル論點デアルノデアリマス、又其地租ヲ還元スルノミ
  ナラズ、營業稅ニ付テハ、從來惡稅トシテ非難セラレタル所
  ノ徵稅方法及課稅標準ニ變史ヲ加ヘテ、之ヲ純然タル所
  ノ特別收入稅ノ形ニ引直シテ之ヲ維持スルト云フコトガ、
  吾々ノ唱ヘントスル議論デアル、吾々ハ單獨ニ所得稅ノミヲ
  以テ現在ノ租稅系統ヲ立テヽ行カウトスルコトハ、甚ダ危險
  ヲ感ズルノデアル、何トナレバ所得稅ハ言フマデモナク彈力
  稅デアル、盛衰消長ガアルノデアル、此盛衰消長ノアル稅ニ
  對シテ、盛衰消長ノ少イ稅ヲ持ノテ來テ之ニ補助ヲ加ヘルト
  云フコトハ、租稅ノ系統上必要缺クベカラザル點デアルト私
  共ハ信ズルノデアリマス、斯樣ナ點ニ立ッテ吾々ハ營業稅地
  租ノ輕減ヲ行フト共ニ、社會政策ノ意味ニ於テ、織物稅及
  醬油消費稅ノ輕減ヲ行ッテ、現在ノ社會ノ要求ニ副ウテ、此
  租稅ノ輕減國民ノ負擔ヲ輕クスルト云フコトヲ實行シタ
  イト云フノガ吾々ノ意見デアルノデアリマス、顧ミレバ三十六
  年、此議會ニ於テ海軍ノ擴張問題ニ附隨シテ、地租ノ增稅
  ト云フモノヲ計畫セラレ夕當時、政友會モ憲政本黨モ擧クテ
  之ニ反對ヲ致シテ、ソレガ爲ニ議會ハ解散致シ、其次ノ第十
  八議會ニ於テハ、內閣ハ餘儀ナク地租增稅案ト云フモノヲ
  撤囘スルノ外ナキニ至ラシメタ所ノ尊キ歷史ヲ有スル所ノ
  諸君ガ、今日此度始メテ此軍備ノ縮小ノ行ハレル際ニ於
  テ、地租ノ輕減ヲ行ハレルト云フコトハ當然デアッテ、本年地
  租ノ輕減ヲ行ウタカラト云ッテ、來年ニ地租ノ委讓ハ出來ナ
  イノデハナイ、吾々ハ本年カラ實行スルノデアル、本年此輕減こ
  ヲ行ヒタイノデアル、來年カラ諸君ハ地租ノ委讓ヲ行ハレル
  モ、何ノ不可カアランデアッテ、之ヲ阻ムト云フコトハ政黨根
  性ヲ以テ漫リニ國政ヲ弄ブモノナリト斷言スルノデアリマス

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• 064・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　砂田重政君
  〔砂田重政君登壇)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=64

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• 065・砂田重政

  ○砂田重政君　此稅制ノ問題ハ、非常ニ重大ナ問題デア
  リマス、殆ド日本國民全體ガ、眞劍ニ此結果ガ如何ニナルカ
  ト云フコトヲ期待シテ居ル問題デアリマス、唯〓徒ニ政黨ノ
  揚足ヲ取リ、攻撃ヲ仕合フ問題デナイト私ハ信ジテ居ルノ
  デアリマス、吾々ハ此重要ナル案ガ今日議セラレルニ方リマ
  シテハ、特ニ謹ンデ諸君ノ眞面目ニ眞劍ナル御批評ヲ仰ギ
  タイト思フノデアリマス、本年此地租營業稅ノ委譲ノ問題
  ニ付テ、吾々ハ今期ノ議會ニ政府ガ單純ニ營業稅ノ極メテ
  一部ニ對スル改正案ヲ出サレタト云フコトハ、此政府ノ爲ニ
  之ヲ悲シマナケレバナラスト思フノデアリマス、申ス迄モナク
  三稅ノ廢止ト云フコトハ、幾度カ吾々ガ唱ヘタ、營業稅ノ撤
  廢ト云フコトモ、今日迄屢〓唱ヘタ問題デアリマス、且ツ其後
  ニ臨時財政經濟調査會ヲ、大正八年ニ吾々ノ同志デアリ、
  吾々ノ先輩デアル野添君カラ此議場ニ建議ヲ致シ、政府
  ハ之ヲ採用シテ日木ノ經濟及財政-稅制ニ對シテ根本
  的、改革ヲ圖ルベク、玆ニ調査會ヲ作ルト云フコトニナッタコ
  トハ、諸君ノ御承知ノ通リデアリマス、而シテ此財政經濟調
  査會ガ出來テ以來、屢〓惡稅ニ對シテ如何ナル處置ヲ執ル
  カト云フコトヲ政府ニ質問ヲ致ス每ニ、前々ノ原內閣ニ於
  テモ、前內閣ノ高橋內閣ニ於テモ、常ニ答辯サレタコトハ、現
  ニ財政經濟調査會ノ諮問ニ付シテ居ルカラ、具答申ヲ待ッテ
  速ニ之ヲ實行スルノデアルト云フコトハ、此演壇ニ於テ屢、
  總理大臣ヨリ承ッタ所デアリマス、隨ッテ現內閣ガ、高橋內閣
  ノ後ヲ受ケテ政府ヲ引受ケラレタ以上ハ、此財政經濟調査
  會ノ答申ヲ待ッテ、速ニ之ニ依シテ一定ノ方針ヲ立テ、一定ノ
  主義ヲ立テヽ今期ノ議會ニ之ヲ現ハスト云フコトガ、現內
  閣ノ責任デアラウト吾々ハ考ヘルノデアリマス、然ルニ現内
  閣ハ、過日吾々ノ同志大口君ガ、地方ノ財政ノ窮困ノ狀態、
  國費多端ニシテ國民ノ負擔ニ堪ヘ難キ狀態ヲ述ベテ、是ガ
  根本的解決ニ付テハ如何ナル考ヲ持フテ居ルカト云フ質問
  ニ對シテ、總理大臣モ內務大臣モ、明ニ御同感デアルト言
  ハレテ居ル、又大藏大臣ハ過日來ノ稅制ノ委員會ニ於テ、
  地和、營業稅ノ地方委讓ト云フコトハ、主義ニ於テ贊成デ
  アルト云フコトヲ明ニ言ハレテ居リマス、旣ニ現內閣ガ賛成
  デアルト云フ以上ハ、何故直ニ之ヲ實行シナイノデアリマス
  カ、現内閣ハ就職尙ホ日ガ淺イカラ、其點ニ付テハ熟考中
  デアル、考へ中デアルト云フコトヲ屢、御答ニナッテ居ルノデア
  リマス、併ナガラ現内閣總理大臣ノ加藤サンハ既ニ原内閣
  時代カラノ大臣ノ席ニ列セラレテ、此總理大臣ガ今日マデ
  屢、答辯ヲ爲シタル稅制ノ根本整理ハ、財政經濟調査會ノ
  答申ヲ待ッテ速ニ實行スルト云ンコトハ、今日マデ能ク御存
  ジノ筈デアル、若シ加藤内閣ガ全然此機會-此內閣ヲ組
  織スルニ至ルマデハ、此稅制ノ根本整理ニ付テ何等ノ方針
  ナシ、何等ノ考ヲ持ッテ居ナクシテ此内閣ヲ受繼イダナラバ、
  此内閣ハ輔弼ノ責ヲ完ウシナイ內閣ト謂ハナケレバナラヌ
  (拍手)少クトモ加藤サンガ此内閣ヲ引受ケラレタ以上ハ、
  此內閣ハ議會ノ上ニ何等ノ根據ヲ持ッテ居ルモノデモナイ
  本當ノ中繼內閣、若ハ中間內閣、此中間閣ノ使命ハ何
  デアルカ、中間內閣トシテ出來上ッタ此內閣ノ使命ニ、唯こ
  少クトモ此世界ノ大勢ニ順應シテ、國民ノ思湖ニ共鳴スベ
  ク善政ヲ行フト云フコト以外ニハ何モノモナイ筈デアル、然
  ルニ主義ニ於テ賛成ヲシナガラ、其實行ヲ期スルコトガ出來
  ナイト云フコトハ、內閣自體ノ實ニ其識見ノナイ無爲-所
  謂徒食ヲシテ居ル内閣トモ謂フベキモノデアル、既ニ內閣ガ
  斯ノ如シトセバ、政友會ノ諸君ハ前ノ最モ尊敬サレク原總
  理大臣、及前總理ノ高橋サンガ、屢〓此席ニ於テ言明サレタ
  ガ如クニ、答申ノ終シ夕以上ハ、直ニ之ヲ實行スルト云フダケ
  ノ抱負ハ御持チニナラナケレバナラヌト思フノデアル、然ルニ
  政友會ニ於テハ、是ハ本年ヨリ實行ハシナイ、革新倶樂部ノ
  主張ハ悉ク賛成デアル、併ナガラ本年直ニ實行スルト云フ
  コトハ出來ナイカラ、來年カラ實行スルノデアル、既ニ諸君ガ
  眞ニ來年カラ實行サルヽト云フ意思ガアルナラバ吾々ノ此
  大正十二年度ヨリ地租營業稅ヲ廢止スルト云フ案ニ對シ
  テハ、之ヲ十二年ト云フ「二」ノ字ヲ「三」ノ字ニ直シテ、修正
  意見ヲ御出シニナラナケレバナラヌ(拍手)現ニ本年度ノ政
  府ノ提案ノ中ノ賣藥營業稅ニ對スル法律ノ改正案ハ、大正
  十三年度ヨリ之ヲ實行スト云フ事ガ書イテアル、之ニ諸君ハ
  賛成ヲサレテ居ルデハナイカ、然ラバ本當ニ諸君ガ誠意ヲ以
  テ實行サレルナラバ、之ニ修正ヲ加ヘラレテ適當デアラウト思
  フ(拍手)併ナガラ吾々ノ信ズル範圍ニ於テ、本日島田君ハ
  始メテ革新倶樂部ノ主張ニハ主義ニ於テ贊成デアル、來年
  カラ之ヲ實行スルニ躊躇シナイト言ハレマシタガ、眞ニ政友會
  ノ諸君ガ稅制ノ根本整理ニ關スル識見ヲ持タレテ、速ニ此
  答申ノ當時ヨリ根本的ノ此大方針ヲ御定メニナッテ居ルナ
  ラバ現內閣ヲ應援スルモノハ政友會デハアリマセヌカ、此
  豫算ヲ編成スル迄ニ何故ニ此主張ヲ爲サラナカッタノデアル
  カ(「ヒヤ〓〓」拍手)諸君、併ナガラ吾々ノ主張致シマスル此
  地租及營業稅ノ撤廢、地方委讓ノ問題ハ今日政府カラ
  提案サレテ居リマスル營業稅ニ對スル改正案ノ如キ不徹底
  ナルモノデハナイノデアリマス、是ト同時ニ憲政會ノ諸君ガ
  御提出ニナッテ居ル如キ應急的ノ性質ヲ持ックモノデモナイ
  ノデアリマス、申ス迄モナク吾々ノ提案ハ、先程大口先生カ
  ラ詳細ニ述ベラレマシタ如クニ、國民ノ負擔ヲ普遍的ニ輕
  減シ、而シテ一面ニ於テハ膨脹ニ膨脹ヲ重ネタル國費ノ整
  理ヲ行ヒ、地方費ノ緩和ヲ圖ルト云フコトヲ目的トシテ此案
  ハ提案サレタノデアリマス、隨テ其根本ノ趣旨ニ於テ政府ノ
  提案トモ違ヒ、憲政會ノ提案トモ違フノデアル、吾々ガ屢。今日
  迄主張シタ如クニ、此國費ノ十三億四千万圓ニ對シテ、今
  日ノ地方費ハ十一億五千万圓ノ多額ニ上ッテ居ル、而モ此
  多額ニ上ッテ居ル國費ハ、獨リ農民ノミガ負擔スルノデモアリ
  マセヌ、又商工業者ノミガ負擔スルノデモナイノデアリマス、此
  負擔ヲ負フ者ハ國民全體-給料ニ依シテ生活スル人モアル、
  勤勞ニ依シテ生活スル人モアルノデアリマス、既ニ國費ガ非常ナ
  ル多額ニ上ッテ堪へ切レナイト云フ時代ニハ、農民トカ商工業
  者トカ、或ハ給料ニ依ッテ生活スル者トカ、勞働者トカ云フコ
  トヲ、此間ニ差別ヲ付ケテ、別々ニ之ヲ考ヘルコトハ出來ナイノ
  デアリマズ、總テノ國民ニ、普遍的ニ、徹徹的ニ、此負擔ノ輕減
  ガ行ハレ、而シテ普遍的ニ總テノ人々ガ輕減ノ恩澤ニ浴スルト
  云フコトデナケレバ吾々ハ徹底シナイト思フノデアリマス、此意
  味ヨリスレバ、此地租營業稅ヲ委讓シテ、而シテ之ヲ一部分
  ニ地方費ニ充テ、他ノ一部分ヲ營業者及地租ノ納稅者ノ負
  擔ノ輕減ニ充ツルト云フコトノ結果ハ、地方費ノ上ニ於ケ
  ル先程大口君ノ述べラレタ戶數割デアルトカ、雜種稅デア
  ルトカ、有ユル方面ニ向ッテ之ヲ均霑シテ行ッテ、國民全體ノ
  負擔ノ輕減ヲ圖ラウト云フコトヲ根本ノ趣旨トシテ、此案
  ハ提案サレテ居ルノデアル、唯.此問題ニ對シテ先程來川
  崎君デアリマシタカ、革新倶樂部ノ提案シタ財源ハ非常ニ
  誤リガアル、恆久的ノ財源デナイト云フ御議論ヲ繰返サレ
  タヤウデアリマス、又一面ニ於テハ此地租營業稅ヲ直ニ委
  讓スルト云フコトハ、所謂和稅ノ體系ヲ紊ルモノデアルト云
  フ御議論モ出タヤウニ承リマシタ、又政友會ノ堀切君カラ
  ハ、此財源問題ノ海軍擴張問題ニ對シテ、革新倶樂部ノ主
  張ニ對スル疑ヲ持タレタヤウデアリマスルガ、是等ノ點ニ對
  シテ私ハ極メテ簡單ニ辯明ヲ致シテ置キタイト思フ、川崎君
  ガ、海軍費ヲ削ルト云フコトハ間違ッテ居ル、而モ之ヲ削ッタ
  結果ハ、恆久的財源ニナラナイト云フ御議論ノヤウニ承リ
  マシタ、併ナガラ此海軍ノ所謂艦艇製造費ヲ削ルト云フコ
  トハ、是モ先程大口君ガ述べラレタ如クニ、華盛迫會議ニ於
  テ既ニ一旦人道ノ爲メ-社會人道ノ爲ニ世界的平和ヲ
  保タウト云フコトヲ認メラレテ、所譯大軍艦ヲ造ル爲ニ莫大
  ナ經費ヲ掛ケテ居ッタモノスラ打捨テヽ、此華盛頓會議ノ條
  約ヲ締結サレテ歸ラレタ以上ハ、之ニ代ルベキ小艦精銳主
  義ノ軍艦ヲ、玆ニ又大正十二年度ヨリ更メテ要求スルト云
  フコトハ、華盛頓會議ニ、此條約ニ參加シ、之ヲ承認シタル
  加藤總理大臣トシテハ、出來ナイ事デアルト云フコトヲ說明
  シテ居ル(拍手)而シテ是ガ恆久的財源ニナラナイト云フ御
  議論ハ、幾ラ吾々ガ考ヘテモ分リマセヌガ、少シ此内容ヲ御
  話ヲ致シテ見マスナレバ、川崎君ニ先ヅ吾々ノ主張シテ居ル此
  財源ト云フモノハ、少クトモ今日ノ歲入歳出ノ狀態ラ以テ
  今後モ進ムト云フコトガ前提デアルト云フコトヲ豫メ申シテ
  置カナケレバナラヌ、歳入ニ大變化ノ起ラナイ、卽チ十三億
  四十万圓ノ歲入ハ今後繼續スルト云フコトガ前提ニナラ
  ナケレバ議論ハ出來ナイノデアリマス、而シテ此海軍ノ中デ
  假ニ吾々ノヤウニ、是ハ全部入レナイト云フコトノ議論ヲ棄
  テヽ、大口君ガ先程言ッタノハ此意味デアル、假ニ之ヲ全部
  ヲ打切ルト云フコトヲ止メマシテモ、尙ホ之ヲ繰延ベタナラ
  バ四千六百万圓ヅヽ恆久ニ金ノ出ルト云フ意味ハ斯ウ
  云フ意味デアル所謂軍備補充費ノ第一款ニ於テ、本年
  度ノ支出額ガ六千九百六十六万九千圓アルノデアリマス、
  サウシテ是ハ其後十三年、十四年ノ三箇年ニ亙ッテ、十三年
  度ハ四千万圓、十四年度ハ千三百万圓、斯樣ニ出ルノデア
  リマス、吾々ハ之ヲ認メテノ話デアル、之ヲ認メテ此艦艇製
  造費ノ大正十二年度四千六百万圓、大正十三年度七千
  万圓、此以後ノ大正十六年度マデニ、總計三億八千八百
  万圓出ス分ヲ、假ニ之ヲ一年延期ヲシテ大正十三年度カ
  ラ行クトドウナルカ、之ヲ十三年度カラスレバ、本年ノ四千
  六百万圓ガ所謂大正十三年度ニ廻ル譯デアル、サウスルト
  大正十三年度ニハ本年一方此軍備補充費ノ方デ七千万
  圓出ス分ガ來年ハ四千万圓ヨリ出サヌノデアルカラ、此七
  千万圓ノ割合ヲ以テ年々出シテ行クナレバ、來年度ニ於テ
  四千万圓補充費ニ使ヘバ艦艇製造費ノ方ニ三千万圓
  增スコトガ出來ル、其翌年ハ一方ニ千三百万圓ヨリ使ハナ
  イカラ、一方ニ於テ五千七百万圓ヲ使フコトガ出來ル、其
  後之ヲ十八年度マデ七千万圓ヅツ出シテ行ケバ此四千六
  百万圓ト云フ計數ハ永遠ニ歲入ノ上ニ於テ殘フテ行クト云
  フ意味デアリマス、其意味ヲ主張シタノデアリマス、是デ御
  分リニナラナケレバモ少シ詳シク申シテモ宜シイ、ソレカラ滅
  債基金ノ繰入ト云フコトヲ否決スルト云フコトハ、非常ナ危
  險ヲ感ズルト云フ御議論デアル、是ハ先程大口君ノ述ベマ
  シタ如クニ、減債基金ヲ今日繰入ヲ爲ス必要ナシト云フコ
  トヲ吾々ハ主張シタ、此減債基金ノ繰入ヲ今日マデシナ
  カッタ爲ニ-大正九年カラ今日迄此減債基金ノ繰入ヲシ
  チカッタ爲ニ、日本ノ公債ガドノ位下ッタト主張サレ
  ルノデアリマスカ(「下ッテ居マスゾ」ト呼フ者アリ)ソ
  レハ君ノ考ガ間違ヲテ居ル、決シテ是ハ下ッタノデナ
  イ、殊ニ諸君ハ盛ニ之ヲ下ルト主張サレマスガ、之ヲ下ラナイ
  ヤウニスル方法ハ政府ニ確カニアル、四千二百万圓位ノ金
  ヲ此中ニ補充ヲシナクテモ、大藏省ノ預金部ニハ大正十一
  年十二月末日現在ニ於テ、郵便貯金、振替貯金等ニ於テ
  十三億四千九百万圓ノ金ガアルノデアリマス(拍手)而シテ
  公債ノ下落スル危險ノアル場合ニハ常ニ此預金部ノ金ヲ
  以テ買入償還ノ方法ヲ以テ是ハ釣上ゲラレテ居ル、少シモ
  御心配ハ無イノデアル、此明カナ問題ヲ、之ヲ若シ此減債基
  金ノ繰入ヲ止メタナラバ、直ニ國家ニ危險ガ生ズルヤウナコ
  トヲ言ハルヽノハ、諸君ハ此公債基金ヲ入ルコトヽ、現寶ニ
  於ケル今日國民ノ困ッテ居ルコトヽ、何方ガ重イト言ハレル
  ノデアリマス、諸君ハ此減債基金ヲ、今後我國ニ於ケル財政
  上ノ危險ノ無イト云フコトヲ認メラルヽ以上ハ、今日先ヅ國
  民ノ最モ苦痛トシテ居ル租稅ノ輕減ニ充テルト云フコトハ、
  少シモ暴論デハナイノデアル(拍手)ソレカラ陸軍ノ經費節
  滅ニ付テ、恰モ革新倶樂部ノ主張ニ誤ガアル如キ御議論ヲ
  爲サッタノデアリマス、是ハ陸軍ノ整理ヲシマシタ金ノ總計デ
  二千三百六十万圓デアルト云フコトハ、川崎君ノ御議論モ
  吾々ノ主張モ同樣デアリマス、唯こ此中ニハ癈兵院、航空
  費、ソレカラ馬政局ヲ他ニ移管シタ金ガアルカラ、事實陸軍
  ニ於テ減シテモ、他ノ部ニ於テ殖エテ居ルカラ、總計今日ニ於
  テハ一千九百八十万圓ヨリ陸軍ノ縮少ハ行ハレテ行ラヌノ
  デアリマス、隨テ吾々ガ一一千十六万圓ト云フコトヲ稱ヘタノハ、
  此所カラ稱ヘテ居ルノデアル、以上述ペマスルガ如クニ吾々
  ノ主張致シテ居リマスル根據ハ、適當ニ此兩稅ヲ地方ニ委
  讓スルコトガ出來ルト云フ確信ノ下ニ行ハレタノデアル、吾
  吾ハ決シテ憲政會ノ如クニ未ダ財政ノ整理、稅制ノ根本整
  理ニ付テハ何等ノ意見ガ無イト云フヤウナ考デハ吾々ノ
  此主義ニ對シテ批評ハ加ヘラレナイト思フ(拍手)此政府ガ
  旣ニ吾々ノ主張ヲ實行シナイ、無爲ニシテ何事モ爲シ得ナ
  イモノナリト云フナラバ、若シ此政府ガ倒レテ万々一憲政會
  ニ行クヤウナコトガアッタ場合ニ、憲政會ノ諸君ハ、吾々ハ稅
  制ノ根本整理ニ付テハ、何等ノ考モ無イカラ御斷リ申スト
  言ハレルノデアリマセウカ(拍手)吾々ハ政府ニシテ之ヲ實行
  シナイ以上、總テノ政黨ニ於テ此根本方針ヲ定メテ、此政
  府ニ向ヲテ之ヲ實行セシムルト云フコトガ、國民ニ對シテ最モ
  忠實ナ、遣方デアラウト思フノデアル(拍手、「ヒヤ〓〓」)願ク
  ハ諸君、靜ニ此狀態ヲ御考下サッテ-眞面目ニ御考下サッ
  テ、國民ノ利益ノ爲ニ如何ナル方法ヲ執ルノガ最モ忠實デ
  アルカト云フコトヲ御考下サッテ、吾々ノ主張ニ御賛成下サ
  ランコトヲ切望シテ已マナイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=65

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• 066・岩崎勲

  ○岩崎勳君　討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=66

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• 067・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ヨリ討論終結ノ動議ガ
  出マシタ、之ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=67

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• 068・粕谷義三

  ○副議長(柏谷義三君)　御異議ハナイト認メマス、仍テ討
  論ハ終結サレマシタ、採決ニ先チマシテ採決ノ順序等ニ付テ
  一言致シテ置キマス、第一ニ政府竝ニ議員提出ノ所得稅
  法案ヲ採決致シマス、次ニ政府竝ニ議員提出ノ營業稅法
  案、次ニ政府提出石油消費稅廢止法案、賣藥稅案、印紙
  稅法案、次ニ議員提出地租條例ニ關スル法案、次ニハ議員
  提出醬油稅則、織物消費稅法ニ關スル法案、次ニ自家用
  醬油稅法案、斯樣ナル順序ニ依シテ採決ヲ致シマス、而シテ
  同一ノ議案ハ便宜一括シテ採決致シマスガ、廢止案ト改正
  案トアリマスル、是ハ先ヅ廢止案ヨリ採決ヲ致シマシテ、次ニ
  改正案ヲ採決スルコトニ致シマス、其事ヲ豫メ諸君ノ御了
  承ヲ願っテ置キマス、所得稅法中改正法律案ハ、政府案卜岩
  本半藏君外六名提出ノ二案アリマス、先ヅ政府提出所得
  稅法中改正法律案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シ
  マス、第二讀會ヲ開クコトニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=68

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• 069・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマス、仍テ第
  二讀會ヲ開クコトニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=69

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• 070・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミ
  ママス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=70

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• 071・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニハ御異議ナイト
  認メマス仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ議案全部ヲ議題ト致シ
  マス、此際高田耕平君ヨリ發言ノ通告ガアリマス、之ヲ許シ
  マス
  所得稅法中改正法律案(政府提出)第二讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=71

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• 072・高田耘平

  ○高田耕平君　簡單デアリマスカラ自席ヨリ發言ヲ求メマ
  ス、本改正案ニ付キマシテ、委員長報告ニ三箇ノ修正意見
  ガアルノデアリマス、卽チ第二十六條、第七十三條及第七十
  四條デアリマス、吾々ハ其中第二十六條ノ三箇年溯及スル
  コトガ宜シクナイト云フ、此修正意見ニハ同意致シマス、併
  ナガラ第七十三條及第七十四條ノ修正意見ニハ反對デア
  ル、卽チ政府提案ノ通リ是ニハ贊成ヲ致スノデアリマス、理
  由ハ申述ベマセヌデ-時間モアリマセヌカラ唯"極テ簡單
  ニ··
  〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=72

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• 073・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　只今高田君ノ御述ニナリマシ
  タ御說ハ、委員長ノ報告ニ對シテ一部ノ反對デアリマス、先
  ヅ此點ハ採決致シマス、卽チ第七十三條ノ二ニ第二項ヲ加
  ヘル點ト、ソレカラ第七十四條中ノ削除ノ點、此點ニ付キマ
  シテ委員長ノ報告ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ望ミマス
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=73

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• 074・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　起立多數、卽チ委員長ノ報告
  ノ通リ決シマス、他ハ委員長ノ報告ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=74

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• 075・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ハナイト認メマス、仍テ委
  員長ノ報告ノ通リ決シマス、是ニテ第二讀會ハ終了ヲ致シ
  マシタ、本案ノ第三讀會ヲ開クニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=75

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• 076・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ第
  三讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=76

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• 077・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直ニ第三讀會ヲ開キ第二讀會議決ノ通リ、
  可決確定セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=77

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• 078・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニハ御異議ナイト
  認メマス仍テ直ニ第三讀會ヲ開キマヌ
  所得稅法中改正法律案(政府提出)第三讀會
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=78

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• 079・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御御異議ハナイト認メマス、仍
  テ岩崎君動議ノ如ク決シマス、次ニ岩本平藏君外六名提
  出ノ所得稅法中改正法律案ノ第二讀會ヲ開キマス、本案
  ニ對シテハ村山喜一郞君ヨリ修正ガ提出サレテ居リマス
  〔村山喜一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=79

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• 080・岩崎勲

  ○岩崎動君　一寸議事ノ進行ニ付テ、今第二讀會ヲ開ク
  ヤ否ヤヲ第一讀會ニ於テ御決メヲ願ハナケレバナラヌ
  〔「議長ガ第二讀會ヲ開クト宣告シタ」ト呼フ者ア
  リ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=80

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• 081・岩崎勲

  ○岩崎勳君　第二讀會ヲ是カラヤルノデアリマス
  〔「間違ッタラバ直シ給へ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=81

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• 082・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　一寸誤リマシタ、ソレデハ只今
  宣告致シタコトハ誤リマシタカラ、ソレハ訂正致シマス、是ヨリ
  第二讀會ヲ開キ-第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=82

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• 083・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=83

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• 084・岩崎勲

  ○岩崎動君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマ
  ス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=84

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• 085・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハナイ
  ト認メマス、仍テ直ニ本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
  ス
  所得稅法中改正法律案(岩本平藏君外六
  名提出)第二讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=85

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• 086・村山喜一郎

  ○村山喜一郞君　私ハ岩本平藏君外六名提出ニ係ル所
  得稅法中改正法律案ニ對シテ修正ノ動議ヲ提出スル者デア
  リマス、卽チ其主張ハ「山林ノ所得ハ竹木伐採ニ因ル前年
  ノ總收入金額ヨリ其ノ植栽養成ニ必要ナル經費ヲ控除シ
  タル金額」ト、此本文ニ對シテ「其ノ植栽養成ニ」ト云フ七字
  ヲ削ルノデアリマス、其理由ハ岩本君案ニ依リマスレバ山
  林伐採ノ所得トシテ控除スベキ必要ナル經費ト云フモノハ
  其植栽養成ニ關スルモノヽミデアルト斯樣ニナルノデアリマ
  ス、現行法デハ必要ナル經費ノ總テヲ控除スルト斯樣ニナッテ
  居リマス、卽チ其中ニハ植栽養成ノ經費ハ勿論買入代金
  其モノモ必要ナル經費ノ中ニ包含サレテ居リマス、然ルニ此
  改正案ニ依リマスレバ、假ニ木材業者ガ或ル立木ヲ一万圓
  ニ買受ケマシテ、而シテ之ヲ一万千圓ニ賣シタ、斯樣ナル場
  合ニ於テハ、其買入代金ナルモノ全部ヲ所得トシテ算定セ
  ラルヽノデアリマス、私共考ヘマスルニハ、立木ノ買受代金ナ
  ルモノハ元本デアリマシテ、所得デハナイノデアリマス、然ルニ
  此改正ノ結案、其買入代金立木ナルモノハ、卽チ(「ソレハ誤
  解デアリマス」ト呼フ者アリ)サウデアリマセヌ、立木ナルモノヽ
  買入代金ハ、其所得トシテ之ニ課稅ヲスルト斯様ニ相成ル
  ノデアリマスルカラ、現行法ヨリモモット控除金額ガ少クナル
  ノデアル、卽チ伐採ニ著手スルモノハ眞實ノ所得ナキニ、其
  買入代金其モノヲ所得ナリトシテ課稅ヲ受クルト云フ不幸
  ヲ見ルノデアリマス(拍手)卽チ此意味ニ於テ現行法ニ依ル
  所ノ必要ナル經費ト云フモノハ、其牧入ヲ得ルニ必要ナル
  總テノモノト云フコトニ改ムル目的ヲ以テ「其ノ植栽養成
  ニ」ノ七字ヲ削ルト、斯ウ云フ意見ヲ提出スルノデアリマス
  (「七字ヲ削ルノデスカ」ト呼フ者アリ)左樣デアリマス、尙ホ
  此機會ニ於テ岩本平藏君提出ニ係ル所ノ第二十三條但
  書ガ、委員會ニ於テ全部削除ト決定ニナッタノデアリマス、元
  來此案ハ岩本君ノ名ニ依ヶテ提出ニハナッテ居リマスケレド
  モ、大日本山林會ニ於テ此成案ヲ定メマシテ、其名ニ於テ
  農商務大臣及大藏大臣ニ是ハ建議サレテ居ル、然ルニデ
  ス、此問題ハ全國林業家多數ノ希望ニ依シテ、玆ニ一ツノ案
  ガ出來タノデアリマシテ、其由ッテ起ル所ノモノハ(「モウ止
  セ〓〓」ト呼フ者アリ)-聽イテ下サイ、其由ッテ起ル所ノモ
  ノハデス、現行法ハ山林ノ所得ハデスネ、假ニ五十年ニシ
  テ-五十年ノ伐期ニ於テ之ヲ伐採シテデス、其金額十万
  圓デアルト假定致シマスレバ、其十万圓ハ其年ニ得タル所
  得ナリトシテ、ソレニ對應スル稅率ヲ課スルノデアリマス、併
  ナガラデスネ、是ハ眞實ノ意味ニ於テ其年ニ得タル所得デハ
  ナイノデアル、唯〓五十年間蓄積サレタルモノガ、其年ニ於テ
  現金ニ變ノタト云フノデアリマスルカラ、所得稅ノ本質トシテ
  一年間ノ所得ヲ計算スルノガ當然デアル、五十年ニシテ十
  万圓ヲ得タルナラバ、則チ其平年一年間ニ相當スル所得ト
  云フモノハ二千圓ナノデアリマス、然ルニデス、現行法ハデス
  ネ、之ヲ一年ニ十万圓ノ收入ヲ得タルモノトシテ租稅率ヲ
  課スルノハ不當ナンデアル、能ク其木材ノ年齡、其成長期間
  ニ得タル年限ヲ以テ之ヲ割出シ、一年間ノ所得ヲ見出ス、サ
  ウシテ一年間ノ所得ニ對應スル稅率ヲ課スルト云フコトニ
  改メルノガ合理的デアル、斯樣ナル意味ニ於テ建議ヲサレタ
  ノデアリマス、然ルニ政友會ハ之ニ對シテ反對セラレテ、茲ニ
  愈〓と葬ラルヽコトニナッタンデアル、併ナガラ是ハ確ニ岩本君
  ノ御提出ニナリマシタ此條項ハ、明ニ道理ニ適フ合理的ナ
  ルモノデアリマスルガ故ニ、縦シ本年否決ニナリマシテモ恐
  ラクハ明年或ハ稅制整理ノ機會ニ於テ、必ズ實現ハ期シ得
  ラルヽコトヽ思フノデアリマス、願クバ政友會ノ諸君モデス、
  此點ニ顧ミテ更ニ愼重ニ御考慮アランコトヲ、此際ニ於テ
  希望スル次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=86

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• 087・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　村山君ノ修正說ニ付テ採決致
  シマス、岡君ノ修正ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔贊成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=87

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• 088・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　起立少數デアリマス、村山君修
  正ハ否決サレマシタ、次ニ委員會ノ修正ニ贊成ノ諸君ハ起
  立
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=88

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• 089・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　起立多數、仍テ委員長ノ報告ノ
  通リ可決サレマシタ、是ニテ本案ノ第二讀會ハ終了致シマ
  シタ、本案ノ第三讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=89

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• 090・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ第
  三讀會ヲ開クニ決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=90

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• 091・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、第二讀會ニ於
  テ議決ノ通リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=91

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• 092・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎勳君ノ動議ニハ御異議ナ
  イト認メマス、仍テ第三讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致
  シマス
  所得稅法中改正法律案(岩本平藏君外六
  名提出)第三讀會
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=92

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• 093・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ第
  二讀會議決ノ通リ可決確定シタルコトヲ宣告致シマス、次
  ハ營業稅法案デアリマスガ、是ハ廢止案ト改正案トアリマ
  ス、卽チ廢止案ハ林田龜太郞君外十七名ノ御提出、又安
  達謙藏君外四名御提出、又上田彌兵衞君御提出、以上
  三案アリマス、其提案ノ理由ハ曩ニ御說明ニナリマシタ通
  リ、各〓違ヒマス點モアリマスケレドモ、同法ヲ廢止スルト云
  フ其點ニ於キマシテハ三案同一デアリマス、仍テ此三案ハ
  便宜上一括シテ採決致シタイト思ヒマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=93

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• 094・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　右廢止案ノ第二讀會、卽チ營
  業稅法廢止法律案ノ第二讀會ヲ開クベシト云フニ同意ノ
  諸君ノ起立ヲ乞ヒマス
  〔「反對」ト呼フ者アリ〕
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=94

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• 095・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　起立少數デアリマス、仍テ廢止
  法案ハ第二讀會ヲ開カザルコトニ決シマシタ、次ニ政府提
  出營業稅法中改正法律案第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮
  リ致シマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシート呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=95

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• 096・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ第
  二讀會ヲ開クコトニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=96

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• 097・岩崎勲

  ○岩崎勳君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミ
  マス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=97

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• 098・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キマス
  營業稅法中改正法律案。第二讀會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=98

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• 099・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　別ニ御異議モナイヤウデアリマ
  スカラ、委員長ノ報告ノ通リ可決スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=99

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• 100・岩崎勲

  ○岩崎勳君　本案ハ第三讀會ヲ省略シテ第二讀會ニ於
  テ可決確定セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=100

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• 101・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-次ニ只今ノハ第三
  讀會ヲ省略シタモノデ委員長報告ノ通リ可決確定シタノ
  デアリマス、次ノ政府提出ニ係ル石油消費稅法廢止法律
  案、賣藥稅法中改正法律案、印紙稅法中改正法律案、右
  三案ハ何レモ委員會ニ於テ可決ノ報告デアリマス、一四シ
  テ採決致スニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 102・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマス、仍テ一
  括採決ヲ致シマス、右三案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 103・粕谷義三

  ○副議長(柏谷義三君)　御異議ナイト認メマス、仍テ第
  二讀會ヲ開クコトニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=103

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• 104・岩崎勲

  ○岩崎勳君　只今ノ三案卽チ日程第八乃至第十ノ三案
  ヲ一括シテ直ニ第二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ委
  員長報告通リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 105・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議ハナイト
  認メマス、直ニ第二讀會ヲ開キ議案全部ヲ議題ト致シマス
  石油消費稅法廢止法律案
  第二讀會(確定議)
  賣藥稅法中改正法律案第二讀會(確定議)
  印紙稅法中改正法律案第二讀會(確定議)

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• 106・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　別段御異議ハナイト認メマス、仍
  テ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ可決確定サレマ
  シタコトヲ宣告致シマス、次ノ地租條例ハ廢止案ト改正案
  トアリマス卽チ廢止案ハ中川幸太郞君外十六名ノ御提出、
  又松下禎二君外一名御提出ノ二案アリマス、委員長報告
  ハ否決ノ報告ニナッテ居リマス、仍テ一括シテ採決致シマス、
  地租條例廢止法律案ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ
  起方ヲ求メマス
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=106

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• 107・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　起立少數デアリマス-更メテ
  宣告ヲ致シマス、只今ノ廢止案ハ第二讀會ヲ開カザルコト
  ニ決シマシタ、次ニ安達謙三君外四名提出、地租條例中改
  正法律案ニ付テ採決ヲ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クベ
  シトスル諸君ノ起立ヲ乞ヒマス
  〔贊成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=107

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• 108・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　少數デアリマス、仍テ本案ハ第二
  讀會ヲ開カザルコトニ決シマシタ、次ニ安逹謙藏君及外四名
  提出ノ醬油稅則廢止法律案、織物消費稅法中改正法律
  案、何レモ委員會ニ於テ否決ノ報告デアリマス、之ヲ一括シ
  テ採決致シマス、右二案ニ付テ第二讀會ヲ開クベシトスル諸
  君ノ起立ヲ求メマス
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=108

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• 109・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　少數デアリマス、仍テ二案共第
  二讀會ヲ開カザルコトニ決シマシタ、次ニ安達君外四名御
  提出、自家用醤油稅法廢止法律案ニ付キ採決致シマス、本
  案ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=109

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• 110・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　起立少數デアリマス、仍テ本案ハ
  第二讀會ヲ開カザルコトニ決シマシタ、是ニテ稅制ニ關シマ
  スル諸法案ハ議了致シタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=110

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• 111・岩崎勲

  ○岩崎勳君　殘餘ノ日程ハ之ヲ延期シ、明後十二日定刻
  ニ特ニ木會議ヲ開會セラレンコトヲ希望致シマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004613242X01119230210&spkNum=111

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• 112・粕谷義三

  ○副議長(粕谷義三君)　岩崎君ノ動議ニ御異議アリマセ
  ヌカ(「異議ナシ」ト呼フ者アリ)ドウゾ暫ク御待チ下サイ、少
  シ御待下サイ、明後日ハ只今岩崎君ノ動議ニ依ッテ決シマ
  シタ如ク特ニ本會議ヲ開キマス、此本會議ノ日程ハ何レ公
  報ヲ以テ御通知致シマスガ、御承知ノ通リ是迄質問日ニ豫
  定サレマシタ日ニ色々ノ議事ガアリマシテ、質問ノ演說ヲス
  ルコトガ出來ズニ居リマス、仍テ來ル十二日ニハ日程中ニ若
  干ノ質問ヲ揭ゲタイト思フノデアリマス、此事ヲ豫メ御承知
  置ヲ願ヒタイ(「賛成」ト呼フ者アリ)尙ホ御諮リ致スコトガア
  リマス-御諮リ致スコトハアリマセヌガ、此場合私ハ一言致
  シテ置キマス、一昨日田淵君ノ發言ニ關シマシテ速記錄ヲ、
  調ベテ見夕上ニ、何分ノ措置ヲスルト云フコトヲ申上ゲテ
  置キマシタ、今田淵君ハ此處ニ御出デハゴザイマセヌガ、議
  長ハ其後速記錄ヲ調ベテ見マシタガ、免ニ角田淵君ノ御發
  言ハ同僚ニ向ッテ穩カナラザル言葉ヲ發セラレテ居リマス、此
  事ニ付キマシテハ同君ハ今後十分ニ御愼ミアランコトヲ、私
  ハ特ニ玆ニ警告ヲ致シテ置キマス、此事ハ何レ速記錄ニ
  依シテ田淵君ニ御承知ヲ願フコトニ致シタイト思ヒマス(「議
  長公平」ト呼フ者アリ)本日ハ是ニテ散會致シマス(拍手)
  午後十時五十四分散會

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