第46回帝国議会　衆議院　本会議　第17号　大正12年2月20日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  大正十二年二月二十日（火曜日）午後一時十七分開議
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  　議事日程　第十六號　大正十二年二月二十日
  　　　午後一時開議
  　　　　　質問
  　　一　農業政策及米穀法運用に關する質問（土井權大君提出）
  　　二　經濟界救濟に關する再質問（橋本喜造君提出）
  　　三　木更津大原間鐵道豫定線中線路變更に關する質問（鈴木久次郎君提出）
  　　四　西伯利駐兵に關する再質問（野村嘉六君提出）
  　　五　高等試驗令に關する質問（横山勝太郎君外三名提出）
  　　六　北樺太油田に關する再質問（高野毅君提出）
  　　七　羅馬法王廳との使節交換に關する質問（押川方義君提出）
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  　第一　煙草專賣法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三　都市計畫法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第四　明治四十一年法律第三十七號中改正法律案（政府提出）　　　　　　　第一讀會
  　第五　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第六　種牡馬檢査法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　　第一讀會
  　第七　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第八　産業組合中央金庫法案（床次竹二郎君外十一名提出）　　　　　　　　第一讀會
  　第九　勞働組合法案（板野友造君提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十　出版取締法案（星島二郎君提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十一　國籍法中改正法律案（植原悦二郎君外二名提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　第十二　國有土地森林原野下戻に關する法律案（阿部武智雄君外十七名提出）　第一讀會
  　第十三　米穀專賣法制定に關する建議案（小菅劍之助君外一名提出）
  　第十四　國有林野所在の府縣市町村に對し交付金下付に關する建議案（八田宗吉君外六名提出）
  　第十五　帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案（八田宗吉君外六名提出）
  　第十六　神社調査會設置に關する建議案（岩崎勲君外十二名提出）
  　第十七　府縣社以下神社經費國庫補助に關する建議案（岩崎勲君外十二名提出）
  　第十八　磐梯山猪苗代湖を中心とする國立公園設定に關する建議案（八田宗吉君外五名提出）
  　第十九　湖南鐵道建設に關する建議案（八田宗吉君外五名提出）
  　第二十　柳津小出間及只見古町間鐵道速成に關する建議案（八田宗吉君外六名提出）
  　第二十一　野岩羽鐵道速成に關する建議案（八田宗吉君外三名提出）
  　第二十二　富士山を中心とする國立公園の設定及岳麓一週鐵道速成に關する建議案（三枝彦太郎君外二名提出）
  　第二十三　大漁船奬勵に關する建議案（櫻内幸雄君外二名提出）
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  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/0

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• 001・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　諸般ノ報告ヲ致シマス
  〔原田書記官朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  岩北軌道株式會社所屬軌道經營廢止ニ對スル
  補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案
  (以上二月十九日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  農業倉庫業法中改正法律案
  提出者花城永渡君麓純義君
  仲田德三君宜保成晴君
  石川善盛君
  (以上二月十九日提出)
  靑島罹災民救恤ニ關スル建議案
  提出者岩切重雄君河上哲太君
  山口義一君山崎猛君
  樂劑師法制定ニ關スル建議案
  提出者河上哲太君鈴木巖君
  鐸木三郞兵衞君戶符權之助君
  戶水寛人君井上角五郞君
  稅務署管轄移管ニ關スル建議案
  提出者伊藤虎助君木村〓三郞君
  高橋金治郞君
  鐵道局管轄移管ニ關スル建議案
  提出者伊藤虎助君石川淳君
  高橋金治郞君
  隠岐國航海費補助增額竝造船費補助ニ關スル
  建議案
  提出者若林德懋君島田俊雄君
  佐野正雄君平田民之助君
  櫻內幸雄君原夫次郞君
  松江隱岐間海底電信電話增設速成ニ關スル建
  議案
  提出者若林德懋君島田俊雄君
  佐野正雄君平田民之助君
  原夫次郞君櫻內幸雄君
  大正九年勅令第四百五號適用ニ關スル建議案
  提出者若林德懋君島田俊雄君
  佐野正雄君平田民之助君
  櫻內幸雄君原夫次郞君
  正米市場設置ニ關スル建議案
  提出者田中定吉君原田佐之治君
  三善〓之君
  全邱鐵道建設ニ關スル建議案
  提出者牧山耕藏君阪上貞信君
  (以上二月十九日提出)
  一昨十九日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  衆議院議員〓水留三郞君提出米國ノ日本人歸化
  權ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
  又今二十日政府ヨリ受領シタル各辯書左ノ如シ
  衆議院議員鈴木久次郎君提出木更津大原間鐵道
  豫定線中線路變更ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員野村嘉六君提出西伯利駐兵ニ關ス
  ル再質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員押川方義君提出羅馬法王廳トノ使節
  交換ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  〓水留三郎君提出米國ノ日本人歸化權ニ關スル
  再質問主意書
  米國ノ日本人歸化權ニ關スル再質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  大正十二年二月九日
  提出者〓水留三郞
  賛成者石井〓二
  外三十名
  米國ノ日本人歸化權ニ關スル再質問主意書
  大正十二年一月二十四日本員ノ提出セル米國ノ日本
  入歸化權ニ關スル質問ニ對シ二月六日內田外務大臣
  ヨリノ答辯書到來セリ然シ其ノ答辯書ハ本員ヲシテ滿
  足セシムルコト能ハス依テ茲ニ再質問スルコト左ノ如シ
  -未國ニ於テ白人及黑人ニ歸化ヲ許シナカラ日本人
  ニ對シテノミ支那人同樣差別的待遇ヲ與フルハ假令
  米國大審院カ人種的差別ニ非ス唯歸化法ノ解釋ノ
  然ラシムルモノナリト抗辯スルモ事實上日本人ヲ侮辱
  セルノ甚シキモノナラスヤ又日本人ニ對スル歸化ノ否
  認ハ在留邦人ニ及ホス影響甚大ニシテ帝國ノ移民政
  策上非常ナル不利不便ヲ來スノミナラス最近米國下
  院移民委員會カ新外人入國制限法案ヲ可決セル如
  キ加州ニ於テ更ニ米國生レノノ日本兒童ノ市民權ヲ奪
  ハムトセル如キ在米邦人ノ漁業ヲ禁止セムトスル如キ
  悉ク日本人ノ歸化不能トナリシ結果ナラスヤ政府ハ
  何故米國ノ差別的待遇ニ對シテ抗議ヲ爲サヽリシヤ
  二國籍法上日本ハ血統主義ヲ米國ハ出生地主義ヲ
  採用セル結果米國ニ生レタル日本人ノ子ハ二重ノ國
  籍ヲ有ス而シテ今回米國ニ於テ日本人ノ歸化權カ否
  認セラレシ爲現在日本人ニシテ米國内ニ土地ヲ有シ
  且特殊ノ權利ヲ獲得スルモノハ唯米國生レノ日本人
  卽チ出生ニ依リテ市民權ヲ得タル日本人ノ子孫アル
  ノミ然ルニ國籍ノ積極的衝突ヲ防ク能ハストセハ在
  米日本人ハ折角得タル權利ヲモ抛棄スルノ餘義ナキ
  ニ陷ルヘシ政府ハ此ノ際國籍法及徵兵令ノ一部改正
  ヲ爲ス意思アリヤ
  三加州其ノ他ニ於テ日本人ノ土地所有權ヲ禁シタル
  ハ日米條約中農業其ノ他ニ關スル特殊ノ條項ヲ缺ケ
  ルカ爲ナリ本年七月十六日ハ日米條約十箇年ノ期
  間滿了スルノ日ニシテ六箇月前ニ豫〓シタリシナラハ
  之ヲ改訂シ得ル機會ヲ與ヘラレシナリ然ルニ政府ハ何
  故改訂ニ關シテ豫告ヲ發セサリシヤ改訂ノ必要ナシト
  思考セラレシヤ
  在留邦人カ土地所有權其ノ他ヲ剝奪セラレシハ十餘
  年前內田外務大臣カ駐米大使タリシ當時締結セシ
  日米條約中農業其ノ他最惠國條款ニ關スル規定ヲ
  削除セラレシカ爲ナリト信ス政府ハ速ニ日米條約ヲ改
  訂スル爲米國トノ交涉ヲ開始スル意思ナキヤ人種的
  偏見、差別的待遇ヲ除去シ歸化權獲得、農業其ノ他
  ニ就テノ特權ヲ獲得セムトスル考ナキヤ
  右及再質問候也
  大正十二年二月十九日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  衆議院議員〓水留三郎君提出米國ノ日本人歸化權ニ
  關スル再質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員〓水留三郞君提出米國ノ日本人白血歸化
  權ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
  一、他國ノ法制竝其ノ解釋ニ關シテハ答辯ノ限リニ在ラ
  ス歸化否認問題ノ解決ニ付テハ前答辯ノ如シ
  二、二重國籍問題ハ大正五年國籍法ノ一部改正ニ依リ
  一應ノ解決ヲ告ケタルモノナルモ尙兵役關係ニ依ル國籍
  離脫ノ制限撤去ニ關シテハ政府ニ於テ目下審議中ナリ
  三、日米條約ハ十二年ノ期間滿了ノ前後ヲ問ハス六箇
  月前ノ豫告ヲ以テ何時ニテモ廢棄シ得ヘキハ條約ニ規
  定スル處ニシテ必シモ本年七月十六日ヲ目標トスルノ要
  ナシ尙同條約改訂交涉ニ際シテハ邦人正當ノ權利確保
  ニ關シ遺算ナキヲ期スヘシ
  右及答辯候也
  大正十二年二月十九日
  外務大臣伯爵内田康哉
  木更津大原間鐵道豫定線中線路變更ニ關スル質
  問主意書
  木更津大原間鐵道豫定線中木更津久留里間ニ於テ線
  路變更ノ計畫アリヤ否ヤ若アリトセハ何レノ箇所ニ於テ
  變更セムトスルカ又近時鐵道省當局ノ意向ナリト稱シテ
  前記線路變更ノ旨ヲ流布シテ該地方ノ民心ヲ感ハサム
  トスル者アリ當局ハ果シテ斯ル意向ヲ有スルカ此ノ點ニ
  關スル當局ノ眞意如何
  右及質問候也
  大正十二年二月二十日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  衆議院議員鈴木久次郎君提出木更津大原間鐵道豫
  定線中線路變更ニ關スル質問ニ對シ別紙各辯書差進
  候
  〔別紙〕
  衆議院議員鈴木久次郎君提出木更津大原問錢
  道豫定線中線路變更ニ關スル質問ニ對スル答
  辯書
  一木更津、大原間鐵道豫定線中木更津、久留里間卽
  チ千葉縣營ヨリ繼承スヘキ線路ハ現在軌間二呎六吋ノ
  輕便鐵道ナルヲ以テ久留里、大原間線路建設ニ件ヒ軌
  間ノ取擴、軌條ノ取替、停車場擴張等線路ノ改築ヲナス
  ヘキ計畫ナリ、從テ前後線路接續竝ニ曲線勾配其ノ他
  ノ關係上局部的線路ノ移動ヲ必要トスルコトアルヘキモ
  目下特ニ該線路ヲ變更スルノ意向ヲ有セス
  右及答辯候也
  大正十二年二月二十日
  鐵道大臣伯爵大木遠吉
  西伯利駐兵ニ關スル再質問主意書
  西伯和駐兵ニ關スル政治責任ニ對シテ一月二十四日ニ
  遠ヘラレタル內田外務大臣ノ答辯ハ其ノ要點ニ觸レス
  依テ更ニ詳細ナル辯明ヲ求ム
  右及再質問候也
  大正十二年二月二十日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郎
  衆議院議長粕谷義三殿
  衆議院議員野村嘉六君提出西比利駐兵ニ關スル再質
  問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員野村嘉六君提出西比利駐兵ニ關スル再
  質問ニ對スル答辯書
  西比利駐兵ニ關スル政策ニ對シテハ現内閣ハ右駐兵ニ
  關輿セル歷代内閣ト共ニ其ノ責ニ任スヘキハ勿論ナルモ
  西比利共同出兵ノ目的タル「チエックスロヴアック」軍ニ對
  スル救援ノ目的達成セラレタル後ニ於テモ西比利ノ政情
  安定セス從テ國境ニ對スル脅威除去セラルルニ至ラス且
  居留民ノ安全保障セラレサルニヨリ西比利ニ對スル帝國
  特殊ノ地位ニ顧ミ已ムヲ得ス駐兵ヲ繼續シ來リタルモ
  ノニシテ帝國政府ハ豫テ事情ノ許ス限リ速ニ撤兵セムコ
  トヲ希望シタル次第ナルヲ以テ西比利ノ政情漸次安定
  ニ料キ國境地方ニ對スル脅威竝居留民ニ對スル危險亦
  減少セルニヨリ客年十月沿海州地方ノ敬兵ヲ断行スル
  ニ至レルモノニシテ右駐兵及敬兵ニ關スル措置ハ當時ノ
  事情ニ在リテハ其ノ當ヲ得タルモノナルコトヲ確信ス
  右及答辯候也
  大正十二年二月二十日
  外務大臣伯爵内田康哉
  羅馬法王廳トノ使節交換ニ關スル質問主意書
  曩ニ政府ヨリ提出シタル羅馬法王施ニ對スル使節派遣
  費ハ當院ニ於テハ旣ニ之ヲ削除セリ政府ハ本問題ニ付
  今後如何ナル措置ヲ執ラムト欲スルカ詳細ノ答辯アラム
  コトヲ望ム
  右及質問候也
  大正十二年二月二十日
  內閣總理大臣男爵加藤友三郞
  衆議院議長和谷義三殿
  衆議院議員押川方義君提出羅馬法王廳トノ使節交換
  ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員押川方義君提出羅馬法王廳トノ使節交
  換ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  明年度豫算案ハ目下貴族院ニ於テ審議中ニ屬スルヲ以
  テ羅馬法王廳ニ外交代表者駐派ノ問題ニ關シ今後政
  府ノ執ルヘキ措置ニ就テハ此際言明スルコトヲ得ス
  右及答辯候也
  大正十二年二月二十日
  外務大臣伯爵內田康哉
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
  植民地栽判ノ統一ニ關スル質問主意書
  提出者齋藤鷲太郞君水野吉太郞君
  食糧問題ニ關スル質問主意書
  提出者中原德太郞君
  (以上二月十九日提出)

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• 002・野村嘉六

  ○野村嘉六君　議長

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• 003・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　マダ圓會シマセヌ、是ヨリ會議ヲ開
  キマス-野村嘉六君何デスカ

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• 004・野村嘉六

  ○野村嘉六君　只今私ノ質問ニ對シテ政府ノ答辯ガアリ
  マシタガ、其各辯ニ對シテ意見ノ陳遠ヲ致シタウゴザイマス、
  併セテ中シテ〓キキスガ、政府ハ兔角質問ニ對シテ不得要
  傾ナ、僅カノ文字ヲ以テ答辯スル傾ガアルノデアリマス、言論
  界ノ此議會ニ於テ、僅カノ文字ヲ以テ答辯スルト云フコトハ、
  一面カラ見マスルト言論界ヲ抑壓シ、不誠意ト思フノデアリ
  マス、ドウカ此事ニ對シテハ深切ニ誠意ヲ以テ質問ニ答辯セ
  ラレンコトヲ、議長カラ御注意ヲ願ヒタウゴザイマス

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• 005・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　只今野村君ヨリ御要求デアリマス
  ガ、其意見ノ陳述ハ、此頃ノ慣例デハ質問演說ヲ終リマシタ
  後ニ於テ許スコトニナッテ居リマス、尙ホ意見ノ陳述ニ付テ
  モ、前ニ申込マレマシタ者モアリマスカラ、ツレヲ順次許スコ
  トニ致シマス、議事進行ニ關シテ發言ヲ求メラレテ居リマ
  ス、山邊常重君

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• 006・山邊常重

  ○山邊常重君　簡單デアリマスルカラ此席カラ御許ヲ願
  ヒマス

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• 007・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　宜ウゴザイマス

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• 008・山邊常重

  ○山邊常重君　本月三口本員提出ニ係ル商商中改正法
  律案ハ、重大ナル法案デアルニ拘ラズ、二週間餘リノ今日尙
  ホ上程セラレナイノハ如何ナル理由デアリマスカ[シシ由由
  ガ無イトスレバ、特ニ御上程ヲ願ヒタウゴザイマス

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• 009・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御答致シマスガ、多分次ノ日程ニ
  上程サレル事ト考へテ居リマス

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• 010・富安保太郎

  ○富安保太郞君　中央市場法案委員會ヲ開キタウゴザ
  イマス、御許ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/10

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• 011・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　富安君ノ御要〓求ニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 012・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、許可致シマ
  ス質問第一、農業政策及米穀法運用ニ關スル質問、土井
  權大君
  一農業政策及米穀法運用ニ關スル質問
  (土井權大君提出)
  農業政策及米穀法運用ニ關スル質問主意書
  農業政策ノ實施及米穀法運用ニ關スル政府ノ方針如
  何
  右及質問候也
  〔土井權大君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/12

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• 013・土井權大

  ○土井權大君　極テ簡單ニ農業政策及米穀法運用ニ關
  スル質問ヲ試ミマス、併ナガラ此議場竝ニ委員會ナドニ於
  テ、農業政策ニ對スル各種ノ應答ガアリマシテ、ソレ等ノ點
  ハ重複ヲ避ケル爲ニ成ベク其點ニ飼ハラザル範圍ニ於テ、質
  問ヲ試ミクイト思ヒマス、同時ニ米穀法運用ニ關シマシテハ、
  大口君ヨリモ質問アリ、又齋藤宇一郎君ヨリモ米穀法ノ改
  正法律案ガ出テ居ル次弟デアリマスルガ故ニ、ソレ等ハ委員
  會デ各種ノ應答ノ便アリト思ヒマスルガ故ニ、未穀法運用
  ニ關スル質問事項ハ撤廢シマシテ、單ニ農業政策ノミニ付
  テ質問ヲ試ミタイト思フノデアリマス、第一御尋シタイノハ、
  小作爭識及農民思想ノ惡化ニ處スル對策如何、是ガ第一
  ノ問題デアリマス、御承知ノ通リ今ヤ我國ニハ小作爭議ト
  云フモノガ益〓頻出シツヽアルノデアリマス、丁度太正十一年
  度ニ於ケル所ノ現在ヲ調ベマスルト一千三百九十八件デ
  アリマス、參加人員、地主ガ二万四千九百七十四人、小作
  人ガ十万八千三百四十七人、斯ウ云フ割合ニナッテ居リマ
  ス、是ハ內務省ノ調査ニ依リマスガ、大正十年度ヨリ一層
  其數ガ殖エテ居ル、斯ウ云フコトニ相成ッテ居リマス、ツレカ
  ラ又此小作爭議ニ原因シマシテ小作地返還、土地ヲ作ラナ
  イト云フ所ヨリ致シマシテ、上地ヲ返還致シテ居リマス數ガ
  幾ラゾルカト言ッタナラバ、二万六千三百四町步ト云フ如キ
  多數ニ上ッタノデアリマス、是ハ帝國農會ノ調査ニ依ッタノデ
  アリマス、斯ノ如ク小作爭議ト云フモノガ頻々ニ起ルト同時
  ニ、又折角土地ニ依シテ生產ヲ起サナケレバナラヌ大事ノ土
  地ガ荒廢ニ歸セラレルト云フ如キ今日狀態ニ相成リツヽ
  アルノデアリマス(拍手)更ニ農民ノ思想ハ一層惡化致シマ
  シテ、御承知ノ通リ岡山縣兒島郡ニ於ケル所ノ藤田農場ニ
  於ケル爭ノ如キハ、殆ド戰爭ノ如キ狀態デアッタノデアリマ
  ス、又北海道ノ御料地ニ於ケル小作人ノ爭議ト云フモノモ、
  隨分甚シカッタノデアリマス、先日態々北海道ヨリ參リマシ
  テ、小作制度ノ不完全所謂宮内省ト小作人トノ間ニ介在シ
  テ居ル所ノ惡管理人ガ暴利ヲ貪リ、徒ニ小作入ヲ苦メテ居
  ルト云フコトヲ詳シク陳述シテ、實ニ悲慘ナル話ヲシテ歸多
  ノデアリマス、而シテ彼等ガ言フノニ、吾々ハ生活ガ出來ナイ
  ナラバ國家ノ必要ハ無イ、生活ガ出来ナイナラバ政府ノ必
  要ハ無イ、又議會ニ認メルコトガ出來ナイ、斯ウ云フ思想ニ
  已ムヲ得ズ相成ルツテアル、斯ウ云フコトマデ陳述シタノデア
  リマス、其他思想ノ惡化ヨリ致シマシテ、御承知ノ通リ租稅
  ノ不納同盟ト云フコトガ頻々トシテ流行シツヽアルノデアリ
  マス、大阪府ノ郡部ニ於テモ不納同盟ガ起リマシタ、又兵庫
  縣ノ郡部ニ於テモ悉クトハ申シマセヌガ、二三租稅ノ不納同
  盥ヲ企テタコトガアルノデアリマス、此事ハ政府ハ能ク御承
  知ノ事デアラウト思ヒマス、斯ノ如ク小作爭議頻出シ、農民
  思想ノ惡化ニナル原因ハ何レニ在ルカト中セバ私ノ思フ所
  ニ依ルナラバ、是ハ正シク生活問題ニ原因致シテ居ルノデア
  ル、小作ヲ致シテ居クテモ〓入力無イ、生活ガ出來ナイト云
  フコトニ私ハ原因致シテ居ルモノナリト考へルノデアリマス、
  現ニ農商務省ニ於テ農家經濟ノ調査ヲ爲スッテ居リマス、
  卽チ大正九年度ノ調査ニ依リマスト、此小作者ガ經營ノ田畑
  一町五反-一町五反ノ小作ヲ致シテ居ル、五人ノ家族デ
  一町五反ノ小作ヲ致シテ居ル、其收入ハ一年幾ラデアルカト
  言ッタナラバ千三百六十一圓二十三錢、ソレニ對シテドレダケ
  生活費、經營費ガ要ルカト云ヘド千三百八十六圓十八錢、
  差引ドレダケ損失ヲスルカ、働イテ二十四圓九十五錢ノ小
  作者ハ損ヲシナケレバナラヌト云フ統計ニ相成ッテ居ルノデ
  アリマス、卽チ彼等ノ生活不安ト云フ所ヨリ致シマシテ、斯
  ノ如ク惡ムベキ不幸ノ現象ヲ農村ニ來シツヽアルノデアリマ
  スルガ、此問題ニ對シテ政府ハ如何ナル對策ヲ御持ニナッテ居
  ルカ、卽チ小作爭議ニ對シテ如何ナル對策アリヤ、農民思想
  ノ惡化ヲ防止スルニ付テ如何ナル御考ヲ持ッテ居ラレマスカ、此
  事ガ第一ニ承リタイノデアリマス(拍手)第二トシテ承リタイ
  ノハ、自作農及農村ノ中產階級ハ、逐年滅亡シツヽアル、每
  年減リツヽアルノデアリマス、之ニ對シテ『政府ハ如何ナル對
  策アリヤ、是ガ第二問デアリマス、御承知ノ通リ年々一万戶
  宛ノ自作農ト云フモノガ減ヲテ居ル、而モ又每年自作農ニ依
  リマシテ不生產的ノ借財、卽チ收入ガ少ク損ヲシテ生活シ
  テ行カナケレバナラヌ、其生活ヲ補フガ爲ニ卽チ不生産的ニ
  借錢ヲ致シテ居ルコトガ一億万圓計上サレテ居ルノデアリ
  マス、而モ自作農ノ經濟狀態ハドウデアルカト一云ヘバ是又農
  商務省モ御承知ノ通リ、大正九年ニ於ケル調査ニ依レバ、
  此處ニ家族數七人アル、七人ノ家族ノ自作農ガアル、而シテ
  所有ノ田畑ハ二町一反所有致シテ居ル、サウシテ之ヲ自ラ
  耕シマシテ一年ニ幾ラノ收入、所謂總收入ガアルカト云ヘバ
  一千六百十四圓六十九錢、然ラバ幾ラノ生產費、幾ラノ生
  活費ト云フモノヲ使フカ、其總計ハ一千七百三圓七十錢、
  差引八十九園一銭ノ損ト相成ルノデアリマス、所謂生活不
  安ト云フモノハ斯ノ如キ事ヨリ致シテ來ルノデアリマス、是モ
  亦私ガ喋々申サズトモ政府御承知ノ通リデアル、然ラバ政
  府ハ此自作農ヲ如何ニ救濟スルカ、又中產階級ガ滅亡シツ
  ツアルノヲ如何ニ防止サレルカ、其御對策ヲ具體的
  ニ明ニ御示シガ〓ヒタイノデアリマス(拍手)第三問ト致
  シマシテ小作爭議、中產階級ノ滅亡、農民思想惡化ノ原因
  ハ悉ク經濟組織ノ革命、卽チ資本萬能、機械萬能主義橫
  行ノ爲メ、彼等農民ノ家族的手工業ニ依ル自給自足ノ
  途ヲ奪ハレタルニ在リト私ハ考ヘルノデアリマス、政府ノ御考
  ハ那邊ニ在ルカト云フコトヲ御伺致シタイノデアリマス(拍
  手)卽チ前刻讓々申シマシタ通リ今日ノ農民特ニ農業勞働
  者ト云フ者ノ生活ハ、不安而モ收入ハ不足、損ヲンチケレバ
  ナラヌト云フ、其一大原因ハ何デアルカ、經濟組織ノ革命ヨ
  リ私ハ來テ居ルモノナリト斷定スルノデアリマス、丁度先日
  植原悅二郞君竝ニ田淵豐吉君ヨリモ斯ウ云フ御說ガアリ
  マシタガ、私モ確ニ此經濟組織ノ變遷ヨリ來テ居ルモノデア
  ルト斯ウ考ヘル、ドウデアルカト云ヘバ吾々ノ幼少ノ頃ハ、私
  ノ家ニ於テ綿モ作ッテ居ッタノデアル、機モ織ッテ居ッタノデアル、
  絲モ拵ヘテ居ッタノデアル、總テ此自給自足ノ經濟ヲ以テ、漸
  ク吾々農民ノ家庭ト云フモノヽ經濟ハ保タレテ居ッタノデア
  リマス、然ルニ御承知ノ通リ大ナル機械ノ應用ニ依リマシ
  テ、卽チ鐵、電氣、蒸氣ノ應用ニ依リマシテ、大機械ニアラザ
  レバ大工業ガ行ハレナイ、大工業ヲ行ハウトスルニ付テハ資
  本ノ合同ノ必要ガアルト云フ所ヨリ致シマシテ、總テノ事業
  ハ大工業、大經營ノ下ニ行ハルヽト云フコトニ相成リマシ
  テ、卽チ吾々幼少ノ頃ニ家庭的ノ工業、自給自足ノ經濟ト
  云フモノガアリマシタノガ、ソレ等ノ大資本、大機械ノ爲ニ奪
  去ラレタノデアリマス、又煙草ニ致シマシテモ、酒ニ致シマシテ
  モ、醬油ニ致シマシテモ、是又自給自足ノ經濟ノ下ニ釀造
  竝ニ製造サレテ居クタノデアリマスルケレドモ、煙草ハ御承知
  ノ通リ專賣トナリ、酒、醬油モ是又大工業ニ非レバ醸造スル
  コトヲ得ズト云フガ如キ狀態ニ相成ッタノデアリマス、是ガ卽
  チ今日農村ガ苦シム小農ト云ハズ、中農ト云ハズ、小作ト云
  ハズ、苦シム所ノ一大原因デアルト斯ウ私ハ考ヘルノデアル、
  政府ノ御考ハ果シテドウデアリマスカ、爰デ第四ノ御尋ヲ致
  スノデアリマス、是ニ於テカ農村振興ノ第一要義ハ、農村ニ
  於ケル所ノ團體的自給自足ノ方策ヲ講ズルニ在リ、是ヨリ
  他ノ方法ハ無イト私ハ考ヘル、卽チ自給自足ガ奪去ラレタ
  ノデアルガ故ニ、何等カノ形ヲ以テ自給自足ノ經濟ト云フ
  モノヲ復舊スル所ノ必要ガアル、ケレドモ個人的ノ自給自足
  ト云フガ如キコトハ今日ノ時代、今日ノ時勢ニ於テ言フベク
  シテ行フコトガ出來ナイ、是ニ於テカ已ムナク此團體的ノ白
  給自足ノ方策ヲ講ズルノ外途ナシト私ハ考ヘルノデアル(拍手)
  ソコデ私ハ每年此農業組合ト云フモノヲ組立テヽ、彼等ノ
  共同ノ下ニ、勞資協調ノ下ニ經濟的ノ組合ヲ造リ、其經濟
  的ノ組合ニ依リ機能發揮ニ依ッテ、團體的自給自足ノ途ヲ
  講ジナケレバナラヌト云フコトヲ度〓論ジタノデアリマス、卽
  チ其組合ノ力ニ依リ日用品或ハ原料品ハ共同デ購入スル、
  又生產ヲシタ所ノ生產品、所謂農產物ハ共同ニ販賣スル、
  又共同デ生產シ得ラルヽ所ノモノ、醬油デアルトカ、味噌デ
  アルトカ、或ハ肥料デアルトカ、斯ノ如キ日用口四竝ニ原料品
  ノ共同的ニ生產ヲ致シ、所謂團體的自給自足ヲ行ヒ、又是
  等ノ仕事ヲ致スニ付キマシテハ、金モ要リマセウ、又金ノ餘ル
  所ノ人〓アルデアリマセウ、ンコニ於テ相互金融ノ途ヲ開カ
  ナケレバナラヌ、斯ノ如ク致シマシテ所謂團體的ノ自給自足
  ノ方策ノ下ニ農民ノ生活費ヲ低減シ、又農產物其他ノ日
  用品ノ製造、原料品ノ製造ナドノ生產費ヲ減少シ、詰ラナ
  イ所ノ進ンデハ浪費ノ節約ヲ圖リ、共存共榮ノ實ヲ此際擧
  ゲルト云フコトガ、根本的ニ必要デアルト、斯ウ私ハ考ヘルノ
  デアリマス、併ナガラ是等ハ消極手段デアリマスルガ、更ニ進
  ンデ農村ト致シマシテハ、積極的ノ仕事ヲヤラナケレバナラ
  ヌ、ドウシテモ此消極的ダケデハ生活漸ク安穩ナリト云フコ
  トデアリマシテ、彼等ノ經濟的地位ノ向上ヲ圖ルコトハ出來
  マセヌ、仍テ更ニ進ンデ必ズヤ積極的ノ方策ヲ講ズル必要ガ
  アルノデアリマス、ソレハ如何ナル事デアルカ、耕作法ノ改良
  デアリマス、一ツハ耕作法ノ改良デアリマス、神武天皇此方
  同ジヤウナ農業ノ遣リ方ヲヤッテ居ル、是等ニ付テモ隨分其
  改良ノ方法ガアルダラウト思フ、或ハ此機械ノ應用或ハ電
  氣ノ應用、鐵ノ應用、蒸氣ノ應用、所謂此機械的ノ耕作法
  ト云フコトニ改良スルノ必要ガアルト考ヘルノデアリマス、更
  ニ肥料ノ改良、農具ノ改良、農具ト云ヒマシテモ籾ヲ摺
  ル、或ハ精白ヲスル、昔ノ如ク確ト云フガ如キ物デ、今日三
  百年モ四百年モ前ノ古キ農具ヲ以テハ、今日ノ時世ニハ適
  シマセヌ、是ニ於テ電氣ヲ應用シ精白モ電氣デヤル、籾摺モ
  共同的ニ電氣デ行フト云フコトニ改良ヲシナケレバナラヌ、
  更ニ進ンデハ共同的副業ノ獎勵及發達、土地ノ開拓及改
  良是等ガ農村ニ於ケル所ノ積極的ノ方策デアリマス、斯ノ
  如ク致シマシテ農村ノ土地效力ノ增進ヲ圖ルト云フコトガ、
  取モ直サズ農村ヲ振興スル所ノ第二ノ要義デアルト斯ウ私
  ハ考ヘルノデアル、政府ノ御所見ハ如何デゴザイマスカ、第五
  ト致シテ御尋致スノハ、更ニ農村ニハ共存共榮ノ機關トシ
  テ免ニ角形ノ上ニ於テ、法制上ニ於テ森林組合、漁業組合、
  水產組合、各種農會畜產組合、產業組合、水利組合、耕
  地整理組合、蠶絲組合、茶業組合、農業的同業組合ナド、
  多數ノ組合ヲ公認致シテ居ル、又出來テ居リマス、併ナガラ是
  等ノ共存共榮ノ機關デアル所ノ組合ノ機能ヲ發揮セシムル
  所ノ、金融ノ大機關ト云フモノガアリマセヌ、ソレガ爲ニ何レ
  ノ組合モ孤影竿然ノ觀ガアルノデアリマス、何レモ發達致シ
  テ居ラヌ、形ダケハアルケレドモ本當ノ共存共榮ノ實ヲ擧ゲ
  テ居ラヌト云フ實狀デアリマス、產業組合ニシテモ然リ、畜
  產組合ニシテモ然リ、ソレ等ノ例ハ申シマセヌ、能ク御承知
  デアリマセウ、是ニ於テカ近時產業組合中央金庫ノ設立ノ
  必要ナル事ガ論議サレ、本日政友會カラモ法律案ガ提出サ
  レルト云フコトデアリマス、又私モ先日建議ヲ致シタ次第デ
  アリマスルガ、抑〓此產業組合中央金庫ト云フモノハ、單ニ
  產業組合デアルトカ、水產組合デアルトカ、畜產組合デアルト
  カ、各種ノ共存共榮ノ大機關トナルノデアルカ、マダ政府ガ
  御提案ナサッタ譯デアリマセヌカラ、政府ニ斯ノ如キ事ヲ御
  尋致スノハ如何カト田心ヒマスガ、免ニ角是等ノ共存共榮ノ
  機能ヲ發揮セシメル所ノ金融機關トシテ、產業組合中央金
  庫ニ對スル御意見ハドウデアルカ、又更ニ產業組合中央金
  庫ナルモノガ各種ノ共存共榮ノ組合、所謂團體ヲ収濟スル
  コトガ出來ナイトスルナラバ、是等機能ヲ發揮セシメル所ノ
  金融ハ如何ナル方法ヲ以テ講ゼラレルカ、此事ガ承リタイノ
  デアリマス、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ各種農村組合ノ金融ノ方
  策果シテ如何、此事ガ承リタイノデアリマス、此根本ヲ定メ
  ルニ非ザレバ、農村ニ於テ積極的方策ヲ講ジヤウト致シテ
  モ、言フベクシテ行フコトガ出來ナイ結果ニ終ルガ爲ニ、最モ
  肝要ナ事デアラウト思ヒマスガ爲ニ、特ニ聲ヲ大ニシテ御尋
  スル譯デアリマス、ソレカラ第六問、土地ノ開拓及改良事業
  ノ勃興ハ內地植民ヲ奬勵シ、失業者ニ職業ヲ與へ、更ニ食
  糧政策ノ樹立ニ效果アリト信ズル、然ルニ此方面ニ對スル
  金融ノ途ナキ爲其事業ノ進捗ヲ見ズ、政府ノ對策如何是
  ガ第六問デアリマス、政府ハ必ズ斯ウ言ハレルデアリ』マセウ、
  決シテ政府ハ土地ノ開拓或ハ改良ト云フコトハ等閑ニ致シ
  テ居ルノデハナイ、開墾助成法ト云フモノガアル、又耕地整理
  法ト云フモノガアル、斯ウ言ハレマス、所ガ中〓耕地整理法
  或ハ開墾助成法ニ依リマシテ、干拓デアルトカ若クハ改善等ヲ
  致サウト致シマシテモ、今日ノ狀態ハ金ノ出場ガ無イノデア
  リマス、ソレガ爲ニ到底開墾助成法ノ如ク唯〓此處マデ來
  イ甘酒進上ト云フ如キ法律デハ、土地ノ開墾開拓ト云フコ
  トハ出來ナイ狀態ト相成ッテ居ル、現ニ福岡縣ニモ干拓ノ土
  地多ク、廣島縣ニモ多イ岡山縣ニモ多イ、兵庫縣ニモ多イ
  大阪府ニモ多イ、私ハ一年間掛リマシテ是ダケノ土地ヲ親
  シク調査シタノデアリマス、農商務省デモ調査ナスッテ居ルケ
  レドモ、愈〓之ヲ實行致サウトスルトキハ、多クノ資產家ハ左
  樣ナ事業ニハ氣ヲ付ケナイ、元氣ナ人間ガヤラウトシテモ金
  ガ無イト云フ狀態デアリマシテ、空シク國家ノ立派ナ土地ヲ
  遊バサナケレバナラヌト云フ狀態ニナッテ居ル、又開田ノ例ト
  シテハ御承知ノ通リ、宮崎縣ナドニハ隨分大キナ開田ノ土
  地ガアル、北海道ニモアルケレドモ水利ト云フモノガ不完全
  ナル爲メ、之ヲ開クコトガ出來ヌノデアリマス、是ニ於テ私ノ
  考フルニ、此水利ト云フモノヲ國營ニ致シテ宮崎縣ノ如キ、
  又北海道ノ如キ所ハ、水利事業ヲ國營デ致スト云フ方策ヲ
  御立テニナッタラ自然開墾、開拓、開田ト云フ事ガ出來ハセ
  ヌカト斯ウ考ヘルノデアリマス、現ニ福島縣ニ於テハ維新後
  斯ノ如キ事ヲナスッテ、同デ大キナ水路ヲ間カレ、大キナ水ノ
  路ヲ御拵ニナッタ例ガアルノデアリマス、今日ニ於テ斯ノ如ク
  國ガ水利ノ仕事ヲスル、是ハ如何デアリマス、又此開墾事業
  ハ之ヲ政府事業トシタラドウデアラウカト思ヒマスガ、悉ク
  政府ニ賴ルト云フコトモ如何、國ニ悉ク賴ルト云フコトモ如
  何カト思ヒマスガ故ニ、是ハ大キナ一ノ開墾會社、開拓會社、
  所謂半官半民ノ開墾會社ヲ創立セシメテ、政府ハ之ニ相
  當ノ保護ヲ加へ、相當奬勵シテ此開墾、開拓ヲヤル事ニシタ
  ラドウデアルカ、然ラバ〓日ヤカマシイ失業問題、失業者ノ中
  ニハ官吏モアリマセウ、軍人モアリマセウ、職工モ無論アル、
  ソレ等ノ人間ヲ此方面ニ向ケル、サウスルト失業者救濟トナ
  ル、丁度明治維新當時東海道ニ雲助ト云フモノガ多ク居ッ
  タ然ルニ汽車ガ開通シタ爲ニ雲助ガ失業シタ、其雲助ドウ
  シテ救濟シタカト云フト、御承知ノ通リ之ヲ布哇ニ送ッタ、サ
  ウシテ雲助ノ失業ヲ救濟シタノデアル、或ハ今日ノ軍人、官
  吏、勞働者等ヲ雲助ニ比スルノハ如何カト思ヒマスケレド
  モ、失業ハ失業デアル、之ヲ救濟スルニ土地ノ開拓及改良
  事業ノ方面ニ向ケルコトニスレバ、相當ノ效果アルモノト考
  ヘル、政府ノ所見果シテ如何、ソレカラ第七トシテ御伺シタ
  イノハ、農村補習〓育振興ニ關スル政府ノ方針如何、是デ
  アリマス、随分〓育問題ト云フモノハヤカマシク議論サレ、義
  務〓百問題ニ付テモヤカマシク論議サレテ居リマス、又國民
  〓育ノ必要ト云フ事モ御承知ノ通リデアル、人問ヲシテ能
  率ヲ增進セシメヤウトスレバ、〓育ヲ多數ノ人ニ授ケナケレ
  バナラヌト云フコトハ勿論デアル、然ルニ今日ノ農村ノ補習
  〓育ハ、御承知ノ通リ極テ微々トシテ振ハナイ、而シテ昨年
  モ申シタコトデアルガ、小學校ヲ卒業シテ中學以上ノ學校へ
  行ク者ハ、百人ノ中僅カ十二人、殘ル所ノ八十八人ノ〓育
  デアリマス、都會デモ其問題ハアリマセウ、私ハ農業政策ノ
  爲メ農村ノ〓育問題、農村ノ補習〓育ニ付テ御伺スルノデ
  アリマス丁度昨年三月二十日頃ニ、日本全國ノ補習〓育
  ニ從事致シテ居リマスル所ノ〓員ノ大會ガ、帝國〓育會ニ
  於テ開カレタ其時ニ、此補習〓育ト云フコトヲ完全ニシテ
  戴キタイ、卽チ金ガ足ラナイノデアル、仍テ政府ハ少クトモ
  補習〓育ノ爲ニ一年五百万圓ノ金ヲ出シテ戴クコトハ出
  來ナイカト云フ決議ヲ致シ、歎願ニ及ンデ居ル次第デアリマ
  スガ、政府ハ果シテ補習〓育、〓員ガ唱ヘタガ如ク五百万
  圓ノ補助金ヲ以テ補習〓育ヲ盛ナラシメルコトガ宜イカ、其
  他ニ何カ農村ノ補習〓育ヲ盛ナラシムル所ノ途アリヤ、此
  事ニ付テ御伺ヲシタイノデアリマス、ソレカラ第八ト致シマシ
  テ、帝國人口調節ニ關スル政府ノ所見如何、是ハ農村問題
  ニ關係ノアル問題デアリマス、卽チ機械ノ應用、其他各種
  ノ應用ヲ致シ、若クハ失業者ノ救濟ヲ致シ土地ノ開墾等
  ヲ致シマスト當然人口ガ餘クテ來ル、其人口ノ餘ルト云フコトニ
  付テ、先日政友會ノ三土君デアッタカ、小川君デアッタカ、
  色々移民植民ノ點ニ付テ述ベラレマシタ、ンコデ私ハ斯ウ云フ
  考ヲ持フテ居ルノデアリマスガ、免ニ角此移民トカ植民トカ云
  フコトヨリモ、食糧政策ノ上ニ於テ、伯刺西爾ノ開拓ヲシタ
  ナラバドウデアルカト思フ-南亞米利加ノ伯剌西爾デス、
  帝國統計年鑑ニ依リマスレバ、大正五年ヨリ九年ニ至ル五
  箇年間ニ於テ、我國へ米ノ輸入ト云フモノハ少イ時ハ一箇
  年三百餘万圓、多キ時ハ一万六千餘万圓、是ダケ輸入ニ
  ナッテ居ル、五箇年間ノ總額ハ二億七千九百餘万圓、是ガ
  一年ノ平均ハ實ニ五千五百八十九万七千餘万圓、斯ウ
  相成ッテ居リマス、ソレカラ又綿ハドウ云フ風ニ這入ッテ來タ
  カト云フト、五箇年間ノ統計ヲ取リマスルト繰綿ノ輸入ハ
  少キトキハ一箇年ニ二億七千餘万圓、多キ時ハ七億二千
  餘万圓、五箇年問ノ總額二十五億三百餘万圓、是ガ一箇
  年ノ平均ハ實ニ五億七十四万二千五十六圓、斯ウ相成ッテ
  居リマス、然ルニ日本ノ植民地-ト言ヘバ語弊ガアリマス
  ガ、政治的植民地デナクシテ經濟的ノ植民地ト云フモノヲ
  伯剌西爾ニ拵ヘルノデアル、少クトモ十五万戶位ノ植民地
  ヲ伯刺西爾ニ拵ヘマシタナラバ、只今統計上ニ元シタ所ノ
  米竝ニ綿ト云フモノガ、卽チ我ガ日本ノ經濟的植民地ヨリ
  供給ヲ受ケルコトガ出來ル、然ラバ我ガ大和民族ハ內外相
  應ジテ自給自足ノ方策ヲ樹テラレルノデハナイカ、斯ウ考へ
  ルノデアル、其點ニ對スル政府ノ御所見ハ如何デアリマスカ、
  詳シイ事ハ此ニ在リマスカラ、議長ノ許可ヲ得テ之ヲ速記
  錄ニ載セルコトニ致シマス、ンレカラ第九ト致シマシテ、全國
  農會代表者協議會決議事項ナルモノガアリマス、之ニ對シ
  テ政府ハ如何ナル御考ヲ御持ニナッテ居リマスカ、全國農會
  代表者協議會ノ決議ト申シマスノハ、第一農業者負擔ノ
  輕減ノ實現ヲ期スル事、其說明トシテ(イ)大正十三年度ヨ
  リ國稅タル地租ヲ地方稅ニ委讓スル事(ロ)大正十二年度
  ニ於テ應急的負擔ノ輕減ヲ圖ル事、第二米穀法ノ運用ニ
  依リ米ノ價格ヲ相當ニ維持スル事、第三小農保護政策ヲ
  樹立シ、直ニ是ガ實行ヲ期スル事、參考トシテ(イ)自作農ノ
  維持創定ヲ圖ル事(ロ)小作法ノ制定ヲ計ル事(ハ)積極的
  低利資金ノ融通ヲ圖ル事(ニ)產業組合中央金庫ノ設立
  ヲ圖ル事(ホ)農業補習〓育ノ普及及內容ノ充實ヲ圖ル事、
  斯ウ云フ決議ヲ致シテ居リマスガ、此決議ニ對シテ政府ノ
  御所見ハ如何デアリマスカ、此事ガ承リタイノデアリマス、最
  後ニ第十デアリマス、此地租委譲ノ事デアリマスガ地租委
  讓ヲスルトモ-私ハ斯ウ考ヘル、地租ヲ委讓スルトモ地方
  ニ於テ所謂地方費ニ相成ッテモ地方廳ハ相當ノ免稅點ヲ
  設置セラレ、所謂地租ニ相當ノ免稅點ヲ拵ヘ、更ニ累進稅
  率ヲ課スルト云フ所ノ方針ヲ執ルニ非ザレバ、土地分配ノ
  公正ヲ期セラレナイ、矢張土地兼併ト云フガ如キコトニナリ
  マシテ、土地ノ分配ノ公正ヲ期スルコトハ出來ナイ、更ニ小
  作保護、自作奬勵ニモ何等ノ效果ナキモノナリト考へル、又
  地租二歩減ノ說ガ出テ居リマスガ、二歩減ノ如キハ徒ニ大
  地主、不在地主ヲ擁護致シマシテ、農業勞働者デアル所ノ
  小作トカ或ハ自作ト云フモノヲ苦痛ニ陷ラシメル、而シテ小
  作爭議頻出ノ動機ヲ造ルモノナリト私ハ考へルノデアリマ
  ス(拍手)何故ナレバ地租ナラ地租ガ減レバ地租ノ附加稅
  モ減ル、附加稅ガ減レバ何ガ殖エルカト云フト、少クトモ戶
  數割ガ增加シナケレバナラヌ、悉ク戶數割ノ全部ヲ國ニ於
  テ御負擔ナサルコトモ出來マスマイ、所謂義務〓育ノ國庫
  負擔等モ戶數割全部ノ負擔トナッテ居ル、然ラバ其尼ラザ
  ル所ノ戶數割ハ誰ガ負擔スルカト云ヘバ、不在地主デハア
  リマセヌ、所謂小サナル所ノ農業勞働者、在住農業勞働者
  ガ負擔シナケレバナラヌ、然ラバ此小作人モ自作人モ益〓負
  擔ガ重クナル、負擔ガ重クナレバ地主ニ喰ッテ掛ッテ、年貢ヲ
  負ケテ吳レノ、斯ウ云フ事ヨリ致シマシテ小作爭議ガ益〓頻
  出スルコトニナル、寧口頻出スルノ動機ヲ造ルモノト私ハ考
  ヘルノデアリマス、政府ノ御所見ハドウデアリマスカ、卽チ質
  問ハ此十項デアリマス、此時此際農民生活ノ安定、農家經
  済ノ維持確立ヲ圖リ、更ニ進ンデ土地效力ノ增進ヲ圖リ、
  殊ニ食糧及人口ノ調節ヲ圓ルト云フコトハ、國家ノ一大急
  務ナリト私ハ考ヘルノデアリマス、且又產業立國ノ基礎此
  ニ在リト考ヘテ此質問ヲ致シタ次第デアリマス、何卒誠意
  アル御答辯ヲ望ミマス(拍手)
  〔參照〕
  帝國統計年鑑ニ據レバ大正五年ヨリ同九年ニ至ル五ケ
  年間ニ於ケル我國米ノ輪入ハ少ナキ時一ケ年三百餘万
  圓多キ時一憶六千餘万圓、五ヶ年間ノ總高ハ二億七
  千九百餘万圖、之ガ一ケ年ノ平均ハ實ニ五千五百八十
  九万七千餘圓ナリ
  又、同五年間ニ於ケル練綿ノ輸入ハ少ナキ時一ケ年二
  億七千餘万圓多キトキ七億二千餘万圓、五年間ノ總高
  ハ二十五億〇三百餘万圜、之ガ一ケ年ノ平均ハ實二五
  億〇〇七十四万二千五十六圓ナリ
  扨テブラジル國ニ於ケル米作一町歩ノ收穫ハ平作ニ於
  テ年十五石ヲ下ラザルヲ以テ假リニ二百万町步ノ米作
  地ヲ得ルトセバ一ケ年ノ收穫ハ三千万石以上ナルペシ而
  シテ現今同國ニ於ケル米價ハ一石二十五六圓ナルヲ以
  テ之ニ運賃諸費ヲ加ハルトモ石、三十五六圓以下ニテ
  本邦ニ輸入スルハ難事ニアラズ
  又、同國ニ於ケル綿作一町步ノ收穫ハ眞そトシテ平作
  十擔ヲ下ラザルヲ以テ假リニ百万町歩ノ縮作地ヲ得ルト
  セバ一ケ年ノ收穫ハ一千万擔以上ナルベシ而テ現今同
  國ニ於ケル綿價ハ一擔約四十四五圓ナルヲ以テ之ニ運
  賃諸費ヲ加フルトモ一擔約四十七八圓以下ニテ本邦ニ
  輸入スルコト亦難事ニアラズ
  米ト綿ノ外我國ガ輸入ニ待ツ必需品中、大小麥、大小
  豆、砂糖、落花生、小麥粉、豚毛、羊毛、獸脂、獸皮等ハ
  悉ク容易ニプラジル國ニ於テ產出セラルヽモノナレバ若
  シ本邦耕作地面積ノ約半バニ當ル程ノ耕地ヲ同國内ニ
  設ケ得テ之ニ我ガ農事者ヲ移住セシムトセバ我因民ノ
  生活資料全體ハ内外同胞ノ自給ニ依リテ潤澤ナルヲ得
  ン本邦耕作地ノ面積ハ田畑ヲ合セテ五百四十七万〇
  四百五十七町步、農業者ノ戶數ハ五百四十八万一千
  百八十七戶、一戶ニ當ル平均耕作面積ハ一町步ニ充タ
  ズ、然レドモ若シブラジル國ニ於テ三百万町步ノ耕地ヲ
  得テ之ニ牛馬耕ヲ施ストセバ一戶ニテ平均二十町步ヲ
  耕作スルコトヲ得ベキガ故ニ之ニ對シテ移住セシムベキ
  我農民ハ僅々十五万戶ニシテ足ル
  十五万戶ノ農民ハ每戶五人トシテ七十五万人ナリ、之
  ガ移住ニ幾何ノ年月ヲ要スベキ乎惟フニ若シ非常ノ努
  カヲ以テスレバ約三十年ニシテ成就スルヲ得ベキカ、其ノ
  年割別表乙ノ如シ
  ブラジル國ニ於テ上記移住者ニ應ズル設備トシテ六百
  万町步ノ土地ヲ購入シ其半面積ヲ耕地トシ他ノ半面
  積ヲ原野、山林トス、其ノ經費及收支ノ〓算ハ別表甲ニ
  示ス
  本經營ニ要スル資金ハ一億圓ニシテ之ヲ十ヶ年間ニ支
  出セバ足ル政府ハ之ニ對シ三十ヶ年間年六步ノ利子ヲ
  補給シ尙移住者ノ旅費ヲ支給スルコトヲ條件トス、其年
  割額ハ別表丙ニ示ス
  以上甲、乙、內ノ三表ハ大體ノ梗〓ヲ見メスヲ旨トシ
  タレバ尙疎略ヲ免レズ特ニ覽著ノ〓究ヲ望ム
  右政府ノ支給、補給等ノ一案ト假ニ例示シタルニ過ギ
  ズ、其他低利資金ノ借入、國策的特別債劵又ハ三十
  三年据置還付公債發行等、諸方案トシテ〓究スベキ
  モノアラン
  本計畫起業後第三十一年度ヨリ資本金一億圓ニ對シ
  テハ政府ノ補給ナキヲ以テ事業資金ノ内ヨリ年一割ノ
  配當ヲナシ第三十三年末ニ至リ元資金全部ヲ債還シテ
  玆ニ會社ヲ解散シ各農區ヲ獨立自治團トシテ之ニ第三
  十三年度末ノ殘餘金(五千百万二千圓)及ビ三百万町
  步ノ山林、原野(原價一千ハ百万圓)加工場(投資四千
  八百万圓)等ヲ擧ゲテ交付シ其共有財產トシテ永ク保
  有セシム、移住民ハ各自ガ所有スル財產ノ收入トコノ共
  有財產ノ收益トヲ併セ得テ偉大ナル發展ヲ遂グルコト
  ヲ得ベ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/13

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• 014・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　質問ノ第二、第三、第七、右各質
  問ニ對シマシテハ、政府ヨリ答辯書ガ參ッテ居リマスルカラ日
  程ヨリ省キマス、質問ノ第五、第六ハ各提出者ヨリ延期ノ
  申出ガアリマス、之ヲ許可スルニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/14

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• 015・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ハナイト認メマス、仍テ延期
  ニ決シマス-續イテ質問ノ答辯ニ對スル意見ノ陳述ヲ許
  シマス、支那財政列國共同管理ニ關スル件-松本君平君
  支那財政ノ列國共同管理ニ關スル質問ノ
  答辯ニ對スル松本君平君ノ意見
  〔松本君平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/15

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• 016・松本君平

  ○松本君平君　本員ハ曩ニ支那財政ノ列國共同管理ニ
  關スル質問ヲ政府ニ提出シテ置イタノデアリマス、之ニ對シ
  テ外務大臣ヨリ答辯ガアッタ所ノモノハ頗ル要領ヲ得ズ、且
  ツ私ガ此問題ニ付テ質問ヲ發シタル事柄トハ大變意味ノ
  違ッ夕事ニ付テノ尙答辯ガアッタ譯デアリマス、私ハ此支那ノ
  財政ヲ外國ガ管理スルト云フ事柄ハ、現代ノ支那ニ取ッテ
  非常ニ重大ナ問題デアッテ、又今後支那ノ財政ノ成行ヲ見
  テ洵ニ深キ憂ニ堪ヘザル者デアリマス、而シテ之ニ對スル外
  務大臣ノ御各辯ハ、所謂霞ヶ關一流ノ御答辯デアッテ、雲ト
  モ霞トモ付カナイヤウナ曖昧タルモノデアル、ソレデ甚ダ遺憾
  ニ思フノデアリマスガ、列國ガ支那ノ財政ヲ管理スルト云フ
  問題ハ、既ニ支郡ノ各新聞ニ於テ唱ヘラレ、支那ノ南方ノ方
  面ニ於テハ支那亡國ノ端開ケリトマデノ非常ナル悲鳴ヲ揚
  ゲテ居ル問題デアリマス、此問題ニ對シテ私ハ政府ノ意嚮
  ヲ間キ、且ハ一面ニハ國民及議會ノ深甚ノ考慮ヲ要セナケ
  レバナラナイ事ト思ッテ居リマス、本議會ガ開ケテ以來、外交
  問題ニ付テハ、非常ニ貴衆兩院共微頭徹尾外交ノ失政ニ
  付テ彈劾シ、或ハ論究シテ居ルノデアリマス、本員モ亦現代
  ノ外交ノ甚シク振ハザル事ヲ嘆息スル一人デアリマスルガ、
  强テ此問題ニ付テ政府ヲ迫窮シヤウトモ思ッ」テハ居ラナイノ
  デアリマス、唯〓支那財政ノ管理ト云フ問題ガ、必ズ近キ將
  來ニ起ッテ來ベキ問題デアッテ、而シテ之ニ對スル政府ノ考ガ
  定マッテ居ラズ、又國民モ何等之ニ付テ考慮ヲ廻ラサズニ居
  ルト云フコトハ、實ニ東洋ノ禍根ヲ起ス所以デアッテ、爲ニ近
  キ將來ニ起ッテ來ラントスル此大問題ニ付テ、政府ハ餘程確
  カリシタル考ヲ持ッテ之ニ對應シナケレバナラナイ、又國民モ
  議會モ共ニ此問題ハ深キ考慮ヲ要スル問題デアルト自分
  ハ信ジテ居ルノデアリマス、由來此日本ノ外交ノ所謂霞ケ
  關外交ノ病源ト云フモノハ、傳統的ニ二ツノ病源ヲ持フテ
  居ノテ、其一ツハ祕密主義ヲ絕エズ維持シテ居ルト云フ事、
  又一面ニハ非常ナル刹那主義デ、其問題ガ起ヲテ來ル時マ
  デハ深キ考慮ヲ運ラサズニ居ル、一面ニハ事件ノ眞相ノ成
  ベク隱蔽シテ國民ニ知ラシメズ、議會ニ於テ之ヲ發表セズ、
  唯、當局者ノミガ此問題ニ付テ。頭ヲ痛メテ居ル、又問題ガ
  起ヲテ來ナケレバ一霞ケ關外交ノ人とハエライ考慮ヲ運ラサズ
  ニ、唯〓其日暮シ行當リバッタリノ外交ヲシテ居ルガ爲ニ、茲
  ニ重大ナル問題ガ起ノテ來レバ、動モスレバ非常ナル失態ヲ
  演ジ、非常ナル狼狽ヲシテ、其事柄ヲ國民ニ知ラシメズ、極
  テ祕密ニ外交ヲシテ居ルト云フコトガ今日ノ霞ケ關外交ノ
  私ハ病弊デアルト思フ、故ニ起ッテ來ル所ノ外交上ノ問題ニ
  對シテハ、何等ノ用意モシテ居ラナイ、極端ニ言フナラ極テ
  不用意ニ此國際的問題ヲ考ヘテ居ルガ爲ニ、殆ド寸前暗
  黑事件ノ勃發スルト同時ニ、國民モ是等ニ對スル準備モ
  ナイ政府ハ無論其一時ノ智惠ヲ以テ其問題ヲ解決シヤウ
  ト思フ爲ニ、常ニ外交ニ於テ大ナル失敗ト、大ナル攻擊ヲ受
  クル原因ヲ造ッテ居ルト思フ、ドウシテモ〓後ノ外交ハ國民
  的外交デナケレバナラヌ、國民ノ意思ト感情トヲ其背景ト
  シテ行カナケレバナラヌト云フコトガ、此ニ在ルノダラウト思
  フノデアリマス、外交官ガ國民ノ意思感情ヲ無視シテ、サウ
  シテ外交ヲ祕密ノ中ニ葬リ、由ラシムベシ知ラシムベカラズ
  ト云フヤウナ態度ヲ執ッテ、常ニ此外交ノ重要ナ問題ヲ議會
  ニ發表セズ、又其眞相ヲ告ゲナイ、斯ノ如クニシテ常ニ事件
  ガ起ヲテ來ルト同時ニ、非常ナル狼狽ノ態度ヲ示ス、是ガ今
  日ノ外交ノ誤リヲ惹キ起ス所以デアル、又大ナル失敗ノ原
  因ヲ造ッテ居ルト思フノデアル、此問題ニ付テモ-今起ラン
  トスル所ノ支那列國財政管理ノ問題ニ付テモ同樣デアル
  ト思フ、政府ハ未ダ國民ニ其眞相ヲ知ラシメナイ、本員ガ此
  問題ニ對シテ質問書ヲ出シテモ、成ベク其質問ノ要領ヲ示
  サナイヤウニ、其事件ガ如何ニモ無キガ如クニ之ヲ糊塗シテ
  居ルノデアル、今日マダ此支那財政管理ノ問題ハ、確實ナ
  ル具體的ノ形ニ於テ現レテ居ラナイケレドモ、必ズ近キ將來
  ニ於テ、驚クベキ勢ヲ以テ、支那財政管理ニ列國ノ勢力ガ
  及ンデ來ルコトハ疑ノナイ事實デアル、既ニ其形ヲ現シテ居
  ル、而シテ霞ヶ關外交官ハ之ヲ有ルガ如ク無キガ如ク、ソレ
  ヲ殆ド曖味模稜ノ間ニ葬デ居ルト云フコトハ、此事件ノ眞
  相ヲ國民ニ隠シ、サウシテ歷然トシテ大ナル形ニ於テ現レテ
  來タトキニ於テ、之ニ對スル何等ノ具體的ノ方案ヲ持っテ居
  ラヌト云フヤウナ、大失態ヲ何時モ演ズルノデアル、御承知
  ノ如ク革命ノ亂アッテ以來既ニ十數年經ッテ居ル、此間ニ於
  テ支那ノ財政ノ狀態、支那ノ政治上ノ狀態ハ非常ナ混亂
  ニ混亂ヲ重ネテ、各省ニハ督軍ガ割據シテ所謂督軍政治ヲ
  シテ、サウシテ獨立ノ國家ノヤウナ形ヲ成シテ、今日支那ノ
  政治ヲ分割シテ居ルノデアル、所謂唐ノ唐末ニ藩鎭ガ亂ヲ
  爲シタ如キ此督軍政治ガ、今日ノ支那ノ混亂、政治上政
  上ノ所謂混亂ヲ惹起ス所ノ原因ヲ造タテ居ルノデアル、十數
  年革命以來間斷ナキ、歌ム時ナキ所ノ此戰爭內亂、年一年
  ニ支那ノ混亂ハ其甚シキヲ加ヘテ、今日ハ殆ド康爛救フペ
  カラザルノ勢ニナッテ來テ居ルノデアル、隨テ北京政府ハ財
  政上カラ之ヲ見夕時ニハ破產ノ狀態ニ入ッテ來テ居ルノデ
  アル、今支那ノ國債ハ二十億圓以上ニ達シテ居リマスガ、此
  二十億圓ノ國債ノ利息サヘモ今口拂ヘナイノデアル、軍隊
  ノ給金ハ無論拂ヘナイ、官吏ノ体給サヘモ-中央政府ノ
  官吏ノ作給サヘモ、固ヨリ拂ハナイノハ三年モ五年モ拂ハナ
  イ偶沸フト云フヤウナ有樣ニナッテ來レバ、官吏ハマルデ混
  亂ヲシテ大藏省へ駈込ンデサウシテ給金ノ掠奪ヲヤルト云
  フヤウナ、殆ド名狀スペカラザル所ノ財政上ノ狀態ニ入ッテ
  居ルコトハ諸君ノ知ラルヽ所デアル、斯ノ如キ支郡政府ノ
  狀態ニ於テ、外債ノ利息ヲ拂ヘナイコトハ明カナ事實デア
  ル、偶〓支那ノ政府ニ收入ガアルモノハ、皆督軍ガ之ヲ橫領
  シ掠奪シテ、中央政府ニハ一文ノ金モ入レナイ、全ク今日支
  那ノ財政ハ絕望ノ狀態ニ入ッテ來テ、財政上ヨリ見タ時ニ
  ハ、支那ノ前途殆ド救フベカラズ、絕望ノ此境遇ニ陷ッタル
  支那ノ財政ハ、之ヲ悲觀スル者ハ、支那ノ今日ノ財政、經
  濟、政治ノ狀態ヲ知ッテ居ル者ハ、皆齊シク支那ノ前途寒心
  ニ堪ヘズト思ッテ居ル、北京ニ居ル所ノ「ロンドン、タイムス」ノ
  通信員「フレザー」ガ「ロンドン、タイムス」ニ此內情ヲ暴露シ
  テ、支那ノ現代ノ政治上、財政上ノ枚フベカラザル狀態ヲ列
  國ニ訴ヘタルコトハ明カナル事實デアッテ、サウシテ世界ノ支
  那ニ關係ヲ持ツ所ノ人々ニ對シテ、大ナル反響ヲ惹起シテ
  居ルノデアル、最早支那ノ斯ノ如キ狀態ハ、一日モ看過スペ
  カラザル所ノ點マデ來テ居ルノデアリマス、是ニ於テ列國ガ
  支那ニ有スル所ノ債權ノ保護ヲスルト云フコトハ當然ノ事
  デアリマス、後十億ノ支那ニ貸シタ所ノ金ヲ債權國ガ保護
  スルガ爲ニ、屢、會議ヲ起ンテ支那ノ財政ノ大整理、根本的
  整理ヲセナケレバナラヌ運命ニナッテ來ルコトハ、當然明カナ
  ル結論デアル、是ニ於テ昨年十一月デアリマシタカ、列國
  ガ-列國ト中シマシテモ日本ト英吉利ト亞米利加ト佛蘭
  西ノ北京ニ在ル公使ガ協議ヲシテ、支那ノ政府ニ財政整理
  ノ警告ヲ發シテ居ルノデアリマス、ソレデ此警告ニ對シテ、私
  ハ外務大臣ニドウ云フ內容ノ警告ヲ發シテ居ルカ、是ハ新
  聞ニモ外國電報ニモ出テ居ル事デアッテ、其警告ノ內容ヲ
  伺ヲタ所ガ、外務大臣ハイヤ冨ナドハシテ居ラヌト云フコ
  トヲ言ッテ居ル、是ハ果シテ何カ爲ニ斯ウ云フ事ヲ言ッテ居ル
  カ、天下萬衆ガ皆知ッテ居ル、今日支那ノ財政ノ殆ド破產
  ニ瀕シテ居クテ、外債ノ利子サヘモ拂へヌ爲ニ、列國ノ債權
  者ガ集^テ、支那ノ財政ノ監督ノ爲ニ使ガ昨年ノ暮
  ニ於テ支那財政ノ整理ニ對スル警告ヲ發シタルコトハ天
  下周知ノ事實デアル、[所ガ此重大ナル問題ニ對シテ、外務
  省ハイヤサウ云フ警告ヲ發シタ事ハ無イト云フコトヲ言ッテ
  居ル、私ハ其內容ニ付テ玆ニ外務大臣ヨリ發表シテ貰ヒタ
  イト思フ、何トナレバ是ハ日本ノ國民及政府ガ支那ニ貸付
  ケタル所ノ金ヲ、將來ドウシテ之ヲ取得ルカト一云フコトノ重
  要ナル問題デアルノミナラズ、支那ニ於ケル所ノ財政ノ監督
  ト云フコトガ、非常ナ支那ノ運命ヲ左右スベキ所ノ、結局ハ
  支那ヲ財政的ニ分割スル問題マデ進ンデ行クベキ運命ヲ
  持ッテ居ル大ナル問題デアル、此警告ヲ四箇國ガ發シタト云
  フコトハ事實デアルガ、其内容ハドウデアルカ、内容ヲ明ニス
  ルト云フコトガ、今日國民ヲシテ支那ニ對スル此重大ナル問
  題ノ成行ヲ知ラシムル所ノ、大ナル必要ノ事デアラウト思フ
  而シテ此財政ノ整理ヲ勸告致シマシタガ、若シ支那ノ政府
  ニ於テ其整理ヲスルコトガ出來ナカッタトキニハドウマルカ、
  無論支那ノ政府ニ於テ支那財政ノ監督ヲシ得ル所ノカハ
  無イ、能力ハ無イ、兵隊ノ給金ハ勿論、役人ノ月給サヘ拂ヘ
  ナイ政府ガ、二十何億ノ外債ニ向ッテ利息ヲ拂ヘヤウガナイ、
  之ヲ列國ガ支那ニ向テ白發的ニ財政ヲ整理セヨト云フ
  トヲ責メルト云フコトハ、殆ド不可能ナル事ノヤウニ思フガ、
  併ナガラ免モ角モ財政ヲ整理セヨト云フコトヲ列國ガ警告
  ヲ發シテ、ソレハ何日迄ニ其財政ノ整理ヲスベキコトデアル
  カ其詳細ノ事ハ分カラヌ、分カラヌガ若シ支那政府ニシテ
  此財政ノ整理ヲスルコトガ出來ナカッタ場合ニハドウスルカ、
  之ヲ一ツ伺ヒタイノデアリマス、唯〓徒ニ警告ヲ發シタノミデ
  ハナイ、是ニ於テ日本ニ於テハ此問題ヲ外務大臣ハ祕密ニ
  隱シテ居ルケレドモ、英吉利、亞米利加ニ於テハ旣ニ之ヲ公
  ニサレテ、來ルベキ問題ハ支那自ラ自發的ニ財政ヲ整理ス
  ルコトガ出來ナカッタ場合ニハ、進ンデ列國ハ支那財政ヲ管
  理セナケレバナラヌト云フコトハ入ッテ來ル、支那ノ財政ヲ管
  理スルト云フ事ハドウ云フコトカト云フト、支那ノ財源ニ向ツ
  テ手ヲ著ケルノデアル、支那ノ財源ハ何デアルトカ云ヘバ、今
  日ノ所ハ或ハ稅關デアルトカ、或ハ鹽ノ税デアルトカ、最モ
  重大ナル財源ハ鐵道デアリマス、京漢鐵道、京奉鐵道、津浦
  鐵道、是等ノ鐵道ノ收入ヲ列國ガ管理スルト云フコトハ詰
  リ支那ノ最モ財源デアルベキ所ノ鐵道ヲ押ヘ、此鐵道ヲ列
  國ニ於テ管理スルト云フコトニナッテ來ル、或ハ鑛山或ハ其
  他ノ利權ニ入,テ來ルカモ知レヌ、是ハ體ノ良イ所ノ財源管
  理デアルケレドモ、結局ハ支那ノ分割ヲ起スベキ所ノ動機、
  或ハ其基礎ニナルノデハナカラウカ、支那ノ爲ニ考ヘテ見タ
  ナラバ、或ハ東洋ノ平和ノ爲ニ考ヘタナラバ實ニ前途寒心
  ニ堪ヘナイ問題デアルト思フ、ト云フコトニハ日本ニ於テ之
  ヲ閑却シテ居クテモ、英吉利ハ既ニ支那財政ヲ管理セヨト
  云フコトヲ盛ニ唱ヘテ居ル、數年前ニ千九百二十年ニ於
  テ、英吉利ノ「メーヤー」ト云フ人ガ、盛ニ支那ノ財政ノ管理
  ノコトヲ主張シテ、英吉利ノ政府モ之ニ共鳴シテ居ル、所ガ
  最近亞米利加ハ支那ノ前途ニ付テ幾ラカ望ヲ囑シテ居ッタ
  爲ニ、成ベク支那ノ財政ヲ列國ガ干涉シナイヤウニト云フ
  說ヲ取ッテ居ッタケレドモ、華盛頓會議以來、支那ノ爲ス所ガ
  一々亞米利加ノ豫期ヲ裏切ッテ、サウシテ支那ノ前途甚ダ
  賴リ少ナイト云フコトヲ感ジテ、今日ハ積極的ニ亞米利加
  モ亦支那ノ財政管理、共同管理ト云フコトヲ主張シテ來テ
  居ル、英吉利ヨリモ一歩進ンデ支那ノ財政ノ管理ヲ主張シ
  テ來テ居ルノデアリマス、斯樣ナル狀態ニ於テ既ニ英吉利ナ
  リ、亞米利加ニ於テモ、二年三年以前ニ於テ支那財政管理
  ノ具體的意見ヲ發表シテ、政府モ人民モ之ニ共鳴ヲシテ居
  ル時ニ於テ、支那ニ債權ヲ持ッテ居ルモノハ日本ガ一番澤
  山持ッテ居ルノデアル、サウシテ此債權國トシテ日本ガ-列
  國ガ進ンデ支那ノ財政ヲ管理シヤウト云フ場合ニ於テ、日
  本ハドウ云フ態度ヲ執ルベキカ、ドウ云フ態度ヲ執ルノガ果
  シテ日本ノ利益デアルカ、日本政府ハ此態度ヲ今日ヨリ決
  メテ置カナケレバナラヌ、所ガ外務大臣ハ之ニ對シテ空漠ナ
  ル想像ヲ以テ、サウ云フ事ヲ考ヘル必要ハ無イト云フヤウナ
  事ヲ言ッテ居ル、私ハ空漠ナル議論デハナイ、既ニ此問題ハ
  具體的ニ歐米ニ於テ唱ヘラレテ居ル問題デ、而シテ其端〓
  トシテ昨年ノ暮ニ於テ、四國公使ガ支那ノ財政ノ整理ニ
  向、テ警告ヲ發シテ居ル、此警告ガ卽チ列國共同管理ニ導
  ク所ノ一ツノ火蓋デアルト自分ハ考ヘテ居ルノデアル、斯樣
  ナル問題ガ起ッタ時ニハ、日本政府ハ若クハ外務大臣ハ、ド
  ウ云フ御考ヲ以テ此問題ヲ切拔ケテ行クデアラウカ、支那ニ
  於テ最モ利害ノ關係ノ深イ日本ガ、之ニ對スル所ノ一定ノ
  議論ヲ持っテ居ルト云フコトハ、獨リ政府ニ於テ必要ナルノ
  ミナラズ國民モ議會モ亦此問題ニ付テ十分ニ考慮ヲシテ置
  カナケレバナラヌト思フ、デ私ハ此問題ノ中心デアルベキ、卽
  チ將來ニ於ケル支那ノ財政上ノ管理ノ問題、支那ノ將來ニ
  於テ必ズ起ッテ來ベキ所ノ問題ニ對シテ、明確ニ外務大臣
  ガ其意嚮ヲ以テ國民ニ之ヲ知ラシテ置ク、政府ノ態度ヲ明
  カニシテ置クト云フコトハ、決シテ躊躇スベキ事デモナケレバ、
  一支那ニ對シテ遠慮スベキ事デモナイ、斯ウ云フ問題ヲ秘密ニ
  シ、成ベク國民ニ知ラシメザラント云フヤウナ態度ヲ執ルト
  云フコトハ、遂ニハ此問題ガ非常ナル火ヲ揚ゲ、非常ナル束
  洋ノ禍亂ヲ起ス所ノ原動力ニナリハシナイカ、結局支那ガ救
  ハレナイモノデアルナラバ、或ハ列國ガ支那ノ財政ヲ管理ス
  ルト云フコトモ、東洋ノ平和ヲ維持シ、或ハ支那四億萬民ノ
  平和ヲ維持スル爲ニ必要ナル問題デアルカ』知ラヌケレド
  モ、是ハ國民ノ背景ト國民ノ感情ト總テノ人ノ智惠ヲ集メ
  テ、日本ガ將來攻究シナケレバナラヌ、殊ニ當局者ガ此問題
  ニ付テ深慮ヲ運ラサナケレバナラヌ所ノ問題デアル、之ヲ明
  白ニシ又具體的ニ此案ニ對シテ考ヲ政府ガ元サレルト云フ
  コトガ最モ必要ナ事デアラウト思ヒマシテ、政府ノ質問書ニ
  對シテノ更ニ私ノ意見ヲ述ベテ、政府ノ回答ヲ促シダイト思
  フノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/16

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• 017・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　次ハ米國ノ日本人歸化權ニ關ス
  ル件、〓水留三郞君
  米國ノ日本人歸化權ニ關スル再質問ノ答
  辯ニ對スル〓水留三郞君ノ意見
  〔〓水留三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/17

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• 018・清水留三郎

  ○〓水留三郞君　諸君、本員ハ米國ノ日本人ノ歸化問題
  ニ關シマシテ、政府ニ再質問書竝ニ再質問書ヲ提出シタノデ
  アリマス、所ガ政府ノ答辯ハ本員ヲシテ滿足セシムルニ至ラ
  ナイノデアリマスカラ、遺憾ナガラ茲ニ意見ヲ陳述致シマシ
  テ、政府ノ反省ヲ促シタイト思フノデアリマス、米國ニ於ケル
  日本人ノ歸化權問題ハ多年ノ懸案デアリマシテ、或州ハ之
  ヲ許シ或州ハ之ヲ禁ジテ居クテ、米國ノ大審院ニ於テハ確定
  セル判決ハ無カッタノデアリマス、偶、布哇ニ在住ヲ致シマシ
  テ歸化ノ手續ヲ爲シテ不許可トナッタル者ハ、小澤孝雄ナル
  人「シヤトル」ニ於テ山下宅治氏外一名ノ者ヨリ、米國ノ大
  審院ニ對シ、日本人ハ果シテ米國ノ法律ノ下ニ於テ歸化シ
  得ラレルヤ否ヤト云フ所ノ所謂訴訟ガ提出サレタノデアリマ
  ス、其試訴ノ結果判決ハ昨年十一月十三日ニ言渡サレマ
  シタ、米國大審院ノ判決ニ依リマスルト、日本人ハ白人ニ非
  ズ黑人ニ非ザルガ故ニ、米國ニハ絕對ニ歸化スルコトハ出來
  ナイト云フ風ナ判決ヲ受取ッタノデアリマス、之ニ對シマシテ
  政府ハ此儘泣寢入ヲフルノデアルカ、或ハ其他ノ方法ニ依ツ
  テ日本人ノ受ケタル差別待遇的ノ行動ニ對シテ、將來ドウ
  云フ風ナ考ヲ持ッテ居ルカ、是ガ私ノ質問ノ大要デアリマス、
  尙ホ之ヲ分類シテ申上ゲルナラバ、私ノ質問ノ第一ノ要點
  ハ、米國大審院ガ日本人ノ歸化權ヲ否認セルニ對シマシテ、
  政府ハ如何ナル處置ヲ取ラレタカト云フコトガ第一ノ質問
  デアリマス、之ニ對シテ政府ハ米國大審院ノ歸化判例ニ對
  シ、政府ハ何等容喙スベキ餘地ヲ認メズト。云フノガ其答辯
  デゴザイマス、若モ此政府ノ谷辯ヲ在留十四万ノ同胞ガ聞
  イタナラバ、如何ニ日本政府ガ米國ニ居ル日本人ニ對シテ
  冷淡デアッテ、無慈悲デアルト云フコトニ對シ、必ズヤ憤慨サ
  レルコトデアラウト信ジテ疑ハナイノデアリマス、米國ハ輿論
  政治ノ國デアル、日本ノ政府ニシテ眞ニ差別待遇的ナル此
  歸化否認ニ對シテ、此否認ヲ未發ニ防グト云フ一片ノ誠意
  ガアリマスナラバ、何故ニ亞米利加ノ輿論ヲ喚起シ、亞米利
  加ノ國論ニ訴ヘナカッタノデアリマスカ、亞米利加ノ歸化法
  ナルモノヲ私共調ベテ見マスト、自由ナル白哲人種、阿弗利
  加人及其子孫ノ歸化ヲ許スト云フノガ其規定デアリマス、
  而シテ此亞米利加ノ歸化法ヲ歷史的ニ攻究スル場合ニ於
  キマシテハ、千八百八十年ノ前後ニ於キマシテ、米國ニ於テ
  支那人排斥ノ熱ガ盛デアリマシタ、如何ニスレバ此支那人
  ノ徹底的排斥ガ出來ルカト云フ風ノ關係ヨリ、米國ニ於テ
  此歸化法ヲ制定セラレタノデアリマス、其證據ニハ白人ニモ
  アラズ黑人ニモアラザル所ノ墨西哥人ヲ、米國ニ於テ歸化セ
  シメタ實例ガアリマス、ンレハ墨西哥人ハ白人ニモアラズ、黑
  人デモナイノデアリマスガ、歸化法制定ノ精神ナルモノハ、唯と
  支那人排斥ニ在ルノデアリマス、支那人排斥ニ在ルノデアリ
  マスカラ、法律制定ノ精神ヨリ言ッテモ、墨西哥人ニ歸化ヲ
  許スノハ何等差支ナイト云ッテ米國ガ盛ニ墨西哥人ノ歸化
  ヲ許シタ實例ガアリマス、又土耳古人ニモ許シタ例ガアル、
  是等米國ニ於キマシテハ、白人黑人ニアラザル者ニモ歸化
  ヲ許シタ實例ガアルノニ、日本人ガ白人ニモアラズ黑人ニモ
  アラズト云フ理由ヲ以テ、歸化ヲ否認スルノハ私共ハ甚ダ不
  當ナル判決ナリト信ジテ疑ハナイノデアリマス、政府ハ言フ、
  米國大審院ノ判決デアルカラ是ハ如何トモスルコトガ出來
  ナイ、併シ苟モ米國ノ國情ヲ解シ、在留同胞ノ苦境ヲ思フ
  場合ニ於キマシテハ、私ハ斯ノ如キ答辯ヲスルト云フコトハ、
  全ク官僚的俗吏ノ根性デアッテ、國ヲ念フノ精神トハ思ハレ
  ナイノデアリマス、第二ニ本員ノ質問致シマシタノハ、日本人
  ノ米國歸化權ニ對シテ、政府ハ如何ニ考慮セラレツヽアルカ
  ト云フ風ノ問題デアリマス、之ニ對シマシテ政府ノ答辯ハ自
  國民ノ歸化ハ外國ニ對シテ强要スベキモノニアラズ、隨テ
  政府ハ邦人ノ爲メ歸化權ノ付與ヲ米國政府ニ求ムル意思
  ヲ有スルモノニアラズ云々ト云フコトデアリマス、顧ミマスレ
  バ十數年前デゴザイマシタ、私ガマダ米國ニ居リマシタ當時
  學童隔離問題ナルモノガ起リマシタ、其關係上日本人ノ歸
  化權ガ米國ニ於テ盛ニ論ゼラレマシタ、其時駐米大使ノ靑
  木君ハ矢張此答辯ト同ジ風ナコトヲ申シタコトヲ記憶シテ
  居リマス、本員ト雖モ在米邦人悉ク未國ニ歸化スベク歸化
  シテ、本國ニ敵對行動ヲ取レト云フノデハアリマセヌ、唯〓米
  國ニ移住シテ人生天賦ノ權利ト自由トヲ主張セント欲スル
  者ハ歸化スルガ宜シイ、又實業上ニ於テ、或ハ農業上ニ於テ
  歸化シナイト非常ナル不利不便ヲ來ス者ハ歸化スレバ宜イ
  ノデアル、而シテ歸化シテ故國ニ盡ス道ニ於テハ、彼我ノ意
  思ノ疏通ヲ圖リマシテ、國交上ヲ密ニシ、國際間ニ難局ノ起
  ル場合ニ於キマシテハ、其中間ニ立ッテ兩國ノ關係ヲ圓滿ナ
  ラシムル所ノ原動力タラシメレバ宜シイノデアル、彼ノ歐洲ノ
  戰爭ノ當時ニ於キマシテ、獨逸種デアリマス所ノ米國人、獨
  逸人、ノ歸化シタ所ノ米國人ガ、如何ニ獨逸ノ爲メ米國ノ爲
  ニ鬪ッタカト云フ、アノ事實ヲ知レバ明カナノデアリマス、而シ
  テ今日歸化權ガ無イ爲ニ我ガ同胞ナル者ハ、有ユル迫害有
  ユル排斥ヲ被ッテ居ルノデアリマス、故ニ私共ハ自ラ歸化セザ
  ルマデモ、歸化シ得シムルダケノ權利ダケハドウシテモ之ヲ保
  持シナケレバナラナイノデアル、差別待遇ハ今日亞米利加ニ
  於テ行ハレテ居リマスル、差別待遇ト云フモノヽ條項ヲ見マ
  スルト、大部分ハ歸化シ得ラレザル外國人ト云フヤウナ規定
  ヲ持ッテ居ルノデアリマス、故ニ私ハ此政府ノ答辯ニ向ッテ滿
  足スルコトハ出來ナイ、故ニ再質問ヲ致シタノデアリマス、私
  共ノ致シマシタ再質問ノ要旨ヲ申シ上ゲマスルト、米國ニ於
  キマシテ、白人黑人ニ歸化ヲ許シ、日本人ニ差別待遇ヲ與
  ヘルト云フコトハ、如何ニ米國ノ當局ニ於キマシテ、ソレハ人
  種關係デハナイ、差別待遇デハナイ、、歸化法ノ解釋ガ之ヲ然
  ラシムルモノナリト辯明シテ居リマスガ、事實ニ於テ明ニ私
  共ハ日本帝國、日本臣民ヲ侮辱スルノ甚シキモノナリト信ジ
  テ疑ハナイノデアリマス、吾々ハ正義人道ヲ口ニシ、博愛平
  等ヲ唱ヘテ居リナガラ、其實ハ侵略主義、帝國主義ヲ能事ト
  シテ居リマス彼ノ亞米利加ニ向ッテ、歸化セシメタイトハ思
  ハナイノデアリマス、併シ世界ノ一等國ヲ以テ自任シテ居ル
  日本、「ヴエルサイユ」ノ會議ニ於テ五大强國ノ一、華盛頓會
  議ニ於テ三大强國ノ一ト政府ガ己惚レテ居ル所ノ此狀態、
  此世界ノ一等國トナッテ居ル日本ガ、白耳義ヤ和蘭ノ如キ
  歐羅巴ノ此小國ノ國民ニスラモ歸化ヲ許シテ、世界ノ大國
  デアル日本人ニ差別待遇ヲ與ヘテ居ルト云フコトハ、私ハド
  ウシテモ之ニ就テ我慢スルコトハ出來ナイ、斯ノ如キ差別的
  ノ行爲ニ對シマシテハ、飽迄モ抗議ヲ申込ムコトハ私ハ適當
  デアルト信ジテ疑ハナイノデアリマス、況ヤ日本人ニ對スル歸
  化權ノ否認ト云フモノハ、在留邦人ニ對スル所ノ影響ハ甚
  大ナルモノデアリマス、帝國ノ移民政策上不利不便ヲ來スコ
  ト又莫大ナノデアリマス、最近ニ於キマシテ米國ノ下院移民
  會ガ、新外人入國制限法案ヲ可決シタ如キ、或ハ「カリフオ
  ルニア」州ニ於テ聯合憲法ノ下ニ當然受クベキ權利アル所
  ノ日本兒童ノ市民權フ奪ハントスルグ如キ、或ハ更ニ「カリ
  フオルニア」州ニ於テ華盛頓州同樣ニ、在米邦人ノ漁業權
  ヲ禁止セントスルガ如キ事、是ハ悉ク日本人ノ歸化權ガ不
  能トナッタ結果ト言ハナケレバナラヌノデアリマス、過去十五
  年ノ間、加州議會ノ年中行事デアル所ノ排日案、最近ノ現
  象デ見マスルト、在米日本人ニ對シテハ壓迫ヨリ寧ロ追放
  ニ進ンデ、漸次惡化ノ傾向ヲ示シテ居ルノデアリマス、之ヲ
  歴史的ニ觀察シマスルト、彼ノ學童隔離問題ニ其端ヲ發シ
  タ、日本人ノ子供ハ亞米利加ニ於テ〓育スルコトハ出來ナ
  イト言ック學童隔離問題、具後ニ於テ起ッタ問題ハ轉航禁
  止、日本人ガ亞米利加ニ轉航スルコトハ許サナイト言ノタ所
  ノ轉航ノ禁止、次ニハ日本人ノ土地所有ノ禁止デアル、更
  ニ渡米者ノ制限デアル、紳士協定ノ下ニ於テ「ゼンツルマン、
  アリーメント」ノ下ニ於テ、所謂更ニ寫眞結婚ノ嚴禁、最近
  ニ於テハ農業者ノ借地權ノ判奪トナッテ排日案トナッテ居リ
  マス、最近ニ於キマシテハ、日本人兒童ノ國語補助〓育ノ
  全廢ヲシナケレバナラヌト云フコトヲ主張シ、又日本漁業
  者ノ撲滅ヲ圖ラントシテ居ルノデアリマス、日本人漁業者
  撲滅法案ノ內容ナルモノヲ見マスルト、米國ノ市民タリ
  得ザル者ニ加州內ニ於テ其州權、又ハ中央政府ノ司法權
  内ニ屬スル、水中ニ於テ販賣ノ爲メ又ハ利益ノ目的ヲ
  以テ鮭或ハ〓用ニ供サルヽ他ノ魚類竝ニ貝蟲類
  ノ漁撈ヲ禁ズ、違犯者ハ規定]ノ州法ニ依リテ處罰ス
  ト云フノガ、今制定セントシテ居リマス所ノ日本人漁業權ノ
  禁止法案ノ內容デアリマス、八年前ニ於キマシテ華盛頓州
  ニ於テハ日本人ノ漁業權ハ禁止セラレタ、併シ華盛頓ニ於
  ケル日本人ノ漁業者ハ極ク少數ナ者デアリマス、今日「カリ
  フオルニア」州ニ於テ、日本人デ「カリフオルニア」州ノ漁業ニ
  從事シテ居ル者ハ約六千人デアリマス、此六千人ノ而モ其
  爲ニ投ジテ居リマスル費用ハ數百万圓ニ上ッテ居ルノデアル、
  六千人ノ生命トモ云フ此漁業權ノ總テヲ剝奪セントシテ、
  而モ數百万圓ノ損害ヲ被ムラシメントシテ居ル此排日案ノ
  內容ヲ見マスルト、矢張歸化シ得ザル外國人ト云フノデ、今
  囘ノ歸化權ト云フノガ重大ナ意味ヲ爲シテ居ルノデアリマ
  ス、更ニ亞米利加ノ下院ニ於テ最近可決シタ排日法案、本
  日ノ新聞ヲ見マスルト、或ハ亞米利加ノ下院ニ於テハ之ヲ
  握リ潰スカモ知レヌト云フコトガアリマシタガ、免ニ角下院
  ニ於テ可決致シマシタ所ノ移民委員法案中ノ記事ヲ見マ
  スルトドウデアリマスカ、市民トナリ得ザル外國移民ニ對シ
  テハ、再渡航者、宗〓家、大學〓授又ハ學術的職業者竝ニ
  其妻子及學生ヲ除ク外ハ入國ヲ禁止スルト云フノデアリマ
  ス、之ニ對シマシテハ亞米利加側ノ答辯ニ依ルト、是ハ只今
  マデ存立シテ居ル紳士協約ヲ具體化シタ所謂法律トシタ
  ニ過ギナイト云フノデアリマス、日本政府ガ任意ニ移民ヲ禁
  止致シマスル紳士協約ト、法律ヲ以テ條約ヲ無視シテ差別
  的待遇ヲ與ヘテ、サウシテ移民ヲ禁止セントスル此法案トハ
  雲泥ノ相違ト言ハナケレバナラヌノデアル、而シテ日本ノ移
  民ガ、歐洲ノ移民ヨリハ善良ナル者デアルト云フコトハ、今
  日一般ノ批評デアリマス、然ルニ此日本ノ移民ニ對シテ、歐
  洲移民トノ特別ノ待遇ヲシ、差別待遇ヲスルト云フコトハ、
  實ニ國家ノ體面上ヨリモ、又國ノ名譽ノ上ヨリモ、又吾々
  同胞ノ困難ノ狀態ヨリモ、私ハ許スベカラザル問題デアラウ
  ト思フノデアリマス、是ガ私ノ再質問ノ第一ノ大體デアリマ
  ス、第二ニ於テ私ノ指摘致シマシタノハ、國籍法上ニ於テ日
  本ノ血統主義ヲ採用シ、米國ハ出生地主義ヲ採用シテ居
  ルノデアリマス、所謂日本ノ國籍法ニ依ルト、父日本人ナル
  トキハ其子ヲ日本人トスル、父知レズシテ母日本人ナルトキ
  ハ、其子ヲ日本人トスルト云フノガ、日本ノ國籍法ノ規定デ
  アリマス、亞米利加ノ國籍法ニ依レバ、亞米利加ニ生レタ者ハ
  亞米利加人トスル、是ニ於テカ國籍ノ積極的衝突、二重國
  籍ト云フノガ起ルノデアリマス、而シテ今日亞米利加ニ生レ
  マシタ所ノ日本人ノ子供ト云フモノハ、一面ニ於テハ日本人
  デアリ、一面ニ於テハ亞米利加人デアリマス、而シテ今日日
  本ガ-日本人ガ亞米利加ニ於テ歸化權ガ否認セラレテ
  以來、日本人ノ子孫ニシテ、亞米利加人タリ得ラルヽ者ハ
  亞米利加ニ生レタル日本人ノ子供アルノミデアリマス、然ル
  ニ今日ノ國籍法ニ依リテ見マスルト、滿十七歲以下ノ者ニ
  對シマシテハ、其父兄ナリ保證人ナリガ要求スルト、日本ノ
  國籍ヲ離脫スルコトガ出來ルノデアリマス、一人前ニナリ十
  七歲以上ニナルト云フト、如何ナル條件ガアッテモ、此國籍
  ヲ離脫スルコトハ出來ナイ、頗ル矛盾ナル規定デアリマス、其
  結果亞米利加テ今日排日論者ガ唱ヘテ居リマスルノハ、二
  重國籍ニ對シテハ市民權ヲ剝奪シナケレバナラヌト云フコ
  トヲ盛ニ論ジテ居ルノデアリマス、又徵兵令ノ問題ニ付キマ
  シテ、海外ニ發展シテ、或ハ日本ニ歸ッテ嫁ヲ貰フトカ、或
  事業ノ關係デ歸ラウト云フ場合ニ於テモ、二箇月以内ニ歸
  ラナケレバ再渡航ガ出來ナイト云フ風ナ狀態デアリマス、此
  所謂徴兵令ノ關係、是等ノ關係ニ付テ政府ハドウ云フ風ニ
  考慮セラレテ居ルカト云フコトヲ聞キマシタ所ガ、矢張政府
  ノ答辯ノ要領ハ吾々ニ滿足ヲ與フルコトガ出來ナカッタノデ
  アリマス、最後ニ私ノ再質問致シマシタノハ、此歸化權デア
  ルトカ、或ハ土地所有權ト云フ風ナモノガ、斯ノ如キ困難ナ
  ル狀態ニ陷ッタト云フコトハ、日米條約ノ缺陷カラ生ジテ居
  ルノデアリマス、現在ノ日米通商航海條約ナルモノハ、明治
  四十四年ノ二月十一日ニ締結セラレタノデアリマシテ、其
  第十七條ニ依リマスルト、千九百十一年七月十七日ヨリ
  實施シ、滿十二箇年問ハ有效ナル旨ガ規定サレテ居ルノデ
  アリマス、而シテ本年ノ七月ニ其滿期トナル、而シテ此條約
  ハ桂內閣ノ當時ニ於キマシテ、小村外務大臣竝ニ現在ノ外
  務大臣タル內田君ガ、亞米利加ノ大使トシテ締結セラレタ
  所ノ條約デアリマス、此條約ニ付テハ曾テ衆議院ノ速記錄
  ヲ私共ガ見マスルト云フト、其當時ノ國民黨ノ代議士デア
  リマシタ服部綾雄君ヨリ詳細ニ此論及ガアッテ、其一節ニ依
  リマスルト、米國ト歐米諸强國トノ條約ハ、皆農業其他財
  產權ニ關スル規定ガアルガ、日米通商條約ニ此重要ナル規
  定ヲ缺ケルノハ何事デアル、今日ノ此日米條約ニ於テ、農
  業上或ハ工業上、其他肝要ナル所ノ條項ヲ缺イテ居ルト
  云フコトハ、是ハ日米條約ノ缺陷デアリマス、此爲ニ日本人
  ハ亞米利加ノ土地ヲ所有スルコトモ出來ナケレバ、日本人
  ノ歸化ガ否認サレテモ據ロナイ、故ニ日本ニ於テ此日米通
  商條約ヲ改訂シナケレバナラヌ、此改訂ハ本年ノ七月十六
  日デアル、併シ六箇月以前ニ豫告スルナラバ、其以後ニ於テ
  モ出來ルノデアリマスカラ、私共ハ日本人ノ問題ヲ根本的
  ニ解決スル上ニ於テ、日米通商條約ヲ改訂スルコトガ最モ
  必要デアル、之ニ就キマシテハ嘗テ對米同志會ナルモノガ一
  月十三日ニ決議シテ居リマス、ソレハ「來ル七月改訂スヘキ
  日米通商條約ノ條支中ニ明白ニ商業工業及農業上ニ關
  スル一切ノ權利ヲ歐洲諸國民同樣ニ確保セシムルコトヲ期
  ス」ト云フノ決議デアリマス、私共之ヲ希望シテ居ルノデアリ
  マス、日本人ヲ此亞米利加ニ於ケル差別待遇カラ救ヒ、歸
  化權ヲ確保シ、其他一切ノ權利ヲ歐洲人同樣ニ取扱ハシ
  ムルニ於テ、唯、此日米通商條約ヲ改訂スル一事アルノミ
  デアリマス、吾々ハ條約ニ依リマシテ、歸化權其他ヲ得ナケ
  レバナラヌノデアル、亞米利加ノノ法法ニ依リマスト、條約ハ
  國ノ最高法律デアル、若モ州ノ法律其他ノ法律ト牴觸スル
  場合ニ於テハ、條約ニ依ッテ規定セラレタル權利ハ一番最
  高ノ法律デアリマスカラ、此條約ヲ締結スルコトハ所謂凡テ
  ノ問題ヲ解決スル上ニ必要條件デアルト信ジマス、「カリフ
  オルニア」其他ニ於テ有ユル日本人排斥ノ問題ヲ今後惹起
  セシメナイヤウニスルニハ、此日本人ガ歐洲人同樣最恵國
  條款ノ下ニ權利ヲ確保スルナラバ、少シモ心配ハ無イノデア
  リマス、故ニ吾々ハ其目的ヲ貫徹スル爲ニ、飽迄モ奮鬪シナ
  ケレバナラヌト思フノデアリマス、終リニ臨ンデ私ハ政府ニ警
  告致シタイ、政府ガ今日全ク恐米病ニ襲ハレテ居ルノデア
  ル、政府ハ亞米利加英吉利ト云ヘバ、亞米利加ハ最モ恐ロ
  シイモノデアルカノ如ク考ヘ、其言フ事ニ對シテ唯々諾々ト
  シテ承諾シテ居ル有樣デアル、須ク此恐米病ヨリ目覺メテ
  主張スベキ事ハ正々堂々ト之ヲ主張シ、面シテ一步ヲモ讓
  ラザル決心ヲ以テヤッテ戴キタイノデアル、一面ニ於テハ困ッテ
  居ル我ガ十數万ノ同腕ヲ救ヒ、他面ニ於テハ帝國ノ國成ヲ
  發場シ、國益ヲ增進スベク、政府ハ此條約ノ改訂ニ際シテ
  ハ飽迄モ硬强ナル態度ニ出デラレンコトヲ政府ニ對シ警告
  シテ置ク次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/18

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• 019・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　西伯利駐兵ニ關スル件野村嘉六
  君
  四西伯利駐兵ニ關スル再質問ノ答辯ニ
  對スル野村嘉六君ノ意見
  〔野村嘉六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/19

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• 020・野村嘉六

  ○野村嘉六君　私ノ質問ハ西伯利ノ駐兵ニ關スル責任
  問題ニ對スル質問デアリマス、此問題ハ屢、此議會ニ於テ繰
  返サレテ居リマス、併ナガラ未ダニ當局ノ答辯ガ質問者ノ質
  問ニ答ヘルダケノ要點ニ達シテ居ナイト思フ、是ガ爲ニ已ム
  ヲ得ズ本員ハ再ビ此壇上ニ立ツヤウナ次第ニナッタノデアリ
  マス、故ニ或ハ前ノ質問者ト同ジ事實ヲ擧ゲルコトガアルカ
  モ知レマセヌ、此點ハ豫メ御了承ヲ顧フテ置キタイ、御承知ノ
  通リニ西伯利ノ出兵ハ大正七年ノ八月二日二三市府府ガ聲
  明シテ行ハレタノデアル、其時ニ帝國政府ガ宣言ヲ出シ
  マシテ、其宜言ノ趣旨ニ基イテ其後ノ行動ヲ執ッテ居ラナケ
  レバナラヌノデアリマスガ、其後ノ行動ハ全ク矛盾シタ行動
  ヲ執ッテ居ルト中シマスノハ、大正七年八月二日ニ宣言
  ハ-私ハ必要ノ點ダケヲ當時ノ宣言文ノ中カラ爰ニ摘讀
  シテ議論ヲ確ムル材料ト致シタイノデアリマス、大正七年八
  月二日宣言「帝國政府ハ露國竝露國人民ニ對スル舊來ノ
  隣誼ヲ重ンシ露國ノ速ニ秩序ヲ恢復シ』テ健全ナル發達ヲ
  遂ケムコトヲ東心切望シテ止マサル所ナリ」此文書ヲ見マス
  ルト云フト、當時露國ニ於キマシテ秩序ガ非常ニ紊レテ居タ
  ト云フコトハ想見スルニ難カラヌノデアリマス、更ニ中略、第
  二段トシテ「合衆國政府モ亦同ク其危急ヲ認メ帝國政府
  ニ提議シテ先ツ速ニ救援ノ軍隊ヲ派遣セムコトヲ以テセリ
  是ニ於テ帝國政府ハ合衆國政府ノ提議ニ應シテ其友好ニ
  酬ヒ且今次ノ派兵ニ於テ聯合列强ニ對シ步武ヲ齊フシテ
  履信ノ實ヲ擧クル爲速ニ軍旅ヲ整備シ先ツ之ヲ浦潮ニ發
  遣セムトス」之ニ依リマスト云フト、西伯利出兵ノ目的ハ亞
  米利加ガ先ヅ提唱シテ、日本ガ之ニ聽イテ、亞米利加ト共
  ニ之ヲヤッテサウシテ、步武ヲ齊ウシテ履信ノ實ヲ擧グルト云
  フ目的デ、此西伯利出兵ガ行ハレタト云フコトハ明瞭デアル
  ノデアリマス、更ニ中略ト致シマシテ大變長イ文章デアリマ
  スカラ、要點ダケ中シマスガ、「其國內改革ニ干涉セサルノ旣
  定主義ヲ聲明スルト共ニ所期ノ目的ヲ達成スルニ於テハ政
  治的又ハ軍中的ニ其主權ヲ侵害スルコトナク速ニ撤兵スヘ
  キコトヲ玆ニ宣言ス」詰リ亞米利加ノ提議ニ基イテ出兵シ、
  而シテ「チエツク」種族救援ガ其目的ヲ達スル上ニ於テハ、速
  ニ激兵スベキコトヲ玆ニ宣言スト云フノデアリマスカラ、「チエ
  ク一種族ヲ救援シタ以上ハ、西伯利カラ撤兵スルト云フノ
  ガ是ガ宣言デアルノデアリマス、思フニ此宣言ハ國民ニ對ス
  ル宣言デアルト同時ニ、各國モ此意思ヲ了承シタモノナリト
  私ハ思フノデアリマス、而シテ此宣言ノ責任者トシテノ當時
  ノ總理大臣寺内伯、後藤新平氏、現總理大臣夕ル當時ノ海
  軍大臣加藤友三郞氏、何レモ貴任ヲ負ウテ此宣言ヲ天下
  ニ公表サレタノデアル、否世界ニ公表サレタノデアル、所デ此
  「チエツク」種族ヲ救援スル目的ガ達シマシテ、大正九年ノ
  二月ニ於キマシテハ、既ニ皆此目的ヲ達成シタ以上ハ、亞
  米利加ノ如キハ二月ノ十日カラ一週間內ニ駐兵シテ居タ
  ノヲ救兵スルト云フコトヲ、各國ニ宣言シタノデアリマス、成
  程御承知ノ通リニ、此天下ニ對スル宣言カラ見マスルト云
  フト、所期ノ目的ヲ達成スルニ於テハ、政治的又軍事的ニ
  其主權ヲ侵害スルコトナク速ニ敬兵スベキコトヲ茲ニ宜言
  スト此處ニアルノデアリマス、所期ノ目的ヲ達成シタ以上ハ
  速ニ撤兵スルノガ理ノ當然ナリト信ズルノデアル、亞米利加
  ニ於キマシテハ、大正九年ノ二月十日ヨリ二月十七日迄ノ
  間ニ於テ、旣ニ亞米利加ノ兵隊ヲ撤退シタノデアル、天下ニ
  對スル宣言ヲ重ンジタナラバ日本モ當然其時ニ撤兵スベキ
  ガ、私ハ義務ト信ズルノデアリマス、又日本ノ信用ヲ高ムル
  所以ナリト私ハ思フノデアリマス、所ガ日本ダケハ撤兵セズ
  ニ、却テ二月ノ半頃カラ越後ノ高田師團ニ對シテ約半師圏
  モ出兵ヲ命ジタノデアル、私ハ此點ニ對シテハ大正七年八
  月二日ノ宣言ヲ裏切ルモノナリト思フノデアル、併シ政府ノ
  政策ハ免モ角モ大正九年ノ二月中旬カラ、更ニ越後ノ高田
  師〓ニ對シテ西伯利ニ出兵スベキ命令ヲ下シタノデアル、御
  承知ノ通リニ日獨戰爭ハ大正三年八月二十三日ニ宣戰
  ノ公布ガアッタノデアル、サウシテ大正九年ノ一月十日ニハ
  平和ノ詔勅ガ出タノデアル、所ガ大正九年ノ二月ノ末ニ至ッ
  テ高田師〓ニ出兵命令ヲ出シタノハ如何ナル一體理屈デ
  アルカ、憲法ノ根據ガアルノデアルカ、私ヲシテ言ハシタナラ
  バ、憲法第十三條ニ「天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ
  條約ヲ締結ス」ト云フコトガ規定シテアルノデアル、所ガ大正
  九年ノ二月後、旣ニ日獨戰爭ノ平和詔勅ノ出タ後ニ、尙ホ
  高田師團ニ出兵ヲ命ジタト云フコトハ、正シク私ハ憲法違
  反ナリト思フノデアリマス、(「ヒヤ〓〓」)去ナガラ此點ニ對シ
  テハ、是ハ法律上ノ見解デアルカラシテ强テ申シマセヌガ、免
  モ角モ所期ノ目的ヲ達シテ居ル以上ニ出兵シタト云フコト
  ハ、私ハ日本帝國トシテハ其信ヲ履ムモノデナイト思フノデ
  アル、併シ議論ト實際トハ動モスルト相違スル點ガアルノデ
  アリマスカラシテ、サレバ實際其當時ニ於テ必要デアッタカ、出
  兵尙ホ必要ナルカ、更ニ實際論ニ付テ申シタイノデアル、吾々
  ハ此所期ノ目的ヲ達シタ以上ハ撤兵スルノガ當然デアル
  ト思フ、憲政會亦始終此意見ニ一致シテ居ッタノデアル、ソ
  レナラバンレ以外ニ所期ノ目的ヲ達シタ以上ハ撤兵スルト
  云フ議論ガ無カッタカト申シマスレバ、大正七年八月ノ出兵
  當時ニ、軍隊ノ派遣ハ勿論當時之ニ伴フ行政上ノ關係ニ
  於テ、加藤恒忠君ガ露國ノ大使ト爲ニテ赴任サレ、又前議
  會ニ選出サレテ居リマシタ所ノ政友會ノ代議士頭本元貞
  君ガ、軍司令部公報局長トシテ矢張同時ニ赴任サレタノデ
  アリマス、私ハ餘リ當時ノ憲政會ノ議論ヲ支持スルノハ如何ト
  思ヒマスカラシテ、當時ノ狀況ヲ卽チ憲政會ノヲ除キマシテ
  政府ノ職名ヲ帶ビテ武官以外ニ派遣サレタル所ノ加藤恒
  忠大使竝ニ頭本元貞公報局長ノ意見ヲ此處ニ一言申上
  ゲルノハ、論據ヲ確ムル上ニ必要ナリト斯ウ信ズルノデアリマ
  ス、大正八年ノ十二月ニ於テ卽チ亞米利加ガ撤兵ノ期ガ熟
  シタ其時ニ、頭本公報局長、卽チ情報ヲ偵察スル所ノ當時
  局長ノ天下ニ公表シタ意見ノ一節ニ依リマスルト、斯ウ云
  フ事ヲ申シテ居ルノデアル、然ラバ此際如何ナル政策ヲ執ル
  ペキヤト云フニ、唯思切ッテ撤兵スルノ外ハナイ、外間ニ現
  シタル消息ニ依レバ、有力者間ニ當分現狀維持ノ姑息策ヲ
  以テ當面ノオ茶ヲ濁サントスル者モアルヤウニ見ユルガ、是ハ
  最モ危險ナ愚策デアルト云フコトヲ斷言シテ憚ラズ、現狀維
  持ト云フコトハ多クノ場合無策ノ意味デアル、殊ニ今日ノ
  場合無策程危險ナ事ハナイ、西伯利ノ狀態ハ最早現狀維
  持ヲ許ス餘地ハ無イノデアル、此際若シ現狀維持ノ態度ヲ
  執ルニ於テハ其結果ハ恐ラク「レーニン」政府軍ト對峙若ク
  ハ對戰スルノ已ムナキニ至ルデアラウ-吾々ハ憲政會員ガ
  言フノナラバ別ト致シマシテ、當時政府ノ與黨デアッタ、政府
  ノ俸給ヲ貰ッテ、サウシテ而モ重大ナル任務ヲ帶ピテ居タ政
  友會代議士頭本元貞君ガ、公報局長トシテ西伯利ノ當時
  ノ狀態ヲ視察シタ結果、吾々ニ此意見ヲ公表シタノデアリマ
  ス、シテ見レバ吾々ハ是ハ公平ナリト見ナケレバナラヌノデア
  ル、卽チ「今日ノ場合無策ホド危險ナル事ハナイ、西伯利ノ
  狀態ハ最早現狀維持ヲ許ス餘地ハ無イノデアル、此際若モ
  現狀維持ノ態度ヲ執ルニ於テハ其結果ハ恐ラクハ「レーニ
  ン」政府軍ト對峙若クハ對戰スルノ已ムナキニ至ルデアラウ」
  ト吾々ハ頭本君ガ矢張其地位ニ鑑ミラレテ、大局カラ認メ
  ラレテ居ル意見ヲ發表サレタト云フコトハ至當ナリト信ズル
  ノデアリマス、併シ頭本君ノミカト申スト、當時矢張遣露大
  使トシテ約一年間汽車ノ中其他ニ於テ其任務ヲ果サレ
  夕加藤恒忠大使ノ言ニ依リマシテモ、矢張同樣ノ趣旨ノ意
  味ヲ述ベラレテ居ルノデアル、此際ハ撤兵スル外途ハナイト
  云フコトヲ述ベテ居ラレルノデアル、私ハ政黨ノ關係ニ於テ
  ハ憲政會之ヲ唱ヘ、在朝黨ノ關係ニ於テハ時ノ其局ニ當ッテ
  居ラレル此兩君ガ唱ヘテ居ラレルト云フコトヲ今述ベテ居ル
  ノデアル、更ニ露國ノ內情ニ至ッテハドウデアルカト申シマス
  ルト、私ハ其當時露國へ參ッテ居リマセヌカラ樣子ハ分リマ
  セヌ、唯こ是ハ通報ニ依テテ知ル外ハ眞僞ノ程ハ分リマセヌ
  ガ、併シ私ノ得タ情報ニ依レバ、浦潮ニ於テ浦潮市會ニ於テ
  ハ須ク撤兵ヲシテ貰ヒタイ、露國ハ露國ヲ以テ自ラ治ムルノ
  デ、決シテ他ノ國ノ厄介ニハナラヌト云フ附帶決議ヲシテ居
  ルト云フ情報ヲ得テ居ルノデアル、是ハ露國側カラ見タ一ツ
  ノ情報デアル、併シ是ハ本當デアルカ如何カト云フコトハ、私
  ハ此處デ保證ハ出來マセヌ、更ニ又東西伯利ニ於ケル東〓
  鐵道ノ從業員ノ職業同盟會ニ於テハ、日本人ガ在留スル
  以上ハ、憤懣ト怨恨トヲ惹起スノデアル、ソレデアルカラ須ク
  撤兵シテ貰ヒタイト云フ決議ヲシタト云フコトヲ、其當時情
  報ニ接シテ居ルノデアル、併ン是モドノ程度ニ在ルカト云フコ
  トハ、身自ラ親シク其局ニ當ッテ居ラナイノデアルカラ、責任ヲ
  以テ言フコトハ出來マセヌガ、所謂時ノ電報ニ依ッテ私ノ承
  知シタ範圍ニ於テ申上ゲルノデアルノデアリマス、內地ニ於
  キマシテハ、吾々一派、在朝黨トシテハ時ノ政府ニ責任ヲ持ツ
  テ立ツ頭本君竝ニ加藤大使、又當時其地ニ於ケル所謂露
  西亞ノ是等ノ人民ガ、何レモ撤兵ヲ必要ナリト主張シテ居
  ルト云フコトヲ、是ハ大體的ニ申上ゲテ、サウシテ其時ニ駐
  兵撤兵ノ相岐ルヽ大議論ガアッタト云フコトヲ申上ゲテ置
  キタイ、斯ク申上ゲルト云フコトハ、矢張議論ノ根據ヲ確ム
  ル必要上デアリマシテ、吾々ハ所期ノ目的ヲ達シタ以上ハ
  撤兵スベシト、是ガ政策上ニ於テノ、意見デアル、駐兵スベシ
  ト云フノハ時ノ政府ノ意見デアル、此政策上ノ可否ガ孰レ
  ニ在ルカト、此判斷ニ基イテ更ニ責任問題ガ玆ニ惹起サレ
  ルノデアリマス、ソレデアリマスカラ已ムヲ得ヌ、事面倒デアリ
  マスケレドモ、手續上ノ問題ヲ申上ゲナケレバナラヌノデア
  ル、偖テ頭本君ガ政友會ノ代議士トシテ、海外ノ事情ニ通
  ジタ此人ガ公報局長ノ責任トシテ、今申上ゲマス通リ若シ
  此儘ニ置イタナラバ危險是程甚シキ事ハナイト云フコトヲ、
  大正八年ノ末吾々ニ報知シタ所デアル、所ガ大正九年ノ御
  承知ノ通リ四月二十五日カラ二十七日ニ亙ッテ起ッタ事實
  ハ如何デアリマスカ、「バルチザン」ノ爲ニ我ガ同胞六百人ガ
  無殘ニモ虐殺サレタ事實ガアルノデアリマス、所謂頭本君ノ
  此儘ニ置ク程危險ナ事ハナイ、是レ位無策ノ事ハナイ、須ク
  撤兵スベシト云フ大正八年十二月ノ意見ヲ採用シタナラ
  バ、此慘事ハ起ラナカッタデアラウト思フ、憲政會ノ議ニ聽ク
  ニアラズ、政友會ノ前代議士頭本君ノ言ニ聽キナガラ、不幸
  ニシテ此慘事ハ起ッタノデアリマス、御承知ノ通リ頭本君ガ意
  見ヲ發表シテカラ五箇月目ニ此事實ガ起ヲタノデアル、六百
  人ト云フ人ガ免モ角モ他國ハ率知ラス、日本トシテハ恐ラク
  虐殺サレ、悲慘ナ最後ヲ遂ゲタト云フコトハ、曾テ私ハ歷史
  ニ無イ事ト思フ、而シテ其虐殺ノ模樣ニ至リマシテハ、私
  此處デ言フヲ實ハ憚ルノデアル、免モ角善良ナル軍人竝ニ
  非軍人合セテ六百人ガ虐殺サレタ、ソレ自體ハ何ノ爲カト
  云ヘバ、卽チ駐兵ノ結果ナリト私ハ玆ニ斷言シタイノデアル
  (拍手)隨テ其行途ニ付テ一二申シテ置カナケレバナラヌ、駐
  兵スル理由ニハ幾ツモアリマセウガ、其時ニハ兔モ角モ政府
  ニ於テハ「オムスク」政府ヲ非常ニ重ク視タノデアル、西伯利
  ニ於ケル「オムスク」政府ニ賴ッタナラバ所期ノ目的ヲ達スル
  コトガ出來ルト思ッタノデアラウ、所ガ「オムスク」政府ハ瞬ク
  內ニ潰レテシマッタ、是ガ結果所謂「オムスク」政府ニ反對シ
  テ居ル連中ガ、此怨ガ「バルチザン」トナッテ到頭六百名ノ虐
  殺事件ヲ惹起シタノデアル〓「オムスク」政府ニ力ヲ置イタト
  云フソレ自體ガ政策上ノ誤リデアル、私ハ第一トシテ申上ゲ
  タイノハ、今申上ゲマシタ通リ嘗テ日本ノ國トシテハ絕後ト
  ハ思ヒマセヌガ、空前ノ虐殺事件ヲ惹起シタノハ全ク駐兵ノ
  結果ナリト云フコトハ、玆ニ斷言ヲシテ置クノデアル(ヒ
  ヤノ〓)更ニ有形上ノ損害ト致シマシテハ、約六億万
  圓ノ經費ガ是ガ爲ニ費消サレタノデアリマス、或ハ六
  億万圓ニナルカ、七億万圓ニナルカ五億幾ラニナルカ
  此ノ精算ハ私ハ分リマセヌガ、約六億万圓トシテ差支ナカラ
  ウカト思フ、此金ヲ萬一生產事業ニ使ッタナラバ如何デアリ
  マセウ、義務〓育費國庫支辨デ御互ニヤカマシク議論シテ
  居リマスケレドモ、一年ニ四千万圓乃至五千万圓ノ程度ガ
  議論ノ焦點デアル、萬一六億万圓ノ金ガアッタナラバ、相當
  ノ利子ニ廻シタナラバ未來永劫其利子ダケデモ國民〓育
  ヲ十分ニ爲スコトガ私ハ出來ルデアラウト思フノデアル(ヒヤ
  ヒヤ)又近時地方竝ニ中央ノ財政ガ非常ニ困難シテ居リ、
  地租委譲等ノ議論モアリマスガ、免モ角之ヲ地租或ハ營業
  稅ニ廻シタナラバ、一年ニ約五千万圓乃至六千万圓ハ利
  子ダケデモ生ズル、是ダケヲ減稅ニ充テヽモ我ガ國民ハ頗ル
  其生活ニ安ンズル結果ニ至ルデアラウト私ハ斯ウ思フノデア
  ル、私ハ是ハ有形上ノ議論ニ對シテ申上ゲル、所ガ此六億
  万圓ト云フモノハ全ク水泡ニ歸シタノデアル、水泡ニ歸シタ
  ノミナラバマダ宜シイガ、是ガ爲ニ大ナル後患ヲ貽シテ居ルト
  云フ事實ガアルノデアル、此點ニ對シテハ後ニ申上ゲマスガ、
  免ニ角モ吾々ガ今日議會デヤカマシク論爭シテ居ル此財政
  經濟整理ニ於テ、年ニ六千万圓ノ餘分ノ金ガアッタナラバ、
  整理ヲスルニ必ズユトリガ出來、又緩和スルコトガ出來ルデ
  アラウト云フコトヲ斷言シテ憚ラヌノデアル、ソレト同時ニ國
  民ハ必ズ滿足スルモノデアルト云フコトモ、私ハ玆ニ申シテ
  不都合ハ無イト信ズルノデアリマス、御承知ノ通リニ苟モ國
  ヲ成ス以上ハ、其國防上他ノ國ト戰ヲスルト云フノモ、平和
  維持ノ必要上已ムヲ得ヌノデアル、是ハモウ何レノ國ト雖モ
  已ムヲ得ナイ、平和ヲ維持スル必要上、自衛上、他ノ國ト戰
  フコトハ已ムヲ得ヌノデアル、甞テハ日〓戰爭ヲ起シタノデア
  ル、其時ノ經費ハ幾ラデアルカ、成程物價モ當時ハ安カッタ、
  併ナガラ漸ク二億二千五百万圓デアルノデアル、御承知ノ
  通リニ日〓戰爭ハ我ガ日本國ヲ世界ニ紹介シタ第一ノ階
  梯デアッタノデアル、彼ノ世界ニ日本ヲ紹介スル第一ノ階梯、
  而シテ廣大ナル支那ニ對スル戰勝ノ結果、如何ナル費用ガ
  掛ッタカト申シマスレバ、僅ニ二億二千五百万圓デアルノデ
  アル、又日露戰役ハ更ニ今度ハ世界ニ紹介スルニ止ラズシ
  テ、世界的ニ地步ヲ占ムル必要上、否東洋平和ノ爲ニ戰ッタ
  戰爭デアルガ、其時ノ費用ハ幾ラデアルカト云フト、十三億
  五千六百万圓デアルノデアル、我ガ日本ヲ世界ニ紹介スル
  必要上、否東洋平和ノ爲ニ戰ッ夕日清戰爭、其時ノ費用ニ
  對シマスルト云フト、今回ノ無益ノ六億万圓ノ費用ハ何夕
  ル大キイ事デアリマセウカ(拍手)約三割ノ費用ヲ使ヒナガ
  ラ、何レノ所ニ國家ノ權威ガ發展サレマシタデアリマセウカ、
  國家ノ信用ヲ增スコトガ出來タデアリマセウカ、是ガ爲ニ却
  テ我國ノ國威ヲ毀損シタト云フ事實ハアルカモ知レヌケレ
  ドモ、一トシテ國威ヲ發揚シタト云フ事實ハ無イノデアル、更
  ニ述ベマスガ多大ナル費用ヲ使クテ、サウシテ成功セヌノミナ
  ラズ、却テソレガ所謂古來傳ハッテ居ル所ノ日木ノ武ヲ黷ス
  ト云フ結果ヲ來シタノデアル、又是ハ財產上ノ關係デアリマ
  スガ、更ニ人命上ノ關係カラ中上ゲマスルト云フト、詳シイ
  事ハ分リマセヌガ、大略約三千人ト見テ宜シイデアラウト思
  フ、三千人カラノ死傷者ヲ出シタノデアル、戰死者ヲ出シタ
  ノデアル、公明正大ナル戰ノ下ニ於テナラバ、我ガ日本國六
  千万人擧ゲテ戰地ニ臨ミ討死シテモ敢テ後悔セヌ、否敢テ
  ソレヲ意トセヌ所ノ日木ノ國民性デアル、併ナガラ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/20

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• 021・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　一寸御注意致シマスルガ、マダ後ニ
  意見ノ陳述ガ澤山アリマスカラ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/21

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• 022・野村嘉六

  ○野村嘉六君(續)　私ハ重複セヌ積リデアリマス-公明
  正大ナル戰ノ下ナラバ六千万人皆擧ッテ計死シテモ決シテ
  意トセヌノデアル、併ナガラ斯ノ如ク理由不徹底ノ下ニ六千
  万人カラノ人ガ、詰リ戰死或ハ病死-其他ノ事ニ病歿シ
  タト云フニ至ッテハ、私ハ實ニ遺憾ニ思フノデアル(ヒヤ〓〓)
  是ガ第三ノ理由デアル、併シ六億ノ金ヲ使ヒ、戰死三千人、
  病傷者三千ノ約六千ノ人ガ出來タガ、併シ是ガ爲ニ他ニ利
  益ガアッタカ、斯ウ申シマスト御承知ノ通リニ、今日各〓國ヲ
  成シタル程度ニ於テ、却テ是ハ不利益ヲ來シテ居ルノデアル、
  何故ナラバト斯ウ申シマスト、是ガ爲ニ英吉利人ダトカ、或
  ハ亞米利加人ガ〓疑心ヲ懷イタト云フコトハ是ハ爭ヘナイ
  事實デアル、日本動モスルト侵略主義デハナイカ、吾々ハ當
  初出兵ノ約束ハ七千五百人デアル、ソレヲ七万五千人出シ
  テ更ニ所期ノ目的ヲ達シテ居ルニ拘ラズ、尙ホ出兵スルノハ
  或ハ西伯利ヲ占領スル意思デハナイカト云フ疑懼ノ念ヲ懷
  カセタト云フコトハ事實デアルノデアル(ヒヤ〓〓)此事ハ加
  藤友三郞總理大臣モ貴族院ニ於テ述ベテ居ラレルノデアリ
  マス、是ガ爲ニ誤解ガフッ夕、此誤解ヲ解ク方法ダケハ盡シタ
  ト言ウテ居ラレルノデアルカラシテ、其誤解タルヤ卽チ侵略
  主義、其他ノ關係ニ於テ國際上穩カナラザル誤解デアッタト
  云フコトダケハ私ハ斷言スルニ憚ラヌノデアル、又露國人カ
  ラ見マスルト、色々自分ノ兄弟親子ガ討伐サレテ居ルノデア
  ル、是ハ果シテ好イ心持ガスルデアリマセウカ、自分ノ親子ガ
  殺サレ兄弟モ殺サレタ時ニハ、如何ナル人ト雖モ其怨ハ骨
  髓ニ徹スルト云フノハ人情ノ當然デアルノデアル、露國人ニ
  對シテハ救フベカラザル怨ヲ懷ガセ、サウシテ亞米利加ナリ、
  英吉利ニ對シテ所謂疑ヲ懷カシメタト云フコトハ、果シテ國
  際的ニ適當デアルカドウデアルカ、是ハ卽チ此出兵ノ結果
  此駐兵ノ結果ノ失態ナリト斯ウ信ズルノデアル、更ニ申シ
  マスルト云フト、此出兵此駐兵ノ結果ハ御承知ノ通リニ、武
  器ノ紛失ト云フ問題ガ之ニ伴ウタノデアル、大正十一年ノ
  十月十六日內閣發表ノ公表ヲ見マスルト、免モ角貨車十
  九輛ニ積ムダケノ小銃、火藥、其他ノ所謂軍器軍戎ガ紛失
  サレタト云フコトハ辯解ノ上ニ辯解ヲ加ヘテ、極ク節約ノ程
  度ニ於テ是ダケハ已ムヲ得ズ公言シテ居ルノデアル、貨車
  十九輛ノ噸數ハ私ニ分リマセヌガ、免モ角斯ノ如キ多大ノ
  武器ヲ紛失スルト云フコトハ、果シテ帝國政府ノ信用如何
  ト云フコトヲ私ハ思フノデアル、況ヤ其品物ハドウデアルカ
  斯ウ申シマスルト「チヱック」ヨリ預カッタル品物デアル、斯ウ
  云フノデアル、他所カラ預カッタ品物、否個人カラナラ別トシ
  マシテ、荀モ一ツノ獨立國ヲ成シテ居ル其國カラ預カッタ品
  物ヲ-個人デ預カッタニアラズシテ、帝國政府ガ預カルノナラ
  其品物ヲ紛失シタト云ウテ、ソレデ果シテ信用ガ持續ガ出
  來ルデアリマセウカ(ヒヤし〓)其價格ハ約八十六万圓ト云
  フコトデアルノデアル、由來個人トシマシテモ、人カラ物ヲ預
  カッタナラバ十分ニ管理方法ヲスルノガ當然デアルノデアル、
  所ガ政府ガ其管理ヲ怠ッタノカ或ハ故意カ、是ハ他ノ別問
  題トシマシテ、兔モ角モ國ト國トニ預カッタ其ロ叩物ヲ紛失サ
  シテ、ソレデ帝國政府ノ信用ガ維持サレルト云フ考デアラウ
  カ、由來日本ノ國ハ信用ヲ以テ立ッテ居ルノデアル、私ハ此
  點ニ對シテ此駐兵ノ結果、日本ハ嘗テ例ノ無イ大ナル不信
  用ヲ來シタモノデアルト云フコトヲ斷言シテ憚ラヌノデアル
  (拍手)況ヤ紛失シタ本人ガ問題ニナッタ-原少佐ガ問題
  ニナッタノデアルガ、偖テ其裁判ハ御承知ノ通リニ未ダ判決
  ヲ言渡サヌ前ニ、判決文ガ社會ニ公表サレテ居ルヤウナ次
  第デアル、十九輛ト云フ大ナル貨物ヲ紛失サセルヤウナル此
  無責任ナ當局デアッタナレバ、隨テ栽判モ前以テ-公表シ
  ナイ前以テ洩ラシタリ、裁判ガ裁判ナラザル威信ヲ失ッタノ
  モ、是モ當然ナリト私ハ思フノデアル(拍手)私ハ是ガ矢張
  駐兵ノ一ノ結果ト思フノデアル、駐兵シタナレバコン此所謂
  不始末ガ出來タノデアル、所謂所期ノ目的ヲ達成シテ直ニ
  撤兵シタナラバ、斷ジテ斯ウ云フ不結果ヲ來サスノデアルト
  云フコトヲ私ハ言フノデアル(拍手)更ニ第六ト致シマシテ
  ハ、所謂此樺太ノ問題デアル、是ハ何ノ爲ニ起ッタト斯ウ申
  シマスルノニ、要スルニ尼港占領ノ保障ノ爲ニ新高艦ガ彼處
  ヲ警戒シテ居ックト斯ウ思フ、彼ノ新高艦ガ二百人ノ我ガ忠
  勇ナル將士ヲ海底ノ藻屑トシテ、其悲慘ナ最後ヲ遂ゲサセ
  タト云フコトハ、畢竟其警備ノ爲ニ新高艦ガ出タノデアッテ、
  是ガ卽チ此駐兵ノ結果ナリト私ハ斷言シテ憚リナイト思フノ
  デアリマス(拍手)尚モ聞クモ忌マハシイ問題ガアルノデアリ
  マス、ソレハドウデアルカト斯ウ中シマスルト、今ヤ問題ガマダ
  未決ノ中ニアルト云フコトヲ聞イテ居リマスガ、露西亞ノ「カ
  ルミコフ」カラ金塊ヲ預ッタト云フ、六十万圓ノ此金塊ガ戰
  爭當時、所謂駐兵ノ時期ニ於テ預カッタト云フ話デアル、此
  六十万圓ノ金塊ノ處分ハ未ダニ付カナイノデ、先日モ態、ミ露
  西亞カラ談判ニ來タト云フ話デアル、先ヅ我ガ日本ノ軍器
  ヲ盜マレルト云フコトハ旣ニ未ダ曾テ無イ日本ノ恥辱デア
  ルニ拘ラズ、今度ハ商人同樣金ヲ預カッタモノヲ紛失シテ返
  サナイト云フノデ談判ニ來ルト云フニ至ッテハ、我國ノ國威
  ヲドウスルノデアルカ(拍手)尙ホ無益ナル駐兵ノ結果、今囘
  撤兵スルニ際シマシテ、約三百五十餘万ノ建築物ヲ其儘ニ
  放棄シテ來ルト云フコトデアルノデアル、是ガ露西亞ノ人ガ
  利用スルナラバ、ソレモ宜シイデアラウ、或ハ恐ル今日迄利權
  獲得ニ最モ意ヲ注イデ居ル某國ノ人ガ、若モ利用デモサレ
  タナラバ、我ガ日本ノ國ガ折角澤山ノ金ヲ入レ、サウシテ利
  用スルモノハ某國人トアッタナラバ、如何ナル面目ガアッテ此
  政策宜シキヲ得タルモノデアルト言ハレルデアリマセウカ、是
  モ全ク所謂政策ノ大失態ノ結果ナリト斷言シテ憚ラヌノデ
  アル、私ガ今迄申シマシタノハ物質上ノ此駐兵ノ結果ノ大
  失態ヲ言ウタノデアル、更ニ精神的ノ損害ニ對シテ申シテ置
  キタイ點ガアル、私ハ斯ノ如キ失態ヲ來シタ以上ハ、將來我
  ガ日本國民ハ對外政策ニ對シ非常ニ疑ヲ持ツ、殊ニ戰爭
  ニ關スル觀念ニ於テ不安ノ念ヲ生ジハセヌカト思フ、隨テ國
  民ヲシテ義勇奉公ノ念ヲ或ハ薄カラシメナイカト云フコトヲ、
  私ハ精神上ノ損害トシテ虞レルノデアル、何故ナラバト云フ
  ト、理由ノ無イ出兵ハ駐兵ノ濫用ニナリハセヌカト云フコト
  ヲ私八虞レルノデアル、又斯ウ云フ理由ノ無イ出兵、卽チ理
  窟ノ分ラヌ出兵ノ爲ニ戰死サレタ其人ノ遺族、或ハ病死サ
  レタ其人ノ遺族之ニ對シテ何トシテ政府ガ申譯ヲスルノデ
  アルカ、私ハ此遺族等ニ對シテ慰ムルノ言葉ハ無イデアラウト
  斯ウ思フノデアル、此慰ムル言葉ガ無イ、其遺族タルヤ必ズ
  不滿不平ニ驅ラレルニ違ヒナイ、此不滿不平ノ聲ガ何レノ
  處ニ勃發スルカト云フコトヲ私ハ之ヲ虞レルノデアル、精神
  上ノ損害トシテ又第三トシテハ、將來我ガ日本國ハ對外關
  係上如何ニ平和主義ヲ持續スルトハ言ヒナガラ、或ル場合
  ニ居テハ自主的ニ出兵スル必要ガアルカモ知レナイ、其時ニ
  果シテ大多數ノ國民ガ後援スルカドウデアラウカ、其後援
  ニ對スル私ハ危惧ノ念ヲ起スノデアル、何故ナラバト斯ウ中シ
  マスルト、斯ノ如キ大ナル失敗、大ナル政策ノ失敗ノ其結果、
  出兵スルト云フコトハ或ハ國民全體ヲシテ不安ノ念ニ驅ラ
  シメハセヌカト云フコトヲ私ハ心配スルノデアリマス、此三點
  ハ私ハ精神上ノ損害ナリト信ズル點ニ於テ申上ゲル、サウ致
  シマスト云フト、今囘ノ詰リ駐兵ハ徹頭徹尾失敗デアル、此
  六億ノ金、三千人ノ戰死者、其他有形無形ノ損害ヲ不可
  抗力ナラ已ムヲ得ヌノデアル、又誰ガ考ヘテ見テモ一應ソレ
  ガ利益ナリト云フ所ノ程度ナラバ是亦已ムヲ得ヌノデアル、
  所ガ大正九年ニ既ニ私ハ憲政會竝ニ在官者、其局ニ當ル
  人ガ反對シテ十分考慮參酌スル餘地ノアルニ拘ラズ、尙
  ホ駐兵シタノデアルカラ、其罪最モ深シト私ハ斷言シテ憚ラ
  ヌノデアル(拍手)所ガ此點ニ對シテ、先日此議席ニ於テ望
  月君カラ此責任ハ如何、御承知ノ通リニ是ハ政策ノ失敗
  デアル、不可抗力デナイ、政策ノ失敗デアル以上ハ、所謂政
  治ニ關與シタ者ガ負フノハ當然デアル、今日ハ立憲政治ト
  シテ責任政治デアルカラシテ、此點ニ對シテ望月君ガドウカ
  ト云フト、加藤總理大臣ハ、望月君ノ責任觀念ハ如何ト云
  フ質問ニ對シテ、責任觀念ハ責任觀念ナリト云フ、殆ド成ツ
  テ居ナイ所ノ答辯ヲシタノデアル、貴族院デ此點ニ對スル質
  問ニ對シテ、ドウ云フ答辯ヲシテ居ルカト斯ウ申シマスルニ、
  ソレハ露西亞ト日本トハ一接續地デアルト云フコトガ第一ノ
  理由トナッテ居ル、怪シカラヌ話、接續地デアルト云フコトハ
  地球ガ初テ出來タ當初カラノ話デアル、又出兵ハ接續地
  ガ出來タト云フノデ駐兵シテ居ルノデハナイ、故ニ是ハ理由
  ニハナラヌ、ソレカラ赤化ガ滿洲竝ニ朝鮮ニ及ボスト云フコ
  ト、是ガ理由ニナッテ居ル、滿洲竝ニ朝鮮ヲ擁護スルト云フ
  コトヲ言ウテ居ルガ、是ハ驚イタ話デアル、西伯利ニ七万五
  千人ノ兵隊ヲ出サナケレバ滿洲朝鮮ニ赤化ガ來ル、之ヲ防
  止ガ出來ナイト云フ理由ガ分ラナイノデアル、何故ナラ軍人
  ハ卽チ戰鬪ノ士デアル、思想ヲ征伐スル者デナイノデアル、此
  人等ガ西伯利ニ行クテ、或ハ戰鬪ノ關係ニ於テハ其效ヲ爲
  スカモ知レマセヌガ、思想ヲ討伐セヨト云フニ至ッテハ全ク意
  味ヲ爲サヌノデアル、所謂朝鮮、滿洲ニ思想ノ及ブノヲ恐レ
  タナラバ、朝鮮、滿洲ノ區域ニ於テ十分防禦ノ餘地ガアルノ
  デアル、然ルニ意味ナキ出兵ヲシテ、サウシテ其害ハ今申上
  ゲル通リデアル、又事實ニ於テドウデアル、是ダケノ出兵ヲシ
  タカラ成功ガアッタカト云フト、今日ノ西伯利ノ方面ハ全部
  赤化シテ居ルデアリマセヌカ、之ヲ見マシタ所デ所謂政府當
  局ノ政策ノ誤ッテ居クタト云フコトハ明瞭デアルノデアル、吾々
  曾テ日本ニ無イ此大恥辱、大犧牲ヲ拂ッテ、ソレ以上日本
  ノ國益ガ上ルト云フナラバ是ハ已ムヲ得ヌ話デアル、政治ハ
  結局大ト小ト打算シテ立案スルト云フノガ政治ノ要諦ト
  斯ウ思フ、今申上ゲタ通リニ有ユル方面ガ全部國ノ恥辱ト
  國ノ不利益ヲシテ店ルニ拘ラズ、何レノ點ニ利益ヲ求メタカ
  ト云フト是モ無イノデアル、加藤總理大臣ノ所謂今申シマ
  スルヤウニ、接壞地トカ何トカ云フヤウナ問題ハ殆ド答辯ニ
  ナッテ居ラヌノデアル、若シ是ダケノ理由デ斯ノ如キ大ナル出
  兵ヲシテ失敗ヲシタト云フナラバ、是ハ提燈ト釣鐘ト換ヘル
  ソレヨリ以上ノ不權衡ノ甚シイモノト思フ、尙ホ加藤總理
  ハ此點ニ對シテハ出兵ヲ單ニ利益ノ爲ノミデハナイト言ッテ
  居ル、成程出兵ハ利益ノ爲ノミデハナイ、去ナガラ今申上ゲ
  ル通リニ、ソレデハ空前ノ此大失敗ノミノ目的デ出兵シタカ
  ト問返サナケレバナラヌ、斯ノ如キ點カラ申シマスルト、此內
  閣否加藤友三郎其人ニ於テハ、其責任ヲ背負フノハ當然
  デアルト思フ、併ナガラ加藤總理大臣ハ斯ウ云フコトヲ云フ
  カモ知レマセヌ、吾々ハ海軍大臣トシテハ成程大正七年八
  月ノ宣戰ノ詔勅ニ-宣言ニハ判ヲ捺シタ、併ナガラ是ハ陸
  海軍ト云フモノハ日本ニ於テ特殊ノ地位ニ在ル、政策一般
  ニ對シテ責任ヲ負フモノデナイ、其證據ニ今日迄ノ此內閣
  ノ更迭其他ヲ見ルト云フト、名ハ病氣其任ニ堪ヘズトハア
  ルガ、其實所謂責任ヲ感知シテ辭職スルト云フノガ當然デ
  アルガ、陸海軍大臣ダケハ今日迄ハ何時デモ居殘リデアル、
  ソレデアルカラ此政策ニ對シテモ大ナル失敗、所謂空前ノ大
  失敗デアルガ、皆海軍大臣、陸軍大臣デアルカラ責任ガ無
  イト云フカモ知レヌノデアル、併シ是ハ海軍ノ一技師ナラソ
  レデ宜イ、海軍大臣ト云フ行政長官ナラソレデ宜イノデア
  ル、去ナガラ苟モ憲法上國務大臣トシテ輔弼ノ任ニ當リ、國
  策遂行ニ對シテ連帶責任ヲ有シテ居ル以上ハ、所謂此遁
  辭ハ許サヌノデアル、況ヤ加藤友三郞氏ハ確カ大正六年夏
  ノ議會、寺内內閣ト思フ、其時ニ本野一郞氏ガ外務大臣
  デ大變此議場ガ紛糾シタ事ガアル、而シテ外交ノ問題デアツ
  タガ尾崎氏カラ此外交ノ問題ハ他ノ閣僚モ責任ヲ負フノ
  カト云フ質問ニ對シテ、加藤友三郞氏ハ無論連帶責任ナ
  リト云フコトヲ言明シタコトハ、彼レ自身モ記憶ガアルダラ
  ウト思フ、斯ウ致シマス以上ハ憲法ノ正條カラ論ジ、彼レ加
  藤友三郞自身ノ大正六年ノ當議會ノ言貴カラ申シマシテ
  モ、此問題ニ對シテ責任ヲ負フノガ私ハ當然ナリト斯ウ思
  フ(拍手)私ハ思フ、併シ當局ガ之ヲ失態デナイト信ズルノデ
  アルカドウデアルカ、昔ハ所謂大ナル失態ヲシタ時ハ切腹シ
  タト云フコトデアリマスガ、今日ハサウデナイ、詰リ責任ノ觀
  念デ其職ヲ去レバ解決スルコトニナッテ居リマスガ、去ナガラ
  近頃希臘ノ首相ガ土耳古ニ戰ヲシテ、サウシテ戰ニ負ケタ
  ト云ッテ死刑ノ宣𠮷ヲ受ケテ居ル、今日ト雖モ尙ホ國ニ依。ッ
  テハサウ云フ國モ世ノ中ニアル、私ハ死刑ノ宣告ト云フサウ
  云フコトヲ言フノデハアリマセヌガ、免モ角斯ノ如キ大失態
  ヲ來シ、恬然其地位ニ居ルト云フコトハ果シテ責任ヲ知ル
  政治家デアルカドウカト云フコトヲ疑フノデアル(拍手)而モ
  中途ニナッテ内閣ニ入ッ夕人ナラバ、ソレハ幾ラカ宥恕スベキ
  點ガアルケレドモ、彼レ加藤友三郞氏ノ内閣ニ入ッタノハ確
  カ大正五年デ、此問題ハ大正七年八月二日ニ起ッテ、サウ
  シテ其宣言書ヲ彼レ自ラ署名シテ居ル、大正十一年十月
  ニ問題ガ解決シタノデアル、此間全部彼ハ大臣トシテ其地
  位ニ立ッテ居ルノデアルカラ、陸海軍ハ共同動作ノ關係カラ
  申シマシテモ、國務大臣ノ地位カラ申シマシテモ、彼ガ大正
  六年ニ此議會デ公言シタ點カラ申シマシテモ、彼ハ責任ヲ
  負ウテ上陛下ニ對シ、下國民ニ對シ、サウシテ其職ヲ退ク
  ノガ當然ノ責任ナリト私ハ斯ウ思フ(拍手)併ナガラ今私ノ
  申シタコトガ是ガ果シテ過失デナイ-或ハ過失デナイト云
  フカモ知レヌ、私ハ過失デナク所謂政策ノ失敗デナイト云フ
  コトデアレバ、政策ノ失敗デナイト云フ言明ヲ得タイ、併ナガ
  ラ如何ニ厚顏無恥ナル加藤友三郞ト雖モ、是ガ政策ノ失
  敗デナイト云フダケノ勇氣ハナイダラウト思フ(拍手)若シソ
  レ政策ノ失敗デアルトシタナラバ、彼レ自ラ責任ヲ負ッテ辭
  職スルノガ當然ナリト思フ、私ハ第一トシテ此西伯利ノ駐
  兵ハ詰リ過失デアルカドウデアルカト云フ問題、過失デナク
  政策上ノ失敗デアルカドウカ、若シ政治上ノ失敗デアッタナ
  ラバ、彼レ自ラ詰リ立憲政治ノ責任ニ於テ如何ニ處決スル
  カ、此二點ニ對シテ質問ヲスル次第デアリマス、是ダケ述べ
  マス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/22

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• 023・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　次ハ經濟界救濟ニ關スル件ニ付テ
  意見ノ陳述ガアリマス、橋本喜造君
  經濟界救濟ニ關スル質問ノ答辯ニ對スル
  橋本喜造君ノ意見
  經濟界救濟ニ關スル再質問主意書
  金利引下ハ各般ノ影響ヲ考慮シテ適當ナル時機ヲ選ハ
  サルヘカラサルハ勿論ナルモ其ノ所謂適當ナル時機トハ
  如何ナル條件ヲ具備スル時機ヲ指スヤ現時ハ最其ノ適
  當ナル時機ナラサルヤ
  右及再質問候也
  〔橋本喜造君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/23

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• 024・橋本喜造

  ○橋本喜造君　大分議場ガダレタヤウデゴザイマスガ、成
  ベク簡單明瞭ニヤリマス、暫クノ間御〓聽ヲ願ヒマス、本年
  一月二百巴里ニ開カレマシタル各國首相會議ハ、僅カ二日ニ
  シテ決裂シ、遂ニ佛國ヲシテ「ルール」ノ地方ヲ占領スルノ餘儀
  ナキニ至ラシメタノデアリマス、隨テ會議ノ眼目タル對獨賠
  償金問題ノ解決ハ混沌トシテ前途尙ホ遼遠タルガ如キ感
  ヲ懷カシメタノデアリマス、世界經濟界ノ回復ハ一ニ對獨賠
  償金問題ノ解決ニ依ルモノトシテ、一般ニ期待セラレテ居リ
  マシタガ、此期待ハ見事ニ裏切ラレマシテ、實ニ慘澹タル決
  裂ヲ遂ゲマシタコトハ吾人ノ最モ遺憾トスル所デアリマスヽ
  英米兩國ノ如キハ此問題ノ如何ニ拘ラズ、經濟界ノ回復ニ
  對シマシテハ政府國民、所謂擧國一致有ユル犧牲ヲ惜マ
  ズ、有ユル方法ヲ講ジマシテ、所謂非常ノ時期ニ於テ非常ノ
  手段ヲ斷行致シマシタガ爲ニ、既ニ曙光ヲ認メ、日ヲ追ウテ
  順調ニ經濟界ハ回復シツヽアルノデアリマス、又英吉利ノ如
  キ海外貿易、殊ニ東洋向ノ綿絲、綿布、其他數種ノ品目ニ
  對シマシテハ、政府自ラ運賃ノ幾分ヲ負擔致シマシテ、斯業
  ヲ獎勵シツヽアルノデアリマス、又獨逸製口叩ノ如キハ馬克ノ
  下落、爲替ノ關係上、非常ナル安價ヲ以テ全世界ニ向ッテ
  捲土重來、凄ジキ勢ヲ以テ輸出セラレツヽアルノデアリマス、
  是ガ爲ニ我國ノ產業界ハ尙ホ一層壓迫セラレマシテ、實ニ
  悲ムベキ退嬰的狀態ヲ現シツヽアルノデアリマス、昨年ノ如
  キ我國米作ハ非常ナル豊作デアリマシテ、外國米ノ輸入ハ
  殆ド皆無ニ近ク、又紡績事業不振ノ爲ニ棉花ノ輸入殊ニ
  僅少ニシテ、啻ニ是等二大輸入品ノミナラズ、我國ノ經濟
  界ハ今尙ホ不景氣ノドン底ニ在リマシテ、一般物質ノ消化
  ガ甚ダ鈍キガ爲ニ、輸入品ノ全體ニ亙リマシテ十二分ノ差
  控ヲナシタルニモ拘ラズ、又一方輸出ニ於キマシテハ、米國
  景氣ノ回復ニ伴レマシテ、我國輸出ノ大宗タル生絲ハ意想
  外ノ高價ヲ以チマシテ、最モ巨額ニ輸出セラレタルニモ拘ラ
  ズ、實ニ昨年度ノ輸入超過額二億六千万圓ニ上リタリト云
  フコトハ、驚クベキ現象デハアリマセヌカ、寶ニ寒心スベキ事
  柄デアルト言ハナケレバナラヌノデアリマス、是ニ於テ私ハ最
  モ痛切ニ感ジマス、水ハ低所ニ流レ物資ハ高所ニ集マルト
  云フ原則ヲ、强ク腦裡ニ印象セラレンコトヲ政府當局ニ希
  望スル次第デアリマス、十九箇條ノ物價調節ヲ產聲トシタ
  加藤内閣ハ、引續イテ暴利取締令ヲ出スト云フコトガ一般
  ニ傳ヘラレテアッタノデアリマス、併ナガラ此暴利取締令ハ某
  政黨ノ壓迫ニ依ッテ、御中止ニナッタト云フ話デアリマス、此
  暴利取締令ナルモノガ、曩ニ發表シタル所ノ十九箇條ノ物
  價調節令ノ如キ幼穉ナモノデアッテ、而モ不徹底ナモノデアッ
  テ、有害無益ノモノデアリマシタナラバ、寧ロ御中止ニナッタ
  方ガ、現內閣ノ信用ヲ保ツ上ニ於テ遙ニ御利益デアッタラウ
  ト私ハ信ズルノデアリマス、政府ハ五厘若クハ六厘ノ預金利
  子ヲ以テ預リタル幾億万圓ノ大金ヲ、三錢若クハ四錢ト云
  フ高利ヲ以テ貸付ケル所ノ銀行家ヲ餘所ニシテ、小商人中
  ノ最モ小商人タル全國中ノ饂飩、蕎麥屋ヲ征伐シマシテモ、
  全國中ノ風呂屋ヲ征伐致シマシテモ、物價調節ハ絕對ニ出
  來ルモノデハアリマセヌ、現ニ荒井農商務大臣ハ正米師ヤヽ
  或ハ相場師ヲ煽動致シマシテ、米價ヲ高ク釣上グ、尙ホ其
  釣上ゲタル米價ノ上ニ幾「パーセント」カヲ加算致シマシテ、
  三十五万石ノ米ヲ買上ゲテ居リマス、尙ホ引續イデ百万石
  ノ米ノ買上ヲ發表致シテ居リマス、斯ノ如キ事ヲ致シマシ
  テ、如何ニシテ物價調節ガ出來マセウカ、單リ物價調節ガ出
  來ザルノミナラズ、農民救濟ノ爲ニ買入レマシタル百三十五
  万石ノ米穀ハ、或ハ農民殺シノ百三十五万石ノ米ニ變化
  シハセヌカト本員ハ杞憂ニ堪ヘヌノデアリマス、御承知ノ如
  ク昨年ノ米穀ノ實收穫ハ六千百万石、我ガ日本帝國開闢
  以來第三回目ノ豊年デアリマス、此豐年ニ於キマシテ僅ニ
  五十万石ヤ、百万石ノ米ヲ買入レタト致シマシテモ、決シテ
  米價ノ釣上ハ出來ヌノデアリマス、唯〓此機會ニ乘ジテ相場
  師ヤ或ハ正米師ガ自己ノ私腹ヲ肥サントシテ、一攫千金的
  ノ一時的ノ釣上ヲ爲スニ止マルノデアリマス、斯ノ如キ有樣
  デアリマスカラ、農民ハ米價ガ上リ掛ケタナラバ、何時マデモ
  上ルヤウニ思ヒマス、木下君ハサウ思フノダラウ、ソレデ何時
  マデモ賣ラナイ、賣ラナイコトニナリマスト其內ニ政府ノ百万
  石ノ買上ガ直ニ済ンデシマフ、濟ンデシマフト將ニ釣上ゲル
  所ノ材料ガ無クナル、ソレガ爲ニ反落ヲ來シマシア、或ハ二十
  マス、併ナガラ民間ノ經濟ハ斯ノ如キ單純ナルモノデハアリ
  マセヌ、又人種ヲ異ニシ、隨テ國情ヲ異ニシ、法律ヲ異ニシタ
  ル所ノ世界各國ヲ相手トシナケレバナラヌノデアリマス、而
  シテ競爭ノ結果必ズ優勝者トナラナケレバナラヌノデアリマ
  ス、優勝者トナルニ付キマシテハ、如何ニシテモ最低金利ノ
  金ヲ使ハナケレバナラヌノデアリマス、簡單明瞭ナル實例ヲ
  擧ゲマス、東洋ニ約一千万圓ノ借金ノミヲ以テ營業シテ
  居ル英吉利人ガアリマス、是ト同樣ニ日本人デ以テ
  矢張一千万圓ノ借金ノミデヤッテ居ル日本ノ商店ガアリ
  マス、孰レモ一年ノ割合ニ於テ約一百万圓ノ利益ヲ計
  上致シテ居リマス、然ルニ英國ノ商館ハ年利三朱ノ金
  ヲ使ッテ居リマス、斯ノ如キ百万圓ノ利益ニ對シテ三
  十万圓ノ金利ヲ差引キ、殘餘ノ七十万圓ヲ以テ六分ノ
  配當ヲ爲シ、尙且ツ幾部分ノ積立金ヲシテ居ルノデアリマ
  ス、之ニ引換ヘテ我ガ日本ノ商店ハ、同ジ百万圓ノ利益ヲ
  得テ居リマスガ年利一割二分ノ金ヲ使ッテ居ルガ爲ニ、一文
  ノ配當ヲ爲スコトガ出來ザルノミナラズ、尙且ツ二十万圓ノ
  損失ノ繰越ヲ致シテ居ルデハアリマセヌカ、是ハ單ニ金利ノ
  ミノ相違デアリマス、サレパトテ金利ノ引下ハ決シテ容易ナ
  事デハアリマセヌ、餘リニ急激ナル金利ノ引下ハ或ハ財界ノ
  安定ヲ妨ゲルト云フ虞ガ無イ譯デモアリマセヌ、併ナガラ世
  界ノ大勢ニ鑑ミ、我ガ日本ノ今日ノ經済上ヨリ考ヘマシタ
  ナラバ、如何ニ致シマシテモ日本銀行ノ貸出日歩、所謂標
  準金利、之ヲ一錢五厘位マデニ引下ゲ、一般金融市場ノ金
  利ヲ一錢六厘、若クハ一錢七厘マデ引下ゲルト云フコトガ、
  最モ妥當ナリト本員ハ信ズルノデアリマス、昨年十一月二
  十五日大阪ニ開カレマシタル關西銀行大會ニ、市來大藏
  大臣ト井上日銀總裁ト共ニ臨席セラレテ、恰モ雨君打合
  セタルガ如ク、銀行家ニ向ッテ預金利子ノ協定ニ對シテ非
  常ナル御褒ノ言葉ヲ給ッタノデアリマス、之ニ對シテ一部ノ
  老人連中ハ隨喜ノ淚ヲ零シタト云フコトデアル、併ナガラ多
  數ノ識者ハ時代後レノ陳腐言葉ナリトシテ之ヲ一笑ニ付
  シ去ッタノデアリマス、元來預金利子ノ如キハ銀行其モノヽ
  信用、銀行其モノヽ資本、或ハ特殊ノ關係ニ依リマシテ之
  ヲ自由競爭ニ任スベキモノデアリマシテ、決シテ協定スベキ
  性質ノモノデハアリマセヌ、况ヤ當座預金ノ如キハ尙更デア
  ル、果セル哉其是ガ協定ヲ爲シタルガ爲ニ、反對ニ貸付ニ於
  テ大競爭ガ起リ、昨年末ノ如キハ財界不安ノ時期ニ於テハ、
  平素粗放ナル貸付振ヲ爲シテ居ル一流乃至二流銀行ノ
  大部分ハ緩慢ナル引出シニ逢ヒ、或ハ急激ナル取付ニ遭ヒ
  マシテ、實ニ慘澹タル光景ヲ現シタデハアリマセヌカ、是ハ諸
  君御承知ノ通リデアル、其反對ニ堅實ナル銀行ニハ預金ガ
  殺到シタノデアリマス、是ハ寧口當然ノ歸結デアル、要スルニ
  欧米先進國ニシテ善政ノ行レル文明國ハ、文明國ダケ金
  利ハ安イノデアリマス、而シテ一般ノ銀行ニ於キマシテモ特
  別預金或ハ定期預金ノ外、我國ノ當座預金ノ如キ性質ノ
  モノニ對シテハ、最初ヨリ金利ヲ附セザルコトニナッテ居ルノ
  デアリマス、故ニ此際我國ニ』於キマシテモ特別預金或ハ定
  期預金ノ金利ヲ引下ゲ、當座預金ノ金利ヲ全廢スルト同
  時ニ、貸付ニ對スル所ノ金利ヲ出來得ル限リ引下ゲ、以テ
  極度ニ銷沈セル現下ノ經濟界ヲ救濟スルコトハ焦眉ノ急
  ニシテ、一日モ忽ニスルコトノ出來ナイ事柄デアリマス、面シ
  テ之ヲ救濟スルハ輔弼ノ任ニアル總理大臣加藤友三郞君
  ヲ初メトシ、帝國ノ財政ヲ雙肩ニ擔ヒ且ツ帝國ノ產業ヲ盛
  ニシ、同時ニ國民經濟指導ノ任ニ在ル所ノ大藏大臣市來
  乙彥君、農商務大臣荒井賢太郞君、當然ノ責任ナリト信
  ズルノデアリマス、問ホ進ンデ中上ゲマスルガ、御承知ノ通リ
  最近英國ノ對米借款五十億万弗、此償還問題ハ英國ガ
  米國ノ提案ヲ受諾致シマシテ、其償還期限ヲ六十二箇年
  トシ、最初ノ十箇年間ハ年三朱、殘餘ノ五十二箇年間ハ三
  朱五厘ノ金利ト致シタノデアリマス、是ハ近ク米國ノ議會
  ニ於キマシテ、滿場一致ヲ以テ必ズ通過スルモノト一般ニ信
  ゼラレテ居ルノデアリマス、ソレガ爲ニ英米爲替ハ暴騰致シ
  マシテ、今日ハ四弗六十九仙八分ノ三ト云フヤウナ新高値
  ヲ現シテ居ルノデアリマス、』申上ゲルマデモナク英米借款償
  還問題ト對獨賠償金問題ノ解決ハ、雨々相侯テテ界界
  濟界回復ノ端〓トモナリ、又原因トモナルト云フコトハ、何
  人モ疑ヲ容ルヽノ餘地ハ無イノデアリマス、現ニ英國ハ戰後
  自己ノ信用ヲ利用致シマシテ、制限外ノ紙幣ヲ發行シ、通
  貨ヲ膨脹セシメ、金利ヲ引下ゲテ產業ヲ奬勵シツヽアルノデ
  アリマス、而シテ現在英國ニ於ケル所ノ通貨ハ一人當リ九
  十一圓八十錢、米國ハ八十二圓四十錢、我ガ日本ハ二十
  六圓十錢、又通貨ニ對スル金ノ準備、英國ハ三割五分、米
  國ハ七割一分、我ガ日本ハ九割四分、斯ノ如キ有樣ニナッテ
  居ルノデアリマス、之ニ對シマシテ市來大藏大臣ノ先輩デア
  リ、且ツ經濟學者デアル某氏ノ最近ノ著書ニ斯ウ云フコト
  ヲ書イテアリマス、是ハ極ク簡單デアリマスカラ申上ゲテ置
  キマス「英國ハ英蘭銀行劵ニハ十分ノ金準備ヲ有スレド現
  在ノ英國ニ流通スル貨幣ノ約七割ヲ占ムル政府發行ノ紙
  幣ニ對シテハ十分ノ一ニモ足リナイ金準備シカナイ、而モ猶
  ホ戰前ニ十五倍スル通貨ヲ流通セシメ、内國產業ノ發達ニ
  努力スルノミナラズ其信用ヲ利用シテ外國ノ借款ニスラ
  應ゼントシテ居ル、然ルニ我國ハ殆ド流通貨幣ニ等シキ金
  準備ヲ擁シテ、却テ通貨縮小ノ聲ニ傾聽シテ居ル、金ノ運
  用ニ於テハ英國ト我國トハ當ニ格段ノ巧拙ガアルデハナイ
  カ、政府當局以テ如何トナス」斯ウ云フヤウナコトガ書イテ
  アルノデアリマス、願クバ此際我國ニ於キマシテモ制限外ノ
  紙幣ヲ發行シ、通貨ヲ膨脹セシメ、金融ヲ圓滑ニシ、金利ヲ
  引下ゲ、產業ヲ獎勵スルノミナラズ、國家國民ヲ救濟スルハ
  加藤內閣當面ノ急務ナリト私ハ信ズルノデアリマス、以上
  本員ノ述ベ來リタル事柄ニ對シマシテ、政府當局ノ明確ナ
  ル答辯ヲ希望致シテ此壇ヲ降ルコトニ致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/24

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• 025・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　最後ニ羅馬法王廳トノ使節交換
  ニ開スル件-押川方義君
  羅馬法王廳トノ使節交換ニ關スル質問ノ
  答辯ニ對スル押川方義君ノ意見
  〔押川方義君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/25

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• 026・押川方義

  ○押川方義君　今月十三日ノ豫算總會議ニ於キマシテ、
  羅馬法王廳ニ使節ヲ派遣致シマスル費用ガ政府ヨリ要求
  セラレマシタガ、衆議院ニ於キマシテハソレヲ削除致サレマシ
  タ、當時私ハ極テ之ヲ遺憾ト致シマシタノデアリマス、去ナガ
  ラ固ヨリ院議ヲ重ンズルノ精神ハ申スマデモナイコトデアリ
  マス、故ニ自分ノ意見ヲ申述ベマシテ、議員諸君ノ再考ヲ
  願ヒタイト思ヒマシタガ、遂ニ討論終結ノ議ガ出マシテ、ソレ
  ガ採用致サレマシタ故ニ、當日其事ヲ述ブル機會ヲ失ッタノ
  デアリマス、其時ニ委員長ガ削除致シマスル理由トシテ申サ
  レマシタル所ノコトハ三箇條デアリマス、ンレハ羅馬法王廳
  以外ニ締盟國ハマダ二三箇國モアッテ、使節ノ交換ヲシテ
  居ラナイ故ニ、必ズ今日羅馬法王廳ニ使節ヲ遣ハス必要ハ
  ナカラウ、是ガ一箇條、次ハ此事ニ付テハ國民ノ多數ガ未ダ
  意義ヲ能ク諒解シテ居ラナイ、故ニ今日之ヲ强テヤレバ或
  ハ友好ヲ害スル虞ガアルカモ知レナイカラト云フノガ第二デ
  ス、第三ハ今日ハ總テ政費ヲ節減致スコトヲ以テ政治ノ方
  針トシテ居ル時デアルカラ、十万圓ノ金ト雖モ此費用ヲ出
  ス必要ハナカラウト思フ、此三箇條デアリマス、是等ノ理由
  ヲ以テ此極テ「デリケート」ナ外交問題ノ必要條件ヲ否決シ
  テシマフト云フコトハ、我輩思フニ議院ノ取調ガ極テ組漏ト
  考ヘマス(「ノウ〓〓」「サウデナイ」ト呼フ者アリ)併ナガラ斯ノ
  如クナラシメタ所以ノモノハ、政府ノ責任極テ大ナルモノト
  思フ、斯樣ニ種々ナル關係ノアル事柄ヲ提案致シテ置キマ
  シテ、其各辯振ハ極テ粗雜要領ヲ得テ居リマセヌコトノミヲ
  言ハレテ居リマス、殊ニ宗〓上ノ關係ガアリマシテ、其當時
  早ヤ佛者ノ或人ハ極テ反對行動ヲ開始シテ居ル時デアリ
  マシタ故ニ、衆議院モ知ラズ識ラズ之ニ制御セラレル虞ガナ
  イトハ言ヘナイノデアリマス、政府タル者ハ其當時議院ニ對
  シマシテモ、又國民ニ對シマシテモ、此使節交換ノ最モ重大
  ナル事柄ヲ極テ口ヲ盡シ、言葉ヲ盡シマシテ說明ヲ加ヘナケ
  レバナラナイノデアルニモ拘ラズ、是ハ直接宗〓ニハ敢テ關
  係ノ無イモノダト言放シタ位ノコトデ、既ニ答辯ガ盡キタト
  云フヤウニ思ッテ居ッタコトハ大ナル誤デアリマス、御承知ノ
  如ク「ヴアチカン」ト英國ノ帝室トハ歷史的怨ヲ持ッタ二朝
  デアリマスガ、近頃其所ニ公使ノ交換ヲ致シマスル時ニ「口
  イドジヨージ」ガ議會ニ申シマシタル所ノコトハ、精密ニ且ツ
  眞實ニ其間ノ消息ヲ取調ベタル所ガ、英國ガ「ヴアチカン」ニ
  公使ヲ出スト云フコトハ、國家ノ爲ニ極テ重大ナ事デアル、
  是ハ歐羅巴大戰以來既ニ始マッタ事ダト斯ウ申シマシタ「ヘ
  ンリー」八世ハ羅馬法王カラ破門ヲセラレ、サウシテ英吉利
  「チヨルチ」ト云フ者ハ十七世紀ノ時ニ於テ羅馬法王ニ反抗
  ヲシテ居ッタノデアリマス、然ルニモ拘ラズ此際外交ノ重要
  事件ノ爲ニ交換ヲ開始シタト、「ロイドジヨージ」ハソレダケ
  信用ノアル人デアッタカラ、其言フ言葉ニ議會ガ承認シタ、
  佛蘭西モ御承知ノ通リ「ヴアチカン」ト共和政治トハ非常ナ
  怨ノアル間柄デアリマスルカラ、公使ヲ交換シヤウトスル時
  分ニハ隨分議論ガアッテ、有力ナル委員ガ選マレテ調査ヲ致
  シマシタ、其報告ハ「ヴアチカン」ト佛蘭西ガ交涉ヲ開始スル
  ト云フコトハ、彼ノ道德ヤ信仰ヲ採用スルト云フコトデハナ
  イ、唯〓、精神的ニ之ヲ見レバ「ヴアチカン」ニハ雄大ナル勢力
  ガアッテ、三億五千万人ノ、「ローマンカソリック」〓徒ヲ持ッテ
  居ルガ、此三億五千万人ハ法王ノ一令ノ下ニ卽チ去就進
  退ヲ決スル所ノ人デアル、「ヴアチカン」ハ世界ノ情報ノ聚集
  場デアル、情報ハ輿論ヲ作リ輿論ハ天下ヲ制スルモノデアル、
  故ニ佛蘭西ハ斯ウ云フコトヲ輕視スルコトハ出來ナイト云
  フ報告ヲ致シマシタ、議會ハ之ニ賛成ヲシタデハアリマセヌ
  カ、外務省ニ於テハ此事柄ナドハ十分ニ御承知ニナッテ居ル
  筈デアッテ、今日日本ノ所謂委任統治ニナッテ居リマス「マー
  シヤル」「カロリン」モ、最初獨逸ノ手ニ入リマス前ニハ西班
  牙領デアッタ、西班牙カラ取リマシタ所ノ者ハ「ビスマルク」デ
  アル、「ビスマルク」ガ羅馬法王廳ヲ用井テ之ヲ取ッタノデアリ
  マス、「ロイドジヨージ」ガ愛蘭ノ困難ノ爲ニ羅馬法王廳ヲ使
  ハウト致シマシタガ、終ニ是ハ拒絕サレテシマッタ、是カラ我
  國ガ大發展ヲ致シマスル爲ニハ、ドウ致シマシテモ海外ニ向ッ
  テ發展ヲスルヨリ外ニナイ、「アングロサクソン」ガ占メテ居リ
  マス所ノ各領地ハ、今日ノ所デハ兔角日本人ガ排斥サレテ
  居リマス、是モ十分ナル交涉ヲ遂ゲマシテ、遂ニ彼等ノ迷夢
  ヲ開カナケレバナラヌ義務ハゴザイマス、去ナガラ今日ノ所デ
  ハ先ヅ日本人ガ自由ニ行カレル所ハ支那ヲ除キマシテハ南
  洋、或ハ南米デアリマス、其南洋、南米ト云フ所ハドンナ狀
  態デアルカト云ヘバ、大〓皆「ローマンカンリツク」ノ信者デア
  リマス、「ローマンカツリツク」ノ信者ハ唯〓國ト國トガ交際ス
  ルト云フバカリデナク、宗〓上ノ觀念ガアリマス故ニ、交際ス
  ル人モソレ等ノ心得ヲ持ッテ掛ラナケレバ、巧ク交際ノ出來
  ナイト云フコトハ言フマデモナイコトデアリマス、日本ガ是カ
  ラ發展ヲ致シマスル時ニハ、其考ヲ持ッテ居ラナケレバ決シテ
  十分ニハ出來マセヌ、且ツ諸君ノ御承知ノ通リ、我國ガ非
  常ニ困難ヲ致シテ居リマスノハ彼ノ「カリフオルニア」殊ニ桑
  港ノ排日思想デアリマス、其實行デアリマス、之ヲ解カント
  致シマシテモ、如何ニシテモ解ク事ニ苦ンデ居リマスコトハ諸
  君ノ御承知ノ通リデアリマス、此後ニハ誰ガ居ルノデアリマ
  スカ、此「カリフオルニア」ノ七八分ノ人間ハ誰デアリマス、皆
  南歐カラ移住致シマシタル所ノ「ローマンガソリツク」〓徒デア
  リマス、吾輩等ハ是等ニ依リ賴ンデ事ヲシヤウト云フノデハ
  ナイガ、併ナガラ外交ヲヤル時ニハ當局者ニハ此手心ノ要
  ルコトハ言フマデモナイコトデアリマス、ソレ故ニ我ガ當局者
  ハ此事ニ付テハ三四年ノ間ノ宿題デアリマシテ、原內閣ノ
  時代カラ出サウ出サウト思ハレテ居ッタサウデアリマスガ、今日
  マデ其事ヲ實行セラレナイデ、此加藤內閣ニナリマシテ之ヲ
  出サレマシタ、大〓ハ之ヲ出セバ通過スベキ所ノ信念ガアッテ
  出シタニハ相違ナイ、サウ私ハ思ウテ居リマシタ所ガ、其說明
  ガ極テ不十分不徹底、斯ノ如キ說明ヲ以テ此困難ナル問題
  ヲ容易ク解決ガ出來ルト思ハレタルコトハ、卽チ當局者ノ不
  明デアリマス、當局者ノ大責任デアルト吾輩ハ考ヘル、ソレデ
  此反對ヲ致シマスル所ノ主ナル事ガ五六箇條アリマスケレ
  ドモ、ソレハ長イカラ別段言フ必要ハナイ、併ナガラ此反對
  論者ノコトハ誠實ヲ以テ聽カナケレバナラヌノデアリマスル
  ガ、其誠實ヲ以テ聽クベキ所ノ中ニ最モ大切ナル問題ノ一
  二ハ、卽チ此「ローマンカソリックチヤーチ」ト云フ者ト、日本ノ
  帝室トハ主義ニ於テマルデ正反對ノモノデアル、若シ此問ニ
  公使ノ交換ヲ致スヤウナコトガアッタラバ、終ニハ皇室ニ累ヲ
  及スコトニナリハセナイカト云フコトガ最モ重大ナル、又極テ
  大切ナル所ノ反對論ノ一ツデアリマス、其次ハ日本臣民ガ
  得テ居リマスル所ノ信〓ノ自由ヲ、若シ特別ニ彼ノ羅馬法
  王カラ使ハサレタル所ノ大僧正ニ與ヘルヤウナ事ガアリマシ
  タナラバ、終ニ其間ニ差等ノ情實フ起シマシテ、日本國民ノ
  信〓ガ妨害サレハセヌカト云フノデス、其他國際上學問上
  ノ色ニノ議論ガアリマスガ、ソレヲ言フ必要ハナイ、又羅馬法
  王廳ニ於テハ、學問ノ進步ヲ阻碍シタカラ今デモ是ハ恐ロシ
  イト云フ議論ガアルガ、ソレハ卑屈デス、ソンナ事ハ反對ノ論
  トスルニ及バナイノデアリマス、今ノ二ツノ事ヲ一寸說明ヲシ
  シテ置キタイ、尤モ日本ノ皇室ニ累ヲ及スヤウナモノハ「ロー
  マン」〓ニ限リマセヌ、何事ヲ問ハズ日本人ガ用ユペキモノデ
  ナイ事ハ言フマデモナイコトデアリマシテ、其論者ガ反對スル
  所ノ、眞實トシテ言フコトガ眞デアルカナイカト云フコトヲ究
  メナクチヤナラナイ(拍手)ソレハドウ云フ事デアルカト云フ
  ト、「ローマンカソリック、チヤーチ」至上主義トー云フコトデアリ
  マス、內ニハ餘リ言ウテナイカト思ヒマスルガ、先ヅ多ク外カ
  ラ言ハルヽ所ノ天下統一主義デアリマス、「ローマンカソリッ
  ク、チヤーチ」ト云フモノハ至上主義ヲ唱へ、世界統一主義ヲ
  唱ヘル、サウスルト日本ノ皇室ト]云フモノニハ正反對ノモノ
  デアルカラ、之ヲ採用シタラ遂ニ皇室ニ累ヲ及スダラウト斯
  ウ云フノデアリマス、是ハ唯〓宗〓ヲ知ラヌ人ガ言ヒ居ルコ
  トデハナイ、之ニ向フテ反對ヲ唱ヘル所ノ者ハ各宗ノ管長ガ
  麗々トシテ名ヲ記シテ判ヲ捺イテ、サウシテ吾等ニ送ッテ居ル
  所ノ事柄デアリマス、宗〓ト申シマスルモノハ宗〓學ト云フ
  モノガアリマスルカラ、諸君ノ御承知ノ通リ其定義ヲ以テ物
  ヲ見ナケレバ決シテ事ノ分ルモノデハナイ、軍學者ガ哲學ノ
  事ハ分ラズ、哲學者ガ法律ノ事ガ分ラヌ事ガ往々アルヤウ
  ニ、宗〓ハ宗〓ノ凡ソ定義ガアリマス故ニ、爰デ謂フ所ノ至
  上主義トハドウ云フモノダトカ、天下統一ト云フ事ハドウ云
  フモノダトカ云フコトハ、宗〓觀ヲ以テ解釋ヲ下サナケレバ
  分ラヌ、此主義ニ國家觀念ヲ適用シテ言フコトナラバ、非常
  ナル誤謬ヲ起スト云フコトハ申ス迄モナイ事デアル(拍手)是
  ハ日本ノ各宗ノ管長トモアラウ者ガ、己ノ宗〓ニ終生ノ力
  ヲ入レテ、隨分ムヅカシイ所ノ宗門ヲ〓究シテ居ル人ニモ拘
  ラズ、斯ノ如キ誤解ノアルコトハ殘念至極デアルト考ヘルノ
  デアリマス(「日本帝國ヲ度外シタヤウナコトヲ言フナ」ト呼フ
  者アリ)シマヒマデ聽イタラ分リマス、反對ガアレバ此處へ上ッ
  テ言ヒ給へ、是ハ決シテ日本ノ國家ト申シマスルヤウナ觀念
  カラ言ッタ言葉デハナクシテ、卽チ國家デナイ所ノ事ヲ彼等ハ
  言ヒ居ルノデアル(「分ラスコトヲ言フナ」「默レ」ト呼フ者ア
  リ)··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/26

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• 027・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ
  〔「日本帝國ノ國會デハナイカ」「馬鹿」「默レ」「トラ君
  默レ」ト呼フ者アリ)〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/27

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• 028・粕谷義三

  ○議長(柏谷義三君)　私語ノ應酬ヲ禁ジマス-中野君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/28

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• 029・押川方義

  ○押川方義君(續)　ソレ故ニ日本ノ皇室ニ向ッテハ決シテ
  非常ナ信仰ヲ致シマセウトモ、必ズ皇室ニ累ヲ及スヤウナ事
  ガ無イト云フコトハ、彼等ガ世界統一ダトカ、〓會至上ダト
  カ云フコトハ、國家ニ關係ヲシテ言ヒ居ル事デ少シモナイノデ
  アリマス、是ハ宗〓觀ヲ以テ觀マスナラバ、明白ニ分ル事デア
  リマシテ、彼等自ラ唱ヘテ居ルコトデモ其通リデアリマスガ故
  ニ、各國ニ矢張羅馬〓ガ行ハレテ居リマシテモ、帝王ノアル
  國モ、大統領ノアル國モ、社會ノアル所ノ國ガ決シテ之ニ就
  テハ反對ヲシテ居ラナイト云フコトガ、明ニ分"テ居ルノデア
  リマス、ソレ故ニ是等ノ事ニ付テ恐ルベキ所ガ無イノミナラ
  ズ、若シ彼等ガ萬一斯ノ如キ事ヲ縱シヤ主張致シタ【カト申
  シマシテモ、天壤無窮ノ我ガ大日本帝國ノ基礎ガ彼等ノ意
  見ヤ主義ニ於テ動クト考ヘルコト、ソレ自ラガ馬鹿ラシイ事
  デアル(拍手)ドウ日本ト云フ國家ヲ考ヘテ居ルノカ、唯〓獨
  リ「ヴアチカン」ノミナランヤ、獨逸デアラウガ、英吉利デアラウ
  ガ、亞米利加デアラウガ、若シ日本ノ皇室ニ反對シタル所ノ
  議論ヲ唱ヘレバ、彼等ト交際ヲ絕タナケレバナラヌト思フ程
  ノ臆病怯弱ナル人間ガ、何デ日本ノ大計ヲ爲スコトガ出來
  ルカ(ノウ〓〓)況ヤ彼等ハサウ云フ意味デナイ者デアルモノ
  ヲ其通リダト思ヒマスルコトハ遺憾ノ極リデハアリマセヌカ、
  故ニ私ハ終リニ臨ンデ諸君ニ此事ニ付テ十分ノ御考ヲ願ヒ
  タイ、是ハ私ガ最モ遺憾ト致シテ居リマスル一ツハ、日本ノ
  佛法-今度極テ反對ヲ致サレマシタル、表面ニ現レタル人
  ハ日本ノ佛者デアリマス、佛信者デアリマス(ヒヤ〓〓)此佛
  法ト云フモノハ東洋ニ於テ各國ニ行ハレタガ、佛者ノ言フコ
  トヲ聽キマスルト、獨リ佛法ノ大乘祕義ハ日本ニ於テ初テ
  成就シタモノダト、斯ウ唱ヘラレテ居リマス、然レバ此佛法ト
  云フモノハ天下無二ノ眞理デアルノデス、天下無二ノ眞理
  ヲ持ッテ居ル所ノモノハ日本ノ佛法信者デアル、今日歐羅巴
  ハ非常ニ思想ノ變動スル時デアリマス、歐羅巴ノ人ハ東洋
  ノ哲學、東洋ノ宗〓、東洋ノ文學、東洋ノ技藝、總テ是マデ
  持ッテ居ッタ所ノ文明制度デハ滿足シナイデ、東洋ノ物ヲ非
  常ナ熱心ヲ以テ〓究シツヽアルノデアリマス(「ソンナコトハ
  誰モ知ッテ居ル」ト呼フ者アリ)知ッテ居レバ其通リヤラウト云
  フノダ、ソレ故ニ此日本ノ念佛者ガ固ヨリ大事ナ人物ヲ選
  ブト云フコトハ外務省ノ務メデアリマスルガ、此二十七箇國
  ノ大公使ガ集"テ居ル、非常ナル幸ナル所ニ、日本ノ有力ナ
  ル大德大知識ト云フヤウナ公使ガ、外務省ノ大命ヲ、受ケテ
  サウシテ、彼ノ處ハ宗〓本體デアリマス、學問本體デアリマ
  ス、其處ニ東洋ノ總テノ學問ヲ背負フタル人ガ行ッテ、サウシ
  テ歐洲ノ今求メテ居ル所ノモノニ光明ヲ與ヘマスルナラバ、
  是ハ唯、獨リ現在ノ外交問題ノミナラズ、世界中ノ永遠ノ
  平和ヲ、或ハ學問、或ハ哲學、或ハ宗〓ニ於テ相結ブコトガ
  出來ルヤウニナル、最モ大切ナル機會ヲ與ヘラレタルモノデ
  アルニ拘ラズ、彼等ハ小サイ僅ニ唯、日本ノ在來ノ宗〓ニ
  媚ビシテ、政府ノ恩寵ヲ受ケテ、位地ノ「イイカ低イトカ云
  フコトヲ目安トシテヤルト云フコトハ、最モ殘念極マル事デア
  リマ、ス衆議院ハ滿場一致ヲ以テ委員長ガ報告シタルガ如
  キ意義ヲ以テ、此費用ヲ創除致サレマシタコトハ極メテ殘
  念ニ思フノデアリマス、願クハ衆議院諸君ガ再ビ此事ニ付テ
  勘考シテ、之ヲ復活セシムル所ノ勇氣アリヤ否ヤヲ申述ベタ
  ノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/29

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• 030・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)是ヨリ議事ニ入リマス、日程第一、　煙草專賣法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-政府
  委員
  第一煙草專賣法中改正法律案(政府提
  出五第一續會
  煙草專賣法中改正法律案
  煙草專賣中左ノ通改正ス
  第十一條第一項ヲ左ノ如ク改ム
  政府ハ收穫前ニ於テ葉煙草ノ收穫量目ヲ査定ス但シ
  査定ノ必要ナシト認ムルトキハ之ヲ省略スルコトヲ得
  第十二條及第十七條中「又ハ葉數」ヲ削ル
  第十三條中「煙草耕作者ハ政府ノ許可ヲ受クルニ非サ
  レハ第十一條ノ査定前」ヲ「煙草耕作者第十一條ノ査
  定ヲ受クル場合ニ於テハ政府ノ許可ヲ受クルニ非サレハ
  其ノ査定前」ニ改ム
  附則
  本法ハ大正十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔政府委員西野元君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/30

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• 031・西野元

  ○政府委員(西野元君)　私ハ只今日程ニ上リマシタル煙
  草專賣法中改正法律案ニ付キマシテ、簡單ニ其提案ノ理
  由ヲ申上ゲタイト存ジマス、現行煙草専賣法ニ於キマシテ
  ハ、葉煙草ノ收穫前ニ於テ、其收穫ノ量目又ハ葉數ヲ査定
  致シマス、以テ葉煙草密賣買等ノ犯則ヲ取締ルコトヽナッテ
  居リマスケレドモ、本法施行以來年ヲ閱スルニ從ヒマシテ、
  密賣買其他ノ犯則ハ漸次減少シテ參ルコトニ相成シテ居リ
  マシテ、隨テ現今ニ於テハ事實上量目ノ査定ノミニ止メマシ
  テ、葉數ノ査定ハ之ヲ施行シナイ狀態ニ相成ッテ居ルノデア
  リマス、仍テ今囘專賣法ノ規定ノ」中カラ、此葉數査定ノ事
  ヲ削除致シマスルト同時ニ、此量目ノ査定ニ付テハ產地ノ
  全部ニ互リマシテ、必シモ之ヲ實行致ス必要ノナイ場合ニ
  於キマシテハ、政府ニ於テ之ヲ省略シ得ルノ途ヲ開キタイト
  存ズルノデアリマス、之ガ爲ニ今回專賣法中ニ改正ヲ加ヘ
  ントスル趣旨デゴザイマシテ、極メテ簡單ナ改正デゴザイマス
  カラ、御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/31

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• 032・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　日程第二、右議案ノ審査ヲ付託ス
  ヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
  選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/32

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• 033・高見之通

  ○高見之通君　委員ノ數ヲ九名トシ、議長ニ於テ指名セ
  ラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/33

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• 034・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニ御異議ナイト認メ
  マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第三、第四ハ關連
  シタ議案デアリマスカラ、一括議題ト爲スニ御異議ハアリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/34

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• 035・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマス、乃チ玆ニ日
  程第三、都市計畫法中改正法律案、日程第四、明治四十
  一年法律第三十六號中改正法律案、右二案ヲ一括シテ
  議題ト致シマス、其第、一讀會ヲ開キマス-只今ノ三十六
  號ト申シマシタノハ、七號ノ誤デアリマスカラ訂正シテ置キマス
  第三都市計畫法改正法律案(政府提出)
  第一讀會
  都市計畫法中改正法律案
  都市計畫法中左ノ通改正ス
  第八條中「百分ノ十七」ヲ「百分ノ二十二」ニ改ム
  附則
  本法ハ大正十二年度分ヨリ之ヲ適用ス
  第四明治四十一年法律第三十七號中改
  正法律案(政府提出)第一讀會
  明治四十一年法律第三十七號中改正法律案
  明治四十一年法律第三十七號中左ノ通改正ス
  第一條中「(沖繩縣ヲ除ク)、沖繩縣ノ區及町村」ヲ削ル
  第二條中「百分ノ二十九」ヲ「百分ノ四十一」ニ、「百分ノ
  四十七」ヲ「百分ノ六十一」ニ改ム
  附則
  本法ハ大正十二年度分ヨリ之ヲ適用ス
  本法公布ノ日迄ニ北海道、府縣其ノ他ノ公共圏體力營
  業稅附加稅ニ付制限外課稅ノ許可ヲ受ケタル場合ニ於
  テ其ノ制限外ノ賦課率ハ之ヲ本法ニ依リテ許可ヲ受ケ
  タル制限外賦課率ト看做ス
  〔國務大臣水野鍊太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/35

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• 036・水野錬太郎

  ○國務大臣(水野鍊太郞君)　只今日程ニ上リマシタ兩
  案ノ說明ヲ簡單ニ致シマス、御承知ノ通リニ此度營業稅
  法ノ改正ガ提出セラレマシテ、旣ニ本院ハ通過致シタノデア
  リマス、其結果ト致シマシテ、地方稅ノ附加稅、卽チ營業稅
  附加稅ガ此制限內ノ徵收額ニ於キマシテ、約千五百万圓
  ノ減牧ヲ見ルコトニナルノデアリマス、一而シテ今日地方財政
  ノ現況ニ鑑ミマスレバ、此千五百万圓ト申シマスノニハ、之
  ガ補塡ノ必要ヲ認メルノデアリマス、併シ現時纒濟界ハ不
  振ノ際デアリマスカラ、成ベク營業者ノ負擔ヲ增大スルコト
  ノナイヤウニ致シタイト思ヒマス、同時ニ又此千五百万圓ヲ
  地方稅ノ〓損ニ致シマスレバ、地方ノ財政上ニ困難ヲ來シ
  マスルカラ、成ベク此兩樣ヲ緩和致シマスル所ノ地方稅ノ制
  限ヲ設ケタイト思フノデアリマス、其結果ト致シマシテ約千
  二百有餘万圓ノ程度ニ止メマシテ、營業稅附加稅率ノ引
  上ヲ爲スコトニシタノデアリマス、而シテ其殘ル所ノ約三百
  万圓ト申シマスルノハ、之ヲ地方費ノ整理ニ出シマシテ、成
  ベク他ノ稅源ニ之ヲ取ラヌト云フコトニ致シタノデアリマス、
  是ガ營業稅ノ附加稅率ニ關スル法案ノ大要デアリマス、而
  シテ又沖繩縣ニ付キマシテ多少ノ法律ノ改正ヲ致シタイト
  思フノデアリマス、沖繩縣ニ於キマシテハ、地租附加稅ニ關シ
  マシテノ從來特別ノ稅率ノ定メガアッタノデアリマスガ、今日
  ニ於キマシテハ、此特別ノ稅率ヲ保持スル必要ハ無イノデア
  リマスカラ、之ヲ一般寢縣ト同樣ニ改メルコトニ致シタノデ
  アリマス、尙ホ今一ツノ法案卽チ都市計畫法中ノ改正案
  モ、只今申シマシタ所ノ營業稅ノ附加稅ニ〓スル改正ト同
  ジャ)旨デアリマシテ、市町村ノ營業稅附加稅率ニ準ジテ改
  正スルコトヽ致シタノデアリマス、是ガ此兩法案ヲ提出スル
  次第デアリマス、ドウゾ御審査ノ上御協賛アランコトヲ希望
  致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/36

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• 037・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　本案ニ對シテ質疑ノ通告ガアリマ
  ス、作間耕逸君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/37

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• 038・作間耕逸

  ○作間耕逸君　本員ハ此場合ニ於テ質問セント致シマシ
  タ趣旨ハ、別ニ質問ノ形式ニ依ッテ提案致シテ置キマシタカ
  ラ、此際ニ於ケル發言ノ通告ハ撤囘致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/38

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• 039・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　板野友造君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/39

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• 040・板野友造

  ○板野友造君　本員ハ簡單デアリマスカラ此席カラ申上
  ゲマス、都市計畫ノ改正案ガ出マシタカラ此際御尋致シマ
  ス、其第一ハ都市計畫ニ付テハ此法律制定ノ際カラシテ、
  政府ノ方デ此事業ニ對シテ補助スル、斯ウ云フコトガ議會
  ニ於テモ明言サレテ居っタ、ソコデ此際御尋致シテ置キタイト
  思ヒマスルノハ、政府ハ依然トシテ此都市計畫ヲ施行シテ
  居ル都市ニ對シテ、補助ヲ爲ス意思ヲ有スルカ否カ、補助ヲ
  爲ス必要ヲ認メテ居ルトスレバ、如何ナル程度ニ於テ補助
  ヲ爲サントシテ居ルノデアルカ是ガ一ツ、ソレカラモウ一ツハ
  都市計畫法第八條ノ中ニ於テ、都市計畫事業ノ財源トシ
  テ特別稅ノ二三ノモノヲ揭ゲテ、其他ハ之ヲ勅令ヲ以テ規
  定ヘル-財源ニ付テハ勅令ヲ以テ規定スル、斯ウ云フコト
  ヲ第八條ニ規定シテ居ルガ、其後一向勅令ノ發布ヲ見ナイ
  ヤウニ私ハ考ヘル、此事業ノ財源トシテ特別稅ヲ許ス勅令
  ハ、如何ナル內容卽チ如何ナル特別稅ヲ起スコトヲ許サント
  スル考デアルカ、此二ツニ付テ政府ノ答辯ヲ求メマス
  〔國務大臣水野鍊太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/40

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• 041・水野錬太郎

  ○國務大臣(水野錬太郎君)　板野君ノ御問ニ御各致シ
  マス、第一點ハ都市計畫ヲ爲シツヽアル各都市ニ、對シテハ、
  從來ノ通リ國庫ガ補助スルノ意思アリヤ否ヤト云フノガ第
  一點ノ御問デアルト記憶致シマス、左樣デアリマス、卽チ都
  市計畫ヲ施行スル所ノ都市ニ對シマシテハ、從來ノ如ク或
  ハ道路、或ハ水道、下水、是等ノ事柄ニ付キマシテハ、從來ノ
  通り財政ノ許ス範圍ニ於テ補助ヲ爲スノ意思ヲ待ッテ居ル
  ノデアリマス、第二點ハ都市計畫法ノ八條ニ於ケル特別稅ノ
  事デアッタト記憶致シマス、此特別稅ハ私共ノ只个考ヘテ居
  リマス所デハ、ドウ致シマシテモ都市計畫ノ財源トシテ、特別
  ノ財源フ與ヘネバナラヌト考ヘテ居リマス、ソレデアリマスカラ
  只今折角調査ヲ致シテ居ル、之ニ付キマシテハ只今正確ニ
  御答ハ出來マセヌガ、腹案ヲ中シマスレバ、ム或ハ間地稅ノ如
  キ、或ハ土地增價稅ノ如キ、是等ノモノヲ都市計畫ノ財源
  トスルノガ適當デアルト考ヘテ居ルノデアリマス、面シテ是ハ
  財政當局卽チ大義省ニ於テモ、相當容査スルノ必要ガアリ
  ト認メマシテ、内務省ニ於テ考案致シタルモノヲ大藏省ニ於
  テ容査致シツヽアルノデアリマス、た樣ナ狀況デアリマスカ
  ラ、左様御承知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/41

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• 042・板野友造

  ○板野友造君　此都市計畫業ノ截助現在ニ於テ或ハ
  道路補助若クハ下水事業ノ補助ハ斯ウ云フ形式デ各都市
  ニ補助サレテ居ルコトハ私モ承知致シテ居ル、併シ是ハ都市
  計畫事業ノ補助ト云フノデナクシテ、或ハ道路ノ補助、或ハ
  水道ノ補助、斯ウ云フモノデ、補助スベキ目的ガ違テ居ル、
  ソコデ是ハ郁市計畫ガナクトモ、或ハ水道、或ハ道路、斯ウ
  云フ工事事業ニ對シテ補助スルノデアリマスカラ、事實ニ於
  テハ或ハ道路ノ補助ト云フ全ヲ都市計畫事業ニハ使ッテ居
  ル、使ッテ居ルケレドモ、其他ニ都市計畫其事業其物ニ對シ
  テ補助ヲ與ヘルト云フ考ハナイカ、斯ウ云フコトヲ御導致ス
  ノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/42

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• 043・水野錬太郎

  ○國務大臣(水野鍊太郞君)　此席カラ御答致シマス、少
  シ細カイ事ニナリマスガ、都市ノ計畫卜申シマスコトハ、或ハ
  道路、或ハ上水、下水、或ハ公園ト云フヤウナコトガ〓括シ
  テ都市計畫ニナルノデアリマス、ソレニ對シテ國家ガ必要ト
  認メマス場合ニ於テ、國費ヲ以テ之ニ補助〓スノデアリマ
  ス、卽チ只今ノ御述ノ如ク、道路或ハ水道下水ノ如キモノニ
  對シテ、補助ヲ與ヘルト云フコトニ旧成ルコトヽ考ヘテ居り
  マス、大體サウ云フ趣旨デ取扱クテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/43

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• 044・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　日程第五、右二案ノ審査ヲ付託ス
  ヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第五右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/44

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• 045・高見之通

  ○高見之通君　日程第三及第四ノ兩案ヲ一括シテ、林田
  龜太郞君外一名提出明治四十一年法律第三十七號中
  改正法律案ノ委員ニ〓セセ付付セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/45

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• 046・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニハ御異議ナシト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第六、種牡馬檢
  査法中改正法律案ノ第一讀會ヲ聞キマス、白川政府委員
  第六種牡馬検査法中改正法律案(政府
  提出、貴族院送付)第一讀會
  種牡馬檢査法中改正法律案
  種牡馬檢査法中左ノ通改正ス
  第一條中「每年」ヲ創ル
  第三條第一項ヲ左ノ如ク改メ同條第二項中「期限」ヲ
  「有效期間」ニ改ム
  證明ノ效力ヲ有スル期問ハ三年以內ニ於テ檢査委員
  之ヲ定ム
  第七條中「二圓以上二十圓以下ノ罰金」ヲ「五十圓以
  下ノ罰金又ハ科料」ニ改ム
  附則
  本法施行ノ際現ニ效力ヲ有スル證明ハ本法施行後新ニ
  檢査ヲ受クル迄仍其ノ效力ヲ有ス但シ該證明ノ效力ヲ
  生シタル時ヨリ三年ヲ超ユルコトヲ得ス
  〔政府委員白川我則君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/46

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• 047・白川義則

  ○政府委員(白川義則君)　種牡爲檢査法中改正ノ事ニ
  付テ申上ゲマス、現行ノ檢査法ニ於キマシテハ種牡馬ハ每
  年檢査ヲ受ケマシテ、之ニ合格シタモノデナケレバ種付ヲサ
  レヌト云フ規定ニナッテ居リマス、然ルニ現今ニ於キマシテハ
  本法制定當時ニ較ベマシテ、一般ノ馬ノ素質ガ向上ヲシテ
  參リマシタカラ、必シモ每年之ヲ檢査スル必要ヲ認メマセヌ、
  仍テ檢査合格ノ證明書ノ有效期間ヲ三箇年以內ニ改メ
  ルノデアリマス、又衿査ニ合格ヲシナイ種牡馬等ニテ種付ヲ
  致シマシタモノハ、二圓以上二十圓以下ノ罰金ニナッテ居リ
  マシタガ、刑法改正ノ結果之ヲ五十圓以下ノ罰金、又ハ科
  料ニ處スルト云フコトニ改メルノデアリマス、ドウカ御審議ノ
  上御協賛ヲ願ヒマス(拍手認ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/47

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• 048・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　日程第七、右議案ノ審査ヲ付託
  スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第七右識案ノ審査ヲ付記スヘキ委員ノ
  選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/48

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• 049・高見之通

  ○高見之通君　委員ノ數ヲ九名トシ、議長ニ於テ指名セ
  ラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/49

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• 050・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　高見君ノ動議ニハ御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第八、產業組合
  中央金庫法案ノ第一讀會ヲ開キマス、提出者ノ趣旨辯明
  ヲ許シマス、橫田千之助君
  第八產業組合中央金庫法案(床次竹二
  郞君外十一名提出)第一讀會
  產業組合中央金庫法案
  產業組合中央金庫法
  第一章總則
  第一條產業組合中央金庫ハ法人トシ其ノ主タル事
  務所ヲ東京市ニ置ク
  產業組合中央金庫ノ組織ハ有限責任トシ產業組合
  聯合會及產業組合ヲ以テ之ヲ組織ス
  第二條產業組合中央金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ
  從タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
  主務大臣ニ於テ從タル事務所ヲ必要ナリトスルトキハ
  產業組合中央金庫ニ命シテ之ヲ設置セシムルコトヲ
  得
  產業組合聯合會ハ產業組合中央金庫ノ業務ヲ代理
  スルコトヲ得
  第三條產業組合中央金庫ノ存立期間ハ設立免許ノ
  日ヨリ五十箇年トス但シ政府ノ認可ヲ經テ存立期間
  ヲ延長スルコトヲ得
  第四條產業組合中央金庫ノ資本金ハ三千萬圓トシ
  之ヲ三十萬口ニ分チ一口ノ金額ヲ百圓トス
  產業組合中央金庫ハ資本金全額ノ拂込前ト雖出資
  者總會ノ決議ニ依リ政府ノ認可ヲ經テ資本金ヲ增
  加スルコトヲ得
  第五條政府、產業組合聯合會又ハ產業組合ノ外產
  業組合中央金庫ノ出資者タルコトヲ得ス
  產業組合聯合會竝產業組合ノ有スヘキ出資口數ハ
  二百口ヲ超ユルコトヲ得ス
  第六條政府ハ千五百萬圓ヲ限リ產業組合中央金庫
  ニ出資スヘシ政府ハ其ノ出資額ニ對シ設立當初ニ於
  テ五百萬圓ヲ拂込ミ爾後每年五百萬圓宛拂込ムモ
  ノトス政府以外ノ出資者ハ其ノ出資ニ對シ設立當初
  ニ於テ出資額ノ五分ノ一ヲ拂込ミ爾後十箇年間ニ
  其ノ殘餘ヲ拂込ムモノトス
  政府ノ產業組合中央金庫ニ對シテ所有スヘキ持分ニ
  關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第七條商法中株式會社ニ關スル規定ハ本法ニ別段
  ノ規定アルモノヲ除クノ外產業組合中央金庫ニ付之
  ヲ準用ス
  第八條產業組合中央金庫ニハ所得稅及營業稅ヲ課
  セス
  第二章役員
  第九條產業組合中央金庫ニ理事長副理事長各
  人理事監事各三人以上ヲ置ク
  第十條理事長ハ產業組合中央金庫ヲ代表シテ其ノ
  事務ヲ總理ス
  副理事長ハ理事長事故アルトキ其ノ職務ヲ代理シ理
  事長缺員ノトキ其ノ職務ヲ行フ
  副理事長及理事ハ理事長ヲ補助シ定款ノ定ムル所ニ
  從ヒ產業組合中央金庫ノ業務ヲ掌理ス
  監事ハ產業組合中央金庫ノ業務ヲ監査ス
  第十一條理事長、副理事長理事及監事ハ主務大臣
  之ヲ任命ス
  理事長、副理事長及理事ノ任期ハ五箇年監事ノ任
  期ハ三箇年トス但シ其ノ任期滿限ノ後再任ヲ命スル
  コトヲ得
  第十二條產業組合中央金庫ニ評議員二十名以内
  ヲ置キ主務大臣之ヲ任命ス但シ其ノ半數以上ハ產業
  組合關係者中ヨリ之ヲ選任スルコトヲ要ス
  評議員ハ名譽職トシ定款ノ定ムル所ニ依リ業務經營
  ニ關スル重要ナル事項ニ就キ理事長ノ諮問ニ應スル
  モノトス
  評議員ノ任期ハ三箇年トス
  第三章業務
  第十三條產業組合中央金庫ハ左ノ業務ヲ營ムモノ
  トス
  所屬產業組合聯合會又ハ所屬產業組合ニ對シ
  擔保ヲ徴セスシテ五箇年以內ノ定期債還貸付ヲ爲
  スコト
  二所屬產業組合聯合會又ハ所屬產業組合ニ對シ
  手形ノ割引又ハ當座預金貸越ヲ爲スコト
  三所屬產業組合聯合會又ハ所屬產業組合ノ爲ニ
  爲替業務ヲ爲スコト
  四產業組合聯合會、產業組合、公共團體又ハ營
  利ヲ目的トセサル法人ヨリ預リ金ヲ爲スコト
  第十四條產業組合中央金庫ハ必要アリト認メタル場
  合ニ於テハ擔保ヲ徴シテ前條第一號及第二號ノ業務
  ヲ爲スコトヲ得
  第十五條產業組合中央金庫ハ定期預リ金ヲ爲スコ
  トヲ得
  第十六條産業組合中央金庫ハ左ノ方法ニ依ルノ外
  預リ金又ハ業務上ノ餘裕金ヲ運用スルコトヲ得ス
  -預リ金ノ四分ノ一以上ハ國債又ハ公債ノ買入、
  大藏省預金部若ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル銀
  行ヘノ預金又ハ郵便預金ト爲スコト
  二公共團體、産業組合聯合會、產業組合其ノ他
  營利ヲ目的トセサル法人ニ對シ短期貸付ヲ爲スコ
  三國債又ハ公債若ハ生產物ヲ擔保トスル三箇月
  以內ノ短期貸付又ハ手形ノ割引ヲ爲スコト
  第十七條無擔保ニテ借入ヲ爲シタル府縣郡市町村
  其ノ他法律ニ依リ組織セル公共圍體ニ於テ元利金ノ
  拂込期日ヲ過キ之ヲ拂込マサルトキ又ハ期限前ノ償
  還請求ニ對シ其ノ拂込ヲ爲ササルトキハ產業組合中
  央金庫ハ監督官廳ニ其ノ處分ヲ請求スルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テ產業組合中央金庫ハ府縣ニ對シ
  テハ內務大臣ニ郡市町村其ノ他法律ニ依リ組織セル
  公共團體ニ對シテハ第一次監督官廳ニ其ノ請求ヲ
  爲スヘシ
  監督官廳請求ヲ受ケタルトキハ府縣郡市町村其ノ他
  法律ニ依リ組織セル公共園體ニ命令シテ延滯元利金
  ヲ拂込マシムヘシ
  第十八條産業組合中央金庫ハ本法ニ記載セサル業
  務ヲ營ムコトヲ得ス
  第四章產業債劵
  第十九條產業組合中央金庫ハ拂込金額ノ十倍ヲ限
  リ產業債劵ヲ發行スルコトヲ得但シ貸付金現在高割
  引手形現在高及其ノ所有ニ係ル有價證劵現在高ヲ
  超過スルコトヲ得ス
  產業債劵ヲ發行スル場合ニハ商法第百九十九條及
  第二百條ノ二ノ規定ヲ準用セス
  第二十條產業債劵ハ劵面金額五十圓以上トシ無記
  名利札附トス但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記
  名ト爲スコトヲ得
  第二十一條產業組合中央金庫ハ產業債劵借挨ノ爲
  一時第十九條ノ制限ニ依ラス低利ノ產業債劵ヲ發
  行スルコトヲ得
  前項ノ規定ニ依リ產業債劵ヲ發行シタルトキハ發行
  後一箇月以內ニ抽籤ヲ以テ其ノ發行劵面金額ニ相
  當スル舊產業債劵ヲ償還スヘシ
  第二十二條產業組合中央全庫ニ於テ產業債劵ヲ發
  行セムトスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
  第二十三條產業債劵ノ所有者其ノ元金又ハ利子ヲ
  要求セサルトキハ元金ハ十五箇年利子ハ五箇年ニシ
  テ其ノ要求ノ權利ヲ失フモノトス
  第二十四條產業債劵ノ發行ニ關スル印紙稅及登錄
  稅ハ之ヲ免除ス
  第二十五條產業債劵ノ模造ニ關シテハ通貨及證劵
  模造取締法ヲ準用ス
  第五章計算
  第二十六條產業組合中央金庫ノ事業年度ハ一箇年
  トス
  第二十七條產業組合中央金庫ハ每事業年度ニ於テ
  準備金トシテ剰餘金ノ十分ノ一以上ヲ積立ツヘシ
  第六章監督及補助
  第二十八條主務大臣ハ產業組合中央金庫ノ業務ヲ
  監督ス
  第二十九條產業組合中央金庫ハ其ノ定款ヲ變更セ
  ムトスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
  第三十條產業組合中央金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受
  クルニ非サレハ剩餘金ノ處分ヲ爲スコトヲ得ス
  第三十一條產業組合中央金庫ハ主務大臣ノ命令ニ
  從ヒ其ノ業務ニ關スル諸般ノ狀況及計算報告書ヲ差
  出スヘシ
  第三十二條主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ產業
  組合中央金庫ノ貸付又ハ割引ノ金額若ハ方法ヲ制
  限スルコトヲ得
  第三十三條產業組合中央金庫ノ貸付金利子ノ最高
  步合ハ每事業年度ノ初ニ於ア主務大臣ノ認可ヲ經テ
  之ヲ定ムヘシ其ノ事業年度內ニ於テ之ヲ變更セムトス
  ルトキ亦同シ
  第三十四條主務大臣ハ特ニ產業組合中央金庫監理
  官ヲ置キ產業組合中央金庫ノ業務ヲ監視セシム
  第三十五條產業組合中央金庫監理官ハ何時ニテモ
  產業組合中央金庫ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢査スル
  コトヲ得
  產業組合中央金庫監理官ハ監視上必要ナリト認ム
  ルトキハ何時ニテモ產業組合中央金庫ニ命シテ業務
  上諸般ノ計算及狀況ヲ報告セシムルコトヲ得
  產業組合中央金庫監理官ハ出資者總會其ノ他諸般
  ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得但シ議決ノ
  數ニ加ハルコトヲ得ス
  第三十六條產業組合中央金庫ハ創立初期ヨリ十五
  箇年間政府ノ出資ニ對シ剩餘金ノ配當ヲ爲スコトヲ
  要セス
  第七章罰則
  第三十七條左ノ場合ニ於テハ產業組合中央金庫ノ
  理事長副理事長、理事又ハ監事ヲ百圓以上千圓以
  下ノ過料ニ處ス
  -本法ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ受クヘキ場合ニ其
  ノ認可ヲ受ケサルトキ
  二主務大臣ノ命令ニ反シタルトキ
  三第十六條ノ規定ニ反シ預リ金又ハ業務上ノ餘
  裕金ヲ使用シタルトキ
  四第十八條ノ規定ニ反シ本法ニ規定セサル業務ヲ
  營ミタルトキ
  五第十九條第一項及第二十一條第二項ノ規定ニ
  反シタルトキ
  第三十八條非訟事件手續法第二百六條乃至第二
  百八條ノ規定ハ前條ノ過料ニ之ヲ準用ス
  附則
  第三十九條主務大臣ハ設立委員ヲ置キ產業組合中
  央金庫ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
  第四十條設立委員ハ定款ヲ作リ主務大臣ノ認可ヲ
  受ケタル後出資者ヲ募集ス
  第四十一條設立委員ハ出資者ノ募集ヲ終リタルトキ
  ハ出資申立書ヲ主務大臣ニ提出シ產業組合中央金
  庫設立ノ認可ヲ禀請スヘシ
  前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク出
  資第一囘ノ拂込ヲ爲サシムルコトヲ要ス
  第四十二條創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其
  ノ事務ヲ產業組合中央金庫理事長ニ引渡スヘシ
  〔橫田千之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/50

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• 051・横田千之助

  ○横田千之助君　諸君、本案ハ中產以下ニ對スル金融機
  關ヲ設立スル爲ニ、民法第三十三條ノ規定ニ依ッテ、公益
  的營利法人ノ樹立ヲ目的トスルモノデアリマス、章ヲ分ツコ
  ト七、法條ヲ含ムコト四十二、之ヲ法律的ニ解釋ヲスレバ、
  此法案ノ中ニムツカシキ條項ハ五ツカ六ツニ過ギナイ、映
  事務的ノ規定ガ多イノデアリマス、併ナガラ今期議會ニ於
  テ、各黨各派ノ間ニ農村振興ノ問題ガ大ニ起リ、而モ根本
  政策ニ伴ッテ此農村ノ急ニ應ズル爲ニ、應急ノ政策モ亦必
  要ナリト云フ聲ガアル時ニ於テハ、唯〓法律的說明ヲ以テ
  滿足スルコトハ出來ヌノデアリマス(「ヒヤ〓〓」)加之本案ガ
  世ニ現ルヽヤ、一部ノ銀行家、學者、論客、是等ノ方面カラ
  既ニ反對的批評ノ聲モヤカマシイノデアリマス、尙ホ議場ニ
  於テハ少クトモ下院ノ議場ニ於テハ、大勢本案ヲ迎ヘルヤ
  ウデアリマスルケレドモ、發案者タル私ノ手許ニ來ル所ノ有
  力ナル方面ニ、强キ反對ガアルト云フコトヲ豫メ諸君ニ警
  告シテ置カナケレバナラナイ、其反對ハ未ダ勢力ヲ成シテ形
  ニハ現レテ居ラヌ、併ナガラ此法案ノ上下兩院ヲ通過スル
  間ニ於テ、如何ナル力ヲ以テ此方案ノ進路ヲ害スルカモ知
  レヌノデアリマスルカラ、私ハ此提案ノ說明ヲスル機會ニ、此
  法案ガ包含スル所ノ精神、及此法案ガ活動スベキ所ノ直
  接間接ノ問題ノ働ニ向ッテ、時刻ハ遲レテ居リマスルガ、多
  少諸君ノ時間ニ付テ寬大ナル雅量ヲ持タレンコトヲ豫メ希
  望シテ置キマス(拍手)此法案ノ特質ハ、中產以下ニ對スル
  金融機關デアルト云フコトハ既ニ申上ゲタ通リ、更ニ擔保
  短期貸付、卽チ對人信用ヲ基トスルト云フコトガ第二ノ要
  點ニナッテ居リマス、其組織ニ於テハ株式會社ノ營利的性
  質カラ努メテ遠ザカル爲ニ、相互組織ノ組合ニ基礎ヲ置ク
  ト云フコトニナッア居ルノデアリマス、其働ノ方面カラ行キマ
  スレバ、此金融ノ機關ヲ置イテ、金融市場、寧ロ金融市場ト
  云フヨリハ、國家ノ各方面カラ吸收スル所ノ預金部ヨリ呼
  出ス所ノ低利資金ノ源泉ニ向ッテ、玆ニ貯水池ヲ置カウト
  云フノデアル、此貯水池カラ產業聯合會、產業組合ト云フ
  用水路ヲ通ジテ、中產以下ノ農民ノ勤勞ニ向,テ灌漑ヲシ
  ヤウト云フノガ本案ノ働ニナッテ居ル、說ヲ爲ス者ハ、斯ノ如
  キ組織ハ今日ニ於テハ旣ニ國家ハ用意シテアル、曰ク勸業
  銀行ノ働、農工銀行ノ働、是等ノモノガアル以上ハ、殊ニ二
  三年來是等ノ銀行條例トカ銀行法規ノ上、ニ對人信用貸
  付ノ途ヲ規定シタル規定ガ開カレタ以上ハ、此法案ノ如キ
  ハ-此中央金庫ノ如キハ屋上屋ヲ架スモノデナイカト云
  フ議論ガアルノデアル、併ナガラ勸業農工銀行ハ御承知ノ
  通リ、其成立ノ初ニ於テ產業ノ助長機關デアル、產業助長
  獎勵主義カラ出來テ居ル、銀行取引ノ內容ニ於テ、不動產
  擔保對物信用ト云フモノヲ基礎トシテ造ラレタモノデアル
  ト云フコトハ言フ迄モ無イガ、加之何十年間銀行ノ成長シ
  テ居ル所ノ歷史的關係ニ於テ、此銀行ノ內部ノ取引ハ、悉
  ク對物信用ト云フ所ノ性質ニ向ッテ成長シ來ノタノデアリマ
  スカラ、如何ニ銀行法規ノ規定ヲ直シテ見テモ、是ハ對人
  信用無擔保主義ニ向ッテ此ニ集ッタル所ノ資金ヲ注入レル
  ト云フ事ハ、事情ノ上ニ於テモ非常ニ困難ニナッテ居ルノデ
  アリマス、中央金庫ハ産業助長主義ト云フ意味デナクシテ、
  全然社會政策ノ見地カラ出テ居ルノデアル、前段申上ゲマ
  シタ通リ、中央金庫ト云フ「タンク」ヨリ產業組合ノ用水路
  ヲ通ジテ、短期少額ノ無擔保貸付ヲ主トスルノデアリマスカ
  ラ、全然社會政策ノ見地カラ出テ居ルノデアリマス、他ノ方
  面カラ見マスト、勸業銀行農工銀行ノ規定ハ、或ル.方面ニ
  於テハ、擔保主義トナリ、或ル方面ニ於テハ對人信用主義ト
  ナッテ居ルノデアリマスガ、此中央金庫ハ全然ンレヲ排斥致
  シマシテ、併行主義ヲ避ケテ、專門ニ中產以下ノ無擔保貸
  付主義ニナッテ居ルノデアリマス、且又是等銀行ノ仕事ト云
  フモノハ株式組織デアリマスカラ、國家ガ優越ナル或ル特殊
  ノ待遇ヲ與ヘテアリマスケレドモ、是亦純然タル營利會社デ
  アルコトハ爭ハレナイ、中央金庫ハ此四十二條ノ規定ノ中
  ニ點々散在スル如ク、努メテ非營利主義ノ形式ヲ採リ、出
  來ルダケ組合員ノ利益分配ヲ制抑シテ、中產以下ノ農
  民-大部分ノ農民ニ資金ヲ融通シヤウト云フ精神ノ上ニ
  立脚シテ居ルノデアリマス、勸業銀行農工銀行等ノ從來ノ
  歷史沿革其働ヲ見マスト、多ク絮說スルコトヲ要セズシテ、
  中產以上ノ資本家ニ利用サレテ居ルコトハ明カデアル、國
  家ガ最初設立シタ目的ハ此ニ無カッタカモ知レヌ、大部
  分ノ農村ニ向ヒ、此中ノ農民ニ對シテ、農業奬勵發達ノ爲
  ニ資金ヲ供給スルノガ半分以上ノ目的デアッタカモ知レヌガ、
  爾來發達ノ徑路ヲ見レバ、何人ト雖モ中產以上ガ多ク之
  ヲ利用シテ居シテ、中產以下ノ農民ノ利用ト云云モノハ、極
  ク小部分デアルト云フコトハ明白デアル、卽チ〓日ニ於テハ
  アレ等ノ銀行ハ國家有要ノ機關デハアリマスガ、餘リニ資本
  主義的色彩ガ濃厚ニナッテ、是ダケヲ以テ農村ノ衰廢ヲ防
  グナドト云フコトハ思モ及バヌノミナラズ、却テ資本主義ノ
  旺盛ニ向ヲテ、一鞭ヲ加ヘル傾向ヲ持ツト云フコトヲ斷言シ
  テ憚ラヌノデアリマス、土井權大君ハ先日此演壇ニ立ッテ、
  各大銀行ガ集メタ金ガー-貸付ケタ金ガ約百三十億、而シ
  テ此金ガ農村ニ向フテ注ガレタノハ三億ニ過ギヌト云フ數
  字ヲ擧ゲラレマシタ、其通リデアリマセウ、勸業銀行、正金銀
  行其他ノ大銀行ニ各方面カラ集ッテ來ル金ガ-貸付ケラ
  レタ金ガ百三十億デアルガ、此中カラ農村ニ注ガレタ金ハ三
  億ニ過ギヌト云フコトヲ言ッタ、跡百二十七億ト云フモノハ、
  中產以上寧口大資產家ノ利用スル所トナッテ居ルト云フ有
  樣、最近ノ統計ニ依ッテ見エマシテモ、郵便貯金十億ト稱シ、
  而モ此內容ヲ分析シテ見レバ其五割以上ハ、全ク中產以下
  ノ農村ニ居ル農民ノ懷カラ差出サレテ供給サレタモノデアリ
  マス、然ルニ昨年組合ヲ通ジテ斯ウ云フ方面ニ使ハレタモノ
  ハ僅ニ二百何十万圓、組合以外ノ他ノモノヲ通ジテ使ハレ
  タ金ガ五百万圓、然ルニ都市ニ向ッテ如何ニ此金ガ出テ居
  ルカト云ヘバ、都市住宅組合ト云フモノノミニ注ガレタ金ハ、
  實ニ一千万圓ノ巨額ニ上ッテ居ルノデアリマス、集ルモノ
  ハ-地方ノ農民ノ方面カラ來リ注ガルヽモノハ、多クハ都
  市及中產以上ノ方面ニ注ガルヽト云フコトハ、土井權大君
  ノ揭グラレタル統計ト、今私ノ申上ゲタル統計ヲ對照セラル
  ルナレバ、思半バニ過ギルダラウト考ヘルノデアリマス、斯樣
  ナ意味ニ於テ都市否農村中產以下ノ農民多數ニ向ッテノ
  金融機關ハ、現在ニ於テハ斷ジテ滿足ハ出來ナイ、是ニ於
  テ本案設立ノ必要ガ生ズルノデアリマスルガ、尙ホ此點ニ付
  テノ心配ガアルト云フコトデアル、ソレハ何デアルカト云フト、
  近來此產業組合ノ發達ハ非常ニ著大ナモノデアッテ、日本
  ノ戶數一千万戶ノ中之ニ這入ッテル者ガ二百何十万、斯ウ
  云フコトニナッテ居ル、而シテ一万何千ノ組合ガアルガ、此組
  合ノ可ナリ良クナッタモノハ、往々ニシテ此金ナドヲ使込ム者
  ナドガ出來、或ハ個人寄託ト云フ名義ニ於テ、始終不都合
  ナ事ナドガ出來ルノガ多イ、金ノ無イ組合ハ萎靡振ハズシテ、
  形式ガアッテ精神ガ働イテ居ラヌ、斯樣ナルモノヲ機關トシ
  テ、之ヲ唯一ノ機關トシテ、中央金庫ノ設立ヲシテ働ヲ爲ス
  カドウカト云フ所ノ心配ガアルヤウデアル、之ニ付テ辯明ヲ
  致シテ置キタイノハ、此中央金庫ノ働ハ、此方面ニ付テハ二
  ツノ目的ヲ有シ、卽チ未ダ大ニ振ハントシテ振ハズ、形ガ備ッ
  テ其實體ガ完備セザルモノニ對シテハ、力メテ之ヲ助長ノ方
  針ヲ執ッテ、之ヲ段々盛リ起シテ活カシテ-出來得ル限リ
  活カシテ行ク、發達ノ途中ニ在ッテ動モスレバ剩餘金ヲ個人
  預ナドヲシテ、此間ニ何等カノ間違ガ生ジサウニナッタモノハヽ
  丁度成育シテ來タ所ノ少年少女靑年男女ノ如キモノデア
  リマス、此所ガ大切ナ所デアルカラシテ、玆ニ中央金庫ト云
  フ保護役ハ附ケテ、斯ノ如キ剩餘金ト云フヤウナモノハ力メ
  テ之ヲ吸收シテ、東西互ニ相倚リ相助ケ、有無相通ジテ此
  中央金庫ニ依シテ統一綜合制御スルト云フ所ノ目的ヲ持ッ
  テ居ルノデアリマス、右ハ此法案ニ包含シテ居ル所ノ大體ノ
  法條ノ說明デアリマスルガ、之ヲ又國民思想ノ上ニ政治的
  方面カラ考ヘテ行キマスルト云フト、此法案ノ働、此中央金
  庫ノ働ト云フモノハ、卽チ一面ニ於テハ〓結事能ノ發揮ト
  ナリ、一面ニ於テハ日本古來ノ美風タル、隣保相倚リ相助
  クル此情誼ノ延長トナルノデアリマス、更ニ又家族主義ノ
  親愛味ノ擴大トナルノデアル、經濟的方面カラ見マスレバ
  長イ問世間ノ爲ニナリ、或ル場合ニ於テハ社會ノ動
  搖ヲ起ス所トナッテ居ル所ノ、經濟的自由競爭主義ニ
  對スル所ノ一ツノ所謂制御トナル、此增上慢ヲ抑ヘル
  所ノ一ツノ建物トナルノデアリマス、他ノ方面カラ見テ行キ
  マスト云フト、嚮ニハ町村制及府縣制ノ選擧權ノ擴張ニ依ッ
  テ、政治的ノ自治ニ對スル參與ノ區域ハ著シク擴大サレタ
  ノデアリマス、地方農民ニ向クテ、共同一致シテ經濟的獨立
  經濟的自治ノ觀念ヲ養ハナケレバナラヌ必要ガ今日最モ
  迫ッテ居ル、此場合ニ於キマシテ此法案ガ能ク働キマスレバ、
  此方面ニ大ナル力ヲ爲シ、大ナル基礎ヲ築クト云フコトハ多
  ク論ズルヲ要セズシテ明白デアラウト考ヘルノデアリマス(拍
  手)說明ガ此所ニ至リマシテ、私ガ辯明ノ初頭ニ於テ申上ゲ
  テ置イタ所ノ有力ナル反對論、隱レタル反對論ト云フモノヲ
  御紹介ヲシテ、之ニ對スル辯明ヲ一ツ加ヘタイト思フ、有力
  ナル反對論、隱レタル反對論、此反對論ハ動モスレバ上院ニ
  手ヲ仲バシテ、此法案ノ發展ヲ-穏健ナル發展ヲ害スルノ
  デハナイカト私ハ憂フル點デアリマス、ソレハ外デハナイ大政
  治家ノ議論ヂアル、從來此現在ノ行政殊ニ行政費ヲ統轄
  スル大臣連中ノヤッテ居ル所ヲ見ルト、國務ハ段々複雜ニナ
  ルト同時ニ文化機能ガ分解シテ働ヲ爲ス、國家ノ機能ガ之
  ガ發ツモ出來ルト云フコトハ是ハ已ムヲ得ナイ、然ルニモ拘
  ラズ是ハ已ムヲ得ヌトシテモ、之ト同時ニ國家ノ綜合統一ヲ
  スルカト云フノハ-機關ト云フノハ、此場合ニ於テ最モ嚴
  〓ニ嚴密ヲ加ヘナケレバナラヌノデアル、然ルニ獨リ此內閣
  トハ言ハヌ、長イ間ノ因襲ガ勢ヲ成シテ文化機能ハ段々ト發
  遠シテ、內閣ト云フ綜合統一ノ機能ハ段々ト弱マッテ來テ居
  ル、是ニ於テカ各省悉ク籠城主義トナリ、割據主義トナリ、
  各省ノ大臣ハ國務大臣夕ル立場ヲ多クハ忘レテ、一省ノ行
  政長官タルコトニ重キヲ措イテ、一省ノ屬條ノ議論ガ國內
  ノ與論ト映ズル、而シテ此屬僚ノ與論ヲ提ゲテ閣議ニ臨ン
  デ豫算會其他ニ於テ、若クハ法制ノ審議ニ於テ總理大臣ニ
  肉薄スル、斯ノ如キ狀態ニナッテ居ル、此弊害ノ根柢ニ向ッテ
  先ヅ政治家ハ斧ヲ加ヘナケレバナラヌ、激語デハアルカモ知
  レヌ、是ハ私ノ說デハナイ、內閣彈劾ノヤウニ聞エルケレドモ
  私ノ說デハナイ、其反對論ヲ紹介スルノデ、激語デハアルカモ
  知レヌガ、今日ノ狀態各省大臣ハ豫算分取ノ總大將デアッ
  テ、次官以下ノ役人ハ豫算分取ノ勇將猛卒デアル、斯ウ云
  フ評ガアル、是ニ於テ大藏大臣ハ何レノ場合ニ於テモ、積極
  的ト消極的トヲ問ハズ之ヲシッカリ袋ヲ締メテ、何デモ出サ
  ナイヤウニ出サナイヤウニスルノガ職務ノ如クナッテ居ッテ、總
  理大臣ハ内閣書記官長、法制局長官ト云フ左右ノ翼ヲ使ツ
  テ綜合統一ニ努メテ居ルガ非常ニ困難ヲ感ジテ居ル、言葉
  ヲ換ヘテ言ヘバ國家機能、國家意志ハ各省ニ分裂シテ發揮
  サレルカラシテ、何時モ國家ノ眞目的大目的ト云フモノハ貫
  徹シナイト云フ斯ウ云フ狀態デハ、或ハ此法案ガ成立シテモ
  デス
  〔粕谷議長議長席ヲ退キ松田副議長代リ著席〕
  一
  大蔵省ハ自分管轄ト云ヒ、農商務省ハ自分管轄ト云ヒ、或
  ハ雨省交ミ之ヲ監督シテ、サウシテ此法案ノ活キタ精神ト
  云フモノガ、國情ニ向フテ十分ニ發揮サレナイ虞ガアリハセヌ
  カ、斯ウ云フ場合ニ於テハ、何ヲ差置イテモ議會ハ法律ナド
  ヲ作ルト云フ閑事業ヲシナイデ、大困難、デハアラウガ、行政
  維織ノ根柢ニ向フテ斧ヲ振フテ、制度ノ革新ヲ議會一致デ迫
  ラナケレバナラヌト云フ反對論ガアルノデアル、私ハ此論全
  部悉ク肯定スルモノデハアリマセヌ、併ナガラ確ニ時弊ノ中
  心ヲ射換イテ居ル、所ノ矢デアルト私ハ見テ居ル、或ハ制度
  ノ革新ガ先デアッテ、此法案ノ成立ヲ後ニスルト云フノモ一
  ノ議論デアリマスガ、私ハ別ノ方面カラ此法案ヲ先ニ出シテ
  宜イト云フ一ノ安心ヲ持ッテ居ル、ソレハ何デアル、行政組織
  ハ今私ガ紹介シタ程デナクテモ、サウ云ム弊害ガアリマセウ、
  併シ行政組織以外ニ、今國論ノ大部分ガ此農村ヲ振興シ
  ナケレバナラヌ、金融機關ノ用水路ヲドンナモノデモ差當リ
  作ラナケレバナラヌト云フコトニ熱狂シテ居ル所ニ、此ニ見ル
  所ガ私ニ在ル(拍手)此零圍氣、此環境ノ下ニ用水路ヲ置
  キマシタナラバ行政機能ハ或ハ之ニ向,テ、完全ナル所ノ法
  ト世話焼ハ今ハ不十分カ知ラヌ、然レドモ民論カラ起ル此
  力ニ依シテ是ガ動力トナッテ、中央金庫ノ機能ト云フモノガ
  十二分ノ活動ヲスベキ方面ニ向フト云フノハ、私ハ確カデア
  ラウト云フ確信ヲ以テ提出シタノデアリマス、諸君、尙ホ私ハ
  此決案ニ聯關シテ御話ヲ致シテ置キタイ事ハ、固ヨリ此法
  家ガ獨立孤行シテ國家民人ニ大ナル『寄與ヲスルト云フ程
  ニ、私ハ純法律家ニハ落チテハ居ラヌ、此法律ガ出來テ、而
  シテ此法律ヲ周圍ヨリ盛上グル所ノ各種ノ機關ガ其頭ニナ
  ラナケレバナラヌ、是ニ於テ吾々ハ他ノ別個ノ方面カラシテ、
  行政ノ根本的整理制度ノ革新、是ハドウシテモシナケレバ、
  斯ウ云フ法律ヲ幾ラ作ッテモ、本當ノ働ハ出來ヌト云フコト
  ヲ私共ハ考ヘテ居ル、此意味ニ於テハ私共ハ革新倶樂部ノ
  方々ガ、其政綱ノ多數ノ中ニ行政ノ根本的整理、根本的革
  新ヲ絕叫セラルヽ上ニ於テ、空谷跫音ヲ聞クノ感ヲ懷クノデ
  アリマス、唯革新倶樂部ノ方ガ高イ理想ノ松明ヲ揭ゲテ、
  國民ヲ指導セラレヤウトスル此點ニ於テ、國政ニ貢獻スルコ
  トハ私ハ多イト信ズル、國民黨ノ歷史ヲ飾ル多年ノ仕事ハ
  是デアル、吾々ハ此松明ハ見落スマイトスル、其上常ニ國民
  ノ先頭ニ先チ、直前ニ寄リ添添テ前路ノ榛莽ヲ開キ、〓棘
  ヲ拓イテ難關ヲ乘越エヤウトスルノガ、自由黨以來三十年
  間ノ歷史デアリマス(拍手)此法案ノ設立-此法案ノ提出
  モ此意味カラ成フテ居ル、吾々ガ行政ノ根本的整理ト云フコ
  トヲ御話ヲシタ點ニ於テ、憲政會ノ尊敬スベキ方々カラ屢〓
  冷笑ヲ承ル、或ハ不信用デアルト云フコトノ言モ吐カレルノ
  きささとなる
  ハ、甚ダ以テ私ハ遺憾ニ思フ、是ハ〓派ノ異同ヲ問ハズ、政
  治家ガ今見テ以テ爲サヲケレバナラヌ大事ナ仕事デアル、之
  ガ無ケレバ-之ガ出來ナケレバ、此法案ガ幾ラ全會一致デ
  通ッテモ本當ノ精神ハ働カナイ、而シテ此行政ノ根本的整
  理ノ前途ニハ、憲政會ノ聰明ナル方々ガ其遂行ヲ危マルヽ
  ヤウニ種々ノ難關ガアル、殊ニ近頃副島博士ナドノ口カラヤ
  カマシイ問題トナリ居ル所ノ樞密院論、此樞密院ノ方面ナ
  ドニ付テハ非常ナル困難ガ橫ハッテ居ル、然レドモ樞密院ノ
  諸君子モ長キ經驗ノ上カラ割出シタル所ノ保守、自重、因
  襲尊重ノ風ニハ滿チテ居リマスケレドモ、若シ議會多數ノ意
  嚮ガ此ニ在ルト云フコトガ一致シクナラバ、之ヲ阻害スルコ
  トノ勇氣ナドガアルモノデナイト云フコトハ、私ハ斷言シテ置
  キマス(拍手)此意味ニ於テ憲政會ノ方々ハ、皮相ノ松明ヲ
  高ク揭ゲルト云フコトヲ仕事トシテ居ラレルヨリハ、實行的
  政黨トシテ任ジラレテ居ルヤウデアル、此方面カラ云フト、吾
  吾ノ行政整理ノ問題ト云フモノヲ冷笑スルドコロデハナイ、
  之ニ參加シ追隨セラルヽノガ政黨トシテノ本義デアル(拍
  手)諸君、細カイ點ニ付テ御話ヲスベキ點ハ幾多モアリマスケ
  レドモ、是ハ委員會ニ譲リマシテ、尙ホ此問題ト諸君ノ熱心
  ナル普通選擧ノ關係等ニモ論及シテ、此法案ト云フモノガ
  此方面ニ働ヲ爲スト云フコトヲ一言致シタイ、吾々ハ地租
  委譲ヲ唱ヘ、而シテ又地方自治制ノ政治的參與ノ方面ニ
  大擴張ヲ加ヘ、更ニ此方面カラシテ、地方民ノ經濟的ノ
  自治ニ向ッテ自覺ヲ促シテ居ル、斯ノ如ク地租ノ委譲地方
  行政ニ對スル參與ノ區域擴大、而シテ本案ノ提出、是等ノ
  三方カラ攻寄セテ來テ是カラ打出ス所ノモノガ、眞ニ日本ノ
  國體、國情、民情ニ合致シタル所ノ選擧權ノ擴張トナルト
  云フコトヲ今日カラ御話ヲシテ置ク(拍手)更ニ是等ノ法案
  ト云フモノハ、吾黨經綸ノマダ閃ニ過ギナイ(笑聲起ル)諸君ハ
  冷笑サレルガ、目ヲ刮マシテ吾黨將來ノ活動ヲ見ヨ(拍手)
  吾黨經綸ノ閃ニ過ギナイ、此閃カラ數千條ノ光芒ヲ發シテ
  陸離トシテ國家民人ノ前途ヲ照スノモ永キ未來デハナイト
  云フコトヲ玆ニ斷言スル(拍手)本〓ノ各條章ニ付キマシテ
  ハ不十分ノ點モアルカモ知レヌ、是等ノ事ニ付マシテハ各黨
  各派ノ意見ニ基イテ、之ヲ美化シ、玉成スル點ニ於テハ、吾々
  ハ吝ナラヌ者デアルト云フコトヲ諸君ニ告ゲテ說明ノ終リト
  致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/51

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• 052・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　本案ニ付テ質疑ノ通告ガアリマ
  ス、通告順ニ從シテ發言ヲ許シマス星島二郞君
  〔星島二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/52

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• 053・星島二郎

  ○星島二郞君　現在ノ社會組織、殊ニ庶民階級ノ經濟ヲ
  救フニ付キマシテハ、產業組合ノ發達ガ最モ必要デアルト思
  フノデアリマシテ、私共殊ニ最近露西亞ガアル程ノ革命ヲシ
  ナガラ、尙ホ產業組合ハ儼トシテ存シテ居ルト云フ事由カラ
  致シマシテモ、如何ニ是ガ人間共存ノ生活ノ原理二適ッテ居
  ル主義デアルカト云フコトヲ知ルコトガ出來ルノデアリマス
  サウ云フ意味合カラ、私ハ最近獨リ庶民ノ經濟上ノ問題デ
  ハナクシテ、モウ少シ根本ニ入ッテ思想的ニモ此產業組合ノ
  發達ヲ期シタイト所ッテ居ル一人デアリマシテ、自ラ小サイ經
  驗ナドヲ以テ、此法案ニ對シテハ殊更興味ヲ持ヲテ居ル一人
  デアリマス、同僚ノ土井權大君モ年來熱心ナル組合運動者
  デアリマシテ、此度大政黨政友會ヨリ政府ニ先ンジテ斯ル
  法案ノ出タコトニ付キマシテハ、私ハ政友會ニ敬意ヲ表シタ
  イト思フノデアリマス、併シ其根本ノ思想ニ付テ今少シク私
  ハ提案者ニ對シテ御尋シタイト思フノデアリマス、ソレカラ又
  一面當局者ニ對シマシテモ、二三此機會ヲ藉リマシテ御尋
  ヲシタイト思フノデアリマス、第一ノ點ニ付キマシテ現在產
  業組合ノ運用上困ルノハ、勿論中央ノ金融機關ニ困ッテ居
  ルデハアリマスルケレドモ、寧ロソレモリモ普通ノ金融機關
  普通銀行トノ連絡ト云ッタヤウナ點ニ於キマシテ、非常ナル
  不便ヲ感ジテ居ル、若シ一歩進ンデ之ヲ組合ノ中央金庫ト
  セズシテ、寧ロ特殊銀行トシテ一般金融界ト連絡シテ、始メ
  テ本當ノ機能ガ達セラレルデハアルマイカ、私ハサウ云フ意
  味合カラ寧ロ產業銀行或ハ產業組合ノ中央銀行トシテ、
  普通銀行ト取引スルヤウナ仕組ニ何故セラレナカッタカ、是
  ハ最モ重要ナル點ト自分ハ思フノデアリマス、ソレカラ私ハ
  殊ニ此法案ノ非常ナル缺點ト思ヒマスル點ハ、獨り產業組
  合ノミニ報ッテ居ル點ニ付テ、非常ニ自分ハ遺憾ヲ覺エテ居
  ル、只今横田氏ノ實ニ法案說明ノ「レコード」ヲ破リマシタ思
  想的背景ヲ帶ビタル御說明ヲ聽キマスルト、農村振興、中
  產以下ノ金融機關ヲ救濟スルト云フ點ニ付キマシテ、巨細
  ノ御說明ガアッタノデアリマスルガ、今日ノ各種組合ハ獨リ
  產業組合ノミナラズ、現在ノ森林組合、漁業組合、畜產組
  合、養蠶組合、耕地整理組合、斯ウ云フヤウナモノガ非常ニ
  殘ッテ店ッテ、寧口數字ノ上カラシマスレバ、此他ノ組合ノ方
  ガモツト〓〓資登ヲ要求シ、其他ノ連絡ヲ要求シテ居ルシデ
  アリマス、唯2是ハ或ハ私ノ邪推力モ知レマセヌケレドモ、マ
  ダ口本ク政黨ハ政務調査機關ガ備ラズ、大政黨政友會デ
  アリナガラ、是ハ確ニ御手落デハナカッタカト白分ハ思フノデ
  アリマス、若シ政黨ハ地盤ノ利用、所謂黨利黨略ノ爲ニヤラ
  レルト云フコトガ理想デアルナラバ、何故斯ウ云フ澤山ノ組
  合ヲ看逃シテ居ラレルヤト云フコトヲ疑クテ見タタナルノデア
  リマス、斯ウ云フ點ニ付キマシテ、特ニ提案者ノ御意見ヲ伺
  ヒタイト思フノデアリマス、サウシテ此法案ノ最モ缺點ナノ
  ハ、勿論詳シイ事ハ委員會デ申上ゲマスケレドモ、三箇組合
  ニ限ッテ居ルト云フコトニ付テハ、殆ド其機能ガ餘程薄ライデ
  來ルト思フ、昨日特殊銀行法改正法律案ノ委員會ニ於テ、
  政府ヨリ配付サレタ日本銀行貸付ノ狀況ヲ見マシテモ、產
  業組合ニハ僅ニ一千六百万圓デアリマス、然ルニ耕地整
  理、漁業、森林、畜產、其他ヲ總計シマスレバ、一億四千万
  圓ト云フモノニナッテ居ル、此數字カラ見マシテモ、私ハ此法
  案ヲ政友會カラ出サレタトキニ、多分漁業組合、森林組合
  ハ入ッテ居ルト思クテ居シタ、是ガ明ニナレバ屹度要求ハ起シテ
  來ルト思フノデアリマス、斯ウ云フ點ニ付テ横田君ハ-提
  案者ハ之ヲ改正スルノ意思アリヤ否ヤ、ソレカラ現ニ勸業銀
  行ノミデモ、此各種ノ組合ニ對シテ一億四千万圓カラノ資
  金ヲ供給シテ居ルノニ、今日此提案ハ政友會ノ只今ノヤウ
  ナ大キナ恩想ヲ持チタル御說明ニシテハ、餘リニ資本ガ小サ
  イデハナイカ、斯ウ自分ハ思フノデアリマス、アレ程ノ大キイ
  領袖ガ出マシテ、大キイ聲ヲ爲サッタカラニハ、モウ少シ私ハ
  資本ヲ大キクシテ欲シイト思フノデアリマス(拍手)此點ニ付
  テハドウ云フ御考デアルカ、ソレカラ是ハ思想的背景カラ私
  ドウシテモ肯ヒ得ナイノハ、此產業組合ノ基礎根柢トナルモ
  ノハ、法人ト同樣ニ人間ヲ認メル-人格ヲ認メル、卽チ多
  數ノ出資口ヲ持ヲテ居ル者モ、一口ヲ持フテ居ル者モ、唯、
  人一票デアルト云フコトニ本當ノ面白味ガアル、然ルニ產業
  組合ノ中心機關ヲ造リナガラ、其機關ノ理事ヲ官廳/任免
  トシテ居ルノハ是ハ子盾掻著デアル(拍手)私ハ此點ニ付キ
  マシテ此法案ノ根本ヲ作ルトキ、是ハ屹度大藏省ニ行カレヽ
  或ハ農商務省ニ行カレ、或ハ產業組合中央會ニ行カレテ、
  俄作リニ出來上ッタ法案デハアルマイカ、大政黨ノ政務調査
  機關未ダ備ラズト云フ意味ニ於キマシテ、日本ノ政治界ノ
  爲ニ憂フルノデアリマス、是等ノ五六ノ點ニ付キマシテ、此機
  會ニ於キマシテ提案者ノ御說明ヲ願ヒタイト思フノデアリマ
  ス、是ハ思想問題ニ最モ影響アルモノデアリマス、殊ニ只今
  普選ト聯閣シタル御說明ガアッタカラ、サウ云フ意味ニ於テ
  殊更理事ノ互選ガ組合員ノ其自治ヲ認メルト云フコトデ、
  組合ノ中心精神デアリマスカラ、殊更ニ說明ヲ要スル點ト思
  ヒマス、ソレカラ此機會ニ於キマシテ、政府當局ニ御尋シタイ
  ト思フ點ハ、私ハ近來產業組合ノ中ニ於キマシテモ、特ニ市
  街地信用組合ハ他ノ組合ト違ヒマシテ、殆ド銀行ニ近イ業
  務ヲ致シテ居ル、斯ウ云フモノガ他ノ産業組合卜共ック組合
  銀行ヲ造ルト云フコトノ必要ヲ感ジテ居リマスガ、之ニ對ジ
  テ政府ハドウ云フ意見ヲ持ノテ居ラルヽカ、隨テ此中央金庫
  ハ勿論政府ト意思相通ズル大政黨ノ提案デアリマスカラ、
  當局者モ御賛成ト思ヒマスガ、斯ルモノガ出來タトシテ、或
  ハ勸業銀行ノ中ノ興業貸付ガ其方へ行クトカ其他色々按
  排スレバ、今日ノ勸業銀行、興業銀行、斯ウ云フモノヽ性質
  ガ殊更ニ別ニ設クル必要ガナクナッテ、將來ニ於テ勸業、典
  業ノ合併ヲ必要トセラレルヤウナコトデハナイカ、對ウ云フ
  點ニ付テ政府ハドウ云フ意見ヲ持ッテ居ラルヽカ、今一步進
  ンデ言ヘバ、今日ノ特殊銀行ガ斯樣ナ中央金庫ヲ造ヲテ、社
  會全體ノ國家ノ金融政策ノ根本カラ致シマシテ、日本ノ特
  殊銀行ノ大改正ヲスル必要ナキヤ、勘興ノ合併ノミナラズ、
  或ハ朝鮮銀行、臺灣銀行ノ銀行劵ノ廢止ノ如キ、或ハ今一
  步進ンデ日本銀行-國家ノ中心銀行ヲモ改造スル意思
  ナキヤ、旣ニサウ云フ時機ニナッテハ居ナイカ、斯ウ云フ點ニ
  付テ極ク大雜把デハアリマスガ、大體政府ハ各特殊銀行ノ
  條例改正ノ時機ニ達シテ居ルヤ否ヤト云フ點ニ付テ、御答
  辯ヲ得タイト思ヒマス、詳シイ事ハ委員會デ御尋致シマス
  ガ、右御答辯ヲ順ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/53

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• 054・横田千之助

  ○橫田千之助君　星島君ノ第一ノ御尋ハ、私ノ提案ノ說
  明ノ際ニ中シテ居リマスガ、此中央金庫ハ相互組合ノ組織
  デ、共助協力ノ精神デ出來テ居リマス、銀行ハ營利的方面
  ニ陷ッテ居ルカラ、中央金庫トシテ共助協力ノ機關トシテノ
  働ト云フモノトハ全ク別ナ事ニナルカラシテ、寧口是ハ今日ニ
  於テハ銀行ノ組織ナラバ、既存ノ銀行デ済ンデ店ル、ソレト
  ハ別ノ方面ノモノヲ造ルト云フコトガ本案ノ根本ノ性質デ
  アリマス、ソレカラ今一ツハ單リ產業組合ノミニ、若クハ產業
  組合聯合會ノミニ貸付ケルト云フコトハ、大變狹イ事デハ
  ナイカト云フ御質問デアリマシタガ、是モ提案ノ說明中ニ盡
  シテアルト思ヒマス、卽チ相互組織ノ是ガ働デアッテ、唯〓若
  干ノ例外ヲ附ケテアル、餘裕金アル場合ニ於テハ、公益ヲ目
  的トスル法人是等ノモノヽ手ヲ通シテ、相當ニ餘金ガアレバ
  貸付ケル、是ガ矢張本案ノ金庫ナルモノガ他ノ銀行ナドヽハ
  精神ヲ異ニシテ、別ナ働ヲ中產以下ノ農村ニ向ッテ
  爲スベキ所ノ時代ガ來夕モノト云フ見地カラ是ガ出來テ居
  リマス、金額少キニ失セズヤ、資本金少キニ失セズヤト云フ御
  尋、資本金ハ證立ノ當初、最初ニ於テ政府拂込ガ千五百万
  圓(「聞エナイ演壇デヤレ」ト呼フ者アリ)私ノ聲ハ大イカラ聞
  エル筈ダ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/54

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• 055・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　田淵君、注意致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/55

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• 056・横田千之助

  ○橫田千之助君(續)　千五百万圓ノ三分ノ一ノ五百万
  圓、組合ノ拂込ムモノハ千五百万圓ノ五分ノ一三百万圓、
  合シテ八百万圓、社債ハ十倍ノモノガ發行出來ルノデアリ
  マスカラ、初年ニ於テ八千八百万圓ガ出來ルノデアリマス、
  是ハ固ヨリ第一步デアリマスカラ、更ニ增資或ハ組合ノ增
  加、此方面カラ資本ノ增大ヲ來スヤウニ試ミタイト云フ考
  デアリマス、理事長其他ノ者ヲ官選ニシタノハドウデアルカ、
  是ハ銀行ノ組織ニスルカシナイカト云フコトニ對シテ
  〔「田淵君自席ニ行ケ」「登壇シロ」「登壇シロ」ト呼フ
  者アリ〕

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• 057・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　田淵君靜肅ニ····(「登壇シナ
  ケレバ聞エナイ」ト呼フ者アリ)議長ハ許可シテ居ルカラ宜シ
  ウゴザイマス

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• 058・横田千之助

  ○橫田千之助君(續)　金庫ノ組織ト云フコトノ御質問ニ
  對シテ、御答ガ少シ洩レテ居ル事ガアリマス、今星島君ノ御心
  配ノ通リ、色々ノ有力ナル特殊銀行ガ在ル限リハ、是等ノ銀
  行ガ特別ニ働イテ居ル間ハ(「登壇シロ」「登壇シ口」ト呼フ
  者アリ)議長、私ノ說明ヲ妨害スル者ニ退場ヲ命ズルコトヲ
  願ヒマス

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• 059・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　田淵君ノ發言ヲ禁止致シマス
  〔「退場トハ何ダ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/59

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• 060・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　田淵君ニ度々注意ヲ與へ發言
  ヲ禁止シマシタケレドモ、尙ホ議長ノ制止ヲ肯キマセヌカラ
  退場ヲ命ジマス
  〔「登壇ト云フニ退場トハ何ダ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/60

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• 061・横田千之助

  ○橫田千之助君(續)　議場ノ多數ハ登壇ヲ望ンデ居ラヌ
  ト云フコトヲ見テ居リマス-此金額ハ市場ヨリ吸收スル
  コトハ頗ル困難デアラウ、是ニ於テ國家ハ重農主義ノ基礎
  ニ立ッテ低利資金ノ出來ルダケ多ク、將來此方面ニ迴シテ
  貰ハナケレバナラヌト云フ政策ヲ執ッテ貰ヒタイト考ヘテ、是
  ガ出來タ同時ニ低利資金ノ取入ヲスル上ニ於テ、理事長以
  下ノ人々ヲ官選ニスルノヲ便宜トスル、但シ民間カラノ要求
  ヲ金庫內ニ注入スル爲ニハ評議員ノ規定ガアルカラ、ソレヲ
  御參照ヲ願ヒタイ、辯明ノ終リニ申シタ通リ、無論是ハ完璧
  ノモノデハナイ、御熱心ナル各黨各派ノ人ノ御意見ヲ聽イ
  テ、之ヲ玉成スル爲ニ、修正ハ固ヨリ吝カナルモノデハナイト
  云フコトヲ附言シテ置キマス
  〔黑田政府委員登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/61

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• 062・黒田英雄

  ○黑田政府委員　星島君ノ御質問ニ對シテ御答辯致シ
  マス、此法案ガ成立シマスルナラバ市街地信用組合ニ付テ
  モ矢張同ジヤウニ中央倉庫ト云フ風ナモノヲ設ケル必要ハ
  ナイガ、政府ハ如何ニ考へテ居ルカト云フ御質問ノヤウニ拜
  聽致シタノデアリマス、恐ラク此中央金庫ハ主トシテ市街地
  信用組合以外ノ農村ノ產業組合ニ向ノテ力ヲ注グヤウニナ
  ルコトハ考ヘテ居ルノデアリマス、又ソレガ目的デアラウト先
  程提案者ノ御說明モ拜承シタノデアリマスルガ、市街地信
  用組合ニ對シマシテハワレト同樣ニ特ニ。玆ニ中央ノ機關
  ヲ設ケル必要ガアルト云フコトハ、今日ニ於テハマダ考ヘテ
  居ラナイノデアリマス、ソレカラ第二ノ御質問ハ此中央倉庫
  ガ出來マシタ暁ニ於テハ、產業組合等ニ對シテハ此金庫ガ
  資金ヲ供給シ、之ニ向ッテ中央ノ金融機關タル働キヲスルコ
  トニ成ルノデアルカラシテ、自然勸業銀行ノ業務ノ中カラシ
  テ、其等ノ働キガ此方ニ移フテ來ル、然ラバ勸業銀行ト興業
  銀行ハ合併ヲスルト云フコトガ至當デハナイカト云フ風ノ御
  意見デアリ、尙ホ其他ノ特殊銀行ニ付テモ、此際根本的ニ
  制度ノ改正ヲスベキ時デハナイカト云フ御話デアッタノデア
  リマスガ、此事ニ付キマシテハ過日豫算委員會ニ於キマシテ
  大藏大臣カラ中上ゲマシタ通リ各種ノ-單ニ此勸業銀
  行興業銀行等ニ付テノミナラズ、各種ノ特殊銀行、特殊銀
  行ノミナラズ、又一般ノ金融機關ニ付キマシテ、今日準備的
  ノ調査ヲ致シテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ其等ノ調査ノ結
  果如何ニナリマスルカハ、今日ニ於テ明言ハ致サレナイノデア
  リマスルガ、今日ニ於テモ十分ニ根本的ニ調查ノ步ヲ進メ
  テ居ル次第デアリマス、又中央金庫ガ出來マシテモ、勸業銀
  行ト致シマシテハ、其特權デアリマスル所ノ割增付債劵ニ
  依ヶテ得マシタ零細ノ資金ヲ、此方ノ方ニ供給ヲスルト云フ
  働モアリマスシ、又勸業銀行自身モ依然トシテ產業組合等
  ニモ資金ヲ供給シ得ルノデアリマス、當然此働キヲ失フ譯デ
  ハナイノデアリマスルカラ、前申上ゲマスル通リ、全體ニ於テ
  今日準備的調査ヲ致シテ居ル次第デアリマスルカラ左樣ニ
  御承知ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/62

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• 063・星島二郎

  ○星島二郞君　一寸モウ一言最後ノ日本銀行條例ハ不
  十分デアリマスガ、之ニ對シテ何カ今日改正ノ準備ヲ爲サレ
  テ居リマスヤ否ヤ、一寸其點ニ付テ·
  〔政府委員黑田英雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/63

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• 064・黒田英雄

  ○政府委員(黑田英雄君)　先程申上ゲマシタノハ極ク一
  般ノ金融機關デアリマシテ、日本銀行モ勿論包含ヲシテ調
  資致シテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/64

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• 065・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　南鼎三君
  〔南鼎三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/65

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• 066・南鼎三

  ○南鼎三君　中央金庫法ノ御說明ヲ横田君カラ承リマシ
  テ私ハ衷心ヨリ其御精神ニ賛意ヲ表スル者デアリマス、聊カ
  本日ハ聲ガ嗄レテ居リマスルカラ、ドウカ彌次ラナイヤウニ願
  ヒタイ(「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)農村救濟ト云フ事
  柄ニ付テハ、不肖等モ大ニ〓究シテ居ルノデアル、單ニ地主
  ノミ所謂資本主義化シタル所ノ地主ノミヲ保護スルヤウナ
  事柄デハ農村ガ救濟出來ナイ、屹度中以下ノ者デアラネバ
  ナラヌト云フ其橫田君ノ御意見、竝ニ木案ノ功德ハ屹度其
  等ノ階級ニ波及スルノデアルト云フ御精神ニ對シテハ私ハ
  井常ニ喜ンデ居ル、而モ斯ノ如キ法案ノ出ルコトヲ吾々トシ
  マシテハ、其調査力未グ及バズ、政友會トカ或ハ憲政會トカ
  或ハ革新倶樂部ノヤウナ團體ガ非常ニ之ヲ研究シテ爲スペ
  キモノデアッテ、今迄斯ウ云フヤウナモノヽ出テ居ラナイト云
  フノモ寧ロ不思議ニ感ジテ居ッタ位デアル、所ガ玆ニ農村救
  済ト云フ事柄ニ付キマシテ、憲政會ハ前ニ地租二分減ハ宜
  イト云フ事柄デアックガ、私ハ反對ノ意見ヲ持っテ質疑ヲシタ
  ノデアルガ、所ガ此產業組合ナルモノニ保護ヲスルト云フガ、
  一體小作人ガドウ云フ工合ニ此恩惠ヲ蒙ムルノデアルカ、
  大抵大地主ト稱セラレル者ガ殆ド二「パーセント」位ヨリ農
  村ニハアリマセヌ、或ハ中地主ト云フヤウナ者ガ八「パーセン
  ト」又小地主或ハ自作農ノ如キニ至リマシテハ三十「パーセ
  ント」程アル、此等ノ人々ハ利益ヲ蒙ッテ、農村ノ中ノ六十
  「パーセント」ヲ占メテ居ル所ノ小作人ガ是等ノ恩惠ニ浴ス
  ルコトノ出來ルヤ否ヤト云フコトヲ御尋シタイノデアル、是ハ
  其一デアリマス、大抵此地方ニ參リマスト云フト、自作農或
  ハ小地主等ハ總テノ上ニ於テ一致ヲスルノデアリマスガ、小
  作人ト云ヘバ直ニ昔ノ奴隸ヲ扱フヤウナ態度デ、同ジ組合
  ニ入レナイト云フヤウナ惡イ習慣ガアリマス爲ニ、(「違フ〓〓」
  「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)是ハ政友會ヲ惡ク言っテ居リハシナ
  イ、サウ云フコトガ現在我國ニ於テア、ルノデアリマス、サウ云
  フヤウナモノヲ成ペク刎除ケテ自分等バカリ小サクスレバ小
  サクスル程利益ガ多イト云フ考カラ、遂ニ此小作人ヲ度外
  視シハシナイカト云フコトヲ憂ヘルノデアリマス、是ハ策一ノ
  問、是ガ若モ實現サレマシタナラバ農村ハ非常ニ助カルノデ
  ス、農村ト致シマスレバ政友會ガ斯ウ云フ事ヲ編出シタトス
  レバ、實ニ我國ノ農村ハ政友會樣々デ(笑聲)或ハ之ヲ三部
  經以上ニ有難ガルカモ分ラヌ、併シ有難ク思へバ思フ程其
  處ハ又附込ミ所トナリマシテ、此運用スル上ニ於テ、卽チ黨
  勢擴張等ニ之ヲ使フヤ否ヤト云フコトヲ憂フルノデアル、サ
  ウ云フヤウナ事柄ガ無ケレバ結構デアルガ、成ベク無イヤウニ
  シテ戴キタイコトヲ希望スルノデアル、サウ云フヤウナ黨勢擴
  張ノ爲ニ、既ニ鐵道ノ如キデモ反對黨ノ方デハアレハ黨勢
  擴張ニ使ッテ居ルト云フコトデアルガ、出來得ルコトナラバソ
  レハヤッテモ宜シイ、泥ガ少シ掛カルカラ自動車ノ便利ナ物
  ヲ廢メテシマウト云フヤウナ、サウ云フ狹小ナ意見ヲ持ッテハ
  イケナイケレドモ、功德ガ多ク利益ガ多イ程、ソレ程又黨勢
  擴張ニ使ヒタイモノデアラウト考ヘル、サウ云フ憂ガ、此法律
  ノ運用ノ上ニ於キマシテソレガ使ヒ得ルヤウナコトデハイケ
  ナイカラ、サウ云フコトハ絕對ニ避ケラルヽコトデアルヤト云
  フ此二問ヲ御尋シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/66

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• 067・横田千之助

  ○權田千之助君　南君ノ第一問ハ、中農以下ニ御深切ナ
  御質問デアリマシテ、私モ感謝致シマス、此產業組合ハ購買
  組合販賣組合、事業組合、是等ノモノデ組立ラレテ居リマ
  シテ、勤勞ヲ資本化スル、卽チ小作人階級ノ者ニ對人信用
  ヲ以テ金ヲ貸スト云フコトガ目的デアリマス、此用水路ヲ通
  シテ中央金庫ト云フ機關カラ金ヲ出スト云フノデアリマスカ
  ラ、南君ノ主張セラルヽ多數ノ小作ニ向ッテ少額ノ短期信
  用ノ貸付ヲスルト云フコトガ、此本案ノ主ナル働キニナッテ居
  リマス、之ヲ御答致シマス、第二ノ黨勢擴張云々ノコトデア
  リマスガ、政黨ガ國利民福ヲ圖リ、其圖ヲタ結果ハ黨勢擴張
  ニナルト云フコトハ餘儀ナイ、唯〓此機關ヲ惡用スルガ如キ
  コトハ、政友會ノ人々ハ毫末モ考ヘテ居ラヌ所デアルト云フ
  コトヲ、此場合申シテ置キマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/004613242X01719230220/67

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• 068・高見之通

  ○高見之通君　本案ハ政府提出、日本勸業銀行法中改
  正法律案外三件ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 069・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　高見君ノ動議ニ御異議ガナイヤ
  ウデアリマス、其通リ決シマシタ

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• 070・高見之通

  ○高見之通君　殘餘ノ日程ニ對シテ、延期ノ動議ヲ提出
  致シマス
  〔「賛成賛成」ト呼フ者アリ〕

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• 071・松田源治

  ○副議長(松田源治君)　是モ御異議ガナイヤウデアリマス
  カラ、爾餘ノ日程ニ向ッテハ延會ノ宣告ヲ致シマス、次回ノ
  日程ハ公報ヲ以テ御通知ヲ致シマス、本日ハ是ニテ散會
  午後五時五十三分散會

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